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1970-06-11 第63回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年六月十一日(木曜日)     午前十時五十分開議  出席委員    委員長 加藤 清二君    理事 始関 伊平君 理事 山本 幸雄君    理事 島本 虎三君 理事 岡本 富夫君    理事 寒川 喜一君       遠藤 三郎君    林  義郎君       松本 十郎君    赤松  勇君       大原  亨君    川村 継義君       土井たか子君    藤田 高敏君       細谷 治嘉君    有島 重武君       大橋 敏雄君    米原  昶君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 内田 常雄君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  委員外出席者         総理府総務副長         官       湊  徹郎君         警察庁交通局長 久保 卓也君         経済企画庁国民         生活局参事官  西川  喬君         法務政務次官  大竹 太郎君         法務省人権擁護         局調査課長   井手 昭正君         厚生省環境衛生         局長      浦田 純一君         厚生省環境衛生         局公害部長   城戸 謙次君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       橋本 道夫君         農林省農地局管         理部長     小山 義夫君         水産庁漁政部長 平松甲子雄君         通商産業大臣官         房審議官    成田 寿治君         通商産業省企業         局立地公害部長 柴崎 芳三君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君         運輸省自動車局         整備部長    隅田  豊君         建設省河川局長 坂野 重信君         建設省住宅局建         築指導課長   前川 喜寛君         自治省財政局財         政課長     森岡  敞君         最高裁判所事務         総局民事局長  矢口 洪一君         日本国有鉄道常         務理事     一條 幸夫君     ————————————— 委員の異動 六月十一日  辞任         補欠選任   土井たか子君     赤松  勇君   細谷 治嘉君     大原  亨君   多田 時子君     有島 重武君 同日  辞任         補欠選任   赤松  勇君     川村 継義君   大原  亨君     佐野 憲治君   有島 重武君     大橋 敏雄君 同日  辞任         補欠選任   川村 継義君     土井たか子君   大橋 敏雄君     多田 時子君     ————————————— 本日の会議に付した案件  産業公害対策に関する件(大気汚染及び水質汚  濁対策等)      ————◇—————
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  産業公害対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。赤松勇君。
  3. 赤松勇

    赤松委員 内閣所管大臣であります厚生大臣が、産業公害対策委員会出席をするのに遅刻をしておるということははなはだ遺憾です。健康を害していらっしゃる荒木行政管理庁長官もこうして私ども質疑に答えるべく出席をされておる。ましてや内閣所管をつかさどるその大臣が、十時半開会、しかも、もう十一時になろうとしておる、その遅刻は後ほど私は責めますけれども委員長におかれましても、厳重にひとつ注意していただきたいと思うのです。
  4. 加藤清二

    加藤委員長 さよう心得ました。
  5. 赤松勇

    赤松委員 それから、行政管理庁長官にお尋ねしますが、実は私、本日は佐藤総理出席要求しましたが不可能なので、保利官房長官出席要求したわけであります。元来この種の問題というものは、人間生命に関する問題です。しかも、あらゆる分野にわたってただいま公害が発生している。佐藤内閣総理大臣は、一九七〇年代は人間の命を大切にする年代である、予算委員会で、私の質問に対してこう答弁していらっしゃる。しかるに、口では人命尊重人間の命を守るということを言っておりますけれども、ただの一回も産業公害対策委員会出席をしないということはまことに不当であると思う。国会軽視もはなはだしい。のみならず、国民公害に対する要求というものに、当然内閣の政策を明らかにしてこれにこたえなければならぬ。この点も委員長としても十分ひとつ内閣に対して反省を求めるように要求をしていただきたい。本委員会は法案の審議をいまやっておりませんから、政府のほうは聞きおく程度でもってごまかそうとするならば容易ならぬ問題であります。  一昨日以来、本委員会は、連日にわたって各委員諸君が熱誠あふるる質疑を重ねて、新聞もまた大きく報道いたしまして、世論もこの委員会の活動に期待をしておるわけであります。  ところが、問題の一つを質問しようといたしましてもきわめて多岐多様に各省にわたっておりまして、だれが一体責任者であるか明確ではない。行政管理庁長官国家公安委員長も兼務をしておられますけれども、デモを取り締まることには熱心であるけれども公害対策について内閣行政一元化する、こういう問題に対してはきわめて不熱心であると思うのです。したがって、この際行政管理庁長官として内閣に対して勧告をするとか、あるいは内閣に対して、みずから閣議においてこの行政機構一元化のために提案をするというような措置を講じていただきたいと思うのです。この点について荒木行政管理庁長官の所見を承りたいと思います。
  6. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 公害対策は刻下の急務であります。しかも、公害の起こる原因が各省庁にまたがっておって複雑多岐であることもお説のとおりであります。政府としては、これに真剣に取っ組んでまいる所存でありますが、すでに公害基本法が制定されましたときに、公害対策会議なるものを置きまして、内閣総理大臣を長として、厚生大臣庶務主管大臣として発足をいたしておりますが、縦割り行政の中で横割り行政とでもいうべき公害対策は、取り扱いに非常に苦心を要するところであります。したがって、いま申し上げすしたように公害対策会議を設けて、総理大臣イニシアチブをもってぐいぐい推進してまいるというかまえのもとに対処しておるところであります。
  7. 赤松勇

    赤松委員 ぐいぐい推進しておるとおっしゃいますけれども昭和四十二年に公害対策閣僚会議が持たれまして、自来今日まで、その会議は七回しか開かれていないということです。そうすると半年に一回じゃありませんか。半年に一回、一時間か二時間お茶飲みの会議をやって、それで問題を糊塗しようとすることは、これは国民をばかにしたものであり、また真剣に公害対策政府自民党は取り組んでいく姿勢がない、こう言わざるを得ないのであります。いま鉛の問題とか、あるいは汚水の問題とか、その他たくさん公害の問題が出ておりますけれども、連日にわたって公害関係対策会議を開いても開き過ぎではないのであります。この点について、あなたは責任者であります佐藤首相に対して積極的に進言すると同時に——この公害閣僚会議責任者は一体だれですか。
  8. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 公害対策会議設置以来七回開催をいたしておりますことは御指摘のとおりでありますが、まずもって公害防止計画策定基本方針議題として取り扱っております。次に、一酸化炭素にかかる環境基準について、さらに水質汚濁にかかる環境基準について、第四に、公害白書について、さらに水質汚濁にかかる環境基準についての一部改正についてということをおもな議題として七回開催しておりますが、最近は昭和四十五年の五月末に開催した次第でありまして、ぐいぐい推進しておるつもりであります。もちろん公害問題がやかましくなってきておる実情にかんがみまして、積極的にこれを活用して、総理大臣のイニシアをはっきりさせるべく進言をしたいと思います。
  9. 赤松勇

    赤松委員 ぐいぐいとおっしゃいましたけれども昭和四十二年にできて、それからたった七回開いて、それはぐいぐいの範疇に入らないと思うのです。それはひょろひょろだ。  この会議責任者はだれですか。もちろん内閣総理大臣議長格であると思うのでありますけれども、だれが担当されておりますか。
  10. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 会長内閣総理大臣でありまして、その庶務を担当しておるところは厚生大臣であります。
  11. 赤松勇

    赤松委員 その重要な厚生大臣が、いま国民注視の中で開かれておる産業公害対策委員会に三十分もおくれて出席するとは何ごとだ。政府にその公害対策に対する、公害防止の積極的な姿勢がないということは各新聞が一斉にこれを指摘している。  重ねて、こういうような、佐藤首相が形式的に会長になってその下へ事務局長か何か知らないけれども、その庶務取り扱いを、庶務課長じゃなかろうが、庶務局長ですか、あるいは事務局長ですか、そういったものを厚生大臣がやっている。われわれはとうていこれで行政機構一元化あるいは行政対策一元化というものは期待できない。この際、国民世論が求めておりますように公害防止特別省公害省または公害罪に伴うところの公害法というようなものをつくる必要があると思うんです。昨日の全国検察官会同でこの問題が出まして、政府に対して申し入れをするということをきめております。これは現行の法規ではとうてい取り締まることができない。よって、新たなる公害法を新設して、公害対策に対し積極的に取り組むような、そういう行政を行なうために、この際、公害法を設ける必要があるということを佐藤内閣総理大臣申し入れをするということで、東京高検検事長右代表でこれを申し込むことになりました。  そこで私は、公害防止のための特別な省をこの際設けまして、これと積極的に取り組む必要があるのではないか、こういうように考えますが、荒木さんはどのようにお考えですか。
  12. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 何さま、公害問題と申しましても、御案内のとおり各省庁にまたがっておるのでありまして、複雑多岐にわたります。縦割り行政のたてまえをとっております現在の行政組織のもとにおきまして、特にそれを担当する省を設けるということも、お説ではありますが、はたして適当であるかどうかを疑問に思うものであります。たとえば、公害対策基本については、いま申し上げたように主務大臣厚生大臣として、ただし、他省庁でも密接な関連のある問題につきましてはそれぞれ主管大臣でございますが、さらに大気汚染対策につきましては工場事業場排ガス対策自動車排ガス対策家庭等暖房ばい煙対策と、大気汚染だけでも種々の態様がございまして、ばい煙規制法電気事業法ガス事業法鉱山保安法道路運送事業法道路交通法等法律関係がありまして、それを主管する関係各省としましても、厚生省あり、通産省あり、運輸省あり、警察庁ありということであります。  水質汚染対策にしましても、経済企画庁、大蔵省、厚生省農林省通産省運輸省建設省等関連をしてまいります。  地盤沈下対策にいたしましても、工業用地下水採取による沈下対策建造物建築物用地下水採取による沈下対策等これまた通産省建設省関係してまいります。  防音対策につきましては、航空機騒音対策自動車等騒音対策その他の騒音対策がございますが、運輸省防衛庁警察庁関係してまいります。  公害対策一般につきましては、科学技術庁、文部省、厚生省農林省通産省運輸省労働省等関係してまいるというあんばいで、はたしてそれらのことを一省にまとめてやったほうが適当であるかどうかということは、根本的な行政組織課題として取り上げれば格別ですけれども、むしろ関係各省庁の主管する事柄を内閣調整機能を発揮いたしまして、かつまた、内閣総理大臣イニシアチブを発揮いたしまして、総合的にその間の調整をはかって推進することが適切であるという考え方から公害対策会議を設けたような次第は先刻申し上げました。当面そのやり方によって推進していくことこそ適当である。一省を設けることは、御意見でありますから拝聴いたしますが、現実問題としましては、対策会議を推進することこそ適当であろうと、こう考えておる次第であります。
  13. 赤松勇

    赤松委員 適当ではございません。なぜならば、対策会議会長佐藤総理であるけれども主務大臣が、つまり事務局長厚生大臣がやっているわけだ。そんなら、その事務を一体だれがやっておるかといえば、厚生省環境衛生関係諸君がやっているわけだ。こんな片手間仕事でどうして公害問題と取り組めますか。私は各省にまたがるところの諸問題があるから、したがって、たとえば交通問題を警察庁所管から引き抜いて、そうして公害省へ持ってこい、そういうことを言っているんじゃないんです。あなたがおっしゃったように、強力に各省行政一元化し、コントロールするための公害省を置いたらどうか、こういうことを申し上げているんだ。ぜひこれは十分検討して佐藤総理とも相談をして、そして善処したいというぐらいな答弁荒木さんできませんか。
  14. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 大体お説のような考えを申し上げておるつもりであります。内閣調整機能を極度に発揮して推進する限りにおいては効果を発揮し得るものと思います。
  15. 赤松勇

    赤松委員 荒木さんにしては歯切れの悪い答弁だ。治安問題になるとなかなか歯切れがいいんですけれども、こういう問題になると非常に歯切れが悪い。  そこでいまあなたに公害省を設けるかどうかということを質問しましても、本来いえばあなた自身行政改革の先頭に立たなくちゃならぬ人でありますから、あなたから答弁してもらうのが適当だと思いますけれども、まあこれ以上私は申しません。  そこで、公害省をつくれという要求は社会党は捨てませんけれども、しかし、現在ある佐藤会長中心とする公害対策会議ですね、これをもっとすみやかに強化をして、一省の一部がこの事務取り扱いをするというんでなくて、やはり各省からそれぞれの専門家、これを抜てきして、そしてそれらのスタッフによって強力な各省との行政調査をやっていくということをぜひやっていただきたい。それから半年に一回か四カ月に一回この会議を開くんでなくて、必要に応じて、たとえば鉛害の問題が出れば、その問題と連日取り組むぐらいな姿勢をひとつ示していただきたいと思うのです。この点どうですか。
  16. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 今後陸続として公害対策会議が開かれるものと思います。
  17. 赤松勇

    赤松委員 そんなことを私は言っているんではなくて、思われますじゃなくて、開きますと——この点厚生大臣どうですか。あなたは主務大臣だそうだから。
  18. 内田常雄

    内田国務大臣 私は、公害問題を先取りするぐらいの気概を持って、微力ではありますがつとめておるわけであります。これは赤松さんに迎合するわけではございませんが、正直に申しまして、公害に取り組む厚生省内の機構があまりに弱体過ぎます。私は何とかしてこれを強化するために公害省をつくらなくても、いまお話がございます公害対策会議というものを、私どもが名目だけでなしに、その庶務をつかさどるのではなしに、政策的にもこれを振り回し得るぐらいの組織実力を備えるような仕組みにしたい。これは私は政治生命をかけてやらせていただくつもりで、いずれここにいらっしゃる荒木国務大臣とも、ほんように腹を打ち割ってお願いをしたり御相談をいたすつもりでおります。
  19. 赤松勇

    赤松委員 先ほどから質問しているのは、あなたが主務大臣だ、そうすれば佐藤さんがなまけておったら、あなたが主務大臣だからどんどん督促をして、おしりをたたいて、こういう鉛の問題その他の問題について積極的にこれと取り組む、そういうことをやってもらいたいことを言っている。  この間新聞を見ますと、厚生省の中に公害局ですか、を設けられる、——これは違いますか、新聞の誤りですか。とにかくそういうちゃちな構想でなしに、抜本的な、この際内閣としてこの問題と積極的に取り組む、こういう姿勢をひとつ打ち出してもらいたい。重ねて要求しますけれども、いまの内閣に設けられております公害対策会議、あなたが主務大臣、これを半年に一回、三月に一回なんて言わずに、必要ならばどんどん開催していく、そして当面の問題と取り組む用意がありますかどうですか。
  20. 内田常雄

    内田国務大臣 まず、最初におことばがございました、厚生省の中に何らかの機構を設けることにしたということにつきましては、それはこういうことでございます。現在厚生省には環境衛生局のもとに公害部というのがございまして、これは何もかも申したほうがいいと思いままが、一部長課長でございます。いわば飛車角を落としたような取り組みでございまして、桂馬と歩を並べたようなかっこうにもなっておりますので、私は、厚生省内の飛車、角全部をこれに参加させることを当面ひとつやろう、そのためには厚生省の中に公害部というものを中心にして、厚生省の全機構というものを、この際もう設置法等法律関係なく動員する仕組みをつくろうということで、厚生省の中に公害対策連絡会議というものをつくりまして、その幹事役公害部長にして、あとは厚生省内の関係部課長全部をひとつこれに動員をするという仕組みをつくったわけであります。いわば厚生省といたしましては、この際公害部だけでなしに、全体が臨戦体制をつくるということにいたしました。公害局をつくるにいたしましても、これは設置法改正でありますとか、予算を伴わないとできませんので、いま私が申しましたことは全くつなぎでございまして、いずれ予算概算要求時期も切迫いたしますので、その時期までに、厚生省としてほんとうに公害対策会議を振り回せるような実力組織を備えるような仕組みをつくって、そして時世の要望にこたえたいと思います。  次には、公害対策会議でございますが、これは実は十八人の閣僚をもって構成する閣議全体と同じ形でありまして、そのメンバーでないのは、たしか外務大臣防衛庁長官お二人だけでございますので、公害対策会議とは言いませんけれども閣議のたびに、事あるごとに公害についての発言は私もいたすようにいたしております。でありますから、公害対策とは銘打ちませんけれども、私は、各閣僚公害についての関心と対策をぜひこれに注いでもらうだけのことはやっております。  しかし、それはそれといたしまして、その対策会議の下に関係官会議がございまして、これは大体部局長。またさらにその下には、課長までも動員した仕組み関係各省公害対策会議の下の実動会議がございまして、これはもう始終やっておりまして、今回の鉛の問題につきましても、厚生省だけでは、暫定的な環境基準を設けるとか、あるいは調査とか、測定の方法などにつきまして、関係方面を指示していろいろやるということでありますが、実際はそのガソリンの鉛分について措置をするとかあるいは自動車の型式についてどうこうするというようなことになりますと、いまの厚生省だけではとうていできることではありませんので、通産省運輸省と語らわなければなりませんので、そういう関係からはいまの公害対策会議下部機構は始終動かしております。しかし、御激励にこたえまして、さらに私ども中心となって、政府全体をもってこの課題に取り組むようにいたさなければならないと思う次第でございます。
  21. 赤松勇

    赤松委員 あなた、人間的にはなかなかおもしろいところあるのだけれども、ひょうひょうと軽率なことをときどきあれする。私、ことしの予算委員会であなたがこういう答弁をしたことを覚えている。八月には児童手当を必ず答申させます、こう言ったもんだから新聞はぱっと大きく扱った。ところが、一向にどうもその気配がないようです。まあこの問題は別に質問しません。質問しませんが、一向に進んでいないようであります。  私は、これはつまらない小さな問題ですが、この際、厚生大臣に注意を喚起しておきたいことがある。それは例の水俣の患者の問題。これはわが党の島本委員が質問しました、つまり生活保護の適用からはずすという問題ですね。これが新聞に出ましたので、実は厚生省国会を通じましてその患者氏名——別にこれは私は発表するつもりで聞いたわけじゃないのです。これは私の心がまえとして、新聞にはAという表現がありましたので、それで名前を調べたいと思って、国会調査室を通じまして厚生省にその氏名を知らしてくれと言つた。これは厚生省から来たのですが、こういう返事なんです。「水俣病患者の件、生活保護世帯氏名は法を運用していく上で、よほどのことがない限り、秘密を守る上から公表できない。厚生省社会局保護課」となっている。なるほどそれは一般にわかるようなことは避けて、できるだけ御本人の利益のために秘密にしておくということは望ましい。ただ、国会調査権の発動として、私はこれを要求した。何もこれを公表するとか、天下に宣伝するとかということのためにやったわけではないのです。どうしてこの程度のものが秘密を守るためよほどのことがない限り公表できないのか。一体、よほどのことというのはどういうことですか。これは大臣国会軽視もはなはだしいじゃありませんか。私は、国政調査権に基づいて厚生省にこれを要求しているのですよ。これはいかがですか。
  22. 内田常雄

    内田国務大臣 その厚生省回答のことは、実は私に相談がございませんでした。なぜそういう回答をしなければならないかも、私がここではお答えいたしかねます。私が事務当局から報告を受けておりますところによりますと、該当の世帯は、たしか訴訟をされておる方の間に五世帯、それから今度の補償処理委員会に一任されておられる方々の間に五世帯か六世帯、合わせて十世帯ないし十一世帯あるはずでございます。その氏名については、いま赤松さん自身も言われましたような事情があってきっと御報告申し上げなかったと思いますが、しかし国会がお調べになるわけでありますから、これは外に公表しないというようなことの条件をつけるかどうか知りませんが、申し上げたほうがいいのではないかと思いますので、さっそく担当の方面に申しつけまして、また後刻御返事を申し上げたいと思います。
  23. 赤松勇

    赤松委員 これは厳重に注意していただきたいと思うのです。公表してくれるなと言われれば、だれも公表する者はございませんので、ぜひ御注意願いたいと思います。  次に、大気汚染防止法について。私は、ここで公害対策基本法から公害に係る健康被害救済に関する特別措置法、まだこれは施行されて間がないので実際には救済されていないと思うのですが。それから公共用水域水質の保全に関する法律工場排水等規制に関する法律大気汚染防止法騒音規制法建築物用地下水採取規制に関する法律公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害防止等に関する法律、こういう法律実施状況を、ぜひ文書をもって後ほど私のところに報告をしていただきたい。  続いて、大気汚染防止法の問題に移ります。  この大気汚染防止法ばい煙その他を規制しておりますけれども、特にこの中でいま問題になっております自動車排気ガスに関する規制の問題であります。法文によれば「主務大臣は、自動車又は原動機付自転車(以下自動車などという)が排出する自動車排気ガス濃度許容限度を定めなければならないこと。」これは義務づけております。「主務大臣は、自動車排気ガス濃度許容限度を定めなければならないこと。」それから「自動車等使用者は、当該自動車の装置が、前項許容限度を確保することができる状態に整備されておらなければならない。」「前項の確認の結果の表示について規定すること。」「都道府県知事は、自動車等自動車排気ガス排出基準に適合しない自動車排気ガスを排出していると認められるときは、当該自動車等の使用者に対し、期限を定めて当該自動車などの装置の改善または使用の一時停止を命ずることができる。」「都道府県知事は、自動車排気ガスによる大気の汚染を除去し、または緩和する必要があると認める地域について、自動車等の運行の規制及び道路の構造の改善の措置に関し、関係行政機関の長、その他の協力を求めることができること。」以上のように、自動車の排気ガスについて規制をしております。  美濃部知事が柳町の現地を視察をしました。新聞が痛烈にこれを批判しておりますが、その際、美濃部知事さんは、こう言っております。「都知事が「区部への車の乗入れ制限が抜本策だと思うが、警視庁や国は、どう思っているのだろうか」と質問したのに対し、稲葉警視庁交通部管理官は「都心の一定区間の一方通行などはやっているが、区部全体への車乗入れ制限は警察だけではやれない」といい、飯塚運輸省自動車局整備課長も「まだ現実の運輸政策にはなっていない」といった。根岸通産省公害第二課長が説明した石油業界に対するガソリンの無鉛化指導も、鉛汚染の防止には効果はあるが、一酸化炭素汚染対策には役立たない。都知事の「都心への車の乗入れを制限しない限り、各省対策も、自動車の増加で効果がゼロになる」という意見に、出席者全員は“その通り”という表情。しかし、そのためには東京都内の総合的な交通機関の再編が必要で実現はほど遠い、ということになった。」こういうことを言っておる。続いてこの横に、「厚相“駆け足視察”ここでもキメ手は聞かれず」ということで、あなたがちょこちょことかけ回って視察をした、それに対して都民は批判をしておりますが、それは、まあやめておきましょう。とにかく、このように都知事は、交通規制以外にないというように考えておりますけれども警察庁は、警察庁だけではこれはできない。それから通産省は、無鉛化指導も鉛汚染の防止には効果はあるが、一酸化炭素の汚染などには役に立たない、こう言って、何ら政府対策がない、こういうことを明らかにしている。わが党の土井たか子君をはじめ公害対策委員諸君が熱心にこの点を追及されました。しかし、満足な答弁はいただけない。この中には「主務大臣は、自動車の排気ガスの濃度許容限度を定めなければならない。」とこうある。これは定めてありますか。
  24. 内田常雄

    内田国務大臣 いま、お読みになられましたのは、大気汚染防止法の第三章第十九条「自動車排出ガスに係る許容限度等」というところで「主務大臣は、」じゃなしに、「運輸大臣は、」とあるはずでございます。条文を差し上げてありますが……。
  25. 赤松勇

    赤松委員 どっちでもよろしいのですが……。
  26. 内田常雄

    内田国務大臣 どっちでもよろしいが、これは私の責任だということで、私がひっかぶってやるつもりでございますが、公害防止体制というものは、さっき行政管理庁長官をお責めになりましたが、みな各省大臣持ち寄りの仕組みになっております。そこで、この条文にも運輸大臣は、これこれ定めなければならぬ、こういうことになっております。それで何でも厚生大臣に指揮命令権はありません。これまたいいところもあるのでありまして、何でもかんでも厚生大臣がやるということになりますと、各省みな厚生大臣にげたを預けて、おれのほうは見ぬもの清しだ、こういうことになってしまう点もありますので、私どものほうが各省と協力してやれるという体制も、またいいところがあると思います。しかし、これはやはり主務大臣として厚生大臣が大きな旗棒をかつぐように、私は機会があったらぜひ改めるように法文の上からはいたしたいと思いますが、しかし、それにいたしましても、法文の書き方はどうでもよろしゅうございますが、これは私ども中心になって運輸大臣を激励し、また通産大臣を激励いたしまして、鉛の対策につきましては、いろいろやってまいりたいと思います。ただし、そのためには、鉛についての環境汚染状況の調査、これをやはり正確にやらなければなりませんし、またその地域に住まわれる方々の健康の診断と血液中における鉛の含有状況というものも調べなければなりません。それも一カ所だけで調べてはなりませんので、クロス何とかいいまして、お互いにチェックして調べ合って正確なものを出さなければならないということで、これは東京都とも現在打ち合わせまして、その資料の一部がきのうあたり出たようでございますが、それを前提として、さらにいま各省連絡会議もやっておりますが、私がそのかけ足視察をやりました日にも、場所を違えて厚生省課長がほかの関係課長諸君と東京都を交えてやっておったその日でございまして、これは私のほうが、もうごく近いうちにこれに対する対応策も、あるいはまた許容基準などにつきましても、一酸化炭素についてはできているはずでありますが、鉛については、おそらく許容排出基準というようなものが、まだ運輸省令で出ていないと考えられますが、いま申しましたような手順を至急にとりまして、これは調査で逃げるということじゃございませんで、運輸省にやってもらうように督励をいたします。
  27. 赤松勇

    赤松委員 いま「主務大臣」を「運輸大臣」とおっしゃいましたが、それはそれとして、この大気汚染防止法というものは、この施行の責任は厚生省にございますね。——厚生省にあるんですよ。これは運輸省ではありませんよ。
  28. 内田常雄

    内田国務大臣 これも実は持ち寄りの法律でございまして、たとえば亜硫酸ガスなどでございますが、その亜硫酸ガスなどにつきましての環境基準とかいうようなものを設定します場合にも、通産、厚生両省令でございますか、両省告示などでやっているわけでありまして、持ち寄りになっておりますが、私はそういうことはどうでもよろしいが、とにかく人の健康を守るのが公害対策だということで、私どもはすべての責任を持ち、またそれだけの努力をいたしてまいらなければならないとほんとうに心得てやるつもりでおります。
  29. 赤松勇

    赤松委員 河川や海水浴場汚濁などの公害については、五月二十九日の閣議水質汚濁に関する環境基準をきめておりますが、これも鉛のほうはたいへんおくれているわけだ、排気ガスのほうは。そこで美濃部東京都知事が、これを自動車規制をやろうと思いましても、排出基準の濃度許容限度政府のほうがきめておりませんから、したがって実施が困難だと思います。  そこで、私は運輸省に聞きたいが、これはいつごろ閣議決定に持ち込むつもりですか。これほど鉛公害がやかましいときに、どうして河川と同じように閣議決定をしないのですか。
  30. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいま御指摘の中に環境基準と、それから排出基準に当たります許容限度とこの二つの問題があるわけでございます。  前者の問題でございますが、実はこれは私どもとしましては、浮遊粉じんの環境基準を設定します専門の委員会を現在生活環境審議会の中に設けておりまして、鋭意検討を続けていただいております。この総粉じん量につきましての基準がこの秋には出てまいりまして、その後早急に個々の物質、たとえばカドミウムだとか、いまの御指摘の鉛だとか、こういうものにつきましての環境基準をつくっていきたい、こう考えておるわけでございますが、鉛の問題は、非常に、こういう事態になってまいりましたので、私どもとしましては暫定的な目安としまして、一応労働衛生の恕限度であります数値の三十分の一ないし百分の一に当たります立方メートル当たり五マイクログラムないし一・五マイクログラムという数値を、現在八時間ないし二十四時間の場合の判断の目安にしておる、こういう状況でございます。できるだけ早く環境基準を設定したい、かようには考えておるわけでございます。
  31. 隅田豊

    ○隅田説明員 お答えいたします。  ただいまの厚生省のほうからの御説明にありましたとおり、鉛の問題につきましては、運輸省といたしましても現在排出基準をどういうふうに定めるかということは一応の検討中でございます。ただ、いまだに環境基準その他が十分定まっておりませんことと、それからもう一つは、これをはかります技術がいまだ完成されておりません。車から直接出てくる、自動車から排気ガスが直接出てくるところで鉛がどれだけ含まれているかということをはかります技術が、いまのところまだ完成されておりません。これをできるだけ早く完成いたしませんと、排出限度を定めましても、車個々についてこれはいい、悪いということを判定することが不可能になりますので、現在研究所で鋭意それを検討中でございます。
  32. 赤松勇

    赤松委員 いつごろその閣議決定するのですか。
  33. 隅田豊

    ○隅田説明員 これは閣議決定と申しますより、省令できめるべきものでございますし、その前に政令でもって有害ガスとしての決定を先にやっていただいて、その有害ガスときまりましたら、それについての排出限度をきめる、こういうことになります。
  34. 赤松勇

    赤松委員 世界第二位の高度成長の岡で、まだ鉛を検査する技術が開発されていないというのですから、驚くべきことだと思うのでありますが、鋭意ひとつそのために努力していただきたいと思います。  そこで、次に法務省に聞きますが、法務省はだれが出ているかな。
  35. 加藤清二

    加藤委員長 政務次官が来ております。
  36. 赤松勇

    赤松委員 大竹さんおいでですね。見落としましてたいへんどうも失礼いたしました。  私は、きょう刑事、民事両方について質問したいが、時間がありませんから簡単に、一問一答をやらないで、ざっとあなたに答弁を求めたいと思います。  まず、三月の二十五日の法務委員会におきまして、辻政府委員はこう言っております。「公害罪というものが将来できました場合には、現在のこの法制審議会の草案のように、やはり過失犯ということで規定すべきものであろうと思うのでございます。それと刑法関係のこの刑法典とは関係なしに、行政規制の面で一定の行政規制をやり、それに対して、その違反に対して罰則をかけていく、これはもちろん故意犯になるわけでございますが、こういう形と、それから刑法典のようなものでいくときには、やはり過失犯で押えるべきであろうというふうに考えております。」これが刑事局長答弁です。  次に民事局長、これは損害賠償に関係がありますから申し上げておきますが、民事局長が三月二十日の法務委員会におきましてやはり同様の答弁をここでしております。  さらに、先ほど申し上げましたように、昨日の検察官の会議でこの問題に言及をいたしまして、そうして公害罪の新設を内閣総理大臣要求する「大沢東京高検検事長は十日、佐藤首相が招待した検察幹部の昼食会で、検察側を代表してあいさつし、「経済の高度成長の中で、これまで考えられなかったような種々の公害が生じており、現行法規では処理が困難なので、適切な方法を講じてほしい」と述べ、公害罪新設を要望した。」こういうことが新聞に報道されております。これにつきまして法務当局はどのようにお考えでありますか。
  37. 大竹太郎

    ○大竹説明員 いまほどお尋ねのとおり、きのうの昼食会、私も実は出ておったわけでございますが、いまお話しのとおりの要望がされたわけでございます。  きのう島本委員の御質問に対してもお答えをいたしたのでございますが、刑法一般改正の中でこの問題が考えられておったところ、最近非常にこの問題が社会問題として大きく取り上げられたということからいたしまして、刑法一般改正を待っておってはとても相当の年月がかかるということから、これを特別法にしても早急にやるべきであるということが司法部内においても問題になって、最近特にこの一般改正の中でこの問題を取り上げて、早急に何とかしなければいけないということで、現在のこの一般改正の中においては第二百二十一条の二、第二百二十二条の二ということで一応の成案ができておるわけでございますけれども、きのう申し上げましたように、この公害の中にも非常にたくさんございまして、非常に大事な大気の問題、水の問題等はもちろんでありまするけれども、そのほか騒音の問題、あるいは臭気の問題までもいわゆる公害としてあるわけでございますし、民事の問題と違いまして、これを処罰するということになるわけでございますので、どこまで一体処罰の対象にするかというようなことも非常に問題でございますし、また公害関係の諸法令におきましても、御承知のように罰則があるわけでございますが、これにいたしましても、先ほど来の御質問にもありましたように、関係官庁から、何といいますか、この限度といいますか、こういうようなものもある程度はっきりさせていただかなければ、これはやはり処罰の問題として取り上げることも、これはなかなかまたむずかしいというようなこともございまして、それらの問題とあわせまして、何とか早急に次の国会に出せるようにということで、大臣のほうからもお話が出ておりますことを申し上げておきたいと思います。
  38. 赤松勇

    赤松委員 ぜひ来国会に約束どおり提出をしていただきたいと思います。  それから、この際、厚生大臣にこれは要求するのが適当かどうかわかりませんが、まあ政府要求します。  大気汚染防止法によれば、その罰則で第三十三条違反の場合は、これは「一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」三十四条違反の場合には、「五万円以下の罰金に処する。」それから三十五条違反の場合には、「各号の一に該当する者は、三万円以下の罰金に処する。」それから第十一条第一項、実施の制限の規定に違反した者についても同様。それから第三号の第十五条、ばい煙量等の測定の規定による記録を怠った者、もしくは虚偽の記録をした者、第二十六条の第一項、ばい煙に関する事故時の措置の規定による報告を怠り、虚偽の報告をした場合の罰則、三十七条に規定するところの届け出をせず、または虚偽の届け出をした者は一万円以下の罰金に処する。私は、この点はいまの貨幣価値からいえば、五万や十万の金は経営者自身たいしてこたえないと思います。これはむしろ体刑に切りかえていく必要があるのではないか。このことをぜひ立法の際には法務当局は十分考えていただきたい。  なお、大気汚染防止法に関する実施の状況、たとえばこれは各都道府県が、たしか命令を出すでしょう。行政命令を出しますね。それに違反した者に対して処罰を加えるわけです。一体処罰を加えられた者が現在法実施以後どれぐらいの数字にのぼっておるか、このことをぜひ私あてに報告をしていただきたい、いかがでございますか。
  39. 内田常雄

    内田国務大臣 赤松さんがお読み上げになられました大気汚染防止法第六章の罰則は、申すまでもなくこれは行政罰といわれているものでございまして、命令違反でありますとか、手続違反でありますとか、そういうものに対する罰則でありまして、これは行政法に共通する、おおむね罰の範囲の基準を同一にするような低いものになっております。しかし、今回問題になっておる公害罪につきましては、こういう行政罰ではなしに、おっしゃるように体刑が入るかどうか知りませんが、そういうものをも考慮し得る範囲の刑罰法規としての研究ということであろうと思いますので、そのことはこの大気汚染防止法の罰則のワク外として、別にあるいは同時に研究さるべきものと思います。  なおまた行政罰の適用につきましては、私が係官から報告を受けておるところによりますと、この法律ができましたのは、たしか昭和四十三年、一昨年の途中からでございまして、もっぱら行政指導でいっているので、この罰則で罰金なり何なりを科したものはほとんどない、こういう状況でございます。
  40. 赤松勇

    赤松委員 ほとんどやってないのだ、政府のほうでは。
  41. 内田常雄

    内田国務大臣 行政指導で……。
  42. 赤松勇

    赤松委員 行政指導にしても実際はやっていないのだ。なおこれをまたあとでいろいろあれしていきましょう。  そこで、私は交通局長に聞きたいのだが、先ほど牛込柳町の鉛害問題について私は触れました。そしていま各省とももう対策がないということで、お手上げ状態なんですね。これにつきまして、美濃部知事が申しておりましたように、徹底的な交通規制をやる必要があるのではないか。これは外国の例でありますけれども、モスクワなどは、市民のモスクワ市内への移住につきましては厳重に制限しております。これは都市の過密化を防ぐために厳重に制限している。それからモスクワでは昼ほとんどトラックを見ることはできません。これは夜間走らせていると思います。あるいはモスクワへの乗り入れを制限しております。こういうような徹底した指導をやらないと、一方では自動車会社が年産何百万台だというようなことをいって盛んに大量生産をやっている。一方ではこういう公害はどんどん発生する。しかし、なおこれを防止する研究は未開発だ、こういう状態ではたいへんなことになると思うのです。ここで警察庁だけではやれないことは十分承知しておりますけれども、一体どのようにして東京都内におけるこれらの障害についてこれを除去していくか。  また市バスの運行等について、電車の軌道を走らせることは道交法違反であるかどうか。もし道交法違反であるならば、道交法改正のために次の国会改正案を出すかどうか。もし道交法に反しないというならば、それぞれ公安委員会相談をいたしまして、各大都市における電車の軌道にバスを走らせるというような措置はとれないかどうか、この点はどうですか。
  43. 久保卓也

    ○久保説明員 ただいまの御質問でありますが、まず最初に、都知事を含めて御認識をいただきたい一点があるわけであります。それは、交通量を規制をするということが抜本策であるというお話でありますが、まず問題は、たとえば柳町の場合には交通量が多いということではございません。都でこの二月と三月に十五の交差点を調査いたしました。この出発点は鉛ではなくて一酸化炭素であったわけでありますが、この調査に基づいた結果、あとで鉛の問題が出てきたわけでありますけれども、柳町の場合に一時間当たりの交通量というのは三千台見当であります。
  44. 赤松勇

    赤松委員 時間がないので結論をおっしゃってください。
  45. 久保卓也

    ○久保説明員 それでは柳町のこまかい問題は別にいたしまして、具体的な問題としましては、柳町の対策としては現在行なっております。現在行ないつつある以上のことは現行法ではできません。ただし、次の国会で道交法を改正いたしまして、公害防止のために交通の規制をやるということができるようにいたしたい。現行法では交通の安全と円滑のためにのみしかできませんので限界があります。それから都知事が特に要望しておられるように、都心部への車の乗り入れ規制の問題、これはいろいろな分野でむずかしい問題がありますけれども、一応やる予定で根拠法規をつくりたい。外国と日本とではいろいろな事情が違いますけれども、これは申し上げませんけれども、一応やる方向でまいりたい。  それから市電の軌道敷については車は走ってはいけないことになっておりますけれども、公安委員会が解除すればそれはできます。そこで問題なのは、いま市電は漸次廃止の運命にありますけれども、従来私どもも必ずしも観念が正しかったと思いませんけれども、市電敷きには車を通さないほうが本来はやはりよろしいように思うのです。と申しますのは、市電、いわゆる公共輸送機関の優先ということで。その場合にバスだけを通すということはこれは考えてもよろしかろうと思います。ただし、公安委員会関係でできるわけで、法律改正の必要はございません。
  46. 赤松勇

    赤松委員 去る六日、愛知県警察本部長以下交通関係の方々と、私ども、私をはじめ県会議員団、市会議員団代表とこの問題についていろいろ話し合ったわけです。それで現地では道交法の改正を必要とするということを言っておりましたが、事実上大阪、東京では軌道の乗り入れをやらしております。そこで交通局長にお願いしたいのは、公安委員会のそれがあればできるというお話でありますから、ひとつ愛知県警へ連絡していただきまして、ぜひ交通緩和の一助としてその措置のとれるように努力願いたいということを申し上げておきます。いいですか。先にそれを答弁してくれますか。
  47. 久保卓也

    ○久保説明員 現地の詳しい情勢は存じませんけれども、方向としては悪いことではないと思いますので、承知いたしました。
  48. 赤松勇

    赤松委員 それで自動車の制限に関するそれをぜひやりたいと美濃部さんが主張しておりますようなことを、こういうお話でありますが、これも道交法の改正は必要だと思うのです。そこで、来国会にはこれはお出しになりますか。
  49. 久保卓也

    ○久保説明員 出す予定で準備を進めております。
  50. 赤松勇

    赤松委員 どうも明快な答弁をいただきまして……、まあ当然です。別にお礼は申しません。  時間がないから飛ばしていきます。次に、これは運輸省でぜひ参考にしてもらいたいのだが、あとで上げますからね。名古屋市の市議会が名古屋市立大学の奥谷教授というのを呼びました。この奥谷教授は非常な専門家です。この方の鉛に対するいろいろな研究の結果があれされておりますが、尿の中に含まれる鉛の量は四十四年になって急激にふえている点を指摘して、その原因としてガソリンのオクタン価を上げるため添加されている鉛が急増した。それから高オクタン価ガソリンの使用量がふえたという二点をあげております。この教授の指摘によりますと、劇毒物取締法によるとガソリン一リットル中の加鉛量は一・三ccまでと定められているが、航空機用を考慮しての最高基準であって、自動車用としては〇・八ccが限度と見られる。しかし、最近の調査では、ガソリン九銘柄のうち、六件がこの法定基準を上回る加鉛量が検出をされ、最高一リットル中一・八一ccを検出したのである。以下、この人が調べました名古屋市内の自動車整備工、それから給油所従業員、名古屋の印刷工、これを調べた結果次のような驚くべき鉛害の結果が出ておりますから、ぜひ参考にしていただきたいと思うのです。  それから、名古屋市議会は鉛害公害追放の決議をいたしまして、政府の見解を問うということを決議しております。五月三十日名古屋市議会の公害対策委員会は、問題になっている鉛公害審議した結果、ガソリンに鉛を添加しないよう関係法を改正する。加鉛ガソリンを使わない自動車エンジンの開発、改良を急ぐ。鉛の及ぼす人体の被害調査を実施する。とりあえず市などの官公庁の公用車に高オクタン価ガソリンを使用しない。以上の四項目を決議して政府の所信を聞きたい。こういう要望書を出すことになりました。昨日私は法務委員会におきまして——法務省がなお加鉛ガソリンを使っていくということを言ったために、毎日新聞が大きくこれを取り上げました。ところが。きのう質問しましたら、もうやめたということでありますから、たいへんけっこうであります。この名古屋市議会の決議について、政府のほうはどのようにお考えでありましょうか。適当な人、答えてください。
  51. 成田寿治

    ○成田説明員 お答えいたします。  ガソリンの中に基準量をこしている鉛が入っておるものがあるという奥谷教授のお話、調査がありましたが、われわれが通産省で調べた結果によりますと、生産段階で鉛の投入を見ますと、最高がスーパーの場合でございますが一ガロン当たり三・〇、リットル当たり〇・八ccでありまして、JIS規格の中、これも平均は一・三ぐらいでありますが、最高がガロン当たり三・〇、リットル当たり〇・八ccでありまして、生産段階では、それを超過したものがないと思っております。ただ奥谷教授がそういう調査をやっておりますので、もうちょっとわれわれも調べて検討してみたいと思っております。
  52. 赤松勇

    赤松委員 ガソリンの加鉛の問題で、官公庁の公用車の問題はどうですか。これは厚生大臣、あなた主務大臣だ。
  53. 内田常雄

    内田国務大臣 官公庁のほうは、これは私が主務大臣でありますが、場所はいつも総理府を借りますが、総理府にみな各省の会計課長に集まっていただきまして、総理府総務長官とともに協議をいたし、これは高オクタン・ガソリンを使わないように指示を先般いたしました。各省がそれにならっておると思います。もちろん厚生省は、率先して高オクタン・ガソリンを使っておりません。私の車もしかりでございます。
  54. 赤松勇

    赤松委員 なお、通産省にお願いしておきますけれども、無鉛化のための開発が非常に急がれている。きょうの新聞によりますと——きのうでしたか三井鉱業か何かが画期的な開発をしたということが報道されている、あるいは電気エンジンというものもいま東洋工業が開発すべくやっております。通産省は、これを督励して早く無害のガソリンが使えるように、いろいろ指導していただきたいと思います。  それから、同じく奥谷教授が、この名古屋市会で年次的な推移の研究資料を示しました。これは交通警官です。交通警官七十九人を対象とした尿中の鉛量は四十二年と四十三年を比較した場合に県警本部勤務者、白バイ・パトカー乗務員、交通警察官、派出所勤務員のいずれも鉛がふえており、特に交差点に立つ交通警官は尿一リットル中の鉛量が四十二年十七・九マイクログラム、ところが四十三年には二十・〇マイクログラムにふえておる。四十四年には一挙に四十八・〇マイクログラムに激増した。この尿中に含まれる鉛の正常な限界は二十マイクログラムで、交通警官ははるかにこれを上回っている。これは一般市民にとっても交通警官にとっても非常に重要な問題であるので、特に健康保持について交通局長はどのように考えておるか。十分に交通警官などの健康を保持するために、その対策を何か、きのうかおととい発表しておりましたが、この対策をひとつはっきり答えてもらいたい。
  55. 久保卓也

    ○久保説明員 尿中の鉛は、正常で大体二十ないし三十マイクログラムでありますが、ただいまお話しのように四十八マイクログラムで相当高くなっております。ただし疾患と認められるのは百五十マイクログラムだそうでありますので、その程度までに至っておりませんけれども、長時間そういったところで勤務することは相当問題があろうかと考えます。  そこで、現在私どものほうで警務局が主管いたしておりますけれども専門家と協議をいたしておりますが、さしあたっての方向といたしましては、特別の健康診断の回数をふやしてまいる。特に鉛の測定を進めてまいりたい、これは交差点その他の特別の勤務者に限られると思いますけれども……。それから勤務時間、これもやはり交代制で、そういった場所での勤務時間を短縮させねばならないということ。それから場所の選定の問題もあろうかと思います。警察官の立つ場所をどういうふうにやるかということ。それから二交代制のところは三交代制にしてまいるというような問題。それから外勤警察官でも、交通係の警察官でも、休憩室がありますけれども、そういったところに酸素吸入器あるいは空気清浄器などを置くというような問題、その他勤務環境についての調査を進めたいと思っておりますが、名古屋につきましては四十一年度から三カ年にわたって調査してまいって、昨年度の調査が一番ひどい結果が出ておるわけで、この結果に基づきまして私どもとしては全国的に調査をもう一度やってみたい、かように考えております。
  56. 赤松勇

    赤松委員 次に、四月十七日の産業公害対策特別委員会で私は質問しました。その際、水質審議会から、名古屋市内の堀川をはじめ各河川については、アユが住めるまでにはいかないまでも、ざこ程度は住めるようにしたいという答申が出され、たしか四月、これを告示されたのではないかという私の質問に対して、経企庁の西川政府委員は、水質汚濁にかかわる環境基準で、これが三月三十一日審議会のほうから答申をいただいて、これに基づいて現在閣議決定に持ち込む手続を進めているという答弁がありました。おそらく五月に閣議決定が行なわれたと思うのでありますが、その点はどうなっているか。  次に、名古屋南部地区産業公害の総合事前調査中間報告書が通産局、企業局、愛知県より政府に提出されてきたが、これに対してその後どう処置されているか。また処置されるつもりか。これを答弁していただきたい。  それから四月二十八日、通産省企業局公害部から私の質問に対して公害防止対策についての報告書が出されました。私はその際に名古屋港を徹底的に浄化するためには防潮堤をこわしたりあるいは伊勢湾に下水あるいは企業の汚水を注ぎ込む限りは、名古屋港の浄化は絶対にできない。そこで、私は、名古屋の東部と西部、この二本に下水並びに企業から出すところの汚水、そういったもののパイプもしくは導流堤を設置して、そしてこれを伊勢湾の外へ流して、つまり太平洋へ流していく。この事業をやらなければだめだという私の質問に対しまして、それは必要だとこの産業公害総合事前調査中間報告には述べております。パイプ排水、導流堤の設置などは抜本的な対策として必要である、これは伊勢湾総合開発の一環として本問題に取り組むことにしている、こういう答弁書が私のところに参りました。現在どの程度進行しておるかということをお聞きしたい。これは通産省御存じのように、今度四日市では画期的なことをやりました。それは漁業組合と企業とが協定を結びまして、下水及び企業の汚水についてはこれを途中で浄化装置をしまして、浄化して流していく。浄化の中へ残ったヘドロのようなものは船に積んで熊野灘の沖、太平洋へこれを捨てる。なお、その捨てたものが公害になるようならば、さらにこの協定を発展さして研究していこう、再検討しよう、こういう協定が行なわれました。私は民間とそれから企業との間に、この種の協定がなされることはたいへん望ましいことだと思うのです。したがって、いま名古屋港へ市内の下水並びに企業の汚水は流れっぱなしでしょう。これはどうしても太平洋へ流さなければならぬ。そのためには、大パイプ管、大導流堤が必要だと思うのですが、現在どうなっているか、この点についてお尋ねいたします。
  57. 西川喬

    ○西川説明員 お答えいたします。  水質汚濁にかかわります環境基準につきまして−は、三月三十一日の答申を経まして、四月二十一日に閣議決定いたしております。そのうち生活環一境にかかわります分につきましては、それぞれの水域の該当する類型を当てはめることになっております。この当てはめ行為につきましては、当初五月中を目標にいたしておりましたのですが、達成の方途その他にやや問題がございまして、現在、まことに申しわけありませんが、一月おくれております。今月中には当てはめ行為を指定水域については完了する予定で、現在審議を進めておる段階でございます。
  58. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 名古屋南部地区の産業公害総合事前調査の結果、並びに先般先生の御質問に対しましてお答え申し上げましたその具体的な措置につきましての御質問でございますが、総合事前調査の結果、先生が御指摘されましたような導流堤の設置なりあるいは現在の防潮堤の改良なりあるいは大パイプラインなりいろいろ提案しておるわけでございますが、それらの対策をいかに組み合わせたら最も合理的な結果が得られるかにつきまして、大型の水理模型実験をやりまして、その結果に基づいて、総合的な対策考えようというのが結びになっておりまして、その線に沿いまして、現在地元の県、通産局、それから企業、これらを全部合わせまして、現実に協議会をつくりまして、その水理模型実験の建設並びにそれによる研究の段取りをつけております。現に愛知県と三重県におきましては、九月の補正予算でこの水理模型実験の予算を計上する準備を進めておるわけでございまして、これらの動きと密接な関連をとりつつ、この水理模型実験は、通産省の資源技術試験所で一番技術的にも蓄積があるものでございますから、その技術をいつでも提供して、結果をなるべく早く得たいという段取りをしております。  なお、この結果が得られますると、その事業そのものは運輸省あるいは建設省にお願いしなければならない面が多々ございますので、関係各省にもわれわれから強力にお願いを申し上げるよう考えておる次第でございます。
  59. 赤松勇

    赤松委員 もう二点だけひとつ質問を許していただきたいと思うのです。  五月二十七日、南部工場地区の亜硫酸ガスの風洞実験をやりました。ところが環境基準の約五倍に達しておるということが明らかになった。そこで南部臨海工業地帯を中心とした工場群が使用する重油量は、これは名古屋でありますが、昭和四十八年に現在の約二倍に達して、南南西の風に乗ると、亜硫酸ガスの汚染帯が名古屋市内の約三分の一に当たる約百平方キロをおおうことが、名古屋通産局と愛知県公害課の調査でわかった。調査した五十社のうち、四十八年の設備計画で、亜硫酸ガスの排出量が環境基準の〇・二PPM以下だったのは約二割で、八割は不合格だった。このため県公害課は、各工場に対し、五月中に設備改善計画を出すよう求めたが、いまのところ三十工場が応じただけである。この調査は、名古屋南部地区の大気汚染を防止するため、南部地区の四十八年度における企業計画に基づいて、産業公害防止協会に委託して行なった。同協会は名古屋港を中心とした二千五百分の一の模型をつくり、三菱重工長崎技術本部で風洞実験を行なった。対象工場は名古屋南部、同西部臨海工業地帯と名古屋市港、南、中川区の五十社六十八工場、煙突数は四百二十二本として、南南西と北西の二風向について調査した。この工場群の重油使用量は、四十四年の四百五十万キロリットルから、四十八年には九百十万キロリットルと倍増すると想定、名古屋南部の汚染大気が市内に流れ込む最悪の風向である南南西風の場合、亜硫酸濃度厚生省環境基準〇・二PPMを越える地域は、東海市から小牧市をつなぐ延長約三十七キロ、幅約五キロの範囲に及び、人口の集中する市街地をすっぽり包むという調査の結果が出ております。  ここで指導方針としては、一工場が排出する亜硫酸ガスの最大着地濃度を、風洞実験価で〇・二PPM以下に押える、第二に、使用する重油を低硫黄に切りかえる、三に、煙突の集合化、高煙突化で拡散をはかるなどとして、各企業に改善方法を検討さしておる、こういうのでありますけれども、各企業がなかなかこれに対して協力をしない。先ほど申し上げましたように、報告書を出してこない。これは大気汚染防止法でもって一発やればいいのでありますけれども、なかなか県当局あるいは通産省はそれをやろうとはしない。この点について私はさきに質問をして、通産省から答弁をいただきました。その答弁によって、各工場別に、昭和何年何月何日までに改善をさせるという約束をしてもらいまして、市民はたいへん喜んでおります。この点につきましてはいかがでしょうか。
  60. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 ただいま先生の御指摘の調査は、通産省の総合事前調査という形で、地元の県、市と共同いたしましてやりました調査でございまして、結局、昭和四十八年を目標にいたしまして、会社の計画をそのまま実現した場合には、どの程度の汚染状態が生ずるかということを実は予測したその数値でございます。御指摘のように、かりに会社がそのままの計画を実行いたしますと、非常に悪い状態になるということは、これではっきりいたしたわけでございますが、そのための改善指導を目下鋭意やっておりまして、改善計画につきましては、六月六日現在では、すでに全部会社の改善計画の提出が終わりまして、その結果をただいま風洞実験にかける準備をしておるわけでございます。われわれはこれを何回も繰り返しまして、環境基準を完全に守れるという状態に至るまで会社の改善を実行する予定でございまして、そういった意味で、この数値は第一次的な参考値であるというぐあいに御理解いただきたいと考える次第でございます。
  61. 赤松勇

    赤松委員 最後に、一点だけ聞いておきたいと思います。  ここに新聞がございますけれども、ちょっと通産省、よく見ておいて。こんなにでかく問題を取り上げているんだ。これは木曽川の問題です。木曽川の水質基準をきめるという問題については、これは愛知だけではなしに、岐阜、三重、三県にまたがる重要な問題です。去る二月の二十一日の閣議で、まず全国どこの水域でも一律に適用する七項目の決定をいたしました。続いて五月中には、全国四十五水域に水域別水質環境基準をきめて、五月初めに閣議に持ち込む予定であった。ほかの水域では関係府県の調整が進んでおるのに、木曽川だけがただいま暗礁に乗り上げている。それは初め経済企画庁は、国定公園の木曽川上流は自然景観を一〇〇%保護する、中流も上水道取り口のあるところはヤマメやイワナが住める条件を守る、そういう意向であったけれども、岐阜県側はそんな条件は守れないということで、経済企画庁は第二案として名古屋市水道局の犬山取り入れ口がある犬山市までをA、下流の馬飼頭首工まで、これをB、その下流、河口までをCとする案を示し、さらに第三案として、落合川合流点から馬飼頭首工まで約百十キロという長い区間をBにゆるめてしまう案を出してきた。また最下流の三重県は、河口部のノリ養殖への被害で従来から苦い目にあわされており、少しでもきれいな水をと、第二、第三案には大反対している。この点について経済企画庁はどういう指導方針でいかれるか。  さらにこの木曽川の汚水は、最近の調査によれば亜鉛がたくさんまじっているということがわかった。昨年六月でしたか、大量のアユが死んだ当時から見ると、亜鉛の量は約三倍にふえている、こういうのです。時間がありませんから私はもう詳しくは申し上げません。新聞ども非常にこれを大きく取り上げまして、それでこれは名古屋市の二百万市民の上水道に関する問題ばかりでなしに、三県にまたがるところの重大問題、しかも木曽川ではひんぴんとその後、汚水の問題が起きまして、また長良川におきましても上流のメッキ工場その他からいろんな毒物が流れて、たいへん汚濁をして、もう長良川はウ飼いができないという状態にまで追い込まれている、こういう状態です。これにつきましてどのような対策を、あるいはどういう指導方針を持って臨んでおられるか、経済企画庁からお答え願いたいと思うのです。
  62. 加藤清二

    加藤委員長 佐藤経済企画庁長官。——だめです。さっきから呼んであるんだから。佐藤経済企画庁長官。——こんな重要な案件は西川君一人にまかせるのは気の毒です七三県にまたがる問題でございまするから長官出席を求めます。  この際、質問者にお尋ねしますが、これは重要案件でございまするので、担当事務官、参事官では答弁に困ると思います。佐藤経企庁長官出席を待ちまして、出席されたおりに本件について御答弁を願うということにしたいと存じますが、いかがでございますか。
  63. 赤松勇

    赤松委員 それではこうしていただきましょう。まず、経済企画庁の水に関する担当者から、一応御答弁願って、さらに経済企画庁長官出席の際は再度質問するということにして、ひとつぜひ経済企画庁長官出席を強く要求していただきたいと思います。大原委員もおそらくあとから質問されるのでその経済企画庁長官出席要求されておると思うので。
  64. 西川喬

    ○西川説明員 木曽川の水質環境基準の当てはめ行為につきましては、いま先生がおっしゃいましたように三県にまたがっておりますので、非常にその三県の利害関係が相反している関係上難航はいたしております。現在主として自治省が中心になりましてこの三県間の調整をはかっております。私たちのほうにおきましても各省関係並びにこの関係県の意見の調整を行ないまして最終的な当てはめを決定いたしたい、このように考えておりますが、先生がおっしゃいましたいろいろな形式につきましては、これはその検討過程の中間でいろいろ出てきたものでございまして、経済企画庁といたしましては、当初の第一案、あるいは第二案とか、第三案とかいうようなものを経済企画庁として決定した経緯はございません。私ども考え方といたしましては、各省並びに関係県の十分な意見の一致をしたところを待ちたいと考えておりますけれども所管官庁としての経済企画庁といたしましては、いまのところ先生がおっしゃいました第二案、これが現在の利水状況その他から考えまして、流域の状況から考えまして最も妥当なところではないだろうか。一番上流のほうの落合川合流点から上は、これはAAといたしまして自然環境を維持する。それから犬山の頭首工まで、これはA類型といたしまして相当上水道としてのきれいな水を確保する。それから犬山頭首工から馬飼の第二濃尾の頭首工まではこれはB類型。これは朝日の取水口がございますが、B類型も水道用水としての適合性には合格いたしておりますから、B類型として確保いたしたい。大体この線で最終的な調整をはかりたい、このような考え方を持っております。  それから、別の重金属その他の汚染の問題でございますが、木曽川につきましては昨年度から今年度へかけまして基準の見直し調査をいたしております。その見直し調査に基づきまして新しい改定した排水基準をきめたいというふうに考えております。  現在、先ほど先生のおっしゃいました金属関係につきましても、ある程度の数字は出てきております。ただ一部その数字の中にやや疑問と思われる点がありますものですから、現在県のほうに再調査ということで、企画庁のほうにおきましても再検討いたしておりますが、県のほうにつきましても、調査方法並びにその検出した数値についての再検討を命じております。  それから長良川につきましては、先般アユの斃死事件が生じたわけでございますが、この水域につきましては昨年度基準設定の調査を終えておりますので、早急に水質審議会に部会をつくりまして、今年度じゅうには指定水域にいたしまして排水基準を決定いたしたい、このように考えております。
  65. 赤松勇

    赤松委員 非常に不満でありまして、私はやっぱり当初の経済企画庁のA案でもっていくべきである、この考えを捨てません。あらためて経済企画庁長官にさらにお尋ねしたいと思います。しかし、時間が参りましたので、以上をもって私の質問を終わります。
  66. 加藤清二

    加藤委員長 この際、経企庁に申し上げておきます。  ただいまの旨を経企庁長官によく伝えていただきまして、出席冒頭本件についての答弁をすみやかにできるよう準備のほどを要望しておきます。
  67. 加藤清二

    加藤委員長 この際、おはかりいたします。  最高裁判所長官の指定した代理者矢口洪一君から産業公害対策に関する件について本日出席説明の要求があります。これを承認するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 加藤清二

    加藤委員長 御異議ないと認めます。よって、承認するに決定しました。
  69. 加藤清二

    加藤委員長 次は大原亨君。
  70. 大原亨

    大原委員 私も若干同じことを言うようですが、きょうはきのう、おとといの言うなれば締めくくりをやる公害特別委員会だと思うわけですね。ですから、それぞれいま議論があったように、公害対策会議のメンバーが全然いないで、それ以外の者だけで議論するというのでは私はあまり意味がないのじゃないかと思う。きのう、おとといの真剣な午後八時ごろまでの討議を締めくくってやるわけですから、湊総務副長官と大竹法務政務次官がお見えになっておりますが、あとの方に私は聞いてみたいのだが、あとの、チンピラとは言わぬけれども、それぞれ各省において協議をして、きのう、おとといの討論を踏まえて、それぞれの各大臣の意思を体して出てきておるのかどうか、こういうことについて私は聞いてみたいと思うのです。通産省運輸省厚生省、それぞれ答弁してもらいたい。きのう、おとといと同じようなことを答弁するのだったらもう承知せぬですよ。
  71. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 お答え申し上げます。  きのう、おとといと通産省のこの公害関係事務的な責任者全部そろっていろいろ御意見を拝聴し、お答え申し上げておった次第でございますが、これらの問題点につきましては内部的にもよく相談いたしまして、通産省としての正式の見解を御質問に応じまして申し述べる用意が十分できておるわけでございます。
  72. 隅田豊

    ○隅田説明員 お答えいたします。  運輸省といたしましても、先ほどの通産省の御答弁と同じでございまして、昨日からいろいろ拝聴いたしておりましたことを検討いたしまして出席しております。
  73. 城戸謙次

    ○城戸説明員 先ほどまで大臣がおりましたが、席を中座いたしましたので、私といたしましてできる範囲内のお答えをいたしたいと思います。  昨日の状況等につきましては、大臣に十分御報告いたしております。
  74. 西川喬

    ○西川説明員 経済企画庁といたしましても、一昨、昨日の審議の過程を経まして、これを公害担当の庁の方針といたしまして本日御答弁申し上げているわけでございますが、長官ただいま外国の高官との関係のほうに出席されておりまして、本日午後三時半からこの公害委員会のほうに出席する予定になっております。まことに申しわけがごいませんが、御了承願いたいと思います。
  75. 大原亨

    大原委員 それではいまの質問に続いてですが、厚生省内田厚生大臣公害局の構想を出している、それはどんな構想か、答弁してください。
  76. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいまの公害局の構想でございますが、これは大臣の指示に基づきまして、現在官房を中心としまして、組織機構の問題でございますから、検討中でございまして、先ほど大臣からもお話ございましたように、まだ非常に弱体な組織でございますから、できるだけこれを強化していく、そして局に持っていきたいというのが大臣の真意でございます。
  77. 大原亨

    大原委員 部を局にするだけですか。  もう一つ、ついでですが、あなたが大臣だと思って質問しているのですよ。水俣病のあっせん案の発表にあたって内田厚生大臣は、きのうも議論になっておったけれども公害についての無過失責任の問題をきちっと立法化する、そうすべきである、こういうかなりはっきりした意思表示をしておるわけですが、これはどういう考えか。公害局の中身の問題、なぜつくるのかという問題と二つの問題……。
  78. 城戸謙次

    ○城戸説明員 私ども部を局にすればいいとは決して思っておりません。昨日、一昨日いろいろ議論がありましたところでも、重金属の問題等にしましても、私ども調査すればよりよくいくところを、現在の段階ではたとえば県でやらないとできない、こういうような陣容でございますから、まずやはり陣容を強化する。また組織を現在のような、公害直接の課が二課だけでございます。これではやはりこれだけ山積しています公害対策に対処するには不十分である。課の組織の数もふやしていく。いろいろな点におきまして内容を充実した上で局にしていただく、こういうのでなければ意味がないと思っておりますし、大臣もさような考えを持っておられます。  無過失責任の問題でございますが、これは厚生省だけで決定すべき問題ではございませんが、いまも御指摘のような水俣問題等の経緯も考えまして、大臣としましてはぜひ企業の無過失責任ということをできるだけ早い機会に立法化すべきである、こういう考えを持っております。
  79. 大原亨

    大原委員 その公害局にする場合に、縦割り行政になっている。他の省の公害関係行政も一緒に、その中のものについてもこれを厚生省に移管をして公害局として強化する、こういう意見かどうか、厚生省の意見は。
  80. 城戸謙次

    ○城戸説明員 先ほどもお話ししましたように、現在そういう基本的な線に沿いまして官房を中心に検討されているわけでございまして、他省庁との関係につきましては、さらに今後の検討事項であるわけでございます。
  81. 大原亨

    大原委員 公害部公害局にしただけで何も中身がないじゃないですか、あなたのお話じゃ。  それから無過失責任については立法化をするのにはどういう手続でこれを進めていくのか。いつの国会でやるのか。
  82. 城戸謙次

    ○城戸説明員 先ほどもお話ししましたように、無過失責任の問題は決して厚生省だけでできる問題ではございません。確かに御指摘のように、政府全体で検討すべき問題でございますが、私ども国民の健康なり生活を預かる省としましては、ぜひ企業の無過失責任の立法化の線に沿って進みたいというのが大臣のお考えでございます。
  83. 大原亨

    大原委員 湊総理府副長官に御出席いただいておるわけですが、一つは公害対策会議の中におきましては、総務長官はどういう位置づけをされておるのかという点と、それからいまの二つの点についてあなたはどういうお考えを持っておられるか。つまり、公害局とか公害省の議論がきのうも、ずっと前からあるけれども、その問題が一つと、それから無過失責任について公害対策会議としても意思表示をするわけでしょう。きょうは保利官房長官出席を求めておるわけだが、保利官房長官新聞に自分の意見を堂々と言っておるわけだ。そういう政治論をやはり立法の問題を踏まえてここでやらなければ意味がないですよ、幾ら議論したって。ですから、そういう二つの点についてあなたの立場とそれに対する見解をひとつ聞かしてもらいたい。
  84. 湊徹郎

    ○湊説明員 ただいまのお話でございますが、過般の本特別委員会において決議もいただいておりますし、特に幅の広い公害の問題に対処するためには総合調整機能をどういうふうにこれから活用していくか、こういう点についていろいろ部内で検討いたしております。  ただいまお話がございました公害対策会議、これは先ほどおそらく荒木行管長官のほうからあるいはお答えがあったかと思いますが、今年に入ってからかなりやっておりますし、特に担当者の会議はもう相当数多くやって、具体的な問題と同時に一般的な問題についてもやっておるわけでございますが、総理府総務長官、これは対策会議のメンバーの一人といたしまして、官房長官も同じでありますが、公害全般の総合調整、こういう立場から参加をいたしておるわけであります。  それから公害省公害局の問題、実は私、正式にはまだ伺っておりませんけれども、しかし機構全体のことに関しては、過般の公害特別委員会、私も五、六回出席をいたして、つぶさに各委員の意のあるところは承知しておるつもりでございますし、現実に基本法では六公害が具体的にきめられておりますが、そのうち主として大気の問題は厚生省中心になり、水の問題は、先ほどのように企画庁が中心になっている。こういうかっこうで、公害の類型別に、その取り扱い方、その他さまざまございますので、そういう形でやはり運用していくのがいいんじゃなかろうかと思っております。公害局の問題については、なお行管等とも相談しながらひとつ検討していきたいというふうに思っております。
  85. 大原亨

    大原委員 先ほどの質疑応答で、厚生大臣公害対策会議事務局長だという話でした。総務長官事務局長的な立場だ、こういうお話です。しかし、あなたの話によると、所管別だ、その他は総合調整は総務長官がするんだ、こういうことですね。  これは委員長、私は質問をいよいよ始めるわけですが、逐次対策会議の相当中心的な人が出席されないと、実際に何を議論してもあまり意味がないと思うのです。私は、総括的なところへ入りながら具体的な問題もやっていくわけですが、具体的な問題から先にやりますから、逐次各関係大臣出席を、ひとつ委員長のほうからも要請してもらいたいと思う。  出席の全部の方々に私は申し上げておいて意見を聞きたいわけですが、これはたとえ部長あるいは課長といえども、それぞれの省を代表して来ておるという一面もあるから聞きたいわけですが、きのう、おととい以来の質疑応答を通じまして非常にはっきりしておることは、私は、大きく言えば二つの点であるというように思うわけです。  その一つは、企業責任を明確にしていかないとこの公害対策は絶対に進まないということが一点であります。官房長官はあるところで、やはり産業との調和を考えるということは私の念頭にはない、産業や企業が公害を排除する処置をとれば当然製品コストは上がるだろう、その結果、この製品が社会に迎えられなくなって企業が存立できなくてもそれはやむを得ない、こういうことを言って、公害基本法についてのいままで議論があった、あるいは宮澤通産大臣が立ってここで答弁した。産業との調和、自治体との権限の関係、そういうことで答弁をした。そういうこととは意味の違う議論も政府の部内からも出ている。きのう、おとといの議論もそういうことが一つの中心であった。企業責任を明確にしなければ公害というものは進展しない、こういうことが第一点である。これを各分野から討論の結果として締めくくっていく必要がある。  もう一つは、縦割りの行政指導の方式ですが、縦割りのばらばらの方式であっては中心棒がないから、責任主務大臣もいないから、実際上は助長行政、指導行政は企業の育成に押しまくられて、公害の問題は行政的にも監督できないし解決できない。結局は各省において公害を担当しているのは、省によってニュアンスの違いはあるけれども、チンピラと言っては失礼だけれども、どうも日の当たらぬようなところに、こそっとすわっておって、ごそごそっとやっておるというような印象をきのう、おとといの議論を通じて私どもは受ける。こういうことであってはだめである。やはり主管大臣をきちっときめる。全体を統括する主管大臣総理大臣イニシアチブだけでなしに、主管大臣をきちっときめることが必要ではないか。もう少し責任ある大臣をきめることが必要ではないか。あるいは中央官庁と第一線の住民に密着している自治体との権限関係についても明確にすべきではないか、こういう鉛害の問題その他を通じまして、私は二つの点でいままで議論を通じて痛感をいたしたのであります。こういう全体のことについて、そういう私の議論に対して、総務長官それから厚生省、それから通産省運輸省考え方を聞きたい。
  86. 加藤清二

    加藤委員長 ちょっと指名する前に政府委員の皆さんに申し上げます。  大原亨君の要求されておりまする関係閣僚は、保利内閣官房長官内田厚生大臣、宮澤通産大臣、小林法務大臣佐藤経済企画庁長官、以上でございます。質問者の言うとおり一人も出席がございません。至急手続をとって出席されるよう要望いたします。もし要望に応じられない場合は、理由書を明確に書類にして委員長の手元へ至急提出願いたい。事のいかんによっては、理事会はじめ所定の手続を経て委員長として対策を講ずるのやむなきに至ることを御承知願いたい。以上。
  87. 湊徹郎

    ○湊説明員 ただいま御指摘の二点について、私もその趣旨は全く同感でございます。企業責任の問題、それから縦割りのばらばら行政、特にその第二点は、たてまえ上直接私ども所管事項になっておりまして、昨年七月の行革の計画の中でも明らかに内閣の総合調整機能並びに企画立案機能の強化のためにひとつ検討しなさい、こういうことになっておるわけでございます。率直にいいまして、いままでの時点で具体的な検討というものはあまり行なわれておりません。私、就任して以来確認をしたわけでありますが、山中長官とも相談をして、特殊法人審議会等を含めて、広い立場で行政機構の問題、本来は行管なんでございましょうけれども、私ども所管のものが非常に多うございますから……。で、公害につきましても、ただいまおっしゃられたような趣旨でもって、いま申した総合調整機能の一環として、具体的な問題としてひとつ取り上げていきたい、こういうふうに考えております。
  88. 城戸謙次

    ○城戸説明員 厚生省としましては、先生いま御指摘になりました二点につきまして、全く同じような考えを持っているわけでございます。  第一点の企業責任の明確化の点でございますが、これは私ども最も要望しているものの一つでございまして、先ほど御指摘の無過失責任制度の問題あるいは企業の費用負担制度の問題等の問題を含めまして、今後十分検討してまいるつもりでございます。  それから縦割り行政の問題につきましても、特に私どもとしましては、国民の健康あるいは生活を預かる省としまして、ぜひ私ども考え方が各省関係にいれられますように、またそれがより有効に調整されますようにと念願してこれまでまいったわけでございますが、特に公害の中でも、健康あるいは健康に密接な関係がある生活環境の問題、こういうものはぜひ研究面から行政面まで一元的に担当できるような考え方で今後できるだけまいりたいと思っておるわけでございます。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
  89. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 先生の御指摘になられました二つの点につきましては、まことにそのとおりであるという感を深くするわけでございますが、まず第一の企業責任の明確化につきましては、現在通産省もっぱら企業側の味方ではないかという観点で非難を受けておることはよく存じております。ただ、われわれの現在行なっております意識といたしましては、決して企業側の味方というようなちゃちな考え方で行動しておるわけでない点を御了解いただきたいと思うわけでございます。昨年通産、省で五つの新しい柱というものを打ち出しまして、今後数年間にわたる通産省基本的態度というものを打ち出したわけでございますが、その中の最も重要な柱の一つといたしまして、国民生活の質的な充実という点を取り上げました。この質的な充実という意味は、産業政策そのものの中に国民生活の向上という観点を入れて、常に産業政策を実施するその段階においてよく国民生活にまつわるあらゆる問題を考慮しながら政策を進めていかなければならないということでございまして、そういった考え方に基づきまして、実は先般の国会でも公害保安局というものをお認めいただいたわけでございます。しかも、この公害保安局は、通産省組織といたしまして、通商関係の局、企業局、その次に位する大局といたしまして、通産省全体をそういった目でいろいろ仕事の面で調整していこうという意図をその中に込めたわけでございまして、それらの点をすべて総合いたしまして、われわれとしては現在行動しておるわけでございます。  なお、具体的な企業責任の問題につきましては、現在の法制で許される範囲内におきまして、われわれとしては企業側の自覚を促し、反省を促すという指導をしておるわけでございますが、先般来問題になっております公害罪あるいは無過失責任論、その他これは相当厳密な法理的な検討も要するかと思いますが、その過程におきまして、ただいま申し上げましたような通産省の新しい考え方というもので各省の御検討に対応いたしまして前向きに取っ組みたい、かように考えておる次第でございます。
  90. 隅田豊

    ○隅田説明員 お答えいたします。  運輸省といたしましては、先生御承知のとおり企業側の問題、企業責任の問題として事を議論しておるのじゃございませんで、車の技術の問題として、こういうふうにあるべきだということでやっております。そういう意味では先生の御指摘については全面的に賛成でございまして、企業のあり方ということそのものについてはあまり考えておりません。技術的な問題として取り扱っております。  それから、縦割りの問題でございますが、この問題につきましては、私たち自動車の専門の立場から申しまして、安全、公害あるいは自動車の普通の意味での健全なる使用、こういうものすべてを含みまして一番妥当な道をさがし求めているわけでございまして、この目的といたしているところに、公害で申しますと、たとえば厚生省中心といたしました行政で行なわれておりますところの環境基準の設定とか、あるいは有害なる排出ガスというものは何であるかとかいうようなものを受けまして、それを自動車というものの技術的な専門の分野に適応しているということでございまして、厚生省と十分な連絡をとりつつやっているわけでございますので、現在までではうまくいっているのじゃないかと考えておりますし、今後とも十分連絡をとってやっていく所存でございます。
  91. 大原亨

    大原委員 総理府の副長官にお尋ねするのですが、これは時間が限られておるので簡単にひとつ。  きのう、おとといも議論になったし、他の委員会でも議論になっているのですが、東京都の公害条例、これが簡単に言うと少し出過ぎておるということで、前の国会においても予算委員会でもそういう議論がございました。違法であるとはいわぬが不当であるというような議論あるいは違法であるかのごとき議論、あるいはもう一つは、たとえば柳町の問題に関しまして、一酸化炭素規制を八時間平均一〇PPMに東京都が規制をする、これは中央の規制よりも少し強化されているわけですね。そういうことがあるわけです。これはやはり自治体が住民、現場に密着しているのですから、そこが責任を持ち、権限を持って、そして全体が協力をするような体制でないと、地域的に特殊性を持っている公害に対応していくことはできないのではないかという議論は、学説としても普遍化しておると思うのです。そういう点で、二つの点については政府の見解を変える必要がある。はっきりと地方自治体においてそういう公害の実態に即応して、国の基準を最低基準として、そういう規制を加えていくということについては、これは住民の生活を守るという観点から、こういう方針でやることが好ましいし、当然である。そういう見解を明らかにすべきであると思うが、いかがですか。
  92. 湊徹郎

    ○湊説明員 ただいまの見解については、基本的に私も同感でございます。特に私も府県のいろいろな行政の実態を。多少経験もございますし、心得ております。特に過般の国会で、公害紛争処理法が成立を見たわけでありますが、あの対象になっております紛争のほとんど大半というのは、ただいまおっしゃるとおりに地元に密着した自治体として解決しなければいけないような問題が多いだろうと思います。特に騒音等の問題もそうでありますし、ただいまの一酸化炭素等についてもそうであろうと思います。そういう点で、やはり実態に即しながら地方自治体が処理し得るような弾力性を持った一つの考え方、これはもう率直に申しまして私は必要であろうと思います。ただ関係各省のこともございますので、ただいまの御指摘の点も含めて公害対策会議ないしその下部機構であります各省の担当官の会議等において検討してもらいたいと思っております。
  93. 大原亨

    大原委員 公害罪が議論をされましたが、これ以外に重要な問題が高検、地検の責任者会議で問題になっております。それは何かといいますと、現行法の罰則の適用の問題です。いまさっき議論になりました行政罰の問題です。中央官庁の大臣あるいは地方官庁の自治体の長が、改善命令を法律に従って出す。その改善命令を実行しない場合には検察官が摘発する、こういうことについてはっきりした態度をきめよ。もしいままで話があったように、そういう行政罰、特別に刑法の刑罰の適用はなくてもあるいは改善命令が発動がなくても、検察官自体が、やはり違反した事実があるならば、たとえば大気汚染防止法だって一年以下の懲役、罰金があるわけで、それぞれついておるわけですから、そういうものがついてなくても、やはり違反の事実があれば、検察庁は国民にかわって摘発をしていこう、こういう態度をきめた、一種の話し合いをした、こういうことがあるわけですが、私は、総務長官各省行政長官もそうですが、有名無実になっているそういう点、公審罪を設定する前に、現行法のそういう行政罰適用の問題ですが、そういう問題については、私は改善命令を出す行政当局も、あるいは罰則を適用していく検察の側においても、あるいは裁判の側においても、これに対応する措置をとるべきであるというふうに思うけれども、法務省の見解はどうか。
  94. 大竹太郎

    ○大竹説明員 いまの御質問でございますが、少なくとも罰則規定の違反があり、もし検察においてこの事実を知るならば、当然これは取り調べ、起訴するべきものだと思いますが、いままでそのような、たとえば労働基準法違反でありますとか、そのほかいろいろ特別法の違反というものにつきましては、なかなか一般犯罪でも手が回らない検察庁といたしまして、なかなか手が回らない面もあるわけでございますが、いまおっしゃいました事柄について、原則的にはそのとおりだと思います。
  95. 大原亨

    大原委員 いま公害に対する民事訴訟がかなり行なわれておるわけであります。これは最高裁の関係の説明員にお尋ねいたしますが、そのときに裁判費用が問題になっておるわけですが、これは弱い立場の被害者に負担させないで、国が負担する、こういう問題が一つある。  それから立証責任の問題があるわけです。これは被害者側が立証責任があるということであるならば、これは裁判を幾らでも、いままでのいろんな裁判を例にとるまでもなく、引き延ばしていくのであります。費用がたくさんかかるのです。私は例を一々申し上げませんが、そういう立証責任は、相対的な因果関係が明確である場合においては、当然に加害者側、公害の発生源の企業側が負うべきである。こういう見解を明確にして、被害者のそういう訴訟における権利を保護すべきであると思うが、それに対する二つの点についての見解はどうか。
  96. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 お尋ねの第一点の訴訟救助の問題でございますが、訴訟に費用のかかることはお説のとおりでございまして、公害罪等につきまして、救助の必要のあることは、私どもも痛感いたしておるところでございます。現実の問題といたしましては、四大公害等といわれておりますが、阿賀野川事件にいたしましても、数日前追起訴になりましたもの除きまして、その他の全員について訴訟救助の決定がなされております。また四日市の公害の事件につきましても、全員訴訟救助をいたしております。富山のイタイイタイ病につきましては、第一次の原告につきまして救助の申し立てがございませんでした関係上、これはいたしておりませんが、その他の四百六十五名という多数、ほとんど全員でございますが、これにつきまして、一審の裁判所は訴訟救助の決定をすでにいたしておるという段階でございます。水俣病の事件につきましては、現在主張を整理中の段階でございますので、とりあえずの措置といたしまして、全員につきまして損害賠償の請求金額に応じて張る印紙代につきまして、すでに訴訟救助の決定がなされ、印紙は免除されているという関係にあるわけでございます。その他の事件におきましても、この種事件の特殊性ということは、一線の裁判官全員が考えておるところでございますので、具体的な事件について、それに応じた救助措置がとられるものと私ども確信いたしておる次第でございます。  お尋ねの第二点の因果関係及び故意、過失に関する立証の問題でございますが、一昨日の島本委員のお尋ねに対しても申し上げましたように、現行法上どちらがどの事実を立証しなければならないかという問題は、実体法の問題であるわけでございまして、その点をめぐりまして無過失責任になすべきかどうかといったような御議論が先ほどもなされておったようでございますが、最終的には実体法の規定の整備がございませんと、訴訟におきまして具体的に企業者側に全立証の責任を負わせるといったような点まではまいらないわけでございます。しかし、たびたび申し上げておりますように、公害の被害者は一般の市民でございます。また加害者と目されるものは、おおむね資力のある企業、大きな企業等でございます。したがいまして、訴訟の現実の進行の過程におきましては、政府公害の認定ということで打ち出しておられますそういったものが、現実の問題としては、原告に非常に有利に援用し得るわけでございまして、それによって一応の因果関係といったようなものは立証できるということに相なるのではないかというふうに考えております。もちろん具体的な事件の認定に関しましては、これは個々の裁判所が独自の見解でなされるわけでございますので、私のほうからどうこうするようにということを申すわけにはまいりませんが、裁判官皆さんのお考えは、いま申しましたように、すでに存在するあらゆる証拠資料を駆使いたしまして、一応の因果関係の認定ということを行なっていく方向で努力しようではないか、そしてそういうものができるならば、逆に反対側にそのような一応の推定、あるいは蓋然性の推定というものが破れるかどうかということについて立証を行なわせようじゃないかというような考えであるわけでございます。もしそういうことに相なりますと、これは立証責任の転換という問題ではございませんが、現実の問題といたしましては、この種公害訴訟における原告の立証活動の容易化と申しますか、そういったことによって、もちろん法律改正に基づく場合に比べまして、十全とは申し上げかねるかとも存じますが、ほぼそれに近いような考え方、訴訟の進行経過ということをとることができるのではないか、そうすることによって原告と被告との実質的な対等と申しますか、平等というものが期し得るのではないかということで、現在この種公害訴訟につきまして進行がなされておる。これが現状でございます。
  97. 大原亨

    大原委員 時間はできるだけ守りますが、きょうの出席者にふさわしく、ぐっと小さな問題ですが、微小水滴の大気の病原菌汚染の問題です。次の質問に入る前に聞くのですが、だれか知っていたら答弁して下さい。人間が一回くしゃみをしましたら、どのくらいの水滴が出るか知っていますか。何個の水滴が出るか知っていますか。これはトンチ教室じゃないけれども、ちょっと聞いてみるのですけれども、知っている人ありますか。これは微小水滴を研究している人だったら、みんな知っている。微小水滴の公害というのが非常に大きな問題になっている。この問題についての公害対策について質問するのだが、知っていますか、だれも知っていないでしょう。厚生省知っているか。微小水滴の研究をしている人だったら知っているはずだ。——私が答弁しますが、一回人間がくしゃみすると、百万個の水滴が出る。くしゃんとやりますと百万個出るのです。これを測定いたす機械がある。このくらいこの微小水滴は今日のいろいろな点から特にアメリカで問題になり、今度は日本でも学者の中において問題になっておる。  そこで私が問題とするのは、こういう項目であります。下水処理場の問題が一つある。これは空気を入れ、酸素を入れましてひっかき回しますから、そうするとものすごい水滴が出てくるという微小水滴の公害問題がある。ふん尿ですから病原菌、あるいは中毒食品、そういうものがあるということですね。それからふん尿処理場の問題がある。家畜の多頭飼育場の問題がある。病院の汚水処理の問題がある。団地における集中汚水処理の問題がある。これは建設省関係がある。家庭ごとの小型の浄化槽の問題がある。これは日本が都会において、きのうもあったが、三割しか下水道が整備されておらぬわけです。個人個人で小型の浄化槽をつくっておるわけです。これをめぐる微小水滴の問題で大気汚染の問題がある。これは非常に大きな問題だ。食品工場における水を、酸素で撹拌するときに起きてくるそういう問題がある。それからバキュームカーの——これは酸素、空気を使ってやるわけです。においだけでなしに、ものすごい微小水滴の問題がある。汽車の便所のたれ流しの問題がある。それからそういう微小水滴以外に洗剤のあわ、ABS、中性洗剤を使っているときに空気を包摂いたしますから、これが動いてまいりますと、あわが空中に飛ぶという問題がある。こういう微小水滴の大気汚染公害についてどの省のどこかで研究しているところがあるかないか。これはみんな各省に非常に小粒で専門家が集まっているわけですから聞くわけですが、ひとつやっているところがあれば聞かせてもらいたい。
  98. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 非常に恐縮なお答えでございますが、調査研究の問題として先生のおっしゃったような形での微小水滴の問題は扱っておりません。動物実験の場合に、微小水滴と粉じんとがまざるということによっての曝露実験のことは、これは行なわれていると私ども思っております。おっしゃったようなケースにつきましては私どもは触れておりません。
  99. 大原亨

    大原委員 東京大学の海洋物理研究室で、鳥羽さんという人が「気泡から発生する微小水滴の拡散に関する総合報告」というのを出されておって、これは一つの例ですよ。十五年前から研究しているのですが、これは国際的に大きな成果が認められておる、研究成果について評価されております。それは知っていますか。
  100. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 存じません。
  101. 大原亨

    大原委員 これは建設省に聞きますが、建設省昭和四十四年の五月一日に建築基準法の施行令の三十二条を特に改正をいたしまして、いま申し上げた中で、家屋ごとの小型浄化槽をはじめ、ふん尿を酸素を注入いたしまして、これを撹拌する、こういう曝気式の曝気槽、こういうものを政令に基づいて公示をして認めておるのであります。この公害問題について研究したことがあるかないか、いかがですか。
  102. 前川喜寛

    ○前川説明員 お答えいたします。  いまの微小水滴に関してのお話でございましたら、申しわけございませんが、検討してございません。ただ、いろいろな汚物処理の浄化槽といたしまして、廃液がどうとかというふうなことにつきましては、これ以前にいろいろな曝気式の浄化槽が出てまいりまして、ここ数年間ぐらいの問題でございます。それで従来の浄化槽とだいぶ型が違った新しい形式のものでございます。法律の三十八条に基づきまして、そういう非常に特殊な型のものにつきましては、建設大臣の認定という制度がありまして、それによりまして、いろいろ試作的な設置を認めまして、ずっと放流水の水質その他についての検討を進めまして、その結果に基づきましていま御指摘の政令を改正いたしまして告示を出したわけでございます。
  103. 大原亨

    大原委員 私が質問したのは違うのですよ、あなた。曝気式を、建築基準法の政令を改正いたしまして告示をして許可したわけです。曝気式を採用することを許可した。それで曝気槽というのは一軒一軒に設定いたしまして、ふん尿の浄化装置なんですけれども、御承知のとおりだ、あなた知っておるとおりだ、電機会社がよく知っておる。これに酸素を入れまして撹拌するわけでしょう、そういたしますと、どんな小さな中にも——私はくしゃみの話をしたけれども、ものすごい微小の気球がぱっと空中へやるわけです。そのときに病原菌を運搬するという議論があるわけです。研究があるわけです。アメリカでも、日本の一部でも問題になっているわけだ。そういうことについて検討した結果曝気式を採用したかどうかということを私は言っておるのです。そういう検討はいたしておりませんというならそれでいいわけだ。
  104. 前川喜寛

    ○前川説明員 お答えいたします。  最初に申し上げましたように、微小水滴の件に関しては、申しわけございませんが、われわれとしては検討しておりません。
  105. 大原亨

    大原委員 それでは厚生省聞きますよ。これはあらかじめこの問題について議論することになっております。建設省がそういう政令を改正し、あるいは告示行為で曝気式を採用するにあたって、そういう公害の問題についていろいろ議論がある問題について、厚生省は清掃法施行規則第十条に関連をいたして検討をいたしておるやに私は聞いておる、皆さん方の答弁と違って。そういうときに、どういう具体的な意見を建設省に出したのか、こういう問題についてお聞きいたします。
  106. 島本虎三

    島本委員長代理 大原君、あと五分です。
  107. 大原亨

    大原委員 わかりました。
  108. 城戸謙次

    ○城戸説明員 曝気式のものの中でも、小型の家庭用の曝気式浄化槽につきましては、外界から遮断されておりまして、いまのような問題は比較的少ないわけでございますが、特に大型のものの場合には、開放されておりまして、あわが飛ぶ、こういうことで先生御指摘のような問題があるわけでございます。私どもとしましては、今後できるだけこういう点を行政指導で問題が起こらないようにやっていきたいと思っておりますが、いまおっしゃいましたような意味合いにおきまして、建設省からどうだということでございますが、これは私どもとしましては、特に建設省から具体的な相談を受けたわけではございません。ただ、経過的に申し上げますと、日本建築センターの衛生設備委員会の基準部会で検討されて建設省報告され、建設省でこの構造設備の基準の改正がなされたと聞いておるわけでございます。
  109. 大原亨

    大原委員 私が言ったのは、大型の曝気式だけでなしに、集中方式その他、小型の曝気式について、どんな小さなすき間からも、ものすごい目に見えないようなそういう微小物が発散をしているということを科学的に調査し、検証し、それと一緒に病毒が、菌が発散するという、そういう公害問題が大きな問題になっている。こういうことが、最近曝気式がどんどん出ておるけれども、非常に大きな問題になりつつあるという点で、あなたの答弁は、小さいものは害がないというふうな認識は、これは間違いである。委員長があと五分と言って時間を示しましたから、私も協力するわけですが、きょうはあなたの答弁では、全く微小気流については私の納得できるような公害対策がなされていない。これは各省にも関係していることです。公害対策についてそういう一元性がないということの一つの縦割り行政の欠陥が曝露されているというふうに私は思います。これは私は将来論議を続けていくということを申し上げておきます。  この際、国鉄がお見えになっているはずですが、ふん尿の列車からのたれ流し、あれは測定いたしましたらものすごいんですよ。測定したことがあるかどうか、付近住民にどのような公害を及ぼしているか、それに対する対策はどうか、二つの点についてお答えいただきたい。
  110. 一條幸夫

    ○一條説明員 お答えいたします。  列車の汚物の飛散状態等につきましては調査をいたしております。  それで、対策でございますが、ただいま進めつつあります対策は、客車の便所の改造並びにその処理のしかたの対策を立てております。要点を申し上げますと、現在新幹線で採用いたしておりますような方式でございますが、国鉄で現在旅客車が二万五千両ございまして、便所の数が一万八千五百ございます。そのうちで新幹線の関係は車両数約千百両でございますが、これは御承知のように循還式の汚物の処理装置が車についておりまして、車両基地に入りましたときにそれを全部抜く装置になっておりまして、運転中に汚物が飛散するようなことにはなっておりません。そういう設備を一万八千の便所につきまして全部やるつもりで対策を進めております。ただし、一万八千を全部一ぺんに並行してはなかなかできませんので、重点をきめておりまして、東京とか大阪のような大都市に入ってまいりますといいますか、便所の使用回数から見まして、やはり長距離列車の使用のほうが多うございますので、長距離列車から重点に対策を進めております。  それで、現在この対策を進めてまいりますのに最大の問題点になりますのは、地上設備の問題でございまして、車上に幾ら設備をしましても、地上の汚物を抜き取ります装置ができませんと使えませんので、まず地上の設備を整備いたすことにいたしておりまして、まず初めに東京では品川、田町、それから大阪では向日町、宮原、それから九州の南福岡、こういうところをまず第一に考えております。そういう優等列車用の車両につきましてまず第一に考えることにいたしておりまして、その改造します予定の車両数は約千九百両でございます。  現在までにどの程度できているかということでございますが、先ほど申しました新幹線の千百両は全部そういうものになっておりますが、在来線の車両につきましても、昨年度は新製車両が、便所のついておりますのが約七百両ありますが、これは全部地上の設備ができれば使えるような設備をしてございます。それからさらに昨年度は百両改造いたしております。今年度も同じような考え方で新製車両につきましては、地上設備ができますれば生かせるように対策を講じてはございます。それから昨年度と同程度の改造は今年度もやりたいということで現在準備を進めている段階でございます。
  111. 大原亨

    大原委員 これで終わります。  いま、曝気式の問題について一言だけ言っておくのですが、これは建設省やその他電機メーカーが大きな消費市場として持ち込めば検討もしないですぐ告示して使用させるというふうな、そういうことの一つのあらわれなんです。これはひとつ、厚生省だって公害という観点で問題があるということを十分承知しなければならぬ立場にありながらチェックできない、こういう立場である。ですから、私はそういう点でこの問題は将来も議論を続けていきたいし、国鉄からのたれ流しの問題についてもこれはやはりこまかな議論を続けていきたい、こう思います。   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕  私は以上をもって質問を終わるわけですが、私の質問が終わるまで、委員長閣僚会議のメンバーは出てこない、まことに不届きしごくである。全く公害に対する熱意がないのではないか。出た人は答弁も一生懸命やられたことについては認めるが、しかしながら、まことに私は遺憾である、そういう点については。そういう点の表明をいたしまして私の質問を終わります。
  112. 加藤清二

    加藤委員長 この際大原君に一言だけ申し上げておきます。  せっかくの大原委員の希望でございますので、大原委員の質問に間に合うべくいま私が通産大臣をもらいに行きました。ところが、あちらでも公害の問題を質問しているのでございます。したがいまして、通産大臣公害委員会に提出する場合には、向こうでの質問者をこちらの委員会でやらしてくれるかという交渉になりまして、その結果、それではこちらのバッター順が狂うことになりますので、もう一度向こうの理事たちによく懇談していただいて、可能な限り出席をしていただくということに相なりました。したがって、通産大臣出席の場合は、またあなたに質問の機会を与えることをお約束いたします。  それでは次は有島重武君。
  113. 有島重武

    有島委員 私はおもに水質につきまして、具体的な問題を取り上げていきたいと思います。  初めに経済企画庁長官に。わが国の代表的な都市河川の水質の低下は非常にはなはだしいものがあるわけでございますが、これは最近徐々に回復されつつあるところもある。これは喜ばしいことでございますけれども、非常にわずかなことなんで、たとえば東京都の隅田川、荒川、あるいは大阪の淀川などについてでございますけれども、この水質を一体どの程度まできれいにするかまえがあるのか。いつまでかかるのか。それからその金額をどう見積もるのか。そうしてその財政措置は、民間それから国あるいは地方公共団体、おのおのにどう配分されるのか、そういうことについて伺っておきたい。
  114. 西川喬

    ○西川説明員 お答えいたします。  都市河川の汚濁は非常にはなはだしいものがございます。現在きまりました水質汚濁にかかわります環境基準によりましては、一番悪いところでE類型、これは臭気が出ない程度でございますが、BODで申しますと一〇PPMというものを目標にいたしてございます。水道あるいは工業用水、農業その他の利水がなしに完全な排水河川というものにつきましても、最悪の場合で少なくとも都市環境に悪影響を及ぼさないというところで、一〇PPMを一番下の基準と考えておるわけでございます。いま先生のおっしゃいました隅田川とかあるいは東京の城南の河川、それから大阪の市内河川、このような川につきましては、現在ひどいところにおきましては四OPPM、五OPPMと、隅田川等におきましてはやっと一五ないし二〇PPMまで現在なっておるわけでございますが、このような川につきましては一応一〇PPMを目標にいたしたい、このように考えております。  都市の中にございましても利水の目的がございます多摩川とか淀川、これらにつきましてはそれぞれの利水目的に対応しまして、もう少しその目的に対応した類型に当てはめたい、このように考えておるわけでございますが、一応それ以外の利水目的のないところではE類型というものまではどうしても持っていきたい、このように考えております。  それに要します費用につきましては、現在指定水域につきましての該当類型の当てはめ行為を作業中でございます。この作業によりましてそれぞれの水域におきまして目標年次、それぞれ変わってまいります。個々に検討いたしまして何年という目標年次——これは一般のところでは五カ年以内を目標といたすわけでございますけれども、現在非常に汚濁が進行し切っているところでは、五年以内をある程度延ばすこともやむを得ない。そのときにはその中間の目標も設定いたしまして、計画的によくしていく。原則としては五年以内にその目標に到達いたしたい。  それに要します費用につきましては、これは施策といたしましては水質基準の排水の規制、それから社会資本の充実、すなわち下水道の整備あるいは屎尿の処理施設の整備、このようなことになるわけでございます。もちろんこの排水の規制をいたします。排出源の規制、これは全部それぞれの排出者の負担でございますが、下水道の整備、屎尿処理場の整備等につきましては、これは公共事業として行なわれるわけでございます。それらの費用がどのくらいかかるかということにつきましても合わせてそれぞれの水域について現在積算中でございます。こまかい具体的な数字は大体今月中に各指定水域だけについてまず取りまとめることになっておりますので、そのときにはおおよその必要な投資額並びにそれを達成するための年限というものが水域ごとに明らかになることになっております。
  115. 有島重武

    有島委員 私一番最初に具体的にということを申し上げたわけなんで、原則的なことはいまほぼお答えいただいた。それで今月中にその積算ができるというのでございますけれども、いまの代表的にあげました隅田川、荒川それから淀川なんかですね。こうしたところについて今月中に積算ができるわけですね。そしてその目標は、いつから五カ年以内にEランクになるわけなんですか。  それからもう一つ伺いたかったのは、財政措置がきまる。そうするとその配分ですね。民間側と国と公共団体ですね。その配分というのはどうなっているのか。そういったことについても伺いたい。
  116. 西川喬

    ○西川説明員 必要な投資額につきまして、一番基本になりますのが下水道の整備費用でございます。これは現在下水道を所管いたしております建設省のほうで積算をいたしている段階でございます。この積算が、いろいろ計画的にこれをやらなければなりませんものですから、このために実は先ほども申し上げましたように環境基準の当てはめ行為、約一カ月おくれたわけでございますけれども、その具体的な数字につきましてはまだ現在中途段階でございますので、もうしばらくお待ち願いたいと思うわけでございます。  その費用の負担でございますが、これは下水道は現在の下水道法によります費用負担によって行なうということになっております。ただ公害対策基本法の第二十二条に基づきます企業負担というのが現在通産省厚生省のほうで検討中でございます。もしその結果が得られまして法律が制定されますと、下水道等の費用につきまして一部の企業負担が生ずるかもしれませんが、現在の段階におきましては下水道法に基づくいわゆる国及び地方公共団体の負担、それから一部都市下水用になりますと受益者負担が一部入っております。それらによって、下水道法によってその費用の負担は処理されるもの、このように考えております。
  117. 有島重武

    有島委員 では次に入ります。現在すでにはなはだしい汚染をこうむっております河川については、これはどう回復するか。これも非常に重大な問題でございますけれども、未汚染の河川水質を守ること、これも非常に大切なのじゃないか。これは先ほど主務大臣が先取りする気概である、そう言われたわけでございますけれども内田さん行かれてしまいましたけれども内田さんの代理でいらっしゃる城戸さんからお答えを承っておきたい。
  118. 城戸謙次

    ○城戸説明員 水質の汚濁の問題につきましては、常々経企庁とも十分連絡いたしまして対策を検討してまいっておるわけでございますが、特に現在よごれてないようなところをよごさないということが一番大事だ、これは厚生大臣が常々私どもに指示をされておるところでございまして、ぜひ将来、たとえばカドミウムだとか、水銀だとか、健康に非常に大きな害があるようなものを中心としまして、現在のような指定の問題にかかわりなく、全国どこの河川においてもそういうものが排出されないということを確保できるような施策を講じていきたい、かように考えておるわけでございます。
  119. 有島重武

    有島委員 どこの河川においてもということでございましたが、アユの住むようなきれいな川に最近ひんぴんとして汚染が起こっておるわけでございます。ところが、これは定常的な水質汚染ではないというところに問題があるのじゃないか。間欠的ないしは周期的に魚が死ぬ。これを一体公害として扱うか、あるいは一事件として公害のほうからははずしていくのか。およそ一時的な事件だというふうな扱いにしている限り、これは先ほど言われました先取りをしてどこの河川も水質を保っていくということにならないのじゃないか。こうした基本的な態度についてはいかがでしょうか。
  120. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいまのような問題が公害にならないかどうかという点でございますが、私どもこれは公害対策基本法の定義からいたしますと当然に公害になるわけでございます。ただその対策が、まだその場その場でやっておるのであって、一貫性がないじゃないかということだと思うわけでございまして、この点、今後できるだけ組織的に対応できますように、経済企画庁と連絡してやってまいりたいと思っております。
  121. 有島重武

    有島委員 水産庁のほうに伺いますが、六月二日に長良川でもってアユが大量に浮き上がった。それから、つい八日でございましたか、狩野川でも浮き上がった。これは新聞にずいぶん報道されましたけれども、これについての実害についての調査結果を伺いたい。
  122. 平松甲子雄

    ○平松説明員 お答えいたします。  狩野川につきましては、六月七日にアユが浮かびまして、これは工場から流出したシアンによるものではないかというふうに考えられておるわけでございますけれども、死にましたアユの数が大体二十万尾から三十万尾程度のものではなかろうかということでございます。  それから長良川につきましては、六月二日に魚の死亡が見られたわけでございますけれども、現在のところ、数量ははっきりいたしておりません。
  123. 有島重武

    有島委員 これは一番実害をこうむるのは、地元の漁民であると思うのですね。そういたしますと、お金に換算しますと、大体どのくらいの実害をこうむっておるのか、そういうことも一番現実的な問題になるのじゃないかと思うのです。それで長良川のほうも、この前十万尾くらいですか上がった。それ以上であったということだけは、明らかであるように私は聞いておりますけれども、地元のほうの実害ですね。大体どのくらいの人数の漁民が、大体どのくらいの金額の害をこうむったのか。
  124. 平松甲子雄

    ○平松説明員 両方ともまだ期日が近こうございますので、県のほうで調査中でございまして、狩野川の件につきましては、大体二十万ないし三十万ではなかろうかということでございます。  関係漁民がどの程度いるかということでございますが、狩野川につきましては、狩野川漁業協同組合という組合がございまして、そこの組合員が一千名でございまして、それから長良川につきましては、長良川中央漁業協同組合というのがございまして、組合員が五千五百五十五名でございますが、そのうちどの程度の方がこの該当した魚の採捕に従事しておられるかということについては、ちょっと私どものほうでは、数字を持ちあわせておりません。
  125. 有島重武

    有島委員 これは魚のことでございますから、厚生省でもって、人命に直接かかわる話ではございませんけれども、こうした問題の究明にあたりまして、被害者が大体どのくらいの実害をこうむっているのかというその測定といいますか、調査といいますかそういうことについての原則は、どうなっておるのですか。主務省から……。
  126. 城戸謙次

    ○城戸説明員 厚生省のほうで答弁せよということでございますが、魚の問題につきましては、私ども特に特別な所管になっておりませんので、ただ全体の公害の問題という一環の中で、できるだけの対応をしたいと考えておるわけでございまして、いまのようにどういうルールで損害をはかるかというこういう問題につきましては、県なりあるいは水産庁なり、関係のところに連絡しながらやっていく以外に方法はないと思うわけでございまして、地元としましてそういうような関係省庁あるいは県と御連絡いただいて対応していただくということのほかないんじゃなかろうかと思っておるわけでございます。
  127. 有島重武

    有島委員 いまのは非常に何だか人ごとのようなお話であって、主務省としてはそういった点についてやはりしっかりした指導基準というものをはっきりしていただくべきではないのだろうか。  いまの水産庁からのお話、これはまだ時間がたってないということでございますけれども、概算的なことはすぐにわかるはずなんですね。そしてどのくらいの損害をこうむって、そのあとを一体どうするのかという、そういうような発想のしかたが大切なんじゃないか。それは先ほどから縦割り行政である、あるいは責任が分散されておるということでございますけれども、それを統合していくという立場からいえば、そういった点を推進していらっしゃるべきじゃないかと私は思いますけれども、いかがでございましょうか。
  128. 城戸謙次

    ○城戸説明員 水の問題につきましては経企庁を中心に対応しておりますし、特に魚の問題は水産庁中心、こういうことになっておりまして、私どもとしましてできる限りにおきましてはいま御指摘のような努力をいたしたいと思うわけでございます。
  129. 有島重武

    有島委員 そのできる限りのお話なんでございますけれども、そういったことを推進していくことができるのか、あるいはそういったことは水産庁または経済企画庁におまかせしてあって、こっちからは手が出せないからということなんですか。  もう一つ加えて御質問いたしますけれども、いまの原因の究明でございますけれども、狩野川のほうはシアンであった、長良のほうはアルカリであったと思うのですけれども、その原因究明についてはどのように事が運んでおるのか。これはああしたきれいな川なんですから、そんなにたくさん工場があったわけではないんですね。これは特定のこの工場からこういうふうに出たということがほとんど明らかになっているはずです。これについての原因究明の状況、これをあわせて伺います。
  130. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 工場の排水につきまして、直接監督しておりますのは通産省でございますので、通産省からお答え申し上げたいと思います。  御指摘のように長良川のアユは強アルカリ性の物質であろうという疑いが出ておるものですから、さっそく強アルカリ性を排出する工場について調査をいたしました。これは具体的には長良川の支流の余取川の付近に存在する工場であろうということで調べました結果、紙を製造しております製紙工場中四工場、これが一番排出源としては疑いが濃いということで、名古屋通産局と岐阜県と共同いたしましてさっそく立ち入り検査をした次第でございます。ところが、その段階では工場の排水から強アルカリ性の物質は発見されませんでした。しかしさらに念を入れまして、その工場の排水をとりまして十倍に希釈いたしまして、その中で生魚実験をやりまして、魚がどういう状態で推移するかを綿密に調べてみたわけでございますが、その段階の実験では、これもやはり異常が認められなかったということで、非常に疑いの濃い工場が四工場あったわけでございますが、はっきり原因を究明するには至っておりません。  なお、この四工場につきましては、さらに設備内容その他を厳重に調べまして、改善さすべきところは直ちに改善させるという措置をとっておるのが現状でございます。  それから狩野川でございますが、狩野川につきましては、御指摘のとおり魚体並びに川の水から微量のシアンが発見されました。このシアンの排出工場といたしましては、狩野川のその付近にありますメッキ工場が多分その排出源であろうということで、メッキ工場中心に静岡県、沼津市並びに漁協の共同調査団ということでいろいろ立ち入り検査も行ないまして調べてみたところでございますが、これもやはりその調査時点におきましては、排出口からの水にはシアンが含まれていなかったということでございまして、現在の段階ではこれが犯人であるという意味の工場は実は発見されていないわけでございます。  静岡県では以前も狩野川につきましてはこういう件がございましたので、昨年の十一月にシアンの取り扱い工場の総点検を実施しておりまして、具体的な設備改善の指導をやっておるわけでございますが、長良川、狩野川、この二つの事件を通じましてわれわれのつかみましたところは、通常の操業状態において基準以上の毒物が流れておるということはございませんで、何か突発的な操作上のミスかあるいは突発的な事故で、その一時期を限りまして有害物が流れ込んだのではないかというぐあいに見ておるわけでございます。さらにこの点はできるだけひんぱんに常時監視いたしまして、そういうケースが出た場合にはすぐにつかみ得るような体制をかためたいと考えておるわけでございますが、いろいろ人員の関係その他で、完全な体制をしくことはなかなか困難であろうかと思いますが、関係者に対しまして常に厳重な注意を与えるとともに、できるだけひんぱんに工場の中の操作状況なりあるいは設備の状況を今後とも監視してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  131. 有島重武

    有島委員 これは主務省の城戸さんもいまのお答えお聞きになったと思うのでございますけれども、こういうふうに原因究明についても非常にあいまいであると思うのです。結局いまのお答えの範囲では、片方はシアンであるということは魚を解剖してわかるわけです。それから片方はアルカリだ、これも魚を解剖してわかるわけなんです。ところが、それがあとになってから水質を調べてみたらば、別にどうということはない、だから工場に立ち入り検査してもよくわからないからということでうやむやになっていくわけですね。それでこうした突発的といいますかあるいは間欠といいますか、あるいはもう少し大きく言えば毎年起こる。これは周期的に起こっているようなことでございます。こうしたことについて本気になってやっているのか、私は態度の問題であると思って、全体の公害問題から見ますと非常に小さい問題のようでございますけれども、重要な問題であると思って取り上げておるわけでございます。  それで長良の話だけにしましょうか。四工場あったという話なんです。紙の工場です。ところがあそこでやっておる紙の操作はあまり薬を使わないで、水で流して、それで古い紙をもう一ぺんやり直すような、そういう工場があるわけなんですけれども、その四工場の中で、アルカリを使っている工場は一工場しかないはずなんです。それはお調べになっていると思います。いまそちらのこまかい話だけ、そういうお答えだったから、さらに突っ込むけれども
  132. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 先生御指摘のとおり、この四工場のうち、苛性ソーダを使いまして色を抜いておる過程を持っておるのは田中製紙という製紙会社一社だけでございます。ただ、立ち入り検査をいたしました結果、この田中製紙の排水口は、一般の水の排水口と、それからアルカリの廃液が入っております排水口と分かれておりまして、アルカリが入っております排水口は、全然余取川とは関係のない水路に流れ込んでおりまして、われわれとしてはこれをもって余取川のアユの斃死と結びつけることはできなかったということでございます。
  133. 有島重武

    有島委員 主務省の城戸さんに今度はお伺いいたしますけれども、こういった場合、一体どうするのですか。これは明らかに実害はあったのですね。それでもって、この場合には強アルカリだときまっている。それで、その工場に立ち入ってみたらそういうようなことがないというので、結局それは漁民は泣き寝入りということになるのですか。
  134. 西川喬

    ○西川説明員 水質汚濁のほうの関係の責任を持っておりますのは経済企画庁でございますけれども、いまのような事件が起きました場合に、加害者と被害者がはっきりいたしておりますと、これはその補償問題の紛争の問題になってまいります。紛争の問題になりますと、前国会で成立いたしました紛争処理法によって和解が行なわれることになるのではないか。  ただ、ただいま通産省のほうから申しましたように、加害者がはっきりしないケース、狩野川等の場合には、シアン工場が非常にたくさんございます。そのような場合におきましては、これはどう処置したらいいのか非常に問題になるところでございます。被害のほうははっきりいたしておりますけれども、加害のほうがだれがやったのかということがはっきりいたしませんと、これはやはりどうにもならないということになるのではないかと思います。  そのために、私たちのほうといたしましても監視体制をもっともっと整備しまして、行政機関としてはできる限りそういう事件が起こらないような方向で努力してまいらなければならないのではないか、このように考えております。
  135. 有島重武

    有島委員 ここにいま大臣がいらっしゃらないので、やはり城戸さんに集中するようなことになりますけれども、狩野川のほうは幾つか工場がある。長良のほうは一つしかない。明らかになっていても、しらばくれて、そういうことはない、ここはこうやっておりませんといえば、それでもっておしまいになってしまうのですね。そういうようなことをいつまでも続けていていいのかということですね。いま水質だけ言っておりますけれども、東京都内なんかでも、空気の汚染だ、騒音だ、ばい煙だ、振動だと、東京だけでなく、各地で起こっている各種の公害によって現実に困っている人たちに対して、国が一体どういうように責任をとっていくのか。これは当然廃液を出している工場の責任ではありますけれども、それを国は何かの形でもって、それがはっきりするまでは仮払いするとかあるいは優先的な金融をするとか、そういった措置考えていかないと、これはほんとうに痛められっぱなしでもってどうにもならないわけです。そういうような一つの、政府がほんとうに原因究明もできない、あるいは実害の調査もほんとうに中途はんぱだというようなことについて、じゃ応急措置ということを考慮されますかどうか、そのことを伺いたい。城戸さんから。
  136. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいま経企庁からお話しございましたとおりの実情でございまして、私どもとしましてはそれ以上特にお答えすることはできませんが、私どもは特にこれまでとってまいりました考え方としましては、まず、いまのような原因が非常にはっきりしないということで一番困りますのは、人の健康にかかる被害でございまして、これにつきましては、たとえば水の問題は経企庁の所管であるということでございましても、健康面に関しては私ども全責任を持ってやらなければいかぬということでやってまいっておるわけでございます。ただ、いまのような魚の問題等になりますと、私どものほうで特に直接的にやるということもなかなかできませんので、所管の経企庁あるいは水産庁というところにおまかせしまして、具体的には県が相当中に入りまして調査等をやっているのが実情だと思うわけでございます。健康被害等の場合につきましては、前の国会で成立しました特別措置法もございますし、それでいまのような暫定的な意味での救済措置もございますが、その他につきましては一に紛争処理あるいは裁判、こういうことでやるほかないわけでございまして、現在制度的にはその面の確立はされていないというのが実情であるわけでございます。
  137. 有島重武

    有島委員 いま主務大臣がいらっしゃらないし、その主務大臣というのは総理の代理でもって来ていらっしゃるのだと思うのですよ。したがいまして、城戸さんも、そこに佐藤総理がいらっしゃるようなつもりでそこにいらっしゃるのだと思うのですけれども、それで、原因の究明のしかたが全く不十分だ、あるいはその原因を突きとめられないというときに、被害者がいつまでも泣き寝入りになっているということは、これはほんとうに国としても恥ずかしいことだと思いますね。それで、こうした問題がおくれるときには、ちゃんと国が肩がわりして、公害罪の被告の立場にあるというような差し迫った立場に立って、そうして何かけんかの仲裁に出ていってやるんだというような姿勢ではなしに、ほんとうに、責任を真にとって、そうしてこの問題を全般的にこれは推進していっていただきたい。これは要望いたしまして、私の質問は終わります。
  138. 加藤清二

    加藤委員長 次は、川村継義君。  答弁者、そろってますか。厚生省通産省、経企庁、法務省、総理府、自治省、そろっていますか。法務省——法律の番人が法律を破っておっちゃいけませんね。自治省。——質問者に申し上げます。厚生省通産省、経企庁、総理府、これだけそろっておりますが、始めますか。あなたの要望の法務省、自治省はまだ来ておりません。
  139. 川村継義

    川村委員 法務省、なるたけ早くひとつ。
  140. 加藤清二

    加藤委員長 始めますか。——じゃ、川村継義君。
  141. 川村継義

    川村委員 私は、昨日参考人に対して、水俣病補償あっせん問題についていろいろお尋ねをいたしました。しかし、どうも満足される答えを得られませんでした。というのは、公害を防止する、人の命を大切にするという第一義的な立場から考えて、どうも不満が残ってしようがないのであります。これらの問題を考えてみますと、私は行政の責任がいかに大であるか、あらためて実は思い知ったような気持ちであります。特に水俣病対策のこの十数年にわたる長い歴史と被害者のこの後の将来を思うときに、いま私が申し上げましたように、これは行政当局にもずいぶんの大きな責任があったのではないか、こう思うのであります。  この水俣病の問題につきましては、幾たびか国会で問題とされました。いまいわゆるイタイイタイ病であるとか、四日市ぜんそくであるとか、含めて四つの大きな裁判が進行しておりますが、またこれらはどういう結論が出るのか、それは訴訟裁判の結果にまたなければならぬということは当然であります。しかし私は、いまも申し上げましたように、行政のあり方というのについて、いままでのことを振り返り、この後の公害対策ということを考えると、どうしてもいま一度皆さん方の考え方なり方針なりを確かめておきたい、こう思っているのです。昨日に続いてこの水俣病有機水銀中毒事件についてお尋ねをするということは、あるいは厚生省あたりは、まあ死児のよわいを数えるものだ、何べん一体聞くんだ、そういう過去をとがめてもしようがないじゃないかというあるいはお気持ちがおありかどうかしりませんけれども、私は、その過ぎ去った過去の行政の中に、ほんとうに行政上の反省が生まれてくれるならば幸いだ、再び将来あやまちを繰り返さない、き然たる行政のあり方を実は念願してやまないものであります。  そこで私は昨日に引き続いてくどいようですけれども、そういう前提を置いて、そういう私の念願を込めて二、三の問題をお聞きしてまいります。連日の委員会でありますし、委員長はじめ各委員非常にお疲れでありますから、また行政当局もたいへんお疲れでございますから、できるだけ時間は縮めてまいりたいと思います。  まず私は、経済企画庁のほうにお尋ねをいたします。御承知でございますが、昭和三十四年の十一月十二日、厚生大臣の諮問機関であった食品衛生調査会水俣食中毒部会、これが最終答申を出した。これはもう御承知のとおりであります。簡単に申し上げますと、水俣病の発生物質は有機水銀でその毒物は水俣湾の魚介類の中にある、こう結論づけた答申が昭和三十四年十一月の十二日に出されております。そのときに、これは表面立った問題ではないのですけれども、当時の熊本大学の学部長であった鰐淵教授が工場排水にその原因がある、こういうことを発言されたれけども、皆さん方の当局のほうでは全然取り上げていない。そうしてその翌日、つまり昭和三十四年十一月十三日、この食品衛生調査会水俣食中毒部会は解散をさせられてしまったのであります。その理由はあとで厚生省にお聞きいたしますが、その後約三カ月ばかりして水俣病総合調査研究連絡協議会というものができた。これも御承知のとおりであります。昭和三十五年の一月に発足をしておる。水俣病総合調査研究連絡協議会、長々しい名前であります。これも御承知のとおり。通産省経済企画庁厚生省、各大学の教授、計十六人でその構成メンバーがつくられておる。そして経済企画庁がその主務官庁というか、責任者となって水俣病問題について取り組む、こういうことになっておったのであります。  企画庁にお尋ねいたしますが、この水俣病総合調査研究連絡協議会は、一体昭和三十五年の一月発足してから、何を研究し、どのような成果をあげたのか、またそれには幾らの予算を使ったのか、第一点お尋ねをいたします。
  142. 西川喬

    ○西川説明員 ただいま先生がおっしゃいましたように、昭和三十五年でございますか、水俣病総合調査研究連絡協議会というのが発足いたしております。そのとき、経済企画庁厚生省通産省、水産庁、国の行政機関といたしましてはこの四省庁が入りまして、それに学識経験者を加えまして発足いたしております。水俣病に関しまして各種の機関で研究しておりましたものを総合的に調整しながら研究を進めよう、このような趣旨で発足いたしたのでございます。当時現在のような公害対策基本法もございませんし、経済企画庁が一応調整官庁といたしましてその司会役を引き受けております。その後協議会は四回開催されております。四回開催されておりまして、その問いろいろ研究を進めてまいりましたのでございますが、昭和三十六年度に至りまして原因物質の究明が非常に困難であるということから関係各省調査が行なわれなくなってまいりましたために、協議会も自然休止と申しますか、いうような形になって自後推移いたしたような次第になっておるようございます。  いま、ちょっと手元に資料がございませんので、それに要しました経費、これにつきましては後刻調べて御報告申し上げたいと思います。
  143. 川村継義

    川村委員 厚生省公害部長も、相当年月を経ているから、実はあなたにお聞きしてはどうかと思うけれども、まあ御存じでありましょうというのは、今度の千種あっせん委員会事務局を担当してやってこられましたから、そういう経過についても当然お調べになっておるはずです。  そこで、いま経済企画庁からお答えになったその問題についてでありますが、厚生省の食品衛生調査会水俣食中毒部会、これが三十四年の十一月十二日に答申を出して直後、翌日の三十四年の十一月十三日、この諮問機関水俣食中毒部会を解散した。これは一体どういう理由で解散したのですか。
  144. 城戸謙次

    ○城戸説明員 お答えいたします。  ただいまの調査会が答申をいたしました直後に解散いたしましたのは、私どもがいろいろ記録を調べた結果によりますと、一応医学的な結論は出たが、無機水銀が有機化するメカニズムがあるのじゃないか、あるいは魚介類中で有毒化する機構があるのじゃないか、あるいはまた海流の問題があるのではないか、その他万般の問題がございまして、厚生省だけで検討するには適当でないという政府部内の話し合いによりまして、この段階で厚生省におきます検討の段階を一応終わりまして、経済企画庁に引き継ぐという形になってまいったと了承いたしております。
  145. 川村継義

    川村委員 いまお二人からいまの問題についてお答えをいただきました。経済企画庁の西川参事官からお話のありましたように、三十五年の一月水俣病総合調査研究連絡協議会が発足して、三十六年の三月まで四回会議をしておる。そしてそのまま、私のことばを言うならば、雲散霧消しておる。消えちゃった。その後何もやっていない。これに使った費用が一千万円。昭和三十三年、熊本大学に厚生省が水俣病を研究せよと言って渡した金額が百十万円。それの何倍かに当たる費用を使って四回の会議をやっただけでついにその後立ち消えになってしまっておる。  第一回は熊本の内田教授の有機水銀実験の報告が行なわれておる。それが一つの柱。第二回は有名なる清浦教授のアミン説が持ち出されてきて会議議題となっておる。そして第二回には今後対外発表は十分注意せいと言って熊本大学の自主的研究発表を押えておる。第三回には熊本の内田教授が有機水銀の抽出をしたという報告があったけれども、清浦さんが反論を加えてうやむやにしておる。第四回は清浦教授が横須賀あたりの貝を使った実験をやって、熊本大学の研究に反論をして終わりにしておる。だからことばを詰めて言うなら、先ほど西川参事官がおっしゃったような結果になってしまうのであります。いま厚生省部長が言われたように、実はこれは厚生省があくまでも責任を持って、食中毒部会なるものを解散せずに、熊本大学に引き続いて研究をさせたならば、もっと早くその真因はつかめているはずです。それはあとでまた経過を申し上げます。  これらの動きをずっと見てみますと、いかにも中央において権威者を網羅して、りっぱなこういう組織はつくってみたけれども、いろんな意見を出して、そうして細川さんや熊大の人鹿山さん、こういう教授が研究したところの有機水銀であるということを打ち消してしまうところの実は役目しかしていないわけですね。ここに私は、当時のことを考え関係各省——これは通産省にも責任があるわけです。こういうような行政のあり方を進めてきたところに、水俣病が有機水銀であったというほんとうの原因究明の仕事がおくれてしまった、そうしてこういう状態になったということを、私たちは、皆さん方を含めてこれは反省しなければならぬ。とういう点が千種あっせん委員会で真剣に検討されただろうかと、これが実は非常に気になる。また、残念でならないところであります。  そこで、引き続いて厚生省にお尋ねいたします。  昭和二十八年から発病した水俣病は、三十一年、三十二年で非常に多発した、そういう経過をたどっております。私がいま一々詳しくその経過を申し上げる必要はないかと思います。昭和三十七年に、今度はまたおそるべき胎児性の水俣病が見つかっておる。厚生省は、胎児性水俣病が昭和三十七年、三十八年、こういうようにして見つかったときにどのような対策をおとりになったんですか。
  146. 城戸謙次

    ○城戸説明員 胎性の水俣病の問題でございますが、これが見つかりまして、私どものほうでいろいろ検討いたしまして、できるだけ早くということでございましたが、若干おくれたとは思いますが、三十八年の十一月二十九日に認定をいたしております。
  147. 川村継義

    川村委員 認定をされたことを私は決してとやかく言うのじゃありませんが、それでは私は、ほんとうにあたたかい政治だとは思わないのです。まあそれはそれでいいでしょう。これもほんとうに自分たちは手抜かりはなかったか、県や市に対して、あるいはチッソに対して指導というものが完全であったかどうか、ひとつ大きく反省してもらいたい。  そこで、法務省はおいででしょうか。いまから私がお尋ねすることは、もう二度と法務省に繰り返してお尋ねしないような問題が含まってまいりますから、ひとつお聞き取り願っておきたいと思います。  そういう経過を経て昭和三十九年には新潟で水俣病が発見をされ、第二水俣病といわれた。昭和四十三年の九月二十六日には熊本の水俣病が公害の認定を受けた。そして御承知のような結果を経て補償処理委員会、千種委員会なるものが昨年の四月二十五日に設置されて今日に至り、先月の二十八日に一応あっせんが妥結をしたという結果を来たしたわけであります。  そこで、厚生省部長にお尋ねいたしますが、補償処理委員会について私はくどくどは申し上げません。私が申し上げることに違うとおっしゃるなら答えてください。というのは、きのうの質問においてもその前の質問においても、これは患者側、会社側がこういうものをつくってくれと言うたから処理委員会をつくった、こういうような趣旨のことを内田厚生大臣も言っておられるんですね。そうしてなるたけ早くひとつ始末をしたい、こういうことを言っておられます。ちょうど一昨日、島本委員の質問に対してだと私は記憶いたしますが、内田厚生大臣は会社側に立ち過ぎているじゃないかと言ったら、大臣は、そんなことはないと言ってずいぶん興奮をなさった御答弁があった。ところが、部長お調べになったでしょう。また十分経過は御存じでございましょう。ほんとうのものを糊塗するような発言は、やはり行政責任者としては慎んでもらわなければならぬ。と申し上げますのは、昨年の三月、参議院の社会労働委員会で実はこの問題の質問があっているわけです。いろいろのやりとりがあっております。これは全部読みませんよ。読みませんけれども、結論はどうなっているか。これは質問者阿具根登君「それはわかりましたが、あなたのところでつくったのではないけれども、会社がつくった案をあなたがお渡しになったと、こうなんですね。」政府委員「そうでございます。」いいですか。いわゆるあっせん委員会患者が一任したという確約書、その原文はもともとは会社がつくって、あなたが持ってきておるのだ。この速記録のいきさつに明らかなんです。そこで、私たちが、あのときにいろいろとあなたたちは弁解をしているけれども、どうもこれはあぶないぞということで、参議院でも質問があり、地元でも大きな問題になって、実は結論的には患者が二つに割れた、こういういきさつなんですよ。そこで、やはりこういうものをお話しになるときには、そのいきさつは——厚生省の真意はわかりますよ。何とか早くこれはしてやらなければならぬ。あなたたちが公害を認定したのだ。公害は認定したけれども、何にもやれない。やっちゃおらぬ。そこで実はああいう形になっておる。処理委員会をつくることになった。それは気持ちはわかる。しかし、そこに至る手続というものは正しくおっしゃらねばいかぬと思うのです。部長、簡単でいいですから、御意見があったら……。
  148. 城戸謙次

    ○城戸説明員 お答え申し上げます。  これも私が直接その当時所管しておりませんでしたので、記録や関係者から聞いたところで申し上げますが、こういうような形で第三者機関によるあっせんをしてもらいたいということが出てまいりましたのは去年の一月でございます。その当時互助会の代表が参りまして大臣とそれから公害部長に会ったときの記録でございますが、大臣としましては第三者機関をつくってあっせんをしてもらうということで了承いたしました。ただこの場合、あくまでも事実上のあっせんをする機関である、国自身で裁くことはできないんだ、こういうようなことを申されております。それから公害部長のところでは、特に患者側からは厚生省がこの際乗り出していただけないようだったら、厚生省に対する信頼関係は全く保てなくなってきて最悪の事態に立ち至るのだ、したがって、公正な第三者組織による処理をするということをぜひ頼みたい、こういうような話になっているわけでございます。厚生省としましては、そういうような双方の要請に基づきまして、第三者機関をできるだけ早くということで努力しましたが、結局四月の終わりになってやっと発足の運びとなったわけでございます。  なお、いまの確約書の問題につきましては、確かに御指摘のように、その確約書を出すことにつきまして、趣旨はともかくとしましていろいろないきさつがあったということは、あとあと私ども聞いているわけでございまして、これが一番いいやり方であったということは必ずしも言えない。ただ、きのう千種参考人も申されましたように、全く制度がないのにあっせんを頼むわけでございますから、そういうような第三者にお願いする前提としましても、かような意味での確約書なりお願い書なりというものを厚生大臣あて提出してもらったというのが実情でございます。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
  149. 川村継義

    川村委員 これについて実はいろいろと速記録等あるいは地元の動き等申し上げたいことがありますけれども、これは省きましょう。その当時おられなかったのですから、あなたにいろいろ申し上げてもかえってぐあいが悪い。しかし、そういう問題があったということだけは、私は速記録に基づいて言っているのだから、十分気をつけてお考えおきいただかなければなりません。  そこで、法務省の大竹次官、次官あるいは御存じないかもしれませんから、参事官でもよろしゅうございますが、いまの問題について私がちょっとお尋ねをしておきます。  実は昭和四十三年の終わり方、公害認定が出てから、四月、処理あっせん委員会が、千種委員会ができるまでのことですが、昭和四十三年の十一月、実はいまのいきさつについて熊本県の人権擁護委員会連合会の委嘱で、これについてはどうも問題があるというので委嘱を受けた熊本地方法務局が水俣病患者調査をやっているわけです。そして一々意見を聞いております。ところが、その法務局は、昭和四十三年の十一月末には人権擁護の問題として調査をした結果を報告する、こういつておりましたが、実は何らそれが公表されていない、こういう結末がございます。これはどういうことであったのか御存じでございましょうか。
  150. 大竹太郎

    ○大竹説明員 いま御質問の法務局が人権違反事件として調べた事実があるやに聞いております。詳細は人権擁護局長のほうから御答弁させたほうがよろしいと思いますが、まだここへ参っておりませんから、至急呼び寄せまして答弁をさせたいと思いますので御了承いただきたいと思います。
  151. 川村継義

    川村委員 わかりました。というのは、いま厚生省のほうから淡々とお答えがあったけれども厚生省にあっせんを頼むについては、地方法務局が手を加えねばならぬほどいろいろないきさつがあったということだけ私はこの際申し上げておきます。  私は、当初申し上げましたように過ぎ去ったことをいろいろ、私たちの悪いことばで言いますならば、ほじくって実はものを言おうとは毛頭考えていないのです。ただ先ほど申し上げますように、この後の公害紛争等に対処するためには、一応こういういきさつを明らかにしておくことが大事ではないかと思ってお尋ねをしておりますから、そのつもりで実はお聞き願いたいと思います。  そこで、厚生省に続いて。きのう私は千種参考人にいろいろとお尋ねいたしました。お聞きのとおりであります。私が千種参考人にお尋ねいたしました一つは、昭和三十四年十二月にチッソ側と患者側とが取りかわした見舞い金契約は一体動かしがたいものであるか、あるいはそれは単なる見舞い金契約であって、またやり直していいのではないか、有効か無効かという大きな問題があるではないか、こういう意味のことをひとつ聞いておる。それから会社のいわゆる過失責任、法的な責任は一体なぜ回避をなさったのか、こういう意味で実は聞いたわけであります。  そこで、どうせ部長課長、皆さん方が千種委員会事務局は担当しておられると思いますから、もう一ぺん私お尋ねをいたしますよ。これは政務次官、くどくなるようでありますけれども、お聞きください。  昭和二十八年から病人が出た。三十一年、三十二年が非常に多発をした。さっそく熊本大学で手をつけて研究を始めた。水俣のチッソの病院でも、細川先生が昼夜を分かたず研究をなさった。そうして昭和三十四年の十二月に、いま申し上げますような見舞い金契約というのが締結をされた。第五条で、今後チッソの廃液によるという原因がわかっても一切損害補償等はいたしませんよという確約を取られておる。ところが、この数カ月前、昭和三十四年の七月には、チッソ自身が有機水銀が排水の中にあるという実験をしておるわけです。これが有名なナンバー四〇〇というネコの実験です。チッソはもうこのときに、自分の廃液の中に有機水銀、メチル水銀があるということをおそらく確認しているはずです。そのネコの実験のデータを九州大学に送って、九州大学もそれを確認をしておる。そこで、何カ月かして、言うならば急いでその年の末に見舞い金契約をし、第五条をつけた。実はこう考えて誤りがありません。その後、先ほど経済企画庁にもお答えいただいたように、いろいろの反論やら何が出てまいりまして、実は三十七年当時にはもう熊本大学がそれを突きとめておるわけですね。病院長の細川博士も実は原因を突きとめているわけです。そういう経過を、大ざっぱに申し上げましたけれどもたどって今日にきているわけであります。  そこで厚生省に、もう御存じの経過でありますがお尋ねをするのは、厚生省は今度の千種委員会に対して、事務当局としてそういう点については全然サゼスチョン、助言というものはやらなかった、あのときの見舞い金契約はあくまでも民法上の和解契約である。こういう考え方で千種委員会が押し切ったのを黙認したのか、あるいは会社の責任については、これは予見できるものじゃないと言っているなら、あなたのほうの事務当局としては、千種委員会に対しては同様にそのとおりであるということで、全然サゼスチョンはやらなかったのか。  それからきのうも部長にちょっとお尋ねしたように、昭和三十四年七月のナンバー四〇〇のネコ実験のデータ、三十五年八月の「精溜塔廃液について」というチッソみずからの極秘レポートというもの、そういうものは全然委員会には提示しなかったのか、いや提示をする前に、あなたはそれを一体知っておったのか知らぬのか、全然見たことがないのか、この三点をまずあわせてお答にいただきたい。
  152. 城戸謙次

    ○城戸説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘になりました点につきましては、全部結論的なことは委員会を代表いたしまして、千種委員からお答えをきのう申し上げておるわけでございまして、私が特に補足するところはないわけでございます。  委員会に対しまして、事務当局としてどうやったかということでございますが、これは当然のことでございまして、私どもとしましては、公害問題に対する認識、具体的なこの事件に対する認識ができるだけ正しくなりますように最善の努力をいたしたわけでございます。  三番目におっしゃいました具体的なネコの実験についてどうだということでございますが、これはきのうもお話ししましたように、会社側からも事情を聴取しますし、それから細川院長あるいは入鹿山教授、こういうようなところからも委員の方々にいろいろ事情を聴取していただくということをやったわけでございますが、具体的なレポートというものは、私どもそういう書いたものとしてはもらっておりません。  それから三十五年八月の「精溜塔廃液について」という文章でございますが、これは私自身見たことがございませんし、委員会にはもちろん提出いたしておりません。
  153. 川村継義

    川村委員 実に私は大きなミスがあったのじゃないか、こう考えざるを得ない。もっとことばを言わせてもらうならば、厚生省は被害者救済というこの大事な使命、あるいはまた千種処理委員会に対しても、行政の担当者として、事務当局として、大きなあやまちをおかしておる、両方に対して大きなあやまちをおかしたのではないか、こう実は言わざるを得ないわけですね。あなたがネコの実験のナンバー四〇〇、あるいは「精溜塔廃液について」ということを知らないということは、私がきのうどういう文献を千種委員会に見せたかと言ったときにお答えになっているのですが、こういうものが全然千種委員会に提出されていない、あるいは話はある程度はしてある。こう言っても、これは千種委員会が判断を間違うかもしれない。判断を間違わなかったというならば、何かの力によって、これは千種委員会が動かされておった、こう言わざるを得ない結果になる。これは重要なポイントだと私は思う。  そこで、これはまたあとで何かお尋ねすると思いますが、通産省にお尋ねいたします。通産省の柴崎さんおいででございますか。——いま私が聞いたレポート、これは通産省にも会社側は見せておりませんか、提出しておりませんか。私は通産省としては、その当時いろいろな問題になったのだから、当然そのレポートを取る、資料を取り寄せるということがあってしかるべきではないか、実はこう考えているのですが、お答えいただきたい。
  154. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 当事の事情を調べてみますと、会社からそういったデータを通産省に提出したこともなく、通産省のほうから具体的に要求したこともなかったようでございますが、水俣問題の重要性を考えまして、現在の時点から反省してみますと、その問いま少し積極的な態度がとられてしかるべきであったかというように私自身は反省しております。
  155. 川村継義

    川村委員 法務省政務次官、お聞きのとおりでございまして、実は私がいま指摘しました三十四年当時、三十五年の当初、三十五年の半ば、すでにチッソが排液するその排水の中に有機水銀があるということは、会社みずからも知っているわけですね。そのレポートを皆さん方御存じないならば、あとでお目にかけてもいい。  そこで、私がここで申し上げたいことは、先ほど経済企画庁からもお話があり、厚生省からもお話があった。そして特に経済企画庁にお尋ねしたときのあの水俣病総合調査研究連絡協議会、こういうようなものが進んでいくときにも、もうすでにそういうものは実は会社側としては明らかに握っておるわけですね。そういうものがあるにかかわらず——もちろん当時は会社が一生懸命直しているから知っていたじゃないか、これは無理です。しかし、そういうようなものがあったにかかわらず、さあ一方ではそういう協議会をつくる、一方では田宮委員会というものをつくる。これは日本工業会が三千万出しているでしょう。そして田宮委員会というものができて、いや有機水銀じゃないのだ、爆薬だ、何とかいう薬だ、こういうようなことで実は大学の研究、熊大の研究、学者の研究、細川病院長の研究、こういうものを実は全部めちゃめちゃにしてしまった。そういうのがいま明らかに指摘できるわけですね。そこで私は、この行政のあり方を見るときに、よほど注意をしなければ、こういうあやまちを再びおかすことになるのではないか、こう思わざるを得ないわけです。これらのいきさつについて、あとで法務省に少しばかりお尋ねをいたします。実はもっともっと経過を詳細に私が述べるべきかもしれませんが、これは皆さん方御存じですから、詳しい経過を申し上げることは遠慮いたします。  そこで、総理府にお尋ねする前に、もう一度厚生省にお尋ねをしておきます。  千種委員会患者の平均所得は、水俣の場合は都会と比べて大きく差があるからというような考え方に立って、この前の最高四百万という補償額をきめておる。言うならば生命の値段をきめたわけですね。公害によって生命を奪われた患者に対し、なぜいなかである、都会であると、差をつけねばならなかったのか、これが一つ。  いま一つ、最終段階のあっせん作業をするときに、五月の二十五日、二十六日、患者代表の諸君をなぜ厚生省から一歩も外に出さないで、地元との連絡も遮断してあのあっせんを進めたのか、これが第二点。  第三点は、最後の詰めのときに患者、家族でもない市長と、患者、家族でもない漁業組合長、もちろん患者の顧問という資格ではあったそうです。しかも、漁業組合長はチッソの下請業者である、こういう二人の代表と最後の詰めをやったのか。私はこれらを見るときに、事務当局の補佐のやり方に問題があると思う。どの委員かが厚生省の千種あっせん委員会において患者側というもの、被害者側というものを考えていなかったじゃないかという批判が出るのも当然ではないかという気がまたしているわけです。  そこで、私がいま申し上げましたことをひとつお答えいただきたい。
  156. 城戸謙次

    ○城戸説明員 お答えいたします。  ただいまの第一点は、あっせんの中身でございますので、私からお答えするのはあるいは適当ではないかとも思いますが、私の聞いております範囲では、裁判等で逸失利益につきましての賠償を命じます場合、その個々人につきまして、むしろどういうような所得が現にあり、確実にどういうふうな所得が将来得られるか、せいぜいそこまでの問題でございまして、一般的に日本の国民の所得がどうだとか、あるいは都会のほうはもっと高いじゃないかとか、こういう議論は何ら入らないわけでございます。今回につきましては全部を一括して処理するという関係上、個々人の所得ということにはまいりませんが、その場合委員会としては、水俣地方におきます漁民の所得を参考にしながら考えていった、こういうふうになっていると聞いておるわけでございます。  それから第二番目でございますが、省内に泊まり込みにしたじゃないかということでございますが、この点につきましては、私どもとしましても非常に意を用いまして、できるだけ宿舎に帰ってもらうということで、宿舎のほうもずっと期間中準備していたわけでございます。ただ、患者側から、いろいろな外部の情勢等からどうしても中に泊めてもらいたいという強い要望がございましたので、さようにいたしただけでございまして、地元との連絡等につきましては、電話でやるということは一切かまわないという考え方をとっておったわけでございます。  それから第三点でございますが、市長、漁協長という関係のない人をどうして交渉の相手にしたかという点でございますが、この点はいま御指摘のように、漁協長は一応顧問という資格でございまして、市長は地元の代表ということで、立ち会い人というかっこうで来てもらったわけでございますが、先生御承知のように、経過の途中におきまして、いろいろ生存者、死亡者あるいはまた胎児性というそれぞれの立場を代表している人が代理者になってきているわけでございまして、なかなかその利害関係も一致しないということで、いわばそういう意味におきます第三者でありますお二人にぜひまかせたいということで、とりあえず委員会としては市長、それから漁協長を通じて話を進め、市長、漁協長はまた持ち帰りまして代表者の皆さんにはかってやっていったというような形になっているように了解いたしております。
  157. 川村継義

    川村委員 お答えでありますが、いまのような問題が、これはやはり皆さん方を補佐なさる事務当局の一つの大きな問題として考えていただかなければならぬいろんな疑惑を生んでいるわけです。私は行政という、特にこういう仕事を進めてもらうときには、ほんとうに厚生省などは眼を大きく見開いて対処してもらわなければならぬのではないか。  そこで続いて、総理府副長官おいででございますからお聞きいたします。  この千種委員会に総理府のほうからは事務補佐という形でだれかを送っていただいたのでしょうか。
  158. 湊徹郎

    ○湊説明員 総理府のほうはタッチいたしておりません。
  159. 川村継義

    川村委員 再度申し上げます。私が何かこう過ぎ去ったことをしつこく聞いておるように誤解を受けるかもしれませんが、そういう気持ちでなくて、今後のいわゆる行政の問題として私はお聞きをしておるわけでございます。  そこで副長官、実は今度千種委員会が御承知のようなあっせん案を出された。私はいまもちょっとお尋ねしましたように、あっせんの状況を見ておったり、あるいはあっせんの手続等を考えたり、あるいは千種委員長内田厚生大臣の言い分を聞いたり、特にあっせん委員会が設立されるときには、厚生省公害紛争処理法という法律ができるから、そのときのテストケースにするのだという考え方でこの処理委員会に取り組んだことも事実なんです。こういうようないきさつを考えてきてみると、いまこのあっせん案が出た、これを考えるときに、ようやく成立をいたしました公害紛争処理法、この処理法のこれからの動かし方は一体どうなるのだろう、こう実は私心配いたしております。私がもうここでくどくど申し上げるまでもなく、公害紛争処理法はあっせん、調停、仲裁、こういうような仕事がある。副長官、今度の千種委員会のあれを見るときに、法案と比べるというのはちょっと問題があるかもしれませんが、あっせん、調停、仲裁、こうあるのだから、しかも千種委員会はもうこれできまったのだ、あと文句は言えない、こういうことを千種さん言っておるわけです。これは一体法案でいうあっせん、調停、仲裁、これと並べて考えたら、一体何に該当するのだ、私は、これは全く法案でいう仲裁ではないか、こう考えられてならないのです。これがお聞きしたい一点です。  それからいま一つ続けてお聞きしますけれども、今度公害紛争処理法の中にあるあっせん、調停というものが動いている、ところがどうしても加害者側がそんな金額ではのめないといって立ちふさがったときには、これは裁判にも持っていけるでしょう。裁判に持っていったら、厚生省や千種さんが盛んに弁明しておりましたように、これはまた長引くことになる。仲裁ということになると、これはもう動かせない、法案による仲裁であったら。そうすると、力の強い企業側が、加害者のほうがどうしてもとがんばったら、被害者というものは低くのまざるを得ない、こういう結果を招来するのではないか。そうしたら公害紛争処理法というものが公害紛争についてこれから動いていく、動かしていく——長官、一体ほんとうに仲裁する、紛争を調停をして、処理をして、被害者を救済するという自信があの法案によって生まれてくるでしょうか、どうでしょうか。ひとつ副長官のお考えをぜひ賜わりたいと思う。
  160. 湊徹郎

    ○湊説明員 ただいま二つのお尋ねがございましたが、第一点のこの千種委員会が、今回成立を見た紛争処理法のどういうものに当たるだろうかというお話でございますが、これはもちろん仲裁でも調停でもないわけでありますし、そのためにこそ今度の紛争処理法の中で正式な調停機関ないし仲裁機関をつくったわけでございますから、しいていえば和解の仲介、つまりあっせん、こういうふうな形だろうと私どもは理解をいたしております。  それから第二点でありますが、先ほどからいろいろ問題がありましたように、ともすれば行政的に処理をいたしますと、いろいろな誤解のもとにもなるし、逆に公正な判断等がなされないおそれもある、こういうふうなことから、全く第三者機関として独立性と中立性を持った準司法的な機関をつくることが公平な判断に一番よかろう、こういうことで今度の紛争処理機関を設けたわけでございまして、そのために先ほどからいろいろございましたが、事実関係であるとか、あるいは因果関係であるとか、あるいは故為、過失の認定であるとか、こういう点について十分資料の提出ないし出頭命令、あるいは場合によっては工場事業場等に対する立ち入り権、これまでその委員会に認めて、十分な根拠の上に立って公正な判断が期待できるようにと、こういう趣旨で今度の機関が設けられておるわけでございます。  そこで、いろいろ審議の過程でも問題がございましたが、要は裁判等によりますと時間が非常にかかる、お金もかかるということから、簡易、迅速に、手っ取り早く、ひとつ被害者のお立場に立って期待にこたえるようにというのが今回の法律の趣旨でございまして、公取その他いろいろ各種委員会の運営については問題はありますけれども、いまのような形で、任意の千種委員会がやったというものとは性格的に非常に違って、すっきりした形に相当前進するものと考えております。
  161. 川村継義

    川村委員 千種委員会のあっせんは、公害紛争処理法に基づいているのではない。そこで実は、これを結びつけてお尋ねするということがあるいはちょっと問題があるのですね。しかし、いまお話のように、仲介、あっせんということであれば、不満の場合には裁判手続もできるわけです、現在の法律、紛争処理法でいえば。ところが、千種委員会の結論というものは実に非難ごうごうたる、生命の補償であっても、これはおそらく民法の和解契約によって和解ということによって動かしがたい、現行法律でいうならばそういう形になってしまうのではないか。そこで、私は一つ残念に思っているわけですけれども、これから公害紛争処理法によって公害紛争は動いていくでしょう。しかし私は、よほど注意しなければ力の強い加害者というものが立ちふさがったときにどうなるか、これはなかなかたいへんなものになるし、   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕 これは県においても、あるいは皆さん方のほうにおいても、それらの委員の人、審議会の皆さん方をお頼みなさるときにもずいぶん苦労が多いのではないかというようなことなど考えたりしております。  そこで実は公害紛争処理法案ができるときに、われわれ社会党のほうから、与党の皆さん方ともよく相談をして、どうだ、この紛争処理の機関は第三条機関にしておこうじゃないか、こういうことをずいぶんと御相談したわけです。ところが、残念ながらそういう形になっていない。どうしても低く低く命の値段を値切られたりなどしたときには、これは第三条機関ではないのだから、訴訟の道も開いておこうではないか、こういうことも実はいろいろと御相談をしたはずです。あるいは委員会調査権とか立ち入り権をもっと大きく与えて、加害者側のそういうものをどんどん調べていく、こういうことも、大きな権限を持たせようではないか、こう言ったけれども、実は抜けている。こういうことを考えますと、副長官、私が心配するのもまた決して全く的がはずれていると思いません。  そこで、これらのいきさつにかんがみて総理府としては現在の公害紛争処理法について、再度私がいま申し上げましたような点について御検討くださる意思がおありかどうか、もう一つお聞かせおき願いたい。
  162. 湊徹郎

    ○湊説明員 お答えいたします。  過般の委員会で、私も列席していろいろ問題の存するところは十分承知しているつもりでありますし、また委員会の附帯決議等においても、機関の性格あるいはその裁定制度の採用等についていろいろ御議論がございまして、私どもも内部的に検討していきたいと思って、現にいろいろと検討をいたしているところでございます。  三条機関、八条機関の問題については、これは逆に私のほうから行管のほうにお願いをしたのでありますが、平たい言い方をしますと、三条機関と八条機関の間に、これが三条であるというしかとしたはっきりした区分の基準というのは何かなくなっているような現状であります。一例をとりますと、検察庁、警察庁、あれだけの強大な権限と人員を擁してやっているあれは八条機関でございます。そこで要はその機関の実体というものを、先ほど申しましたように、独立性、中立性を保持しながら、そうして立ち入り権等を中心にする権限を行使して存分にひとつやれるようにというのが私どもの趣旨でございますので、この発足もなるべく早目に十月ごろ、法律によりますと六カ月以内ということで、十二月までなんでありますが、なるべく早く設置の準備を進めて、そうして最近のいろいろ起きている公害等の実態に対処していきたいというふうに考えております。
  163. 川村継義

    川村委員 全国的なあらゆるおそろしいほどの公害が出ておりまして、いろいろ紛争も重なるのではないか、公害紛争処理法を動かしていただくについて、十分ひとつ御検討いただくように重ねて私のほうからも要望申し上げておきたいと思います。  次に、自治省にお尋ねいたします。  今度の千種あっせん委員会を動かすについて、私の聞いているところでは、これは厚生省のほうもひとつ確認願いたいのですが、四百八十万円用意をしたということであります。これは厚生省のほうからも御報告いただきたいと思いますが、その内訳を私が聞いたところによると、三百万円を特別交付税でめんどうを見た、百八十万円を市から出した、こういうことだそうですが、間違いございませんでしょうか。
  164. 森岡敞

    ○森岡説明員 お答えいたします。  水俣市に対します特別交付税は本年度総額で四千三百十九万四千円の交付をいたしております。その中で水俣病関係のいわば公害対策関係経費といたしましては、いま御指摘の四百八十万円の補償関係の処理対策費のほかに、病院への繰り出し金その他の諸般の経費もございまして、それらを合わせまして千二百万円算入することにいたしました。したがいまして、補償処理対策費の四百八十万円のうち三百万円を見た、こういうことではなくて、処理対策費及びいま申しました病院への繰り出し金その他の関係経費を総合いたしまして千二百万円の措置をした、こういうことに私ども考えております。
  165. 川村継義

    川村委員 重ねて、いまの千二百万円の中には病院関係の費用ももちろんある。しかし千種委員会のあっせんのいろいろのために市が四百八十万円計上しているようでありますが、そういう費用も見て千二百万円の中に計上してある、そんなものは自治省は知らぬ、こういうことですか。
  166. 森岡敞

    ○森岡説明員 ただいま申し上げましたように、四百八十万円の補償関係の処理対策費の支出があったことは十分承知いたしております。そういうものも含め、またいま申しましたように病院への繰り出しなども含めまして千二百万円の算入をいたしました。こういうことでございます。
  167. 川村継義

    川村委員 厚生省にちょっと聞きます。  実は千種委員会の発足するときから、あなたのほうは、その費用はめんどう見てやるとたびたび言明をしておられますね。だから市が四百八十万だけの、この千種委員会にあっせんを依頼した諸君の諸費用を実は計上して、市はちゃんとそのことを説明しておる。それが私は、厚生省の何かの特別の財源でそういうものを——いわばあなたのほうでおつくりになったあっせん千種委員会だから、お出しになるだろうと思っておったら、いまお聞きのとおり何のことはない、自治省が特別交付税の中で一応考えて出しておる。まあ地方財政のめんどうを見てくれる自治省の措置については私は感謝をしなければならぬと思う。ただ厚生省、私がぜひ解明してもらいたいと思うことは、患者側は、あなたのほうの委員会をつくるについて白紙一任をせよということに賛成した者と、反対した者が、これは分かれたのでしょう。賛成した者のいろいろの費用についてはめんどうを見てやる。いや、おれたちはとてもとても白紙委任はできぬから——白紙委任をしたならばもうたいへんな結果が出る、そこでおれたちは白紙委任はできない、できたら裁判でひとつ黒白を明らかにしようとして残った、こういう諸君の費用は全然見られない。一任派のほうはめんどうを見ておる。しかも、あなたのほうでめんどうを見たかと思ったら、特別交付税で処置してもらっている。一つは差別をしておるということですね。こういう千種委員会のようなものを動かしていくのに、その財源を特別交付税に頼んだという、これは一体どういうことなんです。
  168. 城戸謙次

    ○城戸説明員 お答え申し上げます。  水俣病の補償処理委員会の経費につきましては、これが法律によりません事実上のあっせん機関として発足しました関係で、しかも、厚生大臣が人選等取り計らったということもございましたので、厚生省と水俣市が協力しまして委員会の運営費を出す、こういうことにいたしたわけでございます。この場合費用と申しますのは、いわば訴訟の場合において国が設置しています裁判所の運営費、こういうものに相当するわけでございまして、いわばたとえば一任派の代表が上京してくるというような場合の出頭の旅費だとか手当だとか、こういうものは一切見ていないわけでございます。ただ、調停をしていただく委員委員手当あるいは委員の旅費あるいは会場借り上げ費あるいは通信運搬費、こういうようなものを双方で分担し合ったわけでございまして、そういう意味におきまして私どもとしましては、訴訟派と一任派とを差別しているというぐあいには考えていないわけでございます。  それから、特別交付税で見るということにつきましては、いま申し上げましたように、そういう特殊の事例で、私どもとしましては、特別の予算措置もございませんので、一応市で出していただきましたものを、できるだけ多く特別交付税で国としてめんどうを見るように自治省にお願いしてまいったわけでございます。
  169. 川村継義

    川村委員 おかいじゃありませんか。法律によらない、お願いしますよ、じゃそうしましょうかと言ってつくった委員会に対して金を出しておいて、財源は特別交付税で見させておる。そして裁判で裁判所に出すような裁判費用と同じだなんて、ちょっと問題じゃないですか。  ところが一任派の諸君がいろいろ行動を、上京する等の費用、めんどうを見ていないと言うのだけれども、実は市役所のほうでめんどうを見てあるでしょう。あなたのほうで用意した四百八十万円の中に、ちゃんと特別交付税でめんどうを見たものの中からやっているでしょう。差別をしているわけでしょう。この四百八十万というのは、あなたのほうがみずから千種委員会に支払ったのですか。
  170. 城戸謙次

    ○城戸説明員 お答え申し上げます。  ただいまの経費でございますが、これは市のほうから委任を受けて厚生省として支払ったわけでございまして、具体的にいま私が申し上げましたような経費以外には全然支出されておりません。いわば裁判所におきまして裁判官の報酬だとか、こういうものは当然国で持っているわけでございまして、そういう狭い意味での運営費ということでございまして、それ以外には一切使ってない。いま御指摘のような一任派の代表上京の場合のものをその中から市が出しているじゃないかということでございますが、もちろんさような事実は全然ございません。
  171. 川村継義

    川村委員 どこから一体上京費用なんか出ているか、お調べになっていないでしょうが。ちょっと気の毒なんだけれどもね。市から委任を受けて出した。じゃ、市はこういう一任派だけに出した。一任派に出すならば当然訴訟派にもそういう費用をめんどうを見てやるという筋道があっても、これは同じ被害を受けた被害者ですから、こういう筋道も立つ。そうでしょう。自治省だって、そういうものについては交付税で見てやる。見てやるけれども、これは先ほどのいろいろのお話のように特別に経費がかさんだので、まあ自治省はおそらくそんなにたくさんの余分の金があったらめんどうを見てやろうという、特別交付税の趣旨を生かしたのかもしれません。しかし、厚生省のほうのこういうあれは、あなたが、厚生省にある予算の中で何かの金で千種委員会の諸経費をまかなった、これならわかりますよ。市から委任を受けて出しましたと……。私が言うような問題になってくるでしょう。こういうのも非常にこれは大きな実は問題なんです。少し軽率じゃないかと私は思うのです。だから私は、あなたは差別をしていないとおっしゃるけれども、差別をした結果になってしまうのですね。あなたのほうは、そうしたら市に訴訟派のほうにも均等な費用をめんどうを見てやりなさいと指導すれば、ほんとうに厚生省らしい常識なんです、これは。私は一つ指摘しておきますが、自治省としてもそういう点は十分ひとつ注意をして——私は決してあなたのほうが四千何百万円出してやったのが、高かったと言っているのじゃないですよ。当然こういう施設は市がやったのだから、めんどうを見てくださったことは実にありがたい。ありがたいけれども、内容にこういうようなものがあるということだけは、ひとつお耳に入れておいていただかなければならぬ。  そこで、あまりたくさん時間をいただくわけにはまいりませんから、私、いままで申し上げたことをもう一ぺん申し上げます。過ぎ去ったことを繰り返してお尋ねをしたようだけれども、たびたび申し上げるように、私は何も寝た子を起こすとか、死児のよわいを数えるとか、そういう気持ちで申し上げているのじゃない。この十数年という、特に水俣病有機水銀の研究過程を見るときに、実に大きなあやまちを犯しているのではないか、そこに行政の責任が大であるということを言わなければならぬ。そこで皆さん方は先輩が犯したあやまちを二度と犯さぬことをひとつしっかり腹を据えて、きちんとしたところの公害対策、そういう行政を進めてもらいたい。このいろいろな公害に対してこういう紛争問題が起こるだろう。あやまちのないようにしてもらいたい。いや、言うならば、通産省を先頭にして、企業側に絶対そういうものを起こさないように指導をやらせるということが大事ではないか。よくいわれるように、今日のいろいろな公害は、これはあまり高度成長だとか企業優先、そういうような経済政策の結果が今日を招来していると識者は指摘をしておる。私もそのとおりだと思う。それに人命を守る厚生省は、それぞれの関係役所の皆さん方に負けないようにやはり取り組んでもらわねばならぬ、こういうことであります。この点は特に私、強調をして要望をしておきたいと思う。  それでは少し急ぎますけれども、最後に法務省にお尋ねをいたします。人権擁護局の井手課長、お見えになっているそうですが、私先ほどちょっとお尋ねしたのですよ。それは千種あっせん委員会ができるときに非常に患者側の間でもめた。結局一任派というのが生まれた。四十三年の十一月ごろに、地方法務局がそれらの実情を見て、熊本の人権擁護委員連合会のほうから頼まれて、人権擁護の立場から、実はそれぞれ調査をした。ところがその結果を四十三年の十一月の末ごろにはひとつ連合会に報告しましょう、こういう約束があったと聞いているのですが、全然その後何もわれわれ承知しておりませんから、地方法務局が調査をした結果、別に心配することはなかったのか、あるいは全然報告がなかったのか。その点だけ明らかにしていただきたい。
  172. 井手昭正

    ○井手説明員 お答えいたします。  水俣病に関しましては、先生が御指摘のとおり、昭和四十三年に、熊本県人権擁護委員連合会、熊本地方法務局が調査をいたしまして、その結果、昭和四十三年十一月五日付で熊本県人権擁護委員連合会名で決議がなされております。  その決議の要点は、水俣病にかんがみ、公害防止と被害者救済の立法、企業の万全の策と積極的な被害者の救済方要望についてというものでございますが、決議のうち二点を要望しております。第一点は、国は企業の監視、監督の強化、その他公害防止のために適切な方途を講ずるとともに、被害者の急速な救済のために、立法その他万全の措置を樹立すべきである、第二点といたしましては、企業は終始人命尊重の基盤に立脚し、万全の策を講じて被害を防止し、いやしくも被害が発生したときは、いたずらに責任を回避することなく、積極的に被害の救済に全力を尽すべきである、こういう二点の決議をいたしまして、その決議文を厚生大臣、通産大臣経済企画庁長官、熊本県知事、水俣市長、チッソ株式会社社長、水俣病患者家庭互助会会長等に送付しております。
  173. 川村継義

    川村委員 いまお答えをいただきましたように、厚生省のほうもすらすらと一任したようなお立場でものを考えて、千種委員会にも対処されたようだけれども、いろいろとそういう問題が実は内在をしておったということだけを申し上げておかねばなりません。  最後に、法務省に二、三大急ぎでお尋ねをいたします。実は私は民法や刑法は全くしろうとでございましてわかりませんから、私が勉強をするというつもりでひとつお答えをいただきたいと思うのです。  先ほどちょっとお願いいたしましたように、厚生省に私はお尋ねをした経過の中に、水俣病に関して十数年を経過した、そして昭和四十三年九月に公害認定がなされた、そして千種あっせん委員会というものができて結論を一応出した。先ほど申し上げましたような、経過事実にかんがみるときに、昭和三十四年七月、いわゆるナンバー四〇〇というような、排水の中に有機水銀があるという実験をやっておりながら隠蔽をしておった。三十五年にも同様な、役所の人たちが、みんなも知らぬような極秘レポートが実はある。そこでこの三十四年の十二月の見舞い金契約というものをどう見るのか。私は、きょうは、それはこうだというような、それはもう民法のものじゃ、こういうような結論を必ずしもいただこうとは思いません。ただ、学者によってはいろいろとこういう民法の解釈、法理論というものが展開をされておる。  そこで法務省としてはどういうようにお考えになっておるのか。初め私の趣旨を大急ぎで申し上げます。公害訴訟とこの因果関係というのにも幾つかの論が学者側にもあるようであります。昨日私が千種さんにお尋ねしたときに、因果関係だけで過失責任を問うことはできない、賠償の責めを与えることはできない、こう言っておる。しかし、先ほど申し上げましたように、事実に照らして見ると、民法七百九条にいうところの不法行為の要件とはいえないかどうか。もしそうであれば、昭和三十四年十二月の契約というものは無効宣言できるのではないか。これは私なりに、しろうとですけれども考えておるわけです。隠蔽した事実がある。そうして大急ぎで、見舞い金契約の中には第五条で、この後原因が会社のものとわかっておっても一切補償要求はしませんというような取りつけをわざわざしておる。ほんとうに会社が誠実があれば、会社の廃液がその原因であるということがわかったならば、あらためて損害賠償の責に任じます、こう書くべきところなんですね。私はそう思う。これが実はお尋ねの一つであります。  大急ぎで申し上げます。公害の救済については、これまた、いろいろの考え方があると思います。公害によるところの損失を補てんしなければならぬ、公害を生じるおそれのあるところの事業を差しとめることが大事である、こういうむずかしいいろいろな理論も民法論上展開をされておるようであります。私、その点不敏にして勉強しておりませんから、その辺の論点について少しお聞きをしておくわけでありますが、この現行の民法によるところの不法行為の制度は、もちろんたてまえとして過失責任を原則としておるということは、私もたびたび聞いております。しかし、公害のような事業損害の賠償には、どうもこれだけでは不適当ではないか。やはりそこには無過失責任というものが必要ではないか。そういう法制定というものが必要ではないか。聞くところによりますと、そういうのはずいぶんと長い間提唱をされておるようであります。そこでそういう点についてお尋ねをしているわけです。私の少し不勉強なことを先に申し上げてまことに恐縮なんですが、そういう不法行為上の損害賠償というのは、原則としていま生じた損害についてしか認められないというような判例や通達があるということを私も知っております。しかし、この原則も絶対なものなのかどうか。例外を許されないと解すべきかどうか。私がこんなことを申し上げておりますのは、あの家屋とか土地とか不法占拠をした場合の明け渡し請求訴訟で、その明け渡すまで損害賠償を認めるという判例もあるやに私聞いております。あるいは非常に危険な工事などやっておって、その工事が完了するまでにはとりあえず慰謝料を支払っておく、こういう判例もあるということを私聞いております。そこで、先ほど水俣の見舞い金契約に基づいて、それを一つ頭に入れながら、この公害の賠償というものについての民法上の考え方は一体どうなるであろうか。たいへん早口に申し上げましたけれども、子、の点をひとつまずお聞かせいただきたい。
  174. 大竹太郎

    ○大竹説明員 まず最初の、見舞い金の契約の問題でございますが、会社側が昭和三十四年の七月の実験によりまして廃液中に塩化メチル水銀が含まれているということを知っており、かつ、それが水俣病の原因であるということが会社でわかっていながら、この事実を隠して、被害者が長く苦しんでおったという事情、また、これらについての科学的な知識、また法律的な知識のないのに乗じまして、この見舞い金契約を結び、損害賠償請求権を放棄させたという場合を考えてみますと、この見舞い金契約は、いわゆる民法九十条という規定、公の秩序あるいは善良の風俗に違反した法律行為は無効であるという法律の規定があるわけでございまして、この規定によって無効ということにすることができる。したがいまして、会社の廃液が水俣病の原因であるということがはっきりした場合に、この見舞い金契約をいまの条文によりまして破棄をいたしまして、あらためて法律上民法上の不法行為による損害賠償請求ができるのではないか。もちろんこれはこまかい点は調べてみなければわかりませんが、そういうこともあり得るというふうに考えておるわけでございますが、御承知のようにこれは現在裁判にもなっておるわけでございますので、これをここで断定するわけにはもちろんまいらないことは御了承賜わりたいと思います。  それから無過失責任の問題でございますが、御承知のように公害にもいろいろございますので、公害一般について無過失責任で法律でぴしゃっときめるというわけにはなかなか私はまいらないだろうと思うわけでありまして、それぞれの企業によりまして非常に危険性の高いものというようなものを特に取り出してその方向で検討していくということは私は必要だろうと思いますが、無過失責任を法律で認める法制というものは、外国等を調べてみましてもそうたくさんはないようでありまして、むしろ、日本が現在とっております自動車の自賠法によりますように、挙証の責任を転換いたしまして、因果関係があった場合には故意または過失がないことをいわゆる企業者あるいはその行為者のほうが立証しない場合には賠償の責任があるということにしておる例があるわけでありまして、これをやりますれば、現在の自賠法なんかはほとんど無過失責任に近い実質的な効果をあげているということも御承知のとおりでございまして、これは私個人の考えもあるわけでありますが、私は、むしろ、無過失責任というものを表面に出すよりも、このいわゆる挙証の責任を転換することによって、やはり自賠法のように救済していくのが最もやりやすいやり方じゃないかというふうに考えております。
  175. 川村継義

    川村委員 ありがとうございました。  時間をちょうだいし過ぎたようでありまして委員長からも御注意がありますから、最後にちょっと、私いま一つ。  いまの問題に付随して、民法七百十七条の規定というものは私は当然生き返して考えなければならぬ問題だと思っております。これは戒能先生の意見に実は私賛成であるわけです。そういう意味で一言申し上げて、ぜひひとつこの後お教えいただきたい。きょうはもう時間がありませんから、たいへん失礼だが、これも御見解を聞きたいと思っておりましたが、それが一つ。またいずれ時間をいただきましてこの七百十七条の適用問題についてぜひひとつお聞かせいただきたい。  それから次に、私は実は刑法の刑事責任の問題についてお尋ねをするつもりでございましたが、これもひとつ後日の質疑、勉強に譲らせていただきたいと思うのです。刑法上の問題は、これはたいへん論議の多いところでありましてたいへんな問題でありますが、私は先ほど二、三水俣の問題について指摘してまいりましたように、私はちゃんとこれはやはり刑事問題としても特別の構成要件が存在するものだ、そこで違法性がある、責任性もある、実はこう考えて、少し大上段に振りかぶったような考え方でありますけれども考えておるわけでありまして、当然そこには、先ほど申し上げましたような過失、故意の責任というものが問われねばならない。しかし、これはなかなか論議の分かれるところでございまして、今日までそういう事例があまりないようでありますが、そういう意味でもひとつ勉強をさせてもらいたいと思っております。一々お尋ねをするのは時間が来てしまいましたので、いまの民法七百十七条の適用問題と刑法上の問題をひとついずれまたお尋ねをいたしたいと思います。  それから、いま大竹政務次官がおっしゃいましたように、この三月の二十日に最高裁判所が、現行の民事訴訟法の厳格な解釈では、被害者である原告側を救済することがむずかしい。したがって、障害は公害によるものだとの一応の推論が成立したと裁判官が判断すれば、被告側が無過失の立証をしなくてはならないとの見解を明らかにした。実は私非常に力強く思っておるわけです。こういうような方向で法務大臣とされましても、ひとつ裁判所、検察側が取り組んでいくようにぜひ進めていただく、そして公害に対してひとつ取り組んでいただく。  それからこれはけさの新聞で、公害罪を制定せよ、法務省はきのう、おとといと二日間検察長官会議を開かれまして、そして公害罪をどうしてもつくらなければいかぬ、こういうようなことを非常に力強く今日の公害に対処するためにおっしゃっておる、その意見が新聞に出ておるわけです。これもぜひ何とかひとつやらなければいかぬ。いまの法律では抜けるものばかりである。だれかを助けるだけである。人命を捨てたところの被害者を助けるということは不可能である、こういうことになるだろうと思います。  そこで政務次官、どうかひとつ最後に、いまの公害罪の問題、それから加害者に対する挙証責任の問題、もう一ぺんお答えいただきまして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  176. 大竹太郎

    ○大竹説明員 七百十七条その他の問題は私のほうでもひとつ十分研究させていただいて、次にお答えをさせていただきたいと思いますが、公害罪の問題は先ほどもお答えを申し上げましたように、きのうの検察長官会議におきましても、ぜひ早期に取り上げるということでございまして、大臣のほうからもそれぞれ関係者に次の国会に出すように早急に研究、準備を下命してございますので、何とかその方向でやりたいと思っておりますし、また民事上の問題は、これは法務省というよりも裁判所の法律の解釈の問題でもあろうかと思うわけでございますが、裁判所その他におきましても、最近の公害の状況等に照らして、新聞にも出ております方向で考えているようでございますので、ひとつ裁判所におまかせをいただきたいというふうに考えるわけでございます。
  177. 川村継義

    川村委員 どうもたいへん時間をいただき過ぎまして、ありがとうございました。厚生省通産省経済企画庁、いろいろ関係の現在の行政を担当しておられます責任者の皆さん、先輩がおかしたあやまちを絶対繰り返さないように、ひとつき然たる態度で行政を進めていただくように二度も三度も申し上げて、私のきょうの質問を終わりたいと思います。強く要望いたします。
  178. 加藤清二

    加藤委員長 次は島本虎三君。
  179. 島本虎三

    島本委員 せっかく大臣も出てみえましたが、実はこれはきのう、おととい、三日間続いた公害対策特別委員会なんであります。そしておもに有機水銀の問題や、カドミウム中毒による被害者のいままでの救済の状態や、これからの被害をいかにしてなくするか、この問題に集中されたのであります。しかし、残念ながら大臣は、この三日間の間できょう終わるという最後の日にようやく見えたのであります。したがいまして大臣に対する質問は残っておるのであります。私は初日から、二日目の参考人を控えて本日まで、大臣出席を毎回、毎日のように促してまいりましたが、ついにようやくいまにしていわば御尊顔を拝することができたのであります。私にしてみたらまことに残念なんであります。物価のほうも大事だと思います。しかし、なぜ公害の全国民がいま注視しているこの委員会に、それも直接所管している法律の運用に関する重大な事項がかかっている際に出られなかったのか、まずこの点はっきりした答弁を伺ってから質問に入りたいと思います。
  180. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 三日間あったようでございますが、実は私は最初からきょう出るというふうに承っておりますし、別にこの委員会の決定に反して、求められて出なかったわけではございません。その点だけは誤解のないようにしていただきたいと思います。
  181. 加藤清二

    加藤委員長 それはおかしいです。私から申し上げます。各委員要求は初日からございまして、そのように答弁なさいますると、何やらこちらの事務局や委員長の手落ちのように聞こえます。私のほうは最初から要望しておった。これは委員長だけでなくて本委員会理事会において当初、すなわちいまから数えて二日前、その理事会ではっきりきまったことなんだ。したがって、決して要望が出ていなかったのではない。ただあなたの耳に入ってなかったということは当方の知らないところである。どこかに間違いがあるのだ、それは。
  182. 島本虎三

    島本委員 それならば、あれほど要求しておって、その場に出てきておった西川参事官もいるはずです。はたして私が要求していなかったのかどうか、そしてあなたが答弁台に立ったそのことばをもう一回ここで言ってください。私はいまここで重大な侮辱をされたようなものじゃございませんか。
  183. 西川喬

    ○西川説明員 一昨日の委員会におきましても、対長官出席要求はございました。ただおとといには長官の御都合がありますので、この点は政府委員室のほうからいろいろその御都合を委員長のほうにお伝えしたと私は聞いております。
  184. 島本虎三

    島本委員 このようにして要請しているのです。要請しているのがあなたの耳に入らなかったのです。入らなかったから要請してないのだ、こういうように考えるのです。これが行政上そのまま行なわれたら、また第三、第四の水俣病患者が出るのであります。水質所管している皆さんのほうでやはり行政上内部に、こういうような状態にしておくということは、今後のためにも私はほんとうに困ることだと思うのです。大臣、これは要求してあったのですよ。その点ははっきりここで陳謝してから入らしてもらいます。要求してないなんというのは少し困りますよ、それは。おわかりですね、これ。あえて陳謝せいとは言いませんが、わかったとだけ言ってくれればいいんですよ。
  185. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御要求がなかったと私申し上げたのじゃないのです。あるいはそういう点あったかもしれませんが、少なくとも当方の部官等も実はこれあり、いろいろお願いをして、そしてきょう出席をして、やるように、こういうふうになったと私は聞いておりました。あなたが御要求なさったかもしれません。しかし、それについて私は別にあなたに対して要求したとかしないとか、これは事実を知りませんからわかりませんが、いずれにしても御要求があったに違いないと思いますが、その間こちらの都合もこれあり、そういうことでお願いしたのだろうと思います。したがって、ここに出席をするということについて、今日出ることについて御了解を得ておったつもりで私は実は出てまいったわけであります。
  186. 島本虎三

    島本委員 今後、内部でそういうような意思の疎通やいわゆる命令系統の断絶がないように、これは十分気をつけてもらわないといけないと思います。これだけはっきり言っておきます。  なお、私個人の要求ではありません。委員会として他の委員も同様にこれを要請してありましたから、その点も含めてこれははっきり申し上げておきます。  いま川村委員からもいろいろ申されましたけれども、何の罪もない人なんですよ、水俣病の患者や、そのほかこのようなカドミウムや有機水銀の患者は。そういう人が食べたりまた飲んだりしたがために、悲惨ないわゆる患者になってしまうのです。そしてその処理法案なるものの扱いも、いまあなたが来る前に川村委員から長時間にわたっていろいろとただしたわけです。きのうも参考人を呼んでただしたのです。私は再びこれを繰り返してはならないから、これだけ耳に入れておきたいのです。というのは、いろいろ出てきて、政府がお願いをしてあっせんしてもらった。その人の言うには、資料も法的拘束も何も考えない、ただあっせん案をのんでもらうためにどうしたらいいのか、こういうふうに考えて作業したのだ、こういうようなことは一体どういうことですか。何といってもあっせんを頼んだのは厚生省であり政府ですから、当然その責任は大きいのです。したがって、もうこういうことは二度と繰り返してはだめだ。そのためには水質を担当している所管官庁は経済企画庁である。したがって、経済企画庁では、もうすでにカドミウムの問題や洞海湾のシアン汚染の問題を含めてずいぶん各所に発生しておりますから、こういうような問題からして大臣は前国会で一斉に河川の点検をする、こういうようなことを言っておりました。これはもうしたようにも覚えておりますが、大臣はこのとおり一斉に河川の点検を行ないましたか。
  187. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 御存じのようにできるだけ調査を進めるということで、本年度は従来にないスケジュールを詰めまして、これをいま実行しようと、こういうことで進めておるわけであります。
  188. 島本虎三

    島本委員 従来にないスケジュールを組んでやる、こういうようなことですけれども、私が言ったのは、大気の汚染の点はもうすでに年次をきめてやっておる。水質のほうもやらなければならないのはわかった。しかし、ただやるではばく然としているから、年次をきめて、ひとつそれまでの間に全部やらぬか、それは五年である。どうしてもできないところをせめて七年ぐらいまではと、こういうような話も当然出たんです。私はそれで了解した。ぜひそれでやってもらいたい。その前提として、まず各河川をただ四十二か三しかやっていないというから、全部を点検すべきじゃないか、こういうようなことを言っておいたんです。それに対して大臣はすると言っていたから、これはしましたかというのです。
  189. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これはもちろん一月や二月でできることではありません。これはできるだけすみやかにやる、こういうことであります。いずれにしましても、まず書面調査からやらなければならないのです。これをいま全国から集計をしておるのです。これに基づいて年内にできるだけすみやかにやらなければならぬ。これは数も相当なことでありますから、これは一月、二月でできる、こういうものではございません。できるだけすみやかにやろうと、こういうふうに考えているわけです。
  190. 島本虎三

    島本委員 五日の閣議だったと思います。富山県の神通川の水銀の汚染、黒部川のカドミウム汚染、こういうようなことについては水質保全法が制定されても、法による指定水域になっていない河川から発生しているという現状からして、厚生大臣だと思いましたけれども、全水域の河川を対象に有毒物質の最低限の排出規制をするようにと、こういうような要請があったということを聞きました。そしてそれに対して企画庁長官佐藤大臣は、それにこたえた、こういうようなことであります。これはきわめて重要なことでありまして、一歩前進したかまえであると思います。それは具体的でなければならないことはもう御存じのとおりなんですが、そのためにはもうすでに何か具体的にこれをやる見込みを立てている、こういうように思います。この点について見解を承っておきます。
  191. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いまの点は、実は私が企画庁長官に就任をいたしまして、この水質の問題を扱ってやはり最初に気づいた点です。そこで、事務当局にまず現在の制度の根本的なあり方について検討するようにということを実は指示しておきまして、これを法律事項でありますから、来年の通常国会にできたら間に合わせるように、ひとつ制度の根本改正を検討したいということで、これはいま手をつけているところであります。ちょうどたまたま先日厚生大臣から御指摘の発言がありまして、いまのような事情も申し述べ、したがって私もそういう点についてはかねがね検討を要することと考えておるから、ひとつできるだけ前向きでやりましょう、こういう考え方を閣議で披瀝した、こういうのが経過であります。
  192. 島本虎三

    島本委員 では具体的にそれはどういうふうにして実施しようとするのか、西川参事官からこれを承りたい。
  193. 西川喬

    ○西川説明員 現行の水質保全法体系の中におきますいろいろな問題、指定水域制度あるいは特定施設制度、それから環境基準におきまして人の健康にかかわります項目、これはいかなる公共用水域においても確保しなければならない。このような問題にからみましてこういう微量重金属、そのような問題、微量重金属が指定水域制度になじむかどうか、そのような問題、保全法の中にもいろいろな問題がございます。それらを含めまして長官のほうからの指示もございまして、すでに現在関係者との研究会を持っております。それによりまして、だんだん次第に問題点を詰めてまいりましてまとめてまいりたい、このように考えております。
  194. 島本虎三

    島本委員 だんだんとか、そういうようなことじゃないのです。具体的にそれを監視し取り締まるのに、では全部経済企画庁でこれを行なうという構想でこれを進めるのか、これを聞いているのです。そうであるならばそれでよろしい。これは全部国のほうでやるんですね。
  195. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いまの御指摘のような点も問題点の一つだろうと思います。スタッフということも十分考えなければなりません。現在は、実は指定水域ということで水域指定を行なわない点については地方公共団体の条例によってやる、こういう前提でもってできております。ところがごくわずかでありますが、いろんな事情もあると思いますが、地方で条例を定めてないところがあります。こういうところは地方団体と折衝して一刻も早く地方条例を整備するように、こういうことを何回もわれわれは言っています。大体私は公害の性質もいろいろあると思うのですけれども、やはり地方住民というものを基礎にしたものが公害問題である。したがって、これは幾ら中央の政府がかけ声だけかけてもなかなか実行できないものもあります。したがって、本来地方団体が分担すべきものあるいは国が分担すべきもの、これはいろいろあると思います。そういう点について、まだ公害行政というものは本格的に私は検討不十分であると思う。そこいらの点も今後どの分野まで国がなし、また国がなし得ることであるか、また地方団体がそれとあわせてどういう分野を担当すべきであるか、こういうようなこともやはり含めて考えなければいけないと思っています。内容的な結論はもちろん出ておりませんけれども、そういう意味において、十分いま御指摘のような点も考えながらやっていかなければならない。御存じのような企画庁のスタッフですから、これを全部一切地方団体を抜きにして、そうして調査から何から全部やれといっても実際的でない。そういう点も頭に入れて考えなければならない、私はそう考えています。いろいろその他問題点もあろうと思いますけれども、その点は一つの基本的な問題でありますから私がお答えしましたが、そうした点も含めて早急にいま検討をしておる。できるだけ来年の国会に間に合うように立法措置を講じてみたい、これが私のいまの考えであります。
  196. 島本虎三

    島本委員 では、次期の国会までの間に完全にこれの立法措置を講ずる、こういうようなことばでありますから、それで一歩前進にもなろうかと思います。ただ一つ、これだけは十分考えておいてもらいたいと思います。いまのようにして法と条例との関係、これは十分考えなければならないことは大臣おっしゃるとおり、これは常々われわれも主張しておった点であります。そうなりますと、たとえば自動車の排気ガスに対するいろんな規制を自治体にまかしてくれ、こういうような自治体の声もある、東京都をはじめとして。さてわれわれがそれを主張すると、そういうようなことをされては困る、全然われわれのほうは関係ないんだから、そんなのにまで国の事務をわれわれのほうによこされては困るというのもある。まさにこれは東京と奈良の違いであります。そういうような県もあるのであります。まだ条例の制定のない県も六県ぐらいあると聞いておる。きびしい規制条例を持っておるところは十七県程度である。そうなりますと、おそらくあとはゆるやかな認定条例程度のものじゃなかろうと思います。そうだとすると、全面規制への切りかえの場合、やはりそこに対しては若干の混乱もあるだろうと思う。その場合に、えてして低きに堕するのがいままでの行き方であったわけです。低きに堕するならば、またその点から公害が発生し、あとからもんちゃくが起きるのはあたりまえなわけです。したがって、そういうような場合には、調整の重点的な指導をどこの点に置くかというととが重要になってまいります。おそらくこれは、いままでいろいろ住民運動も起こっておりますし、こういうような点については大臣ももう骨身にこたえてこの水質の問題と今後は取っ組まなければならないはずですから、これは十分おわかりだと思うのです。この場合は、低きに堕することがないようにき然たる態度でこれを行なわなければならないと思いますが、この点いかがですか。
  197. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 率直に申し上げまして、現在の制度について非常に問題があると思っているのです。これはやはり公害問題についてのそれぞれの地域における意識というものに格差があると私は思っています。非常に公害問題が進んでおって——これは進んでおると言っていいかどうか、適当でないかもしれませんが、公害問題が事実上発生していてやかましいところ、したがって、住民の意識というものが進んでおるところ、そういうところもあるかと思いますが、最近まで比較的、むしろ公害の問題を憂うるよりも工場を誘致することに地方団体の首脳者の頭がいっておる、こういうような地域も広い全国の中にはあったわけであります。したがって、ほんとうはその公害というものを全国一律に扱うということがはたして適当であるかという問題もあります。今後、予防的な見地を考えれば、今日まだ全然公害の発生のないところでも、公害だけ考えればきびしい基準を求めることにこしたことはない、こういう考えも一面ありますけれども、しかし何といっても広い日本の中で、地域によって要求の差がある。それを中央官庁がいろいろと行政をやる際、画一的にやろうどいたしまするとどうしても全国平均的な指数、平均的な基準というものをとかく立てやすい。そこで、たとえば東京都と食い違いが出るとか、いろんな問題が起こりがちです。そういう意味で、私は実は公害問題についてはある程度地方にまかせるという要素というものを出さなければだめなんじゃないか、こういう感じを、これは私自身考えでありますが、かねがね持っております。  でありますから、たとえばいま問題になっておる制度の改正の問題につきましても、これを地域指定主義を撤廃すると申しましても、全国津々浦々まで全部国がやるのだという結論では必ずしもない。それをどうやって地方と国が分担をするか。しかし、今日のようにある程度公害が発生している地域についても、そこの地方公共団体の首脳部の考えでもって公害よりも工場誘致が先だ、こういうようなことになっては困りますから、そこで今日のように条例の全然ないような、こうした状態はこれは許せない。でありますから、進めぐあいは、法律で規定するのがいいのか、あるいは条例で規定するのがいいのか、いずれにしても何らかの意味で、形式を問わず実際的に規制が行なわれるようにしなければならない。その場合において、少しでもそこに穴のあかないように事務能力とかいろんなものも勘案してこれを配分するということも必要だろうと思っています。ですから、地域指定をして、その地域以外はかまわないのだ、こういう今日の基本的な思想、そしてそれをただ自由に条例にまかせておけばいいのだ、こういう放任主義的なものの考え方は困る、こういうふうに実は考えている発想であります。でありますから、そこいらのところも現実に合うように何か新しい構想を盛り込めないものか、そういうようなことを検討しておるようなわけであります。
  198. 島本虎三

    島本委員 当然、最近の国内に起こっておる公害の多くの特徴点というようなのは、これはいろいろ論ぜられておるのです。あえて言うまでもないのですが、内容も多様化してきて複雑化してきているというのは、これは事実なんです。去年とことしはもう違っているのですから。そしてまたそれと同時に、大都市だとか大工業地帯でこれだけの大気汚染ではなくて、それが周辺にまで広がっている。それと同時に、もう一つ三番目には、地方都市の局地的な野放し公害が、いまおっしゃったような工場誘致によってこれが発生しているというようなのが、この最近の一つの特徴点なんです。これの一つの集約が日本の公害なんです。そしてその中で、やはりこの水質汚濁の面でも、河川に限らないで海面にまで十分及ぼさなければならない状態になったというんです。それはもうすでに大阪湾の屎尿だとか、それから主要港、主要航路、こういうような船舶の廃油の問題であるとか、または福岡の洞海湾を含めての廃液海中放流の問題だとか、いろいろ現在起きてきております。そういうようなことからして、もう河川に限らないで、この公害対策は海面にまで及んできているというような実態もやはり見のがしてはならない現実の一つだと思うのです。そうなりますと、当然公共用水域水質保全に関する法律、これが一部改正案が先般なされました。そしてこれによってもうすでに私が言う必要もないほどはっきりした現実が生まれてきているのでありまするけれども、この受けざらになる実体規制法が十一もあって、河川法や、港湾法だ、それから漁港法だとか、港則法だ、その他まだあるのですが、こういうような関連法ももちろんあるわけであります。そういうようなことからして、今後公共用水域水質保全に関する法律、この一部改正法案によって大臣もはっきりこの水質規制というものをやらなければならない責任を負ったわけでありますから、この河川のみではなくて、その中に湖沼、港湾、沿岸海域なども含まれている、こういうようなことなんです。そうして指定河川のみじゃなく、全河川もこれを対象にするということは、法に基づいて当然、河川のみではなく、湖沼、港湾、沿岸海域まで含まれるものである、こういうふうに解釈していいのか悪いのか、これが判然としないのです。これだけはこの場合はっきりしておいてもらいたいと思います。   〔委員長退席、山本(幸雄)委員長代理着席〕
  199. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 これは当然に含まれております。
  200. 島本虎三

    島本委員 当然含まれている、こういうようなことであります。そうなりますと、今後は経済企画庁の管理する能力の問題も大事になってきます。現在のスタッフではどうなんだ。いま大臣答弁だけであと一年間やっておいたならば、現在のスタッフがこれをやることになるから、はたしてこれが間違いであるかないか、大きい問題になってしまう。あとからはっと思ったってもうおそい、こういうようなことでは困りますので、はたしてこれがどうなのかというような点をここではっきりさしておきたいと思うのです。前から議論のあった点です。  その一つは、計画官庁であり、そして具体的に手足を持たない経済企画庁として、今後は、実務執行の窓口として、独自の機関を持って強力に行政を執行している各省庁に対して、水質行政の徹底とそれの違反に対する監視、この万全を今度は期さなければならない。ここの問題点だと思うのです。そうだとすると、当然いままではあまりにもルーズであったからいろいろな被害が起きてしまった。起きてからあとになっていろいろな対策を講じられている。これではもう被害のあとを追うようなものである。これではだめだから、今後はこういうことのないようにするために、いまのように範囲がわかりましたから、今度体制の問題でも十分これを確立しておかなければならない、こういうふうに思うわけであります。したがって、平常の監視体制、これも万全を期さなければならないのであります。その管理体制、同時に監視体制の強化、こういうようなものの施策をどういうように考えておるか、これもひとつはっきり構想を発表しておいてもらいたいと思います。
  201. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 もちろん水質保全法その他によっていわゆる基準を設定するところまでが企画庁の本来の職務、こういうふうになっていることは御存じのとおりであります。そういう体制でありますから、そのあとをそれぞれの実行官庁がやる、こういうことになっています。そういう意味において、監視体制そのものを企画庁が持つということは、これはもちろん組織上無理でありましょう。したがって、関係各省に監視体制をどういうふうに置くか、あるいは地方団体の監視体制をどういうふうにするか、それらについて総合官庁として企画庁としては助言もしなければならないし、それから予算の獲得についても応援をするとか、こういうことはしなければなりませんけれども、企画庁自身がこの監視人員を持つということは、こういうことはもちろんいま直接は考えておりません。まあわれわれは監視体制を極力確立しなければならない、こういうことを、基本方針をきめております。これに基づいて、それぞれの所管庁においてこれが十分であるかどうか、そういう点についてわれわれは検討もし、そして助言、協力をして、できるだけスタッフの充実をはかっていく。企画庁としてはそこまでしかやれないのが現状であります。しかし、これは要するに各省にそういう体制が整備できるようにこれを持っていけばいいことでありますから、これは各省と一緒になって考えなければならない、こういうわけであります。
  202. 島本虎三

    島本委員 いま言ったように、いままでの答弁を聞いておりまして、いまの答弁が私は一番うしろ向きだと思う。せっかくいままでやってきたのがそれによってまただめになってしまう。公共用水域水質保全法、いま言ったように受けざらに当たる実体規制法が十一もあって、それに関連立法がある、そしてそれによって水をきれいにする。水をきれいにする基準だけはおれのほうでやるけれども、あとはおまえらのほうでやれ、こっちはそういう能力もないし、そういう部隊もいないのだ。それだからばらばら行政でだめだといわれるじゃありませんか。だから、これをはっきり一本化するためにどうすればいいのだということを議論されて、企画庁でやれるのかと言ったら、やれると言ったじゃないか。それだのに、いまあなたまた再び、大臣が来て、今度は各自治体その他の足を持っている官庁でこれをやってもらうのだ、そこまではわれわれはできない。これはいままでの議論をまたむし返して、だめにしてしまうじゃないですか。そういうような体制だから水俣病もカドミウムによるところのイタイイタイ病もなくならぬのです。これは資本べったりではありませんか。そういうような考え方では私はどうも納得できない。したがって、こういうような実態からして、私は水質調査だとか分析の方法だとか、または測定の技術だとか、こういうようないろいろな問題もあろうかと思うのです。ですけれども、そういうような具体的な問題、こういうような問題に対しては指示してやらぬとだめなんでありませんか。それは指示するというからいいでしょう。私はそれでいいと思う。しかし、それだけであって、基準を出したのだからいいのだ、あとは各省がばらばらでそれをやればいいのだ、こういうようなことであるならば、いままでの答弁並びにいままでいい姿勢を示してきたのが、ここによって、またばらばら行政に分解してしまうのです。各都道府県、自治体にやると、工場誘致したがためにいままで何年間か害があるのに、わかっていながら、これを厚生省に言っていない。それがもうすでに起きているのですよ。被害者としてとんでもないことになっているのですよ。それだのにまた、各自治体にまかしておくのだ、各官庁にもやるのだ、こういうようなことをしたら、せっかくあなたのほうが窓口になって今後強力な水質行政をやるといいながら、また各官庁それぞれやってくれというなら、これは何のことにもならない。委員長のほうから決定をもらったって、そしてそれによってあなたのほうでは今後の水質関係のいわばこの公害といわれる問題を起こさないようにせよとちゃんと決議をちょうだいしておるはずなんです。いまのばらばらな体制でいいのだという考え、これには私は納得できません。それと同時に、いわゆる橋渡し規制、こういうようなもので政令にゆだねられる部分が多いわけですから、その点等についての整備等もして完全にこれをやらせなければならないはずなんです。これは前に、それはきちんとしてやりますと言った西川参事官、それからいま大臣として、それぞれの官庁でやればいいのだという大臣答弁、これは両方とも食い違っております。たいがいならば大臣答弁のほうが前向きなんですが、今度は事務官僚のほうが少し前向きだ。これはもう逆なんですから私は了解できない。
  203. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 政府委員答弁しましたのは、あるいは誤解を受けるような説明になっていたかもしれませんですから、この際はっきりその点は誤解を正しておかなければなりませんが、先ほども申し上げましたように、企画庁という役所が、その多数な監視員をみずからのスタッフとして持てる性格のものではもちろんありません。そこで、われわれとしては基準をきめ、並びに水質保全行政についての総合調整というその職分がはっきりしているわけでありますから、それに応じてわれわれの仕事をやっているわけです。そういう観点からいえば、今日御指摘のように監視体制が不十分である。であるから、監視体制整備対策要綱というものを実は企画庁が中心になってつくるわけです。これをつくって、その際に中央ではどうである、地方ではどうである、こういうことでやらなければなりません。それは、地方の小さな河川まで国が監視員を置けるものでもないし、またそれが必ずしも経済的で合理的であるとも思いません。いずれにしても、それぞれ分担に応じて監視体制を整備する。それについては私たちは先ほど申し上げたように十分監視の目を光らして、その整備について足らないところはどんどん指示もし、勧告もする。必要な予算については大蔵省に向かって各省と一緒になって要求もしましょう、こう言っておるのであります。でありますから、企画庁自身が監視定員を備えて、そして直接に監視をする、こういうことはしないけれども、この監視体制全体のことについて非常な関心を持っておる。私はまたそれでいいと思います。それぞれの分野に応じて監視体制をつくればいい、こういうように考えております。
  204. 島本虎三

    島本委員 当然この範囲は、先ほど申し上げましたとおり、河川それから湖沼、港湾、沿岸海域、これあたりが含まれる。そのほかに、最近の公害のいわば特徴点として、これは大臣も知っているとおり、河川だけにいままで考えられておった傾向があったが、最近は急に海面にまでその必要が思われるような、こういうような状態にもうなってきてしまっておる。そうなると、海岸のほうに出ていくと、もうすでに海上保安庁もある。保安庁というのは一つの役所になってやっておる。それがもうすでに監視体制をしいている。地方のほうでは、もうすでに密漁対策の監視員も動いている。そういうような人たちは、密漁ばかりやるのを見ていて水質のほうを全然見ないのはおかしいから、監視というのであれば、たとえば地方自治体の監視であろうとも、片や海域を守っている保安庁によるところのこの保安体制を含めて、これはやはり大きい一つの体制をここに持っていかなければならないとすると、あなたのほうのいまの考え方、こういうようなことでただお願いしますじゃばらばらになってしまう。それを一本化してやるのだ、一本化してやるのはあながちわれわれが部下を持つのじゃないのだ、こういうふうに言うならば、閣議にでもそういうような方式をかけて、そしてあなたの考え方を統一して、日本じゅうの自治体も含めて全部一本にしてこの体制に当たらなければ私はここに完備された体制にはなれない、ばらばらになる、このことをおそれるのです。これはあなた、前向きの質問ですよ。これは、それくらい考えてやってもらわないと私は画竜点睛を欠くと思うのです。閣議にかけてまでこれをはっきりやってもらわなければいけません、こういうような体制は。構想について承ります。
  205. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 先ほど話が出ました監視体制対策要綱というのは、もちろん閣議にかけまして、これを決定を受けるつもりであります。河川がとかく御存じのように中心でありました。海域については、率直に言っていわゆる国外との条約等もありまして、なかなかむずかしい問題を含んでいます。まさしく御指摘のように、普通の河川の監視体制でそのままに適用してもそれは無理です。ですから、私は海の問題が重要になってきただけに、海については、あなたが御指摘になったように、せっかく海上保安庁もあります。もともと港湾の管理は運輸省でありますから、やはりそれに即した体制をつくっていかなければならぬ。あなたのおっしゃっていることは私の考えと全く一致しています。それぞれの適当な機関を選んで、そうして監視体制というものをつくっていかなければならぬ、私もそう考えております。海の場合においては、特に御存じのように油濁、油による汚染というものが非常に始末に困る。これについては、しかも世界じゅうから国外の船が入ってまいります。この国外からの船についてどういう規制を強制するか、こういうようなことで現在世界条約がございますが、その条約が、条約の性格上きわめてゆるい基準になっています。これらを国内法でいかに強めていかなければならぬかというような、いろいろ問題があります。私も海の問題は特に重視しているつもりでありますので、これはひとつ関係各省と、ある意味においては、水質保全という意味においては共通ですけれども、事柄の性格上あるいは別途のものをつくらなければいかぬかとも思っております。そのくらい重要になってきている、このように考えております。いずれにしましても、いま御指摘のような監視体制、こうしたものは参考になりますが、できるだけそうしたことでその事柄の対象の必要に応じたものをつくってまいりたい、こういうふうに考えております。
  206. 島本虎三

    島本委員 それを実施していくためには、大臣もすでに御存じだと思います、私どももいままでこれを論じてまいりました、海面にまで及んでいるというのが最近の日本の公害の特徴点です。そして、この特徴点がついには地方都市の局地的な野放し公害にまで及んできてしまった。こういうような状態からして、中小河川だけに、これはもう汚濁が一回発生する場合には急ピッチでこれが汚濁されてくるわけです。そういうような場合には、監視体制というものをゆるめてはならない、これはますます重要になってくるわけです。  それと同時に、国自身もこの河川に関しては十分なる監視を怠ってはならない、こういうように思っているわけです。先般、第六十三国会におきましてもこれらの問題についていろいろ討論もあったことは、大臣も御承知のとおりなんです。そして、これは経済企画庁の権限というか、いわばこの基準を示してやる。しかしながら、足を持って実際これを行なえる一番大きい部隊として建設省があるわけです。建設省には、所管によるところの河川法があるわけです。河川法があるわけでありますけれども、この二十九条、清潔の規制があるわけです。この清潔の規制を具体的に実施するために政令をもって定めるとあるわけです。そして、それに違反した者に対しての罰則、これは百二条から百九条まであるわけです。そして、これも具体的実施のためには政令をもって行なう、こうあるわけです。そういうようになっておりますけれども、もうすでに去年でありますか、木曽川事件があったころだと思います、委員長でありまして、いま席をはずしておりますけれども加藤委員長もこの問題については大いに発言されたようであります。そしてそれだけではございませんで、前国会においても、この問題等に関連して、すみやかにこの流量や川の水の清潔に対する規制を行なうため、または罰則を実施するために、六十三国会中に政令をつくります、こういうようなことになっているわけなんであります。議事録にもはっきり残っているのであります。こういうようなことを大臣も聞いておられるから、はたして政令ができたのかどうか、これに対しておわかりじゃないか、こういうように思います。あるいは、できて規制されておりますかどうか。これは、河川局長来ておりますか。
  207. 坂野重信

    ○坂野説明員 お答えいたします。  先生の御指摘のとおりに、前国会中にひとつ見通しをつけたいということは私答弁いたしました。そういう方針に沿って鋭意努力したわけでございますが、関係各省にわたりますし、既存の法令あるいは条例との調整に若干手間どりまして、しかし、現在原則的に各省との調整はほとんどつきました。あと、これから条文の作成に入っておりますので、早急に制定するように予定いたしております。御了承願いたいと思います。
  208. 島本虎三

    島本委員 これはもうすでに条文作成の段階に入っているのだ、整備の段階に入っているのだ、こういうようなことであるならば、いまいろいろなことを言いましたけれども、いつまでにこれを完成させるのだということに対して、六十三回国会、今国会終わるまでにこれをでかしますと言ったのです。しかし、それはあまりきょう追及はしません。しかし、これはすぐやらぬとだめです。条文整備だけならばすぐできるでしょう。すぐできる段階になってきたら、あと何日ほどでこれは出すのですか。これはやはり念のためにはっきりして、国民の前に明らかにしておいたほうがいいと思います。六十三国会中にできなかった。これは残念ですけれども、じゃ、いま条文整理の段階にあるとしたら、あと何日たったならばこの政令の公布までたどりつけるか、この見通しをはっきりさしておいてください。これもはっきり議事録にとどめておかないといけません。
  209. 坂野重信

    ○坂野説明員 いま申し上げたとおりでございますので、おおむね一月以内ぐらいに制定できるように最大の努力をいたしたい、このように考えております。
  210. 島本虎三

    島本委員 大臣、河川法によるところのいわばしり抜け、ざる法である、こう言われたゆえんのものは、つくるべき政令がなかったということなんです。ようやくこれも法律ができて、五年目にざる法の汚名を返上するかどうか、こういうような段階にきているわけであります。あと一カ月までの間に政令を公布するといいますから、これを所管する関連大臣経済企画庁大臣ですから、これは足を持たなくても、あなたは優秀な頭脳を持っているはずですから、それをもって一カ月、この間にできるかどうか、悪いものではないように、相互の連絡を緊密にして十分これを督励してやらなければならない、こういうように思います。この点はいいですね。
  211. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 河川法二十九条の政令の問題、いま建設省から答弁がありましたとおりでありますから、ひとつ極力推進したいと思ってます。
  212. 島本虎三

    島本委員 わりあいにきょうはあとになってからぴたぴた話がきまって、私の質問も早く終わりそうな気配がありますから、したがって、今後の問題についてもひとつ皆さん大いに勉強された抱負経綸をはっきりさしてもらいたいと思います。  まず、アメリカでも公害行政一元化の必要性を感じて踏み切るようであります。政府もこの公害行政を進めるためにも、厚生省のほうでは公害局を設置するということをきめたようであります。しかし、この場合には公害局というものの権限もまた問題になるのじゃないか、こういうように思います。いろんな人からこの意見が出ました。あるいは設置法的にただ設置するのか、こういうような意見も出たわけです。この公害局の設置ということは大臣の放言なのか、議論はございましたけれども、それともそうでなければ、権限はどの辺まで及ぶように考えられておるのか。これはもう厚生大臣と総理府長官にはっきり伺っておかなければならない問題です。私はそのために要求しておいた問題です。委員長、これは大きい問題ですぞ。
  213. 城戸謙次

    ○城戸説明員 公害局の設置の問題でございますが、これは大臣としましては、現在のこのような公害の情勢に対処するため何としても局をつくらなければいかぬ、こういう気持ちでございまして、ぜひ実現するように厚生省全体として努力するという段階でございます。ただ、具体的には官房を中心に、現在どういうような形でつくるかということは検討中でございまして、私からこの段階で申し上げることはできないような事情でございます。
  214. 島本虎三

    島本委員 それをはっきりさせないと、大臣の放言になってしまうんだよ。せっかくここまで、いいところまできたのだから、そこをはっきりさせて終わりたいと思っているのだ。ところが、これも人まかせで、だめだと言う。官房長官を出てくるように要請したら、こういう総括の問題は総理府だというのだ。総理府だというから大臣を待っていたら、あなたが出てきているのです。そういうような点を考えないで、ただ公害局だけにしてある。現在のこのスタッフでそのままいって、何が強化になりますか。そうならないから、その権限がどこまで及ぶのだ、こういうようなところまではっきり考えてやらなければならない。少なくとも構想を発表したならば、その権限だって中にあるはずなんです。城戸君は、これは官房長官がやっているというのですか、官房長でやっているというのですか。それとも総理府でやっているというのですか。
  215. 城戸謙次

    ○城戸説明員 私が申し上げましたのは、厚生省の中において大臣官房を中心に検討されている、かような意味でございます。
  216. 島本虎三

    島本委員 だから、どういうような権限、どこまで及ぶような権限を持つ公害局なんだ。私、これは大臣答弁を求める。大臣、連れてきなさい。もう事務官僚ではだめだ。いま一番だらしないのは厚生省の官僚じゃないか。厚生省は窓口だといっていながら、もうすでに、一本化するのは厚生省に置いていいのかどうか疑問になるような、うしろ向きになっている。そんなのに何ができるか。できないようだったら、やめてしまいなさい。すぐ大臣を呼んできなさい。これだけはっきりさせなければならない。
  217. 山本幸雄

    ○山本(幸雄)委員長代理 速記をとめて。   〔速記中止〕
  218. 山本幸雄

    ○山本(幸雄)委員長代理 速記を始めて。
  219. 島本虎三

    島本委員 では、それ連れてくるのかこないのか。それでなければ、ここにいる人は大臣にかわって答弁しなさいよ。できないなら、もうここへ来るなよ。  委員長、これはどうしますか。大事なところまできて答弁のできない官僚だけここに置いてはだめですよ。——では、厚生大臣が来るまでの時間が惜しいそうですから、次に進みます。  これも、経済企画庁、来ていない。厚生省大臣が来ていない。来ているのは総理府の政務次官だとすると、これは本来ならば経済企画庁厚生省、窓口は厚生省法律案だと思います。前から問題になって他の委員からもちょっと出されました質問にも若干答えていますが、核心に触れておりません。いま企業責任が問題にされたり、公害に対する積極的な取り組みの姿勢なんかも問題にされているときに、公害基本法ができて、第三条を受けた二十二条の企業が負担する費用の区分を法律できめるということになっているはずなんですが、いまだ企業負担について法律——これはもう両方でだめだからといって、総理府の長官は私のほうでこれは調査するといってこれを調査し、現在ある程度までいっていると聞いているのです。通産省厚生省、これが窓口の法律案がそこでやられないで、総理府のほうへいってやられているというのは、これは一体どういう体制なんですか。これがつくられない以上、これは実施されないのですから。普通ならば、政令によってこれを行なうとあるのを、これは、法律によってこれをやると、ここまで規定して企業家を守っている法律です。ですから、法律ができない以上、いまの河川法の二十九条並びに百二条から百九条までのこの政令と同じように、これが出ない以上適用できない、企業者の負担が区分がきまらないのだ、一体これをわれわれのほうでやると、こう言っておりましたけれども、総理府のほうでこれはいつ出すようなめどがつきましたか。
  220. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 先生御指摘の二十二条の費用負担の法律がおくれております点はまことに申しわけない次第でございますが、この点につきましては前国会で御説明いたしましたとおり、通産省の産業構造審議会の公害部会費用負担小委員会におきまして鋭意検討を続けまして、この十八日に小委員会としての一応の結論を得る見込みでございます。さらに、その上で二十五日ないし二十七日に公害部会を開きまして、その部会としての正式決定をしたい、かように考えております。  ただ、この法律案と申しますか、まあ費用負担の要綱の内容といたしましては、単に通産省措置できる問題だけではなく国の負担あるいは地方公共団体の負担、それら全部を総合的に取りまとめ、かつ考えなければならないような性格でございますので、この案ができましたあとで内閣審議室にこの案を御提出いたしまして、審議室のほうでさらに総合的な観点で検討していただいた上で正式の法案をつくるということで、内閣審議室のほうとも一応話がついておるわけでございます。この案の作成の過程におきましては、関連各省の担当官にもずっと出ていただきまして、その審議の過程は逐一トレースしていただいておりますので、審議室で検討していただく場合でも国の負担あるいは地方公共団体の負担について、相当むずかしい問題があろうかと思いますが、ある意味の各省のコンセンサスはその審議の過程においてでき上がっておるというぐあいにわれわれは考えておる次第でございます。
  221. 山本幸雄

    ○山本(幸雄)委員長代理 ちょっと島本委員に申し上げますが、厚生大臣はただいま参議院の社会労働委員会出席して委員の質問に答えておるまっ最中だそうでありますので、それが済み次第ということだそうでございますので、御了承を願います。
  222. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいまの費用負担の点でございますが、厚生省としましてはいまの産業構造審議会の審議と連絡をとりながら、別途、公害防止費用研究会を設けまして、公害防止計画の費用負担という見地を中心にしまして検討をいたしておりまして、近く結論を得る段階になっております。特に先発しました岡山、三重、千葉の三県のそれぞれの公害防止計画の、基本方針に基づきます計画につきまして承認をいたす段階になりますので、それまでにいまの企業の負担と同時に国、県あるいは市の負担ということをどういうぐあいにするかということにつきまして、できるだけ早く結論を得たいと考えておるわけでございます。
  223. 島本虎三

    島本委員 もう少し私は愛情を持って厚生省のほうに申し上げますが、よくわかりました。できるだけ早くやりたい、それはよくわかりましたよ。善処したい、その気持ちもわかりましたよ。いまここでやっているのは、そういうような法律用語によるところの日本語を聞いているのじゃないのです。ほとんどこれは現実の問題から、通産省のほうで一カ月ぐらいたったらこのめどを得る。おそいながらも一カ月というめどが出た。あなたのほうではできるだけできるだけじゃ、これはそれよりいいのか悪いのかわからぬ。いいのか悪いのかわからぬような状態でこの場をごまかすから、あとになってまた問題になったときに、また重大なことになる、こういうようなことなんです。ある場合は、私のことばがちょっときついかもしれぬが、そういうような場合にもこれだけの確証をもってこれだけまでにやれるのだ、こういうようなことを言ってほしいのです。できるだけだとか、善処だとか、こういうようなことばはもう聞きあきました。今後そういうようなことばはあまり使わないようにしてください。では、いまの質問に対して、はっきり言っていただきたい。
  224. 城戸謙次

    ○城戸説明員 私ただいま、できるだけと申し上げて失礼しましたが、私どもとしましては、実は公害防止計画の中にどういう事業が織り込まれるか、それに対してどういうぐあいに判断していくか、それが前提になっております。ところで、いま千葉が最初にまいりまして、三重がその次、岡山のほうが実はおくれておりまして、二十五日過ぎになる、こういうようなうちうちの話でございます。一応の案ができました上で、厚生省は当然でございますが、各省のヒアリングをしていくという段階でございまして、その点で若干まだペンディングになっている面があるということでございまして、私どもとしましてはただいまのような意味におきましては七月の初めというところを一応のめどにして、現在努力をいたしておるところでございます。
  225. 島本虎三

    島本委員 そういうふうにはっきり言えば、まことに名答弁とあなたほめられるのですよ。いままでなぜそれを初めから言わないのです。最後になって言うとは何です。  それで、次には総理府、これも最近水俣処理委員会の結論が出て、御存じのとおり質疑が行なわれた。この公害紛争処理法によって、今後紛争処理に当たる審議委員会というものができます。この審議委員会のメンバー等についても、現在までの水俣の処理委員会の結論等に合わして、またこのような世論の反映から見て、なかなか現法律によってつくる審議委員会の中に議論があるということを聞いているのです。これは重大だと思うのです。私はこういうようなことではなしに、あなたがおっしゃったように、国家行政組織法第三条によるところの強力な機関、これになれないで、現在八条機関だ、それでも内容として事務局を持ったりある程度調査権やこういうようなものを持っていますから、これはもうまがいものとはいいながらも、そういう活動をできないわけじゃない。今後期待されるのはそこじゃありませんか。それだのに現在大事な審議委員にもまだなり手がないということを聞いておるのですが、これは水俣の影響があるといいながらも、私はこれは重大だと思っているのです。現在この問題についての危惧は全然ないですか。
  226. 湊徹郎

    ○湊説明員 先ほども申し上げましたが、非常に重大な問題でございますので、もちろん人選その他について慎重を期していきたいと思っておりますが、いまのようなことが具体的に危惧されるような状態にはございません。
  227. 島本虎三

    島本委員 それでは、これまたまだまだ来ませんから進みます。  進んでもこれは困るのでありますけれども厚生省と、これは官房長がまたいませんから、これは総理府だということですから総理府、これはどうも、これじゃ困るのです、実際。昭和四十二年に公害対策基本法、これが制定されて、この作成する過程において、われわれも審議に参加し、これは現在のような法律になりました。そのように修正するのにも、われわれとしてだいぶ苦労し、時間がかかりました。しかしその中で問題だったのは、産業界からの強い要請で、生活環境の保全について経済の健全なる発展との調和、これをはかるようにするという織り込みが問題だった。やはりこれが現在になってみまして、いわゆる調和の名において体制全体が企業優先に傾斜してしまった、そして同時に人命や健康が無視されるような傾向に至った、これはまことに重大な問題です。いまや根本的にこれを刷新するようでなければならない状態にもう追い込められたのです。そういうようなことですから、現行公害基本法基本法の持つ関連法それぞれありますから、これらの改正についてそれぞれの大臣の放言があるようでございますけれども、これは総理府のほうでもやはり考えなければならないのじゃないかと思います。これもやはり大臣でなければだめですか。——しかし、あなたは大臣のかわりなんですから、副長官なんですから、ここではっきり基本法の改正考えます、関連法の改正考えなければなりません、こういうふうに明言してもらいたいと思うのです。してもらえますか。
  228. 湊徹郎

    ○湊説明員 実は就任以来山中長官ともいろいろ打ち合わしておるのでありますが、先ほども話がございましたが、内閣全体の総合調整機能、こういうことをほんとうに発揮するために、現在各省それぞれ分担願っていただいておる諸般の問題について、全部ひとつ片っ端から率直にいえば洗い直していこう、こういうふうな態度で部内では検討をいたしております。  具体的にいまお話しの公害対策基本法そのものについては、いまの段階でまだ改正するという前提の検討はいたしておりませんけれども、同じように災害関係等についても、例の激甚災の指定基準等々ございまして、いろいろな実体的な基準の間のアンバランス、これについても率直な話、かなりございますので、そういうものをひとつ全部洗い直す過程でひとつ検討さしていただきたいというふうに思っております。
  229. 島本虎三

    島本委員 あなたの日本語はほんとうにいい日本語であります。どっちにもとれるようにちょっと思いましたが、念のためにこれだけは確認しておきます。基本法の改正並びにその関連法の現在にそぐわないような点については、今度改正を考慮しておる、改正を前提に検討しておる、こういうふうに理解して次に進みたいと思いますが、そうですね。
  230. 湊徹郎

    ○湊説明員 先ほど費用負担の問題についてもございましたように、あの条項一つについても、先ほど申しましたように、関係数省の間で大体私どもとしましては九月ないし十月くらいをめどにして、その前段の通産省の産業構造審議会ですか、あれの検討のほうは七月ごろをめどにする、こういう話でございましたが、そのあと中央公害対策審議会等にはかって大体十月ごろをめどに答えを出そう、こういうことでやっておる最中でもございます。(島本委員改正を前提として検討しているんだな。」と呼ぶ)いや、さっきの費用負担の問題、公害対策基本法の二十二条のあの条項一つについても、いまのような慎重な検討が実際問題として必要でございますので、いろいろ公害基本法並びに関連する実体法規のバランス等を今後考慮して一応洗い直しをずっとしてみた上で検討したい、こう申し上げたわけでございます。
  231. 島本虎三

    島本委員 私は、二度、三度聞きませんけれども、私の意に沿うような意味でこれは検討しておるということですね。頭を下げたということを私のことばから言っておきますよ。了解して頭を下げたのですね。——はい。それで了解しました。  では次に、これは先ほど大原議員と思いましたが、間違いかもしれませんが、公害対策会議のメンバーについていろいろ聞かれたんですけれども、この事務局はどこでしたか。これははっきりしなかったのですが……。
  232. 城戸謙次

    ○城戸説明員 公害対策会議庶務厚生省環境衛生局でやる、かような法律の規定になっております。
  233. 島本虎三

    島本委員 公害対策会議のブレーンはどういう人ですか。
  234. 城戸謙次

    ○城戸説明員 公害対策会議のメンバーは、閣僚の中で外務大臣行政管理庁長官と、それから防衛庁長官、これだけを除いたあと全員でございます。
  235. 島本虎三

    島本委員 そうすると、基地公害、こういうようなものは重大である、今後公害紛争処理法案の適用だけは受けないけれども、その他に対しては万全を期する、したがって、公害紛争処理法案の適用を除外してもらいたい、こういうようなことでありました。公害の被害から国民をはっきりと救済しなければならないし、そういうようなことを二度と再び起こしてはならないことは、もう私自身言う必要もないほどだ。この基地公害が重大な段階に、なぜ防衛庁長官をこの公害対策会議から除いてあるのですか。これは大臣でないとだめだ。経済企画庁長官、あなたちょっと答弁してくださいよ。
  236. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 四十二年にこれができましたときの経緯でありますので、私もちょっとつまびらかにしませんが、いま聞いてみますと、やはり当時としては、まだ特に公害に非常に関係があるということではないというようなことで除いた、こういうことのようであります。
  237. 島本虎三

    島本委員 そうすると、あなたはメンバーですか。
  238. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 私はメンバーでございます。
  239. 島本虎三

    島本委員 そうするならばあなたも国務大臣として、これは基地公害がきわめて重大な段階にあり、これを度外視して考えられないような現状からして、公害対策会議から防衛庁長官を除くのは現状に即さないと思う、これを閣議で発言して、こういうようにして持っていってもらいたいと思います。その意思があるかどうか。
  240. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 水の公害で皆さまに責められて精一ぱいなものですから、なかなか考えが及びませんでしたが、そういう点は一ぺんよく事情を聞いてみたいと思います。
  241. 島本虎三

    島本委員 じゃ、通産大臣も来ておらない、厚生大臣も来ておらない、これでは困るのですけれども、先を急ぐために二つ一緒に言いますから、この問題に対して的確なひとつ結論を出してください。これはいままでの討論の中からこれだけはっきりしたいと思う結論です。  それは、独立製錬所は鉱山保安法の適用になっておらない。現在、あらゆる鉱石を海外に求めるという現状からして、鉱山保安法改正して独立の製錬所の監督を行なうべきでないか、こういうようなことに対して大臣は、その改正の用意はある、こういうように答弁されたけれども、そういう改正の用意があると、こういうようにはっきりこれは認めていいかどうか。
  242. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 独立製錬所の取り扱いにつきましては、これは保安法だけではなくて、鉱業法との関係が実は深うございます。したがいまして、現在ございます大気汚染防止法、それから水質保全法、それから鉱山保安法、鉱業法、全部をひっくるめて法的規制をいずれの形でやるかということはできるだけ早急に検討し、次期国会までには間に合わしたいというふうに考えております。
  243. 島本虎三

    島本委員 安中と黒部のこの製錬方式は乾式、同様な方式であり、また安中東邦亜鉛は日本第一である。それから黒部の日鉱は、これは日本第二の亜鉛、カドミウムの製錬所である。鉱山保安法対象外であっても、当然通産省は日鉱三日市製錬所を調査すべきでなかったのかというのですが、これはどういうことですか。
  244. 成田寿治

    ○成田説明員 お答えいたします。  安中製錬所の問題が起きましたときに、当然これと同じような公害を起こすような製錬所、独立製錬所を含めまして調査すべきであったのですが、法律上の取り扱いが保安法の対象になっておらないという点から調査漏れになって非常に遺憾に思っておりますが、今後は独立製錬所といえども行政の運用によって同じように十分注意してまいりたいと思っております。
  245. 島本虎三

    島本委員 いまにしても厚生大臣が来ない以上——通産関係の締めくくりは一応終わりました。厚生関係だけ残ってしまいましたのはまことに残念であります。しかし、これほど熱心に、これほど前向きに、これほど積極的にやっているのに厚生大臣が来ないというようなことはまことに残念だ。来なければ副大臣もいるはずなんです。副大臣も来ておらない。孤軍奮闘しておるのは公害部長だけではありませんか。ここにしてれんびんの情を、こう言うのは少しおかしいのですけれども、しかしそれにしてみても、公害がいま一番大きい問題だというそのさなかに、こういうような体制じゃ困るのです。これはもう自民党政府の責任ですから、これはやはり委員長においてもこの点十分考えておいてほしい、こういうように思うわけです。これは一体どうしたらいいか、委員長の判断をお待ちいたします。
  246. 山本幸雄

    ○山本(幸雄)委員長代理 ただいまそれぞれ両大臣は常任委員会のほうに出席して国政を審議中でありますので、これが済み次第こちらに参られることと思います。それで御了承願いたいと思います。
  247. 島本虎三

    島本委員 じゃ、この一つだけは保留しておきます。そのときにはっきり決着をつける、こういうようなことにして、私の質問を終わらせてもらいます。長い間ありがとうございました。   〔山本(幸雄)委員長代理退席、島本委員長代   理着席〕
  248. 島本虎三

    島本委員長代理 米原昶君。
  249. 米原昶

    ○米原委員 私も宮澤通産大臣に伺おうと思っていたのですが、ほかの委員会で来れないということで、私の聞こうと思うのは関連していることなので、幸いにして佐藤経企長官が見えていますから佐藤長官にお尋ねしたいと思うのです。  第一に、私、この前、黒部市で起こったあのカドミウムの問題について、黒部に行きまして工場も見てきた。そのときに、同時に神通川のイタイイタイ病の患者のところにも行って、いろいろ事情を聞いたのです。その中で、当時は五月二十一日でしたが、一番大きな不満というのは、県庁やその他の当局がいままで調査に来て、いろいろ健康診断もやったし、あるいは土壌の調査もやったし、いろんなことをやっているのに全然結果を発表しない、ひた隠しに隠しているということだったわけであります。で、それがその後、もちろんこれは地方新聞がこの資料をすっぱ抜いたということから取り上げざるを得なくなって、ああいうことになってきたわけですが、この公害の問題解決の場合にいろんな資料が隠されて、しかもそれが場合によってはもう二年も三年も隠されている、事が重大になってから発表する、このやり方が非常に問題だと私は思う。当然これは国民を信頼しない、住民を信頼しない、この態度では公害の問題は解決つかない、こういうふうに思うわけです。黒部のほうは発表しましたけれども、神通川のほうは、実はイタイイタイ病患者のところへ行ってびっくりしたのは、二年前に土壌の検査をするといって持っていっているんですね。おそらく重大な結果が出たのだろうと思うけれども、これも隠されているということで、何とかこれ解決の方法ないかということを要請されたわけですが、もうそうなりますと、政府も県庁も全く住民は信用してない。私たちはそういう場合にもう民間で独自に科学的な調査団をつくってでもやるよりほかない。どんどん下のほうから重大な発表を行なっていかざるを得ないと思うのです。今度起こりました牛込柳町の四アルキル鉛の公害の問題にしましても、これは民間の医療団体が発表したことが契機になって大問題になってきたわけであります。そういうやり方でもやらないとこれは解決つかぬじゃないかということを痛感するのです。  そこで、大臣にお聞きしたいのは、そういうふうに重大な資料を隠していく、こういう態度を今後もとられるのかどうか。これは地方のほうでずいぶんやっておりますが、ことに富山県の場合は、さっきも大臣のお話があった工場誘致なんということに特に力を入れた県だと思うのですが、そういうところで県当局がとかく隠す態度をとってきたということがあると思うんですが、こういう問題に対して基本的な態度をまず聞きたい。今後どういうふうな態度でいかれるか。
  250. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 私どもといたしましては、別に、政府が特にできるだけ隠すという、こういうものの考え方で今日まで臨んではいなかったと思うのです。ただ、しばしばそういう点について誤解のあったことも私は事実だと思います。それからまた、あるいはほんとうに隠した例もあるかもしれません。いま御指摘の具体的な例になりますと、富山県の場合には、これは、実は国からの依頼調査でも何でもない。県が独自で一般行政の一環として調査をした。ですから、県の考え方として、どういう考えでそのときに発表をおくらしたか、これはちょっといまわかりませんけれども経済企画庁では、御存じのように基準の設定をやっています。その際の前提として、水域の指定の調査をやり、そうしてまた、基準を設定する前にまたあらためて調査をしています。その場合に、相当、実際は県に委託しています。この委託調査を県から受け取ります。受け取るんですけれども、これについては、専門家のことばですが、解析をしておるわけです。どこの工場とその流水の中の汚濁との結びつきというものが、たくさん工場があるわけですから、どういう因果関係になっておるか、こういう解析その他をしなければなりません。そうした解析にわりあいに手間どったりして、県で調査が行なわれて企画庁に持ってきたものは相当時間がかかって発表されることがあります。  ところが、たまたま何らかのことで、地元でもってその県に委託した調査が漏れたということが最近ありまして、そこで、企画庁から委託を受けた調査なんだから、私のほうとしては独断では発表できない、こういうような説明をしたりしています。そういうことから非常に誤解を生みやすい。  そこで、解析の結果は結果でよろしいから、とにかく県で調査したもの、われわれの委託したものは、少なくともわれわれのほうに報告をする。すると同時に県のほうでも発表してもらう。つい先日そういう具体的な例があったものですから、そういう通達を出したのであります。  そういうようなことで、やはり公表のしかたというものは公害行政の重要な一環でありますから、われわれもいたずらにこれを隠蔽するということは決してよくない。これは、住民の立場に立って見れば当然のことであります。ただ、率直にいいまして、調査にもいろんな調査がある。厳密な調査もあれば、一応の、しろうと的な調査もあろうと思います。そういうものがいたずらに乱れ飛ぶということは、これまた事態の進行をミスリードすることもないとはいえません。特に、いわゆる病気に関係する問題については厚生省調査をしていますが、疫学的な見解というものにいろいろと見解の相違があったりして、あるいは発表そのものについて慎重を期する、こういうこともあり得ないことではないと私は考えています。  具体的に従来どういうことであったかということはちょっとつまびらかにできませんけれども、原則としては、できるだけ公表を早める。そうして、何か特別の条件のあった場合に、多少その公表をおくらせるということがあったとしましたならば、それについては十分その点を吟味してみなければならない、こういうふうに考えています。政府としては、できるだけそうした方面において、住民の意思に逆行するようなことは、公害行政の一環としてもすべきではない、私はそういうふうに考えています。
  251. 米原昶

    ○米原委員 政府基本的な考え方はわかりました。  ところで、非常に重大な問題が一つそれに関連してあるのです。これは福岡の通産局で調査されたのですが、重大な結果が出ているので、おそらくわかっていると思うのです。この洞海湾の調査は、一部は発表されておりますけれども、去年行なった調査は、あの北九州の重工業地帯、各大工場から排水されるそれの調査です。排水口のところで排水の調査をやられた。ところが、それは非常に重大な結果が出ている。私、その一部を知っています。しかし、これは大工場の協力を得て調査したから、工場が認めなければとかいうことで発表されないそうでありますが、それこそ大企業を擁護する態度だとしか私には思えません。こういうことが許されていいかどうか。  私、知っている範囲を申し上げます。たとえばシアンです。もちろん、洞海湾は、まだ指定水域には指定されてないけれども、経企庁では指定水域にする方向で検討されているということを聞いておりますが、シアンが、たとえば八幡化学の排水口からは三二〇〇PPM出ている。水質保全法の指定水域の場合、排水口での最高値は一PPMです。ところが三二〇〇PPM、三千二百倍です。こういうものが出ている。あるいは京阪煉炭からは四二〇PPM、三菱化成の排水口からは八八〇PPM、新日鉄からは二五PPM、三原金属工業からは一一・四PPM。これはたいへんな問題です。おそらく、これは相当の措置をとらなければならぬ問題だと思うのですがね。それだからといって、すぐに人体に被害が起こるという問題じゃないかもしれぬ。これはたいへんな問題だと思うのです。こういう重大なものをなぜ発表されないか。これは当然公表さるべき性質のものだと思います。私、非常に重大な数字だけあげたので、そうでないものもありますが、こういうものをなぜ発表されないかということについて聞きたいのです。
  252. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 現在の調査においては、御存じのように指定水域になっておりません。指定水域になっていないものですから、立ち入り調査もできない。立ち入り調査ができないから、どうしても会社の了解を取りつけなければならない、こういうたてまえになっているのです。そういう前提であるものですから、これは表向きにしておらない、こういうことです。ですから、指定水域にしましてから後は、たとえば環境基準というものを越しているかどうか、こういうようなことについては、これは発表してもよろしいけれども、そういうことで、現在の調査のたてまえ上、発表しておらない。これについては、別に大企業とかいうことでなく、ほかの企業も同じような関係でありますから、しいて大企業主義であるとかなんとかいうことは、別に関係はないと思います。ただ、現在の調査のやり方というものは、いわゆる立ち入り検査というものがないために、やむを得ずそういう方法をとっておる。私は、それよりも、すみやかに基準を設定して、それが実質的に改正せられるということがやはり急がれる問題であろう、こういうふうに考えています。いずれにしても現在の調査体制ではそういう方法をとらざるを得ないわけであります。
  253. 米原昶

    ○米原委員 指定水域にされてないから会社側に協力を求めた、会社側は発表を望んでないということだと思いますが、そうしますと、こういう数字を見ますと、企業は重大な社会的の責任をやはり負わなければならぬです。これを発表されないということは、大企業か中企業もあるでしょうが、やはり企業を擁護するということが考え方の根底にあるのじゃないか。これでは、公害の問題で住民に協力を求めて訴えていくというようなことはできない。これは富山県のことだけをいっていられない事態じゃないか。私は、これは、この委員会でも当然取り上げて、公表させるべき性質のものであると思うのです。
  254. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いま申し上げましたように、それはそういう考えもありましょう。いまの行政が、そういうことで、立ち入り調査をできないたてまえでもって調査を円滑にする。また、新たに基準を設定をするときも、やはりそれだけの説得をしながらやってまいっています。そういうこともありますから、この数値を発表しないこと自身がそんなに基本的な問題であるかどうか。その結果としての流水中の値というものを発表しているのでありますから、それが個々の排水口からどう出るかということは、国の調査では協力を得て確保しておりますけれども、しかし、基準を設定し、そして水質保全の行政を遂行していく上について障害になるということは考えていません。
  255. 米原昶

    ○米原委員 水域の指定は、もちろんそれ自身として急速にやるべき事態は、この結果であらわれておると思うのです。それはそれとして、これは指定水域でなくても、たとえばシアンですから、保全法だけでなくて、毒物劇物取締法でも規制されていると思うのです。シアンの場合、二PPM以下に薄めて捨てることになっているはずです。そうしますと、これで見まして、三千二百PPMというようなものが出ているとすれば、これを、ただそういういきさつがあるからといっていつまでも発表しないというような態度ではいけないのじゃないか、こう考えますが、いかがでしょうか。
  256. 西川喬

    ○西川説明員 私どものほうにも数値は参っております。公表は、諸般の事情で、ただいま長官から答弁いたしましたとおり公表はできませんけれども、ただ、いま先生のおっしゃいました数字は、単位が間違っているのではないだろうか、そういうふうにあれしております。
  257. 米原昶

    ○米原委員 単位が間違っているというのは、けたが間違っているのですか。
  258. 西川喬

    ○西川説明員 はい。
  259. 米原昶

    ○米原委員 しかし、水質基準の最高値と比べると、やはり何倍かになっていることは間違いありませんね。
  260. 西川喬

    ○西川説明員 現在指定水域にはかかっておりませんけれども、毒劇法のあれによります二PPMというのは上回っておるわけでございます。ただ、この毒劇法の問題に関しましては、毒劇法そのものは、いわゆるシアンというものを毒物として取り扱うときの取り扱い上の規定である。ところが、洞海湾の場合に出ておりますシアンの場合には、コークスを製造する過程でいわゆる排出物として出てきてしまう、そのような問題があるようでございます。そういうような問題になりますと、厚生省のほうの見解ですと、毒劇法そのものの直接の対象とするのは困難ではないだろうか。ただ、水質保全法によりまして指定水域をかけましたときには、そういうことにはかかわりなく、排出物の中に入っておれば、これは当然基準の対象となり得るということでございます。
  261. 米原昶

    ○米原委員 この問題については、すみやかに指定水域にされて、そしてやはり処置をとらないといけないと思うので、やはりこういうものはすみやかに公開して、そして国民の納得を得る形で措置をとっていただきたい、こう思います。  私の言った数字が若干けたが違っているようですけれども、全部が違っているはずはないと思うのです。  次に私、いま申しました黒部の三日市製錬所で起こったカドミウム汚染の問題です。  昨日も、日本鉱業の社長が参考人として見えまして、社長に対して私ただしたのですが、この社長の説明には私は全く驚いたのです。御存じのように、日鉱は、あの事件が起こって、住民が憤慨しまして、操業を、初め二割短縮、いま四割短縮をやっている状態です。ところが、ここでの参考人の説明だと、現在では全然公害を起こしてないのだ、あすこから排出される水はとにかく〇・一PPM以下なんだ、だからもう一切起こってないのだという態度なんですね。つまり、過去にカドミウムの製造をやってなかった時代に膨大なものが放出されている、それが積もり積もっていま公害を起こしているので、現在ではそれは基本的には起こってないのだ、こういうことを言っているわけです。そうすると操業短縮ということ自体がおかしなことだ、現在の施設では全然起こしてない。これは根本的に認識を誤っているのだろうと思うのです。  そこで私は、きのうも社長に聞いたのです。つまり私は、日鉱自身が出している雑誌に、あすこの技術者が学術論文を出している。三日市製錬所の製錬過程について詳しい数字を出しているのが二年ほど前の雑誌にある。これに基づいて計算していった。そうしますと、原料として入ってくる亜鉛、焼鉱そのものから製錬をやって最後的にカドミウムが何トンとれるかということはわかっているわけですね。すると、もとの原料のところに何トンのカドミウムが大体平均して含まれているかもわかっている。最後の製品のところでは何トンのカドミウムになるかもわかっているわけです。これを引き算してみますと、相当のカドミウムが、単に排出される水の中に入っているだけではなくて、いろいろな粉じんになって飛散している。現在でもそうだということは計算的に出るわけなんだ。つまり、そのやり方でやってみますと、これは大ざっぱな計算なんですが、私、計算をやってみて、専門の学者にも、こういう計算でいいのかということを聞いてみました。それはいいだろう。その計算でやってみますと、一年間にカドミウムが九十六トンぐらいもまだいろいろな形で放出されている。こういうことはもう当然だと思うのです。完全にそういうものを吸収してしまうなんという工場は実際にはないと思う。しかし、この場合、相当のものが出ている。前のように、もうカドミウムを、生産して全部外に流してしまったという事態とは違いますけれども、現在ある程度までやっています。しかし、実際は相当のカドミウムがいまでも飛散している。だから、公害がもう終わっているのじゃなくて、今日でも行なわれている。部分的な、いまよくいわれているこの基準というのをとってみましても、それは放出の基準だけであって、これに何%含まれているかというような検査のしかたであって、問題は、それより重要なのは、かつてはあの工場も小さい工場だったのですが、いまはとにかく日本で二番目の亜鉛の製錬所になっているわけですね。そうしますと、ある程度カドミウムの発散が押えられているにしましても、全体の生産量でふえているわけですから、単に率だけで言っちゃまずいと思うのです。実際のカドミウムの絶対量がどのくらい放出されていて、それは完全には把握できないのでしょう。しかし計算からいうとそういうことになる。一年間に八十トンから九十トンのカドミウムが実際はどこかに出ているんだということになりますと、その計算をやって私は押えなくちゃいけないんじゃないか、そういうふうに考えるのです。  そこで、いままで通産省がやられたやり方を見てみましても、そういうふうに原料にどのくらい含まれているか。結果としてできた製品に結局どのくらいのものができているか。この差額は何らかの形でどこかに逃げ込んでいるわけですね。それが公害を引き起こしている部分だ。少なくともそういう態度で対策としては臨まないと、政府のほうで基準を設けて、排出される水の汚染はこの程度の基準だったらよろしい、これ以下だったらよろしいとか、粉じんで収集されるものはこの程度だったらよろしいとか、そういうことをただきめただけでは不徹底で終わるのじゃないか。実際はどこかから漏れてしまうのじゃないか。実際はそのためにいろいろな公害が引き起こされていて、土地の住民が、むしろそんな数字よりも一番よく知っているのです。そういう点をどういうふうに考えられるかということについて聞きたいです。
  262. 成田寿治

    ○成田説明員 お答えいたします。  カドミウムのバランスの御意見でございますが、この三日市製錬所で年間扱う原料鉱は四十四年度ベースでございますが、十九万五千トンでございます。そしてその鉱石の中でカドミウム分が〇・二二%ということになっておりますので、原鉱石の中では四百二十九トンのカドミウムが含有されているという計算になります。そしてこの三日市製錬所の亜鉛の製錬工程は、敦賀工場で焙焼した亜鉛鉱石を受け入れまして焼結機で焼結したあと、電気炉で蒸留し、そこで産出される蒸留亜鉛を精留工程に送って、残る残滓を堆積場に放出しているという工程でございますが、この計算で見ますと、この四百二十九トンの鉱石に含まれておりますところのカドミウムが、この製錬工程でできますところのカドミウムの地金に七八%とられてまいります。それから中間辺に二一%カドミウム分が含まれてまいります。それから亜鉛地金が精留工程で出るのでありますが、そこに八%くらいが含まれる。合わせますと九八%のものがカドミウム地金なり亜鉛地金なり中間製品に含まれてまいりまして、残るものが二%ということに相なるわけであります。  この二%のカドミウム分が排水処理槽の中に沈でんされまして、そこで中和処理等を行ない、カドミウム分がほとんど出ないようなかっこうで処理されて、そして粉じん等として排出される量は環境基準をはるかに下回る状態で、排煙等の基準を下回る微々たるかっこうで出るということになっております。  それで残りの二%が全部排出されるのでないのでありまして、それは中和槽で沈でんされ、そこで排出されないようなかっこうにされていますが、この二%といいますのは、年間で見ますと八・六トンということに相なるわけでありますが、この八・六トンもそういう中和排水処理槽の水槽の中でいろいろな処理、中和されて、排水として出るのはもちろん基準量を下回るようにいろいろ設備管理され、そして問題を起こさないように十分管理されておりますが、今後もこの排水の問題あるいは沈でん槽の処理の問題は従来以上に厳重に管理してまいりたいと思っております。
  263. 米原昶

    ○米原委員 ただいまだいぶいろいろな数字をあげられました。おそらく今度の事件が起こりまして数字をそろえているという印象を私は受けるのです。そのために今度の事件が起こる前に、会社の技術者が出している数字をもとにして私計算したのです。ですが、いまおっしゃった数字をもとにして私はさらに検討を加えて、別な機会にその点はもっと明らかにしたいと思うのです。  もう一つこの三日市製錬所に関連して、先ほども質問がありましたが、鉱山保安法が適用されていない。そのために鉱山保安局の直接の監督が行なわれてなかったという点が事実上の非常な落ち度であった。法的にそうなっているということでありますが、当然鉱山保安法改正し、また先ほどお話があった鉱業法も関連して改正して、こういう製錬所にも保安法が適用されるということをお考えのようでありまして、そういうふうにされること自体に私は反対しているわけじゃない。少なくとも公害問題ではそういうふうに適用できるように、そうして直接監督権を持って監督できるようにすべきだと思うのです。  そこで、お尋ねしたいのですが、簡単に言えば付属製錬所でないからということでこれが鉱山保安法が適用されてないということなんですが、ただし同じように問題を起こした安中の製錬所の場合には、全面的な適用じゃないが適用されているわけですね。これは鉱山保安法のたしか三十一条で鉱害に関する限り適用されているわけですね。しかもそれが一般的にはむしろ除外されていて適用される、こういう形になっていますね。そうだとしますと、鉱山保安法の第二条「第二項但書の附属施設の範囲は、省令で定める。」こういうふうになっていて、省令のほうを見ますと、その省令の中に一般的には適用しない、その中に安中製錬所その他の製錬所が入っているのですね。むしろ鉱山保安法は適用しないという項目の中に安中製錬所を入れてある。しかし、ここに入れてあるために、逆に三十一条、つまり一番肝心な鉱害の件については鉱山保安法が適用される、こういう形になっているということを私は知りました。  そこでお尋ねしたいのですが、これじゃずいぶんおかしなことだと思うのですがね。なぜ安中製錬所が適用されて——同じようにやれば当然三日市製錬所も適用される。事が鉱害に関するから三十一条で適用されているわけでしょう。そうすると、やはりこの点、三日市製錬所に対しては、鉱害という点がもともと抜かっていたのじゃないか、その点に落ち度があったのじゃないか。安中製錬所の場合はやはり鉱害を起こす可能性もあるということが考えられるから、鉱害に関する限り適用しているわけですからね。そうすると、同じしかたでやれば、実際は鉱山保安法の適用を受けることも可能であったということになるのじゃないかと思いますが、この点をひとつ説明してもらいたい。
  264. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 お答えいたします。  ちょっとこの法律、複雑にからみ合っておりますので、おっしゃるような疑問が出るのは当然だろうと思うのでございます。そもそもこの鉱山保安法で鉱山とは何ぞやというような定義の中で、これは鉱業法の鉱山を引用しております。したがいまして、鉱業法の鉱山というのは山をさしておりまして、製錬所の場合は、それと密接不可分の製錬所——密接不可分といいますれば、自分の山で掘った鉱石をその山元において製錬するというのは、もう当然鉱業法並びに保安法の適用を受けます。しかし、遠隔地にある場合には、自分の山から出た鉱石を多量に使っておるという場合に、初めて法律上密接の関係というふうな解釈になってまいります。ところが三日市の場合には、これは敦賀の製錬所から焼鉱として受け入れておるというふうなことでございますので、山との関連が断たれてしまっておるというふうな状態になっておる。ところが安中製錬所の場合は対州という自分の山から鉱石を持ってきてそれを原料に使っておるというふうなことで法律が適用されておるというふうな仕組みに実はなっておるわけでございます。
  265. 米原昶

    ○米原委員 そういう解釈だろうと思っておりました。ところでちょっとふしぎなのは、いま安中の例をあげられましたが、自分の親の山から持ってきている製錬所だということなんですが、その山から持ってくる原鉱は一万三千八百トン、実際はやはりほとんどほかの山の鉱石を買っているわけです。主要なものは自分の親の山じゃなくて、別の山の鉱石を買ってやっているわけですね。十五万六千二百トン。そうなりますと、三日市の製錬所の場合でも、もとは違った別々のものだったらしいけれども、いまではやはり日鉱の関係の山になっているわけでしょう、北海道から持ってきているというのは。同系統の会社の山から持ってきた鉱石を使っているわけです。そうだとすれば、もともとはそういう法解釈で区別されていたという事情はわかりますよ。しかし、この事情というのが、解釈してみると、実に不合理なんですね。安中の場合も大部分はほかの山の石を買ってやっている。こちらのほうには適用されて、別は適用されない。事情が変更しているわけですからね。そして鉱害という問題はこれほど大きな問題になっているわけですから、当然これは適用するような措置を、簡単にいえばさっそくとるべきじゃないか。法改正はけこっうです。鉱害に対する対策強化のために鉱業法と鉱山保安法改正されるというなら、私たちもその趣旨には賛成なんですが、そうじゃなくていますぐにこれは適用できるのじゃないか。つまりこれは省令の問題ですから、通産省の省令でできるわけです。そうして安中の製錬所を入れたと同じように、三日市製錬所その他五つの製錬所がいま適用されていないということですが、あそこにこれをひとつ省令で入れてしまえば、直ちに直接監督ができるということになるんじゃないかと思いますが、そろいうことは一体できないのか。またやられる意思はないのかどうか。
  266. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 もちろん先生もおっしゃいますような点につきましては、現在検討を進めております。安中の場合は、確かに自分の山からのものは少のうございます。ところがあれができました当初は、相当自分の山からのものが多うございました。したがいまして、かなりの部分というふうなことで一応指定はしております。しかし、その後輸入鉱がふえたために、自分の山が減ってはきましたけれども、だからといって鉱害がだんだん問題になってきた段階においてこれを取りはずすということはむしろ適当ではないということで、それはそのまま実は残しておる。いまおっしゃいました三日市の場合につきましても、これがストレートに自分の山からでございますればよろしいのでございますけれども、そこにもう一つ製錬所がかみ合ってくるというふうなことになりますと、法律上の非常な疑義を実ははさんでおるわけでございます。したがいまして、むしろわれわれとしましては、何らかこれについてもそういうものがうまくはめ込めないかということを検討はしております。したがいましてこれが法律上の運用として許されるのならば、もちろんわれわれとしては早急にもやりたいと思っておりますが、法解釈上はちょっとむずかしいんじゃなかろうかというふうなことで、もしそうならば、先ほど言いましたように、いろいろな体系を全部洗いまして、早急に法的な規制のほうへというふうなつもりでおります。
  267. 米原昶

    ○米原委員 鉱山保安法の趣旨から言うならば、やはり鉱害の防止ということは、そのうちの少なくとも重要な一項目なわけです。しかもその点が現在非常に重要性を帯びてきた。むずかしい点は若干残されておるかもしれませんが、いま言った点は省令の問題ですからね。法の改正をしなくてもこれが適用できるというなら、現地に行きましても、なぜ鉱山保安法を適用して直接の監督をやらぬかということが住民の一番大きな不満の一つなんです。そういう点を考えましても、法改正はもちろんよろしいですよ。しかし、それまでにいますぐにやはり監督をされるようにこれは切望してやみません。
  268. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 もちろん十分検討はいたします。しかし、それまでの間におきましても、これ以外にも実は買鉱をしておる製錬所が独立製錬所としてございます。したがいまして、そういったものにも保安法が適用されておると同じような強さでもって今後は指導監督をしていく。その間にいろいろ法律的な問題は十分われわれとしてももちろん前向きで詰めていきたいというふうに考えております。
  269. 米原昶

    ○米原委員 それでは私、企画庁長官に質問したいのですが、私の質問は先ほどのでけっこうですから、長官何かからだの都合が悪いらしいので、御退席なさっても私自身はけっこうです。   〔島本委員長代理退席、岡本委員長代理着席〕  それからこの問題で農林省のほうに伺いたいことがあるのです。というのは、すでに御存じだと思いますが、あの三日市製錬所の出す廃棄物で、周辺の田畑が非常に汚染された。そこでことしはあそこに対する収穫について停止命令を出したということは御存じだと思うのですが、同時に、現地へ行ってみますと、工場が周辺の農民から、農地をいままで相当買収しているんですね。しかもその買収の問題にからんで非常に問題が起こっております。つまり買収する場合に、相当農地が汚染されて農作物がとれなくなっているわけです。そういうところにある意味ではつけ込んで、しかも市役所を動かして半ば強制的に売らされたと言っておりますが、そこが二十ヘクタール、七万坪以上の農地が工場の敷地に転用をされるので転用の申請が出ているわけです。七万坪の土地が買収されている。農地法によると、五千坪以上の農地の転用の場合は農林大臣の許可が要ることになっていると思うのです。現地では、私は市長に会って聞いたのですが、転用許可の手続を、書類審査はすでに終了の段階に入っている。通産局と県はおおむねこれを認める方向で進められているというのですが、この段階になってあの騒ぎが起こったわけです。  そこで、被害者の農民がいままでのいきさつを全部、これは地方の新聞に出ておりますが、半ば強制的に坪三千円でだまし取られたんだという問題が一つ起こっております。この場合に一応書類審査が終わって、おそらく転用許可の手続がとられると思うのですが、そういう問題が含まれているので、これは十分慎重な態度で対処してもらいたいのですが、農林省のほうはどう考えられるか、これを聞きたいと思うのです。
  270. 小山義夫

    ○小山説明員 日本鉱業のほうから、三日市の製錬所で、製錬所の施設の拡充と福祉施設を建設するという計画があることは私のほうも承知をしております。  これに対しまして地元の富山県当局は、私ども聞いた範囲では、公害の防止対策が十分にとられない限りはそういう施設の拡充をすることは適当でないという態度で、いま会社のほうに対して非常に強力な指導をしておるというふうに聞いております。もしこの転用の申請が出てまいりますと、先ほどお話しがありましたように、許可権者は農林大臣ということになっております。私どもの方針としましては、転用の申請についての正式の手続はまだとられておりませんので、明確な事業計画の中身を審査することができないわけでありますが、もし今後申請書が出てまいりまして、その施設内容を見て、公害のおそれがある場合には、もちろん担当の専門家であります公害担当部局とよく協議をいたしまして、その事業計画を見て、公害の防止施設がもし不十分な点がありますれば、これは絶対許可はしないという方針で臨むつもりであります。  先生さっき言われましたいろいろ手続がありますというのは、おそらく事前の審査を求められたことが去年の暮れにございます。これは正式の転用申請の手続の前に、立地が適当であるかどうかということを中心に事前審査をする制度になっております。その手続は確かにとられておりますけれども、正式の許可手続にまだ及んでいないという段階でございます。
  271. 米原昶

    ○米原委員 そういう事情だということを実はいま初めてここで知りました。ただ問題は、いまおっしゃったように、会社の側は施設の拡充ということでこの土地を充てようとしておる。これは前に安中製錬所で起こった問題とよく似ておるのですが、公害を防止することを十分にやらないうちに新工場をつくるということで、実はさらに公害を広げるのではないかと住民は戦々恐々としているのです。私知事に会ったのですが、知事のほうは施設を拡大するということを全然知らなかった。施設を拡大するならそれは問題だというようなことを言っておりました。ただ、すでに使いものにならなくなった農地を買収したぐらいに受け取っておったので、これは会社側の言っておることと全く違うのでびっくりしたのですが、そういうふうに出ているとすれば、ぜひこれは公害防御の観点から慎重に扱ってもらいたいと思うのです。  時間が非常に少なくて、あと実はもう一つ問題になっている四アルキル鉛の問題です。これが最近非常に問題になっておる。昨日からの説明を聞いておりますと、通産省の方針として、自動車ガソリンによる鉛害の防止対策について方針が出されて、そうして石油業界を強力に指導するというので、ハイオクタン・ガソリンについては、おそくとも七月一日までに加鉛量を半減し、レギュラー・ガソリン以上の加鉛を禁止する。レギュラー・ガソリンについても極力加鉛量を減少させるというような方針を出しておられます。これは通産省からいただいた資料なんですが、プレミアムとレギュラーの加鉛量が各会社によってどのくらいな割合であるかという数字を見ますと、一般的には加鉛量はプレミアムのほうが確かに多いのですけれども、会社によってはレギュラーのほうがプレミアムの場合よりも加鉛量が多い、そういうようなのもありますね。こういうことが数字を見てわかりました。もちろん、これはもとの石油の精製のやり方とか、いろいろな問題が含まれているので、加鉛量が多いから必ずしもオクタン価が高くなるということじゃないということがこの数字からでも逆にわかるのではないか。通産省の出されておる方針で、ハイオクタンのガソリンのオクタン価は九七程度、レギュラー・ガソリンのオクタン価は九〇程度に今度やるのだということで、その程度を出されておりますが、一体九七程度に押えるというのはどういう意味なのか、なぜ九七程度に押えるということを基準に置くのか、その根拠を聞きたい。
  272. 成田寿治

    ○成田説明員 お答えいたします。  さっきの各社別の表でプレミアムよりもレギュラーの加鉛量が多い会社がある、おかしいじゃないかというようなお話がありましたが、これは実は二つくらいたしか例があったと思いますが、これは日本海岸の国産原油を処理しておる製油所でございまして、国産原油は性状が輸入原油と違いまして非常にオクタン価が低い性状になっておりますので、自動車用のガソリンをつくるためには鉛を入れざるを得ないという非常に特殊事情によるものであります。それ以外は、全部レギュラーのほうが半分程度の低い率になっておると思います。  それから、この前の六月二日の自動車公害対策委員会の決定にありますところのハイオクタン・ガソンリについては、加鉛量を二・二ccを半分にして一・一ccガロンにするということ、これを七月一日から実施せよということになっておりますが、その際自動車のオクタン価を九七程度とするということになっております。それでいまハイオクタン・ガソリンについて加鉛量を半分に減らすということになりますと、実際オクタン価はもっと下がるわけでございます。というのは、いままで鉛を入れまして一〇〇%にしておりますが、それを鉛をとってしまいますと九二とか九三ぐらいまで落ちるのじゃないかという見通しを持っておりますが、そうなりますと、いまの自動車の走行に非常な支障を来たしますので、石油業界にも鉛を半分に減らしながら、いろいろ分解装置とか改質装置等をうまく利用して、そしてオクタン価の高いガソリンをつくらせないといけない。そういう意味で、九七以下にはオクタン価を下げないように保証せよという意味で九七というのを出したわけでありまして、ただ鉛を半分にするというだけなら、それ以下に落ちるところを、九七まで保証しないと自動車の運行その他いろいろ国民生活上支障がある、急激な変動を与えては困るという意味からの九七でございます。
  273. 米原昶

    ○米原委員 時間がありませんから簡単率直にお聞きしますが、実はこの事件が起こっていろいろな新聞にいろいろな専門家の意見が出ている。その中に通産省の機械試験所の方の話された意見も出ておりますが、その中には、自動車の場合このオクタン価を八八から九一——まあ九〇以上なら問題ないというようなことを言っておられます。これはそういう方ばかりでなく、大学の教授の人も、ハイオクタンのガソリンを使わなければならないというのは迷信にすぎない、こういうような発言もあります。実際に通産省石油業務課で出しておられる「自動車公害について」というのを見まして、いまから四、五年前には平均オクタン価八八とか九〇以下でも走っているのです。それでもちっとも不便はなかった。どうもモーレツ・ダッシュなどというああいう宣伝で加鉛ガソリンを売りまくっているということが実情じゃないかという印象が強いんですよ。実際に、九七にどうしてもしなくちゃならぬというのが私はいままでの説明じゃよくわからない。むしろ思い切って九七に無理やりにしなくてもいいし、また無鉛化したからといって、そんなにオクタン価を下げなくてもいい別な方法があるのじゃないかという問題についても、いろいろな学者や技術者が述べております。あるいは、確かに国産のガソリンはオクタン価が非常に低いというのを、いろいろなガソリンをまぜるとか、やり方によって十分できるのだということが報道されていますね。こういう形でやらないと、いまのやり方でやりますと、先日も山口県の工場で、一方では鉛をなくするのだという方針を出しながら、一方では東洋エチル株式会社というところでエチル鉛の大量な生産をする予定の工場の認可がおりて、間もなく操業を開始する。この会社の生産計画というのを見ますと、四十六年が年間一万七千八百二十トン、これは現在輸入している量よりもこえていると思うのですね。五年後には二万七千七百十トン、こういう生産をするという計画さえ立てられておる。そういう鉛を全部禁止することになれば、もちろんこういうものはやらないのだとおっしゃいましたが、思い切っていまのうちにそういう方針でいかないと、こんなことをやってずるずると延ばしているとかえって逆な結果になってくる、実際はいつまでも鉛をなくすることができないような事態に実はなってくるのじゃないかということを心配するのです。この点について、ひとつ説明してもらいたい。
  274. 成田寿治

    ○成田説明員 最初の問題でございますが、昭和四十年度のオクタン価は、プレミアムは九八%、それからレギュラーが八八・七%ということになっておりまして、その間、四、五年の間に九八%が一〇〇になったということ、これは先生御指摘のように、いろいろ石油会社の過大な宣伝によってそういう需要を不当に拡大したんじゃないかという御指摘もありましたが、われわれもその点はないとは言えないと思います。したがって、六月一日に石油連盟でそういう宣伝はやめようという自粛措置もとっております。  ただ、それもまあ一つの原因でありますが、もう一つは、自動車がだんだんエンジンの圧縮比が上がってまいりましたので、九七以上のオクタン価がないと動かないという車も一割以上出ております。そういうことで、自動車のほうの事情からもオクタン価が一〇〇まで上がってきたということであります。  それから九七以下にすると、さっき言いましたように、いまのスーパーガソリンを使うような自動車が四十車種ぐらいありますが、そういうものが支障がある。まあ日本とアメリカ、いろいろ違いますが、アメリカでも九七無鉛化計画、政府の案でありますが、七年間は九七までを車によっては認めるという案も出ておりまして、いま急激に九七以下に落とすというのは非常に混乱を起こすのじゃないだろうかというので九七になっておるのであります。  ただ、将来の問題としては、なるだけ加鉛ガソリンは減らしてまいりますので、それに応じてオクタン価も当然下がるのでありますが、われわれとしては極力九七に近いものを確保するように、いろいろなオクタン価の高いガソリンをつくる設備を石油会社に相当無理を言ってつくらせて、車が必要とするようなオクタン価を維持するように心がけていきたいとは思っております。ただ、エンジンのほうの改良によって、あるいはその点の改質があれば、石油側としては非常にけっこうなことだと思います。
  275. 米原昶

    ○米原委員 時間がありませんから簡単に言います。  一昨日でしたか、通産大臣もハイオクタン使用の車は一〇%ぐらいという話だし、いまもそういう話でしたが、私、これもいろいろ聞いてみたのですが、確かに一部にはそういう車があるけれども、差しつかえない、いまハイオクタンを使っている車でも、そうでなくてもやっていけるんだ。実際にハイオク使用の必要のあるのは、国産車でいえば一%にすぎない。これは名前をあげてもいいですが、もう時間がありません。ほんの一部だと思うのです。そうだとすると、もっと徹底したやり方をやらないと、ただ加鉛量を減らすんだというやり方をやりましても、自動車は、いまの勢いではどんどんふえるでしょう。たとえば加鉛量を半分に減らしたところで、自動車が二倍にふえれば同じ鉛害を与えることになるのです。絶対量が問題なんです。一つ一つのパーセントだけではこれは解決つかない。日本でこういう問題が特に最初に大きな問題になってきた。これはある意味では日本の特殊性ですからね。狭い地域に人口が集中した、過密状態である。これが、しかもいま極端になっておる。そこに自動車が一ぱい走るわけですから、これが広いアメリカのような国や、ソ連のような国なら、同じことをやったところで公害にはならないですよ。   〔岡本委員長代理退席、山本(幸雄)委員長代理着席〕 しかし、そこが日本の特殊性なんで、こういう点、思い切った措置をとらないと、アメリカでこの程度でやっているからいいんだじゃだめなんですね。その点で私、どうしてもふに落ちないのは、一方で非常になまぬるい手で、実際上、結果としてはほとんど効果があがらないんじゃないか、そういうことをやりながら、一方では四エチル鉛をつくる工場を認可して、しかもいまの輸入量よりも五年後には二倍も国産できるような工場が生産を進めることも、いまのところとにかくとめる方針じゃないとおっしゃるのですね。全くこれはふに落ちないのです。これじゃ実際は無鉛化にはならないと思わざるを得ないのです。そういう点がありますから、この点は先日、赤松委員からも要請がありまして、この山口県の工場の問題については閣僚相談して、政府の統一見解を出してほしいということでありましたが、私もその点を重ねて要請して、質問を終わります。
  276. 山本幸雄

    ○山本(幸雄)委員長代理 大橋敏雄君。
  277. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 私は、北九州市の洞海湾の汚染問題と、同じく北九州市にいま起こっております降下ばいじん問題と、それから機関庫公害といいますか、この三つの問題点を若干お尋ねしてみたいと思います。  答弁者の時間の関係で、特に国鉄関係答弁者は非常に時間のことを気にしていらしゃるようでございますので、順番を変えて先にお尋ねいたします。  公害問題が全国的にクローズアップされてきている今日でございますが、聞きなれないことばではございましょうが、私は、機関車公害といいますか、機関庫公害といいますか、そういう問題をまず取り上げてみたいと思います。  その事例といたしましては、福岡県の直方市にある直方機関庫でございます。ここには蒸気機関車が常時三十数台というのが配置されまして、その蒸気機関車が排出している煙の量というものは想像以上のものでございます。そこに住んでいる地域住民の方々に及ぼしている公害というものは、これまた想像以上のものであったわけであります。私は、去る六月五日に現地を視察してまいりましたので、その視察した実情の上から数点お尋ねするものでございます。  まず申し上げたいのは、機関車の、いわゆる機関庫になっている、その周辺に及ぼしている公害問題は、先ほども申し上げましたように、想像以上のものであるにもかかわらず、いまの大気汚染防止法規制から全く除外されている。法の盲点といいますか、まるで野放し状態にあるということが最大の問題でございますが、具体的に内容を申し述べてみます。  この国鉄の直方機関区は、言うまでもなく筑豊地方のローカル線の配車の拠点といたしまして、常時三十七両の蒸気機関車を配置しまして、一日に百十八回の蒸気機関車の入れかえ等の作業が行なわれているわけでございます。したがいまして、そこから吹き出している煙というものはその周辺の上空をまっ黒にこがしております。ほんとうに昼間から薄暗い状態にあるわけでございます。  そこで、私は地域の有力者の方々にも会ってまいりましたけれども、中でも同市の山部地区、これは約千戸の世帯があるわけでございますけれども、風向き次第ではそれはそれはそのばい煙をまともに受けましてひどいものでございます。洗たくものなどは、特に白い洗たくものなどはまたたく間に黒みを帯びてくる、あるいはカーテンとか雨戸を締めても、その部屋の中にまでばい煙が入ってくる始末であります。また、たんすの中までばい煙が事実入っておりました。このような被害からのがれるために、その場所から移転していった人もおるわけでございますが、こういう状態の中にある地域住民は、非常に憤りを感じつつその対策を市とかあるいは運輸省、国鉄等に陳情もしたというわけでございますけれども、当局のほうは非常に消極的である。こういうわけで、私はきょうここでその対策についてまずお尋ねをするわけでございますが、とにかくいままで何回か国鉄にも陳情した。しかしながら、幸か不幸かその地域住民の中には数多くの国鉄従業員がいる。そういうことからでしょう、言いたくともものが言えないという立場にあるということも影響している。また、市当局のほうも、これはうわさでございますのでどうか知りませんが、国鉄から、直方駅から受ける固定資産税が、かなり多くの資産税が入るという立場もあり、非常に消極的にならざるを得ないというようなことらしいのですが、確かに国鉄もいままで何らかの姿でそれに応じた模様でございます。  それは、いわゆる機関庫の上に立っている煙突が二十数本ございますけれども、その煙突を何本か高さを高くした、あるいはいままでディーゼル機関車を三台入れた、この程度でございまして、これはそうした公害対策になったというような内容のものではありません。  要するに、先ほども申し上げましたように、蒸気機関車や機関区が大気汚染防止の規制から除外されているというところに大きな問題があるわけでございまして、これは厚生省あるいは通産省等に私は要望もしたいわけでございますが、現行大気汚染防止法には「工場及び事業場における事業活動に伴って発生するばい煙の排出を規制し、」いわゆる「「ばい煙発生施設」とは、工場又は事業場に設置される施設のうち、ばい煙を多量に発生する施設」、こうなっておるわけですね。   〔山本(幸雄)委員長代理退席、委員長着席〕 いわゆる船舶や蒸気機関車などの移動ボイラーについては全くの規制がないという現状でございます。  また一方国鉄のほろも、この大気汚染防止法に見合うような保安基準といいますか、そういうものも何もないというのが現状でございます。したがいまして、私は、まず通産省厚生省等に実態調査を願うとともに、法的規制を何らかの姿でやるべきではないか、このように考えるわけでございます。  まず、厚生省のほうからお答え願いたいと思います。
  278. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいまの直方の問題でございますが、直方の場合はたまたま石炭の生産地でもございますし、石炭の燃焼による蒸気機関車が残っておるということで、かような状態になっているようでございます。私どもとしましては、特にいま御指摘になりましたばい煙の中で、降下ばいじんといわれます、粒形の非常に大きなもの、これは主として生活妨害でございますが、これに対しまして、非常に小さな粒形の浮遊粉じんというのがどれだけあるか、こういう点を中心に県にも連絡しました上で実情を十分把握してまいりたいと思っております。  なお、具体的な数字がありませんでしたら、必要な場合、環境大気あるいは健康状態等についての調査もやる必要があろうかと思うわけでございます。もちろん、この具体的な住民の健康管理につきましては、保健所等を中心に十分指導してまいりたいと思っております。
  279. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 ちょっとお尋ねしますが、私は機関区に一番近い直方の西小学校というところに行ってまいりまして、校長先生、また、養護の先生にじきじき実情を聞いてきたわけでございますが、その小学校は、在籍六百人の児童がいる。ところがその六百人の児童の中に現実にいまぜんそく症状で休学している生徒が十九名おりました。また、それに近い症状を訴えている子供が百三十六名いたわけでございます。合計百五十五名、全体の二六%を占めている児童がぜんそく症状で苦しんでいたという事実を私は見てきたわけでございます。この症状は低学年になればなるほど多いわけでございますが、その校長先生も言っておりましたけれども、他の学校から転勤してきた先生が開口一番目にすることは、この西小学校の生徒は非常に弱いですね、どの先生も口をそろえて言うというのです。つまり他の学校の生徒に比べて、全体的に非常に弱り切った生徒が多い。これもやはりこうしたばい煙関係ではなかろうか、こう言っておりました。したがいまして、私はいままで公式的なデータは何ものもございませんので、厚生省としていわゆる人命尊重の立場、住民の健康状態の把握という立場から、すみやかに健康診断あるいは実態調査をやるべきではないか、やらせるべきではないか、こう思うのですけれども、この点についてお答え願いたいと思います。
  280. 城戸謙次

    ○城戸説明員 お答えいたします。  いまのばい煙の影響でございますが、これは実は私ども一般工場からのばい煙につきましては、四日市、千葉あるいは大阪等におきまして、五カ年間にわたりまして調査をしまして、最終報告が間まなく出てくるわけでございますが、そういう小学校の生徒を対象にしたわけでございますが、きれいな相関関係が出てくるとは必ずしも限らぬわけでございまして、非常にむずかしい点があるわけでございます。おそらく直方の場合におきましても、発生源がもし蒸気機関車だけであれば比較的単純かと思いますが、よほど計画的に調査しませんと必ずしもきれいな数字が出るとは限らないと思っておるわけでございまして、県のほうにも十分連絡しまして、現状でどういう把握をしているか、これに対してどういう見通しを持っているか、こういうことを聞きました上で、必要があれば十分な調査をいたしたいと思っておるわけでございます。
  281. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いま、県に事情をいって、必要に応じれば調査をさせるということでございましたが、現在のところ県もそんな積極的な姿で今日まできた姿はございません。したがいまして、これといった確たるデータも何もないということを私は見てまいりました。いま私が言わんとするのは、いかなる条件のもとにあろうとも、現実にそういう生徒がいまあらわれているというこの立場から私は要求しているわけでございますので、これは特にすみやかに強力な行政指導を行ない、健康診断ないしは実態調査を行なわせるべきである、これを強く要望いたします。  それから、これは通産省になるのでしょうか、いまさっき申し上げましたように、大気汚染防止法規制から全く除外されているかっこうになっているわけです。ですから、機関区のばい煙についてはまるで野放し状態である。これについて何らかの規制をすべきではないか、こう思うのですけれども、この点についてどのような見解をお持ちですか。
  282. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 お答え申し上げます。  発生源の関係から、これは通産省行政対象になっておりません。かりに取り上げるといたしましたら、運輸省規制するということになろうかと思いますが、そのためにはやはり法律改正で移動煙源である機関車その他を規制対象として規定する必要があろうかと思います。そういう意味で運輸省から相談があれば、これは前向きで検討いたしたい、かように考えております。
  283. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それでは国鉄の方にお尋ねいたしますが、いま私が申し上げましたような事情はおそらくまだ詳しくは掌握なさっていないと思いますけれども、私が申し上げましたその立場からでも、どのようにお感じになり、またどのような対策を立てようとお考えになったか、お答え願いたいと思います。
  284. 一條幸夫

    ○一條説明員 お答えいたします。  先生御指摘の直方の機関区は、御承知のように筑豊炭田の石炭輸送の機関車の根拠地でございます。私ども、いまお話がございましたような無煙化という観点から申しましても、それから国鉄自体の経営改善、近代化という点から考えましても、できるだけ早くこの蒸気機関車を使用しなくて済むような状態に持っていきたいと思っております。これがまず根本対策であろうと思っております。が、しかし現在まだ二千両の蒸気機関車が残っております。かつては五千五百両ぐらいございましたが、いまは二千両まで減っております。正確には二千両を割っておりますが、千八百両ぐらいになっておると思います。そこまで蒸気機関車は減ってまいっておりますが、これを一度に使わないようにすることは不可能でございますので、それまではできるだけ機関車の整備を十分にいたしまして、燃焼状態ができるだけいい状態で石炭が燃焼するように機関車を整備していく努力をいたします。  それからもう一つは、この直方地区でもやっておりますが、煙をできるだけ出さないような石炭を使う努力をしております。直方地区につきましては、普通の石炭よりもトン当たりにしまして八百円高い無煙練炭を使っております。そういう努力もいたしておりますが、蒸気機関車を使います以上は煙を絶対なくするというのは不可能であろうと思いますが、できるだけ煙を減らす努力をしていきたいと思っております。  それでこの直方地区につきましても、先ほどお話がございました中にも出てまいりましたが、かつては九十六両の蒸気機関車がおりました。それがお話にございましたように、三十七両まで減っております。この三十七両の蒸気機関車が全部直方地区で働いているわけではございませんでして、実は筑豊炭田の一帯に散らばって仕事をいたしております。直方地区で働いておりますのは、直方のヤードの入れかえ機関車でございまして、この入れかえ機関車はできるだけ蒸気を使わないようにしたいと思いまして、先ほどお話がございましたように三両ディーゼル機関車を入れております。この三両のディーゼル機関車ともう一両——三両では実は足りませんようです。蒸気機関車もまだ動いてはおりますようですが、直方地区の入れかえは三両だけはディーゼル化をしたという経過になっております。  それからもう一つは、この機関区に滞泊をいたしております蒸気機関車は、電気機関車やディーゼル機関車と違いまして動力を殺してしまうわけにはいきませんので、機関庫で休んでおります間も実は石炭をくべていないといかぬわけでございます。それが一つの問題点でございます。それに対する対策といたしましては、先ほどお話がございましたように、その機関庫の二十数本の煙突を、全部同じ長さまで伸ばせなかったようですが、前は二メートルの高さでございましたものを五メートルないし八メートルまで長さを伸ばしているという努力はいたしております。これも四回にわたってやっておりますが、これは車庫の構造上これ以上長くいたしますことは不可能のようでございます。車庫の構造上強度がもたないようでございます。そういう努力もいたしております。  それから先ほどお話しいたしました石炭でございますが、一日約百トン近い石炭を使っておりますが、これは全部ではございませんですがほとんど無煙練炭に切りかえております。  それからもう一つお話しいたしましたDLも、三両は直方地区に配置をいたしましたというような努力をいたしておりますが、現状をもう一度検討いたしてみまして、とるべき対策があればさらに改善をする努力はいたしていきたいと思っておりますが、直方地区につきましては、国鉄といたしましてはないがしろにしてまいったつもりはございませんし、そうではないようでございます。現地としてはできるだけの努力はしているようでございます。しかし、現状を検討いたしましてさらにとるべき手段がございますれば、その付近の方々になるべく御迷惑のかからないような努力はしていきたいと思っております。何しろ石炭を運びますための基地でありますので、石炭を使います蒸気機関車をゼロにいたしますのは比較的あとのことになるのじゃないかと思いますが、それはできるだけ努力はいたします。
  285. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまの答弁では、直方は筑豊地帯のいわゆる石炭地帯の機関庫だからこれはやむを得ないのだ、これはもういま相当数残っている蒸気機関車の最終拠点になるのじゃないかというような印象を受けるのですけれども、やはり国鉄としてもそういうお考えなんですか。実は地域住民が一番心配しているのはそれなんですよ。おそらく産炭地域だからという名のもとに、この薄ぎたない機関車がいついつまでもここにとどめられてその公害を受けねばならぬのじゃないかというのが、もう偽らざる地域住民の最大の悩みですよ。その点もう一回はっきり言ってもらいたいですね。
  286. 一條幸夫

    ○一條説明員 先ほどお話しいたしましたように、国鉄といたしましてはできるだけ早く、一日も早く全体の無煙化を完成したいと思っております。これは無煙化そのものからも、経営改善という点からも実現をいたしていきたいと思っております。これまでの計画は直方地区とは申しませんですが、九州地区は比較的そのスピードがおそかったように思いますが、ただいま私どもといたしましては、この無煙化の進め方について検討している最中でございまして、九州は石炭の産地ではございますけれども、鉄道が必要といたしますような石炭の入手というのは全般的に非常にむずかしくなっております。そういう問題もございますので、無煙化の進め方については検討していきたいと思っておりますし、それから先生の御指摘のございましたような問題点についても、十分検討して進め方を考えていきたいと思っております。
  287. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いま答弁なさいましたように、無煙化すれば問題はなくなるわけです。もちろんディーゼル機関にかえてしまえばいいようなものですけれども、地元住民が心配しているのは、かりにディーゼル機関にかえてみても、煙そのものは出なくてもそれなりのまた公害が起こるのじゃないか、いっそ電化をしてもらいたいという要望もありますけれども、一挙にはそこまではいかないだろうと私は思う。しかしながら、現実問題といたしまして、百十何回の入れかえ等をやっているその蒸気機関車の公害が、あとわずか五両か六両ディーゼル機関が入りさえすればそれは消滅できるのだ、解消できるのだ、こういつております。われわれから見たら五両とか六両というのは簡単にいくのではないかという気もするのです。というのは実際問題として、去年ですか、あの門司機関庫のほうには相当数のディーゼル機関が配属になった。ところが、門司のほうには直方みたいな被害を受けるような状況は、海岸のほうでないわけです。しかしながら、直方そのものは町のまん中に駅があるようなかっこうになっておりますので、特に煙をなくさなければならぬということは、もうだれが見ても考えられるわけです。したがいまして、私は国鉄の基本方針として、五年後には無煙化するんだという方針でもありますので、特に直方のこの実情にかんがみて、やはり早急にディーゼル機関をそこに配車する、このような方向で進んでもらいたいと思うのですけれども、この点についてはどうでしょうか。
  288. 一條幸夫

    ○一條説明員 お答えをいたします。  先ほど申し上げましたように、お話にございましたような点を検討いたしまして今後の進め方は考えてまいりたいと思っております。
  289. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 先ほども申し上げましたように、いままでは公害問題も地域住民があらゆる条件のもとに押えられて、泣き寝入りをしていたというのが実情ではなかっただろうか。今日のように公害問題が大きく取り上げられるようになりまして、はじめて地域の住民も言いたいことを言って何とか助けてもらいたいということであります。これはひとり直方の問題だけではないと思いますので、各機関庫にこうした蒸気機関車を使ってまだ作業しているようなところには、大なり小なりこのような公害を受けて苦しんでいる実態があろうかと思いますので、国鉄としてもそういう状態を全国的にいわゆる総点検するような気持ちのもとに今後進んでもらいたい。  また厚生省にもう一言お願いいたしますけれども、いまのような状態のもとにあって現実に地域住民は泣いております。これを一日も早く救済できるように公式なデータを早く取りまとめ、公表し、それに対する対策を立ててもらいたいということであります。  それでは国鉄関係の方はけっこうでございます。  次に、北九州の洞海湾の問題に入りますけれども、その昔この洞海湾は「くきのうみ」として万葉集等にもうたわれて、その優美な眺望がいろいろと取りざたされていたすばらしいものであったわけでございますが、今日は全く死の海といわれております。そこには砒素とか、シアンとか、カドミウムなど、有害物資が充満しておりまして、工場排水のため池といわれているほどの状態になっているわけでございます。行ってみられた方は、それこそ百聞は一見にしかず、もう海とはいえない状態であります。赤とか、緑とか、黒とか、あるいは茶色とか、まるで絵の具を溶かして流し込んだような状態であります。このようなきたない海になって、いまや水質汚染度は日本一だといわれているわけでございますけれども、ありがたくない汚名をいま着せられているわけでございますが、こういう状態のもとにあって地域の住民、特に漁民の方、水上生活者の方、そういう人々は、最近公表されました洞海湾の汚染度の内容にびっくりしまして、つまり深刻な不安におののいている実態でございます。  ちなみに、洞海湾を往来している状況を申し上げますと、入港する三百トン以上の船は一日に五十隻、また洞海湾を拠点として動いている機帆船だとかあるいははしけ、給水船あるいは通船など約八百隻であります。また、この洞海湾内で仕事をしながら生活をしている人は五千人以上だといわれております。このような実情の中にあって、今日洞海湾の汚染状況が発表されまして、ことさらにその不安はつのっているわけでございますが、住民の健康やあるいは生活環境を第一義に考えていかなければならない国とか自治体が、なぜ今日までそういう状態を放置してきたのか、さらにこの汚染の実態を住民にいままでなぜ知らせなかったのか、このような疑問あるいは不安、不信がつのっているわけでございますが、まず経企庁と通産省にその問題を説明してもらいたいと思います。
  290. 西川喬

    ○西川説明員 洞海湾につきましては、四十四年度におきまして水質基準設定のための調査をしたわけでございますが、その調査のデータで見る限りには、汚染は相当進んでいるということは申せるかと思います。汚染の実態から見ますと、若戸大橋から湾口のほうへ出てまいりますとまだ比較的よろしいのでございますが、湾央のほうでございますと、中洞海から奥洞海にかけましては、これはほとんど水が滞留して動かないというような状況から、CODにつきましても三〇から四〇PPMというような高い数字を示しております。それから一部今回の環境基準におきまして健康に関する項目ときまりましたもの、シアンそれから砒素等につきましては、環境基準を上回る数字も検出されております。それからカドミウムにつきましてもわずかながら環境基準を上回るというような地点も検出されております。これらの状況から早急に水域指定を考えたいと思っております。  それから、ただいま先生のおっしゃいましたデータの公表の問題でございますが、これにつきましては従来国のほうで委託調査をいたしましたデータにつきましては、実は各県にお願いしているわけでございますが、その調査方法その他につきましてときどき疑問のあるような数字も出てくる、あるいはそれをチェックしてまいりますと、調査の方法を間違えておった。はっきりJISその他に規定された方法をとってなかったというようなケースもございました。幾つか例がございまして、そのような場合にミスリードするおそれがあるということから、調査した結果につきましては、国のほうにおきまして解析を済ませまして、審議会におきまして水質基準設定のための部会等におきましてそのときに初めて公表するというような大体の慣例をとっておりましたが、公害問題の重要性にかんがみまして、今後はその調査を実施する県におきましても、調査要領なり何なりを十分確実に守るということ、それからまたそれを守りまして、県としてもそれに対して責任を持つということから、そういう調査要項につきましてもあらためて注意を喚起いたしますとともに、公表のルールをきめまして、県が調査要項を完全に順守いたしまして、正確なデータをとりましたならば国のほうにこれを報告する。委託調査でございますが、正式に報告することになっておりますが、国のほうに正式に報告した段階においては公表してもよろしい、国のほうに報告すると同時に、地元ではこれを公表してよろしいというルールを定めたわけでございます。  今後そのルールに従いまして一般の住民に関係がございます流水の中の水質の状況というのは、できる限り早急に住民に周知徹底させたいという方向をとるように努力してまいりたい、このように考えているわけでございます。
  291. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 経企庁は、昨年福岡県にいわゆる委託調査をさせて、六月と八月に二回、計三回調査をさせたわけですね。その結果がようやくことしの五月の二十日、ここに発表されたわけでございますが、その発表の内容も調査された全部ではなくて、それは八カ所のうちの四カ所であったわけですね。地元住民はそれを疑問に思いまして、あとの分に問題があるのじゃないかということで、私も現地を調査しましたその結論に基づいて、経企庁のほうにも申し入れをしたわけです。そのときにもその問題をお話ししましたですね。それから五月の三十日に残りの分が発表になった。確かにヘドロの問題などはみなが疑惑を持っていたより以上におそろしい内容であったというようなことで、さみだれ的な発表をなさるものですから、住民は非常に政府に対する不信を抱くわけですね。こういう姿はほんとうに改めなければならぬ。いま依頼したところが、いわゆる調査要領に基づいて正式にやった姿で国に報告した段階においては、直ちに現地で公表してよろしいというルールをつくったという話を聞きましたけれども、それは当然のことだと思うのです。  ただ問題は、何といいますか、公表がとにかくおそいということですね。つまり調査をされた段階から公表になるまでの期間がきわめて長過ぎる。これは解析等の作業があるのでというお話でございますけれども、ここに実は問題が起っているようでございます。つまりこれは故意に隠されているのじゃないか、何か問題があるのじゃないか、疑惑不信というものがここに起こってくるわけでございます。もっとも政府はいままで目隠し公害行政といいますか、いわばこういう問題に対して前科があるわけですね。富山県の黒部市のカドミウムの問題にせよ、神通川のメチル水銀の問題にせよ、そういう問題を指摘されてきております。したがいまして、洞海湾の問題にしてもその発表がおくれた、またさみだれ的な発表になったということは、やはりそのような目で見られたわけであります。もうこの辺で目隠し行政というものを改めて、ガラス張りの公害行政に切りかえていかなければならない。いま西川参事官はそのルールをきめたとおっしゃいましたけれども、これは公式に発表になったのかどうかということですね。  その前に、もう一つお尋ねいたしますが、経企庁長官が五月の二十八日の日に全国知事会の席で、公害関係調査結果は地方自治体で発表してもよろしい。このようなことをおっしゃったということを、ある記事で見たわけでございますが、この点もあわせまして答えていただきたいと思います。
  292. 西川喬

    ○西川説明員 ただいまの公表のルールでございますが、五月二十三日付通達で各府県に流しました。それによりまして、経済企画庁報告した後はすみやかに公表しなさいと、すでに通達で流しております。その趣旨に基づきまして、知事会議においても長官は発言されたものでございます。
  293. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 それでは、もしそれが地方自治体でなくて、国の関係調査したものはどうなるのですか。同じような考えで発表すべきなんですか、してもよろしいわけですか。
  294. 西川喬

    ○西川説明員 この問題につきましては、このルールは流水の中の水質調査結果につきまして、経済企画庁所管しているものについて、こういうルールをとったわけでございます。それ以外の他の所管省が調査しているものにつきましては、まだそこまでの調整ははかっておりません。しかし、先ほども御説明申し上げましたような、さっき長官の話にありました監視体制の整備要綱、これは各省間全部関連のあるところで決定いたしたいと思っておりますが、これにおきましては、私たちのほうといたしましては、所管がどこであれ、いろいろなところのそれぞれの所管が、その基準点の問題については調査するとか、その場合には報告を受けまして、その報告につきましては、これを取りまとめて公表するというような手段を講じたいというようなことを、いま素案として考えているわけでございます。この対策要綱を、先ほど長官閣議決定をいたしたいと、このように申しておったわけでございますが、それによりまして、いわゆる流水の基準点のようなところに関します水質につきましては、同じようなルールでやるような方向に持っていきたい、このように考えております。
  295. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 自治体が調査した分については報告次第現地で発表してもよろしいが、国の立場で他の所管庁がやったことについてはまだそこまで及んでいない。私が具体的にお尋ねしたいことは、経企庁が北九州の洞海湾周辺の工場の排水の状態に対して、排水を通産省に依頼なさっているわけですね。通産省は福岡県の二十七工場の排水調査を終えているわけですよ。それで現にもう経企庁には報告しているわけですね。今度のさみだれ発表で、さみだれなんということばが適当かどうか知りませんけれども、海水の汚濁の問題、あるいはヘドロの問題については明らかにされました。その点については、住民もある面では信頼をしたわけです。しかしながら、肝心かなめの工場排水の分析内容がいまだに隠されている。これは何だかなぞめいた気持ちでこれをながめておるわけですね。これは一体どういうわけでしょうか。
  296. 西川喬

    ○西川説明員 ただいま申し上げました公表のルールにのっとります調査のデータと申しますのは、これは一般住民と非常に密接な関係のございます流水中の基準でございまして、工場そのものの排水の問題に、水質の問題に関しましては、これは先ほど長官も米原先生の御質問に対して御答弁申し上げましたように、現在指定水域になります前の段階の調査といたしましては、立ち入り調査権もございません。工場の協力を得て調査させてもらっているわけでございます。今後さらに水質基準設定のためのいろんな協力や何か、そういうこともあるわけでございます。そのような観点から、水質基準設定以前の工場のほうの協力を得まして、得られましたデータにつきましては、これは一応まだ現在のところ、公表する意思はございません。それのほうがかえって今後の基準設定までのあれを円滑にさせるであろうということ、それから住民に直接非常に密接に関連のあるものは、公共用水域の流水の状況であります。間接的には工場の排水というものも影響するわけでございますが、流水の状況が一番問題なわけでございまして、その状況を国なり地方公共団体、行政機関がその環境基準に適合するように努力しているわけでございます。  そのような観点からも水質基準が設定されます以前の個々の各工場につきましては、この公表のルールはもちろん除外をしてございます。今後とも一応はこの方針で進みたい、このように考えております。
  297. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 まことに平凡なたとえを申し上げて失礼に当たるかもしれませんが、たとえばあるところに水たまりがある、大きな池みたいなものがある。それが長い間自然的に汚染されていった、こういうことになれば、これは自然現象でありますし、それを国できれいにしようとすれば、当然国の予算、税金でもって何らかの対策をなされても問題はないと思いますが、しかし、自然に汚れたのではなくて、たとえばある人がそこにやってきて、きたないものを投げ込んだ、それによって汚れた、こういうことになれば、当然そのある人、AならAという人がその責任者になるわけですね。当然Aさんがそれに対する措置を全責任を持って講じなければならないと思うわけです。また、そのAさん一人ならば、これは簡単にあの人が悪いんだ、あの人が問題だとわかるわけでございますが、Bもやってきた、Cもやってきた、それぞれきたないものを池に投げ込んでしまった。そうすれば、おまえがきたなくしたのではないか、こう言ってみても、いやわしはそんなたいしたものは投げ込んでいない。あれなんだ、これなんだとお互いに責任のなすり合いになるのではないか、したがいまして、たとえば池そのものは、どこからも汚される条件はない。だれかが来て何かを投げ込んだからきたなくなったんだ。となれば、だれか来た者の責任には間違いはございません。したがいまして、そのAとかBとかCとかいう人々がどういうものを投げ込み、その投げ込んだ内容にどういうものが含まれていたのか、これを知らなければならぬことは、当然のことではありませんか。そういう意味で、私はいま工場排水の内容というものを地域住民は知りたがっているのだ、また知る権利があるのだ、こう言っているわけです。
  298. 西川喬

    ○西川説明員 そのような問題がございますから、早急に水質基準を設定いたしたい。その水質基準を設定するのに、各工場には協力を願っているわけでございます。でございますから、水質基準が設定されますと、今度はこの法律によりまして、これ以上のものを捨ててはいけない、出してはいけないということの基準となるべき数値がはっきりきまるわけでございます。そういたしますと、今度それをこえている工場、基準はこれだけなのに、これだけの水を出しておったというような工場、基準が設定されましたあとにおきましては、それぞれの個々の工場水質を公表するということは、これはやぶさかでないわけでございます。ただ、現在汚染されているところに、早いところ基準を設定いたしたいということによりまして、工場に協力を得ているわけでございますので、そのような観点からも、一応水質基準設定前の任意的な調査によります場合のデータは公表を避けたほうが、今後の水質基準設定の上、あるいは他の水域の水質基準を設定する場合の問題として円滑にいくのではないだろうか、もちろん当該工場がそれを了承した場合にはこれは公表するにはやぶさかではございませんけれども、そのところは一応そういう方針で進みたい、このように思っているわけでございます。
  299. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 福岡のある大学の先生がこのように言っておりました。洞海湾の汚染の状況を見まして、いまのお役所が、工場優先といいますか産業擁護の姿勢を百八十度転換させない限り、この洞海湾の水はきれいにならないだろうと。洞海湾の汚染は、それは工場の排水だけではないと言えるかもしれませんけれども、その九〇%以上がもう工場排水になっているわけです。これはもう常識的ですよ。このように工場が公共水域である洞海湾を汚していることがはっきりしている以上は、工場側に浄化への自覚を促す意味からも、私は、工場排水の調査結果を一日も早く公表することのほうがいいのではないか、こう考えるわけです。いまの御答弁では、水質基準がきまれば、あとはそれに対する措置ができるので、それまでの協力として協力を願っている立場だから、いまの段階では公表することはまずいというような言い方をなさいますけれども、先ほどの平凡な例ではありませんが、そこにだれかがやってきてきたないものを投げ込む前に、そこに監視者あるいは管理者がいて、何を投げ込むのだということを事前にチェックしていけば、それはとどまるわけですから、ものの考え方を根本的に改められて今後対策に臨んでもらいたい。  結論から申し上げますと、北九州市民の公害に対する関心というものは、事実を詳しく知るにつれまして、ぐんぐん高まっております。早くきれいな海をと、そして青い空をと切望しているわけでございますが、北九州市もこの市民の要望に押されまして、五月の二十九旧から市の衛生研究所が独自の調査を始めております。しかしながら、どのようにデータをそろえて見ましても、洞海湾の汚染進行度というものは急ピッチでありまして、これは四月の予備調査、また四十三年度の予備調査と四十四年度の木調査のデータを比較してみても、その急激な進行状態は一目りょう然でございますけれども、問題は洞海湾の水は滞留しているわけですね、流れていない。つまり洞海湾の抜本対策というものは潮流対策である、あるいはヘドロ対策であるといわれるほど大きな問題になっておりますけれども、まあ調査結果がどうの、あるいは水質基準がどうのということも早急にやってもらわなければならぬわけでございますが、いずれにしましても、よごれ切っている洞海湾の姿は一目りょう然であります、はっきりしております。これに対して、じゃ、一体経企庁とし、あるいは通産省としてはどのような対策を立ててこの水をきれいにしようとなさるのか、具体的な方法をもし考えられているとすれば発表してもらいたいと思います。
  300. 西川喬

    ○西川説明員 現在早急に水質基準を設定いたしたいということで、すでに部会も設置いたしたわけでございますが、排出基準を設定いたしますときには、必ずその水域の環境基準の当てはめをいたすことにしております。そういたしますと、今回公害対策基本法によってきまりました環境基準達成のための施策ということがあるわけでございます。今後洞海湾の部会の審議の過程におきまして、この環境基準をどの類型に当てはめるか、その類型に当てはめた場合に、その達成をいかにして行なうか、むろん水質保全法に基づきます排水の規制、これはこの一環でございます。それ以外に下水道の整備等それぞれにいろいろな問題がございます。これらを、いかにしてその環境基準を達成するかという点につきましては、当てはめ行為を決定するときに関係各省とも十分協議いたしたい。ただ、いま具体的な策と先生はおっしゃいましたのですけれども、実質問題といたしましては、私たちから見ますと、非常にむずかしいのではないかということがあるわけでございます。一般の都市河川の場合におきましては、下水道のおくれが非常に影響しているわけでございますが、洞海湾の場合につきましては、下水道よりも、下水道の整備そのものが、洞海湾の水質そのものに大きく貢献するということはあまり考えられないというような問題がございます。その辺のところもあります。一部には、抜本的な対策として海水の入れかえと申しますか、ほかからきれいな水を導入して循環させるというような構想もございますけれども、これらは非常にばく大な経費を要する問題でございます。それらの達成の可能性、そのような問題を考えますと非常に困難ではないか。それらの問題は、今後環境基準の当てはめをやりますときに、関係各省と十分協議して何らかの方策を打ち出したい、このように考えておるわけでございます。
  301. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 いまもお話がありましたようですが、とにかくいかなることがあろうとも、きれいな海に変えてもらいたいわけですね。水質基準がどの程度のものが出るか、これも一つの問題点ではありますが、通産省としてどのようにお考えになっておるか、お答え願いたいと思います。
  302. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 洞海湾の汚染源の大半が工場であるということは先生御指摘のとおりでございまして、通産局が調査いたしました二十二工場のうち、問題になる工場を拾い上げてみますと、大体十四工場ございます。この十四工場につきましては、調査の結果が判明した時点におきまして、個別に通産局に招致いたしまして改善を勧告しております。それと並行いたしまして、東京の本省におきましても、その時点以降におきまして、新日鉄あるいは三菱化成、新日鉄化学、こういった大きな汚染源をかかえる工場の本社から責任者を呼びまして、改善計画を指示しておった次第でございます。  今回の件が新聞その他で非常にクローズアップされた以後のわれわれの行動といたしましては、いままで指示いたしました改善計画が実施されておるかどうか、それを確実に確認するために、いろいろさらにこまかいデータの収集をしたわけでございますが、六月十日には各工場に係官を派遣いたしまして、その実施の状況を確認さしております。その結果はまだ手元には参っておりませんが、相当程度の改善が行なわれておることをわれわれとしては確信しておる次第でございます。  今後の対策といたしましては、同じ福岡県の大牟田川あるいは大牟田水域につきまして、これも非常に問題のある地域でございますが、福岡通産局それから鉱山保安監督局それから県、市、そういったところで連絡協議会というものを結成させまして、相互に緊密な連絡の上で総合的な対策を立て、これを本省のほうにもあげまして、本省間でも大いに本格的に検討しようという体制で進めておるわけでございますが、洞海湾につきましても同じような組織をつくり上げまして、至急基本的な構想を練りたいという考え方でございまして、いま現在の構想といたしましては、会社の排出口の規制だけでは、蓄積された汚濁物はなかなか解消しないということは事実でございますので、きめられた水質基準を確実に守らせることはもちろんでございますが、抜本策といたしましては、ただいま西川参事官がお話しになりましたような海水の入れかえとか、あるいは遠賀川の水と洞海湾の水を何とか結ぶ方法はないかとか、あるいは相当部分を埋め立てて緑地その他にするような方法はないかとか、そういうことも含めまして、基本的な対策考えたい、かように考えておる次第でございます。
  303. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 もう時間が来たようでございますので、最後に一問だけお願いいたします。  厚生省関係ですが、北九州のばいじん問題でございます。石炭からの重油に切りかわって、いま全国的にはデータは下がっているにもかかわらず、北九州市のばいじん降下量は、公害白書にも指摘しているとおり、逆に上がってきているわけですね。これにはいろいろの問題があろうと思いますが、考えられる原因といたしまして、工場の集じん装置が完全に動いていないのか、あるいは工場側が装置の能力以上の負担をかけているのか、どちらかであろうと私は思うわけであります。地元の北九州市は亜硫酸ガス対策で手が一ぱいであるということでございますので、本省としてこういうおかしな現象をいつまでも見のがすわけにもいかぬと思いますので、厚生省として何らかの強力な手を打ってもらいたいということですが、これについてお答えいただきたいと思います。
  304. 城戸謙次

    ○城戸説明員 北九州市の降下ばいじんでございますが、これは三十四年度から全市的に調査ができております。これによりますと、当初二十三・七トン程度でございましたが、年々減少して、四十一年ごろからほぼ十六ないし十七トン程度の横ばいとなっております。ところが、いまお話ございましたように、ここで再び増加の徴候を示しておるということでございまして、特に八幡、戸畑、若松、これだけが高くて、八幡の城山地区あたりでは四十三年度最高九十八・五トン、平均五十二・一トンと非常に高くなっております。同時に、いまお話ございませんでしたが、粒子の小さい浮遊粉じんがまた非常に高い水準を示しておりまして、平均濃度は一立方メートルあたり三百七十七マイクログラムという数値でございます。これは八時間値で、若干比較がむずかしいわけでございますが、公害防止計画で示しております五〇%値の百五十マイクログラムに比べますと倍以上の水準であるといわれておるわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、こういうような粉じん関係規制をぜひやりたいと思っておりまして、実は硫黄酸化物の排出規制はこの二月から実施しましたが、すすその他の粉じんの規制が残っておるわけでございまして、ぜひこれを早急にやりたいということで、現在通産省のほうと相談をいたしております。ちょっとおくれましたが、ぜひきつい規制に持っていきたい、かように考えております。
  305. 大橋敏雄

    大橋(敏)委員 終わります。
  306. 加藤清二

    加藤委員長 次は、土井たか子君。
  307. 土井たか子

    ○土井委員 一昨日よりきょうまで三日間、当委員会公害対策に対してるる質問と答弁が繰り返されて、そうしていままでのところ私は私なりに、お疲れでもございましょうけれども、せんじ詰めてこれだけはぜひとも確認しておきたいという事柄をいまから申し上げてお聞きいただきたいと思います。十五分ばかり時間をお許しいただきたいと思うのです。  まず一つは、一昨日私が伺いました限りでは、通産省の例のガソリンの無鉛化に対する五年以内で実現するという計画を昨日おそらく話し合われて、そうして討議された内容が青写真になっているはずでございますが、その内容について、大綱でけっこうですからひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。  昨日のこと、自動車工業会会長、それから石油連盟会長に対しまして、私のほうから申し入れをいたしました。  その一つは、自動車工業会に対しまして、加鉛ガソリンでなければ動かないエンジンの製造を停止することでございます。さらに他の一つは、鉛化ガソリンを製造することにはなくてはならない四エチル鉛が、来年一月から操業を開始される工場によりまして、山口県のほうでございますが、わが国で初めて国内生産でまかなわれることになります。したがって、石油精製会社に対する取引関係の破棄を申し入れるようにという問題でございました。少なくともこれら二点は、これから無鉛化を進める第一歩としてはたいへん大事な問題だと私自身考えているわけでございます。  そこで、通産省のほうにおかれましては、五年以内に無鉛化をするという実行計画の中に、この問題をぜひとも盛り込んでいただきたいと私は強く要望するわけでございますが、この点についてもお聞かせいただきたいと思うのです。柴崎立地公害部長さん、どうぞ……。
  308. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 御説明申し上げます。  ガソリンの無鉛化の五カ年計画についての青写真という第一点でございますが、昨日、自動車公害対策委員会の専門委員会を開きまして、どういうスケジュールで無鉛化を実行すべきかという点を議論したわけでございますが、私、国会のほうに出ておりまして、まだその内容を簡単に報告を聞いた程度でございますので、あまり詳しく御説明できないのは残念でございますが、まず第一に、ガソリンの無鉛化計画を作成しようということで、その無鉛化計画の骨組みといたしまして、まず第一の骨組みに、目標オクタン価を設定しようという考え方が出たようでございます。  これはどういう意味かと申しますと、二つ意味がございまして、無鉛化した場合にオクタン価が下がる。今度オクタン価をある程度上げるためには、石油精製会社のほうの設備をいろいろ追加いたしまして、分解、改質ガソリンの増産をしなければならない。そういう意味でどの程度のオクタン価を維持するかということが石油精製の面から必要でございます。  もう一つは、自動車のエンジンの面から、どの程度のオクタン価を前提にしてエンジン構造を考えたらいいかということでございまして、まず目標オクタン価を設定することが第一番の重要事項であるということ、それが第一の柱。  それから第二の柱といたしまして、その目標オクタン価を目標にいたしまして無鉛化のスケジュールを立てていく。  その無鉛化のスケジュールを立てる場合に一番重要なファクターは、ガソリンの組成がどうなるであろうかということ、これが三番目の柱になりまして、その段階において具体的な石油製精会社の設備計画その他とも結びついてまいるわけでございます。  以上の三点を組み合わせまして至急その案をつくるということで、これは石油精製会社から出ております専門委員とそれから自動車メーカーのほうから出ております専門委員が、きょうあすじゅうにでもいろいろ相談いたしまして、至急原案をつくって、来週早々程度にはこの原案に基づいてまず第一歩の計画をつくろうということでございまして、したがいまして、現在の段階でいつ、何年何月からこういう形になりますということを御説明できないのは非常に残念でございますが、作業のほうは順調に進んでおるということを御報告申し上げたいと思います。  それから第二点は……。
  309. 加藤清二

    加藤委員長 土井たか子君、もう一度質問を……。
  310. 土井たか子

    ○土井委員 お答えいただきました第一番目の項目の内容は、私、了解いたしました。  二番目、これはおそらく加鉛ガソリンでなければ動かないエンジンの製造を停止されるようにと、きのう私が自動車工業会会長申し入れた内容をぜひとも通産省の例の無鉛化実行五カ年計画の中に生かしていただきたいということでございますので、そのことをどうお考えになっているかという点からひとつお聞かせいただきます。
  311. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 お答え申し上げます。  第二番目の問題はちょっと整理させていただきまして、第三点をまずお答えいたしたいと思います。  第三点の四エチル鉛の国産の中止、契約の破棄の問題でございますが、この点につきましては委員長からの御指示もありまして、通産省中心になって統一見解をつくれということになっておりましたので、省内の意見をまとめると同時に、厚生省運輸省、法制局並びに内閣審議室、これは閣僚ベースということではございませんで、担当責任者の見解ということでまとめたものがございますので、それを読み上げさせていただきたいと思います。    ガソリンの無鉛化対策および東洋エチル(株)による四エチル鉛の製造に関する統一見解  一、ガソリンの無鉛化については、総合的な自動車排気ガス対策の一環として、産構審自動車公害対策委員会において、今後五年以内のできるだけ早い時期までに無鉛化を達成することを目途に無鉛化の具体的スケジュールおよびこれを達成するための具体的方策について審議検討を行なっており、七月に答申をうることとしている。    政府としては、この答申を得て、これにそって、無鉛化対策を強力に推進してまいりたい。なお、鉛害問題の緊急性にかんがみ、通産省としては、当面の対策として、   (1) ハイオクタン・ガソリンについては遅くとも七月一日までに加鉛量を半減し、レギュラー・ガソリン以上の加鉛を禁止する。   (2) レギュラー・ガソリンについても極力加鉛量を減少させる。   よう強力に石油業界を指導して来たところである。  二、東洋エチル(株)に対しては、四エチル鉛製造に関し、四十一年七月に外資法に基づく外資導入および技術導入契約の認可を行なっているが、外資法においては、当該契約が法令に違反する場合など同法第八条第二項に規定する場合を除いては当該認可の取消しを行ないえない。    しかし、自動車用ガソリンの無鉛化計画が策定された場合には、その計画の進展に伴い、四エチル鉛の需要が減少してゆくので、同社としてもその生産計画を逐次縮少してゆかざるを得ないものと思われる。 これが統一見解であります。
  312. 土井たか子

    ○土井委員 いまのはわかりましたが、どうもお伺いしておりますと、企業側の公害責任が、いわゆる公害発生源は企業にあるということがはっきりしている場合、今日ただいま責任に対する追及がこれくらい強く叫ばれているときはないわけでございますのに、ややもすると企業側の営利ベースに乗っかって事を運ぶというふうなきらいがちらちら見えるように私は思うのです。先ほどおっしゃいました第一番目の御回答の中にありますエンジンから考えられるガソリンの内容、これから五カ年計画で進めていかれますオクタン価をお考えになる場合にも、ひとつ企業者側の営利面に乗っかって考えるのではなしに、き然たる態度でそれは臨んでいただかなければ、これは五カ年計画なんてとんでもない話なんで、私は一歩も前進はないと思うわけでございます。  一体公害問題ということを考えた場合に、いずれの立場で処することが公害解決の道であるかということはおのずと明らかでございますから、営利側、企業側、経営側に立ってものをお考えになるというふうなことがいささかでもございますなら、それはもう即刻根本から改めていただきたいと切に私はただいま申し上げたい気持ちでございます。  さて、それに続きまして、この企業の責任ということから考えてまいりますと、現在公害対策基本法という法律の内容を見ました場合に、やはりこれは手直しが必要だと私は思うのです。先ほど馬木委員もこの事柄について関係して述べられましたが、実は公害の発生源が企業側にあるという場合に、その公害に対する対策費として国が三分の一、地方公共団体三分の一、企業三分の一なんというふうな配分ではなくて、これは全面的に企業が費用を分担する、費用をまかなっていくというふうなことでなければならないと私は思うのです。そういうふうなことをはっきりと国の政治の中で打ち出す、そういうふうな方向で行政を進められるということが、いわばこの公害対策基本法の第四条にあるところの国の責任ではなかろうかと私は思います。この第四条では、御存じのごとくに「国は、国民の健康を保護し、及び生活環境を保全する使命を有することにかんがみ、公害の防止に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。」というぐあいになっておるわけでございますから、そういう関係から考えまして、この公害対策基本法というものの立法趣旨は、断じて企業者の営利面というふうなものに対してそれを保護するのではなくて、やはり住民の命と暮らしを保障するというところに根本の立場があるということを考える以上は、この基本法の第二十二条についてもやはり改正をされるという余地があるのではないか。先ほど申し上げたこの二十二条の個所については、公害の発生源が企業にあるということが明確である場合に、企業がこの公害対策に費用を全面的に分担しなければならないという向きで考え直す必要があるのではないかというふうに私は思うわけでございます。しかし、一歩進めまして、こういった公害対策基本法に対する手直しであるとか、あるいは環境基準に対する手直しであるとかを進めるだけで事足れりとはしないと私は思います。法万能のものの考え方では、法律が欠缺している場合あるいは環境基準が不十分な場合、救われないのは公害によって被害を受けている国民自身でございますから、こういう問題を促進していこうとしましたら、やはり公害対策に対してはき然として、法律より以上に、これを予防する対策に対しては徹底して講じていく、研究に対しては十分に進める、あるいは環境基準より以上に公害に対してはき然たる態度でこれを防止することに進むことが私は必要だと思うのです。そういう意味からじまして、私はこの三日間、このたびの自動車の排気ガスから出ました鉛害についていろいろ質問を進めてきたわけでございますが、肝心の自動車についての関係省庁でございます運輸省、運輸大臣に対しての御出席を求めましたのに、ついに拝顔することができませんでした。ここにいらっしゃったのは隅田整備部長だけでございます。私は、他の厚生省なり、通産省なり、経済企画庁なり、それぞれの省庁が、いまこのたいへんなときに、新聞で日夜自動車の排気ガスの公害についてこれほど問題にされておりますときに、示される一連のこれに対する努力に比べまして、運輸省のほうはまことにこの事柄に対する熱意が足りないと思うのでございます。そういうふうなことからいたしましても、どうも各省庁の足並みもそろっておりませんし、第一、私開口一番聞きました無機鉛の人体に及ぼす実害はどういうものであるかということについても確たる統一した見解をついに聞くことはできませんでした。私はこの際、したがって法律万能主義におちいらず、基準万能におちいらず、徹底して公害に対する対策公害予防に対する対策公害研究に対する対策、常に公害に対する監視を怠らずにやるということ、それを考えました場合に、この際行政の窓口を一本化していく必要がどうしてもあるんじゃないかと思うのです。単に行政改革をいたずらにすることによって事を進めようとすることは、私はやはり間違っているとは思いますけれども、この際大所高所に立って全般的に見ました場合に、どうしても行政公害に対処する窓口を一本化していくということが急務であるように考えます。厚生省のほうは御承知のとおりに今度は公害局を新設したいというふうな厚生大臣の六月九日付新聞などの発表もございましたが、しかしこれは、厚生省という一省が、省の中にこの公害局という一部局を置かれるというに問題はすぎないと思うわけでございます。同様に、今度の鉛害一つ取り上げても、警察、運輸、通産それぞれが関係省庁としてはすぐに浮かび出るところなのでございますから、そういう総合的な、全般を取り扱ってこの行政を一本化していくということは、どうしてもこの一つの例を見た場合にだって、今後強く考えを打ち出さなければならない問題を提起しているように思います。  そこで私は、せっかくここに経済企画庁長官がお見えでいらっしゃるわけでございますから、特に経済企画庁長官にいまこの席でお尋ねしたいわけでございます。でき得れば内閣総理大臣に御出席をいただいて、内閣総理大臣じきじきからこのことは私はお聞きしたいつもりでおりましたけれども、ついに内閣総理大臣も御出席になりませんでした。また閣僚についても、この問題についてはやはり御意見をたださなければならないと存じますが、きょうはひとつ経済企画庁長官から、日本においてもひとつこのあたりで公害省というものの設置を考えてみてはというふうな声もちまたにございます。こういう問題についていかがお考えでいらっしゃるか、ひとつ御意見をお伺いいたしたいと思います。
  313. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 いまの御指摘の点は、われわれも大きな問題であると思います。最近いわゆる縦割り行政に対して横割り行政というものをどういうふうにするか、こういうことで、物価であるとか、公害であるとか、いろいろそういう議題があるのです。私もこの点についてときどき考えさせられるのですが、私は自分で役人もしましたし、そういう経験から見て、率直に言いまして、いままで機構の改革をやりますと、たいてい屋上屋を重ねる結果が多いのです。これは私の体験でそう言えると思うのです。そこで、確かに一般のお気持ちからいうと、たとえばいま運輸大臣出席しないとか、いろいろな各部面があって、質問される立場からも、追及される立場からも、非常にそういう点歯がゆさを感じられるだろうと、私もそばで見て思っております。ただ、実際問題としますと、これはある意味では私は日本の内閣制度に原因があると思うのですが、ほんとうの意味でもって全部の一元的な権能を持った庁をつくれば別です。それならば、ある意味において不可能ではないのです。ところが現在の仕組みというものはアメリカと違って——おそらくアメリカの、たとえば環境衛生庁ですか、そういうようなものを頭に浮かべて御質問なさっておると思うのですが、アメリカは御存じのように大統領がこうきめれば、各大臣のイエス、ノーはほとんど無視してもいい。ですから、たとえば予算に関しても予算局というのがありますけれども、アメリカの予算局というのは、とにかく相手の省の意向を聞かないでいいのです、最終的には。日本の大蔵省というのは必ず相手の大臣と協議がととのわなければ予算ができない。つまり閣議決定という手筋を必ずとる。ですから閣議で、ある省の大臣がこれは自分のほうは反対だと言われると、できないのです。そういうことを仕組みとした英国式な内閣制度でありますと、はたしてうまくいくかどうか、これは私は率直に言って疑問を持っておるのです。ですから経済企画庁自身がある意味においてはいま御指摘のような窓口の総合庁的な性格を持っておるのですから、率直に言って歯がゆい。それで窓口といいますけれども、結局これは水についても、排水の規制については通産省、あるものは厚生省、基準をきめるところまではいいけれども、あとはみんなやっかいになっておる、そういうのが企画庁の現状です。そういうことから言いますと、現状で一番いいのは、やはり各省——私は通産省公害部がありそれから厚生省公害部がある、これはいいと思うのです。こうやって通産省厚生省諸君がここへ来て皆さんの批判を受ける、追及を受ける、これなら深刻にいくのです。ところが、これが何か環境衛生庁みたいなものができまして、そこの役人だけがここへ呼ばれていじめられて、そうして今度帰る。よその省は、関係あるけれども、まあ、のほほんとして、どっちかというと間接的な声を聞く。どうも政策の実効の上からいうと、多少迂遠のようですけれども、私は通産省公害部をつくったのは非常に賛成だったのですが、やはり通産省が自分でその気になって批判を受けながらだんだん進めていく、これが非常に効果がある。ですから、いまのような内閣制度のたてまえからいうと、ちょっとでも関係のあるものはみな責任部局をつくって十分責任にこたえるようなことをやっていく。かっこうはいかにもいいです、一カ所にまとめると。そうすると企画庁に似たような官庁ができます。そうすると結局、材料から何からまた方々とって歩く。材料とるところまで、それじゃその役所がやるとします。しかし、今度厚生行政というものは、ある程度分割される。薬務局はおそらく厚生省に残るでしょう。毒物規制の問題は厚生省がやる。こういうことではほんとうは私はうまくいかないんじゃないかという気もするのです。しかしいずれにしても、いまみたいな事態がだんだんふえてきましたから、できるだけその機構を、まず数を減らしていく。ちょっと多過ぎるような感じがします。そこから始めて、なかなか一本化ということはできないかもしれないけれども、できるだけそれに近くやっていく。それで実際問題として、もっと総合的にやるというのでしたら、内閣にたとえば御指摘のように環境衛生庁をつくる、これは私はわりあいに決心すればできると思うのです。あとはそれをどう始末するかですね。ですから、まあいまのところ私は、はたしてそれがいいかどうかについて、率直に言って決心してないんですけれども、結論を得ていませんけれども、これも、そういつまでもというわけにもいきませんが、十分検討に値する問題である。私自身は、いろいろな観点から見て、はたしてそれがいいかどうかについては、まだ自分の結論は持ってないというのが率直なところであります。
  314. 土井たか子

    ○土井委員 ただいまの御意見を拝聴しておりますと、どうも行政組織そのものに問題があるのではなくて、やはり運用の面で問題があるように私思うわけなんでございます。ですから、行政組織の改革というふうな方向で一歩を進めて、各省がやはり公害問題に対して各省ごとに責任部局を置いて取り組んでいく。それがだんだん進んでまいりますと、おっしゃったとおりに、一つの庁を設けるという機運もおのずとわいてくると思うのです。ただ、いたずらに天下り的につくってみましても、熱意のないものはおっしゃったとおり結局屋上屋を重ねるという愚を繰り返すことになりましょう。ですから、その問題についてやはり盛り上がりこそ必要だと思いますが、どうもそれからいたしましても、現在一つの問題に対して、ある局面については厚生省、ある局面については通産省というぐあいになってまいりますと、あっちこっちと責任のなすり合いということも出てまいりますし、一つの問題に対してたらい回しということになりますと、肝心の被害者こそたまらないわけでございますから、その辺何とか一日も早くひとつお考えをまとめていただきまして、英断をすべきときに、タイミングというものがございますから、やっぱりはっきり打ち出していただきたいと思うのです。けさほど行政管理庁長官も、この問題に対しましては、赤松委員の質問に答えられまして、再検討いたしましょうということでございました。ひとつ長官からもどうぞよろしくお願いいたします。  では、これで終わります。
  315. 加藤清二

    加藤委員長 この際、通産省に申し上げておきます。  先ほどそこで御発表になりました統一見解、これは土井たか子君の要望と同時に、各委員の要望もありましたゆえに、委員長私から通産省に命じたわけでございます。したがって、その統一見解のコピーを委員全員に配付されんことを要求いたします。これは今週中にやれますね。——それではいますぐあれしてください。  次は岡本富夫君。
  316. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は、きのうの参考人あるいはまたおとといの質問の最後の詰めを若干行なって終わりたいと思います。  それにはやはり一つの例を申し上げたほうがよいと思うのであります。四十三年の十一月七日、長野県の諏訪湖、ここにおきまして魚介類が非常に汚染された、こういうように当時岡山大の小林教授から発表がありまして、そして私さっそく園田厚生大臣に対して質問をいたしました。そのときに、経済企画庁で現在水質基準をきめるようにいたしております、また専門家が出向いております。こういうような答弁をいただいたわけでありますが、その後経済企画庁のほうでどういうような調査をなさり、また水質基準をまだおきめになってないようでありますが、いつごろこれをおきめになるのか、これをひとつお聞きしたいのです。
  317. 浦田純一

    ○浦田説明員 ただいま岡木先生御指摘の諏訪湖の水の汚濁による、ことに重金属の汚染による魚介類への影響でございますが、この事実を知りまして、その後厚生省がさっそく県と一緒になりまして、人体への影響を調査してまいったということについてはすでに御案内のところかと思います。問題は、その後どうなっておるかということと、また今度水質保全法に基づく水域の指定のほうはどうなっているかということでございますが、前段について厚生省のほうからお答えいたしまして、あとのことにつきましては経済企画庁のほうから答弁があるものと思います。  諏訪湖の魚介類の人体に対する影響につきましては、調査いたしました当時、幸いにも現状におきましては、人体には認むべき影響は与えないものであるというふうに結論が出ておりまして、つまり通常食事に供しましても支障がないというふうに考えておるのでございます。しかしながら、もちろんこの状態が今後どのように推移していくかということにつきましては、非常に関心を持たなくちゃならない点でございますので、昭和四十四年度におきまして、その後引き続き年に三回検体、たとえばシジミとか、あるいはタニシとか、あるいはワカサギといったような生物を採取いたしまして、さらには川のどろ、あるいは湖底に沈んでおりますどろ、さらに水そのもの、あるいは工場排水といったものを取り出しまして、実施いたしてきておるわけでございます。いまその分析を鋭意進めておるところでございまして、四十五年七月に入りますと、公表ができる予定でございます。  それから水質基準の設定でございますが、その際にはひとつこれらの結果も十分に御考慮いただいて、重金属等の水質基準、そういったものも盛り込んでいただきたい、このように考えております。  以上でございます。
  318. 岡本富夫

    ○岡本委員 当時、四十三年十一月七日ころにはそういう見解をあなたのほうでお出しになった、しかし、いまはもうものすごく濁ってしまって、そしてワカサギやタニシ等はもう食べられない、食べないほうがいいのだ、こういうように地元でも発表しておるのです。ちなみに申しますと、ここの衛生研究所が発表しました数字によりますと、カドミウムが湖の底のどろから二九・九PPM、これが最高、最低が四・五PPM、クロムが五一二PPM、最低のところで五〇・七PPM、銅は八八・二PPM、最低で五〇PPM、ニッケルは一六五PPM、少ないところで三四・八PPM、亜鉛は四九〇PPM、少ないところで九〇・四PPM、こういうようにもうすでに発表しておりまして、しかも現地を見ますと、井戸水を掘りますと、ものすごい青い色だとか、あるいは黄色い色の水が出てくる、こういうようなわけで、現地は非常に心配いたしております。この白い衛研のデータですけれども、こういうものも市長が隠しておった、それがわかりまして、市民にあやまっておる、こういうような状態なんです。年々これが汚染されていく。付近にはたくさんメッキ工場なんかがございます。またみそあるいはまた酒類の工場もあるのです。  そこで、まず経済企画庁長官にひとつお聞きしたいのですけれども、一点は、いつここが水質基準をきめられて、そして取り締まることができるようになるか、これが一点。  次には、いろいろなこうした公害をいままで見ておりますと、市民の方が耐えられなくなりまして、そうして市のほうに申し出ておる。大体この役所の窓口は、市役所あるいはまた区役所、こういうところに話があるわけでございます。したがって、水質保全法で要するに水質基準をきめ、指定水域にしたときには、この一定流量の、いままで条例でもって規制しておったところが、はずれてしまうわけです。そういうことになりますれば、要するに水域指定をされた場合に、いままで条例で押えておったのが、条例の効力がなくなってしまう。こういうことをお考えになって、どうかひとつ水域指定にしたときには、いままである条例が生かされるように法改正、あるいはこれは政令でございましょうが、していただきたいことを長官にお願いしたいのですが、いかがでございましょうか。
  319. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 どういう手順でこれからやるか、ちょっと政府委員に説明させます。
  320. 西川喬

    ○西川説明員 諏訪湖の指定水域につきましては、四十四年度に基準設定調査を終わりまして、現在解析を始めておりますが、今月末の審議会に部会を設置いたしまして審議を始めます。今年じゅうには指定水域にして、基準を設定いたす手はずに考えております。  それから条例の関係でございますが、これは法律改正も政令も関係ございません。いわゆるすそ切りをやっておりますケースの場合には、これは告示によりまして小規模のものには適用しないということをやっておりますが、これは、そこの水域のそれぞれの状況に応じまして決定している分で、県のほうが全部規制してほしいということでありますれば全部規制いたします。現在すでに指定水域になっておりますのでも、すそ切りをやってないところの例もございます。ですから、これは実際に取り締まりに当たります県の意向を尊重いたしまして、県が全部取り締まれるということになりますれば、私たちのほうといたしましては、すそ切りはいたしておりません。
  321. 岡本富夫

    ○岡本委員 間違いないですね。
  322. 西川喬

    ○西川説明員 間違いございません。
  323. 岡本富夫

    ○岡本委員 実は、私は大阪府あるいは大阪市、そういうところを歩いてまいりまして、たとえば淀川、こういうところの水域指定はされた。しかし、いままで条例で取り締まっておったところが、一定水量、一定流量以上でなければいけない、こういうように政府のほうではきめておるわけですから、その小さい分に対して、いままでは条例で取り締まっておったが、水域指定されたために、今度は条例は法よりも軽いものですから守らなくなっておる。こういうところがあるのですが、いかがでしょうか。
  324. 西川喬

    ○西川説明員 現在、私たちのほうでやっておりますのは、指定をしまして基準をかけます。そのあと監視の問題がございます。この監視のほうにつきましては、現在では、ほとんど大部分の業種が都道府県知事のほうに委任されております。その場合に、非常に小規模のものが件数が多い。実際汚濁の元といたしましては、たとえば一割以下が件数にしますと八〇%ぐらい占めておる。そのような場合に、二〇%の件数で九割の効果をあげる、八〇%の件数を監視しまして、効果が一〇%以下、そのようなケースもあるわけでございますが、そのようなときに、都道府県といたしまして、すそ切りをしてくれというような要望がありましたときには、すそ切りをしている。それじゃなしに、実際できますか、やりますというようなケース、最近指定したケースにもそういうケースがございますが、相模川のケースでございますか、そういうようなところにつきましては、すそ切りをいたしておりません。全部規制するというような方向をとっております。それから矢作川のケースなんかでございますが、これは小規模ケースばかりで、矢作川のうちにおきまして、窯業原料の製造業でございますが、これがほとんど零細企業ばかりであったわけでございまして、そのすそ切りをいたしますと、この場合には、ほとんど規制の効果があがらないというようなケースの場合につきましては、これは県のほうがなかなか取り締まりができない、かえってこのような意向もあったわけでございますが、そのようなケースにつきましては、国のほうが通産省とも協議いたしましたし、県のほうにも要請いたしまして、すそ切りなしに全業種を規制対象とした、そのようなケースもあるわけでございます。それぞれの水域の状況に応じまして、地元の都道府県と十分協議いたしまして、その都道府県の意向もくみまして基準設定をいたしているようなわけでございます。
  325. 岡本富夫

    ○岡本委員 私、十四、五カ所回りまして、事実そうでないところ、またそういう陳情を受けてきたところがある。したがって、この際、もう一度洗い直しをしてもらいたい。そのときは県のところでよかった、しかし、いまになってああ不便だというところがある。たとえば大阪市の場合もそうであった。だから、もう一度洗い直しをしてもらいたい。これを、ひとつ長官要求しておきます。
  326. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 ちょっと説明が悪かったと思うのですが、これは元来われわれのほうとしては、すそ切りはしたくないのです。一番いい例が東京都ですが、東京都の場合、私たちとしては、どんな小さいものも、これをできるだけ規制する、こういうことで、もうだいぶ前、三、四年前ですが、交渉した。ところが東京都自体のほうで、かんべんしてくれ、これはたいへんだ、都として責任が負えない、こういうことで適当な、小さな規模のものだけはすそ切りと称して除外する、こういう切なる要望もあって、企画庁がそういろすそ切りを認めているのです。しかし、これは、いま説明がありましたように、地方団体の立場を考えてやっているのですが、それは地方団体の立場を考えてやることが適当かどうか。それから、これは五年前と今日とで違いますから、事態に応じて強く要請しなければならぬものがたくさんあると思います。それで、私のほうでは、そういう意味の洗い直しをできるだけやりたいと思っておりますから、ひとつわれわれとしても、いまの御要望に沿うように研究させていただきたい、こう思っております。
  327. 岡本富夫

    ○岡本委員 洗い直しをするということですから、それで了解いたしまして、次に、今度指定水域になりますと、各工場からの排水を取り締まるのが工場排水法、この工排法を見ますと、工場排水の取り締まり権限が、御承知のように都道府県に全部委任されておらない。たとえば先ほど申しました酒類は、国税庁長官が取り締まることになっている。それから石油精製業の用に供する施設、こういうものは通産大臣の下の通産局長です。こういうように全部見ますと、都道府県知事が立ち入りできないところの工場がずいぶんあるのです。そういうところから、往々にして排水の中からいろいろなことが出ておるわけです。これは先ほどもちょっと申しましたように、市民の皆さんの声によってそれが都道府県へ行くわけですが、これが通産局長のところに行った、陳情した、こういうようなのはなかなかない。あるいはまた、酒類だからここの排水は国税庁長官のところに行った、それもないのです。全部都道府県のところへ、要するに地方自治体の役所の窓口へ来るのです。私、先ほども公害行政一元化の話がありましたけれども、もっときめこまかくこの公害行政をやるためには、長官も非常に排水の問題で頭を痛めていらっしゃるわけでありますけれども、それであるならば、ひとつここらで、工排法は通産省の管轄でありますけれども、あなたのほうからこの調整をして、権限を地方自治体におろすことが大事ではないか、こういうように思うのですが、その点いかがですか。
  328. 佐藤一郎

    佐藤(一)国務大臣 まことにおっしゃるとおりであります。通産省をはじめ、いま御指摘のような問題について、だいぶ数が減ってまいりました。通産省でいうと、たしかまだ七つくらい残っていましたか、これは石油事業法であるとか、いわゆる産業関係の単独の事業法がございます。その事業法の体系の一環としてこれを監督、取り締まる、こういうものの考え方が別にありまして、そういうことからしてまだ残っておるものがございます。しかし、公害問題がだんだんこういうふうになってきましたから、これらはよく産業の実態を見ながら、できるだけいま御指摘のような方向で持っていくのが適当である、私もこういうふうに考えています。それぞれ所管省の法律事項でありますから、われわれとしてもよく各省とも相談をしてまいりたい、こういうふうに考えています。
  329. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは特に要求をしたいし、また水の問題で頭を痛められる経企庁としても必要ではなかろうか、ぜひ必要だと私は思うのです。たとえば、金属製品製造業の中のメッキの施設は、これは通産大臣主務大臣でありますけれども、都道府県に行っておる。ところが鉄道関係、車両関係の電気メッキの施設は、これは陸運局長、それから船舶関係のメッキの施設は海運局長、こういうことになっておるのです。これは御存じだと思うのですが、したがって、一日も早くこれは国民の皆さん、市民の皆さんの一番身近なところにおろしてあげて、そして早く予防をさせていく、こういうようにしていただきたい。これはいまそういうように進めていく、こういうことでございましたから、了解いたします。  そこで、あまり時間がおそくなってはいけませんから、厚生省にお聞きしますが、公害救助法が昨年の年末に国会を通過いたしましたが、そのときの救済する財源、これにつきまして財界の寄付金を集めるようになっておりましたが、予算どおり集まりましたか。
  330. 浦田純一

    ○浦田説明員 先生御案内のとおり、救済法による給付費は、企業がその二分の一を負担、残りの二分の一を国と県、市で均等に負担するということに相なっておるわけでございます。  御指摘の金額でございますが、企業負担につきましては、四十五年の一月八日に発足いたしました財団法人公害対策協力財団におきまして、これを集めまして、公害防止事業団のほうに拠出するというたてまえになっておるわけでございます。昭和四十四年度におきましては、実際にこれによりまして拠出されました金額は百八十一万一千円でございます。  この金額は少ないんじゃないかという御指摘かと思いますが、法律の施行が当初予定しておりました昨年の十月というところが大幅におくれまして、本年二月に延期したというようなこともございまして、実際上の給付費が支出が少なくなってきたという点が原因でございます。  それでは四十五年度におきましては給付費はどういうふうに考えておるかと申しますと、全体といたしましては二億五千三百九十八万三千円、したがいまして企業負担といたしましては一億二千六百九十九万一千円を見込んでおります。また国の支出といたしましては四千三百九十三万九千円を計上してございます。
  331. 岡本富夫

    ○岡本委員 これはわれわれこの救済法を審議するにあたって、責任をもってこの拠出金を集めるかどうか、そのときにはこんな少ない額百八十万なんということは言っていなかった。そこで、なぜこれが少なくなったか、要するに国の拠出が少なかった、こういうことになると思うのですが、それは要するにどこからきたかというと、公害病を指定する地域を少なくしたからなんだ。だから、この公害を救済するところの、その指定する地域を少なくしたからこんなに少なくなった。その点どう弁明されますか。いまあなたは局長になったところですから、よく聞いてひとつ……。
  332. 浦田純一

    ○浦田説明員 御指摘の金額、当初予定したより非常に少額ではないか、それがひいては同法に基づきます指定地域の選定、ひいては実際に救済されるべき患者さん方の数、そういったものについて十分に救済措置として働いていないのじゃないかという御指摘だと思います。この法律が施行されまして、いままで実際に同法によって救済を受けた患者の数でございますけれども、現在までのところ約千五百名の患者が実際の対象になっておるわけでございます。  それから健康被害救済法によります地域の指定を、ただいまのところは、その基準に合致しておるかどうかということにつきまして、こちらで検討を進めておるところでございまして、決して不当に予算の面からの制約を受けておるといったようなことではございません。また実際に運営にあたりましては、さらに今後患者が発見されました場合、同法による救済が行なわれるように、予算の面でも多少の余裕もございますので、実行にあたりましては、できるだけこれらの指定の作業も急ぎながら、できるだけ多くの対象の方々に一人残らず同法による救済が働きますよう、運営の面についても十分に努力してまいりたいと思っておるわけでございます。
  333. 岡本富夫

    ○岡本委員 当初、四十四年のこの予算は幾らあったのですか。推定をして、公害病が何人で、何ぼの予算厚生省は組んであったか。それに対して財界からこれだけしか入ってない、こういう説明を願いたいのです。
  334. 城戸謙次

    ○城戸説明員 いま局長から申し上げました数字でございますが、百八十一万というのは、去年の二月以上分だけしか四十四年度の予算で対象になりませんので、その分に見合います事業者の拠出分でございます。  私どもとしましては現在、いま申し上げましたように千四百七十八名認定をいたしておりますが、月別に申し上げますと、三月の十日現在が千六十一名、四月末が千三百五十六名、五月末が千四百七十八名と、こういうぐあいに伸びてまいっておるわけでございます。昨年たまたま時期がおくれましたためにだいぶ少額になりましたが、本年度は大体軌道に乗るようにやってまいりたいと思っております。  それから調査につきましても、予定の地域につきましては環境、大気、健康状態両面にわたりましてやりたい、尼崎市につきましても明日から一週間にわたりまして環境、大気の調査をやる、かようになっております。
  335. 岡本富夫

    ○岡本委員 これはいま追及してもしかたがない、時間があれですから。  次に、これは私ども、あの審議のとき、数億ぐらいは寄付が集まるのじゃないかというようなえらい勢いであった。しかしこんな少ない百八十一万というようなことでは話にならぬ。そこで厚生省の立場といたしまして、たとえばいまたくさんのカドミウム患者が、調べたら出てくると私は思うのです。  そこで、きのう萩野博士から、ゲルろ過法、こういうものでもって早期発見ができるんだ、まだ学界では認められておらない、しかしこれによって早く患者を発見することができるんだ、こういうような説明があったのです。あの悲惨な、骨が折れてしまったり、レントゲンで見て、そしてああ骨が薄くなっている、それがもう重症な患者になる。それまでいかずに早く救済をしてあげることが大事ではないか。こういうことを考えますれば、きのうの萩野博士のあのゲルろ過法を採用して、もっと早く患者を救済してあげるような姿勢にならないか、これをひとつお聞きしたいのですが、いかがですか。
  336. 浦田純一

    ○浦田説明員 御指摘のカドミウム等重金属によります中毒、その他一般環境汚染によります健康への障害あるいは中毒、この問題を、事が起こってからあわててそのあと始末をするということでは十分でなく、万全を期するためには、やはりそういったことが起こらないように予防措置を講ずるということが一番大事であるということは、先生の御指摘のとおりであると思います。  御指摘のカドミウムの健康調査方式の問題でございますが、そのような意味から申しまして、できるだけ早い時期に、まだ病気があらわれてない時期に、カドミウムの中毒が起こっているかどうかということを早期発見できれば、これが一番けっこうなわけでございます。御指摘のゲルろ過法でございますが、これにつきましては、私どもといたしましては、方式そのものは非常にけっこうなものである、かように考えているわけでございます。ただ、そのこまかいいろいろな手技、やり方につきまして若干学者の間に意見の相違があるようでございます。したがいまして、私どもといたしましては、それが固まり次第ひとつ必ずこれを項目として取り上げてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  337. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、この問題を取り上げて採用していく、そういうように受け取ってよろしいでしょうか。
  338. 浦田純一

    ○浦田説明員 先生の御意見どおりでございます。
  339. 岡本富夫

    ○岡本委員 あまりおそくなってもあれですから、あと一つ諏訪湖の問題をもう少し詳しく取り上げたいと思いましたが、このくらいでやめますが、御承知のように諏訪湖の付近は、井戸水が、深さ三十六メートル掘っただけで青色、黄色というのが出てくる。こういう面もよく考慮して、そしてこの七月に水質指定されるわけですね。それまでの対策として、この現地の小さな市ではどうしようもない、こういうようになっております。大体百億くらいの予算が要るのではないかというようなことも言っております。だからひとつさっそく再調査をしていただきたい。先ほどの、魚もあるいはまたタニシも食べてもだいじょうぶだというのは、もうずっと前の調査報告です。いまでは、現状は変わっておる。これをよく認識の上、再調査をし、また対処をしていただきたいことを要求して、終わります。
  340. 加藤清二

  341. 柴崎芳三

    ○柴崎説明員 土井先生の先ほどの御質問の第二点にお答え申し上げます。  質問の趣旨は、加鉛ガソリンでなければ動かないエンジンの即時中止ができないかということであったわけでございますが、現在の自動車エンジンの構造はすべて加鉛ガソリンを前提にして設計されておりますので、この措置をとりますと、いま直ちに無鉛化ガソリンで走り得るエンジンの生産ができない限り、生産の全面ストップということになるわけでございまして、これは、ただ単に業界だけの問題でなく、日本経済の非常に大きな問題になろうかと思います。  無鉛化ガソリンを前提にいたしましたエンジンといいますのは、現在のエンジンと、特にバルブの構造と申しますか、バルブの周囲の部分を新しく開発すべき特殊鋼でおおいませんと、鉛が一種の潤滑剤としての役目を持っておりましたので、その潤滑剤がなくなったガソリンを前提にした特殊なかたい鋼をもってつくりませんと、すぐに焼けついて、うまく動かないという問題がございますので、これが実は現在のエンジン構造改善の非常に大きなテーマになっているわけでございます。  それからもう一点、無鉛化ガソリンのエンジンをつくるにいたしましても、先ほど御説明申し上げました目標オクタン価をどこに設定するかということによりまして、エンジン構造の内容が非常に変わってくるわけでございます。  以上のような問題は、実は先ほど御説明いだしました専門委員会で現在検討中の点でございますので、その辺の線が出ますれば、できるだけ早い時期にこの技術をはっきり開発いたしまして、無鉛化計画とあわせてその生産準備に入り、その生産を開始するというようなことで現在のエンジンとの代替を考えていきたい、かようにわれわれは思っておる次第でございますが、ただ無鉛化計画で実現したところで切めて無鉛化エンジンをつくるというのではおそいわけでございますので、われわれはそれを先取りといいますか、前に十分、前広に準備いたしまして、徐々にこの無鉛化エンジンというものの生産体制に入っていきたいということで業界を指導していく方針でございます。
  342. 加藤清二

    加藤委員長 島本虎三君。
  343. 島本虎三

    島本委員 私に対する先ほどの答弁がまだ残っておるようであります。質問しても、ここにはっきり答弁できる人もついにきょうはあらわれませんでした。ただ、その内容だけははっきり言っておきました。これで私はもう今回はとどめておきたい、こういうように思います。朝からでだいぶ皆さんも疲れて、だいぶしかられたり、あげられたりしてたいへんだったろうと思います。ただ一つ、最後になって、これが終わると、にやりとする皆さんの顔はだめなんですよ。だめなんです、それは。一そう緊張して、あすからこの対策に当たらなければならないのに、終わっちまえばにやっとして官僚的な笑いをするのです、皆さんは。笑い方も皆さん研究しなさい、今後は。だめだ、それは。前に言った公害局を設置して、ただ単につくるだけなら何にもならぬぞ、その権能はどの辺まで考えているんだと官房長官をして聞いても、わからないという。それなら退職手当をよけい取るだけの機関になるじゃないか。そんなものはだめなのだ。そうじゃない。じゃどこまでやるんだ。わからない。こんなんじゃわからない。したがって今後は、整備されるこういうような公害機構、この中で一元化のこういう要請がだいぶ出ておりました。公害局にする、権能を高める、そして他の省庁にも公害対策機関が全部あるのですから、それに、あるいは連絡しあるいは命令し、これによって一元化はしないけれども、権能を高めることによって完全に期待にごたえるようにしたい、こういうようなところまで私は言わせたかったのです。逆に皆さんその席から拍手かっさいを仰ぐような、仰がなければならないこれは誘導質問であったんです。皆さんはこれをわれわれに頼めばいいいんだ。決して頼まないような皆さんだから、私のほうでそれを創作して聞こうとしても、肝心やられる本人が来ないじゃないか。こういうような姿勢じゃだめです。今後作成する場合にはそこを十分考えて、そうしていまの期待にこたえるような作文をしてやってもらいたい。このことはきょうお集まりの皆さんを通じて大臣にもよく言っておいてほしい。わかったかわからないか、あとから私のほうに返事だけはもらいたい。  このことを言って私の質問は終わります。
  344. 加藤清二

    加藤委員長 残余の質問は次回の委員会にこれを行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時十四分散会