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1970-06-09 第63回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年六月九日(火曜日)     午前十一時二十七分開議  出席委員    委員長 加藤 清二君    理事 小山 省二君 理事 始関 伊平君    理事 山本 幸雄君 理事 渡辺 栄一君    理事 島本 虎三君 理事 岡本 富夫君    理事 寒川 喜一君       伊東 正義君    久保田円次君       浜田 幸一君    林  義郎君       松本 十郎君    赤松  勇君       土井たか子君    藤田 高敏君       古川 喜一君    細谷 治嘉君       山口 鶴男君    多田 時子君       西田 八郎君    米原  昶君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 内田 常雄君         通商産業大臣  宮澤 喜一君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房審議室長   青鹿 明司君         警察庁交通局長 久保 卓也君         経済企画庁国民         生活局参事官  西川  喬君         法務政務次官  大竹 太郎君         厚生政務次官  橋本龍太郎君         厚生省環境衛生         局公害部長   城戸 謙次君         厚生省環境衛生         局公害部公害課         長       橋本 道夫君         厚生省薬務局薬         事課長     山高 章夫君         農林省農政局農         産課長     上田 克己君         食糧庁業務部長 中村健次郎君         水産庁漁政部長 平松甲子雄君         通商産業大臣官         房審議官    成田 寿治君         通商産業省企業         局立地公害部長 柴崎 芳三君         通商産業省化学         工業局長    山下 英明君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君         工業技術院標準         部長      久良知章悟君         運輸省自動車局         整備部長    隅田  豊君         運輸省航空局長 手塚 良成君         郵政大臣官房電         気通信監理官  牧野 康夫君         建設省道路局有         料道路課長   菊池 三男君         自治大臣官房参         事官     佐々木喜久治君         最高裁判所事務         総局民事局長  矢口 洪一君         (参 考 人)         公害防止事業団         理事長     原 文兵衛君     ————————————— 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   土井たか子君     中嶋 英夫君 同月二十九日  辞任         補欠選任   佐野 憲治君     古川 喜一君   中嶋 英夫君     土井たか子君 六月九日  辞任         補欠選任   土井たか子君     山口 鶴男君   藤田 高敏君     細谷 治嘉君   古川 喜一君     赤松  勇君 同日  辞任         補欠選任   赤松  勇君     古川 喜一君   細谷 治嘉君     藤田 高敏君   山口 鶴男君     土井たか子君     ————————————— 五月十三日  一、産業公害対策に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  産業公害対策に関する件(大気汚染及び水質汚  濁対策等)      ————◇—————
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  産業公害対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。浜田幸一君。
  3. 浜田幸一

    浜田委員 私はお許しをいただきまして、自由民主党を代表して通産省立地公害部長並びに成田審議官厚生省公害部長に御質問を申し上げます。  問題点の第一点は、現在柳町をはじめといたしまして問題になっておりますハイオクタン・ガソリン鉛害の問題であります。この問題についてお伺いをいたしますので、確実なる御答弁を賜わりたいと思います。  まず第一の質問点は、私自身の意見を除きまして質問点を申し上げますので、お願いをします。いま、柳町をはじめとするところで、ハイオクタン・ガソリンから出ております鉛公害で柳町では非常に問題が起こっております。しかしこの問題は氷山の一角でありまして、たまたまそれが問題化されただけでありますが、日本全国における鉛害の問題は緊急を要する問題として討議をしなければならない問題だと思います。  それで、まず第一の質問を申し上げますが、立地公害部長日本全国にわたる、たとえば柳町と同条件にあるような交通繁多なところ、そういうところに対して、鉛害危険性がどの程度あるか調査されたことがあるかどうか。もし調査を指示されたことがあるとするならば、その結果についてお聞かせをいただきたいと思います。もしなければないということで明確にお答えをいただきたい。  第二番目の質問は、調査事実に基づいて、その後の対策について指示されたことがあるかどうか、このことについてどのように指示をされたか、お聞かせをいただきたいと思います。  引き続きまして第三番目の質問は、この間の新聞紙上では、厚生省ハイオクタンを使わないことにした、通産省は初めから使っていない、こういうことで、ハイオクタンそのものについての責任のなすり合いというよりも、自分だけがいい子になるような言動が新聞紙上に発表されておりますが、そういうことは、公害全体を論ずる現在の国政の場からいたしますと、その場のがれの発言行為でありまして、抜本的な無鉛化対策には相ならないと思うのであります。  そこで、率直に申し上げますが、現在の段階で、通産省の発表によると、ハイオクタンを使わなければならない車が約百五十万台あるといわれておりまするけれども、このハイオクタンを使わなければならない車に対して、業界そのものではあまり積極的ではない。少なくとも業界に対して私ども質問をいたしましたところ、業界では、率直に申し上げて、われわれは百五十万のハイオクタンを使用する車に対して石油ハイオクタンを供給する責任がある、こういう答弁をいたしております。これは私は、率直に申し上げて、残念な発言だと受け取っておるわけであります。もちろんそれは車があるからガソリンを供給するのは当然であったといたしましても、現在世論がこれだけ公害を問題にしているときに、基本的な人権を尊重する、そういう姿勢通産行政を行なわなければならないときに、通産省指導下にある石油業界そのものがそういう発言をするということは、私はまことに残念なことだと思います。  そこでお伺いをいたすわけでありまするけれども、率直に申し上げて、現在までの通産省ハイオクタンの処理については、私は積極的な姿勢がとられていないと思うのでありますが、もしかりに積極的な姿勢をおとりになっていたという態度をお持ちであったとするならば、それがどういう態度であるのか、ひとつお示しをいただきたい。  以上、三点だけまず御質問を申し上げておきます。
  4. 柴崎芳三

    柴崎説明員 お答え申し上げます。  第一点の、日本全国にわたる鉛害が特にはなはだしい地点を調査したことがあるかという御質問でございますが、現在までかかる調査通産省としては行なっておりません。  ただ、この自動車規制の問題は、運輸省並び厚生省でもそれぞれの立場でお取り上げでございますので、運輸省厚生省でやっておられるかどうか、その点は別途お答えいたさなければならないかと思います。  それから、第二点の現在までとられた対策でございますが、二つ対策をとっておりまして、第一の対策は、おそくとも七月一日までに、ハイオクタン加鉛量を半分に減らすという対策でございまして、御承知のように現在レギュラー加鉛量ガロン当たり一・一cc、ハイオクタン加鉛量が二・二ccとなっておりますが、これをレギュラー加鉛量並みに至急下げるということで、これは現在すでに各会社あてに通達を出しまして、この十五日を目標にいたしまして、その実施計画を取り寄せるべく手配中でございます。それからレギュラーにつきましても、現在平均は一応一・一ccになっておるわけでございますが、これをなるべくさらに下げるということで、全体の加鉛量を現在の四分の一程度減らすということを目標に努力しておるわけでございます。  それからさらに二番目の対策といたしましては、産業構造審議会の中に自動車公害対策小委員会というものを設けまして、無鉛化の方策につきまして、現在鋭意検討中でございまして、あすもその専門委員会が開かれる予定でございます。専門委員会で特に詰めてやる問題といたしましては、五年以内のできるだけ早い時期に無鉛化する方法はどういう方法があるかということをまず詰めまして、その目標期日もはっきりきめまして、それに対するガソリンサイド無鉛化対策と、エンジンサイド無鉛化対策、これをかみ合わせまして無鉛にいたしまして、なおかつ走行性能が落ちない車を開発するというような形で、この対策を進める予定になっております。  それから第三点の、通産省並び厚生省が、それぞれハイオクタンの油を使わない、非常にひとりよがりの態度じゃないかという御指摘につきましては、通産省もこの措置をとるまではハイオクタンガソリンを使っておりました。ただこの問題が非常に大きな問題になりましたために、厚生省で実施されております調査の結果を待たないで、とにかくみずから身を正そうということで、さっそくハイオクタンレギュラーに切りかえるという措置をとったわけでございまして、決して他意あるものではございません。みずからの姿勢を正すという考え方から出た措置でございます。  それから第四点でございますが、ハイオクタンを使う車は百五十万台あるから、石油業界のほうではその供給責任があるという点についての御指摘でございますが、確かに現在走行中の車千五百万台の約一割程度が二千cc以上のエンジンあるいはスポーツカーということで、ハイオクタンを使わざるを得ない車になっておりますので、通産省といたしましては、ハイオクタンガソリンの中の鉛分を減らせば、さしあたり鉛による害というものは削除されるのではないかという考え方で、先ほど御説明申し上げました鉛分の二分の一カットということを実行したわけでございますが、今後は車のエンジン構造その他も鉛のないガソリンに合うような形で開発していくということを、業界のほうにも十分指導いたしまして、供給責任論に名をかりた無責任体制というものは、これは絶対とらせないという考え方でございます。  大体以上のとおりでございます。
  5. 浜田幸一

    浜田委員 引き続いてお伺いしますが、いまの御答弁の中で、ガソリン供給上の責任におい通産省は五カ年以内に無鉛化状態を確立するために審議会を設ける。一つ方法としてはガソリンサイド、もう一つサイドエンジンサイドということでありますが、率直に申し上げて五カ年以内というのは私は時間的に非常に長いような気がいたすのでありますが、これを短期に解決する方法はお持ちでないのか、通産省自体率直な見解として五年はどうしてもかかるのかどうか、この点をお伺いします。
  6. 柴崎芳三

    柴崎説明員 お答えいたします。  五年必ずかかるという状況ではございませんで、五年以内のできるだけ早い時期にこの目標を設定しようということで、あしたも専門委員会の中ですべての問題をさらけ出しまして検討するつもりでございますが、ただ世界状況といたしましても、たとえばアメリカを例にとりますと、一九七四年までにレギュラーガソリンについては無鉛化する、それからハイオクタンガソリンについては若干の鉛は認めるということを一応目標にしておるようでございまして、無鉛化にいたしますと、またあらためて芳香族その他から出てまいります有害のガス成分がふえるとかそれを吸収する触媒につきまして、新しい触媒を発見しなければならないとか、あるいは当然オクタン価が落ちてくると思いますが、その落ちてきたオクタン価をベースにいたしまして、どういう効率の高いエンジンを開発するかとか、いろいろかみ合わせるべきファクターがたくさんございますので、いま一がいに何年目にできるということは断言できない状態でございますが、専門委員会の席上でも通産省の意向を十分徹底いたしまして、できるだけ早い機会にこれらの組み合わせが可能になるように努力いたしたい所存でございます。
  7. 浜田幸一

    浜田委員 重ねてお伺いします。  立地公害部長の話では、アメリカの例が一九七四年までということでガソリンサイドのお話がありました。しかし、アメリカ状態日本状態では状態が非常に異なりますので、それは当面基本的なものにはならないと私は考えるのであります。  そこで、無鉛化の方向に進めるための条件として必要なものがある。その一つについては、これは成田審議官にお伺いをいたしておきたいのでありますが、たとえば現在タクシー業界では、率直に申し上げて、すべてもうほとんどがLPGをお使いになっておられる。このLPGを使った場合にLPGから鉛が出るものであるかどうか。私はLPGからは鉛が排出されていない、こう聞いているのでありますが、成田審議官お答えをいただきたいと思います。
  8. 成田寿治

    成田説明員 自動車燃料としてLPGを使った場合には、鉛は排出いたしません。
  9. 浜田幸一

    浜田委員 それでは立地公害部長にお伺いします。  いま成田審議官にお伺いいたしますと、LPGを使用する場合には車から鉛が放出されないで進むのだという御説明がありましたけれども、その場合、いままで通産省では自動車業界に対して、これは営業車は現在でも使っておりますが、なぜガソリン単価よりも二分の一以下の単価で車を走らせることのでき得るLPG一般乗用車に使わせなかったか。もちろんこれは使わせなかったかという質問よりも、むしろそういうものを使ったほうが鉛のためにはいいんだ、こういう指導をされたことがあるかどうか。この点をお伺いします。
  10. 柴崎芳三

    柴崎説明員 お答えいたします。  鉛との関係LPGを使うようにという指導はいままでしたことはございません。と申しますのは、LPGを使うかガソリンを使うかということは、供給体制との問題もかみ合いまして、ユーザー側の便利さというような点も非常に大きく働きまして、現在のような形に落ちついておるというぐあいに理解しておるわけでございますが、この前、柳町の調査の結果、鉛が直接人体にあのようにはっきりした形で害があるというデータは実はいままで全然握っておりませんでした。したがって、鉛についてLPGガソリンとの関連を取り上げまして指導した例がないわけでございますが、LPGにつきましてはいろいろ組成上、酸化窒素とかあるいは一酸化炭素とか、鉛以外の排ガスにつきましてはガソリンよりも多いという事例もございますので、現在それらを総合的に検討しておる最中でございます。
  11. 浜田幸一

    浜田委員 成田審議官にお伺いします。  これはLPGそのものの要素の問題でお尋ねしたいのでありますが、いままでどういう理由LPGガソリンよりも二分の一の値段であるのに一般化されていなかったか。この点について第一点お伺いします。  それからもしLPGを使用した場合に、鉛だけを防ぐ場合には私はLPGが非常にいいものだと思うわけです。少なくともガソリンよりも鉛公害については安全であるということがいえるわけですが、たとえばLPG一般使用化する場合のネック、難点はどういうことなのか。たとえば鉛の人体に及ぼす影響、そういうものも含めて御答弁をいただきたいと思います。  私の聞きたいのは、何のためにLPGが使われていなかったか。一説によると、冬になると凍ってしまうから特殊技術が必要だとか、いろんなことがいわれておりますが、私ども調査では五万円なり七万円なりというものをかければ、LPG液体化燃料については安全である、こういうことで調査の結果では、発生しているにおいがあります。このにおいが非常にくさいということ以外に何もないと思うのでありますが、その点をも含めてお答えをいただきたい。
  12. 成田寿治

    成田説明員 お答えいたします。  LPG自動車が、なぜいままで一般乗用車として普及されないかという問題と、あるいは今後の鉛対策上、LPG車を普及させるための難点は何であるかという御質問ですが、両方同じようなうらはら問題点だと思います。現在LPG車は、全国ハイヤータクシー等営業車については七五%普及しております。しかし、オーナードライバー等一般自動車全部につきましては一・二%くらいで、非常に微々たるものであります。これは営業車は、大都会ハイヤー、特にタクシーは、大体七五%がLPG車を使っておる結果でありまして、そのかわり一般乗用車としては全然普及していない。その理由としてあげられております点を述べますと、一つは、先生が先ほどおっしゃったように、キャブレーターの関係で冬、凍結するという難点もあります。それから始動する場合に問題があるという点も指摘されております。  それから燃料は、主として税金の関係でございますが、ガソリンの場合よりも二、三割安いのであります。ただLPGを使うためには車の設備に金がかかって、一〇%ぐらい高くつくというような難点指摘されておりますが、ただこのように鉛の問題が大きな社会問題となっておる以上、そういう問題もいろいろ技術的に解決していくべきであろうと思います。  それからガソリンスタンド全国至るところに、四万五千もたくさんあるのでありますが、LPGスタンドは大都会以外にはない。これはLPG車が大都会タクシー以外に走っていないということとうらはらをなしておるのでありますが、そういう意味でこれをほんとうに普及させるためには、LPGスタンドをどんどん全国的に普及させていかなければならないという問題もあります。  そういう意味で、いままで申し上げました難点も、いろいろ今後の検討によって技術的に解決できる問題が相当ありますし、それからスタンドの拡充とか、あるいは一般LPG供給力充足等は、これは五年もかからぬ、当然数年間で充足できる問題でありますので、鉛害対策の問題としてわれわれも業界と一緒になって真剣に取り組んでいきたいと思っております。
  13. 浜田幸一

    浜田委員 立地公害部長にお伺いします。  いま成田審議官の御答弁では、LPGの問題もこれから鉛害禍をなくすために努力をしていかなければならない問題だ、そういうことで取り組んでいきたいという御答弁だったのでありますが、質問の要点をもとに戻します。これは単に一個の鉛害をなくすためのテクニックの問題でありますから、私は抜本的な問題について立地公害部長にお伺いします。  先ほど五カ年以内という問題を短縮する方途として、よろしければ、私が反論さしていただくことをお許しいただきたいと思いますが、いま利用されているハイオクタンを使う車が百五十万台、これがあと五カ年間たちますと、もう全部使用不能になりますね。ですからこれは五年以降ハイオクタンを利用するものについては売り出さないということにすれば、ハイオクタンは必要なくなるわけですね。レギュラーガソリンで走れる高級車というものをつくればいいということになりますね。その場合に、業界との相談で五年後からはそういうものをつくらないということをきめれば、これは不必要になるわけですね、あとレギュラーガソリン全体の問題を考えればよろしいわけですから。で、私は率直に申し上げて、この五カ年以内——これはいまもどんどんどんどん車がつくられているわけでしょう。いまある百五十万台はそれでいいかもしれないけれども、きょうも生産されているわけでしょう、ハイオクタンを使わなければ走れない車が。たとえば一番いい例ですが、グランプリ問題できょうの毎日新聞に出ております。日産自動車が、公害問題に取り組んでグランプリには参加しない。おそらくこのグランプリは中止になるのではないかということが出ている。これは、率直に申し上げて、公害問題に対する業界の良識だと私は思う。しかしながら、こういうことを発表しながら、実際にはハイオクを使わなければならない車をきょうもつくっている。そうして通産省は、その問題について、五年以内に無鉛化ガソリンに成功すれば別でありますけれども、そうでない場合には、やはり鉛が放出されることを認めながら通産行政を進めているということになると私は思うのですけれども、その点についてはどうでしょうか。
  14. 柴崎芳三

    柴崎説明員 お答え申し上げます。  まず、第一点の無鉛化につきましては、通産省といたしましては、五年以内に必ず無鉛化を実現させるということをかたく期しておるわけでございますが、無鉛化ガソリンができ上がりました場合に、ハイオクタンレギュラー二つ銘柄をはたして存続するかどうか、これはやはり専門委員会検討事項になっておりまして、あるいはこれを一本化して現在のレギュラーよりは若干高く、現在のハイオクタンよりは若干低い一本の銘柄になるということも考えられますし、あるいは現在と同じような格差のあるハイオクタンレギュラーが存在するということも考えられますが、その場合には鉛はございませんので、鉛害は起こりません。しかし、鉛害は起こりませんけれどもハイオクタンのほうが排出ガスがいろいろの意味で多くなるという点がございますが、これは触媒を開発いたしまして、たとえハイオクタンガソリンを使いましても完全にその有害ガスは吸収するような形の検討を進めておりまして、これもやはり無鉛化のテンポと合わせまして、五年以内のできるだけ早い時期にやりたいということを考えておりますので、いまこの段階におきましてハイオクタンガソリン生産をやめるとか、あるいはハイオクタンを使う自動車生産を中止するとか、そういう問題とは直接に結びつかない、今後の検討課題であろうか、かように考えておる次第でございます。
  15. 浜田幸一

    浜田委員 わかりました。私が矛盾に感ずるところは、いまの御答弁でも、これから研究する問題だからいまは申し上げられないということで了承せざるを得ないと思いますけれども、たとえばグランプリであれだけの車が早く走ろう、早く走ろうと競争している。これは世界の通例ですから、日本だけなくすというわけにいかない。しかし、その問題と同じように、スピードアップされない車は売れない、こういうのが現況ですね。しかし、通産省指導理念とすれば、交通公害で年間一万五千も二万人もの人間がかりに死んでおる。その理由を考えてみれば、これは車が早く走り過ぎる性能を持っているからだと私は思う。そういうものとからめて、やはり完全な対策として御研究をいただく場合の条件としてお願いを申し上げておきますが、いかがでしょうか、これは極論になってたいへん恐縮ですが、現在日本国で、名神を除いて百キロ以上で走るとか八十キロ以上で走るというところはないわけです。そこで、通産省指導で、八十キロ以上走れない車というものをつくる方法はないものでしょうか。そういうことを提案した場合に、業界全体が世界経済競争の中で、過当競争の中でどのくらいおくれるものであるか、私はちょっと御意見だけお伺いしておきたいと思う。  たとえば車を八十キロなら八十キロで速度を制限する。これはもう、鉛をなくすることよりもバルブで調節できるわけですから。そして警察官は交通対策で、たとえば取り調べをする場合には、そのバルブ——八十キロ以上走れる車をつくってもいい。百二十キロでも百五十キロでもいいから、つくっておいて、バルブ調整をして封印をしておいて、赤なら赤の封印をしておいて、警察官はそれをあけて、封印が切られているかどうかだけを調べれば、これは交通道徳を守っているかどうかということにつながる、こういう形の規制が、私は必要ではないかと思う。そのほうが、一酸化炭素の場合もこれは解決しやすい。なくなることは明らかですから、解決しやすい。あらゆる問題が自動車公害の中から除去される要因になると思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
  16. 柴崎芳三

    柴崎説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御提案のありましたサゼスチョンは、私は、立地公害部長の総合的な公害対策という面からは、非常に貴重な御意見だと拝聴いたしたわけでございますが、生産行政のほうは重工業局のほうで担当しておりますので、重工業局のほうではまた別途の意見があろうかと思いますが、十分ただいまの御意見を参酌いたしまして、内部で検討さしていただきたい、かように考える次第でございます。
  17. 浜田幸一

    浜田委員 厚生省公害部長にお伺いしますが、先ほど通産省の立地公害部では、日本全国において発生されているであろうという鉛公害の問題については、通産省独自の形で調査したことはない、ことによったら厚生省でおやりになっておるかもわからぬということだったのでありますが、厚生省公害部長にお伺いをしますが、厚生省ではどのような調査をされたのか、お聞かせをいただきたい。それでその調査状況に基づく指導理念はどういう形で発揮されたのか、この点をも含めてお答えをいただきたい。
  18. 城戸謙次

    ○城戸説明員 お答えいたします。ただいまの調査でございますが、私どもとしましては、鉛の問題が将来大きな問題になるということを予測いたしまして、昭和四十年度から、鉛化合物を含めました、大原交差点等におきます、自動車の排気ガスの人体影響調査というものをやってまいりました。さらに四十一年度からは、東京都、大阪市、尼崎市の国設大気汚染測定網を、四十四年度末には十一カ所が稼働しておりますが、四十五年度には二カ所ふえることになっております。この測定網におきまして鉛の測定をやってまいったわけであります。それからその他各種の調査研究を横浜市立大学に委託したり、あるいは慶応大学の土屋教授に委託したり、その他いろいろやってまいったわけでございますが、今後さらに四十五年度から五カ年間に、大気汚染の影響調査という中で、相当精力的に取り組んでまいりたい。かように考えています。  その調査の結果でございますが、私どもとしましては、現在までの調査では、日本全体の汚染としましては必ずしもそうひどくなっていない。と申し上げますのは、国設大気汚染測定網の測定結果では、たとえば昭和四十三年のデータで申し上げますと大体立方メートル当たり〇・五マイクログラム・年平均という程度でございまして、最高値の二十四時間値も二マイクログラム・パー・立方メートルという程度でございます。ただ、日本では御承知のように非常に道路条件が悪いということがありまして、国土全体の汚染はひどくなくても、また都市では必ずしも悪くなくても、交差点という非常に局部化されたところでは汚染が非常に多うございまして、その汚染値につきましては、そのデータによりますと大体五マイクログラム・パー・立方メートル程度でございますが、中には一一・一七あるいは一三・五八、これはいずれも八時間ないし十二時間値でございますが、こういうデータもございます。したがって私どもは、今後また一そう汚染がひどくなるということを前提としまして、できるだけ低鉛化、できますれば無鉛化という方向に持っていくというように、関係省と、話があれば相談をいたしたい、という段階でございます。ただ、何と申しましても今度あらわれましたような柳町交差点におきます汚染の程度、それによります、四十九人中十三名が職業病の鉛中毒の認定を受けるような基準を上回っていたというようなことがかりに事実といたしますれば、私どもの予測よりもはるかに早いスピードで汚染が進行したというようなことが言えるかと思うのでございます。
  19. 浜田幸一

    浜田委員 ありがとうございました。  そこで、続いて御質問申し上げますけれども、現在問題になっております柳町でございますが、柳町の対策として厚生省ではどういう態度をおとりになるのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。これはひとつ具体的にお願いをいたします。たとえば、いまもうそこから引き揚げていきたい、——ここから引き揚げていく力のある人は引き揚げていくことができますが、力のない者はどうなるのか、そこでこの辺で私は率直に申し上げておきますが、政府としての責任ある柳町対策というものはどういうものであるのか、たとえば集団疎開をする場合に住宅地まで与えるのか、商店を経営している者に対しては商業地区まで与えるのか、そういうあたたかい思いやりも含めて私は御答弁をいただきたい、こう考えます。
  20. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 柳町の中毒事件が新聞に報道されます、マスコミによって報道されますと同時に、鉛害というものに対して非常に大きなショックを世間に与えてまいった事実に対し厚生省としてとれるもの、また厚生省というよりも東京都が行なっていただいているものを私どものほうでお手助けをするもの、また関係各省に対して協力要請をいたしておるもの、種々の問題点がございます。即刻、交通規制等の当面の対策の実施ということと同時に、柳町交差点付近の大気汚染調査、同時に人体に与える影響調査というものを東京都のほうも直ちに厚生省のほうに実施をいたしたいという御連絡をいただきました。そして、これは私どもとしてもぜひ東京都でお進めを願いたい。交通規制、同時に人体における影響調査というものを東京都が第一義的にすぐ行ないたいという御連絡をいただきまして、これには即刻取りかかっていただきたいというお願いをしております。  同時に、いま鉛中毒というものは非常に重要な問題でありますだけに、この原因究明はもちろんでありますけれども、早急に当面可能な最大限の自動車排気ガス対策というものを講じていくことと同時に、むしろ汚染の度合い、同時に人体影響については東京都が御連絡をいただいた範囲よりもなおきびしい慎重な御調査を早急に願いたいということを厚生省として指示をいたしました。  それと同時に、当面可能な対策として厚生省として考えられるものを、直ちに関係各省に申し入れて御協力を願いつつあります。たとえば交通規制対策、これは警察庁の御協力がなければわれわれだけではできないことでありますし、ガソリンの低鉛、無鉛化対策というものは先ほどから通産当局が答えておられるとおりの状況でありますが、これは五年以内という最大限のリミットではなくて、でき得る限り早い期間に終了していただきたいということ、同時にこれは先ほどちょっと出ておりましたけれども、公用車——官庁用の公用車に少なくともハイオクタンは使用させないということ、またむしろ本質的な問題としては無公害公害を発生するおそれのない自動車の開発というものを従来からも通産省でおやりをいただいておったはずではありますけれども、必ずしも実用に、十分な無公害車の開発というものは今日まで成功いたしておりません。むしろこの開発のスピードを上げていただきたいというようなことを中心にして、六月四日に関係各省、すなわち通産省運輸省、警察庁公害担当課長会議というものを主催をさせていただきまして、鉛公害、これは鉛公害ばかりじゃございません。自動車排出ガス一切に伴う全体の公害問題として、自動車公害全体についてその施策を確認すると同時に規制強化の方向を打ち出しつつあります。  なお、先ほど通産省からの御答弁にもございましたが、私どもとして繰り返し通産当局に非常に強くお願いをいたしておりますことは、これは私どもが直接ハイオクタン・ガソリンを使用禁止にするとか、あるいはそこから何%以下の鉛に落とせというようなことを直接指示をいたす権限はございません。通産当局が御努力をいただいている方向というものは当面私どもとしては了承はいたしますけれども、この柳町交差点の調査結果が、現在新聞、テレビ、ラジオ等の報道機関によって伝えられている程度のものであるか、あるいはそれを下回るか、あるいはそれを上回る結果が出てくるか、これは詳細な調査が終わらなければわからぬことであります。その結果がたとえもし現在伝えられているより低い汚染度合いであったとしても、それを理由にして低鉛化、無鉛化の方向にブレーキをかけるようなことは絶対にしないでいただきたい、そうしてむしろ五年以内というお話ではあるけれども、もし人体影響がより以上大きな数字としてあらわれてきたような場合には、この五年という年限は可能な限り繰り上げていただきたいというお願いをし、これは通産当局としても非常に積極的な御了解をいただいております。以上です。
  21. 浜田幸一

    浜田委員 いま政務次官の御答弁をお聞きしますと、東京都に対しても、東京都自身としても交通規制、汚染調査、この原因究明の追跡調査、こういうものについては徹底的におやりになられるということでありますが、私が抜本的にお伺いをした問題に対する御答弁はいただいてないと思うのであります。  たとえば原因究明の調査を徹底的にされました場合に、実際に新聞紙上その他で報道されているような事態があった場合に、基本的な一人の人間を守るための方法として、政策としてどういうことをおやりになるお考えがあるのか、このことをお伺いしておきたいのであります。たとえば交通規制だけでは無鉛化は防げない、人体の侵食は防げないという場合に、厚生省としてはどういうお考えなのか。たとえばきのう厚生大臣が千葉県市原市においでになられて、人間の英知によって公害をなくしたい、こう言っておる。人間のりこうさと利発さと賢さでなくすことはできるかもしれないけれども、基本的な問題として、一人の人間の命を守るということは、政治家の英断よりないと思う。考えることはできても決断ができなければ解決のできない問題だと思うのでありますが、そういう問題が起こった場合に、もしあそこが鉛で実際に医者にもかからなければならぬ、侵食もされているという問題があったときに、その人たちが移転をしたいという場合に、移転をしたいというならばその場合にはどういう施策を厚生省はお考えになっておるのか、この点についてお伺いいたします。
  22. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 住宅を移転される場合にどうするかと言われましても、厚生省には現在そういう権限はございません。先生御承知のとおりであります。公害行政の実際の施策あるいはそれに伴う強制措置等の手段を私どもに与えられておればおのずから違ったお答えもできるわけでありますが、現在私どもは強制疎開あるいは自発的に疎開をされる方々に対し、その用地をあっせんし云々というような権限はわれわれ自体が与えられておらないのであります。ただ、繰り返してお答えするようでありますが、一点申し上げておきますと、現在東京都と相談をいたしておりますことの一つ、そうしてこれは都と私どもで合意をしていることでありますが、厚生省として、また東京都として、詳細調査の結果いわゆる病気の判定がありました場合に、公立病院において、公的医療機関においてその患者の方々の治療には無料で当たろうということだけはわれわれはきめております。
  23. 浜田幸一

    浜田委員 ちょっと公害部長にお伺いしますが、いま柳町の問題がありますが、この次はどこだと思いますか、お答えをいただきます。
  24. 城戸謙次

    ○城戸説明員 全国の測定点で鉛の測定があったところはそうたくさんないわけでございまして、先ほど申し上げました若干高目なのは甲州街道の地点だとか、あるいは祝田橋とか、こういうところが出ておりますが、私どもといたしましては、東京都の調査結果によりまして、できるだけ広範囲に全国的な調査をいたしまして対策を立てる、かように考えておるわけでございます。
  25. 浜田幸一

    浜田委員 たとえば信号待ち五回、信号待ち十回、これは京葉道路、甲州街道あるいはその他にも交通ネックの激しいところがあるわけでありますが、そういう地点の調査は、厚生省でこことこことここをやりなさいということでおやりになったものですか。その点どうですか、ひとつお答えいただきます。
  26. 城戸謙次

    ○城戸説明員 先ほどから申し上げております資料は、都道府県で行なったのもございますし、私ども調査研究委託費等で関係の地方公共団体あるいは国等に委託をしたものもございます。ただ、全体的に調査が非常に少ないものでございますから、今後この状況によりましてもっと広げてまいる。特に柳町の場合は、道路の条件が非常に悪いということでございますので、そういう点も参酌しながら、やはり地域類型別あるいは交差点の形によります類型別に、できるだけ重点的に問題のありそうなところを、厚生省といたしまして、あるいは自治体として総合的な測定をし、対策を立ててまいる、かようにやっていきたいと思っておるわけでございます。
  27. 浜田幸一

    浜田委員 それでは、政務次官にもう一回……。  結局、厚生省としては原因調査をすること以外に何もできない、そういうものが出たら治療をさせることはできるけれどもあとの問題はすることはできないというふうに理解を申し上げてよろしいのでしょうか。その場合、どこで柳町の全体の問題を解決するのでしょうか、どこにこの問題を持ち込んだら解決してもらえるのか、ひとつその点をお伺いしておきたいと思います。
  28. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 私どもは道路行政の権限を持ちません。そのために、交差点の運行をスムーズにするように道路の体系を変えていくことについては、警察庁あるいは建設省に御理解、御協力を願わなければできないわけでございます。また宅地造成その他の問題になりますれば、これは建設省のほうで御所管になっておられておやりになる話であります。ですから、むしろ私どもはそういう意味では先ほど申し上げましたように、私ども自体に最大の権限が与えられている条件の中であるなら、おのずから違ったお答えができるであろう。しかし、現行の法体系の中、組織の中で、厚生省としてできることには限界があるということを申し上げたわけであります。  ただ、そういう意味で今後なお私どもとして考えてまいらなければならない、また活用していかなければならないものとして、総理府に置かれておる中央公害対策審議会というものの機能を、もっと十分に活用していく必要があると私は考えております。これらは必ずしも一省が全部の責任を負うていくことが望ましいものであるかどうか、はっきり私にもわかりません。交通ラッシュの状況等は、われわれでは把握できないこともあります。そしてその結果、道路の体系をどのように変えていけばそのような問題が発生しないで済むのか、これは根本的には無公害自動車の開発というものまでさかのぼるでありましょうが、当面起きておる問題また起きるであろうと予想されておる地域を解決するための問題としては、道路行政の担当の方々の御努力を当然仰がなければならないわけであります。この柳町の交差点の状況というものが、従来から厚生省自体あるいは地方自治体との御協力の上で調査をしてまいった場所で鉛害のこれほどひどい発生というものが見られなかっただけに、われわれもそういう意味では非常に手きびしい教えを受けたわけでありますが、むしろ公害対策審議会自体の中に、こういう問題についてもっと掘り下げていただかなければならない部分が非常に大きく出てきたというふうに今日考えております。
  29. 浜田幸一

    浜田委員 私の与えられました時間が超過いたしましたので、私の要望を各省に申し上げて質問を終わらせていただきたいと思います。  まず第一に、厚生政務次官が御出席ですから、政務次官並びに公害部長お願いをいたしておきますが、柳町にあらわれた現象というのは私は氷山の一角だと思いますが、やはりこれからがほんとうの勝負どころに入ると思います。そこで通産省通産省無鉛化の方向に厚生省と御協議をいただいて進んでいただくことといたしまして、この短期間の間に起こり得る、たとえば尼崎の一一・一八とか、そういう個所については、今後もたとえば月単位に調査をしていただくとか、あるいは各県に御指示をいただいて、そういう鉛害化の追跡調査というものを徹底的におやりをいただきたい、このことをお願いをいたしておきたいと思います。  それからもう一点の問題は、柳町の人たちは、実際にかわいそうなことに、たよるすべもなく公害の中にさらされているわけであります。しかし、厚生省ではこれに対して手を差し伸べるすべはない、これは交通規制を完全にする以外にないというふうにしか理解されないのでありますが、これは一体どこでどうしたらいいのかということを私は政府全体でお考えをいただきたい。たとえばあそこに住んでいることは、道路がすぐ直らないとすれば無鉛化はできないわけで、これは一人の人間の貴重性というものは守れないわけですから、たとえば政務次官会議とかそういうものをお開きいただいて、橋本政務次官に中心になっていただいて、これはどうしたらいいかということを御研究いただくように私はお願いをしておきたいと思います。やる気になれば私はやれる問題だと思います。ひとつお願いをしたいと思います。  それからこれは通産省立地公害部長に要望いたしておきます。私が先ほど申し上げたことは、無鉛化の方向というものは短期間の間に解決すべく努力をすべきものだと思います。その場合、現在の政府の方針としては五カ年以内ということでありますけれども、これをできるだけ短縮する方向で御努力をいただきたい。  それからもう一点は業界指導業界指導というものは、私ども新聞紙上を見ますと、いろんな形でこういう問題が起こるたびに政治家と業者の問題がいろいろと云々される。そういうことによって基本的な人権というものを奪うようなことがあってはならない。だから、き然たる態度で私は業界指導に乗り出していただきたい。少なくとも過般御答弁をいただいたように、百五十万台に対してハイオクタンを供給する責任があると思う、こういう業界姿勢については、立地公害部長責任において、そういうものが二度と再び使われないように私は業界指導に当たっていただきたいと思います。  それから第三番目の要望点は、少なくとも車によって排気ガスが出されて、そのことによって柳町であれだけの人々が嘆き悲しんでいる。このことについては実際に調査に当たられておるあなたが私どもよりも詳しいと思う。しかし厚生省では、厚生省において手を差し伸べることができないとするならば、これは自動車経済の繁栄した一つの、日本経済の繁栄も含めての経済責任だと私は思う。そういうものに対する予算的な措置というものを十二分に通産省においてお考えをいただいて、御解決をいただくように御配慮賜わりたいと思います。たとえば子供たちを疎開させるとか、戦争中と全く同じようなことが行なわれている。そういうものに対して愛情の手を差し伸べることができないとするならば、わが自由民主党そのものが国民に対して公約を果たさなかったという結果になる。そこで私は勇断をもって対処をされるように望みます。  最後に私は、これは厚生政務次官を含めてお願いをしておきますが、いま日本でも公害省が必要だという論議が盛んにされております。おそらく政務次官も、公害省がつくられて、その公害省に予算的な措置がまかされるならば、このくらいのものは解決できるというお考えであろうと思いますが、公害省の設置についてはひとつ十二分に国民の痛いところ、かゆいところに手のとどくような措置のできるような基本的な構想をお持ちの上で本問題の推進をしていただきたい、このように要望申し上げる次第でございます。  時間の経過しましたことをおわびいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  30. 加藤清二

    加藤委員長 土井たか子君。   〔「大臣はどうしたんだ、これでは話にならな   い」と呼ぶ者あり〕
  31. 島本虎三

    ○島本委員 議事進行について発言をいたしますが、土井議員のほうからも出席要求をした人は、十六名のそれぞれの責任者を呼んであるわけであります。しかし、ここでこう見ますと、呼ばれているのはいわゆるわれわれが言う事務的な官僚のみでございまして、まさに責任をもってやる、そういうような人はいま見渡したところ二人くらいしか見えないのであります。公害に対するこういうような政府の態度は、まことに私は現在の公害増発のおりから遺憾であると思います。これはとりもなおさず委員会を通じ委員長自身も軽く見られている、こういうようなことに相なりますれば、国民に対してこれは重大な責任を負わなければなりません。なぜこういうような閑疎な状態のもとに重要な問題が論ぜられなければならないのか、これはまことに重大な問題であります。委員長理事者を督励して、何のために大臣並びに要求政府委員が出ないのか、この問題についてはっきりさせて議事を進めていただきたいと思います。
  32. 加藤清二

    加藤委員長 島本理事の御発言、議事進行ごもっともだと存じます。この際申し上げておきますが、土井たか子君の要求されておりまする政府の当該関係答弁者は総理、官房長官、通産大臣、厚生大臣、運輸大臣、経企庁長官、法務大臣ということに相なっておりまするが、一人も出席がないようでございます。(「国会軽視だ。」と呼ぶ者あり)これは確かに、国会軽視という声もいま出ておりますが、委員長もさようだと存じます。大体総理みずからが公害除去を今後の国政の中心にすると言うておられまするのに、その総理の趣旨に従わない大臣がおられるということは、まことに遺憾きわまりないと存じます。これはやがて今日の新聞世論や国民の要望にもこたえないという結果になるではないかとおそれるわけでございます。したがって、事務当局大至急関係要求大臣が出席するよう、大至急処置をしていただきたい。  この際、皆さんに申し上げます。  ただいま理事会並びに事務当局の報告によりますれば、本日は御案内のとおり閣議が午前中行なわれている。引き続いて物価閣僚懇談会が行なわれているそうでございます。それも近いうちに終わるという報告でございます。そこで物価閣僚懇談会に関係のない要求大臣もこれありまする関係上、いま至急出席するよう要請をしたところでございます。  質問者にお尋ねします。その要求大臣のかわりに政務次官、担当部長等がおられまするが、その担当部長並びに政務次官では質疑に入れませんか。
  33. 土井たか子

    ○土井委員 特に大臣の御出席をお願いしてお尋ねしたい内容の質問がございますので、厚生大臣、通産大臣、御出席をお待ち申し上げたいと私自身は考えております。
  34. 加藤清二

    加藤委員長 土井君に申し上げます。  御趣旨ごもっともでございまするが、質問者も多数これあり、大臣以外の事務的な質問で事が足りる分だけを先にしていただくわけにはまいりませんか。
  35. 土井たか子

    ○土井委員 承知いたしました。そのつもりでそれでは質問をさせていただきます。
  36. 加藤清二

    加藤委員長 それでは事務当局に申し上げます。至急要望に沿うよう処理してください。  それでは質疑に移ります。土井たか子君。
  37. 土井たか子

    ○土井委員 私は、最近新聞紙上で毎日のごとくに騒がれております自動車の排気ガス中にございます例の鉛害の問題、四エチル鉛の問題について順を追ってお尋ねを申し上げたいと思います。  実は周知のとおり、東京新宿牛込の柳町交差点かいわいだけの問題ではなくて、これは全国、特に過密都市におそらくは続々と頻発するであろうという予期をしておいて私は過ぎたことではないと存じますけれども、この際ひとつ鉛はどういうふうな条件のときにどういうふうな被害を人体に与えるかという点について、特に私運輸省関係の方に、この席でお尋ねをしたいわけでございます。
  38. 隅田豊

    ○隅田説明員 お答え申し上げます。  鉛の人体に対する害について、運輸省に御質問のように伺いましたが、私たち専門でございませんので、一応厚生省関係その他から勉強いたしましたところをお答えさせていただきます。  鉛分が血液に吸収されまして、赤血球の成長を阻害するとともに、慢性的には貧血症状、肝障害、じん障害、筋肉痛等を発生するというふうに聞いております。
  39. 土井たか子

    ○土井委員 続けてそれではお尋ねをいたしますが、いまおっしゃったような状況は、自動車が一定の条件で運行する場合に、おっしゃったような状況を引き起こすという場合もお考えになっていらっしゃるかどうかでございます。
  40. 隅田豊

    ○隅田説明員 自動車が一定条件で運行いたす場合に、燃料の中に鉛が入っております場合には、鉛が空気中に排出されることは事実でございます。これが直接的にどういうふうに人体に蓄積されるか、これにつきましては専門の厚生省のほうに伺っていただかないと、私のほうではちょっとわかりかねます。
  41. 土井たか子

    ○土井委員 いまの厚生省にお尋ねになって、一応先ほど御答弁いただいたことは、いつ厚生省からお確めになったわけでございますか。
  42. 隅田豊

    ○隅田説明員 鉛害の問題が新聞に出まして、私たちその事実を知りましてから、何回となく厚生省通産省その他関係各省集まりまして、意見を交換したわけでございますが、その席上において一応そういうことがあるということを伺ったわけでございます。
  43. 土井たか子

    ○土井委員 現在その問題に関係のある法律には、御承知のとおり大気汚染防止法というのがございまして、十九条の個所を見ますと、「運輸大臣は、自動車が一定の条件で運行する場合に発生し、大気中に排出される排出物に含まれる自動車排出ガスの量の許容限度を定めなければならない。」ということになっております。この条文からいたしますと、運輸省がこのたびの状況に対して、どういうふうにお考えになるかということ一つで、やはり現在ございます大気汚染防止法の運用の内容も変わってくるわけでございますから、そこでどういう御認識をただいまお持ちになっていらっしゃるかという点を私はお尋ねしたかったわけでございますが、この席上に残念ながらただいま運輸大臣がいらしておりませんので、後ほど運輸大臣がお見えになりましてから、あらためて私はこの問題についてもお尋ねをしたいと思いますので、あと運輸大臣への質問は保留させていただきたいと思います。  さらに、この問題について厚生省側は、鉛はどういうふうな条件のときにどういう被害を人体に与えるというふうにお考えになっていらっしゃいますか、一応のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  44. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 先生の御質問の鉛の影響の問題でございますが、一番おそれておられるのは四エチル鉛の影響のことを頭に置いていらっしゃると思いますが、これは四エチル鉛の形で自動車の排気ガスから出てくるわけではございませんで、主として酸化鉛あるいは臭化鉛という形で出てまいります。そういうことで自動車の排気ガスに基因する鉛の大気汚染として人体に直接影響があったというデータは、世界中のいずこにも現在の段階ではございません。非常に広範な調査アメリカで三都市において行なわれたものがございまして、そのフォローアップもございます。ただ、私どもで横浜で調べたもの、あるいは大阪市が、これは最近でございますが、非常に詳細な調査を一部の地域でしたものがございますが、排気ガスの鉛によって人体に鉛の中毒を生じたという事例は、世界では報告されていません。どのような影響が考えられるかという点におきましては、私どもは鉛の摂取というのは、これは大気中から入るものは非常にわずかでございまして、水と食品から入ってまいるものでございます。一日大体二百マイクログラムから四百マイクログラムの鉛が摂取されるというのが従来の生理、病理の知見でございます。そのうちの半分以上は、食品と水から入ってくるというのが原則でございまして、私どもはむしろその異常な鉛の蓄積が、どの程度で鑑別できるかというところまでが基本であって、これは鉛の中毒を防ぐというものとは私どもは考えておりません。そういう意味で中毒ということを基準にして環境基準というものを考えるというのではなく、いささかでも鉛の代謝に異常が起こって蓄積するということが起こってはいけないという観点から環境基準を考えてみたいと思っております。
  45. 土井たか子

    ○土井委員 少しいまの御答弁でははっきりしかねるのですが、人体に与える影響について私はお伺いをしているわけでございまして、その被害の具体的な内容、ただいま中毒症状についてだけをおっしゃったようでございますが、中毒症状ではない、鉛を人体に蓄積するということによってどういう被害が、実害が人体に起こるかという点についてお尋ねをしているわけでございます。
  46. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 ただいまの御質問自動車の鉛ということに限らず、一般的に鉛はどのようなものを起こすかというような御質問かと思われますので、教科書的な解説になるかもしれませんが、その点についてお答え申し上げます。  まず鉛が入ってまいりますと、一つは食欲が非常に落ちてくるということもございます。あるいは非常に便秘が起こる、あるいは全体的に筋肉の疲れが目立つというようなことがございます。少し進んでまいりますと、筋肉の神経関係の症状というものが起こってまいります。さらにこれが進んでまいりますと、筋肉に萎縮が起こったり、そういうものがある。あるいは少し麻痺に似たような形が起こってくるということが典型的な例で、こういうように力が出てこないというようなものが中にございます。さらにそれが進みますと、これはじん臓の障害というものがあったり、あるいは脳のほうに影響が及んでくるというようなものも中にあるわけでございます。これは一般論的に鉛ということで中毒が起きたら、どうなるかというような御説明でございます。
  47. 土井たか子

    ○土井委員 それではお尋ねいたしますが、現在ございます毒物及び劇物取締法によりますと、ガソリンに加える鉛、四エチル鉛、その鉛の許容量について制限がございます。御承知のとおり二十六年にはガロン当たり三ccでありましたのを、三十年には、この毒物及び劇物取締法を改正いたしまして、四・九二ccまで認めるということに変わったわけでございますが、厚生次官通達によりますと、自動車ガソリンは従来どおり三ccとするということになっております。こういうふうにガソリンの中での鉛の許容量を規制するということは、先ほどおっしゃったような意味において、いま鉛の実害があるという認識に立ってのこれは法に対する立法措置が行なわれたというふうに理解してよいわけでございますか。
  48. 山高章夫

    ○山高説明員 お答え申し上げます。  昭和三十年に毒物及び劇物取締法が改正になりまして、御質問のような通達が出ていることは事実でございます。この毒物及び劇物取締法は、化学薬品等の急性毒性に着目いたしまして、毒物及び劇物に指定するというたてまえになっておりまして、四アルキル鉛がガソリンに混入する点につきましては、やはり四アルキル鉛の急性毒性に着目しまして、ただいま御質問のような指導をいたしておるわけでございます。
  49. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、重ねてお尋ねをいたしますが、やはり四アルキル鉛から排出される鉛害というものが事実あるというふうに御認識になっていらっしゃるわけでございますね。
  50. 山高章夫

    ○山高説明員 毒物及び劇物取締法は、先ほど御答弁申し上げましたように、急性毒性の点に着目して化学薬品等を規制しているもので、ガソリンに混入をされております四アルキル鉛に着目して指定しているわけでございまして、ただいま問題になっておりますような自動車の排気ガスの中にある酸化鉛あるいは臭化鉛に着目したわけではございません。
  51. 土井たか子

    ○土井委員 それではどういうわけで、この毒物及び劇物取締法の中でガソリンに対する四アルキル鉛のガロン当たりの許容量を問題にしなければならないのかという意味が、ちょっとはっきりしかねるわけでございます。やはりガソリンから排出されるところのいろいろな実害が人体にあるという認識の上に立ってしか、この毒物及び劇物取締法の規制している意味はないと私自身は考えていたわけでございますが、この点、再度お尋ねいたしますけれども厚生省側はどういうふうにお考えでいらっしゃるのでしょう。
  52. 山高章夫

    ○山高説明員 ただいま申し上げましたように、もっぱら急性毒性の点から規制しておるものでございますので、ガソリンが燃焼して排出されます鉛の化合物について、いわば慢性毒性という点であろうかと思いますが、そういう点について規制することを毒物及び劇物取締法は立法の当初から予定しておりませんので、ただいま御答弁申し上げたようなことになるわけでございます。
  53. 土井たか子

    ○土井委員 ガソリンについてのいまの御答弁がそのようでございますなら、先ほど来厚生省としては四十年この方、鉛の調査には力を入れてきたというふうな御答弁がございました。それは一体どういうことになるかと私はたいへんふしぎに考えます。いかがでございますか。
  54. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 先生の御質問二つの点がダブっておると思うのであります。というのは、劇物毒物取締の対象として四アルキル鉛を加えたということ自体は、四アルキル鉛自体が急性毒性を持つからであります。一定量以上を取り扱うことによって急性毒性がある。それをわれわれとしては対象としてこの取り締まりの中に加えた、規制を行なったということであります。ですから、先ほどの御質問はそういう趣旨に薬事課長は解して御答弁をしておったようでありますが、先生のおっしゃりたいことは、それならばなぜ慢性毒性の問題の起きている自動車の排気ガスの取り締まりを鉛についてやってきたのかというお話でありましょう。これは、慢性毒性に対しての調査も当然われわれはする責任がございます。別に鉛ばかりではございません。他のものについても同じであります。いわゆる大原交差点問題等が一つのきっかけになって今日まで調査を進めてきておるのは、これはあくまでも慢性毒性の問題。取り扱いをなさる方々の急性毒性に対する危険を防止することはおのずから別の問題であります。これは両方ともに私どもはいたしておりますけれども、その劇毒取締法の観点からもし議論をされるとするならば、これはあくまでも急性毒性を対象として立法されたものでありますから、急性毒性についての御答弁を申し上げてきた。しかし、それとは全然別のものとして、ごく微量のものが蓄積されていく危険というものを考え、排気ガスについても調査は続けてきておるということであります。
  55. 土井たか子

    ○土井委員 ただいまの御答弁でわかりましたが、急性毒性を野放しにするなんというのはもってのほかでありまして、この際問題になっておるのはやはり慢性毒性の問題であるということはもうはっきりいたしております。  そこで、慢性毒性の問題について、四十年来調査をお続けになったやに私は先ほどの御答弁を聞いておるわけでございますが、それならば、やはり大気を汚染する中に鉛害があることを御認識になっていらっしゃるかどうか。
  56. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 鉛害が起こり得ると考えたからこそ調査を続けてきたわけであります。起こり得ると考えたからこそであります。
  57. 土井たか子

    ○土井委員 起こり得るとお考えになるのなら、大気の環境基準について鉛ということをいままでにお考えになる余地はなかったかどうか、その辺をお伺いいたします。
  58. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 大気汚染防止法が当委員会で審議をされました当時、私も委員の一人としてこの席におったものでありますけれども、当時の時点におきましては、むしろ自動車の排気ガスの中に含まれる鉛よりは、あるいは硫黄酸化物、あるいは酸化窒素等のほうが私ども自体の関心を占めておりました。また世間の状況もそうでありました。そのために、これは当時の委員の一人として申し上げるなら、私どもの勉強不足であり、自動車の排気ガスというものの排出規制については通産大臣のほうにおいて御決定を願うような方法をとってきたわけであります。しかし、現実にこのような問題が起きてきて、大気汚染防止法自体についても再検討をいたすべき点があることは事実でありますし、現在私どもは、通産省当局がガソリン自体について御努力になっておられることを考え、いまいきなり大気汚染防止法の中から通産大臣の排出ガス規制についての基準というものをお示しになる行為について云々をいたすつもりはございませんが、しかし、もしその作業の進捗状況において、むしろ積極的に、大気汚染防止法の中にわれわれとして自動車の排気ガス規制というものを当然入れなければならないような事態も起こり得るわけでありまして、私どもとしては、当然そうした準備を今日進めております。
  59. 土井たか子

    ○土井委員 いつも残念なことには、事故が起こる、事が起こってしまってからそれに対する善後措置という意味で基準が考えられたり、あるいはそれに対する補償の問題に手を打つことに精一ぱいだという、後手後手という傾向があるように私は常に思うわけでございますが、これだけ事が大きくなりましたから、もはやいま次官がおっしゃったとおりに、鉛についての環境基準というものを一歩進めて、はっきりとお確かめ願う必要があるのじゃないかと私は考えるわけでございます。  ところが、それにつきましても私は今度のこの状況を見ておりまして、一体どこの省が中心になってこういうことに処せられるのか、厚生省側のいろいろな御意見通産省側のこれに対する御意見、あるいは大蔵省がどうお考えになっていらっしゃるかあるいは運輸省、自治省がどうお考えになるか。私たち知らされるところでは、新聞紙上を通じてということでございますが、たいへんまちまちでございまして、出足もまちまち、取り扱いもまちまち、対策もまちまち、これでは一体どこに中心があるかということをただただ迷う一方でございます。こういう問題についての環境基準の設置なり、あるいは後の監視体制なり対策なりについて、一体どこの省のどういう部署が中心になって責任をおとりになるというふうにいまお考えであるか。もし内閣総理大臣がこの席にお見えになっていらっしゃるならば私はこれについてはっきりお尋ねをする予定でおりましたけれども、残念ながらいまだ御出席がございませんので、またこれは後刻お見えになった機会に私はお尋ねしたいと思いますが、この席にたまたま厚生次官がいらっしゃるわけでございますから、一応次官からそういう御意見をいま承っておきたいと考えます。
  60. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 現在厚生省として生活環境審議会に対して、これは鉛だけではございません、むしろ浮遊粉じんというもの全体についての環境基準の設定をお願いし、専門委員会を設けて検討をしていただいております。これは当初の予定としては、ことしの秋には総粉じん量についての報告が得られるというふうにわれわれは考えておりましたが、むしろこういう事態で、この秋といわずできるだけ急いでいただかなければならぬというふうには考えております。むしろこれを受けて、個々の有害物質についての本格的な環境基準の策定にお入りを願うように考えておったわけでございます。むしろ現在としては、この環境基準自体、これはやはり専門家の知識を得なければならぬものでありますから、この専門委員会のほうに御検討を願うつもりでおりますけれども、行政措置として今日私どもが考えておりますのは、カドミウムの暫定対策要領と同じような形で、労働衛生のほうでお定めになっておる恕限度、いわゆる三十分の一ないし百分の一に当たる八十時間から二十四時間の平均値、これをむしろ判断の目安として当てはめてまいりたい。むしろ現在の労働衛生のほうでつくられておるものを私どもの行政の目安として取り入れていく。同時にできるだけ早い機会の専門委員会の御決定をまちたい、そのように考えております。
  61. 加藤清二

    加藤委員長 この際、関連質問があると申しますので、これを許します。細谷治嘉君。
  62. 細谷治嘉

    細谷委員 先ほど土井さんの質問に対して公害課長は、自動車の排気ガスから排出されるものは酸化鉛と臭化鉛だと言いましたね。これは間違いですよ。酸化鉛というのはPbO、これは大体水に溶けないのです。塩化鉛、臭化鉛というのは水に溶けるのですから、人体に対してはたいへん影響があるわけですね。自動車の四エチル鉛あるいはアルキル鉛を燃やしますと、最初は酸化鉛になりますけれども、それでは困りますので、わざわざ酸化鉛として排出されないように臭化鉛か塩化鉛になってくるはずなんですよ。あなたの答弁は違うのだ。これは人体に対する非常に大きな影響がありますから、もしも酸化鉛と臭化鉛が出てくるというならばその割合をはっきり言いなさいよ。そんなばかなことはない。責任者が間違ったことを答弁してはいかぬから、はっきりと答えてもらいたい。
  63. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 いまの問題について、私先ほど申し上げましたのは、酸化鉛と臭化鉛が主体となっておるということでございまして、こまかな分析データにつきましての文献はいま向こうの手元にございますが、私どもは国際的にもそういうもので全部を判断をしておる。WHOもそういう判断でいっております。そういうことで、どれだけの量かということは私、たちどころに申せませんが、基礎の国際的に権威ある文献によって答えております。  それから自動車の排気ガスとしての一般の環境、大気の中で、鉛中毒問題を生じた国際的な報告はいままでにないということは事実でございます。
  64. 細谷治嘉

    細谷委員 アルキル鉛が燃えて酸化鉛になる、これでは困るので、わざわざアルキル鉛だけをガソリンに入れているわけじゃないのですよ。御承知のようにアルキル鉛に臭化エチレンとか塩化エチレンをわざわざ混ぜてエチル液というものをつくって、それをガソリンに入れているわけですから、そういうことからいえば酸化鉛ということで排出されては困る。しかし、可溶性の塩化鉛、臭化鉛になりますと、人体にたいへん影響がある、こういうことなんですから、これをはっきりさせてください。あなた、WHOの資料があると言うのなら、それをあとで出していただきたいと思う。新聞等ではよく酸化鉛ということでごまかされておりますけれども、可溶性の鉛になっているということはたいへん問題なんですから、この辺ちょっと申し上げておきたい。
  65. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 いま先生の、臭化鉛あるいは塩化鉛という形で実験すれば影響が出るとおっしゃったことに対しては、私は決して反対しているわけじゃございません。自動車の排気ガスとして非常に高度のラボラトリーで出されておる報告がございます。私は行政官でございますから、そこで出されておる国際的な信用のあるデータをもってお答えをすることがほんとうだと思ってお答えをしたわけでございます。あとでWHOの資料あるいはUSパブリック・ヘルス・サービスが非常に大々的に調査した資料を参考までに御提出したいと思います。
  66. 加藤清二

    加藤委員長 この際、委員長からちょっとお尋ねしておきますが、WHOの資料はいつ提出されますか。
  67. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 いま委員長から御要望がございましたので、こちらにありますのはその資料の一つでございますが、そのほか、このセミナーで持たれた資料及びUSパブリック・ヘルス・サービスの資料がございますので、これはコピーをとれば出ると思いますので、数日内には私どもは提出できる、そう思っております。   〔「数時間以内でいいじゃないですか」と呼ぶ者あり〕
  68. 加藤清二

    加藤委員長 それでいいですか。——それでは、なるべく急いで御提出のほどを要望しておきます。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 橋本公害課長、ただいま国際的な信用ある資料に基づいてということをおっしゃいますから、それでは、私、申し上げますが、国際的な信用ある資料に基づいて考えた場合に、この大気中の鉛に対する環境基準を、外国の場合はどういうふうに定めておりますか。
  70. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 お答えいたします。  現在、外国の場合に、鉛の環境基準をきめているものがあるかということになりますと、ソ連が衛生の至適度としてきめているものがございます。これは長時間平均で〇・七マイクログラム・パー・キュービックメートルというのがございます。これは何も規制にも結びつかないものでございまして、衛生的にはその辺がよいということだけでございます。そのほかにつきましては、私の知る限りにおきましては、環境基準として制定しておるというケースにつきましてあまり存じません。ただ一つ、ペンシルバニアにおきまして一カ月平均一立方メートル当たり五マイクログラムという数字を出しております。これは非常に高いものでございます。それからカリフォルニア州におきましてこの環境基準につきまして指定しております、ゴールド・スミスという人が示したデータによりますと、先ほど私が申し上げました中毒を起こすということではなく、このメタボリズムに少しでも変化が起こるというところでやるとすれば、一立方メートル中二マイクログラム程度になるのではないか、そういうぐあいな見解を持っておるわけでございます。  私が申し上げましたのは、外国の知る限りの実例につきましてお答え申しました。
  71. 土井たか子

    ○土井委員 ただいまお伺いしておりますと、外国ではやはりソビエトをはじめ、環境基準に対して鉛の問題を考えてきているわけでございまして、特にわが国は、御承知のとおりに過密状況という点においては、外国と比較の対象にならないくらいひどいものがございます。こういう状況の中で、いままでその外国の信用あるデータを参考にしながら御研究を積まれた結果、わが国でも一日も早く環境基準の中にこの鉛害の問題を考えるべきではないかというふうなお考えをいままでお持ちになったかどうか、その辺についてお尋ねをいたします。
  72. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 問題であると考えましたからこそ、私ども専門委員会にいま浮遊粉じん自体についても基準設定を願い、同時に引き続いて個々の有毒物質についての基準設定を願おうとしているわけであります。
  73. 土井たか子

    ○土井委員 それは、たいへんショックなこういう柳町事件が大きくクローズアップされてからでございますか。
  74. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいまの浮遊粉じんの環境基準の設定につきましてはことしの一月に始めたわけでございまして、その段階から総粉じん量が済みましたら、鉛を含めましての個々の粉じんについての環境基準をきめたい、かような方針でやっておるわけでございます。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 それはもう申し上げるまでもなく可及的すみやかにひとつやっていただきたいというふうに心から切望する次第なんでございます。特に私は、こういういろいろな公害対策について、いままで各省庁がその対策、取り扱いをばらばらにして、実際問題、基準はきめたけれどもこれを取り扱うことに踏み切れなかった、十分にそれを取り扱うということをようしなかったというふうな例があるやに考えておりますので、この際ひとつ厚生省通産省運輸省、自治体、警察、地元の住民、とにかく総合的な一つの連絡機関というものを設けてこういう問題に対処するということを考えるべきではないかと私自身考えているわけでございますが、こういう点についていかがお考えでいらっしゃいますか。特に厚生省……。
  76. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 端的に言わしていただければ、私どももより以上大きく公害行政に携わっていけるだけの権限を与えてもらいたいと考えておりますし、それが与えられないにいたしましても、連絡を十分従来以上に密にしていかなければならぬということには変わりはございません。  なお、厚生大臣自体が公害局を設置したいということを強く申しておりますのも、厚生省でできるだけ多くの公害行政に対してのウエートを、厚生省という立場から行なってまいりたいというその意思の表示でございます。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 それではこの一つ目の問題について最後にお尋ねをいたしておきたいのは、先ほどの大気汚染防止法並びに毒物劇物取締法の内容について、来たる国会で法の内容をこの際、再度この鉛害などを含めて改正をしてはどうかというお考えをお持ちになっているかどうか、その辺をお尋ねしたいと思います。
  78. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 毒物劇物取締法に関しましては、急性毒性を対象とした立法でありますから、必ずしも今日の時点でこれを変えようとは私どもは考えておりません。慢性毒性に関して扱う分はおのずから別の法体系に属するものと考えます。大気汚染防止法につきましても先ほど申しましたとおりで、私ども自体としては、現在通産当局の御努力の結果を拝見をいたしておるわけでありますけれども、従来考えられておる以上に時間の遷延するような場合、私どもとして大気汚染防止法自体の改正をしなければならぬという考え方は持っております。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 ただいまの御答弁で私一つ奇異に感じますことは、毒物劇物取締法はなるほどそれは急性の問題に対しての取り扱いの法であるというふうなお答えでございましたが、この中にありますガソリンガロン当たり四・九二ccまで四エチル鉛の許容量を認めているということは、行く行くは通産省無鉛化ガソリンを目ざすという五年計画をお持ちである関係から考えましても、私はこの法律がこのままであっていいはずはないと考えているわけでございますが、この点いかがなんでございますか。
  80. 橋本龍太郎

    橋本(龍)説明員 事務次官通達を出しました時点でも明らかなように、自動車ガソリンというものに対しては、私ども自体がむしろ三という数字を出してきたわけであります。そして今日、自動車ガソリンに関しては無鉛化の方向を通産当局自体が進めていこうといわれております。ただ、この四・九二という数値がどこから出たかと申しますと、これは航空燃料関係であります。今日通産当局の行政指導が航空燃料の四アルキル鉛の添加についてまで及ぼしていくお考えであるかどうか、非常に恐縮でありますが、私は不勉強で存じておりません。ただ、これが航空燃料に関しても鉛を一切添加せずに十分機能を果たし得るということでありますならば、むしろ必要のなくなることでありますから、当然規制を変えていくことも行なわれることでありましょう。しかし、ただいま先生が御指摘になりましたように、来たる国会という時間を限りまして毒物劇物取締法の改正をするかといわれれば、私どもは航空燃料関係の問題について通産当局がどのように対処していかれるかを今日伺っておりません。この点についてお答えをいたすことができません。そういうことです。
  81. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁をお伺いしていて、やはり早急に打つべき手は私は各省のはっきりした横の連絡だと思うのです。この横の連絡をひとつ正確に迅速にお願いいたしまして、この法の改正問題についても私はやはり対処していただきたいというふうにお願いをいたします。  それから続きまして、柳町交差点かいわいの交通対策の問題に移りたいと思うのですが、特にこの席においでをいただいております警察庁のほうにお尋ねをいたします。  柳町交差点付近に対するあの鉛害の問題がクローズアップされて以後の交通規制について、どういうふうな規制をおやりになったか、また今後お進めになる御方針であるか、その点をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  82. 久保卓也

    ○久保説明員 二月及び三月にわたりまして東京都のほうで調査をいたしましたその結果に基づきまして、私どものほうでは四月の八日にこのような規制をまずとっております。  それは従来は外苑東通り、これは南北の通りと思っていただいてけっこうですが、この南北の通りは二方向とも午前八時から午後の八時まで、それから大久保通り、これは東西の通りと思っていただいてけっこうですが、この大久保通りの二方向につきましては午前の七時から九時まで、及び午後の四時から六時までの右折禁止でありましたが、これを全部八時から午後の八時まで四方向とも右折禁止にした。  それと同時に、交差点につきましては、従来専務の警察官の配置がございませんでしたけれども、交通整理の警察官を配置した。  それから、六月一日から柳町の交差点からこの南北の通り五百メートルずつ合計一キロにわたりまして積載量三トン以上の貨物及び大型のバスにつきましては午前八時から午後の八時まで通行禁止をいたしたということでございます。  さらに、現在進行中の対策といたしましては、南北の通り及び東西の通りにつきまして、交差点からほぼ百二十メートルのところにもう一つずつ信号機を増設いたします。そこで、その外周に置きました信号機と交差点における信号機とを連結いたしまして、外周のほうの信号機が青になれば交差点のところも同時に青になっていく。したがって、交差点では車は停止しないということで、発進時における排気ガスの増加を防ぐということにいたしておりますが、この方策は、東西の通りにつきましては六月十日ごろにできる予定でありまするし、それから南北の通りにつきましては六月の末にできる予定になっております。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕  なお、現在検討中のところで問題でありまするのは、南北の通りについて午前と午後の一力通行を逆転させる。たとえば午前は南から北へ、午後は北から南へというふうに一方通行することも検討はしておりますけれども、周辺のペアになる道路が非常に遠距離にありまして、たとえばバスの通行その他がたいへん不便になる、あるいはその外周の道路そのものの交通容量というものがパンクをしてしまうというようなおそれもあります。そういうことでいま地域住民の方々とも協議を進めておりますが、どうしてもそういうことがよろしいということであればそれに踏み切らざるを得ないかもしれませんが、これは相当社会的な影響もあろうかと考えます。しかしながら、以上につきましては一応われわれがやりつつある施策についての効果測定をしながらさらに進めてまいりたい、かように考えております。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 それでは重ねてお尋ねいたしますが、効果測定の結果はいかがでございますか、いままでのところ。
  84. 久保卓也

    ○久保説明員 効果測定は東京都でやっていただいておりますが、ただいまの六月一日以降の大型車の通行禁止の結果によりますると、これはCO、一酸化炭素ではかったわけでありますけれども、一三・六PPMが一三・〇PPMになっておるという結果が出て、大差がないということが東京都のほうからもいわれておるわけでありますが、ただこれは六月一日前後の三日を測定したわけであります。  ところで、私どものほうの見方では、この効果の測定をする手段はございませんけれども、渋滞度の面から見ると、もう少し従来よりは減っでおるわけでありまして、したがって東京都で調べました場合にも、ところによってこの排気ガスの出る量というものが相当違っております。これは当然車の量あるいは規制条件その他によって変わってまいりましょうけれども、もう少し長期的にはかってまいらなければなるまいかと考えております。   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、いまの信号機設置の結果は、もう少しいい結果が出るであろうというふうに考えますので、六月が済んだところでさらに効果測定を東京都でやってもらいたい、かように考えております。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま御説明の中にございました東京都の調査結果でございます、大型車とおっしゃるのは、車種はどういう車種でございますか。
  86. 久保卓也

    ○久保説明員 積載重量三トン以上でありますからトラックになります。ただし、おっしゃりたいのは、トラックからの排気ガスは云々ということであろうかと思いますけれども、そうではありませんで、大型車を規制することによって渋滞度が緩和される。つまり交通が円滑になる。そういうことによって車の停滞が防げるという意味であります。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 車の停滞は、それではどの程度防げているというふうにお考えでいらっしゃいますか。
  88. 久保卓也

    ○久保説明員 警視庁のほうでは、渋滞度測定といたしまして、渋滞度の一から五まで、たとえば車列が九十メートル、百八十メートル、三百六十メートルというものに一、二、三とつけておりますが、従来の渋滞度三ないし四が現在一ないし二になっておるというのが警視庁の報告でありますが、厳密にこの点はまだ調査されておりません。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 先ほどからいろいろな調査結果の内容でCOの状況についてはお伺いしたわけでございますが、鉛害のことについてはどういうぐあいになっておりますか。
  90. 久保卓也

    ○久保説明員 私どものほうでは鉛害についての正確な知識がございません。すべて東京都及び厚生省からいろいろ知恵を伺うわけでありますが、この問題の発足そのものがCOから発足いたしたわけでありまして、COの面から見ましても、当該地域はたとえば閣議で決定されました環境基準二十四時間で一〇PPM、八時間で二〇PPMといったような面から見ましても相当高い、したがって、鉛害はともかくとしても、COの面でも規制しなければいけないという発想であります。したがいまして、当然私どものほうでは、排気ガスが多ければ鉛害のほうも多いだろうという考え方であります。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 新聞の報ずるところによりますと、大体柳町かいわいでの交通規制のやり玉に上がっているのは、まずは車種によって大型車というふうなことが載っておりましたけれども、いまおっしゃったいろいろな御意見の中にも、大型車が通行制限を受けているので、ずいぶん交通量は緩和され、るというふうなことをお考えのようでございます。ただしかし私申し上げたいのは、やはり大型車と認識されますトラックやバスなんかは、本来ディーゼルエンジンでございまして、ガソリン車ではないわけでございますから、もともと排出するところのガスの内容についても違っているかと考えるわけでございますが、この点いかがでございますか。
  92. 久保卓也

    ○久保説明員 そういう御質問になるであろうかと予想して先ほど答弁したつもりであります。ディーゼルエンジンでありますから、そのための排気ガスの減少をねらったわけではありませんて、円滑というところに焦点を置いた——御承知のように、道交法は特に交通の安全と円滑を目的としておるわけでございまして、したがって、その点今日の社会情勢からすれば不備な面がありますので、むしろ公害の面から規制するということに進まねばならない、この次の道交法の改正、これは次の国会に出す予定にしておりますが、そういう面で厚生省検討を進めている次第であります。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 いまの問題はわかりました。道交法の改正についてやはり作業を進めていらっしゃるということでございますね。そのように確認してようございますね。
  94. 久保卓也

    ○久保説明員 公害を防止するために交通を規制をするという一つの手段がございます。これは現在の道交法の目的を越えるわけでありますから、目的を改正してそういたします。さらにもう少し大きな観点から立てば、都知事も言っておるわけでありますけれども、都心部への車の乗り入れ規制、これは非常にむずかしい問題ではありまするけれども、いずれ道交法の改正の中で踏み切ってみたい。ただし御承知とは思いますけれども、現在の柳町の交差点そのものは、他の交差点に比べれば交通量が非常に多いというわけではありませんで、特別に地理的な環境でああいった障害が生じているもの、かように考えております。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 むしろ急務を要する車種に対する制限ということになりますと、私はまず手をつけるのはハイオクタン車であろうかというふうに考えているわけなのです。そういう点から現在ハイオクタン車に対しての車種をひとつお伺いしたいと思います。運輸省整備部長さん、いかがでございますか。
  96. 隅田豊

    ○隅田説明員 御質問の趣旨の車種と申しますのは、具体的な車の名前を全部あげるわけにもまいりませんので、型式数を申し上げさせていただきたいと思います。  現在、国産車で大体大ざっぱに申しまして、三百五十型式ほどございますが、その中でメーカーの届け出をそのままとりますと、一応ハイオクタンでなければ走れないということになっておりますのは約五十型式でございます。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 ハイオクタンでなければ走れない車に対して、いままでハイオクタン・ガソリン使用に対するいろいろな指導運輸省としてもなすったはずだと私は思うわけでございますが、こういうハイオクタン車は、大体いままでずっと見ていって、年々ふえていっているという傾向にあるのか、それとも減っていっているという傾向にあるのか、いずれでございますか。
  98. 隅田豊

    ○隅田説明員 こういう傾向の車について的確な統計数字を現在手元に持っておりませんですが、おそらく全体の割合から申しまして、車両数で言いますと、一〇%くらいの車両数になるものでございますので、そうふえていっておるものではないだろうと思います。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 それでは肝心のハイオクタンのほうなんでございますが、現在在庫に対して点検を進めていらっしゃるかどうか、その点をひとつお伺いいたします。
  100. 隅田豊

    ○隅田説明員 在庫に対する点検というお話でございますが、メーカーの在庫に対してどうこうするということは、ちょっと運輸省ではやっておりませんので、運輸省でやっておりますことだけをちょっと申し上げます。  運輸省でやっておりますのは、現在ハイオクタンしか使えない車というものが、車両数から申しまして、先ほど申し上げましたとおり一割程度でございますので、それよりもレギュラーガソリンで本来走らせることができるもの、あるいは点火時期をいじるといった、そうたいしたことでない手当てをいたしますと、レギュラーガソリンで十分実用になるものと思われるものが、けっこうハイオクタンを使用して走っておるという事実があるようでございますので、車両の数で申しますと、ほとんど九〇%、それくらいになると思いますので、それに対しまして、レギュラーで走ろうということについて一般的なPR、あるいは整備業者、販売業者、メーカーを通じまして個々のユーザーさんへのPR、それからそれの受け入れ体制、こういうようなものの指導をやっておるのが現状でございます。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 ハイオクタンレギュラーとの加鉛量の差はどの程度でございますか。
  102. 隅田豊

    ○隅田説明員 石油関係の作業としては通産省のほうでやっておりますが、私たちのほうで認識しておる限りで申し上げますと、大ざっぱに申し上げまして、レギュラーガソリンは半分くらいになるというふうに承知しております。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 半分にいたしましても、レギュラーガソリンにも鉛があるということは事実なんでございますね。そういたしますと、例の通産省無鉛化五カ年計画という問題が出てくるわけでございますが、これは五カ年計画の中で一年一年どういうふうな具体的な対策を立てているか、現在それを現に検討中でいらっしゃるのか、それともある程度それに対する青写真をもう持って公表なさったわけであるのか、そのいずれでございますか。
  104. 柴崎芳三

    柴崎説明員 お答えいたします。  現在検討中でございまして、明日専門委員会が開かれまして、でき得れば具体的のそのスケジュールにつきましても、概要をそこで慎重に検討したいという段階でございます。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 それではただいま御検討中でいらっしゃいますから、たいへん幸いだと思うわけでございますが、一体この四エチル鉛、ガソリンに加入するところの鉛の生産日本の国内でやっているかどうか、その点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  106. 成田寿治

    成田説明員 ガソリンオクタン価を上げるために投入しております四アルキル鉛は、日本では生産しておらなくて、全部輸入になっております。四十五年度の輸入量は一万五千トンという計数になっております。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 では、現在までのところ、全部輸入にたよっていらしたわけでございますから、おそらくは五カ年計画でもって——この五カ年という根拠もよく私にはわかりませんけれども、五カ年計画でもって無鉛化を急がれるわけでございますから、おそらく国内でまさか四エチル鉛の製造をおやりになるということをお許しにならないと思いますが、その点いかがでございますか。
  108. 成田寿治

    成田説明員 こういう鉛害対策が打ち出された以上、国内で生産する必要は毛頭ないと思いますが、ただ、従来のガソリンオクタン価事情からしまして、国内でつくる計画もあるやに聞いておりますが、こういう対策が打ち出された以上、その必要がないと思います。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 いまの問題に対して、所轄庁は通産省だと私は思いますので、ひとつこういう問題について通産省からはっきりしたお答えをお伺いしたいと思います。
  110. 柴崎芳三

    柴崎説明員 ただいま先生御指摘の件は、具体的には東洋エチルの問題であろうかと思います。東洋エチルにつきましては、アンチノック剤の国産ということで、従来から自己開発の技術も研究しておったのでありますが、それがなかなか順調に進まないで、実は昭和四十一年七月に、外資、外国技術の導入の申請を出してまいりまして、当時の状況といたしましては、おそらく四アルキル鉛につきましても、ガソリンのアンチノック剤としての需要も、将来ある程度は拡大するであろうし、また全量輸入にたよっておるということで、その輸入が全部カットされれば、外貨の節約という面からも積極的な意味があるであろうということで、実は昭和四十一年の七月に認可されまして、それ以後いろいろ設備の計画をいたしまして、現在、現に工場を建設中でございます。完成見込みは、本年の九月くらいというぐあいにわれわれ聞いておりますが、その建設の段階におきましても、厚生省から先ほどお答えになりましたような線で、鉛害の問題について、柳町の事件以前もわれわれとしても考えなければならないような問題がいろいろ指摘されておったようなことでございまして、したがって、この工場の建設の過程において、将来あまりこの製品の生産は有望でないというような考え方も随時示しまして、現在ではますますその点がはっきりしてまいりましたので、四エチル鉛の生産は、現在の通産省無鉛化計画に合わせて考えたほうがいいだろうという具体的な指導をしておるわけでございますが、何ぶんこの企業は、そういうことで正式に外資、外国技術の導入の許可も得ておりますし、それから毒物劇物法に基づきます施設基準というものもはっきり完全に満たした形でやっておりますので、これをいま強制的に建設自身を中止させるという具体的な手段は実は持っていないために、将来の見込みを十分われわれのほうとしても説明しながら、この建設当事者の善処にまちたいというような方針で実は進んでおるわけでございます。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、現在建設中の工場で、もしただいまのままで手をこまねいておりますと、四エチル鉛はどしどし製造されるわけでございますが、製造された暁の販路、販売ルート、これについてはどのようになっておりますか。
  112. 柴崎芳三

    柴崎説明員 おそらく完成された当初は、輸入量との代替ということで、現在四エチル鉛を使っておりますところに——輸入業者が大体四社か五社あるわけでございますが、あるいはそういった輸入業者の手を経て、従来の需要家のほうに流れるのではないかと考えますが、ただ、需要量そのものが大幅に減ってくることは必至でございますので、その点について企業家サイドでいかに判断しておるか、その点われわれも増産の、増産といいますか、現在の計画は大体一万七千トン程度の生産予定の能力になっておりますが、それをフルに稼働させる可能性は全くないので、むしろ現在の段階では、撤退作戦を講じたほうが企業のためにもいいのではないかというようなニュアンスで指導しておる最中でございまして、したがって、販路その他についてわれわれが積極的に、こういう方法でこういうぐあいに売りなさいというような指導はもちろんやっておりませんし、また販路自身につきましても、われわれとしては、そうこまかな関心は持っていない。むしろ企業自身の、企業家としての予測の誤りがあったのではないかというような感じで実は接しておるわけでございます。
  113. 土井たか子

    ○土井委員 現に、通産省は許可をなすって、そしてこの工場を設置することに対して許可を中止なさらない限りは操業が開始されるわけでございますから、生産された製品がいずれに売り出されるかという問題は、いませっかくのところ無鉛化五カ年計画をお立てになっている通産省としては、目を光らしてはっきり監視なさるのが私は当然だと思うのです。いまの御答弁を伺っておりますと、その点まことにあやふやでございまして、五カ年計画というのは名前だけであって、実は内容が伴っていないという実感を私強く持つわけでございますが、その点いかがでございますか。
  114. 柴崎芳三

    柴崎説明員 五カ年計画があやふやだという先生の御指摘でございますが、これは五カ年計画ではございませんで、五カ年のうちでなるべく短い期間に無鉛化を実現しようということで、これは正真正銘われわれ全力をあげて取っ組んでおる問題でございまして、必ずこの期間の中で計画を立てかつ実現させたい、かように考えておる次第でございます。  それから四エチル鉛の販売についてでございますが、先ほどの答弁もまことにあやふやで申しわけなかった次第でございますが、その販売は、おそらく輸入のカットという形で、輸入代替という形でしばらくの間は続くと思いますが、その間の販売形態あるいは販売先その他は、もちろん無鉛化計画との関連で重大な問題を含んでおりますので、十分監視させていただきたいと思います。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁をお伺いしておりましても、五カ年計画ではなく、可及的すみやかに無鉛化対策をお進めになるというふうに私はお伺いしたわけでございまして、それならばいよいよでございます。やはりこの許可に対して英断をもって中止ということをなさるか、あるいは操業についても中止というふうな措置を講じられるか、それ以外に、無鉛化へせっかく急いで対策を立てようとなさっていらっしゃる通産省としてはおありにならないのではないかと私は思うのです。片一方では無鉛化と言いながら、その災いのもとをつくることに対して野放しで認めるということはあり得ようはずはないわけでございますから、ひとつこの際この点を特に強く御要望いたしておきたいと思うわけでございます。
  116. 加藤清二

    加藤委員長 この際関連の申し出がありますのでこれを許します。赤松勇君。
  117. 赤松勇

    赤松委員 これは非常に重要な問題であるということを各紙が一斉に取り上げておるのだ。しかも、無鉛化の問題がこれほど国民世論を高めておる中で、いまの答弁によれば、通産省はいわゆる採算ベースで答弁しておるわけだ。しかし、国民の公害防止の観点からいえば、断じて納得できない。しかも、これは一立地公害部長答弁しようとしてもそれは非常に無理であると思う。したがって、私どもは大臣の出席を要求したのだ。しかるに、大臣は一人も出ていない。これは委員長、ひとつ厳重に注意してもらいたいと思う。国会軽視もはなはだしい。公害対策というものを政府はどう考えておるのか。佐藤榮作は一体どう考えておるのか。  そこで私は次の提案をしたい。これはいま土井たか子君の質問は非常に重要なんだ。そこで通産大臣はもちろんのこと、閣内でこの点について十分協議をして、即時操業を停止させる、操業をやらせない、認可は取り消させる、こういうことについて、至急政府間で意見の統一をやっていただくように希望しますが、どうですか。
  118. 山下英明

    ○山下説明員 化学工業局長でございますが、ただいま問題になります東洋エチルの生産は私のところの所管でございますので、立地公害部長にかわりまして補足いたしますが、私どもも会社の責任者を呼びまして、現在事情を聞いておりますが、現在のところではっきり約束してもらいました点は、通産省無鉛化政策には完全に協力する。協力するという意味は、現在五カ年無鉛化計画を審議しておりますが、それがきまればもちろんその範囲内でしか供給しない、またそれがさらに急速に無鉛化できる、あるいは公害対策上こういう需要しかないという場合には、会社としては全くそれに従う、この基本線だけをただいま確認いたしております。  御承知のように、三年前に外資法の許可をしましたときに、こういう需要予測を間違えたこと、また政府側としても、その際に今日を予測して生産を半減するなり停止させるなりするべきであったという点は、現在から省みまして遺憾でございますが、現状では最善の施策をとるつもりでおりますし、先方も協力を約束しておる現状でございます。
  119. 赤松勇

    赤松委員 いま無鉛化のために協力するということを約束しているという話ですが、私ども一企業のそういう約束を信用して、ああそうですかと言って了承するわけにはまいりません。したがいまして、土井たか子君の質問は非常に重大な質問でございますので、これはすみやかに政府のほうで統一見解をもって、操業停止についてひとつこの際決断をしてもらうというふうに取り計らってもらいたいと思います。
  120. 加藤清二

    加藤委員長 この際、事務当局に申し上げておきます。公害立地……、通産大臣見えた、ちょうどいいところです。私の発言を続けます。  いま事務当局に申し上げようと思っておったのでございまするが、公害を除去しようとする立場と、その公害を発生させるものを製造させる側と、同じ通産省内に二律背反の行為が行なわれているやに察知できるわけでございます。したがって、この問題は課長とか局長とかいうことではなくして、公害除去の基本方針をきめられた大臣、それからまた、そのものをつくろうとしておる工場を許可なさった大臣、この方に御答弁を願うのが至当だと存じます。いま質問者もそのような要望がございました。幸い通産大臣がお見えでございます。質問者にどうぞ。
  121. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねは、製造を許可する者とそれから取り締まる者とが同じ行政官庁であるということは、不適当ではないかというお尋ねでございますか。
  122. 加藤清二

    加藤委員長 いや、そうじゃございません。不適当と言うておるのではございません。同じ省の中で、公害を除去する側は鉛を使わせない計画を立てている、それは五カ年以内に実行しようとしております、こういう答弁です。ところが、そのやさきに、その公害を発生する材料を、会社の名前は避けますが、許可して、プラントの製造を許して、その製造がこの九月から行なわれようとしている、これは矛盾ではないか、こういうことでございます。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 わかりました。  従来からの事情によってこれは外資法上の許可を与えたということでございます。ところで、他方で四エチル鉛というものはわが国で今後使用することがなくなる、そうでございますから、かりに許可をされましても、その工場はおそらく生産をすることがない、こういうことになろうと考えております。したがって、外資法上の許可をこの際あえて取り消す必要はない、こう考えております。
  124. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま大臣は、おそらく許可があって操業のためのいろいろな施設をつくっても、操業をするはずはないというふうに考えていらっしゃるように承りましたけれども、それならば、実際上操業を実行した場合にはどういう措置をおとりになりますか。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 事務当局から十分聞いておりませんでしたので、お時間をかけて恐縮でございますけれども、四エチル鉛というものはやがてわが国では要らなくなる、現在の段階ではまだ全部それが要らないという段階ではないわけでございますから、したがってその経過の間の期間、わが国の生産がなければ、これは輸入をするということにならざるを得ないかと思います。好ましくない事態でありますから、早くそういうものが必要とされない状態に持っていきたいと思いますけれども、経過期間にはそういう時期がございますから、したがって輸入との代替関係にある、そういう意味では経過的に操業をすることはあり得る。ただ、この工場は、製品の需要は何年か先にはなくなるということがはっきりしておりますから、おそらく工場をかりに操業いたしますにしても、いわば先の需要がないということを腹に置いた上での操業をすることになるでありましょうと思っております。
  126. 土井たか子

    ○土井委員 私は、こういう工場の設営なりあるいは通産省に対する認可の申請なりは、いわば経済ベースで事が進められるわけでございますから、経済の防衛とか、それから商業政策等々から考えて、やはり今後の善後措置というものもおそらくはとられるだろうと思うのです。いままで公害問題ということを考えてまいりました場合に、やはり経済優先、もうけ主義の背後に、人体がたいへんな危害を受けるというふうな問題があるわけでございますから、どれだけ強く人体の危害に対して予防策を講ずる、あるいはそれに対する補償を強く進めるということをやってもやり過ぎではないと考えているわけであります。そうでなければ、本気になって公害問題に取り組んでいるなんて言えないと思うのであります。  この際、新聞紙上によりますと、宮澤大臣は、お写真入りで、通産省は今度無鉛化に対して可及的すみやかに対策を進めるなどということを公表なさっていらっしゃるやさきでございますから、こういう問題に対して、通産省がどういう措置をこの四エチル鉛の工場に対しておとりになるかということは、私は注目の的だと思うのです。そういう意味を込めてひとつ責任ある態度をこの際はっきり明らかにしていただきたいと思うのでございますが、いかがでございますか。
  127. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの御指摘の趣旨については私も賛成でございますし、従来ともそういうふうに考えております。  そこで、問題は、四エチル鉛というものが従来ガソリンに添加されておったことについて、ごく最近まで多くの人は怪しまなかった。したがって、これを除去して——これは石油精製のほうにもりフォーマーというようなくふうが、新しい装置を必要としますし、またエンジンの側にも必要とするわけでございますけれども、そういう問題の認識がはっきりいたしてまいりましたから、これに対して対策を立てなければならないということで、各方面でいま問題を取り上げたところでございます。しかし、事の性質上、これは一日でやめるわけにいかないことはよく御承知のとおりでございますから、経過期間は、まことに残念なことではありますけれども、なお四エチル鉛の多少の需要がある間は生産が必要であろう、あるいは輸入が必要であろう。そういう状態を一日も早く除去いたしたいと考えておることには変わりがございません。
  128. 土井たか子

    ○土井委員 その点を、ひとつこの際徹底して取り組もうというお考えであるならば、おそらくは許可に対する取り消しなり操業に対する中止なりの措置をおとりになってしかるべきだと私は思うわけですが、しかし、いまの大臣の御答弁では、そういうわけにはいかないように私はお聞きするわけです。そこで、残念ながらしばらくの間といまおっしゃいましたけれども、どれくらいの間というふうにいま大臣自信はお考えでいらっしゃるかどうか、その辺をはっきりとお答えいただきたいと思います。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 アメリカにおきましては、この四エチル鉛の問題というのはわが国よりも早く、一年余り前に取り上げられておりまして、したがって、リフォーマーを装置するとか、エンジンを改造するとかいう研究は、それだけ早く進んでおるわけでございます、私の承知しております限りでは、一九七四年を目途にそういう状態を実現したいというふうに考えておるようでございます。そこで、わが国はかなりおくれましたけれども、ただいまからそういうほうの検討を進めまして、導入すべき技術があれば当然導入もいたさなければならないと思いますが、世界の全知を結集して数年ということが考えられておりますわけでありますから、わが国もできるだけ急ぐといたしまして、その程度の日子ということで考えなければならないのではないかと思います。
  130. 赤松勇

    赤松委員 関連して……。  宮澤さん、あなたは、この鉛害でこんなに困っておるのにどうしてこの輸入を禁止しないのですか。禁止する処置を政府全体としてとらないのですか。すぐにやれないから、しばらくの間経過措置をたどって、その間輸入を続けるのでしょう。そうしていまの企業がいよいよ生産を開始すれば、輸入のほうは減らしていく。そうしてその生産を肩がわりさせていこうというのでしょう。しかし、いまの無鉛化の情勢から見れば、やがて必然的になくなっていくだろうという期待感を持っておるわけです。だれがそれを保証しますか。いまの状態でほっておけば、いつまでもずるずるいきますよ。  そこで、もう時間もないようでありますから、先ほど土井君がおっしゃったように、これは宮澤通産大臣はもちろんのこと、厚生大臣その他関係閣僚と十分ひとつ討議をされまして、そうして——これは一工場の問題ではないのですよ、無鉛化のためにはこの際どうするか、政府の統一的な見解をこの際取りまとめて、そうしてこの産業公害対策特別委員会、土井君に対して、責任をもって答弁されんことを要求いたします。
  131. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私はその答弁を申し上げているつもりでありまして、四エチル鉛というものが、もう明日から要らないということになれば、これは輸入をする必要もないし、生産をする必要もないわけでございます。しかし、御承知のとおり、これを全部やめるためには、ただいま申し上げました程度のかなり長い日子がかかるのでありまして、そこまでの間は、これがなければ自動車というものは実際、絶対動かないとは申しませんけれども、動く体制ができないわけでございますから、経過期間の間、これはいいことではないでありましょうが、私はやむを得ないことだ、なるべく早くそういうものが要らない時期を迎えたいと努力をいたしておるわけでございます。
  132. 土井たか子

    ○土井委員 この問題は、いま大臣が言われるところからも憶測できますように、石油業界自動車業界等々との関連性を持った問題で、これは経営ベースに乗せられて事を運んでいった場合に、非常に先行きがまっ暗という問題でございますから、ひとつこの際、英断をもって大臣は臨まれんことを私は心から切望するわけでございます。いつかやはり行政指導ということがきっぱりなければ、私はたとえ五カ年計画を立てましても、三カ年計画を立てましても、事は一歩も前進しないということを、私はこの際あらためてお願いを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  133. 加藤清二

    加藤委員長 この際、委員長から申し上げておきます。  土井たか子君、赤松勇君、両氏から政府の統一見解の要望がありまするがゆえに、至急、後ほど統一見解を述べていただきますよう要望いたしておきます。     —————————————
  134. 加藤清二

    加藤委員長 この際おはかりいたします。  最高裁判所の指定した代理者矢口洪一君から、産業公害対策に関する件について、本日出席説明の要求があります。これを承認するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 加藤清二

    加藤委員長 異議なしと認めます。よって、承認するに決しました。     —————————————
  136. 加藤清二

    加藤委員長 もう一つ、おはかりいたします。  公害問題の緊急性、重要性にかんがみ、時間を有効にするため、本日は休憩時間をとりません。食事は委員交代でされんことを望みます。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 加藤清二

    加藤委員長 異議なしと認めます。よって、さよう決定いたします。  島本虎三君。
  138. 島本虎三

    ○島本委員 私はおもに、五月二十七日以来、あのような懸案になっておりました水俣病の補償の問題に重点を置いて、カドミウム並びに有機水銀のこういうような公害の再発を絶対なくするために、ここに順序よく質問をしてまいりたい、こういうふうに思いますので、この点はひとつよろしく御答弁を願いたいと思います。  まず第一番に、ここ一カ月ばかりで、公害と環境汚染の記事がまさにちまたにはんらんをしておるような状態であります。それがこつ然として起こったのではないのであります。それはいままでずっといわば継続的に行なわておったのが、それが発見されたのであります。ただいま問題になりました鉛害の問題、また水俣病の補償の問題、黒部のカドミウム並びに洞海湾のカドミウム、シアンの汚染の問題、また山口県の岩国におけるカドミウム含有鉱滓の大量流出の問題や、石川県小松市のカドミウム汚染、この辺で終わったのか、こう思いましたところが、これまた最近北海道の上川支庁管内の下川という町に、三菱金属鉱業下川鉱業所から、その排水の中にカドミウムの汚染の疑いが起きて、北海道庁でもきのうからあらためて調査に入っているという段階なのであります。私は、こういうような状態を見る場合に、大臣は国会で答弁をして、そのままそれで事終わりとするようなのがいままでの傾向でありました。今後は、公害の問題に関しては、そういうような問題は国際的なあるいは日本の産業そのものに重大なるピンチを招くおそれのあるものでありますから、この点は今度は真剣に取り組まなければならない問題になりました。  それで、いまここではっきりと聞いておかなければなりませんが、大臣がこの六十三国会で言明した工場並びに水質についての一斉点検、これはやるということでございました。まだ経済企画庁の長官は来ておらないようでございまするけれども、これははっきりやると言明をされたのであります。したがって、一斉点検をいまだやっておらないのじゃないか、同時に工場排水法による管理がまさにルーズきわまるものじゃないか、この点はただいまの質問でもそういう傾向がはっきり露呈いたしました。この際、経済企画庁並びに通産省に、いまのような点についてはっきり伺っておきたいと思います。
  139. 西川喬

    ○西川説明員 お答えいたします。  工場の排水に関します一斉点検に関しましては、現在都道府県のほうに調査を通達で流しております。それによりますと、まず四人以上の全事業場につきましてその数、それからそのうち指定水域に存在する工場数、それからそのうち基準がかかっている工場数、あるいはすそ切りになって現在まだ基準がかかっていない工場数、あるいは特定施設を有している工場数、そのようなものを全国全部調べまして、まずデスクプランでございますが、書類上の調査によりまして工場の実体数を把握いたします。その次の段階といたしまして、必要な部門につきまして、先生御承知のように環境基準につきましての有毒物質等の問題もございます。健康にかかわります項目の問題もございます。そのような工場がどういうところにどんな配置になって存在しているか、そのようなものをとらまえまして、そのあとで次の段階として実態調査方法を考えたい。現在その調査を全都道府県に流していたしておるところでございます。
  140. 島本虎三

    ○島本委員 工場排水法による管理は通産省じゃありませんか。通産省のほう、黙っていてはいけません。これもまことにルーズなことです。
  141. 柴崎芳三

    柴崎説明員 カドミウムにつきましても、水銀につきましても、現在通産省といたしましてはできるだけの方法を講じまして、総点検の措置に入っておるわけでございますが、まずカドミウムについて申し上げますと、これは鉱山保安法の対象になっておりますいわゆる鉱山の山元の製錬所並びに付属製錬所、これは数が約五十ございまして、これにつきましては鉱山保安局におきまして完全な調査を進めておりますし、現在のところ対策といたしましては完ぺきを期しておるわけでございます。その他カドミウムは、一般の製造工場におきましても使われかつ排出されておりますが、その数は大体三百三十ございまして、四十四年度におきまして三百三十の工場について総括的なリストを作成いたしまして、四十五年度に入りまして一斉点検ということで、現在各通産局を通じまして総点検の体制に入っておるわけでございます。水銀につきましては、これも四十四年度から総点検の体制に入りました。水銀を排出する主要な工場といたしましては、水銀の電解工場及びアセチレン法による塩化ビニールモノマーの製造工場でございますが、これも四十八工場につきまして総点検をやっておりまして、四十五年度におきましてもさらにその点検を続けていくという体制をとっておるわけでございます。
  142. 島本虎三

    ○島本委員 いつでも答弁ではそのように淡々と、点検をしたり調査をしたり、これは進めておるのであります。しかし、いかにこれがルーズであるのか、これは今回のこういうようないろいろな被害の発生によってまざまざと出てくるのです。したがって、もう少しこれは的確にやって、罰則をもってでも臨まなければだめだという段階だということです。いままで経済企画庁ではただ地方自治体に委嘱して、これは調査している。あなたのほうでは年限をきめてただそれをやっていて、それに対してはっきりした罰則をもって臨んでいるか。まことにそれは優柔不断であることを私は残念に思っているのです。試みに、工場排水法によるいわゆる所管官庁は五省もあるでしょう。そして、この大部分が通産省であっても、製薬の点では厚生省、それから食品は農林省、アルコール関係は大蔵省、自動車洗車業は運輸省、こういうような状態になっておりますけれども、この微量の重金属の規制は四月二十一日の閣議でそれぞれきまったようでありまして、一部大腸菌までも規制の対象に取り上げられた。このことはまずいいことです。しかしながら、カドミウムそのものはまだ暫定基準で、正式基準にはなっておらないのではないか。これに対して厚生大臣は一体どういうような考えなんですか。これはまだあくまでも暫定基準で正式な基準ではないそうじゃありませんか。こういうようなことで完全にできますか。ことに通産省でもこの工場を完全に掌握しているかどうか、これはまことに疑問です。これは単に疑問だというだけの問題じゃないのです。原則として山の近くに製錬所を持っていて磁石を製錬している。製錬所は鉱山保安法の適用で厳重な規制を受ける。しかしながら、それをのがれて、これは輸入鉱石でやっているのでもないのに製錬所は鉱山保安法の適用もないままに、そしていままでこのカドミウムの排出をしておっても、だれの罪になるのか、通産省もこれを掌握しておらない。三日市の製錬所の問題なんかあるじゃありませんか。こういうような問題は、鉱山保安法第三条の鉱害の防止の適用除外になっているのをいいことにして、これをやっている。これはだれが監督しているのですか、だれが取り締まっているのですか。そういうようにしてみると、通産省は監督が不手ぎわである。厚生省では、肝心のカドミウムの点ではこれはまだ暫定基準で正式基準にはしておらない、こういうような状態で、完全にカドミウムは掌握いたします、なくいたしますといっても、机上の空論じゃありませんか。こういう状態はとうてい許さるべきじゃない。まして総点検はお互いにしているそうじゃありませんか。しておりながら、こういうのをなぜわからぬでほったらかしてあるのか。これは地方自治体の責任ですか、通産省責任ですか、厚生省責任ですか、これをはっきりさせてください。
  143. 城戸謙次

    ○城戸説明員 お答えいたします。  ただいまの環境基準でございますが、水につきましては、先ほどの閣議決定の環境基準でカドミウムにつきましても〇・〇一PPMときまっております。大気につきましては、私どもの暫定対策要綱の中で、労働衛生の基準から割り出しました〇・八八ないし二・九三マイクログラム・パー立方メートル、こういうことで示しておりますが、これにつきましては私ども、現在やっております生活環境審議会専門委員会におきます浮遊粉じんの総量につきましての基準ができましたあとで、カドミウムを含めまして早急に基準値を設定したい、かように考えております。  なお三日市製錬所のカドミウム問題につきましては、私どもといたしましては、昭和四十四年二月十八日付で各都道府県主管部局長あてに出しましたカドミウム使用工場の有無に対します調査、この結果につきまして富山県から五月七日付で報告をもらっておりまして、それによりますと調査を計画中であるということでございます。私ども暫定対策要綱を示しまして、これによる調査をいたしまして、問題があればそのつど県から連絡を受ける、こういう体制になっておりまして、その点につきまして、ことしの問題が起こるまで調査結果の報告はもらっておりません。
  144. 島本虎三

    ○島本委員 そういうような調査はもらっておりません、報告をもらっておりませんといっても、こういうような被害がじゃんじゃん出ているじゃありませんか。すでに阿賀野川はまた七名患者がふえているというじゃありませんか。調査をもらっていないから、それでいいんだ、こういうような考えはもう許されないんです。そういうような官僚的な答弁を求めているんじゃないんです。水俣の問題にしても、あまりにも官僚的なそういうようなことからして問題を惹起したはずです。大臣、この問題は大事なんです。あんたがぼそぼそしているから悪いんですよ。もっとはっきりした確信を示してください。
  145. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私からお答えを申し上げますが、申すまでもなくカドミウムは微量重金属の一つでございまして、たとえば水銀でありますとかあるいは他のクロムでありますとか、あるいはまたシアン化合物なども同じように私は取り扱わなければならないおそるべき有害物質の一つと考えるものであります。でありますから、厚生大臣であります私の気持ちといたしましては、それによる被害が出てからあとを追っかけてみてももう手おくれでありますので、この公害の問題につきましては、できるだけ先取りをいたしてまいりたいという現在私は気持ちでおるものでございます。厚生省の事務当局に尋ねてみますると、そこまでは私の考えと同じでございまして、カドミウムにつきましても、先年、最終的な環境基準は出ておりませんけれども、カドミウムに対する暫定対策要綱というようなものをつくりまして、そして通産省あるいは地方公共団体その他の調査によりまして、カドミウムの排出の危険のあるところにつきましては、状況によりカドミウムの特別監視区域というようなものを設定をいたしまして、そういうところにつきましては、先ほど申しました暫定対策要綱によりまして、住民の健康診断でありますとか、あるいは環境汚染の調査でありますとか、排出源の徹底的調査というようなことをいたすことにいたしておるわけであります。しかし、まことに申しわけないし、また残念でありますが、厚生省自身は、私ども自身がその調査の機関を持ちません。でありますので、どうしてもこれは都道府県を通じ、あるいはまた厚生省でもお金は出して維持をしておるわけでありますが、保健所等を通じましてカドミウム汚染等に関する実情調査をさせ、あるいはまた先ほど来お話がありますような通産省でありますとか、あるいは水の場合がカドミウムが多いようでございますので、水質の保全等について担当いたしておりまする経済企画庁にもお願いをして、そしてできる限りの調査をしていただいているという段階でございます。しかし、これは私は、都道府県やあるいは通産省お願いしておるのをもって足れりとせず、今度のような富山県のカドミウム汚染というようなものもそうこうしている間に出てきておるわけでありますから、さらに厚生省自身が指揮をとるつもりで、権限があってもなくても、私どもが国民の健康を守る義務がある役所でありますので、権限の有無にかかわらず全国的に網を張って、そして調査を徹底させてまいるべきだと考えます。言いかえますと、私どもの立場は、通産省、経済企画庁とは違いまして、むしろ被害者の側に立つ役所と私は心得ておりますので、国民の健康保護はもちろんのこと、生活環境の保全ということを先取りする意味におきましても、ほんとうに私どもがさらに先陣を切ってしっかりしなければならないという気持ちを深くしておるものでございます。幸い、先般水におけるカドミウムの環境基準はつくりましたが、大気の中に出てくるカドミウムの環境基準につきましては、これは粉じんと一緒に出てまいるものでございますので、せっかく粉じんにつきましての環境基準の調査をいたしておりますので、これをいそがせまして、空気中に出てまいるカドミウムにつきましくも、暫定基準ではない本物の基準をつくるような努力をさせたい所存でございます。
  146. 島本虎三

    ○島本委員 何カ月後につくりますか。
  147. 内田常雄

    ○内田国務大臣 ことしの秋過ぎになるそうでございます。
  148. 島本虎三

    ○島本委員 ことしの秋までにやる。大いにけっこうですけれども、必ずこれをやるようにして、そしてこれと正式に取っ組んでやってもらいたい。  なお、宮澤通産大臣のほうからの御答弁はありませんけれども、三日市の製錬所、こういうようなものは完全に行政上のミスかまたは連絡の不備か、この責任はよって通産省にある。この鉱山保安法第三条の鉱害防止の適用除外になっている当然しなければならないものをそのままにほうっておいた、こういうようなことはもう許されないと思うのです。これに対して今後どういうような決意を持っていますか。
  149. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これが従来鉱山保安法の適用を受けていないことは御指摘のとおりでありまして、独立の製錬所でございますから、いわゆる鉱山保安法の適用を沿革的に受けなかった。ところで、他方でまた大気汚染防止法あるいは工場排水等の規制法の指定地域の中でもなかったということから、県の条例による公害規制を受けておった。確かに御指摘のような問題はあるわけであります。現在の鉱山保安法あるいは鉱業法でございますと、これは昔から通達で保安なり規制をしておりまして、その中に公害という観点が十分に入っていなかったといううらみがございます。そこでこれからの対策としては、水質二法あるいは大気汚染防止法等の公害基本法系の体系による規制か、あるいは鉱山保安法の体系による規制か、どっちかをしなければならないわけで、これは法律改正が必要になるかと思いますが、いずれかのことをしなければならないのではないかと考えて、ただいまそれを検討をいたしておるわけでございます。
  150. 島本虎三

    ○島本委員 大臣の都合で、まだ水に対しての経済企画庁の佐藤長官が来ておらないのです。これは後ほど厚生大臣と両方そろったときに全部譲ることにして、厚生大臣でなく、通産大臣がだいぶ時間が迫っているようでありますから、その方面へちょっと触れさしてもらいたいと思うのです。  通産大臣、今度いわき市のほうでは、市民と会社とで公害対策についてのいわば協定を結んだという報道がなされました。これは国や地方自治体、こういうようなものに対する一つの不信感のあらわれで、直接行動に訴えなければ解決できないという逼迫したような住民の気持ちがそうさせたのではないか、こういうように思うわけなんです。これはその裏を返すと、案外この中に、会社と自治体とがべったりなので、住民がこういうような訴えを直接起こしたものである、こう考えざるを得ないわけでありまして、こういうような情勢は私は望ましくはないと思います。これに対して大臣は、今後こういうような情勢がまた起きる可能性もありまするけれども、どういう指導を考えておりますか。
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 従来地方の市町村におきましては、その地方に、いわゆる地元のかなり大きな産業がありまして、財政等々大いにその産業、企業にたよるといったケースが間々見られます。そういうところでは、ただいま御指摘のようないわゆる企業によるところの市政あるいは町政に対するかなりの影響力とでも申すようなものが残っておるところがございます。しかし、それがいい面においてならば何も差しつかえございませんが、公害等というような問題になりますと、これはやはり市民のためあるいは町民のための市政であり町政でございますから、そのような自治体がやはりそういった観点で行政を考えてもらうことが、私はむしろ当然のことではないかと思っております。したがって、それは国としてもそういうことを切に望みますし、また、ときとして市民の一部が立ち上がって、市政を、市民のための市政という観点から、ただいまのようないわゆる癒着ともいわれるようなものを直していこうと考え、市民が公害に対して直接自分たちの意思をいろいろな形であらわしていくということは、これは十分了解のできることで、そのようにしてでも公害というものは排除をしていってもらいたいと考えております。
  152. 島本虎三

    ○島本委員 せっかく公害を排除していかなければならないとするならば、大きい企業でも、中小企業のわりあい大きいほうの企業でも、企業という企業には、いわば現在のこの情勢からして、ただ単に採算に合うように、ただ単にもうければいいというだけではなくて、当然公害対策部門というようなものを置くようにして、その防除のための指導部門もちゃんと置くべきではないかと思うのです。これは企業に対してそういうような指導をしていなければ、今後やはりそういうような指導も取り上げるのでなければならないと思いますが、この点はどうですか。
  153. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 公害についての問題意識が成熟してまいりますとともに、実は企業自身の立地上の自衛対策からいたしましても、そのようなことに特段の配慮をしなければ、実は企業そのものが土地から排斥をされるというような情勢になってまいりました。そこまで問題意識が成熟してきたというふうに考えます。したがって、企業がただいま御指摘のような公害についての特定の管理部門を持つということは、私はきわめて大切なことであると思います。必要がございますれば、法制化をすることも考えなければならないとすら思っております。
  154. 島本虎三

    ○島本委員 イタイイタイ病にしろ、水俣病にしろ、その原因者は全部企業であるというふうに考えられるのでありますけれども、裁判をやると、また結論が出ないままに、被害者である住民は苦しんでいる、これが実態なのであります。あくまでも厚生大臣は、そういうような場合には国民の側に立ち、被害者の側に立って解決に努力されるものであると、私はそういうように考えておりますけれども、大臣、私の考え間違いでしょうか。
  155. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私といたしましては、島本先生の考え方と同じでございます。
  156. 島本虎三

    ○島本委員 水俣病の特殊性と申しますか、大臣も御承知だと思いますけれども、水俣病患者、その家族に対して、一般災害よりも手厚いような看護が必要である、こういうようなことをもうすでに御存じだと思うのです。病状があのむごたらしいこと、これは大臣も御存じでしょう。精神的、肉体的な苦痛、これは想像に絶します。それだけじゃございません。患者一人をかかえることによって、家計の負担がこれまた倍加するのでありまして、一家共倒れの状態におちいる例もないわけではありません。そういうような中で、十分考慮を払わなければならないと思うのでありまするけれども、何か最近の報道によると、水俣の補償金を受け取る二世帯に対して生活保護を打ち切るということをきめた、こういうような報道がありまするけれども、これはまことに大臣の答弁うらはらの結論のように思うわけでありますが、これは一体どういうことですか。
  157. 内田常雄

    ○内田国務大臣 島本先生のお尋ねは、熊本県水俣におけるチッソ株式会社の製造工程に関連する水銀中毒によって被害を受けられた方々のうち、これは御承知のとおり訴訟で再補償を争っておられる方々と、また和解のあっせんを私どものほうに申し出られて、私どものほうからお願いをいたしました補償処理委員会のあっせんで、今回年金あるいは一時金等の支給が決定いたしました、この二つの組があるわけでありますが、そのあとのほうの、あっせんによりまして会社側から年金、一時金が支給されることになった患者の御家庭の方々についてのお尋ねであろうと思います。これらの水俣病によって倒れられた世帯の中には、御承知のとおりなかなか生計が困難な方々もございまして、そういう方々に対しましては、生活保護法によりまする生活保護の対象家庭として取り上げられて、生活扶助費が出ておるわけなんですが、今度しかるべき金額の補償金が、年金あるいは一時金の形でそれらの家庭にお金が出されることになりますと、生活保護法の体系とその今度の補償等をいかに措置すべきかという問題が起こるわけでございます。新聞の記事は私は見ておりませんが、いままでの生活保護の体系から申しますと、他に財産なり収入なりが、補償の形等によりましても入りました際には、当然生活保護の生活扶助金には影響が及ぶことになりますので、その辺につきましては、厚生省に社会福祉審議会の中の生活保障部会がございますので、それらの審議会、部会の先生方の御意見をも伺って措置をいたすべきものと私は考えておるものでございます。
  158. 島本虎三

    ○島本委員 大臣も御承知のように以前からこういうような問題がたくさんありました。火災の見舞いとしてもらった。それを収入とみなされて生活保護を打ち切られた。それがあまりにもむごたらしい、実情に反するので、ついにそういうようなことからして実施要領、こういうようなものに対してまた修正を加えていった。それから電気冷蔵庫の点に対しても、テレビの問題に対してもそういうようなことがだんだんあって、一つ一つ改正されていっておるわけです。  いま水俣病の問題がこうなってみます場合に、これは特殊性があることは大臣も知っておられるとおりなんです。この問題に対しては将来も生活保護を受けなくてもいいだけのりっぱな補償金があるというなら話は全然別です。そうじゃなくて、長い間苦しみ抜いてきた患者です。そういうような人がやっと受け取る年金あるいは一時金、こういうようなものはおそらくはすぐに生活費に食われてしまう、こういうような可能性の大きいものです。これに対して現地の福祉事務所あたりも、そういうような見解も表明しておるようじゃありませんか。ここで私は大臣に、国民感情に反するようなことをしないように、また実地調査を十分した上で、この問題に対する的確な処理をやってほしい、こういうように思うわけです。ただ単にそうなったから収入をこえるのだ、こういうようなことのためにこれをやってしまった。あとから自殺したり、また何かの社会問題が起こる、こういうようなことに対して、また是正をして改めた、これではまさに噴飯ものですし、ひとつ今度の場合は特に気の毒な家族です。この人たちは好んでやった病気じゃないのですから、そういうような場合、これはほとんど治療費に向けられる性質のものであるならば、補償金の使われ方を大まかにでも実態調査する必要があるのじゃないだろうか。そういうような上で、これは保護打ち切りが妥当だというならば、その貧富の状態を見てやったらいいじゃないか。ただ三十万だ、四十万だ、それだけもらったのだから打ち切ってしまうのだ、それは早計に過ぎる。実態を十分調査した上でこれは実施すべきだ、こう思いますが大臣はどういうふうに思います。
  159. 内田常雄

    ○内田国務大臣 おおむね島本先生のお考えと同じようなことを私も考えております。ただ補償金等につきましては、要は結局その金額の大きさによるもののようでございまして、いまお話しのように、一時金三十万とか四十万というようなことでありますならば、いま島本先生からお述べがございましたように、いろいろの経緯を経て、従来におきましても、ある程度の金額まではそれは生活扶助の支給金に影響を及ぼさないようにして取り扱ってきておると思います。したがいまして、その患者の御家庭において、今度会社側から受け取ることになります金額の多寡なども問題があろうと思いますが、これらのことにつきましては、いま申しましたように私どもだけで機械的な判断をいたさないで、御趣旨もくみながら審議会の皆さまの御意見も十分承って処理いたしたいと思っております。
  160. 島本虎三

    ○島本委員 それで大臣に、最後これだけははっきり確約しておいてもらいたい。それはいわゆる補償金といわれておりまするけれども、この性格は後ほど少し大臣に聞きます、もらったその金、これはまさに生活費に充当しなければならないような、こういうみじめな人たちなんですから、そういうような場合には、少なくとも実態調査を十分した上でなければ保護法の打ち切りはしない、こういうようなところまではっきりしておいて次に進みたいと思いますが、それは当然じゃないかと思います。
  161. 内田常雄

    ○内田国務大臣 お説のとおり実態を調べまして、そうして対処いたす所存でございます。
  162. 島本虎三

    ○島本委員 先月の十五日でありますけれども、熊本では、法によってはっきり支給ときまっておった介護手当の支給がまだないという報告を受けました。これは一体どういうことなんですか。それと同時に、今度は四日市でも医療手当、こういうようなものの支給もまだ十分じゃない、こういうようなことも報告を受けましたが、これは何かの間違いではないかと私は思うのです。こういうようなことはあってはならないように十分措置まで付してあの法律案は通ったはずなんです。四日市では、実際医療手当を受ける者が五五%にすぎない、こういうようなことがほんとうだとしたらとんでもないことじゃないかと思います。これは一体どういうことなんですか。同時に、熊本では介護手当の支給がない、こういうような発表がありましたが、こういうようなこともまた許されないことだと思います。一体これはどういうようなことになって、いまのような水俣病に苦しむ患者に対してそういうような敵がい心を持たなければならないのですか。この実態をはっきりさしてください。
  163. 内田常雄

    ○内田国務大臣 先般国会で成立をいたしました公害による健康被害者に対する特別措置法の適用によりますと、私が承知をいたしておりますところは、医療費と、それから医療手当と、それからいまおことばがございました介護手当と、三本があるはずでございます。  それらの出し方につきましては、私もつまびらかにいたしておりませんので、担当の方面から答えさしたいと思います。
  164. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいま御指摘の、最初に介護手当の点でございますが、これにつきましては、御承知のように一定の認定疾病にかかっている者が省令で定める範囲の身体上の障害である、それでそのために介護を要する、こういう前提になっております。  他方、たまたまあっせんをいたしておる段階におきまして、患者の等級審査等を中身に入れました話し合いが行なわれてまいりましたので、県と患者互助会等とが話し合いまして、若干期間を延ばしておるという話が私どものほうに伝わってまいっておるわけでございます。  したがって、私どもとしましては、そういう公に給付するものとそういうあっせんとを一緒にからめるということは適当ではない、至急に介護手当が必要な者につきましては支給するように、かようなことを県のほうにも指示をいたしておりますし、補償問題が先般一応解決いたしました段階でも県のほうに申しております。したがって、四十五年の四月分以後の分も相当早い機会に対象者があれば支給される、かようなかっこうになってまいると思っておるわけでございます。  それから、この医療手当でございますが、医療手当につきましては、実は大気汚染関係は水の関係と違いまして、入院の場合は同じ条件でございますが、通院につきましては条件が悪くなっております。と申しますのは、もともと予算その他の段階大気汚染関係がはずれておりましたのを、通院につきましても非常に重い場合にはこれを入れようという考え方に広げました関係条件が若干悪くなっております。現在では、そういうことで四日市等におきましては医療手当のほうの支給が少なくなっている、かように思っているわけでございますが、将来の問題といたしましては、できるだけ支給条件の改善等につとめてまいりたいと思っておるわけでございます。
  165. 島本虎三

    ○島本委員 あの公害医療救済法ができるときに、大気汚染患者に対しては、病状によって入院患者と同様程度に十分手厚くこれは見てやる、こういうようなことをはっきり答弁しておるじゃありませんか。そうして金額の引き上げについては来年度——これは本年度ですよ、十分これを考慮する、これは大臣まで答弁しているじゃありませんか。こういうようにはっきりしていながらも、病人そのものを前にして、やはりまだ行き渡らない、こういうようなやり方はあまりにも官僚的です。これはほんとうに厚生大臣としては残念だと思いますけれども、実際はそういうことになっております。これは画竜点睛を欠くような状態ですから、こういうようなものに対して、少しはっきり愛情をもってこれはやってやってほしい、こういうように思うのです。  それと大臣、最後に、前の質問ですけれども、水俣病の補償金の受け取り二世帯の問題については、やはり実態を十分調べた上で、保護法の打ち切り、こういうようなものは考える、こういうことですから、一応は私は了解したわけです。大体において、今後受け取る補償金というようなもの、あの四十七名の人たちが今度受けるであろうと思いますけれども、この金額に対しましては課税する方針ですか。先般は課税しないということが発表されたようでありますけれども、これは一体どういうような方針で臨みますか。
  166. 内田常雄

    ○内田国務大臣 会社から支給されます今回のお金については、課税しないことにして取り扱ってくれということを私のほうから国税庁のほうに強く申し入れております。最終的にはそうなることと私どもは期待をいたしております。
  167. 島本虎三

    ○島本委員 大臣は特に、今回のあの二十七日のあっせんですか、これが終わったあとで、まとまったあっせん案を前にして、公害を起こす企業の無過失責任を法律にきめられていない現在では、あの補償額はぎりぎりの線だ、こういうような発言があったように思いますけれども、あの補償額は大臣としてはぎりぎりの線だとお思いですか。
  168. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私の発言といいますか、あるいは場合によったら新聞の取り上げ方にもよったことと思いますが、私はそういう意味発言、あの金額がぎりぎりの線だというようなことについては触れておりません。むしろあの補償が行なわれることにも関連をいたしまして、これからの公害による責任とか補償とかいうことにつきましては、今日のような高密度社会と申しますか、そういうところに発生してきている公害の損失対策といたしましては、いままでの成文法主義の故意とか過失ということからだけ論ぜらるべきものではなしに、さらに無過失責任というようなことにつきましても考えらるべき時期にきているものと思う、こういうようなことを私は申しているわけでございます。そのところはそのように御理解をいただきとうございます。
  169. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、大臣としては、今後司法裁判で会社側の過失責任がはっきり明らかになった場合には、その理由をもって金額の改定は考えなければならないというふうに思うわけですね。
  170. 内田常雄

    ○内田国務大臣 それとこれとは関係がないわけだと私は思うのでありまして、今回のあっせんは、もう法律論から離れておりまして、会社の製造過程と水銀による中毒というものとの間には因果関係はあることは、もう私はそのとおりであると、今日においてはだれもが考えざるを得ないわけでありますが、しかし今回私どもお願いをした委員の方々がああいうあっせんをされましたのは、故意、過失があるとかあるいは故意、過失がないとかいうことを離れまして、いわゆる和解あるいはあっせんとして出されたものでありますので、一方訴訟をせられている方々が、どういう判決があるかということとは無関係、たとえば裏から申しますと、これは決して私はそれがいいこととか、そうなることを期待しているわけではありませんが、かりに故意、過失がないために、司法上の判決といいますか、決定がどう出て見ても、今度渡されることになったお金はそれは返す必要はない。それと同じようなわけでありまして、故意、過失というようなことによる補償額が裁判上でどうきまりましても、それと今度の金額とは関係なしに、変更せらるべきものではない、こういうふうに私としては思うものでございます。
  171. 島本虎三

    ○島本委員 いまそれを受けた人たちは、これで十分だと言って受けた人は一人もないでしょう。不満だけれども、これは一任したんだからやむを得ないというので、泣きの涙であれを納めたに相違ないじゃありませんか、まだはっきり納めたとは聞いておりませんが。しかし、そういうような場合には、大臣もこれははっきり知ってのとおり半分——半分もいきませんでしょうか、約二十名近くの人がいま司法裁判で争っているでしょう。そうすると、同じような人が、それでがまんしている人と、また司法裁判に求めて、はっきりここで会社側の過失責任が明らかになった場合には、当然それに基づいて金額の改定はすべきであるし、できないということはあり得ないと思うのです。そこなんです。大臣は、これはもうやった以上あきらめなければならないのだ、こういうように言いますけれども、それは被害者の立場に立ったことばじゃない、こういうように言わざるを得ないわけですが、これは裁判で訴訟派の人が、会社の過失責任が明らかになった場合には、当然これはもうよけい出ますから、よけい出た差額の分くらいは先にやった人に対しては当然見てやってしかるべきじゃないか、これが被害者の立場じゃないか、こういうように思うわけなんですが、大臣はそれに対して、あえてそんなことは全然関係ないんだ、こういうような答弁のように聞こえたのですが、そうですか。
  172. 内田常雄

    ○内田国務大臣 そのあっせんの結果につきまして、私はいろいろ申し述べる立場に実はないわけでありますが、しかし、お尋ねの点につきましては二つの問題があると思います。今回厚生省に、第三者のあっせん委員を選んで、その方のあっせんにまかせたいということを希望せられてきた患者の方々は、私どもが訴訟を差しとめたのでは全くないのでありまして、訴訟をやったのではこれはなかなか解決が長引く、あるいはまたいまのその成文法主義においては、故意、過失がない限り補償問題にも影響があるということで、先方の御希望で、前の厚生大臣のときに、第三者のあっせんによってとにかく一日も早く解決したいということであの申し出がありましたので、私どもが両当事者から御意見を聞いたり確約書をいただきながらあっせん委員お願いしてきまったことでありまして、泣きの涙で、私どもが押えつけてあの金額をきまるようにしたということではないことは、ひとつまず御承知をいただきたいと思います。  その次に、訴訟にいっておられる方は、これは裁判官がやられることで、私ども行政機関がかれこれ介入はできませんが、これはおそらく、補償金といいますか損害賠償を支払うためには、今日までの法制上では、裁判所が故意、過失が会社側にあったということを認めるか、そうでなければ、私が先ほど申し述べましたように、無過失責任の原理原則というようなものを裁判所が取り入れられるかどうか、その辺私わかりませんが、そうした場合でなければ私は損害賠償の判決が出ないことと思われるわけであります。したがって、そういうことで故意、過失がお尋ねのようにありとして、賠償責任が決定された場合には、それは裁判上そういうことになるわけでありまして、それと今回の和解の契約等の影響につきましては、これは法律家が論ぜなければならないところでありましょうけれども、私としてはそうなった場合も影響はない。しかし、逆に裁判所が故意、過失を認めない、したがって、補償は出ないというような悪い結果がかりにあったといたしましても、今度受け取った金につきましては影響はない、こう考えられる。また、それを望んであっせんの申し入れというものが県、それからまた水俣市、さらにまた患者と会社側との当事者から厚生省に対してあって今度のような機関ができ、そういう機関が和解のあっせんをされたことと考えるものでございますので、その辺も御理解をいただきたいと思います。
  173. 島本虎三

    ○島本委員 これは理解してくださいと言っても理解できないのです。金額があまりにも低過ぎるからです。それと、残念ながら、患者の立場に立つという厚生大臣は、会社の立場に立ってしまっているからです。そういうようなやり方では私は断じてこれは認めるわけにまいらないのです。
  174. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は会社の側には全く立っていない。
  175. 加藤清二

    加藤委員長 まだ許していない。発言中です。
  176. 島本虎三

    ○島本委員 それもあえて言うと、それならば、あっせんに対する被害者に対する足かせ、こういうようなものをはっきりやった、この事実を認めなければならないでしょう。  まず第一番に、三十四年のあのチッソ会社と被害者の互助会との見舞い金契約、この取りきめの、工場排水に基因が決定しても新たな補償金は一切要求しない、こういうような根拠を一つはっきり今度の場合も打ち出しているでしょう。そういう根拠に立っているでしょう。  もう一つは、厚生省の仲介で今度つくられたこの処理委員会、これに一切一任するというようなこういうような条件をとっているでしょう。  これであったならば、もうすでに手足をもいだ上で料理をしようと思えばどうでもできるような状態にしてあるじゃありませんか、加害者の負担できる額、こういうのをのませる役目しか果たさなかったということは、被害者の立場に立っていると言えますか。現に十数年間苦しんでいる患者、こういうような人たちがいま来る場合には、これは明日の一万よりきょうの五千円でありませんか。そういうような人を三日間も部屋へ詰めておいて、そういうような交渉をしてのませたのがその実態だ。そうすると、もう交通事故の処理の示談と、第三者によるところのいまのあっせん、こういうようなものと、どういうようなことになるのですか。私どもとしては理解に苦しむのです。それだけじゃないのです。補償金の多い少ない、こういうようなこと以上に、企業責任が問われないままに今度国もその問題に加担したということになってしまうじゃありませんか。そうなってしまって、被害者の立場に立っているのだ、経営者の立場に立っていないのだ、こういうようなことをどこから言えますか。それに対して言ってください。これに対して被害者が何と言っているか。金は一銭も要らぬのだ、そのかわりに、会社のえらい人たちは、えらい順番に水銀の母液を飲んでもらおう。これは痛切なことばじゃありませんか。そういうようなことばさえ口から出ているのです。それだけじゃないのです。二百万、三百万、これくらいの金で人の命に値段をつけられるならば、その場でそのえらい人たちがはっきりその値段で自分の命を売ってくれ、こういうような悲痛なことばを吐かせておいて、私は企業の側に立っていないのだ、あくまでも被害者の側に立っているのだ、厚生大臣、はっきりこれは言えますか。
  177. 内田常雄

    ○内田国務大臣 はっきり申し上げますが、私は会社の側に決して立っていない。大体これまでも、先ほどから問題になっております阿賀野川の事件にいたしましても、あるいはその他イタイイタイ病の事件にいたしましても、これに対しては訴訟で争われているわけでございます。水俣病の損害賠償事件につきましても訴訟で二十何名の方々が争っておられるわけでありますが、今回解決を見ました方々は、訴訟をするつもりはない、訴訟をしても長いことかかる、こういうようなおつもりであったと思いますし、もう一つは、御承知のように三十四年に両当事者間の話し合いがあって、そして、これは補償金でございましょうか、見舞い金でございましょうか、その法律上の性格は別といたしましても、そういう事態も経てきているものでございますので、厚生省は決して訴訟をやめろとかいって押えつけたわけでもございません。会社の代弁として訴訟をさせなかったわけでもございませんので、それらの患者の方、家庭の方々から、訴訟はしたくないので何らかひとつ会社と話し合いのチャンスをつくってくれ。またこれは患者側ばかりではございません、熊本県当局からも水俣市の当局からも、県、市としてはもうそれは尽くすだけのことは尽くしてきたが、これ以上はあっせんができないので、何とか厚生省が第三者機関をつくって、厚生大臣が政治的に動くとこれはあぶないから厚生大臣はだめなんで、第三者的な公平な機関をつくって、そしてその第三者機関がそれぞれの事情を十分調査をした上でその結論を出してほしい、それだけのあっせんをしてほしい、こういう申し出がございまして、そして厚生省はそれならば、患者の方々もいまおっしゃるように、先の一万円よりもいまとにかく早く解決したいという気持ちもわかるということで、公平と考えられる、三方面を代表せられる三人の委員の方々をお願いして、そして私どもは干渉しないで、この三人の方々が四十何回も会合されたり、現地にもたびたびいらっしゃったり、両当事者の話を聞いて、法律論でなしに、故意、過失があるかどうかということだけでなしに今度の結論を出された、こういうわけでありまして、あの結論はもっともだからこれをのみなさいというようなことを厚生大臣が言っているわけでも全くございません。とにもかくにも話し合いがついて私はけっこうであった、こういうことを思うと同時に、これからの公害の損害賠償ということについては、私は会社側に故意、過失がなくても、私自身としては進んだ頭でやはり無過失責任というような意味も取り入れるべきような時代が来ているという感想を漏らしておいたというのが今度の全部でございますので、決して私が、あるいは厚生省が会社側に立って、そしてお気の毒な患者の側を押さえつけたというふうにはぜひひとつとらないでいただきたいと思います。
  178. 島本虎三

    ○島本委員 とらないでほしいといっても、私がいま言っていることが認められる以上、これはそう思わざるを得ないのですよ。もしそれが責任じゃないとして、これはもう道義的、社会的な考慮からしてこれはやったのだというならば、もっとはっきり、どれだけ負担させればいいんだ、どれだけ支払えばいいんだということを検討して、そのあとで会社のことを考えるのが当然道義的、社会的責任だといえるのです。ところが先に経営状態を考えてやって、これくらいは会社側が支払えるのだ、こういうような考えの上に立ってこれをやったということであるならば、これはあなたが言うように患者の立場に立ってやったと言えますか。これはあくまでも先に幾ら払うべきかということを考えて、その考えた額に従ってこれをやらせるのが、当然あなたの諮問機関として結論を出すそのゆえんじゃございませんですか。それを会社のいわば経営状態を最優先的に前提としたということ、これは企業のことを考えても、患者の立場に立っていない。このことは私残念なんです。
  179. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私もまことに残念でありまして、私は、私が委任を受けてそして三人の委員会に諮問をして——私が補償額というものを決定するという立場にはなかったわけでございます。三人の委員を選ぶことまでは厚生省責任でございましたが、あとはすべてのことを三人の委員の方々が、厚生省の当局の私どもの影響を遮断して、非常に苦労しておやりになったわけでございまして、私どもは会社の財産や所得の状況等を考えて幾らぐらいでいくべきだというようなことを初めからきめてかかったというものでは全くございません。これを御理解いただきたいというと、御理解しないと、こう言うから私はそれ以上申しませんが、私はそういう立場にあるわけでございます。
  180. 島本虎三

    ○島本委員 あなたの諮問機関でございませんか。それで、はっきりこのことを委任したのは大臣じゃありませんか。あなたが委任してやったとするならば、その責任はあなたじゃありませんか。そんなことをないという理由はないでしょう。あなたのほうでそれを委任したんじゃありませんか。そうじゃないのですか。かってに向こうから申し出てきたのをあなたが承認しただけなんですか。あなたがこれをやってくれと委任した以上、責任はあなたのほうにあるじゃありませんか。
  181. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は法律の専門家ではありませんのでよくわかりませんが、たとえば今度のきめ方というものは中労委なりあるいは公労委というような第三者機関と同じような働きをこれらの三人の方がなさったわけでありまして、それをきめたのは厚生省——その両当事者から、自分たちの持ちごまはない。自分たちが地域から出すなり何なり、しかるべき方面からそういうあっせん委員を出されたらいいじゃないかということまで申し上げたそうでありますが、そういう持ちごまがないので、厚生省が公平と考える方々を選んでください、こういうことでそれについてはそれにおまかせするというというような依頼書というか、確約書というようなものをいただきまして、その三人が全く大所高所から両当事者の立場や何かを判断して、簡単なる法律論やまた会社の経営状態によらずして判断をされてきたわけでありまして、厚生省が、何べんも申しますように、頭から金額をきめて、これでどうだというようなことでその委員会に諮問したわけでもなければ、あるいはまた委員会の勧告を私は受け取って、それを判断に厚生大臣はきめたものではない、こういう次第であります。
  182. 島本虎三

    ○島本委員 実際大臣のことばを聞いて、少しどこか一つ抜けておるような気がするのです。あなたがもしそれがあまりにも低きに過ぎた。また交渉のしかたが、来ておる患者を一室にこうやったまま、二日も三日もそのままかん詰めにしたようにして交渉してきめた金額だ。これはもっと考えなければならないとするならば、大臣として、あなたが委任した人ですから、それはこういうふうにしたらどうだというあなたのことばくらい聞いてもらえないのですか。あなたはそれもやらないでおいて、出たのだからしようがないのだ、こういうふうに言っておる。あなたの責任回避以外の何でもないじゃありませんか。私はちょっと納得しかねる。
  183. 内田常雄

    ○内田国務大臣 他の公害賠償事件が全部訴訟になっておるわけであります。ですから、これは本来からいえば訴訟に持っていくということになったでありましょうが、当事者の方々が訴訟は好まないということで、第三者委員というもののあっせんに持ち込んでこられたわけであります。ということを、たびたび私は申し上げておるとおりであります。現在ほかの訴訟になっておるものも、これは訴訟できめれば、裁判所がきめるわけでありますから、私の責任は追及せられなかったかもしれませんが、しかし、この水俣の事件につきましては、当事者からの熱心な希望で、訴訟はしないで第三者機関をつくって、そして解決の道をとりたいということで、熊本県の知事からも市長からも、そういう方法をとってくれということでやったわけでございます。私のほうが患者にもっとそんなことを言うな、そんなわがままを言うなということも言わなければ、もっと取れということも言わなければ、また会社側に対しましてももっと出せとも言えない立場にある。そんなに出すなと言う立場にもないのでありまして、この三人の委員の方々が、御承知の法律家もおればお医者もおればあるいは地方行政の専門家もおりまして、それらの人々から厚生省の政治的の責任を解除するということを条件にそれらの方々があっせんを引き受けられたわけでありまして、したがって、これは私どもがやり得た最善の方法であったと私は今日でも思っております。
  184. 島本虎三

    ○島本委員 最善の方法であるとするならば、四百万円くらいの補償でこれはりっぱなものである。これ以上出せないのだ、これほど四百万円はりっぱな金額ですか。いま補償金はどれほどになっておるのですか。大阪の場合なんか、ガスの場合幾らですか、千九百万円、そして今度全日空でさえも四十一年の七月ですけれども、八百万円じゃありませんか。十年間も苦しんで苦しんで死ぬ人なんかに対して、どういうような金額で、これは満足なんですか、これはどうなんですか。現在、人の命、こういうものは大臣あなた、金に換算すべきじゃありませんけれども、幾らぐらいやったらいいと思いますか。これは四百万円でいいのですか。
  185. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は人の命は地球より重いということばがあるとおりであると考えます。しかし、今回の場合は、先ほどから申し述べておるように、私が政治家として、私がまた一個の人間として、私が委任を受けてきめるという立場にないわけであります。これは私がこれ以上いろいろ申しますと、私がいずれかの側に立つことになりますので、申しませんので、これは必要とあらば、何らかの形において三人の委員の方々に、今度の事件に対処したその金額の算定の基準等もお尋ねをいただきたいと思います。
  186. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ、そういうように、あす来ることになりますから、これは討論をそこですることにしましょう。その際にも、なんだったら厚生大臣も一緒にこの場所へ来て、一緒に意見を開陳していただきたいと思います。  それと同時に、大臣は無過失責任を企業に負わせるのでなければこういうような問題の解決にならない、こういうようなことを言っているようでありますけれども、大臣は、この無過失賠償責任の問題については、今後どのようにして扱うつもりですか。
  187. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これも私は法律家でありませんし、また、いまこの事件が半分は訴訟に係属をいたしておりますので、法律家的の立場で申すのではございませんけれども、私が政治家として、また一個の人間として考える気持ちを率直に申しますならば、先ほども述べましたように、これほど人間の生活が過密度化してまいりましたり、いろいろな事案の態様というものを考えてみますると、私は、原因と結果との間のその因果関係がはっきりしてさえおれば、こういう問題については故意・過失主義だけで処理するのではなしに、さらにもう一歩進んだ社会生活の原則、他のことばでいいますと、無過失責任の原理というようなものも取り入れられてしかるべきような世論がだんだん起こってくることを、私は期待いたすものでございます。
  188. 島本虎三

    ○島本委員 期待だけしていてこういうような問題の解決になるものじゃありません。  それで、これは法務大臣にお伺いしますけれども、いま法制審議会で、刑法の改正、これをもう全面的に審議している、こういうようなことを聞いておりますが、公害罪についてはどの程度検討が行なわれておりますか。同時に答申はいつごろ出るものか。  なお、小林法務大臣は先般の国会で、衆参両院にわたって公害罪を単独立法としてこれは規定する、こういうようなことを言明されましたが、もうすでにいままでの討論でもおわかりのとおりに、公害企業に対する刑事責任、こういうようなものはもう明らかにすべき時期でありまして、不法行為に対する特別立法、こういうようなものは当然制定すべき時期なんであります。その後どういうような経過になっておるか。はっきりこれをつくるという言明があったあとで、あのハイジャックのほうは先にできておるのでありますが、この公害罪だけはまだどうなっておるのかわかりません。その後の経過をお知らせ願いたいと思う。
  189. 大竹太郎

    ○大竹説明員 御質問でございますが、御承知のように数年前から刑法の全面改正がやられておりまして、公害罪もその過程におきまして、最近御承知のようにこれが非常に問題になっておるということで、法制審議会が取り上げておるわけでございまして、草案には、たしか第二百二十一条の二、第二百二十二条の二というような一応の案がつくられておるようでございます。しかし、これにいたしましても、御承知のように範囲がなかなか広うございまして、一番多いのは大気の汚染、公共水域の汚染でございますが、そのほか騒音でございますとか臭気でございますとか、最近は御承知のように日照権の問題までも公害として取り上げられておるというような状態でございまして、どの程度までこれを法律として取り上げ、しかも処罰をするということにするべきかということは、やはりこれは相当問題になろうかと思うわけでございます。そういうようなことで、もちろん、最近では、刑法全面改正ということになりますとまだ数年かかるようでございますが、それでは間に合わないから、ひとつ刑法の一部改正ということでこれを出そうか、また、いまおっしゃったように、これを一つの単独立法として早急に出そうかというようなことをいろいろ検討しているようでございます。また、御承知のように公害関係の諸法令、たとえば大気汚染防止法でありますとか、工場排水等の規制に関する法律、あるいは工業用水法、騒音規制法、いろいろあるようでございますが、先ほど御質問等にもございましたように、これらの法律もできておりますが、これらはやはり一定の規定を設けて、その規定を破った者を処罰する、取り締まるというようなことになっておりますが、これらの制限とでもいいますか、これもまだ実ははっきりしておらない面もあるようでございます。そういうようなことからいたしまして、この法律を刑法の一部改正にするか、単独法にするか、そしてまたどの範囲をこの中に取り上げるかということが、まず第一に問題になりますと同時に、この公害関係の諸法令の制限その他を整備強化をしていただくということも、あわせて現在考えておるわけでございまして、先ほど、ではいつごろまでにこの法制審議会が結論を出すか、そしてまた、その内容はどういうことかというような御質問のようでございましたが、残念ながら事務局から聞いておりますところでは、まだ詳細な内容については公表できる程度まで固まっていないという報告を受けておるわけでございまして、簡単ではございますが、御答弁を申し上げます。
  190. 島本虎三

    ○島本委員 時間が来てしまって申しわけありませんが、これは念のために、一、二分だけはよろしくお願いしたいと思います。委員の皆さんの、ひとつあたたかい御支援を願います。  これは法務大臣は、もう可及的すみやかにこの問題は単独立法で、刑法全面改正の中へ入れたら結論がおそいから、これは早くつくるのだということを衆議院でも参議院でも言明し、佐藤総理もこれに対してはっきり言っておるわけです。それがまだ手間どっている。こういうようなことでは困るのでありまして、やろうと思えば、ハイジャックの問題なんかすぐできたのですから、もっと立法作業は急ぐべきである、この点は十分大臣に伝えておかなければならないと思うのです。それだから、ほんとうに困るのですけれども、賢明な政務次官ですから、その点はひとつよろしくお願いしておきたい、こういうふうに思います。  次に、最高裁のほうへお伺いしたいと思いますけれども、少なくとも水俣のような発生源が明確なものは、無過失責任として企業責任をとらせることでないと、なかなかこれは証明困難のために裁判が長期化して、故意、過失の因果関係の明確化は困難である、そういうような場合には、やはり水俣の場合なんかはっきりしておりますけれども、発生源は一つしかないのであるから、そういうふうな明確なものは結果を早く国民に公表し、責任と救済の迅速化をはかるべきだ、こういうような考え方からして、裁判所は当然過失の因果関係を立証されないと企業責任が出ない、こういうようなことであるならば、なかなか時間がかかる。したがって、今後は公害病としてはっきり国が認め、それをはっきりとここに立証の責任を企業側に展開させるという方法も考えてしかるべきではないか、こう思うのですが、この点等についてはどういうようにお考えでしょう。
  191. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 現在の法制のもとにおきましては、やはり不法行為というのは故意、過失がございませんと、それによる責任を負わし得ないということに実体法上の規定があるわけでございます。したがいまして、その実体法の規定の改正がございません限り、やはり裁判におきましても因果関係と同時に、その因果関係を起こした側に故意、過失があるということまで認定せざるを得ないわけでございまして、訴訟技術の面からそれを救っていくということはできないわけでございます。しかし、どの程度の故意、過失がありということをもって訴訟法に要求される、実体法に要求される証明ありとするかということは、これは各事件を担当されます具体的な裁判官の心証の問題でございまして、いわゆる自由心証主義というものでございます。したがいまして、公の機関の公害認定のありますような事件につきましては、そういった関係はかなり具体的な事件の問題としてはスムーズに認定し得るのではないかというふうに一応考えておるわけでございます。しかし、最終的な、法律的な問題といたしましては、当初申し上げましたように、やはり実体法規の改正等なくしては、島本委員が御指摘の点を完全にそのとおりに果たすということは困難ではなかろうかと現在考えておるわけでございます。
  192. 島本虎三

    ○島本委員 これはそのまますぐ答えてもらいたいのですけれども、現在の進められている公害裁判、これはあまり長くなって、少なくとも国民には不信の感を持たれているというようなこの状態はどうしてもぬぐい去ることはできないのであります。したがって、いまのようなこういうようなことが、裁判官自体の集まりの中でもそれが言われていることばなんです。それは一体どうかと聞いているわけなんですけれども公害裁判の早期結審、スピードアップ、こういうようなことはやはり必要なことなんです。したがって、この機構、人材、スタッフ、こういうようなものも十分考えてこれに当たらせる必要があるわけです。そういうようなことに対しては、一体どういうような準備とお考えがありますか。ことにこの背景をなす問題としては、公害裁判が時代の要請に応じて迅速果敢な判断を提示していけば、当然公害紛争のいろいろな処理、こういうようなものに対しては中央、地方にかかわらずこれが早く解決するはずだからです。また、その方面にゆだねられる部分が少なくなるからなんです。そういうような点からしてみると、やはり、もっともっと裁判は迅速を考えなければならない問題が多いんじゃないか。なぜ早く結論が出ないか。これはやはりこの中では、機構や人材やスタッフの面ももし影響あるならば、その辺にもメスを入れなければならないんじゃないか。そして科学的な、一つのはっきりしたようなこういうような背景をなすような準備が、いまの場合では無理なんじゃないか。それならば、やっぱりそういうような点についてもはっきりさせなければ、今後の公害裁判に期待を持てない、こういうようなことになるわけです。この点に対してどういうようにお考えになりますか。  それとあわして、まああまり何ですから一回で聞いてしまいます。最近の、一人の命、これに対しては、人命はいかなるものにもかえられない、地球より重いものだ、これはもう当然わかっております。もしこれが可能だとして金銭に還元すると幾らぐらいが、いま常識なのであるか、これもあわしてひとつあなたのほうから——厚生大臣はもうわかったからいいです。
  193. 矢口洪一

    ○矢口最高裁判所長官代理者 お尋ねの第一点の訴訟を急げという御叱正は、まことにごもっともでございまして、ことに公害事件におきましては、いかに早くてもそれは早過ぎることはないと私どもも考えておるわけでございます。現在四大公害事件等と申されておりますが、阿賀野川の事件にいたしましても、富山のイタイイタイ病、また熊本の水俣病、四日市の大気汚染、これらの事件は、すべて現実の問題といたしましては、裁判所の最新鋭の裁判官がこれに当たっておるわけでございまして、ことに阿賀野川、水俣等の水銀中毒事件の進行状況等を見てまいりますと、月に二、三回定期的に口頭弁論を開きまして鋭意これに取り組んでおる。したがいまして、人材、それから設備及びそれに対する精神的な支援等をも含めまして、裁判所といたしましては最優先に取り組んでおるというのが現状でございます。訴訟というものはその性格上なかなかおいそれというふうに進行し得ない面がございますけれども、これらの事件につきましては、私ども専門の者といたしましては、むしろその進行がきわめてスムーズに行なわれておるということについて、陰ながら感謝しておるといったような状況にあるわけでございます。水俣病事件等も世間では相当前から騒がれた問題でございますが、訴訟になりましたのは実は昨年の六月のことでございます。で、それがその因果関係等に関しまする厚生省見解等にささえられておりますので、私、今後の進行もかなりスムーズに運ぶのではないのであろうかというふうに考えておるわけでございます。また、事務当局といたしましては、この裁判に当たっておられる方々が安んじて裁判できますように、その専門知識の補給あるいは裁判を行ないます上につきましてのもろもろの物的設備の支援ということにつきましては、予算上の面等からも最大限の配慮を払っておるわけでございます。  それから後段お尋ねの人の命の金銭に対する換算ということでございますが、これはきわめてむずかしい問題でございまして、いま直ちに幾らが妥当であるなどということは、とうてい申し上げかねる問題でございます。しかし、一般的な例で見てまいりますと、交通事故等におきましては、判決だけで申しますと六千万円程度の判決も出ておるようでございますが、具体的に話し合いのついた事件というようなことでは二千万円から三千万円というのが最も高い側の金額であるようでございます。ただ、これは内容を見てまいりますと、いわゆる得べかりし利益の補償といったような面が含まれておりますので、慰謝料という面だけを取り出してみますと、四、五百万円というのが一般的な平均ではないであろうかということでございます。したがいまして、あわせて全体を生命の額と見るか、どういうふうに見るかということは、これはいわば見る人の心々という面もございますので、私ども平均してどうであるかという最終的な問題といたしましては、いま直ちに幾らぐらいというふうに申し上げかねるということでございますが、御了承いただけますかどうか、そういうことでございます。
  194. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ、これで終わりますけれども、慰謝料であるからそういうふうになるし、人の命としてやったら六千万円ほどにもなる、こういうような味のあることばです。まあ大臣は患者側に立つ、こういうようなことになるならば、そういうような点を十分考えて対処してあったはずなんですけれども、私はこの点はいまの質疑を通じて少し残る残念さであります。私はいままであなたを十分信用していましたが、今後やはりこういうようなことであるならば、私の期待に反することになることを残念に思うのです。ですから、今後こういうことのないように、ひとつ大いに研さん励んでやってもらわないと、とんでもないことに、なると思います。  あわせて、まだ水の問題でだいぶ残りましたけれども、時間が意外に経過してしまいましたから、これで私の質問を終わります。長い間ありがとうございました。
  195. 加藤清二

    加藤委員長 岡本富夫君。
  196. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は限られた時間の中で、まず最近非常にやかましくいわれておりますところのカドミウム問題、それから騒音関係、これについて若干質問をいたします。  私ども公明党では、いま公害の実態調査をやっております。すでに十数カ所を回りましたが、その中で富山県の黒部市におけるところのカドミウム公害に対して、さっそく調査団が参りまして、そしてこの被害調査、意識調査を行ないました、それは三十五名の調査員によりまして、日本鉱業の三日市製錬所所在地の付近約農家百九十七世帯、非農家二百四十五世帯、合わせて四百四十二世帯に対して行なったわけでありますけれども、その中で、八六%が被害を訴えておるわけであります。  そこで、厚生省のほうでこの地域の健康調査、こういうものをおやりになったのかどうか、あるいはまたこの被害調査を行なって今後の対策をどうするのか、この二点についてまず大臣にお聞きいたしたいと思います。
  197. 内田常雄

    ○内田国務大臣 前の御質問者にもお答えを申し上げたところでございますが、カドミウムにつきましては、現実の被害の有無にかかわらず、私どもは有害物質の一つとして考えてまいりまして、両三年前からそれに対応すべき暫定対策でありますとか、ことに注意を要する特別観察地域のようなものを設定をいたしてまいりました。その前提といたしまして、関係各省に対しましても、カドミウムを排出する工場、鉱山等の調査お願いをいたしてまいりましたが、いまごろに至って富山県で日本鉱業のカドミウム汚染の事実が出まして、私どももまことに残念でもあり、かつ申しわけなく存じております。直ちに係官を現地に派遣をいたしまして、私どもから県にも指揮いたしまして、あらためて地域住民の健康調査とそれから環境汚染の実態調査を打ち合わせ、指示をいたしておるわけでございます。  今後これに対する対策といたしましては、そのカドミウムが日本鉱業の三日市製錬所の亜鉛の製錬過程において出たものであることは間違いないと考えられますので、これの排出規制等につきまして、通産省ともども対策を立てしめておるわけであります。  ただ、私が聞いたところによりますと、決して申しわけを言うわけではございませんが、会社側におきましても早くからといいますか、一番初めからではございませんが、途中からカドミウム公害のことに気がつかれてカドミウム回収の措置を講ぜられた。その以前は、鉛の回収措置しか講ぜられなかったが、後にカドミウムの回収措置も講ぜられておるので、したがって、今日のカドミウム汚染はカドミウム回収措置を講ずる以前のカドミウム汚染が今日残存する状況である、こういうようなことを会社は——自身も実は会社に問いただしたのでありますが、説明をされております。しかし、私どもは会社の申し分は申し分といたしまして、通産省及び県ともども現在の排出状況をも調査をいたしまして、これが規制対策通産省にもお願いをいたしておる、こういうのが現状でございます。
  198. 岡本富夫

    ○岡本委員 私どものほうで調査いたしましたら、すでに手がしびれる、腰が痛い、関節が痛む、こういうような被害が出ております。かって同じ富山県の神通川の婦中町において起こりましたこのイタイイタイ病の発見、そしてやっと厚生省の英断によりまして公害病に認定されました。特に悲惨な骨折の方が厚生省に参りまして、当時の厚生大臣にお会いした、こういうような事実もございます。したがいまして私どもは、この黒部において再びそういうような悲惨なことになってはならない、したがって、軽いうちにそうした被害を受けた方を早くなおしてあげなければならぬ、こういう立場から調査をしたわけでございます。厚生省のほうにおいて、骨折してもうどうにもならなくなった、これはなおすわけになかなかいかない、したがって、軽いうちにそうした御病気の方を治療して差し上げるということは非常に適切な手段ではないか、こういうように思われるわけでございますが、厚生大臣、いかがでございましょうか。
  199. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいま御指摘の点でございますが、私どもとしましてはそういうような見地から、現在イタイイタイ病になる以前のカドミウム慢性中毒の段階で患者が把握できれば、これはたとえば公害医療の医療費を持つとかいろいろな方策もできますし、場合によりましては健康被害救済特別措置法の適用もできる、こういうことになるわけでございます。したがって、私どもとしまして何としましてもルールに乗っかった健康調査、被害がございますれば、鑑別診断をぜひやりたいと思っておるわけでございます。ちょうどいま富山の場合におきましては、各種の環境、大気の調査と健康調査をやられておりますが、いずれも厚生省で考えておりますレベルまで至っておりません。したがって、双方厳密な意味で十分あとでデータとして使えるような正確なものをやってもらう。特に健康調査につきましては重点を置きまして、現在七千名余りの人の健康調査をやっているような状況でございますので、ぜひそういう線で努力をいたしたいと思っておるわけでございます。  なお、環境、大気調査につきましても、私どもとしまして全面的に予算措置をいたすことにいたしておりますし、また各種の分析値のチェックにつきましては、クロスチェックは厚生省でやるということにいたしております。なお、鑑別診断を要するケースがありますれば、厚生省で予算的な措置もいたしますし、技術的な応援をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  200. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま聞いておりますと、非常に緩慢のように思われるわけでありますが、それはそれとして、慢性中毒を起こしている症状、これについてはどういうのが慢性中毒を起こしている症状だ、こういうふうに厚生省では認定基準にしておるのか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  201. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 いま御質問のございましたカドミウム慢性中毒をどういうところでつかまえるかということでございますが、この点につきましては、一つは尿の検査をいたしましてたん白が出るかあるいは糖が出るかということを調べております。糖が出ればこれは進行しておるというような意見も中にはあるわけでございますが、そのような尿検査を第一にいたします。それからそのような所見が陽性に出てまいりますと、今度は尿の中にどの程度カドミウムが排出されておるかということを分析するわけでございます。昨年一年間イタイイタイ病とカドミウム慢性中毒の総合医学研究集会をしましたあとで鑑別診断研究班を設けまして、尿の中にどの程度カドミウムが出たらこれはさらに要精密検診として異常があるかないかを確かめるかということにつきまして、多くの専門家が議論をいたしました結果、その委員会の合意といたしまして一リットル当たり三十マイクログラムの割合でカドミウムが排出される場合には、異常のおそれありとして詳細な診断をするというようなことにいたしております。  もう一点は、これは現在私どもの研究費でやっておる成果でございますが、出てまいりましたたん白というものにつきまして、さらに詳細に分析をいたしまして、低分子のたん白がどの程度の割合を占めておるかということにつきましての精細な調査をいたしまして、それがカドミウム中毒を早期に判断をする最もよい尺度であるということにいたしております。  いま申し上げましたもののほか、いろいろアルカリフォスファターゼ等の検査をいたしておりますが、現在の焦点は、尿のたん白と、糖と、カドミウム排せつ量と、たん白の形というところにしぼってカドミウム慢性中毒の早期診断の最終の詰めをいたしておるというところでございます。
  202. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、まだカドミウムによるところの慢性中毒者の認定基準というものがはっきりできないじゃないか、こういうふうに考えられるわけですが、その一点と、それからもう一点は、黒部市におけるところの健康調査をすでにやっておるのかどうか。先ほど公害部長答弁ではどうも富山県全体のことが話があって、もう一つはっきりしてない。その二点について……。
  203. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 まず第一に御質問のございました、このはっきりした鑑別診断がまだ確立しておらないのかという点でございますが、現在労働衛生の分野におきましても、慢性カドミウム中毒につきましての決定的な鑑別診断法というのはございません。そういう点で、私どもはスウェーデンの学者と協力をいたしまして、スウェーデンでこの程度ならば相当な確かさで慢性カドミウム中毒のふるい分けを自分たちはしておるという研究者とともに共同研究を現在いたしておりまして、いまその途上にございます。そういうことで、これは国際的にも医学の先端の問題でございますので、まだ私どもは確証は握っておりませんが、一人ずつの診断という問題と、疫学的な検査の成績あるいはカドミウム汚染の事実、あるいはそれ以前にその地域にどのような病歴あるいは人としての病歴があったかというようなことをすべて総合いたしまして、慢性カドミウム中毒の判断を、できるだけ積極的に予防的な角度から考えていきたいということで対処しておるところでございます。  第二番目の身体状況につきましての調査を開始しておるかということでございますが、これはたしかもう開始したはずでございます。その身体状況調査につきましては、私自身も富山に参りまして、そしてその検査の方式につきまして、暫定対策要領の中に示されてあるその診断のやり方を厳重に守ってもらいたいということを申して、県の部長も積極的にそれに賛意を表していたしておるというところでございます。まだ始まったところでございますが、もうすでに実施はいたしておるということはお答えできるかと存じております。
  204. 岡本富夫

    ○岡本委員 それからもう一つは、当委員会におきまして、私、四十三年にこのカドミウムを排出する工場の総点検を行なって早く発見をしていってもらいたい、そして処置をしてもらいたい、こういうように要求し、その了解を得たわけでありますけれども、この黒部市の日本鉱業のほうの調査はなぜ行なっていなかったのか、これについてひとつお聞かせ願いたいのです。
  205. 城戸謙次

    ○城戸説明員 私ども指摘のように現在あります亜鉛鉱山、亜鉛製錬所あるいはカドミウム電池工場その他につきまして、できるだけ広範囲に県を通しまして、あるいは直接やれるものはやるということでやっておるわけでございます。ただ、この黒部の場合でございますが、この場合私どもが持っておりましたリストに直接載っていなかったので、去年の五月以前の時点ではやらなかったということ。去年の五月七日の時点で、富山県から私どもの照会に対しまして、これから調査を計画してやるんだ、こういう報告がまいっておりましたので、その調査を待っている段階でございました。その調査の結果がまいりましたところが、通常のルールでございますと、一段階段階暫定対策要領によりまして積み上げてまいりまして、問題があればそのつど厚生省に報告し指示を仰ぐ、こういうやり方になっておりますのを、大気汚染調査から健康調査まで全部をいわばラフにやりまして、その上で問題がありそうな段階で持ち出されている、こういうことでございましたので、私どもとしましてもその辺非常に当惑しまして、緊急に各種の調査を一斉にやるということで、現在県のほうを督励しているような段階でございます。
  206. 岡本富夫

    ○岡本委員 あなたのほうのこの亜鉛あるいはカドミウム、こういう製錬工場のリストには載ってなかった、いまそういうような話がありましたが、この全部の工場を通産省のほうに聞いたんではないのですか。
  207. 城戸謙次

    ○城戸説明員 私どもとしましては、カドミウム環境汚染対策ということで、四十三年九月十九日に公文書で通産省のほうにカドミウムを生産する鉱業所、製錬所のリストをお願いしたわけでございます。これにつきまして、四十三年十月十八日付で通産省のほうから回答がございまして、先ほど申し上げました五十五の鉱山、製錬所のリストが届いたわけでございますが、この中には三日市の製錬所は入っていなかったわけでございます。これは、実はこの製錬所が独立の製錬所でございまして、鉱山保安法の適用外であったというような事情もあったろうかと思うわけでございますが、結果的には本年の五月二十一日に通産省の担当官から三日市製錬所を含みます追加リスト五カ所分が届けられた、かような事情になっております。
  208. 岡本富夫

    ○岡本委員 大臣、いまお聞きのとおり、おわかりになっていることと思いますけれども、これはあとで通産大臣にお聞きしたいと思うのですが、通産省にも聞きますけれども通産省のほうに厚生省のほうからカドミウムあるいはそうした重金属を出しておるところの工場のリストを出してもらいたい、それによって点検すると言いましたら、それに対して、一つの例をとるとこの日本鉱業の三日市製錬所がそのリストの中に出てこない、ここに大きな問題があると思うのですよ。厚生省によっていかにやろうとしても、リストから抜けておればこれはわからぬわけでしょう。これは通産省のほうに聞かなければいかぬわけですけれども、そういった穴ぼこと申しますか、要するに現在の鉱山保安法ではそうした取り締まりのできないところがあるわけです。したがって大臣、私はもう一度こうしたこまかいところに配慮をしていただかなければならぬ、これを一つ要求しておきたいと思うのですが、いかがですか。
  209. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私も岡本先生と同じような気持ちを持つものであります。これは通産省が悪いとかなんとかいうことでは私は決してないので、厚生省がみずからそういう重金属のような有害物質については、自分が調査機関を持とうと持つまいと、私どものところも積極的に臨まなければならないことでございますので、ことにまた公害の第一線で対処するところはやはり地方公共団体でございまして、地方公共団体にはおおむね公害防止条例というようなものもございまして、それに基づきまして公共団体が施策もやっていることでもございますので、それらの方面とこの際さらに十分な連絡体制をとりまして、カドミウムはもちろんのこと、それに限らずその他の有害物質につきましても、さらに積極的な姿勢をもって臨みまして、私どもが国民の健康を擁護する役所であるというような立場から悔いなきを期してまいりたいと私自身も思っておりますので、御要望の点は了承いたします。
  210. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、通産省にお聞きしますけれども厚生省のほうからそうしたカドミウム公害を出す工場のリストを出してもらいたいと総点検をするために要求した。そのときに、なぜこの工場は抜けたのか、これをお聞きしたい。
  211. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 いまの点でございますが、四十三年の九月十九日に厚生省公害課長から保安局の鉱山課長あてに実は照会の文書がございました。それで、先生も御承知のように、この製錬所につきましては、鉱山保安法というものが昭和二十四年に制定されまして、そのときからの法の仕組み方といたしまして、付属製錬所というものと独立製錬所とございまして、独立の製錬所は保安法の対象外である、こういう形になっております。しかもまた、うちの鉱山課におきましてはこの保安法の運用というふうな形で設置されておりまして、そこに照会があった関係で、要するに現在保安法で対象にしておる鉱山でカドミウムに関連あるものというものを全部出した。ところが実際には、いまのようなところは保安法の対象でないために、現にこの鉱山課において所管もしておりませんし、また実際実態も承知していないというふうなことから、こういう手違いになったのであろうというふうに考えております。したがいまして、われわれといたしましては、こういった穴を今後どうやって埋めていくかということにつきまして、こういう問題の起こる前からこの製錬所の二重性について検討を進めておりまして、何らかの形においてこれは調整し、あるいは必要があれば法の改正というふうなところまでいかざるを得ないかというふうに考えております。
  212. 岡本富夫

    ○岡本委員 もうちょっとはっきりしないのですが、最後のところが。それで、通産省としては、いままでは鉱山から掘って、そして製錬するところ、それが鉱山保安法の中に入っていた。ところがそうした材料を運んできてただ製錬するというところは、鉱山保安法の中に入っていなかった。これを今度は入れるのか入れないのか、これについてお聞きしたい。
  213. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 その点につきましては、ここばかりではございませんので、まだほかにもございます。したがいまして、法の体系としていずれの形においてこれを規制することが適当であるか、現在の保安法でいくのが適当であるか、あるいは大気汚染法、水質保全法、こういったようなところに組み込んでいくのが適当であるのか。というのは、実態から見まして、かつまたどこまでを保安法でやっていくかということになりますと、独立製錬所ということになりますれば、これはもう鉱山というものと異質の形になってまいります。したがいまして、早急に検討して、いずれかの方法におい措置はしたいというふうに考えております。
  214. 岡本富夫

    ○岡本委員 これはちょっとあとで大臣に念を押したいと思うのです。保留いたしますけれども、そうしたあいまいな態度——鉱山から掘ってそして製錬をしている企業、そういう工場と、それからただ製錬だけをしている工場と、同じようにカドミウムなんかを排出しているわけですが、それがまだどっちにしたらいいのかわからない、どこを押えるかわからないというようなことではこれは相ならない。したがって、どっちにするかということをはっきりしないといけないと思うのです。私もずっと調査に参りまして、工場のほう、企業のほうでおっしゃるのは、私のほうにはそういう規制がないのです、だからやってなかったのです、こういうような答弁をするところがある。こうした隘路と申しますか、通産省におきましても、すでにこのカドミウム公害によってイタイイタイ病あるいは水俣病、こんなものが一ぱいできておるわけですから、もっと適切な処置をしなければならない。これはいまあなたにすぐどうするかということをお聞きするということは非常に酷だと思うのですが、御答弁できますか。
  215. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 先生おっしゃいますように、これは確かに保安法に入れてそして規制をするというふうなことになることが、形の上では私たちも非常にすっきりした形になると思うのでございます。そうしますと、法の改正になってまいります。そうしますと、当然にこの法律上の製錬所というものの性格からいきますれば、たとえていいますと、鉱石をすべて処理しておるということになりますと、通常のたとえば製鉄所、こういったところも鉱石の処理になってまいります。それからまたアルミニウムをやっておるところも、これも対象にせざるを得ないということになってまいりますので、したがって、独立製錬所をどのような法の中に仕組んでいくかというふうなことにおいて研究さしていただきたい。この法律でいくのがいいのか、あるいは大気汚染あるいは水質保全、いずれかの形においてこういう穴のないようにはしていきたいということでございまして、決してこれをあいまいにしようということではございません。
  216. 岡本富夫

    ○岡本委員 法改正をするか、   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕 あるいはまた水質汚濁あるいは大気汚染のいずれかということの態度がまだきまっていないというようなことでは、毎日毎日起こっておるところのこの汚染に対して、また被害を起こしておるそれに対しての適切な処置がなかなかできない、こういうように考えるわけで、これはあとで通産大臣にはっきりした答えをいただきたいと思います。  そこで、厚生大臣にこの間、最近非常に起こるところのこうした公害問題もう各所に起こっております。しかも、厚生省におきましては本年の予算が九億三千八百万円。ほんとうに微々たるものであります。また、しかも専門官は厚生省では三十人。動員ができて十六人。計四十六人。非常にわずかな人数で対処しようとしているわけです。この間も私、尼崎の公害問題で陳情に参りましたら、公明党さんのほうできめてくれ、どっちを先にやったらいいのか、手がありませんのや、次から次と陳情があって手がないんだ、こういうようなお手上げのお話を承りました。ところが、厚生大臣は今度は公害問題に対しては非常に意欲を燃やされて、公害対策本部を厚生省につくるというような御発表をされたのではないでしょうけれども、新聞には出ておった。厚生大臣としては非常に思い切った対策をなさるんだ、こういうふうに私、思っておったわけでありますが、いまのままではうしろから追っかけていくような状態であって、厚生省姿勢というものは大臣が先ほど答弁なさっておりますけれども、非常にお粗末だ、こういうことに感ずるわけでありますが、そこで大臣としては、今後どういうふうにこれに対処していくか、この基本になるお答えをひとついただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  217. 内田常雄

    ○内田国務大臣 公害問題は一九七〇年代の最も大きい国民的課題あるいは政治的課題になっておりますことを、私は先生とともに認識をするものでございます。それにいたしますと、厚生省のいまのスタッフというものは、これはもう一人一人はみな能力のある人々ではございますけれども、とうてい日本列島の公害課題をカバーするのには、はなはだ不十分であるということを私は感ぜざるを得ません。しかし、いまここで直ちに人間をふやすとか、あるいは公害局なり公害庁なりというようなものをつくろうというようなことを申してみましても、これはもう来年の予算なりあるいは次の国会における設置法の改正を待たなければ間に合わないわけでございますので、そこで私といたしましては、いまのこういう状況のもとにおいては責任を人に転じたり、またみずからの部局の貧弱であることを嘆くよりも、厚生省というものがあるのだから、厚生省全体がその公害と取っ組むような、そういう機動的な仕組みをとにかくつくれということで、いまの公害部は公害部といたしまして、これは実はもう岡本さん御承知のように部長がおられます。ここにも来ております。それから公害課長という技術者の課長と、それから庶務課長と、課長は二つだけでございます。もう一人、清掃関係のほうの課長さんがおるわけでありますが、これは清掃の問題にいたしましても産業廃棄物の処理ということと取り組みますので、いまのカドミウム、水銀というようなものに対処できない状態でございます。そこで、厚生省には事務次官もおればあるいは官房長もおる、あるいはまた医務局長もおれば、その傘下に技術者の課長もおれば、薬務局長もおるわけでありますから、公害部の機能を補強するために、私がたとえば公害対策本部というものを厚生省の中につくって、そしてその中心事務局というものは公害部でやってもらうが、本部長は事務次官をもって当てる、他の関係の局長あるいは審議官等をみな本部づきにして、そしてここ当面は厚生省全部でこれにかかろうということで、ああいうことを私が構想いたしました結果がごく最近実りまして、公害対策本部ということではなしに、公害連絡協議会ということで、協議会の議長には事務次官が当たりまして、そしてその連絡会議のほうに関係局のスタッフを入れまして、それが公害部と一緒に厚生省全体として動こう、こういう形をようやくつくりました。これで当面は動かしまして、来年度の予算あるいは次の通常国会における設置法の改正等につきましても皆さまの御指導、御協力を得まして、ぜひ私は厚生大臣としてあるいは厚生省として信頼が置かれるような強力な仕組みを新しくつくる、そのために必要があれば他の部局を削るなり何なりというようなこともやむを得ないというようなつもりでかからなければなるまい、こういうことであります。繰り返しますが、それを待たずして、いまのままでも場合によっては私が公害部長のつもりでやっていきたいということでハッパをかけておる、こういう状況でございます。
  218. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、厚生大臣のその姿勢は非常によくわかるのですけれども、実は私どものほうの公明党でも公害対策本部をつくりました。社会党さんもつくったそうであります。そしてやはり一つのスケジュールを組んで動かさぬことにはなかなか公害の点検も実態調査もできなかったわけですが、そういう私どものほうの経験もございますけれども、ひとつ大臣、ここでもう一歩進められて、そんな連絡協議会なんというようなものではちょっと私、たくさんな各所で起こっているところの公害問題に対処するわけにいかない、こういうふうに思うのですが、いまの決意を伺いましたけれども、もう一歩進んで、じゃ公害対策本部をつくるのだ、厚生大臣がみずから本部長になって指揮をとってやらしていくのだ、こういう姿勢にはどうでございましょうか。
  219. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私のことばが足りなかったわけでありますが、公害連絡協議会というのは、ことばは連絡協議会ということにいたしましたが、その実態は厚生省全体が公害対策本部になって、今日の公害部というものを補強していく、こういうことでございます。名前を対策本部といたしませんでしたのは、それは岡本さんの政党でも、あるいは社会党さんその他のほうでも、同じような名前をおとりになったので、役所のほうは敬意を表するといいますか、連絡協議会ということで機能を全部生かしていく、こういうことにいたしました。しかし、これはつなぎでございますので、将来に処しましては、他の部局を小さくいたしましても公害担当の部局の構成を力強くいたす、こういう私の決心に変わりはございません。
  220. 岡本富夫

    ○岡本委員 将来は公害対策本部にかわるべきものをつくっていく、こういうお考えでございますね。そうとってよろしいですね。——そこで、これであまり時間をとっておりますとあれですが、経済企画庁来ておりますか。——この黒部川の水域指定をされておるのかどうか。いままで神通川にしましてもあるいはまた岩手県の閉伊川にしましても、こうしたカドミウム公害が起こったところはほとんど水域指定はしていない、そういうような状態ですが、現在これは水域指定をしておられるわけですか、どうですか。
  221. 西川喬

    ○西川説明員 お答えいたします。  今回の黒部市の事件につきましては、この排水のほうは黒瀬川という川に出ておりますが、排水量につきましては一万三千トン。カドミウムの排水水質でございますが、これは通産省のほうで現在鉱山を指導いたしております〇・一PPMを下回っております。さらに、この黒瀬川そのものの流量は排水量の約百倍ございます。しかも、黒瀬川におきますこの排水は、すでに海のすぐそばのところに出ておりまして、その排水口から上には利水地点はございません。農業用水の取水地点は黒瀬川の工場の排水口よりもずっと上のほうでございます。そのような状況から見ましても、先般きまりましたいわゆるカドミウムに関します環境基準につきましても全然問題はないというようなことで、いま私どものほうといたしましては、この黒瀬川を国の指定水域にするというふうな予定はございません。調査もいたしてございません。全国的な観点から見まして、県条例のほうにゆだねておいて十分ではないだろうか、水質に関しましてはそのように考えております。
  222. 岡本富夫

    ○岡本委員 水質保全法の責任は経済企画庁にあるのですが、いつもこうしてあなたのほうで水質指定をし、基準もきめて守らしていく、こういう姿がないところからこういうものが起こっているわけです。ですから、あらゆる川に基準をきめて、もう一歩進んで早く発見もし、被害者もなくしていくという立場から、また企業の排水を、工排法によるといっておりますけれども、早くそれをつかまえるためにも、もう少し前向きに検討してやらなければならぬ。私はきょうは、長官が来ておったら、徹底的にこの問題で食いつくつもりでおったのです。食いつくというとおかしいけれども、要求しようと思った。経済企画庁のそうしたほんとうに弱腰といいますか、やる気のない行政を、私はきょうは徹底的に追及しようと思ったのですが、きょうは長官が来ていないからしかたがないけれども、この点ももう排水は出ていないんだからけっこうだ、もういいんだ、こういうような安易な考えではなくして、廃液の中からもうカドミウムは出ていないのだ、こういう一方的な報告ではなくして、経企庁としてもさらにこの黒部川にはメスを入れるべきだ、こういうように私は思うのです。それが一点。  それから、時間があまりありませんから、次に水質試験方法についてIC法を用いたらどうか。BODだけではどうしてもばらつきがある。これはもうすでにこまかいことを言わぬでもわかると思うのですが、IC法、これは山口大学の工学部の中西弘教授が盛んに研究しているわけですが、このIC法を用いるということは非常に意義があるのではないか。なぜならば、IC法というのは、川の自浄作用、すなわち川は三尺流れたらきれいになるのだという話が昔からありますけれども、それはバクテリアが汚物を食べるからきれいになるのであって、このバクテリアが死滅してしまったならば川はきれいにならない。したがって、そうした自浄作用をする細菌の生存を調べるところのIC法を用いることが、これから死の川にしないところの非常に大きな原因になる。同時にそのIC法によって、重金属の物資の流れておるところ、また含まれておることが非常に早くわかる。こういう面を考えますれば、経済企画庁のほうでそういうIC法を用いる考えはないか、これをひとつお聞きしたいのですが、いかがですか。
  223. 西川喬

    ○西川説明員 まず第一点の話でございますが、微量重金属の排出によりまして被害を生ずるおそれのあるところ、これにつきましては、私どものほうも今回、観察地域になっております迫川、神通川あるいは奥岳川等五水域あるいはさらに宮古湾の閉伊川につきましても調査を今年度いたすことにいたしております。ただ、先生のおっしゃいますように、全国すべてのあれを水質保全法でやり得るかどうかという問題がございます。そのために国が基準を設定する水域と、また県のほうに、条例にゆだねてあるところとあるわけでございます。先ほど申し上げましたように、ただいまのところ黒瀬川につきましては、状況から判断いたしまして条例にゆだねておいていいのではないだろうか、このように感じているわけでございまして、全部、常にあとあとを追っかけているのだというようなことはございません。実は、前にきまっておりました調査指定水域にしております調査計画はことしで切れまして、新たに策定することになっております。そのときにまた県のほうの地元の意向も十分くみまして、これは大体国としてやる予定にしておく、ここの水域は県条例にゆだねておいていいのではないだろうかと、このように水域を仕分けする予定にいたしております。そのような観点で、またあらためて全国の水域を見直したい。  また、微量重金属の問題に関しましては、環境基準もきまりましたことから、あるいはこれを出すおそれのある工場全部にやるかということも現在検討事項に残っております。御承知のようにメチル水銀、エチル水銀——アルキル水銀でございますが、これについては、出すおそれのある工場は全部かけたわけでございます。そのような形で微量重金属関係のものに全部やるかどうか、このような問題も、おそれのあるなしにかかわらず必ずかけてしまうというようなことも一つ検討課題になっております。その辺の検討を通じまして、先生のおっしゃいますように、前向きに、先行的に、被害を絶対起こさないような形の方向へ持っていきたい、このように考えております。  それから、第二点のICの問題でございますが、これはいま大阪の衛研等におきましていろいろ研究しているようでございます。私たちもちょっと専門外なもので、内容的には非常にむずかしくて、まだよく理解し得ないのでございますけれども、まだそういう研究段階のような問題でございまして、これは全般的な毒性の強度の判定のための指標というふうに理解しているわけでございますが、これを一般的な汚濁の指標として全般に採用し得るかどうか、そのような問題につきましては、専門の先生方の御意見ももう少し聞き入れまして検討させていただきたい、このように考えております。
  224. 岡本富夫

    ○岡本委員 次に、食糧庁来ておりますね。——富山県の黒部市のカドミウム汚染米はどれくらいの数量があったのか、また配給済みのものはどのくらいあるのか、あとどれだけ残っておるのか、あとその処置はどうするのか、この三点について……。
  225. 中村健次郎

    ○中村説明員 富山県の黒部地区におきますカドミウムの汚染地区というふうに県で推定されておりますのは、五つの部落でございますが、その五つの部落で生産されまして政府が買い入れました四十四年産米は千三百六十トンでございます。そのうち県内では八トン売却をいたしておりまして、大阪へ五百十六トン、愛知へ百九十九トン、奈良へ五十九トン、京都へ七十三トン、合計八百四十七トンを消費地へ運送をいたしております。奈良と京都の分につきましてはすでに売却済みでございまして、在庫はございません。愛知の百九十九トンにつきましては、二十三トンが売却がされておりまして、あと百七十六トンが在庫いたしております。大阪の分につきましては、昨年の九月から本年の五月まで月々少しずつ送っておりますので、かなり消費されておると思いますけれども、ほかの地域のもとの一緒に積み込まれておりますので、目下その在庫しておる数量の調査をいたしております。  今後の措置でございますが、一応こういう問題が起きまして県からの御要請もございましたし、食糧庁といたしましては、さしあたり富山県のこの地区から出ました米につきましては、消費地においても売却をしないようにという指示をいたしておりますし、富山県に残っておるものにつきましても、出庫を停止いたしております。今後、厚生省のほうでいろいろ精密な調査をしていただいておりますので、それらの結果を待ちまして、厚生省と協議をいたしました上で善処をいたしたい、このように考えております。
  226. 岡本富夫

    ○岡本委員 この問題も、いまの答弁のように大阪では何ぼ残っているかわからない。一つ一つ追及していくと、処置がいいかげんだと思うのです。きょうは食糧庁長官が来ていると、この問題をきちっとぼくは詰めようと思ったのですけれども、きょうちょっとお休みだそうですから、はっきりあとどうするのだということを資料要求しておきます。  それから、時間がありませんから、長良川の関市におけるところの廃液によってウ飼いが中止されている、アユが三十万匹も浮上している、こういうニュースが出ておりますけれども、これに対する対処はどうされましたでしょうか。
  227. 西川喬

    ○西川説明員 長良川につきましては、四十一年度指定調査、昨年度基準設定調査を行なっております。それによりまして早急に水質審議会に部会を設置いたしまして、水質基準の設定、規制に入りたい、このように考えております。
  228. 岡本富夫

    ○岡本委員 この問題は、どこだったか愛知県でアユが相当流れて十万尾も死んだという話があったでしょう。(西川説明員「木曽川です」と呼ぶ)木曽川だったか、こういうように同じことが次から次へと起こっている。これはやはり経企庁の非常に怠慢な姿である。先ほど私が言いましたように、あとからあとから追っかけているという一つの姿ではないかと思うのです。ですから、ただ審議会で簡単に、いま審議しております、そんなことでは私はきょうは、よくわかりましたというわけにいかない。この点ももう一度、あと処置をどうするのか、あるいはどうやって今後これをとめるのか、これもひとつはっきりした答えをいただきたいと思うのです。
  229. 西川喬

    ○西川説明員 やはり指定水域にいたしまして基準設定をいたしますためには相当な調査をしなければ——現在どのような汚濁ロードがあるか、それでそれをどの程度カットすれば目標水質がどのくらいまで保てるか、あるいは利用形態に対して目標水質を設定するなど、いろいろな問題がございます。そのためにこの調査はやはり相当綿密な調査をいたさなければなりません。ただいま申し上げましたように、長良川につきましては、四十四年度、昨年度基準設定調査をやったところでございますので、その結果を解析いたしまして早急に基準を設定いたしたい、このように考えているわけでございます。もちろん、その前に事件が起きた、なぜ事前にやっておかなかったかと仰せられますとまことにそのとおりでございまして、手が回りかねたということなんでございますけれども、魚が死にますのはいろいろ原因がございますけれども、大量死の相当大部分の原因は毒物、有毒な物質、これがほとんどシアンでございます。シアンを不当に流す、これは毒劇法のほうによりまして二PPMという制限があるわけでございます。これは指定水域になる前からもそういうようなのがあるわけでございますけれども、これが往々にして守られていないというようなことで、大量斃死の原因がこのシアンによることが相当多うございます。そうなりますと、全部の水域が——そういう危険性と申しますのは、シアンを使いますメッキの工場というのは非常に数が多うございまして、ほとんどどこの水域にも張りついております。そうなりますと、全部の水域にそういう問題があるというようなことになりまして、現実に起きました現象から見ますと、あとあとを追っかけるというようなことになろうかと思いますけれども、その辺のところにも原因がある。私たちといたしましては、汚濁のはなはだしいところからどんどん片づけていきたいといま非常に努力しているような段階でございますので、今後ともますます努力して、できるだけ早い機会に基準設定をしてまいりたい、このように考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  230. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま公明党のほうで公害調査団の方が帰ってきたところなんです。だから、時間があまりありませんから、それはあとでもう一度詳しく御説明を別の部屋でいただきます。  そこで、運輸省来ておりますね。——先般私ども大阪伊丹空港の騒音の対策のために調査をしてまいりましたが、ここでわかりましたことは、官民合同委員会が大阪伊丹空港にもあるらしい。ところがほんとうに名前だけであって、だれが主宰になってやっておるのか、あるいはまた発足がいつであって何回行なわれたのか、こういうことを調査いたしますと、非常にお粗末である、こういう事実がわかりました。だからこれはあと答弁をもらいます。  次に、大阪国際空港にも国際空港の周辺の整備法を適用をしなければならない時代が来たのではないか。なぜかならば、このたび本年は二億九千万の移転補償費がついておりますけれども、たとえば移転補償をさせましても、そのあとでまたほかの人が入っては何にもならない、それでまたその移転補償をしなければならぬ、こういうようなことになりますから、この周辺整備法を適用して土地利用計画をきちんとしなければこの問題は解決しないのじゃないか、こういうことがわかったのであります。  さらにもう一つは、大阪国際空港の移転補償、その範囲でありますけれども、滑走路から横に三百十五メートル、縦の長さが滑走路の端から千三百メートル、こういうようにきまっておるらしいのですけれども成田空港では横が六百メートル、縦は二キロ、こういうようになっておる。なぜこういうように差があるのか、やはり内陸の空港として同じような状態でありますから、ここまで、成田と同じように広げなければならぬ時代が来ているのじゃないか、こういうように思うわけであります。この三点についてひとつ答弁をしてください。
  231. 手塚良成

    ○手塚説明員 第一問は、大阪国際空港の騒音対策委員会の御質問でございます。官民合同によります騒音対策委員会というのを、羽田並びに伊丹両方にそれぞれ別個につくっておりますことは先生の御承知のとおりでございますが、この構成員といたしまして、大阪の場合におきましては三十五名からの付近関係市長あるいは市会議長、それから関係航空会社、それに私どもの空港関係者、こういった者をメンバーにしまして、三十五名という者がこの委員になっております。この委員会は四十年につくったわけでございますが、この騒音の問題につきまして、やはり官で一方的にいろいろな対策をやるということでは必ずしも十分ではない。地元の皆さん方と十分によく実情を把握し、分析をし、話し合いをした上で実情に合った対策をとっていきたい、こういうような意味合いで、空港長の主導によりまして、関係の皆さん方とのお話し合いの結果つくった委員会でございます。活動状況が非常に不活発という御指摘でございますが、大阪国際空港におきましては四十年の十二月九日にこれが発足いたしまして、自来四回開いております。  これを開きましてやりました内容は、当時一番熾烈でございました騒音防止法というものの立法措置を促進したい、あるいは今度も実施をいたしましたけれども、騒音の規制をどこの場所で何ホンというようなことを具体的にきめていきたいというようなことにつきまして、以上の回数をもってやりました。それぞれ行ないました成果につきましては御承知のとおりでございますが、今後やはりこういった委員会で具体的な問題を具体的に取り上げて、それを積極的に解決していくということが非常に必要かと思います。そういう意味で、この委員会も大いに活用していくといいますか、私どものほうの空港長だけの発意ではございませんで、地元の皆さん方の御発意を入れましてやっておりますが、私どものほうでそういった主導をとりまして、いろいろ現在問題の多い大阪国際空港の騒音対策に善処いたしたい、かように考えております。  それから次の御質問でございますが、周辺整備法の設定を大阪国際空港においてもすべきではないかという御質問でございます。おそらく新東京国際空港の周辺整備のための特別措置との比較のお話だと思いますが、新東京国際空港でこれをきめましたのは、この新空港の設置に伴いまして、その周辺における道路、上下水道あるいは河川等々の公共施設が十分に整備をされていない。しかも、これらの施設を空港の供用開始に間に合わせてやらなければならぬというような、時間が非常に切迫しておるあるいは空港がもしこの地方に設置をされなければやる必要がなかったもの、あるいはその拡張整備というものが漸を追って適時やればよかったというようなもの等々が重なっておりまして、これらを実施するについて地元の負担が格段に、一時的に集中をして多くなる、こういった面について、地元の財政的負担の軽減をはかる、かような意味で今回緊急に御設定を願ったわけでございます。  大阪国際空港の周辺につきまして、いま先生からは移転補償に伴って、やはりそういった一部の対策が必要ではないかという御趣旨の御質問であったわけです。もちろん私どものほうも、空港の騒音対策としまして、いわゆるゾーニングといいまして、この周辺の土地利用計画というものを十分に勘案をすることが非常に重要なことであるというふうに考えておるわけでございます。新しいところに新しい空港をつくります場合には、当然全般にわたってそういうことを検討していく。今後は特にそういうことが必要であろうと考えております。  ただ、大阪空港につきましてのいまの移転の補償の問題につきましては、今回初めて予算上も二億九千万、約三億前後の予算がついたわけで、これからその実施につきまして、地元とは十分御協力をした上で実施していこうと考えておるわけであります。今後それの進捗度合いを勘案いたしまして、このあと地利用その他についてのゾーニングの問題等が大きなウエートを持った問題として出てくる場合には、これに対する対策というようなことを考える必要はあろうかと思いますが、当面直ちに新空港で言うような趣旨のものは、その必要はなかろうかというふうに考える次第でございます。  それからさらに、最後の移転補償の範囲につきまして、現行三百十五の千三百という範囲が、いわゆる移転補償ということで、買い取り請求の御希望の方に対する地域、範囲にきめられておるわけです。大阪につきましては、先般来訴訟等も起こされまして、非常にこの問題が熾烈な問題になっておるということは私どももかねがね考えておるところでございますので、予算面におきましても、この移転補償費二億九千二百万円なるものが四十五年度初めて認められて、実施に移すことになったわけでございます。ただ、この範囲の千三百という長さでは必ずしも十分ではない。現地の実情にもそぐわない。かようなことで、私どもも実はその点いろいろ検討をいたしまして、千六百にとりあえず拡張をしたい。そういうことで実は告示もこの十日付をもちまして、その線で改正をして出すということにいたしております。  先生の御質問成田との差があるではないかという点は、確かにそういう差がございます。成田におきましては、その長さが幅六百で二キロということになっております。ただ、成田につきましては、実はああいった国際空港を早急に供用開始に持っていくということで、いろいろ地元対策関係がございました。またここで受け入れの飛行機の機種にいたしましても、いわゆるSSTという相当に騒音の問題になろうかと思う飛行機を飛ばすということを、また一つの大きな目的にしてつくろうとしつつあるわけでございます。そういうような成田におきます特別な事態をこの際勘案をいたしまして、一応この二キロという範囲を範囲としてきめたわけでございますが、ただ、これの実施にあたりましては、やはり予算上の範囲でもって逐次これを実行していくというふうなことで実施に移そうと考えておるわけです。したがいまして、伊丹の場合におきましても、とりあえず千六百ということで、従来より拡張した線を考えましたが、この範囲全体がかりに移転補償を希望いたします場合にも、先ほど申し上げたような予算額ではとうてい間に合わない。これは逐次やはり予算の内容とともに実行に移していく、こういうふうに思っております。したがいまして、この範囲のきめ方自体につきましても、当初からきめるかあるいは逐次そういった実情に合わしてきめていくかということでございまして、決してこれは今回きめるということで固定するものではございません。実情に合わせて、飛行機の運航回数あるいは飛ぶ機種等も変わってまいりますので、それらに合わせた方向で改変をしていかなければならない、かように考えておりますので、そういった方向で移転補償も今後さらに研究を重ねて実情に合うようにしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  232. 岡本富夫

    ○岡本委員 今後実情に合わして逐次広げていくという答弁を了として、時間がありませんから、次に厚生大臣に……。  実はこれは一昨年当委員会で私が総理に対して、大阪空港周辺の騒音の人体に及ぼす影響、これをたくさんの方が訴えておるということで、騒音影響調査研究会、これが発足されたわけでありますけれども、非常に予算が少ない。四十四年には百万円を出していらっしゃる。しかも不足であるということで、兵庫県とそれから大阪府から五十万円ずつ、召し上げたと言ったら悪いのですが、出さしておる。ことしは幾ら予算が出るのか、これをまだきめてない。したがって、大阪府やまたは兵庫県のほうでも、何ぼつけたらいいかわからない、こういうようなわけでありますが、阪大の梶原先生あるいは神戸大学の喜田村教授、こういう人たちによってできた研究会が、やはり予算が少ないために十分な活動ができない。現地の姿をごらんになればよくわかりますように、航空機の騒音によって人体被害が出ているわけですけれども、その実態調査ができておらない。これは佐藤総理は、早急にやらなければならぬというように答弁をいただいたわけでありますが、四十五年度の予算は何ぼか、またそれに対して今後どれくらいの日程、スケジュールで、どれくらいの予算でいつごろ完成するのか、これをひとつ最後に詰めておきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  233. 内田常雄

    ○内田国務大臣 昨年の予算は、お話がございましたように、国が百万円と両府県から五十万円ずつ持ち合いまして二百万円ということでやったわけでございますが、   〔島本委員長代理退席、委員長着席〕 四十五年度は必ずしも多いとは申せないわけですが、国が二百万円、それに両府県からやはりそれぞれ百万円ずつ協力を求めて、合計四百万円でやるということに内定をいたしております。  なお、この調査を完了いたしますためには、学者の方のお話によると、五年くらいかかるかもしれないということを言われる方もありますが、私どもとしては、それじゃあまりに時間がかかり過ぎるので、三年ぐらいでこの健康調査を完了したいということで進みたいと考えております。
  234. 岡本富夫

    ○岡本委員 その節、これは四十四年六月二十五日当委員会におきまして佐藤総理に要求いたしました。それは非常に影響度の多い、要するに騒音によって影響の多い赤ちゃんたちにいろいろの病気が出ている。そのためにどうしても保健所が必要だ、川西に保健所がないということで要求いたしました。そのときに、人体に関する問題は、保健所が当然必要だ、それで厚生省が中心になるべきことであるが、このときは、運輸省との合同審査でしたから、よく運輸省とも相談さして話し合いをさせる、こういう答弁が議事録に出ておるわけですが、この保健所問題についてはいかがでございましょうか。
  235. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は最終的には聞いておりませんが、これまでのところ一応の考え方といたしましては、あの地域には伊丹の保健所が比較的近いところにあるので、伊丹の保健所をでき得る限り充実して、そうして対応策を立てていくというのが当面最も近道ではないかということで進んでおるということも聞いております。しかし、大阪空港の騒音対策というものは、これは一つのモデルにもなる特殊の事例でありますので、先生の御示唆はごもりともとも私は考えますので、伊丹保健所の充実強化ということだけですべてが解決したとしないで、今後も引き続き、保健所の増設等につきましても検討いたしてまいりたいと思います。
  236. 岡本富夫

    ○岡本委員 これはこの前にも私言いましたが、伊丹では非常に遠いのですね、おなかの大きい奥さんたちが、この保健所に行くのが一番たよりですから。さらにいまあなたがお答えになったように前向きに検討する、こういうことを了承しておきます。  時間がありませんから、最後に郵政省。この国際空港の騒音で非常にみな困っておるが、そこで騒音防止電話を無償で取りつけてもらいたい、こういうような要求がたびたび出ておった。電電公社に、どういうようにあなたのほうでは指導しておるか。NHKでもちゃんと協力しておるんですから、どうかひとつその点について、どういう考えか……。
  237. 牧野康夫

    ○牧野説明員 お答え申し上げます。伊丹空港の騒音のために電話が非常に不自由しておるということにつきましては、現地の地元の大阪空港騒音防止協議会の方々から再々にわたってお話を承っております。まず、電話が騒音に強いように、電話の送受話器を技術的にこれを改良しなくちゃなりません。それの開発研究に電電公社はすぐ着手して、これができるようにいたしまして、昨今この新しい送受器ができたわけでございます。これを現地にどういうふうに取りつけるかということにつきましては、やはりこの騒音の原因者負担という原理的な考え方をも考慮に入れつつ、またNHKの、実際飛行機からのいろいろの騒音によって聞きにくいという現象の処理のしかたもあわせ考えて、これを先生の御趣旨に沿って、国の負担と電電公社の負担とを勘案いたしまして、前向きで措置してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  238. 岡本富夫

    ○岡本委員 もうこれで時間が参りましたから、もう一問だけ自治省。やはり大阪空港の問題ですが、非常に騒音で困っておるところの八市、特に宝塚では進入の進入路を提供しております。これが御承知のように昨年で契約期限が切れておる。ところがあとそのまま使っておるわけですが、こうしたところに対して特別の交付金を出してあげて、そして騒音で悩んでおる人たちの市民税を安くしてあげる、こういうようにして、当分の間民生を安定する必要があるのではないか、こういうように考えるんですが、自治省の見解をお聞きしたいと思います。
  239. 佐々木喜久治

    ○佐々木説明員 空港の騒音に伴います対策、これは原因者がその対策、施設を講じ、そしてものによりましてはあるいは一部地方団体の負担が出てくる場合もあるかと思いますが、そういうものにつきましてはそれぞれ適切な財政措置を講じてまいりたい、かように考えております。また、一般的に地方団体におきまして空港の所在によりまして特別な財政需要が生じます場合には、現在特別交付税等でそれぞれの措置をとっておるわけでございますけれども、なおこれらの措置につきまして地方の財政需要の実態等も勘案しながら、そうした財政措置の改善にはつとめてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  240. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ自治省、あそこで基地のほうではちゃんともう今度は調整特別交付税ですか、調整交付税ですか、こういうものが三億円できて、基地関係ではこうした地方交付税ができたわけですから、ひとつその点も、特に今度は、次の機会には考えていただいて、要求をのんであげて、そして同時に付近で困っておる人たちを救ってあげる、ひとつこういう前向きの姿勢でやってもらいたい、これをさらに要求して、終わります。      ————◇—————
  241. 加藤清二

    加藤委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  理事において御協議願いましたとおり、産業公害対策に関する件について、明十日、石油連盟会長出光計助君、日本自動車工業会会長川又克二君、日本鉱業株式会社社長河合堯晴君、医師萩野昇君、水俣病補償処理委員会会長千種達夫君、東京大学助手宇井純君、岡山大学教授小林純君を参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  242. 加藤清二

    加藤委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人出頭の手続等については、委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  243. 加藤清二

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  244. 加藤清二

    加藤委員長 引き続き質疑を行ないます。古川喜一君。
  245. 古川喜一

    古川(喜)委員 私は、富山県婦中町のイタイイタイ病が公害と認定されるまで、現地を歩き、あるいは住民と接し、患者の訴えを聞いていろいろ取り組んできた中で、痛いほど思い知らされたことは、国の政策は常に企業優先であり、したがって、企業の責任というものが非常にあいまいにされておるということであります。そのことが人命軽視となり、住民はいつの場合でも企業の発展の犠牲になってきたのであります。その考え方が一向に改められないから、最近さらに公害の発生が広範囲に続発しているのであります。水俣病の補償の処理、黒部市のカドミウム、東京はじめ大都市の鉛公害、農薬による食品の汚染などが次々と明らかになって、国民に非常に深刻な不安を与えておるのであります。そのいずれもが、政府、自治体の対策が後手に回って、ここでも国民の健康と暮らしがあと回し、産業優先、住民不在の政策を露骨に露呈しているのであります。  私は先ほどから各委員が種々質問されました問題となるべく重複しないように、わが国で五番目のカドミウム汚染要観察地域に指定された富山の黒部市の日本鉱業三日市製錬所の件について、主として住民の声を取り上げて質問をいたしたいと思います。  住民の方の声に、庭木のツツジやツバキは花も咲かず、何度苗木を買って植えてもみんなだめになってしまう。野菜は青い芽が出るが、またたく間に黄色く変色して枯れていく。豆類になると芽も出ない。植物は枯れる。トタン板はぼろぼろである。この問題が表面化してから、農民に対して、カドミウム汚染の地域の水田の田植えが終わりましたが、苗を引き抜け、あるいは汚染されたと見られる牛乳は捨てろ、保有米は食べるなと、きびしい指示が出されておりまして、住民は非常に不安な状態でおるわけであります。長い間この事実を会社や県、市が住民に隠しておった。したがって、住民の人たちは、おれたちを殺すのか、企業殺人である、すみやかに操業を中止せよというふうな声をあげて会社や県、市に迫っておるのであります。  そこで伺いますが、通産省は日鉱三日市製錬所がカドミウムを生産しておるということをいつから知っておったのかということをまず伺います。
  246. 成田寿治

    成田説明員 お答えいたします。  三日市製錬所は昭和二十八年の九月に日本鉱業と日窒鉱業株式会社の共同出資によってつくられて、昭和三十六年二月に同社と敦賀化学工業株式会社が合併して日本製錬株式会社となったのですが、その時点から、すなわち昭和三十六年からカドミウムの生産が開始されております。当省としましては、ほぼその時点でカドミウムの生産を承知しておりますが、当時カドミウム等の重金属によって公害の発生することは全く予想されていなかったということ、また同製錬所が鉱山保安法の適用を受けないいわゆる独立製錬所であったという事情等によりまして、一般の製造業と同じように特に法的規制や調査を行なわないままに推移してきたのでございます。
  247. 古川喜一

    古川(喜)委員 昭和二十八年から製錬所が事業を開始、三十六年に合併して三十六年からカドミウムをつくっておるということを知っておったということでありますが、カドミウムを生産しているということを知っているとするならば、カドミウムが区域にばらまかれているのじゃなかろうかということは当然考えられることだと思うのです。しかし、いま、カドミウムがそれほど人体に影響のある、害を及ぼすものだということは、当時知らなかったということでありますが、昭和三十二年ごろから富山婦中町のイタイイタイ病がカドミウムが原因であるという説も出ておったわけであります。さらに四十三年五月には厚生省公害病と認定をしておるのです。にもかかわらず、通産省はカドミウムを生産しているから区域住民に被害を与えていないだろうかなどということを、全然念頭に置いておらないというのはおかしいんです。そして、それは鉱山保安法の適用外であるからその指示をするのがおくれてきたというふうな答弁でありますけれども、おかしいじゃないですか。それでは、いまここに黒部三日市製錬所の問題が出てから製錬所を一斉点検をする、通産省公害対策としていわゆる鉱山保安法適用外の五つのおもなる工場なんかを一斉点検するといっていますね。とするならば、鉱山保安法適用外の鉱業所であったとしてもやろうと思えばやれるわけです。要はやる気がなかったということなんです。その辺ももっとはっきりしていただきたいと思います。
  248. 成田寿治

    成田説明員 御指摘のとおり、最初はカドミウムの公害問題がそれほど一般的でないということ、それから鉱山保安法の対象外の独立製錬所であったというので、通産本省としては調査その他はしなかったのでありますが、ただカドミウム公害が問題になり始めました昭和四十三年度ころに至りまして、この公害防止のために地方公共団体である富山県で条例による規制が始められたというので、三日市製錬所につきましても富山県条例により規制されておりますので、本省としては、地域の実情に応じた対策を期待するという立場もありまして、鉱業法なり鉱山保安法の直接的な規制をやらなかったのであります。  それから問題が起きましてから、こういうやり方は非常に遺憾であったということはわれわれも十分認識しておりまして、従来いろいろ担当官を派遣し、あるいは地方の通産局を使いましていろいろな調査、恒久対策あるいは緊急対策等の指示もやっておりますが、これは法律に基づく指示なり指導ではなくて、非常に緊急な問題でありますので、いわゆる行政指導によっていろいろな指示をやったのであります。したがって、保安法の適用外について、当初、外であったから怠っておったというのは、非常に事態に対する一般的な認識あるいはわれわれの認識が十分でなかったためということでありまして、今度問題が起きましてからは、法律の対象でないのでありますが、これと同じように非常に強い指示なり指導を行なっているところであります。
  249. 古川喜一

    古川(喜)委員 いまの答弁を聞いておりますと、やろうと思えばやれるのであるし、行政庁としてもやらなければならなかった問題なんでありますが、それをちゃらんぽらんにしておいて全然やっていない。私は大臣にひとつ伺いますが、役所の仕事はいかに適当なことをやっておるものかという一つの例といたしまして、この三日市製錬所が昭和四十一年に工業標準化優良工場として通産大臣の表彰を受けておるわけなんですが、これはどういう基準によって表彰がなされたのか、それをひとつ承りたいと思います。
  250. 久良知章悟

    ○久良知説明員 お答え申し上げます。  工業標準化優良工場の表彰と申しますのは、御承知のようなJISマークの許可工場の中から、特に工業標準化と品質管理にすぐれた工場を表彰する制度であります。運用にあたりましては、従来から公害問題につきまして特に注意を払いまして、公害問題を引き起こしているような工場については表彰の対象としないように配慮してきておったわけでございます。今回問題となりました三日市製錬所は昭和四十一年の表彰でございまして、表彰当時はまだカドミウムが公害源として社会的にも広く認識されていなかった時期でございまして、当該製錬所の公害関係調査につきましては注意はいたしましたけれども、特にカドミウムについての調査をしていなかったわけでございます。最近になりましてこのようにカドミウムの公害禍問題が発生したことでもありますので、今後優良工場の表彰に際しましては、公害問題の有無についてさらに一そう重点的に注意を払っていきたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
  251. 古川喜一

    古川(喜)委員 いまおっしゃいましたように、表彰する場合でも、公害を発生しているような会社は除外をしておるのだと言われる。それなのにこれだけ大問題を起こしつつある会社を表彰しているということは、いかに適当にやられているかということなんです。ほんとうに考えておられるならば表彰されるはずはないですよ。昭和四十三年の五月に厚生省がイタイイタイ病を公害と認定したので、突然認定したわけじゃないのです。その何年か前からイタイイタイ病は公害と、論争を続けてきて、ようやく結論を得たのが四十三年の五月であって、それ以前からイタイイタイ病とカドミウムの関係というものは論議されておったはずなんです。これは本論じゃないのです。私はいかに適当にやる気のないことをやっているかという例を一つあげたわけです。  それから、先ほどから聞いておりますと、あたかも三日市製錬所は鉱山保安法が適用されておらない独立の製錬所であるからというふうに、通産省の全然責任外の会社のようなもののしゃべり方をしておられますが、私はやはり通産省がこういう鉱業やなんかの一番責任を持つ国の機関だと思うわけです。そういう点から思うと、鉱山保安法が適用されてないから何にもできないんだという印象で逃げようとしておられる。それらも私は責任回避のあらわれである、このように考えておるわけであります。  そこで、先ほども申し上げましたように、区域住民は企業殺人である、したがって安全が確認されるまで操業を即時中止すべきであるという訴えを続けておるわけであります。私も当然だと思うのです。また地元の新聞紙でも私は話をしましたが、大体黒部地区のカドミウム公害というのはおかしいじゃないか、あれは公害じゃないんだ、三日市製錬所がカドミウムをばらまいておるので、三日市製錬所の害毒であると新聞に書くべきだ、黒部の公害なんて書くから、企業があたかも公害で、直接自分のところの責任がないようなことを考えているけれども、あれは三日市製錬所の害毒である、三日市製錬所の引き起こしておる企業殺人である、このように断定してもいいと思うのです。そうするならば、当然操業を中止してくれという住民の声を取り上げるべきだと思うのです。あなた方はどう考えられるか、この問題に対して。住民が非常に経済的、肉体的、精神的な苦しみを受けておる。あるいは患者も、相当疑わしい患者が出てきている。さらには黒部の市内の食堂には、当店ではカドミウム汚染米は一切使っておりませんというのを食堂に張らなければ食べてくれなくなっているのです。こういう重大な問題を引き起こしておりながら、法的に何ら規制されることはないんだからといってのうのうと企業を続けている。しかも住民に対しては、会社は現在ただいまでは厚生省の基準を下回っているからだいじょうぶなんですと言っておるけれども、長年住民をだましてきた会社がそんなことを言ったって信用するはずはないですよ。だから企業を一時とめて厚生省なり通産省なり皆さん方の立ち会いのもとに科学的な検査を行なって、これでだいじょうぶなんだというときにおいて再開をする、これが当然だと思うが、あなた方はどう考えられるか、それを承りたいと思う。
  252. 成田寿治

    成田説明員 操業停止の問題でございますが、五月の二十一日、富山県知事から日本鉱業株式会社に対しまして、公害防止施設を強化して早急に公害防止設備を完成するようにすること、また完成に至るまでは操短を配慮すること、という強い勧告が知事から出されておりまして、この勧告につきまして会社としては、五月の二十八日付をもって公害防止施設の補強を早急に実施し、当面四〇%の操短を実施する、操業の工場は、県の公害施設の完成検査を待って行なうという旨の回答を県に出して、それを実施しておるのであります。それで当省としましても五月二十九日付をもって、いろいろ緊急対策あるいは恒久対策を指示して、七月末までにはその実施をさせることにしております。それからまた現在名古屋の通産局で、通常の操業条件下における公害発生の可能性を調査中でありまして、その結果が六月の二十日ごろまでにまとまる予定であります。  それから御承知のように、この工場の蒸留あるいは精留の工程というのは、一度操業をとめますと復旧に非常に長期間を要するという特殊な精製工程でもありますので、われわれは当分の間六割程度の操業、四割の操短を続けることはやむを得ないというふうに考えておるのであります。しかし、通産局で調査の結果、万が一問題があります場合は、直ちに必要な操業停止を含む防止対策指導する所存でございます。
  253. 古川喜一

    古川(喜)委員 断わっておきますが、私は富山県魚津、黒部市の隣であります。でありますから、いまほどの県が操短を申し入れた、あるいは製錬所が四割操短を実施しつつあるということは十分知っております。私の申し上げたのは、操短のことを言っているんじゃないんです。住民はすでに会社や県、市を信頼しておらないということなんです。信頼しておらない人たちが、いまはだいじょうぶなんだと言ったって、どうして、はあそうですがと言えるのですか。であるから、操業を一時中止して、だいじょうぶでありますという科学的調査をすみやかにやって、住民を安心させてから操業を再開すべきでないか、そのことに対してあなた方はどう考えておるかということを言っておるわけであります。それを現在ただいまでは六割ぐらいの操業でやむを得ないと思う。万が一まだカドミウムが排出されておったならば——万が一ということは、現在はだいじょうぶなんですという確信なくして、六割操業でやむを得ないというふうに言っておられるんだと思うのです。まことに不見識だと思うのです。住民は命を脅かされておるんですよ。その点、あなた方はいかにも緩慢に考えておられる、そのことについて非常に不満を私は感ずるわけです。だから操業中止ということに対して、われわれのあるいは住民の言っていることがむちゃであるというのか、当然であると考えられるのか、答弁していただきたい。  それからいま炉を一度とめると、操業を開始するまでには長い月日がかかるということを言われましたが、操業が大切なのか住民の命が大切なのか、そこにも問題があるわけなんですよ。それと一歩譲って、その操業中止という場合でも、炉に保安電力を送っておけば中の製品が固まらないという話も聞くわけですが、私は技術屋でありませんからわかりません。ここに工業技術院から技術屋の方が来ておられると思うが、そのことについても保安電力を通しておけばだいじょうぶなのかどうかということをひとつ明らかにしてもらいたいと思う。
  254. 成田寿治

    成田説明員 最初のほうの御指摘の操業が大事なのか、人命が大事なのかというお話、これは当然人命が最優先で考えるべき問題だと思っております。ただわれわれは諸般の情勢から見ましても、いまのところ地元の不安もよくわかるのでありますが、四割操短で問題ないという考え方に立って、当分四割操短でやむを得ないという考え方をとっております。ただ、六月の二十日ごろまでにまとまる予定の通産局の調査の結果、万一それでも非常に危険であるという事態があるなら、即刻操業停止を含む対策をとるということでありまして、決して人命をおろそかにして、企業が大事であるという考えに立っているのではないということを申し上げたいと思います。  それから操業停止した場合に、保安電力だけ通しておけばその後の稼働が問題ないのじゃないかというお話でありますが、われわれのほうの調査によったところを申し上げますと、三日市製錬所は、大まかにいいまして焼結と蒸留と精留と調合・合金と四つの工程からできております。このうち操業停止した場合に、操業再開に特に問題を起こすのは、蒸留工程と精留工程の二つといわれております。蒸留工程につきましては、これはコークス炉でありますので、保安電力だけ通しましても、鉱物等が、媒体がないと電気炉が動かないのでありまして、その冷却の結果、当然炉が大きな損傷を受けることになります。そしてかわりの燃料を使うということも考えられるのでありますが、排突がないとか、この具体的な炉の構造上の特色からしまして、技術的に困難であるという結論も出ております。それから停止した場合に、炉体の復旧に一カ月程度はかかると考えられております。  それからまた精留の過程につきましても、精留等の冷却による炉の損傷を防止する必要がありますので、これも代替燃料としてプロパンガスによる保温ということも一応考えられるのでありますが、これは短期的には若干の経験もあるようでありますが、長期的には保温の経験がないために、技術的には非常に困難であるということであります。そして、一たんこれが使用不能となった場合には、主たる復旧資材が特殊れんがでありますので、この入手期間も相当長期間かかるという実情にありまして、復旧に要する期間は相当長期になるというわれわれの検討の結果であります。  ただ、これは先ほど申し上げましたように、停止して復旧に長時間かかるから、だから操業停止ができないという意味ではございませんので、われわれはほんとうに人命に重大な影響があるならば当然停止する必要があると思いますが、いまのところ富山県知事等の勧告に従って、企業側が考えましたこの四割操短によってやることもやむを得ない。そうしてもしもその間に重大な調査結果がわかりました場合は、また抜本的な対策もとらざるを得ないという考え方をとっております。
  255. 古川喜一

    古川(喜)委員 るる述べられておりますけれども、要は、一度とめると復旧に長くかかるから、なるべく続けさせたいという考え方があらわれているわけです。そして申しわけ的には、ないと考えるとか、万一あるならばとかということばで、いかにも住民のことを考えておるように述べておられるけれども、一切企業本位にものを考えておられる。私は通産省のほうから行政指導で、むしろ住民を安心させるためにも一時操業を停止したらどうだということを、きょうの質問の中から答えていただきたいと考えていろいろ述べているわけでありますけれども、全然そういう意思はない。過去においても、公害は疑わしきを罰せよということをよくいわれているのです。疑わしいものからどんどん処置していかなければ、だいじょうぶであろうと考えていたことが人体に影響を及ぼすほどにあらわれてくれば、公害はもう末期症状なんです、徐々におかされておるわけですから。交通事故のように、突如被害があらわれるわけじゃないのですから。それを、ないと考えるとか、あるいは六割操業でだいじょうぶだと思うというのは、科学的な根拠があって言っておられるのですか、そのデータがあったら述べていただきたいと思うのです。
  256. 成田寿治

    成田説明員 四割操短でやむを得ないという科学的根拠があるのかというお話ですが、いままでのいろんな県なりあるいはその他の調査によりましても、米の含有点につきましてはかなり高い値が出て、問題でありますが、その他については、水、空気その他についても基準値以下であるという調査が出ております。そして、土壌の汚染が米の原因になったと思いますが、この原因についてはいろいろ調査を要する点がありますけれども、これはカドミウムをとる三十六年以前に亜鉛の製錬をやっておった場合に、その鉱滓に含まれておるカドミウムが、三十八年ですか、大洪水があって、その結果流れて土壌に入って、それが稲等に影響したのではないかという解釈がなされて、現在の操業そのものからもたらされたのではないという解釈をとられておりますので、われわれは現在の操業に伴ういろんな調査結果を見ましても、操業を停止するというほどの危険は全然ないのじゃないかという考えに立っておるのであります。
  257. 古川喜一

    古川(喜)委員 厚生大臣。厚生大臣としては先ほどから私が論争していることに対してどう考えられるか。
  258. 内田常雄

    ○内田国務大臣 公害対策は、人の健康を守る目的と、生活環境を保全する目的がございまして、私どもはその二つの目的の中でも、人の健康を保護することを最重要目標といたしております。でございますので、この件につきましても、さような見地に立ちまして、新しい排出を規制することを通産省に私どもは要望をいたしておりますが、事は鉱山あるいは工場の問題でありますので、私どものほうからいまここで何割操短がよろしいとか、全面停止を行なうべしとかいうことは、通産省が関与しない面におきましてはともかく、もう通産大臣も御承知でございますので、これはひとつ通産大臣のほうからお聞きをいただきたいと思います。
  259. 古川喜一

    古川(喜)委員 成田審議官答弁では、過去におけるいろいろの状態からカドミウムが土壌に含まれていたのじゃないか、であるから、いまは厚生省の基準を下回っているというふうに考えておられるようでありますけれども、そうじゃないのです。現在ただいまでも、やはり生産工程から出てくるばい煙その他によって庭木が枯れたり、あるいは立ち木が枯れたり、苗が育たなかったりしているわけなんです。それは根っこからやられるのではなく、木の枝そのものが道路を通る風によって枯れている、こういう面から見ても、現在もばい煙の中に、あるいは亜硫酸ガス、あるいはカドミウムが含まれていると住民は不安がっているわけであります。  それと土壌の検査の発表を見ておいでになると思いますが、上層部一センチから十五センチまで、十五センチから三十センチまでというような、それから三十センチから四十五センチという深さによる土壌の検査から見ましても、上層部にカドミウムが多いということなんです。多いということは年々カドミウムが蓄積されておるということなんです。なぜならば、土壌ですから毎年たんぼを耕しておるわけです。耕していても上のほうに常に多いということは、年々カドミウムがばい煙にまざって排出されておるか、粉じんとして飛び出しておるかという状態だと思うのです。だから、私はそういう科学的な調査ができるまではやはり操業を停止させるように、通産省から日鉱に対して申し入れをされるべきだと思うのです。ぜひそれをやっていただきたいと思うのです。そのことに対して大臣どう考えられますか。
  260. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 公害の問題というのは、急速に問題意識が育ちまして、おそらくこれから将来のわが国において、ますますこの問題については神経質に考えていかなければならないと思っております。厚生大臣がしばしば公害を先取りしてといわれておりますのも、そういう意味と私ども全く同感に考えておりますが、それでありますだけに、この公害の問題の処理というのは私は理性的に処理をすることが必要であると考えております。これから長いことわが国の制度の中にまた人々のものの考え方の中に取り入れていかなければならない問題でありますから、きわめて理性的な処理を必要といたすと思いますが、そういう意味で、環境基準あるいは排出基準につきましての許容量というようなものを政府としてはきめるわけでございます。そうして、その許容量の範囲ならば原則として許容する、それを越えたものについては、これはやはり非合法的な行為である、こういうふうに考えていくのがこの公害防止の制度の基本だというふうに私は思っております。いまの問題になっております製錬所の場合、従来の鉱山保安法あるいは鉱業法というものが、これはもう昭和の始めからそうでございましたが、公害という観点から実はあまり考えられ運用されてきておらなかった。そのために、一つはその理由で独立製錬所がその法の規制の対象となっていない。排出規制法も大気汚染防止法も適用になっていないわけでございます。  そこで、私どもが行政指導をいましつつあるということは、これは実は緊急やむを得ないと考えてやっておるわけでございます。本来行政指導というものそのものは、場合によっては疑わしいものでございます。ほんとうに緊急の必要があるというときにやるべきもので、ほんとうは法に基づいてやるべきものと私は思いますが、今回の場合、行政指導ということで、改善の指示も——指示ということばは適当でないかもしれませんが、まあ指示でございます、実際やっておる。そうして、四割操短ということが現実に行なわれておる。先ほどから成田審議官が申し上げておりますように、通産局でも直接諸要因の調査をただいまいたしておるわけでございますから、それで、現在の操短状況でなお厚生省の考えておられる基準を上回ってしたがって危険であるということになれば、それはもうそのときに処置を考えなければなりません。しかし、そうでなければ、私どもがいましておりますことは行政指導であるという点もございますが、その調査を待ってただいまのお尋ねの点は決定をすべきものではないか。私ども先ほどから企業寄りだということを言われますが、そういう考えは持っておりません。危険は少しでも少ないほうがいいということはそのとおりでございますけれども、許容基準というものは、そもそもそういう中で許し得る限界はどこかということをきめておるものでございますから、そういう考えはやはりとってまいりませんと、企業の利益ということではなくて、わが国の産業、国民に物なりサービスなりを供給するものもこれは大切でございますから、許容の限度ではそれを認めていくということは必要ではないかと思います。
  261. 古川喜一

    古川(喜)委員 あす日鉱の社長が出てくるそうですから、さらにまたその点を論議していきたいと思うわけですが、先ほどからこの問題が起きましてから、独立製錬所を今後どういう法の規制のワクに入れるかということについての質疑が行なわれてまいりましたが、この会社は昭和四十年に日本鉱業と合併して今日に至った。それで鉱山保安法の適用を受ける付属製錬所の要件を満たさなかったのでとありますが、その付属製錬所の要件というものはどういうものなのか、質問をいたしたいと思います。
  262. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 保安法ができましたのは昭和二十四年でございますが、そのときはもっぱら鉱山、いわゆる山を対象にいたしまして、山と密接不可分な関係にある製錬所、山元ないしは遠隔地にありましても、その山から鉱石をストレートに多量に送鉱しておるといったような考え方でこの法が仕組まれております。したがいまして、ほかから鉱石を買ったりあるいはまた幾つもの製錬所を迂回して鉱石がその製錬所に入ってくるという場合には、あくまでもこの法律のたてまえが鉱山の山を主体にした法体系になっておりますので、これは通常の工場と同じ扱いというふうな運用が昭和二十四年から行なわれております。したがいまして、そういう意味におきましてこの三日市はストレートに鉱石がほとんど運ばれておりませんので、従来から独立製錬所という形で、保安法の適用を受けない製錬所という形になっておるわけでございます。
  263. 古川喜一

    古川(喜)委員 法の盲点といいますか、独立製錬所がこういう危険な公害を引き起こしておっても法的に規制することができないということは、国民にとっても不幸であり、皆さん方責任担当省としても問題があると思いますから、すみやかに鉱山保安法が適用される等の措置を講じていただきたいと思うわけであります。  次に、厚生省伺いますが、厚生省はこの問題が表面に出ましてから五月二十五、六日と汚染調査のために現地に出ておられます。いろいろ打ち合わせをされたのでありましょうが、その中に同工場の点検という項が入っておりましたが、どのような点検をされてきたのか、あるいはばい煙とか粉じん排出等の調査をなされたということなのか、それをお聞きしたい。
  264. 城戸謙次

    ○城戸説明員 私どものほうから二人の係官、技官が参りましたが、私どもとしましては、まず県と市と工場から事情を聴取する、どういうところに現在まで富山県あるいは黒部市がやってきた調査等が不備があるのか、それをいかに早く完結するか、こういう点に重点を置きましてやったわけでございまして、その結果いろんな点に調査の不備があることがわかったわけでございます。私どもとしてはその結果によりまして、現在たとえば環境大気調査につきましては、暫定対策要領できめておりますハイボリューム・エア・サンプラーによる測定方法をとる。現在はローボリューム・サンプラーでやっておりますので直接比較はできませんが、そういうような方法、あるいは測定点が一カ所でありましたのを相当まわりの測定点をふやすとか、あるいは米の中のカドミウム濃度につきましても非常に高いわけでございますので、必ずしもサンプルのとり方が系統的でないので、これをちゃんととるとか、あるいは排水につきましても全く会社側の調査でございまして、県、市の調査ではございません。こういうものにつきましてちゃんとした調査をするとか、あるいはこれらの調査全部をクロスチェックの方式でやるとか、いろいろな点から調査の不備を指摘しまして、総合的な調査をやられるように環境大気調査についてもやっております。あるいは健康調査につきましても、暫定対策要領によります精密な体系的な調査、最後は鑑別診断までやる、こういうことで現在指導いたしておるような状況でございます。
  265. 古川喜一

    古川(喜)委員 先を急ぎます。  厚生省は、黒部市一円をカドミウム汚染の要観察地域に指定をされたわけでありますが、その線引きははっきりしているのですか。  次、今後この要観察地域に指定をしたということで、厚生省がどのようなことをやられるのか。ただ指定をしただけで、調査の資料を県や市に提出するようにということだけでは、県や市の予算負担が増加するだけで、いろいろの資料を提出するだけで、人的、財的にパンクしそうになっておる、こういう地域指定が行なわれると相当な予算が得られておるのかどうか、その点を伺います。
  266. 城戸謙次

    ○城戸説明員 第一のほうの御質問でございますが、先ほどお話ししましたように、たとえば米の調査等につきましても、十分系統的にやられておりません。土壌につきましても、まだ十分な範囲が検査されておりません。したがって、汚染地域の範囲というものをはっきりと区画をするということは、現在では必ずしも十分できないような状況でございます。  ともかく、そういうことで、要観察地域に指定しまして、今後あらゆる調査を進めてまいるわけでございますが、その場合の経費の負担がどうかということの御指摘でございます。この各種調査の中で、まず環境大気調査でございますが、これにつきましては、私どものほうで全面的に予算措置をして進めよう、こういうことを計画いたしております。  それから水田の土壌だとか、米だとか、飲料水、川の水、排水、こういうものの分析でございますが、この分析につきましては、あくまで一測定機関ではなしに、クロスチェックの方法をとっているわけでございますが、この点私どものほうで県、市がやりましたものと別にクロスチェックを担当して、県外の専門の分析機関で分析してもらう、こういうことの担当をいたし、その経費も厚生省で持つようになっております。  健康調査につきましては、現在やっております七千数百名にわたります第一次の健康調査、これは県、市の負担でやるわけでございますが、鑑別診断を要するようなむずかしいケースにつきましては、専門家からなる班を設けまして、厚生省調査研究委託費で精密診断を行なう、かような考え方を持っておるわけでございます。
  267. 古川喜一

    古川(喜)委員 製錬所から排出されたカドミウムの汚染によりまして、すでに住民の中からイタイイタイ病の二期症状であるじん障害が発生しておることが県の調査で発表されておることを御存じだと思います。橋本公害課長は、じん障害は出ているが、イタイイタイ病と呼ぶと、富山県神通川流域の症状と同じように見られるので困るということばを使っておられるわけですが、それはどういう意味ですか。
  268. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 いま御質問がございましたカドミウム中毒としてのじん障害が現在出ているといった事実があるということは、私どもは存じておりません。従来の調査の結果、これはまだ一部のものでございますが、対象地域とこの汚染地域とを分けて調査したところ、汚染地域のほうがじん障害の発現の割合が低かったということは一つございます。ただ、これはどのような人口集団をとったのかというところに問題が残っておるということは、現地でも説明いたしたとおりでございます。  その次は、このじん障害のある者にとりまして、一体どれだけのカドミウムを排出しておるかということは、二十四名か十四名か、私ちょっと数字を忘れましたが、という者につきましては、尿中のカドミウムの排出量をはかっております。尿中のカドミウムの排出量をはかりますと、一リットル当たり三十マイクログラム以上のものを出しておるものについては、精密検診の要ありとして扱うということを私ども判断しておるわけでして、その数字は最高十三マイクログラムということで、三十マイクログラムには至っておらなかったということであります。先生のおっしゃっておられましたのは、おそらく新聞の記事に出ておりました例のゲルろ過法で、低たん白の検査をしたら所見が出ておった云々ということをさしておられるのかと思いますが、例の方法につきましては、実は私ども調査研究費でやっておる研究でございまして、本来カドミウムが中に入って中毒になっておるかどうかということの第一の確証は、カドミウムの排出量であります。カドミウムの排出量の確証なしに、たん白だけでカドミウム中毒かいなかを論ずるということは、学問的には正しくない方法だと思っております。そういうことでありまして、あの検査では、カドミウムの排出量は低い。しかし、ゲルろ過法でやってみると、別なポジティブのデータではないかということも中にあるということでありますから、将来やっていく上におきまして、当然鑑別診断の必要なものは私どもはどしどしやっていくつもりでございます。ただゲルろ過法だけでやられてこうこうだ、しかしカドミウムの排出は少ないというものに対しては、カドミウム中毒ということを学問的に言うことは、非常に誤る可能性があるのではないかということであります。  第二点は、どうしてイタイイタイ病の第二期ということをいわないのかということでございますが、これは先生御承知のように、昨年四月安中の問題がありまして、それからカドミウム中毒及びいわゆるイタイイタイ病ということにつきましての非常に大々的な医学総合研究集会を開いたわけであります。そこの場所におきまして、やはりこういう考え方がはっきり整理されて出てまいったわけでございます。御承知のように、カドミウム中毒ということにつきましては、すでにもう一九三〇年代からこの研究はされておりまして、最初にじん臓に障害があらわれてくるということは明らかになっておるわけであります。私どもは、できるだけ早い時期にじん障害としてのカドミウム中毒の鑑別診断をして、つかまえて直るものは直して、そういうものがはっきりカドミウム中毒として判別がつくならば救済対象になるということを望みながら現在医学研究集会を続けておるわけでございます。  そのような初期のカドミウム中毒者のすべてがイタイイタイ病という言い方は、これは萩野先生のお説としては私承っておりますが、それは大方の医学研究の方々は、初期のカドミウム中毒がすべてイタイイタイ病の第二期という考え方はとっておりません。この考え方につきましては、私はお話をいたしました早朝、萩野先生のところへ行きまして、私はこういう考え方を持っておるということを萩野先生にもお話をしております。そういう意味におきまして、私どもは、ほっておいて、そうしてほかの誘因、つまり神通川におきまして見られましたように、三十年間ほど非常に長く食べものと水から入って、しかも六回ほど妊娠分べんということ、それから栄養の不良、更年期障害、ホルモンのアンバランスというような誘因が加わって不幸にしてイタイイタイ病という骨にまで及ぶものになった。しかし、これはカドミウムがなければ絶対起こらなかったと私ども思っております。そういうことから、ほうっておいてそういうほかの誘因が加わったらイタイイタイ病になるというおそれがあるということは全く同意いたしております。しかし、初めのすべてのものを、とにかくカドミウムの入ったものは片端からイタイイタイ病の第一期、第二期ということは学問的には大かたの認めるところではないということを申し上げたわけでございます。
  269. 古川喜一

    古川(喜)委員 わかりましたが、カドミウムが人体に長らく影響を及ぼして、それがイタイイタイ病になるおそれもある、そういうこかまいことばが出ないで、イタイイタイ病の症状と同じように見られるので困るということだけを新聞紙上で見ますと、いろいろな弊害があらわれてきておる、あるいは課長の考え方を知事や市長も持ったのか、適当に言っておるのかわかりませんが、ことばの端々にカドミウムとイタイイタイ病は関係ないのだというようなことを述べておるわけなんです。地元の知事や市長としてはまことにけしからぬことだと思っておりますが、いまあなたがいみじくもおっしゃいました婦中町の場合は、三十年からの長い年月でということでありますが、この黒部地区のカドミウムの問題に対して、カドミウム公害の研究者である小林岡山大教授は、黒部市の汚染地区をさして第二次世界大戦中に神通川流域で排出されたであろうカドミウムをはるかに上回っておる、だからこれが人体への影響を早く最小限度に食いとめなければならない、こう言っておられるわけであります。われわれはしろうとだからわからないが、かりにカドミウムが三倍の量があれば、三十年のものは十年でそういう病気になるのかという、簡単に算術的には考えます。あなた方は専門家だからどのように理解しているかわかりませんけれども、とにかくそういうおそろしい病気に発展する可能性があるんだということを考えて今後の処置に当たっていただきたい。これからいろいろ、住民の一斉検診なりどんどん行なわれていくと思いますが、そのつどつど適切な処置を講じていただきたいと思うのです。  時間がないから飛ばしていきます。  大臣に伺いますが、厚生大臣、あなたは公害補償問題、水俣の公害補償問題が解決した際に、今後企業の無過失責任の原則を確立する必要があるというふうに述べておられますね。そのことは公害罪の単独法をつくろうという考えなのか、あるいは現行法律を改正していこうという考えなのか、具体的にひとつ述べてもらいたいと思います。
  270. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは公害罪というような刑事法上の問題とは別に、民事上の損害賠償等の原因として、今日まで私どもが承知をしておりますところによると、企業側の故意または過失が立証されないと民事上の責任さえも生じないというふうにとかく現行の民事法は解釈されがちだと思いますが、今日のように産業が発達し、また人間の生命が尊ばれたり、高密度の社会というようなもとにおける公害に基づく損害補償につきましては、因果関係はもちろん必要でありましょうけれども、しかし相手企業の故意、過失ということが立証されない限り、健康の被害者、生命の被害者等が損害賠償を受けられないというような考え方をいつまでも持つべきではない。私は立法者でもございませんし、法学者でもございませんので、きめ手になるわけではありませんが、政治家の一人として、また厚生省というようなものをたまたまあずかっておる私といたしまして、いまいうような環境のもとにおいては、無過失責任の理念というものが方々から取り上げられてしかるべきではないか、こういうことを私が、いわばその先駆者の一人として申しておる、こういう状況であります。私が言ったからといってそのとおりになるわけではないのでありますが、私ごとき者が言うことが非常に意味が大きいと私は考えまして、いま先生がおっしゃったとおりのことばではありませんが、その線に沿ったようなことばを述べておる、こういう次第でございます。
  271. 古川喜一

    古川(喜)委員 時間が来ましたので、先ほど農業の米の問題についても質問をしたいと思いましたが、やめておきます。  とにかく私は、これは法の盲点だと思いますけれども、明らかに日鉱三日市製錬所がカドミウムをばらまいて、そのために人体にいろいろな障害が出てきている、生産物に被害を与えている、あるいは黒部の食堂がはやらなくなっているなどなどの被害をはっきり与えているのです。それを会社も認めているのです。私のうちのカドミウムがこのような被害を引き起こしているんだということを認めているのです。にもかかわらず何にも罰せられないというのは大体おかしいのですよ。けしからぬと思うのです。かりに私が自分の庭先で庭の手入れをして有害な薬をまいている、隣の人やなんかについて、ここがただれたり、ぜんそくになったりしたら、直ちに隣近所が騒いできて、警察を連れてきて引っぱっていくと思うのです。それを工場だからといって、明らかに殺人企業が何ら罰せられないで、しかもたんぼを休んで、たんぼもつくられないと言っているのに、工場だけはどんどん操業していくということで、全くけしからぬと思うのです。こういう点に立って、先ほどから厚生大臣は被害者の立場に立つということを言っておられたことから言いましても、いままた私がそう言ったからそういう法律ができるものではないと思うがと言われたが、ぜひひとつ大臣の手で独立法をつくっていただきたい。そうして企業優先でない、あくまでも人の命が大切なんだという政治を行なうように努力していただきたいと思います。  以上で終わります。
  272. 加藤清二

    加藤委員長 寒川喜一君。
  273. 寒川喜一

    ○寒川委員 お約束の時間を守ってやりたいと思いますので、むしろ政府側に、だらだら時間かせぎの答弁をしないようにお願いをしたいと思います。  そこで、第一にお願いをしたいことは、現地をそれぞれ見てみまして感じますことは、皆さんが御質問をされておる問題以前の問題が、日本公害対策といいますか、取り組み方の面で片づいておらないような気がします。したがって、本委員会におきましても特別国会の中で五月八日の委員会で政府に対して強力な調整機能を発揮するような要請をしておりますが、委員長の手元に対してどういう反応があったかどうか、まずお聞きしたいと思います。先般の五月八日のこの公害特別委員会で議決をして政府に対して要請をしております。湊総務副長官は誠心誠意努力をして問題解決に当たりたいという答弁をいたしておりますが、その後だいぶん時間の経過がございますが、委員長に対して政府が副長官の答弁に従って何らかの対策を講ぜられて連絡があったかどうかお尋ねしたいと思います。
  274. 加藤清二

    加藤委員長 お答えいたします。  いまだ連絡はございません。こちらから要請はしたことはございます。日暮れて道遠しの感なきにしもあらずであります。
  275. 寒川喜一

    ○寒川委員 そこで佐藤総理がことばのあやでいかようなことを言ってもこの問題は私は解決しないと思うのです。特に先ほど厚生大臣は、被害者の立場で取り組みたい。新聞発表によりますと、公害局を設置したい、かようなことも承知をいたしたわけでございますが、たとえば黒部市の問題につきまして、富山の県庁に参りましていろいろ事情をお聞きしてまいりますと、各省庁それぞれの立場でそれぞれの要望をしたりあるいは要請をしたり、そういったことが、どうしても民選知事である関係上、企業サイドを重点にして処理されるというような現況になっておると私は判断しております。したがって、きょうは特に総務長官がお越しをいただいておれば一番いいのですが、総理府におい委員会の要請にこたえてその後どういう措置がとられ、検討が進められておるかお答えをいただきたいと思います。
  276. 青鹿明司

    青鹿説明員 公害行政の総合的な推進をさらに強化せよという御決議をいただきましたのは私ども十分承知いたしまして、その趣旨に沿って今後進めてまいりたいと考えております。ただ、公害行政は申し上げるまでもなく非常に複雑多岐でありまして、これに対する措置もそれぞれの公害の態様、内容に応じて措置せざるを得ないということでございますので、非常に多くの省庁にわたることは御指摘のとおりでございます。  それからさらに、それらの規制の措置だけではなしに、その根元にございます公害の防除のための調査、研究等の問題もございまするし、あるいはさらに広く申しますと、全体的に土地利用をどうしたらいいか、あるいは公害防除の施設をどう整備していったらいいか、いろいろ問題がございまして、これらの問題を、各般の努力をそれぞれの行政庁がまず一次的に責任をもって実施すべきものであろうと思います。ただ、これがばらばらになっておりまして、公害行政の推進が青貝性を欠くということがあってはならないことは御指摘のとおりでございまして、具体的には公害対策基本法の定めに基づきまして地域を指定いたしまして、公害防止計画等を定めることになっております。この段階で、やはり地域の実情に応じた公害対策を総合的に推進することが一番現実的であろうかと思いまして、ただいますでに地域指定いたしました三地区につきましては、防止計画の策定に努力いたしておる段階でございます。今後ともその地域の指定を広げまして、極力総合的な行政ができるように配慮いたしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  なお、一番現実的に公害防止行政を推進いたしますためには、やはり公害対策会議の実質的な推進をはかることが必要であろうと思いますので、今後ともこの充実には会議並びに幹事会等の開催を通じまして、極力御要望の趣旨に沿いたいと考えておる次第でございます。
  277. 寒川喜一

    ○寒川委員 いまの答弁では、実質的に何もやっておらぬという委員長の御答弁どおりだと私は思います。したがって、たとえばこれから申し上げることのような事例からいっても、役所の信用を失墜してしまって、何ぼ後手後手でいろんなことをやってみたところで、私は、公害という問題は、前向きで国があげて対処しておるというようには国民には響かないと思います。たとえば黒部の問題にしましても、通産当局は公害部を拡充して取り組んでおるように承知をいたしておったのですが、問題発生以来十一日たった時点で私が富山に参りました際にも、文書で現況報告をせようという程度のことしかおやりになっておらない。あるいはまた、先ほど社会党の古川さんから具体的な御質問のございました操業関係の問題にしましても、富山県知事が勧告した際の最初は二割で当分やむを得ない、こういうことで二十八日に住民大会が開かれて、地元の強い要望がありますと四割だ。それでもまだ理解と納得がいかないのは、先ほど御答弁の中にありましたように、公的な監視設備を三日市鉱業所に早急につくって信頼を回復するということでなければ、ことばのあやでいろいろと言っても住民の不安は去らないと思います。したがって、そういう問題について、ほんとうに各省がどういう態度で取り組んでおられるのか、通産並びに厚生省からお答えをいただきたいと思います。
  278. 内田常雄

    ○内田国務大臣 先般来だんだん申し述べておりますように、カドミウムそのものが有害な働きをなす重金属であるということは、厚生省は役目柄早くから気がついておりまして、昭和四十三年でございますか、そういうものを生産または排出する工場、鉱山等につきまして、通産省に照会をいたしましたことは申し述べたとおりでございます。と同時に、通産省からはお答え漏れであったように聞いておりますが、今度は全国の各府県に対しましても、さらに念を入れまして、カドミウム排出工場、鉱山等につきましても報告を求めまして、昭和四十四年、昨年になりまして、富山県から初めて、三日市製錬所からカドミウムの回収が行なわれておるというような報告を得ましたので、それに対する対応策をどうしているかということを重ねて富山県について照会をいたしましたところが、富山県のやり方は十分でないというような心証を厚生省では受けましたので、環境汚染調査などにつきましても、すでに厚生省が、これは法律ではございませんが、行政措置として定めておりますところの、カドミウム環境汚染暫定対策要領に基づく諸般の調査をやることを求めて、今日まで至っておりました。  しかし、この五月になりまして、現地からカドミウム汚染の状況が著しいというような報告を受けましたので、厚生省では、さらに現地に対しまして汚染調査あるいは健康調査あるいは今後の対策等につきまして、厚生省の方式に基づく指示をいたしておるわけでございます。それと前後して、通産省のほうからも、あそこの工場がカドミウムを生産する旨の追加報告も受けております。  しかし、これは現地まかせの調査だけでございますとまた不都合な部分が表に出てこないということになってもいけませんので、術語は私は知りませんけれども、要するに複合調査、複数調査というようなことを試みまして、幾つかの方法、幾つかの調査主体によりまして、調査漏れといいますか、調査の結果が最後にあらわれないことを防ぐようなそういう調査をいたすことにし、またその費用等も厚生省で持つことにいたしておるわけでございます。  これと相前後いたしまして、農林省あるいは通産省等も、もちろん米の問題とかあるいは水田、土地の問題あるいはまたその生産工場の問題につきましても、調査をやって、私どもに協力をくださっておる、こういう状況でございます。
  279. 成田寿治

    成田説明員 通産省としてとりました措置を申し上げますと、五月二十日に名古屋通産局の鉱山部長を現地調査に出しております。それから五月二十二日に本省の鉱業課の担当官を現地調査に出しております。それから五月二十九日に、二十日から二十三日までの調査結果に基づきまして、日本鉱業に対して暫定措置と応急対策、おのおの五項目について指示しまして、これを、早急にその回答を求め、実施を求めております。それから六月三日付で三日市製錬所を含む鉱業法並びに鉱山保安法の対象となっておらない独立製錬所全部につきまして、いろいろ通産局に実態調査を鉱山保安監督部、県の協力を得て一斉点検の実施をさせ、そうして実態調査並びに指導を指示しております。  以上でございます。
  280. 寒川喜一

    ○寒川委員 私の質問したいことは、結局誠意をもってやっておるか。機械的に何らかやっておればそれで責任が済んだのだという態度が、私はもうけしからぬと思うのです。厚生省は二十九日に橋本公害課長が現地に行かれて具体的にやっておるのですが、やはり通産は企業サイド的な感覚を一歩も出ておらない。こういう態度が改まらない限りやはり問題は解決していかないと思うのです。  時間がございませんので、関連をして農林省のほうにお伺いしたいのですが、たとえば稲を抜けという指示をされておりまするけれども、補償のことは全然話に出ずに稲を抜けと言ったって、そんなべらぼうな話はないと私は思うのです。  あるいはまた中心部でできた米は押える、したがって、農家に対して配給米の措置をとられております。私などがこういうことでしろうと的に直感的に考えることは、なぜ米の俵同士でかえてやらぬか。そういうあたたかい役所の措置というものが当然あってしかるべきだと思うのです。  したがって、こういった黒部の問題を黒部の問題として片づけるのでなしに、将来そういう類型的な事案が発生すれば、間髪を入れず手を打てるような体制といいますか、そういうものをやるために、前段に申し上げておるように、やはり高い次元でリーダーシップをとれるところがない限り、総理大臣がことばのあやで何べん言ってみたところで片づかないと私は思うのですが、農林省はどういう措置をされておるか、お聞きしたいと思います。
  281. 加藤清二

    加藤委員長 その前に通産省答弁。通産大臣、どうしましたか。——黙って立っていかれてしまったですね。いけませんよ。
  282. 中村健次郎

    ○中村説明員 ただいま御指摘のございました黒部市の汚染地区につきまして、四十五年産米について作付をしないようにという指示をしておることについてでございますが、これは富山県が黒部市と協議をいたしまして、四十五年産米の作付を行なわないようにと関係生産者を指導しておるというふうに聞いております。国としては特にそういう指示はいたしておりません。  それから配給米でございますが、保有米を使わないで配給をしておるという問題につきましては、私のほうでは県からの要請もございましたので、特に配給のワクを出しまして配給をいたしております。これにつきましては日本鉱業と黒部市当局との間で覚え書きができまして、こういった配給米を買うために必要な経費は日本鉱業で負担をすることがきまっておるように聞いておりますので、農家の方には特に負担にはならないと考えておりますので、政府が交換をするという必要はいまのところないのではないかと考えております。
  283. 寒川喜一

    ○寒川委員 先ほど質問しておるように、そこがやはり問題なんで、事後の処理として富山県知事がやっておるのだから農林省は知らぬのだ。少なくとも百姓の耕作権を停止さすという勧告を行ない、具体的には押えてしまっておるようなことを私はこの目で見てまいったわけで、農民の皆さんの怒りはもっともだと思います。したがって、先般大阪市の公害補償のように、県自身が作付を中止せしめるのだということであれば、県が平均収穫高によって補償してやるという体制をとるようなことを国との関係において十分指導していただかぬと、他の県で起こった場合には、それではその知事がやらなければ国は黙っておるのかという問題が起こってくると思います。その辺の理解が食糧庁の当局とわれわれあるいは現地の農民の皆さんとは感覚的に違うということを理解をしていただきたい。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕  それから第二点の米の配給の問題なんですが、配給を受けなければいかないということになぜするか。食糧庁自身が配慮して、自家保有米を甲の家は三十俵、乙の家は五十俵ということであれば、いい米とかえてあげればいいわけであって、配給の手続をして、米の配給を受けなければいかないという問題について、あまりにも機械的なことのために、農民の怒りがより爆発的になっておるという印象を私は受けておるわけです。加えて、将来の農地の耕作がどうなるかという問題についても、やはり農業改善事業の中で、十五センチなり二十センチの客土の入れかえによって解決をする面もあるわけですから、そういう問題についても真剣に取り組んであげないと、他の所でいろいろな規制をして公害除去に努力をして、被害を受ける側を救済しないという態度ではこの問題は解決しないと思うのですが、そういった問題について再度お答えをいただきたいと思います。
  284. 中村健次郎

    ○中村説明員 先生から御指摘のように、私たちとしても現地の農民の方が困っておられることにつきましては十分に承知いたしておりますし、われわれとしてできることはできるだけやっていきたい、こういうふうに考えてやっておるわけでございますが、ただ保有米の交換ということにつきましては、これは食管法上交換できるという規定はございますけれども、こういう場合に交換を必要とするのかどうかという点についてはまだいろいろと問題もございます。これは研究を慎重にやってみたい、こういうふうに考えております。  なお、四十五年産米の作付の問題につきましては、これは非常に頭が痛い問題なんでございますが、せっかくそこでつくりましても、人間が食糧として食えないという米になるのでは非常にむだなことにもなりますので、したがって、県としましても四十五年産米の作付をしないようにということを指導されておりまして、これはごもっともなことだ、こういうふうにわれわれも考えておるのでございますが、それによってこうむられる農家の方の損害につきましては、それを補うような措置を筋の通った形でやはりやるべきものであろう、このように考えております。
  285. 寒川喜一

    ○寒川委員 いまの御答弁を聞いておりますと、いわゆる巷間いわれているように全くお役所答弁です。むずかしいとかむずかしくないとかいう判断は、問題の性質によると思うのです。したがって、こういうことがむずかしいようなことで公害の問題が解決するはずがないわけなんです。そういう点について、答弁は要りませんから、ひとつ真剣に考えていただきたい。  加えて実情を申し上げますと、五月二十八日現在で、農民が作付の転換を行ないたいという主張が一部にあっても、富山県は当時の状態においては今度の新制度の恩典には浴せしめないんだというような答弁をしておられるわけなんです。したがって一貫性を著しく欠いておる。そういう点での配慮をひとつお願いしたい。  それからその次は、きょうは自治省の方がいらっしゃいませんし、総務長官がお越しになっておらないので残念に思うのですが、四十五年の六月一日に自治省の事務次官通牒で各都道府県に対して通牒を出されておるわけでございます。環境基準の問題、特に水の汚染の問題等のことで指示をされておりまするが、厚生大臣にお聞きをしたいんですが、厚生大臣が常々人命の尊重、健康の確保というような視点に立っては、何をさておいても優先して取り組んでいかなければいけないというようなこと等を述べられて、私も全く同感なんですが、自治省事務次官の通牒を見ましても、全くおざなり的な通牒を出されておるんですが、大臣に対して、この通牒を出すからということについて、経済企画庁のほうには何か相談をされたとかされないとかいうことを仄聞をしておるんですが、厚生大臣に対して自治省のほうから協議があったのかどうか、まず御質問したいと思います。
  286. 内田常雄

    ○内田国務大臣 自治省と仰せられましたが、私はその相談は受けておりません。ただ、私が申し述べさせていただきますことは、厚生省はほんとうから申しますと、公害対策につきましてはほとんど有効な権限あるいは手段を持ちません。持ちませんが、とにかく公害の苦情は一切ひとつ厚生省はしょって立つつもりで、私はいまでもこうやってここにただ一人おるわけでございますが、権限がないことでも、法律規定がないことでも、やるんだといえば、今日こういう世の中でありますから、国民皆がついてくる、こういう気概でやっておりますことだけは御理解いただきたいと思います。
  287. 寒川喜一

    ○寒川委員 それでは経企庁の方にお伺いしたいんですが、先ほど来から申し上げております「水質汚濁に係る環境基準の設定について」という自治省事務次官通達について、どの程度の相談を受け、同時に、委員会にいろいろ出て当委員会の空気というものを承知をされておられるはずなんですが、どういう意見を言われたのか、お聞きしたいと思います。
  288. 西川喬

    ○西川説明員 ただいまの自治省のほうの通達は、これは先般の国会におきまして、水質汚濁にかかわります環境基準について御説明申し上げましたとおり、人の健康にかかわりますのは全国一律でございますが、生活環境にかかわります分につきましては、水域類型の当てはめを今後行なわなければならないわけでございます。この当てはめは、これは公害対策基本法に基づきまして国が決定する環境基準でございますので、国がやることになっております。ただ、国が決定いたしますまでの間におきましても、やはりある程度の期間はかかるわけでございまして、国のほうといたしましては、重要な河川あるいは県際河川、このようなものから逐次当てはめ行為をやってまいりたい、このように考えておるわけでございます。その当てはめ行為が行なわれますまでの間、関係都道府県知事が経済企画庁長官と協議しまして、水域類型を指定した場合におきましては、都道府県知事がその当てはめを暫定的に行なう。その場合には環境基準に準じた暫定的な行政目標値としておこう。それで、国がきめた環境基準ではございませんけれども、都道府県知事がきめました分につきましては、政府におきましてもその達成に協力しよう、こういうことが環境基準の閣議決定の内容に入っております。それに伴います暫定的な行政目標値を、都道府県知事がきめるのを行ないなさいという通達なんでございます。
  289. 寒川喜一

    ○寒川委員 したがって、こういうものを出すのでも、常々厚生大臣が主張されておるようなニュアンスといいますか、受け取ったほうで何としてでもやはり守っていかなければならぬというような姿勢の内容を持った文書でなければならない。何か一ぺん出しておいたらしかるべくやりおるだろう、こういう姿勢——たとえば先般富山の問題にしましても、富山県自身が公害条例を持っておりまするが、至って内容のなってないもの、したがって、大あわてに改正をするのだというようなことでおそらく改正をされたかもしれませんけれども、そういうことについて、経企庁なり自治省がいらっしゃらないので残念ですが、しておられるのか。   〔鳥本委員長代理退席、委員長着席〕 同時に、具体的な問題について、やはり知事、市町村長に権限を移すという基本的な体制なしにこの問題は解決をしないと私は思うのですが、御答弁を要求することが無理かもしれませんけれども、あなたのお考え方を率直に述べていただきたいと思います。
  290. 西川喬

    ○西川説明員 水質にかかわります都道府県の条例につきましては、現在三十九都道府県において制定されております。しかしその内容におきましては非常に精粗がございます。非常にきつい基準を設定いたしまして、その基準を順守しなければいけない義務を課しておるところ、あるいは届け出義務だけのところ、あるいは認定基準にすぎないもの、いろいろな性格がございます。この点につきましては、私たちのほうといたしましては、現在各県の条例の内容をいろいろ取りまとめて整理いたしておりますが、今後ある程度この標準的なスタイルをつくって指導しなければならないのではないだろうか、このように考えております。環境基準の当てはめ行為も、このようにして暫定的な行政目標値というようなものをする方向もはっきりしてきた段階でございますので、それにつきましても、経済企画庁長官への協議は、六月一日に自治省のほうで通達を出したところでございますので、まだ全然協議がございません。これに対してのこちらの受ける態度をきめなければなりませんので、そのような点も今後指導を強化してまいりたい。先ほども岡本先生の御質問に対して御答弁を申し上げたのでございますが、ことしこの指定水域の指定をするための調査基本計画をつくり直すときにきております。その計画におき軌て、大体現在の時点あるいはここ数年の将来のことを見越しまして、ここは当分県条例にまかしておいていいのではないかという水域、これはどうしても国として取り上げなければいけない水域、これをこの時点で分類いたしまして、それに基づきまして国がやらなければいけない水域ははっきり年次計画を立ててやる。県にまかしております水域につきましては、先ほど申し上げましたような基準なり何なりのある程度標準的なスタイルをつくりまして、それに基づいて県のほうに十分な規制をお願いする、かような方向で今後指導してまいりたい、このように考えております。
  291. 寒川喜一

    ○寒川委員 お手並みを期待いたしておりますけれども、関連をして、若干横道にそれますけれども、私の承知しておる範囲内では、たとえば琵琶湖の水源というものはこれは京阪神の食生活になければならない水源なんですが、確かな筋のお話では、琵琶湖のシジミが京都、大阪の食ぜんにのぼっておるわけなんですが、シジミを解剖、分析してみまして、カドミウムが〇・五五PPM、水銀総量〇・三八PPM、こんなに多量に含んでおるということを、関係のところで承知をされておるのかどうか。厚生省並びに経企庁にお伺いしたいと思います。
  292. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 いまおっしゃいました数字、私ども存じております。正式な資料としてはいただいておりませんが、数度伺いました。その数字は、私ども現在全国をいろいろ、よごれておるところ、よごれてないところ調査しておりますが、一般に水銀、カドミウムがございますので、そういうものと比べまして異常に高いという数字ではないというふうに思っております。
  293. 西川喬

    ○西川説明員 経済企画庁におきましても、琵琶湖というよりも、むしろ瀬田川のところでとりましたシジミにそういう数値が入っておるということは承知いたしております。ただ水銀等につきましては、これは全国にも存在するものでございますし、また逆に琵琶湖周辺におきましては、カドミウム等につきましてはこれを排出するような工場がないというようなところから、自然汚染であるかどうかというような問題について、まだ決定的なあれが出てない。一応そういう数値が出たということは承知いたしております。
  294. 寒川喜一

    ○寒川委員 大体お認めのようですが、四十四年の九月の調査でそのことが明確になっておりながらシジミを売らしておる。したがって、こういう問題はひとり黒部市の米の問題だけでないので、実態を知るとたいへんなことになると私は思いまするが、早急に何らかの措置をするお考えを厚生大臣はお持ちかどうか。食品としての立場で措置するお考えを持っておるかどうか、お聞きしたいと思います。
  295. 内田常雄

    ○内田国務大臣 寒川さんのお説にさからうようで恐縮でございますが、あとから専門家から説明をさせますが、水の中に含まれる水銀、これは総水銀にしろ、あるいは有機水銀にしろ、非常に厳重に取り締まられているのです。したがって、今度つくりました水の環境基準なんかでも検出せざることということになっております。ところが、その中に住んでいる魚とか貝などについては、水の中でわれわれが検出しないような水銀でも、貝や魚の体内には蓄積されるものだそうでございまして、そこを寒川さんがおとらえになって、非常に高いものでないか、それを食わしてだいじょうぶか、ということですが、それは長期、大量に食わない限りほとんど問題はないということが技術者の答えなんですが、これはもう一ぺん確認をさせて答えさせたいと思います。
  296. 寒川喜一

    ○寒川委員 大体シジミというようなものは、同じ食品でもやはり好ききらいがあって、同じような嗜好の者が選択をする可能性のある食品だと思うのです。したがって、いま厚生大臣がおっしゃられるような観点からいたしますると、これは黒部の米以上の内容を持っておるといっても過言でないわけなんですが、そういう面で私に答弁をするというよりも、むしろここの委員会を通じて国民に、あるいは関係の諸君が理解し得るような、納得のいくような答弁を願います。
  297. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいま御質問の点でございますが、たとえば水銀でまいりますと、日本の場合非常に水銀が多いわけでございまして、魚介類〇・五PPM未満というのが普通でございます。その中で三割から八割程度はメチル水銀というような実態でございまして、そういう生物学的汚染の指標としては、一PPMをこえるものは二割という線を一つのラインとして引いているわけでございます。
  298. 寒川喜一

    ○寒川委員 いずれにいたしましても、やはりこういう問題がぼつぼつ続いて表面化するおそれはなしとしないと思います。したがって、手おくれにならないようなひとつ十全の措置を特に要望したいと思います。  その次は、騒音の公害に関する規制の問題なんですけれども、現在の立法並びに関連するもろもろの制度の中で、交通から発する騒音公害というものを、どういう把握のしかたをしておるのか、まず御説明をいただきたいと思います。
  299. 城戸謙次

    ○城戸説明員 私どもまず現在の騒音の規制は建設工事の関係、それから工場騒音の関係だけでありまして、いまの交通騒音は入っておりません。私どもとしては交通騒音に入ります場合、やはりまず環境基準をはっきりきめていこうという線で現在やっておりまして、その第一としまして昨年四月に一般的な騒音の環境基準の数値を、生活環境審議会専門委員会で出していただきまして、さらにそれを道路交通騒音に当てはめた補正作業を現在やっております。この専門委員会の結論がおそらくここ一、二カ月のうちに出ようかと思いますので、それに従いまして道路交通騒音中心に、今後の対策を小委員会ベースで検討いたしまして、道路交通騒音の環境基準というのがおそらくでき上がるだろうと思うわけであります。でき上がりましたならば、その目的に沿いまして各種の対策を総合的に講じていく、かような予定にいたしておるわけでございます。その他新幹線騒音あるいは先ほども話が出ておりました航空機の騒音等々特殊騒音がございますが、これらのものにつきましての環境基準は、一般騒音、道路交通騒音の問題が済みましてから着手する、こういうような予定にいたしております。
  300. 寒川喜一

    ○寒川委員 したがって、現在部長としては、どの程度以上のホンを越せば生活に著しい影響を与えると判断をされておるのか、お聞きしたいと思います。
  301. 城戸謙次

    ○城戸説明員 いまのどの程度越せばどうだという問題が、実は生活環境審議会専門委員会の議題でございまして、そういう数値を専門的な立場から出してもらうということでございます。あと一、二カ月のうちにはその数値が出ると思いますので、いましばらくお待ちいただきたいと思うのでございます。ただ現実の道路交通の騒音は相当高くて、七十ホン台というのが非常に多いわけでございまして、環七の問題その他いろいろございますが、これをいかに引き下げていくかということが、今後の環境基準の数値がきまりました以降の一番大きな課題になろうかと思うわけでございます。
  302. 寒川喜一

    ○寒川委員 関連をして建設省にお伺いをしたいのですが、具体的な事例として第二阪神から阪神高速に入っておる個所で、百ホンを越すといったようなところが部分的にできつつございます。しかも、これは屋内ではかりましても八十ホンを越す。すでに大阪市が調査を進められておりまするが、新しい道路の整備によってそういった問題が起こりつつあるわけなんですが、まず道路当局として具体的にどういう対策、補償というものを考えられておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  303. 菊池三男

    ○菊池説明員 新しく道路をつくります場合に、そこを通ります単によりまして、従来静かだった環境がこわされて交通騒音が発生するということは、これはもう道路をつくる限り避けられないところでございます。ただ、これは道路をつくるほうの立場といたしましては、発生する音を押えることはできませんけれども、発生されたものをなるべく沿道に大きな音として出さないように、これは道路をつくる場合の設計上の、あるいは構造上の問題として考えております。たとえば、音で問題になりますのは、やはり市街地並びに市街地周辺ということでございますけれども、そういう場所にはなるべく坂路をつくらない。坂道をつくりますとどうしてもふかしますので音が大きくなる。あるいは、道路をつくります場合に、平たんな地形のところに平たんな道路をつくりますと、やはり沿道に与える音は大きうございます。そこをたとえば盛り土にするというようなことになりますと、その盛り土によってのりの長さも出ますし、また、高さによる音の減小効果がございまして音が小さくなるというようなこと、あるいは路面にいたしましても、最近交通事故等の問題からすべりどめ舗装というようなものを考えられておりますけれども、すべりどめ、舗装が必ずしも音に対しては減少的なものじゃなくて、音が高くなりやすいということもございまして、そういうような問題もあわせていま検討しております。なるべく音を外に出さないというような形で設計を進めております。
  304. 寒川喜一

    ○寒川委員 あまり時間がないようですから多くは申しませんけれども、たとえば関係者がたくさんあって束になって要求をするというような形の場合には政府は取り上げる。しかし、その人数が数軒あるいは十数軒の家庭に及ぼす影響ということであれば、できるだけほおかぶりでいてやろうという姿勢があるのではないか。したがって、いま問題になっておりますところも、いみじくもあなたが指摘されましたように、いわゆる出入口ともに同じ個所に乗降口がついているわけです。加えて、周囲は高いビルが建っている。その上に、高速道路は約三十メートル余りの高さで通っておる。したがって、音が全部こもってしまうわけなんです。そういうことで、店をやっておっても耳もとへ行って話をしないと話が通じない、そういうような状況の中で、調査をしてみますと言いつつも、最後はこれは国の問題です、こういう形になっておるわけなんですが、あなたがおっしゃられたように、実際の調査をして、乗降口をつけかえる、あるいは地形の関係でつけかえられない場合は補償をするというような問題について、やはり真剣に考えてもらわないと、この問題は、最終的にはもうノイローゼになって、生活ができないというような現状になってくるわけなんで、再度課長さんにそういうことを言っても無理かもしれぬけれども、ひとつあなた御自身のお考え方で被害者に対して真剣に取り組んでやってやろうという心がまえがあるかどうか、同時に省内を動かして具体的に現地を見て検討するというお考えを持っておられるかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  305. 菊池三男

    ○菊池説明員 いまの一時的に百ホン以上もあるというようなお話でございます。大体道路は七十ホンから七十五ホンくらいが通常でございます。それで道路という道路が、交通でほとんどその程度はあると思います。ところが、特にうるさいから話もできないというふうなことでいわれることがときどきございます。そういう場所は、たいてい先ほど申した坂路であるとか、あるいは掘り割りのような形で両側にビルが並んでおって音が反響するとか、それからトラックが非常に多い。乗用車の場合はあまり影響ございませんけれども、トラックが多いとか、あるいはその乗り方が、昼間でなくて、朝起きがけに多いとか、あるいは夜中に多いとかいうような何か特別の事情がたいていございます。  そこで、ただいまのお話の場合でも、特にそういう現地を調査いたしまして、そういう事実があるとすれば、やはりたとえばフェンスを張るとか何か方法はまたあると思いますので、具体的に検討したいというふうに考えております。
  306. 寒川喜一

    ○寒川委員 だから私の申し上げておるのは、道路ではかって八十ホンというわけではないのです。家屋の中ではかって八十ホンというような状態、外ではかれば百ホン以上、しかもある時間、何時間もそれが続くわけなんです。そういう意味から、建設省は比較的に公害から横を向いておったらいいのだというような態度ではなしに、やはり全国を総点検をして、積極的にやっていくという姿勢をぜひひとつとっていただきたい。このことを要望いたしておきます。  最後に、委員長お願いをしておきたいことは、冒頭に申し上げましたように、やはり公害の問題を解決するためには、先般委員会で決定をいたしましたことが具体的に実らない限り、やはり先ほどの答弁でも通産省お願いをして、こんなばかげた話が役所同士であるはずがないのです。これはやはり佐藤総理のもとにおるそれぞれのポジションなんですから、一定の制度を確立して、リーダーシップをとれるところから指令を発して国、地方が有機的にこの問題に取り組める体制を整え、かつ諸制度もそれに合わせて具体的に積み上げていく、このことなしに委員会でのやりとりだけでこの問題は解決しないと思いますので、善処方を要望して質問を終わります。
  307. 加藤清二

    加藤委員長 この際、寒川喜一君の質問お答えいたします。  特に政府側に申し入れておきまするが、すでに本件につきましてはさきの国会におきまして附帯決議、それから委員会決議等々も行なっております。同時にその両決議に対して、関係大臣はその趣旨に沿って努力する旨の発言がございました。ひとつぜひこの決議を守って、すみやかにこれが具体化されるよう御努力を願いたい、要望いたしておきます。  次は山口鶴男
  308. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私は黒部市のカドミウム公害、正確に言えば日鉱三日市製錬所によるカドミウム汚染といったほうが正確かと思いますが、この場合犯人はもうきまっておるのでありますから、公害ということばは適切でないと思いますが、この問題にしぼってお尋ねをいたします。  最初に、通産省にお尋ねをいたしたいと思います。大臣がいないのでたいへん遺憾でありますが、私は昨年以来群馬県の安中市東邦亜鉛のカドミウム汚染の問題を取り上げてまいりました。私が特に強調したのは、神通川のカドミウム公害と安中の公害とは非常に違う。その理由は神通川の場合は、カドミウムが汚水によって流れていって、いわば水からこのカドミウムが田畑に入り、そうして米等にこれが入ってまいる。それを食べたことによってイタイイタイ病が発生した。安中の場合はもちろん汚水もあります。しかし、そればかりではなくて、あそこは乾式製錬をやっている。したがって、汚水に含まれるカドミウムも問題であるが、同時に排煙中に含まれるカドミウムがより問題であるということを指摘をいたしました。当時の斎藤厚生大臣は、たいへん申しわけなかった、水は調べたが、排煙は調べなかった、申しわけないというので、あらためて排煙について調査をいたしますというようなことだったのでありますが、それはともかくといたしまして、安中の場合は排水と排煙、これによる害だったわけです。  今回の場合は、黒部の問題も同じではないかと思うのでありますが、この三日市製錬所では乾式の製錬もやっておるわけですね。したがって、安中のカドミウム公害が問題になった際に、当然黒部の排煙についても、もちろん排煙もそうでありますが、これは調査をすべきであったというふうに私は考えるわけであります。  ただ、そこで問題なのは、鉱業法にいうところの、いわば鉱山保安法にいうところの鉱山というのが、この鉱石を堀っておる、それに付帯して製錬をやっているという場合は対象にするけれども、独立した製錬所だけ、鉱山を伴わない製錬所については対象になっていないという点が問題だということは私も承知をいたしております。しかし、そうだからというて、私は当然日本の事情は重要だと思うのですが、現在海外から鉱石を輸入して製錬をするというのが大半じゃありませんか。日本国内の鉱山というのは非常に資源が乏しいわけです。安中でも現在買鉱による、海外から輸入した鉱石による製錬なのです。対馬で一部採掘はしておりますけれども、これはごく小部分だ。したがって、そういった日本の製錬所の実態というものを考えた場合に、私は昭和二十四年の法律をそのままほうっておったというのは、大体日本の鉱山の状況、特に昭和三十年代以降の日本の経済の高度成長、ほとんど外国から買鉱して製錬をやっておるという状況から見て、私はこれは怠慢だったと思うのです。この点、大臣がおればいいのですけれども、大臣がおりませんで残念ですが、一応事務当局から御答弁をいただきましょう。
  309. 加藤清二

    加藤委員長 宮澤通産大臣に先ほど寒川さんのおりに言うたら、寒川さんがもう退出してもよろしいと言われたので出ましたという答弁であったが、山口君の場合は初めから指名がございますので、答弁に間に合うように御出席願いたい、そのことは先ほども言うておいたはずである。そういう調子だから後手後手に回るし、なお、業者の味方をして、やる気がないではないかという印象を受けるわけなのです。総理大臣みずからが陣頭指揮をやっているおりからですから、関係各大臣はそのおつもりになってもらわなければならぬはずなのです。現に厚生大臣はちゃんとあれからじっとここにおられるわけなんですから。
  310. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 先生のおっしゃいますように、鉱山保安法についての見直しをすべきであるという意見は、確かにそのとおりだと思います。御承知のように、この法律は非常に古い。しかもまたいま独立の製錬所をこの法の体系において規制しようといたしますれば、もうすでに、おそらくは鉱山保安法という形ではなしに、何か別の形の法体系にせざるを得ないのじゃないかということで、われわれのほうもこの製錬所の取り扱い問題はばらばらになっておりますので、実は研究会をつくって研究をしております。したがいまして、この国会では間に合いませんでしたけれども、いずれにいたしましても、いまのような形のままでは、おっしゃいますように、海外からの鉱石、そういった問題を処理する製錬所と自山の鉱石を製錬するところとの間に取り締まりのアンバランスがある。かといって、それでは鉱石を処理するところはすべてやる、こう言いました場合に、では鉄の会社もアルミの会社もすべてかというふうなことになりますと、この法自体の性格から見まして、どの辺でそれを区切るかという実は問題がありまして、現在事務当局でそれを研究しておる段階でございます。したがいまして、先ほどもお答えいたしましたように、できるだけ早急にそういう問題につきましての形を整備する、ないしは早急に、法体系がこれは鉱山保安法だけではなしに鉱業法にまでひっかかってまいりますので、あるいはさしあたって大気汚染法あるいは工排法、こういったようなものでどこまでいけるかというふうなことも検討した上で整備は考えていきたい、こう思っております。
  311. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 大臣はやがて来るでしょうから、そのときまた議論したいと思いますが、少なくともいま局長も触れましたが、鉄の場合は一〇〇%海外からの輸入ですよ。アルミの場合もほとんどそうでしょう。非鉄金属はほとんどそうです。そういう状態の中で、私は現在の鉱山保安法で採鉱をやっていて、これに付帯した製錬所だけを規制しても、これは全くしり抜けだ。法律は鉱山保安法という、ていさいがいいかどうかは議論のあるところでしょうが、製錬所に対してやはり一括して何らか規制する法律をつくるべきではないかというふうに私は思います。大臣来ましたら、またここで申し上げたいと思います。  それでは、次にお尋ねしたいのは、通産省から、カドミウムの害が出ると予想される製錬所、銅、鉛、亜鉛というのは、カドミウムを大体伴って出る場合が多いわけでありますから、銅、鉛、亜鉛、これを製錬しております製錬所の表を出していただきました。私は、今国会の予算委員会の分科会におきまして、当時宮澤通産大臣も来たわけですが、東邦亜鉛が問題になった、銅、鉛、亜鉛を製錬している他の製錬所では問題ないのかと言いましたら、これはすべて点検して問題ないと当時局長さんは言い切ったわけですね。これは鉱山保安法対象のものは問題ないというふうに言ったのだろうと思いますが、しかし私は、先ほど申し上げたような理由からすれば、独立した製錬所も含めて当然通産省が点検をしておったはずではないか、かように思うわけなんです。当時の言明は、独立製錬所は除いて、付属製錬所のみを対象にして点検をして、心配はない、こう言い切ったわけなんですか。
  312. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 まことにこういう席で所管の問題を云々することは適当ではないかと思うのでございますが、鉱山保安局というものが、鉱山保安法のいわゆる運用という形においての仕組まれ方になっておりますので、当時の話は、すべて鉱山保安法により規制対象になっておるところというふうな意味で私申し上げまして、その点につきまして、ことばの足らなかった点は申しわけないと思っております。
  313. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 立地公害部長がお見えでありますし、成田審議官もお見えですね。同じ通産省であって、鉱山保安局の対象である、いわば鉱山保安法の対象である安中、そこが排煙によるカドミウム汚染が問題になったことは通産省も知っておったはずですね。とすれば、鉱山保安法の適用でない独立製錬所が八つありますね、銅、鉛、亜鉛、カドミウムを製錬している。同じ通産省の屋根の中で問題になったのですから、当然これについては私はチェックすべきはずだったと思うのです。この点はどうなんですか。これがわからぬなんということはないでしょう。
  314. 柴崎芳三

    柴崎説明員 お答えいたします。  先生御指摘の点、われわれの足らないところをつかれた点でございまして、まことに申しわけない次第でございますが、立地公害部の対象範囲といたしましては大気汚染防止法とそれから水質保全法という御承知の法体系でやっておりますので、たまたまカドミウムにつきましてはまだその対象物質として取り上げられておりませんし、また指定地域にもなっていないということで、われわれとしても非常に手抜かりがあったということを御説明させていただきたいと思います。
  315. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私はいまのような御答弁、非常に残念だと思うのです。確かに法律の体系からいけばそのような御答弁があったってやむを得ないでしょう。しかし、同じ通産省の中で、鉱山保安法適用の製錬所、これは鉱山保安法適用の製錬所だけは公害があって他はないという区別は何もあるわけじゃないのですから、全く同じ製錬をやっておったところが問題になったわけですから、当然通産省、特に鉱山石炭局が非鉄金属の生産については所管しているはずなんですから、鉱山石炭局として安中で問題になったようなものは問題になるんじゃないかといって、当然私はチェックするなり調査するなり、そういう責任があると思うのですね。私はそういうことじゃ話にならぬと思うのです。  成田審議官おられますね、どうなんですか。
  316. 成田寿治

    成田説明員 お答えいたします。  安中で問題になったときに、当然三日市も同じ調査をやって万全の措置をとるべきであるというのは全くそのとおりでございまして、ただ、安中が、これは法律問題になって申しわけないのでありますが、鉱業法なり鉱山保安法の対象になっている付属製錬所であり、三日市が独立製錬所であったために、その取り扱いが三日市製錬所に及ばなかったという事情は、いまから見ると非常に遺憾に思っております。  それで鉱業法の体系は鉱害という鉱山のほうからとらえた体系でありまして、公害問題が大きく社会問題になっておる現在から見ますと、鉱業法の体系がはたしていまの時節に合った体系になっているか、非常に問題のあるところであります。そして鉱山保安法は鉱業法を前提にして鉱業所をとらえておりますので、そういう関係から現在の鉱山保安法の対象からはずれる、そういう情勢になっておりますのは、われわれも、鉱業法なり鉱山保安法を、特に鉱業関係公害対策が非常に大きな問題になっている現在、時節に合ったものに早急にしたい、これはおくれて申しわけないのでありますが、早急に取り組みたいと思っております。
  317. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私の聞いておるのは、何も法律の解釈を聞いておるわけじゃないのだ。とにかく同じ通産省の中で、こういう問題があった、類似の問題があれば、当然通産省公害防止に熱意があるとするならばそれに取っ組んでいなければならぬはずではないのか、そういった責任通産省にあったではないか、こう聞いているのです。この問題は大臣が来てから聞くべき問題だと思いますので保留しておきましょう。  さて、そこでお尋ねしますが、あと細谷委員がお尋ねすると思いますが、三池にあります三井鉱山ですか、ここでも最近カドミウムが問題になりましたね。ですから、この前一切心配ないと言ったのですが、どうもそうでないようだ。この付属製錬所並びに独立製錬所すべていま完全にチェックをしていますか。調査をしていますか。
  318. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 付属製錬所につきましては、多いところではほとんど毎月のように、あるいは場所によりましては二カ月おきといったように、定期ないしは臨時に具体的項目をきめてやっておりますし、また、総合的に各関係の市、県、こういったところと共同の調査というふうな形でやっております。
  319. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 独立製錬所はどうなんですか。
  320. 成田寿治

    成田説明員 独立製錬所につきましては、従来非常に手落ちなんですが調査をやっておらなかったのですが、今回の事件を契機としまして、六月三日の通達によって各通産局長あてに独立製錬所の状況あるいは保安上のいろんな問題を早急に調査を命ずる指示をしたわけでございます。
  321. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 資料で見ますと、秋田の同和鉱業の小坂ですか、それから岩手県の宮古にあるラサ工業、秋田県の秋田にある三菱、香川県の直島にある三菱、大分県大分の佐賀関にある日鉱、それからあとで問題になるでしょうが福岡県の三池にある三井等は相当カドミウムを生産しておりますし、亜鉛の生産も多い。当然これは問題になり得る地域じゃないかと思いますので、こういう地域についても厳重に調査をいたしまして、当委員会が終わったあとでまたそういう地域にカドミウム公害が起きたというようなことのないように、これは強く要請をいたしておきたいと思います。  さて、そこで厚生大臣にお尋ねしたいのですが、昨年厚生省は鶯沢、安中、対馬の三つを要観察地域として指定をされた。そして今回また黒部を指定されたようでありますが、厚生省の場合は、鉱山保安法の適用の独立製錬所か、そうではない付属製錬所かという区別はないわけですね。で、鶯沢、安中、対馬が問題になった。そして特に安中は排煙が排水とともに問題になった。こういう事実があったわけです。とすれば、当然昨年の時点で厚生省としては、安中製錬所と同じような性質で、しかも、安中が亜鉛、カドミウムについては日本一ですが、日本第二はどこかといえば、これは黒部にあるいま問題になっている三日市製錬所なんですから、日本第二で、しかも東邦亜鉛と同じような性質の製錬をやっておる黒部について、当然鴬沢、安中、対馬に次いでその時点で調査をすべきだったと私は思うのです。そのころ調査をしておったのですか、してないのですか。しておったとすれば、その状況は一体どうだったのですか。
  322. 内田常雄

    ○内田国務大臣 足りない点は説明員から答弁をさせますが、山口さんおあげになったほかにもう一つ大分を要観察地域にいたしておりまして四つあります。今度の三日市につきましても、それらとの関係におきましてすでに昭和四十三年の当時から通産省にはすべてのカドミウム関係の製錬所の照会をいたしましたが、翌四十四年、昨年には各都道府県につきましても同じ照会をいたし、それに対する調査状況等も照会をいたしましたところが、昨年の何月でございましたか、富山県当局から、この三日市製錬所のあること、そこでカドミウムの生産回収を行なっていること、それについて調査を行なっている報告がございました。しかし、その状況を調べてみますと、その調査方法等もまことに不完全でございますので、厚生省からは、かねてから定めておりますところの暫定対策要綱といいますか、それによる調査等を指示して今日に至っておった。しかし、今日までの間、この五月までの間に、県の調査の結果、特に要観察地域にしなければならないような状況は県から報告されておらなかったということが実情でございますが、わがほうではこれには関心を払ってまいりました。
  323. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうすると、富山県に依頼をして調査をさせた、厚生省独自では特に調査をするということは全くしていなかったということですね。
  324. 城戸謙次

    ○城戸説明員 カドミウムの調査でございますが、これは水銀もそうでございますが、私どものほうで全部やるということは不可能に近いわけでございます。それで私どもとしては、水銀及びカドミウムそれぞれ暫定対策要領を示しまして、そのルールに従って調査をやっていただいておる。富山の場合もそれによりまして昨年度調査をいたしたわけでございます。この方法は御承知だと思いますが、どこを選ぶかということで一応のめどをつけました上で環境の汚染調査をやります。汚染調査で水なり米なりの汚染がある程度ひどければ、それによって環境汚染の精密調査を行なう。それからさらに一日当たりのカドミウムの摂取量の調査を行なって、それからさらにその段階で要観察地域に指定いたしました上でその住民の健康調査を行なう。数段階に分かれているわけでございまして、私どもは、環境汚染調査で精密調査を行なう段階で当然厚生省に報告していただく、かような線で県を指導しているわけでございまして、富山県の場合、全く問題がないという前提で推移しておるということを私どもは考えたわけでございます。この点を今後県を指導いたします場合、そのやり方等につきましてさらに手落ちのないように連絡をとりながらやってまいりたい、かように考えております。
  325. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いまの御答弁ではどうもちょっと受け取りかねるのですが、その理由二つありますよ。  一つは、三日市製錬所が問題になった。安中と同じ性質の製錬をやっている。当初厚生省は、神通川の場合排水が問題だったものですから、排水だけ調査しておったのですね、四つ要観察地域にいたしまして。大分の例を落として失礼いたしましたが、それも含めて排水ばかりやっておった。ところが、私が国会で排煙が問題じゃないかと言った。それからあわてて排煙に取り組んだわけですね、厚生省は。そういう経過もあるわけですから、当然この東邦亜鉛と同じように、排水は問題であるが、排煙が問題になる。そして東邦亜鉛が日本第一の製錬所であり、この三日市が日本第二の製錬所なんですから、当然、そのほかのほうは県にまかしてもいいでしょう、しかし安中類似の製錬所であり、しかも二番目に大きいというものは、同じものに、同列に扱うのじゃなくて、積極的に厚生省としても、県にまかせるということだけでなしに、調査するくらいの私はやはり熱意と積極性があってしかるべきだったのじゃないのか。この三日市の製錬所がうんと小さいものなら別ですよ。そうじゃないのです。第二番ですから。そういう点はどうなんですか。そういうことは考えも及ばなかったのですか。
  326. 城戸謙次

    ○城戸説明員 いま御指摘のような点、確かに私どもとしましても認識が足りなかった点は認めます。ただ私どもとしまして、たてまえはあくまで県を通して問題点をそのつど連絡してもらう、こういう一つの組織を通していきませんと、どうしても問題を起こしますので、そういう県を通しながら、さらに予算の許す範囲内でできるだけ広く今後調査いたしたいと思っているわけでございます。
  327. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 県を通すというふうに言っておられましたね。安中の場合は鉱山保安法適用ですよ。片一方は鉱山保安法適用じゃないくらいのことは厚生省も知っておった。とすれば当然そういう面から考えてもよかったじゃないですか。
  328. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 いま御指摘のありました点は、私どもは鉱山保安法の適用以外の製錬所ということは、事実上そういうことは気がつくべきでございましたが、通産省の書類にどうも載っていないなということで問題が起こって始めて気がついたというようなことでございましたので、この点は申しわけないと思っております。
  329. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いまの御答弁を聞きましたり、それから騒音防止法は厚生省だが、飛行機の場合は運輸省関係しておるとか、それから水質保全法は経企が担当しておるとか、あるいは鉱山保安法は通産省だ、各省ばらばらですね。そして肝心の厚生省もこの三日市製錬所が鉱山保安法適用の事業所でない、通産省の名簿に載っておらぬというのでおかしいなというような程度の認識だったということは、公害がこれだけ問題になっておるにもかかわらず、当委員会でも問題になったと思いますが、やはり行政一元化というものが全くなされていない、ばらばらだというところが、今度の三日市の製錬所の問題がこんなにひどくなってから問題になるというような遺憾な事態を起こした原因ではないかと思います。そういう点では委員長において行政一元化の面で対処をいただきたいと思いますが、厚生大臣もこういう点については非常に遺憾だと思っておられるのじゃないかと思いますが、いまの点についての大臣の所見を承っておきましょう。
  330. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは私は始終このことを感じておりますが、二つの面がございます。  一つは行政が多元化しておりますのを、かりに厚生省に一元化して集めますと、便利の点もございますが、これの防除対策といいますか、公害の排除対策など実力をもって行ないます際にしばしば先ほどからおことばがございます鉱山保安法にいたしましても、あるいはまた鉛の公害等に関連をいたしまする道路運送車両法などにいたしましても、そういう法律を動かしながら企業に対して実力を持っておりますのは通産省であり、あるいは運輸省でございますので、私は常々こういうことも言っておったのですが、通産大臣にも厚生大臣になったつもりでやってくれ、運輸大臣にしてもまたしかり。また違ったことばで申しますと私どもと二人三脚で公害対策をやるのだということを言うのでありますが、私どもは形式的に権限を集めてみますると、ことばは悪うございますが、各省みな肩の荷をおろしたようなかっこうでみな厚生省がやるのだ、こういうことにもなりますので、要は各それぞれの担当の機関がどれだけうまく連携をとっていくかというところにあることも、私は自分が厚生大臣として権限を集めたいというような気持ちだけになれない、そういう面が実はございます。ただし、いまの総理府総務長官がおらぬのですが、それらの各省の関係機関を総理府に集めてやられるということは、通産省としても厚生省の言うことは聞きにくい。経済企画庁にしても、それは運輸省にしてもみな独立の省だから聞きにくいが、総理大臣の下の総理府というところにみな集まってこいということならば、みなそれぞれ各省やりやすいというようなことでああいうことになっておるのじゃないかと思うが、これは私に言わせれば座敷を貸すだけで、それだから実効が上らない。座敷は厚生省で何ぼでも貸すので、そういう意味の貸し座敷業を厚生省にやらせるぐらいのことはやらせてほしい。それからその他にも、私のほうなりどこなりにまとめたほうがいい権限もありますが、まとめないで各省協力してやったほうがいいということも感じます。  もう一つは、これは私どものほうでいろいろやりたくても、何にいたしましても人手が、外へ言うことじゃございませんが足りない。公害部にいたしましても公害課長と庶務課長と二人で、カドミウムの問題で、先般富山でも問題が起こりましたときに、出かけるべき技術者は対島に行っておらぬ。帰ってこないと課長補佐も出せないという状況がありまして、比較的早くは出しましたが、何にいたしましても組織が足りないということで、私は、山口さんも御承知のように、全省をあげて公害部に応援体制をつくれということで、かりに対策本部といいますか連絡協議会のようなものをつくって、現在臨戦体制厚生省としてもとれということでやらしておるわけでありますが、その辺は、今後の課題もありますので、おことばがございましたように、権限をまとめたり、また協力したりする仕組みをうまくつくってまいりたいと思います。
  331. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 総理府に交通安全の問題を一元化するというような意味での行政一元化を私は言っておるのではないのです。当然、いま言った企業に対しても立ち入り権限もある、それからまた、場合によっては操業停止もできるというような、鉱山保安法で持っておるような権限も、やはり公害省なら公害省というものをつくってそこが持つというぐらいの意味での公害に対する行政を強化すべきだという趣旨で私は申したつもりであります。交通安全を総理府の一つの室にまとめたような、そういう程度のものを厚生省にまとめてみたところで、これはまた意味がない。監督権限を持った、そういった意味での一元化というものがなくては、問題は解決しないだろうというつもりであります。そういうことは産業公害の特別委員会でもまた御議論——いままでもあったでしょうし、これからもあるべき問題だと思いますから、ここでは私の考えだけを申し上げておきたいと思います。  そこで、こまかい点をお尋ねしますが、昭和四十三年度産米に三・〇PPMのカドミウムが検出された。それから四十四年度産米では、本年の三月、一四・九PPMのカドミウムが検出をされた。昨年の昭和四十三年度の三・〇PPMのカドミウムの量も、要観察地域に指定をされました地域の米に含まれるカドミウムの量と比較した場合に、当然もう昨年これは問題だ、昭和四十三年度産米ですでにこれは問題ではないかということが当然予見されてしかるべきだったと思うのですが、どうですか。鶯沢、安中あるいは対馬、それからさらに奥岳川、そういうものと比較してもそうじゃありませんか。
  332. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ちょっといま聞き漏らした点があるかと思いますが、米の中のカドミウムでございますが、これは私ども四十三年度産米だけをいただいておりまして、四十四年度産米につきましては分析中ということで報告を受けておりません。
  333. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 新聞によれば、「県では昨年十一月、同じ地区でとれた四十四年度産米から試料十五点を採取してひそかに分析を進め、去る三月末には」だから本年三月ですね。「その結果を得ていた。それによると、最も有毒なカドミウムが最高六PPM、平均で二・四五PPMも検出されており、」こう書いてありますね。ですから、当然四十四年度産米、三月末には県も結果を得ておったのですから、暫定対策要綱で厚生省が指示して調査もさせたのでしょうから、その報告は県から来ておらなかったのですか。
  334. 城戸謙次

    ○城戸説明員 いまの報告でございますが、これはあくまで県が調査したものの報告でございます。四十三年度の米につきましては報告をいただいておりまして、平均一・三一PPM、〇・七六ないし二・〇〇PPM、平均値で比べますと従来の最高値でございますし、最高値のほうでも、従来の一番高かった神通川をこえている。いずれも神通川の最高値をこえている相当な汚染の水準だ、かように判断をしております。ただ四十四年度はまだ報告をいただいておりません。  先ほど先生が並べましたのは、おそらく土壌中のカドミウムのほうだと思いますが、これは米のほうとうらはら関係があるわけでございますが、四十三年度は平均三・〇〇PPM、四十四年度は平均一四・九PPM、四十四年度が非常に高くなっております。ただ四十三年度はいろいろの検査の関係で四検体しか正しいものをとれなかったということで、四十四年度十七検体にくらべますと、いささか不安定な数字だと思うわけでございます。この一四・九PPMというのは、平均値では従来の最高値群馬に次ぎますし、最高値では、従来の最高値はやはり群馬でございますが、これをこえているというような相当の高い汚染の水準である、かように考えております。
  335. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 先ほど私が申したのは項を見間違えておりまして、土壌ですか。土壌にしろ米にしろ、高いわけですね。したがって、四十三年度の水田の土壌の試料が平均で三・〇PPM、非常に高い。それから四十三年度産米についても平均で一・三一PPM、非常に高いわけですね。とすれば、四十三年度の産米の土壌の報告はいつ厚生省に来ておったのですか。
  336. 城戸謙次

    ○城戸説明員 これがまことに私ども残念だと思っておるわけでございますが、四十三年度の試料というのは、実は市のほうで調査をしまして、その分析を県の衛生研究所に委託したものでございます。その結果は、県のほうは相当早い時期にわかっておりまして、むしろこれを前提としまして、その後四十四年度の調査をやったわけでございますが、私どもとしましては、その段階では何ら報告を受けておりません。したがって、その後の調査が全部わかって、いろいろあれもこれも問題があるというはんぱな数字が出てから初めてこちらに報告を受けた、そういうことで完全な調査の時期を失した、かように思っておるわけでございます。これを知りましたのは、この全体が報告のありました時期と一緒でございまして、四十三年度を切り離して報告を受けた、かようなことにはなっておりません。
  337. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 とにかく県がそういう資料を持っていながら、住民に隠すこともけしからぬわけですが、厚生省にすら隠しておって報告せぬということは遺憾だと思います。これは厚生大臣のほうから各官庁に対して、そういうことがあってはならぬという指導を厳重にやっていただきたい。これが第一であります。  あと、時間でありますから、いま一つお尋ねして終わりたいと思いますが、農林省が来ておりますからお尋ねしたいと思うのです。  作付をやめろという指導を県がやりました。その損害に対する補償を一体どうするのかということが問題だと思います。先ほど農林省のほうで、何とか農民に不利にならぬような云々というようなことを言っておりましたが、一体この補償はどう考えておるのですか。結局、いま進めております減反に対する国の補償、それで考えるのか、あるいは農業共済によるところの共済金でもって手当てをしようとしておるのか。そうではなくて、本筋は、そういったのは明らかに三日市製錬所のいわゆるカドミウム汚染による害のためにこういう遺憾な事態になったのでありますから、当然この場合、企業が全額この補償を見るというのが私は正しいと思うのです。そういう形で農林省はあくまでも対処をするつもりなのか。また、そういうことになれば、企業を監督しておる通産省のほうにも関係がありますし、今回成立いたしました法律による調停というようなことも問題があるかと思いますが、ともあれ、この損失については一体どういう形で補償すべきものだというふうに考えておるのか、この点ひとつ明確に答えてください。
  338. 上田克己

    ○上田説明員 ただいま行なっております米の生産調整の補助金を出すか出さないかという問題につきましては、水稲の作付が可能である水田で、そこでその水稲の作付をやらないというものに対して補助金を出す、こういうたてまえでございます。  そこでこの場合、七十町歩ほどの水田の中で二町歩足らずですかの水田が生産調整に入っているようでございますが、このたんぼがただいま申し述べました条件に当てはまるのかどうかということにつきまして、いま直ちに判断しかねるところがございますので、県庁等とも十分打ち合わせをいたしまして、詳細な事情を調べました上で交付するかしないか決定いたしたい、かように存じております。
  339. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 そうしますと、先ほど御答弁になったように、決して農民に不利にならないように考えたいというようなことは、この生産調整でもって処理する、それだけでは私は不十分だと思うんですね。それに対して足らず前を企業に出させて完全に補償するという考えなのか、そうではなくて、生産調整なんということは考えずに、ずばり企業責任というかっこうで処理するのが本来だと農林省は考えるのか、一体どっちなんですか。
  340. 上田克己

    ○上田説明員 ただいまのお答えがやや不明確であった点をおわびします。まず、国が生産調整の補助金を出して、なおかつ足らない分を企業から補償させるという意味で申し上げたのではございませんので、まるまるを企業が補償するのかしないのか、国がまるまる補助金を出すのか出さないのか、そういうことを今後十分事情を検討した上で決定いたしたい、かようにお答えしたわけでございます。
  341. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 厚生大臣がおりますが、やっぱり私はそういうものは閣僚として判断すべき問題だと思うのですが、これについては厚生大臣として企業責任できちっとやるべきだというのが筋だと私は思うのですよ。これについて私は大臣としての考え方をはっきり聞いておきたいと思うのです、大臣が一人しかおらぬから。
  342. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私がお答えすべきでもないことかもしれませんが、先般山口さんからもお話が出ましたような紛争処理法ができましたので、あの紛争処理法の体系ということが公式論でございましょうけれども、実はこれはよけいなことでございますけれども、先般私は会社の当局をも厚生省に呼びまして、そういう場合の会社の心得を一席きつく訓示いたしておきました。そういうことは大いに影響のあることだと思いますので、きょうのところはそれだけのお答えにさせていただきたいと思います。
  343. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 また参考人で社長も出てくるでしょうし、当然また議論もされることだろうと思いますから、やめておきます。  ともあれ農民が絶対に損はせぬということを責任をもってやることが必要だし、同時に、企業責任を明確にすることが必要であるという趣旨をこの際強く申しまして、質問を終わっておきたいと思います。
  344. 加藤清二

    加藤委員長 山口鶴男君に申し上げておきます。  あなたの要望でありました宮澤通産大臣質問のお預けが三カ所ございましたが、いまだに御出席がございません。やむを得ませんので、明後日委員会のおりにその答弁をしていただくことにいたします。  次は細谷治嘉君。
  345. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、先週の土曜日、私の住んでおります大牟田地区でかなり多量のカドミウムが発見されましたので、それを中心に御質問をいたしたいと思うのでありますが、そのまず前提として、国民の生命をあずかる厚生大臣にお聞きしたいのであります。  岩波から出ておる「科学」という雑誌がございます。昨年の六月号と七月号と八月号に、岡山大学の小林教授がイタイイタイ病の原因の研究第一報、二報、三報と、非常に苦労された今日の公害の文字どおり問題点指摘された論文がございます。これをお読みになったかどうか、まずお聞きします。
  346. 内田常雄

    ○内田国務大臣 率直に申しまして私は読んでおりません。それは実は私がこの職を受け持ちましたのがことしの一月の途中からでございますので、ただいまお話しの出版物が昨年のということでございますので、当時私がおらなかったわけでありますが、それはさっそく私は取り寄せて読んで見ましょう。まただれか厚生省の中の者にも読ませたいと思います。
  347. 細谷治嘉

    細谷委員 公害部長、専門だから読んでおるか。——橋本さん読んでおるか。
  348. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 おおよそは御本は全部目を通しております。
  349. 細谷治嘉

    細谷委員 担当の課長はおおよそ読んだそうでありますが、どの程度読んだかあと質問したいと思います。  きのうのある新聞に、GNPが西ドイツを抜いて自由世界第二位になった、こういうことで日本政府は自画自賛しているけれども、実はGNP世界一なんだ。そのGNPというのはグロス・ナショナル・プロダクトではなくて、グロス・ナショナル・ポリューションだ、国民総汚染だ、こういうことを書いてあります。大臣これをお読みになりましたか。
  350. 内田常雄

    ○内田国務大臣 残念でございますが、それも読んでおりませんが、私は実は昨日朝早くから——私が実は日本じゅうを見て回りましても私によくわかるわけではありませんが、厚生大臣の私が率先して公害状況を見て回るということが、部内の士気あるいは政府全体の公害対策姿勢にも影響あると考えまして、朝早くから夕方おそくに至るまで、その公害の、文字ではなしに実際の状況を視察いたしておりましたので、ついそれは見落としました。
  351. 細谷治嘉

    細谷委員 きのうの新聞に、柳町の鉛汚染が問題になったので、厚生大臣は見に行った。たった十五分だ。文字どおりかけ足だ。その前に東京都の都議会の議員が見に行った。これが二十分だ。責任者である厚生大臣が十五分で新記録をつくった。こういうことがいわれておるわけですけれども、どうも私は、いま私が具体的に三つばかり質問したのでありますけれども、厚生大臣の取り組み方というのが、真剣ではありましょうけれども、きわめてやはり足らない、あるいは空転している、こういうふうに申し上げてもよろしいんじゃないか、こういうふうに思うのであります。  そこで、いま私が「科学」という雑誌、これはイギリスの「ネイチュア」という雑誌に匹敵するくらいの総合科学雑誌といわれておりますが、それを読んでみますと、どだい厚生省はあっちこっち全部は手は届かぬでありましょうけれども、全く後手後手ですね。そして大臣がいらっしゃらないときに質問者のほうからお聞きしたところが、それはまあとても厚生省だけでは手が届かぬから、各県に委託してやらせている、こういうふうにおっしゃっております。ところが、あと質問いたしますと——大牟田川、有明海の汚染について福岡県の委嘱を受けてやりました松本という久留米大学の助教授の文章があります。これはこういうふうに書いてあります。現在のようにアルバイト料と消耗品代に基づいた委託形式では、私学においても出血サービスを余儀なくされるのであって、長期にわたって技術者を確保できるよう予算をお願いしたい、こう書いてあります。小林教授はこのイタイイタイ病の原因を究明された大黒柱の一人であります。私は、イタイイタイ病の原因を究明された有力な柱としては、萩野博士と小林教授をあげるのにどなたも異議がないと思うのであります。その小林教授がこの研究に取り組んだのは金がなくて、どこからきたかというと、アメリカからもらってきたのですね。アメリカからきているのですよ。一九六一年アメリカから研究費をもらってこの問題に取り組んだ。しかもアメリカのほうでは、この研究費をこのカドミウムの人間生理に関する影響を調べる場合に、きわめてシビアな検査をした結果、小林教授がその研究費をもらったのですね。このイタイイタイ病は業病といわれて、一度病人が出たら娘は結婚することができない。いわゆるらい病扱いみたいなものですね。あそこの血筋は悪いぞ、結婚してはだめだ、こういうように業病扱いされてきた。この原因が科学の力で解明されたわけですね。そのそもそもの発端はやはりよそからもらったり、私学に赤字を強要したりしておる。こういう状態では、私は今日の公害問題を解決することはできないのではないかと思うのです。これについてひとつ大臣いかがですか。
  352. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これだけ国土全体に公害の問題が広がってまいりますと、それに対応する私どものほうの人員の組織にいたしましてもとうてい足りないことにつきましては、先ほど政府のほうから答弁ですか泣き言かがあったようでございますが、それもそのとおりでございますし、また学者のこの問題に対する取り組みに対する研究費などの予算などにつきましても、私は細谷先生と同じように、まことに残念で、もっとふやすべきだと率直に考えるものでございます。いわんや外国から研究費をもらって研究するというようなことはまことに情けない次第でございますので、微力ではございますが、公害に取り組む体制として、そういう学者の研究費なりあるいは私どもなり地方なりの組織の充実につきましてもできる限りの努力を私はいたしてまいるつもりでございます。  なおまた、私の柳町視察につきまして時間が短かったというお話でございますが、君子は危うきに近寄らずということでのがれているよりも、私は何といわれても行ったほうがよろしいと思いまして、東京都内や千葉や横浜や川崎のほうを見ました。それと同じように、とにもかくにもあちこちに行ってみました。行ってみますと、十五分くらいでは足りない、二十分いたらいいということではございませんで、私は状況を見てまいりましたし、それよりも関係者に非常に激励になったと私は考えております。同じ時刻より少し前に私どものほうからも人を出しまして、東京都また他の通産、運輸の各省からも人を出しまして、あそこの対策につきましてはこれは十五分ではなしに、何時間かかかる長い協議も別な場所でさせておったわけでございます。微力ではございますが、ただいまおしかりがございましたような点について私も同様な感じがいたしますので、できる限り努力をしたりさせたりするつもりでおります。
  353. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、けさからずっと質問を聞いておりまして、どうも厚生省態度が、公害問題について原因が明確になっているにかかわらず、企業責任を明らかにすることができない。厚生省すらできないわけでありますから、いわんや、ということばはどうもおかしいのでありますけれども通産省においておや、こういうかっこうになる。こういうことばを私が言うこと自体が不謹慎であり、おかしいのでありますけれども一般的に言えばそうであります。  ところで、私がこの公害問題を見てまいります場合に、あすも論議されるでありましょうが、水俣病の際には熊本大学なりあるいは当時の水俣病院の院長等の献身的な自己犠牲の研究成果というものが水俣病を解明できたわけですね。ところがその過程において、国立の熊本大学は、東京の有名な大学から、何のいなか大学がということでやられたのですよ。そうでしょう。その東京の大学というのはどこかといいますと、公害問題の本を書いております東京工業大学の清浦雷作という教授がいなか大学の熊本大学の医学部は何をやっておるんだい、原因はそんなものじゃない、えたいの知れないアミンではないか、こういうことを清浦教授が言っておる。  イタイイタイ病の場合も萩野博士なりあるいは小林教授等が努力している際に、神岡鉱山のある岐阜県、その岐阜県の県庁所在地である岐阜大学の館という教授が妨害したのです。とてもじゃないが、カドミウムなんという鉱毒説なんてない、それはおれの実験で明らかじゃないか、こういうことで、一たびはカドミウム説も葬り去られたのです、学界では。そうしてこの館教授のもとで研究をしておったのはだれかといいますと、神岡鉱山で研究した人たちであることがはっきりしたでしょう。  こういうことを考えてまいりますと、企業も学者を動員して、公害の原因追及をじゃましておる。それにどうもやはり厚生省がしゃんとした姿勢がとれない、こういうふうに私は思うのです。この「科学」という本を見ますと、責任者である橋本課長が、いや、イタイイタイ病の訴訟なんというのは、解決のつかない十年戦争だということばを言ったとか言わないとかいうことが書いてあります。でありますから、水俣病の問題も、先ほど大臣はたいへん声が大きくなりましたけれども、どうも問題がはっきりしているのにはっきりできない、こういうことだと思うのですね。ですから、最近未来論がいろいろ書いてあります。最近出たものは「日本の挑戦」、この人も言っておりますよ。日本はおそろしい国だけれども、またおそろしい人類破滅のコースをたどっているのじゃないか、こういうふうに書いてあります。こういう態度はやはり厚生省の中立的な態度でないと思うのです。私はやはりあくまでも厚生省は中立的な科学に基づいて公害行政をやっていくということでなければならぬと思うのでありますが、大臣どうなんですか。
  354. 内田常雄

    ○内田国務大臣 御激励やらおしかりやらのおことばがございました。また細谷先生いろいろ御研究をなさって、学のあるところを御披露をいただいたわけでありますが、しかし私は、厚生省に職を奉ずる者といたしましても、決して企業寄りの立場はとるまいと考えております。  また、いろいろ御批判がございましたが、水俣病にいたしましてもあるいは富山県の神通川のイタイイタイ病にいたしましても、これはそれぞれ水銀なりカドミウムによる公害だと勇敢に認定したものは、ほかでもない厚生省であったはずでございまして、決して俗論に流されたわけではないように私は思います。  また先ほど私の声が大きくなってたいへん失礼をいたしました。これは島本先生からたいへんな攻撃をいただきましたもので、私のこれだけの誠意がわからないかというつもりで申したのでありますが、私の申すことをぜひ御注意をしていただきたいと思いますが、私は常に何らか厚生省の正しい立場、また公害というものの処理については、その被害者寄りの解決をすべきだというような、間接ではございますが、先駆的のような意味のことも実は述べておるのでございまして、先ほどおしかりをいただきましたり、また私からいたしますと残念な誤解を受けたことなどにつきましても、私は、ある意味からは、おまえしっかりしているが、もっとしっかりしろと、こういう少し御激励をさらにいただきたいような気持ちでやっておりますこともぜひお認めいただきたいと思います。
  355. 細谷治嘉

    細谷委員 これ以上申しませんけれども、大臣、私が取り上げましたこの小林教授の論文を読みますと、園田さんがイタイイタイ病の原因はカドミウムだということをはっきり言ったのが厚生省公害行政の頂点であって、それから後退を続けておるということを、この人は言っておるのですよ。具体的に言っておりますよ。ですから、大臣、……。(内田国務大臣「私の着任前です。」と呼ぶ)着任前であろうと何であろうと、厚生省は後退しておる、こう言っておるのですから、これはもってひとつ反省をしていただきたいと思います。  そこで私は、本論に入りたいわけでありますけれども、どうも答弁をいただきますと時間がかかりますから、私が六月六日、福岡県が発表いたしました「昭和四十四年度の大牟田川河口海域におけるノリ等に関する調査結果」、これを申し上げますから、そのとおりであるかどうか、間違っておったならひとつ直していただきたいと思います。  調査期間は四十五年の一月から四月まで、事業主体は福岡県、分析は久留米大学医学部公衆衛生学教室、分析の結果はこうであります。板ノリの分析結果、平均値が、カドミウムが一・一六PPM、最高二・一五PPM、少ないところで〇・七〇PPMであります。鉛が、平均値が一・二六、そして〇・〇六から三・四九PPMの間にある。そしてカドミウムについては、八検体中一PPMをこえたものが三検体である、こういうことであります。一PPMというのはたいへんな量なんですね。それから河口の水の分析結果は、カドミウムが〇・〇二から〇・〇六の範囲であります。鉛が〇・〇一から〇・〇五の範囲でありまして、環境基準は〇・〇一でありますから、二倍から六倍までの間にカドミウムがあるわけです。鉛は、これは基準よりも少なくなっておるようであります。これで間違いありませんか。
  356. 内田常雄

    ○内田国務大臣 細谷さんが仰せられた全部の記録はございませんが、いまの浅草ノリから出たカドミウムの含有が、平均で一・一六PPM、最高の場合には二・一五PPMあったというようなことは、私が担当から受けております報告もそのとおりでございます。また大牟田川河口から六百メートルの地点における海水中のカドミウム濃度につきましても〇・〇一六PPMありまして、環境基準の〇・〇一から比べるとはなはだ高い。ノリの場合も非汚染地域のノリに検出される一般のカドミウム汚染度よりもはるかに高いということは、先生がおっしゃったとおり事実と考えられます。
  357. 細谷治嘉

    細谷委員 これは事実のようでありますが、このほかに何か測定しておりますか。
  358. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいまのは水のほうでございますが、大気中のカドミウムにつきましては、私ども常時環境大気調査というのをやっておりまして、大牟田市に行ないました結果では、立方メートル当たり〇・〇一マイクログラム以下ということになっております。ほかに福岡鉱山保安監督部の測定では〇・〇三マイクログラムないし〇・〇七マイクログラムということになっておりまして、いずれにしましても厚生省が暫定的な目安として示しております〇・八八マイクログラムないし二・九三マイクログラムという労働衛生の基準をもととしました数値から比べますと、低い数値となっております。ただ何も汚染がないところに比べますとやや高い、こういう部類だと思います。
  359. 細谷治嘉

    細谷委員 それだけですか。
  360. 内田常雄

    ○内田国務大臣 大気中にカドミウムを排出する際の排出基準というのがございます。これにつきましては厚生省が望ましい排出基準といたしましては〇・一PPM以下ときめております。ところが三井金属鉱業三池製錬所から排出されるカドミウムの濃度は、福岡県衛生研究所の調査によると、〇・二二ないし〇・七二PPMあるということでございますので、厚生省がきめております望ましい排出基準の〇・一に比べますと、二倍ないし七倍の高さがあるということで、私はこれは遺憾な状態があらわれておると考えております。
  361. 細谷治嘉

    細谷委員 それだけですか。
  362. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私が持っております資料は、それだけでございます。
  363. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 いまの御質問は、それだけかという御質問でございますが、環境大気調査につきましては、そのほかの金属成分もやられております。一部局地的に非常に鉛の高いところがあるということを私どもは注意をしております。そういうことで環境大気調査のデータは現在こまかく持っておりませんが、これはいずれ公表されるということでございますので、それだけかということに対してそれだけだとお答えすることは、正しくないことだと思っております。
  364. 細谷治嘉

    細谷委員 ノリと川の水をはかったんですね。そのノリの下に、川の水の下に土があるんですよ。それからノリはかわいたやつでありますけれども、なまがわきのものがあるでしょう。生ノリ、こういうものを測定しているでしょう。それはわかりませんか。
  365. 橋本道夫

    橋本(道)説明員 いまおっしゃった問題は、福岡県と大牟田市がやった調査でありまして、私どもが直接委託をした調査ではございません。そういう意味で私全部のデータを見ておりませんので、正確に先生の御質問に対してはどうもお答えできないのは残念でございます。何か本日速達がきたということで、簡単なメモが入っておりますが、そのメモの中には先生に十分お答えできるようなバックグラウンドデータを持っておりませんので、全部一度公式の資料を見てからお答えしたいと思います。
  366. 細谷治嘉

    細谷委員 これはほとんど全部の新聞にあります。一つの新聞にはこういうふうに書いてあります。「だが」——いま確認された結果ですね、それに「だが」と書いて、「問題の生ノリについては」、いまのは乾燥ノリでありますが、「「泥も付着していて、分析の対象としては適当でなかった」ことを理由に同衛生部は金属汚染結果の公表を拒否している。記者団の追及で「カドミウムは板ノリの約四倍、鉛などは四−十倍のデータが出た」と答えただけ。したがって生ノリのカドミウムの汚染は環境基準の八−二十倍にのぼることになるわけ。」こういうことであります。こういうことになりますと、乾燥する前の生ノリ、これはカドミウムを相当含んでおった。そして拒否しておる理由として、どろがくっついているからカドミウムが多く出たんだ、こういうものは発表するに価しないと記者団にも拒否しているわけですから、どろを測定しなければどうにもならぬでしょう。どだい委託した久留米大学の専門家が研究するのに、生ノリと乾燥ノリを比べる場合に、常識的に生ノリは生ノリらしく十分洗浄をしてどろがくっついていないものでちゃんと測定しているはずですよ。ところがあまりにも数字が多く出たからこれの発表を拒否したんではないか、こういうふうに疑問が持たれます。  もう一つは、どろは相当のカドミウムを持っているんじゃないか。先ほど山口委員質問したように、安中の場合のどろ、これが相当持っているわけですから、そのどろは相当なカドミウムを持っておる、こういうふうに考えなければならぬのであります。自分が委嘱した研究者をある場合には信用する、自分の都合が悪くなると信用しない。あるいは研究者のそういう問題ではなくて、事実どろがついておるような研究なら、これはこの研究全体が問題になりますよ。なぜこれだけ信用して、未発表の分を拒否しているのですか。おかしいでしょう。お答え願います。
  367. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私が知っておることを全部申し上げますが、いまお尋ねの点は県に調査をさせておりますが、県のほうに、おっしゃるようなことがあれば、これは私は今日の時勢に照らして適当でないと思いますので、そういうことはやらないようにということを申します。  なお、ただいま私のほうの公害課長が申しましたように、県のほうから速達の連絡もきておるそうでありますので、それをも見まして、お尋ねのような件につきましてそのとおりでありますならば、そのこともあらためてあすなりあさってなりお答えをさせたいと思います。
  368. 細谷治嘉

    細谷委員 県の村上公害課長はこう言っているんです。「ノリ原モの検出数値はドロもまじっているので板ノリと一律に論ずることはできない。」と、犯人はどろにしているわけですね。どろまでくっつけた生ノリを測定するそういう研究者が悪いと、これはその中に入っていますよ。そこまでいくんなら、なぜどろを測定しないのか。はっきり原因を究明しなければならぬでしょう。県がどろと言ったのは、いみじくも山口委員指摘した問題と密接な連関があるから私は申し上げているわけですよ。県の公害課長が言っているんですから、生ノリのほうはどろがくっついておったからよけい出たんだ、ですからこれは発表いたしません、こうきているわけですね。こんなばかなことありますか。部長、課長、どうなんですか。きょうきたやつ読んでないそうですが、この問題に触れておるかどうか、触れておるならあさって答えていただきたい。
  369. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいまの手紙の件でございますが、まだ私ども読んでおりませんから、いずれ読みまして内容をあさって御報告申し上げます。
  370. 細谷治嘉

    細谷委員 きょう秘密文書がきているそうですから、ひとつ読んでいただいて、木曜に私の疑問に対する答えができたらひとつしていただきたいと思います。  大臣、もう一つふざけた話があるのですよ。この県の報告の中に、なるほどカドミウムは二倍とか六倍あるけれども、平均は五倍くらいなんだけれども、これは板ノリです。板ノリなんというものは、大体イタイイタイ病になる量までとるためには、言ってみますと神通川は一日に米から〇・四四三ミリグラム食ったのだから、このノリのカドミウムは厚生省が示しているものの何倍もあるけれども、毎日毎日ノリを九十枚以上食わなければイタイイタイ病にならないのだ、ノリを八十枚以上食わなければ鉛の中毒は起こらないのだ、百二十枚以上食わなければ亜鉛による中毒は起こらないのだと、ちゃんと書いてあるのですよ、計算して。これはふざけた話ですよ。これをどう思いますか。
  371. 加藤清二

    加藤委員長 ちょっと答弁の前に、さっきの資料、これはあすでは早過ぎるでしょうから、研究の時間も与えますから、あさっての委員会にはぜひお答え願いますよう要請いたしておきます。
  372. 内田常雄

    ○内田国務大臣 細谷さんの御指摘になったようなことがよく言われるようであります。これは、たとえばチクロなどの場合もそういうことを言う人がございましたが、私はそのことばは適当でないと考えることはあなたと同じでございます。いやしくも環境基準とか、望ましい基準とかいうものを私どもがつくりました以上は、その何倍も連続して大量に食わなければ人体に害がないのだからいいのだというようなことを言われたのでは、これは私どものほうで環境基準をつくった意味がないという点からいいましても、それはいま御指摘のようなことで免れるということは適当ではないと考えますので、指導いたしたいと思います。
  373. 細谷治嘉

    細谷委員 さらに丁寧にこう言っているのですね、県の公害課の責任者が。九州では一世帯四人の勤労者の家族で一年間に五十枚か六十枚、農村では四十枚か五十枚のノリを買っているというので心配はない。一方、大牟田川河口地域についてもノリを大量に食べる習慣がない、だから基準の何倍もあったってへいちゃらだと、こういうことですよ。そうしますと、もうイタイイタイ病というものは四期か五期にならなければイタイイタイ病じゃないのだ、こういうことになりますね。もういつでも公害というものは病気になってからあとを追っかけていく。大臣は最近、公害は先取りしなければならぬ、こう言っておりますが、あと取りあと取りばかりやろうということを、この第一線の県の公害課の人が公然と言っているのですよ。これは問題があるでしょう。大臣いかがですか。
  374. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私の考えはただいま申し述べたとおりでございます。
  375. 細谷治嘉

    細谷委員 公害対策という以上は、大臣、先取りしなければならぬ。いままでは先取りするどころじゃなくて、あと取りばかりであったのですから、今後は先取りしなければならぬという大臣の基本姿勢、これが重要です。ところがこういうことではどうにもならぬのでありますから、ですから、私は少しことばが強かったのでありますけれども、県の責任者としてはまことにふざけた、しかも小学校の何年生かができるような算術で計算をして、一枚のノリの重さはこれだ、そうすると一枚の板ノリにはこれだけのカドミウムがある、だから九十枚以上食わなければだいじょうぶだ、こういうばかげた計算をしている間に、この公害問題に真剣に取り組んだほうが私はいいと思うのです。  そこで大臣、さっき山口委員が言いましたように、三池の亜鉛工場も乾式なんです。そういたしますと、これは河口の水、大気にはよそよりも多いけれども、とにかくカドミウムは含まれていることも確認された。排出されているところも、これもよそよりも多いということが確認されました。そのカドミウムは確実に蓄積されますね。どこに蓄積されるかというと、申すまでもなく川の底、あるいは畑の上、たんほの上、こういうところに蓄積されるわけですね。そうしますと、安中でも研究されましたように、米よりも麦のほうがカドミウムをよけい食う、野菜でもずいぶんよけいカドミウムを食う、そういうものが蓄積されるわけでありますから、これは呼吸器ばかりでなく、呼吸器と、そして消化器を通じて人体にカドミウムが蓄積されることは、やはり当然なことと思うのでありますね。しかも、この地域は干拓地域でありますから、四囲に野菜を供給しているところの野菜地域なんですよ。そうなってまいりますと、空から降ってくるカドミウム、工場から排出されるそういうもの、こういうものによって確かにノリと——この新聞にも、県の公害課長が言った。この川はかんがい用水に使っておらぬから心配はない、ノリは米ほどよけい食わぬから、このくらいあったって心配はないと、こう言っております。ですから安心しておりなさい、こういうふうにちゃんと新聞にも公害課長が語ったと書いてあります。安心はできませんね、これは。安心はできない。安中でもそうでしょう。神通川で起こったカドミウムと思ったところが、安中は空から降ってきたやつでカドミウム被害というのが起こってきているわけでありますから、しかも同じ仕事なんですね、内容は。この工場では月に七千トンから八千トンの亜鉛をつくっておる。月におおよそ十八トンから二十トンぐらいのカドミウムを現在つくっておる。こういう工場なんでありますから、安中とも三日市の工場とも同じなんです。そうなってまいりますと、なるほどかんがい用水にはこの川は使っておりません。神通川のように大きな川ではありません。言ってみますと、大牟田川といいますが、小さな川でありますが、それだけに工場から排水が来るので七色の川といわれております。たいへんな汚染で、これは指定されておる川であります。でありますから、かんがい用水などはしておりませんけれども、そこから流れてカドミウムというのが蓄積する。ノリばかりじゃなくて、魚にも蓄積するでしょう。有明海というのは貝が有名でありますから、貝にも蓄積するでありましょう。農地のほうでは米にも蓄積するでありましょう。麦や菜っぱにも蓄積するでありましょう。こういうことになりますと、——おそろしいことばかり細谷のやつ言っているといいますけれども、私はいままでの実例からいって考えられる問題についてあらゆる対策を講じておかなければならぬと思うので、そう申し上げているのです。ですから、こんな新聞で県の責任者が言うようなことでは、これはどなたも安心できないと思う。これについてどう思うのですか。
  376. 城戸謙次

    ○城戸説明員 ただいま細谷先生のおっしゃること、いろいろ聞いておりまして私感じますのは、やはりそれだけいろいろな方面からの汚染があるということが相当推定されるのでありましたら、米だとか野菜だとかそういう摂取するいろいろなものにつきまして調査を十分いたしまして、一日当たり摂取量はどれだけであるかということまで調査しますれば、それによりましておのずから危険であるかそうでないかという判断が十分できると思います。そうしませんと、断片的なデータではなかなかこれは判断が非常につきにくいと思うような感じがいたすわけでございます。
  377. 細谷治嘉

    細谷委員 この川は、御承知のようにすでに指定されております。そして水銀も流れておることは確認されております。その水銀はアセトアルデハイドをつくっておるわけではありませんから、有機水銀がないなんということは考えられません。今日では無機水銀も有機水銀に変化するということがはっきり確認されております。でありますから、水銀中風の危険にもおかされておる。水俣病の危険にもさらされておる。カドミウムの危険にもさらされておる。こういうふうに申さなければならぬのであります。これはたいへんなことですね。二重のパンチですね。  で、いま部長がおっしゃったように、単に河口の水、ノリを測った、だから安全だ。あんた方は貧乏人だから一日九十枚なんていうノリを食いはせぬじゃないか。むろん、だれでも九十枚なんて食いませんよ。栄養がありますけれども、食いません。ところが、それと一緒に測った、それよりもよけいカドミウムが検出された生ノリのほうについてはどろが入っておったから、だから発表を拒否するといっておる。どろが入っているなら、どろを測定しなければならぬでしょう。畑の土も測定しなければならぬでしょう。そこからできる農作物についても、十分な測定をしなければならぬと思うのですよ。こういう問題をきちんとやって、そしてやはりそこに住んでおる人たちを安心させなければならぬ。しかもノリというのは、この地域でできるものは一年間におおよそ七、八十億円になる。それによって生活をつないでいる人もたくさんあるのですから、これはやはりきちんとしなければならぬと思うのです。有明ノリなんという名前で出ておるのではないですよ。いまはあそこでできるものがみんな東京にきて、浅草ノリという名前で出ているのですから、みんな全国の人が食っているのです。でも、九十枚は食わぬから安全であるなんということはいけません、蓄積しているのですから。  そういうことでありますので、これについて部長は委託した分析結果はまだ足らぬ、もっと徹底的に調べなければならぬということをおっしゃったのでありますが、大臣、いかがですか。こんな報告ではだめです。簡単なこれだけのことでも不十分であります。しかも空気は発表しないわ、生ノリの測定値は発表しないわ、都合のいいのを二つだけ発表するという、こんなばかなことではいけません。はっきり全貌を明らかにしていただかなければならぬと思うのです。これについて大臣のお考えをひとつお聞きしておきたい。
  378. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私が知り得たところでも、あの製錬所から出るカドミウムの量というものが、今回きめられました環境基準のカドミウムの理想基準というものをかなり越えているということを私は承知いたしております。しかし、幸いにもあの川は指定水域にもなっているというお話でございますし、またこの製錬所が鉱山保安法の適用を受ける製錬所でもあろうと思われますので、鉱山保安法の活用によりまして、これらにつきましては水質汚濁防止法あるいはまた公害対策基本法の精神に沿いまして規制をしてもらうことを厚生省としても当然私は要求するものでございますので、私のほうからも、なおまた通産省その他の関係方面、県はむろんのこと、と十分協議をいたしたり、督励をいたして、そうして十分対策を講じてまいりたいと思います。
  379. 橋本徳男

    橋本(徳)説明員 大牟田川につきましてはすでに昨年以来カドミの問題があるというふうなことで、まず、この三井の製錬所に対しましては、監督局で昨年の二月、五月、十月ということで三回の調査をやりまして、昨年の夏、施設の改善命令を大々的に実は出しました。それの完成いたしましたのが大体ことしの一月でございます。一月に完成いたしまして、その後監督局で工場から出る水の質を調べてみますれば、〇・〇五ということで、これはもちろん工場を出るところでございますので、川ないしは海へ行きますればそれの五倍に薄められ、ないし海ではさらに十五倍に薄められるというふうなことで、排出そのものとしては監督基準に合致するというようなことに一応なっておりますし、それからまた煙等につきましても、先ほど厚生省から話がございましたように、監督の範囲内に最近においてはなっておる。しかし、先生おっしゃいますように、確かにこの周辺におきましてはいろいろなそういった問題も含んでおります。そのために、本年の二月から県、市、監督局、通産局、四者におきまして、総合的な調査対策をやるというふうなことになりまして、それぞれ分担をきめ合って、相互に資料を持ち寄り、相互に対策を立てていくというふうな形を実はつくったわけでございます。それで、どろとかあるいは野菜とか、魚介類につきましては、これは県のほうが専門でございますので、県で調査をしてもらう。それから工場側の監督については監督局でやる。それからさらにへどろの処理について、その四者会談におきましてどろをしゅんせつするというふうなことになりましたが、これが地元の漁民の反対に実はあっておりまして、まだ最終的な話はついていないようでございますが、企業側からそのしゅんせつしたどろの捨て場を提供させ、そしてどの地域からしゅんせつをしていくかということについて、現在県が中心になって漁民との話を進めておるというふうに聞いております。  それからまたこの四者会談でいろいろなデータを持ち寄り、一切のそういった外部への発表については、これは県がいわゆる住民の代表でもあるというふうなことで、県がすべてをとりまとめて発表するというふうな話し合いに実はなっております。  したがいまして、いまおっしゃいましたようなデータがまだ私のところにまで正式には実は入ってきておりませんが、なお、それでも工場等からの排出、排煙等について問題があるということならば、さらにこういった点につきましての指導改善は、もちろん法律に基づいてやっていく予定にしておる次第でございます。
  380. 細谷治嘉

    細谷委員 この工場は、言ってみますと原料は神岡から送られて、あそこは製錬所だけなんですね。言ってみますと、ちょうど安中の工場みたいなんです。対馬から原料を持ってきて製錬している、こういうことなんです。しかし、これは鉱山保安法の適用を受けておったわけなんです。同じ会社だからでしょう。  そこで、あなたのいまおっしゃった報告でありますけれども、どうも解せないですね。排出の量、そういうもの、それはひとつこの次までに出していただきたい。突き合わせしませんといけません。  それから、多量の水というけれども、大きな川じゃございませんから、薄まるとか——はっきりとこれに書いてありますように、河口の水の分析結果は二倍ないし六倍である。そして河口から遠のくにしたがってカドミウムが減っていくというのが分析結果なんですから、その資料を出していただいて少し突き合わせる必要がある。その漁連の人も、そういう関係者が全体的な公害対策を講じておるということは一言も言っていないのです。あなたの言った資料を出していただいて、私のこの質問は月曜日に若干残しておきたいと思います。きょうはここで一応休んでおきます。
  381. 加藤清二

    加藤委員長 この際申し上げます。月曜日ではなくて明後日でございます。
  382. 細谷治嘉

    細谷委員 わかりました。
  383. 加藤清二

    加藤委員長 それでは、細谷治嘉君の残余の質問は明後日に回しまして、次に移りたいと存じます。     —————————————
  384. 加藤清二

    加藤委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  ただいま出席を求めておきました公害防止事業団理事長原文兵衛君が見えておられますので、産業公害対策に関する件について原文兵衛君より参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  385. 加藤清二

    加藤委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  386. 加藤清二

    加藤委員長 質疑を続行いたします。多田時子君。
  387. 多田時子

    ○多田委員 厚生大臣にぜひお願いしたいところでございますが、お約束があるそうで、厚生大臣に対する質問を明後日に若干残しておきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  388. 加藤清二

    加藤委員長 厚生大臣は明後日出席願えますか。
  389. 内田常雄

    ○内田国務大臣 多田さんの質問に応じます。
  390. 多田時子

    ○多田委員 きょうは公害防止事業団理事長においでをいただきまして、ちょっと特殊のケースだと思われますので、おもに事業団のほうに質問をいたしたいと存じます。  先日、五月の二十八日でしたか、そちらに参りましてつぶさに現状を見てまいりましたし、また事情もいろいろと聴取をしてまいりましたが、意外と問題が大きく、また深刻であるということをあらためて認識をした次第でございます。御承知のように塩釜市内の水産汚水の問題というのは、ここ数年来スケソーダラを原料とするかまぼこ製品がたいへん急上昇をいたしまして、年間出荷額が八十億円ほどの大量生産ということになってまいったわけでございます。この大量生産に正比例しまして、この公害問題も大きくクローズアップされてまいりましたわけでございますが、何せこの水産加工事業というのは、いわゆる大企業ではございませんで、みなそれぞれ家内企業のような小さい企業が主でございます。そういうところから、この汚水問題も、家内工業のような小さい個々の企業ではこの浄化施設をつくるというわけにはいかないというわけで、その小さな企業が集まりまして、そして水産加工団地構想というものが生まれ、そしてぜひそういうものをつくろうということになって、その資金をたまたま公害防止事業団の融資でまかなうことで、これが具体化をされたわけでございます。ですから考えますのに、その目的といい、また発想といい、私はたいへんけっこうなことだと思います。海国日本でございますから、そうした水産加工の事業というものは日本の各地に繁栄していくであろうと思われますのに、こうした団地構想が生まれたことはたいへんけっこうなことだと思いますし、また公害防止事業団が昭和四十年に発足をいたしまして、おそらく初めての事業ではなかったかと思われます。そうした日本の水産加工事業の先駆を切って浄化施設を持った大きな加工団地ができる。そういうことで、それが成功すれば、水産加工事業の人々にとっては明るい話題となる大きな希望でもある。こういうことから、これがぜひ大成功で仕事が進められるというふうに心から祈るような気持ちで私はその場を去ってきたわけでございますが、その目的に反しまして、現在はその水産汚水公害防止施設というのは全く名ばかりで、むしろその浄化施設そのものが公害の発生源になってしまうというような、最初からそういう目的ではなかったと思いますけれども、現実はそういう状態になってしまって、付近一帯のノリ養殖あるいは漁民の怒りを買っておる。また漁業組合の人々もたいへん不安のどん底におちいっている、そういう状態になってしまったわけでございます。  問題は、その水産加工センターの心臓部ともいわれるその浄化施設の問題でございますけれども、これの原魚の汚水浄化装置が昭和四十四年一月に公害防止事業団から市が譲り受けた時点でもうすでに機能を全く喪失していたという事実がわかったわけでございますが、その事実がわかったのが、さらにまた悪いことに一年後四十五年の一月八日。まるまる一年間それがどういうわけか知らされてこなかったというところに大きな問題があって、問題は二重になってしまったようでございます。ですから関係者は驚いたでしょうし、また市や公害防止事業団も全く批判の的になってしまったわけなのでございます。  それで問題はその浄化施設でありますけれども、第一、設計にミスがあったんじゃないか、これがまず第一点にいわれていることでございます。その公害防止事業団の汚水濃度の測定によりますと二一三〇PPMという測定結果が出た。ところが実は一五〇〇〇から二〇〇〇〇PPMという高い数値の汚水が現実に排出されていた。それを二一三〇PPMというそういう測定結果によって浄化施設が設計され、またつくられたというところに問題がある。これが一つ問題点。  もう一点は公害事業団から五億の融資を受けてつくったその加工センターでありますが、このお金はあくまでも融資でありますし、返済方法は一年据え置きの二十年年賦でその元利総額が七億九千三百万円、こうした巨額のお金を融資を受けて建てたものですから、結局、その公害防止センターができる過程では、いわゆる生産過程にならない、それがむしろ非生産部門であることから、その巨額の融資を返済するということが大きなウエートを占めるわけで、すり身工場とかあるいは冷蔵庫とか冷凍庫とか、そうしたいわゆるコマーシャル部門がつくられて、そして汚水処理施設のほうは五千万円弱の金額をもってつくられた。そういうところでむしろそうしたコマーシャルベース部門にお金がかかってしまったのではないか。だから、本来の目的である浄化施設というよりも、むしろそうした生産過程に大きなウエートがかかってしまったのではないか。  このように浄化槽、浄化施設の問題についてまず二つの疑問がここに起こってくるわけでございますが、その点について事業団のほうから回答をいただきたいと思います。
  391. 原文兵衛

    ○原参考人 お答え申し上げます。  塩釜の水産加工団地の造成につきまして、その目的等につきましては、ただいま多田委員からお話しのとおりでございまして、私どももいわゆる水産加工排水処理施設の初めてのケースとして何とかりっぱなものをつくりたいということで、しかも事業団発足して間もないころでございましたが、非常な熱意をもって事に当たったわけでございます。ところがおっしゃるように、実はでき上がりましてから出る排水の濃度が、当初測定し、予定しましたよりもずっと悪い水が出てくるというようなことで機能が十分働かないということ、もうおっしゃるとおりでございます。実はこの事業は、塩釜市の注文といいますか、依頼によりまして事業団が造成して塩釜市に譲渡したわけでございまして、公害防止事業団法第十八条第二の業務、すなわちいわゆる工場アパート式の業務でございます。  そこで、排水処理施設をつくるにあたりまして、その前提としてどの程度の汚水が出るのであるかということを昭和四十二年の九月に——この九月というのは漁期の初めに当たるわけでございますが、九月に採水して調査を行ないましたところ、その結果では総合排水濃度として、お話にありましたようにBOD二一三〇PPMという結果が出ましたので、この二一三〇PPMを処理するという前提のもとに設計をいたしました。したがいまして、設計はこの二一三〇PPMを前提にしましたので、それに対する設計としてはミスはなかったのでございますが、むしろ二一三〇PPMという測定に十分でなかったところがあるのではないかという点、私ども反省しているわけでございます。  もちろん実際の操業になりましてから、その作業過程におきまして当初予想したものとかなり違った面もあるわけでございます。と申しますのは、私ども決して責任を転嫁するつもりではございませんけれども、個々の業者がやっていた、いわゆる先ほどお話しの家内工業的にやっていたときには、非常に丁寧に魚の最初の処理をしておったが、共同作業になりまして、しかも機械化してきたので、その魚の処理そのものもかなり乱暴になってきているという点もございます。それからもう一つは、排水の最初の測定の昭和四十二年の九月のころは、無頭——北海道で頭を切った原魚が来てそれを処理しておったわけでございますが、その後操業に入ってから、頭のあるままの原魚が来てやっておるというようなことで、したがって、除去作業の過程で頭やはらわたからの非常に濃度の高い排水が出てきているとか、いろいろなそういうこともあるのでございますけれども、しかし何といいましても、最初の測定で二一三〇というBODの濃度を、これ一回だけの測定でもって、そういうことを前提として設計をしたという点に十分でなかった点、私どもまことに遺憾に存じております。そのために、その後も何とかしてこれを早く機能させなくてはいけないというので、市あるいは県当局あるいは東北大学の先生方にもいろいろと御相談しながらいろいろ手を打ってまいりましたが、実際のところまだ機能しておらないというとおりでございます。そういう意味で私どもたいへん残念に思っているわけでございます。  それから、もう一つの御質問の汚水処理施設にかけた金額が非常に少ないんじゃないか。五億円かけたうちの五千万円では少ないんじゃないかということでございますが、もちろん私どもは汚水処理施設、これは本命でございますので、それに十分なことをしなければならないということは当然でございます。ただ、先ほど申しましたように、一つは前提である二一三〇PPMというので処理施設をつくると、ぎりぎりで五千万円程度でできる。しかも、譲渡する相手方は市でございますが、それを利用する組合というのは非常に資金力の弱い水産加工業者でございますので、できるだけ低廉にこれをあげてもらわなくてはならぬといういろいろな事情もございまして、二一三〇を前提として、ぎりぎりのところで五千万円でやったわけでございます。前提の排水濃度の測定が不十分であったというために、いろいろこういう問題も派生したわけでございます。私ども非常に遺憾に思い、何とか早くこれをりっぱに機能するように処理したい。いまも各方面の方々にお集まり願って、その作業をしている最中でございます。以上一応御質問お答え申し上げたいと思います。
  392. 多田時子

    ○多田委員 いまお話のございましたように、いわゆる頭をつけて、そういうふうな乱暴な扱いをしたのではないかというようなお話があったようでございますけれども、九月という時期も時期でございますし、またその水揚げがわずか五十四トンしかないときに調査をした。普通は三百トンないし五百トンの水揚げがある。そういう事業団として初仕事というならば、もっと慎重にしかもこれが一日のデータしかなかったようでございます。これが二回も三回もいろいろな状況の中で汚水を測定しなければならないのではなかったか。これはいま過去のことになってしまいますけれども、そうしたちょっとしたことがこんな大きな結果を生んでしまったということは、たいへん残念ということばで済んでしまえばそれまでですけれども、多くの人々がそれによって苦しみ、悩み、またさらにこれが大きな輪をかけてお金がかかるということになってしまったというわけで、この辺残念というだけではなく、もう一つ確たる御返答をいただきたいと思います。
  393. 原文兵衛

    ○原参考人 おっしゃるとおりでございまして、当時操業期に間に合わせるように、できるだけ早くしてもらいたいという要請はございましたが、しかし要請があった、なかったということではなく、やはりわれわれとしてはこの最初の測定にもっと慎重に、しかも一番悪い条件のときを想定してやらなければならなかったということをしみじみ私どもほんとうに反省しているわけでございまして、その後これを教訓にしていろいろな事業についても十分な調査、十分な研究というものを前提としてやるべく努力をしておりますが、この問題につきましては測定等におきまして、非常に十分でなかった面が多かったということはおっしゃるとおりで、私どもも、したがってそれに対してどうするか、早くこれを——現に出ているのは、先ほどおっしゃったように一五〇〇〇ないし二〇〇〇〇PPMという測定当時の七、八倍から十倍の濃度の水が出ている、これは現実でございますので、この濃度の水をどうしたらば処理できるかということを、これもやはり初めてのケースでございまして、各方面の方々に集まっていただきまして、対策委員会をつくって検討しております。何とか早くその結論を出してこれを手直ししたいというふうに考えておるわけでございます。
  394. 多田時子

    ○多田委員 次に、浄化施設でありますけれども、その浄化施設が全く機能不全になってしまったわけで、それで行ってみましたところが、その浄化槽のわきに大きな沈でん池をつくっております。その沈でん池に汚水を入れて、その上澄みの水を放出するということにしていたようでありますけれども、これも全くうまくいかない。それでそれはうまくいかないだけでなくて、まるで卒倒しそうな悪臭を放っております。ですから塩釜の駅をおりますと、駅頭からにおいがぶんぷんとしてまいるわけでありますけれども、そこへ入っていったら洋服にしみがついてとれないという話で、おどかされながら行きましたけれども、そういうわけで、その沈でん池もベトが一ぱいだし、悪臭を放っているし、用をなさない。しかもあの沈でん池は県の借用地で、しかも期限はことしの三月で切れているということでございますけれども、その沈でん池それ自体今後どういうふうに処理なさるおつもりか。また期限の切れた土地でございますし、その点について御返答いただきたいと思います。
  395. 原文兵衛

    ○原参考人 御質問の沈でん池はおっしゃるとおりでございまして、浄化装置の前処理としてここに一たん沈でんさして、そうしてその濃度の薄くなったものを処理していきたいということでつくりまして、実はつくりました当初二、三カ月は、この沈でん池が非常に有効に働いたのでございますけれども、しかし、やはり沈でん池そのものか、おっしゃるように一ぱいにたまってきちゃってベトが一ぱいになるということで、これも働かなくなってきております。  そこでいま、先ほど申し上げましたように、根本的な手直しの対策を考えているわけでございまして、この沈でん池のいまの悪臭につきましては、この場所自体は町から離れたところにつくりまして、そういう悪臭というようなことも考えられたわけで、隣に水産試験場がございます。そこの方々には御迷惑をかけておりますが、民家からは相当離れているわけでございますけれども、しかし、沈でん池そのものにつきましても、いまもうじき水産加工の休む時期が参ります。それで、これは塩釜市のほうで、責任をもってこの沈でん池につきましてはベト等の処理をするということでございます。  なお、沈でん池をどうするかということにつきまして、これはいまの処理場そのものの根本的な一五〇〇〇PPMないし二〇〇〇〇PPMを前提としての結論が出ますれば、沈でん池をつぶすという方向にたぶんいくのではないかと思います。それの技術的な結論をいま検討してもらっておりまして、それを待っております。  なお、この沈でん池の土地でございますが、これは実は塩釜市としては、第一次の加工団地がいまの水処理の問題がうまく機能しておりませんけれども、しかしやはり市としては、市内に点在するそういう水産加工業者からいろいろきたない水も出ているわけでございますが、そういうものをさらに集めるという第二次の計画をやはり続行するということで、これを事業団のほうに申し入れをしてきております。事業団としてその申し込みを受けまして、第二次団地を造成するための県の埋め立て地ですね、その埋め立て地の一部にこの沈でん池を借用していたわけでございますが、それを事業団のほうで買収いたしまして、そうしていま第二次団地、これにつきましても第一次の経験、教訓を私ども十分生かしまして、これこそ最初からりっぱなものにしなくちゃいけないので、いまそのやり方について、先ほど申しました東北大の先生だとかあるいは水産庁の方々とか県の技師、皆さんに集まってもらって検討しております。その借用の期限はそういうことで県有地を一応第二次団地として私のほうで買収しておるということでございます。私どもとしては、十分でなかったかと思いますが、私ども真剣にこれに取り組んでおりますので、その点だけを申し上げておきたいと思います。
  396. 多田時子

    ○多田委員 いまの土地の問題ですが、これは買収済みでしょうか。
  397. 原文兵衛

    ○原参考人 年度の初めに県のほうから買収いたしまして、現在買収済みでございます。
  398. 多田時子

    ○多田委員 それで、いまのその沈でん池でございますけれども、これも費用が同じく五千万かかっているということで、その費用でございますけれども、それはどこが負担をするということになるのでしょうか。
  399. 原文兵衛

    ○原参考人 実は五千万ではございませんで、千五百万くらいだったと思いますけれども、しかし相当かかっているわけでございます。実はこの処理槽をつくりましたのが住友機械でございまして、それが十分働かなかったということで、住友機械がアフターサービスといいますか、そういう意味合い、また住友機械としては将来やはり自分としてもこういう水産加工だけでなく、いろいろ水処理のことも大いにやっていきたいという気持ちもあるかと思いますけれども、住友機械のほうでもって自分のところでつくった処理がうまくいってないんだから、その前処理の意味で先ほど申しましたようにこれをつくりました。いまそれも機能しておりませんけれども、そういう意味でつくりましたので、住友機械のほうでもってこの費用を負担しておるというわけでございます。
  400. 多田時子

    ○多田委員 そうしますと、費用の五千万というのは新聞に出ていた数字でございますけれども、正しくは千五百万でよろしいんでしょうか。
  401. 原文兵衛

    ○原参考人 私どもが聞いておりますのは千五百万、まるくなっているのは、そこは若干前後あるかもしれませんが、大体千五百万というふうに聞いております。
  402. 多田時子

    ○多田委員 五千万ということで、現地の人たちもそういうふうにはっきり申しておりましたけれども、これはあらためて金額の点をはっきりお教えいただきたいと思います。
  403. 原文兵衛

    ○原参考人 千五百万で間違いございません。
  404. 多田時子

    ○多田委員 では、これは千五百万に訂正をいたします。  で、その浄化装置でありますけれども、こうした沈でん池も用をなさないということで、もちろん本来の目的ではなかったわけでございますが……。それでその浄化装置でございますけれども、これが二一三〇PPMの汚水を一日六百八十トンの水で処理をして一〇〇PPM以下にする、こういう所期の目的であったようでございますけれども、結局、これは機能麻痺という状態で、むしろその浄化施設のほうを改善すべきではないか、このように思いますけれども、その改善が一体できるものかどうか。またできるとすればそれはいつごろまでにでき上がる予定なのか。その辺について……。
  405. 原文兵衛

    ○原参考人 もちろん浄化装置そのものを改善しなくてはいけないわけでございます。そのために、先ほど申し上げましたように、いま学者の方あるいは実務の方々にお集まりいただきましていろいろ検討しておりますが、非常に高い濃度でするものですから、その浄化装置のいわゆる前処理といいまして、浄化装置に入れる前に、もう一回ある程度処理して、薄くして浄化装置にかける、しかし、浄化装置そのものはもっと大きなものでなければならぬということになろうかと思います。その点をどういう方法でやったらいいかということでいま技術的に検討中でございまして、私もその技術の点につきましては、技術家でございませんでよくわかりませんが、今度こそ間違いないように十分検討して、なるべく早い機会に結論を出してもらって改善に着手したいというふうに考えております。
  406. 多田時子

    ○多田委員 次の問題に移りますけれども、この加工団地組合の人たちも、一億四千万という金額を投資をしているわけでございますが、目下望みをかけていた加工団地の機能が麻痺状態で仕事は一向に進まない。これからひまになって、九月にはまた再開するそうでございますけれども、この問題がなかなか解決しない、あるいは改善もおくれるということになりますとばく大な損害だ、こういうわけで、事業団から融資を受けた五億も、結局は負債の形ですから返さなければならないし、そういう経済的な不安、それから仕事の見通しのつかない不安、こういう不安で一ぱいでいるようでございます。また市がその事業団に支払うというその償還金は、地元の皆さんの話によりますと、やはり浄化施設が完全に直るまで延期をしてもらいたい、また利息も免除されるよう措置してもらいたい、こういうふうに強い要請が出ているようでございますが、その辺についてはいかがでしょうか。
  407. 原文兵衛

    ○原参考人 九月から操業が開始されるということも十分承知しておりまして、それまでに何とか結論を出してその改善に着手したい、こういうふうに考えているわけでございます。同時に、いまお話のあったような弁済金の期限の延期とか、機能してない間の金利をまけてくれというような問題、いろいろと私のほうにも申し出がございます。ただ私のほうは実はいわゆる独立採算的に利益をあげてやっているところではございませんので、そういう問題につきましても全部予算的な措置が必要で、監督官庁を通じて——どもも実際自分らにも最初の測定ということで、十分でないところもあります。現地の実情も十分わかっておりますので、何とかそういう点について考慮したいと思って、監督官庁を通じていろいろとお願いしている、こういう段階でございます。
  408. 多田時子

    ○多田委員 先ほどもちょっとお話が出ておりましたけれども、こうした問題がいよいよ複雑化してまいりましたので、事業団とあるいは県とか市が一体となって、塩釜加工排水処理委員会というものをつくったそうでございますけれども、それが六月じゅうに結論を出す、こういうふうにいわれていますけれども、どういう構成メンバーなのか。それから六月じゅうにという目標を持っておりますけれども、その六月じゅうに結論を出すという現在、中間の段階でどのような検討がなされているか、中間的な話でけっこうですからお願いいたします。
  409. 原文兵衛

    ○原参考人 そのいまの構成メンバーでございますが、東北大学の工学部の松本教授を委員長お願いをいたしまして、さらに厚生省、水産庁、通産省、東北工業技術試験所、宮城県衛生部、宮城県水産林業部、それに塩釜の市長、それから水産加工業協同組合の組合長というような方々を構成メンバーとして委員会を開き、さらにもっと具体的にしょっちゅう開かなければなりませんので幹事をお願いしたりしておりますが、その幹事には東北学院大学の助教授、東北工業大学の助教授、それから厚生省、水産庁、通産省、宮城県、塩釜市のそれぞれ実務の方々をお願いして、いま鋭意——これは第二次の水産加工団地ですが、第一次目にはうまくいかなかったということ、それを教訓にして、そのいろいろな経験をデータにして、第二次に対する対策をやると同時に、第一次のそういう反省材料も検討しているわけですが、第一次の改善策をやるということで、今月中には結論を出してもらいたいと思って、昨日も開いておりましたけれども、いまいろいろと一生懸命やってもらっているという段階でございます。
  410. 多田時子

    ○多田委員 私は、第二次加工団地の問題でいまお話が出たからですけれども、第一次の浄化施設の機能が完ぺきに所期の目的が達成されて、しかる後に第二次加工団地と、こういうふうにしていくべきではないか。それを同時に進めていくのもたいへんけっこうですけれども、むしろ地元の人たちの疑惑は、何か第一次の機能も完全ではないのに九億幾らもかかる。その第二次加工団地に着手する、あるいは建設の決定をするというようなことは、何となくそこに第一次の不完全をカバーするという、何か手直しをするというふうなことのために、第二次加工団地の着手を早くしようという思惑があるのではないか、こんなふうに勘ぐっているわけなんですが、確かに第一次の問題が完全でない限りは第二次ができても、これは信用的にいってもゼロですし、そういうふうに勘ぐられてもしかたがないのじゃないか、このように思うわけですが、その辺はいかがですか。
  411. 原文兵衛

    ○原参考人 お話でございますが、結局第一次のうまくいってないのを糊塗するとかなんとかいうようなことは毛頭ございませんで、塩釜市がやはり市の全体の公害防止計画として、第二次をどうしてもやらなければならぬということでわれわれのほうに要請をしてきております。  もう一つは、埋め立て地は県の埋め立て地でもって、県の所有地なわけですが、それの払い下げの問題がありましたので、とにかくこの土地を確保しておかなければならない。しかしながら、実際に団地をつくる、処理施設をつくる等につきましては、いたずらに委員会で変なものをつくって、また轍を踏んではいけないので、そこで土地は確保してございます。先ほどのお答えにも申しましたかと思うのでございますが、等二次を実際に処理施設その他をどういうふうにつくるかということにつきまして、第一次の検討と同時にそれを先ほどお話がありました検討委員会でもって慎重に検討してもらっているというのでございまして、決して第一次を糊塗しようとかなんとかいうような気持ちではございません。
  412. 多田時子

    ○多田委員 次へ進めますけれども、そうした機能不全の浄化施設から出てくる、あるいは沈でん池から出てくる上積みにしましても、汚水は汚水です。その汚水が流出されますと、当然ノリとかカキとかに損害がある。損害はないということですけれども、事実、新聞には若干の損害が出ておりますけれども、こうした損害の補償という問題については、事業団としてはどのように考えていらっしゃいますか。
  413. 原文兵衛

    ○原参考人 私ども事業団といたしまして、市当局から得ました情報では、特別にノリの被害があるということを聞いておりません。そういうような陳情があったということは聞いておりますけれども、市の見解としては、これは塩釜水産加工工場アパートの排水とは関係ないということを、塩釜市当局のほうでは言っているというふうに私は聞いております。
  414. 多田時子

    ○多田委員 そういうお話ですけれども、新聞には、若干いわゆるノリが潤っているというんですか、そういうふうにあります。そういう状態で、このままにしておいていいだろうかという不安が業者の間にあるというふうにはっきり出ているわけですね。ですから、現在は損害という程度のものではないかもしれませんが、しかし、もしもそういうふうになった場合にはその問題をどういうふうに考えていったらいいか、こういう点でお願いしたいと思います。
  415. 原文兵衛

    ○原参考人 私どもといたしましては、やはりこの水処理について、所期の目的を達するように十分につくるというのが事業団の役目でございますので、それを十分に専心やりたいと思っております。したがいまして、事業団は造成してから全部市に譲渡しておりますので、その造成するものを完全なものにするためにも、完全なものに改善していくということについて専念してやっていきたいというふうに考えております。
  416. 多田時子

    ○多田委員 一応事業団は関係がないというふうに解釈してよろしいでしょうか。
  417. 原文兵衛

    ○原参考人 補償問題そのものはやはり市当局がいろいろお話しすべきであって、私どもは、市当局に対して完全な処理機械をつくるように、そうして譲渡するようにということをやるべきであるというふうに考えております。
  418. 多田時子

    ○多田委員 もう一つ委員会ができておりまして、公害防止事業団の諮問機関という立場だろうと思いますけれども、水産加工団地排水処理施設設立に関する基本構想検討委員会という委員会がありますけれども、これは先ほどの委員会と目的、内容、メンバー等に違いがあるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  419. 原文兵衛

    ○原参考人 それは先ほど私がメンバーを申し上げた委員会と幹事会も、そのことではないでございましょうか、別に二つはございません。
  420. 多田時子

    ○多田委員 それでは、これは先ほどの委員会と名前は違いますけれども、同一と了解いたします。  その委員会の内容で第二次の加工団地等に対する問題の検討あるいは現在の浄化施設の検討がなされているそうでありますけれども、四月二十八日に、参議院で峯山議員がこの問題について質問いたしました。その際、いわゆる技術開発という面で、これは結局は数値の少ない、いわゆる汚水の濃度の少ない時点で、それを測定結果として建設したところに大きなロスがあると同時に技術的に大きなマイナス面といいますか、そういうものがあるのではないか、そういう点で、そういうものをりっぱにつくり上げる技術の開発ということが必要ではないか、また、水産加工業という日本国中の問題と考えて、一連のそうした浄化方法というものが考えられる、また、そういう検討がなされることが必要ではないか、こんなふうに質問されておりますけれども、それに対する回答がこの検討委員会の中でなされているかどうか、その点について伺いたいと思います。
  421. 原文兵衛

    ○原参考人 もちろん水産加工から生ずる排水の処理といいましても、全部一定の同じものでもございません。いろいろな形が出てくるわけでございますが、この塩釜の検討委員会——この塩釜は先ほど申し上げましたように最初に水産加工の排水処理をやったところでありまして、ここで最初のあれがうまくいってないことを反省しながら十分な技術開発をするということは当然でもあるし、またやるべきことではないか、また時宜にもかなっているのではないかというふうに私は考えておるわけでございます。したがって、これは御質問の趣旨に沿っているものというふうに考えております。
  422. 多田時子

    ○多田委員 時間だそうですから、簡単に三点ばかり要約して伺いたいと思います。  これは通産省になると思いますが、この加工センターに対して主としてこの三年間ばかり一千万円ばかりずっと補助金を出しているようでございます。世帯にして一万五千、人口にして約六万という小さな市ですけれども、一千万円の助成金というものはたいへんではないかというふうに思います。市でも当然お手上げだというような状態であると聞いておりますけれども、こういう多額の助成金を市は出しているということから考えても、市としても、この水産加工団地に対して一歩も引けないという気持ちであろうと思います。この点通産省という立場で、そうした県あるいは市に対する助成ということが考えられるかどうか、その点について伺いたいと思います。
  423. 柴崎芳三

    柴崎説明員 お答え申し上げますが、対象になっている業者が水産加工でございますので、この補助金は全部農林省から出ておるわけでございます。
  424. 多田時子

    ○多田委員 それでは農林省の方がお見えになっていらっしゃると思いますが、農林省ならば農林省のほうでお答えいただきたい。
  425. 平松甲子雄

    ○平松説明員 お答え申し上げます。  塩釜の水産加工施設につきましては、すり身の処理施設をつくるということで、四十三年度と四十四年度に国から合計一千万円程度の助成をいたしております。私ども、塩釜市がそのセンターにどの程度の助成をしておるかということについては承知いたしておりませんけれども、何ぶん塩釜というのは水産の基地としての重要性の非常に強いところでございますので、その市の特性にかんがみまして、市がそういう水産関係の事業に助成をするということは当然あり得ることだと思いますし、そのことは市とされましては、市の発展のためというふうな見地で、もし出しておられるとすれば出しておられるのではないかというふうに承知いたしております。
  426. 多田時子

    ○多田委員 そうしますと、いまのお話はいわゆるすり身工場に対する助成ということでございました。昭和四十三年度と四十四年度と両方にまたがって一千万円というふうに伺いましたが、市で一千万円、そして農林省としても二年にわたって一千万円、それは今日まででございますけれども、そうした状態でたいへんな中ですから、今後農林省として助成をする意思があるものかないものか、その辺についてお尋ねしたい。
  427. 平松甲子雄

    ○平松説明員 私どもといたしましては、すり身の処理施設、つまり魚肉の処理施設をつくるということについて助成をいたしたわけでございますので、今後また塩釜市でそういうふうな事業計画があるという場合には、おそらく全国ほかの都市でもそういう計画もあろうと思いますから、全体をにらみ合わせた上で重要性に応じて選択をして、もし助成する必要があれば助成してまいるということになろうと思います。
  428. 多田時子

    ○多田委員 いまの御答弁によりますと、そうした新しい計画があるならば助成をしよう、こういうことでございますけれども、現段階においてすでに相当な損害をこうむっているわけですし、それを全面的に市だけにやらせているということは、小さな市でたいへんであろう。したがって、国としても大きく助成をしていこう、こういうことにぜひともお願いをして、小さな市を抱きかかえていくようなつもりでぜひ助成をしてほしい、私どもこれはそういうふうに要求しておきたいと思います。  最後に、責任という問題なんですが、これは抽象的なことになりますけれども、加工団地をつくったにしてもそれは市に譲った。市では、事業団はその最初の測定の段階においてミスをしたのだからというふうに、そういうふうにはっきりは言わないまでも、お互いに責任の転嫁というか、そうしたことがあるようでございます。事業団としても、事業団法の第一条にきちっとうたってあることでございますし、この辺の責任の問題が一体どの辺にあるものか、組合側としては、業者としては、何でもいいからとにかく一日も早く直してほしい、こういうことでございますけれども、やはりその辺の責任を明確にしてほしいと思いますが。
  429. 原文兵衛

    ○原参考人 先ほど来申し上げておりますように、最初の汚染の水の濃度の測定につきまして、私ども十分でなかった。そこからいろいろな問題が発生しているということについて十分反省をしております。またそれを教訓にして、いろいろな今後のことも考えております。とにかくこの問題は、私ども責任のなすり合いとか転嫁というような気持は毛頭ございませんで、ただしかし、実際問題として、その責任論をやり出しますとなかなか複雑な問題がからんでくるんじゃないかと思います。私どもは、測定について十分でなかったという点については、十分反省をしております。まずそれよりも何とか早く機能するように、何とか早くりっぱに改善できるようにということで、市はもちろん県も協同組合も私どもも一緒になって、前向きになってこれを進めていきたいという気持ちでいま一生懸命やっているところでございます。
  430. 加藤清二

    加藤委員長 関連の申し出がありますので、これを許します。岡本富夫君。
  431. 岡本富夫

    ○岡本委員 先ほど多田委員からの質問の中で、貯水場の県の借用地は期限が切れている、この問題はどうするか、これに対してお答えがなかったと思いますが、どうですか。
  432. 原文兵衛

    ○原参考人 それは県有地でも借用しておりましたが、そこは第二次の団地の予定地になっておりまして、そういう意味で、すでに県からその土地を買収いたしましたので、いま借用期限の問題はなくなっております。そういうふうにお答え申し上げました。
  433. 岡本富夫

    ○岡本委員 それから塩釜の処理場は、最初の設計のミス、要するに見当違いがあった、こういうことでありますが、この責任はどこにあるのか。いまもその責任については、それよりも前向きにという話ですけれども、零細企業の人たちがやはりこの代金は返さなければならぬわけですが、こうしたかかったところの費用というものは、これは零細業者が非常に困るわけです。通産省それから厚生省は事業団に対してどういう指導をするのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  434. 柴崎芳三

    柴崎説明員 本問題につきましては、ただいま理事長から御説明がありましたように、基本構想研究会で現在検討中でございますが、その結論が近々に得られるかと思います。われわれが現在まで聞いております中途の段階では、前処理につきましてラグーン池にかえまして何らか新しい施設をつくり上げまして、とにかくあとの曝気槽に入れる前処理の段階で二〇〇〇PPM程度に落としておきませんと、あとの施設がきかない、したがって、現在の施設を有効に動かすためには、何らかの形の有効な前処理施設がどうしても必要であるということでございますので、この前処理施設をまず最も経済的なものを決定し、それを追加する。で、当然その建設について費用負担の問題が起こってくるわけでございますが、この費用負担の問題は、その設備がきまりました段階におきまして、いろいろ方法を十分検討いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  435. 岡本富夫

    ○岡本委員 いろいろ方法検討したいということは、この設計のミスがあった、その失敗をまた業者にこれを持たせるような考えを持っておるのか、あるいはこれは事業団の設計のミスであったから事業団に持たせるのか、そういうような検討をするのかどっちか、そこの点はっきりしてもらいたいですね。
  436. 柴崎芳三

    柴崎説明員 設計のミスの問題につきましては、事業団側に完全にミスがあったというぐあいにわれわれは理解しておりません。当初の算定につきましては、事業団側が算定すると同時に、やはり市と共同いたしまして、市の公的な調査も参考にいたしましてやっておるようでございまして、市か事業団のいずれにそのミスの責任があるかという問題につきましては、これは一がいにきめがたい問題であるというぐあいにわれわれは理解しております。したがいまして、費用の負担につきましても、その責任問題を一応離れまして、最も現実的な方法としてどういう方法があるかというような観点でいろいろ検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  437. 多田時子

    ○多田委員 最後にちょっと一言。  いま私も質問しようと思いましたが、通産省それ自体も、通産省設置法第九条の一項にも公害防止事業団に関することが一つうたってございますので、最終的には通産省としてしっかり責任をとっていただくということが当然の道であろうと思います。確かに責任がどちらにあるかということは、どこまでもそれは抽象論でありまして、現実問題としては一日も早くこれが機能を完全に復活するということのために全力をあげるということが当然だと思います。  もう一つは、やはり市あるいは加工団地に対して、国としてめんどうを見る、いわゆる助成をして一日も早くそれが機能を回復し、また一日も早く操業できるようになってほしい、またそうしていくのが当然ではなかろうか、このように考えるわけでございます。  それで、最後に厚生大臣に一つありましたが、いらっしゃいませんので、質問を以上で打ち切りたいと思います。
  438. 加藤清二

    加藤委員長 議事進行についての申し出がございますので、これを許します。島本君。
  439. 島本虎三

    ○島本委員 きょう朝からいままで、いろいろな貴重なる意見をもって公害の問題に対処してきたわけでございます。委員長も御存じのとおりであります。しかし、このまま質問のほとんどが明後日に残ったのであります。関係大臣並びに要求された答弁者が来ないというこの現実は、この重大なる公害問題に対処する際の政府の態度としては遺憾であります。こういうようなことは、国民の政府に対する信を裏切ることにもなり、われわれ自身、自分の責任を果たすためにもまことに遺憾だと思います。したがって、理事会を通じ、また委員長等から政府に十分これを厳達して、明後日の際にはこういうようなことが絶対にないように取り計らっていただきたい。以上、動議として提案いたします。委員長においてよろしくお取り計らいをお願いいたします。
  440. 加藤清二

    加藤委員長 ごもっともな御意見でございまするので、明日の理事会にこれをはかり、対策を練りたいと思いまするが、委員長の個人的意見としましても、出るべき答弁者が出ていないためにいたずらに議事が遷延される、あるいは繰り越されるということは、この委員会の権威にかけても、あるいは総理大臣が言明いたしておりまする公害問題に専念するということばからいきましても矛盾することが多うございまするので、関係当局におきましては、あす、あさってまた当委員会が設けられまするが、ぜひひとつそのおつもりで、責任ある答弁のできる当該責任者を、時間までに出頭できるよう責任をもって御準備のほどをお願いいたします。  次回は、明十日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後八時五十四分散会