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1970-04-08 第63回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月八日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 加藤 清二君    理事 始関 伊平君 理事 山本 幸雄君    理事 渡辺 栄一君 理事 島本 虎三君    理事 岡本 富夫君 理事 寒川 喜一君       伊藤宗一郎君    地崎宇三郎君       野呂 恭一君    林  義郎君       多田 時子君    西田 八郎君       米原  昶君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 内田 常雄君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      佐藤 一郎君  出席政府委員         総理府総務副長         官       湊  徹郎君         内閣総理大臣官         房審議室長   青鹿 明司君         経済企画庁国民         生活局長    矢野 智雄君         経済企画庁国民         生活局参事官  西川  喬君         厚生省環境衛生         局公害部長   城戸 謙次君         水産庁次長   藤村 弘毅君         通商産業省企業         局立地公害部長 柴崎 芳三君         通商産業省鉱山         保安局長    橋本 徳男君         建設省河川局長 坂野 重信君          委員外出席者         行政管理庁行政         監察局監察官  笹倉 三郎君         農林省農政局参         事官      遠藤 寛二君         建設省都市局下         水道課長    久保  赳君         最高裁判所事務         総局民事局長  矢口 洪一君         参  考  人         (公害防止事業         団理事)    古澤  實君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公害紛争処理法案内閣提出第一八号)  公害紛争処理法案角屋堅次郎君外五名提出、  衆法第五号)  公共用水域水質保全に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出第二〇号)      ————◇—————
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害紛争処理法案角屋堅次郎君外五名提出公害紛争処理法案、及び内閣提出公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  この際、おはかりいたします。  ただいま議題となっております各案審査のため、本日参考人として公害防止事業団理事古澤貴君から意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤清二

    加藤委員長 異議なしと認め、さよう決定いたしました。  次に、最高裁判所長官の指定した代理者矢口洪一君から、各案について本日出席説明要求があります。これを承認するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 加藤清二

    加藤委員長 異議なしと認めます。よって、承認するに決定しました。     —————————————
  5. 加藤清二

    加藤委員長 質疑の申し出がありますので、これを許します。島本虎三君。
  6. 島本虎三

    島本委員 総理府長官に一、二お尋ねしておきたいと思います。  それば前回四月三日金曜日の当委員会で、公害紛争処理法案審議に入りました際に、公害対策基本法に基づいて私が一つ質問をいたしました。厚生省通産省の間で足かけ四年にわたってまだ解決を見ていない点があったわけであります。と申しますのは、公害対策基本法で第三条に「事業者責務」がございます。それを受けて、事業者は、国、地方公共団体が実施する公害防止の施策に協力する責務を持つということがはっきり三条でうたわれてございまして、その二項には、これまたわりあいに具体的にそれをうたっております。事業者は、公害発生防止に資するようつとめなければならないという義務規定もあるわけです。当然、二十二条に「費用負担」がございまして、公害防止のための費用範囲負担させる額の算出の方法、その他の負担に関しての必要な事項は、別に法律をもってこれを定める、こういうふうにしてあるわけです。公害対策基本法ができて足かけ四年にもなるのに、いまだこの法によるところの細則がきまらないので、地方自治団体をはじめ末端においては、事業者との間でもってそれぞれ話し合いを持って、あるいは三分の一、あるいは五分の二、あるいは二分の一、それぞれまちまちな徴収の方法によってこれを行なっているというような状態でございます。現在の推移によっても、公害の問題は、末端にいくほど住民そのものが直接被害を受けるのでありますから、それを受ける立場の国、中央が、こういうような公害対策基本法にきめられた義務を果たさない以上、当然にこの被害を受ける住民、これをかかえる自治体が、企業との間でこれを行なうようにならざるを得ないのであります。現になっているわけであります。このままでこれを放置すると、今度はこれが十分の一の負担になるか、二分の一の負担になるか、三分の二、四分の三の負担になるかもしれない状態でまちまちにしておくところに、公害行政の複雑さが一そう加わるような要素があるわけであります。少なくとも法律できめられている以上、これは中央においてはこの問題は対処しなければならない重大な決意を持たなければならないはずです。しかし、いままで四年間もそれらができないということは、慨嘆すべきことだと思うのです。  これについて前回四月三日に積極的な発言長官がなさったことは、青天のへきれきと同時に、こういうようなことでなければならないと思うのです。これは長官管掌外にもわたる事項ではないかと思いますけれども長官、そういうように熱心さを示されたということ、これに対しては私は満腔の敬意を表します。これを具体的にどのようにしてやっていかんとするのか、この決意をこの際お聞かせ願いたいと思います。
  7. 山中貞則

    山中国務大臣 先般の委員会の席上で、厚生並びに通産両省の答弁を聞いておりまして、しかも、四年間時日が経過しっばなしであるという現実を考えましたときに、これをいまのままほっておいたのでは、毎国会議論が繰り返されるだけで、とうてい「別に法律で定める。」という法の趣旨に沿った政府主張はできにくいと私は判断しますとともに、そこでその委員会の日の夕刻、直ちに私のところの、直接ではありませんが、これに関与いたしております職員の諸君を集めまして、総理府のほうでこれを引き取って、少なくとも通産厚生両省を中心に、各省庁関係のあるところは参加してもらって、当然「法律で定める。」となっておる義務に従った立法について直ちに作業を開始しょう。私のところは、人手が少ない上に、たくさんの審議会をもらってたいへん事務量が多いのでありますが、しかし、先般の御指摘も、まさに政府としては一言もない。率直にいって怠慢であると私は思うのです。ですから、このことについては、その当日からすでに行動を開始いたしましたが、通産厚生両省は、総理府においてイニシアチブをとられることは、あるいは快しとしないかもしれません、これから会合をやってみまして。それならば、いずれかの省が、あるいは両省が協議して、「別に定める。」となっているその法律を、いつごろまでに立法するのか、それらを内容ともに確かめまするし、いつまでもただ総理府でやってもらうことは好ましくないということであるならば、私のほうで積極的に、総理府立法の主奪権をとって法律をつくらなければならないだろう、かような決意をいたして、その後だんだん相談、連絡をいたしておるところでございまして、すでに動き始めました。
  8. 島本虎三

    島本委員 すべからくそういうようにして、直接問題の核心に触れるようにこれは取っ組んでまいらなければ、公害行政は、地方では、ざる法ばかりつくる、そして末端住民をかかえる自治体はまさに塗炭の苦しみの中からその解決を迫まられる、こういうふうにして中央不信がだんだん高まるばかりではないか、こういうように私は考えております。その際に、長官が進んで、所管外であろうとも、この重大な問題に対して手をつけ、そうしてこの解決を促進する、こういうような態度は、私としてはほんとうにりっぱなものである、こういうように思います。一日も早くこれはでかすように、心からこれを期待してやみません。努力を心からお願いしておきたいと思います。  と同時に、通産並びに、厚生は見えておりませんけれども、午後二時半から来るそうでありますけれども、こういうような具体的な問題に対しては、これは実施官庁であって、そしてそれぞれの利害を持っている苦しい立場にあることは、言われなくてもわかっているのです。それを克服していくのがいまの立場として重要であります。そういうような点を十分考えて、残された問題に対しての取っ組みは、心を新たにしてこれに当たってもらいたいと思います。これは要望にとどめておきたいと思います。  それと、長官にもう一つお伺いしておきたいと思います。  それは、紛争処理法内容等について、諸般の質問でおわかりのとおりであります。その内容は、現行法律の中で——どもとしては、前回与野党一致修正した部分、これを原案として出しておるわけであります。そういうような立場からして、長官考えは、これは手を触れないのが道義的な考えである、こういうような考えであるように私は聞きました。しかし、前回で終わって、そしていかに廃案になりましても、今回新たに出されたという見地から、この法案は、時代の推移と合わして、当然こういうようにして修正し、あるいはこのようにして実施したならば最もよいのだということになれば、これはやはり修正するのに少し遠慮されるようなことがあっては困るのじゃないか、こういうように思うのです。前回大臣は、この点についてはなかなかかたい決意のように承りました。しかし私どもは、これを通じまして、やはり修正すべきは修正し、そして通すべきは通し、そして国民のためにこの紛争処理が早く実効をあげるようにしたほうがよろしいのだ、こういうように考えているわけであります。  そこで、この中の裁定の問題、またこの機関の恩恵を受けるために、今度いろいろと申し出る場合に、被害者の一方的な申し出または双方申し出、こういうようなそれぞれの違いがあるわけであります。私はこれを最も被害者に適用しやすいようにして実施させるのがよろしいのじゃないか、こういうように思っている次第であります。  また、裁定等の問題は、八条機関三条機関、すなわちこれになじむような状態であるならば、裁定はこれを取り入れても差しつかえないのだ、こういうようなことでございます。そういうような点等考えまして、これはやはり改むべきは改め、そしてりっぱな法律案にして、一日も早くこれを上げるのがわれわれの態度としていいのじゃないか、こういうように思いますけれども、もう一度この点について、大臣決意の表明をお願いしたいと思います。
  9. 山中貞則

    山中国務大臣 先般も、私はまず、議会政治の、結論の出たことに対する段階的なとらえ方について申し上げました。したがって、道義的にという表現をされましたけれども、ある意味ではそういうことでもあるかと思いますが、やはり前の国会でありましても、国民を代表する衆議院において、修正部分はそのまま、そして一部原案反対の点がありましても、院の意思決定を見ておりますので、その意味で私、議会制度のたてまえ上、その点をまず原則的に申し上げたのです。しかしながら、裁定を含む三条機関その他の問題は別としまして、修正された部分に対しては、そこまでいってもよろしいあるいはいったほうがいいということに踏み切れるような内容でもございますし、また、これは院の意思でもございますから、問答無用で、原案でそれを除いて出してくるなどというのは、もうとんでもない話のうちに入るのでしょうけれども、残りの附帯決議部分につきましては、その実行について、完全に委員会意思とわれわれ政府意思とば一致いたしておりません。したがって、これは今後議論が残るであろう。でありまするから、先ほどの別に法律で定める費用負担等の問題も含めまして、これからはもっと、これを包含した法律が前進して展開をすることを、われわれとしては必要としてくるのだと思いますが、それらの過程において、さしあたりはまず、本国会においてはこの原案で、再度提出いたしました修正を取り入れた原案で相なるべくは御承知を願っておきまして、そして政府との間に、なお、附帯決議部分等については意見——最終的に私も一致していない部分がございます。政府との間にそのような意見の一致していない部分を今後詰めていきながら、新しい法律なり、換骨奪胎した、時流の待望する法律内容なりに改めていくべき段階ではなかろうか。ここで全部を取り入れるということになりますと、またどうも、政府の中において相当な論議を必要といたしまするし、場合によっては行政委員会設置等議論にもなりますので、基本的な機構等の問題についても、政府姿勢としては、いますぐに前進し得ない分野がございます。そこらのところは、御了解を願うといっても無理かもしれませんが、私ども立場は、現在のところ、前進すべき限界一ぱいで再提出させていただいたというふうにお受け取りいただければ幸いだと存じます。
  10. 島本虎三

    島本委員 大臣にはまことに、一人でがんばってもらって、敬意を表します。  しかし、もう一つ、この際ですから、大臣に重大な決断を願いたいことがあるのです。それは法務省関係であります。以前の予算委員会分科会並びに当委員会等におきまして、法務大臣並びにその関係者発言等を通じまして、私自身にもあったのでありますけれども、現在の国際情勢や日本の国内情勢等から、当然公害罪単独立法、これの制定必要性を認めておるわけであります。私どもはそれに対して、今後刑法全体の改正の中からというと時間がかかりますから、これは単独立法にしてでも、現在苦しんでおる国民を救うのだ、公害被害を受けておる国民を救うのだというこの考えは、やはり正しいと思います。一日も早くこれを推進してもらいたいのはもちろんです。ただ、そこにいくまでの間に、現在イタイイタイ病裁判で争っている人たち、それから水俣病裁判で争っている人たち、この数を見ますと、相当の数であります。そしてそれがずうっと長引いております。やはり裁判ですから、いわゆる企業側被告側に立っております。そこからも、費用がなくて困っている、したがって国のほうでこの点はめんどうを見てもらいたいということに対しての反対抗告さえ出るわけであります。こういうような状態ではだんだん長引いてまいります。しかしながら、やはり紛争処理で、これを裁定でもあってすぱっとやるならばできるのですけれども、これがまた裁判にかかった以上、百年裁判の様相さえ呈しております。これに対しても、公害罪制定さえも必要だという現在、裁判にかけたならばいろいろな点から見て因果関係の究明ができるまでとか、またそれが具体的に例証があらわれるまでということになりますと、かなり時間がかかります。それで、いままで死んでいる数はおそらく——日航機のあのハイジャックの問題等において、百名をこえる人たちの生命のために全国民は注視をしたわけです。しかしながら公害の問題で、知らないうちに黙って、だれの罪かわからないけれども、自分が罪を背負わされたような状態で死んでいる人がおそらくその二倍もいることなんです。そういうようなことを考えたら、いま裁判になっているこの問題の決着を早くさせる、促進させる、この点はやはり必要だと思います。あらゆる点でおそくするという発言はないのであります。法務省でも一生懸命やっているということであります。裁判関係でもそのとおりであります。しかしながら、これはやはり総理府総務長官のほうから、ひとつ勇断を持って早く結論を出すようにこれを取り運びさしてやるべきじゃなかろうか。公害対策基本法三条、それを受けての二十二条によるところの負担、これに対して勇断を示されたことには敬意を表します。それと同時にこういうような状態にあるいまの長引いている裁判、この決着も早く出させるように国の機関をあげてこれは推進させるように努力してもらいたい、これが私の希望であります。これは賛成はもちろんします。反対の人はないのであります。ないけれども進まない、これが現状であります。しかし大臣もこの点を考えて早くこの決着を見るように進めてもらいたいと思います。この点に対しましての決意並びに見解をお伺わせ願いたいと思います。
  11. 山中貞則

    山中国務大臣 この問題は、先ほどの二十二条の問題とは少し立場を異にいたします。すなわち、現行裁判制度の中で行なわれている実態についての御批判でありますし、したがって、法務省並びに、その係争の長引いている間、公害の特殊な事情にかんがみて、ただいまお話のありましたような実際上の証明されなくとも、その被害の事実が発生して、死亡もしくは不遇な境遇におる人々に対する措置等は、これは厚生省のなし得る仕事の範囲でもありますし、ある程度のこともしておると思いますが、そこらのことを前提として議論が展開されなければなりますまい。  ただ、政府全体の姿勢としてこれが単独立法でいくのか、あるいは一般刑法分野の中で、公害罪的なものに対して新しい分野を開拓するのか、ここらの点はやはり私ども意見を申す機会ももちろんあるでしょうけれども法務大臣あるいは人間の命を守る立場からの厚生省というものあたりの事前の十分な御相談があってしかるべきだと思うのです。  例にとられました空賊の問題につきましても、単独立法という意見もまだ強うございますが、現在の政府の中の議論では、やはり現在の刑法の中で新たにこの空賊に対する厳重なる処分というものを盛り込んだ改正ということがいいんじゃなかろうかという意見もまた同じように強うございまして、この点、今後議論が進んでいくと思いますが、この問題も似たようなケースでありますし、法務省は現在の裁判のあり方、それに対応する今後のその事実を踏まえてそれをどのようにとらえているのか等につきましては、最高裁等から来ておりますので、そちらの諸君意見も聞きながら、私は国務大臣といたしましても、あるいは公害対策基本法を担当する——担当すると申しましても実務はないのですけれども、そういう関係のある大臣といたしましても、御指摘の点、今後十分肝に銘じて政治家としての考え方をまとめていきたいと思います。
  12. 島本虎三

    島本委員 訴訟救助決定に対して、被告の会社が抗告している状態からして、やはりこういうような点はなかなかばかばかしくないのは事実であります。しかし、これはやはり早く結着を見させなければならない。これもやはり国民の願うところであります。その点については、今後一そう努力を払っていただけるということでありますから、これ以上お願いする何ものもございません。いまの大臣立場からして、法務大臣とよく話したりして、事務的な点は事務的な点として進むべき点は進めて、早く結論を出すようにしてやってほしいのだ、これだけはひとつ心からお願いしておきたい、こういうふうに思うわけです。  それからついでにこの際ですから、大臣にもう一つ共通の問題で聞いておきたいと思います。今度は紛争処理の問題とからみますけれども、この公共用水域の問題にからんで、これは関係大臣は各省全部がこれに該当するようなことになるわけであります。そうしますと、水の問題一つでもそうなる。紛争の問題でも、各大臣のそれぞれの立場で、それぞれの省庁がこれに対して関係してくるわけであります。水なんかの場合でも、これは一つの例をとってみるまでもなく、この公共用水域、これに対してでも大蔵省まで入っております。運輸省をはじめとして、何省庁になるでしょうか。ほとんどになるのです。したがって、これに対する規制、こういうようなものがあっても何ら実効を見ることができないような状態になっているわけです。公共用水域の場合でも、やはりこれをいまきめても、これは権限を持たない一つ総合庁になっている総理府の場合も、やはりそういうような立場で同じであります。経済企画庁もそういうような立場で同じであります。しかしながら、何ら具体的な権限はないけれども、この実態として法律を施行しなければならない立場に立つわけであります。紛争処理の場合は総理府であります。公共用水域の場合には経済企画庁であります。そうなりますと、えてしてざる法になってしまう可能性が強いのであります。いままで法は書いてもさっぱり実効があがらないというゆえんのものもその辺にあるのじゃないか、こういうように思いますが、紛争処理法案とともに、各省庁に責任があるような、こういうようなあまたの法律をかかえながら、その一つ一つを具体的に実施させていくということになりますと、今後は総合庁としても相当重大な決意を持ってやらなければならないし、いままでのような、ただ単に勧告であるとか、指示であるとか、要請であるとか、こういうようなことだけでは済まないような情勢にきているのではないかと思います。この点等については、最も重大な問題だと思っておりますが、大臣見解をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  13. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 イタイイタイ病、それから水俣病につきましての訴訟を早くやるべきであるという島本委員の御指摘は、まことにごもっともでございます。私ども訴訟一般についてでございますが、特にこの種の訴訟につきましては、一刻も早く正しい裁判をやりまして、正当な被害者利益というものを擁護しなければいけない、このように考えておるわけであります。ただ御指摘のように、非常にむずかしい問題を含んでおる上に、私どもといたしましても、この種の事件は新しく発生してきた新しい型の事件でございますので、その正確な判断に一線の裁判官は日夜苦労いたしておるというのが現状で、ございます。イタイイタイ病及び水俣病は、しかし一般事件に比べまして、その困難性にもかかわらず相当程度に進行しておるように私ども承知いたしております。  私どもが報告で聞きました範囲内におきましては、イタイイタイ病のほうは大体口頭弁論現場検証等を終わりまして、原告側立証もほぼ終了し、被告側の反証の段階に移っておるというふうに承知いたしております。水俣病のほうは、実は訴えが提起されましたのが昨年の六月でございまして、まだ双方主張を整理し、一方現地の検証を行なうという段階でございますので、いましばらく時間が必要ではないか、このように考えております。  それからなお御指摘訴訟救助につきまして、せっかく裁判所救助決定をしても、それに対して反対側から不服の申し立て等があるので困るではないかという御指摘でございますが、これは訴訟法でございまして、訴訟法上一方に利益が与えられるならば他方がやはりこれを争って正当に上級審判断を仰ぐというシステムは、この件についてのみ変更するというわけにはまいりませんので、一般的には原告訴訟救助が与えられるならば、被告側にこれを争う抗告権というものがあるわけでございます。  イタイイタイ病につきましては、ことしの二月二十日に、五次まで訴訟がございますが、そのうち二次から四次までの三百八十四名の全員につきまして訴訟救助が与えられましたところ、被告側から、それを与えたのが不服であるというような抗告が出まして、現在名古屋高等裁判所で審理中であります。したがいまして、具体的な事件内容でございますので、その判断裁判にまつよりほかございませんが、ただ、抗告というものの一般的な性質といたしましては、いわゆる訴訟が長引くというものとは少し性質を異にいたしまして、少なくとも二、三カ月のうちにはその結論が出るのが通常でございますので、この件もそう長引くものではない、このように私ども考えているわけでございます。  なお、一般にこの種の事件の迅速適正な審理ということには私ども最優先に考えておりまして、予算、人的設備、その他の点については万全の措置を講じていきたい、このような心がまえでおるわけでございます。
  14. 山中貞則

    山中国務大臣 各省多くの所管がまたがっております問題について、主として私のほうが受け取っておるのが多いのですけれども、これは考え方でございまして、各省がばらばらに意見主張し合ってまとまらないから、しかたがないので総理府であずかって、何とか各省の納得のいく線でもってまとめましょうというのも一つの良識かもしれません。しかし、逆に総理府の長は総理大臣でありまして、私は大臣でありながら、総理府に関する限りは政務次官ともいえるわけなのですね。ということは、やはり政府姿勢を示す権限と申しますか、義務を持つ役所であるとも自覚していいと思うのです。その意味では私のところで調整をゆだねられた場合には、政府姿勢というものは、現在取り上げられている問題で言うならば、たとえば公害については政府はかくのごとき姿勢を持って進むことが国民のためであると考えるという判断のもとに、逆にばらばらの各行政官庁を調整し、統合し、あるいは推進して、そこで新しい方向を示し、それをして従わしめていくということも、権限的には完全に言われないかもしれませんが、政府姿勢という意味から言うならば、ただしりぬぐいにあずかっているという考え方を一歩前進させまして、そして政府姿勢を示しているのだから、各省庁はこの方向に全力をもってついてこいという調整のしかたも私はあると考えます。  そこで、私は長官に就任以来、その方向で、各種審議会なり調整部分等につきまして、こまかい検討をいたしておりまして、不要なものは不要なものとして廃止する。必要なものは必要として、それを最大限に現在の機構で生かす。そういう努力をしても、それで足りなければもっと制度上の前進も期待して進めていくというようなこと等に専念をしておりますので、一ぺんに政治はよくならないかもしれませんが、いま与野党ともにこの種のことで感じておる、国民的な一種のもどかしさというものを、やはり政府姿勢で受けとめなければならないと考えるならば、そこにおのずから今後の姿勢というものはあらわれてくるべきものである、私はそういうふうに前進をしたいと考えます。  経企庁の話も出ましたが、長官はそのとき入っておりませんでしたから、私から代弁をしておきますと、佐藤経企庁長官も佐藤総理からその人物を見込まれて抜てきをされた人物でありますから、ほぼ私と同じ使命感に燃えておると思いますので、両者相協力して、色男金と力はなかりけりといわれないように努力を展開してまいる決意であります。
  15. 島本虎三

    島本委員 いま決意の表明がございました。そういうような立場でひとつ今後の処理に当たってもらいたい、このことだけは強く要請しておきたい、こういうように思うわけであります。  きょうは、おもに公害紛争処理法案、これの一つのまとめとして、いま問題になる水質公共用水域の問題に焦点を合わして質問を展開してまいりたい、こういうように思いますので、この点総理府関係は、これでひとつ休憩しておいてもらいたいと思います。  経済企画庁長官に、いまの公害は、これはどうしても避けて通ることのできないようなものであって、経済社会、それ以上に政治問題になっている状態だ。このことは、私が言う必要もないほど長官よくおわかりのとおりであります。そして公害に関する国際会議が最近何回か開かれて、異常に注目されてきているわけです。そういうようなゆえんもここにあるのではないか、こういうように思っております。そのことにつきましても、これは昭和四十二年ですか、公害対策基本法制定されて、関連立法がその後続々と出ているのであります。そして最近では、いま申しましたように公害罪、この制定さえもいわれておるような状態にあるのでありまするけれども、この法の制定だとか、規制措置だとか、事後対策だとか、これは幾ら打ち出しても現在の経済情勢のもとで、高度の経済成長に伴う環境悪化の点は、これには十分に対応していくことはできないんだ。ここに住民のいわば不満を鎮静させる何ものもないわけであります。そして国民生活の点から見ても、いわば自由主義の国第二位の生産力を誇っておっても、公害は一位である、こういうようなことで、ありがたくないような汚名さえもちょうだいいたします。この根本原因は何なんだ。このことも考えて、今後の公共用水域のいわばこの水質保全の実をあげなければならないんだ、こういうようなところにも私はもう重大な問題があろうと思います。大臣もこの点はお考えおきのとおりでありますけれども、この公害の根本的な原因、これはやはり法規的なものではない。技術的なものでもない。まして小手先でこの対策のみに終始してきたようないままでの傾向、これは今後やはり厳重に注意しなければならないのではないか、こういうように思うのです。  それで、いま総理府長官からも——省庁たくさん相手にして、そうしていわゆる統轄機関的に、今後経済企画庁なり、総理府長官なりがこれに当たるわけであります。それぞれの事務は各大臣が持つわけであります。その横の連絡と権限等において、いわば幾らいい法律をつくってもざる法になりかねない。これはまことに重大な問題であります。したがって、公害に対する基本的な政治姿勢、これが確立されなかったならば、今後この法律を直しても、つくっても、どうにもならない、こういうところにまず第一の問題を私はしぼってみたいと思います。大臣はその基本的な政治姿勢、これが確立されない以上、法律だけをつくっても小手先にすぎなくなって、依然として国民からざる法づくりに専念しておるという批判を受けなければならない、こういうことであります。そうならないために、この基本的な政治姿勢、これをお聞かせ願いたいと思います。
  16. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 いま島本さんの御指摘になりました点は、私も全く同感でございます。  率直に申しまして、公害問題に対する認識というものがやはりだんだん変わってきておると思います。どっちかといいますと、やはり経済の成長というものを中心にして考えられがちであったわけでありますけれども、そうしてこの公害問題というのはその裏側にあって、だんだんとひそやかに深刻さを増してきたわけであります。最近に至っては、先ほど御指摘の国際会議等に対しても、あれだけの大きな関心を呼んでまいっておるわけであります。政府といたしましても、もちろん経済成長と同時に、この公害問題はいわば不可分の関係のものであるということで、結局、幾ら成長いたしましても、公害問題が片づかなければこれは成長ではないのだ、こういう認識がだんだんと出てきておると思います。GNPの増加の数字を手にとるだけではだめである。そこから公害についてのものを差し引かなければほんとうの成長とは言えない。GNPの数字だけでは国民の福祉の指標たり得ない、こういうようなものの考え方が最近いよいよ確立してきたと私は思っております。政府といたしましても、もちろんその考えのもとに、最近におきましては急速にこの施策を拡充強化をはかろうとしておる次第でございます。今回の改正案の提出もその一環でございますが、御存じのように公害基本法に基づくいわゆる環境基準、水質基準の設定等も急速にこれを行なってまいる、こういうことでいま私たちも一生懸命やっておるつもりであります。御指摘のようにまさしく、特に河川の水というものは、あらゆる近代の生活のあかがそこへ入ってくる、こういうことでありますから、成長が進むにつれまして、なかなか、その公害の対策というものがともすればおくれがちになるおそれがあります。これを、過去のおくれた部分をさらに取り戻す、そして今後の分はもう絶対この公害ということを抜きにしては、処置をしなければほかに対策は進めない、そういうような気持ちでいるところでございますから、私もただ法律だけつくってよしとする気持ちではございません。  ただ率直に言いまして、御指摘のありましたように企画庁がいわば調整役というようなことも兼ねて水質についての所管をいたしております。水の行政というものは、御存じのように非常に複雑でありまして、それだけに企画庁としては各省と連絡を十分にとらなければなりません。そうしてまた、ただ水質基準をきめただけではだめでありまして、いわゆる工場の排水規制にはそのための実体法がある。各種の実体法がございまして、これが各省の所管になっておりますし、また地方団体との関係もよほど緊密にやってまいらなければならない。最近は、地方団体もずいぶんものの考え方も違ってまいりまして、一ころはむしろ工場誘致のほうに力を注いでおったようなところが多かったのでありますが、最近は、それよりはやはり公害をまず考える、こういうふうに認識が非常に広く行き渡ってきたと思います。私たちもいま申し上げたような考え関係方面と十分連絡をとって、そしてこの強化をはかってまいりたい、こう思っております。
  17. 島本虎三

    島本委員 その努力の点で、経済的な考え方、これはやはりそのとおりだと思うのです。それからいわば調整官庁、連絡官庁としていろいろやろうとする、そういうような点に対してはそのとおりだと思う。ただ、私が言ったのは、それだけでは困るのじゃないか。というのは、基本的な政治姿勢、これはやはりいままでの状態とは変えなければならないんだ。つまり何を変えるんだ。国民の生命や生活に関係する基本人権、こういうようなものがまずあらゆるものに優先する政治である。まずこういうようなこと。これはみんな言っていることだから、大臣もおわかりのとおりなんです。  ところが、やはり公害に関していろいろな権限を持つ省庁が、それぞれの権限においてやると効果があがらないというゆえんのものは、企業に対する過保護の姿勢、こういうものがいままであった。その結果が生命と健康、こういうようなものに対して重大な影響を国民に与えたのだ。今後は国民利益優先、こういうことに改めるのだ。これと同時に、今度公害防止被害者の補償、こういうようなものに対しての救済、こういうものの費用、こういうようなものはやはりいままでと同じ考え方じゃなく、進んで、それを起こしたものが負担するというのが原則なんだ、こういうような考え方のほうまでぐっといくのでないとだめだ。国がやはり負担してやるんだ、地方公共団体負担してやるんだ、そうするとそこにクッションが何回かあるわけですから、そこがまた温存するような一つのチャンスを与えることになりはせぬか、こういうように思うわけです。したがって、考え方として、これはき然として持っていなければならないのじゃないか、こういうように思うのです。これから具体的な問題に入る際にこの考え方が大事なんです。それで基本的な考え方としてまず長官に聞いているわけなんです。  まさに、明治以来の政治、行政の産業第一主義、こういうようなことから、生命尊重、人権尊重のこういうような転換をする、この七〇年の経済企画庁姿勢は、これでなければだめなんだ、これが今後の公共用水域水質保全に関する法律案を実施する前の心がまえなのである、こういうようなことでなければならない、こういうように思うわけなんです。私はまた、そういうことが基本的な考えだと思っています。間違いないと思います。これを長官も実施してほしいのです。経済的な考え方、また現在調整役、または連絡機関としての考え方、それは間違いありません。その上に立って、この基本的な考え方をがっしり裏表に結びつけて、法の実施に当たってもらいたいのです。いかがです。
  18. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 全くおっしゃるとおりに私たちも考えています。まあ大いにひとつがんばってまいるつもりでおります。
  19. 島本虎三

    島本委員 それと同時に、被害者の救済法、もうできております。窓口は厚生省になってやるわけです。これは水に対しての問題も当然今後出てまいります。そういうようになってみますと、やはり被害者立場からして、長官もこの考えだけは私と同じになってほしいのです。  と申しますのは、この費用負担の問題になると、国の負担、都道府県の負担、市町村の負担企業負担、こういうように、幾つかに分ける傾向がいまの考え方としてあるのです。経済企画庁にもあるのです。こういうような考え方は、ではどういうことなんだ。被害者立場から見ますと、これはもう税金でまかなわれることは、被害を受けた上に、なお自分の税金でそのしりぬぐいをするということにつながるわけですから、これはやはり被害者立場としてはしごく残酷なんです。したがって、そのためには当然これはもう公害対策費は企業負担、当然投下すべき生産費の一種なんだ、こういうような考えでこれからぐっと指導していくべきじゃないかと思うのです。まあ経済企画庁も、同時にあわせて通産省でも、こういうような考えでやっていってもらいたい。  それで同時に、この考えの上に立てば、いま問題になるのは、中小企業のこういうような公害排出機関に対する、画期的な一つの対策を出さなければならない時期です。これはいままでと同じような状態でやっていたら、資力のあるところの大企業はよろしい。しかしながら、中小企業の場合は、依然として都市の下水や河川はよごしっぱなしにする傾向があります。これを行なうのは、いわゆる公害防止事業団、こっちのほうに課された仕事の一つであります。したがって、ここに画期的な一つの対策を考えなければならない、こういうような段階だと思うのですが、経済企画庁長官並びに公害防止事業団、その方面で中小企業に対しての画期的な手段、対策、こういうようなものをお考えであったならば、この際ですから、この水の関係審議を前にして発表しておいてもらいたいと思うわけです。
  20. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 お説のように、公害の責任者が企業である、これをやはり一番の大原則にしてものを考えていかなければならぬ。これは私たちも全く同感でございます。それがやはり大原則になって、その上でもっていろいろな事態に対して対処をする、こういうことでございます。ただ国の税金で何でもかんでもやる、こういう気持ちは少しもございません。ですから、そういうような方向でもって今後できるだけ運営をしていかなければならぬ。なおまた、中小企業というようなことを頭に置きまして、公害対策について事業団その他の事業の拡充を一面においてやっていかなければならない、これもまた必要なことでございます。これについては現在の情勢から見まして、相当急速に拡充をしていく必要があると私も考えています。
  21. 古澤實

    古澤参考人 公害防止事業団の業務を担当しております古澤でございます。  いまの点について御説明さしていただきますが、御承知のように公害防止事業団は、公害防止設備の建設業務と、それから施設のための融資の業務、この二つをやっております。  それで、まず中小企業に対する融資の問題でございますが、これも前々から当委員会で、中小企業に対する融資が少ないのではないかというような御指摘もございましたが、最近の傾向からいいますと、だいぶふえておりまして、四十四年度の融資のワクが四十億ございますが、そのうちの二十一件が中小企業でございます。これは四十一年度から事業を開始しましたけれども、四十一年の中小企業に対しての融資は三件、四十二年が八件、四十三年が十一件、四十四年度は二十一件とふえております。これは一般公害の規制が非常にきびしくなっておるというような関連で、大企業ばかりでなく、中小企業もそれに即応して公害防止設備をやらなければならない、こういうふうなことの関係かとも思います。  そのほかに、直接事業を行なっておりますが、これは年に大体百二十億程度の規模で行なっておりますが、たとえば共同公害防止設備であるとか、あるいは共同のアパートをつくるとか、あるいは工場の団地をつくるとか、あるいは府県との関連でグリーンベルトをつくるとか、こういう仕事をしておりますが、こういう共同公害防止設備と、それから工場福利アパートと申しますか、工場団地はほとんど全部が中小企業でございます。そういうふうな状態になっておりますが、われわれ仕事を通じて乏しい経験でございますが、いろいろ感じますのは、やはり公害防止する場合の中小企業負担力というものが非常に乏しいということで、これをどう解決するか、何ぶんにもトータルコストということになると、これが全部原価にはね返って、いろいろ中小企業を圧迫するということで非常に問題があるわけでございます。ことに公害防止設備をやる場合の問題点としまして、イニシアルコスト、設備投資、それから第二としては、それを維持管理する問題、それから水の場合ですと、これは汚水を処理しますから、その出た汚物、われわれはスラッジと称しておりますが、それが必ず出ますが、それをどうして安く処理するか、こういう点がわれわれとして公害防止設備をいろいろ御相談を受け、あるいはわれわれが直接やっておりますところでは悩みの種でございます。  それで、実は最近、これは多治見の例でございますけれども、これも陶磁器の汚水を流すということで、これは関係の陶磁器業者が、中小企業でございますが、七、八十件ございます。これに対して一々融資をするということではなかなかたいへんだということで、組合に融資をするという形で、それをもって組合がそれを貸すとか、そういう形での共同施設的な面でやってみたらどうかということで、来年度岐阜県庁とのお話でもって、そういうふうな方向でいまの企業負担の問題についての解決をはかっていくというふうにも考えております。  そのほかに、特にいろいろ問題になりますのは、何ぶんにも金利とか、そういういろいろな問題もございますが、これは厚生通産その他の御助力で、どんどん安くなっておりますので、この点は今後もいろいろわれわれ期待しておりますけれども、金利の問題等そういう問題があろうかと思います。
  22. 島本虎三

    島本委員 さっぱり画期的じゃないようであります。いままでの惰性であります。その程度じゃだめです。厚生省通産省とで、もっと中小企業——企業のほうはいいです、やらせますし、またやれます。中小企業のほうの、いろいろのそういうような施設に対しては、今後やはり公害防止事業団を通して、もっと指導を的確にしてやるべきじゃないか、こう思うのでございます。むしろそれより積極的に出してやる。そういうような廃物をそのまま一つの資源として、廃物そのものを一つの産業に組み立ててやっているような仕事があるのです。そういうのは中小企業がやっているのですから、それらに対して遠慮しないでやればいいのです。融資してやればいいのです。やっていないんですよ、私が調べたところでは。排出する排じん、こういうものをわざわざ持ってきて集めて、そしてそれをメッキ用の亜鉛にわざわざやる。煙を出せば公害になるけれども、出さないでやっている。こういうような血のにじむような企業に対して冷淡です。画期的といったって、さっぱりやっておらぬ。今後宿題としてこれはやってもらうように指導して、今後ひとつこういうような計画があるということを、こっちのほうへ文書をもって知らせておいてください。通産厚生両省に強く望んでおきます。  公害防止事業団がその程度であるならば、いままでの惰性でありまして、前から言っておった画期的な対策だとはさっぱり思われません。画期的ですか。画期的だったら、もう一回答弁してください。それでなかったらこれでやめていいです。
  23. 古澤實

    古澤参考人 ちょっと申し添えますけれども、そのほかに、中小企業関係公害防止のための融資その他との関連で、中小企業振興事業団とか、あるいは中小企業金融公庫でありますとか、あるいは府県を通じての中小企業に対する近代化補助金でありますとか、あるいは府県そのものが窓口になって融資をするとか、そういういろいろな金融措置がはかられております。ことに零細といいますか、それが単独に融資を受ける場合は、どちらかというと府県における比重といいますか、そういうものが非常に多いように思います。また府県が非常にきめのこまかいいろいろな御指導、御援助をされておるように思います。われわれといたしましては、中小企業振興事業団と一緒になりまして、大体四、四、二という比率でございますけれども、中小企業振興事業団が四、府県が四、われわれが二という形での融資、そういう場合には優先的に融資をはかる、そういう方法も講じております。
  24. 島本虎三

    島本委員 では具体的に法案の中へ入って、二、三の点で聞いてまいりたいと思います。  まず、公共用水域においての水質汚濁発生施設に対する点検の問題ですね。これはどうですか。厚生省では昭和四十五年三月二十五日、全国のばい煙発生施設に対する総点検を実施するということで、四月からはこれを実施する方針をきめた、こういうようなことを聞いております。そしてこれに違反する施設については、都道府県知事を通じて、直ちに業務の停止、低硫黄油の使用並びに商煙突による広拡散、それと施設等についてのきびしい改善命令を出す、こういうようなことにしたいということをいわれておりますが、厚生省ではこのようなことを現にやっていますか、これからやるのですか。
  25. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 ただいまの点でございますが、これはもう御承知のように、昨年の暮れに、ことしの二月一日から適用されますような排出基準の改定が行なわれたわけでございますが、これに従いまして、現在個々のばい煙発生装置から改善計画が都道府県に出されてまいっております。これは二月末までに出される、こういうことになっておるわけでございます。  これを審査いたしまして、改善計画が適切であるという場合におきましては、それに従って改善が行なわれ、排出基準に適合するような措置が個々の企業でとられる、かようになるわけでございます。もしこの改善計画を出さないとか、あるいは出しておってもそのとおり実施しないという場合には、積極的に改善命令をかけていく。ただ、改善計画につきましては、猶予期間もございませんでしたので、先を見込んでの改善等をいたします場合若干の期間がかかりますので、こういう場合につきましてはあくまで行政指導ベースでいく、こういうことにいたしておるわけでございます。  なお、一斉点検につきましては、そういうような状況をにらみ合わせまして、できるだけ早い機会に、昨年の八月に行なったと同じような一斉総点検を実施して、排出基準の適合の状況を把握してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  26. 島本虎三

    島本委員 経済企画庁では、この公共用水域に対して、全国の水質汚濁発生施設に対する総点検、こういうようなことをいままで行なってみえましたか。
  27. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 今日までまだないようでございます。
  28. 島本虎三

    島本委員 一方、ばい煙では、厚生省でこういうようなことを具体的にやろうとしています。水でもこれは同じであります。やはりこれは可及的すみやかに総点検をして、これに対する一つの対策を考えておかなければ、法律をつくっても、これをやる前に総点検をして置かなければ実効をあげることはできませんよ。これは、やはり横の連絡あたりをもっとつけてほしいゆえんのものもここにあるのです。これもすぐ総点検してみて、法律を実施する場合に何ら障害がないように、またこういうような点については万全の措置をしておいたほうがいいと思います。大臣、これはすべきですよ。
  29. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 水質保全の行政は、具体的にはだいぶ前から行なわれておるわけであります。私どもも、先ほど申し上げたように、事態の進展が急速でありますから、いまできるだけ見直しを行なっております。いままで設けました基準ではもう古くなっておるというようなものを極力見直しをする、そういう意味での点検を行なっておりますが、同時に、具体的な実行を担当しておる実体法の担当官庁である諸官庁においても、やはりいま御指摘のような点を、漏れのないように、現在ほんとうに行なわれているかどうか、事故が起こってからでは間に合わないわけでありますから、厳重に現状をまず把握するということを、ひとつ各省と一緒になってやらなければならぬことだ、こういうふうに私も感じております。
  30. 島本虎三

    島本委員 行政管理庁、それから行政監察局、この方面から先般資料をちょうだいいたしました。都市河川に関する行政監察結果に基づく勧告であります。これがこの三月に出されたようであります。これによって見ます場合には、これはやはり重大な勧告がなされております。いわば都市河川の環境衛生上ゆゆしいような、こういうような現状を打破するための勧告でありまして、これはなかなか、この内容等はわれわれは一読に値するように思ってまいりました。しかし、これにしても、なかなか問題の解決がむずかしいようにも考えられます。この勧告はいままで何回なしておりましたか、そうしてその成果がどうであったのか、これについての御報告をお願いしたいと思います。
  31. 笹倉三郎

    ○笹倉説明員 都市河川に関する行政監察は、今回が初めてでございます。その中に、河川の汚濁に関しましては、河川法第二十九条の政令を早期制定していただきたいということは、四十一年の十月二十四日に勧告いたしました「河川管理に関する行政監察」の結果に基づきまして勧告いたしたところでございますが、この二十九条の政令がいまだ未制定でございますので、今回重ねて勧告をいたした次第でございます。
  32. 島本虎三

    島本委員 そういうふうにして何回勧告をしてもだめだ。やっておらない。そうしてまた、水に対しての総点検をまだしておらない。こういうような状態のもとに、今度公共用水域のいわば水質保全に関しての法律をいかにつくってやっても、その実効の点はやはり私としては疑問を持たざるを得ない、こういうようなことに相なるわけでございまして、この点ひとつ今後監察局の指摘どおりに十分これも考えて対処するように、企画庁のほうでは、いわば総合官庁、調整官庁、こういうような意味においてもこれは重大だと思います。それをやらないからだめなんです。紛争の場合でも、今度山中長官は、今後はがっちりやっていくという決意を表明されました。やはり大臣の場合も、今後、公共用水域水質保全に関しては、同様にこれは重大な決意で当たらなければならないわけです。幸いにして総理と同じ名字ですから、その意味におきましてもそれに堂々と当たらなければなりません。私はそれを期待いたします。  それと同時に、これはどういうようなことになるのでしょうか。いまの法律全部で公共用水域法律は何条になるのですか。
  33. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 十五条です。
  34. 島本虎三

    島本委員 そうして、この紛争処理のほうに回わされておる法律もあるわけです。それは何条回わしましたか。
  35. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 先ほどちょっと答弁間違いまして失礼いたしました。全部で二十五条であります。それで紛争処理に関します条項が五条あります。
  36. 島本虎三

    島本委員 この公害紛争処理法案の参考資料を手にしてようやくそれがわかるわけです。経済企画庁から出された公共用水域のあらゆる参考資料並びに法律案のどこを見ても、そのようなことは書いていないのであります。この公害紛争処理法案によってそれがわかるのであります。いままであったのがなくなってしまう。なくなってしまうのが、その法律に何ら書いておらない。本法のどこにも書いておらない。これは法体系としては整っておるかもしれませんけれども、この点私としては不親切ではないか、こういうように思うわけです。不親切が先行しては、いかに法の精神を実施しようとしても、これは万全の成果をあげることはできないのじゃないですか。これはいままであなたのほうで配ってくれた資料、これによってもいまのように公害紛争処理についての五条、これは紛争処理法案のほうに譲ったのだということが、どこかに書いてありますか。あったらちょっと、私の勉強不足でありますから教えてください。
  37. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 紛争処理に関しますのは、実はこれは公害紛争処理法案の附則のほうで水質保全法のその条項をはずすということに法律上の体系はなっておりますので、水質保全関係の資料のほうにはそういう解説をつけませんで、非常に不親切かと思います。その点はおわびいたします。
  38. 島本虎三

    島本委員 ちょっと不親切ですね。それでは本条に入ります。  そうすると、これはどうですか。第九条に「水質基準を遵守しなければならない。」という順守義務があるわけですが、守らない者に対してはどうするのですか、それをお聞かせ願いたい。
  39. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 排出基準を守りません場合には、これは現在の法体系で実体規制法であるたとえば工排法の規定によることになりますが、その所管省でこの処置をとることになると思います。詳しくはそちらの所管省からお答えすると思いますが、守りません場合には改善命令を出し、さらにその改善命令に従わない場合には、法律によるいろいろの罰則を適用するということに相なります。
  40. 島本虎三

    島本委員 その問題は、あとで全部もう一回おさらいします。しかし、これは念のために聞いておきますが、第八条の「関係行政機関義務」がございます。「水質基準を尊重してしなければならない。」こういうようなことになっていますが、関係行政機関は、水質基準尊重の義務があるわけですけれども、これは順守の義務じゃないのですか。尊重だけすればいいのですか。順守しなければならないのですか。いんぎん無礼ということばもあるわけであります。また努力してもできなかったということも往々にしてあります。しかしながら、尊重の義務とありますから、これは順守の義務じゃない、こう思うのですが、この辺の法体系上の解釈はどういうふうになっているのですか。
  41. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 これは、関係行政機関はこの基準を尊重しなければならない。実際に守るのはその排出をする会社になります。したがいまして、会社に守らせることは、この規定を受けまして関係行政機関が所要の関連法によってその規制をしていく、監督していく、守るのはその企業が守るということになります。
  42. 島本虎三

    島本委員 これはいかにいままでざる法といわれても、関係官庁間は責任がないんだ、結局は企業が悪いんだ、こういうことに相なります。その企業も、考え方としては、被害者よりも企業優先なんだという考え方が、すっといままで貫かれてきたわけです。依然として、この問題についてはこれはやはり尊重すればいいので、守る義務企業なんだ、こういうようなことのようであります。今後やはりこの問題は問題として残ると思います。  同時に十一条「協力を求めることができる。」こういうようにありますが、これは「協力を求めることができる。」でなく、「拒否することができない。」くらいの強力な規制が水に関してはできないのですか。これも事務当局からちょっと聞いておきます。
  43. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 「協力を求めることができる。」という条項によりまして、私どもは協力を求めております。それに対して、その関係行政機関に十分協力をしていただいております。
  44. 島本虎三

    島本委員 じゃこれはちょっとお伺いしておきますが、ほかの法律、法令とは本法制定によって十分連係がとれている、またとれていなければならないんだ、こういうように考えられます。そうすると、この問題と一緒に本法案の受けざらになるような法律、こういうようなものは幾つありますか。
  45. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 十種類ございます。
  46. 島本虎三

    島本委員 十種類以外の法律は、受けざらにならないと解釈すべきですか。
  47. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 水質保全法で水質基準をきめまして、その対象の業種における実際の排出規制はそれぞれの実体法で行なうことになりますが、現在そうした法体系のもとで直接関連するのは、ただいま申しました種類の法律であります。もちろんそのほかに、公害に関しますたとえば救済の問題であるとか、現在御審議中の公害紛争処理法案であるとか、あるいはそのほか融資制度、いろいろ関連の法規はもちろんございます。ただいま私が十種類と申し上げましたのは、直接この水質保全法の排出基準の設定を受けて、それを排出規制をしていく法律だけを申したわけであります。
  48. 島本虎三

    島本委員 そのほかにもこの関連において、この規制を受けなければならない法律もあるわけですね。
  49. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 それは、ただいま私が申しました十種類だけであります。
  50. 島本虎三

    島本委員 ではこれは、河川法だとか、そういうものはどうなっていますか。これは全然関係ないのですか。
  51. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 現在、水質保全法によりまして、御承知のように水質の汚濁を防止しております。河川法では、おそらく先生の御質問は水の清潔に関することかと思いますが、現在もちろん河川法によりましても、水の清潔という観点はこの法律の条項にございますが、水質の汚濁という点では、この水質保全法が現在所管しております。したがいまして、関連はございますが、直接の規制という点での結びつきはない、こういうように思います。
  52. 島本虎三

    島本委員 そうすると、これらには全部罰則がありますか。
  53. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 水質保全法には罰則はございません。それを受けます実体規制法には罰則がございます。
  54. 島本虎三

    島本委員 工場排水等の規制に関する法律、これに罰則ばありますか。
  55. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 あります。
  56. 島本虎三

    島本委員 いままでに受けた数を知らしてください。
  57. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 これは所管省のほうからお答えいただくのが適当かと思いますが、私の聞いておる範囲では、改善命令を出したケースはかなりありますが、罰則の適用はないと伺っております。詳細は所管省にお聞きいただきたいと思います。
  58. 島本虎三

    島本委員 ここには命令違反は「一年以下の懲役又は十万円以下の罰金」とあるのです。さっぱりこれをやっていないじゃないですか。これはあなの言った直接関連法で、受けざらになる法律だと言っているのです。それさえもないんだ。これはだめですよ。問題は長官、工場排水等の規制に関する法律、この実施法、この主務大臣が、汚水等の処理の方法の改善の命令を出さなければならない、こういうふうなことがありますけれども、大蔵大臣厚生大臣、農林大臣通産大臣、運輸大臣、川の上部は建設大臣、それぞれあるのです。受けざらになる法律がこれほどあっても、これはいままでなかった。それほどあっていながら罰則は一つも適用がない。それでいながら、これほどきたないのが問題になっている、これはざるでしょう。だめですよ。ですから、今度総合官庁、調整官庁として、しっかりやらなければならない、こういうゆえんのものもそこにあるわけなんです。いまも、いみじくもこれは受けざらだと言った工場排水等の規制に関する法律、これだってそうなんです。この問題に対しては十分対処しなければならないはずです。長官どうですか。
  59. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 実は、私もあなたと全く同じ疑問を持ちまして、担当者に対して、罰則はあるんだが、それを適用した例はあるか、こういうことをただしてみました。そのときの答弁は、改善命令を出した場合、それは今日まで守られておる、したがって、まだ罰則を適用するような事態が起こってないものと見ておる、こういう話でありましたから、なおこれは、念を入れてもう一回よくそういう実態かどうかを調べるように、こう言っておるところです。おっしゃるように、罰則がある以上は、これを当然適用しなければなりません。そういう事態があるかないか、これはよく実情を調べるつもりであります。
  60. 島本虎三

    島本委員 したがって、これは総点検が必要だというのは、その辺にあるのです。ですから、事務段階でもこういうような点はまちまちなんです。大臣からも、総点検する、こういうようなことですから、それでいいんですけれども、鉱山保安法は受けざらになりますか。
  61. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 水質保全法に基づきます、それに関連する実体規制法の一つであります。
  62. 島本虎三

    島本委員 これに対して坑水、廃水の処理に伴う鉱害の防止については第四条二号がありますが、これは訓示規定にすぎないようであります。これは鉱業の実施による危害もしくは鉱害を生じ云々、これは問題がありますけれども、これには罰則がありますか、ありませんか。この鉱山保安法についてひとつ説明してください。
  63. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 鉱山保安法には罰則がございます。
  64. 島本虎三

    島本委員 いままでこの罰則を受けた数並びにどういうようなことで罰則を科したか、それも説明願います。
  65. 橋本徳男

    ○橋本(徳)政府委員 ごく最近におきましては二件ございます。  一件は水との関係、それから大気汚染との関係もありまして、安中製錬所に対して罰則を適用していま送致しておりまして、裁判になっております。  それからもう一つは直接水というよりも、昨年の七月におきまして、台風期において、保安法上堆石場の崩壊防止命令を出しましたが、これを聞かなかったというふうなことで、現在京都地検に送致してございます。  この二件が最近における事件でございます。
  66. 島本虎三

    島本委員 おそらくその程度だろうと思います。こういうことは問題になるまでの間は、ほとんどこれを手がけない。法律があって罰則があっていながらも、これはしり抜けのような罰則でも、三年以下の懲役または三十万円以下の罰金というふうにあるのですが、おそらく安中の鉱業所一つくらいのものじゃありませんか、具体的な問題として浮かび上がってきたのは。やはりこういうような問題に対しても、長官通産関係との間になかなか困難な問題もあるのです。これは関係法律なんです。今度つくる公共用水域水質保全に関する法律ができれば、これは受けざらになる法律なんです。それでもこういうような状態ですから、今後十分この辺の実施に対しては監視しなければならないと思うんです。しり抜けになるゆえんのものもここにあるのです。ひとつこれも大いにがんばってやってもらわなければなりません。
  67. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 まことにおっしゃるとおりだと思います。とにかく法案を実行するということ以外には、まだわれわれとして公害公害防止の政策の実行がないのですから、これは厳重にそういう方向でもってやっていこうと思います。
  68. 島本虎三

    島本委員 念のために、砂利採取法についてはどういうふうになっていますか。
  69. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 砂利採取につきましては、その採取の計画段階で計画を取り寄せまして、その計画の中に水質汚濁に関して守るべき基準という項目がございまして、その基準をはたして計画の中に織り込んでおるかを厳重にチェックすることになっております。したがいまして、事後においてその基準に違反したような場合には、これに関する罰則規定もございます。また作業の経過中におきまして、それに違反したような事実、その計画の順守につきましての監視体制その他は十分とれるような体制になっております。
  70. 島本虎三

    島本委員 やはりこの罰則規定でも一年以下の懲役十万円以下の罰金、これは併科も認めるようであります。しかしこれは四十三年の法律七十四号ですから、おそらく実施以来の経過としてはわりあいに若いですから、なんでございますけれども、これも結果は採取計画の認可、これを無認可でやった場合、同時にこの順守義務、これだけですね。これくらいだったら、ほんとうに順守しないということになるかならぬか、これは若い法律ですから、今後はやはりこういうような問題に対しても十分対処しておかなければならないと思います。まあこれはそれでよろしいと思います。  それと水洗炭業に関する法律、これはどうなりますか。水洗炭業に関する法律、これも受けざらになる法律です。これに対しても十分措置されてありますか。罰則その他によっていままで実施されておりますか。
  71. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 これに関しましても、水質保全法のほうできめられた水質基準というものは、その基準そのままを適用することになっておりまして、その順守につきましてももちろん法律的に強制され、かつ罰則が設けられておるわけであります。
  72. 島本虎三

    島本委員 これは三十三年の法律百三十四号です。この問題に対しては罰則はないんじゃありませんか。
  73. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 その点直ちに調べまして正確にお返事いたしたいと思います。
  74. 島本虎三

    島本委員 実施法には罰則をもって臨むんだと言ったばかりなのに、実施法だといわれるものにないじゃありませんか。もう一回総点検する必要がある。  それから採石法、昭和二十五年の法律第二百九十一号、これはどうですか。やはりいままで罰則ありますか。あったならばこれをどういうようにして実施したか、その数を教えてください。
  75. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 採石法につきましては、罰則を直接適用いたしまして告発した件はいままでになかったかと思いますが、しかし、問題がある事業につきましては、しばしば勧告をし、その作業内容を改善させたという事例はあります。  それから先ほどの水洗炭業法の関係でございますが、第三十七条にはっきりした罰則規定が設けてございます。
  76. 島本虎三

    島本委員 水洗炭業法の罰則、これはどういうふうにやっておりますか。何回くらいこれを実施しましたか。
  77. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 その点も現在つまびらかにいたしませんが、告発した件数はおそらくゼロではないかと思います。
  78. 島本虎三

    島本委員 それから、船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律、これは受けざらになりますか、なりませんか。公共用水域に入りますか、入りませんか。
  79. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 実体規制法になります。
  80. 島本虎三

    島本委員 この罰則はありますか。あったならば、いままでこれによって罰則をやった数を知らしてもらいたい。
  81. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 現在の水質保全法が実体規制法になると先ほど申しましたのは、現在御審議いただいております改正案が通過いたしますと実体規制法になるという意味でありまして、現在はまだおそらくそういった観点からの規制はされてないはずであります。
  82. 島本虎三

    島本委員 下水道法はどうなりますか。
  83. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 実体規制法になります。
  84. 島本虎三

    島本委員 この中の第一の公共下水道についての放流水の水質の基準についてはどうなりますか。  同時に、都市下水路についての行為の制限、排水施設の構造についての規定、こういうようなことについてば、どうなりますか。直接これは受けざらになる法律だということですから、これははっきりしておかなければなりませんよ。
  85. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 建設省の所管になりますので、詳細に私お答えいたしかねます。
  86. 島本虎三

    島本委員 これは、公共用水域水質保全に関する法律案のいわば主管庁である経済企画庁で、この法律の中のいわば公共下水道についての第一号に当たる点だと思いまするけれども水質保全法の基準がこの政令よりきびしい場合には水質保全——これはもう公共用水域に該当すると思うのですが、その基準によるということになっておるわけです。これは、法律そのものがきめられたならは、そっちのほうに自動的に——前にきめてありますけれども、これを変更して自動的に移行するときめてあるのです。こういうふうにきめてあるから、これを生かすことによってすぐ生きると思うのです。おそらく建設行政の中での河川行政、これはあまり私は感心できませんけれども、ここの点は、やはりいいのです。これだけは、もう十分長官として覚えておいてください。これはよくやらなければならぬし、よくなっておりますから……。同時に、都市下水についてのこの分は、水質基準ができてからこれを適用することになっておりますから、これは厳重に今後当たらせなければならない法律一つです。もちろん、これには罰則はないのでありますけれども、罰則のないところは、りっぱな規定になっておるようですね。ですから、このぐらいの配慮があっていいと思いますけれども、十分長官もこれは考えてやってほしいと思います。  それと同時に、河川法の場合、先ほど行政管理庁から行政監察についての指摘を受けたようでありますが、この問題等も大きい問題になる一つでありますけれども、この第二十九条では「河川の流水の方向、清潔、流量、幅員又は深浅等について、河川管理上支障を及ぼすおそれのある行為については、政令で、これを禁止し、若しくは制限し、又は河川管理者の許可を受けさせることができる。」二項では「二級河川については、前項に規定する行為で政令で定めるものについて、都道府県の規則で、これを禁止し、若しくは制限し、又は河川管理者の許可を受けさせることができる。」こういうことになっているわけです。そうすると、長官と建設大臣との間で、この中で明らかにこの清潔の問題と、流量の問題と、こういうようなのがきめられてあるわけですが、清潔の問題については、水質基準をきめる以上、これは経済企画庁長官の所管のほうになる問題ではないかと思います。そうすると、この問題については、経済企画庁長官権限と、建設大臣権限——この清潔と流量の問題に対して、どちらが受け持つことになるのか。または、これはもう大臣権限が及ばないものなのかどうか、この点を明確にしておいてほしいと思います。大臣、いかがですか。
  87. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 河川管理者として河川の清潔をはかる、これは私は当然のことだと思います。そういう意味で、ただいまいわゆる汚濁というふうにいっておりますが、水質保全の対象になる汚濁現象、これは単なる自然現象であったり、偶発的な現象でなくて、大きな社会現象でございますが、その汚濁を対象にして水質保全法というものができておる。一方において清潔という観念を、その汚濁と切り離して考えることも、私は可能だと思っております。でありますから、たとえば、よく言われておりますが、ネコの死骸だとかいろいろな汚物を投棄する、こういうようなことは、実は現在の水質保全法の対象にはなっておらないわけでありますが、そういう範囲のものについて、いわゆる清潔という見地からこれの規制を考える、こういうことは十分あり得ることだ、こういうふうに私は思っております。
  88. 坂野重信

    ○坂野政府委員 建設省の立場を御説明いたします。  河川法の立場からいいますと、河川法の「目的」にあるように、河川の保全と総合的な管理という立場、そういう意味からいって、河川全体をながめまして、河川の流水の正常な機能を維持するための、そういう意味合いからの河川の保全という責務が、河川法の立場から河川管理者に与えられております。こういう立場からいきまして、二十九条の「清潔」ということばが出てきたものと思うわけでございます。そういう意味合いからいいますと、河川法の立場、河川管理者の立場として河川の汚濁の問題、清潔の問題、全体的に含めて責任がないわけではございませんが、いま長官が言われましたように、おのずから水質保全法との調整の問題があるわけでございまして、水質保全法でもって保全し得る水質に関する事項は、水質保全法のほうにゆだねる方向で政令につきましても検討中でございます。しかし、水質保全法でカバーできない分野もございますので、そういうものに重点を置きまして、河川の政令についても、いま二次的なものを作成中で、各省と調整中でございます。それ以外に、直接水質的なものでなくても、いわゆる河川に汚物を捨てるとかいうような問題は、直接水質にかからない分野でございまして、これは直接的に取り締まるということでやっていきたいという考え方でございます。そういう意味合いから、河川法の立場からいうと、決して河川の汚濁とか、水質保全に責任がないわけではございませんで、水質保全法との調整を十分はかって、水質保全法のほうでできる部分のものはそちらのほうでやっていきたいという方向で、二重行政にならないようにしてまいりたいと思っております。
  89. 島本虎三

    島本委員 そうすると、川に関しては、いわゆる公共用水域といったらまずいろいろあるでしょうが、河川、湖沼、それから沿岸を含めての海、こういうようなところがたくさんあるわけです。そのほかにもあると思いますが……。そうすると、たいがい川ということになりますと、この受けざらになる法律案であり、それに準ずる法律案であれば、大臣権限が、この問題に対してどこまで及ぶのか、こういうようなことは当然考えておかないと、いまのことばによると、流れた水は私の関係ではないということになってしまう。これではとんでもないことだと思う。一級河川、二級河川、この川に流れて、ネコの死骸や、犬の死骸が出たら、こういうようなものは清潔の中に入るけれども、川の水全体がよごれてしまっても、それあたりは、もう清潔の中に入らないのだ、こういうような考えがあるとすると、私は、この問題は納得できない。いま長官の答弁はどういうようなことを言わんとしたのですか。川の水の流れ、このきたないもの、ネコの死骸や犬の死骸、この程度のものを清潔でないというんだ、この程度は私の責任じゃないんだと、こういうようなことなんですか。それとも規制を守らないで流してしまった。流してしまって川がよごれると、当然に公共用水域といわれるこういうような沼でも、湖でも同時に海までいって沿岸でもよごれてしまう。こうなると、それぞれこの管理者が違うわけであります。そうするともう長官の責任は全然ないということになってしまうわけであります。これはどうも私は賢明なる長官の答弁としては納得できない。
  90. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 私の表現があるいはまずかったかもしれませんが、もちろん水は流れております。ですから、汚濁したところの水が川に流れておるわけでありまして、流れる水を私どもは扱わないというようなことはさらさらございません。それはもちろん流れる水を含めてとにかく河川全体のいわゆる汚濁、こういうものについていま水質保全でもってそれを防止するために、規制措置を実体法と結びついてやっておるというのが現状でございます。
  91. 島本虎三

    島本委員 そうすると、この清潔の規制の具体的実施のためには、政令が当然必要だということになるのですが、これは行政管理庁のほうからこの点指摘されているのです。二回にわたって指摘されているのです。四十二年にもこれは指摘されているのです。まだいまだに、この具体的実施のための政令がないというじゃありませんか。これはやはり長官大臣の間の意思疎通を欠いていると思う。これは何のために政令をつくらぬのですか。これは四十二年に行管庁から指摘されても、何のためにいまだにこの具体的実施のための政令がないのですか。この点はやはり水をよごしている最大の悪政にもつながる、こうさえ思われます。ひとつ長官、建設省、両方からこれに対してはっきりした答弁を願いたいと思います。
  92. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 この政令が、今日までどうして出なかったかの沿革は建設省に答えてもらおうと思いますが、いずれにいたしましても、いまも申し上げましたように水質保全の責任を持っておる経済企画庁でございますから、事汚濁によるところのいわゆる公害防止するための水質保全という問題になれば、これは全面的に企画庁が責任を負わなければならない。これは今日の体制でございます。ただその中で、河川法でいわゆる「清潔」という表現がございますから、実は汚濁と清潔ということとの関係が、これは法制局等でもいろいろ問題になっておるようでありますが、今日までのところ汚濁というものについて私たちが扱っておりますが、そのほかに、われわれの行政の対象になるほかに、清潔という見地から、河川管理者の立場からもし何らか行なうことがあるとすれば、それはそういうものを取り上げて政令によってこれを規制していく、こういうことになるだろう、こういうことでありまして、その点はきわめて明快だと私は思っております。
  93. 加藤清二

    加藤委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  94. 加藤清二

    加藤委員長 速記を始めてください。
  95. 坂野重信

    ○坂野政府委員 御指摘のとおり二十九条の政令の必要なことは承知いたしております。私どもも、四十一年の十月二十四日に第一回の行政管理庁からの勧告が出ておりますので、四十一年の十月二十四日の勧告に日ならずして、四十二年の二月に実は第一次の政令案をつくりまして、そして各省に提示いたしましていろいろ協議したわけでございます。まあいま長官おっしゃいましたような法律の解釈論もございまして、実体論としても二重行政になって困るというような立場から、なかなか各省の了解が得られないで今日に至ったわけでございますが、第二次案を実は昨年の十一月に作成いたしまして、目下関係各省とも調整を進めているわけでございますが、水質保全法の関係、あるいは公害防止条例との調整というような問題もございまして、関係省庁、あるいは地方公共団体の有する行政権限との関係もございます。もちろん河川法自体におきましても、河川の本来の目的からいって、河川の清潔なり、水質を含めた汚濁の防止という問題につきましても、責任があるわけでございます。その辺の調整を実は急いでおりまして、これは実は早急にその辺の調整をはかりまして、各省の協力を得てひとつ政令の制定を急ぎたいというぐあいに考えておりまして、おそくなったこと、まことに残念でございますけれども、そういう事情がございましておくれております。早急にこれはひとつ制定に持っていきたい、このように考えます。
  96. 島本虎三

    島本委員 私は、やはり長官も聞いておられますとおりに、総理府長官は、いま言ったような複雑な各省間の事情の交錯があるから、紛争処理法案総理府のほうへきたのだ。同時に同じような状態で、各省にまたがるから、この公共用水域水質保全等に関する法律については経済企画庁のほうへいったのだ。ともどもこれはやはり各省庁をかかえて、重大な調整役にもなるけれども、今後は総理の意を受けて強力にわれわれはこれを実施しなければならないということを、あなたの前ではっきり言って帰られたわけです。これは同時に経済企画庁長官の決意にも当てはまることである、こういうように私ども考えております。  私は、それでせっかくここまできて、水質の汚濁の問題といわば清潔という問題、これはもう法制上でもいろいろ疑問がある点であり検討中だということを聞いておる。清潔と汚濁はうらはらじゃありませんか。汚濁でなくしたら清潔になる。清潔でなくなったら汚濁するのである。これは両方同じことにしようとするのだったら、うらはらにすればいい。そうじゃありませんか。清潔の反対は汚濁ですよ。汚濁の反対は清潔ですよ。女の反対は男、みたいなものです。ですから、これはやはり両方とも別々なものに考えておられるのかどうか知りませんけれども、これは同一のものにして、まず水をよごしてはならないのだ、一方は清潔に保て、一方はもう汚濁してはならない、同じことなんです。だから、この権限についてはいわゆるあなたのほうが受けざらとしての法律なんですから、その根本をつくるのですから、今後一つのあなたの権限の強力な実施をしなければならない状態が、ここにもうくるではありませんか。そこなんです。ですから、建設大臣のほうにそれをやっておいて、今度は私のほうは知りませんよ、実施官庁でありませんと言ったら、せっかくいまの公共用水域水質保全に関する法律をつくっても、何にもならなくなってしまう。実施法には全部罰則があるとさっき言った。そのとおり。今度は河川に対しての、いわゆる清潔でない場合の罰則、これは河川法百九条にあるようです。じゃあこれは具体的な実施のための政令がありますかどうか、これもついでにお聞かせ願いたいと思います。
  97. 坂野重信

    ○坂野政府委員 この罰則につきましては、今度の二十九条の政令にあわせて、その内容としての案をいま作成中でございます。二十九条の政令が調整つきましたら、同時に罰則もその中に含めて実施するように持っていきたいと考えます。
  98. 島本虎三

    島本委員 この河川法ができたのはいつでございましたか。
  99. 坂野重信

    ○坂野政府委員 新河川法は四十年から実施しております。
  100. 島本虎三

    島本委員 そういたしますと、四十年以来二十九条で清潔の規制をはっきりうたいながら、この具体的実施のための政令がいまだになかった。そうして違反した者に対しての罰則は、河川法百九条にはっきりある。その罰則は百九条にあるほかに、百二条、百三条、百四条、百五条、それから百六条、百七条、百八条、百九条、それぞれ違反による者の罰則が一年以下の懲役から十万円以下の罰金、これらをはじめとして百二条から百九条までずっとあるわけです。罰則がこのようにりっぱに体系的にそろっているわけであります。しかしながら、四十年にできてこれまで、いかに川がよごれても、清潔でなくなっても、この罰則そのものがはっきり百二条から百九条まであっても、具体的な実施のための政令が全然ないために、あえてこの罰則があっても適用ができない。いわばから振りなんだ。こういうふうになってしまうと、これは一体どういうことなんですか。いままでも、りっぱな法律はあっても、その法律の実施を政令によってやると言いながら政令をつくっておらない。これは行政管理庁から二回も指摘されておる。こういうふうな状態で、なおかつ、こういうふうな状態だとすると、せっかくこういうふうな受けざらにしておいて、上のほうの基本になるような公共用水域水質保全に関する法律案をつくっても、またしても何にもならないという結果になるじゃありませんか。そうなってはとんでもないことになる。大臣、ここではっきりそういうふうなことにならない、またさせないという基本的な原則は確立してあります。しかしながら、ここに二十九条、同時に百二条から百九条までのいわば罰則、こういうようなものがせっかくありながら、政令がないためにから振りの状態になっている状態、これも今後このままにしておくことはいけない。したがって、これは早く政令をつくらなければならないし、いま準備があるように聞いているのです。答弁があったようです。これはいつ出させますか。それまでにはっきりしためどぐらいつけないと、これはもうこけんにかかわりますよ。管理庁から二回も勧告を受けている。それに対しても、いまそのままになっている。いま新たに法律ができようとしている。それさえもそのままになっている。それでどうして実施できますか。そしていつ政令をつくりますか。大臣、これに対してここではっきり確約をしておいてください。
  101. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 いま、建設省から話がありましたように、いま、その政令を制定すべく各省と調整をやっておるところでありますから、そう遠くないときに私はできるものと考えております。現に、それをやる作業が進んでいるわけです。  ただ、さっきからだんだんお話を伺っていますと、あるいは島本さんのお考えと私たちの考えにちょっとずれがあるかもしれません。ずれがないようにしたいと思うんですけれども水質の汚濁という現象をとらえて、私たちがこれの保全をやっていかなければならぬということで、企画庁が基準をつくったり、水域を指定したりして、そうして今度それを受けた工排法その他の実体法で、関係各省が具体的な規制をやっておる。そうしてそれに応じた罰則を設けておる。こういう一つの体系、またこの河川法の規定がいまお話しの受けざらという表現に入るかどうか、こういうことだと思うんです。もちろん考え方によりましては、河川管理者ということで河川全体について管理をする責任を持っておるわけであります。そういう観点からすると、それが受けざらという観念に当たるのか、むしろ別のものなのか、ちょっとそこの観念の整理が私もまだ疑問がありますけれども、私たちは、いわゆる汚濁に関する水質保全は現在の水質保全法で全部できているわけですから、いわゆる清潔という問題を取り上げる際にも、そうした汚濁ということと対象外のもので、何か清潔という観点から取り上げる問題があれば、それはぜひ規制をしてもらう必要がある、こういうふうに実は考えておったわけです。あるいは島本さんの言われるように、これは受けざらの一つというふうに観念できるのかどうか、ちょっと私もそこいらのところはもう少しはっきりさせなければいかぬと思いますが、受けざらであるかないかにかかわらず、いずれにしても清潔を守るという見地から、もし現在の水質保全法の行政から漏れるようなものがあるということで、しかも清潔の見地からこれを取り上げなければならぬものがもしあれば、これは今回の政令でもって取り扱ったらいいじゃないか、私はこういうふうに考えておるわけであります。
  102. 島本虎三

    島本委員 これは大臣、あなたと私のずれがそこにあるようですな。公共用水域水質保全に関する法律でしょう、いまあなたが出しておるのは。この第三条に「定義」として、「この法律において「公共用水域」とは、河川、湖沼、港湾、沿岸海域その他の公共の用に供される水域」となっているじゃありませんか。そうでしょう。そうすると、これがよごされたら全部影響があるということでしょう。これは関係ないという考え方は私はわかりません。
  103. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 関係がないということじゃないのです。つまりそれを受けて実体法がありますね。それで工排法その他によって規制が行なわれておるわけです。そういう実体法によって規制が行なわれ、それ全体でもって水質保全が行なわれている。そのいままでの実体法でやっておる以外の規制の余地がもしあれば、問題として残っておれば、そういうものは河川については河川法の政令によってできるのじゃないか。つまり実体法でもって規制をしておりますそれの残った部分ですね。もしそういうものがあれば、それはこの政令でもってやれる。つまり二重行政にならない範囲でですね。そういう意味で申し上げておる。ですから、河川の汚濁そのものについて、水質保全の行政体系が、もちろん関係がないどころではない、それは河川の汚濁を対象にしてやっておるのですから。そういう意味でありまして、もしその点、私の言い方が誤解を受けるといけませんから申し上げておきますが、そういう意味であります。
  104. 島本虎三

    島本委員 したがって、この第三条によって重大な一つ範囲に入る河川、この河川は、河川法の二十九条によって清潔を行なわなければならない、それがきめられてあるにもかかわらず、これを実施するための政令がまだない。それに行政管理庁のほうからも二回もこれは勧告を受けておるのに、こういうようなことでもまだやっていない。だから水は流れる、川は流れるかもしれないけれども、依然としてきたないのですよ。ですからこれをきれいにするための法律だから、まず河川のほうのこの中に清潔、汚濁の反対の清潔、このための政令がまだない。政令はいま準備中だ。したがって、これは早くやってもらわなければだめなんだ。だから、早くといったって、十年から見れば二年は早いだろう、二年から見れば一年は早いだろう、一年から見れば六カ月は早い、こういうようにいろいろありますから。いままで二回も勧告されているのですから。この政令はいつ出すような運びになっていますか。できるなら早いほうが望ましい、こういうようなことで聞いているのです。ですから、あなたも早く出すようにするということで督促して、出させるように最大の努力をすべきではありませんか。長官、どうもあなたの態度は、いま少し消極的になったように思われますが、消極的になってはいけませんよ。これは超積極的でなければならないのです。あなたもせっかく選ばれた人なんですから、やっぱりそれを意識して、十分これはやらなければなりません。政令に対していま準備中だというけれども、いつこれは施行されるのか、ちょっと聞いておいて、これははっきりしてくださいよ、せっかくいままで汗流して質問しているんじゃありませんか。
  105. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 日にちがいつということは、まだ確定はしていないようでありますが、いずれにしても、いま作業しておるところですから、もうしばらくひとつお待ちを願います。私たちも一生懸命何とか政令をつくるように、こういうことでやっているわけであります。
  106. 島本虎三

    島本委員 私が心配しておるのは、歌舞伎で「暫」というくらいならこれはいいんですよ。ところがしばらくと言っておる間に、あなたが提案している法律ができてしまった。できてしまっても、依然としてこれがまだ政令もできないままにあるということになったら、せっかくやっても画竜点睛を欠くのじゃないか。したがって、これは早くやるべきじゃないかということを言っているのです。しばらくはわかりました。しばらくというのは、この法律が通過するまでの間、何とかして実施に事を欠かさないつもりだ、これくらいは行政の責任者として当然考えるべきじゃありませんか。これは大臣、どうですか。
  107. 坂野重信

    ○坂野政府委員 私ども努力目標としては、今国会中にひとつ制定に持っていきたいというぐあいに努力するつもりでございます。
  108. 島本虎三

    島本委員 じゃ、今国会中に制定するということですから、大臣もその点、もう事務当局がいろいろな折衝で苦難に突き当たることもあるかもしれない、そういうようなことに対しては、所管官庁の長である大臣がそこへ乗り込んでいって、堂々と壁を打ち破って、これを実施するのに事なきを得るようにしてやってほしいと思います。今国会中であるということで、これは私は了承して、次に進みます。  水質の場合には、この法律の中で第一条中に、基本法にある「国民の健康の保護及び生活環境の保全」、こういうような、同じようなことをまた載せてきているわけです。公害対策基本法できめられていることは、やはり実施法の中ではその趣旨、精神にのっとってこれが実施されるものであります。したがって、公害対策基本法がこの趣旨できめられて、これが実施法である以上、同じことを二度、三度といわなければならないのかどうか。基本法できめられてあって、これが実施法であるならば、あえて二度、三度、産業の調和であるとか協和であるとか、こういうようなことをいう必要はないのじゃないか、こう思うのですが、本法案には丁寧にもまたうたってあるわけです。かてて加えて、「産業の協和」という名が一つおまけにつけてあるわけであります。それほど産業がかわいくて、いまの公害行政を抜本的にこれはあらためて実施することができるでしょうか。心がまえの点からしてお伺いしておきたいのです。基本法にあるものをなぜこの実施法の中へまた持ってきて、おまけに「産業の協和」まで一つつけなければならないのか、そうしなければならないというようなこの必然性を御説明願います、務当局。
  109. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 公害基本法の規定に対して、さらに水質保全法でまた規定しているということでありますが、水質保全法でも公害基本法の精神がそのまま受け継いでおります。ただ、それぞれの汚濁の態様、つまり大気汚染、あるいは騒音の問題水質、それぞれにやはり特徴がございますので、現に大気汚染防止法、あるいは騒音規制法でも、それぞれまた規定を設けております。公害基本法の精神は受け継いでおりますが、若干文句の違うものがそれぞれ載っております。  水質保全法において、産業協和ということが書いてございますおもな理由は、水質保全をしますにあたりましては、大気汚染の場合あるいは騒音の場合に比べますと、産業間の紛争ということが現実の問題としてかなり大きなウエートを占めております。公害基本法、あるいは水質保全法でも、「生活環境の保全」という項目がございますが、この中身が水質保全法では、その特徴に照らしまして若干違っております。公害基本法の場合にはかなり広義に解しておりまして、人の生活に密接な関連を持つ財産あるいは動植物及びその生育まで入っております。水質保全法では狭義に解釈しております。それはなぜかと申しますと、人の生活に密接に関連のある、たとえば動植物、魚とか、農作物がおもなものになると思いますが、これを保全してその生育条件をよくしていくということは、間接的には水産あるいは農業の発展に関連するかと思いますが、先ほど申しましたように、水質保全法では産業間の紛争、利害の調整が相当大きなウエートを持ちますので、ただ間接的に水産なり農業が保護されるという形ではまだ不十分であると思いますので、それを間接的な規定で埋没をさせずに、水質保全法では水産業あるいは農業を産業としても保護していく必要があるという観点が入りまして、この水質保全法では産業間の協和ということを特にまた掲げてあるわけでございます。
  110. 島本虎三

    島本委員 ここはすらっと流そうと思いましたけれども、そうじゃないようになってしまいました。産業間の協和が必要である——産業は一次産業、二次産業、三次産業、いろいろございましょう。そうしたならば、まず川の汚濁を防ぐためにいろいろ規制する、しかしながら、産業そのものの中に、現在たとえばでん粉、アルコール、製紙、こういうようなものは水を使いながら、いわゆる完全にして水を返すことはできない。そうしたならば、よごすことが、いまの場合ははっきり目に見える現実なんです。いかにこれをよごすものが協和したからといって、よごさないことになりますか。二に二を足したら四になるのですよ。いかに協和したって、二以上のものですよ。なぜ協和をやらなければならないのですか、これは。どうもその点ではわからない。協和するならばきれいになる、こういうようなことならばいいのですよ。現在あるものを、協和してよくなるのですか、そこをひとつ……。
  111. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 ただいま先生がおあげになりましたでん粉工場等、汚水を流す産業が一方にございます。他方で、その汚水によって被害を受ける産業がございます。先ほど私が例示として、水産業とか農業と申しましたのは、そういう産業であります。その相互の協和をはかっていく必要があるということを申したわけであります。
  112. 島本虎三

    島本委員 だから、相互の協和をはかってきれいになりますか、というのです。
  113. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 汚水を流す、それによる水質の汚濁を防止するというのがこの法律の目的でございますが、その場合に、汚水を流す産業の規制をしなければならないわけでありますが、その規制をするにあたりまして、人体に影響を与える場合には、これはもちろん御承知のように無条件であります。しかし、生活環境の保全につきましては、公害基本法によりましても、産業の健全な発展との調和をはからなければならないという規定がございます。その精神を受けつぎまして、さらに水質保全法では、先ほど申しましたように、ただ動物なり植物との関連ということから進みまして、被害を受ける産業、それとの間の協和をはかる必要がある。これは、公害基本法によります精神もそうであるかと思います。水質保全法では、その産業間という、つまり加害者と被害者と、この産業間の協和というのは、現実問題としてかなり大きな問題になっておりますので、そこを明記したわけであります。水質の汚濁を防止する、その防止するにあたりまして、加害者側と被害者側のその協和をはかる、こういう意味であります。
  114. 島本虎三

    島本委員 やはりこれは、基本法制定当時からですから、私も若干その論議には加わっておるわけでございます。やはり健康は優先する、環境の場合は、産業間の協和だ、こういうようなことになっている。この点ではいいというのです。現時点ではやむを得ない。健康の場合は絶対だ。同時に、環境の場合は基本法と同じだ。それでなおかつ企業の場合の相互協和、これが一つよけいついてきておるから、相互協和によって水質保全のために、また汚濁防止のために、これはいい効果が生じるのかどうか、生じないのならこんなものなくてもいい、生ずればいい、こういうことを聞いておるのです。一言簡単に答えてください、次もあるようですから。
  115. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 先ほどから申し上げておりますように、水質保全法の目的はあくまでも水質の汚濁を防止することにあります。その防止するにあたりまして被害側と加害側の調和をはかっていく必要があるということであります。これはきたなければいいということではありませんで、なるべくきれいにしていくということがもちろん必要であります。その精神を受け継いでやっていくわけでありますが、その場合人の健康に支障を来たす場合と、生活環境あるいは産業間の調和という場合で、公害基本法によりましても若干それが変わっておるわけであります。もちろん、経済の発展の段階情勢の変化によりまして、おのずからそのウエートは漸次変わってまいるはずでありますので、水質汚濁を防止するという観点をより漸次強くしていく必要があるということは申すまでもございません。
  116. 加藤清二

    加藤委員長 この際、申し上げますが、総理府総務長官は都合がありまして、午後一時までしか出席できませんので、時間内に質疑をしていただくために、質問者を交代していただきます。岡本富夫君。
  117. 岡本富夫

    ○岡本委員 総務長官がお昼から何か用事があるということですから、総務長官に対する質問だけを午前中に終わって、そうして午後休憩後また続けていきたいと思います。  いま提示されておりますところの公害紛争処理法案、この処理法案内容を見ますと、大きく分けますと公害にかかる被害実態という面と、それから法律的に見た公害問題の特殊性という二つの面があると思うのです。  そこで、公害にかかる被害実態、この実態面をどういう機関で、あるいはどういうように実態をはっきり浮き彫りにするのか、この機関はどこになるのか、ひとつお聞かせ願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。要するに公害紛争処理法案はここにありますように、和解、調停、仲裁の制度によって迅速かつ適正な解決をはかる。したがって、公害には被害者と加害者があるわけですが、この被害者と加害者の立場の両方に対して和解、調停あるいは仲裁をするわけですけれども被害者からこういう公害によって私はひどい目にあっておるのだ、加害者のほうからはそういうことはないのだ、こういうことになりますと、いままでたくさんの公害裁判を見ましても、非常に長くかかっているわけです。有名な水俣病によりますと十五年、これはもう悲惨なものです。御承知のように静かな水俣という漁村に第百万患者が発生したのは昭和二十八年の十月です。健康人がある日突然発病して、狂死する。そうしてその間十五年間の長い間を経て今日に至っておるわけです。そうして公害裁判が行なわれておるわけですけれども、こういうような問題を、迅速かつ適正なる解決をはかる、こういうことでありますので、それにはやはり被害実態、原因、こういうものをきちっと究明しないと、和解、調停、仲裁ができないのじゃないか、そういうふうに思うわけでありますが、そういう機関をどこにするか、そういう機関はあるのかどうか、そういうことをお聞かせ願いたい。
  118. 山中貞則

    山中国務大臣 直接の中央委員会と、地方に置かれまする地方機関、この法律を定めますることによって設置されます機関に、それぞれの被害者個人、もしくは複数あるいは団体、地域、そういうものからの申し立てというものを受けて、加害者、被害者立場に乗り出していくわけでありますから、申し立てを受けるのはそういう法律において設けられる機関が、中央地方においてそれぞれ受け付ける、こういうことになります。
  119. 岡本富夫

    ○岡本委員 中央地方にできるということはわかるのですけれども、それを和解、調停、仲裁をするときに、明らかに、これは加害者は君のところじゃないか、こういうはっきりした科学的根拠、こういうものを出すところはどこなのか、これをお聞きしているわけです。
  120. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいま申し上げましたように、委員会へ加害者であろうと思われる当事者、あるいは被害者もそうですが、出頭を求め、それを問いただし、あるいは証拠物件というものの提示等を求めたりいたしまして、その関係機関の専門の行政機関もありますから、それらの協力を得た後、ただいまおっしゃるような受け付けと申しますか、そういう実態をつかまえて、加害者、被害者関係を明確にしていく、そういうことです。
  121. 岡本富夫

    ○岡本委員 この民事訴訟でこんなに長く、民法の七百九条でいままでのものは裁判によって争われておりますけれども、いまの実態を見ますと、水俣病の例をとりますと、ある学者がこれは水銀中毒によるんだ、こういうふうに出しますと、今度は企業のほうから、そうではないんだという学者の判断を持ってきまして、そしてとうとう延びてしまったわけです。こういう場合の判断といいますか、そういうものがこの公害審査会でできるのかどうか、非常に懸念されるわけでありますので聞いているわけであります。  そこで、一つは提案としまして、そうしたほんとうに専門的な知識を持った人、それも左右に片寄っていない公正な判断のできるところの調査機関、こういうものを設置しないとこの問題は解決しないのじゃないか、、私はこう思うのですが、いかがでございましょう。
  122. 山中貞則

    山中国務大臣 それは中央委員会の委員を委嘱任命いたしますときに、ただいまおっしゃるようなそういう専門的知識、あるいは企業側等に片寄らないような——企業に片寄らないという配慮か主でしょうけれども、そういうような人を選ぶということによってそれは充足できることだと思います。
  123. 岡本富夫

    ○岡本委員 人を選び、今度はやはり研究機関、それがありませんと、こういうものは実態調査をいたしませんと、——研究をしてこうだという必要がある。学問的な根拠のあるところの結果を出しませんと、おそらく加害者である企業側も承知はしないのじゃないか、こう思うのですが、そうした権威あるところの研究機関をつくらなければならない、こういうように私は思うのですが、いかがでございましょうか。
  124. 山中貞則

    山中国務大臣 この点は、当初出しました政府原案では、まさにそのような点において政府としてはできると思っていたのですけれども委員会の御質疑を通じ、もしくは委員会の最終的な修正そのものも、専門調査員を置けという修正でありますし、今回は冒頭に提案理由で申し上げましたように、その種のことを予定をいたしまして再門調査員を最初から置くということにしておるわけであります。
  125. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、権威ある国のそうした機関をつくって、そうして専門調査員を置く、こういうことでございますね、そう解していいわけですね。
  126. 山中貞則

    山中国務大臣 そのとおりです。
  127. 岡本富夫

    ○岡本委員 法律上の問題については、あとで法制局と論議したいと思います。  そこで、この紛争処理法案の目的は「迅速かつ適正な解決を図ることを目的」としますが、「この法律において「公害」とは、公害対策基本法第二条第一項に規定する公害をいう。」公害対策基本法の精神からきているわけでありますから、先ほども島本委員からお話ありましだが、この基本法の「目的」のところに、人の健康、環境の保全それから「経済の健全な発展との調和」、こういうことがありますけれども、いままでで明らかなように「経済の健全な発展との調和」ということが出てこないわけでありますから、長官に、この法案を処理するにあたりましてはっきり聞いておきたいことは、たとえば水俣病の相手であるところの新日本窒素あるいはまたイタイイタイ病の相手であるところの——相手といってはおかしいのですが、損害賠償をしなければならない立場であるところの神岡鉱業所、こういうような企業が何億、何十億というような大きな損害を賠償しなければならぬ。そうすると当然その企業はつぶれてしまう。したがって、そういうような事故の起こらないように、被害のないように、排水の処理をしたり、廃液の処理をしたり、あるいはまた排煙の処理をしたり、そういうようにすることが「経済の健全な発展との調和」に通ずるのではないか、私はこう思うのですがいかがでしょうか。
  128. 山中貞則

    山中国務大臣 大体そのとおりだと思います。その企業の健全なる発展ということは、憲法の公共の自由と福祉に反しない範囲という意味が、やはり今日の公害実態から見て、企業というものと地域関係住民との間の問題においても、企業立地なり、あるいは企業の設備、施設なりという問題は、初めからそういうことを前提においてやらなければならない時代になっておることを他面は示しておるものと考えます。  そして、すでにそういう概念がまだ定まらないままに企業が立地し、操業し、そのために予測しなかった被害が起こるような実態が随所に見られ、あるいは不特定多数の人の、あるいは不特定な地域というものに、ばい煙その他の問題等の新たなる公害議論されている時代が来ているということでありますから、時代というものの実態が先に走りましたので、いまおっしゃるように、政府としても、そういうような公害の発生を当然企業側義務としてこれは除く義務が課せられておるということにおいては、そのとおりであるということに立ちますけれども、すでにそういう概念が定まらないままに立地されたもの、つくられたものについては、やはり何かめんどうを児なければいけませんから、いままでも煙突の高さで固定資産税であるとか、あるいは特別償却とか、税制上のめんどうを見ましたり、いろいろなこともやっておりましたけれども、ことしの、御審議願っておる予算でも、すでに御承知のように、重油脱硫につきまして、はじめて輸入原油の関税還付というような制度を、これは議論のあるところでありましょうけれども、そういうものをとっていくということが、補償の問題は別にして、少なくとも今後そういう被害を第三者に及ぼさないということにおいて政府がとらなければならない、あるいは企業の直接収益にならないけれども、そういう企業のモラルの面から、どうしてもやらせなければならない問題についての援助は、でき得る範囲政府としてもやってきましたし、これからもやらなければならない。  したがって、今後は企業と周辺住民の問題というものは、やはり新たなる観点から新全国総合開発計画の具体的な策定、進展にあたっても、十分そこらのところがこの際留意されていかなければならない時代が来ておるということを端的に示しておるものだと判断しております。
  129. 岡本富夫

    ○岡本委員 そういう観点に立ちますならば、企業の育成、そういうような法案に対しては、人の健康に留意をする、あるいは生活環境に留意をするということが大きく取り上げられる。したがって、公害対策基本法については「経済の健全な発展との調和」というものがここでは必要なくなったのではないか、そういう時代に来たのではないかと私は思うのです。要するに取り締まる観点から見れば、早く、大きな事故を起こして企業がつぶれないように、先ほど私が申しましたように完全なる、健康に被害を起こさないような処理をするというようにも私はとれると思いますから、これはもうここで必要なくなったのではないかというように感ずるわけであります。長官考え政府考え方でありますから、この論議はこれくらいにいたします。  次に、大きな問題でありますが、この中央公害審査委員会、これは相当強力な委員会でなければ私はこの問題が処理されないのではないか、こういうように思いまして、先般の、昨年の審議のときにも、三条機関、これを非常に要求してきたわけであります。しかし、なかなか強い意見で、八条機関にされてしまったのでありますけれども一つにはこの考えの中には、まず八条機関でやって、それから三条機関に移行していこう、こういうお考えもあるのではないかということも考えておるのですが、その点いかがでございましょうか。
  130. 山中貞則

    山中国務大臣 いまのところ、八条機関でやっておいて三条機関に逐次移行していこうという考え方ではありませんで、八条機関で、現在規定されておりまする処理すべき事項については、やっていける。ただし、これを御意見のあります裁定という権能まで持つことになると、これはやはり調査権限もしくは司法権みたいなものを付与しなければなりませんから、当然三条機関ということになるわけでありますけれども、他面、もし実効を期し得るものならば、行政機構を——三条機関というものは、人事院とか公取とか特別な機関が主でありますから、あまりふやすとか乱立とかということは避けたいという気持ちも、一方に正直言ってあります。その意味において、まずここで実効のあがるものをやってみようということでありまして、これが完ぺきだとは私どもも思っておりませんし、現在の司法行政の中で、実態はおっしゃるように延々とやるわけですから、実効を期しがたい点は多分にありますけれども、一応の制度としては、やはり行政当局に置くものは大体これくらいの考えのところでいくべきではなかろうかということでありまして、これはもう思想とか何とかということとは関係のない、日本が工業国家に変貌する過程における政治家全体の責務として、人の生命の尊厳、人の健康の尊厳ということに対して、いかなる政治姿勢をとるかという問題でありますから、決して私どもは政治姿勢のとり方に怯懦であってはならない、かといって、やはり司法との関係その他の問題を詰めて、一方行政機構のあるべき姿等も全体的ににらみながら結論を一応落ち着けざるを得ない点もございまして、その点においては必ずしも野党の皆さま方の御主張というもの、あるいは与党の中でも、さっき申しましたように、これは思想、党派にあまり関係のない政治家共通の責務に関する問題でありますから、意見はいろいろあろうと思いますけれども、まず、いつまでも法案が流れているようなことではだめなんですから、これはひとつ御理解を得て、さらに新しい実態というものに対応する事態が生じたならば、島本君にも申し上げましたように、企業負担法律等も考えなければなりませんでしょうし、そうなると、新しい日本の公害に対処する法律は一体こういうことでいいのか、あるいは先ほど言われましたように、企業の健全ということばが入っておりますから、御理解は得ておると思いますが、決して企業に気がねをして、そのことばが入っておるのではないので、企業側は一方的にこの法律によって引き下がるべきなんだということであると、これは公害被災者救済処理法案という形にならないとおかしなことになるので、やはり両者の実態を調べてよく話を詰めて、調停、あっせん、和解という手段をとるわけでありますから、どうしてもいやだというものには、これは一般裁判の道をたどるしかない。こういうことで、さしあたりはこの程度ということで数歩前進にはなるに違いないという気持ちでありまして、政府側が絶対に正しくて、野党の言い分はそれは間違っておるということでもありませんので、ここらのところは今後さらにお互いが研究して、毎年毎年絶えず改善の努力はしていかなければならないことであるということについては同感でございます。
  131. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは、この前もその点が論議になりまして、附帯決議に最後につけたわけでありますけれども、すでに鉱害の調停、これは民事調停法の三十二条、あるいは三十三条にこういったものがあるわけであります。だから一応この八条機関でやってみて、どうしてもぐあいが悪い場合には三条に移行していこう、こういうような考えをこの前私は聞いたことがあるわけですが、長官も今度は新しくそういう決意でやっていらっしゃるのかお聞きしたわけであります。  そこで、和解の仲介が、これは一九六八年の資料を見ますと、水質保全関係で三十四件、こういうように非常に少ないのであります。ということは、そういうところへ持ち出しても、うまくまとめていけるのかどうか。何といいますか、非常に信頼度がないということになりますと、これまた法律をつくっただけということになるわけですから、この際、ひとつ相当強力なものをつくらなければならないのではないかと考えておるわけであります。  最後に長官に、これも少し大きな問題なんですが、「申請」のところで、二十六条、「公害に係る被害について、損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争が生じた場合においては、当事者の一方又は双方は、政令で定めるところにより、書面をもつて、」云々とありますけれども、仲裁の場合は、一方からではだめだ、双方からでないと受け付けない。こういうことになりますと、要するに企業側が加害者としますと、この同意がなければ仲裁は受けられないということになりますので、これはざる法ではないか、しりが抜けてしまうのではないか、こういうふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  132. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、なるほどそういうふうに読めばそういうふうに受け取れぬこともありませんが、これはやはり裁判にはかけないで仲裁にまかせますということでありますから、その相手方もよろしゅうございますということが前提でないといけないということになるわけでして、決して、一方が反対であったら、だめなんじゃないか、——それはなるほど仲裁そのものはだめになりますけれども、その他の手段で被害者側が強硬なる手段をとり得る道は、先ほど来申しておりましたように、これによって閉ざすわけではございませんので、新たなる道を開くということにおいて、裁判に付しませんからということの了承をとらなければ乗り出せないというふうに御理解を賜わりたいと思うのです。
  133. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ長官、実はいままでの水俣病にいたしましても、イタイイタイ病にいたしましても、また阿賀野川の問題は大きな問題ですが、要するに被害者、これは非常に弱い住民なんです。裁判するのにお金がないわけです。そうしたものが、これであれば非常に簡単に申請してお願いできる、こういうことになれば非常にありがたい法律になるわけでありますが、それができないとなれば、これはないのも同じであるというようなそしりを免れないと思います。ここのところは、もう一度検討をしていただきたい、こういうふうに私は思います。
  134. 山中貞則

    山中国務大臣 お気持ちよくわかるのですが、立法、司法、行政、三権というもののたてまえから考えますと、行政府のタッチすべき分野もしくはし得る範囲というものは、こういう裁判みたいな形に近いものになってきますと、どうしても司法権というものの実態というもの、そちらから出発して受けてこなければならない範囲だと思うわけでございます。ですから、では逆に司法権といったって、そちらにまかしたって、延々と手続でまた異議ありということで、またその裁判をやっているんじゃないかということで、この実態は明らかになろうと思いますから、これは法務省なり最高裁判所、そういうところの実態なり、すみやかなる措置、あるいはそれにわたる間の被害者の実情に応じた厚生省等のとらなければならない措置、こういう問題等はあろうかと思いますけれどもそこらの行政府と独立の司法権との問題ということは、裁定の問題にもそこらで接点が生ずるわけですけれども、慎重に判断をしなければならぬと思いますから、ここでだめになったらもう見込みがないということではないのだ、こういう道を今度開くんだということでございまして、これによって全部救われるとも私たちも思っておりません。
  135. 岡本富夫

    ○岡本委員 そんなことになっていると、これはたいへんなことになるわけですが、八条機関の中にも調停、裁定、仲裁をやる建築工事の請負、こういう関係のものもあるわけでして、それもみんなあなたのおっしゃるようにいきますと、これは司法権にかかわるからだめなんだ。こうは言えないと思います。したがって、一応きょうのところはもう一度再考していただきたいと私は申し上げておるわけであります。これが一つ。  それから最後に一点、それは費用負担ですが、公害病ということでいろいろなところを調べるためには、相当費用がかかると思うのです。そうした費用負担が当事者持ちだというようなところがここにあったわけですが、これはいかがですか。申請の費用だけでなくて……。
  136. 青鹿明司

    青鹿政府委員 四十四条に紛争処理に関する費用負担の規定があるわけでございまして、「政令で定めるものを除き、各当事者が負担する。」という書き方になっておるわけでございますが、費用の態様を分けますと、三つあると思うのであります。一つは、当事者が出頭いたしましたり、あるいは代理人を選任するという場合の費用、それから二は、委員会として活動する場合の費用、それから三番目に委員会の経常的な費用であろうかと思います。  このうち、第一の範疇に属するものは、やはり当事者に費用負担を願わなければいけないのではないか。それから第三番の委員会の経常的な費用は、当然国の負担でもって処理すべきものだと考えます。  問題は、委員会が活動いたします際に、たとえば調査をいたしましたり、あるいは鑑定人に依頼いたしましたり、参考人に出頭を求めたりする場合でございますが、この場合は、当事者が任意でそれを求められる場合は別といたしまして、委員会の活動としてやる場合には、これは国の負担で処理したい。ねらいはお申し出の申請人の方のそういった御負担を極力軽からしめるように考えてまいりたいと思っております。
  137. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、ちょうど時間だそうですから、私、質問を一応午前中は打ち切りまして、午後もう一度あとこまかい点について御質問をします。  どうもありがとうございました。
  138. 加藤清二

    加藤委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。    午後一時十五分休憩      ————◇—————    午後二時十五分開議
  139. 加藤清二

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出公害紛争処理法案角屋堅次郎君外五名提出公害紛争処理法案、及び内閣提出公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。島本虎三君。
  140. 島本虎三

    島本委員 午前中に引き続きまして、また公共用水域水質保全に関する法律案を中心にして、法案内容並びにそれに付随する諸点についてただしたい、こういうふうに思います。  七〇年代を迎えまして、公害追放にはまさに蛮勇をふるわなければならないような状態に相なったわけでございますが、経済企画庁におきましても、公害基本法に基づく水質汚濁防止のための環境基準の作成をほぼ終えたように承っております。またこの件につきましては、河川、湖沼の場合、区域によっては特例を設ける、あるいはまた水質審議会の環境審議部会では、そういうような点とあわして、国民健康保持のための基準とまた環境保全のための基準を分けて、そうして河川、湖沼それぞれにまた特別の段階を設ける、こういうようなことをいわれておるのであります。私どもも、常々そういうような件を通して、早くこの水の環境保全の問題についての結論を得たい、こういうふうに思っておったわけでありまするけれども、その後の経過等につきましてひとつ明確にしてもらいたいと思います。  ことに厚生省では一歩先がけて、先ほど申しましたように、全国のばい煙発生施設に対する総点検を実施し、それに対する施策を実施しようとする段階にありますが、水のほうは、各種の条件が交錯してなかなか進まないような段階の中でこの環境基準ができ上がってきた、こういうようなことは特記に値する、こういうように思うのでございまして、今後これを実施する場合の腹がまえは、いままでと同じようなものであっては当然ならないはずであります。この内容等についても一応お伺いいたしたいし、それと同時に、これを実施する際の長官としての決意をあらかじめ承っておきたい。以下順を追って質問してまいりたいと思います。
  141. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 いま島本さんがたいへん、水はなかなか複雑でむずかしいのに、基準を設ける段に至ってけっこうである、こういう評価をしていただきまして、われわれ非常にうれしく思いますが、なお、この方面、精を出しまして、できるだけ拡充をしてまいらなければいけないと思っております。  それからまた、先ほども触れましたけれども、もう現在、相当前に設けたために見直しを必要とするというものも相当あります。これについても、できるだけひとつ見直しをして新しい基準を設けて、最近のデータによる基準を設けるように努力をしてまいりたい。こういうようなことで、いずれにしましても公害問題の発生ということがますます認識されてきておるのですから、私どももひとつ極力、各省と一緒になりまして、この方面の強化をはかってまいるつもりでございます。そしてまたそのときには、いますでに御指摘がありましたように、やはり生命と、それからいわゆる環境保全というものを一応区別いたしまして、そうしてその目的に応じて最も十分な基準を設けなければならない、そういうふうに考えております。  それからまた最近は御存じの微量重金属、こういう問題が起こってきておりますが、これらにつきましても、産業の発展、技術の進歩とともに、いろいろな新しいものが開けてきておりますからして、それに応じてこちらも抜からないように、新たなそういう対象というものを次々に加えてまいらなければならない、こういうふうに考えております。それからまた、河川のみならず、海域等においても十分の規制を行なうようにしなければならない。そして結局は、先ほどからもいろいろとお話が出ておりましたけれども、実体法の運用をよほど強化し、そしてしっかりとやってまいる。ただ基準をきめただけではだめなんでございますから、そういう意味におきまして、私たちもその方面に今後さらに一そうの力を入れてまいる必要があるんじゃないか、こういうふうに考えておる次第であります。
  142. 島本虎三

    島本委員 水の問題等につきましては、先ほどから私も申し上げておりますように、大気に比べてやはりおくれが目立っておる。水に対しての対策は急がなければならない、こういうようなことははっきり言えるのであります。大体昭和三十三年に水質保全法、工場排水規制法、これができて、三十七年に指定水域の規制が行なわれて、三十八年に下水道の緊急整備が法案として通っている。こういうような段階の中で、いまもってこの水の問題がさっぱり解決を見ておらない、こういうような状態なのでございます。そういうようにして見ると、やはり水の持っている多面性と申しますか、多様な目的に使われる、こういうようなものからくる規制の困難性、こういうようなことは十分わかるわけです。ことに、資源である上に飲料水であり、農業用水であり、工業用水である、こういうようなことであるほかに、生活環境にも重大な影響を与える複雑な事情も持っておる、こういうようなことであります。したがって、今後この効果を、いままでさっぱり上がらなかったから、上げるための状態をまたしても考えなければならないのだ。煙の点は厚生省がやった。水の点では、今度はいまの日本の実情を十分了解して、それにメスを入れなければならないのだ。水利権でも漁業権でも、洪水対策でも、権利や量だけがいままで問題になったけれども、今後は水の質がおざなりにはできないような状態になってきた、質の問題が今度からんできておる、こういうようなところがやはり大きい問題になっているわけでありますから、今後その問題をつかまえまして、十分対処しなければならないはずであります。経済企画庁の事案であるところのいわゆる水によるところの環境基準の作成、これによりますと、国民の健康にかかわるいろいろな項目等あげて、全国一律のきびしい基準値をつくろうとしておるようであります。私はこれは当然だと思います。当然というと、ほめていることであります。しかし、このほかに人の健康にかかわる有害物質がないかどうか、この辺の点検を行いましたかどうか、この点事務当局から。
  143. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 健康にかかわる項目といたしまして、さしあたりシアンほか七項目をここできめております。いま先生おっしゃいましたように、このほかにもまだ問題は残っております。その点も、この基準をどこに置いたらいいかということにつきましての技術的な問題、あるいは関係方面のコンセンサスがあり次第、逐次追加していくということにしております。
  144. 島本虎三

    島本委員 人の健康にかかわる有害物質がこのほかにもうないかどうか、こういう質問でありますから、もうないと思いますとか、ありますとか、それに対する対処はこうだというようなのが答弁じゃございませんか。私ばそれを期待したのですが、無理でしょうかね。
  145. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 この七項目以外にも、まだ予想されるものがございます。
  146. 島本虎三

    島本委員 予想されるものに対しては、どういうふうに今後扱いますか。
  147. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 今度水質審議会から答申がございましたものでも、当面この七項目について基準をきめるということでありまして、このほかのものにつきましても、先ほども申しましたが、技術的な点等がわかり次第、早急に逐次追加していくということにしております。
  148. 島本虎三

    島本委員 そのきめ方について用途別、水域別、こういうような基準値で定め、これで当てはめていくというようなことが適当であるかどうか、やはりこれも議論があると思います。この行き方についてはどういうふうにお考えでございますか。
  149. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 人の健康にかかわりますものは、全国一律という方針になっております。
  150. 島本虎三

    島本委員 では、この水質のデータが整わないような場合、たとえばいま四十二の水域に対してこれを行なう。その場合には、まずよろしい。そのほかの水域について、それぞれの行政主体が、暫定的な行政目標値をつくること、この程度ではたしていいのかどうか、残余のものはどういうようにしますか。
  151. 矢野智雄

    ○矢野政府委員 環境基準につきましては、さしあたり、いま先生が言われましたように、すでに指定水域になっているものにつきましては、今月中に当てはめ行為を終えまして、この環境基準の基本方針とともに閣議決定する予定にしております。そのほかのものにつきましては、逐次この当てはめ行為を早急に進めまして、逐次閣議決定をしていくことにしております。  なお、その間の経過的な措置といたしましては、いまここで申し上げましたように、暫定基準といたしまして、これは都道府県知事が経済企画庁長官と協議してきめていくということになっております。
  152. 島本虎三

    島本委員 長官、四十二だけをやって、そのほかのものはそのままにおくというようなことは、一体これはどういうようなことなんでございますか。これはわかりません。行政当局があらかじめこういうようなものは調べておいて、そうしてこれをやる場合には、厚生省がやっているように一斉にこれをやる、こういうふうにすることが、一つの効果を生み出せる大もとになるのではないですか。これはやはり四十二だけは、いままで調査をやっていたから当てはめてやる、それ以外の水域については、暫定的な行政目標をきめて都道府県知事にやってもらうのだ、こういうふうなことになれば、全面的に水のほうはやるということになる。なるけれども、四十二以外のものはそのままになっているということになるじゃありませんか。国の一級河川というものも相当のものがあると聞いている、また二級河川についても相当のものがあると聞いておりますけれども、この問題につきましては、相対的に——他の問題についてはそのままにしておくということは、私としては手ぬるい、こう言わざるを得ないのでありますが、どうしてほかのものに対してはそのままにしておかなければならないのですか。
  153. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 別にそのままにしておくつもりはもちろんございません。この四十二というのは数が少ないようにお感じのようですが、これは御存じのように、一つの水域は相当広範にわたっていますし、それから水系も一水系に限らない場合もあるわけです。ですから、現在いわゆる工場排水等を中心にして、汚濁の問題でもって問題のありそうなところは一とおり網羅していると私は思っております。しかも、これは御存じのように水準を設けるのでありますから、やはり基礎調査がなければできないことでございます。そういう意味において、私たちもできるだけこの調査を急いで、さらにこの数を増してまいりたい。それから先、こっちの調査ができるまで待つというのではなくて、その間でも、地元では地元としてのまた一応の調査というものがあろうと思います。そうしたものによって、こちらの調査が十分できる前でも、やはり暫定的な基準というものでもいいから、それを用いて、できるだけ規制に穴があかないようにしたい、こういう気持ちでございます。できるだけ急いでするつもりでございます。
  154. 島本虎三

    島本委員 長官の衷情、琴線に触れますから、今後の努力を期待しておいて、それ以上追及はしませんけれども、ただ一つ、これは残りはどうするんだということですが、残りのほうがよけいだからなんですね。一般一級河川というものは九十八水域あるんだそうじゃありませんか。これに一万河川もあるんだそうじゃありませんか。そのうち四十二というのでは、半分以上もそのままになっている。それに対して暫定値を当てはめて、暫定的に管理してもらうんだというから、それはいかにいい水準を出してやろうとしても二分の一、半分以下にすぎないんだ、こういうことになるから、これはやはり手放しでほめられないんだということになるわけですが、それと、二級河川は、二千二百余もあるんだそうじゃありませんか。そうなると、ここで河川数としては五千本以上もあるんだということになる、指定されないところは急いでやらないとだめだ。こういうようなことになってしまうわけです。現在、努力のあとが見られます。私なりに、一回一回の皆さんの報告は、チェックしているつもりであります。しかしながら、こういうふうにしていい環境基準の作成、これは画期的なことだとほめておっても、それに当てはまるところが三分の一、二分の一を割る、こういうようなことは、長官、手放しでほめられませんから、指定の川と指定されていない川、これの規制に対して十分今後検討して、早い機会に同様にこれも処置しなければならぬ、こういうことになるんじゃありませんか。長官、ひとつ熱意を聞かしておいてもらいたいと思います。
  155. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 いまの四十二水域でございますけれども、これは千五百本くらいになる、川にしまして。それで、重点的にとにかくやっていくということでございますから、実際上のウエートからいうと、私は相当高いと思います。ですけれども、御指摘のように、もちろん残さないのがわれわれの眼目でございますから、これはできるだけ急ぎます。  それからなお国民の健康という見地からは、これはもう全水域、こういうことでございます。その点もひとつ御了承をお願いしたい。できるだけ急いでやりたい、こう思っております。
  156. 島本虎三

    島本委員 国民の健康のために全水域、まことにこれはいい。  それで、もう一つ、ついでになんですけれども、やはり環境基準はきめるだけじゃだめだ。これを達成するのでなければだめだ。これが、私どものいままでとってきた一つ考え方であり、行動の指針だったわけです。亜硫酸ガスの場合には、厚生省は地域を三つに分けて、それぞれの達成期間を区切ってやっておると聞いておるんですが、実態は、この亜硫酸ガスの規制の場合、どういうふうになっておるか、ちょっと御報告願いたいと思います。
  157. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 亜硫酸ガスの環境基準については、先生御指摘のように、昨年の二月十二日の閣議決定の際、十年を目標とする非常に汚染のひどいところと、五年を目標とするところと、それから直ちに実施するところと、こういうぐあいになってきておるわけでございます。一番ひどいところは東京、神奈川、大阪、兵庫、こういうことでございまして、四日市につきましては、当初五年目標というところでございますが、現在では公害防止計画を進めておりますので、公害防止計画の達成目標年次が五十一年末ということになっておりますから、その辺に合わしていったほうがいいんじゃないかと思っています。  それで、この達成の方途としましては、五年を目標とする地域が非常に多いわけでございますし、十年を目標とする地域については、中間目標を五年にするということにしておりますので、昨年の十二月にきめました排出基準が、この二月一日に施行になっておりますが、これにつきましても、現在の時点で一応強化していく、次に四十六年度にもう一度強化し、さらに四十八年度に強化しまして、初めてこの五年間の環境基準なりあるいは十年を目標とする五年間の中間目標なりを達成する、こういう考え方で、段階的に規制を強化していく、こういうことを考えておるわけであります。
  158. 島本虎三

    島本委員 水に対する環境基準の場合も同様であると思います。これは行政上の目標ですから、設定するだけでは意味がありません。これを達成させるのでなければだめだ、こういうようなことに相なろうかと思います。したがって、最も重要なことは、どうして環境基準を達成させるか、こういうようなことになるわけであります。水質基準の場合には、いま私はほんとうにうれしいのでありますけれども国民健康保護のための基準と、生活環境保全のための基準、まあ国民健康保持のための基準は、大臣の言明によって全国一律だ、こういうようなことであります。そうなりますと、なおさらのことであります。この環境基準の達成の時期、これに対して、いま厚生省のほうでは、亜硫酸ガスの環境基準の場合にはちゃんとこれを分けて、それぞれ年限をきめておるようであります。水質についてもやはり同じ配慮が望ましいことは申すまでもありませんけれども、工場の排水処理施設だとか、下水道の整備の問題であるとか、こういうようなことから、期間をきめなくては、促進だけをやっても、この点はとうてい無理じゃなかろうか、こういうように思うわけであります。これはどういうようなことでしょうか。ただ単に列記しておいても、やはり他にはそれぞれの独立した行政機関があるわけでありますから、むずかしいことはなかなかむずかしい、率直に言っておかなければなりません。したがって、この問題は列挙しておくだけではだめなんだ、期間をきめ、その間に措置をしなければならないんだ、こういうようなことに当然なろうかと思います。排水規制の問題でも、下水道や公共施設の整備の問題であろうとも、工場立地規制や監視体制の問題であろうとも、これは単にこれをするのだと列挙しておいても、達成することにならない。百年河清を待つようになる。これは、いま幸いにして厚生省のほうでは、亜硫酸ガスの場合にはいい例があるようであります。水質の場合にも期間を設け、その場合の具体的なスケジュールがほしい、こういうふうに思いますが、これも十分考えてございましょうか。
  159. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 これは当然われわれも考えなければならないことでございますし、したがいまして、特に汚濁の激しいところは原則として五年以内にやる、そして一般のところは即刻行なう。それから、もちろん下水道の施設の進行状況というようなところともにらみ合わせないといけませんが、すでに今日までに汚濁が非常に激しくなっていて、どうしようもないような状態のところが間々あります。そういうようなものについて、五年をあるいは少しこえることがあるかもしれないが、これも、五年をこえるとしてもできるだけすみやかに実行していく、こういうことでありまして、個々の地域につきまして、どうしても必要な場合には六年とか七年とか、そういうようなものが場合によって起こる、原則として五年でもってやる。こういう方針を立てております。
  160. 島本虎三

    島本委員 原則を五年、場合によっては六年、七年、ここでやはり大臣、一たん五年ときめたらほとんど五年、特別の場合は、これとこれだけはこういう理由によって六年、またはどうしても七年にしなければならない、理由はこれだ、こういうふうにしておいて、それ以内には全部きれいにするんだ、達成させるんだ、こういうようなことが一番必要なことなのであります。しつこいとあなたは言うかもしれませんが、朝から私はしつこかった。それを言うのは、水質保全行政がいままでのように、いろいろな点で問題があった。それは午前中からのやつで御承知のとおりです。水質保全法からいっても経済企画庁のほうがそれだとか、また同時に、工場排水規制法は厚生省だ、鉱山保安法は通産省だ、下水道法は厚生省、建設省、自治省に関係がある。河川法は建設省だ、港則法は運輸省だ、海水の汚濁防止は運輸省だ、それぞれ全部あるわけです。所管各省庁、それに自治体を含めて、これはほんとうにばらばらになっているわけでしょう。環境基準の達成の責任は政府だとしたならば、必要な施策をはっきり出さないと、これはもうばらばらになっているのだから、それでもってはっきりしたものをやっても、なおばらばらになる可能性があるけれども、せめてそれぐらいしなければならないのだ。排水の規制は当然やらなければならないし、下水道の整備はやらなければならないし、それから河川管理は厳格にしなければならないし、立地政策は個々に確立しなければならない。そうすると、関係省庁自治体が全部協力してやらなければならない。黙っておいても協力しないから、あなたのところが今後は、まさに総理大臣にかわってでも強力にこれを実施させるという強い心がまえでないと、これは今後せっかくいい基準をつくってもできないのだ、こういうような心配があるわけなんです。これはほんとうだと思うのです。したがって、いままでのようなばらばら行政に対しての批判——それと同時に監視測定体制、こういうようなものも、各官庁によってばらばらであったならば、これもまた凹凸ができる。ばらばら行政にばらばら監視体制ではなお悪い。したがって、いままでのように行政管理庁から二回も勧告を受けても、ようやく今国会中にできるというような河川法のあの二十九条の政令の問題さえある始末でありますから、関係省庁地方公共団体共通の目標達成のための体制を今度はあなたがつくって、それを十分に検討した上で指示していただきたい。ばらばら行政、ばらばら監視、こういうようなことによって実効をあげようとしてもだめだから、強力に今後実施するための体制を、ここで経済企画庁でつくらなければならない、私はそういうように思っておるのです。いままでの答弁でその意欲はわかるのです。しかし、実際行政ベースでやる場合には、またばらばらになりますから、これじゃできないということになる。五年以内にやる、即刻やるのもある、せっかくこういういいところまでいったのですから、今度は体制の検討、その役者は——役者というか、やる人はあなただ、こういうことになってくるわけです。これはほんとうにやらなければならぬと思うのです。やらなければだめですよ、大臣。もう一回あなたの決意を聞かしてください。
  161. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 どうも私とあなたとは意見が一致し過ぎて困るのでありますが、私も実はそういうように考えております。実は下水道の現状等から見ますと、五年というのはなかなか無理だというような声も相当あったのです。しかし、とにかくこういう現状じゃないかということで、五年ということにしたようなわけでありまして、五年を、私どもも御指摘のように原則にするつもりでおります。ですから、私は例外的なことをちょっと申し上げたのでありまして、この五年の原則というものはあくまで原則として保持しなければならない、こういうふうに考えております。  なお、御存じのように、健康に関してはもちろん即刻やるつもりでおります。
  162. 島本虎三

    島本委員 そうすると、いままでのところは、規制の対策についてはまず十分だった、こういうようなことに考えておいてもいいと思います。  においの問題だけは、どうにも手が負えないという、これは厚生省の泣きどころであります。公害対策基本法ができて、いかにその中ににおいの問題があっても、においに対する一つのものさしができない。この規制の方法は、大まかに出すということは出しても、ここまでいいということはできない。まさに厚生省の泣きどころありとするならば、においであります。悪臭であります。  そういうようなところからして、異臭魚の原因は、工業関係の立地のいわば海域の油分、こういうものだということをいわれておるわけですが、これも測定方法というようなものがあるのかどうか、規制は完全にこの辺まで及んだのかどうか、これをひとつ事務当局からお聞かせ願いたいと思います。これは企画庁ですか、厚生省ですか。
  163. 西川喬

    ○西川政府委員 油分につきましては、現在異臭魚の原因といたしまして、指定水域におきましては規制をかけております。ただ環境基準といたします場合には、現在のJISできまっております検定方法からいきますと、出てしまったあとは検定できないのでありますが、その規制値は、排水の個所におきましては現在一PPM以下というような基準をかけているわけでございます。それが海の中へ入りますと約十倍くらいに希釈いたしまして〇・一PPMになる。異臭魚の調査によりますと、活性汚泥法によりまして〇・一PPM、一般の処理方法によりましては〇・〇一PPM以下であるのがいいというのが、水産庁のほうからの要望になっているわけでございます。そのような油分に押えようとしますと、排出口においてどのくらいであったらいいだろうか、これは計算で出るわけでございますが、今回の環境基準におきましては、それならばその海域の環境基準で油分が幾らあるかということは、現在の測定技術では出ないわけでございます。そのために、今回の環境基準の答申の中には一応油分は含まずに、今後もう少しこの測定技術なり何なりを研究いたしまして、それでたとえば〇・〇一PPMというような基準をはっきりきめまして、現在その基準の〇・〇一PPM以上であるか以下であるかが測定できるというのを、技術が進歩した段階には入れようということでございます。現在のところは、そういう問題がございまして、当面一応除外しているわけでございます。
  164. 島本虎三

    島本委員 入っておると思ったら、これはやはり当面除外されておるようですな。これはおおむね、物質の及ぼす影響というようなものの技術究明段階がなかなかむずかしいようですが、これは遠慮しないで、国の研究機関を使ったほうがいいのです。厚生省なんかにいったり、通産省なんかにいったりして、どんどん使ったほうがいいです。これがまだ出ないなんていうのは研究機関の怠慢ですよ。厚生省の怠慢かもしれない。ですから、これはどんどんとやるべきだ。  窒素化合物に対してはどういうふうになっていましたか。
  165. 西川喬

    ○西川政府委員 窒素化合物につきましては、これは農業のほうに被害を及ぼすことは、ある程度までははっきりしているわけでございますけれども、現在、窒素につきましては除去技術がございません。下水道を通しましても出てきてしまうということで、企画庁におきましても、今年度におきましては窒素を重点的に取り上げていく。それから農林省のほうにおきましても、畜産あるいは食品その他の排水がからんでまいりますし、それからし尿なんかからも出てくるわけでございます。そういうものを研究いたしまして、それによって方途がきまりましたら、窒素化合物についても規制を加えたい、こういうふうに考えます。
  166. 島本虎三

    島本委員 窒素化合物は有毒物質ですけれども、それも技術的な立ちおくれのために今回はだめだ。異臭魚の原因の海域の油分についても、測定方法が確立されないので今回は見送りだ。全部いいのかと思ったら、この辺にまで、まだ技術の立ちおくれがあるということがわかりました。そうなりますと、技術的な究明の立ちおくれ、それと同時に水質汚濁の技術的な解明と技術開発、これは大臣、今後やっていかないとだめだ、こういうようなことに相なってまいりますね。この点は大臣、ひとつ十分御検討願って——残りの川の適用することとあわして、これは重大な一つの案件になりますから、どうぞこれに対する特段の配慮というか、これはしなければならないです。お聞きのとおりでありますから、ひとつこれでピリオドを打ちたいのですが、決意を承っておきます。
  167. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 どうも水質関係につきまして、おっしゃるように、まだ技術の立ちおくれがあります。全力をあげてこの関係の技術開発ということを進めなければならない、こう思っております。  また、いま御指摘のように、水域につきましても、できるだけすみやかに指定を拡大してまいりたい、こういうつもりでございます。
  168. 島本虎三

    島本委員 厚生省もせっかく来ておりますし、厚生省に、水の問題と関連して、ぜひとも聞いておかなければならないことがございます。  それは、いま経済企画庁のほうから、いろいろと基準値の決定についての発表があったわけであります。特Aというような表現もあり、これはなかなかいいようであります。しかしながら、これは私ども心配しておったのでありますけれども、あるいは連絡官庁といわれ、総合官庁といわれ、調整官庁といわれる経済企画庁であります。そうなりますと、せっかくきめても、個々の省の権限まで動かすことができない。そうすると、これを実施させるためには、今後相当決意とともに具体的にこれを動かす方法の検討も必要だ、こういうふうに思うわけです。告示だけしておいてもいいということにはならないと思います。今後はやはりこれを閣議にかけて決定し、各省大臣に対しての協力を強力に求めるというようなところにまで、水に関してはやっていってもいいんじゃなかろうか。  それと同時に、汚濁されたもののあと始末、これが大事ですけれども、まだ汚染されない水域に対して今後は積極的に対策をとって、再び汚水対策を講じなくてもいいようにいまから措置しなければならない、こういうように思うわけであります。大臣には、私自身思ったことを率直に申し上げました。いまの点をあわせて、強力に今後がんばってもらいたいと思いますが、いいですか。
  169. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 特段に努力したいと思います。
  170. 島本虎三

    島本委員 それで、厚生省のほうにお伺いしますが、筑波国定公園というところがあるのですか。国定公園であろうと、国立公園であろうと、だれが管理しようと、これは国の公園であります。この中でちょっと私気になったのは、水と緑と太陽を標榜しながら、湖は、どぶか沼かと思われるほどよごれておる。この原因を調べたら、二市十八町村の汚水や工場排水だ。霞ケ浦が天然の浄化装置の役割りを果たしておるような状態であり、周辺市町村は、財政の貧弱さから、都市下水道が一カ所も設置されていないのが原因だ。こういうようなものを見たのですが、まだこういうようなところもあるのですか。これは国定公園にしながら、重大なる公園管理の責任をサボっておることになってしまうじゃありませんか。もしほんとうなら、これは問題ですね。
  171. 内田常雄

    ○内田国務大臣 もしほんとうだといたしますならば、島本先生のおっしゃるとおりでございます。国立公園あるいは国定公園の構想というものは、公害対策よりも一歩先に進んでおりまして、公害対策の必要のないような自然的環境を初めから保存しておこう、そして人間が人間として親しめる環境というものを初めから保存しておこうというような地域でございますので、その地域にある陸上あるいはまた水面というものが、お話しのように汚濁されておるような状況になりますと、これは自然公園としての存置の意味が全く失われますので、何よりも先にそういう水域、つまり湖水につきましては、経済企画庁とも御相談をして、先ほど来御議論にありますように、水域指定について調査をしていただくなり、また水域指定の決定の有無にかかわらず、それらの水域に対する排出基準というようなものを、いままでの水質保全法あるいは今回改正される水質保全法に基づきまして十分順守させる。排出基準等がない場合には、その所在の地方公共団体等を指導いたしまして、仮基準でも何でもつくらせまして、おっしゃるような事態がないような措置を講じなければならぬことは、当然のことでございます。ひとつその地域を調べさせることにいたします。
  172. 島本虎三

    島本委員 ほんとうにその意気込みでやってもらいたいと思います。  厚生大臣にもう一つお伺いいたしますが、先般来公害紛争処理法案審議していまして、その中でいろいろな問題が出てまいりました。そうして、その中で通産関係厚生省関係が、対公害の問題ではわりあいに一致してこれに当たっているというような点がわかってきたのであります。私はそれは一つの進歩だ、こういうようなことをはっきり申し上げておきたいと思います。それが破行的であってはならない。こういうようなことが一つの要素だ。私聞いたところによりますと、四十一年から始めて、今度大型のいわば脱硫装置が、三菱重工と中部電力によってでき上がった。しかしながら、そのパテントは三菱重工にある。こういうようなことからして、国際公害シンポジウム参加の外人あたり、なかなか納得できないようなことであった。こういうようなことが先ほどわかったわけです。そういうようなことから、通産大臣にいろいろ質疑がございました。その中で、これをやる際に内田厚生大臣も一役買って、応援してつくったのだということもわかったのであります。そうすると、いままで七億もかけてやって、全部企業のほうでこれを利用し、脱硫の装置をして、今後公害を排出しないようにする、これまでは、私どももいいのです。かてて加えて、税制上、財政上、またいろいろな恩典もあるほかに、今度の場合、脱硫装置をつけた企業に原油の輸入関税一キロリットル当たり三百円軽減する、こういうようなことになっておるわけです。いわば二重の恩典ということであります。  しかし公害被害者、これを扱うのは厚生大臣であります。そうすると、そっちのほうに対しては、昭和四十四年六月二十五日に医療救済法成立の際に、当時の斎藤厚生大臣は、患者の生活保障、休業補償は前向きに取り入れよ、こういう質問に対しまして、本法案実施の状況をよく見きわめて、十分検討し、改正いたしますというような答弁があったわけであります。そうすると、本年に至って、片や通産関係のほうはでき上がった。大臣の陰ながらの応援によってもこれができたわけであります。そうして二重の恩典に浴しているわけであります。ところが、大臣の本来やらなければならない患者の救済の措置、これについては生活保障と休業補償、これは今回の救済の中からのがれてしまったわけであります。これはなかなか残念だと思っておりました。いろいろな準備ができなくてこれが入れられないのか、それとも入れるのが適当じゃなかったのか、これは厚生大臣としては十分考えなければならない問題だと思うわけであります。これについてどうも少し一貫性を欠くように思いますので、この際大臣からはっきりしたことを承っておきたい、こう思って質問するわけであります。
  173. 内田常雄

    ○内田国務大臣 公害にかかわる健康被害の救済に関する特別措置法ができます際に、当委員会からも附帯決議がございまして、いま島本委員からおっしゃられるような意味の御要望がありましたことを、私も受け継いではおります。まことにごもっともなことだと思いますが、これは御要望のとおり一足飛びには実はできないのであります。少なくとも四月から始まりました四十五年の予算措置におきまして、この特別措置法できめられておりますところの医療手当、介護手当等につきまして一歩前進をさせることになりました。たとえば介護手当におきましては、従来は、費用のかかった日数において一日三百円というようなことで支払っておったようでございますが、それを百尺竿頭一歩を進めて、若干ゆるやかにいたしまして、そして、これはいい例ではございませんが、原爆特別措置法の例なども参照をいたしまして、その金額並びに金額の決定のしかたをかなり緩和をさせることにいたしてございます。  また、金額のことばかりでなしに、介護手当のほか医療手当をも含めまして、従来所得制限がかなりきついようでございますが、これにつきましても、かなりの所得制限の緩和というものをやる体制が決定をいたしまして、この四月からそういう線で実施をいたします。  その他の事項につきましては、この法律ができましてまだ幾ばくもたっておりませんので、法律施行の状況を見ながら、逐次改善の方途を検討いたしてまいりたいと思います。
  174. 島本虎三

    島本委員 せっかく大臣がそういうように報告をしてくださいまして、所得制限も緩和した、こういうようなことでございます。緩和されて大いにけっこうなんでありますけれども、もともと、所得制限というものは、救貧的な性格からきたものでありますから、救貧的性格がない限り賠償の一部分であるから、所得制限は考えるべきじゃないというのがわれわれの主張だったんです。ところが、依然として、おまえら貧乏だから救ってやるんだ、こういうふうな考え方の上に立ってそれにつけていること自体が問題なんです。公害に対する被害者ですから、おまえ貧乏だから救ってやるんだ、こういうふうなことじゃないはずなんです。賠償額の一部なんだ、こういうようなことの考え方でなければならないはずなんです。所得制限が緩和されるのはいいんですけれども、これは撤廃されるほうがなおいいんです。それをもって誇りにしてはなお困るのです。そうでしょう。もう一回……。
  175. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私もおっしゃるとおりだと思います。私の記憶に誤りがなければ、先ほども述べました公害健康救済法の成立の際の附帯決議におきましても、所得制限のことについてもいろいろの見方、異論があることも一応お取り上げになった文章を添えてではあるが、前向きに検討せよというような文章にたしかなっておったような気がするのでありますが、その辺のことも私どもは含んで、今回とりあえず一歩前進をいたしました。救済措置というものは応急の措置でございまして、つなぎの措置で、原因者がはっきりいたしますれば、原因者のほうから当然なされるべき救済の措置をさせるわけでありますので、それをも否定するというつなぎの措置ではございません。つなぎの部分は原因者から返させる分で、したがって、そういう意味のつなぎの場合におきましては、御承知のように、いろいろのところからお金を集めてやることだし、元来、本来の救済制度そのものじゃないので、なるべく本格的な措置へ十分な課題を残しておくというような意味合いもございまして、このようなとりあえずのつなぎ的な所得制限というものを置いたように私は思いますので、その辺も承知の上で、今後私どもも善処いたしてまいりたいと思います。
  176. 島本虎三

    島本委員 要観察者に対する措置は、こういうようなことでありましたが、これは十分期待したんですが、厚生省の事務当局、要観察者に対しても、あの当時の言明どおりに十分措置してありますか。
  177. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 いまおっしゃいましたのは、カドミウム中毒による要観察者だと思いますが、カドミウム中毒に対しましては、従来のようなイタイイタイ病というような、骨の奥まで病変が及ぶというようなことでない段階で中毒症状をとらえまして、鑑別診断をいたしたいということで、現在鑑別診断に関する研究班を設けまして診断を進めている状況でございます。別個、カドミウム中毒としての診断ができるということでございますならば、それを切り離しまして、健康被害救済特別措置法の疾病名として取り上げるということも可能でございますので、一にそういう診断の技術と、また具体的事例が出るか出ないかにかかっているわけでございまして、その正式の結果を待って善処したい、かように考えております。
  178. 島本虎三

    島本委員 いま大臣から、医療手当や介護手当等についても十分その内容を検討し、一歩前進した形でこれを実施いたした、こういうふうになっておりますが、じゃ医療手当は、これは来年度金額の点で引き上げるべく当然考慮する、こういうようなことになっておったわけです。来年度というのは本年度のことです。そういたしますと、医療手当に対する金額の点の是正、これは今回できましたか。
  179. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 これは先生御承知のように、去年の十月から施行というのがおくれまして、ことしの二月になったわけであります。そういうことでございまして、とりあえず従来の水準でスタートいたしまして、その結果を待ちまして、また将来の問題として検討しよう、こういう考え方でございまして、二月すでに予算が済みましたあとに、制度としてスタートするというような本年度の状況でございまして、改善は行なわれておりません。
  180. 島本虎三

    島本委員 大臣、行なわれていないじゃないですか。
  181. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私の申しましたことばが足らなかったのかもしれませんが、介護手当において引き上げました。そして介護手当並びに医療手当につきましては、これは介護手当の引き上げとは別に、所得制限の緩和をいたした、こういうことになりますので、介護手当のほうは金額そのものも上がるし、所得制限のほうも高いところへ持っていって緩和する、医療手当のほうは所得制限が緩和されるだけであって、医療手当の金額そのものは、現在のところではまだ改善されていないが、これは引き続き私どもも心得ておって、これの改善は今後検討してまいる、こういう意味で申しました。
  182. 島本虎三

    島本委員 それでは、大いに努力するのはいいのですよ。ただ、これはまだまだ足りないから激励するのです。やる前に努力してくださいよ。  介護手当は、原爆の場合はどういうように出ておりますか。これは事務当局……。
  183. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 原爆被爆者の場合には二つに分かれておりまして、認定被爆者に対する部分が五千円、それから特別被爆者全員に対しますものが三千円、名称は、特別被爆者の場合には健康管理手当、こういう名称になっておりますので、私どもはその辺を考えまして、入院の場合四千円、通院の場合が二千円、こういうような金額をきめておるわけであります。
  184. 島本虎三

    島本委員 ちょっと間違っていたら訂正してください。本年は、予算措置等について、原爆被爆の場合と比較して、公害被害者救済法によるところの救済の介護手当は、多いのですか、少ないのですか、同じなんですか。
  185. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 失礼いたしました。介護手当につきましては、原爆被爆者の場合と全く同一歩調で昨年度もやっておりますし、今年度以降も同じような形で持っていきたい、かように考えております。  具体的な構想としましては、現在介護日数一日につき三百円、非常に限定的にやっておりましたのを、介護日数に応じまして一カ月を三段階に分ける。二十日以上、十九日以下十日以上、九日以下、こういうぐあいに分けまして金額を支給していく、こういうような弾力的な運営のできる体系に改めたいと思っております。なお、金額は、二十日以上の場合は一万円、十九日以下十日まで七千五百円、九日以下五千円を一応予定いたしております。
  186. 島本虎三

    島本委員 それはいいと思いますが、医療手当の場合は、原爆の場合と比較して……。
  187. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 医療手当の場合が、さっき私が間違って申し上げましたように、向こうのほうは認定被爆者と特別被爆者と二つのグループがありまして、認定被爆者に対しましては五千円、それから特別被爆者につきましては三千円という金額になっておるわけであります。
  188. 島本虎三

    島本委員 公害被害者に対してはどういうふうになっていますか。
  189. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 私どものほうは、入院の場合が四千円ということでございまして、これは八日以上の場合が四千円、七日以下の場合が二千円、こういうような金額に水質関係がなっております。大気の関係につきましては、通院の場合にはi失礼しました。いまのは入院の場合でございます。通院の場合には、大気の場合は二日以上、水質の場合が八日以上ということを条件にしまして、いずれも二千円、こういうことになっております。
  190. 島本虎三

    島本委員 そうすると、今回の場合、特に原爆の場合は月五千円と三千円じゃありませんか。水の場合には、これを三千円と二千円と、下げているのです。水の場合は、経済企画庁の調査もおくれているから、被害者に対しても、原爆の場合よりも千円ずつ下げたのですか。
  191. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 原則としまして、従来は大気汚染系の疾病につきましては、通院の場合はやらないということで、昨年度は私ども国会等でも答弁申し上げておったわけでございますが、その後いろいろ事情等もわかってまいりましたので、特に通院の日数の長い者につきましてだけ、大気の場合もやっていこうということでございます。(島本委員「三千円か」と呼ぶ)三千円は原爆の場合でございます。私どものほうは四千円と二千円の体系でございます。
  192. 島本虎三

    島本委員 認定だとか特定だとか言っていながらも、公害の場合が原爆の被害者の場合よりも下がっておるということは、どうも私は理解できない。ばい煙の場合は、厚生省がちゃんと全国的に総点検をしてやっておるのに、水質関係経済企画庁がもそもそして、これからだというから、被害を受けた人の手当が少ないではありませんか。これは経済企画庁の怠慢だ。厚生省も、こういうふうにして差をつけてやるのはよろしくない。原爆を基準にしてやったなら、せめてこれと同じところまでやってしかるべきだ、こういうふうに思います。今後これは努力すべきではありませんか。ことに大型プロジェクトの脱硫装置に対しては二重の恩典を与えておるわけでありますから、この被害者に対する救済の休業補償だとか生活保障、こういうような問題についても、今後特段の熱意をもってこの補償に当たるようにやってもらいたい、こう思っております。これだけは私はどうもふんまんやる方ないのでありますから、ひとつこの点だけは大臣、あなたも死ぬほどがんばらなければいけません。
  193. 内田常雄

    ○内田国務大臣 御激励を受けまして、私どももできる限り改善につとめてまいりたい所存でございます。  ただ、先ほど来申しますとおり、この公害被害特別措置の支給金というのはあくまでもつなぎの金でございますので、そのつなぎという性格によって荷を軽く考えておるというような考え方でまいってきておるようでございます。たとえば、水質からくる被害につきましても、水俣病などにつきましてはもう会社側がその責任を認めておるのでありまして、一部訴訟をいたしておるチームもございますけれども、他の分は厚生省のあっせんといいますか、あるいは和解の仲介といいますか、そういうことで会社と患者の家族との間に入りまして、遠からずこれらの救済措置も、会社側の負担で本格的な措置ができるというような見通しもございます。また従来も、すでに昭和三十何年かに、水俣病患者につきましては会社側の責任による措置もいたしておりますので、そんな関係もありまして、これはあくまでつなぎの措置で、いずれつなぎをみな返してもらって、初めにさかのぼって会社側で本格的にめんどうを見る、こういうようなことになることであるけれども、一方におきましてこのような金額が出ていると思います。しかし、これから水の被害も、経済企画庁が環境基準をつくったり、また本格的に水質汚濁の公害対策に乗り出すことにもなりますので、それらと歩調を合わせながら、島本委員がおっしゃることにつきましては、つなぎの救済措置といえども、できるだけのことを本格的にはかっていくように努力をいたす所存であります。
  194. 島本虎三

    島本委員 同時に水質保全について、これは厚生省との関連において、大臣は先般三月二十九日でしたか、清掃法の改正の検討、こういうようなことを発表されたようであります。これは廃油だとかいろいろ不必要になったところのごみ、最近のいわば都市産業廃棄物、こういうようなものの一つの特異性からして、やはりそういうふうな発想に相なったものだ、こういうように思うのでありますけれども、これは水質の汚濁公害が急激に多くなった現在、やはり水にも重大な関係のある問題なんであります。  現在の清掃法が制定されたのは昭和二十九年です。二十九年ごろは、公害問題があまり大きな社会問題として提起されておるころではなかったのであります。しかしながら、水質汚濁の原因、こういうふうなものが、その当時はほとんど工場の排水だとか汚水、こういうようなものに限定されておった、こういうように考えてもよろしいような時代にでき上がった法律であります。  しかし、最近の高度経済成長によってもたらされたいろいろな都市公害といわれます産業廃棄物、こういうようなものの処理とあわせて、今度は屎尿処理場や下水処理場、こういう処理能力を十分発揮させても、こういうようなものをなお川へ流したりして、十分処理されないまま水質汚濁の原因にもなっておる、こういうようなことが方々にあるわけなんです。したがって、河川、海洋、こういう方面に投棄処分をする、こういうようなことさえも国のほうで認めておったという時代なんでございますから、いまも同じにしておくと、これは陸がよごれるだけでなくて、海の水、川の水も全面的によごれることになるのであります。河川法に対しましても、重大な検討がいまこの議会で行なわれたところであります。そうしますと、それを総括する意味においても、清掃法の体制の強化、こういうふうなものが、やはりいま取り上げられなければならない重大な時期ではないか、こういうふうに思うわけであります。そういうようなこととあわせて、やはりここに大臣も、清掃法の一条の「目的」、こういうようなものを公害基本法の精神に沿うように、これは十分改正してしかるべきではないか、それから海面への投棄についても厳重な規制を行なってもいいのではないだろうか、同時に投棄を禁止する、こういうような地域をあらかじめ考えて、総合的に清掃法を考え直さなければならないのではないか、こうも思うわけであります。  大臣の今回のこの発想は、われわれはほんとうに期待して待っておるところなんであります。このごみ公害を規制する意味において、厚生省の清掃法の改正を検討したという快ニュース、ひとつこの内容等々について明らかにして、今後の実施のプランを明らかにしてもらいたいと思う次第でございます。
  195. 内田常雄

    ○内田国務大臣 一面におきまして経済の高度化に伴いまして、単に家庭のごみとか屎尿とか、あるいは家庭下水というもののみではなしに、いわゆる産業廃棄物というものが非常に大量にのぼってきておりますので、これらの処理ということは、今後私どもに課せられた大きな課題になっておるということと、それからもう一つは、いま島本委員から仰せられましたように、現状に即して清掃法がカバーしている海面などの規制の範囲が欠けているところもあるようであります。しかし、清掃法の及ばない海面などにつきましては、現在でも港則法とか、あるいは港湾法とか、そういうものの適用対象にはなっておるところもございまして、そちらの面からの規制はできるわけでございますけれども、いずれにしても一貫性がないようにも思いますので、したがって、それらの関係法律等もさらに検討をいたしまして、いま申しました二つの事態に対応して、清掃法というようなものの改正にいけるのか、あるいはまた別の構想で新しい立法でもしなければならないのか、そういうことも頭に置きまして、御説の厚生省に置かれております生活環境審議会に、この問題についても専門的な意見の開陳形成を求めておるわけであります。いずれにしてもこれは放置し得ないことでございますので、生活環境審議会の答申が出るまでといえども、たとえば現実に地方において、それらの施策に対応せんとする計画などがあります場合には、国から年金の還元融資等の方法をも取り入れまして、善処してまいることにいたしておる次第でございます。
  196. 島本虎三

    島本委員 それと同時に、都市の産業廃棄物対策については、やはり現在あらゆる方面で、たとえば自治省でも、河川の取り締まりをしている建設省でも、もちろん通産省でも、厚生省はその大元締めとして、各省庁にわたって、この問題は、ほんとうに頭の痛い問題になっているわけであります。これに対しても、やはり清掃法の改正を機会にして、何か一つの方策をはっきり出すのでなければ、高度経済成長政策のもたらすところ、これはほんとうに無制限にはびこるのがごみですよ。いわゆる化学的なごみですよ。これを一つの資源にしてやる方法は、通産省で考えなければならない。しかし、それまでの間は、このごみを処理するためには、あなたがいま言った一つの発想の中にあるような、こういう清掃法の改正によって企業から金を取るようにしてやりたいという意向もあるようですが、それならいいけれども、拡大解釈をして、住民全体から、国民から取るというようなことにしないような警戒がまず必要だ。それだけは厳重に念を押しておきたい、こう思うわけであります。あくまでも公害発生源が最後まで負担するのがたてまえですから、それに対して国民全体が負担するんだ、こういうことに往々にして持っていかれがちですから、これは大臣としてはほんとうに戒心しておいてほしい、こういうことであります。  それと同時に、産業廃棄物に対しまして、今後どのような方策をもってこれに当たるのか、それをひとつお漏らし願いたい、こういうふうに思うわけであります。
  197. 内田常雄

    ○内田国務大臣 事態の認識並びにそれに対応すべき法律的の措置につきましては、ただいま申し述べましたように、清掃法の改正でいくか、あるいは特別立法をするかというようなことがあるわけでありますが、技術的対策等を伴いました措置につきましては、担当の政府委員からお答えをいたさせます。
  198. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 産業廃棄物に関しましては、日本都市センターから出ました清掃事業近代化委員会の報告書の中でも大きく取り上げておったわけでございますが、私どもとしましては、昨年の七月十四日に生活環境審議会に対しまして諮問をいたしております。その生活環境審議会の中には、産業廃棄物の分科会を設けまして、その中でも、たとえば海洋還元等に関する非常に技術的な問題についての検討も小委員会を設けて行なっているというような段階でございます。また、畜舎等の汚水処理委員会を別に設けまして、畜産公害に関する研究をいたしているような状況でございまして、審議会の答申が出ました上で今後の対策を立ててまいりたいということでございます。  この産業廃棄物に関しましては、もちろん私どもの省だけでいけるわけではございませんので、たとえば当然工場の中での自家処理だとか、あるいは処理、処分をこちらでいたしますにしましても、その前処理の問題とか、いろいろな問題がございますし、あるいは処理しにくいプラスチックの問題等々ございますので、関係省庁とも連絡しました上で、今後積極的な検討を進めてまいりたいと思っているわけでございます。  なお、当面の行き方としましては、大阪でもうすでに今年度から産業廃棄物の処理をやりたいということでございますので、特別地方債のワクの中にこのための八億の計画ワクを組み込みまして、本年度からスタートできるように処置してまいりたいと思っておりますが、その場合では実施主体が市になります関係で、関係の市町村から地方自治法第二百五十二条の十四の規定によりまして事務の委託をするということで、とりあえず処理してまいりたいと思っているわけでございます。
  199. 島本虎三

    島本委員 それから、同時に公害に対する対策の中でも、いわば農薬の取締法の改正強化、こういうようなことも一つ大きい問題として今後あらわれてくるのじゃないか、もうあらわれているのじゃないか、こういうように思います。最近農薬の空中散布、こういうようなことからして、劇毒性の農薬は禁止されたのでありますけれども、依然として弗素系だとかフェノール系の農薬がいまだに使用されている状態である、こういうようなことを聞いておるのであります。まことに残念でありますけれども厚生省あたりでも、この農薬が食べものの連鎖の過程での濃縮計数を徹底的に究明しない限り、次々と同じような被害が起きてくる、こういうことに相なろうかと思います。したがって、人体並びに水産動植物に害毒を及ぼすような劇毒性の農薬、こういうようなものに対しては使用を禁止するようにしたらいいのじゃないか、こういうように百尺竿頭一歩を進めて考えるわけなんでありますけれども、こういうような点については、農林省並びに厚生省のほうでは、こういう農薬に対していまどういう対策をお持ちでしょうか。
  200. 内田常雄

    ○内田国務大臣 農薬につきましては、一応農林省の所管のもとに農薬取締法というものがありまして、これは私が調べてみますと届け出制のようでございます。届け出制ではございますけれども、実際の運用は許可制と同じようにやっているわけでございますから、その限りにおきましては、その届け出を受理するという際に、農林省がいろいろの見地から規制をいたしておるようでございますし、また厚生省といたしましては、それが農薬であろうが、あるいは工業薬品であろうが、御承知の毒物劇物取締法という法律に基づきます毒物、劇物の指定をするわけでございます。先般ジャガイモとかサツマイモなどに農薬として水銀が用いられておったというようなことで、大問題を起こしましたが、これなどにも赤い着色をさせておる。この水銀につきましては、もちろん毒物劇物取締法の対象として、その取り扱いを厚生省的見地からも規制をいたしておるところであります。  先般同じような御質問が、予算委員会におきまして農林大臣にもございました際に、農林大臣といたしましても、農薬の取り扱いにつきましては全面的に検討するというようなお話でございましたので、今後人体に及ぼす健康、衛生等の見地から、私のほうからもできる限りの御協力を申し上げて、農薬について御心配を根絶するようにしたいと思います。  また、一部の農薬が、家畜の飼料等を通じて家畜の体内に入る、それがまた家畜の乳肉というようなものを通じて人体に入る危険性等につきましても、厚生省のほうではせっかくその関係の専門機関で調査をいたしておるところでございまして、ことに私などの耳に入っているところによりましても、DDTはもちろんのこと、BHCも国内向けの生産は停止をしておるというような状況であることも聞いておりますので、BHCに限らず、今後農薬につきましては、私どもも農林省とともに、その危険防止に最善の努力を払わなければならぬと考えております。
  201. 遠藤寛二

    ○遠藤説明員 農薬関係の取り締まりにつきまして、先般も多少申し上げましたが、説明をいたしますと、農薬は、製造、販売につきましては登録制度になっております。これを製造し、販売しようとする者は申請をいたしまして、届け出だけではございませんで、農薬検査所で検査をいたしまして、その上慢性毒性等につきましては、さらに厚生省と協議をいたしまして、厚生省のオーケーが出ましたところで許可するようになっております。そしてその際に、人体あるいは水産動植物等に著しく被害を与えると思われるようなものは、その段階で一たんチェックをして落とすようになっております。  それからもう一つ、先ほど来のお話にございました農薬でございますので、どうしましてもやはり毒物、劇物というのがいまのところまだかなりございます。毒物は二割以下と思いますけれども、かなりございますので、そういったものを逐次無毒ないしは低毒性のものに切りかえつつあります。御承知のような有機燐剤の大部分を取りかえ、有機水銀剤も種子用以外ばほとんどありません。それから先般BHC、DDTの使用法につきましても相当厳重な規制をいたしました。その他そういう規制をいたしまして、厚生省で定めてくださる許容基準に指定されます基準以下に散布をした結果が下がらないというものは、逐次使用禁止をしていくというかっこうになっております。  それから魚族あるいは水産植物に対します被害につきましては、農薬取締法で、各毒性の段階に応じまして、四つほどに分けまして規制をいたしております。一番きつい規制になっております特定農薬につきましては、都道府県知事にお願いをいたしまして、都道府県知事が地域と使用期間を定めてやる、もしそれをやらない場合にはいろいろ罰則もございます。そういうようなかっこうの規定で取り締まりをして安全を期しております。  なお、指導につきましては、先般も申し上げましたけれども、各県の指導普及員等を通じまして極力改善につとめているということであります。
  202. 島本虎三

    島本委員 今回の公共用水域の解釈の中には河川、湖沼、そのほか沿岸の水域あたりも全部入る、こういうことは御承知のとおりなんでありますけれども、川にしてみても先ほどの議論で御承知のとおり、具体的にこれを清潔に取り締まる段階で、いまだに政令が実施されておらないという状態、罰則についても同様だ。そういうようなことからして、いま公共用水域の規制を、発生源にさかのぼって大いに規制するような措置を講ずるという法律案を出した。しかしながら、末端のほうへ参りまして、それが何ら功を奏しないということがあっては困るのであります。一番末端は海ではなかろうか、こういうふうに思うわけであります。そうなりますと、今度海上における油濁の防止体制の拡充強化、それから屎尿だとか、こういうようなものの河川、沿岸海域投棄に対する取り締まりの厳正、それと監視体制の強化、もちろんこれに対する罰則は当然であります。こういうような警備体制の強化というものも当然必要であります。以前油濁防止法案が通った場合には、監視体制は手抜かりは一切ない、当時の大橋運輸大臣がこの席上ではっきり言ったのであります。そういたしますと、今後においてもやはりその体制は持続されておるものだ、こういうふうに私ども考えるのでありますけれども、この海上の公害取り締まり体制は完全なのかどうか。いま言ったように、最後はその方面まで行ってしまうわけでありますから、これは以前からの言明とあわせて、この監視体制は強力にしておかなければならないものの一つだ、こういうように言わざるを得ないので、せっかくこの機会でありますから、ひとつこの体制等について、水産庁の次長も来ておられるようですから、はっきり表明を願いたいと思います。  もう一つは、漁港法がございますけれども、漁港法によると、「漁港の区域内の水域において、工作物の建設、土砂の採取、汚水の放流若しくは汚物の放棄又は水面の一部の占用をしようとする者は、農林大臣の許可を受けなければならない。」または大臣の許可を得ないでそれらの行為をした者に対しては三万円以下の罰金に処する、こういうようにはっきりあるわけであります。これも最近は何かしり抜けになっておるというようなことを聞くのであります。最近の漁港関係の汚水のはんらん、そういうような情勢を聞くにつけても、せっかく漁港法があっても、水質関連法としてこういうものが存在をして罰則まであっても、いまだかつて罰則が一つも適用されないというような状態では、まさにこれはしり抜けもいいところであります。この漁港法が完全に行なわれているのかどうか、それとあわせて海上の公害取り締まり対策の強化はどういうふうになっておるのか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  203. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 海上におきます公害の監視というのは、水産庁は直接行なっておりません。水産庁で行なっておりますのは、水質が悪くなるかどうかという自衛的な監視でございまして、数カ所の重要海面につきまして水質の監視を行なっております。取り締まりにつきましては、水産庁のほうでは行なっておりません。  それから漁港法につきましては、私ちょっと答えを用意しておりませんので実態はわかりませんが、後ほど調べて御報告したいと思います。
  204. 島本虎三

    島本委員 これは、完全な答弁をしようと思えば、やはり実態に即して、データによってやる、こういうようなのが当然皆さんの心がまえとして了承できます。しかし、私が聞いているのは、こういうような漁港はどこへ行ってもきたないのですよ。きたないけれども、きたなくした場合には罰則もあるのです。漁港法によって、これは農林省、農林省のほうは水産庁、こういうようなことになって、直接の管理者じゃありませんが、そういうようになった場合には、やはりこれに対して大体どういうふうな情勢になっておるのかというくらいの管理は当然しているはずです。いままで汚濁を目的に罰則を適用された例がございますか。
  205. 藤村弘毅

    ○藤村政府委員 漁港につきまして、汚濁による罰則を適用されたということは聞いておりません。
  206. 島本虎三

    島本委員 やはりこの問題は、問題があろうと思います。その問題のよって来たるところは、厚生省になるのじゃないかというように思うわけであります。これはいかに環境基準の最終目標をきめて、またこれを設定したにしても、水質基準が必ず達成されるように、すべての汚濁原因を厳重に規制したとしても、現在の法令の改正その他によっても、最後まで残るのは屎尿と下水の処理場、こういうようなものの完備のいかんが残ってしまうわけであります。おそらく漁港に対しての取り締まりが不十分だということはいなめません。これはやはりその発生源に対しての指導と監視は、もっと厳重にすべきが当然であります。しかし、あそこへ注いでいるのは都市下水であり、それからとりもなおさず屎尿関係のものもいっているとするならば、これはやはり一つ被害者に水産庁もなるわけでありますから、そこは十分考えて対処しなければならないと思うのです。  厚生省もそういうような点では十分考えて、今後水をよごさないためにも、基準の実施を強行させるためにも、ひとつ経済企画庁にこの計画を実施させるために大いに協力してやらなければならない、こういうように思うわけです。  漁港の問題一つとらまえてみましても不完全です。いままで大臣が来る前に、いろいろと関係立法または受けざらになるような法律案に対しても検討を行なったのですが、全部これは不完全です。ですからそういうように、最後に残るのは厚生省、屎尿と都市下水の処理の問題にかかってくるわけです。そうなりますと、それを待ってようやく水質保全ができるというようなことになるわけでありますから、厚生省におきましても、ひとつ各省とともに手を携えて、この水質保全のためには一段の努力をしなければならないのじゃないか、こういうように思うのです。いろいろ聞いてみましてもやはり最後に残るのは厚生省ですな。ですから厚生大臣、あなたの責任はまことに重大で気の毒ですけれども、きょうも病気でがんセンターに行ってこられたということを聞きました。しかし、今後そんなことを気にしないで、大いにあなた自身の職責を全うするためにひとつがんばってもらわなければならない、こういうように思うわけなんです。この点等についてもう一回あなたの決意を……。
  207. 内田常雄

    ○内田国務大臣 島本委員がおっしゃるとおりでございまして、国民の健康なり生活環境を清らかにする最終の責任は、すべてこれ厚生省にあるわけであります。でありますから、それを達成する手段につきましては、あるいは建設省にお願いをしなければならないものもあり、あるいはまた通産省、運輸省にお願いをしなければならないものがありますことは御承知のとおりでありますが、私も実は厚生大臣に就任当時は、ほんとうに公害の発生防止をやるためには、厚生大臣みずからが公害発生源をすべて所管しなければできないとちょっと思い込んだこともございます。  しかし、さらに考えてみますると、厚生省がそういう発生源の規制の権限というものを全部持ってしまいますと、これは各省が楽になってしまって、全部厚生省におっかぶせるということになりますので、むしろ、私どものほうは責任を持つけれども、しかし、その公害防止のための手段の一端は、みなそれぞれ各省に負ってもらうという現行法の仕組み、それも非常に意味があるのではないか。そのかわり督励のお役目や協力のお役目は、それがどの省の仕事であろうと、また単に空気とか水とかということばかりでなしに、いまお話しの農薬であろうが、他の物質であろうが、私どもは、国民の健康生活ということから、重大な関心と、また最終的しりぬぐいの責任は持って立ち向かっていこう、こういう気持ちを、これは、私どものみならず、省の職員全部にひとつ持たしてまいるつもりでおりますので、どうぞひとつ当委員会からよろしく御指導、御鞭撻を今後ともお願いを申し上げます。
  208. 島本虎三

    島本委員 実際のところ、私もだいぶ疲れてきました。しかしながら、やはりやるだけはやって終わらないといけませんので、ひとつ大臣に重ねてこの点要請しますが、やはりさっき言ったとおり、各省ばらばら。ばらばらのうちの最大のばらばらは厚生省。というのは、いまの大臣考え方があるからです。あなたの場合は遠慮しないで——やってもやっても落ちこぼれるものは公害対策なんです。各省のためにやったら気の毒だというそういう考え方こそいけないのであって、公害対策だけはあなたががむしゃらに蛮勇をふるっても、これは完全だというところまではいかないわけです。いまの経済体制の中で国が栄えれば栄えるほど公害も太ってくるのですから、それを一生懸命にあなたが制止して、制止すればするほど日本のほんとうの経済的な発展につながるものなんだ、それを各省にまかせることによって被害を受けるのは国民なんだ、こういうようなことになります。あなた、何も遠慮することないのです。この点だけは先頭に立ってやってください。そのために私は応援しますよ。まあ通産省もそうですけれども経済企画庁——経済企画庁はいまの場合は総合官庁といっていろいろなことをやっても、権限になったら個々の省庁が持つのですから、これはなかなか広くない。そういうような場合にはひとつ一緒になってこれを鞭撻するのがあなたのつとめにもなる。ひとつその点、何も遠慮要りませんから今後やっていただきたいと思います。私が願うのもおかしいですけれども、ひとつよろしくお願いします。  それとともに、ケリをつける意味におきましても、ひとつ次の点をお伺いいたします。これはイタイイタイ病やそのほかの公害裁判に関する問題です。先ほどは大体明らかになりましたけれども、ルートによって聞きましたので、ひとついままで残しておいた点の締めくくりをいたします。  それは、水によるところの被害、すなわちイタイイタイ病や有機水銀中毒、その他がございます。しかしながら、この裁く側の科学的な知識や研究データの理解力、こういうようなものはますます必要となってくるけれども、現在の状態裁判所の機構の中では、原因発生者と疑われる企業公害病との関係を結びつけていかに立証するのか、こういうのはなかなかむずかしいようであります。まして、新しい訴訟やテクニック、こういうようなものも、今後はますます必要になってくる段階であるし、究極的にはいまの世の中にマッチした法律の整備だとか、被害者の救済、そのためのいわゆる公害裁判所の設置なんかも、政治的な解決が一そう望まれるゆえんだ、こういうようなことさえも、いまや世をあげて報ぜられているわけです。  そういうような中で、これは厚生大臣直接の責任でないかもしれませんが、責任の一端は当然負うわけであります。この裁判もずっと長くかかっております。いつ果てるともわかりませんけれども、しかし可及的すみやかに結論を出したい、こういうようなことでございますから、その点は了承するにやぶさかではございません。しかし、いまのように原因と結果、因果関係がはっきりしなければならないんだというような考え方をもとにしては、今後起きるであろう公害裁判、こういうようなものは特に公害裁判所というようなものを特設でもしておかないと、裁定権を伴えない現在の紛争処理段階ではやはり長引くおそれが十分あるのじゃないか、こういうように考えられるわけです。これは政治的な解決こそ必要なんであります。厚生大臣は本務の大臣でございませんから、これはすぐやれと言うことは相当無理のかかることかとも思いますけれども、せっかくこの裁判にいっている現在の問題もありますから、その解決のためには公害裁判所というようなものを特に設置して、こういうようなもののために全機能をあげて困難な情勢の打開をはかる必要があるのじゃないか、こう思うわけなんですけれども、この点裁判所関係考え、それと、これは場違いであっても——場違いではないかもしれませんね、厚生大臣、ひとつ考えを伺わせてもらいたいと思います。
  209. 内田常雄

    ○内田国務大臣 でございますので、今回公害紛争処理法をとにもかくにもつくりまして、これまた公害裁判所というような特別の機能の裁判所をつくったといたしましてもむずかしさのある問題を、とにかく和解の仲介のみならず、これは裁定権こそ持っておりませんけれども、調停とか、仲裁とかいうようなことで、当事者の間にできるだけ納得のいく解決をつけていきたい、こういうようなことでこの法律案がまず出されたものだと思います。  さらに、経済的には、それが和解であれ、あるいは仲裁であれ、解決のつくまでの間の応急的な健康上の被害につきましては、健康被害特別措置法でつなぎのめんどうは見ていこう、こういうような制度がようやくここに出てきたということでありまして、これらの二つの法律の成果を見ながら、究極的にはこれはやはり裁判ということにいかざるを得ない、じゃどういうふうになっていくかというようなことも見きわめた上で措置をしていくべきことになるのではなかろうか、こういうふうにも思うものでございます。  とにもかくにも、今回国会に提案をいたしまして御審議をいただいておりますこの公害紛争処理法案の成立に御協力をいただきまして、それによる解決というものの成果を見てまいりたいと、当面は思うものでございます。
  210. 島本虎三

    島本委員 いろいろ質問してまいりました。まだまだこれの質問は尽きません。しかし、きょうは少し疲れました。私自身、これできょうはやめさしておいてもらいたい、こういうように思うわけでありますが、いままでの答弁は全部納得してやめたんでは決してございませんで、まだこの問題の続きはあるのでありますけれども、きょうはこの程度で私は質問を終わることにさしておいてもらいたいと思います。  長い間、どうも皆さん、御苦労さんでした。
  211. 加藤清二

    加藤委員長 次は、西田八郎君。
  212. 西田八郎

    ○西田委員 経済企画庁長官がおられないので、基本的な問題についてお伺いしようと思ったんですが、四時になったら来られるということですから、それはあとに回します。  公害紛争を処理するというよりも、公害を起こさないということのほうが、私は大切じゃないかと思うのです。そういう意味で、最近公害罪の創設等が叫ばれてきておるわけでございますが、今日この公害防止するために、先ほど答弁を聞いておりますと、十ばかりの法律があるように聞いておるわけですが、その法律の中の罰則の刑量その他について、ひとつお聞かせいただきたい。
  213. 西川喬

    ○西川政府委員 ちょっと、まだ全部は調べ切っておりませんが、新しい今回の改正法によりまして入ってくる新しい業種でございますが、これにつきましては、へい獣処理場が一年以下、三万円以下の罰金でございます。と畜場法が同じく一年以下の懲役、三万円以下の罰金、それから採石法でございますが、これが一年以下の懲役あるいは十万円以下の罰金、それから砂利採取法、これが一年以下の懲役、十万円以下の罰金、油濁防止法、これが五万円以下の罰金、それから清掃法が五万円以下の罰金、建築基準法が五万円以下の罰金ということになっております。
  214. 西田八郎

    ○西田委員 大気汚染をさしたり、あるいは水質を汚濁させたりした場合の罪はないのですか。
  215. 西川喬

    ○西川政府委員 水質汚濁の場合につきましては、水質保全法によりまして基準が設定されます。そういたしますと、実体規制は、各種実体規制法にまかせているわけであります。その実体規制によりまして、水質基準を守らないということになりますと、それぞれ改善命令なり、そういう必要な命令が出されるわけでございます。その命令を出されたときに改善措置をしない、相変わらず違反を繰り返しているときに、初めて罰則を適用されることになるわけでございます。  大気汚染のほうは、厚生省のほうの所管でございますが、水質保全法につきましては、そのような体系になっております。
  216. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 大気汚染防止法の関係は、届け出をすべきときに届け出をしなかったり、あるいはいまお話ございましたような、命令をした場合に、命令違反、こういうようなぐあいにかかるようになっておりますが、一番きつい、たとえば十四条の改善命令をかけて、改善命令に従わないという場合の罰則は三十三条にございまして、一年以下の懲役または十万円以下の罰金、こういうことになっております。
  217. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、この大気汚染をさせた者、あるいは水質を汚濁させた者、あるいはそれらの環境基準を守らなかったという場合でも、その源になっておる企業体は、営業を停止されるとか、あるいは生産を停止されるというような罰則はないわけですね。
  218. 西川喬

    ○西川政府委員 改善命令を出すとか、あるいは改善命令と同じ性格、改善命令の中で施設を改善させる場合、あるいはその施設の改善ができるまでの操業停止も出される場合がございます。
  219. 西田八郎

    ○西田委員 それでは、いままでにそういう操業停止命令を出された例がありますか。
  220. 西川喬

    ○西川政府委員 この問題は、各種の実体規制法の問題でございますから、それぞれの所管のほうで、そういう改善命令なり、停止命令を出します。私が聞いておりますところでは、改善命令を出した件数は相当あると聞いております。これはそれぞれの所管省でお答え願いたいと思います。
  221. 内田常雄

    ○内田国務大臣 厚生省で、直接所管ではございませんが、たとえば東邦亜鉛の安中製錬所、これは群馬県安中にありますが、亜鉛の製造工場において、そこで発生するカドミウムに対する処理が、工場法ですか、鉱山法ですかの違反であるということで、改善命令を出したり、それから事業の停止命令を出したり、さらには刑事上の告発もいたしておるというふうに、思い切った措置を——ごく最近ではございますが、そういうような事例もございます。
  222. 西田八郎

    ○西田委員 私がなぜこういうことを尋ねるかといいますと、厚生大臣おられるのですが、今度管理理美容師制度ができましたね、管理理美容師制度で、二人以上の美容店あるいは理容店が、管理理美容師としての認定を受けなかった場合は、営業停止になる法律措置があるわけですね。一対一の人間の散髪をしたり、あるいは髪を結ったりということで危害が出るおそれがある、いわゆる衛生管理上の技術、あるいは経営管理上の技術がなければ、二人以上のそういう営業を許さないというようなきびしい法律がある一方で、何千人、何万人という人間に危害を加えておる公害に対して、公害を出している企業に対して、きわめて寛容であるところに、私はふしぎでならない。  たとえば私の選挙区である滋賀県の、私の住んでおる地域に、とにかくもう数年前、十数年前から、板紙工場なんですけれども、段ボールですか、ああいうものを再生してまた紙をつくっておるわけですね。そこから出る繊維素が琵琶湖周辺の悪臭と、それからヘドロのような遺留物が蓄積されて、どうにもならない状態であるわけです。それで県からも、市からも何回か改善命令が出されておるけれども、ちょっとどうにもならぬ。常務のいわくには、この水質を、排水する水をどうかしようと思えば、何千万円の費用がかかるのだ、その費用を市なり県が出してくれるならやるけれども、わしのところの会社は昔からここにあるのだ、そのある会社を立ちのけとは何事か、改善せよとは何事だと居すわっておるわけですね。それでいてどうにも手が打てないという実情があるわけです。だから、そういう公害というものの起こってきておる地域住民は、それに対していろいろの抗議をしたり、あるいは市に陳情したりしておるのですけれども、一向に片づかぬわけですよ。  そういうこと等から考えまして、この公害を出している企業が、地域住民の健康にきわめて有害だというようなものが出されておっても、それが十分取り締まられないというところに、私はやはり公害の基本的な問題があるように思うのですが、それについてひとつ大臣からお答えいただきたいと思います。
  223. 内田常雄

    ○内田国務大臣 これは、もう私は決して逃げ隠れするわけではございませんが、厚生省の所管ではないのですけれども、私どもが先ほども申しましたように、健康を守る官庁として見れば、それらの工場なり、あるいは工場排水の規制法をあずかる官庁が私は思い切った処置をとってもらわなければ、厚生省としては困ると考えるのであります。  ただ、その際、琵琶湖のその辺の水域が公共用水域水質保全法の指定水域に一体なっているかどうかどいう問題が先にくるわけでありますが、指定水域になっていなければ、私はまああの辺は指定水域に当然なるべきであろうと思いますし、なった以上は、工場排水規制法による違反があった場合には、行政上の改善命令はもちろんのこと、その罰則等の適用については、昔ならいざ知らず、今日の時代におきましては、いまの東邦亜鉛の安中工場式に、断固としてやってもらわなければ困るということで、私は企画庁の協力を求めてまいりたいと思うものでございます。
  224. 西田八郎

    ○西田委員 たまたま琵琶湖の水質の問題が出たのですが、これはあとで公共用水域水質保全法律の一部改正案で質問したいと思っているので、そのときにゆだねますけれども、そこでこういうことがどうしても解決しないために、公害紛争というものが起こっておると思うのです。その起こっておる公害紛争を、いまここで提案されているような法律の定めにおいてはたして解決できるのかどうか、そこらについての自信のほどを実は経済企画庁長官に聞きたかったのですけれども、もしおられなければだれか担当官から……。
  225. 青鹿明司

    青鹿政府委員 ただいま御提案申し上げております公害紛争処理法で、公害紛争が適切に解決できるかというお話でございますが、この法案のねらいといたしますところが、現在の制度では司法手続においても、また大気汚染防止法その他にあります仲介制度等ではやはり十分に期待し得ないところがあるのではないか、そこの補完的な措置といたしまして、今回新たに制度を創設いたしまして、当事者の合意、納得を基礎に極力解決をはかりたい、要は今後の運営の問題にかかるのではないかと思いますけれども法律、制度的にできるだけの保証を与えまして、独立、中立的に、しかも十分職権行使が可能なようにいたしておりますので、この制度によりまして相当公害紛争解決が促進されるのではないか、かように期待いたしております。
  226. 西田八郎

    ○西田委員 そこで私は、少し飛躍するようですけれども政府の、生産活動というものに対する理解のしかたをひとつ聞きたいのです。  私は、この防止法、公害紛争処理法をずっと一読さしていただいて考えられることは、こういう場合は加害者よりも被害者立場を守るということでなければならぬと思うのです。やはり弱いところに政治のあたたかい手が差し伸べられて善政といわれるのではなかろうかと思うのです。ところが、こういう被害を受けておるほうが、常に弱い立場のものが加害者に対して合意をする、同意を得られるというようなことであるとするならば、紛争解決はきわめてむずかしいと思うのです。そこで、そうした被害を受けておる弱い人を保護するということが前提でなければならぬと思うのですけれども、どうも加害者のほうが、その他の立法によっても、公害関係立法を読んでみたときに、わりあいに擁護されている、保護されているという面が非常に強く打ち出されている。  そこで、お伺いしたいのは、生産活動というものについてどう考えておるか。私は生産というものは、より豊かな、より快適な人間生活を営むために、人間の英知を結集して行なわれるものだと思うのです。たとえば飛行機が早くなるのも、時間的距離を短縮するため、あるいはまた電気器具がいいものがどんどん発明されていくのも、より合理的な、快適な生活を営むためだと思うわけです。それにもかかわらず、生産を行なうために人間の生活が脅かされるということになれば、これは全く主客転倒だと思うのです。人間生活を守るために行なわれる生産が、人間の生活をより豊かに、より快適にするために行なわれる生産が、その生産活動の中から出てくることによって人間生活が犠牲になるということは、全く主客転倒だと思うのですが、その辺についての政府考え方を聞きたい。
  227. 内田常雄

    ○内田国務大臣 西田委員から、私がぜひひとつ御理解をいただきたいと思う御質問を得たように思います。  それは、昭和三十年代にできました公害関係法律では、なぜ政府公害防止の措置をとるかというと、それは、たとえば水質についていいましても、水の中にいろいろな産業の廃棄物なんかを流しておる、そのためにその事業以外の企業や工業が迷惑を受ける、だから一つの工場が発生する水質の汚濁というものを規制して、ほかの企業や工場が迷惑を受けないようにすることとともに、あわせて何か、この法律のことばによりますと公衆衛生の向上をはかる、こういうようなことで、幾つかの産業が調和をもって発展するために行なう規制が公害規制の主目標で、人間の衛生、健康というものはその副目標のような書き方をしてございました。  ところが四十年代になりましてできました公害対策基本法にいたしましても、大気汚染防止法にいたしましても、そこのところを全く考え方を、いま西田委員がおっしゃられたようなたてまえから変えてしまいまして、まず、何のために公害防止をやるかというと、人間の健康保護が第一目標だ、それで、あわせて産業との調和というものもできたらはかりなさい、こういうことに目標をすっかり変えてしまいました。  それで、産業との調和をはかる場合にも、人の健康が先だという場合は産業の調和をはかる必要はない、人の健康をはかることのほうが殿さまのお通りで、すべてを排除して、産業の規制においても、人の健康をはかるための公害防止対策をやりなさい。産業との調和をやる場合には、環境保全のために公害防止を行なう際においてのみ産業との調整をはかりなさい、こういうことに書き改められてきておるわけでございます。  その思想をとりまして、今回この委員会経済企画庁のほうから出されておる公共用水域水質保全法も、三十年代の法律でありますので、そこを私がいま申し上げましたような書き方に直しておるはずでありまして、この水質保全の目的は、人の健康保護と環境保全と二目標がある。しかし、人の健康保護のためには、もう産業との調和を考えなくてもよろしい、環境の保全の場合においてのみ産業との調和をはかれ、こういうふうに思い切って書き改めたものを、こう改めますが御審議をいただきたいということで出しておるはずでございますので、政府が今後そのとおりやるかやらぬかという問題は残りますけれども考え方はかなり、西田先生のおっしゃったように変わってきているということをひとつぜひ御理解をいただきたいと思います。  厚生省といたしましては前々からこれをやっておるわけでありまして、政府部内におきましても、厚生省にまかしておくと強過ぎる、だから、ここに総理府長官がお見えになりましたが、公害の問題は厚生省寄りでもきつ過ぎるから、総理府の座敷でやっておけ、こういうことになったように聞いておるわけでありまして、厚生大臣といたしましては、強いほうの立場をいつも述べまして大いに激励をいたしておる、こういうことでございます。
  228. 西田八郎

    ○西田委員 いま、内田厚生大臣のお話を聞いておると、全く政府は人間の生命を守ることを重点にして生産活動を行なう方針なんだと言われておるわけなんですけれども、それなら公害対策基本法という、「公害対策」というのはおかしい、あるいは「公害防止」というのはおかしいと思うのですね。私はやはり生活環境基準法というものがあって、それをまずつくるべきではなかろうかと思う。それから出てきて、こういう環境を守るべきだ、人間の快適な生活のためにはこれが最低の基準であるというものをつくって、それに違反するものを取り締まるという方向にいかなければならぬと思うのですけれども、その点についてどうですか、もうこういうものを一回総改正する必要がきておる時期だと思うのですが……。
  229. 内田常雄

    ○内田国務大臣 私は、西田委員のお話もよくわかります。でありますから、厚生省公害を論ずる仕組みといたしましては、生活環境審議会というものをつくりまして、あえて公害防止審議会というものをつくっておらぬのです。それは、私ども厚生省考え方というものが、西田先生のお考えに近いということの一つの表明であると思います。  一方の公害対策基本法のほうは、「公害対策」という文字こそはうたってありますけれども、この中のたてまえをごらんをいただきますと、公害で出たもののしりぬぐいをするというようなことではなしに、公害の発生を未然に防止するというたてまえを、随所に実はとっておるわけでございまして、いまの段階におきましては、公害対策基本法が意図するところが、いかに忠実に政府の各省庁によって行なわれるかということにあると思うのでありまして、これ自身を根本的に改正する段階ではないと私は考えるものであります。
  230. 西田八郎

    ○西田委員 副長官お見えになっておるわけですから、いまの件について副長官のお考え方を……。
  231. 湊徹郎

    ○湊政府委員 ただいまの点は、厚生大臣のほうからお話しございましたが、事実問題として従来特に経済の高度成長によって、目立った形で公害が、しかも相当幅広く、単なる産業公害のみならず、生活公害といわれるような形でいろいろ出てきた。それに対処する必要が起きたということから、公害対策基本法ないしはその事前の防止のためのいろいろな処置をとると、こういうことに経過から見ましてなっていることは確かだろうと思いますが、しかし、考え方そのものは、ただいま厚生大臣が言われましたように、一つは人命、健康の保護、それからさらにこわされていく自然の保護、さらに環境の保護、こういうところにやっぱり主眼を置いて、そして総合的にそれを処置をしていく必要があるというようなことから今回提案申し上げたような、裁判制度によらざる行政的な紛争処理法案等が出てまいったのも、いまのような一連の、一貫した考え方のもとに政府はやっておる、その一環として私ども紛争処理法案をここに提案を申し上げておる、こういうふうに理解をいたしております。
  232. 西田八郎

    ○西田委員 その点は、私ども考えておる公害問題の処理、あるいは環境基準という問題と、政府考え方では、なかなか一致点を見出すのはむずかしかろうと思うのです。それは、よって立つところが違いますから、いささか違うように思うわけでございます。  そこで、いままでの答弁をお聞きしておると、この紛争処理法によってかなりな紛争解決できるのじゃないかという見通しを立てておられるわけですけれども、私はどうもその点がきわめて期待ができないのではないか。ということは、今日労使関係紛争は、通常なら労使の相互の話し合いによって解決することを原則にされておるわけです。それでも解決しない場合はということで労働関係調整法があり、そして中央労働委員会というものが設置されておる。その当事者の話し合いを原則とする労使関係でさえ、やはり紛争解決機関として設けられた中央労働委員会は、いわゆる国家行政組織法の第三条にいう機関となっておるわけであります。  こういう一面からいえばつかまえどころのない公害紛争解決する場合は、これはもう行政の付属機関というような形で、はたしてその効果をあげられるかどうか、きわめて私はこれは疑わざるを得ないのですけれども、その辺についての効果をどのように判定しておられるかをお伺いいたしたいと思います。
  233. 湊徹郎

    ○湊政府委員 御承知のように、いままでこの種の問題を処置するためには、それぞれの個別の実体法に基づく和解の仲介という制度が一つございました。これはお互い同士が話し合って、そうしてきめてもらう、それからもう一つは、裁判制度が当然のこととしてございました。ところが、裁判のほうはえらい期間も長引くし、問題が複雑であるだけに、なかなか簡単な処置もつかない。そこで、一つはなるべく迅速に処理をしていく必要がある。二つ目には、手軽にといいますか、利用する立場から利用しやすいような形で、もう一つはお金のかからないような形で処理をするような機関が必要であろうというふうな考慮から、今度裁判制度に準ずるけれども、しかし、公害の問題というのは御承知のように一刀両断でもって黒か白かきめればそれでいいと、こういう問題じゃございませんので、多面的に処理をしながら、同時に、各省庁が実体法に基づいて持っておるいろいろな権限、規制の権限等を有効に動かしていく、その両方にらみながら、総理大臣の所轄のもとにこういう機関を置いて、そしてさっき申し上げたような裁判によらざる、それに近い効果をあげる制度として、こういうものを考えてはいかがだろうかというので御提案を申し上げたわけであります。  それと同時に、たとえばイタイイタイ病であるとか、阿賀野川の水銀中毒事件、古くは水俣病、こういうきわめて重大な案件と同時に、地方のいろいろな公害に関する苦情等の実態を見てみますと、案外都市部なんかは、半分以上が騒音に対する苦情、不満、これが非常に多うございます。そういう点で、中央機関とは別に、やはり地方的にそういうものを処理する機関も必要であろうというふうな考慮から、いまのような形で御提案を申し上げた、こういうわけでございます。
  234. 西田八郎

    ○西田委員 いまお話を聞いておりますと、非常に解決がむずかしい。むずかしいので、それを何とか早期に解決するために、一つの緩和剤としての委員会制度というのですか、そういう形で設けていこう、こういうようなお考えのようでありますけれども、それではこじれている紛争解決には役立たないと思うのです。  特に、この条文を読んでみますと、まず裁定権が全然ありませんね、そして和解もそうですが、仲裁、いずれにしても当事者の同意を得ることになっておるわけですね。そういう点からいきますと、その双方当事者の同意ということになったら、被害者のほうはこれなかなか同意しないというのが原則なんです、いずれの場合も。それを同意させようということは、結局その加害者を泣かせるという結果になりはしないか。それでは加害者のほうが言うことを聞かないということになると、いつまでたっても紛争解決にはならないと思う。したがって、その事件によってはやはり裁定を下し、あるいは調停案をつくり、それを双方に受諾させる権限くらいは持たすべきではなかろうかと思うのですがね。そうしてこそ初めて紛争解決になるんじゃないですか。これは紛争を処理するという法律なんです。紛争を予防する法律なら別ですけれども紛争を処理しようという法律なんですから、その点いかがですか。
  235. 湊徹郎

    ○湊政府委員 先ほども申し上げましたように、一方で裁判制度があり、かつ、いままで起きた相当大きな社会的な事件等については、現に係争中のものもあるわけでございます。ところが、裁判じゃなかなか長引く、経費もかかる、たいへんだということで、行政的に処理をする、こういうかっこうになったのでありますが、御承知のように憲法で何人も最終的には裁判を受ける権利は奪われないことになっておりますから、中間の段階で行政的にかりにきちっと答えの出るようないかなる制度を考えても、ほんとうに納得がいただけないとすれば、最終的にはやはり裁判になってしまうというふうなことも一方で考えまして、それと一緒に、さっき申し上げましたように、たとえばその賠償金額を幾らにするというようなことだけできめるならばいいのですけれども企業に対していろいろな差しとめをするとか、操業停止をするとか、場合によってはお引っ越しを願うとか、こういう処置まで場合によっては必要であるということになってまいりますと、これはむしろこの種の第三者的な、さっき申し上げましたように独立性を持った、そして中立性を保証された第三者の機関の仕事というよりは、先ほど厚生大臣に御質問願っておりましたように、あるいは水質の汚濁、あるいは大気の汚染防止等、それぞれ個別の実体法規の中で規制措置を強化するという形で処置をするのが一つの筋ではなかろうか、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。
  236. 西田八郎

    ○西田委員 結局、見解の相違ということになるのですけれども、第六条で「委員長及び委員は、人格が高潔で識見の高い者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」ということになります。これほど人格が高潔で識見の広い人を選んでまで当たらせるということになれば、その人の御苦労が徒労に終わらないようにするためにも、やはり委員諸公もやりがいのある仕事にしなければならぬのじゃないかと思うのです。それを最終的に出してみたけれども双方が言うことを聞かぬからこれはやめたというようなことなら、委員さん自身にもお気の毒だと私は思うのです。そういう点おそらくいまここで修正するとはおっしゃれないだろうと思うのですけれども、私はそういうふうに理解をいたします。そして少なくともやはりこの種の船員労働委員会とか公共企業体等労働委員会であるとかいろいろありますけれども、そういうものが今日まで果たしてきた役割りというのは高く評価しなければならぬと思うのです。したがって、やはりこういう紛争処理は、裁判所へ行って裁判官の前で署名や宣誓までさせられてやるという裁判ではなしに、お互いに両方の言い分を聞いて言いたいことは言いなさいというようなことをさらけ出して、腹の中を打ち割って話し合いをするということによってのみ解決が促進されるのじゃないかと私は思うのですが、重ねてお伺いします。
  237. 湊徹郎

    ○湊政府委員 ただいまのお話は、先ほど労働関係等を例に引かれておっしゃられましたが、結局は労使双方の、公然にしろ暗黙にしろ、お互い同士のある種の信頼関係というのが前提になっておるだろうと私は思いますし、こういう複雑な困難な問題を処理するためにはそういう前提が必要だろうと思います。ただ問題は、さっきも申し上げましたように、片や裁判制度があり、片や当事者間の話し合いというふうな形の和解の仲介制度しかない。こういう状況では、これだけ広範に、そしてまた各種いろいろな態様をもって起きておる紛争処理には向かないのじゃないかということで今回やったわけでございまして、裁定ということを、あながち私どもも別にえこじになって、それはもう絶対にだめだというのではなくて、もう少しこの処理が実態になじんで、定着をして、そういう段階考える時期が来たり、またこれだけじゃ不十分だということが実績上示されれば、私どもとしてはそれはよりよく被害者立場に立って解決するためにも、そこら辺の弾力性というのは政府としても当然持っているし、私どももそういうかまえで実は今度の問題に取り組んでおるわけであります。
  238. 西田八郎

    ○西田委員 それと、委員会中央公害紛争処理委員会、それから地方審査会、連合審査会、それぞれ設けられることになっておるわけであります。  地方審査会の場合は、現に公害の出るおそれがないとすれば、その候補者をつくっておいて、知事が問題が起きたときに任命するというような形になっておるわけですけれども、そうした段階的な形の中で、たとえば全国で類似的な事件が幾つか起こってくると思うのです。その場合に、たとえば滋賀県で起こった、そして鳥取で起こった、岡山で起こった、あるいは群馬でも起こっておるというような場合に、お互いにどういう和解の仲介がされるだろうか、どういう調停を出されるかということでにらみ合うと思うのです。そうすると、そのにらみ合いのためになかなか結論が出てこない、こういう弊害があると思うのです。  したがって、そういう場合に中央で処理するというような方法がこの制度で講じられているかどうか、そしてまたそれぞれに結論が出なかったものをたとえば中央へ持っていって解決するという、言うならば二審制度のようなものがこの制度の中に——私ちょっと行ないがたいと思うのですけれども、その点についてどうですか。
  239. 湊徹郎

    ○湊政府委員 ただいまのお話は、中央地方機関を、ある意味で二審的に処理するという考えがあるかというお話でございますが、さっきもちょっと申し上げましたけれども、今度の制度、これは一つ議論の焦点に、一方の申し立てでいいか、合意が前提かという一つ議論がずっとございますが、合意が前提ということになりますと、厳密な意味の二審ということになりましても、たとえば一審でうまくいかなかった、あるいは勝った、負けたという結論が出てしまいますと、その上の段階における合意を前提にした制度の運用というのは、実際問題としてなかなかうまくいかないだろうと思います。  それと、ただいま言われた数府県に似たようなケースが起きて、お互いににらみ合いながら答えを出さないで、だれかがやったらひとつやってやろうと待ちかまえるような弊害はないだろうか、こういうおただしでありますが、実際の運用上、そこら辺は一つの行政指導でもってやっていきたいと思っております。  ただ問題は、さっきのように公害基本法に載せられた典型六公害だけでも相当な種類でございますし、それから地方地方でもって実際に苦情の種になっておるような公害は、一体どういう種類のものが、どういう地帯で起きているのだろうかというので、私どもも一応調べてみますと、騒音、振動、こういうものが、地方的な処置をなるべく早くしてほしいという希望が圧倒的でございます。そのほか、大気の汚染、水質汚濁それぞれございますが、そういうことで中央地方機関を分けた大きな意味一つは、そういう公害の種類に応じて中央でもってさばく、つまり広域的に処置しなければいかぬもの、あるいはイタイイタイ病等のきわめて重大な社会問題になっておるようなもの、これは中央で担当するけれども、しかし、わりあいに平易なものは、地方でもってひとつ処置していこう。二審というよりは、むしろそういう公害実態に応じて処理の機関を区分けしていったらどうだろうか、こういうふうな配慮が実は先になっておるわけでございます。  ただ、今度の法律の中でも、三十八条に引き継ぎの規定がございます。いろいろ地方でもってやってみたが、これはやはり中央のほうに移しかえしていったほうがよかろうというふうな場合に、それを中央委員会に引き継ぐ、こういう制度もございます。  そういうふうな形で、二審という形にはなりませんけれども、その引き継ぎを通じて段階的な処理をしていくように運用したい、こういうふうに考えております。
  240. 西田八郎

    ○西田委員 そこでお伺いしたいことは、いま副長官もおっしゃったように、やってみて、いろいろなケースを扱ってみて、そして結果が出てくればその方向でひとつ善処していきたいということなんです。ということは、いろいろ実際にやってみて、これは裁定権を持たしたほうがいいとか、あるいは調停を勧告して、そして聞かなかった場合にはさらにそれを監督し指導するというような権限まで与えたらいいというような、そういう結論が出てきたらそれを改正する意思があるかどうか。
  241. 湊徹郎

    ○湊政府委員 この点はさっきも申し上げましたけれども、多くの場合公害の問題については、ただ賠償の金額をきめればいいとか、それから被災者の救済に専念すればいいというものではなくて、やはり公害が起きないように処置していく、こういうことになりますと、さっき厚生大臣もおられましたし、あるいは経済企画庁長官もおそらく午前中答弁されたであろうと思いますが、そういう個別の実体法で、環境の基準とか、あるいは排水の排出基準とか、一酸化炭素のガスの排出基準とか、そういうふうな実体的な一つの規制のものさし、あるいは業務命令によって、改善命令をするとか、そういうふうなものを伴いながら処理していくのが、公害問題に対する処置のしかただろうと私は思うのです。  ところが、そちらのほうがさっき申しましたような経過から、なかなか熟していないと申しましょうか、労働問題のように戦後二十年の間にある程度労使間のルールができたというのと違って、ルールができておりませんので、そういうものとやはり対応しながら、こういう第三者機関としての運用を考えていく、そういうふうにするのがいいのではないかと私どもは思っております。
  242. 西田八郎

    ○西田委員 結局最後には、公害に取り組む政府姿勢ということで、お伺いしたいのですけれども、それは経済企画庁長官が四時半にお見えになるようですから、お見えになったところで聞きたいと思います。  次に、同時に議題とされておりますところの、公共用水域水質保全法についてお伺いをしたいと思います。  水質審議会から水質汚濁にかかわる環境基準の設定に関する基本方針、これは経企庁長官が諮問されたものに対する答申が出されておるわけでありますが、この答申を実際に守れるのかどうか、答申に基づいてこういう水質基準を設けて、それがはたして守れるのかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  243. 西川喬

    ○西川政府委員 環境基準につきましては、設定されましたあとで、項目が国民の健康にかかわるもの、それから生活環境にかかわるものと二つに大別されております。  国民の健康にかかわります項目が即時設定されまして、これが閣議決定されましたら、直ちに達成、維持するようにつとめなければならない。  それから生活環境にかかわる項目につきましては、現在の態様によりまして、すでに汚濁が進行している地域、これは原則として五年以内に達成させよう。それから現在まだきれいなところで、このまま維持してまいりたい、このような地域については、もう環境基準を設定いたしましたら、直ちにそれを維持できるようにつとめていく。それから五年以内と申しましても、非常に汚濁が進行していまして、いろんな施策を総合的に講じましても、なお五年以内については達成が困難であるというような地域につきましては、やむを得ませんので、例外的に七年とか八年とかいうように、この五年を延長するのもやむを得ない。大体大きくいいまして二つのもの、その中で例外的に五年以上延長するというようなぐあいに達成期間を分けて、その達成期間中に達成するための施策としては、公害対策のほうにもございますが、これは政府が全力をあげてその達成をはかろうとするものでございますので、たとえば排出規制の強化については、現在指定水域でやっております水質基準、こういうものの見直しも含めまして、さらに今回法律改正で提案をしておりますが、未規制を加えるとか、そういう必要な法律改正も加えまして、排出規制を整備してまいりたい。  それから現在の水質汚濁の問題から見てわかりますように、非常に下水道の整備というものが重要なウエートを持っている。この下水道の整備の促進、あるいは汚濁防止施設とか、屎尿処理施設、そういうような汚水の処理施設でございます。いわゆる国または地方公共団体が行なうような事業の促進、そのようなこと。  それから汚水を出すほうの側の立地規制、そのようなものを一応規制する。これは都市計画法によります用途地域のような問題、それから場合によりましては工場の排水の規制、このようなもの。  それからさらに河川の流況の改善、これは浄化用水を導入いたしまして、流量をよくしてやって汚濁を薄める、あるいは河川で維持流量というのがございますが、この維持流量につきましては、流量の規制とか水質ということを十分念頭に入れて考え、さらに監視、測定体制の整備、環境基準がきまりましたときに、その環境基準が維持されているかどうかというような状況を常に把握して、それぞれの手を打っていかなければなりませんので、そのための監視、測定等の体制の整備。  それから汚水の処理技術の研究開発、さらに財政的な問題、あるいは地方公共団体に対します国の援助、あるいは企業側で排出規制が加えられますと、これに対していろいろな除害施設をつくらなければなりませんが、それに対する財政金融面の措置、それらの力を総合いたしまして、総合的な施策によりまして、環境基準の達成、維持をはかろうというふうに考えておるわけでございます。
  244. 西田八郎

    ○西田委員 いま延々と述べられました基準あるいは措置、これらはたいへんけっこうなことなんですけれども、できるかできないかということを聞いているわけですね。  たとえば、たんぼのまん中に工場が誘致されてくる。今度は新都市計画法で工場転用はできないことになっているが、すでに工場誘致がきまっておって工場が来る、へい獣処理場ができる、あるいはと畜場ができるというような場合に、その付近の農業用水というものに、それらの排水がどうしてもごっちゃになって、最終的には河川に流れ込むわけです。そういうものを一つ一つの基準をきめていっても、これが累積されてくると、またそれ以上の汚濁度を増すわけです。  滋賀県の場合ですと、琵琶湖の水なんというのは十二年前は、ある合成繊維の工場が誘致されてくるときに、東京のその会社の技師が、滋賀県の琵琶湖の水を検査して、これは東京都の上水道の水よりきれいだといわれた。その水が十年たった今日では、とにかく三倍以上の汚濁度になっているわけです。  あれだけ大きな満々と水をたたえている琵琶湖でさえ、そういうふうに汚れてきているわけですよ。ましてや、周辺から水が排出されて流されてくる河川の水というものは、これはとてもじゃないが、規制を少々締めるくらいでは解決できないのではないか。最近では家庭から排水される水の中にも、いわゆる合成洗剤等が使われて、かなり有害物が入っていると聞いているわけです。そうなりますと、ほんとうに水質保全のための規制をするだけでできるのかどうか。私はやはり水質保全の最高の手段というものは、下水道を完備して、それで終末処理を完全にするということが最も大切なことではなかろうかと思うのです。そしてそこで終末処理されたものは、水の再生産も行なえるわけです。そういう意味で、いまおっしゃったような規制を強化するということだけではたして水質保全ができるかどうか。これはそうすると建設ですか、厚生関係ですか。その流域下水道については、そういう処置も同時に行なっていかなければならぬと思いますが、そういう点について伺いたい。
  245. 西川喬

    ○西川政府委員 ただいまお答え申し上げましたとおり、水質保全法によります排出規制の強化は、これは総合的施策の一部でございまして、もちろん下水道の整備その他の施策が、総合的に行なわれなければいけないわけでございます。排出規制の強化だけでございましたならば、これはさらに除害施設をつくるにしましても、最低一年ないし二年ぐらいでできるわけでございますが、下水道の整備は、やはり相当な期間を要するものでございますので、達成期間五年というようなことが出てきたわけでございまして、もちろん規制の強化だけではとうていこの環境基準の維持強化は、すでに汚濁が進行しているところでは困難であるということは、私どもはよくわかっております。先生のおっしゃるとおり、下水道の整備というのは非常に重要なウエートを持っているということは、先ほどもお答え申し上げたとおりでございます。
  246. 西田八郎

    ○西田委員 それで、結局現在の下水の整備率というのはどれくらいになっているのですか。
  247. 久保赳

    ○久保説明員 現在の下水道の整備率は、全国の市街地面積に対しまして二一%でございます。
  248. 西田八郎

    ○西田委員 そうしますと、それをせめてイギリス並みといわなくても、ヨーロッパ並みの八〇%程度まで引き上げるために計算された場合、どれくらいの費用が必要になりますか。
  249. 久保赳

    ○久保説明員 ヨーロッパの国でも、国によってだいぶ差がございますけれども、平均的に見ますと、現在の単価で下水道の整備をいたしますと、十兆円を上回るくらいになると思います。
  250. 西田八郎

    ○西田委員 そうすると十兆円を必要とする。非常にばく然としたことばなんですけれども、ヨーロッパ水準に達するために十兆円要るとすれば、五年間ないしは延長しても七年、八年ということで、はたしてそういう処理ができるかどうか、できなければ水質保全というのはお手上げになるんですが、その辺はいかがでしょうか。
  251. 久保赳

    ○久保説明員 ただいま申し上げましたのは、現在の全市街地に完全に普及するという意味でございまして、水質保全法にかかわるべき水質の汚濁源になる地域を重点的に実施することによって、一ぺんに十兆円全部要る、こういう意味ではございません。地域の重点によって整備する、こういう意味でございます。
  252. 西田八郎

    ○西田委員 それでは、可能だとおっしゃるわけですね。
  253. 久保赳

    ○久保説明員 財源の確保ができればできる、こういうことでございます。
  254. 西田八郎

    ○西田委員 財源の確保ができればと、そんなことで答弁されたのでは、何の質問をしているかわからぬようになるわけであります。それをやるからこれだけの財源をくれ、あるいはそれだけの財源はとってでもやるんだという答弁でないと答弁にならないと思います。
  255. 久保赳

    ○久保説明員 環境基準が変わりましたならば、——その環境基準は、私とも現在聞いておりますのは、四十四水域ですか、そういう水域の中には、下水道の整備をしなければ環境基準が守られない地域と、それからほかの対策によって守られる地域がございますので、その閣議決定があり次第、下水道の整備計画をもう少し吟味をしてやるつもりでございます。
  256. 西田八郎

    ○西田委員 そこで、先ほどの島本さんの質問にお答えしておられたようですけれども、河川法第二十九条についての関連の政令をお伺いしたいのですけれども、この河川法が改定されまして、現在施行されておる法律百六十七号、三十九年七月に公布されておるわけですが、それ以来五年半を経過しておるわけです。五年半を経過しておるにもかかわらず、二十九条第一項にいう政令が制定できなかったという理由ですね。これをひとつお聞かせいただきたい。
  257. 西川喬

    ○西川政府委員 河川法の所管庁は建設省のほうでございまして、経済企画庁が所管しているのではございませんけれども、いままでの経過を概略申し上げますと、一応水質保全につきましては昭和三十三年水質保全法ができまして、それの実体規制法といたしまして工場排水規制法も同時にできまして、それ以外に下水道法あるいは鉱山保安法、それらのものが実体規制法といたしまして問題となっておりまして、一つ保全体系がすでに三十三年からスタートしてでき上がっているわけであります。その場合に新河川法によりまして、この二十九条におきまして「河川の清潔」という項が入っているわけでございますが、それにつきましては、政令によりまして禁止もしくは制限あるいは許可を受けさせることができるということが入っているわけでございます。  そうなりますと、もし二十九条を政令によりまして水質保全法と同じようなことをやろうということになりますと、これは完全な二重行政になる、片っ方におきまして水質保全法の体系がある、そこへ持ってきまして河川法の改定によりまして、同じようなことを国がやろうとすると、二重行政になるのではなかろうか。そうなりますと保全法の体系ができておることにつきましては、河川の清潔につきましては相当広い範囲でございますから、いろいろな範囲のところがあるわけでございます。清潔の中につきまして、水質保全に関する分、この分だけにつきましては、これは保全法の特別法的な性格を持っております。保全法の体系の中に入っているのではないだろうかというようなことが考えられるわけであります。  ですから、二十九条の政令をつくることがいけないということではございませんで、二十九条の政令の内容保全法なり何なりと二重行政的になることは、これは国の行政としておかしいのではないか、そのようなことで問題の解決が実はつきませんので、いままで延びてきているのではないか。要するに、建設省のほうで案をつくります政令の内容いかんの問題ではないだろうか、こんなふうに私たちは考えておるわけであります。
  258. 西田八郎

    ○西田委員 ちょっといまのところわからないのですが、二重行政になるから——これはわかります。ところが建設省でと、いま何かおっしゃいましたね。それをつくるということはむずかしいとおっしゃるのですか。——それでは建設省の方、おられないのですか。
  259. 加藤清二

    加藤委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  260. 加藤清二

    加藤委員長 速記を始めて。
  261. 西田八郎

    ○西田委員 それでは続けて、今度の法律改正案要綱の中に、第二に「規制対象の拡大」というところがあるわけですね。規制対象を拡大されて、へい獣処理場、それから採石場、と畜場等々あるわけですけれども、こういう施設は、どちらかというと、へんぴなところにあることが多いと思います。それからまた零細な人たちの経営するものが多くなってくるのではないかというふうに思うわけですけれども、それにこうした基準の責任が負わされるということになると、その施設をするための費用その他について、非常に負担がかかるのではないかと思うのですが、それらについて一体どういう保護処置をなされようとしておるのか。これらは全く事業主の任意にまかすのか、あるいはそれらに対しての補助があるのか、あるとすればどの程度の補助を考えておるのか、その辺についてひとつお聞きしたいわけです。
  262. 西川喬

    ○西川政府委員 今回それぞれ新たに規制対象として入ってまいります各種の事業場でございますが、これにつきましては、それぞれの実体規制法があるわけでございます。この実体規制法に基づきまして、これを規制することになるわけでございますが、その規制につきましては、いわゆる零細企業的なものに対しましては、従来対象となっておりました工場等につきましても、水質基準設定の際にいろいろ配慮いたしております。汚濁のシェアその他を勘案いたしまして、微細な工場あるいは零細工場には、これを適用除外するという配慮をいたしたケースもございます。それぞれの水域の汚濁の態様に応じまして考えております。ただし、それが一件当たりの量は非常に少なくても、非常に多量にそれが存在して、やはりその水質の汚濁の原因として看過し得ないというようなケースの場合には、それらのものを規制対象にやはり加えざるを得ないというようなケースもございます。  それらの点は水域のそれぞれの実態に応じますが、そのような中小企業なり零細企業が規制対象となりまして、除害施設等を設けなければいけないということになりました場合におきましては、融資とか税制面での措置、それから公害防止事業団におきます事業計画の中に繰り入れる、それらの処置によって、それぞれの所管の部門において、十分それらの対策を考えてやっていただいたらどうか。具体的に、通産省その他それぞれの所管省のほうがやっておりますので、そちらのほうからお答えをいただきたいと思います。
  263. 柴崎芳三

    ○柴崎政府委員 砂利採取業、採石業は御指摘のとおり零細企業が多いわけでございます。現在の体制といたしましては、中小企業金融公庫を軸にいたします融資体制が中心でございまして、今後さらに事態の進展に伴いまして相当な防除施設が要るということがはっきりしてまいりますれば、それは何はおいても零細企業の問題でございますので、通産省といたしましても最大限の努力を尽くしまして、その辺の体制を今後固めていきたい、かように考えております。
  264. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 厚生省関係では、と畜場、それからへい獣処理関係施設、それから屎尿処理施設等がございますが、屎尿処理施設とかと畜場の公営のものにつきましては、すでに特別地方債で対処いたしております。なお、本年度からはと畜場のうちの同和関係の分に関しましては、補助金が八千四百万円ほど計上されております。またへい獣処理場関係施設等につきましては、今後融資等の問題につき検討してまいりたいと思っております。
  265. 西田八郎

    ○西田委員 これは要望をいたしておきたいのですけれども、結局へい獣処理であるとか、あるいはと畜あるいは豚もしくは鶏の飼育施設、こういうのは、非常に零細な企業もしくは零細な資金をもって集まった、いわゆる組合方式のものが多いと思います。したがって、そういうところにいまお聞きしたような配慮がなされておるようでありますけれども、その配慮が非常に少ないために、十分な法の規制が守られない、そのことによって水質が汚濁される、汚染されるというようなことになってはならないと思うのです。したがって、そういう点は監督を十分するという意味ではなしに、そうした施設に対しての保護といいますか、援助あるいは補助、そういうものをして、今後企業自体が、そのことによって採算を割るようなことのないようにしていただきたいということをお願いいたしておきたいと思います。もしこれに対しての御答弁があれば、しかるべき方から……。
  266. 西川喬

    ○西川政府委員 先ほど申し上げましたとおり、十分配慮してまいりたいと思っておりますが、今回御答申をいただきました水に関する環境基準につきましては、「環境基準達成のための施策」のところにおきまして、「なお、対策の実施に当たっては、財政・金融・税制面において適切な助成措置を講ずるとともに、中小企業に対しては、特別の配慮を払う」、こういう項目も一項目入ってございます。
  267. 西田八郎

    ○西田委員 けっこうです。  そこで最後に、公害問題全体について政府のお考えを聞かしていただきたいと思っておったのですが、経済企画庁長官は五時という予定ですから、まだお見えにならぬですね。——それじゃひとつ総務長官に、かわってお答えいただきたいと思うのですが、公害という問題は、当初私が申し上げたように、起こすというより起こささないということのほうがきわめて重要だと思うのです。そして予防措置を十分講じていくということが大切ではなかろうかと思うのですが、コンピューターのなかった時代から延長されてきておるために、どうも対策が後手後手に回っているように考えるわけであります。  しかし、今日公害問題は、かの「東京宣言」にも見られるように、また昨年の五月、国連ウ・タント事務総長から報告をなされた報告の中にもあるように、このままの事態で推移いたしますと、公害の中に人間が埋没されてしまって、人間本来の生活というものができなくなるのじゃないか、それは地球の破滅を呼ぶのではなかろうかという、おそろしいような事態を引き起こしかねない問題であります。  したがって、これとどう取り組むかということは、政府自身の姿勢にあると思うんです。アメリカのニクソン大統領も公害白書を出しまして、かなり巨額な資金を投じてでも人間の環境を守る、そして人間性を回復するということを言われておるわけであります。七〇年代が、まさに人間性回復の年でもあるというふうにいわれておるわけでありますが、これは結局、政府が真剣にやるかやらぬかの問題にかかってくると思うのであります。もしそれが人体に大きな影響を及ぼすというのならば、そうした生産活動は停止させてでも、人間の生活を守ることを第一義に置くということが私は本旨だと思うのであります。  そういう点についてやる気があるのかないのか、こう聞けばやる気があると言うにきまっておるでしょうけれども、その辺の決意のほどを聞かしていただきたい。
  268. 山中貞則

    山中国務大臣 ニクソン大統領は、どちらかといえば財界寄りの政党の出身なんですが、それでも巨大産業に対して、容赦なく実例でもって公害白書に対処する行政の実績を出しつつあります。これはやはり学ぶべきであります。  さらに、ロンドンあるいはパリ、西ドイツ、それぞれ産業のいんしんをきわめておる地域におきまして、世界じゅうの国が公害という問題を、いやおうなしに政治の命題として取り上げることを余儀なくされております。  そのような中においてわが国の公害にとってまいりました姿勢は、確かに後手に回った点も多く、あるいはまたこれからの展望をしていく上において、基本的な公害に対する政治の姿勢として、国民立場から、人類の名において要求していることにこたえるには少し足りなかったことを私は認めざるを得ないと思います。しかし日本において公害の世界のシンポジウムが行なわれたことは、ある意味において皮肉でもあり、ある意味においてその提言は、日本の現状を見ながら言われたことであるだけに、私たちはやはりこれを謙虚に反省し、これをとらえて、今後公害対策というものについて総理以下責任者の全部、あるいは極端にいうならば国会議員、衆参両院全員の責任としてとらえて推進していくべき事柄である、そういうふうに考えております。
  269. 加藤清二

    加藤委員長 寒川喜一君。
  270. 寒川喜一

    ○寒川委員 いま西田君に対して長官から御答弁がございましたが、ことばのあやといいますか、そういうような受け取り方をしたくないのですが、私自身は初めて議員に出てきて、委員会に出た印象から申し上げますと、何だか当座をしのげばいいのではないかといった感じが著しくするのでございます。質問、答弁の中に出てくることばは、高度成長経済ということが中心になって議論をされておる。すなわち、産業が発達したから公害が出たのだ、こういう次元のやりとりのようであったと私は思います。  現在の時点は第二次産業革命といっていいのか、あるいは分類のしかたによれば第三次といっていいのか、要するに現在の時点が、いわゆる産業革命が急速に進行して、これにマッチした政治を行ない、かつ行政で措置していかなければならない、こういう観点でとらえました場合において、何だか隔靴掻痒の感があるのですが、長官の御所見を承りたいと思います。
  271. 山中貞則

    山中国務大臣 初めて国会発言の場を持たれての御感想、貴重なものとしてわれわれは承らなければならないと思います。私もまた、初めて大臣の責任者の地位になりまして、今日まで十七年余り議員として質疑応答をずっと見てきたわけでありますけれども、ある意味においてはあなたのおっしゃっているその易しのぎ、一人の質問を切り抜ければほっとする、あるいは法案があがればそれで山を越したという気持ちになって、あとの行政というもの、実行というものにどこまで真剣に打ち込んだかを確認しないうちに閣僚がかわってしまうということになっておることを、私はそういう現象もあることを見まして、やはり自分がその地位についたならばかくありたいと念願していたことがございました。したがって、私は自分の心に期したいわゆるあなたが一年生として初めて発言の場を持たれた、私が一年生大臣として初めて責任ある立場に立って考えておる、いずれも初心の立場に立って考えておる共通の場があると思いますが、私はその意味で、いたずらに弁解や美辞麗句をもって切り抜けるつもりもありません。ただ私が少しべらべらしゃべる、口がよく回るほうですから、あるいはそういうふうにおとりになったかもしれませんが、ただ答弁用のメモをくってその場をしのげばいいという気持ちもありません。ですから政府姿勢において、いまだ国民の目から見て公害に取り組む姿勢の足らなかったこと、この点についてはただいまの、前の質問者についても私率直に認めたとおりでございまして、いけなかったことはいけなかったこと、足らなかったことは足らなかったこと、しなければならないことについてばどのようなことをするかについて、やはり論じ、かつ意思を表明し、実行していく。その結果がよかったか、悪かったか、これは国会並びに国民の審判するところであろうという私は心がまえで政治の衝に当たっておるつもりでございます。
  272. 寒川喜一

    ○寒川委員 そこで、やはりこういう公害の問題は、党利党略を離れて高い次元で価値観の統一をするということでなければ、私は片づかないと思います。そういう意味で、いま長官もいみじくもおっしゃられたように、後手後手と言われるのは、処理の各行政体制が、いわゆる旧態依然たる形に若干進歩的なものが入ってきてこれを処理しなければいけない、こういうようなことでおやりになっておるように私は見受けるわけなんです。そういう意味で、午前中の御答弁の中で、総務長官は次官だと、こういうお話がございましたけれども、そういった角度でなしに、少なくともやはり政治の姿勢、すべてを統一し、かつリーダーシップをとっていかれるのは総理だと思うのです。そういう意味でいろいろな批判はございましたけれども、いまの総理のおにいさん、あるいは池田総理、私は特色があったと思います。現在の佐藤総理のお考え方、なるほど作文にすれば非常にりっぱなものになります。しかし、政治といい行政といいすべて私は生きておると思うのです。こういうものに対して、たとえば先ほど西田君からも申されましたように、アメリカの大統領が考え方を示してこれに集中してやっていくといったような姿勢が、やはりニクソンの個人的な立場を越えて、アメリカ市民生活を守っていこうという立場があればこそ私はできたことだと思うのです。  そういう意味で佐藤総理がこんなに大きな問題について、各省ばらばらでリーダーシップをとった統一的な方針を示されないのはまことに残念だと思いまするが、いまからでも私はおそくないと思います。補佐される長官としてこの問題に対してどういうお考え方をお持ちになられるか、御所見を承りたいと思います。
  273. 山中貞則

    山中国務大臣 午前中、私の表現の中で、総理府大臣であっても、総理府の行政機構としては総理がもう一つ頭におるということを申しましたのは、逆に言って総理の旗本と言っては俗な表現ですけれども総理府の総合行政としてゆだねられるものは、各省ばらばらの行政であってはいけないこと、そのいけないことを総理をもって長とする総理府というものが、政治の姿勢としての方向を示していく役所であるということを申し上げたかったわけでございます。その点私の説明が足りなかったかもしれませんが、そのことは私に強い自覚を促すわけでありますから、その自覚と決意の上に立って私としてはその行政を進めていきますが、反面日本の政治家姿勢なり、たった一人の責任を持つ総理大臣という政治家の基本的な姿勢について、私はやはりこれからの日本も、他国の大統領がどうしたから、総理大臣がどうしたからでなくて、日本という敗戦国家でありながら、奇跡に近い経済的な復興をなし遂げた。その国の中において、人間というものが埋没していくということがあったのではこれは決して他国に誇れることではありません。しかも、視察に外国の学者たちが来られたら、あまりひどいところを見てくれるなという気にどうしてもなる。そういう状態では私はやはりりっぱな政治が行なわれているとは言えないと思います。その点、総理も最近は、ようやく総理らしく風格も備わってまいりました。これからおそらく、総理もりっぱな政治家としての歴史に残る足あとを示すためにやるべきことは何か、そのことについて勇断をもって取り組む心境が出ておられるように私は身近におって拝察をいたしますので、これから日本の政治の向かう重点等については、絶えず進言をいたし、あるいは総理に対して意見の具申等をいたしながら、日本の政治も、ふさわしい風格のある政治が展開されていくように補佐をいたしてまいるつもりであります。
  274. 寒川喜一

    ○寒川委員 あなたの、そういう御答弁を実は期待しておったのですが、ハイジャックの問題にしても、学生紛争の問題にしても、外国がやったからすぐまねをするという日本の風潮というものは、私は等閑視できないと思います。したがって、やはりほんとうにやるんだということについて、もっと政府自身が公害に対する価値観と申しましょうか、そういうものに対する認識を持ってもらいたい。こんなことで、関連をして御質問申し上げたいのですが、たとえば私の選挙区の大阪府では、公害に関する府民会議を大々的に計画をされつつございます。むろん前段にも申し上げましたように、こういう会議に特殊な圧力団体が関係をしたり、あるいは政党が政争の具に供するような立場では公害という問題は解決をしないのだが、そういう側面からいたしますならば、日本全体という段階で、すなわち公害に関する国民会議といいますか、関係者の合意を得るというような問題について、何か新しい御発想といいますか、そういうものを取りつけない限り、やはりこの問題は解決しないとぼくは思うのですが、お考えがあればお示しを願いたい。
  275. 山中貞則

    山中国務大臣 この紛争処理法案というものに関して、特別にいま言われたような国民会議的なものを考えるということは、直ちには考えておりませんが、現在の体制の中で、中央公害対策審議会という名前のものがございまして、私も列席いたしましたが、お忙しいのによくおいでくださったと思われるような、医学の分野まで含めた日本のトップレベルの方々がお集まりくださいまして、熱心な御討議をいただいておりますので、それらの人々の声を聞くことだけで足りるのか足りないのか、これらはいま少しく研究してみたいと考えます。
  276. 寒川喜一

    ○寒川委員 なぜ私がさようなことを申し上げておるかと申しますと、紛争処理法案を法律化して運用する中で、ある程度のことはあるいは解決するかもしれません。しかし、基本的な問題になってくると、やはり国全体がこういう姿勢だということになってきませんと、やはり先ほど西田君が質問を申し上げましたように、要するに様子を見て、火中のクリは拾いたくはないといったような感じに私はなる。そういう意味解決をはかる背景をつくっていくのだという政府姿勢、これが私はほしいと思うのです。ただ、私も役所におりまして、委員会とか審議会というものの運営に携わってまいりましたが、往々にしてこれはほとんど隠れみのなんです。そういうことはいまの山中総務長官の御所見からすれば出てこないと思いまするけれども、やはり都合のいいところだけ政府がとって、かなり多数意見であっても、時期尚早であるとかいうようなことで退けてしまうが、やはり二十一世紀を控えてのこれからの日本民族の将来を考えれば、そういうことを言っておるような問題と違うと思うんです。そういうことについて、やはりこれこそ新しい構想をもって各界各層の考え方というものを集約をして、いままでと変わった意味の価値観を全部国民の中に持ってもらう。このことなし兵小手先で紛争処理をやろうとしても、至って解決が長引くだけだと思うので、再度御答弁をいただきたいと思います。
  277. 山中貞則

    山中国務大臣 大別しまして、審議会には確かに隠れみの的な、国民意見を聞いてきめたんだからというような審議会があることも、私は否定できない半面の事実だろうと思います。かといって、経企庁長官なんかは、えらい味方を得たと思いましたのか、あるいはちょっとやられたという気がしたのかどっちか知りませんが、中山伊知郎先生の物価安定政策会議、前の物価問題懇談会ですね、こういうものの提言は手きびしいものであります。政府としてはいろいろと指摘されたことについては、農民を守るとか、生産者を守るとか、あるいは消費者のことも念頭に置くとかしながら、結局は中山先生の目から見れば、消費者にとってはなきにひとしいものであって、有害であるというようなことも指摘されるわけでありますから、これは全部の審議会政府の隠れみのになっているわけでもありませんので、権威のあるものもございます。この公害の委嘱されておる人々の顔ぶれを先般拝見いたしまして、これらの方々の御提言、あるいは単にこれを聞きのがすことはできないようなメンバーの方々が大部分でございまして、私もそのつもりで、用意した原稿をやめて、諸先生方の顔を見ながら真剣にお願いもしてまいったのでありますが、今後そのようなことにおちいらないような配慮は、私も政治家として当然していかなければならないと考えます。
  278. 寒川喜一

    ○寒川委員 それだけの配慮をしていただければ心配はないと思いまするが、やっぱり反対立場の者を入れて堂々と論戦をして、やはり説得をして最大公約数を求めていくということなしに、公害というような問題を産業革命の中で対処していかなければならないこれからの姿勢としては、かなっていかないのではないか、こんな判断をしておりますので、格別の御配慮をお願いしたいと思います。  それから水質保全の問題に関連をいたしまして、先ほど建設省の方から木で鼻をくくったような御答弁がありましたけれども、特に専門家の学者の御意見等を聞きまして、非常に左寄りの方ではございません。そういった人ですらたとえば淀川水系に例をとりましてもやはり問題が二つあると思います。たとえば二〇PPMの水質保全を維持していこう、こういうことになってまいりますると、下水の問題がほんとうに片づくのか片づかないのか。先ほど長官とのやりとりの中のような姿勢であれば、これは私はある程度片づいていくと思います。しかしながら、現在政府の予算というものに対する考え方、たとえば重点主義といっておりながら、最後の段階になってきますと総花的になる、こういうことではやはり問題が片づいていかない。いわんや下水がある程度進行しましても、これ以上住宅を建設せしめないという制限措置をとらない限り、二〇PPMの水質保全は確保しがたい、こういうことを真剣に憂えておられる学者の皆さんがいらっしゃいますが、そういったことに対して、関係の皆さんはどういう調査と現状の認識、将来に対する展望をお持ちか、お答えをいただきたいと思います。
  279. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 いま寒川さんの御指摘になった問題は、私も水質保全の対策上非常に重要な問題だと思っております。基準を設定しただけではだめなんでありまして、それをいかにして実行するかということに、これは各省にまかされていることではありますが、企画庁としても最も関心を持っています。そして特にこの下水の問題が、実は非常な難物なんです。工場の排水規制につきましては、とにかく法律を守れば一定の水質を確保できる、こういうめどが立ってきているわけです。でありますからして、問題は下水でありまして、特に最近は下水による汚水ということのウエートが非常に高まってきております。  そこで、御存じのように、政府も公共事業費の中でも、毎年最も伸び率の高い事業費を予算化しておることも、これまた事実でございます。しかし、いままでの程度ではなかなか進みません。今回の、新経済社会発展計画におきましては、その点も考慮しまして、特に下水に対する行政投資の金額をふやしております。そうしたことで、これはとにかく事業を進めないことには、口で言っても話にならない問題であります。ただこれは、建設省にも私はしばしば話しているのですけれども、もう少し重点的なやりようがあるのではないか。少ない金でやるのですから、最初から全部はいかないから、そのかわりこういうふうに公害問題がやかましくなってきているんだから、やはりそれを頭に置いた個所の選定ということも、今後ひとつ考えてもらわなければいかぬ。  それで御存じのように、下水の立場からするとまた言い分がありまして、こういうふうにスプロール現象が方々にある。至るところに、かってに、野原にも山にも谷にも家が建ってしまう。そこを下水が追っかけて歩いていたのでは、実に非効率的な投資になるわけでありまして、かねがねそういう問題もありましたので、御存じのように都市計画法によりまして、おそまきではありますけれども、土地利用目的の確定、こういうことが行なわれまして、現在各市町村で御存じのように線を引いています。そうしてこの範囲しか市街化地域ではないのだ、投資もこの地域に集中するんだ、こういうような形で、おそまきではありますけれども、そういう方向が出てきますと、まただいぶ違ったものになってくる。  さらに、これをもう少し積極的に進めていかなければならぬと私は思いますが、そうしたスプロールを防ぎ、そして立地というものをいま御指摘のように十分考える。そうして少ない金をできるだけ効率的に使って下水の促進をはかってまいる。またワクを全体としてもできるだけふやしてまいる。こういうようなことで、できるだけひとつこの下水の促進をはかりたい、こういう気持ちでおります。
  280. 寒川喜一

    ○寒川委員 そこで、たまたま新社会発展計画のお話が出ましたが、仄聞をしておるところによりますると、昭和五十年までに大体五〇%程度の下水を完備しょうと三兆一千億という一応の計画をお持ちになっておるようでございますが、これが間違いないのか、かつ昭和五十年までに画にかいたもちじゃなしに、完全に消化する目標のもとに設定をしておるのかどうか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  281. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 いま、下水のこまかい数字ですが、これが何とおっしゃいましたか、三兆と言われましたか……。
  282. 寒川喜一

    ○寒川委員 三兆一千億、環境衛生と聞いておりますけれども……。
  283. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 それは環境衛生全体が三兆一千四百億でして、下水は二兆三千億ぐらいになる見込みであります。それで、この計画の中で、民間の設備投資等はいつも見込みと実績が食い違いが激しいのですけれども政府の行政投資関係につきましては、従来も大体見込みどおりの実績を実現しております。でありますから、これはもちろん今後の経済の伸びや景況が大きく狂えば別ですけれども、大体全体としての経済の伸びが、この発展計画とあまり違わないペースで進むという前提でありましたら、これは十分実現し得るものである、こういうふうに考えております。
  284. 寒川喜一

    ○寒川委員 そこで、特に委員長質問というよりもお願いをしておきたいことがございます。と申しますのは、最近特にアメリカ、あるいはスウェーデンを中心にしたヨーロッパ、その公害に対する取り組み方といったような問題について、かなり真剣にそういう先進国ですらお考えのようなんですが、委員会として、実際に現地を視察をして、日本の行政が立ちおくれないどころか、総務長官がおっしゃられたようなもっと前進をしたようなものをやってまいるということになりますると、やはり資料では私もかなり読んでおりますけれども、百聞は一見にしかずということがございますが、そういう視察についてお骨折りいただくような配慮、いかがでしょうか、お尋ねをしたいと思います。
  285. 加藤清二

    加藤委員長 お説ごもっともでございまして、百聞は一見にしかず、過去におきましても、何回も実地視察をしたり、あるいはまた各党別にも調査をして公害白書などをつくっております。が、このたびもこの法案が上がりましたら理事の皆さんと相はかり、相協力して、ぜひあなたの御趣旨が実地に生かされるようにしたいと、私も心ひそかにそういう心組みをしておったことでございますから、意見が全く一致しますので、早急に実現方について理事会にはかってみたいと存じます。
  286. 寒川喜一

    ○寒川委員 それで関連質問を終わります。
  287. 西田八郎

    ○西田委員 経済企画庁長官に最後に、いままでずっと質問をしておったわけですけれども、その総括としてお伺いをしたいわけであります。  先ほども申し上げたわけでありますけれども、最近の医学でも予防医学ということが非常に叫ばれてまいるようになりました。病気を起こす前にその病根を断ってしまう、こういうことで進んできておるわけです。公害も経済の成長の進化に伴って非常にふえてきておるわけですけれども、大体石油の中に硫黄が入っておるとか、あるいは自動車の排気ガスの中に一酸化炭素を含んでいるということは、これはあらかじめ予測できることであったわけです。それが急激に膨張してきたために、大気を汚染し、あるいは水質保全について危険が生じてきておるというようなことになってきておるわけですけれども、これはもう当然起こるべくして起こった問題のように私は思うわけです。したがって、こういう紛争処理の法をつくることによって出てくる現象だけを処理するというのでなしに、やはり根本的に公害というものをどうなくしていくか、言いかえれば、私先ほども申し上げたのですけれども、その人間生活の環境の基準というものを、どこに求めるかということのほうが重大ではなかろうかと思うわけであります。したがって、そうしたことを処理していこうとすれば、制定していこうとすれば、当然それに対する基本的な取り組み方がそのようでなければならぬと思うのですが、そういう点について、いま寒川氏からもお話がありましたように、近く経済発展五カ年計画が出されるようでありますし、また公害審議会のほうでも、そうした問題についてかなり突っ込んだ議論がなされて出されておるようでありますし、また世界的にも「東京宣言」もありますし、またウ・タント事務総長の国連に対する報告等があるわけであります。いま世界が、あげて公害問題にどう取り組もうかという出発点にきておるし、そのことが七〇年代の経済に対しても、人間性回復のまた重要なポイントにもなってこようかと思うわけであります。したがって、こうした法律をつくることによって、それが一時的小康を保つというようなことではならないと私は思う。そういう意味で、長官は今後の公害問題全体に対してどういう姿勢で臨まれるか、ひとつその点の御意思をお聞かせいただきたい。
  288. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 西田さんのお話のように、日本はこの三十年代始まりまして、たいへんないわゆる重化学工業化の道を一筋に歩んでまいりました。そして非常に世界的に誇るに足る高い成長で今日まできましたが、しかし、その裏にそのマイナス的な要素がますます累積していたということについての私たちは気のつき方、あるいはまた取り上げ方が非常におそかったと思います。いわばそういう意味において、公害問題は、今日までの日本経済のそうした重化学工業化に対する、一つの挑戦であるということが私は言えると思います。まあしかし、いま気がついたということは私はまだ十分間に合う、こう思うのでありますが、ただそれについては、これからの発生ということを絶対に防止すると同時に、過去の分を取り戻さなければならぬというくらいの気持ちでもってやらないとだめである。  水質保全につきましても、これから新しく区域が指定されまして、そうして事業所の規制が始まるものは、これはもう直ちに実行する。ただし、いままでもよごされきっていて、この一年や二年では急にきれいにならぬというものも、原則として五年、やむを得ないときに六年とか七年ということで、過去のものも取り戻そう、こういう態度でいるわけです。  そこで、やはり特にこの水の問題は、御存じのように複雑でありまして、いわゆる人間の健康問題だけでなくて、産業問題が関連してくる。そうして人間であれば一〇PPMでいいものが、アユだと一PPMでなければいかぬとか、いろいろなことがありますから、そうした関係方面の調整ということも相当むずかしい点もありますけれども、しかし、いままでのありきたりの考え方を捨ててもらって、そうして各省協力して実現しなければならぬ、こういう気持ちを私持っています。そして公害基本法ができまして、久しくこの基準の設定がおくれておりましたのも、これはやはり各省間の平仄を合わせるということに時間がかかったようでありますが、これも考え方で、思い切ってやろうじゃないかということで、このところ、おかげで急速に作業も進みまして、どうやら審議会からの答申を得るような段階まで来たわけであります。間もなく閣議決定もあります。いま御指摘のように、ただ審議会の答申や、あるいはこのたびの水質保全法の改正という、一片の法律改正やそれだけでもって、作文でもって終わる問題じゃありませんから、これはやはりもう常時注意を怠らずにやっていく、そしてやはり目標を高く掲げて、いわゆる障害があってもそれを実施に移していく、こういう強い気持ちを持ってこの対策を進めてまいりたい、こういう決心でございます。
  289. 西田八郎

    ○西田委員 これで最後にいたしたいと思いますけれども、先ほど申し上げましたとおり、やはり経済の発展なり、生産の向上拡大ということは、結局人間のより豊かな、より快適な生活をするために行なわれるものだと思うのです。  ところが、公害が起こってくるということは、そうした人間の生活よりも物の生産に重点が置かれる。言いかえますならば私的な利潤の追求のために、人間の生活がどうなってもいいんだというような考え方が、こうした問題を引き起こしてきた大きな原因ではないかと私は思うのです。しかし、そのことで経済が発展しても、肝心の人間の生活が犠牲にされ、あるいはいわれるところの公害のために人間が埋没されてしまう、こういうことになっては主客転倒であろうと思うので、そういう点で今後私はやはり人間生活を犠牲にする、あるいはそれに対して健康保持のために有害な手段であるとするならば、経済の成長をとめてでもとにかく断固たる処置をとるという強い姿勢で臨まないと、この十年間いままで伸びてきた率よりもまた高い率で伸びていく可能性を、日本の経済は特に持っているわけであります。そういう意味からも、そうした面で人間が窒息しないように臨んでいただきたいと思うのですが、その点についてひとつ長官意思をお伺いして質問を終わります。
  290. 佐藤一郎

    ○佐藤(一)国務大臣 人間が窒息してはたいへんでございます。この間のシンポジウムなんかでも、あれだけの一流の学者が集まりまして、そうしてとにかくだれ一人として異論なく公害の重要性が力説されてきている。私は一つは事態がそこまで進んできたからだと思っています。そういう事態を踏んまえて、そうしていままでのような経済成長率だけで人間の幸福を推しはかるというのでなくて、幾ら成長しても、公害が進めばそれはマイナスだ、相殺されるべきものである、経済は成長してないのだ、こういうふうなものの考え方に徹底していかなければいかぬ、そういう気持ちでおりますから、ひとつ大いに今後具体的な政策をそうした考え方で推進していきたいと、こう思っております。
  291. 加藤清二

    加藤委員長 次回は、明九日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十四分散会