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1970-03-20 第63回国会 衆議院 産業公害対策特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年三月二十日(金曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 加藤 清二君    理事 小山 省二君 理事 始関 伊平君    理事 古川 丈吉君 理事 山本 幸雄君    理事 渡辺 栄一君 理事 島本 虎三君    理事 岡本 富夫君 理事 寒川 喜一君       伊東 正義君    浜田 幸一君       林  義郎君    松本 十郎君       佐野 憲治君    土井たか子君       多田 時子君    西田 八郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         総理府総務副長         官       湊  徹郎君         内閣総理大臣官         房審議室長   青鹿 明司君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         経済企画庁国民         生活局参事官  西川  喬君         厚生省環境衛生         局公害部長   城戸 謙次君  委員外出席者         議     員 角屋堅次郎君         行政管理庁行政         管理局審議官  石原 壽夫君         法務省刑事局参         事官      大村 行雄君         建設省都市局下         水道課長    久保  赳君     ————————————— 本日の会議に付した案件  公害紛争処理法案内閣提出第一八号)  公害紛争処理法案角屋堅次郎君外五名提出、  衆法第五号)  公共用水域水質保全に関する法律の一部を  改正する法律案内閣提出第二〇号)      ————◇—————
  2. 加藤清二

    加藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出公害紛争処理法案議題とし、提案理由説明を聴取いたします。山中総理府総務長官
  3. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいま議題となりました公害紛争処理法案について、その提案理由を御説明申し上げます。  公害問題は、申すまでもなく、現在緊急な解決を必要とする国民的課題でありますので、政府といたしましては、従来から公害対策基本法精神にのっとり各般の公害対策を講じているところであります。  公害対策におきましては、何よりも公害の発生を未然に防止する措置を講ずることが肝要でありますが、同時に、公害が発生した場合に備えて、公害紛争処理制度整備することが必要であります。  公害による被害は、単に財産的なものにとどまらず、人の生命、健康に及び、しかも、当事者が多数にわたり、かつ、加害被害との因果関係究明も困難である等、公害特有の問題があり、これらが公害にかかわる紛争の迅速、円滑な解決を困難ならしめているのが実情であります。  公害にかかわる紛争処理する行政上の制度として、現在、水質汚濁大気汚染等につきまして和解仲介制度がありますが、調停仲裁を行ない得ない等、不備な点が多く、また現行司法制度をもってしては、必ずしも簡易迅速な解決をはかるのに十分でないうらみがあります。  このような公害紛争処理制度現状にかんがみ、また公害にかかわる紛争について必要な措置を講ずべきことを定めた公害対策基本法精神にのっとり、紛争の迅速かつ適正な解決をはかるため、公害紛争処理制度整備すること等を目的として、ここに第六十一回国会の衆議院における修正を織り込んで、公害紛争処理法案をあらためて提案することといたした次第であります。  次に、この法律案のおもな内容についてその概要を御説明申し上げます。  第一に、公害にかかわる紛争処理するための専門的な機構中央及び地方に置くこととしたことであります。中央に置かれる中央公害審査委員会においては、現に人の健康または生活環境公害にかかわる著しい被害が生じ、かつ、当該被害が相当多数の者に及び、又は及ぶおそれのある紛争、広域的な見地から解決する必要がある公害にかかわる紛争被害地及び加害地が二以上の都道府県区域にわたる公害にかかわる紛争について調停及び仲裁を行なうこととしております。また、地方に置かれる都道府県公害審査会等においては、これらの紛争以外の紛争について和解仲介調停及び仲裁を行なうこととしておりますが、さらに被害地及び加害地が二以上の都道府県区域にわたる公害にかかわる紛争については、関係都道府県事件ごとに共同して連合審査会を設け、これを処理することができることとしております。  第二に、これらの機構においては、人格が高潔で識見の高い者のうちから、委員長委員または審査委員候補者が任命または委嘱され、これらの者のうちから、事件ごとに指名された仲介委員調停委員または仲裁委員が、それぞれ所定の手続に従い、和解仲介調停または仲裁にあたることとしております。なお、調停の場合には、当事者に対し出頭要求を、また一定の場合に文書、物件の提出要求ないし立ち入り検査を行ない得ることとしております。仲裁の場合にも、同様の権限を与えております。さらに、中央公害審査委員会には、特に、専門事項調査させるため、専門調査員を置くことができることとしております。  第三に、これらの機構については、具体的な紛争処理を通じて得られた公害防止施策改善についての意見を、中央においては内閣総理大臣等に対し、地方公害審査会においては都道府県知事に対して申し述べることができることとしております。  以上のほか、公害問題は、地域住民に密着した問題でありますので、地方公共団体は、公害に関する苦情について適切な処理につとめるものとし、公害に関する苦情について住民相談に応ずる公害苦情相談員制度を設けることとしております。  なお、防衛施設にかかわる障害に関する事項につきましては、その原因となる行為特殊性及びすでに政府がこれに関し各種の措置を講じていること等にかんがみ、この法律案において別に法律で定めるところによることとした次第であります。  以上が、この法律案提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願い申し上げます。      ————◇—————
  4. 加藤清二

    加藤委員長 次に、角屋堅次郎君外五名提出公害紛争処理法案議題とし、提案理由説明を聴取いたします。角屋堅次郎君。     —————————————
  5. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 私は、提案者を代表いたしまして、日本社会党提出公害紛争処理法案につき、提案理由とその内容概要を御説明申し上げます。  戦後わが国経済は、敗戦の廃墟の中から再出発し、今日世界第三位の生産力を誇るまでに成長いたしましたが、庶民の生活実感からすれば、生活は決して楽になったとはいえず、むしろ物価の上昇、公害激増交通事故多発等による生活生命の脅威に絶えず不安を感じ、はなやかな見せかけの数字より、もっと中身のある経済成長を持ち望んでおります。特に公害激増は、近年大きな社会問題であり、政府の相も変わらぬ企業擁護姿勢に鋭い批判の目が向けられ、また企業社会的責任を無視した経営方針の転換を望む国民的世論も、日増しに高まりつつあります。  こうした国民的世論を背景に、三月九日から十二日までの四日間、東京において国際社会科学評議会主催国際シンポジウムが開催され、公害問題の基本的考え方、当面の対策、それに挑戦する社会科学役割りを強調した東京宣言が採択されました。この宣言は、公害追放のために適切な政治的、経済的、法的手段を追求することが緊急の課題であることを、日本政府産業界に対しても提唱したものであると考えるものであります。  元来公害対策の万全を期するためには、公害の予防、公害の排除、公害にかかわる被害救済について思い切った法制的、財政的措置を必要といたしますが、かかる観点から、わが国公害対策現状をみるとき、両者ともにきわめて不十分であり、特に法制的には、現行公害対策基本法をはじめ、大気汚染防止法騒音規制法水質法等抜本改正が必要であり、ただいま提案されました政府公害紛争処理法案も原案のままでは、とうてい公害呻吟ずる患者はもとより、公害追放を望む国民の期待にも沿い得ないと存ずるのであります。政府紛争処理法案は、国に置かれる中央公害審査委員会が独立の行政委員会ではなく総理府付属機関とされていて、弱体であることは否定できず、その上、仲裁制度も、当事者双方合意による申し立てが、仲裁開始条件であり、したがって、これを利用するかいなかは事実上加害者の選択にまかされており、今日企業者倫理意識責任感では、ほとんどこの制度は画餅に帰すると申せましょう。さらに重大なことは、騒音、振動などの基地公害が現に多発しており、今後もその増加が十分予測されるのに、これを適用除外としていることは、国民の健康、生命よりも軍事を優先するという政府自民党姿勢を端的にあらわしたものであり、断じて許せないところであります。  今日の都市及び工業地帯における公害紛争を見て、企業の強引さに憤激を覚え、正しい紛争解決の道筋を示すことの必要性を痛感しております。  わが党が、公害紛争処理法案提案したのも、昨年来の公害総点検、公害絶滅の運動の実績に立ち、政府企業姿勢に警鐘を鳴らし、国民生命と健康を守る立場から当面の重大な政治的課題に真剣にこたえんがためであります。  以下、公害紛争処理法案内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、公害紛争については、和解仲介及び調停制度並びに裁定制度を設けて、解決をはかることといたしておりますが、政府案仲裁制度に対し、裁定制度を設けたことが、わが党案の大きな特徴であります。これは、加害者に有利となるような妥協を排し、加害者責任を徹底的に究明するために当事者の一方のみの申し立てでも開始される準司法的な裁定制度を設けたのであります。  第二に、組織としては、中央国家行政組織法による三条機関たる公害審査委員会を、都道府県公害紛争調停仲介委員会を設けることといたしております。中央裁定を、地方和解仲介及び調停を行うのであります。  第三は、中央公害審査委員会公害専門調査会を設けたことであります。公害紛争の焦点は、因果関係究明が困難な点にあるのでありますが、これを究明させるため権威ある科学者専門調査会に動員いたしまして、これに科学的な判断を行なわせ、法律的判断たる裁定はその意見に基づいて裁定委員会が行なうこととし、専門調査会委員及び臨時委員は、審理、証拠調べに立ち会い、独自でも事実調査をすることを認め、これによって裁判救済の困難な事案を救済するレールをしいたわけであります。  第四は、裁定訴訟との関係について、特に大気汚染または水質汚濁によって生じた人の生命または身体にかかわる被害についての損害賠償に関する紛争その他の民事上の紛争については、裁定を経た後でなければ、訴訟を提起することができないこととし、裁定の権威を高めるための機構、運営に万全を期することといたしております。裁定委員会証拠調べ及び証拠保全職権探知立ち入り検査等も、公害専門調査会の活動と相まち、裁定科学性合理性客観性を立証するための必要な措置と申すべきであります。  第五に、裁定の効力は、裁定について、裁定書の正本の送達を受けた日から三カ月以内に、訴えの提起がなかったとき、裁定内容について当事者間に合意が成立したものとみたすことといたしております。  以上、公害紛争処理法案提案理由とその概要でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げまして、提案趣旨説明を終わる次第であります。
  6. 加藤清二

    加藤委員長 以上で提案理由説明は終わりました。      ————◇—————
  7. 加藤清二

    加藤委員長 内閣提出公害紛争処理法案、及び角屋堅次郎君外五名提出公害紛争処理法案、及び内閣提出公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、これを許します。浜田幸一君。
  8. 浜田幸一

    浜田委員 私はお許しをいただきまして、本特別国会提案されました法案を逐次御質問さしていただきたいと思います。  まず、過般提案されました公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案から御質問をお許しいただきたいと思います。  その次に、ただいま提案をされました公害紛争処理法案について御質問することをお許しいただきたいと考えます。  現在の社会情勢の中で、国民の健康を保全し守るために、水質保全をいかにするかということは、これを解決すること自体が国家的な急務でありまして、今回の法律提案された趣旨については、まことに当を得たものと考えるのであります。  そこで私は、直ちに具体的な内容に入って御質疑さしていただきたいのでありますが、この法案を見てまいりますと、まず二点にその要旨が分かれなければならないと考えるのであります。と言いますことは、水質基準を定めました場合に、環境基準そのものがどのように浄化されていくか、具体的に解決されていくか、このことがやはり最大の要因であると思います。私は、まず冒頭に水質保全に関する法律に関しましては、四点を御質問さしていただきたいと思います。  まず第一点の問題は、水質汚濁に関する環境基準設定された場合、これを具体的にどのように守らせるようにするのか、この点についてお伺いをいたしたいと考えます。  そして第二点目は、本法案改正のねらいは一体どこにあるのか、この点についてお伺いをいたします。  第三番目には、本法改正により排水水質基準対象が拡大しても、それを順守させるための法制上あるいは財政上の措置がなければ、法改正で空文のものになってしまうと思うのでありますが、この点をどのようにお考えになっているのか、御答弁をいただきたいと思います。  そして第四点目には、都道府県知事に対しまして、公共用水域水質測定をさせるということになっておりますが、測定の結果、水質改善が認められない場合はどのように処理するのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。  そしてこの四点に対しましてお答えをいただきましたあとで、私は逐次関連質問をさせていただきたいと思うのでございます。まず第一回目の質問に対する御答弁を賜わりたいと思います。
  9. 西川喬

    西川政府委員 ただいまの御質問の第一点の問題でございますが、水質保全をやりまして、環境基準設定された場合、これを具体的にどのようにして守るか、このような御質問でございますが、公寄対策基本法に基づきまして環境基準設定いたしました場合に、これをどのようにして達成するかという点につきましては、諸般の施策法律によって規定されております。  その内容を具体的に申し上げますと、まず第一点が排出の規制でございます。これは公共用水域水質の場合でありますと、公共用水域に出てまいります排水そのもの水質規制でございます。これは現在水質保全法によって行なっておるわけでございます。それから第二点が立地規制でございます。悪い水質を出すものにつきまして立地規制を行なう。これは都市計画上のいろいろなゾーニングの問題もございますし、またそういう施設の設置を調整するというような場合もあるわけでございますが、立地規制の問題。それから公共施設整備でございます。水質汚濁にかかわります場合には下水道整備であります。下水道整備の促進をはかる。それから監視体制整備監視測定体制整備環境基準設定されました場合に、それが守られているかどうかということを常に監視いたします体制整備。それから処理技術開発水質汚濁させるようなことに対しまして、これを浄化処理するための技術開発。これらのことを総合的な施策といたしまして、これによりまして環境基準を維持してまいりたい、こういう趣旨でございます。
  10. 浜田幸一

    浜田委員 そこで、趣旨はよくわかりましたけれども、次に、関連して御質問させていただきたいと思いますが、それではあなたが御答弁された環境基準のたとえばPPMですか、そういうものについてはすでに定められておるのですか、その点についてお伺いいたします。
  11. 西川喬

    西川政府委員 水質汚濁にかかわります環境基準につきましては、昨年から水質審議会の中に環境基準部会を設けて検討を続けてまいっております。現在、相当程度草案はまとまってきておりますが、まだ正式に決定するまでには至っておりません。
  12. 浜田幸一

    浜田委員 その点について、実は六十一国会、六十二国会等の中で、これは島本委員だったと思いますが、御質問の中にたとえばサケマスの問題が速記録に載っておりますけれども、そのPPMは三PPMが理想であるということを御質問の中でされておりますが、政府答弁の中では、実際それに対する処理方法というものを真剣に考えている、しかし、調査をした結果と現在サケマスが養殖される条件とは非常に違うのだというようなことが議論されております。私が政府委員に御質問を申し上げたいことは、とにかく水質保全規制することはけっこうでありますけれども、日本全体の環境基準そのものがある面で統一される必要があるのではないか。それは地域的に、たとえば河川法の中でも七十数河川すでに規制はされておりますけれども、そういう中で、たとえば生物が生存するために必要なPPM立地条件、あるいは概念的に申し上げますと隅田川、これは非常に規制もうるさくやっておりますけれども、率直にいって幾らかはきれいになったというところでありまして、まだ水が昔の東京隅田川のように、両国で花火が行なわれたようなああいう条件ではない。こういう全国的な環境基準そのものに対していかように対処されようとしておるのか、その概略でもひとつお聞かせいただければ幸甚と思います。
  13. 西川喬

    西川政府委員 御承知のように、大気にかかわります環境基準につきましては、国民の健康の問題に関係いたしまして現在SO2とCO2でございますが、これは全国一律の数値をもって決定いたしております。ところが、水質の場合に関係いたしますと、いわゆるそれぞれの水域利用の形態なり何なりが非常に多様性にわたっておりまして、必ずしも全国一律という数値を適合することが妥当ではないのではないか、このような観点から、現在素案として検討いたしております水質環境基準設定方式が、直接国民の健康にかかわる項目につきましては全国一律ということに設定いたしております。  それから生活環境にかかわります分、公害対策基本法におきましても生活環境にかかわります分につきましては、経済の健全な発展との調和をはかるということが法律に載っております。そのような観点から生活環境の分、ただいま先生がおっしゃいましたのは魚のBODの問題、これは水産業という産業との結びつきになるわけでございます。このような問題がございまして、生活環境にかかわります項目につきましてはある程度利用目的別に類型化いたしまして、ランクをつくりまして、それぞれの水域をそのランクに当てはめていく、結果的には水域別ということになります。そういう形で設定いたしたいというふうに考えております。  現在検討しております素案段階におきましては、たとえば水産におきましては水産を一級、二級、三級というような形に考えまして、それぞれ、水産一級というのは非常に清浄な水を好む魚、水産二級が先ほど先生のおっしゃいましたようなサケマスとアユ、それから水産三級になりますと、もっと強い魚、コイとかフナとかああいうもの、そういう魚を生育させなければいけないような関係につきましては水産一級、二級の利用目的に適合するようなランクのところに当てはめるということになります。たとえば隅田川のように非常によごれておりまして、現在隅田川はいわゆる上水とか、そのような利水には使われておりませんが、隅田川のようなああいう川につきましては、これは生活環境環境衛生上の問題でありますから、最後の、これ以上きたなくしないというようなところから、これは大体現在の素案におきましては臭気を発生しないようなところまでというところで、BODで申しますと一〇PPMということを考えておりますが、最低限日本の川はどんな利用目的のない川ででもそこまで上げなければいけない。さらにいろいろな利用目的によって水質を、農水、工水、そのような利用のありますときにはもっと上のランクに当てはめたい、このような考え方環境基準設定検討を続けておる段階でございます。
  14. 浜田幸一

    浜田委員 そこで、もう一点私はお伺いしたいのでありますが、今回の法改正目的の第二、規制対象の拡大という中に、たとえば採石業あるいは砂利採取業、こういうものが新たに加えられておるわけでありますが、その場合、砂の採取にあたりましてたとえば河川汚濁をする。それによって水全体がよごれていく、これは現在たとえば京浜工業地常京葉工業地帯、コンビナート、あらゆる工業地帯がつくられつつある中における一つのやはり産業公害だと思うわけです。その場合に、私は千葉県の例だけ申し上げますと、たとえばそういうよごれた水を川に流してはならない、その基準度も設けなければならないということがいわれておりますけれども、これは政府でも、これらに対する基本的な取り締まりのものは原則として持っていないのです。ただろ過設備を設けなさいというだけで、相手方が中小企業の場合にはろ過装置もつけられない、そうすると、一応忠告を受けたときはそういう問題について考えるけれども、完全ろ過行為がされていないから、そこから流れていく濁流そのものが今度は農業生産者に対し悪影響を与えている。そういう問題に対するたとえば具体的な砂利採取業者に対する規制といいますか、水質保全規制、そういうものについては、これはやりなさいということはできる、ところが、どこまで規制するのかということについては具体性がないと思うのですが、その点についてどのようにお考えになっておられるのか、お伺いします。
  15. 西川喬

    西川政府委員 従来の現行法によりますと、採石業、それから砂利採取業、これは水質保全法対象外でありまして、いわゆる砂利採取法によって抽象的な規制しかできなかったわけでございます。今回この法律改正によりまして、砂利採取業採石業規制対象に入ってまいりますと、砂利採取業採石業の場合には、これはSSの濁度でございますけれども、これが公共指定水域になりますと、濃度何PPMというように具体的数字として決定されるわけであります。そういたしますと、砂利採取業のほうにおきまして、砂利採取計画の許可をするわけでございますが、その採取計画を許可いたしました場合の洗い水が、その規定されました水質基準に適合しない場合には改善命令、あるいはさらには操業停止を命ずる、具体的な数字との結びつきになって今度ははっきり規制ができることになるわけであります。
  16. 浜田幸一

    浜田委員 わかりました。  そこで関連してもう一点お伺いしますが、たとえば現在砂採取をやっている中小企業があったとします。その中小企業者がたとえば政府規制の中でそういうろ過設備をつくりなさいということで、そういうものができない場合に中止をさせるということは倒産するということですね。そういうものに対する政府考え方はどうなんですか。大企業に対してそういう規制をすれば、大企業はあとう限りの努力をしてやることができるかもしれないけれども、たまたま砂利採取業とか採石業というのは、非常に零細業者が多いわけです。そういう場合に法律規制をして、そういうものは流してはいけない、ろ過装置をつけなさい、金もかかるだろうけれども、やらなければ中止をさせますよといった場合に、規制規制で設けることはけっこうなんですが、もしそこにおいて中小企業者がやれば倒産するような場合に、政府資金を出して育成するとか、そういう考え方はお持ちになっているのか。ということは、この法律の中にもうたわれておりまするけれども、「「関係産業に相当の損害が生じているもの」に改めること。」という第三の目的の中にも出されているわけですけれども、一番この中で私が問題としてお伺いしておきたいのは、とにかく農民に対して、第一次産業者に対して悪影響を与える、だから規制をしてやめさせるというのだけれども、やめさせれば、規制を加えればつぶれてしまうような現象が起こった場合、政府としてはどういうお考えを持っておるのですか。
  17. 西川喬

    西川政府委員 中小零細企業に対します問題としましては、これは非常に大きな問題がございまして、私たちも水質基準設定の場合において十分考慮いたしております。それで大企業のロード、いわゆる汚濁のシェアでございますが、大きな企業が大半を占めておるケースが多うございます。そのような場合におきましては、大きな企業のほうは資力も十分ございますし、除害施設の設置をすることも、技術的にも資金的にも能力がございます。そういうところのロードのカットを大きくいたしまして、非常に数は多くとも、実際問題として汚濁の及ぼす影響がほとんど微々たる、ネグリジブルスモールなもの、これはすそ切りと申しておりますが、たとえば百トン以下とか五十トン以下、そういう排水規制しないというような方法をとっておる水域もございます。  ところが、零細企業も数が非常に多くて、数が集まりますとこれがやはり非常に大きなシェアを占めて大きな問題になりますから、やむを得ません、この零細なものもある程度規制しなければならない。そのような場合には規制せざるを得ない。その規制のしかたも、大きいほうはカットの率を大きくする、小さいものはカットの率をできるだけ小さくするというような配慮をいたしてございます。  さらに、それによりまして規制がきまりますと、今度は必要に応じて除害施設も設けなければいけないというようなことになるわけでございます。その除害施設のほうにつきましては、これはそれぞれの事業を所管している各省があるわけでございますが、そちらの賓のほうにおきまして、いわゆる除害施設に対する融資、そのような資金、これが相当、中小企業の近代化資金、金融公庫、あるいは公害防止事業団、約七、八種ございます。そちらのほうからの資金的なあっせん。それからさらに税制上の措置でございます。除害施設につきましては特別償却を認める、固定資産税の対象としないというような処置を講じまして、その定められた基準を順守できるような措置政府として総合的にとっているわけでございます。
  18. 浜田幸一

    浜田委員 それでは、第一点目の問題についてはもう一点だけお伺いしておきます。  たとえばごみが川に流される、これを取り締まるのは清掃法だと聞いております。たとえば清掃法とこの水質保全のための基準、この関連というのは、私のほうで質問をすると、それは清掃法でやるのですよという答弁なんだ。ところが、ごみを流されることによって水はものすごくよごれている例が多い。私どもがそれを勉強するためにそういう質問をすると、ごみは清掃法なんだということなんですが、清掃法の基準というのは一体どういうことになっていて、それを守らない場合はどういうことで取り締まりを受けるのか、この点もう一点お伺いしておきます。  それから、まことに恐縮なんですが、説明はよくわかったわけですけれども、下水事業の進捗率と水質保全あるいは環境保全、そういうものをきちんと確立するために、下水道整備というのは完全にやらなければいかぬというのは明らかなんだ。ところが、下水道を完全なものにして水を浄化する、そういうことになると、あなたの関係省と次の下水道関係省との打ち合わせ、横の連絡はよくいっているのかいないのかわからないけれども、実際問題として、ことばの上では下水道事業を盛んにやろうやろうと言っておりながら、予算がついてこない。そうすると、片方では法律をつくろうとして、基準をきちんと守らせようとしても、政府予算がついてこないから、下水道から出てくる水は一向にきれいにならない。環境衛生都市宣言をしている大きな市の中に、どぶ川のような川が一ぱいある。こういうものとの関連について、お考えがあったらひとつ参考のためにお聞かせしておいていただきたい、こう思います。
  19. 西川喬

    西川政府委員 第一点の、ごみの問題でございますが、実は先生のおっしゃいましたとおり、私たちの水質保全法で定めておりますのは排水の基準でございます。いわゆる水域に流れ出てきます排水の基準でございますから、水域の中にごみを捨てるのは、水質保全法の取り締まりの対象にはできないわけでございます。やはりこれは清掃法のほうにおきまして、ごみを捨てることを取り締まるわけでございますが、清掃法は厚生省のほうの所管になっておりまして、ごみ処理施設につきましては、これは施設として入っております。一般の人たちがごみを捨てるということにつきましては、清掃法のほうにおきまして、十一条のところで汚物の投棄禁止の規定がございますが、罰則のほうも二十四条についております。現在のところ、ごみを捨てるということにつきましては、清掃法で取り締まってもらわなければいけない。ただ今度、現在水質保全法できめておりますのは排水だけでございますけれども、環境基準がきまりますと、これは流水の基準をきめることになります。それで、SSの関係汚濁関係から、そういうごみやなにかの浮遊がないというような環境基準もきまるわけでございます。そういたしますと、政府といたしまして、環境基準を守っていくためにどのような措置を講じなければいけないかということは、公共用水域水質に関する環境基準がきまりましたときに、これを守っていこうとして努力をいたしますのは、水質保全法だけではございません、政府の総合施策としてやっていかなければならないわけでございますから、もちろん下水道施設も入ってまいりますが、清掃法も入ります等、いろいろ諸般の目的とあわせまして、この目的を達成するために政府としては努力してまいる、これが公害基本法の精神にのっとっておるわけでございます。  それから、第二点の、下水道整備でございますが、これは、私たちのほうでは、水質基準をきめます場合に、これは経済企画庁は調整機関でございまして、いわゆる加害側と申しますか、排水を出す側、これは通産、農林、厚生、大蔵まで、各省にまたがっている。それによりまして被害を受ける、あるいは水道用水、農業用水、工業用水、水産用水、それからさらに、その河川の浄化を進めるための公共事業を実施するほうの側、下水道実施、それから河川浄化対策をやっております建設省、このような各省に関連いたしておりまして、それらを総合調整いたしておりますのが経済企画庁の立場でございます。水質基準、指定水域をきめます、水質基準をきめます場合には、各省の連絡会を十分催しまして、そして合意に達したところで審議会にかけているわけでございます。それでございますから、下水道整備計画というものも当然その目標水質に到達するまでのいわゆる目標として把握いたしてございます。そのとおり建設省のほうもやっていく。さらに、一般に水質基準をきめましたところにつきましては、指定水域になりましたところでは、建設省が持っております計画よりもさらにスピードアップしてやっていくというのが実情で、それだけの努力はいたしているわけでございます。  事実は、正直なところを申しますと、水質基準設定いたします場合に、今後の経済の伸び、その地帯の人口の伸びあるいは産業の伸びというものを推定して予測いたしまして、その流動、増加を予測いたしまして基準を設定しているわけでございます。その増加が、実は、ごく最近の状況を見ますと、都市近郊におきましては、はなはだし過ぎて、少し予測を誤っているケースがございます。それらにつきましては、今後見直し調査その他によりまして、適切な手を打ちまして、できるだけ早急にそういう状況に対応するような対策を講じたい、こういうふうに思っております。
  20. 浜田幸一

    浜田委員 それでは、第一点目の質問については、環境基準はもう早期におつくりになる、その環境基準を守らせるために必要な水質保全考えた上で規制する、そういう姿勢で臨んでおられるということを御確認さしていただいてよろしいわけですね。
  21. 西川喬

    西川政府委員 そのような姿勢で進んでおります。
  22. 浜田幸一

    浜田委員 それでは次に、本法改正のねらい、このことについてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  23. 西川喬

    西川政府委員 提案理由説明にもございましたように、最近の水質汚濁現状経済の発展、それから都市化の進展に伴います水質汚濁の多様化に対処いたしまして、一番の目的は、規制対象の拡大、現在対象となっております工場、事業場、それから鉱山、これらだけでは水質保全の万全が期せられないという状況になってきておりますので、規制対象を拡大いたしたいというのが一番の眼目でございます。  それから第二点といたしましては、これは地域住民の問題といたしまして、総力をあげてこの公害問題に取り組んでいかなければならない。このような事態に対処いたしまして、都道府県等の協力体制を強化していくということ、これが第二点でございます。  これがおもな趣旨でございます。
  24. 浜田幸一

    浜田委員 わかりました。  そこで一点だけ、私は政府姿勢の中にこういう考え方を入れていただけないのか、ひとつお伺いしておきます。ということは、隅田川から現在上水をしておらない、こういう御答弁がありました。現在の日本国内における水の不足というものは、雨が降らなければ絶対量が不足していると思うのです。そういう中で、あれだけの、水がよごれてはおりまするけれども、流れているその水を上水することができない。でき得るならば、国民の健康を守ると同時に、そういう不足しておる人間の生活に使うために必要な水に変えるような積極姿勢を持たないのかどうか。(「魚の健康はどうなんだ」と呼ぶ者あり)同時に、いまも途中で関連発言がありましたが、魚が中に住んでおる。その魚が生きていくために必要な、たとえば酸素、そういうものに対する一つの規制も必要だと思うわけです。私はその問題は別として、大きなねらいとしてお伺いしておきます。これはあなたの答弁が、政府公害に取り組む姿勢の中から、積極的に予算を投下していく中から、何か得るものがなければならない。たとえばいま米国においては、トン当たり実際に七十円なり百円なりをかけて海水を真水化する作業が行なわれている。あるいは印旛沼から水を取水した場合にも、トン当たり七円なり七円五十銭なり、やがては二十円、三十円になっていくだろう。こういう形の中で、実際に東京が一番水が足りなくなる。そういう要素の中に、隅田川という川がかりにあったとする。その川の汚濁を取り除くことによって、それを人間が生きていくために必要な水に変えるような、そういう積極的な姿勢でものを考えたことがあられるかどうか、この点をひとつお伺いしておきます。
  25. 西川喬

    西川政府委員 私たちの所管しておりますのは、水質保全の問題でございまして、現状隅田川BODで二〇、三〇PPMまでなっています。いま先生のおっしゃいましたようなこと、これは確かに水資源という問題から関連いたしまして必要なことであります。いまのところ、実は正直なところを申し上げますると、現在一五から二〇くらいまでよくなってきておりますが、まず一〇PPM程度までよくしていくということに一生懸命になっております。ただし、これは私の個人的な意見になるかもしれませんけれども、結局水資源としての使い方につきましては、いろいろ用途によりまして程度がございますので、工業用水等におきましては、それからいわゆる水道で使っております分の中でも雑用水等につきましては、必ずしもこれだけのいい現在の水質を必要としないものもあるわけであります。そのような方面につきまして、いわゆる利水の側におきましても、もう少し知恵が出てこなければならないんじゃないかということを感じておるわけであります。御承知のように、下水処理水でございますが、下水道の終末処理場で処理した水につきましては、さらに一段の高級処理を加えて工業用水のほうに転用さしていくというような方法がすでに各地で行なわれております。そのような方向から、この水資源の問題に対処する。飲料水に関係するような上水道、これはもちろん絶対にきれいな水でなければならない。雑用水の方向におきまして、もう少し需要の合理性をはかっていくほうがいいんじゃないか。そのような方向につきましては、私たちも水の関係者として一緒になって努力してまいりたい、こんなように考えております。
  26. 浜田幸一

    浜田委員 御答弁の中に、工業用水に利水することのできるような状態をつくりたいんだという御発言があったわけですが、私、率直に申し上げますと、たとえば隅田川なり江戸川なりありますね。その水利用の点をここで論議すべきではないと思いますけれども、参考のためにお伺いしておきます。たとえば、いまやっておられる規制法というものは、その工業用水の汚水が流れてくるものに対して規制をする。それで保全考えるということなんです。しかし、政府が抜本的に考える場合は、その規制もさることながら、これも必要なことでありますけれども、現在の水不足の状態を考える中で、たとえばそのまま東京湾なら東京湾に流れ込んでいく水が二河川なら二河川ある。その下流を人工的にこれをつなぎまして、いま貯水湖、河口湖とかいうものを考えておりますが、あの水を途中で一たんダムならダム——ダムというよりも、人工の川をつくって逆流をさせるなり、そういう形の中でろ過施設をつくることのほうが、川そのものをきれいにするためにいいんじゃないのか。そういうことまで積極的にやっていかなければ、あなたの答弁のような形の中では水そのものが正しく使っていけないと私は思う。ですから、これは私がここで申し上げましても、現在の答弁の状態では、とてもそういうところまで考え法律をつくるような意思はないようでありますから、その辺のところは差し控えておきますけれども、ひとついま御答弁にありましたような問題についても、積極的にお考えをいただくように御努力をいただきたいと思います。  三番目の、本法改正により排水水質規制対象を拡大しても、それを順守させるための法制上あるいは財政上の措置がなければ、法改正は空文のものになってしまうと私は思う。そこで私は、財政上の措置についてお伺いしたい。本法案がたとえば院を通過した場合、財政的にはどの程度積極的に予算投下をされていこうとしているのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  27. 西川喬

    西川政府委員 予算的問題で申しますと、直接私たちの関係いたしております水質保全のほうの予算といたしましては、これはわずかなものでございますが、今度新しく対象になりました未規制汚濁源、こう申しておりますが、この未規制汚濁源を早急に調査いたしまして、新たに水質基準設定しなければならぬ。現在すでにきまっております指定水域になっております四十水域につきましては、早急にこの未規制汚濁源を追加しなければならない。その分の調査費が予定されてございます。  それ以外の予算といたしましては、先ほども申し上げましたように各省のほうで所管しております除害施設に対する問題、それからそれ以外の問題といたしまして、新しいこういうものに対しての措置をどうするかというような、たとえば農林省所管の養豚、養鶏というような、こういう畜産のほうの廃棄物の処理でございます。このような問題をどうするかというような予算につきましては、農林省のほうで研究開発費等を組んでいるわけであります。そのような各省の所管の予算になりますと、それぞれの省で相当な予算を持っておりまして、通産省におきましては約三十億円、農林省におきましては約二十億円程度のそういう方面に対する新規の汚濁に対する対策費というような予算を計上しておるわけであります。
  28. 浜田幸一

    浜田委員 私は、仏つくって魂入れずということではいけないと思うわけでございまして、今回提案されました中にも、たとえば各県に対して水質の基準を測定させるという項目があります。測定させてその水がよごれていた場合に、現行上の水質基準だけでやっても水がよごれているわけですから、これを浄化させるための財政措置というものは企業側に負担をさせるか、政府側が負担するのか、どっちかなければ法の趣旨というものは生きてこないでしょう。そういう場合が起こりました場合にどういう措置を講ぜられようとするのかお伺いしておきます。
  29. 西川喬

    西川政府委員 現在水質基準をきめました場合に——環境基準ではございません、水質基準をきめました場合に、その水質基準を順守するのは排水者の義務でございます。ですから、それは全部企業負担ということになっております。問題は、公共事業等で行なわれております国または地方公共団体が行なう事業に対しての企業側の負担という問題でございます。これにつきましては、公害対策基本法の二十二条にそういう規定がございます。ただし、この規定は法律をもってやることになっております。現在、通産省、厚生省等におきましてその研究を始めております。これを企業者に負担させる場合にはどの範囲について、どのような率で、どういうところに負担させたらいいかという問題につきまして、研究会を設けて——厚生省におきましては研究会でございますが、通産省におきましては、産業構造審議会の中の小委員会におきまして研究を始めております。その結果によりまして、法律が制定されましたらそういう方途が開かれるということになっております。
  30. 浜田幸一

    浜田委員 それでは特に私は、最終的にはそういう問題については都道府県と合議をして進めるということでございますので、きょうは担当大臣がお見えになっておりませんから、本問題に対する姿勢については、担当大臣が出席されたおりにまた質問させていただくということにしたいと思いますので、委員長のお取り計らいをいただきたいと思います。
  31. 加藤清二

    加藤委員長 わかりました。
  32. 浜田幸一

    浜田委員 第四点の問題ですが、都道府県知事公共用水域測定をさせることとしているが、測定の結果、水質改善が認められない場合はどうするかということが第四番目の質問でありましたが、第三番目と一緒にやりましたので、これを省略いたしたいと思います。  私は、委員長のお許しを得まして、ただいま水質保全に関する質問をしたわけでありますが、最終的に私から政府委員に対して御要望申し上げておきたいことは、公害の基本法がつくられまして一番関心を持っておりますのは、たとえば公害防止事業団が動き出した。ここには膨大な予算がついて回っておる。ところが、実際に庶民の生活の中に関連をしている、特に解決しなければならない問題の要素を一ぱい持っておる水の問題については、私自身、積極的に企業負担側のたとえば予算支出を求めるだけであって、政府規制はするけれども事業者が、企業側が負担のできないものについて政府が積極的な予算投下というものを考えていかなければ、これから定めようとする環境基準そのものが必ずしもよくなっていかないんではないだろうか、私はこう考えるわけです。  そこで、ぜひお願いしたいのでありますが、環境基準設定については早急におつくりをいただきたい。特にその第一の要望としては、横の連絡を密にしていただきたい。横の連絡を密にしていただいて、積極的にやっていただきませんと、あまりにも時間がかかり過ぎます。そういうことでは国民の求めているものに合致する点が非常におそくなりますので、ぜひその点については掌握をされているあなたの手元で、本問題の処理をスムーズに行なうようにしていただきたい、このように御要望を申し上げて私の質問を終わります。  続きまして、公害紛争処理法案質問をさせていただきたいと思います。  まず私は、基本的に公害は、何と申しましても公害が起こってからその対策を講じてもおそいのでありまして、公害が発生しないように政府として未然の防止に全力を注ぐことが私は肝要であると考えます。  同時に、公害が発生した場合に対処して、その救済をはかるため、公害紛争処理制度を早急に確立する必要があると考えます。特に、最近公害による被害をめぐる論争が非常に深刻化いたしておりまして、民事裁判になっているケースも多くなっておるのでありますが、民事裁判では手続きもめんどうでありますし、金もかかりますし、解決までに二年、三年と相当の期間がかかるのでございまして、特に因果関係の立証等が、弱い立場にある被害者に相当な負担となっておることは御存じのとおりであります。もっと簡便な手続で、迅速適正に公害紛争解決できる制度をつくることが、一般住民の切なる願いとなっておるのでございます。その意味でさきの六十二臨時国会政府から提案された公害紛争処理法案の成立が期待されておりましたけれども、それが審議未了、廃案となったことはまことに残念なことであると考えるのであります。  この法案は、その前の第六十一通常国会提案されまして、産業公害対策特別委員会におきまし七十四回、四十数時間にわたる十分な審議委員打合会という形で参考人の意見聴取が行なわれました。国会議事録を見てもわかりますとおり、問題点についてはすでに十二分に議論が尽くされ、与野党の共同一致による一部修正を行なった上衆議院で可決成立し、参議院で不成立に終わったのであります。  本国会政府から提案された本法案は、衆議院における修正案を織り込んだものでありまして、与野党ともその内容については十分承知しております。議論の分かれるところはしかたがないといたしましても、この法案に対する各党の態度としてはすでに結論が出ていることと考えるのであります。したがって私は、前に述べたような公害紛争苦情処理制度現状から見て、本法案の成立を期待している一人でございます。国民の期待にこたえましてすみやかに本法案の成立を期待するものでありますが、政府提案の本法案内容については、すでに議論も十分に尽くされておりますので、新しい論点からあらためて質問することもあまりないと思うのでありますが、いままでの議論を確認するという意味をも含めまして数項目にわたって御質問を申し上げたいと考えるのであります。  まず問いの第一点でありますが、本法案と、前の第六十一回通常国会あるいは六十二臨時国会提案されました法案との相違点についてお伺いをいたしたいと思います。
  33. 湊徹郎

    ○湊政府委員 ただいまるるお話がございましたように、公害基本法の精神にのっとっていろいろと多方面にわたる公害の問題を処理しますためには、まず早く処理をする、それから手軽に処理をする、そうして実態に合わしてうまく処理をしていくということが非常に当面必要だろうと思います。そういうふうな点から、この前の国会で各方面からいろいろ議論がございまして一部修正が行なわれたわけでございますが、今回の法案にはその一部修正になりました点も織り込んで御提案を申し上げたわけであります。  そのおもな点は二点ございまして、第一点は、この問題がきわめて専門的な知識と技術を必要とするというふうなことから、非常勤の専門調査員二十名以内を置く、そしてもっぱら中央委員会にいま申しました専門調査員を置きまして、専門事項調査させると同時に、あるいは調停委員会、あるいは仲裁委員会が立ち入り検査等を行ないます場合に、その補助をさしていくという点が第一点であります。  第二点は、これまたただいまいろいろ話がございましたように、非常に住民に密着した問題が多うございます。そういうふうな観点から、都道府県あるいは政令できめる特別の市に公害苦情相談員、これを置いて、現実に即した実態的な迅速な処理をやってもらう。住民相談に応じてその処理のために必要な調査その他の仕事を、この公害苦情相談員の皆さんにやってもらう。そうして関係行政機関と協力して迅速な処理をはかる。  この二点が前回出しました法案と違うおもな点でございます。
  34. 浜田幸一

    浜田委員 続いて第二点の質問を申し上げますが、本法案において、公害紛争処理制度として、将来大気汚染の防止法等で設けられた和解仲介制度に加えて、調停仲裁制度を新たに設けるということでありますが、その理由は何をお考えになっておられるのかお伺いしたいと思います。
  35. 湊徹郎

    ○湊政府委員 ただいまお話しのように、それぞれの単行法、大気汚染防止法、あるいは水質保全法騒音規制法、個別のいろいろな規制法に基づく和解仲介制度、これは従来からもちろんあるわけでありますが、これはどちらかというと、人に即して、非常に信用の厚い、人望のある、そういう人に話し合いのあっせんを願う、こういうことによって、両者御納得の上解決をはかっていこう、こういう趣旨でございますので、したがって、第三者として積極的に提案申し上げたり、あるいは解決案を提示したりというふうな仕組みにはなっていないわけでございます。ところが、最近の公害紛争の実態に即して考えてみますと、どうしても調停あるいは仲裁制度、これを入れることがきわめて適切でありますし、調停ないし仲裁ということになれば、出頭も強制する、あるいは必要な場合は立ち入り検査等も行なうことができる、さらに加害被害因果関係、これがなかなか究明が困難な場合が多うございますが、調査機能等も十分に持って、その上で第三者として適正な判断を持って解決に当たる、こういう点が特徴でございました、単なる話し合いのあっせんだけじゃいかぬので、そういう第三者的な機関によるある程度強制の裏打ちを持ったそういう制度をひとつこの際つくっていこう、こういう趣旨でございます。
  36. 浜田幸一

    浜田委員 次に、第三点として、わが国現行憲法において何人も裁判権を奪われることがあってはならない、これは三十二条に明記されておりますが、かつ「行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」こととなっております。最終的には当然裁判所の判断を仰ぐ、民事訴訟によって解決されることと相なると考えるのでありますが、本法律案に基づく和解仲介調停等の制度と民事訴訟との関連はどうなっておるのか、お伺いします。
  37. 青鹿明司

    青鹿政府委員 御指摘のとおりでございまして、何人も裁判を受ける権利が憲法で保障されておりますし、また行政機関が終審として裁判を行なうことができないということも明らかでございます。したがいまして、公害紛争も、これは民事上の紛争でございますので、当然裁判を受ける権利を保障されているというふうに考えるのであります。ただ、ただいま御説明申し上げましたように、公害紛争特殊性から、なかなか裁判にかけても簡易迅速な解決が期しがたいというところに、行政上の調停及び仲裁制度を導入したわけでございますけれども、これで解決がいかない場合には、やはり究極的には司法的な手続によって解決がはかられることになろうかと思います。したがいまして、初めにこの制度にかけまして、調停なり和解仲介なりということをやった上で、どうしても解決しないという場合に、司法上の手続にすることも可能でございますし、その制度利用しないですぐ司法上の手続に訴えることもできるわけでございます。ただ、仲裁につきましては、これは当事者がいわゆる仲裁契約という契約によって、訴訟をする権利を放棄して仲裁機関の判断にゆだねる、こういう仕組みでございますので、この場合の仲裁判断が出ましたときは、その後の裁判上の訴える道もかなり制約されてしまいます。特に取り消し原因等がある場合に限って司法上の手続の道がございます。仲裁とは性格が違います和解仲介あるいは調停の場合は、これによってもよろしいし、あとで司法上の手続によることも可能でございますし、また初めから司法上の手続によることも可能でございます。
  38. 浜田幸一

    浜田委員 それでは、紛争処理機関として中央に置かれる中央公害審査委員会については、これは国家行政組織法上の第三条機関、いわゆる行政委員会とするか、同法第八条機関とするかの点については、私は問題があると思うのです。現行法国家行政組織法における三条機関、八条機関の位置づけについては、必ずしも明確でない点があるように思いますが、一般的には第三条機関であるといわれる行政委員会のほうが強力な機関であるとの印象が非常に強いと思うわけです。三条、八条の両機関は、一体どういう基準で区別されているのか、行政管理庁にお伺いしたいと思います。
  39. 石原壽夫

    ○石原説明員 やや一般的なことから申し上げることが適当かと存じますので申し上げたいと思いますが、第三条機関と申しますのは府、省、それから合議制機関でございますいわゆる行政委員会、それから庁、これだけでございまして、いま申し上げました機関にはそれぞれ内部部局、地方支分部局という組織がございまして、それ以外のものは全部国家行政組織法第八条の機関ということになっておるわけでございます。したがいまして、第八条機関の中は非常に種々雑多でわかりにくいということで、国会でもしばしば御指摘を受けておる点でございますが、たとえて申しますと、警察庁とか検察庁、それから印刷局とか造幣局のたぐいから、いわゆる審議会等といわれます、これはいま二百四十一ぐらいございますが、そういうものの一切を含みまして第八条機関と申しておるわけでございます。当委員会で御審議ないただいております中央公害審査委員会は、その第三条、第八条の機関の中の合議制の機関の問題として御審議を受けておることございますが、ただいま先生御指摘のとおり第三条の合議制機関というのは、いわゆる行政委員会でございまして、これは一般的には公権力を国民に行使をするといったたぐいの機能を持ったもの、その他業務の質、量、そういったものを総合的に考えまして第三条の機関ということに位置づけしておるわけでございます。第八条の合議制機関と申しますのは、ただいま二百四十一と申し上げましたが、その中身はまた種々雑多でございまして、たとえばよくいわれます諮問機関、主務大臣の諮問に応じて答申をするというような合議制機関、あるいは当該行政機関が意思決定をいたします際に必ずその合議制機関の意見を聞かなければならないというような機能を果たしております審議会、それからまた行政管理庁的な機能をも果たしておる合議制の八条機関、その中身は種々雑多でございます。  これを区別して申しますと、先ほど申しましたように、第三条の合議制機関は公権力を国民に対して直接行使するという点につきまして、一般的に第八条の合議制機関とその差異を持っておるというふうに申し上げていいのではないかと思います。ただ、第八条の合議制機関の中におきましても、たとえば社会保険審査会、労働保険審査会、さらには中央建設工事紛争審査会等のように全く裁決を行ないます第八条の合議制機関もあるのでございまして、一般論として先ほど申し上げましたような区別はできるわけでございますが、ここに至りますと非常に類似した形になっておるものもあるわけでございます。
  40. 浜田幸一

    浜田委員 それでは、この公害紛争処理法で一番問題になるのは、三条か八条かということだろうと思うのですが、私は、昭和四十四年五月のこの委員会において、島本委員から御発言になっておられるその発言の論旨に基づいて、もう一点だけお伺いしておきます。  というのは、島本委員の発言の中には、こういう形で行なうとこれは憲法違反になる危険性があるのではないか、こういう御発言がされておるわけでありますが、これは憲法違反のおそれは全くないかどうか、この点を一点お伺いしておきます。(島本委員「全部読まなければだめだ、一部だけでは」と呼ぶ)それではこれは参考のために申し上げておきますが、四十四年五月七日の速記録の二〇ページ、上から九行目に実は列記されておりますが、「「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」これは憲法の三十二条。こういうような規定からすると、裁判所は人権保障の保塁として、最終的な審判機関として、これは確保されなければならない、こういうようなことになるのじゃないか、こう思うわけなんです。むしろこれを侵すことや、これを無視することは憲法違反のおそれがある。」と言っておられる。  そこで私は、この問題について憲法違反のおそれがあるのかないのか、この点をひとつ、国務大臣は御答弁をされておりまするけれども、私は新人議員でありますので、新たにこの点について御質問申し上げておきます。  それからもう一点。政府案においては、中央公害審査委員会国家行政組織法三条機関とせず、同法第八条機関としたのはいかなる理由によるのか、あるいは第八条機関でその職務遂行上問題はないのかについて、総理府にその見解をお伺いしておきます。
  41. 湊徹郎

    ○湊政府委員 先ほどの憲法違反の問題でございますが、お読みいただきました中に、何人も裁判権を奪われることがない、こういうことが憲法にございまして、さっき青鹿君から申し上げましたように、この制度そのものは、実態に即してなるべく早くとにかく問題の解決をはかるという趣旨で、一切の裁判所の判断に基づくいろいろな手続を排除する意味はいささかもございませんので、憲法上は全く問題はない、こういうふうに私は考えております。  それから、どういうわけで三条機関にせぬで八条機関にしたんだ、こういうお話でございますが、さっきからるる議論がございましたように、公害というのは非常に種類も多うございますし、発生源や何かを見ましても、たとえば騒音とか振動、これはわりあい原因のつかみやすいものでありますが、大気汚染とか水質汚濁、こういうことになると、加害の側、それから被害、その両者の関係は、なかなか実態に即してつかみにくいし、それからさっき御質問にもございましたように、予防の措置までさかのぼってやる、こういうことになると、実施部隊の各官庁といいますか、建設省とか通産省とか、それぞれの各省が所掌しなければいかぬような問題が非常に多いわけであります。そこで三条機関という場合は、どちらかというとずばり公権力そのものを発動するという形が多いのでございますが、この公害に関しては、私的紛争的なニュアンスというのが非常に多い場合がたくさんございます。それで、いま三条機関になっておるのは数が少のうございますが、御承知の国家公安委員会とか公取とか中央労働委員会とか、その性格、仕事の質、量から見ましても、この種の独立性を確保しながら公権力を行使して、そしてしかも実態に即して弾力的にさばいていく、こういう点からすると、八条機関でねらいだけは確保できるのじゃないか。こういう観点から八条機関を選んだ、こういうことでございます。
  42. 浜田幸一

    浜田委員 次に、都道府県における公害紛争処理は、審査会方式と名簿方式の二本立てとなっているわけでありますが、これはいかなる理由によるのであるのか。またそれで十分紛争処理し得るのか、総理府からお聞きしたいと思います。
  43. 青鹿明司

    青鹿政府委員 御指摘のとおり審査会方式と名簿方式と二種類を採用しているわけでありますが、これは都道府県公害紛争の発生の状況なりその態様が、地域によりましてかなりさまざまであろうと存じます。それでやはり常設的な機関を置いて紛争解決に当たることが適当かと思われる地点におきましては、その判断公害審査会方式をとることにいたしております。これは条例の手続によってきめることになっております。それ以外の府県におきましては、比較的に公害発生の件数も少ないし規模も小さいようなところが多いと思うのでございますけれども、公害審査委員候補者名簿方式によりまして、その事件ごと仲介委員なり調停委員なりを定めまして解決に当たるということにしたほうが現実的であろうという観点から、二種類の方式を、公共団体の自主的な判断で採用可能なように配慮をいたしております。  それでこの方式でもって解決が違わないかという点でございますけれども、いずれも権限なり手続の進め方なりにつきましては全く同様でございますので、いずれの場合をとりましても紛争解決についてかなり役立ち得るのではないか、かように考えておるわけでございます。
  44. 浜田幸一

    浜田委員 政府案において第三十七条及び第四十二条で調停仲裁の手続を非公開としております。調停あるいは仲裁は、裁判と異なりまして強権的なものではなく、当事者合意を前提としている点等から、裁判の公開原則とはおのずから異なってくると思うのでありますが、なぜ非公開としたのか、その理由総理府からお伺いしたいと思います。
  45. 青鹿明司

    青鹿政府委員 調停仲裁、いずれも基本といたしますのは、紛争当事者合意でもって簡易、適正に紛争解決しようということをねらいといたしているわけでありまして、いわばお互いに譲り合うところは譲り合う、意見が一致できるところはなるべくお互いに解決の道を見出すということを本旨にいたしておりますので、当事者が極力この制度利用しやすくしていただくというような配慮をいたすべきではないかということをまず考えたわけでございます。そのためにはやはり調停なり仲裁なりの場が、静かにお互いに胸襟を開いて意見の交換ができるようにすることが必要であろう、かように考えまして、この手続は非公開ということにいたしたわけでございます。
  46. 浜田幸一

    浜田委員 公害問題は、第一次的にはできるだけ住民に近い地方公共団体解決すべきものであると私は考えます。特に公害においては、加害被害因果関係が不明確なこと、原因者が不特定多数で確定しがたいこと等から、現状においても地方公共団体等に対して苦情の形で救済を求めている例が少なくはないわけであります。したがって、これからの公害に関する苦情を適切に処理するための制度整備することが必要であると考えるのでありますが、政府案においてはこの点についてはどのように措置しているか、お伺いしておきます。
  47. 青鹿明司

    青鹿政府委員 公害紛争は、先ほど来申し上げましたように、非常に因果関係の解明がむずかしい、あるいは当事者が多数に分かれているというようなことがあり、司法手続によりましても、また今度この法案によりまして調停仲裁制度が設けられましても、それだけではなかなか紛争として解決しにくいような問題があろうかと思います。いわばそういった公害に関する苦情処理ということ、これは当然にやはり配慮しなければならぬ問題でありますが、これに当たりますのは、住民に一番身近におります地方公共団体が窓口になって当たることが必要でございますし、従来からも地方公共団体がそれぞれ相当の努力を続けているように承知いたしております。ただ問題は、その窓口とか任務がはっきりしていないために、被害者の方がどこに苦情を申し入れたらいいかわからぬというようなこともしばしばあるようでございますので、今回の法律案では都道府県と、政令で指定いたします市には、公害苦情相談員を必置する、それ以外の市町村におきましては公害苦情相談員を置くことができるということにいたしまして、任務とか窓口を明らかにいたしまして、苦情がありますときには、それがすぐ公共団体の耳に入るように、またその解決の手段が進められるようにということを配慮しまして、さような仕組みにいたしたわけでございます。
  48. 浜田幸一

    浜田委員 昨年の通常国会における本法案審議の際に、政府は、第五十条の規定を設けた理由として、防衛施設の運用等から生ずる障害については、防衛施設特殊性に即した方法として、その迅速かつ適切な処理をはかるため、防衛施設周辺整備法等制度を設けられ、一般産業公害に比し、制度上進んだ救済をはかっていること等を理由としてあげておりますが、このことに照らしまして、第五十条を設けたことについて私は当を得たものと考えておりますが、防衛施設の運用等から生ずる障害で、公害対策基本法に定める公害のうち、騒音問題についてはどのような施設を講じておるか、防衛施設庁から具体的に御説明をいただきたいと思います。
  49. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 航空機の音響によって生じますところの騒音につきましての防止、軽減措置といたしまして、従来次のような施策を講じてまいっております。すなわち、教育、医療、保育、養護等に与えるところの障害を防止するため、学校、病院、保育所、診療所、救護施設、特別養護老人ホーム等につきましての防音工事を行なうものに対しまして、補助金を交付いたしております。  住民生活上の障害の緩和に資するために、休養施設、養護老人ホーム、市町村庁舎、図書館、公民館などの生活環境施設整備を行なう市町村に対しまして、これまた補助金を交付しております。  さらに、特定の飛行場周辺におけるところの住民のこうむる障害を軽減するため、民家等の移転補償等の措置を講じております。  以上のほか、各飛行場の実情に応じまして、飛行方法、飛行時間、ジェットエンジンの試運転作業等の規制、あるいは消音装置の設置等の措置を自主的に行なって、極力周辺住民の皆さまに迷惑をかけないようにいたしておる次第でございます。
  50. 浜田幸一

    浜田委員 その場合、いま民家移転の問題が出ましたけれども、民家移転等に関するたとえば見舞い、あるいは補償制度、そういうものが時間的に非常に決定がおくれている、そういうことで住民が迷惑を受けているというようなことの例はございませんか。
  51. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 この民家移転につきましては、先生御承知のとおり、周辺整備法の五条に基づきまして、その障害をこうむっておる皆さまがどこそこへ移転したいという申請がございますと、その申請に基づきまして家屋の移転補償、あるいはその敷地の買収、あるいは農地の買収を逐次行なっておるわけでございますが、ただいま先生の御質問のような、業務の滞停ということはないものと私どもは信じております。
  52. 浜田幸一

    浜田委員 これは一例でございますが、私の地元で木更津航空隊というのがございますが、たとえばこれは地域住民が困っている問題の一点として、隣接農民の方々がそこに排水溝をつくっておった。その排水溝が飛行場の中に入っておりますものですから、ブルドーザーで整地したところ、それが詰まってしまった。そうすると、そこを水が全然流れなくなってしまった。こういう問題は、市長や県知事が日米合同委員会の席上で言うまでもなく、当然その施設に対して、米軍に対して要求すれば解決される問題だと思うのですけれども、それが三年も四年も解決されていない、こういう一つの例もあるわけですから、そういうものの決定にあたってはできるだけ早急にしていただくことが肝要だと思うのです。  それと同時に、学校設備等にいたしましても、測定の問題ですね。たとえば騒音に関する測定の距離が、政府だけで考えられた距離に定められて、その接点にあるものは、相当迷惑をしておる問題もあるわけです。そういう点等の処理について、経済力としては第二位といわれている国ですから、そういう点についてはいま少し拡大する考えがないかどうか、お伺いしておきたい。
  53. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 前段の御質問でございますが、具体的に調査をいたしまして、できるだけの措置を講じたいと思います。  後段の、騒音測定の件でございますが、これは私どものほうで、そういう教育施設、あるいは医療施設で防音工事を施してくれという陳情がございますと、そこの施設に参りまして、騒音測定器を持ち込みまして、騒音の強度、頻度をはかり、防音工事を施すことが適当であるという判断がつきましたならば、それを予算化するということをやっております。
  54. 浜田幸一

    浜田委員 防衛施設の運用によりまして生ずる騒音の防止、軽減措置について、一般民間の例に比べて手厚く、進んで施策を講じていることはよくわかりましたけれども、防衛施設の運用によって生ずる障害には、公害対策基本法に定める六公害のうち、騒音公害のほか、水質汚濁等があると思われますが、これらについてどのような施策を講じているか、具体的に御説明を賜わりたいと思います。
  55. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 防衛施設の運用にあたりましては、極力工事の規制等の措置に努力いたしておりますが、しかも、なお演習場等の防衛施設の運用によって生ずるところの水質汚濁による周辺住民生活上の障害につきましては、その障害を緩和するため、水道あるいはプール等の生活環境施設整備を行なうところの市町村に対し、補助金を交付している次第でございます。  水質汚濁によって農林漁業に被害を与えているものについては、その経営上の損失を補償しております。  なお、汚水の排出によって悪臭が生じ、周辺の住民の皆さまに迷惑を与えている事例がございますが、私どもは極力そのような障害が生じないように、万全の措置を講じておりますが、それでもなおそういう障害が発生する場合がございます。その際は、これの緩和措置といたしまして、汚水を除去するための措置、あるいは極力悪臭が漏れないような施設整備を行なうべく、所要の工事費について、これまた市町村に対し補助金を交付しておるというのが実情でございます。
  56. 浜田幸一

    浜田委員 防衛施設の運用によって生ずる障害にかかる公害について、制度上十分な措置が講ぜられていることはわかりましたけれども、実態的にいままでどのような措置を講じ、かつ昭和四十一五年度においてどのような措置を実施するのか、予算的に御説明をいただきたいと思います。
  57. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 ちなみに、昭和四十年度から四十四年度までの実績を申し上げますと、騒音対策といたしまして約三百九十六億八千万円、水質汚濁対策といたしまして二億五千万円、悪臭対策といたしまして七千万円でございます。昭和四十五年度の基地公害対策費につきましては、先般当委員会で私が御説明申し上げましたとおり、騒音対策経費は約百二十一億一千五百万円でございます。水質汚濁対策経費及び悪臭対策経費の四十五年度予算につきましては、先般の当委員会で申し上げましたとおり、財政法第三十四条の二に規定するところの実施計画段階で所要経費が確定されるため、ただいまの段階ではその内容が未定でございますが、当庁が現在考えております計画概要を申し上げるならば、次のとおりでございます。  まず、水質汚濁対策経費は約一億九千万円、このうち水泳プール、水道施設整備を行なう民生安定対策費が約一億八千万円、汚水による農業被害等の損失補償費が約一千五百万円でございます。また悪臭対策費といたしまして、汚水排水施設整備のための経費が約七百万円、これを実施いたしたい、かように思っております。
  58. 浜田幸一

    浜田委員 この問題についてはまことに恐縮でございますが、今後の参考例にいたしたいと思いますので、委員会に対して、でき得ましたならば文書でひとつ御配付いただきたいと思いますので、御配慮いただきたいと思います。委員長からよろしくお取り計らいをお願いしたいと思います。資料提出です。
  59. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 追って提出いたします。
  60. 浜田幸一

    浜田委員 ただいままでの答弁によりまして、防衛施設の運用による障害については、現在手厚い施策が講ぜられていることが十分理解できましたけれども、率直に申し上げまして、ただいままで御説明をされた施策で十分であるのかどうか、お伺いをしておきたいと思います。
  61. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 今後とも防衛施設周辺整備法等の積極的な活用によりまして、防衛施設の運用によって生ずるところの障害の防止、軽減等の措置を進めていきますとともに、米軍の協力を得、あるいは自衛隊とも協議の上、行為規制についても防衛施設周辺住民の皆さまの受ける障害を、できる限り少なくするよう配慮いたしまして、防衛施設の運用と周辺住民の民生との調和をはかっていくということを考えております。
  62. 浜田幸一

    浜田委員 これで私の質問を終わらしていただくわけでございますけれども、最後に防衛庁に対して御要望申し上げておきますが、やはり基地周辺にある日本国民の対米感情というものは、政府の諸施策に手落ちがありました場合には、特に感情的に悪感情が起こる要因になることが非常に多いのでありますので、私はいままでの説明を承りまして、努力をしていく姿勢については納得をいたすわけでありますけれども、基本的には、今後の対策としてお願い申し上げたいことは、同じ解決をする場合にでも、スピーディーに、具体的な実例をあげますならば、プールならプールをつくるという場合には、これは騒音対策あるいは汚水対策が完全に行なわれている地域に対しましても、できるだけ公平にプール施設等をつくることができるように、そういう公平対策、そういうものをもひとつ御配慮を賜わりたいと考えます。  本日は、残念なことながら防衛庁長官が御出席ではございませんので、また他の質問のときに、防衛庁長官が御出席いただきました場合には、特に委員長のお取り計らいによりまして、基本的な対策等について質疑をお許しいただきたい、このように考える次第でございます。  委員長に厚く御礼申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  63. 加藤清二

    加藤委員長 次に、島本虎三君。
  64. 島本虎三

    島本委員 公害紛争処理法案提案理由説明が行なわれました。私もそのあとで行なわれた社会党提出公害紛争処理法案、この対比におきまして、いま公害紛争が激化しておる情勢の中で、全国民がこの点は注目しているのじゃないか、こういうふうに思うのでございます。そういうような観点から二、三、社会党提案者でございます角屋議員に対しまして、また政府のほうの案に対しましても、同様に若干質疑を試みさしてもらいたいと思うわけです。  まず第一点として伺いたいのは、前々回の国会におきまして、双方の紛争処理法案が最終段階において大幅の修正がなされたわけでございます。そして社会党案もだいぶ取り入れられた、こういうような段階のもとに当案が再び出されることに相なったわけであります。この点等につきましては、どのようなお考えで社会党の独自案をお出しになっておるのか、この点を御解明願いたい、こういうふうに思うわけであります。それが第一点でありますが、ひとつこれから順次承ります。角屋議員にお願いいたします。
  65. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 いま島本委員からお尋ねの点についてお答えいたします。  御承知の昨年の通常国会の際に、公害紛争処理法案につきましては、政府からも御提案がありましたし、また私どもの社会党からも対策として提示をいたしました。同様に他の野党からも御提示がございました。そして非常に真剣な論議が展開をされました。その論議の過程におきまして、与野党における公害対策のそれぞれの理事を中心に修正の折衝がございました。この点については先ほど与党の浜田委員質問に対する政府答弁の中でも御答弁がございましたが、野党側のたくさんの修正要求の中で、主として数点についての修正が受け入れられたわけでございまして、一つは公害専門調査会の問題について、これは社会党で現にありますそういう要請を受け入れて修正を取り入れたという点がございます。  同時に、都道府県以下、市町村に関する問題については、政府は当初原案では非常に抽象的な書き方をしておりました。これに対して野党側のそれぞれ成案を持っておる要請も受けまして、先ほど御説明のように都道府県あるいは政令の市については苦情相談員を設ける、あるいはその他についても設けることができるというような形の、いわば住民に直接接する末端における紛争処理の窓口というものを明確にするというふうな点についての修正は受け入れられまして、政府といたしましてはあの解散国会の際に、その修正を受け入れた原案を御提示願ったわけであります。  同時に、島本委員も御承知の、これと関連をして救済立法についても与野党の相談が行なわれまして、そうして同時に解散国会に提示をされました。救済立法については内容的にはやはりなお不十分な点がありましたけれども、事やはり人間の健康、生命に関する問題について、不十分ながらもその成立における恩恵を待望しておる関係者の要請からいたしまして、これはやはり時期的にも急ぐ必要があるという高次の政治判断から、御承知のように救済立法については人間の健康と生命ということに限定されて、物等に対するところの救済の問題が整備されてない等々のいろいろな問題がありましたけれども、これが御承知のように成立の運びになりました。しかし、公害紛争処理法案については、これは長期にわたる非常に基本的な問題でもありますので、しかもまた与野党のそれぞれの政府提案あるいは野党提案の中では、基本的な問題についてまだ未解決の問題があるというふうなこと等もありまして、これが持ち越されたという形に御承知のようになったわけであります。  そういった経緯からも御判断のように、今回社会党から対案を出すことになりましたのは、政府が折衝の経過の中でわれわれ野党側の要望について受け入れられた点もありまするけれども、なおかつ基本的な問題について相当部分が残っておる。解散、総選挙などの新しい議会構成のなされたこの機会に、やはり国際的にも国内的にも非常に重要な課題である公害問題に対処する紛争処理の基本立法として、やはり政府提案に対して基本的にやはり問題の提示を行なうという立場から、今回あらためて社会党の対案を出すことにいたしたのであります。  若干浜田委員政府委員との議論の中でも御提示がありましたように、この社会党案政府案との中には、こまかい点までいけばいろいろありまするけれども、基本的にやはり違っておる点は、一つはやはり例の国家行政組織法三条機関にするか、あるいは八条機関にするかという点については、先ほど御説明のように、政府案では八条機関方式をとっておるわけでありまして、これはわれわれは当初提案以来三条機関にすべきである、こういう機構の問題についての基本的な考え方については、基本的に違った点がありますので、これはやはり一つの重要な問題として対案を出す一つの理由になったわけであります。  さらに、政府案とわが党の法案との中で、御承知の紛争処理の方法として、和解仲介あるいは調停仲裁というのが政府案の三つの方式でありますけれども、われわれのほうでは和解仲介調停までは同じような趣旨で行なうわけでありますけれども、仲裁政府案に対しまして、わが党案では裁定方式をとっておる点が、これがわが党案の一つの大きな特徴であります。これは昨年の通常国会の過程におきましても、当時政府責任者のほうから仲裁制度をとるか裁定制度をとるかということはいろいろ議論は存するけれども、しかし、もし裁定制度をとるということになったならば、八条機関でなくて三条機関をとらざるを得ないだろうというふうな議論等も行なわれた経緯がございます。それは別にいたしまして、紛争処理の方法として、政府案和解仲介調停仲裁に対しまして、社会党のほうでは和解仲介及び調停並びに最終的には裁定制度を採用しておるという点が基本的な相違でございまして、これはわれわれは公害紛争のいわば民事裁判における最近の経緯、あるいは公害紛争行政部面において最終的に処理する方法の考えられる方法としては、むしろ仲裁よりも裁定制度をとるべきじゃないかという判断に基づいて、この考え方を提示しておりますので、これが今回再び対案を出すことになった第二の主張点であります。  さらに、この中央公害審査委員会、これに対しますわが党の公害審査委員会等の形の権限の問題に関連をいたしまして、いわば政府案でも「専門調査員二十人以内を置くことができる。」という形にしておりますけれども、むしろこれは必置機関とすべきであり、またその権限等についても十分裁定に見合う権限を付与すべきであるという点についても、政府案の今回提案された点と社会党案については、やはり内容的に違った面があると考えております。  さらに、先ほどの議論の中で出ました例の政府案の五十条の基地公害の除外問題、これは本来基地公害だけを本法から特別に除外をするというのは、社会党としては問題が基本的にあるという立場でありまして、基地といわず、あるいは産業公害といわず、全般的に公害紛争処理法案対象として路線に乗せるべきであるという基本的な立場に立っておりますので、政府案五十条による基地公害の除外という点については、われわれとしてはにわかに賛成し得ないという立場をとっております。この点はやはり対案を出す重要な理由の一つであります。  裁定あるいは調停との関係訴訟との関連の問題はございますけれども、これはこまかくなりますので、説明は省略いたします。  なおまた、公開、非公開の問題等、法文の内容に入ってまいりますといろいろございますが、基本的に言うならば、以上述べたような数点が、政府案は野党の修正をある程度のまれまして再提案を出されましたけれども、公害紛争の正しい運営のためには、機構あるいは紛争処理の方法その他も含めてさらに論議を深めて、正しいものを国会において処理していく必要があるだろうという立場から再提案をいたした次第でございます。
  66. 島本虎三

    島本委員 ほんとうに要を尽くした答弁で、それでわかりました。  その中で、先ほどいろいろ質疑がございまして、また答弁もございまして、委員長のお計らいで資料の提出ということに相なっておりまするけれども、防衛施設関係は十分やっている、こういうようなことのようであります。十分やっているし、いままでの紛争、こういうようなものに対しても、他のこういうような同種のものよりも手厚くこれを行なっておるのだ、こういうような答弁があるわけであります。以前もございました。そうであればあるほどに、なぜ基地を特別扱いにしなければならないのか。この中に入れておいても、なおかつ既存の法律がございますから、それによって手厚くこの住民に対しての処理、扱いもできるのだ、いままでの、前の人の答弁によってもこれがはっきりしているわけであります。答弁がはっきりしているだけに、なおさら基地公害を特別扱いにするということがわからなくなるのであります。これは国民に対して誠意を示すためにも、社会党案のように、特別扱いにせずに本案の適用対象にする、このほうがより一そうこの紛争または起こらんとするような事象に対する一つの手厚い処置になるのじゃないか、当然そう考えられます。この件について防衛庁はどのようにお考えでしょうか。同時に、提案者の角屋議員にも重ねてこの点をお尋ねいたします。
  67. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 本件につきましては、前国会でもしばしば御説明申し上げましたわけでございますが、地元住民苦情、陳情等のうち、損害賠償にかかるものにつきましては、自衛隊あるいは米軍の場合は、原因者と責任、こういったものも明確でありますので、従来とも適正な賠償を適宜適切に行なうようつとめてきたわけでございます。このため賠償問題をめぐりまして、いわゆる紛争を生じたという事案はほとんどございません。今後ともこのような処理を行なう考えでございます。  ところで、この損害賠償以外の苦情、陳情等につきましては、場合によっては施設の移転、撤去、あるいは行為規制が要求される場合もあり得ますが、防衛施設の設置というものは、国防上の見地からいろいろの事情を考慮して決定され、行為につきましても、極力国民生活に支障を与えないような配慮をしていくわけでございますが、その任務、態様の特殊性からいって、規制できる範囲がおのずから限界があるわけでございます。そこで、このような防衛施設または自衛隊等の行為特殊性を考慮いたしますと、国防の基本に関するこれらの問題を、たとえ公平な第三者機関にしろ、そのような機関に判断されることは適当でなく、むしろこのような紛争解決によるよりも、先ほど来申し上げておりますところの防衛施設または自衛隊等の行為特殊性に応じたしかたで、迅速かつ適切に処理する方法があれば、それによることが最も適当ではないかというふうに考えるわけでございます。  そこで、このような観点から、私どもは、防衛施設周辺整備法を設けまして、騒音の防止、障害の防止、民生安定施設の助成、基地周辺人家の移転、それから補償などいろいろの措置を講じまして、生活環境改善につとめるとともに、住民の健康につきましても、なるべくその影響が少ないよう措置しているわけでございます。そういうわけで、これらの法律の運用によりまして、今後ともさらに実態的な救済につとめることが国民の要求にかなうものと考えております。  なお、これが運用にあたりましては、都道府県知事あるいは市町村等が、地元の皆さまの意を受けまして、防衛施設庁にこれを反映し、実際上の仲介的な役割りを果たして、このような問題の解決に当たっているわけでございます。また自衛隊等の特定の行為によって生じた事業経営上の特別の措置につきましても、これを補償するとともに、補償金額等につきまして、不服のあるものに対して異議の申し立て制度を設けて、紛争処理を迅速に行なうこととしております。いずれにいたしましても、これらの紛争にあたっては、防衛施設庁という特別の機関がございまして、地区住民の陳情あるいは苦情等については、都道府県知事、市町村が取りまとめまして、これを防衛施設庁に申し入れ、その仲介、あっせんの衝に当たっているのが実情でございます。
  68. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 第五十条の政府案防衛施設等に対する適用除外問題に関連いたしまして、先ほど社会党が対案を出す理由の中でも若干触れたわけでありますが、御質問島本委員御承知のように、公害対策の問題は国民の健康と生命を守るというのが至上命令であるということは、公害対策基本法の論議の際にも政府みずからこれに答弁をしていた経緯がございます。これは産業活動の問題にしろ、あるいは問題になっております防衛関係に関連する問題にしろ、大気汚染水質汚濁騒音、悪臭、地盤沈下等いわゆる公害紛争処理法案で取り扱うべき対象の問題あるいは基本法で提示しておる問題等については、あくまでも国民の健康と生命を守るというのが至上命令であるという立場から紛争処理考えなければならぬ。だとするならば、基地公害問題について、特別に他の立法等もございまするけれども、やはりわれわれが考えておりますような強力な行政委員会等によって、和解仲介、あるいは調停裁定等に持ち込まれる問題については、独立権限を持った公正な立場からこれを正しくさばいていくというのが、まず本来望まれる正規のレールでなければならないというふうに考えております。同時に、この公害被害対象になるような大気汚染あるいは騒音水質汚濁その他の問題については、特に防衛なるがゆえに除外をしなければならぬという特別の理由がないんじゃないかというふうに考えます。もちろん取り扱い上、自衛隊の問題、あるいは在日米軍等、特に在日米軍等国際的な関係の問題については、それらの問題の処理にあたって十分配慮すべきことについては、運営上配慮することは何ら差しつかえないと思いますけれども、しかしいずれにしても、そういう問題について特に除外をするということは基本的に問題があると思いますし、特に公害対策基本法論議の際にも、あるいは政府紛争処理法案を最終的にきめるどたんばの段階において基地公害除外問題が出てきたという経緯にも、私は基本的に成り行きとして問題があるというふうに考えておるところでありまして、本来公害紛争処理については、基地たると産業公害たると都市公害たるとを問わず、この紛争処理法案のレールに乗せるということを基本にして問題の処理をするということが正しい、こう考えております。
  69. 島本虎三

    島本委員 わかりました。  なお、この問題の存するところで、私自身もなお質問しながらも疑念が一つできたわけです。というのは、迅速適切にこれを処理しておる。防衛庁関係のものはいわゆる基地周辺法なりあるいはまた米軍関係はいわゆる特損法なり、これによって迅速適切に手厚くこれを処理する、しておる、こういうようなことでございます。困るのは基地の移転、撤去、こういうようなことになるから困るのである、こういうことのように受け取れたわけです。しかしながら、これは十分やっておるのであり、民生の安短のためには少しも不安のないようにやっておる、こういうような答弁があったわけです。それならば、たとえば騒音であろうと、基地公害といわれるような公審自体に対して手厚く処理しているならば、中に入れてやっても何でもない、むしろそれによって名声を高めることになることこそあっても、逆に困るようなこともないのじゃないのか。ことに公平な第三者機関をもってしてもこれは遭難でないということばがありました。それと同時に陳情や苦情は受けつける、こういうようなことがありました。そうすると、この問題は、国民と国政の上に自衛隊というものをがっしりと置いて、そしてあとは苦情だけ受け付けるんだ、陳情だけは処理してやるんだ、あとは国民である以上言うことを聞くのは当然だ、こういうような考えのようであります。まあ私はここまで質問するつもりではございませんでしたが、いまの答弁の中から、そういうような考え方でいいだろうか。逆に、裏を返すと、それほど手厚くやっているならこの中へ入れても何でもございません、こういうような感を一そう深めたわけでございます。鐘江さん、あなたとは何回もやって、あなたの言うことはもう私はわかっているのでありますけれども、新たに生じたこの疑念に対して一言だけはっきり答弁しておいていただきたいと思います。
  70. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 この問題につきましては、たびたび御説明申し上げておりますように、私どもといたしましては、紛争に至る前の段階で積極的に適時適切に障害の防止、緩和措置を講じておるわけでございまして、基地にかくかくしかじかの問題があるから何とかしてくれという陳情、苦情が持ち込まれた際には、その原因をみずからの手で究明いたしまして、そしてその障害の緩和あるいは除去をすることにつきましては積極的に私どもが従来措置してきたわけでございます。かりに陳情等がございまして、その問題を処理するのがおそいということで、一々第三者機関がこの基地の中に入って原因を究明されるまでもなく、積極的に処理を行なっておりますので、そういう先生がおっしゃるようなことは必要がないというふうに考えております。
  71. 島本虎三

    島本委員 結論は同じです。あなたの答弁があるからこそ、私は社会党のこの案のようにむしろこの中に入れて、特別扱いにはしないで本案の適用対象にしておいたほうがなおさらよろしい、こういうようなことになるのであります。あえて答弁要りません。この問題終わりましたから、あなたはもう帰っていいです。  次に、調査権、立ち入り検査権を持つ専門的な調査機構の問題でちょっと質問させてもらいたいと思います。  これは政府案では「中央委員会に、専門事項調査させるため、専門調査員二十人以内を置くことができる。」こういうようなことになっておるようであります。まあこの「専門調査員二十人以内を置くことができる。」ということ、これは非常勤であるということ、こういうようなことがありましたが、これは常設の機関でなければならないのでありまするけれども、これはもうはっきりこの問題に対しての解明がないようであります。非常勤であるということになると常設の機関ではない、こういうようなことに相なろうかとも思います。この点がはっきりしない点でありまするけれども、事務的な点としてこれはどういうふうなことになっておりますか、ひとつ解明を願っておきたいと思います。  なお、そのあとで——これは時間の関係上であります。公害紛争処理法案の社会党案によりますと、当然これは国の公害審査委員会に職権で証拠調べ、それから証拠保全立ち入り検査などを行なう権限を与えるとともに、同委員会のもとに五十名の科学者からなる専門調査会を常設し、因果関係の早期徹底究明に万全を期す、こういうようなことになっておるようであります。そうすると、先ほどの答弁を聞いておりますと、政府側は逆にこのこの社会党案のような実施をしたほうがよろしいというふうに私は前者の質問に対する答弁を聞いておったのであります。しかし、この点等につきましては、やはり依然として政府案の中には十分でない点が見られるわけでありまして、この点は政府側の答弁からすると角屋案によるほうがよほどよろしい。その意を体してやっているのが社会党のこの紛争処理法案である、こういうふうなことになるような気がして私はならないのでございます。いま言った点について事務的に政府当局からのひとつ解明を願いたいということと、あわせてそれに対しましての角屋議員の提案者としての御説明を賜わりたいと思うわけであります。
  72. 青鹿明司

    青鹿政府委員 専門調査員を置くことができるというような、当委員会の御修正の点を織り込みまして、政府もこれによって今回提案をさせていただいたわけでございます。その点につきまして、どういう形でもって専門員を償いたらよろしいかという点でございますが、御指摘のとおり、確かにこれは常時置いておるものではございません。置き得ることにいたしまして、事件ごと専門員を任命するということであります。なぜかと申しますと、やはり公害紛争の態様もいろいろでございますから、その事件、事案に応じまして適当な方を事件ごと専門調査員として任命しまして、その能力を活用してまいるということが適切であろうというふうに考えておるわけでございます。
  73. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 いまの議論の点でありますが、これは社会党案の場合は、第十六条以降第二十四条までの条項に関連する点でありまして、島本委員も十分御承知のように、社会党案は「設置」については「審査委員会の所轄の下に、公害専門調査会を置く。」というふうにいたしまして、専門調査会のほうは社会党案では第十八条で「専門調査会は、委員五十人で組織する。」ちょっと政府案と変わっております点は、社会党案では、この五十名以外に必要によって別に臨時委員を置くことができるわけですけれども、それも含めて委員及び臨時委員は、社会党案の場合も非常勤という形をとっておるわけであります。しかし、この社会党案の場合は、単に専門調査会を五十人で組織し、あるいは臨時委員も設けることができるようになっておるのみならず、さらに第二十二条あたりのところに参りますとわかりますように、専門調査会はそれぞれ部門別に部会を置くことにいたしまして、その部会の委員及び臨時委員を会長が指名をするというような形で機動的に動けるような体制を常時とっておくということを考えております。また、先ほどの御質問の経緯の中でありました国家行政組織法の三条、八条との関連で、われわれの場合には事務局が置かれるわけでありますから、したがって、第二十四条では「庶務」といたしまして、「専門調査会の庶務は、審査委員会の事務局において処理する。」という形で、いずれにいたしましても、この専門調査会が絶えず機動的に動けるように、また内容的にも部会等を設置して対応できるように、そういう常置体制をつくるというところが、政府案とわが党案と違っている点かと承知しております。
  74. 島本虎三

    島本委員 よくわかりました。  それで副長官もせっかくいらっしゃっておりますけれども、先般公害関係を扱っておる裁判官だけで会議を開いた。その結論として最近紛争処理をはじめとして上がってくる案件に対して、行政的な問題だけじゃなく専門の科学的な知識も必要なんだ。したがって、これは現機構の中では長引くし、せっかく今後早くやろうと思えば、また双方合意の上でなければならないような条項等ありまして、これはなかなかうまくいかないんだ。今後の案件として、国際公害シンポジウムのあとでまた行なわれた公害関係を扱っておる裁判官会議、こういうようなものの結論も出ておるようであります。  そういうようにして見ますと、なおさらこういうような問題に対しまして常置の機関で専門的にこれをやる、いわば科学者からなるこういうような機関も置いて常時これに当たらせるようにするのでなければ、裁判のほうを幾らやっても長引くだけだ。これは紛争解決のためにも、またしいていうと、早くこれを国民のために解決してやるためにも、現在のような機構だけではだめだということははっきりしているわけです。したがって、そうなりますと、いまおわかりのとおり、政府案では二十名以内を置くということができるのであって、非常勤のものであって、これは常設機関ではないのでありますから、これによって多様化するこれに当てていくということに対しては、やはり政府側ももう一考しなければならない点があるのじゃないか、こういうように私、思うわけであります。これは前からずっと議論してきてようやくここまで到達した段階でありまして、あともう一歩でございますから、この点は強く考えておいてもらいたい、これは前向きに対処するような決意を表明しておいてもらいたいと思うわけであります。
  75. 湊徹郎

    ○湊政府委員 ただいまお話がございましたように、最近公害の問題については、アメリカなんかでもニクソンが教書の上で取り上げる、さらに国際シンポジウム日本で開かれるということで、公害問題そのものについて、これはもう広範な社会問題であり、同時に政府としても積極的に取り組まなければいけない問題であることは、もう私どもも重々承知しております。  そこで問題は、先ほど角屋さんから話がございましたように、三条機関にする、それから裁定制度をとる、これは非常に強力な形になるわけでありますが、その白と黒をきめる、勝ち負けをきめる、何が正しいかをきめるという問題と同時に、その結果に基づいて一体どういうふうに処置をするか、どういう対策をとるかという問題がからんできますと、なかなか一つの行政委員会をかりに設けましても、そのワクの中だけで逆に万全の措置がとりにくい事情も実際問題としては生じてくると思います。そこで、総理大臣の統括下において、実際の実施部隊である各省等をコントロールしながらやることのほうが実態的にいいのではないか、こういう判断から私どもも政府提案のような案を固めたわけでございます。  いずれにしろ、このほかいろいろそういう公権力を行使する機関がいままで置かれてまいっておりますが、一例を申しますと土地調整委員会。これは終戦直後の事情に基づいて、鉱業権と農地等との調整を要する案件が非常にございました。ところがいまは、十年間にたしか二件ぐらいしか処置の実績がない。これはもう準司法的な強力な機関、しかも常設の委員を置いてありますが、十年間、失礼な言い方ですがほとんど遊んでいる、というと言い過ぎでありますけれども、それに近いような運用の実態を持っているということで、公害があるということと、それを実際にこういう委員会を利用して解決しようということ、この二つの間には必ずしもずばりの直の関係もございませんし、実態に即した処理をはかりながら、たぶんこの前の国会でも政府委員のほうからお話があったと思いますが、だんだんこういう制度を定着さしていきながら望ましい方向に考えていく、こういうふうな態度で処置をしたいと思っております。
  76. 島本虎三

    島本委員 いま大事な点に触れました。政府案で置く中央公害審査委員会は単なる総理府付属機関であって、独立の行政機関たる権限がないけれども、すべて内閣総理大臣が公害対策会議の会長をして、それによって各省を統括してやるのであるから、これによって実があがる、こういうような考えなのです、総理大臣はじめ皆さんの考えは。そういうふうにするから、いわば国家行政組織法八条によるほうが三条によるよりも強力な措置ができるというのであります。  ところが、社会党案のほうでは公害審査委員会、これは中労委だとか、公正取引委員会のような省庁並みの権限を持つ独立の行政委員会、こういうようなことにして、加害者責任を徹底的に究明できるようにしてやりたい、準司法的な機関、それに対してまたりっぱな研究機関も持っておる、調査機関も持っておる、こういうようなものにしておきたい、おけばよろしい、こういうようなことであります。  それで、いまいろいろなことが申されましたが、いま裁判関係になっているような事件がほとんどまだ解決しておらない。それぞれ、またそれに移行しないものも、紛争が起きてまだ絶えておらない。水俣病しかりであります。そういうようになってみますと、いかに八条機関でやっても、これはいまもうすでに公害基本法ができて三年以上、四年にもなっておるのに、これはまだ一つだに解決されない、一つぐらいあるかもしれませんけれども、ほとんど解決されないというのが実情。これはやはり機構の中にあるということ。これは私が言うのではないのです。日本弁護士会のほうではっきり言っていることを私、申し上げます。その中にはいわゆるこの三条機関、こういうような合議制の機関、公正取引委員会だとか、いまおっしゃったような国家公安委員会だとか、また土地調整委員会であるとか、首都圏整備委員会であるとか司法試験管理委員会であるとか公安審査委員会であるとか、または船員中央労働委員会または中央労働委員会、公共企業体等労働委員会、こういうようないろいろな三条機関があるのです。それぞれ動いているのです。中にはあまり動いていないものもあるのです。それが日弁連のほうではっきり言っているのは、現在ある三条機関、この中のほとんどのものがなくてもいいようなものであるけれども、このうちの特定なもの、またはこれからできんとするこの公害紛争処理の機関、これだけは三条機関でなければならない、このことをはっきり言明しているのであります。そうすると、皆さんの考えとは、現行の問題として弁護士会が扱っている問題とだいぶズレがあるのであります。私はそれを見る場合に、やはりこれは社会党の言う三条機関にして、直ちにこれが活動し、国民の健康と生命を守るために十分手厚い処置をすることができるようにするための機関としたら一番いいのじゃないか、こういうように思うわけなんであります。これは角屋議員のほうから、いま言った私の質問内容に触れてけっこうでございます、ひとつ三条機関にすることの確信をここに御披瀝願いたい、こういうふうに思うわけであります。そのあとからあなたも言ってもけっこうであります。
  77. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 島本委員も御承知のように、この三条機関か、八条機関かという問題は、単に公害紛争処理法案の論議として提示されておるのではなくて、これは公害対策基本法の論議をやりましたときにも、ずいぶんたくさんの省にまたがっておる公害の問題を一元的に強力な独立機関で処理していくということが、公害の予防、公害の排除、あるいは公害救済という立場から必要であるというのは、私はやはり世論の大勢であったと思います。したがって、社会党の場合には、公害対策基本法の中に設ける公害対策委員会について、三条機関提示を行なった経緯がございます。そういう公害対策基本法の論議以来の機構考え方として、三条機関によるべきであるというのを受けて、今回の公害紛争処理法案においても同様に、紛争処理にあたっては第三条機関紛争処理機関を設けるべきである、こういう立場をとっておるのでありまして、政府案は、公害対策基本法の当初以来、そういう世論の大勢をくみ入れることなく、きわめて不十分な形の機構としてすべり出したところに基本的に問題がある、こういうふうに承知をいたしております。  なおまた、いま湊さんから御答弁のあった中で、他の第三条機関裁定その他の問題について、十年間で何件しかなかったというふうなことを例にあげられましたけれども、日本公害の今日の現状、あるいは今後の展望を見ます場合に、これはいま例示にあげられたものとは性格を基本的に異にすることは御承知のところだと思いますし、同時に、紛争処理の方法として政府の場合に、仲裁をとる場合に、一方から申し入れる場合には合意が必要だということで、はたしてそのまま仲裁に上がってくるかどうかということについても、御承知のように論議が存するところでありますので、社会党の場合の裁定は、双方もしくは一方の申し入れで裁定の路線に上がってくるということでございますし、しかも、裁定に上がるような案件については、先ほど来の御質問専門調査会整備あるいは十分な権限の付与ということと相まって、因果の究明その他についても十分やはり納得のいくような方法を通じて裁定を下すという形をとっておりますから、したがって、私は今日の日本公害紛争現状、あるいは将来展望から見て、社会党案がもし受け入れられるならば、こういう方法によって問題が正しく処理できるだろう、こういうふうに確信をいたしておるわけであります。
  78. 島本虎三

    島本委員 それで、この最終段階の手続になりまするけれども、この仲裁でも双方合意でなければならないし、これはもう裁判に移行をすることはできないというように政府案でなっているようであります。社会党案は、被害者の申請によって制度の適用を可能にしているようであります。こうしてみます場合には、やはり現在の公害多様性とあわせて迅速性を要求されますから、当然被害者の申請による制度の適用というほうが、先ほど政府側が述べられましたように、可及的すみやかに、そしてこれは適切にということばそのまま受け入れるとすると、これはやはり被害者の申請による制度適用のほうが妥当なんじゃないか、当然、こうなりますと、社会党提案のほうがより一そう現実的なものであり、実情に即した考え方だ、こういうようなことになるのであります。最後には、この仲裁を受けると裁判に移行できない、こういうようなことになりますと、これはなかなか問題点があるのじゃないか、こういうように思うわけであります。まして双方の合意の上でなければだめだという点、そうなりますと、これは急いでやろうとしても、不利な人は合意しないということになったら、いたずらに受けられないことをここに看板として掲げたにすぎない。また、それをやると、悪い条件仲裁案が出されても、それに対して文句を言うことはできない、こうなってみたら、現実の問題として公害対策を適用した処置じゃないということになってしまう可能性がないかどうか。ここが心配なんであります。まあ、角屋議員並びに政府委員政府側の答弁、これもひとつはっきりこの点疑念があるのかないのか、聞かしてもらいたいと思うのであります。
  79. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 社会党案の第一条の「目的」にも明らかなように、第一条では、「この法律は・公害に係る紛争について、和解仲介及び調停制度を設けてその迅速かつ妥当な解決を図り、これらの制度によっては解決が困難な事案について裁定制度を設けてその公正な解決を図ること等を目的とする。」こう書いてありますように、本来公害紛争等についても、迅速かつ妥当な解決というのは望ましいと思うのですけれども、因果関係究明その他で、そう短期間でいかないような事案も、私は相当にあろうと思います。今日までの経緯から見ても、そういうことが十分判断をされるわけでありまして、和解仲介よりは調停制度でできるような事案と、因果関係究明その他で十分——十分といいますか、相当期間を要するような問題とに分かれてくると思います。そういう因果関係究明その他でむずかしいような問題については、やはり裁定制度に上がっていく、これは若干の期間がかかることはある程度やむを得ないというふうに判断いたしております。  同時に、そういう場合にせっかく裁定制度を設けても、これは一方から申し入れる場合に他の合意ということになると、なかなかこの爼上にのぼってこない、この制度が活用されないということでありますので、われわれは一方からの申し入れで裁定制度の発動ができるように整備する、こういうふうにいたしておるのでありまして、先ほども申し上げましたように、政府仲裁制度は、一方から申し入れの場合も他の合意を必要とするというところに、はたして仲裁制度が十分発動するのかどうかということにも疑念なきを得ないのでありまして、本来被害者と加害者というのは、利害対立するというのが基本的条件でございましょうから、加害者仲裁制度に移行することについて拒否すれば、仲裁制度は発動しない、そういうケースが多いだろうということで、せっかく仲裁制度を設けても、これが活用されない条件のほうがケースとして多くなるのじゃないか、政府案でいけば。それではこういう公害紛争処理法案を設けても十分な成果を得ないという結果になるだろう。やはり単に裁定制度をとるか、仲裁制席をとるかというだけでなしに、一方もしくは双方の条件をどう考えるかということも、同時並行的に考えなければならぬ問題の一つだというふうに判断をいたしております。
  80. 湊徹郎

    ○湊政府委員 いろいろお話がございまして、一つの考え方として裁定ということも、これは当然あり得るとは思いますが、いままでの実態から申しますというと、多くの場合、何といいますか、たとえば行政処分等があって、それに対して異議が出て、それを裁定するとか、あるいはその損害賠償、その金額をきめるために裁定をするとか、きわめて単純——単純と申しますと、おかしいのでありますが、その種の場合に裁定制度というのは多く用いられておるわけであります。  そこで、この公害の場合、それぞれ大気汚染大気汚染水質保全水質保全騒音規制騒音規制というふうに、それぞれ単行法がございまして、午前中の質問にもございましたように、それぞれの環境基準あるいは水質基準、つまり公害問題をきめるきめ手になるものさしそのものをつくること自体に現在非常な問題があって、一刻も早くそれをやっていこう、こういうことでありますから、実際に裁定する場合の具体的なものさし、こういうことになりますと、水質に問題がある場合は、それぞれ単行法に基づく行政庁の処置とか、いろいろな問題が先行いたします。そういう処置に対して、それをどうおさめるかというふうなケースもあり得るわけでありますし、それからすんがりこの委員会のほうに話を持ってくるというふうなケースもございますし、しかも、その中身が単純に賠償の金額をきめるということでなしに、いろいろな改善措置、場合によっては操業の中止、あるいは工場を移転してほしいというふうなことになりませんと解決しないケース等もございましょうから、そこでその裁定という形は実際上なかなかむずかしいのではなかろうか、こう私どもは考えておるわけであります。  それから、仲裁に関して申し述べますと、中央建設工事紛争審査会、これが建設省所管でございまして、年間相当な件数がございます。これもやっぱり仲裁ということで、仲裁当事者合意、こういうことが前提でございますから、さっき話がございましたように、まず仲裁に入る前に仲裁契約、これによって合意ができる。したがって、裁判の手続等はその仲裁合意がございますと、まあ利用されない、こういう形になるのでありますが、同じような建設省の審査会の場合、大体二〇ないし三〇%くらい実際問題として仲裁利用があるようであります。したがりて、この制度も定着をしてまいりますというと、相当利用されるのじゃなかろうかと私どもは判断をしておるわけであります。
  81. 島本虎三

    島本委員 先を急ぎます。  政府案によりますと、手続の公開の問題では調停仲裁の手続内容は原則として非公開としてあるのであります。社会党案はこれはどういうふうになっておりますか、この手続の公開の点に関してのみひとつ解明願いたいと存じます。
  82. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 条文をごらんになればおわかりになるわけでありますが、和解仲介の点については、第三十八条のところに、「仲介委員は、当事者双方の主張の要点を確かめ、事案が公正に解決されるように努めなければならない。」こういうふうな形の文章になっておりまして、「調停」のところは、わが党案の場合におきましても、第四十六条のところで、「手続の非公開」ということで、「調停の手続は、公開しない。ただし、調停委員会は、相当であると認める者の傍聴を許すことができる。」こういうふうになっておりまして、傍聴は調停委員会が相当であると認める場合に許すことに相なっております。  それから政府案仲裁に対して、わが党案では、裁定をとっておるわけでありますから、この態様が基本的に性格が違っておるわけでありますけれども、裁定の場合については、第六十七条のところに、「審理の方式」として、「裁定手続における審理は、口頭審理による。」2といたしまして、「審理は、公開して行なう。ただし、審査委員会規則で定める場合は、この限りでない。」こういうふうになっておりまして、政府案のようなすべて非公開をたてまえとするような方式を必ずしも社会党としてとっておりません。裁定の場合は、いま読みましたように、公開であります。  また調停の場合においても、調停委員会が認める場合には傍聴を許すというふうな形で、公害の社会的な性格から見て、できるだけやはり公開を原則にすべきだと思いますが、和解仲介あるいは調停というふうな話し合いのルールの性格等を十分に織り込んで、全くの公開であるという形は必ずしもとっておらないことは、御承知のとおりであります。
  83. 島本虎三

    島本委員 よくわかりました。  それで、地方公害苦情処理機関についてでありますけれども、政府案では、都道府県、政令市は、公害苦情相談員を置き、これが「住民相談に応じ、その処理のために必要な調査その他の事務を行なう」、こういうようなことのようであります。調査とその他の事務を行なう。社会党案によりますと、都道府県、政令市に公害苦情相談員を置いて、これが「住民相談に応じ、あっせん、助言及び指導をし、並びに必要な調査をする」、また必要があると認めるときには、関係行政機関に対して、「立入検査、改善命令等の措置を講ずべきことを勧告することができる。」ということになっております。  そうすると、下部末端は、まさにこれと取っ組んでいる機関であり、実行機関でありますから、そういう機関に対して簡単に「調査その他の事務」というようなばく然としたものを与えては、これはやりようによってはいいかもしれませんが、往々にして画竜点睛を欠くような結果を招来するのではないかと思います。その点には、立ち入り検査改善命令の、こういうような措置を講ずべきことをはっきり勧告する、ここまで具体的にやるのでなければ、いま政府が初めに説明されましたように、この対策の実をあげるということからほど遠いことになりはせぬか、こういうふうに思うのです。したがって、政府説明どおりだとすれば、地方公害苦情処理機関は、社会党案でやるほうがより具体的であり、より実効をあげる機構だ、こういうようなことに相なろうかと思います。これについて角屋議員並びに湊総理府副長官の御高邁なる御意見を承りたいと思います。
  84. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 いまの島本さんの御質問の点は、これはわれわれ社会党案等の対案に対して、折衝の経過に基づきまして、政府案第四十九条の「苦情処理」として、修正を具体化した点に関する問題であります。  いま御指摘のように、政府は修正を受け入れた結果、再提案されました第四十九条の点では、いわば公害苦情相談員の権限というふうな点については、必ずしも私どもの党案から見て十分なものではないということは、いま御指摘のとおりであります。本来、都道府県にいたしましても、あるいは政令で定める市にいたしましても、公害苦情相談員を置く、あるいはそれ以外のところにおいても苦情相談員を置くことができるということで苦情相談員を置いた場合には、企業相手でありますから、やはり明確な権限をはっきりして、苦情相談員が働きやすいようにするということは、立法機関としても必要なことだというふうに思います。  どの程度の権限を与えるかという点については、特に政府案とわが党案の違うのは、わが党案の場合でいえば、八十六条を受けて、八十七条の「関係行政機関に対する勧告等」ということで、「公害苦情相談員は、前条第三項の職務を行なう場合において、必要があると認めるときは、権限を有する関係行政機関に対し、立入検査、改善命令等の措置を講ずべきことを勧告することができる。」また第二項において、「公害苦情相談員は、前項の勧告を行なったときは、その旨を公表しなければならない。」と書いてありますが、要するに八十七条の苦情相談員の権限というところが政府案とわが党案の差異でございまして、性格は、「都道府県及び政令で定める市に、公害苦情相談員を置く。」その他の市にも「置くことができる。」ということであって、置く場合には、やはり八十七条の権限を与えることが、公害の性格から見て望ましいというふうに考えたわけであります。
  85. 島本虎三

    島本委員 ……
  86. 加藤清二

    加藤委員長 答弁はいいのですか。あなた、湊さんと両方とおっしゃったから……。
  87. 島本虎三

    島本委員 いいです、わかっていますから。  いろいろ対比してみますと、やはり現在の公害に対する紛争処理機関として、これを一そう実効をあげるためには、政府案そのものももう少し考えなければならないということが一そうよくわかってまいりました。と同時に、社会党案もまだ意を十分尽くせないまでも、せめてその辺まで現在やらなければ、現在の複雑多様をきわめている公害に対する紛争処理には適当じゃない。こういうようなこともよくわかったわけであります。せっかく湊副長官はじめ、その努力のほどはよくわかりますが、内容そのものは、今後十分検討されまして、ひとつ一そう国民のためにいいような法律にしなければならない、こういうように思うわけでございまして、今後いかにするか。——なお私自身もいままでの回答で、たとえば軍事基地を除外する問題であるとか、またはいままでないような非常勤常勤の常設、こういうような問題等についてまだまだ答弁は不十分である。またこれに対して、全然私は納得することができない、こういうような点が多々あるのであります。しかし、きょうは、せっかく皆さんの努力がございますけれども、肝心の大臣も来ておりませんので、他日この問題で国民のためにはっきり詰めておきたい、こういうように思いますので、一応努力を多として、今後の一そうの御奮闘を心から期待して、私はきょうは終わらしてもらいます。これで納得したものではありませんから、全面的にこの次にまたやらしてもらうことをここにはっきり留保しておきます。  私は終わります。
  88. 加藤清二

    加藤委員長 次に、土井たか子君。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 先ほどからの質疑応答で、公害紛争処理法案をめぐる主要な問題点はほぼ明らかにされたわけでございますが、私は、国民の命と暮らしを守るために公害をいかに追放するかという問題が、いまや国民の重大関心事になっておりますおりから、国民の期待にこたえるだけの法案内容にこの公害紛争処理法案をしたいという意欲を持っているわけでございます。そういう点から、公害防止のための効果をも、この公害紛争処理法案を通じてあげることができるなら幸いでございますし、少なくとも、すでに引き起こされてしまっております公害の除去とその救済について十分効果を発揮するものでなければ意味がないと存じます。特に公害被害者を救済することが、この法案の眼目として生きていなければならないわけでございますから、この根本問題にどれだけ配慮しているかが実は重要課題であると存ずる次第でございます。この点から考えてまいりまして、政府案はこの根本問題について、本気で十分に取り組んでいらっしゃるかどうか、この点を私考えますのに、幾ばくかの疑惑を感ぜざるを得ないわけでございます。  以下、この政府案につきまして、根本問題について二、三お尋ねを申し上げたいと思います。  まず、第六十一国会当時、この公審紛争処理法案をめぐって国会で論議をされておりますさなか、これは一つの社会問題としてたいへん注目を集めたわけでございますが、その当時に日本弁護士会が公害紛争処理法案に対する意見書を発表いたしておりまして、その中では御承知のとおりに、「公害紛争処理機関は、準司法的性格を持った独立の行政委員会とし、単に調停仲裁を行うばかりでなく、何等かの形に於て審判権又は裁定権を持つものとしなければ実効を期し難いと考える。」というふうな意見が中に出ているわけでございます。そうしてこの委員会の組織機構考えていった場合に、その独立性、公正の担保について十分な配慮が必要であるという見地から、その裁定に対しては制度上司法裁判所の最終的判断を受けしめるものとしなければならないという注意を促しているわけでございます。  そういう点から、先ほどから問題になってまいりました三条機関でなければならない、国家行政組織法三条機関的性格を持つものでなければならないという問題が、この紛争処理機関をめぐって論議されてきたわけでございますが、その六十一国会の衆議院の附帯決議の中で、やはり社会党が出しました附帯決議として、公害紛争が多くの場合公害発生源の明定、因果関係究明などに複雑困難な公害固有の特殊性があるということを考えまして、今後裁定制度の採用などと国家行政組織法三条機関への移行を前向きに検討することということをはっきり確約しているわけなんでございます。  そこで、今回のこの政府提案法案内容を見ますと、四条の一項に「調停及び仲裁を行なうこと。」とございまして、ここには裁定ということが省かれてございます。おそらく裁定を行なうことという項目を入れるにつきましては、やはり三条機関でなければできないというふうな認識が背後にあるやに私は考えるわけでございますが、この三条機関でなければ裁定という機能を発揮し得ないのかどうか、裁定ということを問題にする以上は、裁定機関でなければならないという前提があるのかどうか、その点についてまずお伺いをしたいと存じます。
  90. 青鹿明司

    青鹿政府委員 三条機関でなければ裁定ができないかという点でございますけれども、行政機関を三条機関として位置づけるか、八条機関として位置づけるかという問題は、先ほども副長官のほうから御答弁申し上げましたように、機関の行ないます職権行使の態様なり、事務量なりということから判断されるわけでございまして、先に三条か八条があるのではなくて、むしろ裁定をやるかやらないかということが実際的な判断としてまずございまして、そうした機関であることを前提にどう位置づけることが適当かということになろうかと思います。三条機関でなく、八条なるがゆえに裁定をやらないということではございません。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、三条機関、八条機関ということにかかわりなく、裁定という問題は別問題として考えていくということが許されるわけでございますね。
  92. 青鹿明司

    青鹿政府委員 裁定を所掌の事務とするかどうかということは別問題でございます。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 といたしますと、この八条機関という認識に立ちましても裁定を認めるということはできるわけでございますね。
  94. 青鹿明司

    青鹿政府委員 先ほど副長官から申し上げましたように、権限行使の形の強いものは比較的三条機関になじむというような御答弁を申し上げたと思うのでございますが、裁定というのが、やはり裁定機関の判断で、当事者を一時的にせよ非常に拘束する形になるわけでございますから、権限行使の形ではかなり強いものになると思います。この場合に、一体三条機関であるか、八条機関であるかということでございますけれども、比較的三条機関的な性格が強くなろうかと私は思いますが、さりとてそのときに、これは八条に位置づけるのか、三条に位置づけるのかというのは、行政組織上の問題といたしまして、また別途の検討が要ろうかと思いますけれども、裁定をやる機関ということになりますと、比較的三条機関になじみやすくなるという感じがするわけでございます。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 どうもその点の御答弁が私には釈然としないわけでございますが、この前の六十一国会の附帯決議の中に、三条機関へという方向で前向きにという決議がございます観点から考えまして、今回法案の中にこの裁定ということが入れられなかったのは、おそらくは、三条機関に対する認識にまだ持っていくことができないというふうな御配慮があってかに私は感ずるわけでございます。  そこで、ああいう附帯決議の結果、この第六十三国会までの作業内容で、八条から三条へということに対する認識がどのようにお変わりになったか、またそれに対して、三条機関ということに踏み切れない何らかの障害があるのかどうか、その辺について少しお尋ねをいたしたいと思います。
  96. 青鹿明司

    青鹿政府委員 行政組織法の位置づけの問題でございますので、行管からお答え申し上げるのが適当かと存じますけれども、私どもの考えといたしまして、協議していることを申し上げるわけでございますが、三条機関にするか、八条機関にするか、特に合議制の機関につきましては、その事務の量なり権限行使の態様なり、その独立性なりによって判断されておりまして、比較的事務の量の多いもの、職員の数の多いもの、あるいは職権行使の態様のきついものというのが従来三条機関とされておるわけでございます。また八条の合議制機関の中に、諮問的、調査的なものから、かなり強い権限行使を行なうものまで、各種各様でございます。  この限界が一体どうなるのかということでございますけれども、やはりそのときどきの行政組織に対する、政府の極力これを簡素化したいという別の政策要請もございまして、基本的な考えはただいま申し上げたようなことだろうと思いますけれども、具体的な位置づけがきまってくる。  そこで、私ども公害紛争処理法案を立案することにつきまして一番懸念いたしますことは、この公害審査委員会が十分その職権行使が可能なような実態的な裏づけを持たせるということにあるのでございますが、具体的に申し上げますと、一つは委員会の独立性、中立性というものをいかに確保するかという問題それから紛争解決に当たりまして具体的な事実を明らかにする等のため、立ち入り検査なり、あるいは出頭の命令権なり等を持たせる必要があるのではないかということでございます。  前の問題につきましては、総理大臣の所轄のもとにということで委員長並びに委員は独立して職権を行使することになっております。委員の任命は国会の御同意を得ましてやるということに扱いをいたしておるわけでございます。  また立ち入り検査、出頭命令権については、調停については出頭の命令、それから一部の調停仲裁につきましては、立ち入り検査あるいは物件、文書の提出命令等ができるようにいたしまして、極力公正妥当な判断ができるように、権限的な裏づけはやったつもりでございますので、そういう実態的な裏づけがございますならば、たとえ八条機関であっても、職務の遂行に支障はないというふうに判断いたしたわけでございます。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 ただいまの御説明の限りでは、私も理解をいたすわけでございますが、一般的に考えまして、八条機関よりも三条機関のほうが、独立的に行政機関としての職権を行ない得るということが明らかである限りは、公害紛争に対して公害を除去するために、あるいは紛争をすみやかに処理するために、より権限行使が具体的に広範に強く発揮できるという、そういう機関を要求されるんじゃないかと私は思うのです。どうして三条機関として認め得ないのかというふうなことに対する御説明をなすっていると思うわけでございますが、なおかつ先の見通しといたしまして、これは当局として、これからやはり三条機関へというふうな構想でもっていろいろな具体的な作業あるいは検討をお進めになるかどうか、その辺について少し私ははっきりとお伺いをしておきたい気持ちを持っております。
  98. 青鹿明司

    青鹿政府委員 三条機関、八条機関の位置づけをいかにするかということは、取り扱い上なかなかむずかしい問題が御指摘のとおりあるわけでございまして、この点、行政組織法上の問題としてどう解決をし、またどういう考え方でいくべきかということは、これは別途の問題として政府部内でただいま検討しておるわけでございます。したがいまして、そういう検討の成果等もにらみ合わせまして、この中央公害審査委員会をどう扱うか、将来の問題としてあらためて検討する機会があるのではないかというように考えております。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 あらためて検討なさる機会ということではなくて、やはりこういう問題に対しては常に努力を払っていただくということを、私は特に御要望申し上げたいわけでございます。どうかそういう点で——いままでにも努力をお払いになった点を私も認めることにやぶさかではございませんが、今後一そうの御努力をこの点に対してしていただけますように、私はお願いを申し上げたいと思います。  さて、先ほどから問題になっております裁定の問題でございますが、調停によりますと、これはやはり当事者間の意見の一致ということがどうしても必要になってまいりまして、一般的に見た場合に、調停内容に不服でございましても、被害者側がそれに一応承諾をするということをした以上は、それで、はいそれまでよで事は終わってしまうわけでございまして、正規の裁判に訴えるということはもはや道が閉ざされるわけでございます。多くの場合は、被害者側が、実は経済的な面から申しましても、組織力の点から申しましても、弱者の立場に立つ場合が多うございまして、意を尽くしていろいろ調停に当たるということができかねる事情も多々あると思います。また、調停内容がたとえ少々不服でございましても、経済力が及ばない、組織力を持たないというふうな点から、間々これに対して同意を与えてしまうというふうな事情もあろうかと思います。しかも、なおかつ一たん同意をこれに対してしてしまいますと、後には正規の裁判を受けるという道も閉ざされているわけでございますから、そういう点を、極端な表現をして申しますれば、被害者は泣寝入りというようなことにならざるを得ないような場合も起こり得ることを想定しなければいけないというふうに私は考えるわけでございます。そこで、裁定というふうなことは、これはやはり後に正規の裁判過程に訴えていくという道が開かれているという点についても私は評価をしなければならないと考えているわけでございますが、特に裁定をここで問題として入れられなかったといういきさつについて、少し御説明をちょうだいしたいと思います。
  100. 青鹿明司

    青鹿政府委員 裁定を取り入れるか取り入れないかが主要な争点の一つであることは、御意見のとおりでございます。ただ、当該の紛争が民事上の争いでございまして、究極的な解決は司法手続によらざるを得ないということは申し上げるまでもない点であろうと思います。  それで裁定制度を取り入れまして、裁定判断が加えられた後に当事者合意いたさなければ、結局司法手続に移行せざるを得ないということになるわけでございます。それで木制度を私ども考えましたときに、現行制度にどこに一体問題があるのかという点をいろいろ検討したわけでございますけれども、一つは、先ほど副長官から御答弁申し上げたように、単行法にいろいろ和解仲介制度がございますけれども、これだけでは制度不備である。それでもってできないときはどうなるかと申しますと、制度として民事訴訟なり民事調停にいかざるを得ない。そこで問題になりますのは、やはり公害紛争特殊性と申しますか、当事者が非常に数が多い、あるいは困果関係究明がむずかしい。挙証も困難であるというような事情から、裁定に移りましてもかなりの時間を要して迅速な解決が期し得ない。これを補完するにはどういうような仕組みがよろしいかということでございますけれども、やはり紛争当事者が忌憚なく話し合って、合意の上でもって解決する道を開くことが一番現実的であり、適切ではなかろうかという配慮のもとに、その仕組みを考えたわけでございまして、和解仲介のほかに、調停仲裁合意を基礎といたしておりますから、当事者合意によって、こういう仕組みで極力解決を促進するということにいたしたわけでございます。  裁定は、何と申しましても当事者の一方の申し立てでもって裁定機関が判断を下せば、一時的にせよ当事者を拘束することになるわけでございますけれども、納得のいかない限りは、また司法手続に移行せざるを得ないということになるわけでございますので、当面一番制度的に足りない点は、やはり当事者双方がお互いに話し合って円満な解決を極力求めるというふうな仕組みを導入することが一番現実的であろうということから考えますと、裁定制度はいま申し上げましたような趣旨からいうと、なかなかなじみにくいということで、仲裁調停制度を導入するということにいたしたわけでございます。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 私は、何も調停がだめだとか、仲裁がだめだなんという意味で申し上げているのではなくて、調停もけっこう、仲裁もけっこう。しかしながら、調停仲裁の中になお欠陥、不十分な点があるのならば、その点を補うことのための制度というのは、この際はっきりと認めていっていいんじゃないか。こぼれる水をすくう、これはやはり大事な問題だと思うのです。こぼれた水はこぼれっぱなしというのでは、これは被害者としても救済が不十分だということになるわけでございまして、こぼれる水をすくうというような意味から考えましても、調停でまかないきれない、仲裁ではなおかつまかないきれない残ったところの欠陥を、なおかつ救済していく道はないものか。そういうふうな道から考えまして、裁定というふうなことをここで問題にしていくという側面は、私もたいへん重視されなければならない点ではなかろうかと考えているわけでございます。特に、先ほどの御答弁の中にございました、最終的には民事裁判に訴え出なければならないというようなことからいたしまして、御承知だと思いますが、先ごろ三月十二日から全国初の公害担当裁判官会同が最高裁判所で催されました。その席で活発な意見が出たわけでございますが、この公害に関する訴訟は、企業など加害者側に民法の七百九条の故意、過失があり、そのために被害を受けたという形で起こされているわけですが、現行法では被害者側が企業者側の過失を立証しなければならないたてまえに一応なっている。この点考えていったら、経済力、資金、専門知識、組織力、すべての面から考えて弱い立場にある被害者、原告ですね、原告側が因果関係を立証するというのはきわめて困難で、企業の厚い壁はなかなか破れないのが実情であるから、被告側、企業者側に立証責任を求めていくということが好ましい姿ではなかろうかというふうな意見も出ているわけでございます。  そういうふうな観点からいたしまして、これは被害者側に重点を置いて考えて、被害者側救済ということをやはり課題の中心問題というふうに考えて取り組む姿勢が、この法案考えた場合にも大事なポイントだというふうに私は思いますので、この際やはり裁定という制度が抜けてしまっているということに対しては、不満を感じざるを得ないわけなんでございます。  で、いまこの裁判官の公害問題を取り扱っている方々の集まりでの御意見であるとか、あるいは弁護士会を通じてのこの問題に対する意見などは、およそやはり弱者的立場にある被害者側に立って問題追及という点が非常に強くなってきているわけでございますし、また私はそれはしごく当然のことだというふうに考えるわけでございますが、当局としては、こういうことに対してどの程度の配慮をこの法案の上で重ねられてきたかということを私はたいへん不審に感ずる向きがございますので、その点に対して何か御意見をお持ちでございましたらお教えをいただきたいと思います。
  102. 青鹿明司

    青鹿政府委員 確かに訴訟になりますと、挙証の問題なりなんかでいろいろ問題があることは先ほど来申し上げておるとおりでございまして、むしろそういった問題を解決するために、今度の、今回提案いたしました行政上の制度を導入することにいたしたわけでございます。適当な方を得て、十分被害者のお立場も考えながら、公正な判断解決を進めてまいるということが本案の趣旨でございますので、まあ一方に片寄ることはいかぬと思いますけれども、十分被害者の、そして弱いお立場を考えながら、事案の解決に運用上配慮してまいるということが当然必要であろうかと考えております。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 その被害者的立場に立って常に公害問題、公害紛争処理に当たるということは、私は非常に大事な基本的な問題だと存じますが、少し問題がわき道にそれるかもしれませんが、そういうふうな見地からこの際私は一つお尋ねをしておきたい事柄がございます。  それは、新聞紙上なんかでも数たびこの事柄を取り上げて報じてまいってきたわけでございますが、公害罪を新たに設けるというふうな御意思がおありになるかどうかということ、特に法務省関係の方がもし御出席していらっしゃいますなら御意見をこの際少し承っておきたいというふうに考えます。公害罪を新設なさるという作業は、いま相当程度に進んでおりますものでございますかどうでございますか。
  104. 大村行雄

    ○大村説明員 ただいま御質問のございましたいわゆる公害罪新設の問題でございますが、法務大臣の諮問機関でございます法制審議会におきまして現在刑法の全面改正作業を進めているわけでございます。で、公害罪の問題もこの刑法の全面改正の一環として取り上げて検討を進めている次第でございます。現在、現行法には「飲料水二関スル罪」という規定がございますが、この章を拡充いたしまして、「公衆の健康に関する罪」という章を再編成して、この中にいわゆる公害罪を新設しようということで検討をしているわけでございます。で、この問題につきましては、昨年の六月刑事法特別部会第十七回会議が行なわれまして、その際に公害罪を取り上げて新設するという方向だけはきまりました。現在その刑事法特別部会での意見に沿って検討を続けているという段階でございます。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 先ごろ昭和四十四年十月十一日だと存じますが、法制審議会の刑事法特別部会第四小委員会から第一実施案としての参考案が出ておりますですね。その内容によりますと、どうもこの法人処罰ということが考えられていないようでございまして、事実行為者を処罰の対象として考えているように私は存じております。この点について、法人処罰が脱落したいきさつなんかを御説明願えればありがたいと存じます。
  106. 大村行雄

    ○大村説明員 ただいまの法人処罰の問題でございますが、これは刑事法特別部会でも取り上げられまして、公害罪の新設については、どうしても法人処罰が必要ではないかという御意見もあったわけでございますが、何ぶんこの問題は、いわゆる刑法の責任主義の問題と関連いたしておりますので、さらに慎重な検討が必要ではないか。特別法の中にはもちろん法人処罰の規定はもうすでにあるわけでございますが、刑法にこの法人処罰の問題を取り入れるかどうかということは、どうしても責任主義という原則を貫く立場から、さらに慎重な検討が必要じゃないかということで、目下第四小委員会でこの問題もあわせて取り上げて検討している段階でございます。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 どうもいろいろな取り締まりの基準と、それから違法性というふうなことの関係からいたしまして、従来大気汚染防止法であるとか、工場排水規制法なんかの罰則が、どうも排出基準の設定そのものが甘いことのために、十分な効果をあげていないというふうな実情がよく聞かれるところでございます。そういうふうな意味からいたしまして、やはり違法性のこれは追及でございますし、それに対して可罰行為というふうに認定していく基準こそ大事な問題になってくるわけでございますから、そういう取り締まりの基準に対してのお考えというのを、この法をお考えになる際にどういうふうにお考えになっていらっしゃったかといったことなんかもお伺いいたししたいと思います。
  108. 大村行雄

    ○大村説明員 ただいまの御質問の取り締まりの基準と申しますか、これは特別法におきましては、行政命令が出まして、それに反した場合にそこで罰則がかかってくるという規定になっておりますが、現在では行政命令が行政指導という面に重点を置いてやっている段階でございます。で、刑法でこの問題を取り上げるということになりますと、やはり道義的な責任という面がはっきりする場合でなければなりませんので、取り締まりの問題としてはまあ特別法でやっていく、むしろ最初は行政指導という面に力を入れて、そしてその命令に反した場合には罰則ということになろうかというように考えております。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 実は私は、いまの御答弁からもやはり考えるわけでございますが、各種取り締まり法規というものの充実を放置しておいて、幾ら公害罪というものの刑罰規定を観念的にいろいろ整備してみてもざる法に終わるだけだというふうに考えておるわけでございます。  同じような意味で、この際の紛争処理法についても、やはりその内容被害者を救済するというふうな意味で、徹底した法案内容に充実させていくということが急を要する問題だというふうに私は考えているわけでございます。そういうふうなことから、どうもこの際の法案を見まして、一般の国民は、企業者であるとか経済界というものから圧迫を受けて、それに対して屈したというふうな内容があるのじゃなかろうかというふうな疑惑を、私が先ほど申しました裁定がここには認められなくなったというふうなことをめぐって、おそらく考える余地があるというふうにも思うわけでございます。  そういうふうなことから、私はまだきょうは皮切りでございまして、これから続々と、弱者の立場に立って、いわゆる公害追放というものをどういうふうにしていったらいいかということを、ここで与えられる機会をいただいて展開していきたいというふうに考えておりますが、先ほど来申しました裁判官会同でもたらされました意見を通じましても、これは単に民事訴訟法の一部改正の問題にとどまらず、やはり公害処理のための、特に公害紛争についての裁判規定を特別法として考えていくことが必要ではないかとすら考えるくらいなんでございます。これからこの問題をめぐるいろいろな法案についてそのつど私は私の意見をここで申し上げて、また御質問を申し上げて、担当御当局の御意見も拝聴したいと存じますけれども、ただ今回の法案については、企業者側の立場に立って、財界の立場に立ってあくまで紛争解決をという姿勢がちらちらと見えるというふうな疑惑が、私は十分に国民の間には残るのではなかろうかというふうにも考えておりますので、その点絶対にそんなことはない、だいじょうぶだ、私たちはそういうものに屈しないで、やはり政治の姿勢は、弱者を救済する、こういう紛争処理についても、あくまで被害者を救済するということに全力をあげているというふうな御決意のほどをお見せいただければまことに幸いだと思うのです。いままで見てまいりますと、どうも学界だとか、裁判関係法律家なんかのこの問題に対する認識よりも、ずいぶん政治がおくれているというふうな感想を私は強く持っておりますので、どうぞその辺に対しましては、疑惑を払って余りあるような御決意のほどを最後にお見せいただいて、私、きょうは皮切りの質問をこれで打ち切らせていただきたいと思います。
  110. 湊徹郎

    ○湊政府委員 先ほどからのいろいろなお話を伺って、結局多くの場合、弱者の立場にございます地域の住民の皆さんのいろいろな公害による問題について、救済の立場からものを考えろ、こういうお話、私も全く同感でございます。  先ほど青鹿君のほうから御答弁申し上げましたが、補足して申しますと、裁定制度をとらなかった事情の背景に財界、経済界等の何か圧力めいたものがあったのではないかというお話しでありますが、これは全然ございません。純然たる手続き上の問題で、むしろその救済をするためには相当多方面な措置が必要である。先ほども島本さん、あるいは浜田さんの御質問にお答えしたのでありますが、裁定と申しますと、御承知のように非常にきつい、強制的な解決方法でございます。ところが、公害の問題は、民法の中でも一番むずかしい不法行為をめぐる問題でございますし、特に私的な紛争という面が相当からまってまいります。当事者も非常に多数になりますし、普通の裁定制度というのはたいてい賠償額をどうするかとか、そういう形でイエスかノーかをきめる。公正取引委員会なんかでも、過般の合併の問題だって、合併是なりか非なりか、そういう単純な答えがこの公害の場合にはなかなか引き出しにくいわけでございます。賠償の問題もからんできますが、同時に、いろいろある種の行為を差しとめたり、あるいは工場の操業等についてもおやめ願ったりというような、むしろ関係行政機関等が中に入っていただいて、多面的な解決をしなければいかぬというふうな面が多い。しかも、再々お話がありましたように、加害被害との因果関係究明についても非常にむずかしい。そういうふうなところから、やはり調停制度等を中心にして、実態に即した解決を、いままでは制度の点で不十分なことは先ほど御指摘のとおりでありますから、そういうものをひとつ前進させて解決させるようにしていきたいというのが真意でございますので、その点は御理解を賜わりたいと思います。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 これで私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  112. 加藤清二

    加藤委員長 次に、多田時子君。
  113. 多田時子

    ○多田委員 私は、公共用水域水質保全に関する法律の一部を改正する法律案、この問題から二、三お尋ねしてみたいと思います。  いまもるると論議し尽くされてまいりましたけれども、確かに七〇年代の諸問題の中で、最も重大関心事といわなければならないのは公害問題でございます。また緊急に解決を迫られているということもいえると思います。いまも土井先生がいろいろお話しされまして、全く同感なんですが、この法律の旧第一条に、「産業の相互協和と公衆衛生の向上」とありまして、この一文が新しい改正案によりますと、「国民の健康の保護及び生活環境保全産業の相互協和」というふうに変えられまして、さらに第一条に第二項が加わったわけでございます。確かに、改正前の「産業の相互協和と公衆衛生の向上」というふうになりますと、これはやはり産業第一、国民生活第二というふうに思われて、まあこれははっきりしておりますけれども、その点から考えて今回の改正案は一歩前進ではなかろうか、こんなふうに一応は考えられるわけでございます。  しかし、これをよく読んでみますと、これがはたしてほんとうに国民の健康及び生活環境、それと企業を比べてみまして一体どちらに重点が置かれているのだろうかと、再び何か疑問が生じてくるわけであります。この辺について、人間尊重という立場か、あるいは経済の発展ということが第一義かということを、まず最初にお伺いしたいと思います。
  114. 西川喬

    西川政府委員 第一条の「目的」につきまして、現行法の、「産業の相互協和と公衆衛生の向上」でございますが、実はここで「産業の相互協和」と入っておりますのは、水質汚濁の問題に関しますと、産業間の調整というウエートが非常に高いわけでございます。水の利用という観点から申しまして、加害者の側といたしましては、汚水を出す。これは工業もございますし、事業場もございますし、畜産や何か、それから一般家庭も汚水な出します。それからそれに対しまして、今度被害の側で申しますと、これはやはり農業、水産業、水道、その他利水の側、それからさらに都市環境という問題があるわけであります。それ以外の問題といたしまして、国民の健康に直接関係する問題といたしますと、先般問題になっております水俣病、あるいはイタイイタイ病、あるいはまた有害物質の問題があるわけでございます。  実はいろんなあれを申しますと、現在の水質関係による紛争の大半は、この産業間の紛争でございます。そういう観点で、水質保全の問題につきましては、それが相当大きなウエートを占めているということ、これは事実がはっきり証明しているわけであります。  それからまたさらに、この産業間の問題にいたしましても、必ずしも加害者側が大企業と限っているわけではございませんで、たとえば現在北海道あたりで問題になっております漁業の問題を考えますと、サケマスの漁業、ところがこちらのほうの汚水を出しております大半は、これは農業のほうのでん粉製造業でございます。そういたしますと、これは北海道地区といたしましては、やはり産業としては、農業のてん菜及びバレイショ産業しかないというようなことで、やはり北海道の地区の住民としては一番重要な産業になっているわけであります。そういうところの両者の調和が問題になっているわけであります。そのよう汗観点から、水質問題につきましては、この「産業の相互協和」というのが非常に大きなウエートを占めているというような観点で、現行法のような形になっておったわけであります。  それで現行法は昭和三十三年に制定されているわけでございますが、その後昭和四十二年に公害対策基本法が制定されたわけでございます。公害対策基本法におきましては、国民の健康の保護が一番最優先するという大原則が打ち出されているわけであります。その公害対策基本法趣旨にのっとりまして、この「国民の健康の保護及び生活環境保全」ということを、現行法の「公衆衛生の向上」にかえましてつけ加え、はっきり基本法の精神と合わせて目的をうたおうというふうにいたしましたのが今回の改正でございます。  さらに、これは前々国会の衆議院におきます修正決議によりまして、前はこの「産業の相互協和と公衆衛生の向上」を基本法の字句に照らしまして、「国民の健康の保護及び生活環境保全」とかえておったわけでございますが、順序をさらに修正によりまして逆にいたしまして、「国民の健康の保護」を最優先的に考えるというような今回の改正案になっているわけでございます。この第二項の「生活環境保全については、産業の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。」この点につきましては、これは公害対策基本法趣旨をそのまま受け入れまして、そのとおりの項目をつけ加えてあるわけでございます。  ここで「産業の相互協和」が残っていることにつきまして、前々国会においてもいろいろ議論はあったようでございますけれども、いま申し上げましたような趣旨から、「産業の相互協和」というものが水質保全の問題につきましては相当大きなウエートを占める。「国民の健康の保護」、これはもちろん絶対優先的でございますから、現在水質基準設定なんかをしております場合にも、これははっきりしておるわけでございます。さらにそれ以上にこの産業間の調整というのは非常にウエートをせめるというような観点で残していうるわけでございまして、このため保全法におきましては、この「生活環境保全」という定義は公害対策基本法よりも狭義に考えまして、産業間の相互協和を残しているというような形になっているわけでございます。
  115. 多田時子

    ○多田委員 いまのお話、御説明で大体了解でございますが、私はむしろこれを、「国民の健康の保護及び生活環境保全に寄与することを目的とする。」こういうふうにしていただいたら、もう一つ国民大衆がこれを納得をするのではないか。法案というのはどうも一般国民に了解しにくいということを私は常々感じておりますが、これもまた何も、第一条の2にきちっと「産業の健全な発展との調和」、こうありますのですから、ここはすっきりと、「国民の健康の保護及び生活環境保全に寄与することを目的とする。」こううたっていただいたほうが国民の納得も、そしてまた法案それ自体も理解しやすい、このように考えたわけでございます。  もう一ついまお願いしたいことは、法案それ自体が国民によく納得のできる法案であってほしいということが、ひとつお願いしたいことでございます。  さらに、同じ問題ですけれども、確かに国民の健康の保護と生活環境保全という一文を見まして、ただ単にこれがいわゆる美辞麗句あるいは国民にアピールするための単なるゼスチュア、そういうふうなものでない、国民に、何だ、やはりそうであったのかという失意を抱かせないための——水質保全はもちろんのことでありますけれども、あらゆる産業公害に対する問題の具体的な政策と、そしてまた実行、それが何よりも国民大衆の願っているところでございますので、第一番に国民の健康と生活を守るという確固たる姿勢、その政策、立法、それらについてくどいようでございますけれどもお尋ねしたいと思います。
  116. 西川喬

    西川政府委員 ただいま申し上げましたとおり、国民の健康の保護というととは、これは絶対最優先的に確保されるべきものでございます。われわれもいま水質基準設定なり、水質保全法の運用にあたりまして、もちろんそういう趣旨でやっておりまして、たとえて申しますと、メチル水銀につきましてはこれは公共用水域においては絶対検出されないことというようなことに基準をいたしまして、メチル水銀を出す事業場は全水域においてかけるというような点で、疫学的な面から見てもはっきりしているものはどんどんやってまいりたいというふうにやっているわけでございます。ですから、もちろんこれは第一義でございますけれども、「産業の相互協和」を残しておりますのは先ほども申し上げましたとおり、現在いろいろな問題になっておりますのが、大体統計的にとりましても八十数%、約九割近くがこの産業間の紛争の問題になっているわけです。そのような観点からやはりこの水質保全水質汚濁問題の特殊性ということで、一応この「産業の相互協和」ということばはこのまま残しておきたというのが私たちの考え方でございます。   〔委員長退席、島本委員長代理着席〕
  117. 多田時子

    ○多田委員 次に、最近新聞等で報道されましたが、公害追放に関しての三つの国際会議か開かれまして、それがいずれも日本で開かれたということはまたいろいろな意味でよかったと思いますが、法務省の方がお見えになっていらっしゃるというので、一つつけ加えまして、あのときにあの会議に列席のため来日した外国の学者が、水俣病のフィルムを見まして、これは公害というよりむしろ犯罪であるという発言がありまして、日本の学者は、あらためて日本人全体の公害に対する意識の立ちおくれを痛感した、こういうふうに読売新聞の社説ですか報じておりましたけれども、その発言に対しての当局の見解を一言お伺いしておきたいと思います。
  118. 大村行雄

    ○大村説明員 いわゆる水俣事件につきましては、法務省のほうには実情報告は受けておりますが、刑事事件としては処理されておりません。と申しますのは、水俣事件の場合、患者の発生が見られたのは最初昭和二十八年でございまして、その後患者が激増したのが昭和三十一年になってからでございます。  この原因追及がその後熊本大学医学部その他によって行なわれまして、昭和四十三年九月になって、その原因がチッソ水俣工場の排水中のメチル水銀化合物にあるというように断定されたわけでございます。その間、原因の追及にかなりの長時間を要しておりまして、そのために、現行法におきまして、いわゆる公害事件に適用する条文としましては、刑法二百十一条の業務上過失致死傷ということになるわけでございますが、この条文の公訴時効が現在でありますと五年でありますので、結局時効の関係もございまして、刑事事件としては処理することができなかったというような実情でございます。
  119. 多田時子

    ○多田委員 この問題は残しまして、国際シンポジウムの終わりに臨みまして、公害追放という問題に対する社会科学者の東京宣言というのが発表されました。その一文、ずっとありまして、最後に「よい環境に住むのは人間の基本的な権利である。」こういう一文がございます。これが東京宣言の結論というふうに思えますが、これは社会科学者の決意をあらわすものであるというふうにこの委員長の都留重人氏が述べておられますけれども、これに対する当局の措置といいますか見解といいますか、それについてお聞かせいただきたいと思います。
  120. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 ただいま御指摘ございました国際シンポジウムでございますが、これはユネスコの傘下にございます国際社会科学評議会による学術形式の会合でございます。私どものほうからも今日参っております公害課長が個人の資格で参加するというような形でございまして、会議そのものは政府自体で直接催したものではございません。  現在、公害問題につきまして、世上非常に問題がございますときにこういう会合が開かれまして、ただいまお話のございましたような東京宣言が強調されたということは、非常に意義あることだと思いまして、私ども今後一そう公害対策基本法精神にのっとりまして対策を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それで、特にいまお述べになりました、環境が人間の基本的な権利であるということでございますが、これにつきましては、私どもは次のようなことを考えております。  従来公害の問題は、まず足尾銅山のような産業間の紛争ということで認識されまして、次いで四日市のぜんそくだとか、あるいは水俣病、イタイイタイ病というような、人の生命あるいは病気というような健康被害の問題としてスタートしたわけでございます。ここで国民の健康が絶対であるという姿勢は非常に整ってまいっておるわけでございます。また産業間の協和ということも、いま経済企画庁からもお話がございましたようなことで、非常に関心を持って行政的に処理されている。ただ、自然環境の保全という点につきましては、まだまだ至らない点が多いんじゃないかと思うわけでございます。特に公害対策基本法目的の中でも、生活環境保全ということがはっきりとうたわれておりますが、この中で特にたとえば大気が非常にきれいである、水がきれいである、あるいは騒音がない、こういうような生活の快適さといいますか、そういう狭義の生活環境保全ということにつきましては、今後よほど努力しなければならないと思うわけでございまして、これがまた、さらに自然の保護ということにもつながってまいると思うわけでございます。こういう意味で、人の基本的な権利であるという考え方に非常に近い考え方を持って、私ども広い意味での公害対策に万全を尽くしてまいりたい、かような考えでおります。
  121. 多田時子

    ○多田委員 確かに日本公害対策といいますと、先ほど来お話がありましたが、何となく後手に回りまして、事実が発生して急いで対策を練る、その対策がなかなか実現にほど遠いということで、その恨みをいつも買っているわけでございますけれども、いま答えにありましたように、そうした大きな観点から、人命尊重という立場からも、また社会環境という立場からも、公害対策への真剣な努力が望まれるわけでございますが、今後もそうした誠実味のある公害対策に対する努力をよろしくお願いしたいと思います。  具体的な問題に入りまして、昭和三十三年に制定されました水質保全法の全文でございますけれども、制定されてから昭和四十四年度まで、六十八の水域について水質基準設定されました。この改正趣旨として、汚濁源に関する規制範囲の拡大ということがうたわれておりますし、特に過密都市などにおける河川汚濁というのは、最近非常に深刻な問題となっております。本法に指定されていないいわゆる未規制汚濁源、こういうものがたくさんあるわけで、そうしたものに対する今後の基本的な考え方、そうしたことについて伺いたいと思います。
  122. 西川喬

    西川政府委員 改正案におきまして、法案にございますようにへい獣処理場、採石業、と畜揚、廃油処理施設砂利採取業、さらに政令で定めるわけでございますが、屎尿処理施設、あるいは養豚、養鶏揚、これらのものを追加することにいたしております。これによって現在未規制となっております汚濁源は相当カバーされると考えておりますけれども、しかし、これだけでもって全部というわけにはまいらないかと存じます。現在都市の場合におきまして非常に問題になっておりますのは、一般家庭の汚水でございます。実は水質保全法におきまして水質基準を定めますのは、水質に関する限りは基本法的な立場にございまして、これを受けまして今度はそれぞれの実態規制の取り締まり法があるわけでございますが、一般家庭の家庭下水を取り締まることは実質的に不可能である、実効はあがらないということでありまして、それらにつきましては、公共事業といたしましての社会資本の充実の一環としての下水道整備をはからざるを得ないということでございます。ですから水質保全の万全を期するためには、公害対策基本法精神にもございますように、単に排出規制だけでございませんで、一方におきまして公共事業の促進というものとあわせまして初めて環境の条件が維持されると考えておりますので、そういう漏れたところにつきましては不特定多数の問題でございますから、社会資本の充実によってこれを補っていかざるを得ないのではないか。またこれ以外に何らかの実態的な規制の方法があるものも一、二考えられないことはございません。それらにつきましては実態規制の可能性等考えまして、今後前向きの姿勢検討を続けていきたい、こんなふうに考えます。
  123. 多田時子

    ○多田委員 いまの御答弁の中にございましたように、家庭から排出されるいわゆる家庭の生活排水といいますか、それらに対しても、一般の人々は、各家庭で自分が洗たくをしたり、あるいはお台所で中性洗剤を使ったり、そうしたものがそのまま集まって公害になるなんということは一つも意識しないで使っていると思いますし、水も流していると思います。確かにそういう公害に対する意識が全般的にまだ低いのではないか、こんなふうにも考えられます。片や被害者でもあり、片や加害者でもあるという立場をとっている場合もありますので、国としても、地方自治体、あるいは企業者国民の一人一人、そうした人々に対しても、公害に対する意識変革が迫られていると思いますけれども、そうしたことに対する対策といいますか、見通しといいましょうか、そうした問題に対して一つお願いしたいと思います。
  124. 城戸謙次

    ○城戸政府委員 公害問題を本格的に解決していきますためには、何と申しましてもこれは全体の意識ということ、特に世論の動きということが非常に重要なわけでございます。中でも、ただいまおっしゃいましたような住民自身がいかに考え公害に対処していくか、ただいまのお話もありましたように、加害者であるという場合もありますし、被害者として問題を訴えていく立場もございます。この双方含めまして、私どもとしましては、公害対策基本法の十六条にもありますような知識の普及と公害防止思想の高揚ということに努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  125. 多田時子

    ○多田委員 ちょっと納得をしかねておりますけれども、次へ進みたいと思います。  都市を流れている河川がございますけれども、突然ダムの水をとめた、こういうことも予想されるわけであります。そうなれば、ぐっとせきとあられるのですから、当然そこから流量が減るわけですけれども、しかし、流れが少なくなったといってもいわゆる排出される汚水というのは、川の流れの量の減少に正比例はしないわけです。そこにたくさんな汚水が集ってしまう。水はいよいよよごれてしまう。こんなような場合も考えられるのですけれども、こうした場合に、当局はどのような調整をなされていきますでしょうか。
  126. 西川喬

    西川政府委員 現在水質設定いたします場合には、現状だけではございませんで、将来の流量の変更あるいは流域の人口の増加あるいは事業場等の増加というものも想定いたしまして、それによりまして一応目標水質を満足できるような観点で基準を設定いたしております。従来までやっておりました目標水質と申しますのは、いわゆる水質基準設定いたします作業の過程の裏の資料になっておったわけでございますが、新たに公害対策基本法によります環境基準というものが法律で規定されまして、今後は流水の、川の中の水質の基準というものを環境基準といたしまして、正式に閣議決定いたします。そういう目標を今度は公式に決定いたしておりますから、これを守るためにいろいろな施策を講じなければいけないということになっておりまして、従来ともそういう将来の予測をも考えまして、もちろん現時点においてわかります限りの水資源開発計画その他のことも考慮に入れまして設定いたしておったわけでございますけれども、今後はそれがさらにはっきりいたしまして、そしてまたそういう流域をめぐる状況が変化いたしましたならば、その変化に即応いたしまして、水質基準の見直しなり、あるいは下水道整備の促進なり、指定をかえるとかいうような諸般の施策をあわせてやっていって、現在目標とする環境基準が維持できるように、全般的に、総合的に政府としては努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  127. 多田時子

    ○多田委員 四十二年の十一月三十日に内閣の法制局に経企庁から照会された文案がございます。御承知のとおりでございますが、「水質保全法等に基づく水質規制地方公共団体の条例に基づく水質規制との関係について」、この中からひとつお伺いしたいのですが、指定水域をその管轄区域内に持っている地方公共団体は、その指定水域以外について、地方公共団体で条例で水質規制を行なうことができるだろうかということが一つ。できるとすればどの程度それができるのかということについてお尋ねしたい。
  128. 西川喬

    西川政府委員 指定水域がありました場合に、そこの地方公共団体指定水域外の水域については、条例をもって規制をすることが可能でございます。
  129. 多田時子

    ○多田委員 どの程度ということはわかりませんか。   〔島本委員長代理退席、小山(省)委員長代理着席〕
  130. 西川喬

    西川政府委員 法律的な問題から申し上げますと、指定水域外につきましては、どのような基準をかけても、これは法律的には問題ございません。しかしながら、やはり公害問題が地方の問題でございますから、指定水域につきましてかけられた基準なり何なりというものが、バランスからいいましても参考になるであろうということでございます。
  131. 多田時子

    ○多田委員 次に進みます。  いまの法制局の見解なんですが、地方公共団体が条例で、水質保全法に記された以外の「残部についての規制を定めることができるかどうかは、当該法令の規定の文言だけからは明らかでなく、国の法令の趣旨に照らして解決しなければならないことが多い。」という一文がございます。その解釈から考えますと、指定水域以外のところにおいては、いわゆる地方自治団体の姿勢といいますか、自治体の態度いかんというふうになると思うのですけれども、こうした問題について、具体的事例をもってお答えいただければと思います。
  132. 西川喬

    西川政府委員 現在相当数の都道府県、ほとんど七判まで達しているかと思いますが、具条令をつくりまして、指定水域外についてでございますが規制をかけております。ただし、その条例の中身につきましては、条例の性格が各県によっていろいろ違っておりまして、国でやっております水質保全法と同じような、いわゆるこれを完全な規制基準といたしまして順守しなければならないという条例もありますし、そうではなしに、認定条例、いわゆる紛争なり公害が生じた場合における、紛争が起きた場合の基準とする認定条令のケースもございます。いろいろなケースがございまして、現在のところ必ずしも統一はとれておりません。企画庁といたしましては、この水質問題に関しましては、今回法律改正によりまして県との協力関係を緊密にするとともに、県に対する勧告のあれも出ましたし、また県のほうからも意見の具申の両方のルートができたわけでございまして、今後これによりましてお互いにいろいろ意見統一をやりまして、国、地方が一体となって水質保全の実をあげていくような方向に進みたい、こういうふうに考えております。
  133. 多田時子

    ○多田委員 そういう漏れたところから——今回の水俣病などというのもそういう一つの結果のあらわれではないかと思います。この場合、指定水域以外の国の法律地方条例との関連という問題についてなんですけれども、指定水域以外の場所で、いまいろいろお話がありましたけれどもそういう場所で、現に水がよごれている。そうした場合に、もし事故があった、それが国か、あるいは地方公共団体かということでしておりますうちに、すでに事故が起きたという場合には、一体どこに責任があるのか。それに対する国の対策といいますか、そうした面について、責任分野についいお尋ねしたいと思います。
  134. 西川喬

    西川政府委員 そのような汚濁のおそれがある、もうすでに汚濁が進行しているというようなものにつきましては、できる限り早急に指定水域に指定すべきであるということになろうかと存じます。私たちもそのような面で努力いたしておるわけでございます。  それから、いま先生のおっしゃいましたような事故という問題でございますが、これは非常に有毒物質なり、特定の物質の問題があろうかと存じます。これが比較的にはっきりしてまいりました分につきましては、先ほども申し上げましたようにメチル水銀を出すおそれのある事業場については全部かけました。全国全部かけております。一般水域も合わせて三十六水域でございますが、全部規制をかけております。それからシアン、クロームにつきましても指定水域は全部かけました。指定水域外につきましては、そのような有毒物質につきましては、毒劇法のほうによりましてシアンなどは規制がかかっておるわけでございます。そのような問題点、もしそういうおそれがある、指定水域としまして水質基準でそれを押えなければいけない、それの量的な因果関係がはっきりしてきたものにつきましては、積極的にそれを水質保全法対象水域として取り上げて規制していくという姿勢をとりたい。先生のおっしゃいましたいわゆる責任問題ということになりますと、これはいわゆる道義的責任になってくる。そういうおそれがあるところを早く指定水域にしなかった道義的責任があろうかと思います。ですから、国民の健康の保護、環境の保全というたてまえから、国といたしましては、こういうおそれのあるところを積極的に指定水域にしていくように努力する、そういう方向で進みたいと思います。
  135. 多田時子

    ○多田委員 次に、工排法の問題なんですが、この工排法の中に出ておりますいわゆる特定施設、その範囲についてお伺いしたいのです。特定施設を持っていないところで汚濁の原因となるものが考えられる、そういう場合もあるわけです。また特定施設を持っていないところに対する指導あるいは監督、その二点についてお伺いしたいと思います。
  136. 西川喬

    西川政府委員 工排法に基づきます特定施設は、これは政令で定めることになっておりますが、実は工排法の所管は、それぞれの業種に応じまして大蔵省、通産省、厚生省、農林省、運輸省と各省にまたがっております。現在特定施設として指定しておりますのは、先生がおっしゃいましたような汚水を出すおそれのある施設はほとんどあげております。ただ、現在経済成長に伴いまして、いろいろな新技術開発されていっておりまして、それによりまして、新しい製造設備というようなものが、どんどん技術の日進月歩でできてきております。そのようなものにつきましては、できるだけ各省のほうにも要請いたしまして、早く政令を改正いたしまして、特定施設の中へ入るようにというふうな方向で連絡、調整をはかっております。
  137. 多田時子

    ○多田委員 この特定施設というのは、工排法によりますと、届け出制になっておるわけですけれども、これが届け出を怠った場合、あるいは全く許可を受けないで操業した場合、こうした場合がもしあつたとすれば、これはおそろしい結果になるわけなんですし、こうしたところから、いろいろ問題が起きると思います。いわゆる届け出制というのは、こちらの責任になるわけですけれども、これはむしろ知事の許可制というたてまえにしたらどうか、このように思いますが、いかがでございましょうか。
  138. 西川喬

    西川政府委員 実は企画庁が答弁するよりも、それぞれの工排法の所管大臣が答弁すべき問題かと思いますけれども、いま参っておりませんので、私、かわって申し上げます。  やはり許可制にいたしますためには、企業の営業の自由と申しますか、その問題がありまして、許可制にすることについては、いろいろ問題がございます。届け出制にしておりますことは、実質的には許可制と同じで、全部罰則がかかっております。   〔小山(省)委員長代理退席、委員長着席〕 届け出せずに操業した場合には、それに全部罰則がかかっております。届け出をいたしまして、その届け出をしました水質が、水質基準に合致しない場合には、改善命令を出す、改善命令を聞かずに操業した場合には、やはり罰則もかかるし、さらに操業停止というようなことが全部かかっておりますので、そちらのほうの運用にまかせまして、許可制とすることは、非常に一般的に企業のあれから問題があるんではないだろうか、こういうふうに思います。
  139. 多田時子

    ○多田委員 いまの許可制の問題ですけれども、これはそうであるという断定ではなくて、前向きに検討するほうがいいのではないかと思います。  次に、その特定施設以外の施設については、その製造する品目あるいはその製造する工程内容、そうしたものを判断して、これは特定施設が必要であると考えられる工場もたくさんあるわけですけれども、そうした個々の工場についても、何らかの規制があるのでしょうか。その辺についてお伺いしたいと思います。
  140. 西川喬

    西川政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、実際、製造の過程におきまして、汚水を出すおそれのある施設は、原則的にほとんど特定施設に入っております。新技術なんかで、該当業種でなくても新しい工程で出てきたような事業場が漏れているわけでございますが、ここいらにつきましては、先ほど申し上げましたように、政令を改正してやるよう、すでに今回も三月中に、新年度以前に政令を改正いたしまして、新しい施設を特定施設に入れるようにいたしてございます。  それから水質汚濁の場合につきましては、大気等の場合と違いまして、——大気の場合等におきましては、煙突そのものから煙が出るわけでございます。水質汚濁の場合は、特定施設といいますのは、工場内の生産設備と一つになっているわけです。それで公共用水域に汚水が出てまいりますのは、ほかの施設と合致して出てまいります。ですから、一つの事業場の中に特定施設がございましたら、もうすべてそこの工場から出てくる排水は全部基準がかかるわけでございます。そういう形になっておりまして、特定施設からだけの排水ではございませんで、その事業場から出す排水規制がかかっております。そういう形になっておりますので、もちろん、その工場内に特定施設がありましても、その施設の水も、もちろん水質基準はかかっている、こういうように御理解願いたいと思います。
  141. 多田時子

    ○多田委員 そうしますと、いわゆる東京のような過密都市の中には、いまの特定施設を持っていない中小工場というのはたくさんあるわけですけれども、そういう工場に対して、いま御説明がございましたけれども、それが全部規制されて、あるいは対策がきちっと講じられていけば、結局は東京の川などはよごれるわけはない、こういうふうに考えますけれども、いかがでございましょうか。
  142. 西川喬

    西川政府委員 先生のおっしゃいました東京なんかにおきます中小企業の問題で、小さな町工場程度の小規模の問題でございますが、これは特定施設の問題ではございませんで、実は現在すそ切りと申しまして指定水域に対しましても、零細企業の現在百トン以下——一般の業種におきましては、大体百トン以下のケースが多いわけでございますが、毎日出量が百トン以下のものに対しては、水質基準の適用を猶予いたしております。シアン、クロームにつきましては、先般全工場とも百トン以下の、十トンでも二十トンでも、シアン、クロームを出す事業場は全部規制されている。ただし、それ以外の業種につきましては、百トン以下というのは猶予いたしております。ただし、これは工場排水によります汚濁源というものだけで考えますと、これは名古屋のケースでございますが、約九〇%のロードが大企業でございまして、残り一〇%は百トン以下の中小企業の分でございます。ところが、事業場別で申しますと、九二%が、いわゆる一〇%のロードしか出さない小企業でございます。それから八%が九〇%のロードを出している大企業。そういたしますと、中小企業のそういうところを監視するもの、これは同じようなものになるわけでございますが、九二%のあれをして、一〇%しか効果がない、八%のあれを規制して九〇%の効果がある、このような実態的な監視体制の問題もございまして、現在一部すそ切りというあれをやっております。もちろん、このすそ切りが原因であって、相当すそ切りをしたために中小企業のウエートが高い、それが何十%というオーダーを占めてウエートが高い、それを規制しなければ、しり抜けになって何にもならないというような実態であれば、やはりこれは規制せざるを得ないということになろうかと存じます。ただ、その場合におきましても、工排法によります監督の権限は、ほとんど大部分が、もちろんその中小企業の分でありますと、全部といってよろしいかと思いますが、これは都道府県知事に権限が委任されております。そういたしますと、地方住民に密着いたしました行政をやっていきます都道府県が、はたしてそれでやれるかどうかということが一番大きな実態的な問題になりますものですから、その辺も勘案いたしまして、私たちのほうとしては、すそ切りするかしないかというようなことは、各水域の実情に応じてやっておるわけでございます。  それからもう一つ、東京なんかの都市の場合にふえんさしていただきますと、現在東京等におきましては、すでに一般家庭用水のシェアのほうが工場排水より多くなってきております。だから工場排水だけを一〇〇%規制しても、全然ゼロにしても、現在の汚濁はなくならないというような状況になってきております。
  143. 多田時子

    ○多田委員 そこで、いまお話がありましたように、家庭生活の中から出てくる排水ということはやはりこれも工排法の中だったと思いますが、あったように思いましたが、いわゆる生活排水、その定義といいますか、その内容といいますか、対象とする範囲といいますか、それらについてお伺いしたいと思うのです。中性洗剤とか合成洗剤とか、先ほどもお話ししましたけれども、いろいろと家庭から排水されておりますが、意識の変革の問題も問題ですけれども、多摩川などに行ってみますと、家庭から排水された汚水で山のようになっております。そういう問題から、それを意識して流すわけではありませんけれども、事実は汚水としてたいへん深刻な問題を提起しているわけです。そうした生活排水に対する規制、あるいは当局としての行政とか、指導とか、監督とか、そういう意味におきまして、皆さんの御意見伺いたいと思います。
  144. 久保赳

    ○久保説明員 ただいま主として生活に基因する排水の定義、あるいはそれに対するいろいろな考え方、こういうことで種々の御意見を承ったわけでございますが、実は、下水道法の第二条に下水の定義がしてございます。この定義に、生活もしくは事業に基因して、もしくは付随して発生するところの排水、カッコして汚水としておりますが、それを下水の定義にいたしております。したがいまして、生活から出てくる、あるいはそれに付随して出てくる一切の排水は下水ということになるわけでございます。ただし、そのような各個人の家庭から排出される生活汚水につきましては、いわゆる工排法の適用範囲外になっておりすすので、私どもはそれを一括下水道の仕組みで集めまして、それを処理をしてから公共用水に放流する、いわゆる下水道の設備によって公害を防除していきたい、こういうふうに考えているわけでございます。昭和四十二年の六月二十一日であったと思いますけれども、制定、公布を見ました下水道整備緊急措置法の「目的」の中に、下水道整備都市の環境の整備、それから公衆衛生の向上、それにあわせて公共用水域水質保全に寄与することを目的にいたしまして、下水道整備を緊急に進めていく、こういうことを書いてございます。その下水道整備緊急措置法に基づいて閣議決定を見ます下水道整備五カ年計画の中におきましても、先生御指摘の生活排水あるいは中小企業の工場排水等々を含めました下水道整備をいたしすして、それに基づいて処理をしてから放流をするということを事業の計画として定めておるわけでございまして、そのような趣旨のものを今後さらに計画的に、しかも効率的に進めていきたいという方針をとっておるわけでございます。
  145. 多田時子

    ○多田委員 さらにお伺いしたいことは、この小害問題に対しては、以前からいわゆるばらばら行政ということでいろいろ指摘をされているところでございますけれども、いまも水道に関することでも、経済企画庁、あるいは厚生省、あるいは法務省、いろいろありますが、その一元化の方向に向かっていかなければならないというふうに私どもは考えるわけでございますけれども、その辺の連絡あるいは調整、そうした問題が具体的にどのように行なわれているか、この問題についてお伺いしたいと思います。
  146. 西川喬

    西川政府委員 水質保全に関しましては、やはり経済企画庁が水質保全法を所管いたしておりまして、最終的には一番の責任があろうかと考えております。現在指定水域に指定し、水質基準設定する等の場合におきましては、関係各省並びに都道府県知事意見も聞きまして、大体設定の手続といたしましては、審議会に通常部会を設け、その水域の部分を設けまして、まず現地に参りまして現地部会を一回いたします。現地部会におきましてその水域関係者、加害者側、利水者、被害者、その地方自治体、こういうものの意見を聞きます。それから今度は東京におきまして、その部会において水質基準数字なり何なりそういうものを検討するわけでございますけれども、部会で審議をしていただきます素案につきましては、各省の担当者会議を持ちまして、その間におきまして、関係各省全部集まりまして、そこのところで意見を戦わせまして、最終的に総合調整をはかりまして、その調整をされた案で、審議会の部会にかけて、部会の先生方の御意見を聞くというふうにいたしているわけであります。  そういうふうにいたしまして、結局そういう基準がきまりますと、この基準を守っていろいろの施策を講じていかなければいかぬわけでございますが、それらの施策を講ずる上におきましては、これは関係各省が全部、きまりました方向に向かいまして総力をあげて総合的に力を出していく、ただ単に一元化するよりも、そういう形で総力をあげてやっていくほうが、ほんとうにこの水質の多様化している汚濁の実態に合うのではないかということでやっているわけでございます。
  147. 多田時子

    ○多田委員 最後に一つお伺いしたいのですが、東京の水道の水の問題なんですが、特にABS、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダですか、そうした薬品の含有量がたいへん多くなって、玉川浄水場などはその中和のために大量の活性炭を使わざるを得ない、こういうふうに聞いております。このためにコストも上がりましょうし、水道料金も上がりましょうし、何よりもこれは私どもの健康上によくないというふうに聞いております。これは私ども東京都民の一人として大問題だ、こう思いますけれども、その辺の解決策をどのようにお考えでございましょう。
  148. 西川喬

    西川政府委員 ABSの問題につきましては、現在厚生省のほうにおきましても、いわゆる上水道の水質の基準として研究していただいております。ただABSを禁止することを水質基準設定いたしましても、どうやって取り締まったらいいのか、いわゆる一般家庭の下水と同じ問題でございますが、もし多量に使用するクリーニング屋とか何とかであれば、これは規制する方法があると思いますけれども、結局ABSの問題になりますと、洗剤の製造のほうにあれしなければいけないということになろうかと思うわけでございます。その辺の問題まで発展するためには、今後もっともっと各省間の調整をはからなければいけないと思いますので、前向きの姿勢で、現在環境基準の問題の中で出てきておりますので、その点は関係各省と相談いたしまして前進させてまいりたいというふうに考えております。
  149. 多田時子

    ○多田委員 以上で質問を終わります。
  150. 岡本富夫

    ○岡本委員 関連して。理事会でお願いしてありましたが、いま多田委員から経企庁に対して、まず第一点は、指定水域にしている、それはたとえば重金属、メチル水銀、こういうようなものは指定水域にしているのだ、こういうふうなお話がありましたが、カドミウムの場合はどうですか。
  151. 西川喬

    西川政府委員 カドミウムにつきましては、現在のところ、いわゆる流水の中にありますカドミウムにつきましては、厚生省の方で要観察地域を五水域ばかりきめておりますけれども、一応全般的に、大体におきましては、流水の基準におきまして、現在厚生省が暫定的にきめております〇・〇一PPMでございますけれども、オーバーしているところはないわけでございます。それ以外に底質の問題でありますが、底質にあります分のカドミウムにつきましては、排出されましたあとからの蓄積の現象なり、底質にありますのがどういうふうに溶けていくとか、底質の分と流水中の分との関係とか、あるいはそれが今度は魚とか稲とか、そういうものに入りましてから人体にあれする、そういうような問題につきまして、まだ不明確な点が多いわけでございます。自然のバックグラウンドの中にもカドミウムがあります。そういうような観点から、これは厚生省、通産省それから経企庁におきまして、昭和四十五年度はカドミウムを特殊問題の調査の重点といたしまして各省協力しまして、排出からさらに最終までの間の段階の量を調査いたしまして、厚生省のほうでそれに対していろいろな疫学的な面やなんかの定量的な結論が出ましたならば、それをもとにいたしまして規制をかけたい、こういうふうに考えております。
  152. 岡本富夫

    ○岡本委員 いま多田委員から言われたのは、経済企画庁で水質指定水域にしていないところから相当な事故が起こっておる。たとえば富山県の神通川、あるいはまた阿賀野川、こういうことを言っているわけですが、なぜ水域指定をしなかったか。ずっとおくれている。これが非常におくれているからこういうことになったのじゃないか、こういう話なんですが、神通川の場合、あるいは阿賀野川の場合はどういうわけでしなかったのか。
  153. 西川喬

    西川政府委員 確かに現在の時点で考えますと、なぜしなかったのかということになろうかと思うわけでございますけれども、先ほど法務省のほうからもお話がありましたように、メチル水銀が水俣病の原因とはっきりしましたのが四十三年でございます。それによりまして私たちは直ちにメチル水銀の規制を、メチル水銀を出すおそれのある工場は全部調べ上げまして、その工場の存在しています水域全部指定したわけでございます。イタイイタイ病につきましても、カドミウムが原因ではないかということがおおよそはっきりしてきているようでございますけれども、数値といたしまして、排水の基準なり何なりといたしまして、流水基準といたしましては、厚生省のほうで現在暫定的に〇・〇一PPMなら健康上あれはないだろうということで出しておりますが、流水中に〇・〇一PPMを守るために、排出のところで幾らにしたらいいのかという因果関係がまだ詰め切られていないわけでございます。自然の中にも存在するカドミウムでございますから、このような観点からもう少し研究して、はっきり結末が出ましたら即時それに基づいて規制をかけたいと思っております。
  154. 岡本富夫

    ○岡本委員 神通川の場合は、すでにもう上の鉱業所が、三井鉱山ですか、ちゃんと処理をしているから必要ないのだ、水域指定にしなくてもいいのだ、阿賀野川の場合は上の工場が移転してしまったからもう必要ないのだ、こういうような先国会では答弁だったのです。そうすると、岩手県の閉伊川の場合はどうですか。そういうおそれのあるところに対しては全部指定しました、こういうお話だったんです、いま聞きましたら。
  155. 西川喬

    西川政府委員 阿賀野川につきましては、メチル水銀につきましては、メチル水銀を製造工程から出すおそれのある工場全部かけました。それは四十三年のこれがはっきりしました時点でかけておりますものですから、そのときに阿賀野川の鹿瀬の工場は、すでにメチル水銀の発生するおそれのある操業を全然停止しておったわけでございますから、現在それに関する特定施設がないということでこれはかけなかったわけです。閉伊川の場合はカドミウムのほうの問題でございまして、カドミウムにつきましては、先ほどから申し上げておりますように、四十五年の調査によりまして、各省の協力を得まして調査をいたしまして、その結果によって処置をいたしたい。現在厚生省のほうで要観察地域を五水域でございますか、あげておりますから、私たちのほうもそれに重点を注いでおる、こういうことでございます。
  156. 岡本富夫

    ○岡本委員 水質保全責任は経企庁にあるんですよ。そうしますと、要観察地域、こういうところに対しては、積極的に水質基準をきめていくという、何か事故が起こってからやるようなことではいつまでたっても、先ほど多田さんから話があったように後手後手に回る、こういうことなのです。これは特にきょうはこれ以上追及いたしませんから、要望しておきます。  次に、水質指定水域以外の河川について、これは都道府県知事に委任してある、こういう話ですけれども、ではどういうような指導をしておるのか。水質保全責任というものは経企庁にあるわけですから、この経企庁がどういうような指導をしておるのか、これを聞きたいんですがね。何もしていない。
  157. 西川喬

    西川政府委員 指定水域外の分につきましては、従来県条例等がつくられているところ、つくられていないところ、あるいはその条例の中身につきましても、いろいろ各県の事情によって違っておるということは先ほど申し上げたとおりでございますが、公害問題は、こういうふうになっておりまして県のほうも体制が整ってきておりますので、もう少し全般的に調整をはかりたい、指導を強化してまいりたいというようなことから、実は、まことにおそくなりましたが、今月の初めでございますけれども、初めて水質関係の事務担当者会議を招集いたしまして、開きました。今後そういう担当者会議をしょっちゅうやりまして、各県同士の間の意見の交換、それから中央地方意見の交換、こういうものを通じまして、総合調整のとれた行政を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  158. 岡本富夫

    ○岡本委員 いまの答弁で、いままではあまり指導してなかった、これからは指導をちゃんとしていく。——なぜかといいますと、まだ県条例もできていないところもあるんですよ。ぼくは回りましてよくわかっておる。だから、この水質保全責任は経企庁にあるのですから、これはやはりもっともっと強力に指導をしていかなければならぬ、こういうように思っているわけです。  これはまた次に回しまして、次に、都市排水です。下水道課長いましたね。課長だからあまり言ってもいけないのですけれども、何か人ごとみたいなさいぜんの答弁でありましたが、やはり全国的に下水道というものが相当水質汚濁の原因になってきた現今において、もう少し計画的に、大体何年の間にどうしていくというように、建設省として都道府県に対して指導もしていかなければならぬ、またそれに対する補助もしていかなければならぬ、あしたとか、あさってとか、一年とか、こういうわけにいきませんけれども、どれくらいのビジョンを持っておるのか、そういう腹案があったらちょっと知らしてください。
  159. 久保赳

    ○久保説明員 下水道整備計画についてでございますが、非常に長期の問題でございますから、建設省でまず明らかにいたしております長期ビジョンというのは、昭和六十年度の市街地、これを予測をいたしておりますが、その六十年度の市街地には全部下水道整備をする、こういうことを目途にいたしておりますが、それには、四十四年度価格にいたしますと約十五兆円のお金がかかるわけでございます。したがいまして、その六十年度の市街地面積に対して、六十年度までに——もちろん現在の市街地からだけじゃなくて、これから市街地として拡大されるところを含めての話でございますが、それを目途に、現在、第二次の下水道整備緊急措置法が進行中でございます。第一次の下水道整備五カ年計画は、昭和三十八年から四十二年まで、これが総額にいたしまして四千四百億円が閣議の決定を見まして、これは実行いたしました。現在執行いたしておりますのは、先ほど私ちょっと説明いたしました下水道整備緊急措置法、四十二年の六月に制定をされました法律に基づいて閣議の決定を得まして、総額にいたしまして九千億円、予備費三百億円、合わせて九千三百億円の下水道整備五カ年計画を実施中でございます。これは四十二年から四十六年まででございます。計画が必ずしも順調には進捗いたしておりませんけれども、そういう長期ビジョンと、それから閣議決定に基づきました五カ年計画で実施をいたしておりますのが現状でございます。  その中で、特に水質汚濁対策といいますか、水質保全対策に重点を入れておりまして、たとえば経済企画庁のほうで指定をいたしました指定水域の中で、特に広域的に整備をする必要があるというような地域につきましては、従来市町村中心に下水道整備をやっておりましたけれども、事業主体を府県にいたしまして、流域下水道というような形で第二次下水道整備五カ年計画から実施をいたしております。大体そういう現状でございます。
  160. 岡本富夫

    ○岡本委員 最後に、大体地方に参りますと市長とか県知事というのは、下水というのは土の中に入ってしまいますから、これはあまり選挙の票にならぬ、だからこれはやってもあまり票にならぬのだ、こういうような考えを持っている人もいるのです。ですからこれは建設大臣に言ってひとつ強力にやっていきませんと、何ぼ経企庁や、あるいはまたあっちこっちの人が苦労しましても、下水道の完備がなければ水質汚濁をとめるわけにいかない、こういう現状になっているわけですから、これをさらにつけ加えまして終わります。どうもありがとうございました。
  161. 加藤清二

    加藤委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後二時五十二分散会