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1970-10-09 第63回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年十月九日(金曜日)     午後一時四十五分開議  出席委員    委員長 受田 新吉君    理事 木部 佳昭君 理事 小峯 柳多君    理事 後藤 俊男君 理事 田中 昭二君    理事 河村  勝君      稻村左近四郎君   小此木彦三郎君       唐沢俊二郎君    左藤  恵君       斉藤滋与史君    高田 富之君       長谷部七郎君    横路 孝弘君       松本 忠助君    林  百郎君  委員外出席者         総理府総務副長         官       湊  徹郎君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      平川 幸藏君         警察庁交通局長 久保 卓也君         通商産業省重工         業局自動車課長 大永 勇作君         運輸省自動車局         業務部長    小林 正興君         運輸省自動車局         整備部長    隅田  豊君         運輸省航空局技         術部長     金井  洋君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  交通安全対策に関する件  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 受田新吉

    受田委員長 これより会議を開きます。  参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  交通安全対策に関する件について、参考人出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 受田新吉

    受田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選及び日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 受田新吉

    受田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 受田新吉

    受田委員長 交通安全対策に関する件について調査を進めます。  先般地方における交通事情及び交通安全施設整備状況等調査のため、福岡県、山口県、岡山県及び大阪府に委員を派遣いたしました。この際派遣委員から報告を求めます。河村勝君。
  6. 河村勝

    河村委員 御報告申し上げます。  地方における交通事情及び交通安全施設整備状況等調査のため、議長の承認を得まして、去る八月二十三日から五日間、福岡県、山口県、岡山県及び大阪府に派遣されました派遣委員を代表いたしまして、その調査概要を御報告申し上げます。  派遣委員は、丹羽久章君、佐藤守良君、後藤俊男君、横路孝弘君及び私河村勝であります。そのほか、山口岡山県、大阪府に委員長受田新吉君、福岡山口岡山県に加藤六月君、大阪府に佐藤恵君、福岡県に田中昭二君、山口県に宮井泰良ら委員現地参加を得ました。  今回は、第六十三回国会において成立した交通安全対策基本法実施状況等地方公共団体における交通安全対策に関する総合施策実施状況調査いたしてまいりました。以下順を追ってその概要を申し上げます。  まず、福岡県下交通事情等について申し上げます。県当局、国の関係行政機関当局より説明を聴取いたしましたが、それによりますと、本県は、九州の表玄関として交通上の要所となっており、車両交通量も年々増大する傾向を示しておりますが、特に北九州地区及び福岡地区でこの傾向が著しく、交通事故も両地区国道三号線及び同十号線周辺において多発する傾向にあります。これに対する対策としては、道路交通安全施設整備道路交通指導取り締まり充実交通安全思想普及等重点を置いて、事故防止対策につとめている旨の説明があり、次いで市内踏切道改良工事街路事業、再開発事業等現地調査をいたしました。  なお、これらの調査に先立ち、博多港を調査いたしました。  次に、北九州市において、海上交通事情等について、関係当局より説明を聴取いたしました。この地域の各港湾における船舶交通量は著しく増大しており、船舶交通事故発生危険性を含んでおり、これらの対策として、航路標識整備海事法令違反取り締まり等の強力な施策が望まれるのであります。  次いで、山口県下交通事情等について申し上げます。  県知事から、県下交通事故の概況及びその対策についての説明によりますと、県下主要幹線道路として国道二号線、同九号線、また百九十一号線、山陽の工業都市を結ぶ国道等がおもなものであり、交通事故の特徴として県外通過車両による事故が多いこと、歩行者事故減少傾向にある反面、車両相互事故増加していることで、これら対策としては、交通安全施設整備事業による安全施設整備をはじめ、市町村における組織体制整備事故多発地点道路環境整備等施策が講じられ、特に、街頭における活発な交通指導取り締まりが、本年の事故減少に大きく貢献しているとの説明がありました。  次いで、山口市と防府市を結ぶ国道二百六十二号線の佐波山トンネル工事周南バイパス建設現場等調査いたしました。県からは、交通安全対策としての道路改良整備等について要望を受けたのであります。  次に、岡山県下交通事情等について申し上げます。県知事関係行政機関からの説明によりますと、本県は、阪神地方と中国、四国地方を結ぶ交通上の要衝の地にあたり、県内には五万をこす路線が縦横に走り、自動車保有台数増加県外からの通過交通量の増大に伴い、交通渋滞事故も多発しており、この事故防止には、県は交通安全推進体制を確立するとともに、交通安全施設整備交通規制等重点を置き、その安全対策に力を注いでいるとのことであります。  次いで、国道二号線、鷲羽山有料道路主要地方道玉野玉島線及び国道三十号線、岡山市内交通事情調査いたしました。  なお、県当局から、国がすみやかに交通安全基本計画を策定し、これを契機に画期的な財源措置を講ずるよう強い上要望がありました。  次に、大阪府下交通事情について申し上げます。府知事関係行政機関からの説明によりますと、府下自動車保有台数は、十年前の約五倍と激増しており、府外からの流入車両を加えると、膨大な数の車両が府内の道路を走っており、至るところで交通渋滞交通事故交通公害発生している状況にあります。その対策として、市内幹線道路の一方通行規制交通安全施設整備交通安全教育徹底取り締まり徹底等施策充実に力を入れているとのことであります。  次いで、万国博会場周辺道路交通状況大阪市内幹線道路の一方通行規制等調査いたしましたが、これら周辺道路整備と一方通行規制は、都心部における交通渋滞を著しく緩和させたとのことでありました。  最後に、府下における海上航空交通について申し上げます。大阪港は、阪神経済圏の伸展に伴い、内航船舶タンカー等危険物積載船舶航行が非常に多く、港内交通は著しくふくそうしており、これらの対策として航行管制実施巡視艇による港内交通整理強化等、強力な対策が必要であることを痛感した次第であります。大阪空港は、発着する航空機は一日当たり一万三千回をこえ、すでに限界に近い混雑状態にあります。今後は航空保安施設等効率的運用管制業務体制強化等により、航空交通の安全を確保することがさらに必要と思われます。  以上で各府県における調査概要を終わりますが、詳細についての報告書委員長の手元に提出してありますので、本日の会議録に参照掲載されることをお願いいたします。  なお、本調査の結果、次のような措置をとる必要があることを痛感いたした次第であります。  一、交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法に基づく、第二次交通安全施設等整備三カ年事業を大幅に改定拡大し、昭和四十六年度を初年度とする特定計画の樹立と、施設整備促進をはかること。  二、国道二号、三号線など、幹線道路交通量はすでに飽和状態であり、特に市街地及びその周辺における歩道、横断歩道橋等整備並びにバイパス建設促進をはかること。また最近の事故現況にかんがみ、地方道における安全施設等整備を早急に促進すること。  三、踏切道事故防止徹底をはかるため、歩行者の多い踏切道整備促進するとともに、市街地における鉄道の高架化促進をはかること、また、国鉄、私鉄、国道と並進し、かつ狭隘な地形である地域における安全施設等整備について再検討し、その促進をはかること。  四、被害者救済対策について、これが体制整備をはかり、救急搬送体制等整備には、財政措置を講ずること。  五、最近の港内、狭水道における交通量増加航行複雑化等現況にかんがみ、港湾整備航行の規則、浮灯標の増設等をはかること、特に石油コンビナート建設に伴うタンカー等危険物輸送増加により、化学消防艇海上消防体制強化をはかること。  以上でありますが、政府は各県の要望並びに必要な財政措置について十分配慮し、国及び地方公共団体が一体となって交通安全の施策を推進されることを強く望むものであります。  最後に、今回の調査あたりまして、関係知事、市長及び関係者の御協力を心から感謝いたすものであります。     —————————————
  7. 受田新吉

    受田委員長 これにて派遣委員よりの報告は終わりました。  派遣委員各位にはまことに御苦労さまでございました。  なお、ただいまの派遣委員よりお申し出のありました詳細なる報告書について、参照として本日の会議録に掲載することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 受田新吉

    受田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書本号末尾に掲載〕     —————————————
  9. 受田新吉

    受田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。左藤恵君。
  10. 左藤恵

    左藤委員 道路交通法の一部を改正する法律が八月二十日に施行されたわけでありますが、そのすべり出しと申しますか、施行一カ月余りの状況について、まず警察庁交通局長から伺いたいと思います。
  11. 久保卓也

    久保説明員 八月二十日以降一カ月間は、道交法改正に伴いまして指導を主にし、かつ広報活動をやっております。この広報活動につきましては前からもやっておるところでありますが、特に総理府の御協力も得まして、全般的に相当周知されつつあるものではなかろうかと思っております。  そこで、この効果でありますけれども、必ずしも道交法改正だけの効果であるかどうかは、なかなかわかりにくいところでありますけれども、間接的に推測し得ると思いますので、数字を若干申し上げてみますと、ことしの九月までの死亡事故が、昨年の同期に比べまして五・一%ふえております。これは昨年一年と一昨年と比べますと、一四%昨年はふえておりますから、わりと減っておるわけであります。増加率は鈍化しておるわけなのですが、特に八月二十日から、つまり施行日から昨日までの死者の数を見てまいりますとほぼ二%の増加になっております。先ほど申し上げましたように、九月末までに五%、八月末までですと五・何%の増加に比べて、ことしの八月二十日以降昨日までは二%の増しかないということで、わりと数が減っております。  もう少し具体的に見ますと、たとえば今度の道交法改正の中で飲酒運転一つ焦点になっておるわけですが、昨年一カ年における一カ月の検挙件数、その平均数を見ますと約一万一千件でありますが、この酒酔い運転に対する検挙件数法施行後は六千九百件、非常に減っております。ただし、昨年酒気帯び運転だけでは禁止されておりませんでしたが、今回は酒気帯び運転も禁止されるということで、その分も含めますと約一万件ちょっとということで、それでも昨年に対して約一千件くらい減っているということで、これは必ずしも取り締まりをやらないということでなくて、警視庁はじめ、法施行後特に焦点である飲酒運転に対して取り締まりを厳行しましたが、数字が減っているということは、反面対象が減っているというふうにも見受けられます。私ども部内のいろいろな人に会ったときに、法改正後なかなか飲酒運転がきびしくなったので、酒を飲んで運転できませんということをよく聞きますが、そういった効果であろうと思います。現にこの裏づけをしますのが、八月までで飲酒運転による死亡事故が三十八件減っております。九月一カ月問で十八件減っております。ですから八カ月間で三十八件減ったというのが、九月だけで十八件減っているということは、これは確かに効果があったのではなかろうかというふうに私は観測いたします。
  12. 左藤恵

    左藤委員 いま、酔っぱらい運転交通事故、そしてそれによる死亡者が減少してきたという傾向は、この道路交通法改正ということをやってよかったというような印象を受けるわけでありますが、その中で罰則適用のない、酒を提供するおそれのある者に対して——酔っぱらい運転をするおそれがある者に酒を提供した者は、罰則適用がないわけでありますが、警察庁のほうではこれに対します取り締まりを、この法改正後行なわれたか、すなわち共犯理論でもって検挙されたことがあるかどうか、その辺はいかがでしょう。
  13. 久保卓也

    久保説明員 共犯になりますので検挙はできるわけでありますが、いま私、数字を持っておりませんが、おそらくあまりないのではなかろうかというふうに思います。
  14. 左藤恵

    左藤委員 そこで、この道交法改正によりまして、今度は交通巡視員というものが認められたわけでありますが、その活動がすでに始まっておるかどうか、また始まっておるとすれば、これらの人たちがどのような活動をしておるか、その状況について御説明いただければと思います。
  15. 久保卓也

    久保説明員 交通巡視員は、これは県の予算で採用するものですから、県といたしましては、六月の予算あるいは九月の予算でそれぞれ予算をきめております。そして採用後三カ月間教育をする関係上、現在活動しておりますものは栃木県ほか三県のはずであります。そこで聞いてみますと、マスコミから取り上げられる度合いが多いせいもありましょうが、非常に士気も高くて好評である。これは市民からも好評であるし、栃木あたり女性が全部でありますが、女性も非常に士気を高めて活動しておるということであります。発足当初でありますので、この巡視員は、交通整理指導とそれから駐車取り締まりを任務にするわけでありますが、当分の間は交通指導整理を主にして、漸次なれさせておる。この場合に、男子警察官が最初付き添って指導に当たっておる、こういう状況のようであります。
  16. 左藤恵

    左藤委員 今後そういった士気の高まった交通巡視員が、りっぱな活動をされますよう、特に希望いたしておきたいと思います。  そこで、今度の法律改正に伴って、駐車違反取り締まりというものが、いろいろと問題が出てきておると思います。特に大阪では、駐車違反取り締まりを現在の五倍にするというようなことが、新聞の記事にも載っておりましたし、一体全国的に駐車違反をどのように考えておられるか、交通巡視員の活用という問題との関連において御説明いただきたいと思います。  それから、このことに関連いたしまして、これは新聞紙上にも載っておったこともありますが、ステッカーの使用の問題であります。不法駐車しております場合にステッカーをつけ、そしてそれをつけた場合にひっぱがして逃げる、出頭の命令に応じないというような実態がかなりあるようです。この前御質問申し上げましたときにも、この問題についての非常な警察庁の苦心のところをお話しいただいたわけでありますが、こういった逃げた場合の追及というものは、非常にむずかしくても、法の公正な適用という点から見て、ステッカーをひっぱがして、逃げた者が得をするというようなことがあってはならないと思いますが、その辺についてのお考えをあわせて伺いたいと思います。
  17. 久保卓也

    久保説明員 駐車取り締まりにつきましては、これは地方新聞を見ておりましても、市民要望がたいへん多いわけです。また反面、この取り締まり徹底するには、警察官の数が非常にたくさんを要しますので、なかなか徹底しにくい。しかも駐車の場合に、違反検挙をするときに、本人はだれが運転をしたかわかりませんということで、責任をのがれるという面がある。それから出頭をかけましてもなかなか応じてこないといったような、非常に技術的な難点がずいぶんあるわけであります。  それから、御承知車庫規制法という必ずしも有効でない法律のせいもありまして、なかなか徹底しきれないという面もあります。しかし国会でも再々御要望もありますように、私どももことしは相当の力を入れつつあるところで、東京、大阪、そういった大府県をはじめ、相当ことしは駐車違反件数が上がっておるはずであります。数字を持ってきませんでしたが、昨年よりおそらく何割か上がるはずであります。五倍というような目標を立てたわけではありませんが、警察官あるいは管区機動隊といったようなものを活用してなるべく街頭に出し、また交通巡視員も逐次街頭に出てまいると思いますが、そういったものの力をあげて駐車違反に対処したい。  なお、車庫規制法の問題については、なかなかむずかしい問題もありますが、いずれ改正考えたい。この次の国会には間に合わないのではないかと私ども思っておりますが、いずれ改正をしてみたいと思っております。  それから、いまのステッカーの問題は、これは駐車違反運転者を呼び出した場合に、ステッカーをつけませんと最初呼び出した場合に五割程度しか出てまいりません。ところがかぎつきステッカーをつけますと、ほぼ九割ぐらい出てまいります。残りのうち数%はかぎつきステッカーをこわして逃げているという者もあります。この問題について、警視庁はじめ各県で何とか手が打てないだろうか。たとえば法律的にいえば器物毀棄に該当はいたします。ただ、私ども昨年からこのステッカーを始めて相当効果がありますし、反面違反者とはいうものの、違反者であるという判こを車に押したようなかっこうでありますので、人権上問題にはなっておりませんが、そう強くきびしくするのもいかがなものであろうかということで、器物毀棄ということでは追及いたしておりません。これは現実には四百円前後のものですから、したがっていまのところはこわされ損ということでありますが、しかし現実にたくさん出頭しておりますので、私どもはそれで満足しております。  ただし、道交法改正の中で、ステッカーをはずした者については、別に罰金を取る制度を考えてみたらどうだろうかということを私どもいま検討しております。
  18. 左藤恵

    左藤委員 いまのステッカーの問題につきましては、いま言われたように九割ぐらいの人は出頭してきているので、その効果はあるというお話でございますけれども、たとえ一割であってもそういった人たちがのがれ出るということになりますと、一種のひき逃げみたいな感じをここに残すわけでありまして、そういったことについて善処方をお願いしておきたい。何か新しい法律的なくふうをこらすことができれば、次の道路交通法改正というふうなときに、この問題を取り上げていただきたいと思うのであります。  それからもう一つ、今回の道路交通法改正に関連してだったと思いますが、黄色の信号の意味がいままでとは少し変わってきたので、これに対します信号無視取り締まりの方法というものが、いままでより一そうむずかしくなったのじゃなかろうかと思うわけであります。特にそういったもので検挙した場合に、訴訟で科学的にそういったことを立証する責任警察にかかってくるわけでありまして、この点について器材を充実する、あるいはテレビカメラでとるといったことについて、お考えがあるかどうか伺いたいと思います。
  19. 久保卓也

    久保説明員 黄信号が変わりましたが、黄信号無視といいますか、その検挙はなかなかむずかしいので、現実検挙しておりますのは赤信号無視した場合が大部分であると思います。しかしそうはいいましても、警察官現場にいないとこの検挙はできないということで、街頭になるべくたくさんの警察官を出すということが一つであります。もう一つは、先ほど視察報告の中にもありましたように、私どものほうで交通管理システムの五カ年計画ということで、相当膨大な安全施設の投資をお願いしているわけでありますが、その中で、テレビカメラ都市部については相当多量に装着する予定をしておりますので、こういうものの中で、いまお話しのようなことが解決できるのではなかろうかと思っております。
  20. 左藤恵

    左藤委員 次に、今回の改正に際しまして、次回の改正まで保留された問題について、その後警察庁のほうでどのように事務的に進められているかということを伺いたいと思うのは、騒音あるいは排気ガス発生によります、公害防止のための規制という問題であります。これは、この前私が質問いたしましたときにも御説明があったことでありますが、ことしの二月、一酸化炭素に関する環境基準閣議決定というものが行なわれておるわけでありまして、一酸化炭素発生に伴う公害防止するための、交通規制について検討するという一項目が、閣議決定の中にあがっております。そこで、現実に最近の大気汚染公害の問題、いろいろと取り上げられておるわけでありますが、たとえばロサンゼルスの場合でも、まず、車の排気ガスによるいろいろなオキシダントとか、そういった公害の因になっておるパーセントが九割であるというふうなことがいわれておる点から考えましても、非常に一定地域において騒音あるいは排気ガスが起こっておるというときには、その道路に車が入ることを規制できるような対策を講じなければならないと思うわけでありますが、その後厚生省との間でどのように話し合いを進められておるか、その状況について伺いたいと思います。
  21. 久保卓也

    久保説明員 まだ厚生省との検討は続けられております。したがいまして、結論は出ておりませんが、方向といたしましては、大気汚染につきましては、厚生省なりあるいは地方公共団体の定める一定基準がありました場合に、主としては地方公共団体の長、都道府県知事要請に基づいて、警察公安委員会規制をするという方向に持っていきたい。ただし、少し検討しておりますのは、たとえば、一定基準以上ある地域において発生しておれば、自動的に公安委員会のほうで、要請がなくても規制をすることがいいのかどうかという問題がちょっとペンディングになっております。  それから、騒音とか振動という公害がありますが、この場合については、公安委員会の独自な判断規制ができる。これは特定地域特定場所に限られて、都道府県知事要請にかわらしめるのが必ずしも適当でないといったような、いわゆる迷惑的な問題が多いと思いますので、これは、公安委員会の独自の判断でしたほうがいいのではなかろうかというふうに考えております。  なお、公害、特に大気汚染によって規制をすると申しましたが、事実上は非常にむずかしいようでして、最近もアメリカに私どもの中の者を派遣しまして調べさしておりますが、排気ガスの場合に、たとえば柳町交差点のように、特定場所について、排気ガス濃度が非常に高くなったという場合には、公安委員会規制でほかの道路に回すということが非常に容易であります。ところが、非常に広い地域になっております、たとえば中野区について、排気ガスによる公害が非常に高くなった、濃度一定基準を越えたといった場合に、車をどういうふうに迂回させるか。迂回させると、またそこがたいへんな交通渋滞になり、公害発生するという問題になりますので、これはなかなかむずかしい。ロサンゼルスあたりですと、御承知と思いますけれども特定地域ということでなしに、ロサンゼルス市に入ってこないようにする、あるいはロサンゼルス市にある車をストップをするという全域的な規制措置をしておる。これならば可能であると思うのです。しかし、可能である反面非常に大きな影響を与えるわけで、ロサンゼルスの場合、たとえば、COの例をとってみますと、やはり警報が出るのは一〇〇PPM。御承知のように東京都が一応の環境衛生基準としておりますのは一五PPM、政府がきめておりますのは、八時間二〇PPM、二十四時間一〇PPMというように非常に低いわけです。そこで、ロサンゼルスで車の規制をやるのは二〇〇PPMということで、ほとんど現実には考えられないような状況です。したがいまして、法律的にそういった根拠を設けても、ほんとうに実施されるのかどうか、全域的にそういったことが行なわれるのかどうか、若干私は疑問でありますし、そういう点は今後とも厚生省と私ども、あるいは東京都と警視庁とよく協議をしなければいけない問題だと思います。いずれにしろ、法律上は根拠を置きたい、かように考えております。
  22. 左藤恵

    左藤委員 いまの問題は、市民の健康という点から考えましても、ぜひそういった法的な根拠を明らかにいたしまして、そういった交通規制ができるように取り計らっていただきたいと思うわけであります。  それから、もう一点だけ伺っておきたいと思うことは、無線タクシーの問題であります。運輸省の自動車局長にお伺いいたしますが、私が五月の十二日に当委員会で無線タクシーというものを今後どういうふうに拡充していくのか、それとも押えていくのかというその指導方針について伺ったときに、無線タクシーというのは、利用者の需要に的確に応じ得る、また運転者状況を確実に把握することができるという長所があるわけでありまして、そういう意味で、利用者の利便を増進するというために、運輸省としては無線タクシーを拡充していきたいというお話があったわけであります。その後その普及の方法につきましても、そのときにも御説明がありましたが、東京とか大阪では実車率が高いために、無線タクシーがなかなか普及しがたい。地方では非常によく普及しておるけれども、普及しがたい。そこで専用電話をひとつ計画して、それで一般の利用者に百円入れて呼び出してもらう、そうしてあとで料金でそれを精算するという方式を計画しておるというお話があったわけであります。現にそういうものが東京、大阪でつくられておるのであります。現在ではそれがまだ利用されないで、ほこりをかぶっておるというような状況にあるように聞いておるわけでありますが、最近タクシー業界のほうで、タクシー料金の値上げの申請といいますか、そういう希望が出ておる。この無線タクシーの専用電話利用計画につきましても、そういったことを待っておるのではないかというような一つの推測が新聞にも書かれておるわけであります。この点について運輸当局はどういうふうに考えておられるか、御説明をいただきたいと思います。
  23. 小林正興

    ○小林説明員 お答えいたします。  無線タクシーの利用形態から見ますところのメリットといいますか、これはただいま先生のお話しのとおりでございます。したがってこれを拡充強化するということが基本的な考え方でございます。しかもその具体的な方法といたしまして、ただいまお話のありました無線専用電話を街頭に設置いたしましてこれを普及していこう、こういうことで、東京及び大阪につきまして、すでに計画はできておるわけでございます。この無線車の拡充及び専用電話の設置ということに伴います所要の経費、こういったものをやはり運賃あるいは料金でもってカバーしなければ、こういう施策を推進できないということで、無線車についての割り増し料金の申請が出ておるわけであります。現在そういった内容につきましてこまかく原価計算をしておりまして、かなり煮詰まっておるわけでございます。今後私どものほうで査定いたしました内容につきまして、さらに経済企画庁とも協議して、新しい無線料金というものをきめていきたいということでございます。現在検討中でございます。
  24. 左藤恵

    左藤委員 いまのお話を聞いておりますと、結局何かそのことによって、無線タクシーについてだけでも、料金は値上げせざるを得ないようなお話のように伺ったわけでありますけれども、タクシーの近代化センターというふうなものを設置して、それを運営していこうということに対して、運輸省のほうで強い行政指導を行なっていくという熱意があれば、これは料金の値上げをまたなければ、たとえば専用電話の利用というものに踏み切れないというようなことでなしに、まず現料金においてでも専用電話の利用に踏み切って、そうしてその上で、これは全体の問題として、料金をどうするかということと切り離してでも考えなければならないのじゃないかと思うわけですが、その辺のところは運輸省ではどういうふうにお考えになっておりますか。
  25. 小林正興

    ○小林説明員 一般の運賃の改定の問題、これは基本運賃でございますが、これにつきましては、一応無線タクシーと別個の問題であるということで、無線料金についてだけただいまお話ししたわけでございます。この無線タクシーを強化していくという際、無線車をしからばどうやればふやしていけるか、あるいは専用電話の設置ということも、これの設置に必要な経費あるいはその後の運営に必要な経費というようなものにつきまして、やはり相当なコストがかかるということで、こういったものにつきましては、いわゆる基本料金と全然別個に原価計算をしていきたいというふうに考えております。
  26. 左藤恵

    左藤委員 何か巷間いろいろ伝えられておるところでは、無線タクシーの無線利用にたくさんの経費がかかるということに便乗して、基本的な料金まで値上げをしようという動きがあるようなことも伝えられておりますので、そういった点は、ひとつはっきりと行政指導の面で取り扱っていただくように要望いたして、私の質問を終わりたいと思います。
  27. 受田新吉

  28. 横路孝弘

    横路委員 時間が非常にないので、いま運輸委員会のほうでの、ICAOのほうの条約に基づいた報告書でないのじゃないかというようなことの議論はあとにして、少し内容についてお尋ねをしてみたいと思います。  ボーイング727の事故の最終報告書が九月二十九日に出されたわけですけれども、このレポートの結論を見ると、この当該機は、接水前には何らの異常もなかったのだということが結論になっているわけです。何らの異常もなく、ともかく飛行機が接水に入ったということがこの結論の部分になっていると思うのです。  そこでお尋ねしたいのは、時間がありませんので一つ二つにしぼりたいと思うのですけれども、まず、いま運輸委員会のほうでも議論した乗客の安全ベルトの問題ですね。乗客が何も知らないままに、はたして飛行機が海中に突入したのか、あるいはその乗客が異常を察知していたのではないか。そうすると、飛行機に完全に何か異常事態が発生していたという一つの証拠になると思うのです。そこでこの報告書について、「百二十六席の安全ベルト金具に荷重が加わったと思われる痕跡が認められ、うち九十二席については、右前方向又は左前方向の荷重が加わった痕跡が明瞭に認められた。」ここではこういうレポートになっているけれども、実は昭和四十三年四月二十六日のときの第一次草案の中身では、はっきりと、二七%については安全ベルトの取りつけ部分に荷重が加わった痕跡は認められないというようになっているわけですね。最初は、二七%については圧力が全然かかっていなかったのだというように明確に断定していながら、この最終結論書になると、そこのところをあいまいにして、九十二席についてだけ明確に認められたのだというように表現を変えているわけです。この辺のところはどういうことなんですか。調査団の調査経過みたいなものを簡単にひとつお話し願いたい。
  29. 金井洋

    ○金井説明員 ただいまの先生の御質問ですけれども、安全ベルトが座席の取りつけ金具にかかっておるわけですけれども、そのかかり方が非常にはっきりしたものと、それからあまりはっきりしていないもの、傷はついておるけれども、ほかのものほどはっきりと強くはついていないというものがあったわけです。第一次草案のときには、傷があまりはっきりついていない、座席ベルトの金具の部分は傷がついていないというふうに判断したわけです。その調査したデータあるいは写真等を見た結果、これはやはり傷がついておるではないかという多数の意見になりましたので、第一次草案をつくった根拠であるところの、傷がついていないという判断はおかしいということで訂正されたのであります。
  30. 横路孝弘

    横路委員 座席ベルトは、要するに飛行機が着陸する十五分くらい前からかけているわけですね。だから、このときも当然みんなかけていたと思うのですよ。そうすると、飛行機がたとえば少少ゆれたって荷重はかかるわけですね。こういうふうに着水したときじゃなくたって荷重はかかる。そうすると二七%以外の部分ですね。ここで明確にいっているのは、九十二席については着水のときのショックじゃないか。あとの部分についてはそのショックがないのじゃないかということがやはりいえるのじゃないかと思うのですね。第一次草案から第二次草案の段階で、わずか六十日の間の過程でその結論が逆になってしまうということが、私にとってはふに落ちないのですけれども、その辺のところはどうですか。
  31. 金井洋

    ○金井説明員 ただいまの御質問ですけれども、強く傷がついておるものと、それから傷があまり強くついていないものとの差があるのはおかしい。それから空中でも、締めておっても若干ゆれたりなんかすると傷がつくから、もし着水のときに全部締めておったとすれば、同じような傷がつくのではないかという御趣旨かと思いますけれども、御承知のように、安全ベルトを同じように締めておっても、バックルのはめ方、あるいはよくがっちりはめておる人と、それからがっちりはめていないようなときには、少し引っぱるとバックルがすぐ抜けてしまうわけです。そういうようなことがありますので、必ずしも同じようにきつく荷重はかからないという判断もありますし、それから飛行中ゆれたときにも傷がつくわけですけれども、そのときには大体上下にゆれたりなんかするわけです。この場合には、傷は弱いけれども前後方向についておるというような根拠から、これは弱い、きついなどの差はあるけれども、一応全員というか、大多数の者はベルトをある程度きつく締めていたのではないかという判定をしたわけでございます。
  32. 横路孝弘

    横路委員 そのベルトを締めていたというようなことは、別にこの報告書には何も書いていないのですよ。いま、判断をしたというようにおっしゃったけれども、この報告書には、締めていたというのじゃなくて、ただそういう少しゆるやかな荷重が加わったと思われる痕跡が認められるということしかいっていないのですよ。だから、いまのあれは金井さん個人の御見解だろうと思うのです。あといろいろな問題をこれから聞いていきますけれども、どうもそういう点があるのですね。ほんとうはこうだと言いたいけれども、どうも客観的な資料がこうだから、その辺のところを不明にしてしまおうというか、パイロット・ミスの方向に持っていこうというような形でもってなされている可能性が私は強いと思うのです。ここが、第一次草案では、「ベルト着用の指示があり、客室乗務員がこれを確認した後であったと認められるが、その後において相当数の旅客が何等かの理由で安全ベルトを外したとも考えられる。」ということをいっているわけですね。そのはずしていた可能性というものはあるわけでしょう、この荷重の違いから。
  33. 金井洋

    ○金井説明員 はずしていた可能性があるかどうかということですけれども、ただいま申し上げましたように、強い弱いの差はありますけれども、前後方向の荷重がかかっていたということは、ベルトを一応締めていたのじゃないかというふうに想定するのが当然ではないかと思います。
  34. 横路孝弘

    横路委員 それは着水時にはめていたということですか。
  35. 金井洋

    ○金井説明員 第一の着水というとちょっと誤解がありますけれども、飛行機は少なくも二回以上水についておる。一度バウンドして、また次にもう一度バウンドしているのではないかというふうに推定されるわけです。したがって、最初の着水、第一の着水前には一応ベルトを締めていたと推定するのが当然ではないかと思います。
  36. 横路孝弘

    横路委員 そうしたら、この報告書はそうなっていないじゃありませんか。着水前に乗客がみんな安全ベルトを締めていたということは、どこにも書いていないじゃありませんか。
  37. 金井洋

    ○金井説明員 いまのは報告書とはちょっと違いますけれども、一応傷があったということは、そういうふうに推定するのが当然ではないかということを申し上げたわけでございます。報告書にそう書くとかいうことではなくて。
  38. 横路孝弘

    横路委員 この報告書は、皆さんもお入りになってこれはまとめたものでしょう。そうすると、いまの御答弁とこの報告書、違うじゃありませんか。そうだったら、そのように書かれたらいいのですよ。そういうふうに推定されるというなら、推定されるというように書かれたらいいじゃないですか。
  39. 金井洋

    ○金井説明員 こういう意味でございます。要するに弱い、強いの差はありますけれども、締めていたと推定される。ただ、報告書として書く場合には、あまり根拠のないことは書けない。要するにあくまでも証拠がないことは書けない。ただ、いすの取りつけ金具には傷がついていたという証拠がある。証拠があることは書くけれども、推定される程度のものは——推定というか、断定する証拠がないようなものは書かないという趣旨で、載せてございません。
  40. 横路孝弘

    横路委員 そうしたら、可能性としては、着水前にはずしていた可能性もあるわけでしょう。  それではもう一つ、別な観点から聞いてみましょう。救命胴衣の問題です。九十八個のうち三十三個が膨張操作状態になっていた、こういうことになっていますね。そうしてこの安全ベルトを、いま言った百二十六から九十二を引くと、これは三十四なんですね。救命具が膨張状態になっていたのと、それから圧力がかかっていなかった、弱かった人たちの数は大体一致するのですよ。そうしたら、どちらの推定が正しいかということです。
  41. 金井洋

    ○金井説明員 この報告書では、確かに証拠だけを書くという基本方針で書いてありますけれども、三十三個の救命胴衣がふくらんでいたというのは、それがどの時点でふくらんでいたのかということを明らかにすることができないわけです。たとえば、潜水夫がもぐって、何だと思って引っぱったというようなこともありますし、それから、あるいは破壊の過程で何かにひっかかって開いたのか、その辺もわかりません。したがいまして、なぜ開いたか不明であるということしか書けなかったわけです。要するに証拠がないということです。
  42. 横路孝弘

    横路委員 最終報告書にはそうなっていますね。それが第一次草案では、これらの一部が操作された可能性はあるけれども、構造上から見て、機体破壊時等の外力により、操作状態になる可能性は少ないので、大部分は旅客または客室乗務員が操作した可能性が強い、はっきりこういっていて、この結論は今度はあいまいになっているのですね。それでは、なぜこんな状態になったのですか。
  43. 金井洋

    ○金井説明員 第一次草案に書いてあるようなことをはっきり書くに足るだけの証拠がないということで、第二次草案からこういうことになったわけです。
  44. 横路孝弘

    横路委員 第一次草案が出されたのは、事故後二年間かかっているのです。二年間かかって調査をして、その上でまとめられて出たのが第一次草案でしょう。これは証拠に基づいてやっているわけでしょう。それから第二次草案にぐるっと変わるまでの間には、わずか四十日間しかないわけです。そうすると、いろいろちまたでいわれ、文芸春秋なんかにもいろいろ出ておりますけれども、木村団長のほうから、圧力をかけて変えさせたのだということがいわれております。  もう一つお尋ねしますが、遺体で発見された人の中で、全日空につとめている営業の社員の人が、救命胴衣を握っていたまま遺体で上がってきたというケースがあったように私は聞いておりますけれども、そういう事実があったかどうか。
  45. 金井洋

    ○金井説明員 そのような事実はございません。一部に伝えられておる、救命胴衣を握っておったということは誤りでございまして、救命胴衣をたたんでしまう袋がございますけれども、あの袋の一部が遺体にひっかかっていたということであって、救命胴衣を握っていたという事実はございませんでした。
  46. 横路孝弘

    横路委員 これは、外力によって操作状態になる可能性があるか、ないかということについて、それでは皆さんのほうで実験か何かでもやられたのですか。
  47. 金井洋

    ○金井説明員 そういう実験はいたしておりません。
  48. 横路孝弘

    横路委員 そういう実験もやられないで——可能性があるかどうかというのは、実験をやってみればわかることです。それでは、三十三個全部が引っぱったのか、外に出てきてから潜水夫が操作したのか。それはさっき運輸委員会で公明党の松本議員もお尋ねになっていたけれども、私は常識に合致しない考え方だと思うのです。
  49. 金井洋

    ○金井説明員 実験をせよということでございますけれども、実験の中には、実際的に申しまして、できる実験とできない実験がございます。たとえばこの救命胴衣が膨張するかどうかという実験でございますけれども、救命胴衣は座席の下に入っております。そして一応第一の接水からジャンプして第二の接水をしたと思われますけれども、その間どのような動きをしたのか、それから座席のこわれ方がどういうふうであったのか、それから水の力がどういうふうであったか、どのくらい流れておったか、そういう当時の状況を再現できないわけでありまして、当時の状況を再現できない状況下で試験しても、その当時のことはこうだとかああだとか言うことはできないわけであります。したがいまして、そういう試験はできませんのでやらなかったということでございます。
  50. 横路孝弘

    横路委員 そうすると、いま安全ベルトにかかった荷重、強い人が九十二名、あと三十四名については非常に弱い。その三十四名と、それから救命具のほうで何か操作をした可能性のあるようなものが三十三個ある。これは偶然の一致ですか。
  51. 金井洋

    ○金井説明員 それは偶然の一致といいますか、とにかく証拠がない。要するに、ある証拠というのは、座席にかかった傷であり、まあ前後方向の荷重、そういう証拠しかない。したがって、それが空中でどういうふうにして、たとえば救命胴衣が開かれたものかどうか、それから空中といいましても、第一の接水から第二番目の接水までもやはり空中に浮いておるわけでございますけれども、そのどの時点なのか、そういうことが皆目わからない。しかも、先ほど申し上げましたように破壊の順序、それからこわれ方が全然わかりませんので、どうにも試験もできないし、それから当時の状況もわからなかった。したがって何とも言えませんでしたということでございます。
  52. 横路孝弘

    横路委員 もう一つ、ギャリー・サービス・ドアの脱出用シュートの問題です。これは最終報告書によりますと、「ドアの内側に保管されている脱出用シュートの取付バアが、シュート側から引張られたように曲っていた。何故バアが曲ったかは不明である。」となっていますね。この点も第一次草案になると「ギャレ・サービス・ドアの内側に保管されていた脱出用シュートの金属製の取付棒が両端末を支えとしてシュート側から引張られたように湾曲していた。また機首側の床のブラケットのストップ・ラッチ・カバがとれており、かつ、ブラケットにえぐりとられたような損傷がある。これは脱出シュートが床のブラケットに装着されたことによるものとも推定される。」これは、人為的に操作されたというふうに第一次草案にありながら、これもまたひっくり返ってしまってこういうふうなことになっている。これはどういうことなんですか。
  53. 金井洋

    ○金井説明員 それも先ほど申し上げましたように、必ずしも脱出準備というものをしていたという証拠はない。たとえばスチュワーデスによっては、着陸するときに準備をする人もおるでしょうし、それから機体がどういうふうにこわれたか、その順序はわかりませんけれども、機体がこわれてそれが出て、水に流されて引っぱられるというようなこともありますので、その辺のところが第一次草案に書いてあるように、断定する証拠が何もない。断定する証拠が何もないのに、そういうふうに書くべきではないじゃないかということになりまして、第二次草案には書かれておりません。
  54. 横路孝弘

    横路委員 では、全日空の当時の脱出用シュートの取りつけバーはどんな操作をするような状況になっていたのですか。当時はいまと違うんですよ。
  55. 金井洋

    ○金井説明員 これはいまと違いますけれども、そのときもいまと同じなのか、それとももとのやり方でやっていたのかという証拠がわからないわけでございます。
  56. 横路孝弘

    横路委員 当時の全日空では、この事故後は別だけれども、当時は脱出用シュートの取りつけバーなんというものはやってなかったと言うんですよ。上に置いてはあったけれども、当時は下にきちんとセットなんかしてなかったと言うんですね。全日空の会社を調べてごらんになったらそんなことすぐわかることですよ。ほとんど全員やってなかったと言うんですから……。
  57. 金井洋

    ○金井説明員 それともう一つ、先ほど第一次草案に書いてあるような、脱出スライドの準備をしていたという証拠がないという一つの証拠として、その当時もしそういうことをするとすれば、逆な考え方としまして機長なり何かが当然そういうことを通報するでしょうし、それから海の上でそういうものを使うこともないし、それからそういうふうなこととも関連して、要するに使おうとしていたという証拠がなかったではないかということも、当時の第二次草案で変わった一つの理由であったわけです。
  58. 横路孝弘

    横路委員 答えになっていないと思うのですが、結局全員なくなっているわけですね。そうすると、残された客観的な証拠、いわば間接証拠から推理していくのはあたりまえですよ。普通の一般の刑事裁判だって、だれが犯人なのかということを本人が自供しない場合だって、有罪にすることができるわけですね。間接証拠を積み重ねていって、どういうことになるのかという推理をたどることは、事故調査でも当然じゃないですか。あなたが言っていることは、生きている人がいないから、見ている人がいないからというあたりまえのことを言っているにすぎないのですよ。脱出準備をしていたということは、異常を乗客が感じていたことではないか。これはやはり私は重要な証拠だと思うのですよ。それが、第一次草案から最終報告書になると不明になってしまった。その経過というものが何も明らかになっていない。だから、当時の全日空ではどういう取り扱いをしていたのかと聞いているのですよ。
  59. 金井洋

    ○金井説明員 当時ひっかけていたか、ひっかけていないかということは、全日空に聞きましてもわからないわけです。ひっかけている人々もおるし、ひっかけていない人もおるということで、全日空の当時の人に聞いてもわからないのです。  それはそれとして、先ほど申し上げたように、一つの推理としてはいろいろなことが言えるわけですけれども、要するに証拠がないということと、それからそういう脱出シュートというものは、事故報告書にもありますけれども、十九時〇〇分二十秒ごろロングベースと言って、次に三十一秒後ですか、三十一秒の間にランディングライトをつけろと言ったら、そのときに返事がなかった。だからその間に沈んだと思うのですけれども、その間わずか三十秒でして、三十秒では、脱出シュートをやろうとしてもそういう操作はできないわけです。もちろん、バーをかけていたかかけていないかは、当時としてはわかりませんけれども、もしかけるとしても、三十秒の間にそういうことはできないわけです。したがって、第一次草案の逆の証拠としてそういうことも考えられるので、第二次草案以降訂正がされたわけです。
  60. 横路孝弘

    横路委員 話はちょっと変わりますが、この報告書が三十一秒に限定していることだってほんとうは問題なんですよ。すでにその以前から異常事態が生じていて、その操作を乗務員が一生懸命やっていたことだって考えられるわけです。一々通報するよりも、どこにどういう異常事態が起こったかを発見することに乗務員が一生懸命やっていたとすれば、報告がなかったからといって、ロングベース・ナウと言ってから、あとの三十一秒に固定する考え方自身が私はおかしいと思う。  それにしても、いまの脱出用シュートの問題、これは非常に明確な問題だろうと思います。全日空は、当時はきちんとバーをひっかけてあるのですからね。バーをきちっとひっかけて、あそこの側面の非常ドアをぽんと出せば、脱出用シュートが下におりるような仕組みになっている。そのバーがひっかかっているのでしょう。そんなことは奇跡でも起きない限りあり得ない。だからその操作をやっていた。そういうことになっていたということは、いろいろの損傷から十分言えるというようにいっているのですから、何らかの操作をした形跡があるのではないですか。
  61. 金井洋

    ○金井説明員 いまの御質問ですが、バーがひっかかっていた——バーは曲がってはいましたけれども、ひっかかっていたという証拠はないわけです。
  62. 横路孝弘

    横路委員 傷があるでしょう。
  63. 金井洋

    ○金井説明員 それは傷はありますけれども、ひっかかっていたと断定はできない。確かに曲がってはいましたけれども……。
  64. 横路孝弘

    横路委員 その辺のところが、第一次草案ではいろいろ詳しく書いてあるのですよ。その書いてあるのがなくなってきているのですよ。「床のブラケットのストップ・ラッチ・カバがとれており、かつ、ブラケットにえぐりとられたような損傷がある。」だからひっかけていたのではないかという推論が出てくるわけです。その辺が一切抜けているわけですね。時間もあれですから、まあいいでしょう。  もう一つ、乗客のところだけにしぼっていろいろ質問したいと思うのですが、乗客の検視調書がありますね。これもほかの、たとえば松山空港の事故の場合にはみんな一様の打撃を受けている。それがこれはばらばらですね。ばらばらになっていますね。大腿骨の骨折している人もいれば、胸部肋骨骨折の人は全然いないのに、背部肋骨が骨折している人もいる。これは一体どういうことなのか。乗客が安全ベルトをつけていたら起こり得ないのではないか、そういう疑問がこの検視調書から当然出てきます。どうですか。
  65. 金井洋

    ○金井説明員 この事故機は最初に接水し、それから次にもう一つ、どの程度ジャンプしたかわかりませんが、ジャンプして、そのあと二回やっている。その次に何回やっているかわかりませんが、要するに二回以上ジャンプしているわけです。したがいまして、そのときに右下方方向の力が最初か、あるいは左下方方向の力が最初か、その辺は明らかでありませんが、少なくとも二回やっております。そういうふうなことで、傷のかかり方あるいは打撲の受け方、こういうものがお客によって違う。それからさらに、第一の接水をした後、おそらく何名かはまだ死亡してはいなかったのではないかということも考えられますし、非常に力のかかり方が複雑であったために、松山のような場合とちょっと違って、一様ではないということでございます。
  66. 横路孝弘

    横路委員 この死体検案調書、これは委員会のほうに提出していただけませんか。
  67. 金井洋

    ○金井説明員 出せると思いますので、これはまた検討しまして、あらためてあしたでもお答えいたしますけれども……。
  68. 横路孝弘

    横路委員 いつか参考人を呼んでやるということですから、その前にぜひ提出しておいていただきたいと思います。  もう一つ、客室後方ドアのハンドルが開の状態になっていたということですね。これだって、最終報告書ではあいまいもこ、不明になっているわけですが、第一次草案では、「操作ハンドルおよびハンドルに連結する内部機構は、すべて開のロック位置にあった。その機構から考えて水圧又は衝撃によって開の位置になる可能性は少なく、人為的に操作した可能性が強い。」というように非常に断言しておきながら、わずか四十日の間にまた不明になってしまっているわけですね。これは一体何かあったのですか。
  69. 金井洋

    ○金井説明員 ドアのロック機構があるわけですが、ロックが一カ所ではなくて、何カ所かでロックされるようになっておりまして、機体側とロックするわけですが、そのロックのメカニズムが半開あるいは閉あるいは開、いろいろまちまちな位置を示していたわけです。これがもし傷あるいはメカニズムの状況一つであれば、すぐ断定できるわけですが、いろいろな様相を呈しておったために非常に判定がむずかしかった。第一次草条では——これはもちろん第一次草案もすべての草案もそうですが、事務局で作成したときには、これを開であったほうにウエートを置いて見たわけです。しかし、それは開のほうにウエートを置いて見る証拠はない。ということは、全然ばらばらの傷をしておるわけです。ただ、なぜそういう傷ができたかということはわからないということになっております。
  70. 横路孝弘

    横路委員 この場合、「機構から考えて水圧又は衝撃によって開の位置になる可能性は少なく、」というふうにいっているのですよ。
  71. 金井洋

    ○金井説明員 それは誤っていたということでございます。
  72. 横路孝弘

    横路委員 誤っているという結論を出すためには、何か実験なりいろいろやられたわけですか。
  73. 金井洋

    ○金井説明員 それは実験はやりませんけれども、現物のドアについて詳細に再調査をして、第二次草案をつくる前に詳細に再調査をしました。
  74. 横路孝弘

    横路委員 これだって実験をやればできるでしょう。大体の水圧なり何なり、機構からそういう状態になることはあるのかないのかということ、そういうような調査をやっていないで、結論が四十日の間に変わっている。その辺のところがおかしいというのです。
  75. 金井洋

    ○金井説明員 実験といいますけれども、先ほども申し上げましたように、一度あるいは二度と何回か接水しております。その間、どういう順序でこわれたのかということがわからない。ということは、当時の状況を再現することはできないわけであります。それから模型の大きさその他も違いますし、結局再現できない試験をして、はたして意味があるかどうかということで、再調査をして第二次草案以降を書き直したわけでございます。
  76. 横路孝弘

    横路委員 いま私が指摘をした、従来から問題になっている数点ですね。救命具の問題、安全ベルトの問題、ギャリー・サービス・ドアの問題、脱出用シュートの問題、死体の検視調書の問題、客席後方ドアのハンドルの問題ですね。それだけが全部起こる可能性は、確率でやるとどのくらいになりますか。全部こういう状態が、何か異常があったという方向に向いているわけです。この六項目について起こり得る可能性というのは数学でもって、確率でやればすぐわかることなのです。これは全部が全部そういう方向を示すというのは非常にまれなケースですよ。そうすると、これだけの間接証拠から当然推論ができるのじゃないか。一つ一つのケースについては、あなた方のほうではこうだああだといって打ち消しをしている。しかしそれを全体として見た場合にどうなるかという判断が、この結論のところにないじゃありませんか。解析のところにないじゃありませんか。だから、どなたかが個別撃破の証拠隠滅型レポートだなんて言われているのです。一つ一つの現象を打ち消していって、そのことによって証拠を全部打ち消してしまって、何にもないようになっているのです。何にもないのではなくて、いろいろな現象がたくさんあるのです。それを総体的に見て、これはどうなるかということでやるべきなのじゃないですか。それをやるのが調査団ではないですか。
  77. 金井洋

    ○金井説明員 組み立ててやれということでございますけれども、その証拠の見方、証拠のウエートの置き方その他もございます。もちろん人によってあると思いますけれども、要するに断定できる証拠がないような場合には断定しない、断定すべきではないという方針で一応不明というふうに書いてあるわけでございます。そういった不明なものを組み合わせて推論するということがはたして——不明という程度のものを組み立てて推論すべきかどうかということは、もちろん検討の余地はあると思いますけれども、当調査団としてはできるだけのことをして、断定できるものは断定するし、断定できないものは不明。不明というような程度のものをあえて組み立てて推論しなかったということでございます。
  78. 横路孝弘

    横路委員 時間が来たので結論に入りたいと思うのですけれども、まだまだ問題がたくさんあるのですね。乗務員がどういう措置をとったのかという問題、エンジンの問題、それから例のスポイラーの問題、いろいろあると思います。だからこれからの委員会で一つずつこれは積み重ねていきたいと思うのです。今度参考人を呼ばれるということなのですが、その前に一つだけぜひ知っておきたいことがあるので、その点をちょっとお尋ねします。  この報告書の四ページに、第三エンジンの総使用時間は千三百七十四時間ということになっておりますね。総分解手入れ後の使用時間は七百十七時間になっている。そうすると、この第三エンジンについては、六百五十七時間で総分解をしていることになる。六百五十七時間後にやっている。これは非常に異常な事態ですね。普通は二千時間、三千時間で総分解をやる。第一エンジンを見ればわかるように、第一エンジンは千九百八十時間程度のところで総分解をやっているのです。そこでこの第三エンジンはどういう事情で総分解をやったのか、それを明らかにしていただきたいということが一つ。  それからもう一つは、おたくのほうからいただいた資料によると、この飛行機自身も何回か事故を起こしているのですね。本件の事故を起こす昭和四十一年の前の年、昭和四十年の十一月十三日から二十五日まで、整備中のミスによる酸素火災に伴う修理ということで、飛行機自身をこの間は使っていませんね。使っていないうちに第三エンジンをかえたでしょう。つまり、この第三エンジンは八三〇二機の第三エンジンではなくて、総点検をやったときにかえていますね。これはあなたのほうからいただいた飛行時間の記録を見ると、その前とあとでは違っているわけです。ですから、この第三エンジンはどこかの飛行機から持ってきた第三エンジンでしょう。ちょっとその点どうですか。
  79. 金井洋

    ○金井説明員 まず第一の質問ですけれども、六百五十七時間でオーバーホールしたのは異常であるということでございますけれども、これは全然異常ではございません。なぜオーバーホールタイムが来ない前にオーバーホールに入れたかということでございますけれども、これはデフューザーケースというのに溶接部がございまして、この溶接部はときどき亀裂が入ったりあるいははがれたりするようなことがあるわけなんです。これは通常起こり得るトラブルでございまして、そのデフューザーケースを直すときに、どうせ工場へ持っていったんだから、一緒にオーバーホールしょうということでオーバーホールしたわけでございます。原因は内部じゃなくて外のデフューザーケース、それで入れたわけであります。  二番目の御質問は、ナンバーワンとナンバースリーを入れかえたかということですか。
  80. 横路孝弘

    横路委員 ナンバーワンとナンバースリーを入れかえたのではなくて、本件事故を起こした飛行機のナンバースリーのエンジンは、昭和四十年十一月二十五日の段階でかえましたね。そのことをちょっと確認していただきたいと思います。
  81. 金井洋

    ○金井説明員 かえております。
  82. 横路孝弘

    横路委員 そこで、この第三エンジンの経過、一体どこの飛行機からどういうぐあいに持ってきたのか、最初来たのはどうなのかということを、資料としてあとで私のほうに出していただきたいと思います。
  83. 金井洋

    ○金井説明員 それはお出しします。
  84. 横路孝弘

    横路委員 最後に、こんな席上でこういうことを言うのはどうかと思うのですけれども、この事故報告書に対しては、いろいろな批判がたくさんあります。最近「パイロット」という雑誌に全日空の石崎さんという機長がやられているわけですね。これは個人の自由に関することで、私はむしろこういうような発言は自由にやってしかるべきだと思う。やはりこれだけの問題ですから、今後どんどんこういう発言がなされてくるのじゃないかと思う。そこで、何か私のほうで聞くところによると、運輸省のほうでこの記事を出したのはけしからぬということで、石崎さんを十月一日呼びつけてしかったというようなことを聞いておるのですけれども、そういう事実があったかどうかということと、もしあれば、そんなこそくなことをやらないで、自由にどしどし発言させたほうが、私は真実を発見するためにもいいのじゃないかというように思います。
  85. 金井洋

    ○金井説明員 おっしゃるとおりだと思います。ただ石崎さんというか、石崎さんの上司である全日空の人が事故調査に参加しておったのは、全日空として言いたいことを幾らでも言いなさいということで、オブザーバーとして特別に許可をされておったわけです。そこで、その会議の席上、団員あるいは事務局、石崎さんを含めたオブザーバーに対しては、会議上知り得た秘密はやたらに漏らさないでくれということを再三再四頼んでいたわけです。にもかかわらずときどき漏れていたわけですけれども……。したがいまして、事故調査の最終報告書が出される前にこういうことを記事にするということは、会議のルールに反するではないか、だからもしどうしても出したければ、事故調査報告書が出てから出してもらいたかったということを言いました。事故調査最終報告書が出てからどのようなことを言われても、それは非常にけっこうだと思います。しかし石崎さんに忠告したのは、会議のルールを守ってもらいたい、そうでなければ正常な運営ができないということを注意したことは確かでございます。ただし、発言を永久に封ずるとか、そういうことは言っておりませんし、最終的な事故調査報告書が出された現在、これからは何を言われてもけっこうでございます。
  86. 横路孝弘

    横路委員 これで質問を終わりますけれども、そういうことをやるといろいろ誤解も受けますから、やはりできるだけ慎んでいただきたいというように思うわけなんです。  これで終わります。
  87. 受田新吉

    受田委員長 林百郎君。
  88. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、運輸省当局に、最近新車が非常に多く売り出されておりますが、その新車の型式指定について若干問題があると思いますので、その点をただしてみたいと思うのであります。  第一は、現在売り出されておる新型車の中で、名前を言わせていただきますと、ニッサンチェリーだとかトヨタのカローラ一四〇〇、ホンダクーペ9、三菱のギャランハードトップGSというような相当多くの車が、ハイオクタンガソリンを使用する車種になっている。これは言うまでもなく、柳町の鉛公害が問題になって以来、レギュラーガソリンに比べて加鉛量の多いハイオクタンを使うことの批判が多くの人々からされて、そのことは世論になっている。それにもかかわらず、ハイオクタンガソリンを使用する車がどんどん売り出されている。運輸省は、これらの車に型式指定を与えている。ハイオクタンガソリンを使用しなければならない理由というのは、私たちが技術的な範囲内で調査した限りではそうないのであって、こういうハイオクタンガソリンを使用する車の型式指定というのは、これは慎むべきではないか、こういうように思うわけなんです。念のために私のほうでトヨタのほうから資料を取り寄せてみましたら、たとえばコロナハードトップ一七〇〇はハイオクタン使用車が三五%、それからコロナマークIIセダン、 コロナマークIIハードトップ、これらがハイオクが二九・八%、それからカローラ一四〇〇がハイオクが四一%、パプリカ一二〇〇がハイオクが二〇・七%と、ハイオクガソリン使用の車が生産量の中で相当高い比率を占めているわけなんで、これはどういうわけでこういう高い比率のハイオクタンガソリン使用の新車の型式指定をされたのか、この点をまずお聞きしておきたいと思います。
  89. 隅田豊

    ○隅田説明員 お答え申し上げます。  確かに先生御指摘のとおり、現在出ております新車の中では、ハイオクタンガソリンを使用する新型のものが出ていることは事実でございます。御承知のとおり、この前の柳町の問題以後、通産省のほうで燃料業者のほうに非常に努力していただきまして、現在のハイオクタンガソリンは、昔から見ますと加鉛量は半減しておりますし、当時のレギュラーガソリンとそう違わない加鉛量になっておるわけでございます。  それからもう一つは、できるだけ鉛をたくさん使わないで使える車に早く持っていきたいということは、われわれもそのつもりでございますが、現在発売されております車が、すでに当時計画をされておりました車でございます。現在のところは、鉛のほうもだいぶ以前に比べますと半減しておるということでございますので、いまのところは、まだハイオクタンの車が全部シャットアウトされているという状態になっていないのは、われわれも非常に残念に思っております。今後できるだけ早く加鉛量の少ない燃料で使えるような車を開発させていきたい、こういうふうに思っております。
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 レギュラーガソリンでも、ハイオクタンガソリンを使用する車と技術的には同じ圧縮比と最高速度を維持できる。だから、ハイオクガソリンを使用する車との違いは、出足とか、加速にあるといわれているわけですけれども、これらは安全運転という立場から見れば問題にならないわけなんで、ハイオクタンガソリンを使用しなければならない理由というのは、それはハイオクタンガソリンを売りたいほうからいえばいろいろ言いますけれども、レギュラーガソリンもほとんど機能はそう変わらないところまできているわけなんですから、いまのようなハイオクタンガソリンを使用する車の型式指定については、漸次厳密な態度をとっていきたいという答弁がありましたけれども、その点を十分認識される必要があるのじゃないか。技術的にもそう違いはない。むしろ、ガソリンを売るほうの側の事情が相当加味されておるのではないか。自動車のほうの技術からいえば、レギュラーとハイオクタンとの間の技術的な差異というものは、一時的に出足とか加速というようなときには若干あるにしても、そうないのではないか。そういうことからいって、もう一度将来ともこの型式指定については、きびしい方針で臨んでいくという答弁を私はいただきたいと思うのです。
  91. 隅田豊

    ○隅田説明員 先ほど申し上げましたとおり、型式指定につきまして、ハイオクタンガソリンと申しますか、加鉛ガソリンを使わなくても済むような車の方向へもっていくという、そういうつもりでこれからも私どもは臨んでいきたいと思っております。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 その次に速度の問題ですが、これは型式指定をする場合、メーカーのほうから最高速度の表示が出ていると思いますけれども、御承知のとおり、現在道交法施行令の二十七条の三では、大型乗用車と普通自動車の高速道路におけるスピード、これは自動車として一番スピードを出すときのことを言うのですけれども、最高は毎時百キロということになっておるわけですね。ところが、今度売り出されておる新車を見ますと、大体多くが百五十から百八十五。最高速度百キロで押えておるのに、どうして百五十から百八十五の車が出ているのか。しかもそのことを売りものにして宣伝がなされている。これは各新聞に出ていることをずっととってみたのですけれども、最高速度何キロという具体的な数字は出ておりませんが、非常に高速が出るということを売りものにして宣伝をしているわけですね。  私ども、ある有力会社の技術部長から直接聞いたところですけれども、たとえば最高百六十キロというような場合は、これは瞬間のみでなくて、常時これから五%を下回るスタビリティーで、たとえばカローラ一四〇〇で、圧縮比八・五で最高速度百六十キロというような場合は、五%下回った速度で常時これが出せるのだ、これは決して瞬間的な速度だけではないのだ。大体日本で最高の生産量を持つ会社のある責任者の答えで、私ども直接問い合わせてみたところが、単に瞬間的な速度ではなくて、常時そこから五%の幅で出せるのだ、だから百六十キロの場合はそこから五%引いたのが常時出せる。百八十五の場合も常時出せるのだ、こういうことなんですね。それで一方、今度は百キロという場合に、安全度を考えて、それではどのくらいの余裕を見るかといえば、これは二割程度で足りるのだ、まあ百二十キロぐらいですね。そうなりますと、これは百キロで押えられているのに、常時百五十から百八十五も出るような、しかもそれを売りものにして新車を出して、それを運輸省が型式指定するということは、事故を起こすことに運輸省が協力するということを言っても過言でないことになる。これはやはりユーザーだけの責任でないことになりませんか。どうしてそういうことをなさったのですか。
  93. 隅田豊

    ○隅田説明員 確かに、現在わが国の車の最高速度は、先生のおっしゃるとおり、高いものでは百七、八十まで出るものがございます、しかもある程度以上の車ですと、巡航速度と申しますか、これも確かに百五十以上で十分スピードの出る車があることも事実でございます。われわれといたしまして、そういう率に対してどういうふうな行政指導をやるか、先生のおっしゃるとおり、特にそれを売りものにしてということに対しまして、いろいろなチャンスをつかまえて行政指導しつつある段階でございますが、まだ十分徹底していないうらみがございます。  どうしてそういうことをやっておるかというお話でございますが、現在の型式指定制度のよりどころになっておるのは保安基準でございますけれども、保安基準は、現在のところ最高速度の制限をするということになっておりません。そういう意味では、法制的にはあくまで行政指導によらざるを得ないということになるだろうと思います。この行政指導の問題として考えてまいりまして、われわれとして、それは輸出車の問題その他もあると思いますが、しかしあまりにも過大な最高速度というものに対しては、これからも何とかして押えていく方向で検討していきたいといろふうに考えております。
  94. 林百郎

    ○林(百)委員 きょうは、部長、私の言うことを一々何とかしてそういう方向にいくいくというものですから、私もそういう方向へ前向きでいくならいくで、それ以上追及いたしません。  警察庁おいででしたらちょっとお聞きしたいのですけれども、これはもちろん高速道路で起きたスピードに関する事故が、必ずしも速度の出し過ぎばかりということは私は言いませんけれども、しかし、これを何%か含んでいるということは言い得るんじゃないか。私のほうの調査によりますと、今年の前半期、一月から六月までの高速道路で起こったスピードに関する事故調査によりますと、無理な追い越しが四十五件、これは全事故件数に対して一・二%、それから最高速度違反が三十七件で一・〇%、安全速度違反が二百四十八件で六・五%。これらの違反車のスピードを見ますと、大体百二十キロぐらいが多い。中には百五十キロぐらいのものもあるということで、その車の持っておる非常な高性能のスピードを出す機能、これがやはり相当事故件数関係しているというように思うわけです。パーセントがそう絶対に多いとは私は言いませんけれども、しかしやはり速度の出し過ぎ、あるいは安全速度に違反するというようなものが、相当高速道路で起こったスピードに関する事故の中に多いんじゃなかろうか。そういう中で、こんな百八十五だとかあるいはその前後のスピードを出し得る車の売り出しをどんどんするということについては、警察庁としてはどう考えるか。また、この高速道路で起きたスピードに関する事故についての調査のことなどもありましたら、ここで説明願いたいと思うのです。
  95. 久保卓也

    久保説明員 統計上は、先生いまお話しになりましたような数字になりますけれども、実際はこのスピードというのは、違反者あるいは事故を起こした人の、特に事故を起こした場合には事故を起こした人の話を信じて、最高スピードがどうであったかということを断定する場合が多いわけですけれども、その他の一般の事故でありましても、スピード違反に伴うものがあるのではなかろうかというふうに観測されます。といいますのは、われわれの統計上では、事故の主たる原因というものをあげるものですから、第二原因、第三原因というものは統計上あがってまいりません。したがいまして、スピード違反に基づく事故というものがそれ以外にあるということは想定できるわけであります。したがいまして、高速道路あるいはそれ以外の道路についても、スピードによる違反というものが全般的な数字から申せば非常にふえております。これは道路がよくなっていきつつある関係もあると思いますけれども、今後高速道路が、昭和五十年までに現在の四、五倍になるというようなことになれば、一そう速度制限の問題が問題になりますし、特に御承知のように、往復二車線の高速道路ができるというようなこともありますので、われわれとしましては、何とか構造上そういったスピードが押えられるというようなことのほうが望ましい。運輸省のほうで、いまお話がありましたような方向整備されれば非常にいいと思います。  ただ、一つ新しい器材といたしまして、発信機を道路上ところどころに置きまして、受信機を車につけて、その発信機からの無線を受信をすれば、スピードを押えられるという器材が、いま開発されつつあるそうでありまして、もしこれが有用なものであれば、高速道路について事故が起こった場合に、その直後に、その事故のある旨を一般通行車両に通知をする警報信号機というものの設置を、いま長期計画の中で私どもお願いをしているわけですが、そういった警報信号機と関連をさせまして、無線機をつけて、そしてたとえば百キロという制限ですと、発信機のほうで百キロを出し、受信機のほうでそれを受けるとエンジンが構造上百キロ以上出せなくなる。八十キロのところになれば、発信機のほうが八十キロという指示をして、受信機がそれを受けるとエンジンはやはり八十キロしか出せないというものを、できれば整備していきたい、これは若干将来のことになりますが、そういうことも考えております。
  96. 林百郎

    ○林(百)委員 この問題について締めくくりを申しますと、いま売り出されている新車の最高速度、これは型式指定の届け出にはちゃんと出ているわけですけれども、ほとんどが百五十キロ以上の速度になっているわけです。多いのは百八十五キロ。こういう車を買わされたユーザーが、かりに高速道路で百キロの制限範囲を越えたスピード違反の事故を起こしたとしても、もちろん私はユーザーに責任がないとは言いませんけれども、しかし百キロで最高速度を押えており、安全度を考えても百二十キロ前後でいいと技術者も言っているときに、百五十から百八十五キロというスピードを売りものにした車を生産して、これに型式指定を与えるということは、これはメーカーにも運輸省にも重大な責任がある、こういうように考えるわけです。百キロをこえて事故を起こしたユーザーが、道交法に違反して厳重な処罰を受けているときに、このような、百五十から百八十五の高スピードを売りものにして売り出した新車に型式指定を与えた運輸省も、これはやはり一つ責任はあるといわざるを得ないと思うわけです。このことは、交通事故をなくそうという国民の切なる願いにも反することになりますので、このことについては、ひとつ将来ここで答弁されたような方向を、厳重にとっていただきたいというように思うわけです。  しかも、問題は、高速度の速度の問題だけでなくて、この高速度を出すためにまたハイオクタンガスを使用する。それは確かに加鉛量を一・一%以下にということにはしましたけれども、しかし車の台数がふえていけば、排出される鉛の量はふえていくわけですから、高速度が単に速度の問題ということだけでなくて、これはハイオクタンとからんで、四アルキル鉛の人体に及ぼす影響から考えますと、鉛の公害をなくそうという広範な世論にもまた反することになるので、この点はやはり厳重に考えるべきではないか、こういうように考えるわけです。  時間がありませんので次の問題に移りたいと思うのですけれども、次に、これらの新車の、他の排気ガス、鉛のほかにいろいろの排気ガスがあるわけですが、たとえば一酸化炭素、あるいは炭化水素、あるいは窒素酸化物、こういうものについての規制は、新車についてどういう方針で臨むのか、まずそれを聞いておきたいと思うのです。
  97. 隅田豊

    ○隅田説明員 排気ガス関係規制でございますが、すでに御承知かと思いますが、一応復習の意味で、現在やっておりますものを御説明させていただきたいと思います。  一酸化炭素につきましては、現在、メーカーのつくります新車の段階におきましては、特別のフォアモードというはかり方をしておりますが、その際で二・五%という規制をしております。炭化水素、窒素酸化物等につきましては、現在まだ規制としてはやっておりません。  これからの方向といたしましては、一酸化炭素につきましては、ことしの八月一日から中古車につきまして、使用中の車につきまして車両検査をやっております。この車両検査は、メーカーとはかり方はちょっと違いまして、非常に簡単な、アイドルという特殊な場合だけでございますが、それを適用いたしまして、五・五%以下ということで一般の車に適用したわけです。それから炭化水素につきましては、これは自動車から出る出方といたしまして、三種類の出方がございます。一つ排気ガスの中にまじって出てくるものがございます。それから一つは、エンジンの中から燃え残りのようなものが漏れ出てくるブローバイガスというものの出方がございます。それからもう一つは、自動車全体から何となく蒸発するというものがございます。大体大ざっぱに申しましてブローバイガスというのが三分の一、排気ガスの中に入っておりますのも三分の一、それから蒸発が三分の一、非常に大ざっぱなものでございますが、そういうように考えられております。  ことしの九月一日から、メーカーがつくります新車につきまして、ブローバイガスを出さないようにということの規制をいたしました。これは出てきますブローバイガスをもう一ペんもとへ戻すということをやればよろしいので、非常に特別な装置をつけなければならぬわけでもございませんので、新車について直ちにやることができたわけでございます。排気ガスの中に入っている炭化水素については、現在一応新型のはかりで測定をいたしておりますが、まだ規制の段階ではございません。これもそう遠くなく規制の段階に入っていこうと思っておりますが、まだ数字的なところまで入っておりません。現状規制としては以上でございます。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 私のほうも、業者のほうへいろいろ問い合わせをしてみたんですが、フォアモードで、新車でCOの基準を三から二・五に下げたという意味で言っておられると思いますが、ほとんど二%以下の数字が出てきておるわけなんで、これは二・五では甘過ぎるんじゃないか。ことに中古車については、アイドリングでいまいったようにやっておるわけですけれども、この野放しにされている中古車のものと一緒になってくるわけなんですから、これは甘過ぎるんではないかという数字が、私のほうの各社への問い合わせの数字からみますと出てくるわけなんです。たとえばカローラ一四〇〇を調べてみますと、零から〇・五%が車全体から見るとここのところはないけれども、〇・五%から一%が三三%、一から一・五%が五〇%、一・五から二が一三%、二から二・五がゼロということになっているわけですから、大体これと似た数字が新車全体に出ておるんだけれども、これはもう少しきびしい基準を新車についてはなし得たのではないかというように考えますが、この点どうですか。
  99. 隅田豊

    ○隅田説明員 御指摘のとおり、最近出ております新しい車のCOの基準は、非常によくなっております。これは事実でございます。非常にたくさんの種類の車がございますものですから、すべての、たとえばトラックの一部などにまだちょっと残っておるのでございますが、方向としては先生のおっしゃるとおりでございまして、われわれとしては昨年の九月に二・五%まで下げたわけでございます。  ただ、一つわれわれがここで問題にしておりますのは、これから実は規制の測定の方法を、パーセントの濃度規制から、ガスを何グラムと目方ではかったものの、重量規制というほうに実は切りかえたいと思っております。そういうふうにいたしますと、ここの車からくる絶対量で規制する方法でいくと、濃度規制しておりますから、簡単にいうと大きな車は得をするということになっております。そういうこともございますし、それから国際的にいいまして、重量規制方向がどうも主流になっておりますし、その方向で、はかり方自体を変えたいということを実は検討しております。そのために、去年の九月から一年たって、ほんとうはそろそろもう一段階確かにおっしゃるとおり落としてもいい時期が近づいておりますが、おくれているのが現状でございます。できるだけ重量規制方向にしながらきびしくしていきたい。実際問題といたしまして、このように各メーカーがやっておりますのが下がっているということは、もう一つはことしの六月、われわれのほうの審議会の答申をいただきまして、長期目標を一応立てました。この長期目標でもって、将来大体この方向でいけというものをメーカーに示したわけでございます。メーカーはそれを読みながらやっておるものですから、いわばそれが行政指導の役割りを果たしまして、こういうふうに下がってきておると思います。しかしこの規制をもう少し強化していくという点がおくれているような感じがしないでもございませんが、そういうふうに考えております。
  100. 林百郎

    ○林(百)委員 私が申し上げるのは、実は中古車では、さっきあなたも言われるように、私のほうの調査によるとアイドリングの場合で五・五%、あとの場合フォアモードですか、この場合は野放しになっておる。ここから出てくるCOを考えた場合に、新車よりはより一そう厳格にしていくことが必要だ、こういう観点から質問しているわけです。それから炭化水素と窒素酸化物、HCとNOx、ことにこのHCは光化学スモッグともつながってくるわけです。これは言うまでもないわけです。輸出車では、炭化水素HCは二百七十五PPMで押えているわけです。そうするとこのことが可能であるわけなんですけれども、私のほうはアフターバーナーを取りつけていく、私のほうの党の政策として、このアフターバーナーを取りつけて、NOxを上がらないようにして、HCを除去する装置を取りつけさせるべきではないか。そうして光化学スモッグの原因を、少なくとも新車についてははずしていくべきではないか、こういうふうに考えているわけですけれども、外国への輸出車にはHCの規制をしていながら、国内の車は全然野放しにしておくというのは、どういうわけですか。
  101. 隅田豊

    ○隅田説明員 確かにアメリカの、ことにカリフォルニアにおいては、炭化水素はわりにきびしい規制をしております。御承知と思いますが、炭化水素と窒素酸化物とは、これは発生の原因から考えていきますと逆な現象でございまして、炭化水素の規制対策を進めていきますと、普通の自動車のままでやってまいりますと、燃え方がよくなればなるほど窒素酸化物がふえるという逆な現象であります。それで、ロサンゼルスでも、率直にいいまして炭化水素規制だけで、NOxの規制をやらないできたために、炭化水素規制効果というものが十分出なかったということを、向こうの関係者もわれわれのほうに報告をよこしてきております。そういうふうに、炭化水素の規制をやるのに、何とかして窒素酸化物をできれば一緒にやりたいというのがわれわれの希望でございます。それなりに行政指導で下げさせるなりしておりますが、しかし規制としては炭化水素をいままでやらないできた結果、御指摘のとおり、輸出のものには炭化水素のためのエアポンプとか何らかの装置がついておりますが、国内ものにはついてないという結果になっております。  それからもう一つは、窒素酸化物についての基本的な対策というものがまだついておりません。これはアメリカでも、排気ガスをもう一ぺん再循環させる装置とか、考え方は幾つかございますが、基本的には解決をした段階ではございません。ただいまアフターバーナーのお話がございましたが、このアフターバーナーにいたしましても、実用化をして最終的な完成した姿というものはまだ世界的に認められておりません。そういうふうな技術的な未解決の問題がございますので、いままで炭化水素規制、窒素酸化物規制がおくれてきたわけでございますが、しかし、炭化水素につきましては相当下げられてきておりますし、現実にむやみやたらに出すことがよくないことも事実でございます。ある程度規制をしていきたいというふうに考えております。
  102. 林百郎

    ○林(百)委員 炭化水素についてある程度の規制をしていきたいというのは、もう少し具体的に説明ができたらしていただきたいし、それから窒素酸化物、NOxについても、運輸技術審議会の計画では、四十八年までにキロメートル三グラム、こういう方向が出ているんじゃないですか。これをひとつ方針があったら説明してもらいたいんですがね。しかしあるメーカーでは、これも私のほうの直接調査ですが、キロメートル一・六グラムまでにはすることができる、こう言っているわけですね。だから運輸省のほうは思い切って、炭化水素についても外車については規制をする装置をつけさせているので、国内で使う車についても規制する。あるいは窒素酸化物、NOxについてもある基準を、これは運輸技術審議会でも出しているんですから、これはいつごろこういう規制をするつもりだということを当委員会で責任をもって答弁されてもいいんじゃないか。そうすると、業者のほうもそれをめどにして技術改善に努力することになるわけなんですが、その点どうですか。
  103. 隅田豊

    ○隅田説明員 運輸技術審議会というのがございまして、その中の自動車部会でもって、ことしの七月二十二日に、自動車の排出ガスの対策としての、基本計画の答申をいただいたわけでございます。その中に、先ほど先生のおっしゃいました、自動車の排気ガスの低減目標というものを、四十八年、五十年と二段階に分けまして定めております。これがおそらく自動車メーカーに対しては、一つの指針となって、今後も役立っていくだろうと考えておりますが、運輸省といたしましても、この低減目標にのっとって行政を進めていきたいというふうに考えておます。  四十八年の数字を申し上げますと、一酸化炭素は、四十八年四月以降の生産車から、一キロメートル当たり十一グラム以下というようになります。これはちょっと技術的な説明になりますが、先ほど申し上げましたように重量規制のほうになりますので、濃度規制と比較するのは非常にむずかしゅうございますが、一応そういうことです。それから炭化水素の場合は、同じ状態で一日当たり六グラム以下です。炭化水素排出量はキロ当たり一・七グラム以下であります。先ほど申し上げましたのは、炭化水素のもう一つの、車全体から蒸発するというものでございます。燃料タンクその他から結局ある程度のものは蒸発するわけでございます。蒸発量というものを車一台一日当たり六グラム以下にするという目標を立てております。そうすると、すでに規制に入っておりますブローバイガスを押えることと相まって、炭化水素全体の規制ができる。それから窒素酸化物については、同じような状態で一キロメートル当たり三グラム以下。一応ガソリンエンジンにつきまして以上のようなことを目標として、四十八年のとりあえずの目標としてきめております。  それから、さらに五十年の低減目標というものを、この審議会においてきめてもらっております。これにつきましては、四十八年は比較的私たちも技術的にも見当はついておりまして、まず間違いなくできると見ておりますが、五十年につきましては、おそらくある程度の技術努力について、ここに相当なプッシュをしないとむずかしい点があるかと思います。  内容を申し上げますと、一酸化炭素は、先ほどと同じようなあれで七グラム以下にしております。先ほどのは十一グラムでございますが、それを七グラムにしております。おそらくパーセントにすると非常に低い数字になります。それから炭化水素は〇・三グラム、これも非常に低い数字でございます。それから窒素酸化物が〇・六グラム。それから、新しいものでございますが、排気ガスの中に微粒子といって、たとえばいろんな粒みたいなもの、もちろん、鉛の化合物もこれに入ってくると思いますが、それを微粒子全体といたしまして、一キロメートル当たり〇・〇六グラム以下というのをつくっております。大体そういう目標があるわけでございます。われわれの行政としては、この目標に従ってやっていきたいというふうに考えます。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 時間ですからあと一問で終わります。  新車について今後の方針については、私のほうの党で考えておる基準よりは非常に甘いと思いますけれども、ともかく前向きの姿勢が答弁されたわけです。実は千何百万台という中古車があるわけですね。この中古車の排出ガスの規制は、現在どういうような方法でやられているか。さっき言ったようにアイドリングで五・五%。アイドリングというのは、私たちの知っている範囲では、非常にわずかなパーセントで、しかも停止した状態で行なわれるというように聞いているわけですけれども、問題は、排出ガスの規制を最も必要とする中古車については、現在どういう方法が行なわれて、一体何%くらいそのことをやっていくつもりか、これは運輸省と警察庁と両方から、先ほどちょっと答弁があったようですが、聞かせてもらいたい。
  105. 隅田豊

    ○隅田説明員 現在使われておりますものに対しましては、先ほどちょっと御説明いたしましたが、ことしの八月一日から、車両検査の際にアイドリングの測定を始めたわけでございます。このアイドリングと申しますのは、御存じだと思いますが、ちょうど交差点で待っているような状態で、からぶかしをしているような状態だと考えていただけばいい。  それからフォアモードと申しますのは、普通に自動車は、アイドリングがありまして、それからアクセルを踏んで加速がありまして、それから一定速度で走りまして、それから減速をするという状態がございます。この四つのモードを組み合わせた測定条件をきめまして、その全体で出ます量というものをはかっているわけでございます。これはちょっと研究してみると申しましょうか、高度でしかも時間のかかるテストをやりませんと、フォアモード測定というものはなかなかそう簡単にできません。したがいまして、車両検査というような、とにかく流れ作業によって車がどんどん入ってくる、これを測定をしていくというような場合に、フォアモードを適用するということはちょっと技術的に不可能でございます。一応現在、これは世界的に大体そうでございますが、アイドリングの場合には、やはり一酸化炭素については非常に悪い成績を示しております。それから、非常に特殊な整備状態なり使われ方をしますと別でございますが、普通の常識的な使われ方と整備状態の単の場合には、アイドリングとフォアモードにはある程度の相関関係がございます。そういう意味で、アイドリングを押えておくことによって、フォアモードのときの値はある程度押えられるということが、技術的にわれわれのほうも勉強した結果がわかっております。そういう意味で、車両検査の場合は実際フォアモードの測定はできないが、一応相関関係があるということで、アイドリングをもって車両検査のはかり方ときめたわけでございます。  八月一日から始めたばかりでございますので、現状といたしましてはまだ成績はあまりよくございません。八月一日から始める前に、ためしの測定を検査場で、いわゆる排気ガスについて全然整備もしないものについてずっと続けたわけでございますが、そうしますと、大体世の中いま走っている車は、何もしないといたしますと、半分はいま五・五%ときめております規制に不合格になります。これを車両検査をやることによって、その不合格の半分を五・五%まで持っていきたいということをいまの規制としては考えて実行しているわけでございます。  御存じのとおり車両検査には期間がございます。トラックで一年、乗用車で二年ということでございますので、八月一日から始めはいたしましたが、全部の車が一回り済むまでには、たとえば乗用車では二年かかります。これはわれわれとしても非常に問題でございます。世論からもそういう御指摘を非常に強く受けましたし、それで八月一日から車検場で始めると同時に、警察庁の御協力も得ながら街頭での検査を始めたわけでございます。この街頭での検査、これは一応運輸省はいわば技術を提供しているような形でございますが、とにかく街頭でとめましてはかるというようなことをやりまして、その結果、不合格なものについて道交法上の処理をしていただき、それについてわれわれのほうなりあるいは警察庁でもう一ぺんはかってもらって、合格のものは合格というマークをつけるというような手をとっております。現在合格のものにステッカーを張るようにいたしておりまして、できるだけ早くこのステッカーを張った車が多くなるように、いま整備工場などを督励しながら、鋭意行政指導をしているというのが現状でございます。
  106. 久保卓也

    久保説明員 警察庁は、運輸省と協力しまして、第一線では必ずしも測定器がそろっておりませんから、陸運事務所の器材を使い、また、自分のところで持っておるものは自分のものを使って、共同してやっております。いまもお話がありましたように大体四〇数%のものは五・五%をこえているという現状であります。したがって、保安基準をこえるものについては道交法措置をするということで、将来もそういった保安基準がきびしくなればなるほど、保安基準に従っての取り締まりが行なわれるわけであります。なお、器材につきましては、大蔵省と折衝いたしまして、ある程度の財源を確保しました。また県では、大体九月県会で器材を確保しておるようでありますので、逐次警察庁のほうにも器材が行き渡ってまいると思います。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、総務副長官も見えておりますので、これで私の質問を終わります。  総務副長官、いまお聞きのとおり、千何百万台とある中古車について五・五%、これはCOの、しかもアイドリングの場合の規制基準ですけれども、それでも不合格が五〇%前後だというのです。御承知のとおり、言うまでもなくCOの場合は中枢神経を麻痺させる、それから国の場合は光化学スモッグの原因につながってくるということと、それからNOxの場合には不眠、せき、呼吸促進等が見られる、こういうものを出しているわけです。これは至急に中古車の排出ガスの規制を——いまのように二年春かかってやるということではこれは間に合わないので、私たちの考えとしては、気化器の改良ですね。すなわち噴霧状態をよくするためのジェット類の取りつけだとか、あるいは点火時期の関係の改良だとか、アフターバーナーの取りつけというようなことをすることによって、現在のアイドリング時の排出濃度基準五・五%を半分ないし三分の一以下に減らす、こういう措置を至急する必要があるのではないか。これをメーカーの責任で至急やらせる必要があるのではないか。そうするとアフターバーナーとかなんとかいうことになりますが、費用が相当かかるではないかというような話ですけれども、私のほうの調査によりますと、自動車、たとえば乗用車の千五百ccを見ますと、製造原価が二十五万、輸出価格が三十万、国内で七十万という価格で売られておるのですね。自動車メーカーというのは相当の利潤をあげているわけです。だから、いま柳町の例もありましたように、東京都民をはじめ国民の健康が毎日毎日障害され、長期の殺人の被害を受けているような状態のもとで、中古車に対して至急規制措置を、気化器の改良をするとか、点火時期の関係を改良するとか、アフターバーナーを取りつけるとか、至急こういう措置をする必要があると思いますけれども、副長官としてはどういう方針で臨むつもりですか。  これで私の質問を終わります。
  108. 湊徹郎

    ○湊説明員 先ほどいろいろ話がございましたが、実はこの交通対策の問題、一つは、現在かなり窮屈になっております自動車の通行を円滑にしていくということ、二つ目には事故防止という当然のこと、それに加えて、ただいま話がございましたように、各種の排出ガスによる公害現象をどう規制するか。いままでの交通対策考え方の中に、公害という観点から、取り締まりのほうもそうでございますが考えていくという点が、率直にいっていままで欠けておったと思います。そういう点から、ただいま中古車の排出ガスの規制の問題が出てまいりましたが、過般の柳町の問題をきっかけにして、ちょうど公害関係対策も、私ども総理府のほうで総合的に調整する立場に最近なりましたので、特に自動車の排出ガスにつきましては、公害という観点からも、これからひとつ力を入れてやっていこうというふうに考えております。  ただいま話がいろいろありましたように、単なるCOだけでなしに、窒素酸化物の問題あるいは炭化水素の問題等いろいろございまして、さっきもちょっとございましたように、一方を規制すると逆に一方がふえるというような、技術的に困難な問題もあろうかと思いますが、そういう点も含めて、特に外国に輸出する車両と国内車両との間に、いろんな車両の構造上の差があるじゃないか、この御指摘については、実は過般の閣議でも二度ほどいろいろと問題になった点でございまして、そういう点も少なくとも公害という観点からは、同じような扱いをすべきじゃないかというような考え方で、これから対処することにいたしております。特に中古車の問題は、車検の時期を待たずにということで現在もやっておるのでありますが、さらにお話しのような諸点等も考えて、総理府として、そういう規制措置促進するようなことを、今後ともひとつやってまいりたいというふうに思っております。
  109. 受田新吉

    受田委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後三時四十五分散会      ————◇—————