運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1970-05-06 第63回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月六日(水曜日)     午後一時十二分開議  出席委員    委員長 受田 新吉君    理事 加藤 六月君 理事 木部 佳昭君    理事 小峯 柳多君 理事 河野 洋平君    理事 丹羽 久章君 理事 後藤 俊男君    理事 田中 昭二君       左藤  恵君    斉藤滋与史君       野中 英二君    久保 三郎君       沖本 泰幸君    和田 春生君       土橋 一吉君  出席政府委員         運輸大臣官房審         議官      内村 信行君         運輸省船舶局長 佐藤美津雄君         海上保安庁長官 河君 一郎君         高等海難審判庁         長官      藤原 重三君         気象庁長官   吉武 素二君  委員外出席者         運輸省海運局監         督課長     妹尾 弘人君         参  考  人         (日本海事協会         常務理事)   松平 直一君         参  考  人         (日本造船工業         会副会長)   古賀 繁一君         参  考  人         (日本船主協会         大型鉱石船対策         特別委員)   青山 三郎君     ————————————— 委員の異動 四月三十日  辞任         補欠選任   河村  勝君     和田 春生君 五月六日  辞任         補欠選任   和田 春生君     河村  勝君   松本 忠助君     沖本 泰幸君 同日  辞任         補欠選任   沖本 泰幸君     松本 忠助君 同日  理事河村勝君四月三十日委員辞任につき、その  補欠として河村勝君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  交通安全対策に関する件(大型船海難事故対  策に関する問題)      ————◇—————
  2. 受田新吉

    受田委員長 これより会議を開きます。  交通安全対策に関する件について調査を進めます。  本日は海上交通安全対策について、参考人として日本海事協会常務理事松平直一君、日本造船工業会会長古賀繁一君、日本船主協会大型鉱石船対策特別委員青山三郎君、以上三名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。参考人各位には御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、厚くお礼を申し上げます。本日は海上交通安全対策、特に大型船海難事故現状及び今後の対策等につきまして、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。  次に議事の順序について申し上げます。時間の都合もありますので、御意見の御開陳は、松平参考人古賀参考人及び青山参考人順序で、お一人約十分程度にお願いいたしたいと存じます。次に委員から質疑がありますので、その際参考人各位から十分お答えをいただきたいと存じます。松平参考人
  3. 松平直一

    松平参考人 松平でございます。ただいま委員長よりお話がございましたとおり、日本海事協会意見につきまして申し上げます。  最近引き続き発生いたしました大型船舶の全損事故によりましてなくなられました乗り組み員の方々に深甚なる哀悼の意を表しますとともに、今後再びかかる不祥事が発生することのないよう官界学界海運界造船界協力のもとに、現存大型船舶に対する検査基準、今後建造される大型船舶構造基準整備合理化の促進に一そうの努力を重ねる所存でございます。  最近の大型船舶海難事故に関しまして、海事協会がとりました措置は次のとおりでございます。  まず「ぼりばあ丸」の海難事故に関しましては、昭和四十四年一月六日に当協会内部に、事故関連する技術的調査及びその原因究明のため「ぼりばあ丸」事故調査班を設置いたしました。本調査班において、本船遭難経過に関し得られた情報本船検査履歴あるいは本船船体強度、材料に関する調査結果に基づいて、海事協会構造規則及び検査面において本海難事故発生の主因となるものが存在していたかどうかを検討いたしました結果は、そのような原因の存在は、調査当時の海事協会経験及び知識からは指摘することが困難であると報告されております。  次いで、本年二月九日「ぼりばあ丸」とは構造様式を全く異にする「かりふおるにあ丸」の海難事故発生を見るに至りまして、二月十日本会内に「かりふおるにあ丸」事故調査班を設置するとともに、二月十六日には本会技術委員会下部組織として鉱石船調査委員会を設置する決議をいたしました。三月六日に同調査委員会準備会を開催し、四月二十三日に第一回の会合を開催いたしました。そうして鉱石船構造規則の再検討を始めたのでございます。また二月十六日付け官政第一七八号の運輸事務次官通達に基づき、「かるふおるにあ丸」と類似構造を持つ六十九隻の船舶について、点検及び補強を実施いたしております。  次に大型船損傷及び海難事故についての私ども見解を申し述べます。  最近の十年間における船舶大型化が、従前における船舶大型化の傾向に比べまして早いテンポで進められたことは事実であります。これらの大型船に対する規則は、当協会技術関係委員会におきまして最善の努力のもとに作成されたものでありまして、船体の基本的な強度につきましては十分な検討が行なわれております。しかしながら、大型船小型船に比べまして発生する損傷の数が多いことも事実でありまして、私どもは、その損傷実績に基づいて、大型船構造細部応力集中部発生する局部的損傷防止対策について昭和四十一年以来検討を行なってまいりました。その結果、最近二、三年間に建造された大型船につきましては、以前の大型船に比べて損傷の減少が認められております。これらの損傷は、性質上は従前小型船発生したものと同様でございまして、損傷は局部的に限定され、発生した損傷が急激に進展することはなく、船の安全を左右するような事態を招いた例は全くございません。船体設計上、これらの小損傷は船の安全に直接関係する重大な損傷とは全く見方を変えて検討すべきものであるというのが従来の造船界における見解でありまして、私どももこの見解に異論を持つものではございません。  大型船舶損傷は、以上述べましたような性質のものでございましたが、このような状況のもとにおきまして「ぼりばあ丸」の事故発生いたしましたので、検査機関としましては非常に大きな衝撃を受けたのであります。すなわち「ぼりばあ丸」は波高五ないし六メートル、せいぜい高く評価しましても九メートル前後の波浪海域において船首部が折損したと伝えられておりますが、本船強度から見ますと、この程度波浪によって船体が折損するということは、従来の常識からは考えられないことでありまして、私どもにとりましては全く初めての経験でございます。したがいまして、事故原因として私どもが知り得なかった特別な状況が存在していたのではないかということが考えられるのでありますが、それがどのようなものであったかは、遺憾ながら現在の段階で明らかにすることは困難なことであると考えられます。  次いで「かりふおるにあ丸」の事故発生いたしましたが、本船につきましては、波高二十メートル及び十五メートルといわれております二度の荒天に遭遇した後において、波高十メートル前後の海域において船体破損を生じ、数時間後に沈没したと伝えられております。かりに波高二十メートルあるいは十五メートルという値が実際に近い値であるといたしますと、このような海象海洋波の統計上は全くまれな海象であると考えられます。すなわち「かりふおるにあ丸」の事故もかなり特別な状況のもとにおいて発生したものでありまして、船級船のすべてに適用されておる構造規則におきましては、上記二隻の海難事故を防止するために強度規定を改めなければならぬのではないか、あるいは改めなくてもいいのか、どの程度強度規定を改める必要があるのかということを考えます場合に、どの規定をどの程度改める必要があるかにつきまして早急に結論を出すことはたいへん困難であると考えられます。  「かりふおるにあ丸」の事故関連しまして、先ほど申し上げました運輸事務次官通達によって、鉱石専用船等について総点検及び補強を当協会が実施いたしております。現在までに点検を終了いたしました五十三隻のうち二十一隻の点検結果について簡単に申し述べますと、点検によってかなり多くの損傷が発見されております。これらの破損の大部分は、従来経験されております部分的破損でありまして、船体基本的強度に対する影響は少ないと考えられているものでございますが、中には接岸の際生じた損傷原因になったと考えられる、かなり大きな損傷が発見された船もございます。また、最近一部の船で問題となっておりました専用バラストタンクの部材の衰耗が、かなり多くの船について一般的現象としてあるということが判明いたしたのでございます。これらの損傷あるいは衰耗は船の安全に重大な影響を与えるものと考えられますので、さっそく船主各位注意を喚起いたしましたが、さらにこのような現状に対しまして、その実態に即応した検査基準検査体制について検討を進めております。私どもといたしましては、大型船海難事故防止対策、あるいは事故発生の場合の災害を減ずるということのために、次に述べますような対策が有効であろうと考えております。  まず一つは、船体構造破壊に対する安全性の量的な評価、これを可能とするために波浪中の航海において船体が受ける水圧力調査研究及び船体構造破壊強度調査研究、これを促進いたしまして、船舶に期待すべき合理的な安全性を決定し、それに基づく構造基準作成すること。  次には、こういう基準作成にあたりまして、自由競争下における日本船舶が、他国の船舶に比し、不当に過酷な制約を受けることを避けるために、国際的基準の制定、合理化を促進するよう積極的に努力するとともに、基準が期待する安全性を確保するため船舶保守基準安全航法基準確立すること。  第三には、不幸にして事故発生した場合、事故性質、その発生個所、船の状態、周囲の状況に応じて、乗り組み員が適切な処置をとり得るようなマニュアルの作成。  四番目は、事故に起因する災害の大きさを限定するために、船舶損傷後の安全基準作成して実施する必要がある。  以上の各項目を当協会が単独で行ないますことはたいへん困難でございます。官界学界業界、これに当会も参加いたし、協力してその達成をはかるべき性質の事柄であろうと存じます。  以上であります。
  4. 受田新吉

    受田委員長 どうもありがとうございました。  古賀参考人
  5. 古賀繁一

    古賀参考人 古賀でございます。  昨年一月「ぼりばあ丸」が、引き続いて本年二月に「かりふおるにあ丸」が、いずれも本州東方海域において沈没、とうとい犠牲者を生じましたことにつきましては、まことに哀悼にたえないところでございます。  顧みますと、現在、わが国世界の約五〇%、大型船について言いますと六〇%以上の船舶建造しております。そのうちの半分以上が輸出船であります。これは、終戦後の苦難の道を、国際的にも国内的にも、造船業界が真剣に努力してきました結果であります。たとえば、設計一般につきましても、船舶建造は、政府または船級協会基準を満足することはもちろんでございますが、同じ船の種類実績工作法等参考といたしまして、さらに運航面、それから載貨条件に応じ、必要個所に十分の検討を加えることに努力を重ねてまいりました。また、強度計算法精密化につきましては、電子計算機の導入に伴い、さらにその効果を高めるため、プログラムの共同利用あるいは共同開発の推進をはかり、強度計算法の総合的なレベルアップを期してまいりました。と同時に、この結果を確認し、その精度を高めるため、実船実験あるいは建造過程におけるタンク水圧試験時の応力計測等についても共同研究を重ねてまいっております。  船体主要部に使用する鋼材については、造船研究協会におきまして、いろいろな条件のもとで、亀裂の発生あるいはそれが伝わる伝播及び停止特性、疲労、拘束等が及ぼす影響などを研究して、それを実船に適用してまいっております。  また、工作精度強度に及ぼす影響についても、各種工作法加工法について研究をいたしております。  それから、船の品質につきましては、作業をやります個々の人の責任感と意欲とがいい結果を得るもとでありますので、いま造船業界はその具体策としていわゆるZD運動、ゼロディフェクト運動、まあ、悪いものが絶対に残らないように十分な品質管理をやる運動とか、クォリティ・コントロール・サークル、QCサークルといっておりますが、そういうのを強力に推進して善処いたしております。  それから、修理にあたりましては、単なる復旧修理作業として済ますだけでなく、その事故の技術的な判断、解析をいたしまして、設計計算の面からも調べて、十分な処置を行ない、新しい船の設計にはそれをフィードバックするというふうにやっております。このような状況でございまして、日本造船設計及び建造技術は、世界船主あるいはロイドとかABとかBVとかいう外国船級協会などの十分な信頼と評価をかちえております。国内船につきましても、その設計とか建造法というのは輸出船と全然同じでございまして、何ら変わっておるところはないのでございます。  それから、日本船に適用される船級協会ルールは、さっき松平参考人が説明された日本海事協会ルールでありますけれども、このルールも、総合的に判断いたしますと、外国船級協会と同程度強度基準を持っておるのでありまして、国内船輸出船いずれも国際的な技術レベルにあるものと考えております。  こうやってきておりますにもかかわりませず、昨年「ぼりばあ丸」の事故が起こりまして、本会といたしましては、この対策常任理事会で十分検討いたしまして、すみやかに原因が解明されるよう、また、当該建造会社の行なう調査、及び政府機関が行なわれる調査にできるだけ業界として協力を行ないますとともに、会員各社におきましても、船の設計工作検査、すべての面で一そう気をつけるようにいたしました。本件に関しまして、造船技術審議会の建議に基づいて運輸次官から指示が出たのでありますが、これにつきましては、全面的に一そうの精進、努力をはかることで進めてまいっております。  次に、この二月「かりふおるにあ丸」が事故を起こしたのでありますが、これにつきましても、「ぼりばあ丸」の場合と同じように、造船工業会内部対策調査を積極的に進めておるのでございます。先ほど海事協会からお話がありましたとおりに、次官通達による点検が、対象の船六十九隻のうち五十三隻が終了いたしております。バラストタンクにおける腐食衰耗及び若干の船における接岸事故、船を岸壁につけますときに岸壁に船がぶつかるとか、あるいは係岸しているうちに岸壁と船が接触するとか、そういうことによる損傷が四、五隻ちょっとひどいのがあるのでありますが、そのほか特に問題となるような破損は見出されておりません。特に問題になるような損傷は出ておりませんでした。バラストタンクにつきましては、海事協会から通達が出まして、造船業界は善処することにいたしております。それから、岸壁への接触事故につきましては、船型が大型化したのに伴いまして、港湾設備等の改良を期待しますとともに、接岸操船について十分な御配慮をお願いしたいと考えております。  以上が、経過対策の大要でございますが、造船工学というのは、船の運動との関連を含めての波による複雑な外力適確に把握できない点などから、経験工学といわれておりますが、船級協会中心として、実船でのいろいろな経験を、理論実験の裏づけのもとに解析し、これを整理して、相当の精度で、絶対計算はできませんけれども比較強度計算をいたしております。もちろん理論及び計算法については、まだ十分でない点もございますけれども、一そうの精密さを求めて努力しておるところでございます。  船は、もともと従来からの通常の運航に対し、十分な強度を持ち、安全であるように設計建造されております。すなわち、運航される方の安全航海の長年の経験判断に依存する面が強いわけでございます。したがいまして、私たち船舶建造に当たる者は、今後関係方面で実施される海象気象についての広範、総合的かつ長期にわたっての調査結果、及び実船試験等の結果を得て、船舶に加わります外力、外部からの力をより正確に把握したいのでございます。もちろん、いかなる海象気象に対しても、万全の強度を持たせることは困難とは思いますが、海象気象に対する船体強度設計の基盤をより明確にしたいのでございます。  前述のように、現在の船舶は、従来の安全運航実績経験に基づいて設計建造されていますので、この面についての御配慮をお願いしたいのであります。  このような事態の中で、私たち造船業界は、近年の種々な経験に誠実に対処して、今後一そう安全性の高い船舶建造に最大の努力を払う所存でおりますので、関係方面の御指導と御協力とをお願い申し上げます。終わります。
  6. 受田新吉

    受田委員長 どうもありがとうございました。青山参考人
  7. 青山三郎

    青山参考人 青山でございます。大型船海難事故についてということでございますが、一口に大型船と言いましても、その定義が非常にむずかしいかと思います。また、海難と申しても、いろいろ種類があるのでございます。本日は主としまして、去る二月十日に発生しました鉱石車用船の「かりふおるにあ丸」の沈没事故以来、日本船主協会がどのような措置をとってきたか、また、今後の安全対策についてどのように考えておるか、というようなことに焦点をしぼりまして申し述べたいと思います。  まず申し上げたいことは、「かりふおるにあ丸」の事故は、昨年の一月の「ぼりばあ丸」の事故との関連におきまして、私どもに非常に大きな衝撃を与えたということでございます。  「ぼりばあ丸」の海難原因究明につきましては、現在海難審判が進行中でございますが、「ぼりばあ丸」の場合は、何か特別な原因があったのではなかったかというような全般的なムードがあったように思います。昨年一月二十四日に設置されました造船技術審議会鉱石運搬船特別部会審議結果を見ますと、「ぼりばあ丸」類似船について、造船技術上特に問題はなく、現存船についても、現在安全上問題となる点はないとされながらも、わが国造船技術の高水準を確保する観点から、幾つかの問題点が指摘されておるのでございます。  この事件を契機といたしまして、船主は、大型船に対して、適当な機会に、自主的に点検を実施いたしまして、必要な措置を講じてまいったのでございます。日本船主協会といたしましては、「かりふおるにあ丸」の事故発生いたしまするや、直ちに関係常設委員会におきまして、とりあえず技術的観点からの検討を開始する一方、緊急常任理事会を招集いたしまして、基本的対処方針審議いたしたわけでございます。その結果、今回の事故対策につきましては、乗り組み員が安んじて職務を遂行し得るよう、類似船安全性再確認のための点検を含めて、船主としまして自主的に対処するという基本方針が確認されまして、以後その線に沿って具体的各種措置をとってまいったのでございます。  この間、二月十六日には、運輸事務次官通達をもって、「かりふおるにあ丸」類似船の総点検補強等安全対策が指示されたのでございます。  これに対しまして、当協会といたしましては、関係方面連絡協議を重ね、点検、補修あるいは補強等が最も円滑かつ効果的に実施されますよう努力いたしました。  一方におきまして、次官通達による点検対象船が、鉱石専用船三十九隻、鉱石、油兼用船が三十隻、計六十九隻。また全日本海員組合との安全協議会の結果、自主点検を行なうことになった大型バルクキャリアーは十五隻でございますが、これを含めまして点検対象船は五万トンないし十万重量トン大型船合計八十四隻に及びました。当協会といたしましては、この際、鉱石運搬船のみならず、全船舶について、あらためて安全運航上十分な配慮がなされるよう、海運各社に対して、文書をもって注意喚起方を要請しております。  これら当面必要とする一連の対策措置を終わった時点におきまして、去る三月四日には、福田会長委員長とする、大型鉱石船対策特別委員会を設置したのでございます。この特別委員会は、当協会会長、副会長関係常設委員会委員長などのほかに、日本気象協会日本海事協会日本海難防止協会及び日本造船工業会からも、それぞれ委員として参画をお願いし、海運造船気象海象、救難など、できるだけ広い観点から、事故原因の探求と安全対策確立につきまして検討することといたしておるのでございます。  次に、本問題に関連いたしまして、海運業界といたしましては今後の安全対策についてどのように考えておるかにつきまして、その概略を申し述べたいと存じます。  船主協会といたしましては、ただいま申し上げましたように、大型鉱石船対策特別委員会中心といたしまして対策検討を進めていくわけでございますが、運輸省大型専用船海難特別調査委員会日本海事協会鉱石船調査委員会等審議結果に重大関心を払っておることはもちろんでございます。  安全対策といたしましては、船体構造強度等船舶建造上の問題と、保守整備を含めて運航面での問題があろうかと思われます。この両者は、船舶安全確立上表裏一体であるべきものでございますが、とかく密接不可分関係が十分保たれたとは申せない状況にあると思います。たとえば、造船側は、船舶運航実態の把握にやや欠ける点があり、一方船主側は、その船の生まれといいますか、その構造強度等に関しまして十分理解しておらない、こうしたことも大きな問題点であろうかと思います。しかし、この際、船体構造強度等に関しましては、それぞれ専門家に再検討をお願いすることといたしまして、われわれといたしましては、必要な実船テスト、実船調査等に積極的に協力し、かつ、就航中の船舶からの各種データ効果的フィードバックにつとめたいと考えておるのでございます。  現在、関係者間のコミュニケーションは必ずしも満足すべき状態ではなく、このため、本件に限らず、必要な対策がおそきに失することが間々あるのでございます。特に造船所相互間、船主相互間の情報交換はさらに活発に行なわれるべきでございまして、これにつきましては、日本海事協会がこうした面での中心的な役割りを果たすことが一つの望ましい姿ではなかろうかと存ずるのでございます。  船舶大型化自動化等技術革新が急テンポで進んでおる現在、このことは非常に重要な問題であると考えまして、あえて申し上げた次第でございます。  それでは、主として保守整備を含めた運航面での問題点中心に、安全対策について申し上げてみたいと思います。船主協会特別委員会審議もまずその緒についたばかりでございますので、若干私見の入ることはお許し願いたいと存じます。  まず安全運航の徹底でございます。輸送の要点は安全、迅速、確実ということでございます。経済性安全性などにつきましていろいろ申しておりますけれども、安全第一であることはいまさら言うまでもないことでございます。そのためには、ただ安全第一というばかりでなくて、操船者に対しての安全を確保しやすいような条件あるいはデータを提供することが肝要でございますが、この点、従来必ずしも十分であったとは申せないのでございます。急速な技術革新過程で生じた一つの盲点かと思いますが、たとえば、適切な運航マニュアルの作成等について必ずしも十分でなく、早急に検討する必要があろうかと存じます。  次に、今回の事故関連いたしまして、海象気象の問題が大きくクローズアップされておりますが、船舶に対しまして、より十分な気象情報が提供されるならば、船舶の安全上のみならず、運航経済の向上にも寄与することが大であろうと存じます。日本気象協会では、過去二年間にわたる研究調査の結果、近く北太平洋に関する波浪概況図の船舶向け模写放送を開始することになっております。当協会といたしましては、この事業に対しまして、研究資金の拠出はもとより、実船調査等につきましても全面的に協力してまいりましたが、今後における本格的航路気象予報の開発につきましても、引き続いて必要な支援を行なう所存でございます。自然の力というものは、身をもって体験した者でないと真実には理解できないのでございます。この際、造船技術者は、大自然の実態の把握につきまして積極的であることをお願いいたしたいと存じます。  次に総点検の結果についてでございますが、これにつきましては松平参考人から申し上げましたので、省略いたしたいと存じます。ただ、このバラストタンク内の腐食衰耗の問題でございますが、これにつきましては、海事協会とも十分協議の結果、内部点検を励行いたしまして、適切な腐食防止対策の実施を考えております。  次に救難の問題でございます。海難救助体制の整備強化につきましては、かねて当局にお願いしておることでございますが、この際、特に遠距離救難対策を早急に具体化されますよう重ねてお願いいたしたいと存じます。船舶に装備する救命設備に関しましては、全日本海員組合との協定に基づきまして、大幅な増備を行なっておるのでございます。ただ、過去の海難事例から見ましても、現用の設備では荒天下での有効性に非常に疑問があるのでございますので、今後新型式の救命設備、救命機器の開発が強く要望されるわけでございます。  船舶の急速な大型化が一部問題とされておるようでございますが、大型化による輸送コストの低減は国家経済的要請でありまして、ある意味では、海運業界はこのために大きなリスクを負って基幹産業といたしましての任務を果たしつつあるということが言えると思うのでございます。  今回の不幸な事故を契機といたしまして、原因究明が徹底的に行なわれることを期待し、今後の事故防止に懸命の努力をいたす所存でございますが、関係方面の理解ある協力と御支援を切に望むものでございます。  時間の都合で意を尽くすことはできませんですが、最後に一言、海上交通安全対策について付言させていただきます。  最近のロイド船級協会発表によりますと、一九六九年度におきましては、世界の商船規模は二億一千百万総トンでございますが、日本は二千四百万総トンとなりまして、世界第二位、ついに英国を追い越したのでございます。第一位はリベリアでございますので、実際は日本が第一位と申してもいいと思います。わが国の貿易の著しい進展に伴い、海上輸送活動はとみに活発化し、このため海上交通はますますふくそうの度を加えてまいりまして、わが国周辺の特定の水域では、まさに陸上の交通戦争に匹敵するような様相を呈しております。衝突、座礁等による重大海難発生の危険が増大しつつある現状を認識され、国家的見地に立って、より適切な法規制の早期制定実現に御尽力くださいますようお願いいたしまして、私の説明を終わりたいと存じます。
  8. 受田新吉

    受田委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の御開陳は終わりました。     —————————————
  9. 受田新吉

    受田委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。加藤六月君。
  10. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 参考人の皆さん方には、本日たいへんお忙しい中を当委員会のために御出席いただきましたことを、まず厚くお礼申し上げます。  私たちは、皆さん方においで願いまして、先ほど参考人各位からいろいろお話がございましたが、造船量において世界の半分以上の造船を行なっておる日本、あるいはまた四周を海に囲まれた海国日本、この海運行政というものは、日本の立場にとって非常に重要なる役目をしておる、こういった観点から、昨年の「ぼりばあ丸」あるいはことしの「かりふおるにあ丸」その他いろいろな海難事故等が発生いたしましたが、これはいろいろな面から取り上げられ、あるいはまたこれを国政の上に反映しなくちゃならないという立場で本日おいでいただいたわけでございます。私たちは——私たちと言ったら語弊がございますが、私の場合はしろうとでございます。したがいまして、変な質問やあるいは焦点がぼけるかもわかりませんが、ねらいは船舶の安全ということ、そうして日本がつくった船は世界どこへ行っても事故はないのだ、こういった一つ日本の信用の確立、並びにその船舶に乗り組んでおられますところの乗り組み員の皆さん方が、自分の乗っておる船に対する絶対的な信頼、こういうものを確立して、日本の今後の政策に役立たせたい、こういう立場でおいで願い、また質問させていただく次第でございますので、その点ひとつよろしくお願いいたしたい、こう思う次第であります。  質問の関連上、私は「かりふおるにあ丸」の事故の問題からひとつ入らせていただきたいと思います。政府当局は、あとからこれに関連して質問させていただきたいと思いますが、まず第一番に海事協会松平さんにお伺いしたいと思います。  「かりふおるにあ丸」の資料をわれわれ要求しまして、この資料をいただいておるわけですが、「かりふおるにあ丸」の製造登録というのは昭和四十年の九月二十二日に行なわれておる。そうして四十一年の八月五日に二種の中間検査をやっておる。ここまでは私たちよくわかるような気がするのでありますが、四十二年の十一月七日、一種の中間検査をおやりになっておられますね。そのときには全般の検査というものと、その次は満載喫水線変更、いわゆる増喫水のための船体内部補強工事というのを「かりふおるにあ丸」がやっておるわけです。そのあとにもバラストタンクの中の問題等も四十二年におやりになっておるようです。そうして四十三年の五月十四日に二種の中間で、全般と、それから満載喫水線変更、増喫水のための船体補強残部工事を行ない、満載喫水線の再指定を行なう、こういうことがされておるわけでございますが、この四十二年の十一月七日の、たとえば満載喫水線変更、いわゆる増喫水のための船体内部の補強工事、これをやるときには、どの程度検査をおやりになったかということが一点と、そのときには、いわゆるおたくの鋼船規程、この「かりふおるにあ丸」の場合には、「かりふおるにあ丸」の大きさというのは、この鋼船規程の中にはっきりうたってあった基準でおやりになったのか、それともこれを読んでいきますと、委員会の適当と認めた、という問題が出てきておりますが、これは委員会が適当と認めておやりになったのか、そこら辺の判断をひとつお教え願いたい、こう思うわけであります。資料がなかったらかまいませんけれども、どうでしょうか。
  11. 松平直一

    松平参考人 どの程度検査をやったかという、非常に詳細にわたりましては、検査報告書をいま持っておりませんので、調べて、御必要があればお答えいたしますが、全般的に増喫水につきまして申し上げさしていただきますと、一九六六年にいままでの満載喫水線条約というものが新しくなりました。その条約をその船に適用いたしまして、いままでよりも相当喫水が深くできるということになったわけです。ところが、喫水を深くいたしますと、たくさん荷物が積めるわけでございますが、私のほうは大体船体強度を喫水によって定めておるのでございますから、それだけ喫水線の条約で喫水を深くできるようになるためには、その喫水に応じた強度を持たせなければならない、こういうことになるわけでございます。それで増喫水のための船体強度計算をやり直しまして、そうして本船に相応する補強を施しまして、そうして新しい喫水を与えた、こういうことでございます。  で、実は第一種中間検査、第二種中間検査と申しますのは、少しやり方が……。
  12. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 いや、それは知っています。
  13. 松平直一

    松平参考人 そういうわけです。
  14. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 そのとき喫水を直す。われわれもその条約のあと、国会でこの問題を審議したわけなんでございますが、いま「かりふおるにあ丸」の問題を取り上げた場合に問題になったのは、私がちょっとピンぼけしておるかもわからないと最初お断わりしたのですが、条約はもうすでに日本は締結しておったかどうか、それから日本国内の法律は、そのときに国会を通過しておったかどうか、それに基づくところの規則はどうなっておったかという問題ですね。それはこの「かりふおるにあ丸」の増強工事、いわゆる喫水線変更によるところの増強工事の段階においてはどうなっておったかということなんです。
  15. 松平直一

    松平参考人 満載喫水線条約、それからそれに基づきますところの満載喫水線は、実は船舶安全法に全部規定してございます。で、私どものほうは、安全法八条で満載喫水線の指定をやりますことを認められておりますので、やれるのでございますが、そういう計算の式なり何なりは、全部政府から出ましたものを使います。  それで、増喫水をやります時期は、私ちょっと記憶がはっきりいたしませんが、条約が批准になります前だったと思います。ただ、条約の批准になる前、条約が、あれはたしかパリで開かれたと思いますが、その批准前にその条約を適用してもよろしいということが、サインしました各国政府に許されておりますので、日本政府もそれにならいまして、条約前に一部実行に移したというふうに覚えております。
  16. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 私たちが「かりふおるにあ丸」の事故あるいは「ぼりばあ丸」の事故を見ますときに、新聞等にもすでに出ましたが、第二十次造船のものである、こういうことになっておるわけですね。二十次造船のものの中に「ぼりばあ丸」も「かりふおるにあ丸」も両方入っておる。そうすると、調べてみると、「かりふおるにあ丸」は竣工が四十年の九月であり、「ぼりばあ丸」は同じく四十年の九月であって、両方とも二十次造船の計画造船のものであるということになるわけですが、私よくわからないのでお聞かせいただきたい。というのは、最初四十年の九月に出したときと、いわゆる製造検査をおやりになりますね。その時分と、満喫を上げるといいますか、上げるときとのいわゆる強度構造、それから先ほど出たいろいろな波、いろいろな現象に対する問題は、補強ということで十分にいけるという判断でこの補強ということをおやりになったわけですか、お認めになったわけですか、どうですか。
  17. 松平直一

    松平参考人 その増トンをやりますときの補強は、もちろん先ほど申し上げましたとおり、新しい喫水で強度計算をし直したわけです。そうしてそれに対して補強でその強度が十分保たれるということで、その補強を加えた部材を計算の基礎にいたしてやっておるわけであります。ですから、適用しました規則は変わりございません。
  18. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 そこで、おたくのいわゆる検査基準という問題でございますが、いろいろ見ていきますと、この「ぼりばあ丸」や「かりふおるにあ丸」の補強を認めた時分において、私が一番最初に御質問いたしましたいわゆる鋼船規程というものは、何トンまでのものがその時分ははっきりいたしておったでしょうか。
  19. 松平直一

    松平参考人 二百三十メートルまででございます。二百三十メートル以上は委員会の適当と認めるところということになっております。
  20. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 二百三十メートル……。私は「かりふおるにあ丸」を中心に言うのですが、そうすると、「かりふおるにあ丸」の長さは二百十一メートルということになっておりますね。二百十一メートルということになっておりますと、鋼船規程の中のはっきりした規準の中にそのまま当てはまっておったわけですか。それとも委員会が適当と認めるところというやつをやったのですか。どちらなんでしょうか。
  21. 松平直一

    松平参考人 二百十一メートルでございましたら、当時の規則をそのまま適用いたします。
  22. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 どうも私たちのいろいろ承っておる感じというのは、改正で三百六十五メートルまでのものにいった、しかし「ぼりばあ丸」、「かりふおるにあ丸」というのは、その時分の鋼船規程の外にはずれた、委員会が適当なものというやつの中でいったのではないのだろうかという疑惑が一時あったのです。したがいまして、「かりふおるにあ丸」の問題については、こういった問題をはっきりしておいてもらわなくちゃならないということでお尋ねしたわけです。  ついでにこの際「かりふおるにあ丸」問題にからんでお聞きしておきますが、委員会が非常に大きな権限を持っておるわけですね。そうしますと、この委員会の構成という問題等も当然問題になってくると思うのです。先ほど来参考人の皆さま方がおっしゃっておられましたいろいろな対策というものを講じていく場合でも、委員会の構成は非常に重要だと思うのですが、おたくの寄付行為を見せていただきますと、第六条管理委員八十五名以内ということになっておりますが、この八十五名の皆さん方の大ざっぱな内訳というものはどうなっておるのでしょうか。というのは、これから出てくる経済性あるいは安全性との関連、あるいは私をして言わしめれば、これからいわゆる損保会社との問題等にも出てくるわけなんですが、あるいは技術に対する信頼性という問題もこの八十五名の構成ということの中に若干関係があるのではないかと思うのですが、それはどうでしょうか。
  23. 松平直一

    松平参考人 八十五名以内となっておりますが、いま八十五名全部いるわけではございませんですが、海運会社が三十九名、それから造船、造機の関係が二十名、それから保険業関係が六名、その他、何と申しますか、学識経験といいますか、海事関係団体が四名、そのほかにも、監督官庁である運輸大臣指名の管理委員が一名加わっております。そういうことでございます。
  24. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 それで、もう一つ松平さんにお伺いしておきたいと思うのですが満喫線の線が変わったから補強増強工事をやりますね。その場合の最小乾舷は、五年前につくった船も、あるいはことしつくった船も同じようにするのでしょうか、どうでしょうか。
  25. 松平直一

    松平参考人 ちょっと意味がよくわかりませんのですが、最小乾舷でございますか。
  26. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 乾舷マークの線の引き方ですね。
  27. 松平直一

    松平参考人 乾舷は、大体において、船の寸法、それから船楼とか、いろいろそういうものがありますが、形から大体きまっておりますね。それで喫水がきまる。それに合わせております、強度は。それできまる喫水に合わせた喫水で強度計算する、こういうことでございます。もうほとんどそういうぐあいにやっておりますのですが……。
  28. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 いや、私が御質問申し上げたのは、ちょっと前提条件が抜けたわけです。たとえば「かりふおるにあ丸」と同じ構造ですね、同じものがあるかないか、戦標船とは違いますから言えませんが、「かりふおるにあ丸」と同じような使用目的、同じ構造、そして長さも幅も深さも同じ、総トン数も同じもので、いまさっき御質問申し上げました満喫変更、増喫水をやります工事を、最初から、この法律が施行されたあとつくる船は、そういう基準に従っておたくのほうも検査をやるし、造船所のほうもそういう船をつくりますね。ところが「かりふおるにあ丸」のように、進水したあと補強工事をやっておるでしょう。そうしますと、昭和四十四年に造船に着工し、竣工するものと、それから昭和三十九年に造船所が船をつくり出して、途中で補強工事をやって満喫線を変えるでしょう。その場合に、同じ船であるという前提があるわけですね。構造や大きさ、すべて同じ船である場合、いわゆる最小乾舷マークというのですか、それは同じところに引くわけですか。五年前につくった船舶と四十四年につくった船舶とは、同じ線といったらおかしいのですが、私の質問がおかしいと思うのですが、それはどうなっておるのでしょう。
  29. 松平直一

    松平参考人 それは、いまの御質問はこうだろうと思うのですが、つまり同じ長さ、幅、深さで、同じような構造の場合は、その喫水が同じに出るか、こういうお話ですか。
  30. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 ええ。
  31. 松平直一

    松平参考人 同じに出ます。
  32. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 そこで、青山さんにちょっとこの問題についてお聞きしておきたいのですが、船の場合、保険をかける場合は、船齢によってあれは割り増しがつくんじゃないでしょうか。同じ型の、たとえば同じ大きさの、前提がちょっとおかしいのですが、船齢というのが大体ありますね。そうしますと、「かりふおるにあ丸」と同じ船で、保険の場合は、五年前につくって就航しておる船と、ことしつくって就航さす船とは、保険は違いますか、違いませんか。
  33. 青山三郎

    青山参考人 五年前の船と、いまつくっておる、最近つくる船と保険料は違うかという御質問かと思いますが、それは当然違うと思います。ただし、そのつけ方は、老朽船だからどうということでなくて、船会社の場合は、海難の度合いによりまして、ロスレシオというものを毎年出すのでございます。たとえば保険金が全部で一〇〇%としまして、その内部で何%の保険金を保険会社は支払っておるかということによりまして、割り引きというものがございまして、保険料は毎年変わるわけでございます。その評価があるわけでございます。ですから、いまの御質問についての的確なお答えはできないと思いますが、当然差はあるわけでございまして、老朽だからどうというようなことはないのじゃないかと思います。
  34. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 どうも私の質問、おかしいのですが、満喫線の線の引き方、これは船の航行安全という問題を中心に私はいまお伺いしておるわけなんですが、線の引き方の場合、五年前の船も、ことし就航する船も同じところへ線を引くということになると、同じ総重量トンの積み荷ができるわけですね。しかし、実際保険会社の場合は、保険料金というものは、船が古くなっておればなっておるほど、いわゆる船齢による割り増しという制度をやっておるんじゃないでしょうかということであったわけなんです。
  35. 青山三郎

    青山参考人 そうではございません。船会社によって違いますし、先ほど申し上げましたように、ロスレシオによってきまっていくということでございます。
  36. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 それから、先般来の事故を起こした場所と船というものを見ますと、四十四年一月五日に、先ほど来私申し上げております鉱石運搬船「ぼりばあ丸」、同じく一月六日にタンカー「ソフィアP号」、同じくこれは四十五年でございます、四十五年二月七日に、貨物船「アントニオス・デマデス号」、それから二月九日にいま中心に触れております「かりふおるにあ丸」、こういう船が海難にあい、沈没いたしております。先ほど来参考人の皆さん方もお話しになりましたが、「ぼりばあ丸」については、安全性という問題についての、いろいろなことをおっしゃっておられましたですが、この沈没した帯域という問題でございます。これはあとから、実は政府当局にただしてみたい、こう思っておるわけでございますが、帯域及び季節区域図というものを見てみますと、大体この「ぼりばあ丸」あるいは「かりふおるにあ丸」あるいは「アントニオス・デマデス号」、こういうものが沈没しておる帯域というものが、いわゆる三十五度ウエスト、百四十五度イーストという帯域の境界線あたりでみんな沈んでおるわけです。そしてその内容、たとえばそれでいきますと、冬季季節帯というものが、この帯域で言いますと、十月十六日から四月十五日の間は冬季季節帯に入るという、こういった参考の地図があるわけなんで、これは専門の皆さん方のほうがお詳しいと思う。先ほど青山さんが気象海象情報ということをだいぶ触れておられたわけでございますが、去年「ぼりばあ丸」が沈没するときに、脆性破壊の問題からいろいろな問題が出たと思うのです。これは質問するのはどうかと思うのですが、大東亜戦争の末期におきまして、アメリカの輸送船が数隻、原因不明の沈没をした。これはアメリカの西部海岸の港の近くであったということを私たち聞いておるわけです。それで帯域及び季節区域図というもので、アメリカの輸送船が沈没したあたりというのを調べてみて、何かアメリカは戦争中でございますので、日本の潜水艦にやられたんじゃないか、特殊潜航艇が来たんじゃないか、とたいへん騒いだそうでございますが、調べてみたらそうでなかったということがはっきりしたということで、アメリカにおいても脆性破壊の問題、あるいは帯域あるいは季節区域図の問題というのを非常に真剣に取り上げてきたんだということを漏れ聞いておるわけでございますが、わが国の帯域、季節区域図で、たまたま四隻の船が同じ境界線、冬季季節帯、夏季帯との境界線で沈んでおるということになりますと、そこに一つの鉄というものと極端な冷たい水、あたたかい水という関係、これは私しろうとでよくわからないのですが、ただ帯域、季節区域図というものが設けられておる理由というものは、前段が非常に長くなったのですが、帯域及び季節区域図を設けておる理由はどういうところにあるのでしょうか。これは参考人青山さんでも、あるいはまた松平さんでもかまいませんが、お教え願いたいと思うのです。
  37. 松平直一

    松平参考人 実は先ほど申し上げましたとおり、満載喫水線に関する規則をつくったりするのは全部政府なのでございます。できた規則を適用いたしまして、こういう規則をこれからやれとかいう政府のほうの指示によって私どものほうはやっておるものですから、いまおっしゃった冬季とか帯域が昔からどう変わったか、どういう理由で設けられたか、実は詳しいことはわかりませんので、ちょっとごかんべん願いたいと思います。
  38. 受田新吉

    受田委員長 それでは政府に答弁してもらいます。
  39. 佐藤美津雄

    ○佐藤(美)政府委員 満載喫水線のいわゆるマークでございますけれども、これはいろいろ帯域によって差がございます。すなわち夏季の満載喫水線あるいは冬季の満載喫水線、それから冬季北大西洋満載喫水線、熱帯満載喫水線、それぞれあるわけでございます。それで、この満載喫水線はこの条約からきておるわけでございますが、積み荷の限度を示しておる、こういうことになっております。したがいまして、海の荒らさと申しますか荒海、あるいは季節ということを大体大分けに分けまして、それに応じた満載喫水を指定しまして、それによって航行する、こういうふうにしておるわけでございます。
  40. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 この問題はあとから政府委員に御質問しなければいけませんが、いま船舶局長が説明されたように、満載喫水線、T、S、W、WNA、こう分けてありますね。私が言いましたのは、「かりふおるにあ丸」が航行する地域がS、いわゆる夏季帯を通ってくるのだというので、ぎりぎり一ぱい積んでおる。いま帯域の問題を出したのは、それが冬季帯に入っておったということにしますと、これは私は教えてもらったのですが、喫水線の線で二十七センチ違う。そして積み荷において約千五百トン違う。「かりふおるにあ丸」が冬季帯を通って日本に帰ってくる場合と、夏季帯あるいは熱帯を通ってくる場合とでは、積み荷において約千五百トン違うのじゃないか。それが、夏季帯ばかり通るのだという感じで積み荷をたくさん積んでおる。ところがいまの帯域の場合に、最近の気象その他の関係によって、冬季帯であるところの、私が申し上げました緯度の中にうっかり入っておったということになりますと、二十七センチ満喫線が下がり、そして、脆性破壊ということばが適当かどうか知りませんが、いろいろな現象というものが起こって、「かりふおるにあ丸」あるいは「ぼりばあ丸」は沈んだのではないかという観点からお尋ねしたわけなんで、これは海難審判庁のほうで、「かりふおるにあ丸」の航行という問題等について今後いろいろ議論されるだろうと思いますので、この席でこれ以上、私もそう知識もないし、お伺いいたしませんが、青山さん、法律を見ますと、船舶安全法の第四条の規定により、運輸省令で定める区域を航行するときは、技術上の基準に従い気象及び水象を観測し、運輸省令の定めるところにより、その成果を気象庁長官に報告しなければならないという問題があるわけですね。そうすると、気象庁長官もおいでになっておるようでございますが、これは時間があればあとから私は質問したいと思うのですが、気象業務を船長は刻々報告しなくてはならぬわけですが、一般に船会社の場合は、帯域の境目をどうするとかこうするとか、あるいは東経何度、こういう地点におるときの海の温度は何ぼであって、こういう状態のようであるというような報告は、船長は、会社あるいは気象庁に、現実には一日おきとか、あるいは十時間おきとか、いろいろな条件でやっておるのでしょうか、どうでしょうか。
  41. 青山三郎

    青山参考人 ただいまの御質問でございますが、船といたしましては、これは規定によりまして、船からは気象庁には毎日海象気象について報告いたしております。  それから会社につきましては、これも航海報告等の形式で必要に応じて報告いたしておりますが、大体実績ができておりますので、たとえば北太平洋でしたらどういう海象気象であるかということは、大体会社はつかんでおります。
  42. 受田新吉

    受田委員長 加藤君ちょっと、政府委員はあとからというお話でしたが、三人の参考人方々は非常に誠意をもって、お時間を少しずらしてもいいというお気持ちがおありですから、適当に政府委員を織りまぜて、また、参考人方々政府の意図をお聞きしておきたいというお気持ちもおありのようですから、識りまぜて質問されてけっこうです。御了解を願っておきます。
  43. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 わかりました。  青山さん、たとえば「かりふおるにあ丸」はおたくの船ではなかったと思うのですけれども、「かりふおるにあ丸」が鉄鉱石を積んで日本の港に入ってくる、その場合に、どことどこを通ってどういうようにやるということは、これは会社が指示するのでしょうか、船長が指示するのでしょうか、荷主がやるのでしょうか。それはどうなっておりますか。
  44. 青山三郎

    青山参考人 それは船長がいろいろ経験等によりまして判断してきめるのでございます。
  45. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 そうすると、帯域の問題は私が触れておるのですが、船長が近回りしてやろうということで、いわゆる体験航法に近い方法で、私が申し上げました冬季帯に、荷物はいわゆる夏季帯を通行する荷物を積んでおる、それが近回りしてやろうという、期間を短縮し、先ほどおっしゃった安全、迅速、確実という中の迅速というほうを船長が選んで、帯域圏を通って早く日本へ船を着かせようというので、夏季帯とか冬季帯の帯域を無視してやるということは、船長がやろうと思えばできるわけでしょうか、どうでしょうか。そこら辺は何でしょうけれども……。
  46. 青山三郎

    青山参考人 仮定の問題ですから非常にむずかしいと思いますが、やろうと思えばできると思います。船長が無視してやろうと思えばできると思います。ただし、やはり帯域がきまっている以上、その帯域内を走るのが至当だと思います。
  47. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 私しろうとなんで、どうもおかしいと思うでしょうが、それからついでに、青山さんにいま質問しておるのでございますが、計画造船の場合は、運輸省に書類を出すときに、いわゆる積み荷証明といいますか、荷物の確保の証明書がないと計画造船は認めてくれないようになっておるのじゃないのでしょうか、どうでしょうか。これは開銀の関係か、運輸省関係か、両方かんでくると思いますが、そこら辺はどうなんでしょうか。
  48. 受田新吉

    受田委員長 どちらから答弁をされますか。——それでは青山さんから先にひとつ……。
  49. 青山三郎

    青山参考人 それは一般船でなくて専用船の場合だと思いますが、証明でなくて積み荷の保証ですね。積み荷の保証というものは計画造船には当然必要だと思います。
  50. 妹尾弘人

    ○妹尾説明員 積み荷保証につきましては、積み荷保証のある船については積み荷保証の写しを要求いたしております。保証がなければ建造させないとは必ずしも申しておりません。船会社の体力その他の条件から、無保証船をつくるという場合に、それは審査して無保証船でもつくる場合があり得るわけでございます。積み荷保証のある場合には積み荷保証を持ってきてくれと言っているわけであります。
  51. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 私は、そのつくらすつくらせぬの問題でなくして、この次に、いわゆるオペレーターは、荷主のわがままといいますか、低コストというか、経済性という表現をしたらいいのか、それにどの程度拘束せられるんだろうかということを聞きたいために、いまちょっと申し上げたわけです。  専用船の場合は、そういう積み荷証明がなければ、大体においてつくれないし、また、つくる目鼻もつかぬと思う。そうすると、今度は、荷主は、先ほどのお話にあったように、専用船ですから、それぞれの専用のものを運ぶと思いますが、よそよりもたくさん積んで一円でも安く、そして一時間でも早くという問題が出てくると思うのです。そういうときに、いわゆるオペレーターのほうとして、相当な無理をせざるを得なくなるのではないかという観点からお伺いしたわけなんです。そういう無理をせなければならぬということになると、定期検査あるいは中間検査の一種、二種という問題が、今度は逆にオーナーあるいはオペレーターのほうで、造船所に対してわいわい言わなくてはならなくなってくるという一つの因果関係があるのかないのかということを承りたいために、いまの積み荷証明を最初に出したのですが、実際、オペレーターが運航する場合には、たいてい十年間ぐらい一つの船について専用契約をおやりになる。そうした場合における荷主に対する一つのノルマといいますか、あるいは基準というか、量というか、そういうものはやはり採算をはじき出す上からいうて必要だと私は思うのです。その場合に、航行の安全、船舶の安全というものも無視するかしないかということが、一番最初に申し上げました当委員会の非常に大きな問題にもなってくるわけなんですが、専用船をつくる場合に、荷主と契約される場合における安全性といった問題についての協議というのは、相当おやりになるんでしょうか、どうでしょうか。ただ、もう荷主側は条件を出すだけでしょうか。
  52. 青山三郎

    青山参考人 船をつくる場合は、船会社といたしましては、十年間の積み荷保証というようなことでやらしていただくわけでございますので、計画を立てて、全然採算に合わない船をつくっても意味ないということですから、運賃とコストをにらみ合わせて、有利だというところで船をつくるわけでございます。ですが、先ほど申し上げましたように、安全、迅速、確実ということをいっておりますが、安全を度外視した経済性というものはあり得ないと私は思っております。そういう面では、もちろん安全な船をつくるわけでございますが、しかし、安くて安全であればもちろんそれでいいわけですから、そういうことについてはNKさんの規格に合った、そして安全だという船、それで、規格以上の船もつくっているわけでございます。ですから、むしろ安全というものを非常に重視しておるわけでございます。
  53. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 どうもしろうとでございますので……。古賀さん、よく、今回のようなこういう海難事故が起こった場合にいわれておることばがあるのです。それは、コンピューターにたより過ぎているんではないか、あるいは、コンピューターを駆使して、経済性を強調して、安全性というのを少しおろそかにしておるんじゃないか、こういう問題が出てくるわけなんですけれども、私たちは必ずしもそれを全面的に信じておるわけじゃないんです。造船所がオーナーから船の注文をいただきます。そうすると、海事協会から運輸省へ出してから、いろいろな検査をされるわけですが、二十次船だけに非常に事故が多いということ、これはまた偶然であって、二十次船全体に通ずる欠陥とは必ずしも思っておりません。  私、今回のこういう事故が起こったについて、いろいろしろうとなりに鉄鋼メーカーを調べてみたのです。鉄鋼メーカーに資料を持ってきてもらいますと、NK規格とか、各種の規格がたくさんあるのです。AB規格あるいはNK規格、いろいろな規格が鉄鋼メーカーのほうの内容にあるわけですが、この差は一体どういうものか、あるいはどういう基準でこういうものを出されておるのかということが不敏にしていまだにわかっていないわけです。造船所の場合は、船主から発注があった場合に、いわゆる設計基準上のいろいろな問題は海事協会とやられるのでしょうが、鉄鋼メーカーから買い受ける材料については、独自の検査というのをおやりになっておるのでしょうか。それとも、これは規格品だ、鉄鋼メーカーの検査を信用して造船所はそのまま使うというかっこうをとっておられるのでしょうか、どうでしょうか。
  54. 古賀繁一

    古賀参考人 コンピューターに依存し過ぎるというお話ですが、コンピューターで正確に仕事を運んでおり、依存し過ぎるということはどうかと思うのです。  それから、さっきお話ししましたとおりに、ルールでいろいろ構造の部材、寸法はきまっておりますけれども、それを大型電子計算機で有限要素法で詳しく計算いたしまして、それで、ルールで行き届いていないところは、電子計算機計算結果を使って補って、ちゃんとした、よりいい船をつくりつつあるというのが現状でございます。  それから鋼材は、製鉄所でロールして、すぐ材料試験をおやりになりまして、それは、NKにプラスします船はNKの検査官、ロイドの船はロイドの検査官が立ち会いまして、証明書が鋼材についてくるわけです。それを使ってやっておりますから、十分検査された良質の材料を間違いなく使っておるわけでございます。
  55. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 そうしますと、造船所は、鉄鋼メーカー並びにNKあるいはほかのABならAB、ロイドならロイド、いろいろなところの検査証明がついてきておるから、あらためて検査はせずにそれを使用する、こういうようにとってよろしいわけでしょうか。
  56. 古賀繁一

    古賀参考人 そのとおりでございます。
  57. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 私は、大型船海難事故の問題は、時間ももうだいぶきましたので、この程度でやめさせていただこうと思うのですが、実は、いわゆる材料であるところの鉄鋼そのもの、また、それを溶接する技術、方法、そして、造船所とオーナーと海事協会との関係、オーナーと荷主との関係、こういった問題から入っていって、抜本的にいろいろなものを出していかなくちゃならぬのじゃないか、こう思っておったわけなんでございますが、時間の制約上これで終わらしていただきたいと思うわけでございます。  船舶構造あるいは強度、外部的な経済性の問題、船そのものの安全性の問題、乗り組み員の安全の問題、こういったいろいろな方面からこの海難事故の問題は究明していかないと、一番最初に申し上げました造船量で世界の半分、海運日本の信用という問題、こういう問題全部がからんでくるのではないかと思ったわけでございます。  本日は、参考人の皆さま方に、しろうとでいろいろ焦点のぼけた御質問等いたしましたにもかかわらず、非常に親切、丁寧にお教えいただきましたことを厚く感謝しまして、私の質問を終わらせていただきます。
  58. 受田新吉

    受田委員長 久保三郎君。
  59. 久保三郎

    ○久保委員 お三人の参考人の皆さんからお話がありました点から先にお尋ねを申し上げたいと思うわけであります。私も専門家じゃありませんので、十分に意を尽くしてお尋ねできないかもしれませんが、御了承いただきたいと思います。  まず第一に、いままでお三人の皆さんにお話を伺ったのでありますが、結論的に共通していることは、船の構造というか強度というか、耐航性、こういうものについてはやや十分であるようなお話が共通的ではなかったか。むしろ強調されたのはいわゆる操船の問題、それから提供さるべき情報の問題、さらには救難の問題、あるいは気象、こういうようなものを中心お話があったと思うのであります。もちろんそれぞれのお立場でございますからやむを得ない——やむを得ないと言ったらたいへん語弊がありますが、当然かと思うのでありますが、まず第一に松平参考人にお伺いします。  強度は十分にしてある、そういう御発言がありまして、なお海象気象については、特別な事情というか、そういう十メートル以上の波浪というのはまれなことであるというようなこともある。そうしますと、いままでこういう経験は、あなたのほうにはデータとしてあがっていないのかどうか、あらためてこれをお伺いするわけであります。いわゆる「ぼりばあ丸」あるいは「かりふおるにあ丸」のそれぞれ当時の遭遇した海象気象というのは、まれであるのかどうか、それはどういうデータによってまれであるというふうにお考えでありましょうか、いかがでしょう。
  60. 松平直一

    松平参考人 われわれ側の強度計算に用います外力というものは、実は数字的にいまおっしゃいました波との関連においてはっきりときめられないものです。長い間実際に船が走ったという、その経験から外力を推定しておるわけでございます。しかし、いまお話しになりました二十メートルという波ですが、これは実際にしょっちゅう起こっておらないと思います。おそらく台風でもなければああいう状態は起こらないと思います。結局、通常の海の状態というものをわれわれ大体想定して、それで外力をきめて、それを構造強度計算に使う、こういうふうにやっておるわけであります。
  61. 久保三郎

    ○久保委員 平常の状態条件にして強度計算をしている、こういうお話だと、いうならば通常の平穏無事、そういうものを基準にして船の耐航性というか船体強度というのはきめられておるのですか。われわれの考えでは、外洋にはあらしの日も当然予想して船はつくらるべきだと思っているのでありますが、その点はそうじゃないのでありますか。
  62. 松平直一

    松平参考人 その平穏なというのは、非常に静かという意味ではございませんで、通常起こり得る気象海象というふうに考えます。ですから、数字をいま申し上げますのはちょっと困りますが、大体十メートルから十二、三メートルぐらいまでの波は考えております。
  63. 久保三郎

    ○久保委員 気象庁の吉武長官おいででございますか。  先ほど来長官もお聞きになったと思うのでありますが、いまも松平参考人からお話がありましたが、「ぼりばあ丸」あるいは「かりふおるにあ丸」が遭遇した気象海象条件というのは、お話しのようなものであるのかどうか、これはいかがですか。
  64. 吉武素二

    ○吉武政府委員 お答え申し上げます。「かりふおるにあ丸」は、船としては珍しいくらいよく気象資料を送ってきております。沈没の寸前まで毎日、多いときは五回、そういう資料がございます。その中で、ちょうど沈没直前ごろは右舷の波高が十メートルというデータを四、五回送ってきております。私たちのこういう船からもらうデータとしては、この程度の波というのは冬季北太平洋では別に特に珍しい波ではないように思います。
  65. 久保三郎

    ○久保委員 松平参考人、お聞きのとおりであります。この場合でもいわゆるまれなものであるのでしょうか。それで船体構造規則というのは、いま気象庁長官からお話しのあったような状況までは耐え得られない構造規則になっておるのかどうか。あなたのお話の中では、構造規則を改正するかどうかというのは結論を出すのが非常に困難であるというふうにもお話しになりました。われわれはしろうとでございまして、よく存じませんけれども、「かりふおるにあ丸」は沈没寸前まで気象海象について通報していたのであります。これはまぎれもない事実であります。そういうものをデータにしないで、何をデータにしてあの結論を得られようとするのか、私はあらためてお伺いしなければならぬと思うのですが、いかがでしょう。
  66. 松平直一

    松平参考人 私がさっき意見を述べますときに、二十メートルと申し上げましたのは、これは乗り組み員からの報告でございます。あれにもお断わりしましたとおり、たしか遭難の一週間か六日前でございましたか、いわゆる台湾坊主というのが通りまして、あのとき非常に激しいあらしだったということで、二十メートルと思うといって報告を受けたのです。その二十メートルという波高は、これはたいへんなものだと思いましたです。そういうことで、あの二十メートルという数字を出しましたのです。
  67. 久保三郎

    ○久保委員 気象庁長官にもう一つお聞きしたいのですが、いまお話しになりました台湾坊主というのは異例の気象条件でありますか、いかがでしょう。まれに見るものであるのかどうか。
  68. 吉武素二

    ○吉武政府委員 お答え申し上げます。あの台湾坊主という名前がついているぐらいでして、一年に数回はやってくるものでございます。
  69. 久保三郎

    ○久保委員 いまのようなお話だと一年に数回も来る。俗称、ニックネームまでもついているというようなものでありますから、まれにあるものではないとしろうと目にも見られるわけでありますが、そういうものにも耐え得られない船体ということになりはしないかと思うのでありますが、これについてはどういうふうに松平さんはお考えでありましょうか。
  70. 松平直一

    松平参考人 船を大体どのくらいの強さに耐えるようにしたらいいかということは、いまおっしゃったような年に数回しか起こらないようなあらしにでも耐え得るようにするかどうかということ、これはなかなか運航のほうとの関係がございまして、むずかしいところだと思います。技術的に申しますれば、いまの二十メーターぐらいの風に耐えられるようには私はできるとは思いますが、まあ一般商船としては大体この辺というところがいまほとんど世界的にきまったようなかっこうになっておるわけでございます。中にたまたま二十メーターは入っていないだろうと私は思っているわけでございます。
  71. 久保三郎

    ○久保委員 もう一度気象庁長官に……。  二十メーターという、いま重ねて松平参考人から波の高さについてありましたが、台湾坊主というのは二十メーターしょっちゅう出るのですか、出ないのですか。
  72. 吉武素二

    ○吉武政府委員 二十メートルとおっしゃるのは、風のことでしょうか、それとも波の波高のことを言っていらっしゃるのでしょうか、私ちょっとわかりませんが……。
  73. 久保三郎

    ○久保委員 気象庁長官からはお尋ねできないから、私からお尋ねするわけでありますが、松平さん、二十メーターというのは先ほど聞いたのでは波の高さのように聞いたのでありますが、これは風でありますか。
  74. 松平直一

    松平参考人 波の高さでございます。
  75. 久保三郎

    ○久保委員 気象庁長官、二十メーターというのは波の高さということであります。
  76. 吉武素二

    ○吉武政府委員 そばに大野主任予報官もおりますけれども、波の高さで二十メートルというのは皆無、もうないんじゃないかと思いますが……。
  77. 久保三郎

    ○久保委員 もう時間がありませんから、お答えだけで……。  気象に関しては気象庁長官日本では一番最高権威者でいらっしゃる。そのつもりでお話を伺っていっていいと思うのであります。そこで、そういう状態の中でこの構造規則を改正するかどうかというのは非常に結論を出すのは困難だということです。これはもちろん時間をかけて検討されることはけっこうだと私は思いますよ。しかしながら、現実に一年間に何ぞうもの船が沈んでいる。特に第二十次船の二つが前後して海難にあっているのでありますから、これはわれわれからすれば、早急に結論を出してというよりは、こういう天候にも耐え得られる船をつくってほしいというのがわれわれの考えであります。参考人お話からも、安全性を第一に考えております。当然だと思います。  そこで松平参考人にお聞きするのでありますが、どの程度強度にするのがいいか、運航の面もございますからというお話が先ほどございました。で、あなたとしては、松平参考人のおいでになる日本海事協会というものの任務は何でありましょうか。
  78. 松平直一

    松平参考人 私のほうは御承知のとおり船級協会でございます。この船級協会というのは、海上運送に不可欠な保険に関連して生まれたものでございます。二百年前に設立されたロイド船級協会、これが一番最初のものでございますが、その後各国に船級協会が生まれまして、いま日本では海事協会といっております。船級協会は、船舶検査いたしまして、一定の基準に合っているかどうか判定を下して、そういう船には船級を与えるということになっております。それで、その船級というのはいま申し上げました保険その他に非常に関係を持つものになっております。造船業者のほうにも偏せず、オーナーにも偏せず、また保険関係だけに偏することなしに、厳正中立な立場になければならぬという関係で、先ほど御質問がありましたとおり、私のほうは海運会社、それから造船造機の製造関係、保険会社、それから海事関係者と申しますか、そういうものから選出されました先ほど申し上げた七十八名以内の管理委員会で運営されておるわけでございます。それから運輸大臣指定の会である、こういうことであります。
  79. 久保三郎

    ○久保委員 そうしますと、いわゆる船級協会である海事協会というのは、必ずしも船の安全性についてはあまり責任は持たないでもいいということですね。そういうふうになりますか。極端な言い方をしてたいへん恐縮なんでございますが、詰めて申し上げますれば、そういうことになりますか。
  80. 松平直一

    松平参考人 私のほうの協会の寄付行為には「船舶に関する諸般の事業の進歩発達を図り、人命及び財産の安全を期することをもって目的とし、」こう書いてございます。船級協会というのは当然安全を考えているということでございます。
  81. 久保三郎

    ○久保委員 船舶局長に伺いますが、いままで私が気象庁長官あるいは松平参考人に御質問申し上げている内容、お聞きのとおりでありますが、船舶安全法はこの機会に船体構造についてもっとシビアなものにしていく方法を取り入れて改正する必要がありはしないか、いかがですか。
  82. 佐藤美津雄

    ○佐藤(美)政府委員 いままで参考人からお話がございましたように、構造につきましては、非常に国際的な基準によってこれを行なっているわけでございます。今回の「ぼりばあ丸」事件及び「かりふおるにあ丸」事件以来、この問題につきましては、鋭意各関係の向き、われわれ中心となってやっておるわけでございます。したがいまして、この原因が究明されましたならば、当然それを強化する必要があれば強化するように取り計らうように考えております。
  83. 久保三郎

    ○久保委員 なるほどいま海難審判に二つともかかっておりますから、当然そういう答弁だろうと思うのでありますが、いままでのお話から見ますと、どうも何か船体構造その他検査というかそういう船の安全性については、いうなら結論が出るまでといって、それ以外のいわゆる操船技術あるいはそれに対するインフォメーション、そういうものに何か力点を置いておられるようにわれわれは考えるのでありますが、われわれ自身としてはそのものずばりで問題の究明をはかる必要がありはしないか。  それからもう一つは、第二十次船、これは最近「出雲丸」でありますか、ないしょでやったんではなかろうけれども、一応補強というか修理をしたというので明かるみに出てまいりましたが、けっこうな話でありまして、それぞれ悪いものは外へ出して、この際はオーブンに処理していくことが一番正しいと思うのであります。その意味でいいのでありますが、私はどうも、先ほど加藤委員からもお話がありましたが、第二十次船だけじゃなくて、それ以降のいわゆる大型船についても、これは検討を加える必要がありはしないかという心配をしているのです。これはどうですか、船舶局長。
  84. 佐藤美津雄

    ○佐藤(美)政府委員 正規のルールによってつくったのでございまして、それの安全性は、つくったほうの造船所、それから継続して使っている船会社、及びそれを検査した船主協会におきましてそれぞれ保証しようというかっこうになっておるわけでございます。二十次船といいますと、普通は非常に変わったような感じでございますけれども、私のほうの感じといたしましては、あれは予算上の一つの呼称でございまして、これを技術のほうから考えましたときには、特に差があるわけでございません。そういう意味では実は先生のおっしゃったような懸念もないわけではございません。しかしまた原因の明確でない現段階におきまして、すぐこれをどうするこうするというのはちょっと行き過ぎじゃないかと思います。  それから、実は先ほどの御質問と関連しまして、海難の特別調査委員会におきまして、船体のほうは鋭意その問題点を改良の面からあるいは実船実験の問題からいろいろ検討を進めております。したがって、近い将来にこの一応の結論らしいものが出るんじゃないか、それの対策としてやっていくべきである、かように考えます。
  85. 久保三郎

    ○久保委員 もっともそれ以上の答弁ができないんだろうと思うのでありますけれども、私ら国民の一人としては、念には念を入れて、お立場上いろいろ問題もあろうかと思いますけれども原因がはっきりわかったらどうする、これはあたりまえの話でありますが、お話のように二十次船というのは予算上の呼称の問題であります。ただ、あれを境にして大型化が進められてきたということは事実でありますから、現在問題になっているのは大型船でありますから、これはやはり全体的にもう一ぺん念を入れて点検をする必要がある、こういうふうに思うのでありまして、これは何ら差しつかえないんではなかろうかと思う。何か起きてから、「出雲丸」にしても、ああやっぱりそうだったのかということで、じゃタンカー全部やれ。何か後手後手に回っていることでありまして、これ以上後手に回ることは、どうも政府としてもこれは許されないのではなかろうかと私は思うのであります。いままでわれわれ自身も、まあこの次にそんなことはないだろう。ところがここまできては、もはやあるかもわからぬという考えをせざるを得なくなっている。これは点検をするということは考えていくべきだと思うのですが、どうですか。
  86. 佐藤美津雄

    ○佐藤(美)政府委員 いままで参考人お話を承っておりまして、やはり海難というのはもちろん船舶が十分強くなくちゃいかぬ、耐航性が強くなくちゃいかぬ。しかしそれ以外にもやはりいろいろな原因がございます。たとえば運航の問題、船舶の故障の問題、海象船舶に及ぼす力、そういういろいろなものがございますので、運輸省としましては、鋭意この解明に現在つとめている段階でございます。したがいまして、いまの段階で二十次船あるいはそれ以外のものについてもやるというようには現在は考えておりません。
  87. 久保三郎

    ○久保委員 時間もありませんから先へ行きましょう。  次には、先ほど来参考人からもお話がございました経済性安全性の問題でありますが、もちろんお話にあるとおり安全性を第一にしていく、こういうことであります。ただここで、先ほど加藤委員からも若干お話があったんでありますが、たとえば船会社にとりまして考えた場合には、いうならば計画造船そのものに対する制度的な欠陥がありはしないか、そこから来ているものがありはしないかということです。これは別に何を目的というのじゃなくて、お話もありましたように、積み荷保証、十カ年間で開銀融資は償還だ、その中で再建整備終了後の最近における船会社の実績というか、そういうものはあまり芳しくはない、しかし政府自体というか、開銀を含めてでありますが、約束どおりのものはひとつやる、そのためには運賃をひとつ上げたらどうかという要請も出てきた。最近はだから長期の積み荷保証というものもあまり好ましくないというのでやらなくなってきた。二年でも三年でも短くしてきたものもあるということでありますが、いずれにしても、そういう制度そのものに問題がありはしないか。それと同時に、結局船といわゆる荷主の関係でありますが、これはいうなら過当競争。最近そんな過当競争ほどではないかもしれませんが、いずれにしてもそういう運賃に対する競争が事実あるのですね。最近やや、定期船部門でありますかコンテナ部門でありますか、この調整なども含めてやってきたようであります。これは少し時間的にはおそかったと思うのでありますが、いずれにしても、やることはけっこうだと思うのであります。そういうものがない限りは、やはり運賃競争が当然起きる。運賃競争が起きれば、どうしても安い船をつくらざるを得ない。安い船を追求することは当然だと思う。しかしそれには限界があるはずなんでありますが、これが造船側にまいりますと、結局、先ほどもお話があったかと思うのでありますが、いわゆる船の注文を受けるほうとつくるほうとの関係が必ずしも一体になっていないんではないかという心配も出てくる。そのために、いうならばぎりぎりの線で船をつくる。だから、これはしろうとでよくわかりませんが、一九六〇年、十年ぐらい前は、いわゆる十四次船で使用鋼材の比率を一〇〇%と見れば、二十次船では七〇%から八七%に減っているわけですね。鋼材の使用がそれだけ比率としては減っているというようなことが一ついわれている。しかもこの間じゅう、これは「エコノミスト」だと思うのでありますが、ある対談の記事が載っておりまして、その中で造船業界のある人が言っているのには、いや、安全な船をつくれというならば、それは幾らでもできる、大体二割ぐらい鋼材をよけいに使えば、それはだいじょうぶだろう、こういうようなことをこの「エコノミスト」の誌上で言っております。だからそうなると、われわれは、ああ、やっぱり薄っぺらな鉄を使ったのかということにならざるを得ない、そうであるのかどうかは別にして。そういうことも事実問題にして、これはやはり公正に判断をつけてほしいものだと私は思うのであります。これは回り回って今度は鉄鋼メーカーと造船関係の問題になる。鉄鋼にしても、最近はまた値上げをしようというのですね。かなり鉄鋼を使う。しかも船価の中で占めるこの造船用鋼材は、大体八五%ぐらい原材料の中では鋼材を使う、こういうことになっているそうです。そうなりますと、巨大な鉄鋼メーカーに対して造船業、造船業に対して船会社、こういうようなことで何かずっとしわ寄せがきて、最後にはこの船に乗っている者のところにしわ寄せがきちゃうのじゃなかろうかというふうにわれわれ自身は一つは考えざるを得なくなってくる。そういうことはもちろんお考えはないという御回答だと思うのでありますが、一言お聞きしますが、造船工業会といたしましては、鋼材の問題、鋼材の値上がりに対しては、これは現在どうなんですか。いまの価格の中で吸収できるような体制にありますかどうか。  それからもう一つは、作業時間が非常に合理化、近代化してまいりまして、当然これは大幅に短縮されておりますが、これは労働力の問題等にらみ合わせがございましょうが、最近われわれはしろうとなりに危険に感ずるものは、溶接忘れなんというものがたくさん出てきている。これはそういう作業時間というか、船台におる時間、工程、そういうものに無理がありはしないかどうか、こういうものをひっくるめてひとつお伺いしたい。  それからもう一つは、船価にしても、十年前は、タンカーは、大体当時は四万トンないし五万トンが標準だろうと思うのでありますが、トン当たり七万程度。ところがいまは二十万トンタンカーで大体四万円でありますか、そういうふうなことになってきている。かなり船価も安くなっている。安くなっているのはけっこうでありますが、いまのような問題から海難というか、安全性が阻害される心配がないのかどうか。いかがでしょう。
  88. 古賀繁一

    古賀参考人 鋼材の値段は、ここ数年たいした値上がりはいたしておりません。去年あたりから少し上げてくれないかという折衝はいただいておりますけれども、それもほとんどわずかの金額でございまして、御心配になるような原因にはなっていないと思います。  それから賃金は、毎年、造船工業会会員会社の平均で一七%程度上がっておりますけれども、御承知のとおりに設備の改善をやったり、それから作業のやり方をくふうしたりいたしまして、企業内である程度は吸収いたしております。しかし十数%という大きな改善はできませんので、大部分は船の売り値のほうに御配慮いただくようにいたしております。  それから溶接忘れのお話が工期短縮とあわせてあったのでありますが、工期を短縮いたしておりますのは、たとえが適当でないかもしれませんけれども、プレハブリケーションというのを非常にやっておるわけですね。それで大きなブロック、クレーンで四百トンとか六百トンぐらいの大きいものも近年設備されてきておりますので、そういう大きなブロックをつくりまして、仕事が安全に確実にできるやり方を進めておりますから、そういうブロックは検査も非常にしやすいのであります。工場の中でやりますから、仕事が確実に、また検査も十分できるように進めております。したがいまして、現場でやる仕事がずっと減ってきた。現場でやる仕事は危険もありますし、むずかしくもありますけれども、その作業量がぐっと減ってきたということで、工数も減るし工期も短縮されてきております。これは合理的に工数も減り、建造日数も短縮されてきております。  それから溶接の長さでありますが、「ぼりばあ丸」で二十四万メートル、二百四十キロですから浜松の辺ぐらいまでありますか。それから出光さんの「沖ノ島丸」というのは七十一万九千メートルあるのです。これは東京から岡山の辺までの長さがあると思うのです。そういう中で今度の点検で一船にほんのこのくらいのが何カ所かあった。そういうことはあってはいかぬことでございまして、今後十分検査を徹底してやりまして、そういうことがないようにすることに努力しておりますけれども、非常に長い距離のうちにちょっとした見落としが出ております。しかしこれは幸いにどの船も溶接漏れが事故につながる性質のものではなくて、まあほんの不注意な不行き届きの程度で済んだことをしあわせに思っております。十分気をつけます。
  89. 久保三郎

    ○久保委員 もう時間でありますから、最後に審判庁長官に一言お伺いしますが、先般運輸大臣には申し上げておいたのでありますが、審判にそれぞれかかるわけでありますが、いまの審判制度必ずしも十分でないというふうにわれわれ考えております。しかしながら、審判制度そのもの自身やはりかなり進歩的な制度であろうというふうに思っておるわけです。ただ問題は、今度の事故のように船体その他について問題が多いのではなかろうかというふうな考えからいたしまするというと、たとえば調査機関も、まず第一に海上保安庁長官のところで取り調べをする、あるいは今度運輸大臣の諮問機関の調査機関ができる、あるいはそれぞれのいわゆる船会社あるいは造船界あるいは海事協会、それぞれの手によって調査されるということでは、それはそれなりになかなかいいとは思うのでありますが、手間をとる、あるいは見解の相違ということで原因が不明というか、うやむやになるという心配もあろうかと思う。そこで私は、海難審判の制度の中に独立した第三者機関によるところの恒久的な海難事故調査機関というものを設けておいたらどうか。これは専門家による。そうでないと、何かいまの海難審判のあり方は、先般も申し上げたとおり船舶職員法違反、もちろんそれに対しては裁決によって行政処分をすることになっていますから、審判庁のきびしい権力というのはそれに尽きるわけですね。船体構造あるいは港湾の構造その他の原因によるところの事故については、これは審判庁はあまり権限がない。勧告程度にとどまるということであります。それは勧告程度でもいいと思うのでありますが、この船舶職員法自体に至る前のいわゆる海難全体の原因調査というものは、やはり第三者機関によってやることが正しいと思っているわけなんです。審判庁制度をまるきり変えろとは私どもはいまだ申し上げません。そういう方法をとっていくことも一つではないかと思うのだが、御所見はいかがでしょうか、お伺いします。
  90. 藤原重三

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。海難審判法の改正の点につきましては、昭和四十年から足かけ三年ぐらいの間に、海難審判法改正準備会議というものが学識経験者によってつくられまして、討議の結果、これでよろしいと、そういうふうになっております。がしかし、いま先生がおっしゃいましたように、調査委員会制度の点でございますけれども、この点につきましても、審判法制定当時いろいろと論議されました結果、現在の三審制度に落ちついた、そういうふうに承知しております。しかしながら、いまおっしゃいましたとおり、調査委員会構想につきましては、なお今後慎重に十分検討していかなければならないと存じます。
  91. 久保三郎

    ○久保委員 終わりますが、参考人の三人の方に特にこの際われわれから御要望申し上げたいのは、再びこういう事故が起きないようにすることは、もちろん人命の安全でありまして、これは当然だと思うのでありますが、それ以外に、やはり日本造船あるいは海運界のためにも、徹底的な原因の究明と、その有効適切な処置をとらねばならぬと思うのでありまして、立場上、いろいろ苦しい問題もあろうかと思うのでありますが、どうかそういう線に沿って御協力をいただくよう、重ねてお願いしまして質問を終わります。  ありがとうございました。
  92. 受田新吉

  93. 沖本泰幸

    沖本委員 質問時間を限られておりますので、十分質問ができないかもわかりませんが、できるだけ簡単にお答え願いたいと思います。同時にまた、質問がいろいろと前後するかもわかりませんが、その点御了承願いたいと思います。  私も、せんだって「出雲丸」がいろいろ問題があるということが新聞記事にありましたので、お伺いして船も見させていただきましたし、いろいろ御意見も伺わしていただいたわけでございますが、その節にも話も出ましたし、その後関係方々の御意見もいろいろ伺ってみますと、現在までの段階では、運輸省側のほうにも大型船に対する責任がない、あるいは船主さんのほうにも責任はない、あるいは海事協会のほうにも責任はないし、造船所のほうにも責任はない、こういう結論になるわけです。いま原因を一生懸命に究明中である、こういうことになるわけですけれども、そういう段階でいろいろ対策を立てていこう、こういうことになりますが、原因がわからなかったら対策はなかなか立てられない。これはわかり切ったことなんですけれども、先ほど久保さんの御質問にもありましたとおり、溶接の忘れがあった、こういうことなんですが、聞きますと、船底部分と外板との間の曲がりかどで、非常にその辺の鋼材は強くなってくる、曲げるのに熱を加えなければならない、その熱を加えるのが十分でなかった、そういうことのためにいわゆるはずれが出てきて、溶接忘れのような問題もあったというのが新聞に出ていたと思うのですが、こういうふうな問題はまれにある問題だというただいまのお答えなんですけれども、「ぼりばあ」にしても「かりふおるにあ」にしても表れにあった事故なんです。それでみな日本じゅうが驚いているわけなんですが、そういうことは在来船にはなかったことなんでしょうか。どうなんでしょうか。造船所側のほうあるいは船主さんのほう……。
  94. 古賀繁一

    古賀参考人 御承知のように、前はびょう構造の船であったのでありますが、びょう構造の船の場合にもびょうの打ち忘れというのが間々ありまして、溶接船でも検査は二重三重に十分やっておりますけれども、さっき申し上げましたとおりに、何百キロメートルというものがずっとありますので、検査漏れで、ごく一部、部分的溶接漏れということは従来もありましたし、今度の点検でも若干出てきておる。しかし、これはそういうことがないようにさらに徹底してやっていきたいと考えております。
  95. 沖本泰幸

    沖本委員 私がお伺いしているのは、いわゆる曲げる部分の外板とか鋼材は非常にやわい質の鋼材を使っておる。曲がる部分だけが少し強い鋼材を使う。曲げた場合にある温度を加えながら溶接をしていくということが新聞に出ておったわけです。   〔委員長退席、加藤(六)委員長代理着席〕 その温度が足りないので外に引っぱった、こういうことで溶接部門のところに溶接忘れのような問題が出たというのがあの出光の二十四万トンのタンカーで起きた、そういうふうに新聞で承知しておるわけですが、その点はどうなんですか。
  96. 古賀繁一

    古賀参考人 「出光丸」の溶接のことにつきまして、朝日新聞に記事が出たのでありますが、それは大きな船は高張力鋼を強度を強く必要とする部分には使っておるわけです。高張力鋼、ハイテンサイルスチールといっております。それと普通のMS、普通の軟鋼のつき合わせの溶接部分の一部に、肉眼では検出し得ないような小さなクラックが若干あったということであります。それは、高張力鋼は溶接します前に温度を上げまして溶接するのであります。加熱して溶接するのであります。それから鋼材の材質がもっと高度な、ものになってまいりますと、たとえば圧力容器——化学反応をやる反応塔とか、あるいはボイラーのドラムとか、あるいは原子力のリアクターの、高温高圧だけではなくて放射能を受けるというふうなものについては、材料がずっと高級化されておりまして、溶接のしかたもむずかしい溶接をやっておるわけであります。高張力鋼というのはほんの初歩の、材質をちょっと上げた程度の鋼材でございますけれども、それに対応した溶接方法をとらなければいかぬのであります。  それでエックス線はとっておりますけれども、それでは出てこない、ダイチェックという調査のしかたがあるわけですけれども、それでも出てこない。それでマグナフラックスといいまして、これは非常に高級な溶接を要望されるところで使う検査法でありますけれども、その検査法を念のため使って検査したら、少し小さなヘアクラックに類するものが数十カ所発見できた。それはそれぞれ削り取りまして、手直しをして完全な溶接をしておる、そういうことでございます。
  97. 沖本泰幸

    沖本委員 私たちがこういう問題に対しまして勉強するのは、別に専門的な知識がありませんから、新聞記事なり何なりそういうものをたよりにやっていって、ある程度専門家の御知識をいろいろ伺うわけでありますが、そういう点からいきますと、新聞で一番問題になっておりましたのは、沈没した船の隔壁が少なかったのではないか、こういうことも問題である、こういうふうな御意見が出ているわけなんですけれども、鋼材を減らしていくという点も問題がある、こういうふうに考えられますので、結局船の安全性という観点から見ていきますと、船の耐用年数ですけれども日本外国の場合は少し違うのではないか、こういうことになってくるわけですが、大型船になって、日本外国船の耐用年数は少し違うのじゃありませんでしょうか。その点いかがでしょうか。
  98. 古賀繁一

    古賀参考人 詳しくは知りませんけれども造船所に対して、国内船船主さん、外国船の船主さんから、特別なお話はいただいておりません。それぞれ船級協会ルールによって船をつくってくれという御注文をいただいておりますが、特別な話はない。つくるのは同じ船という点から、差はないのじゃないかと存じます。間違っておれば後刻訂正さしていただきます。
  99. 沖本泰幸

    沖本委員 質問するほうにおいても、私自身確たる自信があるわけじゃないのですが、昔は、船は大体四十年ぐらいもつのじゃないかというふうに、しろうと考えではよく考えておったわけです。そういう船をよく見受けるわけですけれども、現在の計画船からいきますと、十年たてば返済が終わる、こういう考え方から、またどんどん近代化されていきますから、船の耐用年数というものを幅を短くしてお考えになるようなお考えが主力になっていく。それが船の経済性というものに影響していって、昔の船の考え方と現在の考え方とが変わっているのじゃないか。その変わったものが、いわゆる大型船になってくるほどその問題点が広がっていって、やはりそういうものが結果につながっていくのじゃないか、こういう疑問を私たちは持つわけでございますが、そういう点について御三者の方々の御意見はいかがでしょうか。簡単なお答えをいただきたいわけです。   〔加藤(六)委員長代理退席、委員長着席〕
  100. 古賀繁一

    古賀参考人 鋼材の所要重量が、大型船になると単位当たり減っておるという御発言だと思うのでありますけれども、それは、船が大きくなりますと、たとえば積み荷に関係のありますデットウエート、重量トンですね、重量トン当たりの鋼材の所要量は減ってまいります。これは無理して減しているのではありませんで、当然減ってくるのでございます。いま船は大体三十万トン前後ぐらいのところまで大きくなってきておりますが、その辺までは、鋼材の所要量はデッドウエート当たり減ってきております。最初のほうは相当減ってきておりますけれども、いまはもうなべ底みたいになりまして、三十万トン、三十五万トンにいたしましてもそう減りませんし、四十万トンにしてもそう減らないような感じを受けます。だから、二十数万トンまでの大型化過程では、単位当たりの鋼材所要量は合理的に減っております。これは、強さ弱さということに関係なく、合理的に減ってきております。したがいまして、単位当たりの所要工数といいますか、作業時間でございますね、これも滅ってきております。ですから、ある大きさまで船の大きさが大きくなっていくまでは経済性が伸びてきておる、そういうことでございます。
  101. 沖本泰幸

    沖本委員 いまの青山さんの御発言の中にも、バラストタンクの腐食については今後対策をいろいろ考える、こういうことをおっしゃっていたように思うわけですが、いわゆるバラストタンクの中を見ましても、相当さびが、やせが出ておるわけですね。いろいろ聞いてみますと、きめられたルール以上のものを、船主さんのほうはいろいろ考えて、ある程度無理して入れている。ただその間に銀行から借りなくてはならない関係もあるわけで、その点の間に問題があるのではないか。鋼材も新しく強化されてきた鋼材で、そのために、隔壁なんか、使っている鋼材はだいぶ薄いものを使うことになっているけれども、それもある程度船主側のほうでは考えて使っている、こういうことをおっしゃっているわけです。それはやはりやせを考えている。だから、その間に、いわゆる鋼材を強度なものにいろいろ改革されて、新しいものができるようになった、そういう点は考えられるけれども、やせそのものは結局同じだ。こういうところに、亀裂とかクラックとか、そういうような問題点も出てくる。こういうふうにわれわれは見たわけなんですけれども、そういう点について、なぜもっと最初の段階に中の塗装をなさるなりあるいはさびを防ぐなり、そういうものが考えられなかったか。  あるいはまた、もう一点は、上のほうに非常に亀裂が出ているという点が考えられ、しわがある。こういう点も、伺ってみると、いままで船を扱っておって考えられなかったことだ、最近になってそういうことが非常に多くある、こういうようなことをおっしゃっておるわけですけれども、そういう問題が、大型化してきたから、いわゆる油を積んだときバラストをうんと抜く、そういう間に重みがうんと加わってくるためにしわが起きるのか、その辺がはっきりしないということなんですけれども、いずれにしても一年間の保証期間があって、その後いわゆる定期検査のときに問題が出なくて、次の中間検査までの間、時期を待たずして早く問題が出てきたりしている。いままで問題になっている船は、ほとんど早い時期に問題が出ているわけです。そういう点について少し、使っている材料とか、そういう点についての取りきめ、そういうものに問題があるのではないか、こういうふうに考えられるわけですけれども、その点についてお考えは……。
  102. 青山三郎

    青山参考人 バラストタンク内の腐食の問題は、各船によって違うわけでございます。最初はやはり電気防食でいけるじゃないかということで、特に塗装をせずに電気防食でやった船の衰耗が特に激しいということでございます。しかし、同じバラストタンクにおきましても、ダーティバラストの場合、クリーンバラストの場合、それからクリーンでからっぽにして走る場合、その三段階に分けますと、その度合いは違うようでございます。その衰耗の度合いと鋼材の厚みの関係でございますが、これはルールに従って、ルール以上につくっておるわけでございますので、問題はこの塗装の問題が大きくクローズアップしてきたというふうに考えられます。先ほど申し上げましたように、これにつきましては、海事協会と、造船所ももちろんでございますが、船主側ともやはりどうするかという問題について検討しているわけでございますが、これについては新しい一つの考え方が近く出てくるのではないかというふうに考えております。
  103. 沖本泰幸

    沖本委員 こういうふうなことを伺っているのは、その構造について、皆さんおっしゃっているのは、経験工学だということをいろいろいままでたびたび伺ったわけです。ですから、初めの大型船と最近の大型船とは、やはりその間にいろいろな経験をお積みになっていらっしゃると思うのです。そういう点から見ていくと、何らかの形でいろいろな御意見が出ていると思うのですが、そういう点が一つも明らかにならずになっておるという点に私たちは疑問を持っておるわけなんです。ですから十万トンと二十万トンとは、船舶局長さんのお話ですと、深さが少し違うとうんと違ってくる、こういうことをおっしゃっていらっしゃいましたけれども、見た目ではそうは変わらない。だけれども、深さによって相当違う、そういう面、見た目では同じだけれども構造の上から亀裂が起きたり、いろいろなものが起きるような内容になってくるのじゃないかというふうに考えられるのですけれども、そういう点の、経験工学だとおっしゃる上のいろいろな経験というものはいままで明らかにされなかったでしょう。どうなんです。
  104. 松平直一

    松平参考人 それぞれ分担して御返事を申し上げたいと思います。私は建造のほうをやっているわけでございませんから、われわれの立場で申し上げます。  われわれが考えます造船工学という意味は、つまり船体構造についての技術あるいは構造理論は毎年発達してまいりました。そういうのを取り入れて強度計算、それからいままで実際に走った船の構造というものを参考にして、このくらいの強さだったらよかったということでいままでのルールができております。それがずっと長い造船の歴史であった。もちろん、その間いろいろ理論的な解析が進みましたから、そういう考え方を取り入れておりますが、それでもまだ実際の船に起こりますいま問題になっているようなクラックだとか、そういうものがたいへん役に立っているわけでございます。そういう意味で、われわれは船体の各部に出るそういう損傷を解析いたしまして、さらにそれをルールの改正に取り入れていくという形なものですから、その意味で経験工学というふうに申し上げたのでございます。
  105. 古賀繁一

    古賀参考人 先ほど来話がしばしば出ておりますが、海象気象を的確にはつかめない、それで船の強度をきめる場合に、いままでの就航船で、安全に無事に航海しておるプループンの船の実績を持ってきて、それでそれぞれ設計していくというやり方をしているわけです。波の高さが幾らといいましても、波にもいろいろ種類があると思うのです。じわっと来る十二メートルの波はそうたいしたことじゃないと思うのですけれども、波自身も船にぶつかってぱたんとやった場合は非常に強い衝撃力を船体に与える。それから衝撃力がくるときに、それをよけるように船が運動しておるときはそう大きな力を受けないのですけれども、反対に、船もこっちに動いている、波もこっちからこう来ている、船も波も両方正面衝突でぶつかったという場合は、非常に大きな衝撃力を受けるわけです。その辺可能な限り実験して調べてみたいということでいま進めておりますけれども、非常にむずかしい。したがいまして、既存のりっぱな船を手本にして、それで安全なように設計するというのが造船工学の現在の姿でございます。それと、近年電子計算機が大型のものが自由に使えるようになってまいりましたので、新しい計算法をあわせて用いまして、安全な船を手本にして安全に設計していくというわけでございます。  それから船が大型になってまいりましたのは、鉱石船で言いますと、十八次から大型化しております。十八次の計画造船では平均トン数が五万二千トンになっております。それから十九次は平均四万三千九百トン、二十次は五万トン、二十一次は五万二千九百トン、デッドウエートですね。それから二十四次と五次でまた急に大きくなっている。そういうことでございまして、二十次の計画造船から急に大きくなったということではございません。その二年前の十八次の計画造船のほうが船の平均トン数は大きくて、むしろ二十次の場合はちょっと下回って落ちついておるというかっこうでございます。
  106. 沖本泰幸

    沖本委員 伺っていて私たちなかなか御説明で納得できないのですが、まあ経験工学で、われわれが伺ってみてどういう点が変わった面として出てきたかというようなことを伺いたかったわけなんです。時間がありませんので、これは何らかの形で国民にもわかるような方法にしていただきたいと思うのです。各造船業界では、いろいろな商業上の秘密があって、なかなかお漏らしにならないと思うのですけれども、そこは一番疑問に思っている点でございますから、たとえばだんだん無人化されていく点について新しい技術面が取り入れられていっている、そういう面もどんどん進んでいっているわけですから、船体構造についてもこういう新しい技術面が開発されていっているというようなものがいままでもあったし、お使いになったと思うのですけれども、そういうものは全然われわれの目や耳にはわからないままで、事故が起きた事故が起きたで現在進んでいるわけです。  そこで、話をいきなり飛ばしていきますけれども、いまのような内容で、波浪計なんかがあったらそういう問題は問題なかったということなんですが、この波浪計をつけるには、一個が数千万円するということで、船主さんのほうもちゅうちょしていらっしゃるということです。これをおつけになるようなお気持ちがありますか、また海事協会のほうでは、こういう点についていままで開発をどんどん進めておられたか、あるいはこれから開発をお進めになろうとしていらっしゃるか、あるいは運輸省のほうは、こういうものをつけることを大型船に義務づけをお考えになっていらっしゃるかどうか、そういう点についてお答えを願いたいと思います。
  107. 松平直一

    松平参考人 その波浪計、実は申しわけないのですが、どういうものにつけるのかよくわかりませんが、私のところでは波浪計は考えておりません。実は気象庁やそういうほうへお願いして、できるだけ波の観測のデータをちょうだいして利用したい、こう考えておるわけでございます。
  108. 佐藤美津雄

    ○佐藤(美)政府委員 先生のいまおっしゃった波浪計というのはちょっとわからないのですが、あるいは先ほど議論になりました波の大きさをはかる波高計ということかと思うのです。確かにいままで波の大きさを目視でやっておりました。これがかなり正確であったといわれておりますけれども、ほんとうの正確さということは、ちょっと先ほども無人データお話が出ましたけれども、的確ではないと思います。今後そういう船のほうとしましては、外力がどれだけ船に加わるかということが大事でございまして、その外力が加わって、船の構造によりまして、それが構造内の材料の応力と申しますか、どういうふうにそれが分布され変化するか、しかもそれがまた形によりまして一カ所に非常に集中的に応力が起こるとか、そういうことがきわめて大事なわけでございます。当然波高計につきましてはわれわれも考える必要があると思いますが、実船実験で実は現在もやっておりますし、将来もやろうとして船主協会その他の御協力もいただこうとしております。結局波高計そのものよりも、いわゆる船の応力をはかるというところに力を入れてやっておる状態でございます。
  109. 沖本泰幸

    沖本委員 せっかく参考人お越しですから、もう少しお伺いしたいのですが、あまり時間がありませんので……。  さっき加藤さんの御質問にあったのですが、アメリカの沖で船が三隻、原因不明の爆発をした、こういうことなんですが、伺ってみますと、何かガスを抜いている装置の中に静電気が起きて事故が起きたのじゃないかという原因もあるということなんです。これからの船はどうしても動力を使って船体のガスを抜くようなことになるわけですが、そういう動力関係からいろいろ事故も考えられるわけです。今後、船体構造について、どうしてもそういうものを取りつけなければならない時代が来ている、また、そういうことについてそういうおそれもある、こういうことになるわけですが、その点についてどういう対策をしていらっしゃるかどうかお伺いしたいのです。
  110. 青山三郎

    青山参考人 ただいま御質問のタンカーの事故は、昨年の暮れに起きました、アフリカの沿岸に起きましたシェルタンカーの事故、二つございました。これはいわゆる爆発事故でございます。いち早くシェルは世界じゅうの造船あるいは海運関係のほか学識経験者を集めまして、原因探求をしているわけでございますが、まだ的確な原因は把握できてないのではないかと思います。しかしタンクの中を掃除しますガン・クリーンというものがあるわけでございます。これが一つ原因ではなかろうかというふうにもいわれておるわけでございます。したがいまして、シェルはもちろんこれの使用をとめておりますが、日本のタンカー所有者も一応これはとめておるわけであります。これを使わないようにしております。別の機械を使っておるということでございますので、もしガン・クリーンが事故原因であるとすれば、そういう事故は今後は起きないと思います。
  111. 沖本泰幸

    沖本委員 もう二問ほどで終わりたいと思います。  船主さんのほうにお伺いしますが、総点検ということになって、全部の船を点検しているわけですけれども、みな一斉にすぐできるということじゃないと思うのですね。それで、みな定期検査の中間検査、そういうふうな時期を選んで、またドックのあいたときをお選びになっておやりになると思うのですが、相当費用がかかる。安全性をはかるためにお互いにそれは考えなければならないことであり、また船のいろんな損傷とかいうような面が出てくれば、船の安全率、こういうことで船会社のほうもプラスになっていくということも考えられるわけであります。一航海休むと相当な損失が起きてくる、こういうことも考えられるわけです。そういうことで総点検政府からいろいろ言われたわけですけれども、その費用は船主さんのほうで持っていらっしゃるわけでございますか。その点について政府が持ってくれたほうがいいというお考えがあるのじゃないでしょうか。私があえてそれを聞きたいのは、計画造船で、将来どうしても政府のお世話にならなければならないというお考えがあって、言いたいこともおっしゃらないのではないか、こういう点おもんぱかってお伺いするわけですけれども、その点と、海上交通安全対策について先ほど御質問がありました。それについては、われわれ国会のほうでもその問題を相当取り上げているのですが、漁業権の問題とか、いろいろな点でいま問題があるわけです。そういう点はどうしても大型船化していくほど、日本の大きな港、臨海工業地帯、重工業の地帯に入っていくには狭水道を通らなければならない、こういう問題で相当の衝突事故がたびたび起きております。われわれも交通安全対策法案をつくらなければならない。何度か出たけれども、いろんな問題でいままだ日の目を見ていないということなんですけれども、先ほど御要望がありましたけれども、同じような観点についてお考えになっていらっしゃるのでしょうか、どうでしょうか。この二点についてお伺いしたいと思います。
  112. 青山三郎

    青山参考人 第一の御質問でございますが、総点検による費用は大きく分けまして三つに分けられると思います。点検に要する費用、補修に要する費用、補強に要する費用。大体現在までに五十三隻点検が済んでおるようでございますが、それらのかかりました費用の平均でございますが、大体点検費用には一隻二百万前後かかっております。それから補修に関しましては五、六百万円、補強に関しましては二、三千万円かかっておるというような状況でございます。この費用をどうするかという問題については、今後どうするかという問題になると思いますが、船主協会といたしましては、関係の担当の部門がございまして、目下検討中でございます。  それから第二の問題の、日本近海の特定水域における交通ラッシュに対しての海難防止に対してということでございますが、これは私冒頭で申し上げましたように、現在陸上には交通法がございます。これは先生方は陸上では常に車に乗ったりして走られますので、陸上交通の問題についてはお詳しいのです。海上交通については、船に乗って日本近海をお回りになられた御経験があまりないと思いますので、案外大事なところについての関心も薄いものがあるのじゃないかと思います。二、三年前から海上交通法の設定の問題が起きました。東京湾、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内、関門付近、こういったところが交通ラッシュの一番ひどいところでございます。これについては、日本の特殊性といたしまして小型船も非常に多い、こういう狭隘なる水道に漁船はやはり漁業をしておるというような問題もあるわけでございまして、いろいろな複雑な問題はございますが、やはり一つの法規をきめまして海難をできるだけ防止する、これは国際的にもそういうことが必要ではないかと思いますので、先ほども早目に法の規制をしていただくということをお願いをしたわけでございます。よろしくお願いいたします。
  113. 沖本泰幸

    沖本委員 あと運輸省にお伺いをいたしますが、先ほどいろいろ問題点が出たわけですけれども、しかし肝心の亀裂とか、船体構造の部門についてのいろいろな点が浮き彫りにされてこない。いろいろな問題はこれからだと思うのですけれども、そういう点について、私も、いままで何らかの形でいろんな条件が出てきていると思うのですが、運輸省のほうとしても、大型船事故対策委員会をおつくりになっているわけですから、現在までにお調べになった段階もいろいろあると思いますし、来年度予算要求、いろんな関係からも、何らかの形で中間的な発表がおありになるのじゃないかと期待しておるわけなんですが、こういうものの今後の対策について、現在どういうふうな問題をお持ちになっておるか、どういう対策で臨まれておるか、この点についてお答え願いたいことと、それからこれは船舶局長でありませんけれども、先ほどの海上交通法について、運輸省のほうとしてはどういうお考えか、その二点をお答え願いたいと思います。
  114. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 現在運輸省では大型専用船海難特別調査委員会というものを設けまして、諸般の問題につきまして、いろいろと調査研究をしておるわけでございます。その点につきましてごく大まかに申し上げますと、これは二月の二十日に第一回の委員会を開きました。それから三月の二日、それから四月の六日に委員会を開きました。その間におきまして、各部会あるいはワーキング、それぞれで各部会ごとに数次にわたってのいろいろな議論などがされました。その結果、四月六日現在におきましてまとまりましたところは、約九項目ばかりに分かれまして、こういった問題を進めてまいろうというふうなことになっておるわけであります。  その概要を申し上げますと、気象海象関係につきましては、本州東方海域における気象海象の問題、これの統計的調査を行なう、あるいは「かりふおるにあ丸」の海難当時の気象海象調査、あるいは点検対象船舶についての気象海象調査、それから運航部会におきましては、「かりふおるにあ丸」の過去及び海難当時の航海状況調査、「かりふおるにあ丸」の海難当時の付近航行中の他の船舶航海状況調査、それから点検対象船舶、これは六十九隻の点検対象船舶について、冬季における日本海付近の航行状況の様子、その間の気象海象調査、あるいは大型船を所有する各社の船長に対する積み付け、あるいは運航上の注意並びに情報提供の状況、そういったものでございます。あるいは救命設備ないしシステムに関する調査、それから船体破損個所、これは船体部会でございますが、船体破損個所の推定、あるいは当該部分破壊強度、それから破壊順序の推定、あるいは実船実験、模型実験等によります船体破壊のための波浪衝撃の解明というふうなことを大体のテーマといたしまして、具体的なものを積み上げまして、現在調査を進めておるところでございます。これにつきましては、大体四月六日を起点といたしまして四カ月、長いものは一年ないしそれ以上かかるものもあるかと思いますけれども、私どもといたしましては、なるべく必要なものは予算のほうにも反映させたいという気持ちでございますので、必ずしも全部が全部それまでに結論が出るというわけにまいりませんが、なるべくならば六月末くらいの時点で、一応の現在までのものを取りまとめまして、必要な予算要求その他に反映させたい、こういうふうに考えております。  それから次に海上交通法の問題でございますが、これは海上保安庁から御答弁するはずでございますが、ただいま長官おりませんので、私かわって申し上げますと、先ほど先生御指摘のように、私ども鋭意この成立については従来努力してまいったのでございますが、議案関係その他まだ調整のつきません点がございまして、残念ながら今国会には提出することができなかったのでございます。しかし、今後ともその点につきましては鋭意努力を重ねまして、なるべく早い機会に提出の運びに進めたいというふうに考えておりますので、ひとつよろしく御協力のほどお願いいたしておきます。
  115. 受田新吉

  116. 和田春生

    和田(春)委員 本件につきましては、予算委員会に始まりまして運輸委員会、また本日はこの交通安全特別委員会でございますけれども、非常に重要な問題で、連続をしてこの問題についてはお尋ねをしておるわけでございまして、御答弁のほうも、この場限りのあいまいなことではなく、短い時間でありますから、的確にお答えをお願いしたいと思うのであります。  まず第一にお伺いしたいのは、今日の質問に対しまして、NKのほうの代表の松平さんから、また佐藤船舶局長から、この大型船海難については、船体構造、耐航性ばかりでなく、ほかにも大きな問題が、たとえば船舶運航の問題というようなことばが明確に言われておったわけであります。その船舶運航の問題というと、乗り組み員の操船上に誤りがある、端的にいえば、シーマンシップに問題があるということを意識して言われておるのかどうか、お二人にそれぞれお答えを願いたいと思います。
  117. 佐藤美津雄

    ○佐藤(美)政府委員 前に参考人からお話がありましたので、海難という問題につきましては各方面からの検討で、私のほうでは対策委員会船体部会あるいは運航部会あるいは気象部会、そういう方面から出ておるわけでございますが、結局先生がおっしゃったような意味でなく、運航の問題も十分に海難関係することがあるという意味で申し上げたわけでございます。
  118. 松平直一

    松平参考人 私が申し上げましたのは、たいへん口はばったい言い方だったかもしれませんが、いわゆる船舶の耐航性というのがよく一般に言われております。われわれの問題にしております船体構造というのは、狭義の耐航性だと考えております。やはり船体運航とローリングですか、この三つの柱が大きな意味の耐航性があるのじゃないかと、こう思っております。その中で、私のほうは船体構造だけを扱っておるわけでございますので、ただその点を明確にしたかったです。ほかの原因につきましては、われわれはまだはかり知ることはできないわけです。
  119. 和田春生

    和田(春)委員 それでは、船体の狭義の構造の面を明確にしたいという意味でおっしゃったそうでございますから、NKのほうにはそれ以上この問題についてはお伺いいたしませんが、船舶局長に重ねてお伺いしたいと思うのですけれども、私が言ったような意味ではないとすると、船舶局長が言われた運航上の問題というのは、どういうことでございましょうか、端的にお答え願いたいと思います。
  120. 佐藤美津雄

    ○佐藤(美)政府委員 いろいろ運航部会で議論になっておると思いますけれども、昔の小さな船でございますと、波に乗って行くというようなことで、あるいは船に力がかからない、かかる場合がわりあいに少なかった。ところが、最近非常に大きくなってまいりますと、同じような運航をやっておりましても、はかり知れない力がかかってくるんじゃないか、そういうことから考えますと、逆にいまの技術をそのまま遂行していくとすれば、先ほども青山さんからお話がありましたように、運航マニュアルの問題とか、そういうような問題に関連してくるわけでございます。そういう意味におきまして、私ちょっと申し上げたわけでございます。
  121. 和田春生

    和田(春)委員 そういたしますと、お伺いをしたいのですが、これは造船工業会の代表の方、また船主協会の代表の方、運輸省、それぞれ関係すると思いますけれども、第二十次造船を境にいたしまして急速に大型化してきたわけであります。従来の経験にはなかったようないろんな事態が予測される。そういう点について、この種の船舶についてはこれこれの海象気象条件のもとにおいて、こういうふうに注意すべきである、あるいはこのような運航の方法をすべきである、そういうことをどこかの機関で研究し、またそれを船長に指示をする、あるいはまた商船学校その他の船員の教育機関でそういう問題を取り上げて特別に訓練をする、そういうことを行なってきた事実があるかどうか、その点をはっきりお答えを願いたいと思います。
  122. 青山三郎

    青山参考人 私からお答えいたします。タンカー、鉱石専用船等を通じまして船舶大型化というのは非常に急速でございました。十八次ぐらいからだいぶ大型化してきたようでございます。私ども船主といたしましては、船長に、運航上特に注意しろということは言っておりません。昔から親船に乗った気持ちとか、あるいは大船に乗った気持ちということがいわれまして、大きな船ほど安全だという固定概念といいますか、一応そういったものがあったと思うのであります。それが、「ぼりばあ丸」それから「かりふおるにあ丸」、こういった事件が起きましたので、船主としても衝撃を感じておるわけでございます。そういったことで、運航上の問題をどうするかという問題につきましては、いろいろ今後の問題になると思います。先ほど船舶局長のお話ございましたが、小さい船たとえば一万トンの船……。
  123. 和田春生

    和田(春)委員 質問したことだけにお答え願えればけっこうでございます。
  124. 青山三郎

    青山参考人 以上でございます。
  125. 古賀繁一

    古賀参考人 船が大きくなってまいりました経過を申し上げますと……。
  126. 和田春生

    和田(春)委員 時間がございませんので的確にお答え願いたいのですが、急速に大型化をした、そういう大型船で従来の経験では律せられないような問題が出てきた。それが運航上の問題であるというならば、そういう船舶設計建造した立場において、この種の船を運航するにはこういう点に注意してもらいたいということを、つくった側で特別に指示し、ないしはそういう情報を提供したことがおありかどうか、こういう意味をお聞きしておるわけであります。
  127. 古賀繁一

    古賀参考人 船というものは、御承知のとおりでき合いのものを買っていただくようにお願いしておるのではありませんで、船会社が一隻一隻御注文になる。その注文仕様、注文契約書、そのとおりのものをつくっておるわけであります。ですから和田先生のお尋ねの操船マニュアルとか、そういうふうなものはおつくりしておりません。ただ、こういうふうに積み荷をいたしますと、こういう応力がかかって、これはまずいです、これはよろしゅうございますとか、それから重強度計算はこういうふうにやっていただきたいとか、そういうことはやっておりますけれども操船マニュアルは造船所ではやっておりません。
  128. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 私も直接その衝にございませんので、完全な御答弁になるかどうか疑問でございますけれども、一応知っておる限りを申し上げますと、現在のところ、そういった運航マニュアルというものは、あるいは海防協あたりで研究しておるということは聞いておりますが、こういうものをつくれというふうにして指示したことはございません。ただ、今後の問題といたしましては、あるいは今度の調査委員会等で研究した結果、そういうことが安全のために必要があるということになれば、そういうふうなことに対する研究もあり得るかと存じます。
  129. 和田春生

    和田(春)委員 私がこういうことをお伺いしておるのは、船をつくられたほう、あるいは注文された船主の責任を追及しようという意味で申し上げておるわけではなくて、事実関係をこの席上で確かめたかったわけです。といいますのは、この特別委員会の席上における先ほど来の加藤委員あるいは久保委員等の御質問に対するお答えの中にも、運航上の問題ということばが簡単に出てきておるわけです。大型船海難調査特別委員会におきましても、運航部会を設けられるのはけっこうでございますけれども、これは全く秘密のべールに包まれておって、私たちはどういう審議が行なわれておるのかよくわかりません。しかし、うわさに聞くところによりますと、船体構造上の問題が乗り組み員の運航責任に転嫁される傾向がきわめて濃厚であるというようなうわさも出ておるわけです。そこで、そういう形になってくると問題でありますから、一体運航上の問題というのを当局が口にするけれども、それはどういう意味で使っておるのか、そういう点を確かめたいために、いま言ったようなことをお伺いしておるわけであります。  そこで次の質問に移りますけれども、先ほど来の、高さ二十メートルの波、波高二十メートルというものが非常にめったにないことであるとかないとか、あるいは十二、三メートル程度ならば通常の大しけの場合として予想されているということがございました。私も約十年に近い乗船の経歴を持っておりますが、私自身の経験の中で、昔はフィートで言っておりましたけれども波高五十フィート、六十フィートというものを二回経験しております。もちろん一、二メートルというものは正確にはかれないかもわかりませんが、御存じのように、船のブリッジにおける目の高さというものはわかっているわけでありますから、運航上それを標準にいたしまして大体波の高さはわかるわけであります。南米の沖におきまして波高六十フィートと想定される大しけに遭遇いたしました。木製のブリッジが飛ばされてしまいました。しかし、私は当時一万トンの船に乗っておって、まだ船に乗りたてでございましたけれども、船が沈むなどという不安は全然持っていなかった。大船に乗ったということばがございますけれども、もちろん船長以下万全の注意をいたしておりましたけれども、そういうしけによってこれだけの大きな船が沈むということは全然考えていなかった。それがかなりの自信であったわけなんです。ところが、数万トンの巨船が、「ぼりばあ丸」に続き「かりふおるにあ丸」という事故が起きているという点で、大船に乗ったということに対する信頼が根本からゆらいできた。このことは非常に大きな問題を意味していると思う。それは運航上の問題ではなくて、船が大型化いたしますと、波の上に乗る船が乗らない。ちょうど戦闘艦と駆逐艦のような関係で、戦艦の場合には少しくらい波が来ましても、海中からはえた構造物のように船そのものは動かない。それに対して波がぶつかってくるというものと、波の上に乗って動く船というものにつきましては、波を受けるところのいろいろの力の関係、そういう面において基本的に違った面が出てくるのではないか。そういう点を運航の面に問題をすりかえたのでは困るわけなんでありまして、船はどういうしけにあうかもわからない。したがって、おおよそ想定される二十メートルという波は決してめったに起こらないということではないのです。私自身の経験でも二回ほど経験している。そういう場合でも、やはりどういう状況が起こるかということを想定してつくられるべきである。もしそれを想定してつくられていないとするならば、この船はせいぜい波高十二、三メートルまでを想定して構造計算が行なわれているわけであるから、それ以上の波に乗ったときには特別に運航注意をしてもらいたいとか、あるいは逃げて帰れとかいうような適切な指導というものがなければならぬと思う。船乗りも運航経験によってやっているわけですけれども、かつて、そういう大きな船をいろいろの条件のもとにおいて運航したという経験はない。そういう条件を突き詰めていきますと、結局それは運航上の問題ではない。想定される海象気象状況に適応できない船をつくったというところに問題があるのではないか、そういう点を考えるわけであります。この点について、安全行政の一番の責任にある船舶局長の所見をお伺いしたい。
  130. 佐藤美津雄

    ○佐藤(美)政府委員 先生がおっしゃるように、船と天然現象である波浪の問題、これは非常に密接不可分関係にございます。そういう意味合いにおきまして、実は各参考人方々気象の正確な把握がほしいということを言われたと思います。私のほうも、気象部会を設けまして、これにはこれでいけるという線を出したい、かように考えております。
  131. 和田春生

    和田(春)委員 たいへん抽象的なお答えですけれども、事は非常に重要でございますから、この点は時間の関係もございまして、次回は運輸委員会等に譲ることにいたしまして、具体的なことをお伺いしたいと思うのですけれども、実は新聞紙上にも大きく報ぜられましたけれども、「出雲丸」の損傷状況につきまして、私自身タンクの中に底までもぐりましてつぶさに見てまいりました。相当なこれは問題があるというふうに感じました。こういう大型船につきましては、船をつくりあるいは修繕に従事している人たちは、一種のなれっこになっている。そういう関係もありまして、この程度のヘアクラックは大型船においてはよくあることですと、こういうふうなことばもちょいちょい出てきたわけであります。それは決して悪意があると私どもは思わないので、一種のなれからだろうと思うのですけれども、あの船を見てみますと、ロンジの方向のバルクヘッドに対しましてはバックリング、ゆがみが出ている。あるいは相当に材質が弱っているというような点がかなり明瞭に読み取られる。それからヘアクラックといいますけれども、われわれがいままでかつて常識的にヘアクラックといったのは、ちょっとでは気がつかないような小さな亀裂をいっておったのでございますが、あの程度のヘアクラックとなると、ヘアでも相当大さな、ゴジラの毛ぐらいじゃないかと思うようなヘアクラックになってきておるわけですが、これはトランスバースのアスワートシップの方向の、あるいはブラッケットであるとかあるいはスワッシュであるとか、そういうところに非常にたくさん出ている。そういう状況がはっきり出ているわけであります。さらにまた電気防触等をやっておりますけれども、これが予想されたほどの効果がない。建造以来わずかに四、五年の船が、多いところは二ミリも、あるいは三ミリ近くも板の厚さが薄くなっているという条件があるわけであります。昔もずいぶんぼろ船が走っておりましたけれども、こういう点は昔から見ますと、船のいたみが建造してからの年数に比べて非常に激しいということがいえると思うのです。昔の場合にはできてから四、五年でしたらまだ新造ほやほやの部類であったけれども、やはり相当の問題ができておる。「出雲」の場合にも船の安全を行なうために相当たくさんの鋼材を使っている。金額にしても一億数千万円を投じなければならぬ、こういうことになっているわけなんです。こういうような状況というものについて、これはNKが検査をされておったわけでございますけれども、昨年の六月「出雲丸」に行なわれました定検の場合には、これをパスしているわけであります。ところが、その後においてこういう状態が出てきて、本年のドックにおいてはどうしても手入れをしなければ安全上問題があるというところまできたわけであります。その昨年の定期検査におきましてNKの検査員の方はこれに気づかなかったのか、あるいは気づいておったけれども、その程度のことは差しつかえないと思ったけれども、これはやはりいまになってみるとたいへんだということになってきたのか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  132. 松平直一

    松平参考人 今度ロンジ・バルクヘッドに出ました「出雲丸」のあのクラックでございますね、あれをタンク検査に行きまして見落とすような者はいないと申し上げます。それからもう一つ水圧試験をこの前やっております。ですから、あれだけの亀裂がありましたら水圧試験でも発見はできたわけで、この前の定期検査に、ないという報告がございましたのを私は信用いたしております。  ところで、定期検査になかったクラックが四カ月たって出たじゃないか、こういうことだと私は思うのでございますが、まあ正直に申し上げて、あり得ることでございます。何でクラックが出たかということは、いずれいろいろございましょうけれども、定期検査で、なくて、その後発生するということは、これはまああり得ることだと申し上げます。
  133. 和田春生

    和田(春)委員 なかなか松平さんとしましては公式の席上ですからお答えにくいと思うのですけれども、確かに昨年六月の定検のときにはなかった。その数カ月の間に何か激しい航海をやってそういうことが出てきた。あり得るということは、まあ、かもわかりません、あり得ないとはなかなか断定できないことだと思うのです。しかしあの状況を見たところによりますと、私がかりに検査官であったとしましても、よほど時間をかけて綿密に見ないと見つからないクラックがたくさんある。それは御承知のように、電気防蝕で上にずっと防蝕の膜がかかっている。その下からどんどんさびがついて、相当程度にさびが盛り上がっているわけです。それがクラックの生ずるようなところに一ぱいくっついているわけです。これを全部たたいて落としてみないことには、なかなかそれがわからない。たまたまあの船はそういう異常な損傷が一部分で発見されましたがために、念のためにという形でやっていったところ、あちらこちらに何十カ所となくそういうクラックが出ている。これは主要な構造そのものには現在では決定的な影響はないかもしらないけれども、何でもなかった相当程度の厚さの鋼板にあれだけの大きなクラックがたくさん入っているということについては、やはり異常な外力のかかり方というものがあったのではないか。そういう点を考えますと、今後の検査という体制の上において、昨年の六月の定検というものについてその責任を責めるという意味ではございませんけれども、やはり問題があるんではないか。これだけ大きな船の、人命の安全と、それから積み荷の安全に関連をするような検査という点について、現在の体制には私は問題があるように考えるわけなんです。NKの責任者として松平さんは問題がないとお考えになるのか。問題があるとすれば、それは検査基準そのものにあるのか、あるいは検査のやり方にあるのか、あるいは人手が足りないということにあるのか、あるいは船舶運航スケジュールが非常にタイトであるために検査期間が短過ぎるというところにあるのか。あるとすればそのいずこにあるのか。そういう点についてひとつお答えを願いたいと思うわけです。
  134. 松平直一

    松平参考人 鉱石船の総点検をいたしまして、相当いろいろクラックが出てきたということは御報告申し上げました。あれらが大体マイナークラックで、大きな事故には結びつくとは思われないということも申し上げましたのですが、まあ構造上のことを申し上げましてはいけませんかもしれませんが、ロンジフレームがトランスバース、ああいう板を通過するときに、あのスロットがあけてございますですね。あれは何かほかにいい方法はないかということは前から考えておったわけです。ああいう不連続のところへどうしても出るわけで、ストレスが弱くてもいわゆる集中が起こって、ああいうところに起こるわけですね。それでああいうクラックが出まして皆さんの目に非常につくということでございます。で、あのクラックのごく初期には、おそらく一ミリか二ミリだったろうと思います。御承知のとおりああいうふうにタンクの中はきたのうございますし、タンククリーニングをやったといっても、なかなか一ミリ、二ミリのクラックが全部発見できるということはたいへん困難だと正直に申し上げるわけでございます。で、だれが見てもわかるようなクラック、こういうものを見落とすということはございませんし、その発生する個所によりまして、これが発展するものか、大きな事故につながるものかの判断はサーベイヤーにできると思っております。
  135. 和田春生

    和田(春)委員 松平さんの見落とすようなことはございませんという御返事でございまして、一応そうではないだろうと私が言うのも、これは言い過ぎでございますから申し上げませんが、私どもの感じから言いますと、なかなかあの検査はたいへんだろうと思うんです。やはりいまのような状況で進んでいきますと、検査において、これは悪意であるとかサボるという意味ではなくて、一生懸命尽くしてもやはり限界があるために見落としが生ずるとか、あるいは気がつかなかった、それが事故につながるということはあり得ないということも私は断定できないだろうと思う。  そこで、船舶局長にお伺いをいたしたいのですが、現在の安全法によりますと、船級協会のクラスボートにつきましては、運輸省の安全法上の船舶検査の主要な部分を行なわないことになっているわけです。これは予算委員会でもお伺いいたしましたが、あまりはっきりしなかった点でございますけれども、そういう検査というのは、結局安全をチェックするということが非常に大きな任務なわけでございまして、造船所と船主にまかせておけばいいということならば、行政権力が介入する必要はないわけでございます。  そこでお伺いするわけですが、いま政府は、この船級協会であるNKというものが、政府の安全に関する検査の肩がわりをしているというふうに考えておられるのか、あるいはNKはNKという船級協会の独自の立場で検査を行なっている、それを政府が認める、こういう考え方に立っているのか。その辺の運輸省当局の責任ある解釈をお伺いしたい。
  136. 佐藤美津雄

    ○佐藤(美)政府委員 船舶安全法の八条に明記してありますように、日本船級協会検査を受け、船級の登録をなしたる船舶にして旅客船にあらざるものは、その船級を有する間、管海官庁の検査を受け、これに合格したるものとみなすということで、政府の肩がわりをしておるわけではない。結局船級協会の権威を認めて、政府は立法的に手を抜くようなそういう法律体系になっていると私は考えております。
  137. 和田春生

    和田(春)委員 そういたしますと、船の安全に対する検査というものについての最終責任は政府にある、こういうふうに確認してよろしゅうございますか。
  138. 佐藤美津雄

    ○佐藤(美)政府委員 検査そのものは、附則のほうに船級協会の責任と申しますか、監督条項がございまして、これによって監督しております。その面で政府は行政上の全責任がある、こういうふうに考えております。
  139. 和田春生

    和田(春)委員 そういう立場の政府について、検査というものは、やはりどういう船ができるかということと大いに関係があると思いますので、お伺いしたいわけです。先ほども質問の中で、私の意見として若干申し上げたのですけれども、いま大型化の傾向というものは非常に大きな反省期に来ているのではないかという気がいたします。先ほど古賀さんのお話の中にも、三十万トンクラスまでは使用鋼材をデッドウエートトン当たり相当程度に軽減をすることができる。これは船の経済性という面でプラスになることは否定できないと思います。三十万トン以上になってまいりますと、あまりそれが減らないというお話もございますし、また経済性というのは、船をつくる場合の造船単価だけではない。一たん事故を起こしますと、非常に大きな損失をこうむる。そればかりではなく、償却年数というものがあると思うのです。昔の一万トン程度くらいの船でしたら、三十年あるいは四十年現役で走っておった船もあるわけでございますが、いまの大型船の様相を見ますと、とても三十年などはもちそうもない。世の中の進歩も速いですけれども、せい一ぱい十年なり十五年で完全に償却をしてしまわないことには、これはそれ以上長くは使えない。世の中の変化とともに船のいたみが非常に激しいという問題もあるわけであります。また大きな船をつくりますと、それに付随するところの港湾施設その他で膨大な投資が要る。そして船を一隻つくる建造単価だけが安いということが経済性であるのかどうか。しかもそれが安全性を犠牲にして行なわれるという形になると、貴重な人命が失われるという、何ものをもってしても取り返しのつかない、償い得ないような重大な犠牲を生ずる。こういうふうになってまいりますと、検査の体制においても、造船価格の面においても、究明されていない面がまだたくさんあるのにかかわらず、大型船建造というものを、技術上可能であるという点、あるいは船主のふところ勘定の点、そういう点にだけゆだねておって、どんどんつくっていくということに、私は重大な疑問を感ずるわけであります。国際競争の面もありましょうけれども大型船の非常に大部分日本でつくられている。造船王国といわれている日本が、この際人命の尊重と安全という見地、またほんとうの意味の経済性という見地から、船舶大型化というものに対してチェックを加えて、当分の間この大型化というものに抑制を加えて、徹底的な研究を進めていく、こういう考えがあるかないかをお伺いしたい。
  140. 佐藤美津雄

    ○佐藤(美)政府委員 船舶大型化につきましては、実は海運政策とも関連しますので、私一存の答えでは十分ではないと思いますが、船舶局長としましては、安全な船をつくるということに徹すれば、実は大型化も決して問題じゃないのじゃないかというふうに個人的には考えます。ただ、先生がおっしゃったように、いままでは小さな船につきましては、乗り組みの方も船主の方も、それからNKの方もみんな、船が届くのか、あるいは届かないのじゃないかという疑問を投げかけたわけでございますけれども、そういうようなことはあるいはあるかもしれませんし、そういうことから検査の体制というものをこの契機に十分考えていく必要はあろうというふうに考えております。ただ現段階におきましては、御存じのようにすべてが国際的な標準で動いております。それから先ほど古賀参考人からお話があったように、輸出船が先行しておりまして、それの実績日本船に振りかえってきて、それでつくっているわけでございます。そういう意味からわれわれ造船に携わる者としましては、非常にじょうぶな船、安全な船というふうにまで持ってきておるわけでございますし、いまもまたそう持ってきておるわけでございますが、この点はいろいろ問題点があろうと思いますので、検査体制等については、将来の問題としていろいろ検討したいと思います。
  141. 和田春生

    和田(春)委員 私は検査体制についてだけ言ったわけではなくて、お伺いした点を船舶局長は正確にお答えになっていないと思うのですけれども海運政策の関係もあります。本日は海運局長が参議院の関係でお見えになっておりませんので、本件の主管の委員会である運輸委員会において、いずれ海運局長等にも御出席を願いまして、この問題についてはあらためて問題にいたしたいと思います。  なお、時間がほとんど尽きましたので、一問だけ海難審判庁の長官にお伺いをいたしたいと思います。  この点につきましては、予算委員会でも少しお伺いをしたわけですけれども日本の法律の体系によりますと、海難事故原因の探求は海難審判庁の所管になっているわけでございます。これを処理するためには海難審判庁にそれにふさわしい機能がなければいけない。この点につきましては、すでに全日本海員組合からも運輸省に対して申し入れが行なわれているわけでございますが、海難審判庁の長官は、現在高等海難審判庁、地方海難審判庁を通じましてお持ちのスタッフ、審判官、理事官、副理事官、この人たちをもってして、こういう特殊な構造上の問題、大型化によって生ずるところの海難事故について原因を探求をすることが可能であるとお考えであるかどうか、それに対して必要な機能を備えていると判断しておられるかどうかをお伺いいたしたいと思います。
  142. 藤原重三

    ○藤原政府委員 最近の技術革新の進展に伴いまして、新しい型の海難事件が発生いたしまして、その原因も複雑かつ多岐にわたるものと思われるのでございます。したがいまして、今後審判官に海運出身者以外の各分野の専門家も採用するという方針で、運航面に片寄ることのないよう、総合的に体制を整備して、従来以上に原因究明の体制を強化したい、そういうふうに考えておる次第でございます。もちろん重大事件につきましては、参審員制度を活用いたしますし、鑑定それから検証、そういうようなことにつきましても従来以上に十分注意してまいりたい、こういうふうに存じております。
  143. 和田春生

    和田(春)委員 重ねてお伺いいたしますが、現在、海難審判法施行令第四条第二号のイによる船舶検査官、この船舶検査官で経験のある人から任命されました審判官、理事官は何名おるか、簡潔にお答え願いたいと思います。いまおわかりでなければ、あとでもよろしゅうございます。最後にもう一問だけ確かめたいと思います。
  144. 藤原重三

    ○藤原政府委員 この間、最近でございますが、四月二十日付で船舶検査官の経歴を有しておられる方を審判官として採用いたしております。
  145. 和田春生

    和田(春)委員 そうすると、その方が初めてでございまして、いままではなかったわけでございますね。
  146. 藤原重三

    ○藤原政府委員 従来はこういう方がいらっしゃいませんでしたが、機関科関係でございますけれども検査官の経歴を持った人が一人ございます。
  147. 和田春生

    和田(春)委員 それでは、これは質問というよりも最後に、きょうの質問の締めくくりとして要望したいのでございますけれども、せっかく立法上は、海難事故原因の探求が海難審判庁の役割りである、こういうふうにきめられておりながら、ただいまの長官のお答えでも明らかなように、こういう船舶構造上等にかかる問題を探求するためにははなはだ不十分な状況になっておる。そして「ぼりばあ丸」事件が起きればそのための特別の部会を設ける、「かりふおるにあ丸」事件が起きれば調査特別委員会運輸省に設ける。こういう臨時の機関を設けて追っかけておる、こういうことでございますので、今後のことに備えましても、文字どおり海難審判庁が海難原因を明らかにする、こういう体制を備えた法律どおりのものにするようにすること、さらにまた、新しい時代に即応するように海難審判法の改正をして、このような安全対策に適応できるようにすることを強く要望いたしたいと思います。  なお、調査特別委員会等々の具体的な関連事項につきましては、本日は時間がございませんので、次回にあらためて御質問いたしたいと思います。  以上で質問を終わります。
  148. 受田新吉

    受田委員長 和田委員の要望を十分政府に伝えます。  土橋一吉君。
  149. 土橋一吉

    ○土橋委員 私は時間が十分にありませんので、質問する内容をお聞きくださって、あとで一括してお答えを願いたいと思います。  まず第一番に私がお尋ねしたい点は、「ぼりばあ丸」が昨年の二月沈んだときに、いろいろ調べられたのでありますが、この「ぼりばあ丸」の沈んだおもな原因といわれるのは水密隔壁が非常に少なかった、こういうことがいわれておるのであります。この点について、御承知のように日本海事協会の編さんした鋼船規則の十二編六条の規定によりますと、長さ百六十五メーターから百八十六メーターの一般貨物船については、これはどうしても九枚、つまり貨物を入れる船倉が四つ以上必要ではないかというふうにいわれておるのです。いま問題となっておる「かりふおるにあ丸」、これは何枚であったか、この点を明確に答えていただきたい。もし第二十次船の建造にあたって「ぼりばあ丸」と同じようにこの隔壁が七枚前後であったとすれば、「ぼりばあ丸」と同じような欠陥をこの船は露呈しておるということがいわれるのであります。これは財団法人日本海事協会相生支部の渋谷亨支部長が、横浜の海難審判理事所で証言して、この点を明確にしておりますので、この点をお聞きしたいと思います。いままで多くの委員の諸君が言われましたように、相次いで大型船がこのような事故に見舞われたということは、明らかにこれらの船が欠陥船の要素を持っておったのではないかという点が最も大きな点として指摘をされるわけであります。もちろん波の問題あるいは運航の問題等もありましょうが、基本的には、経済性を強調するあまりに、船主側から特にそういう船の要請をしておったのじゃなかろうかというふうに考えられる。こういう点について船舶局長は一体どう考えておるのか、あるいは海事協会松平さんは一体それに対してどういうふうに考えておられるのか、この点をお答え願いたいと思います。これが第一点です。  第二点は、ことしの二月十三日に全日本造船機械労働組合中央執行委員長長谷川勲という方から日本造船工業会会長永田敬生殿というので、日本造船工業会へ要請書が出ております。この要請書の項目は一から十までございますが、この内容は非常に重要なものを含んでおるように私は思いますので、この十項目の内容の特におもなものを読み上げてみますが、これに対してどういうふうに造船工業会は回答しておるのかあるいはどういうふうにこの問題について処理をしておるのかということを聞きたいわけです。  第一は、「経済性、合理性を重視するため、鋼材の使用量が一重量トン当り一四次船(昭和三十三年度)を一〇〇として、二〇次船以降(昭和四十年以降)八七−七〇と節減したことに問題はないか。」こういう点を第一に指摘をしております。  第二番目としては、スクラップ効率を高めるため、つまり廃船になってスクラップした場合にその効率を高めるために、補強材などの機質、量などに不十分はないかどうか、こういう点がやはり事故を起こした原因でなかろうかという点を聞いておるわけです。これが第二です。  第三点は、「積荷スペースの拡大に問題はないか。」という質問です。  第四番目は、「乗組員の削減に問題はないか。」つまり、労働者が非常に少なくなって合理化しておるという点にこういう事故発生する一つ原因があるのじゃないかという点を聞いております。  「したがって、貴工業会において鋭意再検討されることを切望すると共に、私たち造船労働者が余裕をもち、安心して立派な作業をしていくことのために、つぎのことを要請します。」  次は要請であります。五以下でございますが、要請する一つは、「労働力の確保と増員に勢一杯の努力をされたい。」これが非常にいま不十分であるように見受けるわけです。  六は、「下請工の本工化を早急に実施されたい。」つまりあまり経験のない下請、そういう諸君がたとえば溶接をつけ間違えたとか、あるいは溶接をしなかったとか、先ほどから和田委員もいろいろ説明しておりますように、さびのあるところをどんどん塗ってしまって、わからないようにするというような問題もあるわけです。こういうことについて、本工に十分仕事をさせてもらいたいという要求です。  次の七つ目は、「生産協議会などで、工程上の問題等十分意見を取入れると共に、この種の会議がもたれないところは、早急に実施されたい。」ということをいっております。  八番目は、「乗組員の意見も十分取り入れた船舶建造をおこなうべきである。」  九として、「無理な工程の強行はさける。」つまり十分工程を踏んだ仕事をやってもらいたいということなんです。  十番目として、「作業場の環境をさらに整備されたい。」  以上が日本造船機械労働組合の中央執行委員長長谷川勲君から要求された内容です。こういう問題について、私はまことに至当なものが多いと思うのです。特に一と二あるいは三、四などは適切な問題を指摘しているように思うが、船主協会古賀さんはどう考えておられるのか、あるいは運輸省船舶局長さんなんかはどう考えておられるのか。簡単に以上二問について答えてもらいたいと思います。
  150. 松平直一

    松平参考人 「ぼりばあ丸」のバルクヘッドの数が七枚というのは、これは確かでございます。規則によりますと、標準の数が出ておりまして、あれは九枚ですね。ここの鋼船規則に、船の長さに応じましてバルクヘッドの数がきめてございます。それで、これは百八十六メートルまでが九枚。ですから、「ぼりばあ丸」は百八十六メートルをこすわけでございます。二百十三メートルでございます。ですから、本会が適当と認める数ということになります。
  151. 土橋一吉

    ○土橋委員 何枚つけておったのか。
  152. 松平直一

    松平参考人 七枚です。本船は七枚ございます。つけてあったのが七枚です。
  153. 土橋一吉

    ○土橋委員 それは「ぼりばあ丸」でしょう。
  154. 松平直一

    松平参考人 はい。
  155. 土橋一吉

    ○土橋委員 いまお聞きするのは、「かりふおるにあ丸」は何枚つけておりましたか。
  156. 松平直一

    松平参考人 「かりふおるにあ丸」は九枚です。
  157. 受田新吉

    受田委員長 いまの発言は全部委員長が了承したものと認めますが、正規に発言を求めてやってください。
  158. 松平直一

    松平参考人 「かりふおるにあ丸」については何枚であったかというお尋ねでございますね。
  159. 土橋一吉

    ○土橋委員 はい。
  160. 松平直一

    松平参考人 九枚でございます。「ぼりばあ丸」は七枚でございますが、これは一応規則上は本会が適当と認めるところになっております。それで、適当と認めると申しましても、めちゃくちゃな適当ではないわけでございまして、一応船主さんのほうの御要望も加味するわけでございます。それに応じました二重底とか、それから船側部材とか外板、フレーム、そういうところの強度をバルクヘッドの距離に応じましてきめておるわけです。  それから三番目の、経済性を犠牲にしたのじゃないかというお話でございましたが、私のほうで船体強度をきめます基準は、先ほど申し上げましたとおり、一定の耐航性を持つということを目標にしてやっておるわけですね。これは経済性でも何でもないわけです。しかも一定の耐航性の水準というのを昔からいままで変えたことはございませんです。これはまあ一応ロイドとかABとか方々のああいう標準と合っておりますけれども、そういうふうに耐航性の標準を変えてないということがわれわれの信用の一つでもあったわけでございます。ですから、経済性を犠牲にしたということはないと存じております。また、その耐航性の標準を劣化させるということはわれわれは考えていないということでございます。
  161. 古賀繁一

    古賀参考人 いまの御質問のことで長谷川全造船中央執行委員長から造工の会長あての要請書、これは持ってこられた方が造工の専務理事と話をされまして、了承してお帰りになったそうでございます。それで、おもな点をおっしゃいましたのですが、十四次船は鉱石運搬船では一万五千トンくらいが平均トン数になっておりますけれども、二十次船では五万トンくらいになっております。だいぶ大きくなっております。三倍以上に大きくなっております。ですから重量トン当たりの鋼材所要量は大型化のために当然減るわけでございますが、八七、七〇、そんなには減っていないと、実際のことをお話ししまして了解を得たそうでございます。  それからスクラップ効率を高めるために補強材などこまかい部材には規格材を使わずに、質の劣る材料を使っているじゃないか、そういう御質問だそうでございます。全部規格材を使っておりますので、問題ありません。その他についても説明を申し上げて、よく御理解いただいたそうでございます。
  162. 佐藤美津雄

    ○佐藤(美)政府委員 「かりふおるにあ丸」の隔壁につきましては、ただいま松平参考人からお話があったとおりでございます。隔壁が多いということは、すなわち浸水、水が入ってくる場合、非常に沈みにくくするという効果を持っております。それからやはり構造の面からいっても、強さを平均して確保できるわけでございます。しかし、いまお話のありましたように、すべて同等の応力と強度を持たしてあります。それから浸水につきましても、一般のものと同じように、一区画浸水を可能ならしめるように設計されておりますので、何ら支障はない、かように考えております。
  163. 土橋一吉

    ○土橋委員 最後に、それではいま九枚だとおっしゃったのですが、これは常識的に——私どもしろうとですからよくわかりませんけれども、先ほど読み上げましたように、百六十五メートルから百八十六メートルあたりの一般貨物船については、水密隔壁は九枚以上でなければならない。ところが、「かりふおるにあ丸」は御承知のように二百十五メートル前後の船であるわけです。百八十六メートルまでで九枚以上の隔壁を持たなければならない。そうすると浮力と重さの関係で、これから考えますと十一枚あってもいいのじゃないか。それが九枚では、船の全体の構造から見ても百八十六メートルで九枚、つまり船倉が四つになるわけですね。それがこの説明によりますと、約三十メートルも伸びておる船ですから、もう二つくらい船倉があってもいいようにしろうと考えで常識では考えるわけです。そういう点で、船の構造上において非常に危険があったのではないかという点が推定できますが、その点は古賀さん、どう考えていらっしゃいますか。
  164. 松平直一

    松平参考人 私どもは、規則にもございますとおり、ここに一応きめてあります数字は標準でございます。委員会が承認すれば減らすことができるというふうに書いてございます。ですから、減らしていけないということはございませんが、一方、あまり減らしてはぐあいが悪いわけです。減らしたことに対しては、先ほど申し上げたとおり、船側方面構造部材、それから船底方面構造部材を強くしまして、強度上はそれを補っております。あとは浸水に関する区画の浸水だけでございますが、「かりふおるにあ丸」には新しい満載喫水線規則にきめております一区画可浸、これを適用しておりますから、バルクヘッドが少なくなって、タンクが大きくなりましても、その中に一ぱい水を浸水したことにしまして、安全な点を確かめてやっておるわけであります。それで九枚という数が出た、こういうことであります。
  165. 土橋一吉

    ○土橋委員 これで終わります。
  166. 受田新吉

    受田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げたいと存じます。  本日は、休憩なしの長い時間にわたりまして、海上の交通安全に対し容易ならざる熱意を示す貴重な御意見を拝聴さしていただきましたことに対しまして、参考人各位に一言お礼を申し上げたいと思います。ただいまの貴重な御意見が本委員会調査に資することがきわめて多かったことを、委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。      ————◇—————
  167. 受田新吉

    受田委員長 この際、理事補欠選任についておはかりいたします。  理事河村勝委員辞任に伴い、理事一名が欠員となっております。この補欠選任につきましては、先例によりまして委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  168. 受田新吉

    受田委員長 御異議なしと認めます。よって、河村勝君を理事に指名いたします。  次回は、五月十二日火曜日、理事会午前十時、委員会午前十時半より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時十二分散会