運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1970-04-10 第63回国会 衆議院 交通安全対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月十日(金曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 受田 新吉君    理事 加藤 六月君 理事 木部 佳昭君    理事 河野 洋平君 理事 丹羽 久章君    理事 田中 昭二君 理事 河村  勝君      稻村左近四郎君    唐沢俊二郎君       左藤  恵君    佐藤 守良君       野中 英二君    久保 三郎君       長谷部七郎君    松本 忠助君       土橋 一吉君  出席国務大臣        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房陸上交通安全         調査室長    平川 幸藏君         警察庁交通局長 久保 卓也君         運輸大臣官房審         議官      内村 信行君         運輸省海運局長 澤  雄次君         運輸省船舶局長 佐藤美津雄君         海上保安庁長官 河君 一郎君  委員外出席者         法務省民事局参         事官      宮脇 幸彦君         法務省人権擁護         局総務課長   森   保君         文部省体育局審         議官      西村 勝巳君     ————————————— 本日の会議に付した案件  交通安全対策基本法案内閣提出第八八号)  交通安全基本法案久保三郎君外四名提出、衆  法第一〇号)      ————◇—————
  2. 受田新吉

    ○受田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる交通安全対策基本法案及び久保三郎君外四名提出にかかる交通安全基本法案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。松本忠助君。
  3. 松本忠助

    松本(忠)委員 総理府総務長官にお伺いするわけでございますが、去る四月六日から恒例の春の全国交通安全運動実施されておるわけでありますが、例年のように、実施期間中には毎日特定事項について重点的にこれを実施する、一面これはマンネリ化しているんじゃなかろうかというようなこともありますけれども、何はさておき、一昨日の八日には車両完全整備自動車損害賠償責任保険加入、これを全国的にやる、こういう予定でございました。まあやったことと思いますが、特に自賠責の問題につきましては、この加入の問題を具体的にどのようにお進めになったか、その指導要領等について具体的に述べていただきたい。
  4. 山中貞則

    山中国務大臣 マンネリズムに堕しているのではないかという御批判もありましたので、実施のやり方については、そうそう新奇をねらってやるようなものもあまりありませんけれども実施の時期につきまして、新入学児童園児等の初めて家の外に出る子供たち、しかも自動車に対して一番弱い、事故率の多い幼児あるいは新入学児童たちをまず交通安全旬間の中で守っていく、その守られた中で初めて家庭から外に出ていく子供たちの一歩が始まるということがやはりいいのではないかと考えまして、ことしからマンネリズムを打破して、そういう安全旬間というものを一カ月繰り上げたということにそのねらいがあります。  さらにこまかな、そのような点検その他の具体的な問題につきましては、事務当局より答弁させます。
  5. 平川幸藏

    平川政府委員 先生の御指摘のとおり、今回の交通安全旬間におきましては、その日その日に重点項目をきめまして施行しております。ただいま御質問自賠責保険強制加入の問題でございますが、これは運輸省陸運事務所中心になりましてチェックいたします。御承知のように、自賠責保険強制保険でございますから、車検と同時に必ず加入しなければならぬということになっておりますから、自動車をチェックいたしまして、運転免許証等の提示を求めると同時に、自賠責保険に入りましたその契約書等を一々チェックいたしまして、加入してない者につきましては加入することを助言する、こういう方法をとってチェックしております。  なお詳しいことにつきましては、これは運輸省が直接実施しておりますので、運輸省からお答えいただきたいと思います。
  6. 松本忠助

    松本(忠)委員 いま調査室長の言われましたことは、ふだんやっていることであって、何も特別に取り上げて交通安全週間の中でやらなければならない問題でもないと思うのですね。当然やらなければならないことだと思うのです。特にこうやって八日の日に取り上げたということは、何か意図があるのじゃなかろうか。先般も自賠責の問題につきましては、その改正が衆議院のほうは通っております。そのような問題から考えて、特に今回ここに加えたということは、何か意図するところがあったのではなかろうかと思うわけでありますが、いまの御答弁によりますと、ほとんどあたりまえのことをあたりまえにやるにすぎない。これじゃやっぱりマンネリじゃないかと思うのです。いままでのように、要するに二、三年前はそういう問題も、一週間あるいは十日間というものについて特別きめなかった。しかしここ一、二年のところは、特別に実施するものを毎日きめるようにしました。しかし何らそこのところに実効があがっていない。ここは特に総務長官の言われましたように、新入学児童に対して考えをしなければならないというところから日を繰り上げた。それでは単なるマンネリの打破にはならぬと私は思うのですね。もう少しこの交通安全運動に対して根本的にメスを入れる時期がきているのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでありますが、きょうは時間も限られておりますし、このあと実は運輸委員会のほうでも質問の時間がちょうど十一時からになっておりますので、先を急いでいただきますので、その辺でやめておきますが、特にこの問題については、先般、自賠責の問題が衆議院を通過しておりますし、いろいろまだまだ未解決の問題もありますので、一そうこの問題についての研究をなさっていただきたいと思うわけでございます。  そこで、長官に伺いたいわけでありますが、基本法でございますが、法案の第四章「交通の安全に関する基本的施策」の中の「(交通の安全に関する知識普及等)」第三十条のところでありますが、ここで「国は、交通の安全に関する知識普及及び交通安全思想の高揚を図るため、交通の安全に関する教育振興」をはかる、このように掲げてございます。そこで、この交通安全教育振興という問題につきましては、以前から私もしばしば当委員会においても発言をしております。交通事故防止の大きなきめ手である、こう考えるわけでございますが、そこで今回ここに条項は盛られますが、これを具体的にどのように展開しようとしているのか、これが伺いたい点であります。私は、交通安全教育は総合的に、そしてまた統一的にカリキュラムをつくってこれを実施すべきものと考えておりますが、国の施策としてどのように交通安全教育を進めていかれるおつもりがあるのか、具体的に長官の御答弁をお願いいたします。
  7. 山中貞則

    山中国務大臣 学習指導要領等につきましても、このようなものを具体的に取り入れていくような研究をいましておりますが、具体的には文部省で、この趣旨を受けてこれまでもやってまいりましたし、これからも一そう統一的にやってまいりますので、まず文部省説明をさせていただきたいと思います。
  8. 西村勝巳

    西村説明員 交通安全教育を徹底いたしますために、学校におきましては、学校の全体活動を通じてそれぞれ各教科等連携を保ちながら進めるという立場でやってまいりました。たとえば社会科におきましては、交通事故状況とか、交通標識を覚えさせるとか、体育につきましては、交通事故原因とか、その防止の方策を教えるとか、道徳におきましては、交通規則を守る、人命を尊重するというような、いろいろなそれぞれの立場交通安全教育実施してきているわけでございますけれども、その効果をあげるためには、何といっても実践によってこれを身につける、態度、習慣を身につけるということが非常に大事だと思います。そういった意味で、このしかたといたしましては、反復し繰り返し同じことを継続して、何度も指導していくということが必要であると思います。そういった意味で、学校におきましては、ひとつ計画的に時間をとって、そういった実地訓練をやるようにする必要があるというように指導をいたしまして、従来からもそういった指導をしておりますのですが、そういった指導十分徹底をするためには、いま長官のおっしゃいましたように、学習指導要領の中で、教育内容としてこれを明確に位置づけるということが必要であるという観点に立ちまして、いま小学校は新しい学習指導要領昭和四十六年、中学校は四十七年から実施する予定でございますが、そのカリキュラムの中に特別活動というのがございます。その中で安全教育、特に交通安全の問題をとらえて指導するというようなことを明確に位置づけまして、しかしその間事実上いろいろ指導ができるわけでございますので、その年間指導計画なるもののモデルになるような参考資料を非常に具体的につくりまして、これを各教育委員会ないし学校先生方講習会に使いまして、指導をいまからも徹底するようにしてもらいたいということで現在進めておるわけでございます。
  9. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいま文部省が申しましたような、学校教育そのものの場においていま言ったようなことを具体化しつつあるようでありますが、ここに書いてあります教育というものは、単に学校教育の場だけであってはならないと私は思いまして、やはり家庭のしつけ、あるいは周辺地域社会全部が自動車に対して弱い子供たちに対するあたたかい配慮が必要である、それらが広義の教育というものであろうと考えます。  そこで、明日交対本部幹事会を開く予定にいたしておりますが、そこに私の考え議題としてかけることにいたしております。それを本日御披露申し上げておきますと、全国の二十万以上の都市並びに県庁所在地、これは通過車両が非常に多いと思われますので、二十万以下の人口でも対象としたいと思いますが、これらを対象にいたしまして、小学校区もしくは中学校区、これは今後の検討にゆだねますけれども義務教育学校ごとに、さしあたり日曜と祭日車両全面禁止道路を相当長い距離にわたって設定をする。一本ないし二本です。こういうことをやった場合、これはあまり予算も伴いませんし、警察の方々に少しお手間をかけますが、極端に言うと、入り口になわを張って、ダンボールに、通行禁止、何々警察署と書いただけでも、大体そのなわを突き破って入る自動車はいないと思います。そうすると、全国のそのような都市における小中学校において、一本ないし二本の子供たち専用遊び場道路あまり金をかけずにたくさん出現することになるのではないかと思います。大体、日曜だから、祭日だから外に行って遊びなさい、家の中にばかりおっちゃいけませんという子供たちに対する親の普通の常識が、いまは逆に、外に出てはいけませんということに追い込まれつつある社会というものは、私は異常だと思いますので、そういう構想を示しておるわけでありますが、これはしかし、一つ道路だけを年じゅう指定いたしますと、その道路周辺に住んでおる人たちが日曜祭日になるとうるさくてどうにもしようがないという苦情も必ず出ると思いますので、やりようでありますが、これを何クールかに分けまして、大体次々と道路の指定を変えていくというような配慮等もさせながら、あまり極端に交通の支障があるような道路もいけませんので、住宅街の、日曜にはあまり営業車等の通らないような道路、そういうところを指定していけるかどうか、明日の幹事会にかけて決定して表面に出してまいりたいと思います。  きょうは教育質問がございましたので、いい機会でございますので、その前日でございますけれども委員会の場において私の考えの具体的な問題を一つだけ御披露させていただきました。
  10. 松本忠助

    松本(忠)委員 長官にはたいへんけっこうなお話を伺いまして、私も喜びに思うわけでありますけれども、この問題はもうすでにいままでも何回か取り上げられております。当委員会でも問題になったことがあります。そしてまた江東区におきましても、現実にこの問題をやって成功しております。これは警視庁でやっております。そして地元民から喜ばれたことがございます。私どももそれを現実に見に参りまして、これならいけるな、こう思っております。これを長官全国的にやっていただけばたいへんけっこうなことじゃないかと思うのであります。なおまた、これに付随いたしまして、神宮外苑でも日曜日に子供たちのためにサイクリング広場として開放する、こういうこともやって好評を博しております。非常にけっこうなことだと思います。おとなたちがなわを張って、単にダンボールのあき箱でも何でもいいですが、そういったものにいま長官の言われるように書いて、それを下げただけでおとなが協力してくれれば、たいへんけっこうだと思うのでありますけれども、そういう点についての特段指導をまた町会あるいは交通安全協会等にもお願いして、何とかこれを大いにひとつやっていただきたい、こう思うわけであります。それについて、都道府県知事など、それからまた地方公安関係者とも十分協議してやってもらわなければならぬと思いますけれども、これらの点について、具体的にどのようになさいますか。
  11. 山中貞則

    山中国務大臣 これはいまの陸上交通本部というところにおきまして、警察庁も建設省もあらゆる役所を含めまして、およそ交通安全に関係のある役所は全部出ていただいて相談しておりますから、いままでに指示いたしましたことも的確にその旨を受けて地方に流れております。その実施状況等も逐一報告をとれるようになっておりますので、その点について遺憾のないようにしたいと考えます。
  12. 松本忠助

    松本(忠)委員 先ほど文部省審議官西村さんからお話がございましたが、四十六年とか四十七年から実施しようというお考えでございますね。私はこの点はちょっとおそ過ぎるのじゃないかと思うわけです。やることに越したことはありませんけれども、いま四十五年ですね。四十六年、四十七年ということになりますと、来年、再来年のことであります。来年のことを言うと鬼が笑うという世の中、スピード時代。それなのに、四十六年、四十七年にならなければそれが実施されない。そうしてその間に事故が全然ふえないならけっこうでありますけれども、日を追って事故はふえるにきまっております。そういうことであれば、ちょっとどうもなまぬる過ぎるのじゃなかろうかと私は思うのであります。そこで、これはまた文部省だけの、学校教育だけの問題ではございませんし、全般的な問題でございますので、総務長官にひとつ特段にお骨折りをいただいて、四十六年とか四十七年とかいうことではなくて、もっと積極的にすみやかにそれを実施して、そしてまずいところがあったらそれは逐次変えていく、それでよろしいと私は思うのです。何でもかんでも完全無欠に法律をつくり上げてそれから実施するということよりも、むしろいま長官が言われましたように、積極的にこういう方法を提案してみる、そして、やって、まずかったらそれは直ちにやめて、逐次いい方向に持っていくように進んでもらいたいと思うわけであります。  そこで、橋本運輸大臣が一月二十七日の閣議におきまして、これは新聞に載っておりますので、そのまま借りて読みますと、「いまのような運転者教育では、交通事故の絶滅は望めない。この春の新学期から交通教育交通道徳交通公害の三つを内容とする教科学校教育一般教養のなかに繰り入れ、人格形成をはかるべきだ」と運転者教育案というものを提案された。これは御承知でございますか。そこで総理関係閣僚に対して積極的に協力するよう求め、これに対して坂田文部大臣文部省内で具体的にこれを検討する。政府交通安全対策本部本部長である総務長官がいまそこにいられるわけでありますが、対策本部におきましても、来月から関係閣僚協議会でこれらの対策を早急にまとめる。これは一月のことでございますが、これらの点につきましてその後具体的にどのような方向を示しているか、またやられたことがあるのかないのか。総務長官文部省からその辺についてのお答えをいただきたいと思います。
  13. 山中貞則

    山中国務大臣 これは閣議における正式な発言、決定というものではございませんで、就任した直後、橋本運輸大臣別名アイデア大臣といわれまして、なかなか発想よろしい発言が多いわけです。そういうことで、君が担当になったのだろう、ひとつ大いにやろうじゃないかということでそのような提案がありまして、そういうような応答があったことは事実であります。ただ、内容を詰めてから閣僚協を開きませんと、ただ相談ごとのために閣僚を集めるというのはなかなか困難なことでありますし、例もありません。いままでも学校教育の場で行なわれておりますことに文部大臣がさらにそれに意を注ぐということで、いまは具体的な進行過程であります。  さらに、先ほどの四十六年から七年ではおそ過ぎるというのは、学習指導要領改定期というものを機会にとらえて具体的な科目の中に入れていきましょうということでありまして、それが学校教育の場において交通安全教育はやりませんということにはつながらないわけでありまして、予算その他もちゃんとついて教育をしておるわけでありますから、橋本運輸大臣のその発言は、決してその場限りの思いつきの発言ではありませんし、私ども全部頭を痛めておる問題でありますから、学校教育の場も含めまして、全般的な施策の展開がなされて、それの実効をあげつつある段階で閣僚協等を開いて、具体的な施策についての相談はするつもりでありますが、その問題だけでアイデアについて相談閣僚協にゆだねるのは、ちょっと担当大臣の私としても見識のない話でありますので、まだ閣僚協までは持ち込んでおりません。
  14. 西村勝巳

    西村説明員 学習指導要領改定の問題につきましては、いま総務長官から御説明のあったとおりでございまして、これはすべての教科についての改定が四十六年ないし四十七年、大改定でございまして、その中に安全指導を加えるという実施時期を申し上げたわけでございます。その間経過措置がございまして、実行できるものはいまからどしどし実行するというようなことで進めているわけでございまして、決してそれを待って実施するというものではございません。現在でもできるものからどんどん実施するということで進めているわけでございます。  なお、運転者に対する教育でございますけれども一つの試みといたしまして、高等学校等を卒業して、将来職業につくために運転免許の資格を取りたいという希望者がかなり多いわけでございます。そういうものに対しましては、学校のほうと自動車教習所連携をとりまして、希望者を集めて、便宜をはかるというような措置を現在とっております。  それから、再び学習指導要領の問題に移りますと、運転者教育といたしまして、いまちょうど高等学校教育課程改定の作業を進めておりますが、その中で指導内容といたしまして、交通事故防止対策というようなものを加えますし、さらに運転の生理と運転者の適性というような問題について指導するということで、いまその具体的な内容をどうするかという点の検討をしておるところでございます。
  15. 松本忠助

    松本(忠)委員 学習指導要領の中にいろいろと盛り込まれることはけっこうでございますが、現実の問題として、私は一日も早いほうがいいと思うのです。現在の文部省義務教育課程におけるところの交通安全教育、この必要性については、いまさらちょうちょうする必要はないと思うのであります。  そこで、現在の二年生の教科書であります。二年生の社会科教科書の中ではどれくらい取り上げられているかといいますと、「けいさつとしようぼう」という欄がございますが、ここで取り上げられているのは、おまわりさんの動きを通じまして交通整理、こういうところから取り上げているわけであります。これは二年生の社会科でございます。そこで取り上げてあることはたいへんけっこうでありますが、その使っているところはわずかに四ページにすぎないわけであります。  三年生になりますと、社会科におきまして「わたしたちのくらしと交通」という表題で約一五ページ使っております。しかしこれも、各種の交通機関、その状態とそれから道路計画、こういうものを教えるのみであって、交通安全教育とは言いがたいと思うのです。では一体どこで交通安全教育を教えるのかということになりますと、三年の後期の部分に入りまして初めて「交通安全」という表題で出てまいります。そこでは六ページばかり使いまして、いろいろと書いてございます。そしてまた、一番簡単な街路標識、こういうものも出ておるわけでございますけれども、これもわずかに六ページということであって、このような交通安全教育に対して、おそまつと言ってはことばが過ぎるかもしれませんけれども、あまり時間もさいていないように思われるわけであります。  なおまた、四十二年三月に出ましたところの文部省体育局長がまとめました「交通安全指導の手びき」、これがございます。この中におきましても、はしなくも「まえがき」の中でこのようなことがいわれているわけでございます。前のところをちょっと省きますが「しかしながら文部省として、従来交通安全指導について具体的にまとまりのある示し方をしていなかったので、」こういうふうなことなんです。確かにまとまりのある示し方というものはほんとうにしていなかったと思うのです。そういうところから今後それに対しても積極的に取り組むという姿勢を示されていることはけっこうなんでありますけれども、この手引きの中でも、小学校の低学年、それから中等、高等、このように分けまして、いろいろ具体的に書かれてはおります。しかし、その時間について特に定めがないように私は思うわけでございます。手引きの三ページにも「交通安全に関する内容を系統的に集中的に指導するためには、とくに時間を設けて実施する必要がある。」といわれている程度であって、何時間にせよというようなことも書いてない。結局この手引きによりますと、指導計画の作成につきましても、その「内容がじゅうぶんに実施できるよう指導の時間を確保し、年間の一定時期に集中することなく、目標を達成するための指導内容を月別に配列する必要がある。」こういうことをいっている程度でありまして、何時間やれというような規定がないように私ども拝見したわけであります。そういたしますと、学校その他の熱意といいますかくふうといいますか、そういうものによりまして、これが効果をあげられるようになるのじゃなかろうか。そこで、その時間あるいは学年別にもっと具体的に進めるべきではないか、こう思うわけでございますが、文部省としてはこの点についてどのようにお考えであるか、伺っておきたい。
  16. 西村勝巳

    西村説明員 ただいま御指摘のございましたのは、社会科教科書中心に御指摘があったかと思うのでございますけれども交通事故そのものの問題につきましては、社会科のように交通問題一般というような知識指導をしているということではなしに、むしろ小学校では体育中学校になりますと保健体育教科書で、かなり具体的にこの点を取り上げているわけでございます。その中学校保健体育を簡単に申し上げますと、交通事故の現状とその原因の理解をさせる。すなわちスピード違反をするとか、わき見運転をするとか、徐行の違反をするとか、車の直前直後の横断、飛び出しがあぶないとか、そういったような原因をいろいろ教えまして、その防止をするためにはどうしたらよろしいかということで、たとえば疲労をしたり、睡眠不足であったり、知識が不足したり、あわてたりするというような、いろいろな心理的な要素、そういったような原因を分析いたしまして、これを指導する。さらに応急措置につきましても指導するというようなことになっているわけであります。しかし、これは教科の中における取り扱いでございまして、ただいま御指摘がありましたとおり、一定の時間を設けてということが一つの眼目である、その時間の中で実地訓練をするということが最大の効果をあげるゆえんではなかろうかという感じがするわけでございます。ただ、その時間を設けるということが、数学や国語のような教科の時間のように画一的に設けるということはたいへんむずかしゅうございますし、地域の事情によって違いがございますので、そこで、その手引きの中では時間は示してございませんが、大体において現在指導しております時間は、月に一回程度集団的に、特に学校教育として全校的に指導するというようなことをやっておりまして、大体年間十二、三時間程度指導時間を毎月一回ずつ全校的に実施するという学校が大部分でございます。そこで実際の道路の横断のしかた、踏切の渡り方、信号機の見方、自転車の乗り方、そういったような実地訓練がなされているわけでございまして、その内容自体、小、中それぞれその発達段階におきまして違いがありますので、これをさらに研究をして、効果があがるようなカリキュラムにするということが今後の課題であろう。それをいまも実施しておりますが、協力者を集めていろいろさらにこの手引きのほうの改定を、もう少し具体例を入れたほうがいいのじゃないかというような観点で、改定作業を急いでおるところでございます。
  17. 松本忠助

    松本(忠)委員 就学児童の問題については、文部省がそこまで積極的にかつ熱心にやっていただければ、私どもも大いに意を強うするわけでございますが、なお一そうお願いをいたしたいと思うわけでございます  そこで、問題は未就学児童でございます。  交通局長に伺いたいわけでございますが、未就学の児童が事故を受ける、全体の交通事故の中で幼児の事故、これはどれくらいの割合になっているか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  18. 久保卓也

    久保政府委員 子供の事故の中でも、小学校以前の幼児の事故が一番多いわけであります。年齢的に申しますと、満で言えば四歳、五歳、六歳というふうに、四歳が一番高くて、それから順次低くなっていくということで、実を申しますと、小学校でもやはり一年生を対象にして教育をする必要があろうかと思いますが、未就学の子供の事故は、千二百台ぐらいですから、一万六千の約七、八%ぐらいに当たろうかと思います。
  19. 松本忠助

    松本(忠)委員 毎日の新聞を見ましても、子供の交通事故、これはもう連日出ております。世の中の多くのおかあさん方、おとうさん方がほんとうに悲しんでおられる悲痛なその姿が、紙面にありありとあるわけでありまして、私ども、ほんとうにお気の毒にたえないわけでございます。私もかつて運送事業に従事しておりましたときに、会社の車で幼児をひき殺しました。会社を代表しましておわびに伺った際に、何も要らないからもとの体にして返してくれ、こう言われますと、何とももう言いようがない、ほんとうに困り果てたことがございます。そこで、幼児に対する交通安全教育については、どのような取り組みをしているのか。まず、これはどこが主体となって行なっているのか。学校教育のほうは文部省と、受け持ちの分野がきまっておるわけでございますが、未就学の児童、これに対しては、どのような方法をもってやっておられるのか、長官に伺いたい。
  20. 山中貞則

    山中国務大臣 先ほども少し触れましたが、家庭のしつけなり、ことにおかあさん方の手によってなるべくそのような事故を少なくしたい。もちろん第一次的には、ドライバーの諸君が、これは子供の飛び出しそうなところだと思ったら、スピードをゆるめたり、いろいろなことをしなければならない、モラルの面もございますが、そのような年の少ない幼児にいくほど、そういうものがわからないわけですから、やはり家庭のしつけがたいへん大切であろうと思います。いま言ったような痛ましい事故がふえておりますので、幸い民間の団体等におきましても、ことに、母親の人たち中心になりまして、東京あたりでも、そういう会合があるようでございまして、積極的にそれらのおかあさま方たちが、自分たちの手で、人の子も自分の子供も守っていくのだ、あるいはあぶないよという一言もかけてやるということ等も言われております。そういうふうにみんなが自覚して、自分の子供ばかりでなく、買い物の途中でよちよち歩きの子供を見かけたら、どこのだれの子供かわからなくても、手を添えてやるとか、声をかけてやるとかいう社会的な連帯的な問題であろうと考えております。そのようなことにつきましては、総理府といたしまして、それらの啓蒙、宣伝なり、運動の援助なり、そういうものには、いままでも努力を惜しんでおりませんし、これはもうみんなの力でやらなければならぬことだと思っております。
  21. 松本忠助

    松本(忠)委員 私も全く同感であります。幼児の交通安全教育を開始すべき時期、年齢といいますか、そういうものは、早ければ早いほどよいように思うわけでございます。幼い子供には、よい手本を示して、行動を通じて教育訓練をするならば、教わったことはたやすく確実に身につけるもので、このような教育と訓練が、ただ単にこれらの幼児を悲惨な交通事故から守るばかりでなくて、このような教育、訓練によって、これらの幼児が、安全行動というものがいかなるものであるかというようなものをしっかりと身につけることになると思いますので、ぜひともこれは総理府を中心として大いにやっていただきたいと思うわけであります。  そこで、私、最近機会を得まして海外旅行をいたしました。特にソビエトにおきます幼児の交通安全教育の一端を見る機会を得ました。その資料をいただいてまいりました。これによりますと、非常に向こうでは熱心にやっているわけであります。特に未就学児童、最も幼い者に対して、こういうわかりやすい、言うならば自分たちになじみの深い動物の絵、こういうものを活用してつくられている。これを国で配布している。時間がございませんので、また機会を見てゆっくりと見ていただきたいと思いますが、こういうものを国で配布して、そして大いに啓蒙に当たっている。それからもう少し上のほうになりますと、これは現実に、ソビエトでございますから、スケートであるとかあるいはスキーであるとか、そういうものを活用してやっている。子供がトラックの後にかぎをひっかけて走っておる、そういう危険な絵が出ておりまして、それがどうなるか、次々とこれが展開されて、非常に啓蒙に役立っている、こういうものが非常に多量の部数配布されてやっておるわけでございます。こういう点を見まして、これらを通じてソビエトのおかあさん方が、熱心に子供の安全教育に取り組んでいる姿を見まして、日本もこれはぜひともやらなければいかぬのではなかろうか。こういう平易な、取り組みやすい問題について、どうか長官の在任中に大いにファイトを発揮して積極的にやっていただきたい、こう思うわけでございますが、いかがでございますか。
  22. 山中貞則

    山中国務大臣 たいへん参考になりそうでございますので、いずれ見せていただきたいと思いますが、ソ連のように比較的人口が集中してなくて、道路が比較的広くて、車が比較的少ないという感じの国でそのような熱心な幼児からの教育が行なわれているということは、他山の石とするに十分であると思いますので、私のほうでも、幸い総理府広報室というものがありますので、そういうような広報手段に国家として乗り出さなければならない。これは総理府ばかりではなくて、各省の広報も引き受けておりますので、いまのような点を十分検討いたしまして、役に立つようなものはどしどし採用していきたいと思います。
  23. 松本忠助

    松本(忠)委員 それから次に、二十九条の二項のほうの問題でありますが、「国は、陸上交通の安全に関し、住宅地、商店街等について前項に規定する措置を講ずるに当たっては、特に歩行者の保護が図られるように配慮するものとする。」こうございます。この歩行者の保護という面について、最近、歩行者の過保護、こういう話が出てきておりますが、これらの点については、どのようにやっていかれるつもりか、お答え願いたい。
  24. 山中貞則

    山中国務大臣 過保護という意味がちょっとわかりませんが、車に乗っておりまして、青信号でもなく横断歩道でもないのに渡りながら、はねるならはねてみろという顔をしている人にぶっつかることもございますが、そういうことかもしれませんが、私どもは、やはり安全対策は過保護に傾いているきらいがあるくらい人命を守るという徹底したものでなければ——そこに運転者から見て、あまりにも歩行者を優先し過ぎる、過保護過ぎるという点があるくらいで、それでいいところじゃないかと思っておりますが、どういう意味指摘をされたのか、ちょっとわかりませんけれども、そういう気持ちでおります。
  25. 松本忠助

    松本(忠)委員 運転者諸君のことばをかりますと、確かに人命尊重という立場から歩行者の保護をはからなければならないことは当然でありますけれども、たまたま歩行者の側が当然のことのような顔をして、ゆうゆうと横断歩道を歩く、あるいはまた横断歩道をはずれたところを歩く、こういう問題から、歩行者のほうの保護も、過保護過ぎないように適正な指導をはかるべきではないか、こう思うわけでございますが、この「住宅地、商店街等について前項に規定する措置を講ずるに当たっては、特に歩行者の保護」このように歩行者保護ということを大きく打ち出している点については、いまの長官答弁で私も了解するわけでありますけれども、一面、運転者のほうから過保護という声も上がっているので、こういう点について一そうの研究が必要ではなかろうか、こう思うわけであります。  それから、法務省の方においでいただいているわけでございますが、基本法の三十五条に「被害者の行なう損害賠償の請求についての援助等必要な措置を講ずるものとする。」このようにございますが、「請求についての援助等必要な措置」これは、どんなものを具体的にいうのか、お示しを願いたい。
  26. 宮脇幸彦

    ○宮脇説明員 申しわけございませんけれども、この法案をこの席で初めて拝見いたしましたので、私どものほうで具体的にどのような措置を講ずるかということは、残念ながら本日お答えできませんことをお許し願いたいと思います。  ところで、民事訴訟法の中には訴訟上の救助という制度がございまして、貧困者が勝訴の見込みがございます場合には、しかるべき訴訟上の費用を免除するという措置があるわけでございます。この救助を受けました場合には、弁護人に対する報酬の支払いも当然猶予されるというわけでございます。しかしながら、この場合におきましても、弁護士は所要の費用を要しますので、弁護士に対する費用の面での援助をいたさなければならないということに相なります。  この面におきましては、私のほうの所管は人権擁護局で取り扱っておりますけれども、法律扶助制度が次第に完備しておりまして、現に、すでに予算として七千万円ずつ年間の費用が計上されております。  これは人権擁護局の係官のほうから実情については詳細に御説明願うほうがよろしいかと思いますけれども、その七千万円の予算は、弁護士会が主体として運用しておりますところの法律扶助協会のほうに流れまして、その法律扶助協会のほうで弁護士費用に充てるという運用でございます。  これは一つの基金として完備しておるとはまだ申せませんけれども、たとえば被害者が勝訴いたしますと、必ず損害賠償請求の中にその弁護士費用が上積みされるというのがすでに確定した実務の扱いでございまして、取りました場合には基金の中にまた還流してまいるわけでございます。したがいまして、七千万円の金は出っぱなしというわけではないのでございまして、次第にそういう法律扶助事業が完備しつつあるというところで、大体のところ仰せの施策は全うされつつあるというふうに私どもは理解いたしますけれども、なお先生方の御後援によりましてこの事業が一そう拡充されるならば、被害者の救済もより一そう完全になるというふうに私は考える次第でございます。
  27. 受田新吉

    ○受田委員長 いまの答弁は目標がちょっとズレているので……。
  28. 平川幸藏

    平川政府委員 ただいまの御答弁の中で、この基本法につきましての御理解の点につきまして若干連絡不十分なような発言がございましたが、これはそういう事実はございません。私のほうで十分連絡してあるわけでございます。その点まず御説明いたします。(「本人は知らない、初めて見ましたと言っているのですよ」と呼ぶ者あり)  この問題につきましては、事前に質問通告がございまして、政府委員室から……(松本(忠)委員「いまの法務省の答弁について、何も関係ない、知らないということはおかしいじゃないか」と呼ぶ)これは個人の立場と法務省の立場と混同しておられるのじゃないか……。
  29. 松本忠助

    松本(忠)委員 総務長官からお答え願ったほうがいい。  法務省の方の答弁の中にまことにどうも不見識きわまりないことばがあったわけです。私は知らぬ、初めてここへ来て法文を見るんだ、こういうことではまことにどうも困ると思うのです。少なくともこれらの交通基本法の問題に関しては、世をあげての、三年前からの大きな問題でありますし、この問題を法務省の当局が何も相談も受けてない、知らないということでは困ると思うのです。こういう点について長官からひとつお答えを願いたい。
  30. 山中貞則

    山中国務大臣 そのようなふざけたことはあり得ないわけでありまして、法律をつくるのには、関係する各省が全部参加をいたしまして相談をしてつくるわけでございますから、そのいきさつについては、私のところの室長の説明もまずいです。だから、そのいきさつを具体的に説明させます。
  31. 松本忠助

    松本(忠)委員 時間もありませんので、大事なことですけれども、簡単にひとつ。
  32. 平川幸藏

    平川政府委員 この基本法の立案につきましては、関係省庁は多岐にわたっておりますが、各省庁につきましてすべて協議済みでございます。
  33. 宮脇幸彦

    ○宮脇説明員 一応私から説明さしていただきます。私の答えたことが不穏当な点は重々おわび申し上げます。  いま人権擁護局の係官に伺いましたところ、私の省の窓口が人権擁護局でありまして、どうも内部的な連絡の不徹底のようでございますから、その点おわび申し上げます。
  34. 平川幸藏

    平川政府委員 私から内容を簡単に御説明申し上げます。  財団法人法律扶助協会というものがございまして、これに対しまして裁判費用の貸し付けをしておるわけでございます。件数は、四十三年度の例をとりますと、全件数は千九百五十二件でございますが、うち交通事件につきましては千六十一件でございまして、全体の五四%でございます。  貸し付けの条件といたしましては、まず資力がないということ、それから訴訟事件について勝訴の見込みがあるということでございます。貸し付けの内容は、条件といたしましては、利子がない、無利子でございます。それから貸し付け額は、標準額を申し上げますと、まず訴訟費用における弁護士の手数料、それから弁護士の謝金、それから御承知のように、訴訟をします場合は保証金を積み立てます、その保証金の貸し付け、合計いたしまして大体二十万円前後のものを貸し付けていく、こういうことになっております。実際はこれに数倍する場合もございますが、大体の貸し付けの基準はそのとおりでございます。  なお、協会に対する国の補助でございますが、事務費とか法律扶助費あるいは広報活動費等がございますが、その中における法律扶助費に対しまして国が補助をしておる、補助の財源は自賠責保険と法務省から出しておるわけでございまして、四十五年度を申し上げますと、法務省から七千万、運輸省から千五百万、合計八千五百万円の援助をしておるわけであります。以上でございます。
  35. 松本忠助

    松本(忠)委員 最後でございますが、交通事故の被害者の賠償金額の示談の問題をめぐりまして、なかなかその決定が長引きまして、そこで民事裁判に持ち込むというケースも多くなります。そこで私、一つ提案でございますが、刑事裁判の場合に、被告人の要求によりまして国選の弁護人がつけられる制度がございます。交通事故の被害者が裁判に持ち込みたくても、費用がないために裁判に持ち込めない、こういう人がかなりあるように聞いております。  そこで、交通事故に限って、被害者の要求したときには国が国選の弁護人をつける制度、こういうものが必要であろうかと思いますけれども、法務省の考え方はどうであるか、これは簡単にお話を承っておきたい。
  36. 宮脇幸彦

    ○宮脇説明員 御承知のことと思いますが、刑事訴訟におきまして国選弁護人をつけますのは、いわゆる被告人の防御権を確保するためでございます。と申しますのも、警察あるいは検察庁におきまして十分捜査の上起訴された被告人といたしましては、一人の手であるいは一人の口で自己の権利、利益を擁護するということは期待すべくもないからでございます。したがいまして、貧困その他の事由によりまして弁護人を国で選任してやるという制度もございますし、また重い犯罪につきましては必要的に国選弁護人をつけてやらなければならないということになっておるのでございます。それに反しまして、民事訴訟法は、これはたてまえ論でございますけれども、原告、被告が一応対等であるというたてまえをとらざるを得ないのであります。  ただ交通事故の被害者のように、このたてまえ論どおりにいかない場合にそれではどうするか、というのがおそらく先生の御質問の趣旨かと存じますけれども、その点は、たてまえをくずすということはやはり非常に困難でございます。しかも弱い者が自己を弁護するという弁護人制度ともなじみませんので、先ほど申し上げましたような訴訟上の救助、それからさらに、それを補充いたしますところの法律扶助事業によりまして、ほぼ先生の仰せのような目的は達し得るというふうに私ども考えております。
  37. 松本忠助

    松本(忠)委員 もう一問でありますが、交通事故の被害者の救済問題について、事故の補償の問題のほかに、いわゆるその被害者の後遺症、こうなった者が社会復帰の問題、これがあると思うわけでありますが、この基本法の中で、社会復帰に必要な施策が当然考えられなければならないと思いますが、それはどこの条項に盛られておりますか。
  38. 平川幸藏

    平川政府委員 お答えいたします。いわゆる交通事故被害者が救急的な措置を受けまして、それから一応社会に復帰する……。
  39. 松本忠助

    松本(忠)委員 どこの条項に盛られてあるかということです。
  40. 平川幸藏

    平川政府委員 条項につきましては、盛られておりません。
  41. 松本忠助

    松本(忠)委員 条項に盛られておらぬというのですが、総務長官、これはどうでしょうか。この社会復帰の問題は重要な問題であろうと思うのであります。こういう問題はやはりこの中に盛られてしかるべきではないかと私は思うのでありますが、長官のお考えを聞きたい。
  42. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、リハビリテーションの問題について法律で規定していなくていいんだ、あるいは規定してはいけないんだとは思っておりません。思っておりませんが、この基本法で定めまする場合に、事故の態様等によりまして、救急のあとの社会復帰に対しましては千差万別であろうと思うのです。そこで、これを具体的に、厚生省等のそういう対象者に対する措置とか、いろいろありましょうけれども基本法社会復帰というところまで書くのはどうだろうかと考えまして、その千差万別の態様を一律にリハビリテーションに対する規定というもので挿入いたしておりませんが、この点は挿入しないことがいいというつもりはございません。
  43. 松本忠助

    松本(忠)委員 了解しました。それでは、この問題についても一段とひとつお考えを十分に練られて、社会復帰、リハビリテーションについての政府施策を何らかの形で実行にあらわしていただくようにひとつ切望しておきます。  以上で質問を終わります。
  44. 受田新吉

    ○受田委員長 丹羽久章君。
  45. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 お許しを得ましたので、三年来引き続いて十分な審議が行なわれてまいりましたけれども、さらに私は四点の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  私が申し上げるまでもなく、この交通安全問題につきましては、日本の国民は交通地獄だと言い、さらに世界の人々もいかにして交通事故を防いでいくかということをひたすら研究せられておりますが、日本におきましても、政府中心になり、そしてただいまこれが基本的に成立をしていこうというときであります。一日も早く私はこの問題を解決して、事故を少なくしていきたいという念願に燃えている一人でありまするが、四十三年、四十四年の事故件数を見ましても、非常にふえておるわけであります。長官は特に御勉強していらっしゃいますので御存じかと思いますが、ここで記録を申し上げますると、四十三年は六十三万五千件という大きな数字をあげております。さらにこのためになくなられた方が一万四千二百五十六人、しかも負傷者は八十二万八千七十一人という。負傷をせられ、社会復帰のでき得ない方もあろうかと思っております。さらに四十四年という昨年を顧みますと、驚くなかれ七十二万八百八十件という件数にのぼっておるわけであります。そして約二千人ふえて一万六千二百五十七人という大きな数字で、この世からなくなっております。さらにこれに対しての負傷者は九十六万七千人という多数にのぼっております。そういう一つのデーターからいきましても、私は今後たいへんなまだ伸び方をしてくるのではないかという心配をするものでありますが、この際にこのような基本法ができて交通安全を期するということは非常にけっこうであります。しかし、この基本法を読んでまいりますうちに私がお尋ねいたしたいと思いますことは、この交通安全に関する施策は、ほかの施策よりももう何よりも優先しなければなりません。しかし本案にはそれがどのようにあらわれているかということをいま一度お尋ねいたしたいと思いますから、この点をひとつ率直にお答えいただきたいと思います。
  46. 山中貞則

    山中国務大臣 目的の第一条に「もって公共の福祉の増進に寄与すること」となっておりますが、このままではばく然としておりますので、第三条の「(国の責務)」というところで、国民の生命身体及び財産を保護する使命を国が有するのだということをはっきりと打ち出しまして、あくまでも身体、生命、財産というものは国が守る責務があるのだということで、国民の公共の福祉というものは、すべての人が、自分たちの生存権が国の責務において確保される努力を講ぜられる立場にあるということを明らかにいたしたつもりでございます。
  47. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 私は第一章の総則と第二条の定義からまず考えていかなければならぬというように思いますが、ただいま長官のおっしゃいましたのは、三条の国の責務にすべてをかけておるとおっしゃいますけれども、私はまず定義の問題から少し質問いたしたいと思います。  この定義のうちに道路、船舶、陸上交通それぞれの道交法等々がありますが、昭和三十五年とか昭和二十七年、昭和二十四年だとかいうずいぶん古い過ぎ去ったような感を持つような法的根拠をもとにしていくとすれば、この定義はずいぶん私は現状と合わないように考えられますけれども、いま長官のおっしゃいました「国は、国民の生命、身体及び財産を保護する使命を有することにかんがみ、陸上交通、海上交通及び航空交通の安全」これを交通安全ということだけでは、私はあまりにも大きいことばの表現だと思いますので、この点について、長官でなくて室長にひとつお尋ねいたしたいと思いますから、室長からもう少しこまかく具体的にこの骨になるところを教えていただきたいと思います。
  48. 平川幸藏

    平川政府委員 お答えいたします。交通安全の施策が他の施策に優先するということは、それが人命の確保に直接つながるからであると考えます。ただいま長官が第三条におきまして規定している条項を説明されましたが、なおそのほかに十一条といたしまして、施策といたしまして、「国及び地方公共団体は、その施策が、直接的なものであると間接的なものであるとを問わず、一体として交通の安全に寄与することとなるように配慮しなければならない。」という規定がございます。これは、ただいま申し上げましたような趣旨で、人命の保護を直接に目的とする交通安全施設はもちろんでございますが、そうでない間接的な施策、たとえば学校それ自体は直接に交通安全とは関係ないけれども学校の設置というような施策交通安全の施策に制約を受ける、すなわち人命の尊重等交通安全施策が他の施策に優先するということを十一条は表明していると考えます。  それから、道路におきまして、二十九条の二項にございますが、「国は、陸上交通の安全に関し、住宅地、商店街等について前項に規定する措置を講ずるに当たっては、特に歩行者の保護が図られるように配慮するものとする。」こう書いてございます。これも住宅地、商店街等におきましては歩行者が特に多い、その人命を尊重するという趣旨を端的にあらわした表現でございます。  以上のように、この基本法におきましては随所にそういう規定が設けられておる次第でございます。
  49. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 長官のおっしゃったように、三条の「国民の生命、身体及び財産を保護する」ということになりまして、これがいよいよ国会で通過をして公布せられるようになってまいりますと、これに対する施策というのは、国及び公共団体等と密接な連絡をして行なっていくということになりますが、施策を行なっていく上においては、精神面の施策もありましょうけれども、まず交通問題といたしましては、いろいろその施設をしていかなければならぬと思っております。その施設に対する、国が基本的にこれとこれはやるのだというような問題に対する予算措置としては、本年この国会で通過すると考えましたときに、どのような予算の裏づけがしてあるかということをひとつお尋ねいたしたいと思います。
  50. 平川幸藏

    平川政府委員 本年度の交通安全関係予算は、総額におきまして七百九十億でございます。昨年度が六百七十七億でございますから、増加率は一六・六%になります。この予算は、この法律の第十二条において、交通安全に関する施策実施に必要な財政上、金融上その他必要な措置を講ずることとするということを規定しております。  この予算の全体的な考え方を申し上げますと、どういう財政措置あるいは金融措置かということにつきましては、まず第一に、国の直轄事業に対する国庫支出の問題でございます。それから第二は、地方公共団体に対する普通交付税の基準財政需要額に、交通安全の経費を財政需要として見ていくということでございます。また、交通安全対策特別交付金、これは反則金を財源としました交付金でございます。それから第三点といたしましては、地方公共団体の実施する事業に対しまして補助金を交付するということでございます。それから第四点は、地方鉄道等が踏切道改良等を実施いたします場合に、開発銀行等から融資をいたします。これは予算額とは関係ございませんが、そういう措置も入っておる。具体的な内容といたしましては、そういう内容を盛った予算が本年度の予算内容となっておるわけであります。
  51. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 室長、もう一点お尋ねいたします。  昨年より一六%上回った七百数十億というようにいま聞きましたけれども、それは総理府の直接お持ちになっているお金でなくて、建設省、警察庁運輸省、各省が持っておられる予算でありますが、このような法案を出したときに、この基本的姿勢をもって各省に指揮をとられ、指令を出され、総括的責任を持たれるところの総理府としては、どのようなお考えで直接事業を行なっていこうとお考えになっておるか、総理長官答弁を願いたいと思います。
  52. 山中貞則

    山中国務大臣 予算編成におきまして、その過程で総理府と具体的にその進捗状況、最終セットの感触等についての連絡不十分な点があるようであります。この法律、基本法が制定されますと、これらの点は、総括をいたしまして総理府のほうで、予算全体の問題として、それらの適切なものが予算措置されつつあるかについてはチェックしていけると思います。しかし、総理府自体では、安全運動その他に対する援助、あるいは会議を持って、各省の担当官と絶えず連絡を密にして、方向政府の姿勢に合わしていくとか、緊急の措置をとるとかということにとどまるのでありまして、これは私としては総理府の機能、権能というものにたいへんなまぬるいものを感ずるのですけれども、どうもいたし方のない仕組みになっております。しかし、ある意味では総理府の長は総理大臣でございまするし、国の姿勢というものを総理府は打ち出していく役所であるのだということで、ただ各省の雑務を集めているという掃除婦的な気持ちを持たないで、総理府のほうから、交通問題でありまするならば、その基本的な政府の姿勢を採用させるための予算、各種の措置等について、積極的にこれから展開していく覚悟でございます。
  53. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 ただいま長官説明を聞きまして納得することができますが、一言つけ加えてお願いいたしたいと思いますことは、ただいままでの交通行政というものが警察庁運輸省あるいは他の省との関連性が非常にあるので、てんでんばらばらという表現のしかたは悪いかもしれませんが、そこにいろいろと問題がいままで解決でき得ない点があるわけだと私は思っております。そのような意味におきまして、このような交通安全対策基本法ができてまいりますまで、それを所管せられるところの総理府となりますと、金はなくとも各省との連絡を密にしていただいて、そうして中心になっていただき、そこから、本部長総理大臣でありますが、しかしその仕事をしていただくのは長官でありますから、私は、長官がその点について十分な考慮を払っていただき、この交通安全対策基本法に基づいて日本の交通安全問題はすべて解決をしていけるような方向を打ち出していただきたいということを心からお願いいたすわけであります。警察へ行って話を聞くとこうだ、運輸省へ行って話を聞くとこうだ、建設省へ行って話を聞くとこうだといったようなことは、少なくとも国の行政の上におきましても芳ばしからぬことであります。しかも一万数千人という生命をなくし、百万からの負傷者を出すようなこういう問題は、真剣に取り組んでいくべきであり、中心になるものがなければならぬと思いますから、特にこの際長官にそのような方向に進んでいただくことをお願いいたしたいわけであります。  第二点といたしまして、少しお尋ねいたしたいと思いますが、ここで製造事業者の責務というところがありますが、特にこれを規定しました理由をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  54. 山中貞則

    山中国務大臣 これは現在でも、また各省ばらばらと言われるといけませんが、自動車については道路運送車両法、鉄道については鉄道営業法、軌道車両については軌道法、船舶は船舶安全法、航空機は航空法と、いろいろとあるわけでありますけれども、しかし現実にはやはり欠陥車問題が議論をされたことでもわかりまするように、あるいはまた特定の海域でありますが、大型輸送船のえたいの知れない沈没、こういうようなことを考えますと、やはりもう少し製造業者の人々も、まあ企業の秘密もありましょうが、車両の安全についてアメリカあたりのきびしい基準なり規制なりを考えますと、この基本法ではどうしてもこの点に触れておいて、そしてこれらの存在しておりまする法律が国の姿勢の中でさらに一元的に取り入れられて、それぞれの面、それぞれの製造業者がつくり出す商品の質によって事故が発生するようなことが絶対にあってはならないのだということをあくまでも自覚してほしいと思うので、この点はやはり明記しておく必要があると私考えるわけです。
  55. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 それで一応製造事業者の責務ということはわかったのでありまするが、最近起きた事件でありますけれども、航空機乗っ取りというような赤軍学生の行なったあのようなことにおきまして、一つは、構造上、機関室に乱入でき得ないような製造方法をとったらどうかというようなことが論議せられたようでありますけれども、これは非常に困難なことであるというような答弁に終わっておるようでございます。こういうような点についても、一つの責任を持って、そして万全を期して安全性を考えていただけるという意味もこういうようなことに含まれておるとおっしゃるのですか、どうでしょうか。
  56. 山中貞則

    山中国務大臣 この種のことは、この基本法の作成過程並びにこの法律の作成されました中には含まれておりません。
  57. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 それでは先ほどおっしゃいました三条の、国は、国民の生命、財産というような問題に関連してくるが、そこだけは考えていないとおっしゃるゆえんはどうなんでしょう。
  58. 山中貞則

    山中国務大臣 例の空賊どもの起こした事件は、実は御承知のようにごく最近突如として起こった日本民族の初体験でありますから、それに対しまして空賊対策の法務省の特別立法というものが準備されております。航空機を所管する運輸省におきましては、民間からもいろんなアイデアが寄せられておるようでありまして、当然航空機製造なり、あるいは外国から買ってまいりました航空機を日本の国内において使用する際、いま指摘されたような飛行機の操縦に携わる人々と一般の座席との遮断、その手段等はいかにとか、あるいは国内で製造いたしまする国産の飛行機については、もちろんこれは国産の飛行機製造の基準を定めればいいのでありますから、いろいろなことがありましょうから、これは当然法務省の特別立法を受けて運輸省がいろいろな方法、きめ手を考えた結果、採用するに足ると判断したものは当然この航空機製造法の中へ入っていくものだと考えます。
  59. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 時間がありませんので、頭のいい長官からもっとお話を承りたいと思いますが、この問題はこの程度にいたします。  最後に申し上げておきたいと思いますことは、自動車の欠陥車が出たがために、これを知らずして運転していて生命を失ったというようなことから、訴訟にもなっておることは事実でありますし、あるいは政府自体が調査をした結果が、確かにこれは製造過程におけるところの欠陥があるというようなことから、これを修正もしくは取りかえさせるような資料を出しておる事実があります。そういう意味におきましても、製造事業者の責務ということが特に入れられたことに対して非常に私はけっこうだと思いますが、いまおっしゃったように、航空機乗っ取りというような事件は今後は世界的問題であるが、これが減っていくかふえていくかということについてはいま判定しがたい問題だと思っております。さらにこれに対する処罰規定が、死刑にするとか、あるいはもっと重い罪にせよとか、いろいろ議論が出ておるようでありますが、これまたいかに罪を重くしたって、どういう事態にいたしましても、それによってすべてが解決するとは考えられません。あるいは安全性を考えるところに重点があると思うわけであります。たとえば乗客を乗せたとき、その場合に、飛行機の飛んでいく操縦席の操縦者自体が脅迫を受けることによってその運航が停止せられるというような、あるいは方向が変えられて進んでいくというような事態は、これはもうその乗客に対する生命、財産を保護する責務がある、そういうことを考えてまいりますると、構造というもの、設備というものに対して、外国から買ったものであろうと、国内でつくったものであろうと何であろうと、私はこの範囲内において考えていかなければならぬと思っておりますので、どうかそういう意味におきましても、この点についての法解釈を大きく持って指導していただくことを私は願ってやみません。長官、どうお考えになりますか。
  60. 山中貞則

    山中国務大臣 確かに幾ら法律で未遂罪まで含めて起こった行為をきびしく処罰しようといたしましても、それがはたしてきめ手になるかどうかは大いに疑問を感ずるところです。ですから、そういうことをやろうとしても目的を達することができないという方法も、当然機体構造上等から考えられれば、その行為の発生ができなくなるわけですね。確かに問題点を指摘しておると思います。今度の処罰法では飛行機と船舶も入れておるようでありますが、これが日本は、陸続きでありましたら、大量輸送手段のバス等もやはり考えなければならない事態でありましょうけれども、幸い海で隔たっておりますから、飛行機と船だけで済むのでありましょう。その点は橋本運輸大臣のほうにも私からも連絡いたしまして、今後、やっても目的を達することはできないぞというものをつくることも非常に大きな前提条件になりますから、よく御相談を申し上げておきたいと思います。
  61. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 よくわかりました。ひとつぜひそのようにお願いいたしたいと思います。  そこで九条に、「(歩行者の責務)」というような項目がありまして、その九条の内容に「歩行者は、道路を通行するに当たっては、法令を励行するとともに、陸上交通に危険を生じさせないように努めなければならない。」こういうことが書いてあります。私の考えが違っておるかどうかと思いまするが、お尋ねをいたしたいと思いますことは、歩行者は交通事故の危険から保護される立場にあって、むしろ被害者の立場にあると考えるのでありますが、その「歩行者の責務」と特に規定した理由をお聞かせいただきたいと思います。
  62. 山中貞則

    山中国務大臣 これは実は歩行者の責務という表現だけではあるいはあいまいなのかもしれません。しかし歩行者自身に起因したことによって起きる事故というのがやはり絶えないわけです。統計から見ましても、四・七%は明らかに判定されたもので歩行者自身が事故を招いたものであるということが出ておりますので、どうしても歩行者もやはり交通法規を順守して——交通事故の特殊性は、みんなが自分は加害者であるという意識を持っていないわけです。そうしていつ被害者になるかという意識も持っていない。あるときある時間に突然ある場所で加害者になる、あるいは被害者になるということでありますだけに、一そう歩行者の人々も、歩行者がやはり心得というものを持ってくれませんと、ある意味では歩行者が交通事故を起こす原因の加害者たり得る可能性もある。そういう意味でやはり歩行者の責務というものもどうしても触れておく必要があると考えております。
  63. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 昨年の、横断歩行中になくなったというのをちょっと調べてみましたところ、四百三十二名あるわけなんです。その他の歩行中でなくなったというのは二百二十九名、そして道路上で遊んでおりましてなくなったというのが三十七名、合計いたしまして六百九十八名なんですが、七百名近い。一万六千何百人に対して七百名近くの人が歩行者として死亡者になるわけです。  そこで、先ほどから言っております、被害者の立場にあると私は考えるわけでありますが、いま長官お話を聞いてみますと、加害者にもなる、被害者にもなっていくのだ、そこで歩行者にも当然責任を考えてもらわなければならぬとおっしゃることはよくわかりますが、たとえば赤信号に変わった瞬間に、信号のところで出て、そうして責務を果たさずして、法令的なものを励行せずして渡りかけて事故が発生しかけた、しかし事故はせずに終わったというような場合、警察官なんかがその付近に立っておりまして、その事実を認めたときに処罰規定的なものはお考えになっておるか、どうでしょう。
  64. 久保卓也

    久保政府委員 信号無視は直接に罰せられると思いますが、一般的には歩行者というのは、お話しのように保護さるべき対象であるのですから、歩行者のルール違反を直接に罰すべきであるという意見も相当にございますが、これは今後の問題として検討さるべきことであろうと思いますが、現在の法規では、警察官が歩行のルールを指示をいたしまして、警察官の指示に違反をした場合に処罰される、こういう体系になっております。
  65. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 そういたしますると、歩行者の罰則というものは、局長はいまのところお考えになっていない、将来は、これを取り上げて検討してみるという必要はあるとお考えになっておりますか。それに間違いありませんか。
  66. 久保卓也

    久保政府委員 その点は、警察庁の中でも意見が分かれているところでありまして、ただいま長官お話しになりましたように、歩行者の責任でもって事故が起こったというのは、きわめて少ないわけです。ただし、これは第一原因者、つまり主たる原因があって事故が起こったというものでありまして、第二原因者、つまり従たる責任という点もとらえてみますると、全国統計はございませんが、幾つかの県での数字を見ますと、大体歩行者に責任が若干以上あったというものが七割から八割、逆に申せば、歩行者に全然責任がなかった事故というのは二割から三割程度ということであります。ところで、言うまでもないことでありますが、山中長官も再々言われまするように、自動車というものは凶器になり得る。この凶器になり得る自動車の運行がなぜ認められているかと申しますと、これはドイツで相互信頼の原則ということばがありますが、日本の最高裁の判例の中でも、そういったことばが取り入れられております。その意味は、そういう凶器になりかねない自動車を運行させているのは、自動車運転者もルールを守る、同時に歩行者もルールを守ってくれるだろうという相互の信頼があるから、凶器になりかねない自動車の運行も認めさせておる、というのが法律上の思想のようであります。そういうことから言いますると、自動車時代の今日においては、歩行者もルールを守ってもらわなければ、いまの自動車社会というものは成り立たないわけであります。そこで、歩行者がルールを守るということを法律上あるいは処罰上どういうふうに担保するかという問題があるわけでありまして、そこに歩行者を直接に罰するかどうかという問題が出てくるわけであります。アメリカの場合には、非常に歩行者の処罰が厳重でありますが、日本の場合はやや甘いわけであります。なぜ甘いかと申しますと、この辺から意見が分かれるところでありますけれども、日本の道路状況なり安全施設の状況はきわめて悪い。そういうような状況の上で歩行者にルールを厳重に守るべしということを求めるのは、少し酷ではなかろうかという見解があるわけで、その辺が問題のあるところであります。私個人は、歩行者にある程度そういったルール違反についての罰則を直接適用するということをやってもいいのではないかという感じはするわけでありますが、必ずしもそれがいまの原則論にはなりませんで、今日の状況からすると、やはり歩行者というものは、まだ保護さるべきものである、そうして直接に罰則を適用するということは将来の問題とすべしという思想のほうが、警察庁の中では強いようであります。
  67. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 いま局長からの説明で了することができましたけれども、先ほどから申し上げておるように、四十四年に一万六千二百五十七人という方が陸上交通においてなくなったわけであります。そこで、海難事故としてはどれだけの方がなくなったかということをちょっと調査してみますると、千百二十六人なくなっております。航空機は、非常にありがたいことに、事故はありましても、なくなった方が四十四年十名であります。こういうようなことから考えてまいりますると、これが減少をたどっていけばけっこうでありますが、エスカレートしていくことは、現状では想像がつくように私は思うわけでありますが、特に陸上交通の一万六千数百人という人を考えてまいりますときに、歩行者は、先ほどから言っておるように、被害者の立場に立つようでありまするが、長官のおっしゃったように、歩行者にも責任を感じさせよということは十分にわかりますが、この事故を起こしていく上において、運転者のモラル、その者の精神というものが基本法のうちに織り込まれているとこがないように私は思いますが、このモラル的なものに対する考え方というものをどのような面で生かしていかれるか、これは局長に一応まずお聞きいたしたいと思います。
  68. 久保卓也

    久保政府委員 運転者のモラルにつきましては、これは先ほどの私の発言と関連するわけでありますが、基本的には、やはり運転者の問題かと思います。ただ私どもは、運転者なり歩行者なりに求める場合に、やはり政府としてなすべきことをなした上で求めるべきではなかろうかということを感じて、政府側の施策というものを実行しつつあるわけでありますが、しかしながら、アメリカの安全教育の本によりますと、事故原因の中で九〇%は人である、その人の中でも、アメリカの場合は、主として運転者になりますが、そして残る五%ずつが道路と車であるというふうな解説がなされております。そういうふうに基本的には、やはり運転者のモラルといいますか、交通のルールを守るかどうか、そういったマナーの問題があるわけでありまして、この点はもっぱら警察の仕事と考えまして、いろいろな機会における講習なり教育なり、そういう場を通じて教育をやっているわけでありますが、さらに問題は、判断力といったようなマナー以前の問題もございます。そういう問題については、器材を開発して、それを通じて判断力を養成してまいりたい。しかし基本的には、やはりマナーというものが重要である。それを、またどういうふうにして実行させていくかということが私どもの最大の課題であるというふうに考えております。
  69. 山中貞則

    山中国務大臣 法令の中には、第七条で「車両等を使用する者は、」と書いてありますし、第八条で、車両運転者、船員、航空機乗り組み員、こういうふうに定めてありますが、問題は、走っているときの問題を指摘されているのだろうと思います。これは、どうもたいへんむずかしい問題でありまして、私どもとしては、やはりみな善意のものとして解釈したいのですけれども、中には、やはり事故を起こした瞬間から悪意のものに変わる、あるいは処罰の恐怖感あるいは罪悪感ということ等でひき逃げ等も絶えませんし、現在の保険によりますと、車両対象の保険になっておりまして、陸運事務所のチェックになっているわけですね、先ほどの質問にありましたけれども。これを、何べんも事故を起こす者はやはり保険料を高くして、何年も事故を起こしていない者は安くするというメリット、デメリット制の採用というようなことに踏み切っていく。そして現在は、自動車を持っている人だけということになっておりますが、それを広げて——運転免許者というのは、いつ運転者になるかわからない。運転をするために免許をとっていることは間違いないのですから、免許者保険、対人保険、メリット、デメリット制の導入、こういうこと等で、人間の性善説をとりたいのですが、性悪と思われるものも出てくる以上は、そういうものも何らかの手段として検討する必要があるというふうに、直接交通基本法関係ありませんが、関連する諸問題として私は考えている点があるわけです。
  70. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 この問題について、もう少し突っ込んで御意見を聞きたいと思いますが、与えられた時間がございませんので、もう一点先に進んでお尋ねしたいと思います。  十六条と二十一条で都道府県交通安全対策会議と都道府県交通安全連絡協議会というものが、二つとも必要があれば置くことができるということになっておりますが、都道府県交通安全対策会議と都道府県交通安全連絡協議会との違いというのは、これはどういうものですか。この点を、ひとつ率直にお答えをいただきたいと思います。
  71. 平川幸藏

    平川政府委員 都道府県交通安全対策会議は、その目的は、これは陸上だけでございますが、陸上の交通安全について、交通安全基本計画の作成をした上でその推進をはかる、こういうのが目的でございます。これは、この法律によりまして設置することが義務づけられております。ところが、都道府県交通安全連絡協議会というのは、これは設置が条例によって任意制でございます。目的は、六条を除きまして、海空の交通安全につきまして、地方の出先機関、たとえば地方海運局でありますとか、地方航空局、そういった機関の長と海上交通、陸上交通につきまして協議連絡いたしまして、お互いに議論をかわして適当な意見を交換する、こういう機関でございます。したがいまして、設置が義務づけられておるかどうかについて差があるのと、目的の内容が違うということでございます。
  72. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 都道府県交通安全対策会議は義務づけられておる、都道府県交通安全連絡協議会は義務づけられていない、それだけの違いだという。それだけの違いだったら、そういうようなものは一本化しておいたほうが屋上屋を重ねぬようになると思いまするが、何か法的解釈を間違えて、こういうものもでかさなければいかぬかしらと思ってでかすところもでき得ると思いますけれども、これは一本にならなかったか。その必要性はどちらでもいいから、一本にしておいたほうがいいと思いますけれども、それはどうですか。
  73. 平川幸藏

    平川政府委員 ただいま申し上げましたように、都道府県交通安全対策の権限は陸上交通のみに限られております。これはその由来を申し上げますと、実は海空につきましての権限はほとんど運輸省の専管事項になっているわけであります。したがいまして、地方交通安全計画というものはほとんど陸上交通に限られる、こういうことが非常に多いわけであります。実際上、陸上の交通安全についての協議する機関が、これはどうしても義務的なものとして設置する必要がある、こういう意味で都道府県の交通安全対策会議を陸上のみに限ったわけであります。ところが、都道府県におきましても、海空につきまして、飛行場を地元に持ちますとかあるいは港湾を持っておる、こういう関係で海空の交通につきましても意見交換なりあるいは協議をしたいということで、実はこういう都道府県交通安全連絡協議会という機関を設けまして、海空につきましての議論を交換する、あるいは協議する機関を設けた。ただし、これは地方の実情によりまして、たとえば海がないとか、航空につきましてあまり関係がないという府県もございますから任意制にした、こういうことでございます。
  74. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 都道府県交通安全連絡協議会というものは海空を含んだものでつくるのだ、こういうことなのか、どうなんです。海空のあるところがこういうものをつくるのだ、それも義務づけられていない任意制ということだったら、海空があってもでかさぬという人がある、それはやむを得ないということなんですか、どうなんですか。
  75. 平川幸藏

    平川政府委員 ただいま申し上げました都道府県交通安全連絡協議会は、海空のみでございまして、陸は含みません。
  76. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 連絡協議会は海空だけのものであるから、これは義務づけられていないのだからでかさないよと言えば、連絡協議会というものはつくらぬでもいいということになるでしょう。そういう意味にならぬですか、それは私の勘違いでしょうか。
  77. 平川幸藏

    平川政府委員 海空につきましては先ほど申し上げましたように、地方の実情に応じまして実態が違うわけでございます。たとえば、海岸を全然持っていないという県におきましては、海空のうち海を抜きまして、空だけをつくるということは可能でございます。したがいまして、そういう実情に沿ったものをつくっていただきまして意見を交換していただく、こういうことになっております。
  78. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 空でも海でもいいけれども、義務づけられていないから、もう私はでかしませんよと言ったらどうしますかということを聞いているのですよ。それはやむを得ぬとおっしゃるのですか、室長。
  79. 平川幸藏

    平川政府委員 そのとおりでございます。
  80. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 そのとおりと言っては、この基本法考え方というものに私は大きな意義をなくすることじゃないかと思うのです。海空のところは、おまえのほうはでかしたければでかしなさい、陸上だけが交通安全対策をつくるんだ、これを義務づけますよ、海空のところは、事情があるから、でかすでかさぬもどうぞ御自由にしなさいというやり方は、少しおかしいと思うのですが、どうですか。
  81. 山中貞則

    山中国務大臣 質問の趣旨はわかりました。それは必置制にいたしますと、飛行場のない県あるいは海のない県というようなものもありますし、ことに空と海の問題は、県境というものを空と海ではなかなか識別しがたい環境にあることはおわかりになるだろうと思うのです。そういう場合に、お隣の三県とかお隣の二県で空と海の問題は相談し合いましょうという必要がある。そういうところは相談するための会議をつくりますし、そういう必要のないところは単独で置けといってもそれは無理なんではないか。その意味でここでは必置制ではないが、必要によってそれをおつくりなさい、こういうことを言っているわけで、決して必要なものを、つくらなければならないのをつくらぬでもいいんだという思想は全然ございません。
  82. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 長官の趣旨はわかるけれども、片方は義務づけられておって、どうでもこうでもつくらなければならぬという形になる。片方は海空、港がありあるいは空港があるというところは、そういうようなものはあまり気乗りしないから重要性があってもでかしませんよといえば、それをでかしなさいというわけにはいかない。任意制になるとそういうことになるでしょう。そうすると基本的に、この基本法から考えていくと、少し手ぬるいように考えられますが、その点いかがですか。
  83. 山中貞則

    山中国務大臣 海空については、やはり直接の責任者、管理者というものから考えまして、もちろん人命、財産の保護は地方自治体の長も責任を分担するわけですけれども、少しく陸上と性質を異にしますし、ことに事柄として、先ほど申しましたように、県境を越えて相談をしなければならないというケースが存在するところと、そうではなくしてやっていけるところ、必要のないところ、いろいろとあると思いますから、義務設置を必要としないという判断に立っているわけで、その意欲がない、たとえば当然必要とするはずの東京都あるいは大阪とか、そういうようなところが周辺相談をしないというのはおかしなことになるわけです。そういうところはおつくりなさいということも強制はいたしませんが、自治体の責任者ですから、やはり住民の選挙によって選ばれる人たちが当然なすべきであることを自分が故意に怠るということは、大体いまの時代にはもう想像できないことでございますから、そこらのところは事実関係においても、おそらく将来はこれができましたならば、必要と思われるところはほとんどできるであろうという認識に立っていただきたいと思います。
  84. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 あえてこれで論議をしようとは思っておりませんけれども交通安全の対策協議というものは、陸でもなければ海でもなければ空でもない。三者一体の形の上において、その人の生命財産を国が基本的に守ってあげようということになるのですから、片方は陸上だから、それはどうしてもつくりなさいと義務づけておいて、片方は必要性が十分あるんだといっても、義務づけられていないから、私のほうは都合でいろいろの問題がありますから、そういうものはつくりませんよと言えば、やむを得ませんよ。しかし長官は、そういうことは常識判断であり、民主主義の世の中であるから、お互いに話し合えば、そういうものはできていくんじゃないかという見通しをつけられておりますが、そういう見通しということよりも、少し私はそういうところにも考慮したほうがいいんじゃないかということを申し上げたわけですけれども長官がそういうお考え方ならば、あえてこれを追及しようとか、どこまでもこの問題を取り上げて深く掘っていこうということは考えておりません。しかし、私の考えはそうであり、将来の問題としては、そういうような行政的指導というか、そのような方向にいってもらう、義務づけられておっても義務づけられていなくても、必要に対しては考えてもらうような措置をとってもらう、これが必要じゃないかということを申し上げておきたいと思います。私のいただいた時間を少しオーバーのようでありますので、もうこれ以上申し上げることはありません。最初に申し上げましたように、予算は各省が持っておられる。それによって運営せられますので、長官中心になっていただいて、その予算の使いどころにけじめをひとつしっかりしていただいて、運用の万全を期していただくように、この基本法案が通ったときに、どうか大臣、国民のしあわせのための施策を施してもらうように、よく各省との協議をしていただくことを心からお願いいたしまして、私の質問を打ち切ることにいたします。ありがとうございました。
  85. 受田新吉

    ○受田委員長 久保三郎君。
  86. 久保三郎

    久保委員 法案に関連して、大型船の海難問題について先にお伺いしたいと思うのです。  今回というか、去年から引き続いて大型の特に鉱石運搬船、こういうものが、先ほども長官からもお話しがありましたが、引き続いての事故があります。これに対して政府は適切な措置をとっているかどうかの問題であります。  まず第一に、これは船舶局長にお伺いしたほうがいいと思うのでありますが、今回「かりふおるにあ丸」の海難に際して、同型船の補強というか、検査並びにこの修理といったらいいんですか、そういうものを指令されているのでありますが、これは先般の予算委員会等での答弁によりますと、何となく検査をして実は補強している、こういうことでありますが、原因についてかくかくであるから、かくかくの手当てをするというのが普通の常識でありますが、これはどういう考えで通達をしてやられたのか、これをひとつ御説明いただきたいと思います。
  87. 佐藤美津雄

    佐藤(美)政府委員 お答えいたします。昨年「ぼりばあ丸」、一年たってまた「かりふおるにあ丸」の海難が起きたわけであります。昨年の「ぼりばあ丸」のときには、造船技術審議会におきまして、類似の船の一応の検討をいたしまして、構造上に心配がないというふうに結論を得ましたのですが、一年後に同じような海難事故が起きたということは、きわめて行政官庁として重大な責任を感ずるわけでございます。そのために、両方とも船体の船首部ということでございましたので、船首部に、これは乗り組み員の不安を除くという関係もございまして、一応総点検を行ない、かつその内容におきまして、船体に多少のクラックとか、あるいは衰耗とか、そういうものが見つかった場合には、それを補強するという態度で実は通達を出したわけでございます。
  88. 久保三郎

    久保委員 クラックとか、いわゆるひび割れでありますが、そういうものは、あるものに書いてある関係者の意見によれば、この種の船はいわゆるドック入りというか何か知りませんが、そういうときに、もう百カ所以上のクラックが普通である、こういうふうにもいっています。これは極端なのかもしれませんが。それからもう一つは、溶接忘れといって、溶接せねばならぬのが忘れたままで溶接されていないのがたくさんあった、こういうんですね。こういうのは事故原因につながっていないのかどうか。単にひび割れだが、万が一のことがあっちゃいかぬから手直しするという程度のものに考えていいのかどうか、これはどうなんでしょう。
  89. 佐藤美津雄

    佐藤(美)政府委員 一応総点検によりまして原状に復帰するというのが原則でございまして、さらに当時のいろんな船舶に対する船体構造の問題点が議論されまして、技術的に見て、少しこの辺を補強しておいたほうがいいんじゃないかという実は検討もございました。そういう関係でございますので、できるだけ船主の自主的な判断におきましてこれを補強させるというふうにしたわけでございます。
  90. 久保三郎

    久保委員 くどいようでありますが、一番大事な点だし、非常にお答えにくいことかと実は思っているのですが、問題は、ただ単に当面を糊塗して何とかやっていけるという事態ではないと私は思うんですね。いわゆる大阪のガス爆発というか、そういう問題一つとっても、これはもう何も言うことはないと思うんです。でありますから、少なくともそれぞれ良心といったらたいへん語弊がありますが、正しいものの見方と判断をして、正しい適切な処置を講ずるというときに至っていると思うんですね。だから事態は、これまたたいへん恐縮でありますが、ごまかしちゃいけないということです。でありますから、このひび割れがいわゆる海難の原因にならないというのなら手直しも必要ないが、万が一のことを予想するというのならば、これはたいへん言い方は極端でありますが、万が一のことなら、それは原因でないのかもしれない。万が一のこともやっぱり原因だと思うんですね。そういう意味で早くこの態度をきめる必要が私はあると思う。もちろん昨年一月の「ぼりばあ丸」の結論がまだ海難審判では出ていないと思うのでありまして、そういうことからしてあとの問題も不明確になってくる、こういうことだと思うのですが、しかし、「かりふおるにあ丸」については、先般運輸大臣は調査委員会をおつくりになりました。この調査委員会はいまいかなる調査をし、いつのころまでにこの結論を得られるのですか。その結論はやはり公表されると思うのでありますが、すなおに公表されるような情勢にあるのかどうか、いかがでしょう。
  91. 内村信行

    ○内村政府委員 ただいま調査委員会についてお尋ねがございましたので、その点について御説明申し上げます。  今回の事故が起こりまして直ちに大臣が指示されましたことは、先ほどの大型船の総点検をやれということと、総合的な調査をやりなさい、この二つでございますが、そこでその趣旨に基づきまして、今回は単に船体のみならず波浪、気象、海象そういったものとか、あるいは運航関係、特に船体関係、そういったものを含めまして総合的な調査をするということから、これを官民合同で行なうということにいたしました。そこで、各方面の専門家に御参加いただきまして、役所の責任者も加わりまして調査委員会というものをつくったわけでございます。この調査委員会がまず二月二十日に第一回が行なわれまして、続いて三月二日に第二回、それから先般六日に第三回の委員会を開きました。その前に、その中に気象、海象あるいは運航あるいは船体、この三つの専門部会を設けまして、その中で調査課題を選定し、その課題についての具体的な調査内容、調査方法ということを検討いたしました。そこで、先般その専門部会の検討結果に基づきまして大体調査項目を正式に決定いたしました。  その概略を御説明申し上げますと、まず第一に、「かりふおるにあ丸」の過去における航海状況を調査してみよう、これが一つでございます。これにつきましては、建造以来の航海履歴のうち、風力七以上の荒天航海状況、それからそういうものに対応する船体修繕歴、こういったものを調査するということであります。  それから二番目に、海難当時の「かりふおるにあ丸」の航海状況調査。これは出航時から沈没時に至りますまでの船の状態、航跡あるいは航海状況等の調査を行ないます。  それからもう一つは、「かりふおるにあ丸」の海難当時、その付近を航行していた他の船舶、これが一体どういうふうな航海状況をしておったであろうかということについての調査を行なうということが一つございます。  それから、点検対象船舶、これは先ほど船舶局長から御説明申し上げました同型船の総点検の対象船舶でございますけれども、特にそういう対象船舶につきまして、冬季、すなわち十二月から三月における日本近海付近、その他風力七以上の航海状況、そういったものを調査するということで、これは過去五年間のデータによりまして状況を調査してみようということでございます。  それから、そのときの気象並びに海象の調査も行なうということでございます。  次に、大型船を所有する各社の船長に対します積み付けあるいは運航上の注意、それから諸般の情報提供を一体どういうふうにしているのだろうかということの状況の調査をしてみるということが一つございます。  それから船体の破損個所を推定し、また当該部分の破壊強度、それから破壊順序等を推定してみようということでございます。  その内容といたしましては、浸水計算によって破損個所を推定する、あるいは強度計算によって破損個所あるいは破壊順序及び崩壊荷重を推定する、こういうふうなことでございます。  それから船体破壊のための波浪衝撃力は一体どういうふうなものであろうかということを解明いたすこともまたその一つでございまして、そのためには、実船計測によりまして波浪による衝撃的水圧を計測してみようということが一つ。それから波浪中の模型実験によりまして、波と船体運動の相関関係あるいは船体にかかる波浪衝撃力というものを調べてみよう。それから、船体構造模型によりまして強度解析を行なうということでございます。  それから次に救命関係でございますが、救命設備の能力あるいはその操作というものにもいろいろ問題がございますので、救命設備の能力あるいはそれに関する管理、訓練、そういったものを含めましての救命システムと申しましょうか、そういうものについて一体どうしたらいいのかということを検討してみたいということが一つございます。  それから次に、本州東方海域における気象、海象は一体どうであろうか。これを過去十カ年のデータに基づきまして統計的解析を試みるということでございます。  ただいま申し上げました、全部で九項目になりますが、その九項目が先般決定いたしました調査事項でございます。  これにつきましては、その時期ということでございますけれども、これは先ほど先生おっしゃいましたように、これは何としても客観的に原因を究明しなければいかぬということでございますが、ものによってはそう短期にできないものもございます。したがいまして、ものによりましては相当長くかかってもいいから、じっくりとほんとうのものを出したいというふうに考えております。それからまた、ものによりまして、早く何らかの方法、手段のとれるものにつきましては、ぜひそういうふうにいたしたいというふうに考えております。
  92. 久保三郎

    久保委員 そこで、この海難の原因の調査についてお伺いしたいのでありますが、いまお述べになりましたのは、今回臨時的にできた調査機関ですね。これはやはり海難の調査でありますと同時に、「かりふおるにあ丸」の海難調査でもありますね。そこで、海上保安庁長官にもお尋ねしたいのだが、この「ぼりばあ丸」あるいは「かりふおるにあ丸」、特に最近では「かりふおるにあ丸」の事故で生存者がおられるので、あなたのほうでは生存者にこの海難事故についてお聞きしているという話を聞いておりますが、これはいわゆる海難の調査をなさっているのでしょうね。  それから、審判庁はまだ「かりふおるにあ丸」については審判を開始していないが、当然審判を開始する。そこで、この事故原因の調査は三者三様にならざるを得ないだろうというふうにも考えるわけです。もっとも海上保安庁の調査は海難審判庁で扱うものを除いて海難を調査するということになっておる。しかし、まだ海難審判庁はこれについては手を加えていないと思うのです。だから、手を加えるのか手を引くのかということです。  それから、この関係人を呼んで調査するというのは、単に原因を調査するのか、もしも原因が明らかになったならば、いかなる手段、方法をとるのか。これを保安庁長官からお答えいただくと同時に、審議官のほうからも、その法的ないわゆる対策ですね、これはどういうふうな関連があるか、海難審判法とそれから海上保安庁の権限に基づく調査とあなたのほうとの関係はどうなのか、こういうことをちょっとお聞きしたい。時間が制限されておりますから、簡単に御説明いただければけっこうだと思います。
  93. 河君一郎

    ○河君政府委員 ただいまの海難調査の問題でございますが、海上保安庁といたしましては、具体的海難救助ということについて、あるいはまたその海難の宰領につきまして直接の責任を持っております。したがいまして、事件直後におきまして乗り組み員から遭難状況を一応聴取いたしました。その概要につきましては国会のほうにもお話を申し上げておる次第でございますが、制度的な問題といたしましては、ただいま久保委員からお話がございましたように、海難審判庁その他との関係がございまして、私どもといたしましては、私ども本来の任務に即応した調査態度をとっております。  それからまた、先ほど審議官から話がございました特別委員会には、私自身その委員として出席しております。そういった意味で、今後の調査その他にも関連をいたしておる、このように考えます。
  94. 内村信行

    ○内村(信)政府委員 海上保安庁との関係につきましては、いま海上保安庁長官から御説明申し上げましたので、私からは主として海難審判庁との関係を御説明申し上げたい、こう思います。  海難の原因の調査につきましては、これは当然法律上海難審判庁においてやるということで所掌事務になっております。しかし、海難審判庁におきまする調査というものは、これは審判の結果が船員の身分というふうなものに重大な影響を及ぼすものであります。したがいまして、これは準司法的な手続によりまして審判を行なうということで、非常に慎重にやっております。したがいまして、調査には相当長い時間がかかるというふうな実情でございます。ところが、われわれ行政当局といたしましては、こういうふうな事件が相次いで起こりました場合に、これを単に形式論として海難審判庁がやればいいじゃないかというふうにして放置しておくわけにまいらぬ、何とかしてなるべくすみやかに何らかの原因、それらしい灰色のものでもいいから、そういうふうなものを見出して、それに対して対策をしていきたいというふうなことを考えざるを得ないということでございまして、そういった意味で、海難審判の場合には、先ほど申し上げましたように、むしろ白か黒かをはっきりして、疑わしきは罰する、こういうふうな態度が必要かと存じますけれども、この調査委員会の場合には、灰色のものでもいいから、あぶないものについてはすぐ何らかの対策をいたしたいというふうな角度から見てまいりたい、その点が違う点かと思います。
  95. 久保三郎

    久保委員 運輸大臣は他の委員会がおありだそうでありますから、先にお尋ねしたいのでありますが、いま大型船の問題に関連して、海難の原因調査、こういうものについてお聞きしていたところであります。あなたの所管の中には、この問題ではいま三つの機関が動いてやっているわけであります。一つは海難審判法に基づき、海難審判庁が海難の原因を究明するということで、職務をもってすでに「ぼりばあ丸」については手がけております。それからもう一つは、今度の「かりふおるにあ丸」については、あなたの手元に新しくつくられた鉱石船の事故調査というか、海難調査の委員会が発足していろいろやっている。それから海上保安庁は、保安庁の職務に基づいてこの「かりふおるにあ丸」等の、言うならば関係者の意見等も聞いているということ。そこで、時間もたくさんございませんから、理屈は抜きにして、結論から申し上げてお尋ねしたいのは、海難審判庁の制度というのはいい制度だとわれわれは考えているのです。しかし、これは当初発足してから大体時代が変わりまして、多少しょっている職分と実際にやることとは違ってきている。違ってきているというよりも、なかなか新しい時代に即応できない面がありはしないか。御承知のように、この海難審判庁は、海技技術者、いわゆる船員とかその他船に関係する人、あるいは水先案内、こういうものに対しては、責任ありとした場合には、これを懲戒することができる。ところが、それ以外の、原因が海難であった場合には、単なる勧告しかできないわけですね。しかもこれは裁判のような構成になっておりまして、言うならば、人間を処罰するということが、どうも先に、中心になりがちなのであります。今度のように商船の問題を含めて、もちろん問題はあると思うのでありますが、むしろ世上いままで類形的な大型船の海難から見ますれば、とにもかくにも船が航海に耐えられなくて、沈没してしまったということであります。いわゆる耐航性に問題があるということははっきりしているのですよ。これは耐航性の問題です。そういう場合には海難審判庁の審判にかけても、これは勧告に終わるわけですよ。そういうことだし、しかもこれはいまお話がありましたが、二審制になっておりまして、手数がかかる、時間がかかる。そういうことでありまして、これは当初の海難審判法の発足当時の大体形態に戻して、これは置くとして、全体的な海難の原因の調査は、これは独立の機関を設けていくほうがいいのではないかというふうに私は思うわけであります。むしろ独立した海難の原因調査機関というものの出た結論が、海難審判にも影響を与えるというふうに、率直にストレートにいったほうが、むしろ時代に即応していやしないか、こういうふうに思うのです。  ここでお答えいただきたいのは、こういうふうに審判庁でもやり、保安庁でもやり、そして大臣官房でもやるということで、結局みんな三者三様の同じような調べをやっていくことは、あまり得策ではないだろうというふうに思うし、審判庁が、たとえば「ぼりばあ丸」のごとく取り上げたといえば、何か結論が出ても、これは公表できない。できても世上何か伝わるような、はれものにさわるような発表と結論しか出ないとすれば、私は、正しい結論は出ないと思う。海難審判庁を中心にして、海難の原因というか、私ども基本法でも提唱しているように、いわゆる独立機関を設けるべきではないかと思っているのです。交通事故原因の究明、政府案においても、もちろん「事故原因の科学的究明を図るため、」云々と書いてありますが、私どもは、そういうふうな科学的な原因を究明するために調査機関の設置を提唱しているのです。別に私どもの提案を押しつけるわけではありませんけれども、もはやそういうことをしなければならぬ時代にきていはしないかということをわれわれは考えているのです。結論として、再検討の要があると思うのですが、いかがでしょうか。
  96. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 せんだってのハイジャックの問題につきましては、当委員会におきましても、いろいろ御心配をいただきまして、厚く御礼を申し上げます。  いまの久保さんの御意見、非常に関心のある御意見でありまして、この問題につきましては私なりに考えたいと思いますが、そこで、最初お話のありました海難審判庁あるいは特別調査委員会、あるいは海上保安庁等、何か同じような目的で同じようなものをやっているのではないか、こういうお話でありますが、これは全然目的を異にしております。海難審判庁のほうは、いわゆる海難についての原因を究明するということが目的で、この結果によって処理する。大臣のもとにつくりました特別調査委員会のほうは、もちろんこれは原因にも触れざるを得ませんけれども、第一の問題としては、大型船の現状が、はたしてこういう海難、遭難に対して十分なる状態にあるかどうか、いわゆる総点検、そういう意味で大型船の特別調査委員会ということで、ある一定以上の規模の大型船に対して実際上の総点検を行なうと同時に、その結果、補強すべき点があれば、積極的に補強命令を出して補強させる。しかし、それに関連して、今度は別個に海上保安庁では、気象の調査もしくは海象の調査、こういうものをもっと厳密に調査をしておく必要があろうということで、その方面の調査を主としてやっておりますからして、三つありますが、これらはそれぞれ違った目的でやっておる。一方は法的な根拠において、この海難に対するところの過失かあるいは故意か、その他海象、気象等の問題があるかどうか、こういう事柄から、いわゆる科学的な、また技術的な研究を進めていく、こういう立場でありますからして、これは委員会が三つありましても、目的は全く違っておる。その点はひとつ御理解を願いたいのです。  ただ、第二の御提案であります科学的な、また技術的な常設的機関によってそれらの原因が究明されて、それによって与えられた資料によって海難審判庁がこれを処理する。こういうことのほうが近代的な船のあり方、あるいは労働条件、そういう問題からして適当ではなかろうか、こういう御意見であります。この点、非常に私は興味ある御提案だと思います。ことに、日本のように一種の海運国であり、非常にたくさんの船が動いておる。かつまた、気象、海象についても、他の国の沿岸に比べて必ずしも単純ではない、複雑な状態も持っておる、こういう意味では、そういうような常設機関があって、そうして根本的な調査を進めて、その資料によって海難審判庁が判断を下す、こういうのも一つ方法だろうと思います。たとえば裁判所においては判事と検事が分かれておる。この場合においては海難審判庁が両様の仕事をしておる、こういう点につきましては、興味ある提案でありますから、検討はいたしたい。しかし現状においても、必ずしも不公平でもない、間違いでもない、こういう点を御理解願いたい。より完全な方法をということを御提案になったと思いますので、私といたしましては、検討に値する御提案であると思うので、十分考えてみたい、かように存じます。
  97. 久保三郎

    久保委員 時間がありませんので簡単に申しますが、いまのお話検討するということでありますから、ぜひ検討してほしい。いま大臣官房の中にできている特別調査委員会ですか、こういうのは抽象的に大型鉱石船の海難問題を調査するということでありますれば、問題のすりかえであります。ほんとうの原因究明はできないと私は思う。はっきり申し上げて、具体的に、沈没したのはどの船か、その船を対象にして原因を大胆に究明しなければ、抽象的に何ばいかある船全体、それは参考のために現存する船を調査することはけっこうでありますが、「かりふおるにあ丸」、「ぼりばあ丸」、そういう具体的に航行に耐えずして沈没した事実を認めながら、どこに原因があるのか、耐航性がどうしてできなかったのか、これを調べていくことも忘れて、抽象的な調査は意味がないと私は思うのです。回答を与えることが国民に対する義務じゃないですか。一般的な大型船の問題、「かりふおるにあ」はどうした、「ぼりばあ」はどうしたということにまず第一に回答を与えることが私は大事だと思います。時間がありませんから、御答弁をいただくことは省略させていただきますが、私はそう思います。
  98. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 その点については久保さんちょっと誤解をしていらっしゃるので……。  特別委員会は、いわゆる原因を調査するためにつくったのではないのです。こういう大型船が続けて遭難にあいましたから、残った大型船約七十隻——六十九隻ですか、これらに万が一同じようなことが起きては困る。そこで、いわゆるひび割れとかなんとかという技術的なことはしませんけれども、そのような状態があって、またそのようなことがあってはいけないという予防措置です。原因究明は目的ではありません。でありますからして、「かりふおるにあ丸」や「ぼりばあ丸」の沈没原因を究明するのは、もちろん参考になりますけれども、問題は、いま言った現在稼働しておる七十隻の大型船が万が一間違いがあっては困る、そこでそれらを総点検して、予防措置を講じ、補強すべきものは補強しろ、こういうことでございまして、海難審判庁の仕事とは全く違った仕事をしている、こういう意味でありますから、それによって私たちは真相を究明するのだということじゃない。真相究明のほうは海難審判庁でやっておる。この点はひとつ誤解のないようにお願いしたいと思います。
  99. 久保三郎

    久保委員 それは一つのものの考え方でありますが、いま急がねばならぬのは、大臣がおっしゃるように、現存する船をどうして安全にするかという問題、これが一番大事である。一番大事だからこそ、沈没した船の原因を究明していくことが必要だと思うのですね。海難審判庁は審判法に基づいて海難の原因の究明をはかることには違いありませんけれども、その他の機関が原因を究明していって悪いということにはならないはずであります。だから、大臣のもとに特別委員会をつくられたことについては、私は敬意を表しているのでありますが、いまのお話だと、何か予防措置のためにということでありますが、どうもその辺が釈然といたしかねますが、いずれこれは機会を改めてまたお尋ねすることとしましょう。  そこで、もう一言運輸大臣からお答えをいただきたいのは、とにもかくにも、この同じような二十次船というか、そういうものが類型的な海難にあっている。世上言われているのは、結局船価を安くするための犠牲になっていやしないかという話が出ております。事実、鋼材の使用などを見ましても、十四次船から見れば、二十次船は大体七割から九割くらいにしかなっていないのですね。いわゆる二割から三割くらいのものが鋼材の使用が減っているのです。それだけに造船技術が発達したといえばあるいはそうかもしれません。しかしながら、耐航性がなかったという原因のために沈没しておるのでありますから、そうすると、鋼材の使用を節約したためにきたのではなかろうかという疑問を抱くのは理の当然だと思うのです。  そこで、そういうものが一つ原因であるかどうかは、私は独断的なことは申し上げませんけれども、そういうふうに考えてくるならば、いまのいわゆる船のつくり方、造船屋から言わせると、船主のほうは安い船を強要してくる。それから造船屋がもう一つ言っておるのは、いわゆる鉄鋼会社から鉄鋼の値段についてこれまた圧力がかかる。結局、言うならば、そこで船主の要求にこたえてやる場合には、鋼材の使用も少しは減らさなければならぬ、工程も簡素化しなければならぬということできているのではなかろうかというふうに考えられるのは当然だと思います。だから結局ひび割れなんていうものは、一般しろうとの考えでも、薄ければひび割れもくるだろう。それから溶接忘れというようなのが何カ所も出てきておる。溶接でつけなければならぬところを忘れて溶接忘れ、何と言いましょうか、忘れた。いま普通には造船界なり何なりでは、溶接忘れと称しておるのだそうですが、つけなければならぬのが、検査の際つかっていない。そういうところに私は現在の、たとえば工期の問題ですね、船をつくる工期、そういう工程、そういうものにも無理がありはしないか。だからここで結局安い船をつくらせられる、期間を短くしなければならぬ、人手がなくなるということで溶接忘れも出てくるのではなかろうか、ということもこれまた当然の帰結として考えられる。そこで、もっとさかのぼって考えれば、どうして安い船をそういうふうに強要されるんだろうかということ、これは御承知のように、海運業というものは、他産業に従属した形で今日でもいるわけであります。日本ではちょうどそのとおりです。結局、計画造船でつくる場合の一つの保証は、積み荷保証ということです。積み荷保証は荷主の保証ということでありますから、荷主から積み荷保証としてこれということになれば、船会社はこれに応ずるためには、採算に乗せるためにこれは安い船をつくらせるという、ずっと一連の形が出てくる。そこで、いま一つ申し上げたいのは、別に鋼材が少ないか多いかはさておきまして、いまの計画造船のやり方について一ぺん考えてみる必要がありはしないか、安全のサイドから。あるいはこれからの日本海運の健全な発展のためにも考え直す時期ではなかろうかと思いますが、一言どうでしょう。
  100. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 経済性が優先していやしないか、こういう御注意ですが、これは政府としては、人命安全といいますか、航行の安全を保障することは第一の優先的な事項であります。あるいは鋼材が少なく使われておるのではないか、私も技術屋でありませんし、久保さんのほうがその点は技術がおわかりでありますが、たとえば国鉄の機関車、客車にいたしましても、十数年前といいますか、数十年前のものと今日では、厚さや何かは変わってきておると思います。鋼材自身の技術的な成長性、技術開発、こういう問題がありますからして、厚い薄いということが必ずしも安全性にかかわっておらないであろうと思います。ことに船の場合は、国際的な基準が定められておる。そうして国際的な基準をパスしなければこれは認められないわけですね。その国際的な基準がどうかこうかという議論になりますと、われわれは科学者でも技術家でもございませんので、何とも言えませんけれども、少なくとも、信用ある権威ある国際基準によってやはり船というものはつくられておる。こういう意味からいって、安全性は当然保持せられておるものとわれわれは確信をしておるわけであります。この問題は、気象の変化等によって、はたしていまの国際基準で十分かどうかという問題はもちろんありましょう。しかしながら、われわれ行政機関としては、国際基準で定められた技術基準、これを十分守ってもらいたい、これに適合するかどうかがわれわれの竣工検査の目標になるわけであります。こういう意味において、政府は決して経済性を優先させておらない。あくまで安全性。私も大臣になりましてからの委員会での所信表明の際に、科学技術の開発あるいはスピード化、こういうものが行なわれつつあるけれども、それをカバーするもの、あるいは包むものは安全性である、安全性が第一である、これが私の運輸行政に対する第一の基本方針である、こういうことを申し上げてまいっておるのであります。さような意味において、いわゆる積み荷制度というものによって、それだけのものはやるからなるべく運賃が安く——しかし関係者に聞いてみますと、必ずしも単価が安いから運賃が安い、単価がある程度高いから運賃を高くできるということではないようですが、やはりこれは製造単価に伴って、もちろん不当なものはいかぬでしょうけれども、当然料金もきめられるので、国際基準がもし高度化されたところで、造船は全世界一緒なんでありますから、決して料金には直接関係はない。こまかいことは私にはわかりませんので、関係当局から答弁させますけれども、さような意味において、いわゆる積み荷保証制度というのはそういうものではなくて、会社自身がそれだけの大きな投資をした場合に、それが償還等の問題から考えて、ある程度のものが基準的な最小限度あったほうがより便利であろうということであって、それがために運賃を安くするとか、そういう問題とは関係がない、かように理解いたしておるわけであります。
  101. 久保三郎

    久保委員 時間がありませんが、もう一つ申し上げておきます。  いまお話では、国際基準を守ってもらうように指導しておる、これで十分だというお話ではないようでありますが、何かそういうふうに聞こえましたが、私は、国際基準に合っているから、船級基準というか、そういうものに合っているからだいじょうぶだということは、この際は言い得ないのではないかと思っておるわけです。そういうのにパスしたものでも、いままさに沈没しておるのでありますから、これに対してやはり日本は日本なりの安全基準というか、そういうものを上げていくということをこの際は考えなければいかぬだろう、こういうように思うのです。だから、別に大臣のおことばにさからうわけではありませんけれども、少なくともこの際は、お話のとおり、安全第一の観点からすべてを見直していくということが必要だろうと私は思っておるわけであります。  そこで、日本海事協会の検査でありますが、これは大臣よりは船舶局長にお聞きしたほうがいいと思うのですが、ある新聞を見ますと、検査は単なる立ち会いだ、海事協会の責任者がこう言っておるのです。こういうものでは残念ながらいろいろな欠陥を発見したり指摘したりするなんということは不可能だろうと思うのです。しかも、あなたのほうの配下にある船舶検査官の要員も、いまの造船状態あるいは修繕というか検査、こういうものを見ても、これはかなり不足している。そういう中で、いま大臣がおっしゃるような国際基準を中心にして点検なり検査をしましても、これは全部できるはずのものではない。だから一部は事業所にまかせるということも考えておるようでありますが、いまのような、たとえば日本海事協会の検査が立ち会いだというのでは、何をもって国際船級でこれは一級だとか何級だとかいうのでしょうか。そんなもの権威があるはずはないでしょうが、この点についてどうでしょうか。簡単に時間内で答弁していただきたい。
  102. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 その前に、誤解があるといけませんので、簡単に言いますが、重要な問題ですが、国際基準の引き上げ、これは実は遭難がありましたあとで、私はしろうとなりに、船が大型化してきておる、かつまた工法等も非常に革新されてきておる、いわゆる自信のあるものであるかもしれぬけれども、たとえば地震にしても、震度七とか八とかいうのを対象にして建築基準というものを従来考えたが、それ以上のものがあり得ることは可能なんですね、その意味において、国際基準のいわゆる引き上げについては、日本は造船国であるから、積極的に働きかけて、そして国際基準のいわゆる強化促進に努力しろ、かような指示を与えて、目下それらについては努力をいたしておりますので、その意味においては、われわれは積極的にこの国際基準をもっと強化していったほうがよろしい。ということは、起こり得る原因というものは従来の経験を越えるものもあり得る。これはわれわれ気象の変化等を見ましても、こういうことからいってもより以上の安全性を確保する、こういう意味でも、国際基準の引き上げについては、日本は造船第一の国であるからイニシアチブをとれ、かように指示をいたしましてその努力をいたしている最中であります。
  103. 佐藤美津雄

    佐藤(美)政府委員 先ほど大臣から申し上げましたように、NK基準も国際基準でございまして、これは国際的にいろいろ会議を持ちまして、これのルールの向上にもつとめているわけでございます。  それから検査のやり方につきましては、またそれをベースにしまして、すみからすみまで見るということは、これはもちろん一応理想的でございましょうけれども、実は要点を見てこれのよしあしを判定するということが世界的な一つの慣習になっておるくらいでございます。それで今後、先生がおっしゃったように、この検査のしかた、こういう措置をもう少し拡大するかどうかという問題は、新しい問題として検討の要があると思っております。
  104. 久保三郎

    久保委員 もう時間が過ぎましたから、結論に入りたいと思うのでありますが、その前に、これは海上保安庁の方が答えてください。  この間の「かりふおるにあ丸」でも出動が非常におそい。その前の「ぼりばあ丸」でも非常におそくて、これは運輸委員会だったと思うのでありますが、当時指摘されて、今後善処する、そういうことを約束したのでありますが、それが守られていなかったといううらみがあるわけであります。それから二十四時間というか、この体制に入っていない。大体海上保安庁の出先は、官庁執務時間が原則で、朝の八時半かそこらから夕方五時でおしまいだということであろうと思いますが、しかし緊急の場合に出動があまりにおそ過ぎるというのはどうもふに落ちない。そういうためにこそあるのであって、毎日の仕事というのもあるかもしれませんが、特に巡視船艇あるいは航空機の出動が間に合わぬなんというのは、あまりにどうも本来の職分から離れていやしないか。たまたま最近でも先般チョンボをやって長官にしかられたようでありますが、海上保安庁から救難体制というか救難の職務を移そうかという話がちらほら出ている。移そうかというのは、向こうのほうが銭がかかっていて、飛行機もいいのがあるし、人数も多いというようなことだろうと思うのです。  そこで、これは大臣に聞くのがほんとうだろうけれども、あなたのほうの装備なんというものは年次計画でおやりになっているけれども、まだほろ船がたくさんあって、とてもじゃないが、あえぎあえぎ遭難場所に行くというのが実態だろうと思う。ついては新しい計画があるのかどうか、これが一つ。  それから二十四時間体制というものが非常時の場合にとれるのかどうか。この二つだけお答えいただくと同時に、救命設備については、これは船舶局長のほうだろうと思うのです。この間の遭難を見ても、救われるものが救われなかった事実があるのです。これは救命設備その他の装置が悪い点もあったのではなかろうか。それから訓練の問題もある。乾舷があまりにも高いから、沈むまで待っているほかない、飛び込めない。だから、いかだやボートをおろしても、それに乗るわけにいかない。丸ビルぐらいの大きさの船だったらたいへんです。だから結局さか立ちになって沈むまで待っておれば、今度は渦巻きに入って沈んでいく、こういうのですよ。こういうものの救難設備とか、そういうものの開発はできないものか。できないものかというよりは、これは政府自体がやっぱり開発にもっと積極的になるべきだと思う。これは総理府の総務長官にお伺いしたほうがいいけれども、これは別に船ばかりでなくて、こういう救難設備というか、そういうものの開発はてんでんばらばらにやっているのではなくて、交通安全のためのいわゆる研究開発というのは、やはり一カ所でやることが一番いいと思うのです。これは長官にお答えをいただきたいのですが、海上保安庁のほうは、いま申し上げたように、そういう話もあるが、この際どうだろう、こういうことであります。
  105. 河君一郎

    ○河君政府委員 ただいまお話がございましたまず第一点は、海上保安庁のいまの救難体制の問題でございますが、この点につきましては、陸上の部署及び船舶につきましては二十四時間体制というものができ上がっております。したがって、これは決して、私ども関係者が夜になれば帰るとか、あるいは船が夜間出動できないという状態ではございませんので、この点は御認識いただきたいと存じます。  ただ、先ほどの「かりふおるにあ」その他の中遠距離海難におきます航空機の体制でございますが、これは御指摘のとおり、現在の機材の整備状況から見まして、二十四時間体制はとり得ないということでございますので、当面の問題といたしましては、海上自衛隊その他の御援助、御協力を要請いたしますと同時に、根本的には、早急に、海上保安庁はやはり現在海難救助の責任官庁でございますので、それにふさわしい体制がとられるよう今後さらに努力してまいりたい、このように考えております。  それから、船舶につきましても、ただいま約三百隻の船舶を持っておりますが、このうち相当数のものがもう十数年以上たっておりまして、速力、装備その他近代的でないものがあることは御指摘のとおりでございますので、これは今後計画的に、できるだけ早く最も新しい装備を持った船に置きかえてまいりたいというようなことで、具体的に財政当局とも御協議を申し上げているような状況でございます。よろしくお願いいたします。
  106. 山中貞則

    山中国務大臣 海上保安庁長官のお答えにもありましたが、自衛隊に対して、いまのところは緊急の場合お願いしておるということでございますけれども、自衛隊は、もちろん国民の生命、財産を守るということは基本的な概念としてあるわけですが、海上保安庁がやはり海難救助その他には基本的に責任官庁であろうと思いますから、それらのところは、自衛隊がたとえ頼まれてみても、この間は米軍が出動してからはるかにおそく出ていって——まあ、中曽根君は何か懲戒とか叱責とか左遷というようなことをされたようでありますが、それでも米軍に対して感謝のことばを述べなければならぬというようなざまでありますから、やはり海上保安庁にもっとりっぱな海洋国たる日本、ことに海路その他から見て、極東の非常に枢要な海域を占めておる日本でありますから、こういうことはやはり近代国家らしい体制を整えませんと、恥ずかしいことの一つであろうと思いますので、これから運輸省ともよく相談をいたしまして、交通対策の基本の問題の一つとして取り組んでいきたいと思います。
  107. 久保三郎

    久保委員 最後に、総理長官に一言だけ、御要請申し上げると言ってはたいへん語弊がありますが、きのう参議院のほうで予算委員会に出られて、大阪のガス爆発、そういう問題での御答弁が新聞に載っていました。それを読みますと、いまの災害対策というものに対して、行政はばらばらである、それについて何か批判というか、遺憾であるというのか知りませんが、そういう意味の御答弁をなさっておるようであります。それは災害対策もそうでありますが、年来われわれが主張しているのは、交通安全行政もその範疇と大体同じじゃなかろうかと思う。幸い、あなたは就任以来、フレッシュな感覚で馬力をかけておやりになっているから、いろいろな問題が多少なりとも従来に比べれば動いておるやに私は見届けております。しかし、それはあなた自身の力量といったらなんでありますが、そういうことで動かしている面がたいへん多いと思っているのですよ。これは制度のせいじゃないだろうと思うのです。あなたは、非公式な席では、そういう機関をふやすのはどうもきらいだと言うが、好ききらいの問題ではなくて、現実にやはり一元化していく方向が一番正しいのじゃなかろうか。先般、交通安全の期間に入る前の新聞論調なども、それに対応した対策をとるべきであろう、こういうようなことを主張しているのであります。われわれの提案も、そういうところが実は大きな問題になっております。対策会議も、なるほどそれにこたえられる体制であるのか知りませんが、残念ながら、会議はやはり会議ではなかろうか。一歩前進して考える時期ではなかろうかというふうに私どもは思うので、ひとつお考えをお述べいただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  108. 山中貞則

    山中国務大臣 昨日の参議院の予算委員会で私が申しましたのは、大阪のガス爆発に関してではありませんで、消防審議会の答申で、地震、ことに関東大震災的な規模の地震がいま東京を襲ったらという想定の答申が出されましたので、そのことについて触れたわけであります。もっとも、災害体制というのは、常時、あるべき理想的な体制を整えていませんと惨事が起こる。起こったあとで周章ろうばいするということではいけませんので、これは国の責任として、機構その他についても、私は積極的に取り組んでいく用意をして、またその指示もすでに終わっておるということをきのう申したわけであります。  いまのあとの問題は、この基本法関係しての御意見だろうと思いますが、社会党の御対案等も十分拝見をいたしております。御意見として拝聴いたします。
  109. 受田新吉

    ○受田委員長 次回は、来たる十三日月曜日午後一時より理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十七分散会