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1970-05-11 第63回国会 衆議院 建設委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月十一日(月曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 天野 光晴君 理事 大村 襄治君    理事 正示啓次郎君 理事 服部 安司君    理事 渡辺 栄一君 理事 阿部 昭吾君    理事 小川新一郎君 理事 吉田 之久君       池田 清志君   稻村左近四郎君       金子 一平君    砂原  格君       丹羽喬四郎君    葉梨 信行君       廣瀬 正雄君    藤波 孝生君       古内 広雄君    森下 國雄君       山口 敏夫君    山本 幸雄君     早稻田柳右エ門君    井上 普方君       卜部 政巳君    佐野 憲治君       松浦 利尚君    三木 喜夫君       北側 義一君    小濱 新次君       内海  清君    浦井  洋君  出席国務大臣         建 設 大 臣 根本龍太郎君  出席政府委員         建設政務次官  田村 良平君         建設大臣官房長 志村 清一君         建設省計画局長 川島  博君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省住宅局長 大津留 温君  委員外出席者         労働省労働基準         局監督課長   大坪健一郎君         労働省職業安定         局業務指導課長 保科 真一君         建設委員会調査         室長      曾田  忠君     ————————————— 委員の異動 五月十一日  辞任         補欠選任稻田柳右エ門君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君   早稻田柳右エ門君     ————————————— 本日の会議に付した案件  建設業法の一部を改正する法律案内閣提出第  一〇〇号)  建築基準法の一部を改正する法律案内閣提出  第三三号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出建設業法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小濱新次君。
  3. 小濱新次

    ○小濱委員 私は、きょうは公明党を代表して、建設業法の当面する問題点を数点にわたって、大臣それから関係局長に御質問いたしますが、非常に重要な法案でございますので、どうかひとつ誠意ある御所見、御答弁を心からお願い申し上げる次第でございます。  私は、最終日を間近に迎えた本委員会でございますので時間の制約を受けておりますから、つとめて重複を避けながら問題点を順次お伺いしてまいりますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず、第一に建設大臣からお願いいたしますが、賃金不払い解決事件発生状況調査室作成資料で見ますると、その件数において、全産業に占める建設業割合は毎年五〇%以上、こうなっております。一体この五〇%をこえるという最大の理由は何か、こうお尋ねしたいわけでございます。また本改正案では、遅滞賃金について元請負人が立てかえ払いをすることを、大臣知事勧告できることになっておりますが、この勧告制度によって、大臣未払い件数が減ると思われるかどうか、非常に大事な問題でございますので、この点についてのお答えをいただきたいと思います。
  4. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のように、建設業界において賃金不払い事件が非常に多いということは、まことに遺憾でございます。これはいろいろ原因があるようでございまするが、まず第一に、建設業実態が、御承知のように登録制という非常に簡易な手続でたいていの人がこれを営める。ところが、建設業というものは非常に複雑な、二十数種の専門的な業種が集まってやられておるものでございます。しかるにこれが、単なる民法上の請負ということが安易に行なわれておる。それから一般国民は、建設業を営む者は相当信用があるというふうな安易な気持ちでお願いした、ところが、それが現実にはその大事な仕事をするだけの資力技術力も、さらには誠実性も欠けておったというところに、そうした者があるいは破産し、あるいは業界不振になると、えてして使っておるところの労務者に対する不払いとなる。また一方において、最近は建設労務が、ほんとうのしろうとの出かせぎ者とか日雇い者によって充足されるということがありますので、これがまた職業安定所とかいった正規のものを通らずに、いわゆるもぐりあっせん者みたいな人が中に立っておるというような、労働契約上の欠陥もある。  こういうようなことが非常に大きな原因だと思われまして、そういう点をも踏まえまして、今回建設業法改正をお願いする。それと同時に、やはり労働省とも十分連携をとりまして、出かせぎあるいは日雇いによる建設労務については特別なる配慮をしておきませんと、両方とも不測の損害を受けるというふうになりまするので、その点は、今後十分配慮いたして運営したいと思います。  具体的な事例につきましては、事務当局から説明いたさせます。
  5. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  建設業におきまする賃金不払い事件が、全産業に占める率が非常に高いというのは、御指摘のとおりでございます。先生御指摘のように、件数において五三・四%、人員において二九・五%、金額においては下がりまして三・四%でございますけれども、いずれにしてもたいへんに多い。  この原因につきましては、労働省とともにいろいろ分析をいたしておりますが、発生原因別に見ますると、倒産その他経営不振によるものが過半数を占めております。約五九・三%ということになっておりますが、そのほかにおもなものといたしましては、ただいま大臣から御説明がございましたように、就労経路が必ずしも正規職業安定機関を通さないというために、就労条件が非常に不明確である。初めに幾ら幾らどういう条件で払うという条件が、必ずしも明確でない。そのために、支払い時に至りまして両者の間に紛争が生じ、そのために賃金不払いとなってあらわれている件数が多いわけでございます。それが約一一・三%に及んでおるわけでございます。  次に、今回の改正によりまして設けられた、賃金不払い事件にかかります勧告制度が、未払い件数とどう結びつくかという問題でございますが、この勧告制度は、賃金不払いにかかる労務者の救済のための規定でございまして、その規定自体によりまして、賃金不払い事件が減少するということは考えられないわけでございますが、今回の改正におきましては、業者の資質の向上あるいは請負契約適正化、下請負人保護等に関する規定を整備いたしますとともに、特定建設業者下請業者指導する責任を負わせておりますし、また、労働関係法令に違反した業者に対します監督処分規定を強化いたしておりますので、これらは総合的に見ますると、賃金不払い事件等発生防止相当効果をあげるのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  6. 小濱新次

    ○小濱委員 同じく大臣にお尋ねいたします。  今日の日本における建設業界は、他の一般の不況な産業界の中においても盛況といわれる建設業界で、倒産件数が非常に多いということが定説であります。その原因として、これはいろいろあると思いますが、その中の原因一つとして、公共事業工事における出血受注の累積が多く、また民間における工事費支払いについても、非常に悪い状況であるといわれます。たとえばある大手メーカーでは、下請に対する支払い条件は、手形が七割あるいは現金三割で、しかも手形サイトは三カ月というものもあり、これはもっと悪いのもあるようであります。赤字受注公共工事に手を出して倒産のケースも見られるわけであります。この公共工事に手を出して倒産するという例が非常に多い。これは私ももっとこまかく調査をしてみたいとも思っておりますが、こういう状況でございますので、一般国民は、建設業界に対しての不安感を非常に強くしているわけでございます。  今回の建設業法改正によって業者体質が強化され、このような業界に対する不安感を払拭することができるかどうか、これは建設大臣からひとつ御所見をいただきたいと思います。
  7. 根本龍太郎

    根本国務大臣 非常に重大な御指摘でございます。そういう事態を踏まえて実はこの建設業法改正をお願いしておるわけでございまして、これで完全に万能薬とは申しません。しかし、それによって相当程度これを改善することができると思います。  まず第一に、官公庁公共事業になぜみんなが指名をほしがるかというと、これは御承知のように、官公庁は原則として前渡金制度がございます。それから同時に、業界業績としてこれが登録されているわけです。そういう状況でありまするから、業界のほうはもう採算よりもそこに非常に妙味を感じて寄ってくる。しからば、なぜそういうところに集中してくるかというと、登録はごく簡単な条件で許される。一たん登録して登録業者になった以上は、初めて出たものも、早く業績を積み重ねたいというところのものが、経済的にあまり条件のよいものでなくとも、大手の下請負業として一つ業績を固め、それからだんだんに積み重ねていこうとする傾向がどうもあるようでございます。でありまするから、大手のほうもそういうものがたくさんある以上、できるだけ自分の利潤をあげるためには、自分に有利に、したがって下請なり孫請負条件が悪くても、それに安んじてついてくるならば、それを安易にやろうという傾向がどうしても出てくると私は思う。  そういう観点から、今度の業法改正によりまして、特定建設業というものをちゃんと許可する。それだけが下請をちゃんとやれる。そのかわり、下請もちゃんと責任と権利が保護されていくという制度がどうしても必要だ。それから、できるだけ良質にして——良質ということは、誠実で事業能力があり、技術能力もあるという意味ですが、そうしたものについて建設業を許すということでなければ、一定の簡単な条件さえあればどんどん自動的に登録される、そうしてその上に、その登録されたものは、もう二十数種に及ぶところの複雑な専門のいろいろの事業も含めた総合建設、いわゆるゼネコンまでやれるというこの制度自体に、非常に不安定と同時に、そこにいろいろの障害が起きる原因がある。その意味で、この業法改正は、ある意味においては一般国民保護であると同時に、業界保護育成にもなる、こういうふうな考え方をいたしておる次第でございます。
  8. 小濱新次

    ○小濱委員 大手鉄鋼材その他の材料問屋倒産のデータをあげておりますが、非常に公共工事請負をした業者倒産率が多いわけです。そういう点で非常に大きな悩みを訴えられておりますが、この点についてもひとつ大臣から、また今後よろしく御検討をお願いしたいと思います。  次に、同じく大臣にお尋ねいたしますが、私の所見を申し上げるなら、なるほど今回の改正案について、当院としてはかなり思い切った修正案を用意しておられます。しかし、登録制度許可制度になることについてはたいへんな問題が生ずると、このようにわれわれには想像されているわけでございます。今日における国民大衆には、マイホームの夢を実現するために家族全体が働いて貯蓄して、そして努力をしている人がずいぶんと見られるわけでございます。それだけに、今後そのマイホーム建設を依頼する人を選ぶわけでありますから、そのような場合に、許可を受けた業者と受けてない業者については、発注側としても当然警戒するのはこれは当然でございます。この法が施行された場合、善良な正直にこつこつと今日まで住宅建設や増築に尽くしてきた一人親方等が悲しい目にあうのではないかという、こういう心配をする向きもあるわけでございますが、その点について、当局はどのような考えをお持ちになっておられますか。   〔委員長退席大村委員長代理着席〕 結局、これは弱い業者、一人親方等人々が、近き将来倒産される心配が出てくると、こう思われるわけでございます。これら善良な人々に対してはどのような手を打たれようとするのか、一人親方に対する助成措置についてお答えをいただきたいと思います。
  9. 川島博

    川島(博)政府委員 今回の建設業法改正によりまして、登録制度許可制度に改めることにいたしましたが、従来から技術信用によって誠実に請負を行なってまいっております一人親方等零細業者につきましても、累次質疑で明らかにいたしてまいりましたように、許可を受けるよう十分配慮をいたしておるわけでございます。また今回は、現行法登録適用除外金額許可に改める際に、この金額を引き上げることが予定されておりますので、従来、登録を受けなければ請け負うことができなかった工事でも、許可を受けないまま請け負うことができることにいたした次第でございます。  ただ、私どもの希望いたしますことは、一人親方等の皆さんは、今回の法改正によって相当大きな家まで許可なしに請け負うことができることになりますけれども、せっかくそういう一人親方方々には、許可申請を出せば許可をしてあげようという体制になっておりますので、ぜひこの許可をお受けになるということを希望するわけでございます。またそれが、一般の零細な発注者も安心してそういった一人親方方々仕事を依頼することができることになりますので、法律上は許可がなくとも請け負うことができる工事でありましても、できればそういう一人親方方々許可を受けて、こういう発注者の信頼にこたえるというふうにしていただきたい、こういうふうに熱望いたしておる次第でございます。  また、今後大工、左官等のいわゆる一人親方育成のためには、やはり技術向上でありますとか経営の改善をはかることが必要でございますので、技術共同研究なり機械の共同利用、あるいは資材の共同購入等を行ないますために、協同組合なりあるいは企業組合等による企業協同化を推進していただく。こういう法律に基づきます企業協同化が行なわれますと、金融、税制措置あるいは共済制度等、非常に優遇措置法律で講ぜられるようになっておりますので、ぜひ今後、こういった零細業者体質改善して力をつけていく方向指導をしていきたい、かように考えている次第でございます。
  10. 小濱新次

    ○小濱委員 さらに大臣にお尋ねいたします。  わが国において今後の建設業界を見るときに、大手建設業者中小企業業者及び零細な一人親方のような業者、こう三つに分けられると思うわけであります。この三種類の業。百は、それぞれ特徴があると思うわけです。そこで、これらの業者について、その特質が生かされるような方法なり方向を示していくことが大事ではないかと思います。たとえば、日本における大手の二十社を見ると、その受注は国内におけるものが大半のようでございます。このような場合、企業資金力技術信用度をもって、その受注金額によってA級工事はどのクラス会社、あるいはB級工事はどのクラス会社、また零細な業者工事はどの程度会社ときめていくような方法を講じていると聞いておりますが、その現状はどういうふうになっているのか、これは非常に大事な問題でございますので、お答えをいただきたいと思います。
  11. 根本龍太郎

    根本国務大臣 後ほど事務当局から御説明いたさせますが、御承知のように、ダム工事のような大きな工事あるいは高速道路とか非常な長大橋というようなものは、どうしても技術的にも中小企業では無理な点があります。そういうものは主として大手業者のうち、そうした専門的な技術並びに資力のあるものでやらせることにいたしまして、これも非常に金額の多いものと中くらいなものとに分けてやりまするが、大体A、B、Cの三クラスぐらいに分けておるはずです。それに基づいて、一人の業者だけが入札だから何でもとるということにならないように、できるだけ指名平均化をはからしてやる。しかし、指名された中においては自由なる競争ということをやらなければなりませんですが、指名機会平均化していく。それから、中小企業でも非常に内容が充実して、技術者誠実性相当のものだという場合には、ジョイントベンチャー方式をもちましてかなりの大型仕事まで引き受けることができるように指導しております。それから、建築は非常に大きなものと小さなものがございますので、大きなものは大手ジョイントベンチャーをさせる場合もあります。その下請負に相当中小企業を使えることになりますれば、そういうものも配慮しつつ、大手中小企業とのジョイントベンチャーも場合によっては指導してやらせる、こういうことをやらしております。  それから、地建を通じまして発注するところの仕事相当ございまするが、地建においても大体いま申し上げたような方針に従いまして、各クラスにできるだけ機会均等配慮のもとに発注させるようにいたします。なお、今度は地方において都道府県がやられる工事は、主として都道府県知事が主体となりまして、大部分が地元業者発注されております。地方自治体の工事も、特にむずかしいとか大きいものは専門的な大手にやらせる、こういうふうな状況でございまして、全体としては均衡ある発注をするように指導いたしておるのでございます。しかし、実際仕事を受けた実績を見ると、いま御指摘になりましたように、大手のほうがわりあいに受注量が多いということは、それだけ現在の政府関係工事大型化してきたということがいわれると思います。この点も、大型化をいたしましても、もしこれがジョイントベンチャー等で確実に中小企業責任をもってやれるものについては、できるだけそういう機会をふやしてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  12. 川島博

    川島(博)政府委員 等級別発注標準でございますが、これは中央建設業審議会から勧告を受けました、建設工事入札制度合理化対策に基づいて定めておるわけでございますが、現在定められております基準は、昭和四十年の十二月に中建審から勧告を受けたのでございますが、A、B、C、D、Eに分けまして、A級工事は一億五千万円以上、B級工事は五千万円から一億五千万円未満C級工事は千五百万円から五千万円未満D級工事が三百万円から千五百万円未満E級工事が三百万円未満、こういう五階級に分かれておる次第でございます。この工事の規模に応じまして、入札参加を希望する業者について事前審査を行なって、等級別に格づけをいたしておるわけでございまして、工事業者の大きさ、これを見合うように業者発注するということをたてまえとしておるのでございます。
  13. 小濱新次

    ○小濱委員 発注標準についてはわかりました。  次に、局長にお尋ねいたしますが、元請負業者から下請業者に、またその下請業者にと、発注された仕事が回されているわけですが、現在の状況であると、法案によると不当な下請代金の禁止の規定がございますが、この判断は具体的にはどのようになっておりますか。これは局長からお答えいただきたいと思います。
  14. 川島博

    川島(博)政府委員 改正案によりますと、「その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額請負代金の額とする」ことを禁止しておりますが、その判断の基礎となります「通常必要と認められる原価」というのは、標準歩掛かりとかあるいは時価による単価等を用いることによりまして技術的に算定する考えでございます。なお、「通常必要と認められる原価」の計算方法につきましては、具体的に指示をいたしまして、その運用に遺憾のないように指導してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  15. 小濱新次

    ○小濱委員 労働省大坪監督課長おいでになりますか。——ちょっとお尋ねしたいのですが、建設労務者、特に建設事業に関する季節労務者待遇等について最近よくなっている、こういうように聞いておりますが、しかし、一家の主人の蒸発、未連絡は依然として非常に多いと聞いておるわけであります。これら季節労務者の中で行くえのわからない者の数はどのくらいありますか。
  16. 大坪健一郎

    大坪説明員 ただいまの御質問でございますが、季節労務者が、主として建設業でございますが、就労される目的で求人に応ずる場合に、まず公共職業安定所あるいは市町村を介しておいでいただく場合は、蒸発のような例は非常に少のうございますし、かつ追跡が可能でございますが、たいへん残念な現状でございますけれども、なお相当の方が、出かせぎをされるときに、二何と申しますか、そういう公式のルートでない線から御就職になるようでございまして、そういう場合には、残念ながら経路が私のほうでもつかめておらないわけでございます。
  17. 保科真一

    保科説明員 出かせぎされました方が行くえ不明になった状況を、全国的に調査したものはございませんが、青森県の調査といたしまして、青森県で出かせぎされます方が大体五万五千人くらいでございますが、そのうち行くえ不明になりました方が二百九名、割合にしまして〇・四%という資料がございます。それから東京、大阪、札幌、名古屋に出稼援護相談所をつくりまして、出かせぎされました方のいろいろな御相談に応じております。  四十二年の十月から二年半の状況でございますが、約一万五千くらいの相談がございまして、そのうち二百件が、行くえ不明につきまして、家族とかあるいは市町村からの調査依頼でございます。全国的には調査したものはございませんが、新年度におきまして出かせぎ関係実態調査を実施することにしておりますので、それによりまして、全国的な状況を把握したいというふうに存じております。
  18. 小濱新次

    ○小濱委員 さらにもう一点お尋ねしますが、季節労務者雇用形態賃金宿舎等設備はどのようになっているか。これは労働省でしょうか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  19. 大坪健一郎

    大坪説明員 御承知のように、ただいまたいへんな労働力不足の時代でございますので、出かせぎされる方々賃金も、一般建設業賃金としては、建設業労働者一般方々と同じ状況でございます。問題でございますのは、先ほどお話がございました、就職をされますときに労働条件を明確にされておりませんために、賃金不払いが起こる、あるいは起こった賃金不払いを処理する方法に、非常に困難があるという問題が一つあるわけでございます。  それから、寄宿舎等につきましては、最近相当改善されてまいっております。従来事業場付属寄宿舎につきましての規定がございまして、それが一般的でございましたのを、昭和四十三年の四月に特別に建設業寄宿舎につきましての規程を新しく設けまして、それによって監督指導いたしております。昭和四十三年の九月に寄宿舎状態について、四千八百五十件ほどの件数について監督をいたしました結果でございますが、一番問題がございまするのは、寄宿舎一般状態相当改善されておるのでございますが、火災の場合の警報の設備でありますとか、あるいは消火設備でありますとか、あるいは労働者が居住される場所の物の入れ場所でございますね、押し入れ等設備、そういうどちらかといえば付属的な施設についての状態があまり芳しくないという結果が出ておるわけでございます。  それから、賃金不払い等が起こりました場合の確保対策でありますけれども建設業の場合は下請、孫請等重層的なものが非常に多うございますので、私どもの出先でございます労働基準監督署賃金不払いについての申告がなされる場合に、状況その他について明確なお話がございますれば、下請に限らず元請までさかのぼりまして、不払い事後処理指導いたしておりまして、元請が責任をとって賃金不払い事後処理をするような場合も、最近若干ふえておる傾向にございます。それから、都道府県などと建設業界とが協力をされまして、出かせぎ等で出てこられた労働者方々賃金不払い補償制度をつくるという動きも見られておりますので、私どもといたしましては、そのような業界の自発的な協力による労働条件改善賃金不払い防止等措置には、ぜひ積極的な援助を申し上げたいと考え指導いたしておるところであります。
  20. 小濱新次

    ○小濱委員 もう一点お尋ねしますが、季節労務者が労働災害を受けたとき、たとえば不幸にして死亡した場合、重傷を受けた場合、程度の差はあっても後遺症が残った場合等の救済措置というか、労災保険とも関連して、これらの場合に支払いされる金額等はどういう実態になっているのか、もう一点お答えいただきたいと思います。
  21. 大坪健一郎

    大坪説明員 建設業につきましては、労災補償保険は完全な適用がございます。たとえば、商店等につきましては四人未満は労災の適用がございませんが、全員について労働者災害補償保険法の適用があることになっております。なお、労働基準法の八十七条によりまして、元請、下請関係にある場合におきましては、原則として元請が労災保険の保険料を払う責任を持っております。   〔大村委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、下請でありましても、下請事業場の責任者が保険料を払ってないというような状態がございましても、たてまえ上元請がこれを払うことになっておりますので、その労働者の方方に保険金が支払われるような仕組みになっております。  保険金の額その他につきましては、前提条件といたしまして、御本人の賃金、勤務の形態、勤務の期間等ございますけれども、全般的に申しまして、一般労働者と全く同じ扱いになっておるわけでございます。たとえば、ただいま労災保険につきましては国会に改正案が上程されておりますのでございますが、死亡の場合の一時金は、従来四百日でございますが、このたびの改正案で、もし改正案が国会で御承認になるという場合になりますと、千日分の一時金が支払われるというような状態でございます。
  22. 小濱新次

    ○小濱委員 川島局長にお尋ねいたしますが、今回の改正によって、重層下請は具体的にどのように改善されるのか、説明願いたいと思いますが、できれば、工事の内容にもよりますが、孫請までで終わるような措置がとれないものかどうか。私もいろいろ聞いておるわけですけれども下請もたくさんある。そのまた下請がある。たとえば親請、子請、孫請、ひこ請というのですか、非常にたくさんなつながりができているようでありまして、こういうところにやはり問題が生じるのではないか、こう危惧されるわけです。この孫請までで終わるような措置がとれないかどうか、この点についてお答えいただきたいと思います。
  23. 川島博

    川島(博)政府委員 今回の改正によりましては、下請契約を規制する規定、たとえば下請契約書の取りかわしでありますとか、不当に低い下請代金の禁止、一定期間内の下請代金支払い等の規定が整備をされましたので、これらの規定は、各段階の下請契約にも適用されることになっておるわけでございます。さらに、一定の金額以上の工事下請させる建設業者につきましては、特別の許可制度、すなわち特定建設業許可という制度をしくことにいたしまして、下請代金支払い義務を強化いたしますとともに、その工事現場内で作業をするすべての建設業者が、関係法令の規定に違反しないよう指導、管理する責任を負わせているわけでございます。また、建設大臣または都道府県知事は、特定建設業者工事現場で賃金不払い事件発生した場合においては、当該特定建設業者に対しまして、不払い賃金の立てかえ払いその他適正な処置を講ずることを勧告することができることといたしましたので、不必要かつ不当な重層下請は十分チェック、排除され、下請制度改善がはかられるものと考えております。  なお、重層下請をある程度で切れないかという御質問でございますが、御案内のように、建設工事は二十数種類の専門工事を組み合わせまして、それぞれ専門の下請業者によって分業的に行なわれるものでございますから、工事の規模、内容等によりましては、二段階以上にわたる下請施工がなされることもやむを得ない場合が多いわけでございます。したがいまして、このような下請工事を一がいに禁止することはできないわけでございますが、特定建設業者下請施工の実情の把握につとめ、できるだけ重層下請を避けるようにつとめるべきでありますし、またそのように指導してまいりたいと考えておる次第でございます。
  24. 小濱新次

    ○小濱委員 重ねて大臣にお尋ねいたしますが、現在木造建築の場合、住宅一戸の平均は二十五坪ないし三十坪、こうなっているようです。坪単価が九万円から十五万円程度が多いようでございます。二十万円程度の木造建築もかなりあるようでございます。したがって、かなり工事金額がふえております。この傾向許可制が無関係とは考えられないわけでございます。私たちから見れば、どうしても将来三百万円の調達能力、信用保証、担保がないものは切り捨てられる、こう考えざるを得ないわけですが、登録制の場合は原則として切り捨てはできないようにこれはなっているようでございます。なぜなれば、欠格条件として、改正案現行法と比較して、現行法にないものを登録の欠格条件として加えることはできても、登録制である限り、資本金等によって登録条件を定めることはできない、こう考えられるからでございます。不良業者排除ということならば現行法の第十一条、この登録の拒否を改正第八条により補強すればよい、このようにわれわれは考えるわけでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  25. 川島博

    川島(博)政府委員 従来の登録制度によりますと、要件が非常に軽易、画一でありますため、施工能力や資力信用の明らかにない業者を排除することが困難でございましたので、今回の改正案を提案いたしたわけでございますが、欠格要件につきましても、もちろんこれを強化する必要がございますので、今回の改正案では、一年以上の懲役または禁錮の刑に処せられた者とか、建設業法建設工事の施工若しくは建設工事に従事する労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるものに違反して罰金以上の刑に処せられた者は、処分の日から二年間は許可を受けることができないという要件を追加したわけでございますが、欠格要件という形では定め得ない、建設業に関する経営経験でありますとか、あるいは不正、不誠実、財産的基礎等にかかわる積極的な要件を新たに加えましたために、従来の登録制度許可制度に改めることにいたした次第でございます。  ただしかし、現に登録を受けて仕事をやっておられる中小あるいは零細な業者につきましては、過去三年間登録または登録を受けて継続して営業した実績を持っております者につきましては、特にこの許可にあたって配慮することにいたしまして、御不自由をかけないということにいたしておる次第であります。
  26. 小濱新次

    ○小濱委員 最後に、大臣にお尋ねしたいのですが、適用除外業者は、許可業者に比較して受注にハンディを負うことになるのではないか。建設業法の中に、数十億円の工事を常時行なう大業者と一件十万円前後の小工事下請まで、一つ法律の中で公平に保護育成しようとするところに無理があるのではないか、こういうふうに考えられますが、中小零細企業の絶対多数の業態の中では、中小零細企業者保護育成が必要である、こう考えられます。また工事発注者にしても、公共工事のようなこういうものから、企業発注者のほかに、住宅等国民個人の発注者もある。しかも、大半が受注生産であるところから、零細な発注者保護することと零細な業者保護育成するために、建設業法から分離し特別な法律を考慮する必要があるのではないか、こういうふうに考えられます。したがって、単に建設業法許可制を採用しても、この現状は少しもよくならないのではないか、こう考えられますので、この点についてはどういうお考えをお持ちになっておられましょうか、お伺いしたいと思います。
  27. 根本龍太郎

    根本国務大臣 建設業法は、御承知のように業界に対する指導監督のほかに、一般国民保護するということがその目的の中に含まれておるわけでございます。いま御指摘にありました大手、それから中小、それから一人親方、零細企業に至るまで業法保護育成のことを全部規定するということは無理でございます。保護育成は、ある意味においては行政の面でやることもできるし、他のまた金融とか中小企業等のいわば産業行政としてこれは考えるべきでございまして、それを全部業法で消化するということは、御指摘のとおり困難でございます。  したがいまして、御指摘の点は業法と関連は直接持たなくとも、中小企業振興の意味において、あるいは零細企業育成強化、あるいは行政指導等、こういう点で十分配慮して、いま御指摘の点に万全を期してまいりたいと考えておる次第でございます。
  28. 小濱新次

    ○小濱委員 一言申し上げます。  この改正案は、請負契約下請契約の改善について若干見るべきものがございますが、しかし、建設業が当面する諸問題を決して解決するものではなく、むしろ許可制の導入によって、逆に一人親方等零細業者を圧迫し、また建設労働者、小さい下請業者に対する保護についても、元請の責任は必ずしも保障されておりません。このように、零細業者建設労働者を圧迫するこのたびの改正案には、大衆福祉の立場からわが党は反対せざるを得ません。  終わりに、本法案の成立の際には、政府の一段の検討と御配慮を心からお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。たいへんありがとうございました。(拍手)
  29. 金丸信

    金丸委員長 井上普方君。
  30. 井上普方

    ○井上委員 私は、建設業法につきまして若干質問をいたしたいと思うのでありますが、時間の関係もございますので、簡単にひとつ御答弁願いたいと思います。  私は、この業法改正につきましては、なぜ許可制を導入するのかという点について合点がまいらないのであります。と申しますのは、一つには、国民各層におきまして許認可事項というものは、官僚あるいは権力が介入する道が非常に多い。したがって大衆は、この登録制を新たに許可制にするということに対しましては、大きな危惧を持っておるのであります。それは過去のいままでの行政が、大衆をそのように思わしめておるのであります。しからばこの許可制にして——この建設業法許可制の導入について、大臣もいろいろと理由を説明されましたが、しかし、現在の登録制のもとにおいてそれができないか。大臣がおっしゃっておられるもろもろの許可制を導入するについての理由、現在の登録制のもとにおいてできないかといいますと、できないことはないと思うのです。  たとえて申しますならば、先般来建設当局がお示しになっておられる不良事業、粗漏工事、これらの件数にいたしましても、先般、東京周辺において二百八十くらいの件数があるのだ、こう言われました。それは何年間にそれくらいあったのか知りませんけれども、しかし、現在の建設業法のもとにおきましても、業者の営業の停止なりあるいはこういう行政措置はできるのであります。しかし、いままでの登録の取り消しあるいはまた停止というものを見てまいりますと、過去二十年間に行なった数字といいますものが、わずかに百件に満たないのであります。こういうようなところに、現在の粗漏工事を行ない、あるいはまた国民大衆に迷惑をかけておるところがあろうと思うのであります。  したがって、いままでの行政的手法によってできるはずのものをやらなかったのは、建設当局であるといわざるを得ないのです。私どもは、どうもこの許可制につきましては、そういう粗漏工事の面におきましては、これは建設当局の行政指導あるいはまた行政力が、それにあまりにも無関心であり過ぎたがためにこのような結果になっておるのではなかろうか、このように考えられるのであります。大臣の御所見を承りたい。
  31. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のように、現在の登録制度でもチェックすることは、法律上は可能なようになっています。ところが、現実にはこれがなかなか実行できないということは、そうした業界をずっと監督するためにたくさんの人間を配置することよりも、現実の建設事業そのものをやる体制になっているということにも、これは行政上の若干の不備が確かにあると思います。しかし、現実には、御承知のように非常に安易にどんどんどんどんと登録して、ふえるものは、十年間にたいへんな、他の業界に比較することのできないほどの増加率です。しかもその増加したものが、簡易な条件許可を受けたものが非常に高度の仕事までもあえてしようとする傾向に出てきます。一たん許可された以上はできるだけの大きな実績をつくりまして、そうして一つのシェアを確立することによって伸びようとするところの動きがある。実力以上の機械力を持ったり、実力以上の発注をしたり、今度は実力以上の競争に入っていく。そのために、先ほど来いろいろ御指摘がありましたように、破産、倒産が非常に多い。今度はそれに伴う賃金不払い。のみならず、一般民間から購入した代金の踏み倒し、こういう事態が現実に起こっておるわけでございます。これは現状のままではどうしても防ぎ切れない。やはりその点からするならば、国民の生命、財産に密接なる関係ある建設業界は、もっとシビアな条件許可することが一般国民の利益を保護するゆえんである、同時にまた、それはひいては業界それ自身が健全に発展するゆえんである、ある意味においては業界保護になる、こういうふうに考えるのでございます。  いま井上さんの御指摘された点については、それ自身としては意味のあることでございますけれども、総体からするならば、やはり許可制度のほうが、われわれとしては国民全般並びに業界全体の健全なる保護育成になる、こう見ておる次第でございます。
  32. 井上普方

    ○井上委員 私は、大臣の御答弁を承りまして、現在の登録制のもとにおいてもチェックすることはできる。ただそれをやるには、めんどうくさいとかあるいはまたそれをやる人が足らぬとかいうのは、これは言いわけにすぎないと思うのです。単に許可制にいたしましても、やはりそういうようなチェックする機関というものが必要になってくるのじゃございませんか。私は、どうもその点が納得がまいらないのであります。  もう一つ、私、後ほど申し上げようと思いましたが、いま大臣は、倒産が多い、あるいはまた業者の数が多くなってくる、これもそのとおりでしょう。しかし、いままでの権力と申しますか、行政がこれを助長さしておる傾向はありはしないか。たとえば業者が多くなるのは、これは地方末端にまいりますとよくわかるのでありますが、知事がかわりあるいはまた市長がかわるといいますと、新しい業者登録をしてくる。そしてその変遷を、発注状況を私は統計的に調べたことがございますが、権力者がかわるととたんにある業者指名に入る回数が多くなる、あるいはまた受注する金額もぐっとふえてくる、そして前にはよかった業者が悪くなってくるというようなことが、かなり大きく響いておるのであります。それが、一つはこの倒産原因ともなっております。全部とは申しません。  それから、もう一つの金詰まりの面でございますが、特に官公需におきましては、大臣が先ほど来おっしゃっておられるのは、公共事業に対しましては単価が低いんで、あるいはその実績をとるため、あるいは前渡金がほしいために仕事をしておるのだというようなお話がございますが、これはちょっと話が違います。いかにも建築でございましたらそういうことはあり得るでしょう。しかし一般土木につきましては、そのようなことは私どもはいま考えられないのであります。大手業者がどんどんと中小企業の分野にまで入っていっておる現在の実情を見ますと、やはり公共事業というものがある程度甘いものであることを物語っておると私は思います。  さらにはまた、この前渡金制度によりまして大体四割を受け取ることになり、その金利も非常に安い。しかし、その請け負った下請業者は、先ほども小濱君から話されましたけれども、これは現金を渡されるのは三割ぐらい、あるいはまたそのあとは手形決済になって、手形は三月の手形なんといえばいいほうでありまして、ひどいのになるとお産手形というのも発行せられておる。すなわち元請が下請に対して、片方においては元請が前渡金をもらってきておる。しかもその上にピンはねをして下請に渡す。下請手形というものが三カ月あるいはまた半年というような長い手形決済がなされておる。ここで資金繰りがだめになって例産しておるのでないかと私は思うのであります。したがって、そこらのことをぴしりとしてやれば、金詰まりによるところの倒産なんというものは、非常に下請業者にとっては助かって、例産件数も少なくなってくると思うのであります。事実この例産の実例を建設省から出されております資料で見ましても、他の業界と比べまして一件当たりの負債金額というものは非常に低いようであります。  こういうようなことを考えて見ますと、そういうところに政治といいますか行政があたたかい手を、あるいは大企業、元請に対する規制をかっちちりとやるならば、例産件数も少なくなってくるのではないか、このように考えられるのですが、大臣、どうでございますか。
  33. 根本龍太郎

    根本国務大臣 この点は、先般来各委員と、特に野党の皆さんとの意見の食い違いの点でございまして、どうもこの点は、私もあなた方の言うことをそのまま聞くわけにいかないのです。現実に各地方におきまして、これは知事市町村町のみならず、地方議員の改選に伴って非常に登録業者が多くなって、その登録業者が多くなると同時に、指名せい、指名せいということで各地方自治体に殺到してくるという事情は聞いております。こういうことは、私はむしろ登録制というものがあれば、とにかく安易にほんの簡単な条件のもとに自然的に業界に出てくることができるわけですから、そうすると、一たん登録せられた以上仕事を持たなければしようがない。そうするとどうしてもそこに殺到してくる。そうすると条件が悪かろうが何であろうが、実績をかせがなければできないというところにいろいろの無理な受注をする。そういうところから、孫請やひこ請まで引き受けてくるというような現象がふえてくると考えておるのであります。  そういう意味で、現在の登録制度でもそうした状況から出てくる不当あるいは不正工事等を防げるということは論理的にはいえましょう。しかしながら、幾ら論理的に可能であっても、現実がそれに伴わぬ場合は、やはりそれらの欠点を是正するような立法措置をとることが、政治としてしかるべきだと私は思うのです。そういう意味でこの業法改正をお願いしておるわけであり、また下請負と親請負との関係における状況も、もしこれがそれほどの不当競争というか過当競争がなかりせば、そういうふうな不利な条件であえて引き受ける者はないはずです。親元のほうは前渡金を受けておる。下請負のほうは、前渡金どころか長期の手形決済だ。初めから採算が合わないならこれをやるはずがない。にもかかわらずあえてそれを競って受けるということは、いかに過当競争がひどいものかということです。現状のままではそれを防ぐことができませんから、業法改正して親請負責任を明定し、下請をするところの建設業というものは特別の認可を受けなければいけませんよという条件をつけておるわけです。そして今度は、そういうふうに特定建設業として許可を受けたものは自分下請に対して責任を持たせられる。こういうことで、いま井上さんが御心配になっておる点は、その点でこれは大きく改善されると思います。これは下請負から孫請負も論理的には可能であるけれども、そこになってくると私はむしろ中小企業保護になる、かように信じておるのでございます。  それと同時に、先般来申し上げましたように、もう近く建設業界として資本自由化を当然やらなければなりません。そうなってきた場合、現状でいきますと相当大型工事というものが日本においては国際競争の一つの非常に良好なるマーケットになってくる。このときにあたって現状のままでいきますれば、大手、中小といえども相当の打撃を受けるのじゃないか。それと同時に、現在のような状況下において業法改正せられないままでいくならば、金融面において弱いところの中小企業はあげて海外の業界になびいていってしまって、結局は今度はその面から、日本の今後相当大きく発展する産業界が、外資によるところの支配体制をむしろ助長するということになるのじゃないか。  そういう点をも考えまして、いろいろ野党の皆さんが、一人親方保護とか中小企業保護——それはそれとして保護いたしますが、私は全体として、これは業界自身の健全なる発展と同時に、国民の非常に重大な関心を持っておる、先ほど来御指摘のありましたマイホームの夢をくずさないためにも、こうした改正が必要であると考えておる次第でございます。
  34. 井上普方

    ○井上委員 ただいまの大臣の御答弁の中で、この業法改正で、下請保護の点についてある程度前進しておることは私は認めます。しかし、こういうように下請業者倒産していく、それをいままでに規制しなければならなかったのではないか。また、現在の前渡金の制度にしましても親元だけがいい。そうして下請のほうは、これは大臣、過当競争だとおっしゃられました。過当競争であることもこれは事実です。しかし、過当競争は事実だけれども、なぜそういうようになっておるかといいますと、大手業者が、はっきり言いますと、Aランクの業者がBランクの方にも入ってくる。Bランクはシェアが少ないから、したがってCランクのところまで入らざるを得ない。上のほうにはいけませんから、どんどん下のほうへ下のほうへと押しつぶされていっておるのが実情です。したがって、採算は合わぬけれども、自転車操業するためにはどうしてもやらざるを得ない。そうでなければ、自分のところの職人あるいはまた労働者に迷惑をかけるというので、泣く泣くそういう形になっておる。むしろここで行政的にいうならば、Aランクの者はBランクのほうへは入らさない、一億五千万円以下の工事には入らさないというチェックがいままで建設省においてなされていない。  一例をあげますと、私の国元でこういうのがあります。Aランクの大成建設が、普通の道路工事です、舗装工事です、二千二百万円のものに入ってきている。そしてそれを請け負っておるのです。どうしてそういうようなことになったのだと言って私らは聞いてみますと、いや、これは地建のほうで、この工事、この工事、この工事はもうA業者に渡してしまうのだということが、予算配分が、個所づけが行なわれたときにきまっておるのです。だから、私らはあそこに入らない、むしろ向こうから入ってくるのですということをはっきりと申すのです。私もこの業法改正について、実は建設業界から陳情を受けました。陳情を受けたときに、しからばあなた方この業法改正案によって何を得するのだと言って聞きますと、私どもにはこれはあまり影響はございませんとはっきり申します。それでは何で頼んでくるのだと言えば、許可制にしたほうがいいというような、全くあなた方のベースでの考え方を言われる。オウムのごとくです。中央から地方にいったそのままの答えが返ってくる。おかしいじゃないかと私が突っ込むと黙ってしまう。そしてあなた方は得をすることはあるかと言いますと、ありません、結局そういうことになる。それよりも、むしろ大手業者中小企業の分野に入ってくるのを防いでくれというのが彼らの願いなんです。中小企業が当然受け持たなければならない分野にまで大手業者がどんどんどんどんと入ってきておる。この実態中小企業のシェアを狭め、そして過当競争におとしいれておる大きな原因なんです。  ここらあたりを大臣御認識になって、そしてこれをチェックする方法をあなたは考えなければ、過当競争はますます激しくなるでしょう。倒産はますます多くなるでしょう。この点についての大臣の御所見を承りたい。
  35. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいま御指摘の点は、私もある程度その点は事実を知っております。そういう意味から、私のことを申し上げてはなはだ恐縮ですが、十二年前私が建設省を担当しておったときにランクをきめまして、国直接の発注をする場合、これは地建も含めまして、一定のランクには大手を使い、それから地建工事でも、地方の建設業界で消化し得るものはできるだけそれに受注さすべし、それから府県工事は、よほどの専門的な大型のものでない限り、できるだけ従来地方自治体の仕事をした者にやらすべしということで、ずっとやってきております。ところが、その後だんだんと大手業者の中にも過当競争というか、競争が激しくなりまして、それぞれの地方に支店を置くと、支店が独立採算制をとるために、それがだんだんと地方の工事をとっていくという傾向が出てきたものと私は思われるのでございます。  それと同時に、今度は地方自治体がいろいろの工事をやる場合に、財政上の関係で、いわゆる立てかえ工事方式を相当とってきた傾向があると見られるのです。立てかえ工事というのは相当資力を要する。そうすると、地方の業界にやらせることができないで、いわゆる中央業者指名するという状態相当多くなってきたように私は見られるのでございます。その点が、いま井上さんが御指摘になったような問題として相当出てきているのではないかと思われます。  こういう観点から、先般来いろいろ御指摘がありましたように、建設省としては、一応の国全体の公共事業発注量が予算化された場合、わかっておるわけですから、大手と中小と地方自治体とできるだけバランスをとってこれを受注させるというふうに指導すべきだということで、私はそういうふうに指示しております。ただ、そういうことをやるためにも、理論的に見まして、登録制度ならば、だれでも技術者一人あれば、登録さえ受ければどんどんできるということになれば、どうしてもバランスがくずれてしまいます。そこで、これは一定のはっきりしたところの信頼性あるいは財政的基礎、それから従来の経験というものがある者について許可するということになりますれば、そこにおのずから相当の人たちがこれに携わりまするから、これらの経験その他があれば、いまこんな状況下でどんどん無制限にやるならば、これは自分たち自身の破滅になるということがみんなわかります。  ところが、最近の状況を私は見ておる場合に、中小のうちの小あたりは、全然経験のない者が、農家の人が農地を売却した、そのために五、六千万円の金が出てきた、何をやろうか、建設業相当もうかるじゃないかということでだれでもそれをやっている。そういうのがずいぶん地方にあります。あるいは他の商売をやっておる人が、土建のほうにいけば前渡金をもらえるということで、県あたりに、経験のない者が一、二の技術者を雇って出てくるという者が相当あるようなんです。そういうような状況では私はいけないと思いまするので、井上さんがいま御指摘になりました点については、今後ともこれは建設省だけではできません。地方自治体も相当協力してもらわなければなりませんが、私はそういう点は、行政指導でいま御指摘になった点は是正すると思いまするが、そういう観点をも含めまして私は業法が必要であると思うのでございます。  どうも、井上さんはいいところまで理解されておるけれども、肝心の点ですれ違いの議論になりまするので、そこがどうも、野党のうち特に社会党の方々との認識の違いが出てくるところで、これがあるいは政治的なものの考え方の違いかとも思いまするが、私は、この業法は決して中小企業のために圧迫になるとか、中小企業のために好ましいものではないというふうには解釈いたさないのでございます。
  36. 井上普方

    ○井上委員 私は、大臣の御答弁の前半分だけは了承するのです。あと半分がいけない。われわれとすれ違いが起こってくるのです。前半分のことは、いま大臣は、私が申したことについてはあなたは了承せられたわけです。すなわち、大手業者中小企業のシェアにまで入ってきておるこの現状、これがまた中小企業が小さい零細企業を圧迫するというふうに、上からどんどん下へ来ているこの現状、これをチェックしなければならないという大臣のお考えは当然だと思います。その現状もまた大臣はお認めになっておられる。かつまた大手業者が支店、営業所をつくって、そして独立採算制でやるがために中小企業を圧迫しておる。この実情もあなたはいま御認識になっておられる。しからば、それをどのようにチェックしていくか、これこそ行政の最高責任者であるあなたの責任だと思います。あなたは十一年前に建設大臣当時にランク制を導入せられた。ある程度科学的な方法を導入せられたことに対しまして私は敬意を表します。しかし、それがいまくずされている。このくずされているのはだれがくずしたんだといいますと、これは行政当局者ではありませんか。まずこれを直しなさい。そうでなければ、倒産とかあるいは過当競争というのは幾らでも起きてくるのだ。これをまずどのようにしてやるんだという方法をお示し願いたい。  同時に、支店の独立採算制、これらもひとつチェックしなければならない。ところが、この改正法によりますと、営業所につきましては責任者を一人置くことになっておる。一人だけですね。これでは大企業が支店、営業所をつくることに対するチェックにあまりならないと思う。多少はましかもしれませんが、ここらあたりの営業所あるいは支店に対する規制を、もう少し厳格にやるべきじゃないでしょうか。
  37. 根本龍太郎

    根本国務大臣 井上さんは自分に都合のいいほうは認識されて、最も大事なところの点についてどうも問題がずらされるような気がします。この過当競争というものは大手のほうばかりの責任じゃない。今日まで建設業者が非常にふえましたのは、中小のうちの小のほうなのです。これのほうがどんどんどんと、ある意味では無限ともいえるほど登録制でふえていくときに、そしてその過当競争が上から来たものばかりだということを言われるところに、私は論理的な矛盾がどうもあるような気がします。その意味において、これは中小企業といえども良質な責任ある体制をとっていくということになりますれば、現在ある中小企業保護されるということになり、不良なものは整理されていくということでありまして、その点は、ただ単に中小という名のもとにこれが無限にふえることはそのままにしておいて、今度は大手のほうが少し進出したからということで、これは全部大手責任だということについては、どうも論理の飛躍があるのではないかと私は思う。そこに問題があるのです。今日まで大手が一体何ぼ多くなりましたか。大手自身の数はそれほど多くなっておらない。(「吸収したのじゃないか」と呼ぶ者あり)吸収ではないのでありまして、その点を考えていきませんと、現在問題になっておるのは、登録であるがゆえに経験も能力もない者が非常にふえていくために起こる過当競争が、倒産あるいは不払い、そうしてお互いの採算割れをいたしておるところに思いをいたしていただきたいと思うわけでございます。  この点は、あらゆる機会にいろいろ議論しましても、どうしてもお互いの認識の違いのようでございまして、まことに遺憾にたえないのであります。その点は全然違うのです。独占ではございません。   〔委員長退席、服部委員長代理着席〕
  38. 井上普方

    ○井上委員 それではひとつ伺いたいのですが、これは数字の問題になりますので大臣の御答弁はよろしい。局長、この大手業者が、たとえば鹿島の資本金は幾らか、ここ数年間に幾ら伸びておるのか、あるいは受注量はどのくらい伸びておるのか、あるいはまた、資本金十億以上の会社がいま日本には幾らあるのか、その資本金十億以上の会社公共事業の幾らの比率を占めておるのか、ひとつお示し願いたいのです。
  39. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問にぴったりする資料はございませんが、四十三年度の公共工事の着工統計年報によりますと、資本金一千万円以上の建設業者が請け負った工事量、これは一兆円でございまして、全体の工事が二兆二千四百六十億円でございますから、約四六、七%程度になっていると思います。ただいま統計資料ではそこまでしか……。   〔発言する者あり〕
  40. 服部安司

    ○服部委員長代理 静粛に願います。
  41. 川島博

    川島(博)政府委員 失礼いたしました。数字の読み違いでございます。一億以上でございます。一億以上の会社が請け負いました公共工事が……。   〔発言する者あり〕
  42. 服部安司

    ○服部委員長代理 お静かに願います。
  43. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  資本金一億以上の建設会社の全体に占める比率は〇・八%になっております。資本金一億以上の会社が八百五十七社、それから十億以上が三百七社でございます。
  44. 井上普方

    ○井上委員 これは後ほどでいいですが、川島局長、ここ五年以内に十億以上の大手企業が、支店、営業所をどれだけつくったか、それの資料をひとつお見せ願います。  大臣、いまの話を聞きまして、〇・八%にも足らない大手業者が全公共事業のうちの四六%を占めておるんですね。このような実態を見ますときに、しかも先ほど私が申しましたように、大手が今度は中小企業の二千万、三千万の仕事までどんどん入ってきているのです。これには建設当局体質の問題もあります。先ほど申しましたように、地建におきまして個所づけができるというとすぐ業者に筒抜けになる。これこれは大手業者に、Aクラス業者に渡してしまうというような話し合いがなされておるやに聞くのであります。  これは言いにくいわけでありますが、あえて申し上げますと、建設大臣建設一家ということばを使いたいということを言われております。これはいい意味においては望ましいことだと思う。しかし、それが悪い面において建設一家的な建設行政が行なわれつつある。建設省の天下り人事で業者のところに入った人たちによって、各地に建友会なるものがつくられつつある。そしてそれが受注調整を大手のほうで先にやってしまう。あと続いては下のほうに流すというようなことすら行なわれておるのが現状ではありませんか。ここに建設当局建設行政に対する姿勢の問題があると思うのです。これは単に建設省だけじゃない。建設省の出先の公団、監督権のあるところにおきましても、どんどんとこういうことが行なわれております。これらを直さなければ、姿勢を正さなければ私はならぬと思うのですが、大臣、どうでございます。
  45. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御承知のように、現在公共事業のうち政府施策としてやらなければならぬものにはいろいろございます。   〔服部委員長代理退席、委員長着席〕 ところが、特に最近の建設関係の高速自動車道路あるいはまたダムというような大型仕事は、やはりそれだけの技術資力のないものにこれを分割してやらせるわけにはまいりません。これは業界保護ではなくして、われわれは国民のとうとい税金を預かって、その金をいかに効率的に一般の国土保全あるいは国民の幸福に使うかということが第一目的でございます。業界を健全に発達させる以上にその問題があると思います。したがいまして、いずれの国におきましても、日本に比べればはるかに大型のそうして少数の建設業公共事業に当たっていることは、井上さん御存じのとおりでございます。日本におけるように、公共事業中小企業の小さな事業に細分化されてやっていることは、ほとんど例がないと言っていいくらいであります。それにもかかわらず、われわれは日本建設業界一つの歴史的な段階から見て、極力実は中小企業受注体制を強化しつつ配慮していることでございまして、御指摘のように、少数の者に、何か業界の利益のために仕事をさせているような印象を与えることは、われわれのまことに遺憾とするところで、そういう解釈をしてもらっては、それは誤解に属することだと思うのでございます。その点の認識がなければ、私は国民に対してたいへんな誤解を与えると思うのでございます。  そこで、先般来御指摘になりましたように、現在は中小企業でも技術並びに資産体制が強化されれば、それらに政府の公共事業もできるだけやらしたいというので、企業合同とかあるいはジョイントベンチャーの方式でやらせるように指導しているのでございまして、その点が必ずしも満足にいっていないということについては、御指摘のこともございますし、今後さらに前進させたいのでございます。  観点を変えまして、もし一工事三十億、四十億かかる、しかも高度な技術とたいへんな機械設備の要る仕事を、一千万円程度企業会社十社あたりでジョイントベンチャーさせて、はたしてこれはできるでしょうか。そういうことをやることで国民の期待に合わせることができるでしょうか。これはできないのです。でありまするから、大きい工事は、やはり国際的に見ても十分に納得できるような機械設備技術の準備をさせてやるということが、私は当然だと思うのでございます。この点の御了解を得ますれば、漸次現在の日本建設業を、それぞれの分野に定着させるということが必要になってくる。そのためには、私は建設業が単に一定の金と一人の技術者がおりさえすれば、これはどんどん自由に、協力すれば幾らでもいけるというほうにいくことがいいかどうかの判断が、そこに出てまいるのではないかと思う次第でございまして、私は決して井上さんの言うことが、全然荒唐無稽だと申し上げるわけではございませんし、われわれの申し上げることも御理解いただいて、政治というものはやはり客観的現実に基づいて、いかにして現実を一歩一歩改善していくかということにつとめることが、われわれ政治の任務ではなかろうかと考えておる次第でございます。
  46. 井上普方

    ○井上委員 大臣の、まことにそのとおりであれば私はまたけっこうだと思う。しかし、いまの建設業実態を見ますときに、私はそれは納得できないんです。  一例を申し上げますと、東名高速道路が、これが全部企業体によってなされたことは御存じのとおりで、二社ないし三社によって企業体が組まれて、あの東名高速道路ができ上がりました。これは全部企業体でやっておるのです。ひどいところになりますと、私は走っておりまして見ましたところが、鹿島建設と熊谷組とが企業体を組んで、十五億ないし二十億の仕事をジョイントでもってやっておる。これをあなた方はどうお考えになりますか。あの鹿島あるいは熊谷といえば、日本の代表的な企業です。その企業が、あの工事が幾らむずかしい工事であるといいながら、一つ工事を引き受けられないだけのことはないと思うんです。そしてその能力だって十分にあるはずです。ところが、それらの大手のこういう優秀な業者が、これが企業体を組んで東名高速道路をやっております。大臣、この事実を見ましてどうお考えになりますか。明らかに受注を調整する、いわゆる談合が行なわれておる証拠ではなかろうかと私ども考えられてならないのであります。大臣、こういう行政がいま建設当局あるいは公団において行なわれておる事実に対して、あなたのお考え方をひとつお示し願いたいんです。
  47. 根本龍太郎

    根本国務大臣 井上さんも御承知のように、ジョイントベンチャーのシステムというものは、これはアメリカにおいてTVA開発のときに採用されております。したがいまして、大手業者といえども、工期とそれに必要な施設との関係でそのほうが効率的であるという場合には、それはいずれの国でもとっております。日本においても、東名高速道路のようなものは、御承知のように工期が非常に関係しております。それからトンネル工事なんかについても、あの機械が日本に数多くない、それを共同で使うことが非常に能率的だという場合もあります。実は近く東京湾岸道路について、あそこに沈埋工事をやらせなければなりません。近く発注する最初の工事はわずか八億程度です。しかしながら、これは非常に技術開発というものが必要でございますもので、私は原則として大手の連中の共同でやるジョイントベンチャーでやらせなければ危険だよということを指示しているくらいです。新しいことをやるときに、一つの機械設備なんかを各会社がみんな買ったら非常に高いものにつく。そうした場合には、ジョイントベンチャーということもあり得るのでございます。  いま東名の問題について出されたのに対して、適切なる答えになるとは思いませんけれどもジョイントベンチャー一つの談合の結果だということだけに結論することは、必ずしも私は納得できないという意味で申し上げる次第でございます。
  48. 井上普方

    ○井上委員 大臣、この一例を申し上げましたけれども、熊谷組と鹿島建設がジョイントを組んでおる事実、これはあなたの考え方は私は違うと思うのです。工期の面におきましても違います。   〔委員長退席、渡辺(栄)委員長代理着席〕 そしてあれだけの黒四をやったという鹿島でございます。能力的に一社でできないはずはないのです。なぜ組むか。機械にいたしましてもさほどたいした機械は入っておらぬようですが、事実こういうことが行なわれておる。あそこは特殊な工事じゃないのです。この実態をあなた方行政当局としては直視しなければならないのです。それが建設当局の、行政当局のえりを正す道である、それがまた国民に信を置かしめるゆえんでもないかと私は思うのであります。  続いては、いろいろと申し上げたいことがあるのでございますが、いま述べましたジョイントベンチャーには、大体三つの方式がいままで日本ではとられておるようです。一つには、そのつどベンチャーというのがあります。それから業者業者として残しておいて、その業者の中の機械、資材を供出して新しい企業体をつくって、これで工事をやろうという場合もあります。あるいは業者が全く企業合同してしまって一つ企業体となり、もとの姿をなくしてしまって新しい共同体としてやっていく、この三つがあるようです。  したがって、あなた方はジョイントベンチャーをこれから育成するというときに、どの方式を考えておられるのか。先般来川島局長から、ジョイントベンチャーをひとつ育成強化しますというようなお話がございましたが、この三つの方法のうちのどれをとろうとするのですか、お伺いしたいのです。
  49. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これは、画一的にこれだけをやってあとはやらぬということでもないと思います。やはりそれは条件のケース・バイ・ケースで考えるべきだと思います。  具体的なことは事務当局から御説明いたさせます。
  50. 川島博

    川島(博)政府委員 企業者が共同して企業を請け負う方式として、いわゆるジョイントベンチャー、これは民法上の共同請負による方式でございますから、数人の建設業者が全く独立の資格で参加をする、建設工事を共同して請け負う、全く対等の資格で相談をしまして請け負う、履行については連帯をして責任を負う、これがわが国でいうジョイントベンチャーの形式でございます。これに対しまして中小企業協同組合法による共同方式、これにはたとえば事業協同組合方式のように、機械を共同で購入して共同で利用するとか、あるいは共同で宿舎を建てるとか、あるいは共同で材料を購入するという形の事業協同組合方式がございます。それから同じ法律に基づきます企業組合というのがございますが、これは個人の全く零細な業者が相寄りまして組合をつくりまして、各参加者はいわゆるサラリーマンとなって企業組合の名で仕事をする、組合からは月給をもらうという形でございます。さらにこれが発展いたしまして、四十二年にできました中小企業団体の組織に関する法律によります協業組合になりますと、これは協業組合自体が全く独立の新しい法人格を取得いたします。したがいまして、この組合自体が事業の施行の最終責任を負う。したがいまして、参加した各組合員はこの協業組合と別個に同じ事業を行なうことが禁止されます。これはまさに企業合同に至る一歩手前の状態でございます。この協業組合がさらに熟してまいりますと、企業合同、合併という形になるわけでございます。  今後わが国における中小企業育成いたします場合には、私どもはやはり合併、合同という形で体質改善し、強化するということが最も望ましい姿だろうと思いますが、しかし、いろいろ事情の複雑な建設業界のことでございますから、合併まで直ちに持っていくということはなかなか困難でございます。したがいまして、協業化、協同化の方式の第一歩はジョイントベンチャー方式でございますから、まずこのジョイントベンチャー方式によりまして協同化の空気といいますか、やり方を習熟し、さらにこれが協同組合、さらにそれがお互いの理解を深めますと協業組合という形に発展する、最終的には企業合同によって全く一体となる、こういう形で今後やはり中小企業育成をはかるべきではないかというふうに考えておる次第でございます。
  51. 井上普方

    ○井上委員 私は協同組合、協業組合あるいは企業合同までいくのには、日本におきましてはかなりむずかしいものがあるのじゃないか、このように考えられるのであります。しかし、そのつどベンチャーという形がはたして望ましいものであるかどうか、私は大きな疑問を持たざるを得ないのです。すなわち、そのつどベンチャーというのは受注調整の意味が多分に含まれてきておる。この点はひとつお考えになって、これは排除していただくよう強く要望いたすものであります。  さらに、いろいろと申し上げたいことがございますが、しかし、いずれにいたしましても現在の建設業界を見てみますと、ランク制というものが大きくくずれ去りつつある。根本大臣が十二、三年前につくった、ある程度科学性を持ち込まれたこのランク制なるものもくずれつつある。どうか一つ、この上のランクのものが下のランクに入ってこないように、これを非常に強く私は要求いたしたいと思うのですが、いかがでございますか、この点は。
  52. 根本龍太郎

    根本国務大臣 私もこういう制度を奨励した責任者でもございますし、現状にかんがみて、そういう御趣旨に沿いまして行政指導をしてまいりたいと思います。
  53. 井上普方

    ○井上委員 それから続いては、建設業における労災事件が非常に多くなっております。これは先般の荒川放水路の事件、あるいはまた各種の、あらゆるところで行なわれておりますけれども、労働災害がここには非常に多発しております。しかし、これに対して、なぜこういうように建設業において労働災害が多発するのか、これを防ぐ方法としてはどういうようなことを考えてこの業法に入れておるのか、この点お伺いしたいのですが……。
  54. 川島博

    川島(博)政府委員 労働災害が最近多発していることは、きわめて遺憾でございます。これは、一つには非常に工事自体のプロジェクトが大型化しておる。それから、新しい技術開発その他でそういう危険な機械が増大していることも原因でございますが、やはり現場における元請、下請を通じての労務管理と申しますか、労働者の福祉に対する配慮が必ずしも十分でない場合もあるわけでございます。この点に関しましては、建設業法と申しますより、これはいわゆる労働基準の問題であろうと思います。まあ今回の業法改正におきましては、問題になっておりましたようにこの賃金不払いの問題が手当てされていることは御案内のとおりでございますが、やはりこの労働災害の絶滅を期するためには、労働条件、労働環境、これを労働者にとって満足すべき状態にまで引き上げるということが一番大事でございます。そのためには、やはり現場で労働者を使いますのは下請業者でございますから、その下請業者が、労働者労働条件、労働環境を引き上げるために必要な手当てができるようにするということが一番大事でございます。  そこで、今回の政正におきましては、下請業者保護育成のために、特に特定建設業者に対する下請保護の義務、責任を重加いたしまして、そういった直接労働者を雇用する下請業者がそういうことができるようにいたしたわけであります。また、元請業者に対しましては、そういった下請業者がはたして労働関係を現行の法令の定めるように実施しておるかどうか、監視し指導する義務をやはり特定建設業者に課しておるわけでございます。そして、この直接労働者を雇用する建設業者が労働関係に違反した場合には、これは是正を命じ、またそれでも聞かないという場合には、知事なり大臣に通報できる義務を課しておるわけでございます。  このように業法の中でもいろいろ措置をしておるわけでございますけれども発注者のほうにおきましても、今後はやはりそういった労働者の宿舎その他の現場の環境が保持され、また工事現場における労働災害の発生防止されるように、発注者サイドにおいても十分その配慮をすべきじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  55. 井上普方

    ○井上委員 私は、建設工業新聞というのを見てみますと、こういうことが書いてあるのですね。「たとえ元請がくんだ足場で、そこから使用人が落ちて死傷しても、呼び出されるのは下請業者で、元請業者はおかまいなしの形である。しかし一旦無災害記録となると今度は下請業者は対象とならず、元請がその対象となる」ということが建設工業新聞に載っておるのであります。ここらも直さなければならぬのじゃないでしょうか。それには元請の労務管理、これが下請に及ぶということをやらなければならないと思うのです。直接労働の下請依存によって元請の労働管理が不徹底なことになっておるのは、これを見ても明らかであると思うのでございます。この点、元請の責任というものをもう少し明確にする必要があると思うのですが、どうでございますか。  それと同時に、この発注者側におきましても、やはり安全費用を請負金の中に織り込むということをやらなければならないと思うのでございます。特に公共事業においてこのように労働災害が多発しておる際、この安全費用の面についても建設当局としては入れておるのかどうか、この点ひとつお伺いし、今後の御方針をもあわせお伺いいたしたいと思うのであります。
  56. 川島博

    川島(博)政府委員 建設工事におきます労働災害の防止については、発注者並びにこれを請け負った建設業者双方が責任指導しなければならないことはもちろんでございます。  で、現場で労働者が災害を受けるというような場合は、これは一般的に元請並びに下請、実際にその労務者を雇う下請のみならず元請まで責任の及ぶことは、この前の金曜日の答弁でもお答えしたとおりでございますが、たとえば賃金不払いとかあるいは宿舎の管理とか、そういう問題につきましては、結局当該労働者を雇い入れた業者とそれから雇われた労働者の間の契約の問題に、むずかしく言えば帰着するわけでございます。したがいまして、この元請が監督指導することはもちろんでございますが、何と申しましても、その労務者を雇い入れた直接の雇用者でございますところの業者が、こういう労働者に対するいろいろな労働条件なり労働環境なりの改善をはかる第一義的な責任を持つことはもちろんでございます。しかしながら、下請代金が低いとかあるいは下請代金支払いがおくれる、そういったことによって労働者が十分な安全にして快適な生活環境を与えられないという場合には、元請にも責任があるわけでございますが、そういった点から申しまして、発注者並びに元請業者も、労務者が直接には下請業者に雇用されている場合でございましても、十分に目を配っておるということが必要でございます。  最近、建設省におきましては、そういった労働者の安全、福祉という観点が非常に問題になってまいりましたし、また、そういう不当な労働条件のもとでは今後の労働力の不足に対して対処できない、建設業労働者がみな他産業に行ってしまうということにもなりかねない。これは工事そのものの施工にも支障を生ずるわけでございますから、この安全あるいは環境、福祉の保持ということのために必要な経費は、従来でも積算をしておるわけでございますが、今後は積算単価におきましても、そういった安全費用、労働福祉に関する点も十分考慮して見積もることにいたしたいと考えております。
  57. 井上普方

    ○井上委員 私は、労働災害の元請の責任というものも明確に出す必要がある。この点におきましては、原案において非常に不十分であるといわざるを得ないのであります。この点さらに理事会等等において、委員長におかせられましては御討議願いたいと存じます。  さらに、建設業法を見てみますと、なぜ倒産が多いか、あるいはまた先ほど大臣も言われましたが、過当競争が行なわれるかということを考えてみますと、現在の指名競争入札制度、これは財政法あるいは予決令、これからいたしますと例外規定として認められているだけでございます。ところが例外規定が本則のごとく行政官庁において行なわれておる。この実態考えましたときに、またそのほかにもあの請負契約そのものが非常に片務性を持っておる、発注者の側に非常に権限が強いというような点から考えましても、一応現在の入札制度そのものにメスを入れる必要があるのじゃなかろうか、このような気がしてならないのであります。根本大臣建設大臣であると同時に国務大臣でありますので、この指名入札制度そのものあるいは入札制度そのもの、財政法あるいは予決令あるいは会計法で示しておる入札方法に対してメスを加える時期が来ておると私は思うのでございますが、大臣の御見解をひとつ承りたいと思います。
  58. 根本龍太郎

    根本国務大臣 この入札制度には長短両方あると思います。ところで、もしこれが公開入札制度というか公開競争制度にした場合は——先ほど来非常に議論になりました、大手中小企業にやっちゃならないというのを指名で押えているのです。これを無制限にしたら全部が大手にいきます。そうなってまいりましたら、中小企業みな全部たたかれてしまいます。そういうことになるし、今度は、全部完全にフリー競争にいたしますと、はたしてそのものがいかなる能力、資格があるかを調べるのにたいへんなあれがかかるわけでございます。したがいまして、一つ制度の欠点をなくするために他に全部移行した場合に、かえって多くの弊害があるということから、公共事業等における国のこうした発注は、どこの国でも大体一つのランクをきめて指名制度にするのがどうも先進国の共通の制度にも考えられます。ところが一面において、もっと徹底した場合には、今度は逆の点で随意契約のほうがよりりっぱなものをやれるのだということで、アメリカなんかではかなり多くの仕事を随契でやってしまう。そのかわり、一切の責任は行政官庁が負う、それもまたあり得ると思います。  そういうことでございますから、発注制度については検討はしなければなりませんけれども、いまにわかに指名制度を廃止していくということには私はなかなか踏み切れません。しかし、指名方法についてはまだまだ研究すべき余地があるだろうと思います。今後検討いたしたいと思います。
  59. 井上普方

    ○井上委員 私はそういうことを言っているのではないのです。現在の財政法あるいは会計法、予決令、いずれを見ましても公開入札を原則としているのです。そしてその例外規定として指名競争入札を入れている。これは実態に合わなくなってきておる。しかも契約方式が片務性を持っておる。でございますので、入札制度そのものを一応再検討する時期が来ているのではないか、こういうことを私はお伺いしておるのです。大臣もその点十分お考え合わせをお願いいたしたいと存ずるのであります。さらに資本の自由化問題につきましていろいろとお伺いいたしたいと思ったのですが、時間がございませんのでやめさせていただきます。  ともあれ、このたびの業法改正というものは、一つは、資本金五、六百億の会社からあるいは下は一人親方の零細なる企業まで一本の法律で規制しようというところに非常な大きな無理があるのではなかろうか、このように私は考えられてならないのであります。特にそのしわ寄せが、先ほど来大臣と私どもとの意見の大きな食い違いになっております零細企業あるいは一人親方、これらに対する締めつけが行なわれてくるのではなかろうか、このようなことが考えられまして、私どもはどうも納得がいきかねるのであります。   〔渡辺(栄)委員長代理退席、委員長着席〕 さらにはまた、先般来問題が出ております許可基準にいたしましても、改正案を見てみますと、許可基準におきまして信頼度あるいはまた流動資産比とかいうものが出されておるようでございますが、これも現在の建設業界の中におきましてはあやふやなものが非常にある。こういうことを考えますと、これで改正案どおりいけば、日本建設業界それ自体において、まだまだ問題を残しておると私はいわざるを得ないのであります。今後私どもといたしましては、特に行政当局がいかに能率的、しかも公正に建設行政を行なうか監視する必要もあろうと思いますが、どうか行政当局におかれましては、公正に、しかも国民のすべてが納得する効率的な方法でやられることを強く希望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  60. 金丸信

    金丸委員長 阿部昭吾君。
  61. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私はきわめて簡潔にお尋ねをしたいと思うのでありますが、いままで各委員によって明らかにされたところでありますけれども、第一は、登録制度から許可制に切りかえるわけです。この理由というものが私は説得力を持っておらぬと思うのであります。提案理由の説明によりますと、一言にしていえば不良業者をチェックするということでございますが、施工能力、資力信用のない業者の輩出をもたらした原因一つは現行建設業法登録制度にある、だから許可制にする、こういっておるのであります。  そこで大臣、いまの業法が発足いたしました昭和二十五年当時に三万人余の登録業者だったのが現在十六万、私は、戦後の二十五年という、二十年前の状態と今日とを考えました場合、業者の数が約五倍程度になるなんということは、これはあたりまえのことじゃないかと思うのであります。したがって、十六万の業者が多いなんというその理由は、私は根拠が薄弱だと言わざるを得ません。さらに、不良な業者を押えるというのが今回の許可制の目標だ、ねらいだ、こういうわけでありますが、実際上は不良な業者はいまでも押えられておると私は思う。登録制度のもとにおいても不良業者はちゃんと押えられておると思うのです。それでもなおかつ不良業者が存在しておるとするならば、現行登録制度のもとにおいてもなおかつ不良業者を完全に規制する手段、方法はたくさんあると思うのです。本来建設業は、発注者があって、業者受注するのであります。だれしもが不良な業者仕事をやらそうなんというばかなことはやらぬのであります。そこでまず第一段階、不良業者というのは十分一定の規制をされるわけであります。さらに官公関係発注になりますれば、ランク制だとかあるいは指名制度、こういうようなことで二重、三重の業者に対する規制、こういうものがやられておると思うのであります。さらに、許可制にしようというねらいは、提案説明の中でいっておりまする施工能力、資力信用のない業者の輩出をもたらした原因を除去するなんというものではなくて、大手を中心とする業界の支配体制というものを再整備しようというねらいが今回のこの許可制をやろうとする背景にある。いままでいろいろな説明を聞きましたけれども、私どもの持っておるその疑念を解くような説得力のある説明はなかった。これはひとり私どものみではありません。与党の皆さんの中でも、私どもの持っておると同じような疑念を持っておる人が相当多いのであります。いままでいろいろ論議をいたしました。私はそういう意味登録から許可にするということについて、少なくともいままでの質疑の過程で明らかにされましたような説明では、単なる業界に対して行政権力が不当に深く介入するということ以外にないと言わざるを得ないのであります。そして、そのねらいは、——私はいまでも忘れませんが、去年の五月九日であります。本会議建設業法改正案が坪川大臣によって提案説明がされ、私は社会党を代表して質問をいたしました。この質問の問題に文句がついて、懲罰委員会に付されたことをいま思い出すのであります。しかし私は、この業法登録から許可へというこのねらいは、前回懲罰に付されるほど激しく追及したその疑念というものはいまだに実は、説明をずっと受けましたけれども、その疑念を解くわけにいかぬのであります。第一、この登録制から許可制へという問題を私は承認するわけにいかない。この辺もう一ぺん簡潔に、私が納得できるような御答弁を求めたいと思います。
  62. 根本龍太郎

    根本国務大臣 先般来いろいろ申し上げたので、阿部さんが私が言ったためにすぐに納得するかどうか、これはわかりません。御承知のように、阿部さんの考え方からすれば、これは大企業に独占支配を許すためにこういう制度をつくったというけれども、あなたのようなものの考え方からすれば、登録制度だって現実にどんどん支配体制ができているという結論になるだろうと私は思います。問題は、そうじゃないと思うのです。確かに建設業は他の産業と違いまして、これは受注産業です。そうして今度発注した人は、一たんそれを受けてしまえば、いろいろクレームをつけようとしても、これは普通の場合のように全部返品するというようなことはできないことです。しかも、いみじくも阿部さんが指摘されたように、一般国民は不良なものは選ばないという前提条件であるけれども、現在の登録制度では、それを厳密に追及して、資産内容から全部やらなければこれがはっきりわからないということなんです。そこで、許可制度にしますれば、これについてはある程度の資産、ある程度技術、ある程度の行政官庁によってオーソライズされたという安心感が私は出てくると思う。それが必要なことなんです。現在のようになけなしの金を集めてマイホームの夢を持った者が、不良な建築業者のために、あるいは途中にして挫折する、あるいは不良なものをつかまされ、あるいは逃げられるというようなことがひんぴんとして起こっておる今日、やはりそうした国民の不安をなくするために、建設業法から改正するということもこれまた政治家の任務である、政府の任務である。この一つの大きな使命を果たすことが、この業法改正によってできておる。  それからもう一つは、大きい建設業がいまは民法上の契約事項によって下請に出され、それがまた孫請までいっても、ほとんどの責任下請に行ってしまって、自分のほうでは責任がない。これはいかぬじゃないか。やはり発注者がそれだけの企業指名して仕事をさした以上、やはりその責任をホローさせなければいかぬ。その点がこの建設業法改正されて出てきておる。それからまた、零細企業については、建設業法そのものだけで一切を保護助成するというわけにいきませんけれども、少なくともこの許可制度並びに新しい制度によりまして、現在営業しておる中小企業には何らの不利を与えておらない。一人親方についても同様です。そして将来において新しく建設業を営む者については、非常に重大な責任を課することによって国民に対する責任体制を確立するということでありまして、私は、これがいま阿部さんが言われたように、大企業の独占支配を強化するためにねらわれたということは、いささかどうも色めがねが強過ぎるのじゃないかという感じがするのでございまして、この理由については、再三御説明したところでございまして、これを言っても阿部さんが納得しなければ、納得できるまで時間をかけてどっちがくたびれるかということでもたいした意味はないと思いまするので、提案理由に関しての理由はこの程度にとどめたいと存じます。
  63. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 現場における状況大臣もよう御存じだと思います。今回許可制になったところで不良業者はちゃんとやはり頭をもたげてきます。不正なことをやろうなんというのは、浜のまさごは尽きるともじゃないけれども、いろいろなことをやると思う。政治権力と結び、何と結び、いろいろなものと結んで頭をもたげるのであります。では、これを許可制にした、しかし、不良な結果が出たという場合は、許可をした建設大臣責任を持つのかどうか、これが第一。  第二の問題は、いま不良業者によってなけなしのさいふでマイホームをやった国民が迷惑をしておるというけれども、私はその点ならば、登録から許可へというやり方ではなくて、守る方法はたくさんあると思う。たとえば官公庁発注の場合には、工事保証人というものを現在の制度の中でもちゃんとやっておるわけですね。したがって私は、これをすべて登録から許可へという段階で解決しようとしておるところに一体どういう状態が起こるのかということになると、行政権力が業界の中に深くより大きな力を持って介在するというねらい以外にないじゃないか。建設省はどうかわからぬけれども、最末端までいくと、業界のそういうものを一々チェックをする、許可するかすべからざるかというようなことをやるのは一体だれがやるのか。現在の私の知っておる範囲でも、ある業者がわいろか何かやってこの間起訴されたとかなんとか大騒ぎになった。そういう贈収賄みたいなことを起こしたんですから、私の理解の範囲では、三年ぐらいは指名停止だなという話を聞いておった。何とまた、半年たたない間にちゃんと指名に入っております。その裏には有力な政治家が動いたということもちゃんと私知っておるのであります。したがって、悪をなさんとする者はいろいろな手で動くのであります。私は、それらの問題をすべて登録から許可へという形の中で解消するなんということにならぬと思う。私は、そうじゃなくて、いまの登録制度のもとにおいても、ほんとうに善意な、そういう国民の立場に立つやり方というものは、たとえば官公庁発注における工事完成保証といったような方法とか、これを全部に広げるとか、いろいろな方法でやりようがたくさんあると思うのであります。私はそういう意味で、いまの大臣の答弁をお聞きしましたが、残念ながら——私もずいぶん多くの事実を見、あるいは聞き、あるいは調べもしてきましたが、その意味ではどうしても、この登録から許可へというあれは、大臣の提案説明のようなものじゃ私どもを説得するのには十分じゃない。したがって賛成することもまかりならぬ、こう言わざるを得ないのであります。  そこで、時間の関係で答弁はあとでまとめてお願いいたします。いまわが党の井上委員指摘をしましたが、何十億という現場を、東名高速のようにジョイントで押えていくような力を持っておる大手特定建設業者から、こつこつと技術と地域社会における人間的信用を土台として今日一般化して社会慣行の中で育ってまいりました一人親方、これを同じ業法の中でやろうなんということ自体が私は無理だと思うのであります。したがって、私ども考え方としては、まあ名前でいえば小規模建設業者に対する業法のような、一般大手建設業者と異なるそういう何かがあっていいんじゃないか。たとえば鹿島建設の社長が日雇い健康保険なんというものをかける必要はないのであります。間組の社長さんがみずから失業保険をかけねばならぬというような、そんなむちゃなことはありません。いまこの業法によって一括やられようとしております、対象になろうとしております一人親方日雇い健康保険法の問題も問題になり、失業保険法の問題も大いに心配しなければならないこの一人親方という皆さんを、特定建設業者と一緒の基準で縛るということ自体に非常な無理があるように思うのです。この面は大臣、将来の問題としてやはり私は検討すべき重大な問題じゃないかというふうに思うのですが、その辺はいかがでしょう。
  64. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これは立法技術には観点によっていろいろあると思います。いま阿部さんが言われたような規模別に業法をつくるかということは、私はいまにわかにそうはいかないと思いますけれども一つの発想方法としては、立法技術論としてこれはあり得ると思います。ところで、これに直接は関係ないけれども、たとえば建築基準法は、十坪以上のものであれば、何百億とかかる高層建築から一般の小さな住宅まで、これは建築基準であるから一本の法律です。これも業法としては、こういうものもあって、そのほかに建設業法のある特例法としたものを別に考える必要がありはせぬかというような意味にも私はとれました。これはよくあり得ることです。一つの全体的な総論的な立法と、それから今度各論的な立法、特例法的なものもありますから、そういうものはあるいは今後研究する価値はあると思いますけれども建設業法が一本でやるということが立法上不当であるとはいえないと思います。ただ、これは従来そういうことでやっておりましたので、建設業法の一部改正としてやりましたが、あとで、たとえばいま申し上げたような理由によっては研究の価値があると思いまして、今後十分検討してみたいと思います。
  65. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 その点は十分御検討をいただいて、私ども機会を得まして、大手特定建設業者とそれから全く立場の異なる一人親方までを同じこういうもので規制しようというところに、やはりいろいろな矛盾というものが起こってくる。したがって、小規模建設業者というのでしょうか、一人親方、こういうものはやはりそれを特定した一定のワク組みというものを設定する。たとえば建設大臣から最末端の建設省のポールをかついで一生懸命働いておる方々までを同じワク組みの中で縛るといったって、大臣のおっしゃる建設一家構想というものは生まれてこないので、私はそういう意味でもっときめのこまかな点が要求されてきているのじゃないかと思うのでありまして、これはぜひひとつ、いま大臣御答弁のように前向きに、私どももいろいろな前向きな建設的な提言を申し上げたいと思っておりまするので、十分な御検討を要望したいと思うのであります。  次に、今回業法改正をめぐって、いまの問題とも関連して非常に大きな問題は、一人親方の問題であります。いままでも答弁の過程でいろいろ明らかにされてまいりました。いずれ後刻、当委員会では各党一致の附帯決議を付すことになろうと思っておるのでありますが、建築一式工事、これは三百万だ。この考え方は、まあ平準的な日本の庶民が建てる木造住宅——これは大臣のところや私のところみたいに雪のごついところは、百平方などといわれてもそれはちょっと困るようなものもあります。住宅にいろいろなものを付随したり何かするものでありますから、百平方といわれてもこれはちょっと困る問題になってくるのでありますが、まあまあ日本の平準的な一般庶民の国民が住宅を普請したいという場合に、大体その集約をされるところは百平方の木造住宅、これをわれわれは従来の質疑の中では三百万だ、そういう想定で、いまの許可の適用除外の請負工事金額、こういうふうにすべきだという強い主張をいたしてまいりました。私どもは、後ほどこれは附帯決議で出るわけでありますが、その辺について、この問題が論議されましてから以降ずいぶんと重ねられた議論でありますけれども、問題は政令事項なんであります。したがって、この政令事項の際に中建審の議を経てということになる。これは大臣の答弁をもう一回、くどいようですが、私念を押したいのでありますが、中建審の議よりかは、選挙で選ばれて国民を正式に代表する国会、国権の最高機関であります国会の意思決定のほうが優先するという考え方を私どもは確信しておりますが、この辺は大臣、間違いありませんか。
  66. 根本龍太郎

    根本国務大臣 立法機関としては国会が最高の議決機関でございます。国会で議決されたことは、当然政府、したがってまた国民も従わなければならぬ。したがって、中建審よりもそっちのほうが権威あることは当然でございます。ただ中建審というものは議決機関ではございません。議決機関ではございませんが、各界の専門的な意見を解明し、建議する権限も与えておりますので、国会の論議はもとより大事でありまするけれども、従来建設業に関する諸般の問題はそこの議を経て、より違った角度において専門的な意見のほうも一応見るという立場において、これは尊重しておるのでございます。それは国会のほうとは比較にならないウエートでございます。
  67. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで大臣、これは私ひとつ提案なんですが、中建審という存在ですね。たとえて言えば、選挙制度あるいはその他何とか審議会、こういろいろたくさんあるわけですが、そういう場合にこの中に国会の代表も参加をしておる。私は、この中建審は将来とも日本の住宅行政もしかり、道路行政にしてもしかり、たいへん重要なものだと思うのです。そういう意味で、少なくとも国会と中建審で非常に異なるような議論が起こるようじゃまずいと思う。そういう意味では、中建審の中に国会の政党代表なども学識経験者か何かというかっこうで参加をさせたほうが、事がきわめて円満に、スムーズにいくのじゃないか、こう思うのですが、前向きに検討の用意ありやいなや。
  68. 根本龍太郎

    根本国務大臣 私はどうもその説には必ずしも賛成しがたい。先ほど言われたように、国会は最高の議決機関として権威ある機関でございます。その議員が外部において、またそこにいくということはどうかと思う。私は実は党におるときにも、いわゆるそうしたところの政府の審議機関に国会議員が入るというのはおかしいぞ、みずから国会の権威を軽うするゆえんじゃないか、彼らは彼らとして専門的な意見を言わせることはけっこうだが、国会議員がこれに参加をするということになると疑義がある。特にいまのような制度について、私はむしろ政府に置くのじゃなくて、これも一つの私見でございますからそのままに聞いていただきたいのでありまするが、ああいう審議機関みたいなものを政府に設けるよりは、国会の委員会一つのああした機関と申しますか、それを設ける、そのほうが審議機関としては当然だ、行政機関のほうに置くということも必要であるならば、立法機関として広く意見を聞くこともより必要だ、そのために公聴会あるいは参考人がありますけれども、という議論をしたこともありますくらいで、政府の審議機関に国会議員を入れるということについては、これはむしろ私は前向きでなく消極的な意見を持っておるのでございまして、この点はどうも阿部さんの御意思に沿いかねるような気がいたします。
  69. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣が、中建審と国権の最高機関たる国会との関係は、それはおのずから明らかだ、国会の意思のほうが決定的な意味を持つ、こういう認識でありましたから、その問題は——ただ中建審の議論、私どももいろいろ仄聞するのでありますけれども、いまの法適用除外工事金額等にしても、二十四年のとき三十万で、三十一年のとき五十万になって、それが据え置きでもよろしいというような意見が一部出たように聞くのであります。こういう皆さんの意見を聞けば聞くほど、一人親方その他はどんなに腕がよくても、技術がよくても賃金労働者として押え込んでおけ、経営をやるのは全部資本の側なんだという感覚が、あまりにも中建審の中に強くあらわれておるように思ったので、私はいまのことを申し上げたのでありますが、国会の意思に政府は従う、こういうことでありますから、これは私はこれ以上は申し上げません。  さらに、先ほど井上委員指摘をいたしました中小建設業者受注の確保、そのことについても後ほど附帯決議が準備されておるのでありますけれども、いま答弁の段階ではいろいろなことを言う。しかし、実際上運営をされるのは、それぞれ衝に当たる生きた人間がやるのであります。国会の論議と大臣がここで答弁をいたしましたこと、それはそのとおり下に実施されていくのかどうかということについて、たとえばさっき言ったとおり、贈収賄やった業者が三年間は指名からはずされますという話になっておった。ところが半年もたたぬ間に、いろいろなことで相当いい工事にちゃんと指名されている。したがって、私どもは、ここにおける論議というものがほんとうにやられるのかどうかということに、ある種の不信感というか、疑念というものはなかなか抜けないのであります。中小企業育成の問題にしても、国会ではやかましいから、あまり角立たないような答弁になる。実際上見ると、ジョイントベンチャーがほんとうに効力を持つのは、大手の連中がジョイントを組んだときはちゃんとそのとおりいくけれども、地方の業者といっても、地方でもある程度の実績を持つような業者がジョイントを組んだ、それでもなおかつ中央業者がその地方の少々まとまった工事に乗り込んだ場合には、とうてい太刀打ちできぬという例を幾つか私は知っておるのであります。そういう意味で、ここで論議されましたことがほんとうに実行されるかどうかということ。いま大臣が答弁されましたことは、そのとおり必ずやりますということを、いま申し上げました中小業者あるいは地方業者受注確保、地方業者育成、こういう問題についてほんとうにしゃにむにやりますということになるのかどうかという疑念を、さらっと解くような大臣の決断というものをお聞かせいただきたいのであります。
  70. 根本龍太郎

    根本国務大臣 国会において論議された結論が出たこと、あるいは私が責任をもって答弁したことば、全力を傾注して遺憾なきを期します。ただ、御指摘のはうに、私自身が現場におるわけではございませんから、そこはやはり末端の連中の認識の不足の点あるいはまたいろいろ理解しかねておる者もあるといけませんから、この建設業法一部改正に関する論議の結論については、末端機関まで十分徹底させるように示達いたし、その運用の万全を期するつもりであります。
  71. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 これもいままでの論戦の過程で政府側からほぼ明快な答弁の出ておる問題ですが、この業法改正に伴って一人親方、こういう皆さんが受けておるところの失業保険制度の擬制団体の適用、あるいは日雇い健康保険制度、あるいは労働者災害補償保険法、あるいは税制上受けておった状態というものを変えないという意思表明が行なわれておるのであります。しかし、ただ変えないだけじゃいけないのであって、こういうたとえば一人親方のような、実際上は請負になるような部分もあり、あるいはその日その日賃金労働になるような部分もあり、こういう皆さん方の総括として擬制団体の適用のような状態でいままで措置をしてきておったわけでありますけれども、これを変えないような状態から一歩進めて、これらの皆さんをほんとうに保護する確たる制度の確立というものが、私はやはり必要じゃないかというふうに思うのです。これはいま建設大臣一人から答弁をもらっても、厚生大臣関係もあり、あるいは国税庁、大蔵大臣関係もあり、労働大臣関係もあり、いろいろあるのでありますけれども、この辺については大臣ひとつ関係各省庁と十分の連携をとって、単に現状を固定化して変えないというような消極的な方向から、もっと——日本の将来の建設行政、建設業界というものを私は考えた場合に、一人親方と広範な働いている労働者の問題というものを軽視したのでは、日本建設行政というものは前進はないと思うのです。私は、この皆さんは将来とも日本建設業のために、日本建設のために大きな役割りを果たしていくだろうと思うのです。この皆さんに対する社会保障なり税制なり、そういうものは、この業法改正されたからといって後退させないという消極的な態度じゃなくて、前向きにやはり確立をはかっていくという方向がなければいかぬ、こう思うのですが、この辺についてはいままでも答弁はありましたが、答弁は現状を維持するということなんです。これを前向きに、日本の発展の責任建設行政という分野で担当されておる大臣として、関係各方面と十分連携をとって前向きに制度の確立をはかる、私はこういう御努力を求めたいと思うのでありますけれども、いかがでしょう。
  72. 根本龍太郎

    根本国務大臣 本委員会でいろいろ指摘されたことにつきましては、これは事前に十分関係各省に事務的にも連絡さして、責任ある答弁をいたしたことであります。これを前向きと申しますか、いわゆる一人親方の税制上あるいは保険制度上の位置づけということは、非常に実はむずかしいようでございます。私も党におるときにこの点を相当やってみましたところ、現在の段階でいきますれば、どうしても擬制的な運用をしないと、かえって理屈を詰めると税制上も、それから保険行政上も不利になる状況になるのですね。そこで、やむを得ずにあれは擬制適用ということでやっておるのであります。これを他の税法並びに保険行政上の制度とどう合理的にアレンジしながら、さらに有利な保障をするかということはなかなかむずかしいようです。しかし、この点は御指摘のように重要な問題でございますので、関係各省にこの委員会の大かたの御意見を伝達しまして、むずかしい問題であるけれども検討することを、私のほうから推進するようにいたしたいと考えます。
  73. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 以上で私の質問を終わります。後ほど討論の際にもう若干われわれの意見を申し上げたいと思います。
  74. 金丸信

    金丸委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  75. 金丸信

    金丸委員長 この際、正示啓次郎君及び吉田之久君から、建設業法の一部を改正する法律案に対する修正案が提出されております。
  76. 金丸信

    金丸委員長 提出者正示啓次郎君から趣旨の説明を求めます。正示啓次郎君。
  77. 正示啓次郎

    ○正示委員 ただいま議題となりました建設業法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党及び民社党を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  なお、修正案文はお手元に配付してありますので、朗読は省略させていただきます。  御承知のとおり、本改正案登録制度を業種別の許可制度に改める等、重要な事項について改正を行なうものでありますが、特に本委員会におきましては、委員会理事会及び理事懇談会において慎重に審議を進めてきました結果、特定建設業者の下請負人建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合等における当該特定建設業者の立てかえ払い等について不利な点が見られましたので、本案においてその修正を行なおうとするものであります。  すなわち、第一に、建設大臣または都道府県知事は、第四十一条第二項の規定に基づき、特定建設業者の下請負人がその使用する労働者に対する賃金支払いを遅延した場合において、当該特定建設業者に対し適正な賃金相当額の立てかえ払い等を勧告することができることとされておりますが、さらに、特定建設業者がその勧告に従わない場合において、必要があると認めるときは、建設大臣または都道府県知事は当該特定建設業者に対して必要な指示をすることができるものとし、第二十八条に所要の規定を加えることといたしたのであります。この修正によって、建設大臣または都道府県知事は、同条第三項の規定により、その指示に従わない特定建設業者に対し、一年以内の期間を定めて、その営業の全部又は一部の停止を命ずることができるようになったのであります。  第二は、特定建設業者の下請負人建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合において、必要があると認めるときは、建設大臣または都道府県知事は、当該特定建設業者に対し、当該他人が受けた損害につき適正と認められる金額を立てかえ払いすることその他適切な措置を講ずることを勧告することができるものとし、第四十一条に新たに一項を追加することといたしました。なお、この修正規定に基づく建設大臣または都道府県知事勧告に従わない特定建設業者に対する指示等については、第一と同様の規定が適用せられることといたしたのであります。  以上が本改正案に対する修正案の趣旨でありますが、委員各位の御賛成をお願いいたしまして、説明を終わります。
  78. 金丸信

    金丸委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  79. 金丸信

    金丸委員長 本修正案について別に発言の申し出もありませんので、これより建設業法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案の両案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、これを許します。阿部昭吾君。
  80. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私は、日本社会党及び公明党を代表いたしまして、ただいま議題となっております建設業法の一部を改正する法律案に対しまして反対の意思を表明するものであります。  反対の理由の第一は、登録制から許可制に切りかえる、ここに主要なる改正案改正点があるのでありますけれども、この許可制にする理由として説明をされておりまする不良業者を規制する、私ども登録制から許可制にしなければ不良業者の規制はできないということにはならぬと思うのであります。現在の登録制度のもとにおきましも、二年に一度の登録更新の制度があります。あるいはまた、その間に、受注主義でありますこの業界におきましては、指名制度あるいは工事完成保証の制度、こういうようないろんなものを私ども考えまするときに、現在の登録制度のもとにおきましても、いまこの改正案提案のねらいの一番最たるものとして出されております不良業者の規制をやって国民の利益を守る。この国民の利益を守る方法は、登録から許可に切りかえて、そうして行政当局業界に対して大きな介入をするという方向をとらないやり方をもってしても十分目的を達することができると思うのであります。したがって、今回の改正案が意図いたしております登録から許可、そして不良業者の規制、登録から許可にしなければならぬということについて、私どもは残念ながら納得のできる説明を受けることができませんでした。したがって、このことは、業界に対する行政権力の大きな介入をするというこの意図以外にないではないか。そこからさらに私ども判断をするに、現在でも政治権力と結合して業界の中にはいろいろな問題が提起をされております。私は、これに政党政治のもとにおいて行政権力が登録から許可という姿でさらに大きな介入をするということは、従来われわれが指摘をしておったようなこういう問題というものが、矛盾というものがより激化をするのではないかということを懸念いたします。そういう観点で、私どもは第一にこの今回の改正案に賛成することはできないのであります。  第二の点は、日本建設業市場の圧倒的な部分を押えておりまする大手建設業者と、毎日毎日、みずからの技術をいわば根拠にして、技術と長い間の社会慣行の上に立って地域の信用の上に立脚をして事業を営み、労働を売りものにしながらやってきたところの一人親方建設職人というものを、大手建設業者と全く同じの法律で規制しようというところに無理がある。したがって、私ども考え方としては、一般的な建設業者というものと、一人親方を中心とするような小規模建設業者というものは、別途の考え方で一定の法体系を形成すべきだ、こういう観点からも今回のこの改正案に賛成することができないのであります。  それから同時に、今回の改正案をもっていたしましてもなおかつ、許可適用除外金額の問題にいたしましても、あるいは中小企業育成にいたしましても、あるいは中小業者、地方業者受注機会の拡大の問題にいたしましても、これらの建設業界を改革するためにきわめて重要な問題というものは、ほとんど全部政令事項もしくは行政指導という段階にゆだねられたのであります。これも私どもは、今回の業法改正をやるならば、この辺にこそいわば法改正の集中的な努力をしなければならなかった点ではないか、こういう観点からも残念ながら大臣提案の原案に私ども賛成することができないのであります。  最後に、一般の一人親方、職人の皆さんが持っておった失業保険制度日雇い健康保険制度あるいは労働者災害補償保険制度、あるいは税制その他もろもろあるわけでありますが、これらの問題に対してきょうは大臣は、前向きに検討して関係方面と協議をして進めていきたいという、前向きな御答弁がございましたが、私は業法改正と同時に、これらの問題は、政府の側が、国会で論議になったから出てくるというかっこうではなしに、自発的に独自に前もって同時に提起をして国会の審議に付すべき問題ではなかったか、こう思うのであります。  以上のような観点から、私ども今回の業法改正について、基本的には登録から許可に改める、この登録から許可に改めるというこの基本の立場は、私どもいままでの説明の段階でもどうしても従来われわれが持っておった疑念を解くに至らなかった。あるいは業法改正するならば、一括下請、ピンはねといったようなものが横行しておる、こういうものを今度は規制する、こう言っておるのでありますが、これらの問題あるいは中小企業育成、こういった問題も政府は最初からもっと積極的なかまえで提起さるべきであった。若干当委員会の審議を通じて前向きになった部分は、私ども評価するにやぶさかではありません。総体として登録から許可、行政権の深い介入、ここだけに主たるねらいを置かれたという感を、提案の改正からいって私ども認めざるを得ないであります。そういう観点で、残念ながら本法案に対して私ども反対の意思表示を行なわんとするものであります。
  81. 金丸信

  82. 大村襄治

    大村委員 私は、自由民主党及び民社党を代表して賛成の討論を行なおうとするものであります。  本法案は、わが国の建設業界現状とわが国経済の動向にかんがみ、さきに行なわれた中央建設業審議会の答申に基づき、建設業者の資質の向上建設工事請負契約適正化等をはかることによって、建設工事の施工を確保し、発注者保護するとともに、建設業の健全な発展を促進するために提案されたものであります。このため、現行登録制度を業種別の許可制度に改めるとともに、下請業者保護育成建設工事の施工の改善をはかるため、特定建設業許可制度をしくことといたしております。  また、注文者と請負人との間における不合理な取引関係改善するため、不当に低い請負代金を定めることを禁止する等、請負契約適正化をはかることといたしております。  さらに、下請業者の経済的地位を強化するため、下請代金支払いを遅延することを禁止する等の措置を設けることといたしております。  このように本法案はわが国建設業界現状にかんがみ、まことに時宜を得た適切妥当な改正考えられますが、本委員会における審議の結果、原案に、他人に損害を加えた場合における特定建設業者の立てかえ払い等について所要の改正を加えることとなりましたので、賛成の意を表するものであります。  なお、本法案の実施にあたり、許可制度の運営が本法案の目的に照らし適切に行なわれるよう、特に一人親方等の零細企業及び中小企業保護育成等に政府の特段の配慮を加えられるよう強く要望して、私の賛成討論を終わります。
  83. 金丸信

    金丸委員長 浦井洋君。
  84. 浦井洋

    ○浦井委員 私は、日本共産党を代表して建設業法の一部を改正する法律案に反対する態度を表明いたします。  法案の提案説明では、「施工能力、資力信用に問題のある建設業者が輩出して、粗悪工事、各種の労働災害、公衆災害等を発生させるともに、公正な競争が阻害され、業者倒産の著しい増加を招いている」、それゆえ建設業者の資質の向上などのために、従来の業者登録制許可制に変えるのだと説明されています。しかし、この制度では、弱小の建設業者の淘汰はできても、業者の質の向上ははかれない、こういうふうに考えるわけであります。なぜなら、資力信用のない業者の生まれる条件は、もっとほかにあるからであります。  わが国の建設業者の九九%は、中小建設業者によって占められております。過去五年間にわたって、企業規模別の施工高を見ますと、資本金五千万円以上の業者においては一社当たり年平均一二・一%の伸びを示しておりますけれども中小企業においては一社当たり六・八%の伸びでしかなく、大企業中小企業との格差は年々拡大されております。これらの数字にも示されておるとおり、中小企業においては経営基盤の脆弱な企業相互に激しい受注競争が強制され、倒産に至る業者も少なくないわけであります。昭和四十三年度の負債金額一千万円以上の倒産件数二千四百四十七件のうち、建設業関係が実に二二・七%を占めております。このような大企業優先、劣悪な条件のもとにある中小企業の過度の競争の中から、施工能力、資力信用などに問題のある業者も生じてくることになります。  したがって、中小業者の健全な発展は、わが党の政策に示しておりますように、資本と貿易の自由化に反対し、大企業の進出を押え、中小業者に安定した仕事と営業を保障し、資金、資材の保障、技術の保存、開発の援助、税金の大幅引き下げと融資、倒産防止の緊急措置、中小業者の自主的協同化などをとることによってのみ可能であります。  建設業法改正案は、これに反し、業者に対する取り締まりを強化し、登録制許可制に変えることにより、零細業者の切り捨てと中小業者の大企業への吸収合併によるカッコつきの近代化をはかるものであります。  許可の適用が除外される政令で定める軽微な建設工事については、工事一件の請負代金の額が、建築一式工事の場合三百万円に満たない工事、そのほかは百万円に満たない工事とするならば、零細業者にとって、当面のところは相当に緩和されるとしても、零細業者にとって重要な営業表示の制限や住宅ローン、住宅金融公庫の資金による建築工事から、許可業者でないからとして除外され、事実上仕事を奪われ、営業が成り立たなくなるなど、多くの疑義が残されておるわけであります。しかも、登録制度許可制度改正する基本的な点では少しも修正されるものではございません。改正案の中には、請負契約適正化、下請負人保護など、ある程度の前進的なものも含まれておりますけれども、実行の保証については必ずしも十分ではありません。このように、本改正案は、建設業者の圧倒的多数である中小業者の営業と生活を危うくするものであり、同時に、許可業者一般の罠間住宅の建築を依頼することにより、建築費の一そうの値上げは避けられず、勤労人民の利益にも反するものであります。  以上の理由により、日本共産党は、提案されております建設業法の一部を改正する法律案に反対し、本改正案を廃案にすることを要求して、私の討論を終わります。
  85. 金丸信

    金丸委員長 以上で討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  まず、正示啓次郎君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  86. 金丸信

    金丸委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま議決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  87. 金丸信

    金丸委員長 起立多数。よって、建設業法の一部を改正する法律案は、正示啓次郎君外一名提出の修正案のごとく修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  88. 金丸信

    金丸委員長 ただいま議決いたしました本案に対しまして、正示啓次郎君、阿部昭吾君、小川新一郎君及び吉田之久君から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者正示啓次郎君から趣旨の説明を求めます。正示啓次郎君。
  89. 正示啓次郎

    ○正示委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四党を代表いたしまして、附帯決議の趣旨を御説明申し上げます。  附帯決議の案文は、お手元に配付のとおりでありますので、朗読を省略させていただきます。  御承知のとおり、本法律案につきましては、委員会理事会及び理事懇談会において慎重に審査されてまいったのでありますが、登録制度を業種別の許可制度に改める等、重要な事項について改正を行なっている本法の施行につきましては、当委員会は重大な関心を有するものであり、ここに七項目にわたる附帯決議を付して、政府に対し、その運用に遺憾なきを期するよう要望いたしたいと思うのであります。  以上が、本案に附帯決議を付さんとする理由であります。各位の御賛同をお願いいたす次第であります。     —————————————    建設業法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、本法の施行にあたつては次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきをきすべきである。 一、許可の適用が除外される政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が、建築一式工事にあつては三百万円に満たない工事若しくは延面積が百平方米未満の木造住宅工事、その他の建設工事にあつては百万円に満たない工事とすること。 二、優良な地元建設業者を活用するため、中小工事に対する大手業者の参加を極力抑制する等中小建設業者受注の確保を図ること。 三、中小建設業者が施行能力を増大するため、合併又は協業組合等を設立し又は共同企業体を結成したときは、受注機会の確保について特段の配慮をすること。 四、一括下請の禁止の規定に違反するものに対しては、今後とも取締まりを強化するとともの、特定建設業者に対し、下請施工の実態を把握して不必要な重層下請け避けるよう指導すること。 五、営業の禁止をされた者又は許可要件に適合しない不良業者について、関係行政庁間の連絡をはかり、発注者に迷惑をかけないよう配慮すること。 六、建設工事における労働災害の防止をはかるため、元請業者下請業者間における施行過程及び労働管理に対する責任区分を明確にするとともに、発注者は積算単価等において適切な安全費用を十分に見積るものとし、また標準請負契約約款の改善及び公正なる価格による積算単価の是正等請負契約の片務性の解消に努めること。 七、許可制度の採用によつて、建設労働者に対する日雇労働者健康保険法、失業保険法、労働者災害補償保険法、所得税法の取扱いについて、従来と変わらないよう 配慮すること。  右決議する。     —————————————
  90. 金丸信

    金丸委員長 以上で、趣旨の説明は終わりました。  本動議に対し、別に発言の申し出もありませんので、これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  91. 金丸信

    金丸委員長 起立総員。よって、正示啓次郎君外三名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、根本建設大臣より発言を求められておりますので、これを許します。根本建設大臣
  92. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいま採決されました附帯決議につきましては、御趣旨に沿って努力いたしたいと存じます。     —————————————
  93. 金丸信

    金丸委員長 おはかりいたします。  ただいま議決いたしました本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 金丸信

    金丸委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  95. 金丸信

    金丸委員長 本会議散会後直ちに再開し、建築基準法の一部を改正する法律案質疑に入ることとし、この際、休憩いたします。    午後一時二十六分休憩      ————◇—————    午後三時二十分開議
  96. 金丸信

    金丸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出参議院送付建築基準法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦利尚君。
  97. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま議題になっております建築基準法の一部を改正する法律案は、本院に再三かかって相当深く議論された法律であるということを承っておるわけでありますが、新しい議員としては、その経過等について会議録等を検討しながら一部承知はいたしておりますけれども、非常に重要な法律でありますから、その内容点の幾つかについて大臣に直接質問をして、疑問点を解明させていただきたいと存じます。  大臣の御出席がきょうだけだそうでありますから、主として大臣への質問にポイントを置いて御質問申し上げ、その他の問題については、明日でも機会がありましたら質問させていただきます。したがって、質問の時間をおよそ一時間と前もって区切って質問を申し上げます。そうでないと、あとの方に迷惑をかけるようでありますから。  まず第一点といたしましては、この建築基準法と都市計画との関係であります。御承知のように、建築基準法建築そのものの基準を定めておる法律でありまして、都市計画と若干無縁な——無縁と言ったらたいへんことばが悪いわけでありますけれども、どうもぴったりしない面があるのではないか。この建築基準法を見てまいりましても、従来の建築主事という感覚で現在の都市化されてくるこうした状況に対応でき得るのかどうか。従来のように、ただ建築主事というものが、建物が基準法どおりであるかどうかという確認のチェックだけをすることで事足り得るという時代は過ぎ去ったのではないか。むしろこの基準法というものが、極端に言うならばコミュニティーといいますか、これをいかに守っていくかということも、やはりその前提に立つ基準法というものに改めなければならぬ、このように思うのでありますが、その点について、この基準法と現在の都市計画なりその他の問題についての関連を具体的にお聞きかせいただきたいと思います。
  98. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のとおりでございまして、この建築基準法だけで都市社会の満足すべき条件を完備するということは困難であります。したがいまして、これは御無知のように、都市局で御説明いたしましたように、市街地開発法あるいは再開発に基づく諸施策については、いわゆる住居専用地域とか——それも二つに分けて高中層のものを許すところと低層住宅と、さらには商業隣接地域等ずっと分けまして、それに適応するように、今度の基準法も相当程度これは改正しておるわけでございます。そういう改正立法を十分に勉強した上で、建築主事がこの基準法に基づく許可、認可等をやるというたてまえになっておるのでございます。したがいまして、直接に法律上の連係をそれぞれの条項について規定はいたしておりませんけれども、立法がそういうふうに十分に考慮した上に立法されておるということと、行政運用上も、建築主事も都市計画法等を十分承知してやらせまして、御指摘の不安をなくすように努力したいと考えておる次第でございます。
  99. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 従来の建築主事というものの資格認定については私も承知いたしておるのですけれども、いま大臣が御答弁になりましたように、従来の建築主事というものだけの資格条件では、やはりこれからの都市化というものに対応できないのではないか、むしろ都市工学というものをある程度熟知した建築主事が必要になるのではないか、こういうことを考えるのでありますが、そうした建築主事の資格というもの、認定の方法等について、具体的にどのようなお考えがあるのかをお聞かせいただきたいと思います。
  100. 大津留温

    ○大津留政府委員 お答え申し上げます。  建築主事は、建設大臣が行ないます建築主事たるの資格試験に合格した者の中から、知事あるいは市長が任命するわけでございますが、その試験の項目といたしましては、建築の設計あるいは構造といった建築プロパーの問題もございますが、先生御指摘の都市計画に関する事項また建築基準法に関する事項という、いわばそういった都市計画、建築一般について幅広くその知識を求めることにしておりますので、御指摘のように、都市計画についての基礎知識の上に基づきまして建築の確認を行なう、こういうたてまえになっております。
  101. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いまの建築主事の問題については一応了解をいたしますけれども、それでは、今度のこの建築基準法によりますと、従来の四つの用途地域を八つに区分する、こういうふうになっておるわけでございますけれども、御存じのように、新都市計画法による市街化区域と調整区域の線引き問題でも、利害が相反して非常に混乱を生じてきたわけでありますが、実際にこれを細分化することについて私は賛成でありますけれども、これが具体的に作業に入る場合に混乱が出てくるのじゃないかという気が私はするのです。相当強力な行政指導というものが必要になってくるのじゃないか。こういうものについて大臣のほうでは、混乱なくこの基準法に従って具体的に作業が終わるというふうにお考えになりますか。  さらにもう一つは、この八つの地域に分けることはけっこうですけれども、一体いつまでにこの地域指定が、用途別に区画が完了するというふうにお考えになるのか、その点をお聞かせいただきたいと存じます。
  102. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のように、なかなかむずかしい問題を含んでおるのでございます。その理由は、実は人間だれ人も利益を追求し、そうして自分の希望する条件が満たされることに重点を入れてものを考えるのでございます。現在、線引きが少し地元住民の間で利害が相反する、あるいはまた思惑があるというのは、この市街化区域に入れられれば必然的に土地は値上がりをする、したがって自分の土地が将来値上がりすることを期待するという面では、市街化区域に入れてほしいという気持ちがございます。ところが、市街化区域になりますれば必然的に今度はこれが税制上——いま盛んに国会でも一般国民からでも論議されているように、自分の努力なくして、社会的変化に伴うところの付加価値が全面的にその人間だけに与えられているところに、土地問題が大衆から遊離した形で価格形成がなされているところの矛盾があるわけであります。それで、これについては税制を強化するという点がございます。そこで混乱が起きておるのは、税制はそのままにして、しかも市街地に入れてほしい、あるいはまた調整区域に入れてもらって、そうして自分が一定の条件だったならば今度はすぐにこれを都市化せよという、自分自身の心の中でも葛藤しておって、混乱しておる向きが多いようでございます。しかし、だんだん実態がわかってきますれば相当合理的な判断がなされてくるということで、一時、昨年の選挙前当時はこれに非常な抵抗があったのが、いまはわりあい冷静にこれを受けとめる向きが相当出てきております。したがいまして、若干の時間の延伸はございましたけれども、究極においては、各地方自治体においても線引きができるものと考えております。  それから、どの程度までの時間で八つの地域に指定したところを決定するかということでございまするが、これはいまの普通の市街地区域と調整区域の線引きよりももっと時間的に余裕を見てやらなければならないと思っております。その市街化区域になったところの社会的な趨勢がもう少し傾向として定着しなければ、若干不安な点があるようでございます。それで大体三年をめどにして市街地区域の八つの区分をいたしたい。その点については、十分地方自治体の御意見に従わなければなりません。地方自治体は、また同時に、地元の地域住民の意見も相当考えながらやっていくことと思うのでございます。
  103. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 三年間というと非常に長期間かかるわけでありますけれども、その三年間の長期間に、具体的に第一種住宅地域に指定しようとするところに三年間の余裕期間があるわけですから、どんどん高層建築が建つということも出てくる場合があると私は判断するのです。そういうものとの調整という問題があとに尾を引くのではないかと思うのですが、そういう点はどうでしょう。
  104. 大津留温

    ○大津留政府委員 お答えいたします。  現在白紙のところに新しい八つの地域を指定するということならば、おっしゃるような混乱が起きるかと思うのですが、現在すでに住居地域なり何なりに指定され、しかもその中で住居専用地区という現行制度のもとで地区が指定されております。それから東京都の場合のように、さらに高度地区とかあるいは容積地区の指定がございまして、高さなり用途なりについては相当具体的な指定がございますので、それを新しい八つの地域に指定がえするということでございますから、いままで認められていなかったのが急に認められたとかいうような、それほど極端な変化は起こらないのじゃないかと考えております。
  105. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 わかりました。  大臣にお尋ねをいたしますが、私は、ある場面では技術基準を政令によって統一するということも必要だと思うのですが、そうした場合に、地域の実情にそぐわないものが出てくると思うのです。また、技術基準というものを全部地域にまかせてしまうと全国的にアンバランスが起こってくる。どちらの場合をとってみても、やはり矛盾というものは必ず出てくると思うのですが、こうした問題についてはどのように行政措置をされようとするのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  106. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築の設計者が設計する場合に、東京ではこうだが神奈川県ではこうだと、違った基準だとなかなか困る面がございます。したがって、技術基準はできるだけ全国的に統一したものにしたいという考えで、政令で基準を定めるということを原則にしておりますが、しかしまた、地域地域によって事情が異なる面も出てまいりますので、そういう事項につきましては条例でその市ごとにきめ得るということにしておりまして、主として建築の構造、安全に関する基準は政令で統一的に、しかもその地域地域の特性を生かすような用途等につきましては条例で定め得る、こういうたてまえになっております。
  107. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これは大臣に直接お尋ねしたいのですが、都市計画法、都市再開発法、こういった法律があることは事実であります。ところが、御承知のように突然商業地域にでっかいビルが建つ。日本の特殊構造として店舗と住居が一緒になっておるわけですね。そういう人たちは、その大きな建物ができたために、極端に言うと自分自身の生活が破壊されるという現象が最近非常にたくさん出てきておるわけであります。これも一説によると高層化によるスラム、高層スラム化という現象が都心の中に出てきておるわけですね。そうした問題の関連をどう調整しようとされるのか。実際に基準法で高さを取っ払って、四十階の貿易センタービルとかあるいは霞が関ビルというものができ上がる。それによって、いままで古くから生活しておった善良な国民はたいへんな犠牲を受ける。現実にそこだけは確かに高層化されるけれども、従来から生活しておる人たちはそのままの状態に放置されておる。その部分だけは確かに開発は進むが、その周辺は全く置き去りにされてスラム化しておるというように、実質的に法律が有名無実化しておる現実というものがいま出てきておると思うのです。そういう点について大臣はどのようにお考えになりますか。
  108. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のように、過渡的現象としてそういうことが出てきておることは事実と思います。そこで、先ほどお答えいたしましたように、市街地開発地域の一つの専門化地域と申しますか、専門的に周辺も同じような態様に再開発しなければならないということでございます。すなわち、都市開発地域における高度の情報産業を中心とするような場所と、あるいは工場地帯のような場所と、あるいは高度の商業流通の中心地というもの、おのおの都市機能の中で必要欠くべからざる機能であるけれども、これが混在することによって他にいろいろのマイナスの作用を与える。そういうことから、先ほど御指摘のありましたように、都市区域におけるところの専門化を四つの段階から八つにしたということでございます。こういうことによって漸次都市機能を高めつつ、しかも人間生活の確保をはからなければならない。そのために都市再開発法というようなものすら制定して、それに漸次行政的、政治的な誘導をはかっていかなければならない、こういう段階でございます。そういうことで、これは御指摘のように、いま相当の矛盾があることも承知しておりますが、それを漸次機能別にグループをつくって再開発することによって是正してまいりたいと考えておる次第でございます。
  109. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ここで私がお話しするよりも、実は高層ビルができたためにその周辺の皆さん方が非常に苦しんでおられる、そのことを私はテープに収録してまいりました。全部ここで流しますと約二十分か三十分かかりますが、そういった高層ビルの陰にどれほど苦しんでおるかという国民の声でありますから、私は操作がわかりませんから秘書のほうではしょって操作いたしますので、委員長、お許しいただきたいと思います。
  110. 金丸信

    金丸委員長 それじゃ速記をとめて。   〔速記中止〕
  111. 金丸信

    金丸委員長 速記を始めてください。
  112. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま速記はとめてありましたが、お聞きいただきましたように、だんだんと高さの制限を取っ払ったために、ずっと大きな建物が建つために従来なかったような公害、これが現実にいま発生してきておるのです。それで私は、この問題についてどうも理解できないので、日本気象学会のほうに頼んで資料を取り寄せたのです。ところが、すでにこういうものについての研究は気象学会、特に気象研究所では前から行なわれておったのです。どういう形で行なわれておったかといいますと、一番最初に東京タワーが建ったときに、あの周辺の住民から、風の方向が変わったという苦情が来たために東京タワーで調査をしたというデータがここにあるのです。これはもう建築家なら、設計する人はだれでも御承知のようにワストですね。風の呼吸について調査をした内容ですけれども、北と南から来る風というのは常にそういう現象が起こる。ですから、北から吹いてきた場合には、南側には約一・五倍の風圧がかかる。ところが、ふしぎなことに東西では全然ないのですね。そういう状態というのがすでにここでチェックされておるわけです。それからまた、霞が関ビルができたときにも、風の問題というのは気象研究所で現実に研究されておるのです。ところが、実際問題としてこれからどんどんと都心部にあのような大きな建築が建つでしょう。ところが、これが建物としての基準法には適合しておるけれども、いま申し上げたような公害というのですか、風害というような、こうした状態についてはこの基準法には何らうたわれておらないのですね。しかも、これに対する救済措置というものも何にもないわけです。そうすると、実際にどんどんどんどん建物が建ってしまった、いままでは困っておらなかったけれども、建物が建ったために被害をこうむったという人たちが救済される措置というものはない、こういう問題。私は一つの大きな矛盾というよりも、政治的な欠陥だと思うのですね。現実に貿易センタービルが建ったあの周辺の住民というのは、そういう苦しみをいますでに味わっておるわけです。しかも、われわれは国会でいまこういうふうに基準法について議論をしておる。基準法の前にどんどん、どんどん技術というものは進んでいくのです。その新しい技術から起こる公害について、われわれが政治家として政治的にそれを防いでやる方法というものが何らない。こうしたものについて、実際に起こっておる現象でありますから、大臣はどのように対処されようとするのかを明らかにしていただきたいと思います。
  113. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、建築基準法上の問題よりも、都市計画法に基づく専用地区をどう整備するかというところにその救済を求めなければ、これは困難だと思います。御承知のように、ごく最近までは日本において超高層というものが実質上ほとんどなかったために、その研究が一部で行なわれても、これがそれほどの大きな社会的な問題となるとは考えていなかったと思います。霞が関ビルのほうが早くできたけれども、それほど深刻な問題にならなかったというのは、あそこは現在はほとんどビル街になってしまったために、その風害がそれほど痛切に感ぜられなかったわけです。ところが、貿易センタービルは、周辺に住宅や小さな商店があそこに存在しておるということ、しかも御承知のようにあそこは浜に近いところだから、いわゆる海からの風が霞が関ビルよりも大きく作用しておるというふうに考えられるのでございます。ところが、先ほどの録音にもありましたように、従来一般常識的に見た場合に、大きい建物がありますれば、それがむしろ風の防壁になるというような認識が一般的な常識というか、そういう観念があったから、あれを建てるときに何らの抵抗もなかったというような形がああした形に出てきておると思いまするので、今後ああいう超高層のものを都市計画法との関連において許可するときには十分に配慮して、ただ単に容積制限に適格である、あるいは建築基準法上これは適格であるから自動的にやるというふうなわけにはいかなくなってきたというふうに、私も感づいておるのでございます。したがいまして、超高層の建築物を許すときには、そうした超高層建築ができたことに基づく周辺に対する影響を十分慎重に検討した上許可するように、これを行政指導しなければならないというふうな感じをいま持ちつつある次第でございます。
  114. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま将来の問題として、これからの許可、認可については行政指導をしていくということでたいへん前向きな御発言をいただいたわけですが、それはそれでけっこうであります。ただ問題は、現在被害を受けておる人たちについての救済措置というものについても、ある程度配慮していただけるものかどうか、この点も大臣からお聞かせいただきたい。
  115. 根本龍太郎

    根本国務大臣 いま直ちに、具体的にこれこれの立法措置をとるということは困難だと思います。したがって、実情をよく調査の上、これは国として措置を講ずべきかあるいは東京都というような自治体が——実質上この建築基準法に基づくところの認可は、御承知のように地方自治体にあるのでございます。そうしたところの公害を受けるところもまた地方自治体の住民でありまするので、その辺も十分に研究の上、何らかの措置考えなければならない。今後十分に研究いたさせたいと思います。
  116. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 高層住宅の問題については、いま大臣が発言なさいましたように、ぜひ積極的な姿勢で対処していただきたいと存じます。同時に、事務当局にお願いをしておきますが、早急に貿易センタービル周辺の風速その他の測定をしていただいて、その結果について、次期国会でもけっこうでありますから、資料として本委員会に提示をいただきたいというふうに、御要望申し上げておきたいと存じます。  それでは、この法案の内容について若干御質問を申し上げておきたいと存じます。  今度の改正の中心というのは、違反建築物に対する取り締まり強化という問題がその中心を占めておる。もう一つは、技術基準を強化をして、先ほど言いましたように、四地域を八地域に区分けをして、区分を明確にしていく。それからもう一つ建築構造の中で防煙設備等を明確化してきた、こういうふうなことが私はひとつの大きなメリットだと思うのですが、その中で、実は違反建築物というのが一体どれくらいあるものなのか、その点を局長のほうからお聞かせいただきたいと思います。
  117. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築確認をいたします数が、四十三年度の場合約九十万ございます。違反建築として摘発いたしました件数が、年間に約四万件でございます。
  118. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いまのは、届け出確認をした九十万件のうち違反をしたものが四万件、こういうことですが、無届け建築というのは推定どのくらいあるのですか。
  119. 大津留温

    ○大津留政府委員 ただいま申し上げました四万件といいますのは、無届け建築をしておったのを建築関係職員が発見して摘発したというのを含んでおります。
  120. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 無届け摘発が四万件の中に含まれておるということですが、それでは確認申請せずに無届けで建築するものは、数量は幾らくらいあるのですか。——用意がないようですから申し上げますが、私が把握した範囲では届け出確認済みのものが九十万件、無届け建築しておるだろうと思うものが推定二十万件、こういうふうに承っておるのですが、数字に間違いありませんか。
  121. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築取り締まり当局が摘発いたしましたほかに、相当数、目が届かないところで無届けの建築が行なわれておるであろうということは推測できます。その数は、あくまで推測でございますが、多く見れば、おっしゃるように届け出た件数の二割近い件数ではなかろうかという推測もできます。
  122. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 これは数字的なものでたいへん恐縮でありますけれども大臣にお尋ねします。私がお聞きをしておりましたところ、現在建築主事が全国で七百人しかおらない、こういうことなんですね。ところが、先ほど申しましたように、届け出確認をする数だけでも九十万件、無届けで建てておるものが推定その二割、二十万件近くあるということになれば、この建築主事、あるいは建築行政に携わっておる建築職員の人たちが全国で三千名、この三千七百人程度でこれだけの届け出確認、あるいは無届けの工事をやっておるものの捕捉が実際にはたして物理的に可能なのかどうか。その点を大臣から直接お聞かせいただきたいと思います。
  123. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のとおり、人員も非常に少ないので、そのためにそうした未確認のまま不法建築するものが多くなってきている。したがいまして、この建築基準法改正に伴いまして、あるいは監視員制度あるいは建築主事を漸次増強いたしまして、そうして今日までの弱点をこれからカバーしていきたいということでございます。そのためには、これは国が地方自治体に対する技術者の養成あるいは財政上の相当の裏づけ等をしてやらなければ、現在マイホームを夢見てこれからさらに住宅需要等が多くなる、あるいはまた、民間あるいは公共企業によるところの建設事業の大幅な拡大に対応していけないので、ぜひこの際、国会の御賛成を得てこの基準法の改正を実現しまして、現在の弱点を改善していきたい、かように考えております。
  124. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 事務局にお尋ねしますが、いま大臣が言われたように、建築主事というものあるいは建築行政に携わる職員が少ないから、建築監視員というものを設けてこれからそういうものに対処していきたい、こういう御説明でございましたが、その説明に関する限り私は反対はいたしません。しかし、この建築監視員の数は、私が承知しておる範囲では全国に一千名ないし千五百名程度だ、こういうふうにお聞きしておるのでありますが、その点は間違いございませんか。
  125. 大津留温

    ○大津留政府委員 御指摘のように、人員の増強が非常に大事なことでございますが、現在建築行政に従事しておる職員が全国で約三千名とちょっとおります。それを三年ないし四年計画で四千五百名程度にふやしたいということでいろいろ計画しておるわけでございますが、その中で建築監視員を重点的に増強いたしたいというので、いまおあげになりましたように全国で千名ないし千五百名の監視員を置きたい、こういう考えでおります。   〔委員長退席、天野(光)委員長代理着席〕
  126. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま局長が言われた千名ないし千五百名の建築監視員をかりに数量的にふやしてみたとしても、いま申し上げましたように、届け出確認だけでも百万件近くの建築工事が行なわれておる。無届けでも推定二十万件の、合わせて百二十万件。具体的、物理的にこの百二十万件全部をチェックして歩けるという可能性について、局長はどのようにお考えになっておられますか。
  127. 大津留温

    ○大津留政府委員 四千五百名に増強いたしましても、なおこれはそう余裕のある数字ではございません。まだ足らないという状況かと思いますが、一つは、建築監視員というのは分担地域を定めまして巡回するというのを本務として、軽自動車を用意いたしまして、もっぱら受け持ち区域を巡回する、こういうことでまいりたいと思っております。建築活動は、御承知のように大都市周辺部に集中的に行なわれておりますので、この地域を定めて機動力をもってすれば、相当重点的な取り締まりはできるであろうというふうに考えております。また、現在建築担当者が扱っております事務を相当整理し、合理化いたしまして、この建築の確認の仕事と取り締まりの仕事に重点的に振り向けるということをいたしたい、こういうふうに考えております。
  128. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま機動的に自動車等を配備して回るんだ、こういうふうに言われたのですけれども、それでも違反建築を摘発するというのは相当な能力、相当な時間が必要だと思うのです。これだけの人数で私は不可能だと思うのです。言うはやすくて物理的にもむずかしいんじゃないかと思うのですが、しかし、それ以上に大切なことは、今度の建築監視員というのは少なくとも摘発するという資格を与えられるわけでありますから、そういう意味では非常に強い権限を持つということができるわけですね。そういうふうになってまいりますと、この建築監視員の質のいかんによっては、私は重大なそごを来たしてくると思うのです。しかもその建築監視員というのは、先ほどから大臣の御答弁等をいただいておりますように、ある程度都市工学に——ただ法律的に基準法どおりかどうかということと同時に、そういった都市工学的なものも持った監視員でなければならないということになってくれば、私はますます人を得ることはむずかしいんじゃないかというふうに思います。場合によっては、この監視員の判断いかんによっては、そういうことはないと思うのですけれども、仮定の問題としてたいへん言いにくいことですが、監視員の判断一つによって正しい工事が悪くなり、悪い工事が正しくなるということも、これは人間ですからあり得るのですね。そういったことを考えてまいりますと、この建築監視員というのは、従来の建築主事より以上に重要な資格を持ってこなければならぬと思うのですね。しかも今日では、建築士というのは非常に少なくなってきておる、技術者が不足を伝えられておるわけでありますから、そういった意味では、優秀な監視員というものを得ることはなかなかむずかしいのではないかという気がしてならないのです。そういう点について、そういった私が申し上げた条件を満たすような監視員を確保することは可能だ、こういうふうにお考えになりますかどうか。
  129. 根本龍太郎

    根本国務大臣 客観情勢は、御指摘のように非常に重大な責任と権限を与えるわけでございますから、それぞれの監視員については、十分なる配慮のもとにこれは選択して任命しなければならないと思っております。それほど大事なことでございますので、これはなるべく早くこうした基準法の改正をやってそうした充足をしなければ、ますます取り返しがつかなくなってくる。ただ、いま松浦さんから御指摘のあった点は、非常にこれはその運用のいかんによっては弊害もかもされる条件を含んでいるから、運営上十分に配慮せいということだと思います。現在の制度を、松浦さんが御指摘になったような点を完全に充足させるための一挙の人的な補強はちょっとむずかしいと思いますけれども、しかし、いまにしてこの改正をし、漸次増強しなければもっともっと大きな弊害が出ますので、これをわれわれはぜひ成立させていただきたいとお願いする次第でございます。
  130. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 法律を通すということも確かに大切でありますが、それと同時に、やはり監視員というものの人の質というものが通った法律を左右すると思うわけです。そういった面で、監視員の資格条件というものをもう少し明確にして、少なくともいま申し上げたような公平を欠くあるいは問題を起こす、こういったことのないようにこの際配慮をしていただきたいと思うのです。  と同時に、これは大臣にお尋ねをしておきたいと思うのですが、建築主事その他監視員を置くということで昭和四十四年度には三十億の交付税を見込んでおった、こういうことでありますが、将来、それでは具体的な財源措置としてどれだけのものを予定しておられるのか、その点をお聞かせいただきたいと存じます。
  131. 大津留温

    ○大津留政府委員 昭和四十八年度におきましては約七十億程度の予算にいたしたい。このうち交付税が約五十億円。そういうことで、現在御指摘のように三十五億程度でございますから、約倍にこれをふやしていきたい。その財源といたしましては、ただいま申しました交付税のほか、確認の手数料あるいは許可の手数料というのがございます。これが四十八年度におきましては大体年間十五億程度の収入になろうかと思いますので、これをもって充てていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  132. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 ずばりお尋ねをいたしますが、七十億で決して建設省のほうは満足しておられるとは私は思わないのですけれども、結果的に将来、この監視制度について委託制度というものを考えておられるのではないか。建築士会とか、電気、ガス等がとっておられるように、その監視等については民間に委託する、あるいはその他の機関に委託をする、そういった方向というものを将来考えておられるのではないかという気がしてならないのです。そうしなければ、四十八年度七十億という金をもってしても、百万件がさらにふえてくると思うのですね、年間の建築戸数というのはさらに増加するということになってまいりますと、人数からいっても経費からいっても、いまのこの基準法にいうように、直接的な監視制度というものはむずかしいという気がしてならないのです。そういう意味では、ガス、電気等のように監視員というものを一般に委託するというような方向があるのではないか。その点はどうでしょうか。
  133. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築監視員にやらせることにしております違反の取り締まり、これは監督行政の最も代表的なことでございますから、これを民間の一級建築士等にまかせるというのは、これはちょっと私どもはただいまのところ全く考えておりません。ただ、特殊建築物の定期的な検査報告ということがございます。これはエレベーターの点検状況がどうか、その他安全上の点がどうかということを定期的に点検した上で報告を求めるということでございますが、これらのことは民間の建築士に点検してもらって、その結果を徴してそれを見るということでいけるのじゃないかということで、今回の改正案におきましてもそういう趣旨のことを織り込んでおりますけれども、今後そういう検査、調査という点には民間の方を利用していただくことは出てくるかと思いますが、監督行政の発動である違反の取り締まりという点につきましては、ちょっと考えていないような状況でございます。
  134. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 監視員制度については将来にわたっても絶対にそういうことはない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。  それで重ねてお尋ねをしておきますが、実はきょう私新聞の切り抜きを持ってきておったのですが、ここに見当たらないので何の新聞だったかわかりませんけれども、四月の十八日ごろの朝日ではなかったかというふうに記憶しておるのです。東京都内のビルを建ててみたところが、そのビルの周辺におる人たちが、日照権の問題がまず問題になって、日照権をどうにかしてくれ、こういって強硬に申し出たところが、すでに建築確認を終わっておる建物であるから、日照権は今日法律上の、裁判上の問題であって行政上の問題ではないというようなことから拒否されたために、それでは建築基準法に適合しておる建物かどうかとというのを地域の住民が全部で測定してみたところが、建築基準法の違反があった。それで直ちに確認をしたところに行って、これは建築基準法違反じゃないかという申し入れをしたけれども、なかなか承知をせずにみこしを上げなかったけれども、地元のほうから相当やかましく指摘をしたところが、来て調べてみてそのとおり違反建築であった、基準法上の違反建築であったということが明るみに出たという新聞記事があったわけなんですけれども、ここで私が思ったことは、どうもマイホーム自分が建てる一軒の家というものについては、監視員は非常に簡単に調査ができる。坪も小さいし個人住宅ですから、簡単に調べることができる。ところが、大きなビルとかその他になってくると調査する人も非常にめんどうくさい、だからなかなか調べない。書類上の審査だけで取り締まりをしないというようなケースが、現実のこの基準法の中で一つの例として、四月十八日だったと思いますが、朝日新聞に報道されておるのですね。ですから、私は、この基準法上のそういった制度が、はたして具体的に大きな建物についてもぴしゃっと監視監督できるのかどうか。個人が建てる住宅だけが、簡単ですから監視の対象になって、大きなところは書類審査で済ます、ときどき行って現地を見る程度に終わる、こういうことになるのではないかということを非常に危惧するのです。これは大臣というよりも直接その衝に当たられる局長のほうから、この問題をどういうふうに把握しておられるか。私はたいへんな問題を提起しておると思うのです。その点どうでしょう。
  135. 大津留温

    ○大津留政府委員 ただいま御指摘のようなことが新聞に出ておりました。私も拝見したわけでございますが、通常ビルの場合でも住宅の場合でも、確認というのは書面審査をたてまえとしておりますので、その書面でいろいろ配置図だとか設計図を見まして、それが規則に合っておれば確認するわけでございますが、御指摘のケースは、実際に敷地が八十平米ばかり不足しておったということで、これは書面に不実記載、うそが載っておったということに相なりますので確認を取り消しまして、あらためて正しい面積に合った設計を出させてこれを確認したということがございます。そういう民間の方々のいろいろな通報とか連絡を受けまして、役所で手が及ばないところは補ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  136. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いまのようなことはなくなるというふうに理解をしていいのですか。地域の住民がわざわざ行ってはかって、これは違反じゃないかと言いにいかなければやってくれない、そういうことはなくなる。もう住民がそういうふうに騒がなくとも全部監視員が調べてチェックしてくれるのだ、こういうふうに理解していいのですか、大きな建物なり全部。
  137. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築監視員は、いまおっしゃいましたような大きな建物、あるいは劇場だとか映画館だとか、大ぜいの方が入る、安全性を確かめなければならない特殊建築物、こういうものに重点を置きまして、こういうところは何回も行って見るというふうに指導したいと思います。
  138. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 それでは、この監視員というのが、そういう大きなところを中心にして監視するというふうに、いま言われたことで了解をしたいと思うのです。  次に、日照権の問題その他通風権の問題、これは全くの技術的なことでありますけれども、私は最高裁のほうから、実は日照権に関する、日照通風妨害に関する訴訟の一覧表を提出していただきたいということでここでもらったわけですけれども、実は大正十五年に、日照権の問題が、採光、通風の妨害ということで裁判に争われておるということを、私はこの資料を見て知ったわけです。大正十五年の八月十日ですか、しかもこれは物置き小屋の除去、損害賠償ということで認容されておるわけですね。これが大正十五年の裁判の例であります。それ以来日照権が争われておる。全国的なものを見てまいりますと、認知されたものあるいは棄却されたもの、こういうものは大体半々程度資料としてここに提出をされてきておるのです。ところが、今度のこの基準法案でいきますと、ここに当局からいただきました規制関係資料でいきますと、一部高さの制限、北側敷地境界からの斜線制限例ということで出されておるわけです。ところが、私は実情に合わないのじゃないかという気がしてならぬのです。これは申しわけ的に北側敷地境界からの斜線制限をしただけで、実際に合っておらぬのではないかという気がしてならぬのですが、その点、局長どうでしょうか。これは実態に合っておりますか。
  139. 大津留温

    ○大津留政府委員 住居の日照権を確保するということは非常に大事なことでございます。同時に、今日の都市におきましては、土地を高度に利用するということの要請も非常に強いわけでございます。したがいまして、今回の改正におきましては、住居専用地域におきましては北側斜線制限を設けて日照をある程度確保する。しかし、商業地域とかその他の地域におきましては、むしろ高度利用のほうを優先的といいますか、尊重すべきではなかろうかというふうに考えております。この住居専用地域におきましても、この北側斜線制限だけでそれじゃ日照が一〇〇%確保されるかと申しますと、それはそうはまいりません。やはり北側の方々も、南側にある程度庭をとって、みずから日照を確保するということをお願いする。南側に建つ人も、それに協力するというたてまえでつくっておるようなことでございます。
  140. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 いま第一種住居専用地域のことを言われましたので、これに限定いたしますが、私は、土地を所有しておるものがそこにどういうものを建てるかということ、これは占有権が存在するわけですから、それは法律で許す限り可能だと思うのです。だからといって周辺のものに対して日照権、通風権まで侵害するということは認知できないんじゃないか。これは基準法で明文化できないので、民事裁判の問題だということで具体的には避けておられるのが実態じゃないか。しかし、申しわけ的にそうは言っても、裁判で見られるように、日照権の問題が最近の世論の動向として表面化してきておる。だから、住居専用地域については高さを十メートルに制限して、北側の境界からの斜線制限というものを設けた。そこまでは理解できるのです。ところが、これは私も人から聞いた話ですから真相はわかりませんよ、しかし、少なくとも専門家から聞いたのですから。東京に例をとって、一メートルの建物が冬は一・七メートルの影を引く、こう言われるのです。そういうことになってまいりますと、実際にこの北側敷地境界からの斜線制限というものは、そのこと一つをとってみても実態に合っておらないのじゃないだろうか。その点どうでしょうか。
  141. 大津留温

    ○大津留政府委員 東京における冬至の日の太陽の傾斜角度は、いま御指摘のとおりでございます。私どもの今回の北側斜線を考えました考え方といたしましては、現在東京で敷地の平均が八十平米でございます。ここに建物の平均である二階建て、延べ五十平米の建物を建てたということで考えてみますと、南側に八十平米の敷地のところに延べ五十平米の建物が建っておる、その北側に同じく八十平米のところに延べ五十平米の二階家を建てたといたしますと、冬至の日に北側の二階の部分には四時間の日照が確保される、それから一階部分にもある程度の日照が確保される、こういうことに相なるわけでございます。東京の、こういう町でございますから、この程度でまあごしんぼういただくということで考えたわけであります。
  142. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 基準法ですから、やはりどこか一カ所でも、たとえば第一種住居専用地域だけでも、ある程度近代的に日照権なりあるいは通風権というものが確保される、あるいは新しくでき上がろうとするところに住居地域を指定しようという都市計画が進もうとするとき、この前この委員会を通りました筑波学園都市の研究者の住居地域とか、そこはこの基準法の外にはなりますけれども、そういったことを考えてまいりますと、どこか一カ所でも実際に合ったように基準法というものを改めていってしかるべきだと思うのです。確かに狭い土地を多角に利用させるということも重要でしょうけれども、それと同時に、家を建てる周辺の日照権、通風権というのはある程度基準法によって保障されるべきだ。それが裁判によって争われるというようなことになるのはやはり変則だ、こういう考え方に私はぜひ立っていただきたいと思うのです。局長、そういう点どうでしょうか。
  143. 大津留温

    ○大津留政府委員 基準法は、全国共通の最低の基準ということで定めております。この基準に合っておる建築は、合法建築として許されるわけでございます。しかし、合法建築であっても隣人に損害を与えるということが起こり得ます。合法建築だから他人に迷惑をかけてもかまわないというわけにもまいらない場合がございます。したがって、そういう場合には相応の損害賠償をする、あるいはそれが争いになれば、最終的には裁判でそういう判断を仰ぐということに相なろうかと考えております。
  144. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 もう約束した時間になりましたが、お許しいただいてあと二、三問お願いをいたします。  今度の基準法では、防火、避難に関する基準の整備ということで、排煙設備あるいは非常用の照明装置等に関する基準を定めるようになっておるわけでありますが、この問題については、前委員会において共同住宅の防火、避難対策についての一般質問をいたしましたときに、田村政務次官だったと思うのですが、本問題については早急に各省の意見を統一して本委員会に報告する、こう言われて資料がここに提出されたわけでありますけれども、この内容を見てまいりますと、従来のことを確認したにとどまっておる。ただ、ここで前進的だと思われることは、「必要に応じ、警報用のベル、ブザー等の設備を設ける。」火災が起こった場合に、避難を早急にせしめるために警報用のベル、ブザー等の設備を設けるように行政指導します、こういうふうに書いてあるのです。あとのことは、いままでやってこられた、こういうふうにしたという報告にとどまっておるわけですが、その点について私は非常に一つの前進ではあると思いますけれども、幾つかの質問をしておきたいと思うのです。  それは、この前田村政務次官もここで御答弁なさいましたように、共同住宅に対する防火施設の手直しあるいは防火対策に対する措置、こういったものについては、この基準法に基づいた施行令を公布する際に早急に手直しをして出す、こういうふうに理解をしていいのかどうかが第一点。  それから第二点は、現在既設の共同住宅は、公団、民営を問わず、既設の住宅に対して、施行令が公布後は遡及してすべてを再点検して、極端に基準に適合しないものについては再整備を施すことを考えておられるかどうか、これが第二点。  それから第三番目は、これは基準法その他とは無関係でありますけれども、実際に共同住宅で起こった火災の避難を容易にするために、これは建設省の所管ではありませんが、公団等に対して避難用の諸施設を整備してはどうかという行政指導をなさる意思があるのかないのか。  この三つのことを、基準法改正に関する法案の整備として考えておられるのかどうかをお尋ねいたしたいと思います。
  145. 大津留温

    ○大津留政府委員 政令を作成する段階におきまして、共同住宅に対する防火、避難ということを十分検討し、従来の消防施設に関する消防庁の通牒等につきましても、消防庁と十分検討して必要なものは改定してまいりたい、こういうふうに考えております。  それから、この資料にございますように、既設の公団の高層住宅でございますが、これにつきましては現在約二百棟ございます。これに対して二千八百カ所の警報用ベルまたはブザーを設置しようということで、費用が約二千八百万円かかりますが、これを三年計画くらいで逐次整備しよう、こういうことで考えております。  それから、この法律改正になりましたら、公団のアパートに全部遡及するかという御質問でございますが、これはなかなか新設の場合でないと設置できないような面もございますので、ただいま申しました警報用のベル、ブザーの整備でこれにかえたいというふうに考えます。   〔天野(光)委員長代理退席、委員長着席〕  それから避難用の器具の設置としてなわばしごの設置などを考えたらどうかという御意向がございましたが、先ほど申し上げました消防の設備の整備あるいは消防器具の整備とにらみ合わせまして、それも検討の対象に加えたいと思います。
  146. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 時間がありませんから、いまの問題についてこれ以上の質問は時間の関係で避けますけれども、やはりこの基準法に従った施行令の再整備の際に、現在緩和措置が共同住宅においてはなされておるのです。それについては、この前、田村政務次官も前向きで検討するという答弁をしていただいておるわけですから、いま具体的に排煙設備その他のほうに出されておりますけれども、これと関連をさして前回の委員会の答弁とそしていまの御答弁とをかみ合わせて、緩和措置等についても手直し等の再点検をしていただきたい、かように申し上げておきたいと思いますが、大臣どうでしょう。
  147. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘の点については、積極的に善処するように指導したいと思います。
  148. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 最後の質問になりますが、この法律案関係資料の附則の中に、私はこれは非常にふしぎな法案だと思うのですが、附則の2に「政府は、建築基準法規定による工事の施工の停止命令等の履行を確保するための措置について検討を加えるものとする。」ということがあるんですね。これは検討を加える法律というのがあるのか。ここに現実に出されておるのですから事実あるわけですが、これは一体どういうことを言わんとしておられるのか。そして、「工事の停止命令等の履行を確保するための措置」ということについて、どういうことを具体的に考えておられるのか。しかもこの基準法は再三国会で議論されておるわけですから、内容的にはもう検討されておるのじゃないかというふうにも思うのです。だから、むしろここに「検討を加える」というよりも、もう検討を加えた事項が記載さるべきじゃないかというふうな気がしてならぬのですが、その点について局長どうでしょう。
  149. 大津留温

    ○大津留政府委員 この基準法を的確に施行いたしますためには、工事の施工の停止命令というのが、十分守られることが非常に肝心でございます。そのための措置として執行罰の制度をとったらどうかという有力な御意見がございまして、いろいろ私ども検討したわけでございますが、まだこの改正案をまとめる段階までには結論が出ませんでしたので、今後引き続き検討を加えまして、結論が出次第、また改正に織り込ましていただきたい、こういう趣旨でございます。
  150. 松浦利尚

    ○松浦(利)委員 もう最後になりますが、いま言われた執行罰ですね、私はたいへん重要なことだと思うのです。形ができ上がってしまって、あの一人大工さんたちがつくる木造家屋なら取っ払えということは簡単です。しかし、アパートなり大きな建物が立ってしまったあと、もう生存権ができてしまってからこれを破壊せよといったって、なかなかコンクリートを爆発させてぶっこわすというわけにいかぬわけでありますから、そういう面では、たとえば工事の停止命令をかけたのにどんどん工事が進む。だからその工事をした分だけ罰金を加算していくとか、そういったことは早急に考えておかないと、弱いもの——私は、違反建築するのは、大小を問わずこれは明らかに違法だと思いますけれども、しかし、やはり法は平等でなければならぬわけですから、そういう実行を確保する面で、大きなものについてはなかなか実行確保が困難だというふうな片手落ちのアンバランスな法律にならないように、やはり早急にそういったものについては結論を出していただきたいと思うのです。その結論については、少なくとも本委員会に事後でもけっこうでありますから報告をしていただく。どういう内容のものにしたというようなことについては、ぜひ一方的になさらずに、事後でもけっこうでありますから、本委員会にその経過については御報告いただきたいと思うわけです。  と同時に、私はこの基準法の前向きのことについては非常に賛成です。ただ一つ欠点と思わなければならないのは、運用のいかんによってはきわめて重大な影響を与える内容がある。それは監視員制度というものが、人によって左右されるというところに非科学的なものがあるのです、人間ですから。だから、そういう面についてはこの運用を誤らないように、所管大臣であります建設大臣のほうで十分注意を払って、監視員制度というものがいやしくも片手落ちな制度にならないように要望しておきたいと思うのでありますが、ぜひそういう面についても御検討いただきたいというふうに思います。本問題については大臣からの御答弁は要りません。  以上で私の基準法に関する質問を終わります。(拍手)
  151. 金丸信

    金丸委員長 北側君。
  152. 北側義一

    ○北側委員 議題となっておりますところの建築基準法の一部を改正する法律案の内容につきましては、前国会でも非常に慎重に審議がなされまして、そうして私も議事録をずっと読ましていただきまして、非常に読むのに苦労したというような状況でありますので、ただ不審に思います点を若干と、それに関連します問題についてきょうは少しお伺いしたい、このように思っております。  まず、昭和四十二年の十二月に、建築審議会より建設大臣に答申がなされたわけです。その答申の内容としては、建築関係法制を整備するための方策等に関する答申、この答申の内容から見ますと、今回の建築基準法の一部改正案の内容に変化があるのじゃないか、私はこのように思うわけです。  たとえばその一例をあげますと、新聞等でも非常に報道されておりますが、私もよく相談を受けるわけですが、不動産業者、特にそういう悪質な不動産業者からだまされて敷地の重複使用というものができて建築違反になる、こういうことで困っておられる人をずいぶん私も聞いておるわけです。その予防措置としての敷地台帳制度、これらの創設が今回の改正には抜けておるように思うのです。こういう点について、その答申と改正案の内容の変化した点をどのように考えておられるのか、それをお聞きしたいと思います。
  153. 大津留温

    ○大津留政府委員 今回の改正案は、建築審議会の答申の線に沿って立案したわけでございますが、御指摘の敷地の登録制というようなこと、まだ十分検討が煮詰まらずに残されたものが二、三ございます。先ほど松浦先生の御質問にございました執行罰の問題とか、そのほか取り締まり官に司法警察権を与えたらどうかという御意見もございました。これも検討しましたけれども、まだちょっと時期尚早じゃないかということで結論が出なかったわけでございますが、敷地の二重使用の防止のための台帳制の問題、これも不動産登録台帳との関係がございまして、非常にむずかしい問題がございます。また、実施するといたしましても、そのために相当な人員をさかなければならないというようなことがございまして、確認申請を出してきましたその配置図とか敷地の関係を整理してファイルしておくということにいたしまして、できるだけそういう弊害を除去しよう、また監視員が各地を見回って、そういうインチキがあるかどうかを発見しようということで、対処することにしたわけでございます。
  154. 北側義一

    ○北側委員 いま敷地台帳とか執行罰の問題、また取り締まり官に司法警察権を与えたらどうか、こういうような内容があるのだ、こういうようなお話でありますが、時間的に検討する時間がなかった、昨年のこの基準法の審査の際もそのようにおっしゃっておられたわけですね。それが実際問題といたしましては一年あるわけですよ。やはりそういう大事な問題については、私は、今回入れるべきじゃなかったか、このような考えを持っておるわけです。では、そういう時間的な余裕がない、検討不十分であったと言われるならば、こういう問題について今後第二次改正で検討されるのかどうか、そういう点はどうですか。
  155. 大津留温

    ○大津留政府委員 そういうことを含めまして、今後なお絶えず検討を加え、よりいいものに改正していきたいと思いますが、御指摘の台帳制の問題あるいは執行罰の問題、非常にいろいろむずかしい問題を含んでおりますので、一年半ではなかなか明快な結論が出なかったということであります。もう少し時間をちょうだいしてじっくり研究したい、こういうふうに考えております。
  156. 北側義一

    ○北側委員 こういう都市問題の——基準法はこれから一つ法律として施行されるわけですが、その場合、守っていくためには、その変化に伴ってやはり改正をしてやっていかなければ、環境のいい都市整備というものはできないのじゃないか、こういう考えを持っておるわけです。そういう点も含めて、ひとつこの法の施行に当たっていただきたい、このように思うわけです。  なお、先ほどからいろいろな方がこの問題についてすでにおっしゃっておられるわけですが、この建築基準法をいかように整備しましても、たとえば土地対策、住宅対策、こういうものが関連してちゃんとならなければ、こういう法も非常に守りにくいようになっていくのではないか、このように思うわけです。たとえば、ちょっと私のほうの資料で見ましたところが、住宅建設についても地価の占める割合が非常に高いんですね。たとえば昭和三十三年当時、建築費の三七%が大体土地の価格だったのです、木造あたりになりますと。ところが、昭和四十二年には八六%が地価になっている。これは場所によって違うでしょうが、大体大都市の近辺になりますと、これくらいの土地の価格がかかってくるわけなんです。非常に土地価格が高いわけです。そうしますと、この基準法の精神どおりこれを運用されていくかどうかという問題については、そういう問題が非常に大きく影響してくるのじゃないか、このように思うわけです。たとえば私が住んでおりますところの付近では、実際の問題として土地一ぱい利用されて住宅が建っている。これが住宅の実情です。これを建てかえる場合は、これを基準法どおりやったらもうおそらく建たないのじゃないか、敷地が細分化されておりますので。こういう実態があるわけなんですね。これから新しく開発されるところは、この法の精神どおりびしっとやっていけるでしょう、こういうふうに思うわけです。しかし、要するにこういう地価対策また住宅対策、こういうものをやはり考えなければいけないのじゃないか、こういうぐあいに私は思うわけです。そういう面の基本的な問題が解決されてなくて、これは一つ一つやっていかれるわけでしょうが、そういう点では非常に私は矛盾を感じるわけなんですね。そういう点、大臣、これはもういろいろな人のお尋ねもあったでしょうが、どのようにお考えになっておられますか。
  157. 根本龍太郎

    根本国務大臣 いま御指摘のとおり、これは実は非常に重大な矛盾でございます。実は参議院で、この建築基準法の審議にあたりまして同様のことが指摘されました。一方において日照通風権、これを確保するためには相当土地に余裕を持たなければならぬということは、ただいまずっと指摘されました。しかし、それにあまり重点を置きますと、零細な二十坪か三十坪でようやくマイホームをつくった人が、いまのような通風その他をいうとほとんど建てられない、だから運用を弾力的にせよという議論が非常に強くいわれた次第でございます。そういうような要望の出るゆえんのものも、要するに土地が非常に高過ぎる。しから土地がなぜ高過ぎるか、いろいろの原因がありますけれども、特に都市周辺におきましては、従来までは農地法の制限がありまして、なかなか宅地転換は許されない。これに三年、四年、五年とかかって、ようやく一部が宅地になる。そのときには非常な高いものになる。また、しからばなぜ農民の方々が土地を手放さないかというと、これは農地法で保護されているほかに、これに関連していわゆる固定資産税が、東京周辺では実質上の価格の三百分の一くらいの評価しかされない。それに対して非常に税率が安い。現実に一坪十万円程度する土地が、固定資産税は一年にわずかに二十四、五円。このままでいきますれば、自分の利益を追求する場合にだれ人も土地を手放さない。ようやく今度はそういうものを買う段になると、それだけの購買力がないと二十坪か三十坪になってしまう。こういうふうに、いま指摘された点があると思うのでございます。その意味において、土地対策については今回は十分に間に合わなかったのでありますが、国会終了後大蔵大臣、自治大臣、農林大臣、それに経済企画庁長官が、土地問題に対する抜本的な対策をやるために協議をいたしまして、次の通常国会までには相当思い切った措置を講じなければならない。これによって一面においては民間の土地の非常な値上がりを抑制すると同時に、一面においては相当思い切った大幅の土地供給をしなければならない。実はこれに関連しまして先般、これも参議院におきまして、政府が住宅あるいは公共事業を実施する場合においては、原則として土地収用法を初めからかけるべきだ、そうして土地の値上がり分については付加価値税とも申すべき税金を思い切ってかけなさい、いま少数の土地を持っておる人を保護するというたてまえで、一億サラリーマン化した国民の願望を見過ごすわけにいかないのではないか、そのためには土地収用法をもう一回改正して、住宅についても政府の先買い権を規定すべきじゃないか、こういう意見すら出ているのであります。これも非常に傾聴すべき議論であります。これまた影響することが非常に大でありますので、慎重に関係方面の閣僚の意見を聞きまして、そうしたものを踏まえてこれからやっていかなければ、確かに北側さんが言われたように、建築基準法だけで快適なる都市生活やあるいは住宅問題を解決することが困難だと思いますので、今後一そう配慮をして研究すべきだと思います。
  158. 北側義一

    ○北側委員 非常に大臣の前向きなお答えを聞いて喜んでおる次第ですが、この土地問題は、もう私は限度に来ているんじゃないかと思うのですよ。実際問題として私らの仲間が住宅をつくる場合に、どこで行き詰まるかといったら全部地価で行き詰まっているのです。そうしてもう特に大都市近辺、特に東京、大阪あたりの近辺では、もうすでにそういう土地が、相当長距離の、通勤場所から離れた場所になっておるわけですね。しかもその地価が非常に高い。この地価の値上がりは、御存じのとおり大阪近辺は二四%ですね、去年で。東京で二五%近くですよ。これは早急にやってもらわなければいかぬと思うのですね。きょうの新聞に載っておるところによりますと、四月一日から地価公示制度が発足したわけですが、この地価公示制度が発足されて、やはりその一つの目的というのは、民間が土地を所有する場合にその一つの目安となる、こういうことで発足されたように私は思うわけです。目安となる以上は、その目安ががっちりとしたものでなければいけないと思うのです。たとえば地価公示をやって、その公示された価格よりもすべてが高い価格で土地が取引されるようでは、これはもうこの法律も何にもならないわけですから、そのために地価公示、この問題が非常に大きく先般も取り上げられたと思うのですが、公示価格がきめられたら、それ以上の地価についてはやはり税金でもがっちりかけていく、こういうぐあいにやっていくのが本来の姿じゃないかと私は思うのです。そうせぬと、この法の精神というものが死んでいくんじゃないかと思うのです。それは私権の問題とかいろいろなむずかしい問題があると思いますが、ここはやはり勇断を持ってやられるべきだと思うのです。そういう点についても、どうかひとつ検討していただいて、やっていただきたいと思うのですね。この地価公示について、それ以上の価格で売った場合にどうなるのですか。来年あたりは三倍近く基点がきめられるそうですが。
  159. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のとおりでございまして、ようやく地価公示制度が発足したばかりでありまして、いわばその地価を調査した点が非常に荒い網なものでございますから、すべてそのまま機械的に取引に適用するには若干これは慎重であらねばなりません。そこで、来年度は相当思い切って、地価公示が一般的に国民の取引の基準になるためには、調査範囲を、もっと基点を多くしなければなりません。こういうふうに積極的にやるつもりです。それと同時に、少なくとも公示制度を実効あらしめるためには、それを現実に守ることが得であって、守らなければ得だということでは、これは全部死文に化してしまいます。かえって悪い影響を国民に与えますので、佐藤総理も、この地価公示が明定されたという地区については、現実の取引と地価公示との間の格差については、相当思い切った税金をかけて処理すべきであるという姿勢をとっておるのでございます。そういう点も先ほど御答弁申し上げたところの中に含めて、土地対策を考えてまいりたいと思っている次第でございます。
  160. 北側義一

    ○北側委員 そういうことで、ひとつこの問題については早く実施できるようにやっていただきたい、このことを要望しておきます。  それから、先ほど少し話に出たわけですが、市街地におけるたとえば密集地帯、こういうところで建てかえをする場合に、非常に細部にわたる敷地面積のために基準を守れない、こういう事態も出てくるんじゃないか、こう思うのですが、大体どれくらい建てかえの住宅はありますか、こういう市街地にはいま現在……。   〔委員長退席、天野(光)委員長代理着席〕
  161. 大津留温

    ○大津留政府委員 もう戦前の建築にかかるものは大体建てかえの時期に入ってきておるわけでございますが、私どもの推定では、今後五カ年間に約百五十万戸以上の建てかえが行なわれるであろう、こういうふうに見込みを立てております。
  162. 北側義一

    ○北側委員 これは、百五十万戸というのは何ですか。そうすると、これは五カ年間に建てかえなければいけないと建設省が思っている戸数であって、実態はやはりこの百五十万戸なんですか。
  163. 大津留温

    ○大津留政府委員 私どもがこれは建てかえなければならないと見たのが百五十万戸で、それに至らない住宅でございましても、いまお住まいの方がもう古くさくなったから建てかえよう、こういう御希望も相当出るだろうと思います。そういうのを含めますと、次の五カ年間にはおそらく二百七十万戸くらいの建てかえが行なわれるのではないか、こういうふうに推定しております。
  164. 北側義一

    ○北側委員 そこで、やはりこういう市街地において建てかえる住宅は、戦災で焼けていないところが市街地の中でもずいぶんありますからね。そういうところは、実際問題として建てかえなければいけない。耐用年数が来ているわけですね。ここがこの基準法の一番、問題として大きな問題になってくるのじゃないかと思うのです。たとえば細分化されたその敷地に、共同で共同アパートを建てるとか何らかの対策を考えなければ、実際の問題としてそういう既成市街地の密集地帯ではこの基準法は守れない、こうなってくるのじゃないかと思うわけです。それについてやはり資金面の援助なり、また技術的な援助、こういうものがなければ、細部の敷地を持った土地所有者が基準法のこれに沿ったそれをやっていくかどうか、また、それをこのたびは守らすためにこういう法律をつくったわけですから、そのためには監督も非常にきびしい、こうなってくるわけです。こういう問題が非常にそういう密集地帯において大きな問題になってくるのじゃないか、こう思うわけですが、それについてはどのように……。
  165. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のとおりでございます。現在細分化された土地を、そのまま個人が建てようとする欲求があることも事実でございます。それではとうていこれはできません。全くまた同じことを繰り返すわけでございますから、したがいまして、そういうところはでき得るだけ地方自治体と十分連携をとりまして、いわば市街地開発という面をも含めまして共同化することを進めたいと思っています。そうしたところについては、地方自治体がやる場合においては起債のワクを広げてやるとか、あるいはまた、国において財投をそういうところに優先的につけてやるというふうな形で、これは解決いたしたいと思うのでございます。したがいまして、この現実の、特に大都市の密集地帯が一番これは問題でございます。また、これを処理しなくては地方自治体が、都市再開発ということは、これは空文に帰してしまう。その意味で、御指摘のことはまことに適切な御指摘でございまするので、建設省としては地方自治体と十分連携をとりまして、行政指導をしてそうした問題の解決に当たりたいと考えている次第でございます。
  166. 北側義一

    ○北側委員 そこらのことが非常にやはり大きな問題になっていますので、そういう点は法の精神が守られるように、また、守られるように国なり地方公共団体がやっていかなければ、これは何にもならないものと思うのです。そうして取り締まりだけがきつくなって、そういう技術的な援助もない、資金的な援助もない、こうなりますと、これは実際問題としてはどうしようもない、そういう点を特にひとつお願い申し上げておきます。  なお、政府として、これはちょっと話が基準法からそれるかわかりませんが、この八月ころまでに新住宅建設五カ年計画を策定されるような予定になっておる、このように聞いておるわけですが、この間ある新聞を見ますと、その建設戸数が九百五十万戸、うち政府施策が三百八十五五尺こういうように出ておるわけです。これは新聞発表が間違いなのか、それともこういう新五カ年計画に対しての配分状況を、どのような検討をいまなされておるのか、それをあわせてお聞きしたいのです。
  167. 大津留温

    ○大津留政府委員 お答えいたします。  昨年から住宅宅地審議会で、次の五カ年計画の基本的なあり方並びにその戸数につきまして鋭意御研究を願っている段階でございまして、現在いろいろな数字が出まして検討中でございますが、まだ数字としては固めるまでの段階に至っておりません。
  168. 北側義一

    ○北側委員 この間、新経済社会発展計画、これが発表されたわけです。これの住宅部門の欄を見ますと、収入によって所得階層を第一分位から第五分位まで分けて、そしてその住宅供給の姿を採用するように述べておられるわけですが、そうしますと、新経済社会発展計画の住宅部門と次の新五カ年計画は非常に関連があるのじゃないかと思うのですね。今度の五カ年計画は、ほとんどこれに合わして結局やっていかなければならないような状況になってくるのじゃないかと思うのです。そういう点についてどのようになっておるか、ひとつお答えいただきたいと思うのです。
  169. 大津留温

    ○大津留政府委員 新経済社会発展計画の計画期間と住宅の次の五カ年計画とはちょっと期間がずれておりますので、そのまま数字が一致はいたしませんけれども、しかし、同じ国の計画でございますから、同じような考え方、方針を持って次の五カ年計画も編成する、その点は変わりないと思います。  そこで、どういうところに重点を置くか、全体でどういうふうに押えていくか、またいまおっしゃったように、所得の階層に応じましてどういう形で供給するか、こういう点をいまいろいろ検討しておる最中でございます。
  170. 北側義一

    ○北側委員 時間が三十分ほどしかありませんので詰めていきますが、一つ私お願いしておきたいことは、この間の住宅実態調査、これから見ますと実際困っている人が三七%、特に東京圏、大阪圏、これが四二%、四〇%、こういう実態です。この配分の状況もこういう困った都市の実態に合わせてやっていただきたいということと、困っておられる方というのは非常に低所得階層の人が多いわけです。やはりここに重点を置いていただきたいということなんです。そうしなければ、幾ら調査をやったって出てくる答えは一緒と思うのです。だからやる以上は、やったその実態に合わせて住宅建設をやっていただきたい、このことをお願いしておきます。  それから特に今回のこれからの新五カ年計画の上でも、おそらく政府の公的資金住宅というのは、民間自立建設に比べると非常に低いのじゃないかと私は思うのです。どうしてもそういう傾向になってくるのじゃないかと思うのです。そこで思いますことは、そういう都市周辺部の人口がますます増加しておりますので、地価の高騰と建築費も、見てみますと一般消費者物価が大体五%、六%上がりますと建築費のほうは大体九%、一〇%上がっておりますよ。これを見ますと、そういう状況。非常に住宅が建てにくいということですね、先ほど申しましたとおり。そこで、いままで特に一般の人たちが利用されておられたのは住宅ローンなんです。ところが最近の状況を見ますと、住宅ローンの金利も大幅な引き上げが一部において行なわれております。生命保険会社のほうで行なわれておるわけです。他の会社また銀行、これらもどうもローンの金利引き上げを一斉にやっていこうという姿に私には見えてならないわけですが、そういうことになりますと、地価の高騰と建築費の高騰、またこのローンの引き締め、金利引き上げ、これらで民間自立建設もだんだん非常にやりにくくなってくるのじゃないか、こういうぐあいに考えておるわけですが、これに対してどのように対処されておるのか、それを一ぺんお聞きしたいと思うのです。
  171. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これはまた非常に重大な問題です。そのために、これはまだ研究中でございますが、やはり民間金融機関による住宅ローンに対して、政府の保険というか保証制度考えれば、それだけのコストは高くなってもある程度までこれはダウンできるのじゃないかということが一つです。それからもう一つは、私はこの日本のような国においては、民間企業が持ち家政策をもう少し真剣にやるべきだということです。本年の春闘の結果、先般大蔵大臣が私に語ったところによると、平均すれば賃金上昇率は一七・九%になるのじゃないか、一八%にもなろうという。そうすると、この状況下において物価据え置きということは事実上不可能なことなんですね。なぜなれば、このベースアップされたもの、ほとんどこれは購買力として出てくるわけです。そういうようなことを一方で要求しながら、民間給与を上げろ上げろといっておりながら物価は押えろ、これはできない。そこで私は特に昨年来、党におったときに、労働組合側も企業側もこれは賃金闘争の限界に達しているのじゃないか。むしろこの際もっと良識を働かすべきだ。そこで賃金アップよりも、むしろ企業企業自体で従業員に持ち家政策をやりなさい。そうすればこれによって労働力も安定するし、また一面においては勤労者の方々も、問題は、核家族化した今日、定年退職になってからの住宅問題と生活が最大の問題なんです。ところが、そういうことを全然考慮しないで賃金を上げるばかりやっている。そこで、十五年なら十五年間その一つ企業に従事しておれば、もうちゃんと住宅が自分のものになる持ち家政策をとるということを、私は具体的に、両方とも、労使ともに安定する政策だ、その政策をとることを経団連、日経連、同友会、商工会議所の幹部の人に要請している。この方々も、これはぜひやりたいが、それにはやはり労働団体の合意が必要だ。ところが、幸にして総評等におきましても最近、特に昨年の暮れから今年にかけまして、労働者の持ち家政策、住宅政策が取り上げられたことは、私は一つのいいきざしだと思います。これを実行するように協力してもらいますれば、今度は企業に対しては、そのために税制上の優遇措置を講じまして、住宅持ち家政策をやったものについての経費の一部を、一つの経費としてこれを控除し、またそうしたものに対しては政府の財投をつぎ込むことによって、政府が直接住宅をつくるよりもより効率的で、より安定したものができるだろう、そうしたように現実に即して、もう少し政治、行政に創造性をつけ加えるべきだ。ところが、ややもすれば今日までは、民間で非常に困っているからすべて政府政策住宅をやれやれといって、一方では減税を要求し、これではとうていできないです。聞いたところには非常に耳ざわりがいいけれども、現実にはこれによって勤労者並びに民間の住宅問題が解決できないから、この住宅ローンに対する政府の再保険あるいは政府の保証、これと、いまの民間企業による持ち家政策のこの方面も、いま一段と検討して、実現をはかりたいと思っている次第でございます。
  172. 北側義一

    ○北側委員 その点についても、企業によるところの住宅建設、これも減税措置その他財投の金を入れて、そういうことで非常にいいわけですが、このローンについてもやはり対策を講じなければ——国会閉会後にひとつこの問題はやろうというような、そういう空気もあるらしいのですね。一部、新聞報道で報道されておりますが、開会中にやるとまた論議のまとになってたいへんだから、閉会になったらひとつその審議を一斉にやろうじゃないか、こういうことが新聞にも報道されております。それではますます、前向きのそういう答弁があっても実際は、この住宅ローンを利用している人たちの住宅建設にとって非常に後退していくのではないか、このように思いますので、その点もあわせてよろしくお願いをしたいと思います。  それと、最近の状況を見ますと、住宅産業というのは、これは非常に大幅に建設戸数が伸びてきているわけです。新聞等を見ますと、広告欄にも、ほとんど半分以上は、何々マンションとかそういうような広告がされておるわけですが、こういう住宅産業は、実際の問題として、なるほど基準法に適したような、そういう角度からなっていくかわかりませんが、一般の住宅難に困る人たちの住宅対策になっておるかどうかということなんですね。現在のところでは、私は、なっておらないんじゃないかと思うんです、実際の問題としては。たとえば、非常に特殊な階級が入る高級マンション、大体一千万円とか二千万円ですね、そのようなマンションが建てられたり、また、基準法を全然無視した分譲住宅が建てられたり、また、プレハブ住宅あたりを見ますと一向に安くなっておらない。従来の工法と同じような状況になっておるわけです。こういう問題をやはり国として、量、質、こういう問題も確かにあるでしょう、非常にこれはむずかしい問題だと思うのですが、やはり一つ方向を示さなければいけないんじゃないか、このように私思うわけなんです。そういう点について、ひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  173. 根本龍太郎

    根本国務大臣 いわゆるマンションなるものが、住宅問題の解決にあまりなってないじゃないか、むしろ特定の、かなりの高収入のある者のいわば別邸的な役割りをしておるものもあるじゃないかという点は、確かにそういう事実もあるかと思いますが、一面におきましては、交通関係状況から、かなりの中堅サラリーマンが、従来郊外に出たのが、再び自分の土地、住宅を売却してマンションに移るということも確かにあるようでございます。そういう意味におきまして、一部におきましてはマンションに対する政府資金を融資して、もう少しコストダウンをさしてほしいという面もあります。この点は研究に値すると思います。  それからもう一つは、いま御指摘になりましたプレハブの問題ですが、これは一つは、まだ完全に技術的に定着してない。良質のプレハブがまだ完全に技術開発ができてない。にもかかわらず、各相当の商社なりあるいは建設業者が、未来に対しては相当の希望を持っている。なぜかならば、現在のような状況では、どんなに技術者を養成しても、左官あるいは板金工、大工さんになり手が少なくなっていることは事実なんです。収入のいかんにかかわらずこれは減ってきている。そうすれば、資金の問題ではない。そこで、やはり住宅そのものが工業化されなければならない。工業生産化されて、ある意味における耐久消費財的なものにして、そうして、これが最初のときには寝室と台所、若干の経済的余裕ができれば今度は応接室というふうに、部品的に組み立てていけるという企画までいくべきだ。同時にまた、政府が、公団あるいは公庫住宅等でりっぱなものについては、ある意味における権威づけをしてやる、政府住宅にこれをどんどん採用するという安定した発注をしてやるというような方法、それから、建築基準法に基づく個々のあれよりも、規格化したものをがちっとやっておりますれば、これが建築基準法の、先ほど来問題になりました監視制度あるいは建築技師の監督行政も、これが非常に簡素化されて責任体制ができるということで、これは相当前向きの姿勢で保護、奨励をすべきだ、こう思います。   〔天野(光)委員長代理退席、委員長着席〕 この点は、現在業界はいま非常に熱心にやっておりますので、建設省と通産省相ともどもに提携して、これの振興をはかりたいと思っている次第でございます。
  174. 北側義一

    ○北側委員 業者に対する資金援助ですね、こういう面も非常に大事なことじゃないかと思うのです。というのは、やはり業者にとりましては、土地を買いますね、そのほうで非常にばく大な金が要るわけなんですね。そうしてその買い手が、需要があってもそれだけの土地をやはり寝かすといいましょうか、そういう金がばく大で、どうにもならないのが大体いま現在の業者の——これは大きい業者は別ですが、中小企業あたりの業者だと、建て売りをやっておるような、非常にまじめにやっているようなところでもそういう状況がこの実態ではないかと思うのですね。あわせて、これは実は私、友人にそういう建て売りをやっておる業者がおるのですが、その人の現在建てておる住宅を全部調べてもらったんです。それで坪数がどれぐらいで、建蔽率がどれぐらいで、値段はどれぐらいでと全部書いてあるわけです、その種類別に。これを見ますと、これはいけないかわかりませんが、実際の問題としてやはり二十坪以下の建て売りの住宅の場合、分譲住宅の場合は、新法になって建蔽率六十ですね、それでいきますとやはり高くつくと言いますね。これを見ますとそうなっていますね。大体三十坪ぐらいあると建蔽率六割は十分とっております。新法で十分やれます。ところが、二十坪以下の分譲住宅については、これは新法でやると非常に苦しい、家が小さくなる、こういうことを言うておりますね。まあ環境の整備をやっていくためには、都市計画法とこの基準法は非常に大事なわけでありますが、そこで、そういう環境の悪い住宅は建ててはいけない、これは当然そうであると思うのですが、実際の問題として買う人にとって、できるだけたくさん建てたい、これは人情じゃないかと思うのですね。そういう点も、これはひとつ参考にしてもらいたいと思うのです。これは私、ずっととった資料です。大体この資料によりますと、二十坪以下の家はみな新法によると非常にやりづらい、そういうことがうたわれておりますね。これが実態です。  それから、敷地面積と道路の関係をお尋ねしたいのですが、これは私の近くで実際あった事件なんですが、もうきちんとますのように通った道路があったわけなんです。ところが、実際の問題として幅員が六メートル近くあるのですが、これがまたある土地所有者の私道になっているのですね。それで、へいをばあんとしてしまったわけなんです。これを何とかやってくれぬかということで、実際私らとしてもずいぶん動いたのですが、これはどうにもこうにもならないわけですね。そういう実態があるわけです。これから建築基準法をやっていく場合に、私道と敷地の関係が非常に大事になってくるのじゃないか。特に私道の設置の基準問題が非常に大事になってくるのじゃないか、このように思うわけなんです。そういう点、どうでしょうか局長さん。
  175. 大津留温

    ○大津留政府委員 御指摘のとおり、私道が都市計画の最も末端の細街路として非常に大事な存在であるということで、今回の改正におきましては私道認定の技術的な基準を定めまして、やはり私道といえども一定のきちんとした基準に従って築造してもらうということで、原則として通り抜けができるように、また一定の勾配以下であること、あるいは側溝をつけるというような要件を技術基準として設ける予定でございます。ただ、先ほどからお話しのとおり非常に地価が高いおりから、その敷地の中から一定の私道をさくということが非常に経済的負担が大きいという御意見もございます。したがって、一定の基準以上のそういった私道については何らかの助成策が必要ではないかということで、いろいろ研究はしておるわけでございますが、現在、御承知のように一般の公共の用に供せられる私道は固定資産税を非課税とするということはございますけれども、それ以上の助成はございません。今後の大きな研究課題だと考えております。
  176. 北側義一

    ○北側委員 この問題は非常に大事な問題でありますので、この問題についても、局長いま言われたとおり、今後ひとつきちっとやっていただきたいと思うのです。  時間もあまりありませんので、はしょってやっていきたいと思うのですが、たとえば建築監視員が違反建築を発見して、そして違反是正命令を出すわけですね。その際、建築物の設計者及び工事請負人、こういう人たちについてその監督する行政庁にその住所と氏名を通知して、その通知を受けた行政庁は免許の取り消し、営業の停止等所要の措置が講じられるようになっておる、こういうことですね。実際の問題として住宅建設の場合なんかですと、元請から、下請下請から孫請、こういうぐあいになっていくわけです、そういう場合に、たとえばここに規定された免許の取り消し、営業の停止、こういうものについてはどういう法律でそういう孫請までいくのかということですね、これはどうなんでしょうか。
  177. 大津留温

    ○大津留政府委員 違反建築をやっておりまして、工事の中止命令を食らったというような場合に、いまの通報して行政上の監督処分を受ける、これは違反の工事をやっておるその請負人に命令がいって、それが通報を受けるということで、さらに下請けをしておるその本人が違反工事をやっておれば、その者に対して命令が出されて同じように通報がいきます。単に孫請をやっておるからといって巻き添えを食うということはございません。その本人がそういうことをやっておるかどうかにかかるわけです。
  178. 北側義一

    ○北側委員 それといま一つ、この改正案の条項のうちの、第九条の十三項の違反建築物の標識による公示、これですが、違反建築物を監視員が発見した場合に、特定行政庁は、第九条第一項または第十項の規定による命令をした場合においてはと、このように書いてあるわけですね。この場合の第九条第十項の項目の取り扱いについて、どのような場合に緊急性を要するのかということなんです。それについてはどうなんですか。
  179. 大津留温

    ○大津留政府委員 この基準法違反が明らかであって、しかもその工事がどんどん進捗しておる、これを放置しておったらその違反の建築ができ上がってしまう、これを放置しておけないという場合に工事の停止命令を出す、こういうわけでございます。
  180. 北側義一

    ○北側委員 そこでやはり大事なことは、先ほども少し話が出ておったようですが、監視員が公正を期さなければいけないということと、監視員の人数がどれくらいになってくるのか、こういう問題が非常に大事な問題になってくると思うのです。あるところではそのような違反建築がやられている、一方は同じようなことでやられておらない。そういうのが市民感情に大きな影響をもたらしていくのではないかと思うのです。たとえば現在の企業についても、違反建築であってもそのまま野放しにされている。ところが、隣からそれを役所に言ったことによってやられた、こういう例は幾らでもあるのです。こういう問題が持ち込まれて私が一番困るわけです。何とかならぬか、こういう相談を受けるのですが、やはりそういう面からこの問題についても監視員の公正さというものと、法の執行にあたってどれだけの人員を要するか、こういうものは非常に大事になってくると思いますので、先ほどからずいぶんこの問題については触れておられましたので聞きませんが、この点についても各地方公共団体とよく相談していただいて粗漏のないようにやっていただきたいと思うのです。  なおかつ最後に、たしか第六条の中に十平方メートル以下の建築物については、これは確認申請は要らないわけですね。そうしますと、私考えますのに、少しずつ足していった場合に、毎年毎年足していきますとこれはずっと確認申請も何もなしにやっていけるのではないか、こういう考えを私は持つわけです。そういう点どうでしょうか。
  181. 大津留温

    ○大津留政府委員 ごく小規模の増築、改築にまで成規の手続をとらせるのはどうかという配慮から、十平方メートル未満工事は手続が要らないということになっているわけですが、しかし、御指摘のように、これを悪用しようとすれば違反のもとになるおそれがございます。しかし、その一軒一軒の改築工事は十平方メートル未満でございましても、それが重なって建蔽率の違反に至ったというときはそこで違反の状況になるわけでございまして、監視員が巡回いたしまして、そういうのを発見したら是正を命ずるということで取り締まりたい、こういうふうに考えております。
  182. 北側義一

    ○北側委員 この問題は、建築監視員がこれもやはり見なければ実際どうにもならない、こういう実態ではないかと思います。この法律の六条のところは、やはり考えなければならぬ個所ではないかと私は思うわけです。  実はこれは一つの例ですが、ここに写真があります。私の調べたところでは十平方メートル以上ある建物です。それが確認申請が行なわれておらなくて相当数建っている、こういう実態なのです。これなんかも、一つはやはり確認申請を出せば非常に時期がおくれる、それでじゃまくさいからそのままやってしまう、こういうケースがあるのではないか、このようにも思うわけですが、そういう確認申請の期日の問題とその六条の問題ですね。これなんかも、やはり建蔽率のあるところはいいのですが、ないところの場合、そういうようにやって、さらにこれは問題になってくるのではないかと思うのですよ。そういう点どうですか。
  183. 大津留温

    ○大津留政府委員 確認の事務がスムーズに処理されないということで、建築をされる方々がいや気をさして違反をなさる、こういうような傾向はなきにしもあらずだと思います。そこで先生方から御指摘がありましたように、建築主事の陣容を増強し、また監視員も充実いたしまして、すみやかな処理をさせるように指導してまいります。
  184. 北側義一

    ○北側委員 最後に、この問題にしましても一番困るのは善意な人で、そういう法律を知らないから建てた、確認申請もなされておらない、そうして建蔽率が狭いからこれをこわせ、こう言われたときに一番問題なんです、こういう問題は。そうなりますとこれは困るのです。そういうことのないようにやっていただきたいということなんです。これはずいぶん随所に見られます。特に市営住宅あたりは敷地、建蔽率が非常にあるからこれはいいのですが、ない場所があるんです。そういうところにこういう建物を建てますと、善意の人が非常に泣かなければいけないような状態になってくるわけですから、この法律をきびしくする場合には、特にそういう点を配慮してやっていただきたいと思うのです。  先ほどからいろいろお聞きしたわけでありますが、この建築基準法の問題につきましては、非常に前向きの姿勢で当然やらなければいけない問題でありますが、しかし、先ほど申しましたとおり地価問題、住宅問題、こういう問題に関連して非常に大事な問題になってまいります。また、都市計画法の市街化の区域の問題も少しお聞きしたいと思ったのですが、もう時間がありませんのでやめますが、こういう問題ともからんでくるのじゃないかと思うのです。たとえば市街化区域が二割も三割も上がっていくようではどうにもなりません。実際の公聴会が行なわれますとまるで戦争です。そうして何とか市街化区域に入れてくれ、こういう実態なんです。なぜそういうふうになるのか。結局市街化区域に入ると土地の値段が上がるからです。それを押える基準法が全然つくられていない。おそらくそういうことも今回検討されるのじゃないかと思いますので、あわせて検討していただきたいと思うのです。どうぞその点よろしくお願いいたします。  以上で私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
  185. 金丸信

    金丸委員長 内海清君。
  186. 内海清

    ○内海(清)委員 だいぶ皆さんおくたびれのようでございますので、できるだけ簡潔にいたしたいと存じます。同時に、この法案は、昨年の通常国会でこの委員会としてはずいぶん時間をかけまして審議した問題でございます。私もかなり時間をちょうだいしていろいろ御質問申し上げました。その結果、いろいろ理事の間で問題になりました事柄について修正案も可決いたしまして、修正して、しかも附帯決議もつきまして本院のほうは通過したものであります。参議院に送られまして、これが早期に成立することを私も希望いたしておりましたけれども、不幸にして大学法案その他のあおりの関係で流れたということです。したがって、私はこの前の衆議院におきまする修正案あるいは附帯決議についての二、三の問題について、むしろ確認いたしたいというふうなことでございます。  この改正案の骨子となりましたものは、やはりこの法を二十五万以上の都市に適用しようという、これについてもいろいろ質疑をいたしましたが、いま二十五万以上の都市ということはまことにけっこうでございますけれども、まだ二十五万にはならないけれども新しい企業が誘致されたり、その他の関係で非常に都市化し、発展しつつあるところに大きな問題があると思います。   〔委員長退席、天野(光)委員長代理着席〕 こういう点につきまして、いずれできるだけ早い時期において十万以上の都市にもこれを適用するようにしよう、希望のあるところは知事と話をして、そういう特別行政庁を設けてよろしいというような話もあったのでありますが、これらにつきまして、その後一年たっておるわけですけれども、いろいろな情勢の変化から、こういうものに対して、いまこの二十五万以上という以外になお特別な考え方があるかどうか、これをひとつお伺いしておきたいと思います。
  187. 大津留温

    ○大津留政府委員 先生おっしゃるとおりの考えでわれわれもおります。二十五万以上の都市が四十五ございますが、これは法律によって必ずやらせる。それから十万以上の都市がなお九十四ありますが、これもできるだけ早い機会知事と協議の上、その市に行なわせるように指導してまいりたい。大体目標といたしましては、とりあえず五年間に三分の一はひとつみずから行なうように指導したい、こういう考えでおります。
  188. 内海清

    ○内海(清)委員 前進的に考えられておるようでありますけれども、もちろん知事におきましてはいろいろ考えておると思うけれども、特に本省においても、そういう問題の地区は全国にかなりあると思うのですから、こういうところに対しては積極的にこれが特別行政庁を設けて、この法の適用を受けてやるというふうに、強力な行政指導が必要ではないか。これは強く要望しておきたいと思います。  それから二番目の問題としては、建蔽率が緩和されたということでありますが、これは先ほど来いろいろ問題になっております地価の問題、いわゆる土地の高度利用の問題と非常な関係が出てくるわけです。建蔽率を緩和することは決して好ましいことではなかったけれども、これほど地価が高騰したのでは一般庶民はなかなか住宅など持てないではないか、そうすればある程度これを緩和せざるを得ないだろう、このことがむしろ今日の社会情勢あるいは経済情勢に適応するのではないか、こういうことであったのであります。   〔天野(光)委員長代理退席、委員長着席〕 これはもちろんそう考えられますが、これは決して好ましいことではないと私は思うのであります。御承知のような新都市計画法と都市再開発法、この建築基準法というものが三本の柱として、今後ほんとうに国民の家庭生活が十分でき、社会生活もでき、労働の再生産のできるそういう住宅を持ちまして、環境の整備をやっていかなければならぬ問題である。そういう点からいえば、これは私は決して好ましいことではないと思う。しかし、現状やむを得ないであろうということでありましょう。したがって、こういうふうなものにつきましては、ことに地価問題を解決しなければこの問題は解決しないと思うのです。先ほどから議論がありましたように、土地の高度利用、地価の高騰を押えるという問題については、これはひとつ建設省も真剣に考えていただかなければならぬと思うのです。私どもは、この問題につきましてはいままでも心配しまして、四十二年の特別国会でありましたか、私どもが地価抑制に関する法律を出した。これがずっと、昨年の地価公示法が成立するまでは、一つのたたき台のようになっておったのでありますが、地価公示法ができましたのでこれはいま廃案でありますけれども、いままでどうも政府にいたしましても与党にしましても、地価の問題、土地の高度利用の問題について真剣な態度があったかということにつきまして、私どもは疑問を持たざるを得ない。したがって、私どもが出したものが通過するとは考えなかったけれども、何かの一つの刺激になればということで出したわけであります。この問題をひとつ建設省としても真剣に考えて、ことに住宅政策からいいましても、住宅公団その他のこういう関係から聞いてみても、結局今日は地価問題がその基本である。これは東京都の住宅問題を考えてみましても、みなそれにひっかかっておる。ですから、これは基準法の前の問題として、ただ建設省のみならず、政府全体としてこの問題は真剣に考えていただかなければならぬと思うのです。ことに今度公示法ができましたけれども、これはさっきも議論いたしましたように、はたしてこれが十分守られているかどうかという点については、多くの疑問を持たざるを得ない。ことに私どもが今日まで地価の問題で考えますと、比較的公共的な事業をする場合に、多くは地価がつり上げられてきておる。たとえば電源開発のダム建設等の場合、また公共的な事業とはいえぬかもしれぬけれども、銀行、金融機関だが、こういうものが店舗を設ける場合等にはそういうものを無視してやるという、こういう面に対しまする政府の態度といいますか、もっと行政指導が十分行なわれてくる。ことに公共的な事業をやります場合には、十分政府としては行政指導のできる立場であると私は思うのです。今度地価公示法ができましたから、公共団体あるいは政府その他で買い上げますものは大体標準はできると思いますけれども、それも先般の新聞によれば、これもざる法的になるのじゃないかという一つ心配がある。どうかこの問題については、時間がありませんからあまりやりとりやりませんけれども、ひとつ建設省のみならず、政府全体として真剣に考えていただきたい。ひとつ大臣の御所見をお伺いしておきます。
  189. 根本龍太郎

    根本国務大臣 いま内海さんから御指摘になったとおりでございます。従来土地問題が一般国民の生活を非常に脅かしているという事実があったにもかかわらず、ある意味においては逆の方向でそれぞれやった傾向が強過ぎると思います。それは一つには、農民保護の名において農地法の改正はいけない、農地を宅地に転用することに対して政治生命をかけて戦うなどという姿勢もあったわけでございます。しかし、ようやくそうした点がだんだんと国民全体のために理解されると同時に、政府も決して農民の皆さんの、これから農業を経営する人に対して固定資産税を高くして取るということではなくして、すでに農地としての機能を失いつつある状況の人を、農地の名において不出なる利益を永続して保護するということはやめるというだけのことでございまして、これには国民のほとんど大部分が合意をされた。そのために、都市計画法において、都市化されたところには自動的に農地法は排除するということにもなったし、また今回は、農地法そのものも通過してこれが緩和されるということになった。それからもう一つは、御指摘になりました地価公示法もでき、さらには税制も改正して、これに対して不断なる利益を特定のごく少数の人間に与えずに、あらゆる法律制度というものは一般国民全体の利益のためにこれは修正すべきである、こういう意見がようやくいま与野党を通じて合意の点に達し得る一つのチャンスに達したわけでございます。そうした一つの推進の役を、民社党の土地に関することをやったことは私も認めるにやぶさかではございません。さらにそういう状況を踏まえて、政府が単に建設省のみならず、政府全体としてこれはやるべきだということは御指摘のとおりでございまして、その意味で、先般以来答弁申し上げてありまするように、次の通常国会までには一連の立法措置並びに行政運営上の一つ方向づけをいたしたいと考えておる次第でございます。
  190. 内海清

    ○内海(清)委員 建設省のみならず、政府全体でお考えということはまことにけっこうでございますけれども、どうもいままでこういうことに対しては、そういう土地の所有者たちから強い反撃があるだろうということでタブーにされていたと思うのであります。むしろ私は、そういう情勢が自然に生まれることを待つよりも、政府自身としてはもっと国民を啓蒙していくということ、国民大多数のしあわせのためにはこの面が一番必要である。先を見越しての行政が行なわれ、政治が行なわれていかなければ、常に後手後手で一般大衆は苦しむということに相なると思うのであります。この点はひとつ勇断をもって今後臨んでいただきたい、かように要望いたしておきたいと思います。  それから、この法案の一番中心的な一つとしては、いゆる違反建築物の問題であります。これをできるだけひとつしなければならない。事実これはずいぶん論議されましたが、結局それを取り締まる体制というか、これがどこまでできるかということにかかってくると思うのです。新しく監視員制度が設けられましたけれども、ただこれを設けたからこれがうまくいくということには、なかなかならぬと私は思うのであります。そういう意味合いにおいて、今度の改正は、基準法の改正もやはり守られる、守りやすい法律にしなければならない。守られる法律にしなければならぬということで、当局もずいぶん苦労されましたし、昨年われわれがこれを審議いたします場合に、この点を十分頭に入れて審議したつもりでございます。ところがこの一年間たって、これまた法律ができておりませんからこれが適用にはなっていないけれども、少なくとも国会で論議され、社会的に問題となった点につきましては、建設省はそれぞれできるだけ行政指導の面ではこれにもタッチしてこられたと考えるわけでありますが、現在違反建築状況はどうなっておるか。先ほど約四万件近いものが年間出る。そのほかに陰のものがなおかなりあるであろうというふうなことでございます。昨年の国会以後、そういうふうな建設省が行政指導されて、いままでにかつてないそういう違反建築をある程度防止し得たか、あるいはそういうふうなものをそのために摘発されたか、ただ、いままでの惰性できてこういう結果が出ておるのかどうか、そういう点についてお伺いいたしたい。
  191. 大津留温

    ○大津留政府委員 改正法が通りませんときにおきましても、違反の取り締まりの体制の整備は必要であるということで、昨年来そういう線で地方を指導してまいってきたわけでありますが、昨年から二十五万以上の市またはそれ以下の市でございまして、建設省の勧奨を受け入れまして、すでに自発的に知事相談の上特定行政庁になった市が相当ございます。それから違反の取り締まりにつきましても、できるだけホテルとか旅館というような特殊建築物、また建て売り業者等の常習的な業者、こういうものに重点を置いて監視の目を光らせるように指導してまいりました。そういうことのあらわれの一つかと思いますが、長年懸案でございました銀座にある違法建築のビルを東京都が代執行でこわしたということもございますし、そのほか、逐次違反の取り締まりにつきましては厳正な態度に転換をしてまいっておると思いますが、この改正を機に一段とこれを整備いたしたい、こういう考えでおります。
  192. 内海清

    ○内海(清)委員 この法が通る通らぬにかかわらず、違反建築物というのは絶滅していかなければならぬことは当然であります。この取り締まりにつきましては、先ほどから論議がありました建築主事と、それから監視員制度というものが新しく入るわけであります。建築主事の資格を持っている人は全国でいま何名くらいおりますか。
  193. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築主事になり得る資格を持っておる者は全国で三千六百名おります。この中で県または市の吏員である者が約二千名、現に主事に任命されておる者が七百名でございます。したがって、今後この特定行政庁を市におろすことに伴いまして、その市における建築技術者で資格を持っておる者が主事になる。また、県におりまして他の都市計画の仕事とかあるいは営繕の仕事をやっておる者を建築取り締まりのほうに配置転換するというようなことで、この建築主事を三年計画で千名程度にふやしたい、こういう考えでおります。
  194. 内海清

    ○内海(清)委員 全国で約三千六百名も資格者がおるんでありますから、もちろんこれはそういう役所に入らないで他の仕事についている人も多いと思うのですが、これは今後十分そういう人に有効に働いてもらうという指導が必要であるということであります。同時に、三千六百名のうち二千名程度はそういう県とか市の職員の中におるということであります。これは次の監視員制度とからみまして、十分これらの人々を活用してもらいたいと思うのであります。監視員制度というのは建築主事と多少異なっておりましょうけれども、しかし、十分そういう知恵を持っておる人が必要である。これから一般の人を監視員として養成するためには相当の教育が必要である。これは先ほどお話がありましたように、これが一つ誤るといろんな問題を起こすおそれがありますから、十分その知恵を持っておる人を活用しなければならぬと思うのであります。この二千名のそれらの役所におります人のうちで七百名は現在主事としておるわけで、なお千三百名おりますし、なお民間にも千五、六百名の人がおるわけであります。これらを活用する問題につきまして、特に何かお考えありますか。
  195. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築主事は独立して建築確認という行為を行ないますので、主事の資格を持っておる者でも、やはり経験があまり少ない人は、直ちに主事に任命するというわけにまいらない場合もございます。したがいまして、主事の補助者といいますか下で実質的な審査に当たる、こういうことで現在やっておるのも相当おります。また、御指摘のように、建築監視員というのも大事な仕事でございますし、相当の経験と判断力を要しますから、監視員にもそういう方を活用いたしたい。また民間におられる方、これは昔県におられて、やめて設計事務所を開いておられるとかいうような方が相当おられますので、そういう人にまた県に戻っていただくということも困難な事情もあろうと思いますけれども、事情が許すならばそれらの人にもまた主事として活躍していただく、こういうことも期待しております。また、主事の仕事が非常に全国的に統一した判断を下す必要がございますから、主事の研修ということもできるだけやって間違いのないようにしたい、こういうふうに考えております。
  196. 内海清

    ○内海(清)委員 建築主事ということになると、いまお話しのようにいろいろ問題があると思いますけれども、今後なお主事はふえていかなければならぬはずであります。したがって、できるだけそういうふうな人を活用するということと、同時に、民間でそういう資格を持っておる人が設計事務所を持つとかその他ありますならば、これはひとつそういう資格を持っておる人で民間の一つの協会的なものあるいは団体的なものをつくることによって、そういう設計士はすでに一応の資格を持っておるのでありますから、その設計の際に十分そういう点を通じて違反建築のないような措置ができるのじゃないか。そういう点につきましても、これまた役所の指導いかんによっては、私は現在よりなお進んでいくだろうという気がいたすのであります。この点はひとつ十分御検討の上で、せっかくそういう資格を持っておる人でありますから、できるだけこれを活用することを考えてほしい、こういうふうに考えるのであります。  それから監視員につきましては、たとえば建築行政の経験が三年以上ある者につきましてこれを養成していくというふうなことも考えられておるようでありますけれども、この養成につきましては相当な政府の指導が必要であるし、同時に、財政的な裏づけも必要であろう。現在の地方自治体にまかしておったのでは、これはなかなか進まぬであろうという気がいたすのであります。ことにこの場合に一番重要なことは、そういう資格を持っておる人ならいいということにもまたいかないのでありまして、一番大事なことは、きわめて公平な判断のでき得る人でなければならぬ。これが監視員の重要なポイントになると私は思うのであります。先ほどお話がございましたように、この選定を誤りますと思わざる問題を起こすおそれがあるのです。こういう点につきまして、御所見がありましたらひとつお伺いしたいと思います。
  197. 大津留温

    ○大津留政府委員 監視員の選定を誤らないように、おっしゃるとおりでございます。なお、監視員の必携事務処理の準則というようなものを建設省でつくりまして、これを各地方の監視員に持たせまして、どういう場合にはどういう措置をとるということであやまちのないようにしたいと考えます。また、全国の監視員の講習会といいますか研修会も開きまして、その知識の向上判断力の養成につとめたいと考えております。
  198. 内海清

    ○内海(清)委員 それから、この法案の四番目の中心的な問題としては、公共建築物等のいわゆる防災対策、これがまた重要なことになっておると思うのであります。これにつきましてもいろいろ論議されておりますけれども、先ほど来いろいろ問題になりましたような、ことに高層建築物、日本のいまの消防体制などから考えて、三十一メートル以上の建物などについては特別な考慮が必要なんじゃないか。あるいはまた、開口部の少ない居室のあるもの、つまり排煙設備の問題、これは今度も入っておるわけでありますけれども、こういうふうなものにつきまして格別の注意が必要であろうというふうに思うのであります。ことに重要な問題は、最近のいわゆる建材、内装材というものに対する特別な配慮がなされなければならぬ。これは最近の火災の状況を見ましても、ずいぶんといろいろ問題が起きております。もう時間がありませんから簡単にしますが、四十四年をとりましても、これはまだ概数のようでありますけれども、火災件数が五万六千三百四件。しかも死亡者が一千二百六十八人、これも概数であります。四十二年から四十三年は少し減ったが、四十四年になるとかなりふえておるようであります。さらに四十五年の一月を見ましても、これは大幅に増加しておる。これはいろんな天候、気象の問題があったと思います。異常乾燥というようなことがあったと思いますが、地域的に非常にふえておるのです。四十五年の一月は八千百九十八件であります。これは四十四年から見ますとかなりふえておる。四十四年は件数が五千三百五十二件でありますから、ずいぶんふえておるわけです。死者を見ましても、一月をとってみると二百四十七人で、四十四年よりも六十四人ふえておる。こういう問題は、最近の火災で見ますと、主として煙の問題が非常に大きいのであります。  で、これにつきましてはいろいろいま研究されておりまするが、これは不燃材料とか準不燃材料は比較的問題が少ない。いわゆる難燃材料、準難燃材料——準難燃材料は、まず大体これは室内には使っていないようでありますけれども、難燃材料はかなり内装に使っておる。ここに問題があるようであります。これも昨年から煙の多く出るものは使用禁止になっておるようでありますけれども、この難燃材料はメーカーから見ましても九十七メーカーがあって、品種から見ても三十品種くらいあるようであります。これは他の省にも非常な関係がありますので、建設省独自の問題じゃないと思いますけれども、この問題につきましては、ひとつ関係の各省庁と十分連絡をとられまして、そうしてこういう災害が少しでも減りますように——建設省なりあるいは通産省なり農林省なり、それぞれ関係があるわけであります。これらにつきまして、いままで各省との間の連絡はもちろんとってあると思いますけれども、やはりこれは建設省が中心になってやらなければ、他の省におきましてはそれぞれの業者なりそれらを保護育成するという立場もありますし、あくまでも建設省あるいは消防庁などが中心になってこれは進めていただかなければならぬと思うのです。これにつきまして、どういうふうにいままでやってこられておるか、今後どうやられるつもりか、これらの点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  199. 大津留温

    ○大津留政府委員 難燃材料の煙の問題は、御承知のように、昨年政令を改正いたしましてこの基準を改めまして、煙を出すものは不合格ということにいたしました。  そこで、新しいそういった不燃性の材料の開発でございますが、これは通産省とも連絡をとりまして、そういった新建材といいますか、不燃性かつ煙の点でも優秀な性能を持った材料の開発並びにそういう製造施設につきましては、開発銀行から融資をしております。それから、そういった新しい不燃材料の研究のためには、建設省の研究の補助金を出してそういった材料の開発を援助しております。こういう状況でございます。
  200. 内海清

    ○内海(清)委員 いろいろやっておられるようでありますけれども、これはひとつ早急に徹底した措置をとっていただかなければ、そのために年々多くの人命、財産が失われておるということ、これはまことにゆゆしい問題だと思うのであります。これらにつきましてもひとつ十分なる今後の御検討、推進をお願い申し上げたい、かように考えております。  そのほか、高さの制限のかわりに容積率でもってやっていくということが中心であり、それから用途地域を分けたということも中心であると思いますが、用途地域の整備の問題につきましては、これはさっき申しました土地の高度利用の問題と大きな関係を持ってまいります。格別の御努力をひとつ要望いたしたいと思います。  そういうことでありまして、私どもは、昨年は全体的に見ましてかなりの前進であるというので実は賛意を表してまいりました。しかし、なおその他の問題も多く指摘申し上げたはずであります。これは十分御承知のことと思うのです。つきましては、昨年はさっき申しましたようなことで法案が流れ、本年新しく出されたのでありますが、そういうふうな問題に対して本国会に御提出になるおりに、それらの多くの修正案以外の附帯決議に対しても、その他各委員から指摘いたしました問題についても、どういうふうな態度で対処してこられたのか。それからまた、今回は参議院先議でございましたが、参議院においては、論議の中心的な課題は何であったかということ。  それから、この際もう一つついでに、実は衆議院で昨年修正したのが六つかあったと思いますが、今回の提案にあたってそれがさらに修正された。修正がさらに修正されて出された面があると思うのであります。実は各党の理事の皆さんにはお話があったようでありますけれども、私としましては、少なくとも本委員会で修正議決、衆議院の本会議でこれがきめられたものでありますから、それが簡単にただ一つの連絡でもってなされる。これは法的にはもちろん問題はないのだろうと私は思いますが、しかし、道義的の問題としてはやはり一考を要する問題ではないかというふうに考えておるのであります。いまのあとの、昨年の衆議院の修正におきますものがさらに修正されて出されたという点につきましては、ひとつ大臣所見を伺いたいと思いますし、また、昨年の衆議院の修正、さらには今回の参議院の中心的な論議になりました問題等については局長でけっこうでございます、お伺いいたしたいと思います。
  201. 大津留温

    ○大津留政府委員 昨年附帯決議に盛られました事項でその後どういうふうに実施しておるかということでございますが、一つは、取り締まりの体制を強化して、人員的にも強化してその徹底を期すべきであるという点につきましては、自治省と折衝いたしまして地方交付税を、建築基準法の施行に要するものとして、本年度は昨年度に比べまして四億円ふやして十九億円を回してくれる、また人員も二百十名だけ本年度ふやしてくれるということで、自治省の協力を得て地方の人員並びに予算の強化をはかりました。  それから、違反の取り締まりの徹底ということにつきましては、先ほどもお答えしたところでございます。  それから、参議院の御審議の中で主として論議の中心になった事項でございますが、一つは、日照権の問題が大きく論議せられました。日照権を確保するために、この改正案では足らないのではないかという観点からの御質問が主でございました。これは先ほど来大臣も答弁いたしましたように、住生活に日照が大事なことは申すまでもないところでございますけれども、今日の土地事情からいたしまして、土地の高度利用ということとの調整をどこに見出すかというようなことから、現在の改正案のような内容にしたわけでございます。  それからもう一点は、昨年の衆議院の修正に対しまして、今回の政府提案が一カ所違っておる。それは質問権の対象から一般労務者を落としたということでございます。それに関連いたしまして、その労務者を除いた質問の対象はどの範囲であるか、そういうことではたして取り締まりの効果があがるかどうかというような御論議がございました。
  202. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいま局長から御説明申し上げたとおりでございまするが、衆議院で修正されるにあたりまして、でき得る限り違反建築を徹底的に究明するという趣旨でこの修正案が出されたわけです。ところが一方におきまして、この質問権は、質問を受けた者があるいは正当なる拒否をしたり、あるいは質問に対して間違ったことをやると罰則規定があるわけです。ところが、現在の工事現場に雇われておる作業員というものは必ずしも的確なるあれがありませんので、かえってむしろこれは作業員の保護という立場から、罰則規定のものはこれから削除しても、修正の趣旨はこれは貫かれておりまして、実害がないというような観点からこの点を落とした次第でございます。
  203. 内海清

    ○内海(清)委員 いまの大臣の御答弁の問題は、私は内容については十分理解しておる。ただ、一院でもって少なくとも修正議決されたものが、翌年度にこれをあらためて提案する場合に、もちろん法的には何にもないと思うのですが、ただ道義的に見まして、昨年も御承知のような非常に慎重審議して、理事諸君はどのくらい理事懇を持ってやったかわからない。そういうものでありますから、これはやはりそういうものをあらためてやられる時分には、できるだけそういう昨年修正いたしましたものにつきましては十分了解を得る。もちろん連絡を受けました理事さんたちはそれぞれ理解されたと思います。私もその内容にかれこれ言っておるわけではございませんが、ただ、その辺に法的には何ら拘束はないにいたしましても、もう少しそういう方面は道義的に考えていただく。一たん一院が議決したものに対しましては、もう少し慎重にやっていただきたい。内容がよくなるものについてはかれこれ言う人はないはずでありますけれども、これが十分その経過がわかりませんと、いろいろなひっかかりができるということであります。この点につきましては、これは法的な問題ではありませんから、十分要望というわけにもいかぬと思いますが、私の感じを申し上げたわけであります。  それから、時間がございませんのでこれでもう終わりますが、ひとつ今後この基準法ができまして、これは先ほど申しましたように、守りやすい法律でなければならぬ、守れる法律でなければならぬということであります。しかし、法ができたからといっても、行政当局が十分なる責任を持った行政指導を行なってこれを徹底せしめるということでなければ、この法案もまたがっての法律のように、食管法と建築基準法が最もざる法の標本にされたようなことに相なっては相ならぬ、かように考えるのであります。この点につきまして今後一そうの御留意を願いまして、この法の施行にあたっては十分ひとつお考えをいただきたい、こういうふうに考えるのであります。  それから、いま一つこの法の施行にあたって要望しておきたいと思いまするのは、この法案ができたから画一的に全国にこれを適用すればすべては終わるんだということではなしに、各地域にはそれぞれの特性があるはずであります。したがって、各地方自治体に対しましても十分条例等を活用せしめまして、その地域にほんとうに適応したこの法の運営が行なわれる、こういうことにひとつ御留意いただきたい、この点を特に要望しておきまして、質問を終わりたいと思います。(拍手)
  204. 金丸信

    金丸委員長 浦井君。
  205. 浦井洋

    ○浦井委員 建築基準法の今度の改正一つの非常に大きな柱は、やはり違法の建築物の取り締まりの強化であるということになっておるわけです。建蔽率その他多少緩和して、ざる法でない、守れる法律にしたので、今度はひとつきびしく取り締まるということがずっといわれておるわけなんですが、確かに違反建築物は非常にふえてきておるし、悪質な者に対しては取り締まりの強化をやる必要があるというふうに思うわけです。しかし、ここできめられておる取り締まりの強化については非常に多くの問題が含まれておるというふうに私考えますので、この点について、主として取り締まりの問題について二、三質問したいと思うわけです。  最初にお聞きしたいのは建築監視員の問題です。この制度を新しく設けて、区分けを定めてその管内を巡回する、そして違反建築物を早期に発見する、そしてこれに対して工事の施工の停止などを命ずる権限を持たせるということなんですが、この建築監視員に、いままで何回も言われておると思うのですが、どのような人を任命するのか、まずその資格をちょっとお聞きしたいと思うのです。
  206. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築監視員の資格は政令で定めることになっておりますが、私どもといたしましては、建築行政の経験およそ三年以上の者で公正な判断ができる者ということを基準考えたいと思います。
  207. 浦井洋

    ○浦井委員 そういうお答えなんですが、建築行政の経験三年という点なんですが、これを非常に広く解釈いたしますと、たとえば建物の用途の関係では、風俗営業取締法であるとかあるいは消防法というものが建築物に関係のあるものとして考えられるわけなんですが、こういう法律関係のあるような仕事に携わっていた人たち、たとえば消防とかそういう人たちは、建築監視員の資格には含まれるわけですか。
  208. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築行政の経験の中には、消防とか風俗営業の行政に携わったという期間は通算されません。
  209. 浦井洋

    ○浦井委員 そうしますと、消防署の職員とか、警察官であるとか、あるいは公安職員というような建築行政以外の行政分野の職員が建築監視員になるということはないわけなんですか、あるわけなんですか。
  210. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築行政の経験が三年以上あって、それ以前またはその途中において他のどんな行政経験があったかということは、特に問題には考えておりません。
  211. 浦井洋

    ○浦井委員 ないというふうに理解をしたいと思うのですが、その次に、建築行政の次は公正な判断ですね。公正な判断ができる人というのは具体的にどういう人なのかということなんですが、一般的には、地方自治体の公務員の場合には全部公務に携わっておられるわけですから、ものごとが公正に判断できる、そして公平に国民に奉仕する人であるというふうに考えられるわけなんですが、この公正な判断基準をひとつ教えていただきたいのですが。
  212. 大津留温

    ○大津留政府委員 監視員の職務権限が非常に重要であるという点は、先ほど来再々御議論があったとおりでありますから、一般の公務員の中において、さらに一そう公正な判断ができるということを見込んで任命権者が選定する、こういうふうにしたいと考えます。
  213. 浦井洋

    ○浦井委員 そうすると、大体公務員で過去に特別に何かはっきりと不都合な、不業績なことがあったというような人を除けば、大体だれでもなれるということで、特別に厳格な基準というものはないというふうに理解してもよろしいですか。
  214. 大津留温

    ○大津留政府委員 任命権者である知事または首長が、特にそういう点を配慮して選択するということを期待しております。
  215. 浦井洋

    ○浦井委員 その点はそのくらいにしたいと思うのですが、次に、建築監視員の権限についてなんですが、この仕事のおもなものは、やはり違反建築物の摘発のためのパトロールということになると思うのです。特に今度の改正法の第九条の七項、十項、この部分に関して具体的にひとつ説明していただきたいと思うわけです。いずれにも緊急の必要ある場合という文章が入っておるわけなんですが、これは具体的にどのような場合をさすわけですか。
  216. 大津留温

    ○大津留政府委員 違反が明らかであって、これを放置しておりますとだんだんその建築が進んで建物ができ上がっていく、そういう状況にありましてこれを放置できないというようなときに、工事の中止あるいは使用の禁止というような命令を監視員が出す、こういうふうに考えております。
  217. 浦井洋

    ○浦井委員 そうすると、お尋ねしたいんですけれども、この第九条の七項及び十項の権限ですね、この権限は、建築主事は持っておるわけですか。
  218. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築主事は、建築の確認と竣工の検査というのがその権限でございますので、九条による取り締まりの権限は知事または首長に属しております。主事にはございません。
  219. 浦井洋

    ○浦井委員 そうしますと、従来建築主事でさえも持っておらなかった権限を、特定行政庁のみが持っておった権限を、いきなり、言えば建築主事の補佐的な役割りを果たすべき建築監視員が持つ、それに与えられるということになるわけで、これは、表現が少し不適当かもわかりませんが、少し行き過ぎではないかというふうに思うのですが、その辺の御意見はどうですか。
  220. 大津留温

    ○大津留政府委員 建築主事すら持たないという御意見でございますが、建築主事の権限は限定されている。確認又は竣工の検査ということに限られておる。で、違反建築の取り締まりは知事または首長に属しておる。したがって、知事または首長の部下がその命を受けて取り締まりに当たる、こういう関係になるわけでございます。
  221. 浦井洋

    ○浦井委員 そういうお答えがあったわけなんですが、やはり私は、この建築監視員というのは非常に大きな問題があるというふうに思うわけです。さっき言いましたように、第九条の七項、十項という非常に強力な権限もありますし、もう一つ、第十二条の四項を見ていただきたいんですが、建築監視員が第九条第十項の規定による命令をしようとする場合においては、当該建築物に立ち入り、そのほか建築物とか工事関係がある物件を検査し、もしくは試験し、それから、またはその所有者や建築主や工事の施工者に対して必要な事項について質問するというふうに、非常に大きな権限を持っておるわけなんです。もちろんあらかじめその居住者の承諾を求めなければならないというふうになっておるわけですが、いままでの答弁によりましても、この建築監視員というのは、現在のところは特別司法警察権というようなものは持っておらないわけであります。ところが、参議院の建設委員会局長さんはこういうふうに言われているそうですね。これは他のいろいろな関連した問題が出てまいりますのでなかなかそれに踏み切るに至らなかった、次の機会にまた織り込みたいという答弁をされております。だから、これを解釈していきますと、将来は司法警察権も持つようになるというふうに考えられるんですが、この点はどうですか。
  222. 大津留温

    ○大津留政府委員 先ほどもこの席で御答弁申し上げましたように、建築審議会が答申いたしました問題、改正点の一つとしてそういうことも出ております。しかし、これはいろいろ先ほども申しましたが、関連する問題が大きゅうございますので、もっと時間をかけて検討さしていただきたい、こういう趣旨でございます。
  223. 浦井洋

    ○浦井委員 御承知のように、現在ほとんどの庶民の住んでおる建築物は、現在の基準法に違反しておるかあるいは不適格建築物であるというふうに考えられるわけなんですが、この不適格建築物といっても実態上は違反建築物と何ら変わりませんし、少しでも改造するというようなことになりますと、たちまち建築基準法違反になってしまうというのが実情だと思うのです。そうしますと、ただいま質問してまいりましたように、私たちは常に、建築行政の経験三年をもって、そして公正な判断のできるところの建築監視員に自分の家に立ち入られて、検査されて、いろいろ質問されるという可能性のもとに生活しなければならぬということになるわけなんですが、この辺はどういう御意見でしょうか。
  224. 大津留温

    ○大津留政府委員 現行法におきましても、建築主事が確認または竣工検査のため、また特定行政庁の命令を受けたその吏員が違反の取り締まりのために、建築物の中あるいは敷地の中あるいは工事現場に立ち入る、あるいは必要な検査をし、実験をするということが認められておるわけであります。そこで、建築監視員制度ができて初めてそういう権能が生まれてくるのではなく、特定行政庁の吏員の中で特にそういう経験があり、信頼ができるという人を選んで、現場でそういう権限を特定行政庁の長である知事または首長にかわって行使させる、こういう趣旨でございますから、従来の現行法と特段の変わりは私は特にないと考えております。
  225. 浦井洋

    ○浦井委員 従来と実質あまり変わりはないというお話なんですけれども、現在の建築基準法の前身の市街地建築物法ですか、これを所管しておったのは警察なんですが、それだけではないのですが、それによって国民の権利が侵されていたという苦い経験を戦前われわれは持っておるわけなんです。だから、すぐにいまの建築監視員制度が人権を侵すためのものとして利用されるというようなことはないとは思いますけれども、警職法であるとか道路交通法その他の法律によって、勤労者あるいは労働者の人権が侵されておる例が最近ふえておるわけで、少なくともこの国民の住まいに立ち入って検査をし、質問をするという、いわば基本的人権に非常に深いつながりを持つ、そして人権侵害の可能性を持つ制度については、非常に厳密な規制が行なわれなければならないというふうに私思うわけです。  そこで、ひとつ大臣にお尋ねしたいのですが、こういう強力な重要な権限を持つ建築監視員に対して、こういうような方法はどうでしょうか。たとえば建築士または建築主事としての資格試験に合格して、現在建築行政に携わっている者という程度の資格が監視員にも必要ではないかというふうに思うわけです。それが一つ。第二番目には、その資格については、現在提案されておるのはすべて政令にまかされておるわけですけれども、やはり法律の本文などにはっきりと規定しておくべきではないかというふうに思うわけですが、御意見はどうでしょうか。
  226. 大津留温

    ○大津留政府委員 先生御承知のように、現行法でもそういう建物に立ち入る際、住居に立ち入る場合には、事前にその居住者の承諾を得なければ立ち入りができないということになっております。したがいまして、住宅そのほかビルの中でも管理人の居住する部分、そういうところは事前の承諾を要するわけでございます。違反建築の取り締まりには、建築主事になる資格程度の知識経験があればそれにこしたことはないわけでございますが、やはり必要な人員を充足するためには、三年程度以上の建築行政の経験と、それに加えて公平な判断ができる者ということで足りるのではなかろうかというふうに考えております。
  227. 浦井洋

    ○浦井委員 そういう答弁ではありますけれども、やはり私は、こういう強力な権限を持つ建築監視員は、少なくとも本文の中に資格を明記すべきだというふうに思うわけです。先ほどから建築主事のような人材がなかなか大量には得られないという話ですが、建築主事が不足しておるのは一体どういう理由なんでしょうか。資格のある人は全国で三千六百人ですか、そうして現在主事をしているのはわずかに七百人、こういう数字を先ほど言われておりましたけれども、足らないのは一体どういう理由なんでしょうか。
  228. 大津留温

    ○大津留政府委員 主事になる資格を持っておる者でございましても、民間におる方あるいは国家公務員の方もおります。また、地方吏員でございましても、地方の営繕の仕事あるいは都市計画の仕事あるいは住宅建設仕事等がございますので、それらに従事している者も相当数おるわけでございます。したがって、私どもといたしましては、建築主事をさらに三百名程度増強したいというふうに考えておりますので、他の業務に従事している者の中から配置転換をはかるとか、あるいは新たにこういう資格を得た者の中から選考するとかいうことによって充足したい、こういうふうに考えております。
  229. 浦井洋

    ○浦井委員 ずっといままでのお話の中で、主事であるとか監視員の数字が出ておるのですが、大体三年から五年の間に主事を七百人から千人にしたい、それから監視人は千五百人にしたい、一般職員も含めて四千五百人から五千人にしたい、こういうことですが、そうしますと、算術計算をしますと一般職員は現在のところ二千三百人ですか、それが二千人に減るという形になる、こういうことになるのではないかというふうに思うわけですが、この数字は確かですか。
  230. 大津留温

    ○大津留政府委員 現在およそ三千名の中の主事を除いた者二千三百名の中で、知事や首長の命を受けて建築違反の取り締まりに従事している者が相当おるわけであります。したがいまして、そういう者の中から、今度は監視員としてはっきり職務権限を明確にする、こういう者が千五百名程度できる。そうしますと、これらとそれ以外の一般職員と合わせで二千三百名おったわけですけれども、今後はそれが三千五百名から四千名近くになる、こういう関係でございます。
  231. 浦井洋

    ○浦井委員 私の言っておるのは、一般職員が減るという点を言っているわけです。そうしますと、やはりそういうような算術計算でいきますと、全体の仕事関係としては、いまから五年以後は漸次建築行政が違反建築の取り締まりを重点にするということになりはせぬかということをおそれておるわけなんです。もちろん悪質な違反を取り締まることはわれわれも必要だと思うわけなんですが、違反を事前に防止するような行政指導が、より重視されなければならぬというふうに思うわけです。ところが、現在たとえば建築行政の一番のにない手である主事をとって考えてみますと、一人の確認処理件数というのは大体千三百件ですか、それを局長さんはとりあえず千件くらいにしたい、それができるように主事をふやしたいというふうに言われておるわけなんです。現在の千三百件というのはたいへんな仕事の量になるわけです。これでは、単に仕事の量がふえておるというだけでなしに、十分に、しかも的確に処理できる限度をはるかにこえておるというふうに私も考えます。したがって、現在の建築主事というのは責任だけが重くて、その責任を果たせるような状況になっておらない。聞けば、賃金をはじめ労働条件もよくないという話なんです。それで、そういう点からちょっといまふやしたいと言われてはおりますけれども建築主事になってもよいという人は、なかなか集まらぬのではないかというふうに私思うわけです。これは昨年ですか、やはりこの委員会の中で局長さんは、建築主事の待遇を改善するように地方公共団体に働きかけて努力するということを言われておるそうでございますけれども、一年たった今日、大体どういうような成果があがったか、ひとつお尋ねしたいのですが。
  232. 大津留温

    ○大津留政府委員 まず、主事の仕事も、分量を非常に多く持っております。したがって、これは主事の数をふやすことはもちろん大事でございますけれども、それのアシストをふやしてやるということも実際上の解決になると思います。  それから主事の処遇の改善でございますが、これは各地方地方によって必ずしも統一した扱いは受けておりませんけれども、やはり役付待遇といいますか、課長なり係長でなくてもそれと同等の処遇をするということは大体やっておるようでございますが、さらに全国的にそういう扱いをできるだけ統一するように指導したいと思います。
  233. 浦井洋

    ○浦井委員 建築主事なり監視員について、やはりその都市によって違うであろうが、どの程度基準が一番適当と認めるか。大体何件くらいを目安とするのかという点についてはどうですか。千件というなにが出ましたけれども、今後やはりできるだけ少ないほうがよいと思いますが、その辺の見通しどうでしょう。
  234. 大津留温

    ○大津留政府委員 千件程度がいわば適当な処理の限度じゃなかろうか、それより少ないほうが好ましいと思います。
  235. 浦井洋

    ○浦井委員 次に、質問権についてお尋ねしたいのですが、第十二条の四項のところで、質問される対象者のうち「工事監理者若しくは建設物に関する工事の施工者」というふうになっておるわけなんですが、この工事の施工者の範囲はどういうふうになっていますか。
  236. 大津留温

    ○大津留政府委員 工事の元請人、下請人、さらにいわゆる孫請等も含みます。そのほか、これらの者の権限の一部を代行する者、たとえば現場管理者、現場代理人あるいはいわゆる現場監督こういった者が含まれます。
  237. 浦井洋

    ○浦井委員 参議院の附帯決議の中で、「「工事の施工者」の範囲については、施工の権限を代行する者を含むものである」というふうになっておるわけなんですが、それを解釈すれば、権限を代行する者であって、ここではいま局長さんが言われた権限の一部を代行するものという文字は意識的に除かれておるわけなんですが、その辺はどうなんですか。
  238. 大津留温

    ○大津留政府委員 特別の理由はないと思います。私がただいま申し上げたとおり、参議院でもお答えしております。
  239. 浦井洋

    ○浦井委員 やはり参議院の附帯決議を尊重されるならば、責任の一部を分担する者というその一部はやはり除かれるべきではないか。単に工事に従事する者という文句はもちろん省かれておるわけなんですが、下請人のさらにその権限の一部を負っておる工事の従事者、ほとんど変わらない人も当然省かれるというふうに思うわけなんですが、その点、もう一度局長さんの答えをお願いしたいのですが……。
  240. 大津留温

    ○大津留政府委員 参議院の附帯決議には、施行の権限を代行する者というので一部ということばがございませんけれども、ここに一部を代行する者ということばが入っても、この場合の意味、解釈は全く同じでございます。
  241. 浦井洋

    ○浦井委員 私は同じでないと思うのですが、時間がないのであれなんですが、やはり参議院の附帯決議は当然尊重されて、そのように行なわれるべきだというふうに思うわけです。  以上が取り締まりの問題についての質問なんですけれども、やはり違反建築物が非常にふえておるわけで、これを全く取り締まらないというのも間違っておるというふうに思うわけです。ちょっと最初に言いましたように、悪質な業者がおって、そして不法建築をやる、近所の人も迷惑を受ける、それを知らずに買った人も非常に損害を受ける、こういうような非常に悪質な業者は当然取り締まらなければならぬというふうに思うわけですが、先ほどから論議をされておりますように、今日の住宅事情、土地を手に入れるということが非常にむずかしい、困難であるという状況の中で、善意でほんとうにやむなく、しかも近所に直接迷惑をかけない程度で違反してしまった部分も、一緒に建築監視員をふやしてびしびし取り締まっておるというようなことになりますと、これはたいへんなことだというふうに思うわけです。また、特にその取り締まりによって、先ほど申し上げたように、基本的人権が侵されるというようなことがあってはならないというふうに考えるわけです。違反建築が行なわれる一番根本には、庶民の住む住宅が足らないということが一番根本になっておると思うわけですが、そのさらに奥には土地問題があるということになるわけで、いろいろな雑誌、書物に書かれておるように、単に自分の家と土地がほしいというのは日本人の特性だというような、あるいは特殊な感情だというようなものではなくて、むしろ多くの外国、西欧の諸国に比べて非常に公的住宅なども不足しておる。そして住宅難を自分の力で解決しなければならないというような事情が日本に非常に強い。それで、その結果自分の土地、自分の家がほしいという要望になってきておるんじゃないかというふうに思うわけで、こういうような根本の問題を解決しなければ、少々この建蔽率を緩和しただけでは問題は片づかないというふうに思うわけです。反対に、この取り締まりを強化すれば、表面的には違反はなるほど押えられるでしょうけれども、そういうことは決して正しい形の建築行政が進んだということでなしに、もっとより深い大きな矛盾が国民の中に内攻し、むしろ蓄積されていくというふうに思うわけです。  そこで、この問題の最後にひとつ大臣に見解をお聞きしたいんですが、やはり私は、基本問題の住宅、土地問題、こういうところにもっと積極的に取り組む、特に私は本国会の初めに申し上げたように、やはり公営住宅その他の公的な住宅をもっと大量に建設するということが必要ではないかというふうに思うわけです。この建築基準法改正の中でも、当面ほんとうにやむなく違反しなければならないような事情にある人については、違反しなくてもよいように法律の中で緩和措置をとることが必要ではないか。  それから第二には、高さ制限の撤廃、それから容積制度の全面的な運用によって既成市街地内の中高層化が進められて、建築基準法に違反しない高層ビルやマンションなどによって日照権その他が侵され、そして低層住宅に住んでいた人たちがそこに住めなくなって、遠くにはじき飛ばされるというようなことが生じてくるわけです。こういう被害を受ける人々に対する補償はこの建築基準法にはないわけなんですが、やはりこういう補償もある程度明確にこの法に規定する必要があるのではないか、こういうふうに思うわけなんですが、ひとつ御所見をお伺いしたいと思います。
  242. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御承知のように、あらゆる社会現象は、全部これは矛盾の発展です。この矛盾が時々刻々に進むのをどう解決していくかというのが文化であり、これがいわゆる政治でございます。これは私が申し上げるまでもなく事実でございまして、そこで毛沢東先生も「矛盾論」を言っておられるのでございます。そこで、住宅問題も、ただ一方的なものからして、その一つの要求だけを貫くためにそれを完ぺきにやりますとかえって大きな矛盾が出る、こういうことでございまして、現在日本の住宅がこういうふうに逼迫したゆえんのものは、御承知のように、戦時中に非常に膨大な住宅が一挙に壊滅された。それからその後の社会事情の変化に伴いまして、特に経済の急速な発展に伴いましていわゆる地域格差、過密過疎現象が出てきている。それと同時に、戦後必要欠くべからざる措置としてとられた農地法が土地の値上がりをやった。それからまた、いままで——最近ではだいぶ変わってきましたけれども、政府がいろいろ施策することについて、とにかく土地を入手したり公共事業をやる場合に、従来はいわゆる革新という名において国家政策に非常に抵抗したために、土地の買収とかあるいはその価格の抑制に対してかなりの抵抗があった。こういうものが複雑にからみ合って、現在の土地問題が行き詰まり状況になってきているということでございます。したがいまして、いまの都市機能を高めつつ、一方においては快的なる住宅を充足しなければならぬというところに都市再開発法なり、それからいまの基準法なりをやはり、実情に応じて改正していかなければならぬということでございます。そういう観点から見まして、いま国家が安い住宅を提供してほしいというのはあらゆる人々の願望でございます。しかし、政府が無制限に財政資金をみずから造出することは不可能です。政府の財政資金は、究極するところ、国民のあるいは税金においてまかなわれなければ、それは充足できないのでございます。そこで、現在われわれがとっておる政策は、民間で自分で住宅を持ち得るところの制度をも確立しつつ、そういうことでは救済できない低所得者に対しては、御指摘のように政府政策住宅を充実していく、この両方がなければ、すべての人々から全部政府政策住宅に要求が来ますと、実質上は非常な住宅減になる、そういうことでございます。そういう意味では、浦井さんの言われることについて私も共鳴する点はございますけれども、全部が全部政府政策住宅でいけないという点をもまた御理解いただきたいと思います。  なお、基準法、住宅政策の背後に土地問題がある、土地問題については総合的な施策でなければこれはできない、そのとおりでございます。そのために従来は、ややもすれば土地収用法の改正にずいぶん苦労しましたが、最近になりまして、むしろ野党の皆さんから、思い切って土地収用法を強化して、住宅なりあるいは公共事業については、優先的に国家あるいは自治体が土地の収用を思い切ってやれる措置を講ずべきだ、こういう意見が出てきたことは一つのたいへん時勢に適応したところの、これこそ進歩的な提言だと思いまして、これも全面的に検討してまいりたい。  それと同時に、税制についても、従来はややもしますれば、いわゆる固定資産税等の課税が即、直ちに農業政策の圧迫だというふうにとられがちでございましたが、そうでなくて、固定資産税あるいは付加価値税等弾力的に適用することによって、一部の人間だけが不当なる利益を取って、多数の人間がそのために犠牲になることはやめろということ、これが国民の世論となってきましたので、いまこそ御指摘のように土地問題、住宅問題に対して、これは与野党を通じて本格的な合意の広場を持つべきであり、それを背景にして政府は諸般の政策を実行すべきだと思います。御激励の点は十分体しまして進めてまいる所存でございます。
  243. 浦井洋

    ○浦井委員 毛沢東が出ましたが、ひとつその点私らのほうでも検討させていただきたいと思うのですが、最後に具体的な問題二間ほど、時間がございませんのでお尋ねしたいのです。  四十三条の接道義務の問題についてなんですが、新たに接道義務で位置指定を受けなければならぬ者は全国でどれくらいあるのか、それからこれに対する費用は、一件当たり平均どれくらいになるのかという点をお尋ねしたいのです。
  244. 大津留温

    ○大津留政府委員 過去二年間の統計を見ますと、その間に私道の認定をいたしました件数が五万件ございます。これの築造に要する費用、実は統計がございませんので、わかりかねます。
  245. 浦井洋

    ○浦井委員 費用は当然出しておくべきだと思うのですがね。いままででも、道路の位置指定を受けた土地は無償で提供しなければならないということになっておったわけなんですが、今回の改正では、さらに政令で定める基準に適合する道というような線形、構造などの条件がきびしくなっている。そして、土地を建築物の敷地として利用するために築造する道という基準だけが示されておって、あとは政令にゆだねられておるわけですが、政令で定められたように、新たに私道をつくらなければならぬ人には相当な費用が要るし、また出さなければならぬというふうに思うわけですが、こういうものは、私道ではあるけれども通行の安全あるいは防犯、衛生などの見地から、当然行政機関で管理しなければならぬというふうに思うわけです。そうすると、私道だからといって敷地の所有者の自己負担でつくりなさいというのでなしに、政令で条件をつけるわけですから、特定行政庁が費用の上でも責任の分担をすべきだというふうに思うわけです。したがって、こういう私道をつくるために土地を買い取ったりするための予算上の措置は、一体考えておられるわけですか。
  246. 大津留温

    ○大津留政府委員 一般の用に供する幹線街路は、これは公共の手でつくるべきは当然でございますが、限られた人が通行する私道というようなものは、その道路を利用する受益者の負担において築造していただくというのが至当であろうかと思います。ただ、私道でございましても事実公共の用に供せられる度合いが高いものがございますので、これは逐次公共団体の管理に移管していくのが適当かと思います。また、現在その管理が公共の手に移管せられるに至りません場合は、そういった公共の用に現に供しております私道につきましては、固定資産税を非課税にするという扱いがなされております。この私道が一定の水準以上の高基準で整備されるというような場合には、その基準を越える部分について地方公共団体がある程度援助するということは適当な方策かと思いますが、現在大阪府ではそういった意味の補助金を出しております。これは大阪に限らず、全国的にもひとつ十分検討してまいりたい課題だと考えております。
  247. 浦井洋

    ○浦井委員 やはり国なり自治体なりの強力なその面での援助を当然すべきだというふうに思うわけです。  それで時間があれなんで、最後に一つお尋ねしたいのですが、繰り返しになるかもわかりませんけれども、従来の建築基準法で適法であった建物はこの法の改正によって適法でなくなった、いわゆる不適格建築物になった場合に、たとえば最初は夫婦二人だからというので小さな家でがまんしておった、そこで子供ができる、だんだん大きくなって狭くなってくる、それで勉強部屋を建て増ししようとする、こういうような場合、現在の基準法でいけば十分建て増しができるけれども改正された場合には最初の建物自体が不適格建築物であるということになるわけですから、建て増した分も建築基準法違反になるということになると思うわけです。そういうことになりますと、非常に余裕のない勤労者は、家を建てるときに往々にしてこういうようなケースが今後出てくるのではなかろうかというふうに思うわけです。これを救済する方法がこの改正の中でどういうふうに配慮されておるのか、その辺をお聞きしたいのです。
  248. 大津留温

    ○大津留政府委員 現在は適法である建築物が、法律なり規則が変わったために違法になる、こういうのはいわゆる既存不適格、すでにあったものだからというので、それには遡及して適用はないわけでございます。そういう建物も、しかし多少の改築、増築をする必要がございますので、一定の範囲内におきましては、改築または増築を許すということになっております。
  249. 浦井洋

    ○浦井委員 大体そういうことなんで、まだあすもありますし、もっともっと慎重にお互いに審議をしたいというふうに考えて、私質問を終わります。
  250. 金丸信

    金丸委員長 次回は、定例日ではありませんが、明十二日火曜日、午前十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時六分散会