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1970-05-08 第63回国会 衆議院 建設委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月八日(金曜日)     午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 天野 光晴君 理事 大村 襄治君    理事 正示啓次郎君 理事 服部 安司君    理事 渡辺 栄一君 理事 阿部 昭吾君    理事 小川新一郎君 理事 吉田 之久君       池田 清志君   稻村左近四郎君       金子 一平君    砂原  格君       丹羽喬四郎君    葉梨 信行君       廣瀬 正雄君    古内 広雄君       森下 國雄君    山本 幸雄君     早稻田柳右エ門君    井上 普方君       卜部 政巳君    佐野 憲治君       松浦 利尚君    三木 喜夫君       北側 義一君    小濱 新次君       内海  清君    浦井  洋君  出席国務大臣         建 設 大 臣 根本龍太郎君  出席政府委員         建設大臣官房長 志村 清一君         建設省計画局長 川島  博君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   岸   要君         国税庁直税部所         得税課長    山内  宏君         厚生省保険局保         険課長     中野 徹雄君         社会保険庁医療         保険部健康保険         課長      正田 泰央君         労働省労働基準         局補償課長   松尾 弘一君         建設省計画局参         事官      佐土 侠夫君         建設省計画局建         設業課長    檜垣 五郎君         建設委員会調査         室長      曾田  忠君     ――――――――――――― 五月六日  建設業法の一部を改正する法律案等反対に関す  る請願浦井洋紹介)(第六七〇八号)  同外九件(塚本三郎紹介)(第七〇三〇号) 同月七日  建設業法の一部を改正する法律案成立促進に  関する請願石井桂紹介)(第七四八六号)  建設業法の一部を改正する法律案成立促進に関  する請願外九件(熊谷義雄紹介)(第七四八  七号)  同(江崎真澄紹介)(第七六六七号)  同外一件(丹羽久章紹介)(第七六六八号)  建設業法の一部を改正する法律案等反対に関す  る請願阿部昭吾紹介)(第七四八八号)  同(青柳盛雄紹介)(第七四八九号)  同外二件(麻生良方紹介)(第七四九〇号)  同(井上普方紹介)(第七四九一号)  同外二件(今澄勇紹介)(第七四九二号)  同(川俣健二郎紹介)(第七四九三号)  同(後藤俊男紹介)(第七四九四号)  同外一件(佐々木更三君紹介)(第七四九五  号)  同(曽祢益紹介)(第七四九六号)  同(田邊誠紹介)(第七四九七号)  同(高田富之紹介)(第七四九八号)  同外一件(土橋一吉紹介)(第七四九九号)  同(中嶋英夫紹介)(第七五〇〇号)  同(永末英一紹介)(第七五〇一号)  同外一件(西宮弘紹介)(第七五〇二号)  同外一件(平林剛紹介)(第七五〇三号)  同(不破哲三紹介)(第七五〇四号)  同外一件(藤田高敏紹介)(第七五〇五号)  同(松平忠久紹介)(第七五〇六号)  同外四件(門司亮紹介)(第七五〇七号)  同(山口鶴男紹介)(第七五〇八号)  同(安宅常彦紹介)(第七六六九号)  同(大出俊紹介)(第七六七〇号)  同(竹入義勝君紹介)(第七六七一号)  同(土井たか子紹介)(第七六七二号)  同外七件(松本善明紹介)(第七六七三号)  同外一件(三木喜夫紹介)(第七六七四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月七日  地価安定対策に関する陳情書  (第三七六  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  建設業法の一部を改正する法律案内閣提出第  一〇〇号)      ――――◇―――――
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出建設業法の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦利尚君。
  3. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それではまず大臣お尋ねをいたしますが、この業法改正中心になっております登録制度許可制度に改めるという制度について、提案理由その他説明を聞いてまいりますと、建設業界の中の不良業者、そういったものを改めていくためにはこの際許可制をとっていきたい、建設業界の規律を確保していきたい、こういったことがその前提になっておるやにお聞きするのでありますが、そうだとすれば、この許可制にすることによってそういった方向が確立されるというふうに大臣はお考えになっておるのかどうか、その点をまずお尋ねしておきたいと思います。
  4. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御承知のように、建設業国民の生命、財産に非常に密接なる関係のある業種でございます。しかも最近のように経済の高度成長が続いている場合におきましては、建設業が持つ公共性の重荷と申しますか、これは非常に重大になってきているのでございます。なおまた、住宅難等が相当深刻になってまいり、また地価が非常に高騰することを一つ社会的背景として、特に都会地周辺で、非常に悪質なる建て売り住宅あるいはまた宅地が整備されないまま分譲されるために、これが一般国民並びにその地域社会に非常に重大な支障を来たしておる、これは確かに事実でございます。それで、こうした人たちの立場を保護してやるということと、それから営造物が非常に大規模になってきた今日、これが技術的に非常に整備されたものでなければならないときに、十分なる資格のない者がただ届け出さえすれば何でもやれる、金さえあればやれるというようなことでは、これは非常に不安があるということです。  それからもう一つは、いずれ近く資本自由化建設業にも及ぼされてくるということになりますと、御承知のように、海外の建築土木業者というものは技術的にも、資本的にも非常に信用度の高いのが出てくるわけでございます。そうすると、必然的にそういうものに進出されてくる危険性がある。こういうこと等の諸案件考えてみるとき、ここに単なる届け出さえすれば、登録しさえすればやれるということでは適当でない。やはり監督官庁としても責任を持って国民に、こういうふうな条件許可しておるから信用があるということも示すと同時に、それだけの内容を持って今後監督、指導しなければならない。  それからもう一つは、従前でございますれば元請と下請、孫請負というものが慣習的にやられておる。何ら法的規制ができていない。ところが、これに基づく非常な損害を受ける人々もたくさん出てきておる。公共施設をやった場合におけるそうした監督責任が、どこまで追及していいかということもこれは非常に不明確だ。こういう点を改めていくことが、いま御指摘になったような従来の登録制度から許可制度にしなければならないと考えておるゆえんでございます。
  5. 松浦利尚

    松浦(利)委員 事務当局お尋ねいたしますが、現在の業法第二十八条によっても、第五章監督指示及び営業停止という章がありますけれども、この業法が施行されて今日まで、大臣処分あるいは知事処分営業停止登録取り消し等不良業者に対しての監督処分というものがあったと思うのでありますが、今日までのその具体的な数字をお示しいただきたいと思います。
  6. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  建設業法昭和二十四年に制定されておりますが、自来業法に基づく処分件数は、指示処分営業停止とそれから登録取り消し三つ種類がございますが、指示処分をいたしましたものが合計で六百九十九件、営業停止処分が五十九件、登録取り消し処分が三十二件、合計で七百九十件となっております。
  7. 松浦利尚

    松浦(利)委員 さらに局長お尋ねをしますが、先ほど大垣が説明をなさいました許可についての問題は、現行法登録制度をもってしても、二十八条の監督権限を強化することによって不良業者の締め出しあるいは指導監督、こういったものができるんじゃありませんか。その点どうでしょう。
  8. 川島博

    川島(博)政府委員 御指摘のように、現行法におきましても、第二十八条によりまして建設大臣監督処分できることになっております。しかしながら、現行登録制度要件があまりにも軽易、画一的である。すなわち、一定期間実務経験を有する技術者を一人だけ雇っておればいかなる大工事でも請け負える、こういうたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、御案内のように、業法発足当初は登録業者が三万三千でございましたが、今日ではすでに十六万を突破するという勢いで、最近の年間の業者登録増加数は一万五千業者以上に及んでおります。したがいまして、この監督処分を強化することもさることながら、やはり不良な業者、悪質な業者が輩出することがないようにいたしますためには、この業者登録要件を厳重にするということが必要でございまして、そのためにいろいろ検討いたしました結果、相当要件をきびしくいたしたわけでございます。もちろん登録といい、許可といい、それを受けなければ営業ができないということでは同一でございますけれども、今回は業者に対して誠実の要件を要求する、あるいは財産的基礎についてのある程度の保証を要求するということでございますので、今回、登録制度法律上は許可制度に改め、さらにこれに基づいて業者監督を強化するということが最も適切であろうということで、今回の改正案を提案いたした次第でございます。
  9. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ただいまの局長答弁について、ちょっと私は疑義があるのですが、大臣お尋ねをしたいと思うのです。  いまの局長の発言を聞いておりますと、少なくともいままでのような登録制度のもとでは資格条件その他がただ登録手続することだけで済むために、極端に言うと監督行政というものが行き届かない場合も出てくる。ですから、監督行政の前に登録というものをさらに許可制度に改めて、その企業なりあるいは工事を施行しようとする者の財産的な問題あるいは社会的な信用、こうしたものをチェックした上で許可制度に切りかえていくんだ、こういうふうに、ことばは違いますけれども受け取ったのです。だとすると、それほどこの法律中心、核ともなるべきそういった重要な内容をなぜ政令できめるんでしょうか。少なくともそういった重要な問題であるとするなら、私は政令なら政令でもけっこうですけれども、なぜ事前に、この法律と並行して政令の骨格というものでもわれわれに示されようとしないのでしょうか。承るところによると、中央建設業審議会、この議を経てやろう、こうしておるのですから、少なくとも登録許可に改めた非常に重要なメリットである許可条件について、この政令という問題でわれわれこの審議をする者をつんぼさじきに置いておく、こういう審議のあり方というものは私はきわめて遺憾だと思うのですが、大臣どのようにお考えでありますか。
  10. 根本龍太郎

    根本国務大臣 この政令内容の前に、ひとつ私は松浦さんによくお考えを願いたいと思いまするのは、ややもすれば、建設業法等を改正する場合、中小零細企業を圧迫することだということで反対が出てくることが多いのです。実は十二年前私が建設省におりましたときも、私はこの問題を取り上げたのです。そうしたところが、当時やはり野党方々の相当の部分からそういう意見が出て、そうしてこれが地方業界に非常に働きかけて——これは両方働きかけたと思うのです。地方業界野党の人にも働きかけ、それに基づいて動いたという結果があって、とうとう私それを立法化することが、準備ができないままに終わったことがあるのです。ところで私は、この建設業法はだれのために立法化するかということを考えなければいけない。これはその事業を営む人のためみたいであるけれども、それ以上に大きな問題は、どっちがほんとうにその制度として、一般国民が利益を受けるかということだと思うのです。現在においては、登録制度でいきますと、もう松浦さんも御承知のように、各地方では、何らの経験のない者がもう県あたりに行って金を納めればすっと通っちゃう。今度一たん登録されると、実力のいかんを問わずに、今度は官庁に行って指名しろ、あるいは今度は民間企業に行って、はなはだしきは採算を割ったような、初めから損するようなものをとって実績をかせいでいこう、こういうところに不正工事並びに不良工事、それに基づく損害がどこにいくかというと、一般国民方々にいっている。だからして、この際許可制度ということになりますれば、許可するときにはするだけの、許可したところの政府並びに関係当局がそれだけの責任を持って国民に保証しているということになるわけです。そうでなければ無限に広がる。しかも片方は、もうどんどんどんどんふえると思うと今度は破産し、倒産して、どんどん消えていく。こういうような現象がどうも適当でないというところに根本の問題があるのでございます。したがって、弱小企業者を保護するということとこの許可制度と混同することは、私は政治的に見て適当でないと考えている次第でございます。  ところで、しからば許可条件をどうするかということが非常に大事であるから、それを政令にゆだねるといっておるとするならば、その政令の基本的な内容について考えを明らかにしろということも、私もしかるべきことだと思います。現在それについて、松浦さんから御指摘になりましたように、建設業審議会においていろいろ研究した結果かくあるべしという一つ答申が出ていることも事実でございます。大体それを中心として政令をつくりたいと思いまするが、この政令内容については、この国会における御論議の結果に基づいて、さらにわれわれは審議会答申にあわせて国会の諸先生の御意向をも体して政令をつくる、こういう方針でございます。したがいまして、現在きっしりと条文化してはおりませんけれども、審議会から大方の了解で答申されておるものの内容については、事務当局から説明させてけっこうでございます。
  11. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、せっかくの大臣答弁でありますから、事務当局のほうから答申内容について明らかにしていただきたいと思います。  さらに追加して、政令委任する事項が全部で六つこの法律の中にあるようでありますから、全部この際発表してください。
  12. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  御案内のように、許可基準は第七条と十五条にございますが、一般建設業につきましては第七条の許可基準によることになっております。  今回の改正案によりますと、要件四つございまして、第一は、法人の場合にはその役員個人業者の場合には業主またはその支配人のうちの一人が、許可を受けようとする建設業に関し、五年以上経営業務管理責任者としての経験を有する者となっております。  第二の要件は、各営業所ごと専任技術者を置かなければならないというのが第二でございます。  それから第三が、法人である場合には、当該法人またはその役員もしくは政令で定める使用人、これは営業所長とか支店長クラスの者を予定しておりますが、政令で定める使用人が、また個人である場合においては、その者または政令で定める使用人、これは支配人を予定しておりますが、これが請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれの明らかなものでないことというのが第三の要件でございます。  第四が、請負契約を履行するに足る財産的基礎または金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。この四つ許可要件でございます。  したがいまして、政令で定めますのは、この使用人の範囲がどうだという技術的な問題でございまして、許可要件の実体については法律そのものにずばり明示をしておるわけでございます。  十五条の特定建設業に関しましては、いまの一般建設業許可要件に加えまして、さらに専任技術者資格要件を、二年以上指導監督的な実務経験を有する者というふうに、一段高い技術要件を要求しておるわけでございます。また、財産的要件といたしましては、一般建設業よりも若干厚い財産的基礎を必要とするというふうに規定をいたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、許可要件許可基準に関しましては、実体的なことは法律ではっきりと明示してありまして、あと使用人がだれであるとかあるいは財産的基礎等に関しまして、金額等については政令委任をされておるわけでございます。ただいま大臣からも御説明ございましたように、これらの政令委任事項は、技術的とは申しましても内容的には相当重要なものを含んでおりますので、従来こういったものをきめる場合にもそうでございましたが、今回の法律改正に基づきます政令事項については、中央建設業審議会、これには学識経験者のほか発注者代表、さらに業者代表といたしまして大手、中小職別業者の各代表がすべって入っておりますが、この中央建設業審議会にはかりまして、十分その御意向をいれてきめたいと考えておりますが、さらに、本委員会におきまするこれからのいろいろ質疑応答を通じまして本委員会の御意向が明らかになると思いますので、それらも十分尊重いたしまして、慎重に政令内容を決定いたしたいというふうに考えておるわけでございます。  本改正案では、いろいろと政令できめることがございますけれども、まず第一に、第三条第一項の政令で定める軽微な建設工事のみを請け負う者については、この建設業法許可を必要としないという規定がございます。これが一番重要かつ問題となっておるわけでございますが、実はこれにつきましては、昨年六十一国会でこの法律案を提出いたしまして、これは不幸にも廃案になったわけでございますけれども、その際にこの点が非常に問題になるであろうということが予想されましたので、昨年の夏でございましたが、急遽中央建設業審議会法制小委員会を招集いたしまして、いろいろ御相談をいたしたわけでございます。その過程におきましては、いろいろあったわけでございますけれども、大方の御意向といたしましては、現行では一律五十万円ということになっておりますが、これを「工事一件の請負代金の額が、土木一式工事又は建築一式工事にあっては百万円に満たない工事、その他の建設工事にあっては五十万円に満たない工事とする。」ことが妥当であろうというのが、大方の見解であったわけでございます。しかしながら、適用除外金額政令で幾らに定めるかというのが、今回の法律改正をめぐる問題点の中でも、最重要中の最重要問題でございますので、今後とも当委員会の御審議を通じましての御意向も十分尊重して、法律制定の暁にはまた中建審にもおはかりしなければいけませんけれども、各方面の御意向を十分尊重してきめたい、かように考えておるわけでございます。
  13. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、いま三条の軽微な工事についてのみの百万、五十万と、こういうことを言われたのでありますが、この際でありますから、全部ひとつこれが事実かどうか、私の資料を読み上げますので、間違っておればそれは間違っておるというふうにおっしゃっていただけばけっこうです。  建設省昭和四十四年十一月、「建設業法改正案政令委任事項および財産的基礎又は金銭的信用に係る許可基準(案)」、数字だけ言います。いま残された部分ですね。「第三条第一項第二号の政令で定める金額は一千万円」、さらに許可基準の第四、先ほど局長は少し「財産的基礎又は金銭的信用に係る許可基準(案)」について、いろいろ抽象的なことを言われたようでありますが、ここには具体的にされております。一般建設業にありましては、「次のいずれかの要件を満たす者であること。1.自己資本の額が、土木工事業又は建築工事業にあっては百万円以上、その他の工事業にあっては五十万円以上であること。2.土木工事業又は建築工事業にあっては百万円以上、その他の工事業にあっては五十万円以上の資金を調達する能力があると認められること。」それから、「過去三年間登録又は許可を受けて継続して営業を行なった実績を有していること。」「担保とすべき不動産等を有していること等により必要最小調達資金について金融機関等から融資を受けられる見込みがあること。」それから特定建設業許可基準。第十五条第三号。「次のいずれの要件をも満たす者であること。1.欠損の額が資本金の二〇%をこえていないこと。2.流動比率が七五%以上であること。3.資本金の額が五百万円以上であり、かつ、自己資本の額が一千万円以上であること。」こういった基準案がすでに建設省基準案として出されております。さらに、その他政令委任できめる内容事項がございます。「第二十四条の五の政令で定める金額は一千万円」、それから「第三条第一項第二号の政令で定める金額は一千万円」、こういった案がすでに中央建設業審議会のほうに出されておるのか、あるいはこれは建設省の案であるのか、そういう点を、局長少し明らかにしていただけませんか。
  14. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からお読み上げいただいたのは、昨年の夏に中央建設業審議会を開きます際に、たたき台として建設省から御説明を申し上げ、いろいろ数字は変わったわけでございますけれども、中央建設業審議会が一応この程度ならばいいのじゃないかということでおきめ願った数字でございます。ただ、その中で一つお断わり申し上げておきたいと思いますが、この法七条の第四号の財産的基礎または金銭的信用を有しないことが明らかでないこと、この要件先生がいまお読みになりましたのは、第三条の軽微な工事との関連で、かりに軽微な工事一式工事百万円、その他工事五十万円と定めました場合には、許可業者に要求する財産的要件は少なくともその最低限の百万円なり五十万円なりの工事を実施し得る財産的基礎を必要とするという意味で、必要最小調達資金を百万、五十万とすべきである、そういう関係になっておるわけでございます。したがいまして、今後場合によりまして、当委員会の御審議その他を通じましてかりにこの金額が動いてまいりますと、その三条の許可適用除外軽微工事金額との見合いにおきまして、この百万、五十万という数字は動いてくるわけでございますので、その点は念のために注を加えさしていただきたいと思います。
  15. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いまの答弁によりますと、すでに中央建設業審議会のほうでは多数でこういう案をきめておられるという答弁だったわけですけれども、だとするならば、この法案を審議する条件として、現在政令にしようとしておるいま言ったような案を当然委員に示すべきではないか。しかも大臣が当初言われたように、許可という問題が登録にかわってきた理由として重要なポイントだとするならば、そういった問題についてすでにそういう案があるのだから、なぜ事前にこの委員会に出さなかったのか。逆な言い方をしますと、何か建設委員会よりも中央建設業審議会のほうに重点を置いておるという感じがしてならないのです。かりにここでわれわれがどのような議論をしてみようとも、中央建設業審議会の議を経なければ変更もできないといったことになるのではないかという気がしてならないのです。この点について、大切な問題ですから、大臣どのようにお考えになりますか。
  16. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御承知のように、国権の最高機関国会でございまして、どんなに中央審議会で案ができましても、国会で承認されなければ法律にもなりません。法律ができなければ政令はできないのです。これはどこまでも諮問機関的なものでございまして、政府責任をもって国会の御審議を得るために、綿密な検討を加えるために、これらの審議会意見を徴するのが至当だと私は思うのであります。決してわれわれは内密にしたものではない。あなた自身がちゃんと手元に持っておられるほどでございまして、これは審議会のことでも、言えばちゃんと出されるということでございます。そういうふうに国会よりも審議会を重視しておるということではございません。その点は、われわれのいままでとってまいりましたことは審議会を重視して国会を軽視する、そんなことは毛頭考えていないということだけは御理解願いたいと思います。
  17. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大臣の言われたことは、私はそのとおりだと思うのです。ただ大切なその政令——あなたは持っておるじゃないかと言われますが、私は、これは政令事項があまりに多いので、頼んで取り寄せたのです。取り寄せなければもらえないのです。おそらく各委員は、みんな持っておられないと思うのです。それではやはり私は不親切じゃないかと思う。要求するから出す、しかも要求して出された内容はこの法案にとって非常に重要なウエートを占めておる政令であるということになれば、事前に法案と並行して出されるべきじゃないかと思うのですが、その点どうでしょう。   〔委員長退席、天野(光)委員長代理着席〕
  18. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これは、御質問がありますればそれに答えるのがたてまえでございます。御承知のように、政令というものはあとから出てくる、いつでもそうでございます。その意味におきまして、いま政府政令はまだきめていない。政令は閣議で決定しなければなりませんからきめておりませんけれども、構想について話せと言うから、ちゃんといまお示ししたような状況でございます。政令内容については、正式には閣議決定しなければ政令にならないし、また法律ができなければ、それに基づく政令もできないということでございます。ですから、この問題について私は何も秘密にして、絶対にこれは隠すとかなんとかいうことではない。場合においては政令そのものができていない場合もあります。基本的な考えだけでいくということもありますので、これはそれぞれの委員会等で構想はどうかと言われれば、必要な場合においてそれをお示しするということで、今日まで法案審議をやってこられたのでございまして、その例にならっているだけでございます。どうぞ御了承願いたいと思います。
  19. 松浦利尚

    松浦(利)委員 了解いたしました。どうも私は初めて国会議員になりまして、国会というところはこんなに審議しにくいところかということを初めて知りました。その点は参考になりました。要求しなければもらえない。しかもこの資料は大切なものです。私は非常に奇異な念を持ちますけれども、いま大臣がいわれたように、そういう慣行になっておるということだそうで、それは資料を要求すれば出してもらえるそうですから、それでは基準案要綱というのを出していただきたいと思います。そして、その基準案要綱について、ほかの委員からこれからまた追及していただくことにします。私は時間的に、そういうことだけで議論してもしかたがありませんから、月曜日にすることにして、次の問題点に進みます。それでは大臣、いまの資料を出してください。  次に、さきに大臣が本法律についての御説明をなさいましたときに、大手企業が、元請、下請、孫請等重層請負の中でピンはねが行なわれてきておる、そのために中小企業の倒産の激増あるいは建設労働者に対する賃金の不払いという問題が出されてきておる、これをこの法案では防止すると言われました。なるほど、拝見をいたしますとそういうことができておるようでございますけれども、実際に本法が通ったらほんとうに実効あることが確保できるのか、ほんとうにこういうやり方で実効があがる、こういうふうに大臣はお考えになりますか。その点をお答えいただきたいと思います。
  20. 根本龍太郎

    根本国務大臣 いかなる制度をつくりましても、その法律どおりにいくということは、これは現在のままではなかなかむずかしいとは思います。しかし、こういうような制度をつくることによって、少なくとも現状よりよくなるということは私は信じております。そうしてまた、それだけ責任を追及することも制度上可能である。今日ではそれがないために、いわば元請と下請との関係は、民法上の契約以外の何ものでもないと思います。したがって、責任は全部下のほうにいってしまって、そうして元請のほうは、金を払ったとかあるいはこういう条件でやらしたのだから、われわれはそれ以上関係ないといえば、現実に被害を受けた建設労務者とか、あるいはそれに物品を売った人とか、あるいは受注者が処置ないということは、これは制度的には非常に欠陥ではなかろうか。だから、本来ならば請け負ったものが全部やるというのがたてまえであるべきにもかかわらず、現実にそういう制度建設業法上許されておる状況下においては、やはりその欠陥を是正するのが、私は行政官庁として、また政治として、しかるべきことだと思う次第でございます。
  21. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは大臣、いまの問題を含めてお尋ねいたしますが、建設業についてはなぜ下請代金支払防止法が適用されないのか。建設業界だけについては、下請代金支払遅延防止法からはずされておるのですね。私は、やはり所管大臣としては建設業界にもこの法の適用を積極的に進めるべきだと思うのですが、その点はどうお考えになりますか。
  22. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  御案内のように、下請代金支払遅延等防止法は資本金五千万円以下の中小企業に適用されるわけでございます。建設業は、その九九%がその意味における中小企業でございます。したがいまして、かりに下請代金支払遅延等防止法を適用いたしますと全部がその恩典を受けるということになりまして、非常に妙なことになるわけでございます。建設業界の長い慣行といたしまして、資本金の小さいものが下請をし、資本金の大きいものは必ず元請になるということでございませんで、大きい業者が下請に回ることも間々あることでございます。そういう関係で、現在の下請法そのままを建設業界に適用いたしますと非常に妙なことになりますので、これは建設業界の実態に合った下請法規を別途に制定することが適当であるということで、従来検討が行なわれておったわけでございます。今回の改正案におきましても、そういった下請法の思想を十分にくみ、しかも建設業界の実情に合った形で下請法の精神がそのまま盛り込まれておるわけでありますので、この法律案が通過成立をいたしますと、下請保護については万全を期せられる。下請法の精神がそのまま実現されることになる。そういう点からも、本法律案の成立を一日も早くお願いいたしたいというふうに考えておるわけであります。
  23. 松浦利尚

    松浦(利)委員 局長、下請代金支払遅延防止法のほうが、この法律の改正内容よりもむしろきびしいのですよ。あなたはこの法律案が通ったほうがいいと言われるけれども、むしろ業界として見れば、この法律の適用を受けたほうがいいのです。支払代金遅延防止法の適用を受けたほうがいいのです。その点をどうお考えになりますか。それよりもこのほうが進んでおると局長はお考えになって、いま答弁なさったのですか。
  24. 川島博

    川島(博)政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、建設業は、その全部が中小企業であると言っていいと思います。したがいまして、現行の下請法は、五千万円以上の大企業が五千万円以下の中小企業に対する代金の支払いについて特別な義務を課しておるわけでございますが、これをそのまま適用いたしますと、ほとんどが適用にならないということになるわけでございます。したがいまして、やはり建設業については建設業法自体で別途に手当てをすることが適当であろう。その手当てのしかたは、確かに下請法とは若干しかけが違っておりますけれども、これはやはり、建設業についてはこういう下請保護の形が最も適当である。これにつきましても、やはり二年有余にわたって中央建設業審議会で御検討いただきました結論が、この姿が現状においては最も適切であるということで御答申を願いましたので、それをそのまま立法化いたしましたわけでありますので、現状におきましては、建設業界に対する下請保護の規定はこの改正案に盛られているものが最善のものではないかというふうに、私どもは確信をいたしておる次第でございます。
  25. 松浦利尚

    松浦(利)委員 その問題については非常に重要ですが、その問題だけで私がここで議論しておっても時間が経過いたしますから、その問題はまたほかの委員に議論をしていただきたいと存じます。  ただ、私は、ここに建築工事業中小企業近代化基本計画、建築工事業中小企業近代化実施計画、建築工事業中小企業近代化基本計画説明資料、昭和四十四年一月というものを持っております。これも実は資料を取り寄せたものなんです。これを見てまいりますと、最終的には、四十七年度の建設業界の姿としてこういっておるのです。「目標とする企業規模については、資本の額又は出資の総額(個人企業にあっては、営業用自己資金の額。以下「資本金」という。)をもって表わすこととし、目標とする企業規模は、おおむね資本金が三〇〇万円以上のものとする。」こういうように規定してあるわけです。だとすると、昭和四十七年度までには三百万円以上の企業に全部整理統合してしまう。逆に言うと、零細企業そのものは切り捨てられてしまうとこの基本計画説明資料に書いてあるわけです。そうなってまいりますと、先ほど零細企業を切り捨てるのではないというふうに言われましたけれども、この計画内容を見ると、どうも過当競争におちいった、あるいは倒産、そういったものを意識的に——意識的と言っては悪いですが、無意識的にでもけっこうです、高めながら、実際には資本金三百万の業界に整理してしまう、こういうことが建設省の出された四十四年一月の計画案の中に仕組まれておるわけです。この点について、大臣はどういうふうにお考えになっておられるのか。この点を明らかにしていただきたいと思います。
  26. 根本龍太郎

    根本国務大臣 先ほども御説明申し上げましたように、建設業法等、あるいは建設行政は何のためにあるかということです。業界を保護するということと同時に、これは究極において国民全体の生命、財産、並びにそのために行なういろいろの建設発注に際して、その利益が保護されるということが根本でなければならぬと思います。今日のように非常に人件費が高まってきて、機械化が伴わなければ、技術が伴わなければそうした事業がなかなか存立できないということになりますれば、やはりそれぞれの資本あるいは技術の装備をしなければなりません。そういうことを考え個人でできなければ——これがたぶん問題となると思いますが、いわゆる一人親方と称せられる方々が、そのままの姿で自分がいろいろの工事をとりたいといってもこれは無理でございます。したがって、そういうときには、企業組合あるいは一つのそうした方々の組合において、そうした相当規模の仕事がなし得る状況に持っていくべきだ。そういう場合においては、一応いま示されたようなところの条件を満たすように行政指導をするという方針であろうと思います。その基本政策を作成した当時、私が直接担当してないからわかりませんけれども、たぶんそういうことだろうと思うのでございます。したがいまして、われわれがいろいろの政治、行政をやる場合において、ただ弱小のものだけを助けるということの名において、ほんとうにそのために国民の受ける不安並びに不利が無視されてはならないと思うのでございます。したがいまして、そういう条件に満たない人は、次の問題はいかにしてそういうふうな標準にまで高めるかという施策が必要だということであるならばわかりますけれども、ただそれなるがゆえに首切りだということにはならないと思うのでございまして、その点は十分に配慮して今後運用すべきだと考える次第でございます。
  27. 川島博

    川島(博)政府委員 建築工事業中小企業近代化基本計画につきましては、ただいま御説明がございましたように、三百万円という数字が載っております。これは「小規模工事を主として施工する企業を除き、資本の額又は出資の総額がおおむね三百万円以上のものを目標とする企業規模とする。」結局、それを努力目標にして近代化をはかりなさいという趣旨でございます。しかしながら、これは今回の建設業法の改正にからむ許可基準あるいは軽微工事等とは直接関係はないわけでございます。これはあくまで中小企業を近代化、合理化するための、小規模工事以外の工事企業の規模を、三百万円程度を目標に引き上げるべきであるということを理想としてうたっているわけでございまして、本法の軽微工事金額とは直接関係はないわけでございます。
  28. 松浦利尚

    松浦(利)委員 局長答弁を聞いて、またどうもちょっとわからなくなったのですが、大臣答弁で理解したつもりでしたけれども、ちょっともう一ぺん局長お尋ねをします。  建築士法の第三条の二ですね、要するに三十平方メートル以下の工事については二級建築士の資格がなくても工事がやれますね。そうすると、三十平方メートルといいますと通常のわれわれが住む家なんです。ところが実際にこれだけの家をつくろうと思うと、坪十二万円程度ですね。そうすると、実際に三百六十万程度の工事が現実の工事なんです。小規模工事といわれている工事は、実際には、金額にしますと三百六十万程度の工事になるのです。そうすると、いま言われたように、金額的に資本金が三百万円以上の企業体にするといいますけれども、工事をする内容については、一人親方でも実際にはやる一件の工事としては三百六十万、あるいは建築単価がどんどんと上がってまいりますと四百万、五百万という実際の工事をする状況になるわけですね。ですから、一人親方がやる工事の量というものは、金額的に換算をしていくと相当大きな額になってくると私は思うのですけれども、一人親方の場合は一体どうなるのですか。
  29. 川島博

    川島(博)政府委員 建築士法によりますと、先生ただいま三十平米と言われたようでございますが、百平米、三十坪以下の木造建築物は建築士でなくてもできることになっておるわけでございます。建築士法は、その目的とするところが建築物の設計やあるいは工事監理等の適正化をはかりまして、建築物の質の向上に寄与させようという目的であるわけでございますが、どのような建築物について建築士が設計または工事監理を行なうことを義務づけるべきかということは、建築士に要求される知識あるいは技能と建築物の規模内容等の見合いで定められるわけでございます。したがいまして、三十坪以下の建物は正式の建築士が設計しないものでも建ててよろしいということと、建設業法で問題になっておりますただいまの問題とは、ちょっと次元の違う問題ではないかと私は思います。ただいまお話がございましたように、現行法では五十万円でございますからまあ小屋程度しか建たないわけでございますけれども、今後許可金、額を定めるにあたりましては、そういった小さなうちは許可がなくても建てられるというような方向で従来検討してまいりましたし、今後もそういう方向で検討いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  30. 松浦利尚

    松浦(利)委員 金額でいいますと、これは局長でけっこうですが、金額で、いま許可ということを言われましたけれども、先ほどのこれから資料として出していただく内容も含めて許可をもらおうとする者は、その工事を請け負うだけの財産的基礎または金銭的信用を有しなければならないわけですね。そうしなければ、政令できめられたある一定の金額以上の工事はできない、この法律はこうなっておるのです。ところが、先ほど言いましたように、これほど物価が著しく高まってきますと、建築材の値上がりといったものから当然建築単価というものが上がってくるのです。そうすると、いま言ったように、建築士法でいうところの三十坪程度の家を一人親方が建てようとしても、実際には、建築一式工事をやろうとすると三百六十万円くらいの金がかかる。そうした場合に、三百万以上ですから実際に許可の届けをしなければならない。かりに三百万円という政令がきまったら、三百万という財産的基礎または金銭的信用がありますといって許可をもらわなければならない。また、五百万円に許可基準が上がるかもしれません。どんどん政令で変わるかもしれません。そうした場合には、また五百万という金銭的信用がなければすることができないということになれば、先ほど言った資本規模をおおむね三百万円以上にするということは、結果的に、そういう財産的基礎または金銭的信用のない一人親方というのは切り捨てられてしまうということになるんじゃないですか。そうじゃないですか。その点はどうです。
  31. 川島博

    川島(博)政府委員 先ほど近代化基本計画でも御説明申し上げましたように、小規模工事を主として施工する企業を除き、一般企業は三百万以上の資本規模にすることを目標とするということでございます。したがいまして、小規模工事については、現在の実態から見まして三百万円というような過大な資本金を強制することはとても無理でございます。また、そういう資本金がなくても十分信用を持ってやっておられる方もおるわけでございますから、この近代化計画とは直接関係がない。  それから建築士法の問題でございますけれども、これはあくまで建築物の安全、衛生、そういった観点から、いかに小屋程度の粗末な建物でありましても、できればちゃんとした技術的に信用の置ける建築士の設計したものを義務づけることが理想でございます。しかしながら、建築士にお願いして設計をしてもらうということになりますと、請負代金のほかに設計料をまた三%とか五%とか払うことになるわけであります。そういった施主の負担の問題にもからんでくるわけでございますから、その辺のかね合いを、三十坪程度以下のものなら専門の建築士が設計した建物でなくてもまあまあ心配ないだろうということで、三十坪以下のものは建築士の設計しない建物でもよろしいということにしてあるわけであります。ですから、それはもっぱら技術的にその建物が生命、財産に安全であるかどうかということをどこに線を引くかという問題でございまして、今回の建設業法の問題は、要するに施主とそれを請け負う業者が、施主が思うどおりの建物を契約した金額でちゃんとやってくれるかどうかという問題でございますから、建築士の設計すべき建物の最低限度の問題とは若干問題の性質が違うんじゃないか、私はこういうふうに理解をしておるわけでございます。
  32. 松浦利尚

    松浦(利)委員 局長さん、それは本質的には違うのです。もう具体的に申し上げましょう。実際にいま一人親方に、局長、あなたの家を注文されますね。三十坪の家を建ててもらいたい。そうすると、坪単価は十二万円ですよ。三十坪だと建設一式工事で三百六十万、許可をもらわずにこの法律で建てることができますか。その点どうでしょう。
  33. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  適用除外金額を幾らにするかという問題は、先ほど来申し上げておりますように、まだきめておるわけでございません。一応中建審の小委員会で内々に御相談したら、金額は百万程度が適当であろうという線が出ているだけでございまして、これは何も正式にきまったものでも何でもございません。したがいまして、今後これはだんだんと煮詰めていく問題でございまして、先生のお話もございますから、そういった当委員会の御意見も十分拝聴しながらこれを固めていくということにいたしたいと考えております。
  34. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いまの発言をさらに掘り下げておきたいと思うのですが、建築士法によって、三十坪以下の家をつくる場合には、建築士に頼まなくても一人親方に図面を引いて建ててもらうことができる。そうすると、坪十二万円で三百六十万円の家をつくるということになりますと、実際にいま政令で定めようとする百万円というものでは、もう許可をもらわない限りは何も一人親方はできないということになりますね。同時に、物価がだんだん上がってきて建築単価が十二万から十三万、十五万と上がるわけですよ。軽微な一軒の家をつくるにしても、工事の単価が上がってくればそのたびに許可をもらわなければならない、こういうことにこの法律改正というのは結果的にはなってくるんじゃないですか。その点どうでしょう。簡明にひとつ答えてください、数字ですから。
  35. 川島博

    川島(博)政府委員 許可適用除外金額政令にゆだねましたゆえんも、やはり物価の値上がり等によりまして、金額を固定しておきますとだんだんと家が小さくなってくるわけでございますから実情に合わないということで、その経済情勢に見合わせてそのときどきの金額をきめるというたてまえで政令にゆだねられておるわけでございます。御案内のように当初、法律制定当時は三十万円ということでございましたが、昭和三十一年にその後の物価の上昇を勘案いたしまして五十万円に値上げをされておるわけでございます。自来十数年たっておるわけでございますから、そういった面から申しますと、ある程度物価にスライドするだけは、やはり上げるのが少なくとも必要じゃなかろうかというふうに考えておりますが、先生も御案内と思いますけれども、実は昭和三十六年に非常に日本の景気がよくなって物価が上がった時期がございます。このときにも実は少し値上げをすべきではないかという意見が出まして、この中央建設業審議会にもおはかりをしたことがございますけれども、この適用除外金額を幾らにきめるかということは、要するに小規模業者登録あるいは許可による負担をどの程度軽減してやるかという問題と、一方、発注者たる一般庶民が、一世一代の投資であります自分の家を建てるという場合に、悪い業者にひっかかってたいへんな痛い目にあうということを防がなければいかぬ、この両方の要請からこの額は適切にきめられるべきである。三十六年当時は、そういった発注者の保護ということから考えれば、その後の物価の値上がりはあるけれどもこの金額は上げるべきでないということで据え置きになって、今日に至っているわけでございます。しかしながら、すでに三十一年の五十万円ではどう計算してもやはり倍程度くらいにはしないと物価の趨勢に合いませんので、少なくともその程度は上げるべきではないかというのが、中建審の中間的な皆さんの御意見だったわけでございます。   〔天野(光)委員長代理退席、委員長着席〕
  36. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いまの問題でもう少し説明を聞いておきたいのですが、一人親方の場合、私が仕事を頼むにしても、少なくとも東京の一人親方なり大工さんを呼んできて頼むつもりはありません。やはり自分の住んでおる地域の大工さんなどに頼むのですよ。だから、具体的に言うならば、その地域におられる一人親方その他の大工さんが、不正工事をする、不正をやるというようなことはないと私は思うのですね。しかも自分の地域に住んでおって自分の家をつくるときには、いろいろ建築士あるいはその他の何々組というものに頼んでいくよりも、むしろ直接親しい大工さんに頼んだほうがやりやすい。こうした場合に、その大工さんは百万円では何の工事もできないわけですね、今日の物価高では。そうなれば、その大工さんは必ず許可をもらわなければならないということになりますが、その点はどうでしょう。
  37. 川島博

    川島(博)政府委員 いずれにいたしましても、政令適用除外金額がきまりますれば、それを上回る工事を請け負う建設業者については、許可を受けなければできないことになるわけでございます。
  38. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いまの答弁をお聞きいたしておりますと、私はたいへん重要な問題があると思うのです。  これは大臣責任ある答弁をお願いしたいのですが、いままでわれわれがなじんできた一人親方なりそういう大工さん、俗に職人さんと呼ばれる皆さん方が今日までいなか等では家をつくってこられた。ところが、こう物価高になってくると、一つの家をつくろうにも金額がこえてしまう。そうなれば、その大工さんは許可をもらわなければならない。こういうことになってまいりますと、実際問題として許可をもらわない人は一切建設はできない。金額で表示されてくると、許可をもらわない人は三十坪の家もつくることはできない、こういう状態に結果的に追い込まれてしまうようになるのです。ですから、私はこの際、金額というもので表示をするのではなくて、とどまるところのないインフレですから、金額がどんどん上昇していくということになれば、建築士法にいうように法律的に制限を行ない、三十坪以下の建築物、こういったものがあるわけでありますから、二級建築士が行なう工事については許可から除外をする、こういうふうな考え方でこの金額というものを考えることはできないかどうか、その点について大臣のお答えをいただきたいと思います。
  39. 根本龍太郎

    根本国務大臣 先ほども御説明申し上げましたように、建設業法等は、業者のための一つの保障のための法律であると同時に、一般国民のための法律である。現在の情勢から見ますれば、御指摘のように、年々一坪当たりの単価が高くなっているということも事実です。したがって、金額法律規定しますとこれは非常にむずかしい問題になりまするから、ただいま局長から説明いたさせたように、これはスライドして基準を変えていかなければいかぬ、そのために政令が出ておるということでございます。一人親方、一人親方と言われますけれども、現在のところは、みんな一人親方は孤立してはおりません。全部これは何らかの形で組合をつくっております。そこで、一人親方を一人親方として孤立させて仕事をさせるということにウエートを置かずに、これらの一人親方が、でき得れば企業組合あるいはそれらの人々が合体して資本装備と信用技術者もかかえて、相当程度の仕事ができるというふうに私は指導すべきだと思うのです。政治家の方々もやはりそこまでやってもらわぬと、このようにずっと機械装備が出ていかないと、とても昔のように、一人親方がわずかの道具をもって一人でやるということはできない時代になってきている。そういう点をも考えていただきたいと思います。そういう観点から、今回の業法は、一人親方はできるだけ企業体制に合うようにしていきたいというところに相当の重点を置いている。そういうふうな状況で、そういうことであれば、なるほどそれは資本装備を多くしなければならない。そしてでき得れば、それらの人々がより高度の仕事ができるようにしてもらわなければならない。大工が大工として通るというところに問題がある。ただ、いま御指摘になりました金額でこれを制限つけるのがいいか、あるいは建坪面積、建築量で制限すべきか、これはやはり一つの検討すべき点であると思います。これについては、ただいまそれを直ちにやるということを言うほどの確信を私は持っておりませんので、その点については、せっかく建築審議会ですか、そちらのほうの答申を得てやっていることですから、そちらのほうの意見を聞いて、いずれ政令で定めるときにあたりましては、十分にそうした点をも考慮して措置したいと考えておる次第でございます。
  40. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いまの問題については、大臣も前向きにこの委員会審議を通じてお聞き取りをいただいて、いま申し上げた点が可能かどうか、そういう点についてはぜひ御検討をいただきたいというふうに思います。  それで、いま申し上げましたように、金額許可基準をきめるということになってまいりますと、現在の建築工事というのが金額的に非常に高くなってきているために、極端な言い方をすると、すべての人たち許可を受けなければ工事はできないという状態に結果的になってしまうと思うのです。それはもう局長答弁から見ても間違いない事実だと思うのです。そうなってまいりますと、先ほど言いましたように、財産的基礎または金銭的信用を有しなければ許可基準の対象にならない。それでは許可をもらう場合に、いまの工事をやる一人親方的なそういった人たちが、財産的基礎をつくるためにはどういう方法があるのか。三百万程度の財産的基礎があると判断するような大工さんというのはほとんどおられないわけです。金額的にいって、そういう工事をするために三十坪の家で三百六十万円もかかるわけですから、その工事をしようとすると財産的基礎が云々される。そうすると、その財産的基礎は、本人自身が現金を持っておらなければ、どこからか金を借りるという社会的な金銭的信用を有しておらなければ許可をもらえないということになれば、実際に一人親方というものは許可の対象からはずされ、切り捨てられるということになるじゃありませんか。この点は、局長どうでしょうか。
  41. 川島博

    川島(博)政府委員 御承知のように、現行法によりますと、一式工事であれ職別工事であれ、五十万円以上の工事であれば登録を受けなければ営業できないことになっております。したがいまして、おそらく現在五十万円以下の工事というのは少ないでありましょうから、ほとんどの方が五十万円以上の工事をやっておると思います。したがいまして、当然に登録を受けて営業をやっておられると思いますが、現在この登録を受けて平穏にこの営業をやっておられる方につきましては、ただいまお配り申し上げました許可基準にございますように、過去三年間登録または許可を受けて継続して営業した実績を有する者につきましては、これは必要な財産的基礎が十分あるという前提でこの許可をするというたてまえになっておりますし、この点は、昨年廃案になりました法律案を今回政府は修正いたしまして、附則に七項を加えまして、従来の登録または許可を受けて営業している者については、許可にあたって特別の配慮をするという条項を加えております。したがいまして、従来平穏に営業をやっておられる方についてはこの際許可をするということが法律上も明らかになっておりますので、その点の御心配は御無用かと思います。   〔発言する者あり〕
  42. 金丸信

    金丸委員長 静粛に願います。
  43. 松浦利尚

    松浦(利)委員 その答弁はそのとおりでけっこうですが、実情に合わない点は、またほかの委員から具体的に議論をしてもらいます。私は具体的な事例を知っておりますけれども、いまここでそのことを取り上げようとするのではないのでありますが、そういう登録がえをするときはどうなんですか。登録がえをするときは、財産的基礎または金銭的信用がなければ工事許可基準からはずされるのではありませんか。
  44. 川島博

    川島(博)政府委員 お答えいたします。  許可の更新の場合でも全く同じ扱いでございます。
  45. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今度のこの法律が公布され、施行されて、三カ年間の経験を有した者は許可される、ところが、今度は再登録、再許可の場合には、財産的基礎または金銭的信用がなくても一ぺん許可をもらいさえすれば永久に許可はおりますよ、こういうふうに理解していいですか。
  46. 川島博

    川島(博)政府委員 そのとおりでございます。
  47. 松浦利尚

    松浦(利)委員 そのとおりだそうですから、続いて厚生省にお尋ねをいたしますけれども、実際にここに書いてありますように、財産的基礎または金銭的信用を有するということで、ある程度金額許可条件の対象となっておりますが、そういう人に対してそれは企業主であるというような認定をして、従来の擬制適用しておる日雇い健保等からはずしてしまうというようなことはございませんか。
  48. 正田泰央

    ○正田説明員 先生の御質問でございますが、私どものほうで日雇い健康保険につきまして、大工、左官等の技能労働者のうちで、一人親方について擬制適用を行なっておるわけでございます。一人親方につきまして、被保険者として取り扱うかどうかという問題につきましては、あくまで日雇い健保から見まして日雇い労働者としての実態があるかどうかということで判断しておりますので、建設業法登録あるいは許可、これは財産的基礎とか、先生いまおっしゃいました問題がございますが、そういうことを受けているということだけで、被保険者資格の除外をするということは行なっておりません。
  49. 松浦利尚

    松浦(利)委員 正田健康保険課長に重ねてお尋ねいたしますが、建設の場合ですね、事業主としての実態あるいは日雇い労働者としての実態区分というのは、どのように区分をしておられるのですか。その点どうでしょうか。
  50. 正田泰央

    ○正田説明員 日雇い健康保険法の制度で擬制適用を行なっておるわけでございますが、あくまで一人親方として建設業に従事している技能労働者ということで考えておりますので、その一人親方の就業の実態と申しますか、それが十分に日雇い健康保険法の本来の日雇い労働者のような就業形態がありませんでも、擬制適用の場合には、就業形態から見て一人親方として従事しているという場合には適用いたしております。
  51. 松浦利尚

    松浦(利)委員 さらに健康保険課長お尋ねをいたしますが、実はこれは私が直接従事しておる人から聞いたのですけれども、現在は登録になっておるわけです。ところが、その登録についても、申請する段階で記載内容というのがあるのです。ところが、出先の社会保険事務所のほうでその記載事項をチェックしまして、そして、あなたは擬制適用ではありません、だから、あなたは政府管掌保険に入りなさい、政府管掌保険でなければ国民健康保険に入りなさい、こういうふうにきびしく、現在の登録の中ですら擬制適用をはずそうとする動きが出てきておるのです。具体的に県の名前を申し上げますと、島根県、山口県、香川県、青森県等がそうです。そういう問題について、いま擬制適用をなさるということですけれども、さらに、登録ですらそういうきびしいチェックをしておきながら、今度は、許可を受けた者はある程度の政令できめられる財産的基礎、あるいはまた金銭的な信用を有する人が登録許可をもらうわけでありますから、ますます許可内容をチェックをして擬制適用からはずしてしまう、こういうことになることを非常におそれるわけでありますが、そういう点がないということを明確にお答えすることができますか。
  52. 正田泰央

    ○正田説明員 ただいまのお尋ねの点でございますが、現実にそういう建設業登録の中身でチェックをしているというお話でございますが、本省といたしましてはそういう指導をいたしておりません。ただ、現場で、いま先生おっしゃったようなケースで建設業登録の記載事項——登録簿でございますか、そういったものの記載事項で、あるいは擬制適用についての適正化のための材料に使っているということもあろうかと思いますが、かりにあるといたしますれば、私のほうでそういったものについて、先ほど申し上げましたように擬制適用の実態があるにもかかわらず排除したのか、あるいは擬制適用の実態がないということで排除したのか、その辺が明確でございませんが、それは調べたいと思っております。  それから二番目におっしゃいました許可につきましては、登録許可の中身が変わるという話も聞いておりますが、擬制適用の取り扱いについては、その変更については関係がない、そういうふうに考えております。
  53. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もう一ぺん健康保険課長お尋ねしておきますが、いまかりに政令財産的基礎が三百万、こういうふうにきめられた場合に、あるいは四百万、五百万、こういうふうにかりに政令で定められたとした場合に、そういう財産的基礎を持っていなければ許可条件にならぬわけですから、そういう親方はいままでどおりやはり擬制適用を受ける、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  54. 正田泰央

    ○正田説明員 擬制適用の適用につきましては、財産的基礎がどれだけあるかということについては関係がございません。
  55. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは続いて厚生省の中野保険課長お尋ねいたしますが、私は、擬制適用というのは、これは確かに前向きの形ではありますけれども、でき得るならばやはり建設労働者に対して法制化する、法制適用すべきだ、こういうふうに考えるわけでありますけれども、こうした建設労働者に対する健保の法制化あるいは健保法の適用という、こういったものについて前向きにお考えになる意思があるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  56. 中野徹雄

    ○中野説明員 お答え申し上げます。  実は現在行なわれております擬制適用は、日雇い健康保険法の施行当初からあるわけでありますけれども、実はその法律上の根拠を持っておらないという点におきまして問題が一つあるわけでございます。  それからもう一つの点といたしまして、日雇い健保が、現在改正法案を社会労働委員会に付託されておるわけでありますが、財政状況が非常に悪化いたしております。実は、その法制化の問題につきまして、先生の御発言のようにこれを法制化すべきであるという御要望、御意見も一方であり、また、その日雇い健保の財政状況からいたしまして、その存続がどうか、いかがなものかという意見も一方にはあるわけでありますが、これには経緯がございまして、昨年社会保険審議会で、現国会に提出いたしておりますところの日雇い健康保険法の改正法案につきまして最終的に御答申をいただきました際に質疑がございまして、この質疑について厚生大臣答弁をいたしております。その答弁の趣旨は、現在出しておりますところの法案が成立し、これが円滑に実施される暁においては、この擬制適用制度を将来ともに維持させていくつもりであるという趣旨の発言をいたしておるわけでございます。この擬制適用を法制化いたした場合には、これは現在、各種の保険制度の適用範囲の調整が問題になりますので、あるいは御案内かとも存じますが、厚生省といたしましては、現在、すべての各種保険を通じまして、たとえば給付率のアンバランスの問題だとか、財政のアンバランスの問題等を踏まえて抜本改正を考えておるところでございます。したがいまして、この擬制適用者についての最終的な保険料の取り扱い、法制上の取り扱いにつきましては、厚生省といたしましてはその抜本改正の一還として検討していく、こういうふうな考え方を持っておるわけでございます。
  57. 松浦利尚

    松浦(利)委員 続いて大蔵省にお尋ねをしたいのでありますけれども、御承知のように、職人さんたちの所得の把握というのは非常にむずかしいということは私たちもよく理解をするわけでございますけれども、御承知のように、今度の大蔵省の改正によりますと、百八十万円で最高を押えて、百八十万円以下の場合には一定比率を給与所得、残部を事業所得というふうに、こういうふうに配分、案分をしておられるわけですけれども、これが財産的基礎中心として許可をもらうという場合に、その許可が、極端な言い方をしますと、許可をもらったことによって、これは一つ事業であるという判断から、従来のような税制のあり方を改めて、推計課税といいますか、おまえのところはこれだけの資本があって許可をもらっているのだから、おまえのところにはこれだけの工事量があったはずだという推計課税を行なうようにならないのかどうか、従来どおりの判断で対処されるというお考えに立っておるのかどうか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  58. 山内宏

    ○山内説明員 ただいま御質問になりましたのは、国税庁におきまして出しております通達のことに関連してであろうと思います。御承知のとおり、大工、左官等につきましては、これはたてまえといたしましては、請負契約に基づくものは事業所得、それから雇用契約に基づくものは給与所得ということで、区分をして所得を計算いたしまして、その合計でもって課税するというたてまえになっております。御承知のとおり申告納税制度でございますので、たてまえといたしましては、そういうことで個々に納税者の方が計算して申告をするということであるわけでありますけれども、非常に規模の小さい業者の場合には、一々それがいずれであるかということの判定が非常にむずかしいという関係もございまして、ただいまお話しのように、百八十万円以下の年収額のものにつきましては、一定の率でもって——これはもちろん内容が明瞭でないという前提のもとでございますけれども、雇用によるものか請負によるものかの内容の明確でないものにつきましては、百八十万円以下のものにつきまして、その年収額の階層によって一定の部分を給与所得と推定をし、他の部分事業所得と推定をするということをいたしております。この点につきましては、いまお話しの点、資産基準がどうなるか、あるいは許可基準がどうなるかというふうなこととは関係なしに、事業の実態によりまして従来とも課税をしてまいるつもりでございます。
  59. 松浦利尚

    松浦(利)委員 百八十万円で押えておるわけでありますけれども、いまちょっと調べてもらったんですが、年収百八十万以下の場合、百八十万で押えた場合にその一〇%が給与所得部分、残りが事業所得、こういうふうに比率がなっておると思うのです。これはここに来ておる資料ですが、その場合に、給与所得が一〇%という場合に、百八十万ですから十八万円が年収給与部分、こういうことになるんです。ところが、いま大工一人当たりの手間賃は大体三千円、こういわれておりますね。そうすると、年間大工としては六十日しか稼働しておらない、こういうきわめて矛盾した形が出てくるわけなんですね。この年収の給与部分事業部分との割り振りがちょっと科学的じゃないと思うのですが、その点どういうふうにお考えになりますか。
  60. 山内宏

    ○山内説明員 これは先ほども申し上げましたように、事業の実態が、人に雇われて、つまり雇用契約でやっておるのか、それとも自分が独立をいたしまして契約の相手方と請負契約を結んでやっておるのかということが、具体的に個々について明瞭にならないという場合には、そういうふうな扱いをしてもよろしいという推定の規定でございまして、したがいまして、いまおっしゃいましたように、年間を通じてある親方のもとに雇用契約によって雇われておるということが明瞭なものは、当然その全額を給与所得として課税すべきものであると思います。
  61. 松浦利尚

    松浦(利)委員 さらに突っ込んでお尋ねをしておきますが、御承知のように、大工の請負というのは形態が非常に複雑でございまして、発注者が全部材料を提供して手間賃だけで建てる、たとえばくぎを買ってきてくれといって施主が金をやって、大工さんがくぎを買ってくるというような全くの手間労働だけをやるという場合も、建築の場合非常に多いのです。その場合に、いま大工賃が技術者不足のために非常に高額になっております。そうすると、年収がその手間賃労働によって実際に百八十万以上になる場合もあるのです。そういう場合は、あくまでも百八十万以上だからこれは事業税である、こういうふうに判断をされて課税対象になさるのかどうか、その点をひとつお聞かせいただきたい。
  62. 山内宏

    ○山内説明員 再々申し上げておりますが、一人の大工さんなら大工さんが、一年の間に、ある日はたなを人から頼まれて、材料を買って、その材料を持ってたなをつりにいく。それから次の日にはある親方のもとに雇用されて働くといったようなことが継続されておりまして、したがって、年間のうちに何日どういう形で働いたかということが明瞭でない場合に限って、先ほどお話のありましたように、百八十万の収入金額の範囲内の人に限ってはそういう推定の方法で課税をしてもよろしいということを税務署に対して指示しておるものでございまして、いまお話しのような百八十万円以上の人につきましては、個々にその業務の内容を調べて、給与所得の部分については給与所得、それから先ほどおっしゃったように自分で材料を買って、それをもって請負的に仕事をやっておる場合は事業所得というふうに、個別に内容を判定した上で課税をするということになります。
  63. 松浦利尚

    松浦(利)委員 もう一つお尋ねをしておきますが、所得ということばから年収ということばに指導が国税庁通達で変わった理由は、どういう理由で所得というのが年収というふうに変わったのですか、その点を一ぺん明らかにしていただけませんか。
  64. 山内宏

    ○山内説明員 現在の扱いが年収額百八十万円以下、こういうふうな規定をいたしております。通達は、これは当初から年収額でもって判定をいたすような通達でございます。所得の基準でもって判定をいたす通達を出してはございません。
  65. 松浦利尚

    松浦(利)委員 さらに、これは大蔵省の管轄——これは自治省だろうと思うのですが、自治省の人の出席がないので、知っておられればひとつお答えいただきたいのです。  事業税の減税措置というものがとられておるですね。現に東京、京都あたりでは、事業税の減税措置というのがとられておるのです。減税措置の場合、大かたの場合は台風あるいはその他の災害、こういった場合に減税措置がとられておるのですが、この減税措置の扱いについて、もし知っておられたらお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  66. 山内宏

    ○山内説明員 当方ではわかりません。
  67. 松浦利尚

    松浦(利)委員 自治省でないとわかりませんね。——それじゃ、この質問はあとでけっこうです。  それでは、もう時間もだんだん経過をしてまいりましたから、最後に建設大臣お尋ねをしておきたいと思います。  この業法改正をいまずっと議論を通じて見てまいりますと、登録許可になったということで、相当大きな業界の再編成が行なわれるし、また、従来一人親方といわれておった大工さんなりあるいはそうした職人さんたちの環境というものにも、大きな変化を与えてくるというふうに思うわけです。ところが、こうした皆さん方に対する助成措置、こうした皆さん方に対する金融措置、こうしたものについてはきわめて明確性を欠いておる反面、許可制にすることによって、従来の大企業あるいは資本力の豊かな企業については、この許可制によって保護されるという結果が生まれてくることは事実だと思うのです。また大臣が言われるように、いまいろいろと違反建築その他の問題があり、不正行為があるというようなことから、ある程度業界の粛正を求めなければならぬという発注者としての国民の立場というものもあると思うのですね。やはり一つ法律というものができ上がる場合に特に警戒しなければならないのは、いままで自分の仕事として行なっておった行為が制限を受ける、あるいは一つ法律によって切り捨てられる、こういったものに対しては、やはりこの法律一つの陰の面としてこの法律施行と同時に改めていく、そういう人たちを保護していくという面も、私はある意味で強調されなければならぬと思うのです。ところが、そういうものについては非常に明確性を欠いておると思うわけでありますから、この際大臣から、どういう扱いをしてどういうふうにこういった皆さん方に対して保護政策をとろうとするのか、こういう面についてひとつ明らかにして伺っておきたいと思います。
  68. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘の面もございますので、でき得るだけ一人親方が、この法改正に基づいて、よりよく企業者として伸びていく機会を与えることが必要だと思います。そのためには一人親方が一人親方で孤立することなく、でき得れば企業協同組合のようなものをつくるなり、あるいはまた新たに一つの会社をつくるなり、そうして内容を整備して技術者も充実し、そうしてわれわれのほうで公的工事を発注できるような受け入れ体制もつくっていただく。これに対しては、地方自治体もできるだけそうした地元の業者を育成するように指導をいたしたいと思います。  なおまた、そういうことができますれば、御承知のように、現在の段階では国民金融公庫程度がいまの対象だと思いますが、そうした内容ができてきますれば、中小企業金融公庫とこれらの資金関係のほうもめんどうを見てくれる。ある場合においては今度は、地方自治体等では機械貸与というようないろいろな制度を持っておるのであります。そういうものを貸し与えて、一人親方では一人前の土木工事機材も持っていないのが通例でございますので、そうした内容のものについては機材の貸与というようなものもいたしまして、私は一人親方というものが永久にそのままで存在するということが必ずしも幸福とは思わない。これはちょうど社会党の皆さん方が農業協同組合を別個に考えて、いわゆる協業体制あるいはいろいろの農業の営農団体をつくっていって零細農業を助成するというような同じ意味において、私はこうした一人親方を組織化していくということの配慮もほしいと思うのでございます。現在のように、あらゆるものが技術並びに組織化されている今日でございますから、私はそういう方向に指導していき、その経過において脱落することがないようにしてやるということが、私は建設行政を取扱うものの心得だと考えている次第でございます。
  69. 松浦利尚

    松浦(利)委員 この際もう一つ明確にしておきたいのですが、請負人がたまたま建設資材購入代金などを払わない、そういったことが発注者に迷惑をかけるという場合もあるということなんですね。これは不良業者特定建設業名が指定して下請にしたためにそういう例が出てくるケースが多いのです。そのことが全体の大工さんたち、まじめな一人親方をしておる大工さんたちまでみんなけしからぬという、そういうことになってしまっておるのですよ。正しいものが批判を受けて——実際に特定建設業者が指定した下請が悪いことをしておるのが、全部一般に波及してきておるという経過が実はあるのです。だとするなら、私は、そういった場合には特定建設業者がその代金を払いなさいという勧告制度というものを、将来の方向として明確にすべきだと思うのですが、その点はどうですか。
  70. 川島博

    川島(博)政府委員 御指摘のような事例が間々あることは事実でございます。このために、今回の改正案あるいは現行法にもございますけれども、たとえば一括下請の禁止という規定現行法にもございますし、今回は不当に安い下請代金を定めることを禁止しておりますし、また、下請代金の支払いについても遅延しないように禁止規定を挿入いたしております。さらに、この下請の労務者に対する賃金の不払いという問題に対しましては、元請に立てかえ払いをさせるというような勧告制度も挿入しておるわけであります。いろいろ下請業者が第三者に損害を与えるという場合もあるわけでございます。これも実際の契約そのものは、確かに下請とそれからそういう第三者との契約に基づくものが多いわけでございますから、また、法律上は元請に面接責任はないという場合が多いと思いますけれども、しかし、場合によりましては元請がこの下請代金を握ったり、あるいは代金の支払いを遅延したというようなことのために、やむを得ず下請のお金が払えなくなったというような事例もあるかと思います。これらの点につきましては、法律上は規定しておりませんけれども、事例に応じまして今後行政指導を強化してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  71. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いま局長答弁なさったような勧告制度を法制化するというお考えは、大臣におありになりませんか。
  72. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  政府原案にはそういう点は入れてございませんけれども、もし当委員会の御要望によってそういう御修正をなさるということであれば、これは運用については万全を期したいというふうに考えておる次第であります。
  73. 松浦利尚

    松浦(利)委員 最後になりましたが、労働省のほうにお尋ねをいたします。  御承知のように、労災事故、特に死亡事故が最近の建築業界に非常に多いわけですけれども、これが複雑な雇用形態が把握できないために、労災補償の適用を受けないというケースが間々、というよりもたびたび行なわれておるわけです。こういう問題について、労働省のほうは的確な指導をしていただいておるものと私は理解いたしますが、こういう不明確な雇用関係にある場合の労災事故等について、補償問題について明確な指導ができるかどうか、こういう点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  74. 松尾弘一

    ○松尾説明員 ただいま先生指摘のように、実態的になかなか、それが労働者であるかあるいは事業主であるか、あるいはまた全く一般の人であるかというようなことで、現実に労災補償の対象にする場合に業務上外の議論があるわけであります。これにつきましては、少ない人員でございますが、綿密な調査をして、具体的な把握をして補償の万全を期するように努力いたしたいと思います。
  75. 松浦利尚

    松浦(利)委員 これからますます建築工事が進む反面、そういった労災事故がふえてくると思いますので、いま御答弁になりました以上に積極的に補償の対象になるように調査をしていただきたい、こういうふうに要望を申し上げておきたいと思います。  それでは、あと質問者がおられますので、私の時間も来ましたから、きょうの質問を終わらせていただきます。
  76. 金丸信

    金丸委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時十分休憩      ————◇—————    午後二時十八分開議
  77. 金丸信

    金丸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小川新一郎君。
  78. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 建設業法に入る前に、大臣に日本の経済見通しというものをお聞きしておいて、日本の建設業界というものが、現在のわれわれの一番当面しておる物価問題にも相当影響のあることを見通しながら、私はお尋ねしたいと思うのでございます。  最初にお断りしておきますが、業界についてはまだ私不勉強でよくわかっておりませんし、また、この点につきましてはいろいろな面において先輩諸兄の御忠告など受けながら今日までやってまいりましたので、多々至らないところはひとつお笑いなく御答弁をいただきたい、こう思っております。  昨年九月以来の日銀の金融引き締め政策にもかかわらず、物価は依然として上昇しておりまして、佐藤内閣は五%内外に物価を押えていくといつも言っておりますが、しかし、九月以降六・四%になるであろうということが見込まれております。こういった中で、今回問題になっておりますこの建設業法というものも多分に影響が出てくるのではないか。中小零細企業の倒産、また金融引き締めによるところの金のやりくりその他が、業界に大きな影響を与えてくると思うのであります。また、昭和六十年には日本の全国の都市の人口が八〇%になるといわれておる。こういう中において、いま建設省では市街化区域と市街化調整区域の線引き作業を行なっておりますし、住宅行政、建設行政、こういったものはこれからの七〇年代激動の年の非常に大きな課題となっておりますが、そういうふうに金融引き締め政策、またインフレといわれているような中において、今後どのような姿勢というものを示していくのか。この点、最高責任を持っておられます建設大臣としては、どのような今後の経済見通しの中に立ってこれらの建設業界の正しい育成のあり方というものの見通しを持っておられるのか、その点についてまずお答えをいただきたいと思います。
  79. 根本龍太郎

    根本国務大臣 非常に大きな問題でございまして、私が答弁するにはいささか大き過ぎるかもしれませんが、私自身が考えておることを申し上げます。  実は本日の閣議の際においても問題になりましたのは、春闘相場が従前にない非常な賃金アップでございました。昭和四十一年が一一%の平均の賃上げをしたということで非常に大きな問題でしたが、きょうの労働大臣、経済企画庁長官、それに大蔵大臣等のいろいろの発言を勘案してみますと、平均すれば民間企業が一七・九%ぐらいになるのではないか、こういわれております。そうしますと、もうはるかに生産性の向上を上回っております。これが定着してしまいますと、実に一番おそれておるのは中小企業、これに非常に大きなはね返りが来る。このままで行きますれば、いろいろの日本の企業が今日まで成長はしておるけれども、経理内容と申しますか、利潤率がこのような賃金アップのために相当食われてしまうじゃないかという心配がございます。しかも、これがほとんど一億サラリーマン化といわれるような現状で、こういうふうな賃上げが出てきますれば、必然的にこれが有効購買力として物価を押し上げる機能が出てくる、明年になりますれば、今度は名企業とも採算割れになるではないかという心配をしておるわけでございます。  本日の閣議のあとに引き続いて実は経済閣僚懇談会もございました。そのときに、現在の時点における経済の見通しの問題が出てきましたが、その状況下においても、現在欧米諸国において生産性を上回る賃上げ、これに基づくところの非常な景気の後退が出てきたことは御承知のとおりでございます。現在もアメリカは、この約二カ月ばかりは生産性そのものがあれほど上がっているはずなのにかかわらず、景気の後退を来たしている。こういうような状況で、インフレ下にありながら景気の後退を来たしておるところに重大な関心を持たれてきておる状況でございます。こういうようなことを考えますれば、単なる賃金の上昇だけにこだわっておりますというと、企業自身が、将来において相当の大きな打撃を受けるじゃないかということが心配されるというふうに見られておるのでございます。  こういう状況下において、いま御指摘になりました建設業がどうなるかということでございまするが、これは先ほども御指摘がございましたように、全体としては日本の経済の一つの変動期にありまするので、相当の工事量が伸びると見られております。まず第一に、当委員会でいろいろ御審議を願い、また今後もいろいろ御協力と御助言を得たいと思っておりますところの道路特別会計も大幅に伸びています。それから鉄道も、新幹線網をつくらなければならないという情勢にあります。こういう状況を踏まえて、今度は治水、利水に相当思い切って社会資本の投資もしなければこの社会の激変にこたえられない。それに都市の改造、こういうふうな公的な部面におけるところの建設事業に対する投資も大幅にふえていかなければならない。それに住宅産業でも、相当のこれが整備をはかっていかなければならない。都市生活における上水道、下水道も飛躍的にやらなければならない。これと民間の高層化ということもどんどん進んでいっているということで、そのために、実は建設業の将来においては相当程度の発注が予測されますけれども、今度はそれを受けて立つ業界のほうではどうかというと、まず一番問題になっておるのは建設労務者の不足です。どうしてもこれは機械化しなければならぬ。機械化とそれからいわゆる工業化を進めなければ、こうしたいろいろの要望事項が消化できないであろう、こういうふうに考えられておるのでございます。  そういう観点から、実は現在御審議いただいておる建設業法の一部改正なるものも、そうした状態を踏まえて、やはりこれは責任体制を確立すると同時に、内容も充実した建設業が誕生しなければこうしたことが、実は消化し切れないだろう、いまのままで、しかも一面においては建設事業そのものも資本自由化が出てきますと、やはりコストの安くつく、しかもわりあいにスピーディーに、しかも責任体制のとれておる海外からの建設業の進出をまざまざと——将来における日本の大きな建設業界の建設需要がじゅうりんされるのではないか、こういう不安感もあるのでございます。そういうような意味におきまして、実は現在の経済は高賃金でこうなっておるということは、これが即、実は建設労務に一番響いていきます。御承知のように、現在大工、左官等の方々の賃金は、普通のサラリーマンをはるかにこえてしまっておる。ところが、それにもかかわらず実はなり手が少ない。これがどうも現在の若い人たち一般的な心情でございます。そういう観点からして、どうしても建設事業そのものの近代化、合理化をはかる必要がある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  80. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 そこで、いろいろと問題が出てくるわけなんですが、建設業といっても、これは大臣からお聞きしたとおり実に幅が広く、なおかつ層が非常に厚いわけですね。それを一人大工と鹿島のような何百億というような資本のある大会社と一緒なものの見方の中に七〇年代の建設行政というものを見通していくところに、この許可問題という問題が、いろいろな面から抵抗が出てくると思うのですが、この法律というものは国民の側にも立たなければならぬ、またいま言ったような業界の側にも立たなければならぬ。ところがその業界というのは、いま言ったとおり広範囲、複雑多岐にわたっているということになれば、この改正法案というものはもっときめこまかく審議、論議され、なおかつ要求というものを十二分に参酌したものでなければならないと私は思います。  そこで、まず大きな立場からもう一ぺんお尋ねいたしますと、新全国総合開発計画による昭和四十年から六十年の二十年間のわが国の累積建設投資額というものは、これは約二百七十から三百三十兆円と予想されております。このような巨額の建設事業というものは、現在のような賃金の上昇、また資材の上昇、物価高、コストインフレ、技能者の獲得の不足、こういうものが満たされない中で新全国総合開発計画の中における日本のプロジェクトというものは完成できるのかどうか、そういう大所高所に立ってどうしても業界にメスを入れなければならない。だから、小さいものの犠牲によってどうしても新全国総合開発計画の日本の建設戦略体制というものを立てていくんだという大視点に立ってこの問題を論ずるのかどうか。そこに一部の弱小零細、一人親方というような方方から不信感と疑念というものがわいてくる。そういう点も踏まえた上で、一体この新全国総合開発計画の達成というものができるかどうかということをまず大臣にお聞きしたい。
  81. 根本龍太郎

    根本国務大臣 非常に大事な御発言でございます。先ほど申し上げましたように、今後の日本の長期展望からすれば、公共事業に対する政府の財政投資だけでもたいへんなものです。それと今度は相踏まえまして民間の投資がなされていく。それが、ほとんど大部分建設業関係するところの業である。そういう状況からして、いま御指摘のありましたように、建設業法そのものもそれに対応するものでなければならない。そうでなければ、これだけのたいへんな市場を、資本の自由化をされた場合には、海外の資本がもう縦横にこれを利用してやっていくという結果になります。そういうことを踏まえて、それらのせっかくの日本のエネルギーを外国に吸収されるような愚かなことをすべきじゃないということも一つあると同時に、しかし、一面においては、現在相当の数のいわゆる零細企業と申しますか、その中に特に端的にいわれます一人親方といわれる人々を、このまま、現状のままにして保存するということは困難でございます。そこで、これらの人々が、こうした未来に非常に大きな市場がある、そこにりっぱな近代的な建設業者として生き得る道をつくってやるのが、私は政治行政の任務であると思うのです。ところが、ややもすればこの現状だけにこういう人が困るじゃないか、だからこのままでいったら、結局は同情の結果これを抹殺するという結果になる、そこを配慮していただきたいと考えているのです。そのために、ここに十分なる経過措置をつくっているわけでございます。経過措置をつくっておいて、現状における不利な条件にならないようにしておいて、不利にならないようにしておっただけでもこれは時勢に流されてしまいますから、その間において企業合同なりあるいは共同体をつくって、そして新たなる近代的な建設業に進歩というか拡大していく道をつくってやる。これがそれらの業者を保護するゆえんであり、また同時に、日本の未来のいろいろの公共的な建設業を消化する力ともなる、こういうふうに考えておる次第でございます。
  82. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 そこで、私は憲法の精神というものを大臣お尋ねしたいのですけれども、個人営業の自由というものは憲法上保障された重要な国民の権利であります。   〔委員長退席、正示委員長代理着席〕 ある一定の資格というものが備わらないために、その人が行ないたいという職業選択の自由、また営業の自由というものが、よほどの公益上の要請がない限り、軽々しくこれに制限を加えるということが許されるということは、私は民主主義の逆行であるやに感じております。しかし、これも公共優先という憲法第二十五条の精神、また私有財産権の問題で、私は土地問題において建設大臣並びに総理大臣に土地の理念について予算委員会で十分審議をいたしましたが、その際、憲法第二十五条の精神というものが優先であるということを総理大臣はおっしゃいました。そういった個人営業の自由、職業の選択の自由、こういうものに対して許可を与える、登録から許可というワンクッションもツークッションもきびしくなっていくことに対しては私は逆行の姿ではないかと思うのでありますが、しかし、建設業界の姿というものを見たときに当然許可制度を行なわなければならない。ただ、先ほどから私が言っているように、幅の広い、非常に層の厚い、十ぱ一からげで何もかも一つにひっくるめてふろしきに包んでしまうのだというような見方の中から、零細一人親方という問題がここに憲法上の問題に抵触してきて、いま全建総連等の反対一つの柱になっておりますが、この点について大臣いかがでございますか。
  83. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいままで御説明したことで賢明な小川さんには大体おわかりだと思いますけれども、原則としてすべての人々が職業の自由を持っているということは当然でございまするが、やはり社会情勢の変化に伴いまして、職業の自由というものも、一定の条件のもとに制約されていくこともまたこれ民主主義社会における当然のことだと思います。たとえば環境衛生等においてはかなりの制限を加えているわけでございます。理髪屋だとかあるいはまたいまのふろ屋にしろ、もう庶民生活と切っても切れないことですらいまは制約しておるわけでございます。   〔正示委員長代理退席、委員長着席〕 ましてや現代における建設業というものは、一般国民財産と生存と生命にすら関係する重要なる業種でございます。しかも、そうしたところの健全にしてかつ良心的な業者ばかりでないということも、現在社会的事例としてたくさん出ている今日、私は、政治というものは業者を保護すると同時に、一面において一般国民を守るということがより大きな政治的使命である、こう考えるのでございます。その意味においてこういう立法をいたしたのでございまして、私は現在のところ経過措置を講じつつ、しかも弾力的に運用するというたてまえで行っておりますので、現在の段階ではいま御審議を願っておる程度の立法が、現在においては必ずしもこれは完全というものではございませんけれども、妥当なものだと思って実は御審議を願い、御協力をお願いしている次第でございます。
  84. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 私、最初にお断わりしたとおり、この業界のことに対しては非常にしろうとでありまして、よくわかりませんので大きな口がきけないのでありますが、あさはかな軽い知識の中から御質問しておるのであちらに飛んだりこちらに飛んだりいたしまして、質問を受ける側に立っては非常にやりにくいと思いますが、御容赦をいただきます。私はいま大臣に、私の質問の観点が大手業者と零細一人親方とを区分していけばどうかということをお尋ねしてあったので、いまの登録制度が完ぺきにいいと私も思ってはおりません。ただ、この一人親方制度のいま全建総連で言わんとする業界の姿勢というものは、私もこの二、三日研究してみまして、なるほどと思う点が多々あるのですね。これは組織がない。また機構がない。資本力がない。そういった複雑な、われわれがとてもちょっと想像できないような——これから一つずつ検討してまいりますけれども、そういう問題とさっき言った大手業者と一緒にすることがどうかと思って、そこのところの判断を割って考えられないのか、それについて御質問しているわけです。
  85. 根本龍太郎

    根本国務大臣 具体的なことについては事務当局から答弁いたさせますが、実はこの法律案では、そういうことをある意味では区別して立法しているつもりでございます。  まず第一に、零細規模のものについては、何が零細であるかということは問題でありますが、一定の条件のもとでは許可を受けない人でも建設業に従事することはできるんだということで、まず一応現状を認定しているわけです。現状以上に不利な状態にはおとしいれないということが一つです。  それからもう一つ、現状におきましては大手業者とむしろ下請負、孫請負との関係において、零細企業の人はかなりの程度大手業者の下請負的役割りを演じておる。これが実際上の国民生活と直結するところの事業であります。ところが、これが現在の制度では全くの行政的な監督、指導というところにゆだねられておりまして、法律的な規制、制度上のこれがないのです。したがいまして、現在では親会社というか、親請負との関係は全くの民法上の契約事項にまかされておる。民法上の契約で権限を移譲し、義務を負えば、あとは一切の責任を親会社のほうは実際上負わなくてもいいというような形になっているということ自身、大きな欠点があると私は思う。これを改正することによって、親会社そのものの責任を明らかにすると同時に、下請負したものに対する保護もしてやり、同時にまた、受注者に対する一つの保護あるいは保障をするということが必要である。  それから一方、一人親方というような人たちは現状のまま一応これを認めますが、このままでは社会から押し流されていきますよ、だから、こういうふうな方向に行きますから、単に個人的に自分が永久に一人親方ということに満足せずに、企業組合をつくるなりあるいは企業合同をして、そうして新しい社会発展に対応する業態をつくるべきである。それを助成しようということでございまして、私のほうでは、かなり綿密に現状を認識した上、しかもこれを改善する方途をちゃんと道をあけまして、その上に現状は現状として認める、こういうふうな配慮をしているつもりでございます。その点では、実は私自身も全建労の、自民党としては珍しいというかほとんど例のない顧問をして、ずっと前にこれをつくらしたほうなんです。そのために、将来に対してかなりの意欲と希望を持っておるいわゆる一人親方の意見は、私は相当実はくみ入れてやったつもりでございまして、これは私事に至るようでございますけれども、それこそ私は、全建労の皆さんの客観的な現状、さらにこれらの人々が、現在何が問題であるかについては相当理解しているつもりでございますが、まだ足りない点が多々あると思いますもので、委員会の皆さんの具体的な指示あるいはいろいろの御教示を受けまして、さらに一そう内容を充実させていきたいと考えている次第でございます。
  86. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 大臣のたいへん御配慮のあるおことばを聞いたのですが、質問がだあっと薄く広くいきますと、何を一体聞かんとしているのか、どういう結果が出たのかということに非常に疑問を生じてまいりますので、話は中断して違う角度から行きますが、ひとつ御容赦いただきたい。  それは、この法律案が前国会、前々国会でいろいろ問題になって廃案となり、そして今回出されたわけです。第六十三特別国会も余すところあと数日です。こういうタイムリミットの中で、いま与野党とも真剣にこの問題に取り組んでいるわけです。大臣も御存じでありましょうけれども、理事会、理事懇談会で数回にわたり、私どもの先輩諸兄がうんちくを傾け、何が一体この業法改正案に対して問題点になっているんだろうか、何が一体ネックになっているんだろうか、こういう問題についてある程度煮詰めた四点について大臣の御見解をただして、そして、いまの問題点というものを浮き彫りにさせながら、わが党の議員並びに野党の皆さんからさらに追及があると思います。また、いろいろと議論がございますでしょうが、私は、ここでけじめをつける立場から、いま言ったような理事会、理事懇談会において一たん煮詰まった問題について個条書きに読んでまいりますから、ひとつお願いいたします。  一つ、「政府建設業許可適用除外金額については」、ここが問題でございます。これは要するに一人親方とか、そういう小さい大工さんの方方が一番一つの目安になるところでありますが、「建設工事価格の上昇等を考慮して建築一式工事および土木一式工事については百万円、その他の工事については五十万円とする考えのようであるが、」これはあくまでもわれわれは断定はいたしません。「考えのようであるが、建設業界の実態をも考慮して許可適用除外金額は過去の経緯にとらわれることなく建築一式工事にあっては三百万円、その他の工事にあっては百万円とすることが適当であると考えるが、政府のこれに対する見解を承りたい。」というのが、一応建設省とわれわれの議員の側とのいろいろな話の中から出されてきた。私も、これがいいとか悪いとか即断はできません。なぜ私が最初に物価問題を大臣お尋ねしたかと申しますと、日本の現在の物価上昇率が五%、すなわち銀行利子の長期定期預金の五・五%以下に押えるという政府の姿勢が、この十年来裏切られ続けてきた。そこに、この前の改正法案のときには百万円の五十万円ということだった。物価が上がってくる。大体一坪十万円だ、十五万円だという。まるで戦前には想像もできないような坪価格がいま一般庶民の肩に重くのしかかっています。しかし、それでは大工さんがもうかっているかというと、これまたいま言ったように、諸物価が上がって、当然の資材、労働力の高騰ということで問題になっている。そこで、この金額が本法律案の成否を左右する重大な問題であり、当委員会においても重大な関心を持っておることをつけ加え、強調いたしたいとわれわれは結んでおりますが、これについて大臣はどのようなお考えを持っておられるか。
  87. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいま小川さんから御発言があり、また先般来いろいろと同様趣旨の意味の御発言がありましたので、当委員会においてさように御決定になりますれば、私は、それに基づいて善処いたしたいと考えておる次第でございます。
  88. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 われわれも反対のための反対、不毛の対決を望んでいるのではありません。野党の少ない数の中で与党の皆さんの力に押し切られれば、これまたやむなく法律というものは通ってしまうのです。そこで、私どもは、この法律というものはどのように業界方々にも、国民の側に立っても一番いい点は一体どこなのか、こういう点についてお尋ねしているのでありますから、ただいまの大臣のおことばは、善処するということについては私どもも十二分に理解していきたいと思います。  第二点。「建設大臣又は都道府県知事は、下請人が賃金の支払いを遅滞したときは、特定建設業者に対して賃金相当額の立替払等を勧告することができることとしているが、下請人が建設工事の施工に関して他人に損害を加えた場合においても、同様にその損害相当額の立替払い等を勧告することができる規定が必要であると考える。さらに、建設大臣又は都道府県知事は、特定建設業者が勧告に従わなかった場合に、必要があると認めるときは、」——これは私はちょっと問題があるのですが、ここはこういうふうに私は考えております。勧告に従わなかった場合には、「その特定建設業者に対し営業停止等の監督処分をすることが必要であると思う」、これは非常にきびしくなってきておりますね。連帯責任であります。政府のお考えをここでまずお聞きしたいわけであります。  なお、以上の事項については、私どもは、こういった法律に修正を加えていくということをいま非常に強く希望を持っております。これに対して最高責任者である建設大臣はどうお考えになっておられるのでございましょうか。
  89. 根本龍太郎

    根本国務大臣 下請人の賃金不払いに対しまして特定建設業者に勧告制度を設けておりますことは、特定建設業者と下請人が使用するところの労働者との間には直接の雇用関係はないのでありまするが、労働者は、特定建設業者の直接または間接の指示を受けて作業を行なうものであり、他の事例に比較し関連が深いこと、それから労働者の救済に重点を置く必要があると考えたからでございます。また、勧告制度のみにとどめましたことは、直接の雇用関係のない特定建設業者に対して、法律責任があるものとして監督責任規定することはいかがかと考えたからでございます。  なお、御質問の、当委員会においてお示しの修正が行なわれますならば、政府としてはそれに基づいて適切な運用につとめることは当然だと考えております。
  90. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 そうしますと、その特定建設業者に対して営業停止許可権の剥奪、こういったきびしい罰則というものを加える修正というものをわれわれ委員会のほうで作成した場合には、その適切な運用について大臣はつとめると理解してよろしいですか。
  91. 根本龍太郎

    根本国務大臣 そのとおりにいたしたいと存じます。
  92. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 三番目、中小建設業者の保護育成という問題。これは大事な問題であります。その受注の機会の確保について具体的にどのような措置をとる方針であるのか、まずお聞きしたいのであります。これは私ども、理事会においても理事懇談会においても問題になったのでありますが、いまの受注分野というものは、あらゆる角度からサンドイッチのようにはさみ込まれて、分野が非常に狭くなってきた。大企業中小零細企業の戦野に割り込んできた。また、下からは一人親方という方々の分野もございます。また建設業界の姿勢というもの、姿というもの、住宅産業という分野が次第に変化を伴っていることは大臣も御存じのとおり、特にプレハブ住宅、こういった住宅なんというものは、いまから十年も十五年も前にはちょっと想像もできなかった住宅産業分野でございます。そういった中で、限られた中小企業分野の育成、またその受注の機会の確保については、はっきりしたことをきめていかなければなりません。そのために、中小建設業者の施工能力の増大をはかるために、ジョイントベンチャーを活用することは必要であると考えます。今後ジョイントベンチャーの受注機会の確保についてはどのような方針で臨まれるのか。このジョイントベンチャー方式というのは先ほども協業とかいろいろな問題がございますが、現在のその登録制度よりも許可になったということによって、さらにその点が一歩も二歩も前進し、中小企業の方たちを保護育成できる施策というものがあるのかないのか、この改正法の中に。どうです。
  93. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のように、これは中小企業、零細企業が今後健全に発展するために、まことに必要な運用上の重要な問題を指摘されたものと考えます。政府におきましては、従来も中小建設業者の受注の機会の確保につきまして、現在でも官公需についての中小業者の受注の確保に関する法律を定めまして、これをできるだけ中小業者の受注の機会をはかってまいったのであります。今後さらに、いま御指摘の点を考慮しまして善処したいと思いまするが、今後特にひとつ発注標準を厳守いたしまして、中小工事にはみだりに大手企業者を指名しないようにいたしたいと思います。従来もその方針でありましたけれども、は大手業者の名において下請業者工事をどんどんとっちゃいます。そういう結果が、地元の中小企業がなかなか受注を受けないというような現状もありまするので、この点は、まず第一に発注標準について一つの明確なる一線を画しまして、御指摘の点にお答えしたいと思います。  第二は、これと関連しまして、地元の業者をでき得るだけ地方工事については活用するということをいたしたいと思います。  第三には、成績優秀な中小建設業につきましては、いまいろいろランクがございまするが、大体これは二階級上位のランクの工事についても指名いたしまして、積極的に受注の機会の拡大をはかりたい、こう思っております。  第四番目は、指名にあたりましては、工事の主要部門を一括下請けさせ、あるいはみずから施工管理に任じないような業者は指名しないということを明確に指示して、事務当局並びに下部機関に対してこのことを指導強化いたし、中小建設業者の保護育成につとめてまいりたいと思います。また、中小建設業者の施工能力の増大をはかるために結成しましたところのジョイントベンチャーについては、その施工能力に相応する規模の工事の指名について特段の配慮をはかってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  94. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 ただいま大臣からお答えいただきました四点につきまして、こまかく今度は局長お尋ねしたいと思いますが、そうしますと私の趣旨があっちへいったりこっちへいったりしますので、それはちょっとこちらへおきまして、第四番目、大工さんや左官屋さんといわれております一人でやっていらっしゃる一人親方といわれている方々、こういう方々が今回の法改正によって許可を受けますと、日雇い健康保険や失業保険、労災保険等の各種の保険や所得税の関係で不利益な取り扱いを受けるのではないかという危惧がありますが、この点について大臣の見解を伺っておきます。
  95. 根本龍太郎

    根本国務大臣 この点は、先ほど事務当局からも一応明らかにしたところでございまするが、御指摘の大工、左官等の一人親方に対しまする日雇い健康保険、失業保険、労働者災害補償保険等の各種保険及び所得税に関する取り扱いは、他の省の所管事項でありまするが、次のように、いずれも建設業法に基づく許可を受けたことによって不利益な取り扱いを受けないことにされておるものであります。  一つ、日雇い健康保険の取り扱いは厚生省所管でございますが、現在のところ、一人親方については日雇い健康保険法を擬制適用しておりまして、一人親方をその被保険者として取り扱うかいなかは、あくまで当人が日雇い労務者としての実態を有するか、あるいは事業主としての実態を有するかに基づいて判断しておりまして、許可とかあるいは登録を受けているとかいうことによって被保険者から除外されるというような取り扱いはしないことにいたしておるのでございます。  第二番目に、失業保険の取り扱いは労働省所管でございまするが、失業保険における一人親方の適用の取り扱いにつきましては、許可または登録を受けているからといって不利益な取り扱いをしないことにいたしております。  第三番目に、労働者災害補償保険の取り扱いは労働省所管でございまするが、労働者災害補償保険法の取り扱い上、一人親方とは労働者を使用していないことが常態である者をいうものといたしまして、常態であるかないかの判断は、一年のうち百日以上労務者を使用しているかどうかを基準として行なっているのでございます。したがいまして、一年間に百日以上労働者を使用しないと見込まれる場合には被保険者として取り扱われるものでありまして、許可または登録の有無によって差異があるものではないと解釈いたしております。  第四に、所得税の取り扱いは国税庁所管でございまするが、一人親方の受ける報酬に対する課税につきましては、その報酬のうち請負契約に基づくものは事業所得とし、雇用契約に基づくものは給与所得として取り扱っているのであります。しかしながら、一人親方の場合はその区分が明らかでないことがありまするので、年収百八十万円以下であり、かつその区分が明らかでないときは、年収の多寡に応じて一定の比率を定めまして、年収にその比率を乗じた額を給与所得とし、その余の金額事業所得として取り扱って差しつかえないということにいたしておるのであります。なお、この取り扱いにつきましては、一人親方が許可または登録を受けているかどうかによって差異のあるものではない、かように考えておる次第でございます。
  96. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 ただいま大臣から明快なるわれわれの考え方についての一つの目安というものをいただいたわけであります。これはまた後ほどいろいろと一つ一つについて審議や議論がなされていくと思いますが、私はそれらのことは同僚、先輩の各委員にお譲りすることといたしまして、私は私なりの観点からお尋ねいたしてまいります。  第一点。公共事業工事に積算される労務単価の改善についてお尋ねしたい。五省協定によって単価が定められておりますが、四十六年度からの新方式とは一体どういう方式ですか。
  97. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  従来の公共事業の積算におきます労務単価につきましては、毎年八月労働省が実施しております屋外労働者職種別賃金調査結果を利用いたしておるわけでございます。しかしながら、この調査は労働省が各工事の現場を回って実地調査をした結果を集計しておるわけでありますが、従来、この工事現場における申告が必ずしも正確でないというような点もございますし、またいろいろと欠陥もあるわけであります。   〔委員長退席、正示委員長代理着席〕 したがいまして、必ずしもこれが現場における賃金の実態を明らかにしていないというような批判もあったわけでございます。これについては、かねてからこれにかわる何らかの合理的な調査方法はないものかということで、関係省五省が集まりましていろいろ相談をしておったわけでございますが、この際、公共工事の積算単価でございますから、公共工事を実際に実施しております建設省、農林省、運輸省の三省がみずから実態調査をして、その調査結果の数字を使うべきじゃなかろうかということで関係省の意見が一致したわけでございます。実はこの点につきましては、昨年以来この改正の機運が進みまして、できれば四十五年度実施単価から適用したいということでございましたが、残念ながら準備が間に合いませんので、本年度は現地調査費を計上いたしましてしっかりした調査をする、その単価は来年度、すなわち昭和四十六年度の公共工事の積算単価から使用するということで関係省の意向が一致をし、本年度は調査に着手することにいたしておるわけでございます。
  98. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 そういたしますと、私の質問であります昭和四十六年度からの新方式というものは、まだ四十六年度からはできないということですね。——できるのですか。できますか。  そこで、きょうは警察庁の捜査二課長さんにお忙しいところ来ていただきましたから、先にお答えをいただいて、お帰りいただいてけっこうなんであります。  その一つは、建設業界と官公庁の役人との不正、贈収賄によって摘発された事件というものは一年間どれくらいあるか、その内容はどうなのか、そしてそれに対して、その業者に対する事後の指導、またそれに対してどのような適切な処置をとったのかという点であります。特に埼玉県大宮市の住宅供給公社の不正事件、また大宮市の市議会が解散になったといわれておりますところの宅地開発業に伴う建設業者の介入事件、これらの事件は社会に大きな迷惑を与え、われわれの税金が不正に使われていった。まず、なぜそういう問題が発生するのか。大臣、いま私が質問いたしましたような公共工事に積算される労務単価、またはその受注の契約、これからだんだん議論が出てきますところの重層下請制度、こういったものの不備という点から、役人がその公共工事、たとえば住宅公社等の住宅を建設する際の検査の手心とかそういった問題に介入してくる。業界の粛正も大事ですけれども、公共工事の重大な発注者側であるところの政府地方公共団体の姿勢というものが、やはり業界の乱れた姿を生み出した一つの要因ではないか、こう私は私なりに考えております。建設大臣といたしまして、政府当局者といたしましては、こういった問題についてはどのようにお考えになるのかをお聞きいたしまして、岸さんのお話を聞きたいと思います。
  99. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これは国家並びに地方自治体を含めまして、官庁の発注者の態度それ自身が犯罪を誘発しておるとは必ずしも言えないと思います。ただしかし、不心得の者がその職権を乱用して、いま御指摘になりましたいろいろの不備を土台として業者との間で不当、不正が行なわれたということはあるだろうと思います。しかし、私はそれが支配的なものであるとは考えておらないのでございます。
  100. 岸要

    ○岸説明員 お答え申し上げます。  御質問は三点あったと承りましたが、第一の建設業界官庁の役人の汚職事件の年間の件数ということでございます。私どものほうで大体年間検挙いたしております贈収賄事件は、年によって違いますが、千八百人から二千人くらいの人を贈収賄ということで検挙いたしておりまして、そういう数字が出ております。昨年中は、まだ確定数字は出てまいっておりませんが、いま手元にあります数字で、千七百八十六人の贈収賄事件ということで検挙いたしておるわけでございます。そのうち、収賄側になります役人が大体五百五十五人、それから業者のほうは、建設業者が何人とか何業者が何人という分類した統計はとってはございませんので、正確にはちょっと申し上げられないのでございますが、その人数につきましては、事件のまとめまとめがございまして、何人かが関与してくるという形で事件が出てまいるわけでございます。その事例で分けますと百五十六くらいになるわけでございます。そのうち土木建設等の工事関係が、六十六事例で、一番多いという結果になっております。その他各種許認可とか承認とかいうようなものでございます。土木工事の内訳を若干申し上げますと、道路工事、水道工事、その他建設工事、河川工事というような順番になっております。いま申し上げましたのが昨年中の大体の概観でございます。なお、五百五十五人と申し上げましたが、これは国家公務員の場合と、それから地方公務員の場合と、それから特別法によりましてそれぞれ贈収賄事件で公務員とみなされている三種がございまして、国家公務員が百十六、地方公務員が三百六十二、公務員とみなされる者が七十七、こういう数字でございます。  それから内容でございますが、いま申し上げましたように、やはり土木建設工事の施工なり請負なり監督、検査なりというような形をめぐりまして、便宜を取り計らってもらいたいといったものが一番多いという形をとっておるわけでございます。  それから業者に対する監督その他という御発言がございましたが、私ども警察といたしましては、犯罪を検挙することによりまして世の中に警鐘を鳴らすという役目をになっているかと了解いたしております。したがいまして、犯罪検挙でもってこたえておるというように御理解いただければありがたいかと思うわけでございます。  それから最後に御指摘がございました埼玉県におきましては、最近におきまして、県の住宅供給公社の建築第一課長が団地の工事をめぐりまして工務店のほうから種々の便宜を取り計らってもらうという意味で、ブロックべいの工事で、これは数万円するそうでございますが、供応を受けたということで事件の摘発に乗り出しておりまして、その後の捜査によりまして、他の業者からも、それぞれの工事関係あるいは物品の納入についてよろしく取り計らい願いたいという趣旨のもとに現金をもらっておったということで、なお捜査を継続している最中であります。また、昨年、お話がございました大宮市をめぐりまして、やはり道路舗装工事あるいは下水道工事、給水装置工事、土地区画整理工事、土地の払い下げ問題等をめぐりまして、役人、業者合わせて約四十名を検挙した事件がございます。  以上でございます。
  101. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 世の中が太平になってまいりましてこういう問題で一年間に五百六十人、これは対前年度の比率というものの数字を見なければわかりませんが、こうやって摘発されたのは氷山の一角だと思うのですけれども、これだけ建設業界と役人とのくされ縁、または黒い霧、よごれた取引が行なわれているということに対して、その機構、システムがどうのこうのという前に、モラルの点もあるでしょうし、またそれを監督しなければならぬと思うのでありますが、大臣、どうしたらこういう問題は減少すると考えておりますか。   〔正示委員長代理退席、委員長着席〕
  102. 根本龍太郎

    根本国務大臣 これは御承知のとおり、こうすればこうなる、絶無になるということは言えないと思います。しかし、少なくとも建設業法の改正が成立いたしましてそれぞれの業界責任体制がとれる、また同時に、監督官庁も法に基づき相当綿密な条件のもとに協議をするということになりますれば、これは業者のほうにおいても質的改善がなされるし、また官庁自体も十分自粛するように指導いたしますので、成果はあがり得るものと思います。
  103. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 不正事件は、一面では倒産事件としてあらわれてきている。無理な受注、無理な発注工事、こういうものが犯罪に結びついたり、これが経済面においては倒産という形によってあらわれてきている。それが受注産業の特殊性たる建設業界の姿でもあります。技能労務者不足という問題も加味して非常な問題がここに出てきております。ここで、現行建設省の等級別発注標準金額地方の等級別発注標準金額の実情については差があると思いますが、まずその点について局長お尋ねしたい。  第二点は、歩掛けについて直轄工事と補助工事の格差があります。これは地方公共団体の発注単価と国の直轄工事の単価とをここで発表すれば一目りょう然ですが、きょうはその資料を持ってきておりませんから、その点の格差の点についてはどう考えるか、これが第二点。  第三点は、公共工事の前払い金制度というものがありますが、これは、現在東京都と一部の市町村では、公共事業工事の前払い金に対しては、してない。これは特に大臣お尋ねしたい。第三番目のこういった公共事業工事の前払い金制度というものは、一体どう考えておりますか。なぜ東京都は行なっていないのか。それにはそれなりの理由があると思いますが、そういうふうにまちまちである。こういう点について、建設大臣としてはどのようにお考えになっておられますか。
  104. 根本龍太郎

    根本国務大臣 前払い金制度については、先般も私どなたかの御質問にお答えしたと思いますが、実は十二年前、建設大臣当時私が主唱してこれは制度化したものでございます。御承知のように、十二年前は金融が非常に梗塞しておりまして、いわゆる台風手形といわれるような経済、金融の逼迫時代でございます。当時、また御承知のように、建設業界も近代化ということからはほど遠い状況でございまして、当時の大手業者といえども、仕事をとった場合にまず何よりも金融に奔走しておる。一般金融機関自身が金融の梗塞している事情でありますから、たまに町の高利貸しから借りているということになれば、これが非常にひどい。当時大蔵大臣は一萬田大蔵大臣でございましたが、私は、政治というものは、国民からいただいた税金をどう活用するかということが政治の目的であるはずだ、予算が成立してから後というものはこれを日銀が保有していても何らの意味をなさないんじゃないか、むしろ前払い金制度をやりますれば、それによって金融の道が開け、かつ安心して仕事ができる、良質な利子のわりあいに安いものを使えば、結局においてコストダウンになるから、これはやるべきだ。ところが当時の大蔵省の常識からすれば、とんでもないことだ、他のものは全部納入してから一カ月ないし二カ月してから後に支払いをするのに、前払い金制度というのははなはだいかぬということでいろいろ抵抗がありましたが、当時の岸総理ともよくお話をして、この制度を実施しました。  これは最初は政府の発注がおもであります。それから地方自治団体もやり、またこれに歩調を合わせまして農林省もやるということにいたしたのでございますが、この制度はいわば法律に基づくところの行為ではございません。一応の方針として打ち出し、かつ行政指導でやっていることでございます。したがいまして、東京都がやっていないということはいろいろの事情があると思います。その事情について私はつまびらかにしておらないのでありますが、もし事務当局でその状況を知っておりますれば、事務当局から答弁いたさせます。
  105. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の等級別の発注金額の問題でございますが、これにつきましては、御案内のように、もともとは中央建設業審議会から建設工事の入札制度の合理化対策についての各発注機関に対する実施勧告があったわけでございます。現行の等級別発注標準金額は、四十年の十二月に改定になったものでございます。これを採用することについて勧告があったわけでございます。ただ、国とか公団等の大規模工事と、それから地方の補助工事とでは発注金額に非常に差があるわけでございますので、この標準金額につきましては、地方的特殊性その他事情によってこれによりがたい場合は、適宜発注者において変更することができるということにされております。したがいまして、たとえば建設省でございますと、A級は一億五千万円以上、以下B、C、D、Eと勧告どおり区分を受けておるわけでございますが、各都道府県におきましては、A級で大体数千万円——これはいろいろあるわけでございますが、数千万円以上というものをA級として採用しているわけでございます。  それから二番目の歩掛かりの問題は、あとから官房のほうからお答えいたします。  三番目の前払い保証でございますが、いまはほとんど各都道府県で御採用願っておるわけでございますけれども、東京都は従来採用しておらないわけでございます。これは東京都の事情によることかと思いますが、東京都におきましては前払いをしないかわりに中間払いで、これをきめこまかく分けまして、そのつど業者に支払っております。そういうことをやっておりますので、必ずしも前金で払う必要はない、こういう見解のようでございます。しかし、私どもは、できればこの法律を適用して前払い保証をすることが請負業者資金繰りのためにも非常にいいわけでございますので、数次にわたってこの採用方を勧奨してまいっておりますが、最近東京都においては採用方について考慮しているようでございますので、あるいは近く他の県と同様にこの制度を採用してもらえるのじゃないかというふうに考えております。
  106. 志村清一

    ○志村政府委員 歩掛かりについての御質問でございますが、先生承知のように、歩掛かりと申しますのは、たとえば一立米の土を掘るのに何人かかるというようなことでございまして、中身といたしましては非常にたくさんの種類がございます。これらにつきましては、先生指摘のように、地方の補助に考える場合の歩掛かりと地建の直轄の場合の歩掛かりと若干差異があったことは事実でございますが、これらにつきましては差異のあるほうがおかしいのじゃないかということで、逐次改めております。ただ、歩掛かりにつきましては、また非常にむずかしい地域的な格差等もございまして、地建で一応やってみて、これでどの程度の差異があったかというふうなことから逐次地方に及ぼすというようなことなどもやっております。  御指摘の点につきましては、私どもも十分戒心いたしまして今後努力いたしたいと思っておりますが、つけ加えて申しますと、単価というのは、歩掛かりに、たとえば先ほど申し上げた一立米の土を三人なら三人で掘るといたしますと、それに一人の労賃をかけまして、そしてもとの値段が出るわけでございます。この労賃につきましては、先ほど計画局長からも累次御説明申し上げましたように一応の基準をきめまして、その上下二五%アローアンスがあるわけでございます。この適用につきましても実情に即して適用するようにという指導をいたしておりますが、この点について地方庁におきましてはその適用がわりあいかたい、リジッドであるという点等もあるように承知いたしております。これらにつきましても適切な指導をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  107. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 いま私が三点お尋ねしたことについては、前向きの姿勢で取り組むということで納得いったのでございますが、前払い金制についてはまだまだ私、疑問点がある。この点については後ほど私どもの委員から質問がなされると思います。  そこで、私は質問を分けまして、第二の質問といたしましては一人親方の立場に立っての質問に分けますが、いま私が行なっておる質問は、大手、中小企業のほうで質問させていただいておるわけです。そこで建設業の近代化というものに抜本的な対策を講ぜねばならぬという意見が起きておりますが、その根本になるものはお金でございます。そこで私は、この近代化のために特別の基金制度、これは建設大臣お得意の土地の開発基金制度のように、一定の金をプールいたしまして、その基金によって近代化の方向に踏み込んでいったらどうかということ、これは建設省がお考えになっている問題で、建設業合理化基金、仮称でございますが、そのようにしたらどうかということが建設サイドで論ぜられております。この点についてまずお考えを承りたい。これが第一点。  第二点は、受注者から発注者が迷惑をこうむる倒産という問題に関する保険制度、身がわりの保険制度についてはどう考えているかというテーマであります。これは完成保証制度でございますが、損害保険会社や建設業保証会社による工事完成保証制度というものは一体考えられているのかどうか、保険会社や保証会社に建設業者の資格を与えまして、ある一定の保険金や保証金を積んでおったその会社が倒産もしくは迷惑をこうむるときには、保険会社がかわってできるというようなシステムは建設省で検討されると聞いておりますが、いま申し上げました一一点についてお尋ねしたいと思います。
  108. 根本龍太郎

    根本国務大臣 先ほどの御質問で、前払い金制度をつくったときに、実はこれまた建設業界の保証会社をつくるようにいたさせたのでございます。というのは、政府並びに地方自治体が仕事を与えて、前払い金を出して、そして今度はその仕事を受けた業者が倒産する。これは政府並びにその自治体がたいへん迷惑をこうむる。政府が迷惑をこうむるということは、一般国民の税金において仕事をしていることですから、税金をむだ使いしたことになります。これは厳重に避けなければならないということで、保証会社をつくらしてやったのでございます。ところが最近は、保証会社が非常に保証金を取っているけれども、倒産したりということがあまりないために、保証金が高いということで問題になっているので、これの改善をすべきだという意見がありますので、それは検討さしております。  その次に、いまの基金制度でございまするが、これも発想としてはまことに適当なものと私は思いまするが、数年前そういう立法をして、実は成立しなかったといういきさつもございます。さらにまた、現在の国による保険ですね。これの制度についても考えるべきだというお話がありまするが、そうした問題について事務当局が一応検討したこともあるようでございますので、その点についてはまず事務当局から、今日までの経緯並びに一応の構想があれば御説明いたさせます。
  109. 川島博

    川島(博)政府委員 中小建設業者の経営上の問題に、運転資金の不足が一つ大きな問題となっておりますので、実は昭和四十一年に中央建設業審議会にはかりまして、仮称でございますが、建設業合理化基金というものを設立したらどうかということで、予算要求までしたこともございますが、残念ながら日の目を見なかったわけでございます。しかしながら、建設業の現状からいたしますと、特に建設業は受注産業でございますので、固定資産が少ないという点から運転資金の確保が困難でございます。御指摘のような制度を望む声も強いので、今後とも特別のそういった機関を設立するという問題も含めまして検討を続けてまいりたいと考えております。  それから第二の保証制度でございますが、これは御案内のようにアメリカではボンド制度と申しまして、非常に普及しているわけでございます。日本におきましては、完成保証につきましては現在完成保証人という人的保証制度にたよっているわけでございますが、今後ますます建設投資が拡大してまいりますと、従来のような人的保証では間に合わない。また一たん事故が起こりました場合には、そういった膨大な負担に保証人がたえられないという問題も生じてくるわけでございますから、どうしてもアメリカと同じように、ボンド制度によって工事の完成履行を保証する制度が必要になってくるのではないかと考えております。この点につきましては、今後の問題といたしまして前向きで検討を続けたいと考えておる次第でございます。
  110. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 それでは私はこれから質問をいたしますが、議論は小濱さんにしていただきまして、私はこれに対して反論はいたしません。全建総連の建設業法の問題に対する質問に対して、議事録にとどめておくために個条的に質問してまいります。それに対する意見等は、私はきょうは時間がありませんから申し上げません。  一、まず全建総連は許可制反対しております。「許可制制度化は、本質的には企業の形態を整えていない私たちの請負行為を完全に禁止するものです。もし、不良業者の排除が目的ならば、法第十一条の登録の拒否に、必要な条文を付加すべきです。また業者の経営状況の改善が目的ならば、法第二十七条の二の経営に関する事項の審査を一般化し、公表することを制度化すべきです。」これについてのお答えをいただきます。
  111. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  経営に関する事項の審査は、公共工事の普及にあたりまして発注者に対して業者の経営に関する情報を伝達することを目的といたしておるわけでございます。したがいまして、現在におきましては、この情報は発注者に対して審査結果を通知いたしておるわけでございますが、これを一般に公表することについては現在考えておりません。
  112. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 もう一ぺん申し上げます。  「許可制制度化は、本質的には企業の形態を整えていない私たちの請負行為を完全に禁止するものです。もし、不良業者の排除が目的ならば、法第十一条の登録の拒否に、必要な条文を付加すべきです。また業者の経営状況の改善が目的ならば、法第二十七条の二の経営に関する事項の審査を一般化し、公表することを制度化すべきです。」
  113. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  今回の業法改正による許可制制度化は、先ほど来御説明申し上げておりますように、大工、左官等の一人親方の方々にも十分その機会を与えまして、許可をいたすという所存でございます。  不良業者の排除を目的といたしますためには、今回登録制度許可制に改めまして、従来の登録の拒否にあたり、いわゆる欠格条項でございますが、これを改善強化いたしまして内容を充実いたしております。したがいまして、この欠格要件の改正によりまして、この不良業者の排除は十分目的を達することができるわけでございます。  それから、最後の経営に関する事項の審査、これは現状では、先ほど申し上げましたように、もっぱらこの公共工事を発注する発注者の便宜ということからこの審査をやっておるわけでございますが、これを何らかの形で世の中の人にも知らせてあげるということについては、これは検討すべき点もございますので、今後検討さしていただきたいと思います。
  114. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 第二、「職人労働者の請負行為を建設業法上認めること。」ということです。「現行法においても、私たちの請負行為は、法第三条第一号の場合を除き事実上禁止されています。建設業法上特例請負行為を設け、私たちの請負行為を認めるよう必要な改正を行なってください」という質問、これはどうでございましょうか。
  115. 川島博

    川島(博)政府委員 要望の趣旨が必ずしもはっきりいたしませんが、現法行におきましても登録を受けることが十分可能でございますし、許可制になりましても、許可要件に従来の登録業者につきましては許可するという扱いにすることは、先ほど来述べておるとおりでございます。したがいまして、建設業法上この職人労働者、これは一人親方ということであろうと思いますが、この方々のために特別の規定を設けることは必要ない。現行法で、あるいは改正法上で十分この登録または許可をいたすことにいたしておりますので、その必要はないと考えます。
  116. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 第三点、「下請業者に対する地位向上を目的とした条文を付加すること。」こういうことです。「下請業者に対する契約の平等対等の原則、見積有効期間(見積提出後二週間内に契約しなかった場合、期間経過後の契約に対しては見積の修正を認める措置)の設定、請負業自身の不当ダンピングの防止、下請代金の支払遅延の防止(下請業者に係る工事の完了後、検収の有無を問わず六十日以内に支払う原則)、労務賃金の通貨払いの原則、約束手形支払の制限などを法制化」してくださいという意見です。
  117. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  今回の改正は、下請業者の保護育成とその地位の向上をはかることを主たる目的の一つとしたものでございますが、元請業者と下請業者の間における契約の平等対等の原則は、従来から法律の十八条に定められているところでございます。  次に、下請人が適正に見積もりをすることができるために、第二十条の見積もり期間が設定されておりますが、特に設問にございますような見積もり有効期間を定める必要はないと考えております。  また、下請代金の支払い遅延の防止につきましては、建設工事の特殊性並びに業界の取引慣行を考慮いたしまして、工事完成の通知後二十日以内に検査をしなければならないことといたしまして、さらに特定建設業者については、請負人の検査申し出の日から五十日以内に下請代金を支払わなければならないことといたしておるわけでございます。  約束手形の支払いの制限につきましても、特定建設業者は、支払い期日までに一般の金融機関によって割引を受けることが困難である手形を交付してはいけないということにいたしまして、下請業者の保護をはかっておるわけでございます。
  118. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 第四点、「労働者保護規定を設けること。」ということです。「建設大臣又は都道府県知事の監督権の中に、労働関係法規、社会保険関係法規等に違反した業者に対する処分を加えること。賃金不払等における元請の立替払いの原則を法規化すること。」これは先ほど私のほうの委員会理事会、理事懇談会の中にもこの問題はありましたが、局長のお答えをいただきたいと思います。
  119. 川島博

    川島(博)政府委員 今回の改正案におきましては、労働関係の法規等に違反した業者に対しましては、従来でも監督処分ができることはできたわけでございますが、従来は労働法規に違反した建設業者につきましても、罰金以上の刑に付されなければ処分ができなかったわけでございますが、今回その点を修正いたしまして、その業務に関し法令に違反があれば、刑罰を受けなくても、建設業者として不適当であると認めるときには所要の監督処分ができるように改正をいたしたわけでございます。
  120. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 五番、六番は一緒に読みます。「工事の施行に当っての注文者、設計者、工事監督者および施工者のそれぞれの責任分限を明らかにし、法制化すること。」六番、これは最近の事例でございますが、「建売業者の規制を業法上明確にし、建設業法の適用を受けるように」してください。  この二つの質問であります。
  121. 川島博

    川島(博)政府委員 五の注文者、設計者、工事監督者、施工者のそれぞれの関係でございますが、基本的には、これらのものの関係は民法上の契約によってきまるわけでございます。しかしながら、一番問題になりますのは、継続的大量の工事を発注する注文者と、それを受けて工事を施工する業者の間の関係でございます。この両者の関係につきましては、従来ややともすると、いわゆる契約の片務性と称しまして、無理な契約内容を施工業者に押しつけるというきらいがございました。この点に関しましては、現行法でも相当契約内容を明らかにする規定がございますが、今回はその契約上定めるべき主要な内容につきまして、これを拡充整備いたしまして、当然に注文者と施工者が、契約の初めの段階からはっきりとした形で約束を取りかわすということにいたしたわけでございます。しかも、その契約書は必ず書面でやりとりをいたしまして、記名捺印をすることになっております。したがいまして、今後はこの両者の責任分担はそれぞれ明らかになることにいたしたわけでございます。  六番に、建て売り業者の規制を業法上明確化し、業法の適用を受けるようにすることでございます。建て売り業者にもいろいろございます。これは建設業者である場合もありますし、また宅建業者、いわゆる不動産業者である場合もあるわけでございます。いずれにいたしましても、最近建て売り業者に関しましてはいろいろと社会的な問題が起こってまいっております。したがいまして、たとえば前払い式割賦販売をいたしております建て売り業者、これについてもいろいろと問題が出ておりますので、これにつきましては現在立法作業も進めて、もう今国会には間に合いませんけれども、来国会にはぜひ出したいと考えておりますが、それにあわせまして、現行の宅地建物取引業法の不備な点につきましても検討を加え、必要な点については改正をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  122. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 たいへん貴重な時間をいただいて局長に御答弁をいただいたわけであります。そのお答えに対しての議論は本日私いたしません。きょうはお聞きしただけでとどめておきます。また、わが党の委員がそれに対してはいろいろとお考えがあると思います。  ジョイントベンチャー、これは大臣ちょっとお尋ねしたいのですが、共同企業体、ジョイントベンチャーを法制化すべしという意見がありますが、この法制化に踏み切れない理由というものは一体何ですか。
  123. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  ジョイントベンチャー制度は元来アメリカにおいてでき上がったものでございますが、アメリカのジョイントベンチャーは、各個の企業が集まって結成することは日本と同じでございますが、全構成員が全く別個の新組織を設立いたしまして、各構成員はそれぞれ従業員なり機械なり資産等を提供するものでございます。そして、各州にパートナーシップ、つまり組合の登記をすることによって法人格を取得するというのが一般的な形態でございます。日本におけるジョイントベンチャーは昭和二十六年から採用されましたが、当時は日本にはパートナーシップという法律概念がございませんでしたので、やむを得ず民法の共同経営の方式によりまして、数人の建設業者が建設工事を共同して請け負い、その履行については発注者に対して連帯して責任を負うという、民法の共同請負の法律概念を導入して今日に至っておるわけでございます。しかし、その後わが国の法制も、中小企業の育成強化のために、たとえば中小企業等協同組合法、これに基づく事業協同組合なりあるいは企業組合、最近におきましては中小企業団体の組織に関する法律による協業組合という新しいアメリカのパートナーシップによる法律制度ができたわけでございます。したがいまして、このジョイントベンチャーを法律一つの独立した人格と認めるということになりますれば、それはとりもなおさず協同組合法による企業組合あるいは団体法による協業組合、それを法律の中で何らかの形で活用するという方策は立法化できるわけでございますけれども、現在の責任体制のはっきりしない共同請負制度そのものをこの法律一つの人格として特別の地位を与えるということは、法律的には私は不可能ではないかというふうに考えております。
  124. 小川新一郎

    ○小川(新)委員 たいへん時間も超過いたしましたので、最後に私の考えをひとつ述べながら終わらせていただきます。  その一つは、このような前向き姿勢というものがいろいろと議論を生み出しております。これはそれなりに、戦国時代を迎えたこれからの日本の建設という大きな日本の宿命を裏づけられたものと私は思っておりまして。当然不良業者の排除というものは、通報制度の問題やまだ多く考えなければならぬ問題もあります。私は、建設業者の味方だけではなくして、国民の側に立っても一言言いたい。それは、サラリーマンがわずかな貴重なお金をため抜いて一生に一ぺんというような事業をした、そのときに、そっくりそのまま悪徳業者に、公平に見てそれが不正の対象になって家が建たなかったという事例も私知っております。そういう国民の側に立った投書や陳情も来ております。また、零細な一人親方の方々の一生懸命がんばっている姿も知っております。こういう両面相極端な日本のいまの建設業界というものがいま大きな転換期に立っているということは、建設大臣の先ほどのお話を聞いて私もよく理解いたしました。今回この業法を契機にいたしまして、建設業界というものをいささかなりとも勉強し得たということは私にとっても非常なプラスでありますが、願わくは、国民がほんとにしあわせな建設の姿というものを期待し得るような姿勢の中からこの法案に対する姿勢というものを求めることはあたりまえではありますが、一面、他の人のしあわせのために他の人が犠牲になるような社会体制であってはならないということを大臣に私は訴えたい。この点については、賢明な建設大臣のことでありますので、多くの反対される意見、民主主義の最も大事な言論の自由であるこの反対される意見というものをどうか十二分に尊重、そんたくされて、わが委員会が昼夜を継いでこの会期末に対してどたばたと大騒ぎして通すのではない——このことは私が尊敬しております委員長がいつも心配しておりまして、私は委員長の心というものも十分知っておりますので、この点について与党も十二分に野党審議させることはもちろん、こういう点を大臣もひとつお考えになった上で、私どもも協力してまいりますので、よりよいりっぱな法案になるようお願いし、また希望いたしまして、また後日こまかい議論については他の委員からお話があると思いますし、わが党の委員もこれに対してはいま勉強しておりますのでする予定になっておりますが、私のほんとうに不勉強な恥ずかしい質問ではございましたが、明快なる御答弁をいただきましたことを感謝して、終わらせていただきます。
  125. 金丸信

    金丸委員長 吉田之久君。
  126. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 けっこう小川君のほうから微に入り細にわたって多くの質問が述べられましたし、また御答弁がありましたので、私は大まかに二、三の点を御質問申し上げたいと思います。  実は大臣、天網恢々疎にして漏らさずということばを御存じだと思います。たいへん学識豊かな大臣にこんな注釈をして失礼でございますけれども、これは「老子」の第七十三、新村出先生は、「天の法網は広大で目があらいようだが、悪人は漏らさずこれを捕縛する。即ち天道は厳正で悪事には早晩必ず悪報があるという意。」こういうふうに書いてあります。さっきの質問を聞いておりまして、今度の建設業法というものは、実はその辺のところにこの業法の一番の微妙な改正と運用の問題が含まれているのではないかというふうな気がいたすわけでございます。特に先ほど小川君のほうから、いわゆる適用除外者の請け負うべき金額の限界というふうな点につきまして御質問がありました。これは、今度のこの国会におけるわれわれ建設委員会としては、最も大法案だと考えている建設業法がいつまでもたなざらしになっているようでは困るという決断から、金丸委員長が、どうしても変貌する社会に対応して、この際建設業界のあり方というものをはっきりしようじゃないか。さらにまた、それを期してひとつ建設業界の体質改善と強化をはかろう、そのためには建設業法というものをぜひ今国会で通そう。ついては、あまり網の目をこまかにしてしまいますと、これはまだ零細な旧来の業者人たちが自分の生存権を主張するためには、網の目を破ってでも仕事を続けなければならない。そういうことになりますと、結局ざる法になってしまう。それよりは、やや網の目を大きくしてでも、そのかわりしっかりと体質改善をはかっていく。また網の目の荒い、こまかいにかかわらず、大きな業者も小さい業者に至るまで、悪い業者に対しては仮借なく制裁を加えていこう。こういう法律にしなければならないという配慮から、各党みんな衆知を集めまして、ひとつ現状に適した中でこの出発を始めようじゃないかということから出てきた統一的な考え方であり、その質問であったと思うわけであります。   〔委員長退席、大村委員長代理着席〕 ところが、先ほど大臣の御答弁を聞いておりましたら、それは委員会がそうおきめになるならばいたし方ございませんとはおっしゃいませんでしたけれども、まだわれわれそんな感じを受けるわけなんです。もちろん発注者のことを考えれば、現在まで五十万、せいぜい一式業者百万くらいまでのほうがいいのではないかという考え方からいろいろな根拠を御説明になっております。もしここで、われわれのそうした考え方に従われて、一式業者の場合には三百万まで、専門工事を扱う場合には百万までというように政令を改められるということになりますれば、やはりそれに応じた考え方というものを建設省内部においても整理されないと、いきさつ上こうなったのですでは、やはりほんとうの運用ができないと思います。そういう点で、建設省のほうが現在の五十万円、それと今度の、当初考えておられた百万円は、ここ十年あまりの諸物価の高騰に従ってほぼ倍程度ワクを広げてもいいではないか。それ以上広げると、特に専門工事なんかの場合にはほとんどが許可の対象にならない結果になるではないかということをここに述べられているわけであります。それはそれなりにわからないではありませんけれども、私は、このデータの例の引き方がいささか建設省のほうが都合よく例を用いられておると思うのです。当初、たしか昭和二十四年にこれが発足いたしましたときに三十万で線を引いておられました。昭和二十四年といいますと、ちょうどいまから二十年前です。私が社会に出た最初の年ですが、当時のサラリーマンは千八百円から二千円余りでございました。そういうことから見ても、ほぼ十倍以上になっております、諸物価の高騰というものは。したがって、当時三十万から発足したこの金額一つの線の引き方というものは、現状において三百万でも何らおかしくないというふうに私は考えるわけでございます。この辺の考え方について、率直に大臣は少しチャンネルを変えて、いままでのいきさつにこだわらずに、なるほど三百万円というのが、あるいは専門工事においては百万円というのが一応現状では無理のない妥当な線であろうということではっきり合意をいただかないと、われわれも今後いろいろと心配なのでございます。その点いかがでしょうか。
  127. 根本龍太郎

    根本国務大臣 物価の上昇率等を考えれば、お示しのように、それは意味のあることだと思っております。したがいまして、先ほど来小川さんの総括した御意見に対し、私はそれを尊重して善処するということまで申し上げた次第でございます。  ただ私は、先ほど来いろいろ問題になりましたけれども、物価の上昇がもうあたりまえなんだということになると、これまたたいへんだ。やはり物価はどうしても抑制しなければいかないと思いますので、現在の段階ではこれでやるけれども、今度は、この調子で常に上げていくというようなムードで考えることは必ずしも適当ではないという意味で、若干そこに一つの、いま御指摘になりましたように、やむを得ずというような印象をお受けになったとすれば、このままにどんどん物価が上がっていくんだ、それにスライドして常に限定価額がどんどん上がっていくんだというようなふうにとられることをおそれた次第でございます。
  128. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 国務大臣であるお一人が、物価も将来上がるであろう、それに今後この三百万の数字はまたスライドされるべきであろうというようなことは、いまの段階では断じて申せられないだろうと思います。ただ私は、そうはいっても、もちろんまたいろいろとそういう物価の変動がある場合に、それは一定の時期を見て、また見直しされなければならないと思う。しかし同時に、私どもの考え方としては、古い社会と新しい社会、その二つの社会に対応しながら、古き様式による大工、左官が中心となっての建設の仕事と、それから新しい近代産業としての建設業というものと、当分の間二つに分けて処理していかなければしかたがない。だからといって、この古き形態がいつまでも、今後何十年にわたってそのまま存続していくべきかどうか、また、いくだろうかどうかという問題では、いろいろ論議があると思います。多くの人たちは、おれの一代はこうやってきたのであるから、せめてこのままでやっていきたいんだ、しかし、子供たちにはさらに新しい専門的な知識を身に備えさせて、技術をつけさせて、新しい業界に対応させていこうという考え方の人たちも非常に多いわけであります。  それからもう一つは、日本のローカルな地域におけるいわばひなびた建設といいますか、どうしてもそういうものでないと似つかわしくない建築というものがございます。そういうものがやはり相当長期間にわたって残っていくと思うのです。こういうものに対して一定の別な考え方を持たなければ、この法律は将来非常に無理なものが出てきはしないか。一応三百万という線まで網の目を広げれば、当面はあまり大きな支障は生じないと思いますけれども、将来に向かっては、そういう社会の変化に対応して、いわゆる一人親方といわれる人たちがどのように今後変わっていかれるかということについてまで、建設省としては、相当長期にわたった指導のしかたを用いなければならないと思うわけなんです。そういう点について局長はいろいろお考えになっているだろうと思いますが、今後日本の建設業界というものはどういうふうに再編成されていくとお考えになるか、あるいは特にローカルな地域におけるこの種の建築業者というものは、町においてももちろん部分的に必要でありましょうけれども、やはり永久的な存続性を持っているのではないかというふうに考えるのですが、いかがですか。
  129. 川島博

    川島(博)政府委員 たいへんむずかしい問題でございます。将来、日本の建設業は、日本の経済、社会の発展とともにますます近代化し、大規模化するだろうと思います。しかしながら、その反面におきまして、やはりローカルな棟梁さんあるいは町場における修繕業者、こういうものの需要も、いかに時代は変わりましても必ずあるわけでございますから、これが将来なくなってしまうということは考えられないわけでございます。しかしながら考えてみますると、現在でも建設業界のみならず、各業界におきまして非常な人手不足に悩んでおるわけでございます。建設業界におきましても、全総計画によりますと、労働力は今後年間九%程度増大させなければならぬという見通しでございますけれども、現実の人手は、おそらく年率三%増くらいの人数しか確保できないであろう、残りの六%はいわゆる労働生産性の向上によって吸収せざるを得ないというのが実情でございます。そうなりますと、今後はそういった大手、中小、零細を通じまして、いかに労働生産性を拡充し、社会の需要にこたえるかということは大問題であると思います。で、先生の御指摘の将来の姿、これを現在から予測し、これをとらえることはなかなか困難でございますけれども、私どもは、やはり中小あるいは零細の業界におきましても、そういった人手不足を補うためには、何といっても省力化工法を進めざるを得ない。そのためには、やはり個人個人の力ではどうにもならないので、やはり協同化、協業化、できれば数人の業者が一緒になって仕事をするという方向でいかざるを得ないだろうと思います。  特に将来、私が一つ非常に心配しておりますのは、台所がちょっとこわれたとかつまらない修繕仕事、これに対する労働者というものが一体残ってくれるだろうかという問題がございます。これは事柄はこまかいようでございますけれども、いわゆる家庭生活を円滑に進めるためには非常に困った事態になる。こういったいわゆる修繕業者あるいは極端な零細業者、こういった者を合理的な形で温存するためには、はたして現在の建設業法という体系の中に一括して規定をしておくということだけで十分であるかどうか、これは多分に私は問題であると思います。あるいは数年後あるいは十数年後には、別個に手当てをしなければならぬ時期が参るのじゃないかというふうに考えております。ただいま確実な、的確な予測は困難でございますけれども、何かそういう気持ちがいたしている次第でございます。
  130. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 私も全く同感でありまして、非常にでかいものと小さいものと、名前は一緒でも、それを一つ法律の中で処理していこうとすることは、どだい無理であります。この間も団地サービスの問題で申し上げましたが、非常に急いでやらなければならないこまごました仕事、しかもそれは住民にとってはけっこう大事な仕事であります。そういうこまやかな手当て、社会的手当てですね、それを担当する業界というもの、これは当然一つに区別されて、そして十分に保護育成されなければならない。私はそういう意味で今度のこの法律改正、その趣旨は非常に多とするものでありますけれども、同時に、そろそろ、いま局長がおっしゃられたとおり、大きなものとそれから非常にこまやかなもの、しかし、それがきわめて重要な、国民生活に非常に関係の深いそういう業界、それを二本立ての法律に将来改めていく作業というもの、少なくともそれに対する検討というものを、この法案制定後直ちに準備されていいのではないかというふうな気がするわけでございます。  同時に、先ほどの質問にも出ましたけれども、協同化、協業化の問題です。これはすでに民間で現に始まっております。確かな組織こそとっておりませんけれども、どうもこのままではどうにもならないというのでみんなが何とか会をつくったりして、法の保護を受けないままにあらゆる努力をいたしております。たとえば関西のほうでも、私の知っておりますある会社に出入りをしている数多くの零細業者、これはもちろん登録をとっておりますけれども、しかし、一人一人ではとても大きな仕事がもらえない、けっこうしかし、台風なんかが吹いたりすれば、一番先に走り出していかなければならないのはわれわれだ。うまみがなくて、しかも必要なときにだけ使われる業界、こういう人たちの不満というものは非常に大きいものがあります。そこで随時何か組織をつくって、そして会社のあるいは資材部と話し合ったり、あるいは工務部と話し合ったりしておるわけでございます。これに対しては、まだ具体的に建設省としては大企業に対するその手引き、指導あるいは助言、勧告、そうしたいろいろな導き方をしておられないように思うわけです。私はまず、法律ができなければそれができないというふうなことは、やはりその考え方が古過ぎるのでありまして、そろそろそういうジョイントベンチャーなどを法律できちんと整理し、保護していくためには、一つの試みとしてどこかの個所を選び、会社を選んでこういう協業化のさせ方があるのではないか、また、そういう協業した組織に対しては、このワクだけは必ず仕事を与えてやるべきではないか、まず建設省みずからがそういうことをやってもいいではないかというふうに思うわけなんです。そういう具体的な手の染め方というものは、いまだかつて全然なされていないのか。もしそうだとすれば、この法改正と同時にそのことを始めようとなさいますかどうか、大臣からひとつ……。
  131. 根本龍太郎

    根本国務大臣 先ほど局長から説明された中に、私は吉田さんの考えに非常に共感を覚えるものでございます。本来ならば、この業法をつくるときに、いわゆる一人親方というものをみんなが違った意味で非常に重視しておった。現状のままにおいて、しかも大きな企業の中に伍してどんどん受注できるようにせいということが主体できている。ところが現実にそれをやってみると、実質上は不可能なことなんです。けれども、やはりいま、むしろ何ゆえに大工、左官の方々の賃金は他の賃上げなんかと比べものにならないようにぐっとのぼっていっているかということは、その需要が多いにもかかわらず、それになる後継者がいないということなんです。だから、ある意味においては、現在は一人親方が一つ事業を、三百万なり四百万円の仕事をとってやることが、ほんとうの経済的利益かどうかということも判断すべきなんです。ただ、やはり一つの政治的な運動となりますれば、いかにもこれらが冷遇されて、そしてシャットアウトされたような印象を受けて、全建労あたりのああいうふうな動きになるのです。ところが現実には、ほんとうに一人親方の現実的な人は、もしほんとうに大きく伸びようとする場合には、ちゃんと彼ら自身で企業体をつくったり、あるいは企業組合をつくってやっています。そんなことするよりもむしろ小じんまりと、もう毎日のように、かつての、昔はよく地主とかあるいはある素封家に常雇いみたいにきめられておって、生活の安定もちゃんとしておる人があるのです。むしろそれを望んでおる向きもあるのです。私はそういうふうな意味において、いまの一人親方という名前にとらわれ過ぎて、あれははっきりいえば専門職人です。専門職人としていつでも事業主の要請で、都市では仕事は無限にあると言ってもいいと思うのです。そういった人たちが、そういう職種をもう専門的にこれらの同業組合をつくって、もっとその状況をよくするというのが本来あっていいと私は思うのです。ところが、そういうことよりも、すぐに現状のままにおいて五百万円仕事をさせろ、あるいは一千万円でやらしておるというふうにいくことが、はたして彼らが現実を踏まえてどうかということは、慎重に考えるべきだと思うのです。ただそういうことを言うと、これは結局大きい業者のほうに進出の道をふさいだというふうに一つの偏見を持って見られると思いますから、われわれとしてはそれに手を触れておりません。しかし、現実の問題は、むしろ一人親方というよりも専門職人として社会が要求されるところにどう対応するか、これを法律上、行政上どう保護すべきかということに新生面を開くということが、むしろ社会的にそうした業者の人にも必要じゃないかと実は考えておる次第です。その意味におきまして、この点は、現在これを出しますと非常な誤解を受けまするので、われわれはひそかにこれを検討しておるのでございますが、ただいま吉田さんからそういう提言がなされたことは、私は非常にりっぱな見識だと思って、十分にこれを検討してまいりたいと思います。なお、その際にそうしたものをどういうふうにして助成していくかということについては、まだ実は具体案は私聞いておりません。しかし、これは社会的要請が今後ますます強くなってくる、またある意味においては、先ほど局長から御説明した中で、住宅産業が、特に個人住宅が相当私は大量生産されて、組み立て式のものにならざるを得なくなってくると思います。そうした場合における組み立て業を、工業生産したメーカーそれ自身がやるということはなかなかむずかしいと思うのです。これはビルディングのようになった場合は別ですけれども、そうした場合に、むしろいまのような一人親方みたいな人たちの組み立て工事ということが相当出てくると私は思うのです。  実は、先般プレハブ関係のメーカーの大手筋が私にいろいろの問題で陳情に来た場合に、そうした問題が一つ提起されております。われわれは工業生産する、大きな団地をつくることはできるけれども、アフターケアを全部やるということになると非常な人的要素が必要になってくる。そうした場合に組み立てやアフターケアを、台所のどこがどうなったとか、どこの部品がどうなったということを請け負ってくれる者が出てくるともっともっとコストダウンができる。そのときに私は、いまの一人親方というような方々を、都市においてはそうした方面に組織的にあっせんしてやらなければならぬというくらいに考えた次第でございまして、この点はまだほんの思いつきにすぎませんので、十分に事務当局をしてそういう問題を検討させまして、いままで御指摘になったほかに、いま吉田さんから御指摘なさった新しい面における一人親方というか、専門職人、建設職人の新たなる社会的任務と、そのために必要なる制度上の問題を検討してまいりたいと思う次第でございます。
  132. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 現状に対する大臣の分析や認識、たいへん正しいと思います。ただ、いまおっしゃったようないわゆる一人親方に対してどうするかという考え方を出すといろいろ問題が出るだろうから、誤解が出るだろうからというので、いままで押えてきた。問題は、押えてきたから誤解が出ているのですよ。それでこういう法案を出してくるものだから、いよいよおれらを締め出すのか、こういう心配で運動が展開された。私は、この法律に続いてすぐにその作業を開始さるべきだと思う。問題は、先ほど申しましたように、いかに社会が変わっても変わらない旧来からの伝統の面を引き継ぐ、そういう建設業者、建築業者といいますか、たとえば宮大工なんかそうです。また、ひなびた地域における普通の家屋の修繕、建てかえは、その宮大工と非常に似たような特殊なものなんですよ。これは大企業がやれといってもやれるものではありませんし、かといって、そういうものがなくなる社会ではないはずです。こういうものをどう守っていくか、こういう担当者をどう守っていくか、同時に、変貌する社会、大きな団地ができる、マンションができる、そういうアフターケアをやってくれる大事な職種の人たちを近代的にどう組織化して守っていくか、これは私は間を置かずに直ちに検討を進めていただかなければならないと思います。そこで、その人たちのためには特別の金庫をつくってやるとか、あるいは特別の需要を必ず確保してやるとか、あるいは大会社との結びつきをどのように指導してやるかというふうなことを、即刻検討を急いでいただきたいというのが私の大きなお願いであります。  その次に、いま一つの問題としては、今度の改正によりまして、賃金の不払いがあった場合、下請においてそれがあった場合には元請で責任をとってもらおうじゃないか。とりわけ特定建設業者に対しては、大臣や知事が勧告して、ぜひそのあと始末は責任を持ってもらおう。しかし同時に、先ほども質問、そして大臣のお答えの中にありましたように、その下請業者がいわゆる地域の建設業とは全然かかわりがない建設業者に対して迷惑をかけた場合のあと始末に対しても、多少元請のほうで持ってもらおうじゃないか、こういうわれわれの主張であります。大臣はそれに沿うように運用する、こうおっしゃっているわけでございます。これは民法上は非常にむずかしいデリケートな問題であることは、われわれも承知いたしております。特にこういう責任を負わせる場合、そして大企業がそれの損害をかぶらないようにみずから努力していく場合を考えましたならば、私は当然下請や孫請の場合に、いまよりももっと強烈な系列化が起こってこやしないかという気がするわけであります。一方、今度の法律ではそういう不当な請負代金をきめたり、あるいは不当な使用資材等の購入の強制は禁止する。これは発注者の場合でございますが、注文者の場合にそういう規制をいたそうとしております。ところが、同じようなことが元請者にも指導されなければならない。しかも一面、いま申しましたような責任は負わされなければならない。この辺、相矛盾してくる問題であります。それをどのように適切に指導していこうとなさるかという点をお伺いいたします。
  133. 根本龍太郎

    根本国務大臣 ただいま吉田さんから言われたとおりでございまして、世の中の事態というものは、論理的な正確を期せば期すほど、論理としては鋭くなります。しかし、現実にはこれが非常に実際から遊離してくる。これが世の中の事象なんです。ですから、法律でも、万全を期した場合には守り切れないものになってくるものなんです。  私は先般、これはたしかここでなくて参議院だったと思いますが、こういう論議の場合に、法の欠陥がどうだとか、これに対する保護ができないということをずっと追及してそれを鋭く言われた場合に、結果は逆になりますよということを実は私はお答えしたことがあるのです。それは、たとえばこれとは直接関係ないけれども、アメリカのピューリタンが御承知のように禁酒法をつくりました。禁酒法は人間尊重であり、人間の健康上からも、モラルからしてもいいということでやった結果はどうなったかというと、たいへんなアルコールの密造を激発し、暴力団が横行し、禁酒法のアメリカで一番アル中患者をつくっちゃったですね。そして、ついにこれを廃止せざるを得なくなった。同じなんです。  したがいまして、いま御指摘のように下請並びに他のほうを保護するという名のもとにがんじがらめの責任を元請者に負わせますれば、元請は、そこまでいくならこれは下請に出さない、自分の直轄部隊をつくってやらせるか、あるいは特定したところの系列下請業者をつくって、これを移動させて歩くということになってしまいます。その結果は、地元の大企業の下請としていままで随時仕事をもらっていたのがもらえなくなってしまう。だから、これはあまり厳密にやっていきますと、そういう結果が出てくるのだ。その意味で、法律でがんじがらめにするよりも、行政指導あるいは政令の運用等において、ある程度は現段階ではしかるべきでないかとすら考えておる次第でございまして、こういう点で、やはり立法府である国会が単に論理的な精密さを追及した結果、逆のことになるということは、おそらく一般国民から何万票、十何万票ともらってきた諸先生であるから、そこに私は単なる法律学者とかあるいは立法技術者以外に、政治が立法の最高の権威として認められているゆえんがあると思うのです。そういう意味において、論理的な討論からすれば若干手ぬかりのようであっても、それには私は政治の英知というものが含まれているんじゃないかと思う次第でございます。その意味において、今回の業法については、ある観点からすればなまぬるい、ある観点からすれば少し冷酷だといわれるが、そのようなことはいずれの国の立法においてもあり得ることであって、これを総合判断してどう生かしていくかということであります。法律は若干そういうような欠陥があっても、今後はその欠点というかあるいはまた足らざるところは運用でやっていく。また人間社会でございますから、その運用の結果あるいは改正し、あるいはさらに別のものをつくっていくということの繰り返しが、私は人間社会の実際の姿ではなかろうかと考えておる次第でございます。
  134. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 法律に対する大臣の哲学的見解は承りましたけれども、現実の問題としては、ともかくそういうふうに改正しようということになっておる。そして他人に与えた損害はやはり責任を持ってもらおうというのがわれわれの意思なんです。そこで、これからいろいろその問題を厳に実施してもらわなければならない。同時に、この法律の精神というものは、元請が下請に対して、自分の地位を利用してやるというようなことも当然避けなければならないという精神が盛られているはずなんですが、これに対しては相当周密な指導がなされないと混乱が起こります。また、看板に偽りありということで非常にいろいろなトラブルが続出する。賃金の場合ならば、その把握のしかたはまだわりと明快であります。他のうどん屋を踏み倒したの文房具屋にどうしたのというようなことは、一体どうして把握し、処理していくか。しかし、それはされなければならない。これについてひとつ局長の御見解をお聞きします。
  135. 川島博

    川島(博)政府委員 たいへんむずかしい御質問でございますが、先ほど小川委員大臣との質疑応答を通じて明らかにされました点がかりに修正条文として入りました場合に、それをどう読むか、解釈するかという問題でございますが、下請負人が第三者たる他人に損害を与える場合、これは大きく分けますと二つに分けれると思います。一つは、この下請人と第三者が契約に基づいていたした取引行為、その契約に基づく債務を履行しないために第三者に損害を与えた場合、この場合の例といたしましては、日雇いを雇って賃金を払わなかったというのも入りますし、また下請の場合でございますと、孫請に対する孫請代金を払わなかったという場合も入ります。それから貸し付けた資材に対する支払いを資材業者にしなかったという場合、あるいは飯場周辺からたとえばどんぶりを取り寄せてその金を払わなかったというような場合でも入るわけでございます。これはいわば取引行為に基づく債務不履行による損害を第三者に与えた場合でございます。  それからもう一つは、この契約に基づくものでございませんで、いわゆる民法上の不法行為による損害、これには、たまたま立てかけてあった材木が倒れて道を通っていたおかみさんの頭を割ったとか、いわゆる公衆災害といわれるものでございます。それから使っておった労働者の頭に窓ワクが落ちてけがをさせたとか、これはいわゆる労働災害といわれるものでございますが、これらの人身災害は、いずれも取引によるものではございませんから、不法行為による損害ということになるわけでございます。  そこで、一体これらの場合にこの修正条文がどのように適用されるかということでございますが、まず私どもは、この債務不履行による損害、これについては、第一原則としては行政等の民事に対する介入を定めた規定ではない、つまり債務者、債権者の間の関係における問題は最終的には民法による判断でございますから、これは裁判所の解釈にゆだねるべきであるということが大原則であろうと思います。したがいまして、この債務不履行によって第三者に損害を与えた場合、元請人たる特定建設業者は債務者ではございませんので、法律上の支払い義務はないことは明らかでございます。しかしながら、この下請人の支払い能力がない、また被害者も放置できないほど困っているという場合には、一般的に元請人は下請人よりも経済的に強い立場にあるのが通例でございますから、その場合に、建設業法に特別の規定を設けて、立てかえ払いとかあるいは資金の貸し付けでもいいわけでございますけれども、そういった勧告をすることができることにいたそうとするわけでございます。ただ、この勧告をいたしましても、元請たる特定建設業者が聞かなかった場合に一体どういうことになるのかと申しますと、その場合に、何が何でもこの元請人が払わなければならぬかという問題でございますが、これは法律論といたしましては、やはりそうはならないのではないか。下請人の債務不履行について特定建設業者が何らかの責任がある場合、その典型的なものは、たとえばピンはねをして不当に安い請負代金しか払う約束をしていなかったとか、あるいは代金は正当に払うと約束しておっても支払いが著しく遅延したために債務が不履行になったというように、第三者に損害を与えることについて元請業者に何らかの責任がある場合、この場合には、やはり建設業者の監督責任を追及することも必要かつ適当ではないかというのが私どもの判断でございます。  また、不法行為による損害の場合には、一般的に民法七百十五条の規定によりまして、元請は使用者としての責任を負うのが通例でございます。したがいまして、この使用者責任によりまして、この被害者に対する損害賠償の義務を元請業者自体が負うことが一般的でございます。しかしながら、元請に全く過失がない、賠償責任がないという場合もあり得るわけでございますが、こういった場合におきましても、下請に支払い能力がない、また被害者の現状が放置するに忍びないという実情にあります場合には、やはりこの業法上立てかえ払い等の勧告をすることは可能だろう、かように考えておる次第でございます。
  136. 吉田之久

    ○吉田(之)委員 たいへん微妙な指導を必要とすると思うのです。民事に介入せずして行政指導の中でその実効をあげていこうということなんですから、したがって、この法律が改正されましたら直ちにその事務を扱うべき行政機関の出先に、微に入り細にわたって、読んだだけでもわかるような、あらゆる場合を想定しての指導をしておかないと、将来、まあしばらく経過措置はありますけれども、許可制度に変わっていく、そこで、いや許可するのしないの、営業停止をするとか、いろんな問題が起き、それがまた行政訴訟に巻き込まれるというようなことでたいへんな混乱が起こらないとは限りません。しかし、その問題は正しく処理されていかなければならないというふうなことで、今度の法律は非常に多くの問題をかかえながら適切な運用が進められていかねばならないと思います。したがって、この法律ができたからといって、それで問題が解決したわけではなしに、むしろできたところから問題が始まるということを十分腹に据えられて対処していかれることを強く要請いたしまして、私の質問を終わります。
  137. 大村襄治

    ○大村委員長代理 卜部政巳君。
  138. 卜部政巳

    ○卜部委員 各委員からそれぞれ核心に触れられた質問が行なわれていますから、端的に一、二点だけ質問をいたしたいと思います。  その質問に先立ちまして、調査室のほうからたいへん綿密な資料をいただいておりますが、その中にまだ明確になっていない数字がありますので、その点をまずお聞きしてから質問に入りたいと思います。  そこで提案説明の中にもありますように、登録した建設業者十六万云々、こういうふうなことになっておりますが、その資本階層別の数をまず示していただきたい。これが第一点目。第二点目は、やはり資本階層別の建設業者のいわゆる建設工事の量、これをひとつ示していただきたい。同時に金額を示していただきたい。さらにまた構造別の着工建築高を示していただきたい。この四点をまず聞いてから質問に入りたいと思います。
  139. 檜垣五郎

    ○檜垣説明員 まず資本金階層別の建設業者の数でございますけれども、トータルいたしますと、この調査時点におきましては十五万四千四百二十五ということになっておりますけれども、そのうち個人業者が八万一千六百九十、資本金二百万円未満の業者が三万五千九百五十六、資本金二百万円以上五百万円未満が二万百九、五百万円以上一千万円未満が七千八百二十、一千万円以上五千万円未満が六千九百六十五、五千万円以上一億円未満が七百二十一、一億円以上十億円未満が八百五十七、十億円以上が三百七、こういうことになっております。   〔大村委員長代理退席、委員長着席〕  この建設業者の中には、土木一式業者、あるいは建築一式業者、あるいは大工とか、左官とか、土工とか、れんがとか、鉄骨というふうなそれぞれ専門分野に分かれておりまして、それぞれの分野ごとのいまのような分布もあるわけでございますが、一般的に申しまして、一式業者の占める比率はいま申しましたトータルと大体似たような傾向にございます。若干一式業関係の方が中小業者の数が多いというふうな傾向が出ております。また専門業者でございますけれども、観光事業とかあるいは電気工事業というふうなところは兼業としてそういった事業をやっておるという業者が多い関係もございまして、若干資本金の多いものの数が多いというふうな傾向が出ておるわけでございます。   〔委員長退席、天野(光)委員長代理着席〕  次に、資本金階層別分布に応じます工事壁の分布状況でございますけれども、これは建設工事施工統計によって見ますと、これは実は公共工事と民間工事とを含めました工事量の集計でございますが、これによって見ますと、資本金百万円未満の業者工事量、これは元請による工事量でございますが、この元請による工事量をパーセンテージで申し上げますと、資本金百万円未満のものが二・七%、資本金百万円から二百万円未満が六・三%、資本金二百万円から五百万円までが一一・八%、資本金五百万円から一千万円までが八・三%、資本金一千万円から五千万円未満が一八・八%、資本金五千万円以上一億円未満が四・一%、資本金一億円以上が四八%、こういう統計が出ておるわけでございます。
  140. 卜部政巳

    ○卜部委員 着工別の建築については……。いわゆる構造別の着工、たとえば非木造、木造、鉄筋、鉄骨、この分野について。   〔矢野(光)委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 檜垣五郎

    ○檜垣説明員 ただいま資料が手元にございません。後ほど調査いたしますけれども、数字が出るようでございましたら、お手元にお届け申し上げることにいたします。
  142. 卜部政巳

    ○卜部委員 いま構造別の着工建築単価の問題については資料が出ないということで、大臣はお耳にすることができなかったと思います。だけれども、いまの御説明の中で大臣もふと気づかれた点があろうと思います。それは資本金一億以上という会社はわずかに八百五十七社と、こうなっている。ところが今度は、工事をやる率ということになりますというと、何と四八%、わずか一%に足らないような建築業者が五〇%ものいわゆる建設事業をやっておるというこの状態であります。ここにやはり問題があろう。さらにこの問題というものは派生的に、構造別着工のそれを示していただけばわかりますが、一九六〇年の時点におきましては、非木造の場合はこれが——私のほうから教えるというかっこうになりましたが、ちょっと言わせていただきたいと思いますが、木造が三百八十一万平方メートルという状態にあったものが、今時点におきましてはぐっと木造のほうが下がりまして、これの半分に満たないという数字なのです。それと同時に、鉄骨並びに鉄筋、これを含めておる非木造建築というものが異常に上昇を示している。こういう現状にあるわけであります。そこで、先ほど申されたこの統計をながめてみますると、一番パーセンテージが少ないと言われておるところの人々と、さらに元請といわれておるいわゆる五百万から千万の中小企業ですね。まあ各地方にありましたならば一流でございましょうが、東京あたりに出してみれば二流、三流というところ、こういうところのものがいまたいへん苦しい立場に追いやられておる。と同時に、いまの一人親方という人々もこれはたいへんな苦しい目に追いやられておるということが、この計数の中ではっきりしておると思うのです。上のほうは——先ほど来根本大臣は、あんまり法律を云々すると、理詰めにやると、きびしさが増した中で、かえって逆現象を起こすのではないかというようなことをおっしゃられましたけれども、そんな心配はない。もう大企業なんかは、あそこの第一議員会館でもそうでしょう。さらに各会館なんかをつくるのにも、二億のリベートをもらっています。そして下請にまかしている。まあ私はその会社の名前は言いませんよ。そういうふうにまかしておる以上は、この人たちは何ら痛くもかゆくもない。ただ、ほんとうに困っておるのはそうした下請業者とでもいいますか、そういう人たちが困っておる。ところが、先ほど吉田委員のほうからお話しになったように、そうは言いながら、どんどん減ってきてはおるものの、木造建築というものの重要性が、やはり地方に行くとこれがまだたくさんあるのです。そういう連中がまた今度は、困ってはいるけれども、この数というものは総体的にあまり減らないのです。減らないとすると、下からぐんぐん突き上げられ、上からも押えられるということで、そういう二流、三流の元請業者というものは何をねらっているかといえば、やはり系列化です。そういう一人親方を自分の企業に入れていきたいというのが彼らのねらいだと思うのですね。そのことは別問題といたしまして、そうした問題の中で、いま出されておる問題は、やはり各委員から指摘をされたいわゆる許可制の問題になる、こう思うわけであります。許可制の問題は、もう皆さん方からるるおっしゃられましたから、私はその点強調することを避けたいと思いますが、ただ大臣答弁の中でやはり気になることがあります。そのことばはいわゆる意見を尊重し、善処をいたします、こういうことであります。しかし、将来この物価高云々があることについて、それがスライドされるもの云々ではありません。こういう答弁のしかたでありますが、しかしながら、この適用除外の問題についての三百万、さらには専門職の百万という問題については、この委員会においてはそれはもう確認をされたものだ、いわゆる確認をしてもよろしいという答弁をしていただかないと、やはり善処するということでは何かぼやっとしてしまいますから、その点はひとつ明確にしていただきたい。そういう点でまず前段大臣からそのことばをいただいて、漸次進めてまいりたいと思います。
  143. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘のように、私は、スライド制をそのままこの運営にあたってやるということは言えないが、しかし本委員会で、国会のほとんど与野党一致の意見として修正されるということになれば、それは当然それに従ってわれわれは善処をするということであります。ただ、いまはそこまではっきりと、これは理事懇談会でこういう話があるというだけの段階でありまして、しかも先ほど来これに関連して出てきた問題は、スライド制が一例として出てきたものだから、それまでも私が認めたということになりますと、これは非常に重大な問題になりますので、念のために先ほど申し上げた次第でございます。したがいまして、いま御指摘になりました点は、全会一致でこれが御決定になりますればそれに従います。
  144. 卜部政巳

    ○卜部委員 いま大臣のおことばの中で、それは理事懇談会ぐらいに出たものであるということでございましたが、いますでにこうして、各委員の討論がここに集中をしておるわけでありますから、だからその時点ではこれを確認をして、物価云々という問題については、それは当然言いたいこともありますが、しかし、それとは一応切り離して確認をしていただきたい。その点はひとつ委員長よろしゅうございますね。  次に、各委員の中から指摘をされておりますが、同時に調査室のほうから出ておりますように、国民総生産高、まあ額でございますが、三十五年には十六兆云々ということになっておりますが、ところがことしになりますと、四十五年では七十二兆というかっこうになっている。それと飛躍的に、建設業者の投資額につきましても二兆五千億から十四兆へとぐっとのぼっていくわけですね。それに並行して、根本建設大臣が何としても物価を押えるのだ、押えるのだと言っても、佐藤総理はやはり言っているのですね。国民総生産量が上がっていけば、物価がそれに並行して五%や七%は上がったってやむを得ないということを総理は言うのですよ。そういうかっこうになってくれば、各委員がおっしゃるように、そういう心配があるからやはり将来も云々ということを指摘しただけであって、いまの現実のこの法案を審議する段階においては、ぼくはいまの百万円という点をまず明確にしていきたい、こういうふうに思います。よろしゅうございますか、大臣
  145. 根本龍太郎

    根本国務大臣 よろしゅうございます。
  146. 卜部政巳

    ○卜部委員 そこで、話が一人親方の問題に若干なってきましたから、ついでに一人親方の問題を申し上げたいと思います。厚生省のほうからも来ていらっしゃいますね。——厚生省の方はあとからということにいたしまして、先ほどわが党の松浦委員から質問をいたしたときに、島根県の不適格者の排除の問題について触れておりました。その点について厚生省のほうはいろいろと答弁をしておりましたけれども、その前に私は、建設大臣に明確にしたいことがあるわけです。というのは、実は私は島根県の出身ですから島根県の問題を申し上げてみたいと思いますが、現実に、局長は、これで登録制が許可制になったからその許可制というものの利点を強調されて、登録制との違いという問題についていろいろと論議の中でも明確にされてきましたけれども、ただ困ることは、いまの日雇い健保の擬制適用の問題についても、現実に島根県の場合等におきまして、たまたまにして一人親方のところに勤務をした、そこに行ったところが、それは三百万の資本金があるという登録がなされておるじゃないか、だからそういうものについては適用除外であるという通達が出されておるわけであります。ですから、建設大臣といたしましては、多少の問題点はあろうとはいいながら、許可制になった場合にそういうものが排除されてくるという冷厳な事実について、関係省との打ち合わせの中で明確な位置づけを行なっていただきませんと、ただ自分たちの建設省自体としては存ぜないことですから許可制にすればいいということになるけれども、そういう被害がここら辺に出てきておる。この点についてひとつ建設大臣も十分理解をしていただいて、閣議の中でも十分に発言をしていただきたいと思います。  そこで、建設大臣のほうはさておきまして、厚生省の方に出ていただいて答弁をしていただきたいと思います。実は松浦委員の質問の中に、許可制になったからといって今後そういうことはございませんということが言われておるわけでありますが、これは具体的に名前をるる申し上げればよろしいのですが、百四十といまここに数字が出ているわけですね。ところが、島根県下の不適格者排除通告の名をもちまして、島根県厚生部保険課長から、この皆さん方の組合の中には当然適用にならない人までも適用をしておるという問題が提起をされておるので、この点については十分な注意をしていただきたい旨の文書が出ておるわけです。これを調べてみますと、たまたまにして登録した資本金三百万、こういうことをせなければ登録されないという業者の一人親方の考え方もあったのでありましょうが、登録用紙を出しておる。この登録用紙を見てそのものずばりで不適格者として排除通告をやってきておるという事実があるわけであります。課長は、そういうことは今後いたさないということでありますが、この点について、島根県は御承知のように過疎の県ですから、これは過疎を促進していくような措置だと私は思うのです。ですから、まさか島根県の厚生部がこういうことを考えたのではなくて、厚生省のほうからの強い達しがあったのではないかというふうにも考えるのですが、その点はいかがなものでしょう。
  147. 正田泰央

    ○正田説明員 ただいまの先生お尋ねでございますが、まず基本的な事柄といたしまして、私どもは健康保険と日雇い健康保険を現業庁として実施を所管いたしております。厚生省のほうで国民健康保険の所管をいたしております。これは従前から長い間の歴史がありまして、被保険者の資格につきましては、たとえば健康保険では使用関係が必ずあるかどうか。日雇い健康保険で申しますと、日雇い労働の使用という実態があるかどうか。国民健康保険で申しますと、当該市町村に居住の実態があるかどうか。こういうことが保険のベースになっておりまして、これの適正という問題については常々各保険制度全般が留意いたしているところでございます。  そこで、ただいま先生が御指摘ございました通達という問題でございますが、これにつきましては、健康保険、日雇い健康保険両方含めまして、従前から適正化についていろいろ指導の通知をいたしておるわけであります。  それから擬制適用のことにつきましては、その一環といたしまして適用の適正化ということを、同じく当然のことながらうたっているわけでございます。ただし、繰り返すようでございますが、建設業法登録という事実をもちましてその適用の排除をしろとかいう指導は一切いたしておりません。ただ、現実に御指摘のような事態があるといたしますれば、特に資本金三百万円とかそういう角度だけで一応取り上げて指示しているとすれば、やはり若干問題があると私は率直に思っておる次第であります。ただし、島根県の例でございますが、私どもが承知しております範囲では、建設労働者はいろいろな組合がございますが、全体ではいろいろな適正でないケースもありまして、これについては先ほど先生がおっしゃった数字とは若干違いますが、一応排除あるいは不適正としてはどうか、こういう話をしております。また、いま御指摘数字につきましては、現在私どもが承知している範囲では、現地の保険課と組合の方方とお話し合いになって、両方実態について意思統一をして話を進めている、こういうふうに承知しております。  先ほど申し上げたような調査のしかたその他については、私ども、各団体からのお話があったことを聞く機会がかつてございましたので、その後いろいろな機会にそういったことについて十分注意するように指示いたしておりますし、また今後もそういうことは十分留意いたしたいと思っております。実態につきましてはさらに私どもももう少しいさいを承知いたしまして、適正な方向で処置するように考えさせていただきたいと思います。
  148. 卜部政巳

    ○卜部委員 課長指摘されたように、地元におきまして、幸いにしてこの適用排除の問題については了解に達したということについては私はたいへん喜んでいるわけですが、ただそれが、ここにもありますように三百万円という形で努力をしただけに、こういう排除の問題が出たということになりますと、これが許可ということになりますと、いよいよこの締めつけが今後きびしくなるだろう。こういう点で、これは遠い話ではない。もうすでに去年発生したような問題でもありますので、また、ここに法案がかりに通過をする場合に、許可制になったとすれば、当然またそういう締めつけが行なわれてきたときにたいへんだ。ですから、午前中にも御答弁になったように、許可制になったからといってそういうことの排除をするということはないとは言いながらも、なお念には念を入れて、こういう事例もあるのだからひとつよろしくその指導につとめていただきたいというのが私の願いでございます。これが第一点。  それから第二点といたしまして、これはこういう登録をしたということだけでそれが適用排除の通告を受けたということにもあるわけでございますが、今度は山口県の場合におきまして出てきておりますものは、三人を使用している、こういうことをただ聞き込みでもって聞いてまいりまして、そして確かに三人を使用しておるわけでありますが、登録も何にもしていない。こういう業者に対しても、そしてまたその日雇いの人々に対しましても適用除外であるというような措置がとられておるわけですね。不適格者名簿などといってこれが出されておるような現状なのです。ですから、ともかく率直な言い方をしますと、これは厚生省のほうには関係がないわけでありますが、今日の赤字保険とでもいいますか、保険赤字とでもいいますか、そういうものと相呼応して、労働力不足の中でそういうものをいよいよ強めていくということになりますと、島根県などのような過疎の県でありますと、大阪やそこら辺の京阪地帯に行きますと案外締めつけがきびしくないものですから、こんなところにおるよりも、どんどん京阪神のほうに出ていったほうがよろしい、こういう結果になりかねないわけです。ですから課長、この点はひとつ十分配慮をしていただいて、許可制になったからといって、この委員会の中で論議をされておるように不当な適用除外をすることのないようにという通達を、そしてまた各県にそういう指導を厳にしていただきたい、このことを私はお願いをしておきたいと思います。よろしゅうございますか。
  149. 正田泰央

    ○正田説明員 建設業法許可制になった場合にどうかという、またそういうことによりまして日雇い健保の擬制適用の適正化がさらに不当にきつくなるようなことのないように、こういうお話でございますが、これは私どもまことにそのとおりに考えております。建設業法制度登録制、許可制のいずれを問わず、私どもは健康保険制度の実施といたしまして、昔からやっておりますような適正な運用をやっていきたい、こういうふうに考えております。  さらにまた、山口県のお話がございましたが、これはやはり健康保険との競合の問題いろいろございまして、確かに問題のある事柄かと思いますが、実態につきましては、中央のほうではつまびらかにしておりませんのでよくわかりませんが、先ほども申し上げましたように、いろいろな課長会議その他を通じて、諸団体の御陳情をいただいた以後、特にこういう問題については慎重に配慮するように指示いたしております。また機会を見てそういうことの指導をさしていただきたい、こういうふうに考えております。
  150. 卜部政巳

    ○卜部委員 お聞きになっておわかりかと思いますが、今度許可制になったとしても一人親方も許可になるような状態になります。そうすると、一人親方で許可を受けたという場合に、すでにおまえは事業主であるという、そういう位置づけというものが行なわれて、そこで国保でやれ、いわゆる労働災害というものないし労働者としての受けておる保護というもの、そういうものが全部排除されるというようなことになりかねないと思うのですが、その点はどうですか。
  151. 正田泰央

    ○正田説明員 私ども擬適制度は、繰り返すようでございますが、一人親方ということで制度というものを設けております。一人親方という実態と、その制度の中に考えられますところの労働の実態がありさえすれば、建設業法その他のいろいろな制度の変換がありましても、その実態がございますれば、そういうことについての扱いは変わらない、かように考えております。
  152. 卜部政巳

    ○卜部委員 大臣、いまお聞きのように、先ほどもお話を申し上げましたように、率直に申し上げて、こうした登録制によっても、目に見えない労働者にしわ寄せをされておるもろもろの不利といいますか、そういうものがあるわけなんです。それが今度許可ということになってくると、そういう締めつけもさらにきびしくなりかねないという状態に対して、私はいま明確にしておいたわけでありますが、この点やはりこういう問題等建設省といたしましても十分な配慮をしていただかなければいけないのじゃないか、こういうように考えますから、その点については、これからのこうした許可制と相関連して、厚生省の指導の問題等についても十分に連絡をし、ある意味におきましては建設省が出した法案でもありますだけに、その人たちを保護する意味において、ことばはきびしいのですが監視をするというのですか、ひとつ連携を保っていただきたい、こういうふうに思います。よろしゅうございますね。  そこで、続いてでありますが、ちょっと話が飛び飛びになってまいりましたけれども、先ほどの資料に示されたように、ほんとうに一億円以上の大企業というものが約半数以上の事業量といいますか、建設のそれを持っておるわけなんでありまして、そこで木造建築というものの数字というものが、過去十年間に半分も減退をしておるというふうな現実なんであります。そこで建設業者の問題でありますが、大企業については、大都市再開発及び流通近代化資金だとか、さらにはこの開発強化資金というような、そういう資金がここに出されて、大企業には有利な融資が行なわれておるわけでありますね。そういうふうな観点に立って、現実にいま大企業、一億円以上の資本者と一千万円までの資本者との間に、いろいろとトラブルが起きておるわけであります。そのトラブルというのは、少なくとも今日の機械設備、そうしたものを持っていない業者に対しては指名が来ない、こういうふうなことからいたしまして、その設備資金を過当に流用してやっていくために、倒産が続くというようなこともあるわけでありますが、そうした面において、こうした融資の制度をただ一億円以上の大企業にのみ融資をするのではなくて、五百万円以上、一千万円以上という企業に対しても、これを融資をするという制度を適用してはどうかと思うのでありますが、いかがなものでありましょうか。
  153. 川島博

    川島(博)政府委員 建設業を近代化いたしますためには、省力化工法ですね、その一環として機械装備を高めることは、一般的にはこれは必要だろうと思います。しかしながら、中小業者におきましては、なかなか資本装備をみずからの資本力で行なうということは困難でございます。そのためにいろいろな優遇措置が講ぜられておるわけでございますが、たとえば中小企業近代化資金等助成法によりますと、機械の購入資金といたしまして、中小企業に対しましては、一企業八百万円を限度といたしまして購入資金の二分の一の相当額を無利子で融資する制度がとられております。しかしながら、やはり今後の建設機械を個々の業者が保有するということでは、なかなか稼働の面で不経済な面もございます。したがいまして、今後におきましてはリース制度の活用を考えるということも一つの方法でございますが、いわゆる中小企業協同組合法によります協同組合を設立して機械を共同保有する、あるいは業者間で手持ちの機械を相互融通利用する、こういった制度によりまして資本負担をなるたけ軽減していくという方向で中小業者を指導してまいっておりますし、また、今後も指導していきたいというふうに考えております。
  154. 卜部政巳

    ○卜部委員 率直に申し上げて、建設の工事量に占めておるところの公共工事の割合というのが全体の三分の一だ、こういうふうなことをいわれておるわけですね。率直にいって、この公共工事なんということになりますと競争入札、こういうかっこうになっておるわけでありますが、実際は指名入札、こういうかっこうになっているわけです。そこで私たちも十分配慮しておるわけですが、また十分な関心を持ってこの状態を見ておるわけでありますが、実際は競争入札に参加をさしてもらえない。参加をさしてもらえないから、ひとつ設備投資をしようじゃないか。さらにはまた受注工事をやろうじゃないかというような、こういうようなかっこうで装備が行なわれて、ずいぶんと無理をしておる。そして、この資料の中にもありますように、倒産件数というのが、大臣のことばではありませんが、ふえると思えば減ってくるというような、こういうような状態であろうと思うのであります。ですから、そういうようなものについて、政府がやはり機械を貸し与える制度をつくるとか、そうして無理にそうした背伸びをしないような措置をとってやってしかるべきではないか、こういうふうに思うわけでありますが、この点についてはどう思われるか、ひとつ御答弁を願いたいと思います。
  155. 川島博

    川島(博)政府委員 お答えいたします。  確かに現行の入札制度におきましては、機械の保有ということが一つのメリットに数えられておるわけでございます。しかしながら、先ほども御答弁申し上げましたように、機械の装備率を高めるということは必要でございますが、それをみずからの事業用資産として保有する、保有の多寡によって審査上メリットを与えるという従来の行き方については、私どもはこの際やはりひとつ考え直す必要があろうと思います。それは先ほど申し上げましたように、共同保有あるいはリース制度その他やはり中小業者の経済的な負担を少しでも軽減する、軽減しながら資本装備率を高めるという方向で考えるべきであろうと思います。その際に、自己保有ということにメリットを与える。これは現行でも大体全体の五%以内という程度のウエートしかとっておりませんけれども、それにいたしましても、この制度を今後そのまま続けるということには若干問題があろうと思いますので、この改善につきましては、現在前向きで検討いたしておるわけでございます。
  156. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうした競争入札の中で大きな被害が出てきておるわけですね。それで現実には、大臣のことばではありませんが、あまり締めつけをやるとかえって逆現象が出てくるというようなお話がございましたけれども、たまたま午前中の大臣のことばの中に、台風手形などということばが出てまいりましたが、さらにそれに付加して、お産手形なるものが出てきておる現状なんですね。お産手形、言うまでもない十カ月というような、こういうことが平然と行なわれていますし、それから、関連事業でございます電気、そしてまた冷暖房の設備、そういう問題に対する下請業者といいますか、そういう業者に対するリベートの要求なんというものが公然と行なわれているような、こういう現状ですね。そういう問題について、やはり率直にいって何か制肘を加えていく制度を、その基準というものでも持たなければならないというふうに感ずるわけなんですが、その点はどうでしょう。
  157. 川島博

    川島(博)政府委員 元請業者が下請業者に請負をさせます場合に、俗に一括下請さしてピンはねをするというようなことがいわれておりますが、これらはやはり工事代金が原価を割るような不当に安い代金で落とされるという場合に問題が生ずるわけでございます。今回の法律改正案におきましては、こういった不当に低い価格による下請代金を定めることを禁止をいたしております。またそういう事実が発見されますれば、これは独禁法の規定にも触れるわけでございますので、建設大臣なりあるいは都道府県知事あるいは中小企業庁長官がすみやかに公取委に措置請求をする。その事実が明らかになりますと、公取委は勧告あるいは差しとめ命令をするということによってこの是正をしよう、こういう仕組みになっております。  また、下請代金の支払いの方法でございますが、従来、御指摘のようにお産手形というような非常に長期な手形で支払われる例がまれにはあったわけでございますが、今回二十四条の五の改正におきまして、特定建設業者が注文者となった下請契約におきましては、この下請業者から申し出があった日から五十日以内にこの下請代金を払わなければならない。しかもその代金の支払いにつきましては、当該下請代金の支払い期日までに少なくとも一般の金融機関、銀行でありますとかあるいは信用組合等の一般の金融機関によって割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならないという規定を入れまして、そういった長期の手形で代金を支払うということを禁止をいたしておるわけでございます。これにつきましても、違反がありますと公取委に通報いたしまして、公取委が所要の処分をする、こういうたてまえにいたしまして、御指摘のような不安をなくすように法律を改正いたしております。
  158. 卜部政巳

    ○卜部委員 いまの局長答弁の中で、一般金融機関が割り引かないような手形を発行してはならぬ、こういうことでありますが、それは確かに理屈としてはよくわかるわけですね。ところが、現実に金融機関としては、歩積み両建てというのをやるわけですね。そういう点はどういうことでしょうか。それも禁止するわけですか。
  159. 川島博

    川島(博)政府委員 いま御指摘の点は、建設業法上は、そういう長期の手形で払ってはいかぬということでございますが、歩積み両建ての問題は、この法律の問題とは別の問題、問題点はないとは申しませんけれども、これは別個の問題であろうと考えております。
  160. 卜部政巳

    ○卜部委員 確かに法案とは関係ないのですが、一般の金融機関に持っていけば必ずやられるでしょう。関係はないといいながらも、現実に手形を割ってくださいといえば、当然あなたのところはこれだけの金は貯金しなさいといわれますよ。局長は五十日以内と二十四条にきめたと言うけれども、現実に各企業なんかでも歩いてごらんなさいよ。大蔵委員会あたりでそういう問題を取り上げて、それでそんなことがあっちゃいけないということを、中小企業の連中は当然喜んでくれるかと思ったら、そういうことは追及はやめてくださいと言う。なぜかというと、そういうような手形割り引きの問題について、お産手形だとか台風手形だなんということを言うと、われわれとしては今度は取引をしてやらぬというような、こういうことで逆に締めつけがくる現状なんです。でありますから、今日いま五十日だ云々なんということを言っておっても、あまりせんさくが過ぎるのじゃないかと言われればしようがないわけでありますが、もし五十日に払わなければこうである、これに対する問題点指摘をしながら、さらに金融機関等についても、歩積み両建て等については、これは行なわないのだという明確なものを出してやらないと、私は同じような繰り返しが行なわれてしまうのではないかという心配があります。ただ法文上ではりっぱです。なるほどこうだ、五十日だ。それから一般機関の割り引きがされるような手形でなければならぬというのは、スムーズにいきますけれども、現実の問題はそんなものではないのじゃないか、こう思うのですね。この点はどうですか。根本大臣のほうが閣僚としてそういういろいろな問題にぶつかっていると思うわけですが、そういう問題については大臣はどう思われます。
  161. 根本龍太郎

    根本国務大臣 大蔵省においても、歩積み両建ては厳に禁止しておるという現状でございます。いま御指摘になりました点は、それにもかかわらず現実にはあるんだということでございます。これを建設業法との関係においてどうせいということは、これは問題にはなりますけれども、ちょっと困難ではなかろうかと思いまするので、そうした歩積み両建てを行なわないように、さらに一そう大蔵省等にも連絡をいたしたいと思います。
  162. 卜部政巳

    ○卜部委員 と同時に、いまの手形の問題なんですが、不渡り手形などを持ってくるような業者は、このごろおらぬようになりました。しかし、何といっても締めつけをするのは、おまえが五十日以上だ云々というふうなことを言うならば、これからはおまえのところには発注しないぞ、下請もやらせないぞという締めつけがくるならば、五十日だなんて言わざるを得ないような状態です。質問されても調査されても、いや五十日以内の手形をもらいましたという答弁をしいられるような情勢に、ぐんぐん締めつけてくる大企業のやり方については、やはり何かメスを入れなければならぬ。メスを入れるについては、やはり事務手続の中で基準というものをつくり、さらにはそれを監視する一つ制度というものをつくらなければいけないのではないだろうか。そうせぬと、ただ建設業法で守ってやるという趣旨が、現実にはそれが守られない。うやむやの中でまた下請が困ってしまうという状況が出てくるわけです。この点についてやはりそういう基準みたいなものをつくってはどうだ、こう思います。
  163. 根本龍太郎

    根本国務大臣 論理的にはそういうことがいわれますけれども、現実にしからばなぜそういうふうな非常な不利な条件にもかかわらず、下請、孫請まで出てくるかというと、登録中小零細企業がほとんど無限に近いほど出てきますから、一たん業界に入った以上は、何としても、自転車運転でも何であろうとも受注をしなければならないというところに問題があると私は思うのです。これがちゃんと整備された許可制度で、条件が整って、資産も技術もありますれば、そういう弊害がだんだんなくなってくるということでございます。これは一つ条件だけで全部を満足させることは困難だと思いますけれども、そうした意味等も含めて今回は業法許可制度にしないと、もういまのように登録制度でありますと、一定の金額を納めて登録すれば、あとだれでもやれるのだということに、(「大臣、そうはならぬぞ」と呼ぶ者あり)実質上そうなるのです。そこに問題があるのでありまして、やはりその点をも押えて、かつ下請業者なるものが自分を自分の力で守り得る条件を、やはり制度上つくってやることも必要であろうと考えておる次第でございます。
  164. 卜部政巳

    ○卜部委員 それで大臣、私は先ほど来から各委員に対する答弁を聞いていて、やはり若干問題があるなという感じをするのはいまのことばなんですね。というのは、いまの許可制にしたというこの問題が、大臣考えておるのは一人親方という孤立をした現状では、これからの産業に立ちおくれがくるから、少なくとも協業化、そしてまた何といいますか協同体をつくり上げて云々と、そのためには許可制のほうがいいという、このことばはある面においてはいいです。しかし私は、やはりその中に大きな落とし穴があるような気がしてならないのですね。たとえば大臣は、いまのような一人親方にこれからのプレハブなんかの組み立ての工事をやってもらいたい、こう言いますけれども、しかし、先ほど来から論議されておるように、実際問題としては優秀な職人が多いし、地方にいきますと、やはりそれでなければならない建物、そしてまた今日の住宅なんかもそうですね。たいがいが一人親方によってつくられてきておるような現状なんですよ。島根県なんかもそうですね。五百万とか一千万くらいの、二百人も三吾人ものという建築業者は全然ありません。たいがい一人親方がこつこつやっておるのが現状ですね。そこで私の言いたいのは、なぜにそういう問題が出されてきたかという背景みたいなものも考えてみたいと思うのです。それはやはり先ほども申し上げたように、そうした人々が着実な職場を持ち、そういう現在の着実な地位というものを確保しておるということは、これは今日の労働力の不足の中ではやはり問題があるのじゃないか。だから、これを吸収していこうというようなねらいがあるように私は見受けられてしかたがないわけです。ですから、その面ばかり大臣が強調されるということについては、私は若干の抵抗を感ずるわけです。それよりもむしろいまは、そうした一人親方なんかに対するあたたかい配慮、特殊技能者として、これからの日本民族の、またそれの家屋を保存していく人々に対する保護政策こそ必要なのではないだろうか、私はこういうふうに思うわけです。しかし、それは押し問答でありましたし、さらにいまの問題の核心にそれることでもありますから、もとに戻すといたしまして、ひとつありとあらゆる機関を通じ機会を通じて、いまの歩積み両建てをはじめとする、そしてまた台風手形だとかお産手形だとかいうような現状でもって下請を苦しめていくようなそういう制度というものは何としてもひとつ排除する方向に持っていってもらいたい。また、そのことがもしかりにわかったというふうなことがあったならば、近代化資金の融資を差しとめるとか、そういうような方向の懲罰をやはり行なってもらわなければいけないのじゃないか、私はこういうふうに思います。  次に、先ほど来から論議をされておりましたが、そういうふうな問題と関連をして基準をつくればいいじゃないか云々ということからいたしまして、この基準の問題について、同じくひとつ許可制の問題についても私は基準を設けてはどうなのかということを一つ指摘したいと思うのです。許可制の大きな理由というのは、大臣がるる指摘をしておるように、不良業者を排除する、こういうことではあるわけでありますが、少なくともまじめな既存の業者、さらには新規業者を保護育成をするというのがたてまえだとするならば、それに対するところの行政官庁の相当職員がこれを公平な審査をするという基準がなければならぬのじゃないか、私はこういうふうに考えます。その面においても事務処理の基準というものをつくる。それからまた、先ほど来からも出てまいりましたけれども、悪徳業者というものを追放するために通報制度というものもやはりつくってはどうかと思うのでありますが、どうですか。
  165. 川島博

    川島(博)政府委員 御指摘のように、今回の許可制度の実施にあたりましては法律にかなり詳しく基準を書いたつもりでございますが、何と申しましてもこまかいところまで全部書くというわけにはまいりません。したがって、許可制度の実施にあたりまして末端の職員の取り扱い方に不公平な処理がなされるということは厳に戒めなければなりませんので、御指摘のようにできるだけ詳細かつ具体的な事務処理基準を定めて、そういう末端における混乱が起こらないように処理をいたしたいというふうに考えます。  また、不良業者を排除するための手段として行政庁間における相互通報制度が必要ではないかという御意見でございますが、全くその必要はあるというふうに考えますので、本法律が成立いたしました暁には、この行政庁間の相互通報制度をぜひ確立いたすように行政指導をいたしたい、かように考えております。
  166. 卜部政巳

    ○卜部委員 基準だ、やれ制度を設けたらどうかということばかりを申し上げておるわけでありますが、おまえはえらい悪い点ばかりを指摘をしておるようだということで恐縮でございますが、先ほども申し上げたように、下請なんかに対しても不当に安い下請を押しつけるとか、そういうふうな問題等についてどこまで、じゃチェックをするのかという問題があるわけです。だから、そういう問題についてもやはりチェックをする機関というものが当然必要じゃないか、こういうふうにも思うわけでありますが、いかがなものですか。
  167. 川島博

    川島(博)政府委員 下請代金が適正であるかどうかということは、本改正法を施行するにあたりまして非常に重要なことでございます。しかしながら、特に公共工事におきまして請負代金を定めます場合の方式につきましては、資材とそれから労務並びに歩掛かり、この三つの要素が決定的に重要でございます。これにつきましては、先ほど午前中の御質問にもお答えいたしましたように、積算に使用する労務単価については来年から抜本的な改善をはかることに相なっております。資材につきましては、従来から民間の調査機関が実施しております時価を採用することになっております。歩掛かりにつきましても標準的な歩掛かりが定められておりますので、これらの三要素を使いますれば、ある程度機械的とまではいかないといたしましても正当な代金、適正な代金というものは特別な機関を設けなくともはじき出せるような仕組みになっておりますので、特にそういう機関を設けることはただいま考えておりませんが、なおこの工事代金の適正な額の積算方法につきましては、改善をするところが全然ないとはもちろん言えませんので、今後必要な点については改正を加えていきますれば、特にそういう専門の機関を設けて判定をする必要はないのではないかと考えておるのであります。
  168. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうするとあれでしょう。現実にはそういう機関を設けないというけれども、手探りでやるということですか。結果的に私はそうした機関を設けていいものであれば、その中に積極的にそれを設けていくという姿勢があってしかるべきだと私は思う。その点で、やはり建設省がたまたま業界と相結んでおるのではないかなどといういやなことばをときどき聞くわけでありますが、そういうことのないような配慮、そして疑惑のないような方向に向かって裏づけをするということがなぜ悪いのか、この点はやはり明確にしながら、いいものは制度として設けていくという方向が正しい、こう思うのです。その点は考慮するという考え方はないのかどうか、もう一点指摘をいたしておきたいと思います。
  169. 川島博

    川島(博)政府委員 この工事の予定単価につきましては、担当者一人がかってにはじいてきめるというものではもちろんございません。部内におきましては、数次の段階を経てチェックをいたしまして客観的にきめることになっております。ただ、それを第三者的な機関をつくってそういった適正な価格というものをきめるということは必要がないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  170. 卜部政巳

    ○卜部委員 押し問答になりますから、その点は省略しますが、しかし、実際問題として、常識的に考えても不当なものだというふうなことを感ぜざるを得ないような状態というものが出てきても、それがスムーズに進行しておるという現状もあるわけですから、その点については、やはりこれからせっかくこの建設業法というものが出された以上は、これを充実していくという配慮、当然つくり上げていくべきじゃないか、こういうふうに思います。そして次に進んでまいりたいと思います。  このごろ電気機器、それから商社なんというのがこの建設業に進出をしてきていますね。ナショナルとか何とかいうような電気会社みたいなものが建設業界のほうへ進出をしておるわけでありますが、そうした問題等々、建設業界、大手の既存の業界との間にずいぶんトラブルがあるわけであります。これは受注調整の問題になると思うわけでありますが、これからの建設生産、こういうもの等々と関連をいたしまして、これの生産のいわゆる受注調整の問題についてはどういうふうに考えられておるのか、ひとつただしてみたいと思います。
  171. 川島博

    川島(博)政府委員 現在の登録建設業者の現状を見ますと、建設業を専業にしている業者が約八割、残りの二割が他産業から建設業に進出をしてまいりましたいわゆる兼業業者でございます。他産業から進出してまいりました兼業業者はおもに下請工事業者でございまして、職別工事業にありましては全施工高の約五割、設備工事業においては約六割弱が、これら兼業業者の施工によるものでございますが、総合工事業にありましては、全施工高の六・六%程度しか兼業業者は施工していないわけでございます。建設技術がだんだん高度化してまいりますし、工事自体が多様化、複雑化してまいります。また工場生産等もだんだんと盛んになってまいりますので、他産業が時代の要請によりまして建設業に進出してまいりますことをとめることはできない、進出はやむを得ないというふうに考えるわけでございますが、ただ、全く施工能力を有しない商社的な業者が、もうかるからというので建設業に進出する、そして一括下請でピンはねをするというようなことは、建設業の健全な発展にとって障害になりますので、そのようなことは厳に取り締まってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  172. 卜部政巳

    ○卜部委員 しかし、兼業者と今日の既存の業者との間に現実にトラブルが起きておるでしょう。現実にはそれが大きな問題になっているでしょう。そういうもののいわゆる受注調整の問題がやはり問題になっておるだけに、その点をどうするのかということなのでありまして、現実に問題になってない、ただ下請だけやっておればいいという問題ではない。商社などが大手を振っていま進出してきておるわけでありますから、その問題で調整というものをどうするのかということを質問しているわけです。
  173. 川島博

    川島(博)政府委員 従来の登録業者でございますと、商社でございましても、土木または建築関係技術者が一人おれば、だれでも進出ができるわけでございました。その弊害を改めますために、今回経営者についても五年以上の経営の管理責任者としての責任を問うておるわけでございますし、また技術者についても、各営業所ごと専任技術者の配置を要求しているわけでございます。そのようなことで、従来の登録から見ますと、商社等の他産業からの進出はなかなか要件がきびしくなりましたから、それだけ進出は困難になったというふうに考えますが、なおその要件を満たします場合に許可を与えないということはもちろんできないわけでございます。  ただいま、いろいろトラブルがあるかというお話でございますけれども、具体的に私はそういう事例を耳にしておりませんけれども、いやしくも、現状でも建設業として登録を受けた業者は、少なくともそういった技術者を持ってある程度工事の全体の管理運営に向けているわけでございますから、これを場合によっては問題があるからといって禁止するということは法制上むずかしい問題ではないかと考えております。
  174. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうすると、局長は、一般商社の進出はきびしくなっておるから、そういうトラブルはないという評価のしかたですか。
  175. 川島博

    川島(博)政府委員 一般的に商社の進出が激しいという言われ方をされますが、私どもの認識では、少なくともゼネコンにおいては商社の進出はそれほど顕著ではない、わずか六%程度でございますから。問題は、設備工事業とかその他の、要するに職別専門業者の進出が著しい。これは機械機具メーカー等が進出して、たとえば製造用のプラントをつくるとか、そういった工事をプラントメーカーが兼業で、建設業でついでに応札してしまう、そういった仕事の上で密接な関係がある場合に非常に進出が著しいということでございますので、そういう形態の進出は、私どもは必ずしも好ましくないことではないというふうに考えておりますし、現状でそう弊害が目立つというふうには認識をしておらないわけでございます。
  176. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうすると、そうした分野でもいいのですが、そうした分野で、受注をめぐって進出した連中と大企業とのトラブルというものはないのですか。局長の言われるのは、中小企業にはある。いわゆる中小企業じゃなく、そういう部分的に進出をしてきている電気機具を初めとしての装備、暖冷房なんかの形をつくり上げるためにメーカーなんかが入り込んできておる。たとえばナショナルならナショナルが入り込んできておる、こういうようなことはあり得ても、全体の建設業界に進出してきておるということはあり得ないということを指摘しておられるようなわけでありますが、その点はどうなんですか。
  177. 川島博

    川島(博)政府委員 職別専門工事業等のいわゆる一般の下請関係業者の中には五割、六割という高い比率で他産業から進出をしてきております。これは進出する必然性があって進出してきていると私どもは思っておりまます。そうでない一般のゼネコン業者としての中に商社等が進出している例は、先ほど申し上げましたように、ないとは申し上げませんけれども、その比率はわずか六%程度でございますので、現在のところ、これが既存の大手業者と非常な摩擦、あつれきを起こしているという事実は、私は聞いておりませんということを申し上げた次第でございます。
  178. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうすると、中小業者とそうしたところの大企業との受注をめぐるトラブルはないのですか、あるのですか。
  179. 川島博

    川島(博)政府委員 お尋ねは公共工事のことかと思いますけれども、公共工事につきましては、御案内のように、入札制度の合理化対策によりまして発注標準を定め、等級に応ずる工事は等級に応ずる業者が応札するということを原則といたしておりますので、御指摘のようなことばないと考えております。
  180. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうすると、角度を変えて質問をしてみたいと思いますが、たとえばいまの公共事業の問題ですね。中小企業の連中が協同体をつくって、そして大臣の言う協業化の方向でもって進んでいった場合には、特に国は優先的にこの人たちに指名をするというふうな方途をとってやるのかどうか、この点はできるのかどうか、この点を質問してみたいと思います。
  181. 川島博

    川島(博)政府委員 現在入札に入りたいという業者につきましては、資格審査をいたしておるわけでございますが、その資格審査基準におきましてジョイントベンチャーを組んだりいたしました場合には、ある程度優遇をするという措置がとられております。従来中小企業の協同化につきましては、ジョイントベンチャーだけについてそういう措置がとられておったわけでございますが、昨年から、やはりそれだけでは不十分であるということで、中小企業団体の組織に関する法律によりまして協業組合をつくった場合、あるいは企業の吸収合併、対等合併でもいいわけでございますが、合併をいたしました場合にも、中小企業の体質改善を育成助成するという意味におきまして、このジョイントベンチャーと同じように、この指名の審査にあたりまして優遇措置を講ずることにいたしたわけでございます。これによって中小企業の受注機会の確保のために優遇措置を与えるという措置をとって今日に至っておる次第でございます。
  182. 卜部政巳

    ○卜部委員 現実にそういう優遇措置をとっておるというけれども、中小企業が国並びに県の公共事業を請け負ったというようなことは、現実にはそういうことはまずないですね。だからこそ今日大臣が言われておりますが、協業組合あたりをつくって何とかしてその資格条件とでもいいますか、入札の基準に即応したいというような空気も燃え上がりつつあることも事実ですね。だから、もしそういうものが行なわれた場合には、大臣のことばではありませんが、ただそういうものが望ましいということではなくて、そういうものに対する優遇措置を加えるということでなければ、何ら意味はないと思うのです。その点について大臣どう思われますか。
  183. 根本龍太郎

    根本国務大臣 地方によって、育成といいますか助成といいますか、そういう点はだいぶ違うようであります。相当堅実な中小企業が合同しまして、いわゆるジョイントベンチャーをつくって、そしてかなりの国の工事を受注しておる例は私も相当聞いております。問題は、ただジョイントベンチャーのかっこうだけつくったということが問題ではなくして、その内容と能力ということがやはり発注者としては考えることであろうと思うのでございます。今後さらに一そう配慮いたしまして、先ほど来与野党一致の御意見として御質問がありましたのに対してお答えしたとおりに、今後はより一そう前向きで善処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  184. 卜部政巳

    ○卜部委員 いま前向きという話ですから、これ以上のことはないと思いますが、やはり現実に先ほど申し上げたように、実際問題として受注資格というものがないだけに、背伸びをするという現状が建設業界の中に出てきておることは事実ですね。それで倒産が相次ぐということも私は指摘したところであります。でありますから、そうした公共工事の問題等については、もしかりにその中小企業等が相寄って協業組合等をつくって、特に内容が充実したものであれば、これに対する、たとえば足らざるものがあれば補助していくくらいな措置があってしかるべきだ、金融上の問題もしかるべきだ、さらに機械設備の問題等についてもこれを補助していくというような、そういう措置がとられてもしかるべきだ、私はこう思うわけです。ただ、それが前向きということばだけではなくて、現実にどのように具体的にこれからそういう方向を見出そうとされているのかをちょっとお聞きしてみたいと思うのです。ただ前向きという、だけでは困ると思うのです。
  185. 川島博

    川島(博)政府委員 中小業者が協同化のために中小企業等協同組合法に基づきます事業協同組合あるいは中小企業組合を設立する、あるいは中小企業団体の組織に関する法律による協業組合を設立するという場合には、それぞれの法律によりまして金融上また機械の償却等の税制上優遇措置が講じられております。したがいまして、最近におきましては、これらの法律による協同組合あるいは協業組合の設立が盛んになってまいりました。建設業関係ではまだそうたくさんは設立されておりませんけれども、これからは、これらの法律に相当メリットがあるわけでございますから、協同化、協業化は建設業界においてもだんだん増加してまいるだろうと思いますし、私どももこのジョイントベンチャーの結成と並んで、さらに協業組合ができれば合同というところまでいってもらいたいわけでございますけれども、協同化、協業化についてはこれを推進してまいりまして、この法律上の優遇措置を講ずるように指導しているわけでございます。
  186. 卜部政巳

    ○卜部委員 いまそういう答弁がなされたわけでありますが、機械の減価償却その他についても、大企業とそうした下請と並べた場合の不利益な点がありますね。九十八条なんかの問題ですね。ただ、下請を除くという項目が入っているばっかりに不利な扱いをなされている現実があります。その点はどうなんですか。そういうものの減価償却の優遇などといいますが、大企業と下請と中小企業とにはそれだけの差があるじゃありませんか。その点はどういうふうに理解されますか。
  187. 川島博

    川島(博)政府委員 法律につきましては、私もうっかりしてよく研究しておりませんけれども、最近資本の自由化を控えて、企業の体質を改善しようということで、たしか今回の税法の改正でも、体質強化改善のために合併した場合に税法上の優遇措置を与えておるように記憶しておりますが、これらについても、別に大企業だから優遇するとか、中小企業だから不利にするということではないと私は思っておりますが、内容の詳細を存じませんので、この程度でごかんべん願いたいと思います。
  188. 卜部政巳

    ○卜部委員 大臣一つお願いがありますが、現実にそうした不利益が中小企業にもたらされておる税制等の問題があります。これは私は持ってきていませんから、あとから持ってまいりますから、そういう問題につきましては閣議において、そういう中小企業と大企業との減価償却をめぐる償却の年数等においてやはり問題がある等においては、これを是正するにやぶさかでない、この点についてはひとつ確認を得ておきたいと思います。よろしゅうございますか。
  189. 根本龍太郎

    根本国務大臣 御指摘の点は、実は私もよくわからないのです。それは中小とか大の問題ではなく、機械そのものの性格とかなんとかいろいろじゃないかと思いますが、その点よくわかりませんので、御指摘を得ましてから後よく検討いたします。それが大企業中小企業との企業規模の差に基づく非常な不公平があるということならば、それを是正するための措置を大蔵省に要請することはやぶさかでございません。
  190. 卜部政巳

    ○卜部委員 そういう力強いおことばがあったので安心したわけですが、大臣が御指摘をされるように、大企業と同じ機械を使い——ほんとうに同じ機械ですね。たまたまにしてそこに下請を除くということが書いてあるだけに不利益をこうむっておる現実があるのです。ですから私が指摘をしたのですが、たまたまここでいまこのことを思い出して言っただけなんですから、これはあとから提出をし——そういう大企業中小企業が同じ機械を使いながら、ただそこに下請を除くとするだけの条文のために不利益をこうむっておるという、この現実を指摘したわけですから、ひとつその点は別問題といたしまして是正方をお願いをし、また建設省のほうに特にそういう配慮もしてもらいたい。ということは、減価償却したのだからこれで事足りただろうというけれども、現実には、では中小企業と大企業がどうであるのか、こういう対比を調査していただいて、そしてそれだけの措置はとってやろうじゃないか、大臣はやはり閣議の中でそれを主張していただく、こういう配慮があってしかるべきじゃないか、こう思うわけです。その点はよろしゅうございます。  そこで、実のところいうと、出発が、話の順番が一番最初急に後尾のほうから入ったために、自分のほうが何かしゃべっておっても自分自身でわからないようなことになって、まことにしどろもどろになりましたけれども、時間が来たようでありますので、この辺で終わりたいと思います。  そこで、もう一つ最後にお願いをいたしておきたいと思いますし、特に配慮をしていただきたいと思うのが、先刻来から指摘をされております許可制をめぐる問題で、そこに大体重点が指向されたような発言でございましたが、この点については特に十分なる配慮をしていただきたい。特に一人親方とそこに働く人々の条件というものを考え、そして同時に中小企業と大企業との差、あまりにも大きい差、そしてまた歩積み両建てだとか、さらには台風手形だとか、そしてまた機械の減価償却だとか、あらゆる面から差をつけられておる。こういう状態というものを早急に克服していただいて、そして根本大臣が言う、ほんとうに将来に向かって明るい展望云々というものにふさわしい施策というものがここに結びつくことを念願して、私の質問を終わりたいと思います。
  191. 金丸信

  192. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私は、今度の法律の改正点と、それからその改正点を踏まえて現実との間にどういう点があるのかという点をお伺いして、この法律を理解したいと思います。そこで、大臣局長もお疲れでしょうから、関係責任のある方はまだほかにおいでのようですから、まず官房長にお伺いいたします。  この建設業法というのは、昭和二十四年に法律がきまっております。それから改正したのを見ますと、八回改正しておりますが、その中でこの目的を変えた、変更したということがいままでにありますか。八回改正していますね。その中で目的に手をつけたということがいままでにあったかどうか。
  193. 志村清一

    ○志村政府委員 担当でございませんが、いま調べましたところによりますと、目的を改正したのは従来なかったようでございまして、今回が初めてのようでございます。
  194. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そこで、私は、この目的を変えるということは、この法律案の中身が大きく変わったもの、こう考えるわけであります。したがって、建設業法の大変革、大改革だ、こういうとらえ方をする中で、さてそれなればこれに対するところの重要な事態があるはずであります。そこで、根本大臣のこの提案の理由を読んでみますと、大体二つ書いてある。簡単に言うて悪いですけれども、一つは悪い業者が出てきた、それから粗悪な工事が多くなった、だからと、こういうことが書いてある。だからというように私は受け取ったわけでありますが、参事官おいでになっておりますから、その悪い業者というのはどんな状況で、どんなに数がふえていったのか、現状をひとつ知らせていただきたいということと、粗悪な工事とはどんな工事をさすのか、そしてどういうように粗悪な工事がふえてきたのか、それを言ってください。大臣お疲れでしょうから……。
  195. 佐土侠夫

    ○佐土説明員 ちょっと件数はわからないのでございますが、現在の登録制度でまいりますと、先ほど来から説明しておりますが、とにかく一人の技師がおれば、登録でございますので、登録申請者は全部拒否はできないわけです。したがって、それだけの人数がおれば全部登録される。登録されますと、主として請け負う建設工事以外の工事もできる。たとえば大工で登録を受けておっても、二十六品目ございますけれども、ダムをやろうとすればできるというような形になっておりますので、この法律ができた当初は三万何がしおりましたけれども、現在約十六万。ことに知事登録業者がどんどんふえてきておるわけです。したがって、現実に資力、信用あるいは施工能力のある業者がどんどんふえておる分には、確かに建設能力がふえておりますからけっこうでございますが、これが資力、信用のある人とない人とチャンポンになって過当競争をやっておるものですから、まじめな業者はそれだけ無理をしてまじめに仕事をするために……
  196. 三木喜夫

    三木(喜)委員 例を言ってください。
  197. 佐土侠夫

    ○佐土説明員 例は、公共事業の場合には、手抜き工事をやれば公衆災害など起こしますが、一般の民間の工事においても、工事を請け負って請負代金だけを取ってそのまま蒸発するとか、工事をやりかけて、たとえば柱だけつくってあとしばらくほうっておく、そしてあとこれだけ出せばまたやるというような形で、なかなか工事をやらない。ただピンはねだけして逃げる。そしてそのために、ある県で登録の仕事をしておって、そして蒸発して、またよその県に行って登録を受けて仕事をする。そういう形で、一般の公共事業の場合以外に、一般の民間の人が業者にお頼みになっていろいろな問題を起こして、いわゆる紛争の種をつくって、苦情を言って建設省とかあるいは県に来ておる方もたくさんございまして、東京だけでも件数がたしか八百何件あると思います。(「いつからいつまで」と呼ぶ者あり)最近でございます。最近特にふえております。ことし東京都で、われわれの聞いておる範囲では八百何件、そういう民間の苦情の伴う件数があるわけであります。
  198. 三木喜夫

    三木(喜)委員 建設の現実と建設業者とが大体数は比例してくるでしょうけれども、いまおっしゃるように八群何件東京都にあるということになれば、全国にも相当あるわけですね。それから、粗悪工事というのはどんなことですか。悪い業者というのはいまよくわかりました。それから、数も東京にこれだけあれば、全国大体類推することができると思います。粗悪な工事とはどんなものですか。
  199. 佐土侠夫

    ○佐土説明員 最初に東京都の件数でございますが、これは八百何件と申しましたが、逆でございまして二百六十八件であります。それから粗悪、粗漏工事でございますが、現実に字のとおりでございますけれども、屋根をつくっても雨が漏るとか、あるいは壁を張ったけれども壁がある日突然こわれるというふうなことだろうと思います。
  200. 三木喜夫

    三木(喜)委員 だろうと思うということくらいで非常にあいまいでありますが、それではひとつ聞きますが、国会の中に通路がありますね。第一から第二の間に通路がありますね。あそこでいつも水が漏って壁を塗っておりますが、あんなのを粗悪というのですか。聞かしてください。
  201. 佐土侠夫

    ○佐土説明員 まずつくったとき設計どおりにつくっておれば、いきなり粗悪といえるかあるいは粗漏といえるか。いまの具体的な例でいえば、相当時間も経過しておりますので、設計どおりにつくったときに水が漏っていなければ、その段階では粗悪といえるか、粗漏といえるか——現実に水が漏っておれば粗漏になってきたというふうに答えざるを得ないと思います。
  202. 三木喜夫

    三木(喜)委員 あなたの言うことをことあげすると差しつかえができるかもしれませんけれども、われわれ建築のことがわかりませんので、ああいうのを粗悪というのか、ひとつ聞いておきたいと思います。あの工事を私初めからずっと見ておるのですが、こういうようなのは一体どこの責任なのか。だれがこれをチェックするのか。国会のしかもどまん中でああいうことが起こっておる。それはどういうことになるのか。建設省としてはもう請負業者にやらしたのだから知らぬのだ、こういうように考えていいのですか。あれは恥さらしですよ。あんなところにああいうのがあるということは国会の恥さらしですよ。それで建設業法を云々するということは、われわれはちょっとうなずけないのだ。足元にあんなものを置いてあるが、粗悪でないというなら粗悪でない、粗悪だというなら粗悪だ、粗悪の例として言ってください。私はわからぬ。あれは粗悪ですか。
  203. 志村清一

    ○志村政府委員 ちょっとお答えいたします。  あの工事は、たしか私ども建設省の営繕が引き受けまして、国会から受託をいたしまして施工いたしたものだと存じます。正確は保しがたいのでございますが、そのように考えます。工事を受託して営繕が監督をしてやっているわけでございますから、工事を施工した業者責任ばかりでなく、監督をした営繕部におきましても十分そのアフターケアをする必要があろう、かように考えております。また、あの実態につきまして、先ほど参事官からお話がございましたけれども、工事が粗漏であったか、設計そのものが悪かったのかというふうな点等につきましては、ただいま直ちに御答弁できないのでございますが、実態は水が漏れているのでよくないということだけは事実でございます。
  204. 三木喜夫

    三木(喜)委員 官房長、あそこをお通りになりましたか。このごろまたよく壁がとれてしまってふわふわと風化されたようになっているあの姿を見ると情けないのだ。これはもう建設関係のこのことを論議する以前の足元の問題だと思います。  そこで、いま悪い業者とか、粗悪工事が多いとかいうことを一つの原因にされておりますが、目的変更ということは、これはもう大変更であるというふうに思うのです。そこで前のものと比較してみますと、こういうことが書いてある。これはしまいのほうは一つの通りことばだからいいのではないかと思いますが、「建設工事の適正な施工を確保するとともに、建設業の健全な発達に資することを目的とする。」下も同じように「建設工事の適正な施工を確保し、」「建設業の健全な発達を促進し、」とありますが、上の旧のほうは、「建設工事請負契約の規正、技術者の設置等により、」となっている。技術者を設置するとなっている。下のほうは「資質の向上」をやる。技術者をつくってみたけれども、それはやめにして登録制にする、登録制をやめにして「資質の向上」をやるのだから、一人一人許認可のワクの中へはめてやろう、そして「請負契約の適正化等を図る」。これがこの前は「請負契約の規正」となっておりましたけれども、今度は「適正化等を図る」というように変わってきているわけでありますが、さてこういう大変化にもかかわらず、これは、そういうことをおっしゃるから官房長にひとつおまけをつけておきたいと思いますが、建設月報を見ました。そうすると大変革が大変革になっていない。「第六十三回国会(特別会)提出予定法案」の中で、建設業法の一部を改正する法律案の一として「建設業者の資質の向上を図るため、登録制度に改める。」と書いてある。今度の法律はそうなっていますか、これを目的が逆転しておるのではないかと思います。こういうような粗悪な工事とかいうお話がある中で、こういう建設月報を出してもらっては困る。大臣に言うのは申しわけないから官房長に言うのですが、あなたの責任ではないかと思うが、どうですか。
  205. 志村清一

    ○志村政府委員 建設月報は官房の広報関係でやっておりますので担当いたしておりますが、その辺にたいへん大きなミスがございまして申しわけないと存じております。今後さようなミスは生じないように十分注意をしてまいりたいと思います。
  206. 三木喜夫

    三木(喜)委員 私はそれでは済まされないと思う。建設業法の一番心臓になるところの目的でしょう。目的が旧の目的を書いて、そうしてこれが建設月報でございますということを——これはどことどこに出しておりますか。
  207. 志村清一

    ○志村政府委員 建設月報は広報のためでございますので、建設省の内部はもちろん、外部におきましても、諸先生方とか建設関係に御関心の深い向きに御購読いただいておるような次第であります。
  208. 三木喜夫

    三木(喜)委員 これはそういうことで改めるという話ですから、ひとつよく気をつけてください。業者だとか、あるいはまた一般国民の中に出ていくということなら、逆の目的が書いてありますのでこれはたいへんなことだと思います。  そこで次にお伺いしたいのですが、いまのお話をずっと聞いておりまして、きょういろいろ話を聞いたのですが、建築士法と建設業法、これはおそらく施行令の七条をさすだろうと思いますが、これは局長にお伺いしたいと思います。先がたのお話の中で、建築士法をこれに当てはめますと、坪でいうと三十坪、それ以下はよいということです。それから建設業法施行令七条をこれに合わせて、かりに与野党の話し合いの中でこれが三百万円以下ということになっても、きょうの質問者のお話の中にもありましたように、三十坪の場合三百万円以下にはおさまらない。それは大臣もお話しになりましたが、いわゆる建築士法と建設業法の施行令との食い違いがここにできる。これをどういうふうに改めるかという話は聞かなかった。ただこれを検討するという話はあった。これは法律論の大きな食い違いができるわけです。それについての局長考えを聞きたいのです。
  209. 川島博

    川島(博)政府委員 先ほども御説明申し上げましたように、建築士法と建設業法はその目的とするところが異なります。  建築士法は、わが国の建築の質を向上させる、特に住宅は人の一生の住まいでございますから、特に安全とか衛生という面から十分な設計上の配慮をする必要がございます。したがいまして、本来ならば建築士という優秀な技術の国家試験を経た資格のある人が、すべての住宅について設計をすることが望ましいわけでございます。しかしながら、建築士の数には限りがございますし、また、住宅を建てる場合は設計をすべて建築士に頼まなければならぬということになりますと、これは五%という手数料を取られるわけでございます。そういった発注者の経済的負担と、それから建築の質を向上させるという社会的要請をどの辺で調和をとるかという観点から、三十坪以下の住宅であるならば、しろうとさんと言っては語弊がございますが、少なくとも設計については専門家でない施工業者にまかせてもまずまず心配はなかろう、社会的な弊害も少なかろうということできめられておるわけでございます。  これに対しまして、建設業法許可適用除外金額を幾らにきめるかという問題は、先ほど先生がお触れになりました法律の目的にも書いてございますように、従来の建設業法の目的は、建設業の健全な発達に資する、つまり建設業サイドの健全な発達ということのみを目的としておりましたが、今回の法律改正では、これに発注者の保護という重要な改正がなされております。これは単に建設業者が健全に育成されるということも建設業法の重要な目的でありますけれども、同時に、発注者の保護をはかるという国民サイドの権利、利益を守るということも一つの大きな法律の目標として、今回あらためて目的に取り入れられてございます。したがいまして、およそ建築というものは公共性が高い、また一般の住宅でありましても公共の福祉に関係するところがきわめて深いわけでありますから、理想を申しますれば、たとえ物置一つを建てるにあたりましても、施主の立場、権利、利益を保護するという観点からいえば、およそ許可を得た業者でなければ請け負ってはならないという規定にすべきであろうと思います。しかし、そういたしますことは、一方においては零細業者がおりますし、また、これらの業者許可制の適用を受けることによって非常に過重な負担を受ける。それほどの必要のない軽微な工事もあるわけでございますから、そういった施工業者側の負担を軽減するという問題と、国民財産を守るという観点から、軽微工事金額はそれらの権衡の上にきめられるべきであろう、現行法はそれを五十万円という線で押えておりますが、累次御説明申し上げましたように、少なくともこれは五十万円という思想を踏襲するならば、物価にスライドして百万円程度まで引き上げることが適当であろうというのが中央建設業審議会の大かたの御意見であったわけでございます。しかし、これにも、いろいろ建設業界の実情ということも考慮し、過去のいきさつにとらわれることもいかがかということでいろいろ御議論が出ておるわけでございますが、両法はそのねらいとするところが違うわけでございますから、建築士法の百平米というものを直ちに引き直して建設業法の軽微工事金額にかえて配置するということは、この両法の目的が違いますから、やはり若干問題があろう。しかし、これは大臣も御説明いたしましたように、一つ考え方としては、建築士法との均衡という意味ではなくて、別途な観点から検討することは私は可能であろうと思いますけれども、建築士法で三十坪になっているから、建設業法はそれにならうべきだという意味でこの基準に取り上げるということは、いかがかというふうに考えております。
  210. 三木喜夫

    三木(喜)委員 別の観点からとおっしゃることが私はわからぬですけれども、まあいいです。あなたは非常にこのほうにたんのうなんですし、私はこの法律関係がもう少しわかりませんから、一応またわからぬところは後日にお伺いして教えを請います。  そこで、先がたの話の中で二億円のリベートがすでにいわれておる。会館を建てたときの話じゃないかと思いますが、先がたの質問者のほうからそういう話が出ておりました。このことをあげつらうわけじゃありませんけれども、許認可というような中で、あるいは大きな企業にだんだん系列化され、あるいは統合されしてまいりますと、そういう問題についても卜部さんが言われましたようによく配慮をしておかなければならぬ。きょうも話があったが、それを徹底的にわれわれとしては別の角度から調べるべき必要があると思うのです。そういうようなことがすでにいわれて、二億円のリベートがどんなかっこうだったかということもわかりませんが、しかし、そうした大企業の請負の形の中でそういうことが行なわれるということならば、これは非常に困ったことで、いままでの登録制というものが十六万の登録者を出して今日まで続いてきておる。これを急に変えて、一年なり二年なりの経過措置はあると思いますけれども、しかし、その中で許認可をめぐってそういう問題が今後起こる心配はないか、これはお考えになったでしょうか、あるいはもうそんなことは起こらないというようにお考えなのか。いままで許認可というものをめぐりまして国民は非常に苦労しておる。その中にいろいろな人が介在いたしましてやるわけであります。入学試験一つやりましても、その中に介在して不正な入学が行なわれるというような時代ですから、許可制度にしましてもそういうことを御配慮になったかどうか、こういう点をひとつお伺いしたいと思います。
  211. 川島博

    川島(博)政府委員 御指摘の二億円云々ということは私ども初めて耳にすることでございまして、内容はよくわかりませんけれども、少なくとも建設業法が従来の登録制度許可制度に変えましても、この許可制度の運用にあたりましては、法律に基づき基準がきまっております。しかもなお、末端における不公平、不統一な取り扱いを避けますために、詳細に具体的な許可基準をつくり、運用基準をつくりまして、取り扱い者のいかんによってその取り扱いがまちまちになるということを厳に抑制をするということは、先ほど来申し上げておるとおりでございます。したがいまして、この許可を申請するにあたりまして、何か忌まわしいことが起こる可能性があるやに先生御発言だったと記憶いたしますが、そういうことは、いやしくも建設業法許可に関する限りは絶対にないと私は確信しております。
  212. 三木喜夫

    三木(喜)委員 もう一つ念を押しておきますが、それでは思想、信条あるいは宗教、そういうようなことによってこういう問題が左右されるということも絶対にありませんね。
  213. 川島博

    川島(博)政府委員 法律に定められている要件以外の要件は要求することはございません。したがって、そういうことは関係ございません。
  214. 三木喜夫

    三木(喜)委員 それから、簡単なことですからもう一つだけお伺いしておきます。  先がたの話の中で、やや私の考え方が甘いのかどうか知りませんけれども、倒産が多く出ておる、それは支払いが遅延したというようなとらえ方をされておったようですが、この資料を見せてもらいますと、建設投資額が国民総生産の中で四十四年に一九・九%。年々、投資といいますか、経費をかけておる額が多くなっているわけです。そして逆に建設の倒産の件数がふえてきておるわけであります。投資が多くなっておるにもかかわらず、こういう建設業の倒産が多いということは、単に代金支払いという問題と結びつけるだけでいいのかどうか、これをひとつお伺いしておきたいと思います。   〔委員長退席、天野(光)委員長代理着席〕
  215. 川島博

    川島(博)政府委員 建設業の倒産件数は、東京商工興信所の調査によりますと、負債金額一千万円以上で倒産したのは四十四年一ぱいで二千七十七件でございます。前年の四十三年が二千四百四十七件でございますから、件数においては四百件ばかり減っているわけでございます。また、金額におきましても、四十三年が一千五百五十二億でございましたものが、四十四年には九百八十四億、約五百億円減っているわけでございます。しかしながら、全産業に占める比率を見ますると、建設業の倒産は、件数で依然として二割五分近い比率を占めておりますし、金額でも一八%近い比率を占めておるわけでございます。これら建設業界におきます倒産が件数、金額とも非常に高いのは事実でございます。  この原因は、もちろん中には代金の支払いが遅延したり、また、もともとの請負代金が非常に低かったりということもあるかと思いますが、私たちがいろいろ分析いたしますると、やはり企業の経営自体に問題があるものもあるようでございます。たとえば過小資本でございますとか、設備が過大であったり、あるいは経営自体が放漫であった、また労務者が十分確保できなかったというような、元請業者からの代金との関係においてばかりが倒産の原因ではございません。むしろ、それよりも企業自体の経営に倒産の原因が認められる件数が多いのじゃないかと考えております。
  216. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そこで目的のところでは、「請負契約の適正化」、こういうことがうたわれ、旧法律といいますか、いまの法律においては「請負契約の規正」となっていますが、「請負契約の適正化」ということと「請負契約の規正」ということの違いをひとつ……。
  217. 川島博

    川島(博)政府委員 目的に定める文言は旧法と新法では若干違ってはおりますけれども、旧法による「請負契約の規正」といい、新法による「請負契約の適正化」といいましても、ねらうところは別に変わりはないのでございます。すなわち、従来からいわれておりますように、建設業は本質的に受注産業でございます。また、発注者が継続的しかも大量に発注をするというケースが多いわけでございます。したがいまして、どうしても工事を受ける請負業者の立場が発注者に対して弱いと申しますか、劣位に置かれがちでございまして、従来そういう関係から、契約関係でも多少不利な要件を押しつけられても、やむを得ずがまんをするというケースが多かったわけでございます。この点に関しましては、現在法律におきましても契約要件、契約露の記載要綱をいろいろ特定しておりますけれども、それには相当足らないものがございました。したがいまして、片務的な契約内容を全く両者対等平等の内容に改めるためには、少なくともこれこれのものは必ず契約書に記載しなければいかぬという記載事項を追加して明記したわけでございます。と同時に、従来は往々、下請契約等によりますと、ろくに契約書も取りかわさないという事例があって、あとで紛争が起こる例が多かったわけでありますけれども、今回は、いやしくも契約を結ぶ以上はお互いに文書で取りかわす、しかも記名捺印をするという要式行為を義務づけまして、これによって紛争を防止するとともに、請負業者あるいは下請業者の発注者に対する不利な条件を少しでも回復しようという点に、今回の改正案一つの大きなねらいがあるわけであります。
  218. 三木喜夫

    三木(喜)委員 規正という中にはそういうような義務づけがなかったですね。こちらのほうの適正化ということばになって、そこで義務づけができた、こういうように理解していいですか。
  219. 川島博

    川島(博)政府委員 お答え申し上げます。  しいて申し上げますれば、規正よりは適正化のほうが日本語としては積極性を持っておるわけでございます。従来は、契約でございましても、下請関係については何らの定めがなかったわけでございます。ところが今回は、発注者と元請の間の契約はもとよりのこと、元請と下請、下請と孫請、いずれにつきましても注文者と受注者という関係において建設業が施行される場合には、いずれもこの契約条項を適用するということにいたしまして、両者を完全に対等平等の形で適正な契約を結ばせるというところにねらいがありますので、そういう意味では、若干ことばのニュアンスが内容を反映しているということがいえると思います。
  220. 三木喜夫

    三木(喜)委員 なるほど、下請契約、それから元請人、発注者、こういうように明確化されておるところはこの法律案一つの特徴だと思いますが、さて、旧法によります定義の二条の総合と専門、これをはずされたわけはどういうところにあるわけですか。新法ではそれがありませんね。
  221. 川島博

    川島(博)政府委員 従来旧法におきましては、総合と専門というふうに分けておったわけでございますが、今回はこれをやめまして、特定建設業一般建設業ということにいたしておるわけであります。旧法のこの総合というのは、一般建設業登録でございますと、技術者が一人おればよろしいということでございましたが、これを二人置きますると総合業者登録を受けられる。総合業者というのは二人以上技術者を置く場合に与えられる一種の名誉称号でございまして、法律上は何らの優遇措置を講じておりません。   〔天野(光)委員長代理退席、委員長着席〕  ただ二人以上技術者を置いた場合には総合工事業者ということを名のれるだけでございまして、一人しかいない場合は総合工事業者の名称を名のれないというだけの名目的な問題でございました。したがいまして、今回はそういう法律上意味のない制度はやめることにいたしたわけでございます。
  222. 三木喜夫

    三木(喜)委員 結局、二十年の歳月がいろいろなところに変革をもたらし、法律の中にもそういう形を変えてきたと解釈していいと思うのですが、さて、先がたの話の中で、あるいはまたこの法律案施行の中で心配することは、これは卜部さんのほうからもお話が出ておりましたが、吉田さんの質問に対して大臣は、石で手を詰めたような法律網を敷くと、大企業が直属の部隊をつくり、系列化をいよいよやる、こういう心配があるじゃないか、こういうお話があったんですが、こういう許可制度になってまいりまして逆にそういう心配はないか、こういうことを私たちは思うのですが、これは大臣からひとつお答えをいただきたい。先がたの話を受けて、大臣は、このまま買いておくほうがそういう系列化だとか大企業の直属部隊で仕事をするというようなことはなくて、下請、孫請と下へ落ちていくだろう、俗なことばでいうとふんわりしておるほうがむしろいいんだ、こういうようなお話があったわけであります。私は逆に、こういう法律で今度許可という問題やあるいは金額という問題によって、逆にそういう方向に拍車をかけないかという心配をしておるんですが、間違いだったら間違いと言ってください。
  223. 根本龍太郎

    根本国務大臣 先ほど私がお答えいたしましたのは、下請負を法律上規制するということのために系列化するんではなくして、元請負、下請負、孫請負が行なった第三者に対する損害を、無条件に全部親請負業者が負担しなければならぬというようにしてはどうかということでありましたが、それをやれば、結果的に、はね返りを防ぐために親請負が非常に厳密なる自己防衛措置を講ずるであろう。そうした結果は、完全に自分が信頼する系列の中小企業でなければ下請はさせない、こういうことになって、現在では相当の大手業者が、たとえば千葉県なりあるいは北海道なんかでやる場合においては、みんな地元のものを相当使っているのですよ。ところが、それが今度は、地元の業者に一切のあらゆる責任を負わなければならないということになれば、なかなか地元の業者を使わないというふうになりはしないかということを言ったのでございまして、本質的には三木さんが言われたことと私と同じ意見なんです。ただ、いままでは下請負について何らの規制がないから、今度は下請負になったものが実は非常に不利な立場に置かれたり、あるいはまたそれによって下請負、孫請負が不当あるいは経済上非常に大きな迷惑を一般第三者にかけた場合に、これを追及することもできない。だからして、今度の業法の改正でその点は明確にしようじゃないかということでございまして、結論においては三木さんのお考えと私は一致しているもの、こう思っておる次第でございます。
  224. 三木喜夫

    三木(喜)委員 もう一つだけ局長にお伺いいたしまして、私、十五分までいいということですけれども、早く終わりたいと思います。  きょうお話を聞いておりますと、不良業者に対して通報制度をしいたらいいじゃないか、全くその必要はあります、こういうお話でございました。しかし、私は、この法律の立法の趣旨というものが、先がたからお伺いしておりますように、不正業者あるいは粗悪な工事、こういうところから発想が出ておるように思うのです。それはむしろ建設省の行政指導にまつべき問題であって、業者を悪徳視して、それによって、だから許可制度にしなければならないというこの発想は、まことに危険な考え方じゃないか。先がたから論議を聞いておりまして、通報制度というのはこれは一つのスパイですよ。建設業界にこういう制度を持ち込んだら、私はたいへんなことになると思う。やはりこういう問題はオープンにやる。そして論議し、そして悪ければ悪いで指導してもらわなければいかぬ。いまそういうふうに私も聞いたので、聞き違いならいいのです。
  225. 川島博

    川島(博)政府委員 今回の改正案によりますと、建設業者が営業停止または許可の取り消しの処分を受けた場合に、その役員あるいは支配人等の責任のある使用人が、その会社を離れまして、ほかへ行って独立して自分で建設業を営んだり、また他の会社へ行ってそしらぬ顔をして営業活動を行なうということでは、せっかく営業停止許可取り消し処分をしてもその実効があがらない。一体その実効をあげるためにはどうしたらいいのか。全国には十六万の業者がいるわけでございますから、たとえば長崎県で悪いことをやって、北海道へ行って口をぬぐって会社をかってにつくる、それは北海道ではわからぬじゃないか。そういった悪質な者を法律に従って処分の実効を期するためには、やはりどこへ行ってもそれが不適格者であるということを各行政庁が知っていませんと、これはどうにもしようがないわけでございます。そういった意味において、営業禁止の処分の実効をはかりますためには、営業の禁止をされた者についての行政庁間の相互通報が必要でないか。また許可制度の実施にあたっては、許可要件に適合しない不良業者、たとえば計画的な倒産によりまして工事を途中で投げ出す、あるいは賃金や下請代金を故意に踏み倒すというような悪質不良業者には許可を与えないということにしておりますが、これとても、知らない土地でそういう不始末をして、離れたところへ行ってそしらぬ顔をして許可申請をしたら、これは行政庁でもわからない場合があるじゃないか、そういった者については、やはりブラックリストをつくって、行政庁間で相互に情報を交換するという制度がなければ、せっかく法律をつくっても魂が入らぬじゃないかというのが、実は当委員会理事会で御指摘を受けまして、そんなしり抜けの制度ではだめだ、そういう行政指導を建設省は強力に実施することを約束してほしい、こういう御要請がございました。これに対しまして、なるほど私どもも、実際的にそういう措置を講じなければ必ずしも法の実効は期し得ないということで、そういう方向で検討するということを御約束した次第でございますので、それを御答弁申し上げた次第でございます。
  226. 三木喜夫

    三木(喜)委員 そういう考え方なれば、それも一つ考え方であろうと思います。しかし、この法律の中に、受刑者については二年間許可をおろすことができない、こういうきめもありますし、そういう詐称した場合には、むしろ法律の中に明文化して、それは明らかに刑法に触れるというような項目を書いておくほうが的確ではないか。その人間のブラックリストをつくって、それを各方面にばらまくということは一考を要する。これは一つ意見ですが、そういうやり方は、要するにこの許可制度というものが非常におそろしいものになる、許認可というものが役所のなわ張りといいますか権限の強化になる、いわゆる建設省あるいはその都道府県知事の権限があまりにも強化して集権化する、こういうおそれなしとしない。通報制度がそうするというわけじゃないのですよ。こういう許認可の制度というものがそういうような性格を持ち、そして立法の発想が不正、悪徳業者、こういうきめつけ方の中でこれがずっと一連つくられていくのですから、そういう心配を私は持つのです。だから、この法律案はもう少し考えてもらう必要がある。与党の諸君も理事諸君にお話しして、何とかこれをこの国会に通せというようなプレッシャーがあるようでありますけれども、私はこれを考えてみましたときに、その目的一つとってみても、そして発表されておる要綱一つ見てみましても、たいへん危険な要素を持っておると思います。それから先がた言いましたように大型化し、系列化するという心配もあるし、先がた大臣のほうでは、要するに一人親方のことばかりにウエートを置いておまえたち野党のほうは論議を展開しておるじゃないか、こういうお話がありました。それだけでなくて、私たちはそういうところにもこの法律の持つ危険性を感ずるのです。だから、これはあとで理事会でお話しいただき、あるいはそれでもなおわれわれは行くという考え方になるか、それは知りませんけれども、一応お互いに頭を冷やして、もう少し熟考してみる必要があるんじゃないか、こういうふうに思います。  以上、意見をまじえまして、私の質問を終わります。
  227. 金丸信

  228. 浦井洋

    浦井委員 私は、共産党を代表しまして、この建設業法の一部改正について二、三質問をさせていただきたいと思います。  まず一番初め許可基準の問題でございますけれども、許可基準の第一に「五年以上経営業務管理責任者としての経験を有する者」、こういうふうになっているわけなんですが、これは一体どのようにして認定されるおつもりなのかという点をお聞きしたいと思うわけです。というのは、いままで大工さん、建設業で働いておって腕もみがいてきた、そしてやっと一人前の親方になった、多少のお金もできたので独立した建設業者になりたい、そういうときに、さっき言いましたように五年間の経営業務管理責任者としての資格の認定を証明するものは一体何なのか、こういう点をお聞きしたいわけです。これがはっきりしなければ、若い町場の職人さんがいまから独立してやろう、許可を受けようというときに、これにひっかかってオミットされるという危惧が非常に強いわけなんですが、この点はどうですか。
  229. 川島博

    川島(博)政府委員 経営業務管理責任者としての経験でございますが、これの運用にあたりましては、結局、対外的に責任を有する地位にあって、経営業務について総合的に経験したことをいう。具体的には、法人役員個人業者事業主、支配人のほか、支店長、営業所長等の地位にあって経営業務を行なった経験をいう。したがいまして、町方の職人さんでありましても、自分で小さな工事を切り回して請け負っておった経験がある、また、親方に雇われておりましても、全体をまかされまして全体の段取り、仕切りを五年間やっておったということであれば、当然にこの経営業務管理責任者としての経験を積んだことになりますので、御指摘のような場合には当然に合格するということに考えております。
  230. 浦井洋

    浦井委員 その点について具体的にはだれがどういうふうに認定するわけですか。もう一ぺん重ねてお聞きします。
  231. 檜垣五郎

    ○檜垣説明員 非常に技術的な問題でございますので私からお答え申し上げます。  現行登録要件といたしましても、一定の要件を満たす技術者がいなければならないということになっておりまして、この技術者をどういうふうな方法で許可行政庁が確認しておるかということと類似した問題であろうかと存じます。現在におきましては、登録要件といたしましては、「主として請け負う建設工事に関し十年以上実務経験を有する者」、これが高等学校におきまして土木建築等の学科を修めておりますと五年以上ということに短縮されておるわけでございますけれども、これは学校を卒業したという点につきましては在学の学校の証明書、経験年数につきましては原則といたしまして使用者、たとえば会社の公式の証明書、そういったものを要求いたしております。また、自営等で会社等の証明の得られない者につきましては、みずからの証明書というふうなものでも扱っておるわけでございます。今回の五年以上の経営業務管理責任者としての経験と申しますのは、ただいま局長から御答弁申し上げたとおりでありますけれども、それの証明といたしましては、やはり会社、使用者、そういったものの証明ということになろうかと思うわけでございます。この点につきまして業界の団体等から、たとえば何々協会、そういうものの証明ということにしてもらえないかというふうな意見も出されておるわけでございます。これも将来十分検討いたさなければならないところだと思っておりますけれども、そういたしますと、その協会に加盟していない、いずれの協会にも加盟していない者についてはどう扱うかというふうな問題もございますので、慎重に検討いたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  232. 浦井洋

    浦井委員 そうしますと、もう少し具体的にいきまして、たとえばいままでその親方のところで五年以上働いておったという場合には、その親方さんの証明、みずからの証明というのはその許可を受けるときの書類にみずから記入すればよい、こういうことになるわけですか。
  233. 檜垣五郎

    ○檜垣説明員 たとえば「経営業務管理責任者としての経験」というのは、法人企業役員であるとか、あるいは支店長とかそういった者でございますので、あるいは個人企業事業主あるいは支配人というふうな者でございますので、この役員とかあるいは支店長、営業所長というふうな、あるいは支配人というふうなことに関する証明は、その会社またはその事業主の証明によって得られると思います。ただ問題は、個人事業主が、私は五年以上建設業事業主として営んできたのだというふうなことにつきましては、そういった会社とかあるいは使用者とかいうふうな者がいないわけでございます。したがいまして、この点につきましてはみずからが証明してみずからが捺印するということになろう、ならざるを得まいと考えられる次第でございます。しかしながら、これにつきましては、虚偽の申請に基づいて許可を受けたということがはっきりいたしますと、これは許可の取り消し事由ともなり得るわけでございますので、そういった面で十分遺漏のないように運営いたしたいと考えておる次第でございます。
  234. 浦井洋

    浦井委員 大体その点は了解しましたので次に進みたいと思うのですが、その次の「許可基準」の中で、「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。」ということで、資料の中の註の説明では「請負契約に関する不正な行為とは、請負契約の締結又は履行に際して、法律に違反する行為、たとえば詐欺、脅迫、横領等を行なうことであり、」云々というふうにあるわけなんですが、この「詐欺、脅迫、横領等」、この「等」の中にどのようなものが入っておるのか、ひとつ教えていただきたいのです。たとえば建築基準法の違反のようなものは、この「等」の中には含まれるわけですか。
  235. 檜垣五郎

    ○檜垣説明員 これは欠格要件許可要件といたしまして、これに該当すれば営業を認めないという、そういうふうな要件でございます。これは現に営業を営んでおりまして、そして建築基準法違反というふうなことを行なった場合との比較というものも考えて運用しなければならないというふうに考えております。  先生承知のとおり、現在何らかの意味における建築基準法違反というのは世の中にきわめて数多くございまして、そのすべてのケースにつきまして許可の取り消しとか、あるいはその営業停止というようなことをいたしますと、ほとんどとは申しませんけれども、きわめて多数の建設業者がそういった処分を受けざるを得ないということにならざるを得ないわけでございます。したがいまして、この不正な行為の中に、建築基準法違反をやりましても、これはまた発注者のほうから無理やりにそういうふうに頼まれて、不本意ながら建築基準法に適合しない、そういう行為をやるというふうな場合もございましょう、あるいは発注者をだまして、いかにも建築基準法に適合するがごときことを言いながら、とんでもない建築基準法違反の建物をつくるというふうな場合もあろうかと思います。したがいまして、この不正な行為の中に建築基準法の違反ということが含まれないとは申しませんけれども、ただ、これを運用するにあたりまして、やはりそのときの社会情勢と申しますか、そういったことも十分考慮いたした上で運用しなければならない、かように考えておる次第でございます。
  236. 浦井洋

    浦井委員 はっきりしないわけなんですが、参議院の質疑の中にも基準法の違反も含むというような答弁があったように聞いておるのですが、事実ですか。
  237. 金丸信

    金丸委員長 静粛に願います。
  238. 檜垣五郎

    ○檜垣説明員 これは、いま申しましたのは事柄を二つに分けて考えてみる必要があろうかと思うのであります。  まず第一は、それをやっておれば全然許可を認めないということと、そういったことをやった場合に監督処分をするという問題と二つあるわけでございます。この監督処分の中には指示に始まりまして営業停止、これは従来六カ月以内ということであったわけでございますが、今回一年以内ということに訂正いたしております。それから許可の取り消しというふうなものがあるわけであります。したがいまして、建築基準法違反、これは当然監督処分の対象となるわけでございますけれども、やはりそれはその態様によりまして許可の取り消しになる場合もございますし、十二カ月の営業停止になる場合もある。三カ月の営業停止になる場合もある。その態様に応じてあるわけでございます。したがいまして、許可要件として考える場合、それに該当すれば営業を認めない。つまり許可の取り消しに類似したような効果が生ずるわけでございますから、すでに営業を開始しております者について許可を取り消す。建築基準法違反につきまして従来の許可を取り消すという場合と、新たにこれから営業開始しようというものについて許可要件に適合しないと判断する場合とは、従来の営業権を尊重するというふうな意味合いにおきまして、若干の相違はあろうかと存ずるのでございますけれども、大体それとの関連におきまして運用してまいりたいというふうに考えております。
  239. 浦井洋

    浦井委員 非常に支離滅裂な答弁があったわけですが、そういう点で私が言いたいのは、この基準法の違反については日を改めて基準法の審議のときに触れたいというふうに思うわけですけれども、私も、ほんとうに悪質な反社会的な違反については取り締まらなければならぬというふうに思うわけでございますけれども、さっき課長さんが言われたように、施主に頼まれて、そして断わることができずにやむなくごくわずかな違反をやった。そのような種類の違反と、それから非常に大がかりな計画的な違反とを同一にして考えて取り締まるということには非常に問題があるというふうに思うわけです。したがって、基準法の改正の審議が行なわれるわけですが、いま答弁があった点を中心にして、私ももっと深めたいというふうに思うわけです。やはり弱い者を守る、これを保障するという立場は堅持してほしいというふうに思うわけです。  それで業法ですが、そうした基準法の違反がそのまま業法での不許可要件になってはならないというふうに考えるわけで、この点についてもう一ぺん責任のある答えをお願いしたいのです。
  240. 川島博

    川島(博)政府委員 ただいま課長が答え、また先生が確認されましたとおりに考えております。
  241. 浦井洋

    浦井委員 時間がないので次に進むのですが、これは確認なんですが、登録または許可を受けて継続して建設業を営んでいるものについては、普通の場合には誠実であるという誓約書をとればそれでよいというふうに聞いておるわけですが、その点はどうですか。それでよいわけですか。許可基準の場合、誠実性の要件……。
  242. 川島博

    川島(博)政府委員 そのとおりでございます。
  243. 浦井洋

    浦井委員 許可基準の問題についてはその辺にいたしまして、許可制そのものについて次に入りたいと思うのですが、私はやはり許可制には反対だというように考えるわけです。これはすでにいままで他の委員の方が述べておられるように、町の善良な大工さん、左官さん、こういう一人親方の利益を守る、このためにも許可制は非常に不都合だと思うわけですが、家を建てたいと考えておるところの一般庶民、一般勤労者の利益の立場からいっても、やはり許可制というものはだめだというふうに思うわけです。現在、一般人たちが、庶民が自分の家を建てようとするときには大体二十坪から三十坪くらいのものですが、これを自分の住んでいる町のよく知っている一人親方に頼むと、家の設計や見積もり、こういうものが事実上サービスの形になっておる。そして、しかもいろいろ相談しながらやってもらえる。経費の点でもあまり暴利をむさぼるというようなことは、同じ町中に住んでおるわけですからできないということで、さらに家ができてしまってからも、同じ町に住んでおるということで後々まで責任を持ってもらえる、世話をしてもらえる。そういう腕と信用の中で、しかも安い家が建ってきておるのがいまの日本の状態です。そして今日まで民間の住宅建設の主力というものは、そういうそれぞれの町に住んでおられる善良な大工さん、左官さんという一人親方が中心になってやってきておるわけです。これをもし許可制にするならば、当然いまよりももっと大きな許可業者に頼むというケースも多々出てくるわけだろうと思うのですが、そうなると、大体見積もりますと、工事費が少なくとも二〇%くらいは高くなるのではないか。なぜならば、大きな業者は一軒一軒の庶民の家を自分で直接建てない。やはり下請あるいはもう一つ下くらいというようになって、そこに当然マージンが出てくるわけでございますので、建築費が二〇%くらいは引き上げられざるを得ない。それからさらに、先ほど述べたのと反対に、信用の点でも親切さの点でも、町の一人親方に頼んだ場合よりもずっと悪くなるというふうに思うわけですが、現在、町の大工さんと大手の大企業とでは、現実に坪単価が約二〇%くらい違ってきておるわけですから、許可制をとった場合には確実にこのくらいの工事費の値上げは予想される。そして、現実に家を建てようと考えておる人がさらに苦しめられるという結果になると思うわけです。許可制をとる場合に、その利点として不良業者を排除するということがいわれておるわけなんですが、ここでいう不良業者というのは、町方の一人親方の場合はほとんどこれには入らない。実際に不良業者といわれるのは、建て売り住宅をつくって詐欺的に販売しておるところの、そういう建て売り専門の業者の中に不良業者が多い。これを規制するには、やはり建て売り住宅の取引を規制する方法、こういうものによって有効に不良業者を排除することができるわけで、信用のある町の一人親方を巻き添えにして、むしろこういう人たちを犠牲にして許可制が実施されるという危惧が非常に強いわけなんですが、この点については御見解はどうでしょうか。
  244. 川島博

    川島(博)政府委員 現在の一般の庶民住宅の建設は、登録業者によって行なわれておるわけでございますが、確かに登録業者の中にも必ずしも善良でない者がいることは事実でございます。しかしながら、今回の許可制によりまして要件をある程度厳密にするということで、従来よりも登録業者の質が向上していくであろうということは間違いない。ただ、法律を改正したがためにそういった悪質な業者が一掃されるというものではないと思いますけれども、少なくとも現状よりも改善をされることは間違いないだろうと思います。私どもは、そういう確信のもとに今回の法律改正案を提出いたしておるわけでございます。  なお、御指摘の建て売り業者は、請負業者である場合もありますが、不動産業者である者が多いわけでございます。こういった流通業者につきましては、建設業法だけではとても手当てがし切れませんので、これにつきましては別途宅地建物取引業法の改正によって手当てをいたしたいということで検討を進めておる次第でございます。
  245. 浦井洋

    浦井委員 どうも答えが部分的、かつ、すれ違いのような感じがするわけですが、時間がございませんので、次に進みたいと思います。  許可を要しない零細業者のワクが百万円から三百万円というふうに引き上げられるという話があるわけなんですが、三百万円のワクの中には材料費であるとか、それから材料その他の運搬費などももちろん含まれているわけですね。——そういうことで計算いたしますと、午前中の松浦委員のお話では、坪当たり建設費が十二万というようなお話でしたけれども、神戸のような大都会、これは神戸だけではないのですが、大都会では、現在坪当たり最低で十五万という数字が現実に出ておるわけなんです。そうしますと、まず庶民の家は二十坪前後ということになりますから、十五万かける二十ということになって三百万円というのはほんとうにかつかつの線になるわけです。  そこで、午前中の繰り返しになるかもわかりませんけれども、政府の予算でも消費者物価は四・八%のアップを見込んでおる。それから昨年は五・七というふうに見込んでおったところが、結果は六・四ということで、来年も当然上がるというふうに考えるのが、これは理の当然でございます。そうすると、三百万円というワクがもう来年にはちょっと間に合わぬようになってくるというように考えられるわけです。そういう処置として、午前中も言われたように、この三百万円を物価上昇にスライドしてこれからも上げていくおつもりがあるのかという点と、それから大臣は、そのスライド制、それから建坪などの方法にするか検討したいというふうに言われておるわけですが、私も建物の構造から規制することも合理性があるというふうに考えるわけです。この場合木造の建物または二級建築士の設計、監理の要らない百平米までの建物については許可を要しない範囲とすべきであるというふうに思うわけなんですが、この点について御意見を承りたいのです。
  246. 川島博

    川島(博)政府委員 ただいまの問題については累次にわたってお答えを申し上げておりますが、適用除外の軽微工事は、やはり発注者の保護という観点と、それから軽微な工事のみを行なう建設業者の許可による負担の軽減、こういう二つの要請をどこでかみ合わせるかという観点からきめるべきであろうと思います。  実は建設業審議会審議の過程におきましては、学識経験者の中からは、この際現行の五十万円のワクさえはずすべきである。たとえ十万の工事であっても、これが零細な庶民が貴重なさいふをはたいて家を建てるという場合には、およそ登録あるいは許可にかかる業者でなければ工事ができないようにすべきであるというようなきつい御意見まであったわけでございます。しかしながら、本法制定の経緯にかんがみまして、現行の五十万円はやはりその後物価が相当上がっておりますので、これにスライドする程度までは引き上げる、たまたま許可制というふうに若干要件も加重される機会でございますから、それに見合って引き上ぐべきであるということが中建審の御意見にあったわけでございます。  今回、そういった経緯にとらわれずに、これを三百万円に引き上げるべきであるという御意向が強いようでございます。それには私どもは異存はないわけでございますけれども、さらにこれを引き上げる、あるいは将来物価にスライドすることをお約束せいということでございますが、これにつきましては、かりに三百万円ときまりましても、これを将来スライド制にするというふうなことをお約束することは、やはり発注者の保護という観点からいかがとも思われますので、私どもは、やはりその線で当分は運用すべきじゃないかというふうに考えております。
  247. 浦井洋

    浦井委員 もう一つ百平米、その点についてはどうですか。
  248. 川島博

    川島(博)政府委員 ただいま建築の単価のお話が出て、先生からは十万円ではなくて十二万円程度が普通であるというお話がございました。(浦井委員「十五万」と呼ぶ)十五万というのはまだ私どもの庶民の感覚からいえば相当高い。現に公営住宅等は単価がまだ十万に至っておりません。また木造、プレハブ住宅等では、東京等でもまだ単価は十万でございます。したがいまして、たとえば同じ三十坪の家でも、投資額は単価によって相当違うわけでございます。したがいまして、庶民のふところぐあいから見て、三百万円程度がやはり発注者の保護という観点から適当じゃないかということで私は判断しておりますので、これを坪数に置きかえるということは、少なくとも建築士法との関連から、そういう発想からそれに置きかえろという御意見でございますれば、それは問題であろうということは先ほど来申し上げておるとおりであります。
  249. 浦井洋

    浦井委員 時間があれなんで非常に残念なんですけれども、もう一つの問題として、下請の保護の問題に関連いたしまして、建設労働者のことについてなんですが、最初にお尋ねしたいのは、建設労働者の中で常用でないところの臨時であるとか日雇いの人たちは、建設労働者全体の中で占めるパーセントというのは一体どれくらいなのか、そういう点をお聞きしたいのです。
  250. 川島博

    川島(博)政府委員 総理府で実施しております労働力調査によりますと、現在建設業に従事する就業者は、ホワイトカラーまで含めまして三百七十万人という数字が出ております。それから技能労働者は、これは労働省の調査でございますが、約七十万人ということでございます。それから出かせぎ労働者、これは農林省の調査でございますが、四十三年に十三万四千人という数字が出ております。実はこの日雇い労働者ずばりという数字が現在手元に持ち合わせません。そういう統計はございませんけれども、これらの数字から推計いたしますと、やはり百万単位で存在するのではないかというふうに考えております。
  251. 浦井洋

    浦井委員 建設労働者の臨時、日雇い、この数字だけではちょっとはっきりしないのですけれども、約三〇%前後というようなことだろうと思うのですが、その中で起こっておる建設労働者の労働災害ですね。これは常用の労働者と比べて比率において臨時、日雇いの労働者の労働災害のパーセントはわかりますか。
  252. 川島博

    川島(博)政府委員 全体の数字といたしましては、労働災害による休業八日以上の負傷者数ということで建設業におきましては四十三年、これは年間でございますが、約十一万人という数字が出ております。しかしながら、先ほど申し上げましたように、日雇い労働者の実態がつかめませんので、この十一万の負傷者の中で日雇いがどれくらいの比率を占めているかは、ちょっと数字がございませんのでお答えいたしかねます。
  253. 浦井洋

    浦井委員 そうしますと、もう一つ観点を変えまして、日雇い労働者、臨時の労働者と常用の建設労働者のおおよその賃金の比率は、大体どれくらいになるのですか。常用と臨時の賃金の比率ですね。
  254. 川島博

    川島(博)政府委員 残念ながら日雇い労働者の実態が完全につかめておりませんのでお答えいたしかねるわけでございますが、常用労働者の一人平均月間支給額は、四十三年の数字でございますが、建設業が五万二千百六十三円、製造業が五万二千六百九十九円というのが労働省の調べでございます。
  255. 浦井洋

    浦井委員 さっき私二、三質問したことを、ひとつ正確に調べて資料として出していただきたいと思うのですが、そういう点で出かせぎの問題なんですがね。農業だけで生活できなくなってそれで都会に出てくる。そういう場合に建設関係に働くケースが非常に多いわけなんです。技術的にも未熟である、それから賃金も安い、無理をして長時間働く、深夜まで及ぶ、そういう状態であるわけです。しかも先ほどから尋ねておりますように、私は災害も多いし賃金も低いと思うのですが、臨時の方たちは非常に歩の悪い労働に、危険な仕事に従事させられておるというふうに思うわけです。その結果、非常に労働災害も多いだろうと思うわけですが、大臣、この点については大体どういうふうに考えておられますか。そうだろうと思われますか。
  256. 根本龍太郎

    根本国務大臣 以前はかなりそういうふうな情勢もあったようには聞いています。私の県も相当農業従事者が出かせぎに出ているほうでございます。しかし、いま御指摘になりましたように、農業では生活苦に追われて出てくるというだけではないようです。御承知のように、このごろ農業が非常に機械化もいたしまして、努力農業でありまして、相当規模の大きい農家もやはり金銭収入をより多く望みたいというのが人間の本性でございますから、私のほうでは五町歩程度のかなりの大きい経営者も出かせぎに出ていることは事実でございます。それと同時に、現在労働力不足でございますから、非常に劣悪な状況ではどんどんどんどん他のほうに移転していくようでございます。したがいまして、いまから五、六年前の状況からすれば、飯場の状況も変えられておる、労働条件もだいぶよくなってきておると私は聞いております。しかし、これが非常にいい条件であるということは必ずしもいえない。  それから、いま御指摘のように、十分に技術的なあるいはそういった建築業務になれてないために不慮の災害を受けやすいということは確かにあるようでございまして、そのために、これは労働省も十分に配慮をしてやると同時に、建設業界においても訓練、安全の指導は十分にいたすように指導しておる次第でございます。
  257. 浦井洋

    浦井委員 最後に、もう一つ具体的なことをお聞きしたいのですが、そういうような状態でたとえば出かせぎの農家の人たちが都会に出てきて建設業の日雇いで働く、そういう場合に、えてして雇用契約もはっきりしない、それから必ずしも信用のある業者のところで働くとは限らない、こういう例が多々あるわけなんです。そこで、たとえば冬の何カ月か一生懸命都会で働いて、いざ賃金をもらって故郷に帰るというようなときに、たまたま雇い主が悪徳業者であって、そっくり賃金を持ち逃げされて行くえ不明になったというようなことが新聞でもしばしば見られるわけなんですが、こういうようなときに、今度のいわゆる業法の改正によって、元清はどういうような責任をとることになるわけですか。
  258. 川島博

    川島(博)政府委員 これも先ほど来御答弁申し上げておりますように、具体的な雇用契約は下請業者と当該出かせぎ者の間で結ばれておるわけでございます。したがって、本来ならば下請業者が金を払う、取れなければ裁判に訴えてでも取る、こういうことでございますけれども、実際問題として下請が逃げてしまえば賃金がもらえないという場合がございます。その場合には、今回の法律では、そういう労務者が劣悪な状況にある場合には、建設大臣あるいは都道府県知事が元請業者たる特定建設業者に対して立てかえ払いをするなりあるいは貸し付けをするなり、そういう勧告をするように規定されているわけでございます。
  259. 浦井洋

    浦井委員 時間が来ましたのでこの辺でやめますけれども、非常に不満足なお答えしか得られなかったので、ひとつまた機会がございましたら質問を続行するということで、この辺で終わります。
  260. 金丸信

    金丸委員長 次回は、定例日ではありませんが、来たる十一日月曜日、午前十時理事会、十時十五分委員会を開会いたします。御出席をお願いいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時四十七分散会