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1970-09-10 第63回国会 衆議院 決算委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年九月十日(木曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 白浜 仁吉君 理事 高橋清一郎君    理事 丹羽 久章君 理事 鳥居 一雄君    理事 吉田 賢一君       笠岡  喬君    菅野和太郎君       椎名悦三郎君    中村 弘海君       勝澤 芳雄君    田中 武夫君       日野 吉夫君    西中  清君  出席国務大臣         通商産業大臣  宮澤 喜一君  委員外出席者         行政管理庁行政         監察局長    岡内  豊君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         外務省経済局次         長       鈴木 文彦君         外務省経済協力         局長      沢木 正男君         大蔵省主計局予         算科学分析室長 西垣  昭君         通商産業政務次         官      小宮山重四郎君         通商産業大臣官         房長      高橋 淑郎君         通商産業大臣官         房会計課長   飯塚 史郎君         通商産業省貿易         振興局長    後藤 正記君         通商産業省繊維         雑貨局長    三宅 幸夫君         通商産業省鉱山         石炭局長    本田 早苗君         工業技術院総務         部技術参事官  長沢 栄一君         中小企業庁次長 外山  弘君         運輸大臣官房参         事官      原田昇左右君         労働省職業訓練         局長      石黒 拓爾君         会計検査院事務         総長      佐藤 三郎君         会計検査院事務         総局第四局長  田中  稔君         中小企業金融公         庫総裁     佐久  洋君         中小企業信用保         険公庫総裁   長村 貞一君         決算委員会調査         室長      池田 孝道君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十三年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十三年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十三年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十三年度政府関係機関決算書  昭和四十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十三年度国有財産無償貸付状況計算書  (通商産業省所管中小企業金融公庫中小企  業信用保険公庫)  国が直接または間接補助金奨励金助成金  等を交付しているものの会計に関する件      ————◇—————
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  国が直接または間接補助金奨励金助成金等を交付しているものの会計に関する件について調査を行ないます。  質疑の通告がございますので、これを許します。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、佐藤会計検査院事務総長に若干お伺いしたいと思います。  これは、私前もってお断わりしますが、別にしゅうとめの嫁いじめのような気持ちでやるのではなしに、もっと大所高所に立っての意見を聞きたい、こう思いますので、いじめるという態度でないことだけをまず申し上げておきます。  これは佐藤総長ももう御承知のことでもあり、その新聞記事自体佐藤さんの談話も出ておりますからよく御承知と思いますが、九月四日の読売新聞、私は東京版関西版、両方とも持ってきておりますが、中身は大体一緒でございますが、見出しは、東京版のほうは「会計検査食事おみやげ」そしてサブタイトルに「各区役所がワリカンホテル、料亭で懇談会 〃たかがビール〃道義マヒ」といったような見出しで出ております。それから関西版のほうは「酒食つき会計検査 区がホテル招待 帰りにはおみやげ」といったような見出しが出ております。  これはもう内容を申し上げるまでもなくおわかりだと思いますから申し上げませんが、こういうことが一流新聞に堂々と出るということ、これはうそではなくて、事実あったと思います。しかも、これはプリンスホテルですかで招待したときの「品川区役所様御席」といったような写真まで出ておる。  そこで、念のために最近のものを一、二、新聞記事を見た程度ですが、あるいは落ちておるかもしれませんが、本年四月十七日には、これは朝日新聞だと思うのですが、これも「また平日ゴルフ会計検査院調査官県課長」、それから昨年の十二月の十二日「調査官芸者接待 連夜の宴席1週間 災害工事会計検査奈良県32万円使う」こういう見出しが出ております。この三件、いずれも会計検査に行った先で酒つき食事等招待を受けた、そうしてみやげまで持って帰る、中にはゴルフということで、これは相手方関係の県の課長ゴルフをやったとか、あるいは災害工事についての検査に行って、芸者つきで連日の宴会をやって、県自体が三十二万円を使うというようなこと、こういう記事を見た場合に国民はどう思うか。そのつど、今回の場合は佐藤総長みずから、他の二件についてもそれぞれその監督立場にある会計検査院局長さんなりあるいはそういった方が、今後こういうことのないように、あるいは十分注意するとかなんとかといったような談話も出ておるわけなんです。私は、こういうことであったならば、一体国の金でやった工事検査をやる、あるいは国民税金の使い道について検査に行って、そうして招待を受けたり何かしておる、ひどいのになると、現場を見ずに宴席招待を受けて、そうして判だけついて帰るというようなことも過去にはあったように聞いております。これは、国費、国民税金のむだづかいというか、あるいはそれに対する責任感というものの考え方が一体どういうことなのか、こういうように思います。そのつどそのつどにそれぞれ適切な措置をとられたと思います。今回の場合も、聞きますと、何か措置をとられたようです。しかし、そのことについてはあまり新聞記事というものは出ないわけですね。そうしますと、こういう記事が出る、国民は何だと、こう思って、それで会計検査なり、ひいては政府ないし政治に対する不信感を高めていく、しかし、それに対してどういったような措置をとったのか、今後そのようなことのないような方法をどう講じたか、そういうことがあまりにも知らされていないと思います。  そこでひとつ、今回のこの東京都の関連した最近の事件について一体どのような措置をとったか、さらに、こういうことが今後ないような会計検査院内の綱紀粛正ということについてどういうように考えておるのか、もし今後このようなことがありとするならばどうするのか、ひとつ明確にお答え願いたいと思います。
  4. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院説明員 先生御指摘のような事態が起きましたことにつきましては、私、監督者といたしまして、はなはだ申しわけないと存じておる次第であります。かねてこの問題につきましては、こういう接待の問題につきましては、幾らいい検査をしても、こういう事態が一回起きれば、検査院威信を失墜し、検査そのもの威信をはなはだ失墜することになりますので何にもならぬということで、かねがね部下にも強く注意をしてまいった次第でございますが、なおこういう事態が出ましたことは、はなはだ遺憾に存ずる次第でございます。  これにつきましては、直後、それぞれ全員訓戒処分にいたしまして、それから局長を集め、あるいは課長を集めて、こういうことで威信をはなはだしく失墜して、会計検査院としてはもう国民から軽視されるような事態になっている、ここで大いにふんどしを締めなければならぬということで、厳重に注意を喚起した次第でございます。  なお、この検査に参りましては、かねて、こういうこともあるいは起きるといかぬということで、できるだけ相手方にも事前に、検査に行く前に、こういうことをしてくれるなということで、課長向こう担当官にお願いして行っておるのでございますが、なおこういう慣行が断ち切れなかったということは、私ども、はなはだ残念に思っておる次第であります。  私どもの聞くところによりますと、東京都の検査はここだけではございません。事務所とか、ほかの郡部の事務所にも行っております。そのような場合には、同じようなことがあったけれども、けんかをするようにして引き揚げてきたというようなことも聞いておりますし、あるいは、どうしても顔をかしてくれというようなことだったものですから、それじゃといって、まるで落語みたいですけれども、顔を出して、ビール一ぱい飲んでさようならということで引き揚げてきたというような場面もあったわけでございますが、たまたまこの三カ所につきましては、こういうような事態が、心のゆるみと申しましょうか、出ましたということにつきましては、私どもほんとうに相すまないと感じておる次第でございます。なお、今後こういうような事態が起きましたならば、私どもといたしましては厳重なる処分をもって臨みたい、こう考えております。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 訓告ですか、処分の重いか軽いかというようなことは存じません。しかし私は、この当該の人を厳罰をもって、というだけでは事が済まぬと思うのです。これは会計検査院だけではなく、中央役所すべてにそういう感覚があるんじゃないかと思うのですが、せっかく地方へ行ったのだから、あるいはまた、東京都でも中央からいえば地方になるのかもしれないが、行った、だからめしくらいは、あるいはみやげくらいはという、それが普通の、日常の礼儀というか慣習というか、そんなことで、そういうようなことについて、やるほうも受けるほうも、別に悪いというか、これがいけないことだというような感覚がなくなっているんじゃないですか、そういうことが私問題だと思うのです。これは、ある人に言わすと、三権分立じゃなくて、会計検査院を入れて四権分立だなんて言う人もあるくらいなんですよ。それだけに会計検査院はことにえりを正してもらわなければいけない。国民税金国民の金、これで工事をするあるいは補助事業をやる、それの一番最後のけじめをつけるのは会計検査院検査でしょう。それがこういう状態であるなら、国民中央に対する、役所に対する、行政に対する、政治に対する不信となってあらわると思うのです。  そこで、この問題もさることながら、全般に対してそういうことがいけないんだということ、あるいは、そういうことをしてもらっちゃ困るんだということ、先ほどの話でも、何か関係課長がさっきそういうようなことを言ったとか言っておりますが、この際、会計検査院長ないし事務総長が、その関係会計検査院検査に行く地方団体あるいは補助団体等全部に対して、ひとつこれを機会に、こういうことのないようにしてくれ、こういうことの通達とでもいうのか、あるいは書簡というのか、それをお出しになったらどうです。いかがですか。
  6. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院説明員 先生のおっしゃること、もっともでございまして、私どもいままでは、先ほど申しましたように、関係課長向こう担当官に直接言うというふうな指導をしてまいったのでございますが、なおそういうような方法を考えたいと存じます。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 これは国会決算委員会でも問題になった。したがって、今後そういう供応その他、やってくれた相手方に対しても追及する、こういうことを強く言われておるということを特に書いて、全部にお出しなさい。いかがです。
  8. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院説明員 御趣旨をよく体しまして、実行いたしたいと存じます。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 それから、こういうことがあるということに関連をしてですが、会計検査院検査のために全国へ出かけますね。旅費日当については十分なんですか、予算的に。それが一つ、それから、これは事務総長に言うことはどうかと思うのですが、行管はきょう見えるのですが、むしろ人事院も呼ぶべきだったと思うのですが、こういう人に対してはある程度待遇を考えてやらねばならないんじゃないかという感じもするわけです。このことを事務総長に言ったって、それはけっこうです、月給を上げてもらったらなおけっこうだということだと思うのです。待遇の問題も考えなければならない、と同時に、出張の場合の旅費日当、それが少ないんじゃないですか。そういうのは予算的にどうなんです。
  10. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院説明員 旅費の問題につきましては、ことしの四月から旅費法の改正がありまして、そして旅費を三割ないし四割引き上げていただきました。したがって、いま調査官検査の主体でございますが、調査官の一番下が五等級でございますが、五等級で一日三千六百円くらいになっております。それで十分とは申せませんが、まあ何とかやっていける程度じゃないかと思っております。  会計検査院といたしましては、全国指定旅館という特別な契約を結びまして、大体二千円くらいで泊まれるような旅館を四百六十数カ所契約いたしております。それからあと共済組合連合会で泊まるとか——連合会宿泊所でございますが、そういうような施設を使うということで、まあいま何とかやっていける程度じゃなかろうか、こう考えております。  それから先ほどの待遇改善の問題でございますが、職員はこういうふうに非常に身分的拘束が強うございますので、私ども管理者といたしましても、何とかこれに相応ずるものを見てやらなければならぬじゃないかということで——これは検査院の諸君の身分の根本的な問題に関する問題もございますので、いわゆる特別職とか、それから俸給表の特別の表をつくってもらうとか、いろんなあれがございますので、そういった点をどうしたら一番いいかということをいま検討しているわけでございます。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 行管見えましたか——それじゃ委員長行政管理庁のほうの意見も聞き、あるいは委員長にもお願いをして、きょうも参考人ということできめていただくことになったのですが、向こうの都合で、急で来られないということで、あらためてひとつ、相手方というか、検査を受ける側、あるいは、そういうことによって酒食を提供してもてなしたほうの側、こういう人も呼んで、あるいは行管、あるいはもっと責任のある総理と言いたいのですが、何なら官房長官検査院長、全部一ぺんそろったところでなおこれを、具体的な一つの事実でその個人を云々ということでなくて、全体の綱紀粛正ということで取り上げていきたいと思います。同時にまた、委員長のほうからも、ひとつそういうことについて決算委員会の強い意思だということで関係方面にお訴え願いたい。もしなんでしたら、後日当委員会でそのようなことについて決議をしてもいいんじゃないか、このように思っております。そういうことを留保いたしまして、一応本日の質問はこれで終わります。
  12. 濱野清吾

  13. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 関連しましてひとつ。  事務総長承知のとおり、いま日本におきましては、行政府並びにわれわれの国会もあわせまして、とにかく批判、反省をせなければならぬ問題がたくさんございます。しかし、もし、たとえば司法部におきまして、司法部がわいろをとって裁判をするということになりましたならば、これはもう国が混乱しちゃうんです。そういうことをあわせて考えますと、この際に検査院立場——憲法並びに院法によって規定せられておる検査院立場を厳粛に反省するということにして、いかにして綱紀粛正を全うするかということに異常な決意をなさるべきときでないだろうかと思われます。当委員会におきましても、幾たびかあらゆる案件を通じて指摘したのでありますけれども、膨大な年々の予算増費、財政の紊乱などはともかく、ここで指摘するものは全然あとを断つことなし、これがひいては世相の混乱にもなり、あるいはまた、日本社会全体に対してどれだけ悪影響を及ぼしておるかわかりません。行政に対し独立の地位を保障されておる検査院でありますから、検査院におきましては、やはりほんとう院長以下、泣いて馬謖を切るというような厳粛な姿勢をもって、この種の問題に臨まなければいくまいと思うのでありますが、事務的な扱い方といたしましては検討してしかるべきでありますけれども基本姿勢を確立するという意味におきまして、いまこそ絶好の一つのチャンスなり、好個の題目が提供せられたときだからというので、日本の国政全体に寄与するという問題も含めまして、院長先頭に立って綱紀粛正方法を具体化すべきときでないか、こう思われます。どうすることが一番適切であるか、どうすることがこの際必要であるかということは、これはしかるべく検討されたいと思うのです。  いずれにしましても、事務的に終わらすということのないようになさって、この際は、何はともかく、やはり院長先頭になりまして、会計検査院ここにありというようなその姿勢社会に明らかにしてもらいたい、行政府全体に対しましても明らかにしてもらいたいと思うのであります。申すまでもありませんが、人間ですから、相手もあるし、周囲があるし、弱いところにはひっついてきます。誘惑もあります。ほしがっているものも提供します。これは人情です。でありまするから容易じゃありません。神にあらざればなかなか避けがたいのがその境涯かと思いますけれども、それだけにやはり検査院としましては、重要な職責にかんがみて、この際いいチャンスが与えられたとして私は進まれるべきじゃないかと思います。だから、綱紀粛正、絶対の重要な課題を提供せられたとして、院長はやはり当委員会に出て、そうして決意を表明して全国民に道を示し、みずから省みまして、今後も寸毫の仮借も許さないで、またみずからの誤ち、誤算、相手の見そこない等々がないように職責を全うせられる道を講じてもらいたい、これを切実に要求いたしておきます。そして、しかるべきときに院長はぜひここに来て、はっきりと検査院の異常なる決意のあるところを国民に示すことを強く要請しておきたいと思います。  御所見を伺って、これでよろしゅうございます。
  14. 佐藤三郎

    佐藤会計検査院説明員 先ほどの田中委員のおっしゃることといい、また吉田委員のおさとしといい、私、非常に肝にこたえる次第でございます。先生方の御趣意を体しまして、厳正、厳格なる検査をするとともに、そういったことで検査院威信が問われるようなことのないように、十分気をつけてやっていきたいと存じます。
  15. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 終わります。      ————◇—————
  16. 濱野清吾

    濱野委員長 この際おはかりいたします。  本件調査のため、本委員会参考人として関係者出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 濱野清吾

    濱野委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。  なお、参考人出頭の日時及び人選等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 濱野清吾

    濱野委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  19. 濱野清吾

    濱野委員長 昭和四十三年度決算外二件を一括して議題といたします。  通商産業省所管中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫について審査を行ないます。  まず、通商産業政務次官より概要説明を求めます。小宮山通産政務次官
  20. 小宮山重四郎

    小宮山説明員 ただいま議題となっております昭和四十三年度通商産業省所管歳入歳出決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、通商産業省所管一般会計歳入歳出決算につきまして、御説明いたします。  昭和四十三年度通商産業省主管歳入につきましては、当初予算額二十二億一千三百九十万円余でありまして、予算補正追加額四億六千三百九十二万円余が増加されましたので、歳入予算額は二十六億七千七百八十二万円余となっております。  これに対しまして、収納済み歳入額は二十八億四千三百四十万円余でありまして、これを歳入予算額と比較いたしますと一億六千五百五十七万円余の増加となっております。  これは、鉱工業技術研究費補助金償還金の納付が予定より多かったこと等によるものであります。  次に、四十三年度通商産業省所管歳出につきましては、当初予算額は八百六十八億六千五百三十九万円余でありまして、予算補正修正減少額十六億二千八百四十一万円、総理府所管から移しかえを受けた額七億一千百九十一万円余、文部省所管から移しかえを受けた額十万円余、計七億一千二百二万円余、前年度からの繰り越し額六十六億二千六百三十六万円余、予備費使用額六億三千六百五十三万円余の増減がございましたので、歳出予算現額は九百三十二億一千百九十一万円余となっております。  これに対しまして、支出済み歳出額は八百三十八億二千七百七万円余でありまして、歳出予算現額と比較いたしますと九十三億八千四百八十三万円余の差額となっております。  この差額のうち、翌年度へ繰り越しました額は八十四億六千五十三万円余でありまして、不用となりました額は九億二千四百三十万円余となっております。  四十三年度におけるこの経費の執行につきまして、そのおもな事項の大要を御説明いたします。  第一に、貿易振興及び経済協力費であります。  四十三年度予算現額は二百七十一億一千八百九十四万円余でありまして、その支出済み歳出額は百九十四億八千七百九十八万円余であります。  この経費は、日本貿易振興会が行なった海外市場調査国際見本市への参加、貿易あっせん等事業に対する補助金貿易振興関係団体が行なう海外市場開拓事業に対する補助金及び日本万国博覧会を開催するため日本万国博覧会協会が行なった会場の建設事業に対する補助金等でございます。  第二に、中小企業対策費でありますが、四十三年度予算現額は二百六十四億七千九十九万円余でありまして、その支出済み額は二百六十一億九千五百三十七万円余であります。  この経費は、中小企業構造高度化を促進するため、中小企業振興事業団が行なった指導資金貸し付け等事業に対する出資等と、中小企業近代化を促進するための中小企業設備近代化補助金等でございます。  第三に、技術振興関係費でございますが、四十三年度予算現額は百五十一億七千七百八十六万円余でありまして、その支出済み額は百四十六億八千九百九十六万円余であります。  この経費は、将来の技術開発の核心となり技術的波及効果の高い大規模な国産技術研究開発を積極的に推進するための大型工業技術研究開発事業及び通商産業省試験研究機関における特別研究実施等に要したものでございます。  第四に、公共事業費であります。  四十三年度予算現額は八十九億五千九百九十七万円余でありまして、その支出済み額は八十四億百六十七万円余であります。  この経費は、工業用水道建設工事に対する補助金等でございます。  次に、不用額を生じました経費のおもなものは、貿易振興及び経済協力費一億七千百五十四万円余、繊維工業構造改善対策費二億八千五百二十八万円余、中小企業対策費二億六千二百五十三万円余でございます。  以上をもちまして、通商産業省所管一般会計歳入歳出決算に関する説明を終わります。  次に、当省所管の各特別会計決算について御説明いたします。  第一に、石炭対策特別会計でございます。  四十三年度収納済み歳入額は七百二十九億九千四百五十五万円余、支出済み歳出額は五百九十億六千四百四十七万円余であります。  収納済み歳入額支出済み歳出額との差額は百三十九億三千七万円余でありまして、翌年度へ繰り越しました金額は十億六千四百五万円余、剰余金は百二十八億六千六百一万円余となっております。  四十三年度におけるこの経費の執行につきまして御説明いたしますと、石炭鉱業合理化安定対策費四百二十三億三千四百二十六万円余、炭鉱離職者援護対策費四十九億一千百九十九万円余、産炭地域振興対策費三十六億八千五百二十一万円余、鉱害対策費七十一億七千八百三十七万円余を支出いたしております。  第二に、アルコール専売事業特別会計でございます。  四十三年度収納済み歳入額は八十億二千五百九十九万円余であります。  支出済み歳出額は六十三億八千九百七十三万円余であります。  この会計の損益計算上の利益は十八億七千二百九十三万円余となっておりますが、期末資産の増加相当額三千三百九十一万円余を控除した残額十八億三千九百一万円余は一般会計に納付いたしました。  第三に、輸出保険特別会計でございます。  四十三年度収納済み歳入額は二百四十八億九千五百十五万円余、支出済み歳出額は八十一億九千百四十五万円余であります。四十三年度における保険引き受け件数は五十一万三千件、その保険金額は一兆八千九十億六千万円でありまして、前年度に対し一千二百七十七億一千四百万円の増加となっております。  第四に、機械類賦払信用保険特別会計でございます。  四十三年度収納済み歳入額は十二億八百十三万円余、支出済み歳出額は一億九千四百六十八万円余であります。保険引き受け件数は一万三千件、保険金額は百七十五億七千百万円でございます。  以上をもちまして、通商産業省所管特別会計歳入歳出決算に関する御説明を終わります。  なお、一般会計及び特別会計事業の詳細につきましては、お手元にお配りいたしております昭和四十三年度通商産業省所管歳入歳出決算概要説明書に記述してございますので、御了承を願いたいと存じます。  最後に、四十三年度通商産業省所管決算につきまして、会計検査院より不当事項として指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。  今回、不当事項として指摘を受けましたものは、中小企業設備近代化補助金を財源とする都県の貸し付け金の運営当を得ないもの四件でございます。  この指摘事項につきましては、直ちに返還を命じまして、県の特別会計に収納済みであります。今後この種事例の発生を未然に防止するため、より一そうの指導監督を行ない、かかる事例の絶滅に努力いたす所存でございます。  以上をもちまして、通商産業省所管の一般会計及び特別会計決算に関する御説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  21. 濱野清吾

    濱野委員長 次に、会計検査院当局より検査概要説明を求めます。田中会計検査院第四局長
  22. 田中稔

    田中会計検査院説明員 昭和四十三年度決算通商産業省についての検査概要に関しまして説明いたします。  検査報告に不当事項として掲記いたしましたものは、一二五号から一二八号までの四件でございます。  これは、都道府県が中小企業者の設備の近代化に資するために資金を貸し付けておりますが、その貸し付け金の財源として国が交付しました補助金に関するものでありまして、内容といたしましては、貸し付けの対象になった設備を設置していない者に貸し付けがなされているものなど、補助の目的に沿わない結果となっていると認められるものでございます。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。     —————————————
  23. 濱野清吾

    濱野委員長 次に、中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫当局より、資金計画、事業計画等の概況について説明を求めます。  佐久中小企業金融公庫総裁。
  24. 佐久洋

    ○佐久説明員 昭和四十三年度におきます中小企業金融公庫の業務の概要について御説明申し上げます。  昭和四十三年度のわが国経済は、内外需要の増勢と国際収支の改善が顕著であったため、年度間を通じて実体経済面の拡大基調を持続し、とりわけ年央以降は前年度来の金融引き締め措置が解除されたことにより、企業活動は一段と力強い伸長を示しました。  かかる一般経済の動きを反映して、中小企業の景況はおおむね順調に推移し、特に金融引き締め解除後は企業の資金繰りも好転するなど、着実な上昇歩調をたどりました。  この間、中小企業の設備投資は、需要の増勢に対処した生産能力の増強及び労働力不足の進行、発展途上国との競合等、経済環境の変化に適応するための合理化の推進を主目的に積極的に進められ、当公庫に対する資金需要も設備資金を中心に旺盛なものとなりました。  当公庫は昭和四十三年度の当初貸し付け金を二千七百七十五億円と定められましたが、その後年末、年度末の中小企業金融対策として三百九十億円の貸し付け資金の追加が認められましたので、これにより、前年度実績に比較して一四・三%増の三千百六十二億二百二十一万円の貸し付けと、ほかに中小企業投資育成株式会社に対する十七億円の貸し付け及び設備貸与機関に対する十三億一千百五十万円の貸し付けを実行いたしました。このうち、設備資金は三千百六十二億二百二十一万円の七七・九%に当たる二千四百六十三億七千六百八十四万円余、運転資金は二二・一%に当たる六百九十八億二千五百三十六万円余であります。また直接貸し付けは三千百六十二億二百二十一万円の三六・九%に相当する一千百六十七億二千七百七十万円で五千五百九十五件、代理貸し付けは六三・一%に当たる一千九百九十四億七千四百五十一万円で四万一千七百十三件となっております。  年度末総貸し付け残高は六千三百五十九億一千五十六万円余で、前年度末に比べ一千五十八億六千九百十七万円余、二〇・〇%の増加となっております。  昭和四十三年度の融資にあたりましては、わが国経済の全面的国際化及び労働力不足の本格化等に対処するため、中小企業設備の近代化及び中小企業構造高度化を強力に促進することとし、特に輸出産業、特定機械工業、中小企業近代化促進法指定業種及び流通部門の設備の近代化、合理化並びに産業公害防止施設及び産業安全衛生施設の整備について配慮するとともに、後進地域、産炭地域等、地域経済の振興開発に留意することとしてまいりました。  なお、四十三年度におきましては、中小企業者の便益に一そう資するため、北海道旭川市に出張所を開設いたしました。  次に、日本開発銀行から当公庫が承継しました復金承継債権等につきましては、回収促進に努力いたしました結果、昭和四十三年度におきましては八百二万円余の回収と七十万円の償却を行ない、年度末残高は三千九百四十八万円余となりまして、当初承継しました百十九億八千八十三万円余の九九・七%の整理をいたしたことになります。  最後に、当公庫の損益計算について申し上げますと、昭和四十三年度におきましては、二十億八千九百八十八万円余の償却前利益をあげましたが、固定資産減価償却引き当て金繰り入れ額六千三百二十六万円余を差し引きました残額二十億二千六百六十一万円余は、大蔵大臣が定めた滞り貸し償却引き当て金への繰り入れ額及び積み立て額の限度内でありましたので、その全額を滞り貸し償却引き当て金に繰り入れました結果、利益金はなく、国庫納付はいたしませんでした。  以上、簡単でありますが、中小企業金融公庫昭和四十三年度の業務の概要の御説明を終わります。  何とぞ御審議のほどをお願いいたします。
  25. 濱野清吾

    濱野委員長 次に、長村中小企業信用保険公庫総裁。
  26. 長村貞一

    ○長村説明員 中小企業信用保険公庫昭和四十三年度の業務の概況につきまして、御説明申し上げます。  御承知のとおり、昭和四十三年度のわが国経済は、景気調整下にもかかわらず、引き続き高い成長を持続し、中小企業事業活動も総じて活発でございましたが、若年労働力の不足等、中小企業を取り巻く経済環境は依然としてきびしく、企業倒産も多発化傾向のうちに推移いたしました。  こうした情勢の中で、信用補完制度におきましても、中小企業金融の一そうの円滑化をはかるための各種の施策が講ぜられた次第でございます。  すなわち、産炭地域における中小企業者についての中小企業信用保険に関する特別措置等に関する法律の適用期間が昭和四十九年三月三十一日まで延長され、また、一定要件を備えた無担保保険の保険料率の引き下げ及び特別小口保険の納税要件の緩和がはかられるとともに、国の一般会計から保険事業の円滑な運営をはかるための原資としての保険準備基金といたしまして二十五億円及び信用保証協会の保証活動の円滑化をはかるための原資としての融資基金といたしまして七十億円、合計九十五億円の出資が行なわれるなど、本制度の一そうの強化推進がはかられた次第でございます。  まず、保険事業におきましては、当公庫が全国五十一の信用保証協会との間に締結いたしました保険契約に基づく保険引き受けの実績は、件数で八十三万九千件余、金額で九千八百六十一億四百六十八万円余になっております。これを前年度実績に比較いたしますと、金額では九百八十五億二千五百六十五万円余、比率にいたしますと二%の増加になっております。  なお、保険金の支払いは百八十三億九千二百二十四万円余になりまして、これを前年度実績九十五億二千四百三十七万円余に比較いたしますと、金額では八十八億六千七百八十六万円余、比率にいたしますと九三%の増加になっております。  一方、融資事業におきましては、昭和四十三年度におきまして国の一般会計から新たに出資されました七十億円と既貸し付けにかかる回収金二百六十七億八千万円との合計三百三十七億八千万円をもちまして、長期貸し付け三百二十六億二千百万円、短期貸し付け八億五千三百万円、合計三百三十四億七千四百万円の貸し付けを行ないました。これを前年度実績に比較いたしますと、九%の増加になっております。  この結果、昭和四十三年度末における貸し付け残高は四百九十二億八千百万円になっております。  次に、収入支出及び損益の概況について申し上げます。  まず収入、支出について申し上げますと、収入済み額は百三十五億七千八百三十五万円余であり、これに対しまして、支出済み額は百九十億八千五百六万円余でありまして、差し引き五十五億六百七十一万円余の支出超過になっております。  損益計算につきましては、さらに支払い備金等の整理を行ないました結果、総利益は百五十三億二千八万円余、総損失は二百十二億一千八百七十二万円余になり、差し引き五十八億九千八百六十三万円余の損失を生じました。  以上、簡単でございますが、昭和四十三年度の業務の概況につきまして御説明申し上げた次第でございます。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  27. 濱野清吾

    濱野委員長 これにて説明聴取を終わります。     —————————————
  28. 濱野清吾

    濱野委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高橋君。
  29. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 旅のお疲れで、お着き早々いろんなことでお尋ねして恐縮に存じます。  過般、繊維問題のああした国をあげてと申し上げてよかろうほどの大問題で非常な御辛労をせられたことについて、あの当時を思い起こし、心から御同情申し上げます。しかし、当時の業界あげまして、あるいはまたわが自由民主党の関連いたします議員諸公等も、むしろ大臣のあの当時とられました行動から出てくるいろんなニュアンスと申しますか、そういうものにつきましては絶賛おくあたわずといった一面も出てまいりました。さすがは宮澤通産大臣真価を発揮されたという場面でありますということを、この際はっきり申し上げておきたいと思うのであります。しかし、ああしたアメリカとの経済戦争と申し上げてよかろうと思う事態がずっと推移してまいりました。これからお尋ね申し上げます問題につきましても、やはりその一環でもあろうと思うのでございます。  私は新潟県でありますが、先般も地元の連中に直接お合いいたしまして、一つの市がなくなるかどうかというような大問題にまで発展いたしました事象については御案内のとおりと思うのであります。何せ、ざっくばらんに申し上げまして、地場の、いわゆるステンレスの問題でございますが、金属製品の大半がアメリカ向けである。国内需要は二割しかございません。八割はアメリカであるという食器業に携わっております。約二百五十社であると思うのでありますが、それは工業組合に入っている連中の数で、その下請は二千軒ございます。四万程度の市でございますが、それをいちずに生きる道として、今日まで長きにわたり生業にいそしみ、アメリカさまさまの姿でまいったということにつきましては御案内のとおりであります。なるほど諸外国等につきましても相当の数は出ておりますが、何といたしましても六割程度のものがアメリカに依存してまいったということは御案内のとおりであります。最近におきましては、特に日本以外の香港あるいは韓国、台湾、これらの国々におきましては、日本の年ごとの伸び率と比較いたしまして毎年倍以上であります。倍増の姿が出ておるということであります。特に競争相手としてはたいへんなことです。たいしたもうけもない品目であるにかかわらず、ただいちずにアメリカの今日までの親心を信用してまいったということにいままでの惰性的なものがあっただろうと思うのであります。  なるほど、一面考えてみますると、もっと早くから自主規制というものに思いをいたし、構造改善等についても資質の改善策をとるという努力を払われたらいいじゃないかという面もあろうと思うのでありますけれども、しかし、今日までまいりましたこの天下に名だたると申しますか、日本全国——関という一カ所はございますけれども、全部が全部と申してもいい燕市の洋食器業界であります。これの浮沈にかかわる大問題であります。これがこのままでまいるならば、おそらく燕市は消えてなくなるわいというところまで地元の新聞社も報道しておるほどでございますことを、特にこの際御認識いただきたいと思います。  それで、私の申し上げたいことは、どうしてにわかに——まるでかたき討ちでもしているのじゃなかろうか。ざっくばらんに申し上げますならば、繊維問題が尾を引いておるのじゃなかろうかといううがった見方をするものすらございます。  したがいまして、まっ先にお尋ねしたいことは、三年前まで何らこういうことに心配がなかった。三年前までは一つの規範はありました。ガットに対する提訴、これは十九条でございましょうか、それによるものであると思うのでありますが、今回は二十八条で相当きびしい面を含んでおると思うのでありますけれども、なぜにわかにこうした規制の場が出たかというその背景であります。いわゆる規制の動きの背景はどうだろうか、大臣といたしましてどのようにお考えであろうかというお尋ねをいたしたいと思います。
  30. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先般産地の関係の方々とも一時間半ばかり直接にお話を伺いましたわけでありまして、この問題についてお互いにまことに深い関心を持たざるを得ない事件であると思っております。  アメリカ側が今回のような申し入れをしてまいりました背景いかんということでございますが、これは私としてアメリカ側の背景を肯定するという意味ではございませんので、ここは非常に気をつけて申し上げなければなりませんが、一応どういうことであろうか、それを正しいと申すわけではないのでありますけれども、そんたくをいたしてみますと、かつてこの金属洋食器にはアメリカ側が取引クォータをかけておったわけでございますが、それを一九六七年の末に廃止をいたしたわけでございます。その後わが国からの輸出は六七年は比較的低かったわけでございますけれども、六八、九年と、かなり急増をいたしたわけでございます。年率にいたしまして五〇%近い伸びを二年にわたって示したという事実がございます。業界の立場から申しますと、かつて取引クォータがございましたその直前には千数百万ダースまでいったのでございますから、そのくらいまでの水準は取引クォータ撤廃後に逐次達成してもたいした問題ではなかろう、こういうふうに考えられたようでありますし、また、少し事情を詳しく聞いてみますと、非常に大量の買い付けをしたのがアメリカ側のメーカーであった。大きなメーカーが二つあるようでございます。アメリカのメーカー自身がまとめて買いたいというのであるから、それは問題を起こすことはなかろう、一応こう思った。それは聞いてみますと、そう考えそうなことでございます。そこで、結果としては急増したが、問題を起こすとも思わなかった、こういう御説明でありました。  私、アメリカ側の主張を肯定するわけではございませんけれども、年率五〇%近い伸びが二年間にわたって続いた、そしてアメリカの業界、おそらくはこの二つの大きいメーカーの勢力争いであるとか、いろいろ複雑なことがあるのではないかということが想像されるわけでございますけれども、そういったことから、この際再び取引クォータをしきたい、こういつてきたのではなかろうか。しかしこれはガット二十八条による通告でございますけれども、それについては、こちらとしては代償を求めるという問題もございましょうし、またそういう点から考えますと、今後いろいろ折衝をする、ネゴシエートする余地のある問題であろうというふうに考えておりますので、外交当局を通じて速急にそういう措置に入りたいと考えておるところでございます。
  31. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 いま大メーカーというおことばが出たのでありますが、日本からアメリカへの輸出量の約三分の一は、この米国の二大メーカーでございますところのインターナショナル・シルバー、オネーダ社の買い付けによるものであるということを聞いておるのでございます。いまお示しになったとおりであります。  それに関連いたしまして、こうした規制といういまだかつてないきびしい状態に導いた背景には、この二大メーカーが何か策謀しておるのではなかろうかといううわさすら出ておるのであります。地元はああいうふうな事情になりますと、いろいろなことを考えます。こうした場で、いまあなたの二大メーカーというおことばにくっつくというような形でございますけれども、お許しをいただきたい。地元には、米国の大メーカーが、自社のシェアを確保するために日本から直接買い付けを増大させたというようなことが今回の背景の一つにあげられておるわけであります。あるいはまた、今日まで輸出量としてのワクの問題については、通産省の指導で商社も一緒にきめたことである、かってにふやしたわけではございませんと申しています。二年間にわたって五〇%増という過程があったというおことばがあったから私は申し上げるのでございます。あるいはまた、繊維問題がこじれなければ表面化しなかったはずで、明らかにこれは報復措置だと先ほど私が申し上げましたことと関連して、裏づけるようなことを相当な有力者が新聞紙上で言っていることが出ておるわけであります。  いろいろなことが複雑にからみましてこの事態になったと思うのでございまするけれども、いずれにせよ、こうした面が、地元といたしましては非常にやるかたない、残念だ、もうすべてそうした感情で一ぱいでございますことを、この際はっきり申し上げなければならぬと思うのでありますが、先ほど申し上げましたように、輸出量は通産省の指導で商社も一緒にきめたことであるということに関連いたしまして、これは大臣からお答えいただきたいと思います。実際はわかりません。ただ私の印象でありますけれども、通産省に、どうも二つの局ですか課ですかわかりませんけれども一つは業者代弁である——代弁ということばはどうかとも思うのでありますけれども、とにかく業者の側に立っていろいろ心配していると申しましょうか、そういう部課がある、片方には商社の側になっていろいろこれまた心配している部課がある。そういうことでありますと、先ほども理事会でいろいろ話し合ったのでありますけれども、各省間のなわ張り争いが近ごろきわめて顕著であるというような話もあったのでありますが、各省間どころか、間違いだったら御了承していただきたいと思うのですけれども、通産省の中においてすら、局の傘下でございましょうかどうかわかりませんけれども、片方は商社だ。商社というのは安くたたいて、ある程度は規制もやる。業者のほうの側に立っている部課については、いや、そうじゃない、この程度である。お互いにいろいろめんどうを見てくれるということについては、気持ちは一致するのかもしれませんけれども、私どもの印象といたしましては、何か通産省の内部においてこういう葛藤がある。葛藤ということばは語弊があるかもしれませんけれども、利害得失、きわめて影響顕著であるところの組織体があるというような気がしてならぬのです。こういうことでありますが、いかがでございましょうか。
  32. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 当委員会においてお尋ねのございますこと、またお答えを申し上げますことが、一応、今後米側と折衝いたします際に先方には当然知られておる、これから知られるということを考えた上で申し上げませんといけませんので、その辺、申し上げ方が非常にむずかしゅうございますけれども、この間業界の人たちと直接私が一時間半ばかり話をしました際に、私としては、いかにも輸出急増であるので、これについて役所から何も申し上げたことはなかったかということを実はお尋ねいたしたわけでございます。  そこでいろいろ問答がございましたが、私ども役所として、当面相当の急増であるので、多少そういうところにも注意をしておかれたほうがいい、これはむろん違法とかなんとかという問題ではさらさらございません。が、とかく紛争を起こしやすいような状況は避けておいたほうがいいということは、何度か申し上げておるようでございます。しかし、それに対してまた業界にもしかるべき言い分があったので、これはそもそも輸入する当事者が米国のメーカーである。いわば、普通でありますと競争相手になる相手でございます。それが輸入を慫慂してきておるのであるから事を起こす心配はないではないか、これも一応ごもっともな話であります。その辺で多少の議論がありながら、結果としてそういう輸出が行なわれるようになった、そういうのが実情であるようであります。そこで私も業界の方に申し上げたのでありますけれども、もう少しアメリカ側の今回の内部事情がはっきりわかりませんか、と申し上げますのは、かりに一つのメーカーがシェア拡大のためにわが国からの輸入をたくさんしたということでありますと、アメリカのメーカーがこぞって今回の反対の措置に出たということであるのか、あるいはメーカーの間の何か勢力争いであるのか、その辺のことはもう少しはっきりしておきましたほうが、今後事実上の交渉をやるのにやりやすいと  いうことを、実は要望をいたしておきましたようなわけでございます。   いずれにしても、この件は決して違法になるという意味ではございませんが、紛争の起こりやすいような事態は気をつけておかれたほうがいいということは、私ども役所として内々何度か申し上げておったように聞いております。
  33. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 事態がここまでまいりました。なるほど繊維問題等に比べますならば、年間の取り扱い量にいたしましても一億ドル程度のものでなかろうかと思うのであります。でありますけれども、冒頭申し上げましたように、日本の国の中の四万近い一つの市が消えてなくなるというような印象を与えております。また、事実米国の出方によりましては、そのような流れが出てくるような気がしてならぬような大問題でありますだけに、通産省といたしましても本腰を入れて御協力を願わなければならぬ。指導精神を発揮していただきまして、明るい方向に持っていくように万全の努力をおとりいただかなければならない。これについては、もう大臣がまっ先に、それこそ局長、部課長、係官まで御督励くださいまして、ひとつ御善処願わなければならぬと思うのでありますけれども、ここまでまいったのでありますので、通産省としては今後この問題についてどう取り組んでいかれようとするかということであります。なるほどアメリカから二十八条に基づいてガットに通告があったという段階であり、交渉はこれからだ。何月幾日に規制を始めるという具体的なものが出てこぬ今日でございますけれども、やはりいまから相当ほぞを固めた御施策の御展開を賜わりませんことには、相手がアメリカでありますだけにたいへんなことでございます。大問題でありますだけに、まだ具体的なものは御発表いただける段階でございませんので、抽象的でけっこうでございますが、この際もう一度大臣のお考えのほどをお願いいたします。
  34. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 アメリカ側は新しくタリフクォータを設けるといっておるわけでございますけれども、そのことが本来妥当であるかどうかということについては、今回輸入量がふえました具体的な経緯にかんがみて、まず議論をしなければならないと考えるわけでございます。と申し上げますのは、現に輸入を慫慂いたしましたものがアメリカの大きなメーカー自身であるということから申しますと、これは実はアメリカのメーカーそのものが輸入をした動因になったわけでございますから、その点の問題が一つあろうと思います。しかしながら主権の発動としてタリフクォータを考えるというのであるならば、一体タリフクォータの水準はどのくらいならば一応リーズナブルかという問題があろうかと存じます。それからまた、そうしました場合に、わが国としては当然代償を要求できる立場にあるわけでございますけれども、それに対してアメリカ側はいかなる代償を用意しておるのか。この最後の点は、代償を求めること自身が目的であるよりは、御承知のとおり、ただ取りは許さないというものの考え方でありますから、洋食器そのものに実は関係がある問題になるわけでありますが、そういうこと等々、いろいろな問題をいろいろの角度から持ち出さなければなりません。すでにそういう準備をいたしておるわけでございます。
  35. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 いま大臣は代償ということばをお使いになりました。この点については、外交折衝の場においては、いま大臣が力説なさいましたお気持ちそのまま外務省との横の連絡を密におとりいただくことによって向こうが受けつけなければしようがないかもしれませんけれども、ともあれ、日本は借りはないのだよというような理屈をじょうずにつけていただいて、この代償制度の問題につきましては、とことんまで、微に入り細をうがつ御心配をおとりいただきたいと思います。  先般牛場大使が赴任されたのでありますが、これに関連して、外務省もおいででございますが、どの程度の情報、御連絡をおとりいただいたか。大臣または局長とされましても、赴任するにあたってこの問題を取り上げていただいて、アメリカへ行かれた場合、どういうふうな腹づもりで折衝に当たるように特別の御指示をなさいましたかどうか。なさいましたならば、その内容いかん。こうした場でございまするから、特にまた外交問題でありますだけに、あまりはっきりしたことを言いにくい面もあろうと思うのであります。その点は抽象的な言い方でもけっこうであります。お聞かせいただきたいと思います。
  36. 鈴木文彦

    ○鈴木説明員 牛場大使御赴任前に、関係の業界の方がお見えになられて種々お話をかわしたということを牛場大使から伺いました。同時に、牛場大使も外務省幹部の方とも御出発前にお会いになりまして、本件をどのようにおさめるかということを、大筋でありますけれども、いろいろ意見交換をされたと聞いております。御赴任後も、この問題をどうするかということを、もちろん東京で外務省、通産省その他連絡をとりながら、かつ、業界の方の意見も徴しながら、最善の方策をさがし出すという方向で現在も引き続き検討をいたしております。在米大使館との連絡も、必要に応じまして緊密にとるようにいたしたいと思います。はなはだ抽象的でございますけれども、現段階そのように伺っております。
  37. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 重複するかもしれませんけれども、いわゆる産地指導でございます。先ほども申し上げたのでありますが、いままで地元につきましては、百数十国でございましょうか、諸外国に出しておる。でありますけれども、それらのことは、アメリカに比べますならばきわめて微々たるものでございます。高級品をつくればいいじゃないかという論もあることは確かでございますけれども、それもアメリカと太刀打ちできぬということになりますと、いままでの過去の実績は自然一%程度でなかったかと思うのであります。したがって、残りましたものがすべてこれ大部分は一ダース三ドル以下でございましょうか、未満のもののはずでございます。これにアメリカ側でもって圧力をかけてきているという本問題でありますだけに、なかなかもって容易でない、死活問題だというところまでまいる、これは当然であります。先ほど申したのでありますけれども、この問題については決して産地ばかり責められる筋合いのものではないと私は思うのであります。申し上げたのでありますが、この間やはり通産省が指導力を発揮していただいて、事よかれかしと思って、長い間心配が続いたと思うのでありますけれども、ここまで来たのはおまえのせいだ——もっとも、いままでアメリカの外交折衝といいますと、外交折衝ではございませんが、工業組合等が、商売に関することでございますから、この問題について、通産省あるいはまた外務省を経由いたしましていろいろごめんどうをおとりいただいて、いわゆる正式の外交折衝という問題にまで発展したことはいまだかつて一度もないのであります、正直申し上げて。せいぜいのところ、燕市の市長あるいは工業組合の連中、有力なと申しましても、中小企業の範囲であります。もう二百名か、一番多いメーカーでも三百人以上なんということはほとんどありますまい。その程度のものです。でありますから、すべてこれ中小企業者と申し上げてよかろうと思うのであります。その代表が市長さんと一緒にのこのこアメリカまで行って、それは一部、いろいろな面で指導方については通産省のお役人のほうからお指図を賜わったことは多々あろうと思うのでありますけれども、正式の外務折衝——外務省、通産省のお役人が真剣に取っ組んでいただかなければならぬ、ここまで来たわいという感情はいまだかつてなかった。今回が初めてでございますだけに、国会においてこの問題を取り上げていただいて、大臣から御指摘をいただいてごめんどうをおとりいただくというのはこれが初めてでもあるのであります。それだけに、彼らは未熟者でございます。政治折衝のことについてはほとんどわかりますまい。それだけに、本問題の解明ということについては、今後の動向を明るく持ってまいるということについては、大臣がほんとに繊維問題について御努力いただきましたあの御熱意、たいしたものです。みんなが一部には敬意を払っております。事実、なるほど連中は、先ほど申しましたけれども、燕の一億ドル程度の問題とはやっぱり違うわいというところに御熱意についても差異は出てこようと思いますけれども、これは人情上やむを得ないかもしれませんけれども、しかし、四万の市が消えてなくなるかどうかというせとぎわであるという事実に思いをいたし、何ぶんのひとつ御努力をおとりいただきたいということであります。したがいまして、産地ばかりは責められない。産地指導を今後どう御心配をおとりいただくことができるだろうかということでございます。
  38. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前段の問題でございますが、アメリカ側の申し分、考えますと、これが正真正銘のものの考え方であるのかどうか、私自身の経験からいたしますと疑問を実は持っておりますので、これはいろんな意味でこれから全力をあげて交渉しなければならない。言い分がそのままけっこうだという筋のものではないというふうに考えておりますから、その点は全力をあげて折衝に入りたいと考えておりますことは、先ほど申し上げたとおりでございます。  次に、後段の問題でございますけれども、産地でも非常にいろいろ努力をしておられまして、なるべく高級な品物のほうへ生産を移していこうということはしておられる。またその実績もないわけではないのでありますけれども、いまだに生産の半分近いものが一本三十円余りというような値段になっております。これはいかに考えましても決して高いとは申しにくい。しかもそれがアメリカに参りますと一ダース五ドルくらいにはどうもなっておるようでございますので、その辺についての流通関係の問題が一つ、いわば買いたたかれておるかどうかという種類の問題でございますが、それが一つ。それからもう一つは、いずれにしても発展途上国の追い上げもあるようでございますので、わが国においてこれだけの技術を持っておるといたしますと、一本三十円余りというような品物はやはりなるべく少なくしていって、そして付加価値の多いものをつくっていく、そういう努力をこれはしてもらうのが適当でありますし、また政府もそれをお助けしなければならない。構造改善もその目的でやるわけでございますが、さらには、今回いわゆるブランド商品というものもその中からつくり出してみたい。行政的にはそういう形で御相談をしながらごめんどうを見てまいりたいと考えておるわけでございます。
  39. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 時間もありませんので大体結論でございますが、いま大臣は高級品に一歩進めてというおことばがございました。これに関連していることでございますけれども、大体アメリカの、先ほど正直申し上げまして悪口を言いましたが、二大メーカーのやり方はひきょうだと思います。その例といたしまして、台湾に対し、韓国あるいは香港等にどの程度やっているかわかりませんけれども、低労働賃金目当ての工場をどんどん進出しております。そういう動きからいたしましても納得いかぬのです。先ほど申しましたように、片方に米国内部におきます事情を勘案いたしました動きをとり、片方はじょうずに仕組んで規制をとるといったような二重の動きをやっているような気がしてならぬのであります。これらのこともどうかひとつ御看取賜わりまして、折衝等については、ここまで来るについては日本側が悪いのじゃないのだ、あなたのほうでこういう事実があるじゃないかというようなことで、自信をもって迫ってもらうだけの迫力をおとりいただきたいという御熱意を御披瀝願いたいということでございます。  お話がございましたように、先ほども申し上げたのでありますけれども、まだ最後の段階になったわけではございません。大きな障害でありますところの関税割り当て制度の復活ということは、すぐきょうからあすから実施というものではございません。これからの努力をお願いすることは、これは通告の内容をめぐりましてであろうと思うのであります。日米間の折衝が始まるということであろうと思うのでありますから、規制がいつからということも関連いたしまして出ておらぬ今日でございますだけに、今後の問題といたしましては、いわゆる高度の政治折衝ということが一番大事であると思うのです。何べんも繰り返して申しわけございませんけれども、地元といたしましても、大臣は偉いのだ、通産大臣は頭がすぐれて、繊維の問題についてはあれだけの御熱意を発揮していただいたじゃないか、たいしたもんだ、何かしてくれるわい、通産大臣であるならば、宮澤さんであるならばという期待を実は持っておるのであります。どうかこの点に深く思いをいたし、部課長局長さんお出ましをいただきましたが、あなたの答弁は求めなかったのでありますが、大臣が全部言うていただきましたので、大臣のきょう御発言くださいました御趣旨をくんで、ひとつ、どうか燕の興廃にかかわる大問題でありますだけに、私特にこの問題を国会で取り上げたのは今回が初めてでございますが、地元の熱意を御推察いただかなければならぬと思うのであります。どうかよろしくお願い申し上げます。
  40. 濱野清吾

    濱野委員長 丹羽久章君。
  41. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 最近の国際情勢は日本にとってきびしいきざしが見えてきたようであります。そういう点から私は特にきょうは大臣御出席していただいておりますので、今後の経済見通しについて、あなたの抱負、そしてどんな方向に進められているかということをお話をしていただきたいと思います。
  42. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 非常に広範なお尋ねでございますが、まずわが国の輸出の伸長によりまして、外貨収支というものにある程度の余裕ができてきたわけでございますが、他方で、輸出の伸長ということがかなり急激でございますために、諸外国から、わが国自身が各国に自由に進出しながら、わが国に対する各国からの働きかけについては門戸を閉ざしているという批判が相当に強いことは御承知のとおりでございます。また、わが国がガット及びOECDに加盟いたしましてから相当長い年月がたっておりますが、なお十分にその規約を守っていないということも、これも残念ながら認めざるを得ません。したがって、基本的にはわが国の輸出が伸長しておりますだけに、国内対策をいろいろ考えつつ、貿易、資本等の自由化については一そうの努力を進めてまいらなければならないと思いますし、また関税率あるいは非関税障壁を下げることにつきましても一段の努力をする必要があろうと思います。  他方で、わが国の外貨収支がこのような状況になってまいりましたので、いわゆる対外経済協力ということを一段と進め得る状況であり、また進めることを各国からも期待されておるわけでございます。この点につきましては、対外経済協力の量と質を改善すること、あるいは発展途上国に対して、いわゆる特恵等の処置をも考えつつ、蓄積いたしました外貨を有効に、窮極的に申せば、世界平和のために、経済大国になりつつあるわが国の義務を果たすために使っていかなければならない、概してかようなことを考えておるわけでございます。
  43. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 大臣、ありがとうございました。  それじゃ率直なお尋ねをいたしたいと思いますが、最近の輸出の伸び率、このような伸び率で今後もいけるというお考えでしょうか、どうでしょうか、その点の見通しをひとつお聞かせいただきたい。
  44. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それには、お尋ねには二つの面があるわけでございまして、わが国の経済成長から申しますと、もちろん輸出品の内容は変わってまいるわけでございますけれども、予想される成長率から考えまして、十数%の輸出の力は、毎年それだけの成長力はあるものと私は考えております。ただし、その場合世界貿易の伸びが従来程度のものであること、すなわち六%から一〇%内外であるということ、わが国の輸出の弾性値がしたがって二ないし二・五、その辺のことを前提にいたしますけれども、私はそれはさしてむずかしいことではない。そういう意味では可能であると私は考えております。しかし他方で、そのような世界と多少飛びはずれました伸び率の輸出を世界各国が今後快く受け入れるであろうかどうかということにつきましては、これは先ほども申しましたように、わが国自身のいわば開放体制そのいかんによるところが多い、こういうふうに考えるわけでございます。
  45. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 先日宮澤通産大臣と愛知外務大臣とのお二人で米国に行っていただきまして、世界注視の繊維の問題の交渉をしていただいた。ほんとうに御苦労のほどはよくわかります。これはやはり通商関係の上と外交の両面からアメリカを納得させるようにすることはたいへんなお骨折りであったろうと思います。その結果は、遺憾ながら、私どもが率直に受け取った感じを申し上げますると、御苦労はしていただいたけれども、一方的にアメリカに押し切られたという感情を私どもは持っております。しかし、今後が残されておりますので、大臣はまだまだすべてがある問題によってあのような方向へ決定づけられたものではないというお考え方もあろうとは思いますが、−民の生産者側に立って考えてまいりますと、何か繊維の前途にさびしさを感じておるということだけは事実です。  そこで、アメリカのニクソン大統領からは、この問題は繊維だけであって、他のほうの問題には影響するようなことはないという書簡が総理大臣のもとに渡されてきたということを新聞に報道せられたように思っております。しかし、日浅くしてさらにテレビの問題が起きてきた。あるいは牛場次官が、トヨタの何か関係者が行ったとき、この次は自動車の問題が必ず起きてくる、自由化の問題がもっと積極的に進められる傾向にあるから十分にその用意をしなさいというような警告を与えたということがまた新聞に報道されておる。何か日本と友好関係の大きい結び方をしておるアメリカとの間に経済的な問題が次から次に起きてくるような感じを私どもは持ちますけれども、通産大臣、これに対しての所信、そして前途に対するあなたのお考え方を率直にお聞かせいただけませんか。詳しい、ダンピング問題だとか、そしてアメリカの感情的というような問題に対してはまたほかの委員からも質問があろうかと思います。そういうことを抜きにいたしまして、大きい面からのあなたの感じていらっしゃること、そして国際間の問題等々については、心配ないなら心配ないでけっこうです。将来はわれわれももっと謙虚な気持ちで立ち向かっていかなければならぬとか、どういうお考えでいらっしゃるか、この点明らかにしていただけませんか。国民はこの問題に非常に大きな関心を持ってきておるのです。この次に何を言われるか。一番大切なお客さんであるアメリカがこのような態度に出られてくるというと、一体日本の経済はどこへ持っていくべきだということがいまお互いの心のうちにある問題ですから、この際、ひとつはっきりしておきたい、こう思うのです。
  46. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点につきまして、実は昨日も東京駐在のアメリカの大使が参りまして、昨今起こっておるところのダンピング等々の一連の問題、これをあたかもアメリカ側が日本に対していわばしっぺい返しをするというようなふうに一部にとられておるようであるけれども、それはアメリカ行政府の真意ではない、事実で明らかなように、これらのことはすでに一九六八年当時提訴されたケースであって、それが今回調査が完了したということであって、時間的には偶然にそうなったのであるから誤解をしないでほしいという話がございました。私は、その点は私は別に誤解はしていない、それは了解するが、私が心配しておることは、両方の間に関連がなくとも、たとえば繊維についてのミルズ法案に見られるようなああいうアメリカの、ことに議会筋にあるところのものの考え方、そういう基本の考え方の変化というものについては私は関心を持たざるを得ない、こういうことを申したわけでございます。  したがって、私といたしましては、いわゆる日米経済戦争、これはもうたいへんだ、こちらも身がまえなければというような姿勢をただいまとることはおそらく賢いことではなく、アメリカ側にもいろいろな議論のあることでございますので、冷静にこの事態に対処することが必要であろう。明らかにしっぺい返しだと考えられることがございましたら、これは別でございます。これはこれとして考えなければなりませんが、ただいまのダンピング等の関連から申しますと、時間的に見ましても、一応アメリカ大使の申しておりますことをすなおに聞いておいてよかろう、こう考えております。  したがって、基本的には、アメリカ側に自由貿易という考え方がもうすでに死滅をしてしまって、まっすぐに保護主義にいくのであるから、われわれはそれに対してどうするかというような見方をするよりも、むしろアメリカ側にもいろいろな迷いもあり、また挫折感もあっていろいろな動きがあるのであろう、したがってわれわれは、これに対してできるだけ冷静に、自由貿易の方向を打ち出していって対処をする、こういうことが基本的に大事なのではないか。具体的にわが国としてどうあるべきかということにつきましては、冒頭に申し上げたようなことでございますが、われわれとしてなすべきことはなしていくということが必要なのではなかろうか、こう考えております。  なお他方で、さらに一言つけ加えますと、わが国として、成長率から考えまして、まずこの程度の輸出の伸びは常識的であると考えるその常識が、世界各国のものさしに必ずしも合わないという事実が、これは事実としてございますので、その点は、われわれも品物によりまして具体的に内内では注意を払いながら、相手を無用に刺激しないような考慮を輸出の上で払っていく、これは必要なことではないかと考えております。
  47. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 ありがとうございました。  いまのおことばのうちに、先ほども言ったように、基本的に冷静に対処をしていかなければならないということ、具体的だとおっしゃいますが、もう一度お聞かせいただけないでしょうか。これからアメリカ、各国に対しての輸出関係の基本的冷静な態度とはどういうことでしょうか。この点、ひとつもう一度お聞かせをいただけませんか。
  48. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 俗なことばで申しますと、いわゆる売りことばに買いことばというような姿勢で臨むことはかえって大局を逸することになって、結果としては世界全体の保護主義を呼ぶのではないか、こういう心がまえの問題かと思います。  なお具体的には、先ほどちょっと申し上げました輸入の急増が、非常に特定の品物について特定の地域に対して長く続くというようなことについては内々で配慮しなければならないであろうということ、及びわが国全体の開放体制の推進、このようなふうに考えております。
  49. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 大臣のお話を聞きますと、アメリカ対日本の問題は少なくとも感情的なものは何一つないと考えていいでしょうが、私ども国民の生産者側で考えてみますと、先ほど高橋委員も言っていらっしゃったように、何かしっぺい返し的なものがあるようにわれわれは思う点が多いと言っておられます。たとえば繊維の問題でもあるいはテレビの問題でも、いまお話を聞くと、テレビの問題なんか、もう二年、三年前の結論が出ただけだ、こうおっしゃいますけれども、はたしてそういうふうに受け取ってほんとうにいいでしょうか。その次に自動車の自由化貿易を押えておった。もうすでにアメリカからはずいぶんきびしく言われてきて、私ももっと自由化貿易を早くやるべきではないかと言ったのですが、政府自体は、日本の自動車というものに対する保護的な考え方というのか、そういうことをしてはたいへんだというような考え方で、通産省も協力して、入ってくることを極力避けられておった。そういうような積もり積もってきた感情がきょうになって、やはり日本に対する見方というものが少し変わったように私は思う。それならばそのように、もっと謙虚な考え方で、そして売りことばに買いことばというような行き方でないとおっしゃるが、それはもう基本的な姿勢だと思います。  具体的な一つのあり方として、通産省はこの問題を真剣に取り組んでいかなければならぬときが来たと私は思っております。たとえば椎名さんの大臣の当時、菅野さんの大臣の当時、大平さんの大臣の当時、そういうことを私はずっと総合して考えてみますと、何か通産省の仕事というものは、民間企業が優先してしまって、お役人のほうはそのままついてきたかっこうになって、そして民間の言うとおりになってきたといったような事態が多いように私は考えるのです。そういうことが一つの災いをしてきたんじゃないか。政府としては、やはり日本の国はどうあるべきかということをもっと真剣に考えていかなければならぬと思っております。大臣は当然それはお考えいただいておると思いますが、いまのお話を聞いておりますと、売りことばに買いことば、そういうようなことでなくて、もっと冷静に判断をして対処するのだ。その前にもう一つあるのじゃないでしょうか。その前にアメリカの態度というものがどうしてこういうことになったかということをもう少し深く掘って解剖する必要があるのじゃないかと思いますが、どうでしょうか。そういうことはさらさら考える必要はないとお考えでしょうか、もう一度大臣の御所信を承りたいと思います。
  50. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘の点は私にはよくわかって実は伺っておるつもりでございます。  そこで、相手の態度に理解を示すということと、それを肯定するということとはこれは全く違うことでございますので、公の席でそれが混同されたようなことになることは、私は非常に避けたいと思っておりますものですからこのような申し方を申し上げておるわけでございますけれども、やはりわが国が敗戦後目ざましく立ち上がった段階は、世界から称賛を浴びたわけでございます。ことにアメリカからそうであったと思いますが、いまや相当の分野で平等にアメリカ経済と太刀打ちできるような輸出力を持つようになりました。しかも、その背後にあります賃金水準というものは、ざっと申しまして四対一という現状でございます。そういうことがアメリカ人の頭にはやはりどうしても一つございます。  それから、わが国が海外には貿易で進出をしながら、先ほども申し上げましたような貿易及び資本関係の開放体制ではなはだおくれておるということも、これもアメリカとしては一言申したいところであろうと思います。  第三に、アメリカ自身がベトナム戦争等々、いろいろなことからくる国内経済の不調、それからまた挫折感等々、何となくいわゆる孤立主義に返りたいという一部でかなり強い気持ち、そういったようなものが重なりまして、わが国に対してかつて称賛の気持ちを持っておったものが、それがかなり違ったものになりつつあるといったようなことは、これは私として決して肯定をするわけではございませんけれども、そういうものとして先方を理解をしていくことは必要である、こう考えておるわけでございます。
  51. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 大臣、ありがとうございました。  しかし、私がここで申し上げたいと思いますことは、日本国の一番いいお得意さんというのか、そして日本が信頼をしている友好関係を結んでいくアメリカとは、やっぱり長期的にほんとうに経済援助をしつつ、お互いの技術を交換しつついかなければならぬということは大臣も当然お考えだろうと思うのです。そういうときに、七〇年代の一歩を踏み出した瞬間にこういう問題が起きてくるというと、何か国民全体の生産者、消費者すべての人たちがショック的なものがあることはお認めになるだろうと私は思うのです。これをいかに国民にそういうものでないという理解を求めていくかということは、これはなかなか困難ではあろうし、それぞれの思いはそれぞれ違っておることはわかりますけれども、また私は、ほんとうにあなたのおっしゃるように、そう心配したこともないし、そういう問題は前々からの問題じゃないかとおっしゃいますが、国民はそう受け取っていない面がたくさんあるのですよ。だから、そういうふうにあなたがお考えになっていらっしゃるなら、私どももそういう考えで心を一にしていきたいと思います。  そこで、与えられた時間が非常に短いのでありますので、これ以上私の考えていることを、アメリカを中心にしてという考えはあとにいたしまして、いま日本の一番近いところで、未開発というのか、まだ進んでいないという国の東南アジア、この国にしぼって少し質問いたしていきたいと思います。これは大臣に特に御答弁いただこうとは思っておりませんが、たまたまひとつあなたのお考えをお聞かせいただけばけっこうだと思います。  東南アジアとは、政治的、経済的、歴史的にも非常に密接な関係があることは御存じのとおり、特に最近は政府、民間による経済協力も増加してきたわけであります。そういうようなことから、全額出資だとか証券取得等の投資も、形態はいろいろありますが、最近たいへんな進出をしております。そこで企業の民間通商関係において、日本国にとって先ほどから言っておりますように、イエローアニマルだとかエコノミックアニマルだとかというような日本の評判は比較的よくない面もあることは、大臣御存じだろうと思います。私は東南アジアに対する海外投資については、経済協力の一つとして相手国の経済的自立を促すために最も有効な手段の一つであると考えております。したがって、相手国からも喜ばれ、相互に利益をもたらすのでなければならないと思っております。これは大臣もそのとおりのお考えだろうと思うのです。そこで、海外投資の現況を中心に経済協力のあり方、これに私はしぼって質問をいたしたいと思います。  東南アジアに対しては、昭和四十三年度の残高の累計が、件数にすると七百十二件あるのです。金額にしますと一億四千四百万ドル、日本円に直しますと五百十八億円という投資が行なわれておる。そして、これの個別企業数にするとどういうふうにあそこへ集中してきたかということで、できたら、個別的の投資資本の形態とか、それから先進国と東南アジアとのそういう関係だとかいうものをお尋ねいたしたいと思いますが、これは非常に幅が広い問題ですから、局長から概略でいいのですよ、先進国との関係はどうなっておるかということを、きのう教えておいたから調査できておるはずだと思いますから、聞かしてくれませんか。あなたに内容を大体教えたでしょう。だから、そうまじめな顔をしてやらなくてもいいから、ひとつ答弁をしてください。
  52. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの点は政府委員のほうからお答え申し上げますが、実はその前に、前段のほうで私の申し上げましたことが、あるいはそのままとっていただけなかったかと思いますので、補足させていただきます。  いまの日米関係でございますが、私は実は非常に心配をしておるのでございます。おそらくどなたよりも心配しておる一人ではないかというふうに考えております。そこで、そういうときに、われわれとしてアメリカをこれ以上好ましくない方向に追いやらないためにいかにしなければならないかということがわれわれの問題だろうと思いますので、私が冷静に個々の案件に対処したいと申し上げましたのは、実は心配していないからではなくて、むしろ非常に憂慮をしておるからでございます。  率直に申しまして、しかし長期的に考えますと、従来の日米関係というもの、いわばわが国のほうがあとから経済発展を戦後いたしてまいりましたので、どちらかというと、兄弟と申せば先方が少し兄だという感じがあったのではなかろうか。しかし、わが国がここまでまいりますと、だんだんそれが文字どおり対等に近くなってまいった。そういたしますと、おのずから兄弟の間では起こらなかった種類の問題が起こってくる、これは私は必然ではなかろうか、そういうことを事実として考え、その上でほんとうの親善関係というものをいかにつくるかということがこれからの問題ではなかろうか、こう思っておりますので、そういう意味では、私は非常に事態を心配し、また大切な転機にきておるというふうに考えておりますことを申し添えさせていただきます。
  53. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 大臣、ありがとうございました。あなたが心配していらっしゃるその面は、国民もそういう点を心配しております。  私は大臣に一言つけ加えて申し上げたいと思いますことは、日本の経済がこのように発展してきた、工業も発展してきたといいますけれども、わが国に一体資源がどれだけあるかということを、もう一度私どもは静かに振り返ってみなければならぬと思うのです。日本の品物で、日本がそれをつくって、そしてよその各国に対して貢献したというのでないと私は思う。少なくともアメリカを中心にしたあらゆる国からもとを、原石、原油、そういうようなものの仕送りを受けて、それを加工してそして日本の経済は発展し、そして完成品を海外に送り出したということをわれわれはもう一度考えていかなければならない。そういう意味から考えてみますと、どこの国に及ばず、もっと姿勢を正していくということがきょうの国民に与えられた義務であろう。そういう意味から、あまり図に乗った考え方ということは慎むべきことだということを私は思う。同時に、そういう姿勢になることを強調していただくことが通産大臣の責任だと私は思いますが、どうお考えになりますか。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まことに私といたしまして同感であります。
  55. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 ありがとうございました。  それではひとつ局長さん。
  56. 後藤正記

    ○後藤説明員 お答えいたします。  仰せのとおり、四十四年三月末までの東南アジアへの企業の進出は、残高ベースで一億四千四百万ドルとなっております。  国別の内容を申し上げますと、マレーシアが四十件、千五百万ドル、シンガポールが三十七件、一千万ドル、タイが百五件、三千四百万ドル、インドネシアが九件で四百万ドル、フィリピンが十八件で八百万ドル、香港が百三件で一千万ドル、台湾が二百二十七件で三十二百万ドル、韓国が四件で八十万ドル、こういう数字になっております。   〔委員長退席、高橋(清)委員長代理着席〕  全体の状況を見ますと、大体現在の海外投資は、東南アジア向けというのが一七・八%、二〇%弱、こういうことになっております。それ以外では北米に三〇・八%、中南米へ二〇・八%、中近東へ一三・九%、その他という状況になっておりますが、概観いたしますと、先進国へ出ておりますのは商業関係のものが多うございまして、東南アジア向けのものは大体市場確保と申しますか、その国へ物を生産して輸出するよりもその中で売ったほうがいい、こういったかっこうの製造業の比重が多いようでございます。それから特にわが国の近隣の諸国、東南アジアの中でも近隣の諸国につきましては、これは賃金格差を利用したその地の低賃金の良質の労働を利用するという労働集約型の製造業の進出が多いようでございます。先ほど申し上げましたように、残高から申し上げますと、東南アジアは量的には北米、中南米に次ぐ第三位ということに相なっておりますが、件数では一番多い状態でございます。  これが大体の概況であります。
  57. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 後藤局長さんの答弁は数字を並べてもらっただけのことでありまして、これはまたの機会に譲って、いろいろあなたの責任上の問題をお尋ねしたいと思います。  ここで、海外へ出ている工場が、その国の労働条件だとか規則だとかといういろいろの面を十分に研究していない面があるんじゃないかというようなことから思いをいたしておりましたところが、「労使紛争続く日系企業」というようなことが新聞に出ておりますね。何かこれは働いている人たちがゼネストに入ったとかというようなことで、これは一方に言わせれば、組合の幹部が組合規則を守らず、いきなりそういうことに入り込んだというのは違法行為だと言っておる。しかし、事実はそういう紛争が続いておるということは、これは私にとってみれば、今後の発展の上において、そしてさらにその国の発展を援助してあげるというために、お互いに心を割って進出した会社がそういうことになるということは遺憾だと思いますが、こういうことに対してどういうお考えを持っていらっしゃるか、その点を簡単にお答えいただきたいと思います。
  58. 後藤正記

    ○後藤説明員 お答えいたします。  近隣と申しましても、東南アジアでもことばも違いますし、習慣、風俗、それからその国の企業の受け入れ体制、そういったものがいろいろ違う国への企業の進出でございます。したがいまして、全般的に見ますればいろいろたいへん苦労はいたしておりますが、順調に進んでおるというのが概況であるかと存じますが、中には、ただいま先生御指摘のように、あるいは労働問題あるいはそのほかの、国の突如の政策変更の問題等で、一たび進出はしたけれども撤退をせざるを得ないというような不幸な事態におちいったという例もございます。しかし今後の問題といたしましては、特に東南アジアを中心といたします海外投資は、国の内外の情勢から見まして今後とも一そう進んでいく一方と存じますので、あらかじめ事前に企業としても十分に言語、風俗、習慣、法制等々の点をよく調査し、さような現地における摩擦あるいは企業の撤退という事態に至らないように、十分な心がまえと準備をもって進出していくことが必要と存じますが、また国といたしましても、いろいろな政策指導あるいはまた資料の提出、いろんなアドバイス、そういった点を通じまして、そういう事態の起こらないように、一たび進出すれば、十分にその国の環境に即応して企業として健全な発達をしていくように指導いたしてまいりたい、かように考えております。
  59. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 ありがとうございました。  企業局の方、来ていらっしゃいますか——大臣にこんなことをお尋ねしてもちょっとわかりにくいだろうと思うのですが、だれかわかっている人があったら答弁していただけばいいのです。通産なんというものは、貿易も企業も大体の線はお互いに話し合っておるでしょう。  そこで、四十三年度に七百七十七が進出しているのですよ。そして現在では七百十二で、六十五件が撤退をしたのです。なぜ撤退したのかというその理由、これは、その理由を明らかにしてくれと、ちゃんときのう私のほうから言ってあるので調べてあるでしょう。もしそれをだれもやっていないということだったら、議会軽視だよ。
  60. 後藤正記

    ○後藤説明員 私が先ほどの御答弁で申し上げました数字は、投資は、ある一部を除きまして許可制度に従来なっておりますので、許可をした件数、金額と、それから実際にそれが許可を受けてから出ていった金額との間の開きもあると存じます。したがいまして、七百何件のうち現在現地で十分に操業しておるのがという御指摘でございましたが、その差が約六十件というのは、あるいは中にはほんとうに出ていっていないのもその中に含まれて、その辺の統計上の差もあるかと存じますけれども、しかし全般的に見ますと、私ども調べたところによりますと、計画をいたしましたが、その後いろいろ考え直して進出を中止したというのがそのうち約三割ほどあるようでございます。それから、どうも思わしくない——これはいろんな事情、あるいはその国の政策、方針なり市場の変化等々ございまして引き揚げてきたものが約二割五分くらい、それから特に資本だけを投下して相手企業と一緒になってやったけれども、営業成績がおもしろくないからその資本を引き揚げたというのが残りというような形になっておるかと存じます。
  61. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 大臣、いま局長が撤退した大体の理由というのを話されましたが、そのうちに資金の面で格差がついてきて出れない、あるいは利益を計算してみたら思わしくないというようなことで進出をしない、こういうようなことで六十何件というものが撤退をしたという実例があがっているわけですよ。その数が多いとは思いませんけれども、やはり申請をしてそういうような手続をとってきたものが、うまくいかぬからというようなことで撤退するということは、実際問題としてはいいものではないと私は思うのです。そういうところの指導というものはやはり通産省がやるんですから、ひとつそういう点について、思惑で出たいというような考え方、直ちに、いやだからもうやめますというような考え方、そういうものを、統一というものを今後厳重にひとつ考えてもらおうと思いますが、どうでしょうか。  それから引き続きまして、もう一つこれに関連することですが、日本輸出入銀行の調査によりますと、進出した企業のパーセントを調べてみると、自分のマーケットの防衛ですかね、それと開拓というので大体六〇%を占めておる。それから設備の機械化とか半製品等の輸出を目的とするもの、これが大体二二%、残りはそこの製品を第三国へ輸出するを目的とするというものもあるわけです。これは大体東南アジアの数字になっておりますが、世界の全地域の日本関係から見ましても、おおむねどこもかも同様なような状態だということはいえるわけです。その企業が進出するに対しては、まず利益ということを第一に考えるということ、相手国の利益については、もう非常に日本の場合は消極的です、というように考えられる節がたくさんある。もちろん企業というものは利益を優先することは当然だとは思いますけれども、やはり特に東南アジア等は発展途上にあるわけなんですから、それだけに相手国に根をおろしてもらって、その国の経済の発展のために寄与してもらいたいということを少し考えてもらわなければならぬ。こういうようなことは無理かしれませんが、通産省の指導方針としては、どういうような考え方で進出する会社に対して指導していらっしゃるかということ、つけ加えて申し上げますと、私は東南アジアを歩きましたときに、向こうの商社の人々、企業の関係の人にお集まりいただきまして懇談したことがある。私はどういう発言をしたかというと、かつて日本は、戦争前には外国へ出て一生懸命かせぐ、そしてそれを終わったらすぐ日本に帰ってきて余生を日本で送るんだという考え方が非常に多かった。だから、日本人というのはほんとうに出かせぎ根性であるというようなふうに見られておった。戦後の日本はそうでなくて、戦争は放棄して経済で立っていく国であるから、あなた方はぜひここで根を据えて、そしてほんとうにこの国の利益のためになる、その後、余った利益を国へ持ってくる、寄与するという考え方でひとつやっていただきたいということをお願いしたことがあるのです。そうしましたら、二十人ぐらいお集まりの中で、言いにくい話ですが、丹羽さん、そういうことをおっしゃるけれども、あなた方は代議士ですからそういうことを政治的な含みで言われますが、私どもは企業ですよ、だからこの国がどういう形になっていくか、前途というものは、この国に対しては私どもは非常に心配と懸念を持っておる、だから、投じた金は一日も早く回収して、そして本国へ持っていくことが私たちの頭に浮かんでいることである、こういうことを私どもの前で平気で言う商社もあったということを、大臣、記憶しておいていただきたい。あなたの方針をはっきりして、ひとつ通産省としては、どういう考え方でこの人々を指導しておるかということをお聞かせいただきたい。これは事実なんです。私はあいた口がふさがらなかった。なるほど日本人というのはこういう考え方か、商社というのはそういう考え方でおったのだろうか、全部とはいいませんが。そしてそれは間違っているという商社は一人もなかった。黙って聞いておった。どういうつもりでおるかということで、私はそのとき何かさびしさを感じました。だから、大臣の今後の指導方針をここで国民の前にはっきりしていただきたい。
  62. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その問題は、先ほど御指摘の問題に劣らず、これからのわが国にとって大切な問題であろうというふうに私もかねがね実は考えております。  そこで、戦後東南アジア等々との経済関係が、主として物の輸出、輸入というところから始まりまして、それは商社が非常に機敏に活動をした、そのことの功績を私は認めるにやぶさかではないのでございますけれども、もう少し長い経済関係ということから考えてまいりますと、そういったような機敏さ、あるいはただいま御指摘になりましたような、早く金を引き揚げるといったようなことでは、とうてい今後長い間わが国とそれらの国とが友好関係を保っていくことはできませんし、また経済だけの面から見ましても、そういうことではおそらく失うところがまことに多いということにならざるを得ないと思っております。この点は、それらの国と一緒になって経済協力をやるということが、われわれ民族として、事実上ほとんど最初の経験でございますだけに、よほど戒心をしてかからなければならないところであると思います。  そこで、私どもかねてそういう方々に申し上げておることは、これは企業でありますから、利益を無視して仕事をするということはできないでありましょう。当然でありますが、短期の利益を考えずに、ことに経済協力ともなれば、長い目での利益を考えてもらいたい。現実の問題としてはそういうふうに申し上げておるわけでございます。それはつまり、かりに現地で一定の利益があがりました場合に、それを持って帰ってくるというようなことでなく、さらにそうやってあげた利益をその土地で新しくどういう方面に再投資をしていったらいいかというところまで実は考えていかなければ、どうしても話はクイックマネーになってしまうわけでありますから、そういうことを考えてやってもらいたいということを実は常々申し上げております。  また他方で、文字どおりその土地にいわば半永住するといったようなつもりでなければそういう大きな仕事はできないのでございますから、そうなりますと、現地におけるその人たちの子弟の教育の問題もございます。それから、やはり若いときからそういう気風を養うという意味では、迂遠ではありましても、青少年の船といったようなものがそういう役割りを果たすことができると思いますし、また、私ども持っております、俗に申します貿易大学と申しますものがございますけれども、そこでも、そういったようなものの考え方、現地の言語、風習といったようなこともかなり時間と金をかけて講習をするというようなこともいたしております。  私どもの基本的な考え方はさようでございますけれども、これはその説教をすることはやさしく、行なうことばまことに難いことであります。したがって、われわれが民族としてこれから何十年あるいは何百年でありますか、ほんとうにそれらの国とお互いに助け合い、助けられたという感じの関係に入りますためには、おそらく十年とか二十年とかいう間にそういう民族の心がまえが急にできるとは考えられません。やはり長い間の教育、ものの考え方というものを養っていかなければならないと思いますから、私は、そういうものの考え方は、先刻も申しましたように、教育の問題としてこれからうんと時間がかかってもやり遂げるつもりでやっていかなければならない。しかし、当面の問題としてそれは間に合いませんから、現地に出ていかれる方々には、先ほど申し上げたような形ですぐに利益を引き揚げるということではなく、あがった利益はもう一ぺん現地の経済にこれをおろしていく、そういう心がまえで仕事をしてもらいたいということを申し上げておるわけでございます。
  63. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 ありがとうございました。  もう時間がだいぶん経過いたしましたので、もう一つ締めくくり的に大臣からの御答弁をいただきたいと思いますが、「日本品を締め出す動き、片貿易一斉反発」なんということが新聞に出ております。これは片貿易というのが非常に多いということは大臣お認めになるでしょう。  そこで、そういうことをするなら、先ほどのお話のように、輸入制限もわれわれの国はやろうじゃないかということが、タイ国、インド、南ベトナムだとかインドネシア、フィリピン、シンガポールという東南アジア各国が最近そういう活発な動き方があるということです。これは日本経済におきましてもたいへんなことだと思うのです。こういう声がだんだん上がってくるということは、私が申し上げるまでもなく、これは将来の日本の発展に大きな関係を持つものでありまするが、そういうことから関連いたしまして、愛知外務大原が国民総生産の一%まで引き上げて経済援助する、これは東南アジアだけではありませんけれども、全体的にそれはやろうということをおっしゃっています。ところが、いままでの東南アジアなんかの比率を出してみますと、一%でなくて、国際間の話し合いは一%だったと記憶いたしますが、〇・七四%というものを国民総生産のうち援助してきたということになっております。しかし、これは政府ベースと民間ベースのうち、政府ベースは別といたしまして、民間ベースの金額をまぜての計算になるわけです。その民間ベースというのは、これを分析してみますと、実際の経済援助的なものになるのかどうか、そういうものも、企業的な数字にひとしいようなものも入れて援助しておりますよというようなことでは、やはり納得しないと思うのです。未開発国、後進国の国は、日本は調子のいいことを言っているけれども、何だ、事実上やってくれないじゃないか——これは私が東南アジアを回ったときにも、愛知外務大臣は国民総生産の一%を今後続けていってやろうと言っておられる、われわれはたいへん感謝しているが、ほんとうにやってくれるのかどうだということに私どもは少しの心配を持つ、こう言うのです。どうでしょうか。もうすでに通産大臣にも相談があり、今後どういう方向でこの援助をやっていこう、そして今後の援助のあり方、いままでのようなあり方でなくて、総理も言っていらっしゃるように、再検討して援助の新しい方法を考えなければならぬということを言っておられますけれども、もうすでに来年度に向かってそういうものに取り組んでおっていただけるでしょうか。たいへんな期待です。しかし、事実そのようなことが、東南アジア会議の発言が実行に移されないということになったら、日本というのは常にそういうようなアドバルーンを上げながら実行に移してくれないということで、ますます信用をなくすることだ。その点について、大臣どのように進められておりますか、お聞かせいただきたいと思います。
  64. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 やはりどうしてもこれはそこまでお話がこなければならないところの大事な問題でございます。先ほどのお話の系列から、当然そういう問題に実はぶち当たっておるわけでございます。  そこで、この問題には二つの面がございますので、それを申し上げさせていただきますが、まず、海外援助というものの定義、どれだけのものを援助として勘定するかということは、御承知のように、経済協力開発機構の下部機構でありますDACにおきましてきめられました定義がございます。そこで、私どもがわが国のたとえば一九六九年における海外援助は十二億ドルであるということを申しますときに、これはDACの定義に従って申し上げておることでございます。また、おそらくは外務大臣が国民総生産の一%、かりに国民総生産が四千億ドルになりますと、四十億ドルでございますが、一%を一九七五年にと言われましたときに考えておられますことも、そのDACの定義に従いまして四十億ドル、一%というものを言われたことと思います。それに関する限り、われわれは国際的な規約に従って援助の勘定をしておりますので、それは間違っておるわけではございません。  ただ他方で、先ほどから丹羽委員の言われますような観点から申しますと、その援助の非常に多くのものは、実は援助という名の商売ではないかという批判が受け取り側から非常に出ておるわけであります。したがって、そういうことにもかんがみて、国民総生産の一%はいいが、そのうちで政府間の援助というものを七割くらいまで高められないかという問題がかねてあるわけでございまして、これは、わが国ほか、かなりの国がなかなかそれは急速にはむずかしいということで、国際会議では留保をして今日に至っておるわけでございます。しかし、現実にわれわれと東南アジアをはじめとする発展途上国との関係から申しますと、貿易に伴う、あるいはプラント輸出に伴うところの金融というものは、純粋な意味での彼らがほんとうに欲しておる援助というもの——それも欲しないわけではありませんが、それはもっとほかにあるのではないかという声は、これまた無視できないような情勢になってまいりましたから、そこで、ただいま私どもが考えておりますことは、わが国からいたします援助をどの程度ひもつきでないものにできるかという問題になってきておるわけでございます。援助はするが、その使途については、たとえば、それでどこの国からブラントを買う、どこの国から物を買うというようなことは受け取り側の自由であるというような、援助にひもをつけないということが、どの程度、どのような方法で可能であるかというのが、ただいま私どもが各国と共通して持っておる問題意識でございます。ちょうど国連二十五周年にもなりますので、援助をできるだけひもつきにしないようにということについて、この秋ごろにはわが国も態度を表明しなければならない時期になってまいりましたので考え方をきめなければならないことになっております。  よそからの動きはそのように急でございますけれども、国内の納税者の立場から申しますと、わが国の公共投資、インフラストラクチュアは必ずしも十分でございませんので、そこで、外国に対してそのようなひものついていない援助をするくらいならば、まだまだ国内にすることがたくさんあるではないかという批判は、これは当然にございます。いままでは、援助と申しても、これは日本からの輸出増進になるのでというようなことで説明をしてきた場合が多うございますが、そうではなくて、これは文字どおりもう少し高い性格を持ったものであるということになりますと、国内的にそれを支持するだけの世論というものがやはりなければならないわけでありまして、これは現在のところ必ずしも十分だとは申しがとうございます。  したがって、われわれがとるべき現実的な道としては、これから援助というもののうちでひものついていない、先方が自由に使えるであろうような援助を徐々にでもふやしていく、そういったような過程の中で国内の世論の喚起につとめまして、それらの国々との友好関係が、また最終的にはわが国自身のためにもなるのだ、そろばんの上ではなくて、もう少し高い次元でそういうことになるのだという世論の啓発をしていかなければならない段階にただいまある、そういうふうに考えております。しかし、非常に重要な問題でありまして、いまわれわれはちょうどその転換期に立とうとしておるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  65. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 ありがとうございました。  七〇年代に突入をして、世界は自由国家群と共産主義国家群と、二つの潮流によって今後お互いが進んでいくだろうと思うのです。地球の距離が非常に狭くなって、どの国も、その国だけの繁栄で、そして他の国を顧みずしていくことのでき得ない世界情勢になったことは大臣お認めになるだろうと思う。昔は、アメリカだ、イギリスだ、ソ連だ、そしてシナだといったような大国、そして日本も加わったその国で話し合いができれば、他の国というものはそんなに話し合いをせずしてもすべてが片づいていった情勢もある。けれども今日は、アメリカだ、あるいはソ連だ、中共だということだけでは片づかない問題がたくさんできてきたことは大臣もお認めになるだろうと思う。たとえ小さい国であろうとも、発言権もあり、そこには自由を唱える権利もあり、あるいは共産主義的な発言をする権利もみな持つようになってきたんです。日本がこれだけの経済が発展してきた、世界の第三位だ、第二位だと言ってみても、やはり他の国との友好関係が親密でなければ将来の日本というものは伸びていけないことは、大臣、十分お考えいただいておるだろうと思うのです。そういうときに、日本国民総生産の一%は経済援助に出しましょうというようなことを言われた。いま反面、国内には公共投資でやることがまだたくさんある。それをやらずして、よそのことをやるというのもどうかと思うという世論は当然わいてくるんです。けれども、やはり閣内みなが相談して、そしてそれが一つの鉄則として世界的条約のうちにも含まれておるとするならば、これはやっていかなければなりません。しかし、きょうまではそれは行なわれてはこなかった。これを指摘せられたというのが、あの東南アジア会議だったろうと私は思う。  そういうような点から、今後は一%をやっていきましょう、確実に守りましょうと言われた、その反響は全世界に及んだ。これからどう詰めてこの問題を解決していくか、どうしてあのような発言に対して今後実行に移していくかということは、大臣のおっしゃるように非常にむずかしい、そしてこれは非常に研究していかなければならないことだ。いままでやってきた〇・七五というものの経済援助でも、それは利益のために出してすぐ回収をするという表向き援助にすぎなかったということは、各国がこれをよく認識している。だから今後の期待は非常に大きいんです。これはほんとうにやってくれるとするならば、もう一ぺん日本を見直そうという考え方は多分にあります。  どうかそういう意味におきまして、七〇年代に突入した日本が、世界の人々の未開発のところに日本のこの力でつとめて喜んでくれる政策を進めていただきたい。心からお願いいたしまして、私の質問を終わりますが、大臣のその鋭さ、その感覚をまたお尋ねして、勉強いたしたいと思います。この次の時間にまたお聞かせを願いたいと思います。どうもありがとうございました。
  66. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 勝澤芳雄君。
  67. 勝澤芳雄

    勝澤委員 大臣に、時間もだいぶかかっているようでありますから簡単にお尋ねいたしますが、その一つは、最近テレビのダンピングの問題が大きな政治問題となってきました。経過をお聞きいたしますと、一昨年の三月、米国の電子工業会の部品部からこの問題が提起された、こう伺っておるわけでありますが、一時期には、問題が解決するだろう、こういう時期もあったようでありますけれども、最近の状態を見てみますと、すでに関税評価の差しとめの措置が行なわれて、ここ三カ月以内に事実関係調査がされるようでありますが、これに対して、電子機械工業会はアメリカ財務省に異議申し立ての措置をとるようなことをきめたようでありますが、政府としては、一昨年からの経過の中で、今回のアメリカの態度、こういうようなものに対してどのような対応をいたしてまいりましたか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  68. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のように、この問題は一九六八年に提訴のあった問題でございまして、政府といたしましては、昨年の暮れまで、これはアメリカの法律にも国際ダンピングコードにもあることでございますので、業界から米国の財務省に対して、今後一定の価格をもってアメリカに輸出するという、いわば確約書と申しますか、そういうものを提出させることによりまして、事実上、いっときこの問題は終結をしたやに見られたわけでございます。ところがその後になりまして、米国が国内上の規則を変え、また多少人的にも異動があったようでありますけれども、この確約書の方式によらずして、さらにわが国の業界から詳しい資料を、しかも非常に短期間に求めるということになりましたので、その段階で、政府として、非常に短期間にそれだけの資料を求めることは無理であるので、期間の猶予を先方に対して求めまして、それは一応いれられました。そうして、猶予されました期間に新たな資料が提出されたわけでございます。その段階で政府は、在米大使を通じまして、従来の慣例によれば、昨年の末に行なわれたような形で本件は一応収束をしたと考えるのが常識であるが、今回突如として新しく問題を、また資料等を求めて、いわば再発したかに見えることは納得のいかないことであるということを在米大使から財務長官に申し入れたわけでございます。しかし、それにもかかわらず、新しい資料に基づきまして財務省の調査が進みまして、先般御指摘のように評価差しとめが行なわれた。  そこで、ただいま私どもは、評価差しとめをするに至った際に先方が用いましたところの各資料、わが国の国内価格をどのように、どういう資料に基づいて算定をしたか、これは各社各製品別に別々にあるわけに違いございませんから、そういったものをまず求めまして、先方の主張の根拠がダンピングのコードに照らして正当なものであるかどうかということについて検討を始めようとしておるところでございます。したがって、ただいまの段階は、アメリカ財務省に対して資料の提示を求めておる段階でございます。
  69. 勝澤芳雄

    勝澤委員 最近、カラーテレビの問題だけではなくて、いろいろな各商品についてもきびしい態度を示してきたようでありますけれども、むろん通産省はこれらの対米輸出について、いろいろといままで指導されてきたと存じますけれども、これらの対米輸出商品の再検討をする、こういわれているようでありますけれども、これらの問題を考えてみますと、相当やはり真剣に、総合的な対策といいますか、そういうことをしていかなければならないと思いますけれども、特に最近、自由貿易というようなたてまえからいって、こういう問題、アメリカの保護貿易の拡大といいますか、こういう観点からガットなどの場でも解決するというような方向で、いま当面起きている問題もあれですけれども、それ以外の拡大しようとする諸問題についても、やはり対処する方法というものを考えなければならないんじゃないだろうかと思いますが、それらの問題についていかがですか。
  70. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 米国側に一般的にそういう風潮があることは確かでございますから、ダンピングというような提訴が起こりやすい。そして、このダンピングという提訴が起こりますと、国内価格とは何であるかといったようなことになりますと、商習慣が違いますと、かなりその辺は見解が分かれてまいるわけでございます。  そこで、結局、かりにダンピングでないということが最終的に明らかになるにいたしましても、その間に評価差しとめというようなことがありましたり、不安要因を生み出しますから、私どもはなるべくそういう疑わしいような事態に入ることは気をつけておいたほうがいい、ことばをかえて申しますと、一つの商品があまり一カ所に集中して、しかも毎年大きく輸出が伸びていくということは、これはそのような疑いを招きやすいのでございますから、たとえ最終的に疑いが晴れましても、その間の迷惑というものははかり知れないものでございますから、そのような輸出の集中、あるいは過度の継続した伸びというようなものについては私どもお互いに国内で注意をしていったほうがいい、こういうふうな注意喚起をしたしているところでございます。
  71. 勝澤芳雄

    勝澤委員 国際的な問題もおありになると思うのですけれども、従来そうたいして問題がなかったのが最近になってなぜこういう事態が起きてきたのか。先ほどの経過の中でも、いろいろアメリカ側の人のかわり、情勢の変化等々のお話がありましたけれども、こういう点についてはどうお考えになっておられましょうか。
  72. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 行政の方針の変化、あるいはこの問題については最終的にかぎを握っております関税委員会の構成等々、私どもとして従来からかなり変わってきておるのではないかという徴候をいろいろ見ておりますけれども、これにつきましてあまり立ち入って申しますことは、ひょっとすると、それを肯定する立場にとられても困りますし、また、いろいろ他国のいわゆるポリティックスにも関係をいたすそうでございますからこれは申し控えさせていただきたいと存じますが、そのような徴候があることは、私どもも実は注意を払っているところでございます。
  73. 勝澤芳雄

    勝澤委員 最近町では、テレビはもうちょっと待てばもっと安くなるだろう、こういうような空気が濃厚で、年末にいけば、年が明ければ、こういって、実はカラーテレビは安くなるだろうというように消費者の多くは期待をしているわけです。  このことは、従来から、輸出価格と国内価格というものから考えて、国内価格がことさらに高いのではないか、こういうことがいわれておるわけでありますが、最近電子機械工業会も価格モデルを公表したようでありますけれども、こういう点から考えて、国内の販売価格というものについていま消費者が不信を持っているわけでありますから、やはり不信のない流通機構なり何なりというものの指導をされるべきではないか。あるいは、いまのこういう不安定な状態をどうお考えになりますか。
  74. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 このことはダンピングの容疑とは全く関係のないことでございますので、その点を最初にはっきり申し上げておかなければならないと思いますが、他方でわが国の国内の価格形成について、たとえば十九型なら十九型の白黒、カラーテレビにいたしましても、一社で七つとか八つとかいうモデルを出しておるということが、これがはたしていわゆる規模の利益を十分消費者に還元するゆえんなのであろうか、あるいは、しかもそれらのモデルがしばしばモデルチェンジをする結果、在来のモデルに対して投ぜられた資本なり技術なりが十分償却されないままに終わってしまうのではないだろうかといったようなこと、それからまた、流通機構がかなり複雑でありますが、はたしてどのようになっておるのであろうかといったようなこと、それらについては、私ども、これはダンピング問題とは関係のないことでございますけれども、国内の消費者からいろいろの声もございますので、まず調査方法を一、二カ月のうちにはきめまして、少し実態の調査をして事実を洗い出してみたいと考えておるところでございます。
  75. 勝澤芳雄

    勝澤委員 この国内の価格の問題で、公正取引委員会全国地域婦人団体連絡協議会に調査を依頼した結果が公表されておりまして、大臣、もうすでにその価格の差についても御報告を受けておると思います。そういう点から、国民はこのカラーテレビが安くなるだろうとたいへん期待をしておるわけでありますから、ひとつ流通機構の現況についてもこの際十分なメスを入れて、やはり正当な利益は確保してやらなければいけませんけれども、それが不当な競争行為、また格価協定によってそういうことが行なわれるとするならば、当然これは取り締まりをしなければならぬと思いますが、そういう点で、ぜひ私はこの際こういう国民の疑問、業界に対する不信、こういうものを払拭する意味からも、通産省のよりよい指導というものを要望いたします。
  76. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 流通機構につきましても、できるだけ調査をいたすつもりでおります。
  77. 勝澤芳雄

    勝澤委員 それでは大臣、お食事をどうぞ、パイプラインの質問をいたしますから。  最近パイプラインの計画が出てまいりまして、これについていろいろ新聞などの報道を見てみますと、このパイプラインの所管をめぐって通産省と運輸省の間で意見がまとまっていない、そのためにパイプラインの計画がおくれている、こういうことがいわれておるようであります。  そこで私は、パイプラインというのはどういう立場で検討されているのか、通産省と運輸省の両方から、パイプラインについてのお考えをまずお聞きいたしたいと存じます。
  78. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  パイプライン構想の基本的な考えの出てまいります事情は、御承知のように石油の需要が経済成長を上回るテンポで増加してまいっております。しかも石油製品の需要につきましては、臨海工業地帯のみならず、内陸の各種需要を充足する必要がある。従来鉄道のタンク車あるいはタンクローリーでこれを輸送してまいったわけでございますが、今後の増加のテンポを考えますと、タンクローリーの増加あるいはタンク車による輸送の増加というのは、現在の道路状況あるいは国鉄輸送力等を考えますと、先々限界のくることを予想せざるを得ない、こういうふうに思うわけでございます。しかも、石油製品につきましては原油代が七割程度でございまして、石油精製費というのは一割程度、原油の輸送から石油製品の輸送まで入れまして流通コストというのが二割もかかる、こういうふうにいわれておるわけでございます。今後基本的な基礎エネルギーとしての石油製品の低廉な、安定した供給ということに相なりますと、安定した輸送力を確保すると同時に、低廉な輸送手段によって輸送することが必要である。かような意味で、道路事情の逼迫あるいは国鉄輸送力の限界等を考えますと、道路機能にかわるものとしてパイプラインを布設して、そして内陸へ石油製品の輸送を行なうことが必要であると思うのであります。低廉、安定輸送ということに相なりますと、これがエネルギー供給の一つの体系の中で考えることによって低廉、安定を確保することが必要ではなかろうか、こう思うわけでございまして、ただいまパイプラインの建設によって将来の低廉、安定供給の確保をはかる計画を立てておるわけでございます。具体的な計画については、運輸省、国鉄等とよく連絡をとりつつ実現をはかろうと考えておる次第でございます。
  79. 原田昇左右

    ○原田説明員 運輸省といたしましては、今後の日本経済の発展を考えますと、物資の輸送量並びに人の輸送量というものは急激に増加する見込みでございます。たとえば、昭和六十年を目標といたします新全総計画におきましても、それでもまだ過小見積もりという批判がございますけれども、大体現行から三倍ないし四倍程度の輸送量になるのではないかという見通しも私どもは試案としてあるわけでございまして、そういった今後増大いたします人並びに物の輸送体系をどういうふうに形づくっていくかということは非常に問題になるわけであります。  そこで、従来輸送機関別の対応策ということがいろいろ検討されておったわけでございますが、各輸送機関別の対応策では必ずしも十分でない。総合的に考えまして、全国の総合的な輸送体系を考えていく必要がある。その場合、単に輸送コストという面だけでなくて、環境、条件との調和あるいは安全な輸送体系あるいは労働力節約型の輸送体系といったようなものを、国民経済的な観点あるいは社会福祉的な観点から考えていかなければならない。そういうことから考えていきますと、先ほど通産省からもお話がございましたように、石油類につきましても非常に輸送需要が増加するということと、さらに、石油類につきましては、御承知のように非常に危険な物質でございますので、こういった輸送の体系の中にどういうように織り込んでいったら一番いいかということを考えているわけでございます。  そういうことから考えまして、たとえば東京湾であるとか瀬戸内であるとか、あるいは内陸部における過密地域におきましては、パイプラインによる輸送体系を全体の総合輸送体系の一環として整備する必要がある、こう考えて、目下具体的な計画作成を検討いたしておる段階でございます。  その具体的な一環といたしましては、すでに国鉄におきますパイプライン輸送の計画が進んでおりまして、先般閣議で御承認を得ました国鉄財政再建に関する基本方針におきましても、国鉄にパイプラインの輸送を担当させることが適当であるということになっておりますので、その線に沿って、全体の計画の一環としての国鉄のパイプライン輸送の計画が目下具体的に進行中でございます。  なお、新国際空港公団につきましても、現在、空港の建設と合わせまして、具体的に航空用燃料を千葉の港から成田まで引っぱるというパイプライン計画の検討が進められておるわけでございます。  このような情勢を踏まえまして、私どもは、全体的な輸送体系の中における石油輸送のあり方、そして、その中におけるパイプライン輸送の体系といったものを検討しておる段階でございますが、その段階におきまして、石油業を監督しておられます通産省と十分話し合いを行なって進めてまいりたいと思っておる次第でございます。
  80. 勝澤芳雄

    勝澤委員 そうしますと、具体的なお話をいま聞いてみますと、運輸省のほうは、国鉄なりあるいは成田空港なりはある程度具体的な計画は進めている、こういうお話であります。  通産省のほうは具体的な計画はどうなっておるのでしょうか。
  81. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  来年度以降の考え方といたしまして、北関東方面への石油製品輸送のパイプラインの建設を考える必要があるのではないか。その際、最終的にまとまっておるわけではございませんが、たとえば浦安から北に、浦安までは海底のパイプラインを置くことによって製油所から送る、こういう計画を推進するのが適当でないかと考えておるわけでございます。なお、東京湾の大型タンカーの航行は逐次むずかしくなるという事情もございますので、運輸省からもお話がありましたような東京港のCTSと、それからCTSと製油所を結ぶ原油パイプラインというものも調査を行ない、実現する必要があると考えております。
  82. 勝澤芳雄

    勝澤委員 通産省にお尋ねしたいのですけれども、鉄道のパイプラインというのは、あるいは港湾なりあるいは成田空港なりのパイプラインという具体的な話がいまありました。これは運輸省がやるのですか、それとも通産省がやるのですか。そこはどうなっているのですか。
  83. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  成田の新国際空港と製油所を結ぶパイプラインというのは、これは特定の需要者と製油業者とのつながりということでございますから、現在コンビナート等で電力と製油所がつないでおるパイプラインと同じ性質のものであろうと思います。  それから、いま国鉄の御計画のものにつきましては、われわれとしては、低廉、安定輸送手段であることが今後の石油製品の供給の体制からいって必要であると考えておるわけでございまして、その線に沿う計画であれば、われわれとしてはけっこうだと思っております。
  84. 勝澤芳雄

    勝澤委員 初め一緒のように聞いていましたが、何かどっかで違うようなお話なんですけれども、違うのですか、一緒なんですか。運輸省と通産省の考え方というのは、石油そのものは通産省の行政だ、輸送そのものは運輸省の行政だ、ただパイプを引くのは、タンクローリーとタンク車のかわりにパイプが通るんだ、中を通る石油はおれのほうだ、こういう違いなんですか。われわれから見れば、いま走っている鉄道のタンク車やあるいは道路を走っているタンクローリーがパイプラインに置きかえられるんだ。そのことがより安全であれば、あるいはあなたがおっしゃったように安ければいいわけですね。別にどちらがやろうとそれはいいわけですが、いま国鉄の話を聞いていると、国鉄は自分の鉄道線路のところを使おうという。一番手っとり早い話じゃないかという私も気がするわけです。これはしろうとでわかりませんけれども。  それで、通産省で計画しているのは、パイプラインはどこを通すのだというようなことで、これはあまり全国的な、全体的なことを考えるので、当面の問題というのは——当面の問題を考えるには、全体的なことを考えなければ当面の問題もうまくいかないだろう、これでたじろいでいるような気がするのですが、その点はうまくいっているのですか、どうなんですか。
  85. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  具体的な問題の点の御指摘につきましては、国鉄の敷地を使えるということは、これはまことにけっこうだと思います。ただ、われわれとしては、低廉、安定な供給の体制であってくれればそれでけっこうです、こういうことでよくお話し合いをしたい、こういうふうに申し上げておるわけです。北へ行くときも、あるいは国鉄の敷地を利用することもあろうかと思いますし、あるいは河川敷を利用して北へ行くということもあろうと思います。そこの敷地の最終の線がまだきまっておるわけではございませんが、そういう方法でパイプラインを引くことによって、ふくそうしておる交通事情の緩和をはかり、安全な低廉な輸送を実現したい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから全国的に考えますと、全国各地をパイプラインでつなぐようなことはとうていこれはできない。たとえば阪神地区であるとか、北九州地区であるとか、あるいは今回室蘭、苫小牧に製油所ができますので、これを札幌方面へつなぐとか、こういうことで、日本全体としてはそれほど大きな範囲に広がるパイプラインではないと思います。局部的というか、地域的な範囲の輸送手段、石油製品の輸送を非常に密度の高い地域にはパイプラインによって代替する、こういうことであります。
  86. 勝澤芳雄

    勝澤委員 いま当面具体的に計画として実施しようとしているのは、パイプラインはどんなものがあるのですか。
  87. 原田昇左右

    ○原田説明員 先ほど申し上げましたように、運輸省の関係といたしましては、成田の空港公団が千葉港から成田までパイプで航空用燃料を輸送するという計画が一つあります。これは空港公団法によりまして、空港公団が建設、運営、管理するということでございます。  それから第二の具体的な計画といたしましては、日本国有鉄道が目下計画しております川崎地区から八王子方面に至るパイプラインでございます。これは先ほども申し上げましたように、日本国有鉄道の財政再建に関する基本方針、これは閣議決定になりましたものでございますが、この中に、日本国有鉄道の関連事業の整備の一環として「パイプライン輸送等日本国有鉄道の鉄道輸送と密接な関連を有し、その機能の促進に効果があり、又はその施設を有効に活用することが望ましい事業については、これを経営し、又は適切な投資を行なうものとする。」という基本方針がございますので、この方針に基づいて日本国有鉄道が建設、運営、管理をするという計画でございます。
  88. 勝澤芳雄

    勝澤委員 いま言われた二つについては、片方は公団が、片方は国鉄がやることについては、通産省、異議がないのですか。何かそこのところが、異議があっておくれている、こういうふうにわれわれは聞かされているのですが、そういうことはないのだすか。
  89. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  根岸−八王子ラインを建設されるのは、それはけっこうだと思います。さっき申し上げましたように、低廉、安定な輸送手段であるということの考え方でやっていただけるならばけっこうでございます。
  90. 勝澤芳雄

    勝澤委員 それが私たちにはよくわからないのですが、低廉、安定ではないのですか。低廉、安定であるかないかはまだきまらないのですか。そこはどうなんですか。
  91. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  われわれのほうで、幾らで送れる、幾らになるというのまでは伺っておりませんが、われわれで懸念するところは、国鉄の再建の一環としておやりになるということになりますと、大世帯の中の一つということになって、いろいろ懸念するようなことになりはしないかということで、したがって低廉、安定な輸送手段であることを考えていただければけっこうです、こういうことであります。
  92. 勝澤芳雄

    勝澤委員 私たちの立場から見ていれば、このパイプラインは計画としてはたいへんすぐれたものであって、これからやらなければいけない、こう思うわけです。そのことが、役所間の問題で建設がおくれた、あるいは計画がなかなか進まないということになると、一体われわれ国会は何をしているのだと実はいわれるわけです。それはいろいろないきさつがあり、いろいろな役所の形態があると思うのです。それで、新しいものをつくるときに、またこれはこうすべきだ、ああすべきだと、いろいろ議論があると思うのですけれども、それはすっきりして——議論があることもいいし、あるいはもめることもいいと思うけれども、早いことですね。そのためにそれが一月も二月も一年も延びたということになれば、これはやはり何をしているんだということになるのです。せっかくできている計画のようでありますから、そういう点は調整をされて、私はこの計画は積極的に進めるべきではないだろうかと思うのです。  それで、ここで聞いていると、何か争いがないような話なんですけれども、経済企画庁のほうは、こういう問題については両省の話し合いできめていくのですか。経済企画庁なりに、これはこうすべきだ、あるいは行管行管なりに、それはどういうふうにしたほうがいいのじゃないか、というふうになるのですか。その点はまだまだそこまではいっていないということなんですか。どうなんですか。
  93. 新田庚一

    ○新田説明員 経済企画庁としましても、新長期計画でも、油の輸送体系の合理化、エネルギーの効率的な輸送という面からパイプラインの建設促進ということをうたっているわけでございまして、本件につきましても関心を持っているところでございますが、ただ、この問題につきましては、運輸省、通産省で十分研究し、連絡しながらやっておるというふうに聞いておりますので、私どもは、基本的な考え方の食い違いがあるということで調整しなければならないというふうな段階にあるとは思っておらない、現段階ではそういう段階でございます。
  94. 岡内豊

    ○岡内説明員 お答えいたします。  行管のほうといたしましては、まだこういう問題について実は全然調査をしたことがございませんし、そういうふうに、もめているというようなこともきょう初めて聞いたようなことでございまして、具体的にお答えすることはできないわけでございますけれども、今後なおいろいろと問題があって事が運ばないということであるならば、いろいろ関係各省の意見を聞きまして調査をして、なるべく早く工事が進むように推進したい、かように考えるわけであります。
  95. 勝澤芳雄

    勝澤委員 基本的な意見の相違は、運輸省もそれから通産省も私はないように思いますし、いままでの経過からいって、どちらがどこまで管理、監督するのかというようなことじゃないだろうかと思うのです。しかし、この問題がそういうものがきまらないためにおくれるということになりますと、今日この排気ガスの公害の問題あるいは国民経済的なことからいって、これはあまりそのままほうっておくわけにはいかない。どちらでもきまらなければ、では国会できめようじゃないかという意見もいま出ているような段階です。  ですから、やはり国民の側から見て、役所のお互いのなわ張り争いのために問題がおくれているということのないように私はしてもらいたいと思いますし、それから、経済企画庁にも申し上げておくと、国民経済的にむだのない投資という立場をぜひお考えいただきたいと思うのです。それは、やはり政治ですから、たとえば米の問題を見ても、あるいは最近問題になっておる保健の問題を見ても、いろいろひん曲がりもあると思うのですけれども、しかし、国民経済的から見れば、だれが見ても結論が出るわけです。先ほど丹羽委員も発展途上国からの片貿易の問題を言われておりましたけれども、その問題も、国内の産業構造との問題を比較してみれば、もっと日本日本政治のやり方以外でやれる方法があるわけでありますから、そういう点は、なかなか政治の中で正すことのできないのはやはり行政で正さなければいけない問題がある。行政の中でなかなかうまくいかない問題は、では政治的にものをきめようかということになるわけでありますから、そういう点で、いまのお話を聞いておりますと、せっかく両方が相談し合っていこうということでありますから、当然、輸送設備の場合においては運輸省になるでありましょうし、あるいは石油の立場でいうならば通産省になるわけでありますから、よく立場立場はわかるのでありますけれども、総合的な立場で、ものをおくらせないように進めていくということで、この問題は問題自体が政治的になって国民から大きなひんしゅくを買うような役所のなわ張り争いというものにならないように特に要望いたしておきます。  以上、質問を終わります。
  96. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 鳥居君。
  97. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 私は地盤沈下について少々お尋ねしたいと思います。  まず、東京へ大阪などの工業用水等の急速なくみ上げによる地盤沈下がこれまでしばしば問題になってきましたけれども東京から千葉県にかけます京葉工業地帯の、特に葛南地区の場合、これはいささか事情を異にしているようであります。沈下対策のきわめて立ちおくれた、天然ガスの大量くみ上げによる地盤沈下でありまして、これに焦点をしぼりまして少々お伺いしたいと思います。  すでにマスコミの各紙は県の公害課の測量をもとにいたしまして報道しております。これは御存じのとおりだと思いますが、葛南地区がまるで底なし沼のような勢いで現在沈下をしている。また、船橋市内の中学校では年間二十四・三センチメートルと、これまでの最高沈下量を記録した地点も出ており、一昨年の東京江東区の沈下量をはるかに上回るものである、こういう報道がなされております。  ちなみに、測定を始めました昭和三十八年の二月から今日までの七年間どのくらいの沈下をしたか、県当局の発表を取り上げてみますと、船橋市栄町では一千十一ミリメートル、一メートルをこえております。市川市湊新田で千二十六・七ミリメートル、これも一メートルをこえております。昨年からことしにかけてこの一年間を見てみますと、船橋市の夏見町で二十四・三センチメートル、やはり市川市の湊新田で二十四・一センチメートルと、いずれも二十センチをこえるような大幅な沈下が起こっているような現状であります。県当局の調べによりますと、これは非常に規模の小さな観測井による調査でありますが、船橋地区の場合には、地下二百メートル以下の地殻変動、つまり地表にきわめて近いところに原因があるのではなくて、かなり深い部分の地層においてその地殻変動、沈下が起こっている、地盤沈下の九八・八%までが二百メートル以上深い部分で地殻変動が起こっている、こういうふうに公表しております。ところが、天然ガスの採取にあたりましては、大体地下二千メートル程度のところの地下水をくみ上げ、水溶性の天然ガスでありますから、その中から天然ガスを出すということで大規模なくみ上げが行なわれているわけです。  現在ここで問題になることでありますが、地盤沈下の著しい地域におきましては、学校がすでに倒壊寸前になってしまった浦安の南小学校、あるいは船橋中学校、これは校庭の体育館等が地盤沈下のためにパイルを何本も打たなければならない、こういうような状況でありまして、そうした公共の福祉を害してまでも鉱業権を守らなければならないものであるかどうか、大臣のお考えをまず伺いたいと思います。
  98. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 具体的な事案でございますので、政府委員からお答え申し上げます。
  99. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  御指摘の船橋地区におきまして地盤沈下が従来からあったわけでございますが、当時の観測では、この土地の深部の地質が非常に古い地層であるということで、御指摘のように非常に深いところの水を上げる天然ガス採取が直接これに因果関係があるのかどうかという問題があったわけでございます。ところが、御指摘のように昨年の二月の観測によりまして、浅い部分ではなくて深い部分のほうで沈下が起こっておるということが観測されたわけでございます。そこで、われわれといたしましては、今後この地下深所にあると思われる原因につきまして、さらに正確な判断をするために観測井を設けたいというふうに考えておりますが、御指摘のように、非常に影響の出てまいっておる地域において鉱業権をそのまま放置するのかどうかということに相なりますと、われわれとしては、非常に大規模な被害の生ずるような状態におきましては、鉱業権の行使につきまして制限するというか、鉱業権の行使を制約的に動かすという形でこの被害を及ぼさないようにしたいと思っております。なお、新しく鉱業権を認める、あるいは新しい採掘井を掘ることを認めるかどうかという場合につきましては、かような地域については認めないということでまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  100. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 工業用水法が制定されましたのは昭和三十一年であります。これは工業の発達に主眼を置きまして工業用水の確保をねらいといたしましたために、昭和三十七年に改正いたしまして、地盤沈下の防止の立場から、ポンプの太さであるとかあるいは深さの制限、政令で指定地域を指定しまして井戸の新設を規制するとか、そういう措置がとられることになったわけですが、沈下の著しいこうした千葉県の葛南地区を考えてみましたときに、同じ水をくみ上げていながら、工業用水法の適用を受けない鉱業権があるからということで、鉱業法による過保護のような状態で今日まで無制限に近いくみ上げが現に行なわれてきております。天然ガスは水溶性でありまして、先ほども申し上げましたとおり水から分離をさせる、ですから、くみ上げる点につきまして、事、地盤沈下ということに関しましては、くみ上げる水は変わりはない。ですから、くみ上げポンプの太さの規制、あるいは新設ポンプにつきましては、指定地域を指定して、そうして制限をする、そうした強い措置がとられてしかるべきだ、こういうふうに考えるわけですけれども、この点についてはいかがですか。
  101. 本田早苗

    ○本田説明員 先ほど御説明申し上げましたように、非常に地質の安定した深所からくむという事態がございましたので、工業用水法でなく、鉱業法でやってしかるべきだという判断をいたしておったわけでございます。その後地盤沈下の状況等問題が生じておりますので、四十三年に東京通産局では専門家を集めまして、千葉県下の天然ガス開発技術委員会というものを設けまして、今後の掘さくについての考え方を整理いたしまして、施業案の認可に際して委員会意見を聞くということにいたしておるわけでございます。  この委員会意見の基本的な考え方としては、申し上げましたように、沈下の激しい地域ではもう新たに許可しない、沈下のおそれのある地域では、大規模なものについてはもう許さない、山間部で認める場合にも井戸の本数は制限する、そして、かつ、いまの事態につきましては、現在の採水量をさらに制限することについて検討しておる次第でございます。
  102. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 この地盤沈下につきましては、およそ二十年の歴史があります。もちろん、東京あるいは大阪に比べますと非常に歴史が浅い、そういう面はありますけれども、現在その原因の調査につきましては、通産省としては全く関知しないような、たとえば県は観測井を持っておりますけれども、観測の井戸すら通産省としては持っていない。鉱業権を認める、これは鉱業権の設定にあたって県のほうと協議をするということになっておりますけれども、これもきわめておざなりの一方通行の話しか現在なされていない。それから具体的なくみ上げの水の量あるいは規模、こうした施業案につきましては、これは地方自治体は全然関係ない。そういう状況で、通産省のほうでは、施業案が出ればこれを認可するというかっこうでやってきております。今日まで施業案で拒否されたものは全くない、こういう事例を考えてみましたときに、よって来たるところの地盤沈下については、やはり通産省として大きな責任を持たなければならない、強い姿勢でこの地盤沈下対策に当たらなければならない、私はこう思います。しかし、国としては、通産省としては、観測のため、原因調査のための井戸を一本も持っていないというのが現状でありまして、いまから二年、三年あるいは五年ほども前に原因調査のために井戸を掘るべきだった、私はこう思うのですが、姿勢の弱さ、これを痛感してならないのですが、その点についてはいかがですか。
  103. 本田早苗

    ○本田説明員 言いわけになってまことに恐縮でございますが、先ほども申し上げましたように、地盤沈下の原因が深所の採水によると考えられるという事実がわかりましたのは本年の二月でございまして、そこで深所についての観測井の必要性というものがこのときに出てまいったわけでございますので、ことし二千百メートルの——県か五百二十メートル、一千メートルのものを置くようでございますが、国としては最も深い二千百メートルの観測井を設けまして、今後の実情を確認してまいるということにいたしております。  それからもう一点、施業案の認可にあたりまして、認可の際に井戸の間隔あるいは採水の方法、たとえば、深いものについては水中ポンプは認めるが、間隔の狭い場合にはガスリフト方式でなければならないというふうに、採水の方法等について指導の上、認可しておるということでございまして、われわれとしても、その点については考慮を払いつつ認可してまいったわけでございます。
  104. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 地方自治体との協議につきましてはいかがですか、その点につきまして。
  105. 本田早苗

    ○本田説明員 東京通産局のほうで、県の担当部のほうに連絡をいたして認可をするということで処理してまいったわけでございます。
  106. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 まず早急に国として観測井を持っていただきたい。そうして、現在自主規制を東京通産局を初めとしてこの働きかけをやっておりますけれども、県のほうではそんな甘いことではどうしようもない、こういう態度です。それに対しまして、企業側では五〇%自主規制というのはどうしてものめない、こういう態度で出ております。ですから、いずれにしましても、この原因がはっきり天然ガスのくみ上げである、こういう結論を出さなければならない立場からも、観測井の取りつけ、建設をひとつ急いでいただきたいと思うのですが、この点はどうでしょうか。
  107. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、二千百メートルの観測井の設置のための予算は、先般経済企画庁のほうでお持ちの調整費から出すということになりましたので、本年度中に完成して、観測し得る状態にすみやかにいたしたいと思っております。
  108. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 年度中ですね。
  109. 本田早苗

    ○本田説明員 はい。
  110. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それからもう一つ、この原因をあいまいにしておくことでありますけれども、むしろこの挙証責任につきましては企業側にげたを預けるべきだ、私はこう思います。現在のところ、住民や県側が天然ガスが原因だという立証をしない限り企業側の協力も得られない、あるいは規制もできない、こういうのがいまの通産省の態度でありますけれども、むしろいままでの弱い規模の観測井で天然ガスが原因の非常に大きなものであるということがわかっている以上は、企業の責任において、地盤沈下の原因が天然ガスのくみ上げでない、そういう証明ができない限りは、企業側に、大きな責任をもって地盤沈下対策について通産省側でとろうとする規制に応じさせるような、そういう強い措置をとっていただけるようにお願いしたいと思うのです。  現在、ABC——これは特に沈下の著しい船橋の市役所を中心にしまして、半径一キロを五〇%規制しようということです。九月から始まるそうでありますが、これがA地区、B地区はそれからさらに一キロメートル延ばした地域、それからさらにC地区はその外一キロメートルだそうでありますが、この三キロメートルの中の規制を考えてみましたときに、この規制のパーセンテージもきわめて甘いものだと思うのです。そこら辺の根拠についても、しっかりした根拠を持って、もっと強い措置をとって、そうして地盤沈下のきわめて著しい傾向をなくしていかなければならない、こう思います。どうですか、その挙証責任については。
  111. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  御指摘のように、相当因果関係があるかないかという問題になりますが、これは早急に設置する観測井の観測によってある程度出てまいるかと思いますが、それまでにも、採水量について規制を強化してまいるということについて、御指摘のとおりのパーセンテージで現在実施するよう結論を急いでおる次第でございまして、できるだけ早く実施に移しまして、さしあたり採水量の減少によって影響を少なくいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  112. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ここに大手のある社の事業拡張計画があります。この供給地域の拡張計画によりますと、今後大幅に供給地域を拡張しようというものでありますが、この中に天然ガスに負うところが非常に大きいと思うわけです。この拡張計画を考えてみましたときに、東京通産局あるいは通産省として、さらにこの拡張計画を進めていく上において必ずぶつかるわけでありますけれども、これに対してはどういう措置をとってまいりますか。
  113. 本田早苗

    ○本田説明員 ただいまの事業拡張計画についての御発言につきましては、山間部の天然ガス、あるいは他のガス源に転換して供給しようという計画のようでございまして、さしあたって地元の採水量を増加してガスを供給するということでないようでございますが、さらに詳しく公益事業局とも検討していきたいと思っております。
  114. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 非常に新潟の地盤沈下の例と類似している点が多いわけであります。天然ガスのくみ上げであるというそういう点でありますけれども、この水溶性天然ガスのことにつきましては、すでに新潟におきまして地下分離実験を行なっております。これはくみ上げてから天然ガスをとろうというのではなくて、地下において分離して必要な天然ガスだけをとる、地盤沈下の原因にはならない、そういう技術開発が実験の段階でありますけれども、これが進んでまいりまして今日まで続いてきたそうでありますが、この主催者、その結果、これについて伺いたいと思います。  何でも、聞くところによると、予算措置がとれないために、工業化の段階でこの実験が足踏み状態である、こういうふうに聞いております。むしろこれを受けて立つような姿勢が通産省に必要である、私はこう思うのですが、この点についていかがでしょう。
  115. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  現在企業におきましては、地下の水とガスを分離するのでなくて、むしろ上げた水を再圧入するということについて研究を進めておりまして、われわれのほうとしても、これについて助成できるようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  116. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 これはこの葛南地下におきましてはどの程度進んでおりますか、圧入法でけっこうですが、やっていますか、やっていませんか。
  117. 本田早苗

    ○本田説明員 実験段階でございますが、一日に千トンの水を圧入するという実験をいまやっておる次第でございます。
  118. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 新潟ですね。
  119. 本田早苗

    ○本田説明員 いや、船橋地区です。
  120. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ともかく、この地盤沈下の問題につきましては、やはり認可を今日までしてきて鉱業権を与えてきた以上は、やはりこの後に起こりました地盤沈下問題につきましては相当強力な姿勢でこれに対処していく、そういうことでなければならないと思います。ともかく地盤沈下が起こってから何千億円かけて対策を講じたところで、これは公費のむだづかいでありますし、そのいう点からいっても、社会秩序を守る点からいっても、業者にはよくわかっていただけるような話し合いが、またその努力が通産当局になければならない、こう思いますし、今後少しでもこの緩和がはかられるようにひとつ努力していただきたいと思うのです。大臣、この議論につきましていかがでしょうか。
  121. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま最後に御指摘のとおり、これは明らかに地盤沈下は公害でございますから、従来、そういうことがかつては考えられなかったことも、いま明らかにそういうことになってきておりますといたしますと、十分通産省としてもそれに対処しなければならないと思っております。
  122. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 次に、石油の対策でありますけれども、まず、石油による公害、この問題についてお伺いしたいと思います。  先ごろの総合エネルギー調査会の需給見通しで想定するところによりますと、一次エネルギー供給における石油の構成比、これはまたきわめて大きなものがあります。昭和五十年度現在七三%、六十年度現在六九%という見通しでありまして、かつて昭和四十二年の二月出されました見通しの約二倍ちょっと欠ける程度のそういう見通しになっておりまして、今日のわが国の経済社会にとって不可欠のエネルギー源になっていることはまぎれもない事実であります。そこで、当然のように起こる問題でありますが、亜硫酸ガスによる大気汚染、これが拡大されることが非常に憂慮されるところであります。通産省は大型プロジェクトによる研究開発といたしまして、排気ガスの脱硫それから重油の直接脱硫、この技術開発を進めてまいりましたけれども、排ガス脱硫のほうは昭和四十四年度で終わり、重油の直接脱硫のほうも四十五年度で終わる予定になっているそうでありますけれども、この研究成果、その内容、実用性の点でどうか、この点について伺いたいと思います。
  123. 長沢栄一

    ○長沢説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生のお話しのとおりでございまして、排煙脱硫技術については、昭和四十一年からこれを大型プロジェクトに取り上げまして、取り上げましたものは活性炭法と活性酸化マンガン法でございます。活性炭法は四十四年の三月に実験を終了いたしまして、活性酸化マンガン法は四十四年九月にほぼ所期の成果を得て終了いたしております。その後電力業界等は、この施設を使いまして、なお実用化を目ざしての詳細データの取得のための追加研究を行なっております。この研究も終わりまして、電力業界では、これらの研究成果をもとにいたしまして、昭和四十五年度中に実用規模といえるような十五万キロワットないし十一万キロワットの排煙脱硫装置の建設に着手することになっております。通産省といたしましても、この建設につきましては開銀融資による助成を予定しておるものでございます。  それから、重油の直接脱硫につきましては、やはり大型プロジェクトで四十二年からこれを取り上げまして、触媒の開発とかあるいはエンジニアリングの開発等を進めてまいりまして、現在五百バーレルの直接脱硫装置を横浜地区に建設中でございまして、これはことしの十月から運転研究に入り、来年の九月一ぱいにはこの研究を完了する予定でございます。いずれも直接脱硫につきましてはまだ研究中でございますが、排煙脱硫においてはしかるべき成果をおさめたものでございます。
  124. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 これはある新聞社の調べた数字でありますが、東洋一、世界一の規模を誇るいわゆる京葉工業地帯における昭和四十一年度一年間の重油使用量の数字が出ております。会社、企業にして百二十五カ所、消費量は約二百六十万六千五百キロリットル、トンに直しますと二百六十四万三千百トンに当たります。この中の硫黄含有量が平均三%ということでありまして、これで計算いたしますと、七万八千二百トンの硫黄が燃えて大気中に拡散されている、こういう現状であります。まことに驚異的な数字であります。大気汚染ということを考えてみましたときに、幾ら煙突を高くしたところで、それは直接の解決策ではない、やはり重油の中からこの硫黄分を抜き取る技術が必要である、こういうふうに考えるわけであります。この粗悪な重油を規制するその措置を何としても講じていかなければならない、こう考えるわけですが、見通しについてはいかがですか。
  125. 長沢栄一

    ○長沢説明員 排煙脱硫装置につきましては、技術的には問題点は解決しております。したがいまして、この四十七年ぐらいからはこれらの装置の本格的な実用化は可能であろうかと思っております。何しろ、世界で排煙脱硫の装置と申しましても、工技院で行ないました五万キロワットの排煙脱硫装置は世界最大規模のものでございまして、一時にこれを大きくするわけにはいきませんけれども、なかなかむずかしい点がございます。そういうわけで、この実用化に大いに努力しているところでございます。  それから直接脱硫につきましては、これは御承知のとおり、すでに緊急なものでございますので、石油精製各社、直接脱硫あるいは間接脱硫によりまして十数基の脱硫装置をすでに稼働中でございます。私どものほうの開発中のものができますれば、これはまた日本の国情に合ったものを開発しておりますので、なおこれの低硫黄化には役立つものと考えております。
  126. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 もう一つ伺っておきたいと思います。  石油の供給先でありますけれども、わが国の企業によって開発されました石油の輸入量が二・四%にすぎない現状です。大部分が輸入に依存しておりまして、世界第一位の輸入国である。いわゆるフリーハンド原油は全体の約二〇%程度といわれておりまして、残りはすべて購入を義務づけられたものである、こういわれております。  そこで、わが国の石油政策といたしまして、このフリーハンド分を三〇%程度に引き上げまして、自主性を確保いたしまして、供給先を分散させて安定化をはかる必要があるだろう、こういうふうに考えるものでありますが、その実現の可能性、これによるひもつき原油価格への影響力、フリーハンド原油の増加による購入義務との関係による取引体制、これについてどう考えておられますか。
  127. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  御指摘のように、現在海外で開発した原油の輸入は一割前後でございまして、かつて答申を受けました三割の確保にはほど遠いという現状でございます。このことは、御指摘のようにわが国の原油の供給源が中東に集中するという形になりますし、また石油資本の構成の関係で、御指摘のようにフリーハンド原油というものが非常に低率であるということにもつながりまして、石油産業の一次エネルギー供給産業としての使命を全うすることについて問題があるということでございますが、この点につきましては、御指摘のように、できるだけ自主開発を促進して供給源を分散するということを考えておる次第でございます。  御承知のように、現在石油開発はアラビア石油と北スマトラ石油開発の二社が採油しておりますほかは、十四事業はまだ探鉱段階でございますが、地域としては中東、東南アジア、オーストラリア、アラスカ、カナダ、アフリカというふうに各地に探鉱を続けておるわけでございまして、これらのうち開発へ進むことができるものがあれば、供給源としてはかなり分散化される、のみならず、御指摘のように海外で自主開発した原油を引きとるということに相なりますと、原油の価格決定に対してわが国としても発言力が強まるということに相なるというふうに考える次第でございまして、できるだけこれを促進してまいりたいと考えておる次第でございます。
  128. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 引き続きまして、議論があるのですが、時間の都合がありますので一応打ち切りまして、以上で終わります。たいへんありがとうございました。
  129. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 吉田君。
  130. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大臣お急ぎのようでありますので、できるだけ全体の質疑の骨子はあなたにお尋ねして、そして、通産省としましての基本的な態度とかあるいは施策とか、そういうものにつきましてまず明らかにしておきたい、こう思うのであります。  第一点は、あなたが六月にアメリカに使いせられて、スタンズ商務長官との間に例の日米繊維交渉を遂げられて、不幸決裂になったことは、二十四日の共同声明によって明らかになっております。そこで、これによってアメリカとの間に新しい緊張が発生するというのではなく、またしかるべき友好の関係が続いていくと思いますけれども、しかし繊維規制の問題は、何といいましても、日本の産業、国民経済の面から考えまして非常に重要でございますし、私は、主として中小企業的観点に立ちまして、この問題の影響なり今後の対策なり、どこの場で何をするのかということを伺ってみたいのであります。  そこで伺いたいのでございますが、例の一九七〇年の通商法案というものが、ミルズ法案を含めまして成立を見たようでございますので、したがいまして、日本中小企業の繊維産業に対しましては、いろいろな意味において相当深刻な影響を与えつつあるということは事実であります。その面につきまして、大臣は、どのような影響を与えておるだろうか、これにどう対処すべきだろうかということを、まず基本的な姿勢としてぜひとも明らかにしておいていただきたいと思うのであります。あなたが六月に使いせられたことは、全国民は相当な期待を持っておりましたのですが、不幸にああいう結果になりましたけれども、問題は未解決ということであります。でありますので、いかがでありましょうか。
  131. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 日米繊維交渉が不調に終わりまして、ただいまは私どもいわゆるミルズ法案なるものが今後どのような帰趨をたどるであろうかというところに注目をいたしておるところでございます。本年内に成立するものであるかいなかということは、ただいまの段階で予測が困難でございます。かりに成立いたしました場合に、あの法律案の中には二国間の交渉云々ということが書かれてございますので、そのような事態に立って、わが国の繊維業界が何をもって自分たちの最も欲するところとされるか、私どもはその段階で業界の意向をよく聞き取ってみたいと考えておるわけでございます。  ただいま具体的にそういう問題があるわけではございません。業界の意向云々と申し上げましたのは、これは、したがってただいま仮定の問題でございますけれども、業界の中にも、御承知のように業態千差万別でございますから、比較的被害を受けるところの少ない業態と被害を受けることの多い業態と、いろいろございますと思います。そこで、業界が一体になりまして、それをある程度お互いの相互支援のもとに、全体として一番被害の少ない方法を発見することによって、もう一ぺんアメリカと接触をしようと考えるのか、あるいはそうでなくて、また別個の希望を持つのであるか、それはその段階になりませんとわからないことでございますし、今日現在、業界としてはミルズ法案の帰趨が不明である以上、自分たちとして急いでこの問題を考える必要はない、そういう考えを持っておられるように承知をしております。
  132. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 一点明らかにしておきたいことは、決裂の一番重要な原因は何であったのであろうか。スタンズ商務長官は、みずからが当事者のごとき高姿勢終始一貫変わりなし、こういうような印象を受けたというようなことが伝わっておるのでございまするが、アメリカのこの姿勢というものは、それほど動かない強いものであるということに根ざしておるものであろうか。また、一面におきまして、日本の繊維業界というものが非常に多種多様に分かれまして、利害関係、そして構造改善等々いろいろな面から見まして、相当複雑な要因のあるということに対する理解があるということが向こうにあったことを感ぜられるかどうか。それは直接の原因ではないといたしましても、それも理解をしながらどうしても一致点に到達しなかった、こういうことになるのだろうか。一言でよろしゅうございますから、何が最も重要な原因だったか。
  133. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一番大きな原因は、アメリカの政府当局が、日本の繊維の自主規制は日本政府政治的な決断によって法律的に可能になる、そう考えておったところにあるように思います。そういう誤解に基づいて、選挙等々を通じていろいろ政治的な公約がなされ、後になりまして、これは文字どおり自主規制であって、日本政府の決心いかんで左右されるものではないということが最終的には納得されたようでありますけれども、そのときには、しかし、もう政治的なコミットメントは、非常に深く、かつ長い期間にわたっておりましたためにその理解がつきましたけれども、先方としては動きようがもはやなかった。経済論議の上におきましては、わが国の零細な業界についての理解があったかどうかというお尋ねでございますけれども、経済水準の議論においては、向こうの言うことはほとんど全く体をなしてなかったということであります。
  134. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 反面におきまして、今後の準備といたしまして、ガットの場におきましてこの問題を論議しなければならないというようなことになるのであろうかどうか。これも先方の態度等等、情勢の推移を見守っておるというような御様子でありまするので、白紙で見ておる、こうかとも思いますけれども、ガットの場でということになると、またそれはそれなりでいろいろな角度から検討をし、精密に情勢の判断をして、しかるべき用意も要ることではないであろうかと思うのですが、これはしろうとですからどうかと思いますけれども、この点、いかがでしょうか。
  135. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、御指摘のとおり、厳密な意味でのガットではございませんが、ガットの事務局長が中心になりまして、先進四カ国の貿易会談が先般行なわれまして、その第二回目が十月の当初に行なわれることになっております。そこで、おそらく十月の当初には、繊維問題全般を含めて、問題の所在、これから将来をどう考えていくべきかといったようなことについて、ガットの中に作業部会を設けたいという提案が、おそらくはガットの事務局長からなされるであろうというふうに考えております。私どもとしては、そういう全般的な問題の分析それから検討であるならば、あえてその作業部会を拒否する理由はないであろうと、ただいまのところは考えておりますが、これはしかし、どのような性格を持つ作業部会になるかにもよることでございまして、最終的に決心いたしておりません。
  136. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 アメリカの——決裂ですな、もしくは決裂を伝えられる情勢、もしくは非常に高姿勢でアメリカが出てきて自主規制を迫っておるというような、各般のこういう対米繊維貿易の悪材料が山積しておりまして、これが具体的に中小企業の上に相当のしかかっておるという事実があるわけなんです。これは言うならば何かにおびえて、くしゃみしてかぜをひいたか何か知りませんけれども、そういった影響かと思うのですが、例を具体的にあげてみますると、たとえば兵庫県におきましても、これは兵庫県は合繊ギンガムですが、ギンガムの全国の九〇%輸出をいたしております。九千万平方メートル輸出しておるわけなんです。これが事実上最近は五割です。受注は五割です。したがいまして本年度五割だろうと言っております。先物受注は五割、こういうことになってまいりますと、またその波及は深刻なんです。ここに問題があるわけなんですね。したがいまして、国と国との折衝は、こういうふうに決裂したということで、また待機してよろしい、白紙でじっと見守っておる、これで済みますけれども、業者は生きておるのです。毎日自転車を操縦しているかっこうですから、その被害は深刻なんです。  そこで、これは通産省の最近の重大な政策でありました構造改善事業が四十二年以来ずっと引き続いて行なわれております。兵庫県だけでも、この間計算いたしましたらすでに四十三億円、五つの組合が借金しております、事業関係が。こういうことと、先の見通しが暗いというようなこと、したがってそれは工賃が値下がり、これは織り賃の値下がりです。それから染め料の値下がりです。加工賃の値下がりです。ことに、たとえばギンガム、ヤール三十五円というのが表向き、それが三十円、事実上は二十五円でもやれます、それは二十五円でもけっこうです。とにかく馬車馬式にやらぬとどうにもならないという現状ですね。したがって、そういうものに右へならえで染色の染め賃に影響してます。加工賃に影響してます。これはひいては労働需給の関係に、勢いまた響いてくるのです。うっかりそんなところに行くならばやがて倒産してしまうかもしらぬで、というような秋風が吹くようなうわさがばっと流れましたらたいへんなんです。  こういうような深刻な影響を与えておりますので、これに対しましては、これは中小企業庁に聞きますけれども、やはり通産大臣とせられましては、アメリカとの折衝のみならず、アメリカとの繊維規制の問題がこのような零細企業に対する深刻、重大な影響を与えつつあるという事実をひとつぜひともつかまえていてもらいたい。しからば具体的にどうしたらいいのか、ずばっと対策がなければ、研究してもらいたいと思うのです。どうしたらいいのか。それには、たとえば構造改善をどうするのか。もう四年目を迎えまして四十三億も借金している。零細家内工業を加えましたら千四百も工場があるのですから、それを一体どうしたらいいのか、どういう対策を一体立てたらいいのかということもせなければいけませんし、今後どういうふうにするかということにもつながってきますので、これはひとつ、そいつは影響するところはわかっているから、通産省はこんな方針を持っておるんだ、対策はああだこうだということで、何かおありでしたら、はっきりしておいてもらいたい。基本的にでよろしいです、こまかいことはいいですが。まだでございましたら、ぜひとも早急に立ててもらわんといかぬ。この点はいかがですか。
  137. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 産地におきまして、ことしの春ごろから、産地によって態様は違いますけれども、ただいまに至るまでいま御指摘のような情勢が出ておりますことは、仰せられるとおりであります。  ただ、これをちょっと分析して考えますと、日米交渉の問題というのが不安要因としてございますことは間違いのないところでございますけれども、その前に、やはり一般的な金融引き締めがかなり長きにわたりまして、それに加えてのただいまのような要素がございましたから、メーカー筋がやはり在庫というものをできるだけ最小限にとどめておきたい、こういう気持ちに当然なりまして、おそらく正常在庫を割って、そうして極端な場合には、注文があれば当用買いでもいいような状態でございますから、メーカーとしてはできるだけ在庫を減らして、そうしていざ注文がありましたときに当用買いをしますと、産地のほうはみんな遊んでおりますから、どんな値段でも引き受けたい、そこで加工賃が下がってくる、こういうことがずっと今日の状態を招いたように思います。  でありますから、日米関係が不安であるということは、先行き不安要因になったことは確かでございます。そうではございますが、もう一つその基本に、やはりかなりの金融逼迫でメーカーが在庫を軽くしておこうという気持ちがあったということもあったのではないか、それが産地に影響を与えた。そこで、土地によって違うかと思いますが、しかしその中では、構造改善を推進してきた企業というものが、かなり今回の場合抵抗力を示しておることはどうも事実でございます。相当の生産性の向上がございましたから、取引上も有利な立場に立っておる、ということから考えますと、かりに転廃業という問題があれば、これはこれとして処理をしなければなりませんが、一般に構造改善というものは、たまたまこの時期に際会してかなり意味のあるものであったということが、逆に認識されておるという面もあるかと思います。そこで、結局構造改善というものを推し進めていくということは、これは従来の方針どおりやってまいりたいと思いますが、同時に、いろいろ系列等において、あるいはメーカーにおいて、そういうような産地の実情を認識の上でしかるべき金融等々の処置をとり、あるいはまた、県なり商工中金なりが一部やや滞貨的な融資を考えるなりという動きもございますので、そういうことも指導してまいりたいと考えております。
  138. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 構造改善の事業は、これは来年で終わることになりますが、こういう情勢になりますと手直しが若干要るんじゃないか、こう思われますので、望まれているがごとく、一年とか二年とか、しかるべき延長の必要が生じてくるんごゃないだろうか。これはひとつ、きょうでなくてよろしゅうございますので、しかるべき態度を御検討の上、おきめになりまして、適当な方法で御報告願いたいと思います。  それからもう一つは、適正工賃というのはどうして維持していくかということは、構造改善を推進していく上におきましても絶対に必要なことでございますので、むずかしいことですけれども、これもやはり重要施策としてどうしても立てていかなければいかぬ。構造改善をやりながら、おっしゃるように近代化しながら、そうして競争力を養いながら新しい市場の開拓とか、あるいは新製品を開発していくとか等々いろいろあると思いますので、これはまた別に伺います。  もう一つの問題は、特恵関税の問題であります。特恵関税というものはまた大きくクローズアップされようとしております。これがまたたいへんでございますので、この特恵関税につきまして、許容品目は大体予定されておるのでございますが、そしてまた具体的な内容等々につきましても明らかになって、日本に向けるべき影響とか、あるいは日本にいろいろと主張はあるようでございますけれども、無税供与があるのかないのかということ、追い上げがあるということをいたずらに心配するのではなくて、これは日本も先進国の立場上適当な線を引きまして、これに積極的な姿勢をもっていかなければいくまいということを思いますし、あるいはまた例の緊急輸入制限、セーフガードが別途あると思います。そういうこともいろいろと考えられる問題があるのじゃないだろうか。  いずれにしましても、やはり開発途上国に対しまする特恵関税の関係は、あわせてまた別の面から見ましたら、経済援助関係にもつながってまいります。それから平和、親善友好の関係を増進する問題にもつながってまいりますので、よほどこの点は、おれのほうはえらい目にあうからおまえのほうは締め出すのだというような消極的なことは許されない。同時にまた、日本の産業をつぶしてまでそうした許容品目を拡大しまして、そして協力するということは逆効果にもなりますし等々しますので、むずかしい問題でありましょうけれども、特恵関税につきまして、大体の基本姿勢はどういうふうになっておりましょうか、この点をひとつ明らかにしておいてもらいたい。  時間もございませんので、ちょっと一、二なお一括して御答弁いただきたいと思いますが、一つは、通産省が重要な行政対象になります公害問題であります。特に公害行政につきまして、これは重工業局なんかにつきましては、公害原因になるようないろいろな企業もあることでございまするし、したがいまして、公害行政といたしまして積極的に通産省が主唱するくらいな態度をもちまして、もっと公害行政機関の総合的な統一的なものを政府として確立する。公害対策本部もあることもわかっておりますけれども、そういうものもさることながら、やはりもっと構想を高めまして、そして行政の真の実行機関といたしまして、公害行政というものは総合性を持った企画、立案、調査はもちろんのこと——調査はもちろん精密厳正に行なうこと、こういうようなことを、やはり通産省は重要な省でありますので、大臣の御責任で進めていくという絶好の機会ではないだろうか、こう思うのであります。この点につきましても、ひとつ基本姿勢を明らかにしておいてもらいたいと思います。各省の関連もありまするから、あなたのほうだけでやって、という意味じゃございません。いずれにいたしましてもその方向だけは打ち出していかねばなるまい、こう思いまするので、特恵関税と公害行政、この二点につきまして、ひとつ基本姿勢を明らかにしておいていただきたい。
  139. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 繊維の構造改善の問題につきましては、確かに御指摘のような問題がございます。当初千二百八十億円余の構造改善を考えておりまして、全国的にはただいまのところ五割ちょっと終了しただけでございまして、ただいまのところで申しますと四十六年が終期になるわけでございますが、実施状況はそんなことでございますし、また、当初見込んでおりました毎年の賃金上昇率も、実は当初の見込みをかなり上回っておるというような事情もございます。  あれこれございますので、今後どうすべきかについて、産業構造審議会の繊維部会なりあるいは繊維工業審議会なりに実は御答申を求めております。この十一月ごろにはどうすべきかという御答申があると思いますので、それに従いまして今後どうすべきかをきめてまいりたい、こう思っております。  それから特恵の問題でございますが、これについての御理解は、まさに吉田委員の御指摘のとおり、いろんな方向での問題を含んでおります。私ども当初そのようなことも考えまして、いわゆる競争力条項といったようなもので国内の一番弱い部門を保護しようと考えたわけでございますけれども、どうもこれも多少再考しなければならないような情勢でもございます。その場合には最小限度のものを例外品目に入れまして、そして、これについては特恵を行なわないということにせざるを得ないであろう——国際的にはなるべくその例外が少ないほうがよろしゅうございます。発展途上国に対してもさようでございますが、わが国にもぎりぎりの事情のある面もございます。最小限度やむを得ずある程度の例外品目を設けざるを得ないのではないか。その場合に、繊維の一部のものがやはりその中に入らなければ、どうもむずかしいような情勢ではないかと私は判断いたしております。  なお、この特恵の問題につきましては、これは立法事項でございますので、いずれにいたしましても先々御審議を仰ぐことになると思いますが、その場合に、できましたら特恵実施に伴うところのわが国の各方面の産業に及ぼす影響、それに対して政府がなすべきいわゆる調整策、援助策等々についてもあわせて御審議を願いたい、こう思っておりますので、その際にも、かりに打撃があるようでございましたら、それを緩和するような施策につきまして、法案等々を通じて御審議を仰ぎたい 私どもとしてはそう考えております。  それから最後の公害の問題でございますが、これは御指摘のとおりで、私は、やはり直接企業に関係のあります通産省が公害行政について積極的に取り組まなければならないということを就任当時から考えておりまして、ただいま役所もそういう体制で問題のまっ先に立ちまして、責任を感じつつ行政をいたしておると自分は考えております。先般公害対策本部が設置されましたが、それに対しましても最も優秀な人材を出し、緊密に一緒に仕事をしております。将来この対策本部がどのような形になりますかは、まだ政府として決定をいたしておりませんけれども、いずれにしても、企画、立案、調査等々、通産省としても、人の問題でない自分の問題として、企業に対しましてもそういう姿勢を打ち出して、緊密に各省あるいは対策本部と一緒に行政をやってまいる、こういう基本的な姿勢を持っております。
  140. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 皆さんたいへん長らくお待たせ申しまして、できるだけ早く進めましてお引き取り願うように努力いたします。  具体的な諸問題になるわけですが、繊維規制の問題、これは特に繊維局なりあるいは中小企業——次長、おられますな。アメリカの繊維規制問題の日本の業界への波紋というようなものは、かなり深刻重大でございますことは、さきに福井県等におきまして大がかりな倒産などもあったような事実、あるいは操短等々によりましても大体見当がつくのでありますが、しかし、さっきも大臣述べておりましたように、構造改善もやらなければいかぬ、その成果もあがりつつあるという際に、耐え忍んでその影響を追い払って進めていかなければならぬという立場なんですが、それならば、具体的にどういうふうにすべきなのであろうか。たとえて申しますると、さっきも期間の問題も出たのでございまするが、資金援助あるいはまた償還期間を延ばすというような問題もあろうかと思いますが、構造改善とアメリカの自主規制の影響、こうからんでおります面については、具体的に業者を守り産業を守り、そして将来近代化の目的を達し、競争力を盛んにし、あるいは海外その他へも新しい市場をつくり、あるいは新製品を開発するとか、そこらは何かこの際私は手直しをしながら新しい手を幾つか打っていくという段階がどうも来たように考えるのでございますが、アメリカとの交渉が決裂した年でありますし、よけいそのことを感じますのですが、その辺について、しからば具体的にどうしたらいいのか、重要な問題はこれとこれをやるんだ、こういうようなのは用意されておるのか、それとも、小さいのはもうつぶれてしまっていいんだという考え方をお持ちになるのだろうか、そこら辺どうでしょうね。これは企業庁のお立場かと思いますが、本省の事務当局との関連もありますので、どちらかりなりと、もしくはどちらからもお答え願ったらたいへんいいだろうと思うのですが、どうでしょうか。
  141. 三宅幸夫

    ○三宅説明員 お答えいたします。  先ほどの大臣の御答弁にありましたように、繊維の不況問題というのは、米国に対する不安ないしは発注の手控えという面から来る点もございます。また、金融引き締めによる在庫調整という面から来ておるものもございます。また、産地によりましては、非常に一時的かあるいは構造的か、よくしろうと筋でも判断がつきかねる需要者の嗜好の変化、それに対する企業の適応がややおくれておるという面もございます。そういう千差万別、並びに業態、業種、地区によりまして非常に起伏がございますが、その間に処しまして一応まだ抵抗力を持っておるというのは、やはり従来構造改善計画を進めてきた地区ではなかろうか、あるいは企業グループではなかろうか、このように感じておるわけでございます。  先ほど御指摘がありましたように、現在の構造改善計画は四十六年度末で法的期限を失効するわけでございますが、進捗率は四十五年度予算をもって五十数%ということでございますので、現在それの延長の可否について、先ほど御答弁がありましたとおり、諮問をして御審議をいただいておりますが、その過程におきまして、従来よりも需要者の嗜好が相当変わってきておる、それから賃金上昇も激しい、それから第三に、単に省力化、マスプロ方式だけでいいのかどうか、もう少し多様化した需要に対応する弾力的なグループ化の結成が考えられないか、こういった点を再検討したい、こういうことで現在急いで検討を進めておる、こういう段階でございます。とりあえず、地区によりまして不況が深刻になっておるという地区につきましては、県当局と御相談の上で、一部の県では、県が相当の金を地元銀行あるいは商工中金に預託して、それに何倍かの銀行の自己資金を上のせして、とにかく短期的な措置を講じておるというのが実情でございます。  対米規制の問題がどうなるかというのは、まだ先方の法律案の帰趨がはっきりいたしておりませんので、なかなか私どもとしてもそれに対応する適当な手段あるいは施策というものが議論の爼上にはのせられない段階でございますが、一応短期的ないろいろな要因によって起こっております短期的な問題並びに需要の変化等々、日本に内在しております構造の変化からくる中期的な問題については、ただいま申し上げたような施策を検討ないし実施中でございます。
  142. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 企業庁でもあるいは三宅さんの局でもどっちでもいいんですが、もっと付加価値の大きな製品に切りかえるとか、もっと新しい分野の製品の開発を急ぐとかいう、その根本的な姿勢を製品に向けるということが必要ではないだろうか。特許関税の、たとえば開発途上国あたりの七十カ国も一団をなして国連へわんさわんさと猛烈に押し上げてまいりました、あの情勢から考えてまいりますと、やはり適当なときにあるときのものはそれぞれの後進国にまかして、もっと高度なものへ切りかえるという必要があるんではないであろうか。私は先年、十年以上になりますか、前にアメリカへ行きましたときも、ちょっとそういう声をちらっと聞いたことをまだ記憶しておるのでありますが、いつまでも同じような競争の場で同じような製品をやっておるというところに一つの矛盾があるんではないであろうか。  もう一つは、市場問題のことでございますが、国内市場というものは、これは一体どうなんであろうかというようなこと、いずれにいたしましても、ただ力をつくって近代化してというような、そういう芸のない単純なことでは、いろいろと困難な条件が重なってくるんではないであろうかと思われるのでございますが、いまのような二点、これはどうでございますか。これは中小企業対策としても大事なことでございますし、ひとりこれは繊維だけに限らぬ問題かもわかりませんしね。
  143. 三宅幸夫

    ○三宅説明員 繊維につきましては、ただいま御指摘のとおりの問題点が確かにあると存じております。したがいまして、先ほど御答弁申し上げましたように、従来の省力化方式だけではなしに、もう少し需要の変化なり嗜好の変遷に対応し得るような弾力的な、しかも付加価値の高い多様的な生産形態というものをこの際もう一度足元を見直して検討し直す必要があるのではないかということで、いま新しいビジョンの検討を重要な項目に取り上げておる次第でございます。
  144. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その点につきましては、中央で研究なさることもさることながら、県段階においてそういった専門家をもって、そこで研究もし、中央との連絡もしながら、何が適するか、何が最もその地方における条件に合うだろうかというようなことも地方庁においても相当さすという体制をこの際用意する必要はないだろうか、そういうことを考えるのです。私は、先般来構造改善が発足いたしましたところから、地方行政庁の地方公共団体における構造改善事業指導というものをもっと強化しなければいかぬ、緊密な連絡、間髪を入れず情報がばっとすぐに東京から業者団体へというふうな、その辺は機敏に活動して適切に処置をするというふうなことが必要だと思うが、いまは進んで開発の一役を演じていない。だから、中央の研究を待つのではなしに、地方でやるというその指導を、これはどれが適当かわかりません、何とか研究所というものをもっと充実する必要があるかわかりません、それぞれと研究所があるはずですからね。だから、それがいいのか、あるいは県庁のそれがいいのかよくわかりませんけれども、いずれにいたしましても、そういう行政機構を充実する必要があるだろうと思います。これはなんでしたら答えてもらわぬでもよろしいですが、そのつもりで今後やっていってもらいたいと思います。  ただいまの諸問題について、中小企業庁はどういうふうに具体的対策を持っておられましょうか。同じでしたらもういいですけれども……。
  145. 三宅幸夫

    ○三宅説明員 現在の構造改善事業は、中央で大きなビジョンを描き、それの具体的展開は県が中心になってやっております。県では、事業団あるいは中小企業関係金融機関あるいは技術的なコンサルタントを集めまして、県が中心になりました指導援助委員会というものによりまして、県ごとに、あるいは産地ごとに具体的な個性のある構造改善計画をおつくりになっておる、それを中央が大きなビジョンの中で承認する、こういう仕組みになっておりますので、ただいま御指摘にありましたように、もう少し産地ごとの個性を強めていく、あるいはまた多様化、付加価値の高い製品への特化を急ぐという点につきまして、今般ビジョンの見直しをする機会に県当局にもあらためて強く要請をしたい、かように考えております。先生の御指摘のとおり実施いたしたいと考えております。
  146. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 中小企業庁におきまして、企業庁の担当分野はまことに大きいだろうと思いますが、これらの諸問題を中小企業者、零細業者の角度から考えてみましてどう取り扱っていくべきだろうか。  ついでに、企業庁の御答弁を求める場合に、これは中小企業問題の関連もありますので一点触れておきますが、織物工場の関連作業、準備工程あるいはまた仕上げ等々におきましては、百姓のおかみさんが片手間にやるという場がかなりあるわけでございます。こういうようになってまいりますと、これは企業にあらずして家内工業、手工業みたいな感じさえあるわけです。これは何も繊維だけの問題ではありません。したがいまして、そういう面も含めまして、私は繊維業界についてもう一ぺんずっとこまかい業者のすみずみまで手を差し伸べまして、一つも遺漏のないような状態に指導はできないものだろうか、もちろんそれらの人みずからも奮起し、協力し、努力することも必要であることは申すまでもありませんけれども行政庁自身といたしましても、大きなところの受ける影響、度合いに比べて、小さいところはぺしゃっといってしまうのですから非常に重大だと思いますので、これらも含めまして、企業庁の持っておられる対策、どういうふうになるのかということをひとつ御説明願っておきたいと思います。
  147. 外山弘

    ○外山説明員 吉田先生が先ほど来おっしゃっておられまする繊維問題についての御指摘は、中小企業業種共通にいえることが多分にございます。そういった方向で、地方庁との関係なり、構造改善の進め方なり、それから分野の高級化なり、そういった点を指導しているわけでございますが、ただいま御指摘の小規模の事業者に対する対策というのは、やはり特別に配慮していかなければならないということを常々考えているわけでございまして、中小企業対策の中でも小規模事業対策ということで特に重視をしておるわけでございます。  小規模事業者と申しますと、大体やはり一つは情報に暗いという点もございましょう。あるいは政府の施策という点についての理解も乏しいという点もございましょう。私どもといたしましては、まず第一に経営改善普及事業という点を小規模事業対策の一つの大きな柱として考えております。商工会あるいは商工会議所経営指導員というのを設けまして、これを年々増員いたしまして、そうして個々の小規模事業者に対する経営指導、金融指導、そういった点を含めまして具体的な指導をするようにつとめてまいっております。さらに、昨年巡回技術指導というのを新たに設けまして、技術指導の面でも、積極的に地方の公設試験研究機関を中心といたしまして、専門家が技術指導に当たるというような制度も設けております。こういった経営改善普及事業によって、小規模事業者が特に足りない点、普通の中小企業者よりは特に欠けておる点を補っていきたいという点が一つでございます。  もう一点は、資金面におきましても、やはり小規模事業者に対する特別な配慮が、特別の弱点を持っておるという点にかんがみまして必要であろうというようなことで、あるいは三機関の中でも国民金融公庫はやはり零細事業者、小規模事業者に対する融資が中心でございますし、これについても年々の配慮をしております。あるいは信用保証事業につきましても、これも大部分が小規模事業者に対する配慮になるわけでございますが、これの充実も年一年としておるわけでございます。あるいは都道府県が具体的に行なわれます設備近代化助成につきましても、国が半額の補助をいたしまして、五〇%無利子の金を融資しているわけでございまして、これも小規模事業者にとっては有効な金融助成措置になるかと存じます。さらにそれでも機械の購入にも足りないという点につきましては、機械貸与事業というのをやっておりまして、五年間に割賦弁済するというふうなことで機械の使用を可能なようにするというふうな事業も、すでに二十八都道府県においてやっております。それに対して国が助成しているわけでございまして、そういった金融上の小規模事業者に対する配慮も、先生御指摘の小規模事業に対する配慮ということになるかと思います。私どもとしましても、中小企業対策の中でも特に小規模事業対策には気をつけて、あたたかい配慮をもって進めていかなければならないという認識のもとにこういった政策をますます今後も充実してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  148. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 三宅局長、先染めの染色の例の公害対策ですね。これは御承知のとおりに、大体において中小企業です。零細は少ないですけれども中小企業ですが、これが公害問題発生対策として、たとえば私の知っている例に見ましても、沈でん方式というので七億五千万円を投じまして施設を大体完了いたしました。ところが、維持していかなければならぬ、これがたいへんですね。その辺の業者は何ぼであるかというと、小さいのを合わせまして二十四か五あるというようなことなんです。この中小企業という認識に立ちまして、先染めの染色業者の公害対策について、いま世上伝えられ、もしくは政府間におきましてもそのような意向が決定したやに伝わっておるのです。中小企業者に大半な経費負担をさせていきたい、こういうようであります。中小企業は、言うまでもなく、技術面において、あるいは経済力におきまして弱いものですが、そこへもってきて公害という——公害は何も企業自体が全部責任を負うべきものじゃないですよ。もっと割って言うならば、やはり国の政治姿勢にもつながってまいります。何でいまごろになってこの公害問題をがたがた言うのか、私らに言わせると実際おかしいのです。ここでも前回もやったのですけれども、十数年前に私は黄変米について指摘いたしましたときにも、東京大学の先生方にも、黄変米の原因について、これは徹底的に研究機関を設けてやらなければならぬということをすすめたことがある。ところがその後何もやっていない。いまごろ汚染米がやかましく言われておるような状態であります。これはやはり政治姿勢の問題にもつながるのであります。  したがいまして、原因は必ずしも企業のみにあらずということになりますので、一種の広い意味の公害かもわかりませんといったときに、技術面において、資力面において弱いところの中小企業にほとんど負担させていく、その原則をずばっと適用していきましたならば、その業者はしかり、従業員も共倒れになってしまいます。このような深刻なうめきがこのごろ生じてきておるのであります。ある場の小さな業者の場合、もうこんなにぎょうさんおっかぶせられて、経常費までぎょうさんかじられてはたいへんだから、ここで働いておってもだめだからやめようか——それにしましても、若い労働力ならともかくも、しかるべき年齢の者ではなかなか転職しにくい面もなきにしもあらずなのであります。  こういうようなこともありますので、この点は、小さい業者である染色業の公害対策費の負担という問題について、政府といたしまして相当これは考慮していくべき問題じゃないかと思います。これは通産省といたしましても中小企業庁といたしましても、公害対策本部としましての政府自体の問題であります。政府全体の問題でありまするから、基本的な問題でありまするので、私はこの点、事務御当局としての御意見を伺っておきたい、こう思うのです。そう思いますが、ひとつ三宅さんから……。
  149. 三宅幸夫

    ○三宅説明員 先染め染色の公害問題、染色という特殊な工程を持っておりますだけにいろいろな問題があるわけであろうかと思いますが、一番典型的に発生いたしまして問題を起こしましたのは、御存じの加古川水系でございまして、先生方の御努力によりましてあの辺の関係業者が一団となって共同施設をつくった。それに対しまして、中小企業振興事業団から八割の無利子融資並びに公害防止事業団から二割の低利融資ということで、この共同施設が完成しました。若干水質規制の実施期間の猶予を与えたことと相まちまして、すでにその施設の一部は完成し、一部は近く運転が開始される、こういう状況になっております。私どもは、中小企業の糸染めの公害につきましては、こういう先例に従いまして、問題を起こしておるケースについては、その例にならって対処してまいりたいと考えております。ただいま御指摘のございました具体的なケースがどこか、不勉強でよく存じませんが、そういう例がございましたら、私のほうで取り上げて、いま申し上げたような方式によって何らかのお手伝いをいたしたい、かように考えております。
  150. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この点はやはり中小企業全体としまして、ひとり先染め工場のみならず、いろいろな工場で今後起こるだろう問題であろうと思いますので、やはり基本的な姿勢をもって、中小企業行政的に指導するというお立場にある中小企業庁の大事な課題としてこれは取り上げてもらわなければいくまいと思います。つまり、対策経費の負担区分をどうするかということ、過大な負担になりますと中小企業をつぶしてしまいますから、この点はどうでございますか。
  151. 外山弘

    ○外山説明員 個々の具体的な公害防止施設につきまして、負担の区分がどうであるかという問題はまた別途に出てくる問題かと思いますが、中小企業として、やはり公害防止施設をつくらない限りその地域社会の中でやっていけないという事態が出てくるわけでありますし、同時に、中小企業自身がやはりそういったことをどんどん進めていかなければならないということもまた事実でございます。  私どもといたしましては、従来から、ただいま繊維局長がおっしゃいましたような公害防止事業団の融資の問題、あるいは共同公害防止施設に対する中小企業振興事業団の融資ということで助成をしてまいりますと同時に、もう一つ中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫の中に公害防止施設の貸し付け制度を設けまして、特別に低利の融資もやっておるわけでございます。そういったかっこうで金融上の助成ということをできるだけ拡大し、できるだけつとめてまいりたい、こう思っておりますが、もう一つ大事なことは、やはりどういう施設を設けることがいいかということ、そういった点についての親切な相談もしなければいけないし、技術の開発もしなければいかぬ。こういう点につきましても、今後技術の開発、公害防止技術の開発ということも、中小企業向けの点に重点を置きまして、公設試験研究機関への助成とか、あるいはそういったところへの研究補助、あるいは個々の事業者についても、そういった研究をやる場合についての補助というようなことで技術の開発についての応援も強化してまいりたい。また、来年には特にそういったものにつきましての指導といいますか、公設試験研究機関が公害防止に関する技術指導をやるということにつきましても、新たにそういった職員を充実する、そうしてその職員にもいろいろ勉強してもらうというようなことも考えておりまして、今年発足いたしました商工会議所における中小企業向け公害相談所といったようなものと相まちまして、親切な相談についての施設もつくってまいりたい、こういうことで、できるだけ中小企業の公害防止に対する応援をしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  152. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 労働力の問題ですが、繊維産業並びにその他の中小企業の労働力の不足対策、これはますます深刻でございます。ところによって、業種によりましては、一人の労働者を得るのに九州くんだりまで行って、そして一人五万円ないし多いのは十五万円使って、むなしゅう手をこまねいて帰るという例がなきにしもあらずなのであります。これほど深刻でございます。そういうかと思えば、労働の配分適正にあらず、要らざるものに優秀な労働力がはんらんするほどみな集まっていくという面も社会にはあるわけなのであります。  そこで、労働力不足対策に対しましてどうしておられるであろうか、これはやはり労働の生産性というものが産業の生命になっておるのでございまするから、非常に重要な課題であります。  それで、石黒職業訓練局長は見えていますか。
  153. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 おられますよ。
  154. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ちょっと済みませんが、前に出てください。簡単にしますから——ではお願いいたします。  あなたのほうでは職業訓練も指導しておられることも存じておりますし、また求人対策もやっておられることも存じておりますし、いろいろと苦心惨たん、毎年やっておられることもわかるのでありますけれども、やはり根本的には、根本的な日本の産業全体といたしまして、もっと労働力の社会的適正配分をするという原則の確立が必要であります。これはひとりあなたの事務当局でできないことでありますから、政府姿勢につながります。したがいまして、私がちょっと一言触れましたように、あってもなくてもいいところにやはり優秀な労働力が相当漂っておるということが社会現象としてはあります。これはやはりモラルの問題であろうと思うのです。労働力がいかに枯渇しておるかということが、どんなに社会的に国民の福祉のために大きな欠陥になるかというようなことに対する国民の考え方が足りない面がまだあるのだろうと思うのであります。やはり日本全体といたしまして、労働力の適正配分をどうなすかということは、基本姿勢として労働省は明らかにしてもらいたいと思います。これは言いにくいことですよ。しにくいことですよ。言いにくい、しにくい、敵もあり、反対もある。当然これはわくように反対が起こってくると思います。思いますけれども、やはりそこまでいくのでないと、私は労働力問題は解決しないと思います。そうしなかったなら、勤勉な、誠実な、善意の人は身を粉にしまして、みずからのため、家庭のため、社会のために労働に従事するということになって、さらにあらざる人は、物質の世界をさまよって、享楽の、あるいは本能を満足し、豊かに暮らしていくということになりましたら、これは社会一つの断層がこんなところから生じるのであります。これはえらいへ理屈を言ってすみませんけれども、したがって、基本姿勢としてそれはぜひ立ててもらいたいと思います。ひとつあなたのほうでも立案されまして、職業訓練局長の仕事かどうか知りませんけれども、労働省として重要な政策として立てるべきときがもう来ておると私は思います。しかる上、労働力不足対策は具体的にかくかくすべきだということが、最も合理性に富んだ、高い次元の労働政策の基本的な課題への答えであろうと私は思うのです。この点はどうでございましょうか。
  155. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 御指摘の点は、私どもも常々思っておりますことで、たいへん適切な御意見であると存じますが、これまた御指摘ございましたように、非常に摩擦も多く、問題の多い問題でございます。国民経済全般あるいは国民生活全般にとって必要な部門のほうに、重点的に労働力を誘導していくということが、今後次第に必要性が高まるというふうに考えておりますが、これにつきまして、戦争中の勤労動員のような政府の強制的な配置はもちろんできないわけでございます。イギリスにおきましては、選択的雇用税というような税金の手段をかりましてそれをやろうということを試みたわけでございますが、これも十分成功したという評価はなされておりません。私どもといたしまして、一つは、これはわりにやりやすいことでございまして、ブルーカラー、技能労働者の社会的地位を高めるという一種のPRと申しますか、精神運動でございます。この辺につきましては、一昨年来いろいろな方法をもちまして世間に訴えてきておりますし、また職業訓練、技能検定といったようなことは、そういうブルーカラーの社会的地位を高めるために非常に役立つことであるというふうに考えております。さらにそのほかに、社会にもろもろ存在する職種のうち、どれが重要であって、どれが重要度が低いかということにつきましては、だいぶ前に私どもが研究している過程のことがちらっと新聞に出ましただけで、ずいぶん世間の物議をかもしたわけでございますが、強権的な手段を使わない、しかも職業安定所におきましては、求人、求職を適切に結びつけるという本来の職務をそこなわないという範囲内におきまして、重点的に誘導するという施策はいかなる方法が可能であるか、あるいは効果的であるかという点につきましては、鋭意、省をあげて研究をいたしておるところでございまして、決定的な政策というのはなかなか出しにくうございますけれども、いずれいろいろと研究いたしました結果につきまして、国会の御審議あるいは社会の御批判をいただきたいと思っております。
  156. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 職業訓練をおやりになっております。これはシステム分析なんかの対象にもなっておるのでありますが、私ども日本人は、労働というものに対して、ほんとにとうといものであるというような考え方をこの際もう一ぺん持つ必要があるのではないだろうか。もうかるなら何でもいい。こちらはうんと給料を払ってやるから、一番いいやつは来いというようなことで、完全に商品化するというような考え方じゃなしに、労働に対してもう少し違った角度から考え直す必要はないであろうか、こう実は思うのであります。一粒の米も捨てたらもったいない、お粗末にしたら目がつぶれるというようなことばすら昔はあったといわれておりますが、労働につきまして、神聖ということばは適当でないと思いますが、やはり労働に対しましての考え方を、もっと経済構成の上から、社会生活の上から、生産性の面から、あらゆる面から非常にとうといものであるという考え方に、もう一ぺんなる必要はないであろうか、そういう意味でひとつ根本的にPRなさってはどうだろうか。そして、日本人全体としてそのほうに進んでいきませんと、とてもいくまいと思います。これが一点です。これはひとつ省をあげて御研究くださって、労働省として重要国策として打ち出してもらいたい、国会でも堂々と審議を進めるような新テーマをひとつ出してもらいたい、こう思うのであります。ひとり当委員会だけではありません。全国会みずから——実はきょうもりっぱな公務員の方々がたくさんその部屋に一ぱいおられたので、私はほんとは相すまぬと思うのです。どうしてこんなに委員会が能率があがらぬのだろうか、どうしてこんな大事な仕事をしている人がここでぶらぶらしてじっと待機しておらなければいかぬのかなというような感じがしたのでありますが、何とかひとつ、社会全体として合理性を発揮できるようにできぬものだろうか、そう思います。かかる意味におきまして申し上げますから、ひとつPRの基本課題として取り上げまして、ぜひ研究してもらいたい、こう思うのであります。  それからもう一つ、これはひとりあなたのほうだけではありませんけれども、潜在労働力の問題です。これは非常に重要であります。私も女性の職場をつくることにずいぶん骨を折ったものでございますけれども、潜在労働力を活用するということ、開発するということにもっと企画性をもって全国に臨んでもらいたいと思う。  最近兵庫県におきまして手足のない人が五千名おりますが、主として交通事故であります。この人に、厚生省としては大体において授産のかまえはできておるはずでありますが、実際はないのです。川重の会長の砂野仁という方がおりますが、私、県立のリハビリテーションの所長さんなどをその方に引き会わせまして、手足のない人に職場を与えるということについて、計画をもってやってほしい、こういうふうにしてやったのであります。これらはほんの一例にすぎませんが、こういう潜在労働力、これを活用するということは、一つは産業のため、一つはその人に対して、社会復帰する、人生を新しく計画せしむるため、言うなら光を与えるためであります。そして潜在労働力というものを活用するということは、他のいろいろな面において波及効果があるわけです。これが一つです。これはやはり労働省としまして、厚生省とも組んで、通産省とも組んで、積極的にひとつ企画してもらいたいと思うのです。  それからもう一つは婦人の労働ですね。これは中小企業関係にもなるのでありますが、たとえば、私いなかに行ったのですが、兵庫県に三木市というところがある。これは金物です。そこに行きましたら、のこぎりをやすりですっておる。これは薄暗いところにかみさんがいる。五十がらみの人が何人もおります。こちらに二人、あちらに三人、何人もおります。一生懸命やっております。りっぱに何々メーカーの製品として出るのですよ。一流の商店にちゃんと出るのですよ。それだけの労働力、生産性を持っているのです。しかし、その場はどうかというと、暗いところ、ほこりがばっと出るところです。おのずからその人の健康は害されているかもわかりません。これはもっと明るくできぬだろうか。もっと明るく、愉快に、そして能率をあげるような職場にその小さいところができないだろうか。潜在労働力ではありませんが、こういう労働の場です。労働者がほんとうにしあわせを感じながらその場で仕事をするというような、それこそ私は生きた労働行政だろうと思うのです。これは何も不足対策そのものじゃありません。やはり職場を明るくする、職場をしあわせの場にする、愉快にその職場へ行けるということは、どれだけその人のしあわせになるかわからぬと思います。これが一つであります。  もう一つは、やはり農村の主婦なんかでありますが、農村の主婦自体でも、これはやはり用いようによりましては相当な労働生産性があるのですよ。こういうものにつきましても、一々そんな遠方へ行って職業訓練所で免状やるから、卒業証書やるから、そんな式じゃなしに、やはりそこにおきましてその生産性を高め、同時にその人の体力、嗜好、技能等々に適するような何かを与えるというような簡易な労働訓練、指導を現場へ行ってするような手はないだろうか。これはしろうとの歩いた思いつきですけれども、こういうようなことを思いまするので、この潜在労働力を活用するということ、またさらに、これはひいては老人対策につながっていきます。  老人過剰の日本になってきましたから、老人対策といたしまして、七十になってもなお職場で元気よく一人前に仕事をする。そして老後人生に生きがいを感じていく。いたずらに国の税金を食って、ひなたぼっこして、棺おけ横に置いて待つという老人対策にあらずして、そういうふうにひとつしむけていく、これも一つの労働行政ですよ。だから労働、厚生にもつながりますよ。生産性もあがります。だから、これは繊維行政やら中小企業なんかの各面からみんな注目して、こういう方面は提携して私は施策を立てるものであると思うのですが、いろいろありますけれども、例を二、三あげたのです。これは若年者にもあります。婦人にもあります。いろいろな面があるのですから、一、二例をあげたにすぎません。  この場はそれ専門の場でありませんから多く述べませんけれども、これは現実に生きた事実に基づいて私は御質疑申しておるのです。それで労働省の御意見を聞き、また繊維の関係もありますし、中小企業関係もあります。もちろん同じような問題でありますけれども、それぞれ角度が違いますので、御答弁伺っておきたいと思います。あともう一点で終わりますから、急ぎます。
  157. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 種々御鞭撻いただきまして、恐縮に存じます。御指摘のございました点は職業訓練局の問題だけではありませんで、労働省全般の問題にわたると存じまして、私が全部につきましてお答え申し上げますのはいささか僭越でございますが、知る限りにおきまして言及させていただきます。  労働のとうとさを教えなければならない、もっとPRしなければならないという御指摘は、まことにそのとおりであると存じます。私ども微力でございますが、青天井人事管理、あるいは卓越した技能者の伝記というようなものでそのPRにつとめておりますし、あるいは文部省あるいは中教審に対しましてもそのような申し入れをしておりますが、まだ非常に微々たるものでございまして、今後一そうこれは努力をしなければならない。むしろこの認識を得ることこそが、労働行政として一番基本の問題の一つじゃなかろうかと考えております。  それから潜在労働力、特に心身障害者の労働能力の活用という点につきましても、これまた私ども今後特に力を入れなければならない分野であると考えております。詳しいことを申し上げる時間はございませんけれども、特に身障者の真の幸福を期する上には、これは自分の力で世の中に役に立つ仕事をして、それによって世の中からの報酬、すなわち賃金を得て、自分の力で生活するということにこそ身障者の真の生活があるというふうに私ども考えております。ただいま職安に登録されております身障者の数は一万人、それから身体障害者職業訓練校で訓練を受けております身障者は千七百名にすぎないわけでございまして、これは身障者全般の数から申しますと非常にまだ微微たるものでございます。省内におきまして、身体障害者に対する総合対策というものを策定いたしまして、これに基づきまして毎年予算を強化するという努力をしております。明年度予算につきましてもそのつもりで編成をいたしておりますので、いずれ御審議を得る機会があるかと存じます。  婦人労働力等につきまして、職場を明るくしなければならない、明るく働けるようにしなければならないという御指摘もまことにごもっともでございます。従来から労働省といたしましては、たとえば単純労務の問題とかその他検討しておりますが、特に三木市の例で御引例になりました問題は、たぶん家内労働に働く婦人のことではなかろうかと思うわけであります。幸いにいたしまして、ことしの春の特別国会におきまして家内労働法の制定を見たわけでございます。今後この面では相当な進歩が見られるものと考えておりますので、一そうの御指導をお願いしたいと思います。  それから農村婦人につきましては、これまた来年度予算におきまして、もちろん農業従事者に対する特別職業訓練を行なっておりますが、御指摘のように、本格的な職業訓練というのじゃなくて、農村に家内工業的なあるいは零細企業的な工業がどんどん進出しておる、それに従事する婦人というものに対しまして、ごく簡単な職業指導というもの、これも訓練校に通うというのはたいへんでありますので、訓練校の指導員が農村に進出して、工業の進出している地帯に指導員がときどき巡回をして、ごく簡単なこと、プレスというのはこんなふうにすると指を切るから気をつけなさい、あるいはハンダづけをする場合には右手にこてを持ってこうやってかまえるのですよ、というような簡単なことを教えてあげるというようなことを訓練校の指導員にやらしてみたいと考えております。  それから老人につきましても、これまた御指摘のとおりでございますが、私ども高年齢者に対する雇用奨励金その他考えておりますが、ただ老人は、世間で老人が再就職するということは非常にむずかしゅうございまして、また私どもといたしましても、高齢者の適職というようなものを開発し、PRするという点につきましては十分まだ進んでおらないという反省をいたしておりまして、今後この点はさらに研究をしなければならない事項であると考えております。
  158. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あともう一点で終わりますので、ただいまの問題については通産省の御答弁はけっこうでございます。  あと一点で終わりますが、通産財政の問題です。通産財政の問題で、予算の編成から予算の執行に至る問題でありますが、特に最近、大蔵省を中心としまして、また経済企画庁がだんだんと研究を続けてまいりまして、防衛庁その他におきましても積極的な調査研究をしておりますが、通産省ももちろん研究もしておると思うのでありますが、この予算制度の改革につながってまいりますPPBSの導入の問題でございます。これはどうでしょうかね。たとえば企画庁におきましても、企画庁のシステム分析室におきまして、通産省からも出向されて、大気の汚染防止対策に関する分析も去年、ことし継続しておられるはずであります。また本年は、さらに構造改善事業における投資効果の分析もしておるようでありますし、これは農林省でしたか、情報処理技術者の教育に関する調査もやったようでございますし、あるいはまた、地域の冷暖房管制のシステム分析もやったようでありますし、大気汚染の防止対策に関する分析、こういうようなものも本年なおやっておるようであります。みずからやり、あるいは民間会社に委嘱したものもあるようでございますけれども、こういうものもだんだんやっておられますのはPPBSの導入への準備に関する調査研究の過程であろう、こう思うのでありますが、具体的にどういう成果をあげつつあるのであろうか、しからばPPBS導入へ踏み切るというところまで調査研究が進んでおるのであろうかどうであろうか、これらの点について、ひとつ通産省として、どのような場合にこれが導入することが適当であろうかということをひとつはっきりしてみたいと思います。ことに大気汚染に対する対策ということになりますと、これはひとりPPBSのみにあらず、行政制度の問題にも関連いたしまして、もっと総合的な行政機関があって、いまのような公害防止対策本部よりももっと構想の高い見地から総合企画をなし得るように、あるいは調査研究、立案、情報収集等なし得るようなものに進めていかなければなるまいじゃないか、こういうふうに考えておるのですが、これらの点につきまして、これはこういうシステム分析など研究してずっとやってきておられますと、おのずからそこいらについて相当な結論がひらめいてくるであろう、こう思うのですが、どんな段階まできておるのであろうか、そこらをひとつ聞いておいてみたいと思うのです。  なお、この際、大蔵省が見えておりますね。大蔵省が熱心にPPBSの研究もしておられますししまするので、本年度における予算の傾向、各省からも予算要求が出ておるはずでありますから、これは主計官だから全体がわからないのかもしれませんけれども、非常に大事な問題でありまするから、あわせて両方からひとつ御答弁願っておきたい、こう思います。
  159. 高橋淑郎

    高橋説明員 いまお尋ねのPPBSの導入について、まずどの程度準備が進んでおるかというお尋ねでございますが、PPBSにつきましては、大蔵省を中心に研究を進めておられる段階であります。通産省におきましても、政策の立案それから実施を一そう合理的に、かつ科学的に行なうことが必要であると考えております。  こういうような基本的な考え方あるいは認識に立ちまして、昭和四十三年に省内に行政高度化委員会という仮称のものをつくりまして、システムズアナリシスあるいはPPBSの研究を従来行なっております。このほか電子計算機を用いまして、情報システムの開発、実施についても研究を行なっております。  ただ、現在非常にその研究が進んでおるとまでは申し上げる段階に至っておりませんが、先ほど申し上げましたように、大蔵省を中心として現在いろいろと進められております検討の結果、将来この日本の国の予算制度にPPBSが導入されるということが可能になるという事態におきましては、通産省としてもこれに即応できるように準備を当然進めてまいらなければいかぬということで、その覚悟で現在研究をいたしております。  また、御指摘の大気汚染防止対策等について、システム分析を行なっていくということについての必要性があるということから、昭和四十四年、それから四十五年度にわたりましていま分析を試みておりまして、今年度末までには一応の研究成果を得られる見込みでございますが、いま現在、かくかくしかじかの成果があがっておるということを申し上げるまでの段階に至っておりません。  以上でございます。
  160. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 たとえば通産省にしましても、八月は予算要求の月でありますけれども予算を要求する場合に、昨年度予算はこういうふうに使ったので、その効果、便益はこうであったので、したがって費用・効果の分析というものを事実上することなくして予算要求できないと思うのです。もし会社でございましたら、百万円投じて、あることをある課にやらした、何も結果は得られない。そうすると、その次百万円下さいといっても、もう会社はそんなものは振り向きもしません。そんなことでどんどん使っておりましたら会社は倒産してしまいます。国は幾ら使っても倒産がありません。ですけれども、そこで予算の執行の効果いかんということは、私はこんな素朴な問題は、何も理屈を言うことなしに、当然のことだと思うのですがね。ですから、せっかく二年も三年も研究してきておるのだし、アメリカにおきましても、もうマクナマラが国防省に入れましてからでも何年にもなりましたし、ジョンソン大統領は全省に向かってPPBSの導入を指令したのでありますから、そんな先例もあるのですから、ことに相当皆さんのほうではアメリカへ出張して研究してこられたはずであります、各省がそれぞれやっておられますから。各省におきましても、企画庁システム分析室におきましてもどんどん調査研究をやっておられます。ただし、いまのように事務段階における勉強の段階ということばかり繰り返しておりましたら、これはどうにもいくまいじゃないかと思いますね。やはり絶対必死の体制で作戦を練っておる戦地のように、うかうかしたら殺されちゃうのだということになりましたら、じっとしておれませんからして、実用化するというところに踏み切らなければなるまいかと思うのですが、まだそこまで手がかりは全然出ませんでしょうか。どうでしょうね。通産省予算におきましては、その辺はいまの御説明でせっかく調査研究のさなかと思いますので、積極的な姿勢で一生懸命やっていただくにこしたことはありませんが、やはりこれはいま具体性を持ってずばっと御答弁願えるというところまでどうしても困難、こういうことになりますかね、どうでしょうな。
  161. 高橋淑郎

    高橋説明員 先ほど申し上げましたように一生懸命やっておりますが、先生御指摘のように、ずばりこうだと手がかりが得られたというところまではまだ至っておりません。
  162. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大蔵省、おられますね。大蔵省は幸い指導的にPPBSに取り組んでおられるらしい。これはたいへん私は日本の財政当局といたしまして大きな進歩であろうと敬意を表します。  そこで、たとえばPPBSを積極的に導入するという場合、公害行政なんかはこれは最も手ごろなものではないだろうか。公害行政こそ、たとえば公害原因の探求、何のために対策を立てるのか、それは防止であるとか、いな、被害をなくするためであるとか、あるいはまた、産業自体の根源をほっておいたら、いつまでも同じことの繰り返しになるからそこまで追及をしていくのであるとかいうようなことまでさかのぼらねばなるまいじゃないかと私は思う。しからば、そういうことにつきましては、いろんな調査をしなければ前提が立ちませんわね。そこで初めて予算を組む、予算を組んだらその予算の執行をどうするのか、予算を執行したら防止になるのか、あるいはそれの具体的な対策予算なのかあるいは調査研究なのか、公害原因をずっと追及をしていくということになるのか。たとえばカドミウムの汚染米、それを食ったらからだをこわす、それならば、こわさないようにするという対策になるのか、というがごとく、ことに大気汚染、自動車の排気ガスというものは具体的にこうやって毎日生じておりますし、そんな際でありまするので、公害行政の面から見ますると、これはやはりPPBSの導入につきましては一つの大きなチャンスが来ているんじゃないだろうか。アメリカでは国防省からと、さっきやりましたけれども日本におきましては、公害行政——カラスの鳴かぬ日はあっても公害問題を新聞に書かぬ日はありませんわ。これが今日の現状ですな。ですから、打ってつけじゃないかと思うのですね。これはちょっぴりも予算にあらわれてきませんわね。各省からあるいはわんさわんさ——きょうもどこかへ行って説明しておるようでありますが、各省から出ました予算のうち、特に公害をつかまえている省はたくさんありますね。非常に手ごろな対象のように考えるのですが、これはいかがですか。
  163. 西垣昭

    ○西垣説明員 たいへんむずかしい問題でございます。いま先生がおっしゃいましたように、あらゆる国の施策にPPBSの手法を適用しまして合理的な予算編成をするというのは、われわれの願いでございます。そういった意味で、われわれといたしましては、四十三年度以来、本格的にPPBSの研究をやっているわけでございます。本年度におきましても、PPBS導入の今後のあり方につきまして、財政制度審議会の法制部会で検討をいただいておりまして、近く何らかの結論を出していただけるのではないかというふうに考えている次第でございます。  ただ、PPBSの導入につきましてはいろいろと問題がございまして、われわれの感じとしましては、PPBSを直ちに全面的に導入するということは非常に困難だというふうに考えております。と申しますのは、たとえばPPBSの中心になりますシステムズアナリシスというようなものにつきましては、これはアポロの打ち上げで開発されましたシステム的な解決方法というものを社会問題に適用しようということでございますけれども、そうなりますと、自然科学的な素養だけでなくて、自然科学的な素養と社会科学的な素養と両方あわせ持ったような分析要員が多数要るということになるのでございますけれども、残念ながらそういった要員確保がまだできておりませんので、そのための努力を、昨年度から、各省の若手、中堅職員の研修というような形でやり始めているような次第でございます。  それからまた、社会問題にそういった科学的手法を適用するということは非常にむずかしい問題がございまして、なかなかだれもが納得するような解決手法というものを開発することはむずかしいのでございますが、アメリカにおきましては、しっかりした研究所等がございまして、これが中立的な立場からそういった手法の開発というものに当たっているわけでございますけれども日本ではまだそういった研究所が十分に育っていないというふうなこともございます。  それからPPBSにおきましては、費用と効果の分析を通じましていろいろな選択的手段の中から何が最も適当であるかというものを選び出すわけでございますけれども、そのためには十分なデータがなくちゃならないというふうな問題がございますけれども、そのデータが十分でないというふうな問題もございます。  こういったようなことで、いろいろと問題はあるわけでございますけれども、PPBSは確かに予算編成の合理化のために非常にすぐれた手法であると思いますので、われわれといたしましては、今後も積極的にその研究開発を続けまして、できるところから合理的、選択的にその導入をはかっていきたいというふうに考えております。
  164. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 事業予算制度は、日本においては実際になじまれないで今日まで来ておりますが、アメリカにおきましては、フーバー委員会の勧告により予算制度にまず導入して、何年かそれぞれ研さんを積まれましてPPBSに進んでまいったらしいのでありますが、たとえば、今日の予算制度——あなたのほうは科学的な分析をおやりになるのだから、今日の予算制度は、一口に申しましたならば、だれが使うかということで使途別分類は主になっておりませんです。単年度でありますし……。ですから、予算についての原価意識というものは非常に希薄ですわ。言うなら、雑費とか一般何とかというのでぽんとほうり込んでいくというものさえあるようなわけですから、だれが使うのかということでなしに、何に使うのかということから、もっと行政費の原価意識を高揚するという基本的なものが、まずやはり全省、全公務員になければならぬ。もちろん国会みずからですよ。国会はやはり重大な反省を前提にせねばいけませんですわ。  ですから、そういうことでなければいけませんので、せっかくきょう通産行政、非常に重大な問題を私は取り上げたつもりなんです。取り上げたつもりですが、数量的に掌握しにくいような面も相当ありますので、だから適用難の面もずいぶんあろうと思います。しかし、いずれにいたしましても、各省に一つぐらいは、これならいけるというようなものをやはり出してもらうというようなことをあなたのほうから示唆するというくらいな協力体制を大蔵省として出す、そして行政の原価意識をもっとはっきりする。できるだけ使途別分類に切りかえていく、単年度方式ではいけません。やはり二年、三年、四年の計画にしなければいけません。ただし、国会の審議は一年でよろしい。一年一年でいいと思いますが、いずれにしましても、一年一年でぶち切っておりますので、費用・効果を分析するといったって、うまくいきません。ほんとうのものはできやしませんです。これだけの事業をやる、これだけには百億円要る、それから本年は十億円、次は二十億円——それはいいじゃありませんか。あとはぶち切って、予算国会を通過したらいいのですから、そういうふうに、やはりそれ自体からしてもっとシステム化しなければいくまいと思うのですね。そして、いま私はたまたま公害行政のことを取り上げましたが、やはりこの辺は大蔵省がせっかくこういう室まで設けたのでありますから、同じように呼応して、各省に類似のもので科学的な手法で予算の編成をする。大蔵省とつまらぬかけ引き、問答しないででも、すうすうと予算は通っていくというくらい、それこそ合理的な措置をしていく。自然科学、社会科学の混淆の面もあろうかもしれませんけれども、アポロとは違います。もっと身近な面で相当な活用をして、そうして財政の効率化をはかり得る道が開けてくる、かつ、ほんとう行政目的を達し、予算の目的を達する道が開けていくだろうと思うのです。PPBS積極的導入への姿勢をこの際うんと強調するこの委員会におきまして、PPBS導入について四十二年の決算の最終結論で一つの決議を出しております。ですから、ひとつ国会の意思表示といたしまして、きょうは四十三年の決算をやっているはずですから、去年、おととしの予算の執行について、そのあとは、その効果は必ず四十六年の新予算の編成にある程度何かが出てこぬと、いつもここで議論ばかりして、議論をやみに、また議論をやみにというんじゃ、これは国会の審議それ自体がきわめて非効率化です。そんな効率があがらぬことじゃ私はだめだと見ておりますので、ここで議論されて、ノーと指摘されたような問題は必ず翌年の予算編成には何らかの形で影響を与えるもの、こういうふうにあってしかるべきだと考えておりますので、ひとつどうぞその辺は適当にあなたのほうも御研究になってしかるべきと思います。中小企業のほうもそれから繊維局のほうも、どうぞそこは、ともに大きな見地に立ちまして、予算の編成、そして行政目的の達成について新しい科学的手法をできるだけ取り入れるようにしてもらいたいと思います。  こういうことを強く御要請申しまして、これで終わっておきます。
  165. 高橋清一郎

    高橋(清)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十二分散会