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1970-05-19 第63回国会 衆議院 決算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月十九日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 白浜 仁吉君 理事 高橋清一郎君    理事 丹羽 久章君 理事 華山 親義君    理事 鳥居 一雄君 理事 吉田 賢一君       阿部 文男君    中山 利生君       箕輪  登君    大原  亨君       小林  進君    田中 武夫君       高田 富之君    西中  清君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 内田 常雄君  委員外出席者         厚生政務次官  橋本龍太郎君         厚生大臣官房審         議官      首尾木 一君         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 鴛淵  茂君         厚生省薬務局長 加藤 威二君         厚生省国立衛生         試験所長    石舘 守三君         厚生省国立衛生         試験所衛生微生         物部真菌室長  倉田  浩君         農林政務次官  渡辺美智雄君         農林省食糧研究         所長      谷  達雄君         農林省食糧研究         所穀類貯蔵加工         部病菌研究室研         究員      鶴田  理君         食糧庁長官   森本  修君         通商産業省企業         局立地公害部公         害第二課長   根岸 正男君         会計検査院事務         総局第三局長  藤田  勇君         会計検査院事務         総局第四局長  増山 辰夫君         農林漁業金融公         庫副総裁    佐竹  浩君         医療金融公庫総         裁       山本 正淑君         環境衛生金融公         庫理事     橋本 健寿君         参  考  人         (東邦大学教授桑原 章吾君         参  考  人         (東京医科大学         助教授)    佐藤 倚男君         参  考  人         (東京大学講師高橋 晄正君         参  考  人         (千葉大学教授)宮木 高明君         決算委員会調査         室長      池田 孝道君     ————————————— 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   中村 弘海君     古井 喜實君   山中 吾郎君     勝澤 芳雄君 同日  辞任         補欠選任   古井 喜實君     中村 弘海君 同月十九日  辞任         補欠選任   中川 俊思君     箕輪  登君   勝澤 芳雄君     大原  亨君   勝間田清一君     高田 富之君   日野 吉夫君     小林  進君 同日  辞任         補欠選任   箕輪  登君     中川 俊思君   大原  亨君     勝澤 芳雄君   小林  進君     日野 吉夫君   高田 富之君     勝間田清一君     ————————————— 五月十三日  一、昭和四十三年度一般会計歳入歳出決算    昭和四十三年度特別会計歳入歳出決算    昭和四十三年度国税収納金整理資金受払計    算書    昭和四十三年度政府関係機関決算書  二、昭和四十三年度国有財産増減及び現在額総    計算書  三、昭和四十三年度国有財産無償貸付状況総計    算書  四、歳入歳出の実況に関する件  五、国有財産増減及び現況に関する件  六、政府関係機関の経理に関する件  七、国が資本金を出資している法人の会計に関    する件  八、国または公社が直接または間接に補助金、    奨励金助成金等交付しまたは貸付金、    損失補償等財政援助を与えているものの    会計に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十三年度一般会計歳入歳出決算  昭和四十三年度特別会計歳入歳出決算  昭和四十三年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和四十三年度政府関係機関決算書  昭和四十三年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和四十三年度国有財産無償貸付状況総計算書  (厚生省所管医療金融公庫環境衛生金融公  庫、農林省所管農林漁業金融公庫)      ————◇—————
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  昭和四十三年度決算外二件を一括して議題といたします。  厚生省所管医療金融公庫及び環境衛生金融公庫について審査を行ないます。  まず、厚生政務次官より概要説明を求めます。橋本厚生政務次官
  3. 橋本健寿

    橋本(健)説明員 昭和四十三年度厚生省所管一般会計及び特別会計決算について御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算額については、当初予算額七千六百八十六億七千五百四十一万円余でありましたが、その後、国民健康保険費等不足に伴う補正予算額百六十三億九百六十五万円余、総理府所管からの移しかえ増加額八億六千二百二十六万円余、前年度繰り越し額二十九億九千九百六万円余、予備費使用額二百七十七億七千三百六十万円余、計四百七十九億四千四百五十八万円余を増加し、予算現額は八千百六十六億二千万円余となりました。これに対して、支出済み歳出額は八千百二十八億二百六十六万円余、翌年度繰り越し額は二十八億二千九百二万円余、不用額は九億八千八百三十一万円余で決算を結了いたしました。  以上が、一般会計決算大要であります。  次に、特に重要な事項について、その概要を御説明申し上げます。  第一は、生活保護費関係に要した経費であります。  生活保護法による保護基準等については、一般国民消費水準向上に対応し、その内容改善をはかるため、生活扶助基準について一三%の引き上げを行なったほか、教育扶助住宅扶助及び生業扶助等についてもそれぞれ改善を行なっております。  このほか、保護施設職員待遇改善を行ない、生活保護費としては、予備費使用を加え、総額一千六百四十七億五千四百四十四万円余を支出しております。  第二は、社会福祉費関係に要した経費であります。  まず、児童保護費でありますが、児童福祉施設飲食物費 日常諸費等増額したほか、施設職員待遇改善をはかるとともに職員の増員を行ない、保育所について地域差の是正をはかり、また、未熟児食育医療等母子保健対策に要する経費身体障害児及び結核児童援護対策に必要な経費家庭児童対策に要する経費をそれぞれ増額するなど、児童保護費として、予備費使用を加え、総額四百七十二億三千二百三十万円余の支出を行なっております。  このほか、児童扶養手当及び特別児童扶養手当支給に要した経費として四十億九千六百十万円余の支出を行ない、母子福祉対策の一環としては、母子福祉資金貸し付け原資として五億八千百一万円余の支出を行なっております。  次に、老人ホーム身体障害者更生援護施設保育所等各種社会福祉施設及び地方改善事業施設整備に対して五十五億四千八百五十三万円余の補助を行なったのであります。  また、老人福祉費については、老人健康診断受診人員増加老人クラブ助成費増加等をはかり、さらに収容施設飲食物費日常諸費増額したほか、収容施設職員処遇改善をはかる等により、予備費使用を加え、総額百十八億五千九五十三万円余の支出を行なっております。  なお、このほか、身体障害者及び精神薄弱者保護更生につきましても、前年度に引き続き増額を行なっております。  第三は、社会保険費関係に要した経費であります。  国民健康保険については、昭和四十三年度末において三千四百五十八保険者が実施しており、その被保険者数は四千二百四十九万七千余人となっております。  これら保険者昭和四十三年度における財政状況は、全保険者の合計で申しますと、収入は四千四百八十一億八千六百六十一万円余、支出は四千三百四十九億五千三百十六万円余で、差し引き百三十二億三千三百四十五万円余の黒字となっております。  国民健康保険事業に対しましては、国は保険者事務費の全額、医療費に対する四割五分の補助等を行なっており、これらの経費として、予備費使用及び補正予算を加え、二千五百八十八億七千九百十九万円余の支出を行ないました。  第四は、保健衛生対策費関係に要した経費であります。  まず、精神衛生対策費でありますが、精神衛生法に基づく入院措置をさらに強力に推進したほか、通院医療公費負担に要する費用に対する国庫補助を進め、さらに在宅精神障害者対策強化をはかるなど、精神衛生費として二百四十八億三千六百六十一万円余の支出を行なっております。  次に、原爆障害対策費でありますが、原爆被爆者に対する健康管理強化をはかるとともに、さらに、原爆障害者に対する特別手当等支給を行なうなど施策の拡充をはかり、原爆障害対策費として予備費使用を加え四十四億四千七百八十五万円余の支出を行なっております。  このほか、結核医療費として三百七十一億五千六十九万円余、保健所運営費法定伝染病予防費等保健衛生諸費として、予備費使用を加え、百億二千二百十万円余、らい予防対策費として二億三百四十九万円余をそれぞれ支出しております。  第五は、恩給関係費のうちの遺族及び留守家族等援護関係に要した経費であります。  まず、戦傷病者戦没者遺族等援護費のうち、障害年金遺族年金及び遺族給与金については増額改定を行ない、百九十六億二千七百三十一万円余の支出を行なったのであります。  次に、留守家族等援護費として、留守家族手当葬祭料等に一千百六十二万円余、未帰還者特別措置費として九百八十五万円、戦傷病者特別援護費として療養費補装具給付費等に十億五千七百二十九万円余の支出を行なうなど遺族及び留守家族等援護費として、予備費使用を加え、総額二百八億二百七十二万円余の支出を行なっております。  第六は、公共事業費関係のうち、環境衛生対策費に要した経費であります。  明るい生活環境を実現するため、特に環境衛生施設整備をさらに強力に推進することとし、清掃施設整備緊急措置法に基づく昭和四十二年度を初年度とするし尿処理五カ年計画及びごみ処理施設整備五カ年計画により清掃施設三百二十六カ所、簡易水道施設四百二十一カ所、上水道施設五十八カ所に対してそれぞれ補助いたしました。  これらの経費公害防止事業の推進をはかるための対策費及び公害防止事業団運営費並びに環境衛生施設災害復旧費を加え、総額七十一億八千六百二十六万円余の支出を行なっております。  以上、厚生省所管に属する昭和四十三年度一般会計決算概要を御説明申し上げましたが、次に特別会計決算大要について申し上げます。  まず第一は、厚生保険特別会計決算であります。  厚生保険特別会計につきましては、一般会計より五百七十六億九千五百三十四万円余を繰り入れました。  まず、健康勘定決算額について申し上げますと、収納済み歳入額五千三百二十二億九千九十七万円余、支出済み歳出額五千三百三十九億八千二百九十九万円余でありまして、差し引き十六億九千二百一万円余の不足を生じましたので、これをこの勘定積み立て金から補足することとして決算を結了いたしました。  昭和四十四年三月末の事業所数は六十一万余カ所、年度平均保険者数は一千二百八十四万余人に達しております。  次に、日雇い健康勘定でありますが、その決算額は、収納済み歳入額八百八億八千六百七十八万円余、支出済み歳出額八百九億一千二百十七万円余でありまして、差し引き二千五百三十八万円余の不足を生じましたので、これをこの勘定積み立て金から補足することとして決算を結了いたしました。  なお、年度平均保険者数は百六万二千余人であります。  次に、年金勘定でありますが、その決算額は、収納済み歳入額六千二百九十億九千七百七十三万円余、支出済み歳出額八百十一億一千六百十五万円余でありまして、差し引き五千四百七十九億八千百五十七万円余の過剰を生じ、これをこの勘定積み立て金に積み立てることとして決算を結了いたしました。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済み歳入額百七十二億七千三百万円余、支出済み歳出額百六十七億四千百八十九万円余、翌年度繰り越し額五億二千六百八十七万円余でありまして、差し引き四百二十三万円余の剰余を生じ、これを健康、日雇い健康、年金の各勘定積み立て金に組み入れることとして決算を結了いたしました。  第二は、国民年金特別会計決算であります。  国民年金特別会計については、一般会計から一千五十三億七千七百六十六万円余を繰り入れました。  まず、国民年金勘定決算額について申し上げますと、収納済み歳入額一千八十七億三千八百六十三万円余、支出済み歳入額八十八億六千七百三十七万円余、翌年度歳入繰り入れ額三億七十一万円余でありまして、差し引き九百九十五億七千五十三万円余の過剰を生じ、これをこの勘定積み立て金に積み立てることとして、決算を結了いたしました。  昭和四十四年三月末の被保険者数は二千二百三十一万余人で、そのうち、保険料免除該当者は百八十七万余人であります。  次に、福祉年金勘定でありますが、その決算額は、収納済み歳入額六百三十五億六千百六十五万円余、支出済み歳出額六百二十五億八千八百三十九万円余、翌年度繰り越し額一億二千六百十七万円余でありまして、差し引き八億四千七百八万円余の剰余を生じ、これを翌年度歳入に繰り入れることとして決算を結了いたしました。  最後は、業務勘定でありますが、その決算額は、収納済み歳入額六百七十五億二千百九十一万円余、支出済み歳出額六百六十一億五千三百九十五万円余でありまして、差し引き十三億六千七百九十六万円余の剰余を生じ、このうち十三億五千七百四十四万円余を翌年度歳入に繰り入れ、残余は国民年金勘定積み立て金に組み入れることとして決算を結了いたしました。  第三は、船員保険特別会計決算であります。  船員保険特別会計につきましては、一般会計から十九億六千二百十四万円を繰り入れました。  その決算額は、収納済み歳入額三百六十一億五十五万円余、支出済み歳出額二百十八億八千四百六十三万円余でありまして、差し引き百四十二億一千五百九十二万円余の剰余を生じ、これをこの会計積み立て金に積み立てることとして決算を結了いたしました。  本年度事業概況を申し上げますと、年度平均の被保険者数は、普通保険で二十六万三千余人保険給付については、疾病保険給付費百四十九億三千五百八十七万円余、失業保険給付費十二億三千二百五十二万円余、年金保険給付費四十一億五千二百四万円余の支払いを行なっております。  第四は、国立病院特別会計決算であります。  国立病院特別会計については、一般会計から二百六十五億九千二百七十九万円余を繰り入れました。  まず、病院勘定決算額について申し上げますと、収納済み歳入額四百九十七億九千三十万円余、支出済み歳出額四百八十五億七百五十八万円余、翌年度繰り越し額十一億三千七百四十六万円余でありまして、差し引き一億四千五百二十五万円余の剰余を生じ、これをこの会計積み立て金積み立て決算を結了いたしました。  本年度事業概況を申し上げますと、入院患者数は一日平均二万八千余人外来患者数は一日平均三万二千余人であります。  次に、療養所勘定でありますが、その決算額は、収納済み歳入額四口二十九億九千三十八万円余、支出済み歳出額四日十九億九千九百二十六万円余、翌年度繰り越し額六億四千百十八万円余でありまして、差し引き二億四千九百九十二万円余の剰余を生じ、これをこの会計積み立て金積み立て決算を結了いたしました。  本年度事業概況を申し上げますと、入院患者数は一日平均四万三千余人外来患者数は一日平均五千余人であります。  第五は、あへん特別会計決算であります。  あへん特別会計決算額は、収納済み歳入額十億三千百五十二万円余、支出済み歳出額三億四千六十一万円余でありまして、差し引き六億九千九十万円余の剰余を生じ、剰余金はこの会計の翌年度歳入に繰り入れました。  本年度における業務実績は、アヘン購入七十四・ニトン、売却五十七・二トンであります。  以上が、厚生省所管に属する昭和四十三年度一般会計及び特別会計歳入歳出決算概要であります。  最後に、本決算につきまして、会計検査院から指摘を受けた点がありましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。  今回指摘を受けましたのは、一般会計においては、国民健康保険調整交付金交付が適正を欠いているもの一件、特別会計においては、健康保険厚生年金保険及び船員保険保険料徴収に関するものであります。  交付金については、交付目的に沿うよう必要な措置を行ない、返還すべきものについてはすでに手続中でありますが、今後指導監督徹底をはかり、交付の適正を期する所存であります。  次に、保険料徴収不足については、かねてから鋭意その解消につとめてきたところでありますが、重ねて指摘を受けましたことは、まことに遺憾とするところであります。  今後は、さらに適用事業主または船舶所有者に対して報酬に関する届け出を適正に行なうよう指導、啓蒙を積極的に行なうとともに、調査徹底をはかり、保険料徴収不足解消に努力いたす所存であります。  以上をもって厚生省所管に属する一般会計及び特別会計決算の御説明を終わりますが、何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  4. 濱野清吾

  5. 藤田勇

    藤田会計検査院説明員 昭和四十三年度厚生省決算につきまして、検査いたしました結果の概要を御説明申し上げます。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項が三件でございます。  五一号及び五二号の二件は、健康保険及び厚生年金保険並びに船員保険保険料徴収に関するもので、いずれも保険料算定の基礎となる報酬の把握が適確に行なわれなかったなどのため、保険料徴収不足していたものでございます。  五三号は、国民健康保険普通調整交付金交付につきまして、調整対象収入額算定が誤っていたため交付が適正を欠いていたというものでございます。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。
  6. 濱野清吾

  7. 山本正淑

    山本説明員 医療金融公庫昭和四十三年度業務概況について御説明申し上げます。  昭和四十三年度貸し付け計画額は、貸し付け契約額二百八十五億円、貸し付け資金交付額二百八十五億円を予定し、その原資としては、資金運用部資金借り入れ金二百五十億円、貸し付け回収金三十五億円、計二百八十五億円を充てることといたしました。  この計画額に対する実績は、貸し付け契約額三百二億円、貸し付け資金交付額三百二億円でありまして、これを前年度と比較いたしますと、貸し付け契約額で三〇・七%、貸し付け資金交付額で三〇・七%の増となりました。なお、貸し付け計画額二百八十五億円と貸し付け実績額三百二億円との差額十七億円は、前年度から繰り延べとなったものであります。  貸し付け契約額内訳は、設備資金二百九十八億円、長期運転資金四億円であり、また、貸し付け資金交付額内訳は、設備資金二百九十八億円、長期運転資金四億円であります。  貸し付け残高は、前年度末八百四十七億円でありましたが、四十三年度中に三百二億円の貸し付けを行ない、七十九億円を回収いたしましたので、当期末においては一千七十億円となっております。  次に、決算状況について申し上げます。  昭和四十三年度損益計節上の総収益は六十七億三千七百六十三万円余、総損失は六十六億六千二十万円余でございまして、差し引き七千七百四十二万円余の償却利益を生じましたが、大蔵大臣の定めるところにより、固定資産減価償却引き当て金へ五百九十四万円余、滞り貸し償却引き当て金へ七千百四十八万円余を繰り入れましたので、結局、国庫に納付すべき利益金は生じなかったのでございます。  以上で、昭和四十三年度業務概況につきましての説明を終わります。
  8. 濱野清吾

  9. 橋本健寿

    橋本(健)説明員 環境衛生金融公庫昭和四十三年度業務概況につきまして、御説明申し上げます。  環境衛生金融公庫は、国民日常生活に密接な関係のある環境衛生関係営業について、衛生水準向上近代化を促進するため必要な資金を融通することを目的として、昭和四十二年九月発足いたしたものであります。当公庫は、従来、設備資金については、特定の設備対象についてのみ融資しておりましたが、昭和四十三年度から融資対象を拡大し、環境衛生関係営業設備資金のすべてについて取り扱うこととなりました。  昭和四十三年度貸し付け金は、当初三百七十一億円の予定でありましたが、資金需要増加いたしましたので七十六億円を追加しまして四百四十七億円に改定されました。  これに対しまして、貸し付け実績は四百四十六億七千万円余であります。  次に、貸し付け残高について御説明申し上げます。  昭和四十二年度末における貸し付け残高は二百三十七億八千万円余でありましたが、昭和四十三年度における貸し付け金四百四十六億七千万円余が加わり、一方、貸し付け回収金が八十三億四千万円余がありましたので、差し引き六百一億一千万円余の貸し付け残高となっております。  次に、昭和四十三年度収入支出決算について御説明いたします。  昭和四十三年度における収入済み額は三十五億七千万円余、支出済み額は三十四億円余でありまして、収入支出を上回ること一億七千万円余となっております。  まず、入入の部におきましては、本年度収入済み額は三十五億七千万円余でありまして、これを収入予算額四十二億六千万円余に比較いたしますと、六億八千万円余の減少となっております。この減少いたしましたおもな理由は、貸し付け金利息収入等予定より少なかったためであります。  次に、支出の部におきましては、本年度支出予算現額四十一億五千万円余に対し、支出済み額は三十四億円余でありまして、差し引き七億四千万円余の差額が生じましたが、これは借り入れ金利息等予定より減少したためであります。  最後に、昭和四十三年度における損益について申し述べますと、本年度の総利益三十九億六千万円余に対し、総損失は三十八億三千万円余でありまして、差し引き一億二千万円余の償却引き当て金繰り入れ利益をあげましたが、これを全額滞り貸し償却引き当て金及び固定資産減価償却引き当て金に繰り入れましたため、国庫に納付すべき利益はありませんでした。  以上が、昭和四十三年度における環境衛生金融公庫業務概況であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  10. 濱野清吾

    濱野委員長 これにて説明聴取を終わります。
  11. 濱野清吾

    濱野委員長 本日は、厚生省所管中特に医薬品等の検定について、参考人として東邦大学教授桑原章吾君、東京医科大学助教授佐藤筒男君、東京大学講師高橋晄正君の方々の御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとう存じます。本件審査につきまして、それぞれの立場から何とぞ忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。  なお、念のため議事の順序について申し上げます。  まず初めに、御意見を一人約二十分以内に取りまとめてお述べをいただき、次に委員からの質疑に対してお答えを願います。また、発言の際には、そのつど委員長の許可を得なければならないことになっておりますから、あらかじめ御承知おき願います。  それから、御意見開陳の順序は、桑原参考人佐藤参考人高橋参考人の順序でお願いをいたします。まず桑原参考人
  12. 桑原章吾

    桑原参考人 私は、現在中央薬事審議会の医薬品特別部会の臨時委員及び新医薬品調査会の副座長をつとめておりますので、その経験から、大衆薬の再評価と二重盲検試験という主題について意見を述べさせていただきます。  まず初めに、終戦後新しい薬事法ができてから現在まで、新医薬品の臨床評価の方法がどんな歩みをしてきたかという点について、簡単に触れてみたいと思います。  初期の臨床試験につきましては、二カ所以上の十分な施設を持つ医療機関において、原則として合計六十例以上の症例について効果判定が行なわれていることが基準になっておりまして、かつ、二カ所以上の成績は、専門の学会発表、もしくは雑誌掲載が条件となっておりました。ただし、抗結核剤、悪性腫瘍治療剤につきましては、一カ所三、十例以上、合計百例以上の治験例が要求されるとともに、病型、観察事項、使用期間などがある程度こまかく規定されておりました。この規定は、現在の学問のレベルから考えればまことに幼稚なものではありましたが、当時としては常識的なものだったと考えられます。その後治験例数につきましては、全般的に五カ所、百五十例以上と基準が改められましたが、比較評価の概念につきましては、近年に至るまで導入されておりません。しかし、私どもはすでに十年くらい前から、自然治癒の傾向が大きい疾患、治癒の判定が客観的な資料にたよれないような病気及び薬理学的に効力の裏づけがむずかしいような薬品の評価については、主観とか片寄りの入らない比較実験を行なうべきことを主張してきたのであります。しかし、臨床部門の各学会の比較試験の価値に対する認識がまちまちであったことも原因いたしまして、なかなかその希望が実現されませんでした。   一方、欧米では、二十年ぐらい前から臨床比較試験の方法の検討が始まっておりまして、一九五〇年代の後半には、ある程度まとまった方式がくふうされていたようであります。しかし、わが国におきましても、たとえば昭和三十七年に塩酸モルホリノビグアナイドのインフルエンザに対する効果判定には、かなり綿密な比較試験が評価に用いられております。また、向精神薬につきましては、昭和四十年以降二重盲検法が採用されております。御承知のように、昭和四十二年に行なわれました医薬品製造承認基本方針の改正で、臨床試験については、客観的かつ精密な資料の整備が特に強調されまして、現在では、精神神経科領域のほかに鎮痛剤、鎮静剤、催眠剤など、効果の判定に主観が入りやすい疾患あるいは薬剤、自然治癒傾向の大きい疾患については、基準の薬剤を使うかあるいはプラシーボ群を含む二重盲検試験が行なわれるたてまえになっております。  二重盲検試験を行なう場合に問題になりますのは、医師が評価すべき薬剤を知らずに投与することについて、安全性の面から見た危惧、またプラシーボを投与するということの人道的な問題などでありましょう。しかし、その前者につきましては、急性、慢性毒性試験の精細な資料を集積するとともに、前臨床試験での慎重なテストを経過して、投与量、投与期間などの条件を慎重に設定することによって回避できますし、また、後者のプラシーボ投与の問題につきましては、重い病気あるいは客観的な有効性の判断の可能であるような病気につきましては、なるべくその使用を避け、また、すでに有効であることが確実な薬剤がある場合は、できるだけそれを対照薬剤とするように配慮しますれば、患者に無用の苦痛や迷惑をかけることが避けられると信じます。さらに、人道的な見地にのみ固執して正しい評価を怠り、効果の明瞭でない薬剤を広く一般に使わせることは、一そう薬に対する害毒を大きくすることを認識する必要がありましょう。  さて、現在問題になっておりますいわゆる大衆保健薬につきましては、初めにお話しいたしましたとおり、臨床比較評価の概念が導入されなかった時代に承認されたものであります。また、主成分につきましては薬事審議会の討議を経ておりますが、それが配合剤として大衆向けに発売された時点では、薬事審議会の議を経ておりません。現在認められておる効能の中には、厚生省内の事務段階で認可されたものがかなり含まれておると思います。  また、現在問題になっておる大衆保健薬が認可されました時代には、現在のように医療用医薬品と大衆向け医薬品の取り扱いの区別がはっきりしていなかったために、日常使用される大衆保健薬としては不適当と思われる一という意味は、つまり、専門医師の処置によって治療されるべきような効能が認められている点も考慮を要する事実であると思います。  以上の事実を総括しますと、現在の医学のレベルから見て、既発売大衆保健薬を再評価することは、理念の上からはまことに当然のことと考えられます。問題は、再評価をどんな手順で実現させるかという点にしぼってみたいと思います。  いま議論の焦点を、二重盲検法の関連する臨床面にしぼってみますと、問題になっております薬剤について、どの品目のどの効能について再評価を行なうかを初めに整理してみる必要がありましょう。また、現在問題になっているような販売量の多い重点品目について初めに検討することは、常識的には当然でありましょうが、販売量が少ないからといって、一部の品目についてのみ試験した成績から、その類薬を単に類推をもって処理してよいかどうかには問題が残ると思います。各品目について、記載されております多数の効能について、そのすべてを問題にすることは、技術的にも不可能に近いことでありますし、また、評価の対象とすべき効能の選定によって、再評価のための実験計画がかなり違ってくると思います。  いま申しましたように、大衆薬の臨床評価について最も問題になりますのは、実験計画の規模と試験機関の選定にあると思います。いかに直観的、主観的であるとはいえ、きわめて多数の経験を経ている薬剤の効果を正確に再評価するというためには、相当大規模な計画が必要であります。そのためには、十分な設備と人員を持った大病院がかなり多数動員される必要があることは言うまでもありません。このような困難な仕事を引き受ける機関の十分の数が予定できるかどうかには幾らか不安があります。まして、現在、御承知のように、医科系の大学が一連の改革行動のために、医療面での能力がある程度低下しております。また、看護婦対策の不手ぎわから実働病床数が減少の傾向を招きつつある状態でありますから、この懸念は一段と現実味を帯びてくるように思います。  このような問題をなるべくすみやかに手ぎわよく整理するためには、厚生省としても具体的な大衆薬再評価の方法を検討するために、できるだけ早く適切な組織をつくって、いろいろな資料の調査を開始すべきであろうと思います。けれども、具体的な再評価の方法の決定にはかなり長い時間が必要である、まして、成績を完結するためには、相当長期の時間を覚悟しなければなりません。その間、現状のままで放置してよいかどうかは問題でありまして、少なくとも、大衆保健薬に関する広告あるいは宣伝等を、なるべく規制、自粛するような適切な処置をとることが必要と思います。  以上で、私の発言を終わります。
  13. 濱野清吾

  14. 佐藤倚男

    佐藤参考人 東京医大の助教授佐藤倚男であります。  私の関係しておりますのは、中央薬事審議会臨時委員ということと、学術会議の医薬研究連絡委員会委員であります。その立場を含めまして、私たち自身が二重盲検法をどういうふうに進めてきたかを簡単にお話しいたします。  日本においては、昭和三十一年ころに、約十四年前ですか、二重盲検法に関する最初の仕事が出たと思いますが、その前にプラシーボを使った比較試験は、耳鼻科などにおいて行なわれております。それから、同じく昭和三十一、二年のころから、ギャバという精神薄弱に対して試みられた薬について、東京医大及び京都大学において二重盲検比較試験が行なわれております。それで申請は、約三年後の昭和三十四年に申請書が出ております。昭和三十四、五年になりまして、精神科の中では十二の、十一の大学と一つの病院で共同研究が行なわれまして、これは二重盲検比較試験をどのようにやればいいかということについて、約数年研究会が続けられております。そのときには、十分なところまで達しませんでして、そのあと、今度は各大学の中堅クラスを集めまして、あらためてまた別の疾患に関して二重盲検比較試験が行なわれました。昭和三十七年ころになりまして、精神科以外で、グロンサンに関しまして高橋晄正さんの反論が出まして、これを私たちは読んだ記憶があります。それから、同じく昭和三十七年十二月に、砂原茂一先生の書かれた非常に詳しい、現在いわれていることのほとんどがもうすでにそのとき書かれておりますけれども、そういう詳しい概説が「日本醫事新報」に出ました。これは、いろいろと二重盲検比較試験をそれまで数年やっておりましたわれわれにとっては、非常に参考になったわけです。  現在は、私、調査会に入りましてから徐々に範囲を広げていきまして、ほぼ年間百に近い二重盲検比較試験が出ております。しかし、その内容は、まだいろいろ不完全なものもございますが、だんだんとレベルが上がりつつありまして、これは厚生省のほうで指導をそういうふうに変えていったこと、及び製薬会社、それから臨床医がそれに協力するようになってきたためであろうと思います。  二重盲検比較試験自体について簡単に説明いたしますと、ここに箱を二つ持ってまいりました。この箱の中に二週間分の薬が入っております。この二つの箱のどちらかにためされる薬が入っていて、どちらに比較される、従来最もいいとされた薬が入っているかわからなくなっています。これの割りつけは、無作為に、第三者であるコントローラーが順番をきめて、そして一組の一番、一組の二番というふうに順番を箱につけます。これを各病院に配りまして、各病院では、その疾患の患者さんが見えたときに、一番から順に使っていくというやり方になります。そして評価はきめられたとおりに、一週間に一回でしたら一週間に一回、項目の数がたいてい十ないし数十、精神科などでは二百から三百の情報をとりますけれども、そういう形で続けていって、そうして非常によくきいた、頭痛は半分くらいに減った、いろいろな項目ごとにどう動いたかを記録いたしまして、そしてコントローラーにそのコピーを渡します。コピーを渡しましたあとは絶対に訂正を許さない。そうしてそのあとでコントローラーがキーカードを開きまして、そうして一番の患者に渡った箱は、これは新しい薬である、二番は従来の一番いいとされた標準薬であるというふうに明らかにするわけです。そうして両群を今度は分けまして、実際の薬の入った群の中で、非常によくきいた人たちはどのくらいである、中等度にきいた人たちはどのくらいの数いるというふうに分けるわけです。そうして分けたあと、主として、臨床医は統計に詳しいわけではございませんので、現在の段階ではカイ二乗検定という検定が主として使われておりますが、そういう統計学的な手法で、ある程度の数で、ある程度の有効率の差があった場合に、どのくらいの危険率で断言していいかということをきめてレポートを書いてもらうということになります。  ところが、二重盲検法が比較的理解されまして、新しい薬に対する評価は浸透しつつありますけれども、実際に二重盲検法が出始めてみますと、いろいろとその中で片寄りがさらにあることがわかってまいりました。元来、二重盲検法というものは、情報が片寄らないようにするためのものであります。偏見が入らないようにするためのものでして、たとえば、ある患者さんの頭痛について、痛みはなおりましたでしょうと聞きますと、ええ、まあそうですね。しかし、その薬がきくとは思えない、今度はきかないはずであるという偏見を持った医者が、あの薬じゃ全然きかないでしょうと言われると、患者さんは、やっぱり少し頭痛があるような気がする場合には、ええ、全然ききませんというふうに、質問のしかたで答えが変わってまいります。そこで、非常に医者による片寄りが大きいことがわかりまして、それで二重盲検にしたわけです。  で、そのほかにも片寄りを防ぐために、統計学的な基本概念がどうしても必要になります。統計学的な基本概念と申しますと、まず最初にどの人にためすかというときに、この人とこの人というふうに選びますと、重症な人を選んだり軽症な人を選んだり、片寄りが起こってまいります。それで、医者の判断で選ぶことをやめて、そうして無作為抽出という方法をとる。選ばれた人の中に新薬を割り当てるか、標準薬を割り当てるか、またはプラシーボを割り当てるかというときにも、この人には新薬、この人にはプラシーボというふうに医者がやりますと、そこでまた軽症な人にプラシーボをやるというのは人情でございますから、そこでまた片寄りが起こって比較ができなくなる。そのために、どの患者にどの薬を割り当てるかということも無作為にするようにする。それから、何人中何人なおったという比較をする場合でも統計学の原理に従うという点で、二重盲検法及び統計学を使った薬の評価法というものは、あらゆる点で主観者である医者の判断の片寄りを認めて、その結果、みずからの判断を捨てた上で成立していく方法なのであります。  そういう場合に、十分理解されていない面もございまして、公平性に関して疑われるような面が多数ございます。それがあるために、たとえばアメリカなどでは、二重盲検比較試験をやった上での議論がさらにまた起こっておりますし、日本でも、これから先二重盲検比較試験同士で争うことが起こってぐるのではないかと思います。  ことに保健薬の問題は、いろいろな問題があるかもしれません。私自身は自分で何回かやってからしか、そのデータでしかものを言わない主義なものですから、保健薬に関しては何とも言えませんけれども、いままでのわれわれのところへ来る患者さんについて、ということは、患者さんのほうで来る意思が十分ある、そしてこちらの診察その他にも応ずる意思がある、医者もやる気があるという状況の中で二重盲検比較試験をやっても、一人前に一まだ一人前でないかもしれませんけれども、何とかやれるようになるまでに十年近くかかっております。それがわれわれのところへ来る人でない人ということになりますと、やり方は幾らでもあるでしょうけれども、妥当なやり方という点で、今後議論はますます激しくなるのではないかと思います。しかし、どうしてもやらなければならない問題でしたらやれなくはない、こう考えます。  これで私の話を終わります。
  15. 濱野清吾

  16. 高橋晄正

    高橋参考人 東京大学医学部の高橋でございます。  健康を害しました人間にある種の化学物質を与えまして、それが健康の回復に役立つときに、その物質は薬と呼ばれます。薬は、その物質性によって定義されるのではなくて、それを生物に適用したときに発揮される薬理作用によって薬であり得るのであります。一方、生体に適用されました化学物質は、適用されました目的とは異なった多面的な作用を呈するのが普通であります。ここに薬の主作用と副作用は共存することになります。副作用は一般的には害作用でありまして、特にその中で害作用の著しいものは、毒物として区別されるわけであります。したがいまして、保健薬のように、長期間にわたってだれでも飲んでもいい薬で、害がなくてしかも有効であるという、そういう薬があり得るかどうかということは、非常に疑問がございます。こういう保健薬を大量に国民が飲むということは、世界の国々では見られない事実であります。  さて、薬の薬理作用は、適用されます生体の置かれております条件、すなわち、性とか、年齢とか、病気の型、発病後の日数、こういったことによりまして大きく規定されますので、これらを層別因子、分類因子と呼びます。このように、薬の効果を大きく左右しますところの因子を規定いたしましても、なお薬の効果というものは不確定な部分がたくさんございます。その中の一番大きな要素は個体差でございます。したがって、薬の効果は、それぞれの層別条件のもとでの統計法則という形でしかとらえられません。ところが、薬の効果は個人にとっての効果が問題でありますので、統計法則を使って個人についての薬効をどう保証するのかという非常に特殊な問題が出てまいります。これは臨床の場におきまして、科学的に管理されました条件のもとでの試行錯誤、つまり、薬をある程度使ってみて、二日目に、そのきき目によってまた薬をかえるなり量をかえるなりするということでありますので、これを私たちは管理された条件のもとでの試行錯誤と呼んでおりますが、そういうことで逐次修正することによりまして、誤りによる損失を最小限にとどめるような努力がされなければならないわけであります。  ところで、ある薬の効果を判定します場合に、私たちを一番苦しめますのは、まず第一に、生物としての人間のからだにはいろいろな種類の自然回復の力が大なり小なり備わっている、これを物理現象にたとえていいますと、ちょうど傾斜しております坂の上で車を人間が操作しておるということにたとえられると思いますが、それが自然落下で車がすべっていっているのか、それとも人間がそれを押してさらに進めているのか、あるいは、それをブレーキをかけてすべり落ちないようにしてゆっくりおりていっているのかということは、これがなかなか外から見ていて判定がしにくいのと同じようなことであろうと思います。臨床におきましては、その病人の自然回復の力、これは、たとえでいいますと、坂道の傾斜度になりますが、こういうものがどのくらいあるのかということを一人一人の人間について見分けるということは非常にむずかしいことであります。それは個人の個体差にもよりますし、層別条件にもよりますので、非常に複雑な組み合わせになります。これを、種々雑多な状況の患者さんが次から次へとやってまいります日常の診療の場の中で、私たちの直観と経験でそれを頭の中できちんと整理いたしまして、薬の効果判定に反映させるということは、非常にむずかしいことでございます。  ところが、一九二〇年ごろになりますと、イギリスにおきましてR・A・フィッシャーという農学領域におきます統計学者が出てまいりまして、この人がこういったような生物実験の複雑さに対処する実験計画法というものをつくりました。  それによりますと、こういう場合には、同じような、層別条件の似ているような患者さんを公平に二群に分けまして、一方にはテストされる薬物を与える、他方にはにせの治療を行なうということをすべきであるというふうに書いてあります。しかしこれは、その根底には、両方とも、現代までの医学の中で最小限これだけははずしてならないという標準治療は両方にやる、その上に新しい治療を片方には加える、もう片方にはにせ治療を加える、こういったような方法は、これは同時に両方のグループを比較していきますから、同時対照試験というようなことばで呼ばれます。こういう方法が非常に有効であるということを、フィッシャーは、農業の中での肥料の効果だとか、品種の選抜試験なんかで明らかにしてきたのでありますが、これを最後に統計的に処理します場合には、両方のグループの平均値を比較いたしまして、結局、テストされる薬を飲ませたほうからにせ処理をしましたほうの結果を差し引きしました、差し引き分としてテストされた薬の効果を評価するという方法であります。うっかりしますと、坂道の傾斜度そのものも薬の効果のように見誤ってしまいますけれども、それは、フィッシャーの同時比較試験におきましては差し引きされて、それは除かれて、ほんとうの薬の効果によるものだけが評価されるわけであります。  こういった比較試験が同時でなければならないというのは、人間のあさはかな知恵でいかに層別条件をうまくやったつもりになりましても、なおかつわれわれの予測し得なかった片寄りが、時と所を異にするところの二つのグループの中で起こっていることがしばしばございます。これは実験データとして報告されておるものの中に幾らでも例をあげることができますが、そういうことが発生するのを私ども非常におそれるものですから、同じ条件のもとに同じ時期に、あるものを二群に分けるということを必要条件といたしております。  こういった薬の効果を判定します場合の第二の困難さは、われわれ並びに患者さんが人間であるということです。おそらく獣医学では問題にならないと思いますけれども、医療を受けます場合には、患者さんの側でも必ず期待を持って医師を訪れる、私たちも、新しい薬を使いますときは期待を持って使うということで、両方に使用する薬物に対する期待効果というものが出てまいります。そのために、きいたように思うけれども、これが医者と患者の両方の心理的な期待効果ではないかということも、われわれしょっちゅう疑ってみなければならないのです。  これに対して、実験計画法はどういうことを教えているのかといいますと、これは病人にも医者にも、いま非常に重要な臨床試験がやられているぞということは、どちらもわかっていなければいけません。これは副作用が突然発生する危険がありますので、両方ともそのことは承知していなければなりませんけれども、しかし、実際この患者さんには、本物が飲まされているのか、にせものが飲まされているのかということは、どちらにもわからないようにしておかなければならない。これは先ほど佐藤氏が言われましたような二重盲検でございます。二重盲検というのは、実験計画法の中では、こういう心理的な効果を排除するための両方に目隠しをするという一つの実験の設計条件でありまして、これそのものが実験法ではないわけですね。そういう設計条件として二重盲検ということばが使われております。  したがって、これを合わせまして、人間という意識のある生物において、しかも自然治癒という傾向性の非常に強く働く場合のあり得るところの治療薬の検定の場合に、両方合わせまして、二重盲検方式のもとでの同時対照試験という実験計画によってやりますと、私たちは薬効の評価における客観性を著しく大きなものにすることができるわけであります。これにももちろん、先ほど佐藤参考人が言われましたように、いろいろまだそれをくずすような要素が入ってまいりますので、私どもは絶えずそれに対して警戒しなければならないのでありますけれども、しかし、これまで私たちが雑然とした外来の中で、あるいは病室の中で、直観と経験で層別条件と個体差によるところの非常に複雑な条件を頭の中で解析したつもりでおりましたのよりは、はるかに客観性がございます。これは歴史の中におきましても、そういう直観と経験できいたといわれた薬が、以後の客観的な科学の方法で検討いたしまして、無効であるといわれて消え去っていったものが無数に存在いたします。  しかしながら、これに対する抵抗はまだ非常に医学界の中に大きくございまして、なかなかこれが取り入れられない。しかしながら、もしこのような実験計画を用いないといたしまして、なおかつ、ある薬の効果というものの評価に正しさを認めようというと、どういう条件がそこに必要であるかといいますと、私たちは判定者の経験にささえられた直観の力の正しさを前提条件としなければならない。この直観の力というものは、正しい場合もありましょうけれども、正しくない場合もあるということは、歴史的に明らかな事実でございますし、何よりも決定的な欠陥は、客観性がないということです。フィッシャーの方法ではっきりと比較いたしますと、これはだれがどこでやっても、同じ条件であれば同じに出るはずでありますけれども、経験にささえられましたところの直観による判定の場合には、客観性ということの保証がきわめて乏しくなるという問題がございます。  しかし、こういった大家の経験者の直観というものがいかにたよりないものであるかということは、戦後のわが国の例をとりますならば、強肝保健薬、肝臓を強め健康を保つ薬として、最高のときは年間五十億ぐらいも売られましたところの、これが十数年にわたって続きまして国民に宣伝され乱用されまして、国民に甚大な被害を与えましたグロンサンの例をあげることができると思います。  この物質は、昭和二十六年に、毒素と結合して尿中に排せつされる抱合解毒ということをうたって発売許可されたものでありますけれども、これがどのレベルで許可されたものか、私ども現在わからない。つまり、製薬課長レベルで許可されたものなのか、正式に薬事審議会にかけられたものであるのか、これがわかりません。人体の中でグルクロン酸が毒素と結合するということは、ずいぶん昔からわかっていることでありますけれども、しかし、私がこれに疑問を持ちました一九六一年ごろのアメリカの医師会で出しておりますところのNND、「新薬と局方外薬品集」という本がございますが、これにはどう書いてあるかといいますと、これは関節や腱の成分であるから、ことによったら、リューマチだとかそういう病気にはきくかもしれないと書いてありますけれども、肝臓にきくとは一言も書いてない。したがって、もしこれを肝臓薬として使うならば、新しい適用でありますから、薬としてこういうものを使うならば、当然これは薬事審議会に正式にはからなければならないものであったと思いますけれども、それがはかられているかどうかということは、現在私ども明らかにいたしておりません。  ところが、この薬につきまして、わが国の名だたる肝臓専門の臨床の大家たちの中で、この物質が臨床的に有効であるという論文を書かなかったという人はまずないだろうと思われるぐらい、これはきいた、きいたと書かれたわけであります。しかしながら、その四年あとに、アメリカのアイゼンベルグという人がこの点に疑念を持ちまして、人体内部でできるクロンサンと——クロンサンというのは商品名でございまして、グルクロン酸が学名でございますが、これと、外から飲ませたグルクロン酸と区別できるようなくふうをしましたものを飲ませまして、人間で実際に実験いたしまして、そして、全くこれは解毒抱合しないということですね。少なくとも認識される程度までは尿の中に出てくる毒素とは結合していないということをはっきりと証明しましたので、その時点におきまして、外から与えられたグロンサンというものは、毒素と結合する力がなくて、大部分は炭酸ガスと水に分解されて排除されるものであるということがわかったわけでございます。  それでは、わが国の臨床の大家たちがきいたと思ったのは何であったのかということをいま考えてみますと、これはグロンサンを使ったら病気がなおったからきいたんだという——私たちこれを「使った、治った、きいた」の三た論法と言っておりますけれども、こういう不完全な論理によって、きいたという太鼓判を押していたものと考えられます。すなわち、その中身は自然治癒と心理効果であったに違いない、そういうふうにしか考えられないわけであります。  また、こういった問題を世界の文献の中に見てみますと、第二次大戦の直後には、世界の国々にも確かに強肝保健薬というものはございました。これは私、特別講演の機会に、全世界のものを数十年にわたって医局員の協力を得て調べましたけれども、しかしながら終戦直後、一九四五年ごろからその後約十年間、一九五五年、昭和三十年ごろまでの間に、このフィッシャーの実験計画法が普及するにつれて、前にきいたといわれる報告は次から次へとひっくり返されまして、一九五五年ごろでほとんど世界の強肝保健薬は消えてなくなっております。ところが、ちょうどそのころからわが国では強肝保健薬がブームとなりまして大量に発売され、消費されたわけでございます。このことは、私たちが「肝臓治療剤の臨床的根拠」といたしまして、昭和三十八年に論文として出してございます。  しかしながら、こういう科学的な薬効評価の方法を取り入れなかったわが国におきましては、ちょうど世界の学界でこうした薬が消えていきますころからこういう薬がちまたにはんらんいたしまして、今日に至っておるわけでありまして、これは皆さん御存じのとおりでございます。  ところが、こういう実験計画法はわが国では全然やられていなかったかといいますと、そうではございませんで、すでに昭和三十二年に結核病の領域におきましては、国立療養所東京病院長の砂原茂一氏を班長としますところの研究班の中では、実にりっぱな、きれいな結核薬の比較試験をやっております。しかしながら、これは結核という特殊領域であったためでありましょうか、一般の薬の領域には普及せずにまいったわけでございますけれども、この砂原先生は、先ほど佐藤参考人も言われましたように、非常にりっぱな本を書いて、薬の薬効検定をいかにすべきかということを詳しく書いておられます。  いまわが国でこうした科学的な薬効判定法が普及してないということは、一つには臨床の大家というものが、自分の直観的な判定に盲目的な自信を持ち続けてきたということが一つの問題であると思います。これは事実においてたくさんくずされておるにもかかわらず、それを明確に自覚していないということが一つあると思います。第二には、薬務行政に従事する官庁の窓口が、そうした大家の直観的判定に権威を認め続けてきたということのために、論文提出のほうが一向にそのきびしさを加えていかなかったということであろうと思いますし、第三には、医学教育の中で、こうした実験計画法とか統計解析のような教育が著しく不十分であったということにも関連すると思います。  これは、日本の医学を育成するためにドイツから参りましたベルツ博士が、在日二十五周年記念の記念講演のときに、日本人は、われわれから科学の結果は学んだけれども、科学をつくる精神を学ばなかったというきびしい批判をしておりますけれども、これはまさしく戦後の日本の教育の中で、科学というものをでき上がったものとしてその技術をマスターするということに専念いたしまして、科学的に前向きに進んでいくために必要な科学の論理を身につけなかったということは、すでに明治の中ごろですか、終わりごろでしたか、ベルツの在日二十五周年記念のときに、一ドイツ人である彼によっても指摘されておるわけであります。これが現在までまだ続いておるということであろうと思います。  しかし、きわめて重要なことは、このように虚構の権威、偽りの権威によってささえられて、薬とはいいがたい物質が薬として製造許可になり、それが社会保険に使用されることになりますと、私たち医師は、その日常の医療の中で、病人の自然回復力と、それから病人と私たちとの心理的な期待効果のために幻惑されてしまいまして、容易にその虚構性を見破ることができず、私たちの日常診療は非科学性に満ち満ちまして、正しい医療を行なわないことによって非倫理的な状態となり、国民医療費を不当に膨張させて、医療経済を破綻に導こうとしていることになっていると思います。国民に不当な経済的損失を与えないためにも、また、医師といたしまして、非科学性、非倫理性におちいらないためにも、私たちはこの非科学的に製造を許可されました医薬品を、科学の論理に従って全面的に再検討しなければならない時期であると思います。  戦後いち早くこの科学的薬効評価の方法を取り入れました諸外国でも、それ以前に発売されました薬につきましては問題がないわけではございません。イギリスでは、私の知る限りにおきましては、一九六六年から二年を費やしまして、セインスバリー卿という人が十人の専門の学者を委員にいたしまして、そして薬事制度を全面的に検討いたした記録がございます。その結果としまして、少なくとも三分の一の薬は、イギリスにおいてさえ無効、ないし好ましくないものであると報告しておりまして、薬物委員会をつくってこれをより徹底的に再検討すべきであるということを勧告として出しております。  また、アメリカにおきましても一九六四年にキーフォーバー・ハリス修正法案というのが通りまして、これはたしか一九三八年から一九六二年までだったと思いますが、この期間に許可されました薬につきましては、再検討を可能にするような立法措置が行なわれていると聞いております。  しかし、このわが国のように、薬が医師の処方なしで、新聞、テレビ、ラジオなどで大々的に広告が行なわれているような状況のもとでは、ちょうど戦後の混乱の中で許可されました薬の有効性と安全性というものは、早急に再検討されなければならないものであります。  いまから二年前に私たちは東大医学部の学生たちの協力を得まして「保健薬を診断する」という小さな本を出しました。十種類ほどの有名な保健薬について個別的に検討した成績を発表いたしましたが、こういったものも、上に述べましたような科学的な薬効評価の方法に従っておりませんものですから、調べてみますと、臨床に持ち込む前の基礎医学の段階ですでに医学常識に反するような物質が堂々と薬として許可されているという事実が明らかにされております。  毒素と結合する能力をほとんど持っていないグロンサンというものが、私たちが一九六二年ごろから批判するまで、抱合解毒による強肝保健薬として売られ続けてまいりましたことは先ほど申し上げましたが、そのほかにもこれに類するものはたくさんあります。  一、二の例をあげますと、唾液腺の中から出るホルモンというのがありまして、これは老化防止剤だといわれておりますけれども、これは許可された時点におきましては、非常に不安定であるから、注射薬として使う場合でも溶液と薬とは別々のアンプルに入っていまして、使う直前にそれを溶かして使えというぐらい慎重な指示で売られたわけでありますけれども、それが数年後には、量からいいますとその二倍ぐらいの十ミリグラムぐらいですが、こういったものを錠剤として飲んできくといって売られておるわけでありますけれども、この物質はたん白質でありまして、たん白質を飲んで胃や腸で消化しないということはきわめて医学常識に反することでありまして、その医学常識に反する事実がほんとうに真実であるならば、これは世界的に重大な問題でありますけれども、私たちが調べました範囲内におきましては、これが胃や腸の中で消化されないということは、その基礎づけとして出されている実験はきわめて不完全なものでありまして、とうていこれは科学の目から見まして承認できないものでございます。  それはともかくといたしまして、三ミリや五ミリぐらいを注射する場合に、使う直前に溶かさなければならないほど慎重なものが、錠剤として固められて店頭に何十日も放置されて、われわれの消化力の強い胃、腸を通過して、どうして吸収されぬか、こういうことが真実ならばわれわれはこれを世界の学界にはっきりと報告しなければならないものでありますけれども、その点に関しましては、きわめてあいまいな実験しかなされていないのであります。  また、アミノ酸の混合物、いろいろな種類のアミノ酸をまぜましたマミアンという薬がございましたが、これの一日量というのは、たん白質にしまして一・五グラム程度のもの、ところが皆さんも御承知のとおり、私たち健康人は一日七十グラム、ないしはそれ以上のたん白質が必要でありますが、たん白質が足りないよという事実はあのころあったかもしれませんけれども、七十グラム、七十五グラム必要なものに対して一・五グラムを百円なら百円の金で飲むということは、一体これはどういうことであるのか。もしこれを肉の一つまみで食べたなら七円とか八円で済むものであっただろうと思いますが、それを百円でわれわれは飲む。これはアミノ酸でございますから、飲んでもゼロということはございませんけれども、その価格に相当する価値があったのかといいますと、実に不当な値段であった。また、たん白質が足りない場合に、百円でそれを買って飲んだほうがいいのか、肉を五十グラム買って食べたほうがいいかといいますと、当然これは栄養学的な配慮によってその不足を補うべきであるという指導をしなければならなかったわけでありますけれども、こういうものが薬として許可されまして、われわれはちょうど神さまのお札を飲むようにこういうものを飲まされてきたわけであります。  また、アスパラギン酸という、これはどこにでも幾らでもある、からだで幾らでもつくれる、アミノ酸とカリウムとマグネシウムとをまぜましたものが、疲労回復剤としてアスパラという名前で、アスパラでやり抜こうとか、生き抜こうということで売られましたけれども、これはイタリアでつくられまして、アメリカでも一時新薬集に載ったことがございますので、許可した時点においてこれは不当だとは言えませんけれども、アメリカ医師会はその後一、二年の間に疲労とは関係のない、また有効でもないということを、ジョンズホプキンズ大学の人たちが囚人を使ってきれいな実験をいたしまして、もちろん二重盲検で、しかも交差試験をやって、問題のないような実験データによってこれを否定いたしまして、アメリカ医師会がそれを取り上げまして、医師会の中の無効データの発表する欄に、これははっきりと無効であるというふうに記載しておりますが、これは許可した時点においてはよかったけれども、それ以後にわれわれはこれに対して何らの処置もしてこなかったという点が問題にされるわけでございます。  こういった戦後わが国において許可されました薬の中には、世界の医学常識から見まして、まことに恥ずかしいものまでも薬として流通しておりまして、流通しておるだけではなくて、その後も、学問の進歩に伴って新しい事実が明確に出てきているにもかかわらず、何ら禁止ないし回収の措置がとられていなかったということは、これはやはり薬務行政の一つの欠陥ではないかと私ども考えるわけでございます。しかし、これも、もとはといいますと、薬効の反対に科学性を欠いて、医者たちがきいた、きいたという、使ったらなおったからきいたという誤った論理に従って太鼓判を押したためでございますので、もちろんわれわれ学者の共同責任でございますけれども、しかし、国は国でやはり許可の窓口のところに、もう少し主体的な動きをしていただきたいものだなと私は考えるわけでございます。  なお、昭和二十九年に発売されました研誘導体であるところのアリナミン、及びその後に発売されました同類のビオタミン、ベストン、こういったものが疲れ、神経痛などにきくということが盛んに宣伝されておりますけれども、これは私たちは一番文献の多い武田のアリナミンにつきまして、向こうで製品便覧として医家向けにりっぱな厚い本を出しておりますが、その中の資料に基づきまして分析しました結果、ないしは武田薬品から提供を受けましたところの若干の資料を追加いたしまして分析いたしました結果、そこには科学の論理に従って、あるいは、先ほども言ったような薬効検定の一般論理に従ってやられている論文はまず見当たらない1疲れ、神経痛に関するものですね。したがって、これはやはり私たちは科学の根拠なしに誇大に宣伝されているものではないかというふうに考えておりますが、しかし、これは医療薬といたしましても相当大量に使われておりまして、健康保険に通っておりますものですから、これは概算でございますけれども、年間三百億円ぐらいこういうものが使われておると思います。ところが、神経痛に対しましては、いまから四年前、昭和四十一年でございますが、「日本醫事新報」という非常に広く読まれております医学の週刊誌の質問欄に、最近こういB1は神経痛にきくという証拠がないというような論文があるけれども、これはほんとうかという質問が出ました。それに対しまして、早くからこのアリナミンの研究をやっておりました京都大学の栄養学の桂助教授、現在では教授でございますが、この方が答えを書いておりますけれども、これを要約いたしますと、仰せのとおり、臨床的には確かにきくという推計学的な、実験計画法的な観点での統計処理されたものはない、しかしながら動物実験で大体ききそうに思えるということでこれは許可になっているものである、したがって、二週間ないし四週間使ってみてきかなければやめたほうがいいだろう、こういうふうに書かれております。医薬品は個人の生命ないし民族の寿命に関係する重大な、いわゆる生命関連商品でありまして、一方、医薬品に関する科学的知見は日々増大しつつあり、しかも、すでに発売許可されている医薬品は、日々の診療ないし国民の保健衛生の手段として生き続けているものであり、これらの流通医薬品を時代おくれのままに放置することのないように、一度発売許可したものも数年ごとに再検討する機構を行政の中に設けることも必要ではないかと存じます。  時間を超過いたしましたことをおわび申し上げます。
  17. 濱野清吾

    濱野委員長 以上で参考人各位の御意見の開陳を終わります。  次に、石舘説明員の発言を求めます。石舘国立衛生試験所長
  18. 石舘守三

    石舘説明員 私は国立衛生試験所長でありますが、また薬事審議会の会長を拝命しておりますが、そういう立場でなく、私は薬の一研究者としてきょうはここへ立たされたということを承っておりますので、そういう意味で、政府委員というような肩書きを脱して、一般的なことで簡単にお話し申し上げ、私の所感を述べたい。  きょうは二重盲検の可否——可否といいますか、その功罪について話をしぼるようにというお話でありましたが、これについては、先ほど参考人お二人から詳しく申し上げたので私がつけ加えることはありません。私は臨床家じゃないので、ただ薬の検定、動物実験はした立場でありますが、二重盲検というものは、確かに客観性を除いた一つの科学的な手段として用いるということは、世界各国同じょうにこれに対して対処しておる、できるだけこれを採用するのがよろしいということには変わりありません。  ただ問題は、二重盲検といいましても、これは学者でもたいへん議論があるところで、きょうその二重盲検の内容を説明する時間がありませんので一切省略いたしますが、ここにもたいへんな条件が必要であります。  先ほど来申し上げられておるように——私はもう少し具体的にお話しいたしましょうか。たとえば、薬というものの価値を判断するには、三つのファクターがあると常識的に考えられております。というのは、いわゆる心理的効果、これはプラシーボとしてあらわれる効果、薬本来の効果、それからもう一つは、医者に対する信頼の効果というようなものが合わさったものが、全体として臨床的に効果として出てくる。その場合、非常にプラシーボ効果が強い人があり、非常に弱い人がある。たとえばプラシーボ効果がかなり強い、四〇%、効果の判定が非常にきいた場合でも六〇%というようなことが出た場合、これを統計学的に調べると申しましてもなかなかむずかしい。それは選ばれた対象によって非常に動くのでありまして、単にこれを機械的に統計的にただ処理しましても、これは四〇%はプラシーボで六〇%が薬の効果といっても、二〇%よりきかないという意味じゃありません、六〇%きいているわけですから。そういうような結果をいい薬、六〇%きいた薬は非常にいい薬であります。たいがい個性の差、いろいろな病気の状態、ドーゼ、いわゆる用量によってみな違いますから、薬というものは七、八〇%きくものじゃありません。  そういうわけで、これを統計学的に処理しますと、少なくとも四百人くらいの選ばれた患者を用意しなければならぬというようなことで、非常に恵まれた条件においてもそのくらいの人間は動員しなければならぬ。そうでなく、非常に条件が悪い場合、つまり検定法が間違った場合、あるいは、その状況が検定に適しない場合は、もっとたくさんの人間を動員しなければならぬということになりまして、この問題は、世界じゅうこれを採用しようとして努力はしていますけれども、二重盲検法にも大きな矛盾と困難があるということは、先ほど佐藤参考人が言われたとおりでありまして、わが国におきましても、そういう条件が許す、二重盲検法が最も信頼度が高いというような病気あるいは薬品に関しては、できるだけこれを推奨する、これを要望するというようなことになっておると私は思います。これをほんとうに活用するためには、先ほど来言われましたように、よく訓練された——二重盲検、薬に対する知識について訓練された医師の養成、それから、それを実行する環境、施設、たとえば国立等における大きな施設、そうして、そういうテストする患者を十分に自由に駆使できるような環境、そういうものがすべでそろって初めて二重盲検法がその価値を発揮するのじゃなかろうか。そういう意味において、日本におきましてはそういうことが非常に困難な実情にある。先ほど来大衆薬が問題になっておりますが、これらを再評価するというようなことになりますと、たいへんな犠牲を払わなければならない。日本の現状においては、実行はきわめて困難じゃなかろうかというのが私自身の考えでもありますし、また大方の考えではなかろうかと存じます。  そこで、先ほど薬の評価の問題についていろいろお話が出ましたが、しからば、今日の現状でそれでいいかと申しますと、決してそれで満足すべきものではないので、そういう二重盲検というような科学的な武器を活用できるような環境をだんだんつくっていくということ、あるいはまた、薬によっては二重盲検が不適当、危険な場合がたくさんあるわけであります。二重盲検法を無理に強制しますと、むしろ逆な結果を生み出す、誤った結果を生み出すという例も多々あるので、それを補うにはどうしたらいいか。ある先進国で利用しておるように、薬品の評価は、権威ある医師を設定しておいて、そういう権威ある医師にその判定をまかすというような制度を設置したらどうだという意見もあるわけであります。  なお、大衆薬の問題が先ほど来問題になっておりますが、高橋晄正君がいろいろ具体的に例をあげて理由を述べて——幸か不幸か、私はクロンサンの研究をしてきた者でありまして、その一つをとりましても、だいぶ主観が入っておるのでありまして、こういう問題は、ここで論ずるのではなくして、学会で十分論ずべき性質のものである、しかも特定の名前を出してここで一方的に言うということは、これは弊害があるんじゃないか。学問は刻々進歩しております。それらは、私は薬の研究をたくさんしてきましたが、臨床的知見が薬の発見につながることが非常に多いのでありまして、私は、軽々しく臨床家の結果が、科学的な方法をもってやらなければそれは無価値だというような考え方はぐあいが悪い——高橋君とは、こういう問題については、学会の席上で大いに討論してほしいと存ずるわけであります。  そういう意味で、結論としまして私、申し上げたいことは、大衆薬にいたしましても、国によって取り扱い方は違います。皆さん御承知のとおり、大衆薬は日本において国民の健康保全のために非常に役立っておる実情でありまして、社会的、歴史的背景というものを無視できないのであって、幅の広い許可のしかたをしておるわけでありますが、・諸外国でもその取り扱い方は国によって非常に違います。その眼目は、安全性の高いもの、多少きき目は弱くとも弊害が少ないものを選んで、用量、使用方法を限定して許しておるというのが現状であります。過去において許されておるものが、現在の水準からはその存在の理由がはなはだ薄くなったものもありましょう。また、なくてもいいというようなものも、よりよき薬が出る場合はそういう運命になりがちであります。しかしながら、薬というものは、個人的な好み、自分のからだに合ったものを選択するという自由も残しておいていい。日本国民は昔から薬石に親しむという習慣がある、自分が選択して飲むといういい習慣もあるのじゃないか、これをもすべて除去するということはどうか、そういうような社会的な背景も考えなければならない。要するに、だからといって、今日のような道義が乱れたような薬の宣伝は許されるべきことではないので、これに対しては、メーカーのほうの道義的自粛、あるいは国民の薬に対する知識の啓発、社会的レベルを高くして、そうしてこの薬に対する弊害、過当競争による社会的悪は、みんなでこれを矯正していかなければなるまいと、私個人は考えておる次第であります。  以上であります。
  19. 濱野清吾

    濱野委員長 これより質疑に入るのでありますが、先ほどの理事会の申し合わせもあり、質疑時間は一人二十分以内にお願いいたします。  それでは、質疑を順次許します。高橋清一郎君。
  20. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 ただいまは、いわゆる薬ということを題材にいたしまして、三参考人並びに政府の説明員のほうからるる専門的の観点において御説示を賜わったのであります。  お話の中にありましたように、国民の健康の保持、増進に重大な影響を及ぼしまする医薬品は、有効かつ安全な状態で供給されなければならないということは、言うをまたぬのであります。先般のサリドマイド事件等を契機にいたしまして、医薬品に対する安全性が強く要望されてまいったのでありますが、さらに、いまお話がございました中での焦点でありますところの大衆保健薬の有効性につきましても問題が出されておりますので、これに関連いたしまして、二、三の御質問をいたしたいと思うのでございます。  まず、医薬品の生産金額の推移を見ますと、四十年度以降でありますが、年間一〇%台で増加しておりましたものが、三年後の四十三年度になりますと、これが二二%に増加いたしまして、金額にいたしまして六千八百八十九億円となっておるのであります。これを用途別に見ますと、医療用の医薬品は四千八百八十三億円、大衆薬は二千六億円ということであります。一方、政府管掌健康保険について、医療費に占めておりまする投薬の割合は、三十七年度におきましては二九%であったのでありますが、これが四十三年度になりますると四〇%に増加しておるのでございます。  一般に投薬の割合が多いといわれておるのでありまするが、しからば、世界的な傾向はどのようなものであろうか、またその理由はどうかということであります。これを先に保険局長、薬務局長にお尋ねしたいのでございます。なお、時間もございませんので、願わくは簡潔明瞭にお願いいたしたいと存じます。
  21. 加藤威二

    ○加藤説明員 先生御指摘のように、医薬品の医療費に占める割合が、三十七年以降非常にふえております。これは最近の医学、薬学、特に貴重な薬がいろいろできてくる、高価な薬も出てくるということでございまして、そういう意味では、私は日本だけの傾向ではないと思いますが、ただ、ふえ方が非常に激しいということは言えると思います。特に政府管掌で、先生御指摘のように、二十数%だったのが四〇%にふえたということは、健康保険におきまして、それまでは薬について相当保険で制限を加えておったわけでございますが、それを三十七年にその制限を取り払ったというようなことから急激にふえてきたのでございます。そういうことで、このパーセントは非常にふえておるということでございます。  ただ、諸外国におきましては、医療費に対する薬の割合は四〇%というところはあまりない、大体二〇%から三〇%ということでございますが、これはしかし、日本の技術料が非常に低いということとも関連があるわけでございます。技術料が非常に高ければ、同じ金額の薬を使いましてもパーセントは下がるということでございますので、単純に、医療費の中に占める薬のパーセントだけで比較するわけにはまいりませんが、数字はそういうことになっております。
  22. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 保険局長、おりますか。
  23. 濱野清吾

    濱野委員長 保険局長はおりません。審議会のほうへ行っておるそうですからだれかかわって……。
  24. 首尾木一

    首尾木説明員 総医療費に占めます薬剤費のほうは、先生もおっしゃいましたように、社会保険におきまして増加をいたしておるわけでございますが、その原因としましては、給付される薬剤の範囲の拡大でありますとか、あるいは薬学の進歩でありますとか、薬剤を要求する患者の性向といったようなものが考えられるわけでございますけれども、これらはお互いに錯綜いたしておりまして、最近の薬剤費の増加が、おもに何によっているかということを判断することは、なかなかむずかしいということでございます。  先生のおっしゃいました世界的な傾向はどうかということでございますが、ただいま薬務局長が申し上げたようなことでございまして、全体としましては、薬剤費の割合は増加しておる傾向にあるのではないかと考えられるのでございますけれども、その原因あるいは薬剤費の割合等につきましては、それぞれの国の医療費としております範囲が違うということであります。あるいは、診療報酬の支払い方法が各国によってまちまちであるというような関係もございまして、それらを正確に判定するような資料を持ち合わせておらないわけでございます。
  25. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 続きまして、輸出についてでございますが、ビタミン類をトップにいたしまして、いわゆる抗生物質、その他の医薬品が四十三年度には百七十九億円輸出されておるのでございます。そのうち製剤原料が主として西欧諸国でございます。最終製品がアジア州諸国に輸出されておるのでありまするが、アメリカにおきましては、保健薬といわれる薬には、ビタミンやミネラルは植物によって豊富に供給されておる、特殊な医薬的な必要性を認める人を除きましては、ビタミンやミネラルを薬剤といたしまして常時補給する必要はないといったような意味のレッテルをこれから張ろうというような記事が先般出されておるのでございます。日本におきましては、たばこの例を見ましてもそうですが、日本内地におきましては、これはニコチンがどのくらいある、有毒だなんという発表はありませんけれども、アメリカを中心にいたしまして、諸外国におきましては、はっきりした数字まで出されて、その害毒というものが例示されておるというようなことを聞いておるのでございます。これはたばこと違うのでありますけれども、そういうようなことが記事に出ているという現状でございます。  外国におきましては、したがいまして、大衆保健薬というものがどのようにして承認されているのであろうかという疑問がわくのであります。このことにつきまして、桑原参考人に、それから、どのように使用されているかということにつきまして、桑原佐藤高橋の諸先生からお伺いしたいのでございます。
  26. 桑原章吾

    桑原参考人 ただいまの御質問でございますが、私、不敏にいたしまして、いままで新しい医薬品の認可についてだけ、いろいろな情勢を調べておりますので、大衆保健薬の認可の詳細について、外国の事情をよく存じません。  ただ、外国におきましては、大衆保健薬という形で店頭で一般人が買える薬剤の種類が非常に少ないということだけを承知しております。お答えにならなかったかもしれませんが……。
  27. 佐藤倚男

    佐藤参考人 私も売れ行き、その他はよく知りません。  ただ、最近ほかのことで調べました。アメリカから日本における売り上げの順位の中で、総合ビタミンとしては出ておりませんでしたけれども、アメリカでは乳児用の総合ビタミンが上位百位の何番目かに出ているのは見ました。それくらいしか知っておりません。
  28. 高橋晄正

    高橋参考人 私も自分で外国に行ったときの見聞以外には詳しく調べておりませんけれども、自由に買える薬の数は非常に少なくて、たとえていいますと、胃腸薬と、かぜ薬と、じんましんの薬というのは、ある程度自由に買えるようですけれども、それ以外に、日本のようにビタミンとか保健薬のようなものがはんらんしているのは、ついぞ見たことがない、そういうものは、許可されているとしても、ごく少ないのではないかというふうに思います。これも自分の体験だけで、積極的調査はいたしておりませんので、十分なお答えができないのが残念でございます。
  29. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 時間もございませんので、最後にもう一つだけお尋ねしたいと思うのです。  医薬品の承認ということについてであります。厚生省におきましては、四十二年の十月だと思うのでありますけれども、医薬品の製造承認等に関する基本方針、これに基づきまして実施されておりますが、効力ということについての裏づけの試験であります。この試験の方法を再検討すべきであるという声も近ごろ出かかっておるのでありますが、しかし、その必要はない、万全だ——いわゆる万全と思われるのでありますかどうか。また、それ以前に承認になりました医薬品につきましてはどうすべきであろうか。このままでいいのか、その必要なしというならば、そのようにお答えいただきたいと思います。いまるるお話がございました大衆保健薬というものは、宣伝どおりの効力があるものかどうか。このことにつきまして、先ほどるる御所見を承ったのでありますけれども、あらためて御三人の参考人から伺いたいのであります。
  30. 桑原章吾

    桑原参考人 初めの御質問の四十二年度に出ました基本方針の効力に関する試験でありますが、これは従来の試験に比しまして、かなり医学界の現状とにらみ合わせて進歩したものであると私自身判断しております。  ただ、臨床評価につきましては、それぞれの関係学界の進歩とその評価に関する資料の整備とが当然関連し合うわけでございまして、たとえば精神科領域のように、非常に早くから比較試験の概念を導入した学界と、その導入が比較的おくれておる学界がございます。それらのおくれておる学界に対しては、機会あるごとに十分に比較試験についての意義を強調浸透させることに努力いたしまして、漸次その評価方式についての進歩に努力したいと考えております。  それから、後段の御質問の大衆薬の効力についてでありますが、前に申しましたとおり、認可されました時点では、当時の基準としてはそれに適合する成績が出されておったものでございましょうが、現在のレベルから見てそれに疑問が持たれるならば、当然試験し直しの方法を考えるべきでございますし、また、現在の薬剤の認可が、一度認可されますと、何か大きな問題点がない限り、その認可が取り消されることがないというそのシステム自体に問題があるように私は考えております。
  31. 佐藤倚男

    佐藤参考人 現在の許認可に関しましては、なし得るぎりぎりの線までレベルアップをやっております。そのために、製薬会社または臨床医との間での摩擦が相当あるぐらいにやっておりまして、先ほど触れましたように、年間約百ぐらいの二重盲検試験によるレポートが出てまいりますけれども、その公平性に関して疑われるものがありました場合には、再試験、それから、場合によってはコントローラーとして、もっと、客観的な第三者を置くようにというようなことで、申請されましたものの三分の一ぐらいはそういうことで保留になっております。  それからもう一つ、そういうことについて、製薬会社にいたしましても、かなり慎重になってきたところでは、申請前に、比較的公平で、かつ、うるさいグループに依頼して試験をするようになってきておりまして、その段階ですでに、私の経験では、調べられる薬が三つありますと、そのうちの一つ、三分の一はきかないということが申請前にわかってあきらめている現状です。方法論、完ぺきとはもちろん申しませんが、いまの線で進めていけば、日本の薬の許可の水準は、むしろほかの国よりもよくなるのではないか、会社の言うとおりかどうか、それから、ほかの国の様子はわかりませんけれども、日本はイギリス、アメリカよりもきびしくなりつつある、ことに臨床試験ですけれども、そういうふうにいわれるぐらいでございます。これは新しい薬の登場の場合、要するに入学試験が非常にうるさくなったことであります。しかし、一たん通ってしまった場合には、再評価という問題ですか、再評価の問題はいままでそれほど大きく取り上げられておりませんでした。  きかないかきくか、私の立場では一つ一つやってみてでないと何とも言えませんけれども、私は主として公平性に関する理論なりいろいろな事実を集めながら考えていく立場でございまして、公平性に関しては比較的いいのです。ということは、二つの薬を比べまして、そして、片方に片寄って判断しないという方法論を進めてきております。しかし、薬はきかないと思い込んでいる人がやった場合には、どの人もみなほとんどきかなかったとしてしまう、その場合は、開いてみましても、薬もプラシーボもどちらもきかないということになってきます。二重盲検ですから、薬かプラシーボかわからないままに、有効率がどちらも一〇%近くになってしまう、しかし逆に、薬はきくものだと思っているグループの仕事になりますと、今度はどの薬もきくはずだと思っている、それで有効率が非常に高く出ます。その場合でも、同時にプラシーボも有効率が高く出ますから不公平にはならない、そういう方法論のほうを進めているのでありまして、正確という問題になりますと、また全然別になります。きくかきかないかを検出する能力という問題になりますと、これはその専門の人たちで集まって、その経験から、大体どのような症状が、いつごろに、どの程度によくなるかということをよく見きわめて、そして、それに対する調査項目、それから調査項目を何段階に分けて調べるか、たとえば、非常によくきいた、かなりよくきいた、少しきいた、不変だ、悪化だという五段階評価か、それとも、心理学などで使うこともある九点制をとるかによって感度がまた違ってまいりますし、どの時期にそれを調べるかでも、たとえば、かぜ薬を一週間日に調べたのでは、かぜ薬は全部きかないことになります。これはほっておいても、一週間ですとほとんどなおりますから、したがって、かぜ薬は飲んで三十分から一時間のときに、鼻水はどうかとか、くしゃみはどうかというふうに見ない限り、かぜ薬がきく、ないしは、かぜにきく薬という意味ではないにしましても、かぜのときに使う薬として有用かどうかわからないわけです。したがって、デザインはだれでも自由につくれますけれども、そして、それを公平にさせることはできますけれども、正確にする問題に関しては、われわれが始終見ている患者さんの経過と全然違う対照ということになりますと、たいへんな勉強をしなければならないと思います。  それから、宣伝どおりの効果があるかどうかも、私はまだどうもよくわかりません。
  32. 高橋晄正

    高橋参考人 第一段の問題につきましては、臨床データについては、精密かつ客観的な資料を添えることというふうに四十二年度に書きかえられております。これは内容を、具体的に二重盲検のもとでの同時対照試験というような規定をいたしておりませんので、佐藤参考人が言われますように、現在の新薬調査会のメンバーが現在のような意識で審議している限りにおいては、かなりきびしいものかもしれませんけれども、しかし、その人たちが次から次へとかわっていった場合にそれがどうなるかという保証が全くない。したがって、やはりこれは明確に、どうしても二重盲検のもとでの対照試験ができない場合には、特に審議して除外例を設けるにしても、基本原則として、二重盲検のもとでの同時対照試験を行なうべきであるというふうに規定されることを私は希望したいと思います。  それから、第二段の保健薬についてどう思うかということでございますが、これは私たちが学生と一緒に検討しました本でございますけれども、この中で検討しましたのは、アリナミンその他のビタミンB1誘導体、ハイシーその他のビタミンC剤、ユペロンというビタミンE剤、リポビタンDその他のドリンク剤、マミアン、アスパラ、グロンサン、チオクタンS、パント、パロチン、総合ホルモン剤、この十一種類につきまして詳細な検討をいたしたわけでございますけれども、この範囲内に関する限りは、このような使い方をする限りにおいては、これらは有効であるという保証は一この時点、つまりこれが出版されました一九六八年二月十五日現在におきましては、これらの薬が、このような量において、このような使い方をする限りにおいては有効であるという保証は全く存在しない。平たく言いますと、要するにきかないということであります。  この中で生きる薬があるかといいますと、ビタミンEだけは医療薬として残る可能性はある、しかし保健薬としては世界的に認められていないということでございます。これは臨床試験から見ましてももちろん不合格でございますけれども、基礎医学、現在の世界の医学常識に照らしましても、これはきくとは考えがたいものである。しかも、この中には、何十年たちましても、世界の医学界どこでも使わないものというのが幾種類もございますから、もしそれが真実であるならば、日本の学界だけでなくて、世界の学界でそれは論じられていいはずでございますけれども、そういうこともない、そういうことがありますと、われわれはこういうものはきかないというふうに考えております。
  33. 高橋清一郎

    高橋(清)委員 参考人の諸先生、いろいろありがとうございました。  時間もありませんので、これで終わります。
  34. 濱野清吾

    濱野委員長 田中武夫君。
  35. 田中武夫

    ○田中(武)委員 参考人の御意見を伺いながら大臣に質問したい、こう思っておったのですが、大臣、時間の都合で途中で出られるそうでありますので、はしょって一点だけお伺いいたします。  その第一点は、きょう参考人に来ていただいております高橋晄正先生から、さきに大臣に対する公開質問状というのが出ておると思います。それに対してまだ回答を得ておられないようですが、これに対してどうお考えになっておるのか、なぜ回答がおくれたのか、回答する気なのか、する気はないのかどうか。  それからもう一つは、先ほど来いろいろ御意見を伺っており、私、前からそういう意見を持っておるのですが、それは薬事法の六十六条に、薬の広告に対する誇大広告の禁止の規定があります。ところが、それが十分に守られていない、さらにまた、製薬の許可基準、あるいは一たん許可をしたのが、いまのようないろいろの御意見のあるように、むしろ害がある、こういうようなことであるなら、それを取り消すというようなことに関連をいたしまして、こういう点について薬事法の改正が必要ではないか、このように思うのですが、薬事法の広告あるいは許可、あるいは、一たん行ないました許可を取り消す基準等々について、法を改正する考えがあるかどうか、その点だけをお伺いいたしておきます。
  36. 内田常雄

    ○内田国務大臣 まず第一点の、高橋暁正氏から厚生大臣に対する質問書でございますが、本年の二月に私のところに届きまして拝見をいたしております。  高橋先生はその学界におけるその方面の研究深い方であると私は存じておりますが、中身は二重盲検法等に関するたいへん専門的なことでございますし、これが第一点と、それからその方面におけるごりっぱな学者であられることは私も承知をいたしておりますが、学界等を代表した質問というものでもございませんで、個人的の御質問という形でもございますので、したがって、一国を代表する厚生大臣としての私からこの御質問に対して答えるのに的確な筋のものでもないように考えまして、この内容につきまして、私どもも薬務局の部門がございますので、そのほうには十分披見をいたさせまして、高橋先生の御所見を部内としても十分検討をいたすことを申しつけておりますけれども、私から御回答を申し上げるつもりは現在のところございません。  しかし、これはおそらく中身も御承知だと思いますけれども、何丁目何番地高橋晄正というお手紙でございまして、カッコの中にも東大講師、こういうようなことでございますので、私は、高橋先生が御希望があられますならば、いつでもお目にかかって、その方面を担当する大臣といたしまして、高橋先生の御研究の成果等は聞かしていただく機会は得たい、そういうことで、私も勉強はさしていただきたい、こういうつもりでございます。  それから、第二点の広告の問題でございますが、これは薬事法にも御承知のように規定もございますし、また、事が薬のことでございますので、むやみに誇大あるいは虚偽広告をなすべき性質のものでもございませんので、厚生省の部内におきましても、広告等に関する指導基準のようなものをつくりまして、そして、その基準に従って業者を指導いたしておりますほか、このごろにおきましては、業界自身もこのことに思いをいたされまして、業界自身の一つの自粛基準のようなものもつくられておると聞いております。したがいまして、私どももこの点につきましては、今後におきましても十分誤りなく指導をいたす所存でございます。  しかし、テレビ等でだいぶはでな広告も私どもの目にも、正直のところ入ります。広告業界につきましても、私どものほうでも調査をいたしておりますけれども、広告費総額というものは、薬の生産額、あるいは日本の経済成長が伸びるにしたがいまして、これは電通等につきまして調べたものによりましても、このところ毎年若干づつ伸びておるようでございますが、総広告費の中における割合は少しは減っているというような状況もあらわれてはおりますけれども、これらについては、感心はいたすものではありませんので、今後ともその指導方針を貫いてまいりたいと思います。  それから、法改正の問題につきましては、一ぺん承認をされた薬について、いろいろさらに再検討をする必要が起こったり、取り消し等の場合につきましては、はっきり法改正をして、そして、そういうようなことをしたらどうかというお尋ねかと存じますが、すでに承認された薬の再検討は、もちろん私はものによってはなすべきだと思います。しかし、ここで問題にされておりますような二重盲検法によってこれらを再検討するというこになりますと、私は専門家ではございませんが、専門家のお話によりますと、一つの再検討をするのに相当広範囲の疫学的と申しますか、また何年かをかけての再検討が必要になるというような問題もございますので、これを一律に並べて再検討ということは、なかなか技術的にも専門的にもむずかしい問題があるということでございますので、これは私どものほうにございます専門方面の方々とも打ち合わせをしまして、そしてその結果、法改正の必要があるということでございますならば、何にいたしましても、国民の医療のため、あるいは保健のための医薬でございますので、私は、的確を期するためには、研究の結果によりましては法改正もいたす必要もあろう、こういうふうに考えまして、検討さしていただく所存でございます。
  37. 田中武夫

    ○田中(武)委員 私は、許可の基準と、一たん許可したのを取り消す、この点について法改正の必要はないか、それと、もう一つは、広告の取り締まり、そう言っておるわけです。簡単に……。
  38. 内田常雄

    ○内田国務大臣 広告につきましては、いま述べましたとおり。それから、一ぺん承認したものを取り消す場合につきましては、これはなかなかやっかいなことですが、その必要があるというならば法改正もいとわない。承認のことにつきましては、いまの法律に基づきまして、先ほどもお話が出ましたように、法律に基づく新しい承認基準というものをつくりまして、それがかなり厳重にいっているという面もございますので、法律の改正をいたさなくても、法律に基づく承認基準というものの運用で、私はいまのところやっていけるものと考えております。
  39. 田中武夫

    ○田中(武)委員 意見はあります。また高橋先生に、公開質問状についての意見もあります。だが、時間の関係、同僚委員の質問の関係等もありますので、あらためてお伺いをする、そういうことにいたします。
  40. 濱野清吾

    濱野委員長 時間がありませんから、大臣に対する質疑だけを許します。高田君。
  41. 高田富之

    高田委員 一言だけ伺っておきたいのです。  実は、大臣も御存じのことと思いますが、昨年の予算委員会におきまして、佐藤総理に対しまして、大衆保健薬のきき目につきまして、再検討する必要はないかということについていろいろお話を申し上げましたところ、総理も、非常に問題が重大なので、ぜひこれは再検討する方向で進めたいという御答弁があり、続いて分科会におきまして、当時の斎藤厚生大臣に、特にこの点について、総理の発言を生かしてやられる意思があるかということを御質問いたしましたところ、全面的にといってもなかなか容易じゃなかろうが、とにかく、先般あげられたような十種類かそこらのおもな大衆保健薬については、早急に総ざらいをする、洗い直しをするということを、実は確約されておるわけです。私も非常に期待して、その後の経過等について注視しておりましたところ、たまたま、ただいまの高橋晄正先生が、私の分科会における質問をもとにいたしまして、そのような公開質問状を出されたことをあとで実は知ったわけであります。  そこで私も、これに対する回答はぜひ必要だと思って、先般委員会で御質問をしたわけなんですが、私は、ただいま参考人の各先生方からもお話がございましたように、本格的に大衆保健薬を総ざらいするということは、確かに好ましい、しかし、これをやるには非常に大がかりにやらなくちゃならないし、それだけの機構をつくるとか、あるいは立法措置をやるとか、たいへんなこともあろうというようなお話がありましたが、少なくともあれだけ政府が確約されましたことについて、この間のお話を聞きますと、この一年間、若干着手されたようです。しかし、そのかまえ方というのは、本格的にやり直そうというかまえ方が実は残念ながら受け取れないのであります。非常に残念なのでありまして、そういうようなこともあって、実は委員長のお考えもあり、きょうのこういうふうな参考人の方々をお呼びするということにもなったと思うのですが、大臣に、私はこの問題の重大性について十分お考えを願いまして、これは前大臣からの約束でもあることですから、総ざらいについては、必要とあればその道の有識者の方にもお集まり願って、佐藤先生ですか、いま参考人の方からも一そういう御提案があったわけですが、特別な機構をおつくりになって、本格的に着手する、その関連した問題についても十分検討されましてやってもらいたいと思うのです。それがまたお約束でもあるわけですから、ただいま何か、大臣の御答弁によりますと、これから検討して、というようなお話ですが、やるということについては、腹がまえはすでに政府としてはさまっているもの、こう私受け取っておりますので、具体的なことについては御検討願わなくちゃなりませんが、その点について、もう一度念のため、大臣の御決意といいますか、御方針をはっきりと承っておきたいと思います。
  42. 内田常雄

    ○内田国務大臣 正直に申し述べまして、大切な問題でございますので、私、先入主にとらわれないで、高田先生の御意見を謙虚にただいま聞いております。  昨年の衆議院の予算委員会の第三分科会における前の厚生大臣の答弁に関連しますその後の措置につきましては、これは私がここで思いつきで申し上げるわけではございませんで、そういうお尋ねがあることを実は想定をいたしまして、昨日、省内でも会合がございまして、私が振りつけを受けておるわけであります。  それは、前の厚生大臣の答弁がありましてから、御指摘の保健薬につきましては、承認後行なわれた臨床試験等を収集し、調査を行なってまいりましたけれども、その結果は、現在までのところ、いずれも有効であると報告されている状況にあります。  なお、昨年九月に中央薬事審議会に一般用医薬品特別部会を設けまして、かぜ薬の承認基準について検討をしていただいており、その他の大衆薬についても、種類ごとに逐次承認基準を定めていく考えである、今後とも、再評価の問題については前向きの検討をしてまいりたい、こういうことでございます。  ただ、臨床評価の方法自体につきましては、先ほども申し述べ、また参考人の方々からもいろいろ御意見がありましたが、その方法はどういう方法がいいかということについては、どうも臨床関係の学界で論議がある問題でもございますので、そういう進展に合わせて、中央薬事審議会の意見を聞きながら、今後ともできるだけ客観的な評価が行なわれるよう配慮いたしたい、こういうことでございますので、たとえば二重盲検法によって全部を再審査するということは、これは無理だろうということになっておりますが、しかし、いまの大衆保健薬をそのまま放置するということではなしに、高田先生の御所論も私は謙虚に受け入れまして、そして当局指導して善処をいたしてまいりたいと思います。
  43. 濱野清吾

    濱野委員長 鳥居君。
  44. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 時間がありませんので、かいつまんで伺いたいと思います。  厚生省がこれまでに製造許可をしてきた薬品、医薬品の数は、昭和四十四年現在、十万五千三百二種類に及んでいるわけです。この中には、いまもお話にありましたとおり、整理をしなければならない薬品がかなりあるように思います。ところが、さきの大臣の答弁の中にもありましたけれども、現在の薬事法の精神からいきますと、内閣法制局のほうの見解は、副作用がなければその取り消しができない。これを考えてみますと、FDAあたり、これは食品薬品庁、こちらのほうでは、きき目のないような薬はどんどん回収して、かなり強い措置をとっておる、こういう観点から考えてみまして、薬事法の改正は、そういった意味で急務であるように思うわけです。  たとえば、さきにこれは広告することを禁じられた薬の中で、ベルツガンという梅毒によくきくといわれていた薬でありますけれども、結局きかないことがわかった。きかないことがわかって、そして製造許可の取り消しができるかというと、それができない。厚生省がとった措置は、広く売ることをなるべく押えたいという弱い措置から、広告するのを禁じた、こういうふうに私ども受け取っておるわけでありますけれども、こういうように、確かに年々薬の数はふえております。十万種類をこえるような、しかも、その中にはもう役に立たないような薬があるわけであります。この整理を早急にやるべきだと思う。そのためには、ただいま田中委員のほうからも話がありました薬事法の改正をすべきである、こう思いますけれども、大臣、どうですか。
  45. 内田常雄

    ○内田国務大臣 毎年相当の数にのぼる薬の承認をいたしておるようでございます。しかし、世の中が進歩してまいりますので、かつて承認をした薬でもその後再検討の対象になるべきものは、私は、正直に申して、あるのではないかと考えます。ところが、法律の改正をいたさなくても、ほんとうに前の承認が誤りであった、また、前の承認と、条件その他が違ってきて、今日無効であることが客観的に学界等の検証によって認められます場合には一行政行為によって承認をいたしたものでありますから、今日の薬事法上も承認の取り消しということはできる、こういう解釈に私どもは立っておりますので、取り消しの条文がないから取り消さないということではございません。  ただ、きくか、きかないかということにつきましては、これは、私は門前の小僧ですが、厚生省に入りましていろいろ議論を聞いてみますると、これは非常に議論のある問題で、いまのアメリカのFDAとか、あるいはキーフォーバー委員会などがありまして、理想論に従いましてきかないという判定を下しましたところが、きかないというその判定については、また非常な反論が起こりまして、ほとんどが訴訟の対象になってきておるというような問題もございますので、このことにつきましては、学界の方面とも薬の種類ごとによく打ち合わせをいたしまして、その必要があるものにつきましては、医薬行政をあずかる私どもといたしましても、正しい進み方をしてまいる所存でございます。
  46. 濱野清吾

  47. 箕輪登

    箕輪委員 きょうはたいへんお忙しいところ、三人の参考人の方々がおいでになりまして、貴重な意見の陳述を聞きまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。  そこで、単刀直入にお尋ねをいたしたいと思いますが、その前に、先生方に私自身のことを打ち明けたいと思いますが、私も北大出身の医者でございます。しかし、専攻科目が外科でございましたので、薬については幼稚な知識しかございませんで、幼稚な質問になるかもわかりませんが、お聞きをいたしたいと思います。  まず、高橋晄正参考人が出された公開質問状、これはお話には聞いておったのでございますが、私、初めて拝見いたしました。その八行目「拝啓」を入れますと九行目になりますが、「そのために、わが国でいま大衆保健薬として販売を許可されているものに、改めて科学の論理によって検討を加えてみますと、」云々ということが書かれております。わが国でいま大衆保健薬として販売を許可されている薬がありましょうか。あれば、どういう薬が販売を許可された薬か教えていただきたいと思います。
  48. 高橋晄正

    高橋参考人 保健薬の扱い方は制度が変わっておりまして、医療薬と一般大衆向けとが数年前に区分されたはずでございます。私がそこに大衆保健薬と申しましたのは、俗に、大衆が自由に、健康に役立つと宣伝されて飲んでおる薬というのは、かなり常識的なことばでございまして、特に私どもがその背後に言っておりますのは、先ほど申しました約十一種類のお薬でございます。
  49. 箕輪登

    箕輪委員 ちょっと異なった意見を持つわけでありますが、最近薬事法か何かで一般の薬と医家向けの薬と区別をされたというふうに記憶しておりますが、というお話でございますが、これは薬事法上も大衆保健薬というものは全く認められておりませんし、また大衆楽という規定も一向にないわけであります。また学問上も、大衆薬というもの、あるいは大衆保健楽というものは規定が行なわれていないように私は思います。厚生省の見解をお尋ねいたしたいと思いますが、いかがでしょう。
  50. 加藤威二

    ○加藤説明員 薬には、私どものほうの取り扱いでは、大衆保健薬という区別のしかたは、法律上もございませんし、事実上もやっていないわけでございます。薬事法の上からはそういう薬の大衆とか医療用という区別はございませんが、私どもの行政上の取り扱いといたしましては、昭和四十二年から、許可いたしますときに、医療用の医薬品として許可するか、あるいは大衆用の医薬品として許可するかという振り分けはやっておりますが、これは行政上の処置でございます。したがって、大衆保健薬としてのそういうカテゴリーはないということでございます。
  51. 箕輪登

    箕輪委員 それでは、大衆保健薬として販売を許可したということはないわけですね。これからの質問をする際に、大衆保健薬の定義というものを知らないと、どの範囲まで拡大していくかわからぬものですからお尋ね申し上げてみたわけです。
  52. 加藤威二

    ○加藤説明員 大衆保健薬として許可したということではございません。
  53. 箕輪登

    箕輪委員 また高橋先生にお尋ねすることになりますが、これまで厚生省で承認されたものについて、先ほど御説明を聞いておりましても、五カ所の研究所、そして百五十以上の臨床報告がついていなければ、これはもう薬事審議会にも何もかからない、承認されない、こういうことに聞いているわけですが、高橋先生は、これらの臨床報告は全く無価値なものと断定されるかどうか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  54. 高橋晄正

    高橋参考人 試験例として、こういうことに使ったらこうであったということ、つまり、著しく有害であったとかいうことがないという参考にはなると思いますけれども、その薬を使ったためになおったという客観的な評価には耐えがたいものだと思います。
  55. 箕輪登

    箕輪委員 時間があまりございませんから、突っ込んだお話はまたいずれかの機会にお尋ねしたいと思いますが、あまり価値のないものだ、こういう言い方でありますが、これはたいへんなことだと私は思うのです。  いま十種類ほどのいわゆる大衆保健薬を例にあげられましたが、いままで許可承認をいただいている薬というものは、医薬品を含めれば、先ほどの質問にありますとおり、たいへんな数であります。これを全部ダブルブラインドテストをやらなければ、その効果あるいは薬の再評価をやらなければわからない、疑わしい、こういうことであるならば、もうあすから病院の治療も全部やめなければならない大問題になると思うのであります。  そこで、先ほど十種類余りのいわゆる大衆保健薬については、高橋先生は、これは効果が疑わしいということばではなしに、平たくいうと無効である、きき目がない、こういうふうにおっしゃいました。私はいまこうして衆議院におりますが、やはり学問の世界におるときには、これはきき目がないということであるならば、みずからが自分できき目がないというデータを出さなければならないわけであります。しかも、それを学会という専門知識を持った人々の集まりの世界で討論に付さなければなりません。しかるに、高橋先生にお尋ねしたいことは、この先生のお書きになった本を読んでみますと、冒頭に、昭和四十一年でありますか、五月祭から引き続き一年半にわたって問題の検討を続けてきた。これはいろいろな文献を海外からも集められて、そうして御研究されたことは、私はその労を多とするものであります。しかし、これはきかないという立証をされるところのデータをお持ちでしょうか。これはきかないという御研究をあなたはやられたことがあるでしょうか。あるいは、あなたが提唱されているところのダブルブラインドテストをあなたみずからがおやりになって、学会に出されたことがあるでしょうか。もしあったならば、それをお示しいただきたいと思うのであります。
  56. 高橋晄正

    高橋参考人 私が申し上げておりますのは、厚生省が薬を許可しました時点において、科学的な根拠なしに許可しているということを指摘しておるのでありまして、それがいわゆる大家の経験と直観によって太鼓判を押されて、厚生省は、学者がいいというからいいと言って、窓口を通過させるという形で通ってきたわけでありますけれども、そういう十万になんなんとする薬を、私が全部きかないということを一人で証明することは不可能であります。したがいまして、一番いい方法は、きくという証拠のないものは、この際一切御破算にしてしまう、そうして、きくというならば、そのきくというデータをその会社で出す、あるいは、それを信ずる学者が出すということを私は考えるべきであろうと思います。  それからいま一つ、自分できかないという実験をやったことがあるかということでございますが、これは自分でやらなくたって、ほかの人がやったデータでも、その実験そのものが誤りでなければ幾らでもデータがございます。  一例をあげますならば、これはまだ未発表論文でありますけれども、私がもう一つ薬の徹底的な批判の本を書いておりますので、武田薬品に、ほんとうに疲れにきくという証拠があるならば出してほしいという要求をしました。これは大阪朝日新聞の四月二十二日に、高橋は昔のデータで疲れ、神経痛その他にきかないと言っているけれども、最近、新しいちゃんとしたデータがあるから間もなく発表をするという新聞報道がありましたので、それを見て私は要求したわけでございます。そうしましたところが、私はいま本を書いておるのであるからということで、それに載せてもよろしいということでいただいたので、ここで御紹介いたしますけれども、これはまずその武田のデータを先にお目にかけまして、あとで私どものやりましたデータをお目にかけます。  これは、要するに高熱作業者に対して、乳糖とアリナミンの五十ミリとを比較した。二十五ミリではだめで、五十ミリで乳糖と比較して、やっとひっかかったというデータがございます。しかし、これはごらんのとおり精神疲労についてでありますけれども、早出組の場合には、先にアリナミンを飲ませて、あとで乳糖を飲ませましても、若干の差はございます、一〇%かそこらぐらい。しかしながらおそ出組では全く差がない、逆に、乳糖を先にやりますと、全く差がない、それから夜勤組でも全く差がない、こういうデータが出ております。したがいまして、これは私はおかしいと思って飲んでみたのですけれども、乳糖を飲んだのとアリナミンを飲んだのでは、胃の感じではっきりわかりますので、これはダブルブラインドになっていなかった、ダブルブラインドが破れていたという証拠であろうと思います。  それからもう一つ、こちらのほうは一般疲労に関する問題でありますが、これもおそ出のほうでは、乳糖を先に飲ました場合には、アリナミンを飲ました場合と比較しますと、かえって乳糖のほうがいいという結果も出ております。こういうことがありますので、この実験はまだ分析方法その他について統計学的にもかなり問題がございますけれども、決してこういう高熱作業者における疲労に対するアリナミン効果も、安定的なものではなくてかなり問題がある、不安定なものであるということは一つ言えるだろうと思います。  それから、私自身はいままでどれだけ薬効検定をやったことがあるかといいますと、これは表面に出ているのはほとんどございませんけれども、ある会社のために、約二十種類ほどの薬のデザインをし、解析をしてやったことがございます。それを持ってきてもらってはまた検討し、持っていっては向こうでやりということをしたことがございますが、ここに私どもはアリナミンと乳糖との比較ではなしに、にんにくエキスと司をまぜたもの、これとの比較をしたデータがございます。いま二つほど予備実験をやっておりますが、それによりますと、これはまだ予備実験で、十分まとめておりませんけれども、どちらを飲んでも、やはり健康で働いている集団に飲ませますと、かえって副作用が出てくる。特にこの例でごらんになりますと、全身がだるくなりますのは、アリナミンを飲んだほうがはるかに強い。にんにくエキスのほうでも若干ありますけれども、それよりもはるかにひどいということであります。それから第二に、頭がぼんやりするという症状につきましても、これはにんにくエキスのほうは多少もちろんございますけれども、アリナミンのほうが断然多い。ここら辺からどんどんいやだと言いまして、脱落が始まりまして、もうここから先はあんまり信用できないデータになりつつあります。朝、目がさめないという症状につきましても、アリナミンのほうが断然多い、こういうことがあります。  どうしても自分でやれと言われましても、これは全部はとてもできませんから、私どもが学者として、学者というのは薬効検定、製薬会社と薬務局がどんどん許可しましたものを掃除係をやるのがつとめではございませんので、私らは学問的に興味があるものはいたしますが、そういう意味におきまして、これからもやるかもしれませんけれども、そういうものを全部自分で反論しろということは、これは学問のあり方と厚生行政のあり方を、もう少し整理して考えていただかなければならないのではないかと思います。
  57. 箕輪登

    箕輪委員 ただいま少なくともきき目があるという立証の行なわれない薬は全部廃止すべきである、こういう高橋参考人のお話であります。  さて、しからばそれを立証するといっても、これは臨床報告も全部ついておりますし、先ほど来いろいろなその基準のお話もございます。さあこれはたいへんなことだと思うのです。それを再評価するためにダブルブラインドをやれということを提唱されているわけでありますが、先ほどのお話もございますように、最近はその他の精神神経用剤やあるいは鎮痛消炎剤等においてはダブルブラインドテストをやっておるようであります。しかしながら、この一般向けのいわゆる大衆保健薬というもの、これがはたしてダブルブラインドテストができるかどうか、私は非常に疑問を持つんです。なぜならば、同じような生活条件、環境のもの二グループを集めなければできません。そうして一定の期間同じような条件のもとに管理をしなければできないわけです。あるいは、ある者は徹夜でマージャンをするかもしらぬ。国会議員は徹夜で国会審議をやることもある、酒を飲む、何時から何時まで寝せても、やはり夜、夜中に疲れるようなこともある。セックスの問題はどうなるかというような問題が全部違うわけであります。それから、いまいわゆる大衆保健薬といわれているものは、ほとんどがビタミン剤であります。ほとんどがビタミン剤である場合には、そのプラシーボと有効成分のビタミン剤と分けて飲ませるだけじゃなしに、全部食事をとらせない方法もとらなければ、正確なデータは得られないような気がするんです。食事の中から幾らでも、あるいはその他の薬品の中にたくさん入っているんです。これは相当むずかしい問題じゃないかと思うのです。  時間がございませんから、私の私見は申し上げませんが、ちょうどそういうことを考えておりましたときに、昨日、私、宿舎へ帰りましたら「薬事日報」、昭和四十五年の五月の十六日、ついこの間、土曜日に発行した郵便物でありますが、薬学博士川崎近太郎先生、近大の薬学部長だと思うのです。そうして、この第三番目にこう書いてあります。「二重盲検はできない」とはっきり書いているんですよ。それを見ますと、川崎近太郎先生は——御承知でない方もいらっしゃるかと思いますので申し上げますが、ビタミン剤に関する限り、わが国の最高の権威者であります。私はそのように承知しておる。「大衆保健薬といわれるが内容はビタミン剤で、T博士の目標とされるのは」——T博士というのは、おそらくこれは高橋先生じゃないかと思うのですが、  易吸収性B1剤である。いわゆる「活性B1剤」の治験例が二重盲検法でやってないという点が主たる追及点であるが、これらの医薬品は吸収されてB1になって有効になるのである。ところがB1は食品の中にあるしビタミン剤以外の医薬品にも多く配合される。プラシーボを与えても強化食品をとったりしたら、B1は必需量以上摂取されるし盲検にならない。またB1の効果については疑う余地もなく、B1欠乏症に一〇〇パーセント効くものであり、特に易吸収性であるから効果てき面である。  逆にB1が欠乏していないとき、どのくらいB1を摂取するか分らないときいかに方式にかなった二重盲検をやっても、仮りに有意の差が出たとして「活性B1剤」の効果といえるかどうか問題である。活性B1剤で効果が出れば普通のB1剤で効果が出るかもしれないので、活性剤B1特有の効果かどうか判定できない。  合成医薬品その他の薬物の効果判定では二重盲検ができるが、脂肪やアミノ酸の二重盲検をやって薬用効果を見ようという人がいないと同じように、ビタミンの二重盲検で薬効判定ということはできない相談である。  二重盲検はできないといったが、厳密にB1欠乏を盲検につかってやれば効果の出ることは自明の理である。しかしやっても実際の用法の参考にならない。 はっきりいっているのであります。  こういうところから考えてみて、相当困難なことだと思います。しかも、こういうところで、国会で、二重盲検をやったほうがいいとかやらないとか論議をするのは、これは私は、場所を間違えていると思うからであります。やはり先ほど国立衛生試験所長さんがおっしゃった、これは学会の場で早急に御検討されて——しかし、できないと私は思うけれども、学会がもしこれをやれ、専門団体がやれということであるならば、国民に不安を与えないように早くやっていただきたいと思うのであります。ただ、学会で論議がつくされてないものを、自分の考えだけで、一般大衆に不安を与えるような本でもって訴えるという手段は、これは自分自身で思うのでありまするけれども、私は手段として適切でないような気がいたします。したがって、その薬の承認にあたって一番最高の責任は、何といっても、薬事審議会よりも厚生省であります。国民に不安を与えないような再評価の方法があるならば、それを求められて、すみやかに国民の不安を解消していただきたいということを要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  58. 濱野清吾

    濱野委員長 高橋参考人、何かお話ありますか。
  59. 高橋晄正

    高橋参考人 川崎近太郎先生の御意見を引用されましたけれども、川崎先生は薬学者でございまして、人間の意識そのものによる心理作用が問題になるような二重盲検については御経験がないと思われますので、二重盲検ができるかできないかということは、臨床家の論ずる問題でありまして、薬学者の論ずる問題ではないというふうにいま考えるわけであります。  それから、すべてを二重盲検をやるのはたいへんた、だいへんだと先ほどからおっしゃっておりますけれども、二重盲検などやるまでもない、世界の学界水準に照らして、明らかに無意味な薬はたくさんございますから、それだけで何十分の一かに減らすことが可能であります。それをまず先に整理すべきである、残ったものについて、これは有効そうであるということが世界の学界に照らして明らかなものだけ二重盲検をやればよろしい、私はそういうふうに考えます。
  60. 濱野清吾

    濱野委員長 田中武夫君。
  61. 田中武夫

    ○田中(武)委員 時間の関係もございますから、まとめて御質問申し上げて、それぞれの方から御答弁をいただきたい、こう思うわけであります。  参考人の三先生、特に高橋先生の御意見を伺いたいのですが、先ほど私、厚生大臣にも申しましたが、薬事法の六十六条以下に薬の広告の問題に関しての規定がございます。ところが、これが実際は空文化しておるのが現状であります。そこで私は、これをもっと適確に運営できるように改正すべきではなかろうかと思っております。  たとえば、聞くところによると、外国の事例では、一般に対して広告を禁止する、そして薬剤師、医師といったような専門家にのみ、たとえばその専門家のための専門誌のようなものですね、そういうものにのみ広告を許す、そういうような立法例もあると聞いております。そういうような方法をとるべきではないか、こういうように考えられますが、御意見はいかがとお伺いいたします。  さらに、薬の許可にあたっては、害がなければ許可をする、こういうのがいま一般にいわれております。また、先ほど来の御意見、論議があるように、一部害があるといわれても、一たん許可したものを今度は取り消しすることは——大臣はできると言っております。できるだろうと思います。しかし、はっきりとそのことを法に明記する必要があると思います。そういうような点について法改正の必要があると思うのですが、どのようにお考えになるか。また、他の二人の先生にも特に御意見がございましたらお伺いをいたしたいと思っております。  さらに、石舘説明員にお伺いいたしますが、先ほどあなたはここで意見を述べるときに、専門的なことは学会でやるべきである、そのようにおっしゃいました。しかしながら、この決算委員会が、専門的な方々から御意見を伺いたい、そういうことで委員長を中心としての理事会等できめまして、来てもらって専門的な立場からの御意見を伺っております。それを、先ほども論議がありましたが、そんなことはここで言うべきでないということは、いささか言い過ぎであろうと思います。お取り消しになったほうがいいのではなかろうかと思いますが、御所見はいかがでございましょうか。  さらにもう一点は、先ほどの御意見の中で、現状が好ましいとはあなたとしても認められていないようです。しかしながら、それを全部洗いかえるとするならばその被害が大きい、だからできないんだ、やるべきでないというような御意見のように伺いましたが−首を振っておられますが、違っておれば訂正していただきたい。悪いとわかっておっても、そのほうのことでたいへんだ、だからやるべきでないというような印象に承ったのですが、でなければ訂正をしていただきたい。  次に三先生、参考人の方々を含めてお伺いいたしますが、薬務局長、薬の値段は一体どうしてきまるんです。薬の値段のきめ方、ことにいま問題になっている大衆保健剤とでもいいますか、そういうのの値段をきめることについて、たとえば一定の基準を設けるとか、このようなことは考える必要はないのかどうか。薬は一体どのようにして値段がきまるのか。たとえば、先ほども、外国におきましては胃腸薬とか、かぜ薬等々しか一般には売っていない、こういうような話がございました。コンタクト六〇〇というのがいま宣伝せられております。先年——二年ほど前です。私がアメリカへ参りましたときに、サンフランシスコでは、このコンタクト六〇〇はスーパーマーケットで売っておりました。日本の値段に比べると、ばかなほど安いものです。もちろんあのようなぎょうぎょうしい包装はしておりません。びんの中へ三十個とか五十個とか入れたやつがそのまま置いてある。これはばかなほど値段が安い。それが日本に入ってくると、一個一個ぎょうぎょうしい包装をして、いままたびんに入れたやつを売っているようですが、そうして何十倍の高価なものとして販売せられております。  このような点について、今後薬価の決定に対してどのような行政指導をしようと考えられておるか。私は基準を設けるべきではないかと思うが、参考人の三先生の中に、特にそのことについて御意見がございましたら、お伺いいたしたいと思います。  以上、まとめてお伺いいたしました。残余の時間は、同僚高田委員に譲ります。
  62. 濱野清吾

    濱野委員長 参考人の御三人の方々に申し上げます。御意見がありましたならば、ひとつお答えを願います。
  63. 田中武夫

    ○田中(武)委員 いや、高橋先生には特に名ざしで申し上げておるのです。
  64. 高橋晄正

    高橋参考人 先ほどおっしゃいましたように、外国に行ってみますというと、この日本のように薬の広告がべたべた出ている国は、私は見たことがございません。それで、これは聞いてみますと、自分のからだがどういうふうに悪くて、何を飲んだらいいかということを自分ではなかなかわからないから、おかしいと思ったら医者のところへ行って相談をするんだ、それを、広告でつられて、あなたはこうこうこういう症状がある場合にはこれを飲みなさいというようなことは、商業資本が薬を売っている以上は非常に危険であるというようなことを言う外人がございます。私はもっともなことだと思いますので、たとえて言いますと、土地会社が、ガス、水道あり、駅から三分というのが、メタンガスが出て、水道は雨が降れば水が流れていくというような、駅から三分というのは新幹線で三分などという笑い話がございますけれども、こういうものに対してわれわれは非常に警戒いたしますけれども、なぜ薬の宣伝に対してだけ警戒しないのか、こういう点がございますので、これは私は当然広告は取り締まるべきであると思います。  先ほど、専門家に対する宣伝はよろしいだろうというふうにおっしゃいましたように思いますが、これは、先ほど言いましたイギリスのセインスバリー卿のレポートによりますと、医師に対するサンプルつきの広告を送るのも、医師からサイン入りの請求書があったときだけ送ればいいのであって、それ以外はあまり利用されていない、したがって、これは国家的に不経済であるからやめたほうがいいというようなことが書いてあったと思います。私はこういう点で、大いに日本では自粛すべき点があると思います。  それから、薬の値段でございますが、これは私あまり多くを知りませんのですけれども、実際に、ある医師会製薬というのがございまして、そこを見学に行ったとき聞いた話でございますが、直接そこの製造責任者から聞いたのですけれども、現在のアリナミンの一万円に相当するものの原価は、五百円でわれわれはつくれるということを言っておりました。こういう事実がございますので、現在かなり高いものをわれわれは飲んでいる。それから、先ほどのアリナミンの五十ミリのは、いま二十五、六円か三十円ぐらいすると思いますが、もしにんにくエキス研でよろしければ、一錠一円二十銭でございます。二錠で二円四十銭でございますから、もし同等であったとしても、そちらのほうがはるかに経済であるということになります。  それから、薬の検討に関する法改正は必要かということでございますが、私は、これはぜひしていただきたいというふうに考えております。
  65. 桑原章吾

    桑原参考人 ただいまの御質問の初めの広告の規制の問題でありますが、私ども、従前は医家向けの薬品であっても何であっても、かなり一般的な広告が行なわれておりましたが、たとえば、悪性腫瘍にきく薬とか、抗菌剤その他特別な薬力学的な製剤について一般の広告をする必要は全然ないと思いましたので、かなりその面を強調しまして、相当前から医療用の医薬品につきましては一般の広告はされない状態になっております。一般用医薬品につきましてはかなり広く広告されておるようでありますが、高橋参考人が言われましたように、その広告はかなりオーバーであるように私は考えます。これは何かの形で規制されることが望ましいと思います。  それから第二点の、医薬品の許可にあたって、害がなければ、効果はどうあろうとも許可するかどうか、そういう意味でございましたが……(田中(武)委員「というのが現状のように聞いておるが、法改正はどうするかということです」と呼ぶ)現在の新薬承認の基本のデータにつきましては、効力についての試験、それから安全性についての試験、両面とも相当高いレベルのものを要求しておりますので、現在の時点で、害がないだけで許可するという事実はないと信じます。ただ、御存じのように、こういった問題は、学界の進歩の現状と並行して進歩していくものでありまして、現状から、たとえば昭和三十三年なり三十五年なりの許可の資料を調査すれば、これは非常に不十分な点があろうかと思います。これはその時点での学界の進歩とにらみ合わせて考えなけれ、ばならないと思います。  それから、薬の価格につきましては、私、基礎医学を専攻しておりまして、多分にそのほうに暗いので、全然存じません。
  66. 濱野清吾

    濱野委員長 佐藤参考人から御意見ございませんか。
  67. 佐藤倚男

    佐藤参考人 先ほどの御質疑について、簡単に御回答申し上げます。  私もここへ出されておるのは、専門家として呼ばれているわけでございます。ただ、ここの席で特定の薬品についての学問的な評価は、これはデータを持ち寄ってお互いに学会の席で論ずべきことではないか、こう申し上げたわけでございます。誤解のないようにお願いします。  第二の二重盲検に対する私の所見でありますが、私は二重盲検は大いに尊重すべきものだと思っております。現在でも薬事審議会において、先ほどの調査会においては、これをできるだけ活用するようにとすすめているということを私、伺っております。何%かはそれを要望しております。ただ、それは十分に条件が備わらないときには誤りをおかすことがあるんで、われわれはこれがだんだん拡張していくようにいろいろな整備をすることを要望する、病院を設定するとか、医者を設定するとか、そういうことがあって初めてこれが有効に活用できるんじゃないかということを申し上げておるんで、決して逃げておるわけではございません。これは正しくその結果を呼ぶためには、相当な準備と犠牲を払わなければいかぬということを申し上げたつもりでございます。
  68. 田中武夫

    ○田中(武)委員 薬価については意見ないのですか。
  69. 佐藤倚男

    佐藤参考人 私は行政のほうじゃないですから……。
  70. 加藤威二

    ○加藤説明員 薬価についてのお尋ねでございますが、いわゆる大衆薬の薬価については、先生十分御承知のように、法的にもこれは国がタッチできるということではございません。全くの自由競争でございまして、いかなる薬にいかなる値段をつけるかということは、それぞれのメーカーの自由にまかされている、こういう段階でございます。  それで、薬の値段が妥当かどうかということはなかなかむずかしい問題でございまして、原価計算等につきましても非常にむずかしいようでございます。薬とか化粧品というものは、原価がなかなかわからない商品の代表的なものになっております。それから、薬につきましては、場合によっては研究費がうんとかかるというものもあるわけでございます。  そういうようなことで、私どもも、たとえ法律的な権限はなくても、私のほうで、この薬はこういう値段であるべきだといはっきりしたデータでもあれば、また行政指導のしかたもあるかもしれませんが、そういうものはなかなかつかめないというのが現状でございます。ただ、薬の七割は医療用医薬品でございまして、これは薬価基準ということで、厚生省のほうで薬の値段をきめております。  この薬価基準についても、もちろんもっと引き下げるべきであるとかいういろいろな問題もございます。私も、ものによっては相当引き下げていいというような感じもいたしますが、これは、いろいろな薬価調査等によりまして、そのデータに基づいてやるべき、だと思いますが、そういうものとのバランスというようなことを考えて、私どもも、目に余るものがありましたならば、行政指導という形で、今後とも薬の値段については、メーカーが自主的にみんな消費者の納得するような薬の値段をつけていくというようなことに持っていきたいと思いますけれども、なかなかむずかしい点があるということを先生も御了察願いたいと思います。
  71. 田中武夫

    ○田中(武)委員 高田委員に譲りたいと思ったのですが、もう一点だけ高橋先生に、特に法改正について、こういうようにすべきじゃないかというような御意見があれば、お伺いしたいと思います。  それから薬務局長には、現在においてはいま言われたような状態であるけれども、これだけ普及し、あるいは問題化しておるわけなんです。物価の問題という点からいっても、私は、一定の、ことに大衆薬といいますか、保健薬については基準を設けたらどうなんであろうか、設けるべきじゃないかと思うのですが、現状の説明でなくて、そういうことがたいへんだとかどうとかということでなくて、その必要があると思うのか、なくてもいいと思うのか、その点だけお伺いします。
  72. 高橋晄正

    高橋参考人 ただいま、特にこの法改正についての希望があらばということでございましたが、これは新薬の許可の場合には、現在の委員たちはそのことを意識しておるにしましても、委員が次から次とかわった場合に危険性がございますので、特に不可能であるという特殊条件がない限りは、二重盲検のもとでの対照比較実験を義務づけるというふうにしていただきたいと思います。  それから、特に戦後の乱れた時代に許可されました薬、つまり一九四五年以後、少なくとも昭和四十二年、一九六七年までの間に至る薬は再検討する委員会をつくっていただきたい。そのためには、まず、先ほども申し上げましたが、世界の学界の水準に照らして無意味と思われるものを排除する、それから、特に日本だけで使っていて、よその文明国で使っていないものは、調査員を派遣してその理由をただすことによって、その理由が明らかである場合はいいけれども、不明な場合には、あるいは悪いほうにはっきりしている場合にはそれも取り消す、そうして、世界の学界に照らしてみても、なおかつ妥当性を持っていると思われる薬についてだけ慎重に検討をするというような委員会をつくるように法改正していただきたいと思います。  先ほど、二重盲検は非常にむずかしいじゃないかというような御意見もございましたけれどもい実験計画法というものは、そういうむずかしい場の中で、いかにしてわれわれが真実をつかむかということのためにつくられた学問でございますので、少し専門的な勉強をしていただきますれば、先ほど言いました、マージャンをどうする、セックスをどうするという問題は全部解決できます。フィッシャーが農事試験場でなぜそういう実験計画をつくったかといいますと、農地というものは、一見して平らのように見えていましても、でこぼこでございます。そのでこぼこの中において、しかもなおかつ、こちらの肥料がいいとかこちらの品種がいいということの選抜をいかにしてやるかという苦労の中から生み出されたものでございますので、われわれ人間における比較試験の場合には、その論理がそのまま使えるものがだいぶございます。したがって、実験計画法の段階においては何ら不安はございません。
  73. 加藤威二

    ○加藤説明員 いまの先生の御質問、非常にむずかしい御質問でございますが、医薬品というものは、人間の生命、健康にかかわるものでございまするから、一般の商品とは私はある程度違った性格を強く持っていると思います。したがいまして、その値段につきましても、メーカーがそういう消費者の弱みといいますか、それにつけ込んで、ものすごく暴利をむさぼるということは、他の商品に比べてそういう事態があるとすれば、それは非常に好ましくないと思います。  しかし、では、それをどういうぐあいにそういう規制をしていくかというと、これはなかなかむずかしいということは、先ほど申し上げましたし、まず基準をつくる——おまえの考えはどうかとおっしゃれば、私も、理想論としては、そういう客観的な適正な基準ができて、それにメーカーが積極的に協力してそういう値段を守っていくということができれば、これは理想的だと思います。しかし、そういう基準といいますものは、たとえば、薬につきましてはいろんな研究費も要ります。私は日本の製薬企業はますます研究費をたくさん出してもらいたいと思います。そのためには、ある程度適正な利潤もあげなければならぬ、こういう問題もございますので、薬の値段をどうするかということは非常にむずかしい問題でございますが、理想論としましては、みんなの納得するような、メーカーも積極的に協力するような、そういう適正な値段というものができれば、それは一番理想だということは言えると思いますが、なかなか実現は困難であろうというぐあいに考えるわけでございます。
  74. 田中武夫

    ○田中(武)委員 実現は困難だろうなんて、初めからへっぴり腰でできるはずはありません。しかし、きょうはほかの委員の質問がつかえておりますから、あらためて厚生省にはものを申します。  以上で私の質問を終わります。
  75. 濱野清吾

  76. 高田富之

    高田委員 最初、局長にちょっと伺いますが、私がこの問題に興味を持ちましたのは、別に薬の専門家でもないし、お医者さんでもありません。ただ、物価の問題を検討しておりますうちに、これだけ膨大な消費量があり、これだけ異常と思われる宣伝費を使っておる。しかも薬の消費量を調べましたら、日本人の薬の消費量は、所得に比例する比率でいって、世界で飛び抜けて一番でございます。それからまた、これだけ膨大な生産量がありながら、輸出がわずかに数%にすぎない。これは大衆医薬品ばかりでなく、全部の医薬品でも数%です。ということは、これだけつくっているけれども、使用しているのは日本人だけという事実、それから、保険が赤字でどうにもならぬというときに、保険財政の中身を見ると、医薬品で半分ぐらい食ってしまっている、これまたパーセントでいうと、世界で飛び離れて一番大きい。いろんな面から見まして、これは異常である、これは日本における異常現象であると考えざるを得なかったのであります。  したがって、これは単なる学会でどうとかこうとかいう問題じゃない、重大な政治課題である。なぜ日本だけがこんなに異常な医薬品というものが生産され、消費されておるのかということ、これは大きな問題でございます。そういう点で実は取り上げておりますので、問題の重大性というものをやはり政治の場で深刻にとらえるところから出発しなければならぬと思うのです。先ほど来いろいろ、そういうものは専門の学会でやればいいとかどうとかいう御議論も相当ありますけれども、そういう次元の問題ではないと私は考えるからこそ、今日までいろいろ専門家の方にもこの問題で特に御意見をお聞かせ願いたい、こう考えておるわけなんです。  厚生省は政府の立場で、すでにずっと前から国会の問題になっておるわけでありますから、いまどういう考えでこの問題に対処しているのか。大臣がもうお帰りになっちゃったけれども、あなたはよくお考えを述べていただいて、政府として真剣に取り組んでもらわなければならぬと思うのですが、こういう問題を、異常な現象、どこかに大きな問題がある、メスをふるって正常化しなければならぬという立場に立っておられるのですか、それとも、これはあたりまえの二とでいいことだというふうにお考えなんですか。
  77. 加藤威二

    ○加藤説明員 薬のわが国における使用量の著しい増大という問題、これはこの前の決算委員会でもお話し申し上げましたけれども、やはり医療保険制度の中にも相当問題がある、こういうぐあいに考えます。したがいまして、医療保険の抜本改正等とからみまして、この薬の問題もいまのままでいいとは私どもは考えておりません。やはりいま現在におきましては、医療保険におきましても、あるいは大衆薬におきましても、いろいろ薬の面においてむだがあるだろうということは私どもも否定できないわけでございます。どのくらいのむだがあるかということは、これはなかなか数量的には計算がむずかしいわけでありますけれども、しかし、医療保険制度を適正化することによって、もう少し、医療保険においてほんとうに必要な薬を必要な量だけ使うというようなことも可能になってくるのではないかという感じがいたします。それは医療保険の抜本改正のほうでやっていただくということになろうと思います。  もう一つの大衆薬の問題につきましては、これも私は、日本人の食生活、非常に淡泊なものを食べるという食生活との関連もあろうと思いますが、とかく、そういう薬にたよって栄養のバランスをとっていくというような考え方が、諸外国に比べまして強いような感じがいたします。これは日本人の食生活その他の関連による特殊性というぐあいに考えられますので、まあ大衆保健薬を諸外国以上に日本人が好むということそれ自体が、絶対的に悪いということは言えないと思いますけれども、しかし、ほんとうの栄養というものは、一番バランスのとれた食事でとるということが理想でございますので、やはり薬を、大衆保健薬であろうとも、浴びるように飲むということは好ましくないと思います。その大衆保健薬の効能、効果につきましては、これは私どもも、二重盲検法という問題がございますが、これが、大衆保健薬についてほんとうに二重盲検法で点検することが事実上可能であるという、またそれが非常によいということであれば、私どもはそういうことに進むことに決してやぶさかではございません。しかし、いろいろ聞いてみますと、これはなかなかたいへんな問題のようでございますので、そういう点も関係の学者方の御意見も十分伺いまして、その上でやるべきものはやる、こういう方向でやりたいと思っておるわけでございます。
  78. 高田富之

    高田委員 石舘先生に伺いたいのですが、先ほどの御説明の中で、いま私が質問しました問題に非常に関連のある御発言があったので、あらためてお考えをお聞きしたいと思うのです。  宣伝については行き過ぎもお認めのようではありますが、しかし、それよりも何よりも、国民の啓発だ、国民の啓発によってそういう宣伝にひっかかったり何かしないような教養を高めればいいじゃないかという御意見、また一方、業者が自粛していくという指導をしたらいいのじゃないかというようなお考え、それから、たくさんのいろいろな薬が出て市販されているというようなことは、これはいまの局長のお話の中にも実はちょっと出ているので私は気になるのですが、個人的な好み、あるいは、いま言った食生活の特殊性からくる個人的好み、薬に親しむという日本人の習慣、これは一種のいい習慣みたいな——私はいまこの現象を、これは非常に重大な薬事行政の問題であり、政治の問題であり、制度の問題かなということから重大視しているわけですが、一方、それとは正反対にお考えがあるとすれば、たいへんこの考え方は違うわけなんで、もう一度念のため、石舘先生のこの現象に対するお考えをお聞きしておきたいと思います。
  79. 石舘守三

    石舘説明員 ただいまの御質疑、まことにデリケートな問題でございます。説明がようできますかどうか。  私が申し上げたのは、現状、つまり薬品というものを、普通の物質と同じように、宣伝によってこれを使わせるとか、いわゆる商品としての考え方を、薬は別に考えなければならぬものだ、薬というものは、どこまでも国民の健康、生命にかかわるものだという一つの概念は徹底させなければならぬ、これは業者にも徹底させなければならぬ、売りさえすればいいんだというものではない。そういう意味において、けしからぬやつはいつでもあるので、そいつを幾ら縛ってもなかなか根本的解決にはならぬ、やはり業者それ自身に、薬に対する観念というものを道義的なもので自粛させていくということが一つ、一方において、そういう宣伝に誤らないような社会的教養も深めていくということも、私はどうしてもこれはやっていくべきものだということをお話し申し上げたわけであります。  とかくこれは、日本は特別な過当競争の状況にありまして、日本ほど医薬品の生産額が多いところはほかにもありません。そういう意味で、いい面がありますと、それには必ず弊害が伴ってくる、この弊害をできるだけ——政府当局におきましても、たとえば広告を許可制にする、かってに広告を出さぬで、許可制にするとかいうようなことも考えられていいんじゃないかということを、私個人としては考えております。  もう一つの点は、東洋——ことに日本だけではないのです。東洋の薬に対する考え方は、いろいろな歴史的伝統がありまして、昔は和漢薬、民間薬が国民の健康を保全した歴史を持っております。また今日でも、お医者さんが薬を与えるということも、そういう習慣を脱し切れない慣習からきているものと考えている。薬石に親しむということは、自分の健康は自分で守るという精神は、正しい意味において指導されることはいいのでありますが、これがいわゆる宣伝に乗って誤った使い方をするということは、これはぜひ是正していかなければならぬということを申し上げておったつもりでありますが、東洋におきましては、とかく、薬は自分のからだに合ったものを自分で選択するという習慣がついているんじゃないか。日本国民が薬の恩恵に浴するのは他の国民よりも非常に多いということのいい面を私はネグレクトはできない、しかしながら、それに対して伴う弊害は、できるだけ協力して、官、学者、学界及びメーカーそれ自身も自粛して、これを善導すべきであるということを申し上げたわけであります。
  80. 高田富之

    高田委員 おっしゃることの意味がわからないわけではないのですが、現時点で政府の薬事行政に相当の大きな影響力をお持ちになる立場にある方としては、私は、そういういまの現状を半ば肯定するような立場からでは、思い切った薬事行政の刷新というようなことは期待できないような気がして、非常にその点が実は残念なんです。  そういういい面も確かにあるのでしょう。しかし、いまはそれを強調することではなしに、その欠陥をこそ強調しなければならないんじゃないかな、私はそう思うのです。それは、先ほど局長のことばにも、食生活が簡素だから云々といいますけれども、肉や野菜を食うかわりにビタミン剤を飲むという、この不健全にして最も消費生活を破壊するような、経済的にも問題になるようなことが行なわれていること自体は憂慮すべき事態なんで、そういう点で全くきびしさがない。非常に私は残念なんです。いろいろな雑誌や何か見ましても、日本は製薬天国だなどということばも書かれているのを見て、なるほどな、製薬天国、世界でまれに見るほど製薬業者にとってはここは天国なのかと思いたくなるような状況がたくさんありますね。そういうときに、薬事行政を担当される方は、製薬天国なんということばが出ていることは、これは全く不面目しごくなんですが、それを、これは日本人のよき慣習の一つでもあって、薬の恩恵に浴する点では世界じゅうで一番いいようなことも——全然そういうことがないと私は言おうというのじゃありませんが、いまこの時期に言うことばとしては、まさに製薬天国万々歳のほうにくみするような印象を少なくとも与えるのですよ。これは私は非常に残念だと思うのです。  そこで、今度は高橋先生にお伺いしたいのですが、先生はこういう質問状をお出しになった。ところが、業界の新聞や何か見ますと、先生が一生懸命こういうことを言ったり本を書いたりしているけれども、だれも相手にする人がいない、孤立無援だというようなことで、叫んでも一向響かないのだというようなことがちょっと書いてあるのですが、それほどさように先生が孤立無援で、日本じゅうのお医者さんや製薬業者や、あらゆるところから、学界からも孤立して一人で苦しんでおられるのかどうか。こういう質問状や何か——ここのところを見ますと、空欄にたいへん賛成者の名前が書いてあるようになっているのですが、はたしてどういう状況で先生はこういうことをおやりになっておられるのかを、ちょっと御説明願いたいのです。
  81. 高橋晄正

    高橋参考人 ただいま、厚生大臣に対する質問状をどういうようないきさつで出したのか、また、はたしてそれは孤立しているかという御質問がございましたが、そもそもの始まりは、私たちが先ほどの「保健薬を診断する」という本を出しましたときに、ある業界新聞に、何課長だかいま覚えておりませんが——製薬課長ではなかったかと思いますけれども、国が許可したものを批判するとはけしからぬ、調査の上、法に従って処分するという談話を出された方がおられます。私たちは——医科歯科大学の佐久間助教授、共著者でありますが、二人で、それはおもしろい、それじゃさばきを受けようじゃないかという話をしたことがございますが、一向にそのさばきの通知がないものですから、じゃ、こちらから出かけていこうかという話をしたことがありましたけれども、そのうち大学の中のごたごたが起こりまして、それもさたやみになってしまい、また佐久間助教授はスイスへ留学に行かれた、私はそのあとを承りまして、消費者行政に手伝わされてでしょうか、長野県の婦人会十六カ所、これは県庁の企画部の講演ですが、それから東京都の生活科学センターその他十カ所、神戸の生活科学センター一カ所、こういうところに昨年の夏からことしの初めにかけまして二十数カ所講演させられましたけれども、その中で、国民の中から、話はわかった、しかしそれだけわかっているのなら、なぜそれを厚生省に行ってとめさせないのかというきびしい反撃が起こりまして、なるほど、そうやりますと、いかにもあの本をダシにして講演料かせぎをしているような感じを持たれても、これははなはだぐあいが悪いということで、厚生大臣にお伺いをしてみたわけでございます。  その講演会の席上で、それでは、皆さんの御希望もありますから、私はそういうことをいたしましょうということで出しましたら、私たちも署名するからぜひやってほしいということがございました。これはいまお手元に差し上げましたような公開に踏み切りましてからでございますが、その前は私信としてお出ししましたけれども、一カ月たってもお返事がございませんので、公開にいたしまして、それではみんなで質問しようじゃないかということで、それを知り合いの方々のところへ配ったわけであります。     〔委員長退席、丹羽(久)委員長代理着席〕 ここにその方々から返ってまいりました署名簿がございますが、これを集計してみますと、今日までで現在、総数が二千五百四十五名でございます。内訳を申し上げますと、医師が三百七十七名、看護婦、保健婦百五十五名、薬剤師二十八名、その他の医療関係者五十一名、医学生、薬学生が三十六名、一般人が千八百九十八名で、合計で二千五百四十五名でございまして、決して孤立しているわけではございません。  それから、これはどういう方々が署名されたか、全部お目にかけられませんですけれども、その中で、皆さんも御存じかと思われる方々の名前をちょっと申し上げてみますと、九州大学の高橋正雄教授、物理学者の武谷三男先生、徳島大学の学長、小児科の北村義男教授、国保連合会の事務局長の菊地武雄さん、駒沢大学の丹羽小弥太教授、映画監督の今村昌平さん、東京女子大の松尾均教授、東京新聞論説委員の木屋和敏、東京大学の教養学部の教授小野周、東京外語大学の教授伊東光晴先生、前の東京大学医学部長吉川春寿先生、栄養学の教授でございますが、宮崎の社会保険中央病院の三原七郎院長、東京医科歯科大学の島本多喜雄教授、岩手県の水沢市長の高橋忠八さん、その他大ぜいおられます。こういう方を初めといたしまして、現在二千五百四十五名おられて、まだまだ拡大されておりますので、かなり全国民的にこの問題には関心を持っておられるというふうに私は考えております。
  82. 高田富之

    高田委員 ただいまお聞きしましたのはほんの一部なんでしょうが、その名前の中にも私どもの知っている方もだいぶあるわけですが、実は私がこういう問題にたいへんな疑問を持ちましたときに、私自身が接触しました医学界における第一級の大家と思われるような方々が真剣に心配をしておられ、そして、さっき高橋先生もおっしゃったような方々が、学問的にはとっくに結論済み、有効性なしときまっていることがいつになってもだめなんだということを慨嘆されておるわけなんですね。いまの名前の中にも若干知っている方がございます。それはまだまだふえるというならば、そういう趣旨に、先生のような御研究や御主張に同調されるような方々の氏名は、できればこれをひとつ広くたくさんお集め願って、この委員会に資料として御提出をいただきたいと思います。何か風変わりな変わり者の高橋先生があらわれて何かやっておるということでは軽視されてしまうわけですが、いまのお話では、とてもそんなものではない、事態はきわめて深刻かつ重大というように私はほんとうに感じておるのです。ですから、ぜひこの点は委員長におかれても、そういう資料を今後ともこの委員会に提出されるように御配慮を願いたいと思います。  そこで、先ほど高橋先生のお話の中で、二重盲検でこれから調べなければならぬものばかりじゃなくて、すでにその必要もない、世界の学界において全く結論済みのものだってたくさんある、それを整理しただけでも、三分の一ですか三分の二ですかくらいすぐ減るだろうというふうなお話があったわけですが、私どもが日常名前に親しんでおるような薬で、これはすでに決定的だ、もう議論の余地なしといわれるものに、たとえばどんなものがございますか。
  83. 高橋晄正

    高橋参考人 一番はっきりしておりますものは、ここに石舘教授がおられるのでちょっと申し上げにくい点もございますけれども、グロンサンでございます。
  84. 高田富之

    高田委員 そのほかに……。
  85. 高橋晄正

    高橋参考人 たとえばアリナミン、こういうB1と何かくっつけまして非常に吸収されやすくしたようなもの、これは私はアメリカのFDAに問い合わせまして、こういうものがアメリカで申請されたことがあるのか、許可されているのかということを聞きましたら、こういうものは申請されたことはない、それから、医師の処方なしで売られている薬の中には、こういうものは存在しないという返事がございました。  それからビタミンCでございますが、このビタミンCも、アメリカで学生や看護婦を使って、かぜ引きにきくかとか何か、いろいろなテストをしましたけれども、これもまずほとんどひっかかっていない。したがって、ビタミンCはビタミンC欠乏には必要でありましょうけれども、一般の健康を増すとかなんとかいう意味においては、これは全く問題ない薬になっております。  それからビタミンEも、エヴァンスというビタミンEの発見者を記念するシンポジウムがアメリカにおいて行なわれましたときに、それまで世界じゅうで出されております論文を全部整理いたしまして、これはまずだいじょうぶだということを専門家が審議した中には、保健薬的なものは全部落ちておりますから、それはございません。  それから、リポビタンDの仲間のようなものは、これは飲んでみると何となくきいたような気がしますけれども、この正体は何かといいますと、中のカフェインという興奮剤とハチみつ、ものによってはアルコールが入っている、つまり安ウイスキー、安コーヒーがこの中にひそめてありまして、それがきいたような感じがするのでありまして、この中の薬そのものがきくのではないということも周知の事実であります。  マミアンというたん白質の配合剤でございますが、これもアメリカの学者は、同じグラムのたん白をとるならば、やはり肉のままでとるのが一番いい、それを水解しても損だし、こういうふうにばらばらに分解しても損だという実験をいたしております。  アスパラにつきましては、先ほど申し上げましたが、これも食品の一部でありまして、アスパラとして飲みましても、このアスパラギン酸は、われわれの食品の中に含まれている量の約十分の一でしかございませんし、これは幾らでもつくれるものでありますし、カリウムはわれわれ食物の中から大量にとり過ぎて、それでナトリウムで追い出しているわけでございますが、これも要らないもの、マグネシウムに関しましても、現在その不足症状は確認されておりませんし、アメリカ医師会では、一、二年かそこら新薬種に入れましたけれども、現在削除いたしております。  それから、グロンサンはすでに先ほども申し上げましたが、一九五〇年から——これは許可になったのは五一年でございますが、大体一九五〇年から五五年の間に、製薬会社でつくる裸のグロンサンは結合力を持たない、これが結合するためには、肝臓の中でUDP、すなわちウリジン・ジホスフェートというエネルギー物質、つまり火薬を装てんされたグルクロン酸でなければだめだ、製薬会社で売っているのは燃えかすだというような意味のことが確定いたしまして、これは世界のどこの生化学の本にも現在書いてあります。  それから、これが基礎的な問題でございますし、その次、臨床的に問題は、これはアイゼンベルグというアメリカの学者が、解毒抱合の効果なし、力なしということを、実際に人間で証明しておりますし、私たちが調べましても、対照をきちんと置いて有効であるということを実証している論文はございません。こういう点がございますし、現在世界の学界どこを見ましても、こういうグルクロン酸なんというようなものは、肝臓薬だとかなんとかいうことには使われておりません。したがって、これも世界の学界では解決済みと考えてよろしいと思います。  チオクト酸に至りましては、これは発売されて間もなくのころ、私ども副作用で患者さんを悪くした経験を持っておりますので、おかしいと思って調べてみましたら、これはアメリカでは肝臓毒であるといって、させばさすほど動物の肝臓が悪くなるということをウィルトシャフターというのがちゃんと実験で証明しておりまして、肝臓の悪い人間には使うなと書いているのが、これは日本では肝臓薬として売られております。現に、これは飲む分にはさほど害がないのかもしれません。健康な人が飲む分には害がないのかもしれませんけれども、これは、チオクタン研究会とかグロンサン研究会とかアリナミン研究会といういろんなところの肝臓病学者が集まって、いろんな薬を検討します際の報告書を三つ並べてみますというと、グロンサンなんかの場合でありますと、これは肝硬変という肝臓のひどい状態に使われましても、数%しか悪化率がないけれども、チオクタンは二七、八%ぐらいひどく悪化いたしまして、これは私ども三例ほど経験いたしましたし、また、報告はされてないけれども、陰でいろんな方々が言っておりますのを聞きましても、これは注射した場合にはかなり肝臓障害を起こす薬であるというふうに考えております。  パント錠につきましても、パントテン酸ですが、健康人、人間におきましては、これの不足症状というものは現在確認されておりませんので、これをわれわれが一般の保健薬的な意味において国民に飲ませなければならないという意味はない、特別なこのパントテン酸欠乏の症状があった場合なら別でございますが。  それから、パロチンというものは、これは四十年前に唾液腺ホルモンとして学説が出されまして、その後、その中からある種のたん白質がその実体として抽出されたのでございますけれども、このたん白質が、注射する場合には別々のアンプルに入れておいて水と溶解しなければならない……
  86. 高田富之

    高田委員 先生、時間がありませんから、名前だけでけっこうです。
  87. 高橋晄正

    高橋参考人 そういうことでございまして、少なくともわれわれがここに掲げてありますのは、全部これは無意味なものでございます。世界の学界でまあ結論が出ているものでございます。
  88. 高田富之

    高田委員 時間が参りましたから、またの機会にしまして、一つだけ、いまお話が出ましたので石舘先生にお伺いしますが、グロンサンは先生御発明なすったのですか、私よく知らないのですが……。御発明なすったのだとすれば、あれほどはっきり言われるのですが、なるほど、一時一世を風擁したグロンサンというのは、このごろ影が薄いように思うんですがね。これはひとつどういうふうに処理をされたのか、先生御自身。それからまた、局長さんとしては、これはどういうふうな御処理をなすったのですか。それだけお伺いしまして、質問を終わります。
  89. 石舘守三

    石舘説明員 どうも特にさされて、きょうここへ出てきているものですから。  実は私はグロンサンを、いろいろな薬物の解毒、体内の解毒に効能があるという動物実験の結果から、これを世に提供する価値があるということで、たくさんの臨床家にお願いしてやったわけです。ただ、高橋さんが言ったのは古いだけ——つまり、私が申し上げたいのは、大衆薬なんていうのは、臨床的に有意の差を見つけるのは、非常に大がかりな二重盲検でもやらなければわからぬ、ただ、われわれたよるところは、動物実験が正確であるという前提がなければ薬は許しておりませんと思います、これは審議会の前提として。その薬がはたしてこういう作用があるかないかということは、十分動物実験においてテストされた後に臨床に回すのですから。臨床においてはいろいろなケースがありますから、これはしかし、臨床に人間と動物の違いがありますから、直ちに動物実験できいたから人間にきくだろうということは言えません。その差は常に考えながらしなければならぬ。いまのグロンサンのことも、私ここで言うのはまことに遠慮したいんですけれども、これも日本でいまでも売れております。また外国でこのものを所望しております。フランス及びイタリアにこれを相当輸出しております。  これはやはり解毒——これは、その当時はわからなかった作用機構が、いわゆる解毒を守るという、つまりグルクロン酸が毒物にくっつくんじゃなくして、からだにはくっつく機構が自然とありますから、それを分解する酵素を阻害するという重大な作用があるということがその後わかった。これはあとで学問が進歩すると説明がわかってくる。説明がわからないものがたくさんあります、薬というものは。これはその医学の程度が、その段階ではまだそこまで説明は達してない。たいがい薬というものはそのメハニスムス、その作用機構というものはあとから研究されるもので、そのときは何だか知らぬけれども、きいた、理由がわからぬ、理由がわからぬからこれはきかないんだということは、はなはだ薬物の研究に障害をなす問題でありまして、グロンサンはいい例でありまして、当時は理屈がようわからなかった。現今はりっぱに説明がつく材料もありますので、提出しろというなら提出する準備がありましょう。しかし、私はいま直ちにそれを研究するわけじゃありません。  ただ遺憾なことは、これを世に出す場合に、いわゆる商社が過剰な宣伝をしたり、目に余る宣伝をしたこともあるということを、私は常に苦々しく思っている。したがって、学問的にこれを伸ばすことに非常に障害になったということは、私はいまでも脅えております。現在はこれを外国で再評価しているということは確かであると思います。
  90. 加藤威二

    ○加藤説明員 グロンサンにつきましては、ごく最近までの臨床例を約三千六十九例、これは東大その他の二十八施設で、その臨床例が私どもの手元に出てまいっております。その有効率が大体七〇%というような報告になっております。  それから、ただいまお話がありましたが、外国にも昭和四十四年で約五億八千万、これはフランス、イタリア、西ドイツ等に輸出されているという現状でございますので、いま私どもといたしましては、グロンサンについて直ちにどうこうするというようなことは考えてないわけでございます。
  91. 高田富之

    高田委員 いろいろいまの御答弁に対しての高橋先生の御意見もありましょうけれども、時間がもうきておりますので、またあとの機会に譲ることにいたします。
  92. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員長代理 鳥居一雄君。
  93. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 私は薬にはずぶのしろうとで、たいへん素朴な質問をいたしますけれども、現行の薬務行政について業界紙等を読んだ知識で伺うわけでありますが、特に大衆保健薬の中で非常に出回っている種類の多いドリンク剤についてでありますけれども、この内服液剤は大体何種類ぐらい現在出ておりますか。厚生省のほう、いかがでしょうか。
  94. 加藤威二

    ○加藤説明員 はっきりした数字はございませんが、大体のところでございますが、約三百ぐらいという推計でございます。
  95. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 さきに国立衛生試験所で試験を行なったそうでありますが、時の経過とともにそのききめがなくなってくるいわゆる経時変化、これについて研究成果をまとめたそうでありますが、ビタミン耳とビタミンCについてその概要説明を伺いたいと思いますが、石舘さん、いかがでしょうか。
  96. 加藤威二

    ○加藤説明員 国立衛生試験所におきまして昨年でございますが、ビタミンB1とCにつきまして、一年間、衛生試験所に置いておきまして、内容がどういうぐあいに変わったのかというのを検査したわけでございます。その検体は四十一検体ございましたが、平均値でございますが、ビタミンB1につきましては表示量の九八・七%になっていた。ですから、ビタミン耳については、一年間ではあまり変わっていなかった、ごくわずか減っていたということでございます。それからビタミンCにつきましては、二十二検体でございますが、これは平均値で表示量の八四・三%、ですから約一五、六%ビタミンCの含有量が減っていた、こういう事例が出ております。  ただ、これにつきましては、いろいろメーカーによって技術格差というものがございまして、なかなか一律ではない。いまのは平均でございますが、メーカーによっては非常に保存のよくきくものもあるし、そうでないものもある、こういうばらつきが相当ある、こういう結果でございました。
  97. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 経時変化があることがわかったわけですね。その点、どうですか。
  98. 加藤威二

    ○加藤説明員 程度によりまするけれども、やはり経時変化があるということはわかったわけでございます。
  99. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 私も少々勉強したのですが、ビタミンB1については大体二年から二年半、ビタミンCにつきましては、これが著しく、大体一年で経時変化が起こる、こういうふうにいわれております。特にビタミンCにつきましては、非常にこわれやすくて、半年で経時変化が起こるという学説もあるくらいであります。特に内服液剤を調べてみますと、ただいまの答弁にもありましたとおり、メーカーによって経時変化の格差がかなり出ている、こういうことであります。  さきに、これはリポビタンDの主成分になっているタウリンでありますけれども、この経時変化について、国立衛生試験所で試験をした、その結果、やはり経時変化があることがわかったということでありますけれども、このタウリンの経時変化について発表を避けて、これを公表しなかった、こういうふうに聞いておりますけれども、この点、いかがですか。
  100. 石舘守三

    石舘説明員 ビタミンB1、ビタミンCは、経時変化により変化する性質を持っているということは確かであります。ただ、経時変化を保護するいわゆる安定剤というものも同時にあるのでありまして、必ずしも——それは単味で水に溶かしておきますと半年ももたないのでありますが、これを適当な方法において安定化しますと相当もつということもわかっております。現在、おそらくそういうものの中には安定剤も同時に、許可されておる安定剤を付加して使っておるんじゃなかろうか。ただ私どもは、はたしてそれが規定どおり入っているか入っていないか、ときどき抜き取り検査をやっており、一斉検査というものを去年ビタミン耳、ビタミンCを含んだすべての製剤についていたしました。落第するものはそうたいしてなかったように、私は監視課から伺っているのですが、私ら、やった結果をただ監視課に報告するだけで終わるのです。  タウリンの問題は、私、どうも聞いたんですけれども、ただそれは、リポビタンじゃなく、ほかの薬だったそうです。タウリンの手入れをしたこともあります。しかし、タウリンは非常に安定なものです。ビタミンCとかBなんかのようにこわれるものじゃないと私は思っています。何か、含有量が不当であったということがあったようでありますが、私、はっきりとそのことは承知しておりません。
  101. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 先ほど厚生省のほうでは、約三百種類というお話でありましたが、私のほうの調べでは大体千二百から千六百種類ぐらいのばく大な種類のものが現在市販されておる、こう受け取っております。そうして、しかも内服液剤には有効期限が明示されておりません。ただいまのビタミンB1あるいはビタミンCというのが、たいがいドリンク剤には入っているわけでありまして、これは明らかに経時変化があることがわかっており、有効期限が明示されなければならない、私どもはこう考えるわけであります。しかも、公の機関の研究の結果、そのデータが出ているわけでありますし、前の国会だと思いましたが、衆議院の物価問題特別委員会、ここで消費者保護基本法に附帯決議をつけまして、食品にある有効年月日を薬品にもっけるべきだ、こういう附帯決議がなされているわけでありますけれども、いまだにこれがないわけです。これは一体どういうことですか、局長
  102. 加藤威二

    ○加藤説明員 御指摘のとおり、前の国会でも、衆議院の物価問題特別委員会でこの点についていろいろ御質疑を受けたわけでございますが、私どもといたしましても、やはり薬につきましては、そういう経時変化をするものがあるということでございますので、何らかの方法でそういうものを表示するということは必要だろうと思います。そういうことで、いろいろ業界とも話し合いをし、附帯決議もございましたので、その御趣旨に沿って関係方面といろいろ折衝しておるわけでございますが、いまのところ、ただいま申し上げましたように、たとえば有効期限をつけるといたしますればどのくらいの期限をつけたらいいのか、これはメーカーによっていろいろ違う、その技術格差によりまして、あるいは中に入れる成分によりましていろいろ違う、こういうことになってまいりますので、ドリンク剤にいたしましても、A社のものは二年とか、B社のものは三年とかいうことになるかもしらぬ、はたしてそういうことでいいかどうかという問題もございます。また、むしろその有効期限ということじゃなくして、製造年月日にしたらどうか、製造年月日にすれば、消費者がそれを見まして、これは少し古くなっておるからやめておこう、もっと新しいものをくれというようなことで、消費者がある程度そこで選別できるというようなこともございますので、そういう方向で、どういうことにすれば一番いいかということを現在検討中でございまして、まだ最終的論が出てないという段階でございますが、私どもといたしましては、そういう国会の附帯決議がございますので、できるだけ早い機会にこういう問題を前向きの姿勢で解決してまいりたいというぐあいに考えております。
  103. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 私は、これは業界のある新聞でありますけれども、国会議員の一部に、任意の団体でありますが、製薬議員の懇談会がありまして、かなりの圧力が厚生当局にもかかっている、こういう記事を読んだことがあります。この有効期限の表示について、前向きの姿勢で取り組むべきだと私は思うわけでありますが、どうもいままでの経緯を見てみますと、もたもたした感じがする、そう受け取れてならない。ともかく、前向きの姿勢で有効期限の表示ができるように、ひとつ検討していただきたいと思います。  それから、先ほど大臣にお尋ねいたしましたけれども、梅毒にきくといわれておりましたベルツガンについて、厚生省のほうでは広告掲載を禁止した、こういう措置を一昨年とっておりますが、これはどういう理由によるものですか。
  104. 加藤威二

    ○加藤説明員 これにつきましては、そのベルツカンの中に、ある程度——そういう効能というものは絶対にないわけではないわけでございますけれども、梅毒の治療というものはやはり専門のお医者にかかって的確にやるべきであるということで、一般の大衆薬にそういう効能、効果をうたいますと、大衆がそれでなおそうということになりますと、せっかくなおるものもなおらなくなる、こういうようなことで削除したというぐあいに私は聞いておるわけでございます。
  105. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 そうしますと、要するに、現状においてはベルツガンのたぐいの薬は使われてないわけですよ。もう幾年も使われてないような薬が、整理できないままになっているわけです。まあ常識で考えてみまして、このたぐいの薬は製造許可を取り消す、消極的にこれを処理する場合には、広告の掲載をやめさせて、次第に使われない薬として社会が葬っていく、こういうことになるわけですけれども、一ぺんこうした薬について特に整理をする必要がある、私はこう思うわけです。年年、薬でありますから日進月歩進んでいく、昭和四十三年現在、これは厚生省の数字ですが、十万二千七百六種類の薬が製造許可になっております。この中にもかなりの数の使われない薬があるわけです。年々ふえていくわけでありますから、また、そうしたものが消費者の私どもにとりましては、やはりきくという判断のもとに買う場合もあるわけであります。これをひとつ整理してやっていく考えはないかどうか伺いたいと思いますが、どうですか。
  106. 加藤威二

    ○加藤説明員 ただいまのべルツガンなんかはそのほかの効能もあるようでございますので、そういうことで、まだ薬としては普通に使われているということのようでございます。  いま御指摘のように、確かに、厚生省で許可いたしました薬は十万をこえておる、しかし、現実に出回っておるものはその半分にも満たないだろうといわれておるわけでございます。結局、その十万の中には、許可だけとって、ほとんどいま製造を中止しているという薬もたくさんあるわけでございます。で、業界のほうでも、大体時代の進歩に即応して製品を切りかえておりますので、そういう点で、すでにつくらなくなった品物をこちらも帳簿上整理すれば十万という数字がぐっと減ると思いますけれども、これも事務的になかなかたいへんなのでほっておるということで数字がべらぼうに大きくなっておりますが、現実に使われておる薬はそれよりははるかに少ない、半分以下であるということでございます。  現実にいま使われておる薬の中にも、確かに効能効果その他からいって、整理していいものもあると思いますが、これはやはり無効であるというようなことがはっきりするとか、あるいは、最初許可のときのデータが非常におかしかったということであれば、これは取り消しができると思いますけれども、そうでない場合には、やはり業界のほうから、これはもうやめるということでこちらに連絡があるということで初めて消えていくという、こういうかっこうになるわけでございます。若干そういう点で手ぬるいと申しますか、そういうものがあるかもしれませんが、一応現状はそういうことになっておるわけでございます。
  107. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 最後に、高橋先生にお伺いしたいのですが、非常に数の多いドリンク剤、しかも、こうした経時変化があり、現状におきましては、この表示ができないままになっているわけでありますけれども、この経時変化につきまして、要するに、きき目がなくなってしまった薬を私どもは買わされる心配があるわけですが、それについてどうお考えになるか。  もう一つは、いま厚生省当局の答弁によりますと、大体成り行きまかせみたいなぐあいで薬の処理がなされているわけですが、この問題につきましてお考えを伺いたいと思います。
  108. 高橋晄正

    高橋参考人 先ほどのドリンク剤の内容の経時変化でございますが、これはドリンク剤がきくかきかないかというほうがまず先でございまして、どうせきかないものならば、経時変化の表示も必要ないわけでございますね。そちらのほうを先にきめていただかなければならない。きいているのがもしカフェインとアルコールとハチみつなら、そっちのほうがどう減っていくかということが重要であって、ビタミンなんかはどうでもいいということになるのじゃないかと思います。  それから、厚生省では薬が成り行きまかせみたいだということをどう思うかということでございますが、私なんか、決算委員会の記録か何かで、たしか、国が許可したものは有効性を保証していると考えてよろしいというふうな政府側からの答弁を読んだような気がいたしますけれども、きょう聞いていますと、どうもそうではないように思いますので、一体これはどうしたものであるのか、特にこれは健康保険に関連いたしまして、健康保険の薬価基準に載っかっているようなものは、国が保証したものであるから、幾ら使ってもいいというようなことを言う医師会の方もおります。そこで私は、大臣に質問した中にも、国が許可したものはきくということで許可しているのか、そうでないのかということをお伺いしたわけですが、どうも本日のあれでは、必ずしもそう言えないとなりますと、これは健康保険審査基準に重大な影響を持つものではないかと思いますので、とても成り行きの状態では私ども安心して診療できないので、ぜひ早急にこの薬の整理をしていただきたいというふうに考えます。
  109. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 多少時間がありますので、佐藤先生いかがでしょうか、いまの問題につきまして。
  110. 佐藤倚男

    佐藤参考人 ドリンク剤のことは実はよく知らないのです。医者が処方するわけがございませんし、飲んだこともございませんし、よくわかりません。
  111. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それじゃ以上で終わります。
  112. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員長代理 小林進君。
  113. 小林進

    小林(進)委員 厚生省にお伺いしますけれども、昭和四十四年度における消費者の側から見た薬の消費量の総額は幾らでございましょう。それは薬屋がつくった薬の製造価額は大体八千四百億円とかという数字を聞いておりますが、これが売薬を加えて、あるいは被保険者の立場で医師の手を通じて請求される、そういうものの総額を含めたその消費額の総合計が概算幾らになりましょうか。
  114. 加藤威二

    ○加藤説明員 昭和四十四年でございますが、大衆薬と、それからお医者さんのほうで使われる薬というものを合わせまして、約一兆四百億でございます。
  115. 小林進

    小林(進)委員 若干私の計算と違うようでありまして、私は一兆二千億前後と踏んでいるのでありますが、その数字はあとで突き合わすことにいたしまして、あなたのおっしゃる一兆四百億円と  いたしましても、国民一人当たりにいたしますると、生まれたばかりの赤ん坊からいま死んでいく者まで含めて、一人、平均一万四百円になります。五人家族ならば大体五万あるいは六万近くの薬代を払っている。その薬が、先ほどからお伺いいたしておりますように、効力があるのかないのか。特に大衆保健薬に至っては、害あって益なしというお話になっておれば、どうもこれくらいむだな浪費はないということをいわざるを得ないのであります。こういう問題を含めて、私はまた私の古巣の社会労働委員会でゆっくり議論をさせていただきたいと思いますが、きょうは二時半までということで、残された時間が七分か八分でございますので、概略だけひとつ……。  薬がいままでは益がないという話でありました。その薬のために被害を受けている者のそのあと始末が一体どうなっているかという問題で私は  一、二お伺いをいたして私の責任を果たしたいと思うのでありますが、第一番目には、大正製薬の例のかぜ薬アンプルで——大正製薬ばかりでございませんで、十数人の人が死んでいるのであります。もちろん、私どもは国会において直ちにその撤回、廃止を要求いたしましたけれども、当時の薬務局長の熊崎君をはじめ、厚生省がもたもたもたもたしておりまして、そのためにだんだん被害が大きくなっていった。私は過去の話をするのじゃないのです。薬務行政に関する限り、常に行政はかくのごとくもたもたしておるということをいまでも言いたいから私は申し上げる。ああして、かぜ薬アンプルなどというような危険な薬を飲んで、なくなった遺家族のあと始末が一体どういうぐあいになっているか、私はそれをお伺いいたしたい。  時間がないから続けて言いましょう。第二番目には、これも問題になっておりますサリドマイドの問題であります。これはおとといの朝のテレビでもやかましくこの問題を、関係者も、あるいは放送する担当者も涙を流して論じておりました。古くて新しい問題であります。これを一体厚生省はまだ頑強に裁判に持ち込んで、そうして遺族の涙をそのままに見のがしておられるのかどうか。これはあなたも御承知のように、イギリスでは、このサリドマイドのための問題について薬屋が和解を申し込んで、これは五十二家族でありますけれども、サリドマイド児一人当たり五千ポンドから四万五千ポンド、四百三十二万円から三千八百八十五万円の範囲で損害の賠償金を支払って和解をいたしております。スウェーデンの製薬会社も、これはアストラという会社でありますが、奇形児百人に対して、年間一人四十三万三千八百円、六十年にわたってその年金を支払う、総合計二十億円出して和解をいたしております。それからまた西ドイツにおきましても、四十五年一月、一億マルク、百億円の金を出して製薬会社が和解を申し込んでおります。これが世界の趨勢です。このサリドマイド禍のために泣いている日本の遺族、最初の数字はこれは相当あったのでありまするけれども、もはやだんだん死んでいって、四十四年の十一月ですかの計算では、まだそれでも二百人近くの生存者がいらっしゃる。解決しないのは日本だけです。頑強にこの人たちの救済や補償、これに抵抗しているのは日本の厚生省と製薬会社です。一体どう処置せられる考えであるか、二つ目です。  第三番目は、蒙古症、これも厚生行政の中で大体年間三千人ばかりずつ生まれて、虚弱児で、蒙古人のような顔をしながら、非常に淡い生命を保っている人たちがおります。いまでもまだわが日本には二万か三万人いるのではないか。これを厚生省は、この人たちの治療や、あるいは保険薬を、頑強に抵抗して、いわゆる医療保障の中に組み入れようとはされない。一体こんな残酷な医療行政が許されるのかどうか。いまこの問題をどう扱っておられるのか、第三番目であります。  四番目でお伺いしたいのは、ブレオマイシンの問題です。これはガンの薬といわれて、非常に国民は期待をいたしております。ここにも石舘先生もいらっしゃる。あなたはその当時の中央薬事審議会の常任部会長で、ブレオマイシンは保険薬として用いるべきだという答申をされている。違いますか、厚生大臣に答申をされていますね。そう私は記憶いたしておりまするが、違っておりましたらあとで……。
  116. 石舘守三

    石舘説明員 健康保険薬です。
  117. 小林進

    小林(進)委員 それがいまなお健康保険薬に採用をされていない。これは一クール約二十万円もする、なかなか高い薬です。これは自由診療で受けるとすれば二十万円、ところが、なぜ一体これが受け入れられないかという一つの問題に、先ほどからお話しになっておりまする治療指針と、それから例の基準の問題があるわけであります。医師会のほうでは、一厚生官僚や厚生行政が、この専門的医薬の使用やあるいは使い方について指針を示したり標準を示したり基準を示したりすることはおこがましいから、われわれはそういうことの厚生行政には協力することができぬといって、いまのガン妙薬の採用に対する答申を拒否していらっしゃる。これは窓口を通らぬからいわゆる保険薬として採用できないという、国民の側からこれは非常に大きな期待もそのままに投げやっておるのであります。こういう問題について、一体厚生省はどういうふうにお考えになっておるのか。ちょうど時間でありますから、以上の四点だけお伺いをいたしておきます。
  118. 加藤威二

    ○加藤説明員 最初の二点だけ薬務局でございます。あとの二点は保険局でございますので、保険局のほうからお答え申し上げたいと思います。  最初に、アンプル入りかぜ薬の犠牲者の問題でございますが、これはまことに申しわけございませんが、きょう私どもその資料を持ってまいっておりませんので、調査の上、先生に御報告申し上げたいと思います。  それから第二点のサリドマイドの問題でございますが、これはこの前の当決算委員会で私から高田先生に御返事申し上げたわけでございますが、結局、これは国がやはり被告として訴えられておるわけでございます。これは諸外国では例がないわけでございまして、諸外国では、訴えられておるのは薬会社だけでございますが、日本だけは国も訴えられておる、ということは、国が、結局サリドマイドの薬とサリドマイド児という奇形児との間の関連性という問題がドイツで起こりました場合に、その時点で直ちに、日本で売られております薬を販売停止あるいは回収することなしに約十カ月ばかり経過してしまった、その責任を問われて国が被告になっておる、こういう特殊性があるわけでございます。     〔丹羽(久)委員長代理退席、委員長着席〕 そういうことで、国といたしましても、一応法律的に被告として訴えられておりますので、それに対する被告の法律的な反論ということは行なっておるわけでございます。  これは法律的な問題として、国がそういう問題について責任があるかどうかということについての反論をやっておるわけでございますが、私はしかし、その問題とは別にいたしまして、この問題は裁判ではなかなか決着がつかないということは、諸外国の例でも明らかでございます。どこの国を見ましても、どっちに責任がある、国、メーカーに責任があるとかいうことの結論はなかなか出ておらないわけでございます。しかしながら、相当多数の国でそれぞれの和解をやっておる、それでサリドマイド児に対しまして、製薬企業のほうから相当の金額を出して和解をしておるのが諸外国の例でございます。  そういう例を見ましても、私どもといたしましては、国は被告として法律的に訴えられておりますので、いま法律的にその問題をここで、私としては、法律的な責任があるとかないとかいうこと、法律的な責任があるということをこれは申し上げかねるわけでございますけれども、私の気持ちといたしましては、やはり問題はもう起こってしまったことでございますので、いかにしてサリドマイド児並びにその家族の方々に一日でも早く、ある程度気持ちの安らぎといいますか、それから生活の安定を得ていただくということが一番大事な問題でございますので、そういう意味におきまして、和解という気運が原告のほうにも出てくるということでありますれば、国といたしまして、製薬会社のほうにも話をいたしまして、何とかそういう諸外国のような和解というかっこうで早くこの問題にケリをつけてまいりたい、いつまでも裁判で争っていくというようなことではなしにしたい、こういう気持ちでおるということをお答え申し上げたいと思います。
  119. 首尾木一

    首尾木説明員 お尋ねの第一の蒙古症の問題でございますが、これにつきましては、蒙古症自体に対しまして、原因療法としまして効果的な薬剤は目下ないということでございますけれども、しかし、対症療法といたしまして、発熱でありますとか、あるいは下痢でありますとか、そういった蒙古症に応じますそういう対症療法といたしまして、蒙古症に対して給付をしないということはございませんで、蒙古症に対しましても給付を行なうということになっておるわけでございます。  それから次は、ブレオマイシンの問題でございますが、これにつきましては、去る十三日に中央社会保険医療協議会におきまして、支払い側及び医療側の同意を得まして、この問題につきましては、早急に薬価基準に登載をするということになりましたので、お答えを申し上げます。
  120. 小林進

    小林(進)委員 これで終わりますが、大正製薬のかぜ薬でなくなった人たちのあと始末はどうなっておるかは、あとでお伺いいたしましょう。  いまのサリドマイドといい、農薬の問題でいえば水俣病といい、昭和電工の被害者といい、みんな一連の農薬や、この薬行政に関する被害者というものに対するあと始末というものが、世界の各国に比較しても日本は非常におくれている。こういう被害者は、長い訴訟の道中には、勝っても負けても、もう精神的にも物質的にも参ってしまう、そういうようなことをみんな放置をしておられる。  私は、薬が害がない、無害ならばよろしいという、そういう独占資本のやるような、薬のほうだけ一生懸命に厚生省は力をお入れになっておいて、それから受ける被害者のほうはかくのごとく冷淡に扱われていることの一例を申し上げて、実は質問にかえたわけであります。あとはひとつ、また場所を社会労働委員会にかえて御質問を繰り返したいと思います。  たいへんどうもありがとうございました。
  121. 濱野清吾

    濱野委員長 吉田賢一君。
  122. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 わが国は薬がはんらんしまして、病気はますますふえていく、どうもそういう感じがいたします。これは国民保健の見地から見ましても、また日本の医薬行政の見地から見ましても、これは現在、将来にわたりまして非常に重大な課題である、こう考えるのであります。  そこで、特に大衆薬を中心にして伺ってみたいのでございまするが、医師が医薬として用いるというのは、専門的立場でありまするから、かなり次元の違った問題があるようでありますが、大衆薬となりますと、これはやはり国民大衆と薬の関係です。なぜこんなに薬がはんらんするのだろうか、こう考えますと、二面において、どうも——たとえば新聞、雑誌、テレビ等を見てみましても、最大の広告ワクは薬じゃないか、大衆薬でないだろうか、こうさえ感ずるのです。  こういうふうに調べてみますると、また雑誌などに集計も載っておりまするが、医薬品の広告で、四十三年度には三百五十三億円使っておるようであります。言いかえますると、三百数十億円を投じまして、国民大衆に売らんかな売らんかなの宣伝が行なわれておる。言うならば、国民は参ってしまうのです。そういうのでありまするから、反面から見ると、まるで国民にとっては取りつかれたようになりまして、必要な消費物資ではないか、生活必需物資ではないか、こういうような錯覚にさえおちいるであろうと思います。  そこで、厚生当局に伺いたいのでありますが、こういう方面について、何かこう正当な知識もしくは判断の正当さ、それからまた、メーカー並びに扱い業者の側で自制をするということか、何か行政指導の手はないものであろうか、もしくは立法の手段でも考えるのであろうか、ここらについてはどういうふうに考えますか。この点、伺っておきます。
  123. 加藤威二

    ○加藤説明員 広告の問題でございますが、これは薬事法の六十六条に広告についての規制の条文がございます。それで誇大広告というようなこともしてはいかぬということで、広告の条文がございまするので、私ども厚生省といたしましては、広告についての適正な広告基準という基準をつくりまして、そして具体的にこういう表現を使っちゃいかぬとか——これはなかなかボーダーラインがむずかしいのでございますが、そういう基準をつくって業界を指導しておるということでございます。また、業界のほうにもそういう広告委員会というものを実質的につくりまして、お互いにあまりむちゃな広告をしないようにという自主規制も行なっておるということでございます。  それから、広告の額につきましては、先生御指摘のとおり、四十三年度は三百五十三億でございますが、ただ一つ申し上げたいと思いますのは、これは大手十二社の統計でございまするけれども、売り上げ高に占めます広告の比率が次第に下がってきておるということでございます。これは私ども、特に大手の会社にあまり広告を盛んにやり過ぎるなということを強く行政指導しておるわけでございます。薬で一番いい宣伝方法は、一番いい薬をつくることであって、宣伝ではないということで、そういうことで、たとえば三十九年ごろには売り上げ高の一〇%が広告費であったものが、四十四年には五・六%であると、これは大手十二社でございますが、そういうぐあいに次第に売り上げ高に占める比率も下がってきておりますので、あとはこの傾向をさらに助長いたしますと同様に、内容につきまして、国民にどんどん薬を無理やりに——無理やりにといいますか、うんと飲め飲めということを盛んにすすめるような広告というものをできるだけ押えていく、そういう方向で努力してまいりたいと思っております。
  124. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 誇大広告とか虚偽の広告とか、これは表示の偽り等によりまして公取等におきましても扱い得ましょうし、その取り締まりはもちろんできることは存じております。私はそういうふうに言っておるのではなしに、やはり売らんかなに持ち込むことは、こんなマスコミ時代でありますので、国民は広告に圧倒されるのであります。だから、広告をよくすれば、よけいすれば、テレビによけい出すならば、それだけシェアは広がっていくのです。これはもう経済の常識でありますので、したがいまして、そういうようなことではなしに、せめて大衆薬だけはほんとうにきくものを、そして正しい知識で判断し得るように、そういうふうに選択をさすのでないと、ほんとうに正しい日本人の健康を守るわけにはいかぬと私は思うのです。外国等におきまして、たとえば欧米等におきましても、やはりこんなに膨大な広告になるのでしょうか。いま局長が御指摘になりました五%から一〇%というのは、これは売り上げがずっと伸びていくならば、五%、一〇%といいましても、これは必ずしもものさしにはなりませんですよ。そういうこともありますので、ことにさっきの御説明によりますと、生産原価が六千八百九十億円ですか、そして市価になってまいりますと一兆円をこえておるということになるのでありますから、そういう点から考えまして、やはり私は相当な行政指導が積極的に行なわれてしかるべきではないかと思うのです。  いまの答弁ではちょっと尽くしておりませんから、これは大臣とも相談して、積極的に働きかけるようにする必要があると、こう私は考えるのです。ぜひそれは強く御要望を申し上げておきます。  もう一点、それから今度、さきに教授その他の方々がりっぱな医師をつくるということ、その必要性を述べておられます。これも大事なことでありましょう。しかし同時に、国民に正しい薬の選択をしいるという、この知識を与えるということが非常に大事なことであります。もし一般の生活必需物資、消費物資のような感覚におちいってしまいましたならば、これはほんとうに——いまの、たとえば企画庁におきまして国民生活局を持っておる、そして消費者行政はこの内閣の重要な施策の一環となっておるというような観点から考えまして、国民大衆に薬を選択する知識を十分に持ってもらう、こういうようなことも、私は厚生省の一つの任務ではないかと思うのであります。これをメーカーにまかせておいては、これは広告で押しつぶしていくのですからとてもどうもいけませんし、他に方法なし、といって、病気になった以上は、その選択はお医者さんをたよる、そしてまた薬をたよる、いろいろ疑って、どうこうもする余地もなし。あらかじめ知識を持っておらなければならぬ。これは薬品に対する、大衆薬に対する一種の消費者教育かもわかりません。だから、そういう意味におきまして、私は、行政指導的な一つのあり方が国の施策として、行政として、厚生省の一種の施策として必要な段階に来ているのではないかと思うのですが、この点、いかがですか。
  125. 加藤威二

    ○加藤説明員 確かに、薬に対して正確な選択をするように国民指導するということも非常に大事だと思います。私は、広告というのは、盛んに、何でもいいから薬を飲め飲めということではなくして、むしろこの薬はこういう成分が入っている、したがってこういう症状の場合に飲むべきであるという、そういう薬の効能というものを客観的に国民に知らせることに重点を置くべきだろうと思います。そういうことによって国民が薬の理解を深めていくということが必要ではないかと思うのでございまして、やたらに、これは何でもきくから飲めということではなくして、より客観的、科学的な広告の文句というものを指導していくことによって、これは一つの例でございますが、国民に薬の正確な知識をしみ込ませていくということも一つの方法ではないかと考えている次第でございます。
  126. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私は、いまの第二問は広告の観点から言っておるのではないのであります。広告の観点からは、これは業者に対しての施策であります。一種の国民の薬品に対する消費者的な行政というものは、別個に立てるべきだと考えるのであります。でありますから、消費物についていうならば、生産と流通と消費と関係がありましても、消費者の立場において、消費すべきものについて正確な十分な知識を持っておるということが必要なんであります。ある水準のものはみんな持たなくてはいけない。そういうふうに国民指導——指導というよりも行政をしていくという施策が欠けておるのではないか、これを言っておるのです。対象は業者ではなくて、国民なんです。国民の知識の水準をもっと上げなさい、常識化しなさい、こう言うのであります。その点なんです。それをおやりなさいと言うのです。
  127. 加藤威二

    ○加藤説明員 先生の御指摘、ごもっともでございますが、それをどういう方法でやるかということについては、われわれもさらに研究してみたいと思います。  たとえば、学校の保健衛生というようなところ、これは文部省の問題になりますけれども、そういうところで薬について正確に教えていくというようなことも一つの方法かもしれません。一般の通常人にどういう方法で薬の正確な知識を植え込んでいくかということについては、われわれもその方法についてさらに検討してみたいと思います。
  128. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それは単に薬のみにとどまらず、基礎知識といたしまして、健康とは何ぞや、衛生とは何ぞや、病気の予防とは何ぞや、そこから入っていかなければなりませんし、文部省だけにまかしておくべき問題ではございません。厚生省といたしましては、国民の健康を守る最も中核的な行政府なり、こういう責任に立ちまして進めていかなくてはならぬ、私はこう思うのです。これば省の一つの方針としておやりなさい。積極的にやるべき段階にきておると思うのです。  それから、これはここでは論議が要りませんので、高橋講師と石舘所長に主として御依頼しておきたいと思うのです。  さきのグロンサン論は、たまたま出ました薬品問題に対する一つの好個のテーマであります。そこで、三分や五分でありましたので、どうも十分な論拠がお互い尽くしておりません。学会において、とおっしゃっておりましたけれども、これもその場では遠いことでありますので、当委員会に対しまして、もう少し根拠を明白にいたしまして、長文の論文は要りませんから、グロンサン問題につきまして、やはり双方の意のあるところ、理由のあるところ、それらを明白にしておいてもらうことが、われわれがこの種の問題を政治的に扱っていく上において非常に参考になるのであります。これは御要望申し上げておきますから、答弁は要りません。ぜひしかるべくお計らいを願いたいのであります。よろしゅうございますね。  それからいま一つ、膨大な数量にのぼります医薬品の製造承認の件であります。これにつきましても、言うならば、ひまと手があるならば総点検をするときが来ておるのではないだろうか、どうもそういう気がいたします。  これは若干しろうと論でありますけれども、そこで私はこの点も厚生省に対して御要望するのでありますが、どの点からそれは線を引くかは別といたしまして、言うならば、少し古いというようなものにつきましては、いつ承認されたものであるかということぐらい、また、その他の何か参考になる事項を記載いたしました資料を当委員会に出してもらいたいと思います。非常に大きな手数がかかるというごとならば、これは何かその辺のことをお書きいただきまして、どこかで集約し、あるいはグループ別になと適当にしていただきまして、何か資料を出してもらう、そしてこれもやはり一種の総点検をすべき時代が来ておるのではないかと思うのでありますが、この点はいかがでしょうか。これは薬務局長かな。
  129. 加藤威二

    ○加藤説明員 御要望でございますが、これは十万件をこえる薬でございますので、これを全部整理いたしまして、いつ認可したかということをやりますと、これは膨大な作業量になるわけでございます。それでなくとも、いま製薬課には一それをやるとすれば製薬課の仕事になるわけでありますが、製薬課では薬の承認事務が殺到しておりまして、しかも薬の承認事務がおくれているということでいろいろ批判を受けていることでございますので、そのままの形では資料としてはとうてい先生の御期待に合うような資料ができかねるかと思いますが、何らかの形でもう少し事務的にできる資料があれば、検討した上で、また先生と御相談して、提出できるものは提出したいと考えております。
  130. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 もう一点で終わります。  これも厚生省に対して申したいのでございますが、医薬品、特に私は大衆医薬の問題の重要性を強調しておるのでありますが、これらの諸般の施策がどうもあるらしい。あるいは反面におきまして、よくこの委員会で問題にいたしました例の献血の立法化にいたしましても同様でございますが、この種の問題は、あまり長い時間を持たずに、国会で問題になりましたら即刻それに取り組んで、しかるべき結論を出す、そういうふうにいたしまして、次の国会には相当な成果のある報告をするようにしなければ、この委員会が何のために審査しておるのか実はわからぬことになります。やはりここは審査をします以上は、次の時期におきまして何らかの相当な報告をもらわねばならぬというぐらいな期待さえ持つのであります。  そこで、いま当委員会におきまして問題になりましたこの医薬品等につきましても、厚生省はいろいろの面で問題を持っておるようでありますが、八月には四十六年度予算の要求の第一次が来るのであります。したがいまして、これは予算化せんならぬ問題もありましょう。施設を充実せんならぬ問題もありましょう。特に国立衛生試験所等におきましては、まだその他——この間文部省関係決算でも少し申し上げたのでありますが、施設、人間等々の充実の問題もあります。いろいろのことがありますので、この際、やはり薬品を中心といたしまして、次の年度における予算要求につきましても相当まとめたものをして、過去の反省と新しい時代を展望しました新施策を打ち出していくというふうにしてしかるべきじゃないかと私は思うのです。いろいろの、数個の点はありますけれども、述べるのはやめますけれども、そういうふうにすべきだと思うのだが、もうやがて六月に近寄ってきたのでありますから、厚生省としましても腹をきめて、予算の下地ぐらい、積算の基礎ぐらいはずっとつかんでおらなければいくまいと思いますが、こんな用意があるのだろうかどうか、そこらを伺って、きょうは私は質問を終わります。
  131. 加藤威二

    ○加藤説明員 まだ来年度予算の作業には入っておりませんけれども、私ども来年度予算を要求いたします場合の一つの大きな重点事項といたしましては、やはり薬の安全性、それから有効性というものについて、行政上さらに適確性を期していくということが、薬務行政の上では非常にウエートを占めるべきものと考えるわけでございます。  そういう意味におきまして、先生いま御指摘になられましたように、国立衛生試験所の充実ということを、これは本年度もそれを非常に大きな目標にいたしましたけれども、来年度も国立衛生試験所の人的、物的施設の充実ということを薬務局予算要求の一つの大きな柱として来年度予算要求をやってまいりたいというぐらいに考えております。
  132. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ちょっとつけ加えて申し上げておきますが、私は、たとえば公害問題にしましても、交通問題、その事故等のあと始末の問題にしましても、どうも最近のわが国の現象といたしましては、生活とかあるいは健康に直接つながるような問題が続発するような感じがいたします。したがいまして、この調査、研究するような技術者、学者、そういうものも養成する、機関も充実する、世界的な視野に立って、先進諸国における研究、調査の一切の事情も、すぐにこれを日本に用いていくというぐらいの規模で私は躍進せねばいかぬと思うのです。そうしないと、いろいろな現象が出まして、あとから追っかけていきますけれども、議論ばかりして何にもしないというような、そういうふうになりがちになりゃしないか、これが厚生行政の実情ではないか、こう思いますので、私どもは国民の税金を大切に使ってもらうべき立場にありますので、このような国民の福祉に直接つながるような諸問題の解決に大きな任務を負っておる厚生省は、積極的にこういう充実施策を進めてもらいたいということを強く御要望しまして、質問を終わりたいと思います。
  133. 濱野清吾

  134. 大原亨

    大原委員 きょう参考人の人々からこんなに長く各方面から御意見を聞く機会、こういうことは最近一両年の間にはなかったわけです。これは濱野委員長はじめ、丹羽理事高橋理事や与党の理事さんや、そしてわが党の華山さんや各関係理事の御努力でありまして、これは非常な抵抗、妨害があったと思いますが、これをやっていただいたことについては、出席されました参考人に、私は委員長にかわってやるわけじゃないけれども、非常に感謝いたしております。今後とも、委員長、ぜひともこういう機会を、さらに議事録を精査いたしまして質問が発展できるような、そういうことにおいて取り運びをいただきたい。  というのは、昭和四十四年の話がありましたが、昭和四十五年度の日本の国民の総医療費ばおそらく二兆五千億円だろうといわれておりますが、その中で薬剤費の比率は四〇%ですから一兆円であります。そして保険財政は火の車であって、保険料を上げる、患者負担をふやすといいながら、製薬会社は非常にもうかっているというふうに言っておるわけであります。それで、こういう質問の機会を設けようといたしますと、たとえば歴代厚生大臣も私は六、七人見ておりますが、非常に良心的な大臣もおりますが、そうでないのもおりまして、終わりごろになったら製薬会社とおかしくなりまして、そして政治献金を受けているような実例があるわけであります。大口の実例があるわけであります。花輪だって、後援会つくりますと、ずらっと製薬会社の花輪が並んでいるというようなことがあるわけでございます。そういたしますと、厚生省の事務当局でも、やろうといたしましても政治圧力がかかるわけであります。ですから、決算委員長理事の諸君がこういうことをやろうといたしましても、かなり私は問題があると思います。しかし、これは決算委員会関係ないことではないのであって、保険財政は、やはり国鉄の赤字と米の赤字と三大赤字でありまして、これは非常に政治の重要問題でありますから、委員長にお願いしておきたいんですが、今後もこういう機会を設けていただきたい、こういうことについて、ひとつ委員長の所見を伺わしていただきたいと思います。
  135. 濱野清吾

    濱野委員長 委員長の所見を尋ねられるのも、これもまた新しいことですが、皆さんの質疑応答が済みましたならば、私は国立衛生試験所長石舘先生に、皆さんにかわって一つ聞きたいことがある。これはひとり大臣や政務次官や局長の責任ではない。これは学者グループの陰に隠れてこの行政が非常におくれている。あなたの発言を見てもそうだ。これは速記をごらんくださいませ。あなたは科学者の立場からきょうは説明すると言ったが、政治的ニュアンスが非常に強い。そういうことであっては国民に忠実ではない。私は端的にそう思っているのです。  したがいまして、皆さま方とともに速記録を精査いたしまして、合点がいかなければ、また学者諸君に来てもらって、そして国民全体の健康と生命を守っていく、こういうふうに考えておりますから、他の圧力を受けてということには、理事の諸君も委員長も決して屈しませんから、御安心の上、ひとつ……。
  136. 大原亨

    大原委員 かなりたくさんあるわけで、私のほうから質問をいたしたい点は、参考人あるいは石舘さん等を中心にいたしまして質問をいたしたいのですが、これはきわめて問題を限定いたしましてやります。  石舘所長は薬事審議会の会長をしておられるわけですが、きょうは学者としてお見えになっておりますが、薬務局長は、いままでたくさん議論したことを、薬の安全性と有効性というふうに分けて言いましたが、薬のファクターとして三つあると石舘さんはお話しになった。それは心理的な効果がどうか、第二、薬の本来の効果があるかどうか、もう一つは、薬を使う医師に対する信頼、こういうことを言われたのですが、これはなおるのだよ、これはなおるのだよ、こう言って、これはなおるのだということになれば、鼻くそまるめたのでもきくという、これは信じたら何でもきくというところがある。これは医療にもあるわけです。あるわけですが、私は、ここで議論しているのは、第二の薬本来の効果について議論をしているし、最近は、安全性があるならば許した、毒でなければ許した、こういうことから有効性ということを議論をしている、薬事審議会もやっている、われわれも国会で議論している、薬務局もやっているということです。ですから、私は薬本来の効果がどうかということが問題だと思うのです。その上に、心理的な効果とか医師に対する信頼とかいうものがあるのであると思う。特に無機質の化学合成の薬については、私はそれがきめ手だと思う、薬は毒だという裏表を持っていますから。私は、薬事審議会の会長としても、そういう点を明確に、やはりその立場に立った、いま濱野委員長から指摘があったけれども、そういうはっきりした専門家的な意見を聞きたいと思うし、将来もやってもらいたいと思う。私はいままで——これをあげ足をとるようなことは、時間もないし、いたしませんが、その第二の問題点が問題ではないか。これは私が予算委員会で厚生大臣に質問した答弁の中にもあるし、いままで議論された中にもあるわけです。これは薬務局長もそういうことを言っておるはずでありますが、この点については、私は他の参考人の方々の意見を聞きましてほとんど納得できる点でありますが、そういう点について高橋先生の御意見をお聞きしたい。
  137. 高橋晄正

    高橋参考人 確かに、薬には神秘的な効果もありましょうし、それから医師の信頼によってきく場合もありましょうけれども、そういうものは、それとして私たちが自覚して使う場合はもちろんございます。これはほんとうの薬ではないけれども、いまあまり強い薬を使えないから、にせ薬であるけれどもこれを黙って使おうという場合がございますけれども、しかし、われわれ自身まで、二番目のほんとうの薬本来の効果というものについて何にも知らされずに使わされるということでは非常に困るわけでございますので、やはりこの三つは区別いたしまして、薬そのものとしましては、第二番目の薬本来の効果、客観的にだれがやっても確認できる効果というものをまずはっきりつかみまして、それ以外のところは、医師がその場に応じまして、もっと安い薬で、そして害のないものを、それこそメリケン粉みたいなものでも乳糖みたいなものでも、神秘性とか信頼によってそれを患者さんにうまく使うということはあると思います。しかしながら、薬事審議会のようなところで、神秘性とか医師の信頼感までひっくるめて審議されるのでははなはだ困るので、ぜひこれは科学的な審議をしていただきたい。
  138. 大原亨

    大原委員 薬務局長に質問するのは私は本旨ではないのですが、いままでの質疑応答を聞きまして、二重盲検法について評価をしている。ただし、科学的、客観的な薬の効果の判定は、二重盲検法だけではない、こういう御意見がちょっと出ているが、二重盲検法を否定されたというのは、空極的にはなかったと思います。私は、石舘さんもなかったというふうに思います。これは二年くらい前から、アメリカその他国際的に大きく取り上げられている問題です。そういう薬の客観的な、科学的な評価の問題がぼくはあると思いますが、他に・客観的な方法があるのですか、ないのですか。いま問題となっている問題について、厚生省はどういうふうに理解しているか。  つまり、厚生省は十万の薬の中で、何万かは薬事審議会にはかりまして、その他は事務当局、薬務局でやるわけです。その中から、いわゆる健康保険法の薬価基準に登載するわけでしょう、具体的には。これが問題になるわけです。  たとえば、いままで議論にならなかったたくさんの、十万のおびただしい薬の中で、薬価基準に登載する、保険薬として採用するという場合に、私はいまの議論を進めていけば、政策上は、客観的に科学的に疑わしきは使用しない、こういう原則の上に立った、有効性が判定できるような、そういうものを具体的には載せていくべきだと思う。そう考えると、他に、二重盲検法以外に、的確な、客観的、科学的な、そういう有効性の判定ができるような方法があるかないか。いかがですか。
  139. 加藤威二

    ○加藤説明員 先生のいまの御質問は、むしろ学者の先生方にお聞きになったほうが妥当かとも思いますが、役所といたしましては、そういう方面は非常に暗いわけでございますが、いま私が承知いたしております限りにおきましては、二重盲検法よりもさらにより客観的なそういう方法があるということは、私は承知してないということでございます。
  140. 大原亨

    大原委員 石舘先生、日本の薬の許可は、これはおたくのほうの審議会でやる場合もあるし、事務当局がやる場合もある。それは法律のことは言いません。しかし、その場合に、文書主義、文書審査であるということが一つ、それから申請者が出した資料で審査する申請者主義であるということが一つ。私は、これはやはりあなたのほうの国立衛生試験所の機能やあるいは予算をもって、その薬の臨床効果等について、いろいろな関係のない大学病院とか研究者その他、アメリカでは医師会か学術団体、そういうものによって材料を整えて、だれが見ても客観的に判定できるというふうな、何かそういう制度的にチェックする方法がないと、文書主義で申請主義じゃだめじゃないかと私は思うのですが、いかがですか。
  141. 石舘守三

    石舘説明員 私、審議会の会長として答えなければならないのですが、ただいまのに的確にお答えするとしまして、つまりもっといい方法がないか。いままではメーカーの責任において、できるだけ客観的な資料を集めろ、しかも権威ある病院等における資料、評議員になっておる権威ある先生方によってやられた資料を持ってこいということになっております。  ただ、こんなことを私が申すと政治的発言になっても困るのですが、日本におきましてはだんだんそれが困難になってくる傾向がありますね。それはメーカーに主体性を持たせて材料を集めるのですから、どうしても、多少そこに悪いデータを省くというようなこともあり得るかもしれない、しかし、それは怪しいとなれば突き返す——たいがい一つの審査をやるのに一回で通ることはありません。二年、三年かかる場合があります。やり直せ、やり直せ、これは対照試験が不完全だからもっとやり直せということは、桑原先生がその責任者として、窓口で非常にやかましく現在の学門の水準でやり得る範囲の可能な限りのものを要求しておるはずであります。そういう意味において、窓口で三分の一か半分は落とされることがあるわけです。決してそれはいいかげんではない。  ただ、メーカーがやる現在の日本の状況でいいかということは、私は個人の意見としては二、三あります。  たとえば、このごろ大学において薬を依頼しても、これは昔みたいに親切にやってもらえません。そういうメーカーの依頼試験を大学はやるべきでないという考え方が、やはり圧倒的になりがちですから、そのために、これはどうか国の研究機関か総合病院を設定して、そこでそういう評価を、客観的にできるだけ正確にはかる機関がほしいということは、私だけでなくメーカー側もそれは欲しておるところであり、また識者一様にそういうものをつくれというので、そういうプランはおそらく薬務局長のほうでも持っていると私は思う。そういうぐあいに、国家が手伝って、新薬を調べるときには、そういうところに客観的なデータを持ってきなさい、そうすると審議会も非常に楽なわけです、疑う必要はありませんから。そこで、客観的なデータを持ってくると、その判断も非常にすみやかにいくということだと私は思う。それはやろうとすればできないことはなかろうと考えております。国としての施設の強化あるいは準備ですね。
  142. 大原亨

    大原委員 それと、いままで十万の薬の問題で議論があったけれども、問題は、薬価基準に登載するものと薬局で売っている大衆保健薬、それから誇大宣伝の規制だと思うのです。  薬価基準に登載する数十の薬について見ると、薬価基準に登載されまして、ある程度時間がたちますと、実勢価格の九〇%、バルクラインの九〇%できめるわけですから、だんだんと下がってくるのは当然でしょう。すると、ちょっとつけ足したり、まぜ薬をやって新薬だと称して登載するわけです。そしてつり上げていくわけですから、そこでメーカーと厚生省業務局や保険局との関係が出てくる。  そのことについては私はしばらくおくとして、薬価基準に登載して保険薬として採用する数干の薬は、その商品名で、アリナミンAとFというような差で、大衆薬と医療薬の差をつけるのではなく——これは私はできるだけ会社の名前をあげないようにする。あげる場合には、高橋先生のように全部あげたほうがいい。しかし、これは一番宣伝もひどい。薬の効果と三船敏郎と何の関係がある。こういうものをどんどんやっておるから、具体例をあげてもいいと思うのだが、それにいたしましても、アリナミンAとFで区別をつけるというふうなインチキなことでなしに、オリジナルな学名と商品名はきちんと分けて、薬価基準には、医者や薬剤師がわかるようなかっこうで学名で登載して、人々に処方せんを書いて配剤をしていくようにすれば、最小限度使用の法則で、薬は毒なんですから、副作用があるんですから、そういうことが守れるんじゃないかと私は思う。商品名でたくさんの会社が、同じビタミン耳の誘導体をたくさんやっている。それを、どれを使ってもいいということをやると、二クビタンのような事件も起きてくるわけですね。これは佐賀県で、医師会の藤川という幹部がやったことが問題になって裁判になった。だから学名でやるべきじゃないか。できるだけそういう方向にして、一般に宣伝をしている——宣伝の規制の問題は別だが、そういうまぎらわしいものは一切やめるという方向で薬価基準を規制すべきじゃないか。これはやろうと思えば可能なことじゃないですか。医者と薬剤師が、専門家が知っておればいいのであって、患者が行って、アリナミンよこせ、こう言ってお医者さんに要求する。マージャンやって、行って、アリナミンよこせ、こう言う。お医者さんのほうは、テレビ等に出てくるやつを要求するのに応じたお医者さんのほうが人気がいいということでやるということになる。そうしたらむちゃくちゃになってしまうということでしょう。ですから、やはりそれを断ち切るのには学品名を薬価基準に登載すべきではないか、私はこういうふうに考えるのですけれども、参考人の方で、ひとつこの点について積極的な御意見をお持ちの方がありましたらお聞かせいただきたい。
  143. 桑原章吾

    桑原参考人 私、基礎医学をやっておりますので、そういう点にまとまった考えがないのでございますが、いずれにしても、現在の薬価基準のシステムは、非常に複雑過ぎるような感じを持っております。特に抗菌剤その他、効能の方向が非常に確定したものについてはそれがわりにはっきりしておりますが、ビタミン剤その他につきましては、非常に品目が多過ぎるというような点に混乱があるように思います。この点は、もし是正できるならばされたほうがいいような感じを持ちます。
  144. 濱野清吾

    濱野委員長 桑原さんだけでいいですか。その他の諸君から聞かぬでもいいですか。
  145. 大原亨

    大原委員 その点はいいです。  それで、時間が参りましたから協力するわけですが、メーカーの世界でも医者の世界でも、つまり薬務行政や保健行政がでたらめだから悪貨が良貨を駆逐していると私は思うのですよ。悪いやつほどよく眠るというけれども、良心的でないほど事実上ぼろもうけをしていると思うんだ。その客観的な事実は、だれが否定しようと思ったって否定できない。武見太郎会長だろうとだれであろうと、そうだと思う。  だから、ほんとうに技術が尊重されて、薬が最小限度国民の健康のことを考えて使われるという状況において、いまどういうふうに整理をしたらいいかということが一番大きな問題です。政策上の問題であるし、学問上の問題でもあると思うのですよ。そうすると、良心的なメーカーの技術開発を保障する方法として、たとえば特許法を思い切って早く改正をして——日本は世界で第二の薬の生産国になっているわけだから、大きいことはよいことだけれども、中身が悪いわけだ。外国へ輸出をいたしましたら、外国は信頼していない。国際的な評価がないというのが特色です。ソニーとかホンダとかいうものとはまた違うわけです。薬の問題については、権威もないわけです。薬が今日ぐらい権威がないことはない。薬九層倍、うそ八百と薬のことをいうけれども、そういう信頼がないことではいけないと私は思う。  そこで、その一つとしては物質特許にしていくべきじゃないか。つまり構造式をちょっと変えて、何かくっつけたら、新しい名前をつけたら事務当局が承認するということではなしに、結果として同じような類似品は許さない。そのかわり、それを開発したものは、ある程度国内的にも国際的にも技術が保護されるということをしないと、過当競争というものがそういう面でもどんどん激化される。私は特許法を検討すべきじゃないかと思う。これはイタリア等でもそうですけれども、発展期で、よそのまねをするときにはいいのですけれども、逆に言いますと、アメリカでもドイツでもフランスでもスイスでもそうですが、日本に売りつけてきまして、日本はルーズであるから、日本でテストをして、人体実験をやって自分の国へ持って帰るというような逆な現象が起きていると私は思うのです。  それから、私はスイスのバーゼル州に一昨年行きまして、あそこのメーカーの人々に日本の大衆保健薬の話をいたしましたところが、ああ、あのテレビのこれですかと言って、みんな大笑いです。みんな、こんなものは薬じゃないと言っているんです。でたらめなんですね、国際的に。だから、いまや特許法も、そういう医薬品については物質特許でやるべきではないか。模倣のできないような形で、きちっとその技術を保護するということが必要ではないか。そうでないと、まぜ屋というメーカーがおって、よそのまねをしてはまぜて、テレビでばあっとやって、王選手がかっ飛ばしたり何かするとみんながぐっと飲む、こういうばかなことになるわけですから、ほんとうに良心的な技術の開発というものが保護されるような、そういう特許や政策というものがなければ、悪貨が良貨を駆逐するようなその根本を正すことはできない。そのことを早くやるべきだ。これは学者の方方の意見がありましたらひとつお聞かせいただきたい。なければ、薬務局長、あなたはどう思っているかということをお聞きしたい。
  146. 加藤威二

    ○加藤説明員 特許につきましては、確かに先生御指摘のとおり、わが国では医薬品については製法特許になっております。これが日本の独創的な医薬品の開発のためにはネックになっているという御指摘は、そのとおりだと思います。ただ、これをいますぐに物質特許に変えたほうがいいじゃないかという点につきましては、私どもは若干その点については、もう少し慎重にその切りかえる時期−当然私は将来切り変えるべきだと思いますけれども、その時期等を慎重に考える必要があるというぐあいに考えているわけでございます。  その理由といたしましては、残念ながら、わが国には物質的に特許を持った医薬品というのは、日本がほんとうに開発したという医薬品は非常に少ないわけでございます。したがって外国から入ってきている、そうすると、日本では、製法特許であります限り、製法さえ変えれば同じものでも特許なしに、特許に触れずにつくれる、こういう利点といいますか、ある意味では悪い結果になると思いますけれども、それがある。物質特許に切りかえますとそういうことが全然できなくなりますので、要するに、外国で開発して日本に入ってきた薬は、全部外国の、その開発した国に利益を持っていかれてしまう。それで、日本の企業は特許料でも払ってそしてつくっているということになるわけでございまして、そういう意味で、もう少し新しい薬を開発する力が日本の企業にできたときに、この製法特許を切りかえていく……(大原委員「もう考えるときではないの」と呼ぶ)確かに、自由化も近づいてまいりますし、時期は迫っておると思います。そういう時期について慎重に検討して、先生御指摘のように、日本の独創性を発揮するためには、このネックになっている特許法を近い将来改めていく必要があるだろう、これは必ずしも厚生省の所管ではございませんけれども、薬務を所管しております私どもといたしましては、そういう感じを持っているわけでございます。
  147. 大原亨

    大原委員 終わります。
  148. 濱野清吾

    濱野委員長 最後に、まことに恐縮ですが、委員諸君の御了解を得て、委員長として、実は非常に不愉快なことばを聞かされたものですから、ひとつ、できるならば釈明をしてもらいたい。  それは、国立衛生試験所長石舘さんから、参考人の三学者が来ておる中でこういう発言があったわけですね。こういう検討、そういう発言は学会でやるべきであって、ここでやるべきではない、こういう発言がございまして、せっかくお招きした科学者の発言に制約を加えるがごとき発言があった。これはまことに遺憾である。(「そうだ」、「同感」と呼ぶ者あり)石舘さんはいろいろな要職にいらっしゃる。薬に対しましては、あなたの発言やあなたの行動が微妙な影響を受けておる。そういう重要なポストにいらっしゃるだけに、こういうことはどうしたものかと考えるのですが、あなたの感懐をひとつお願いしたい。  わからなければもう一度申し上げます。学者の方がこれだけおいでになって、あなたの発言に、学者の意見発表にブレーキをかけるような発言があった。これは一体どういうわけなんだ。ほかの場合なら、薬事審議会あたりの会長としてお話しになるならいいが、少なくとも国会の審議の場でそういうことを発言されると、委員長としての私自身が非常に迷惑する。私どもは必要があって参考人の方々においでを願っているのに、しかも国立の衛生試験所長である薬事審議会の会長さんがそういう発言をされるということは、国会の委員会としてもまことに迷惑だし、それから、参考人としておいでになった方々の自由な発言にも制約が加わるであろう、これはあなたの立場から考えると、そう私どもは推測するわけであります。そういうことは、ひとつどうですか、将来はやらないようなことにしてくださいませんか。できればお取り消し願いたい。
  149. 石舘守三

    石舘説明員 私、どうも国会の場の慣習をあまり承知しておりませんので、あるいは誤りがあったかもしれませんが、ただ私の意味は、一つの薬品がきくかきかないかという議論になりますと、これは専門的な議論になるので、こういうことは私も申し上げたくないし、また、申し上げても非常に時間もかかることで、そういう意味で私は、こういう純学問的な議論、純専門的な議論は別な場所でやるべきじゃなかろうか、そう承知したわけであります。  この発言が非常に不適当だという御忠告であるならば、私喜んで——決して不謹慎なつもりで言ったんじゃないのですが、専門的な、皆さんあまり理解できないような議論をここで展開しても、御迷惑だろうという意味で私は申し上げたわけです。
  150. 濱野清吾

    濱野委員長 それじゃ重ねてお伺いいたしますが、いままで委員諸君の質疑応答の中で、化学方程式やその他純化学にわたった質疑応答はやってないはずなんです。問題は方法論なんです。薬の価値判断をどうするか、この方法論の問題なんです。ですから、化学方程式をここで述べて云々というわけでもなかったし、それからもう一つあなたに心得てもらいたいことは、この委員会の中には、あなたのような専門家が、お医者さんが二人いる、国会というところはあらゆる業務を持っている議員がいるわけなんです。ですから、知っているのはわれわれだけ、少なくともおれだけだというような考えで、国会を変な形で見ていることは迷惑千万である。ですから、取り消しを願えるならば取り消しを願いたい。
  151. 石舘守三

    石舘説明員 私、こういう場にはなはだなれないで、ここへ招かれたのは一回か二回で、たいへん慣習に対して、ここの何というか、尊厳を傷つけたという点があれば、私はつつしんでおわびを申し上げたい。
  152. 濱野清吾

    濱野委員長 傷つけてます。これは少なくとも国会の場です。専門家もいます。だから、自分一人だけが、われわれのグループだけが、かりに言えば、これを判断すべきものであって、国会で審議する問題ではない、こういうことに受け取れる。これはひとつ取り消してもらいたい。
  153. 石舘守三

    石舘説明員 それじゃ、つつしんで取り消しましょう。
  154. 濱野清吾

    濱野委員長 どうぞひとつ率直に取り消してください。
  155. 石舘守三

    石舘説明員 私、別に何も悪意がないことを御了解願いたい。
  156. 濱野清吾

    濱野委員長 以上で、厚生省所管についての本日の質疑は終了いたします。  参考人の皆さまには、審査に御協力くださいまして、まことにありがとうございました。(拍手)      ————◇—————
  157. 濱野清吾

    濱野委員長 これより、引き続き農林省所管及び農林漁業企融公庫について審査を行ないます。  まず、農林政務次官より概要説明を求めます。渡辺農林政務次官
  158. 渡辺美智雄

    ○渡辺説明員 農林省所管昭和四十三年度歳入歳出決算について概略を御説明申し上げます。  まず、歳入につきましては、収納済み歳入額は、一般会計において四百三十五億九百五十万円余、食糧管理特別会計勘定合計において四兆九千五百九十三億二千九百四十六万円余、国有林野事業特別会計勘定合計において千七百四十七億五千百八十八万円余、農業共済再保険特別会計勘定合計外七特別会計の総合計において千六十三億千二百九十三万円余となっております。  次に、歳出についてでありますが、支出済み歳出額は、一般会計において六千九百九十八億七千三百四十八万円余、食糧管理特別会計勘定合計において四兆九千五百三十六億千三百三十九万円・余、国有林野事業特別会計勘定合計において千五百三十三億千六百二十九万円余、農業共済再保険特別会計勘定合計外七特別会計の総合計において六百七十六億八千四百四十九万円余となっております。  これらの経費は、農業の生産性の向上と総生産の増大、農業生産の選択的拡大、農業構造の改善、農産物等の価格の安定及び流通の合理化、農業従事者の福祉の向上と地域の振興、農業団体の整備強化、林業の振興、水産業の振興その他農林漁業金融公庫資金の拡充、災害対策事業、食糧管理事業、国有林野事業等の諾事業の実施に使用したものであります。  これらの事業概要につきましては、お手元にお配りいたしております昭和四十三年度農林省関係決算概要説明によって御承知を願いたいと存じます。  これらの事業の執行につきましては、いやしくも不当な支出や批難さるべきことのないよう、常に経理の適正なる運営について極力意を用いてまいりましたが、昭和四十三年度決算検査報告において、なお、不当事項として相当の件数の指摘を受けておりますことは、まことに遺憾に存じます。  今後とも指導監督徹底いたしまして、事業実施の適正化につとめる所存であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  159. 濱野清吾

    濱野委員長 次に、会計検査院当局より検査概要説明を求めます。増山会計検査院第四局長
  160. 増山辰夫

    ○増山会計検査院説明員 昭和四十三年度農林省の決算につきまして検査いたしました結果の概要説明申し上げます。  検査報告不当事項として掲記いたしましたものは、物件関係が一件五百万余円、保険関係が一件千四百万余円、補助金関係が六十九件一億三千百万余円、計七十一件一億五千百万余円でございます。なお、補助金のうちには災害復旧事業に対する早期検査の結果、補助金の減額を要すると認めましたものが三千六百万余円ございます。  まず、物件関係について説明いたします。  五四号は、国の物品を民間の業者等に無償で譲渡したものでございますが、これは国以外のものに無償で譲渡することができる法令の規定がございませんので、有償とすべきであったと認められるものでございます。  保険関係について説明いたします。  五五号は、農業共済保険事業の運営が適切でないというものでございます。このような事態につきましては、毎年度検査報告に掲記してその適正をはかるよう注意を促しているところでございます。  補助金関係について説明いたします。  五六号から一〇六号までの五十一件は、いずれも公共事業関係のものでございまして、コンクリート工事などの施工が不良で設計に比べて強度が著しく低下しているもの、石積み及び石張り工事などの施工が設計に比べて粗雑となっているものなどでございます。  このような事態につきましても、毎年度検査報告に掲記してその適正をはかるよう注意を促しているところでございますが、なお、今後一そう指導、監督の強化をはかるなど、工事の適正な施行について配慮の要があると認められるものでございます。  一〇七号から一二三号までの十七件は、公共事業関係以外の一般補助関係のものでございまして、事業費を過大に精算しているものなどでございます。このうち一二三号は、都道府県が国からの農業改良資金助成補助金と自己資金とを財源として農業者に無利子で貸し付ける農業改良資金関係のものでございまして、借り受け者に対し本制度の趣旨を十分徹底させていないなどのため、借り受け者が事業を全く実施しないで貸し付け金を団体の経費に使用したり、貯金のまま保有しているものなど、道県の貸し付け金の運営が適切を欠き、補助目的に沿わない結果となっていると認められる事態でございます。つきましては関係当局改善方を期待するところでございます。  一二四号は、昭和四十三年発生災害復旧工事費の査定を了したものに対し、早期に検査を行ないました結果のものでございます。このような事態につきましては、毎年度検査報告に掲記してその適正をはかるよう注意を促しているところでありますし、関係当局におかれてもその対策について種々努力されておりますが、なお、今後一そうの努力を期待しているところでございます。  次に、是正改善の処置を要求したものについて説明いたします。  その(1)は、土地改良事業等における直轄工事の間接労務費の算定について是正改善の処置を要求したものでございます。これは、農林省が直轄で施行する土地改良事業等における請負工事の予定価格の作成にあたり、同省で制定した積算基準により直接労務に必要な役付及び雑役の経費を間接労務費として算定することとしておりますが、近年、機械施工の分野の増加、既成品の使用率の増加することにより直接労務費が減少する傾向にありまして、間接労務費の算定が工事施行の実情に沿わなくなり、工事費の積算が適正でないと認められますので、工事施行の実態を適確に把握して、現行の積算基準を施工の実態に即するよう改訂するなどして、工事費積算の適正をはかる要があると認められるものでございます。  その(2)は、外国麦の買入れに伴う検数について是正改善の処置を要求したものでございます。これは、食糧庁が輸入商社から外国産の小麦及び大麦を買い入れるにあたり、その荷さばきに際し輸入商社をして検数人にその個数の計算または受け渡しの証明をさせておりますが、外国麦はばらの荷姿で輸入されまして、サイロに庫入れするものが増加するなど荷役が合理化され、その数量の確認も容易に行なわれるようになりましたことなどを考慮いたしますと、荷さばきにあたり必要やむを得ないと認めた場合についてだけ検数を行なわせるなどの処置を検討し、経費の節減をはかるよう配慮の要があると認められるものでございます。  以上の不当事項及び是正改善の処置を要求した事項のほか、本院の質問に対して処置を講じたものについて説明いたします。  食糧庁が飼料用外国大麦の売り渡しにあたりまして、入札日を繰り上げることにより当月中に現品の売り渡しが完了することができ、保管料の節減がはかれるのではないかということで当局の見解をただしましたところ、そのようにする処置をとったという事態でございます。  なお、以上のほか四十二年度におきまして、土地改良事業における直轄工事の予定価格の積算につきまして、改善の意見を表示いたしましたが、これに対する農林省の処置状況につきましても掲記いたしております。  以上、簡単でございますが、説明を終わります。
  161. 濱野清吾

  162. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 農林漁業金融公庫昭和四十三年度業務概況につきまして、御説明申し上げます。  まず、昭和四十三年度収入支出決算について御説明いたします。  昭和四十三年度における収入済み額は四百億六千六百三十六万円余、支出済み額は三百九十四億二千四百三十七万円余でありまして、収入支出を超過すること六億四千百九十八万円余となっております。  以下、これを収入支出の部に分けて御説明いたしますと、まず収入の部におきましては、本年度収入済み額は四百億六千六百三十六万円余でありまして、これを収入予算額四百四億三千三百二十八万円余に比較いたしますと、三億六千六百九十二万円余の減少となっております。  この減少いたしましたおもな理由は、一般会計からの補給金受け入れが予定より少なかったためであります。  次に、支出の部におきましては、本年度支出予算現額四百十五億三千六百九十五万円余に対し、支出済み額は三百九十四億二千四百三十七万円余でありまして、差し引き二十一億千二百五十七万円余の差額を生じましたが、この差額は全額不用となったものであります。  この不用額を生じましたおもな理由は、借り入れ金利息及び委託金融機関に対する手数料の支払いが予定より減少したためであります。  次に、昭和四十三年度における損益について申し述べますと、本年度の総益金四百五十四億二千六百十四万円余に対し総損失は四百四十五億九百六十八万円余でありまして、差し引き九億千六百四十五万円余の償却引き当て金繰り入れ利益をあげましたが、これを全額滞り貸し償却引き当て金及び固定資産減価償却引き当て金に繰り入れましたため、国庫に納付すべき利益はありませんでした。  次に、昭和四三十年度貸し付け概要について御説明いたします。  昭和四十三年度中における貸し付け決定総額は千七百六十八億四千九百九万円余で、前年度に比し三百十八億六千三百三十七万円余の増加となっております。  これを業種別に申し上げますと、農林漁業経営構造改善六百七十四億千五百五十三万円余、農業構造改善(土地基盤整備)六十三億七千四百九十一万円余、土地改良四百七十一億三千九百六十四万円余、林業百三十八億三千七百三万円余、漁業九十六億九千九百十四万円余、共同利用施設及び新規用途・乳業百六十九億六百十六万円余、自作農維持七十三億六千四百四十五万円余、その他八十一億一千二百十六万円余となっております。  以上、貸し付け決定状況につきまして御説明申し上げましたが、これに対しまして、四十三年度貸し付け回収実績は五百五十七億七千九万円余で、前年度の回収実績に比較いたしますと七十五億七千百三十七万円余の増加となっております。この結果、昭和四十三年度末における貸し付け金残高は七千三百三十五億五千二十万円余となっております。  次に、昭和四十三年度貸し付け資金概要について御説明いたしますと、本年度における貸し付け資金交付額は千六百十六億千二百三十七万円余でありまして、これに要した資金は、資金運用部資金からの借り入れ金千二百八十億円及び簡易生命保険及び郵便年金積み立て金からの借り入れ金五十億円並びに貸し付け回収金等二百八十六億千二百三十七万円余をもって充当いたしました。  以上が昭和四十三年度農林漁業金融公庫業務概況であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  163. 濱野清吾

    濱野委員長 これにて説明聴取を終わります。
  164. 濱野清吾

    濱野委員長 本日は、農林省所管中、特に古古米の管理及び処分について、参考人として千葉大学教授宮木高明君の御出席を願っております。  この際、参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  御多用中のところ、当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとう存じます。また、午前中の委員会が長引きまして、たいへんにお待たせしたことをおわび申し上げます。本件審査につきまして、何とぞ忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。  なお、念のため議事の順序について申し上げます。  まず、初めに御意見を約二十分以内に取りまとめてお述べいただき、次に、各委員からの質疑に対してお答えを願います。また、発言の際には、そのつど委員長の許可を得なければならないことになっておりますから、あらかじめ御了承を願います。  それでは、宮木参考人に御意見の開陳を求めます。宮木参考人
  165. 宮木高明

    ○宮木参考人 私がこれから申し上げますことは、今回食糧庁保管の古古米につきまして、毒カビが発生するという問題について焦点をしぼってお話ししたいと思います。  この問題を考えますときに、基本的に理解しておきたいことがございます。  第一は、カビによる病害、いわゆるカビ中毒症と呼ばれるものはどのようなものであるか、歴史的にいかなる問題が起こっていたかというようなこと、それから第二には、このカビ毒がわれわれの保健衛生に対していかなる問題を提起しているか、第三には、このカビ中毒症の成り立ちというようなことから考えまして、いかなる対策を持つべきであろうか。この三点に分けてお話ししたいと思います。  第一に、いわゆるカビ中毒症でありますが、これはカビ毒を含んでおりますもの、主として穀類でありますが、これを食用とした人間、あるいはそれをえさとしました家畜に被害を与える、そういう中毒症であります。学問的には、人あるいは温血動物に病害、好ましからぬ生理作用をもたらすというふうにいっておりますが、このようなカビ毒は、家畜にとりまして、えさとして与えましたときに、当然いま申しましたように病害を起こすわけでありますが、その家畜の乳あるいは内臓、そのようなものをわれわれが摂食しましたときに、そのカビ毒がそこに蓄積されていまして、それによる被害のおそれもあるということを注意しなければなりません。なお、人あるいは温血動物と申し上げましたが、最近におきましては、特殊のカビ毒は、マスのような魚類あるいはこん虫の蚕にも被害を与えるというようなことが発見されております。  ところで、このカビ中毒症、カビ毒による被害の歴史はきわめて古いものがありまして、中世紀にヨーロッパにおきまして麦角中毒症というのが起こっております。これは四肢が壊死を起こしまして脱落するという非常に悲惨な中毒でありますが、当時はそれが何ゆえに起こるかということがわからず、人々を非常に恐怖におとしいれたものであります。原因はその後追求されまして、近代に移って、これは食用とするライ麦の中に麦角菌と呼ばれるカビが混入しておりまして、その麦をパンとして食べましたときに中毒を起こすことが明らかになりました。  この麦角中毒がカビ中毒症の最も典型的な、かつ歴史的な例でありまして、また人間に及ぼす被害を如実に示したものでありますが、これは決して古いことばかりではありません。一九四二年から一九四七年、すなわち、今回の二次大戦をはさみまして、ソ連に起こりました食餌性の無白血球症という中毒症があります。これは原因が最初やはり不明でありましたが、結局、冬越しの小麦あるいはキビのたぐいのものがその保存期間中にカビに襲われまして、その繁殖を通じまして、そこにカビ毒ができる、そしていま申しましたような無白血球症を起こしたわけでありまして、この被害はかなりの数にのぼっております。この原因は、フザリウム菌と呼ばれるカビの一種でありますが、実はこのフザリウム菌の別の種類でありますけれども、わが国にもこのカビによる被害が、一九四六年から一九五〇年代、すなわち昭和二十一年から三十年にわたって、各所に、散発ではありますが起こっております。これは、その赤カビといわれるカビによって、カビ毒が含まれている小麦粉を食べた、特に農家の人たちにその中毒症があらわれております。目まい、嘔吐が起こり、肝障害を与えるという、そういう中毒であります。  一般に、カビ毒は、このような人間に及ぼす病害よりかも、むしろ家畜に与える病害のほうがあらわになりやすいわけでありますが、わが国の例で申しますと、一九五四年、昭和二十九年に、牛がやはりこのカビ毒を含んでいるえさを食べて中毒死をするという事件が起こっております。これはパッリンと呼ばれるカビ毒を含んでいるえさのためであります。また近くは、昭和四十一年でありますが、麦芽をえさとしておりますときに、そこに特殊のカビがはえまして、カビ毒ができておりまして、それを食べた牛が中毒を起こしているという事件も知られております。  しかし、何と申しましても、このカビ再につきまして学界あるいは技術界にショッキングを与えましたのは、昭和三十九年、英国におきまして、一カ月の間に十万匹の七面鳥のひなが斃死するという事件を通じて起こりました、今日では最強のカビ毒と呼ばれるアフラトキシンの発見であります。  これは原因は、結局ブラジル産のピーナツを輸入いたしまして、これをえさとしたわけでありますが、それに繁殖していましたカビから出たアフラトキシンというカビ毒によって中毒症を起こしたものであります。これは英国のみならず、オーストリア、ハンガリー、スペインと次第に広がってまいりまして、ついにアメリカにおきましてはこの問題を重視いたしまして、特に問題がありますのは、このアフラトキシンは、それまではあまり注視されておりません発ガン性のあるということであります。  御承知のごとく、われわれのガンの成因はまだ突きとめられてはおりませんけれども、あるいは食べものによるのではないか、あるいはまた排気ガスの中の毒物によって肺ガンができるのではないかというようなことが検討されつつありますけれども、少なくもこのような自然物の中に発ガン性の物質がある、しかもそれはきわめて強力であるということは、ガンの対策上にも重大な問題としてとらえられたわけであります。このため、アメリカにおきましては毎年五百万ドル以上の対策費を出しまして、研究調査を今日まで励行しております。  それはいかなることをやっているかと申しますと、穀類の中に、いかなるカビがどのように分布しているかというサーべー、調査であります。それから第二は、穀類の中にどのくらいのカビ毒が含まれているだろうかという常時の監視であります。それから第三は、いかなる条件のときに穀類にカビがはえやすくなるだろうかというその検討であります。第四には、そのカビがはえないようにいかなる対策を講ずるべきか、さらに、先ほど申しましたように、カビ毒が家畜のからだを通じてわれわれにとらえられるその経路の追求であります。たとえば牛、豚、羊その他につきまして、どのような部分にどのようなカビ毒が含まれてわれわれの口に入るだろうかというような大がかりな実験であります。このようなことをやりまして、行政的にも、カビ毒に対する安全性の保障ということを努力して続けてきておるわけであります。  また、この問題がわが国に関係いたしましたのは、やはり昭和三十九年のころでありますが、わが国では、御承知のごとく主要な食べものの中に酒、みそ——酒は食べものというといけないかもしれませんが、みそ、しょうゆのたぐいがありまして、これは御承知のごとく、こうじでつくるものであります。このアフラトキシンをつくります毒カビはこうじ菌の一種でありまして、アスペルギルス・フラブスと呼ばれておるものであります。このことは、外国のガン研究者にいろいろな考え方を持たせたようであります。すなわち、わが国では御承知のごとく肝ガンとか消化器ガンが多いわけであります。外国の学者から見ますと、このようなこうじカビを使用した食品を日本人は常食しているがゆえにそのようなガンができるのではないかという疑いを持つのも当然だったわけであります。これに関しまして、わが国におきましては、国立予防衛生研究所が緊急にこのアフラトキシンの検査法を検討いたしまして調査を進めまして、幸いにこうじ菌の生産株——野生株でありませんが、生産株にはアフラトキシンをつくるものがないということ、並びに醸造界におきましても検討を続けまして、製品の中にもアフラトキシンはないということが認められました。この点は愁眉を開いたわけであります。  しかし、一方におきまして、このアフラトキシンの登場は、カビの中でも、特に慢性の病害、特にまた発ガン性を持つカビ毒の追求ということが考えられて、それに研究が集中してまいりました。御承知のごとく、昭和二十九年に起こりました黄変米事件があります。この当事の黄変米によって人畜の被害は認められてはおりませんけれども、そこに毒カビが存在しているというゆえに、このお米は食用とはされずに処理されたわけであります。その後、研究者たちの努力によりまして、実はこのカビの毒にも発ガン性があるということが発見されました。  一方におきまして、カビ毒のこのような意外な作用につきまして、外国におきましても研究が進みまして、そしてその後、少なくも発ガン性を持つというカビ毒が二、三種類発見されております。その一、二を申し上げますと、わが国の米からも発見されますアスペルギルス・ベルシカラーというカビがつくりますカビ毒のステリグマトシスチン、これは先ほどのアフラトキシンの十分の一ないし百二十五分の一の強さではありますが、ガンをつくるということが動物実験で知られています。またアスペルギルス・オクラセウスというカビがつくるカビ毒のオクラトキシンも、これは発ガン性が疑われているわけでありまして、現在検討が続けられているわけであります。いずれにしましても、このほかまだ正体の分明にならないカビ毒も発見されているわけであります。  この発ガン性のカビ毒というのはきわめて重視すべきものがございまして、御承知のごとく、発ガンと申しますのは、いろいろな発ガン性の物質が微量ずつ集まりましても、加算性と申しまして、それが一緒になりますと発ガンするという実験があります。したがって、このようなカビ毒に対して保健衛生上対処しますのには、できる限りこのような発ガン性であるカビ毒を排除するということが大事なわけであります。強い弱いはあれ、これをできるだけ取り除くということがガン対策に連なるということが言えるわけであります。  ところで、カビと申しますのは、高温多湿の風土に多いわけであります。穀類に寄生いたしますカビにはほぼ二種類ありまして、いわゆる野外のカビというような種類のもの、つまり、たんぼとかあるいは畑で付着いたしますカビは、水分二五%の穀類あるいはきわめて湿度の高い季節条件でよく増殖いたします。それからもう一つは、貯蔵性のカビと申しまして、貯蔵しているうちに増殖してくるカビでありますが、これは穀類が水分一五%以上、湿度が八〇%という条件が彼らの繁殖に好適であります。  いずれにしましても、わが国はそういう高温多湿の風土性でありまして、言うなれば、カビ風土にあるわけであります。ヨーロッパなどにありますような乾燥した風土ではなく、カビの問題というのは、わが国にとって特にシリアスなきびしいものがあるのではないかと思われます。加えまして、最近の食糧流通の上から見ますと、外国、ことに熱帯地区のようなところから入ってまいります穀類が多い。先ほどのブラジル産のピーナツのほかに、アフリカなどからの穀類にもアフラトキシンのカビが発見されておりますし、アフラトキシンの含まれていることも知られております。言うなれば、わが国はカビ風土であり、また、カビ風土から穀類が輸入されているという最近の状態になっているわけでありまして、しかも、さきに述べましたごとく、毒カビあるいはカビ毒が研究上従来知られなかったものが発見されているという現実に至ってきたわけであります。  米は、言うまでもなくわれわれの主食であります。この主食におけるカビというのは、われわれとしても看過することはできません。したがって、そのカビが毒カビがあるか、また、その毒カビがどのような条件で米の中にカビ毒を出すかということは、保健衛生上大いに考えなければならず、また、必要に応じてはそれに対処する方策が要求されてくるわけであります。これはカビ毒というものを切り離すだけではなく、残留農薬の問題、あるいはそのほか、われわれの食生活を通じてわれわれに危害を与える数々のものとあわせてこのカビ毒を考えなければならないと思います。特に急性中毒のようなものではなく、先ほど申しましたように、ガンのごとく、慢性の病害についての対策ということを特に考慮する必要があると思います。しかも最近、古古米のカビ問題につきましてマスコミがいろいろな角度から取り上げます。言うならば、米食民族の国民あるいは東洋各国の人々は、これによって不安を抱いているに至っております。これに対する対処というものが必要ではないかと私は思います。  ところで、ここで毒カビとカビ毒との関係を申し上げておきたいと思います。例はあまりよくないかもしれませんが、御承知のごとく、ペニシリンという医薬品があります。これはカビがつくり出すものであります。毒カビもちょうど同じように、いろいろな種類の名前、学名がつけられておりますけれども、そのカビがつくり出す毒であります。したがって、カビの種類は何でもいいというわけでありません。毒カビと呼ばれるものがそれに固有のカビ毒を出します。しかも同じように、形の上から見て同じものと考えられる種類でありましても、その中でカビ毒をつくるものは限られているということであります。  それから第二は、その毒をつくるカビでありましても、繁殖条件で、カビ毒はできにくくなったり、あるいはできやすくなったりいたします。しかも、このような条件下でできますカビ毒ではありますが、その食品中の含有量、穀類なら穀類の中に含まれている量が、結局は毒性というものを支配しているわけであります。したがいまして、毒カビを発見するという仕事のほかに、カビ毒自身を穀類なら穀類について分析調査をすることが必要なのであります。その毒を食べてこそ病害が起こるのでありますから、その毒を調べなければなりません。検査をしなければなりません。しかし、これが従来ほとんどされていなかったわけであります。わが国におきましては、先ほど申しましたように、アフラトキシンだけがその時点で行なわれたわけであります。黄変米の当時ですら、これは行なわれておりません。したがいまして、場合によりましては、毒カビがありましても、カビ毒はそこにはないということもあり得るし、また、毒カビが発見されていなくても^何らかの過去におきましてカビ毒が入っていることもないとは限りません。したがって、このカビ毒の検査ということは、きわめて不可欠なことだと私は考えております。  したがいまして、このようなカビ毒に対処する方策といたしましては、第一が、毒カビの調査、検出であります。第二は、カビ毒の分析調査、第三は、カビが生じない保存方法の改善、第四が、いまだわれわれの知らないカビ毒を発見し、それに対策を立てるということでございます。言うなれば、前の三点は行政的な任務であり、第四点は研究的な任務であると考えられます。  これはいかようにしてシステムをつくるべきか。私の見解では、次のようなシステムがあり得ればよかろうと考えております。  それは、たとえば東日本あるいは西日本、水分の含有量がグループ的に変わっておりますそのような米につきまして、定期的にカビの検査を行ないます。あるいは天候が、非常に長雨がありますとか、いろいろな点で変わった時点には、特にそのようなサーべー、調査を数をふやしてまいるということであります。  そして、そのことを通じまして、二つのことが明らかになります。一つは、米の中にいままで知られていたどのような毒カビが一番多く分布しているかということが、ランキングでわかると思います。それから第二点にわかりますことは、いままで知られていないカビではあるけれども、意外に多く米に繁殖しているということが明らかになる、この結果が、常時の定期的なチェックによりましてこの二つがわかりましたときに、第一の、毒カビとして何が一番多いかということにつきましては、その毒カビがつくりますカビ毒はすでに明らかになっているものでありまして、分析法も、あるものについてはすでにでき上がっております。なおまだ検討しているものもありますが……。その方法によりまして、カビを調べるまでもなく、米についてそのカビ毒の検査を行なうわけであります。これはやはりルーティンに、常に定期的に行なうのが正しいと思われます。第二点の、いままで知られていないカビが多く繁殖しましたとき、これを追求するわけでありますが、その結果、幸いに無毒であれば問題はありません。しかし、そこに新しいカビ毒が発見されたならば、これは新しい問題点として対策の追加事項とするわけでございます。このようなシステムができておりまして、これによって絶えずカビ毒を監視するというやり方こそが重要ではないかと思うわけであります。  なお、今回の古古米の問題に対しまして、われわれも意見を求められて、食糧庁との間で検討いたしましたが、その結果、統一見解というものが出されております。この場合、米の水分が一五%以下ならば、カビ毒がそこにあるおそれはないという結論が出ておりますが、これは先ほど申しましたように、一般的に、貯蔵性のカビは水分一五%以上が最も増殖に好適になってまいりまして、したがって、カビ毒の生成、発生も多いという一般論から出たものであります。  それから、その統一見解の第二には、寄生するカビが一粒の粒培養で一〇%まで出るものは正常である。これはここに見えております倉田博士の見解でありまして、普通の、われわれが日常食べております米の状態から割り出した妥当な線だと考えられます。しかしながら、この点はさらに今後解明しなければならない点ではないかと思います。  統一見解の第三におきまして、肉眼検査が常に行なわれておりますが、それと検出菌数に相関性があるという立場から、カビを認めないものには菌数が少量であり、微量であるから、カビ毒をつくるということが少なくて、有害ではないという考え方でありますが、この点につきましては、これは科学的な、合理的な推定ではありますけれども、先ほど来申しましたように、これを裏づけるべくカビ毒の分析、検出ということが行なわれねばならないと私は考えるわけであります。  以上が私の意見でございます。
  166. 濱野清吾

    濱野委員長 次に谷説明員、鶴田説明員及び倉田説明員に順次発言を求めます。  まず、谷食糧研究所長
  167. 谷達雄

    ○谷説明員 本日の問題でございますカビ毒に関しまして、それと、その基盤になります米をはじめその他の穀類の保管あるいは貯蔵につきまして、見解を申し述べたいと思います。  現在日本で行なわれております貯蔵は、自然条件におきますところのいわゆる常温貯蔵と、これを人間がコントロールいたします低温貯蔵あるいは準低温貯蔵とがございます。これを分けて考えることが必要であろうと思います。  それで、自然条件のいわゆる常温貯蔵の場合におきましては、貯蔵に伴いまして、米その他の穀物の品質は漸次低下いたしますが、その際に、その品質低下ばかりでなくて、そこにいわゆる生物による被害が生ずるわけであります。このおもなものは害虫、カビ、それからネズミでございます。これらのいわば生物によりますところの被害は、いろいろな条件でその被害の程度が違ってまいりますが、そのおもなものといたしましては、米をはじめとする穀物自体の持っております水分、温度、湿度、この三要因をあげることができるかと思います。それで、この水分あるいは温度、湿度、これはそれぞれ水分が少ない、あるいは温度が低い、あるいは湿度が低いということが望ましいのでございます。しかし、この水分と貯蔵の温度には、いわばかなり相関的な関係がございまして、貯蔵温度が低ければ、水分はある程度多くてもよろしい、水分が少なければ、逆に貯蔵温度はある程度高くてもよろしいというようなことが言えようかと思うのであります。それで、わが国におきますところの、こういう湿度が高い、あるいは温度が高い時期と申しますのは、大体六月、七月、八月、九月、あるいは五月も多少入るかと思いますが、一年じゅうではございせんで、そういういわば初夏からつゆを経まして秋までに至る四カ月ないし五カ月が一番問題の時時でございます。  そういうような害虫、カビなどの被害を防ぐ、あるいはそれを除く方法といたしまして、まず第一に、日常の管理があげられるわけでございます。その管理と申しますのは、倉庫をよく見回るとか、あるいは、その倉庫自体の条件を低温に保つように、あるいは温度を上げないように、熱をさえぎるような貯蔵条件に持っていく、あるいは湿度を調節するということが行なわれておるわけでありまして、これは単にその管理者の勘でもってやっておるわけではございませんで、いまではそれぞれ、特に湿度などにつきましては、温度がこれくらい下がれば、あるいは米の水分がこれくらいあればそれに応じて湿度がどれくらいになるといったような、そういうテーブルを持っておりまして、それによって、倉庫の開閉でありますとかそういうようなことをやっておるわけでございます。それは一例でございます。  それから次に、やや積極的な方法といたしまして、薫蒸というものがございます。これは薫蒸剤を使いまして、倉庫の中の米あるいは穀物を特に害虫あるいはカビの害から防ぎ、あるいはそれを駆除するわけでございますが、特にカビにつきましては、この予防的な意味を含めまして、カビが出ておりませんでも、その予防のために薫蒸を行ないます。もちろんカビが発生いたしますと、その駆除のためにそういう処置を行なうわけでございます。それが大体常温の一般的な貯蔵とその対策でございます。  それから次は、低温の貯蔵、あるいは準低温と申しまして、かなり温度を低く保つ、普通十五度以下あるいは二十度以下の温度に保っておりますが、そういうように温度を低温に保つということが、これは先ほどから申しましたことと関連いたしまして、日本で特に発達いたしました方法でございまして、こういう倉庫が、現在約百五十万トンあるいはそれ以上にふえておるわけでありまして、こういうような方法は、そのカビの害を防ぎ、あるいは害虫を防ぐ、あるいは米の品質の劣化するのを防ぐということから、最もいい日本に適した方法であると考えております。  それで、こういうような貯蔵の実際の監視あるいは管理がどう行なわれているかということでございますが、これは食糧庁を中心にいたしまして、私どもの食糧研究所が協力いたしますし、さらに、各府県にございます食糧事務所がそれぞれそういう専門の課を持っておりまして、それがそれぞれ倉庫に対して適切な指示をするとか、あるいはその見回りをやるというようなことで行なっておるわけでございます。  日本におきますところのこういう穀物の貯蔵、保管の管理体制というのは、非常に歴史が古うございまして、日本では、何と申しましても戦前、もっと古くから米を大事にしておりますので、この貯蔵間のそういう管理の技術、あるいは知識の集積、あるいは経験、あるいはその体制というのが古くから確立しておりまして、それに年々新しいものを加えまして、あるいは講習会をやりますとか、あるいはそういう管理に役に立つところの新しいデータを提供する、いろいろなそういうことで、体制自身は古くから続いておりますけれども、それに常に新味を加えていくような努力をやっておるわけでございます。  それで、これは私どもの立場から申しますと、日本における米をはじめ、穀物の貯蔵、保管のレベルというものは、東南アジアあたりとはもちろん比較にはなりませんし、世界的に見ましても、決して水準の低いものではないというように公正に考えられるわけでございます。  以上、本日のカビの問題に関連いたしまして、その背景になりますところの、あるいは基盤をなしますところの米の貯蔵、保管の状況について基本的に申し上げたわけでございます。
  168. 濱野清吾

    濱野委員長 次に、倉田国立衛生試験所真菌室長
  169. 倉田浩

    ○倉田説明員 私は、ただいま宮木教授のお話を伺いまして、私も全く同様な考え方で、先生はきめこまかくいろいろ、特にカビ毒と毒カビとの関係について詳しくお話しなさいました。私も、もしもその機会を与えられたならば、その話をここでお話し申し上げようと考えておりました。  私は、あの黄変米以来、輸入米の検査その他のカビ研究のことにつきましては、十五年の経験を持っておりまして、むしろ、はなはだおこがましい言い方でございますが、その研究に関しては、宮木先生よりも私のほうが先輩と思いますが、その立場でも、先生は非常に——というのは、私どもはいま宮木教授と共同研究をいたしておりますので、その立場で、統一見解なり、日ごろ考えていることをお話し申し上げたので、私からは何事もお話しすることもございません。
  170. 濱野清吾

    濱野委員長 次に、鶴田食糧研究所研究員
  171. 鶴田理

    ○鶴田説明員 いまいろいろお話が出ましたので、実際的なお話をちょっとしてみたいと思います。  食糧研究所では、四十三年度に、いまいわゆる古古米といわれております四十二年産米につきまして、マイコトキシンにおいて分析方法の確立されておりますアフラトキシンの存在を、各県の倉庫より入手した玄米について分析を行ない、アフラトキシンの存在しないことを確認しております。また、玄米に存在する菌が保管中に繁殖した場合アフラトキシンがつくられるのじゃないかというようなことから、その米をカビの繁殖するような条件に置きまして、それでカビを繁殖させて、アフラトキシンの検出を行なっておりますが、その際に生産性は認められませんでした。また、四十四年には、幾つかの生産県に保管されております四十二年産米を対象に、肉眼によりまして繁殖が認められているものと、良好に保管されている玄米とを対象に、どのような菌がどの程度米粒の表面に存在するかを知るため調査を行なっております。この結果からは、肉眼によってカビの寄生が認められたものとそうでないものとの間には、判然とした差異が認められております。  ここであえて申し上げたいのは、米粒のカビを調べる場合、寄生粒の数を調べる方法、要するに米何粒が寄生を受けているのかというような粒数を調べる方法と、存在するカビの菌数を見る方法とがございます。新聞紙上で、食糧研究所でマイコトキシンの生産菌の一つでありますアスペルギルス・ベルジコラーの寄生を古古米に認めたというような報告がなされておりますが、このデータは、玄米一グラム上に平均一・七個程度の胞子が存在しているということで、要するに、米を洗った液を流しておるデータでございますということを念のため申し上げておきたいと思います。過去のデータからあるいは他のデータから見まして、この程度の存在数というのは、ほとんど寄生との関係はないのじゃないかというようなことでございます。  簡単でございますが……。
  172. 濱野清吾

    濱野委員長 以上で説明員の発言を終わります。
  173. 濱野清吾

    濱野委員長 これより質疑に入ります。  質問時間は一人二十分以内でお願いいたしたいと存じます。  順次質疑を許します。丹羽久章君。
  174. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 お許しを得ましたので、私は、特に一日として欠かすことのできない命のもとである米についてお尋ねをいたしたいと思います。  この米がここ二、三年たいへん余ってまいりました。余った新米と現在倉庫に入れられている古米については、今後いかに処分をするか、現在研究作業中のようでありますが、この倉庫に貯蔵してある米が、月日がたつに従って害毒が発生するおそれがある、あるいは、発生したものもあると警告をせられておるようであります。今後、たとえ少量でもカビが発生している米が配給をせられたというようなことになりましたら、たいへんなことになると国民は非常な心配をいたしております。先日総合見解が発表せられましたが、この貯蔵米のカビの発生防止の最善の方法は、本日非常に御多用の中を御出席いただきまして、ただいま千葉大学の先生から御説明を願いましたが、いま一度私はこれからお尋ねいたしたいと思います。  それについて、毒カビとカビ毒という点についていまいろいろとお話がございました。そのうちに、このようなことを防止する上においては、定期的に倉庫米の検査をすることがまず必要であろうとおっしゃいましたが、定期的に検査をするというその米は、はたして、ある程度の倉庫にある米をさして定期的に検査をするんだ、すなわち、古古米に限って検査をすればいいとお考えになっておるのか、この点をまず第一点お尋ねいたしたいと思います。  第二点におきましては、この米が今後たくさん余るということは、皆さん御承知のとおりであります。そういう意味におきまして、総合発表はせられましたが、この総合見解というものは、どのような人によって、発表する前にいろいろと話し合いがせられ、研究がせられ、そうしてその結果が出たか、こういう二点について、まずお尋ねいたしたいと思います。
  175. 宮木高明

    ○宮木参考人 米の定期的検査の対象とするものについてお答えいたしますが、もちろんこれは、私、米の専門家でもありませんので、私なりの研究者の立場で申し上げることとしてお知りおきいただきたいと思います。  この貯蔵米の数量が非常に膨大であります。これを克明な検査をするとなれば、よほどの人数、よほどの期間をかけないとこれはできないことでありまして、したがって、検査対象をどのようにして取り上げるかということは、技術的にも問題点があると私は考えております。したがって、当面古古米——いずれこれはもう一つ古の字がつく状態になるのではないかと思うのでありますが、新しくまた古古米なるものも出てくるというわけでありますが、これらのい、ずれかにしぼりたいというわけでありますけれども、これはおそらく鋭意急がれております約一カ月間の現在の調査ということ、私は非常にこれを期待しているわけでありますが、その結果によりまして、どういうふうなサンプルにしぼっていくかということがおのずからわかると思いますが、しかし、これは古古米だけであります。私は、でき得れば古米、その時期が問題だと思いますけれども、少なくもその範囲までは数量、サンプルの数は少なくとも調べていくことが大事じゃないかと思うのでありますけれども、実際にカビの発生ということは、やはり古古米の程度のところに一番問題があると思われますので、検査の技術上からいきましても、そこに重点をしぼるべきがいいんじゃないか。それからさらに、検査をいたしますのに、先ほど申しましたように、米粒の水分含量が一五%以下というのはかなりカビ毒のつくられ方が少ないということが考えられておりますので、一五%以上の米粒についてその中でも検査をしていく、サンプリングして検査をしていくということが妥当ではないかというふうに考えるわけでございます。  それから第二の御質問でありますが、先般の統一見解でありますか、あれで食糧庁から招かれて参りましたのが東大医科研の斎藤守教授、この方は病理が専門でありますが、ガンの研究の大家でありまして、特にカビ毒、黄変米あるいは赤カビ毒の発ガンについて研究をされてきた方でありまして、カビ毒につきましても、あるいはカビにつきましても、その通暁するところが深い方であります。それから、大学側からは私——千葉大の腐敗研究所の有害真菌、つまり有害なカビの研究をやります部門の主任教授をしておりますが、その私と、それから厚生省の側といたしまして、先ほどここでお話しになりました倉田浩博士が出ておられます。たしか、記憶違いがなければ、外からの者はこの三名であります。
  176. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 参考人、ありがとうございました。もっと詳しくお尋ねいたしたいと思いますが、割り当てられた時間が非常に少ないので、食糧庁長官に少しお尋ねいたしたいと思います。  食糧庁長官、四十二年産の古古米と称するのは百十数万トンあるのですか、この米の処分方法というのは、まずさしあたって、この米だけでも早く処分しなければならぬと思っておりますが、どのような処分方法をお考えになっておりますか。四十二年産米だというと、もうすでに四十五年産米、四十五年に植えつけたのがこの十月にとれてくるのですね。だから、四十二年産米の百十何万トンというのが余剰米として倉庫に眠っておるということなんですから、これは何度も何度もお尋ねいたしておりますけれども、決定しましたか、これを処分する方法は。カビがはえたからストップということを聞いておりますが、その後どういうような方針を立てられたのですか。総合見解が出たあと、日がたつに従って一日も許しがたい問題だと思うのです。どうでしょうか。
  177. 森本修

    ○森本説明員 先般もお答えを申し上げましたが、一つは、私どもとしては、先ほど来御議論になっておりますように、食品衛生上の観点からの処理ということをまず固めなければならないということで、先般関係の学者あるいは食品衛生に詳しい試験場の先生方にお集まりをいただいて、今後そういう問題についていかような調査をしてその安全性を確認するかということに腐心をしてまいりまして、先般の統一見解並びにそれに基づいた厚生、農林両省の処理方針というものがきまりましたので、早急にそういう方針によって調査をして、まず安全性を確認したいということが第一であります。  それから、どういう用途にどういう形で処理をしていくかということは、先般来も申し上げましたように、いろいろな用途についていろいろな意見がございます。したがいまして、そういったことを私どもも従来から事務的にいろいろな方々に意見を聞いて、まず検討の材料というものができました。しかし、こういうものについての処理の用途の決定、テンポというものも、いろいろな形で一般の納得が得られるような用途に処分をするということが必要でありますから、現在そういう方面に詳しい人々に集まっていただきまして、早急にどういう用途に配分をすればいいかということを検討をしているわけであります。  なお、この前の当委員会でも御議論になりまして、飼料用等に売却をするということも、あるいはやむを得ないのではないかということで、飼料用に向くかどうかということについて、まず試験研究のところに頼みまして、現在の段階では、飼料用にさような米を使用することは、科学的に見てまず支障はないという結論を得ております。  そこで、実際に飼料業者がそれを使うということになりますれば、どういう使い方をするか、また、横流れ防止といったようなことも、現在の食糧管理の情勢では十分考えなければいけませんから、そういう点も含めて試験的な売却をし、飼料の実際の実需者からそういうものについての実際的な評価も得て、本格的な実施に移りたいというふうな段取りを想定をしておりまして、試験的な売却に着手しようというやさきに、先ほど来の食品衛生問題が起こりましたので、まずそういう点についての安全性の確認を急ぐことが第一であるということで、いまこの点を固めつつあるというのが現在の段階であります。
  178. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 それじゃちょっとお尋ねいたしますが、安全性、毒カビの問題というのを優先的にどうこれを研究し、そして使用等を考えるかというお話ですが、全部が全部そういうような毒カビが発生したというものでなくて、古古米のうちでも、しろうと目に見ても何ともないという米があるはずでしょう。これはできたというのは、わずかの一部分にそういうことが発生したとするならば、全体から見たらわずかなものなんですから、全体の百十何万トンのうちの百万トンだけの処理方法というのを優先的にまず考えるべきだと私は思うのですね。これが一日一日延びていくということには、あなた自身も相当苦労していらっしゃると思うが、どこに壁があるのですか。その壁を早く取り除いて処理するということが、まず優先問題だと私は思うのですよ。壁というのは、ぶつかる壁なんです。どうしてそれができないかということについて、国民は非常に不満を持っているのですよ。日がたつに従ってカビもはえる、あれもはえる、腐るというような問題が起きてくるでしょう。だから、今度のカビ問題というのは、わずか一部よりそういうのが発生していなければ、それはそれとして研究をしてもらって、カビの発生するようなおそれはどうやって食いとめる、あるいは、カビが発生してしまったものは、もう食べることができなければ飼料に使うことが適当であるかという研究を皆さんがおやりになる、これはけっこうだと思うのですが、古古米のうちでも、使える米があり、それが飼料なら飼料、あるいはどこかへ出しても影響ないという米のほうが多いでしょう。その多い米をなぜもっと早く処理できないのですか。それを食糧庁長官、苦労していらっしゃるだろうけれども、どこかにぶつかるものがある。私がいま言うぶつかるというのは、壁なんですよ。そのぶつかるところがどうしてこれがあかないのですか。それをあけてこそ初めて解決できてくる道が開けると思うのですよ。それは一日も早くやってもらわなければならぬが、いまお話を聞いたり、あなたの部下の人たちに聞きますと、何か審議会を設けて、そしてそれを早くやるんだとかどうだとか言っていらっしゃるが、日がだんだんたっていけばたっていくほど、いろんな問題が起きてくると言うのですよ。  どうですか、それは。これは食糧庁長官よりも、政治的な解決の問題として、渡辺政務次官、どこにこの問題を片づけるについてじゃまなものがあるのですか。
  179. 渡辺美智雄

    ○渡辺説明員 まことにお説ごもっともだと思います。  そこで、先ほどこのカビの問題については、学者の先生方並びに食糧庁長官からいろいろお話があったわけでありますが、御説のように、政府の持っているもの全部にカビがはえているわけでも何でもありません。ごく一部のものでありますから、まず第一に考えられることは、今後厚生省や学者等の打ち合わせを慎重に行なうということを一方やるわけであります。それで、今月の十一日に毒性についての統一見解が得られましたから、これに基づいてもちろん今後の措置を進めるということで、まず、官能検査によってカビ汚染の認められた米穀については、食品の原材料用、飼料用には売却しない。まずこれは大事をとる必要がありますから、官能検査でカビがはえておるというものは、これは研究の結果をまたなければ、有毒であるかどうかということはしろうとにはわかりかねます。ですから、そういうものについては、これは売却をしない。そうして、工業用のアルコールあるいは染色用のり等、心配のない工業用の原材料に売却をするということを考えておるわけであります。官能検査によってカビ汚染が認められなかった米穀については、これは必要な調査を行なって、この払い下げなりあるいは輸出なり、そういうことについて速急に進めていきたい、かように考えております。
  180. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 政務次官は一日も早く片をつけたいというお考え、これはあなたのお考えも国民の考えも一緒だと思うのです。さらに食糧庁長官は、お米が余ってきたということに対して、非常  に御苦労していらっしゃることもよくわかります。しかし、ほんとうに国民は、明らかにせられてくる数字を聞いたら実際びっくりしますよ。それが食糧に使えなくて飼料に回すなんという金額というものはほんとうに三分の一程度のものになるのでしょう。そうすると、私の調べた数字でさえ百十二万トンに三百二十万トン等々、調べてまいりますと、いよいよことしから食べるのと買い上げるのとが一致するということで、余剰米が出ないとしても、七百万トン近いものは余ってくる。その七百万トン近いものが食糧一般の特配で買ってくれないで飼料に回ったとするならば、五千億も六千億もの大きな金額が赤字になるということなんです。だれが一体得するでしょうか。安く買ったものだって、安く買って高く売るというもうけは出てきません。そうすると、全体的に国民の全部の損害だということに答えは出てくるわけなんです。だから、これは何としても一日も早く処理しなければならない。それだけの数字はあなた方はちゃんと計算ができて、それだけのものが余るということは、私どもでさえ聞けばお答えになるのですから、十分わかっておるはずだと思うのですね。  だから、私の言わんとすることは、何とか処理方法を早くしてください、そうしてカビのはえないように、そうしてそれを一日も早くどこかに適当に配分するということが最も必要だと思うのです。そうして、出てくる産米については、新しい米を国民に食わしてあげる、おいしい米を食わしてあげるということが、私は食糧庁長官の任務であり、使命だと思うのですよ。いままでは米が足らなかったということで、いろいろ御苦労していただいた。その先業、あなたに対しては感謝しますけれども、これからの問題をどうするかということに、この一点に全生命を食糧庁の人たちはかけてもらわなければならない、農林省の人たちはこの問題にすべてをかけて勝負をしてもらわなければならぬときだと私は思っている。そういうときですから、どうぞひとつこの点を十分に、国民の前に立って、そうして国民のためにも、国家のためにも、一日も早く解決してもらうことを私は心から願います。  そこで、先日私どもはいきなり深川倉庫を訪れたのです。あそこは東京都の食糧を一応保管するところだそうですが、大体あそこの倉庫には十万トンというものが収容できるということなんです。ずっとつぶさに案内してくれましたが、非常に整とんされておりまして、りっぱな倉庫だという感で皆さん帰ってきたのです。ところが、聞いてみますと、古い倉庫のほうは四十数年前にできた倉庫だということです。その倉庫でさえ、私どもはどこも非難の打ちどころのない感に打たれて帰ってきたのです。一粒一粒の米も大切にしまって、これをまた新しく詰めますよという話でした。ところが、こういう問題が起きてくるというのは、地方の倉庫に問題点があるのじゃないか、あるいはもっと他のところにあるのじゃないかということで、悪い倉庫を見ずに帰ってきたことは残念ですけれども。  そこで、率直なことを申し上げますと、変質米という米があるのですよ。私は、変質米を一ぺんさして見せてみよ、どんな米を変質米と称するかと言って聞いたのです。そうしたら、手のひらに一ぱいの米をくれた。その米を見まして、そうして新米と合わしてみましたら、何ら変わるところはないのです。そこで私は、係官に、この変質米というのはどう違っておるのだ、この米は一体どこが変質しているのだ、どういう原因でなっているのだと聞いたのです。そうすると、私どもはただ預かっている米ですから、倉庫として預かったときに、これは変質米として持って来られたので預かりました、だから、これがどういう理由で、どういうふうになって変質米かということは、私どもにはわかりませんと言う。だから、倉庫を預かる立場に立てばそうであろうと思って、それ以上追及しなかったけれども、これは食糧庁長官、おわかりにならなかったら、係の方に、変質米の定義というもの、どういう米を変質米と称するか、これを一ぺん聞かしていただけませんか。これは私ども行った人たちがみんな、この米と新米とを並べてみて、変質米をどこで検査するのだ、どうして変質米という名前がついてきたのだ、こういうことを言って、数量はどうだと言って聞いたら、ずいぶんたくさんこの通りにありますと言っておるが、どうですか、これは。水をかぶったのでもありません、何らどうもなっておりません、しかし、ただ変質米ということですから、私どもは変質米で預かりましたと言うが、この変質米というものをどこで検査するか、どういうようなデータによってこれを変質米と断定するか、その点、はっきりしてもらいたい。
  181. 森本修

    ○森本説明員 私どもが米を扱います際に、いろんな段階でいろんな検査なりチェックをしております。もちろん、米を買う際におきましても買い入れ検査というのをいたしますが、いまお尋ねの変質米、これは米を倉庫間を輸送いたしまして、Aの倉庫からBの倉庫に入れるというふうな際におきましても、入れます倉庫の前で第三者検定というのをやっております。もちろん食糧事務所の人もよく見ますけれども、第三者による専門家の検定を受けるほうがお米の管理上よかろうということで、そういう制度をやっております。その第三者の検定を受けました際に、その検定機関がそれぞれの米をチェックをいたしまして、俗にいいますと、少しこれはおかしい、そういうものについては、一応変質米として別途保留をする。で、変質米が、調べました結果、それほどおかしくない米である場合もありますし、また、何らかの原因によって、いわゆる事故米というふうなことに認定をされるものもあります。したがいまして、変質米という形で保留をしております段階では、ちょっと検査をしてみれば、それは一見おかしいというふうな米でありまして、最終的には、専門家が集まりましてその変質米を見まして、これはやはりいろんな関係から事故米として認定をして通常の売却には回せられない、これは一見、はだずりをしておるけれども、正常な米と認定できるというふうな形で、最終的には振り分けをいたしまして処理をする、さような形になっておるわけであります。
  182. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員 与えられた時間がもう経過いたしましたので、これ以上の追及をしようとも思いませんが、変質米ということは、いま一応変質米にしておくんだ、あとでもう一ぺん検査し直すのだとおっしゃいますが、私はそれはまともには受け取りませんよ、向こうで聞いた話では。もうすでにこれは変質米として断定せられてきたものでありますと言っている。変質米というのはどういう処分方法をするか。これはおそらくあの飼料と同じことで、安い、天災地変によるところの米と一緒の取り扱いであろうと思っております、こう言っておりますよ。もう一ぺん検査をしたときに良質米に化けますなんていうようなことは言いません、私が聞いたときは。あなたの話だというと、変質米で来たけれども、長官、それがもう一ぺん検査すると良質米に化けるという、そんな話は聞いてきませんよ、向こうで皆さん一緒に行ったときに。向こうの人は勘違いして、倉庫の番だといってわからなかったかもしれないが、一応の責任者たちにぼくは聞いてきた。変質米になった理由はどうだいと聞いたら、それはわからぬ、けれども、倉庫でもう一ぺんこれが良質米で出てきますなんて言いませんよ。私は、ほんとうにこの問題を率直にうまく片づけてもらいたいという一心から申し上げたのですから、長官のおっしゃることもうそだとは思いませんけれども、取り扱い上の行き方というものについて、そういう扱いというのは適当でないように思ったから聞くので、す。そうむずかしい問題でない。悪いというように御判断になったら直してください。そうして長官のおっしゃるようなあり方にするならけっこうなことですから、変質米の札がついておっても、もう一ぺん検査し直して良質米に直して出すなら出してください、それならけっこうだと私は思っております。ところが、事故米の定義はありましても、変質米の定義というものは全然ないのですよ。事故米ではあるけれども、変質米の定義というものはありません。けれども、これは数量からいってもずいぶんの大きな数量になると思うのですね。事故米というものを持ってきた場合、変質米の定義というものもひとつつくってください。そうしたほうが、国民はすべてガラスの中のような感じがするのです。  たとえば、この変質米は、見方によっては、これをつき直せば、水分が足らないから、少しぐらいあちらこちらやったからということで、こういうのが問題の米になりやすいと私は思う。これはあなた方が御苦労せられながらも、それを飼料の米として与えた場合に、少々悪いからといって変質米、これを渡した場合に、これがつき直されて良質米に化けて市中で売られるときに問題が起きてくると私は思う。水をかぶってしまったとか、そういうものは飼料とか、全然使えないものがあるが、変質米というのは、私どもがしろうと目に見ても、つき直せばこれはうまく普通の米に流用  できるような感じがするのです。だから、そういう点にあなた方が監視せられておっても、いろいろの問題が起きてくると農林省の責任だというこ  とになる。だから、こういうところにやはり一つの線を引く必要があるんじゃないかな、私はこういうことを親心で申し上げるのですから、ひとつよく御調査していただきたい。  時間がありませんので、もっと聞きたいこともたくさんありますが、またの時間にひとつゆっくり長官のお考えを聞きたいと思いますけれども、いま米はたいへん余っています。何千億という赤字を出す、だれも得せない状態にある。まことに残念なことでありますから、どうか早く処分をしていただいて、そして国民が喜ぶような体制にひとつしていただきたい、これを心からお願いをいたしまして、私の質問を打ち切ることにいたします。  ありがとうございました。
  183. 濱野清吾

    濱野委員長 華山親義君。
  184. 華山親義

    ○華山委員 質問時間もございませんので、食糧庁のほうに対しまして、諸般の政策につきましては、もう少し推移を見た上でお尋ねをいたしたいと思いますけれども、きょうは専門家の方がおいでになっておりますので、その点について特に伺いたいと思います。  先ほどお話がございましたが、カビのついたものをえさとして使った場合に、これを食べたものが七面鳥のように死んでしまうという場合もあるかもしません。あるいは、先ほどお話がありましたけれども、牛肉とか肉とか、そういうものに蓄積されて、これが人間に害を与える、こういうこともあるというお話のようでございましたけれども、卵についてはどうでございますか、宮木先生から……。鶏卵についてはいかがでございますか。
  185. 宮木高明

    ○宮木参考人 先ほどお話ししましたアフラトキシンに関するいろいろな調査の中で、牛に関しましては、内臓と乳と肉についてアメリカの西部農業技術研究所で検討いたしましたが、その際、肉には含まれない、乳には食べさせたものの三%が出てくる、内臓についてはなお検討中というのが一昨年の発表でございますが、その後、他の研究者がラットについて調べましたときに、内臓にも十数%のアフラトキシンがラットの場合にはあるということがいわれております。したがって、牛の場合の内臓についてもそのような可能性はないとはいえないと考えられます。しかし、卵につきましてはまだそのデータが出ておりません。もちろん、わが国でもその検討はまだされておりません。
  186. 華山親義

    ○華山委員 七面鳥のお話がありましたから、鳥もこの場合害毒を受けることは明白でありますが、卵についても出るということになりますと、牛乳と卵、私は子供の保育上非常に大きな問題じゃないかと思う。最近われわれは——前には聞かなかったことでありますけれども、全くのしろうとのことばでございますから御了承を願いたいのでございますが、小児ガンということもいわれるわけであります。そういう点から、牛乳、また卵には明白でないといわれますが、卵にも出るんだということになりますと、これは私は大きな問題だと思う。現在、農林省はえさといたしまして鳥のえさも考えてはいるようでございますから、その点につきましても、現在まだ究明なさる機会がおありにならなかったかと思いますけれども、早く研究をしていただきたいと思うわけであります。  それで、なお、宮木先生、その他ほかの諸先生からでもけっこうでございますが、とにかく政府の管理するところの倉庫にある間、この間はそういうばい菌、カビがはえなかったといたしましても、これを一たん外に出した場合にどうなるか。     〔委員長退席、丹羽(久)委員長代理着席〕 たとえば、えさにいたしましても、その古い米を砕いて、あるいは砕かないのかもしれませんけれども、ほかのものと一緒にするだろうと私は思うのです。そしてそれが出た、そしてそれを農業倉庫なら農業倉庫の中に、農協なら農協の倉庫に積んである、さらにこれが農家に移る、農家でもこれを積んである。そこでは湿度とか温度等の調整はできないわけでありますけれども、その段階においてカビが多くなるということは、専門的にはどんなふうなものでございましょう。
  187. 倉田浩

    ○倉田説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  非常にむずかしい問題で、ただ私の調べましたデータの点から申し上げますが、私が四十一年と四十二年に家庭の主婦からお米をいただきまして、全国的な調査と五大都市のお米のカビの検定試験をいたしましたところが、カビが検出されたサンプルのパーセンテージが五五%、四五%からは菌が検出されませんでした。その菌が検出された五五%について詳細に調べましたところが、大体そのうちの八五%、ほとんどのサンプルがわれわれのいわゆる粒数検査で一〇%、百粒培養いたしますと十個からカビが、コロニーが出るというような成績を得ました。こういうことは、結局、家庭で、倉庫のものが家庭に配給になっても、水をかぶるというようなきわめて特殊な条件以外では、米の水分が高まってそこにカビが圧倒的にはえるということはまず考えられないという見解でございます。
  188. 華山親義

    ○華山委員 前に御調査になったのは、とにかく古米とか古古米とか、古い米を材料にされたわけではございません。それで、私はその点がどんなものかということを心配をいたしているわけであります。  それから、いま温度、湿度ということを申されましたが、外国に輸出するというお話、これにつきましても前からお話もございましたけれども、行くところは東南アジア等、そういう方面でございまして、最もカビの産地、そして湿度と温度の高いところなんです。船の中だって冷蔵できるという大きい船倉は、私専門家でございませんからわかりませんけれども、ないのじゃないのだろうか、こういうふうに考えました場合に、外国に行っても、日本の倉庫から出るときにカビがなければだいじょうぶなんだ、そういう保証は、これは学問的の立場から、宮木先生なりほかの諸先生なり保証ができるものでございましょうか。
  189. 谷達雄

    ○谷説明員 ただいまの御質問、ごもっともでございますけれども、私ども米をいろいろ扱っております立場から、日本の米を輸出いたします場合に、一番最初から注意いたし、また関心を払いましたのは、この米のカビの問題でございます。  米がいま御指摘のように、輸送中あるいは向こうの国に着きましてからかびないかということでございます。そのためには、先ほど私が申し上げましたように、カビの繁殖には水分の含量というものが非常に重要であるということを申し上げたわけでございます。それで、この輸出米の場合には、これは白米でございますが、米の水分を、大体目標としまして一四%以下に下げるように努力しておるわけでございます。いままでの調査では、大体それは一四%あるいはそれ以下にとどまっておるというように認められます。  それからもう一つは、このカビが繁殖いたしますのは玄米についてかなり多いわけでございますが、白米にいたします際に、いわゆる歩どまりと申しますが、搗精の歩どまり、つまり米のつき方を程度を上げまして、ということは、たくさんつくということであります。つきまして、カビの繁殖の一番栄養源が多いところのぬかの層、そういうものをなるべくよく除く、除いて、しかもその米をなるべくぬかが残らないように、みがくと申しますか、研磨と申しますか、そういったような措置を講じておるわけでございます。  それで、現地の東南アジアの状況でございますけれども、確かに、おっしゃるように高温でございますし、それから湿度も必ずしも低くございません。それからその場合にカビの分布と申しますと、これはいろいろ地域によってかなり違うところもございますけれども、そういうように水分を押えておくということが、温度の高い場合には一番必要でございまして、大体いままでの日本における研究、あるいは外国における研究にいたしましても、米の水分が一四%以下の場合、これはそう有害なカビが発生するという懸念は比較的少ないというように判断されるわけでございます。  なお、現地におきまして、パキスタンあるいはインドネシアでございますか、こちらでいろいろ日本の輸出米を受けました場合に、その品質その他につきまして、かなり好評のようである、いまのところ、いままでそういう問題が起こっておらないということでございまして、私どもが一番懸念しましたし、また当然国際信義の上からも関心を持っておりましたそういう米の水分とカビの問題というのは、現在出ておらないわけでございます。  それからなお、輸送中にいろいろ問題が起こる可能性もございますので、現在食糧庁のほうからも、やはりその輸送間の米の水分でありますとか、あるいは積み込んでおります船内の湿度でありますとか、そういったことにつきまして調査をやられておる。それからなお、これは十五、六年前になりますが、黄変米の問題が起こりましたときに、逆にビルマから輸入しましたような場合に、私どもの研究所の職員が実際船に乗りまして、逆でございますが、その船内の調査をやったというようなことでございまして、いまのところは、ごもっともな御指摘でございますけれども、幸いそういう懸念が少ないのじゃないかというように考えております。
  190. 華山親義

    ○華山委員 私は、党を越えまして、そういうふうな古米や古古米が余って国費に大きな損害を与えるということのないように心配をしていることは変わりありません。ただ、そういうことについて、よほどしっかりした説明国民にするなり外国にするなりしなければ、私は買わないだろうと思うのです。それで、先ほど、いま委員長席に着いておられますけれども、何が障害だというお話がございましたけれども、飼料については、買わないのが障害なんです。私はこういうことにつきまして今後大きな問題があるのじゃないかというふうに考えます。  それで、一五%以下あるいは一四%というふうなお話がございましたけれども、現在の米の買い入れる検査、これは何%が基準でございますか。
  191. 森本修

    ○森本説明員 原則としては一五%、一部のいわゆる軟質米の地帯につきましては二八%という基準がございます。  なお、そういった米を買い入れまして保管をしておりますと、御承知のように、米の水分というのは、通常の状態であれば抜けてくるということでありますから、買い入れますときの基準よりは、買い入れをして保管をいたしておりますと水分は減少してくるというのが通常の状態であります。
  192. 華山親義

    ○華山委員 買ったときよりも湿度が下がるということは、保管が悪ければ湿度が多くなる、水分を吸収しやすいという性向を持っているのじゃないのかと私は思うのです。したがって、食糧倉庫の中の場合にはだんだんかわいていくでしょうけれども、これを湿度の高いところに出したならば、たとえば飼料といたしまして、われわれの家庭で米を買うような飼料の買い方はいたしません。ある程度のものを買って、そして納屋か何かに入れておくのでしょう。そういう場合には、かわいたものは湿度を吸いやすいのじゃないでしょうか。専門的にどうなんでしょうか、ちょっと……。
  193. 谷達雄

    ○谷説明員 米の水分の吸湿、湿度を吸う、それから放湿、湿度を放すという、それに対してのお尋ねでございますが、理論的に申しますと、ちょっとむずかしくなりますけれども、水分を放湿する場合とそれから吸湿する場合で、それは必ずしも同じじゃないのでございます。こういうような一つの、何と申しますか数字の上の差があるわけでございます。放湿の場合は水分を出しやすいわけでございますが、その出しました米は、今度吸湿します場合に、もとの水分には戻りません。つまり、かりに一六%の米を一四・五%に乾燥いたします。それを今度多湿の場合、湿度の高い場所に置きました場合に、その吸湿の場合はもとの一六%には戻りにくい、そういう性質を持っておるわけでございます。これは、ほかのああいうようなかなり複雑な構造を持っております物質にも見られることでございます。これはむずかしく申しますと履歴現象ということでございますが、そういう点で、乾燥したものは、吸湿しないわけじゃございませんけれども、その程度が少ないというように言えるかと思います。
  194. 華山親義

    ○華山委員 専門的な、科学的な立場からいろいろお聞きいたしましたけれども、私は、この問題は、まことに食糧庁の皆さん方にはお気の毒でございますけれども、非常に大きな多難な道を歩まれるのじゃないかと思うわけであります。  それで、倉庫のことでございますけれども、私のところに出てきた資料でございまして、私調べたわけじゃございませんから、あるいは違っているかもしれませんが、いわゆる低温倉庫というのは四%しかないわけですね。それから準低温倉庫が四%、それで断熱倉庫が三%ですから、温度というものを調節することのできる倉庫というものは二%しかない。それで薫蒸可能倉庫が大部分で七四%、薫蒸もできないところの倉庫が二二%ですか、そういうふうな状態で、日本の米の保管、そういうものにつきましてはきわめて手薄なんじゃなかったのか。この点、どういうものでございましょうか。それですから私は、四十二年産米が終われば四十二年米になる、四十三年米も一こわいんだ、そういうふうなときに、四十三年米についてさらに大きな問題が起きるのじゃないか。それは、いままでは、とにかく米が足りないのだから、入れておけばいいということでこうなったのでしょうけれども、そのときになりますとたいへんな問題が起きてくるんじゃないですか。
  195. 森本修

    ○森本説明員 御案内のように、ここ二、三年来、こういった米の供給過剰といいますか、そういう状態が急速にやってまいりました。したがいまして、それに対する倉庫の手当てということも、こういった相当大きな固定投資を要するものでありますから、私ども、そういった状況に合わせまして、農林漁業金融公庫から制度的な融資をする、あるいは農業近代化資金にさような金を見込むというふうなことでずいぶんやってまいりました。先ほど言われました倉庫の種類別の割合というものは、最大の収容力といいますか、そういうものを計算をいたしまして、その計算による割合ということになっておるわけであります。現在はこういった最大収容量に完全に見合ったような形で物が保管をされておるわけではございませんで、若干のゆとりがありますから、実際に、米がこれに対してどういうふうな保管をされておるかということになりますと、もちろん、いい倉庫から米を詰めていくわけでありますから、先ほど御指摘がございましたように、薫蒸不可能倉庫が能力としては二三%ございますけれども、実際そういった種類の倉庫に幾ら米の在庫があるかということになりますと、現在の在庫の状況では、一ないし二%程度が薫蒸不可能倉庫に入っておる、こういう関係になります。お手元にありますのは、倉庫の最大収容力による能力別の割合ということになるわけでございます。
  196. 華山親義

    ○華山委員 薫蒸不可能倉庫、これはもってのほかのものですね。入れたままで薫蒸もできない倉庫なんというのは、ちょっと倉庫なんというものじゃないでしょう、米倉といたしまして。それは別といたしまして、とにかく薫蒸の可能な倉庫は何であって、温度の調節のできる倉庫というものは、温度温度とよくいわれますけれども、とにかく一〇%前後なんでしょう。こういうふうなことで、米の保管というものは私はむずかしいのだと思うのですよ。  これは少し余談になりますけれども、事務当局の責任じゃございません。去年の補正予算で二百六十億ですかの稲作特別対策費というものをお出しになった。その当時、農林省のお役人に、これは何の目的で何をするのだと聞いたら、政府のほうでおきめになったので私は存じませんという御回答だった。それほどおかしな政策だったのです。私はその際言ったのですけれども、なぜこれでりっぱな食糧倉庫をつくらないのか、あるいはこの金でいままでのを改造しないのかということを申し上げたのですけれども、私は、ほんとうにこの点については、政府が投資をして政府倉庫を増すなり——政府倉庫政府倉庫といいますけれども、微々たるものなんです。全部の倉庫の三、四%なんでしょう、これは。そういうふうなことで、平生、米を貯蔵することについてほとんど政策がなかった、こういう、実態だと私は思いますけれども、いまちょっと伺いますが、もう四十三年米は四月一日以降は配給いたしませんですね。
  197. 森本修

    ○森本説明員 倉庫の関係がまず第一に出ましたが、私どもとしては、先ほど言いましたようなことで、この二、三年来の過剰在庫というようなことに対応いたしまして、できるだけ倉庫の、特に低温倉庫の普及については努力をいたしておりますけれども、なお足りない点もございます。もちろん、これは米の過剰在庫というのが現在のような状況がピークでありますから、相当長期に使うような倉庫をいかようにつくっていくかということは、これまたなかなかむずかしい問題であります。将来米の在庫が減れば、倉庫の経営というものはどうなるかといったような問題もありますから、倉庫の普及、奨励ということになりますと、あるいは米を入れられなくなれば、野菜を入れるとか、ほかのものも考えるとか、そういう多面的な形で解決をしていかなければならぬ点があると思います。いずれにいたしましても、そういった優良な倉庫の普及については今後も努力をしていきたい。  なお、四十三年産の話でありますが、四月からは、希望があれば全部新米ということで配給操作をしております。したがって四十四年産、オール四十四年産ということに希望があればなるわけであります。
  198. 華山親義

    ○華山委員 したがって、四十三年米は、秋を過ぎますとやはり古古米になるわけですよ。四十二年産米は古古古古米なんて、鳥の名前になっちゃうかもしれない。ほんとうにえさ米になるかもしれない。そういうふうな状態で、いまの倉庫で——これを海にでも流すのなら別だ、売れれば別だ。大体だいじょうぶなんですか、いまの倉庫の面積で。この秋とれる米というものは、四十三年あるいは四十二年の余剰米を全部かかえた上でこれはできるのですか。
  199. 森本修

    ○森本説明員 現在の倉庫の最大収容力ということを考えますれば、米の在庫が一番ピークになりますのは十二月でありますが、需給推算をいたしまして十二月の在庫の推定をいたしますれば、現在の倉庫事情で収容は可能であるということは計算上出ております。ただ、お説がございましたように、倉庫にもいろいろございますから、できるだけ優良な倉庫を普及してまいるということについては今後も努力をしたいということを重ねて申し上げておきます。
  200. 華山親義

    ○華山委員 もう少し、いろいろなおきめになったこともありますから、その様子を見てお聞きする時期もあるかと思いますので、きょうはこれで終わります。
  201. 丹羽久章

    ○丹羽(久)委員長代理 西中清君。
  202. 西中清

    ○西中委員 先ほど丹羽先生からもお話がありました古古米、そして古米の処理については、先ほどから聞いておると、もうひとつすっきりした返事がないし、これは食糧庁また農林省も、その他の関係省庁がもう一つ認識がないんじゃないか、私はそのような気がして聞いておったわけです。先ほど宮木先生からもお話があった話を総合して考えてみますと、このカビのカビ毒というものは、米だけではなくて非常に広範囲な影響を与えるものだ、こういうふうに私は理解をいたしました。さらにガンその他の病気がさまざまの形であらわれておる、こういうことですから、なお一そう農林省だとか厚生省はこのカビについて認識をしていただくように、先ほど宮木先生にやっていただきましたので、お詳しいと聞きました倉田先生に簡潔によろしくひとつ御説明を願いたいと思います。     〔丹羽(久)委員長代理退席、委員長着席〕
  203. 倉田浩

    ○倉田説明員 私、黄変米以来、輸入米に関する限りはいち早く衛生試験所が専門技術者を集めまして、そのほうの検定と、それから食品のカビに関する検定の部屋をつくりまして、私が室長として今日まで参りました。もちろん、本来ならば、輸入米も食糧庁の責任というか、私はそういう学門的な立場からしかものを申せませんが、とにかく厚生省の一研究者としての立場から、積極的なる検査ということについては、一般の食糧についても今日まで研究してまいりました。今後私も、私どもの研究レポートを通じまして、上層部にこのことを——いろいろとカビ毒あるいはカビの生産するカビについての研究の必要性も説いておりますし、それから、今日までやってきた基盤の上に立ちまして、もう少し今日以後も積極的なる研究をやる、あるいは検定をやるというようなことを、所としては私のいままでの研究から通じまして申し上げていきたいと思っております。
  204. 西中清

    ○西中委員 古古米のカビ毒に対してのいままでの実験データ、それから、先ほどから米の話がだいぶ出ておりますが、食料品等に付着したほかのカビを人体が摂取した場合に影響がないか、それから古古米を飼料として使った場合、人体にどのような影響があるか、それから米以外の飼料が別のカビをつくって、それを食べれば人体に影響がないか。私、この雑誌を一部拝見したわけでございますが、いま申し上げた類例について、かなりの疑いがある、こういうように認識をしたわけでございます。いま四つのケースを申しましたが、それぞれについて心配な点がありましたら、お話をお願いしたいと思うのです。
  205. 宮木高明

    ○宮木参考人 先ほど卵のカビ毒の問題について御指摘がありまして、私もそのとき御返事しようと思ったのですが、たまたまいまそういう御質問をいただきましたので、あわせて私の意見を申し上げたいと思います。  確かに、えさによって卵なりミルクなりがカビ毒に汚染されるということは、特に子供の栄養上大きな問題であります。とりわけカビ毒に対して病弱な児童が、あるいは乳幼児が被害を大きく受けるということは、動物実験でもそのような結果が出ておるわけでありまして、何とかこれは防止しなければなりませんけれども、先ほど私が意見で申し上げましたように、問題は、家畜に与えるえ
  206. 西中清

    ○西中委員 あと厚生省と通産省。
  207. 鴛淵茂

    鴛淵説明員 ただいまの黒部の新聞報道のものは、私どものほうには報告をいただいておりません。  それから、米についてカドミウムの調査をしたことがあるかという御質問でございますが、このカドミウム研究調査班に委託をいたしまして、いろいろ全国の米の状態を調べたことはございます。ただ、現在まで、きのう新聞に出ましたような多量のカドミウムの含有したものはございません。  四十三年の一例をあげますと、富山県で大体〇・一三から〇・二四、平均いたしまして〇・一八という程度の量でございます。  それから、ただいま農林省のほうからお話がございましたように、当時全国の米のカドミウムの含量を検討勘案いたしまして、暫定的な環境基準といたしまして、大体〇・四PPM以下であればまあ環境基準としては適当であろう、この環境基準は、人体に直接影響するという性質のものではございませんで、一応の基準でございまして、それ以上になれば、何かほかの要因で米が汚染をされた疑いがあるというような指標になるものでございます。これを一応〇・四PPM以下といたしまして、一応現在の環境ではそれ以下に入るであろうというように思っているわけでございます。
  208. 西中清

    ○西中委員 時間がございませんので、あとはよろしいです。まだ報告受けてないのでしょう。  以上で終わりますけれども、このように、まだ報告も受けておらぬし、検査をしたといっても、カドミウムを精製しておる近くを全然検査をしておらないというような現状ですから、私はカビについても非常な心配をするわけです。先ほどいろいろと要望等もまじえてお話をいたしましたが、食糧庁を中心によく検討をお願いしたいと思います。  以上で終わります。
  209. 濱野清吾

    濱野委員長 吉田賢一君。
  210. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ただいま問題になっております米に付着しておる有毒カビの問題でございますが、第一に伺いたいのでございますが、食糧庁、厚生省ともに合同会議をやりました結果、報告をいたしました報告書によりますと、大体カビの種類は二百種類ある、ごくわずかが有毒カビを産生する、こういうことを言っておりますが、大体そのごくわずかというのは何%ぐらいに該当するのであろうか、どういう種類のカビであるか、これをちょっと要点だけ示してください。
  211. 倉田浩

    ○倉田説明員 人及び家畜に非常な毒性を及ぼしたという、いわゆる注目すべきマイコトキシンを生産するカビはおよそ十種類でございます。
  212. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 わかりました。  そこで、これは発ガン性、あるいはまた温血動物の肝臓への被害があるものは、その十種類全部になるわけですか、そのうちの一部ですか。
  213. 倉田浩

    ○倉田説明員 以前は肝硬変症とかいろいろいわれておりまして、肝臓か、じん臓か神経系統に来ると、三種類に分けておりましたが、大体毒物は一番最初に肝臓に来るということになっておりますので、肝臓の変化があるのはその全部だと思います。十種類のうち十種類とも何かしらの肝臓に及ぼす影響はあるということでございますが、そのうちで最もはっきりしておるのはペニシリウム・イスランジクム、これは黄変米当時の御承知のイスランジトキシンと申しておりますが、このものはラッチに微量に与えた場合に、肝硬変あるいは肝ガンになるということの実験がございます。アフラトキシンも肝臓のものでございます。しかし、そのいずれもまだ米からその毒素そのものが検出されたという成績ではございません。あくまでもカビ毒としての、カビが生産したという実験室内における、それを動物に注射したという段階でございます。
  214. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 これを畜類に食わしましたときに、それはどのような作用をするものでしょうか。たとえば肉、これは人が多く食いましょうが、あるいは乳あるいは卵、こういったものに相当な毒性の作用がするわけですか。その点はいかがですか。
  215. 宮木高明

    ○宮木参考人 先ほど同様の御質問がありましたが、重ねてお答えいたしますけれども、実はカビ毒、マイコトキシンが、えさを介して家畜あるいは家禽、場合によりますと餌料を通して養魚というようなことになりますが、これらについて検討されておりますのはわずかにアフラトキシンだけでございまして、それもアメリカにおける研究の成果であります。ただいま問題になっております米に可能性のある、すなわち毒カビが発見された、条件によれば、その毒カビにより特有のカビ毒がそこに含まれるであろうという仮定のもとに立ちましたときに考えられます何種類かの肝ガン発生のカビ毒につきましては、これが家畜のえさに入りまして、与えられたときにどのように乳に出る、因に分布する、あるいは内臓あるいは卵にということのデータは、残念ながらまだとられていない状態であります。  その一つの理由といたしましては、これらのカビ毒の分析法でございますが、からだに分布する場合に、これらのカビ毒を、微量の状態においても確実に分析することができないと、検討がし切れません。いまの段階では、これはかなりの手数をかけることによって可能ではありますけれども、多くの飼料について調べねばならないようなただいまの検査につきましては、なお簡便適確な方法を考案する必要がございまして、現実にそれが重要であるということを私ども意識しまして、鋭意その方法を検討しているところでございます。
  216. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 カビ毒を培養いたしましてラッチに注射して、その作用を見るということは、これは十数年前にもおやりになったかと思いますが、その後、最近やはりこういう方法で試験研究などをしておいでになりましょうか。
  217. 宮木高明

    ○宮木参考人 二つの動物試験の方法があります。ただいまのラッチ、マウス——ネズミにつきましては、一つは急性の毒性を調べて、つまり毒カビであるかどうかということをその培養液について調べるためには、普通マウスの腹腔内注射という方法をとります。しかし、実際にこのカビ毒が発ガン性があるとか、あるいはそれ以外の慢性の病害があるということを見ますのには、注射ではいたしません。経口投与、えさの中に一定量まぜるとか、あるいは強制的に口から入れるというやり方を通して、長いのは二カ年以上に及ぶ実験を続けて、その結果を確かめているわけであります。
  218. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 報告によりますと、おおむね米の水分が一五%以下ではカビ毒の産生のおそれはないものと考えられる。これはいまの段階におきましては、このように国民は信じていけばいいのであろうかどうか。こうなりますと、やはり保管方法に影響し、保管対策ということにも直接に関係を持った点でございますが、これはさように強く信じていけるようなものでございますか。その点、いかがですか。
  219. 宮木高明

    ○宮木参考人 先ほど私が当初に申し上げましたように、問題になります貯蔵性のカビ、すなわちアスペルギルス・ペニシリウムその他でありますが、これらについては、米の場合、水分が一五%以下という場合には、それらのカビの繁殖も進まず、したがってまたマイコトキシンのカビ毒のつくり方も微弱であるということが学界の通説でもあり、また、これらについての実験データもあります。しかし、特殊なカビにつきまして、これはいま米の問題には直接関係ないと思いますけれども、そういう条件でなくとも、低温下で増殖するようなカビもございますが、やはり問題になりますのは、ただいまの貯蔵型の申し上げたようなカビについて考えるのが適当であると思いますし、またそれについて考えれば、いまのように、水分一五%以下ならば、マイコトキシンについては懸念がきわめて少ないということがいえると思います。
  220. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 一グラム中千個以上の有毒カビがあるような場合には、人間の食糧はもちろん、
  221. 森本修

    ○森本説明員 現在問題になっております古古米の在庫は約百十二万トン、ただ、先ほど丹羽先生からも御指摘がございましたように、そういった古古米について、全部が全部心配だというわけではございません。いままでの保管管理の状況からいたしますれば、私ども、カビの発生しているものはごくわずかであるというような感じを持っております。  ただ、かような問題が指摘をされました以上は、国民が口に食べる主食であり、あるいはまた間接に食べるようなものになる品物でありますから、念には念を入れてよく調べるということが私どもの責任であるということで、先般来学者先生に集まっていただいて、どういう調べ方をすればいいかということをまずやっていただき、また、調べた結果についても、かような先生方によく見ていただきまして、今後適切な処分をしたいというのがいまの考えであります。
  222. 西中清

    ○西中委員 そのように厳重にやっていただければ安心なのでございますが、はたしてそれができるかできないかも大きな問題だろうと私は思います。実際、衛生試験所の構成メンバーその他の検査機関の力からいって、私は全国の米を、そして間もなく一年分近い米が余ろうとしておる、そういうお米に対して、ただ単に見ただけで検査が終わりだ、こういうような官能検査だけで終わったのでは、いまの私たちの不安が、国民の不安がぬぐえない、このようにも考えるわけです。  その点、どのような計画で食糧庁は検査をしていこう、このようにお考えか、その点を聞かしていただきたいと思います。
  223. 森本修

    ○森本説明員 処理方針といたしましては、官能検査でもってカビの発見をされたものについては、先ほど来申し上げておりますように、工業用のアルコールであるとか、あるいはのり用であるとかいうことで、直接間接に口に入らないような用途に売却をする、なお、そういった検査によりましてカビの発生が認められないものにつきましても、一定の倉庫の条件、あるいは水分の状況その他、よく条件を調べまして、そこから適切なサンプリングをいたしまして、培養検査並びに定量分析といったような方法によってよく調査をし、その調査結果を先生方に御確認をいただいて適切な処分をしたいというのが、今後の処理方針のあらましであります。
  224. 西中清

    ○西中委員 私はそういうことを聞いているのじゃなくて、体制的に、人数的に、能力的に可能な話なのかどうか、こういうことを聞いているわけです。  私が知っている限りにおいては、たとえば衛生試験所においても、どんどんとそういうものを発して調査をしようというようなメンバーについては、非常に少ない、そういう点を私は先ほどから申しているわけです。また、全国の倉庫に入っている米も、現実問題としてないはずだというところから出てきている。きょうは厚生省の方にも来ていただいたり、また通産省の方にも来ていただいているわけでございますが、私はきょうの新聞で富山県の黒部のお米がカドミウムで汚染されているであろうという記事が出ておりましたので、関連をしてお聞きをするわけです。  ということは、このお米がカドミウムに汚染をされておったかどうかということについて、されておるかどうかについて検査をされたことがあるのかないのか。また、新聞報道によりますと、おそらく幾らかは配給米にすでに出回ったことは確実だ、このようにございます。また、先日わが党の同僚議員が質問しました舞鶴の米についても、昨年の六月以降は出しておらぬけれども、その前は出したような形跡がある。すなわち、米の検査そのものがどのような検査を一体なされておるのか。  また、この際私は厚生省も通産省もあわせてお聞きしますが、このカビの問題とまたカドミウム、いろいろと私たちが主食とする米についてもこれだけの問題があるわけです。こういうお米はあぶなくて食べられない、ますますお米が余ってくるのじゃないか、このように私は心配をしております。そういう点、厚生省はこのカドミウムの報告を受けておったかどうか、通産省はどうだったか、そして食糧庁として、この配給されたであろうお米、さらにはまた、いま問題になっております米がすでにどれほど配給されたか、その点について、順番にお答えを願います。
  225. 濱野清吾

    濱野委員長 厚生省、どうですか、報告を受けていますか。
  226. 谷達雄

    ○谷説明員 カドミウムの問題ではございませんで、最初の検査体制と申しますか、そういう問題でございますが、このカビの検査、あるいはそれの生産するカビ毒の検査というのは、これはやはり現在の検査で行なうということにはかなり無理があろうかと思います。したがいまして、これはやはり試験研究機関なりその他の検定機関がこれを扱っていかなければいけないのじゃないかと思うわけでございます。そのために、厚生省のほうにはそれぞれの試験研究機関を置いてございますが、農林省のほうとしましても、私どもの食糧研究所が中心になりまして、そういうような体制を固めていくというようなことでございます。ただ、そういったカビあるいはカビ毒を十分調べられる研究者、あるいはそういう研究者を養成しますのにある程度ひまがかかるのでございます。現実にはそういう方面に興味を持ち、またそういうことを担当する人が比較的少ないというような状況でございまして、そこに苦慮があるわけでございますけれども、今後いろいろ発展する可能性のある問題でございますので、私どものほうの食糧とは違いますけれども、そういう上部の機関とも・すでにいろいろ相談をいたして協議をいたしておりまして、そういう基礎的研究並びに当面の対応策というものをさらになるべく充実してやっていきたいというように考えておるわけであります。  それからなお、ちょっと恐縮でございますが、先ほどいろいろ食品のお名前をおあげになりまして御質問ございましたのですが、その中で古古米あるいは古米につきましては、カビにつきましても私どものほうで多少調べまして、その結果、発ガン物質を生産するような菌の分布が非常に少ない、微量であって、その結果は、いまのところ有害とするに足りないというような統一見解もいただいております。  それからなお、一番発ガン性の強い物質でございましたアフラトキシンにつきまして、これは先ほど鶴田研究員が申しましたが、四十一年、四十二年の産米につきまして、つまり古古米、古米につきまして全然検出されておりません。それからなお、醸造食品でございますが、いろいろみそ、しょうゆ、日本酒というものがございますが、これについても全然検出されておりません。そのことをちょっと、御質問の趣旨と違うかと思いますが、ふえんさせていただきたいと思います。
  227. 濱野清吾

    濱野委員長 カドミウムの問題で何か連絡あったかという……。
  228. 森本修

    ○森本説明員 カドミウムを含有しておる米につきまして、私ども、四十二年産米から問題が起こりましたので、四十二年産米について厚生省にも調査をお願いをし、当時政府で保有をしておりました神通川流域の一部で生産をされた米について厚生省調査をし、見解をいただいたわけでありますが、四十三年の五月八日、厚生省から、カドミウム汚染地帯で生産された米は、配給米として食べても人体に影響はないという旨の正式な見解が表明をされました。そういう関係から、私ども、一般米と同様に配給をしてきたのであります。で、配給をいたしました米といいますか、政府で買い入れをいたしましたそういった流域の米が千百五十二トン、現在その米について政府の各地の倉庫で在庫をいたしておるものが五百五十トン、そういう状況であります。
  229. 西中清

    ○西中委員 これは神通川じゃないんだよ。神通川より非常に多いといわれている黒部の話をしている。その報告があったかないかということを聞かしてもらいたい。
  230. 森本修

    ○森本説明員 御指摘の富山県の石田地区の米の状況につきましては、まだ報告がございません。ものだろうか。そうすると、買い上げ費、それから中間経費等々合わせまして——保管費にしろ、その他の事務費、金利なども加わりますから、こういうものを合わせまして、トン当たり原価が何ぼについているか。そこで、これを処分するのにトン当たりどのくらいに売れるか、結局、差し引きどのくらいの損になるか。総計いたしますと、この古古米を通じまして、その繰り入れ赤字はどのくらいになるのか、この点をひとつ明らかにしてもらいたい、こう思うわけです。  それから、・ちょっとつけ加えまして、その際私が心配するのは、横流しのことであります。やはりライスカレーに回りましても、しろうとはわかりません。しろうとは古古米やら何やら、適当な味つけをすればわかりゃしませんから、そういうふうにして市販されるということになりますと、たいへんでございますから、厳重にこの流れていくルートを取り締まる、その他規制をしてもらわなくてはいかぬ、こういうふうに思うのですが、これはいかがですか。
  231. 森本修

    ○森本説明員 用途によってどういう値段で売れるかというお話でありますが、端的に私ども輸出用、工業用、それから飼料用というふうなことで、これは売ってみないとわからない要素はありますけれども、輸出用でありますれば五万円から六万円、それから工業用でありますれば六万五千円、それから飼料用でありますと二万円から二万六千円といったような幅の売り渡し価格になるのではないかというふうに思っております。  いずれにいたしましても、現在持っております米のトン当たりの簿価が約十一万一千円ということでございますから、その差額損失になるというふうな計算になります。なお、工業用アルコールというふうなことで処分をするということになりますれば、二万円弱という売り渡し価格が想定されるわけであります。  全体の金額がどうなるかということになりますと、将来この米がどういう用途に配分をされていくかということにもよるわけでありますから、先ほどの単価によりまして、それぞれの用途にどういう割合で配分をされるかということによって総額がきまってくると思っております。
  232. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そこの私の質問がちょっと間違っておりまして、肉眼検査で有毒カビがあるもの、それをいまちょっとお尋ねをしたのでございますけれども、肉眼検査で有毒カビのないものにつきましては、えさ等に回していく、したがいまして、あなたのおっしゃる数字の内容が変わってくるわけですね。その点はわかります。  これは、そうしますと、全部検査をした上でなければわからぬ、そうなんですね。大体いつごろ終わるか、それからまた、つゆを越すまでこのまま持っていくのかどうか。三度つゆを越さなければならぬことになります。さっき申しました横流しの対策、この二点だけで私、きょうは質問を終わっておきます。
  233. 森本修

    ○森本説明員 先ほど申し上げましたような方法によって調査をするのが、約一カ月という予定であります。  それから第二点の横流れの防止、これまた、こういった過剰米処理にあたりまして、私ども十分留意をしなければならぬ点であります。これも先般の委員会で申し上げたかと思いますが、とりあえず飼料用に売却するにあたりましては、いろいろな横流れ防止対策というものを目下考えておりまして、いろいろな人に意見を聞きましてやっております。なお、形を変えるとか、あるいは、においをつけるとかいったような方法についても、目下研究をしております。
  234. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 まだ質問したいことがございますけれども、時間がございませんので、きょうはこれで終わります。
  235. 濱野清吾

    濱野委員長 最後に長官、ひとつ聞いておきたい。  あなたのほうの、この間の五月十一日の会議によって発表されたこの記録を見ますと、残念ながら、谷食糧研究所長のただいまの答弁と、あなたのほうの学者諸君を集めていろいろな検討をされた資料をやってみると、だいぶ意見も違うし、それから、汚染された米の推算などの数字も大体出ているのですが、あなたはちっともないと言っているのだけれども、新聞にも出ているし、あるいは「肉眼により、カビの認められなかったものについては、検出された菌数は微量であり、」しかし、これは「有害とは考えられない。」というようなことを言っているんだが、あまり職務に忠実のあまり、うそをつかないように、天下の大事ですから、みんなで協力してその対策を講ずるようにひとつしてもらいたい。  それから長官、この調書によると、四十二年度米それから四十三年度米、すなわち四百三十万トン、この米は配給としていま実施していない、配給から除いてある。したがって四百三十万トンは、委員諸君のおっしゃるように、早期に何かの方途で処分しなければならぬ。それの処分の方法として、工業用とした場合、いろいろありましょうけれども、売却価格は六万ないし七万円であって、帳簿との損失差額は四万ないし五万円である、それから飼料用にしたような場合には、売却価格が二万から二万五千円、したがって、この損失は一トンについて八万ないし九万円、合計の数字が、四百三十万トンとして、現に配給ストップしておる米は二千六百億ないし三千一百億円の損失になる、こういう計算がちゃんとデータで出ておるのですが、これはどういうことですか。いまの答弁だと、そういうばく大な数字の損が出ていないようでありますが、これはどういうことでありますか。私どもは目の子勘定計算しましても、四百三十万トンの米は配給ストップしているのでありますから、これは何らかの形で処分しなければならぬ、こういうことです。
  236. 森本修

    ○森本説明員 私が先ほど御答弁を申し上げましたのは、それぞれの用途別の売却予想価格というのを申し上げたわけであります。それで、帳簿価格は幾らかということも十一万一千円というふうなことで申し上げました。したがいまして、その差が、そういったそれぞれの用途に売却をされますと損失の単価になる、そういうことを申し上げました。したがいまして、いま委員長が御指摘になりましたような数字と、単価については変わりはないというふうに思っております。総額につきましては、四百三十万トンをどういう用途別に売却をされるかによって変わってまいります。したがいまして、その用途別の配分がきまりますれば、おのずから四百三十万トンについての損失の見込みというものが総額として出てくるわけであります。先ほどはそういうふうに申し上げたわけであります。
  237. 濱野清吾

    濱野委員長 その総額は大体幾らと予想されるかという質問に対しては答弁がない。
  238. 森本修

    ○森本説明員 したがって抽象的にさようなお答えを申し上げたわけでありますが、幅として申し上げるということになれば、二千六百億ないし三千百億ということになるわけであります。
  239. 濱野清吾

    濱野委員長 そうですね。大事なことですからね。
  240. 谷達雄

    ○谷説明員 先ほど私の答弁につきまして、多少ことばが足りませんで申しわけなかったのでございますけれども、この統一見解で先ほど委員長から御指摘いただきましたのは、食糧研究所の調査結果だと思います。これは肉眼で明らかにカビがはえておるものと、それから認められないものと、二つに分けてあります。その肉眼で認められるものからは、かなりのカビが当時出ております。認められないものについて、私が先ほどカビが認められないということを申したのでございますが、これはカビはおりますけれども、有害物質をつくるカビは、ここにございますように、菌数が微量であって、有害でないという見解を得られたということでございまして、その点、ことばが足りませんでしたので、私申し上げましたこととそれほど違っていないと思いますけれども……。
  241. 濱野清吾

    濱野委員長 所長、お話し中だが、その他の資料があるのだ。汚染されるトン数は大体何トンになるかということまで君のほうでは出ておったはずだ。だけれども、それは後日に譲りましょう。あ家畜のえさにも使うことはできないという説があるようでございますが、いま東北とかあるいはその他の地域におきまして倉庫の在庫米を検査したときに、有毒カビが出たとかいうデータが出ておるらしいのでございますが、これは概して申しますると、どのくらいの割合のカビ毒の産生菌が出たか、どういうことにデータはなっておるのでございましょうか。
  242. 谷達雄

    ○谷説明員 この調査につきましては、二通りございます。  先ほど西中先生でございますかに申し上げましたが、できます毒性物質自体を調べる方法と、それから有害なカビを調べる方法と二つございますが、前者のほうの有害なアフラトキシンにつきまましては、東北だけじゃございませんが、全国各地の米、もちろんその代表的なものでございますけれども、それについては古古米、古米ともいままで発見しておりません。  それから、いま御指摘の東北あるいは北海道地方の調査でございますが、これは昨年行ないまして、その中から、先ほど私、西中先生の御質問でございますか、カビは出ないということを申し上げたのですが、カビは検出されておりますけれども、有害なカビは先ほどお話しのべルジコラーというのがわずかに出ましたので、それは米の表面に付着しておるものでございまして、中まで入っておるとは考えられませんので、その影響はかなり量が少ないということと、それから有害であるということは、いまのところ懸念が少ないというような統一見解をいただいたわけでございます。
  243. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 内地米、外地米の関係は、さっきも御質問があったのでございますが、このカビ毒の産生の条件、これは、この内地米、外地米を比較をいたしますと、その条件は相当開きがあるのでしょうか。その点はどうなんでしょうか。
  244. 倉田浩

    ○倉田説明員 昭和二十八年、二十九年、三十年、あのころのカビの検査法と、現在もほとんど検査法は変わっておりません。  それで、外米を私ども検査しましたあの黄変米当時は、少なくともほとんどのサンプルが一〇〇%の検出を見ました。内地米につきまして、先ほど私がお答え申し上げました方法も、この方法とほとんど本質的には変わっておりませんが、その場合には一〇%以下、これは、われわれが普通食品として食べている場合の検出ですが、その辺の差がかなりあるということをふえんさしていただきます。あの当時はまだカビ毒の検出方法が確立されておりませんでしたので、その一〇〇%くらいの検出の高いものについては、毒素が出ていたかどうかということと対応する研究データがぜひ必要であったのですけれども、それをすることができませんのは、いまもって残念に思っておりますけれども、そういう関係で、いかに内地米が菌の出方が少ないかということをちょっと一言御説明申し上げておきます。
  245. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 有毒カビの付着というものが、総じて米を中心にいま論議されておりますが、米は常食であり、主食であり、日本人全部が毎日食うものである、こういうことになっておりますが、この心理的影響がかなり大きいと思いますので、この際、徹底的に安心さすものは安心させ、追及するものは追及する、そして処分をするものは処分をするということで、やはり何の苦慮することもなく私は邁進しなければならぬ、こう考えております。  そこで、現在四十二年産の古古米の在庫、政府の手持ち米が百十二万トンありますね。これを一体抜き取りでやろうとするのか。全国の政府倉庫あるいは農協倉庫、民間倉庫あるいはカントリーエレベーター、全部を調べて回るというのか、それには手がない、時間がかかるというようなことになって、また古米が古古米になる、そういうことになりますと、追っかけ合いでどうにもならぬ、こういうことになるのですが、概して、抜き取りでやっていこうとするならば、徹底して有毒カビを追及するということにはまだほど遠いと思います。この辺は、時間的にも能力の点で、また国民を安心さすという意味において、政府に責任があるという点から見まして、どういうふうに処置なさろうとするのか。これも要点だけでよろしゅうございますが、答えていただきたい。まだはっきりしないなら、しないでよろしゅうございます、また別の機会にいたしますから。ちょっと時間もだんだんなくなってきましたので……。
  246. 森本修

    ○森本説明員 調べ方でございますが、まず軟質米と硬質米地域を分けまして、それぞれの代表的な地域で各種の保管状態の倉庫がございますが、倉庫のいろいろな構造にもよりますし、また、建っておる基礎的な立地といいますか、そういうものにもよりますし、いろいろな関係から、各種の保管状態の倉庫がございますから、さような倉庫から適切なサンプリングをいたしまして、それをしかるべき試験研究機関に持ち込みまして、培養試験、並びに毒物といいますか、そういうものの分析をするということでありますが、全部の倉庫にやるということになりますと、たいへん手間もかかる、経費もかかるというふうなことでありますから、先生方にお集まりをいただいて、まず、かような調査方法であれば全体を推しはかれるであろうというふうなことを御検討をいただきまして、かような方法で調査をするということでございます。
  247. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そこで、一転いたしまして、これも結論だけでよろしゅうございますから述べておいてもらいたいのですが、保管方法、これが非常に重大だと思います。これは米に関心を持ち、また利害関係のある者は、だれもみなこの点は重大な関心を持っておりますが、政府倉庫、それらも必ずしも完全なものでもございませんし、また、農協倉庫はもちろん、民間倉庫——というて、サイロを全国に設置するということも、経費の問題もあるしということになるのだが、保管が適切でなければ有毒カビが発生するということは当然でございますので、こういうことも兼ねまして——財政の問題もありますが、緊急処置しなければならぬという問題もあります。というて、ほかの商品でしたら、おそらく生産をストップする、しかし、そういうことはできません。食管法がある以上は、それもできないということになりますし……。これも基本的には、単に農林省だけの問題ではございません。厚生省もあり、内閣全体といたしまして、保管方法、倉庫を中心にして、またカントリーエレベーター等の新しい施設、これも考えながら、新しい開発の視野に立って保管方法を検討するということも早急の重大使命である、こういうふうに思うのです。これが、やはり古古米の処理あるいはカビ問題の処理につながるところの次にくるところの当然の課題でありますが、この点はどうなりましょうか。これはだれが説明しますかな。
  248. 森本修

    ○森本説明員 保管方法につきましては、先般来御説明を申し上げておりますが、一つは、低温倉庫といったような常時温度の調節ができる、したがってカビの発生もない、あるいは虫の害も発生しないといったような近代的な倉庫を普及してまいるということがまず第一であります。とはいいましても、全部の米がそういう倉庫に入るというわけには当面いきませんから、それぞれの倉庫に保管をしております保管状態について、できるだけ厳重にやってまいる。詳細に言いますれば時間がかかりますが、そういったことで、カビの発生のおそれがあるというふうなときには、臨時に薫蒸するといったようなことで適切な予防策をしていきたいというふうに思っております。  なお、新しい保管方法につきまして、先般来申し上げましたようなことで、洞窟に保管をするとか、あるいは湖底に保管をするとか、あるいはまた、もみ貯蔵をするとか、かような新しい保管方法につきましても目下研究をしているということであります。
  249. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そこで、百十二万トンの古古米の処理の問題でございますが、これは工業用アルコールに回す、また染色ののり等の工業用の材料に回す、こういうようなことが、大体食品衛生の見地からする処理対策としてこの間意見が一致したらしいのでありますが、その際、トン何ほどのさにカビ毒がないということが前提であります。卵に出ないからカビ毒のあるものを食べさせていい、そういう逆説は成り立たないわけでありまして、この点はぜひとも励行していただきたい。  特にただいまの御質問に関連してまいりますが、ちょっと順序が狂って失礼だと思いますけれども、このような古古米で、もしかりにカビ毒があった場合に、これをえさとした場合にどうかということと関係がありますが、古古米のカビの毒の可能性よりも、現在輸入する穀類を利用するえさに私は大きな問題があるのではないかと考えております。この点は、ぜひとも今後国として検討していただきたい。これは、最後に米以外のものでカビのはえたものに問題がないかということのお答えになると思いますが、この辺の検討が私は緊要ではないかと思っております。つまり、えさのカビ毒の問題というのは、一つのカビ毎問題としては当然検討すべき重大な問題ではないかと考えております。
  250. 西中清

    ○西中委員 そういう点で、たとえばこの雑誌にございますが、かっけの場合はビタミンが不足しておる、こういう通説があったけれども、それはどうやらカビの疑いがある。それから米穀地帯、ここには先ほど説明をいただきましたマイコトキシンのほうの関係でガンが多い。それから米以外の食料品ではみその事故があった。その他麦、イカの薫製、魚、さらに新聞でも出ておりました豚の肝硬変、こういうように考えていきますと、この細菌、カビ毒に対する研究というものは非常に急を要するのじゃないか、また万全の体制を整えてやっていかなければ心配なものが多い。ちょっと考えましても、先ほど出ました牛乳、アメリカで問題になったマス、その他日本でもやはりマスその他の魚の養殖、ウナギ等の問題があります。これは一つ一つ学者の皆さん方として、絶対だいじょうぶなんだと——先ほども飼料は問題だとおっしゃいましたが、その多数が外国の輸入飼料でまかなっておる現在の状況について、倉田先生はどのようにお考えになりますか。
  251. 倉田浩

    ○倉田説明員 非常に核心に触れる御質問で、その点お答え申し上げて、どこが安全かというふうな御質問になりますと、私どもの学問的な立場からは、やはり先ほども宮木教授がしばしば御指摘なさいましたとおり、そこに毒素が、カビ毒が検出されるという段階に至って初めて問題が強められてくるときなのですけれども、しかし、有毒カビがあったということは、一種のレーダーみたいなものでございますから、警戒警報の発令ということで、そういう分野において警戒警報が発令しておるから、積極的なる科学的なマイコトキシンの直接検定をやって調査を急ぐ、こういう組織をつくってやらなければいかぬ、そういうことでやっていかなければ心配であるというのが学問的な見解の立場でございます。
  252. 西中清

    ○西中委員 私ども牛乳も飲んでいますし、ウナギも食べますし、特にこの毒素で肝臓あたりをやられやすいとなりますと、レバーなんかはちょっとあぶなくて食えない、これが現実の問題になってきたわけでございます。  したがいまして、先ほど来申していますように、かっけも、それからガンも、そうしたお米をたくさん食べるところ、ないしは高温多湿のところに多い、こういうことでもございますので、これはかなり広範な、また完備した検査組織が必要であろう、私はそのように考えているわけです。その点、食糧庁のほうはどういうようにお考えになっておるのか。お米だけではないのです。その点を言ってもらいたい。
  253. 森本修

    ○森本説明員 私ども所管が米、そういった主要食糧でございますから、全般の食品についての試験研究なり、あるいは食品衛生上の対策というふうなことになりますと、ちょっと私、御答弁する立場にはないと思うのでありますが、い、ずれにいたしましても、私ども、今回こういった米につきまして、かような問題を指摘されたということでございますから、一つは、現在持っておりますところの米について、先ほど来先生方からいろいろな御見解の発表がございましたけれども、また別途、先般集まっていただきまして統一的な見解を出されておる、こういった学問的な統一的見解の上に立ちまして、あの線に沿って調査をし、また調査をいたしました結果をよく先生方に見ていただきまして、その上で、安全性を確認した上で処分をしていきたいと思っております。  また、先ほど来お話がございましたように、かような分野については、きわめてまだ試験研究といいますか、医学的な研究の分野が広いわけでありますから、私ども所管の品物につきましても、さような研究を先生方に深めていただくということも、行政上きわめて大事だと思っておりますから、できるだけ行政的にも支援のできるところは支援をいたしまして、かような研究を深めていただく、そういった試験の結果を私どもの米の保管管理の上にも十分活用いたしまして、今後そういう問題が解決されていくように考えていきたいというふうに思っておる次第であります。
  254. 濱野清吾

    濱野委員長 いま厚生省の食品衛生課長と、それから輸入物資に関する問題、これは通産省の根岸公害第二課長を呼んでいますから、おいでになったら質問をどうぞ。
  255. 西中清

    ○西中委員 それで、毒性でございますけれども、一体どのくらいの毒性があるのか、人体に影響があるのかということが、われわむしろうとにはもう一つよくわからないのですが、たとえばチクロがこの前問題になりましたけれども、そうしたものと、この米のカビ毒とは、どのような違いがあって、どちらが強いのか、そういう点について先生方どなたからでも……。
  256. 宮木高明

    ○宮木参考人 たいへんむずかしい御質問ですが、同時に、非常にお知りになりたいことだと思います。  チクロが問題になりましたのは、ラットに与えまして、キロ当たり二千五百ミリグラムで二カ年間食べさせたところ膀胱ガンができたということで、これがポイントで禁止をされました。先ほどのアフラトキシンと申しますのは、それに比べますと、たとえば〇・一マイクログラム、パーグラムでございますから、その千倍といたしまして〇・一ミリグラム、パーキロで発ガンするというわけですから、これはもちろん肝臓ガンでございますが、ガンの発生の場所は違いますけれども、格段な強さでございます。  それからまた、私どもが指摘いたしましたステリグマトシスチンというのは、先ほども説明いたしましたように、使う動物の種類、あるいは条件で違いますけれども、大体アフラトキシンの十分の一から百二十五分の一という数字でございますから、この数字にいたしましても、チクロよりは強い発ガン性があると考えられております。そのほかのカビ毒につきましては、まだそういうふうに比較すべき数字が出ておりません。
  257. 西中清

    ○西中委員 いまお聞きしましたところ、チクロよりはるかに毒性が強い、こういうことでございます。  したがいまして、食糧庁のほうも、この古古米、次いで古米が間もなく古古米になるわけでございますが、こういう事態にあたって、先ほどもお話があったように、やはり管理をきっちりやっておかなければたいへんな問題になるのじゃないか。現実に、これも毎日新聞の報道でございますが、事故米が良質米に化けておる、こういう事例も汚職の捜査で出ておったようでございます。私はこういう点、これは官能調査でだいじょうぶなんだというような簡単なことで処理をされたのでは、実際目に見えて、歴然とこれはあぶない、こういうものは当然排斥しなければならぬし、排除しなければならぬ。だけれども、管理がいいかげんですと、事故米であってもそのようにつき直してごまかされる。またカビも、ついてしまったら、全然しろうとではわからなくなる。そういう点で、これはよっぽど厳重な管理と検査をしていただかなければならない、このように考えております。  一体、カビが心配される、そういうお米はどれくらいあるのか、このほうを食糧庁のほうからお話し願いたいと思います。るいは、あなたがそう安心しているうちに有毒なカビがどんどんふえていくかもしれない。  この問題は、国民として大きな関心を持っているのですから、国会も政府もわれわれも、みんなでこの対策を講じなければならぬというこの気持ちを了解して答弁に当たってもらいたい。これはまたやりますから……。
  258. 谷達雄

    ○谷説明員 私の申しましたのは、先ほど私の申しました調査結果だけについて申したのであります。どうもいろいろ−…・。
  259. 濱野清吾

    濱野委員長 それでは、質問者からはこれで終わりましたが、宮木参考人には、審査に御協力をいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時十九分散会