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加藤(威)
政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、高橋講師の
質問状の第一点は、先生御指摘のように、大衆保健薬、名前をあげました十
種類ばかりの大衆保健薬が許可されました時点において、その許可の基準はどういうものであったか、害がなければいいというのか、あるいは、害がなく、かつ有効でなければならないというのか、その他、ということでございますが、これは
厚生省におきまして、大衆保健薬ばかりでございません、あらゆる薬を承認、許可を与えますときには、まず、有害であるかどうかという点、副作用があるかどうかということを一番重視いたしまするけれども、同時に、薬であります以上、有効性というものを無視して承認ということはできないわけでございまして、これは害がなければ、あとはきくかどうかわからぬ、どっちでもいいということではないわけでございまして、害がないということと同時に、有効であるという判定があるものについて許可をしているということでございます。
それから第二点の、保健薬が有効であると認められたその手続はどうなのか、
厚生省の独自の判断によったのか、あるいは中央薬事審議会の答申をそのまま採用したのかどうかの点でございますが、
厚生省で薬を承認いたしますときには、いろんな薬の承認申請が出てくるわけでございますが、成分が全く新しい成分を含んでいるというような薬品につきましては、これは中央薬事審議会に諮問いたしまして、専門の
先生方の御
検討を願って、これは許可してもいいという御
意見の出たものについて許可するという
方針をとっております。したがいまして、何らか新しい成分を含んでいるとか、その他、使用
方法その他が全く新しいというようなものにつきましては、中央薬事審議会の答申を得て、それに沿って承認をしている、しかし、中には日本薬局方等に載っております薬品、これはもう昔から使って、その成分とかあるいは有効性、それから無害性というものがほとんど確立されている
心配のない薬品を日本薬局方に盛り込んでございますが、そういうものを成分として、いろんなそういう成分を組み合わせてつくったというような薬品につきましては、これは薬事審議会に聞くまでもなく、その成分等についてはっきりわかっていますので、そういうものは役所限り、
厚生省限りでいろんな文献その他を見まして、そして判断をして承認を与えている、こういう二通りの
方法をやっておるわけでございます。
それから三番目でございますが、有効であると認められた論理は、経験を背景にした直観的判断によったものか、あるいは科学の論理、たとえば二重盲検法のもとでの同時対照試験などによったものかどうか、こういう点でございますが、これはいわゆる二重盲検法というものが、最近ここ二、三年わが国でも取り入れられるようになっております。したがいまして、現在問題になっております大衆保健薬というものは、相当前、五年から十年前に承認をしたというものが多いわけでございまして、二重盲検法というようなやり方がまだあまり行なわれていないときに承認されたものでございます。したがって、二重盲検法というやり方はやっておりませんけれども、しかし、これを承認いたします場合には、国立病院とかあるいは大学付属病院等におきまして、そのような相当の施設を持った病院で臨床試験をやりまして、その結果、有効であるというような資料を出してもらって、それに基づいて承認をしておるということでございますので、ただ二重盲検法によらなかったからその効果は疑わしいということが言えるかどうかということは問題だろうと思います。この
質問に対しましては、いわゆる二重盲検法というものがその当時はあまり行なわれていなかったので、二重盲検法によったものではないということを申し上げる以外にはないと思います。
それから四が、
国民は、その大衆保健薬について
厚生省が許可しているからには、科学の論理に従って審議し、その有効性を保証しているに違いないと考えていますが、そのように考えることは正しいのか誤りであるのかということでございますが、これにつきましては、いままで申し上げましたように、許可するにあたりましては、相当のデータを、しかもちゃんとした病院のお医者さんによるデータを基礎にして、そしてその有効性を判定した上で承認しているということでございますので、
厚生省が許可しております以上は、一応その有効性について相当の根拠があるというぐあいに考えていただいてけっこうだろうと思います。
それから五番目が、四十四年二月の予算
委員会第三分科会で、
高田先生の御
質問に対しまして、斎藤国務大臣が、早急にこういった大衆保健薬について
検討すると言われておるけれども、その問題については、どういうぐあいにその後なっておるのかという御
質問でございますが、これは、その国会のあとにおきまして、
厚生省といたしましては、問題となりました約十
種類の大衆保健薬につきまして、その後の臨床データというものを極力集めたわけでございます。それで、約十
種類の薬品でございますが、そのうち六
種類の薬品につきましては一千例以上の臨床例を集めております。一番多いのは八千八百例というものもございますが、六
種類については一千例以上、四
種類については一千例以下でございますが、相当の
種類の臨床例というのを取り寄せまして
検討いたしたわけでございます。
それによりますと、薬によってその有効率というものは違いまするけれども、大体七〇%前後、七〇%から八〇%、ものによっては若干七〇%を切るものもございますが、その
程度の有効性があるという臨床例が出ておるわけでございます。
しかし、さらに私どもといたしましても、
高田先生の仰せられますように、薬についていろいろ再
検討するという必要性はあるというぐあいに判断いたしておりまして、昨年の九月に中央薬事審議会に一般用医薬品特別部会
——この一般用医薬品と申しますのは、いわゆる大衆薬でございますが、大衆薬についての特別部会というものを設けまして、そして大衆薬についてのいろんな成分その他を再
検討して、承認基準をつくっていこうということをやっております。最初はまずかぜ薬に取り組んでおりまして、近くかぜ薬の承認基準というのを答申していただくことになっておりますが、その後も大衆薬につきまして、
種類ごとに逐次承認基準を定めていきたいということで、今後ともこういった大衆薬の再評価の問題には真剣に取り組んでまいりたいと思います。
ただ、高橋講師の指摘されますように
——高橋講師の言われますのは、これらの大衆薬については、その臨床試験というものが二重盲検法によっていないということで、したがって、きくかどうかわからないじゃないかというような御指摘が中心になっているように考えられるのでございますが、こういう臨床試験というものが二重盲検法以外の
方法ではだめなのかどうかという点については、これはむしろ学界で論議されるべき問題だろうと思います。そういう臨床例、東大とか京大、いろいろな大学、あるいは国立病院、あるいは慶応の付属病院というようなところの
先生方のデータで私どもは許可しておるわけでございますが、その場合に、二重盲検法によらなければみんなだめなのかという点については、むしろそういった
先生方と高橋講師の間で大いにディスカッションをしていただきまして、私どもとしては、その結論に基づいて
処理をしていきたいというぐあいに考えておるわけでございます。したがって、高橋講師の御指摘の問題には、相当学界で
検討せらるべき問題があるように考えられるわけでございます。
それから次の問題といたしまして、同じ
高田先生の御
質問に対して、第三分科会で斎藤前厚生大臣が、きかなければ許可を取り消すと言っておられますが、これは法律的にどのような条文によるものでしょうか、こういう御
質問でございます。
薬事法におきましては、そういう最初きくと思った薬がきかなかったというようなときに、それを取り消すような明文の規定はございませんけれども、法制局等とも打ち合わせをいたしました結果では、とにかく最初のデータがイカサマなデータであった、それに基づいて
厚生省のほうで承認、許可をしたという場合には、その最初のデータがイカサマといいますか、インチキなデータで信憑性がないという場合には、これは当然、条理上、明文の規定はなくてもそういうものは取り消すことができるという解釈でございます。したがいまして、明文の規定はございませんけれども、明らかに最初のデータがイカサマなデータであるというような場合には取り消すことができるというぐあいに考えております。
それから最後に、いま
国民が最も多く飲んでいるビタミンB1誘導体は、疲れ、神経痛などにきくものとして、テレビ、
新聞、ラジオなどに広告されておりますが、
厚生省においてこれが誇大広告でないと判断しておられる科学的根拠をお示しを願いたいという御
質問でございます。
私どもは、こういう薬の広告等につきましては、特に承認を与えた効能、効果以外のものをうたったり、そういう詐欺的な広告、こういうものが一応誇大広告であるということで、そういう場合には、その広告について、その広告をいたしましたものに対しまして、厳重な注意を与えているという行政
措置をとっているわけでございます。これは一応一般的な御
質問でございますので、個々のケースに当たってみないとわからないわけでございますが、私どもの広告に対しまする取り扱い、行政上の態度といたしましては、とにかく承認の際に、その薬はこういうものにきく、こういう症状にきくということで承認しておるわけでございますが、それを逸脱しましたような宣伝広告をやっております場合には、これに対して処置をする、こういう態度でおるわけでございます。
以上でございます。