○曽祢
委員 私は主として中国問題について
外務大臣に御
質問申し上げたいと思います。
いまさら言うまでもないことでありまするけれ
ども、一国の
外交政策は第三国がどういう
態度をとったからというようなことによって左右されるべきではない。非常な情報時代ですから、カナダあるいはイタリアが
国民政府から承認を北京
政府に変えた、あるいは今度の
国連総会におけるいわゆる中国代表権問題の議決が非常に変わってくるのではないか。場合によったらアルバニア決議案が通るかもしれない。また、重要事項指定方式——われわれはその提案国になるべきでないという強い
政治的
見解を持っておるのでありまするが、それも少しあぶなくなってきた。こういうような
動きが確かにある。かてて加えて先ほど来議論になっておりましたアメリカのフィリップス代表の
演説も、簡単にいえばブルータスおまえまでもかといわぬばかりの、日本だけが取り残されたという感じがするような、かなりあらしが吹いている。私は、外国のまねをするということはいけないけれ
ども、同時に
国際情勢が大きく動いているというその
動き、底流あるいは渦巻き、こういうものをやはり正確にとらえて機宜適切な
外交措置をとらなければいけない。これはもう言うまでもないことだ。そういう意味では、きょうは特に与党の二人の
理事諸君も非常に紳士的に
質問されておりましたけれ
ども、私は、言っていらっしゃることは必ず
外務大臣にもひしひしと胸に刺さるものがあったと思う。私はそういう意味でことしの五月、本院の本
会議における
演説の中でも申し上げたのでありまするけれ
ども、やはり従来
政府がとってまいりました一つの中国、これは台湾の
国民政府である、こういう方針はどう
考えてもフィクション、虚構である、擬制である。したがってこれはやはり修正されなければならない。時とともにフィクションは通用しなくなる。同時に他方においてはむろん一方の北京
政府の
主張である、すなわち北京
政府だけが全中国であるという、これも一つの
主張であるけれ
ども、台湾に
国民政府の名における一千四百万人の中級な国があることも事実です。しかもその国とは、
国民政府が負けて台湾に逃げてからあと、日本の実際上の意思にかかわらず、アメリカの強要によったにせよ、大陸から逃げてきてしまったところの
国民政府と
日本政府は
平和条約を結んだ。そしてその
平和条約をわれわれは誠実に守るという
立場からいえば——私は先ほど意外な答弁を聞いてあとで
条約局長にはっきりたださなければいかぬと思うのですけれ
ども、この
国民政府との間の
条約を、人がかわったから直ちに別の
政府にと承認先を変えるといいますか、そう簡単にできていいものかどうか、非常に疑問だと思うのですね。台湾の中でクーデターが起こってその
政府に承認が継承される場合もあるでしょう。しかし、少なくとも台湾の
国民政府との
条約にはいろいろな経緯がある。吉田さんがダレス国務長官に出した書簡にいっているように、日本としては中共は侵略国であるから絶対
平和条約を結ばないとかなんとかそのときのいろいろなまくら
ことばはもう通用しないと思いますけれ
ども、少なくともこの
条約において、現在の
国民政府が現に領有している
地域に関し、ほかの
政府に領有権を認める、あるいはほかの
政府がその
地域についても唯一の中国代表者であることを別の承認
行為でやったならば、われわれは
条約上一つの大きな違反になるという
行為を起こすのじゃないかと思う。したがって、そういう点を
考えると、われわれがこの中国大陸との国交正常化に努力すべきだという、これは
わが国のコンセンサスなんですね。だが、このコンセンサスを
現実に積み上げ方式で北京
政府との間に直接やっていこうと思うと、カナダですら——日本と違ってカナダは承認先を
国民政府から北京
政府に変えるのに
条約上にも何ら障害はなかった。したがって、カナダは今度は
国連総会におけるアルバニア決議案には賛成だ。つまり中国の
政府は唯一無二に北京
政府であるということに無条件に賛成だ。しかし同時に、その北京
政府が台湾を領有しあるいは解放する権利を持っておるということを
外交文書で、これは強制もしないけれ
ども裏書きもできませんという
立場をカナダはとにかく守り通した。私はそういうことは
わが国の場合には一そうもっと大きな制約があろうと思うのです。経済上、
政治上あるいは安全保障上の制約もあろうし、特に
条約上の制約があって私はできないと思う。そこで問題は、日本としては表裏
一体であるけれ
ども、北京
政府との国交調整の問題を北京
政府とだけ積み上げていく努力はもうやらなければならぬ。だがしかし、一方においては
国連総会における足並みが非常に早いこともあって、もういや応なしに
わが国は
国連総会においてこの中国代表権の問題について、つまり北京
政府を代表に認めるのか認めないのか。その場合無条件なのかあるいは有条件なのか。その有条件というのは、アルバニア決議案のように国府を追放するという条件までのむのか。アルバニア決議案を初めのほうとうしろのほうと二つに分けて、中国の代表権を北京
政府にしようということだけをまず表記した場合には
一体どうなるのか。いろいろな問題が起きている。
事態は非常に大きく動いている。問題は単にことしの
総会でかろうじて重要事項指定方式が勝ったというだけでは済まないくらいに大きく動いておる、私はこういうように
考える。そういうわけですから、ぜひひとついままでの答弁だけでなくて、これからやはり
考えていくのだから、本日のところは一つの中国、それは
国民政府であるという従来の方針を変えておりませんということは、従来の
政府の方針だから、事実として、私は反対であるけれ
ども、認めますけれ
ども、それにこうしがみついていていいのかどうか。もっともっと大きく情勢は動いておるのではないか、こういうように思うわけです。
そこで、前段が長くなって恐縮ですけれ
ども、そういう意味から一つ
考えたいのは、やはり何といってもフィリップス
演説は、確かにいま私が言ったように、前段の、中共は悪者だというものはなくなった。むしろむちゃ言わなければ、国府追放ということを条件にしなければ代表権を認めていいのだという方向に窓を開いた。これは間違いない。だから形式論としては、
外務大臣が言われるように重要事項指定方式の提案国である、それからアルバニア決議案の中の国府の追放には反対であるということは変わっていないけれ
ども、その
背景は全然変わってきている。少なくとも中国代表権に関する限り、北京
政府、あるいはことしの
総会だけでは実らないかもしれないけれ
ども、一つの大きな融和的ゼスチュアをしていることはこれは歴史的意味があると思うのです。もっとそういうことを日本で早くやってくれと言っているのに、それが日本でやられないで、アメリカのほうがそっちのほうにきた。いや、それは従来と変わらない、アメリカの方針は変わらないという
説明をしなければならないようなこと自体、私は
国民として非常に残念だ。私は、それだけ大きな展開がある、このことを申し上げて、もう一ぺん御
意見を伺うとともに、先ほど、親しき仲だけれ
ども、井川
条約局長の御答弁は、私は何か誤解されて言っているのじゃないかと思うんですね。
現実の
国民政府との
平和条約のたてまえから見て、法理的に見て、
条約的に見て、北京
政府を承認することに支障なしという御
意見には、私は承服しかねる。
外務省としての
統一見解をお尋ねいたします。