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1970-06-10 第63回国会 衆議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年六月十日(水曜日)     午後一時二十三分開議  出席委員    委員長 田中 榮一君    理事 田中 六助君 理事 永田 亮一君    理事 山田 久就君 理事 戸叶 里子君    理事 大久保直彦君 理事 曽祢  益君       石井  一君    宇都宮徳馬君       北澤 直吉君    鯨岡 兵輔君       小坂徳三郎君    田中 龍夫君       中山 正暉君    加藤 清二君       松本 七郎君    中川 嘉美君       樋上 新一君    不破 哲三君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  委員外出席者         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省経済局長 鶴見 清彦君         外務省条約局長 井川 克一君         通商産業大臣官         房審議官    室谷 文司君         通商産業省繊維         雑貨局長    三宅 幸夫君         労働省職業安定         局審議官    小鴨 光男君         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   石井  一君     谷垣 專一君   山口 敏夫君     大石 武一君 同日  辞任         補欠選任   大石 武一君     山口 敏夫君   谷垣 專一君     石井  一君 同月十三日  辞任         補欠選任   楢崎弥之助君     加藤 清二君 六月十日  辞任         補欠選任   木村竹千代君     北澤 直吉君   豊  永光君     田中 龍夫君 同日  辞任         補欠選任   北澤 直吉君     木村竹千代君   田中 龍夫君     豊  永光君     ————————————— 五月十三日  一、国際情勢に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 田中榮一

    田中委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私は最初沖繩毒ガスの問題がたいへんに沖繩で騒がれており、これは当然の問題でございますので、政府のお考えを問いただしていきたいと思います。  昨年の七月に沖繩米軍基地の中で神経ガスが漏れて二十数名の中毒者を出したことで、米軍沖繩基地に非常に多くの毒ガス兵器が貯蔵されているという事実が明るみに出されたのは、この委員会でも問題にされたところで、御承知のとおりでございます。  そこで、その当時アメリカは、十二月に沖繩毒ガス兵器は、ワシントン州のバンゴーに運ばれ、それからオレゴン州のハーミストンに近いウマティラ陸軍貯蔵所に輸送する、輸送作業は七〇年春に完了の予定というような発表をいたしまして、先月のジュネーブ議定書審議のときにも、外務大臣がはっきりと、アメリカ側は公に、ことしの春までに沖繩から毒ガス兵器撤去する約束をしており、現在運搬がおくれているのはアメリカ側国内事情現地に危険がないということを説得しているから、もう少し待ってくれというような了解を求めているのが現状でありますと、こういうことをあの当時答弁をされております。さらに外務大臣は、致死性ガスはもうなくなった、あるいはなくなりつつあるんだ、これはもうはっきり明確な事実でございますと述べております。私たちといたしましては、沖繩から毒ガス撤去されるのは時間の問題だとばかり思っておりました。  ところが先月の二十三日、この半年も前から公に約束しておりました米本国オレゴン州への移送計画を中止するということが発表されて、その代案として今度はコージアク島を候補地にあげたわけですけれども、このアラスカの州の人たちも反対するということで、今度はどこへ持っていっていいかわからないというのがアメリカ現状のようでございます。  一方、移転先もきまらないのに、保利官房長官米側早期撤去方針に変わりはないというようなことを発表されまして、何かしら日本政府の口先だけの約束、こういうものが私どもは信じられなくなってきたわけです。これは私たち本土人たちは当然ですけれども沖繩の県民は一刻も早い撤去というものを望んでおりますけれども、そうしてまたテレビ等でも、高校の生徒がテレビに出まして、そうして私たち人間性人道主義の上からも毒ガス撤去してもらいたい、こういうことを訴えておりますけれども政府としては一体どういうふうなお考えで今日いらっしゃるのか、この点をまず最初にお伺いしたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 沖繩毒ガスの問題については、ただいま御質疑がございましたような経過並びに現状でありますことを、政府といたしましてもまことに遺憾に存じておる次第でございます。  で、前国会の当時に、私あるいはそのほかの者から申し上げましたのは、その当時の実情であり、政府としての考え方を明らかにいたしたものでございまして、基本的にはそれに何らの変わりはございません。したがいまして最近の事情、御承知のことと思いますけれども、念のため御報告を兼ねて申し上げますと、政府といたしましても、本件については重大な関心を持たざるを得ないので、さっそくアメリカ政府側に対しましてできるだけの措置、あるいは申し入れを行なっておる次第でございます。  まず五月の二十五日東郷アメリカ局長から、スナイダー在京米公使を招致いたしましてアメリカ本件兵器撤去方針には変わりはないことの確認を求め、アメリカ側としての確認をさせたわけでございます。同時に、二十七日でございますが、下田駐米大使からアメリカ国務省ジョンソン次官に対しまして、毒ガス兵器撤去先変更にもかかわらず、沖繩よりの撤去方針に変わりはないとの米国政府基本方針確認を求めました。あわせて、この基本方針に基づいて、撤去がすみやかに現実に行なわれるようにという日本政府としての申し入れを行ないました。これに対してジョンソン次官から、沖繩から毒ガス撤去するという米国方針には何ら変更がないことを確認すると同時に、撤去現実にできるだけすみやかに実現し得るよう最大限度努力を払うのは、米国政府方針である旨の確言をとったわけでございます。  さらに本月五日、私はマイヤー日米国大使に対しまして、沖繩毒ガス撤去について、重ねていま申しましたような要請あるいは確認をあるいは実行等を求めたわけでございます。これに対しまして、マイヤー日大使早期撤去という米国方針を再確認するとともに、すみやかに善処約束をいたした次第でございます。これが政府として本件につきまして、とっております最近における対米折衝状況でございます。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま外務大臣から正式にアメリカに対して撤去申し入れをされたという、その具体的な事実を日付けをもってお伝えになったわけですが、実は先月の二十五日にわが党の伊藤教宣局長アメリカの大使館に抗議に行って、そしてエリクソンという参事官にお会いしたところが、まだかつて日本政府が正式に毒ガス撤去を要請したことがない、こういうようなことを言われまして、私ども驚いたわけでございますが、いま外務大臣のおっしゃったところによりますと、ちょうどこの日から申し入れをされているようでございます。五月二十五日からされているようでございます。ただ問題は、そうした正式な交渉をされているにもかかわらず、アメリカ側はそれに対して撤去をいたしますとそういう約束をされている。すみやかに撤去をしなさい、すみやかに撤去をいたします、こういうふうなやりとりだけで、一向にこれの撤去をされるような様子が見当たらない。そればかりか、これの受け入れ体制というものがアメリカの側のほうではないようです。たとえば、どこどこの島に持っていこうと言えば、その島の住民が断わる。こういうようなことで、なかなか問題ははかどらないのではないかと、たいへんに私ども沖繩人たちばかりでなく、本土人たち心配をしておりますけれども、一体お見通しのほどはどのようでございましょうか。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は、私も率直に申しますと憂いをともにしているわけでございまして、その後におきましても六月五日以後におきましても、アメリカ国内におけるいろいろの情報などを収集するとともに、おりあるごとに具体的な早期撤去、駐日大使の言います早急なる善処内容について監視しているわけでございまして、すみやかなる実行策が行なわれて沖繩県民をはじめ、われわれが安心できるようにいたしたい。これを念願して、さらにできるだけの努力をいたしたいと思っております。   〔委員長退席永田委員長代理着席
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま私お見通しのほどを伺いましたが、政府自身もどのように、どうやって解決されていこうというような見通しもお立ちにならないようでございまして、私はたいへんこれは心配だと思うのです。と申しますのは、この毒ガス兵器の一部には、その容器がもうすでに耐用年数限度にきていて、たいへん危険な状態におかれているということも伝えられているわけでございまして、こういうことももちろんその情勢を把握していらっしゃるとは思いますが、こういうことも御存じでございましょうか。これもあわせお伺いしたい。と申しますのは、ちょうど六月五日に、わが党の江田書記長ランパート米高等弁務官にお会いして、毒ガス兵器即時撤去要求をされましたところ、同弁務官は、沖繩での毒ガス兵器安全管理は万全であります。御心配は要りませんということを強調しておられたわけです。ところがそういうように述べたその日に、皮肉にも原水爆禁止沖繩県協議会が明らかにしたところによりますと、美里村の米軍第二六七航空中隊近くの池でガスの入った容器が数百個見つかった。そしてこの容器は十数年前に製造されたもので、表面にM28という記号があった。そうして容器内のガス人間の皮膚や目を刺激する毒ガスではないか、こういうふうに言われているわけでございまして、いわゆる容器自体も非常に危険なものになっている、年数が非常に古くなっている、こういうことが現地からも伝えられてきているわけでございますが、こういう状態政府自身も把握していらっしゃるでしょうか。この点も念のために伺いたいと思います。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 事実関係等につきましては、いろいろに報道されていることについて、必ずしも米側当局がさように——何と申しますか観察しているわけでもない点が多いようでありますが、それはともかくといたしまして、私ここにも現にいまも持っておりますけれども、本日は十日でございますけれども、十日の朝現在におきましても米側との間の現実における交渉、話し合いもいたしておるわけでございまして、率直に申しまして米側当局としての積極的な検討が鋭意進められておる。決して一部に報道されるような悲観的な、いつまでも置かれるとか危険な状態が放置されるというようなことは絶対にいたしません。積極的に検討を進め実行に移ろうとしておる。ただ、ただいま、すなわち本日朝の状況において撤去の日にち、時間をまだ決定的に申し上げることができないのを、先方としても遺憾である、こう言っておりますのがただいまの状況でございます。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 国会でも始まっておりますと、私どももこうして委員会政府にやんやと追及できますけれども国会が始まっておりませんと、ただ、まだ撤去されない、まだ撤去されないといういらだたしさを感じるだけで、たいへん心配でございます。  そこで、きのうの新聞を見ましても、アメリカ早期ガス兵器撤去日本約束したものの、どうも引き取るところがなくて困っているんだというようなことも聞いておりますし、それからまた下田さんとジョンソン国務次官とが約束をされたにもかかわらず、早期撤去すると約束をされたにもかかわらず、なかなかこれもむずかしい、こういうふうなこともいろいろ報道されているわけでございます。いまの大臣の御答弁を伺っておりますと、まあ日時ははっきり言えないけれども早期撤去するような話もあるようにもおっしゃっておられます。一方アメリカにおいてはガス兵器持ち込みを禁止するというような法案を作成したり通したりしているわけでございまして、私どもとしてはたいへんに心配でございますけれども、一体秋の選挙までにこれを通すというようなことはアメリカ考えているでしょうか。それともきょうおっしゃったニュアンス外務大臣アメリカ側交渉をした話の中では、日時をいま言えないことは残念だということは、たいへん早い機会に、それは十日なり一週間ぐらいの間に撤去するであろうというような見通しが持てるようなニュアンスをお感じになっていらしたかどうか、この点を、やはり非常に心配ですから、もう一度お伺いさせていただきたいと思います。   〔永田委員長代理退席委員長着席
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 アメリカ政府といたしましても、正規の外交チャンネルを通してかつ高いレベルにおける折衝においての公の約束でございますから、アメリカ政府といたしましても非常に苦慮していることと私は考えております。それから国会のお話がございましたが、先ほども申し上げましたように私どもとしても非常に憂慮にたえませんので、国会のあるなしなどにはかかわらず政府としてもう連日のようにこの話は続けているわけでございますから、先ほど申し上げましたように日本時間の十日の午前八時現在における先方の態度がこうだということを申し上げたわけでございます。先方としては、具体的なタイミングをいまの時間で申し上げられないことは遺憾だけれども、誠意を尽くして早期撤去について積極的に検討しておる。   〔永田委員長代理退席委員長着席〕  それからある場所はこれを移転する先として不適当であるとか、それが移転する先として適当でないと決定したとかいう報道もあるようだけれども、そういう点も含めてアメリカ政府といたしましては早期撤去について、つまり移転について積極的に努力しておりますということを繰り返し現在言っているわけであります。したがって、そういう状況でございますから、私からそれ以上に推測を交えて来月何日にどうこうとか、あるいは今日午後何時にどうこうというようなタイミングを申し上げる立場にまだなり得ていないということを率直に申し上げて、御答弁とする次第でございます。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 相手のあることですからとは思いますけれども、事は人道上の問題ですからほんとうに強く要求をしていただきたいと思います。と申しますのは、アメリカ国民自分のところへ持ってきてもらっては困るのだと言って断わるとするならば、日本国民自分のところに置いてもらっては困ると言って断わる権利があると思うのです。アメリカ国民は断われるけれども日本にはこれは置いてもいいのだ、日本人は犠牲にしてもいいのだ、そういうふうな立場沖繩人たちはいま置かれているわけでございまして、白色人種優先というようなことさえもややもすると考えざるを得ない。こういうふうな状態に置くということは日米関係にとっても私はいいことではないと思います。したがいまして、この問題は、いま外務大臣の御答弁を伺っておりましても、なかなか苦しいようでもあり、そしてまたアメリカ側も一応は早期撤去いたしますというようなことを言っておられるようですけれども、どうもめどがつかないでたいへん私は心配だと思います。きょうの国会の強い意見をぜひもう一度アメリカ交渉内容としてぶつけていただきたい。人道主義的な立場からぜひ考えるようにということをもう一度交渉していただきたい、こういうふうに私は考えますが、いかがでございましょうか。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまお述べになりましたことはもう全くごもっともで、私も同感でございます。さように善処いたします。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 毒ガスの問題でもう一つ伺いたいのは、安保条約の中の地位協定の十七条の十項の(a)に「合衆国軍隊軍事警察は、」つまりMPは「それらの施設及び区域において、秩序及び安全の維持を確保するためすべての適当な措置を執ることができる。」こういうふうに書いてございまして、その適当な措置の中に、MP催涙ガスを使うことができるかと楢崎さんがこの前質問をされました。ところが井川局長は、日本法律警察官職務執行法程度内容範囲であると考えられ、催涙ガスは可能であるということを答弁されたのでございますけれども、私はこれに対して非常に疑問を持つものです。MP催涙ガスを一体使うことができるのかどうかというふうなことでございますが、たとえば日本警察催涙ガス使用の法的な根拠というのは警察官職務執行法の七条によるものでありますけれども、しかし、アメリカ警察武器使用というものはもっと限られたものではないか、こう考えますけれども、この点について、井川局長にも関係があるので御答弁を願いたいと思います。
  14. 井川克一

    井川説明員 はっきりしたことばづかいをちょっと覚えておりませんけれども、私、御答弁申し上げました趣旨は、この十七条十項によりまして、この「施設及び区域において、秩序及び安全の維持を確保するためすべての適当な措置を執ることができる。」ということの内容催涙ガスの問題でございますけれども、私の記憶によりますと、そのとき、たとえば犯人が部屋に閉じこもってピストルを撃つというふうな場合には、催涙ガスというのですか、催涙弾というものですか、そういうものが当然使われることはあるであろう、ということを申し上げました。そしてここの権限は、普通に考えられますことは、もちろんアメリカの国法、アメリカ軍隊の法令というものがあるわけでございますけれども、一般的に考えまして、それは日本警察官職務執行法とそう違うものではなかろうし、そういうふうな意味において完全にその催涙ガスを使うことができないという意味には全く解されない、こういうふうに申し上げたことが私の記憶でございます。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 井川さんの答弁は、日本法律警察官職務執行法程度内容範囲であると考えられ、催涙ガスは可能であります、こういうふうに答えているわけです。ですから、日本警察官職務執行法と同じようなもので、そしてこの催涙ガスは使えるのだ、こういう答弁をされているのです。  ところが、六〇年の安保審議のときに国会に出されました合同委員会合意書にはっきりとこういう問題が書いてある。それは刑事裁判管轄権に関する事項の中に、「日本国刑法第三十六条第一項」、それは正当防衛です、それから、「又は第三十七条第一項」緊急避難「に該当する場合のほかは武器使用してはならない。」と書いてあるわけです。つまり警察官職務執行法よりも狭い範囲だけしか使えないことになっているわけです。この日米合同委員会合意書の中にはそうはっきりしているわけです。  ところが、たいへんに広い範囲解釈をされて、そしてMPは使えるのだというようなことを言われますと、私どもはあの当時に出されました文書とは違って、たいへん広い範囲解釈して、MP催涙ガスも使えるのだということになると問題になると思うのです。非常にMPをかばって催涙ガス——もしたとえば日本で何か暴動が起きたときにMPがこの催涙ガスを乱用するおそれがある。こういうことを非常に心配する。合同委員会合意書の中と答弁が違っているわけです。ですから私は、どうしてそういうふうな広い解釈MPをかばわなければならないか、たいへんに心配になるわけでございますが、この点についてはっきりさしていただきたいと思います。
  16. 井川克一

    井川説明員 合同委員会文書をたまたま持ち合わせておりませんので申しわけないわけでございますけれども、ただ私が先ほど申し上げ、またこの前申し上げましたことは、私、決して違ったことを申し上げているつもりでもございませんし、またMP権限というものを特に拡大して申し上げているつもりは全くございません。通常の場合に、警察官職務執行法等によって日本警察が使い得るような場合、先ほど申し上げました例のような場合には、これはまた当然使えるわけでございまして、その他の場合にも、十七条十項にお主まして「秩序及び安全の維持を確保するためすべての適当な措置を執ることができる。」と規定されておりますし、また第三条の管理権というものも持っておりますから、それをあえてきわめて限定的に制限している規定というものはないと思います。合同委員会のあれを持ち合わさないので申しわけないのでございますけれども、その点はそういうふうに、ことに基地内におきましてはっきり限定しているということはないと思います。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私がそれでは申し上げましょう。合同委員会合意書の中で刑事裁判管轄権に関する事項、そういう中で日本国刑法第三十六条第一項、これは正当防衛です。または第三十七条第一項、緊急避難に該当する場合のほかは武器使用してはならない、こう書いてある。そうすると、日本警察官職務執行法の場合にはもっと広い範囲で使えることになっているわけです。この場合にはこの二つのものに限られているわけです。ところが職務執行法と全く同じで使えるんだということになると非常に幅広く使えることになるわけで、毒ガスといいますか、催涙ガスなどをそういう形で使うことを許しますと、非常に今後において問題がある。しかも合意書の中ではっきりきめているのですよ。それよりもワクを広げて解釈する必要はないんじゃないでしょうか。
  18. 井川克一

    井川説明員 文書を持ち合わせませんで引用して申し上げることができないのが遺憾でございまするけれども、おそらく戸叶先生のお話しの点は、いままでの点は完全に基地内の問題でございまするけれども合同委員会刑事小委員会でございますか、そこにおける合意基地外の場合にも合意があるわけでございまして、その場合に、特に正当防衛及び緊急避難の場合のみに武器を使えるということが書いてあったと記憶いたしております。そして私ども解釈では、いわゆる催涙ガスもその武器の中に含まれる。したがいまして、そういう正当防衛及び緊急避難の場合にのみ特に基地外においては催涙ガスが使える。しかし正当防衛緊急避難の場合でございますから、催涙ガスがその場合の武器であっても、現実正当防衛緊急避難に該当するかどうかというふうなことは個々の場合をとってみなければわからないと思います。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 私はここで法律的な論争をしていますと時間がなくなってしまいますからいたしませんけれども、これは井川局長、よく研究しておいていただきたい。というのは、あなたの御答弁もよく読んで、そして一体そういうふうな拡大解釈していいものかどうかということは私は非常に疑問です。しかも日米安保条約というのがこの二十二日に一応検討期になって、これを政府自身自動延長をしようとしている。しかもこの地位協定というものはほとんど十分に審議されなかった。十分に審議されない中に、いま洗っていけばずいぶんいろいろな問題があるわけです。しかも政府答弁とあわせてみますと、こういう点が心配だ、心配だというところがあるわけです。ですから、これをいい機会にこの問題もよく統一した解釈をはっきりわかるように出していただきたいし、このほか私どもは二十二日の前後に委員会を開くなり国会を開くなりということをお願いしたいんですけれども、とてもそういうことがありそうもないもんですから、もしないとすれば——ぜひ開いていただきたいのですが、もしないとすれば、せめて地位協定のいろいろな問題を、具体的な例をあげながら一つの資料をつくって、そして提示していただきたいと思うのです。私どもの知らない問題がずいぶんあると思います。私は、行って、一生懸命読んで、調べて、そしてこれはこういうふうに解釈するのか、こういうふうに解釈するのかということを勉強いたしますけれども、一般にはまだわからない問題があると思うのです。ですから、この際この地位協定内容等につきましての問題点、裁判管轄権の問題だとか基地の内部の問題、いろいろあると思いますが、そういうふうな点について具体的な事例をあげながら、たとえばこういう問題、毒ガス使用の問題などもその一部ですが、そういうことを例をあげながら一つの参考資料みたいなものも何らかの機会に出していただきたいと思いますけれども、いかがでございますか。
  20. 井川克一

    井川説明員 先ほど来の問題の十七条の十項の規定につきましては、私もさらに勉強いたしまして、戸叶先生のところへでも伺いましてお話しを申し上げたいと思います。また先ほど来申し上げておりますとおりに、基地外正当防衛緊急避難の場合、武器使用はその場合のみに認められるということでございまするけれども、はたしていわゆる催涙ガス使用がそういうふうな場合に該当するかどうかということは非常に疑問でございまして、原則としてそういう催涙ガス使用というものは、緊急避難正当防衛に該当する場合はほとんどないのじゃないだろうかと私は思っております。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 井川さんのいまのような答弁だったら、この前の委員会でああいうふうなあいまいな答えをしないでいただきたかったと思います。
  22. 井川克一

    井川説明員 私は基地内の問題と基地外の問題とを分けて申し上げているつもりでございまして、先日の御答弁基地内の問題に限って御答弁申し上げたつもりでございます。ただいまの後段の最後のところは基地外の問題のつもりでございます。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この問題あとではっきりさしていただきたいと思います。  そこで、外務大臣にお尋ねやら意見を出したいと思うのですが、ガス兵器の持ち込みにつきまして、私どもはもちろんガス兵器などを持ち込まれては困るわけですけれども沖繩の例を見たりあるいはまた日本基地があるからにはやはりそういうふうな心配も一応考えなければいけないと思うのですが、ガス兵器の持ち込みにつきましては、事前協議の対象にすべきではないか、私はこういうふうに思うわけです。安保条約の事前協議の内容もたいへんあぶなくなってきております。大体においてイエスと言うのではないかというようになってきておりますけれども、事前協議というものは交換公文で認められて、そしてその内容の一々の問題については公文書で話し合いの中できめられているわけですね。たとえば装備とか配置の変更とかそれから戦闘作戦行動に出る場合とか、こういうふうな話し合いの中でされているわけですから、今後話し合う場合に、やはりガス兵器というようなものの持ち込みも当然これは事然協議の対象にすべきであるというような話し合いをするために持ち出すべきではないのかと思いますが、この点については外務大臣はどういうふうにお考えになるでしょうか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういう意見も私はごもっともな点もあると思いますけれども政府といたしましては、毒ガス兵器というものは、絶対に持つべきではない。また現に沖繩の問題は先ほど申し上げましたようなことでございますけれども沖繩が返還になりました場合はもちろんのこと、現に毒ガス兵器というものはないわけですから、ことさらにこれを事前協議の対象にして協議するというような必要はない、私はかように考えております。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 大体持ち込むこと自体が問題なのですから、そういうふうなことをさせないという意味からも私ははっきりチェックする意味でしてほしいと思うわけですが、大臣のお考えは違うようです。そこで、安保条約のいわゆる検討期というふうなことで、政府自身自動延長ということに踏み切ったようでございますけれども、自民党の中にも固定延長というような意見も前にあったようでございます。そこで、今後この七〇年代を通して非常に流動的な面なども国際情勢などに出てきたりする、そういうふうな場合にアメリカ側が望むかもしれないし、また日本の内部からもこれを固定延長すべきであるというような意見が出ないとも限らないと思いますが、そういうような意見が出てきたときには、そうしてまた情勢が変わってきたときには、そんなことも政府はお考えになっていらっしゃいますか、どうでしょうか。こういう点も念のために伺っておきたいと思います。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実はまだ政府としても最終決定しているわけじゃございませんけれども、十年の期限が参りますこの機会安保条約というものに対する考え方というものをまとめまして、ひとつ政府声明のような形ででも全国民に訴えることがどうであろうか、こういうふうにも考えております。まだ二十二、三日まで若干の日の余裕もございますけれども、十分ひとつ考えまして、政府の意のあるところを明確にいたしたい、かように存じております。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 政府はいままでおきめになった態度を一歩もくずさないようなお考えのようでございますし、私どもとしても、ぜひこの国会をその日だけでも開いて、そしてこの問題をもう一度振り返って検討してもらいたいというふうに考えるわけですが、外務大臣はそれをお望みにならないようでございますけれども、念のためにこれをひとつ伺いたいと思うのです。  それで最後にもう一つお尋ねしたいのは、時間がきてしまいまして、私も六月にきょう一度しか開かれないのならもう少しいろいろな質問をしたいと思いますが、これは半分しかできないわけです。ぜひ委員長にもお願いして、なるべく早い機会にもう一度外務委員会を開いていただきたい。これを要望いたします。  最後に、いま私が外務大臣にお聞きしたこととあわせて御答弁願いたいことは、あとから同僚の加藤議員から質問をしていただきます繊維の問題ですが、一言外交上の問題として伺いたいことは、アメリカのほうではミルズ法案というもの、輸入規制法でございますけれども、これを出そうとして、アメリカ国会をこれが通ることはガットの精神がくずされることだ、こういうことをいいながら、しかも最終的な態度決定を、十八日にはアメリカの下院に報告をする、こういうふうな言い方で日本に迫ってきているようでございますが、私ども日本人から考えますならば、このガットの精神に違反するのはアメリカであって、日本には別に関係のないことである。そしてミルズ法というような輸入規制の法案を通すということは、これはアメリカが通したければ通したらいいし、そしてもしガットの精神をこわすならば、それはアメリカ考えだからしかたがないのじゃないかというふうに考えるのですが、政府がそれに動かされて、そういうことになっては日米関係がどうのこうのというふうなことに結びつけると、私はとんでもないと思うのです。こういうところに日本の軟弱外交ということがいわれるわけですから、き然とした態度を持っていただきたい。そしてまたアメリカがいかに十八日というふうに期限を切ってこられましても、そういうものには縛られないというような断固たる気持ちを持っていっていただきたいと思いますが、この点に対しての信念のほどを外務大臣にお伺いいたしまして、この繊維問題は同僚の議員にバトンをタッチしたいと思います。  以上の点についての御答弁をお願いしたいと思います。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず安保条約の問題ですが、これは実はいまさら申し上げるまでもないことでございますが、安保条約の規定それ自体に従ってとられる態度でございますから、あらためてその点について御審議云々ということは、これは政府立場から申すべきことではないかと思いますけれども、私としては、あらためて御審議というほどのことはないのではないか、かように考えております。  それから繊維の問題につきましては、御承知のように私も昨年の五月の初めにスタンズ商務長官を迎えて実は大激論をいたしました。今日まで私の考えは変わっておらないつもりでございます。御激励をいただきましてたいへん恐縮に存じますけれども日本の国益というものを中心にいたしまして十分善処したいと考えております。
  29. 田中榮一

    田中委員長 石井一君。
  30. 石井一

    石井(一)委員 私は本日北方領土の返還について外務大臣の御意見を伺いたいと思うわけでございます。  去る四月十日に本委員会におきまして、私、一つの仮定でございますけれども、もしソ連側から現在の日本政府の基本的な方針、すなわち安全保障体制であるとか防衛力の問題というふうなものを曲げずに、またそういう形で米軍の軍事基地は北方領土に置かないということ、さらに自衛隊の駐留ということも最小限度に押える、そういうふうな形でもしソ連側がこの北方領土に対して前向きの姿勢を示すといった場合に、政府の見解はどうかということをお伺いしたわけでございますが、そのとき愛知大臣より、「いまの非常に示唆のある御意見につきましては、私どもも十分考えていきたい。そういうところまでこぎつけて、まず返還になることに全力をあげていきたいと考えております。」こういう御回答をいただいて私の質問を終わったわけでございます。その時点からの継続を続けたいと私は思うわけでございますけれども、もう一歩突っ込んでソ連側の提案でなしに、そういう提案を日本政府から積極的にソ連側に提示する御意思はないだろうか。この点について政府の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  31. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま御引用になりましたそのときの答弁を私ももう少し補足して申し上げたいと思いますが、私の申したかったことは、この北方領土の返還問題についてソ連が、この日本国民の願望、十二分に根拠のあるこの願望にこたえて、胸を開き門戸を開いて話し合いに応ずるという態度をとらせることがまず第一でありまして、それから先どういうふうにこの領土の返還についての話し合いを進めるかということはその次のことでございますから、現在の状況においては問題はしかくなまやさしくはない。私どもは全国民の願望の上に立って、まず領土問題について話し合いを展開するということ、その門を何とかして開きたいということに全力をあげるべきであると、かように考えております。
  32. 石井一

    石井(一)委員 ただいまの政府の御見解よく理解するわけでございますけれども、現在の一応凍結した状態を一歩前進さすためには、何らかの積極的な日本側の提案というものが必要じゃないか。そういう意味でソ連が危惧いたしておりますことは、やはり防衛上の立地条件というふうなことであろうかと思いますので、私がただいま申しましたような日本側の案を出すということも決して無意味じゃないというふうに考えるわけでございます。  いずれにいたしましても仮定にのっとった質問で恐縮なんですが、もう一問だけ、次の問題に関連がありますので確認をさしていただきたいと思うわけでございますが、もしそのような状態日本に北方領土が返ってきた場合には、その地域に対するすべての問題——もしそういうふうに返ってきたと仮定した場合には、たとえば米軍基地の問題であるとか、あるいはそれが日本の国内に入るわけでありますから、おそらく日米安保体制のその域内に入るということも確実だろうと思うわけでございますけれども、そういう場合に日米安全保障条約というふうなものをもう一度手直しするような必要があるのかないのか、仮定の問題でございますけれども、そういう点についてちょっと御確認をいただきたいと思うわけであります。
  33. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほども申しましたように、まずこの返還問題についてソ連が胸を開き戸を開くということが最先の問題でございまして、それから先のことについて仮想にとやかく言うことは、政府立場からはコメントしないことが適当ではないか。しかし、これは前回のお答えでも申し上げましたとおりに、あなたの御意見には示唆に富むものがございますということは私も申し上げているとおりでございます。
  34. 石井一

    石井(一)委員 私が主張していきたかった問題は、結局この地帯というものを非武装地帯というふうな宣言にして、日本に返ってきたけれどもソ連にも大きな害を与えないし、ソ連が危惧しておるいろいろの問題というものの芽をつみ取る形でそういう構想を推進していくことによって、ソ連のいま外務大臣の言われております胸を開かせるという行為に結びつかないだろうかというふうなことを考えておるわけでございますが、この問題については政府のお立場もあろうかと思いますので、用意している問題がいろいろございますけれども、この辺でとめまして、それでは次に、多少歴史的な過程に入ってくるわけでございますけれども、第二次大戦のときに連合軍が領土の不拡大の原則というものをたびたび打ち出してきたわけであります。すなわち第一回目は一九四一年の米英共同宣言、いわゆる大西洋憲章、次に一九四二年の連合国共同宣言、続いて四三年のカイロ宣言と、戦争は領土拡大のためじゃないということで、たびたびこういう連合軍の公式の立場を表明してきたわけでありますけれども、その二年後の四五年、ヤルタ協定では、一挙にわが国固有の領土であるこの北方領土をソ連に与えるという約束をしてしまった。したがって、これは非常に古い話にもなりますし、戦争という非常事態ということも考えますので、いまから大きな問題にするわけにいくかどうかわかりません。しかしながら、英米、ソ連が自分たちでつくったその不拡大の原則というものをまたみずからで破ったということは確かでありまして、そこにヤルタ協定を無視しておるということは事実だと思うのでございますけれども、これに対する政府の御見解、あるいはこういうことに対する三国の見解をこれまで求められたことがあったのかどうか、この点についてちょっとお伺いをしたいと思います。
  35. 愛知揆一

    愛知国務大臣 しばしば論議されるところでありますけれども、ヤルタ協定というものは、日本は全然これに参加していない。それから日本としてのサンフランシスコ平和条約というものは、沿革的にいいましてもポツダム宣言に因由しているわけでありますし、領土の拡大のための戦争というものはしないんだ、領土不拡大の原則というものが根拠になっている、こういうふうに私は理解いたしているわけでございますから、ヤルタ協定についてとやかく申しますよりも、もしこれが法理論的な、アカデミックな問題ならともかくでございますけれども、北方領土要求に対する日本政府としての立場、あるいはその根拠づけの問題として考えます場合には、政府立場は何べんも申しておりますように、一八五五年の日露修好条約に基づき、またその後のサンフランシスコ条約の根拠になっておりますような条約的な根拠あるいは沿革的、歴史的それから事実的あるいは地理的、あるいはその地理の上に存在する生物学的見地、あらゆる点からいいまして、日本が国後、択捉に対して固有の領土としての権限を持っているんだということが根拠づけとしては必要にして十二分である、私はかような見解に立っている次第でございます。
  36. 石井一

    石井(一)委員 ただいま指摘いたしましたヤルタ協定に日本が入っていない、したがってそれに対する発言力というものもないということもわかります。それからこの島々が日本の固有領土であるということも条約的に裏づけられる根拠がある、こういうこともわかるわけでございますが、ソ連との交渉でバイラテラルの形で進めていくことに現在一つの大きな問題があるわけであって、ヤルタ協定自体を取り上げてみると、三国以外の国が関係しておった。そしてアメリカなりイギリスというのは自由主義諸国であり、現在はわれわれの朋友であるというような関係である場合に、アメリカ、イギリスというのは、ヤルタ協定自体をとれば、やはり日本に対してはその公約を裏切ったという行為をしておるとも言えるわけでございますので、何も過去のことをとやかく言うわけじゃございませんけれども、やはりバイラテラルで解決できない問題に対して、何かもう少しマルチラテラルな形でのアプローチというものを考え得るのじゃなかろうか。二十年前の米英ソの関係と現在の米英ソの関係とは違うのであり、まして日本というものを中心に考えた場合には、その間の非常に大きな国際関係の変動というものが起こっておることは事実でございます。そういうふうなことを考えた場合に、たとえば日本がもう一度この問題に関して三国の会議を持っていただくということをソ連に提案しなくとも、米英に提案するとか、あるいは日本がオブザーバーであってもいいからそのときの法的根拠というようなものを追及する必要が多少あるのじゃなかろうか、そういうところに糸口は出てこないだろうかということを考えたわけでございますが、この点についてもう少し何か御意見がございましたら、お伺いをしたいと思います。
  37. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はむしろこれはサンフランシスコ平和条約の起草に当たりあるいはこれに参加した——ソ連は参加してないわけでありますけれども、その根拠になった、また起草に当たったその中心はアメリカでありますし、その他の国も非常な関心を持ってこの条約の起草に参加しあるいはこの条約の調印に参加したわけであります。それらの国々の北方領土に対する見解というものはいかがなものであったかということについては、政府といたしましても何回かにわたりまして公式にそれらの国々の公式見解を求め、かつ回答にも接しておるわけであります。あるいはまたソ連に対しましても、それらの国との間の本件についての往来もあったことを承知いたしておるわけでございますが、さようにいたしまして、そういった点の根拠づけについて、あるいはいまお話しのようなマルチといいますか、日本、ソ連以外の関係国の意見というものも、私は十分の根拠づけをとるだけのことはすでにできている、こういうふうに思いますけれども、しかしさらに念には念を入れてさらに多くの国々の協力を得るという意味におきまして、現に日本国民の中にもそういう方向について国際的な世論を喚起するための運動を展開しておられる方々もございますので、われわれそういうやり方についてはその成果があがることを期待することは一向差しつかえないことだ、かように存じているわけでございます。
  38. 石井一

    石井(一)委員 それでは次に、現在交渉中でございます安全操業の問題について御意見をお伺いしたいと思うわけでございますが、私はこの問題についても本委員会で前にお伺いいたしまして、日本側の考えておられるかなりの問題点について大臣よりお伺いをしたわけでございます。その後の経過でございますが、いろいろなことが一部新聞にも出ておりますし、またうわさといいますか、情報で入ってくるわけでございますけれども、たいへん大きな問題になっておりました領海の問題について、一体十二海里にするのか三海里にとどめるのか。一説には、日本側もソ連側が主張しておった十二海里の線にだいぶ近づいておるというふうなことも聞いておるわけでございますが、この点について政府の統一見解なり何なりというものが出たものなのかどうなのか、お伺いしてみたいと思います。
  39. 愛知揆一

    愛知国務大臣 あらためて統一見解と申し上げるほどのこともないのでありますけれども、これは国会におきましてもしばしば論議が繰り返されている、その間に政府の見解はしばしば表明しておりますように、要するに領海というものは多数の国との間の合意があってかつそれが順守されるものでなければならないというのが一番の基本原則であると考えるわけでございます。したがいまして、その内容において、数年前の国際法学会において、たとえば全体を十二海里にする、そのうち六海里は領海である、六海里は専管水域であるということがほぼ固まりかけた状況になったことがございますが、政府といたしましては、それがたとえば大多数の国々の間の合意ができ、そしてそれが順守できるということでありますならば、それに賛意を表するものでございます。ところが、まだそこまでいっておりませんのに仮想に日本だけが態度を決定するのはいかがであろうか。同時に日本としては、水産業等の関係におきまして関係の深い国々との間にはそれぞれ漁業協定その他が結ばれておりまして、現在のところ少なくともさしたる支障なく円滑に漁業が行なわれておる。たとえばただいま、これからも御質問あろうかと思いますが、ソ連との間の北方水域の安全操業の問題というようなことは懸案になっておりますが、その他の国々との間には円滑に水産業が行なわれているという状況でございますから、いましばらく各国の動向を見きわめまして、合意がなることを政府として望みながら、誤りのない線に結論が出るようにしたい、かように考えているわけでございます。たとえば先年の国際海洋学会の決議にいたしましても、十二海里ということに一たんきめるけれども、しかし、沿岸国についてはそれにプラスして特殊の権益を認めるべきだというような風鈴がつくような決定ということになりますと、なかなかこれは大多数の国々の合意を得ることはできない。これは当時の会議状況からいっても御承知のようなことなんでございますから、それらの点にも十分配慮いたしまして、大多数の国の合意ができ、かつその基準が適確に順守される、国際義務をお互いに順守するという約束が前提にならなければいかぬのではないか、私はかように考えておる次第でございます。
  40. 石井一

    石井(一)委員 この安全操業の問題の解決は非常に時間的にも急いでおる問題でございますし、その間、交渉の過程にトラブルも二、三起こっておるというふうに私は理解いたしております。水域以外にも、たとえばこの前の御答弁で、対価を払うという意思はないとか入漁料を払うという考え方はないというような基本的な見解をお示しになったわけでございますけれども、その後これをたとえば来月あたりにまとめようとする場合に、何か一説にはソ連側は日本側から提示されるその案を待っておるというふうなことも伺っておるわけでございます。おそらく外務省のほうで、水産庁のほうでいろいろの技術的な問題を検討されて譲歩すべきところを譲歩するというふうな形が進んでおるのじゃないかと思いますけれども、ソ連に提示されようとしておる基本的な構想なりあるいはその骨子がわかるようでございましたらひとつお教えをいただきたいと思うわけでございます。
  41. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも国会中にお話を申し上げましたような基本線で現在進んでおります。それは昨年九月、こちらから原則を提示いたしましたように、国後、択捉、歯舞、色丹の距岸三海里ないし十二海里、これを安全水域とするということをまず原則的にソ連に認めさせて、それから具体的な商議に入ろう、こういう提案に対しまして、これまた原則的にと言うとちょっとまだ言い過ぎになるかもしれませんが、ちょうど国会の会期中に来日いたしましたノビコフ副総理の一行がその線の上に立って具体的な話し合いに入るということについて先方も承諾をしたわけでございます。そこですぐ引き続き具体的な話し合いに入りたいと思いましたところが、ソ連側の都合もございまして延び延びになっておりますが、今月中にソ連側の予想される希望その他もそんたくいたしながら日本側としての応酬要領をきめまして、さっそくソ連側との細部の話し合いに入りたい。その場所はモスクワであっても東京であってもよろしい、この点は流動的に考えております。  その内容については現在鋭意検討中でございますが、消極的なほうの要件からいえば、前々からお話しいたしておりますように、入漁料ということは政府考えておりません。それから日本の港に対して特にソ連にだけ優先的に入港を認めるというようなことを条件として与えることは考えておりません。こういうふうな点は消極的な要件でございますけれども、それら以外の点につきましては、ただいまいよいよ具体的交渉に入ろうとするところでございますので、鋭意関係方面と打ち合わせ中でございますが、今月中に取りまとめ、そうしてできるだけすみやかにソ連側との話し合いに入って、なるべくすみやかに結論を得たい、こういうことで鋭意努力をいたしております。
  42. 石井一

    石井(一)委員 この問題の終末、いよいよ問題がまとまったという時点に、たとえば外務大臣が訪ソされてその締めくくりをなさる、あるいは倉石農林大臣に何か招待状が来ているとかなんとかということをちょっと聞いたわけでございますけれども、そういうふうな政府としての御計画があるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  43. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は総選挙前の状況におきましても、相当具体的な話し合いをしそうな段階になりましたときには、農林大臣がモスクワに行く——これはいまの農林大臣の前任者の長谷川大臣の当時でございますが、そういうことを心組んだことも一つの参考にはなろうかと思います。同時に、先般ノビコフ副総理一行が参りましたときに、この安全操業の問題については非常に具体的で技術的な問題が多いので、ソ連側としてはイシコフ漁業大臣を主務者といいますか、交渉の当事者に指名をするということを日本政府に通告をいたしております関係もございますから、そういうような点で当方としてもそれに対応する措置考えるのが妥当であろうかと、かように考えております。なおソ連側は、漁業相あるいは漁業大臣という立場は、日本政府の閣僚とは多少性格の違った点等もございますから、それらの点も十分考慮に入れて考えていきたいものだと思っております。
  44. 石井一

    石井(一)委員 私、本日予定しておりました質問をほとんど終えたわけでございますけれども、ソ連との外交というものは、私、まずこの安全操業の問題を解決するということが非常に緊急な課題であると思いますし、それと同時に、この七〇年代の日本の外交的立場というものは、以前とは全然違った一つの評価といいますか、そういうことになっておると思いますので、従来の外交方針も非常に必要でございますけれども、やはりそれから一歩突き進んだ形での自主的な外交というものが、この七〇年代に非常に要請されておるのじゃないかと私は考えておるわけでございます。最近の外務大臣のいろいろ外国での行動、発言を見ておりましても、その意欲が十分にあらわれてきておるということに対しまして、私は心からの敬意を表しておるものでございますけれども、とにかく沖繩の次には北方だということが日本の大衆の中に気持ちとしてはにじみ出ておる、そういうことを考える場合に、単にソ連に対する交渉ということ、これは非常に必要でございますけれども、それと同時に、日本の現在の立場というものを十分に的確に利用して、マルチラテラルなアプローチというものをこの際もっと強力にやっていくべきでなかろうか。それに必要な歴史的な過程というもの、過去の経過というふうなものも、昔ならそれを検討する必要はなかったかもわからぬけれども、さらにそういう問題についてしさいに検討を加えるということも必要であろうと思いますし、相手側のソ連の、どういう問題でこの問題がひっかかっておるのかというふうな問題についても、こちらから積極的に提案なり日本案というものを提示していくことによって、私は七〇年代の外交というものがもっともっと前進していくものだ、こういうふうに考えておるものでございます。  そういうことで、本日、私は外務大臣にいろいろな問題についてお伺いをしたわけでございますけれども、今後も、さらにこの北方領土の返還、安全操業に対して積極的に御推進くださいますことを御要望いたしまして、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  45. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほども私、政府立場としてこの段階で申し上げるのもいささか不適当かと思いまして、ことばを濁したわけでありますけれども、たいへん示唆のある御提言をいただいておるわけですが、私は対ソ外交については、やはり国民的な願望の北方領土問題を解決しなければならぬということは、非常に強く考えておるわけですが、そのためにも、むしろ対ソ強硬といいますか、何でもかんでも対決してこれをもぎ取るのだという姿勢ではなくて、ソ連の立場においても、最近かなりな程度に日ソ共同宣言の線の上に乗って、友好の度合いというものが、とにかく曲がりなりにも進んできておるので、これを一そう強く進めていく。つまり日ソ間の親善友好の関係の中で、この領土問題というものが話し合いの中で解決ができる、こういうふうな持っていき方というものが、私は一番望ましいことである、かように考えるわけでございます。これは領土問題についての意欲が強ければ強いほど、ただいまも御示唆がありましたように、今後の日本政府の姿勢としては、さような姿勢が必要ではないか、かように考えておりますことを申し上げまして、御答弁にかえたいと存じます。
  46. 田中榮一

  47. 加藤清二

    加藤(清)委員 私はこの際、ただいま日米間に問題となり、懸案となっておりまする日本繊維製品のアメリカ側の一方的な制限措置について承りたいと存じます。  きのう、きょうの新聞によりますと、各紙が一斉に風雲急を告げております。関係閣僚の動きがあわただしい、あすにも、あさってにも結論が出そうな様子でございます。  そこでお尋ねいたしますが、外務大臣、この懸案を解決するのか、悪いほうへ追い込むのかは、結果を見ないとわかりませんけれども、まず政府が予定していらっしゃるところのスケジュールを承りたい。
  48. 愛知揆一

    愛知国務大臣 スケジュールということよりも、私は本件については、昨年、前国会の当時ではありますが、特に衆議院におきましては、本会議の院としての決議もあることでございますから、そういう線に沿うて問題を解決すべきものであるとすれば、解決しなければならない、そういう立場に立ってこれからも努力をいたしたい、かように考えている次第でございます。
  49. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは朝日、毎日、読売、中日をはじめとして、全国各紙が一斉に筆をそろえて書いておりまするところの最終的態度をあす協議する、その協議するのは四者会談であって、佐藤首相、愛知外相、宮澤通産相、保利官房長官、これはそのスケジュールではございませんか、ございますか。
  50. 愛知揆一

    愛知国務大臣 スケジュールということばの定義をどういうふうに申し上げたらいいかわかりませんが、しかし、とにかく大きな問題が、ここに懸案となってあるということは事実でございますから、それに対してどう始末をつけ得るとすればつけようかということを随時協議するということが私どもの責務ではないだろうか、こういうふうに考えているわけでございまして、そういう点からいえば、スケジュールといえばスケジュールと申し上げてかまわないかと思います。それと同時に、御意見はこれからいろいろ拝聴いたしたいと思いますけれどもアメリカ側のほうの状況を見てみますと、いわゆるミルズ法案というものが、これも他国のことでございますから、その見通しについて軽々な判断は許せませんけれども、あるいは成立するかもしれないということで、かなり緊迫したように見受けられる情勢でもある。この法律が制定されるとしたならば、これは、どういう影響が日本に起こるであろうかということも、やはり政府立場といたしましては、十分に情勢分析をしておくことが必要ではないかと考えるわけでございます。アメリカのミルズ法案というものがアメリカ国会で通るか通らないか、あるいは通すことが善であるか悪であるかということには、いろいろの立場から私にも意見はございますけれども、成り行きとしてこれができるかもしれない。できた場合に、どういう影響が日本の国益に対してあるだろうかということも、また政府立場で十分検討し、情勢分析が必要ではなかろうか、これも、またスケジュールといえばスケジュール問題ではないだろうか、こういうふうに考えているわけであります。
  51. 加藤清二

    加藤(清)委員 大臣にまことにおそれ多い話でございますけれども、与えられた時間の制限がございます。したがって、でき得べくんば私の質問にお答え願いたい。私は日本側のスケジュールをお尋ねしたのでございます。アメリカ側の問題について内政干渉をするとか、あちらの問題を批判しようなどとは思っておりません。  それでは、ぎりぎり一ぱいのところをお尋ねいたしますが、十八日ごろにはすっかり日本のスケジュールが完了する、そういう目途で行なうのだということが報道されておりますが、これは事実でございますか。
  52. 愛知揆一

    愛知国務大臣 アメリカのスケジュールはともかくとしてというお尋ねですけれども、これは、やはりこちらが好むと好まざるとにかかわらず……。(加藤(清)委員「それは、あとで聞きますから」と呼ぶ)しかし、それとやはり関係があると言わざるを得ませんね。こちらが自主的にいろいろと考えてまいります場合にも、そういう場合に伝えられるように、十八日ということがアメリカ事情として一つの転機であるとするならば、それをやはり頭に置くことも日本立場として必要ではございますまいか。そういう点を私申し上げたわけでございます。
  53. 加藤清二

    加藤(清)委員 私の質問に答えてください。頭に置く置かぬは、あなたの自由である。私は日本側のスケジュールを聞いているのである。それが言えぬとおっしゃれば、これはもうやむを得ません。外交的機密とおっしゃれば、これもやむを得ません。日本政府側、特に四者会談、最終態度あす協議、こう本日の新聞に伝えられている。ここのところと、もう一つは、十八日ごろに最終態度の決定をする、こういう報道がなされている。それは事実かと聞いている。
  54. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは情勢の推移によると申し上げざるを得ません。
  55. 加藤清二

    加藤(清)委員 わかりました。それでは、最終態度はあす協議して、決定が十八日ごろになるのは目標ではあるけれども、なるかならぬかはわからない。目下のところは融通無碍である、かように受け取ってよろしゅうございますか。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも端的にお答えしないとしかられますけれどもアメリカが制限立法というようなことがなくなってしまう、そういう状況がなくなってしまえば、これはこちらは何にもする必要はございますまい。こういう意味で、融通無碍とおっしゃいましたけれども、私は情勢の推移によるとお答えいたしたわけです。
  57. 加藤清二

    加藤(清)委員 ミルズさんの法案の問題についてはあとでゆっくりお尋ねいたします。先ほどあなたは、日本の態度はあくまで日本国会ですでに議決されている、それが基本的態度である旨のことを述べられました。  そこでお尋ねいたしまするが、その内容は、インジュリーなきところ制限なし、これが基本でございます。あらためてお尋ねするまでもないことでございますが、外務省は下田さんをかの地に派遣しておられます。逐一向こうの状況はつぶさに聴取しておられると思います。インジュリーがあったかなかったか、はっきりお答え願いたい。
  58. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはインジュリーというものについての見方にも——これはまあ加藤さんから前国会でもきわめて該博なる知識と資料をもとにしての御質疑がございましたから、もうよくよく御承知のところでございましょうが、これは日本側だけからいい、あるいはアメリカ側だけからいえば、意見の相違があるということは否定できない、明らかな事実であると申し上げざるを得ません。
  59. 加藤清二

    加藤(清)委員 あなたはアメリカ側の主張を是となさるか、日本側のこのインジュリーに対する調査の結果の主張を是となさいますか。
  60. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は、日本政府の者でございます。
  61. 加藤清二

    加藤(清)委員 しからばお尋ねいたします。  日本側で調べましたアメリカの繊維業況、これはきわめて好況でございます。同時に日本のかの地へ輸出する製品はほとんどが微々たるものでございます。インジュリーはどこにもありません。ただアメリカの国益、国策を遂行するにあたって、日本の輸出される繊維製品がアメリカにたいへんな利益を与えている。これが概括でございます。そこで私は、それをあなたが認められるか認められないかということを先にお尋ねいたします。
  62. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、私に認めるか認めないかと言われましても、お互い日本人でございますから、われわれの立場というものは、私ははっきりしているのじゃないかと思うのです。これもまたお答え以外のことを言っておこらないでいただきたいと思いますけれども、私はそういう点について私見を申し上げますならば、日米の関係の方々の間でフランクに意見の交換ができ、あるいは資料が必要ならば両方でフランクに資料を提示し合って、十分その意見も戦わし、また自由な意見の開陳ができ上がればいいなということを私はひそかに思っているくらいでございます。日本立場というものは、先ほど申しましたように、国会の御決議もあることですから、私にアメリカの代弁をせよというようなお立場で御追及いただきましても、私はちょっとお答えができかねます。
  63. 加藤清二

    加藤(清)委員 お説のとおりでございます。あなたのおっしゃるフランクという意味が、長いか短いか私は知りません。フランクということばはわかりませんが、私は、最も平和的に友好裏にアメリカの方々と資料を交換し合いました。その資料を持ってまいりました。この資料は、私がでっち上げたものではございません。アメリカの権威のある調査団の発表でございます。日本調査団の調査ではございません。ごらんください。これは大きいですから、そっちの事務の方、ここへ来て持ってください。速記の方がわかるようにあれしなければならないので、もう一人来て、つってくださらぬか。  これは米国繊維産業雇用者の推移でございます。私がつくったデータではありません。これによりますと、一九六〇年の十二月以降のアメリカの繊維雇用者、これを示しておりまするが、二百四十二万人、この数を突破しておりまするけれども、これはアメリカの開聞以来の繊維の雇用者の数であります。ここで輸入のおかげで——日本からいえば輸出のおかげで、黒人の雇用が減ったの何のという声がございますけれども、それは部分的にはあったでございましょう。しかしそれは黒人が職場へ就職しますと、その周辺にいた白人がかわっていっちゃうのです。白人があるポジションを押えますと、今度は黒人が逃げる、そういうものであって、不況による退職ではないのです。すなわち責任は、日本の繊維製品にはないということなんです。これはもう大臣、釈迦に説法の感でございますけれども、インジュリー、インジュリーというのはあいまいもことしておりまするから、私は、申し上げるわけであります。  これは米国繊維産業の生産指数でございます。たいへんな伸び率でございます、一九六八年から。この十一月には、これもアメリカ建ち始まって以来最高でございます。年数はずっと一九六一年から出ております。これを確かめるために、私は去年のものは出しておりません。  これは米国繊維産業の利益水準——利益でございます。これもこんな伸び方でございます。一時下がったことがありまするけれども、これはごく手近なデータによればどんどん伸びておる。これはケネディさんの繊維産業界に対する施策のよかったことを示す一例にも使われております。非常な伸び率でございます。  次は、化合繊の国内消費量、輸出入量の対比であります。これもよく見ていただきたい。これを制限しようとしておるわけです。これにインジュリーがあるというのです。これで見ますと、これは国内消費の伸び率でございますが、アメリカもずいぶんこの繊維の消費は伸びておる。ところがここを見てください。アメリカの繊維製品の輸出があります、アメリカの繊維製品の輸入が出ております。この輸入のほんの一部が日本の占めるシェアでございます。この全部じゃありませんよ、一部ですよ。この伸び率を見てください。一九六一年において、日本の化合繊のアメリカへの輸出量は、全体で二%ないのですが、そのうちの三〇%ですから、〇・六%しかないわけです。〇・六%ということは、日数にいたしまして三百六十五日の二日分ないということです。どこにインジュリーがあるか。伸びた、伸びたといわれます。一九六七年、なるほど伸びてきている。確かに二%であったものが四%に伸びているから、この伸び率は倍ということがいえます。しかし倍に伸びたとしても全体で五%以下でございます。この中に占める日本の量は、この年においてわずか三五、六%でございます。しまするというと、全体の四%のうちのかりに四〇%とすれば、一・六%ということになるわけです。一・六%は日にちの使用量にして一週間ないということであります。三百六十五日のうちの一週間分を出していない、ワイシャツにしてもブラウスにしても。それがどうして相手方にインジュリーを与えるでございましょう。この結果、アメリカの紡織産業の売れ行き、繊維産業の売れ行きはどんどん伸びておる。私はこういうデータをたくさん持っております。いまあちらの私の部屋へ行けば、どんと積んであります。どこに日本の繊維輸出の被害が発見できるでございましょうか。どうやったらインジュリーが発見できるでございましょう。どこにもございません。しかるがゆえに、現地に行かれました高橋ミッションも私のデータと同じ報告をしていらっしゃるわけでございます。あえて私はこの際、このデータを提供してくれたアメリカの友人の名前をここで売ろうとは思いません。しかしあなたのおっしゃるとおり、私は、それこそあなたのことばを借りていえばフランクに、きわめて平和裏に、きわめて友好裏に実態を把握しているのでございます。しかもこのデータの基礎は、学者の研究だけではございません。実質にかの地においてその業を営んでいらっしゃる人たちがデータづくりに参加してでき上がったデータでございます。こう考えてみまするというと、インジュリーはどこにもないと私は断定せざるを得ませんし、そう断定した高橋ミッションの報告は正しいと私は認めているわけでございます。関係業界の専門家の方々もこれまた一致した意見でございます。これをあなたは否定なさいますか、それとも肯定なさいますか。
  64. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは前から申し上げておりますように、加藤さんのこういう御研究というものは、私は非常に敬意を表しております。この御検討について、このお出しになっておる資料に対して、それは違っているなどということは申しません。
  65. 加藤清二

    加藤(清)委員 そこでお尋ねしたいことは、これは歴代の通産大臣もまたしかりでございます。さきの大平通産大臣もこれをよく知っております。にもかかわらず、国会が終わったらとたんに、インジュリーの有無は問わずに、ミルズ法の関係よりしてなぜゆえなき規制を急がなければならないのであろうか、これは国民ひとしく疑問に思っているところであります。ゆえにこそ業界は一向納得しようとはいたしません。おそらく現段階においては、それは無理なゴリ押しという批判は受けるけれども政府の今日のこの態度を是とする人はないでございましょう。ただほくそ笑むのはアメリカの一部にあるかもしれませんが、アメリカの中においてもなお日本から繊維製品が輸入されることを制限されることは不利益に通ずるという仲間がたくさんいらっしゃることを、あなたは専門家ですから、よく御案内だと存じます。こういうやさきになぜ妥結を急がなければならないだろうか、その理由を国民の皆さんによくわかるように解明していただきたい。
  66. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは先ほど抽象的には申し上げたつもりでございますけれども、その是非善悪の判断ということが非常にむずかしいと思いますけれども、とにかく勢いとしてアメリカ国会の中の大多数の人がミルズ法に賛成をして、これが成立をするということになるとどうなるであろうか、その可能性ということもまた考えなければならない。その情勢がもしそうなろうとした場合に、これを阻止するためにわれわれとしてなすべきことはどういうことであろうか、それにはいろいろの方法があろうと思います。  それから、そういうことを全力をあげて努力しても、なおかつ国が違うことでございますから、先方としては先方としてこの立場からいって、ミルズ法を成立させるということがあり得るかもしれない、そのときにどう対処したらいいかということも、私は日本側としても考えておかなければならない。それにはどうしたらいいか、こういうことを政府といたしましては十分検討しておかなければならない。いわばこれは相対的な問題で、先方の動きというものとの関連において、先ほど申しましたように流動的にこちらのスケジュールというものもつくっていかなければならない、これが今日の状況でございます。
  67. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、最も尊敬する外務大臣からいただけない答弁をいただいたような気がいたします。理解に苦しむわけでございます。なるほどそれは通過するかもしれません。そういう想定は成り立つでしょう。さて、それを実行に移したら一体どういうことになるでございましょうか。それこそアメリカ側は二律背反ということに相なる。おのれみずからつくったところのガットの精神に違反し、おのれみずから宣伝しているケネディラウンドに反し、おのれみずからいっているところの自由貿易主義に反してそれを行なった場合、世界はこれを許すでございましょうか。殷鑑遠からず、イギリスの例を私が説明しなくても、あなたのほうが御専門でいらっしゃるからおわかりのとおりでございます。先年イギリスがこれを行なって袋だたきにあいました。実行に移そうとする用意は行なわれました。しかしついに行なわれずに終わったわけでございます。結果はどうなったか、イギリスの伝統的な紳士的権威を失墜し、その結果はますますポンドの価格を下げていったにすぎません。はたしてアメリカはそれが行なえるでありましょうか。私は、アメリカの英知と技術は、特に国際的な技術はそれを実行には移さないと思います。なぜかならば、いま日本からのアメリカへの輸出物資を次々と制限をしていったならば、つまり同業者の言うままにいまの大統領ニクソンさんが制限していったならば、はたしてアメリカの経済は保つでございましょうか。さなきだにドル防衛だ、さなきだにベトナムの軍事費の出費を制限しなければならぬ、それはやがてインフレに通じていく。産業はいんしんであるけれども、経済関係は非常なインフレの前夜である。株価は暴落しつつある。そのインフレのやさきに、インフレをとめる手は一体何であるか、これこそあなたの専門です。インフレをとめるには金融引き締めか税を上げるか以外に手はない。それ以外にアメリカとしてはできない。それを行なう以外の手でインフレを是正していまの戦争を遂行しようとすれば、景気の過熱を防ぐには景気の低いところ、物価の安いところからよりよきものをより安く買うということが一番の景気過熱を緩和する即効薬である。釈迦に説法をいたしたようであります。はたしてこれをあえて知りつつも、世界の攻撃を受けつつも、それが行なえるでありましょうか。私は行なえないと思う。そういう見通しを立てます。もしもあなたがいなとおっしゃるならば、勝負を張ってもけっこうでございます。お答えを願います。
  68. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はあなたと御一緒にそういうことはやるまいということを期待いたしたいと思います。しかし、このことは他国のことでもございますし、それから米国議会内の状況などを見てみますと、必ずしもその可能性がないと断定できないのは非常に私は遺憾な状況だと思います。この憶測、分析、判断が間違いますと、これは少なくとも当面のところ日本の国益が害される結果になる。これはアメリカとか日本のことを言うわけではございません。非常に仮定の観念的な問題ですけれども、あの国は戦争をしかけてこないであろう、善意の国であるし、世界の状況を見ればそんなばかなことをしないであろうと、善良で純真なる日本国民がそう期待しておっても、どこかの国がどういうことをやるかもしれない。そういう場合にどうなるであろうかということも、政府立場でほんとうに真剣に情勢分析が必要ではないか、ここが政府としての苦しいところであるということを私は申し上げておきたいと思います。
  69. 加藤清二

    加藤(清)委員 委員長から電報が参りました。残り時間少なし。いままでのところは緒論なんです。これから本論佳境に入ろうとしているのに、血も涙もないと言いたいところですが、そうは言っておるひまがございません。  そこで、それじゃあとの問題はあす通産大臣に承るということにいたしまして、一点だけ承ります。羽田へ着かれましたおりに宮澤さんが、包括規制を一年か一年半暫定で行なう、それをガットにつなぐのだ、こういうことを言っておられるようでございます。急げ急げの声の原因は、あなたが先ほどおっしゃられましたミルズ法案と、それから今度はコースとしては宮澤案の一年か一年半を包括規制でいって、あとはガットにつなぐ、こういうことのようでございます。  そこでお尋ねいたします。第一点は、あなたはこのことがほんとうにそうだとお思いでございましょうか。  第二点は、先ほどあなたがいみじくもおっしゃられたように、法案が通るか通らないかも、これは確定要素に欠ける点がある。私は確定要素のなさ以上に、一年包括、あとガット移行ということのほうがなお不確定であり、不安定であり、遺憾ながらその反対の実例をここに披瀝しなければなりません。それはいま問題となっておりまするLTA、この秋にこれを延長するやいなやのことが問われておりまするLTA、この発足は御案内のとおり二国間協定から始まっております。しかも暫定的でございます。その暫定が一年に延び、二年に延び、あまり毎年やるのもなんだからというてSTAに変わりました。ショートでいこう、二、三年固めていこうということになりました。その二、三年固めていったらどうなったか。今度はロングでいきましょう。いわゆるLTAになった。LTAをきめました。三年間ときめました。期限が過ぎました。もう三年やりましょう。その三年がまた済みました。もう三年やりましょうということになった。これがLTAの歴史でございます。以来、あれから合わせて十七年の余がたっております。何とまあ、その間日本の業界はうそをいわれ、日本の中小企業は次々と倒れ、綿業界は次々と倒産、格納、封緘、その結果は繊維構造改善ということになった。与えられた影響はたいへん大きい。生き残ったものは化繊に逃げた。そのまた化繊を今度やるという。その化繊は一年ではたしてはっきりとめることができるかできないのか。ここを承りたい。このLTAの第一条と第六条には、この問題は絶対にこれに限る、他には及ぼさない、なぜかならばガット精神に違反するから、こういうことなんだ。しかしそれをまたぞろ今度はアメリカが及ぼそうとしておられる。それを日本政府はのもうとしている。一体どういうことなんでしょうか。これで国会はおさまるでございましょうか。  あわせてお尋ねいたします。国会決議違反をどうやって言いのがれなさいますか。ここでためしに言いのがれてみてください。——時間ですからあわせてしまってやります。委員長の命令に従うためにどうもすみません。  今度の問題は、歯どめがございますか。どんな歯どめがあるでしょう。もしその歯どめがあるとするならば、それをお示し願いたい。あるとするならばLTAに適用してもらいたい。なぜならばLTAのほうが前の借金ですから。不渡り手形が前に残っている上になお銀行から金を借りようといったって無理な話なんです。アメリカを信用せいといったってだれが信用できるか。前の手形が一年先に支払うといったって十七年先になって、この秋になったらまた三年延ばしましょうといってきておる。したがって新しく行なおうとするところのこの繊維包括規制、あとガット案とおっしゃるならば、この歯どめをお示し願いたい。歯どめがあったら、それを前の借金のLTAに穴埋めをしてから、それからこっちをやったって決しておそ過ぎるということはない。歯どめをお示し願いたい。  以上、四点質問いたしましたが、お答えのいかんによっては委員長の許可を得てまた追って質問しよう、こういうことに相なるわけであります。
  70. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことにごもっともなお尋ねで、四点にお分けになりましたが、四点相関しておりますから、総合的にお答えしたいと思います。  まず第一に、先ほど来るる申し上げておりますように、今日ただいま政府がどういうふうに考えているかということを具体的に申し上げるような段階でございませんので、政府の的確な態度を申し上げる段階でないので、国会決議に違反するようなことは私どもとしてはしたくない、あるいはこれから申し上げますことがその角度からどういう御批判を受けるかわかりませんが、これはまだ政府としてのまとまった見解ではないということをまず前提にさせていただきたいと思います。  一般論として先ほど来いろいろ御質疑があり、お答えもいたしましたけれども、率直に申しまして非常にこんがらがったことでございますから、先ほど私が申しましたように、双方が十分率直に意見交換ができるような場ができるということならば、暫時休憩と申しましょうか、場持ちをするということも、こういうこんがらがった場合には、一般論としての問題の取り扱いとしてあるいは一つの方法として考えられるのではなかろうかということが、宮澤君がくしくも羽田の飛行場で漏らしました一つの感懐ではなかろうかと私考えます。  しかし、一般論としてそういうとりあえずの妥結の方法論はあると私は思うのですけれども、ここがむずかしいところで、これが繊維の問題であり、そしてLTAという不幸なる実績を持っておりますだけに、われわれとしても、かりに暫時休憩という考え方があるにしても、その休憩後においてどうなるのか。直ちに本会議が開けることを何らかの形で保証をとっておかなければ、休憩の連続ではいじめられっぱなしということに相なるということを、私は、本件が、繊維問題であり、かつ、にがい経験を持ちます問題でありますだけに、そこのところが非常に問題であろうと思います。また、そこのけじめがはっきりするかしないかが、私は、終局的に国会の御決議の線に沿い得るかどうかということに関連してくるのではないかと思います。  同時に、たまたま通産大臣が、やはり羽田飛行場で、ガットにつなぐというようなことばをたしか使っておったかと思いますけれども、これは結局多数国間できめなければならない性格の問題である。これはやはり一つの国会の御決議の線に沿う考え方を言っておるのではないかと思います。  そういうことは、先ほどお断わり申し上げましたように、一つの考え方であるかもしれない。しかし、まだ、こうこういう考え方できめていくとかいけそうだということではございませんで、私といたしましても、先ほど申しましたように、少なくとも昨年五月だいぶ議論をいたしましてから以降、私は、ものの考え方の筋目と過去の経緯はよくわきまえておるつもりでございますから、きょうのこの委員会での御意見も、私も非常に力づけられ、激励をいただいたわけでございまして、こういうことを十分頭に入れて、必要の場合においては私自身といたしましても十分の努力をしてまいりたいと思っております。
  71. 加藤清二

    加藤(清)委員 釈迦に説法をいたしました非礼をお許し願いたいと存じます。  与えられた時間が終わりそうですから、最後に申し上げますが、一番私がふかしぎに思う点、ミルズ法案が通ったら困るということであるならば、それが通っては困るということを相手方に訴えるのが外務省の役目だと思います。下田さんのように先方の意見だけを日本へ伝えるということは、これは一方交通のような気がしてなりません。それを、一方交通だけ受け取って、あえて中小企業の倒産を横目に見つつ、相手方の言うこと、すなわち人質となってかの地にいる者の言うことを、本丸におられるところの城代家老や城主が人質の言うなりになって、外堀を埋めたり内堀を埋めたり、わが国民、中小企業の倒産を無視するということは、これは賢明な政治家のとらざるゆえんだと思います。  私は、あえて、かつてのおとどが、三軒や五軒の中小企業が倒れてもやむを得ぬと言った。それで首になった。あなたはどうだとは言いません。しかし、経済の転換期に倒れていったのはまだその趣旨に幾ぶんなりとも賛同ができますけれども政府みずからが通ってはいけないと思っている法律が通ったおかげでその犠牲を中小企業にしょわせたとなると、これはかなえの軽重を問われるだけではなくて、歴史的に非難を浴びなければならぬことになるのではないかと懸念をするわけでございます。  大臣、かつて無理なゴリ押しをして腹を切られた犬養という大臣がおわしました。その轍を踏むことは、彼氏は彼氏一人で済んだんでよろしい、しかし今度へたな轍を踏もうものならば、たいへんたくさんの連れ子と申しましょうか、あるいは追い死にとでも申しましょうか、たいへんな犠牲を日本がしょわされるのみならず、これはやがて、隣国、共同の仲間の輸出国やEECその他の諸国にも、たいへんな影響を及ぼすということを御検討の上、私は、あなたの善意、国益を守る、祖国、中小企業を守るところの態度を期待して、本日の質問を終わります。
  72. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いろいろと示唆のある御意見をまじえての御質問をいただいてありがとうございましたが、それだけにこちらが陳情を申し上げるわけですけれども、これは率直にいって二律背反、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、ほんとに努力の要るところでございます。どうかひとつ、賢明にしてかつ本件については特にあらゆる条件や環境を御承知加藤さんにおかれまして、この上とも御協力をいただくようにお願いをいたし、御答弁に補足をさせていただきます。
  73. 田中榮一

    田中委員長 中川嘉美君。
  74. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 新聞の報道によりますと、北ベトナム軍が九日にラオス南部のサラバンを占領した、このように伝えておりまして、インドシナの戦況というものはますます激化を見せておるわけであります。  きょうは、先日行なわれましたところのアジア会議につきまして伺いたいと思うのですが、この会議は、インドネシアの提唱によって開催されたわけでありますけれども、このたびのインドシナ問題解決の道として、幹事国である日本は今後どういう態度をもって進むか、できればその具体的な見通しについてまずお答えをいただきたいと思います。
  75. 愛知揆一

    愛知国務大臣 時間が制約されておりますときに長い御答弁を申し上げることは慎みますけれども、きわめて簡単に申し上げますと、アジア会議については、いろいろの沿革や背景がございまして、政府といたしましてもいろいろと配慮と苦心をいたしたつもりでございます。  あの会議に臨みます政府としての態度としては、特定の立場人たちといいますか国々あるいはその他の人たちを誹謗したり非難したり対決の場にしたくない、すべきではない。それから、かりにも集まったものがたとえば反共ブロックというような色彩を帯びたようなブロック化するような行動をとるべきでない、じみではあるがほんとうに純正なアジアの国民として平和を希求する立場に立って、その処理のじみちな努力をし合おう。イデオロギー的には反対の立場に立っておる国々も、領域も、この考え方ならばあえて反対はされない考え方であろう。いや、積極的に賛成を求め得る考え方にコンセンサスをつくっていきたいということで、私といたしましては会議に臨むいわば四原則を固く持して会議に臨みまして、会議場はもちろんその他の機会におきましても、十分その意のあるところを各国の人に訴えもし説得もいたしました。その結果、大体において私ども考えたような線に沿うた共同声明でコンセンサスができ上がりまして、私もほっといたしました。そしてそういった環境から、それではひとつあとのフォローアップをできるだけ主催国であったインドネシアと、それからマレーシアが中立的な立場と申しましょうか、ああいう御承知のような立場の国でございますから、これと日本とがいわば世話人になって、そしてそれぞれの代表者といいますか特使を指名して、そして共同決議に盛られたことを線に乗せるように努力し合いましょう、こういう結果になりましたから、その結論に従ってまた委嘱を受けた日本政府といたしましては法眼審議官を特使に指名いたしまして、すでに行動を開始いたしたわけでございます。そしてまず国連、それから一九五四年ジュネーブ協定共同議長国の英ソ両国政府、それからICCの三国、これらの国々、あるいはそれ以外の国々に対してもこの共同声明の線が実現できるようにと訴えの旅行^行脚を始めつつあるわけでございます。  共同声明の内容はもう御承知のところでございますからあえて申し上げませんが、一言にしていえばカンボジアについては民族自決ということでいってもらおう、外国軍隊は撤退してもらおう、そして中立、独立を維持する領土保全をやりたい。それには一九五四年の協定の線に戻ること、バンドン会議の精神によって処理すること、これが中心でございますから、この考え方が実現できるようにということで、とにかく誠実に謙虚にひとつ関係各国に訴えようということをただいま始めているわけでございます。
  76. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 御答弁によりますとたいへんに慎重にこのたびの会議に臨まれたように感じますけれども、具体的に日本は今後の方針としてソ連の説得に全力をあげることだと思うわけですけれども政府は、はたしてソ連がカンボジアあるいはベトナム問題でアジア会議参加国の側に有利な行動をとってくると思われますかどうですか、この点について伺いたいと思います。
  77. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは相手国がどういう態度に出るかということの予測よりも、こちらの誠意と努力だと私は思います。実はソ連に非常な重点を置いているということは、イギリス、ソ連が共同議長国ですから、何と申しましても英ソ両国が一生懸命になってくれるということは、この考え方からいって当然中核になるわけでございます。イギリスは早々に現政府がこのやり方といいますか訴え方に対して積極的な好意を示しておりますけれども、英国は現に総選挙最中でございますから、次にいかなる政府ができるかわからぬので、総選挙後に三特使をお迎えしてじっくり御相談に応じたいと言っております。ソ連のほうは、このアジア会議というものに対してソ連政府として賛成はしかねたのだ、あるいはむしろ反対の空気があったのだということは率直に言っておりますが、しかしそういう方々がおいでになれば、まあお目にかかりましょうというところまでにはいっているように私は思います。それで具体的な日程ももうでき上がりつつありますし、まず何はともあれ、国連が国際機関の中心でございますから、国連事務総長にまず最初に訴えるわけです。  お尋ねは、ソ連が一体どういう態度をとるか、これはこれからでなければわかりません。あらかじめ、先ほど申しましたように、この会議は特定の国々を相手に意識したりすることはもう絶対にやらない、どこの国にも呼びかけて純正な平和の呼びかけをしたいというわけでございますから、これからほんとうに謙虚な、誠実な努力を三国がし、あるいはその他の十一カ国ももちろんでございますけれども、そういう方向で進んでまいりたいと思っております。
  78. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ただいまの答弁確認のようになりますけれども、中国はシアヌークの民族統一政府を支持しているわけですけれども、先ほどの、ソ連の態度は現在のところ非常に不明確であって、大勢においては心情的にはシアヌークを支持しておるようでありますけれども現状ではロン・ノル政権を認めている、こういうことは言えると思います。  ところで、日本がアジア会議の結果、前に述べたとおりソ連と交渉を始めようとしておるわけですけれども、このようなソ連側の不明確な態度を考えたときに、この交渉への期待と見通しは簡単に判断し得ないものがあると思うのですが、この点、交渉への期待と見通し、まあ誠意と努力によってというお話もありましたけれども、簡潔でけっこうですが、どういうような期待と、また見通しを持っておられるか、この点お答えいただきたいと思います。
  79. 愛知揆一

    愛知国務大臣 率直にいって、これはただいまのお答えで尽きているわけでございまして、いまにわかにこうだろう、ああだろうと想定をこの席で申し上げることは差し控えたいと存じます。
  80. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは具体的なソ連との交渉でありますけれども政府は法眼審議官にどういうような訓令を与えておられるか、交渉に際して。この点を伺っておきたいと思います。
  81. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは共同声明の内容を他の二世話人国と協同して実現をするということが彼の職責でございます。
  82. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 シアヌーク民族統一政府はロン・ノル政権を三年以内に打倒しようと叫んでいるわけでございます。このシアヌーク等のロン・ノル政権打倒のための行動でございますけれども、こういった行動ははたして合法的であると思われますか、それとも違法であると、このように思われますか、まずその点を伺いたいと思います。
  83. 愛知揆一

    愛知国務大臣 共同声明の趣旨とするところは内政不干渉でございます。したがいまして、カンボジアの国内でいかなる政権が、まあ俗なことばで言えば人気が出てくるか、あるいはどういう形でこれが確立されるか、これはカンボジアの人たちの手にゆだねられるべきものである、これがジュネーブ協定の精神でございますから、これまた私がここでとやかく申すべきことではないと思います。要するに、カンボジアには外国軍隊が入るべきでない、入ったものは即時に撤退をみんなしてもらうべきものである、そして民族自決でやってもらうべきものである、これが私たち考え方であり、共同声明の考え方でございます。
  84. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 これに関連して伺いたいのですが、さっき申されたように三年以内ということになりますと、七二年、沖繩返還の時点においてもなおカンボジアの紛争が続いている、このように考えられるわけです。一九七三年になってしまう。したがって、共同声明を発表した当時とこのインドシナの情勢、問題そのものが非常に大きく変化しているわけでありますけれども、それでも七二年返還の実現に変更は来たさないかどうか、この点をここで確認をしておきたいのです。
  85. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちょっと、お尋ねの点について私も若干意見があるわけでございますが、そのカンボジアの国内にだれがどういうふうに何年以内に政権を樹立するといって軍事行動を起こすか起こさないかということは、これは日本政府としてとやかく言うべき問題でないと思います。とにかくカンボジア国内の政体といいますか、安泰ということはカンボジアの人たちの手でつくり上げらるべきものであり、これがすみやかに外国軍隊が撤退してそういうことができるような状態にしてもらいたいというのがアジア会議の共同声明の趣旨でございます。  同時に、今度は別の問題でございますが、沖繩返還は累次申し上げておりますように一九七二年返還ということで、報道も十分されておりますようにすでに返還の準備作業が両国政府間でむずかしいけれども着々と軌道に乗って具体的の話し合いが進んでおる、この事実で御承知を願いたいと思います。
  86. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ところでグアム・ドクトリンですけれども、一応表向きにはアジアはアジア人の手で解決しよう、こういっておりますけれどもアメリカはアジアから完全に手を引くといっているわけではない、むしろアジア人の背後においてこれをあやつろうというのが今後アメリカがとろうとする政策であって、それがグアム・ドクトリンの本質ではないか、このように思います。この意味でグアム・ドクトリンは決してアジアの平和を目的としたものではなくて、むしろアメリカ人の犠牲を最小限に食いとめようじゃないか、そういう目的があるんじゃないかと私は思いますけれども、この点はどうでしょうか。いまの御答弁の中でカンボジアの国内の問題である、内政問題だというお話がありましたけれども、しかしながらやはり極東の平和と安全というような点から見て、単にそのように簡単に済まされない極東の重大な問題がひっかかってくると思うのですが、その点いかがですか。
  87. 愛知揆一

    愛知国務大臣 アメリカのグアム・ドクトリンをどういうふうに理解されるか、これは人によって違うかと思いますが、日本として、たとえばアジア会議でいえば、他の十カ国と一緒にアジアの平和とそしてできるだけアジア人の手で、外国軍隊の手なんかは全部撤退してもらって、まともな平和をつくり上げようじゃないか、こういうコンセンサスができたわけでございまして、こういう点を事実そのままにすなおに見ていただきたいと私は思うのでございます。
  88. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 御答弁は一応わからないことはありませんけれども、どうもこういったグアム・ドクトリンによって近い将来といいますか、そういう限定はしなくてもいいと思いますが、日本がアジアの戦争のどろ沼にだんだん深入りしていくんじゃないか、こういう懸念がこちらとしてあるわけです。そうなると、いずれ日本の自衛隊派兵というものもしいられる、そういうような事態も出てくるのじゃないか、すなわち軍事援助要請も考えられるのではないか、こういう懸念があるわけです。政府はこのような懸念に対して——これが質問ではないので、むしろ最後のところの質問になるわけですけれども、どんな名目あるいはいかなる形式にせよ海外の派兵というものはない、このように断言できますかどうでしょうか。
  89. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはおことばを返すようですけれども、これはわれわれお互いにきめることではないのでしょうか。お互いにわれわれは自衛隊の海外派兵なんということは断じて考えない、あり得ざることだ、さようなことはやるべきでないというのが全日本国民のコンセンサスだと私は信じております。これがかりにどこの国から強制されたからといってそれに従うような日本国民であっていいんでしょうか。私はそれは日本国民自体がきめるべきことであって、断じてさようなことを考えるべきでないと思います。
  90. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 現在アメリカ——こういう質問になりますとまた非常に想定的なあれになりますけれども、カンボジア領にあった聖域をつぶすという目的でカンボジア領に侵入して、そして軍事行動というものをとっているわけであります。そうであるならば、向こう側から見ると、沖繩及び本土アメリカにとっての聖域ではないかという理屈も成り立つのではないか。これはもちろん理論的にそういうことがいえるのであって、アメリカの聖域としての沖繩及び日本本土にある聖域をつぶすために今度は向こうのほうから攻撃をしてくるということもあり得るのじゃないか、こういう考えがここに出てくるわけです。もっとも現在北ベトナムであるとかあるいは解放戦線側には、沖繩本土を攻撃するだけの手段を持っていない。したがってそういうような心配はもちろんないかもしれませんけれども、将来必要に応じてはそういう兵器の入手も可能ではないか、このように思います。こういう点を政府も十分考慮すべきではないかと思いますが、ひとつ政府の見解についてお答えをいただきたいと思います。
  91. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは率直にお答えするのですけれども政府としては全くそんなことはお答えするだけの対象にならない問題の設定ではないだろうかと考えます。沖繩がカンボジアにおける聖域同様だ、私はちょっといまそういうお尋ねを受けてとまどうくらいでございまして、私の頭の中にはさようなことは全然ございません。
  92. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いろいろと国民は、このたびの安保自動延長につきましても非常に安保の危険性ということに対していろいろな想定をして心配もし、ほんとうに間近に迫った六月二十三日をいろいろな角度から想定しているわけですけれども、そういった意味で、いまのような御答弁も出てくるかと思いますけれども、もう少し慎重に、それこそさっき大臣が言われたように誠意をもって、こういうような想定もあるのか、あるいはまたああいうような想定もあるのかということで一応御答弁をいただくということを要望いたしまして次の質問に移ります。  政府はインドシナにおける米国の行動を正当であり、そして北ベトナム解放戦線は不法な侵略であるという立場をとっているように私は思うのですけれども、この米国の正当性というものは、国際的にもあるいはまた国連でも確認されていないわけであります。ここで確認をしたいのでお尋ねしたいのですけれども政府アメリカの行動はあくまでも正当であり、北ベトナム及び解放戦線の行動というものは侵略である、このように見ておられますかどうですか、この辺をまずお答えいただきたいと思います。
  93. 愛知揆一

    愛知国務大臣 条約的、法律的な解明につきましては別にお答えすることにさせていただきたいと思いますけれども、政治的には政府の見解というものはベトナム戦争自体が早期に終結することを願望しているわけです。その考え方は、昨年十一月の日米共同声明でも両国の首脳が強くこれを願望しているということにも明らかにされているわけでございます。  そこで、たとえば四月三十日のニクソンのテレビの演説におきましても、カンボジアに対する軍事行動というのは、その大目的であるベトナム戦の終結に向かってアメリカ国民の願望にもこたえて云々とございますが、このいわゆる聖域にかねがね蟠居しておるところのベトコン軍をたたいておかなければ撤退ができない、あるいはこれを促進することができないということであるから、そういう大目的のため、あるいは全米国民だけではなくてわれわれもこれを心から望んでいるようなことの目的のためにやるのだとすれば、これは万やむを得ないことである。したがって六月中、今月中に、これはその後米政府が言明しているように撤退をすることを確信しておるわけでございますが、そういう点も含めまして、われわれといたしましてはベトナム戦争というようなものが終結して、そして平和的になるということを一日も早く実現できるようにということはあらゆる機会において呼びかけておるわけでございますし、それからこれは最近の何回かのアジア太平洋の諸国の人たちと集まりましても、これらの人たちの心からの願望であることは明らかに感知されるところでございます。したがって、まずカンボジアについて先ほど申しましたような方向で、何とか各国が一国でも多く同じ考え方に立って終結に対する努力を結集するということが望ましいし、ぜひそういうことを実現したいということで働きかけを始めている、こういう次第でございます。
  94. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 御答弁として非常によくわかりましたけれども現実にはいわゆるインドシナ紛争というものはどんどん広がろうとしている。なるほどアメリカは撤退のための一つの手段としてやむを得ないという表現もありますけれども現実にはどんどん広がろうとしているこういう現実の問題をほんとうに真剣に見詰めて事に当たらなければならないんではないか、このように思います。こういう事態においては、日本はいずれにも加担をしない中立の立場であることのほうが正しいのではないか、このように思いますけれども、そこで日米安保体制のもとではそういう立場はとれないのかどうか、こういうことであります。こういう意味で、われわれは日米安保体制がほんとうにわが国にとって正しいものであるかどうかについて疑問を持たざるを得ない、こういうふうに考えるわけであります。この点に対する大臣の御見解を伺いたいと思います。
  95. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日米安保条約につきましてはもうしばしば申し上げておりますとおり、日本自身の安全の確保ということがもう第一義的で、そしてこの日本を含む極東の安全の確保ということがこの安保条約の目的になっているわけでございます。したがいまして、極東における平和の維持ということがどんどん具体的な芽が出てくればそれが一番望ましいことであって、そしてこれに巻き込まれるというか、極東に軍事的な行動が——いまお話がありました点は必ずしもぼくは客観的に正しい見方とは思いません。けれども、そういう懸念もありとすればインドシナ半島においての軍事情勢というものが南北ともにその気になって平定されるような努力がされることが望ましいし、日本としてもそれに徹底した努力をすべきではなかろうかと思います。安保条約を結んでおる日本としても、日本自身の安全がほしいから結んでいるのであり、極東においての平和安全というものが望ましいから結んでいるのでございますから、かような地域において現在以上に軍事的な紛争が続くということはできるだけ避けるように、この条約のもとにおいても十分日本がインドシナ半島において中立的な立場努力することはできるわけですし、現に私はアジア会議においては日本としての立場というものが相当確立された、この見解というものは明らかに表明されたと私はかように存じております。
  96. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 時間があまりありませんので、これは非常に残念ですけれども、次に沖繩毒ガス撤去——このことについては先ほど戸叶委員にもいろいろと御答弁がありましたので、問題をうんとしぼってしまいまして二、三伺いたいと思うのです。  先ほど戸叶委員からもお話があったように、米国自身がその製造した毒ガスの本国への撤去という問題、これを米国民が強硬に反対しているために持ち帰ることができない。いってみれば無期限に沖繩に置こうとするのは一体どういうことなんだろうか、これは理解に苦しまざるを得ない現状であります。米国人がいやがるものを外国に置こうという考え方は、要するに米国人自身被害を受けないならばそれでいいんだ。そこには何か非常に残念でありますけれども、人種的な差別問題すら感じざるを得ない、このように思うのですが、この点、大臣はどのように感じていらっしゃいますか。
  97. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは先ほど申しましたように、まことにごもっともな御意見で、私も全くそれと憂いをともにいたしますからこそ、アメリカに対しては手を尽くして早急の撤去を要請しているわけでございます。先ほど申しましたように、私はアメリカ側としても公式に何回にもわたって早期撤去を年来公約をいたしておりますから、アメリカ政府としても非常に苦慮しているのだろうと想像されるわけで、先ほども戸叶さんにお答えいたしましたように、けさの時点でいつ撤去するということは残念ながら、まことに申しわけないが明示できないけれども、積極的にあらゆる努力をいたしております、ある報道によりますと、どこそこの地域に移転するということはもう絶望的になったんだというような報道もあるけれども、そういうことはないので、そこをも含めて早期に持っていくように積極的な努力を展開しておるのであるということをけさも言っているような状況でございまして、なお一そう私としては努力の限りを尽くして一刻もすみやかに御安心を願いたいと思っております。
  98. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私がお聞きしましたのは、非常に残念だけれどもということで、アメリカが人種的に、何となく自分たちさえよければそれでいいんだ、こういうふうに感じられるわけでありまして、大臣、その点どのようにお考えに相なるか、これが質問であります。
  99. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それはただいまも申しましたように、まことにそのお考えはごもっともだということを申し上げているわけです。つまり沖繩の方あるいはあなたをも含めて日本人がそういうふうに考えるのももっともである、したがって政府といたしましてはアメリカとの間の公約の履行を一日も早く迫ることがアメリカのためにもなる、かような考え方に立脚しているわけでございます。
  100. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 毒ガスでもう一つだけお聞きしたいのですが、沖繩にある毒ガスを無毒化して処分する、このようにアメリカは言っております。現実的にそういうものがはたして可能かどうか、よしんば可能であっても沖繩で無毒化処理をしないで、むしろ米国内で処理すればいいんじゃないか、このように思うわけですけれども、この点はどうでしょうか。ついでにお聞きしておきますが、それではこの処理に絶対に危険がないという保証があるかどうか。もう一つは、もしそんなに簡単に処理できるのであれば、これはもうどうして米国で処理しないのか、こんなふうにも考えを発展させざるを得ないと思いますけれども、この辺の点についてひとつ御回答願いたいと思います。
  101. 愛知揆一

    愛知国務大臣 昨年来米政府日本政府に対して公約をいたしておりますことは、沖繩からの撤去でございますから、撤去以外に私は何も考えないで、一日もすみやかに撤去を迫り、実行させることにある、かように考えております。
  102. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 次に、沖繩において起こった最近の暴行事件で、これも少しばかり質問したいのですが、まずいままでに沖繩において婦女暴行事件及びそれに関連するところの傷害事件、こういったものが何件くらいあったか、これを伺うとともに、その処分が具体的に沖繩においてどのようになされてきたか、これをまず最初に伺いたいと思います。
  103. 東郷文彦

    東郷説明員 従来その種の事件が何件くらいあったか、私、ただいま資料を持っておりませんのでごかんべん願いたいのでございますが、米国当局もこの種の事件に対しては、法のもとに厳重に処分するという態度で臨んでおりまして、裁判も公開ということを原則としておるようでございます。いまの件数につきましては、ただいま資料を持っておりませんので御容赦願いたいと思います。
  104. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 最近もう新聞を開けば、沖繩のこの傷害事件、暴行事件が必ず目に飛び込んでくるわけです。そういった意味で、じゃはたしていままで何件くらいそういうような事件が起きてきたのか、どのような処置をされてきたのかくらいはひとつぜひともつかんでおいていただきたい、このように思います。  軍法によりますと、婦女暴行事件は十五年の刑でありますけれども、今回の沖繩の高校生の暴行事件、これは被害者の少女には何らの過失もない。むしろその動機及びその手口の凶悪さからいたしまして、情状酌量する余地は全くない。むしろ最高刑の十五年以上が当然じゃないか、このように思うわけであります。今日まではこの種の犯罪について何となくうやむやになってしまってどういうふうに処分されたかわからない。そのような不合理はこの際絶対に認めるわけにはいかないと思います。われわれは厳罰をもってこういった犯罪に対して臨むことを強く要望する次第でありますが、唯一のこの原因は、やはり琉球政府に裁判権あるいは警察権そして逮捕権等がない、これらの権限を異民族が持っているからじゃないか、このように思います。沖繩だけがこういった不合理が残されておるわけですけれども、これに対して政府はどのような態度で臨むか、施政権返還前にも少なくとも裁判権の返還をも要求するかまえがあるかどうか、この点について大臣に伺いたいと思います。
  105. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私はたいへん残念で、たいへん遺憾な問題ですけれども、とにかくこれはやはり一九七二年ということですが、一九七二年のなるべくすみやかな機会に施政権が返還されるということに、ほんとうに努力を集中してまいりたいと思います。そうなれば一切が本土並みになるのでございますから。それから施政権ということになりますと、裁判権それ自体ということは率直に言って非常にむずかしいことではないかと思います。そこで警察権という行政権のほうの関係におきましては、できるだけ返還前におきましても、運用の上にくふうを加えまして、日本側が相当の権限といいますか、運用上の裁量ができ得るようにいたしたい、こういう基本的な考え方でまいりたいと思っております。
  106. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 聞くところによりますと、沖繩の施政権返還に関連して約一千くらいの関連法案があるということを聞いているのですが、この点どうでしょうか。実際そのくらいの数にのぼるのでしょうか、この点をまず伺いたいと思います。
  107. 愛知揆一

    愛知国務大臣 事実そのとおりでございます。
  108. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 返還協定も、それから返還に付随する多くの協定あるいは議定書等があると思いますが、それらの数は大体でけっこうですが、どのくらいになりますか。そしてこれらを国会審議する場合に政府の意向としてどのような方法を望んでおられるか、いろいろなケースが考えられると思います。たとえば議定書だとか法律案を一括して外務委員会に付託する、あるいは議定書は外務委員会、そして他の法律案はそれぞれの所管の常任委員会に、あるいは諸協定、法律案を一括して沖繩・北方問題の特別委員会に付託する、あるいはもう一つの行き方としては、新しく特別委員会をつくってしまう、これをこの特別委員会に付託する。いろいろあると思うのですが、いまお聞きしたいのは、政府の意向として、どのように考えておられるか、この点をさっきの件数とあわせてお答えいただきたいと思います。
  109. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一口に申しますれば、これは国会でおきめいただくことでありますから、政府側から何ら御希望申し上げる筋合いのものではないと思います。法律あるいは政令のものもございましょうけれども、やはり法律関係が千件をこすことは確実ではないかと思いますが、これはやはり立法技術上の問題もございますから、なるべくこれをくくりまして、御審議を願う案件としては、件数を減らすことも、これは可能だとは思いますが、実態的には相当多くの件数になると思います。これはそれぞれが何々法中一部改正法律案というような形になるものが、少なくとも実質的には相当大部分がそういうものだと思います。返還協定、それから議定書というようなものは条文としては、これはこれからのことですから、私がそう簡単に申し上げるわけにいきませんが、そんなにたくさんの長々とした条文ではないのではないかと思います。もちろん奄美の返還協定などとは性質は同じであっても、年数も長いし、人口も比較にならず多いし、あるいは土地、資産、事業あるいはその他基地関係なんかも比べものにならず多うございますから、実質的にいろいろと御審議を願う問題は多々ありますけれども、返還協定として、そんなに百条も二百条もというような筋合いのものではないと私は思います。これは当然国会の御審議をいただくものですし、いままでの慣行から言えば、特別の委員会ができない限りは、外務委員会で御審議を願うのがまあ普通ではないかと思いますけれども、これはあくまで国会でおきめいただくことである、かように存じております。
  110. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは締めくくりといたしまして、伺いたいのですが、七二年返還を目ざして現在どのような交渉段階になっているか、この点について時間があれば詳しく伺いたいと思ったのですが、できればまた次の沖繩のほうの特別委員会でもお聞きしてみたいと思います。  いまここで最後にお聞きしたいことは、七二年前半の返還がはたしてほんとうに可能かどうか、前にも伺ったとおり、インドシナ半島の戦争というものが平和ではなくても、むしろ激化の徴候を見せているわけでありまして、インドシナ半島ばかりではなくて、よしんば東南アジアの全域に戦乱が拡大するような事態になっても、沖繩返還は七二年に間違いないかどうか、非常にくどいようでありますけれども、ここでいま一度政府の意向を確認しておきたいと思います。これでもって私の質問を終わりたいと思います。
  111. 愛知揆一

    愛知国務大臣 返還協定、それに関連するいろいろの事項については、先般もアメリカ大使と相談をいたしましたが、促進をいたしますために、とにかく毎月一回は大臣、大使がしばしば定期協議をやって、そして専門的な部会、事実上は部会のようなものに——もう現にやっておりますけれども、たとえば財政上の問題とか、あるいは防衛上の問題とか、あるいは返還協定それ自体の問題としても、細部にわたる問題とか、もう多面にわたって作業を展開して、それを大臣、大使の協議において締めくくったり促進をしたり、あるいは調整をしたりするということで、どんどんわき目も振らずにやってまいるということに合意ができております。このことは何べんも申し上げているように、日米共同声明で沖繩返還については一九七二年中に返還が約束されたのでございますから、わき目も振らずにやることが私はよろしいと思うのです。これに迷いを生じてはいけないと思うのです。ただいまの御質疑は御質疑でございますから、御意見ではないと思いますけれども、聞きようによっては、日本の内部から一九七二年よりもおくれてもいいんだなどというような、かりにもムードが出ることは、ひとつ絶対に避けたい。一九七二年と約束されたからには、もう一九七二年早々に実行ができるということに、ひとつ政府を御鞭撻願いたいと思うのであります。政府におきましては、天地が壊滅するというような事件でも世界じゅうで起こればともかく、さようなことは予想もされないことですから、一九七二年返還ということには絶対一〇〇%の確信と、そしてアメリカ政府との公約の上に立って、この道をばく進してまいるべきである。かように存じております。
  112. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 最後に一言だけ。  確かにいまおっしゃられたとおり、そうなればそれに越したことはもちろんないわけでありますけれども、新聞等によれば、沖繩基地の機能が非常に拡大強化、そういったこともいわれているので、先ほどおっしゃった迷いが多過ぎるのではないかという気もいたします。そういった意味で、ただいまの答弁をむしろまともに受けて、七二年核抜き本土並み返還は絶対間違いない。このように大臣答弁を理解いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  113. 田中榮一

  114. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 時間がないので一言だけお願いしたいと思います。  先月末に発生をいたしましたペルーの大地震についてまとめてお伺いをしますので、まとめて御答弁を願いたいと思うのです。発生後のニュースはいろいろ伝わってきておるわけでございますが、わが国といたしまして、時を移さず天皇陛下からも見舞い電報、また外務大臣、また国民の名での見舞い電報等が打たれたわけでございますけれども、私ども日本が関東大震災という非常な災害にあったということだけではなしに、このたびのペルーの災害については、深いいろいろな誠意が寄せられていることはわかるわけでございますけれども、具体的に日本政府から二万ドルの援助金が贈られた。アメリカから一千万ドル、といいますと、三十六億円でございますか、援助がペルーに対して行なわれているのに対しまして、わが国の二万ドルという援助金は、いささか額が少ないのではないか、こういう懸念を持つわけなんですが、第一の御質問は、こういった諸外国の災害に対する日本政府の援助という問題につきまして、本年のビアフラの問題は例外としましても、いままでの外務省の統計をずっと見てまいりますと、一九六八年九月のイランの震災のときに同じく二万ドルの援助が行なわれている。このたびのペルーの震災は、イランとは比較にならないほど大きいわけでございますが、こういった額がどのような経過をたどってきめられるのか、そういう点を第一点お伺いいたしたいと思います。  また、ペルーとの友好商社五社が集まって一万ドルの援助金の申請を申し出ている。また万博等におきましても、現在約二百万程度の援助金が募られておる。またペルーと日本との友好関係を見てまいりますと、この十年間、向こうの政府日本国には非常に友好の姿勢を保っておりますし、日系の方が約六万人、ブラジルに次いで二番目の大きな比率を占めておる。またペルーの鉱産物等、日本にとっては非常に経済的にも有効な資源が多い相手国でございますが、まとめてこの二万ドルで終わってしまうのか、それとも今後の政府の援助計画等がございましたらこの際伺っておきたい、このように思うわけでございます。私の個人的な見解でございますけれども、いま値段の問題で盛んに話題になっておりますお米なんかはこの際どんどん贈与すべきではないか、このように思いますが、この点、まとめて二点お願いいたしたいと思います。
  115. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ペルーの地震についてはこの機会に御報告をいたしたいと思いますけれども、五月三十一日リマ市北方三百五十キロメートルの地点を震源地として、震源地付近震度八の非常に強度の地震があったのであります。関東大地震は震度七・九といわれておりますから、これ以上の強度の地震でありました。死者、罹災者等につきましても、まだ確実な数字というものが公電としてもはっきりしていないぐらい甚大な被害のようでございます。政府としては、とりあえずただいま御質疑がございましたように二万ドルを支出をいたしましたが、これは報償費から支出をいたしたわけでございます。ただいま御指摘がございましたように、これは従来のこうした外国の災害に対する見舞い金とすれば最高額でございますし、それから民間側からの拠出も二万ドルをこえ、さらに民間からの拠出も増加する見込みでございます。しかし、現地からの報告や意見具申もございますし、それから特にこれもお尋ねがございましたが、日系人の被害がもし非常に甚大であったような場合におきましても、特に措置検討する必要があるのではなかろうかと考えております。それからこの報償費からの二万ドルのほかに、現に予備費から米によるところのお見舞い、救済ということも外務省としては考えておるわけでございまして、大蔵省に現在相談をいたしておるところでございます。
  116. 田中榮一

    田中委員長 曽祢益君。
  117. 曾禰益

    ○曽祢委員 最初に、外務大臣安保問題について伺いたいと思います。  戸叶委員が御指摘になったように、二十二日にはいよいよ安保条約の固定期限が一応切れるわけで、以後はいわゆる一年間の予告で、これがやめようと思えばやめられる時代になるわけでございます。この問題について、実は本日ももう少し本格的ながっちりした論議が行なわれなければならなかったと思うのですけれども、もう時間がございません。  私は、この間、先般終わりました国会のちょうど終わりのころ、五月七日の本会議における総理大臣に対する私の質問の中でこういうことを申し上げたわけであります。どうもこの日米安保に対する評価については国論が必ずしも一致してない、しかしながら決して総理大臣がこの議会における所信表明なんかで言われているように、総選挙の結果示された国民の判決は、安保即時破棄あるいは自衛隊解散論を否定したものとはわれわれも考えているけれども、総理の考えておられるように、現行安保のままいわゆる自動延長、すなわち実質的には長期固定化するという方向に国民の総選挙における判決が下ったというような安易な見方をしておられるのは、これは非常に間違いではないか。確かに総選挙における国民の審判は、あるいは即時無条件廃棄あるいは非武装中立ということに対する支持は非常に少なかったということが表決上いえると思うけれども、必ずしもそのことは自民党の自然延長あるいは長期固定ということに対する賛意ととるべきではない。即時破棄ではないけれども、そこに安保のメリットは認めておっても、やはりそれは安保には欠点がある。したがって、安保の即時破棄ではない議論の中に、やはり改定論があるしあるいは段階的解消論もあるのだ、こういうふうにとるのがむしろ正しい意見ではないか。総理のお考え方はあまりにも自己過信みたいな押しつけがましい態度でいけないということを申し上げた次第ですが、何しろ本会議の質問ですから、これに対する総理の答弁もまことに砂をかむようないんぎん無礼の、まるでイグザンプルみたいな答弁でございました。非常にそれは残念だと思う。「政府は、現行の日米安保体制を今後とも堅持する方針について、広範な国民合意を得ていると確信しております。」もう単なるすれ違いに終わったようなことでありますが、しかしちょうどこのあとで、五月三十一日に有力な新聞の世論調査の結果が出ております。安保問題。私は、これは言うならば非常に私の考えを裏づけている結果ではないかと思うのです。なるほど、一応この安保の自動継続に対しては不満だというのが二七・六%、それからわからぬ、DK、これが三〇・五%、それで四一・九%は一応安保自動継続にまあまあ賛成だ、満足だという結果が出た、こうなっている。ところがそれは一皮むいてみると、じゃこれからの安保についてはどういうふうに評価しているのかというと、実にはっきり安保に対する不安ということがあらわれている。第一、この期限を固定して継続すべしというこれからの安保のあり方、これに対しては一四・四%が賛成、それから固定をしないけれどもいまのままの自動継続がいいというのが一〇・〇%。すなわち簡単にいえば、現状のままあるいは長期固定の路線は合わせて二四・四%にすぎない。しかるに一方においては、軍事的な内容を期限を限って、あるいは期限を限らなくても、とにかく逐次薄めていけという意見が合わせて三一%、そして廃棄すべしというのが一一・六%。言うならば、中正な意見といいますか、自然継続という穏やかなような形をとりながら、現在のまま長期固定という意見はやはり非常にこの統計から見ても少ないのですね。二四・四%。やはり何らかの意味内容を改定し、そして軍事的色彩を薄めていけというような改定論が三一%、廃棄論は一一・六%。大体私はこういうのが——これは一つの世論調査の結果ではございますけれども、私は非常に典型的で、方向は決して誤ってないのではないかと思うのですが、まず、この世論調査の結果についての外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  118. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一般論として、世論調査というものは非常に価値のあるものだと私は思います。と同時に、調査の方法あるいは命題の出し方等によっても相当の振幅があるものと思いますけれども、しかし、いま曽祢さんのおあげになりましたような角度から見て、私といたしましては、十分それらの世論の動向というものは常に謙虚に分析してまいりたい、かように存じております。
  119. 曾禰益

    ○曽祢委員 外務大臣の態度並びにいまのお答えは、非常にまじめで、私はいいと思うのです。ここに不在だから、不在者は答弁できないし、別に総理大臣にかみつくわけではありませんけれども、どうも総理は思いつきが非常に多くて、せんだって行なわれた新聞記者諸君と総理との特別会見においては、そんな長期固定するのはどのくらいの間なんだと聞いたら、それに対して二、三年はこのままだろう、むしろ与えた感じは、やはり七〇年の早い時期には、何らかの意味の改定——これは必ずしも廃棄とは、常識的に私ども考えられない。何か近くやはり改定等の予想をしているとはっきり示唆したがごとき発言があった。そうしてそれがしばらくすると、今度は、これも新聞の伝うるところですけれども、総理大臣は、アメリカ大使をそのために呼んだかどうか知らないけれどもアメリカ大使との会談において、いや、そんなことはない、要するに長期にわたって現行のまま継続というような趣旨だという弁解をしているというのですね。先ほど同僚委員の御質問に対して外務大臣は、これはどうせ二十二日のころの時点において政府の声明をお出しになるそうですが、私は、この問題は、二十二日から二十三日への移りかわりは、一つの画期的な時期だとは思うけれども、そこの時点だけでゲームセットになるというような問題ではありません。時期はいつまでかわかりませんけれども、やはり七〇年代にわたっての、しかも七〇年代の早い時期に、かなり安保条約の持っている内容というようなものについて前向きで検討を加えていくことが必要ではないかというふうに思うのです。ですから、そういうことも総理は考えておられるのか。総理のこの間の新聞記者会見における発言と、それからその後のアメリカ側に対する訂正と認められる分についても、この点は真意はどういうことなのか。外務大臣は、こういうことについてどうお考えなのか。またこの二十二日の政府声明というものは、どういう骨格においてできるのか。やはり政府としては、こういったような世論の動向、コンセンサスというものを求め、そういうような弾力的な形でいくのかどうか、こういう点をひとつお答え願いたいと思います。
  120. 愛知揆一

    愛知国務大臣 二十二日か二十三日に大体政府声明と申しますか、内閣声明と申しますか、そういう形で、この時期に安保条約あるいは安保体制というものに対するいわば統一見解というものを明らかにすることが、私は適当だと考えまして、大体そういうことになるのではないかと思いますけれども、その案文等につきましては、現在準備中でございます。これは閣内の合意を必要といたしますので、その時期がまだちょっと先でございますから、いま申し上げる段階まで準備ができておりませんことを御了承いただきたいと思います。  それから、これから申し上げることは、したがって私の意見になると思いますけれども、私は実はこう考えております。安保条約は、条約自身としては十カ条で、これは、かなり簡潔にできているように私は思うのでございます。見方によりましては、そのうちの一、二の点について、一部に非常に御意見があることも、私承知いたしております。しかし全体として見れば、きわめて簡潔にできているものであって、むしろこれの今後における運用について——国際情勢もございましょうし、国内世論の動向もいろいろございましょうが、先ほど申しましたように、謙虚に世論に耳をかしながら、安保条約を私的に理解をいたしますれば、日本の安全に対するディターレントとしての効果が維持できるように運用上においてはいろいろの配慮が加えられてしかるべきではないだろうかと考えております。過去十年間におきましても、基地のあり方その他におきましても、相当程度に改善がされたと私は思っておりますが、これからの将来に対しましても、そういう気持ちで運用上に十分適切な配慮を加えていったらいいのではないか。条約についての改正とかあるいは修正とかいうことは、ただいまのところ改定を加えるということは不適当ではないか、私はかように考えております。
  121. 曾禰益

    ○曽祢委員 その改定についての意見は、これは並行線でやむを得ないと思いますが、実際の運用といいますか、基地については、やはり体制としては縮小、整理という方向がかなり急ピッチで進められるし、それは正しいと思います。ですから、第七艦隊の寄港、修理——その船舶の修理は、必ずしもアメリカが直接やらなくても、日本側の民間が修理してやってもいいというようなことはずいぶん考えられると思うのです。そうすれば横須賀の基地なんかというものは、実質的に非常に変わってくる。それで横田とか三沢なんか、向こうがかなり使うことがあると思うのですが、しかし、それを日本の自衛隊に移管するというような形も考えられていいのではないか。そういったような点たけでも、もっと何か——いままで安保条約に触れることがタブーであるかのごとききらいが、国務省及び外務省になかったとは限らない。ですから、そういう意味で、それらの点も、安保条約でなくても、あるいは地位協定の問題を含めて、さらには運用上の問題でも、やはり時勢に応じた基地のあり方等について、なるべく基地公害を減らすというようなことについても、どんどんやっていかなければならぬと思うのですが、これについては、別に回答は求めません。  それから、先ほどちょっと気になったことで、当面、返還前でも、沖繩における警察権だけは何かこっちにというような考えでおられるようなお話でしたけれども、これは裁判権よりは、あるいは楽かもしれませんが、しかし、はたして基地以外における、公務以外のアメリカ軍人の犯罪について、琉球政府側への警察権移譲をほんとうに考えておられるか、また、それができるということなのかどうか、その点もひとつ明確にお答えを願いたいと思います。
  122. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申しましたように、これは願望とは違うわけで、まことにこの点はある意味では残念なことでありますけれども、裁判権の即時移管というようなことになれば、もう返還の実体が実現することになるというような性質の問題であると思いますので、これはなかなか望むべくもないことだと考えております。ただ警察権の運用その他については、くふうの余地があるのではなかろうかと、これは私の願望を含めて申したのでございまして、具体的な研究あるいは関係方面との協議の結果一つの線が出ているというところまでは、まだいっておりません。これは率直に申し上げます。願望を主として申し上げただけでございます。
  123. 曾禰益

    ○曽祢委員 次にこれも同僚委員が触れられたことですけれども、重要な緊急な今日の問題ですから、繊維関係交渉についてお伺いしたいと思います。  去る国会のときにも私はこういうことを申し上げたつもりです。この繊維関係の日米の態度は初めから食い違いがあったようだ。つまりアメリカはこれを非常に政治的にとらえた。大統領選挙の公約という形で、まず政治的にとらえた。日本側はきわめて具体的、現実的に、いわゆる経済的にとらえた。しかも日本側の経済的にとらえたのが正しいのであって、前々から、ことに綿布関係のいわゆる自主規制から始まる長期協定に引きずり込まれた、そういったような過去の経験からいっても、非常にがっちりといかなきゃいけないというようなとらえ方の相違がある。かてて加えて日本側は国会において、被害のないところにコントロールはないし、こういう問題はガットの場でやらなければいかぬ、包括的規制なんかとんでもないというはっきりしたワクをはめられている。したがって、私は昨年のちょうどいまごろの段階では外務大臣にワシントンでたまたまお目にかかったときにも、あの段階では繊維の規制法案は、まずおどしであって、悪いけれども、スタンズ長官のおどしに乗る必要はない。しかしいまやアメリカの、ことしは言うまでもなく選挙の年でございます。下院の改選の年であるから、そういったときには何とかこういったような選挙区向けの法案が通る可能性と危険性は非常に大きいことは否定できないと思う。そういう場合にアメリカのほうが不法なというか、乱暴な制限の法案を通しちまって、それでアメリカ自身がたたかれればいいじゃないか、これは私はそういうことでいいんなら外交なんか要らないと思うのですね、それでいいんなら。それは確かにそれも一つのみせしめになるかもしれない。そうでなくて、しかし同時にそのことは、日本側にもやはり被害がないわけじゃないし、ことにアジアの諸国で日本側ががんばってくれたうちは賛成、くっついてくるけれども日本側の態度がアメリカの法案をつくらしたことになると、今度は恨みが日本側にこないとも限らない。いろいろなことで、そういうことが必ずしもいいのではない。かといって、どうしたならば国会の三原則を貫くのか、また非常に不信感が強い。しかしこれは無理もないと思うのですね。日本側においても、業者はそう思っていたけれども、少なくとも総理大臣のワシントンにおける十一月の態度等を見ていると、そのレベルでは日本側も政治的に、悪く言えば繊維となわを取りかえっこしたのじゃないかというような、これは不幸なるざれ言が出るような、やはり政治的に自分らだけが、繊維関係者だけが沖繩問題等の犠牲をしいられるのじゃないかという不信感がある。この不信感をどういうふうに克服していくのか、これは私は非常にむずかしい問題だと思います。むずかしいけれども、ここにこそ日本の外交のいわゆる腕を示す一番の正念場だと思うのです。激励の意味で申し上げているのですけれども、こまかいことは要りませんけれども、ほんとうにやむを得なければ一時一年間くらいの、とにかく休戦というか、短い期間の包括規制みたいなことを認めてもガットの場でりっぱなあれをつくる。選択的な規制をやるという案をひとつどうしてもまとめて、アメリカもそれで納得させる、業界にも誠意を込めてこれを納得するように努力する気持ちであるのかないのか。一体、もうこの辺で外務大臣がどうなんだ、アメリカはやるならひとつ輸入規制をやってみろ、ミルズ法案を通してみろというのが、私はそれは必ずしも外務大臣としていい態度じゃないと思うのですね。どういう基本的な態度でおられるのか、ひとつお示しを願いたいと思います。
  124. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この問題については、先ほど加藤さんの御質疑に対しましても、まあ歯切れが悪いようなことを申しましたが、言外に私の態度もまた申し上げたつもりでございます。  ただいま外交の先輩である曽祢さんから御激励のことばをいただきましてまことにありがたい次第でございまして、玉砕することが外交の真義ではない。先ほど申しましたように、二律背反のように見えて、率直に申しますと、せっちん詰めになっているようなかっこうでございます。しかしそのせっちん詰めを何とかして国益を守りながら、また正しいとわれわれが信ずる方向でアメリカの世論を微力ではありますけれども、啓発するということの最後の努力をするのが私に課せられた責務であると、かように承知をいたしまして、まあ何とかひとつ努力を重ねたい、かように存じております。
  125. 曾禰益

    ○曽祢委員 これ以上申し上げるのはどうかと思うのですけれども、もう一つだけ、ガットの場で、これがちょっと私は気にかかるのですけれども、ジュネーブに行かれて、宮澤、これは御本人がおられないのですけれども、通産大臣が行かれてから何かガットのほうで、ガットから日本があんまりがんばっているためにアメリカのいわゆる輸入規制法案を成立させちまう、そういうことになるとガットに対して非常に大きなマイナスが起こる、それこそダメージが起こる、インジュリーが起こる。だから、日本に、日本よひとつこの辺でアメリカとも話をし、そうしてその結果ガットにものを持ってくるようにしてほしいというようなことがあって、何かそれが大義名分になって、悪く言えばアメリカに譲る、一時的包括規制くらいはやむを得ないじゃないか、それをやって、しかしガットのほうに持っていくということで解決したらどうだ、つまり妥協へのにしきの御旗を、ガット側からあまり日本がかたいことを言ってミルズ法案的なものを通されることは困るということをいわれたことを、まあ一つのよりどころにしているような感じがあるのじゃないですか。私はそれはちょっと納得できないのですね。われわれ自身がガット精神を守りたいということは、これはいいですけれども、ガットからいわれたということはおかしいと思うのです。その点はどうでしょう。
  126. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは宮澤君の弁解のようになるかと思いますけれども、御承知のようにガットのロング局長とだいぶいろいろ意見の交換を、一回、二回でなくかわしたようでございまして、その直後に日本へ帰ってきたものでありますから、そういう環境でのことばづかい等の上において、若干誤解を受ける点もあったのじゃないかと思いますが、その辺のところは賢明なる通産大臣も十分承知しておるつもりでございますし、またよけいなことかもしれませんが、私としてはこういう非常にむずかしい段階になってまいっておりますだけに、特に通産大臣との間には、水も漏らさぬ緊密な協力でこの窮境を打開いたしたい、かように存じておりますので、本日のお話につきましても、十分宮澤君にも伝えまして、建設的な御意見として十分意を体してまいりたいと思います。
  127. 曾禰益

    ○曽祢委員 言うまでもなく、中小企業はむろんそうですけれども、繊維産業に働く五十万以上の労働者の非常に関心を持っているところでありまするから、筋を立てながら、ひとつアメリカの説得につとめるという外交をしていただきたいと思います。  最後に、けさの、たしかNHKのニュースだったと思いますけれども、モスクワの消息通の見方として、コスイギン首相が近くやめるのではなかろうか。その理由として、コスイギン氏自身は、チェコスロバキア問題のときのハト派であったというところから、必ずしも党のほうとよくなかった。ことに、それよりも、これは最近、非常に目に余るくらいソ連の経済の行き詰まりがひどい。しかも、この行き詰まりたるや、いろいろな利潤導入方式とかいろいろやってみた結果、どうにもうまくいかない。その責任をとらされて、ただ単に首相のみならず、ポリトビューローのメンバーの地位も奪われるのではないか。本人が病気等を理由にやめるという形は、むろんとるのではありましょうけれども、ソ連の場合には、政策を転換するときには必ずどこかに犠牲の小羊を求めるのが、ああいう独裁体制の常のやり方のようですから、そんなところで、コスイギン首相の退陣というようなことがあるやに伝えられました。これは必ずしも、けさのニュースばかりではなくて、これは否定のニュースもその後、出ているようですけれども、イギリスの新聞なんかにも、そういうことが出ていて、必ずしも火のないところに出た煙じゃないと思うのですね。何かそれらのことについて、情報が外務省に入っておられるか、ちょっとその点を伺ってみたいと思うのです。
  128. 愛知揆一

    愛知国務大臣 こういう趣旨の問題でございますから、政府の公式のといいますか、情報としては、確たるものは入っておりません。同時に、しかし、何かこう、動きがあるやに想像されるような不確実情報とでも申しましょうか、そういうものはあるようにも見受けられるようでございます。  それから、なお、御質問以外になるかと思いますが、やはりソ連の経済の問題としては、生産性という問題について、非常に最近も熱心に検討されているようでございまして、もうすでに立たれたかと思いますけれども日本のその道の権威者といわれるような人たちにも、ソ連政府から招待がございまして、もうすでに出発されたかと思いますけれども日本の生産性ということについて、いろいろとまた、先方の謙虚な態度からいえば、日本側からもいろいろ教えてもらいたいというようなことで、一つの経済調査団のようなものが出発いたしましたようなこともございます。経済問題については、非常に熱心ないま再建の段階にあるということは、それらの点からも認識がされるように思います。
  129. 曾禰益

    ○曽祢委員 これで終わります。
  130. 田中榮一

    田中委員長 不破哲三君。
  131. 不破哲三

    ○不破委員 カンボジアの問題について、外相に伺いたいと思うのですけれども、先日開かれましたジャカルタ会議においての共同声明を読んでみますと、すべての外国軍隊がカンボジア領から撤退するということをカンボジア問題解決の一番のかなめといいますか、冒頭にうたってあります。ところが、この会議のあと、ジャカルタ会議に参加をしたいろいろな国の動きを見ますと、たとえば、南ベトナムのサイゴン政権は、あの会議の直後に、二十日でしたか、会議のコミュニケが発表された三日後に、新しい軍隊をカンボジアに投入しておりますし、二十八日には、南ベトナムとカンボジアのロン・ノル政権の間に、共同コミュニケが発表されて、引き続き、サイゴン政権の軍隊がカンボジア領内に問題の解決まで駐留するということが声明され、最近では、プノンペンに総司令部をつくるということが報道されております。  それと、同じ参加国であるタイ、この国がこのジャカルタ会議のあとに、義勇軍を派遣をする、そうしてカンボジアのロン・ノル政権の軍隊と共同で、海軍も派遣して、河川の防衛をやる、カンボジア領内で防衛をやる、こういうことも決定されたと伝えられています。  それからまた、この議長国になったインドネシアの動きも、たとえば、六月の二日には、国民協議会のスブハン副議長が記者会見で、共同平和維持軍をつくって、カンボジア領内に配置したい、その中には、台湾の国民政府の政権、それから、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、マレーシア、インドネシア、こういうジャカルタ会議の大部分の参加国からなる平和維持軍の提唱まで行なっております。  こういうふうな動きを見ますと、これは明らかにジャカルタ会議での、すべての外国軍隊がカンボジア領内から撤退するということを定めた共同声明からの違反ではないかと思うのですが、その点について外相の見解を伺いたいと思います。
  132. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほどの御質問にもお答えいたしましたが、この十一の国が集まりまして、コンセンサスをつくり上げる。それから、もう時間の関係もございますから詳しくは申し上げませんが、日本会議に臨むいわば私の四原則を基調にした主張に、結果において、私は、コンセンサスができたと思います。しかし、それなりに各国それぞれの苦労とくふうが私は要ったと想像されるわけでございまして、特に、地理的な関係などから申しまして、やはり自国の防衛と申しますか、安全と申しますか、そういうところで、やはりそれぞれ特殊の立場があるようでございまして、このアジア会議のコンセンサスに従いながら、しかし、自分のところの安全、防衛ということについて特殊の配慮ということについてずいぶん苦心をそれぞれの国が配慮をしているように私は見受けておるわけです。  ただ、たとえば、一つの例を申しますと、タイに例をとりますと、当初、タイの閣議あるいはタイの総理大臣がカンボジア問題について発言をしたことが、実質上、かなり訂正されておりますですね。そして現実に行なわれたところは、現在におきましては、カンボジア籍あるいはカンボジアの系統のタイの人が、自分たちの自発的の意図によってカンボジアの救援におもむくというような趣旨のものについて義勇隊の組織というものが認められたという程度で、当初伝えられたところよりも、私から見れば、筋を通したようなかっこうにまとまったように思いますし、それから、それらに対して、外国であるところのタイ国政府から武器弾薬その他の装備というものはしない、それはカンボジアのやることだというふうな配慮も加えられている。  それから、もう一つは、いまさら申し上げるまでもございませんが、カンボジアとベトナムとの関係では、いろいろもたもたして国交がなかった。ところが、そこへ虐待事件、虐殺事件なども起こった。ちょうど日本は利益代表国であるような立場から、前国会の終末でも御説明いたしましたように、実情を調査するための調査団を派遣するというようなことにも、日本政府としてはあっせんをいたしまして、人道的な立場からある程度の効果ができた。それに関連して、通商代表部的な性格のものを交換することができた、というようなそれぞれ特殊の経過なり事情なりというものがあることもこれは留意しなければならぬことではなかろうか、さように考えております。  私は結論として、アジア会議のせっかくまとめ上げたこのコンセンサス、しかも、それに従って先ほど申しました誠実に日本も世話人国として努力を始めているときでございますから、どうかしてこの趣旨が貫かれるように、ぜひそうなりたいと思います。  それからインドネシアの関係も、その情報は情報でございましょうけれども、さように具体的な事実が動いていることは私はないと思います。
  133. 不破哲三

    ○不破委員 タイの件にしましても、最初タイの首相が記者会見で発表したときから、装備はカンボジアを通じてアメリカから供与されるということを言明していた、それであとで訂正されたのが、形式は政府が直接招集する義勇軍ではなくて、政府は特別の便宜をはかるということで表に立たないというように形式を変えただけだと私は推察するわけですけれども、ともかくジャカルタ会議で、すべての外国軍隊がカンボジア領から撤退をするということを第一の目標に掲げながら、その会議に参加をした国々が実はそれを実行するつもりがない、特にアメリカが一緒に南ベトナムのサイゴン政権の軍隊をカンボジアに投入をしてそれで六月末に撤退するという約束をしながら、実は南ベトナムの軍隊だけはカンボジアに居残るということが前から問題になっていたわけですけれども、そのことが実はジャカルタ会議のあとずっと事実として確認をされてきている。つまりこれは、いま愛知外相が外に対してせっかくまとめ上げたコンセンサスだから、この線で努力をしたいと幾ら言われても、実は会議に参加をした国々がそれを実行するつもりがなくて、会議をやったあとでどんどん軍隊の派遣をきめる。そしていわばニクソン大統領自身がこの間の三日の演説で空軍部隊の支援活動をやるということを言明しているわけですから、実はそういうかっこうでカンボジア領内への外国軍隊の駐留といいますか軍事行動、これがもう引き続きジャカルタ会議の参加国を主体にしてやられることが明瞭になっている。その場合に、その決議をもって会議の参加国以外に対して努力を求めても、これは全く一つのから文句にしかならないのじゃないかというように考えるのですが、その点で、外国軍隊のすべての撤退ということに対して、外相がせっかくまとめられたコンセンサスと言われることについて、これを一体どうやってほんとうに実行しようとされているのか、その点を伺いたいと思うのです。
  134. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私は考え方やコミュニケの趣旨に御賛成はいただいていると思うのですけれども、それについては私が先ほど来申しておりますように、私はこれを対決の場にしてはいけない、そして事実についてはいろいろの見方もあろうけれども、それを他の立場に立って誹謗したり非難したりしていたのでは、いつまでたっても事は解決しないということを基本にして私は主張いたしました立場から申しましてあえて申しませんけれども、しかしこれは一方的な事実だけを申すのではやはり解決にはならないと思います。私は言うべきこともあるかもしれませんけれども、私としてはこの会議のコンセンサスが誠実に謙虚に実行されるような努力をひたむきにするということを申し上げるにとどめたいと思います。これはどちらの側に対しても私は強く主張したいところでございます。
  135. 不破哲三

    ○不破委員 そうなりますと、外国軍隊の撤退ということを会議はうたったけれども、実はこれを取りきめた会議の参加国自体が、外国軍隊の増強をはかっているという事態についても、日本政府としては何ら意思表示をするつもりもないし、ましてやこの会議の決定どおり、文面にあらわれた決定どおり、これを実行させる努力をするつもりもないということですか。
  136. 愛知揆一

    愛知国務大臣 率直にいいまして、それはたいへん意地の悪い御質問だと思います。私はそんなことは考えておりません。できるだけの努力は今後も続けます。私どもとしては外国軍隊が入ることはしかるべきことでないということを指導的立場に立って主張し、それに賛同を得たのでありますから、これはどちらの側に対しも好ましくないことは好ましくないということで努力をいたしております。
  137. 不破哲三

    ○不破委員 そうしますと五月十七日に共同声明が出されてから、たとえばわずか十一日あとに同じ会議のテーブルに着いたサイゴン政権が、問題解決まで引き続きサイゴンの軍隊をカンボジア領内に置くという共同声明をカンボジアとの間に結んだ。これは実は日本政府が文面どおり合意だと考えていたとすれば、裏切られたことになるわけですね。そのことについては、これは望ましくないとかいう意思表示をサイゴン政権にされたのでしょうか、それとも今後それをやるつもりがあるのでしょうか。
  138. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一々私は自国だけで、日本政府だけとしてやれることとやれないこととございますし、それから多くの国々と合意しながら共通の線に、ことばは悪いですけれども引っぱっていこうとしているわけでございますから、一々このことについてはこう言った、このことについてはこう言ったということはあえて申し上げることを差し控えたいと思います。
  139. 不破哲三

    ○不破委員 先ほどの、前の議論での御答弁では愛知外相は、一番大事なことはすべての外国軍隊の撤退だという趣旨のことを言われたと思うのです。ところが実際にはそれに反する事態が起こっても、しかも同じ共同声明の参加国の中から起こっても、それは一つ一つこまかい問題で一々あげつらうつもりはないというように言われるとすると、この共同声明というのは実は客観的にはごまかしではないか。アメリカと一緒にカンボジアに軍隊を送ったサイゴン政権の代表と同じ席で外国軍隊の撤退を宣言しよう。しかしその宣言をしたすぐ口の下からどんどん軍隊の増強が行なわれる。その看板をたてにして日本政府はこれから行動されるとしても、だれが見てもこれは国際的にも一種のごまかしになると思うのですね。そういう意味で私は今度のジャカルタ会議の非常に大きな問題点はそこのところにあるというように思うのです。  時間もありませんので次の点に進ませていただきますが、もう一つの問題は、先ほど外相が言われたカンボジアの中での政権の問題ですね。どちらの政権が将来人気を得ようが、そういうことについては内政問題として干渉したくないと外相は先ほど言われました。確かにいまカンボジアには、ロン・ノル政権成立というのはクーデターによって行なわれたもので、実際にロン・ノル政権とそれからシアヌーク前元首の指導する政権との二つの政権が現に存在をしていて、この政権の間に内戦が進んでいるという事態がだんだんはっきりしてきている。しかもこの問題は解決をしていない、その点が非常に大事だと思うのです。たとえば先日発表されたアメリカの上院外交委員会調査団の報告書でも、シアヌーク前元首が多くの農民の支持を得る可能性というものは否定できないということをアメリカ側調査報告それ自体がいっていますし、そしてまた最近の普通の新聞に伝えられているプノンペンあたりからの特派員の報告でも、ロン・ノル政権の言い分とプノンペンの一般のすべての見方とは全然違っている。ロン・ノル政権は事態を全部ベトナム側からの侵略として描いているけれども、実はロン・ノル政権が相手にしているのはカンボジアの反政府軍といいますかシアヌーク側の軍隊だという見方が非常に強いという報道もされています。こういう状態で、二つの政権の問題が解決されていないというのが現状だと思うのですけれども、この点について先日のジャカルタ会議はカンボジア政権についてはどういう態度をとられたのでしょうか。
  140. 愛知揆一

    愛知国務大臣 カンボジアについては共同声明に書かれているとおりでございまして、独立、中立、領土保全、内政不干渉、これが共同コミュニケに出ておるくらいでございますから、カンボジアの内政についての見方というものは申し上げるまでもないことだと思います。それからカンボジアの中で戦争状態が起こっているとして、これがあるいは観念的かもしれませんけれども、やはり外国軍隊が撤退するということになれば、ほんとうにこれが国内の問題としてカンボジアの国民によって処理ができると思いますけれども、単なる内戦じゃなくて外戦がカンボジア領内で行なわれているんだという見方もあるわけですから、そういう点を整理していくという意味からいっても、私は外国軍隊の撤退ということが非常に必要なことだと思います。  それから先ほどの御質疑に関連いたしますけれども、こういうふうに考えていただきたいと思いますが、もしアジア会議のようなものがなかったらもっともっとひどいことになったのではないかという点もひとつ御理解をいただきたい点だと思うのです。少なくとも、その後の各国には、各国の先ほど申しました特殊な事情もあるようですし、ことに境を接しているところの地域において自国の安全というようなことを考えれば、特殊の立場として許されることもあるいはあるかもしれないけれども、しかしそれについても、アジア会議ということのコンセンサスができたことによって、そのやる措置というものの幅が非常な制約を受けたということも、経過においてお考えをいただきたいし、そういう点についてはもう少し、何と申しましょうか、事態に対して配慮をしていただくということも必要じゃないかと思うのです。こうした場合に、白か黒かがきわめてはっきりするかどうかというようなことをほじくり立てていけば、国際問題というものはなかなか解決しないのじゃないでしょうか。そういう複雑な問題をともかくまとめ上げていい方向に持っていくということの努力の過程あるいはその成果というものについて、もっと日本人的な御理解と御同情をいただきたいと私は思います。
  141. 不破哲三

    ○不破委員 そのジャカルタ会議がなかったらもっとひどくなっているのじゃないかという見方を述べられましたけれども、私は全く反対の見方をせざるを得ないわけです。つまりこれは、論争にわたりますからあまり言いませんけれども、ジャカルタ会議を契機にして、ロン・ノル政権といろいろな周囲の政権との軍事援助関係、軍事的ないわば同盟関係というものが、あの会議を契機にして個別に進んだということは一般に周知のことでして、あの会議のために非常に平和的になったということは事実に反するのじゃないか、これは指摘にとどめておきます。  私が伺ったのは、ジャカルタ会議は、カンボジアの二つの政権の問題についてどういう態度をとられたか、つまりロン・ノル政権をカンボジアの政権として認めるといいますか相手にするといいますか、そういう態度をとられたのか、それともその問題については全く保留、ペンディングであるという態度をとられたのか、そこら辺のことを伺いたいと思うのです。
  142. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は先ほど申しましたように共同声明にあらわれている点から御了解いただきたいと思いますが、それではことばが足りなかったと思いますが、また触れていないということですね。  それからなお、会議の運営や性格の問題にも関連いたしますけれども、カンボジアの現政府ですね、現政権といいましょうか、そこから人が来て、現在の実情をぜひ説明させてくれという希望があって、そうしてそれに対して協議の結果、話だけは聞きましたが直ちに退席をしてもらったというようなことで、会議の参加者でもなければ、あるいはその政権問題に対して、共同声明でごらんのとおり、この両政権に対してのコメントというものは出ておりません。そして内政不干渉という原則が出ている、ここが特徴でございます。
  143. 不破哲三

    ○不破委員 いまの外相の説明ですと、たまたま会議をやったらカンボジアのロン・ノル政権の代表が来て説明をさせてくれと言ったかのように聞こえるのですけれども、共同声明を読んでみますと、「会議の招きにより、カンボジアのサンボウル第二副首相兼外相は、同国における最近の事態の推移と現状について説明し、これに関する質問に答えた。」という、会議自体がカンボジアのロン・ノル政権だけを呼んだということが非常に明瞭に共同声明の中に書かれているわけですね。確かに、オブザーバーといいますか、説明だけをさせて退席を求めたという経過は私も存じておりますけれども、ともかくカンボジアの問題を論じる際に、ロン・ノル政権の代表だけを呼んで事態の説明をさせて、それを前提にして会議を進めるということは、先ほど外相が言われたこととは客観的には非常に違っている。ですから、カンボジアの代表団と称しておりますけれども、この会議の代表団の副団長であるマオという人は、アジア会議はわれわれに道義的な支援を与えたということを、会議の直後に公然と発表しているわけですね。そういう点で、私は先ほどの実際に行なわれているカンボジアに対する外国軍隊の投入、侵略、こういう問題について、ことばとは全く逆に不問に付しているという点と、それから実際にはカンボジアの内政問題といわれるロン・ノル政権支持の態度を事実上示したという点で、この二つの会議は無前提の会議ではなくて、このジャカルタ会議は非常に明確な前提を持った会議になったといわざるを得ないと思うのです。  その点で、次にこの問題についての日本政府自身の態度を伺いたいのですけれども、カンボジアの政権問題についての日本政府自身の態度はどういう御見解でしょうか。
  144. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは前国会の末期にしばしばお答えいたしましたように、国連その他の国々と同じような態度をとっているわけです。カンボジアのロン・ノル政権からの通報によりますと、これは憲法によって行なった政権の交代であるということをそのまま受け取っている、こういう状況でございます。そして国連におきましても、ロン・ノル政権からの常駐代表が引き続きカンボジアの代表として認められている。そのステータスというものが続いておる。日本政府としては前例等もございますから、かような場合におきましては承認とか不承認の問題は起こらない、こういう見解をとっておりますが、同時に政治的にはジャカルタ会議においてとりましたような態度でもありますし、それからカンボジア人民に対する人道的な救援を行なう場合におきましても、赤十字を通し、かつ救援の物資その他についても、全部あげて赤十字社に一任をしている、こういう態度を明確にいたしておるわけでございます。
  145. 不破哲三

    ○不破委員 大多数の国がとっている態度をとっているというように言われたのですけれども、この問題では私は、政権の変更があった、そのことが通報されてそのとおり事実としてデファクトにそういう状態を受け入れているという、いわば消極的な承認の立場と、いま内戦状態にある国の一方の政権に対して積極的に援助を与えるといいますか、いわば介入的な承認のしかたと、この二つの問題が、いま国際的にはかなり厳密に区別されなければいけないというように考えているわけです。その点で日本政府の態度は、カンボジアへの援助という問題が、ジャカルタ会議から愛知外相が帰られて具体化をされたわけですね。確かにいま言われたように、形式は赤十字を通じての人道的援助ということになっておりますけれども、赤十字が自発的にやったことではなくて、日本政府がその額まできめて、赤十字を通じてカンボジアの、実際にはロン・ノル政権側に援助を送るという点では、政権問題に対する一つの単なる意思表示、単なるデファクトにそういうことが起きたから受け入れていくということではない、積極的な、私がさっきあげました分類によれば介入的な承認ということにならざるを得ないと思うのです。その点について、いま世界の国の中で、医療援助にしろ軍事援助にしろ経済援助にしろ、そういう形でロン・ノル政権に対処している政府が、日本以外にどういう国があるか、ちょっと伺いたいと思います。
  146. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは他国のあれで、いまちょっと資料がないようですけれども、赤十字社を通して人道的な立場——しかもロン・ノル政権相手ではないのです。そこは十分私ども配慮しておるつもりでございます。お金はなるほど政府のお金を出したわけです。しかしそれは日本赤十字社に対するお金の交付でありまして、日本赤十字社がカンボジアの赤十字社と連絡をとってやっていることであるし、それから、日本の赤十字社としては、かねがね、人道的な立場で救援するのであれば、自分のところで応分のお手伝いができるということは政府も連絡を受けておりましたので、その線を使ったわけでございます。
  147. 不破哲三

    ○不破委員 そうしますと、どんな国が実際に援助しているかという点については、後ほど調査の上知らしていただきたいのですけれども日本政府が医療援助以外に、経済援助に問題を拡大することは将来絶対ないということを、赤十字社を通じてのそういう援助以外に援助を拡大することはないということを、お約束というか、断定できるでしょうか。
  148. 愛知揆一

    愛知国務大臣 今後の場合、いまのところ考えておりません。ただ、御承知のように、従来からカンボジアにおいては——従来はいわゆるシアヌーク政権ですが、その当時から畜産センターであるとかその他のセンター等に対して、日本が経済協力等で施設をつくりましたり、それからお金を貸したり、そういうものはずっと継続してあの土地において行なわれておるわけでありますし、そういうところは、現在までの情報では、幸いにしてあまり被害なく運営されているようであります。
  149. 不破哲三

    ○不破委員 シアヌーク元首の時代というのは、カンボジアが統一されていた時代でして、今日の場合の援助とは全く性格が違ってくるわけですね。やはり、今日こういう状態での援助というのは、一方の側に手を貸すという役割りを果たすことは明瞭なわけです。それから、外相が先日日本へ帰ってくる途中で香港でインドシナの公館長会議ですか大使会議ですか、やられた直後に、カンボジアの力石大使が、東京新聞だったと思うのですけれども、座談会で発言しているのを読ましていただきますと、とにかくいまは医療援助が先で、経済援助はあとからの問題だというように、そういう援助を全体がこれから展望されるような発言もあるわけで、私どもとしては、やはり、いま日本政府が、一番最初に日赤のそういう援助という形で形式は限られているにしても、政権問題の意思表示ということが客観的に生まれざるを得ないというように考えるわけです。いま、二つの点からジャカルタ会議の問題について質問をしたのですけれども、だいぶ時間が迫ってきましたので、少し結論的な方向へいきたいと思うのですが、先ほど外相は、ジャカルタ会議に臨む態度として、特定な立場に立つブロックはつくりたくないのだというのが日本政府立場だった。ところが、実際にあそこに集まった十一カ国、この中には、先日のロジャーズ長官の発言によりますと、いま共同で北ベトナムと戦っているカンボジア、ラオス、タイ、南ベトナム、この四カ国がこっぽり——カンボジアを除いては入っているわけですね。しかも、そういう軍隊がカンボジア領内で外国軍隊として活動を拡大していくことについても、実際には何ら否定をしていない、そういう状態にある。それから、政権問題では、この集まった十一カ国の中の大部分の国が、いま、ロン・ノル政権への軍事援助あるいは経済援助を、あのジャカルタ会議をきっかけにして具体化しつつある。タイの問題もそうですが、韓国でもそういう議論がいま進んでおる。実際にあそこにそういう状態がある。こういうことになりますと、幾ら文面の上ではカンボジアの中立を尊重するとかいろいろいわれていても、その立場アメリカのやってきたカンボジアの侵略行為を非難しないという点、しかも、実際にはその行動を容認するという立場に立っていること、それから、カンボジアの政権問題では、ロン・ノル政権を事実上支持するという立場に立っている国の一つの集合であり、その中には、インドシナでアメリカと組んで共同でベトナム民主共和国や民族解放戦線と戦っているという諸国が全部主力として入ってしまう。こういう状態になれば、これはだれが考えても、特定の立場に立った、アメリカの侵略を支援するといいますか容認する側でのブロックというふうにならざるを得ないと思うのです。私はそこに、今度の会議にそのほかのアジア諸国が参加を拒否した最大の理由があると思うのです。  それからまた、先ほども言いましたニクソン大統領の演説では、今度のジャカルタ会議について、ロジャーズ国務長官と私は、カンボジア問題の解決を求めるジャカルタ会議でアジア十一カ国が行なった決議に勇気づけられた、この会議アメリカにとっても大いに勇気づけられる会議であったという意味の演説をやっているわけです。これは、どんなブロックもつくらないという説明とは全く事態が違うし、そのブロックの幹事国といいますか世話役としてカンボジア問題の解決のために行動するということは、言われている趣旨とは全く違った役割りをせざるを得ないというように考えるわけです。これは、アメリカの政権が、いわばニクソンドクトリンということで、アジア問題を、アジアの国を主役に推し立てながらその政策を遂行するといわれていることの具体化だと、われわれ言ってきたわけですけれども会議の結果はやはり実際そういうことになったと考えざるを得ません。  そこで伺いたいのですけれども、先日開かれたジャカルタ会議のような会議ですね。先日、外相は、次にはもっと多くの参加国を望みたいというように言われていましたけれども、ともかく、今度の会議の延長としての第二回目のジャカルタ会議といいますかアジア会議、こういうようなものを今後開かれるつもりがあるかどうか、その点について伺いたいと思うのです。
  150. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま前段としての不破さんの立論の根拠については、私は遺憾ながら全然反対の見解を持っております。もう少し前向きに、希望を持って見ていただきたいと思います。  それからお尋ねの点ですけれども、そこはやはりそれに関連しているわけでございまして、当初は、この十一カ国の中で、たとえばこれを常設的な会議体にして、あるいは事務局を置くとか、あるいはオブザーバーを現地に派遣するとかいうような考え方もないではなかったようでございますが、そういうことは少なくとも会議に臨んだ私の趣旨とするところではございません。ことばは悪いですけれども、この会議のコンセンサスのまとめ方、いわゆる落とし方によっては、少なくともアジアの非同盟中立の国々も参加してくれるに違いない。したがって、この会議は、次回、いつ、どこで開くなどということには私は反対である。それよりはもっと多くの国々の参加を求める努力をまず展開すべきであるということで、さようなことにはならなかったのであります。したがって、インドネシアにしても、マレーシアにしても、御承知のようにベトナム戦争には参戦国でもございませんし、また、先ほどお触れになりましたが、インドネシアの情報は、そういう情報はございましたけれども現実にインドネシア政府はさようなことは言っておりません。そして、これらの国々からのコミュニケの趣旨を実現できるように努力をすることの世話人を頼まれた以上は、誠実にその努力を展開するということで、先ほど申しましたように、まず国連から始まって、ジュネーブ協定の英ソ両議長国、それから国際監視委員会を組織しているカナダ、インド、ポーランド等にアピールして、そしてそれを早く再開するような決意になってくれれば、ほかの方法論を考えるよりもここにまとめた考え方の実現に大きな貢献ができるはずである、私はこういうふうな考え方に立って今後とも努力をしていきたいと思うのでありまして、集まった者の顔つきが、色が違うから、初めからけしからぬというふうなことでありましては、平和への戦いとか平和への努力というものは、いつまでたっても日本はできないと思うのです。よいことをするために、まずできることから進めていく、そして排除すべきことを排除していくということでやっていくのがほんとうの日本外交ではなかろうか、私はかような信念でこれからも努力を続けていきたいと思いますから、どうか、イデオロギーを異にしても、あるいは哲学や人生観が違いましても、その平和でありたいという目的に対してもう少し建設的な御協力を私はお願いいたしたいと思います。
  151. 不破哲三

    ○不破委員 重ねて最後に伺いたいのですけれども、私は別にイデオロギーの話をしているわけではなくて、現実の政治的な行動の話をしているのですが、最後に伺いたいのは、ではいまの愛知外相の説明ですと、非同盟中立諸国に、今後努力をしてそういう諸国を加えるような条件ができるまでは今回のような会議日本としては開かないというふうに理解をしていいわけですか。
  152. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申し上げましたように、先般集まりました十一カ国は、この形の会議で次回いつ開きましょうということは決議をしなかったわけです。自然そういうものが、再びそういう空気が起こるかどうかは将来の問題ですけれども、私はそういう主張をした日本の代表でございますから、ただいまのところこういうものを続けてやるということは考えておりません。ただ、念のために申しておきますけれども、アジア太平洋地域には日本が入っている入っていないは別として、ASEANというものもあるし、入っておるほうではASPACもあるし、あるいはエカフェもあるし、いろいろの会議体がございます。従来日本の参加しておるそういうような会議体には、今後とも精を出して入って、そうして日本考え方、主体的の立場というものを十分ひとつ貫徹するように努力をいたしていきたい、かように思っております。
  153. 田中榮一

    田中委員長 本日は、これにて散会いたします。