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1970-07-27 第63回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年七月二十七日(月曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長代理 理事 鯨岡 兵輔君    理事 大村 襄治君 理事 箕輪  登君    理事 川崎 寛治君 理事 中川 嘉美君    理事 永末 英一君       安倍晋太郎君   稻村左四郎君       上村千一郎君    亀山 孝一君       中村 寅太君    福田 篤泰君       本名  武君    東中 光雄君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君  委員外出席者         沖繩北方対策         庁長官     山野 幸吉君         沖繩北方対策         庁総務部長   加藤 泰守君         外務政務次官  竹内 黎一君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省欧亜局長 有田 圭輔君         外務省条約局長 井川 克一君         厚生省公衆衛生         局結核予防課長 月橋 得郎君         厚生省医務局総         務課長     信沢  清君         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 七月二十七日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     安部晋太郎君   北澤 直吉君     上村千一郎君   小坂善太郎君    稻村左四郎君   山田 久就君     亀山 孝一君 同日  辞任         補欠選任   安倍晋太郎君     宇野 宗佑君  稻村左四郎君     小坂善太郎君   上村千一郎君     北澤 直吉君   亀山 孝一君     山田 久就君     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖繩及び北方問題に関する件      ————◇—————
  2. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため、委員長の指名によって私が委員長の職務を行ないます。  沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  この機会に、ただいま開かれましたこの委員会理事会において意見の一致を見たことについて外務大臣に申し上げます。  いよいよ返還の時期が迫ってまいります沖繩、一方、アジアの情勢も変転を続けておりますので、沖繩及び北方問題に関する審議の対象は、特に外務大臣にお聞きすることが多くなってまいりましたし、今後もますますその傾向は強くなると思いますので、これからこの委員会から出席要求がしばしば外務大臣に行なわれるものと思います。非常にお忙しいでしょうが、万難を排して御出席方をお願い申し上げておきたいと思います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。箕輪登君。
  3. 箕輪登

    箕輪委員 外務大臣お尋ねをいたしますが、七月二十三日の毎日新聞の朝刊で、七月の米兵、米人沖繩関係犯罪事件のリストが出ておりますが、これを見ますと、一日、二日、四日、五日、六日、七日、八日、十日、十一日、十二日、十四日、十六日、十九日、二十日、二十一日、二十二日までが出ているのでありますが、こういうふうに、いま読み上げたように、ほとんど連日こうした犯罪が出ております。外務省としましても、頭の痛い問題で、対米申し入れ等もやっているように聞いておりますが、米琉合同会議がただいま行なわれておりますが、それで捜査権逮捕権の問題が私どもに、残された問題であろうと思います。裁判権はこれはちょっとむずかしいという大臣見解発表等も見ておりますが、捜査権逮捕権だけは、やはり沖繩現状から見て、アメリカのMPが非常に少ないように思われますし、これはやはり琉球の警察が合同でやれるような仕組みになったほうが非常にいいと思います。調べてみますと、そういう捜査協定のようなものが以前からあったように聞いておりますが、なかなか両者の円滑な合同捜査逮捕というものが行なわれない現状にあるように聞くのであります。この米琉合同会議を通じて、この問題がどのように進んできているか、大臣お答えをいただきたいと思います。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 沖繩における米軍犯罪行為がその後も起こりつつあるということは、政府といたしましてもまことに遺憾なことでありますので、米側に対しましても、そのつど厳重な注意を喚起すると同時に、その対策について苦心をしておるわけでございます。ただいまきわめて最近の事例をおあげになりましたが、実は今年に入りましてから、昨年の同期に比べましても、犯罪の件数は決して減っておりませんし、また犯罪検挙率等についても遺憾とする点が多いわけであります。したがって、少なくとも捜査権等については、米琉合同捜査検挙犯罪検挙率をできるだけ上げるということについて、米側協力を求め、この点については原則的には協力を約しておるわけでございますが、なお現地におきましても、ひとつ十分連携を強化して、この犯罪発生の未然の防止、並びに起こった場合における捜査等については、この上とも十全の措置をとるように、このことも十分の配慮をしてまいりたいと思っております。
  5. 箕輪登

    箕輪委員 犯罪発生原因をいろいろ調べて、これは憶測もありますが、聞くところによりますと、やはりベトナム帰り兵隊に非常に多いということと、特にこのベトナム帰り兵隊の中には、いわゆるマリファナ中毒にかかっているやつが非常に多いと聞くのです。やはりそれが一つ原因であるかもしれませんし、また聞くところによりますと、米軍兵隊の給与を天引きして兵隊の自分の故郷に送ってしまう、金が少し足りないみたいだというようなことも原因一つでないかと現地ではいわれておるわけであります。ですから金がないし、ちょっと精神異常的なところもあるし、こういうことになりますと、合同捜査犯罪検挙率を高めていくのも一つ方法だけれどもランパートあたりが中心になって軍紀粛正をやるということから始めていかなければ、なかなか犯罪は減らないと思うのです。ずっと調べてみますと、去年も一昨年も、このごろのように新聞にたくさん載らないけれども犯罪はたくさん出ているように思います。ただ聞くと、大体二〇%ぐらいはことしは伸びている。犯罪が二〇%伸びるというのは非常に大きな問題だと思いますが、そういうことで、どうか米軍のほうにも軍紀粛正ということを外務大臣のほうからも強力にしゃべっていただきながら、いまの合同捜査あるいは逮捕権、こういう問題を処理していただきたいと思います。  大臣も御承知でしょうが、弁護士さんの連合会であります日弁連裁判権の問題で見解を出しております。大臣は、これは施政権の重要な部分であって、復帰実現に先立って権限移譲を求めることは困難であるという見解を出された、その見解に対する反論を日弁連が出されたのであります。内容はよく御承知でしょうから、ここで申し上げないことにいたしますが、この日弁連見解に対する外務大臣見解お尋ねしたいと思うのでございます。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日弁連から七月十八日付で要望書が出ております。日本政府が、沖繩における米軍人等による犯罪捜査権及び裁判権を原則的に琉球政府の所管にするように強力な交渉を行なうことをこれは要望しているわけでございます。これについて私の意見はどうかというお尋ねでございますが、この意見書中身がおもな点が三、四点あるわけでありますけれども日弁連というようなその道権威のある方々合同した意見でありますから、私といたしましてもこれはもちろん敬意をもって検討いたしております。ただ詳細な意見を申し上げるまでにまだ至っておりませんけれども、この問題は、常識的に言えば、日本裁判権にまで完全に持ってこなければ終局的には解決しない問題である、私は率直にこう考えるわけでございます。そして返還の時期が刻々迫っておるわけでございますから、返還が実現されれば裁判権も完全に当方に帰属するわけでございますから、終局的にはそこで万事が解決するもの、そこに至りますまでの間における法律論、特に大統領行政命令によって規定されておる裁判権範囲法理論的にどうなるかということについてのいろいろの見解はあり得ると私は思います。その一つ見解がここに出されていると思いますけれども、この点につきましては私はやはりいろいろ論議のある点ではないかと思います、したがって政府といたしましては、返還に至りますまでできるだけ実際的に可能な限りにおいての手を尽くしまして、同時に返還がスムーズにできるだけ早く行なわれるようにするということを基本的な問題として取り上げていきたい。個々にわたって意見を申し上げますと、あるいは何か反対のための反対を私が故意に申し上げるように伝わってもいかがかと思いますが、これは確かに一つ法理論的な御意見、傾聴すべき点もあると思いますけれども、実際的、政治的あるいは外交交渉的いろいろの立場から見ますと、必ずしもこの法理論どおりに承服できかねるところもあるし、またこの法理論を詰めておりますうちにも相当の時間が経過をするわけでもございますから、実際的にここに取り上げられているような御趣旨に近いことが実現できて、少しでも沖繩方々に御安心ができ得るように実際的な措置を進めていくことがいまの政府立場としては妥当ではないだろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  7. 箕輪登

    箕輪委員 この問題は、大臣が心配されているとおりなかなかたいへんな問題だと私も考えます。準備委員会等でこの問題が話題になって、アメリカが硬直するとほかのほうにも影響を及ぼすことも考えられますし、なかなかめんどうな問題だと考えます。しかしやはりいま大臣が御答弁されましたように、これも法理論的な考え方一つだと思いますし、どうかこの趣旨が生かされて、いま大臣お答えになったように、沖繩の人々が安心できるような、これに近いような状態で、少なくとも捜査権あるいは逮捕権の問題は米琉合同でやれるような、またそれが円滑に運営できるような方法でおまとめをいただきたいと考えるわけであります。そこで、この問題はこれで終わりますが、毒ガス撤去の問題について若干お尋ねをしたいと思います。  先般アメリカ専門家で編成された調査団ジョンストン島の調査をされたと聞いておりますし、また調査を終わってもう帰国されているはずであります。私どもはその調査結果が全くわかりません。非常に大きな問題でありますので、お話しになれる範囲でけっこうでありますから、その調査の結果あるいは今後の見通しというようなものについて大臣から御説明をいただきたいと思います。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 毒ガスの件については昨年以来の大問題でございまして、アメリカ政府といたしましては、日本政府に対して即時撤去を約しておるわけです。そしてしばしば誠意をもって毒ガス沖繩からの撤去ということを約束し、同時に、延びておることについてはたびたび遺憾の意を表しておるわけであります。先月私がワシントンに参りましたときにも、この点を国務長官にも強く督促をしております。また国務長官がそれに引き続いて来日いたしたときも、持にこの問題につきましては督促を重ねたわけでございますが、私の得ている印象としては、アメリカ政府としては、これは国防省ももちろん含めてでございますが、日本に対するかねての公約でございますから、すみやかに撤去するということに誠意を尽くした努力をしているということは私は受け取れると思うのです。そこで、私がワシントンに参りましたときにも、わずか三日間の滞在ではございましたが、私の滞在中にさらによき御返事ができることを信じておるということであって、帰りますときに、ぎりぎり出発の直前に、まず九五%これはすみやかに実行の可能性が出てきた、ただしどこに移転するかということについてはまだ申し上げることはできない、こういう態度でございましたが、ちょうど私が羽田へ着いたときに、ジョンストン島ということが国防総省等からも明らかにされたわけでございます。私も、非常に延び延びではあったけれども、これで決着すると思いまして胸をなでおろしたわけなんですが、その後米議会方面におきまして御承知のような動きがあり、さらにまた法律の問題が起こったわけでありますので、それらを背景としても、日本政府としては米政府に対して強くこの公約の履行を迫っているのが現状であります。米政府としては、先方議会動きはともかくといたしまして、公約をして誠意を尽くしてやっているのである、それからジョンストン島については、きわめて最近の情況では調査も終わったということを言ってきております。そしてその内容は、いろいろの関係もございますのでしょう、調査報告内容を詳細には私もまだ承知しておりませんけれども、私の受けている印象といたしましては、技術的にはジョンストン島で受け入れ可能である。アメリカ政府としてはそういう見解を持っているように私の印象としては承知いたしておりますので、議会筋等においてもこれをできるだけ尊重していただいて、この一年にわたるところの大懸案がすみやかに解決できるようにひたすら待ち望んでいるという状況でございます。
  9. 箕輪登

    箕輪委員 どうもありがとうございます。ジョンストン島で大体きまるだろう、私もその話を聞いて安心をしたいと思います。  この毒ガスと直接関係があるのかないのかわかりませんが、最近米軍基地の中でたくさんの立ち木が枯れたとか、あるいは具志川の近辺の海岸で学童海水浴中からだに非常にかゆみを覚えたというような問題が発生いたしております。学童海水浴海水汚染の問題はことしに限ったことではございませんでして、先年もあったわけでありますが、これらの原因がはたして毒ガスのものであるか、あるいは一部では農薬でないかという説もあったりいたしておりまして、原因がいまだに不明であります。これは直接外務省がお調べになるわけではないと思いますが、これらの原因あるいは調査状況等について、大臣もしお知りであったならばお知らせをいただきたい、かように考えます。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私もこうしたことについては至大の関心を持っております。実は今朝も那覇のほうからの電報がございましたのですが、ただいま御指摘の、学童の皮膚にかゆみを覚えたという件については、やはり科学的な調査の結果を待ちませんと、原因についてはっきりしたことをまだ突きとめておらないようでございます。これは毒ガス原因なのか農薬原因なのか、あるいは中にはクラゲその他の水中におる動物の害ではないかというような説もあるやに聞いております。それらについては那覇の大学のその道権威者その他に科学的な検討現地当局としては依頼しているようでございますが、正確な科学的な原因の究明はまだ結果を報告するに至っていないという状況でございますから、私としては何ともその原因について申し上げかねる状況でございます。わかり次第何らかの方法で、これは沖繩の人はもちろんでありますが、全国民の心配していることでございますから、科学的な結果が出れば、しかるべき方法で一般に周知をするようにいたしたいと思っております。
  11. 箕輪登

    箕輪委員 きょうは時間があまりございませんので、それでは大臣の御専門のほうの問題についてお尋ねいたしたいと思います。  すでに現地準備委員会ができましたし、また中央においては返還協定交渉が行なわれておりますが、その後準備委員会あるいは返還協定交渉進捗状態新聞等にもあまり出ませんし、外務省からの御発表もありませんが、今日どの辺まで話し合いが進んでいるのか、この準備委員会返還協定交渉進展について、そしてまた返還協定はいつごろまでにおまとめになるのかというような問題について、大臣の御見解を御披露いただきたいと思います。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 返還協定、またそれに関連する問題についての進め方は、まず東京におきまして総括的には私とマイヤー大使の間で随時協議をいたしまして、取りまとめ、調整をやることにいたしましたので、いまのところは大体月に一ぺんぐらいの頻度で米大使との協議を持っております。そして問題の洗い出し並びに督促等を主としてやっておりますが、概括的に言えば、円滑に作業が進み、また米側も非常な協力態勢を示しておる。七二年のできるだけ早い機会に完全に施政権返還が終わるようにということを目標にして、ともかくいまの段階ではできるだけ双方全力をあげて作業を急いでいこうということに合意をいたしておる次第であります。  それから問題の中には、たとえば財務関係とかあるいは防衛関係とかいうことで、それぞれの専門家同士調査意見の交換というようなことに相当こまかく入りつつありますので、それらについては専門家同士検討あるいは調査等をできるだけ進めながら、それを私と大使の間で見守りながら、スピードアップするように心がけていきたいと思っておりますが、いわばこの専門的会議と申しますか、そのほうがものによりますと具体的な調査や、資料や、そのほうの検討というものに忙殺されておる段階で、これが基本的に非常に必要なことでございますので、ただいま各種の問題についてこれはここまでいった、あるいはこういうところで妥結しそうだということを申し上げるまでのところにはまだいっておりません。というのは、大使と私との間でも、そういうこまかい点についての専門家同士のまとまりということの細部にわたっての報告とかあるいは指示を仰ぐとかいうところまでにはまだちょっと時間がかかるのではないかというような状況にあるからでございます。
  13. 箕輪登

    箕輪委員 それでは北方の問題についてお尋ねをいたします。  七月二十五日、各新聞社が取り上げておりますが、社会党成田委員長等東ドイツ訪問中に東ドイツ共同声明発表いたしました、その記事が載っております。欧州の現国境線を承認します、特にオーデル・ナイセ国境の承認が必要であることで意見が一致した、こういうことが出ております。そこで大臣お尋ねいたしますが、大臣は昨年の九月訪ソいたしましてコスイギン首相会談された際、北方領土返還要求をされたときに、コスイギン首相が、第二次大戦後の状態を維持すべきであり、これを動かすことは他に影響することであって好ましくない、こういうふうにお話しされて北方領土返還を拒否したというふうに聞いているわけでありますが、かりに社会党のこの共同声明が特にオーデル・ナイセといっているけれども、その前提である欧州の現国境線を承認するというたてまえをとっている以上、北方領土の問題にも微妙な影響があるように私は考えざるを得ないのではないか。なるほどヨーロッパにおける国境線とわれわれが要求しているところの北方領土、これは本質的に、また歴史的な見地に立っても異なっていることは間違いありませんけれども、これとヨーロッパとは関係ないのだ、われわれの要求はそんなものと全然関係なしに固有領土でないか、歴史的に見てもそうではないかというようなことでやっていることは違いないけれども、さて領土のかぎを握っておるソ連のほうからの立場で考えると、私は、社会党ヨーロッパにおける現国境線を承認したということは、アジアにおける北方領土返還も、これは受け取り方でありますけれども、あきらめたとは思いませんが、そういう受け取り方をされるのではないかというような感じがいたしてなりません。ヨーロッパにおける国境線現状でよいとするならば、北方領土現状でよいということに解釈されるおそれがあるので、この際、外務省はこれを無視するというようなことが新聞に出ておりますけれども、あらためて大臣見解お尋ねしてみたいと思った次第であります。  あわせて御答弁いただきたいと思いますが、例の安全操業問題であります。たしか十四日だと思いましたが、中川大使からイシコフ漁業相にこちらの案を示したそうであります。その中身については、私はあえてお尋ねしないほうがよろしいと思いますので、お尋ねいたしませんが、その後何かの変化があったかどうか、この二点について大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず第一の領土問題でございますが、昨年九月の私とコスイギン氏その他との会談において、先方の言うたことは言うたこととして、こちらはそれを全然やはり拒否しているわけでございまして、こちらの主張固有領土——固有領土ということの根拠等については、しばしば申し上げておりますから、ここに繰り返すことを省略いたしますけれども当方主張とは全くすれ違いでございまして、双方とも主張しっぱなしで、歩み寄りはなかった。しかしこちらはあくまでもいつまででもこの固有領土主張は、この正当な主張は繰り返しやるんだぞということをはっきり念を押しておいたのが昨年の会談状況でございます。  それから、今回の社会党委員長と東独との関係共同声明に言及されましたが、まあそのことについてはともかくといたしまして、私の考え方は、北方領土要求根拠性格とそれからヨーロッパの国境問題とは異質の問題であると、かねがねかように考えておりますし、今後もさように考えておりますから、それとこれとは別問題で、したがって、従来から繰り返して主張しているところを何ら当方としては——わがほうとしてはそれによって影響を受けることはない、あってはいけない、かように考えております。ただ申すまでもありませんが、現在ドイツソ連ドイツとポーランド、東西両ドイツ、あるいはベルリン会談というものが行なわれておりますし、その話し合いがいわゆる緊張緩和というようなことに成果があがるとするならば、それはそれとしてたいへんけっこうなことだと私は考えております。しかし、いま申しましたように、それだからといって、そのヨーロッパの国境問題の処理が北方領土に対するわがほうのかまえ方に影響するようなことはあり得ざることである、性格が違うものである、かように私は考えております。
  15. 箕輪登

    箕輪委員 以上をもって質問を終わります。
  16. 鯨岡兵輔

  17. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 先ほど本委員会開会にあたりまして委員長代理のほうから外務大臣要望がありましたように、本委員会における外務大臣出席はたいへん悪いのであります。実はきょうももっとよけいの時間を予定しておりました。米軍カンボジア侵入ジャカルタ会議、ASPAC、それからロジャーズ国務長官アジア訪問、そして先般の第四回の日韓閣僚会議ホノルル米韓防衛問題の協議、そしてきょうあす行なわれます日米安保事務レベル会議、こうした相次いで非常に大きな問題が進展をしておるわけです。それらの多くが沖繩基地のあり方とも関連をいたしておるわけでありまして、そういう問題をじっくり検討しようとしても、外務大臣の本委員会における出席が制約をされるということはたいへん遺憾であります。今後ひとつぜひ無理をしてでも出席してもらいたいということを要望しておきたいと思います。  そこで、たいへん予定よりも限られた時間になりましたので、私は幾つかの問題をお尋ねしていきたい、こう思います。率直にひとつお答え願いたいのでありますが、まず、いまアジアをめぐっての大きな問題としては、わが国にもかかわっております在韓米軍削減の問題でありますが、これがなぜ行なわれるのか、その点について日本外務省としてはどう考えておるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 在韓米軍の撤退問題について、米側がどういうふうに考えているかということがお尋ねの焦点だと思いますけれども、これは米国側が公にしているところでも御承知のとおりでありますが、米国側としては財政上の問題等を主たる理由として掲げているように承知いたしております。そして、これはまだ米韓両国間の協議の最中でありまして、つい最近のホノルル会談におきましても、米韓両国防当局の結論といいますか、相互の合意というか納得、了解ということがまだしかとはできていないように思いますから、今後の推移によってまたいろいろと説明ぶりもあろうかと思いますが、現在のところは以上申し上げた程度以上に日本政府としてコメントができない、かように存じております。
  19. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは日本にどのような影響があるか、防衛庁長官は過ぐる十三日の参議院の本委員会において防衛庁長官としての考え方を述べておるわけでありますが、外務大臣としてどう考えられるか、明らかにしてほしいと思います。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 昨年十一月の日米会談のときの共同声明にもありますように、日本といたしましては朝鮮半島の緊張ということには大きな関心を抱かざるを得ないわけでございますし、また韓国が一面国防、一面建設ということで国づくりに非常な努力をしている、また三十八度線をめぐる状況においても現状において従来とさしたる変化がない、こういう点を考えあわせてみますと、韓国の現状に対しては、あるいはまた米軍の撤退希望に対しては、わが国として、防衛庁長官が言っておりますように、理解をし、あるいはそれに対して同情を持つという考え方をとっておることは申すまでもないところかと考えます。
  21. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 外務大臣が仙台で記者会見をされた記事を読みますと、韓国側から、この削減の問題についてあっせんをしてくれ、こう言ってくるだろう、こういうふうなことを記者会見で述べておられるわけですね。それから先般明らかにされたところによりますと、佐藤総理大臣ロジャーズ国務長官に対して、慎重にしてほしい、こういう要請をしたということが明らかにされておるわけです。そこで、理解をするといういまの答弁でありますが、今回の日韓閣僚会議等を通して、その問題についてあっせんをするのかどうか。あっせんの要請があるだろう、こうあなた自身が行く前に言っておられるわけでありますから、このことについて仲介の立場をとるのかどうか。特にきょうあす事務レベル会議もあるわけでありますけれども、その中でこの問題についてあなた自身が明らかにしておるというか予想しておったそういう問題についてどういう態度で臨まれるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 あっせんとか仲介とかいうことはございません。しかし、ただいま申しましたように、日本自体といたしましても、朝鮮半島の緊張ということ、あるいは韓国の非常な努力や心配に対しては、理解と同情を私は持たざるを得ない、かように考えております。そういう点から、朝鮮半島の状況あるいはアジアの情勢等についての一般の情勢判断を含めまして、日米間におきましてもいろいろ機会がございます。御承知のとおりでございますが、そういういろいろ意見の交換というときに、そういうふうな態度というものがそこににじみ出るということは自然の成り行きではなかろうかと思います。  その次に、日韓会談に言及なさったわけでありますが、この点は非常に明確に日韓会談終了に際して、参加いたしましたこちらの閣僚諸公、私のみならず、会見その他でも申しておりますように、朴大統領からのわれわれに対する説明、要請におきましては、米軍の撤退問題ということについては、米韓間で現在いろいろとアメリカに対する要請あるいは申し入れ等をやっているということは触れましたけれども日本に対する関係においては、それだからといって軍事的あるいは軍事に準ずるような点、あるいはまた軍需産業というようなことをそれに関連して日本にお願いするというようなことは、日本の国策をよくよく理解しておるわれわれとしては、さようなことは絶対にございません、こういう態度が最初から表明されておりますだけに、日韓合同会議に参加した先方の閣僚諸公からも、さような角度からの日本に対する相談あるいは協力の要請あるいは仲介、あっせんというようなことは全然出ておりませんでした。
  23. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 今回の在韓米軍削減という、いわゆるニクソン・ドクトリン、ニクソン原則といわれるものの適用第一号が韓国だ、こういうふうにいわれておるわけでありますが、このことについて、一面国防、一面建設という、先ほど外務大臣も言われておりますけれども、今回の日本側の新しい借款という問題の動きを見ますとき、このニクソン・ドクトリン適用第一号、このことについて日本の事前の了解というものがあったと考えざるを得ないわけです。それは昨年の七月のグアム島における大統領の原則の表明、それから十一月の佐藤・ニクソン会談、それからこの二月に出されておりますアメリカの外交教書というもの等の中でも、日本の役割り、日本の経済援助というもの、肩がわりを明らかにしておるわけでありますし、またナショナル・プレスクラブにおける総理大臣の演説においても、アジアにおける問題は日本のほうが主体的な役割りを果たすのだというふうなことを言明しておるわけですね。そうしますと、今回の在韓米軍の削減という問題は、昨年の日米首脳会談でそうした原則的なことが了解されておった。こういうふうに見ざるを得ないし、また沖繩返還の交換条件ということであったと見ざるを得ないわけであります。その点は、七月の十四日李大使に対して、佐藤総理がきわめて積極的な姿勢を援助についてはもうすでに示しておるわけであります。今回の日韓閣僚会議において、新聞報道等を見ますと、事務当局が詰めて考える考え方と、閣僚諸君の考え方というものとの間にはたいへん大きな開きがある。持に韓国における大統領選挙や国会議員選挙等を前にした、そういうきわめて政治借款としてのにおいがあるわけでありますが、非常に広範な問題に触れましたのでしぼりますが、今回のニクソン・ドクトリンを韓国に適用することについて、日本側が事前に了解を与えているのではないか、それは日米首脳会談ですでにしているのではないか、こう思うのでありますが、いかがでありますか。それと沖繩返還の交換条件にされていないか。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日米首脳会談で、米軍の二万人と伝えられておりますけれども、そういう削減問題が合意されているなどということはとんでもないことでございまして、これは日米間の会談でございますから、さようなことはあり得るはずはございません。  それから沖繩に関連させてお考えになることも、これは日本アメリカとの関係でございまして、交換条件がほかにそういうふうなものがあったなどということも、少しこれは思い過ごしをされているのではなかろうか、筋から言いましても、そういうことがあろうはずはございません。
  25. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 時間がないので、一つ一つ詰める余裕がないわけですけれども、日米首脳会談の延長、その実行ということで今回の日韓閣僚会議は行なわれておるわけでありますけれども、それらの点はいずれ一つ一つこまかに詰めなければならない、こういうふうに思います。  そこで次に、韓国から二万人撤退の問題は、何も日米首脳会談で云々ということを言っているのじゃないのです。もっと原則的な問題を言っているわけです。韓国、台湾、フィリピンからいま米軍の削減が行なわれつつあるわけです。フィリピンから六千人の補給部隊が引き揚げていく。それからタイからすでに六千人引き揚げておる。韓国は今年中に二万人、こういうことですね。アジアからそういうぐあいにずっと米軍を削減していく。では在日米軍はどうなるのか、沖繩米軍はどうなるのか、その削減はどうなっていくのですか。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御案内のように、たとえば日米の関係におきましては、一昨年来基地の縮小、整理というようなことは相当それ以前の段階に比べては私は程度が進んでいる、こういうふうに考えておるわけでございます。したがって、そういう点における米国のプレゼンスと申しましょうか、そういうことは漸次減少されている、これはすでに日米の間においてはそういう点が進んでいる、これは非常に抽象的、常識的なことでありますけれども、そういうふうに考えていただいていいのではないかと思います。したがって沖繩につきましても、返還のいろいろの作業をいたします上におきましても、基地のできるだけの縮小ということを本則として話を進めつつあるわけでございますから、傾向として全体的にアメリカの対外的なミリタリー・プレゼンスというのが減る傾向にある、またその一環としてとらえられる問題である、こういうふうに全体的には理解し、捕捉して適当ではないだろうか、かように存じております。
  27. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 ウエストモーランド米国陸軍参謀総長が、韓国、台湾、フィリピン、そうした基地の機能を縮小し、沖繩へ機能を集中する、こういうことを言っておりますね。これは前にも本委員会でも問題になっておりますが、リーサー長官の発言とか、あるいはつい最近チャップマン海兵隊の司令官が沖繩基地のあり方、つまり返還後の基地のあり方ということについても、太平洋アジア全域にわたって直ちに出撃できる体制をとっていくのだ、こういうことを言っておるわけです。そうしますと、そのことは七二年返還以後の沖繩基地のあり方について、いま兵たん部隊の再編成あるいは基地全体の機能の強化ということで検討が進められておるわけでありますが、そのことについて日本としては日米安保協議の中で了解をしておるのかどうか。いま沖繩施政権アメリカにあるのだから、これはアメリカの一方的な作業で進むのかどうか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 たとえばウエストモーランドが証言したことも御引用でございますが、あの中でも沖繩については返還後には日本の本土並みになる、事前協議が適用されるのだというようなこともちゃんとうたい込んであるという点にも御注目をいただきたいと思います。私は、全体としてやはりアメリカのグアム・ドクトリンの精神であり、その実現が行なわれるということが大前提であるとすれば、大きくなるということよりは小さくなる傾向にあるということは自然の成り行きではないだろうか、こういうふうに考えますが、いま安保協議会その他に関連して何らかの約束をさらに沖繩に対してしているのかという御趣旨お尋ねについては、さようなことは全然ございません。沖繩返還については、しばしば申し上げておりますような既定の態度でもって話し合いを煮詰めていきたい、こういうことで鋭意努力をいたしておるわけでございます。
  29. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 韓国の米陸軍の削減、撤退ということと関連をして、今回のホノルル会議における米韓のコミュニケを見ますと、太平洋基地にあるアメリカの空軍を韓国に移す、こういうことがいわれておりますし、このことは丁一権国務総理も韓国の中ですでに沖繩ということで明らかにしておるわけでありますけれども、このことについては日本政府としてどのように見ておるのか、このことが一つ。  それから台湾がB52の離着陸のできる飛行場を建設しておるということがアメリカ議会でも証言をされておるわけでありますが、そうした問題があるのかどうか。この二つをまずお尋ねしておきたいと思います。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 韓国が沖繩についてどういうことをかりに言っているとしても、沖繩返還問題は日米間の問題でございまして、他国がとやかく言われたからといって、それが新しい要素として入ってくることはない、そういうことはけじめをつけてきちんとすべき問題ではないかと考えます。  また、台湾がB52の基地云々ということは、私は承知いたしておりません。
  31. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 C5Aが横田なりあるいは嘉手納なりにいまやってきておるわけでありますが、これは定期便になったのかどうか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お尋ね趣旨が必ずしもはっきりいたしませんが、おそらく私からは定期便になったことはございませんとお答え申し上げることを御期待のようでございますが、定期便というようなことではございません。
  33. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは米軍の撤退、日本基地あるいは沖繩基地の強化、そういうアメリカの戦略全体の中でこのC5Aの問題は考えなければならないし、議論もしなければならないと思いますが、愛知外務大臣からはそういう答弁しかできないだろうと私も予想しておりました。  朴大統領が、日米韓の共同防衛体制の実現性を検討する必要がある、こういうふうに韓国の議会で安保問題についての議論をしたときに言明をしておるわけです。つまり日米韓の共同防衛体制、これはいま日本側は軍事的なかかわり合いはないのだ、こういうことを言っておりますけれども、日米韓の共同防衛体制の実現性ということをすでに韓国の議会では大統領が問題にしておるということは、今回の経済協力にいたしましても、その進んでいく方向、すでにこれまでもPATOの問題やその他ASPACの問題等いろいろありましたけれども、日米韓の共同防衛体制の実現性を検討しよう、このことについての外務大臣見解を伺いたいと思います。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 韓国内のことはともかくといたしまして、一番最近に、数日前に、私だけではなくて他の五閣僚も同席で朴大統領と相当の時間会談しているわけでございます。したがって、御必要ならばほかの閣僚からもお聞き取りいただきたいと思うのでありますが、先ほど申し上げましたように、現在自分のところは、減軍ということばを使っておられますが、減軍問題で非常に困っている、韓国としてはいついつまでも米国の大軍にいてもらわなければならない、そんなことを絶対に考えているわけではありませんが、ものにはタイミングというものがある、そこで韓国軍隊の装備の充実というようなこと、あるいは撤退にしても心配のないような。プログラムで、そこは堅実にうまくやっていきたい、われわれとして十分納得のできるようなやり方でやってもらいたいという意味でいまわれわれとしては非常に頭を悩まし、かつ、まず最高国防当局間でホノルル話し合いをさせておる、これが現在の実情であります。同時に、日本に対しましては、先ほど申しましたように、それに関連づけて日本に対しても軍事協力を求めるとか、準軍事協力を求めるとか、あるいは軍需産業についてこの際日本の援助を求めるとか、さような考えを毛頭持っておりません、日本のお考え、日本の国情、世論というものは、私は私なりによく承知しているつもりでございます、これがわれわれに対する朴大統領の方針と申しますか、抱負であり見識である。そこを基礎にいたしまして、日韓会談は、いまさら申し上げるまでもございませんが、国交回復後毎年定時にソウルと東京で開くことになりました。もう第四回でございまして、主として経済協力関係、あるいは法的地位というような、経済に直接関係はございませんが、そういう問題が議題となって、全体あるいは非公式にいろいろの意見交換をやってまいりまして、その詳細はコミュニケに——実に長い長いコミュニケでございますから、これ以外に話があることはまず絶対にないと常識的にも御了解いただきたいものと思います。
  35. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 長い長い朴大統領の選挙対策のコミュニケが出されたわけでありますけれども、対日請求権・経済協力協定の実施状況はどうなっておるのか、その具体的な進行状況を明らかにしていただきたいと思います。
  36. 愛知揆一

    愛知国務大臣 こまかくは政府委員から御説明いたしたほうが正確かと思いますけれども、概括的に申し上げますと、日韓国交正常化いたしましてまる五年でございますが、当時約束いたしました有償、無償その他の協力については、きわめて順調に進んでおりますし、またその実施の状況等についても、政府といたしましてはほぼ満足の状況で、これが既定の計画以外に流れているというようなことはないように思います。そして今回のコミュニケにあらわれておりますところもごらんのとおりでございまして、金額が出ておりますのは、一億ドルという借款について韓国側の要望をわれわれは承って、これに対して好意的に今後検討しようということが出ているだけで、あとはプロジェクト中心の問題でございますから、プロジェクトの内容等について合理的にあるいは経済的にうまくいけるかどうかということを、わがほうとしては通産省が中心になりまして、よきアドバイザーとして、協力者として、とっくり内容検討した上で、取り上げ得るものは御協力をいたしましょうということになっております。  それから、一億ドルの問題につきましても、考え方がはっきり出ておるつもりでございまして、輸出振興とか中小企業あるいは農業、こういう関係を目的にして、かつ日本で必要な資材その他を調達するための必要な資金、こういうことになっておりますから、たとえばこれは輸銀の融資というようなことが普通は想像されるわけで、こういう関係になれば、きわめて合理的で経済性のあるものに限定されます。また金利、期限等の条件等もきわめて合理的にきめられるものでございますから、これはいわばつかみの政治借款だとか大統領選挙の云々であるとか、そんなこととはおよそ次元の違う、まことに経済性の豊かな、また合理性の十分筋の通ったものに、今後両方の実務者同士の話し合いがまとまれば、融資あるいは供与をいたしましょうということが約されたわけでございますから、その点も御留意いただきたいと思います。
  37. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 先ほど箕輪委員の質問に対して、ヨーロッパにおける緊張緩和の大きな方向というものを外務大臣は触れられたわけです。そこで、アジアにおいても大きな緊張緩和という方向に向かっている、向かうべきだ、そしてそのために日本がどういう役割りを果たすかということが今日の日本外交の一番基本でなければならない。しかしそのこまかい、たとえば第三回の定期閣僚会議できまりました浦項の総合製鉄所の問題にいたしましても、あるいはそれに今回のプロジェクトベースといわれる特殊鋼の工場五百八十万ドル、これらは、米韓の間で小銃の工場をつくりたいと言いながらそれがなかなかできない、そういうものにかわり得る工場ではないですか。鋳物工場にしても、特殊鋼の工場にしても、重機械工場にしても、製鉄所のコンビナートとしてつくられていく。まさに韓国の防衛力増強というものに直接切りかわり得るものであります。外務大臣は軍事協力でない、こう言っておりますけれども、明らかに軍事協力にかわり得るものに日本協力をするというところに、むしろ朝鮮半島における朴大統領の、いまの武力優位により北鮮を押えようという政策というもの、そのことに即協力をしておることになるのではないか。だから、いまの朴大統領の政策をどう変えさせるかということが、朝鮮半島における緊張を緩和する道でなければならぬわけです。だから、今回のはきわめて生産性の高い経済協力なんだ、こう言われておりますけれども、浦項総合製鉄所コンビナートの一連としての今回のプロジェクトというのは、明らかに軍需産業に切りかわり得るものだ、こう指摘せざるを得ないわけです。そこで、そうした在韓米軍の削減、在日米軍基地の機能強化、あるいは沖繩基地の機能強化という中で日本が進めておる韓国に対する経済協力の本質というものも、そう私は指摘をせざるを得ないと思うのです。その点はどうですか。アジアでは、そういうヨーロッパにおけるような方向に進んでいないという判断なのかどうか。まずその基本のところを明らかにしていただきたいと思います。
  38. 愛知揆一

    愛知国務大臣 緊張緩和ということがわが国の外交の基本方針であることは申すまでもないところであります。それに向かって鋭意努力をいたしておるわけでございますが、同時に大きく世界の情勢を大観してみますと、ヨーロッパあるいは中近東くらいのところまでは、米ソの動向が大きな柱といいますか要素であると思います。この間におきまして緊張緩和の動向がやや出てきているということは歓迎すべきことだと思います。それからアジア方面におきましては、そこにもう一つ中共というものの要素が大きく浮かび上がっていることは否定することができません。それから同時に、日本を中心に考えれば、世界じゅうで四つの分裂国家がありますが、三つまで日本の周辺にあるということが、外交政策の展開としてなかなかむずかしい点であることは、いまさら御指摘申し上げるまでもないところだと思います。同時に私は、韓国についての御質疑でございますが、韓国において三千数百万の人口があって、そしてともすれば職につけない、あるいは貧富の差が増大する失業の問題というようなことがありますことも着目しなければならないので、隣国のことでありますが、働ける人、働く意思のある方に仕事を与えて、そして国民生活が充実するということは、私はけっこうなことではないかと思うのでありまして、それに対して合理的で望ましい協力の手が伸ばし得るならば、これを展開していくことは日本の国策としてけっこうなことではないか。同時に韓国に対しても、望むらくは北に対してことさらに挑発的ととられるようなことは避けることが望ましいということは、私は隣国の日本といたしましても期待をしたいところであります。
  39. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 バターより大砲の政策をとるから失業が出るのは当然でありまして、今回の問題についても、こまかいあるいは金利の関係もいろいろ新聞等でも出ておりますけれども、調べてみました。二十何%というたいへん高い金利であります。定期預金の場合二二・八%です。だから三・五%のあれですとたいへん選挙にも役立つだろうという感じもしますが、もう時間を少し過ごしておりますから、そういう問題はおいておきます。  そこで、いま中国の問題にも触れたわけでございますが、先般、社会、民社、公明三党の国対委員長会談においても一致をし、官房長官に申し入れをいたしておりますが、アジアにおける緊張を緩和する方向に日本が役割りを果たすその一つは、国連総会における中国代表権の問題であります。重要事項指定共同提案国になるべきでないということを社会、民社、公明の三党は一致して申し入れました。この点についての外務大臣の態度を明らかにしていただきたいと思います。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いろいろの考え方、見方もあろうと思いますけれども、現在の段階で中国代表権の問題ということにだけ象徴的に問題をしぼるということはいかがかと、率直に申しまして私はさように考えております。それから、現在の状況下におきまして、国連における代表権問題というものは、何としても私は重要事項として扱うべきものである、これは私の持論でありまして、これを変えるわけにはまいりません。
  41. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 毒ガスの毒に当たっているせいかどうかあれですが、B52の撤去の問題はいま日米間でどう話し合われておるのか。これを話し合われておるのか、いつ撤去されるのか。この点は常駐でないということで一昨年来明らかにしてきておるわけでありますが、毒ガスの問題にかまけまして、B52の問題はいまごまかされております。しかもこれがインドシナ半島では、たいへん毎日飛び立っていって大きな爆撃をやっております。この問題についてどうなのか。なお撤去要求していくのかどうか、しているのかどうか、していくのかどうか。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 B52は、もうしばしば国会を通じても申し上げておりますように、日本政府としては撤去要求、そして一時的な沖繩基地の利用であったのだというアメリカの態度に対しては、そのとおりであることをあくまで政府としては要求し続けているわけでございまして、ただいまも御指摘があったとおりに、毒ガス問題というようなものがありましたので影が薄れたような感じがするとお話でございましたが、そういうことがありとすればこれは適当でないのでありまして、これは政府としての従来からの方針であり、また今後も機会あるごとにその政府の態度、要望というものがすみやかに実現されることについて、この上とも努力を続けてまいりたいと思っております。
  43. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 毒ガスについては、ロジャーズがどう言ったとか、マイヤー大使とどうだったとかということを明らかにしておるわけですね。じゃ、B52はいつどういうふうにしましたか。その点を明らかにしていただきたいのです。私、これで終わりますから……。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは機会あるごとに要請を続けておる次第でございます。
  45. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長代理 中川嘉美君。
  46. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 まず、ただいまの川崎委員の質問に関連いたしまして、沖繩における米軍基地について大臣に二、三さらに質問をいたしたいと思います。  七月三日の新聞報道によりますと、上本部飛行場というところがありますが、ここは復帰前に全面的に返還されるのではないかと地元では非常に期待をしていた。しかしながら、米海兵隊司令部は同飛行場を修理して、そして再舗装をすると二日に発表しておりまして、しかも六日から工事が進められると、こういうふうになったそうであります。また七日の新聞によれば、沖繩米軍司令部は六日に、韓国の工兵隊沖繩に統合する、このように発表したと報道されておりまして、さらに先ほどの川崎委員のお話にもありましたけれども、七月十一日の新聞によりますと、韓国と台湾の基地を縮小して沖繩へ機能を集中するという、あのウエストモーランド米陸軍参謀総長の記者会見が発表されております。私たちも、沖繩の人たちも、七二年には核抜き本土並みということで返還されることになっておるわけですから、この基地が、縮小されるということはあり得ても、拡大強化あるいはいま申し上げたような機能の集中というようなことについては、だれしも想像はしておりません。  このように沖繩基地が拡大強化されるということに関して、先ほどからもいろいろ御答弁があったようでありますが、外務大臣米側から何らかの連絡ないしは通報を受けておられるか、まずこの辺について御答弁をいただきたいと思います。
  47. 愛知揆一

    愛知国務大臣 沖繩基地の拡大について具体的に何か通報を受けているかというお尋ねについては、何もございません。それから、そういうことは私はあり得ざることであると基本的に考えております。沖繩基地が拡大強化されるというようなことは、全体の現在の情勢から見ましても、常識的にもさように判断してしかるべきではないかと思います。  そこで、いつも問題にされますのは、ウエストモーランド参謀総長の証言あるいは記者会見、あるいはリーサー長官の証言とか記者会見とかいう問題でございますが、これらにつきましてもしばしば申し上げましたように、従来と変わりはございませんので、これは政府として事実上と申しますか承知しておりますことは、補給関係の中央管理機能をできるだけ効率あるようにするために、指揮、命令の系統等についての相当の変更がある、そういう関係から、沖繩に所在するところの司令官その他に権限あるいは命令、指揮系統を移すということはあり得るようでございますけれども、膨大な物資の集積あるいは基地の機能を強化するというふうなことを考えているわけではないと承知いたしております。  それからなお、先ほども申し上げましように、最近のウエストモーランド参謀総長の証言につきましても、返還後の沖繩には事前協議を含む日米安保条約及びその関連取りきめがそのまま適用されることになることは、これまでも繰り返し明らかにしてきたところであると、これはわれわれがしばしば申し上げておりますと同じことを、繰り返しウエストモーランド総長も言明しておりますことにも御注目をお願いいたしたいと思います。
  48. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 御答弁を信じたいところでありますけれども、かかる重大な問題について日米間において何ら話し合いがないということは非常に理解に苦しむわけでありまして、外務大臣日韓閣僚会議にせんだっても出席された。韓国における米軍の削減、引き場げについて、聞くところによりますと、韓国側は米軍の削減には反対である、そういうことで朴大統領もその意向を表明しております。先ほどの御答弁の中にありましたとおり、日韓閣僚会議と並行してホノルルにおいて米韓国防閣僚会議が開かれた。二十二日には共同コミュニケが発表されておるわけですが、私どもはこのアメリカと韓国との間の問題についてはとやかく言うものはないのでありますけれども、在韓米軍を削減してそしてその分を沖繩に補強されるという点については、やはり重大な関心を持たざるを得ない、国民の立場からもこのように言えるわけであります。政府は、復帰前の沖繩米軍の増強については米側に何も申し入れをしないのか。このいわゆる増強と返還ということは完全に相反するわけでありますけれども沖繩県民はもとより、この点について国民は深く憂慮しているわけであります。そういった意味で、沖繩米軍の増強に関して、政府の方針をここでもう一度明確に伺っておきたい、このように思いますので、御答弁いただきたいと思います。
  49. 愛知揆一

    愛知国務大臣 米軍の韓国からの減軍ということと、日本側の立場に立って見る場合において、日本あるいは沖繩にこれは関係のないことだと私は思いますので、日本側から韓国に対してもアメリカ側に対しても、減軍になったら沖繩に増強するそうであるがいかがであるかなどと私は言うべきものではないと思いますし、またさような話は日本に対して何もございません。沖繩返還日本アメリカとの問題であって、これは累次申し上げますような、昨年十一月決定された線に沿うて、返還の準備が着々と一九七二年の早期を目標にして行なわれておるわけでございますから、韓国における米軍問題と沖繩の問題というものをそういうふうに関連づけてお考えいただくことは少し考え過ぎではないだろうか。御心配の点はわからぬではありませんけれども、全然これは関係がない。日本政府として、この件に関して、アメリカ側からも、沖繩基地についてどうするというようなことを、米軍の撤退に関連して申し入れを受けたことは何もございません。また、こちらからとやかく先回りして言うべき筋の問題でもない、私はかように存じます。
  50. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 このことと関連いたしまして、しつこいようですが伺いたいのですけれども、やはり繊維交渉の決裂と沖繩返還問題が出てくるわけです。日米繊維交渉も長い折衝の結果、ついに先月決裂をもって終わったわけでありますが、この結果は日本アメリカもともに予期していなかったと言えるのではないかと思います。ある新聞は、戦後二十五年を経過して、日米間で初めての意見の対立であったと報じている。私たちは、この問題について外務大臣及び通産大臣が払われたところの努力を多とするものでありますけれども、一方、この結果が沖繩返還交渉に微妙な影響を与えるのではないかということでおそれもしているわけでありますけれどもロジャーズ国務長官外務大臣に対して、繊維交渉の結果は沖繩返還に何らの影響もない、このように確約したというように伝えられておりますけれども、国民は日米間の関係は非常にきびしいものになるのではないかとおそれて、特に繊維問題の仕返しを沖繩問題で受けるのではないかと非常に心配しているわけです。いつでしたか、こういった問題もたしか新聞に出たのではないかと思いますけれども沖繩現地においてはさらに深刻にこういったことを憂慮しておりますので、こういう懸念は全くないかどうか、この際大臣からもう一度はっきりと政府の姿勢について、そしてまた今後の方針を明確にしていただきたいと思います。
  51. 愛知揆一

    愛知国務大臣 およそ交渉ごとがありました場合に、これをまとめるのが外務大臣の責任であり、仕事であると思いますので、私は繊維交渉がまとまらなかったことを非常に残念に思っておる次第でございます。いわんやこれがまとまらなかったことが沖繩問題をはじめほかの問題に影響することがあっては、ほんとうにこれはたいへんなことでございますので、及ばずながらその事後処理については努力を傾けたつもりでございますが、これは口で申し上げることはもちろんでございます。けれども、六月二十五日付と思いますが、国務長官外務大臣との間に取りかわしました書面がございます。これはそのまま何らの字句を修正せず、そのまま両国政府から共同声明として公表いたしました。これには、繊維交渉がまとまらなかったことは双方とも遺憾であるけれども、一九七二年沖繩返還話し合いその他については何らの影響を及ぼすものではないということをはじめといたしまして、両国の責任者がかわしました書面を公に発表いたしましたのでございますから、沖繩問題には絶対にこれがアフェクトすることはないと信じておりますし、また米国政府といたしましても、公式の文書によって内外に声明いたしたものでございますから、これ以上の保証はない、私はかように考えております。
  52. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 次に、ガリオア援助そして米資産買い取りの件ですが、私は三月十七日の当委員会におきまして、米軍沖繩に対するガリオア資金は返済すべきものかどうかということについて大臣に伺いましたところが、大臣は、米側からそのような要求があった場合はわが国としてはこれに応ずべきものではない、このような御答弁がありました。これを記憶しておりますが、その後もしばしばガリオア援助資金と米資産買い取りの問題が新聞紙上報ぜられております。特に六月十七日の朝日新聞の朝刊によりますと、琉球政府が十六日の臨時局長会議で資産は無償、無条件で琉球政府に譲渡さるべきことを確認し、日米両政府に要請書を提出することをきめた、このようにいっておりますが、この要請書が届いておりましたならば、ひとつ御披露といいますか、どういう内容のもので来ておりますか、いつごろ来ているか、ちょっと御答弁いただきたいと思います。
  53. 愛知揆一

    愛知国務大臣 要請書が琉球政府から出ております。これは毒ガス撤去問題その他たくさんの問題がございますが、その第二番目に「沖繩における米国支出金及び米国管理資産の処理について」というのがございまして、これも公表されていると思いますが、ただいまお述べになりました趣旨がこの中に取り上げられ、そして数字もあげてありますし、かなりこまかい説明が付加されておりますので、私は念のため関係各省にも直ちにこれを回しまして、さらによく検討して、琉球政府の御要望がここに重点があるということを日本政府側においてもとくと念頭に置くように、とりあえず処理をいたした次第でございます。
  54. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 もう一つ、六月中旬に行なわれた米資産についての第一回日米会談において、沖繩返還時に、日本側が電力、水道、開発金融公社の三公社、それから琉球政府ビル等の行政構造物あるいは米軍基地外の道路、それから通信用施設などの米資産を引き継ぐことがきまったとのことですが、第一回日米会談内容はどういった内容であったか、簡単に御報告いただきたいと思います。
  55. 愛知揆一

    愛知国務大臣 結論から申しますと、この日米間の、先ほど申しました私と米大使との間の話し合いで本件について結論が出たということはございません。双方からいろいろの意見交換、あるいは現在、御承知と思いますけれども、たとえばアメリカの財務省と大蔵省との間でもいろいろの資料の突き合わせや研究が行なわれております。そういう経過を双方から確認し合ったというだけでありまして、これは相当大きな問題でもございますので、まだまだじっくり双方意見を固めて、結論が出るのにはまだ若干の日にちがかかるかと考えております。  それから先ほど申しましたように、随時協議とでも申しましょうか、その会議で、基地の整理統合、沖繩住民の請求権、米国資産の処理、在沖繩の外国資産の取り扱いというような問題が順次取り上げられつつあるということになっておりますが、いずれも、たとえば基地の問題につきましては防衛庁というか自衛隊と申しますか、この専門家、そして向こうの国防関係の人あるいは現地軍等々との間の実態の調査等も、これが基本的に非常に必要で、鋭意作業を進めている。それから財政的、金融的な問題については、やはり双方とも大蔵省、財務省等の専門的な研究、知識が必要でございますので、分科会というような名称はつけておりませんけれども、事実上そういった人たちの双方のジョイントスタディをいま一生懸命やらしておりまして、そして、それを政治的に解決しなければならぬ。あるいは重大な食い違いがあるということが将来起こりますと、それに従って私と米大使との間でこれの調整をするということに運びたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  56. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 本院におきまして、昭和三十七年の第四十回通常国会でガリオア、エロア返済協定の審議が行なわれたわけでありますが、そのおりにもガリオア、エロアが債務であるのかどうか、それから返済すべき性質のものであるかどうか、こういうことで審議が渋滞して、ついに徹夜審議の上、政府与党が強行採決という手段をとって国会が荒れに荒れましたことは、実は私たちの記憶にまだ新しいところであります。たしか琉球政府ビルの入り口に、この建物を沖繩住民に献呈するといった趣旨の米国民政府の銅板がはめられている。かつて日本に与えられたガリオア、エロア援助については、あくまでも贈与であると思って、国会で感謝決議までしたのに返済を要求された、こういうことがあります。沖繩の場合は、銅板にしるされたごとく、沖繩の人たちはだれしも、贈与されたものであって、いまさら買い取る筋合いのものではない、このように信じておられます。特に現地では、日米間でかってに資産買い取りの話し合いを進めるのはけしからぬ、それは話が違うじゃないかという空気があるように思われますが、政府はこの点をどのように解釈しておられますか、御見解を賜わりたいと思います。
  57. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、ただいまお話がありましたように、日本自体のガリオア、エロアにつきましては、私も当時直接、間接の関係者としてずいぶん苦労いたしましたので、経過はよく承知いたしております。国会が感謝決議をされ、あるいは一方においては吉田元総理が債務と心得ているという答弁をされたこと等々を、いまもってよく記憶いたしておるわけでございますが、率直に申しますと、沖繩についてのガリオア資金につきましては、私は若干日本本土の場合と違うような感触を受けております。そして沖繩についてのまだ返還のこうした合意ができるかなり前のことではありますけれども、当時の日本政府の財政当局としては、沖繩に関連するところのガリオア資金については、これは返すべき性質のものではないと思う、こういう答弁が行なわれた事実もございますので、私もそれを承知し、かつその上に立って今後の折衝をうまくまとめてまいりたい、こういうふうに考えております。沖繩方々からは、先ほど申しましたように、要請書も出ておりますから、この点は十分頭に入れて善処いたしたいと思っております。
  58. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 佐藤総理が所信表明演説でも述べておられますけれども、確かに戦争によって失なった領土、この沖繩を平和裏に返還を受けるということは例の少ないことである、そのように思います。しかしながら、今日まで立法、司法、行政の三権を行使してきた米国には、当然に施政権者としての責任があるわけですから、ガリオア、エロアは全部沖繩住民に贈与せられたものであって、その資金によってつくられた資産、施設等は当然沖繩住民に帰属すべきものであるという結論になると思います。この点について、くどいようでありますけれども大臣の御見解を重ねて伺っておきたいと思います。
  59. 愛知揆一

    愛知国務大臣 的確に経過と法律論的な考え方を申し述べますと、だいぶ時間がかかりますし、まだ十分に練っていないところもありますから、概括的に申し上げたいと思いますが、大体いまお示しのような考え方が私は正しいと思うのです。つまり日本本土の場合と背景や経過が違うように考えられますし、それから、とにかく直接施政権の責任者として行政に当たっていたのが米側でございますから、そういう点が日本本土の場合と事情が異なる。それから沖繩におけるガリオア資金の使途でございますけれども、この使われ方も日本本土の場合とは多少違っている点もございますから、そういう点を勘考して、日本側あるいは沖繩側の根拠というものを詳細に説得力のあるものに組み立てていく、このことについては十分のかまえをしてまいりたいと思いますし、また、そうしなければならぬのではないか、かように考えております。
  60. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 これで最後ですが、ぜひともそのような方向で御努力いただきたいと思いますが、やむを得ず資産を買い取る場合、こういうことは、ここではいま必要でないことですけれども、どうしても資産を買い取らなければならぬという事態が出た場合の話でありますけれども、その積算の根拠を明確にして、そうして国民に疑惑の念を与えることなく、納得のいく解決がなされなければならないと思いますし、このことを切に希望いたします。特に資産の評価基準を、返還時の時価にするとか、あるいはその後の投下額を加算するとかいった点については、今後の交渉において米側要求に無条件に応ずることの断じてないように、これは厳に慎しむべきことだと思いますが、区別をはっきりつけて交渉に臨んでいただきたいことを要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  61. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長代理 永末英一君。
  62. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣は、韓国からアメリカ軍が何ほどか撤退していくという判断に立っておられますか。
  63. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、いま米韓両方が真剣な討議をしていることでございますから、わきから見通しを申し上げるのは、ちょっと不適当かと思います。
  64. 永末英一

    ○永末委員 昨年の佐藤・ニクソン共同声明で、朝鮮半島の安全がわが国の安全にきわめて緊要である、こういう表現をされたからには——アメリカ側は韓国から撤退するということを何べんも発表いたしている。先ほどのあなたのお話を伺っても、韓国の朴大統領から、減軍のことで頭が痛いのだ、こういう話をあなたは承っているわけです。であるならば、このことがきわめて現実の問題として、両国すなわちアメリカと韓国の間で問題になっていることは承知しておられると思います。だといたしますと、きまってから判断するという立場なんですか。だとすれば、私はいまからある一定の見通しを持ちつつ考えていかねばならぬ、こういう問題ではないかと思いますが、いかがですか。
  65. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は、まったくごもっともでございます。したがいまして、私といたしましては、この成り行きには重大な関心をもってながめておりますが、日米共同声明で日米両国の考え方というものが合意されているわけでございますが、その線を逸脱するような、朝鮮半島の緊張感をさらに拡大するような方向にアメリカが動くとは思いません。したがって、撤退といういまおことばがございましたけれども、いわゆる減軍でございまして、その程度、方法等は、国防的に支障がないというような米韓両国のことでございますから、双方が納得できるような線にこれは必ず落ちつくものである、そういうことが日本としても、よそに立っておりますけれども、望ましいことである、そういう線に必ずまとまるであろう、私は、こういう期待を持ちながら、この情勢というものを関心をもって見つめているというわけでございます。
  66. 永末英一

    ○永末委員 私は何ほどか撤退と申したのであって、全面的撤退とは申しておりません。それは別としまして、朝鮮半島の安全についてわが国が緊要である、エセンシャルであると見ておることは、いまあなたがとられているような立場ではないのではないかと私には思えるわけです。それは、いまそういうことを頭に描きつつ、もしアメリカ軍の何ほどかが韓国から撤退していった場合には、これは全体的に見て、朝鮮半島の現状から見た安全について脅威条件となるか、すなわちマイナス条件となるかならないか、どう判断されますか。
  67. 愛知揆一

    愛知国務大臣 韓国の安全、平和に心配のないという状況が引き続きつくられるということについては、私は確信を持ってしかるべきではないかと思います。
  68. 永末英一

    ○永末委員 この共同声明に、米軍の極東における存在がこの地域すなわち極東の安定に大きなささえとなっておることをあなたも同意されて共同声明を出された、これはどういう意味ですか。
  69. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、規模であるとかあるいはその内容であるとかいうことに触れておるわけではございませんで、極東と言いましても、またいろいろ地域によって差もございますけれども、一般的、抽象的に、アメリカのいわゆるミリタリー・プレゼンスというものがささえになっているという考え方を表明したものでございます。なお、この共同声明におきましても、ある部分においては地域的な点について特にメンションしたものもあることは御承知のとおりでございます。
  70. 永末英一

    ○永末委員 このくだりができるまでに、韓国側から具体的に沖繩の役割りについて指摘をして、彼らのほうの言い分があったと報道されております。また、いまあなたがおっしゃった韓国における米軍の減軍ですか、これについても、彼らが日本の何ほどか同意を得たい、こういう気持ちで意向の表明もあったと伝えられております。こういうものを前提としつつ共同声明のこの文章がとられたとしますと、文案は極東でございますけれども、特にこれは沖繩、韓国と関連をしつつこういうことばになった、こう了解せざるを得ないと思いますが、いかがですか。
  71. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その点は先ほども御質疑がございましてお答えしましたが、沖繩については、今回の会談においては、何ら先方からも話はございませんし、こちら側からももちろん何も申すことはございませんでした。それから、そういったようなことが前提になってということはございませんで、そういったような認識といいますか、情勢に対する判断というものは、昨年十一月の日米共同声明の、何と言ったらよろしいのですか、フィロソフィ、これを継承しているわけでありまして、それを越えるものでもなければそれを下るものでもない、こういう気持ちでわれわれとしては話し合いをしてまいったわけでございます。
  72. 永末英一

    ○永末委員 昨年の佐藤・ニクソン会談の場合には、アメリカに対して日本側の総理大臣が韓国問題についてのある見解発表した、こういうことですね。今度は同じことをあなたは、この経済閣僚会議、これは日本と韓国との間の話し合いでございますが、日本立場として表明された。すなわち新たに韓国に対しても、韓国の安全というものはわが国、日本の安全にとって緊要であるのだ、エセンシャルであるのだということをあらためて韓国との間にもやはり約束をされたものだ、その最終的表現がこの共同声明のこういう表現になった、私はこう見ておりますが、それでよろしゅうございますか。
  73. 愛知揆一

    愛知国務大臣 およそ一国の政府が、相手がかわったからといってフィロソフィや国策の基本を変えるべきものでもございません。したがって、先ほど申しましたように、朝鮮半島の状況について情勢の見方、判断というものについての日本としての見方というものは、相手がアメリカであろうが韓国であろうが、何ら変わるところはございません。
  74. 永末英一

    ○永末委員 アメリカ側と話をする場合には、アメリカアメリカの方針を持っておる。わがほうはわがほうの方針を持つべきであります。しかしながら、あの共同声明、昨年の日米共同声明でございますが、これを見ておりますと、何かアメリカの方針にわれわれ日本の方針を合わしたかのごとき感覚がうかがわれる。今回の場合は、韓国が韓半島の安全に対してとっておる方針に対してわが日本国が同調したかのごとき印象を私は持つのです。この点に対してあなたの御答弁を伺いたい。
  75. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういうふうにおとりになるとすれば、日本の自主的な立場というものが初めからないようなお考えをもとにしてそういう御見解になろうかと思いますけれども政府といたしましては、日本立場日本見解というものが一つあって、それに対してどこの国もがこれに対して同調している、こう考えるべきではないかと思うのでありまして、少し日本を過小評価なすった御意見ではございますまいか。
  76. 永末英一

    ○永末委員 私は、政府として、あなた方いろいろな文章を通じて、何とかわがほうも自主的な立場が明確に出ている個所はないかと思ってさがしているのですけれども、なかなかそういう個所が見つからぬので伺っておるわけです。たとえば今回の共同声明でいまのくだりのすぐあとで、名前ははっきり書いてございませんが、北朝鮮でございましょう、概称して言っておきますが、正確な名前ではありませんが、北朝鮮に対して、韓国の航空機や船舶が抑留されておる、その乗務員やあるいはこれのお客さん、乗客を早く抑留から送還をするということを両国が一緒に希望しているわけです。なぜ一体日本政府は韓国の人のことについてこういうことを言わなくちゃならぬのですか。韓国はある方針を持っておる。これに対して日本国は同調している。こういうことが出ておるから私は伺っておる。なぜこういうことを言われたのですか。
  77. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは、そこにもありますように、人道主義の立場から言えば、韓国が望むことに対してこちらが同意を表明して一向差しつかえないことではないかと私は思いますが、人道的の立場で、母国に帰りたいと言っている者に対してそんなことは言わぬほうがよろしいという必要がどこにございましょうかという気持ちでございます。
  78. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣、北朝鮮という国家がございますね、正確な名前は別としまして。それならば、そこに日本国として、この件に関して何らかの政府としての行動をされますか。
  79. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いたすつもりはございません。願望の表明でございます。
  80. 永末英一

    ○永末委員 いま人道的見地と言われましたが、別途北朝鮮に帰りたいという人々はわが日本国におります。この人々の帰るという問題について、日本国は赤十字社がこれに当たっておる。日本政府は、もし日本の赤十字社と北朝鮮の赤十字社との話し合いが何ほどか前進する場合、これを促進し、これがまとまることを期待し、人道的見地から、わが国からの北朝鮮に帰りたいという人は帰すということについて、これを実施することが日本政府の責任になってくる場合にはやる、こういう決意であるか伺いたい。
  81. 愛知揆一

    愛知国務大臣 北鮮送還の問題は、長い経過がございますから、もうとくと御承知のところと思いますが、政府は、従来から現に申請されておって、そうして政府といたしましてもコロンボ協定に準ずる取り扱いをするという趣旨で赤十字に依頼をしておるわけで、ほかのいろいろの、その後はどうだその後はどうだというような風鈴をつけないで、いわゆるワン・バイ・ワンに片づけていくという実際的な方向をとられることに北鮮赤十字側も同意をされるようにということを心から私は望んでいるわけでございまして、そういう進め方については韓国側としても同様の立場に立って協力をしてくれるということが望ましいことであると思います。
  82. 永末英一

    ○永末委員 最後のところがよくわからぬのですが、私が申し上げておるのは、日本国にもし独自の方針があるのであるならば、朝鮮半島における平和を維持しようとするためには、韓国がとっておる方針とおのずから別個の方針を日本政府としては持たなければならぬではないか。ところが、分裂国家におけるこの種の、いま申し上げた抑留問題ですね、これは単に人道的見地のみならず、きわめて政治的な意味合いのものであると私は思います。その一方の願望にきわめて容易に人道的のゆえをもって同調せられるということは、片一方政治的な意味合いを持っておる事件でございますから、一方だけの意向というものにいつでも同調するというこういう姿勢であっては、本来朝鮮半島全体における平和の維持のためにはならぬのではないか。その意味で、逆に北朝鮮とわがほうとの問題になっておるこの帰還の問題については、もっと積極的にやっていく、これはおそらく韓国側から従来までの長い歴史の経過によっても反対がございますね。あなたが最後にちょっと言われたと思いますが、単に願望ではなくて、これはやはりこういう共同声明を書くからには、この北鮮の韓国の人々の抑留を戻せということに期待するからには、やはり韓国を説きつけて、わがほうの日本国内における北朝鮮に帰りたい人の帰還に対してはちゃんとやるんだ、これくらいのことをやらなければ片手落ちじゃございませんか。御意見を伺いたい。
  83. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私、率直に申しますが、まさにたいへんよいところをついていただいたと思います。私は御同感なんです。人道主義の立場に立ってこの種の問題は処理をするということについて、私はどこの国も協調し合う、協力し合うということが望ましい。先ほど御質疑にもお答えいたしましたように、四つの分裂国家のうち三つまで日本の周辺にあるわけですから、この問題の処理には日本としては非常に苦慮するわけですが、しかし人道主義的な立場に立って処理をするということ、この種の問題については、場合によれば政治的考慮ということをできるだけ考えないで、人道主義に徹した考え方で、イデオロギーはイデオロギー、あるいはそれぞれの国の政治的立場ということはむしろ捨象して、人道主義に徹した考え方がだんだんに行なわれるようになってくるということが望ましい。私はそういう気持ちを持っておりますので、私は、言外に永末さんが非常にいいところをついていただいたと思いまして、感謝申し上げます。
  84. 永末英一

    ○永末委員 私は、わが国の平和と安全を守るためには朝鮮半島の安全を守ることがきわめて重要な問題だと思う。これは佐藤・ニクソン会談の意味ではないのですよ。そのためにあらゆる手段をやはり尽くすべし。そのあらゆる手段というのは、北朝鮮というものに対して私はあらゆる手段を尽くすということを日本の外交方針の中に組み入れるべきだと思うのです。そのことが沖繩返還に際して、沖繩における軍事基地の効用、これを議論ではなくて、アメリカ側もまた軍事基地の機能に対しておのずから違った判断を下させる基となり、わがほうの返還交渉を容易ならしめる、このように思います。  きょうは実は沖繩の軍事基地の問題について伺いたかったのでございますが、時間がまた五分ほど削られてしまったということで、愛知さんに一つだけ伺っておきたいのですが、いまの交渉状態、何らの特別の協定なく沖繩返還があった場合には、地位協定を適用して、アメリカ沖繩に持っている軍用地の貸借関係の転換ができるとお見通しかどうか、伺いたい。
  85. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも率直に言えば非常にむずかしいことですが、同時にこれが一番重点で、何らの取りきめなしにというのは、しばしば御説明申し上げておりますように、現行の地位協定を私は当面変えるつもりはございませんし、現在のままがそのまま返還の時点に完全にアプライされる、こういうことでぜひやらなければならない。これがいわゆる本土並みという大原則の一番大事なところである、こういうふうに考えておりますから、現行の地位協定をそのまま沖繩に適用するということを貫いていかなければならない、またいくべきである、こう考えております。
  86. 永末英一

    ○永末委員 現行の地位協定が沖繩返還時に適用された場合に、沖繩の土地所有権者が現在よりは被害を受ける、こういう点があるのです。  その一つを申し上げます。現在沖繩の土地所有権者が軍用地を貸与しておるわけでありますけれども、契約は二段になっておりますが、五年間の期限を切った形での賃貸借をしておる人々がある。ところが、わがほうの地位協定によるこの種の賃貸借は形式上は一年一年賃借料の計算をいたしますけれども政府はどうもこれが無期限だと考えておる節があるわけです。つまり安保条約、地位協定が続く限りと思っておる節がある。といたしますと、沖繩側は少なくとも明文をもって五年間の定期期限が切られておる、こう思っておる人々が、地位協定でそのまま動かそうとするならば無期限になってしまう。これは非常な被害ですね。この点どうされるつもりか。
  87. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま私は抽象的にむずかしいところがあるということもちょっと触れたわけでございますが、実はそういう実際こまかい点に及んでまいりますと、私は、地位協定は何としても現行のままそのまま適用していかなければならない、これはもうあくまで基本のことなのでありますが、それをやった場合に、それで沖繩の方にかえって逆に何か損害を与えるようなことがあるかもしれない、その場合にはどういうふうにそれを調整するかということは確かに一つの研究問題だと思います。とくとそれらの点、あるいはそのほかにもいろいろこまかい点が技術的にも起こってくるかと思いますが、いまそういう点を総ざらいにあらゆる場合を検討しておりますが、地位協定を改定しないそのまま適用する、この大原則は動さないでまいりたいと思います。
  88. 永末英一

    ○永末委員 これで終わりますが、現在の沖繩の土地所有権者がもし琉球政府との間に賃貸借がならぬ場合には、施政権者であるアメリカが直接に収用をかけてくる、こういう形になってくるわけですね。地位協定が適用されるということになりますと、今回はいかなる意味においても日本政府と土地所有権者との間の交渉にならざるを得ない。したがって、いままでの強制収用をかけられたような土地については別個の考え方を私は日本政府はせざるを得ないと思います。概括的に地位協定の適用といいながら、ある何かの協定でいまある沖繩の賃貸借関係を全然手を触れずに移行することはしてはならぬ問題だ、やはり一件一件土地所有権者と相談をして新たな賃貸借契約をなすべきだ、この方針で政府はいまから臨まなければやはりごたごたするのではないか。一件一件新たな賃貸借をするのだ、この決意でお臨みになるのかどうか。これだけを伺いたい。
  89. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それらの点は十分ひとつ研究させていただきたいと思います。いまそういう別個の契約形態ということを必ずしも予想しておりませんが、沖繩県民の方々現状よりもかえって悪くなることがあっては、これはたいへんなことでございますから、そういうことのないように技術的、法制的に十分検討させていただきたいと思います。
  90. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員長代理 東中光雄君。
  91. 東中光雄

    ○東中委員 時間がございませんので簡単にお聞きしたいのですが、沖繩県民の対米補償請求権の問題についてですが、最近の新聞で、外務省沖繩返還協定交渉細目を整理し、沖繩住民の対米請求権の処理について、奄美、小笠原両返還協定でいずれも対米請求権を放棄した例から見て、沖繩の場合も請求権を放棄せざるを得ないとの見方をしておるようだ、こう報道しておりますが、沖繩県は二十五年間、しかも百万近くの県民がいるという状況で、いろいろな被害があったわけですが、奄美、小笠原とは条件がだいぶ違うと思います。そういう点で対米補償請求権問題について外務省としてはどういう方針で臨んでおられるか、お伺いしたい。
  92. 井川克一

    ○井川説明員 あらゆる請求権問題につきましては、ただいま仰せられましたように、日本側といたしましてこれを放棄するというふうな決定をいたしたことはございません。目下のところ、もろもろの請求権につきましていわゆる洗い出しをしている段階でございます。   〔鯨岡委員長代理退席、大村委員長代理着席〕
  93. 東中光雄

    ○東中委員 請求権を放棄するという決定はしていないと言われたのですが、請求をするという観点でやっておられるのか。ただ無方針で調べておるということじゃないと思うのですが、その基本的な方向ですね。沖繩については小笠原や奄美とは違う状況にあるという前提で進んでおられるのかどうか。その点とあわせて、いま検討しておられるという請求権の内容といいますか、あるいは沖繩県民の受けた被害の種類あるいは補償の程度、そういった問題についてどの程度すでに調査をされたか、その点をお伺いしたい。
  94. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま私念のために事務当局で何か見解を出したことがあるかと思って条約局長から御答弁させたわけでございますが、いまお聞き及びのとおりでございます。私も請求権を放棄するというようなことは考えておりません。請求すべきものは請求するのが当然である、かように考えます。  それから小笠原、奄美と沖繩とが全然違うのではないかというお尋ねですが、必ずしもこれまた断定的に全部違うんだとも言えないのじゃないかと私思いますが、その辺のところはいま洗い出しまして、こういう種類の請求権については請求すべきものである、こういう問題についてはどういうふうに処理したらいいかというようなことについて、原則的にこうだああだという政府としての統一見解を申し上げられるところまでちょっとまだ研究が進んでおりませんので、その点は御了解願いたいと思います。
  95. 東中光雄

    ○東中委員 私、内容について一、二お聞きしたいのですが、たとえば戦争終結直後に沖繩では沖繩県民が一定地域に囲い込まれて、そのほかはむしろ全部米軍が使うというふうな状況があった。それからだんだん開放していって、むしろ基地が優先的に県民から手続なしの収用をされておるという経過があったわけですが、こういう問題についてヘーグ条約、いわゆる陸戦の法規慣例に関する条約からいっても、個人財産の補償というものがあるわけですが、こういうことでこうむった沖繩県民の被害に対する補償請求権というものは、もともと沖繩県民にあるものだという前提でものを処理されていくのか、それはもう沖繩についてはないのだという前提でいかれるのか、その点をまずお聞きしたい。
  96. 井川克一

    ○井川説明員 ただいまの御指摘の点は、いわゆる講和前補償の問題かと存じますけれども、講和前補償の問題につきましては、すでにお答え申し上げましたとおり、平和条約十九条の法解釈といたしましては、放棄されている、しかしながら、施政の任に当たるアメリカ政府が住民の幸福その他をはかるために、それに対して道義的責任を有しているということは申し上げましたとおりでございまして、またこの点につきまして、日本政府から十億円、及びアメリカ政府から約二千万ドルのお金が支出されているわけでございます。
  97. 東中光雄

    ○東中委員 講和条約によって、十九条の(a)で放棄されたという見解外務省がとっておられるというのは、参議院の沖特でも答弁されておることは承知しておりますが、私がいまお聞きしたのは、講和条約の十九条で放棄したというその権利の内容は、終戦直後の、あるいは朝鮮戦争前後の土地収用、あるいは土地収奪と言ってもいいような形で沖繩県民が権利を侵害されたことは事実だと思うのです。その権利侵害の事実、ヘーグ条約なんかから見て、これは不法行為になるということをたてまえにして、そしてなお無条件で沖繩県民のそういう権利を日本政府は放棄したという考えをいまもとっておられるのかどうか、そこのところをお聞きしたいわけです。
  98. 井川克一

    ○井川説明員 平和条約の趣旨というものが、戦争の結果及び占領の結果として生じましたもろもろの事件というものを一括して解決するという趣旨でございますので、その場合におきまして、その根源が不法行為である云々ということではなしに、十九条におきまして、あらゆる請求権というものにつきまして国と国との関係におきまして放棄いたした、ということになっているわけでございます。
  99. 東中光雄

    ○東中委員 国と国との関係で放棄した。しかしもともとその被害補償請求権というのは沖繩県民が持っているわけだ。その点について沖繩県民が持っているのだという前提でそういう処置をされたのか。しかも講和条約後引き続いて施政権アメリカ軍が持っておるという状態では、戦争終結による最終的な清算ということにはその時点ではならぬわけです。だからいま問題になるわけなんで、その点はどういうふうに考えておられるか。
  100. 井川克一

    ○井川説明員 ちょっと私御質問の趣旨がわかりかねまして申しわけないわけでございますけれども、いわゆる法律上の請求権の有無にかかわらず、あらゆる請求権というものが十九条によって放棄されているわけでございます。ただしアメリカ施政権者の責任といたしまして、その請求をなす方々に対しまして一定の補償をするということは、またこれ別のことでありまして、現にアメリカ側もそれを約二千万ドルのお金でやったわけでございます。
  101. 東中光雄

    ○東中委員 時間の都合があるようですので、この続きはあとでまたすぐ聞かしていただきたいと思います。一応外務大臣についての質問は終わって、あと条約局長なりに質問させていただきたい、こう思います。
  102. 大村襄治

    ○大村委員長代理 中川嘉美君。
  103. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 引き続きまして、沖繩のハンセン氏病対策について伺いたいと思いますが、まず屋我地にある沖繩愛楽園と宮古島にある南静園、この二つの療養所は、沖繩の祖国復帰と同時に当然国立に移管すべきものと考えるのでありますけれども、この点についての政府の所見を伺いたいと思います。  ここにいま愛楽園の入園者自治会からこういうような、本土復帰と同時に国立に移管するようにという要請書が来ておりまして、この際政府のあたたかい配慮のある御見解をお聞かせいただきたい、このように思います。
  104. 信沢清

    ○信沢説明員 先生御承知のように、沖繩が復帰いたしますれば、本土のらい予防法が当然適用される、このように私ども考えておるわけでございまして、らい予防法によりますれば、国はらい患者の療養のために国立の療養所を設置してその運営に当たる、こういう趣旨の規定がございます。したがって、いまお話しの二つの療養所につきまして、復帰と同時に国立に移管すべきもの、このように考え、目下必要な準備を進めている段階でございます。
  105. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ただいまのお考えはよくわかりましたけれども、ひとつ今後とも国立移管が実現するようにぜひとも御尽力をいただきたい、このように思います。  次に、現在沖繩には、いま申し上げた二カ所のハンセン氏病の療養所があって、約一千人の患者が重病にあえいでいる。ここに屋我地の愛楽園の自治会の田場会長から訴えられたところの陳情書が参っておりまして、これによりますと、沖繩のハンセン氏病患者の食費が一日三十六セント、これは御承知のように円でいきますと百三十円、本土の患者は六十一セントですから二百二十円、こういうふうになっておりまして、こんな少ない百三十円の食費では、もう療養などとてもできない。親戚や縁者も援助してくれる人はいない。七二年復帰などとても待てない、一日も早く本土並みの療養ができるようにしてほしいというような切々とした訴えがあるわけです。一日三食の食費が百三十円ということでは、確かにどうにもならないと思います。このように日の目を見ない一番弱いところにこそ、政治があたたかい援助の手をまっ先に差し伸べなければならない、このように思います。いまかりに沖繩の一千人の患者に本土並みの食事がとれるように援助を与えるとしますと、一人九十円、すなわち本土が先ほどの二百二十円ですから、二百二十円と向こうの百三十円、その差額の九十円、この九十円が千人でもって年間どのくらいになるかといいますと、約三千万円という数字になるわけです。このくらいの援助は琉球政府も七一会計年度からでも実現できるように努力すべきじゃないか、このように思いますが、きょうは山中長官おられたら決意のほどを伺いたかったのですが、政府としての決意をここで伺いたいと思います。
  106. 信沢清

    ○信沢説明員 ただいま先生からお話しのございました患者の御要望は私どものほうにも参っておりまして、御指摘のような本土との格差というものがあることは私ども十分承知をいたしておるわけでございます。したがいまして、いま先生のおことばにありましたように、現状において何らか援助の方法がとれないのかどうかというような点を含めまして検討をいたしておるということを先ほど申し上げたわけでございます。
  107. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 また愛楽園の園長あるいは医務課長等は一年も欠員のままできているそうです。琉球政府のほうから医師を派遣してくれという要請はいままでのところあったかどうか。これは当然向こうからは来ていると思うのですが、このような点も親身になって考えていただきたい、このようにあわせて要望するわけでありますが、ここにやはり私ども党の、つい最近沖繩へいろいろと調査に行ってまいりました同僚議員の持ち帰った資料があります。これを見ますと、医師とか看護婦の不足あるいは職員の不足、いろいろの面で向こうの実情を訴えておりますけれども、こういった面について、最近何かそういった派遣してほしいという具体的な要請があったでしょうか、その辺ちょっと伺いたいと思います。
  108. 信沢清

    ○信沢説明員 最近特にただいまの点について琉球政府から要請があったというようなことはございませんが、従来からそういうお話は伺っておるわけでございます。ただ、たいへん残念ながら、実は本土の国立のらい療養所が十一カ所ございますが、ここがすでに医師、看護婦が大幅に定員を割っているというような状況でございますので、そういう観点から、なかなか思うにまかせないというような実情でございます。しかし、実情は先ほど来申し上げておりますように、私ども逐一琉球政府からも聞いておりますし、機会を得て人が出ました場合には、向こうの状況も調べておりますので、できるだけ御要望に沿うように努力いたしたい、このように考えておるわけでございます。
  109. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 これはぜひとも具体的な検討をさらに加えていただいて、一日も早く、本土を含めて、いま本土の実情も伺いましたが、どうかひとつ一日も早く送っていただきたい。何か話によりますと、沖繩現地で医師をどうにかしろという話を伺っておるのですが、これは無理な話なんで、どうかひとつ本土のほうで一日も早く具体的な推進をお願いしたい、このように思います。沖繩では年々新しい患者が少数ながら発生しているようでありますが、ハンセン氏病、これを根絶する方法については政府でどのように考えておられるか、このハンセン氏病の根絶について、ひとつ方法を聞かしていただきたいと思います。
  110. 月橋得郎

    ○月橋説明員 らいの予防対策につきましては、わが国の本土ではらい予防法、それから沖繩につきましてはハンセン氏病予防法ということで対策を進めておるわけでございますが、御指摘のように、沖繩にはかなりの患者がおりまして、現在登録されておる患者が大体一千名近くおります。これに対しまして、もちろんらい予防法並びにハンセン氏病予防法に基づきましてその治療あるいは患者の福祉等につきまして実施をされておるわけでございますが、特に政府の技術援助といたしまして、これら療養所あるいは外来患者に対しますところの医薬品の支給、それから現在らいにかかっておりまして、特に高校生など学習を行ないながら療養を行なう必要がございますので、そういう者につきましては、本土の療養所に二十六名を収容いたしまして、学習並びに治療を実施しておる。それからもう一つ対策といたしましては、特に沖繩の場合は若年者のらいの発生が多いという実情がございますので、これに対しましては、昭和四十二年から年次計画を立てまして、医師九名、看護婦三名を派遣いたしまして、これが早期発見につとめますと同時に、その発見された患者に対する医療並びにその管理というふうなことに力を注いでおる実情でございます。
  111. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いま高校生の問題も出ましたけれども、無菌者に在宅治療というものを認めているとのことですけれども、やはりこの辺に非常に問題があるのじゃないかと思います。療養所内においてあるいは検査のときたまたま菌が発見されなくても、長年自宅治療をやっていると、何かのおりに家族等に感染する、このようなことが起きるんじゃないかと思いますが、この点については、本土と同様に在宅治療というものを認めないで、全員療養所に入所させて、ハンセン氏病の根絶についてき然たる対策を打ち出していかなければならぬじゃないか、このように思います。このことについてぜひとも政府の勇断を要望するわけでございます。このような点は人員が限られておりますし、施政権返還の前であっても、政府がただその気にさえなれば実現できるのじゃないか、このように思うわけでございます。復帰前でも、できることは小さいことから一つ一つ解決していかなければならないと思いますが、こういった点についてはいかがでございましょうか。御答弁を願いたいと思います。
  112. 月橋得郎

    ○月橋説明員 らいの治療につきましては、わが国におきましても最近治らい薬の開発が急速に進んでおります関係、あるいはいろいろな社会事情の好転というふうなことを考慮いたしまして、感染の可能性のない患者については外来医療を積極的に進めていくというふうな考え方も一部にあらわれておるわけでございますが、こういう点を考慮いたしまして、沖繩のらいの感染の可能性がある患者に対しましても、本土の復帰にあわせまして十分に検討を進めながら、らい予防対策について十全の措置をはかってまいりたい、かように考えております。
  113. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いまの御答弁にありましたように、積極的にというお話がありましたけれども、現時点において何か沖繩のハンセン氏病についての具体的な方策といいますか、それは現に進んでおりますか、その点ちょっと御答弁いただきたいのです。
  114. 月橋得郎

    ○月橋説明員 先ほども申し上げましたところでございますが、らいの患者はなおるというのが今日の医学の常識でございます。したがいまして、患者をなるべく早期に発見して、なるべく十全な治療をするというのがらい予防あるいはらい治療の原則でございますので、こういう観点から特に高校生、中学生あるいは小学生の検診を十分に実施いたしまして、少なくとも早期の治療を実施する。そのほか沖繩におきます対策は、御視察でおわかりのとおりに、外来治療というものにかなりウエートも置いておるわけでございますが、この点は先ほども申し上げましたように、感染の可能性がない者は、指定医師によって十分に管理をされた上で決定されておるわけでございますので、このような対策は、現在の医学常識から申し上げますと、きわめて合理的な方法であろうということでございます。ただ、感染をいたす可能性のある患者につきましては、これはハンセン氏病予防法に基づきまして、すべて入所させることによって退所の可能性が出る、これは菌が出なくなるという時期でございますが、この時期までは十分な管理と福祉を考慮しながら治療が行なわれているというのが実態でございまして、この早期発見につきましては、昭和四十五年も特に技術援助の中身で実施をはかってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  115. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 最後ですけれども一つ要望したいことがあります。この沖繩のハンセン氏病療養所内の図面がここにあるのですけれども、これはだいぶ広い。こうやって見てみますと、寮も相当たくさん建ち並んでおりますし、かなり広大な面積になっておりますが、ここの食事が、三度三度患者がリヤカーを持って中央炊事場というのですか、この図面のまん中に炊事場がありますけれども、ここまで行かなければならない。非常に距離があるわけです。次の食事の前に器を返しに行かなければならない。そういうわけで、一日のうちに合計六回自分の病棟から中央炊事場まで行かなければならない。これを見ただけでもたいへんな距離があるわけです。具体的な問題でありますけれども、こういうふうに構内が非常に広いわけなので、どうか本土の療養所におけるように、本土の療養所は職員が小型車か何かで配って回るそうですけれども、この点についてもリヤカーとかそんなものにかえて、食事を配るための車を購入するとか、あるいはまた寄贈するとか、そういったことをぜひ考えていただきたい、こういうことは現地の非常に切々たる訴えとして出てきているわけです。そういった意味で、私はこういったことこそ非常に大事なことじゃないか、このように思いますので、どうかひとつ善処方をぜひお願いしたいことをこの際要望いたしまし、簡単ですけれども質問を終わりたいと思います。
  116. 大村襄治

    ○大村委員長代理 東中光雄君。
  117. 東中光雄

    ○東中委員 さっきの続きをお伺いしたいのですが、講和条約によって沖繩県民の講和前の被害は全部請求権を放棄したという趣旨のことを言われておるわけですが、放棄した内容について先ほどから聞いているわけです。ヘーグ条約なんかに違反した、そういう問題はあったけれども、しかしそれももう放棄するということなのか、そういうものはなかったけれども、そのほかのものを全部放棄したという趣旨で言われておるのか、そこのところをまず聞いているわけです。
  118. 井川克一

    ○井川説明員 そのようなものがございましても、十九条によりまして放棄されている、こう申し上げた次第でございます。
  119. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、請求権を放棄するという場合に、何を放棄したかということをきめないままで、そういうものがあるかないかわからぬけれども、あってもそれは放棄するのだ、こういう態度でおったというふうにいま言われたように思うのですが、今度の返還協定で請求権を放棄することは決定していないけれども、請求をするかあるいは放棄をするか、そのための前提としていろいろ調査をするということですが、これはやはり放棄するならどういう請求権があって何を放棄するのだ、これは当然のことだと思うのですね。何かわからぬけれどもとにかく放棄するのだ、そういう自主性がないことではないと思うのですが、そういう点、調査はいま進めておるということですけれども、どの程度進んでいるのか、どういう項目について調べておられるのか、その点はいかがでしょうか。
  120. 山野幸吉

    ○山野説明員 お答えいたします。沖繩のほうで沖繩返還に伴って各種の請求権問題がある、そのうち、いわゆるいまお話に出ておりますのは復元補償の問題が中心だろうと思いますが、そのほかにもたとえば漁業補償の問題でございますとか、あるいはまた沖繩で従来賃借権契約で、賃貸料を米側から受けているけれども、これが不当に低いとかいうような、現地側でのこれに対する措置についての御要望もあるようでございます。それからまた、終戦前後におけるいわゆるつぶれ地補償というような問題も提起されているようです。それからまた講和前補償で先ほど話に出ました約二千万ドル払われた補償のうち、いわゆる人権関係の補償漏れの問題がございます。そういうような、沖繩返還に伴いまして、二十五年間の米国施政下におけるいろいろなひずみと申しますか、そういうようなことをめぐっての各種の補償問題がございまして、これらを全体として一体実態はどうなのか、そういうことについて私どものほうで目下琉球政府を通じて全般的な調査を行なっております。
  121. 東中光雄

    ○東中委員 講和前の人身損害についてですが、琉球政府沖繩県祖国復帰協議会から講和発効前の米軍人軍属の不法行為による人身損害の補償についてという要望書や陳情書が来ておりますが、米軍人による射殺あるいは轢殺あるいは強姦、あるいは強姦致傷、強姦致死、傷害、傷害致死、いろいろな事件が現にあった。いま言われた一部補償されたということでありますが、全く補償されていないというのが指摘をされてきていると思うのです。死亡事故で百六十件、傷害等で百五十七件、合計三百十七件、補償要求総額が五十七万三千八百八十七ドル余り、こういうことをあげてこられておると思うのですが、こういう講和前の不法行為による人身損害、これに対しては外務省アメリカに請求をする考えは持っておられるのかどうか、対策庁としてはこういう現実の損害に対してどうなさるつもりなのか、お聞きしたいと思います。
  122. 山野幸吉

    ○山野説明員 お答えいたします。いま御指摘ございましたように、琉球政府のほうから、講和前補償の補償漏れとしまして、三百十七名に対して約五十七万ドルというものが補償漏れになっておるということが、日本政府のほうへも説明がありました。しかしこの問題につきましては、本来約二千万ドルの補償が払われましたときに解決すべき問題であったと思うわけでございますが、どういう実情があったのでしょうか、そういう補償漏れが出た。アメリカ側としては、二千万ドルの補償そのものについても、元来アメリカとしては補償の義務はないのだけれども施政権者の立場から恩恵的な意図で補償をしたというようなことが言われておりまして、したがいまして、この補償漏れについては、さらにこれを補償するという意図はないように聞いておるわけであります。  いずれにいたしましても、こういう問題は、返還協定沖繩返還に伴って今後十分検討調査をし、そうして最終的な結論を出すべき問題だと思うわけでございまして、目下私どもも、先ほど申しましたように、そういうことを踏まえて正確な事実の把握のための調査をいたしておる段階でございます。
  123. 東中光雄

    ○東中委員 アメリカ側が一九六五年のいわゆるあの補償法でやったというのは、これはまさにいま言われたように恩恵的なものである、あるいは道義的な倫理的な責任でやったんだ、それは実際ほかの地域と比べて不公平になるからだ、こういう観点からやっているわけですが、ただ私がお聞きしたいのは、そういう人身損害の補償請求権というのは、不法行為に対する補償請求権ですから、それは沖繩県民が法的な権利として持っている権利じゃないのか。アメリカが一九六五年にやったというのは、これは恩恵的にやった。法的な義務としてやっているわけではないわけです。その問題、法的な権利は沖繩県民にあるのかないのか。恩恵的にやられたときに、いろいろな事情があって時期的に間に合わなかった、あるいは知らなかった、請求できなかったということはあったとしても、それは恩恵的な六五年補償法による問題であって、本来持っておる法的な請求権、射殺された、強姦されたというようなそういう事案についての請求権は、一体日本政府としては請求を沖繩県民のためにしないのか。当然すべきじゃないかと私は思うのですが、その点はどういうお考えでおられるのか。そういう事柄の性質上、問題をどういうふうにつかんでいま調査をされておるのか、これをお聞きしたいわけです。
  124. 井川克一

    ○井川説明員 先ほどもちょっと申し上げましたが、平和条約の趣旨というものが、いわゆる戦争状態に全面的に終止符を打ちまして、結局一言で申し上げますならば、国と国との関係におきましてすべての請求権問題を一括して整理するということにあるわけでございます。したがいまして、たとえば十九条と直接関係はございませんけれども日本人の在外財産におきましても、それを没収するというようなことに対しまして、個人の財産を没収されても、日本政府といたしましては、これに対する抗議とかその他のことができない、国際法上向こうが責任を持たないということでございまして、十九条の個人の請求権も、向こうがたとえば国内法上の請求権を否認いたしましても、わが国としてはその相手国の責任を追及することができない、こういう意味であるわけでございまして、沖繩に戻りますならば、沖繩の個人の請求権というものが、たとえば一九六五年の損害補償法でございますか、それに従いまして払われるということは、向こうの立場であるわけでございます。しかし、その場合に、十九条の趣旨は、向こうが否認いたしましても、わが国といたしましてはその相手国の責任を追及することができないというのが平和条約の趣旨でございます。
  125. 東中光雄

    ○東中委員 平和条約の第十九条の(a)の効力についてお聞きしておきたいのですが、少なくとも沖繩県民には、戦後すぐにニミッツ布告なり行政分離覚え書きで、日本政府施政権が全く及ばなくなった。同時に講和条約が結ばれるそのときに、だから日本政府沖繩県民の意思を代表するような立場にはなかった。沖繩県民は選挙権もなければ、日本政府沖繩県民を代表しておるという立場には当時なかったわけです。そして沖繩県民の現実に受けた不法行為による損害、それを戦後処理という形で、日本政府沖繩県民の信託も何もなしに完全に放棄してしまったということで、あとそれで何もしない。こういうことが、日本政府のとっている態度として私はどうしても理解できないのです。それでは全く沖繩県民を売り渡しているようなかっこうになってしまう。だからその点については講和条約の効力が及ぶのか及ばぬのか、私は及ばないと思います。及ぶとしたらそれに対してどういう処理を今後していくつもりか、それをお聞きしたいわけです。
  126. 井川克一

    ○井川説明員 将来の問題につきましては私のあれでございませんが、それまでの十九条の解釈につきましては、確かに遺憾なことでございますが、仰せのとおり平和条約全体につきまして沖繩県人が発言の機会がなかったということはそのとおりでございます。しかしながら、十九条云々ということでございますけれども、私どもといたしましては、この平和条約の趣旨というものが、先ほど来申し上げておりますように、平和関係をもたらしました戦争関係のもろもろの案件を一括全部処理するんだというたてまえで、この十九条から、ことにわれわれといたしましては、この平和条約の日本国及び日本国民ということばの中から沖繩及び沖繩県人の方を除外するというふうな主張はとてもできるものではございません。私どもといたしましては、私、単なる事務屋でございまするけれども、平和条約の解釈からいたしましても、沖繩日本国の領域であり、沖繩の方が日本国民であるという立場から平和条約というものをずっと解釈してきているわけでございまして、その意味からいたしましても、この十九条というものに沖繩及び沖繩県民の方がいかんということは別といたしまして、本土と同様に入っている、こういうわけでございまして、したがいまして、その後の施政権者としてのアメリカの道義的責任の問題、及び日本国の国民であるという点からしての日本政府としての道義的な問題は、確かに御指摘のとおり、今後もっと検討すべき、いわゆる五十何万ドルの問題その他の問題がございまするけれども日本政府といたしましては、いままでのところ、一応十億円の支出及びアメリカ側はその法律によりまする二千万ドルの支出ということによって大体片づいているわけでございまするけれども、その後確かに御指摘のようなこともございますので、目下沖繩北方対策庁において十分事実の把握及び問題の検討につとめられておるわけでございます。
  127. 東中光雄

    ○東中委員 あとで対策庁のほうへお伺いしますが、その講和条約の効力の問題について、沖繩県民は日本国民でないなどとはとうてい考えられなかったというふうなことをいま局長言っているのですけれども、その沖繩県民の施政権を売り渡してしまったわけですから——売り渡すというか、とにかく日本施政権が及ばぬようにしてしまったその条約なんですから、沖繩県民は日本国民と同じように扱っておったのではないという条約なんですから、普通ならば、いままでの第一次大戦あるいは第二次大戦後の占領下で生じた損害については、アメリカを当事者とするそういう補償問題について戦敗国が請求権を放棄した場合に、戦敗国がその国民に対して補償するというふうな条項を入れているのが慣例になっていますね。今度の場合はそれが入っていない。この講和条約では入っていない。それは、その後引き続いて沖繩アメリカ施政権下に置いてしまう、日本施政権が及ばないという状態にある、そういう特殊な状況にあるからそういうものを入れなかったというよりは、むしろそういう沖繩県民の請求権を放棄するということを日本政府はその条約の中へ入れてなかった。もし入れたのだったら、当然アメリカ施政権下に入ってどうするかということについて、単に道義的なものではなくて、倫理的な補償を六五年法でやっているというような問題でなくて、法的な問題としてどうするかということが当然きめられておらなければいかぬと思うのですが、そういう点から見ても何かの処置を、講和条約十九条(a)をもってくるのだったら、ここでは普通に処理されている方法で処理されていない、慣例的に問題が処理されていない、法的な請求権を持っている沖繩県民のその権利をどうするかということについて、条約外なら話はわかりますが、条約の中に含まれるのだったら、それをどうするかということについては、日本政府としてどうする考えだったかということがはっきりしない。奄美返還協定のときには、だからわざわざ講和条約で放棄したものでないことを前提にして、返還協定で放棄したと書いているわけですから、返還協定で請求権を放棄するまでは、講和条約では放棄されていないというたてまえに立っているわけですから、そういう点で言うならば、沖繩の場合も当然同じ考えになっていなければいけないのじゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  128. 井川克一

    ○井川説明員 十九条全体の問題でございますけれども、確かに今度の平和条約、この第二次大戦を解決いたしました平和条約、イタリア平和条約につきましては、イタリア国政府の損失補償責任というものが明記されてございます。ただし御指摘のとおりに、サンフランシスコ平和条約には書いてございません。ただ、お説によりますと、それが沖繩があるためにそのような日本政府のいわゆる損失補償、損害補償責任というものが書かれなかったということは、これはやはり事実に反するのではないかと思います。当時の場合、平和条約をごらんくださればおわかりと思いまするけれども、当時の日本の財政状態、経済状態からいたしまして、賠償条項につきましてもかかわりございますけれども、ああいうすべての損失、損害補償というものを日本政府の義務とするということを全部連合国側が避けたわけでございまして、これは日本本土全部に関係があることでございまして、沖繩がなんであるから、したがいまして日本政府の本土内における損害賠償の責任を規定しなかったというわけでは全くないのじゃないかと思います。その点が第一点でございます。  第二点に、請求権があるからというふうなおことばで、確かにそのとおりでございまするけれども、あの十九条というものは、御存じのとおりに、これまた沖繩ばかりでなく、主として日本本土に関係がある条項でございます。確かに請求権があった云々というふうなことも全部含めまして放棄いたした、いわゆる決着をつけたということになるわけでございまして、沖繩だけというふうなことは私も申したことはございません。十九条というのは日本全土にかかるものでございます。  また奄美協定のことを御指摘になりました。御指摘のとおりでございます。ただし、これはすでに私も御答弁申し上げたところでございまするけれども、奄美協定のあの条文というものは確認規定であって、小笠原協定にはそのような規定がないわけでございまして、奄美協定にあのような条文があるから沖繩における十九条の適用はないというふうに解釈すべきではないと、私ども従来より政府は一貫して考えている次第でございます。
  129. 大村襄治

    ○大村委員長代理 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  130. 大村襄治

    ○大村委員長代理 速記を始めてください。
  131. 東中光雄

    ○東中委員 講和前の問題については対策庁としてはどうするつもりでおられるのか。現実に不公平な事態、現実に被害をこうむった事態、そういう点についてどうするつもりでおられるのか、その点をひとつ簡単に言ってください。
  132. 山野幸吉

    ○山野説明員 お答えします。先ほど申し上げましたように、これは本来二千万ドルの補償の中で解決せらるべき問題であったわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、米側に支払いの義務がないというたてまえに立ちつつも、恩恵的にこういう措置がとられたのだから、補償漏れの問題についても、これは希望でございますが、米側がそういう特別な措置をとっていただければこれにこしたことはない。しかしそういうことも困難であるというようなことがはっきりしましたときは、いま御指摘のように、三百十七名の人の取り扱いとしてきわめて不均衡な、不公平な状態が出ておりますから、少なくともこういうような個人の方をそういう不均衡な状態のままにおくことはできない。そういう意図から、その方法はいま、米側の気持ちもわかりませんので、日本側としてどうするかということは言えませんが、少なくとも個人のそういう不均衡な状態は解消する方向で政府部内でひとつ十分検討してまいりたいと考えております。
  133. 東中光雄

    ○東中委員 もう一つ、講和前、講和後を含めて、漁業権の補償というものは、これは米軍側は全くやっていないわけですが、この点をどういうふうに考えるか。これは本土との関係からいえば、沖繩県だけを差別することになるので、この点についての補償を米側要求するかどうか。それから同時に、日本政府としてどうするか、補償すべきだという立場に立ってやるのかどうかという点をもう一点聞きたい。
  134. 山野幸吉

    ○山野説明員 お答えします。この漁業権の補償の問題につきましては、米軍関係した問題もあろうかと思いますが、もっと全面的に日本の、いわゆる戦後における漁業権を買い上げて再配分した、そういう漁業権の改革の問題に関連して、沖繩が復帰する際にこれをどうするんだという問題があろうかと思います。これらの問題につきましては、現在十分調査をいたしておる段階でございまして、まだいまの時点におきまして、これをどうするということを申し上げる段階にはないわけでございます。
  135. 東中光雄

    ○東中委員 最後に、講和後の問題について聞きたいのですが、人権侵害問題がずいぶんあります。これも私が一々指摘するまでもない。特に最近非常に多いわけですが、こういう問題についての補償は、補償をしているアメリカの適用法律が、損害を補償するということを目ざしての法律ではなくて、むしろ外国人損害賠償法といわれているあの法律の目的からいって、外国居住者と米国との間の親善関係を維持促進するために迅速に解決するというたてまえ、だからそれについての裁判権も認めないし、加害者である米軍の一方的査定で全部が押し切られているし、一件一万五千ドル以上になるときは連邦議会の承認が要るというようなことで、そういうふうな補償がされることは例がないとか、しかも請求総額に対する裁決が出されても、内訳が明らかにされない、こういったいろいろな問題があって、結局請求額の一〇%からせいぜい五〇%くらいの補償しかされていない。これは法律のたてまえが違うわけですから、沖繩県民であるがゆえにそういう沖繩沖繩県民が被害を受けたから、そういう補償が非常に少ないという状態のままで返還協定を結んで、そのままほっておくというようなことは許されないと私は思うわけですが、そういう点について本土と差別をつけないという、そういう観点から、あるいは加えられた損害に対しては全面的な必要、十分な補償は請求権があるんだという点から見て、十分に補償されていない分についてアメリカ側に請求をするかしないか、日本政府としてそれに対してどういう処置をとるかという問題。それから土地の使用料についても、沖繩タイムスの社説も言っておりますけれども、軍用地であれば年間坪当たり二十セントぐらいの畑も、住宅企業用地として使えば一ドルから一ドル五十セントぐらいが相場になる。ずいぶん安くやられている。これは現在損害をこうむっているわけです。そういう問題は補償するのかどうか。それから特に復元問題ですが、軍用地の復元については、復元補償の請求権の発生するのは返還時だというのが常識的だと思うのです。法律的にいって当然そうだと思うのですが、アメリカ側は必ずしもそういう態度をとっていない。これは今後復元請求権についてはどういうふうにするか。こういった問題がさきの漁業権の問題とあわせて重要な問題だと思うのですが、講和後の問題について請求権を放棄するという立場でないことはお聞きしましたが、いま申し上げた人身事故、土地復元、地代、漁業権、この問題についてはアメリカ側に要求をする方向でやるかどうか。それから、もし要求しないというのだったら、日本政府としてはどうするか。沖繩県民の差別的扱いをしないという立場でひとつ回答をはっきりしていただきたい。
  136. 山野幸吉

    ○山野説明員 お答えいたします。沖繩返還に際しましては、いま御指摘のような二十五年間の米国施政下におけるさまざまな補償問題があるわけでございまして、そのために私どもは、こういう問題をどういうぐあいに処理していくかという面から、全般的な実態の把握、調査をやっておるわけでございます。で、あるものは合理的なものであり、あるものは合理性を欠く問題もあるかと思います。しかしながら、いずれにしましても、沖繩返還に際して、これらの補償問題を円満に解決していくということは、日本政府が当然やっていかなければならぬ問題でございます。先ほど来御指摘の、たとえば人身傷害に対する補償がきわめて不当な法律のもとに行なわれておる、こういうものは改正すべきであるとか、あるいは過小に補償がなされておるとか、いろいろ問題があります。ありますけれども、私どもはいまの時点において、これは対米請求するとか、あるいはこれは日本政府が持つとか、そういうようなことをきちっと申し上げられるような段階にないわけでございまして、各種の補償請求権につきまして詳しくその実態を把握しまして、政府部内で十分その内容検討いたしまして、返還協定の締結の際あるいはまた返還の時点におきまして、これらを円満に解決していくようにひとつ政府間で十分話し合ってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  137. 大村襄治

    ○大村委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十九分散会