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1970-06-18 第63回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年六月十八日(木曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 池田 清志君    理事 大村 襄治君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 床次 徳二君 理事 川崎 寛治君    理事 中川 嘉美君 理事 永末 英一君       小坂善太郎君    中村 寅太君       本名  武君    中谷 鉄也君       広瀬 秀吉君    大久保直彦君       門司  亮君    林  百郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中曽根康弘君  委員外出席者         総理府総務副長         官       湊  徹郎君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         沖繩北方対策         庁長官     山野 幸吉君         沖繩北方対策         庁総務部長   加藤 泰守君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省条約局長 井川 克一君         大蔵政務次官  中川 一郎君         大蔵大臣官房審         議官      赤羽  桂君         大蔵省国際金融         局長      奥村 輝之君         通商産業大臣官         房地方管理官  西山敬次郎君         参  考  人         (琉球政府立法         院議員)    伊芸 徳一君         参  考  人         (琉球政府立法         院議員)    桑江 朝幸君         参  考  人         (琉球政府立法         院議員)    崎浜 盛永君         参  考  人         (琉球政府立法         院議員)    知花 英夫君         参  考  人         (琉球政府立法         院議員)    仲松 庸全君         参  考  人         (琉球政府立法         院議員)    中山 兼順君         参  考  人         (琉球政府立法         院議員)    長嶺 秋夫君         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 六月十七日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     林  百郎君 同月十八日  辞任         補欠選任   小平  忠君     門司  亮君 同日  辞任         補欠選任   門司  亮君     小平  忠君     ————————————— 五月十三日  一、沖繩及び北方問題に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  沖繩及び北方問題に関する件  沖繩における米軍毒ガス兵器撤去に関する件  沖繩県民に対する米国軍人等犯罪防止等に関  する件      ————◇—————
  2. 池田清志

    池田委員長 これより会議を開きます。  この際おはかりいたします。  本日は、特に沖繩問題に関する件について、琉球政府立法院議員伊芸徳一君、同じく桑江朝幸君、同じく崎浜盛永君、同じく知花英夫君、同じく仲松庸全君、同じく中山兼順君、及び同じく長嶺秋夫君、以上七人の諸君参考人として出席を求め、本件調査のため意見を聴取することにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 池田清志

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これより参考人から意見を聴取することにいたします。  この際、委員長から参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中にもかかわりませず、本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。  ただいま、本委員会におきましては、沖繩問題に関する件について調査をいたしておりますが、本日は特に先般立法院において決議にありました問題を中心に御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  これより参考人に御意見開陳お願いするわけでありますが、本日は、参考人を代表して伊芸徳一君及び中山兼順君に御意見開陳お願いいたします。  まず、参考人伊芸徳一君、次に参考人中山兼順君、そういう順序でお願いをいたします。伊芸徳一君。
  4. 伊芸徳一

    伊芸参考人 団長伊芸徳一であります。よろしくお願いします。  御説明の前に一言御礼申し上げたいと思います。  このたびの立法院決議のために、このようなけっこうな機会を与えていただきましてほんとうにありがとうございます。  これから決議内容について概略説明申し上げたいと思います。  このたび、立法院の七名の代表が本土に派遣されました理由は、五月十九日第二回目の毒ガス兵器即時撤去要求決議と、それから六月六日の米軍人による女子高校生刺傷事件等に関する抗議決議、この決議案を持って本土政府並びに国会折衝のために参った次第であります。  まず最初に、毒ガス兵器撤去の件について申し上げたいと思います。  先ほど第二回と申し上げましたのは、この件につきましては一九六九年七月二十二日に第一回の決議がなされております。この決議は、それ以前に、一九六九年の七月八日ごろ沖繩米軍基地内において毒ガス事故が発生しましたので、初めて沖繩毒ガスがあるということが実証されまして、県民は非常な恐怖を感じております。そのために、立法院としても、七月二十二日にさっそくこれを取り上げまして、従来の米軍考えておった毒ガスはないというような言明を一挙にくつがえしております。そのために七月の二十二日に全会一致をもって第一回の決議がなされております。その後米国内でも大統領はじめ国務、国防の両省がこの沖繩にある毒ガスを早急に撤去する、ことしの春には撤去するというような一応の取りきめがあったようでありますけれども、また大統領言明もありました。ところが、これが米国内に移送するということがきまるや、米国内への移送について、その移送先ワシントン州それから移送経路オレゴン州、両州民は猛烈にこれを反対しました。特にワシントン知事エバンズ知事、それからオレゴン州のマコール知事シアルト市長はこの移送を中止するという訴訟まで提起されております。現在、これが訴訟中であります。さらにこの訴訟が継続する間は沖繩移送はおくれるというような言明がありますので、県民としても、これに対して非常な憤激を買っております。同時にこの移送裁判訴訟がおくれるということだと思いますけれども、さらに大統領はアラスカ州それからグアムというようなところに移送するというようなことを言明されておりますが、この両方でもまた反対を行なっております。われわれ県民としましては、国内の事情はどうであれ、国内でこれを反対するならば沖繩に置いてもいいかというようなことになりますので、これではとうていがまんできぬということで、ことしの去った五月の十九日に二回目の決議をなしたのであります。  決議内容につきましては、すでにお手元に配付してありますので、詳しいことは申し上げませんが、特にこの決議について三つ重点を掲げておりますので、それを読み上げて、この点について皆さんの強力なバックアップをお願いしたいと思います。  一 沖繩における毒ガス兵器の種類、数量及び貯蔵場所を明確にし、同兵器撤去する時期及びその撤去の方法を明示すること。  二 沖繩における毒ガス兵器輸送経路及び輸送上の安全対策を明示すること。  三 毒ガス兵器撤去されるまでその安全性を確保するため、日米琉科学者からなる監視委員会を設置すること。  この三つ重点目標を掲げて、ぜひともこの三つの点について日本政府並びに国会が強力な対米折衝を行ないまして、一日も早く沖繩からこの毒ガス撤去されるようお願い申し上げる次第でございます。  なお、この点につきまして現地弁務官並びに民政官に対する折衝の経過は、後ほど中山特別委員長から十分説明がありますので、私のほうでは省略させていただきます。  次に、米軍人による女子高校生刺傷事件等に関する抗議決議、この点につきまして少しほど説明申し上げたいと思います。  五月三十日に白昼、具志川市の上江洲部落から五十メートルの離れたところに陸軍の通信隊がございますが、ちょうどそこの上江洲部落出身女子高校生下校途上あと五十メートルもすれば自分の家が見える地点で白昼米軍人に襲われて、瀕死の重傷を負うた事件がございます。この事件以前にも毎日ほど米軍人による事件が発生しておりますけれども、特にこの事件県民恐怖のどん底におとしいれまして、さらに全県民の絶大なる憤激を買っておる事件でございます。  このような非道な事件はいまだかつてないということでありまして、さっそく立法院でもこの問題を取り上げまして、全会一致の線でこれを強く抗議するということで決議をした次第であります。特にこの点につきまして五つほどの重点項目をあげまして日本政府並びに国会から対米折衝を強くお願いする次第でございます。  一 軍事裁判を公開し、犯人氏名を公表し、   厳重に処罰すること。  二 沖繩県民に対する米軍人軍属(その家族を含む。)による犯罪裁判及び捜査管轄権琉球政府に移譲すること。  三 沖繩県民に対する一切の米軍人軍属犯罪について、裁判の結果及び執行状況県民に明らかにすること。  四 米軍責任所在を明らかにし、かかる事件が再びおこらないよう軍紀を厳重に粛正すること。  五 被害者に対する公正な損害賠償を行なうこと。  この五つの点につきまして、特に本土政府並びに国会におかれましても強力な対米折衝によって二度とこういう事件が発生しないよう特にお願い申し上げまして、私の概略の説明を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  5. 池田清志

    池田委員長 次に、参考人中山兼順君にお願いいたします。中山兼順君。
  6. 中山兼順

    中山参考人 琉球立法院軍関係特別委員長をしております中山兼順でございます。  ただいま団長から御説明がありましたが、両決議案につきまして、それぞれ高等弁務官あるいはフィアリー民政官に会いましたので、その結果について御報告いたします。  去る五月二十六日十時三十分から星立法院議長軍関係特別委員会中山知花正委員長高等弁務官に五十分にわたりまして毒ガス撤去の問題につきまして会見をいたしました。高等弁務官はいままで毒ガス兵器撤去について、おくれた理由をこまごまと説明いたしております。そのことにつきましては、団長から御説明があったとおりでございます。しかしながらアメリカ政府基本方針というのは、沖繩から毒ガス撤去することに変わりはないということを再三強調しております。その点沖繩県民にも説明していただきたいということを申しておったわけでございます。特にこの移送問題につきましては、これは沖繩にはアメリカ人もおれば沖繩県民もおり、この安全対策が一番重要であるということを強調しておりました。この点につきましては、アメリカから数名の専門家が来て、その準備作業を行なっておるのだというふうに言っておられました。この移送につきましても、安全性を強調いたしまして、昼間しかも専門家監視のもとに移送するのだ、その点沖繩県民に対しても、詳しく皆さま方から説明していただきたいと弁務官は申しておられました。この移送につきましては、あとしばらくかかるので、ぜひこれはしんぼう強くアメリカの実情を理解していただきたい、その点を皆さま方から沖繩県民に伝えていただきたいというわけで、しばらく待ってくれという言い分でございました。  それから米軍人による女子高校生刺傷事件につきましては、六月十二日星立法院議長軍関係特別委員会中山知花正委員長フィアリー民政官に会いまして、約一時間三十分にわたりまして会見をしたわけでございます。フィアリー民政官も、この点につきましては、申しわけないとはっきり申しておるわけでございます。また、この件につきましては、沖繩におきましては、米軍による犯罪が最近とみに増加しつつあります。一昨年、一九六八年におきましては、米軍による凶悪犯罪が百二十四件も起こっております。それから六九年におきましては百二十三件でありますが、検挙率は、一九六八年におきましてはわずか二十八件、二二・五%の検挙率でございます。六九年におきましては百二十三件発生いたしまして、検挙されたのが四十二件、三四・一%の検挙率を示しております。これは凶悪犯罪は殺人、強盗、放火、強姦、この四つでございますが、こういうふうに米軍によるところの犯罪がふえております。去年は強姦事件が十三件発生しておりますが、検挙されたのは六件、半分以下でございます。それから、ことし一月から五月までに六件の強姦事件が発生しておりますが、検挙されたのは六件でございます。そういうふうに米軍によるところの犯罪につきましては、琉球警察捜査権がないというのが大きな原因とわれわれは見ているわけでございます。ですから、われわれは民政官にもこの点を強く申し入れているわけでございます。  具志川事件につきましては、私の出身地でございますが、わずか五十名足らずの米人のおる小さい通信隊でございますが、部落から百メートル離れた地点でございます。先ほど団長から説明がありましたとおり、昼の一時ごろに発生した事件でございまして、学校帰りアメリカ黒人兵が襲いかかって、そうしてキビ畑に引きずり込んで暴行しておるわけでございます。それを通りがかりの婦人が見つけまして、部落に通報するとともに、その犯人の行方を目撃しておる。二、三名の方々が部隊に入るのを見ておるわけでございます。そういうわけで、警察に連絡するし、部落民四、五百名が集まりまして、通信隊を包囲しておるわけでございます。犯人が逃げ込んだのを目撃しておるわけでございますが、琉球警察捜査権がないために、どうにもならないという状況でございます。幸いCIDと連絡いたしまして捜査したものの、肝心なところはCID捜査いたしまして、琉球警察はフェンスの内側だけの捜査しかできないというような状態でございます。その意味からも事件解決を早くするためには、どうしても琉球警察捜査権を与えてもらわなければ困るというふうに強く訴えたわけでございます。  そういうふうにこの件につきましても、民政官五つ項目を要求したわけでございますが、その点につきまして、会見内容を御説明申し上げます。  一番目の「軍事裁判を公開し、犯人氏名を公表し、厳重に処罰すること。」につきましては、民政官は、従来も軍事裁判は公開しているのだ、しかしながら沖繩県民関心がないのか傍聴に集まるのはわずかしかいないというようなことを話しておりました。この犯人氏名は、すでに公表されております。そしてこれは、今度の事件につきましても、前もって日時、場所琉球政府に知らすから、あるいはマスコミを通じて発表するから、ぜひ来てもらいたいというふうに申しておりました。それから通訳をつけることにつきましては、通訳はつけられない、自分で適宜英語のわかる人を連れてきて傍聴してもらいたいというふうに話しております。  それから二番目の「沖繩県民に対する米軍人軍属(その家族を含む。)による犯罪裁判及び捜査管轄権琉球政府に移譲すること。」につきましては、フィアリー民政官は、この問題は、平和条約六条の規定によりますところの地位協定というのがあるので、これは日本復帰しないと解決できない、解決困難であるということをはっきり申しているわけでございます。  それから三番目の「沖繩県民に対する一切の米軍人軍属犯罪について、裁判の結果及び執行状況県民に明らかにすること。」につきましては、民政官は、このことは、裁判のたびに結果は出るが、傍聴人が来ないためにわかっていないというようなことを言っておりますが、従来、新聞紙上でも、ときたま発表になりますが、沖繩県民は、その結果がどうなったか、刑の執行状況がどうなったか、全然知っておりません。そういうわけで、この件につきまして、民政官は、いままでの裁判結果につきましては、当局と話し合って資料を立法院に提出するというふうに明言いたしております。  四番目の「米軍責任所在を明らかにし、かかる事件が再びおこらないよう軍紀を厳重に粛正すること。」につきましては、高等弁務官は、四軍の司令官を直接弁務官のもとに呼びまして、軍紀の粛正について厳重に通達してあるのだということを話しておりました。この米軍責任につきましては、裁判の結果によって明らかになるであろうということを、フィアリー民政官は、はっきり申しているわけでございます。  それから五番目の「被害者に対する公正な損害賠償を行なうこと。」、これは当然なことである、しかしながら、私はそういう内容については詳しく知っていないので、これはその当局について聞いてみるということをはっきり申しているわけでございます。  この米軍による女子高校生刺傷事件は、アメリカにとっても、あるいは琉球警察にとっても非常に重要な問題であるので、われわれもその結果について関心を持っているのだということをフィアリー民政官は話しているわけでございます。  以上、簡単に会見内容を御説明申し上げます。どうもありがとうございました。
  7. 池田清志

    池田委員長 以上で参考人の御意見開陳は終わりました。  参考人各位には、御多用中にもかかわりませず、貴重な御意見を承りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。      ————◇—————
  8. 池田清志

    池田委員長 この際、おはかりいたします。  すでに委員長に提出があり、委員各位のお手元にも配付いたしております立法院の両決議につきましては、会議録の末尾に参考掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 池田清志

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  10. 池田清志

    池田委員長 次に、沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。鯨岡兵輔君。
  11. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 きょうは、あまりにも時間がございませんので、これからいろいろの問題について、特にいま参考人からお聞きいたしました二つの重要な問題についても詰めて、いろいろわれわれの考えを申し述べたいと思いますが、その時間がありませんので、あらかじめこのような機会をきわめて最近のうちにもう一回ひとつ大臣出席のもとに開かれるようお願いをいたして、質問に入りたいと思いますが、その前に、この沖繩問題に対する現在そしてまたいままでの私の考えをちょっと大臣に聞いていただきたい、こう思いますので、その基本の態度を踏まえて、幾つかの問題を簡単にお聞きしたいと思います。  何度もいわれたことですけれども、沖繩百万県民は、戦後二十五年の間まことにお気の毒な立場にありました。これを何とかしなければならないと県民諸君は最大の努力をいたしたのであります。われわれもまた、党派の立場を越えて、アジアの情勢やアメリカ立場もあってなかなか思うようにはいかなかったけれども、それでも今日まで努力を重ねてまいったのであります。アメリカ側もこれに対して理解と協力を示してくれたことをわれわれは忘れてはならないと思います。  私自身のことを申し上げてはまことに恐縮ですが、先輩のあとを受け、御指導を願い、一つには一日も早い本土復帰と、二つには豊かな沖繩県づくりのために微力を尽くしてまいったわけであります。その間、常に私が心がけてまいりましたことは、対米関係については、民族的問題だけに、ともすれば感情に走りやすくなることではあるけれども、そしてそれは十分に理解できるけれども、ここは一番決して感情に走ってはならぬということでありました。そして、そのことは、いよいよ明後年じゅう復帰タイムリミットについて日米の合意がなされた今日、ことのほか心がけなければならないことであると私は確信をいたしておるのであります。  ところが、逆に民衆の気持ちとしては、そのタイムリミットがきまったということで、かえって、気のゆるみというか、抑圧からの解放というか、前よりも民族的感情が高ぶるということは心理的にも十分考えられるところであると思うのです。そして、それはアメリカ側にも言えることであると思うのであります。感情を先に走らせるということは、この沖繩問題に対しては百害あって一利ない。われわれ政治家は、間違っても民衆感情を刺激してはならない。民衆理性に訴えたければならない。感情に走れば、そこには混乱があるだけ。得るものは何もない。理性に訴えて処理するところにのみ解決の道がある。これが沖繩における対米諸問題に対する私の今日までとってきた道であり、今後もそれは十分に守らなければならない道であると考えるのであります。これがアメリカに対する交渉というか、それに対する基本考え方なのですが、この点についてひとつ大臣からお考えをお聞きいたしたいと思います。  さらに二番目の、豊かな沖繩県づくりについて考えなければならないことは、戦争末期における筆舌に尽くせない沖繩県民の犠牲と、その後二十五年間の本土との隔絶した忍従の生活とを思い、この際、できるだけの援助をしなければならぬということは、これは言うまでもなく当然のことでありますけれども、忘れてならないことは、自分のことは自分でするということであります。まことに冷たいことを言うようですけれども、天はみずから助ける者を助ける、自力更生、これは金言であります。豊かな沖繩県づくりは、百万の沖繩県民がするのであって、他の何ものでもない。主役は沖繩県民であって、われわれではない。失礼なことを申すようですが、もしこの点に考え違いがあったら援助はついに援助になるまいと私は思います。この点について大臣はどんなふうにお考えになられるか、これをお聞かせ願いたいと思うのであります。  時間がありませんからずっと申し上げますが、そういう二つの前提に立ってずっとこう見てまいりますと、まことに失礼ながら、沖繩政府はちょっと何をしているのかわからないという考えを私はどうしてもぬぐい切れない。大臣並びに対策庁長官、この点どう考えておられるか、ひとつ御意見を承りたいと思うのですが、屋良主席は去る八日立法院で一九七一年の施政方針演説の中で、軍事基地には絶対反対、すぐにどこかへ持っていってもらいたい、こういうふうに言ったり、日米安全保障条約反対をするということを明確に言っている。日米安全保障条約日本本土と結んでいる条約と全く同じにするのだということを言っているのに、その日米安全保障条約反対ということをいま言っている。それもお考えですからいいのです。いいのですが、そう言いながら、米軍雇用労働者間接雇用制度にしていくのだということを言ったり、当然なことながら、屋良さんが責任者になって沖繩長期経済開発計画をつくっている、その中では、今後十年間は米軍基地沖繩にあるということを想定して年次計画を立てている。これは何かはなはだしい矛盾ではないだろうか、何かこうまとまりがつかない、何を考えているのだかちょっとわからない。そういうようなことでは、一体重要な県政移行準備はどの程度に進んでいるのだろうか、一体化政策のための財政援助の消化というようなものも一体どういうふうに進んでいるのだろうか、こういうことについて基本的にどうも何かこう心配でならない、そういう感じがいたすのであります。  何せ与えられた時間が十五分ですから、こう聞いてこう聞いてとこうやりたいのですが、それができない、まことに残念ですけれども、あとの先生方に御迷惑をかけてはなりませんから、私は大臣に質問したいことをずっと続けます。  私は、先ほど感情を刺激するところに混乱があるだけ、そこには何もない、ことさら今日はわれわれ政治家感情を刺激してはならない、ともすればこうおこりがちになる感情を押えることに努力することが大事だということを申し上げましたが、今月の二十日——二十日というとまだですが、きのうも何テレビですか、テレビにも出ていましたけれども、沖繩の小中学校では安全保障条約反対特別授業というようなことを何か教育委員会か何かが指図して、全部に特別授業で、安保条約反対アメリカ軍事基地はどこかへ行っちゃったほうがいいのだというようなことを含めた、そういうややもすれば県民感情を刺激するようなそういう教育が子供たちにさえも行なわれるというようなことが出ているのです。こういうことは、日本本土との教育の一体化という——本土でも偏向教育ということが非常にやかましくいわれているときに、そういう面から見たって問題なのに、その上に県民感情をいたずらに刺激する——いたずらと思っていないでしょうけれども、いたずらに刺激するようなことになりかねない、そういうことは慎まなければいかぬことだと思うのですが、大臣どんなふうにお考えになってどんなふうにこれに対してアドバイスをなさるつもりですか、お伺いいたしたいのであります。  毒ガスの問題についてですが、先般私沖繩へ参りまして、ランパートさんに会ったときに、間接雇用問題についていろいろお話をしたら、ランパートさん、こんなふうに言っておりました。間接雇用の問題については日本政府からその話があれば十分に話に乗ってもいいですよ、こう言ったのです。そのことは日本政府からいまだ話がないということなんです。どうしてそういう話をしないのかなと実はそのときそう思ったのですが、毒ガス問題も、一体外務省はどういうような要求をアメリカ側にしているのでしょうか。いまもお話がありましたけれども、アメリカ側でさえもどこでもいやだ、こう言っている。アメリカのいやなものはやっぱり沖繩だって置かれちゃ困ります。やっぱりこれは外交ルートで十分に交渉をすべきことだ。これは感情を刺激するのでも何でもない。当然の要求を当然のようにやる、あたりまえのことなんですが、これはどうしてやってないんだろうか。やってないということが間違いだとすれば、どんなふうにやってるんだろうか、そんなことをひとつお聞かせいただきたいと思います。  米軍の心ない兵隊さんによる暴力事件がこのごろ伸びてきた。なぜ伸びてきたんだろうか、まずそれがふしぎでかなわない。沖繩全体にそういう暴力事犯が多くなってきているのだろうか。調べてみたらば、沖繩県民による事件もありますよ。ありますけれども、比率はそれほど伸びてないのに、米軍によるそういう暴力事件だけが伸びているとすれば、なぜ伸びてきたのだろうか。これは山野長官、あなたのほうでは十分にもう御調査済みだろうと思います。これらについて、一体どんなふうにお考えになり、どういうような抗議といいますか、注意といいますか、政府間でしているかということについてお聞かせを願いたいのであります。  質問だけで、もう与えられた時間が終わりそうですが、しかたありません、十五分しかないのですから。  最後に一点、通産省、来ていますか。通産省の方に私は何回も言うのですがね、沖繩のこれからの経済はどうやっていくか、これは重要な問題だ。一番重要な問題だと私は受け取っているくらい重要な問題なんです。沖繩にこれからどういう産業を育てたらいいのか、これも重要です。だが、政府が考えたって、もうからない仕事は持っていかないです、企業ですから。沖繩に二十五年間せっかく育ってきたその仕事を何とかして温存させてやりたいと思っているのですが、一九七二年施政権の返還になりまして、一体化いたしますと、本土に育った力の強い企業がわっと行くのです。そうすると、一ぺんでつぶれちゃうのです。これは目に見えている。そこで何とかしてそれまでの間、このいませっかく育ってきたものを力づけてやらなければならぬというのが、われわれがやらなければならない最大のことだと思う。何回も言うていることです。ところが、たとえばセメントに例をとってみれば、沖繩のセメントは南西物資として指定されてない、全くの外国扱い。まだそのほかにもありますよ。それを、なかなか、外国扱いにして、そいつを特別の地域として見てくれない。ところが本土のものは沖繩へ行くときには、外国として行くんです。だから本土で売っているよりもずっと値段が安い。それにまた景品つけて売るの。だからみんなまいっちゃう。たとえば、おしょうゆなんかそうですよ。おしょうゆなんかは、われわれが買う値段よりも、われわれが買うのはお酒屋さんから買うのですが、お酒屋さんの値段は卸売り値段でしょ。その卸売り値段よりももっともっと安い外国へ売る値段で出すのです。それに向こうの手間や何かがついてやってもまだ安い。それで向こうと同じ値段くらいになる。そこへもってきて何か景品みたいなものをたくさんくっつけてやりますから、ここ二年くらいの間に沖繩に育ってきたおしょうゆだの、おみその企業は三分の二くらいつぶれちゃった。そういうようなことを平気でやっていて、それで沖繩のことを心配しているんだとはいえない。こういう点については、これはあなたに返答を求めてもしかたがありませんが、何回言うても、このことについてもう少しきちんとした態度といいますか、沖繩の企業を育ててあげようという態度、総理府は幾ら考えたってだめですよ。通産省あたりでそういうことですから。これに対して幾らか理解を持って、南西物資に指定すればいいがというようなことを言った税関の官吏は左遷されたようなことを聞いている。この前もそのことを言うた。いまだに反論がないところを見ると、それはほんとうかもしれない。もしほんとうだとすれば、まことに私はゆゆしき問題だと思うのです。通産省、ひとつもう一ぺんそういう点について大臣に言うてくだすって、真剣に考えていただきたい。日本から向こうへ持っていく品物については、もう少し行儀のいいやり方をして、沖繩は外国じゃないのですから、そのつもりでひとつやっていただきたい、こう思うわけであります。  何か質問ということじゃないかもしれませんが、大臣、ひとつそれについてお答えをいただきたいと思います。
  12. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まず第一点、感情に走らないようにしたい、これは当然のことであります。しかしながら、現在私たちが考えなければならないことは、その問題、いろいろの問題の起因者はだれかという問題であります。そのことに対して起因者たるべきものは当然それに対する反省なり、あるいはそういうことの起こらないようなことを自分自身でやらなければならない立場にある。その点において一例を女子高校生の暴行事件ということにとるならば、やはりこれは若い国民の青年が徴兵されてベトナムの戦場に投入されて、そうしてどのような戦闘環境にあったのかもしれませんが、少なくとも心理学の上でも戦場心理学というものがあるようにいわれておりますけれども、その異常なる心理を沖繩に持ち帰った結果にほかならない、私はこのように思います。でありますので、沖繩は戦場ではないということの周知徹底ということは、当然全アメリカの軍人諸君になされなければならないことであり、その点にとって、私はアメリカ側にとって、第一、アメリカ側が非常にまずいことをしたものだと思わなければならない、アメリカ自身のためにそうあるべきだ。よりよき友人は真実を告げ合わなければならない。その意味において私は感情を抜きにして真実をアメリカに対し告げ、反省すべき点は反省し、そうして残されたわずか二年くらいの期間の空間が日米の亀裂を沖繩から生ずる時間にしてはならない、このことを今日までも主張してまいりましたし、今後も一貫してその態度をとってまいるつもりであります。  県民づくりにつきまして、新しい県政づくりの主役は県民である。天はみずから助ける者を助くということでありますけれども、心意気はそうであってよろしいと思います。その意味において、私たちと少しく、軍事基地が将来はなくなってという前提等において、現実にそうなるかどうかについての前提条件の違いがあるとしても、理想論に近いものであっても、やはり琉球政府年次計画をつくられ、あるいはまた復帰の具体的な対策についても立法院特別委員会をつくっておられるわけでありますから、これらの人々とよく相談をいたしながら、私といたしましては、発足いたしました新しい沖繩事務局の諸君に訓示いたしました際、これからは琉政の能力がどうである、あるいはまた行政機構がどうであるかということは問題ではない。これから先の事務がうまく進まない場合には、それは琉球政府と一体となって作業しなければならない対策庁出先機関の諸君責任でもある。したがって、どちら側ということはこれからあり得ないのだから、お互いが学び、お互いが教え合って、助け合って一体の作業をしてもらいたい、こういうふうに言っておりますので、今後私たちとしては、主役は県民の皆さまの心意気で進めてもらわなければなりませんが、ひとりでやろうといっても、祖国が二十五年ほっておいたのでありますから、それに対する償いをするための十分のあと押しをしてあげなければならない。そのことについて私たちは決してそれを惜しんではならないと思います。琉球政府の主席の発言なり、あるいはまた現地における立場は革新政権であり、革新与党の立場がありますから、いろいろの表現もあります。しかし私は県民の幸福の追求という上において大きな違いはないのであろうと考えます。そのような姿勢を保たれる姿の裏には、また混乱があるといわれるように、理想と現実の板ばさみに屋良主席自身も立っておられるのであろうと私は思いますが、われわれの与党あるいは自民党、われわれの政権という立場からすれば、若干われわれと見解を異にいたします。しかし、そのことを私たちが琉球政府にけしからぬと言う資格はいまのところないのではないかと私は思うのです。  第三点は、安保反対特別授業が行なわれておる。これはやはり教育というものは同じ日本の教科書を使い、そうして同じ日本人たるべき教育を行なっておるのでありますから、そういうような特別な授業が組まれることについては私も賛成はいたしかねます。しかしそのことよりももっと大きな貢献を沖繩の教職員の方々にはしてもらった。それは、戦後生まれた新しい世代の少年をも含めて——あるいはもう青年にも達しておるでしょう、あのきびしい環境の中で、依然として、日本人であるのだ、私たちは日本人ですというその気持ちを持ち続ける教育を続けてきたのは、沖繩教職員会の諸君であります。アメリカと交渉をして、日本の教育基本法そのものの日本人たる教育を行なうということを確保し、あるいは日の丸、そうして祖国という思いをつないできたのも、そういう貢献もやはり教職員の皆さんでもあったわけでありますから、これからいろいろな困難があると思いますけれども、よく教育者たる人間としての立場と組織としてのいろいろの立場の行動とを区別をしてもらって、少なくとも子供というものが、白紙であるべき子供が一方的な考え方の色に染まらないようなふうには私もお願いをしたいと考えます。  第四点の間接雇用の問題で、ランパート高等弁務官はあなたに対して、日本政府から申し入れがあればすぐ応ずる、しかし申し入れをしてないじゃないかと言ったことを言われましたが、これはもうこの委員会でも再三私は申し上げておりまするように、それは申し入れ、受諾という形において文書にして同時に発表という形はなし得ない段階にあるということであって、それに対する過程における申し入ればたびたび行なっておりまするし、外交権を持たない私でも、先般この問題についてランパート高等弁務官フィアリー民政官その他の最高スタッフの諸君と同席をいたしまして、そうして間接雇用移行のための琉球政府の中における準備、それに対する本土側の諸支援等について慎重な配慮並びに検討ということに同意をみておりますので、そのようなことについていまだに申し入れてないという形式論だけでこの問題々議論するのには、私はちと酷ではなかろうかと思います。  さらに、通産省の既存産業、島内産業保護の問題で、総理府に言ってみたってしようがないと言われますが、私はそうではないと思います。通産省の考え方というものは、国内の法律その他に縛られておりましょうし、本来自由企業、自由競争という前提においての、企業をきびしく律する立場にない反面もありますし、いろいろな法律等も持っておるわけでありますが、それらの問題から、業種ごとにいろいろと通産省では、国内の通産行政の立場から異論のあるところでもありましょう。しかしながら、例をあげられましたセメントにつきましても、近く事務的な手続きが琉政からあがりましたならば、南西諸島物資に指定もいたす用意をしておるようでありますし、むしろ南西諸島物資は、復帰が既定の事実となりました今日において、そのような名前の物資を置くことが問題である、南西諸島物資指定品目というものはやめまして、かわりにいますぐ特別な、本土に比べて有利な条件で逆に入ってこられては困るものというものを例をあげるような表示のしかたにしたい、こういうことにいま作業をいたしつつございます。また、みそ、しょうゆ等に対する例でありますが、これはもう沖繩県内の自給率が八〇%くらいに既存産業でいっているわけでありますから、あと残りの一〇〇%自給まで既存産業の人たちに近代化資金その他の援助をいたしながら自立、自給一〇〇%自給に達してもらえば、復帰までの時間の間に可能なことでありますので、その自給された物資について、オーバーする分を本土からわざわざなぐり込む必要もない、またそのことは当然行政上のチェックする必要があるというふうに私は考えておる次第でございます。
  13. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 では終わります。
  14. 池田清志

    池田委員長 川崎寛治君。
  15. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 ただいま前副長官と現長官の質疑応答、たいへん興味深く伺いました。  そこで、起きておる原因というもの、戦場心理の問題を言われたわけでありますが、実は私、先般沖繩へ参りまして、六月の五日でありますが、わが党の江田書記長と、ランパート高等弁務官にも一時間会っていろいろ話をいたしてまいりました。そのときにも指摘をいたしてまいったのでありますけれども、いま沖繩女子高校生の問題をはじめ、あるいは兵たん基地の中で従業員が暴行を受ける、あるいは運転士が耳をかみ切られるというような事件が続発をしておるわけです。だから社会病理的にいうならば、これはまさに異常な状態というのが次々に発展をしておるわけですが、先ほど伊芸副議長から立法院における決議を申し述べられたわけでありますけれども、その中に、沖繩立法院としては、ここには前議長の長嶺さんやあるいは桑江さんなりという沖繩現地の自民党の幹部の方々も皆さんお見えになっておるわけでありますけれども、「このようなアメリカ合衆国による治外法権的取扱いに対し、県民は、怒りに燃え、米軍の駐留に対し、強い不満の意を表明している。」この点ですね。これは後ほど防衛庁長官にも、具体的な基地の返還交渉に当たっております当面の責任者として関連をしてお尋ねをしますので、注意をしておいていただきたいと思いますけれども、「米軍の駐留に対し、強い不満の意を表明している。」これは異常な決意だと思うのですね。つまり自民党の諸君としては異常な決意だと思います。現在の与党の諸君撤去ということを明確にいたしたかったのでありましょうけれども、それが全会一致ということでできなかった。問題は、先ほど総務長官も言われましたけれども、ベトナム戦争自体にあるわけですね。そうして沖繩基地のあり方そのものにあるわけです。この院の決議によります「米軍の駐留に対し、強い不満の意を表明している。」この点をどのように受け取られるか、総務長官と防衛庁長官に伺いたいと思います。
  16. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、与野党一致の決議でありますから、われわれ本土国会においても与野党一致の決議についてはいろいろと各党の基本的な要求と最大公約数を見出すための文言の修正その他についてやりとりが行なわれる経過をよく体験しておるわけでありますが、この短い文章の裏に合意に達するまでのいろいろの議論が行なわれたであろうことは想像にかたくありません。その議論の結果の公約数としてそのような表現がなされておる事態というものは、やはり保守も革新もない、沖繩の人たちが、自分たちも人間であるという気持ちで毒ガスの問題を底流とし、そうしてあどけない少女に対する人道上許されないそのような行為が行なわれたことが重なって、そのようなコンセンサスが得られたものと私は思います。その点については当然であろう、その御心情はそのとおりであろう、その心情を踏まえて、私たちとしてはそれを根底に持って話し合いを進めていかなければならぬと考えております。
  17. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 沖繩の状態はまことに遺憾なことでございましたが、平和条約締結の際、同条約第三条によりまして今日のようなアメリカは施政権を持つという情勢になっております。それできておったわけであります。七二年以降は日米安全保障条約が内地と同様な条件で適用されるということになりまして、内地と同じような情勢にできるだけ早く持っていく、事実上も持っていく、そういう努力をしていきたいと思います。  こういう国際関係の問題等を論ずる際には、やはり歴史的因縁というものを離れては空論になるのでありまして、われわれはそういう歴史的因縁に立脚しつつ、しかも一歩一歩確実に日本の国益を回復していくように今後も努力してまいりたいと思っております。
  18. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 総務長官の個人的な感情に終わらしてもらいたくない、こう思うわけです。先般沖繩から帰ってまいりまして、保利官房長官に、江田書記長と会いました。しかし残念ながらいまの総務長官のような感じというのは、佐藤内閣の大番頭としての官房長官からは受けられなかったわけです。だから、いま防衛庁長官は歴史的な経過というものを言われたわけでありますけれども、そういうものを踏まえた上で、なおかつ今日の佐藤内閣が、はたして百万沖繩県民の現地のこのせっぱ詰まった人権を守ろうという、しかも裁判権というのが施政権の一番の根源だ、こういうことで手をつけられないでおる今日の姿勢に対しては、たいへんな不満を持っておるわけなんです。  そこで、けさの各紙にも出ておりますけれども、琉球警察米軍のこの捜査に対する不満等、そういうものが出ておりますし、それに対して総務長官も、これはまあたいへんなことだ、こういうことでこの警察権の問題等については強く進めたい、こう言っておられるわけでありますが、個人的な感情としてではなくて、今日日本政府が外交交渉としてどのように進めておられるか、明らかにしていただきたいと思います。
  19. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私も感情でものを言っているつもりはありません。沖繩から第一回の視察を終えて帰りました翌朝の閣議におきまして、総理から沖繩について何かあるかと発言をわざわざ求められたのでありますが、私としては、ございません、ただ一つ、毒ガス問題を重大な問題として日本政府の姿勢としてこれから対米折衝に当たってほしいということ、それだけ申しました。これは証人としてそばに証人がおるわけでありますから、決して私はそういう偽りの発言を言っておるわけではありませんので、その後愛知さんにも二回にわたってお願いをいたしました。ただ、女高生事件は、私の閣議に出席いたしましたあとの、最初の閣議のあとのことでありますから、これはその件も含めて愛知さんと二回話し合いをいたしました。その結果、議題外でありましたけれども、愛知・マイヤー会談においてそのことが申し入れられ、もちろんこれに対しては米側も一言の反論するところも何もなかった。なるべくそういうふうにしたいという願望をもちろん表明したそうでありますが、そういうことで、私としては外交手段としての行動を取り得ないだけであって、私の立場からの、沖繩県民の代表はいま私であるという立場からするならば、その行動を決して一時の感情のみで言っているのでなくして、あるいは心情というのが当たっているかもしれませんが、そういう意味ではございません。根底から私たちは沖繩県民の心を心として行動すべきがいまの祖国の姿勢であろうということにおいて今後も一貫した姿勢をとっていくつもりでございます。
  20. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 私は外務大臣がおられる間にやりたいと思って、この女子高校生の問題が起きたあと委員長のほうにも本委員会の開催申し入れをしたわけでありますけれども、いろいろな都合で外務大臣のいないこの委員会になりましたので、その点はたいへん残念であります。できれば外務大臣代理でも出てもらって大いに述べてもらいたいとも思いましたけれども、東郷アメリカ局長、その点いま捜査権、逮捕権あるいは警察権の問題等について総務長官の強い意向というものをどのように外交交渉の面で進めておるか、具体的にしていただきたいと思います。
  21. 東郷文彦

    ○東郷説明員 この件につきましては、先般外務委員会におきましても外務大臣から見解を披瀝されましたのですが、裁判権そのものの問題は、施政権が向こうにある限りこれに触れていくことは非常にむずかしいけれども、特に警察、行政面、こういった問題に対処する実際の運営の上においてできるだけ改善をはかっていきたい、こういうお話もございましたので、ただいま総務長官がお述べになりましたような同じ気持ちで、現地の状態を少しでもよくしていくように、東京においてもまた那覇においても最善を尽くしたいと考えております。
  22. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 ランパート高等弁務官に会っていろいろ話をすると、この問題は私の権限外ですと必ず言うのですね。条約の問題です、安保条約の問題です、これは東京−ワシントンの問題です、財政の問題もそうです、毒ガスの問題もそうです、この女子高校生の問題もそうです、全部東京−ワシントンだ、こう言う。しかし、全部進まないわけでしょう。そのうち七二年は来るのですよ。百万の県民の人権は常に無視されたまま、やりたいやりたい、努力する、こう言いながら、東京−ワシントンだ、高等弁務官自体もそう言って全部逃げるわけです。私は三月にも会いました。今度も会いました。同じですよ。その点はこれ以上申し上げても、努力しているのだということで、また総務長官にしては外交権がないのだからほんとに残念な思いでおるだろうと思うのです。しかし、そういうことを明確にしておきたい、こういうふうに思います。  毒ガスの問題でありますが、保利官房長官に会いましたときにも、ちょうどその日は、各紙に、屋良主席に対してアメリカのほうからいつになるかわからぬという屋良主席の書簡に対する返事が参ってそれが報道されておった日でありますが、下田大使に、移すことは間違いないのだ、こう言ってきているから、撤去はされるのだろう、たいへんたよりない話であります。この点はどうですか。
  23. 東郷文彦

    ○東郷説明員 毒ガス撤去の問題は、経緯は先ほど参考人からも詳しく御説明がございましたが、そのとおりでございまして、米国政府としては早期撤去の方針に変わりはないけれども、米国国内の問題としてあるいは司法府あるいは立法府との関係でいますぐ動けない状況にある、いますぐ撤去できない手足を縛られた状況にあります、しかし、早期撤去の方針は変わりないので、それを具体化する方法について苦心しておる、これが実情でございまして、いま先生おっしゃいましたアメリカにおけるお話あるいは東京における外務大臣と大使の話、この間においても米国政府の現在置かれている立場をるる説明するということでございまして、われわれとしては、しかし、米国全体の問題としてただ動かないでは済まないので、米国国内の問題を解決して撤去が早期実現するよう、これも外交的に最善を尽くしておるということでございます。
  24. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 本日は保利官房長官の出席を求めましたが見えておりませんので、佐藤内閣全体としてその点の責任ある答弁を願いたかったわけでありますが、努力しておるということで聞く以外にないわけでありますけれども、国務大臣として努力していただきますことをお願いしておきたい、こういうふうに思います。  そういたしますと、次には、女子高校生の問題で特に前原地区等県民大会が開かれましたときには、前原高校の校長やあるいは上江洲地区の区長まで基地撤去を叫ぶわけです。そして、即時撤去してほしい、撤去しなければもうだめなんだ、そこに従来そういう強い意思表明ができなかったような人までが基地撤去の問題を言ってきておるわけです。そこで、五月の二十六日宍戸防衛局長とカーチス中将との間で沖繩基地の問題について交渉が始まっておるわけでありますけれども、なお日米安保協議委員会も行なわれておるわけです。そこでそういう交渉の責任者であります防衛庁長官に幾つかお尋ねしたいと思いますが、私に与えられた時間は限られておりますので、まとめてお尋ねをしてみたいと思います。  それは、参議院の六月一日における沖繩特別委員会の論議、あるいはつい最近出ました「東洋経済」におけるあなたのいろいろな発言、そういうもの等をまとめてお尋ねをしてみたい、こう思います。  まず第一には、六月二十三日以降安保条約の運用について防衛庁長官としてどう考えられるか。このことが一つ。  それから第二番目には、国防の基本方針。宍戸防衛局長とカーチス中将の話の間にも、ことしの秋までに防衛庁としては第四次防衛計画をつくりたい、こういうことを言っておる。閣議決定は来年の秋だろう、こういうことになりますね。そうしますと沖繩基地の扱いというのはこの第四次防衛計画の中に組み入れるのだということは、国会の各委員会においても防衛庁長官も明らかにしてきておりますし、それらの問題からまいりまして、第四次防衛計画をつくる前に国防基本方針を変えなければいけない、こういうことも「東洋経済」では非常に明らかにあなたも言っておるし、これまでも何べんか言われておるし、参議院の沖繩特別委員会においても、そういう質疑に対してある程度の抽象的な答弁もしておられるわけでありますが、第四次防衛計画が定まるまでの間に国防基本方針を変えるというその方向づけを明らかにしていただきたい。  それから第三番目には、自衛隊が主、そして安保条約補完と、これは国防基本方針の中でも当然変えられる中で明らかにされるのでありましょうが、自主防衛というものとそれから日米安保の位置づけというものは、きわめて抽象的であって不明確であります。なかんずく沖繩基地考えますときには、その点はたいへんいろいろと問題が出てくる。その点を明確にしていただきたい。  第四番目には沖繩基地の機能でありますが、あなたは参議院の特別委員会においても、昭和二十七年当時のように、沖繩が七二年返還をされてもしばらくは、本土並みの基地になるのに時間がかかるであろう、沖繩基地の機能というのがきわめて縮小され、攻撃的な基地でない、本土基地のような性格になるであろうというようなことを、ばく然と希望的な観測を述べておられるわけでありますが、アメリカの議会等でいろいろと問題になっておる、東南アジア、太平洋における兵たん補給基地としての、そしてまた攻撃基地としての沖繩基地の機能というものが、あなたが言うようになくなっていくとごらんになっておるのかどうか。  時間が限られておりますので、ほんとうならば一問一答しながら詰めてまいりたいけれども、以上四点をお尋ねしたいと思います。
  25. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 まず第一にカーチス中将と防衛局長との話でありますが、これは五月十九日の日米安保協議委員会で私から話を持ち出しまして、沖繩返還後の沖繩の防衛問題について具体的話し合いに入りたい。向こうも承知しまして、その第一回として宍戸・カーチス会談が持たれました。第一回は瀬踏みのような話で、どういう段取りでやっていくか、一般論として話をしました。むしろ向こうの意見を聞いてみようということで話が終わりまして、引き続いてやることになっております。われわれのほうとしては、まずアメリカがどういう認識を持っておるかということを開いた上でわれわれの考えを出していく、そういう考えであります。  第二は、自動延長後の安保の運用の問題でありますが、この六月二十三日以降は一年の予告で一方的に廃止できるわけであります。私はこういう事態になりますとできるだけ外国の世話にならぬようにしていきたい。ただし憲法がありますから、核抑止力とかあるいは他国に脅威を及ぼす攻撃的兵器については友好国であるアメリカに期待し依存せざるを得ないが、それ以外のことについては本土の防衛に関する限りは自前でやっていくようにしていきたい。ただしやはりわれわれ政治家及び日本国民の願望は、一日も早く西欧的生活水準に実質的にも入りたい、そういう強い願望をわれわれ政治家も持っておるわけであります。GNPの数字だけでは論ぜられない、実感としての生活を、イギリスやフランスやヨーロッパに負けないところまで持っていきたい。七〇年代にそれを完成したいという非常に強い熱望を私らは持っております。そういうかげんから国民生活のそういう部面をよく考慮しながら、スローテンポでそういうところへ漸次近づけていきたい、そういう考えでおるわけであります。  それから次の防衛計画を四十七年から始めますけれども、防衛庁内部で秋ごろにその原案を作成するつもりです。そのためには基本方針も、いままでの十年前につくられたものは検討を必要とすると思いまして、私らは基本方針をその新しい防衛計画の基礎として検討の上正すべきものは正して改定していきたい。それは検討の結果どういうふうになるかわりませんが、われわれの方針としてはそういう考え方を持っております。  それから自動継続後はいまのように日本アメリカとのステータスが安保条約をめぐって変わってくるわけであります。したがって当然自分の国は自分で守る。足りないところは友好国と補い合う、そういう原則に持っていくべきことは理の当然であります。独立国家としての命ずるところであると私らは思います。そういう基本的観念に立脚して安保条約を運用していきたい。自主防衛と安保の関係は、いままで申し上げたような原則に立ってこれから運用していきたい、このように考えるわけです。  沖繩のステータスにつきましては、七二年以前と七二年以後は違います。われわれがいま話しているのは七二年以後の返還後の話を向こうと正式に交渉しているわけでありますが、七二年以降安保がそのまま沖繩に適用されると、やはり極東安全保持の条項というものがございます。それは本土と同じようにからまってくるわけでございます。そういう点については、しかし運用が非常に大事でありますから、日本の国の利益を中心にして日本の平和と安全を守るということを第一義にしてわれわれはこれを運用していきたい、このように考えております。
  26. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 もう時間がありませんから一つだけで終わります。  自分の国を自分の手で守る、あなたの考えで、スローテンポでいく、しかも一方では廃棄の条件が常にあるのだ。何年かかるのですか。
  27. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 何年かかるか数量的には確定しておりません。しかし、そうあせって国民生活に影響を強く及ぼすようなことは、しないようにしていきたいと思っております。
  28. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 もっと詰めたいのですが、これでやめます。ただ、きわめて数字的、科学的に詰めなければいかぬ議論と、きわめて抽象的な、ばく然とした感情的なことで問題をあいまいにしてはいけないと思うのです。これはあらためてやります。終わります。
  29. 池田清志

    池田委員長 中川嘉美君。
  30. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 沖繩復帰準備委員会は三月の二十四日に初会合を開いてから、毎月一回委員会を開いているわけでありますが、そもそもこの準備委員会というのは、日米両政府代表で構成され、沖繩代表は入っていない。すなわち、行政主席が顧問という形で参加しているにすぎないわけであります。沖繩では現地代表を入れないほうが交渉しやすいというような、日米政府がそのように考えているからだというふうに疑念を抱いている向きもあるわけであります。そういった疑惑を払うためにも、日米双方とも沖繩立場に立って、そして問題の解決に当たる必要があるのじゃないか、このように思います。このためには、これは一つの方法でありますけれども、毎月準備委員会が開催される前に高瀬代表とそれから屋良主席とが毎月いわゆる事前に定期的な会合を持って、そしてそこで意見を十分交換した上で準備委員会に臨んだらどうか、このようにも考えるわけでありますが、政府はどのように考えられるか、ともかく現地の声に耳を傾けないで日米の代表のみで議事を運ぶようなことは厳に慎まなければならないと私も思いますが、政府の見解についてお答えいただきたいと思います。
  31. 山中貞則

    ○山中国務大臣 外務省から答えるのがほんとうかと思いますが、私が沖繩担当大臣として日米協議委員会の構成メンバーでございます。あくまでも出先の高瀬大使も入りました会合は、現地における局地的な問題、これも日米協議委員会の私を含めた会合の基本的な方針に沿って作業をするわけでございまして、その意味では国と国との間において作業が進められる形になりますので、三者平等構成ということが、本土においては沖繩担当大臣も入ってなされますが、沖繩においては施政権下にある琉球政府というものの代表者とアメリカというものが対等であるかどうかの問題等もありましてそのような構成の形にはなっております。しかし、それはあくまでも外交の形だけの問題であって、実際においてはあなたの御意見と私も同じ気持ちを持っておりますし、そのような運用もすることを確認して第一回の会合を終わっております。しかし、なおそれ以上に日本側の意思統一をする必要が、琉球政府として現に存在する政府の代表とわが国の代表である高瀬大使との間に事前の会合が持たれるべきであるという提案は、形の上においても、実質においてもたいへん興味のある提案でございますので、外務省当局と相談をしてみたいと考えます。
  32. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ただいまの御答弁に沿ってひとつそういった方向で進んでいただくことを切に要望いたしたいと思います。  次に、先ほどからいろいろ毒ガス問題あるいは傷害事件等の質問が出ておりますが、私どものほうも、限られた時間でありますので、ずっとしぼっていきますと、どうしてもやはり毒ガス問題あるいは傷害事件ということになります。きょうは立法院の方々もお見えになって、先ほどのいろいろな御説明もありましたものですから、まず先に毒ガスのことについて一問だけ伺いたいと思います。  沖繩の原水協等の調査によりますと、沖繩に貯蔵されている毒ガスというのは瞬間殺戮の兵器で、VX系毒ガスを含めて全部で十六種類、五万トン近くのこういった毒ガスがあるといわれております。それらの中には、もう御承知のように容器が耐用年数の限界にきている、いつガス漏れになるかわからない、島ぐるみの惨事に至らないとも限らないわけであります。こういった意味で沖繩県民がほんとうに不安のまっただ中に置かれている。自国民——これはアメリカの国民をさすわけですが、自国民すら反対するようなそういう非人道的な兵器、こういったものを沖繩県民と同居させておくということは、これはどうしても納得ができない。このたびの国会で、毒ガス禁止に関するジュネーブ議定書を批准したわけでありますけれども、この立場からも政府は沖繩県民の不安と危険を除去する、こういうために最善を尽くして、その撤去を再三再四申し入れるべきじゃないか、このように思います。米国撤去計画が中止された、こういう発表がありましたけれども、こういった発表に対して、政府が、米側の撤去基本方針というものは変わらないのだということで静観をしているようであっては、これも納得ができない。沖繩県民は一刻も早い撤去を要求しているわけでありますから、いま沖繩に不安と危険と怒りが満ちているのに、政府が静観の姿勢を取り続けるとするならば、私は、政府のいうところの沖繩本土並みの復帰であるとか、あるいは一体化であるとか、そういうことが単なるかけ声であって、しょせん口先だけの一体化というふうにいわざるを得ないのじゃないか、このように思います。今後とも機会あるごとに米側に強い態度で沖繩毒ガス撤去について要求もし、また早期それを実現していくべく最善の努力お願いしたいわけですが、先ほどから努力をしてまいりますというような御答弁もありましたけれども、単なる努力ではやはりこれは進展しないのじゃないだろうか、そういった意味でこれは確認かたがた伺うわけでありますが、長官の責任ある本件に対する御答弁をいただきたいと思います。
  33. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩県民も人間ならばアメリカの人も人間でしょう。アメリカ人が人間であるから、人間殺傷のおそろしい兵器を持ち込むことを、通すことも反対だというならば、沖繩の人たちは黙って持ち込まれて、それが事故によって発覚して確認されて、なおかつそれが撤去があいまいになってしまっておる。撤去そのことははっきりと変わらないと言っておりますが、一月から開始すると言ったのがすでに延び延びになっておる。その背景においては先ほど来現地の代表の方も言われました経過もありますし、あるいは反面アラスカのコジャック島等においては、ある意味ではそれでも、われわれのほうはそれに関連するいろいろな米政府の投資が付随するならば受け入れてもいいという意見等もあるようであります。これは一部の意見であるかもしれません。そのためにまだ調査団の最終報告も結果としてはなされていないと聞いておりますが、そのほかにもグアムその他信託統治領というものも別にあるわけでありますし、ビキニにおいて実験をして、住民を立ちのかしていまはまた戻らしたようでありますが、そういうような環境のところもあるわけでありますから、私どもも相手国のどこに持っていけといって、はだの色が違うところに持っていけばいいじゃないかという気持ちは全くございませんが、それはそれ相手国の事情でございますけれども、少なくとも沖繩の人々にとっては一刻も早く沖繩からは持ち去ってもらいたい、そちらの国内事情の許すところを、それはそちらさまの御判断であるという気持ちであろうと私は察します。私どももいま東京で生活を送らしてもらっておりますが、もし空襲のあとの不発弾が自分の家の床の下に残っておることがかりにわかると、その平和の生活もそのあとは毎晩毎晩、一分一秒、その自分の平和な家の中に生活することに恐怖感を覚えずには、あるいは住んでいることができなくなるだろうと思うその心情が、まさに毒ガスがあることがわかった沖繩本島の住民の方々の心情であろうと私どもは考えるわけです。ただ、あとの外交の折衝のしかたにつきましては、愛知大臣と私との間においては何回も確認し合っておりますけれども、このような考え方の共通点あるいはまたその折衝に対する日本側の心がまえというものにおいての違いは全くございませんので、私は愛知外務大臣の外交折衝を信頼をいたしております。また、私自身が半公的に接触をいたす機会を得まする場合には、たとえばランパート高等弁務官等との先般の会見においてもそのことを議題に供したわけでありますけれども、ちゅうちょすることなく、また外務大臣の権限を侵すことなく、私は住民の意思を正確に反映させて、そのことの一日も早からん努力を続けていくつもりであります。
  34. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 せんだっても本件については外務委員会において外務大臣にも質問したわけでありまして、ただいまの長官の御答弁を私も信頼して、ひとつ、同じ努力であっても実質的な努力を長官にこれからさらにお願いしたい。このことを重ねて要望したいと思います。  最後に、先ほどの傷害事件になりますが、きょうは時間がありませんので、いろいろとお聞きしたいことがありましたけれども一つにしぼってしまいまして、この傷害事件は、現在沖繩基本的な人権を求める声がいままで以上に高まっている、先月末の黒人米兵による女子高校生の暴行事件に対しては、屋良主席も人権無視の侮辱的な行為である、こういうことで米側に抗議しているわけでありますが、これは、言うまでもなく原因の一つとして、米軍人あるいは軍属犯罪に対しての、沖繩捜査権もなければ裁判権もない、そういった不合理を一日も早くはね返そうという要求になってきているわけであります。この件についてはもちろん立法院全会一致でこういう決議を可決しているわけでありますけれども、政府は七二年の返還のときを待たずに司法権を沖繩県民の手に取り戻して、実質的に取り戻して、県民基本的人権が守られるように日米交渉の場においてそのつどしんぼう強く、これを実現すべく要求していかなければならないと思うのですが、この件に対する政府の基本的な姿勢、先ほどからもいろいろと御答弁ありますけれども、外交ルートによるところの具体的交渉の見通し、具体的にどういうふうな見通しを立てておられるか、いつごろどういうような会合を持とうとされているか、非常にこまかくなりますけれども、むしろ努力目標というようなことでなくして、そういうふうな外交ルートでどういうような会合を持たれようとしているか、この辺をお聞きしたいと思うのです。努力だけではこれはどうにも進展しないというふうに私思いますので、具体的な努力目標といいますか、見通しについて最後に御答弁をいただきたいと思います。
  35. 山中貞則

    ○山中国務大臣 琉球警察が公的に女高生刺傷事件についての米側のとった態度について不満を表明いたしました。このことは非常に重大なことであると私は考えております。双方覚え書きによって、微妙な接点を円満に運営するための——今日まで内在した不満はあったかもしれませんが、とにかくも両者協力して行なわれてきましたこれらの不祥事件あと始末について、琉球警察側が不満を表明したという事実を私としてはたいへん重大なことだと思っておりまするし、そのようなことをそのままにいたしておきますと、米兵の集団対県民の集団のトラブルも発生する可能性が予想されますし、その徴候がすでに起こっております。このようなことは、日米双方にとっても、アメリカの現地駐留の諸君にとっても、沖繩県民にとっても、結果何ものをもプラスを生まないだろう。非常に心痛いたしております。その意味において、私は、現在具体的に琉球警察の逮捕権並びにその周辺に付随する捜査権の問題、アメリカ側から言うならば施政権と裏表をなす裁判管轄権の周辺の問題としての捜査権の限界というようなもの等について、事務的に、具体的にいまただいま折衝中でございまして、ただ願望を表明しているわけではございませんし、現在折衝が進行しつつあるということを申し上げられると思います。
  36. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 じゃ、時間がございませんので、以上で質問を終わります。
  37. 池田清志

    池田委員長 林百郎君。
  38. 林百郎

    ○林(百)委員 時間が十分に限られておりますので、私も二つの問題に限って質問をいたしたいと思います。  一つは、米兵の女子高校生に対する暴行事件でありますが、最近とみに——これは総務長官にお尋ねしたいと思います。特に沖繩で米兵による犯罪が非常にふえております。沖繩県で続発している米軍犯罪は、これが明らかに特に最近増加しているということは、沖繩基地とするアメリカのベトナムの侵略戦争、ことにこれがインドシナ半島全体へ拡大されておる、カンボジア、ラオスまで拡大されておるということと非常に密接な関連を持つものであると考えております。で、沖繩米軍基地がある限り、またその基地アメリカのアジアの侵略の重大な基地となっている限り、こういうような問題は根本的に解決されるものではない。私たちはまあそう考えております。したがって、基地撤去、米兵の沖繩からの退去というものが基本的な問題だと思いますが、しかしとりあえず私たちは、沖繩の全面返還を要求すると同時に、政府に次の二点をこの問題について要求したいと思いますので、答弁を求めるわけでありますが、一つは沖繩県での米兵による一連の極悪犯罪について米国政府に抗議するとともに、責任者犯人の厳重な処罰を要求して、被害者に対する公正な損害賠償の支払いをさせなければならないと思います。要するにあいまいに、任務が済んだからといって何らの裁判の結果も知らされずに本国にいつの間にか帰っているというようなことがしばしばありますし、また、検挙数も非常に極悪犯罪については少ない数字になっておるわけでありますが、そういう事態をあいまいにさせることなく、やはり日本政府としても米国政府に直ちに抗議をして、責任者犯人の厳重な処罰と、被害者に対する公正な損害賠償の支払いを、これは政府としても責任を持って要求しなければならないと思いますが、この点について長官、どうお考えになりますか。
  39. 山中貞則

    ○山中国務大臣 その点は、先ほど立法院の代表からも、あるいは委員長中山議員からもお話がありましたとおり、そのことについて基本的にはアメリカ側も同意いたしておるわけでございますから、私たちといたしましては、検挙率の一そうの向上につながる琉警の納得する米側との緊密なる協力体制というものをもう少しバックアップしてやりたいということ、さらにその後における処理のしかたについて、今後琉警の不満等が出るような遺漏のないような体制にしなければならない。またその検挙、起訴いたしましたあとも、その処理が、裁判の経過も含めてでありますが、あいまいにされることのないように、これは向こう側も守ってくれるものと思いますし、そういう言明もなされております。ただ、私たちの国におきましても、祖国においても、かつてベルギーの宣教師でありましたか、スチュワーデス殺しの犯人と目された人が外交官特権でもって帰国してしまったという忌まわしい事件がございました。私たちは、そういうことが今日の沖繩のこの県民感情の底流の上に立って行なわれないように、十分米側に対しては、私自身も必要な場合においてはそういう連絡もいたしますし、要請もいたしますし、さらに外交努力は不断の努力を続けていくつもりであります。(林(百)委員損害賠償の点」と呼ぶ)その点は含めて私、申し上げたつもりでおりますが、裁判の公開、それから適正なる損害の補償等は決議事項等にも入っておりますし、それを含めて中山委員長が現地における対米折衝をされた、そのことですでに現地の軍当局においても明確にいたしておるところでありますから、そのことがあいまいにならないようには、私たち祖国の政府も責任を持たなければならぬと考えます。
  40. 林百郎

    ○林(百)委員 次に、私たちのほうは、サンフランシスコ条約三条を当然廃棄して、沖繩無条件全面返還をすべきであるという立場に立っておりますから、われわれは治外法権は当然に撤廃されなければならない、こういう立場に立っておるわけであります。わが党も、またこのことを六月十五日に政府に要求したわけでありますが、このことは質問にも出ております。沖繩県での米兵の一切の特権、治外法権を廃棄して、米軍人軍属犯罪捜査権、逮捕権、裁判権を直ちに琉球政府に移管するよう米国政府に要求すべきである。これは立法院決議にもこのことがたしかあるわけなんですけれども、このことにつきまして、あなたが沖繩の代表に、捜査権の拡大の方向で検討しているということを説明されているわけですけれども、これはどういう意味のことを説明され、従来よりどのように捜査権について琉球政府側の独自の捜査権をどのように拡大するという立場説明されたのですか。正式に国会であなたの答弁をお聞きしたいと思います。
  41. 山中貞則

    ○山中国務大臣 外務大臣から御答弁願うとたいへんありがたいのですけれども、私のほうは、先ほど来申しておりまするように、具体的にどこまでということの限界をいま言える立場にありませんが、少なくとも私の立場から考えましても、いますぐに裁判管轄権そのものを琉球政府に与えろということについては非常な障害があるように思います。すでに現地においては、民政官限りでありますが、そのことについてならばノーであるということを返事をしておるようであります。そのような前提がありますが、私たちとしては、やはり捜査権というものがどうしても付随しなければ関係住民も県民も納得されないだろう、あるいは琉警の公的発言もそこらに問題が存在しておるのではなかろうか。そのことを踏まえて、それを前進させるための交渉をいたしておるわけでありますから、いまここで具体的にどういう点をどこまでということについては、また私自身は、ある意味の考えを固めておりますけれども、それを外務大臣御同席もしくは外務大臣の御発言というものなしに私から対米折衝の中身についての発言をする段階には現在はないということをたいへんに残念に思います。
  42. 林百郎

    ○林(百)委員 時間の関係ですから……。そうすると、わがほうとしては、治外法権の廃棄を立法院の議決どおりに要求するわけですけれども、総務長官としても、捜査権の拡大という方向は考えておる。しかしこれは外務大臣と十分の調整協議をして、対外的な交渉をしなければならないので、ここで具体的な説明はできないけれども、あなた個人の考えとしては、捜査権の拡大という方向へは前進的な考えを持っている、こう聞いていいのですね。
  43. 山中貞則

    ○山中国務大臣 東郷局長より答弁がありましたように、すでにそういう具体的な事務と申しますか、そのようにどういうふうな手段があり得るかということについては、すでに検討が開始されておる、進行しておるということを申し上げておるわけでございます。
  44. 林百郎

    ○林(百)委員 次に、時間の関係でこれだけで終わりますが、毒ガスの問題について。わがほうの調査によりますと、アメリカの発表ですけれども、「現在沖繩にある致死性化学物質(毒ガス兵器)は約一万三千トン、このうちわずか二トンで百万に近い沖繩県民が数分間で全滅してしまうという威力をもっている。この毒ガス兵器が貯蔵されているのは沖繩本島知花弾薬貯蔵所のレッド・ハット・エリアとよばれる一角である。」こういう非常な高度の致死性を持った毒ガス、わずか二トンで沖繩県民が数分間で全滅するという威力を持った毒ガスがレッド・ハット・エリアに貯蔵されている。この問題について、島民の諸君は具体的に「この恐怖のレッド・ハット・エリアと一キロメートルとはなれていない美里村美里のある女子事務員は、「いまこうして吸っている空気は大丈夫だろうか。もしかして毒ガスがもれて流れこんでいたらおしまいだ——こういう考えが頭にこびりついてはなれません。まわりの人もみんな同じ思いでしょうが、お互いに毒ガスのことはつとめて話さないようにしているのです。これ以上、恐怖や不安が高まると気が狂ってしまいそうですから」と怒りに顔をくもらせて語っていた。」という現地の談話がございます。  もう一つ、美里村と同じように、知花弾薬貯蔵所に隣接する嘉手納村役場の一職員は、「県民がなにも知らないうちに毒ガスを持ちこんでおいていざ撤去となると県民安全対策も考慮せず、米国民の反対のこえがあがるとそれを口実にいつまでもおいておこうとする。こんなすじの通らないことが許せますか。」こういう談話があるわけです。  そこで、長官にお尋ねしますが、こういう致死性の化学物質、毒ガスが、致死性のものが沖繩に存在しているかどうか。この事実ですね。わずか二トンで百万近い沖繩県民が数分間で全滅するしいう、そういう威力を持っている。これを貯蔵しているかどうかという点が第一点。  第二点は、これは立法院決議にもありますけれども、「毒ガス兵器撤去されるまでその安全性を確保するため、日米琉科学者からなる監視委員会を設置すること。」というのが一つ。要するに二つですね。もう一つは、これも立法院決議にもありますが、「沖繩における毒ガス兵器の種類、数量及び貯蔵場所を明確にし、同兵器撤去する時期及びその撤去の方法を明示すること。」とにかく兵器の種類、数量、貯蔵場所、ことにこういう致死性のものがあるかどうかということが一つ。もう一つは、毒ガス撤去されるまで、その安全性を確保するために日米琉科学者からなる監視委員会を設置するということが立法院決議としてなされていまするが、これについて長官、どういうように考えているか。答弁願いたい。
  45. 山中貞則

    ○山中国務大臣 内地においても、イペリットの問題で銚子沖の漁民がなおいまだに心配していろ関係もありますし、また漂白剤の原料として——ついおとといですかきのうですか、おとといのできごとできのう報道されたわけですが、トラックに積んであったボンベが……(林(百)委員本土のことはわかっている。」と呼ぶ)というようなこともありました。現地の人々、その周辺の人々の恐怖感というものは、想像に余るものがあろうと思いますということを申し上げたかったのです。ただ、私としてはアメリカ側があることを確認いたしておりますから、そのほかに致死性の何というものが幾らあって、何種類あってというようなことについては、私自身は承知いたしておりません。しかし終戦直後からそこに搬入いたしました運転手等の実際上の体験談等も聞いてもまいりました。その確認等はやはり外務省を通じて必要な場合にはしなければならぬと考えておりますが、私自身は、いまいろいろとトン数についても言われますが、アメリカ側から何トンあるという正確な発表あるいは回答というものがございませんので、ここで責任あるお答えはいたしかねるわけでございます。  第二点の、日米琉からなる監視委員会ということでございますが、おそらく撤去という搬出の手段については日本側も立ち会うことを認め、もちろん琉球側の立ち会いも認めるでありましょうし、日本側としては学者と申しますかあるいは防衛庁、施設庁の専門家あたりにわずらわすことになると思いますが、そういうものについては撤去がきまり搬出がきまればやってくれる、応じてくれると私は確信いたしております。しかし現在貯蔵されておる事態を監視するということについて、はたして受けるかどうかについては非常な困難性があるように考えますが、私自身の判断だけでは処理できませんので、これまた外務大臣と相談をいたしたいと考えます。
  46. 林百郎

    ○林(百)委員 これで終わりますが、二つちょっと詰めてお聞きしたいのですが、毒ガスの中で致死性の毒ガスが貯蔵されているかどうかということが一つと、それから日本政府として、こういう立法院の議決にあるように毒ガス兵器撤去するまでその安全性を確保するための日米琉科学者からなる監視委員会を設置するということを日本政府として申し入れる意思があるかどうか、意図があるかどうか。向こうから言ってくるのを受けて待つのではなくて、こちらからこういう要望をする意思があるかどうか、そういうことを聞いているわけです。
  47. 東郷文彦

    ○東郷説明員 国防省の発表によりますと、沖繩にある致死性の毒ガスで化学剤としてあげたものはマスタード剤、それから神経性ガスのGB、VX、こういうことでございます。正確な数量、それ以上の種類については発表はございません。  第二の点につきましては、ただいま総務長官がお答えになりましたところで御了承願いたいと思います。
  48. 林百郎

    ○林(百)委員 ちょっとわからぬ。どういうことですか。申し入れをする意思があるのかないのか。
  49. 東郷文彦

    ○東郷説明員 総務長官がただいまその点について外務大臣とよく御相談するとおっしゃったと了解しております。
  50. 池田清志

    池田委員長 永末英一君。
  51. 永末英一

    ○永末委員 防衛庁長官にお伺いいたします。  一九七二年に沖繩の返還が行なわれる時点を境にして、それ以前とそれ以後では沖繩における米軍基地の性格、役割りは変わると防衛庁長官はお考えですかどうですか。
  52. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 基地状況は変わると思います。
  53. 永末英一

    ○永末委員 基地状況が変わるということは、アメリカのこの地域における戦略もまた変わると判断されておりますか。
  54. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 向こうが施政権を持って自由に使えるときと、日米安全保障条約がかぶってきて日米安全保障条約のワク内において使う場合とは変わってくるだろうと思います。
  55. 永末英一

    ○永末委員 その場合に当初基地の性格が変わるということは、ただ単に条約上の関係で変わると判断されておられるのか、それとも実態的に変わると判断されますか、いずれですか。
  56. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国際条約というものは国の約束で非常に重要なものであり、信義を持って守るべきものであります。そういう意思を持ってこの条約は締結されているものでありますから、その条約の命ずるところに従って運用されなければならぬと思います。
  57. 永末英一

    ○永末委員 もちろん、ある一つの状態は条約も含んでの状態でありますから、条約なしの状態は考えられません。私がお伺いしたいのは、現在は彼らが無制限の施政権を持っておることを前提にしての、沖繩における米軍基地の使用であり、それに基づく彼らのアジア戦略の構成であります。一九七二年以後には安保条約がきいてくる。その意味において彼らの戦略が変化する、こういう御認識でございますが、その変化のポイントをひとつ詰めて考えるならば、現在、私の判断では、いわゆる前進戦略に基づく前進基地として、そこにいろいろな基地が置かれ、駐兵が行なわれ、武器も置いてあると思います。そういう性格は変わるか変わらないか、お伺いいたします。
  58. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 安保条約の極東条項並びに日本本土防衛に関する条項、沖繩日本本土になりますから本土並みになるわけであります。その両方がひっかぶってくるだろうと思います。
  59. 永末英一

    ○永末委員 もう少し包括的に考えるならば、無制限な基地使用を沖繩でやることをアメリカが許されておるという状態から、安保条約による規制がきいてくる一九七二年以後のアメリカのこの地域における戦略というものは、沖繩の状態が変わった場合に、本土における安保条約また沖繩においてきいてくる安保条約、その範囲におけるアメリカの戦略というのはどちらに重点が置かれるか、そこをお伺いしているわけです。
  60. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 沖繩本土並みに安保条約においても運用されなければならぬから、アメリカのほうでもしいままでどおり使おうと思っても使わせないようにするということになるところが出てくるだろうと思います。
  61. 永末英一

    ○永末委員 もう一つ詰めておきたいのですが、本土は安保条約下にある、沖繩は彼らが自由に使っておるということが、たとえば台湾、朝鮮、これを含みつつアメリカの戦略はその上に成り立っておる、ところが沖繩に安保条約の規制が加わるということになれば、基本的に前進基地としての使用ができなくなるということを彼らが考えた場合には、アジアに対する戦略全般に対して大きな変更を加えざるを得ないと私は思いますが、あなたはどうお考えですか。
  62. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 アメリカが極東全般にどういう戦略体系を持っているか、その中で沖繩や、あるいは韓国、台湾をどういうふうに評価し、運用しようとしているか、そういう全体系をこまかに承知しないと断定はできません。われわれのほうから言えることは、沖繩についても本土並みに安保条約を運用するということでありまして、その点は厳格に実行するようにわれわれは向こうと話し合い、われわれの意図を透徹するようにしたいと思っております。
  63. 永末英一

    ○永末委員 もう少しこの点を明確にしたいのですが、あなたはなぜ沖繩アメリカ軍が毒ガスを置いておるとお考えですか。
  64. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 それは過去の結果がいま継続しているということなので、したがって、内外の情勢変化に伴って沖繩から撤去するというふうにアメリカも変わってきたと思うのです。  過去の冷戦時代にアメリカがとった戦略体系と今回のように緊張緩和ということも考えつつ中国その他とも話し合いをしようという体制に出てきた状態とでは、アメリカの態度に差異があるだろうと思います。そういう結果いまのような変化が出てきたのだと私は思います。
  65. 永末英一

    ○永末委員 毒ガス撤去させねばなりません。しかし、彼らが沖繩毒ガスを配置いたしたのはただ単に自由に使えるところだからという観点からだけではなくて、やはりこれを前進基地としてここから彼らが使おうとするところへ持っていこう、こういう企図があったと私は思います。  だといたしますと、いまわれわれが努力してこの沖繩からの毒ガス撤去を実現せしめるということは、同時に、その他の兵器につきましても彼らの戦略の変更をわれわれが迫っておるということを彼らに思い知らさねばならぬと思うわけです。これがわからなかったら、ただ単に人道的なことということだけでは私は相すまぬ点がある。防衛庁長官としてはその点についてどうお考えか、伺います。
  66. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点は非常に大事なポイントでありまして、アメリカ側が七二年の切りかえの性格の返還に十分注意をしないと、日本国内に非常に大きな波紋を呼び起こす事態ができてないとも限りません。その点はわれわれとしては事前に十分お互いの立場、変化を了解し合って、万が一にもそのような安保条約を逸脱するようなことのないように注意を喚起し、また努力してまいりたいと思います。
  67. 永末英一

    ○永末委員 先ほど、日米間で、沖繩の返還時における沖繩防衛について一回話し合いをされたと聞きました。私は、先ほどあなたが言われたとおり、わがほうもまたアメリカのアジアにおける全般の戦略を承知し、そうして沖繩の防衛構想については、むしろわがほうから、わがほうのなし得ることを提示して、それをアメリカ側に承認せしめるということがなければいけないと私は思います。あなたはどうお考えか。
  68. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その点はまことに同感でございます。
  69. 永末英一

    ○永末委員 それではその点について、あなたは現行平和憲法のもと、防衛方針として打ち立てらるべき基本観念は専守防御にあるということを発表されておられます。この専守防御という観点から沖繩の返還後の防衛構想を考える場合に、あそこにある米軍とわが自衛隊との関係は一体どうあるべきとお考えか。
  70. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 自衛隊は日本の国土防衛を憲法の範囲内において行なうという使命を持っております。米軍日本の防衛を行なうと同時に、極東条項というものによって基地を持っておるという性格も持っております。その極東条項という点において差異があるだろう、また極東条項というところにおいて限界もあるだろう、そのように思います。
  71. 永末英一

    ○永末委員 少しはしょり過ぎたのですが、専守防御があなたの考えられるわが防衛庁構想に基づく防衛方針ですね。
  72. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 極東条項による行動もやはり国連憲章あるいは防衛的な意味が基本になってそれは行なわれているので、これは安保条約の前文その他を読んで見れば明らかなことであります。そういう意味においては、あれは攻撃的な性格を持っておる条項ではなくして、防衛的な性格を持っておる条項である、このように私は解釈いたします。
  73. 永末英一

    ○永末委員 私が伺っているのは、極東条項に基づくアメリカの軍事力の性格を論じているのではなくて、わがほうが沖繩にもし防衛的な措置を講ずるとした場合にも、わがほうは専守防御をもって貫かれるべしとあなたはお考えだなということをお伺いしているわけです。
  74. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 もとより当然であります。
  75. 永末英一

    ○永末委員 そういたしますと、沖繩返還後の自衛隊の配置について、あなたは自衛隊独自の基地を求めることなく、現存する米軍基地の共同使用等々を考慮するほうがいいのではないかという向きの発言をされたと思います。あなたは現在もそうお考えかどうか。
  76. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 現在米軍が使っている施設、区域等を使用して、これ以上広げることをしないようにと努力したいと思っております。
  77. 永末英一

    ○永末委員 それは米軍とわが自衛隊とが同じ基地で雑居するということなんですか。それとも米軍がいなくなって、そのあとに自衛隊が入るということなんですか。どちらですか。
  78. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 できるだけ後者のようにしたいと思っております。
  79. 永末英一

    ○永末委員 できるだけではなくて、私が伺っているのは、専守防御に立つ自衛隊の役割りと、安保条約は別としても、要するにアメリカの前進戦略に立ってなお沖繩にとどまろうとする米軍とは、はっきりとした役割りの差異が私はあると思う。もしそれが同じ区域に雑居し、また同じ施設を使おうということになりますと、きわめてわがほうの専守防御を貫き得ない条件が生まれてくると思う。できるだけではなくて、私は、交渉の方針としては、やはり自衛隊は自衛隊としての独自の施設、区域を使うことを沖繩県民と相談をしながらやっていかなければならぬ問題だと思いますが、この点を明らかにしていただきたい。
  80. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これから話し合いに入るわけでありますから、結果まで予見することはできませんが、御趣旨に同感であります。
  81. 永末英一

    ○永末委員 時間がございませんからもう一つ。  最初沖繩に置かれるべき自衛隊の指揮官等について、私は、沖繩戦争さらにまた戦後二十五年、一九七二年までですと二十七年、沖繩の置かれた特殊の事情にかんがみ、その指揮官には沖繩県民をもって充てるべきだと思いますが、あなたはどうお考えか。
  82. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 自衛隊の編成並びに人事の配置、それから機能、指揮官の能力等も考えてやらなきゃなりませんが、県民の皆さんと調和をとるということが非常に大きな任務であろうというこは自覚しております。ただ、そういう適当な人がいるかどうか、これはその場になってみないとわからないので、いまからお約束することはできません。
  83. 永末英一

    ○永末委員 いまからお約束できないではなくて、いまから準備をされるべき問題だと思います。時間ですから、防衛庁長官、もうけっこうです。  東郷アメリカ局長、新聞の報道するところによりますと、沖繩におけるアメリカ側の資産について、何か買い取りを妥結したかのごとき報道がなされておりますが、それはどういうことをやったのか、御報告願いたい。
  84. 東郷文彦

    ○東郷説明員 御承知のように、昨年十一月の日米共同声明第九項に、沖繩返還に関して両政府間に処理しなければならない財政上、経済上のいろいろな問題があるということがございました。現に沖繩にあります米国のいろいろな資産につきまして、これを返還時どうするかということが、返還実現までに日米間で取りきめられなければならないことでございます。そのための準備といたしまして、日米双方におきまして実情の調査をそれぞれやっておりましたわけでございますが、最近新聞紙上にも伝えられておりますように、わがほうの大蔵当局米国側の財務当局との間に、この問題を返還までにどういうふうにしていくかという話し合いが始められたわけでございます。
  85. 永末英一

    ○永末委員 話し合いが始められたというからには、何らかの御方針をお持ちでしょう。すなわち適当な対価をもって買い取る基本的態度を持っておられるのですか、これを伺いたい。
  86. 東郷文彦

    ○東郷説明員 いま申し上げましたように、この問題、すなわち資産の問題は、返還実現までに日米間で十分話し合った上、双方満足する取り扱いをしよう、こういうことでございます。  まず第一には、どういうものがあってそれはどういう性質のものであるかというところから当然話は始まるわけでございます。したがって、結局においてあるものは有償で引き取る、こういうことになるかもしれません。その辺の問題の今後の進め方も含めまして、最近両当局の間に話が始められたわけでございます。
  87. 永末英一

    ○永末委員 あるものは有償ということですね。昨年の十一月の佐藤・ニクソン会談後、この委員会で外務大臣にはちゃんと注文をつけておきましたが、一つ御質問したいのは、ガリオア資金をもとにしてつくられているいろいろなものがございますね。これは一体有償のうちに入るべきものとお考えかどうか、お答え願いたい。
  88. 東郷文彦

    ○東郷説明員 すでに国会のいろいろな委員会におきまして、ガリオアをそのまま返還するということは考えたくない、こういうことは政府からもすでに意見を述べておると記憶いたしますが、先生お話しのように、ある資産についてはガリオア資金からできたものもあるということでございますけれども、それらの問題も含めまして、個々の資産について日米当局間でとくと話し合いまして、合理的な解決を見たいということでございます。
  89. 永末英一

    ○永末委員 わがほうのガリオアは、債務と心得ると言った人がございまして、とうとうこれは債務になってしまいましたね。しかし、沖繩の場合にはガリオアに関するものは沖繩県民に対する贈与だということをアメリカ側アメリカの議会においても言明し、また沖繩県民に対してもこれは差し上げるのでございますということをはっきり言っている。明らかにこれは日本政府がかつてガリオアに対して債務と心得たという条件とは全く違っていると私は思います。この辺の御認識はございますね。
  90. 東郷文彦

    ○東郷説明員 先生ただいまお話しの点は、米国政府と沖繩との関係でございまして、日米間に沖繩のガリオアに関してはすでに話がついたというようなことがあるわけではございません。ただいま申し上げましたように、わがほうとしてはガリオアそのものを返還するというのは適当でないという意見はすでに申し上げておりますが、それらの問題を含めまして、すべて返還の際に決着をつける、こう御了解願いたいと思います。
  91. 永末英一

    ○永末委員 日本側、すなわち日本政府がガリオアを処置したことと、これから始まる沖繩のガリオアによるところの施設等の帰属の問題は別問題である、こういう態度で対処していくという御言明だと承知してよろしいな。
  92. 東郷文彦

    ○東郷説明員 考え方としてはそういうことでございます。
  93. 永末英一

    ○永末委員 時間が参りましたのでこれで最後にいたしますが、少なくとも沖繩県民が、長い、つらい歴史の中で、そして相手側がこれはあなたに差し上げるのでございます、ということは、沖繩県民の所有だと考えて、その分についてはたとえその施設に幾らかの一般資金が入っておろうとも、筋を貫いてこれは有償にすべきものではないと私は思うのです。その辺の考えについてお答えを願いたい。
  94. 東郷文彦

    ○東郷説明員 御指摘の点は、今後の日米間の返還に関する話し合いの内容の問題でございますので、われわれの今日考えておりますところはいままで申し上げたところで御了承を願いたいと思います。
  95. 永末英一

    ○永末委員 終わります。
  96. 池田清志

    池田委員長 広瀬秀吉君。
  97. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いま永末委員から沖繩米国資産買い取り問題の質問がありましたが、私も引き続いてその問題をまず質問をいたしたいと思います。  最初に外務省にお伺いしたいのですが、つい最近、六月十一日から十二日までですか、この問題について日米会談が開かれた、こういうことで買い取るということに合意を見たというように新聞に報ぜられております。しかも、その買い取りの範囲も、電力公社であるとか水道公社であるとか、あるいは道路の一部あるいは通信施設などをも含んでいるというような報道もあるわけでありますが、この問題については国会の審議をずっと調べてみますと、そのようにまことにすんなり買い取り交渉に入ってしまっているということなんですが、経緯を見ますと、たとえばかつての小笠原三九郎大蔵大臣あるいは田中大蔵大臣などからは、特に沖繩のガリオア資金は返済すべきものではないというような表明なども行なわれておりますし、また、リッジウエイ占領軍総司令官が、総司令官として沖繩高等弁務官に対して、ガリオア資金などは返還を求めるものではないんだと、米国自身、米軍自身の、占領しておった総司令官自身がそういう表明をいたしておるというようなこともあり、現地の沖繩等においても、これは大体筋として返すべきものではないのだ、こういう議論が行なわれてきておったわけです。こういう経緯を見ますと、一々だれが何月何日どう言ったということは申し上げませんけれども、そういう経緯を踏まえてみますと、私どもどうもわからなくなる。というのは、一体この資産の買い取りというものは法律的な根拠なり条約上の根拠なりこういうようなものがあるのかどうか、かくかくの法的根拠によって、かくかくの条約上の根拠によって政府が買い取るのである、こういう点はどのように外務省としてお考えになっておられるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  98. 東郷文彦

    ○東郷説明員 先刻御答弁申し上げましたように、日米共同声明にも、返還に関して両国間で処理されなければならない経済上、財政上の問題がある、われわれはこの資産の問題はその一つだと考えておりますが、これは法律的に有償でなければならぬとか無償でなければならぬとかいうことよりも、あるいはまたこういった場合に国際的に先例があるかと申しましても、沖繩が今日日本に返ってくるというのは、まさしくこれに当たるという先例もございませんので、両政府間において十分話し合った上、双方満足する解決をはかる、こういうことになると思います。われわれも、また財務当局におきましてもさような考えで検討を進められておると了解しております。
  99. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いま何やらわからぬ答弁なんですが、法的な、条約上の明確な根拠というようなものはないに近いという答弁だと私は思うわけです。しかも沖繩が返ってくるというケースそのものが大体世界にあまり例のないことなんだということで、ほかにも参考になるようなものはないんだ、こういう御意見のようであります。  次に一つお尋ねしたいことは、昨年十一月の総理とニクソン大統領の共同声明の中に、第九項ですか、「総理大臣大統領は、沖繩の施政権の日本への移転に関連して両国間において解決されるべき諸般の財政及び経済上の問題(沖繩における米国企業の利益に関する問題も含む。)があることに留意して、その解決についての具体的な話合いをすみやかに開始することに意見の一致をみた。」このことから六月十一日からの日米会談は行なわれた、こういう関係にありますか。
  100. 東郷文彦

    ○東郷説明員 日米共同声明にはいま御指摘のとおり書いてございまして、そう書いてあるからこうやったと申しますよりは、返還に関して日米間にこういう問題があるということをそこで総理大臣大統領との間で確認し合ったというのは一つの事実でございます。これはそこにそう書いてあるから今度やったということよりは、現案にそういう問題があるので、返還までにこれを両政府間で処理しなければならぬということで、時期もだんだんたちまして、双方のそれぞれの検討も進み、今後の進め方を含めて話し合いを始めた、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  101. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それでは重ねて聞きますが、日本国政府に対して、アメリカ政府の公式な立場において返還請求がなされた時期、そしてだれからどういうぐあいに買い取ってもらいたいという請求が公式に、オフィシャルになされたか、時期とだれがそういうものを持ってきたか、このことについて明らかにしてほしい。
  102. 東郷文彦

    ○東郷説明員 日米共同声明に至る日米間の話し合いにおきましてもそういう問題がある。そのときに中身まで立ち入って、たとえばこれは有償でなければ困るとかそういう話があったわけではございませんが、やはりそれぞれの当局におきましては、問題を知らぬわけじゃございませんし、十分わかっておるということで、それを返還実現までにどのように処理していくかという意味から、両当局間で話を始めたということでございますので、何月何日にどれをどうしろという要求があった、こういういきさつはございません。
  103. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 どうもお話を聞いていますと、沖繩を返還する、このことについては、私どもはこれはもう日本アメリカに返還をさせる権利があるんだ、アメリカは義務があるんだ、こういうとらえ方をしてきたわけであります。講和条約第三条によって、後段のところで、国際連合に対する信正統治の提案をやるまでの期間は、アメリカが三権を、すなわち施政権を包括的に行使するんだ、こういうことになっておったわけです。それを平和のうちに交渉の中で返してもらう、そういう、言うならば日米友好、パートナーシップということが、これから日米共同責任時代だともいわれる、そういうものの代償として、やっぱりこの問題を考えるというのが基本でございますか。
  104. 東郷文彦

    ○東郷説明員 共同声明にもその考え方は書いてございますが、返還までに日米両政府間で処理しなければならぬということでございまして、もし先生のおっしゃるのが、こういうことで沖繩を買い取るというような意味でございましたら、全然そういう意味ではございません。
  105. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 どうも私どもこの沖繩が、四分の一世紀にわたってアメリカの言うならば完全な占領下に置かれて、日本の主権が全然及ばない土地として、軍事占領にひとしい状態を続けてきた、こういうようなことに対して、こういう場合にアメリカ沖繩に占領者として、施政権者として投資をしてきた、こういうものを返還のときに無償で返すというのが、むしろ日米のパートナーシップをアメリカ側が言うならば、そういう形こそが正しいんだと思うわけでありますが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  106. 東郷文彦

    ○東郷説明員 政府委員の私から答えるのはいかがかと存じますけれども、ともかくそういうすべての問題、すべての考え方を含めまして、これから日米間で話し合いをしまして、双方満足する解決をはかりたいということでございます。
  107. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 基本問題をあまりやっていますと、先へちっとも進みませんし、時間が非常に制約されていますので、いずれまた機会をあらためて、外務大臣出席の際に、基本的な立場をさらに明らかにしたいと思うわけであります。  ところで大蔵省にお聞きしますが、昨年の国会で福田大蔵大臣が大蔵委員会において、その際保利官房長官もお見えになったのでありますが、筋の通る資産は買い取らなければならないのではないか、こういうような発言を初めてなされたわけですが、この筋の通るという解決、筋の通る資産は買い取るというのでありますが、沖繩に対するアメリカの投資と申しますか援助と申しますか、そういうものは、いろいろこれは軍事施設そのものもありましょうし、また民生、沖繩県民の生活に至大の関係のある電力とか水道とか道路とかそういう問題、あるいは沖繩の官公庁の庁舎であるとか学校の施設とかいろいろありますが、そういうものにガリオア資金というものも含めてそれがあった。そういう中で、筋の通る資産については何とか買い取らなければなるまいという大蔵省の、これは福田大蔵大臣のことばでありますから、それが基本的な大蔵省の立場だと理解するのですが、それをどういう資金のどういう範囲の部分を買い取ることが筋が通るのだというお考えなのか、その点をお聞きしたいと思います。
  108. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 お答えをいたします。  御指摘のとおり昨年の通常国会におきまして、愛知外務大臣それから保利官房長官それから福田大蔵大臣、それぞれ、まず愛知外務大臣は、返すほうの立場からいえば、施設その他民生に対して相当のお金を使っているから、何がしかの考慮を求めてくることは自然の成り行きではないか、こういう御表現をなすっていらっしゃる。それで福田大蔵大臣は、あまりおっしゃっておりませんが、私としてはなるべく日本国の負担を少なくしていきたい、こういう姿勢でやってまいりたいという議事録が残っておる。保利官房長官は、みなただでもらうのだというようなことでは事は片づくものではない、これが国会答弁でございますが、そのあと行なわれました記者会見におきまして、買い取りの対象は米軍基地より電気、水道などの公共施設になるであろうという記者会見をされておるわけでございます。  それから、ただいま六月の十日から始まりました第一回の交渉でございます。この結果が新聞紙上には、向こう側の提示されました資産全部を有償で買い取るというようなことで出ておるわけでございますが、その真意は、実はあそこに並んでいる資産を全部有償で、金を出して買い取ります、こういう約束を第一回の交渉において行なったわけではございません。第一回の交渉において一応話がきまりましたのは、アメリカ政府としましては電力公社でございますとか水道公社でございますとか琉球開金でございますとか、航海施設、通信施設といったものを日本政府復帰時において承継をする、こういうことを申したわけでございます。われわれは、日米ともでございますが、金を出して買い取るということは、実は意識的に極力避けておるわけでございます。避けておりますのですが、買い取りといっていただいて、常識的な意味で決して否定するものではございませんけれども、厳密な意味では一応避けておる。なぜ避けておるかと申しますと、先ほど申し上げましたそういった資産を全部有償で買い取るというようなことはまだきめておらないわけでございます。その意味で承継ということばをわれわれは中で使っておるということをまずお含みいただきたい。  そこで御質問のポイントでございますが、何が筋があるかという御質問でございます。これにつきましては第一回の交渉の始まる前におきましては、アメリカ側は一体何を要求してくるかということは全くわからなかったのであります。われわれといたしましては、いろいろと憶測をいたして、こういうことも言ってくるかもしれない、こういうことも言ってくるかもしれない、いろいろ役人のことでございますので、あらゆる可能性を考えておったわけでございますけれども、その場合にもし、アメリカが二十五年の施政権を把握しておりました間にいろいろな金を出している、これは事実でございます。たとえば民生関係のそういった援助の金の中には、消費的な経費と投資的な経費と二つあるわけでございます。投資的な経費は現にここに残っておって、現に把握できるわけでございますけれども、消費的な経費は、なるほどそれは、確かにそのときにおいてはいろいろと役に立ったことは、これは事実でございましょうけれども、これをも含めて、要するに全部払ったやつをコンペンセートしてくれ、補償してくれ、もしこういうような要求がございましたら、これはいかにも沖繩を金で買い戻すという感じを与えるじゃないか、かようなことは、ガリオアの話が出願したですけれども、ガリオアのリッジウェイがああいうことを言った、あるいはまた米国の議会の証言で信託統治をされているのだということがなくても、かようなことはどうも金で買い戻すような印象を与えてはなはだおもしろくないということで、まず筋の一つといたしましては、かような要求がもしございましたらこれは断わろうではないかというような話を政府部内ではいろいろやっておったわけであります。  次に、第一回のふたをあけましたところが、そういった要求のしかたはアメリカ側はいたしてきませんで、アメリカの所有になっております国有財産について承継をする、今後これについて買い取りというのは避けると私は申し上げましたけれども、まず常識的には買い取りといっていただいてけっこうだと申し上げましたけれども、そういったものについて今後どういうような理屈づけで、どういうような評価をして、評価と、それから実際に現にこの財産がどのくらいの価格になるかという評価と、実際に銭を幾ら出すかということはこれはまた別問題でございます。でございますが、まず何よりも現在どのくらいの価値があるかということをまず買い手のほうから、こちらの承継するほうから確かめる、これが第一の作業と存じます。まずその評価作業を早急に始めるといえことで、この第一回の会合は終わっておるわけでございます。  それじゃしからば向こう側が提示いたしました資産をどういう名目ならこういったものは理屈が立つ、こういったやつはちょっとまずいじゃないか、こういうような判断をこれからわれわれは向こう側の出方も確かめながら固めていかなければならないかと存じますけれども、いまのところこれこれこういうわれわれは方針だということは、外交交渉のことでもございますし、いまここで申し上げるのは御容赦いただきたいと存ずるのでございます。
  109. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 新聞の報道を見ますと、買い取り対象合意、要求額は四、五億ドルかというようにかなり具体的に出ておるのですね。問題は、この講和条約が締結される以前のことは、まずこれはそこに幾ら金をつぎ込んだか、これはあまり問題にならないだろう。もちろんそういう立場があるだろうと思うのです。講和条約が締結された後アメリカが施政権を行使するということが条約上はっきりしている。その前にもガリオア援助はあったと思います。その後もガリオア援助は続いたかどうかその点はっきりいたしませんが、ガリオア援助あるいはプライス法等に基づく財政支出、これはもう援助というのじゃなくて、アメリカのプライス法によって民生の安定、経済の発展というようなことを眼目にした法律が出されて、六百万ドルあるいは千二百万ドルというような形で、あとで増額はされましたけれども、そういう形のものが出されてきた。それとガリオアの援助と、こういうものできわめて常識的に——あなた方の常識ですよ。われわれはまた立場が違いますけれども、あなた方の常識、交渉に当たる者の常識として、どういうものが対象になるのかということについての基本的な立場というものは、いまおっしゃった程度しか答えられないのでありますか。ガリオア援助でたとえば水道公社にどれだけ出資しているのだ、その出資分ぐらいは返すのだ、これが筋だというようなお気持ちなのか、あるいはまた琉球政府の建物がデディケーテッドということがちゃんと表示されて、大っぴらに表示をされているにもかかわらず、それも対象になっているということで、現地でもびっくりぎょうてんしているというような話もあるわけでありますが、もう少し突っ込んだ、アメリカがつぎ込んだ金というもののうち、占領者として、施政権者として当然なさなければならないもの、そしてそれは返還時においても決着をつけるという形で有償買い取りを求めるというようなものがあった場合、そういうことでおかしいではないかというものと、あなた方の常識で買い取りの対象にどうやらなりそうだというようなものについてどういうポイントを置いて区別をされるのかという、その基本がなければこういうことにならないと思うのですが、一体そこのところをひとつ明らかにしていただきたいことと、この程度までのとにかく買い取りはいたします、こういうような資産の内容、電力、水道あるいは開発金公、これは一説には在沖の日本の金融機関が買い取るのだ、こういうことのようでありますが、そのほか石油施設であるとか琉球銀行の保有株であるとかあるいは軍用以外の道路であるとか、こういうようなものが列挙されておるわけなんですが、そういうところまで合意をした、こういう事実があるのですか。そのとおりなんですか。
  110. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 お答えをいたします。  冒頭に申されました四、五億ドルというのが新聞に出ていたことがあるかも存じませんけれども、そういう具体的な数字は、実は私らも率直に申し上げまして若干意外であったわけであります。向こうから何ら提示がございませんので、その点一応断わらせていただきたいと思います。  それからもう一つ、いま並んでおるところの資産について、これはいい、これは悪い、こういうことをはっきりしろ、こういうお話でございます。  まずその点につきまして、ガリオアのお話が出てまいりましたのですが、ガリオアは御案内のとおり終戦直後から始まりまして、一九五七年に終了いたしております。五七年以降はいろいろの名前、ARI、RIA、ARIAとかいうような名前で現在まできておるわけでありますが、そういった水道公社あるいは電力公社、あるいはまた道路にいたしましても、通信施設、航海施設にいたしましても、その財源関係がどういうぐあいにして何から出て一体でき上がってきているのか、これが非常に複雑でございます。こういったところを確定するのがまず第一歩かと存じます。水道公社でございますとか電力公社でございますとか、そういったものがガリオアだということが一応いわれておるわけでございます。それがまた初年度そういったもので出発したことは事実のようでございますけれども、実はそれ以外にいろいろとどうも財源が出されておるということがございます。まあガリオアだけではないわけであります。そういった財源関係を確定することがまず第一歩でございまして、そのために現在調査団も派遣いたしておるような状態でございますけれども、質問のポイントでございますところのどういうものを買うべきでないと思うか、どういうものは買っていいものだと思うかという点につきましては、先ほどお答え申し上げましたとおり、これは相手方のあることでございます。それからまた琉球の方々のいろいろな御要請もございます。それからまた、日本本土国内の世論というものもございます。そういったものもいろいろと勘案をいたしまして、今後順次固めていかなければならない問題でございまして、いまこの場所でそういった方針を示せ、こういう点につきましては御容赦いただきたいと存ずるのでございます。
  111. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 合意した部分があるのかないのか、そのことだけちょっと答えてください。
  112. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 全体といたしまして、これを買う、これは少し疑問だというような合意は何らございません。
  113. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いずれこの問題は、きょうは時間がありませんので、また詳しく大蔵委員会等でも十分やりたいと思いますが、これに関連して、大蔵省でいま御答弁があったように、よく資産の実態を調査をするということなんですが、調査団を派遣するそうでありますけれども、この調査団派遣の構想、時期、こういうようなものはいつごろになるのかということ。  それからもう一つは、この買い取り交渉は、返還が大体一九七二年の四月から七月ごろになるんじゃなかろうかという予想が立てられておるわけでありますが、返還までにこの交渉は妥結しなければならないものなのか、返還後まで引き続きいく可能性もあるのか、そこらについての大蔵省としての考え方。これと二つだけ聞いて、この問題については終わりたいと思います。
  114. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 第一の御質問でございますが、調査団は六月の十一日に第一班が出ております。今後、電力班でございますとか、水道班でございますとか、琉球開発金融公社の班でございますとか、八月の終わりにかけまして順次出ていく予定になっております。  それからなおちょっと申し上げておきたいと存じますけれども、この調査団は大蔵省の理財局の国有財産関係の者が中心となって出かけておりますが、この返還交渉資産承継に関するもののみならず、現地におきます国有財産の状況でございますとか、あるいは復帰日本の出先機関がいろいろできるかと思いますが、そういった庁舎の敷地はどこら辺がいいだろうかというようなものもあわせて出かけておりますので、その点を申し上げておきます。
  115. 東郷文彦

    ○東郷説明員 第二の御質問ですけれども、こういう問題が返還後まで残ってはかないませんので、返還協定の際に結論を出したいと考えております。
  116. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 いずれまたこの問題は別な機会に取り上げることにいたしまして、次の問題は実は山中長官にお聞きしたかったのでありますが、沖繩返還で激変緩和というか、復帰ショックというものをやわらげるというような意味も含めて、今日まで四分の一世紀にわたってドル経済が支配したというような現況に重点を置いていわゆるフリーゾーンを設ける。那覇とかコザあたり地域を限って、あるいは時期を限ってということも言っているようでありますが、このフリーゾーン構想というのは非常に問題が多いわけだし、七二年返還されれば本土と一体化されるのだ、外資法も適用になれば外国為替管理法も適用される。そういう中でドルの流通が許される地帯、それから沖繩県人あるいは企業、そういうようなものがドルを中心にした外貨の保有を認められるというようなことになりますと、これは外資法、外為法等に違反する事態ということにもなってくる。しかもまた非常に大きな立場から見てみますと、何か沖繩を、かつて上海あたりにあったような租界扱いにそういう地域というものをするのではないか。これはいい意味、悪い意味、とり方によって二通りあるかと思うのですけれども、一種の租界じゃないか、不平等扱いではないかというような面も出てくる。こういう問題について、山中総務長官がこういうことをあちらでもこちらでも、現地へ行っても発言をしておられる、現地の業者の代表などからの陳情に対してもそういう構想を示されてそういうことにしたいということを言っておられるが、大蔵省に対してどういう相談があったか。このことが一つ。  そして大蔵省として、そういう外資法なりあるいは外国為替管理法なりというようなものを運用している立場において、本土沖繩が一体になる時点においてそういう事態というものが好ましい方向であるのかどうか、こういうものについてどういう判断をし、その外資法なり外為法なりの違反ということが明らかなような発言をされておるわけなんだけれども、そういうものを特例措置というようなことでそういう地域を認めていくというような方向に検討をしておるのかどうか。その辺のところを明らかにしてほしいと思います。
  117. 奥村輝之

    ○奥村説明員 まず山中総務長官のお話の中身を私どもはどう理解しているかという点でございますが、沖繩が返還されましたときにアメリカの軍人とか旅行者、こういう非居住者が沖繩において買いものその他を外貨ですることを、便利に、あるいは不便を感じることがないようにしたい、こういうことがその趣旨であるというふうに了解しているのでございます。  どういう相談があったかということでございますが、これは緊密な相談が絶えずあって、私どもはよく内容を承知いたしております。  これに対してどう考えるかというのが第三点でございますが、まず日本国内での取り扱いを御説明したほうがいいと思うのですが、日本国内では一般に外貨の授受、商品を買います場合に国内で外貨を払って商品を買う、こういうようなことは認めていないのでございます。ただ、両がえ商というものが御存じのようにあるわけでありまして、たとえば百貨店であるとかホテルであるとかあるいはみやげもの店であるとか、非常にたくさんの商品販売、サービスの提供業者が両がえ商の免許を受けているのでございます。つまり、外貨しか持たない非居住者が買いものをしたい、サービスを買いたいというときには、両がえ商でまず円にかえまして、その円で買いものをする、こういうたてまえで現在は運用しているのでございます。したがって、沖繩において復帰後同じような扱いをすればいまの問題は非常に不便を感じない処理ができるということで、本土沖繩との取り扱いは同じでやっていけるというのが私どもの考え方でございます。
  118. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵省としてはそういうフリーゾーン構想、少なくとも山中長官が語って、これに対して新聞が報道をされている、ああいう方向での方向づけというものを支持される立場なんですか。これは次官から……。
  119. 中川一郎

    中川説明員 山中構想のフリーゾーンには、私は二通りあるんじゃないかと思います。一つは、いま局長が御説明いたしましたように、ドルで物が買えるようにというゾーンをつくったらどうかということなんでありますが、これは特別ゾーンをつくらなくても、両がえ所で目的が達成される。山中構想がこの制度によって十分達成できることが一つ。もう一つフリーゾーンの考え方として、沖繩のように観光客が非常に多い、これからまた民生安定なり産業が発展していく上においては、関税のフリーゾーンといいますか、高級な国際物資が税金がかからずに買えるようなことをもってお客さんをたくさん沖繩に呼んだらどうかというような意味の構想もあるようでございます。この点については、山中長官の沖繩をひとつ何とかめんどうを見てあげたいという構想としては非常にけっこうな案でありますが、関税法のたてまえからいって技術的にそういうことができるかどうか、若干問題がある。そこで、この辺についてはこれから少し煮詰めなければならぬ問題である、このような状況になっておるわけでございます。
  120. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 非常に時間がありませんので、いま問題点を次官も指摘されたわけでありますが、特に、私どもああいう構想というものはやはり沖繩というものを、本土との一体化だと言いながら、二十五年間も——七二年までには二十七年間になるわけでありますが、こういう長い期間異民族の支配の中に置いたという、こういうものをやはり色濃く特殊な地域として温存をするというような、それで日本国民の沖繩県人である、こういうような形が非常に後退した形になって、何かやはりそういうような形で外貨をかせいでやろうというようなさもしいことで沖繩県人に対して差別を——そういう意味で、沖繩の暮らしもそういう中で豊かになるのだ、そういう特殊事情にあるのだというような点は、あるいは風土的に、あるいは慣行的な形でそういうものがあるにしても、これはやはり日本国民の、日本沖繩県として均衡のとれたノーマルな形で、サウンドな形で経済も発展をし、民生も安定をしていくというような方向に全力をあげるべきであって、何か租界的なにおいのするああいう構想というようなものに対して私どもは賛成するわけにいかないので、そこらのところは十分ひとつ考えて、慎重にこれは対処してもらわなければいかぬというように考えるわけであります。  あと、いわゆるドルと円との切りかえの問題、あるいは渡航自由化の問題など、いろいろ準備したのですが、きょうはどうしても時間がありません。あと待っておりますので、これで失礼をいたします。いずれまたあらためて機会を……。
  121. 池田清志

    池田委員長 中谷鉄也君。
  122. 中谷鉄也

    ○中谷委員 私はきょう、山野長官とアメリカ局長にお尋ねをいたしたいと思います。  司法権の独立という問題は、最近本土においては石田最高裁長官の発言などをめぐって非常に論議をされております。同時に、本日、立法院全会一致による米軍人による女子高校生刺傷事件等に関する抗議決議をわれわれは拝見をいたしました。そういうふうな司法権の独立、要するに沖繩県民の主張、要望、願望はきわめて切実なものでありまして、裁判権を中心とする捜査権をすべて沖繩県民の手に取り戻したい、こういう要求でありまして、それはまことに当然のことであります。そこで、米軍人軍属沖繩県民に対するところの犯罪というのは、すでに指摘されてから長いわけです。  そこで、次のような資料は、長官、政府としてお持ちでしょうか。沖繩県民に対する米軍人軍属犯罪の量刑、それがどのようなものになっているか、どのような刑を受けたか、この点についての資料は当然入手しておられると思いますが、念のために最初お聞きいたしたい。
  123. 山野幸吉

    ○山野説明員 米軍人犯罪の量刑の内容につきましては、そのつど米側から発表されたものにつきましては、私ども従前からの若干の資料を持っております。しかし、それがすべてであるかどうか、そういうことにつきましては不明でございますし、またその量刑がはっきりしないものもあるわけでございます。
  124. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そのような資料が入手困難であるという事情については、質問いたしております私としては了解ができないわけであります。要するに、米軍人軍属沖繩県民に対する犯罪の件数、この件数についても、不明確ではありまするけれども、それが琉球警察局において認知されたもの、これについての量刑が全体として政府において把握されておらない。把握されておらない理由は一体どこにあるのでしょうか。アメリカ局長にお尋ねいたしたいと思いますけれども、まさに裁判が壁の中で行なわれている、暗黒の中で裁判が行なわれているということについての沖繩県民の怒りであり、不満であります。そういうようなものについて、米軍人軍属犯罪の不当性について指摘をいたしましてからすでにもう何年もたちます。何十年もたつ。その問題についての資料をアメリカに対して要求をされる、そういうふうなことはされたのですか。要求をされたけれども資料が来ないということなんでしょうか。
  125. 山野幸吉

    ○山野説明員 この量刑の結果につきましては、かつて一昨年でございましたか、昨年でございましたか、国会からも御要求がありまして、沖繩事務所に依頼いたしまして、琉警と連絡して資料を御提出したこともございます。しかし、何ぶんにも琉警のほうから民政府のほうに要請いたしますので、相互の連絡上向こうのほうではっきり示されないものについては、これはいたし方がないということでございます。しかし、ここ一、二年につきましては米側からもかなりはっきりした資料が出るようになっております。不明のものは以前のものが多いように私は承知しております。
  126. 中谷鉄也

    ○中谷委員 問題は、では何年ごろからが不明なのか、これをお答えいただきたいことと、沖繩県民がはなはだしく不満に思っているのは刑の執行、それがあいまいである、この点であります。要するに、沖繩県民に対して害を加えた犯罪者であるところの米軍人軍属がどこの刑務所に服役をしたか、その刑の執行は量刑どおりの執行がなされたのか、これらの執行状況についての資料は入手しておられないと思います。入手される意思はありますか。
  127. 山野幸吉

    ○山野説明員 何年から何年までが不明のもので何年からはっきりしてきたかという年次をはっきり申し上げることはできませんが、大まかに申しまして、近年においては非常にはっきりしてきた。従前におきましては軍のほうの発表も正確に発表されない場合があったと私は考えております。したがいまして、ここ数年は裁判の結果が非常に公にされるようになった、その結果資料がはっきりしてきたということでございます。御指摘のように刑の執行状況についての資料は私ども持っておりませんが、今後ひとつその点については検討いたしたいと考えております。
  128. 中谷鉄也

    ○中谷委員 検討では困ると思うのです。われわれは、巷間伝えるところによりますると、判決を受けた、しかし判決を受けた兵隊がベトナムへ行った、それで帳消しだというふうなことの話も聞いている。事実の真偽はわからない。そういうふうなことが正義の名において許されていいはずがない。沖繩県民県民感情の点からいっても許されていいはずがない。検討では私はいかぬと思う。刑の執行状況についての資料は要求されますね。
  129. 東郷文彦

    ○東郷説明員 完全なお答えにならないでたいへん恐縮でございますけれども、同種の問題はおそらく今日まで本土におきましてもあったかと存じますが、なお法務当局とのそれらの点も十分調べました上で善処したいと考えます。
  130. 中谷鉄也

    ○中谷委員 善処とか検討というふうなことではいけないと言っているのです。沖繩県民の中からは、そのことが非常に不満を感じている。だから私はその点については、善処ということばの意味はよくわからないけれども、早急にその点についての措置をする、それを出さないとすれば相手が悪い、少なくとも出しなさいという要求をするという意味で善処ということばをお伺いしてよろしいかどうか。
  131. 東郷文彦

    ○東郷説明員 政府部内関係のほうとも十分相談いたしまして、ただいま私が申し上げた善処という意味はさように御解釈くださってけっこうでございます。
  132. 中谷鉄也

    ○中谷委員 非常に基本的で、しかも素朴な質問であります。本土における基地米軍人犯罪検挙率は、私の記憶によれば九八%、ときとして一〇〇%でございますね。沖繩における米軍人検挙率が五〇%を大きく下回っている理由、これをどのように分析されますか。山野さんにお尋ねいたしたい。
  133. 山野幸吉

    ○山野説明員 御承知のように、沖繩では布令八十七号によりまして犯人の逮捕あるいは捜査につきまして、米軍人軍属等については軍のあるいは民政府の捜査当局がこれに当たり、そして米軍人以外の一般の沖繩の住民については琉球警察が当たることになっておるわけでございます。もちろんその間に双方の覚え書きがかわされまして、相互に協力する体制になっておりますけれども、ことばの違いその他ございまして、その間の協力関係が必ずしも十分に行なわれない場合があるというような問題、あるいはまた基地が非常に広範に住民地区と入り組んでおります。そういうような関係で非常に広範囲にそういう軍人犯罪の起こる地域が広がっております。したがいまして、なかなか警察相互の協力関係が十分に行なわれない、その他いろいろ事情があると思いますが、そういうようなために検挙率が御指摘のように低い。この状態は決して満足すべきものじゃございませんので、この検挙率の向上をはかり、そしてまず犯罪の防止、それから犯罪が起きたらすみやかに逮捕し、そしてそれを公正に処断するという体制を確立するために、先ほど来大臣からもお話がありますように、私どもは鋭意対策等についても検討しておるわけでございます。
  134. 中谷鉄也

    ○中谷委員 昭和三十八年、昭和三十九年、昭和四十年、四十一年、検挙率は上がっていると認識しておられますか、それとも下がっておると認識しておられますか。私は下がっているというふうに調査上把握をしているのですが、この点についての政府の正確な御答弁をいただきたい。  端的に私のほうから申し上げたい。捜査権沖繩県民の手に取り戻せ、沖繩県民捜査させよというのは、これは事民族的な感情であり、司法権の独立に関する問題なんです。私は検挙率の低さは次のようなものだと思う。かりにアメリカ捜査関係者がまじめに意欲的に捜査をするならば、捜査権アメリカにあることについての不当性はともかくとして、こんなに検挙率が低いはずがない。長官の口から端的に、アメリカ捜査をするつもりがないのだ、仲間かばいをしているのだというふうにおっしゃられても私はいいのじゃないかと思う。相互協力関係といって先ほど長官が御指摘になったような布令の八十七号の——協力したくても協力のしようがありませんよ。すべて捜査がとにかくアメリカの手にまかされておる。よほどアメリカのほうは捜査をする能力がないのか。  ところが、私の考えるところでは、それほど捜査能力が低いはずがない。要するに、捜査する気持ちがない。仲間かばいをしている。このあたりに問題点を指摘しなければ検挙率の向上というものはあり得ないと思う。その点について私の言っていることは肯定されますか、されませんか。
  135. 山野幸吉

    ○山野説明員 私どもは犯罪を犯した米軍人に対して何かそれをかばうような気持ちから犯罪捜査に怠慢であるというようなことは想像したくありません。また、そういうことがあるはずがないと思うのであります。やはり犯罪が起きたら真剣に向こうも捜査をし逮捕をしようとしておると思うわけでございます。しかし、先ほど来申し上げますように、確かにこの捜査、逮捕の関係が二つに分かれております。また米軍犯罪については原則として現行犯、緊急犯等を除いては逮捕権がないわけでございますから、したがいましてそのような捜査の協力体制の間隙等もありまして、遺憾ながら、いま御指摘のように米軍犯罪検挙率は低い。これを何とかして改善して一〇〇%検挙できるような体制に持っていきたい。そのためには一体どう米側と琉球警察とが協力すればいいか、どう改善していくかという点で、現在検討を重ねておるわけでございます。
  136. 中谷鉄也

    ○中谷委員 違います。  じゃ、アメリカ本土におけるアメリカ米軍人軍属アメリカ国民に対する検挙率は御存じですか。要するに沖繩においてはアメリカ捜査機関が捜査をしている、そういう点においては全く事情は同様ですね。布令八十七号の現行犯逮捕に限っての権限しか与えられていない。  じゃ、長官のお話によると、アメリカは特に質の悪い捜査官を連れてきているのですか。要するに捜査をする気持ちがないといわざるを得ないのです。政府の口からはそういうことは言えませんか。なぜこんなに検挙率が低いのですか。五〇%割るなんということは考えられもしないこと、三〇%なんということは野放しの状態なんですよ。そんなことについて、いやしくも琉球警察のほうに権限がないとかいうことについての、まず私は琉球警察に権限を持ってこいと言うのです。それはさておいて、現状においてそんなに低い検挙率ということについて、アメリカ捜査能力以上の、捜査意欲のないことを私はまず指摘しなければならぬと思う。軍紀の粛正ということをおきめになったらしいですけれども、軍紀を粛正すべきのはむしろアメリカ軍人の捜査関係者です。この点についてはいかがですか。
  137. 山野幸吉

    ○山野説明員 この検挙率の低いことについては非常に遺憾な状態でございますから、したがいまして、私どもは米側に対してもこういう点については十分指摘をして改善をしていただきたい、かようにお答え申し上げておきたいと思います。
  138. 中谷鉄也

    ○中谷委員 検挙率は上げなければいかぬ。こういう点について、低いということはここ十年来、二十年来、どういう点について、では検挙率を上げる、不当な罪を犯した者は許さない、ことに権力を持った人間、それがとにかく、非常に苦しい生活をしいられておるところの人間に対する犯罪なんというものは正義の名において許せない。どうして検挙率を上げますか。その点についての方策を明確にひとつ言っていただきたい、どういうようにお考えになっているか。
  139. 山野幸吉

    ○山野説明員 これはいま大臣が、事務当局間で検討をしておるというお話がございましたが、現在私ども、警察あるいは総理府、外務省を含めまして、事務的にいろいろ検討しておりまして、いまその内容を明らかにせいとおっしゃいましても、この席では申し上げられません。
  140. 中谷鉄也

    ○中谷委員 犯罪が行なわれたのは沖繩米軍に占領され、そうして平和条約によって引きちぎられ、二十何年間にわたって犯罪が行なわれているのです。検挙率向上についての検討を始められたのは一体いつですか。
  141. 山野幸吉

    ○山野説明員 米軍犯罪の問題につきましては、歴代総務長官か沖繩に行かれまして高等弁務官と会談される際には必ずと言っていいぐらいこの問題について触れられるわけでございまして、したがって、たとえば軍紀の粛正はもちろんでございますが、パトロールの強化とかあるいは捜査の協力体制の強化とか、そういう点については絶えず日本政府としては現地の最高責任者に要請をして今日に至っておるわけでございます。
  142. 中谷鉄也

    ○中谷委員 パトロールの強化、軍紀の粛正、その他もろもろ、歴代総務長官が御努力になったことは実績があがらなかったということですね。検挙率は向上していないんだから、実績はあがらなかったということですね。そうすると、方向として新しい米軍軍人、軍属犯罪は許せないのだ、犯罪を犯した者は必ず検挙されるのだという方策が出されねばならない。ずいぶん気の長い話ですよ。立法院からこういうふうな、米軍人による女子高校生刺傷事件等に関する抗議決議、これが出てから検討しているのではまさかありますまいな。だとすると、新しい検討の方向は一体何ですか。
  143. 山野幸吉

    ○山野説明員 先ほど来御答弁がありましたように、裁判権を移管してもらうことは、施政権がアメリカ側にある以上、これはなかなかむずかしい。そこで裁判権は向こうに置いた体制において、どういう米側と琉球警察との協力を確立すればこういう事態が解消できるかということに中心を置いて、具体的に検討したいと考えておるわけであります。
  144. 中谷鉄也

    ○中谷委員 裁判権、捜査権、逮捕権、そうして執行、四つの問題点が司法権の独立に関してある。そこで、裁判権の問題について、政府の答弁はわかりました。そこで、そういう四つの問題の中で、ひとつ具体的な実務を私はお聞きしたい。きょうは調べてこなければいかぬのだが調べてこなかったのだが、軍事法廷は陪審制度は認めていますか。どちらからでも……。
  145. 山野幸吉

    ○山野説明員 軍事法廷の種類としましては、一般軍事法廷、特別軍事法廷、簡易軍事法廷となっておりますが、その中で陪審制度が採用されておるかどうかは、私ども承知しておりません。
  146. 中谷鉄也

    ○中谷委員 政府は施政権下にあるのだからといって、裁判権を沖繩県民の手に取り戻すことについての努力は、もうすでに放棄しておられるようだ。そういうことではいけないということで、私はこれを激励いたしたい。しかし少なくとも、では次善の策として、米軍人軍属沖繩県民に対する犯罪について——アメリカは陪審制度の盛んな国です。これはもう定着をしている。沖繩県民を陪審員として陪審法廷に並ばせる。公開なんということは、あたりまえのことなんです。公開について、この立法院からこういう決議をわれわれは受けたというふうなこと、また、こういうことを立法院決議をしなければならぬということは、きわめて残念です。しかし一歩進めて検討事項として、米軍人軍属犯罪について沖繩県民を陪審員の何名かに選ぶ、こういうことは、とにかく私は裁判権の問題の中の、全面的に裁判権返還の問題ではないのだから、このくらいのことは七二年までに私はできると思う。この点について、アメリカ局長、いかがでしょうか。
  147. 東郷文彦

    ○東郷説明員 部内において、よく考えてみたいと思います。
  148. 中谷鉄也

    ○中谷委員 山野さん。
  149. 山野幸吉

    ○山野説明員 この点はよく御意見として検討したいと思いますが、軍事法廷が判決を下したその内容が直ちに公表され、その結果が一般住民に周知されるということが、一番大事だと思うわけでございます。そう思いますが、御意見については十分検討してみたいと思います。
  150. 中谷鉄也

    ○中谷委員 信号の赤が太陽の光で緑に見えた、だから学童をひいたんだ、やむを得なかったんだ、無罪だなんという、常識で考えられない事件がありましたね。陪審の仕事というのは、無罪か有罪かについての答申をすることでしょう。そんなでたらめな裁判をさせないために沖繩県民を陪審員として選ばせる、これは私は当然やるべきだと思う。私はそのことを言うのです。量刑の結果じゃない。無罪という結果が沖繩県民に公知されて、それで満足するのですか。われわれが、だれが考えても有罪だと思われる事件が証拠不十分だということなどで無罪になった、そんなことを沖繩県民百万に知らして沖繩県民は承知するでしょうか。怒りがあるだけですよ。先ほど与党の委員の方が理性をもってものごとを判断しようと言われた。しかし加害者に対して被害者が怒るというのは権利感情ですよ。権利とか法律というものの基礎にあるものは怒りの気持ちであり、人間性なんですよ。本来有罪になるべきものが無罪になったらたいへんですよ。量刑が知らされたらなんということは、私は山野さん、ほんとうにまじめに裁判権の問題をお考えになっているかどうか疑問ですよ。そういうことを私が例を指摘すれば、陪審制度というものをこの沖繩の場合にも突っ込んでみようじゃないかということについて私が言っていることについては非常に合理性があると思う。また沖繩県民の期待にもこたえられると思う。いかがですか。
  151. 山野幸吉

    ○山野説明員 私は裁判制度そのものについては先生ほど詳しくございませんので的確にお答えできませんけれども、要は犯罪が発生したらすみやかに犯人を逮捕し、そしてそれが公正な裁判にかけられ、その裁判の結果が公表をされる。公表されるということは公正な裁判を受けるということだ、こういうふうに解釈して申し上げたのでありまして、陪審員制度等についてはひとつ御意見として検討したいと思います。
  152. 中谷鉄也

    ○中谷委員 布令八十七号の現行犯逮捕の規定は、現実には現行犯については琉球政府警察官は逮捕できるというふうな運用になっておりますか。運用についてです。
  153. 山野幸吉

    ○山野説明員 そのとおりでございます。
  154. 中谷鉄也

    ○中谷委員 間違いございませんね。
  155. 山野幸吉

    ○山野説明員 間違いございません。
  156. 中谷鉄也

    ○中谷委員 要するに、たとえば布令八十七号一のCの(1)、「運転手が自動車事故で人体又は財産を損傷したとき、停車して被害者、その関係者又は警察官の要求に対する陳述をせずに逃亡する犯罪」について現行犯逮捕ができるとなっている。間違いございませんね。要するに布令をまともに読めば、ひき逃げしか、あるいは不陳述の場合しか逮捕できないことになっていますね。それは自動車事故を起こした場合には全部逮捕できるように、運用の面でなっているのですね。——それだったら非常にけっこうです。答弁を変えないでくださいね。
  157. 山野幸吉

    ○山野説明員 これは布令八十七号で書いてございますように、米官憲が現場に居合わせないということを前提にしまして、現行犯は逮捕できる……。
  158. 中谷鉄也

    ○中谷委員 布令八十七号の構成要件は二つあります。一つは「米官憲が居合せない」ということ、そうして犯罪については布令八十七号をすなおに読めば、犯罪についての限定的規定になっております。これは私は不当だということを数年前から言っておる。しかし運用の面では八十七号に書いてある、そういうふうな犯罪、たとえば一のA、B、C記載以外の犯罪についても現行犯であれば逮捕されるような運用になっておるわけですね、MPがおらないときには。そういう運用になっておることは間違いございませんね。
  159. 山野幸吉

    ○山野説明員 これは民政官からの回答におきましても、ここに掲げた犯罪は例示規定であるという回答がなされていますから、私はさように考えております。
  160. 中谷鉄也

    ○中谷委員 次に、捜索権を何とかして拡大したい、とにかく布令のもとにおいて捜査権を全部沖繩県民の手に取り戻したい、それが私たちの願いであるし、当然の要求だと思う。しかしその中においてこの点についてはどのように理解をすべきだろうか。要するに「直ちに最寄りの米国陸、海、空」その他の軍隊に引き渡さなければならないとなっている。「直ちに最寄りの」というのは、とにかく四十八時間でも直ちだ、二十四時間でも直ちだ、一時間でも直ちだ、こういうふうに私は前から言っている。捜査権の拡大というのは、布令八十七号の「直ちに」というのをとにかく拡大していく——運用の面ではどうなっていますか。  じゃ具体的に、琉球民警察官が逮捕した場合に、大体どの程度の時間で引き渡しをしておりますか。四十八時間くらい置いても私はいいと思う。
  161. 山野幸吉

    ○山野説明員 現行犯を逮捕します場合に、逮捕し、そしてそれに伴う捜索等はできるようになっておりますが、しかし逮捕しましたら直ちに引き渡さにゃいかぬ。ところがその「直ちに」というのが、たとえばさらに捜査をしたいからしばらくこの犯人引き渡しを延ばしたいというような引き延ばしは認められていないわけでございます。もちろん物理的に引き渡しが不可能な場合もありましょう。そういうような場合には認められますけれども、特定の目的を持って犯人を逮捕したのをさらに手元に留置しておくということは認められていないわけでございます。大体どの程度で引き渡しがなされているかということについては、はっきりした数字を申し上げかねます。
  162. 中谷鉄也

    ○中谷委員 要するに、いかにして沖繩県民のために捜査権を拡大しようかという、しがみついてでも拡大しようかという意欲が政府にはないのですよ。だからこんなときには、私は法務委員会で別件逮捕はけしからぬといつもよく言っているのだけれども、米軍の軍人、軍属については一週間でも直ちだというくらいのことがいえてもいいと思う。そうしてとにかく現行犯逮捕の手続の中で捜査をして、きちっととにかく証拠をそろえればうやむやにならない。だから「直ちに」ということばを何をさておいてもというふうな解釈をする、そんな考え方が間違いなんで、そういう実態を調べてもらいたいということは私は前から言っている。これをお調べになってない。捜査権の拡大というのは、私はそういう努力の中からでもあると思いますよ。実態を調べてください。逮捕して一体どのくらいで引き渡しているか。  それからその次に、現行犯逮捕状況報告書というのは、長官、御存じですか。
  163. 山野幸吉

    ○山野説明員 逮捕して米官憲に引き渡す場合に、同時にいまの書類を出すようになっておると私は承知しております。
  164. 中谷鉄也

    ○中谷委員 加藤さん、現物は御存じですか。
  165. 加藤泰守

    ○加藤説明員 この布令八十七号の二のAのところの「逮捕状況明細報告書と共に」、これでございますね。
  166. 中谷鉄也

    ○中谷委員 現物を知っていますかと聞いているのです。
  167. 加藤泰守

    ○加藤説明員 見ておりません。
  168. 中谷鉄也

    ○中谷委員 私はこの点はもう四十二年から、特連局時代からこのことはあなた方に申し上げてきた。現行犯逮捕状況報告書は、これは一枚の紙でA、B二つに分かれていますね、当時。最近改まったかもしれぬが。事件概況書というところは十七行、横八センチ、縦十二センチ。私、はかってみたから、これは覚えている。それで、二百字しか書けないんですよ。女子学生をかりに刺したというとにかく米軍人がおったとする。現行犯逮捕したとする。二百字で一体何が書けますか。二百字で書いたようなものを捜査する能力も意思もないようなところへほうり込んでしまって、証拠の隠滅やりほうだいですよ。なぜこんな、とにかく二百字しか書けないような欄の現行犯逮捕状況報告書をいつまでもほっておくのかということなんだ。現物ぐらいは見てくださいよ、ひとつ。捜査権の拡大だ、検討中だから言えない、こういうことで、これは非常に私は遺憾です。ひとつこれはぜひとも検討していただきたい。お約束いただきたい。
  169. 山野幸吉

    ○山野説明員 十分現物を見まして、検討したいと思います。
  170. 中谷鉄也

    ○中谷委員 裁判の公開なんというようなことは、もう十八世紀以来の原則、こんなものが行なわれてないというようなことについてはもはや質問することもない不当きわまりないことですから、もうこれは飛ばします。時間もないようですから。飛ばしますがね、一点だけ。  補償については、立法院諸君は次のような決議をしていますね。「被害者に対する公正な損害賠償を行なうこと。」、そうですね。そこで私はお尋ねいたしたいが、補償についてはあくまで公正であったらいいと思う。補償の限度の頭打ちはございませんね。
  171. 山野幸吉

    ○山野説明員 この補償につきましては、民事事件としてこの被害者から琉球政府を通じ、または直接に米側に要求しまして、米側では外国人損害賠償補償法でございますかに基づいて補償をしておるわけでございます。たしかその補償の限度が五万ドル——限度そのものはございませんが、一定の、たしか五万ドルと記憶していますが、をこえるものは本国のほうへ報告をして、議会の議決を経るとか、そういうややこしい手続になっておると思います。
  172. 中谷鉄也

    ○中谷委員 外人補償法によれば——もう少しやっぱりまじめにやりましょうや。外人補償法によれば、一万五千ドルでしょう、限度額は。違いますか。間違っておれば、私の間違いだが。
  173. 山野幸吉

    ○山野説明員 失礼しました。一万五千ドルになっております。
  174. 中谷鉄也

    ○中谷委員 公正な補償ということは、一万五千ドルで公正な補償でない場合は十分にあり得ますね。この点について、外人補償法——大体人に刺されたり、殺されたり、強姦されたりして、何が悲しくて一体補償の査定をしてもらわなければならないんですか。補償というのは要求すべきことなんでしょう。こういうものについての外交交渉される意思はありますか、アメリカ局長
  175. 東郷文彦

    ○東郷説明員 補償に関しまして非常に問題があるというような場合には、過去においても話し合ったことがあると存じますが、公正な補償ができるようにわれわれも御協力いたしたいと思います。
  176. 中谷鉄也

    ○中谷委員 違う。一万五千ドルで外人補償法でこう切っている。公正な補償が十万ドルという場合、そんなことで一体いいのか。この点をぶち破るということがまず先決問題じゃないか、この質問なんです。そのことの交渉をされる意思はないか、こう聞いている。
  177. 東郷文彦

    ○東郷説明員 私、本土に関しましてたしかその法律を前に見たことがあると思いますが、一万五千ドルというのはたしか現地の司令官限りの問題、それ以上の場合には上局に伺いを立てるということになりますので、一万五千ドルが限度だ、それ以上はたとえば外交交渉をしなければ出ない、こういう問題ではないと思いますが、いずれにしましても一万五千ドル現地限りで出ないものは、いかぬという場合には、まず向こうの当局が公正なる立場をもって国内手続を踏むべきでありまして、それをやらぬというような場合には、これはやはり日米間の問題として解決しなければならぬと思います。
  178. 中谷鉄也

    ○中谷委員 アメリカ局長の御答弁でいいと思うんです。そのいわゆる外人補償法の解釈についての答弁はそれでいいと思うんです。  ただ、じゃ実態を長官にお尋ねしますが、従来、米軍人軍属犯罪によって被害を受けた人の補償金額はどういうことになっているか。資料はお持ちでしょうね。大体どの程度出ていますか。なお、一体先ほどからアメリカ側とおっしゃっていますが、これは軍が当然払うべきものなんでしょうね。そうですね。
  179. 山野幸吉

    ○山野説明員 ただいま補償額の金額のこの実例につきまして、資料を手元に持っておりません。はっきり申し上げかねますけれども……
  180. 中谷鉄也

    ○中谷委員 いま手元に持ってないけれども資料としてはお持ちですか。庁にはありますか。犯罪ですよ。
  181. 山野幸吉

    ○山野説明員 これは大体事案が、その事案ごとに性質が違いますから、一律にどのぐらい出ておるかという御質問にはそのままお答えできませんが、ここにございますのは昭和四十一年の十二月に暴行傷害致死事件がございました。その場合には一万四千二百ドルの賠償額が支払われております。それからまた四十二年の一月五日に、これは強盗事件がございまして、その賠償額が百三十四ドルという事例、その他その事例によって違いますが、いまお話に出ました限度ぎりぎりの賠償額も出ておる場合があるわけでございます。
  182. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そうじゃないんですよ。私が聞いているのは、米軍人軍属による犯罪の一覧表はとにかく詳細にまず出してもらいたい。執行の面についての追跡もしてもらいたい。すべきだ。同時に、補償についての一つか二つの例がありますというようなことは、私だってそんなことは聞いていますよ。全部を政府の責任において調査すべきだということを言っているんです。調査される意思がありますか。
  183. 山野幸吉

    ○山野説明員 いま御指摘になりましたような問題につきましては、十分正確な調査をしてみたいと思います。
  184. 中谷鉄也

    ○中谷委員 じゃ、もう私は質問を終わりますが、最後に、私は裁判権、捜査権、逮捕権、執行、補償、この五つの問題について、はなはだいろんな点について断片的にお尋ねをしたけれども、率直な感想を最後に言わしていただきたい。  まともに沖繩県民の人権を守るために、しがみついてでも、とにかく何とか施政権のもとにおける沖繩県民の権利を拡大していこうという意欲があらわれてないと私は見る。それがとにかく現行犯逮捕の問題の解釈の問題が一つ。さらにまた補償についての一覧表が出てないという事実、執行については全く不明という事実、補償金額についても一例か二例しかなくて全部については出てないという事例、私はきわめてそういうのは不十分だと思う。検討する、検討するとおっしゃってからもう何年たつんですか一体。こういうふうな立法院決議がある以前に検挙率向上のためにこんなことをしましたということを言えにゃいかぬ。長官お帰りになったけれども、事は外交交渉に属することだから内容は待ってくれと。十年前——われわれも待ち切れませんよ、そういうことは、ということを申し上げておきます。  だから、よほど、裁判権を取り戻すというふうな、非常に抜本的なことをお考えになっておるのだろうと私は期待をいたしますけれども、人権を守るという立場から、沖繩県民が失望しないような努力をしていただきたい。私は、庁の資料もきわめて不十分だと思う。私たちしろうとが持っている資料よりもまだ不十分じゃないですか。私は、何でそんなことで沖繩県民の人権が守れるかというふうに、ちょっと言い過ぎかもしれないけれども、申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  185. 池田清志

    池田委員長 川崎寛治君。
  186. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 まず第一に委員会の運営の問題でありますけれども、けさ理事会でも話し合われましたが、資産の買い取り、あるいは企業進出、さらには財政硬直化、そして人権問題、どんどん問題が出ておりますし、発展しておる。そういう中にありますから、委員長としても、この委員会は適宜適切に開く、つまりひんぱんに開くということについて、まず委員長のお考えを明確にしておいていただきたいと思います。
  187. 池田清志

    池田委員長 理事会でお話がありましたとおりに執行してまいります。
  188. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 私も腹が減っておりますし、早く終わらしたいと思います。しかし、先ほど申し上げましたように、進んでおる事態でありますから、少し詰めてみたい。広瀬委員から詰められた問題等にも関連をいたします。  三点お尋ねをします。企業進出の問題が一つ、二番目には資産の買い取りの問題、三番目に財政の問題、三点であります。  まず第一のアルコアの問題は、沖繩現地の外資審議会がこれは許可を出しました。許可をすることにきめましたね。琉球政府のほうにもう出しておるわけであります。本土のアルミ五社も申請をいたしております。ところが、どうも本土の五社は、ただ権利を確保するというか、つまり、アルコアが出てきたからあわてて出ていくという形の姿勢がたいへん濃厚であります。しかも、通産省は、アルコアの問題については強く琉球政府に対しても指導しておるわけでありますけれども、その本土五社が、税金だとか、水だとか、電力だとか、あるいは土地だとか、こういう点でいろいろな条件をつけておる。そしてアルコアを阻止しようとする。そういう点については、私は、本土五社の姿勢というのはいろいろ問題があると思う。ほんとうに沖繩の経済を豊かにしていく、県民を豊かにしていくという姿勢ではない。あまりにも資本の論理が先に出ておると思うのです。でありますから、この点について、アルコアが外資審議会で許可になりましたけれども、本土五社の今後の問題あるいは、具体的に現地で正式に許可が出るならば、いつ出ていって、どういう形で、いつから始めるつもりなのか、そうした点について明らかにしていただきたいと思います。
  189. 西山敬次郎

    ○西山説明員 アルミの進出の問題でございますが、沖繩本土に返還になりまして、その後沖繩の経済を振興するために本土の企業が大いに進出しなければならないということはもう当然でございまして、通産省としましても、沖繩の工業振興のために、どういう業種が進出可能かということを検討しておるわけでございます。その一つにアルミ企業がどうであろうかということは昨年からいろいろと検討いたしておりまして、本土の五社にもこの検討を依頼しておったわけでございます。  アルミは、御承知のように、原料はオーストラリア、インドネシア、マレーシアから持ってまいりますわけで、原料面からしますと、本土よりも近いという利点はございますが、その市場面となりますと、やはり本土に送り返すというような点もございまして、必ずしも、沖繩に立地することと本土に立地することにつきましてどちらが採算がよろしいかということにつきましては、直ちには結論が出ないわけでございます。それに加えまして、御承知のようにアルミは電力を多量に必要とする企業でございまして、電力料金が、今後沖繩の電力がどうなるかということにもよるわけでございますが、その点も勘案しますと、まあ比較的アルミは適した業種であろうとは思いますが、必ずしも本土よりは有利な企業であると言えないと思っている次第でございます。  本土の五社は、これは通産省の要請もございまして、沖繩の振興のためにぜひ結束して進出したいということで、六月の十二日に琉球政府に外資の免許の申請を提出しておるわけでございます。ただいま琉球政府の審議会で検討していただいておるわけでございますが、その場合の計画でございますが、一応、提出いたしました計画によりますと、当初五万トンが操業できるのは一九七四年になる、最終的には二十万トン生産は一九七七年に活動できるということで計画をいたして、申請をいたしておる次第でございます。
  190. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 これはまたあらためて企業のいろいろな問題についてはお尋ねしたいと思います。  それから、先ほどの資産の問題ですが、筋が通らないものは買い取らない、こういうことを広瀬委員に対して、外務大臣なりあるいは大蔵大臣なり等の答弁も引用して言われたわけでありますが、少し数字をほぐすというか数字を明らかにしてみたい、こう思います。  電力公社でひとつ考えてみたい、こう思うわけです。電力公社の現在の資産が何ぼあるか。私のほうから具体的に言いますから、少しその点を議論を詰めたいと思います。  資本金が一千二百四十万六千ドルですね。それから、利益剰余金が千九百六万六千ドル、長期借り入れ金が千百九十五万二千ドル、締めて四千三百四十二万四千ドル。この場合に、資本金の千二百四十万というのは、これはガリオア資金ですね。そうすると、牧港の発電が七百五十万ドル、これは完全にガリオア資金ですね。それから、米軍が油脂を一手販売したもうけから来ておるというのが四百万ドル。だから、締めて、資本金の千二百四十万というのは、完全に沖繩県民の汗、努力、そして無償贈与によるガリオア、そういうものだというふうに考えてよろしいですか。
  191. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 ただいまの電力公社の資産内容につきまして、詳細に、資産の種類につきまして、その財源がどこから来ておるかお示しになりましたわけですが、率直に申しまして、現段階において私たちはさような数字を把握いたしておりません。電力公社の資産内容、これはバランスシート等でわかるわけでございますが、その財源がどこから来たかというのは、たとえばいま牧港の発電所がガリオア勘定分とおっしゃいましたのでしょうか、そういったことは、ちょっとこれは現実の問題としてそういうぐあいにきれいに分かれるかどうか。たとえば現在琉球電力公社に資産が全部で幾らある、その中でガリオアが当初幾らあったかということぐらいは、これから詰めていく段階で出てくるかもしれませんが、その後、牧港発電所は、私の聞いておる限りにおきましては、いまなお増工事をやっておるはずでございますが、そういったことについて的確な御答弁を申し上げる資料をちょっと私握っておりませんので……。
  192. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 要するに、そういう資産をきちんとして、その中から、買い取るべきであるか買い取るべきでないかというのは明確に出てくるわけでしょう。それを、とにかくそういう買い取りという考え方それ自体について、広瀬委員の質問に対しても、ガリオア資金等に対する問題にしても、その辺をあいまいとして、とにかく締めて幾ら、それを幾らぐらいに資産を買い取るというふうなことに、いまのような姿勢だと、進んでいくのですよ。だから、現地側でもこの点は明確にしておるわけですし、私はいまの電力公社を見てみた場合でも、少なくとも電力公社の資本金なりあるいは利益剰余金なりというふうなもの等考える場合には、これは買い取らなければいかぬものでもないわけなんだし、だからそういう中身を明確にして、つまり油脂のもうけからきているものか、あるいはガリオア資金でつくられた最初の牧港の発電所なりというふうなもの等については——これが発足なんですから、一九四五年にガリオア資金で始まったわけだ。だからそういう点を買い取りというふうな問題については明確にすべきだ、こう思うのです。その点を具体的にガリオア資金そのものの、三七年、三〇年代当時のそういう議論も全部振り返ってやらなければいかぬわけですが、きょうは時間がありませんから、ただあなた方が資産の買い取りの問題の交渉に入るにあたって、具体的に電力公社の問題一つを取り上げてみて、その中で政府の姿勢を明らかにしたい、こういうふうに言っておるわけです。
  193. 中川一郎

    中川説明員 いま川崎委員の御質問の中に買い取りということが固定化されたような言い方をしておられるようでありますが、新聞では買い取りと書いてあったようですが、第一回の交渉、十日から十二日まで三日間のうちに二日は会談したようですが、その中では、移譲すべきものは何と何か、いま言った公社その他がある。そこで、これは買い取りになるとかなんとかじゃなくして、財産的価値あるいは資金がどこから出ておったということについてまず評価をしてみよう、評価が出た上で買い取るものであるのかどうするか、それは何らきまったものではありませんので、いま買い取るのだどうだといってお詰めいただくことは、かえって交渉を進める上において支障があるんじゃないか、このように思いますので、御了解いただきたいと思います。
  194. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 それでは、委員長時間を非常にあれしていますから、私資料を出してもらいたいと思います。そしてそれをこの次議論しましょう。それはつまり、アメリカが占領地域の行政救援資金として、ガリオア資金として沖繩の事業のために投資をした、つまり琉球銀行なりあるいは開発金融公社なり電力公社なり水道公社なり琉球生命保険なりそういうものについて資産内容を明確にしてガリオア資金との関係というものを明らかにする資料を出していただきたい。委員長よろしくお願いします。
  195. 池田清志

    池田委員長 委員長で提出させます。
  196. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 提出するそうですから……。
  197. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 いま資料の御提出の要求がございましたけれども、ガリオアがどう使われているかということについてかなり詳細な資料はすでに一回御提出申し上げたことがございます。今回の通常国会の冒頭において出ております。いまの御要求は、それと三公社との関連を明らかにしろ、こういう御要請でございました。われわれといたしましては、いまいろいろ御指摘になりました問題を十分含んで、これから作業を始めておるところでございます。それを早急に出せ、こうおっしゃられましても、ちょっと時間が間に合わないのじゃないかと思いますことが一つと、それから政府の姿勢を聞いておると、何か全体で幾らで、じゃその何割を引くとかそういうことでぱっときまるじゃろう、こういうようなことを仰せられましたが、さようなことは毛頭考えておりません。そんなことをやりましても、琉球現地の方はもちろん、日本国会の中で通るものとはわれわれは少しも考えておりません。そのために、今回調査団を出しましても、その中には、率直に申し上げまして役人だけではいろいろ技術的な、専門的な評価に欠けるところがあるのじゃないかと考えまして、水道にしろ、電力にしろ、それぞれ民間の専門家を大部分連れていっております。それで詳細なる評価作業をこれから開始せんとしているところでありまして、その関連はいずれ最終的に明らかにしなければならぬと思っておりますけれども、これを来週もう一回やるからすぐそれまでに出せと仰せられましてもちょっと不可能なわけでございますので、事情御賢察いただきたいと思います。
  198. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 いずれ本委員会の審議の進みぐあいの中で、とにかく可能な限りの資料の提出を要求をしながら審議を進めていきたい、こういうふうに思います。  それでは最後に長官にお尋ねしますが、これは財政の問題です。つまり日本政府が四十五年の予算を閣議決定をした、政府案がきまった、日米協議委員会を開いて話し合った、そのあとアメリカ援助を打ち切る方針を出してきた。これが一つ。琉球政府がすったもんだしたあげく民間から金を借りてまでやって、そして布令の改正という非常に大きな問題も含めて、見込みまで入れて予算を編成をして立法院議会に出した。そうしたら今度は下院のほうで削ってきた。この間ランパートに会いましたときにはこれは経済援助の分だ、こういうことを江田書記長と私に対しては明確にした。そうするとそれは学校あるいは保健施設、橋梁だ、こういうふうになるわけですね。ここでまた穴があいた、総務長官は、これは参議院の特別委員会日米協議委員会は形骸化している、こう言っておる。返ってくるのは七二年だ。そうするといま琉球政府が審議しておる予算というのは七一会計年度ですね。そこで日本政府は四十六年度——次の補正予算があるかないのかわからぬが、補正予算なりあるいは四十六年度の予算編成というのは、四十六年四月から四十七年三月にかかってくる。アメリカのほうはことしの六月から来年の五月まで。もう一つ来年の五月からどこまでいくのか、それは外務大臣に聞かなければわからぬ返還の時期になりますが、そういう中で、いまのような財政欠陥を——むしろ返還がきまってからよりいろいろなそういう条件というのが、つまりアメリカ側はドル防衛のためにどんどん減らしてくるわけですね。アメリカの議会の審議を見てみても、アメリカが投資をした資産は投資額以上に買い取れ、そういうふうにいたしましょうということをアメリカじゃやっておる。大いにもうかるのだ、こういうことも言っておる。議会の中ではそういうのが出てきている。そういう中で、つまり政府が、いまあなた方が六月、七月、八月というところでまた来年のやつに取り組んでいかなければいかぬ。ところがアメリカのほうは、相手側は日米協議委員会が信用ならぬでしょう。それを当てにして組んだやつは今度アメリカの議会でいつどんなふうに削られていくかわからぬ、こういう中でどういうふうにして円満に返還に向けて県民の生活に不安がない財政運営ができる方向を打ち出していくのか、その点をひとつ明確にしていただきたい。つまり政府としての心がまえといいますか方針ですね、それを明確にしていただきたいと思います。
  199. 山野幸吉

    ○山野説明員 御指摘のようにただいま沖繩立法院で検討しています予算の内容は非常に苦しい予算編成の内容でございまして、したがいまして私どもは端的に申しまして、現在琉球政府がかかえておるこの赤字問題をどうするかという問題に強い関心を持っておるわけであります。この前ランパート高等弁務官と山中大臣とのお話し合い、それから私とフィアリー民政官との話し合いでも、この赤字問題についていま御指摘の七二年の予算編成を含めて現在の沖繩の財政硬直化の問題をどう打開するかということにつきまして、日米琉で話し合いを始めようとしておるところでございます。八月一ぱいには日本政府の予算要求もしなければいかぬ。まあ若干沖繩の予算はおくれますが、大体その時期に三者の意見を統一しよう。その問題については日本政府はどういうぐあいにするか、米側としてはどういう態度をとるか、あるいは琉球政府は財政運営の面からどういう態度をとるか、その三者の結論を出しまして、それを踏まえて七二年度予算の編成をやろうということになっておりまして、いずれにしましてもこの沖繩の財政の硬直化は、復帰が近いだけに非常に大きい問題でございますので、私どもも真剣に取り組んで何らか具体的な方策を出したい、かように考えておるわけでございます。
  200. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 最後に。これはランパートに会いましたときに、今度の九十五万ドルの削減についても言ったわけです。これは私の手の届かぬところだ。アメリカの議会のことですよね。だから、いま日米琉で話し合うと言われたけれども、そこで話し合ってみてもまた問題が出てくるのです。だからそのことについてそういう不安がないようにするためには——東郷局長、お尋ねしますが、つまり日米琉で話し合ってみてもまた問題が出てくるんだ。だからそれの不安がないように、七二年まできちっと見通せる、そういう外交交渉はどのようになされておりますか。
  201. 東郷文彦

    ○東郷説明員 米国政府の今年度の援助が大幅に減りましたのですけれども、その減る向こうの予算案ができる前に、米国政府に対しては援助が急に減ることのないようにいろいろ話をいたしましたわけですが、結局ああいうことになりましたのははなはだ残念に思っております。その意味におきましては、これも、特に米国の議会の行動というものは、われわれから見れば、先ほどお話しのようにある程度といいますか、米国政府を通じてこれに働きかけるという以上には手の届かない世界でございまして、ただいまのお話のような御懸念はまことにごもっともです。また今後とも返還までにそういうことが起こるかもしれませんが、これは場合によってはとめようもないことかと思います。しかしながら、われわれとしては外交ルートを通じまして、混乱が起きないように、米国政府を通じまして米国議会が措置するように働きかける、こういうことでございまして、これが絶対に心配ないというような解決はございません。
  202. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 これは大蔵大臣か総務長官にお尋ねをしたかったけれども、結局そうなると——ただ非常にデリケートだと思うが、たとえば穴があいた、それじゃ日本政府は必ず補償しますと言ったら、アメリカ政府はどんどん穴をあけるかもわからぬから、そういうことはなかなかデリケートかもわかりません。しかしそういう復帰に向けての財政欠陥等に対しては、させないようにひとつやってもらいたいということを、これは最後は要りません、申し上げておいて終わりたいと思います。
  203. 池田清志

    池田委員長 以上で政府に対する質疑は一応終了いたしました。      ————◇—————
  204. 池田清志

    池田委員長 この際鯨岡兵輔君外四名から、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党及び日本共産党の各派共同提案にかかる沖繩における米軍毒ガス兵器撤去に関する件について、決議案の提出がなされました。  この際、提出者から趣旨の説明を求めます。鯨岡兵輔君。
  205. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 ただいま議題となりました沖繩における米軍毒ガス兵器の即時撤去に関する件につきまして、自由民主党、日本社会党、公明党、民社党及び日本共産党を代表して、その提案の趣旨を御説明申し上げます。   まず、案文を朗読いたします。    沖繩における米軍毒ガス兵器撤去に関する件(案)   昨年七月沖繩米軍基地内における毒ガス事故の発生を契機として、米国政府はその撤去を明らかにしたにもかかわらず、いまだに撤去されていないことはまことに遺憾である。   よって政府は、沖繩県民をはじめとする国民の要望にもとづき、すみやかに毒ガス兵器撤去され、かつ、移送までの安全性が十分確保されるよう、米国政府との交渉を強力に推進し、その実現を期すべきである。   右決議する。  昨年の七月、沖繩米軍基地内における毒ガス漏れ事故によって、毒ガス兵器の配備が明らかとなったのでありますが、その直後米国政府は、その撤去の意を表明し、さらに去る十二月には、来たる四十五年の春までに撤去完了の予定の公表を行なったのであります。  しかしながら、その後、ワシントン及びオレゴン両州の毒ガス兵器移送反対する動きをはじめとする米国内の国内事情によって、今日までその撤去は実現しておりません。  御承知のとおり、致死性毒ガス兵器は、今六十三特別国会におきまして衆参両院が承認した一九二五年ジュネーブ議定書によってもその使用が禁止され、また、わが国は軍縮委員会において、その開発、生産、貯蔵をも有効な管理のもとに禁止することを主張している兵器であります。  最近、米国の上院におきましても、この沖繩毒ガス兵器は廃棄すべきであるとする、いわゆるグラベル案が提出されたと外電は伝えております。  このように、すでにその製造、貯蔵についても国際世論の強く反対する兵器が、沖繩に現存することは、県民はもとより、同胞として本土国民の黙視できない問題であります。  特に一九七二年の沖繩返還を控え、この毒ガス兵器がすみやかに沖繩から撤去され、移送を含めてその間の安全性が十分に確保せられるべきであると考えまして、ここに本案を提出した次第であります。  何とぞ御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  206. 池田清志

    池田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  207. 池田清志

    池田委員長 別に発言の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  鯨岡兵輔君外四名提出の沖繩における米軍毒ガス兵器撤去に関する決議案のとおり決することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 池田清志

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、本決議案は可決せられました。      ————◇—————
  209. 池田清志

    池田委員長 次に、鯨岡兵輔君外三名から、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の共同提案にかかる沖繩県民に対する米国軍人等犯罪防止等に関する件について、決議案の提出がなされております。  この際、提出者から趣旨の説明を求めます。鯨岡兵輔君。
  210. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 私は、ただいま議題となりました沖繩県民に対する米国軍人等犯罪防止等に関する件の決議案について、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    沖繩県民に対する米国軍人等犯罪防止等に関する件(案)   最近沖繩では、女子高校生刺傷事件等沖繩県民に対する米国軍人等による犯罪が頻発し、県民生活に多大な衝撃を与えているのは人道上まことに遺憾である。   政府は、米国政府に対し、米国軍人等によるかかる犯罪が、今後発生しないよう軍紀の粛正を強く要請するとともに、これら犯罪に対する捜査と逮捕の徹底並びに裁判の公正がつらぬかれるよう適切な措置をとることを申し入れるべきである。   右決議する。  最近沖繩では、米国軍人等による沖繩県民に対する忌まわしい事件が相次いで起こり、県民に多大の衝撃を与えております。まことに遺憾といわざるを得ません。  これらの事件の発生について、屋良琉球政府主席は現地の米軍当局に強くこれを抗議し、さらに立法院においても抗議の決議を行なっておるのであります。  このような沖繩県民憤激と不安に対し、同じ日本国民として、深く同情するとともに強い怒りを覚えるものであります。また、このような事態は、日本国民のみならず、日米両国の友好関係を願うアメリカ国民にとっても非常に残念なことであろうと考えるのであります。  琉球政府沖繩県民は、米国軍人等による沖繩県民に対する犯罪に対し、軍事裁判の公開、犯人の厳重処罰、被害者に対する公正な損害賠償軍紀の粛正、裁判権の琉球政府への移譲等を要求しております。  これらの要求は沖繩県民が現地米軍当局のこれまでの裁判の処理等に対する不信から生じたものであろうと思われて、遺憾でございます。  よって政府は、米国政府に対し本決議の趣旨を強く申し入れ、その実現を期すべきであると考える次第であります。  以上が本決議案を提案した理由でございます。何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  211. 池田清志

    池田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  212. 池田清志

    池田委員長 別に発言の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  鯨岡兵輔君外三名提出の沖繩県民に対する米国軍人等犯罪防止等に関する決議案のとおり決することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  213. 池田清志

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、本決議案は可決せられました。  ただいまの両決議に対し、政府から発言を求められております。これを許します。湊総理府総務副長官。
  214. 湊徹郎

    ○湊説明員 本件に関します政府の態度につきましては、従来、特に本日の質疑を通じまして明らかにしたところでございますが、政府といたしましても、ただいまの御決議の趣旨を十分に尊重して適切な措置を講ずるよう、さらに一段と努力をしてまいりたいと思います。
  215. 池田清志

    池田委員長 ただいまの各決議について、議長に対する報告及び関係当局への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  216. 池田清志

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  217. 池田清志

    池田委員長 この際、委員長から御紹介申し上げる人物があります。  沖繩北方対策庁調整部長田辺博通君。   〔田辺説明員起立〕
  218. 池田清志

    池田委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後二時三十二分散会      ————◇—————