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1970-04-09 第63回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月九日(木曜日)     午後一時十二分開議  出席委員    委員長 池田 清志君    理事 宇田 國榮君 理事 大村 襄治君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 床次 徳二君    理事 箕輪  登君 理事 川崎 寛治君    理事 中川 嘉美君       宇野 宗佑君    小坂善太郎君       田中 龍夫君    福田 篤泰君       本名  武君    山田 久就君       豊  永光君    中谷 鉄也君       広瀬 秀吉君    美濃 政市君       横路 孝弘君    山本弥之助君       大久保直彦君    小平  忠君       林  百郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 愛知 揆一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  出席政府委員         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         総理府特別地域         連絡局参事官  加藤 泰守君         外務政務次官  竹内 黎一君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    御巫 清尚君         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 四月九日  辞任         補欠選任   山本弥之助君     横路 孝弘君   不破 哲三君     林  百郎君 同日  辞任         補欠選任   横路 孝弘君     山本弥之助君   林  百郎君     不破 哲三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖繩北方対策庁設置法案内閣提出第六四  号)      ————◇—————
  2. 池田清志

    池田委員長 これより会議を開きます。  沖繩北方対策庁設置法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。鯨岡兵輔君。
  3. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 外務大臣お時間もないようですから、きわめて簡潔に疑問とするところをお尋ねいたしまして、また簡潔にお答えをいただきたいと思うのです。  きのうソ連の副総理並びに漁業相日本をたずねられて、これからいろいろむずかしい交渉があるのでしょうが、その中で、抑留船員をこちらに即時釈放してくれるということになりまして、まことにうれしく思うわけですが、北の海でもあるいは南のほうの韓国あたりの海でも、のべつに日本の漁船は不法侵入だといって拿捕されて、それで抑留騒ぎを起こすのですが、ソ連韓国のお魚をとる人を日本のほうで不法侵入だといって拿捕したという話は一ぺんも聞いたことがない。何か国民の素朴な感情からいえば、こちらばかりつかまっているような感じがしてならないわけですが、この点いかがでございましょう。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 お答えいたしますが、現在のところ、ソ連関係以外で拿捕、抑留されているものはないと承知いたしておりますが、いま仰せのように、実情といたしまして、こちらで拿捕したあるいは抑留したということもまたございません。これはまあ突然のことで、こちら側でどういうふうな事態があるかということについては、なお詳細取り調べまして、最近の状況などを御報告することがあれば御報告いたしたいと思います。
  5. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 時間がありませんので言い尽くせないことをまことに残念に思うのですが、十二海里と三海里というここに差がある。そこに非常に、ずいぶんつまらないことをやっているものだなというふうに素朴な国民考えるのですが、この点いかがですか。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 領海の問題は御承知のように非常にむずかしい問題でございますが、要するに国際的な条約なり話し合いができまして、十二海里領海なら十二海里領海、あるいは六海里が領海あとの六海里は専管水域というような取りきめが国際的にできれば、それについて日本としてもその協約なり条約なりに参加して国益を守るということは当然でありますけれども、現在は御承知のように、三海里ということならば国際的な約定ができているわけですから、それ以外に一国がそれ以上に、一方的に十二海里とか、国によれば百海里、二百海里と主張しているところもございますけれども、これは国際条約からいっての領海の、その中に入りましても侵犯その他の問題は起こらない。それから具体的にいえば、日本としての漁業関係で、外国の水域で漁労を活発に行なっているようなところとの間には、バイラテラルに二国間で専管水域等の取りきめができていることによって、事実上一般的な摩擦を避けているというのが現状でありますことは、御承知のとおりと思います。領海全体の問題については、国際法学会その他、あるいは国連その他等におきましても検討が進められておる。その各国の態度とにらみ合わせて、世界的な帰趨に即応して、日本としての立場というものをはっきりきめるようにいたしたいという気持ちを持っておるのが、現在の政府立場でございます。
  7. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 どうもこのごろ、三海里じゃなしに十二海里という国がだんだん多くなってきているように思いますが、外務大臣よく御承知のとおりであります。そこで日本も、こういうふうになってきたら十二海里説を採用することのほうがむしろ情勢に適しているというふうに、外務大臣考えになっておられるかどうか。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま申しましたように、それから最近の経過におきましても、たとえばいま申しましたように領海専管水域と合わせて何海里ということの取りきめができる方向に向くことについては、日本としても積極的に協力し、そういう方向ができることを望ましいと考えているわけです。ただそのときの条件としては、全部の国が、あるいは少なくとも大多数の国がそれに合意をしてまとまるということが条件でありまして、少数の国あるいは日本だけが、たとえば十二海里説を主張いたしましても、それだけでは効果が十分ということは私はできないと思うのです。  それから同時に、確かに一般的な、いまもお話ありました素朴な国民感情からいえば、三海里より十二海里のほうがよさそうだということは、素朴な感じからいえばそのとおりでありますけれども、同時にまた日本海洋国であり、水産業の非常に盛んなところで、大いに海外においても活躍しているわけでございますから、現状のところにおいての利害得失というところからいくと、いずれの立場が適当であるかということについては慎重に考えざるを得ない。要するに、回りくどいことを申すようでありますが、十二海里説なら十二海里説、あるいはその中の何海里を専管水域にするということが大多数の国において約定ができてそれが守られるということについて、政府としては積極的に考え、かつそれができるようにするという努力をするということが最もしかるべき方向ではないか、国際的にもそういう考え方が最近においても強くなりつつある、傾向としてよい傾向になってきている、こういうふうに私は考えております。
  9. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 時間をかけてもう少し国民の素朴な感情を訴えて外務大臣にもお考えを願いたいと思うのです。いまのお話を聞いていてわかりませんのは、いつごろでしたか、しばしばにわたって銚子の沖合いなんか、もう目に見えるところまでソ連の船が来て魚をとっているということが一方に新聞に出ている。そうかと思うとすぐに日本カムチャッカ半島のほうではつかまってしまうというようなことを見ると、日本ばかりが三海里、三海里といっていて、どこもみんな十二海里になっちゃうのに三海里説をとっているのはどういうことなんだろう。いろいろ御苦労もあるのだろうけれども、ちょっとよくわからないというのが国民の素朴な感情でございます。だから日本だって十二海里説をとったらいいではないかというような考えになるのですが、いまのお話ではちょっとよくわからないわけです。それはそれとしまして、せめて歯舞群島、色丹、国後、択捉、この四つの島のうち、十二海里といわないで三海里まで魚をとらしてくださいというような交渉をいまやっていますね。大臣、私は、この四つの島はもともとが日本のものなんだから返してくれろという強い要求とちょっと矛盾するような、そんなことが通ればそれで話が終わってしまうような感じがするのですが、その点はいかがでございましょう。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そこで私どももう少し詳しく申し上げないといかぬですが、いまの領土問題ということについては日本態度としては非常に強硬な不退転の態度でいるわけでございますね。ですからそれをもう一度あとで御説明いたしますが、現在、安全操業の問題についてソ連側と話がこれから進められることになりかかってきましたが、これは、ですから三海里から十二海里の間のところを安全水域として設定してほしい、原則的にそういうことを頭に置いて細部の話し合いをしようということに、この安全操業の問題については話が始まりつつあるわけですね。そこでこちらがただ一方的に十二海里説ということを現在の段階で主張したり、それについて効果ある施策をとるとかりに仮定いたしますと、そういうことの主張の論拠というものは相対的にこちらが非常に弱くなるということも考えていかなければならないと思います。つまり十二海里までは領海だということになれば、十二海里から外のところだけしか公海ということはいえなくなるわけですね。そういう微妙なところもございますし、それから従来もいろいろ水産業関係の深い国々とはバイラテラル条件、状態が違っておりますけれども、やはり日本としては従来から三海里が領海だ、これが万国でまとまった、また守られている基礎であるということを基礎にしていままではやってまいりましたので、全世界的に十二海里あるいはその中の六海里が専管水域だということが、基準としてきまればそれはけっこうなことですが、それはそこに至りますまでの間はやはりバイラテラル状況に応じて日本国益を守っていかなければならない。その場合に向こうが三海里のすぐ直前に来ているからそこだけにあまり執着するという考え方は大局的に見ていかがであろうか。もう少し真剣に対処しなければならないというのが私ども考え方でございます。  それから第二の領土問題との関係は、領土問題は領土問題として日本主張というものは厳として存在する。それはそれといたしまして、しかし日本が伝統的にも、また現実の問題としてもこれらの水域においてはぜひ操業をすべきである、またそこにいろいろの紛争が起こる、あるいは抑留者の問題が起こるということは妥当でありませんから、ともかくも水域をきめて、その水域の中では日本漁業が安全に操業できるように確保することが当面最も必要なことであるということで、領土問題の要求要求として、とりあえず並行的に安全操業の問題を解決していきたいという態度ソ連との交渉にいままきに入らんとしつつあるところであります。
  11. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 外務大臣、それが私にはよくわからないんですね。何か従来主張していたことが弱くなってしまうのじゃないかと思うのです。変な例をとってまことに恐縮ですが、愛知揆一という人の家を私が不法に占領して、そこへ住んじゃって、それで鯨岡君、それを返せと愛知さんが幾ら言われても私は返さない。そこで愛知さんは、それじゃしかたがないから、君の家へときどき立ち寄って水を飲むだけは許可せよというようなことを言う。ああ、そうですか、それは水を飲むぐらいはいいでしょうと言っちゃったら、それでもう交渉はおしまい、話はそれで終わりになっちゃうという感じがして、どうも何か——それはお魚をとっている人の身になればよくわかるのですけれども、こんな例は間違いでしょうかな。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは適切な例かもしれませんけれども、やはり根本は領土問題の解決ということがなければならないということについては厳とした主張を明らかにし、かつこれについては大いに努力をしておりますことは御理解いただいていると思うのですけれども現実事態で、一方においてはこうした抑留者の問題などもあるし、それから三海里以遠十二海里以内のところはどうしても日本現実の当面の沿岸漁民の生業の保護ということからしても絶対に確保しなければならないところである、こういう現実的な立場に立って処理をしたい、こういう考え方で前々からそういう姿勢で取り上げてきているわけであります。
  13. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 これで最後質問になります。いまのお話を承って現実はよくわかるのですが、何かお魚をとれないという損失、現実にお魚をとることを業としている人たちの問題のことを考えればよくわかるのですけれども、これだけ経済が発展してきたのですから、それらの人には別な方面で補いをつけても、姿勢はきちんとして、当面の損得でもってものを考えるべきではないと私は思いますので、申し上げておきたいと思います。  松本俊一さんが北方領土復帰期成同盟の会長として、北海道の北方領土問題に関係する人を連れて十日にアメリカに渡るということを大臣お聞き及びだと思いますが、これは当面どういう目的でしょうか。御存じでしたらひとつ……。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは政府を代表し、あるいは政府の委嘱によって行かれるのではありませんから、やはり関係漁民あるいは業界の方々意見を十分ひとつ関係国にも知らしめたい、また協力も求めたいということで行かれるものと了解しております。
  15. 池田清志

  16. 箕輪登

    箕輪委員 お尋ねをいたします。  その前に、私はこの三月二十八日の日に、日本航空の御招待がございまして、モスクワに行ってまいりました。その前日、すなわち三月二十七日の夕刊で初めて知ったのでありますが、ソ連爆撃演習の問題であります。私はあらかじめアポイントメントしておきまして、向こうの要人と会う約束をとっておりましたので、爆撃演習等を含めて交渉するつもりでモスクワに行ったわけです。大体向こうでわれわれを待っていてくれましたが、シャリポフソ連最高会議の副議長、デムチェンコ同じく最高会議議員であり向こうでいうソ日議員連盟議長ヴィソーチン最高会議渉外部長、その他数名の方々とお目にかかる機会を得ました。一番先に一緒に渡航してくださった長谷川峻先生から、北方領土問題のお話をいたしました。ところがこれらの方々を代表してシャリポフ副議長は、それは戦後の諸協定で大体話がついているじゃないか、こういう答弁をきれました。初めて北方領土の問題で向こうと折衝してみて非常にむずかしいことを知らされたわけであります。そこで長谷川さんが、箕輪君何か君のほうから意見があったらということで言われたので、戦後の諸協定というのは一体何であるか、われわれは領土に関する限りサンフランシスコ平和条約しかないと思っているのだが、あなたのほうでは諸協定と言われた、諸協定というのは何だということを聞いたところが、一番先に彼があげたのは日ソ共同宣言であり、次にあげたのがヤルタ協定、その次にあげたのがポツダム宣言、そして最後サンフランシスコ平和条約をさす、こう言ったから、それじゃもう一回お尋ねを申し上げたい、ヤルタ協定はあなた方が好きかってにやった秘密協定であって、少なくとも領土の問題は両国の問題であって、日本が入った協定でなければ国際的に通用しないじゃないか、またポツダム宣言はその宣言で明らかにされているように、旧来の領土は返してもらうけれども領土の不拡張をいっているではないか、しかるにわれわれが北方領土といっていま要求しているところの四島には、あなた方の民族がかつて一度も住んだことはないではないか、しかも八月十五日にポツダム宣言を受諾するということで終戦を迎えたにもかかわらず、八月二十九日以降にこれらの四島に諸君は上がってきたのだ、おかしいじゃないか、また最後にあげられたサンフランシスコ平和条約はあなた方あげるのはおかしいので、これはあなたのほうは署名国家の中に入っておらないではないか、こういうことを実は聞いたのであります。  それに対する御回答をいただきたい、こう言ったら、こういうことを言っておりました。それはいま箕輪とその議論をする時間もないのでわれわれは議論をしたくない、それは国会議員同士の話じゃなくて外務省政府同士の話である、こういうことで彼らは逃げました。  そして最後デムチェンコソ日議員連盟議長でありますが、いろいろ両国の間にある諸問題もあるから、ひとつわれわれのほうと日本議員の間で常設の協議機関をつくってほしい、そういうところでやろう、こういう幅を持たせたようなことを実は言っております。これは党の問題でありますから党のほうで相談をして進めたいと思いますが、この領土の問題は外務大臣も行かれて御承知のとおり、私も初めて行ってみて非常にむずかしさを感じたのであります。  そこで、いまもお話が出ましたが、松本さんたちが行かれますが、これは十日の日に出発されるわけですが、こういう国際情勢のむずかしいときでありますので、私は外務省としても署名四十八カ国に対するアピールや、あるいは四十八カ国を集めての国際会議を開くことは相当なむずかしさがあるのではないかと考えてはおります。おりますが、せっかく切々たる気持ちを、サンフランシスコ平和条約署名国家の四十八カ国に訴えてくる、国連を舞台にして訴えてくるというこれらの人々に対して、外務省から適切なアドバイスや、また現地へ行ってから現地大使館を通じ、これらの方々にいろいろなお世話をしていただければ私は非常にありがたいと思います。そういうような意味で、時間がございましたら、もっともっと御質問したいことがたくさんあるのでありますが、何か前置きが非常に長くなって申しわけありませんけれども、それらの一般の問題について、またいまの松本さんの訪米アピール、こうした問題について大臣の御見解お尋ね申し上げたいと思います。
  17. 愛知揆一

    愛知国務大臣 北方領土についてのソ連言い方には、いまおあげになりましたようないろいろの言い方があるわけですが、これはいずれもこちらからいえばいわれのない言い分である。これは条約、諸協定あるいは宣言その他いずれに対しましても、日本側から見れば全部当たらない言い分でございます。これを一番簡明率直に申しますれば、これらの宣言協定等については、一八五五年ですか、日魯通好条約というものがございますが、このときの両国決定というものが非常にはっきりしておるわけでございまして、そういうことからいっても、沿革的にいっても、たとえば日本があらゆる意味で力によって奪取したというようなことはいえない根拠があまりにもここで明瞭になっている。そういうことを踏まえて条約論宣言論というようなものは、ソ連言い分というものはあらゆる角度からこれは打破し得るものと考えておるわけであります。  それから先ほど鯨岡君の御質問にもお答えしたのですけれども松本俊一氏の一行が今度アメリカに行くことになった。これは、サンフランシスコ条約解釈等をめぐって、関係国々の注意を喚起し、協力を求めたいという切なる願望に出たものであるということは私もよく承知いたしておりますから、あたたかい気持ちでこうした運動が効果を見出し得るように、これは政府といたしましても十分の配慮はいたしたいと思っております。  政府としては、従来の経緯は御承知と思いますけれどもサンフランシスコ条約起草者であるアメリカ政府の公式の見解、これらについてはこちらからの照会に対する答えもあるし、あるいはまたソ連に対するそれらの国の公式の見解というものもすでに明らかにせられておることでもございますので、サンフランシスコ条約加盟国というものはすべて日本主張に対してきわめて好意的である、こういうふうに私は確信を持っております。  同時に、現在の国際情勢というものはあらためて申し上げるまでもないことでありまして、こういう国々が公に政府立場に立ってこの条約に対する見解をまたあらためて全部が集まって表明したり、あるいはその決議に基づいて日本政府を助けるというようなことになるかどうか、そういうことが効果を期待し得るやいなやということについては、いまのところ私は論評できませんけれども、しかし国民的なそういう願望がこういう機会に表明されるということは、いろいろの意味効果のあることである、そういう意味政府としても十分の配慮をしていきたい、こういうふうに考えております。
  18. 箕輪登

    箕輪委員 最後に一、二分で簡単にお話をいたしますので、お答えをいただきたいと思います。  私どもがクレムリンを訪問したときに、いまも鯨岡先生がお触れになっておりましたように、安全操業の問題について話し合ったのであります。この安全操業に関する昨年九月の愛知提案に対して、研究中だ。いまだに貴国はそういうことを言っているけれども、少なくとも今度日本を訪問されるポドゴルヌイさんが来られるまでの間にひとつ御回答いただきたいということについて私が質問したところが、向こう側は力を込めて言いましたが、きわめて近い将来に回答できる。私ども大使館に帰りまして分析をいたしまして、少なくとも彼らがこっちへ来るまでの間に返事が得られるかもしれません。今度ポドゴルヌイさんが御病気ということで、ノビコフさんが来られたようでありますが、彼らがいる間にその回答が出るのか出ないのか。また、回答が出るとすればどういう回答が出るか。ひとつ大臣の感触をお聞かせいただきたいと思います。
  19. 愛知揆一

    愛知国務大臣 安全操業の問題については、先日政府側からもとりあえず発表をいたしたわけでございますが、いまもお話しになりましたような国会方々の御尽力、御協力等が実りまして、昨日ノビコフ総理佐藤総理に会見をいたしましたときに、ソ連政府としては安全操業の問題について日本側話し合いに入ることに決定をいたしましたという正式の回答がございました。  それから、それに引き続いて、私はノビコフ一行と会談をいたしたわけでございますが、先方としては、いま来日中のイシコフ漁業大臣を本件の主役にしますから、イシコフ大臣農林大臣あるいはそれにかわる日本のその道の責任の方々十分意見を交換して帰りたい、こういうことでございました。これはいわば口頭での話でございますから、紙に書いた回答とか、紙に書いた先方提案というものでございませんから、これから話し合いを始めてみませんとソ連側の内容についての考え方というものも的確にわかりませんので、いまこの時間に想像を交えて申し上げることはできませんけれども、ともかく昨年の九月こちらが、先ほどもちょっと申しましたように問題になっている水域について、三海里以遠十二海里以内のところの安全操業を認めてもらいたいという、この提案の原則の線に沿うて話し合いに入る用意があるのではないかと私は想像するわけでございます。この水域イシコフ氏の滞日中にきまるかどうか、これもさだかでございませんけれども、とりあえずイシコフ氏に対しては私からも、一行よりも多少日程を延ばして東京に滞在して、こうした話し合いの煮詰めについてできるだけの協力をしてほしいという話をしておきましたら、向こうはできるだけそういう方向であらためて努力をしたい、こういうことでございました。
  20. 箕輪登

    箕輪委員 どうもありがとうございます。質問を終わります。
  21. 池田清志

  22. 横路孝弘

    横路委員 いま安全操業の問題について話が出ましたので、その点について外務大臣のほうにお尋ねしたいと思いますけれどもソ連側から話し合いに応じたいという回答があったということでありますが、それは昨年の九月の愛知提案をもとにして話し合いに応じたいということでございますか。その点をまず確かめておきたいと思います。
  23. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点はこれから話し合いに入ってみませんと、いま申しましたように的確なお答えはできないわけでございます。と申しますのは、これについても沿革がございまして、私の前に——正確な日時は失念いたしましたが、椎名外務大臣の当時に、貝殻島付近の安全操業ということをソ連側が話をしたことがある。こういう経緯があるものでございますから、私の昨日の会談では、それよりも水域を広げるというのが私が昨年話をしたことでございますし、それから椎名大臣の当時は先方考え方は受け入れがたいという態度で終始しているわけでございますから、あらためてソ連側として安全操業について話し合いに入るということであれば、こちらは先方考え方が柔軟に変わってきたとは見ておりますけれども、しかしこれは話し合いが始まってみませんとまだ確たることはわかりません。しかしこれは見通しの問題でございまして、日本政府といたしましては、もちろん水域を拡張して安全操業ができるようにという基本の姿勢でもってこの話し合いに入る、こういう態度でおるわけでございます。
  24. 横路孝弘

    横路委員 この安全操業の問題は、北海道の漁民の最大の願いであるわけです。そこでその安全操業交渉について二つほどちょっと確かめておきたい点があるのです。  愛知提案の内容は、歯舞、色丹、択捉、国後の四つの島について、十二海里、三海里の間について安全操業を認めてくれということが提案の内容になっているわけなんですけれども、その点については今後の交渉の中で、これはソビエト側との交渉になりますからこれから先の話になるわけですけれども、原則としては四つの島、しかし話の内容の動きの変化によっては、四つでなくても、あるいは歯舞、色丹なら歯舞、色丹だけについてソビエト側が認めましたという態度に出てきた場合には、それに応じて日本側でもそれに同意をするというような、そういった幅のある態度交渉に臨まれるのか、それとも、いやこの四つの島でなければだめなんだということなのか、その辺のところはどうでございますか。
  25. 愛知揆一

    愛知国務大臣 こちらがこれから話し合いに入っていきます日本側態度としては、水域はできるだけ広いほうがいいということはもちろんでございますから、いわゆる愛知提案というものを基礎にして話し合いに入りたい、しかし何ぶんにもいわゆる愛知提案というものに対しましても、その原則をまずソ連話し合いに応ずるならば、細目の話し合いについては若干のゆとりを持つ、ただし先ほど鯨岡君の御質疑の中の趣旨も私よくわかるような感じがするのですけれども、たとえば入漁料というようなことはこちらとしては考えたくないわけでございます。あるいはまた別の方面から見れば、水域が相当広いことを容認するならば、操業のやり方について多少はこっちが譲ってもいいところがあろうかとも思います。いわゆる若干の自主規制というもの、そういう点を含めて申せば、話し合いにある程度の幅を持ってこの交渉に臨むということも適当かと思いますけれども、何ぶんにも話し合いを始めましょうということに向こうが応じ、かつイシコフが滞在を延ばしてこれに当たってくれるというわけでございますから、私どもとしては基本的に水域の広いことを望みながら、先方のいま持っている考え方ども十分聞いて、それに対してしかるべく日本漁民方々立場に立って、安心を願える程度ができるだけ高いことを望むという基本方針で話し合いをまとめるようにしたらばいかがか、かようにいま考えておるところでございます。
  26. 横路孝弘

    横路委員 いま話がありました入漁料のことについても、現在でもすでにたとえばオーストラリアとの漁業協定とかあるいはインドネシアとの漁業暫定協定で、マグロはえなわ漁について十二海里の中の漁をお金を払って認めてもらっているわけですね。だからといってこちらのほうで、漁業専管水域というものを認めたということには法律的にはならぬと思うのです。ですからその点でもゆとりを持ってぜひ部分的にでも解決する、その積み重ねの上で全体について安全操業の確立ということをお考えいただきたいというように思うわけです。  もう時間がないのでありますけれども、きのうの会談の中でも、新聞の報道によると、北方領土の返還を求めるということに対して、ソビエト側では、すでに解決済みだという話になっているわけなんですけれども、そこで二つほどお尋ねしたい点があるのです。  一つは、従来の政府立場からいえば、北方領土というのは四つの島に限られるのだということになっているわけです。ではそれ以外の北千島あるいは南樺太については、南樺太は別にしても北千島についてはどうなんだろうか、これは全然従来のソビエト側との交渉の中で交渉の対象になったことはないのですか。というのは、この北方領土の問題に関して、法制的な問題とかあるいは北方領土の範囲について、いろいろ与野党微妙な食い違いはあっても千島列島全体について、日本領土なんだから返還してもらいたいということ、これは一致しているわけなんです。ですからその点について、対象になったことがあるのかないのかという点と、それからこのサンフランシスコ条約で放棄したいわゆる千島列島というものについて、将来政府は一体どういう解決をはかるべきなのか、あるいははかろうとしているのか、その展望について、この二つの点お尋ねしたいと思います。
  27. 愛知揆一

    愛知国務大臣 政府といたしましては、日ソ共同宣言によって国交正常化されまして以来の領土問題に対する政府としての態度は、歯舞、色丹は、御承知のように日ソ共同宣言のときに一応考え方は解決したと申し上げてもいいかと思いますが、国後、択捉はサンフランシスコ条約においても放棄したものではない。それから先ほど申しましたように、一世紀以上にわたって、いかなる点から見ても国後、択捉には絶対的な領有の根拠があるのである、こういう立場に立って国後、択捉の返還を求めているというのが政府の方針でございます。そしてサンフランシスコ条約は、先ほどもお話が出たように、ソ連はこれに入っておりません。同時に千島は日本が放棄したわけですから、国後、択捉以外のそれよりも北のほうの島々はこれは放棄した、こういう考え方の上に立って、いま申しましたような国後、択捉の返還を求めているわけでございます。将来他の千島あるいは南樺太というようなものについてどういう態度であるかという点については、政府としては、条約によって放棄をいたしましたものでございますから、これに対しては日本政府としては発言権がないという考え方基礎にしておりますので、これらについてただいまのところいかなる措置をとるかということについては考えておりません。
  28. 横路孝弘

    横路委員 最後に、今後の交渉のことで一つだけ、時間がないので恐縮なんですけれども……。  昨年九月の愛知外務大臣が訪ソの際に、ことし初めにグロムイコ外務大臣を東京に招いて第二回の日ソ定期協議会が開かれるという予定になっていて、まだ実現していないわけですね。なぜ実現していないのか、その辺の事情と、それからいまノビコフ副首相はじめ来ておられるので、その中で、政府として具体的にやはり正式な外交ルートによる交渉というのは継続してやっていかなければならぬと思うのです。その辺のところ、政府のほうで何か特にソビエト側に要望を出したかどうか、その点を質問しまして、終わりにします。
  29. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点はまことにごもっともでございまして、政府としては非常に残念に思っております。それで、先日、ノビコフ一行との間でももちろんこの話が出ましたが、今回来日しておるこのノビコフ以下の一行の諸君も——そういうことまで申し上げるのも率直過ぎるかもしれませんが、彼らのほうから、われわれもみんなで早く日ソ定期協議が復活といいますか、できるように大いにプレッシャーをかけます。これはどうしても、われわれが見ても日ソ定期協議というものは必要だから、グロムイコ外相になるべく早く日本へ来て、今度自分らが来る番になって延び延びになっていて申しわけないから、なるべく早く来るようにみんなでひとつプレッシャーをかけましょうというような、これは冗談のような雑談のような話ではございますが、なるべくすみやかにグロムイコ来日が実現できるように先方努力をしてくれるという約束をしたような状況でございます。
  30. 池田清志

    池田委員長 暫時休憩いたします。    午後一時五十五分休憩      ————◇—————    午後二時五十九分開議
  31. 池田清志

    池田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横路孝弘君。
  32. 横路孝弘

    横路委員 お忙しいようですから、一つだけお尋ねしたいと思うのですけれども、結局北方領土の問題について、従来の交渉を見ますと、日本のほうとしては固有の領土である、ソビエトのほうとしては領土問題は解決済みだというように、一歩も進展していないというような現状にあるわけで、その中で安全操業をとらえて、この積み重ねの中でこの問題の解決をはかっていく以外にないと思いますし、根本的には国際的な緊張の緩和なり、あるいは日米安保条約の問題もあると私たちは思うわけですけれども、結局この領土問題の解決は、日ソ間の友好関係の推進というのがやはり不可欠な要素としてあるだろうと思うのです。ところがソビエト側の態度というのは、北方領土返還運動というものは一部の反共反ソ分子の運動だというようなとらえ方がきれているようですし、また現実に私たちが国内のいろいろな情勢考えてみまして、北海道では決してそうではないわけですけれども、やはり東京あたりのいろいろな運動を見ますと、そうした指摘がやはり事実である面もないわけではないと思うのです。たとえば街頭などでよく愛国党あたりが、ソビエトに対する攻撃をしながら、北方領土の返還について署名運動をやっているというような事実から、やはりソビエト側でそういうような把握がきれているのじゃないか。そこでお聞きしたいのは、やはり友好が基礎にならなければならない。返還運動というものもそうした意味でソビエトに対する攻撃なり反ソ宣伝というようなものと結びつけられて進められるようでは、ほんとうの返還運動にならないし、国民的な合意というのは、この問題解決には必要不可欠な要素だろうと思うのです。  そこで今度の沖繩・北方対策庁の予算の中でこれを見てみますと、北方領土返還復帰促進国民大会というものに百万円というお金を計上しているわけでありますけれども、この参加団体は、北海道からの参加団体は非常に正式の団体ばかり参加しているわけですが、東京からの参加団体の中にはそうじゃない、非常に正体不明ないわゆる右翼団体みたいなものがこれに参加しているわけです。それに対して政府が金を援助しているということになりますと、誤解を生むもとになるのじゃないかと思うのです。そうした意味で、たとえば昨年十一月二十九日に行なわれましたこの国民大会でも、民社党、公明党の代表に対してはやじが飛んで話が聞き取れないというような会場の様子だったということが新聞等で伝えられておりますし、その辺のところがやはりこれからも沖繩・北方対策庁としての運動を進めていく上にあたっての非常に大きな問題じゃないかというように思うわけでありまして、その辺のところを、外務大臣のほうと総理府のほうとそれぞれの基本的な見解というものをお尋ねいたしたいと思います。
  33. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはまことにごもっともな御指摘であると思います。最近の日ソ関係は私は一般的にはかなりよくなってきていると思うのでありまして、当然といえば当然かもしれませんが、先般の日本海と太平洋の日本本土に近接しているところの演習を比較的短期間で中止をしたというようなことも、日本の平和的な国民のムードといいますか、それに対する理解と配慮というものが非常によく徹底した結果ではないかと思います。それから積極的な面におきましても、たとえば万博に対するソ連姿勢も非常に積極的であります。それから現に昨日、ノビコフ一行との会談のときにも非常にそういう感じ感じ取ったわけでありますけれども、いろいろな面のたとえば経済協力等についての非常に積極的な意欲があらわれておる。私どもとしてはこういう友好親善関係の環境の中で、ここまできたらぜひ平和条約ということにこぎつけたい。それには、日本側から見れば、ソ連側としてここで一つ決断をしてくれれば領土問題が解決できて、平和条約——決して対決的な、あるいはいわんや反共的なというようなテークアップのしかたではなくて、そういう友好関係の中でさらにこれを盛り上げる、そういう雰囲気の中で解決するように持っていきたい、こういうふうに考えているわけでございますから、後段に言及されました領土問題の国民的な盛り上がりにつきましても、一党一派に偏したりあるいは先方に口実を与える——といいますか、誤解を招くようなやり方については十分戒心していきたいと思っております。この取り上げ方については、もちろん同じ政府の中でありますから、今回できる沖繩・北方対策庁と外務省との間に見解の相違というようなことは全然ございませんし、またかりにも今後においてそういうことのないように十分協調してやってまいりたいと考えております。
  34. 山野幸吉

    ○山野政府委員 北方領土返還の国民大会は毎年一回やっておりますが、これらは相当多数の関係団体が連合体をつくられて開催の準備をされておられます。総理府からは北方領土対策協会、これは従来、南援に対しましては昨年は七十八万と記憶しておるのでありますが、ことしは百万程度出しておりますけれども、個々の参加団体に、特定の団体を選びまして補助金を出すようなことはいたしておりません。この問題はただいま外務大臣からもお話がございましたように、国民全体が一致して世論を盛り上げていく関係の問題でございまして、私どもはそういう一方に偏向するようなことは極力避けてまいりたい、かように考えております。
  35. 池田清志

    池田委員長 川崎寛治君。
  36. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 二、三お尋ねします。  まず第一に、四月六日、アメリカの教育厚生相が、沖繩の致死性ガスを貯蔵するためオレゴン州に輸送するとのアメリカ陸軍の計画を許可した、こういう報道がされておるのでありますが、これが日本政府に正式に通知されておるものかどうか。そして撤去はいつになるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  37. 御巫清尚

    ○御巫説明員 ただいま御指摘のとおりに、陸軍省は四月六日に、沖繩の化学兵器の撤去に関しまして発表いたしておりますけれども、それに関連いたしまして、ワシントン大使館のほうに内々の連絡をいたしてきております。ただし沖繩からの現実の撤去の時期に関してはまだ正式にきまっておらない、こういうことでございます。
  38. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 第二問は、沖繩返還協定はいま交渉に入っておるわけでありますけれども、これは大体いつめどをつけて国会のほうに承認也求めてくるつもりなのか。いろいろな問題とも関連してまいりますので、その返還協定の見通しについて大臣から明らかにしてもらいたいと思います。
  39. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先般も当委員会で申し上げたかと思いますけれども、いま具体的に、これは今年とか来年とかいうことではございませんで、何年同月ごろ国会の御審議がお願いできる段階になるかということは、まだ的確に申し上げ得るところまで至っておりません。そこでいま申し上げる点は、もう再来年返還ということがきまっておるわけでございますから、再来年のなるべくすみやかな時期に返還が行なわれるようにというところを最終の目標に設定いたしまして、それから逆算いたしまして、なすべき準備作業をどんどん進行させて、かたわら返還協定の草案について日米双方の合議をまとめていく。考えてみれば、これはよほど努力をしなければ、短い期間にいろいろ解決していかなければならない問題が想定されますので、文字どおりほんとうにがんばって、できるだけ早く諸般の準備を進めていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  40. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 北方領土の問題でお尋ねしたいと思いますが、万歳、沖繩が返ってくる、次は北方領土だ、これは自民党の諸君の総選挙の際のスローガンでありますけれども、先ほど外務大臣は、北千島のほうはサンフランシスコの平和条約で放棄した、こういうことでありますが、一八五五年の日魯の通好条約あるいは七五年の千島、樺太の交換条約、こういうものから見ますならば、また明治以来の日本における行政的な措置というものを見ますならば、千島全部が、つまり北千島も平和的な国際的な関係で定まった日本領土であるということは明確であります。その点はお認めになりますか。
  41. 愛知揆一

    愛知国務大臣 一八五五年の日魯通好条約ではいわゆる広く使われておった千島ということばの中で、その地域を明確にしておるのは、国後、択捉である。一番端的に素朴に考えましても、この点が一番わかりやすいところではないかという点に立脚しているわけでございます。
  42. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 そうしましたら、この問題は詰めようと思えばちょっと時間がかかります。だからたいへんあとが詰まっておりますから、私は一問一答で詰めようとしておるので、なかなか議論しにくいのですけれども、いずれにしましても、領土の帰属問題というのは当時の条約に参加した連合国間の問題になると思うのです。そうしますと、いずれにしろアメリカがヤルタ体制という戦後の米ソ体制というものをつくったわけです。一方にアメリカが加担しておる。そこでいずれにしてもこの問題は、アメリカというものが中に入らなければならない。こうなります。  端的にお尋ねしますが、今回の佐藤・ニクソン会談、あるいは愛知・ロジャーズ会談、それらの中で北方領土の問題を話し合ったかどうか、このことを明らかにしてもらいたいと思います。
  43. 愛知揆一

    愛知国務大臣 日米会談ではこの問題は取り上げておりません。と申しますのは、これはサンフランシスコ条約では、放棄したものの中には、国後、択捉は入っていない。つまり日本として固有の領土である。放棄はしていないということになっておりますから、そういう関係から申しましても、これは日米間の議題ではない、かように考えておるわけでございます。
  44. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 三十六年の十月三日の衆議院の予算委員会では、当時の池田総理は、領土帰属問題は連合国間できめられる問題だ。だからこれは国後、択捉というのと北のほうと分けておるというふうに思いますけれども、その連合国間できめられる問題だということが、当時の池田総理からは答弁されておるわけです。具体的にそういうことは何もやってない。だからつまりこの問題は日ソ間だけの問題だということで進められておる、こういうことでございますか。
  45. 愛知揆一

    愛知国務大臣 連合国間の問題というのは二つあるわけでございます。サンフランシスコ条約は、連合国といいますか、加盟国署名国との間でできたものでございますから、それらとの間にできたサンフランシスコ条約において日本が放棄いたしました地域についての処理ということになれば、それらの国々考え方できまるのが筋道だと思います。それから政府見解といたしましては、サンフランシスコ条約の草案国であるアメリカをはじめ、日本が放棄したものの中には、国後、択捉は入っていないんだということは、先ほどのお答えの中にも申しましたけれども、そういう見解をとっておりますから、これはサンフランシスコ条約の範囲外の問題であって、法律用語としては正確でございませんから問題にしないでいただきたいと思うのですが、いわば不法といえないかもしれませんが、いわれなきソ連の事実上の占有であって、日本は国後、択捉についてはストレートにソ連に対して本来の姿にしてくれというのが日本主張であるべきである、かように考えております。
  46. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 私は明らかに分けて議論したつもりです。しかしそれは十分時間がありませんから詰まりませんけれども、いずれあらためていたします。平和的に国際的にきまっておる日本領土であるという意味において、北千島を放棄したことは誤りであるということをいずれあらためて議論いたしたい、こういうふうに思います。  終わります。
  47. 池田清志

    池田委員長 林百郎君。
  48. 林百郎

    ○林(百)委員 私も時間が非常に制限されて十分ということですので、二点ほどに限って質問したいと思いますのは、沖繩・北方対策庁が今後とり行なうと考えられる業務内容に対して若干確かめたいと思うのです。  その一つは、沖繩の米軍基地の取り扱いについてでありますが、これはわが党の不破君もすでに質問している点ですが、詰めてありませんのでこれを詰めたいと思うのです。外務大臣も御承知のとおり、レアード国防長官の議会の証言によりますと、沖繩の米軍基地の機能は、一は東アジア、西太平洋全域の緊急事態にすみやかに対処するという機能、二つ目には西太平洋全域の陸海空三軍へ補給を行なうということ、三は前記の全地域への通信基地ということになっておるわけです。リーサー米陸軍長官の報告によりますと、沖繩を西太平洋の全米軍に対する補給基地にするということがあるわけですけれども、そこでこういう広範な西太平洋全域に対する補給基地というようなことになりますと、ここでの米軍基地に対しては日本政府としては同意できないことになるわけです。この前の不破君の外務大臣への質問は、返還前の交渉と返還後の交渉の性格が違ってくるのではないかというような質問をいたしまして、返還前の交渉アメリカ側が存続をしたいという希望に対して日本側が拒否することができる、返還後の交渉になりますと、日本側が存続してもらっては困るということに対してアメリカ側が拒否することができるという事態が発生してくるわけなんですけれども外務大臣は、いや返還前の交渉も返還後の交渉も変わりないというような答弁だったですが、厳密にこれを分析してみると、やはり返還前の日米交渉、返還後の日米交渉は性格が違ってくるのじゃないかというように思うわけです。  そこで、日米両国間で一致できない基地ですね。アメリカ側はぜひ今後存続しなければ困ると言う、日本側ではこういう性格の基地では存続は困ると言う、一致しなかった場合はどうなるだろうか。先日私の質問に対して、外務大臣は、岡崎・ラスク交換公文のような、いずれにころんでも存続させるというようなそういうものはとらないんだというような——これは速記録を読んでみますと、外務大臣はとらないとははっきり言ってないのです。これはもうなくなっておりますというようなことで、とる、とらないと言っていませんけれども、こういうように日米間で一致できない基地がある場合に、これはどう処理なさるわけですか。
  49. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いまのお尋ねの中で、私厳密にいえば、返還前と返還後は法律的な性格も違うわけでございますから、厳密にいえばこれは違う。これは私はお話のとおりだと思います。しかし返還前においても、返還後のあるべき好ましい姿を想定しながら返還の準備をしていくわけでございますから、そういう意味からいえばもう再来年返還ということがきまっている以上は一体的につなげて話し合いをしていくべき筋合いではないか、こういう意味でこの前御答弁をいたしたわけでございます。  それから、話がまとまらなかったらどうなるかということですが、これは話は、合意は私は必ずできるものと思います。そうして返還が実現しましたあとは基地のあり方については本土並みになりますから、たとえば基地の縮小、整理あるいは統合その他については安保協議会が直接本土と同じような姿でこれを両国が協議をしていくということになるわけでございますから、返還後の日本としての好ましい姿、あるいはアメリカとして同意し得る限度において安保協議会において話を進めていけばよろしいのではないか、かように考えております。
  50. 林百郎

    ○林(百)委員 返還後も依然として西太平洋全域に対する補給基地というような性格を持った基地としてアメリカが使用していいというような場合に、これはどういうような処置をなさるつもりですか。
  51. 愛知揆一

    愛知国務大臣 このリーサー陸軍長官あるいはレアード長官が——リーサーのほうは返還がきまってからの証言であります。それからレアードのほうは返還話がきまる前の証言でございます。そういう点も詰めて分析していかなければなりませんけれども、要するに今後の沖繩における施設区域というものは日米安保条約の使命によってその性格、使命が限定されるわけでございますから、その範囲内において利用し得るものを返還後においては日本政府は提供するという形になります。そこでたとえばリーサーのアメリカ国会における証言、レアードのほうはこれはまあ返還前の問題ですから別といたしまして、これについてまだ日米間で意見の交換をしたことはございませんけれども、したがって的確なことをまだ申し上げる時期ではないと思いますけれども、たとえば補給の問題について管理機構というようなものでございますれば、むしろ補給のやり方などを合理的にあるいは縮小するという考え方基礎にあって、そうしていわゆるマネージメントを合理的にする、その指令というものをどこから発するのがいいかというようなことが中心になっているようですから、そういうことで考えられるならば考え得る問題ではないかと思います。というのは、そこに示されてある考え方でも、広範な機能、アジア全体に及ぶような物資の集積をするようにその地域を選ぶというような趣旨には私は読めないように思いますが、なおそれらの点については十分これからもアメリカ側の考え方も聞く必要がございます。また、日米安保条約の使命、性格から逸脱しているようなことが認められます場合、あるいはそれが予想されますような場合には、これを日本としては受け取れないことは、これは当然かと考えております。
  52. 林百郎

    ○林(百)委員 時間がありませんので、この問題はいずれまたあと機会に御質問したいと思いますが、本法案の三条に、「北方領土問題その他北方地域」とあるのですけれども、この「北方領土」——問題というのがありますけれども、「北方領土」と「北方地域」というのはどういう使い分けになるのですか。
  53. 山野幸吉

    ○山野政府委員 お答えいたします。  この「北方領土問題」と申しますのは、歯舞、色丹、国後、択捉の主として対外的な関係の問題として、領土問題としてここで「北方領土問題」といっておるわけでございます。「その他北方地域」、これはこの北方地域も歯舞、色丹、国後、択捉でございます。この「北方地域に関する諸問題」と申しますのは、この引き揚げ島民の援護でございますとかそういう内政的な諸問題をきしてかように使い分けておるわけでございます。
  54. 林百郎

    ○林(百)委員 昭和三十四年三月二十日の総理府設置法第三条第二号に規定する北方地域の範囲を定める政令というのがありまして、「北方地域は、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島及び内閣総理大臣が定めるその他の北方の地域」とあるのですけれども、この条文でいう「北方地域」というのはこれと同じ概念と見ていいのか。そうすると「内閣総理大臣が定めるその他の北方の地域」というのはどこをさすのか。
  55. 山野幸吉

    ○山野政府委員 当時いろいろ国際的な諸情勢等もありまして、そういう表現が使われたと思いますが、現在御指摘のように内閣総理大臣が定める地域として定めた個所はございません。それからまた、いまのところそういう地域を定めることも考えておりません。したがいましてその政令で定める地域はやはり歯舞、色丹、国後、択捉でございます。
  56. 林百郎

    ○林(百)委員 これは大臣、今後も内閣総理大臣が定めるその他の地域というのを政府は定める意向はないわけですか。歯舞、色丹、国後、択捉というように限界して解釈していいのですか。
  57. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは累次申し上げておりますように、北方領土の問題としては、返還問題といたしましては、国後、択捉に限定して考えております。
  58. 林百郎

    ○林(百)委員 それではこの一問で大臣は帰っていただいていいのですが、千島全体についてですけれども、この見解だけただしておきたいと思います。  御承知のとおり、カイロ宣言では「暴力及貧慾ニ依リ日本国が略取シタル他ノ一切ノ地域」と、こうあるわけですね。南千島については一八五五年の日魯通好条約それからさらに北千島については一八七五年の樺太、千島交換条約でお互いに条約によって交換した地域なんですね、南にしても北にしても。これをサンフランシスコ条約で放棄してしまう。これは、第二次世界大戦の連合国側の領土に対する基本的な考え方というのは領土不拡大の原則というのをうたっているわけですから、これはサンフランシスコ条約第二条(C)項のほうをむしろ廃棄すべきではなかろうかというように考えられる。そういう意見もあるわけですね。これについてはどういうようにお考えになるのですか。
  59. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは端的に申しますと、サンフランシスコ条約というものが日本に平和回復された基本の条約ですから、これを廃棄するというような考え方をもちろん政府は持っておりません。従来の条約宣言そしてこれに加うるにサンフランシスコ条約、このいずれから見ましても、国後、択捉については、いかなる議論をもってしても、これが固有の日本領土であるという主張を堅持し得る、こういう立場に立っているわけでございまして、いまサンフランシスコ条約そのものを廃棄するとか修正するとかということは、和府としては考えておりません。
  60. 林百郎

    ○林(百)委員 大臣への質問はこれでいいです。大臣はどうぞお帰り願ってけっこうです。  この際、私のほうの党は、これで審議から席をはずすことになりますので、一、二分でけっこうですから、この法案に対する党の態度だけ表明して、席をはずさせていただきたいと思います。  この法案に対して、共産党は、沖繩の施政権返還そのものも、また千島問題の解決も賛成なんです。これは日本国民として当然なことですから。  わが党は公正で合理的な基礎に基づいて沖繩、千島問題の真の解決、すなわち核も基地もなくした沖繩の無条件全面返還、それから日米安保条約サンフランシスコ条約の千島放棄条項の廃棄によって、やはり全千島の早期返還の実現のために努力すべきではなかろうか。これはカイロ宣言によっても、別に暴力によって奪取したところではなくて、条約によって交換して日本領土になったものですから、これはやはり千島の早期返還の実現のために努力すべきではないかというふうに、私のほうの党としては考えております。  私のほうの党が反対しているのは、沖繩の施政権返還が日米共同声明に基づいて、核隠し、核の基地を隠して、実際は核はそのまま継続することになります。あるいは有事のときに核の持ち込みがなされ、ここから自由に出撃ができる、そういう条件のもとで返還される、こういう日本の安全と極東の平和を脅かして、沖繩の県民をはじめ、日本国民の利益をそこなう方向で進められているという事実に対して、私たちのほうの党は反対しているのであって、沖繩問題の公正な解決、千島問題の公正な解決には、決してわが党は反対しているわけではありません。  こういう見地から沖繩、千島問題について「国の行政事務を総合的に行なう」という本法案には、そういう規定がございますけれども、そのための行政機関として沖繩・北方対策庁を設置することは、それ自体の必要性については——沖繩、千島問題の処理のために行政的な機関を設けること自体については、私たちはこれに反対するものではありませんけれども、この対策庁を通じて実行される政策自体が、私のほうの党としては賛成できない。日米共同声明に基づく沖繩政策、これを実行するという内容を持つものでありますので、この対策庁の設置自体には反対ではありませんが、対策庁が行なう政策自体に反対だという立場で、私のほうは、この法案については棄権の態度を表明いたしますので、これからはこの法案の審議に参加しなくなりますので、一応党の態度を表明して、席をはずさせていただきます。
  61. 池田清志

    池田委員長 本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  62. 池田清志

    池田委員長 これより討論に入ります。討論の申し出がありますので、順次これを許します。大村襄治君。
  63. 大村襄治

    ○大村委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました沖繩北方対策庁設置法案に対しまして、賛成の討論を行なおうとするものであります。  昨年十一月、ワシントンで行なわれた佐藤総理とニクソン大統領との会談の結果、全国民の悲願である沖繩の返還が、来たる一九七二年に実現することになったことを心から喜ぶものであります。  沖繩は、さきの大戦においては、本土防衛のとりでとなって全土を灰じに帰し、幾多のとうとい人命を失ったのみならず、戦後は引き続き米国の施政権下に置かれて、百万県民は言い知れぬ苦難を味わってまいったのであります。しかし、政治的な独立と自由へのあこがれは、民族の本能的欲求ともいうべく、県民は祖国復帰を叫び続けてまいったのでありますが、今日、ようやく沖繩の祖国復帰は現実のものとなろうとしているのであります。  しかしながら、本土と沖繩との間には、各般にわたる制度上の相違があり、また、経済的、社会的にも本土と比べ差異があるのでありまして、このような格差を解消して豊かな沖繩県を実現するため、復帰準備の諸施策を推進し、進んで、その経済及び社会の開発、発展をはかり、県民の期待にこたえることは、政府の当然の責務と考えるものであります。  一方、北方領土問題及び北方地域にかかる諸問題についても、以上述べましたような沖繩の問題の解決の進展を考えますと、戦後処理の最大最後の懸案として、政府はその解決に全力を尽くすべき段階に至ったと考えるものであります。  かかるとき、沖繩及び北方問題に関し、国の行政事務を総合的に推進するため、総理府の外局として、沖繩・北方対策庁を設置することは、まことに時期適切、妥当な措置として賛成の意を表します。  最後に、対策庁は、業務の遂行にあたって、沖繩百万の県民の意思を十分に反映させるよう強く要望して、私の討論を終わります。
  64. 池田清志

    池田委員長 美濃政市君。
  65. 美濃政市

    ○美濃委員 私は、日本社会党を代表して、沖繩の復帰並びに北方対策について、日本政府のとるべき措置を明確にし、条件を付して、沖繩北方対策庁設置法案に賛成をいたします。  二十五年の長きにわたって、沖繩県民は異民族の植民地支配のもとに置かれてきた結果、沖繩の経済、社会開発は大幅におくれています。低水準の県民所得を、少なくとも本土の所得に均衡することは、急を要する作業であり、日本政府の責任であります。この作業を進めるためには、多くの前提対策が必要であると考えます。  一例を申し上げますれば、二十五年前の条件で推移している農地制度、あるいは社会保障制度等強力な行財政の手段を必要とする案件は、山積していると思うのであります。北方対策についても、領土の返還対策はもちろん、安全操業並びに漁獲高の問題及び拿捕補償等、重要な外交手段と内政措置を必要とする諸問題が多いのであります。  このような現況のもとで、沖繩・北方対策庁が、単に関係行政機関の事務調整機構ということで、これら山積する難問題の処理を推進する能力に欠けてはならないと考えますので、沖繩県民、北方漁民等の意思を反映した企画を行ない、これを強力に推進する能力を要求いたします。  以上の経緯にかんがみ、三点の条件を付したいと思います。  第一の条件は、北方領土の対策のためには、いたずらに反ソ宣伝的な行為は問題解決の効果とはならないので、北方領土の正しい啓発を行なうことであります。  第二の条件は、沖繩県民の意思を復帰準備に反映させるため、県民代表を含めた開発審議会を設置することであります。  第三の条件は、復帰後沖繩の経済、社会開発をはかるために、対策庁は解消し、国務大臣を長とする開発庁を設置ざれたい。  以上で私の討論を終わります。
  66. 池田清志

    池田委員長 中川嘉美君。
  67. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 ただいま議題となりました沖繩北方対策庁設置法案につきまして、私は、公明党を代表して、賛成の意を表するものであります。  かねてより、琉球政府及び沖繩の各層より本土復帰に備え、沖繩の経済開発を強力に推進するため、総理府の外局として、沖繩開発庁を設置してもらいたいという強い要請が、本土政府並びに衆参両院にありましたことは、すでに御承知のとおりであります。  昨年十一月の佐藤・ニクソン共同声明によって、いよいよ一九七二年中に本土復帰が決定した今日、本法案の制定によって沖繩・北方対策庁が設置され、沖繩から本土に要望しているもろもろの施策が実行に移されることを現地では大いに期待しているところであります。  本法案により沖繩・北方対策庁の目的、任務、さらには権限、内部部局、沖繩事務局等々に関する内容や条文の解釈については、すでに委員会審査の過程において明らかとなっておりますので、私は、この際、新設される沖繩・北方対策庁に関連し、政府に対し若干の要望をいたしておきたいと思います。  その第一点は、沖繩・北方対策庁が、単に総理府の内部部局である特別地域連絡局から外局としての対策庁に昇格したことにとどまってはならないということであります。  申すまでもなく、沖繩問題は、現在のわが国にとって政治、経済、外交上の重要懸案であります。政府の説明によりますと、比較的組織も小規模で、予算も少なく、その上業務の内容は多様多岐にわたりますので、新任される庁長官にはいろいろと御苦心もあろうかと思いますが、戦後今日まで置かれました沖繩の苦難に思いをはせ、一段と奮発して業務に当たられんことを要望いたします。  第二点は、対策庁が沖繩施策を策定するに際しては、何よりも琉球政府及び県民各層の意見をよく聴取した上で、真に沖繩県民のためになる施策を樹立されることであります。本土政府沖繩県民の願望を無視して、かってに沖繩施策を決定するような態度は、厳に慎まなければならないと思います。平和条約締結の際は、占領下でもあったという事情もあって、沖繩県民の意思を尊重することもなく、平和条約第三条に同意せざるを得なかったのでありますが、今度復帰するに際しては、何よりも沖繩県民の意見及び文化、伝統等精神的財産が十分尊重、配慮されなければならないのは当然であります。この点、政府に対し、特に要望いたしておきたいと思います。  第三点は、現在沖繩には復帰不安があるのでありますが、それに追い打ちをかけるように、本土の各企業が新しい百万人の沖繩市場を目ざして、すでにしのぎを削るような進出競争が始まっているとのことであります。廃墟の中から立ち上がり、やっと自立できるようになったら、そこへ復帰によって優勢な本土企業がどっと押し寄せ、沖繩の経済に混乱を招来するようなことがあれば、これは沖繩人たちにとってとうてい納得できないことであり、本土に対する不信を深めることにもなるのであって、まことにまずいと思いますので、この方面の行政指導も怠りなく行なっていただきたいと思います。  最後に、北方問題であります。北方領土に対する外交交渉外務省の所管であり、これの実現にはなお多くの努力と長期の歳月を要するものと思われますが、当面の課題としては、むしろ漁業安全操業の問題や、抑留漁船員及び引き揚げ者に対する援護の問題であろうと思います。  領土問題としては、私たち沖繩と北方地域とを同列に扱うことに疑義を抱くものでありますが、安全操業と援護の問題は水産庁、厚生省等関係行政機関と密接な連絡をとり、沖繩問題と同様に万全を期していただきたいと思います。  以上、数点を政府に要望いたしまして、本法案に対する賛成討論を終わります。
  68. 池田清志

    池田委員長 小平忠君。
  69. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は、民社党を代表して、ただいま議題となりました沖繩北方対策庁設置法案に対しまして、賛成の討論を行なおうとするものであります。  御承知のとおり、沖繩県民は、太平洋戦争において、祖国防衛のとりでとなって、多大な犠牲を払ったのみならず、その後二十五年間にわたってアメリカの異民族支配のもとに放置され、日本国民として当然享受すべき日本国憲法の適用も受けず、軍事優先の政策のもとで、渡航の自由をはじめとする基本的人権の保障もなく、社会福祉、経済政策等、あらゆる面で差別を余儀なくされて今日に至ったのであります。  しかし、本土一億の国民沖繩百万の県民の祖国復帰の悲願は、民族運動としての高まりを見せ、その結果ようやくここに、一九七二年の沖繩返還は一応約束されるところとなりました。  かかる情勢の変化に対応して、沖繩の復帰に備え、基地依存経済からの脱却をはかり、平和経済開発を進め、沖繩県民の生活、文化の水準を向上させることは、政府国民の当然の責務であると考えるものであります。  政府は、今日ようやく沖繩復帰対策大綱を定め、同時に、沖繩・北方対策庁を設置しようとしているのでありますが、返還時及び返還後の沖繩のあるべき姿が明らかにされておらず、現地住民の不安に十分こたえているとは考えられないのであります。特に、返還後の沖繩復興計画がいまだ明らかにされていないことに、はなはだ不満を感ずるものであります。  しかしながら、沖繩の諸問題が複雑多岐にわたり、その解決に種々の困難性が考えられるとき、復帰準備の施策の推進をはかり、日本国民の責務としての平和で豊かな沖繩県づくりのための段階的措置として、この際沖繩・北方対策庁が設置されたものと考えるものであります。  今後各省庁の連絡調整をますます緊密にし、総合行政の実をあげ、また現地沖繩住民の意思を十分くみ取り、沖繩返還の準備が着々と推進されることを要望いたします。  一方、北方領土問題につきましても、平和外交の原則にのっとり、対ソ交渉を強力に推進し、その解決等について十分な措置がとられるよう要望いたしまして、私の賛成討論を終わります。
  70. 池田清志

    池田委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより沖繩北方対策庁設置法案を採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  71. 池田清志

    池田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  72. 池田清志

    池田委員長 ただいま議決せられました本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が、鯨岡兵輔君外三名から提出せられております。  この際、提出者の趣旨の説明を求めます。鯨岡兵輔君。
  73. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 ただいま議題となりました沖繩北方対策庁設置法案に対する附帯決議案について、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党の四派を代表して、その提案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     沖繩北方対策庁設置法案に対する附帯決議案   政府は、本法の施行に当つては、次の事項について配慮せられたい。  一、本法第四条第三号における沖繩の経済及び社会の開発、発展を図るための基本的な施策を策定するに当つては、沖繩代表を含む沖繩対策審議会等を設置し、沖繩住民の意向を反映させること。  一、沖繩が復帰した際、復帰後の沖繩の経済及び社会の開発を強力に推進するため適切な措置を講ずること。   右決議する。  ちょっと御説明申し上げますが、各界の長い間の努力によって、いよいよ沖繩は返還されることになりましたが、考えてみると、本土と沖繩との間には、経済、行財政をはじめ、各般に大きな相違があり、これからが非常に難事業でございます。沖繩においても本土に対して大きな期待がありますし、また不安もあります。かかるとき対策庁が設置され、諸施策が策定されようとしていますので、その施策の策定にあたっては、十分に沖繩住民の意思が、沖繩対策審議会などを設置するなどして、これが反映されなければなりません。  また沖繩復帰後におきましても、引き続いて豊かな沖繩県づくりのために、強力にして適切な措置がとられるべきであると考える次第でございます。  以上が提案の趣旨でございます。何とぞ委員各位の御賛成をお願いいたします。(拍手)
  74. 池田清志

    池田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  動議に対し、別に発言の申し出もありませんから、直ちに採決いたします。  鯨岡兵輔君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  75. 池田清志

    池田委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所信を求めます。総理府総務長官山中貞則君。
  76. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ただいま満場一致をもって可決されました附帯決議につきまして、第一点の審議会の設置等につきましては、委員会の質疑応答を通じまして、復帰までに設置する意思のないことを明らかにいたしておったところでございますけれども、「等」ということばもございまするし、またその御趣旨というものが十分私もわかっておりますので、その後段に書いてございまする「沖繩住民の意向を反映させること。」について、単に機構のみにとどまらず、全会一致の御趣旨を十分に体し、第二点の復帰した際の特別措置に関しましても、ともに決議の趣旨に沿うように努力をするつもりでございます。
  77. 池田清志

    池田委員長 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 池田清志

    池田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  79. 池田清志

    池田委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十一分散会