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1970-08-10 第63回国会 衆議院 運輸委員会海運に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年八月十日(月曜日)     午前十時三十九分開議  出席小委員    小委員長 加藤 六月君       砂田 重民君    斉藤 正男君       内藤 良平君    宮井 泰良君       和田 春生君  小委員外出席者         運輸政務次官  山村新治郎君         運輸大臣官房審         議官      見坊 力男君         運輸省船舶局長 田坂 鋭一君         気象庁長官   吉武 素二君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正巳君     ————————————— 本日の会議に付した案件  海運に関する件(大型専用船海難に関する問  題)      ————◇—————
  2. 加藤六月

    加藤委員長 これより運輸委員会海運に関する小委員会を開会いたします。  海運に関する件について調査を進めます。  大型専用船海難に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許します。宮井泰良君。
  3. 宮井泰良

    宮井委員 前回の小委員会におきましては、百万トンタンカーの諮問あるいは四十七万トンタンカー建造という、引き続いての大型船に対する安全性の強化ということをいろいろ審議、また要望いたしたわけでございますが、今回は、運輸省大型専用船海難特別調査委員会中間報告が出ましたので、これに基づきまして、私は若干の質疑を行ないたいと思います。  まず、大型専用船海難特別調査委員会の発足の名目といたしまして、海難審判庁とは別個に大型専用船の今後の海難防止のための総合的な調査を行なう。さらに「事故原因究明責任の追及に終ることのないよう」にということが付記されております。このことはよく承知できるわけでございますが、内容を私もずっと目を通させていただきまして見ますと、早急に着手すべき対策等は詳しく述べられておるわけでございますが、何か集まった資料を羅列したような感じでありまして、この中にも述べられておりますように、かりふおるにあ丸に限定して調査をやるという趣旨から見ますと、その事故原因というものに対しましてまだはっきりしておらない、こういうふうな感を深くするわけでございますが、この点を最初質問したいと思います。
  4. 見坊力男

    ○見坊説明員 この中間報告では、中間報告を全部御説明申し上げるとよろしいのでありますが、この個々原因そのものにつきましては、現在まで調査した調査結果を掲げました。しかし、この個々の点が海難という事象と科学的にどのように関連を持つのかという究明が今後の課題として残されておるわけでありますが、まだ委員会としては、それぞれのいろいろな事象がどのように結びついてどのように作用したかという科学的な究明は行なわれてない段階でありますので、中間報告ではそのように述べてあるわけであります。
  5. 宮井泰良

    宮井委員 この報告書の中でも、海難事故防止のため、船舶、その運航気象海象、すべての分野で関係者が謙虚に科学的に安全サイドへの努力を一段と強化することが望ましい、このように結論が結ばれておるわけでございますが、ただいまも少しお話がございましたが、非常に結論が抽象的でございまして、私たちもわかりにくいわけでございます。もちろん、これから再びあのような事故を起こしてはならない、これはすべての人の願いでありますが、しかし、原因を明らかにして、船体構造上に欠陥があったのか、あるいは気象関係か、あるいは運航上のミスであったのか、その点をあいまいにしないで、それをただしていくという方向に持っていくのが関係当局任務ではないか、私はこのように思うわけですが、重ねて局長見解をお伺いいたします。
  6. 田坂鋭一

    田坂説明員 ただいま先生からお話のありましたことは、ごもっともといいますか、私どもが常に考えるおるところでございまして、今後ともそういう方向によりまして検討を進めていきたい。私どもの担当いたします船体強度につきましてももちろんでございます。
  7. 宮井泰良

    宮井委員 さらに報告の別途資料によりますと、かりふおるにあ丸は、まず航行船舶航跡図で見ますと、他のほとんどの船が夏季帯域を通っておるのに、荒天冬季帯域をまっすぐこの船は突き進んでおる。また、それも偶然とはいえ、波浪図を見ますと、波の高いところばかり通っておるようになっておる。また三回も荒天に遭遇している。しかも自動操舵運航しておった。また法定喫水線を無視していたという資料が出ておるわけでございますが、この中間報告資料を見ておりますと、どう見ても私の個人的な見解としましては、運行上のミスではないかというふうにこの資料を見た限りでは思わざるを得ないわけでございます。それでいて、関係者の方々は運航者ばかり責めているのではない、そのように述べられておることを伺っておりますが、この点矛盾するのではないか、このように思うのですが、明快にお答え願いたいと思います。
  8. 見坊力男

    ○見坊説明員 ただいまのお話でございますが、いまおあげになりましたような事柄があったということはこの委員会中間報告でも指摘いたしておりますが、しかしながら、何で冬季帯域のほうに入ったかという、その判断そのものをこの委員会究明するのは任務ではないのではないか。この委員会としては遭難原因を科学的に調査しようということでありまして、その事実は事実としてあげながらも、それと海難原因との科学的な関係を求めていこうというのが第一のこの委員会の使命でもございます。  それから、結果的には波の高いところばかりを通ったという、非常に不幸な結果に相なっておりますが、その三回の荒天にあい、オートパイロットを使っていた。そのオートパイロットというものを使っていたのがいいか悪いかという問題ではなくて、オートパイロットというものが波の力との関係でどのように作用したかというようなことを委員会としては考えるべきではないかという意見もございました。運航上のミスではないかといういまも先生お話でございますが、この委員会としては、だれがその責任を負うのかということではなくて、この中間報告にも書いてございますが、海難というのはいろいろな原因がからみ合って発生するものであるということをいっておりますが、当委員会報告としましては、それぞれがどのようにからみ合ったか、そういうことを科学的に調査していこうということでございまして、まだ最終的な結論を得るに至っていない段階でございます。
  9. 宮井泰良

    宮井委員 ひとつお断わりしておきますが、運航上のミスじゃないかと私が言いましたのは、その資料を見ている限りにおいてはそのようにとれる、このように言いましたので、誤解のないようにしていただきたいと思います。  そこで、「船体状況」の中で、主要構造部材寸法構造基準に適合していた、またバラストタンク内の鋼材は取りかえ基準以下であった、すべて基準にかなっておるわけですね。その中で、船首左舷の第一バラストタンクに生じた大きな破口から浸水し、さらにバラストタンクから小さな破口を通じて船首倉鉱石倉浸水するという経過をたどった可能性が大きい、このように報告の中には出ておりますが、それが海難原因とどのような関連を持つかという点については不明であるということ、その点が私も納得がいかないわけですが、この点についてはいかがでしょうか。
  10. 見坊力男

    ○見坊説明員 浸水過程を述べておりますのは、当委員会としまして、生存者話等から、当時の海難状況が、たとえば、最初がしん、どしんという音がして、それからしゅうという音がした。左舷に傾いて後、バラストタンクに水を入れて直したが、また沈んでいったということが、時間の経過を追ってほぼ明らかになっています。そこで、その状態に最も近い浸水過程を計算すればこういうことではないであろうかということで、お配りしてあります中間報告の別添資料の中にそのことが書いてございますが、これは推定でございます。それで、破口の原因そのもの、何で破口ができたかということの究明は今後に残されておるわけでございます。
  11. 宮井泰良

    宮井委員 そこで、先ほども少し述べましたが、この委員会というのは、気象海象運航船体の三部会を設けて実質的な調査の段取りを進めることにした、このようにありますが、中間報告を見ますと、何か三部会から出た事項をそのまま発表しているような感じがするわけです。もちろん今後の対策というような点は非常に検討されているように感じますが、その三部会から出たものをよりよく検討して結論を下していくという点はどのようにされておるか、その点が薄いのじゃないか、このように思いますが、その点をお伺いいたします。
  12. 見坊力男

    ○見坊説明員 この委員会は今後も調査を続けるわけでございます。その中間報告では、現在までの調査結果、判明したところをもとにしまして中間報告としてまとめたわけでございます。今後、委員会並びに各部会は引き続き調査審議を継続していく予定でございます。
  13. 宮井泰良

    宮井委員 それでは、その点におきまして、来年の四月をめどに最終的にその判断を下す、何らかの委員会結論がここで出るかどうか、はっきりお答えをいただきたいと思います。
  14. 見坊力男

    ○見坊説明員 最終報告がいつになるかは、ここで明確にお約束を申し上げることは非常にむずかしいわけでありますが、と申しますのは、これからの予定といたしまして、実船計測等も行なうというスケジュールもございます。その場合には、ことしの末からの冬の荒天状況の中で実船計測を行なうということになりますが、その結果の取りまとめにやはり時間を要するのではないかと思いますが、われわれといたしましては、委員会のほうにもお願いいたしまして、できるだけ早く最終的な結論をおまとめいただくというふうにお願いをしたいと思っております。
  15. 宮井泰良

    宮井委員 次に、新聞などによりますと、船体部会と本委員筋においては非常に見解の相違があった、そのために結論が一カ月以上もかかって意見の調整にたいへん難航した、このように出ておりますが、その点どのように相違しておったのか、この点をお伺いします。
  16. 見坊力男

    ○見坊説明員 意見の対立で延びたということではございませんで、もちろん各委員さんの御意見は活発にいろいろございました。前回委員会で、私が、大体七月末までに中間報告を取りまとめてもらうように委員会お願いをしておるということをお話し申し上げました。大体予定どおり七月の三十一日に委員会を開催いたしました。そのときも、六月二十二日の第四回委員会以後、各部会でその後作業いたしましたその結果につきまして、それぞれ報告がありました後、中間報告のまとめ方について討議が行なわれたわけでありますが、時間があまりございませんでしたので、ちょっと時間切れというような感じで、八月七日に継続してやろうということで、八月七日の日にまとまったわけでございまして、委員会において意見が対立したためにこれがまとまらなかったということではございません。
  17. 宮井泰良

    宮井委員 そこで、船体部会では、船体構造上に問題がない、こういう意見が出ていると聞いておるわけですが、海難事故というものは、実際に波と船体との関係で船が沈没しておる。これはもう何回も言われておることで、当然のことであると思うのですが、どのような裏づけで船体構造上に問題がないという意見が出るのか。大型船の沈没という事故が二度と起こらないように、その原因を追及するために設置されましたこの特別委員会意味がなくなってしまうんじゃないか、このように思いますが、その点はいかがでしょう。
  18. 田坂鋭一

    田坂説明員 問題がないということではございませんで、ただいままでのところ、問題点として特別大きく取り上げられるものが見つかっておらないということでございます。  さらに詳しく申し上げますと、本船は世界的な権威を有します海事協会規則に全く合致いたしておりますし、それから問題になりました船体衰耗も、半年前に定期検査をいたしまして十分な検査を終了いたしておりますが、そのときに見つけられた衰耗損傷等は、総点検等に比べまして非常に少ないものであり、その少ない損傷につきましては十分な対処をなしております。そういう見地から、現在のところ、本船のかかる大事故につながる大きな問題を摘出し得ておらないということでございます。
  19. 宮井泰良

    宮井委員 いま申し上げましたこととは逆に、今度はさきの六月二十二日の中間報告の発表のあった際に、ある船体部門専門委員の方は、大型船横方向強度に問題があり、三角波などの異常衝撃に弱いのではないか、こういう推論をしておると伺っておるわけであります。しかし、今回の報告では、船体構造による原因については、いま局長もおっしゃいましたように、大きな原因になるものはない、何ら触れられておらないということで、これは一部委員船体構造説があえて弱められているんじゃないかと思われてしかたがない、このように私は感じておるわけですが、この点について重ねてお伺いいたします。
  20. 田坂鋭一

    田坂説明員 ただいま先生の御質問横強度につきましては、現在までのところ問題点がありというふうなことを聞いておりませんが、三角波等の突発的な大きな波、そういうものの可能性につきましては、いろいろ今後検討すべき点があろうというような委員会でのお話はございました。
  21. 宮井泰良

    宮井委員 それでは次に、この大型専用船調査の範囲につきましては、かりふおるにあ丸にまず限定して、必要な限りにおいて他の調査も行なう、このようなことが確認されておるわけですが、先に沈没いたしましたぼりばあ丸につきましては調査対象に出ておるか、他の調査とはどういうものが考えられるか、この点をお伺いします。
  22. 見坊力男

    ○見坊説明員 この委員会ではぼりばあ丸は入ってございません。他の調査といいますのは、類似船調査をさしておるわけであります。
  23. 宮井泰良

    宮井委員 それでは次に、少し技術的なことになりますが、このかりふおるにあ丸の遭難前に発見された損傷は、本社あての打電によりまして、船首楼付近損傷があった、このように確認されておりますが、船首楼損傷があった場合において、他に損傷があったと見るのが妥当かどうか、この点をお伺いします。
  24. 田坂鋭一

    田坂説明員 その点につきましては、全く現在のところわかりませんのですが、わからない現状になってしまいましたけれども、あったかもしれない、なかったかもしれないということで、想定の段階以上のことかと存じます。
  25. 宮井泰良

    宮井委員 その点は今後の調査委員会におきましては——数々の不明の点がたくさんございます。もちろんこれは調査した結果によって出てきたことでありまして、中間報告ですから、最終結論ではないためにいたしかたないと思いますが、その点をひとつ真剣に取り組んでいただいて、その一つ一つの問題に対して一日も早く解明をしていただきたい、これを要望いたしておきます。  そして、先ほども少し話がありましたが、報告の中に、「早急に着手すべき対策」としまして、「波浪に対する船体強度基準の一層の精密化を図るため、実船による計測模型船による試験」等をやることがしるされておりますが、具体的にはどこの船を使い、あるいは模型船等によりましてはどういう施設を使ってこれをやっていくか、この点をお伺いします。
  26. 田坂鋭一

    田坂説明員 今年度、今後行ないます実検船によります実験につきましては、船主協会お願いして船の選定を進めていただいておりますが、まだ最終的にきまったという段階には至っておりません。一方、模型船によって来年度に行ないます実験につきましては、運輸省船舶研究所によって主として行なうように、ただいま予算要求事務手続を進めておるところでございます。
  27. 宮井泰良

    宮井委員 それでは最後に、調査特別委員会におきましては、三部門の出てきましたいろいろの調査結果というものを列挙するのではなくして、最初にも申し上げましたが、総合的な委員会を何回も繰り返して、かりふおるにあ丸についての結論を一日も早く出してもらいたいということを要望いたします。また次回の委員会におきましては、ほりばあ丸等におきましてもいろいろと問題点があるようでございます。あるいはまた海難審判庁からも、今月末ですか、いろいろそういう結論といいますか、結果が出るようになっておりまして、今後そういった点につきましても深く審議をしてまいりたい。前回も申し上げましたとおり、だんだん大型化しております船舶におきまして、あくまでも経済性が重視されまして、安全性というものが軽視されてきておる。造船におきましては経験工学ということで、すべて経験によらないとできないというところから、そういう観点からしましても、安全性という面をひとつ船舶局長はますます重視してその点に取り組んでもらいたい。このことを要望し、また局長からそれだけの決意を聞かしていただきまして、私の質問を終わります。
  28. 田坂鋭一

    田坂説明員 船舶のように非常に大自然の強い力を受けますものにおきましては、船の安全ということが第一に考えられるべきものと私ども考えております。このことにつきましては、今後とも最大の努力をいたしたいと存じます。
  29. 加藤六月

  30. 和田春生

    和田(春)小委員 大型専用船海難特別調査委員会中間報告が出京して、いま同僚委員である宮井さんからも質問がございました。私が最初に申し上げたいと思っておったことは、宮井さんの質問の中にいみじくもあらわれておったと思うのです。それはどういうことかというと、この報告の限りにおいてこれを読むと、運航上のミスではないか、こういう印象を受けるという意味の発言がございました。まさにそうだと思うのです。その点で私から忌憚なく言わせると、これは一般の人にそういうふうに思わせるように仕組まれた巧妙な作為ある文書である、こういう非常に強い疑いを持ちますし、また中に書かれていることにつきましても、私どもある程度専門的な立場から見て、全く納得できないような事柄があるわけです。  実はきょう運輸大臣が御出席になれば、予算委員会における私の質問に対しての大臣答弁との関連において、運輸大臣にいろいろだだしたいと考えておりました。大臣も次官もそれぞれ御都合が悪くて、また大臣は健康上もすぐれないというようなお話がございまして、やむを得ませんので、事務当局政府委員にお伺いをしたいのです。いま申し上げたような前提でお伺いをいたしますから、いいかげんな言いのがれではなしに、的確に答えていただきたいと思うのです。私も、この問題については、海難によって船員が命を失っているわけですから、そうういう点で、いいかげんに済ますわけにはいかないと考えております。  そこで、まず最初にお伺いをいたしたいと思うのですけれども、この報告書ガリ版刷りの二一ページ、つまり、いままでの調査結果に対する考察の中で、特に非常に大きな字で書いてある。こういう文句があります。「一般的に船体が大きければ丈夫であるという感覚的なとらえ方がなされていないであろうか。」と書いてあるわけです。このことばを日本語のとおりに裏返すと、船体が大きければじょうぶではないという事実があるということになるのですけれども調査委員会はそういう感覚調査を進めたのかどうか、船舶局長にお聞きしたいと思います。
  31. 田坂鋭一

    田坂説明員 船体が大きければそれなりの船体強度はやはり持つべきかと存じますが、この文書におきましては、大きくなりました度合い以上に、強度に対しまして、船体運動等からあわせまして、感覚的な面でその強度以上のことをとらえられたのではなかろうかという疑問がございますということでございます。
  32. 和田春生

    和田(春)小委員 この文書は、いまの船舶局長の御答弁のようには読めませんね。一般的に船体が大きければじょうぶであるけれども、そのじょうぶの限界以上の状況があったかもわからぬというのなら別ですけれども、ここは、「一般的に船体が大きければ丈夫であるという感覚的なとらえ方がなされていないであろうか。」そして「船舶がいかなる条件にもたえるものであることを何人も希望するところであるが、これは実際上困難であろう。」こういうふうに続いているわけです。しかもこのことに関連いたしまして、前回の小委員会で私が質問いたしました。その質問に対する答弁もあったわけでございますけれども運輸省検査官業界紙に発表したことばを私は引用したわけです。それは検査基準とかそういうルールというものは、一口でいうと別に安全を担保したものではない、保険屋のためにあると考えたほうがいい、そのとおりつくったからといって安全だということにはならぬ、簡単にいうと、そういうことを検査行政責任を持っている検査官業界紙に発表している。運輸省はそれをその後も取り消していない。そういう考え方を追及したわけですが、それとこれと結びつくと、いまの船舶安全法に基づく造船に対する政府行政指導なり行政的なとらえ方、あるいはNK中心として行なわれている検査というものは、船舶の安全を担保できないのである、一応の目安としてやっているだけであるから、あとは乗っておる船員が自分で適当にやれ、あぶなかったら逃げてこい、そういう感覚ですか。
  33. 田坂鋭一

    田坂説明員 先生のただいま申されました新聞記事につきましては、後刻御説明いたすことにいたしまして、船舶の安全につきまして包括的にその責任を持っているのは安全法であると考えております。  それから船舶の、安全の実行面におきましては、船体の優良な建造、優良な保守点検、優良な運航、これが相まちまして船舶の安全が確保される、そういうふうに私ども考えております。
  34. 和田春生

    和田(春)小委員 典型的な官僚答弁で、私の伺っていることに的確に答えていないわけです。初めに断わったように、はっきり答弁してもらいたい。だんだん質問はシビアになってきますから、刺し違えるつもりでひとつ答弁してくださいよ。そういう抽象論を長くやっておっても時間がありませんので、今度はこの報告の中の具体的たことについて、一つ一つ伺いをしていきたい、こういうふうに考えるわけです。  まず、この報告書の一四ページ、「船体状況」の「船体強度」、こういうところに、「かりふおるにあ丸は、その主要構造部材寸法が、日本海事協会構造基準に適合して、建造されたものである。」それから、その次に「衰耗」として、「昭和四十四年七月の定期検査において、計測したバラストタンク内上部構造平均衰耗量は一・一ミリで、日本海事協会の取替基準以下であった。」こういうふうに書いてあるわけです。これに対する付属資料も私はつぶさに検討いたしました。  ところで、この船は、ルールに従って製造のときにも検査を受けて、そしてつくられた船なんです。NK規則に従い、NK検査を受け、また船舶安全法の必要な条件を満たしている。そういうふうな条件のもとにつくられた船は、構造基準に適合しているのがあたりまえの話で、いまさら調査の結果適合しているなどということをなぜここで言わなければいけないのでしょうか。こういうことを言うのは、政府安全行政責任を持ち、NK検査をしているけれどもルールに従っておるとは言っておるが、実はルールに従っていない船もたくさんあるかもわからない、そういう前提でこういうことを調べたのですか。その点をお伺いしたいと思います。
  35. 田坂鋭一

    田坂説明員 海事協会検査を受けました船が、検査の不合格のもので検査を通るとは毛頭考えておりません。この場合は個々海事協会検査によってできました船でございます。しかもこの検査は、考えておりませんけれども、完全に検査に適合したものであったということをあとからも再確認いたしましたということを申し上げておるのでございます。
  36. 和田春生

    和田(春)小委員 海難審判庁があるにもかかわらず、せっかく大きな委員会をつくって、長い時間をかけて調査をしたわけです。一番重要と考えられる船体問題ですね、これは、この特別委員会報告の四ページにも書いてあるように、あなた方の関係している委員会船体部会中心として調査を進めるということをきめたとはっきり書いてあるわけです。その中心になる船体部会において、船体強度に対する調査結論が、日本海事協会構造基準に適合して建造されたというようなことを麗々しく書くというのは、ぼくらから見るとナンセンスなのであって、あたりまえの話なんです。検査を受けてパスしている船が基準に適合していなかったなんていったら、そんなでたらめなものならば、NKなんか全部解散したらいい。船舶局なんか全部首にしてしまったらいい。そうじゃないのですね。ではなぜこういうことを害いているのか。実はあの事故が起こったときに取り上げられたのは、四十年代を境にして急速に大型船舶化が進んでいった。造船工学は経験工学だといわれている。これはあなた方も何度も言っているわけです。そこで、長い伝統のある海運界の経験の中で積み重ねられたものではなくて、急激にどんどん船が大きくなった。一応のデータをそろえて計算をしているかもわからないけれども、実際に運航するときにはアンノーンファクターがいろいろある。そこで、はたして鋼船規則ルール検査基準そのものが適当であったのかどうか、その根本が問われておったのではないですか。その点に対する認識をお伺いしたいと思います。
  37. 田坂鋭一

    田坂説明員 現在できておりますルールにつきましては、いままでの長い船体強度に関します歴史を踏まえてできておりまして、この歴史、これらが経験工学的あるいは科学的に検討を加えられて今日のルールができておりますので、この海難を起こしました現在の段階では、これ以上のものはあり得なかったと私は考えております。
  38. 和田春生

    和田(春)小委員 そういう感覚調査しているから、こういうくだらぬ結論が出るのですよ。あれ以上のものはあり得ないというなら、海難が起こるのはふしぎじゃないですか。何度も言うように、岩にぶつかったのでもない、エンジンが爆発したのでもない、波にぶつかって船に穴があいて沈んでしまったのだ。どういう理由で穴があいたかわからぬが、これは歴然たる事実じゃないですか。それが問題になっている。だから、せっかく運輸省海難審判庁とは別に調査委員会をつくるというなら、そういうルールやいまの設計の基準になっていること自体について疑問を向けて、それを徹底的に洗って、それでほんとうにいいのかどうかということを調べて結論を出すのが当然じゃないですか。いまの規則に合っているから問題はないというなら、何のためにあんな調査委員会をつくったのですか。もう一ぺんその点をはっきり答えてもらいたい。
  39. 田坂鋭一

    田坂説明員 ただいまの御質問の点でございますが、問題がなかったとは完全に申し上げておるわけではございません。この報告書の中にも、気象船体強度運航、この相関関係におきまして今後検討すべきことは検討いたしまして、その詳細を科学的に詰めていきたいということを申しております。
  40. 和田春生

    和田(春)小委員 それでは、たとえば先ほど二番目に私が読み上げた衰耗のことについて、海事協会の取りかえ基準以下であった、こういうふうに断定しているわけです。それならば、四十四年七月の定期換査はどういう方法で検査をされたのか、的確に説明をしてもらいたいと思う。端的に言えば、あの事故が起きた後、総点検をやった。その総点検と同じ体制で四十四年七月の定期検査で鋼板の衰耗度についての点検が行なわれたのかどうか、うそを言わずにはっきり答えてください。
  41. 田坂鋭一

    田坂説明員 ちょうど、この四十四年七月の定期検査につきましては、ぼりばあ丸の事故以後でございましたので、相当慎重に定期検査が行なわれた、いままで以上の慎重さをもって調査が行なわれた、こういうふうに報告を受けております。
  42. 和田春生

    和田(春)小委員 それは前よりも慎重にやったかもわかりませんけれども、かりふおるにあ丸の事件が起きた後の総点検に比べたら、はるかに検査が軽度に行なわれておるのは事実ですよ。調べてごらんなさい。結局、それは従来の大体習慣的に行なわれてきた方法で、見える範囲でピックアップをして厚さをはかった。そのいわゆる平均損耗量が一・一ミリであった。これは平均値ですから、はるかに多いところもあった。ですから、さび打ちをやり、足場を組み、バルクヘッドから全部調べたら、もっとはなはだしい損耗が起きているかもわからぬ。現にあの事故後の総点検やタンカーの点検の中で、バルクヘッドに非常に応力腐食が出ておって、バックリングができておる。板も相当薄くなっておる。そういう事実が発見されているのです。そういう点について、海事協会の検定取りかえ基準以下であったということで一体済ませていいものだろうかどうか。しかもその前提になる設計基準において、鋼板の厚さがかりに十三ミリでいいというふうに一応いままではなっておった。ところが、こういう大型船は非常に大きいわけですから、いろいろな条件に合うという形になると、それは必要なマージンを見込んでおったつもりが、実はマージンがあまりなかったのだ。そこで、常識的にコロージョンマージン二・五ミリ見ておっても、十三ミリのもとの板がすでにマージンがないぎりぎりだったら、たとえ一ミリか一・五ミリでも、それはマージンを食ってしまって、限度以下の弱さになっているということだってあり得るわけなんです。なぜそこまでメスを入れて突っ込もうとしないのですか。船舶局にも権威者がおるし、りっぱな、日本でも造船学の権威といわれている人が入っておるのじゃないですか。私は造船学の権威でも何でもない、ただ船の経験者です。しかし、私たちであっても、それくらいのことは考えるのです。なぜそこのところを調査しなかったのですか。
  43. 田坂鋭一

    田坂説明員 海事協会におきましては、個々損傷等を勘案しながら、ルールの適合性につきましては、常時検討を続けられておるものでございます。今回のことにつきましては、まだそこのところまでいっておらないということでございます。
  44. 和田春生

    和田(春)小委員 先ほど船舶局長は私の質問に対しまして、私は——あなたが私はと言われたのですね。私は現在のルールなり何なりというものは、現状において考えられる最上のものである、こういうふうに言われたわけです。     〔小委員長退席、内藤小委員長代理着席〕 そういたしますと、いま私が質問したことに対していろいろお答えになったわけですけれども、まだ検討していないことがたくさんあるんじゃないですか。最上であるということを断定的に言うのはおかしいと思う。特にこの前のかりふおるにあ丸の事件のあとに総点検が行なわれている。その総点検の結果に基づいて、同じ運輸省が、あなたの前任者のときですけれども、補強を命じているじゃないですか。そのためにずいぶん日数を食って補強をしているわけです。それは船主も負担をしているわけです。運航スケジュールがある程度狂うとか、あるいは補強のために費用が要るとか、経済的に見れば犠性を払っているわけです。それは任意にやったのではなくて、実態は運輸省の国家権力が介入して強制的にやらせたのです。そうして、そういう補強を運輸省の指導のもとにやらせた船というのは、全部ルールに従ってつくられたわけなのです。ルールに従って検査を受けた船なのです。それをあなた方がやっておるということは、問題ありと認めたわけじゃないですか。そういうことをやっておいて、いまのルールは最上のものなのだ——そのルールに従ってつくられた船で検査をされているのだ。そして、たとえば平均衰耗についても取りかえ基準以下であったと、いかにもそこには何にも問題がないような書き方をしている。そうではなくて、ルールや、そういう取りかえ基準であるとか、あるいは設計の根本について、間違いがあったのかなかったのかということをもっと良心的に検討すべきじゃないですか。その上でだいじょうぶであるというなら、私は専門家のそういう意見を尊重いたしましょう。しかし、それをやらずに、いかにもだいじょうぶであって、あとから質問しますけれども気象運航の問題で、普通の人が読んだら責任転嫁をするというような、そんなでたらめな報告があっていいのですか。はっきり答えてください。
  45. 田坂鋭一

    田坂説明員 補強の件につきましては、念には念を入れるということを第一義に考えてやられたものと聞いております。私もそういうふうに存じます。  次に、ルール及び船体強度に関します私どもの考え方につきましては、今後も、先ほど申し上げましたが、この報告書に出ておりますように、気象運航船体強度、この三つの相関関係につきまして、相関関係をあわせ考えながら、なお船体強度につきましても十分な配慮をしていくというつもりでおります。
  46. 和田春生

    和田(春)小委員 あなたの言っていることは矛盾しているのですよ。いまのルールが最上のものなんだ、それで、その点についてはあまり問題がない。それなら、なぜ運輸省の指導で補強をやらしたか。念には念を入れたと言った。ではなぜ調査段階で、ルールそのものについて念には念を入れて検討しようとしないのですか。それが科学的な態度だと思うのですよ。盛んに科学的、科学的ということばが出てきているけれども、一つも科学的じゃないじゃないですか。船は海の上を走っているわけですから、海象気象等の問題を考えるにしても、運航を考えるにしても、運航のマニュアルをつくるにしても、その船体はどの程度のしけにどういう状況において耐えるものであるのか、どこまでいけば限界になるのかということがつかめなかったら、どうにもならぬじゃないですか。気象庁が資料を調べてどんどん流してくれても、自分がいまあおうとしているしけの状況が、自分の乗っている船にとって限度を越えるものなのか、越えないものなのか、それは波や風の問題じゃないのですよ。船の強度の問題との関連で、運航性能との関連で出てくる問題なのです。それがわからなければどうしようもないじゃないですか。あるいは運航マニュアルをつくるといっても、どの程度の波になったら逃げてこい、避けて通れ、減速しろとか、どの程度の波浪に対してどういう操縦をしろ、この程度以上になったらこの船はもたないとか、その限界がわからなければできないじゃないですか。従来の船乗りは——私も商船学校で教育を受けて、約十年海上生活をやっております。ここに報告されておるくらいのしけに何度もあっております。しかし、これは従来の伝統的な経験で、この程度のしけに対してはだいじょうぶなんだ、それが一つの自信になっておって、運航ないしは操船の基礎になっておったから、伝統的に申し継がれ、教育されたことで間に合ってきた。しかし、いままでこういう大きな船はなかったでしょう。何十年の経験を持っていない。僅々この数年じゃないですか。そうとすれば、科学的という以上は、一体どういう海象気象のもとにおいて限界以上になるのか、あるいはどういうことを前提にしてつくられているのか、そういう点をはっきり追及するということが、遭難原因究明し、死んだ船員に対しても責任を明らかにするゆえんではないのですか。これは何も行政的責任をとれと言っているのじゃない。そういう感じがあって初めて事故原因究明ができるのですよ。なぜそこを逃げるのですか。
  47. 田坂鋭一

    田坂説明員 先生のただいまのお話につきましては、基本的に全く異議を持つものではありません。そういう考えで今後もやりたいと存じますが、一、二御説明申し上げたいと存じます。  海事協会ルールが最高のものであるということを申しましたが、その時点、その時点で最高のものでございまして、これにフィックスして、これ以上、この規則あるいはこの中に盛られている技術の度合いでとどまろうというものではございません。今後もさらに優秀なものにだんだんしていかなければならないと考えておるものでございます。  さらに波浪に対応します船体強度、これにつきましても、その精度あるいは受けます応力の数値をより以上にさらに的確に把握していきたい、これが実船実験あるいは来年度の模型実験等でございまして、今後とも、経験工学的にあるいは経験的にやられておるものにつきまして、少しでも多くの数字をつけていきたい、そういうふうに考えております。
  48. 和田春生

    和田(春)小委員 もしいまの船舶局長の御答弁のとおりであるとするなら、もちろんこの委員会船舶局長が一人でやっておられるわけではないわけで、いろいろな人が集まっておるのですけれども、私たちの聞くところによると、船体部会の事務局は運輸省船舶局が担当しておったというふうに聞いているわけです。そうであるとするなら、もっとそういう点を、政府責任において設けた委員会ですから、あなた方からサゼストをして、突っ込んで、せっかくの機会だから、これを生かして検討するという態度があってしかるべきだと思うのです。ところが、委員会の開催回数を見てみましても、この報告を見ても、肝心かなめの船体のところが一番お粗末ですよ、はっきり言って。それは結局、問題のポイントを取り違えて調査をし、委員会結論を出したというふうにしか私たちには考えられないわけです。そこで、その船体関係の問題について、ルールはそのつどつど最上のものであり、また船体部会では、特にいままでのところでは問題を発見をしていない、今後の検討にまたなくてはならぬ、こういっておりながら、われわれが理解に苦しむような重要な問題が一つ指摘されているわけです。  そこで、その点を具体的にお伺いしたいと思いますが、先ほど船舶局長オートパイロットのことを申されました。そしてこの中にも、こういう荒天時において自動操舵でやるということがどういう関係があるか、慎重に検討しなければならぬということをいっておるのですが、かりふおるにあ丸のみならず、最近の大型船は、荒天のときには手動操舵でやるということを前提にして設計をされておって、オートパイロットで操縦をするということは頭の中になかったんですかどうですか、それを聞きたいのです。
  49. 田坂鋭一

    田坂説明員 船は大自然の強大な力を受けますので、できるだけその力を弱める形において運航していただきたいということは、私ども製造の分野のほうに携わる者の基本的な考えでございますが、その程度につきましては、まだ明らかに現在私は知っておりません。
  50. 和田春生

    和田(春)小委員 はっきり答えてください。これは大事なことですよ。冬季の北太平洋はしけるということは船乗りの常識なんです。気象関係のことはまたあと気象庁長官にお伺いしたいと思いますけれども、一九六九年のアメリカのパイロットチャートによりましても、三十五度周辺において相当波が高い。日本の資料においてもそういうことははっきりしているわけです。それから冬季満載喫水線と夏季満載喫水線の境である三十五度ラインというものがありますけれども、これはこの前も言ったように、海の上に仕切りがあって、北の方は荒れておって、南のほうはべったりではない。大体において船員の常識からいけば、北のほうは風が強い。南の側は風が弱い。しかし、波のほうは、どちらかといえば三十五度の北よりも南のほうに——百八十度の子午線から西の海域で、東経百四十度あるいは百四十五度付近までの間においては、南のほうが波の高い場合が多いというようなことも、これは一応わかっていることなんです。これはいろいろな資料においてもそういう面は出ております。それは常にそうだというのではないですよ。一般的にそういうことがあり得るのだ、そういうことに心して運航しろということになっているわけです。そうしてしけが続くということは、私たちも経験がありますけれども、だれしも経験していることなんです。その中で、もし船舶局長が言うように、しけのときには減速をする、オートパイロットではなくて手動操舵でやれという形になりますと、それに必要な乗り組み員が乗っていなくてはいけない。いまの船舶の乗り組み員は大洋航海中は自動操舵をするということが当然の常識になってつくられているわけですが、かりにこういうふうにしけてくると、連続しけてくるわけですから、かじとり、いわゆるクオーターマスターですね、操舵手は少なくとも現在の定員の倍乗せなくちゃいけない。かりふおるにあ丸にはその船室の用意があったのですか、なかったのですか。
  51. 田坂鋭一

    田坂説明員 その点につきまして、私、資料の持ち合わせございませんので、知識が十分ございませんが、ただいま聞きますところによりますと、クオーターマスターはそれに対応するだけ乗っておらなかったように聞いております。
  52. 和田春生

    和田(春)小委員 そのとおりですよ。そういうふうに、荒天になり高い波浪の中で航行することが常態であるのに、乗り組み員の数においても、乗り組み員を収容する船室においても、そういう大洋航海中に手で手動操舵をする、そういうことを当然の前提にしてつくられていない。そのことは、普通われわれが考え得るといいますか、あるいはときたまであろうともあうことのあるしけ——これは何百年に一ぺんというような想像を絶するものなら別ですよ。そういう中では、オートパイロットで航海をするということを前提にして船がつくられていなくちゃならぬじゃないですか。もし、そういうときに相当減速をしなければならぬ、あるいは手動操舵に切りかえて運航しなくちゃならぬということをあなた方が言うならば、なぜ初めから、この船は、しけてきたらオートパイロットで通常速度で突っ走ったらあぶない船だから、それはやめてくれ、船室もたっぷりつくってあるから、船員も十分乗せてやれということを設計した者が言わないのですか。その点はっきり答えてください。
  53. 田坂鋭一

    田坂説明員 非常に大きなしけかどうかにつきましては、気象庁のほうの問題かと存じますが、船首に損傷を受けましたあとのそういう非常事態におきましては、十分な対処があっていただきたかった、そういうふうな感じはいたします。
  54. 和田春生

    和田(春)小委員 そうすると、船体部会における検討の結果、このかりふおるにあ丸が航海しておった当時の北太平洋の状況に対して、この船は、普通の船員が常識的に考えている運航方法、船の持っている操舵、走行の性能、乗り組み定員から見ると、適さなかった船である、そういう考え方があったから、二一ページにあるように、「船体が大きければ丈夫であるという感覚的なとらえ方がなされていないであろうか。」と、こういうことばが出てきたわけですか。
  55. 田坂鋭一

    田坂説明員 ただいまの御質問に的確な考え方がいまわかないのでございますが、この船が、この大きさ、この波浪耐応性、そういうものに関連いたしまして、十分な航海技術が完全になされたかどうかにつきましても考えなければならない。これにつきまして、船員の側に責任を考えておるのでありませんで、こういうものにつきまして十分な情報が与えられておったかどうか、そういうものをあわせ考えながら、こういう関連につきまして今後検討いたしたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  56. 和田春生

    和田(春)小委員 私は船員責任を回避しようと思って言っているのではないのですよ。間違ったことをやっておったら、船員だろうとそれは責任を追求したらいいのですよ。しかし、衝突したのでもないんだ。座礁したのでもない。海洋を走っておった船がああいう事故を起こしたというときに、もし船員運航が適切でないという結論を出すならば、この船は、この船体はその遭遇した状況に耐えることができない程度の強度しかなかったのだ、それを無理して運航したということが前提でしょう。だからそういう弱い船、いうなればオーシャンゴーイングに適しないぼろ船か欠陥船であったのだ。それは意図して悪い船をつくったのではない。一生懸命つくったけれども、結果的にそういうことになっておったのかもしれないのだが、そのことがはっきりしていなかった。限界を越して突っ走ったから事故を起こしたのだということになれば、それは船員運航責任が第一に出てくるのではなくて、耐えられない弱い船を走らせたということが先に出てくるわけでしょう。それに対して船員運航がはたしてよかったか悪かったかということになるわけだ。その根本ルールの問題で、運輸省の考え方は順序が逆じゃないですか。しかも、かりふおるにあ丸の設計当時、一〇%、喫水にして一メートル増トン工事が行なわれて、積み荷したときには一割もウエートがふえている。この船がはたして航行に適当であったかどうか、一割軽かったときを前提にして設計されておったものが適当であったかどうか。そこまで突っ込んで調べていって、そして問題があるという形になれば、今後この種の大型船については船乗りは心して動かせ、あぶない船なんだから、場合によったら三十六計きめ込むのが命の安全のためには大事だということを言わなければならないかもしれない。どうしてその原因を追求せずに、船乗りの運航のしかたがよかったか悪かったかというような議論のしかたができるのですか。それをひとつ聞かしてください。
  57. 田坂鋭一

    田坂説明員 乗り組み員の運航技術だけを話しておるわけではありませんで、これは全般的に船体運航気象、これらの関連を考えながら、あらゆる面について今後検討いたしたい、先ほどから申し上げておるとおりであります。
  58. 和田春生

    和田(春)小委員 もちろん、海難原因というのは単一ではないと思います。それはあくまで船体中心ではありましょうけれども海象気象運航といろいろなものがからみ合うというのは、これはだれしも認めることだと思うのですが、私が何度も言うように、一体当時の予想された海象気象において耐え得る船であったのかどうかということがすべての根本であり、これは逆にうと、その当時の海象気象というものは、一応船を設計するとき、冬季の海を航行するという前提においていろいろデータが投入されておる。そのデータをはるかに越えるような、想像を絶するものであったのかどうか、そういうことが一つポイントになると思う。  そこで、この報告の一七ページにはこういうことが書いてあるわけです。「この損傷発見前に遭遇した荒天は、冬期の北太平洋ではさほど珍らしいものではないにしても、損傷が発生したことに鑑みれば、波浪の実態の調査並びに船体」云々と、こう書いてあるわけです。気象庁長官にお伺いをいたしたいと思いますけれども、これはそのとおりに読んでよろしいわけでありましょうか。
  59. 吉武素二

    ○吉武説明員 かりふおるにあ丸は非常に気象事業に協力してくれた船でして、今度の航海中も遭難寸前まで電報を打ってくれました。そういう意味で、いままでの海難とはまた違った意味で、気象海象資料が船自体に対して整っております。ただ天気図から見てどうだというのでは、やはり的確な資料とは私は言えない。そういう意味で、あらゆる資料を提供して、その遭難とどういう関係があるかということを調べていただきたいというのが私の気持ちでして、まあいままで得られた資料で見る限りは、特に何十年に一ぺんとかいう大しけではなくて、北太平洋ではさほど珍しいものではなかったというふうに考えられます。
  60. 和田春生

    和田(春)小委員 ただいまの気象庁長官のお答えによりますと、大体この一七ページにいっていることは、珍しいものではなかったと考えられる。これは現場にいなければ、神さまでない限りなかなかわからないにしても、そういうデータから考えられるということであります。そうすると、この問題については、冬季の北太平洋において三十五度ラインの北であったか南であったかということがいろいろ議論になっていますけれども、これはもう当局においても十分いろいろ資料をお持ちですから、私はここで短い時間でくどくど言いませんけれども、あるいはかりにそういう仮定を置いたわけでありまして、その中の波浪ないしは風の状況についてはいろいろな変化がある、こういう点で、あと質問関連いたしますので、重ねて気象庁長官にお伺いいたしたいのですけれども、このかりふおるにあ丸が運航しておったという当時ないしは前後、あるいは通常の場合におけるこのシーズンの北太平洋という点で、三十五度ラインの北と南と、一応この報告でも触れておりますけれども、そういう点について決定的な差異があるというふうに、いままでの観測ないしはデータの上でお考えでございましょうか、いかがでございましょうか。
  61. 吉武素二

    ○吉武説明員 何しろ北太平洋は広うございます。それで、船の通る範囲というのはやはりおのずから限度がある。北太平洋について、たとえば波というようなものについて、われわれが北太平洋全体の資料を十分持っているわけではございません。船から送られてきた資料が唯一のものである。そういう観点で、今後も、いままで気象庁で持っておりますかなりな資料がたまっておりますので、それをよく統計的には調査してみたいと思いますが、やはり三十五度というはっきりした線でそれが切れるかどうかということについては、私は何とも申し上げかねるように思います。
  62. 和田春生

    和田(春)小委員 この点につきまして、まだ今後調査をされるためにこの段階でははっきり言えないというお答えでございます。十分御調査を願いたいと思います。  そこで、時間がもうございませんので、ちょっとあとごく端的にお伺いしたいと思うのですけれども、この報告の中で、そういう海象気象等についてもいろいろと調査を進めて、データをそろえて情報を提供することが必要だ、こういうふうに書いてあるのですが、これは船舶局長にお伺いいたしますけれども、北太平洋にこれだけの大型の船が航行しておって、データが出てくるのはいいですよ、かなり大きなしけ、しかもそれが南方ないしは南西方に向かって広範囲に存在をしているというときに、状況がわかったからといって簡単に船が逃げられるとお考えですか。どうでしょうか。
  63. 田坂鋭一

    田坂説明員 最後の九日の状況あるいは八日の状況におきまして、簡単に逃げられなかったと考えられます。
  64. 和田春生

    和田(春)小委員 私たちの経験からしても、船舶局長のお答えのとおりだと思うのです。そういたしますと、情報を提供するということ、あるいはパイロットチャートを整備するということは、全体的なコースの選定であるとか、運航マニュアルをつくる場合の一つの資料ではあり得ても、根本的には、そういう場合に普通われわれが経験をするようなしけとか、それが五年に一ぺん、十年に一ぺんにしても、その程度には耐えるという船の構造にしておいてもらわぬことには、船乗りは命を預けておくわけにいかないのだ。非常にあぶないということがわかるけれども、逃げられないということになったら、突っ込んでおだぶつする以外に方法がないのですよ、正直なことをいって。そうすると、問題はやはり船体に還元してくる。そういう点で、このかりふおるにあ丸は、前のしけにおいて若干損傷を受けておる。この報告で見ると、何だかその損傷が沈没の原因に結びつくかのごとく、結びつかないかのごとく書いてありますけれども報告ではっきりしているように、あるいはフォークスルの事故であります。つまり波を受けた船首楼の問題なんです。ところが、かりふおるにあ丸が沈没したときに、どういうふうに穴があいたかわからぬけれども、つまり、左舷船体部分がやられておるということになっておるわけですね。そういう点を考えると、この船は、そういう主要な強度に対して直接影響はないけれども、フォークスル、船首楼においてさえもそういう条件を生じている形になると、結局、机上の計算の上でデータを入れてつくったという面においては完璧だったかもしれないけれども、しけの中に突っ込んだときには、やはりいままで知られていない応力がそこに働いておる、ストレスが生ずるという形で問題を起こすのではないかということを考えるのが、造船の見地から常識だと思うのですけれども、そういう点に立って、もっと突っ込んで、すみやかにこの中間報告の内容を深めるというよりも、むしろ根本姿勢を改めて調査を突っ込むというお考えがおありかどうか、聞きたいと思うのです。
  65. 田坂鋭一

    田坂説明員 十分に今後とも考えていきたいと存じております。ただ一つ、先生も十分御存じだろうと思いますが、船の安全といいますのは、船体強度だけではございませんで、船体の復元性もいろいろ関連いたすところがありますので、そういうものすべての関連において考えていかなければなりません。非常にむずかしい問題がございますので、先ほどから申しておりますが、船体波浪、操船の相対関係からくる波浪船体に及ぼす影響、こういうことについて、すべての分野の関連において考えていきたいと思っております。
  66. 和田春生

    和田(春)小委員 そういうふうに問題を逃げるから、私から言わせると、こういう、何を言っておるのかさっぱりわからない、たいへんな人と費用と時間をかけて報告が出てくるわけなんですよ。何度も言うように、運航とか海象気象関連するのですよ。それは何かというのです。船が波の上に浮いて走っておる部分が問題でしょう。その船がじょうぶなのかどうか、いいのか悪いのかということを徹底的に追及をする。そこで問題が明らかになってきて、この船はこの程度のものなんだ、こうなるわけであって、だからこういうふうに注意して動かせ、こういう気象の情報が入ったときには出港を見合わせるとか、はるか民南方の平穏な海上を迂回航路をしろとか、そういう指示ができるわけなのであって、船の船体問題がはっきりしないことじゃ困るわけです。ですから、この点については、この中間報告というものは、これは中間という名前をつけるにも値しないと考えているわけなんです。肝心の点は全部逃げられておる。その点を徹底的にやはり追及をしてもらいたい、このように希望しておきます。
  67. 田坂鋭一

    田坂説明員 ただいま仰せのように、十分なる情報が乗り組み員サイドに渡るような研究も今後進めるようにいたしたい。そのこともこの中に入っておると存じます。どうかよろしくお願いいたします。
  68. 和田春生

    和田(春)小委員 質問を終わります。
  69. 内藤良平

    ○内藤小委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午前十一時五十九分散会