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1970-05-13 第63回国会 衆議院 運輸委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年五月十三日(水曜日)    午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 福井  勇君    理事 宇田 國榮君 理事 加藤 六月君    理事 徳安 實藏君 理事 箕輪  登君    理事 村山 達雄君 理事 内藤 良平君    理事 松本 忠助君 理事 和田 春生君       菅波  茂君    中馬 辰猪君       古屋  亨君    増田甲子七君       金丸 徳重君    斉藤 正男君       米田 東吾君    田中 昭二君       宮井 泰良君    渡辺 武三君       關谷 勝利君  出席政府委員         運輸政務次官  山村新治郎君         運輸省船員局長 高林 康一君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部長     長谷川俊之君         運輸省海運局定         期船課長    富田 長治君         海上保安庁警備         救難部長    貞広  豊君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   細田 吉藏君     木村 武雄君   田中 昭二君     貝沼 次郎君 同日  辞任         補欠選任   貝沼 次郎君     田中 昭二君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  閉会中審査に関する件  海上保安に関する件(旅客船強取事件に関する  問題)      ————◇—————
  2. 福井勇

    福井委員長 これより会議を開きます。  海上保安に関する件について調査を進めます。  この際、旅客船の強取事件概要について、政府当局から説明を求めます。山村運輸政務次官
  3. 山村新治郎

    山村政府委員 事件概要について御説明申し上げます。  皆さま方新聞、テレビそのほかで御存じのようでございますが、警察官から拳銃を、また広島市内銃砲店からライフル銃猟銃等を奪取した犯人川藤展久(二十歳)は、五月十二日午後五時八分ごろ、広島営桟橋に係留中の瀬戸内海汽船所属旅客船ぷりんす、総トン数百七十六トン、乗り組み員十一名、乗客三十三名、このぷりんすに乗り込みました。そして猟銃を乱射して船長を威嚇し、航行を命じました。  ぷりんすは、午後五時三十分出港し、音戸瀬戸、安芸灘を経まして松山高浜桟橋に着桟いたしました。そして乗客全員及び乗り組み員四名を下船させて、十三日午前零時五十七分出港いたしました。速力は約四ノットで、来島海峡を通航して今治沖に至り、午前五時二十五分、反転いたしまして広島向け航行いたしまして、午前八時五十四分広島営桟橋に着桟いたしました。巡視船艇十二隻がぷりんすの警戒監視に当たっているうちに、午前九時五十二分警察官により逮捕されました。  犯人川藤は、ライフル銃二丁、たま八十発、猟銃二丁、散弾三百十五発、拳銃一丁、たま五発、これを所持しており、広島営桟橋出港前、警官隊に向かって発砲いたし、警察官一名及び民間人一名を負傷させたほか、航行中及び高浜桟橋着桟後も、警戒中の巡視船艇等に発砲いたし、巡視船艇二隻が被弾いたしましたが、乗り組み員に格別の被害はございませんでした。  これが状況報告でございます。
  4. 福井勇

    福井委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。加藤六月君。
  5. 加藤六月

    加藤(六)委員 先般のよど号事件、ああいうことが起こって、たいへん国会は憂慮し、関連する条約並びに法案合わせて四本をようやく審議し尽くしたと思う直後に、今回は船の強取問題が起こりまして、われわれ先般航空法改正案その他を審議した人間にとりましては、非常に考えさせられるところが多い、こう思っておるわけでございますが、幸いにも、ただいま政務次官報告で、けさ九時過ぎに犯人が逮捕できたということで、これは御同慶にたえない、こう思っております。そしてまた、昨日五時過ぎにこの事件が発生して以来、運輸省海上保安庁並び海上自衛隊、あるいは警察庁、各関係皆さん方が実に一致協力してこの問題に当たってくださいましたことに対して、私は深甚なる敬意を表するものであります。ただ、犯人逮捕に至るまでに二名の負傷者が出た。その伏線として、山口県内その他においてこの三人組強盗の起こした問題等いろいろあるようでございますが、この問題に関連してひとつお伺いいたしたいと思います。  新聞あるいは記事によって内容が違いますが、ただいま報告いただきました中に、乗客三十三名というのがありますが、ある新聞によりますと、乗客二十名、それで、十三名というのは便乗者という名前が出ております。乗客でない便乗者というのは、どういう立場の方で、どういう関係で乗せておったのかということについて、これは当委員会関係あることでございますので、一番にお聞かせ願いたい、こう思います。
  6. 貞広豊

    貞広説明員 御説明申し上げます。  いま指摘された便乗者というのは見送り人等であります。
  7. 加藤六月

    加藤(六)委員 見送り人が、まだ船が出る前であったから船内に入っておって、それがそのまま一緒に出させられたと判断すればよいわけですか。
  8. 貞広豊

    貞広説明員 そのとおりでございます。
  9. 加藤六月

    加藤(六)委員 わかりました。それなら正式のお客は約二十名、十三名は見送り人であった、こういうようにまず判断していいわけですね。
  10. 貞広豊

    貞広説明員 さようであります。
  11. 加藤六月

    加藤(六)委員 政務次官、いま経過を一通り承ったのですが、けさ模様ですね。われわれの聞くのは、広島に回航したところまでしかないわけなのでございます。いま御説明いただきましたのですが、ちょっとけさの九時何分前後における模様が詳しくわからなかったものでございますから、ぷりんすが広島に着いてからいまに至る模様をちょっと詳しく御説明いただけませんでしょうか。
  12. 山村新治郎

    山村政府委員 広島に着きまして、ちょうどこの委員会が始まる直前に私ども報告を受けたのでありますが、その後もいろいろニュースその他が入ってきておると思いますので、政府委員からそれを詳しく説明させます。
  13. 貞広豊

    貞広説明員 ぷりんすは八時五十四分に桟橋に着いたのであります。そのときに、付近巡視船が十二隻ずっと警戒して固めておりました。犯人はその近い巡視船に対してライフル銃で三、四発撃ちまして、それぞれ、たかなわという巡視船と、いぶきという巡視船に一発ずつ当たりましたが、たいした被害はございませんでした。その後、説得につとめまして、九時五十一分になりまして警察官が狙撃をいたしまして、犯人が倒れて、五十二分に逮捕した。直ちに救急車でもって病院に送った、そのように連絡を受けております。
  14. 加藤六月

    加藤(六)委員 その前に、ちょっとはっきり承りたいのは、警察当局まだ来られてないようでございますが、警察官が何で撃ったかということ、何発撃ったか、大体どういうところに当たったのかというところは、もう少し詳しくわかりませんか。
  15. 貞広豊

    貞広説明員 いまのところ、まだ情報を詳しく持っておりません。
  16. 加藤六月

    加藤(六)委員 今回の問題は、警察にお聞かせ願わなければならない問題のほうが多いわけですが、海上保安庁にお伺いします。  今回しかれた体制は、非常配備を発令する、このようになっております。非常配備を発令するという場合は、どういう手続でどういう場合におやりになるのか、ちょっとこの席で承っておきたいと思います。
  17. 貞広豊

    貞広説明員 非常配備には、台風などの場合と、今度のような事件あるいは大きな暴動というような場合と、二種類ありまして、今度の場合は、このような凶悪な事態に管区のうちの大多数の部署をあげて取り組むもので、本部長が発動することになります。
  18. 加藤六月

    加藤(六)委員 本部長が発令した場合は、他の管区からも巡視艇その他は応援に出すわけですか、どうなんですか。
  19. 貞広豊

    貞広説明員 状況に応じて、本部長は直ちに長官に対して、巡視船艇航空機等協力の要請をすることができます。
  20. 加藤六月

    加藤(六)委員 そうしますと、海上保安庁の今回の非常配備を発令したということは、いまの報告を聞きますと、巡視船六隻、巡視艇三隻、それからヘリコプター一機を出した。これは第六管区全部の——戦力ではございませんですが、巡視艇並び巡視船ですか。それとも何ですか。
  21. 貞広豊

    貞広説明員 いまちょっとどのくらい六管本部船艇があるか記憶ございませんけれども、この船が行動する範囲、必要なものとして、広島、呉、松山今治付近から集めて十分なる体制をとった次第でございます。
  22. 加藤六月

    加藤(六)委員 私は、この中の巡視艇三隻というのは納得できるのです。巡視艇三隻を出された。ところが、巡視船六隻を出されたと聞いておりますが、この巡視船は何をやらすためにどういう方法で出したのかというのは、実は疑問に思うておるのです。犯人ライフルを持っておりますね。巡視船でしょう。したがって、巡視船内容が知りたいわけですけれども、これは鋼鉄船か、それともそうでないか、いろいろな問題がありますね。もしものことがあった場合どういうことを考えておるかということと、それから、いま当局でお手元に資料がないから第六管区巡視艇巡視船の隻数がわからぬ、こういうお話でございますが、この巡視船というのは、非常配備をしたときでも使うのですか。巡視艇中心じゃないのですか。
  23. 貞広豊

    貞広説明員 そのときの事案内容によりまして、巡視船も当然使います。今度の場合は、巡視艇はもうほとんどが木船でございますので、犯人が銃を持っておりますので、当たりますとこちらのほうに被害がありますので、鉄船の船を当てた次第でございます。
  24. 加藤六月

    加藤(六)委員 そうしますと、この巡視船六隻というのは全部鉄船ですか。違うでしょう。
  25. 貞広豊

    貞広説明員 全部鉄船でございます。
  26. 加藤六月

    加藤(六)委員 わかりました。そうすると、巡視艇のほうが木船で、巡視船のほうが鉄船ということになるわけですか。
  27. 貞広豊

    貞広説明員 はい。
  28. 加藤六月

    加藤(六)委員 それでは、巡視船のほうが巡視艇よりか今回はよく活躍したわけですね。  そこでお伺いしますが、海上保安庁巡視艇巡視船というのは、平生何ノットくらい出すようなものにしてあるか。それから、第六管区の内部におるものの装備はどういうようになっておりますか。
  29. 貞広豊

    貞広説明員 六管にある通常の業務に従事する船では、約十一ノットから十二ノットくらいの速力でございます。装備としては、拳銃以外には装備しておりません。
  30. 加藤六月

    加藤(六)委員 わかりました。時間が来たようでございますので私やめますが、警察庁がいまおいでになったようでございます。  私は、今回の責任——責任とかなんとか言いませんが、発生した一連の問題から考えて、警察庁もいろいろ苦労されたと思いますが、先般よど号事件が起こりまして、今回こういう川藤のような犯人が行動を起こす場合に、あるいは船、あるいは飛行機、あるいはバス、こういうものを乗っ取り強取しはせぬかという懸念あるいは予想というのはされておったでしょうか、どうでしょうか。それが一点。  もう時間がないので、続いて聞きますが、その次は、そういう場合には、広島空港宇品港、こういうあたりに犯人がなだれ込んできはしないだろうか、強取しにこないだろうかという意味における警戒配置はされたのでしょうか、されなかったのでしょうか。それが一つ。  それからその次に、警察官の五名をすぐ現場へ派遣されたようでございますが、これは大阪管区警察官なんでしょうか。大阪府警警察官なんでしょうか。  それから、犯人を逮捕するときに、撃ったのは何で撃ったのだろうか。ピストルか、それともそれ以外のもので撃ったのか。そしてその撃つときの命令はだれが下したのだろうかということ。その場合には、射殺してもかまわぬという立場で撃ったのだろうか、なるべく生命を助けたいという立場で撃ったのだろうか。たくさんの質問を一ぺんにしますが、時間がないので、私これだけ重ねてさせていただきます。
  31. 長谷川俊之

    長谷川説明員 お答え申し上げます。  第一点の、こういう事案を予想したかどうかという点でございますが、例のハイジャックの問題以来、人間をとりこにいたしましてする事犯が起きておりましたから、一般的にはこういう事案というものは十分起こり得るということにつきましては、警察といたしましても予想しておったわけでございます。  しかしながら、第二点の御質問にありました、しからば本件の具体的な事案について、宇品港並びに広島空港事前配置をしたかどうかという点でございますが、なお詳細調べなければあるいは不十分な点があるかもしれませんが、今日まで私が聞いておりますところでは、事前にそこまで配置を現地の広島県警はしておらなかったという状況でございます。  それから第三点の、派遣をした警察官はどこの者かという点でございますが、これは大阪府警警察官応援を求めたというふうに聞いてわります。  それから第四点の、撃ったのはどういう銃で撃ったかという点でございますが、これはなお現場のほうがたいへんふくそうしておりまして、正確なところ、あるいは万一間違えるとまずいと思いますが、いままで私の聞いたところは、ライフルであるというふうに聞いております。しかし、あるいは間違いがあればあとでまた訂正しますが、ライフルというふうに聞いております。  それから、命令はだれが出したかということでございますが、この点は、これは私の推測から申し上げますと、現場最高責任者命令を出したものと思います。ただこれは、まだ現場が混乱いたしておりますので、正確なところは聞いておりませんが、私の判断では、現場最高責任者命令を出したものと、こういうふうに思います。
  32. 加藤六月

    加藤(六)委員 現場最高責任者はだれがされておりましたか。
  33. 長谷川俊之

    長谷川説明員 広島警察本部長現場に行っておると思います。
  34. 加藤六月

    加藤(六)委員 わかりました。  私の質問はこれで終わります。
  35. 福井勇

    福井委員長 次に斉藤正男君。
  36. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 今回のシージャックに関しまして、海上保安庁並び瀬戸内海汽船等がとった態度は、おおむね良好であったというように私は判断をいたしておりますけれども事件が決着を見た今日、反省するものがあるとするならば——まだ時間がたっておりませんから、省議その他も開かれておりませんので、的確なお答えはできないかと思いますけれども、もし反省するものがあるとするならばどういうものがございましょうか。次官並びに海上保安庁から伺いたいと思います。
  37. 山村新治郎

    山村政府委員 今回の事件というものは、この前の先般起こりましたよど号事件等と違いまして、計画的なものではなくて、突発的に起こったものと私は考えておりますし、     〔委員長退席加藤(六)委員長代理着席〕 それで、これにつきまして、この突発的に起こった事故というより、今度の強奪事件、これは、挙動不審者、これらに対するいわゆる警察における連絡体制緊密化、これがはっきり申しまして少し欠けておったんじゃないか。今回山口県に起きまして、そして広島まで来た、そこらの経過はどういうぐあいになったか、まだ詳しい報告がきませんのでわかりませんが、まずこれらをもっと緊密な連絡を保って、そのような事故が起こらないように、いわゆる凶悪犯人といわれた指名手配等人間に対しては、もっと緊密に連絡をとって、完全にこれを逮捕してくれというような線をもつと強く出さなければならない。また、海運会社等に対しましては、いわゆる自衛措置、これを今後とるようにしていかなくちゃならないのじゃないか、私はそのようなぐあいに考えております。
  38. 貞広豊

    貞広説明員 いま運輸政務次官から申されましたことについて、さらにつけ加えて述べさせていただきますと、平素から私どもにおいては情報収集を活発に行ないまして、そういった者の動きを早くつかむということと、事実そういうことが予想されるときには、海上保安官桟橋等配置する、あるいは警察連絡して協力体制をしくということを考えております。それからなお、必要あれば巡視船艇によって護衛をするというようなこともございます。しかしながら、今度のような事件にかんがみまして、何と申しましても海運会社の担当の方と、こういった場合にはどのようにするかというふうなことを、いわゆる自衛措置について十分緊密に連絡をとって指導してまいりたい、このようにいまのところ考えております。
  39. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 いま次官からも御答弁がございましたけれども警察庁関係に伺いたいわけでありますが、この犯人川藤は、山口県において三人組をもって検問巡査に立ち向かい、新聞によって報道が違いますけれどもナイフで脅かしたというものもあれば、このときすでに猟銃を持っていたというような記事もあるわけでありますけれども、いずれにしても、山口県で盗んだ車に乗り、検問にひっかかり、この検問で一人の少年は逮捕されておりますけれども、二人は突破をいたしておるわけであります。この辺の事情がどのようなことが真相であるのか、お調べになって結果は出ておるのでございましょうか。
  40. 長谷川俊之

    長谷川説明員 お答え申し上げます。  五月十一日の午前零時ごろ、山口県の山陽町の国道二号線の三差路で、ただいまお話のありましたとおり、山口県警特別機動警ら隊山陽検問所勤務警察官三名が検問をいたしておったところ、三人組の男が乗車する不審の乗用車が参りましたので、これをパトカーで五十メートルほど追跡をしまして、そして停車を命じ、近くの駐車場に誘導いたしまして調べましたところ、この自動車は博多駅で盗んだものであるということが判明いたしました。そこで自動車並びに乗っている者を近くの検問所へ連れていこう、こういうことで、一人の警察官は、この乗っておった犯人の一人をパトカーに乗せまして連れていく。それからもう一人の警察官は、犯人たちが乗っておりました自動車運転台に乗って、自分がこれを運転をいたしまして検問所へ出発せんといたしましたところ、後部座席にすわっておった被疑者川藤が、いきなり猟銃をこの警察官の後頭部に突きつけまして停車を命じ、体をかわそうとした警察官に、もう一人の被疑者が横におりましたのですが、やにわに刃渡り六・五センチの切り出しナイフで切りつけてまいったわけであります。そこで格闘となりまして、この警察官は左の胸部に全治二週間の傷害を受けましたが、一応被疑者の凶器をもぎ取ったわけでございますが、そのすきにこの二人の被疑者の乗っておった車は逃走した、こういう状況でございます。
  41. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 そうすると、山口県で盗難車に乗っていた当時、すでに猟銃を携帯しておったという情報が正確でございますか。
  42. 長谷川俊之

    長谷川説明員 そのとおりでございます。
  43. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 そして今度は広島へあらわれて、やはり警官に発見をされておるわけでありますけれども、このとき、警察官ピストルをもって威嚇射撃をした。ところが、逆におどかされて警察官ピストルを取られておる。しかも警官はその際、万一のことをおもんぱかって、弾倉に入っているたまを四発抜いて渡しておる、おどかされて。しかも相手猟銃を持っているというようなことで、非常に危険な立場にあったことはわかるわけでありますけれどもピストルをよこせ、やらぬ、じゃからならやる、いやたまもよこせ、というようなやりとりがあったように想像できるわけでありますけれども自分の携帯しているピストルを強奪された、というよりも、納得ずくで渡したというようにしか新聞報道では考えられません。何となれば、たまが入っているから、そのままよこせ、いや、あぶないからということで、たまを抜いた、そして渡しておる。そうしたら、その抜いた四発のたまもよこせということで、それも渡しておるというような記事にしかとれないわけでありますけれども、いささかゆうちょうではなかったかというように思うのですが、これはまだ時間も経過しておりませんので、確実な情報は入っていないと思いますけれども、その辺のやりとりはいかがでございましたでしょうか。
  44. 長谷川俊之

    長谷川説明員 現在まで入っております報告をもとにして御報告申し上げますと、五月十二日の午後一時五十六分ごろ、広島の住民の方から、岩鼻踏み切り付近の山の中に二人の男が猟銃を持って寝ているという旨の一一〇番がございまして、その一一〇番を受けまして直ちに、出動しておりますパトカーにそちらへ行くように指示をいたしたわけであります。そして現場に着きましたのは、パトカーがまず二台この現場に着いたわけでございまするが、その付近は山になっておりまして、着きました二台のパトカーの乗員が二組になりまして、そして山へ犯人を探しに登ったわけでございます。  問題の迫井巡査ともう一名の者が一組になりまして、そうして山のほうへ向かって登っておりましたところが、途中でこの道が二手に分かれておった、こういうことで、二人で相談をしまして、一人は一方のほうへ、迫井巡査はまた別の道を行ったところが、迫井巡査が行きますと、五百メートルほど先のほうに道路がありまして——道路というのは、上のほうから来たときに道路があったようでありますが、そこを被疑者らしい者が二名歩いておったのにぶつかって、急いで同僚の巡査に声をかけたわけでございますが、何しろ山でございますので声が届かないし、それで、このままでおったのではまた見失ってしまうということで、自分はその下の道のほうへおりていった。そしておりましたところ、そこへたまたま軽四輪の貨物を運転してきた方がおりましたので、あれを追跡するから乗せてくれということで、それに乗せてもらって前方の被疑者のほうへ行きまして、被疑者の約十メートルほどうしろ停車して、職務質問をかけようとしたわけでございます。ところが、その軽四輪車は警察官をおろすと同時に、さらに発車して被疑者のほうに向かったわけでございますが、やにわにその軽四輪車をとめまして、その運転をしておりました方に猟銃を突きつけまして、そうして拳銃を捨てろ、捨てなければこの男を撃つ、そういうふうに言ったわけでございます。警察官は、ばかなことをするな、銃を捨てろ、捨てなければこちらも撃つぞと、再三にわたって言ったわけでございますが、相手はますます激高して——さらに一発警察官威嚇射撃をしているわけでありますが、あるいはこれも被疑者を激高させたことになったかと思いますが、その運転をしておった方のこめかみに猟銃を突きつけまして、おまえが拳銃を渡さない限り殺すぞといって、いかにも殺しそうな様相であったので、警察官は、これ以上あれしてはその運転者の方の生命があぶないということで、まずたまを抜いて拳銃だけ下に置こうとしたのでありますが、それじゃだめだ、荷台のところへ拳銃を出せ、こういう要求です。そこで拳銃だけを荷台のところへ出した。ところが、たまもよこさなければだめだということであったので、やむなく出した、こういうふうに報告が参っておるわけでございます。
  45. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 途中ですけれども、その後の犯人逮捕状況等入ったようでございますので、新しい情報があったらお伝え願います。
  46. 山村新治郎

    山村政府委員 ただいま入りました犯人逮捕状況を御説明申し上げます。  けさ午前九時四十七分から十六回にわたりまして、南警察署長の名をもって、犯人に対し、川藤君に警告する、むだな抵抗をやめよ、銃を捨てて出てこいと警告した。犯人は警告のたびに陸上に向かって発砲した。九時五十分に客船ぷりんすが後進桟橋を離れようとしたとき、警察官が一発発射し、たま犯人の腹部を貫通し、犯人はその場にくずれるようにすわり込み、同時に警察官が乗り込み逮捕した。これが九時五十二分でございます。  以上でございます。
  47. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 事情はわかりました。結局、通りかかった民間の車を巡査が借りて追跡に移った。そうしてつかまる寸前に、今度はその民間人を人質にしてピストルやりとりをやった。、こういうことでございますね。まことに凶悪だと思います。その次に、その後、広島銃砲店へ入っていき、情報によれば、ライフル銃、散弾銃を奪取した。先ほどの当局の資料にもそういうことが書いてございます。そうしますと、犯人は最終的には、山口から持っていった猟銃一丁も含め、ライフル二丁と猟銃二丁を持って、しかもおまわりから取り上げた拳銃、これだけ持ってぷりんすに乗り込んだということになりますが、それが正確でございましょうか。
  48. 長谷川俊之

    長谷川説明員 仰せのとおり、最初から盗んで持っておった散弾銃一丁、それから広島銃砲店ライフル二丁と散弾銃一丁ですから、猟銃合計四丁、それから拳銃一丁、こういうことになっております。
  49. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 この「犯人川藤は、ライフル銃二丁(弾八〇発)猟銃二丁(散弾三一五発)、けん銃一丁(弾五発)を所持し」という、この猟銃二丁のうちには、山口県当時から持っていた猟銃一丁が含まれている。そして広島銃砲店で盗んだのはライフル銃二丁と散弾銃一丁、こういうことなんでございましょうか。
  50. 長谷川俊之

    長谷川説明員 お話のとおりでございまして、ライフル銃二丁及び猟銃一丁を広島銃砲店で盗んだわけでございます。それ以外に、別のところですでに猟銃——これは散弾銃でございますが、一丁を盗んで持っておったわけでございます。したがいまして、猟銃は二丁、ライフル銃は二丁、ほかに警察官ピストル一丁、こういうことになります。
  51. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 あまりにも重武装でございますので、驚き入った次第でございますけれども、いまの広島の山中における二叉路をパトカーのおまわりが一人一人に分かれたというようなこと、少なくも相手猟銃を持ち、凶悪犯と見るべきでありますけれども、まあ犯人逮捕の使命感に燃えて二人が一人一人になったということはわかるわけでありますが、それにしても、やはり凶悪犯を追跡する巡査立場としては少し手ぬかったではないかというような気もいたします。しかし、これは当委員会の本格的にお尋ねする問題でもございませんので、今後警察庁としても大いにこういう点は御勉強をいただきたいというように思うわけであります。  いずれにいたしましても、ハイジャックに続いてこの事件、今後まだいろいろ予想をされるわけでありまして、当局におきましては十分な配慮をいただかなければならぬというように考えておるわけであります。さればといって、これがやはりいたずらな船内警乗だとかいうようなことになっても、これはまた行き過ぎの声も出るでありましょうし、非常にむずかしい問題を含んだ、御時勢とはいえ頭の痛い問題である。お互い私どもも今後勉強していかなければならぬ問題であろうと思うわけでありますけれども、最後に次官から、こうした人質を大勢かかえて、しかも非人間的な、非人道的な行為をする犯罪というようなものの対策につき、心がまえを伺いたいと思います。
  52. 山村新治郎

    山村政府委員 お答えいたします。  ただいま先生おっしゃいましたように、今回のいわゆる船舶の奪取事件、そして先般の航空機の奪取事件、これはほんとうに私は許すべからざることであると思うのであります。一般の何の罪もない人々を人質にとりまして、そして自分の身の安全をはかる、私はほんとうに許してはならないことであろうと思います。先般も、実は航空法の一部改正のおりにおきましても、船のほうにも手をつけたらどうだというような話もあったわけでございますが、船となるとなかなか広範囲にわたって、どこまでが船舶でということそれ一つを取り上げても、少なくともいわゆる航空法のように煮詰まった問題ではございませんので、また多くの日数を要する、とりあえず飛行機のほうにだけいわゆるハイジャックの防止という意味でやったらどうだというところでございまして、もちろん今後は船舶そのほかあらゆる乗りものを含めましての、いわゆる人質をとって自分の目的を達成するなどという、このような卑劣な手段は絶対に許してはならないと思いますので、今後また先生方各位におかれましてもいろいろ御指導をいただきながら私どもやってまいるわけでございますが、あらゆる面におきまして、人質をとってということは、これはやはり誘拐をするというにひとしい悪らつな事件であると思うのでございます。今回の事件、これが続いて起きたわけでございますので、これを教訓といたしまして、一日も早くあらゆる面で——あらゆる面と申しますのは、飛行機、船に限らず、乗りもの、またそのほか家において、部屋の中に入って人質を取ってというような問題も含めまして、そういうようなことを絶対に許してはならない、あらゆる方法というものを講じていきたい、そのようなぐあいに考えております。
  53. 斉藤正男

    斉藤(正)委員 終わります。
  54. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 松本忠助君。
  55. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 今回の事件につきましては、さきのハイジャック、そしてまたこのような事件が引き続いて起こるということに対して、われわれは非常に憂慮すべきものがあるわけでございますが、幸いにも今回は非常に早い時間でこれが解決を見ましたことは、まことに同慶の至りであると思うわけでございます。  そこで、いまいろいろと報告書により、また警察のほうからも経過をお伺いしたわけでございますけれども、まず、運輸大臣として、今回の事件が起きたとき、海上保安庁長官に対してどのような指示をなされたか、その最初の問題点をひとつお伺いしておきたい。
  56. 山村新治郎

    山村政府委員 この問題に対して運輸大臣が指示をいたしましたのは、この前のよど号事件のおりに発しました指示どおりでございます。まず第一番に乗客の安全を確保する、乗客の人命尊重、これに徹すること。そして、これは飛行機と違いまして、今回起きました事件というのは瀬戸内海で起きておる。これをまず外洋へ出さないようにして、そして気長に人命の安全確保という面に全力を尽くすように、これが運輸大臣からの指示でございます。
  57. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 それでは、いまのお答えの中から一点伺いたいのは、外洋に出すな、外海に出すなということは、どういう意図から大臣は言われたのか。
  58. 山村新治郎

    山村政府委員 これはその当時、私ども初めに聞きましたおりには、いろいろな情報がございました。この前のよど号事件のおりにも、犯人が十五人であったり、六人になったり、そして最終的には九人であった。いろいろな情報がございました。今回も初めの情報を聞きましたおりは、五十時間分の燃料は十分入っておるというような情報でございました。そこで、これをもし外へ出しました場合に、船が日本の領海を離れた場合には、これはまた一つの国際問題ともなってくる。そこでとりあえず、国内においてこの問題は解決しなければならない、そういうような意味から、外へ出さないようにということを言ったわけでございます。
  59. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 次に、警察関係でございますが、保安部長に伺うわけなんですが、警察庁長官といたしましては、まず最初どのような処置をとられたか。報告を受けたときに、末端に対して、あるいは中国関係の県警、そういうところに対する指示はどのようにされたか、この点を伺っておきたい。
  60. 長谷川俊之

    長谷川説明員 お答え申し上げます。  長官の指示は、まず、乗客生命をあくまでも守ることを第一とするということ、これが第一点でございます。それから、犯人の逮捕にあたってはしんぼう強く、急がないでこれに当たる。それから第三点は、万やむを得ないときは犯人を射殺してもこれはいたしかたがないから、その決心で事態の処理に当たるようにということを指示いたしたわけでございます。この点につきましては、国家公安委員長とも十分連絡をいたしまして、そして指示をいたしたわけでございます。
  61. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 場合によっては犯人を射殺してもやむを得ないという御指示、もちろんこれは最高幹部と十分な連絡をとられた上で出されたことと思いますけれども、その前の山口事件発生以来、非常に凶悪であるということから当然の処理だと思うわけでございますけれども、私の記憶では、四十年の何月でございましたか、七月ごろでございましたか、渋谷でこのような銃砲店にやはり警察官を射殺した者が飛び込んで、その銃砲店の中に立てこもって、そうして銃砲を奪って、人質を取った事件があった。このような事件が記憶にありますが、今回もやはり銃砲店に飛び込んで、そうして猟銃をかっぱらっている。それも今回は更衣室に追い込んだ。そうして銃砲店から奪取したわけでございますけれども銃砲店におけるそういう危険な銃砲類のふだんからの陳列の方法といいますか、銃砲店の中では銃砲あるいは弾薬、散弾、そういうものをどのような状態で置いておくものか、再三にわたってこのような事件が起こるということは、そのお店におけるしまい方に問題があるのではないか。単に手の届くようなところに何のかぎもかけないで置いてあるというようなことだったら、非常に危険だと思うわけであります。私もそういうお店に行ったことがないのでわかりませんので、その辺のところをひとつ教えていただきたいと思います。
  62. 長谷川俊之

    長谷川説明員 お答え申し上げます。  仰せのとおり、さきに渋谷に事件がありまして、銃砲店の一般的な管理、監督というのは通産省系統の所管になっておりまするけれども、私どもといたしましては、防犯上からたいへん重要なことでございますので、しばしば各県警を中心といたしまして、銃砲店の方々と会合を持って、保管については、むき出しで置かない、一定のケースに入れる、そしてそれはかぎがかかるようにするということ。それから第二には、個々の銃につきまして、これは銃によっていろいろ構造が違いますので、簡単にいかない銃もありますが、ある部分をはずしておくようにする。その場合は、かりに銃を取っていきましても、発射できないということになるわけでありますから、そういうことをしておいてもらいたい。それから、個々の銃をばらばらに置くのじゃなくて、鎖などでつないでおいて、一つだけ取り出すということができないようにしてもらいたい。それから、たまは別のところにしっかり保管してもらいたい、こういうことを中心といたしまして指導をいたしてきたわけでございます。各銃砲店におきましても、おおむねこの方針にのっとりましていろいろやっていただいてきておるわけであります。  今回の広島銃砲店につきましては、県警の報告によりますと、広島県でも最も大きい銃砲店でございまして、保管の状況というものは県下でも最もいい状態であった。具体的に申しますと、それぞれの陳列のケースをしっかりかぎをかけまして、その中にさらに鎖で固定してつないであった。こういう状況であったわけでございますが、何ぶんにもピストルを発射しながら入ってきて、男の店員は更衣室のようなところに押し込めて、女の店員を脅迫してかぎを出させ、あけて取っていったというわけでございまして、銃砲店としましては、まことにやむを得なかった状況のように思います。
  63. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 なお、この問題に対しましては、取り締まりを十分厳密にしていただいて、再びこのような事故が起きないように——すでに四十年の七月に渋谷でああいう事故が起きているわけですから、その後十分監督、指導はしてあったと思いますけれども、今回また再びこのようなことが起きているわけです。これはひとつ保管については十分に指導、監督をしていただきたいと要望するわけでございます。  それから、新聞によりますと、いろいろ出ておりますけれども、これは毎日新聞でございますけれども松山港の岸壁は相当の人出になっているわけですね。千人というふうな数字が書いてございますけれども、警備の関係の方、それから船舶関係の方も、必要欠くべからざる方は当然いるとは思うのでございますけれども、千人という人は、ちょっとやじ馬的な人が入っているのではなかろうか、こう思うわけであります。この前の大阪のガス爆発の事件におきましても、やじ馬が出て、それが思わぬ災害を広げております。こういう事件が勃発いたした場合には、やはり一般の方々に迷惑がかからないように、そういうやじ馬的傾向のある人を寄せつけないようにすべきではないかと思うわけでございますが、その辺に対する手抜かりはなかったでしょうか。
  64. 長谷川俊之

    長谷川説明員 具体的に何メートルの範囲につきまして整理をしたかというような点につきましては、申しわけないことですが、まだ私、詳細聞いておりませんので、正確にお答えはできないわけでございますが、仰せのとおり、たいへん危険でございますので、いろいろ好奇心のおありの方はたくさんおられるわけでございますが、とにかく警察といたしましては、危険の及ばない線までこれを整理すべきものでございます。そして、そういう点につきましては、現地のほうの警備本部といたしましても勢力をしたと思うのでございますが、具体的な点がはっきりいたしませんので、今後さらにそういう点につきましては私どもよく反省、検討いたしまして、間違いのないようにしたいと思っております。  なお、宇品のほうに帰ってきましたときは、海上保安庁とも協力をいたしまして、あの桟橋付近あるいは乗船場付近につきましては、かなり広くそういった点から整理をしたように聞いております。
  65. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 次は運輸省の船舶局の関係ですが、いらっしゃらないのですか。実は伺いたいことは、前にもハイジャックのときにいろいろ研究があったようでございますけれども、いわゆる船橋、ブリッジあるいは機関室、そういうところに乗客が自由に出入りできないようには当然なっていることだと私思うのですけれども、まぎれ込んで、機関室に入っていたずらをするとか、あるいはまた船橋で船長を強迫するとか、そういうふうなことができないような方法を十分とっておくべきではないかと思うのです。言うならば、そういう場所をきちっと隔離して理不尽な出入りができないようにする、こういうことは構造上十分できるのじゃないかと私どもはしろうと考えで思うわけでございますが、この点どうでございましょうか。
  66. 富田長治

    ○富田説明員 お答え申し上げます。  仰せのとおりでございますが、一応鎖を張りましたり、立ち入り禁止の標識を掲げたりして、入っていただかないようにということにはなっておりますけれども、日常業務として船員が出入りせざるを得ませんので、完全にそのたびごとに鎖錠をするというようなことはいたしておりません。
  67. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いろいろお伺いしたい点もございますが、時間の関係もございますので、以上で終わるわけでございますが、最後に、もう一点、次官警察庁の方にお伺いしたいことでありますけれども、こういう事件が再び起きないためには、警察官にすでに危害を加えて、そしてまた無辜の住民に大きな恐怖を与えている、こういう者に対しては厳罰をもって処すべきではないか、私はこういうふうにも思うわけでございます。その辺のことの考え方について、警察庁のお考えをまず第一番に聞いておきたいと思います。
  68. 長谷川俊之

    長谷川説明員 たいへん悪質な事件でございますので、私ども、仰せのとおり、厳罰をもって当たるべきものだというふうに考えております。
  69. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 現在の刑罰の範囲は三月ないし五年というようなことなんですか。
  70. 長谷川俊之

    長谷川説明員 本件につきまして、どういう罪名がつくかという点は、さらに研究しなければなりませんが、少なくとも殺人未遂は成り立つわけでございますから、三月云々ではなしに、ちょっと不正確でございますが、死刑までなり得る罪名に当たると思います。
  71. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 では次官から。
  72. 山村新治郎

    山村政府委員 ただいま警察庁のほうからお答えがございましたとおり、私は、これらの犯罪は最も憎むべき犯罪であろうと思うのでございます。また、先ほど申しましたように、人質を取って自分の目的を完遂する、これは一番ひきょうな、非人道的なやり方であろうとも思います。わが国で一番よいと思っておった人命尊重というものを逆に悪用するということに結果がなってくるものと思いますので、このようなことは絶対許してはならない。そこで、先日航空法の改正をしていただいたわけでございますが、今度は船長の職務権限を強める等、これらのいわゆる船舶の奪取防止その他、運輸委員会のみならず、法務委員会その他の委員会におきましても、いろいろこれに付随するものを出していただきまして、法的にもできるだけの防止方法をやっていく、そのような姿勢で進んでいきたいと思っております。  それと、先ほど、船を外洋に出さないようにということで、ちょっと私、答弁漏れをいたしたわけでございますが、国際間の紛争というものも起こってまいりますが、それと同時に、実はこの船自体が外洋に耐えられないようなものである。安定性の問題その他のものを含めて内海用の船、そういうこともありましたので、他の乗り組み員、また犯人も含めまして、やはり生命の安全確保という面に立ちまして、外洋には出さないようにという運輸大臣の趣旨であります。
  73. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 終わります。
  74. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 和田春生君。
  75. 和田春生

    ○和田(春)委員 この問題については、すでに同僚各委員からかなり質問がございました。重複を避けて、二、三に焦点をしぼってお伺いをしたいと思います。  一般の新聞報道によりますと、先般の日航機乗っ取り事件に続いて今度は海である。いわゆるスカイパイレートに対して海のパイレート事件というふうに、共通の観点から大きく取り上げているという傾向もあるようですけれども、しさいに調査をしなければわかりませんが、いままでのところは、先般の日航機乗っ取りとは事件の質においてかなり違うところがあるように思うのです。日航機乗っ取りのほうは、明確な目的をもって計画的に準備をして、そして飛行機というものの特性をフルに活用してあの事件を引き起こした。今回の場合にはどうも目的がよくわからない。多分に衝動的である。それから銃砲の威力を利用いたしました人質という手段に訴えての犯行でありまして、必ずしも船というものの特性を利用したとは考えられないというような面で、両者の間にはいろいろ違った面があると思います。そこで今度の問題は、一般犯罪的な見地から考えてみますと、まず第一に、すでに指摘されたように、船を乗っ取られるまでの対策がまことにお粗末であった、これはその一語に尽きると思います。船がああいうふうに乗っ取られてからの関係者の対応策というものはおおむね妥当であったということは、すでに斉藤委員からも指摘をされているわけでございますが、乗っ取られるまでのお粗末であったということの一番のポイントは、銃砲取り締まり、これを利用する犯罪というものに対するわが国の警備体制にかなり大きな手抜かりがあるのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、この点について長谷川保安部長からお答えいただきたいと思います。
  76. 長谷川俊之

    長谷川説明員 お答え申し上げます。  銃砲を使用する犯罪に対する警察としてのこれまでの取り締まりの状況でございますが、私どもといたしましても、銃砲というものがたいへん危険なものでございますので、保安警察の中でも最重点の項目として取り締まりをいたしてきたわけでございます。  御承知のように、簡単に申し上げますと、所持につきましてはたいへん厳格にこれをやっておりますし、所持を許可いたしました者につきましての保管という点につきまして、最近におきましては、年二回それぞれ銃砲の一斉検査を実施いたしまして、これは署に持ってきてやる場合もありますが、それぞれ保管している場所におもむきまして、そうした保管の状況等について防犯診断をし、勧告をするというようなことをやっておるわけでございます。さらに、先ほどもお答えいたしましたように、銃砲店に対しましても特に力を入れてやってきたわけでございます。  しかしながら、何ぶんにも銃砲は、大ざっぱな数字で申し上げますと、現在、警察が許可いたしておりますものは、空気銃を含めまして五十数万件あるわけでございます。これらがみな国民の方々それぞれの責任におきまして保管をしていただいているわけでございまして、中にはついうっかり床の間に置いておったために取られたということもあるし、あるいは今度の事件は、物置きか何かに置いてあったのを侵入して盗んだように聞いておりますが、そういうことでございまして、私どもとしましては、この銃砲の取り締まりにつきましては極力力を入れてまいってきたわけでございます。しかしながら、現実に事件が起きているわけでございまするので、さらにこれらにつきまして十分研究いたしまして、足りない点につきまして一そう努力してまいりたい、かように考えております。
  77. 和田春生

    ○和田(春)委員 その点について、実は私は戦前から船に乗っておりましたし、戦後も何十回海外に行っているのですが、確かに、銃砲の取り締まりということについて、日本は世界の各国に比べても一番きびしいほうに属していると思います。そのかわり、一般の市民というものは銃砲を所持していないというのが社会の通常の状況になっているわけです。その結果、一たん銃砲を手にした者はオールマイティーの力をふるい得る余地が多いと思う。これがアメリカであるとか、南米であるとか、そういうところでございますと、うかつにピストルを出せば自分も簡単に撃ち殺されるという可能性もあるわけですから、そうそうオールマイティーの力を発揮することができない。そういう点を考えますと、日本の場合には、現状の銃砲取り締まりということは、はなはだ手ぬるいような気がいたします。さらに猟銃等においても、 いまのように人口が非常に稠密になってまいりまして、自由に野山で猟銃を持って鳥をとるというようなことも非常にやりにくい日本の国土の状況になってきているという状況において、今後銃砲を悪用して犯罪を犯す者を防ぐためには、むしろ禁止に近い徹底的な措置をとる必要があるのではないか。そうでないと、最近はレジャー等でもクレー射撃場等もある、あるいは猟銃を手に入れることもそれほど困難ではないという事情もございまして、法律的には整っているように見えますけれども、私は、日本の社会状況と比べると問題がある。特に金嬉老事件以来、こういう銃砲を使って人質政策といいますか、犯罪を犯す者が英雄視されるような傾向もあって、若い者が衝動的にこれに乗せられるということを考えた場合に、私は、全般的に原則として、民間における銃砲の所持は禁止をするというくらいに徹底をしていく、これはもう治安とか防衛に従事する者以外は持たせない、そこまでいっても一向差しつかえないと思うのです。この狭い日本の中で鉄砲持って遊ぶ必要はない、それくらいの考え方で今後の取り締まりないしは立法を考える必要があるように思うのですけれども、その点いかがですか。
  78. 長谷川俊之

    長谷川説明員 お答え申し上げます。  確かに、銃砲の事故をなくする、銃砲の取り締まりという観点からは、先生のような御説も成り立ち得るというふうに私も思います。銃砲の所持の許可は、御承知のように、一つは狩猟の目的を有する場合、それからもう一つは射撃競技の目的を有する場合のみに許可されるわけでございます。私どもといたしましては、銃刀法等の改正を過去にわたって何度か行ないましたが、その方向は、お説のように、銃砲が悪用されない、こういう観点から、あるいは所持の目的のはっきりしないものは許可をしない、あるいはまた、実際に持っておるけれども、将来狩猟にも射撃にも使わないようなものは廃棄させる、こういうようなことをできるように、そういう法制の点につきましても努力をしてまいっておるわけでございます。  一面、狩猟の問題につきましては、農林省の御所管でございますが、私どもも審議会の委員の一人といたしまして、御指摘のように、狩猟につきましては、狩猟地域の限定、それから使う銃種制限、こういったことにつきましては、常に意見を申し述べておるところでございます。農林省のほうにおかれましても、鳥獣保護という見地も加味されまして、たとえば空気銃等につきましては、漸次これを制限してきておるところでございます。しかしながら、いまの段階におきまして、やはり国民のレジャーといいますか、そういう用途というものは無視できないところがあると思うのでございまして、全面的にいま原則として、狩猟ないし射撃のためにもこれを持たせないようにするのがいいのかどうかという点につきましては、問題があるのではないだろうかというふうに考えておるところでございます。御意見の点はなおよく研究させていただきたいと思います。
  79. 和田春生

    ○和田(春)委員 その点検討をお願いいたしておきたいと思うのですけれども、日本で鉄砲を持ったレジャーなんというものはそう深甚な配慮をする必要はないわけでございまして、国民の中のごく一部の者なんです。それが犯罪に利用されるということは、先ほど言ったような理由で問題があると思いますから、その点はひとつしかと御検討をお願いしたいと思います。  それから同時に、こういう事件が起きた場合に、今度の場合は幸い乗客や乗り組み員にけがはございませんでした。しかし、あの状況で、犯人が極度の興奮状態におちいって、広島で逮捕されるまでに乗客や乗り組み員に発砲いたしておりますと、あるいは死傷者がさらにふえていたかもしれないという危険があるわけであります。こういう点を考えると、ややもすれば、犯人の人権を尊重することも必要でございますが、こういう人命をだしにした凶悪犯人に対しまして、やはり必要な場合には、そういう死傷者、無辜の善良な市民の死傷者を防ぐために、射殺をするというようなことが場合によれば必要である。こういう点についてあまり時間をもたもたしておりますと、取り返しのつかないおそれがある。そこで、一般に何回か公知をして、その状況がはっきりわかったというときに、人質をとって犯罪目的を達しようとしておるような場合には、これは射殺をするのも差しつかえないというような、はっきりした対策をとることが、事件を起こしてからの刑罪を重くするということよりも、船とか陸上とかのこういう事件に対しましては有効ではないかという気もするわけでありますが、その点はいかがでありますか。これはあらゆる犯罪について言っておるわけではございません。凶器を持って人命を脅かすことによって犯罪目的を達しようとしておるような場合には、そういうことをいたす必要がある、こういうことを考えておるわけでありますが、その点ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  80. 長谷川俊之

    長谷川説明員 先ほど御答弁を申し上げたわけでございますが、やはりこういう人質事件におきましては、まず第一に人質になっておる方の生命の安全を期するということが大事だと思うわけでございます。具体的な場合におきましては、人質の方の生命の安全は、九九・九%でなくて、一〇〇%安全である、かつ犯人を射殺する以外にほかにとるべき手段がない、この二つの条件が満たされるならば、私も先生のおっしゃるとおり、ちゅうちょすべきものではないというふうに考えます。今回の事件につきましても、警察庁長官としては、先ほど御答弁申し上げましたように、そういう趣旨を含めて指示をいたしておるところでございます。
  81. 和田春生

    ○和田(春)委員 これは船員局長にお伺いいたしたいと思うのですけれども、船でああいう事件が起きてまいりまして、飛行機の場合とは違うと思うのですけれども、従来は法律的には海難救助訓練というものが船の乗り組み員に義務づけられておるわけであります。しかし、ああいう犯罪が起きますと、類似のものがまた起きないとは限らないわけでありますが、少なくとも一定規模を持った旅客船、これからカーフェリー等も出てくるわけでございますけれども、こういうものの乗り組み員に対しましては、この種の事件に対する対応策というものがいままでほとんど皆無にひとしかったと言ってもいいと思うのですけれども、やはりそういう点は、一たん有事に備えまして、船舶の運航管理者あるいは船舶の乗り組み員、こういう者に対しての対応策についての事前の訓練、措置というようなものが必要に感ぜられますけれども、そういう点、積極的に行政指導の面でも行なってもらったらいかがか、こういうふうに思うわけですが、その点どうでしょう。
  82. 高林康一

    ○高林政府委員 お答え申し上げます。  現在、船員法の考え方といたしましては、そういう危険が存在いたします場合に、船長がその者に対するいろいろ制裁権を持つと同時に、必要な場合には行政庁に援助を求めるという考え方でやっておるわけでございます。ただ、先生御指摘のように、やはりこの種の事件についての対応ということについては、従来必ずしもはっきりした訓練なりものの考え方なりというものがなかったように思います。そういう点は、船主側、あるいはまた船員の関係団体、それらとまたよく打ち合わせをいたしまして、どのように具体的にそういう問題を考えていくか、検討を進めてまいりたいと思っておる次第でございます。
  83. 和田春生

    ○和田(春)委員 では最後に政務次官にお伺いいたします。  先般、日航機乗っ取りに関しまして、ハイジャック防止の法案が本国会で成立をいたしました。そのとき、船舶も入れるかどうかということがありまして、落とされた点は、先ほど説明のとおりの経緯であります。この点は、この前航空機が起こったからまず飛行機を対象にした、今度船舶が起こったから船舶を対象にする、今度自動車を利用した何か事件が起こればそれを対象にするという形でなしに、先ほど政務次官からもかなり思い切った御発言がございましたけれども、空であろうと、陸であろうと、海であろうと、あるいは旅館、ホテルの中であろうと、ともかく人質を取って犯罪をやるという者に対しては、場所や手段のいかんを問わず、これは厳罰にする、そういう立法体系を考える必要があるのではないか、こういう点について、運輸大臣の所管だけではございませんが、ひとつ政府を代表しているという意味におきまして、今後の善処とすみやかな対処をお願いをいたしたいと思いますが、次官からお答えいただきたいと思います。
  84. 山村新治郎

    山村政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、先般のいわゆる航空法の一部改正、このおりに、確かにこれは私からの発言でございましたが、船もひとつ入れたらというようなことを申しました。と申しますのは、実はこのよど号の機内におきまして赤軍派と称する犯人たちと一緒におりましたおりに、その犯人の口から船もやったらおもしろいじゃないかというような、ほんとうにこれは不謹慎なことばでございますが、そのような話が出たわけでございます。そこで、船の場合はということを私申したわけでございますが、それが今回まことにはからずもここに出てきてしまったような結果になってしまいました。しかし、そのおりも私はかなり強く申し上げたのですが、船の場合になると、いろいろどこまでが船舶になるかというような問題を含めて、これはかなりの日数を要するものではないか。そこで、そういうことで、この次には船のほうへ手がけていく。これはこの前話が出ましたが、船長の最後退船義務の問題をも含めましてどういうぐあいにするか。しかし、ただいま先生おっしゃいましたように、これは飛行機、船のみに限りませず、はっきり申しますれば、一般の乗りもの、またそのほか旅館。もちろん一般家庭の中におきましても、先日もございましたが、平和な家庭の中へ飛び込んで、その家族を人質にして自分の目的とする犯罪を行なおうとする、これらはほんとうに許してはならないことと思いますし、私は、今後、先生おっしゃいましたように、運輸省だけでできる問題ではありませんが、運輸省が皮切りとなりまして強力に推進して、この人質を取って、そして自分の安全をはかり、自分の目的とすることをしたいというような行動につきましては、厳罰をもってこれに当たるというように各方面に働きかけをしてまいりたい、そういうぐあいに考えております。
  85. 和田春生

    ○和田(春)委員 終わります。      ————◇—————
  86. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 この際、小委員会設置の件についておはかりいたします。  すなわち、小委員十名からなる海運に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長は、追って公報をもって指名いたします。      ————◇—————
  89. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 次に、閉会中審査に関する件についておはかりいたします。  すなわち、  陸運に関する件  海運に関する件  航空に関する件  日本国有鉄道の経営に関する件  港湾に関する件  海上保安に関する件  観光に関する件  気象に関する件  以上各件について、閉会中もなお調査を行なうことができますよう、議長に対し申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  90. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。  次に、閉会中の委員派遣承認申請についておはかりいたします。  ただいま議長に対し申し出ることに決しました閉会中審査案件が付託になり、その調査等のため委員を派遣する必要が生じた場合には、その調査事項、派遣委員、派遣期間、派遣地並びにその承認申請の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。  次に、おはかりいたします。  閉会中審査案件が付託になりました場合、先ほど設置されました海運に関する小委員会につきましては、閉会中もなおこれを設置し、調査を進めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、小委員、小委員長の選任、辞任補欠選任並びに小委員会において参考人から意見を聴取する必要が免じました場合には、その人選等所要の手続につきましても、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午前十一時四十七分散会