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1970-04-10 第63回国会 衆議院 運輸委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月十日(金曜日)    午前十時五十八分開議  出席委員    委員長 福井  勇君    理事 宇田 國榮君 理事 加藤 六月君    理事 徳安 實藏君 理事 箕輪  登君    理事 村山 達雄君 理事 内藤 良平君    理事 松本 忠助君 理事 和田 春生君       佐藤 孝行君    菅波  茂君       中村庸一郎君    西村 英一君       金丸 徳重君    田中 昭二君       宮井 泰良君    渡辺 武三君       田代 文久君    關谷 勝利君  出席国務大臣        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君  出席政府委員         運輸省自動車局         長       黒住 忠行君         運輸省自動車局         業務部長    見坊 力男君  委員外出席者         運輸省自動車局         業務部旅客課長 菅川  薫君         労働省労働基準         局監督課長   大坪健一郎君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 四月十日  理事宮井泰良君同日理事辞任につき、その補欠  として松本忠助君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  連合審査会開会に関する件  参考人出頭要求に関する件  タクシー業務適正化臨時措置法案内閣提出第  一〇三号)      ————◇—————
  2. 福井勇

    福井委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についておはかりいたします。  理事宮井泰良君から理事辞任いたしたい旨の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。
  3. 福井勇

    福井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  つきましては、その補欠選任をいたさなければなりませんが、これは先例によりまして、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  4. 福井勇

    福井委員長 御異議なしと認めます。それでは、松本忠助君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 福井勇

    福井委員長 タクシー業務適正化臨時措置法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑通告がありますので、順次これを許します。和田春生君。
  6. 和田春生

    和田(春)委員 このタクシー業務適正化臨時措置法案につきましては、いままでの質問等においてかなり明らかになった点がございますが、なお初めての試みでありますし、運用いかんによっては、当初の意図と反しまして、これ自体がかえって物議をかもすようなことにもなりかねませんので、なお、そういう点の疑問とするところを確認する意味におきまして、幾つかこの法案内容についてお伺いをし、あわせてタクシー業務正常化についての根本的な政府姿勢につきまして、あとから運輸大臣にお伺いをいたしたいと思います。  まず、法案内容、これは自動車局長でけっこうでございますが、運転者登録いたしましてある業者に雇われておったのが、現に雇用されているあるタクシー会社をやめた。そのときに、登録の消除を申請をするのは運転者自身であって、そこに雇い主は何ら介入をしないのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  7. 黒住忠行

    黒住政府委員 登録の消除でございますが、これは運転手のほうが申請をできるわけでございまして、雇用者のほうの承認とかそういうものは別に要しません。運転手みずからで申請ができるわけでございます。
  8. 和田春生

    和田(春)委員 そうすると、この運転者は、この会社をやめたい、どこかいい会社があれば就職をしたいとか、あるいは一時タクシー運転手をやめたい、こういうときに、当該会社辞表を出してやめましたと、そういう行為をとれば、その辞表なら辞表の写しをつけて登録の消除を申請すればそれで足りる、こういうことになりますか。
  9. 黒住忠行

    黒住政府委員 さようでございます。
  10. 和田春生

    和田(春)委員 その場合、この条文で見ますと、「その登録を消除しなければならない。」こういうふうになっておりますけれども、この「その登録」というのは、登録そのものを取り消すということではなくて、あるタクシー会社、AならAなるタクシー会社に雇われておったその雇用主事項だけを消除する、こういうことでございますか。その点を確認したいと思います。
  11. 黒住忠行

    黒住政府委員 ある会社をやめましてほかの会社に移る場合、それから運転手をやめてしまわないような場合におきましては、第八条の変更届け出でございまして、第八条に、次に掲げる場合には、運輸大臣届け出をしなければならないと  いうことでございます。その内容につきましては、五条の第二項に、運転手の雇用されているタクシー事業者氏名とか名称とか、こういうものがございます。それには、雇用されないという変更届け出をする、あるいは今度はそれをやめまして、次に甲という会社から乙という会社に移る場合におきましては、乙という会社雇用契約書あるいは雇用予約書を持ってくれば、それも変更することができます。
  12. 和田春生

    和田(春)委員 私の伺っていることはちょっと違うわけです。Aのタクシー会社からBのタクシー会社に移ったという場合には、雇用者変更になるわけですね。そうではなくて、Aのタクシー会社を一時やめた。しかし、うちで少し休んでいる場合もありましょうし、どこかいい会社がないかなと思うこともある、あるいは自家用の運転手にでもなろうと思ったけれども、いい口がなかったので、またもう一ぺんタクシー運転手になりたい、いわゆる日雇いではなくて、本人の職業選択の自由に基づいてそういう場合があり得るわけです。そこで、AからBへ移るのでなくて、Aのタクシー会社をやめた場合にどうなるかということを聞いているわけです。そうすると、その雇い主の点だけを消除するのか、登録そのものを取り消すことになるのか、登録は残っている、そういうことになるのか、その点を確認しているわけです。
  13. 黒住忠行

    黒住政府委員 第十条の第一項第三号でございまして、相手方の事業者名前だけがなくなるわけでございまして、登録は一定の運輸省令で定める期間、これに約二年間という予定にいたしておりますが、継続するわけでございます。
  14. 和田春生

    和田(春)委員 それではっきりいたしましたが、そうなりますと、いまおっしゃった二年間の期間登録は残っておる。したがって、その期間内に別のタクシー会社に雇われたという場合には、そのタクシー会社名前登録の上に記載をされる。したがって、この登録を消除するというようなことが、雇い主権力によって不当に、人身売買というと言い過ぎでございましょうけれども、運転者を拘束するおそれはない、このことを確認してよろしゅうございますね。
  15. 黒住忠行

    黒住政府委員 いま先生がおっしゃるとおりでございまして、雇用事業者でもって運転手の移動の制限その他はできないというふうに考えます。
  16. 和田春生

    和田(春)委員 それでは次にお伺いをいたしますが、登録運転者登録運転者証が交付されることになっております。ところが、いろいろなこういう機会に悪い例もあるわけでございまして、大方業者並びに大方運転手というのはまじめにやっておるわけでございますけれども、業者運転者ともにやはりたちの悪いものもいるわけなんです。そういう場合に、結託をするというか、偽装をして、そういう登録運転者証を受け取って、それが転々として日雇い運転者に悪用される、そういうことになると、せっかくの登録が無意味になるわけでございますが、運転者証というものはだれに渡されるのか、またその渡された運転者証は、そういう悪用され左いというような明確な表示か何かがあるのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  17. 黒住忠行

    黒住政府委員 運転者証は、第十四条によりまして、「タクシー事業者申請により、当該登録運転者に係る運転者証を交付する。」ということでございまして、事業者に交付するわけでございます。  それから運転者証には、これは第十五条によりまして記載事項の訂正というようなことがございますが、記載事項につきましては、これは省令でもって決定をいたす予定にいたしておりますが、氏名とか事業者名前、それから第二種免許の有効期限、それから登録番号または運転者証番号、それから写真もこれに一緒に掲載をいたすことにいたしておりまして、いまのような悪用はできないと思いますし、かりにこれを悪用いたしますと、この法令に対する違反になりますから、適当なる罰則その他がかかるわけでございます。
  18. 和田春生

    和田(春)委員 それではその登録運転者証を実際自分が雇われている会社と違う事業主の車に持っていって使った場合には一日りょう然である、そういう形につくられるということでありますか。
  19. 黒住忠行

    黒住政府委員 省令によりまして、先ほど申し上げましたように、具体的詳細に規定をいたす予定にいたしておりますので、一日りょう然にわかるようにいたしたいと思います。
  20. 和田春生

    和田(春)委員 そういたしますと、このタクシー業務適正化臨時措置法案によって、いわゆる業者としてはなはだ責任を持ちにくいような、俗にいう日雇いあるいは渡りものの運転手、本来タクシーというような業務に従事するのは好ましくない、そういうものが締め出される、そういうことが担保されることになるわけでございますが、そういう悪質な意図を持っていなくても、この前の委員会でも質問になっておりましたけれども、労務供給事業という形で、日雇いの形態になっているという運転手もおるわけでありますけれども、そういう悪質であるかないかは問わず、いわゆる日雇い形式運転手、ごく短期間において業者転々とする運転手というのは、この登録実施によって締め出される、それは認められないことになる、こういうふうに確認してよろしゅうございますか
  21. 黒住忠行

    黒住政府委員 登録につきましては、雇用契約書によりましてこれをチェックして登録するわけでございますから、二重に転々と雇われるというふうなことはチェックできます。さらに省令でもって禁止されております者は、「日日雇い入れられる者」とか、「二月以内の期間を定めて使用される者」とか、「試み使用期間中の者」とか、「十四日未満の期間ごとに賃金の支払いを受ける者」と規定されておるわけでございまして、登録申請を見まして雇用契約その他をチェックすれば、これらは従来とは違いまして、完全に実施されるものと思っております。
  22. 和田春生

    和田(春)委員 その場合の政府としての解釈は、この臨時措置法がなくても従来からそれがたてまえとしては認められていなかったのであるが、この臨時措置法案においてそれの実施が保障されることになるという解釈であるのか、従来は日雇い的なものは事実上認めておったが、この臨時措置法案においてそれが認められなくなるという解釈なのか、その辺をお伺いしておきたいと思います。
  23. 黒住忠行

    黒住政府委員 従来から日雇いは禁止されておったわけでございまして、臨時監査の場合等におきましてこれをチェックしたわけでございますが、犯罪捜査的な監査はわれわれのほうではやれないわけでございますので、一応帳簿その他を見まして調べるわけでございますけれども、なかなか真実が発見できないきりいがございました。したがいまして、われわれとしましては、どの程度そういうものがあるかにつきましては、従来明確なる資料はなかったわけでございまして、極力臨店の場合等におきましては調査をいたしておりましたけれども、おそらく書類上の表面と実質というものが伴っていなかったような例があるのではないかと思います。今後におきましては、それらを登録の場合におきましてチェックするわけでございますので、そういうふうなことはないように実施できるものと思っております。
  24. 和田春生

    和田(春)委員 次に、近代化センター登録仕事をやらせるわけでございますが、同時に、業者は、伝えられるところによりますと、会社の場合には三万円、個人タクシーの場合には六千円ですかの負担金を納めることになっておりまして、月々これだけの費用負担をするという形になりますと、かなりの負担になるために、たとえば納付を怠る、こういうことが行なわれるようになると思うわけです。これについては、三十七条の第八項によりまして、運輸大臣納付義務者に対して適正化事業実施機関負担金あるいは延滞金納付すべきことを命ずることができる、こういうふうになっているわけでございますけれども、この行政権力の行使として負担金納付すべきことを命ずるというその金額は、三万円なら三万円の全額であるのか、あるいはそのうちの部分になるのかということを確かめたいと思うのです、なぜならば、三万円という負担金については、運転者登録という業務だけではなくて、そのほかに適正化事業実施機関がいろいろな事業をやることになっている、それの費用を含めての負担金であるわけですが、その点の限界というものをお伺いしたいと思います。
  25. 黒住忠行

    黒住政府委員 三十七条に強制徴収規定がございます。ただ、適正化事業実施機関が取ります金は、強制的な性格の金と、そうではない金がございますので、性格上強制的に取りますものは第三十四条にありますが、三十四条一項に列挙いたしておりますところの一号から五号に関する金につきましては、これは適正化事業実施機関が行なう事業でございますので、これに要する金につきましては強制徴収負担金となるわけでございます。それにつきましては、三十七条に負担金徴収規定がございまして、規則上納付書によりまして納付していただくわけでございますが、かりにこれが納付されない場合におきましては、督促状を発しまして第四項によって督促をする。それにつきましては、さらにおくれた場合においては延滞金を徴収するというわけでございます。そのような方法でもって負担金を徴収するわけであります。
  26. 和田春生

    和田(春)委員 延滞金の点は、非常にはっきりしておるからお伺いしておるわけじゃございませんので、この適正化事業実施機関が徴収する負担金について、そのきめられた負担金全額であるのか、あるいはこの法律において実施することが義務づけられている仕事範囲内についてなのか、その点を明確にしていただきたいということをお伺いしておるわけです。これは法律的な問題やいざこざの起こる種になりますので、お伺いをしておるわけであります。
  27. 黒住忠行

    黒住政府委員 ただいま申し上げました第三十四条一項の一号から五号に規定いたしておりますところの仕事に相当する金につきましては、負担金として強制徴収対象になります。それで、現在の数字から申しますと、たとえば三万円の場合におきましては、二万円ないし二万五千円程度のものがその対象になると思っております。
  28. 和田春生

    和田(春)委員 その点、大体はっきりしてきたわけでございますけれども、三十四条の一号から五号までありましても、その事業実施機関管理運営施設等が適当でない、そのために、金を使ったけれども事実上遊休施設になるとか、あるいは非常に不適当で利用されないとか、そのために実施機関費用が余分にかかるというような、実施機関運営そのものの欠陥、ないしはその姿勢から生ずる損失、ないしは負担の増大というようなものが、この規定によって負担金を納める裏にかけられて、そして各業者個人タクシー運転手負担が強制されるという形になると、たいへん問題になると考えられます。この点については、もし負担金を納めない場合には納めろということを運輸大臣が命令をするわけです。それに違反すると、タクシー事業ができないというような、認可の取り消しにまで及ぶことでありますから、特段に慎重で厳密な運営並びに監督を行なわれるように、強くこれは要望をいたしておきたいと考えるわけであります。  これは要望といたしまして、次に、この事業実施機関運営につきまして諮問委員会が設けられる。これにはタクシー運転者が組織する団体が推薦する者を入れることになっております。現実に運転者が組織する団体には、系統の違った、色合いの違った労働団体幾つかあるわけでございます。この場合、人選が片寄りますと、この事業実施機関そのものの権威というものが、そのときから非常に否定されるような結果にもなりかねないわけでございますが、その点の選任については、そういう労働団体色合いの違い、系統の違いというものも十分に配慮して人選をされるおつもりであるかどうか、お伺いしたいと思います。
  29. 黒住忠行

    黒住政府委員 適正化事業諮問委員会は、第三十九条に規定いたしておりまして、その第三項におきまして、「タクシー事業者が組織する団体が推薦する者」と「タクシー運転者が組織する団体が推薦する者」、それから学識経験者、それから利用者というふうな四者構成になっております。その中で、「運転者が組織する団体が推薦する者」というものがございます。これにつきましては、いま先生御指摘のように、現在の東京、大阪の運転手にはいろいろの団体がございまして、大別すれば、おおむね三つくらいに分かれるんじゃないかと思います。それで、われわれといたしましては、それらの各団体の御意見を聞きまして、ここで「団体が推薦する者」とありますので、十分それらの意見を聞いて、尊重いたしまして人選をやるというふうに考えております。
  30. 和田春生

    和田(春)委員 それでは最後に、この罰則関係をするというか、そういう問題について、二点だけお伺いをいたしたいと思います。  運転者登録を取り消されると、タクシー運転者としては死刑の宣告を受けるのと同じようなことになるわけでございますが、第九条の第一項第二号に「自動車運転者職務に関して著しく不適当な行為」という条文があります。この点は前の委員会でもいろいろ質問がされまして、どうも具体的にはっきりいたしませんが、九条の第一項の一号があって、二号がそこにある。「運転者職務に関して著しく不適当な行為」というものが、不当に解釈され、利用されますと、運転者としては非常に困る。また不安を持っております。その点についてかなりこの法案に不安があるようですが、ひとつこういうことなんだということがわかるように、具体的なものを二つか三つ明示していただいて、その点について当局の見解を明らかにしていただきたいと思います。
  31. 黒住忠行

    黒住政府委員 第九条の第一の第一号は、道路運送法関係のものでありまして、乗車拒否だとかその他のものでございます。第二号は、そういう直接道路運送法関係のものではございませんで、「職務に関して著しく不適当な行為」でございます。たとえば、証券取引法等にも規定がございますが、今回の場合におきましては、まず第一に、乗客に対する行為として、乗客に対する傷害とか殺人だとか強制わいせつ、あるいは強姦であるとか強盗、脅迫、そういうふうな類の刑法犯でございます。その他、運転自体につきましては、ひき逃げをしたというふうなことが明白であるような場合におきましては、著しく不適当な行為になります。
  32. 和田春生

    和田(春)委員 そういたしますと、そういう刑法事犯に類するような問題は、刑法によって処罰されるということ以前においても、そういう事実があれば、この第九条第一項第二号によって登録取り消しを行なうことができる、そういう道を開いているわけであって、著しく不適当なというのは、おおむね自動車運転中ないしは自動車内部において刑法にひっかかるような犯罪行為、その範囲内であるというふうに解釈してよろしいわけですか。
  33. 黒住忠行

    黒住政府委員 先ほど申し上げましたような行為につきましては、われわれのほうの機関でもって直接に把握するということはほとんど例外でございまして、警察のほうでこういう事犯は検挙されるわけでございます。したがいまして、そっちのほうの通告を得まして、これが明白になってくるわけでございます。その場合における取り調べ等は、こういう事犯が起こりますと、おそらく警察のほうで身柄の拘束をして取り調べるということでございますから、われわれのほうは、それからの通報を待ちまして処理するという順序になるかと思います。本件につきましては、十分運用につきましては警察庁とも連絡を密にいたしまして、運用に誤りがないようにしたいというふうに相なっております。
  34. 和田春生

    和田(春)委員 それではもう一点だけお伺いいたします。  第五十九条によりますと、運転者違反行為をやる。たとえば、乗客を乗せてはいけないという場所で乗客を乗せたというようなときには、その運転者、つまり行為をした者だけではなく、「その法人又は人に対しても、各本条罰金刑を科する。」というふうになっておるわけでございますが、これはいままでしぱしば、運転者にはその意図がないにかかわらず、業者の強要により、あるいは誘導によりまして、違反行為をあえてするという事例も報告されておりますので、そういう場合には業者自体責任をとるという意味で設けられている罰則規定であると思うのでありますけれども、業者善意において努力をして、運転者に適切な指示を与えているにもかかわらず、その運転者自体違反行為であるという場合に、第五十九条の条文だけを見ますと、法人または人、つまり使用者に対しても本条罰金刑が当然科せられるというふうにも読めるわけでございますけれども、そうなると、善意で努力している業者にとってはなはだ迷惑なことになるわけですが、その点はどういうふうに解釈をし、運用されますか、確認をいたしたいと思います。
  35. 黒住忠行

    黒住政府委員 この五十九条は、いわゆる両罰規定でありますが、両罰規定の場合に、たとえば道路運送法百三十二条におきましてはただし書きがありまして、「相当の注意及び監督が尽されたことの証明があったときは、その法人又は人については、この限りでない。」というただし書きがついておるわけでございますが、今回の法律にはそれがついておりません。これは昭和二十五年から二十八年までの間に制定された法律においては、この両罰規定ただし書きをつけるのが通例であったわけでございますが、現在の立法例におきましては、そのただし書きをつけないことが通例でございます。それは昭和三十二年十一月二十七日の最高裁大法廷の判例がありまして、両罰規定は、事業主として行為者らの監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽くさなかった、過失の存在を推定した規定と解すべきであるということであります。このただし書きがなくても、適当な注意監督をしておけばこの両罰規定はかからないという判例がございます。そうしてまた、本件立法につきましても、ただいま御説明申し上げましたように、最近の立法例昭和二十五年から二十八年までの立法例と違いまして、ただし書きをつけなくてもつけたものと同じように解釈してしかるべきであるというふうなことで、今回の法律にはそのただし書きをつけなかった次第でございます。
  36. 和田春生

    和田(春)委員 それではただし書きがなくても、いま言ったような善意でやっている者が巻き添えを食うという心配はないというふうに厳密に運用される、そうである、そうでないだけでけっこうでありますから、もう一度はっきりお答えいただきたいと思います。
  37. 黒住忠行

    黒住政府委員 そうでございます。
  38. 和田春生

    和田(春)委員 それでは法文そのものに対する質問は以上で終わりまして、たいへんおそくなりまして、運輸大臣には恐縮でございます。このタクシー業務適正化ということをねらいにして臨時措置法ができたわけでありますが、これはあくまでも臨時措置法という形になっておりますが、本来の目的は業務適正化にあると思いますので、その点について運輸大臣の所見をお伺いしたいと思います。  それでは具体的に申し上げてお伺いしたいと思うのでありますが、現在大都市におきまして乗車拒否が起こるとか、運転手の極端な客選びが行なわれるとか————もちろん刑法犯罪にかかるような悪質運転手は論外でございますけれども、いま言ったようなことが非常に問題にされ、世論から追及をされておるわけであります。この点について、もっぱら世論の動向は、乗客被害者ですから、タクシー業者並びに運転者の諸君が加害者で、悪者にされているという傾向が非常に強いわけですね。私自身タクシーを利用し走ってみた実感からいきますと、現在のタクシー自体の料金体系、そのために、このように非常に交通が渋滞をしてきたし、自動車の量が飛躍的にふえてきて、道路事情が追いついていけないというので、大都会に不適当なものがあるのではないかということを感じました。それを補正する手段として、たとえば、今回若干の料金の引き上げに加えまして、時間制メーターの併用も行なわれております。これは確かに一つの方法だと思いますけれども、時間制メーターが併用されると、一定の距離を走るのに、着いてみなければ一体幾ら運賃がかかるのか、幾ら料金を払えばいいのかということがはっきりしない。見当がつきにくい。運転手に聞いてみても、さあ走ってみなければわかりませんと答えざるを得ない。大体ここら辺でしようといってみたところが、予想以上に時間がかかると、料金が高くつく。それが百円、二百円のことでも、乗客との間にたいへんトラブルを起こす。そういうことになりますと、できるだけトラブルがあるところは避けて、そして収入をあげないことには、業者にとっても運転手にとっても困るということになるわけでございます。これは単に歩合給が存在するということだけではなくて、運賃収入が上がらなければ会社自体がまいるわけです。固定給であっても運転手がやっていけなくなるわけですから、やはり収入を上げなくてはいけない。そういたしますと、従来の基本料金が最初百円で、走行キロ数に応じてメーターが上がっていくという仕組みは、大体正常にほとんどの場合車が走れるということを前提にした運賃体系ではないのか。たとえば東京では、改定前は最初の倒しの運賃が百円で、二キロまでとなっておりました。今度はこれが百三十円になった。そういうふうにすることも、数字がいいか悪いかは別でございますが、倒しでメーターが二百円なら二百円出る、そのかわり、たとえばキロ数は二キロを三キロに延ばすか、三・五キロに延ばすか、その辺は計算でございますけれども、都内あるいは都心部の一定の範囲内においては、距離の長短にかかわらず大体一定の料金で走れる、こういう形にすれば、かなり事態は改善されるのではなかろうか。値上げがけしかるとかけしからぬとか、業者がもうかるとか利用者がどうとかいう感情を抜きにして、冷静に今日の都市事情というものを考えてみますと、そういうことが必要ではなかろうかという気がするわけです。運賃値上げ前におきましても、長距離のタクシーを頼んだときに、私自身の経験でも、もう時間がなくて交代で帰る場合とか、ほんとうにやむを得ない事情のある場合以外は、断わられたためしは一度もありません。むしろ東京に行くと言うと喜んで乗せてくれる。料金を値上げする前でもそういう傾向が強かった。そういうことを考えると、すいすい走れる長距離については値上げということについて特段の重点を置かなくても、都心部の渋滞地域における料金体系そのものに根本的にメスを入れる必要があるように思うのです。かなり世論の批判を浴びて運賃の値上げをしたばかりでありまして、それをさらにいじるという朝令暮改は許されぬでしようけれども、今後こういう形を続けておったのでは、いつの場合でも、善良に努力しようとする運転手や業界もひっくるめて悪者にばかりされておって、一つも事態は改善されない。相変わらず乗車拒否客選びというものが進むという事態は、運輸省当局がどれだけ強調されても残ると思うわけです。そういう点につきまして、運輸行政を担当している大臣といたしまして、大胆率直に今後の改善について、この法律に頼るだけではなく、いまのような料金体系に対するメス入れも含めまして、所見をお伺いいたしたい、こう考えるわけであります。
  39. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 最初のタクシー業務適正化、この法案の目的は、だんだんと皆さんの御質疑で御了解願ったように、最大の目的は、やっぱり研修といいますか、運転手の特性その他を含めた————もちろんこれは技術のこともありましようけれども、それらを含めた一つの人間教育をやっていこうということが第一。第二は、御承知のように登録制度。人間の特性はいろいろありますから、できるだけりっぱな運転手タクシー運転手として使っていくための登録制度。それに違反した場合にはこれをのける。これが第二の目的でしよう。第三は、かような神経を使い、かつまた都市交通等に従事する者の環境を考えてやろう。いわゆる休養施設、この休養施設につきましても、あるいは遠く保養的な施設も考えたらいいと思いますが、この三点がねらいで、特に第一と第二がねらいであります。  しかし、この臨時措置法によって乗車拒否か絶対になくなることを運輸大臣保証できるかといいますと、これは人間の特性がからんでおりますから、最大限の努力をいたしましても、完全にこれを防ぐということはむずかしい問題が残ろうと思います。しかし、何歩でも前進すれぱ法律目的は達成するわけでありますから、無理のないように————ただいま和田委員からいろいろこまかい点の適切なる御質問がありましたが、この適切なる御意見の中で、無理に行なうことによっていろんな障害が逆に起こる心配がある、かような御注意はごもっともだと思います。私もその点は心配しております。したがって、いわゆる社会の調和といいますか、そういうものは一つの単なる形容じゃありませんから、そういう意味において、和田さんのようなお考えのもとにこれを運用していきたい、こう考えております。  そこで、これらの問題をひっくるめまして第三の問題として問題にされましたのは、いまのようなめんどうな料金制度よりは、一定区域間を均一料金で走る、金額は幾らにするにいたしましても、そのほうがかえっていいのではないかという御意見であります。私も実は、この法案ができます前に、なかなかめんどうじゃないか。アイドルタイムでいきましても、夜間時間というものでも、お客さんのほうから見れば、めんどうなことはあまり好ましくない。しかし、法律ということになりますと、あるいは規定ということになりますと、何かそこに合理的な根拠がないと定めにくいのです。そういうことから、業者あるいは学識経験者その他各般の意見を集めて、そしてでき上がったのがあの料金だろうと思うのです。したがって、この料金制度の改正が完全なものであるとわれわれは考えてはおりませんが、いまお話がありましたように、せっかく各方面の意見を聴取して、この辺でやってみよう、ある程度の収入も確保できるのではないか、かつまた、運転者にしても労働条件に比例して一定収入を得ることができるだろうというので、でき上がった料金改正であります。いまおっしゃるように、朝令暮改はできまいという御親切な御意見ですが、そのとおりです。一年なりあるいは二年なりこういう状況で実施した上において、やはりこれは考えるべき事態が出てくるかもしれませんけれども、ただ問題は、先ほどお話があったように、交通事情が変わったんだということです。アイドルタイムというものは、実際はタクシーにとっては迷惑千万で被害者です。しかし、乗客のほうから見れば、おれはちょっとそこまで行くんだ、それに対して二百円だということでも困る。二百円とか百五十円とか金額は別にして、従来の倍あるいは三倍とられる。しかし、相当の距離まで行けば従来より安くなるというもののとり方が出てまいりますので、日本人というものは、案外合理主義者的な考え方をするのです。その点法律がたくさん出ることになる。こういう意味で、もちろん一つの御意見として尊重すべきではありますが、一応これを実施しまして、その結果によって、どういう形で改正する必要があるかどうか、あるいはこれがまあまあみんなに納得されて、いろいろ不満があるにしても、これ以上方法がないかもしれない、こういうところに落ちつくか、これらの実施を見た上で考えるべき点が出てまいりますれば、もちろん、これは積極的に考え直す必要が出てくるような、」とであれば、勇気を持ってこれを処理する。やったんだから五年か六年やってみよう、かようなことは乗客利用者にとっても御迷惑でありますから、やった上で、これはどうしてももう一度考え直す、必要があるという事態が起きれば、もちろんこれは率先取り上げて検討することはやぶさかではありません。しかし、まだ一カ月か一カ月半でございますから、もう少し情勢を見てみたい、かように考えております。
  40. 和田春生

    和田(春)委員 重ねてお伺いいたしますが、大臣がおっしゃいましたように、人間教育であるとか、あるいは環境の整備であるとか、いろいろな点で、立法の上においてもあるいはその他行政指導の面でも、手段を尽くすということはたいへん大切だと思います。その努力は否定する気持ちは毛頭ございません。しかし、こういうことを私が考えたというのは、実は私自身がオーナードライバーで約八年間の経験があるわけです。完全無事故できておるわけです。都内をずっと走っておりまして、この七、八年間における事情の急変というのはたいへんなものがあるのです。タクシーに乗ったとき考えてみますと、これほど人間をぜいたくに使う輸送機関はないわけであります。一人の人間が乗ったときに、一人の運転者をちゃんとそこへつけておるわけですね。ドアをあけさせて、自分をどこかに運ばせて、そしておろさせるという、一人の客に一人の運転者を使っているということになると、今日非常に労働力の不足の時代に、これはある意味でたいへんぜいたくな輸送手段であるということもいえるわけなんです。ところが、そういうことにふさわしくない労働条件なり、あるいは運行の環境が出てきておるものですから、なかなか運転者になりたがらない。やっても逃げ出してしまう。そうすると、結局質の悪い者が集まってくる。そういう悪循環があるように思うわけです。その点において、やはりある程度誇りを持って仕事ができる、そこまで大げさに言わなくとも、環境をつくっていくということが、いろいろな立法なり行政指導の手段を成功させる根本において必要なのではないかというふうに考えまして、タクシーに乗った際に、いろいろ運転者の皆さんにも話しかけて聞いてみるわけです。やはりそういう悩みも非常に訴えておるわけですね。そういう点を考えると、運賃値上げという形で問題を議論しますから、世論の反撃を浴びる。そして、上げたけれども一つもよくならぬではないかという非難攻撃が依然続く。続くばかりではなく、さらにエスカレートしていくという形になると思うのです。運賃を上げなければにっちもさっちもいかぬという事態が目の前にきてから、ああでもない、こうでもないという議論をするのではなくて、この際、交通事情が根本的に変わったということをたてまえにして、いまから運賃体系そのものを————人を乗せて走ってかせぐという観念に非常にウエートが置かれている運賃体系だと思うのですけれども、そういう点を抜本的にメスを入れていくということが必要であるように痛感をしているわけです。どろなわでなしに、ひとつ時間をかけて、運輸省の十分な指導とイニシアチブのもとに公害局長公害局長業者運転者ももちろんでありますが、利用者も気持ちよく利用させるということであるならば、今日の経済発露の中で、ある程度負担増は、値上げという観念で受けとめないと思う。一つもよくならないのに値段ばかり上がるからけしからぬ、こういうことになる傾向が強いように思いますので、特段の御配慮を重ねてお願いして、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  41. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 御意見ごもっともであります。それで、私もタクシーによく乗るのです。それから外国でも、めったに私は行きませんけれども、向こうで、パリなりロンドンでタクシーに乗りますと、彼らは一つの誇りといいますか、きちんとした態度でわれわれをタクシーに乗せてくれるわけです。一つには、日本の社会環境といいますか、慣習、これがだいぶ違うのですね。外国では、弁当持ってこいとかどんぶり持ってこい、そんなことはないのですね。日本では、そば一ぱいでも配達をさせる。いわゆる必要以上、不必要な個人サービスというものを要求する。その面では日本の社会は非近代的社会かもしれません。こういうわれわれの生活環境、生活慣習というものが、やはり近代化されたタクシー業あるいは自動車といいますか、そういうものに同じような影響力と考え方を持ってきておる。最近は配達料を特に取ったりするような傾向があるようですが、特別に配達料を取るのではなくて、そういうものは食堂に行って食うべきだ。外国はみなそうですね。それをどんぶり一ぱいでも配達させる、新聞も配達させる。外国で新聞を配達するところはないですよ。こういう社会慣習、いわゆる非近代的な慣習を、もう近代国家になってきたのですから、これはお互いが考えていかなければならぬ。そういう影響力、そういうものの考え方か、やはりタクシー事業にあるということですね。したがって、和田さんも外国にはたびたび行っていらっしゃるようですが、とにかくパリならパリ、あれだけの観光大都市に、タクシーといえばそんなにたくさん日本のようにないのです。タクシーというものは緊急必要なるものが主として使う。あとはオーナードライバーもしくは地下鉄というような軌道にたよっておる。ところが、日本ではタクシーの使い方が、軌道、バス、電車と全く同じような使い方をしようとする。でありますから、いま和田さんがおっしゃったように、ある程度ほかから見れば高いという賃金を料金として得てよいかどうかということになると、そういうものの考え方が変わってこないと、やはり反発を受けるのではないか。しかし、非常な貴重な御意見でありますから、今後この問題に取り組む際には、それらを含めまして、いわゆるタクシーのあり方あるいはハイヤーのあり方、こういうものをひとつそれらの関連性において十分検討して、近代的なあり方、さようなものを考えていきたい、かように考えております。
  42. 和田春生

    和田(春)委員 終わります。
  43. 福井勇

    福井委員長 次に松本忠助君。
  44. 松本忠助

    松本(忠)委員 タクシー業務適正化臨時措置法案につきまして、若干お伺いしたいわけでございます。私が海外旅行をしておりましたために、本法案につきまして関係同僚議員諸氏が数回にわたって質疑をされたわけでございましょうが、その内容につきまして会議録によって詳細に知り得ないので、重複する点があろうかと思いますが、その点は御了承を願いたいと思うわけでございます。  大臣にまず伺いたいわけでありますが、提案理由の中で、「タクシー事業利用者の利便の確保に資するため、当分の間、」とございます。この当分の間というのは、大臣の腹づもりとして、どのくらいの期間を当分の間としてお考えになっておるのか。
  45. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 臨時措置法というようなことばになっておりますから、十年、二十年という長い期間でもない。まあ十年以内といいますか、そんなところが見当である。できれば四、五年でも必要がなくなれば————要するに、いい業者ができ、いい運転手ができるようになれば、その必要はないだろう、こういうところに置いておるわけであります。ただ、運転手のいわゆる休養とか保養とか、あるいは待遇改善とか、こういうものは、この法律のいかんにかかわらず、別な事業団みたいなものができるわけでありますから、そういうものによってやはりある程度相当続けていかれるのではないかと思いますが、ここでいう法律できめましたことはそう何も半永久的なものではない。お互いを規制するような法律はないほうがいいのですから、ある程度業者も、また運転手のほうもだんだんとよくなれば、やはり窮屈なものは、よろいかぶとは着てないほうがいいということから、自由にするのが自由主義社会のあり方ですから、なるべく早くさようにしたいと思っております。特にこの問題は、業者を保護する法律というよりは、善良なる運転手あるいは一般の運転手、こういう者に対してできるだけ保護する、そういうものの考え方を持っておる。これは二、三の悪い運転手のために全部の人が誤解される例のないようにしたいというところに主眼がある、かように心考えおき願いたいと思います。
  46. 松本忠助

    松本(忠)委員 私も、いま大臣が言われるように、そう思うわけであります。すべての運転手さんが悪いわけではないのであります。一部の限られた悪い運転手さんのために、善良な数多くの運転手さんがこの法律によっていろいろと制約を受ける、また負担金を徴収される、こういうことになるということは、長い期間それが続くということは好ましいことではないと思う。言うならば、先ほども和田議員の質問に対して大臣が答えられましたように、乗車拒否というような問題、大きく世の非難を浴びた問題がございます。これらが解決されればこういうものは必要ない、そう思うわけでございますが、当分の間というものは、十年なんという長い期間にわたるようでは、私は非常に残念だと思うわけであります。こういう問題をすみやかに解決し、すべての善良な運転手さんが保護され、そしてまた楽しい仕事につけるようにこの法律運用してもらいたい。かつまた、タクシー利用者の利便の確保ということが冒頭に書かれておるのでございますから、そのためには、本来言えば、利用者の利便をはかるためならば、当分の間ということよりも、むしろそれかずっと長い期間続くのが当然ではなかろうかというふうにも考えられるというところから、いま特にお聞きしたわけでございます。大臣のお考えは、大体十年以内でこの問題の解決を完全になし得るというふうに理解してよろしゅうございますか。
  47. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 法案それ自体の改正は十年以内、できれば五、六年くらいで片づけたい。そのくらいに業者運転手さんもがんばってもらう。私、せんだって値上げの直前でしたが、いろいろ値上げの問題もありますから乗ってみたのです。そのときに、私のうちに行くのに、Uターンするような、逆に遠回りをするコースに乗ったわけです。そのときに、運転手さんは、もちろん私が大臣とは知らぬですよ。向こうは一般乗客だと思っている。私はあっちのほうに帰るけれども、別な道路を通って営業所からずっと戻ることになる。そうなりますと料金が高くなりますがよろしゅう公害局長と言う。いや、私はちょっと途中で寄るかもしれぬからけっこうだ、こう言って乗ってみたのですが、その運転手さんは、そうですが、それならばけっこうですというような態度であった。和田さんも、先ほど自分も乗車拒否にあったことがないということですが、私も、何十回、何百回か乗っておりますが、この半年以来、その間そういうことにあったこともない。ですから、いまおっしゃったように、そういう好ましくない運転手は非常に数が少ないのではないかということと、あるいはまた運転手さんの説明が足らぬ場合もあるというようなこともあったり何かして、誤解が起きたんだろうと思います。したがって、私は、この法律を長く置いて窮屈な思いをさせる必要はない、かように考えております。
  48. 松本忠助

    松本(忠)委員 大臣が、いま御要求もあったようでございますので、もう一問だけお答え願って、席をかわっていただいてけっこうでございます。  そのことは、実は私もロンドンでタクシーに試乗いたしまして見てまいりました。ロンドンのタクシー運転手は、上着の胸のところに登録番号をしるされた金属のバッジ、約五センチくらいのバッジに番号が入ったものをつけております。そのバッジは、御承知かとも思うのでございますが、免許証とこのバッジの携帯があって初めて営業が許可されている。今回この法律によりますと、日本では当該タクシーに表示する、こうなっております。私は、からだにつけさせたほうがよろしいのではなかろうか、こう思うのです。表示する場所というのが、大体どこに表示するお考えなのか、まだ具体的に伺っておりませんが、たとえばフロントガラスにその表示をするとか、あるいはタクシーの車内に表示するとか、いろいろ方法はあると思うのでございますけれども、できるならば、タクシー運転手さんの胸のような見やすい場所につける、このほうがはっきりするのではなかろうか。この点をひとつお考え願いたい。  それからもう一点は、運転者責任を明確にするために、現在の車体の左側にナンバープレートを大きく書いてはどうかと思うのです。現在だと、乗客番号を見るのには、わざわざうしろに回らなければナンバープレートを見ることができません。乗車拒否をされて、車が行ってしまうそのときに、初めて何番であるということを確認できる。こういうことなので、できるならば、車の左側に大きくそのナンバープレートを書いてはどうか。これは提案でありますけれども、こうすることによって乗車拒否を少なくすることができるのではなかろうか、こう思うわけでございます。  それからもう一点、個人タクシーが最近非常にいい評判を得ております。たいへんけっこうなことだと思うのでございますけれども、現在の日本の個人タクシーというものは、自分の好きなときだけ稼動するわけです。何ら制限がないわけです。制約を受けていない。そこで、公共性を持つタクシーである以上は、何らかの方法をもって、地域のグループごとに分けるなりして営業時間を割り当てて、そうして個人タクシーの稼働時間を制約してはどうか。それでないと、個人タクシーというのは、自分の好きなときにかってに————極端にいえば、夜だけ走りたいという人も中にはあるかもしれません。しかし、おおむね昼間はやって、夜はやらない、これが多いわけであります。そういう点から考えまして、個人タクシーの営業時間の割り当てということをぜひひとつ検討してみてもらいたい。  この三点につきまして、大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
  49. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 第一のほうの、外から見やすい、たとえば洋服につけてはどうだろうかというお話ですが、私は、松本さんの御意見よくわかります。ただ、わかりますけれども、要するに、外国では郵便配達は尊敬されるのですね。タクシー運転手はそれほどじゃないかもしれませんけれども、それにしても、向こうでは日本みたいに運ちゃんというような感じじゃないですね。だから、郵便配達が尊敬されているという立場でマークをつけるのと、いまのようにあまり尊敬されない立場でだれしもがマークをつけるということは、本人のほうが好むかどうか、そういう感じが私はするのです。ですから、登録された運転手さんが、おれたちは名誉ある運転手だ、だから堂々と、いわゆる外国流に郵便配達のようにびしっとすることが好ましいという自発的な考えがあれば別ですけれども、ただ洋服につけるということは悪い運転手を見つけるためだ、こうなって、多くの人に何かそのような印象を与えるということになれば、運転手さんの心証といいますか、かえって不愉快な印象を与えるという意味においては、私のほうから積極的にそうさせるべきかどうかということは、もう少し考えなければいかぬのじゃないか。逆に、運転手さんが、われわれは選ばれた名誉ある運転手だからやるんだ、こういう気持ちであれば、それはけっこうなんです。ただいまの日本の社会意識が、そういう点については、利用者側一般が、郵便配達とか、こういう公共事業に携わっている従業員というものをもっと尊敬していかなければならぬ、敬愛すべきである、こういう考え方を持ってもらいたい。そうすると、堂々とおれは登録をもらっておるんだ、こういうことになるわけでありますから、こういう点については、私はやはり慎重に考えるべきではなかろうかと思います。  それから第二のナンバープレートの問題ですが、これはもっとわかりやすいところにというお話でしようが、中にはタクシーの場合あるようですけれども、これは事務的にどう考えておりますか、もちろん、タクシー自身を表示するという意味で、犯罪捜査的なものの考え方よりも、私は少し人間が甘いかもしれませんが、やはりタクシー自身を表示するためにわかりやすくするということであれば、これも一つの方法ではあります。ただ、犯罪意識でものを考えるということはしたくないのです。やはりお互い人と人との関係は愛情である。環境をまずよくしてやらなければ人間自身はよくならないのだという、現実の社会から見て少し人道主義的な考え方がわれわれは強過ぎるのかもしれません。だが、それが遠回しであっても、やはりそこから政治は始まる、行政指導もそこから始まる。その期間がないで、ただ罰則で押える。規制で押える、こういうものの考え方は、必ずしも成功するものではないのではないか。やはり必要最小限度、たとえば法律にしましても、法律万能じゃないと私は考えておる。ただこれは基準ですから、できれば順法精神、法は守ってもらいたい。たとえば、これはきたない話ですが、軽犯罪法で、どうしても小便が出たくなった、そこではしてはいけないわけですね。しかし、とてもがまんができないでしてしまった。これは法律からいえば軽犯罪ですね。だが、そういう状況の場合に、その状況を警官が聞いて、ああそうか、それはやむを得なかったと知らぬ顔をするというのも、一つの法律運用じゃないかと思うのです。そういう愛情的なものの考え方があって、こういう罰則とか規定とかいうものを考えていかないと、ますます人間を悪いほうに追い込んでしまう危険がある。そういう意味において、法律を執行する者は、そのような立場でものを考えてほしい、かように考えて、私は、この自動車局の諸君にも、そのようなものの考え方で運用をやってもらいたい、かように指示をいたしておるわけであります。  個人タクシーの稼働の点、これはいろいろの事情があってなかなかむずかしい問題ではありますけれども、行政指導としてこれはやらしたいと思うのです。また一つには、個人タクシーというものは非常に高年齢にしているのですね。これも原因があるのです。なかなか夜おそくまでやらないということもありますので、個人タクシーを認める場合に、私は従来の考えはあまり賛成じゃないのです。十年以上とか二十年以上とかいうものにとらわれないで、ぶらぶらやっておったけれどもひとつタクシーをやってみたいという人があれば、必ずしもタクシー業者の中からだけ引っこ抜くというような考え方をせずに、五年なら五年、その間に和田さんみたいに無事故であるという方がタクシーをやりたいということであれば、和田さんにやってもらってもいいのですね。そういうオーナードライバーでも五年なら五年の経験があり、無事故であり、そして稼働時間がどうであるというようなことに在れば、そういう業者の中からだけ抜くという考えではなく、もっと広く考える。そういうことになれば、あるいは夜でもそういう人はやるかもしれないのですが、しかし、おっしゃるように、行政指導として、そのような措置を講ずるように努力してみたいと思います。
  50. 松本忠助

    松本(忠)委員 いまのお話で理解できますが、言うならば、私も別に、タクシーの左の胴腹にでかい番号をつけるとか、あるいは胸に番号をつけるというようなことは、何も罪悪視し犯人視するのではなくて、それらのことによって出そう運転者も自覚をし、そしてまた、善良な運転手が多いわけなんですから、そうすることがその運転手たちを制約するものは何もないと思う。ごく一部の限られた悪い運転手さんのために今回の法律もあるんじゃないかと思われる。善良な運転手さんはむしろ被害者の立場です。そういうふうに考えれば、何も大きな番号をつけたって、あれは非常に親切な運転手さんでよかった、こうみんなに言われるように、そしてその運転手に対して感謝の念を持って————そして大臣がいま言われたように、外国では運転手さんを日本のように雲助扱いはしないわけです。日本ではどうもそういう侮べつの目で見ているということは、こちら側にも問題があると思う。そういう目で見るから、運転手さんのほうでも反発して、乗っても何も返事をしない。これではいかぬと思う。やはりこちらからあたたかい目をもって、公共的な事業に携わっている運転手さんの社会的な地位というものをもっともっと向上させる意味においてわれわれは見てやらなければいかぬのじゃないかと思うわけです。  個人タクシーの問題につきましては、大臣と私は少し見解を異にしております。やはりいまの法律で十年なら十年という期間を経た上で、しかもタクシー事業というものに経験があって、十分に地理のこともわきまえている、そういう人が老後の安定のために個人タクシー事業を免許されているという本来の姿で私はよろしいと思う。そしてあの人たちは、ハンドルを握っている限りにおいては、非常に楽しい環境において握っているわけです。決して苦痛をもって握っているわけじゃない。ハンドルを握っていることがむしろ楽しみである。私は、夜だって十分出られるということも聞いております。一応そういう面からこの問題についての方法を考えていただきたい、かように思うわけでございます。  以上で大臣はけっこうであります。あとは自動車局長にまたお伺いしたいと思います。  自動車局長に伺うわけでございますが、「タクシー事業業務が適正に行なわれていないと認められる地域」というのは、具体的にどこをさすわけですか。
  51. 黒住忠行

    黒住政府委員 本法にあります供給輸送力と輸送需要量との関係で、著しく供給輸送力が不足し、かつ適正に行なわれていない、すなわち、運送引き受けの拒絶その他の行為がひんぱんに行なわれる地域は、現在では東京と大阪地区というふうに考えております。
  52. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは、なぜ東京、大阪はタクシー事業業務が適正に行なわれていない地域と認めたのか。その理由は、単にいま言われたことだけですか。
  53. 黒住忠行

    黒住政府委員 需給の関係でございますが、従来は実車率五五%の場合においては非常にバランスがとれておる、これが六〇%に迫りますほど需給のバランスがくずれてくる、六〇%をこえますと著しく不足してくるということでございまして、現在におきましては、東京、大阪のごときは六三%前後に相なっておりますので、需給のバランスが適当ではないというふうに考えております。  それから乗車拒否のことにつきましては、ほかの都市においては皆無と申し上げるわけではございませんけれども、東京地区、大阪地区につきましては、他の大都市あるいは中都市に比べまして、それらの違反が非常に多いというふうなことが現実の姿でございますので、他の大都市等に比べまして東京、大阪が顕著であるというふうに考えまして、これを政令でもって指定しようというふうに考えております。
  54. 松本忠助

    松本(忠)委員 その適正に行なわれていない地域という東京、大阪のタクシー料金、これは値上げしたわけですね。適正になるのを待って値上げするのが当然じゃなかろうかと私は思うのですが、適正でないところの値上げを認めた理由というのは、どういうところからきたわけですか。
  55. 黒住忠行

    黒住政府委員 運賃の改定申請がありましてから、いろいろ審議したわけでございますが、六大都市につきましては、特に適正に行なわれていない地区、東京、大阪等ございます。それからそのほかの地区につきましても、労働環境等を十分見てやらないとまずいというふうなことで、いろいろ審議をしてきたわけでございますが、基本的には、経費が非常に上昇いたしておりまして、事業場全体といたしまして、収支が償われていないという実績でございます。それに対しまして、これを改善するためには運賃の改定を要する、また並行いたしまして、企業の体質改善ということも行なわれなければならぬという二つの命題があったわけでございます。それに対する決定といたしましては、政府といたしましては、昨年の十一月二十一日に物価対策閣僚協議会と交通関係閣僚協議会が開かれまして、運賃改定は必要なものの範囲においては認めるということと、そして並行して体質改善施策を推進するということに相なったわけでございます。労働条件の改善につきましては、できるだけこれを推進するけれども、現在において賃金、就業規則等が規定されておるかどうか、それが守られておるかどうか、最小必要のものにつきましては、労働省の監査によりまして確認をされたわけでございます。しかしながら、今後さらに適正化するということは、並行して推進をする必要があるということに相なりまして、それで、その方向につきまして、今回の法律につきましても指摘をされておりますので、われわれといたしましては、運賃改定と並行をしてこの体質を改善していこうということの一環といたしまして、この法律案を御提出申し上げた次第でございます。
  56. 松本忠助

    松本(忠)委員 労働条件の改善という問題が私は大きな命題であろうと思うわけです。現実に今回値上げをしまして、まだ一カ月はたちませんけれども、約二十日以上たったわけでございます。しかしながら、まだまだ現実の問題としましては、労働条件の改善という面についてどこの会社でもはっきりと踏み切っておらぬようでございます。このような点について局長はどのようにお考えになっていらっしゃるのか。大体今度水揚げが、いままでの一万二千円程度のものが一万三千円ないし四千円くらいになったのではなかろうかと私は思うわけです。いろいろ運転手さんに聞いてみましても、大体そのくらいのことを言うわけです。中には、短距離のお客さんがなくなったので非常に収入が減ったなんということを言う人もいますけれども、少なくとも二千円ないし三千円の増収になっているとは思うわけであります。これらの点を考えて、いままでのノルマのそのままでいけば、当然運転手さんは十分の保障になるわけでございますが、会社としては、いつまでもそれをほっぽっておくわけにいかないので、やはり何らかの形でノルマの引き上げが行なわれるのではなかろうかと思われるわけであります。そうなってくると、またイタチごっこになってしまうのではなかろうかと思われるわけであります。その辺のところで、いま会社としては、ノルマの引き上げを考えているようでありますけれども、それをすることによって運転手さんを確保できなくなる、運転手さんに逃げられてしまう、もうしばらくの間はこれはやむを得ないからということで、会社のほうではやらないようにも見受けられるのでありますけれども、これらの間の事情について局長はどのように理解をしているか、ちょっとお答えを願いたい。
  57. 黒住忠行

    黒住政府委員 先ほど申し述べました閣僚協の指摘した事項におきましても、具体的に労働条件等の改善につきまして、給与水準の引き上げ、累進歩合制の完全廃止、保障給部分の引き上げ、すなわち歩合給部分を三割以内とする、それから労働時間の短縮、日雇い運転者の雇用禁止という五項目について指摘してあるわけであります。われわれといたしましては、労働省の御協力を得まして、これらのことが完全に実施されていくようにこれからも監督を厳にしていきたいと思っている次第でございます。今回の運賃改定におきましても、給与の改定というふうなものは当然計算をしておるわけでございますが、さらにその改定前におきまして、関係の協会と関係の組合とが確認書を交換いたしておりまして、給与の改善につきましては誠意をもって行なうということで、具体的な内容等が記載をされております。われわれといたしましては、ただいま申し述べましたような五項目の方針を推進する、そしてまた、具体的には関係事業者と労働組合とが具体的に折衝いたしましてきまるわけでございますけれども、その改善につきましては今後とも十分監視をしていきたい。今回の運賃改定につきましては、まだ実績的には、一カ月強でございまして、三月分につきましては、二十日前後に締め切っておるわけでございますので、まだそれに幾らというほど、御説明申し上げますような要素が入ってないかと思いますけれども、現在労使の関係におきましてこういうふうな確認書等もございますしするので、交渉が行なわれておるように聞いております。労働省におかれましても、これらの労働条件の改善につきましては十分監督をしていく、またわれわれと関係を密にいたしまして、今後に対して善処するというふうに相なっておる次第でございまして、引き続き改善の方向に向かって指導を続けていきたいと思っております。
  58. 松本忠助

    松本(忠)委員 そこで次に、タクシー事業業務が適正に行なわれてないと認められる地域については、今後東京、大阪以外にも出ると思いますか。
  59. 黒住忠行

    黒住政府委員 東京、大阪以外には出ないことを期待いたしております。
  60. 松本忠助

    松本(忠)委員 出ないことを期待している————それはわれわれもそうでありますけれども、そうすると、東京、大阪に限ってこの法律を施行するというような腹づもりと理解してよろしいわけですか。
  61. 黒住忠行

    黒住政府委員 現在の情勢におきましては、さように考えております。
  62. 松本忠助

    松本(忠)委員 千葉県市川の競馬場あたりでもこういう問題がひんぴんとして起きていることも耳にいたします。こうなった場合には、千葉県にこれを適用する考えがありますか、ありませんか。
  63. 黒住忠行

    黒住政府委員 いまの場合は、競馬でありますとか競輪でありますとか、ごく限定されました場合におきますところの乗車拒否というふうな事案であると思います。そのほかの地域におきましても、たとえば雨が降ったときでありますとか、あるいは夜の電車が着くときであるとか、そういうふうな場合におきましては、乗車拒否等があるわけでございますが、これらに対する取り締まり、改善の指導につきましては、従来の道路運送法規定で対処できるのではないか。またそれによって、それを適正に運用いたしまして改善の方向に努力いたしたい、かように考えます。
  64. 松本忠助

    松本(忠)委員 本法によりまして、タクシー運転者登録実施するということになるわけでありますけれども、登録をしない者はタクシー事業に従事できない、こう理解していいわけですか。
  65. 黒住忠行

    黒住政府委員 会社におきまして、登録をしてない運転手を乗務さしてはいけないということでございますから、登録をされてない運転手タクシーのハンドルを持ってお客を運ぶということはできないわけでございます。
  66. 松本忠助

    松本(忠)委員 会社タクシー個人タクシーを同列に見ておるわけでありますけれども、個人タクシーの中には、登録をしなくてもいいと思われるような方が大部分じゃなかろうかと私も思うわけですが、これについて、個人までもやはり登録をしなければならない、こう規定するわけですね。
  67. 黒住忠行

    黒住政府委員 個人タクシーはすでに営業の免許も受けておるわけでございまして、登録以上の免許を受けておりますから、登録の制度を実施することにはなっておりません。ただし、個人タクシーの人が病気のときにおきまして代務運転手を雇うときがございます。代務運転手タクシーに雇用されて働くという関係になっておりますから、法人タクシーにおきますところの運転手と同じように、登録対象に相在るというふうに考えております。
  68. 松本忠助

    松本(忠)委員 登録の問題でございますが、登録しなければ従事できない、こういうことになりますと、憲法の職業選択の自由、これが侵されると思いますけれども、その点についてはどのように解釈をしているか。
  69. 黒住忠行

    黒住政府委員 本件につきましては、いろいろ御論議がありました。この立法の場合におきましても、非常に重要な点でございますので、法制当局等とも十分お打ち合わせをしたわけでございますが、これを要約して申し上げますと、現在のタクシー事業というものは、国民の日常生活に非常に密着をしておるということ、そしてまた、現在起きておりますところの乗車拒否等の現象は社会的問題になっているということをとらまえました場合に、特に公共機関としての使命を達成するための最小限の公共の福祉上の制限であるということでございます。  第二点といたしましては、指定地域内のタクシー運転手として就業することを禁ずるだけでございまして、他の運送事業あるいは自家用自動車に雇われて運転するということを禁止するものではないということでございます。  第三といたしましては、この登録によりまして、転職を制限するというふうなことではございません。また、それらの運用につきましては、職業選択の自由を制限はしない、疑義の起きないように十二分に注意をいたしまして実施するつもりでございます。  要するに、以上申し述べました事由から、憲法第二十二条にいいますところの職業選択の自由に反しないというふうに解釈いたしまして、この制度を採用しようとするものでございます。
  70. 松本忠助

    松本(忠)委員 第一章総則の第二条第五項のところに、「この法律で「指定区域ことはタクシー運転手の確保が困難であるためタクシー事業に関して供給輸送力が輸送需要量に対し著しく不足しており、」こうあります。なぜタクシー運転手の確保が困難になったのか、この点については十分御承知であると思いますが、あらためてこのことを局長の口から伺っておきたいわけであります。
  71. 黒住忠行

    黒住政府委員 わが国におきまして全体的に労働力が不足しておるということは言い得るのでございます。特に運転手の場合におきましては、われわれの関係のハイタク、トラック、バスその他通運等の事業がございまして、おのおの労働集約的な事業でございまして、それの輸送力増強をいたしますためには、どうしても運転手を要するということでございます。また、オーナードライバーでない自家用の場合におきます運転手会社、官庁等に雇用される運転手もおるわけでございまして、このようなモータリゼーションの場合におきまして、全体的に運転手が不足しておるということは言い得るかと思うのでございます。そうしますと、今度は相対的にどうかということになるわけでございますが、それらの運転手の中におきまして、タクシーというものは、労働の形態が非常に特殊でございまして、流しの場合におきましては、街頭でもって客と契約するというふうなこと、そして相当長時間の労働であるというふうなことでございまして、それには相当の体力、精神力を要するわけでございますが、それらの人がなかなか得られない。また、給与の問題等につきましても、ほかの運送事業等との比較も考えなければなりません。要するに、給与の面、それからこれを受け入れる労働環境の改善というふうな面を十分やらないというと、必要な数の運転手は確保できないというわけでございまして、それらの点の改善を行なう、その改善努力に対して従来やや不足をしておったのではないか。また、われわれといたしましても、タクシーの輸送力を増強いたしますためには、車を実際に動かす運転手さんが必要でございますが、これがただいま申し上げましたような点の対策が従来欠けておりますので、給与の点、福利厚生施設の点等をも考えていきたい。そしてまた、都市交通におきまする全体の環境改善ということも必要かと思うわけでございまして、これは自動車行政だけではございませんで、われわれの行政だけではございませんで、全体の都市交通の改善ということによりまして、現在のようなあの道路交通状態を改めていくというふうな施策も全体としてお願いを申し上げたい、かように考えておる次第でございます。
  72. 松本忠助

    松本(忠)委員 いろいろと局長がその理由を述べられましたけれども、私は、端的に言って、車両数かける二・四といういわゆる運転手の確保、これが当然なされなければならないにもかかわらず、なされていない。その時点において増車を認めてきた。ここにその問題があると思うのです。当委員会でも、私、この問題については、運転手がほんとうに確保されないのに、増車を認めていくという当局のやり方には賛成できないということは、しばしば申したわけです。自動車局長がいまいろいろ言われておりますけれども、各会社の車庫には相当の車が眠っておる。現実にほこりをかぶって眠っている車が相当あるわけです。それにもかかわらず、増車が許されている。その車の権利の売買というようなことも、たまには耳にするわけであります。そういう点がありまして、基本的に増車が多い。増車をすることが、結局はタクシー運転手さんの不足を招来している。しかしまた、一面考えてみれば、タクシー運転手さんのいわゆる臨時雇い、日雇いというような問題も、これは条件次第では幾らも集まるというのが現実の姿です。決して運転手さんの不足とも言えないわけであります。それらの点をどのようにお考えになっていらっしゃるのか。日雇い運転手の供給機関というものを労働省は認めておるわけでありますが、この法律ができると、もう日雇い運転手さんは使えなくなるということになりますか。この供給機関を運輸省は認めないということになるわけでありますか。その辺のところをひとつ自動車局長としてどのようにお考えか、伺っておきたい。
  73. 黒住忠行

    黒住政府委員 いまのお尋ねは二つあると思います。  増車の場合、運転手不足にもかかわらず増車を行なうことは適切ではないのじゃないかという点でございます。オリンピック前に、三十八年から九年にかけて相当増車をいたしましたが、そのときには、運転手の確保が可能なために、実際の輸送力となってあらわれてまいりました。その後におきまして、いろいろ需要がふえてまいりましたので、増車をしたいということで考えておりましたが、なかなか運転手不足の現状であるということでございました。それで四十三年、おととしの暮れに、東京におきましては約三千四百両の増車を認可いたしたわけでございます。そのときには、七社と却下された三社を除きまして、ほとんどの会社に認可したわけでございます。そのときにおきましては、会社の乗務員台帳であるとか、あるいは賃金の支払い台帳というふうなものを一応調べまして、これなら行けるのではないかという判断のもとに増車を認可したわけでございますけれども、現実の姿としては、その増車分だけは稼働しない、現に一割以上の休車があるわけでございますので、全体といたしましては、運転手が不足しているということは言い得るわけでございます。したがいまして、この状況に対しましては、おととしの暮れに行ないましたような一律的な増車のやり方ではまずい。もしかりに可能なれば、ある会社が半年、一年継続をしてある数以上の運転手を確保しているという実績等が挙証できる場合におきましては、あるいは例外的には増車してもよいのではないか。しかしながら、それらの点の把握というものが従来では制度的にも十分でないわけでございます。したがいまして、今後この登録制度が実施されますと、それらの点が具体的に把握できますから、全体としての不足の状況、そして個別的には、特に不足しているところとそうでないようなところと把握できますから、その場合におきましては、具体的な行政が実施できるのではないかというふうに考えております。  それから日雇い関係は、今回の法律ができる前におきましても、道路運送法関係省令、運輸規則によりまして、これは禁止せられておるわけでございます。これは監査その他によりまして把握して、行政処分等を行なっておるわけでございますけれども、何ぶんにも現制度では十分把握できないということでございます。今回の登録制度を実施いたしました場合におきましては、それらは十分把握できるのではないかというふうに考えております。  それから供給団体につきましては、これは必ずしも日雇い運転手を供給するというものではないわけでございますし、合法的に認められている。労働省において認められたものにつきまして、この法律ができたからどうということはございません。ただし、日雇いというものにつきましては、そのこと自体については、われわれの省令でも禁止しておるわけでございますし、これの実行につきましては、この登録制度を実施することによって、従来にもましてこれの取り締まりということが、法律の完全な施行ということができるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  74. 松本忠助

    松本(忠)委員 そうすると、いろいろとお話がありましたが、労働省で認めているところの機関がありますね。これの手を経由してくる者については、使うことについては差しつかえないわけでありますか。その点、局長と、それから労働省の関係の方の両方の御意見伺いたい。
  75. 黒住忠行

    黒住政府委員 それは、この登録の場合におきましては、どこからあっせんされましても、その当該雇う会社運転手のいわゆる雇用契約あるいは雇用の予約によって登録をするわけでございまして、いまの労働省の認めております職業安定法第四十五条の許可にかかわる供給事業と、直接の関係法律的にあるわけではございません。  それから日雇いの点につきましては、すでに従来からこれは禁止されている事項でございまして、そういうものは認められないわけでございますけれども、今回の登録の場合におきましては、そういうような点が非常に明白になって、その禁止の条項が十分守られるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  76. 大坪健一郎

    ○大坪説明員 ただいまの問題は、実は職業安定局の問題でございますが、私どもが聞いております点では、ただいまの自動車局長の御答弁のとおりであろうと思います。ただ問題の一つは、現在労働省が認めております労働者の供給事業としてのタクシー労働組合、これは労働者を供給いたします場合に、あらかじめいろいろなタクシー事業者と労働協約を結んでおりまして、その協約による労働者の供給は、日雇いの供給という形式ではないというふうに承っております。
  77. 松本忠助

    松本(忠)委員 日雇いの形式ではない、それはどういうことですか。
  78. 大坪健一郎

    ○大坪説明員 期間を定めまして、そこへ働きにいくということのようでございます。
  79. 松本忠助

    松本(忠)委員 期間を定めてやる場合には、自動車局長登録を要するのですか、要しないのですか。
  80. 黒住忠行

    黒住政府委員 タクシー運転手としてハンドルを持つためには、今後は必ず登録を要するわけでございます。今回の法律に基づきます登録をしている運転手でなくては、タクシー事業者運転をさしてはいけないということでございます。
  81. 松本忠助

    松本(忠)委員 時間の関係もありますから、それでは最後に、基準局の方に伺うわけでありますが、今回の値上げによりまして、運転手さん方の労働条件の改善というものがなされていくことと思いますけれども、その増収分がどれくらいであるかというふうなことについては、まだまだ労働省側でも十分把握はされていないと思います。しかし、これを今後どのような方向に労働省側では引っぱっていこうとしているのか、指導していこうとしているのか、その点についてお話を伺っておきたいと思います。
  82. 大坪健一郎

    ○大坪説明員 労働省といたしましては、原則は、賃金は本来労使間で自主的に協議決定さるべきものであろうと考えておりますが、御承知のように、今回のタクシーの運賃の改定に際しましては、関係閣僚協議会等におきまして、特に労働条件の改善が言及され、問題にされ、おきめいただいたわけでございますので、タクシーの業界でありますところの全乗連に対しまして、私どもからかねがね、料金の改定に際して労働条件の改善に特に留意をするように申し入れ、指導をいたしたわけでございます。なお、給与水準の引き上げに際しましては、歩合い給の部分を三割以内とするという確認も一応行なわれておりますので、今後そういう事実が個々の事業所において現実化いたしますように指導をいたしてまいりたいと存じます。
  83. 松本忠助

    松本(忠)委員 自動車局長伺いますが、第二節の十三条にあるところの登録タクシー運転者証というものを省令で定めるわけですが、これを定めたところに表示するということを義務づけるわけですね。この点につきまして、わが党が従来から提唱しておる就業免許と同じようなものであるというふうに理解してよろしいでしようか。
  84. 黒住忠行

    黒住政府委員 就業免許といいますのは、一つの資格を付与する方法でございまして、現在タクシー運転手につきましては、通常の一種免許のほかに、さらに高度の第二種免許を要することになっております。これは運転技術的にさらに高度のものを要するということでございますが、いわゆる就業免許と申しますのは、そういう技術的なレベルにプラスいたしまして、客扱いの点等を加味した、いわゆる道路運送法的なものを加味した一つの資格を与える。すなわち、試験等によりましてその資格を与えたらどうか、その資格を持っている人でなくてはタクシー運転できないというような制度が、いわゆる就業免許制度だと思う次第でございまして、今回の登録の制度は、その就業免許までは至らないで、運転手の実態の把握、そして悪質運転手を追放しようというふうな趣旨から、補完的な意味におきまして登録制度を実施したわけでございまして、資格を付与するという就業免許とは性格を異にしております。ただし、非常に簡単でございますけれども、地理を全然知らないというような場合があるわけでございますので、地理の試験等は行なうというふうなことは、この法律でもって規定をいたしておりますけれども、要は、一定の資格を持っておる場合におきましてはそのまま登録するというたてまえでございまして、積極的にサービスの面等につきます試験等を行ないまして資格を付与するという就業免許の方法をとらなかったわけでございます。われわれといたしましては、必要最小限度の方法をもって効果をあげるようにいたしたいという考え方から、この登録制度を採用しようとするものでございます。
  85. 松本忠助

    松本(忠)委員 ちょっと私の説明が悪かったわけでありますけれども、わが党でいっているのは、要するに地理の試験、あるいはサービス業だから本来接客の態度が大事だ、こういうところから、いわゆる技術免許であるところの現在の二種免許プラス就業免許という形を考えておるわけであります。やはり私はもう一歩進んでそうしたほうがいいのじゃなかろうかと思うわけです。ロンドンの状態などを見ましても、タクシー運転手がドアをあける時間が非常にかかるわけです。というのは、私のほうでどこどこへ行ってほしいということに対して、向こうでよく理解したとき初めてドアをあける。そして乗っければすぐ、もう料金の問題等は何も言わないで、そのまま走っていって、完全にその料金の徴収が行なわれるということです。ところが、日本の場合はそうでないわけです。お客さんが一々行き先を告げても、それに対してある一部の運転手さんは全然答えてもくれない。乗ったお客さんがどこへ連れていかれるのかわからない、こういう例がしばしばあるわけです。現在の官房長がまだ自動車局長の当時に、私、実例を申し上げたことがあります。町へ行ってほしいと言ったところが、椎名町へ連れていかれた。最近こういうことを聞いております。千束、これは浅草にも千束があります。それからまた荏原のほうに千束があります。ただ単に千束と言った場合に、どっちへ連れていかれるか、非常に不安なわけです。それで、浅草の千束ですか、あるいは品川のほうの千束ですか、こういうようなことを聞き返すことは当然のことだと思うのです。それが聞き返されないような状態なのがいまの現実なわけです。そういう点から考えて、やはりいわゆるサービス精神というものを発揮して、わかりました、そしてそれから出発するというような方向に指導すべきである、こう思うわけです。今回地理の試験をやることはたいへんけっこうでありますけれども、なおまた一そうこの点も明確にしてほしいと思うわけです。ロンドンの場合には、中心地より半径六マイル、こういうところのいわゆる公共の建物、所在地、あるいはたとえていうならば外国の公館であるとか、ホテルであるとか、劇場、著名人のオフィス、住宅等、主要な道路はもう一切わからなければいかぬ。またA地点からB地点まで最短距離をどこを通っていく、これも十分にわかっていなければいけない。六マイル以外の場所についてはおよそ知っている程度でよろしいわけでありますけれども、地理の試験を課すというからには、東京ではどのように実施をされようとしているか。具体的にいうと、どのくらいの距離をもってこれをわからなければいけないのか、そういう点についてどのようにお考えになっているか、最後にお伺いして、質問を終わります。
  86. 黒住忠行

    黒住政府委員 ロンドンにおきます地理の試験というものは、非常に厳格なものが行なわれておりまして、タクシー運転手はロンドンの市内のすみずみの道まで一番知っているということは定評があるわけであります。そういうふうにして質的に向上していくということはもちろんいいことでございますけれども、われわれといたしましては、量的に質的にできるだけの範囲、また必要最小限度の範囲によって解決をしていきたいというふうに考える次第でございます。  地理の試験の内容といたしましては、地域内のたとえば主要なところ、駅であるとかホテルであるとか、有名なビル等に至るところの主要な経路、道路、それから橋の名称というふうなものをペーパーテスト式に実施したいというふうに考えております。
  87. 松本忠助

    松本(忠)委員 けっこうです。以上であります。
  88. 福井勇

    福井委員長 次に内藤良平君。
  89. 内藤良平

    ○内藤委員 この法案につきまして、わが党社会党の同僚の先生たちも、斉藤、井野両先生がいろいろの角度から質問をされておりますけれども、私はまた違った立場で少しくお尋ねしたいと思います。  今度の法案が出てまいりまする原因である乗車拒否という問題ですね、この問題の発生といいますか、ここまでさかのぼってみたいと思うわけです。  それを乗客の側から見ますと、非常にくだいた話でありますけれども、お聞き願いたいと思うのです。第一には、空車の表示がある車が来ますね。合い図をしても応答がなく通過してしまう。これも乗客にとっては乗車拒否というぐあいにとるでしよう。これはぼくの考えだけですから当たらないかもしれないが、ぼくの体験した例も入っているわけであります。それから次に考えられるのは、乗客利用者が合い図をして応答があって、そして車が利用者の前に停車をした。そこで利用者との交渉の中で、行き先によって拒否される場合もある。たとえば車庫帰りだとか、あるいはいま食事に向かう途中だからということで、だめだということになる、こういう状態ですね。それから今度は扉があいて乗車してから、九段に行きたいと言った場合に、私は車庫入れでいま反対側に行くのだから、あるいは食事で帰る途中だからそっちに行きません、おりてください、こういうこともあるでしよう。これは非常に乗客の側から見るとひどい例になってくる。この事例がら、今度はそこで乗客が一たん乗ってしまいますと、これは派生的なことになりますけれども、チップとかあるいは特別な支払いをせざるを得ないような状態に乗客が追い込まれる。これは乗車拒否というよりもひどい状態になる。あるいはまたもう一つ考えられるのは、車がとまってお客さんと交渉の段階で、特別の料金を要求される。どっちが言い出すかわからぬけれども、暗黙のうちに何かうんとはずむから行ってくれという式に言わざるを得ないような状態になるんじゃないか。こんなようなことが乗車拒否あるいは乗車拒否にからんでのお客さん側の非常な不満の状態じゃないかと私は思うわけです。まだまだ他の例があると思います。  そこで、利用者の側から見ますと、空車の表示のある場合は、利用者の合い図ですね、これはまたあいまいで不確実な場合があるかもしれません。両手に荷物を持っておって、おいおいと呼んでも、この騒音で聞こえない場合もあります。利用者は一生懸命に車を求めておるわけたが、見のがされてしまう場合もあるでしよう。それらを含めて、空車の場合は、乗客の合い図によって停車して、そして乗車させて、行く先の指示によって目的地に迅速に安全に到着すること、これが利用者の要求でしよう。この場合に、行き先か不明確な乗客もおりますね。地理、地番の知識をそのために運転手が働かして、あるいは交番所にわざわざ尋ねて歩くぐらいのことまでやったり、たばこ屋に聞いたりして、乗客にかわっていろいろ聞きただしながら、目的地に到着させる場合等もあるわけです。しかし、乗客の側から見れば、それは当然なような状態になるんじゃないかと思うわけです。だから、これはタクシー利用者の側から見れば、完全なサービスを要求しておるのが普通の状態じゃないかと思うのです。ある場合には過剰なサービスを要求しておるような場合もあるんじゃないか。これは無意識かもしれませんけれども……。しかも料金はできるだけ安くということでしようね。乗客の側からの乗車拒否にからんての利用者の立場を考えた場合です。  そこで一方、経営者というのはおりますけれども、しかし、第一線に出て利用者と接触しますのは運転者でありますから、運転者の側から見ますと、第一に、拒否という現象が出てくるのは、お客に明確な乗車の意思表示がない場合がある。いま申し上げたように、両手に荷物を持っておって、何か叫んでおるけれども、聞こえない。はたして車をとめて乗るという意思があるのかないのか、はっきりしない形でやってしまう場合もあるでしよう。それから次に考えられることは、合い図によって停車はしたけれども、乗車しない場合もある。せっかくとまったけれども、何かあいまいな態度で乗らない場合もある。車が貧弱だとか新車じゃなかったということもあるかもしれません。そこらはわからないけれども、そういう場合もある。それから、いまの利用者の場合でもお話しましたが、今度運転者の側ですけれども、車庫帰り、あるいは腹が減っておる、空腹時に運転者の目的地と反対の方向に目的地を指示される場合もあるわけです。乗車拒否という現象の場合、運転者としてはとてもそれじゃ行けないという場合もある。それから、乗車してから客が非常に傲慢だ、あるいは強圧命令的だ、運転者の人権を無視するような場合もあるでしよう。一寸の虫にも五分の魂ということで、同じ人間ですから、うん、このやろうということで、乗車拒否になる場合もあるかもしれない、一たん乗せてからもですね。また次に考えられることは、酔っぱらいの乗客ですね。もうこれは乗車前でも乗車後でも、無理無体といいますか、乱暴を働くような状態もあるでしようね。だから乗車拒否せねばならぬ。またひどい例は、どうも人相ふうていが強盗でもやられそうな感じなので、予感がして乗車拒否をはる場合もあるんじゃないか。こういうことで、いろいろな乗車拒否の場合が、利用者側、それからまた運転者側というぐあいに考えられるわけです。  ところで、利用者側が過剰なサービスといいますか、ある意味ではわがままな立場であることは、これはやむを得ない。完全なサービスを要求するくらいのが普通だと思います。運転者側の場合から見ますと、体力、気力の続く限り、できるだけいわゆる水揚げを多くして収入を多くしたいという気持ちが第一にある。だから、むだな動きはできるだけ避けたいという気持ちは当然でしょう、こういう意思に対して、今度この法案で二つの地域の指定になる東京、大阪の大都会では、今日の状態では非常に大きな障害があります。一つは、交通の渋滞がひどい。また思うように走行ができない。それにまた、事故防止の見地も加わってくる。そこで神経質にならざるを得ないでしょう、また大都会の場合は、対人関係、人間関係が非常にドライで、先ほど来言っていますように、運転者は完全サービスを強要される、何かロボットのように扱われる、こういうような状態であろうと思います。さらにまた、労働条件が、工場労働者等に比較して悪い。長時間の勤務がほとんどである。それから勤務の関係その他で、娯楽、休養あるいはまた文化的施設等に接する機会も少ないし、それから考えられることは、事業者、管理者側の————やはり事業でございますから、利益を追求するといいますか、利益第一、もうけ第一主義が、運転者、労働者の肩にのしかかっておる。これは刺激的な歩合給等でわかるわけではね。それからまた言えることは、運転者であるけれども、雇用労働者だ。雇用された労働者であるにもかかわらず、一般の利用者から見ると、いわゆる全責任を負わされるかっこうになっている。はなわち、事業者とか管理者は、一般的企業と比較すると、企業責任者としての負担運転者、労働者に過大に背負わせているような結果になっておりはしないか。これはこのサービス業としての特性があるからでしよう。生産工場の場合は、生産物が媒介になって、そして直接の生産者、労働者の人間的なものは前面に出てまいりません。これは利用者にはタッチされません。しかし、サービス業であるタクシー事業につきましては、そういう媒介がありませんから、運転者利用者、なまの直接の人間関係というものが、サービスという形あるいは料金という形で出てくるわけでありますね。私は、こんなぐあいに、乗車拒否といわれるところの実情なり、あるいはまたそれが出てくるところの直接間接の原因というものを考えてみたわけであります。だから、やはり製造事業と違って、タクシー事業はサービス本位の事業でありますから、今日のこの大都会、東京、大阪等の世相から判断しまして、非常にむずかしい事業じゃなかろうか、私はこう思うわけであります。しかも地方の中都市と比較して、都市の過密化ということ、このひどい状態、非常に影響される面が多いということが常にあるんじゃないか。  そこで、こういう問題点をタクシー事業のみで全面的に解消することは、なかなかできないことでもあるわけです。これは私からいま短い時間の中でいろいろ申し上げるまでもなく、皆さまおわかりだと思います。だけれども、それを探求しなくちゃならぬ。これが非常に大切だと思うわけであります。どこへポイントを置いていくか。私は、第一に、やはりこのタクシー企業の特性から、第一線の運転者、労働者、それから車、これが結局この事業の場合中心でございましょう。第一線の運転者、車が中心であるというこの事業の特性というものの認識が、やはり私は第一に必要ではないかと思うわけであります。そして第二には、これを通じて利用者に良質のサービスを提供することがこの事業の特性であるという認識がやはり大切ではなかろうか。こう考えてまいりますと、この第一、第二と私が申し上げました事業性格上から、中心的なものは何であるか。運転者と車、それから生み出される良質のサービス、これがこの企業の性格である、中心でなければならぬじゃないか、私はこういうぐあいに思うわけであります。  これが今日の企業者の考え方、認識のしかたあるいは企業方針の立て方にどういうぐあいに受けとめられているか。私が申し上げたような考え方で企業の方針なりが立てられておるかどうか。これは非常に重要なことだけれども、はたしてそれが重要視されて、このタクシー事業の中にはっきりそれが打ち立てられておるのかどうか。これは免許事業でございます。やはり企業の特性というもの、免許される段階でこれをはっきり認識された中で、今日の運輸行政といいますか、自動車局の施策が行なわれておるかどうか、まず、この一点を、ちょうど大臣おられますけれども、大臣並びに局長からひとつ御答弁願いたいと思います。
  90. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 おっしゃるとおり、内藤さんの御意見、原則として大体その方針でやってきておるわけなんですが、乗車拒否一つ取り上げましても、おっしゃるように、いろいろな場合がありますね。あるいは労働基準法とのからみ合い、たとえば回送車ということでも、普通なら時間が来れば回送車でもって帰らざるを得ない。八時間、九時間という労働基準法によっての契約がありますからね。その場合に、善良左運転者は、どうせそっちへ行くのだから、そっちへ行く人だけでも乗っけていってもいいという気持ちもありましょう。これは善意ですね。ところが、空車になっているからどこへ行ってもいいじゃないかと思って、利用者のほうは、違ったほうへ行け、いやおれはそっちへ行かないと言うと、不愉快左印象を与えるわけですね。だからおっしゃるように、タクシー事業というものは、運転者にとりましても事業者にとりましても、人と人との関係、それから人と車との関係、そして労務関係、労働基準法、いろいろなものがからみ合っておる。そこにまあ一がいにこれを乗車拒否として厳罰方針で臨むという考え方は、私は好ましくない。やはりよく事情を聞いてみないと……。そういう意味で、この法律においても、悪質なるという前提がかかっておるわけであります。その意味において、この法律を適用する場合に、その考え方というものは、基本的にいうなれば、良質のサービスを提供するということにあります。その良質のサービスを提供するということにあるのですが、現在の日本における近代化、でこぼこでありますけれども、近代化の状態と、その受け入れる側の人間の近代的なものの考え方————たとえは皆さんが外国を旅行なさっても、荷物を持ってタクシーを待っている人はありません。一〇〇%いない。みんなこれはオーナードライバーです。日本ではまだまだ相当の荷物を持って歩く習慣がある。なかなか消えない。外国では荷物はもう小荷物の自動車に載っけるとか、人間はほとんどから手、かばんだって持っている人をわれわれは見ることはできないですね。そういう近代社会の生活の状態が、近代社会に伴う機械文明というものとマッチしていないというところにも、いろいろなトラブルの起きる原因があります。これはしかし急に直そうといってもなかなか直らない問題でありますから、したがって、そういういろいろの違った条件、悪条件、いい条件等の中において、どうしてスムーズにタクシー行政が進められるかというためには、言うなれば、やはりこれは人間関係でありますからして、人間同士が理解を持つということがまず第一だと思うのです。ですから、先ほどお話があった空車の場合も、実はこうこうこういうわけだ、こういって丁寧懇切に運転手さんが説明すれば、必ずしもわからないことはない。しかし、お客さんの態度があまり心かしいと、やはり人間ですから、何だこのやろうという調子で、これは感情の問題になる。こういうこと等を含めまして、やはりこういうような近代化センターあるいはこういうような臨時措置法ができて、そういう点を基礎にして、いわゆる再教育といいましょうか、人間関係をだんだんと調和さしていく。したがって、私は、この法律なるものはいろいろ罰則がありますけれども、罰則を適用することが最大の目的ではない、できれば罰則など適用しないほうがいいと思うのです。そうして、そういう人間関係、いわゆる日本のように急激に発達した機械化文明の社会では、人間のモラルといいますか、あるいは人間と人間との接触関係、こういうのがそれに伴っていない。こういうものを調和する工うに、まず行政指導なり、関係者が努力することが第一だ。そういう意味では、内藤さんのおっしゃることの基本の考え方が妥当だと思う。その方針で指導してまいりたいと思っております。
  91. 内藤良平

    ○内藤委員 まあ大臣は御就任なさってからまだ日も浅いわけであります。しかし、タクシー事業というものは、もう大正年間からでしようか、だいぶ古くからあります。また、局長も新任といいますか、長くおられたわけでもないでしょうから、なかなかさかのぼっては責任がないということになるのでしようけれども、しかし、私は、いまの時代でも、ここ十年、五年前の時代でも、このタクシー事業の持っておる性格というものはそんなに変わるものではないと思う。やはり大臣もいまおっしゃいましたように、人間同士、人間関係というものがある。そこで局長さん、あなたは当面の責任者として、このタクシー行政といいますか、タクシー事業というのは、人間対人間の関係が非常に大事で、それによって成り立っている事業なんだという御認識でおられるかどうか。経営者というものはあるけれども、しかし、実際は利用者運転者————車もあるけれども、古い車、新しい車もあるけれども、この関係タクシー事業というものの成り立っている第一義、ほとんどもうすべてだと言ってもいいと思う。それは極端と言うかもしれませんが、そういう点を、運輸省の担当される皆さん、特にあなたは行政の中心にすわっておると思いますので、これをひとつ確認してみたいと思います。
  92. 黒住忠行

    黒住政府委員 タクシーはほかの事業と違いまして、運転手がいわば営業係である。輸送契約を運転手が直接行なうというところに、ほかの運送事業と違う特色があるわけでございまして、その点の認識は先生のおっしゃるのと全く同様でございます。
  93. 内藤良平

    ○内藤委員 ちょっとことばじりをとらえるようですけれども、局長さん、営業係だけではないでしよう。いまのハイジャックの例で飛行機を例にとりますと、操縦士であり、また機関士であり、と同時にスチュワーデスである、こういう関係になるのではないですか、単に営業だけではなくて。あるいは国鉄の場合におきましては、機関士であり、車掌であり、あるいは案内係も入ってくるわけだ。非常に総合された複雑な仕事を、ある意味では経営者の分身というか、経営者の全体といいますか、タクシー業務を行なっておる。全責任を負っておると言ってもいいのではないでしょうか。営業係というのではあまりにも狭いものではないでしょうか。
  94. 黒住忠行

    黒住政府委員 通常の運送の場合の運転手さんは運転をせられるということでございますけれども、そういう通常の運転仕事にプラスしまして、営業係として直接契約をする仕事もさらに加わるという意味におきまして、全体の仕事があるということでございまして、まあこれは営業係の仕事もプラスされるというような意味で申し上げたわけでございます。私は決して営業だけのあれでなくて、営業もやりつつまた運転もやらなければならぬということでございまして、もう総合的に会社にかわりまして、街頭でもって仕事を直接やられておる。そういう認識につきましては先生と全く同じでございます。
  95. 内藤良平

    ○内藤委員 局長、認識は同じだ、ぼくもそのとおりだと思います。それは局長も言われたから、確認します。  そこで大臣、これは免許事業ですから、運輸省ではそういう認識というものを持たれて、その認識の上に立って業者、いわゆる事業者を指導してこられたかどうかですね。その点、今日まで乗車拒否という問題で世論が出て、関係労働者もいろいろ賛成あり、反対あり、いろいろ議論が出ております。最近は突発事故が多いですから、これはちょっと消えたような感じですけれども、いま大臣なり局長なり私と同じようなお考えだということで、私も非常に意を強うしましたけれども、運輸省で免許されている事業で、いままで申し上げ、お互いに確認したような考え方で、この事業者、こういう方を指導されてきておったかどうか、この点いかがでしようか。
  96. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 私は後段の御質問についてお答えしますが、その前に、私、運輸行政については古くから関係しておりませんけれども、ただ、こういう発生源があったのではないでしょうか。これは皆さんにお聞きしたほうがいいかもしれませんが……。  タクシー事業というものは、発生の当初はいわゆる事業体をなしておらなかった。したがって、一般的な過去の経験からすれば、免許事業ではなかった。タクシーというものはそういう時代があった。そして、それが免許事業となった原因は何かといえば、一つは、街頭の輸送機関としての役割りをするということが第一。第二には、それに伴うところの交通事故が起きてきて、いわゆる人身あるいはいろいろな損害賠償が起きてきた。そういうことからして、いわゆる事業体を保護すると同時に、運転手及び利用者、これを保護するために、法律によるいわゆる事業としての免許制度というものが発生してきたのではないか。間違っておるかもしれません。私、過去の経験だけでものを申せば、そういうところがあると思うのですね。したがって、そういう原因からきていますから、今日いわゆる業者を指導する、あるいは運転手なり利用者に対しては、その発生原因から考えましても、当然運輸省の行政指導はいま内藤さんがおっしゃったような方針でなければならぬし、またその方針で今日までやってきたと思いますし、私自身はもちろん大臣としては日が浅いのでありますが、そういうような伝統を守って行政指導をしてきた。ただ、最近の急激なる発達、激増というものがいろいろな問題を起こしているが、しかしながら、行政指導の根本は、内藤さんのような考え方でやってきたということは間違いないということを御理解願いたいと思います。
  97. 内藤良平

    ○内藤委員 そこで、私が疑問に思いますのは、これほど乗車拒否の問題あるいは事故の問題というようなことで、運転者なり働く皆さんには無理にいろいろな問題がかぶさってきているということです。それに関連して、経営者側にもいろいろ処分なり何かがあるわけでありましょう。ところが、事業者は運輸省から免許されておる企業の趣旨からいっても、乗客あるいは運転者に対するもろもろの方策がふさわしくないために、サービスがまずいということで免許を取り消されてしまうという非常に強いものですけれども、そういうことがいままであったかどうか。運転者は、場合によれば馘首され、あるいは事故の問題で責任を負わされ、あるいは乗車拒否で社会的にも法律的にも経済的にもいろいろ負担をさせられる。そういうことの中で、この経営者側に対しまして、免許を取り上げるということがいままであったかどうかということです。これは大臣は大臣になられてから日が短いですから、局長さんいかがでございますか。あるいは担当の課長さんどうですか。
  98. 黒住忠行

    黒住政府委員 タクシー事業に関する免許の取り消しは、二十七、八年から九年ごろにいわゆる名義貸しというのがございまして、ある会社会社として免許を受けておるけれども、ほとんどこの名義は個々の人に貸して、会社側は経営の責任を実際は持っていないというふうな事態がございましたときに、改善を求めたわけであります。ところが、どうしても改善ができないものに対しましては、この免許を取り消した例がございます。その合計は何件ということは覚えておりませんけれども、東京につきましても大阪につきましてもございます。ただ、乗車拒否等を理由にした取り消しはございませんが、営業所単位に一定の期間営業を停止するというふうな事例は最近におきましてもございます。
  99. 内藤良平

    ○内藤委員 時間もなくなってきましたが、ぼくたちのいなかの小さなタクシー事業は、大東京から見ますと小さいわけでありますが、いまから十年くらい前にはいろいろ問題がありました。このタクシー事業運転者というか労働者の立場からどうしてよくしていくか、いいサービスをしていくか、あるいはいい賃金、待遇改善——生活向上ですね。そこで、働く皆さんが個々ばらばらな体制ではなく、結束した中で生活の向上はもちろんやりますけれども——ちょっとことばが悪いので、関係の方がおったらお許しを願いたいのでありますけれども、ぼくの経験では、十何年前にはチャージということばがありました。料金のほうではごまかされるのが当然だというようなことも聞いておりました。このために、賃金は低くてもいいんだという経営者もおりました。あるいはそういう現象もあったかもしれません。しかし、それでは働く者の立場からみてもいいことではありませんので、そういう経営者側の不信をなくしていくためにどうしたらいいかということになり、そこで組合をつくって、働く者自体の中でみずからそういうものを規制していこうではないか、そうして団結の中で賃上げなり生活向上なり職場の改善をはかっていこうではないか、そうしてまた、利用者には誇り高き運転技術者としていいサービスをしていこうではないか、こういうことで組合をつくりまして、その結果賃上げもできましたし、内部的にもお互いに研究し合って、あるいはうわさかもしれないけれども、料金をごまかすようなこともなくなってきたような状態でありまして、したがってまた、賃上げにも好結果を来たし、福利厚生の要望についても、経営者側もそういう従業員の状態から見方を変えて、真剣に取り組むという状態になりました。私はいま経営者のことについてちょっと追及しましたが、いま私の体験しましたような働く皆さんの団結、組合といいますか、自主的に責任をもって大いに誇り高き運転技術者として働くし、また正当な賃金も取るし、利用者にも喜んでいただける、こういう状態をつくり出すような指導を運輸行政の中でやったことがあるかどうか、そういう点はいかがでございますか。
  100. 黒住忠行

    黒住政府委員 正常なる労使の慣行をつくっていくということにつきましては、これはわれわれの行政のみならず、一般的に必要なことでございます。タクシーの場合におきましては、たとえば東京につきましては、約半数が未組織でありまして、いろいろ問題があるかと思うわけでございますけれども、われわれといたしましては、これらが正当に組織されまして、労使の話し合い等が順調にいくことを期待しておる次第でございます。
  101. 内藤良平

    ○内藤委員 経営者側にも、免許取り消し、おまえやめてしまえ、サービス業のタクシー事業としてはおまえはだめなんだということで強く当たらない。同時に、重要な責任というか、立場にある労働者、運転者の皆さんにも、組合のようなものをつくってみずから打開しなさい、あるいはまた利用者の皆さんにも積極的に働きかけなさいということも必要ではないかと思うが、あなたのお話を聞いておりますと、そういうこともあまりしないということですね。経営者側にも運転者側にも、タクシー事業というものの性格についてちゃんと認識を持っているとおっしゃるが、どっちつかずに適当にやっておったというぐあいに理解していいですか。
  102. 黒住忠行

    黒住政府委員 これは直接には労働行政の関係かと思います。しかし、われわれといたしましては、現に運賃の今回の改定の場合におきましても、いろいろ確認の状況等は経営者と組合側がそれらを交換することを指導いたしましたり、それらをチェックいたしておるわけでございまして、また今回の近代化センター等の案につきましても、関係の組合、団体等に対しまして詳細に御説明をし、またその意見を承っておるわけでございまして、そういう場合におきましても、やはりこれらの関係団体が十分に力を持っておられまして意見を出していただくということは、非常に重要な必要なことでもございますので、われわれ、いま申し上げましたような姿勢でもって対処していくつもりでございます。
  103. 内藤良平

    ○内藤委員 時間もないようですから、少しはしょってまいります。  もう少し詰めたいのですけれども、またあとの時間も残したいし、同僚の方からもまた詰めてもらいたいと思いまするが、そこで、局長さん、この法案には、いままで私がいろいろ議論してまいりましたこの企業の特性といいますか、いわゆる運転手さん、その方々を中心とするような機構なり運営なりが、この法案の中に十分に盛られて実践できるようになっておるのかどうか、これを簡単でいいですから……。
  104. 黒住忠行

    黒住政府委員 それにつきましては、登録関係適正化事業に関します諮問委員会がございまして、それは、前者につきましては三者構成、後者につきましては四者構成をもちまして、公正妥当に運転手意見が、労働者側の意見が反映いたしますように制度もなっておりますし、運用においてもこれの適正化を期してまいりたいと考えております。
  105. 内藤良平

    ○内藤委員 それから、いまお話しした登録関係ですね。それから事業運営関係ですね。センターでやるわけですね。そこで、やはりいままで論議されたような認識のもとに、運転者側の意見が十二分に発言され、実行されるようなぐあいにやられておりますか。入っておりますか。その点、ひとつ確認しておきます。
  106. 黒住忠行

    黒住政府委員 この原案をつくります場合にも、いろいろ御意見を拝聴し、それを尊重した次第でございますが、この法案におきます制度といたしましても、ただいま申し上げましたような二つの諮問委員会がございまして、そこにおきまして十分意見が反映されるような制度になっております。また、その意見を十分尊重いたしまして、運営に当たっていきたいと思っております。
  107. 内藤良平

    ○内藤委員 ただ、法律は一たんできてしまいますと、それなりに動いてまいるわけですから、あなたの御意思はそうであっても、あるいは機構を運営する者、あるいは登録を実質的に審議するその委員会がどういう数になっておるか。労働者側、運転手側が入っていても、過半数にならない場合は、これはどうにもならないわけですね。その構成員数との関係ですね、それはいかがですか。
  108. 黒住忠行

    黒住政府委員 このようにこれらの仕事を円滑にやるということでございまして、それは一つの労使の利害関係というものを調整するという今回の制度ではないわけでございます。したがいまして、今回の制度が円滑に実施されるためには、いわゆる三者構成、四者構成タクシーの場合は利用者という階層もおるわけでございますので、それらの三者構成、四者構成適正化いたしまして、いわゆる中立的にそれが実施されるということを期しておる次第でございます。どちらかが過半数以上というようなことでもってやるということではなくて、この種の諮問委員会というのは、いま申し上げましたような形でやるのが通常でございまして、皆さんの意見が公正に反映されまして、このセンターというものが、いわゆる中立的な機構としましてのセンターの所期の目的が達成できるように運用をしていきたいと考えております。
  109. 内藤良平

    ○内藤委員 まだ詰め足りない感じですけれども、先を急ぎます。  それでは、大臣も御出席のようですから、運輸省としては、タクシー事業に対する施策としては、この法案で事足りるというぐあいにお考えになっているのでしょうか。これをひとつ簡単に……。
  110. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 きつい意味でもってこの法律で足りるかと言われると、完全にこれでもって全部が解決したという返事はできませんが、ただ、現時点で要望せられる点、そういうものに対しては、この法律によってひとつ解決をしていきたい。まあ先ほどからここでお話がありましたように、人と人との関係でございますから、それには運営上の問題が非常に重要でございます。運営上につきましては、公正といいますか、愛情を込めた公正な意味でこれを運用することによって、ある程度目的といいましょうか、大部分の目的は達成できるのではないか、かように考えております。
  111. 内藤良平

    ○内藤委員 これで終わりますが、大臣、それではかりに実施して実効があがらなかった場合、その施策の手直しやら法修正等について直ちに行なうということはいかがですか、そういうお考えはいかがでございますが。
  112. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 ただいま申し上げましたように、この法律はどっちかといえば、運営が問題ですね。ですから、適切な運営ができれば非常な効果をあげるのじゃないか。これはもう決して業者にも片寄っておらない、あるいは運転手、従業員にも片寄っておらない、利用者にも片寄っておらない。こういう意味で、問題はしかし運営上の問題ですから、その運営さえ適切にいけば、ある程度成功するのじゃなかろうか。万が一それらのものについて、善良なる運営があるにもかかわらず、その目的がほとんど達成できないという場合には、これは考えざるを得ない。決して、この法律があるからこれにこだわって、これによって何でもかんでも強行突破するというような刑罰法ではございませんから、したがって、柔軟な態度で対処していきたい、かように考えております。
  113. 内藤良平

    ○内藤委員 それでは、大臣の御発言で、かりに実施されて実効があがらない場合には、やはり施策の手直しやらあるいは法律の修正等を直ちに行なうという、そういう柔軟左考え方——一たんできてしまうと、往々にして官僚の皆さんもなかなか固執して後退しない、硬直してしまうということがあるのですね。まあ大臣の、柔軟に対処して、いわゆる時の流れといいますか、今日の世相というものがあるのですから、そういうお考えというふうに確認してよろしゅうございますね。公害局長公害局長それを確認して終わります。
  114. 福井勇

    福井委員長 次に田代文久君。
  115. 田代文久

    ○田代委員 大臣にお尋ねしますが、先ほど来同僚委員質問に対して、この法律の目的は、運輸労働者、当面これはタクシー運転者、そういう諸君を保護するということが一つの目的であり、同時にまた、これは人間の教育ですね。そうして好ましくない運転者登録制で排除する、その他いろいろおっしゃられておりますが、そういうことがこの法案の目的である、それに間違いありませんか。
  116. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 法律に書いてあるとおりに、いわゆる悪質なる事業者、あるいは少数かもしれぬが悪質なる従業員、こういうものに対してはこの法律が適用されるが、運営方針としては、よき環境状態をつくり上げるということが目的である、かように考えております。
  117. 田代文久

    ○田代委員 いまの御答弁ですけれども、先ほどの松本委員、それから和田同僚委員の二人に対するあれでは、一方においてはとにかくこれは非常にけっこうなことである、ぜひそうしてもらわなければならぬけれども、これを保護するという目的を持っている。一方においては、この運転者の働く人たちをとにかく教育し、あるいはこれを排除するということは、非常に矛盾している。というのは、これはとにかく保護するということがはっきり端的に出なければなりませんけれども、教育するということは、教育しなければならないそういう問題があるのだということが前提になっておりますし、それから登録制によって排除するというようなことになっているのですね。そうすると、頭ごなしに、頭から、運転手さんなんというものはそういうものだ、だから、教育してやらなければならないし、また乗車拒否というような問題がある場合には、こういう連中はとにかく排除して、懲罰といっては非常にことばが強過ぎるのですけれども、そういう好ましくないものとしてそういう処置にするんだ、こういうことになるわけですね。ですから、私は、この点で基本的にはこの態度が正しくない、労働者は、運転する労働者にしても、あるいは工場で働いている労働者にしても、全部労働者であるし、もし好ましくない働きぐあいがあるということがあるならば、これは工場であろうと、あるいは運転であろうと、全く同様なんです。ところが、一般の工場における労働者に対しては、政府はそういう教育を法律的な干渉によってしなければならないとかなんとかいうことをやられておらない。そういうことをかってにやるべきじゃないと思うのですよ。しかし、頭ごなしに教育するとか、しかも、これが乗車拒否というその一面をただ現象的にとらえて、そしてこれを排除して、それで罰則みたいな形でその免許を取り上げるということになりますと、実際これは問題であるし、また事実そうなっていると思う。私どもはそういう好ましくない現象が全然ないとは申しません。そしてまた、そういう現象を弁護するつもりも私たちはいささかもございません。しかし問題は、そういうことが起こった場合に、その根本原因は何かということを明確にして、それに対して大きな政策的な手を打つということが政治の根本であるし、またこれは大臣の責任であると私は思うのです。それで、この根本原因は、御承知でしようが、私たちもそれは知っていますけれども、これは実に長時間にわたる——私、しばしば車に乗って尋ねますけれども、とにかく運転手さんというのは、子供の顔も見ないというのがたくさんあるんですよ。夜おそく帰ると子供は寝ている、朝起きたら子供は学校に行っているというような形で、子供の顔もろくに見ない。そして、物価が高くなって賃金が安いから、どうしても無理をするんだということが根本になっているわけですね。そういう劣悪な労働条件、労働環境、これを政府が徹底的に真剣に直していくということにならなければ、ほんとうにこういうごまかしの法律は無用であると私は思わざるを得ません。実にこれは矛盾だらけな内容を持っておる。ですから、先ほど言いましたように、労働者を保護するとかなんとかいうふうにおっしゃいますけれども、今度の値上げの問題について、労働省あるいは運輸省がどのように具体的に指導されたか。一例を申しますと、今度の値上げ分については、当然労働者の労働条件をよくする部分が——これは大臣もいつか答弁されましたね。六〇%ぐらいは当然入っておりますというふうに答弁されました。福岡の例を見ますと、これに対して組合の人が業者と団交して、とにかくいまのままでは食えないから上げてくれ、そして今度のこの料金値上げの分の中に入っているんじゃないかと、全く正当な主張をされたことに対して、そんなことはない、この中に入っているということは聞かない、福岡の陸運局はそうは言わないんだ、こういう形で拒否しているということがあるのですね。したがって、その問題については非常に切迫しておりますので、私は、課長に来てもらって、現地でどういう処置をとられたかということを調べてもらいたいということを頼みましたが、これはどういう回答が来ておりますか。
  118. 橋本登美三郎

    ○橋本国務大臣 事務当局から説明する前に、田代さん、ちょっと待ってもらいたいのは、一方的にお話をされても困るので、研修所というのは、教育の場ではありますが、感化院じゃないのですね。そういう間違った人だけをやるのではないのですよ。たとえば東京あるいは大阪というところで運転をする場合には、地理も知らなければいかぬでしょう。いなかから来た人は、ことばだってできれば東京弁を少しは覚えたほうがいいでしょう。ですから、この場合の教育というのけ広い意味の教育である。だから特定の人、ことばをかえて言うなれば、悪質の運転手をつかまえて研修するんじゃないのです。運転手全体、まだ未熟練の人もあるいは全然新しくこれから始めようという人もやるのであって、この点何か感化院でもつくっているんじゃないか、そんな法律じゃないのです。ですから、いわゆる研修、教育ということは、未熟な運転の人もありましょう。あるいは新しくやる人もありましょう。あるいは東京の地理もわからない、あるいはお客さんに対してのことば使いとか、そういう勉強というのは、小学校だって幼稚園だってあたりまえです。人間はいきなりおとなになるんじゃないので、幼稚園とか小学校とかいうところで教育も受けて、だんだん一人前の人間になるのと同様に、いわゆる人と人との関係は重大な問題でありますからして、こういうような研修の場を経て、そしてりっぱな運転手をつくる、全体的にりっぱな人間をつくるということが目的であって、あなたの話を聞いていると、その教育でもってどうも何か特別な軍隊教育でもするんじゃないか、けしからんじゃないかというようなお話でありますが、さような誤解は全く無用であります。また、そんなことでもって皆さんの御協賛を得ることは不可能であります。いやしくも国会の場でやる以上は、ほんとうに正当な道において、そうして人間社会という関係をよくするための法律でなければ通るはずがないのです。ですから、さような誤解のないように、まず、その点だけをひとつ御理解を願いたいと思います。  その他のこまかい具体的な問題は、事務当局からお答えさせます。
  119. 黒住忠行

    黒住政府委員 労働条件の改善ということは、非常に重要なものでございます。それで、大都市の運賃改定におきましては、閣僚協でそのことの具体的な実施方法につきましてきめておるわけでございますけれども、その考え方、精神につきましては、これは六大都市に限ったものではないのでありまして、ほかの都市におきましても当然のことだと思います。ただ、具体的な方法につきましては、六大都市の場合には、さらに詳細に閣僚協で決定されたわけでございます。したがいまして、その精神に基づきます指導は現地のほうでいたしております。  それから、御指摘の福岡の場合につきましては、御趣旨のような指導をいたします。しかしながら、給与の改善の内容を具体的に幾らにするかというふうな点につきましては、労使の交渉で決定するものでございまして、考え方といたしまして、労働条件を向上するという指導をわれわれとしては、あるいは労働省としても、行なっておる次第でございます。
  120. 田代文久

    ○田代委員 さっき言いましたが、課長、どうですか、福岡のほうから何か回答してきましたか。
  121. 菅川薫

    ○菅川説明員 お話をお伺いしまして、局のほうでは、いま局長もお話し申し上げたような趣旨で問題に対処するようにということを具体的に指示いたしました。ただ、労働条件改善の問題については、いろいろな過程でいま交渉が行なわれておりますので、最終的にどうなるかというようなところまでは至っておりませんけれども、局としては、いま局長が申し上げたような態度でこの問題に対処するようにいたしたいと思います。
  122. 田代文久

    ○田代委員 時間がありませんから、いろいろ言いたいことはたくさんありますけれども、とにかく運賃アップの中に労働条件をよくしなければならない分が相当量入っているんだ、そういう形で具体的に指導していただきたいということをはっきりと申し上げておきたいと思います。  資料を政府にお願いします。  東京、大阪あるいは福岡のタクシーの労働者の平均月収、残業、超過勤務など含めて、この人たちが一カ月平均大体何時間働いておるか、そうして固定給の部分は幾らで、また超勤部分による。パーセンテージは幾らかということです。超勤部分などは大体三〇%以内に押えなければならないというふうに指導したいとおっしゃっていましたが、事実そうなっておるかどうかという点を知るために、そういう資料を提出していただきたいと思います。  それから、大臣がいないのにかれこれ言ったってしようがないのですけれども、こういう法律ができて、教育するとかなんとかいうことが軌道に乗ると、事実は非常に労働者を精神的にも実際の時間的にも圧迫してくることは間違いないし、それは労使の慣行に、ほんとうに民主的にこれを運営し解決するというようなことに非常な支障を来たし、労働者にとって非常な不利な条件になるので、これはあらかじめ言っておるのであって、大臣の言っておるような、そういう常識なんというものは問題にならないと思います。そこで、この乗車拒否なんか起こるのは、需給関係にあって、それで実際に運転手が足らぬところに原因があるということを再々おっしゃいましたね。足らないということはどういうことか。私たちは足らないことはない、このように考えるわけです。つまり労働条件ですね。ほんとに暮らしができる労働条件、あるいはからだをめちゃめちゃに疲労さして破壊するというような状態にならなければ、私は運転手さんは幾らでも寄ると思うのです。また現に免許をとっている人がおると思うのです。しかし、そういう労働条件が悪いがために、実際において不足しておるというふうに私は見ておりますが、これはどうですか。
  123. 黒住忠行

    黒住政府委員 現実の姿として不足しておるということを申し上げておるわけでございまして、二・四人の運転手を確保して必要な輸送力を提供させるためには、給与の内容等を改善し、やはり環境をよくすることによって、たくさんの人たちがこのタクシー運転手という職場を選んでもらう、こういうことによりまして必要な数の充実をしていきたいというのがわれわれのねらいでございます。
  124. 田代文久

    ○田代委員 この乗車拒否の問題は、先ほど来私、またその他の委員も主張しておると思うのですけれども、根本的な労働条件ですね。劣悪きわまりない、そういう環境に労働者が置かれておるということにあるので、その問題が解決すれば私は解決すると思うのですが、この法案がほんとうにおかしな矛盾した法案だというのは、たとえばかりに乗車拒否というような問題があったとしますね。ところが、それに対してはいままでの法律すでに道路運送法その他の規制する法律がちゃんとあるわけです。先ほども答弁されました。雨が降ったとか、あるいは夜おそくなったという場合において、そういう乗車拒否というものがあった場合には、道路運送法で全国的にこれを適用して解決さしております。あなたはできるんだとおっしゃった。ところが、東京や大阪だけ何でこんなことをして、そして登録さして、しかも、登録する場合においては事業者の手を通じてやるというようなこと。結局、労働の基本権とかあるいは憲法に違反することがその内容にになるような疑わしいことが非常にたくさんあるのに、何でこういう罰則みたいなことをしてこれを規制しなければならないかという問題ですね。同じ乗車拒否でも、これは福岡でもやっておるし、川崎でもやっておるし、千葉でもこれはやっておるわけですよ。同じ労働者が同じことをやって、東京の場合あるいは大阪の場合には規制されなければならない、ほかでは同じことをやっておっても見のがされるというようなばかなことは、これはあり得ますか。東京や大阪で働いている運転手さんだけなぜ窮屈な、そういう民主的な権利を制限されるような立場に置かれるかという問題なんです。私は、そういう問題は、新しくこういうことをしなくても、既存の道路運送法その他によってとにかく十分規制できると考えますが、その点にどうですか。
  125. 黒住忠行

    黒住政府委員 道路運送法で全国的に処理しておりますことは原則でございますが、東京あるいは大阪は、交通環境というものがほかの都市とは非常に違っております。車両数におきましても違いますし、そこに起きておりますところの需給のアンバランスあるいは乗車拒否の問題も、ほかの都市等とは相当程度違うわけでございまして、そういうきわめて違っている場所に限ってこれらの措置をしようとするものでございまして、必要最小限度のものに限りたいというふうに考えておるわけでございます。  それから登録申請は、事業者がやるのではなくて、運転手のほうがやるわけでございまして、それに関することにつきましては、職業の自由、また経営者のほうがそういうことについてじゃまをするのではないかということにつきましては、そうでないということは、すでに御答弁を申し上げたところであると思います。  それからもう一つ、センターで行ないます適正化事業といいますのは、元来事業者がやるべきかもしれません。しかしながら、この事業には中小企業が非常にたくさんあるわけでございまして、それらが全体としてこれらの仕事をやるという必要性は特に緊急でございますし、中小企業としてやりますためには、こういう中立的なセンターでやることによりまして、新規の運転手の養成、これは二種免許をとるための養成でございますし、あるいは新規採用者に対する研修というもので、これは法律的には各会社でやることになっておりますのをこういうところでかわってやることによりまして、非常に中小企業も助かるのではないかというふうなことでございまして、これらの適正化事業あるいは登録のことにつきましても、事態が安定すれば、すみやかに法律的な強制はしないで、自主的にやってもらうというふうに期待をしておる次第でございまして、決してこれは全体をやるための一環ではなくして、全体は道路運送法でやっておりますけれども、特に東京、大阪の場合は先ほど申し上げましたような現象を呈しておりますので、臨時的な必要性からやっている。しかも適正化事業というものは、中小企業を全体としてやりやすいようにこういう措置を講じておるということを申し上げたいと思います。
  126. 田代文久

    ○田代委員 最後に、いまおっしゃいましたが、結局、登録はこれは事業者を通じてやるわけでしょう。登録をする場合、とにかく事業者の力が作用することは明らかなんですよ。私はそのことを言っておるのですよ。ですから、そういう点は、労働組合法とかそういう基本的な労働権に対する侵害なりあるいは制約になりはしないかという問題です。  それから、この法案の中には各種の委員会があるわけですね。その中でいろいろ処置されるのですけれども、実際のいままである労働組合法などによって、いわゆる労使間の関係とか——これは単に賃金の問題だけじゃないですよ。労使間の関係というものはいろいろ非常に多岐にわたっておるわけですから、そういうことは、実際のいままでの労働組合法で解決するのがたくさんある。そういう点に対していささかでもこれが侵害されるということになれば、これは明らかに、東京、大阪における運輸労働者というのは、それだけとにかく自分の民主主義的権利が制約を受けるということになるし、そして、これは臨時法とかあるいはまた東京、大阪に限っておりますけれども、さっきの大臣からの答弁では、何か五年かあるいは十年以内くらいを見込んだとおっしゃいますけれども、私は逆だと思います。ますます自動車の数がふえるということになれば、東京、大阪だけでなく、いまおっしゃったような観点でいけば、これは横浜だって千葉だってあるいは名古屋だってこういうことにだんだん広がっていく。そうすると、そういうことは、時間的にもますますもう少し臨時措置法を長期にしなければならないことにもなるし、範囲も東京、大阪でなくて、これはもう少し全国的にしなければならないという、可能性としては実際むしろそっちのほうが非常に大きいと思います。そういう意味で、これは運賃値上げにからませられた、そして労働者に対するそういう労働者の基本権なり民主的な権利なりを非常に制約することになる危険な内容を持っていると私は思うのですが、そういう点どうですか。
  127. 黒住忠行

    黒住政府委員 この登録申請は、第五条によりまして運転手がするわけでございまして、この登録に関して経営者側が介入するものではございません。  それから、ただいまの点でございますけれども、東京、大阪以外につきましては、われわれといたしましても、この種の立法を強制する、政令でもってさらに拡充していくということは、現在の情勢では考えていない次第でございまして、また東京、大阪につきましても、なるべく早くこれらの必要性が解消されることを期待しておる次第でございます。タクシー行政につきましては、今後さらに全般的に努力をいたしまして、事態が好転されるように努力を続けていきたいというふうに考えております。
  128. 田代文久

    ○田代委員 終わりますが、一言申し上げます。  そういう主観的な希望や期待、それはこの法律をつくられる立場からは、そういうあれですけれども、そういうことではない、事態は反対の方向に進んでいる。車はどんどんふえるし、そういう条件は客観的にふえておるのに、こういうことを期待します、そのときはこの法案は要らないようになります、主観的に幾らそうおっしゃっても、客観的にはそうではないということが問題だということを言っておるわけです。ですから、そういう点で、五年あるいは十年たつかもしれませんけれども、もしこれが通るとしましても、いかに無理な法案であったかということが明らかに証明されるということを、私はこの点だけはいまはっきり見通すことができるということを言いまして、質問を終わります。      ————◇—————
  129. 福井勇

    福井委員長 この際、参考人の出頭要求に関する件についておはかりいたします。  ただいま審査中のタクシー業務適正化臨時措置法案について、来たる四月十七日、参考人の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  130. 福井勇

    福井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、参考人の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  131. 福井勇

    福井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  132. 福井勇

    福井委員長 次に、連合審査会開会の件についておはかりいたします。  本委員会において調査中の航空に関する件、日航機乗っ取りに関する問題について、先ほど内閣委員会、地方行政委員会、法務委員会及び外務委員会から、それぞれ連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。
  133. 福井勇

    福井委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決定いたしました。  なお、本連合審査会の開会日時は、関係各常任委員長と協議の上、四月十三日月曜日とし、午前十時から開会することといたしたいと存じますので、この際お知らせいたします。      ————◇—————
  134. 福井勇

    福井委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  本委員会において調査中の航空に関する件、日航機乗っ取りに関する問題について、来たる四月十三日、参考人として日本航空株式会社専務取締役斎藤進君、同じく運航基準部長長野英麿君及び日本赤十字社の関係者の出席を求め、意見を聴取することといたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  135. 福井勇

    福井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、日本赤十字社の参考人の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  136. 福井勇

    福井委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人からの意見聴取は、当日開合の運輸委員会内閣委員会地方行政委員会法務委員会外務委員会連合審査会において行ないたいと存じますので御了承願います。  次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時五十三分散会