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1970-04-08 第63回国会 衆議院 運輸委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十五年四月八日(水曜日)    午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 福井  勇君    理事 宇田 國榮君 理事 加藤 六月君    理事 徳安 實藏君 理事 箕輪  登君    理事 内藤 良平君 理事 宮井 泰良君    理事 和田 春生君       佐藤 孝行君    菅波  茂君       砂田 重民君    中村庸一郎君       西村 英一君    長谷川 峻君       古屋  亨君    増田甲子七君       井野 正揮君    久保 三郎君       斉藤 正男君    田中 昭二君       渡辺 武三君    田代 文久君       關谷 勝利君  出席国務大臣        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君  出席政府委員         運輸政務次官  山村新治郎君         運輸省自動車局         長       黒住 忠行君         運輸省自動車局         業務部長    見坊 力男君         運輸省航空局長 手塚 良成君  委員外出席者         警察庁交通局交         通企画課長   藤森 俊郎君         労働省労働基準         局監督課長   大坪建一郎君         労働省職業安定         局業務指導課長 保科 真一君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 本日の会議に付した案件  タクシー業務適正化臨時措置法案内閣提出第  一〇三号)  航空に関する件(日航機乗っ取りに関する問題)      ————◇—————
  2. 福井勇

    福井委員長 これより会議を開きます。  航空に関する件について調査を進めます。  日航機乗っ取りに関する問題について、質疑の通告がありますので、順次これを許します。井野正揮君
  3. 井野正揮

    井野委員 差し迫っておる問題でございますので、たいへんこまかいことで恐縮でございますが、今後の基本になる問題でありますので、運輸行政のみに限って私はお尋ねをしたいわけであります。  まず第一番にお尋ねをしたいのは、四十四年の十二月一日に、実は日本航空指令8−0/4というので、飛行機の乗っ取り事件が起こった場合の乗務員のとるべき措置について、実にきめこまかい指示をいたしております。  実は、これについて私は運輸省のほうにお尋ねをしたのであります。外国の乗っ取り事件等に関連をして、運輸省政府航空会社に何らかの指示通達をしたことはないか、こう聞いたのです。ちょっとそこに断わり書きを私のほうは誤っておったようですが、一、二カ月の間と言ったら、三カ月前でございました。航空局のほうからは、そういう事実はございませんという御返事があった。ところが、私いま手に入りました。実はこの日航職員通達したと同時に、 このときに、これは政府指導通達によってこれが出されたものだということが明らかになったのです。一体運輸省は、当該常任委員である私が問題を究明しようとして尋ねたことに対して、それは一、二カ月と言ったのは、一カ月先で三月前だったからといっても、この間私の聞いていることは、こういう乗っ取り事件についてそういうような指導通達をなさったことがあるかないか、そういう文書が出ているか出ていないか、お尋ねしたのですから、それが十日や二十日や一月違っておっても、実はあなたの指摘は一、二カ月だったけれども、三カ月前にあるという回答でなければならぬと思う。それがなされぬ理由は、大臣に聞く前にまず局長お尋ねいたしますが、いまこれが来なかったら、私はなかったものとしてお尋ねをして恥をかくところだった。ところが、いま届きました。ちゃんと出ている。それはハイジャッキング(航空機不法奪取行為について)運航基準部運航基準課昭和四十四年十二月一日、これは運輸省でしょう。違うのですか。日本政府でもない。これはどこなんですか。
  4. 手塚良成

    手塚政府委員 先生がいまお示しのものは、四十四年十二月一日、運航基準部運航基準課と書いた資料だと思いますが、その運航基準部運航基準課といいますのは、日本航空会社内の一つの組織でございます。
  5. 井野正揮

    井野委員 じゃお尋ねします。そうすると、これは、省令によって定められた運航規程政府承認を得るわけですから、ある意味では間接的な命令考えてよろしいですか。
  6. 手塚良成

    手塚政府委員 命令というと少し行き過ぎかもしれませんが、運輸大臣承認のものでございます。
  7. 井野正揮

    井野委員 そうしますと、これは私が読み上げるまでもなく、運輸大臣も御承知だと思います。きのう山村政務次官の御功績やら御努力に感謝をし、また敬意を表しながら、特に今後解明をしなければならない問題については、あの段階で、あの国民感謝の空気の中で、大臣のかわりに山村さんに質問をすることは当を得ないとして、私は質問しなかったわけでありますが、運輸大臣が今回とられた措置がいかに偉大であっても、さりとて運輸行政の中にある責任をのがれるものではないことは、私ごときが言うまでもなく、大臣先刻御承知のことですから、お尋ねをしていきたいと思います。  この運航規程を補完して、つぎ足して、 この乗っ取り事件等に対する場合の処理するものの考え方、この中を一貫して貫いているもの、そしてそういう航空会社の平素周到なる職員訓練が、ああいう石田機長以下の冷静にして、沈着な、そして果断な判断を下させた基礎である、こう判断してあやまちなきものと思うのであります。したがって、当然、これらの職務を遂行させる上において、運輸省政府指揮もまたこの精神で一貫しておらなければならないと思うわけでありますが、私のお尋ねをしたいのは、こういうことについて、いまも将来も運輸大臣としてはこの考え方には変わりございませんか。
  8. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 原則として、方針は変わりありません。ただ、御承知のように、これはよその国でもそういう国がありますが、日本の場合、いわゆる近隣に分裂国家あるいは未承認国家といいますか、そういう国があります。そういう点で、なかなか連絡上不十分な点が一つはあることと、まあその前提として第一には、この問題はやはり犯罪事件である。何といいましても、これは飛行機が乗っ取られたのですから、犯罪事件である。したがって、政府当局犯罪事件として、これをできるだけ内地において解決したいという気持ちがあることも当然であると思います。しかしながら、これは限度があります。お話しのように限度がある。しかしながら、一応これは犯罪事件として取り扱うというたてまえから、その国内で解決できるものであるなれば国内で解決したいということは、これはおわかり願えると思うのです。しかし、原則方針としては、何もかもそこでもってやれないものまでもうできませんからして、それらの状態を見きわめつつ、基本的には、いまの日航で出しました、われわれも了承しましたその方針に従わざるを得ないという考えのもとに、今回も処理したし、将来かようなことが二度とあっちゃいけませんから、まずできないように事前予防策を十分にやらなければいけませんけれども、なおかつそれでも万が一出た場合は、これはやはりその方針考えていくべきである。ことに今度の事件に私は関係いたしまして、現地にわずか二十四時間足らずしかおりませんでしたが、その間における国際関係のむずかしさ及び感情問題等もありながら、なおそれを越えて人道主義の上からやってくださった。しかし、それにしても、実際上は連絡はなかなか不便であります。こういうことを考えますと、政治関係、そこまで言っていいかどうか別問題ですが、それとはやはり別個に、この種のような問題を何とか連絡し得る方法考えなければいかぬのじゃないか。それはどういう方法でやっていいかは別問題であります。いろいろの事情がありますから、国際関係上それだから相手を承認しろというわけにもまいりません。しかしながら、こういう人命に関する人道上の問題を何らかの方法連絡したり、あるいは連絡するようなことが考えられないだろうか。そうすれば、こういう問題が起きた場合に、これを解決する上に非常に容易であり、またいろいろな問題を伴わなくても済むという気がいたします。これらの問題は、将来の問題として慎重に考えていかなければならぬと思っております。
  9. 井野正揮

    井野委員 私は、きょう大臣のその答弁のほうに引きずられないようにしようと思っているのですが、先ほどの理事会でもありましたが、この問題については、国会内にもっと大きな、広い範囲の審査機関を設ける等々の話もございます。しかしながら、問題は、いまの基本的な飛行機運航という問題に限定をして論議をしておかなければならない問題であり、その委員会に出ましても、運輸常任委員会でそれを究明しないでおいて、合同審査委員会のほうで運輸大臣にこれをお尋ねするのは、国会構成責務分担からいっても不見識だと思います。そういう点で、大臣に特にそっちのほうへお話を持っていかないように願いたいと思うのです。  私がなぜあの運航規程、そして補完された指令をいまも将来も変わらないかということをお聞きしておるかというと、何も二つに分かれた国家が今日突然出たのではない。終戦以来南北朝鮮もありますし、台湾もありますし、南北ベトナムもありますし、いろいろ分かれておりますけれども、こういう認識の上に立って、なお交戦状態とまでいかなくても、国交が回復しない事情がある。また、世界の奪取された飛行機友好関係の国へ飛んだ例はありません。全部主権の及ばない国へ飛んでいる。この事実を踏まえてこの通達指令は出されていると思うし、それを御承認なさったはずです。この点、大臣どうですか。
  10. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 未承認国を飛ぶことを前提として出したのではないだろうと思うのです。いわゆるハイジャックされた場合どうするか。無用な抵抗をするよりも──これは政治亡命であります場合は、たとえそれがいわゆる国交のある国でありましても、これが明らかに政治亡命とはっきりしておれば、これは保護する義務があるでしょうからして、犯罪等の問題がからんだ場合は別問題でありましょうけれども………。したがって、必ずしも未承認国とかそういうような問題を別にして、いわゆる飛行機を動かす場合、そういうハイジャックのようなことが起きた場合にはどうするべきかという一般論として、これは日航当局考えたのでありましょうし、私たちも、乗客人命の安全ということからして、できるだけそのような趣旨でやることは原則として当然であろう、こういうふうに理解して、これに承認を与えた、こう御理解願いたいと思います。
  11. 井野正揮

    井野委員 私は、この質問をする前にお断わりをしたのは、これは命令考えるか、あるいはそうでないのかとお聞きしたのも、真に今日の航空行政というものを——しかも世界に二百件近く起こっておるわけですから、たとえ日本で起こっていなくても、この通達を出され、承認される限り、大臣の頭の中には——週刊誌を読んでみたら、かつて馬占山にハイラルまで会いにいかれたそうでありますから、その当時は、私とずいぶん満州で近いところにおられたわけで、また新聞記者であられたということで、社会の裏ということについても、人情の変化ということについても、非常に深い造詣を持っておられる大臣として、あらためて敬意を表しておるわけなんで、これは今日国会内で起こっている議論に対してたいへんな指針になると思うから、私は尋ねるのです。  きのうも本会議でああいう議論がありました。しかし、あの怒号している議員の中に、自分のむすこが今日反国家的行動集団におられる人もおりますよ。私、知っております。したがって、これらの犯人集団を単に教育責任あるいは家庭教育責任とおっしゃったならば、国会議員をやめなければならぬ人も出てくるかもしれません。そういう問題を踏まえてみて、われわれは人間の問題として、世界観人生観が違っても、国家観念が違っても、やはり起こしてはならない犯罪であるし、かりに起こったときには、いかにしてその中から次善の策として人間の命を救うかということに徹したのがこの通達だと思う。この指令だと思う。したがって、これに対してなおいま大臣がお答えになったようなことは、今日の国家の外交の問題として、内政の問題として、すべて頭にきている悩みの中に起こった問題である、こう考えなければなりませんので、その中で定められた指令というものは、ある意味では命令的拘束を持っている、こう考えるならば、大臣信念は、これを貫かれるというのであれば、その中から発想したすばらしいものだと思うし、この指令にすら疑義を持たれるというならば、私の敬意を表していることとは違って、現象によって大臣信念がウロチョロウロチョロしていることになるのです。この点どうですか。
  12. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 私は日航基準部でつくりました原則、それに対して大臣として承認を与えておる、こう申し上げたのですから、その基本的方針には変わりはありませんが、ただ、国内で起きた事件はできるだけ国内でこれを片づけたい。片づけ得ない場合は、これはもうそのまま情勢に応じて、飛行の上のことになりますと機長判断ですから、下からどうのこうのと指図のできない問題ですから、したがって、皆さんから御質問があったときにお答えしましたように、政府はどこにおりろとかなんとかいうことを指令命令を出しておらない、こういうことでもおわかりになると思うのであります。人命を助けるということは最大の目的でありますが、しかし、その前には、可能ならば近いところでおろすことができれば一番いいわけですね。御承知のように、福岡で二十三名の女子供をまあまあおろすことができた。これも国内でとった処置の一部の成功であります。でありますから、人命はどうでも犯人を何でもかんでも力づくでつかまえてしまえという考えは、政府では持っておらない。したがって、最後にはできるだけ乗客をおろす。私は、金浦に着いてから行ったのですから、そこでもっておろせる者はおろして向こうにやる。あそこでもって何もかもつかまえてしまえという指令はとっておりません。ただ、できれば説得によって乗客をおろして、赤軍派と称する諸君が希望するところにやってもよろしいというような方針のもとに、私もその方針のもとに今回の問題を処理したわけであります。その場合に、十分なる連絡──私のほうとしては、事前北朝鮮当局にも連絡方をお願いしておったわけでありますが、しかし、何せああいう短期間の時間でありますし、先ほどから申しますように、直接連絡のできる関係ではありませんので、不十分なる連絡のもとに行ったにかかわらず、北朝鮮当局人道的に扱われて、そうして無事に帰してもらったということは、これはまことに感謝にたえない、こう思っております。その点はひとつ御了承を願いたいと思います。
  13. 井野正揮

    井野委員 何しろ大臣、時間を制約されておりますので、聞いただけ答えてください。そうでないと、どうも大臣ペースのほうへ持っていかれてしまうのです。  それでは今度は局長お尋ねしますが、航空法によって、事故発生を確認すると同時に、機長から運航本部長ですか、日航内の指揮系統に従って報告をされ、同時に、時を移さず運輸省にも報告があり、事後の処置についてはやはり指示を受ける、相談を受ける性格のものだと思います。その手続はどういうふうになっており、今回は、きわめて簡単に経路だけ言って、何時何分どういうふうに手続をされたかということだけ、福岡到着までをお知らせください。
  14. 手塚良成

    手塚政府委員 私どもがこの事件を知りましたのは、七時四十三分ころに、飛んでおります日本航空当該機から超短波の無線を通じまして東京航空交通管制部というところへ事情が伝わってまいりました。内容につきましては、現在赤軍派と思われる連中日本刀や短刀その他を持ってコックピットに押し入ってきて、キャビンのほうにも十五、六人ほどおるのではなかろうかと思う、それでキャプテンの意向としては、乗客の生命安全のためには、北朝鮮へ行きたいと言っておるから、行ったほうがいいんじゃないかと思う、こういう交信が入りまして、私どものほうでは直ちにその由を上司に伝えるとともに、関係筋連絡をしたわけでございます。そのうちに若干時間がたちますと、パイロット連中とコンタクトをいたしまして、燃料が足りないというので福岡燃料を補給していこうということになっておりますという通報が、同じような経路を伝わって入っております。連絡をいたしました先は、自衛隊、米軍警察当局、さらに本省を通じまして関係各省、こういうところに連絡をいたしました。そうして飛行機福岡に着く……(井野委員何分ごろですか」と呼ぶ)それを受けまして直ちにでございます。それぞれのところに何分何分というのは、若干時間もたっておりますが、七時四十五分ごろには防衛庁に連絡がいっておりますし、七時五十四分ころに東京航空事務所に入っておりまして、空港事務所から本省に入っておりますから、その間ずっと時間が連続して関係方面に伝わっておるわけであります。  そういうことで、その間閣議も開かれまして、板付においてできるだけ犯人説得乗客救出につとめるという方針が出まして、その方針現地に伝えるとともに、関係機関、特に県警、空港事務所日航、こういう三者が寄り集まって、そこでの対策を協議をして、意見一致したところに従って、いろいろここで説得救出につとめた。簡単に言いますと、さような経過でございます。
  15. 井野正揮

    井野委員 大臣にお聞きしますが、そうしますと、非常事態が出たわけですから、この連絡はスムーズに機能を発揮してとれたということは確認できるわけであります。その良否の判断は別です。そうすると、閣議を開いて──きのう佐藤総理は、最終的には私の責任だから、包括的に私の責任だと本会議で御答弁になりましたが、それは政治的な答弁であって、やはり航空運輸行政責任としては、機長に対する指示は、大臣を通じて、局を通じて、経過的には日本航空を通じて機長に伝えられるべき性格のものですね、精神としては。方法は、ストレートに最も近い通信方法をとるにしても、その指揮指示指令はそういうことになりますか。
  16. 手塚良成

    手塚政府委員 指示の必要があれば、いまのような経路を使って指示をすることはむろんできます。しかし、いままでの福岡に着きます経路につきましては、いま申し上げたようなことで、機長判断によって、これは燃料補給をしなければ北鮮へは行けない、こういうことで自主的に板付に着く、こういう通報がありましたので、その通報に従って板付におりるということを前提にし、おりた場合にどうするかということを地上のほうに同時連絡をして、先ほど申し上げたように、できるだけ板付でもって犯人説得乗客救出ということにつとめる、こういうことになったわけでございます。
  17. 井野正揮

    井野委員 そうすると局長、これは重大なところだと思うのですが、そういう非常事態が起こって、すでに運航管理が恐喝ないしは威嚇で束縛されている、非常に危険な緊急状態になっている、その中で、しかもなおかつ連絡によって機長判断を告げて了解を求めてきていると考えていいわけですね。機長判断運航本部に伝えて、管制塔ですか、これに伝えて、そしてこの機長判断について助言を求めるとか、あるいは指揮を受けるとかいう性格のものだと思いますが、それはあくまでも政府閣僚会議あるいは各方面からの情報収集等によって判断されたのは、機長判断のために補助的に与えた情報だ、こう考えていいですか、どっちなんですか。
  18. 手塚良成

    手塚政府委員 先ほど申し上げましたように、名古屋市ぐらいの上空で先ほどの連絡がありましたが、その後において、燃料補給のために板付へ着くという情報があり、そのまま飛行機交信を続けながら板付へ向かっておりますので、その間において特に指令指示は出しておらないわけでございます。それで、板付へ着いてからの措置として、板付へ着いて、私のほうでいえば、空港長、そういうところに先ほど来申し上げるような指示を出しておる。
  19. 井野正揮

    井野委員 そうしますと、福岡から平壌へ行くまでの燃料というのは、あそこの作戦ラインがあって、そこをストレート連絡なしに行くと国際上の問題がある等々の問題があって、迂回をしたとすれば──今度帰ってきましたから、羽田平壌間の燃料というのははっきり計器で出ちゃったわけですね。このガソリン、燃料はどの程度を必要とするのですか。そこで、私は、意図を明らかにしますが、その質問は、あの運航規程施行規則ですね、これで定められておる。この飛行機福岡まで飛ぶときに積まなければならない燃料、また機長はこれを確かめなければ発進してはならない、この法律の制約、これからいくと、これはどうも行って帰ってくる飛行燃料があるんじゃないかという気がするんですが、このとき積んでおった燃料幾らで、そして実際に積まなければならない燃料幾らなのかをお聞かせいただきたいと思います。
  20. 手塚良成

    手塚政府委員 正規の定期のスケジュールで運航する場合には、当該目的地へ着くまでにどれくらいの燃料を積むか、当然ある一つのオルタネートの空港へ着くまでの燃料を積むというのが一般原則になっております。今回の場合は、これは非常に異例の場合でございますので、そういうところまでパイロット自体もとっさの場合として頭ももちろん回らないと思います。私の聞いたところによりますと、とにかくこれから見ず知らずのところへ行くわけで、飛行場はどうなっておるか、あるいは周波数はどういうものを使う電波で交信するか、そういった実際に必要なデータはないわけでございますので、まだ十分確認はしておりませんが、機長としてはおそらく最大限の燃料を積んでいかなければならぬという判断をしたと思われ、燃料については、たしか四万ポンド、一ぱい一ぱいに積んだというように聞いておりますが、これはまだいささか確定した数字ではございません。満タンということだと思います。
  21. 井野正揮

    井野委員 この燃料積載量と、この規則に定める燃料との関係は、当然、この事故があって羽田に帰港したわけですから、七十六条の規定によって、運輸大臣はこの調査をしなければならないということに法律で定められているわけですね。以前に発生した事件の中には緊急不可抗力のものもあったと思いますが、いまもう羽田に帰ってきて、そして国際世論の中にあるこの問題の処理としては、法律では調査をしなければならないとなっておるのですが、ただいまの航空局長の御答弁では、確たる調査もないように思われるのですが、この点はいかがなんですか。
  22. 手塚良成

    手塚政府委員 いろいろ調査事項がございまして、いまの数字もどこかに控えてあると思うのですけれども、ちょっとわからないという状態ですが、要するに、たとえば平壌に行こうということに考えておったわけですけれども……。
  23. 井野正揮

    井野委員 いや、その辺はいいです。調査されたかどうかです。
  24. 手塚良成

    手塚政府委員 調査自体については、私自体がちょっと聞いていないと思うので、係官のほうにはあると存じます。
  25. 井野正揮

    井野委員 それも局長、ちょっとおかしいのですよ。特別立法をしようか、特別調査委員会を設けようかというときに、法令事項で定められたことについて、その調査内容等についての役所の業務命令ですね、これを確認しておられないというのは、局長、いささか同情できないお答えじゃないですか。いかにあなたが今日たいへんな時点に立たされておるといっても、平常業務としてもこれはしなければならぬことで、法令で定められてあることですから、これはそういう御答弁では少しピントがはずれませんか。その業務命令をお出しになったのですか、ならぬのですか。
  26. 手塚良成

    手塚政府委員 業務命令といいますか、こういう緊急事態で、その行く先が行く先でございますので……。(井野委員「戻ってきてからだ」と呼ぶ)この数字は、四万ポンドの給油をいたしました。
  27. 井野正揮

    井野委員 油はいいです。事故後の調査です。
  28. 手塚良成

    手塚政府委員 これは調査書が出まして、福岡空港空港長から報告がございましたが、この中で、十一時四十五分四万ポンドの給油完了の旨報告を受けたということになっておりますので、油の数字は、四万ポンドを給油いたしております。
  29. 井野正揮

    井野委員 福岡で四万ポンドやった。──この飛行機は一体燃料は何ぼ積めるのですか。
  30. 手塚良成

    手塚政府委員 これは満タンでございます。
  31. 井野正揮

    井野委員 満タンで四万ポンド──福岡で四万ポンド給油したといったら、福岡に行ったときはからになっていたことになる。これは運航規程に違反するのじゃないですか。そこのところは、少し調べて、数字に基づいてお答えください。少し頭が錯綜しておるのじゃないですか。それは少しつじつまが合わぬから、あとで資料で出してください。しかし、それはそれとして、飛行機羽田に戻って以後の調査事項について、あなたがいまなお確認がないというのは、これはいただけませんよ。法律で定められてありまして、それは運輸大臣調査をしなければならないとなっているのですが、運輸大臣がそのことをお知りにならないし、あなたもその業務命令について確認しておらないということになると、補弼の任にたえていないということで、運輸大臣も英雄気どりで、まことに無責任きわまると言わなければならぬ。この点はいいです、御答弁できないようですから。  まだあとからいろいろ御質問があろうかと思いますし、うちの理事からも注意がございますが、もう二、三点お尋ねしておきたいと思います。  まあ、いままでのお話をずっと聞いておりますと、機内に起こっておる問題については、この指令に基づいて、この精神によって石田機長判断、これが最大限に尊重され、あくまでも、犯人取り押えやできる限りの人命救助等については、政府はあらゆる協力を得られる機関を得て協力をし、救出をしたということを、私はすなおに受け取りたいと思います。しかしながら、必ずしもそうでないものもあるわけなのです。どういうことが裏づけられるかというと、ここに日航機長会あるいは運輸労働者、航空労働組合の皆さんの運輸省に対する申し入れ、要請があるわけです。私は、ここで最も重要視して考えなければならないのは、この中に、小細工を弄して犯人をだましたり、取り押えをするような措置をすることは、きわめて危険な不測の事態を引き起こすから、そういうことはしないようにと記してあるのです。  そこで、これは今後にも起こる問題でありますから、私は特にお尋ねをしておきたいのは、この密室の中の判断というものは、飛行機の外にいる人の期待とは別に、予測できないものがあります。また、外から不可能な条件やあるいはと思わせるような助言、判断が加えられるときには、私はこの密室内の判断を誤らせる危険があると思います。そのときはいかなる善意をもってしたサゼスチョンであっても、助言であっても、それが不幸な結果を生む原因になるのは避けられないことだと思うのであります。だからこそ、こういう犯人の意思に全く従えという指示が出されたのは、まことにこの辺の経験から生まれたものだと思います。  そこで、この石田機長が無事に帰られた後に、いろいろと言われておることがあります。テレビの発言、新聞記者との会見、そしてその時間的に、言われたものの中に、大きな食い違いのあることもいなめない事実であります。きのうの代表質問にも出ましたように、いま国民が非常に疑惑を持っておる点は、この人命尊重という精神が、国際的な関係やら国内的な期待やら、特に治安当局の犯人を逮捕するという功績の問題、また不測の事態を起こすという責任から来る問題、そういう問題等の思惑が、今後起こり得る事故に対して再び影響するということがあれば──今回は幸いに人と所を得たから、こういうきわめて幸福な結果が出ましたけれども、これがいつも得られる結果とはとうてい考えられません。そういう点から考えて、石田機長の発言が一貫していないという印象をマスコミにも与えているようであります。国民全部がそう思っているようであります。そしてここで話されたときにも、こちらで質問しているとき、うしろで話されたことの中にも、すでに国会議員の中で、いや井野君、北鮮から撃たれたのだよ、撃たれるところに行けぬじゃないか、こういう発言がここで行なわれている。(「この委員会でか」と呼ぶ者あり)はい、この委員会で。ただし不規則発言ですが……。それはやはり何らかの情報、そういうものが、国会の中にすら、不確定な、不安な、不穏な情報が乱れ飛んだということは──大臣は行っておられていなかったからおわかりにならぬかもしれませんが、これはきのうの質問にも出ましたけれども国家の安危をになう自衛力の発動にも触れてくる問題である。かつて張作霖事件がどうして起こったのか、蘆溝橋の一発の銃声は何であったかということは、今日では歴史的に解明をされております。だから大臣、これは特に運輸行政の中で運輸大臣がどこまでもその指揮権を持っておらないと──協力、期待、情報等をもらうためにする行為は、これは私は否定しはしません。だが、最終的判断、これはいつも刻々しなければならぬと思います。これが運輸大臣の手から離れて──運輸大臣が直接現地へ乗り込まれてから後はそういうことはないと思いますが、運輸大臣飛行機で飛んでおられる期間あるいは運輸大臣の耳に入らない期間、そのときには、かわって行なわれるのは次官であり、局長だろうと思うのであります。意外に、こういう点についての指揮系統は、大臣自身もあまり確認をしておられなかったのではなかろうか。局長自身も、これは防衛問題に関連をし、国際問題に関連をするから、政府全体の判断を仰がなければということで、運輸行政面からの指揮が薄れたか、よりかかったか、そういう点はなかったか。私はここが非常なポイントだと思いますので、大臣と、それから局長のお考えも聞きます。
  32. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 たいへんごもっともな御意見であります。私が金浦空港に到着しましたのは一日の十七時十分でありますが、到着しまして、直ちに金山大使、山村次官、こちらからアジア局長が行きましたが、私がまず第一に言ったことは、これは絶対に小細工を弄してはいけないということです、私の経験からして。先ほどちょっとお話があったような、非常に似たような事件に私も二回ほどあっております。南京に最後まで残った事件馬占山事件。そういうところから考えて、一切の小細工はしてはいけない。したがって、実はこちらからおかあさんたちの録音ももらいましたけれども、そういう必要はない。問題は、われわれの誠意を犯人にわかってもらうということ。必ず諸君は送る。ただ、飛行中のことでありまして、地上を歩いておるのではないのでありますし、かつまた操縦士たちが非常に疲れておる。そういう状態であれば、身軽が一番いいんじゃないか。であるから、必ず送るのであるから、したがって乗客だけはおろしてほしい。だから、これを説得してそこでもってつかまえようなんて考えは私は毛頭持っておりません。したがって、言ったことは、絶対に小策を弄してはいけない。せっかくとってくれました録音も使いません。山村次官と金山大使、韓国の当局者にも出てもらいましたが、それによって、必ず諸君は送るんだから、できれば操縦士は疲れておるから取りかえてもらいたいけれども、諸君がどうしてもいまの操縦士でなければいかぬというなら、それもやむを得ない、よろしい、私はそういう判断をして、ことに機長会からは、とても疲れておるから取りかえてくれ、それが絶体の条件だと言ってきましたけれども犯人承知しませんので、承知しないではしかたがない。石田機長がまだやれるかどうか聞いてくれ、そうしたら、これだけのものがおりてくれたから何とかやります、それならば、たいへん御苦労であるけれども、とにかくやってほしい、こう言って、日航当局もなだめ、関係者をみんななだめまして、そうして犯人の言うとおりに同一機長をもってやったのであります。だから私が申しましたことは、小策を弄さない、あくまでわれわれは誠意を持ってこたえているのだ、したがって犯人を安心せしめる、こういう基本方針を貫いてまいったのであります。その点においては、いま御意見がありましたような方針を今後ともとっていきたい、かように考えております。
  33. 手塚良成

    手塚政府委員 私ども基本は、福岡空港までにおきまして、先ほど来申し上げておるような措置というものを関係各省ととるということ。それから先に飛び出しますについては、これは純航空的な立場でこれを安全に航行させなければならぬという使命があるわけでございますので、福岡航空交通管制部から大邸の航空交通管制部に、向こうから聞いてまいりました飛行機の型式あるいは高度、方向、そういった通常の通信内容を通信して、航行の安全を保持するという方法一つとる。それからさらに、目的地といわれております北鮮ということについては、残念ながら飛行場あるいは通信機関、その周波数、またいろいろ必要項目がありますが、そういったものが全くわからないという状態でございましたので、これは外交ルートを通じてそういうものを入手すべく、その後の折衝を続けてまいっておりました。こういった状態です。それで、その後におきます情報等につきまして、いろいろ関係方面連絡をとり、そういった安全運航ということについての必要な措置を私どもはとったわけでございます。
  34. 井野正揮

    井野委員 これを最後にしたいと思いますが、質疑を通じて大臣方針はたいへんよくわかりました。これからの対策に一つの指針が出たと思います。私は、この航空運送事業というものの特殊性を世界の経験から照らしてみて、この指令に書かれた精神というものはどんなときでも守らなければならないし、また政治的な問題があるにしても、いまだ国交回復せざる国とも、少なくとも航空の問題については相互の最小限の協力という関係が結ばれなければ、やはり人道上反するものになると思います。そういうことでございますので、ぜひその精神を貫いていただきたいと思います。  それから、私どもがこういう主張をすると、すぐ赤軍と社会党の結びつきというふうなことをいわれますが、まことに迷惑千万でありまして、そうではなしに、赤軍といわれるような思想グループあるいはその他の思想グループ、この国にもう住みたくない、どんな手段でもいいから出ていきたいという青年たちがかなりいることを私どもは忘れてはならぬと思っております。その前に、この人々を犯罪者と言おうと、極悪人と言おうと、冷血鬼と言おうと、それは批判をする人のかってだと思います。それによって起こる行動で、罪も何の縁もない人が、このような非常な苦痛を味わい、ときには生命の危険にさらされなければならぬ、こういう事態に対して、航空を扱うものは、そういう者の実在を意識しながら、そうして防止の可能性を考えながら、かつ人間の権力を考えますときに、私は両立しないむずかしい問題があると思います。たとえば、いかに探知機をもってしても探知をされない科学もあるわけであります。したがって、きのうわが党の石橋議員が言いましたように、今度のことは防止対策に多くの教訓を与えたけれども犯罪者に対してもまた多くの教訓を与えたことを忘れてはならぬと思います。同様に高まっていくものである。いい薬ができれば、必ずそれを越える細菌ができるのと同じことであります。われわれはこういう自然の法則を踏まえながら、今後の航空問題を考えていかなければならないと思いますので、特にこの点、一方的な側面だけで御判断にならないようにお考えをいただくことを希望いたしまして、まだございますけれども、時間の制約がありますので、私の質問を終わります。
  35. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 井野さんの御意見よくわかりましたし、たいへんありがとうございました。なお、阿部助哉さんが御協力くださったことをもってしても、社会党と赤軍と関係があるなどと決してわれわれは考えておりません。ほんとうに阿部さんには御苦労をかけましたが、おかげで山村政務次官に間違いないということを犯人に、赤軍の連中にわかってもらって、そこでスムーズにいったのでありまして、その点は社会党の皆さんにも厚く御礼申し上げます。
  36. 福井勇

    福井委員長 次に久保三郎君。
  37. 久保三郎

    ○久保委員 限られた短い時間でありますから、さしあたり二つほど、お尋ねというか、意見を入れて申し上げたいのでありますが、今回の問題について、いま井野君からもいろいろお話がありましたが、やはり機長判断というか、そういうものが優先されたかどうかという問題だと思います。これは今後のものの考え方や対策の上においてたいへん大事だと思います。そこで、私どもは、いまいろいろな政府側の皆さんのお話やら、あるいは新聞等を通じての情報、こういうものを総合して、機長判断が最後まで通ったとは考えていないのであります。機長判断が通ったのは、まず途中でハイジャックにあった、そこで福岡に着陸しなければいかぬというのは、これは機長判断だと思います。それから福岡を飛び立つときには、きのうの本会議での防衛庁長官等の答弁を含めて考えると、これまた機長判断北朝鮮に向けて飛んだと思うのであります。しかし、金浦に着陸することは機長判断というか、意思ではなかった。意思に反した着陸であった。それからもう一つ平壌に飛び立つことは機長の大体の意思でもあったかと思うのでありますが、その飛び立つ時期ははたして機長判断であったかどうか、たいへん疑問があります。飛び立つ時期、そういうものは機長判断であったかどうか。そこで、私が言いたいのは、いまも話に出ましたいわゆるJALが持っているハイジャックに対する措置機長のとるべき措置運航基準ですね。この運航基準を中心にして、事件が発生したならば機長判断を誤りなからしめるように関係機関は協力をするというのがまず第一だと思う。そういうためには、機長判断というのがオーソライズされなければいけない。運輸大臣はこのJALの運航基準を承認されているのでありますから、当然これを中心に考えなければならぬものを、残念ながら、きのうの防衛庁長官の話は別として、警察当局福岡で何かタイヤをパンクさせようと思ったとか、空気を抜こうとした、あるいはこれは新聞情報でありますが、飛び立つ寸前に油送管のコックを締めようとしかかって振り落とされた事件、そのままよど号は飛んでいったという。こういうのは機長判断とは相反することだと思う。いわゆる機長判断ということでオーソライズさせていない。だから、今後の対策としては、ハイジャックにあった場合は、この運航基準に基づくところの機長判断をそれぞれオーソライズできる体制を築くことがまず先決だと私は思う。そういうふうに考える。だから、これをやらないで、政治的やいろいろな犯罪捜査やその他の面から機長判断を狂わせるようなことであっては大事件になると思う。だから、それをやはり貫き通して体制を築いてもらわなければならぬだろうというふうに一つ考えます。  それからもう一つは、オーソライズすると同時に、この機長判断に誤りなからしめるための情報の提供、手段方法を尽くすというようなこと。機長判断から関係機関の協力が求められるような、これまた逆な体制が必要だと思うのですね。これがはたして今回の事件ではなされたかというと、あまりなされていないですね。幸い皆さんの御尽力によって無事戻ったといえば戻ってまいりましたから、事なきを得たということでありますが、私はそういうふうに思う。だから、運航基準を中心にした機長判断、権限、こういうものを中心にして、ハイジャックにあった場合の対策は確立されるべきだ、こういうふうに一つは思うのですが、いかがでしょう。  時間がありませんから、続げて申し上げます。  それからもう一つ、きのうの本会議での答弁でも、運輸大臣は、ボデーガードというか、航空保安官というか、こういうものを乗せたらどうかということでありますが、私はあまり効果がないと思うのです。それから航空機上におけるところの犯罪に関する条約、これはあとから申し上げますが、あるいはこれもそうですが、乗員室と客室の間のロックの問題でありますが、これもかかる場合においてはあまりきき目がないと思う。しかし、これは当然一般の者が出入りが自由であってはならぬと思うのであります。当然のことでありまして、別にハイジャックがあるからとかなんとかいうことじゃなくて、これは一般的な運航基準とかそういうものにあるべきだと思う。私は再度申し上げますが、航空保安官を機内に乗り込ませることについては、一考をわずらわしたいと思う。かえってこれはためにならぬ場合がある。むしろこの際、条約等の関係もございましょうから、機長並びに乗員に対して司法警察官あるいは警察吏の職務を行なわせるという権限を持たせる必要がある。これはぜひやらなければならぬ、こう思う。そういうことのほうがむしろ法体系としては正しいのではなかろうか、こういうふうに思う。  それからもう一つ、これはお尋ねになりますが、この東京条約に対しての批准がおくれている原因は何だろうということ、これは航空法を中心にした国内法の整備がうまくいっていないということでありますが、問題は、これはハイジャックにあまり適用にならない。犯人飛行機からおろす、あるいは外国の官憲に引き渡す、あるいは引き取らなければいかぬというようなことだけであって、ハイジャックにあったときの、その他今回やったような、外国へ行った場合に、乗員と機材と乗客、そういうものとの関係は、何も条約には出ていない。だから、やろうとすれば、これはこれからの国際的な条的、国際間のいわゆる交渉上において、最近におけるハイジャックの実態をさらに詳細に調査して、これは日本国としても提案をすべき時期ではないだろうか。そうすることが、たとえば今回のような未承認国というか、国交を回復していない国々との間に対しても、何らかの方法がもっと簡便にとれはしないか、こういうふうに思うわけです。  あらためて質問の要点は申し上げませんけれども、先ほど申し上げたように、いわゆるハイジャックにあった場合には、JALの運航基準、それによる機長判断、こういうものが最高の基準である、それに対して何ものもこれに制肘を加えてはいかぬ、こういうようにオーソライズされることが一つ。それから機長判断を誤らしめないための情報提供、手段、そういう協力体制をもっととっておく、こういうのが必要だということを申し上げておく。それから二番目には、保安官の乗務よりは、司法警察官その他の職務を機長はじめ乗員に与えることが考究さるべきではないか。それから三番目には、東京条約については、先ほど申し上げたように、今回のハイジャックそのものにはあまり効用がないようだけれども、さらに広げていくとするならば、この東京条約批准にあわせて外交上において交渉をさせろ、こういうことであります。以上です。
  38. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 第一の問題は、犯罪のあったことと飛行運航の問題と二つに分かれると思います。犯罪があるという事実、それを無視するわけにも実際上いかないと思うのです。ことにこの間のように子供まで乗っかっているような場合、あるいは病人もいるというときには、やっぱり犯人をある程度説得して、そういう人を幾らかでも救うということは妥当な手段だと思うのです。おそらく福岡においても、あそこで赤軍の連中をつかまえることができるとは思わなかっただろうと思います。ただ乗客の安全、人命の保護ということが先決だったと思います。  それから、もちろん、飛び立つ場合において十分なる資料を提供することは当然です。ただ残念ながら、日航当局──きのうは長野運航部長も参議院の運輸委員会で説明しておりましたが、何せ日航にしましても、あるいはわがほうの自衛隊にしましても、一切の資料がないわけですね。そのときに私見ましたが、普通定期便の動くところは非常にこまかい大きな地図があります。ところが、北朝鮮ばかりじゃない、中共でもそうでしょうが、そういう未承認国というか国交のない国には、そういうものがないのですね。やむを得ず小学校で使う地図、平壌と京城がほとんどくっついているという地図をしかたがないからこれに渡して、そういう場合には、こっちにこういうふうに飛んでいく方法しかないだろう、この程度までの資料しかできなかった。したがって、今後向こうの天気状況、気象情報とか、そういうものがわかればもちろんつけてやらなければなりませんが、いま申したように、国交関係がありませんので、気象の状態も全くわからないということで、わずかな資料だけしか出すことができなかった。したがって、その時点においては、日航運航部長が、北朝鮮に行くものとして北朝鮮の入った地図を渡したわけであります。もちろん、これは事情がわかれば、そういうことがあった場合でも詳しい資料を提供することは当然でありますから、今後ともそういうことがありましたらいたしたいと考えておりますが、この場合、将来の問題でいろいろ考えなければならぬ問題が幾多あると思います。たとえば、いろいろな目的で未承認国から日本に来る場合だってないとはいえないわけですね。そういう場合もありますから、将来ほんとに冷静になって、慎重にこういう問題は別個の問題として、政治関係や何かは除いて、やはり人道問題の上で起き得る可能性があるのですから、やはりこれは慎重にかつ人道的な立場で検討を加えていかなければならぬと思っております。  第二の、機長並びに乗員に対するいわゆる機内の秩序保持、これに関する法律改正はぜひやりたいと思っております。その場合に、いま久保さんがおっしゃったような、保安官を乗せるようなものを置いたほうがいいかどうかということは、御意見もありまして、私も必ずしも乗っけなければならぬと思っておりません。ただ、いわゆる事件自体には大小それぞれあります。その場合において、あるいは小なる場合にはそういうものがあったほうがいい場合もあると思います。機長解釈だけで、機長だけで間に合う場合もありましょう。そういう場合も考えて、当然のこととして保安官を乗せるべきであるという考え方ではもちろんありません。それらを各方面の意見を十分に聞きまして、最善、そして人命を保護し得るに足る条件を整備するということが──力づくじゃないということですね。力づくじゃなく、いろいろな点から考えて、リーズナブルなものを考えていきたい、かように考えておるわけであります。  なお、機長運航上における責任は、当然機長責任であるばかりでなく、これは実際外部からどうのという指図のしようがないのです。せんだって金浦から平壌に飛ぶ場合も、いろいろ機長の意見を尊重して、そしてガソリンは幾ら入れてくれとか、その他いろいろなことを全部機長の意見に従って行なったわけでありまして、金浦を出発する際におけるものに対しては、何ら制肘はもちろん韓国当局も加えない、われわれも加えない、全部機長判断でやってもらう、こういうことで行なったわけであります。
  39. 福井勇

    福井委員長 次に宮井泰良君。
  40. 宮井泰良

    ○宮井委員 たいへん時間がなくなってまいりました。私、初めて大臣質問いたしますが、今回の事件に際しましてはたいへん御苦労さまでございました。  私は、根本的なことをまず第一点お聞きいたします。  今回の事件あるいはこれからジャンボ時代、SST等、今後航空行政は急速に複雑かつ緊急性を要してくると思われる時代になっているわけであります。事業量もまた非常に増大してまいります。こういった観点で、この航空行政はこのままでいいと大臣はお考えであるか、さらに増大せねばならないとお考えであるか、その点をお伺いします。
  41. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 お話しのように、飛行機を利用する交通というものは非常に急増しております。先ほどちょっと申しましたように、十年後には国内だけでも一億二千万人が一年間に乗るだろうというのですから、これはたいへんな問題であります。したがって、現状のままの機構でいいかどうかという問題も、これは将来は考えていかなければなりませんが、現状のところでは、私は、いろいろな点を十分勘案しながら、そして関係方面と密接に連絡をとりつつやっていけるのではないかと思う。これは実際上、行政部門としてこれから非常に拡大せざるを得ない。ただ、警察行政、いわゆる飛行機の中の警察行政、飛行場の警察行政と運航行政というものを、やはりこれは相当はっきりとある程度まで区分して、その両者における陣容の強化、こういうものがだいぶ必要になると思います。  もう一つは、これは行政的にもできると思いますけれども、一日何十万という人の出入りする大飛行場、こういうものに対する秩序維持の方針ですね。これは運輸省だけの責任じゃないので、運輸省にも責任はありますけれども、これらは何か行政的な実質的な一元化、形式上はなかなかむずかしいと思いますが、実質的な一元化ができないものでもないのではなかろうか、またしなければいかぬのじゃないかと私は思います。たとえば表のほうで待っておる警察官はそれだけの仕事、内部でやっている連中はそれだけとか、あるいは飛行場に関係するそれは、保安任務は飛行場だ、それではしかたがありませんで、また指揮命令もはっきりしない。こういう点で、これは行政上の相談ずくである程度やっていけるのではないか。できなければ法律をつくる必要もありましょうけれども、行政的なことでできる。こういうことで、これらに関してはできるだけ早く関係方面と相談して整備をしていきたい、かように考えております。
  42. 宮井泰良

    ○宮井委員 それでは航空局長お尋ねいたします。  東京条約の批准につきまして、運輸省内に、条約の趣旨は機内の一般犯罪の防止のためで、効果がないという考えがあると承っておるわけです。今度ICAOで今年中に採択しようといたしておりますハイジャッキング防止条約のほうを批准すべきである、このようにいわれておると聞いておるわけですが、そうお考えであるかどうか、お伺いいたします。
  43. 手塚良成

    手塚政府委員 東京条約は、御承知のように、ハイジャッキングそのものの対策といたしましては、必ずしも十分でないということになっております。そのために、各国におきましても、最近のハイジャッキングの続発によりまして、新たにハイジャッキングそのものとしての国際条約をつくらなければならぬという動きになってきたわけです。一九六九年の二月、九月の二回にわたりまして、ICAOの法律委員会というのが開かれまして、そこでそういう新しいハイジャッキングそのもの、つまり、ハイジャッキングを犯罪として厳罰にする、そしてあと、犯人、機体その他を引き渡しをするという内容のものを討議いたしまして、ことしの二月に条約草案を採択いたしておりまして、おそらくこの秋には外交会議が開かれて、これに関する最終的な採択が行なわれると思います。  こういう情勢が一方にありまして、実はいままでのところ、私どもはハイジャッキングに対するいろいろな対策は必要だと思っておりましたが、東京条約では何せそういう点が少しなまぬるいという感じがいたしておりましたので、これの批准についてやや消極的な態度をとってまいりました。しかし、東京条約には、単にハイジャッキングのみならず、ほかの意味合いのものがいろいろ盛られております。そこで、そういった内容は、今回の事態に徴してやはり何がしかのプラスの効果を発揮するものでございますので、目下東京条約そのものについてこれの採択の方向で、国内法の整備等についていろいろいま関係方面と前向きで検討をいたしておる最中でございます。  あとで申し上げますハイジャッキングそのものの法律委員会の結論というものについては、これは当然わが国も採択をされるものとして、これに対応する国内法を整備すべきものと、かように考えております。
  44. 宮井泰良

    ○宮井委員 ただいま航空局長から、両方を検討するというお話が出たわけですが、外務大臣は東京条約の批准を考えておられる。あるいは法務大臣は、航空機強奪処理法を単独立法として考えておられる。運輸省では、ハイジャッキング防止条約の批准を必要としておる。こういった関係で、国際条約と国内法の調整の問題点につきまして、意見の調整が十分でないように私は思えるわけですが、大臣の所見を伺いたいと思います。
  45. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 関係大臣方針は一致しております。ただ、航空局長が申しましたのは、従来事務当局で検討しておった経過を申し上げたと思います。  私は、基本的な、根本的なものの考え方を申し上げますと、ややもすれば、何でもかんでも抜本的、根本的にこまかいことまで出そろわないとものをつくらないという考え方は、私は誤りだと思う。というのは、いまのような情報化時代、科学技術の革新というか非常なる進歩の時代、こういう時代には、十年も二十年ももつ法律や条約がはたしてあるかどうかわからないですね。ですから、いいことがあればとにかくそこからやっていく、それからだんだんと直してやっていけばいいじゃないか。これは西欧の諸国でもその他の国でもそうだろうと思いますが、私は、そういう必要なことはどんどん進めてやっていくという考え方であります。ただ、航空局長は、従来の事務的検討の段階を申し上げたのであって、われわれ大臣としての責任ある立場からいえば、外務大臣も法務大臣も私も意見は一致しておる。この点を御了承願います。
  46. 宮井泰良

    ○宮井委員 次に、今度の事件で最も大きな問題になりましたのは、情報処理のことであったと思います。外務省、運輸省、警察、日航、それぞれの立場で情報入手していたために、一貫した処理が行なえなかったのではないかということでございまして、この情報処理は、今後あらゆる問題に対処するために重要であると思いますが、運輸省といたしましてこの問題をどのように考え、また今後対策を講じられるか、この点を。
  47. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 おっしゃるように、現代社会は情報化社会ですから、情報は非常に大事であります。ただ、私は情報化社会議員連盟の会長などをやっておりまして、申し上げておりますことは、情報化社会であればあるほど、情報の正確なるものを提供する、これが第一だ。コンピューターは、いわゆるめちゃめちゃの情報を入れますと、コンピューター自身も答えようがない。そういう意味で、私は情報を統制しようとは思いませんけれども、正確な情報をできるだけ迅速に数多く提供するということ、その面において、現代社会は、日本だけでなく各国ともにまだ不十分である。そういう意味において、今回の事件はとっさの事件であり、われわれにしてみれば全く予期しない、気も転倒するような事件でありますから、その間に未確認情報が出たと思いますが、私は、現地において出しました情報は、全部これを正確に実態をとらえたものでなければ、情報として私は出さなかった。ただ、それが不十分な手ぎわであって、多少時間がかかったために、あるいはこちらではいろいろなうわさやら何やらというものが情報として流れて、世の中に御心配をかけた、かように存ずるわけであります。
  48. 宮井泰良

    ○宮井委員 それに関連いたしまして、通信関係の行政を運輸省の中に組み込むことが以前から考えられておったと思いますが、今後これを行なう考えはないか、これを。
  49. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 宮井さんの御質問は、どういう意味か、私にもはっきりわかりませんけれども、もし通信関係といって、飛行機に関する通信関係でありますれば、これは機関士が兼務してやっております。ただおっしゃることは、あるいは外部の情報ということであろうかと思われます。外部の情報については、設備によっては、国際線は運航上の通信は十分にできるようにその点はなっております。
  50. 宮井泰良

    ○宮井委員 けっこうです。  そこで、あと先になりますが、今回の事件に関しまして、各省それぞれの見解、立場で解決に当たられたわけでありますが、今後の問題といたしまして、各省庁ともちろん密接な連絡をとられたわけでありますけれども、対策本部というものを設けてやっていくべきではないか、こう思いますが、これについて。
  51. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 ある程度時間がありますれば、さような形の上でのものをつくってもよかったと思いますけれども、実際的には直ちに関係大臣が随時協議いたしまして、そうして一貫した方針でやってまいりました。これは長期戦ということになれば別問題ですが、あの場合で、私も事件を知りまして、直ちに私の判断山村政務次官現地に送り、続いて関係大臣と相談をしました結果、山村政務次官だけではなかなか処理が困難であろうから、これを総括的に指揮するために行ってもらいたいということで、私が行きましたので、現地における責任は、私が最高の責任者として処理をする。外交上の問題は、これは金山大使がおりますから、金山大使を通じて、形式的には本国あるいは韓国政府当局と折衝させましたが、私もその中にあって折衝した。こういうことで、実質的にはさような形でまいった。あのような状態の場合にはあれでやむを得なかったのではなかろうか、かように思います。
  52. 宮井泰良

    ○宮井委員 それでは時間がありませんので、もっとお聞きしたいのですが、これで終わりたいと思います。  きのう山村政務次官にお伺いしましたが、機長犯人を取り押えるといういわゆる警察権を与えるという問題に際しまして、アメリカ等におきましても、取り押えようとして副操縦士が射殺されたというような事件もございまして、山村政務次官は、法規定だけでは解決できない、いろいろな国情もあるのではないか、そういった航空法の改正についての実際の体験からのお話があったわけですが、運輸大臣も金浦等へ行かれまして、そういう単独犯あるいは一人、二人のときにおいては押えられるというようなことも考えられますけれども、そういう点の御見解をお伺いして、終わります。
  53. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 山村政務次官の身をもっての体験、これは十分に尊重しなければならぬと思います。私も現地において、全く立場の異なった立場で彼らは行動しておるのでありますからして、その意味においては、単に航空法とかあるいは飛行機奪取法とかというものだけでは解決がつかない。何といっても、いわゆる調和された社会を建設するといいますか、そういうような広い立場での社会をつくり上げていく。人間自身もそのような人間をつくるべく、教育面からも考えるという総合的な施策があって、初めてこういうものを根絶できるのではないか。しかし、現状で、いま直ちにさようなことは困難でありますから、次善の策として、いろいろの考え方を各方面において処理して、そうしてできるだけ未然にこれを防ぎ、できた場合においては、人命尊重の立場でこれを解決する、こういう方針でいかなければならぬと考えております。
  54. 宮井泰良

    ○宮井委員 ありがとうございました。
  55. 加藤六月

    ○加藤(六)委員長代理 田代文久君。
  56. 田代文久

    ○田代委員 大臣にまず伺いたいのですが、今度の事件の場合、機長責任並びに権限、これが大体これまでの国際的な常識あるいは昨年十二月に追加されました航空規定、これが厳密に守られておるということになれば、幾日間も国民やあるいは当事者の方々に不安を与えるというようなことが少なくて済んだのじゃないかという点が、非常に重要な私どもの関心になっているわけです。そういう意味で、機長責任と権限が十分こういう国際常識あるいは航空規定にのっとって守られたかどうか、再度御答弁願いたいと思います。
  57. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 結論から申しますと、機長の権限、いわゆる航空機または旅客の危険に際して機長のとるべき権限、その権限は原則としてわれわれは守り、かつ機長もこれを守って行動した、かように考えており、国際的な航空運送事業関係者においても、ハイジャックの場合においては、機長がその権限を原則として活用する、その点については今回も同様であった。ただ、先ほど申しましたように、いわゆる国内で解決でき得る範囲内のものはそれを努力するというのは、これは当然であって、それがために飛行機を犠牲にしたり乗客を犠牲にしたりしてはいけませんけれども、そうでない限りにおいて、やはりある程度の措置を講ずるということも、これは当然であると思います。
  58. 田代文久

    ○田代委員 ではお尋ねしますが、この事件が発生した後に、先ほどの答弁によりますと、機長燃料の問題、これは当然正しいと思うのですが、燃料の問題で板付飛行場におりるという意図で行ったということですね。ですから、燃料が十分そこにあれば、そのまま機長の意思によってこれは平壌の方向へ行くことができたと思うのですね。ところが、板付に着いたとたんに、または着いてから、そこには非常にいろいろな工作がなされておる。あるいは発進直前に、機長が求めもしないのに、バルブを締めるとか、あるいはそこにいろいろの障害ですね、滑走路に自衛隊の練習機が配置されるとか、こういう異常なことが起こっておりますが、日航当局は、そういう滑走路に自衛隊の飛行機を並べるとか、あるいはバルブについてのいろいろ処置をするとか、こういうことを頼んだのか。それとも、そういうことをやったのは警官の自発的な意思によるのか、あるいは自衛隊がやったのか、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思う。
  59. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 先ほど来申しておりますように、人命尊重──百三十五人ですか、全部入れまして。その中には、御承知のように老人、病人、子供、こういうものを含んでおるわけであります。したがって、赤軍派連中北朝鮮に行きたいというその原則はまあ了承するにいたしましても、問題は安全に飛行できるかどうか、あるいは乗客の諸君を何人かでも、そういうような特殊な人だけでも出し得るかどうか、また、出すように努力するということは、やっぱりこれは人命尊重の上から当然とらなければならぬ。そのために、現地においては相談の結果、そのような措置が行なわれたわけでありまするが、そうしてその結果は、犯人のいわゆる一応の理解のもとに、病人及び子供など二十三人を出すことができた。でありますからして、私は、いかなる場合でも人命尊重──全部を乗せて危険があるかないかということもありますけれども、一応は幾らかでもそういうものをおろすことによって機内の秩序、冷静を保つという意味では、やっぱり病人や子供がいないほうがいいんじゃないでしょうか。そういう意味で、そういう方々をおろすための努力をしたということは、私は、機長の権限を侵したことにはならない、かように考えます。
  60. 田代文久

    ○田代委員 これはなお総結果から見て議論しなければ、いまの大臣の御答弁では納得できませんけれども、では、そういう指示飛行場におけるバルブの問題とか、あるいは自衛隊の練習機が配置されたというような問題の指示は、これは大臣がなさったのですか、どこが大体そういう指示をしたのですか。簡単にひとつ……。
  61. 橋本登美三郎

    橋本国務大臣 われわれは現地事情がわかりませんので──私にしましても、その他の大臣にいたしましても、現地事情は詳しいことはわかりません。したがって、現地において日航当局を中心にして関係者が相談されて、いわゆる老人、子供をおろすための措置として行なわれたものと、かように考えます。
  62. 田代文久

    ○田代委員 それはおかしいですね。ただ関係者といっても、全責任を持つ人が、これは意見を聞くといたしましても、その結果こうすべきだという責任の明確な所在のもとになされなければならない。当然それは運輸大臣が持つべきじゃないかと考えられるのですね。これは自衛隊が出てきたとかなんとかいう問題もそうなんですが、単なる関係者がやったということでは、そういう答弁ではわれわれは納得できません。  時間がございませんから、先に進みますが、三十一日の正午ごろ、在日米軍の司令官に、日本航空の長野運航基準局長が幾つかの要請をしております。この要請は運輸省は知っておったかどうか。その要請というのはどういう内容であったかということなんです。
  63. 手塚良成

    手塚政府委員 これは私どもへは事後報告的でありましたが、私どもも知っておりました。その内容は、これから平壌へ行く、行くについては下から撃たれるおそれがある、そこでそれを撃たないように関係のところに連絡をしてもらいたい、こういうようなことです。初めはこれは防衛庁にお願いをしたようですが、防衛庁のほうでは飛行機との交信用周波数がぐあいが悪いというので、これは韓国のほうへ頼まなければならぬというような話があったので、これを米軍を通じてお願いをした、こういうようなことであると思います。非常に出発直前の時間の切迫しておった時期でございまして、事前にそういう了解を各方面にとることが困難であるということから、日航は最善の方法としてそういうことをやったわけでございます。私どもにも連絡がございました。
  64. 田代文久

    ○田代委員 では最後に、一点お尋ねいたしますが、福岡空港を離陸するまでの石田機長に、わざわざ国際基準となっておるサイクルについて注意をしているわけですね。つまり、百二十一・五メガサイクルの周波数を注意して聞けという指示をしておりますが、運輸大臣はそういう指示について知っておられたかどうか、この点お尋ねしたいと思います。
  65. 手塚良成

    手塚政府委員 これは航空の常識といたしまして、非常事態に使うべき周波数でございます。緊急用の周波数でございます。そこで、事態がいまのように平壌へ飛ぶということでございますので、国際的にきめられておるそういう緊急用の周波数を使って、絶えずそれをウォッチする。どこからどういう連絡が入り、ニュースが入り、インフォーメーションが入っても、それを聞けるように注意していきなさい、そういう意味でその周波数に注意しておれ、こういうことを伝えたわけでございます。
  66. 田代文久

    ○田代委員 では、当然これは運輸省としては知っておられたわけですね。
  67. 手塚良成

    手塚政府委員 これは、私のほうで直接そういうことを指示し、あるいは連絡を受けるということはございませんでしたが、これは航空会社あるいはパイロットとしましては当然の措置でございますので、何ら問題はないものと考えます。
  68. 田代文久

    ○田代委員 これは米軍との関係でそういうふうになったのと違いますか。つまり、この周波数の問題は、これが平壌に行くというコースがずっとUターンして金浦へ行くという問題と非常に重要な関係を持っているわけですね。したがって、これは、最初機長が意図しておったコースと、これを変更するについて、実に重要なポイントになっているわけですね。ですから、こういう問題を単にいま常識として当然機長がやったんだということをおっしゃいますけれども、何らかの力がそこに作用したのではないかということは、大きな国民の疑惑になるわけですね。何の意味で、とにかくそういうことを特に注意したかという問題なんです。いわゆる米軍との関係において、何ら無関係でこういうことがなされたかどうかという問題なのです。
  69. 手塚良成

    手塚政府委員 これは国際的に一般のエマージェンシー用周波数ということになっておりますので、今回のような異常事態におきまして、国内から国外へ出るというような場合には、当然その周波数を注意をしていくということは、これはもう普通の慣行でございます。
  70. 田代文久

    ○田代委員 そうすると、もう何ら米軍との関係においてはそういうものは全然ない、接触も何もなくして、機長なり会社の判断によってなされたということなんですね。
  71. 手塚良成

    手塚政府委員 そのとおりでございます。
  72. 田代文久

    ○田代委員 終わります。      ————◇—————
  73. 加藤六月

    ○加藤(六)委員長代理 タクシー業務適正化臨時措置法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。古屋亨君。
  74. 古屋亨

    ○古屋委員 ただいま審議をされておりますタクシー業務適正化臨時措置法案について、数項目にわたりまして疑点を解明いたしたいと思いまして、御質問をいたします。  まず第一に、この法律を出したことの効果についてお伺いしたいのでありますが、本法が成立いたしますると、本法が目的としておりますような乗車拒否その他どの程度なくなると予想されておるか、ひとつ局長の御判断をお示しを願いたいと思います。
  75. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 この法律は、現在大都市におきまして、乗車拒否をはじめといたしますいろいろの問題が起きておるわけでございまして、良質の運転手を確保いたしましてタクシーサービスの改善をしようという総合対策の一環として考えたものでございまして、さらに従来からいろいろやっておりますところの問題、すなわち労働条件の改善、あるいは現在実施いたしました時間距離併用メーター、あるいは深夜割り増し制度の運賃改定、さらには事業者に対する取り締まりの強化というふうなものと相まちまして、今回の法律考えております悪質の運転者の排除のための登録制度あるいは適正化事業の実施を行ないますと、乗車拒否等は防止できまして、サービスの改善がはかれるものというふうに確信をいたしております。
  76. 古屋亨

    ○古屋委員 それではこの法案について疑点をお伺いいたしますが、この法案では「当分の間、指定地域において、」ということになっておりますが、また指定地域につきましては、業務の適正に行なわれないところというものを政令をもって指定をするということになっております。ただいままでの質問その他のお話では、東京と大阪だけということでございますが、業務の適正に行なわれてないところを指定区域として政令できめるということでありますが、指定区域を広げることがあるかどうかという問題、それから当分の間という臨時措置法でありまして、当分の間、そこでまた追加ということがあり得るというのは、いろいろ考えましても、私法体系の上でもちょっと了解しにくいところがありますが、そういう点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  77. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 自動車運送事業に対する、すなわちタクシー、ハイヤー事業に対する監督の法律は道路運送法があるわけでございまして、これが一般の恒久法としてあるわけでございます。ところが、大都市におきまして、特に東京、大阪のような大都市におきまして、タクシーの乗車拒否等の問題が起きてまいっておりますので、これをなくするために臨時的に必要な措置である。これにつきましては、たとえば運転手の登録を実施する、あるいは適正化事業を実施する──適正化事業につきましては、元来事業者が自発的にやるというようなたてまえをとりたいところでございますけれども、事態が非常に切迫いたしておりますので、このような法律でもって対処しようとするものでございます。したがいまして、それらの事態の解決が早ければ、この法律の臨時的な必要性がなくなるわけでございますので、なるべく早い機会を期待しておるわけでございますけれども、いつ期待どおりいくかということは明白ではございません。したがいまして、当分の間というふうにいたしたわけでございます。  それから地域の指定につきましては、政令でもって指定するわけでございますので、法律的にはプラスすることはもちろん可能でございますけれども、現在のような事態が起きておりますのは東京、大阪でございます。これは実車率というものが非常に高い、すなわち、需給の面のアンバランスが著しいということと、それから乗車拒否等のような事態が起きておるという地域は東京、大阪でございまして、それを政令でもって指定する予定でございます。ほかの地区につきましては、現在のところそれらの問題が東京、大阪ほどございませんし、またほかの都市につきましては、自主的にいろいろの政策を実行するように、事業者のほうにも指導をいたしておりますので、われわれといたしましては、東京、大阪以外に現在その拡張を必要とする理由は考えていない次第でございます。
  78. 古屋亨

    ○古屋委員 それでは、東京、大阪等における乗車拒否、大体最近における、たとえば昨年一年のそういう乗車拒否の件数とか、それに対してどういう措置がとられておるかというような点について、もしわかっていたらお伺いいたします。
  79. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 東京、大阪につきまして、乗車拒否等、これはいろいろ件数はあるわけでございますけれども、その中で警察の通報あるいは直接の通報等があるわけでございます。四十四年度におきましては、警察等からの通報が五百八十九ございます。それから一般からの親告通報が七百七十七件ございます。それから処分でございますが、いまの四十四年度はまだ全部の集計ができておりませんが、四十四年の四月一日から本年の一月三十一日までにおきまして、東京の特別区では、処分いたしましたものが、車両使用停止のものが百六十二件でございます。その中には四件の個人タクシーが含まれております。それから文書警告いたしましたものが百四件、次に大阪市域につきましては、使用を停止いたしましたものが九十五件でございまして、それから文書警告いたしましたものが二十四件というふうになっております。
  80. 古屋亨

    ○古屋委員 それでは、こういうような登録制という問題についてお伺いをいたすのでありますが、憲法にいういわゆる職業選択の自由との関係について、どういうような見解を持っておられるかということ。  それから、たとえば川崎のタクシーが東京へ来る場合には、おそらく東京都内へのお客さんを送ってくる場合、これはもう登録なしで入ってこれることになると思いますが、それが都内から西のほうへ、川崎へお客を拾っていくことも許されると思うのです。そういう点ちょっとお伺いしたい。
  81. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 第一点は、本法は登録制をとっておるわけでございますが、憲法二十二条にいいますところの職業選択の自由に反するのではないかということでございますが、それは三つの点において反しないというふうに考えております。第一点は、公共機関としての使命を達するための最小限度の公共の福祉上の制限であるということであります。第二点は、指定地域内のタクシーの運転者として就業するということを禁止するのでございまして、指定区域外のタクシー、あるいは指定地域内のハイヤーの運転、あるいはその他の自動車運送事業、あるいは自家用の運転者として就業することを妨げるものではございません。それから第三点といたしまして、登録によって転職を制限するのではないかということをいわれるわけでありますが、その点は、法律上そういうことをいたしませんし、また運用におきましても、そのような問題がないようにしていきたいというふうに考えております。  それから第二点の御質問でございますけれども、現在の道路運送法におきましては、事業区域を定めておりまして、いわゆる発着地主義をとっております。発地または着地のどちらかにお客が属すればよろしい。すなわち、川崎から東京へ来る場合におきましては発地でございます。それから東京から川崎に参りますときは、その乗客の着地が川崎の事業区域でございますので、川崎の事業者が運ぶことは可能でございます。その場合におきましては、もちろん東京都区内、大阪等の指定地域において営業所を持っているタクシーについてのみ登録制度を行なうわけでございますから、川崎の事業者に対して登録制度は働きませんし、またお尋ねの、帰りに川崎まで運ぶということは、法律上従来と全然変わりございません。
  82. 古屋亨

    ○古屋委員 それでは次に、この法案の出ます前に運賃値上げの問題がございまして、その前提として、労働条件その他についていろいろの検討等がされておるのでありますが、労働省が出しました四十二年二月九日の通達がございます。これに対して、この実施状況と、どういう点が改善になっているか、特に値上がりのときの改善状況はどういうふうに確認されておるかという点につきまして、ひとつ労働省のほうからお伺いしたいと思います。
  83. 大坪建一郎

    ○大坪説明員 お答え申し上げます。  御承知のように、運送関係の労働者の中で、特に自動車につきましては、問題が多々ございますので、いま先生御指摘の昭和四十二年二月九日に、労働基準法の道路運送関係の運転者における適用の基準と申しましょうか、そういう通達を私どものほうで出しておるわけでございます。この通達に基づきまして、毎年春と秋の二回の交通安全週間に関係事業場の集中的な監督をいたしております。ただ残念ながら、従来私どもの監督をいたしました限りにおきましては、なかなか事態の改善が見られておらなかったという点も事実ございます。昭和四十二年から昨年の昭和四十四年まで、全国で約八千四百の事業場がございますが、これに対しまして一万六千回の監督を実施いたしました。したがいまして、大体三年に二度ほど全部の事業場を監督いたしたということになっております。このような結果に基づきまして、実は昨年の秋に一ぺん監督をいたしたわけでございます。その後、十一月十二日に、私どもの基準局長名で全乗連に、いろいろ運賃改定その他の問題も出ておる時期でもございましたので、もちろん決定がある以前の問題ではございますけれども、タクシー、ハイヤー等の労働条件の改善について勧告をいたしております。十一月二十一日には内閣におかれまして関係閣僚協議会をお開きになりました。これは交通関係と物価関係と両閣僚協議会をお開きになりまして、ここにおきまして、特にタクシーの給与水準の引き上げなり、累進歩合制の廃止なり、あるいは保障給部分の引き上げなり、労働時間の短縮なりということについて、指導を強化して、この際条件をよくするように業界に努力をさせる、こういうことが御決定になったわけでございます。  そこで、このような動きと関連いたしまして、十二月中に、六大都市の全タクシー業者に対して、タクシーの運転者の就業規則を全部審査をするから提出せよということを申しまして、就業規則の全面的な審査をいたしました。この審査の過程で、ただいまの閣僚協議会の御決定にあります累進歩合制でありますとか、あるいは非常に低い保障給でありますとかいうような、タクシーの運転者が実際に過労運転におちいりやすいと思うような労働条件につきましては、これを直すように指導をいたしました。六大都市のタクシー運転業者の就業規則につきましては、累進歩合等は、指導におきまして、ほぼ完全に就業規則からは姿を消しておる現状になったわけでございます。  そこで、このような事情を踏まえまして、運輸省におかれては、一月一日に横浜、名古屋、京都、神戸等で運賃改定をなさったようでございます。一月の上旬から中旬にかけましては、私どもで、特に大都会で問題になっております東京と大阪につきまして特別の監督を実施いたしました。これは東京で百八十三、大阪で九十二の事業場について行なったわけでございますが、この監督結果を私のほうは直ちに運輸省のほうへ御連絡を申し上げてあります。  一月二十三日になりまして、東京と大阪でそれぞれ、東京では三月一日、大阪では二月十五日まで運賃改定の留保が御決定になられました。私どもの承ったところでは、労働省が行ないました独自の労働条件の監督の結果、若干の事業場について状態の改善が十分でないので、やはり全体の連帯責任上、運賃をその際改定することを見合わせるというお話でございました。  二月上旬になりまして、東京では六十八事業場、六十二社でございます。大阪では十四事業場、これが特に違反がきついという報告を私ども受けておりましたので、これにつきまして監督署に出頭を命じまして、具体的な是正の計画書を提出させました。この具体的な是正の計画書に基づいて是正を行なうということをもちろん前提といたしまして、二月の中旬に再度監督をいたしたわけでございます。そこで、大阪は二月十五日に、その最も悪いといわれておりました十四の事業場を除きまして運賃改定が行なわれたわけでございますが、問題のありました十四の事業場につきましては、二月の下旬に監督をいたしました結果、三月一日から運賃改定を行なうということになったわけでございます。東京におきましては、三月の上旬に六十八の事業場について監督をいたしましたが、三月一日にその六十八を除いた事業場で運輸省のほうから運賃改定が行なわれております。六十八の事業場につきましては、すでに昨年の秋から三度監督をいたしておりますが、その監督によりましてほぼ状態が改善されたと認められますので、この旨を運輸省に御連絡を申し上げた次第でございます。三月十五日にその六十八の事業場につきまして運賃の改定が行なわれたという状況になっております。
  84. 古屋亨

    ○古屋委員 労働省の基準局のやっておられる現状を承ったのでありますが、ぜひこういう問題は今後賃金その他の問題、労使の実態の問題として、一そうこれらの基準が守られるように、特に労働省としても力を入れられますと同時に、陸運局と基準局との連絡ということについて、特にいまお考えになっておる点がありましたならば、ひとつお知らせを願いたいと思います。
  85. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 道路運送法を実施いたしております運輸省関係本省と陸運局、それから労働基準法と労働関係の仕事を所掌されておりますところの本省あるいは地方の関係につきましては、従来から連絡を密にして処理しておるわけでございますけれども、今回の経験にかんがみまして、さらに詳細にひとつ連絡を密にしようではないかということで、去る二月十八日に、労働省の基準監督局長と自動車局長でもって、今後お互いに通報し合って、行政を円滑にやるということについて覚え書きを交換いたしております。それからさらに、それの詳細につきましても、いま打ち合わせを終わりまして、地方の機関指示をいたしておるところでございまして、今後両省で密接に連絡をいたしまして、この問題に対処していきたいというふうに考えております。
  86. 古屋亨

    ○古屋委員 それではもう少し登録の問題についてお伺いいたしますが、今度新たに登録制度を東京、大阪についてとる。いままで二種免というのがとにかく全国的でありますが、運転者として持っておられる。そういう点で、この運転者——事業者はもちろん陸運局で把握できる。もちろん把握されていなければならぬし、把握されておりますが、こういうような運転者の方を、事業者と同じように陸運局で把握することができるか。つまり、裏を返して申し上げますと、第一線の取り締まりその他についてやっております警察との協力関係はどの程度行なわれておるかというような点、つまり、登録をやる以上、陸運局だけでやれるか、警察のほうも、公安委員会のほうも、どの程度これに関与されておるか、目的達成のためには、両者緊密なる連絡をとってやらなければならぬと思いますが、その点について、陸運局と警察のほうからお話を願いたいと思います。
  87. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 今回、法律によりまして登録を実施するわけでございますので、従来は道路運送法上、事業者のほうの内容的なものは把握できておりますけれども、運転手に対する把握はできなかったわけでございます。今回の登録によりまして、その把握ができるわけでございます。さらに警察との関係につきましても、この法律の実施につきまして、覚え書き等も交換いたしておる次第でございまして、十分お互いに通報し合って、円滑にやりたい。これはいろいろの項目がございます。標識の問題とかいろいろございますけれども、総合的にひとつ連絡を密にしてやるというふうに話し合いもできまして、覚え書きも交換いたしておる次第でございます。
  88. 藤森俊郎

    ○藤森説明員 ただいま御質問のございました登録制度につきまして、警察と陸運局との関係についてでございますが、私どもは二種免の制度をもってその運営に当たっておるわけでございますが、両者は事実上うらはらのような関係にもなりますので、両者の間に密接な通報関係がなければ、両者とも実行し得ないというふうに考えておりますので、先ほど自動車局長からお答えがございましたような覚え書きを交換いたしまして、この制度が実効をあげるように両者が協力をすることを申し合わせております。その細目的な、技術的な方法につきましては、これから運輸省と相談いたしまして、いかなる時期に、どういうふうな形式の通報をするかということを取りきめたい、かように考えます。
  89. 古屋亨

    ○古屋委員 その問題に関連いたしまして、今度の法律では、登録の取り消し等の場合に、たとえば第九条第一項の二に、取り消す原因で、「自動車の運転者の職務に関して著しく不適当な行為をしたと認められるとき。」というのは、「著しく」でしぼっておりますが、非常に範囲が広いような感じがしておりますが、私もちょっとほかで申し上げたいこともありますので、大体どういうような点をこの法令ではお考えになっておりますか。どなたでもけっこうですから、お話し願いたい。
  90. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 第九条の第一項第一号におきまして、たとえば乗車拒否の問題であるとか、そういう道路運送法あるいはそれに基づく命令等に違反するものに対する処置がございます。しかしながら、二号で考えておりますのは、婦女の暴行でありますとか、ひき逃げでありますとか、一号でいいますところの道路運送法の従来の規定には直接は規定がないけれども、いま申し上げましたように、非常に不適当な行為をしたような場合をその二号でもって考えておるわけでございます。まあ強盗というふうなものもあるわけでございます。しかしながら、これの運用にあたりましては、今後十分検討いたしまして、問題がないようにしていきたいと考えております。
  91. 古屋亨

    ○古屋委員 そういう場合、警察のほうで、たとえば起訴になった場合とか、そういう場合の通報制とか、何かそういうような連絡は事実上行なわれていることになるわけですか。
  92. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 この問題につきましては、直接われわれだけで判断するというのもむずかしい点がございますので、こういう事犯が起こった場合におきましては、一番的確に把握されるのは警察でございますから、連絡をしていただきまして、その内容によりましてこの法律の適用を考えていきたい、かように存じております。
  93. 古屋亨

    ○古屋委員 それでは登録の最後に、個人タクシーの問題についてお伺いいたしますが、この個人タクシー事業者の登録の問題につきまして、現在申請中のものが相当あると思いますが、これに関連してお伺いしたいと思いますのは、東京、大阪について個人タクシーの申請がいまおたくで持っておられるのがどの程度あり、そしてそれをどの程度許可しようとされておるか、個人タクシーの免許に対して陸運局はこの登録制が実施されるということに関連して従来と変わらないか、どういうふうにやるのかということをお話し願いたい。
  94. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 個人タクシーの申請でございますが、個人タクシーは流し営業を行なっておりますところに個人タクシーを免許いたしております。現在東京都内におきましては五千六十五件が申請中でございます。大阪につきましては一千五十六件が申請中でございます。従来から個人タクシーの評判はいいわけでございます。それは申請に対しまして十分の審議をやりまして適格者を免許しておるわけでございますから、われわれといたしましては、その評判を落とさないようにして適格者を免許いたしたいと思っております。なお、現在では、たとえば東京におきましては約八〇%の合格率でございまして、将来もそういうことであると思います。  次に、方針として個人タクシーと法人タクシーでございますけれども、個人タクシーの場合におきましては時間の制限というようなものがないわけでございまして、本人が働けるときには働くというふうなたてまえでございます。法人タクシーの場合におきましては三交代制でもって二十四時間稼働しているというような点もございますし、それらの点等を考えました場合におきましては、個人タクシーのいいところ、法人タクシーのいいところ、おのおのの長所があるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、両方の長所を発揮さすように行政を進めていく必要があると考えております。しかし、個人タクシーの評判がいいわけでございますから、従来どおり以上に個人タクシーを育成をしていきたい。さらに、現在出ておりますところの免許申請事案に対しましては、現地の陸運局を督促いたしまして、早く処理するように努力したい、こういうふうに考えております。
  95. 古屋亨

    ○古屋委員 次に、適正化事業につきまして、一、二お伺いいたします。  福利施設の現状につきまして、業態によって違うわけでありますが、特に百人以下は中小企業的なもので、そういうものが六〇%以上だと思いますので、福利施設の現状というものについてお伺いしたいのと、それから研修あるいは共同休憩施設の構想、こういうものはいつごろからやろうとしているか、それからまた研修につきましては、現在各社でやっております訓練の現状というものはどういうふうになっているか、こういうような点についてお伺いしたいと思いますが、特に私どもタクシーを利用させていただいて運転手さんからいろいろ聞いておりますと、せっかく訓練を受け、講習を受けた方が、職業自由選択の立場からでもございましょうが、ひっこ抜かれてほかの会社へ行くというような例も相当聞いておるのでありまして、現在の訓練といいますか研修の現状と、将来の研修の計画、それからまた新しい福祉施設の現状と、それから共同休憩施設とか、あるいは寝るところとかめし食うところとか、いろいろの構想があるようでございますが、そういうのをいつごろやられるのかというような点につきまして、ひとつお考えを時間がありませんからごく簡単に話していただいて、必要だったらまた資料で出していただければ幸いだと思います。
  96. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 現在タクシー事業者は大部分が中小企業でございます。大企業のほうはそれらの福祉施設等を整備する能力はありますし、当然やるべきだと思うわけでございますけれども、たとえば中小企業につきまして抽出調査いたしました結果によりますと、食堂の施設があるものが四四%で、ないものが五六%という数にもなっておりまして、食堂ですら持っていないところのほうが多いというふうな現状でございます。さらに共同住宅等になってまいりますと、これはないところが非常に多いというふうな現状でありますので、これらの整備というものが急がれるわけでございます。  一方、近代化センターの考えております仕事で重要な点は、運転手の研修でございます。現在、運転手の研修は、新人を——これは当然二種免許を受けておるものでございますけれども、新人を採用いたしました場合におきましては、五日間の研修を行なわなければならないということに相なっておる。それで、それにかわりましてこのセンターで研修をしようということでございます。東京におきましては、研修につきましては年間約二千四百人を研修をいたしたい。それからさらに、二種免許を獲得をいたしますためにはそれの試験もございますので、いわゆる新人を養成するということで、年間約三千人の新人養成ということを考えております。それで、研修所の設備は東京と大阪で一カ所でございますけれども、これは本年度、四十五年度におきまして、法律等が通りますとなるべく早く整備いたすようにいたしたいと思っております。  それからあとの福祉事業の点でございますけれども、何ぶんにも初年度のことではございますし、場所その他の点につきましても、あるいは規模の点につきましても、いろいろの調査をする必要があると思いますので、これの調査等を行ないたい。とりあえず運転手の登録と研修所の整備ということにさっそく重点を置きまして取りかかっていきたい、かように考えております。
  97. 古屋亨

    ○古屋委員 負担金の問題ですが、この法律で負担金を義務づけをしておりますが、金額の点は何にも書いてないが、大体聞いている。三万円と六千円、その根拠、どうしてそれをその金額にするか、あるいはされておるのか、あるいはそれをどうして業者に示すのか、そういう点ちょっとお話し願いたい。
  98. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 負担金につきましては、本案の第三十七条に負担金の徴収という規定がございまして、これにつきましては、適正化事業実施機関、将来指定さるべき事業実施機関が案をきめまして、運輸大臣の認可を求めるということになっておる次第でございます。その内容につきましては、今後適正化事業実施機関があらためて運輸大臣のほうに提出するというたてまえでございます。その場合におきまして、約三万円ということを案といたしまして、従来から予算のときの要求であるとか一応の計画をつくる場合の案がタクシー三万円であります。三万円の案につきましては、事業をどの程度やるかという問題と、それから負担側の事情というものを考えなければならないという二つの事情があると思う次第でございます。  負担側につきましては、先般の運賃改定の時期におきまして、約三万円という金額でもって算定をいたしておる次第でございます。その三万円につきましては、現在の水揚げが一日一万二千円とか一万三千円とか、いろいろあるわけでございますけれども、一万二千円というのをとりまして、これを一年間稼働する。それに実際の稼働日等をかけたものが約三百九十万円でございます。一応稼働の自動車の約一%程度以内ということで、三万円くらいならば支払い能力があるだろうということと、運賃の算定におきましても、それらの金額を基礎にいたしまして一応計画をしたわけでございます。それらの点等を見まして、今後適正化実施機関が案をつくりまして、運輸大臣のほうに認可を求める。案をつくります場合におきましては、所定のセンターの手続がございまして、それらの手続を終わりまして申請があるわけであります。こういうふうに考えております。
  99. 古屋亨

    ○古屋委員 それからまた、これからそういう額は正式に決定されるというふうに解して差しつかえないと思いますが、もし会社並びに個人事業者が、そういう額がきまってそれを納めることができないで滞納した場合、それは延滞金とかいろいろ書いてありますが、そういうときの制裁としては、そのために自動車業ができなくなってしまうというようなことまで及ぶのですか。
  100. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 滞納の場合におきましては、この三十七条の第四項におきまして、滞納金を納付する義務があるというふうなことであります。ただし、天災地変であるとかいうふうな場合におきましては延滞金の納付を免除されるわけでございますが、延滞金の納付は督促状によってやるわけでございます  それから、納付の命令に対しまして納付しないということになりますと、本法に基づく違反でございますので、法律の五十二条におきまして、五十二条の第一項に規定いたしておりますような処置になるということでございます。したがいまして、これは納付の強制的な義務があるわけでございまして、三十七条と五十二条によりまして担保する立場になっておる次第であります。
  101. 古屋亨

    ○古屋委員 時間がありませんので、質問はこれで終わりますが、どうも私は地方の陸運局としょっちゅういろいろ連絡しておりますので、自動車局というのを陸運局と名前を言っておるのは、ひとつ御訂正を願いたいということと、最後に、資料として、労働省と陸運局との覚え書き、差しつかえなければそういう資料。それから運転手さんについて、個人と、それから業態別、人数別の数字、それから平均勤続年数、これは会社規模によって違うと思います。それから個人タクシー業者の数字とかその経歴というようなものにつきまして、ひとつ資料を整備していただければ幸いだと思いますので、この際お願い申し上げます。  以上で終わります。
  102. 加藤六月

    ○加藤(六)委員長代理 この際、午後二時から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時休憩      ————◇—————    午後二時十四分開議
  103. 福井勇

    福井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。斉藤正男君。
  104. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 私は、いろいろタクシー法案のお尋ねをする前に、去る六日物価安定政策会議が提言を行なっておりますけれども、その中で、「行政介入と物価について」ということで、政府がいろいろなものの価格をきめる際に深入りし過ぎて、かえって価格の安定より引き上げの方向に働いている場合も多い、タクシー事業の免許制云云ということで、いわゆる政治の過保護が物価安定に逆作用をしているというような意味のことをあげ、タクシー業界もその一つだということをいっているわけでありますけれども、この提言に対しまして運輸省としてどのようにお考えになっているか。次官から見解を伺いたいと思います。
  105. 山村新治郎

    山村政府委員 ただいまの先生のお尋ねでございますが、いわゆるタクシー事業免許制、これに対する提言をいただいたわけでございますが、この物価安定政策会議からいわれましたのは、まず一つは、事業免許制の運用にあたって、競争原理を積極的に導入せよ、いわゆるもっとどんどん許可したらどうだということでございます。二番目は安全とサービス、これを確保しようということで、これは運輸省、また警察、そして労働省、これらの関係を強化したらどうだということでごいますが、これにつきまして、従来ともその方向では一応進んできております。しかし、都市内におきましての免許をどんどんするということになりますと、はっきり申しまして、現在運転者が不足しております。それで、運転者確保対策を強力に推進する必要があると思います。そのために、一応大都市においてはある程度制限はいたしておりますが、しかし、地方におきましては、現在でも免許はどんどん与えております。  もう一つ、二番目につきまして、いわゆる安全とサービス、この確保に努力すべきことはもちろんでありますが、関係省庁十分連絡調整をはかっていきたいと思います。また、現在御審議をいただいておりますタクシー業務適正化臨時措置法案、これもタクシー輸送サービスが特に低下している地域について、その適正化をはかろう、そういうようなつもりでやっております。
  106. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 たまたまタクシー業務適正化臨時措置法案国会で審議する、そのやさきにああいう提言が行なわれたということは、本法案の審議にも無関係ではない、非常に重要な方向を示唆したものだというように私は考えておるわけでありますけれども、時間がありませんから、この問題については深入ったお尋ねはいたしません。  そこで、本法案の提案理由の説明の中にあるように、要するに、特殊な地域において乗車拒否をはじめとする違法行為が起こっておって、このままでは利用者である乗客の安全も保障できないというようなところから、提案になったと思うのでありますけれども、この提案理由の二ページのところに「このような事態は、本来タクシー事業者の責任とタクシー輸送に従事する運転者の自覚によって是正さるべきである」こういうように規定をいたしております。「本来タクシー事業者の責任とタクシー輸送に従事する運転者の自覚」ということで、経営者にも責任があるけれども、運転者の自覚も足りないのだ、こういうことで何か両方に責任を負わせているというように考えられます。もちろん私は、全く悪質な運転者が皆無だとは申しません。しかし、ここでいわれているように、タクシー輸送に従事する運転者の自覚がなぜ必要になってくるのかということを抜本的に考えていく必要がある、こういうように思っておりますけれども、その前に少し常識的に伺っておきたいのですけれども、この法案の審議にあたって、いわゆる中小企業者が多いだとか、あるいは大企業が少ないのだとかいうことをいっておりますけれども、自動車局として、タクシー業の大企業とは一体何台以上を規定しているのか。中小企業とは一体何台をそういう対象にしているのか。タクシー企業に零細企業というのはあるのかないのか。非常に常識的なことでして、商工業者等には規定があるわけでありますけれども、タクシー事業というものに対しまして、大企業、中小企業、零細企業という分け方は、どういう基準で規定をされておるのか、局長に伺いたい。
  107. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 これはほかの法律、中小企業等協同組合法に規定されております従業員数あるいは資本金というふうなものとは若干相違があると思います。われわれといたしましては、大都市、たとえば東京、大阪におきましては、百両以下のものは小業者、百両から五百両までの間が中業者、それ以上持っておるものは大業者と一応考えております。しかし、これは百両以下の場合におきましても、五、六十両の会社が相当たくさんあるわけでございまして、これらは特に小企業というふうに考えております。
  108. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 そういたしますと、これは東京、大阪の例で言われたようでありますけれども、五十台から百台までの間あるいは五十台以下というような企業も多々あるわけでありますけれども、いわゆる零細企業というようなものがタクシー業界にもあるのかどうなのか。タクシー業界は、中小企業と大企業というように機械的に分けていいのかどうなのか。零細企業というようなのが一体タクシー企業というものにはないのですか。
  109. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 大都市におきましては、一応五十両以下の場合におきましては、いわゆる小さ過ぎるということで、出発のときにおきましては二十両あるいは三十両の会社がございますけれども、最近におきましてはほとんど五十両以上でございまして、五十両以下のものはきわめてレアケースでございますが、これは会社のほうに増車等の能力がないというような場合に限られております。それから地方におきましては、いわゆる個人営業、個人タクシーではございませんで、会社の形態ではない、個人が二両とか三両を持って経営をいたしておるものもございます。それから十両以下というふうなものは相当多数でございます。しかし、これはその地域ごとの需給の面等によってそういうことになっているのでございまして、いわゆる二、三両というものが零細企業ということになると、それらの例は地方においては相当多数ございます。
  110. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 そういう見解から立っていきましても、この提案理由の説明の中にありますように、今日の不幸な事件、たとえば乗車拒否というような問題につきましては、よって来たるものは何か、その原因は何かということを追究したときに、やはりこれは企業側の責任に帰するものが大部分であるというように考えざるを得ないわけであります。  そもそもタクシーなるものは、運転者がおるからタクシー業を始めたのではない。タクシーを利用しようとするお客がある。車を購入しようとする資金もあるし、経営しようとする意欲もある。そこで運転者を雇用して営業を始めたというのが事の始まりだと思う。もちろん、その歴史的な発生の中において、経営者が運転免許証を持っていて、個人経営でもいいから、昔のことだから一台でも二台でも始めようかというようなことで、おやじとむすこが経営者であり、運転手であって企業を始めたというようなこともあるのかもしれませんけれども、少なくも企業としてのタクシー業というものは、やはり資金があり、企業を始めようとする意思があり、そして運転者を募集して仕事に入っていったというのが発生の歴史であろうというように思うわけでございますが、そういう観点からいたしましても、経営者側の努力が不十分なために、今日いろいろいわれている社会的な問題になってきた。鶏か卵か、どちらが先かという論議をするならば、やはりどっちもどっちだという言い方でなくて、経営者側に大多数の責任があり、運転者側にはそれほど基本的な責任はない、あえてそうせざるを得ない幾つかの客観的な原因があって、そういう不幸な事象を招いているのだというように考えますけれども。私は運輸委員の一人というよりも、タクシーを利用している市民の一人として、ごく素朴に考えたときに、さようにしか思えないわけですけれども局長の見解はいかがでございますか。
  111. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 現在の道路運送法によりますと、いま先生御指摘のように、経営者がいろいろの計画を立てまして申請をしてくるわけでございます。道路運送法自体も、経営者に対する責任を中心に規定しておるわけでございまして、その経営者の責任というものは非常に重大であるというように考えます。経営者の責任は、タクシー運転者を雇用いたしまして、それらが働くいわゆるバックグラウンドといいますか、働く場を提供するのが経営者の責任でございます。それから、安全管理、運行管理等を行ないまして、法律に従って経営をしていくというのも経営者の責任でございます。で、働きやすい職場を与えるためには、給与の内容を質的にも量的にも改善していく、あるいは厚生施設等の諸施設も改善していきまして、多数の良質な運転手に会社のほうに来てもらうというふうな努力が必要であると思うわけでございます。また、企業が努力することによって、運転手さんに来てもらい、車もふやしていって企業を拡張していくというふうな責任も経営者のほうにあると思うわけでございます。そういう意味合いにおきましては、道路運送法上、経営者の責任ということで規定をしておるわけでございます。  しかしながら、一方におきまして、現在の乗車拒否のような事態につきましては、特にいわゆる心がけのよくない運転手がおりますので、乗車拒否が起こっているということは事実でございます。したがいまして、われわれといたしましては、原則的には、道路運送法の規定による経営者に対する責任を第一義的に考え、そして第二義的には、運転者を登録いたしまして、それを把握して、そしてまた、よりよい職場を与えますために近代化推進事業というようなものを自主的に経営者が行なうべきところではございますけれども、それらの努力が不十分でございますので、法律的には臨時的な措置といたしまして、それらの事業もやらそうというのが今回の法案の趣旨でございます。
  112. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 なおはっきりさせておかなければならぬと思うわけでございますけれども、私は、原因というのは三つも四つもあるんじゃない、いずれもほんとうの原因があって、そこから派生して出てきた問題が結果になり、その結果がまた原因を生み、そしてまた結果になるという悪循環を繰り返しているのが、今日のタクシー業界の実態だろうと思うわけであります。ほんとうの原因は何かということになれば、以下申し上げる数点に集約されると私は思うのですが、それよりも、こういうことがあるんだ、あるいはそれは間違いだということがあるならば、局長から指摘をしていただきたい。  第一は、タクシー経営者の中に、前時代的経営態度の事業主が多くて、各種の企業がきわめて近代化あるいは科学化されている中で、タクシー経営者の中には、きわめて前近代的な、いわゆる徒弟制度といいますか、あるいはウ匠がウに綱をつけて放してやれば魚は幾らでもくわえてくる、それを吐き出させればいいんだという、まことに非人間的な金もうけ主義の経営者。  二番目には、労働管理というようなことをほとんど知らない。労働法規はもちろんのこと、道路運送法その他について無知であって、労務管理を非民主的に行なっている経営者が少なくない。  第三点は、タクシーは今日公共大衆輸送機関として確固たる基盤を持っているわけでありますけれども、この公共大衆輸送機関としてのタクシーの責任、こういうものを企業的に意識をしていない経営者が多いのではないか。  四番目に、大半のタクシー事業者が、いまもちょっと触れましたけれども、たとえば、二・九通達といったようなものがどういうものであって、これはどうしなければならぬのかというようなことについても、知っていても違反を何とも思っていない。それは通達として出ている、それは守らなければならないことだろうというようなことはあるいは知っているかもしれぬけれども、この通達のほんとうの意味を実践をしていない。  さらに五番目には、今日のタクシー運転者の労働条件というのは、他の企業の労働条件と比べてきわめて劣悪である。特にノルマ制の歩合給、長時間労働といったようなものは、それがタクシー界の常識だというようにいわれておるにしても、これは全くほかの企業には見られないお粗末なものである。  六番目には、交通渋滞、交通環境の悪い中で、精神的、肉体的に運転手の過労がきびしく、安全運転の確保、円滑な運行確保の客観条件が悪い。最後に申し上げましたのは、これは何も経営者だけの責任ではございません。これは総合的な対策にまたなければならない問題でありますけれども、少なくも私が以上申し上げた五つの点につきましては、今日の状態を生んだ経営者側の欠陥事項である、こういうような把握をいたしておりますけれども、これらがまた今日の業界の不幸を招いている最大の理由だというように思いますけれども局長いかがお考えですか。
  113. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 第一点は、前近代的経営者の感覚ということでございます。これの著しいあらわれは、十年ほど前にありました神風タクシーの問題はこれの大きなあらわれだと思うわけでございまして、それに対しまして、御承知のように関係省令等を改正いたしまして対処いたしたと同時に、監査等を厳にしたのでございます。  それから第二番目の労務管理の無知、あるいは第四番目の二・九通達に対してあまり十分な理解がない、この点につきましては、今回の運賃認可にあたりまして、就業規則、賃金規程、これは当然提出する必要があるものでございましたが、これらについての知識が十分でなかったということで、大都市におきましては全部これの提出を待って初めて認可をするということに一応いたしました。それからさらに、その中で、東京、大阪につきましては、その内容が実施されているかどうかということを監査いたしましたが、御承知のように、六十八事業場につきましては十分ではなかったので、さらに指定を保留したわけでございますが、やはりこれを通じて見ますと、経営者の一部におきましては、これらの労務関係の法規あるいはそれに対する順法精神が十分でなかったということを私たちも痛感をした次第でございますが、今回の措置によりまして非常に効果があったのではないか。と申しますのは、労働省の行政というものとわれわれの道路運送行政というものをもう少し密着してやることによって、これらの改善の効果があがるのではないかということを痛感した次第でございます。したがいまして、両省でいろいろ覚え書き等も交換いたしまして、今後におきましては、もう少しきめこまかい密接な関連のもとに仕事をやっていこうというふうにいたした次第でございます。  それから三番目の公共交通機関、これはもうすでに二百二十万以上の人を一日に輸送しているわけでございまして、他の地下鉄であるとか、バスであるとか、国電等の交通機関に比べましても、相当大きなウェートを占めておるものでございまして、これらに対する公共交通機関としての自覚は当然持つべきでありますけれども、遺憾ながらそれに対する理解の欠如している者もあるというのが今日の姿であると思います。  それから劣悪な労働条件の点でございますが、累進歩合の問題であるとか、長時間労働の問題とかいうふうなことにつきましては、先ほども申し上げましたが、今回の措置によりまして相当反省を促したのではないか。これらの点につきましては、組合ともいろいろ話が進んでおるわけでもございますので、今後その改善については労働省とともに努力をしていきたいと思っております。  それから客観条件が悪いというのは、現在の都市交通の状況でございまして、その状況下において、流しタクシーというのは、お客さんを拾ってそこで契約するわけでございますから、普通の運転以上に神経を使い、肉体を使うということも事実でございます。それに関する総合的対策の必要は御指摘のとおりでございます。今回の時間併用メーターの採用というものも、それの一つの対策ではあると考える次第でございます。  それから、タクシー運転手の場合の給与がほかの運送事業者の給与のアップ率よりも最近においてはやや低いということが、タクシー運転手の人手不足の原因になると思う次第でございまして、これらの点につきましては、さらに改善の努力をしていく必要があると思う次第でございます。  われわれといたしましては、これらの点は、よりよい運転手がタクシー界に来ていただくくということのためにどうしても必要なことであるし、近代的な経営をやりやすいためにも必要なことであると考えておる次第でございます。ただ、乗車拒否の原因というものは、私は、どれが一番でどれが二番ということでなくて、原因としてやはり総合的なものもあるのじゃないか。時と場所によるところの需給のアンバランスという物理的な原因もありますし、またそれらの原因をなすバックグラウンドというものもあるわけでございまして、それらから総合的にひとつ解決していきたい。今回の近代化センターという考え方も、従来とは相当変わった考え方であると思いまけれども、これがオールマイティーと考えているのではなくて、総合的な対策の重要な一環として考えておる次第でございます。
  114. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 私の例示した五つの問題等について、局長もほぼこれをお認めになっておるわけでございまして、私は、やはり経営者の経営方針、経営態度というものを変えない限りこの問題は解決しない。どう見ても経営者が問題であって、運転者側に主たる責任はない。そして問題はない。たまたま乗車拒否等をめぐって、一部にたちのよくない運転手も確かにいるでありましょう。ありましょうけれども基本的には経営者側のタクシー経営に対する態度といったようなものが問題だと思ってお尋ねしたわけでありますけれども、この点はお認めをいただきたいというように考えます。  そこで、まず伺いたいのですけれども、ハイヤーを除いております。これは車庫待ちであって、乗車拒否その他やる心配はない、こういうことでありますし、局長の頭の中に、タクシーの運転手の中には悪いのがいるけれども、ハイヤーの運転手の中には悪いのがいない、こういう先入観がございましょうか、また、実際そうなんでございましょうか。
  115. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 タクシーとハイヤーの相違は、ハイヤーは営業所でもって契約が行なわれるわけでございます。タクシーの場合におきましては、街頭、現地におきまして運送契約が成立するという、非常に違う特色があるわけでございまして、いわゆる乗車拒否といいますのは、タクシーの場合に現実に行なわれているというふうに考えます。それから今回の登録制度につきましては、やはり広くこれを行なうというよりも、必要最小限度のものに限りたいというふうな考え方から、法律的に強制いたしますものはタクシーの範囲に限るというふうにいたしたわけでございまして、タクシーとハイヤーという運送契約のやり方の問題、それから事態から見まして、タクシーに限るというふうに考えた次第であります。
  116. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 私は、ハイヤーに本法を適用しないのはなぜかということを聞いたんじゃなくて、ハイヤーの運転手には、局長がお考えになっているような悪質運転手がなくて、タクシーに、局長がお考えになっているような、一部に悪い運転手があるというようにお考えになっていませんか、こういうように聞いたわけですが、ハイヤーには悪質をやろうと思ったってやる余地がないのだ、だからみんないいので、タクシーにはやる余地があるからタクシーの運転手は悪くなるんだ、こういうことなんですか、その辺はどうですか。
  117. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 いわゆる乗車拒否といいますものは、契約上のことでございます。契約上につきましては、ハイヤーの場合は、当該の運転手が契約するのでなくて、営業所の所長であるとか営業所の契約をする係がやるわけでありますから、その運転手さんは乗車拒否をやる余地はない、こういうふうに考えます。さらに道路運送法上の問題でなくて、他の問題につきましては、必ずしもタクシー運転手だけがどうというものではございませんが、中心的に考えましたのが乗車拒否の点でございますから、契約の形態によって、これは両者は相違があるというふうに考えた次第でございます。
  118. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 確かにそのとおりだと思うわけでありますけれども、ハイヤーの料金がやはりそれぞれタクシーよりは高いけれども、規定をされていることは当然だし、御承知のとおりでありますけれども、メーターにカバーをかけたまんまで走っているハイヤーもたくさんありますし、私どもが乗りましても、メーターを倒さないハイヤーもたくさんある。しかし、料金についてはきわめて千差万別であって、運転手の勘によってとられる、あるいは乗客がその場でポケッットマネーを払って乗車運賃を払うということが少なくて、大部分が伝票制であって月末に集計し、乗客の事業所から支払われるというような形態、あるいは時間ぎめで借り上げる、日ぎめで借り上げるというようなこともあるようでありますけれども、一体カバーをかけたまま走っているハイヤーとか、あるいはメーターを倒さずに走るハイヤーというものの実態について、局長、御承知でありましょうか。そしてまた、乗ったときにより、乗った人により、たいへん料金に差があるということなど御承知でありましょうか。
  119. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 ハイヤーの運賃は、いわゆる時間制と距離制の二つがございます。時間制の場合におきましては、たとえば、東京地区におきましては一時間九百円の率でございます。一時間九百円でございますけれども、一時間の間に走る距離が相当相違がありますので、時間制で契約いたしました場合に、一時間十六キロ以上走る場合におきましては、十六キロ単位にいたしまして、たとえど十六キロまででしたら九百円ですが、三十二キロまででございますと千八百円、そういうふうな刻みでやっておるわけでございます。距離制では、これは古い、二十七、八年の認可でございまして、現在では時間制の中におきますところの、時間による計算と、あるいは距離による計算、十六キロ単位による計算ということで行なっておるわけでございます。それから一日貸しというふうな制度もあるわけでございまして、それらの場合におきましては、あるいはメーターは倒さないでやるというふうなこともあるかと思います。普通の場合におきましては、これもメーターでもって表示するということになっております。しかし、いま御指摘のような点を直接体験をしておるわけでもございませんので、何とも申し上げかねますけれども、メーターの表示によって運賃を収受するというたてまえでございます。
  120. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 私がなぜこういうことを聞いたかというと、それは時間制だとか距離制だとか、いろいろあることも当然ですし、それはけっこうだと思うのです。しかし、やはり適正料金で運行していないということは、私は、ハイヤー業界においてもあるということを知ってもらいたい。乗ったことがないからということですけれども、これはぜひひとつ御検討をいただかなければならぬ問題だというように思っております。同時に、このハイヤーの運転手さんというのは、いま申し上げましたようなことから、ノルマとかあるいは歩合だとかいうことがないわけであります。タクシー運転手に関してのみノルマとか歩合だとかいうものがある。この辺に根本的な問題があるのではなかろうかというように思うわけですけれども、ハイヤーの運転手さんにもノルマとか歩合とかいうものが実際にはあるのでございましょうか、いかがですか。
  121. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 ハイヤーの場合におきましても、これは会社によりましていろいろ相違があるかと思いますけれども、ある社の例を申し上げますと、固定給が約五万円、それに対しまして歩合給というものがさらに加わっております。この五万円に相当するものが七〇%で、それからあと歩合に相当するものが三〇%というのがA社の例でございます。それからB社につきましては、固定給は同じく五万円近く、歩合の割合が少し高くなっておりまして、六五対三五というぐあいになっております。それからノルマ云々という点につきましては、これはいろいろ原因があるかと思いますけれども、われわれとしては、そういう刺激的なノルマ制度というものは認められないと考えます。要するに、固定給と歩合給というものは、ハイヤーの場合にも存在するということでございます。
  122. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 そこで、問題があると思うのです。いわゆるハイヤー・タクシー業界というものが、いま局長からお答えがありましたように、ハイヤーなるものは、いわゆる運転手が客を拾うということではない。運転手がみずからの意思で客を運ぶということではなく、会社なり事業所の契約で、直接客との取引はない。にもかかわらず、いわゆる運賃をとって車を運転をする、人を乗せて運転をするという仕事であるために、ハイヤーの中でも固定給と歩合給がある。私は、逆にハイヤーにはないんじゃないかというお尋ねをしましたけれども、実はあることを承知で聞いたわけでありますが、事ほどさように、人から金を取って自動車で運ぶという仕事は、ノルマと歩合ということが常識になっている。こんな業種が一体ほかにあるのかどうなのか。もちろん、全然ないとは言えないと思いますけれども、今日的な問題になっている問題というのが、このノルマと歩合にある。何でハイヤーの運転手がノルマと歩合の必要があるのか、全くこれは会社あるいは事業所がお客と契約をして、運転手は運ぶだけの仕事なんだ。ここにハイヤー、タクシー業の前近代性、封建性というものが根強く残っている。これを抜本的に全く根源的に解消しない限り、このハイヤー、タクシー業の近代化、明朗化というものはあり得ないと私は思うわけです。いろいろ行政指導もされて、そうしたノルマ制とか歩合制というものをなくしていく努力は私は認めておりますけれども、それでもなおかつこういう実態が残っているということは、この業界の根強い前近代性であろうと思うのですが、局長、いかがでございますか。
  123. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 給与の内容等につきましては、現在の法律のもとにおいては、労使の交渉ということを基準にした考え方でございます。しかしながら、タクシー、ハイヤーというふうなものにつきましては、人命を預かる事業でもございますから、現在のわが国における法律構成の許される範囲内におきましては、道路運送法あるいはそれの関係省令でもって措置をすると同時に、労働関係の違反とこちらに対する違反というものが関連づけられる場合におきましては、こちらでも行政処分その他をやるというふうなことで、許される範囲内において極力この方面の改善にここずっと進んできたつもりでございまして、今度におきましても、法律上許される範囲内におきましては努力をしてみたいと思っております。先般の運賃改定のときにおきまして、改定前に労使の給与改善等に関するところの話し合いを確認書の形でもって交換させた、これらを指導したのもその一つであるかと思います。それから運賃改定の認可のときにおきまして、異例の措置といたしまして、これらの関係規則等の提出を義務づけ、あるいは内容調査によって、悪いところは保留するというふうな措置も従来とらなかった措置であるわけでございまして、われわれといたしましては、現在の道路運送法あるいは労働関係の諸法に照らしまして、できるだけの範囲内においてそれの適切な運用でもってこれの改善を考えていきたい。また、今回の法律につきましても、これらの点等につきましてはいろいろ考慮いたしまして、われわれといたしましては、一刻も早く近代的なタクシー経営の業態にしたいという悲願に燃えている次第でございます。
  124. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 局長の意図するところはわかるわけでありますが、いろいろな現象があるけれども、そのほんとうの基本になる問題、原因の本物は何かということになれば、やはり経営者側の態度にかかっている。これが最大の課題であって、抜本的に解決していかない限り、いかなる法律をつくろうとも、いかなる制度をつくろうとも、容易なことではないというように考えておるわけであります。したがって、今回の臨時措置法もその一助にはなるであろう。なお鋭意そういう方向で行政指導もするし、監督もするということでありますから、一応了とするわけでありますが、法案について二、三伺っておかなければならぬと思います。  午前中のお尋ねにもありましたけれども、いつの間にか臨時措置法になってしまったわけであります。しかも、これは適用区域については東京と大阪であって、ほかのところへ拡張する意思はない、こういうことでありました。本法案につきましては、経営者側にも賛否両論があるし、運転者の諸君にもいろいろな意見のあることは御承知のとおりだと思うわけであります。なぜ臨時措置法にされたのか、そして別に期限が切ってあるわけではありませんけれども、どういう状態になったらこの法案は撤回なり廃止なりしようとしているのか、また、政府が念願しているような状態の正常化がこの法案で行なわれるというように考えているとするならば、そのめどは一体どの程度に置かれているのか、もう一度この臨時措置法とした理由について明快にお答え願いたい。
  125. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 現在のタクシー業に対する監督法規は道路運送法でございまして、道路運送法を原則としてやっていくということでございます。しかしながら、最近におきます東京、大阪のような地域におきましては、供給輸送力が輸送需要に対して著しく不足しているという点と、それから乗車拒否等の行為がひんぱんに行なわれるという二つのことがあるわけでございまして、その意味において道路運送法の補完的な法律といたしまして、特定の地域に限って、しかもいま申し上げましたような二つの条件が満たされて解決されるまで実施していきたいという意味におきまして、恒久立法じゃないわけでございます。しかしながら、「当分の間」といたしておりますのは、その期間が早く解決できるということを期待しているわけでございますけれども、具体的に何年というようなことを事前に予測することは困難でございますから、「当分の間」というふうにしたわけでございます。  それから臨時措置法案といたしましたのは、元来、前の原案におきましてもその精神考えておったわけでございますが、さらにその点を明白にしたほうがよろしかろうということで、法律の第一条に「当分の間」というのを入れました。したがいまして、理由のほうにもそういう文言を挿入したわけでございまして、法案の内容も、特別事項というのを臨時措置法としたわけでございまして、これは内容的には全然前の原案と変わっていないわけでございまして、これを明確にしたという意味でございます。  地域の指定につきましては、これは二つの要件が満たされる場合におきまして政令でもって指定するわけでございまして、東京、大阪以外のところを現在考えておりませんし、そのようなことのないことを期待しておる次第でございます。
  126. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 これはいろいろ憶測があるわけですよ。立法過程において労使双方からいろいろな要望もあり、特に経営者側がこの立法をめぐっていろいろに論議をし、考えが必ずしもまとまっていないことも承知をいたしております。そういう人たちのいわゆる宣撫工作として、経営者側への一つの懐柔策としてこういう措置をとったとするならば、これは少しおかしいのじゃないかというように思うわけでありますけれども、そのような事実はないかどうか。あってもありましたとは言わぬと思いますけれども、その辺いかがでございますか。
  127. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 この種の法案は、いわば画期的と申しますか、従来なかった法案でございますので、労使ともにいろいろ御意見があることは当然だと思います。しかしながら、現在の状況に照らして、道路運送法だけでは不十分であって、当分の間この特別立法で解決しようという方向でございます。その方向につきましては、われわれは、内容についても昨年の秋以来労使双方に対してその正式な機関を通じて意見を聴取し、それらの人たちの意見も取り入れまして、こういう法案にしたわけでございますので、いろいろ御意見がありますけれども、大勢といたしまして、現在におけるこういうものの必要性というものを御認識いただいておるものと思っております。私は、この臨時にいたしましたのは、決してそういうものに対する妥協ではなくして、法律的により明白になったから、原案に対してより法律的にはっきりしたと解しておるわけでございまして、いろいろ御意見があろうとも、われわれといたしましては、昨年来、あるいは一昨年、タクシー改善としまして運輸省として政策を出しましたときにも、この法案の内容のようなことは世間に公式に申しておりますし、昨年八月に同様のことを繰り返しております。それから、運賃改定のときにおきましても、この近代化法案を提出することは決定しておるわけでございますので、それの一連の連関した政策に従いまして、法案を御提案申し上げた次第でごいますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
  128. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 いろいろお尋ねしたいことがたくさんありますが、また後日に譲るわけでありますけれども、私は、ここで、基本的な問題についてどうしてもお尋ねしておかなけれならぬわけであります。  この近代化センターの設立に対して、その構成、その運営、その決定の三つの基本的な問題について、構成は、労使対等で自主的なものでなければならぬ。それから運営は、民主的な原則がすべての部会で保証されていなければならぬ。三番目に、決定については満場一致制をとる。労使それぞれの拒否権、そういうものが保障されていなければならぬ。多数決できめるだとか、あるいは何かしらの圧力でこれが支配をされるとかということがあってはならぬ。このセンターの構成と運営と決定に、以上申し上げた三つの原則というようなものが当然確保されなければ、本来の意味は達成できない、こういうように思うわけであります。学識経験者あるいは経営者側あるいは労働者側といった三者が構成するとするならば、当然その構成と運営と決定について、三原則というものは確立されていかなければならぬ、こう思うわけです。しかし、このことは、それができたあとでセンター側のやることであって、行政官庁である運輸省が関知すべき問題ではないというように言われますと、これは基本的にたいへん困る問題であります。したがって、いま私が申し上げました構成と運営と決定に対する三原則は、私が申し上げましたとおりの方法を確認してよろしいかどうか、局長から明快に答弁をいただきたい。
  129. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 この法律におきましては、指定登録機関と、それから適正化事業を行ないますところの適正化事業実施機関という二つに分かれておるわけでございます。国は直接これらの仕事をやらないで、民主的にそれらの機関にやってもらうという考え方原則でございます。それの運営につきましては、指定登録機関におきましては、それに関する委員会がございまして、第二十五条に登録諮問委員会の制度がございます。それからタクシー業務適正化事業につきましても、第三十九条に適正化事業諮問委員会がございます。前者につきましては、三者構成をとっておりまして、事業者が組織する団体が推薦する者、タクシーの運転者が組織する団体が推薦する者、及び学識経験者の三者構成をとっております。それから適正化事業諮問委員会におきましては、これは直接利用者の利益にも関することでございますから、利用者というものをさらに加えまして、四者構成というようにいたしております。われわれといたしましては、これらの人選の場合等におきましても、これらの準備委員会の段階等におきましても、労使双方の御意見を十分尊重いたしてまいったつもりでございますし、今後におきましても、両方の意見を公平に尊重いたしまして、民主的運営を期していきたい。また、センターにおきましてもそのつもりで運営をいたしていくものと期待している次第でございます。
  130. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 この問題は、両委員会とも、その運営いかんによってはトラブルの原因であり、本法が成立運営されることによって、かえってマイナス面を来たすおそれが多分にあるわけであります。いまお答えをいただきましたので、大体了といたしますけれども、私が言ったことにつきましては、原則的に私が言ったとおりでよろしいというような答弁をいただいたと考えてよろしいかどうか。
  131. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 元来、民主的に運営をしようとするものでございますので、その民主的な運営の方向について、制度にもなっておりますし、今後注意いたしたいと思います。ただ、このセンターというものは、いろいろな利害が対立したものを解決していくというふうな性格のものではございませんで、運転者の登録と適正化事業というものを円滑に実施するための機関でございますから、そもそも利害の対立したものを調整するという性格でございません。したがいまして、皆さんのほうでいろいろ意見を出していただいて、それを十分尊重いたしまして民主的に運営していく、そういうふうに考えている次第でございます。
  132. 斉藤正男

    ○斉藤(正)委員 時間がございませんので、後刻また機会をいただくならばお尋ねをすることにいたしまして、きょうの質問はこれで終わります。
  133. 福井勇

    福井委員長 次に宮井泰良君。
  134. 宮井泰良

    ○宮井委員 最初に、基本的なことにつきましてお伺いいたします。  東京都内のタクシーの一日の輸送量は二百五十万に達しておる。全地下鉄の輸送量に匹敵すると思います。大衆の足といたしまして、日常生活と密着した公共機関になっておる、このように思います。しかしながら、他の交通機関と比べまして、タクシー業界は、勤務時間、労働条件等の特殊性により、運転手が自己の職業に対しましてプライドも少なく、約九割近くの方が転職を希望していると聞いておるわけですが、現行タクシー事業のあり方につきまして、運輸省の見解をお聞きしたいと思います。
  135. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 タクシーが非常に重要なる輸送上のウエートを占めておりますことは、いま先生がおっしゃるとおりでございます。そのような重要な仕事でございますから、この事業を育成するということも、これまたわれわれの重大な責任であると思う次第でございます。その責任を遂行するためには、経営者のことにつきましては、先ほど斉藤先生からいろいろ御意見がございました。それにプラスいたしまして、今度は運転手の皆さんにたくさん来ていただきまして、それによりまして供給をふやしていくということをしなければならないわけでございまして、それにはほかの仕事に移りたいというふうなことであっては困るわけでございます。タクシーは、街頭におきまして、現在のような交通事情のもとにおきまして、お客をさがしてお客と契約するわけでございますし、また相当長時間の労働で特殊な労働でございます。したがいまして、それに来ていただくというためには、給与の量的、質的な改善、その他の改善をいたすということが重要な点でございまして、われわれといたしましては、この重要な事業であるという認識のもとに、これらの施策を遂行する必要があるというふうに考えております。
  136. 宮井泰良

    ○宮井委員 次に、東京におきましては、すでに三月一日から、乗車拒否をなくし、サービス改善、タクシー業界の体質改善という名のもとに、料金が値上げされております。値上げ分の五〇%は運転手の待遇改善のために回すといわれておりますが、その点、料金の値上げが待遇改善に結びついておるか、また業界の経営改善にプラスされておるのかどうか。約一カ月たったわけでございますが、現在の現況、その実態をできればお聞きしたいと思います。  また、今回の料金値上げ後におきましても経営内容が向上していないという業者にはどのように指導し、タクシー業界全体の改善をはかられるか、その点をお聞きしたいと思います。
  137. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 東京におきましては、大部分のものは三月の一日に実施したわけでございますけれども、現在で一カ月ちょっとしかまだ経過いたしておりませんので、当初予定いたしましたのは二二・五%の改定率でございましたが、二二・五%をこのまま実施しているかどうかにつきましては、まだ日が浅いために的確な資料を持っておりません。ただし、運賃を改定いたします場合におきましては、若干の逸走率というものがございますので、当初から予定どおりのものが上がるかどうかということは疑問がございます。ここ数カ月の経過を見て、どのようになっておるか、推定どおりになっておるかどうかというふうなことを見たいと思っております。  それから給与の点につきましては、たとえば四十三年度の一カ月平均が六万七千五百円でありましたが、四十五年三月の給与は平均七万四千五百十六円、これは抽出会社の場合でございまして、必ずしも全部をあらわしておるかどうかということは若干疑問がございますけれども、抽出会社の加給平均によって調べた金額でございます。しかもこの給与につきましては、会社によって締め切りの日が違いますけれども、大体二十日ごろが締め切りでございます。そうしますと、運賃改定が行なわれたのが三月一日でございますから、ほとんどその実績があらわれないというふうなことになります。この一カ月平均に対する比較につきましては、昨年の春闘がありましたから、それらの数字を反映をしておるのかと思います。給与の改善につきましては、運賃改定の前に労使でいろいろお話がございまして、経営者のほうから、増収になったものは少なくとも半分以上のものを給与改善に、五〇%程度を全従業員の賃金、労働条件の改善に振り向けるというふうなことが確認をされております。われわれといたしましては、給与の具体的な内容は役所が直接関与すべきものではなくて、組合と経営者の話し合いのもとに行なわれるべきものと思いますけれども、この確認書というものが提出されておることは事実でございますので、経営者といたしましては当然この方向に向かって努力するものと思っております。
  138. 宮井泰良

    ○宮井委員 今回の登録制は、登録申請にあたりまして運転手自身が行なうということでございますが、会社に採用された証明書を必要とする。これでは事実上運転手を会社に縛りつけるものであり、一部の悪質運転手のために全員をブラックリストに載せるようなものである。憲法で保障されました職業選択の自由、それを奪うものではないか、こういう声もあるわけでございますが、この点どのように考えられるか、お聞きしたいと思います。
  139. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 これは運転手が申請をするわけでございまして、これは東京の、今回の指定地域内で雇用されておるかどうかということと、それから雇用される契約になっておるかどうか、雇用の予約というものがあるかどうかということを見ないと、この人が東京、この指定地区内の都内の営業所につとめておるかどうかということが確認できないわけでございまして、したがいまして、そのようなものをつけてもらって登録をするわけでございます。直接会社のほうがするわけでございませんので、運転手のほうでされるわけでございますし、今度はこれによって転職を制限するわけでありません。転職する場合におきましては、後ほど変更届けをしてもらうという形になっておりますので、決して転職を制限しようというものではないわけでございまして、登録制自体については、考え方としては、最小限度の公共の福祉上の制限であるということ。そしてまた、他の地域に対する就業制限あるいはほかの事業の運転手に対する就業を禁止するものではない。あるいはいま申し上げましたように、タクシー業界内での転職を制限するものではないというふうに考えておりまして、さらにこの運用にあたりましても、十分注意していきたいと考えております。
  140. 宮井泰良

    ○宮井委員 さらに、この登録制に関連いたしましてお尋ねしたいことは、安全面のことでございます。なるほどサービスの面では強調されておりますが、最も大事なことは、目的地に乗客を安全に送り届けるということでございます。そういう観点から事故違反歴等にも目を配り、抜本的な事故対策を警察庁と連携をとって検討されたことがあるかどうか、その点をお伺いします。
  141. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 安全ということは最も重要なことでございまして、道交法上の警察の取り締まり、そしてわれわれのほうにおきましても車両検査等によりまして一両ずつの車についての検査をやっておりますが、さらにタクシー事業者に対しましては、運行管理者であるとか、整備管理者、特にこの運行管理者というのは、運行上の責任をそれに与えておるわけでありまして、これらの点につきましては、十分警察当局連絡を密にしております。さらにまたサービスの点につきましても、安全ということは、最も重要なサービスでございますから、これらの点につきましても、連絡を密にいたしておりますけれども、今回の法律の運用につきましても、さらに連絡を密にして、具体的に十分やっていくという話し合いになうております。  警察とわれわれの関係というものは、非常に重要でございます。そしてまた、労組との関係も重要でございますから、これらにつきましても、一段と連絡を密にしてやっていきたいということでございます。
  142. 宮井泰良

    ○宮井委員 料金が値上げになりますと、乗車拒否はなくなるであろう、こういうことでございましたが、一向になくなっておらないような現状でございまして、その一つの理由としましては、需要に対する供給のアンバランス、すなわち、運転手不足といわれておりますが、運輸規則に基づく行政指導では、一台当たり二・四人の運転手が必要である、現在の東京の法人タクシー台数は二万五千四百五十七台、したがって、その点から考えますと、六万人の運転手が必要になってまいります。しかし、実際には五万人強で、約八千人の運転手が不足しておるのではないか、このように思いますが、このような運転手不足に対しまして、さらに絶対量の獲得にどのように対処されるか、この点をお伺いします。
  143. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 これは先ほど来申し上げましたように、運転手にたくさん来ていただくためには、量的、質的に給与を改善する、そのための施策を行なう、また福利厚生施設等を充実していくということでございます。  それから、登録等をやることは、良質な人にたくさん来ていただくための施策でございますから、社会的評価を向上いたしまして、プライドを持っていただくというふうに考えておるわけでございます。  それからさらに、職場の改善といたしましては、先ほどからもお話がありましたように、全体の都市交通の環境の改善もはかっていく必要があろうというふうに思います。
  144. 宮井泰良

    ○宮井委員 次に、昭和三十三年にタクシーの具体的改善策といたしまして、東京都内の場合一日の走行キロを三百六十五キロと運輸省は定めておられますが、現在までそのまま据え置きされております。したがって、経営者はこの走行キロをノルマといたしまして、このノルマを基準とした賃金を採用していると聞いております。これは世界一の交通麻痺の中で、一日で約東京−名古屋間を走っていることになると思います。平均走行可能時速は、現在昼間におきまして十六から十七キロぐらい、夜間におきまして十八キロというような調査結果が出ていると私は承知いたしておるわけでございますが、タクシーの一日の労働時間十五時間では一日二百七十キロしか走れない。それにもかかわらず一日三百五十キロ以上も走っていることは、運転手の超過スピードと長時間労働によると思うわけでございます。現在の交通状態に照らしまして、このような基準は改善されるべきである、このように思いますが、いかがでしょうか。
  145. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 一日の最高走行キロ制限といいますのは、昭和三十三年に神風タクシーの問題がありましたときにきめたものでございまして、当時におきます平均速度等から見て、これをおのおのの地域に当てはめまして、たとえば東京区内におきましては三百六十五キロというふうにきめたわけでございます。しかし、これは過労防止上の措置でございまして、それ以内で走るということであって、それまで走るべきであるというふうに運営されているところがかりにあるとすれば、それは間違いでございます。現在におきましては、過労防止のためには、この最高走行制限をさらに変更したらどうかという意見もあるわけでございますけれども、われわれといたしましては、そのほかの措置でもって、直接労働省の監査、監督等と密接に連携いたして処理をしておるわけでございまして、いまこれをさらに何キロにするというふうなことにつきましては、決定をいたしておりませんけれども、過労防止という点につきましては、労働時間の短縮という面で解決をしていきたい。さらにこの走行キロにつきましては、今後検討をしてみたいと思っております。
  146. 宮井泰良

    ○宮井委員 次に、ここで提案を申し上げたいことは、流し運転ということでございますが、わき見でありますとか追い越し運転になり、非常に事故が起きやすいわけでございます。このタクシーの流し営業を全面的に禁止して、常設のタクシー乗り場を設置し、さらに無線車を利用するようにしたほうがよいと私は考えるわけですが、その点はいかがですか。
  147. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 タクシーがこれだけ皆さんに利用されておるわけでございますから、この流しを全部とめてしまうということにつきましては、いろいろ問題があるかと思います。かりにとめるとすれば、それにかわるべきタクシー乗り場というものを各地に整備する必要があるわけでございますけれども、大都市におきましてそれをにわかに整備するということは非常に困難が伴いますので、全面的にこの流し禁止ということは非常に問題点があると思います。それで、今回の法案におきましては、第四十三条に「タクシー乗場及びタクシー乗車禁止地区の指定」という規定がございまして、一定の駅前であるとか繁華街等におきましては、タクシー乗り場を指定いたしまして、それ以外では乗車させてはいけないという場所と時間をきめることにいたしております。この決定につきましては、公安委員会であるとか道路管理者と協議することになっておりますので、それらの措置につきまして進めていきたい。これもいま先生御指摘のような方向に対する実施可能な具体的な方策であると考えております。
  148. 宮井泰良

    ○宮井委員 この臨時措置法案とは、あくまでも当分の間、暫定的にタクシーの運転者の登録を実施し、タクシー業務適正化事業の実施を促進するというように伺っております。具体的にいつまで適用されるのか。また、政令で指定地域と認めるところは東京、大阪である、このように思っておりますが、それ以外の都市でも、たとえば千葉におきましては、中山競馬場周辺におきましてひんぱんに乗車拒否等が行なわれておるというように聞いておりますが、ひんぱんに乗車拒否が行なわれているようになれば、新たに指定地域を定め本法案を適用するのかどうか、この点もお伺いします。
  149. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 この法案は「当分の間」ということになっておりまして、「当分の間」とは、これらを法律的に実施しなくてもよろしいという時期でありまして、その点につきましては先ほども御説明申し上げましたが、いつまでという期間は限りませんで、なるべく早い期間に解決するように期待しておるということでございます。  それから地域につきましては、現在、東京、大阪というものを考えておりますのは、この法律にもございますように、二つの条件がございまして、著しく需給のアンバランスがある地域、そしてまた「道路運送法に違反する運送の引受けの拒絶その他の行為がひん繁に行なわれる」という二つの条件があるわけでございます。これは第二条の第五項に規定いたしておりますけれども、そういう場所について行なうということでございまして、それに適合するところはただいまのところ東京、大阪であって、そのほかの地域においては適用しないことを期待しておる次第でございます。  それから、これを行なうための方法といたしましては、一定地域の営業所における車を把握するという必要があるわけでございまして、そうなりますと、常時それらの事態が行なわれておる地域で、それらの営業所というものを把握できるというようなことでなくてはいけないと思う次第でございまして、われわれといたしましては、東京、大阪についてこれを実施していきたい——いや、東京、大阪についても、早くこれらが必要でなくなるように期待すると同時に、ほかの地域においては、目下のところ適用を政令でもって指定するという考え方は持っておりません。これらのものはひとつ自主的に解決したいということと、それからいまおっしゃいました千葉等におきます乗車拒否の具体的な問題に対しましては、従来のような取り締まりをさらに進めまして、業者に対して厳重な行政処分等をもって臨みたいと思っております。
  150. 宮井泰良

    ○宮井委員 重ねてお尋ねいたしますが、近代化センターというのは、私はあくまでも永久的な措置であるというように思います。建物あるいは役員の方々がきまりましてできるわけでございますが、そうなりますと、一片の臨時措置法ではならない、このような感じがするわけでございますが、その点の御見解はいかがですか。
  151. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 このセンターは、今回の法律でもってつくるものではないわけでございます。民法第三十四条に基づきますところの財団法人でございまして、これが申請によって、この法律的な資格を持っておればそれを指定するという形でございます。しかしながら、現在すでにできております財団法人は、これの仕事をやるという意欲がございますし、そのためにいろいろ準備をせられておるわけでございますから、おそらく申請があるものと期待しておる次第でございます。また、それらの財団法人の仕事というものは、法律的に強制的にやるかどうかということは別といたしまして、適正な事業等の必要ということは将来に向かっても要請されるわけでございますから、それらの財政法人が継続してやられるということはもちろん可能でございますし、またそれは期待されるべきものでございます。
  152. 宮井泰良

    ○宮井委員 さらにこの問題で、悪質運転手の追放、タクシー事業の抜本的改善策として、この近代化センターが昨年の十二月に発足したわけでございますが、私が聞くところによりますと、中身は業者団体と同じようなものだ、運輸業者の外郭団体ではないかというふうなうわさも聞くわけでございまして、タクシー業界の健全な発展のためにも、多くの声を反映する機関でなければならない。そうなりますと、組織、人事の面で検討していかなければならないのではないか。単なる外郭団体であってはならない。もっと抜本的な対策を立てるべきである、かように思うわけですが、御見解をお伺いしたいと思います。
  153. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 これは財団法人でございますから、その原則によりまして、役員の指定になりますと運輸大臣の認可を要する点はあります。それから、決して役所なり業界の人事のために考えたものでなくして、これはすでに業界の中にもいろいろ御意見がございますけれども、タクシー事業の近代化のためにやろうとするものでございまして、決して役所、特に役所の一つの外郭団体をつくるためのものであるということは絶対にございません。それから民主的に行ないますために、先ほども申し上げましたが、登録関係の登録諮問委員会と適正化事業の諮問委員会というものをつくりまして、三者構成あるいは四者構成でもって、実際の仕事について重要なる諮問に応じていくというふうになっておる次第でございます。
  154. 宮井泰良

    ○宮井委員 経営の合理化ということがいわれているわけでございますが、ほんとうにその会社が赤字なのかどうなのか、その点を実際当たっておられるかどうかということでございます。聞くところによりますと、これはうわさだけかもわかりませんが、書類に目を通すだけだということも伺っておるわけですが、たとえば一千台の車を擁する大手会社がここにあるといたしますと、これをこまかく分けまして、百台ずつ十社の会社に分ける。社長は一人でございます。他の系列の事業所は本社ですべて処理をしておるというようなところがあると聞いております。その場合、交際費でありますとか社長の給料というものは、一社でございますと一ぺんに百万円ということになるわけですが、十社ということでございますと、十万円ずつということになりまして、そういった給料の面に対しましても、課税対象が低くなるというようなことも考えられるわけでございます。したがって、その経営内容までチェックされているのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  155. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 われわれのほうで監査をいたします場合におきましては、計画的なものと、事件等がありました場合に特別にやる特別監査とございますが、計画的なものといたしましては、事業計画の遂行状況はどうであるか、施設の状況はどうであるか、日報等の記録は正確であるかどうか、それから経理関係、帳簿の記載状況が正確であるかどうか、運行の管理の関係、それから安全管理の関係等が法律的に行なわれているかどうかというふうな内容について見るわけでございます。経営の改善につきましても、気がついた点につきましては一つの改善をするということでございます。  ただ、いま御指摘のように、営業所単位にいたします場合に、これを全体の会社の中の営業所としてやっております場合と、傍系会社的に独立さして運営しておるものとがございますけれども、これらの点につきましては、株式会社の性格でございますので、どちらにしろということを申し上げておるわけではございませんが、要は、その会社といたしましては、道路運送法あるいは車両法上の義務に違反しておるということが発見された場合におきましては、それに対しまして適切なる処分あるいは指導を行なっておる次第でございます。
  156. 宮井泰良

    ○宮井委員 次に、免許のことでありますが、現在の免許の許可はタクシーの場合におきましては二種免許になっております。これは運転技術の面だけでありまして、接客サービスの点が許可の基準に入っていない。したがって、乗客へのサービス改善を目ざすといたしますと、運転免許の基準の中に、技術面だけではなくして、そういった乗客へのサービスの点を加味していかなければならないのではないか。言うならば、タクシー運転免許というようなものを設けるべきではないか、このように思うわけですが、いかがでしょう。
  157. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 これはだいぶ前からいわれておりました就業免許制ということかと思いますが、われわれといたしましては、一つは個人タクシーによりまして——個人タクシーというのは、経営という面と運転という面と両方ありますが、個人タクシーという免許制度を実施いたしておりますが、今度は法人タクシーの場合に就業免許規定を実施したらどうか、現在の二種免許にプラスいたしまして、さらにいろいろな試験等をやっていただき、サービスの点等も十分調べてからやるということが就業免許制かと思います。しかしながら、それほど厳格にしていく必要があるかどうかといいますと、これは最小限度のものでいいのではないかということで、現在の二種免許にプラスいたしまして、一定の地域のみに限って登録制を実施するというようなことで、登録制度は、一定の道路運送法上の条件が備わっておりますと登録するたてまえでございまして、この法律で地理とかの試験もございますし、きわめて簡単な常識的な試験をやりたいというふうに考えておりまして、就業免許制というまでは進まないで、現在の制度に登録という制度をプラスして解決していきたいというふうに思っております。
  158. 宮井泰良

    ○宮井委員 次の問題に入るのでありますが、乗車拒否はなくさなければならない。これは当然なことであります。しかし、反面、乗車拒否のできる項目につきましても規定すべきではないかと思います。たとえば泥酔者でありますとか、これは家の前まで運転していきまして、さらに自分で肩にかついで家の中まで送り届けるとか、あるいは犯罪関係していると判明している者、あるいは薬物の中毒者、行き場所が危険なところ等においては身分証明書の提示をするとか、あるいは挙動不審のぐれん隊風の者への金銭の提示、また行き先がひんぱんに変わる者等、これらの乗車拒否をしてもいい条件の場合は、これを認めるべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
  159. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 この件につきましては、現在の自動車運送事業等運輸規則の第十三条に「運送の引受及び継続の拒絶」ということが書いてありまして、たとえば泥酔した者または不潔な服装をした者等であって、迷惑となるおそれのある者については、拒絶することができるというふうな規定もございます。ただ、それをさらに明確化したらどうかということでございますが、諸外国の例等につきましては、一定の距離以上の区域においては行く必要がないというような規定もあるようでございます。われわれといたしましては、現在の乗車拒否等の事態がある場合でございますから、現在の法律上、省令上規定しております以上に、さらに明記したらどうかという点につきましては、今後検討をさせていただきたいと思っておりますが、一応法律的には、いま申し上げましたような十三条に規定しておるわけでございます。
  160. 宮井泰良

    ○宮井委員 大都会に夜はない、このようにいわれております。最近とみに、深夜の職業等もございまして、東京などにおきましては、深夜になるほど人の往来が多いというような現状でございますので、そういった深夜の輸送機関がますます必要になってくるわけでございます。現在の輸送体制というものは、昼と夜を区別しておると思います。地下鉄は十二時前に終わっております。したがって、タクシーしか利用できない。どうしても大都市における、タクシーはもちろんのこと、輸送機関の総合政策を立てるべきではないか、かように思うわけですが、運輸省としての方針をお伺いしておきたい。
  161. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 御指摘のとおり、現在の都会は二十四時間動いているわけでございまして、深夜におきます輸送につきまして、いろいろ検討しなきゃならぬということも御指摘のとおりでございます。タクシーにつきましては、二十四時間スリーシフトの方法でもってサービスを提供いたしております。しかし、鉄道関係につきましては、夜間におきまする補修工事の関係がございまして、なかなか予備の線がないというふうなことで困難が伴っておるわけでございますけれども、まあ深夜運転を極力延長するというような方法でもって対処する考えでございます。バスにつきましても、いろいろ深夜のバス運行について検討しておりますけれども、労働条件等の変化も来たしますし、また輸送の需要というものが、夜においては必ずしもまとまらないという現象もございます。しかしながら、団地等があります場合におきまして、夜おそく電車で帰ってきた場合に、そこに帰る交通機関がない、あるいはいままではタクシーがあっても一人ずつしか乗れないということでございますから、それらに対しては、路線バスあるいはマイクロバス等で終夜深夜運転をするとか、あるいはタクシーの乗り合い等を検討するというふうな方法があるかと思う次第でございまして、特にこの乗り合いタクシーにつきましては、東京陸運局でも、三月の十七日から三月の末までに実態調査を終わりましたので、現在それを集計いたしまして、検討いたしておる状況でございます。
  162. 宮井泰良

    ○宮井委員 それでは最後にお尋ねしたいことは、先日来東京陸運局におきましては、タクシーの乗り合いという面を検討されておるということでございます。料金等の問題で非常にむずかしいと思いますが、そこで、私が提案したいことは、乗り合いタクシーのようなものを考えてはどうか。現在のタクシーでは運転手を含め五人でございまして、乗り合い行為は認められておりません。また自動車の構造上これはもう当然なことであります。そこで、採算のとれない大型バスというのではなくして、マイクロバスのようなもので特別な車をつくりまして、一定の区域を自由に走らせまして、指示標識を方向別につけて、そうして乗りおりをしていく。団地の方々の問題も先ほど出ましたが、そのようなことを検討してはどうか、そういったことをお伺いしたいと思います。その乗り合いの点につきまして、それがおわかりであればお答えしていただき、さらにこの提案に対しての御見解を伺いまして、私の質問を終わります。
  163. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 ちょっと先ほど答弁で申し上げましたが、乗り合いの終夜の営業ということにつきましては、それを指導いたしておりますけれども、需要との関係等でなかなか問題がありますし、またマイクロバス等の使用といいましても、マイクロバスを今度は日中に使うと、これまた不経済な点もございます。それで、乗り合いタクシーという点でございますが、本件につきましては、原則といたしましては、道路運送法上では乗り合い行為は禁止いたしておりますけれども、許可を受ければこれができることになっております。それで、東京陸運局で実態を三月末までに調査をいたしましたのは、国電の駅について稲毛、上尾、藤沢の三駅、それから私鉄の場合については綱島、鶴川、相模大野の三駅について調査をいたしております。それは鉄道の利用人員、バス、タクシーとの接続の調査、バスの状況はどうなっておるか、タクシーをどういうように利用されておるかというふうな点につきまして、さらにアンケートも徴しまして、調査を一応終了いたしまして、現在そのデータを集計中でございます。四月中にはその実情分析ができる運びになっておりますので、その結果、いわゆる範囲として把握できる数として深夜バスが成り立つかどうか、タクシーの乗り合いをやりました場合に問題点はどこかというふうな点につきまして、検討を進めさせておる次第でございます。それらの検討を終わり次第、結論を得たいというふうに考えております。
  164. 宮井泰良

    ○宮井委員 終わります。
  165. 福井勇

  166. 井野正揮

    井野委員 たいへん長い時間の質疑で局長もお疲れだと思いますが、重複しないように、またいままでの御答弁の中でさらに確かめておきたい点について御質問を申し上げたい、こういうふうに思っております。  二つの委員会性格については、先ほど先輩の斉藤委員からいろいろお尋ねがあったわけであります。そこで、ひとつこの点で触れておきたいと思いますことは、登録取り消しの審査、取り消し処分はこの登録諮問委員会で行なうのかどうか。それからその取り消し処分に対して不服、異議があった場合の補完手続はどういうふうになるのか。この点をまずお聞かせ願いたい。
  167. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 登録の取り消しというものは第九条にございまして、運輸大臣がやるわけでございまして、運輸大臣がそれを通知いたすことはいたしますが、運輸大臣責任でもってこれを行なうわけでございます。  それから審査請求につきましては、三十一条に「指定登録機関がした登録事務等に係る処分に不服がある者は、運輸大臣に対し行政不服審査法による審査請求をすることができる。」というふうになっております。  それから登録諮問委員会は、第二十五条でございますが……(井野委員局長、そんなことは聞いてないのです。簡単なことを聞いている。」と呼ぶ)第二十五条の第二項にございますが、登録取り消しの責任者は運輸大臣でございます。
  168. 井野正揮

    井野委員 いや、ぼくの言うことに全然答えていない。聞かないことばかり返事をしておる。この者の登録を取り消すぞという原告はだれになるのかと聞いているのです。警察になるのか、それとも一般の市民の申告によるのか、同業者の申告によるのか。この人間はこういう悪いことをしたぞとその原告になるのは、だれがなるのですかと聞いている。
  169. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 登録の取り消しは、第九条によりまして運輸大臣が行ないます。
  170. 井野正揮

    井野委員 そうすると、運輸大臣が東京じゅうを見ておって摘発をするのですか。そうじゃないでしょう。たとえば道交法に引っかかって警察にあげられたときとか、あるいは同業者の中でこういう乗車拒否をやっておる者があるぞという申告が来るとか、お客さんからあるとか、そういう具体的なことを聞いておるのですよ。
  171. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 法律上、登録を取り消すのは運輸大臣でございますが、運輸大臣が取り消すためには、第九条の一項一号から三号にありますように、道路運送法に違反して乗車拒否が行なわれたということを知ったときでございます。それには、警察の通報によりまして知った場合、それから利用者等の通報があって、それを調査した結果知った場合、それらの結果によりまして取り消しの処分を行なうというわけでございます。
  172. 井野正揮

    井野委員 そうすると、この仕事はもっぱら警察の仕事に属するわけですか。
  173. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 乗車拒否という事実があるかどうかということにつきましては、現在におきましても、現場におきます警察が把握してこれを通報する場合、それから一般から通報をする場合、さらに一般からの通報の場合におきまして、陸運局に直接通報がある場合と、それから指導委員会のほうに通報がありまして、そこを経由してこちらに通報がある場合とがございますが、要するに、警察なり一般の利用者の通報によりまして、その事実を把握して、把握した結果、呼びまして聴聞をいたしまして、十分確認した結果、それらの事実があると判断した場合において、登録を取り消すということでございます。
  174. 井野正揮

    井野委員 そうしますと、一般から通報が陸運局または警察あるいは登録センターにあった。このときの呼び出しの権限、証人、これらの判決、確認は、その諮問委員会がどういう法律根拠で持つのですか。それからまた、この処分を不服として、運転手は生活権をとられるわけですから、その場合の不服申請あるいはこの再審の決定に至るまでの営業権、これはどうなるのですか。
  175. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 陸運局長は、いまの通報を受けまして調べる場合におきましては、従来のように道路運送事業者側と運転手側を呼び出しまして、調査をいたすわけでございます。これに対する不服につきましての審査は、行政不服審査法でありまして、これは第三条に規定いたしておりますから、その不服審査法の規定によっていたすわけでございます。  それから諮問委員会は、登録に関します事項につきましていろいろ意見を申し述べるわけでございます。  なお、先ほど申し上げました処分の前には、第九条第四項で、聴聞を行なわなければならない、聴聞に際しましては、十分意見を述べる機会をその運転手に与えなければならないというふうに規定をされております。
  176. 井野正揮

    井野委員 どうも聞いておることに答えてくれないですね。私は聴聞会のあることも知っておりますし、聴聞会の手続も何も——聴聞会でやるのかと聞いているのなら、そうだでいいわけです。  そこで、その決定がなお不服であるというときは、その再審の手続はどうなるのか。その再審までやはり時間がかかるわけでしょう。その間に免許は停止になるのか。その間は、刑が確定するまでは仕事ができるのかという質問にはまだお答えになっていないですね。
  177. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 これは行政不服審査法によるわけでございまして、本人の申し出によりまして、裁判所の執行停止処分が可能でございます。これは行政不服審査法の第三十四条で執行停止の規定がございます。
  178. 井野正揮

    井野委員 まだそれは返事にならないです。最終決定があるまでの間就労できるのかと聞いている点はどうなんですか。
  179. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 行政不服審査法による第三十四条の執行停止がない限りにおいては就労できません。
  180. 井野正揮

    井野委員 それは少し人権を侵害しませんか。現行犯は別です。しかし、他人の密告あるいは申告によって乗車拒否をしたと認定をされても、その証拠に対して納得できない場合があり得るでしょう。先ほどからお答えになっているように、それが泥酔しておったとか、たびたび行き先を変えたとか、いろいろの理由があったとしても、それはあくまでも一方的判断であってはならないはずじゃありませんか。したがって、その最終的判決確定というものがそう安易に簡単にやられたのでは運転者の人権侵害になりませんか。その点の見解を運輸省はきちっとしておかなければこれはたいへんですよ。
  181. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 この種の処分につきましては、非常に重大なことでございますから、単に利用者から通報があったということだけでそういうことをやるわけではございませんで、十分その事実を把握しなければならないわけでございます。その方法といたしましては、聴聞のときにおきまして、その人から十分意見を述べてもらう、あるいは証拠も提出していただくというふうなことで、慎重を期した上で処分をするわけでございます。その結果さらに不服があれば、先ほど申し上げましたような行政不服審査法の規定によりまして処理されるという意味でございます。
  182. 井野正揮

    井野委員 最終的に行政不服審査法ですか、そこで確定するまではその権利は侵害されない、こういうふうに理解していいですね。
  183. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 行政不服審査法によりまして、執行停止の申し出に対しましては、この場合は、陸運局長に対する上級の行政庁といたしまして、運輸大臣が決定するわけでございます。さらに行政事件の訴訟法によりまして裁判に訴える裁判の方法を求めるということも可能でございます。
  184. 井野正揮

    井野委員 まだどの時点で仕事が取り上げられるのか上げられないのかということがはっきりしないのですよ。これは運転者にとっては非常に不安なことですから、そこをひとつ明確にしてください。
  185. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 この第三十四条によりまして、処分庁の上級行政庁が執行の全部または一部の停止をするということを決定するまではできないわけでございます。その取り消しを運輸大臣が命ずると、取り消しましてからはこれは就労できないわけでございます。その運転手を雇ってはいけないわけでございますけれども、不服がある場合におきましては、執行の停止をすれば今度は働けるということになるわけでございまして、これは執行停止がない限りにおきましてはその運転手を雇ってはいけないということでございます。
  186. 井野正揮

    井野委員 通常、刑は、最終の判決の期間まで、国民が拒否できる間は、その権利は留保さるべきが憲法の定めだと思うのです。その点は、いま最終答弁にしないで、もう少し検討して、まだ二、三十分あるようですから、考えてからお答えください。それは私納得しませんです。運転者の職業を取り上げるということが、そう簡単に運輸大臣命令できめられては困ると思うのです。最終的に裁判所の判決にその権限を求めて運転者が訴訟する限り、その最終判決があるまでその権利を停止することができない、疑わしき者をもって罰せずという原則は、そこにもちゃんとあると思います。その点をちょっと留保しておきますから、よく検討した上でお答えください。大事な点です。  それから次官、たいへん退屈そうですから、ひとつお答え願いたいと思いますが、昨日来、いろいろタクシーの営業正常化の臨時措置法について御質問があるのですが、私どうも一つ納得がいかない点は、いま東京、大阪に起こっておるタクシーの不法行為といいますか、乗車拒否だとか不法料金だとか、あるいは乱暴な言動だとかいうものを、社会現象としてお考えになるか、それとももう一つ、そうではなしに、経済構造、先ほど次官もよくお使いになったけれども、資本主義の経済というのは、競争を原則として、その中に社会発展を期待する、これは一つの側面だと思います。しかし、そういうことにも、いい側面と一つの弊害を生む側面とがあるわけです。これはかつてアメリカのルーズベルト大統領時代のニューディール政策なんかが、この弊害の面に対する是正策として、保守の良心といわなければならない、いうところのヒューマニティーですね。そこで、最近たいへん政治感覚を高められた輝かしいあなたですから、私申し上げたいのですが、ここでこのとらえ方を誤ると、この政策も実は羊頭を掲げて狗肉を売る結果になると思うのです。基本的な問題がきちっとしておると、大きな障害があっても、これを何とか政治の良心、行政の良心、体制の矛盾克服という方向に向けようとする運輸当局の良心を変えるものになるし、しかし、先ほどお話しのように、運転手の登録と雇用関係前提としてこれを想定するところに、大きなあやまちをおかす危険があると考えておるのです。  したがって、いま私が端的に聞きたいのは、今日起こっておるこの過当競争の中に生み出される、非常に脆弱な企業の中における重労働と低賃金、そして勤務状態の悪化、そして社会不安の醸成、こういうものを一面の社会現象として考えるか、体制内にある一つの体質矛盾と考えるか、この点をひとつ次官にお答えいただきたい。
  187. 山村新治郎

    山村政府委員 ただいま先生おっしゃいました、いわゆるタクシーについての乗車拒否を罰する、いわゆる一般に言いますれば、サービスの低下ですか、これというのは、先生がいろいろいまあげられましたものすべてがからんでおるのじゃないかと私は思います。そこで、とりあえずそれを少しでもなくそう、少しでもよいサービスをしていただこうということで出したのが、今回のタクシー業務適正化臨時措置法でございます。そこで、いろいろいま御審議いただいておるわけですが、この上ともいろいろ御協力いただきまして、そちらのほうの改善につとめていきたい、そういうことで考えております。
  188. 井野正揮

    井野委員 私も、これがもしこういう姿で理解をされて、ほんとうに一致して、東京や大阪を国際的に恥ずかしくない都市にするために、善意を尽くして審議をして、その中から、なるほどとお気づきになられた点について改善を加えられ、そして国際環視の中でこれが行なわれるならば、私は非常にいい結果が生まれると思います。そういう意味で、私どもの知っている限り、先ほど斉藤議員からもお話があったように、事業者の中にも強い反対の意見もあります。また賛成の意見もあります。また労働者の中にも、なお幾つかの不安を残しながらも、やはりこういう方向で共通の努力をしたほうがいいのじゃないかという意見もあります。しかし、いやいや、そうじゃない、落とし穴があるぞという非常な猜疑心もあります。     〔委員長退席、箕輪委員長代理着席〕 これは事実です。  そういう点に立って、私は、この政策の実をあげるためにまずお尋ねをしたいのですが、運輸省にいろいろお伺いしてみたところ、タクシー業態のほうについてはあまり知っておられないという証拠を私は突きとめております。あまり知っておられない。私の調査した範囲内において、タクシーの料金とハイヤーの料金は著しく差がある。それから、運輸省は一応基準を示して指導しているけれども、それは指導した人すら、いつのものだったか忘れておる程度で、あれは二十八年だった、いや三十三年だった、四十年だったというふうにお忘れになっておって、それほどハイヤー料金の関係についてはお考えの中にないという事実を私は証拠として体験をしております。しかしながら、実際にどういうことになっておるのかというと、これはこの際御披露申し上げて御参考に供したいと思います。局長井野委員の献身的な調査ですから、尊敬して聞いてもらいたいと思うのです。まず、先ほどもお話がありましたけれども、ハイヤー料金は相手を選ぶままにその契約が締結をされているという事実であります。たとえば銀行やマスコミに対してはたいへんサービスがよろしいのです。これは一日八時間で七千円から八千円程度で雇って契約しております。そして通常の場合は、これは六千円ないし八千円で、九時間から十八時間ぐらいが普通なんだそうです。個人の場合については、これは一キロ百三十円から百四十円というふうになっておる模様であります。私の体験を一つ話しますと、国会から、私の宿舎が当たるまで住んでおりました板橋の下赤塚まで、これはタクシーで帰りますと七百五十円、これは三べんともそうでございました。夜中、夕方、変わりません。ところが、東京でも有名な大きなハイヤー会社です。これは私のもとの議会の関係の北海道庁を通じてお世話を願って、すぐアナウンスで乗って帰ったのですから、待たしておりません。何と二千七百円の料金を徴収されました。あまり高かったので、びっくりして聞いたところが、これは運輸省指示の料金によるということであります。ところが、この計算を実は運輸省の料金に当てはめてみますと、大体三倍取られたことになります。身分も、井野正揮ということも知っており、あっせんしたのは北海道庁の配車係、そして行ったところがここということになっておるわけでありますから、これは悪徳の中になるのか、よい運転手になるのか、私の判断ではわかりません。そこで、このハイヤーの料金のきめ方というものは、大体が銀行などというところは企業と非常に関係のあるところでありますから、そういう恩恵があると思いますけれども、ちょっと下がりまして、日銀の場合は大体一日五千円で雇い上げておるようであります。マスコミは七千円から八千円、同じ東京でこれぐらい違うのです。大体私が社会矛盾ではないかということを言いましたのは、今度のタクシー業者の一番大きな不満は、この自動車の社会需要が非常に大きい。いつでも拾えるところにあることが望ましい。だからいつでも走っておらなければならない。そしてこれを利用する国民の性格からいって公共性である。だから料金は認可制だ。こういうふうにきめておきながら、これら三百五十の業者に対しては、政治の恩恵は一つもないということであります。協同組合法も適用されていないし、小さな業者に至っては、皆さん方まだよく検討されておらないようでございますけれども、その金利の書きかえと手形を落とすのに頭一ぱいだ。倒産、破産もまた非常に多い。したがって、経営も周期的に変わっていっている。そして先ほど宮井君からもお話がありましたけれども、会社を分散さして、経費を隠してでも経営を何とかしなければならぬという、涙ぐましい、きわめてきびしい状態に置かれている。これが次官、競争が社会を発展させる、産業を振興したという側面はあるけれども、ある場合においては、これを保護しないと、社会公共の事業に携わっていながら、結局追い詰められて、運転手を重労働に追い込んでしまう、あるいはノルマをかけた関係の中で、料金外の収入を得る道があることに運転手が生きる道を求めてくる。それを悪と言い切れるか。そうなってまいりますと、私ども、この経営者に契約したときに登録させるという方法は、第一、労働者の立場というものを第一義的に考えていない。これは私は改めなければならぬ大事な点だと思いますし、同時に、東京の三百五十の事業主を一体とした一つの過当競争を防止する方法といえば、これはロバート・オーウェンの書物を読むまでもなく、共同社会主義あるいは資本主義の中における協同組合的運営というものが歴史的にあるわけなんですから、そういう方向がとられなければならないし、そして先ほど斉藤議員からお話のあったように、民主的で、対等で、そして双方の言い分が十分に言い尽くされて、この社会的任務を、この法律案の説明にあるとおりに、業者と運転者の創意とくふうと善意によって解決をされるべきものであるというならば、国の政治は当然ここのところに思いをいたして、これらの過当競争から守り、国にかわって公共事業を実施しておるこの業界に対して、階層別にこれを育成する努力がなければならぬと思うのです。私、そういう意味で次官にお聞きしたいのですが、この点ひとつ、これは政治的判断答弁になりますので、お答え願いたいと思います。
  189. 山村新治郎

    山村政府委員 ただいま先生おっしゃいました点、まことにごもっともでございます。  今回これは一つの具体的な例でございますが、たとえばタクシー近代化センター等、これは四十五年度に五千万ばかりのわずかな金でございますが、とりあえずつけました。これらのことをやるのは、ほんとうは事業者が自主的にやるというのが、一般的にいえば、これが当然のことでございます。そして一面におきましては、実は過保護じゃないかというような批判もあったわけでございます。しかし、それを押してこれをつけたということもひとつ御理解いただきまして、また今後これらに対する国の助成そのほかにつきましては、これは先生方にいろいろ御指導、御鞭撻いただきながら、拡充というほうに向かって進んでいきたいというぐあいに考えております。
  190. 井野正揮

    井野委員 過保護というお話がございましたけれども、まだしないうちから過保護ということでもないだろうと思いますし、これがもし体制内の体質矛盾として、こういう社会不安をかもし出す原因をつくり出したと判断をすれば、経済がますます高度化して成長していく過程の中では、この矛盾は拡大しても縮小されることはないと判断してそう大きな間違いはないと思います。  そこで、臨時措置法が臨時ということばをつけたことが、実はこれを説得する一つの手段であると考えられてもやむを得ない点がございます。そういう展望に立つならば、こういう社会不安をなくすために、経済成長の中で加速度をつけて発展していく社会構造の中で、こういう矛盾を拡大こそすれ縮小することはないというふうに考えるのが、お互いに政治をやる者の心がまえとして持っておらなければならぬ問題であり、すでに運輸省では十地区ほどを予定をしておられたのです。これはいままでの話の中にたくさん出ておる。十地区ほどを予定をしておられたのを、何とか東京と大阪で押えたいという考え方のもとに——地方へ行ってみますと、もうどことどこだということを知っています。  それからもう一つは、いまのような形で、この業界新聞にありますけれども、運転手が二〇%悪いのがあるから、これは排除しなければならぬと書いてある。とんでもない越権行為だと思います。私は、こういう制度が行なわれて経営者の事業形態が改善をされ、運転者にもまたそういう自分の職業に対する誇りと喜びが出てきたら、性は元来善なんですから、どんどんよくなって直っていけば、この制度はさらに拡大をして、そういうものをなくするという立案当初の心境に返って、労働者も経営者も納得をしてくれる。タクシー運転手という仕事は誇りある仕事である、こうなるべきものだと思うのですが、このようにせっかく提案をしておきながら、中途はんぱで、どっちを向いておるのかわからぬという気がするのですが、局長、もう少し自信を持って胸を張って答えたらどうですか。
  191. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 タクシーの運転手さんがこの業界でたくさん働いていただくということが必要であります。その意味では誇りを持ってもらわなければならぬ。それには、いろいろの労働条件あるいはその職場の環境というものがそれに不十分であるからして、その改善については従来からやっておりますけれども、今回はさらに重点を入れて、労働省と一緒にやっておる次第でございます。  さらに、今回の法案を提出いたしましてこの登録制をやりますのも、道路運送法におきます諸規制をさらに励行できるように、それにプラスした補完的なものとしてやるわけでございまして、この登録制度も、決して悪質な人がたくさんあるからというのではなくて、皆さんに良質な人になっていただいて、誇りを持っていただくようにしたいという趣旨からのものでございます。したがいまして、そのような事態が改善されてくれば、あとは適正化事業の運営というふうなものは、業界のほうが自主的に行なってしかるべきものでございますから、当分の間というふうなことで改正をしようとしたものでございます。  それから、現在の乗車拒否その他タクシー問題の背景は、一つの経済的現象——需給の面のアンバランスがあるという経済的現象でもありますし、また交通社会的な現象で、交通の状況が非常にふくそうしてきているというような状況、また利用者のほうにもとげとげしい関係がございまして、従来はタクシーに乗ってやるというふうな観念があったわけでございますが、これはやはり公共交通機関として、鉄道なんかと共通の交通機関として利用者の方も観念をしてもらいたい。そういうことで、輸送を提供するほうも利用するほうも、お互いに公共交通機関として十分考えていって初めて解決をすることができる問題だと思う次第でございます。
  192. 山村新治郎

    山村政府委員 ただいま先生にお答えしました過保護ということでございますが、これは実際にまわりからお聞きしたことでございます。運輸省としてはこれでは足りないということでやりましたが、とりあえず今回は五千万。しかし、この次はもっとやってくれ。運輸省としては、過保護ということは全然考えておりません。他方のことでございますから、その点御了解いただきたいと思います。
  193. 井野正揮

    井野委員 私はいままで調査をした結果を見て、社会的に国民の需要は非常に激しくて、いつでも好きなときに流しの車が来ることを期待しながら、しかも車のほうの事情には一つも理解をしないで多くの非難がなされている事実も、また見のがせない一点だと思います。この問題を解決しようとするならば、第一番にこの種事業の経営の安定化をはかる。料金を国家が統制をするならば、当然同様の形態の他の業種との均衡を保つ。しかもハイヤーと違って、常に流してお客の利便に応ずるという多くのマイナス面をかかえるわけでありますから、この点については、ハイヤー以上の考慮をしなければならない点があると思います。逆にハイヤーの顧客を考えてみますと、これは今日日本の経済を支配をしておるような銀行とか大企業とか、場合によっては地方公共団体の東京事務所等がこれを主として使っておるようであります。こういう形からいくならば、きわめて恵まれた状態の中に位置をして、同時に、この需要が足りないときにはタクシーの市場まで侵すわけでありますから、タクシー業はもう両ビンタを食っているというかっこうになっております。この事業形態をまず安定せしめる助成政策があって、初めて私は企業の近代化に対して政府はくちばしをいれる資格ができると思います。こういう中で企業がさらに収益性を高めるためには、協同組合方式等による共同購入であるとか、あるいは事務量の軽減であるとか、各般の問題がありますし、業者の相互研修によってその経営手段も高まっていくということも考えられます。そういう方向をとりながら、片方においてはタクシー運転者の団体は一つの団体であるべきだと思いますが、今日のわが国の労働運動の事情等からいきますと、これはきょう労働省にもおいでを願っておりますので、組織人員や実際の従業者等々についても、労働省のほうの労災その他の統計でお知らせいただけると思いますが、運輸省に関する限り、労働者の実数については推定の範囲を出ない統計しかないと言わなければなりません。これは実際そういうことを調べるひまはないのかもしれませんが、あるいは人員その他の関係でそういう実態調査ができてないのかもしれませんけれども、推定の範囲の中のまた推定でもって数が出されております。運輸省の統計から出された数字を見ますと、運転手不足によるこの種問題が起こっておるということが納得できないほど差がないのです。ところが、業界新聞の座談会になりますと、東京だけで二万人足りないと書いているのですから、この業界新聞のいうことと運輸省の調べた統計とは、大きく開きがあるわけであります。この点でぜひ労働省のほうの労災ですか、それから健康保険ですね、この数字から把握した東京の運転者の数だけひとつお聞かせを願いたいと思う。
  194. 大坪建一郎

    ○大坪説明員 ただいまのお答えでございますが、労災または保険の関係では全国の形で出るわけでございまして、東京なら東京における運転者の数は残念ながら出てまいりません。  それで、先生のいまおっしゃいましたのを、私ども運輸省の統計等を勘案いたしまして推計いたしますと、東京では現在約七万人程度運転者がおられるということでございます。昭和四十四年の十月二十日現在でございますと、タクシー業では従業員の数は八万五千七百八十五人となっておりますが、そのうち労働組合員が四万三千百四十八人となっております。もしお尋ねございますれば内容を御報告いたします。
  195. 井野正揮

    井野委員 組織されたタクシーの運転手が四万三千いるということになると、きょう傍聴の労働組合の方びっくりするだろうと思いますが、そんなにおりませんですよ。それくらいわが国政府は労働行政に対してずさんなんだという証拠なんです。今度登録されましたらば、私が暴言を吐いたのか、皆さん方のほうがほんとうだったのか、わかってきますから、これはいいと思いますが、それくらい把握をしておられなくて、観念的に運転手が足りないから拒否が起こるとか、いろんな論議がされておるので、まさにこれは不毛の論議と言わなければならないと思います。総理大臣の施政方針のときにも、深刻な顔をして、お米は余る、企業のほうは人が足りない、深刻な労働力不足、こういうふうに言われておりますけれども、ちまたへ行ってみると、老齢労働者は余っておる。足りないのは若齢の中学卒の労働者が足りないということなんです。それは低賃金政策を企業が求めようとするところに体質矛盾がある、こういうことを言わなければならぬと思います。  最後に、結論を急ぎたいと思います。  私は重大な点を三つ提案をしております。その一つは、この協会を協同組合的なものに育成をする考えについて検討してほしいということ。第二は、労働組合は五二%ほどしか組織されておりません。四八%は未組織で、労働組合のない事業体が多いわけであります。しかしながら、この雇用関係前提として登録させる方式は、決して労働者と経営者を対等の立場に置くものではない。したがって、すべての資格を持つ運転手は、この協会に登録ができるということで、運転者協会、まあ仮称ですね、こういうものを設けて、対等の立場をこれによって保持をさせる。それは組合に入っておる者は団体もしくは個人、これでよろしいという道を開いて、このせっかくの制度をつくった目的を達成するために、こういう形で対等の立場に置く。そしてもちろんこういう形になりますと、先ほど斉藤委員から拒否権の問題が出されましたが、双方の一致によって登録の問題、取り消しの問題、あるいは取り消しの不服審査間における保護の問題等々、近代国家にふさわしい社会体制をぜひおとりになることを希望したいと思います。私どもも、それらの問題が解消されるならば、おそらく全従業者が安心をして、この協会に、このセンターに、この法律に期待をし、そうして改善された待遇の中で、心豊かにお客さんに接するだろう、そういう資質を日本の労働者は全部持っておる、私はこういうふうに信ずるのですが、この点いろいろ論議もあろうかとは思いますけれども、第一段には、事業者を今日の社会的使命に照らして他の産業と同様に保護を加える。それは金融あるいはそういう団体に対する会議、事務その他センターの問題ですね。そしてさらには、この種財産の少なくて社会的使命を持った事業に対して、長期低利の資金等により経営の重圧を除いてやる。さらには、労働組合とその労使の個々折衝が十分行なわれるような近代的雇用関係を促進させる。また登録については、そういうことが現在ないというところに問題が起こっておるわけでありますから、運転者協会等を通じて、そういう制度に対して無知な運転手、目先の僥幸に追われないような性格にする社会環境の育成、こういうことをすることによって、私は、この目的は、きわめて高い感覚を持った近代社会にふさわしい制度になるだろうというふうに考えますし、それは資本主義にも矛盾をしない、こう考えるのですが、ひとつ最後にお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  196. 山村新治郎

    山村政府委員 ただいま先生がおっしゃいました事業者の保護、いわゆる国の助成というものをやったらどうだ、これは先ほど私、答弁申し上げましたように、運輸省としてはやりたいということで第一歩というところで、タクシー近代化センターということをとりあえずこれは成功したわけでございます。本年度から東京で三千万、大阪で二千万というのを確保したわけであります。今後はこれを足がかりにしてどんどんやってみたいと思います。また、協同組合的なものをつくったらどうだ、これは私、実は初耳でございます。これは自動車局その他担当のところで相談しまして検討していきたいと思います。
  197. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 一つは協同組合の点がございます。近代化促進法の対象業種としたらどうかということも、だいぶ前に論議いたしましたが、自動車関係では、通運とトラックあるいは整備の関係は、近代化促進法の対象にならない。タクシーの場合は、論議いたしまして、いろいろ業界等の意見を聞いたわけでございますけれども、まだその希望もあまり強くなかったので、その当時は近代化促進法の指定業種にしなかったわけでございます。しかし、われわれとしましては、協業化というものは時代の趨勢でございますし、中小企業が多数のハイタク業界でございますから、協業化のほうは指導しております。で、協業化の方法といたしましては、中小企業の協同組合のほかに、今度は協業組合というふうな方法もございまして、すでにこの方法について、仙台あたりでは具体的な検討を経営者のほうでも始めております。したがいまして、われわれは、どういう形が一番理想であるかという問題はありますけれども、いろいろの方法につきまして、ひとつ協業化の方向に進んでいくように指導をいたしたいと思っておる次第でございます。  運転手の組織、労働組合の組織等につきましては、労働省とも協力いたしまして、近代化するように、そしてまた雇用契約の点につきましても、近代化の方向に向かって一そうの努力を進めていきたいと思っております。
  198. 井野正揮

    井野委員 最後にしようと思ったのですが、ちょっと合意が足りないと思うのです。保護の場合、次官はえらく補助金のほうを気にしておられるようですが、私は、一時的な補助金というよりは、むしろ事業体が今日受けておる重圧を取り除くことが大事だ。それは事業者の仕事が、ほとんど銀行通いをして、手形の書きかえやら、お百度参りをして、担保提供ばかりをやっているようなことではできないわけですから、それが今日の体質、体制矛盾の問題の最たるものなんです。そこで、協同組合の利点は何かといいますと、一括的に事務を扱って、協同組合法の精神に基づいて、この使用をする場合にはこれこれの基金融資がありますよということになるわけですから、これによって信用度合い、受信力の判定も下されるし、またこれこれの条件を整えれば、その受信力によって協同組合を通じての連帯保証の融資を受けられるというところに、業界の組織化が進んでくるし、そういう作業を続ける中に事業者の企業責任というものが生まれてくる。そういう中でやっていかなければならぬけれども運輸省というのは、元来お客さんの統制をするのか、交通巡査みたいな考え方で仕事をやってきた性格なのかどうか。どうも対人間の問題になると非常にあたたかみがない。取り締まりとか許可、認可でふんぞり返る癖があって、いまなお衰えていない。こういうところに、民主主義を指向し人間問題を解決しようとする政府の方向に沿ってない、こういうことになるのです。そういうことでございますので、この点は十分御理解をくださって、そういう方向に検討されることを期待をいたします。
  199. 山村新治郎

    山村政府委員 ただいま先生が申しましたところで、ちょっと私ふに落ちないところがあります。というのは、ふんぞり返っているというのは間違いでございます。少なくとも私が次官になってからは、そんなことはないと思います。もしありますれば指摘していただきますれば、直ちにそれは今後態度を改めたいと思います。  そのほか、事業者の一番の問題は銀行だ、長期低利の融資とか——私も実は政務次官になります前は、いなかの小さな中小企業のおやじでございます。苦しみはよくわかります。いろいろ経済官庁そのほか相談しまして、できればそのような方向に一生懸命やってまいるつもりでございます。
  200. 井野正揮

    井野委員 たいへん合意を得ましたことを感謝します。ただ、ふんぞり返っているというのは、私どもにはたいへん姿勢は低いのですよ。しかし、国民はそう思ってないということをこの際御理解になって、次官になられたといってもまだ二百日ないでしょう、百日ちょっと程度ですから、その程度の体験をもって言われるのには少し早いのではないかと思います。
  201. 山村新治郎

    山村政府委員 最後に申し上げます。そんなことがあった場合には、どうぞ遠慮なく言ってきていただきたい。直ちに直させます。
  202. 箕輪登

    ○箕輪委員長代理 渡辺武三君。
  203. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 今回提案されております法案は、いろいろな歴史的な経過がございまして、この種法案になって提案をされたものというふうに理解をするわけでございます。     〔箕輪委員長代理退席、委員長着席〕 昨年の十一月二十一日に行なわれております物価対策閣僚協議会並びに交通関係閣僚協議会の合同会議におきましても、いろいろな問題点が指摘をされておるところでございます。その中で、特に日雇い運転者の雇用禁止ということもきめておりますし、御承知のように、運輸省令によりましても、それらが禁止をされておるようでございますが、そもそも国家の試験によって運転者となる資格を有した上でいろいろな職業につくわけでございますが、このような運輸省令なりあるいは閣僚合同会議というようなものにおいて、本来的にきめられておる職業選択の自由が制限をされるということについては、私やや疑問を持つものでございます。先ほど来お答えがあったようでございますが、やや明確を欠いておると思いますので、憲法第二十二条並びに職業安定法第二条に定めてございます職業選択の自由というものを制限しておるのではないか、かように考えるわけでございます。社会の公共的な福祉を維持するための最低限の制限法だというお答えでございますけれども、そういうことであれば本来的な基本的な権利を制約されてもかまわないのかどうか、この辺をまずお答え願いたいと思います。
  204. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 憲法二十二条の職業選択の自由との関係でございますが、タクシー輸送が現在国民の日常生活に密着したものになっておる。さらにこのタクシー輸送につきまして乗車拒否等の違法行為が頻発したために、そのサービスの低下が社会的問題になっているという背景から考えました場合に、今回の運転手の登録制の採用は、その国民に直結しているタクシー事業の業務の適正化をはかるためのものでございます。  したがいまして、第一に、公共輸送機関としての使命を達成するための最小限の公共の福祉上の制限である。第二点に、登録の取り消しによって運転手としての就業を全部奪ってしまうのではないかという点につきましては、指定地域内のタクシーの運転手として就業することだけを禁ずるにとどまっておるのでございます。それから第三は、転職の制限というものについてでございますが、登録によって転職が制限されることのないようにも留意しておるところでございまして、二十二条にいいますところの職業選択の自由に反するものじゃないと解釈しておるわけでございます。法制当局ともこの点につきましては十分相談いたしまして、御提案申し上げた次第でございます。
  205. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 それでは憲法に抵触するものではないという前提に立って、質問を続けてまいりたいと思います。  いろいろな経過の中で拝見いたしますと、乗車拒否等が多く起こるのは、悪質運転者、つまり、日雇い運転者の中に非常に多いんだということがうかがえるわけでございます。したがいまして、四十四年度の運輸経済年次報告を見てみますと、「タクシーのサービスの改善のためには、乗車拒否等の取締りを強化すべきことはもちろんであるが、根本的解決策として乗車拒否やその他のサービスの質の低下の原因を除去する必要がある。」というふうにいっておるわけでございますが、この乗車拒否やサービス低下の原因が一体那辺にあるのであるか。特にうかがえる中では、悪質な運転者というようなことが文章上多分に出てまいるわけでございます。労働条件の低下あるいは前時代的な経営者感覚というものももちろんあろうかと思いますけれども、そのほかに、乗車拒否やサービス低下の原因というものがあるならばお聞かせ願いたい。
  206. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 一つの経済現象として見ました場合におきましては、時と場所におきまして、需要に対して供給が不足しているということであると思います。これをなべて申し上げますと、六三%から四%という実車率というものは、通常のいままでの慣例から申し上げますと、五五%ならば非常にバランスがとれる。これが六〇%に近づくに従いまして、バランスがくずれる。六〇%をこえるということになりますと、非常に不足が目立ってくる。特にそれが一定の時と場所におきましては顕著にあらわれてくるというわけでございまして、われわれといたしましては、輸送需要に対する供給の不足という一つの現実の形態があるのではないかと考えております。これは需要に対する供給をいかにふやしていくか、なぜそれが不足しているかという問題にアプローチして解決していかなければならないと思います。
  207. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 どうもお答えが明確でないと思いますが、いわゆる日雇い運転者というものがその原因になっておるかどうかということを端的にお聞きしたいと思います。
  208. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 日雇い運転手は法律で禁ぜられておるわけでございますが、日雇いの場合におきましては、一定のかせぎを会社に納めれば、あとは適当にかせいでこいというふうな形態が従来あったように聞いております。そういう場合におきまして、お客を選ぶ、そして拒否するというふうな現象が起きておるわけでありまして、何%が日雇いでやっているかという明確なる統計がございませんけれども、いま申し上げましたような、禁止されているような形態における日雇いの場合におきましては、乗車拒否あるいは不当運賃の収受というものが起こりやすいというふうに考えております。
  209. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 道路運送法二十七条、それらに基づく政令だとか、あるいは運輸省令というものがいろいろ定められております。その中に、運転者の年齢だとか免許の種類だとか、さらには運転者としての選任要件というものがきめられておるわけでございます。つまり、日々雇い入れられる者などを運転者として選任してはいけないということがいろいろ定められておるわけでございます。したがいまして、それらの人が現在本来的には就業してはいないはずなんでございますけれども、いまもその実態があるかのごとくのお話があったようでございます。その実態というものが一体どうなっているのか、わからないというお答えだろうと思いますけれども、わからないといいながら、しかし、その原因として大きくあげながら、今回の法案が出てきておるのではないだろうかということを考えますと、ある程度の把握をしておるはずだというふうに考えますので、その把握の現状をひとつお聞かせ願いたい。
  210. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 運転者として選任を禁止されておる者は、日日雇い入れられる者、二月以内の期間を定めて使用される者、試みの使用期間中の者、それから十四日未満の期間ごとに賃金の支払いを受ける者というふうな者は禁じられておるわけでございます。従来こういうふうなものがあったということは否定できないところでございますが、その後、いろいろ調査をいたしましたが——われわれのほうは犯罪捜査ということもできませんので、いろいろ調査をいたしましたが、現在では、表面の形におきましては、これらの者は雇ってないというふうになっております。しかし、実態といたしましては、さらに今後調べなければなりませんが、今回の登録制度というふうなものを実施すれば、これらの点は明確になると思います。
  211. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 私どもの聞くところによりますと、新産別という労働団体があるわけでございますが、この新産別という労働団体が運転者労働組合なるものを結成をしまして、いわゆる労働者供給事業というものを行なっておるようでございます。したがいまして、これがどういう形態になっておるか、私よくわかりませんが、これらの者を今回の法律によるところの登録運転者とすることができるのかどうか、いわゆる規制の対象にされるのかどうかということについてお聞きをしたいと思います。
  212. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 これは職業安定法第四十五条の規定にかかわる労働者供給事業のことでございまして、その供給事業というものは、日雇い的なものを供給するということを本則としているものではないわけでございまして、たまたまそういうことが従来あったということでございまして、われわれといたしましては、この規則法律に適合する運転者を供給してもらって、これが登録もされ、使用されるということになれば、非常にけっこうだと思うわけでございます。今回の法律によって直ちにこの供給事業そのものを否定するものではございません。
  213. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 もちろん、その供給事業そのものを聞いておるわけではなくて、その形態がどうなっておるか私よくわかりませんけれども、供給をされておる労働者が、いわゆる日々雇い入れられると同じような、準ずるような形で雇用をされておるのかどうか。だとすれば、そのような人が今回の登録の規制の対象になるのかどうか、こういうことを実はお聞きしたわけです。したがって、あとでお答えを願いたいと思いますが、まあ関連がございますので、労働省にもついでにお聞きをしたいと思います。  職業安定法の第三十三条二項、さらに四十五条というものがあって、労働者供給事業と紹介事業というものが、労働組合においても労働大臣の許可を受ければやれるという定めになっておるわけでございます。したがいまして、この新産別に与えております許可は、このいずれの条項に基づくものであるのか、さらにはその許可を与えた時点においていろいろな条件が付されているかどうかについて、まずお尋ねをしたいと思います。
  214. 保科真一

    ○保科説明員 新産別に対しまして労働大臣の許可を与えております法律的な根拠は、職業安定法四十五条に基づくものでございます。現在までに新産別系の組合といたしましては、東京支部、大阪支部に許可をいたしております。東京支部に昭和三十五年に許可を与えまして、大阪支部につきましては昭和三十九年に許可を与えておるわけであります。
  215. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 いまの答弁はちょっとおかしいと思うのですがね。少なくとも有効期限が法律によってきまっているはずです。したがって、有効期限の切れる前の遠い昔に許可を与えた。そうすると、いまそれは失効しているわけですね。
  216. 保科真一

    ○保科説明員 この許可は有効期限が二年でございまして、二年たちますと更新の申請が出ます。更新の許可を与えておるわけでございます。
  217. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 そうでしょう。一番新しい許可を与えられた時期はいつですか。
  218. 保科真一

    ○保科説明員 昭和四十三年でございます。
  219. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 労働省にお伺いいたしますが、これらの供給事業なりあるいは職業紹介事業というものを許可をする場合に、もろもろの法律によって、たとえば運輸省令によりましても、いわゆる旅客の運送を業とするようなそういう運転者は、日々雇い入れられる形態ではいけないということになっていることを御存じなんですね。——だとするならば、その許可のときにそのような注意は与えてあるかどうか、許可の条件になっているかどうか、先ほどもお聞きしたのですけれども、御返事がないものですから、あらためてお聞きをするわけであります。
  220. 保科真一

    ○保科説明員 許可の条件にはいたしておりませんけれども運輸省令できまっておることでございますから当然のことだと思います。それで、組合に対しましては、こういう運輸省令だとか、労働者の働く形態といたしましても常用のほうが望ましいわけでございますので、従来から常用でやるようにというような指導をいたしております。十分指導を加えております。
  221. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 そうしますと、その実際に許可を与えておやりになる事業の内容その他については、十分に労働省としては把握をしておられるかどうか、現存する法律、政令、省令等に違反していないかどうか、その辺を明確にひとつお答えを願いたいと思います。
  222. 保科真一

    ○保科説明員 ただいま申し上げましたように、常に労働者供給事業の許可を与えております組合に対しましては、法令を順守するようにということを指導をいたしております。  新産別の現在の状況でございますが、所属の組合員が約五千五百名ぐらい、その中でハイヤー、タクシー関係に従事されておられる方は三千八百名ばかりおられます。実際の供給の形態といたしましては、組合と事業所と労働協約を結びまして、そして事業所へ供給するようにするわけでございます。実際に働くにあたりましては、個々人の運転者と事業所と雇用契約を結びまして働くわけでございます。その雇用契約を締結する際に、運輸省令を守った雇用契約をつくるようにというような指導をいたしております。
  223. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 労働者のいろいろな権利なりいろいろな問題点を擁護する立場にある労働省としてやや問題があると思いますのは、確かにタクシー事業者そのものにもいろいろな労働組合はすでにあると思います。その中にある一部分の労働者が送り込まれた。それは全然別個の労働組合である。これらのものが、いわゆる既存の労働組合の労働条件その他が、これは労働組合法にもうたわれております一般的拘束力を持った形で、労働協約その他が適法に結ばれておるのかどうか、この点についてひとつお尋ねしたい。
  224. 保科真一

    ○保科説明員 これは各事業所によりまして、労働協約がどういうような形態で結ばれておるか、それからその事業所の労働組合が、どういうような労働組合がそこにあるかというような問題と、一般的拘束力の問題については関連があるのではないかというふうに考えられますので、これはやはり個々の事業所の状況に応じまして問題を考えなければ解釈は出ない問題じゃないかというように考えるわけであります。
  225. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 組合があるわけですね。ある一つの企業を例にとりましても、そこの中で、組合は雇用されておる組合員によって組織されておる。その組合とその事業者とは労働協約が結ばれておる。就業規則にしろ賃金規則にしろ結ばれておる。たまたま人員の不足することによって、いわゆる労働力供給事業者から労働力を供給してもらう。この供給された労働者は、いわゆるそこに結ばれておる労働協約、そこで働いておる運転者と同等の取り扱いを受けておるのかどうか。本来組合が違うのだから、これはこちらの組合が事業者と交渉すればよろしいんだという見解で労働省がおられるのかどうか。だとするならば、私が先ほど言いましたように、労働組合法上にきめられておる一般的な拘束力というものはどういうものなのか。本来そういう諸権利を守って擁護していかなければいかぬというお役所がそういうことを──片やまたほかの組合から注入をさせるということでほんとうにいいのかどうか。一体どのような実態になっておるのか。それについて許可をされたんだから、当然その業務内容も十分御承知のはずだし、どういう状態になっておるか、そういうことを十分知悉された上で、いろいろ問題点が生ずるために、契約年限その他がきめられておると思うのですよ。そのとき、やみくもにめくら判を押しているわけじゃないと思うのです。その許可期間の中におけるいろいろな問題点があれば、当然そこで修正をさせるなり、いろいろな適正化をはかっていくという方向で契約更新がなされておると思うのです。そういう意味から見ますと、その実態というものは十分御存じのはずなんです。知らぬでめくら判を押しておるとは言えないわけですからね。だから、その実態をひとつお聞かせ願いたい。
  226. 保科真一

    ○保科説明員 どういうような労働協約を各事業所と締結しているのか、こういうことは調べておりますし、また事業所に働くにあたりまして雇用契約をつくるというようなことも承知しておりますが、どういう事業所にどれだけという点につきましては、ただいま資料を持っておりませんので、ちょっとわかりかねます。
  227. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 それではあとでそれらの明確な資料をひとつ提出をしてくださるように要求をいたします。  まあいずれにしても、そういう問題点があって、過去は確かに運輸省令その他も日々雇い入れるものを許しておった。そういうようなことから労働力が供給をされておった。その時代には日々雇い入れられるいわゆる日雇い契約であったかもわからない。ところが、それらが現実にいろいろな乗車拒否とかなんとかいう問題が出てきて、何とかこのタクシーサービスの向上のためにいろいろなことを考えていかなくてはいけないという情勢の変化というものがあったはずなんです。ところが、片やそういう省令の改正とかいろいろな情勢の変化があったにもかかわらず、同じような状態で供給をされておるとするならば、同じ政府部内において、片や運輸省のほうは、一生懸命でそれを近代化しよう、どうしようということで努力しておられる。片や労働省のほうは、そういうことは無視した状態において供給がなされておるとするならば、これはやはり問題だ。したがって、この点は、十分両者が緊密なる連携のもとに、いまの問題点を一体どうするかということがはかられていかなければいかぬ。そういう状態でございますので、十分に研究をしていただきたいというふうに思うわけでございます。  さらに、今回の法律は、タクシー事業者に雇用される運転者のみを登録させようというふうに考えておるものでございますけれども、個人タクシーそのものもいわゆる乗務証というものを必要といたしております。それから先ほど来論議になっておりましたハイヤーの運転手、これについては特に登録義務を負わしていないようでございますけれども、こういうふうにいわゆるハイヤーの運転手だけを登録義務から除外をすることによって、たとえば大企業にいきますと、ハイヤー部門とタクシー部門と並列的に持っておる企業がございます。したがって、タクシー部門でたとえば登録を取り消された運転者は、いわゆる悪質運転者は、ハイヤー部門であれば自由に乗れるという結果になってまいります。したがって、一種の逃げ道にもなるわけでございますので、その辺は同じようにやはり登録をさせるという気持はないのかどうか。少なくとも制限法だから最小限にしたいという気持ちはわかるわけですけれども、そうすることによってやはり裏道をつくってしまう。また経営者みずからも、企業者のほうも、非常に労働力が不足だから、たまたまタクシー部門の運転手が違反をしてしまって困ったものだ。しかし、ハイヤーのほうにたくさんおるから、こっちから連れてきてということが当然行なわれてしまうと思うのです。そういうことをやはり阻止をしていかなければいけないと思います。そのためには、やはり全員を登録させるということが必要だと思いますけれども、その辺の見解を聞かしていただきたい。
  228. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 今回の法律は、最小必要限度のものにしたいということで、タクシー運転手だけをいわゆる法律上強制的に行ないます登録の範疇に入れたわけでございまして、その理由は、ハイヤーの契約とタクシーの契約の実態が違うということでございます。しかし、ハイヤーの運転手につきまして、登録を受けなければ雇用してはいけないという点は、いま申し上げたとおりでございますが、センターにおきましてハイヤー運転手を登録するという方法は可能でございますので、この点につきましては、センター等によって今後検討をするようにいたしたいと思います。法律的に登録をしている者でないと雇用をしてはいけないというこの条文につきましては、これはタクシー運転手だけに限る。この理由は、最小限度にしたい。しかし、運用上の問題といたしまして、センターにおいてハイヤー運転手も登録するという方法は、これは実際問題としては可能でございますが、それらの点につきましては、今後センターのほうにも研究をしてもらいたいというふうに考えます。
  229. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 法律的にはいろいろな問題があるから、タクシー運転者に限るけれども、その法の運用にあたって、いわゆる近代化センター、登録事務を取り扱うところで同じように登録をさせていきたい。そして実際にはそういう同じ効力を生むような方向で運営をしていきたい、こういうふうに考えるということでございますか。
  230. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 おおむねそうでございますけれども法律上登録をしておる運転手でなくては雇用してはいけないといういわゆる強制的な制限規定は、当然ハイヤーの運転手については働かないということでございます。実際問題として、そういう登録制度をセンターにおいて行なうということにつきましては、検討をさせていただきたい。これでおわかりでしょうか。
  231. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 何かよくわからぬ。
  232. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 いわゆる強制力はないけれども、実際問題として登録することは可能であるから、その方法につきまして、将来運営さるべきセンターにおいて検討してもらうようにいたしたいという考えでございます。
  233. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 いわゆる法的拘束力はないけれども、実際面でそういう運用をしていきたい、こういうことですね。それでよろしゅうございますか。
  234. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 その意味における自主登録でございます。
  235. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 いわゆる業者間の一種の約束ごとのようなもので、自主的な拘束力を持つような方向で行政指導していくということでしょうか。
  236. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 そのような方向につきましてセンターのほうで検討してもらいたい、検討するようにいたしたいということでございます。
  237. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 これは先ほど来御質問がございましたように、今回の法律とは直接的な関係がないかもしれません。たとえばタクシー運転手は直接的にタクシーのお客さんとの折衝がある。ところが、ハイヤー運転手については、営業所を通じて顧客との取引があるんだから、乗車拒否とかいろいろな悪質な問題は行なわれないんだ、また監督は十分行き届くんだということのようでございますが、私は、必ずしもそのようなことがあるからハイヤーのほうのみはいいんだということにはならないと思います。いろいろな意味で、これが強化されればされるほど、先ほど言いましたように、むしろ温床になるおそれすら出てまいるわけでありますから、そういうような状況の変化、このような新しい法律が設けられることによって、さらにそのような条件が増してくると思うのです。したがって、当然そのような面も考慮をしてもらわなければ、全体としてサービスの向上なり、いわゆる企業の近代化の方向に向かわせようという趣旨からかえってはずれてしまうのではないか、こういうふうに考えますので、ぜひこの場だけの答弁で何とかということではなくて、そのような方向に向かって、ひとつ強力な行政指導によって、実際的に法的拘束力を持つと同じような効果があがるような措置をとっていただきたい。強く要望をしておきたいと思います。  続いてお伺いをしたいと思いますが、第三十七条によって一応負担金を課せられるということにきめられておるわけですが、先ほどの答弁の中では、その負担金についてはまだまだこれからきめられていくんだということのようでございますが、現実には、もうすでに一台当たり三万円、個人タクシーは六千円というような金額が流されておりまして、私もその金額については聞き及んでいるわけでございますが、いま言いましたタクシー一台について三万円、個人タクシー一台について六千円という金額は、大体その辺を考えておられるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  238. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 先ほど申し上げましたのは、法律的には、今後センターのほうできめまして、運輸大臣の認可を受けるということでございますけれども、実態問題といたしましては、すでにタクシーの場合一両当たり三万円、個人タクシーの場合に六千円ということで、財団法人のほうから関係の業界に話をいたしております。そしてまた、われわれが先般来運賃を認可いたします場合におきましても、三万円という額でもって所定の金額をはじきまして、二二・五%の中にはそれを具体的に含んだものとして計算をいたしている次第でございます。
  239. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 これらの負担金に対する企業負担というものも相当増してくるわけでございますが、それらがかえって労働条件にまた影響をしていくというようなおそれも十分考えられるところでございます。つまり、タクシー近代化センターなるものが設立されて、負担金が一台当たりで三万円かかってきたから、何とか給料を上げてやりたいと思ったけれども、これこれこれだけの金額が支出をされてしまうんだというようなおそれが労使の席上で出てくる可能性は当然あろうかと思います。したがって、私は、少なくともこのタクシー運送というのは、御承知のようにもう公共輸送機関だというふうにも考えられておりますし、事実そうだと思います。したがいまして、このタクシー事業そのものの近代化の方向については、やはり十分国として助成の方向を考えるべきではないだろうか。  さらにもう一点考えられますのは、確かにいま運転者が非常に不足しているのだ、したがって、いろいろな支障ができてきているんだということがいわれているわけですから、これもやはり国の資金によってその運転者を養成するということを考えなければいかぬ。現実に幾ら内容をよくしようと思いましても、そこで働いてくれる人がまずいない。確かに多くの自動車学校等がございまして、いわゆるペーパー・ドライバーと称する人たちが非常に多いわけですけれども、何もその人たちはこのタクシー運転手になろうとして運転免許をとっておられる方々ではないわけです。少なくともこういう公共輸送機関のいろいろな弊害を取り除いていこうとするならば、国の力によってそういう学校を設立して、そして運転者をどんどん養成していく。それはむしろ国家資金によって養成をしていく。それらの卒業者はその公共輸送機関のほうへ配属をしていくというようなことも、これはやはり国の一貫した政策の中で考えていくべき問題点ではなかろうかというふうに思うわけですが、この辺の見解をひとつお聞かせ願いたい。
  240. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 運転手の養成の必要性につきましては、御指摘のとおりでございまして、今回も、中小企業でございますので、それらの点が不十分でございます。したがいまして、この近代化センターで養成、研修の仕事をやりたい。特にその研修の面につきましては、四十五年度予算で五千万円を国から出す。三千万円を東京、二千万円を大阪というふうに出す予定にいたしております。それで、タクシー事業に対する国の助成につきましては、従来不十分でございまして、一つは、金融面、税金の面等におきます政策が必要でありますし、また直接には補助の制度も必要であると思いますけれども、今回初めてその研修施設に対する補助の制度が実現をしたわけでございまして、今後われわれといたしましては、こういう重大なる仕事をやっております企業であり、しかもそれらが中小企業でございますので、その面におきますところの助成につきましては、一段の努力をいたしていきたいと思っております。
  241. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 いま答弁が半分しかないわけですよ。私は、そういうタクシー事業そのものが、非常に運転者が不足している。ここのいろいろな書類にも書いてありますね。運転者が不足している。そういうようなことからなかなかむずかしい問題があるのだ。したがって、私が言いましたのは、国の助成事業の一環として、何とか運転者養成ということを国家考えたらどうだろうか。そして、そこを卒業した者は、優先的にとにかく公共輸送機関へ就職をするというような義務づけをして、国家がひとつ運転者を養成をしていくという方向は考えられないだろうか。そういう点について運輸省としてどう考えておられるかということをお聞きしたわけです。
  242. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 運輸省では、船員の関係あるいは航空関係等につきまして、いまの養成機関がございますが、残念ながら、自動車関係におきましては、それらと匹敵するような養成の制度はございません。おそらく先生は、海運の場合あるいは航空の場合と同じような制度を考えたらどうかというふうな御趣旨かと思います。われわれといたしましては、そういうことは非常に必要なことと思いますけれども、現在においては実現をしてないわけでございまして、タクシー事業に対する育成助成というものが従来非常に不十分であったから、これからどうやるか。一つのきっかけといたしましては、今回のような研修に対する助成というものが実現いたしましたから、将来いま御指摘のような方向につきましても努力を進めていきたいというふうに考えます。
  243. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 大体運輸行政全般をながめますと、陸の場合、空の場合、海の場合、この三者を比較してみましても、いまや陸運行政というのは、非常に大量の物資を運び、大量の人員を輸送しておる。この三つを比較いたしましても、非常にその中でもウエートが大きなものになってきておるわけです。そういう状況にありながら、運輸省の中の機構を見ますと、局長は自動車局長一人だけだ。海のほうは何局にも分かれておる。そうして強力な行政が行なわれておるという実態でございます。したがいまして、そういうような面もまだまだいろいろな問題があるけれども、これから考えるんだというようなことでございますが、ひとつわれわれも大いに応援をいたしますので、局を多くふやしていただいて、もっと万全な運輸行政をやっていただきたいと希望をする次第でございます。  最後にお伺いをしたいわけですが、この登録諮問委員会とかあるいは適正化事業諮問委員会とかいうようなものが設けられまして、それぞれ委員が出されるということが法律の中にもあるわけでございますが、この構成は具体的に一体何名ずつを予定をしておられるのか、お聞かせを願いたい。
  244. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 登録関係につきましては十名以内、それから適正化のほうは二十名以内でございますけれども、一応の考え方といたしましては、すでに適正化のほうは準備の段階におきまして設立準備委員会というものを設けてやっております。原則といたしましては、その人たちに運営諮問委員会のメンバーになっていただくことを原則的に考えたい。それで東京の場合におきましては、事業者五名、それから組合側五名、それから学識経験者五名、利用者二名、それにプラスしまして個人タクシーでございます。個人タクシーは事業者と運転と両方でございますので、個人タクシー別個に二名、こういうふうに構成を考えております。それから大阪につきましては、事業者三名、組合三名、学識経験者四名、利用者三名、それから個人タクシー業者一名、合計十四名ということになっております。今後におきましても、おそらくほとんど同じないしはこれに近い陣容でもって運営諮問委員としてやっていただきたいというふうに考えております。
  245. 渡辺武三

    ○渡辺(武)委員 この問題も先ほど来問題になっておりますので、深くは追及をいたしませんが、往々にして、これらの問題、それぞれの委員会がきわめて非民主的な運営によって一方的に運転者の問題が律せられていくということになると、これはたいへんなことでございますので、局長も言っておられますように、ほんとうに民主的に、十分運転者の利益が守られるということで、ひとつ運営に十分なる注意をしていただきたいと思います。  最後に、先ほどお願いをいたしました労働省に対しましては、いわゆる新産別が労働力を供給いたしております実態、一体全部で何名なのか、どういう企業にどういうように配置をされておるのか、その配置をされておる労働者の勤務状態はどうなのか、勤務態様はどうなのか、賃金はどうなのか、それらが継続的に雇用されておる従業員との比較は一体どうなのか、これらについてひとつ明細な資料を御提出いただくようにお願いして、質問を終わりたいと思います。
  246. 福井勇

    福井委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時十四分散会