○
安永英雄君
本案について、多少の
意見を加えて
賛成をいたすものでございます。
私立学校は、私人による
財産拠出を
基盤として自主的に
経営されるのが本来のあり方であります。
私立学校の特質を発揮するためには、できる限り自主的な
経営が望ましいのでありますが、しかし
現状は自力のみによって安定した
学校経営を行ない、
教育水準の
維持向上をはかることが次第に困難になってまいったのであります。
すなわち、
私立学校は戦前のような安定した
経営基盤を失い、急激な
臨時的経費の
増大とこれに伴う債務の累積、さらに
教育研究の
高度化と、最近における物価の
上昇等に伴う
経常経費の
増大等、困難な問題に直面しているのであります。
またその
収入源は、大
部分を
学生納付金にたよらざるを得ないため、
所要経費の増加に伴って
授業料、
入学金等の相次ぐ値上げを余儀なくされているのであります。
最近における
私立大学の
学生納付金の急激な
値上がりが
私立大学の
学生、父兄にとって大きな
負担になってきており、特に
入学金施設拡充費等の著しい
値上がりが
進学への大きな障害になっているのはゆゆしい問題であります。最近における
大学進学を希望する幅広い
中間層の多数にとって
私立大学の
授業料等学生納付金の額は容易ならぬ
負担であるし、一方
奨学金制度が完備されていない
現状においては、国の
助成費を思い切って
拡充し、低廉な
納付金で
高等教育の機会を
国民一般に開放させることが緊急の対策として必要であると思われます。
現在、
私立学校に対する国の援助の状況を見ますと、本年度の
私学振興予算の総額は約百二十億円であり、
私学振興会の
財政投融資借り入れ金を含めても三百六十億円であります。
国立学校特別会計予算額約二千八百億円に比べてあまりにも少ないといわなければなりません。
わが国における
学校教育で、
私立学校の占めている
重要性から見て、国が
私学振興に力を入れているという
状態ではないと思われるのであります。したがって、現在国が
私学振興のため行なっている
助成制度の一そうの
拡充をはかると同時に、
私立学校教員の
人件費を含めた
経常経費について、思い切った
助成策を直ちにとるべきであると
考えます。この
抜本的助成策の確立をしないで真の
私学の
振興はあり得ないのであります。
次に、
私学共済に関する基本的な
考え方と、今後早急に
改善を要する課題について申し述べたいと思います。
国家社会が期待する
教育を行なうためには、優秀な教師が必要であり、そのためには
教職員の身分、生活の安定が絶対条件であるのであります。したがって、
教職員の
福利厚生等、その身分、生活の安定保障については国公、私立の差はなく本来同一であるべきであると
考えます。
委員会の
審議を通じて明らかになされましたように、
私学経営の困難さを
理由に低賃金を押しつけ、いまだに給与体系もない学校現場もあるという
現状であります。
昭和四十二年に臨時
私立学校振興方策
調査会の
答申が
文部省に
提出され、「
私立大学の
教職員の待遇については、現在、特に
退職年金制度の確立していないことが問題とされている。
私立大学の
教職員の身分保障を強化するとともに、
私立大学に優秀な
教職員を確保することに資するため、
退職手当
制度を確立するほか、
共済制度、災害補償等の
福利厚生のための
措置の充実・強化をはかる必要がある。」としているのであります。しかるに
政府は、この
答申にこたえ得る対策は何らとっていないのであります。施策をとらぬのみか、施策の
基礎とも言うべき
私立学校の給与の実態について全く把握がないと私はこの
委員会の
審議を通じて感ずるのであります。
退職手当の
制度化、災害補償の確立にいたっては、積極的な施策に欠ける面が多いのであります。今回の改正で長年の懸案であった
既裁定年金の
引き上げ等、国
公立学校の
教職員の過去における
年金の
引き上げの
水準まで
引き上げられたことはまことに喜ばしいことでありますが、本来、先ほど述べましたように
教育基本法の
趣旨からも国共済の改正と同時に、このような改正が行なわれるべきであって、このように改正がおくれたことは、いわばそれだけ
組合員の損失を来たしたことになるわけでありまして、
文部省の責任は重大だと思うのであります。さらに、今後物価変動に対応する
年金スライド制の実現をはかるべきでありますが、当面の
措置としては、国共済において
給付内容、所要財源率等の
改善について
改善が行なわれた場合は、
私学共済においても同時に対応した改正が行なわれるべきであると思います。
なお、今回の
既裁定年金の
引き上げに伴う財源
措置がきわめて不明確であることは、今後に大きな問題を残しておると思います。本年度は、財源調整費の使用等で対処できるとしても、将来
組合員の掛け金の
引き上げを来たすのではないかという心配が大きくあるのであります。
既裁定年金の
年金額の
引き上げは、
政府の物価上昇政策に基因するものであって、その
負担は、本来
組合員が
負担すべきものではないのであります。
また、
私学共済の健全な運営を確保する上からいっても、その財源
措置については明確にする必要があります。したがって、すみやかに
既裁定年金の
年金額の
引き上げに要する財源の
負担関係について合理的で明確な
制度を確立する必要があります。
次に、長期
給付に要する国庫補助について申し上げたいと思います。
その第一は、責任準備額についてであります。
昭和四十三年度において約十三億不足を来たしておるのでありますが、
私学共済の適正な運営の根幹ともいうべき責任準備額に不足を生ずること一は、きわめて
経営としては不健全であり、会員に不安を与え不信を招く結果になるものであります。
私立学校教職員の給与は、国公立の
教職員に比べてはるかに低額である上に、しかも
私学共済の特色として幼稚園教員等の低所得の
組合員がすこぶる多いのであります。
組合員の掛け金を現在以上に
引き上げることはきわめて困難といわなければなりません。したがって、
私学共済の健全な運営を確保し、その
給付の
水準の向上をはかるためには、前に述べましたように、
私学教職員の
人件費に対して国庫補助を行なうと同時に、長期
給付に要する費用の国庫補助率を当面百分の二〇に
引き上げることがぜひとも必要であります。
第二には、短期
給付に関する赤字経理の問題であります。現在、
私学共済経理に累積赤字として約五億円があります。
委員会の
審議で明らかになりました主たる原因は、医療保険
制度のあおりを受けて起こるべくして起こった赤字であります。この赤字の解消の対策は医療
制度の抜本的解決なくして解決のできる問題ではないということははっきりしております。本
法案に示されておる
標準給与の
下限を一万二千円から一万八千円へ、
上限を十一万円から十五万円へ
引き上げ、その
引き上げ幅の増収を赤字補てんに充当したり、一般
組合員の掛け金値上げによって補てんをはかっても解決し得ない問題であります。ましてや
政府の施策の失敗に基因するこの赤字対策というものは零細な
組合員の掛け金によって解決すべきでなく、国の責任において早急に補てんすべき
措置をとるべきだと思うのであります。
以上のような点が解決されれば、かねて懸案になっております未加入校に対する全校加入の対策の
基盤にもなると
考えます。
その他問題はたくさんありますが、そのつど
委員会の
審議の中で
大臣の決意のほども承っておりますので、省略をいたしたいと思います。
以上をもちまして、
意見を加えて
賛成をいたすものであります。