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説明員(
石田禮助君) まず第一に、
国鉄が四十年から非常に大きな
計画をやっているが、どうしてそういうようなことをやらなければならぬのか、こういうことでありますが、これは詳しく申しますとだいぶ長くなりますが、要するに、
国鉄が二十四年に
公共企業体として発足した。譲られたものはぶちこわされた
鉄道線路、
輸送機関。ところが、たまたま終戦後における
日本の
経済状態が非常な
インフレーション、そのために
物価が上がる、
人件費も上がる。そこで
独立採算のたてまえ上、この
支出増に対して
収入増をはからなければならぬ。どういうことかと言えば、要するに
運賃の
引き上げをやる以外に方法がないということで、
運賃の
値上げをそのつど
国会及び
政府に出したのでありますが、私ども、非常な
インフレーションで、
政府にしても
国会にしても、いかにして
物価を押えるかということにきゅうきゅうとしておるときでありますので、
国鉄の
運賃のごとき
公共料金を上げるということについては非常にちゅうちょする。その結果はどういうことになったかというと、
国鉄運賃値上げの
要求というものは却下される。却下されない場合に、幸いにして受け入れられた場合においても、始終大きな
カットダウンをされるというようなことで、かくのごとくにして
国鉄の
自己資金というものの留保が非常に少なくなった。借金すればいいのですが、借金であればやはり金利を払わなければならぬ。
独立採算というものが維持できぬ。こういうようなことがつまり非常に
国鉄の
投資というものを制限して
工事ができない。たとえば、これはいかに
運賃というものが押えられてきたかということを数字的に申しますと、
昭和二十九年度における
電電公社の
電話料というものは、
昭和十一年に比べて二百三十三倍だ。
国鉄の
旅客運賃というのは百十六倍だ。しかも、
電電公社においては
即時通話というものがあって、九割のエキストラを取れると聞いている。こういうことなんで、
昭和十一年に比べると
電話料というものは実際において四百倍以上だ。
国鉄はさっき申したような百十六倍。その後、三十二年、三十六年、それから四十一年というように、数回にわたりまして
国鉄運賃の
引き上げが行なわれたのでありまするが、それでも二百三、四十倍にしかなってないということで、この
国鉄の
収入というものは、はなはだ貧弱だということで、結局、
国鉄としてやるべき
工事もやることができなかった。ところが、その後における
日本の
経済の
発展、それから
輸送需要の
増加ということで、ついに勇気をふるって踏み切ったのが
東海道新幹線。ところが
東海道新幹線はそれでいいんですが、ほかの
一体通勤輸送の
交通地獄的様相はどうするか。そのほかに
貨物輸送にいたしましても、
輸送力が少ないために
輸送需要に応ずることはできぬということで、四十年から思い切った第三次
計画というものを立てまして、二兆九千七百億円でスタートしたのでありますが、これを四十一年、四十二年、四十三年、四年はちゃんと
計画どおりやっておったのでございますが、その後、収支の
状態というものは予想に比べて非常に違ってきたのでありまするからして、これはだめだということで、さらに四十四年から向こう七カ年、五十三年まで思い切ってひとつやろう。それで四十年から四十三年までは一兆四千三百億ですか、
投資したのでありまするが、それに加えて今度三兆七千億の
投資でもってひとつこの
輸送力をつけて
国鉄の使命を果たしたい。こういうようなことでありまして、この問題、なぜ
一体こんな大きな
計画をやらなければならぬかということは、大体それで御了解を得たことと存じます。さらに今度の四十四年から向こう七カ年のこの
計画につきましては、
政府にひとつ
財政援助をしてもらわなければならぬ。
国鉄というものは
公共企業体になりましてから、
運賃でそういうように押えられたほかに、つまり
政府の政策を
国鉄の
犠牲においてやられたものがある、それが公共負担。その一番大きな問題は
通勤通学の問題でありまするが、とにかくこの
通勤や
通学なんかにいたしましても五〇%というものの割引き、これは法定できめられているのでありますが、その五〇%というものを度外視してその上の——つまり割引きだけでも非常に大きな金額である。四十二年におきましては、それは七百十億ぐらいに私は達しておったと思う。それからこの農産物に対する特別割引き、いわく何、いわく何、そういう公企体の公共負担というものが二十四年から四十二年まで一兆二百億も荷物をしょわされておる。
収入ははなはだ貧弱なところへ持ってきて、
政府のためにそういう荷物を負わせられたということが、今日
国鉄が非常に苦しんでおるところでありまして、今後われわれがこの第三次
計画、その後の
計画をやるにつきましても、何とかこれは
政府でもって
援助してくれなければ困る。
国鉄はこれまでに相当に奉公しておるのだから、ことに
通勤輸送については八千億もかけなければならぬということなんで、それで、私は
総裁になりましてから五カ年間、この問題について悪戦苦闘した結果、ついに大蔵省というものも大体
国鉄の立場というものについて御了解くださいまして、ずいぶん思い切った今度
援助をしてくれるということになったのでありますけれども、しかし、それだけでもこれはいかぬ。とにかく
国鉄の今後のことに対しては、
国鉄がまずもってうんと
努力して
合理化に徹しなければいかぬ。つまり経費というものをできるだけ減らし、同時に
収入をうんとふやすという消極、積極の
合理化によって
国鉄というものを大いにやらにゃならぬ。そのあとは、これはやはりひとつ利用者に負担していただきたいということは、やはりコストが上がれば値段が上がるということはこれは当然の
経済原則じゃないか。
国鉄の
運賃なんていうものは世界一安いというようなことで、
運賃の
値上げというものに踏み切った次第でありまして、これについては、あるいはさらに
政府にひとつその分だけつけ加えて補助してもらったらどうかというような議論もあるのでありまするが、
政府が今度やってくれた
財政措置は相当大きなものです。私、
国鉄総裁といたしましては、それ以上にさらにやれということは、どうもいかに勇気をふるうといえどもこれはできぬ。これがやはり原価が上がるがゆえに利用者の方も負担してくださいということで、
運賃値上げということに踏み切った次第でありまして、この点につきましては、
物価の上に
影響があるということでありまするが、私から言わせれば、それは
物価に対しては〇・九%の
影響はあると、こういうのですが、
国鉄はこれによって
輸送力がふえるということになれば、物資の流通というものは非常に迅速に円滑にいくというふうになり、これは私は物資の需要、供給の上において相当プラスになるのじゃないか、いわんや、いまのような
交通地獄というものを是正するにはやっぱりこれ以外に方法がない。
通勤輸送力を
増強するということはこれは非常に大きなプラスだ。だからして、
マイナス〇・九%から幾つを引いた場合、ある場合には幾つというものは、〇・九%より大きいかもしれないということで、これはやはり社会党あたりもやかましくいわれたのでありまするが、この際やはりどうしても御負担願わねばならぬ。こういうようなことで、勇気をふるって踏み切った次第であります。どうぞ御了承願いたい。