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1969-02-21 第61回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月二十一日(金曜日)    午後零時四十九分開会     —————————————    委員の異動  二月三日     辞任         補欠選任      岩動 道行君     田村 賢作君      岡本  悟君     大谷藤之助君      山内 一郎君     中村喜四郎君  二月十八日     辞任         補欠選任      萩原幽香子君     高山 恒雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         塩見 俊二君     理 事                 内田 芳郎君                 江藤  智君                 栗原 祐幸君                 小林  章君                 米田 正文君                 秋山 長造君                 山本伊三郎君                 二宮 文造君                 片山 武夫君     委 員                 大谷藤之助君                 鬼丸 勝之君                 梶原 茂嘉君                 川上 為治君                 小枝 一雄君                 小山邦太郎君                 郡  祐一君                 佐藤 一郎君                 柴田  栄君                 白井  勇君                 新谷寅三郎君                 杉原 荒太君                 田村 賢作君                 内藤誉三郎君                 西田 信一君                 西村 尚治君                 増原 恵吉君                 吉武 恵市君                 木村美智男君                 竹田 現照君                 中村 波男君                 野上  元君                 羽生 三七君                 前川  旦君                 松永 忠二君                 村田 秀三君                 森中 守義君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 矢追 秀彦君                 高山 恒雄君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  西郷吉之助君        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  坂田 道太君        厚 生 大 臣  斎藤  昇君        農 林 大 臣  長谷川四郎君        通商産業大臣   大平 正芳君        運 輸 大 臣  原田  憲君        郵 政 大 臣  河本 敏夫君        労 働 大 臣  原 健三郎君        建 設 大 臣  坪川 信三君        自 治 大 臣  野田 武夫君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  有田 喜一君        国 務 大 臣  菅野和太郎君        国 務 大 臣  木内 四郎君        国 務 大 臣  床次 徳二君        国 務 大 臣  保利  茂君    政府委員        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        内閣総理大臣官        房陸上交通安全        調査室長     宮崎 清文君        総理府恩給局長        事務代理     平川 幸蔵君        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        公正取引委員会        委員長      山田 精一君        防衛庁長官官房        長        島田  豊君        防衛庁防衛局長  宍戸 基男君        防衛庁経理局長  佐々木達夫君        防衛施設庁長官  山上 信重君        経済企画庁調整        局長       赤澤 璋一君        経済企画庁国民        生活局長     八塚 陽介君        経済企画庁総合        計画局長     鹿野 義夫君        外務省アジア局        長        須之部量三君        外務省アメリカ        局長       東郷 文彦君        外務省経済協力        局長       上田 常光君        外務省条約局長  佐藤 正二君        外務省国際連合        局長       重光  晶君        大蔵政務次官   沢田 一精君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        大蔵省主税局長  吉國 二郎君        国税庁長官    亀徳 正之君        文部大臣官房長  安嶋  彌君        文部省大学学術        局長       村山 松雄君        厚生省公衆衛生        局長       村中 俊明君        厚生省環境衛生        局長       金光 克己君        厚生省薬務局長  坂元貞一郎君        厚生省社会局長  今村  譲君        厚生省年金局長  伊部 英男君        農林政務次官   玉置 和郎君        農林大臣官房長  大和田啓気君        農林省農林経済        局長       亀長 友義君        農林省畜産局長  太田 康二君        農林省蚕糸園芸        局長       小暮 光美君        食糧庁長官    檜垣徳太郎君        水産庁長官    森本  修君        通商産業省通商        局長       宮沢 鉄蔵君        通商産業省重工        業局長      吉光  久君        通商産業省公益        事業局長     本田 早苗君        運輸省船舶局長  佐藤美津雄君        運輸省鉄道監督        局長       町田  直君        運輸省自動車局        長        黒住 忠行君        運輸省航空局長  手塚 良成君        海上保安庁長官  河毛 一郎君        労働省労政局長  松永 正男君        労働省労働基準        局長       和田 勝美君        労働省職業安定        局長       村上 茂利君        建設省計画局長  川島  博君        自治省行政局長  長野 士郎君        自治省税務局長  松島 五郎君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————  本日の会議に付した案件 ○昭和四十三年度一般会計補正予算(第1号)(内  閣提出、衆議院送付) ○昭和四十三年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十三年度一般会計補正予算昭和四十三年度特別会計補正予算、両案を一括して議題といたします。  まず、理事会におきまして両案の取り扱いにつき協議を行ないました結果、その要旨を御報告申し上げます。  審査日数は、本日及び明日の二日間とし、本日は、まず福田大蔵大臣から提案理由説明を聴取した後、直ちに質疑に入ることといたしました。  質疑時間の各会派への割り当ては、自由民主党百分、日本社会党百分、公明党三十六分、民主社会党十八分、日本共産党十分、第二院クラブ八分といたしました。  質疑順位は、日本社会党自由民主党日本社会党自由民主党日本社会党自由民主党公明党民主社会党日本共産党、第二院クラブの順といたしました。  以上御報告いたしましたとおり取り運ぶことに御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいをいたします。  それでは、福田大蔵大臣から提案理由説明を聴取いたします。福田大蔵大臣
  4. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府は、今回、昭和四十三年度一般会計補正予算(第一号)及び特別会計補正予算(特第一号)を国会に提出いたしました。ここに、その概要を御説明いたします。  まず、一般会計補正予算について申し述べます。今回の一般会計補正予算におきましては、歳出において総額千二百八十億円の追加を行ないますとともに、既定経費の節減二百九十三億円を修正減少し、差し引き九百八十七億円を増加しております。  一方、歳入につきましては、租税及び印紙収入増加見込み額二千四百五億円を追加計上いたしますほか、税外収入の増二百五億円を計上いたしておりますが、公債金を千六百二十三億円減額しておりますので、差し引き増加額は九百八十七億円となっております。  この結果、昭和四十三年度一般会計予算は、歳入歳出とも五兆九千百七十三億円と相なるのであります。  歳出追加につきましては、当初予算作成後に生じた事由に基づき、特に緊急に措置を要するものにつきまして、所要の額を計上いたしたのでありますが、次に、その内容につきまして御説明いたします。  まず、食糧管理特別会計への繰り入れに必要な経費でありまして、三百七十億円を計上いたしております。これは、国内米政府買い入れ数量が著しく増加する見込みであること等により、食糧管理特別会計食糧管理勘定における損失額が当初予算において予定いたした額より大幅に増加する見込みとなりましたので、同特別会計経理運営の改善をはかるため、一般会計から同特別会計調整勘定追加繰り入れすることとしたものであります。  次に、国民健康保険助成費昭和四十三年度不足見込み額として百七十四億円を計上いたしております。  最後に、地方交付税交付金でありますが、これは、所得税法人税増収及び酒税減収歳入に計上いたしたことに伴い必要となるものでありまして、これら三税全体としての増収額三二%相当額の七百三十六億円を計上しております。  歳入につきましては、最近の経済情勢及び現在までの収入状況等を勘案し、まず、租税及び印紙収入におきまして、所得税法人税等を中心に増収を見込むとともに、酒税印紙収入について減収見込み、全体として増収見込み額二千四百五億円を計上いたしております。さらに、税外収入におきましては、日本専売公社納付金日本銀行納付金等につき、二百五億円の増収を見込んでおります。  一方、公債金を千六百二十三億円減額しておりますので、差し引き歳入増加額といたしましては、九百八十七億円を追加計上いたしております。  次に、特別会計補正予算(特第一号)につきましては、一般会計予算補正に伴いまして、交付税及び譲与税配付金特別会計について所要補正を行なうこととしております。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同いただきたいと存じます。
  5. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 以上で昭和四十三年度補正予算両案の説明は終了いたしました。  これより質疑に入ります。野上元君。
  6. 野上元

    野上元君 私は社会党を代表して、ただいま説明のありました四十三年度補正予算について、まず質問したいと思います。  四十三年度予算案が上程されたときに、蔵相の財政演説あるいはまた予算説明書によりますと、総合予算主義というものがはっきりとうたわれておりました。その理由は、従来、補正要因であった食管、それから公務員給与に関する人事院勧告、これに対して今度は十分な対応措置をとっておるので補正する必要はない、したがって、四十三年度予算総合主義を貫いた、こういうふうに説明になったのでありますが、いまの説明によりますと、補正要因である食管に基づいて補正がされたということは、明らかにこれはあなたの判断の誤りというか、食言といいますか、そういうものにつながるんじゃないですか。
  7. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 例年、秋になりますと補正予算の御審議を願う、それはいままでの——いままでというか、昭和四十二年度までの予算組み方、これが、たとえば義務費みたいなものにつきましてはなるべく少な目に組もう、まあぎりぎりに組んでおこう。また、予備費にいたしましても、わりあいに控え目な予備費でとっておこう。その他諸経費においてぎりぎりというわけだったんです。しかし、それはどうも秋の補正を誘発じ、しかも補正で継ぎはぎをするということは、国政全体として見て均衡のないやり方の結果に相なる、こういうふうに判断いたしまして、四十三年度からは、年度が始まるに先立ちまして、国の必要なる経費を全部そろえる。そろえましたその中で緩急、順序をつけまして、そして四十三年度にやっていくものを予算に繰り入れる。そして義務費のごときも、そうぎちぎちした組み方はしない、どうせ出すものですから。こういうことです。したがって、第一は、予算の全体から見ましての均衡性というところに重点を置いたわけでございまするが、そういう組み方をする必然の結果として、普通ならば補正予算が要らない、こういうことに結論としてはなるんです。私も昨年の十二月一日に大蔵大臣になった。で、何とかして補正をないようにしたいしたいというので、ほんとうに努力をしてみたんでありますが、米がとにかく八百万トン見ておったのが千万トンになった。その結果六百億近い赤字要因になる。もう既定経費なんかの差し繰りを努力いたしましたが、結局できない。二百五十億余っちゃった。形式上は三百七十となっておりますが、実質では二百五十なんです。二百五十億余った。数量が違ってきたんだから、これは国会でもお許し願えるんじゃないかと、そう考えまして、今回、補正予算を提出することに相なったわけです。しかし、この総合予算という考え方は、こういう補正を必要とするようになりましたけれども、私は、財政運営の方式としては非常に前進した考え方であるというので、今後とも堅持していきたい、かように考えております。
  8. 野上元

    野上元君 私は、食管のほうで大きな狂いができたのでお許し願いたい、こういうお話なんですが、実は、四十三年度予算案審議するときに、この予算委員会でわが党の村田君が、この米の買い方をやっておると、必らず買い入れが多くなる、したがって、補正をせざるを得なくなりますよと、こう言って何回もあなたのほうに指摘しておるわけです。しかし当局は、絶対に狂いがないから大丈夫というので組んでおるのですね。一参議院議員と言っては村田君に非常に申しわけないのですが、でさえ、すでに年度当初において計算できたのですがね。それを、食糧庁は何人おるか知りません、農林省は。その人たちが全部計算して、どうしてこんな狂いが出たのですか、どういうことなんですか、これは。
  9. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十三年の米の収買が八百五万トンとみたわけですがね。これは四十二年の収買、これは千万トン近くいったわけですから、これは、これから見るとどうも少ない。そういうことが言えるのです。しかし、四十一年前、ずっと長い間の統計、まあ収買の結果、そういうものを総合してみますると、まず大体八百五万トンというところが適正な見方じゃないか、しかも、この八百五万トンというのは、四十一年度までの中の最高の数字になるわけです。当時としてはそう考えたのですが、幸いにしてというか、史上まれに見る大豊作になり、政府への売りつけというのが史上最大、千万トンをこえると、こういうことになっちゃったんです。
  10. 野上元

    野上元君 私は、一国の財政をあずかる大蔵大臣としてはね、そういう言い方は非常に私は軽率だと思うのですよ。何のために政府行政機関を持ってるんですか。何万人というスタッフをかかえてあやまちなきを期して国民のためにやっておるんでしょう。一体だれのために鐘は鳴ってるのか、あんた方のために鐘が鳴ってるんじゃないんですよ。国民のために鐘が鳴ってるんですよ。それを、こうなっちゃったんだからしようがないじゃないか、そういう言い方で、われわれにこれを承認しろと言っても、承認できないです、これは。農林大臣に聞きたいのですがね。どうしてこんな狂いが出たのですか。何をやっておるのですか、一体。
  11. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) お答え申し上げます。  ただいま大蔵大臣からもお話し申し上げましたように、作付前の想定でございますので、大体、昭和四十一年までの統計をとってみますと、四十一年までの間をとってみて、最高がやっぱり八百万トンというのが最高でございまして、その最高を見積もったというわけでございます。四十二年は御承知のように非常に未曾有の大豊作だということでございまして、四十一年までの統計からみまして、これならばいけるだろう、この程度であろう、こういうふうな想定の上に立ってその企画を立てたわけであります。
  12. 野上元

    野上元君 二百万トンというと、八百万トンの四分の一ですよ。四分の一の誤差ができるような、そんな統計やり方というのがあるんですか。むちゃくちゃじゃないですか。その点をひとつはっきりしてください。
  13. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 八百万トンの買い入れ見込みましたのは、ただいままで大蔵大臣農林大臣が申し上げたとおりでございます。ただ四十二年の千四百四十五万トン、作況指数で一一二というような異常な豊作のあと、どういう生産が行なわれるかということを統計上推理をするのは非常に困難であったわけでございます。でございますので、昭和四十一年度の作柄が過去の統計に基づいて計算いたします平年作水準であります。したがって、四十三年の収量を見込み、かつ集荷量考える場合には四十一年の集荷量、四十二年を除く過去最大のものを用いればほぼ適当な線であろうということで予算化をいたしたわけでございます。
  14. 野上元

    野上元君 統計上は、計算上は誤りがない、政策の問題なんです、これは。どちらですか、統計上の誤りなんですか、政策上二百万トンという差が出たのか、こうやらざるを得なかったのか、政治的に。その点はどちらなんですか。
  15. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) ただいま申し上げましたように、統計上から見ると最高を見たわけでございます。したがって、政策の上に出てきたということでございます。
  16. 野上元

    野上元君 今後長く続くことなんですから、食糧庁に、計算がこのような誤りのあるような計算法があるとすれば、抜本的にひとつ検討してもらいたいと思います。  それから、もう一つの点は、人事院勧告というのは、政府は完全に実施する義務があると考えているかないか、その点はどうですか。
  17. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 政府といたしましては、人事院勧告はこれを尊重する、完全実施を行なうという基本方針をもちまして努力を続けている次第であります。
  18. 野上元

    野上元君 そうしますと、四十三年度総合予算といって大蔵大臣は強調されておるが、人事院勧告を完全に実施しておらんじゃないですか。実施しておらない上に、誤った基礎の上に総合予算なんというものは意味がないじゃないですか。その点はどう考えますか。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま総務長官は、尊重する義務がある。しかし、政策というか、方針としては完全実施方針だと、こういうふうに申し上げておるわけなんです。私ももちろんでありますが、政府としては何とかして早く完全実施にいたしたいと、こういう考えは持っているのです。しかし、なかなか諸般情勢考えますと、そう急にいかない。そこで、漸進的にきているわけですが、ことしは、昭和四十三年度は、年度の始まるころの見通しといたしまして、予備費を増額して、予備費で対処しようという考え方をとったのですが、さて、いよいよ人事院勧告が出たそのときの状態では、まあ八月実施、これで大体政策上、諸般政策とのバランスがとれる、こういうふうに見たのです。ところが、国会からの要請もありまして、七月実施になったというようなことで、ことしはやむを得なかろう、かように考えておるわけですが、今後もそういう基本的な方針を踏まえながら、諸政策とのバランス財政状況なんかを見て善処していきたい、かような考えであります。
  20. 野上元

    野上元君 私の言いたいのは、政府はすべての義務を果たした上で、そうして総合予算主義だと、こういうふうに強調してもらいたいですね。条件が幾つもくずれているのに、その上に総合予算主義といってもあまり意味がないと思います。ぜひ人事院勧告完全実施するという体制の上に立って、ひとつ総合予算主義で組んでもらいたい、これを要望しておきます。  それから、この補正を決定した時期はいつごろですか。
  21. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) たしか二月に入ってからかと思います。
  22. 野上元

    野上元君 地方交付税交付金のやりとりについて、あなたと自治大臣との間に取引ができたのは、たしか新聞によると一月六日ですね、もうそのときすでに補正要因があったのではないですか。
  23. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一月六日に自治大臣と話合いをいたしました。で、覚え書をつくったのです。しかし、補正前提としておらない。ただ、こういうことは前提というか、にらんでやっているというか、昭和四十三年度は二千四百億円ぐらいの税の自然増収が出そうだ、したがって、七百四、五十億円、当時は四、五十億円と言っておりましたが、四、五十億円の交付税交付金の増額がありそうだ、これを補正に組むかどうか、これは米のほうの関係で補正を組まなければならないということになれば、まあこれは補正に組みましょう、しかし、米のほうが何とか差し繰りしてやっていけるんだ、補正は必要ないんだというならば、交付税の財源を留保しておきまして決算上の処理をいたそうじゃないか、こういうことだったのです。ただ、その際、途中そういう経過におきまして自治大臣から、できることなら補正を組んでもらいたいという強い要請があったことは事実でございます。
  24. 野上元

    野上元君 私はどうも大蔵大臣、あなたのことばじりを取ろうという気は全然ありませんよ。ありませんが、ただ、正直にあなたもおっしゃっていただきたいと思うのですが、そのときすでにもう二百万トンよけい買わなければならないということはわかっていたんでしょう。
  25. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 二百万トンよけいに買わなければならぬというのはわかっておったのです。ただ、わかっておらないのは、それによりますと六百億近くの赤字要因があるのです。ところが、その赤字要因は、二百億円ばかりは消費者米価を引き上げた際に処置をしてあるのです。そこで、三百億から四百億という問題が残るわけでありますけれども、何とかしてほかの一般会計の費用の差し繰りで、これで予算のワク内でひとつ食管赤字処置をしてみたいというふうに考えまして、各省大臣にも要請もし、お願いもいたしまして、各省経費の節約、これに馬力をかけておったのです。それが初めは百五十億、それが二百億になり、最終的には二百九十億円になったのですが、まあこれがぎりぎりだ、しかし、二百五十億円の節約がありますると、この予算でもお願いしておりますが、あれがあるのです、国民健康保険の問題を処置しなければならないという問題があるわけですが、これに百七十億くらい要るわけであります。そうすると、残りが二百五十億円になる。二百五十億円のどうしても食管のほうで穴があく、こういうことになりまして、これだけはワク内で処置できない、こういうふうに最終的な判断をいたしまして補正予算を組む、こういうことにいたしたわけでございます。補正予算を組むということになれば、財源の状態を全部国民の前に明らかにし、かつその財源のうち、いわゆる三税の三二%は地方に回さなければならない。こういうことでありますから、当然、交付税予算化というものが歳出として掲げられる、かようなことになる。私はちっともうそも何も言っておりません。包み隠しもいたしておりません。率直なことを申し上げております。
  26. 野上元

    野上元君 そうしますと、四十四年度予算が上程されたときに財政演説がありましたが、そのときにはまだわからなかったのですか。
  27. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) あの当時は補正予算を組むということはまだわかっておらない。
  28. 野上元

    野上元君 次に聞きたいのは、年度自然増収が二千四百億円にのぼるということが見通しできるようになった、こういうことなんですか。これはもう年度当初から大体見通しを持っておったんじゃないですか。財源として取っておったんじゃないですか。あなたは答弁の中では、経済見通しの誤りだったというふうに何回も言っておられるが、率直に言ってこれはどちらなんですか。
  29. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは四十三年度に限ったことはございませんが、租税の見積りというのは非常に正確に科学的に合理的にやっておるのであります。四十三年度の経済見通し、これは見通しを立てる段階では非常に暗かった。これはもう民間の経済人も、あるいは学者も評論家も、あるいは日本ばかりじゃありません。世界中で昭和四十三年度という年、この経済は暗は見通しを持ったわけでありまして、その暗い見通しに基づきまして予算を編成をいたしておるわけなんです。ところが、その見通しというものがまるっきり狂ってしまいまして、世界経済もまたわが国の経済も見通しよりははるかに高い成長を示したわけです。その成長の思わざる高さ、これが自然増収見込みよりは多くしたと、こういうことになるのであります。その見込みを立てた当時、何の細工もくふうもしておるわけではありません。これはもう率直なところであります。
  30. 野上元

    野上元君 逆説的に言えば、この二千四百億円の誤った自然増収があったので、この補正予算が組めた、こういうことなんですか。
  31. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあそう言って差しつかえないと思います。
  32. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連。大蔵大臣ね、経済の見通しが誤ったと、こういうことよりしかたがないと言われますがね、水田大蔵大臣と四十三年度予算のときに、ここでかけをしようとまで言ったんですよ。経済成長が一二・一%は低い。少なくとも一五%はある。自然増収は二千億以上はあるのだということでやったんだが、下期のほうでどうなるかわからぬと言うて逃げたんですね。したがって、あのときの日本経済研究センターの経済見通しを見ましてももっと高かったんです。したがって、あなたが言うように、だれもわからなかったということについては私は承知できない。佐藤総理もそのときにこにこ笑っておった。こういうことですから、だれもわからなかったということだけは取り消してもらいたい。
  33. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) だれもわからなかったということは取り消しいたします。一部、違った観測をする人もありました。申しわけありません。
  34. 野上元

    野上元君 いまのやりとりでおわかりのように、さきも米の買い入れの問題についての見通しを誤っており、そのときは村田君が指摘した。いままた山本君が四十三年度ですでに指摘しておるのですね。社会党に政権を渡したらどうですか。あなた方ではできないのじゃないですか。これ、どうですか。
  35. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) つつしんで御意見を拝聴したいと思います。
  36. 野上元

    野上元君 この二千四百億円の増収が見込めるという判断をされたのはいつごろですか。
  37. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 年末までくらいは大体千八百億くらいと考えておりました。それから年を越えるにしたがいまして、それが二千億台になったんですが、二月に入ります段階におきましては——二月前ですな、ちょっと前になりますか、一月の半ばごろの段階では、大体二千五百億という見当をつけております。
  38. 野上元

    野上元君 その見通しも若干やはり甘いのじゃないですかね。私は新聞で読んだんですが、もう十月の後半にはすでに新聞ではそれくらいの増収があるだろうというようなことを発表しておりました。それのほうが正しかったようですね。どうもいまの政府統計のとり方というのは、どういうふうなとり方をしておるのか。実際には十月ごろもうわかっておったのじゃないかというような気がするのだけれども、その点はどうですか。
  39. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 年内ごろは千八百億の見通しだったんです。ところが、年を越えるに従いまして二千億をこえる。で、中ごろに至りまして、まあ、中ごろというか、その辺で二千四百億という確信を得るに至ったわけであります。
  40. 野上元

    野上元君 なお詳細な点につきましては同僚議員が質問してくれると思うのですが、最後に一つだけ質問しておきたいと思うのですが、四十四年度も同様に総合予算主義をとる、こういうふうに強調をされておるようでありますが、さっき言ったように幾つかの欠陥があるわけですね。たとえば人事院勧告完全実施しておらないとか、あるいは統計上の大きな狂いが出るとかいうような問題があるのですが、そういう上に立って総合予算を組んで、補正なしというようなことが言えますか。たいして大きな、あなたの言うような異常な事態がなくても、また補正を組まなければならないのじゃないですか。
  41. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ一年の間には多少行政上の需要の変化というものがありますので、組みかえ的な補正というものはあり得ると思うのです。しかし、問題はそうじゃなくて、増ワク補正になると思いまするが、ただいまのところ、四十四年度においてこの予算を御承認願えますれば、増ワク補正の必要はなかろう。また、何とかしてそういう事態にならないように、こういうふうに念願しております。ただ、ああ言ったからまたことしの暮れごろになって補正予算を組むのはけしからぬ、こういうおしかりを受けてはかないませんから申し上げますが、異常な事態、また非常な事態がありまする際には、増ワクもあり得る、かように考えております。
  42. 野上元

    野上元君 この際、私、総理にお願いしておきたいのですが、二千四百億円の自然増収が出たわけですね。これは非常な税の取り過ぎですね。ところが、四十三年度の減税のときに、総理は、実際にはとれないのだ、いまはとれないのだけれども、無理やりにとるのだと言って、そういう理屈をつけて実はたばこを値上げしたわけですね。そして実質減税をゼロにしたのです。そういうことで国民に泣いてもらっておるのですから、これだけのとり過ぎがあった場合に、当然これを返すべきだと思うのです、私は、国民に。これはあなた方の見通しの誤りだったのですから。でないと、国民は、たばこを値上げされただけで結局何もなかった、結局値上げ政策に終わったじゃないか、こういうことになると思うのですが、その点ひとつ総理に、将来こういうとり過ぎがあった場合には必ず減税のほうに回すということを約束してもらいたいと思います。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) きょうも本会議でその種の御意見が出まして、そして年度の途中においても減税をしろと、こういう強い御意見でありました。私どもは、年度途中において減税、これはなかなかできないことのように思うわけです。来年度予算では十分含んでおりますから、よくひとつ四十四年度予算審議のときにでもその点を十分御理解をいただきたいと、かように思います。
  44. 野上元

    野上元君 地方交付税交付金で大蔵省はもうすでに相当な大きな借金をしておりますね。四十五年度には八百四十億返さなければいかぬ。いわば借金の上に立った総合予算ですね。借金総合予算とでもいうか、あるいは不完全総合予算とでもいいますか、こういうものを守る、あなたのほうではあくまでも守るというような考え方は、いまの段階ではあまり意味がないのじゃないですか。むしろ私は、総合予算というのは、あなた方の真のねらいは所得政策にあるのじゃないですか。金が余ったら減税には回さない、あなた方の見通しの誤りのほうだけ欠陥を直していく、給与も直さない、これでは総合予算というのはあまり意味がないのじゃないですか。その点もう少し総合予算国民のための総合予算ということを前提にひとつ組んでもらいたいと思いますが、御意見を伺っておきたいと思います。
  45. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 総合予算という主義をとりましたわけを申し上げますが、昭和四十二年度までは毎年毎年補正予算というのが秋ごろになると審議をされたわけであります。これは、国の政策全体からいうと、つぎはぎというか、そういう形のものでありますので、いわゆる国の政策全体の整合性というか、統一性というか、それに欠くるところがあるわけであります。そういうようなことを是正するために、年度初頭におきましては、当然のことでございまするけれども、特に年度間全体の歳出需要というものを並べ立てまして、それを全体としてながめて、重要度の高いものから予算に織り込む、まああまり窮屈な考えはとらない、義務費等につきましてももう十分なものをととのえる、こういうふうなことにして、総合的な角度から政策に均斉のとれた予算を組む、こういう考え方に基づいてやっておるわけであります。したがって、どうも、その結果からいうと、まあ補正予算というものは大体ないということになるわけですが、今日は異常なことで補正予算をお願いするようなことに相なったわけですが、この考え方は、私は、いままでのように、何か事があったら補正で組めばいいじゃないかという安易な財政運営やり方というものに比べますというと、一大進歩である、このように考えているわけであります。
  46. 野上元

    野上元君 予算問題はこの程度にとどめておきたいと思います。
  47. 中村波男

    中村波男君 関連。過日の衆議院の予算委員会で、わが党の北山愛郎氏が、一般会計予算食管会計繰り入れ額を増額補正しながら食管特別会計補正をしないということは疑義があると、相当追及が行なわれたのでありますが、私もこの問題については問題があると思いますので、関連して簡単に質問を申し上げておきたいと思うわけであります。  政府の見解によりますと、予算額をこえる支出増については予算総則に弾力条項があるから補正を要しない、収入増については予算額をこえる収入増があっても条理上補正する必要はない、四十二年度食管会計を補正するのは予算総則に定めた食糧証券等による借り入れ限度額九千八百億円をこえる借り入れが必要になったからであるが、四十三年度の借り入れ限度額は一兆五千億に増額されている上に、弾力条項がただし書きとしてつけ加えられているから、借り入れ額が幾らになっても、これを補正する必要はない、こういうことを強弁をしていらっしゃるのであります。しかし、私は、純粋の法律論、形式的な法律論としても疑義がありますし、また実質論からいいましても弾力条項を引用して食管特別会計補正しなくてもよいという根拠はないと思うのであります。つまり、食管会計の一般会計からの繰り入れを増額するには、税収や使用料、手数料収入等が予算額以上になった場合を前提として一般会計歳出予算を増額補正しなければならないのでありまして、したがって、米麦の売り上げが予想以上にふえたり、食糧証券の増発によって収入が予算額をオーバーするというのとは、その性質がまるで違う。一口で言いますと、一方は国会の議決がなければ増額し得ない歳入超過でありまするし、他方は当初予算で定めた既定のルールを正常に運用した結果生じた歳入超過であります。さらにつけ加えますと、補正後の予算は、一般会計食管会計は首尾一貫しないことになると思うのであります。すなわち、一般会計補正では食管会計へ繰り入れとして歳出が計上されてくるのでありますが、受けるほうの特別会計には全然数字が出てこない、こういうふうな矛盾を生じるのであります。食管会計における受け入れ額と一般会計予算における食管繰り入れ額との間にすなわち三百七十三億の差を生じることになることは、私が指摘するまでもないのであります。予算と決算が食い違うことはやむを得ないことであるといたしましても、予算予算との食い違いを黙認しておくことは、たとえ形式上の問題とはいいながら許すことはできません。言ってみれば、しみのついた服を着て儀式に列席するようなかっこうでありまして、著しく不当なことであると思うのであります。参考までに三十九年度以降について調べてみたのでありますが、三十九−四十二年度の四年間については、いずれも食管会計予算補正が行なわれております。三十九、四十年度については、一般会計から調整勘定への繰り入れ補正をしながら、調整勘定予算補正をしておりません。しかし、四十一、四十二年度予算においては、調整勘定補正しております。三十九年度以降、この問題に関しては事情は変わっておらないはずであります。変わったのは政府の解釈だけであります。しかも、四十二年度については、食管会計のどの勘定も補正していないのであります。この問題について政府の見解を明らかにしていただきたいと思います。
  48. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その問題につきまして御意見があることは、私はもっともなことかと思います。私ども大蔵省におきましても、この問題、補正予算を組むのか組まないのか、ずいぶん検討いたしたのであります。検討いたした結果、補正予算特別会計のほうでは組む必要はない、こういう結論になったわけでございまするが、なぜそういうことかというと、問題を二つに分けて考える必要があるのです。つまり、米の収買をいたします、その売り払いをいたします、このための予算ですね、これは国内米勘定といっておりますが、こっちのほうの問題と、それから、そういう操作をした結果、損益勘定の問題です、赤が出るのか黒が出るのか、こういう問題です、この二つを截然と分けて考えないと、まあいろいろの疑義が出てくるわけなんですが、まず第一の米の売り払い、買い入れ、この国内米勘定、これは買う権限をまず持たなければならないわけです。その権限は、予備費を御承知のように非常にふやしておるわけです。ところが、今度は予備費でも足らなかった。そこで、弾力条項を発動して、これで買う、こういうことにいたしたわけであります。弾力条項も、これも皆さんに御承認を願っておるわけであります。ですから、この関係で国会にあらためて御審議をお願いする事項というものはないわけであります。その財源としては、糧券の発行限度、これの拡大というととも御承知のとおりであります。問題は、その買い取り、買い上げ、また売り払いの問題、予算権限の問題でなくて、今度は損益のほうの問題だろうと思います。損益は、まあ二百万トンもよけいに買ったのでありますから、赤字要因というものは六百億近くにふえる。いろいろと、消費者価格を上げたり、あるいは既定経費によるあれをいたしましたりいたしましても、三百七十億円不足する、こういうことになったわけなんです。これに対して、一般会計から繰り入れを行なって、そうして赤字のない食管会計の状態にしておこう、こういう方針をとったわけでありますが、このほうは、一般会計から入れるにつきましては、これは歳出であります、国の歳出でありますから、これは御審議を願わなければなりませんけれども、受け入れる食管会計の調整勘定、つまり損益の勘定のことです、この調整勘定のほうは、ただ単に、支出権は何の関係もない、出た赤字、その赤字を受け入れる、こういうことだけでありますので、これは国会の御審議をわずらわす必要のない問題である、こういう法的の解釈なんです。ただ、衆議院のほうでいろいろ伺ってみますると、それはそれとして、どうもこの補正予算というものは食管の赤字問題からきているんじゃないかといわれる、そのとおりなんです。そういうようなことも考えますると、政治的な角度からまた考えなきゃならぬ点もあろうかと思うのです。そういうようなことで、衆議院におきましては、私から、今回の補正を組まないというこの措置は、特別会計補正を組まないというこの措置は前例とはいたしませんと、また皆さんからいろいろ御意見がありましたが、これは今後検討し慎重にやってまいりますと、こういうふうにお答えをしておるわけであります。以上が私の見解でございます。
  49. 中村波男

    中村波男君 関連でありますから、これ以上こまかく質問はいたしませんけれども、いま大臣がおっしゃったように、慣例としない。過去にこういうことはあまりないのでありまして、ことしだけそういう取り扱いをされたということは、私は政治的配慮、意図があるように考えられてしかたがないわけです。いまも質疑の中で追及があったのでありますが、ことしのしからば食管会計の予算を見まして、補正を組まずにいけるかということになれば、私は補正を組まなければならないような事態を予想いたしておるのであります。これはまあ見解の相違でありますから、来年の本委員会でまた議論になろうかと思うのでありますが、そこで、食管会計に補正をしない、こういう前提に立って、何とか大蔵省のふところの中でつじつまを合わせて、いわゆる拡大解釈をしてこういう措置をとられたのではないか、こういう大きな疑いを持つのであります。また、この問題は法理論的にも疑義があるという解釈をいたしておるのであります。したがって、総理にお伺いいたしますが、再びこういう事態が起きたときには、今度はこういう措置を行なわずに、国会食管特別会計補正予算を提案する、こういうようなことが約束できるのかどうか。  もう一つは、衆議院で大蔵大臣は参考資料を提出するということを約束されたというふうに新聞はいっておりますが、さらにここで確認をいたしまして、至急に参考資料を出していただきたい、こういうことをお願い申し上げて、質問を終わります。
  50. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 過去三十九年から食管補正予算を出しておる、そのとおりでございます。先ほど私が、この食管には二つの問題を分けて考えなきゃならぬというふうに申し上げましたが、過去の事例というものは、この支出権限——食管特別会計における支出権限自体においてこの足りない問題が出てきた。そこで、それらの補正をお願いしたわけなんです。ところが、総合予算主義というので、特別会計でもそうなんです。特別会計食管でも、予備費を拡大する、また弾力条項も強化する、それから糧券の発行限度も拡大されておる、そういうことで、年度補正の必要はないというような仕組みをすでにつくっておると、こういうことで、四十二年度以前とはまるっきり食管会計の運営の内容が、やり方が変わってきておる、こういうところに御疑問の点があるのではないか、そういうふうに思います。  それから、総理に対して、今後はこういうことがあれば補正予算を出さないということをやめるか、必ず出すかと、こういうお尋ねでございますが、かわって申し上げますが、これはまあいろいろ検討してみます。衆議院においてお答えしたとおりの態度で処置してまいりたい、かように考えております。
  51. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 資料。
  52. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 資料は至急お届けいたします。
  53. 野上元

    野上元君 最近、非核三原則と戦力と、それからそれが憲法にどう関係があるのかというような問題が非常に論争されておるわけですが、私は少し変わった角度からこの際総理並びに関係大臣に伺いたいのですが、自衛権と憲法の関係なんですが、自衛権というのは、これは生存権とともに独立した主権国家には固有の権利である、憲法に書こうが書くまいが、生存権あり自衛権あり、こういうふうに考えるのですが、どうですか。
  54. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 全くそのとおりでございます。
  55. 野上元

    野上元君 そうしますと、自衛権というものの中にはいろいろな手段がありますね。その一つの手段について書いてあるのが憲法第九条じゃないですか。
  56. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 憲法九条の問題は、その自衛権のうちの戦力といいますか、あるいは軍備といいますか、そういうものについての制限規定と、かように私は感じております。
  57. 野上元

    野上元君 かつて日本も自衛権を持った、日本は強大な軍備を持ちました。そして最後は自衛ができなかった、滅亡した。この過去の歴史的経験を踏まえて、新生日本は、軍備は自衛にならない、したがって軍備を放棄しよう、こういうことをきめたのじゃないですか。それが憲法九条じゃないですか、歴史的に。
  58. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は自衛権は認めておる、全くそのとおりだと答えたのは、さっき言ったばかりです。そうして国際紛争を武力によって解決しないということが基本的になっておる。かように私は思っております。
  59. 野上元

    野上元君 憲法九条をお読みいただけばよくわかりますが、国際紛争に武力を使わない、国の交戦権も認めない、陸海空その他の戦力も認めない、完全な武装放棄の宣言じゃないですか。
  60. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) だいぶ専門的になりますから法制局長官にお答えさせますが、急迫不正の侵害に対してみずからを守る、それが私どもがいま言う自衛権、そういうふうに存じます。
  61. 野上元

    野上元君 そのことは私も認めているのです。ただ武力によって自衛はしないのだというのが、日本の考え方じゃないですか。たとえば外交権はあるのですね。これも一つの自衛権です。あるいは経済成長、増強、これも一つの自衛権です。最近問題になっておる領海を三海里を十二海里にする宣言をする、これも一つの自衛権です。そういうもののうちのいわゆる戦力というのは、武力というのは一つなんですね、手段なんです。自衛権即戦力、こういう考え方があなたの頭にこびりついているとすれば、それは誤り。それは旧軍国主義と同じじゃないですか。
  62. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私もただいま言われるような意味に解釈しております。急迫不正の侵害に対していまさら外交的な手段でやれないと、現に紛争が始まっている、起こっている、そういう場合に一体どうするのか。あるいは、これも普通の場合ですね、正当防衛であるからといって前もってどうこうするわけじゃない。急迫不正の侵害、そういう危険を感ずれば、やはり正当防衛は、これはもう個人の場合も同じですよ。そういう場合に望ましきことは、これはもうもちろん外交交渉でやることが望ましい。しかし現実に外交交渉の余地がない、そういう場合にいまのような問題と取り組む、こういうのでありまして、私はそれまで禁止しているとは、かように思いません。野上君と同じような考え方で、ただいまも申す自衛隊は私は合憲だと思うし、またそういう意味において、この自衛隊の自衛力を発動することも、急迫不正の侵害に対しては当然あり得る、かように思います。しかし、私どもは戦争を放棄している。望ましい形ではございません。したがってそういう場合のことは、できるだけ事前に避け得るものは避ける、そういうことをしなければならぬ、かように思っております。
  63. 野上元

    野上元君 私は、その考え方があなたにあるということは、あなたの立場ですから、それはいいですが、しかしそういう考え方があるから、かつてわが国が敗北したんじゃないですか。自衛権を即戦力ということに考えると、だんだん自衛を拡大していくのですね。自衛とは何ぞやということになると、相手を先にたたいてしまえ、これも一つの自衛じゃないかということにだんだん解釈が広がっていくから問題になっておる。ちょうどいまの日本の自衛戦力の問題についても同じじゃないですか。警察予備隊から保安隊、そして自衛隊、そしてあなた方は、国防省をつくって国防軍をつくりたい。こういうふうにだんだんだんだん広がっていっているのですね。その考え方が私は過去の日本を誤らしたんじゃないか、こう私は考えるんだが、総理はどうですか。
  64. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私どもは、この過去、いわゆる戦前と、それから敗戦後と、これはもう生まれ変わったと思っております。もちろん日本は平和愛好国といわれて戦前もおりました。しかしながら憲法は、われわれは戦後において、敗戦後において特別な憲法を持ったはずであります。だからその憲法を忠実に守ると、いま言われるように自衛権、それがどんどん拡大されて、過去のような危険になることは私はないと思います。自衛権すなわち戦力だと、かように私は考えておりません。これはおのずからですね、ただいまの憲法のもとにおいては厳正なる基準があるといいますか、そういう限界があると、かように考えておりますので、あまり御懸念にならないようにお願いいたします。
  65. 野上元

    野上元君 私は、あなたの考え方の中にね、非常に危険なものがあるから、あなたが変わりつつあるから、それを私はあとで証明しますが、だから私は心配しておるんです。まあその前にですね、現行の憲法九条はですね、自衛のための戦力を放棄したんだというふうに、私たちは歴史的に判断しておるんですが、あなた方どう考えますか。
  66. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答えを申し上げます。  先ほど来の御質疑の中にいろいろなことが含まれておりますが、自衛権と申しますものからまあお話しをしてまいらなければなりませんが、自衛権は申すまでもなく国際法上、国家または国民に対して急迫不正の侵害が加えられた場合に、その国家が実力をもってこれを防衛する権利として認められたものだというふうに解釈されております。で、御指摘がございましたように、これは国家固有の権利であって、憲法九条がこれを否認したものでないというのは、政府の従来の考え方でもありますし、また、例の砂川事件判決、最高裁の判決で、自衛権はわが憲法も否認しておらないということを明言しておることは御承知だと思いますが、まあそういうようなことと、それからもう一つ、先ほども総理が御説明をされておりましたが、憲法の九条の一項は、国際紛争を解決する手段としては、武力を行使しない。戦争を放棄するというふうに出ております。「国際紛争を解決する手段」というのは、要するに国際間に主張の対立があって、それぞれに主張を押し通そうという状況が国際紛争でございますが、これを武力で解決することはしない。これはあくまでも、ただいま委員が御指摘のように外交手段、その他一切の平和手段をあげてこれを解決していこうというのが、憲法の趣旨であることは、これは明白であろうと思います。ところが自衛権が認められておる。まあ先ほど最高裁の判決も認めておると申しましたが、その自衛権の発動する限りの部面というものがかりにありました場合に、つまり急迫不正の侵害があって、好むと好まざるとにかかわらず、わが国、国民の生存と安全が外国の侵害によってこれの危険を生ずる、侵害されるというような場合には、これはやはりこれに対して抵抗する権利もまたあるべきであろう。そういうものに見合う限度の自衛力、これは憲法に違反するものであるとは考えておらない。で、これはいま初めてむろん申すわけではなくて、自衛隊法できてから以来のというと語弊がございますが、政府の一貫してとってきた考え方でございます。  その程度のことで一応御説明申し上げて、なお御質疑がありますればお答えを申し上げたい。
  67. 野上元

    野上元君 自衛権の問題は、あなた方そう言うだろうと思って、あとで論争したいと思いますが、現行の憲法九条は、歴史的に見て明らかに自衛のための戦争も放棄したんだ、こういうことに私はなると思うのです。ちょっと読んでみますが、あなたはマッカーサーの回想録を読んだことがあるかどうか知りませんが、幣原さんとマッカーサーとのやりとりがあるわけです。幣原さんがいわゆる武装放棄の条項を持ってきたところ、マッカーサーはこう言っておるのです。私はそのとき腰が抜けるほど驚いたというのですね。あなた方が考えておるようなことを幣原さんが考えておったら、マッカーサーは腰を抜かすことはなかったんですね。そして、それはたいへんりっぱなことだ、それこそ世界の理想追求の旗手だ、こう言って、あなたはやりなさいと言って幣原さんを激励しておる。幣原さんは感激して、ほおを涙でくしゃくしゃにぬらして、そして退出していったというのです。そして、最後に彼はマッカーサーに、いまわれわれは夢想家と言われるかもしらぬ、しかし百年後には必ず予言者と言われるであろう、こう彼はマッカーサーに言っているわけです。そういうことを歴史的に考えてみると、憲法九条というのは、自衛のための武装も放棄しておるんだ、こういうふうに解釈するのが私は正しいと思うのですが、どうですか。
  68. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま御指摘になったことも私承知しておりますけれども、憲法九条については、これはアメリカ側がイニシアチブをとったのか、あるいは日本側の幣原さんがイニシアチブをとられたのか、これ実は憲法調査会でもたいへんな議論の焦点でございましたし、憲法調査会に限らず、いろんな方面でそれが論議の種になっております。したがって、いまのようなことがありますにもかかわらず、はたしてそういう事実があったのかどうかということになりますと、必ずしもいまは結論がないというのが一般的に言われていることでございます。  それからもう一つ、マッカーサーが確かに幣原さんの申し入れがあって驚いた。まあしかし、それこそ平和の道であるというようなことで九条ができたという話もございますけれども、同時にマッカーサーは後日になりまして、まあ説を改めたというわけではなしに、後日になって、日本の憲法九条というものは、自衛権を否定したものではないというようなことを明白に、これはたしか朝鮮事変のころだったと思いますが、明言したことがございます。これもついでのことながらつけ加えておきます。
  69. 野上元

    野上元君 私はね、憲法の解釈をそういうふうに解釈すると、みんなだんだんだんだんエスカレートしていくわけですよ。マッカーサーも最初はアジアのスイスになれと言って励ました。しかし、やっぱりだんだんだんだん考え方をエスカレートさしていっておるわけです。幣原さんがイニシアチブをとったのか、マッカーサーがイニシアチブをとったのか、それがわからなければ憲法九条の問題は解決できないとすれば、それを早く調べてもらわなければいかぬ、重大問題だから。そして、日本のイニシアチブによってこの問題がいま言ったようにきまっているとするならば、明らかに自衛のための武力も放棄したんだ、こういう解釈になるのですが、早く調べてください。調べないで論争してもしようがない。
  70. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの発言がだれであるかという、それは憲法調査会でもずいぶんよく調べて、八年かかっておりますが、それとはいま違って、やはり自衛権ありという、そのことはいままではとにかく自衛権があり、そして自衛力を持つことは当然だというようにずっと解釈はきまっております。日本社会党の主張は、いま言われるように、きょうに始まったわけじゃない、それは否定しておられるんだと、かように私は思いますが、わが党は、これは考え方が違って、国にはやっぱりその存立をみずから守る、そうして自衛隊、これがちゃんと合憲だ、かように私どもは考えておりますので、基本的にどうも立場の相違か、なかなか意見が、議論いたしましても食い違っているような感がいたします。
  71. 野上元

    野上元君 この問題は、おそらく行き違いになるだろうと思いまして——しかし、私はこの際佐藤さんに言っておきたいのです。幣原さんは予言者になるだろうと思ってなくなっていったわけですよ。あなたは彼を予言者の座から引きおろしたわけですよ。大先輩を、せっかく予言者となろうとした幣原さんを、予言者の座から引きおろして凡庸の人にしてしまったのです。あなたの責任ですよ、それは。  それから私は、あなたの心の中に、先ほど心配があると言ったですね。だんだん自衛権が武力であるということを是認すると、だんだんだんだん世の中の情勢の変化によってエスカレートしていくのですよ。それも当然だと思う。これはあなたがすでにそういうふうに変わりつつあるということを、私はこの際はっきりと見せておきたいと思うのです。  かつてあなたは吉田さん時代に、自衛戦力合憲論、違憲論の問題が出たときに、あなたはこういうふうに言っておられるのですね。そのとき自由党の佐藤幹事長は、個人的見解からすれば、政治的既成事実をつくり上げて、これをのませようとする方法で賛成できない。個人的見解からすれば、憲法は国民が納得するよう運営さるべきであって、国民間に反対のある自衛戦力合憲論は、政治的既成事実をつくり上げて、これをのませようとする方法で賛成できない。どうしても戦力の保持が必要なら憲法を改正すべきである。こういうふうにあなたは当時言っておるのですね。あなたの当時の考え方は、自衛のためであっても、いまの憲法のもとにおいて戦力合憲論というのは出てこない。したがって戦力合憲論を言う場合には、憲法を改正して堂々とやるべきだ。こういうふうにあなたは言っておられるのですね。ところが憲法は変わっていないのですよ、今も昔と同じですよ。それはあなたの心は変わってきておる。変わりいく佐藤さん、それが私はおそろしいから先ほどから言っておる。だからもうどんどんどんどんエスカレートしていっております。これは後ほどまたさらに証明したいと思いますが。
  72. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申したように、とにかく戦力、これは持たない。これはもう私いまさら——変わったとすれば、だんだん御期待される方向に変わったというようにも、いまの議論でなるかと思います。私はまた、衆議院の段階でも、何と言おうとも核兵器は佐藤内閣のもとにおいてはつくらず、持たず、これをはっきり申しましたが、そういうふうに申しております。これはいまの戦力というものが、どんな議論があろうとも、そこにはちゃんと歯どめがある、かように申し上げたいのです。したがっていまのように何でもどんどん変わっておる、そうしてどんどん発展している、そうしてわれわれの、国民の好まない方向に発展しておる、かように言われることについて、私抵抗を感じますので、一言申し上げるわけであります。  当時、私が幹事長時分の第九条についての解釈は、確かにいろいろな議論がそのときはあったということ、それだけは私も認めます。しかし私は、国民の期待する方向には向いておるので、これはいまの実情を、過去と今日を考えたら御理解がいくと思います。
  73. 野上元

    野上元君 問題は、私は、佐藤さん個人の考え方によって憲法の解釈が変わっていくということは困るのです。あなたは個人的に変わりつつあるわけです。しかしあなた自身は、これは国民考え方に沿っているのだ、こう言っておるのですが、そういう考え方は非常に私は危険だと思うのですよ。かつてルイ十四世は「余がフランスなり」と言ったのですが、あなたの場合は、「余が憲法なり」ですよ。私の解釈する憲法の解釈なんだ、こういう言い方ですよ、それは。それが私はこわいと思うのですが、その点どうですか。
  74. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、憲法についての観念論をいまここであなたとしようとは思いません。御承知のように、自衛隊は合憲だという、そういうもとにおいて自衛隊法もできておる、かように考えておりますので、現実の問題は、よほど観念論的から現実の問題に進んでいっている。そして、それについても、自衛隊の働く範囲というか、それにはちゃんとワクがかかっている、かように私は考えておりますので、一部でたいへん御心配のようですが、これは心配しなくていいのじゃないか、かように私は思っております。
  75. 野上元

    野上元君 この問題は、私もここら辺で打ち切ります。打ち切りますが、この際、法制局長官に聞いておきたいのですが、憲法九条による「陸海空軍その他の戦力」、その他の戦力というのは何ですか。
  76. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) これも、実はいままでに何回となく重ねて論議がされたものでございますが、御指摘のように、陸海空軍というのは、まさに外敵に当たるを本来の目的としていくものである。それから戦力というのは、しばしば潜在戦力なんかといわれておりましたように、ことばの意味からいえば「陸海空軍その他の戦力」とありますから、やはり戦争に役立つ一定の人的物的組織体をいうのであろうということが言えるようであります。ただそこで、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」ということからいいまして、自衛のためなら幾ら持ってもいいとは決して政府当局は考えておりませんが、自衛の目的、正当の目的を達成する限度のものであれば——それはその限度は非常に問題がございます。限度を非常に厳格に解すべきものと思いますが、その限界内のものであれば、自衛のため、自衛の正当な目的を達する限度にとどまるものであるならば、これは憲法の否認する戦力ではないというのが解釈でございます。
  77. 野上元

    野上元君 そうしますと、いまの自衛隊は、陸海空軍ではないその他の戦力、こういう解釈ですか。
  78. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 非常に分けて考えなければいけませんが、戦力ということばの字義から言えば、先ほど申し上げたような字義に照らして言えば、それは戦力といっていいだろうと思います。しかし、憲法の一項、二項の相関関係から見てくる、特に芦田さんが非常に強調されたところでありますが、「前項の目的を達するため」というようなことからもわかりますように、自衛のための戦力といいますか、自衛力といいますか、こういうものは憲法が否認する戦力ではない、こういう解釈をとっておるわけです。
  79. 野上元

    野上元君 ついでに聞いておきたいのですが、交戦権がないということと、いわゆる戦争権を放棄していますね、これはどういう関係なんですか。
  80. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) これも十年以上前にさかのぼった論議になると思いますが、憲法は戦争を放棄しています。戦争のほかに武力の行使も実は放棄しております。戦争の実体というのは武力行使でございますから、戦争というものを、やはりわれわれは法律的に見なければならないと思います。そうしますと戦争というのは、国際法上は、一番典型的には、戦争宣言を付された場合の武力行動、これが戦争と、やさしく言えばそうだろうと思いますが、この戦争というものは、これは伝統的な国際法から一言えば、認められておったわけですね、戦時国際法なんていうことがあることからも見られますように。そのような戦争は、実は自衛というものの限度を抜きにした、国際紛争を解決するためにも用いられますし、とにかくその紛争を解決するために一国を滅亡におとしいれることさえもできるようなしろものであった。そういう戦争は、憲法九条が明らかに放棄していると私は思っております。そういうような戦争を遂行するための一切の害敵手段を講ずること、それが国際法上違法でないと認められる根拠のもの、それが交戦権であると解しております。したがって、戦争の放棄に伴う交戦権もまた放棄される、これは当然だと思います。  ところがいまのお尋ねの裏には、それじゃ自衛のための行動というものは、交戦権の放棄に入らぬのかというような御質疑があるものだと思いますので、やや先走ってお答えして申しわけないかもしれませんが、自衛というものはあくまでも、いままで自存自衛のためというようないろんなことばを使われておりますけれども、私どもが現在言っております自衛権というものは、あくまでも急迫不正の侵害がある、わが国に対して武力攻撃が加えられる、国民の生存と安全が危うくされる、そういう場合に限っての武力行動だけでございます。それは一国の憲法が、一国の存立と国民の存立あっての憲法が、そういうような国民の生存が全くされないというようなことを放置しておくようなふうには考えられない。しかも、「国際紛争を解決する手段としては、」という文言がありますように、主張の対立のために、昔はよくあったことでありますが、それも国際法上の伝統的な解釈からいえば、あるいは不正の戦争といわれたことがあるにしましても、国際法上は認められないわけではなかった。そういうものは一切憲法九条が禁止しておりますけれども、ちょうどこれも国連憲章あたりでもそういうものは否認されておりますが、国連憲章で、国有の自衛権としての個別的自衛権、集団的自衛権、このうちの、日本は特にまた制限をされまして、憲法九条が制限すると私どもは見ておりますが、全くの個別的自衛権、それだけの場合に限って行なわれるその場合の行動権というのは、全く、よく自衛権の三要件と申しておりますが、急迫不正の侵害がある、他にそれを防護する手段がない、それでまた、これを防護するために必要な限度にとどまる、そういう厳格なる要件のもとに許される限度のものでしかない、そういうものは戦争権に見合う交戦権、これとは本質が違うという考えであるわけです。
  81. 野上元

    野上元君 とにかくあなた方の言わんとするところは、自衛の範囲を出なければ、とにかく交戦権もあるし、戦力を持つこともできるしという考え方ですね。そう解釈してよろしいですか。
  82. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 違います。それは、先ほどの御指摘にありましたように、交戦権はこれを認めないというのは、戦争を放棄するという、その戦争に見合う戦争を、現実、具体的に遂行するための手段と考えておりますので、そのような交戦権というものは、自衛権の行使に伴う自衛行動というものとは別のものであるというふうに考えておるわけです。どういうふうに違うかといえば、先ほど御説明申し上げたように、交戦権というものは、人道主義的見地からする制約以外には制約がないものである、元来。しかし自衛のための行動というのは、自衛権に見合う限度において当然に限界がある。限界があるものとないものとは本質が違う。したがって、ただいま御質疑がありましたように、交戦権を認めるならというお話がございましたが、そういう意味において交戦権は認められておらないと考えていいと思います。
  83. 野上元

    野上元君 どうもあなたの言うことはよくわからないのですね。自衛の範囲でも交戦権はないということになると、自衛のために戦力を持って何をやりますか。あなたの言う新しい交戦権というのは何ですか。
  84. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私は非常にそこを区別して申し上げたので、おわかりにくいかと思うのでありますが、自衛のための交戦権というものをもしお考えくださるなら、つまり限界のある交戦権というふうにお考えくださるなら、それを交戦権と申して一向にかまいません。私は、その本質が違うものは、中身の違うものは、自衛行動権というような名前で唱えるべきものであって、その憲法の禁止している交戦権とは違うというふうに思っておるものですから、そう申し上げたわけですが、自衛権からくる制約のある交戦権だというふうにお考えいただいても、それはけっこうでございます。
  85. 野上元

    野上元君 その解釈というのは、一体だれがやるんですか。それははっきりすべきじゃないですか。あなたはそういうことを考えてないから、交戦権を認めないのだ、いや、あなたは認めるだろうというようなことで、憲法をかってに解釈されるということになると、重大な問題なんで、この交戦権というのは一体何なんです。だれが判断するのですか、解釈を下すのですか。
  86. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 私はこれをむろん独断的に決定的にきめる権能を持っておりません。したがって、こういう解釈はだれもができるものだと思います。思いますが、理論的な問題として、一体政府当局は、この自衛隊なりあるいは自衛隊における防衛活動とか、そういうようなものについては責任を負っているわけでございますから、その限りにおいていかに解釈するかといえば、いま申し上げたような解釈をするというわけでございます。これがもし法律問題になるようなケースがあれば、これはむろん最終的には最高裁なりの裁判所が判断をするということになりますけれども、ともかくも自衛隊法の執行の責めを負っておる政府当局としましては、どう考えるかといえば、そう考えるということを申し上げざるを得ないわけです。
  87. 野上元

    野上元君 あなたさっき言われたように、私はそう考える、だから交戦権はないんだ、こういうふうに言われた。別のものだ、自衛の場合の交戦権というのは。もしもそれが内閣の統一した見解であるならば、それはやはりはっきりすべきですね。そうでないと、あなた個人はそう考えているんだといま言われたが、じゃ違った、法制局長官がかわると、いや交戦権には含まれるんだ、こういう解釈も可能だということになるわけですね。そういうふうに解釈をしてよろしいですかな。
  88. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 自衛権というものから当然に制約をされた交戦権が使えるんだというか、あるいは交戦権というのは戦争というものを現実具体的に遂行する手段としての権能であるという意味で、自衛権の行使に伴う自衛行動権とは違うというかは、実は手段の問題にすぎないと思うのです。実態は実はどっちからいっても同じことである。大事なことは、それだけができるということを申し上げたいわけです。そういうような本質的なものについては、これは私は将来の法制局長官が何と言うかということを保証するわけにまいりませんが、しかし、法制局というのは、皆さんどうごらんになるかわかりませんけれども、これはたとえば内閣がどうかわったからということによって、もう全く自由かってに変わるというようなところではございません。したがって、九条をめぐるいろんな論議につきましては、大きな筋からいいますと変わっておらないというふうにいままで私は見ております。将来もまたそうであろうと思います。
  89. 野上元

    野上元君 どうもたよりないのだな、聞いていると。実体は同じなんだというのですね、あなたの言いたいのは。実体は同じだから文句なんかはどうだっていいじゃないか、その解釈はというわけだ。しかし、それは違いますよ。事憲法の条章に文字が、はっきり交戦権はこれを認めるのだということを書くのと、いやそれは認めてないのだ、別のものなんだ、しかし実体は同じなんだというのとでは、たいへんな違いだと思うのですよ。そういうふうにあなた方考えられておるとすると、これはやはり問題を残すと思うのです。というのは、かつて——あなた方の考え方が内閣を引きずっているのかどうか、あるいは総理の考え方にあなた方ついているのか、その点は私はよくわかりませんよ。法制局長官は内閣の行政に関する、いわゆる何といいますか、ガイドライトなのか、テールランプなのか、その点よく私わかりません。歴代の法制局長官みな違っておりますからね。かつて吉田総理が、自衛隊はいよいよ戦力になったと言って演説された。それであわてて時の法制局長官は、近代戦を行ない得ない自衛隊は戦力ではないと言ってやらなければならぬ、いろんなことをやっているわけですね。したがって、あなたのほうはいわゆるガイドライトじゃないのですね。あなたの意見が、専門家の意見が内閣をリードしているのじゃなくて、総理がちょっと誤って発言したら、それをあとづけるのですね。そういう点が非常に私はあぶないような気がするのですね。その点はどうなのでしょうか。どっちのために法制局長官はあるのですか、ガイドライトなのか、テールランプなのか。
  90. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) どうも法制局の本質的な問題にもお触れになったお話でございます。これはむろん法制局長官は、法制に関しては責任を負っている一員でございますが、しかし国会で法律問題を盛んにやられますために、私がまたしばしば出ざるを得ないのでございますが、これはどうも私としては実はあまりありがたくない、つまり表に立ってやりたい部面ではなしに、やはり内閣というものが法律的に誤りのないように、裏でもって注意をしていくというのが本質的な性格であるべきであるし、またありたいと思っております。しかし、やたらにこの法律問題が出るものでございますから、私はやはりやむを得ずお答えをしているわけでございます。そこで、そのように裏に控えて誤りなきを期するというのが使命ではございますが、ただいま御指摘のように、ことばの上で必ずしも常に同じ表現というのはなかなかできにくいもので、ときには変わった表現が出ることもございます。しかし、先ほどもわざわざ申し上げたと思いますが、大きな筋では変わっておらない。実は私一つ変えたものがございます。これは文民の解釈につきまして、自衛官は文民なりという解釈が実は出ておりましたけれども、私はやはり自衛官は文民にあらずという解釈を衆議院の予算委員会でいたしたことがあります。それはいまの主題ではございませんから詳しくは申し上げませんけれども、それはそれなりの事情があったということを申し上げたいと思いますが、私が知る限りではそれだけでございます。
  91. 野上元

    野上元君 時間がないので、抽象論はあまりやるつもりはありません。ありませんが、あとで重大な問題にも触れながら、いまのことを留意しながら答弁してもらいたいと思うのです。  自衛のためなら核保有は違憲ではないという解釈をされたのはだれですか。
  92. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) その理由を言えというわけですか、だれが解釈したかということでございますか  これは、あらためて申し上げますけれども、閣議決定をしたとかいうことではございません。自衛というものの理論的な問題に照らし合わせてまいりました場合に、通常兵器であるかどうかによってこの理論が変わるものではないということから申し上げているわけです。もともとの筋は、先ほどからも出ておりますように、自衛隊法によって自衛隊、つまり自衛力ができている。その自衛力については限界がないのかといえば大ありである。そういうような限界論からまいりまして、それが通常兵器か通常兵器でないかによって差異のあるものではない。ただし、これはしばしば法律論が政策論とごちゃごちゃになるので、われわれ用心をしなければいかぬのでありますけれども、いわゆる原子力基本法等によって保有あるいは製造というものが禁止されておりますので、これは単なる憲法上の理論にすぎないというわけでございます。
  93. 野上元

    野上元君 自衛権と自衛とは違いますか。どういうふうに違いますか。
  94. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 自衛権と自衛との相違でございますか。これは口述試験みたいなことになりましたが、その自衛権の行使の結果が自衛というものであろうと私は思います。
  95. 野上元

    野上元君 あなたの考え方は、国際的通念における自衛権の解釈ですか、それともあなた個人の、あるいは日本の憲法に制約された上の自衛権の解釈なんですか、どっちなんですか。
  96. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 先ほどもお答え申し上げましたように、自衛権というのは国際法上の観念であるということを申し上げました。したがって私は、その国際法上の観念をはずして自衛権というものをかってに議論しているつもりはございません。ただし、国際法上の観念としては、個別的自衛権のほかに、集団的自衛権というようなものが認められておる。しかし、私が言う自衛権というのは、集団的自衛権のことを申しておるつもりはさらさらございませんで、いわゆる個別的自衛権、それについて申しておるつもりでございます。
  97. 野上元

    野上元君 それでわかりました。  それでは具体的にお聞きしたいと思うのですが、自衛のためには、いわゆる兵器の種類は問わない、何でも持てる、しかし制限があるというような言い方をされておるわけですね。それでは、あなた方がいつも言っているのは、現実にどこかが不法に武力攻撃を受けたとき、それを受けて立っていくのが自衛権なんだ、自衛権の発動なんだ、それは許されるのだ、こういうふうに言われましたね。そうすると、予期できる、最も近い時期に予期できる脅威に対して自衛権を発動できますか。
  98. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 予期できる事態に対して自衛力の保持ができるかというのじゃなくて、自衛権の行使ができるかと、こういうことでございますね。それはやはり武力攻撃というものが現存しなければ私はいけないと思います。ただし、武力攻撃というものが現存するという意味は、着手といいますか、そういうものが入ることはむろんでございますけれども、武力攻撃があるということが前提であると私は思っております。
  99. 野上元

    野上元君 それでは、現実的に日本に武力攻撃があった場合、これは自衛権が発動できる。しかし、一週間後に必ずあるだろうという場合に、これを敵を封鎖したりなんかすることはできないのですか。それは自衛権の行使になるのですか。
  100. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) つまり、非常に脅威があるというわけで相手をやっつける、これはできません。
  101. 野上元

    野上元君 それは国際的な考え方ですか。
  102. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) これはどうも国際法のことになると、私必ずしも十分な確信がございませんけれども、私の知るところ、もし間違っておりましたら外務当局から訂正してもらいたいと思いますが、国連憲章五十一条、武力攻撃があった場合、あるいは武力攻撃に際してとありましたか、いずれにしても、武力攻撃という現実の危険、それが私はこの国連憲章の五十一条の考えているものだと思います。しかし、重ねて申し上げますが、国際法の解釈になりますとやや不安心なところがございますので、違っておりましたら、他の政府委員から訂正をしてもらいたいと思います。
  103. 野上元

    野上元君 具体的に聞きますが、一九六二年十月に例のキューバにソビエトのミサイルの持ち込みがありましたね。その当時ちょうど佐藤さんはケネディと会っておられた、あのときに。そうしてアメリカは、全然武力攻撃がないのですよ、いわゆる準備だけですね、ミサイルの基地の。その準備をしておるにもかかわらず、いわゆる自衛権の発動と称して海上を封鎖した。これは国際法上違反だというのはだれも言っているわけですね。いわゆる海上封鎖、いわゆる交通遮断というものは戦争なんだという概念はだれも否定しておらない。しかし、これは自衛のためにやったのだ、こういうふうに当時は言われたのですね。そうしてそのときにどこの同盟国にも全然相談をしなくて、ごく隠密にやりましたね。そうしてあとであなた方に承認を求めてきたと思うのですが、そのときにあなた方は、これをどう反論したですか、承認を求められたときに。
  104. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) その件につきましては、これはどうも私は何らの反論も示さなかったわけで、実はそのことについてわが国がどうするかというようなことでもあれば、何か反論を私はしたと思いますが、そのときは、私の記憶では、別にこれをどうしようとか、あるいはこうすべきであるとかというようなことを論じた記憶はございません。  それからまた、自衛という場合には武力の行使が中心になりますが、あの場合も武力の行使自体がどこまで行なわれたか、私はっきりいたしませんので、この辺については私は責任を持ってお答えするわけにはまいらないことを遺憾に思うわけです。
  105. 野上元

    野上元君 現実に、事実ははっきりしているのですね。現実に武力の攻撃がアメリカに対してなかったわけですね。ただ、ミサイルの基地をつくっておったわけですね。しかし、それをつくらせないためにいわゆる艦隊を出動させたのですね。そうして全面核戦争を覚悟してアメリカは布陣した。これは明らかなんですね、今日だれに聞いても。ということになると、予見し得る脅威に対しては自衛権の発動は合憲なりということになるのではないですか。あなた方にそのときに承認を求めてきたでしょう、アメリカは。アメリカの行動を支持してくれと、こう言ったでしょう。そのときあなた方は支持したじゃないですか。したがって、自衛権はそういうときにも発動していいのだという解釈をとったのではないですか。その点はっきりしてもらいたい。
  106. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) お答え申し上げますが、アメリカの例の事件のときのことを私どもがどうも解釈を加えてどうということを申し上げるのも、実は私としてはいささか行き過ぎではないかというふうな気がいたします。いずれにしましても、わが自衛隊法上、防衛出動に必ずなる場合になりますから、その場合には国会の御承認ということが必要になるわけでございますので、この点は、そういうわが国に対して不幸な場面がありましたら、その際は国会がよく御監視の上、適当に御措置を願うというようなことにもなるわけでありまして、これを単なる理論だけやっておってもいかがなものかというふうに思います。いずれにしましても、この米国の行動については、これは何とも申し上げかねる。わが国の憲法上の解釈、これは私がさっき申し上げたとおりであります。
  107. 野上元

    野上元君 あなたに言っても無理な話でしょうね。おそらくこれは総理大臣に聞かなければわからぬと思うのですが、そのときに日本はそれを支持したのでしょう。支持したということは、そういう自衛権の発動はいいのだということになるのではないですか。それは国際法上の自衛権、さっきから話しておるように、自衛権の概念は国際法的なものなんだ、私個人のものではない、こう言っているわけです。その基礎の上に立ってアメリカのあの行動を支持したということになれば、予見し得る脅威に対しては自衛権の発動は合憲なりということになるのではないですか。だれが一体答弁してくれるのですか。
  108. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 外国のことですから私のほうの所管のことかと思いますけれども、何しろあの事件は前内閣の当時でもございますし、また、そのときにどういう支持を求められたのか、そういったようなことにつきましても調べてみないとお答えができませんので、御了承願います。
  109. 野上元

    野上元君 それでは調べるまで待ちましょうか。これは重大な問題だからね。
  110. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) それでは政府委員からお答えをいたします。
  111. 佐藤正二

    政府委員佐藤正二君) キューバ事件のときの事実関係につきまして、私も実はそれほど正確なる記憶を持っておりますわけではございませんので、その点留保させていただきますが、先ほどから法制局長官からお答えのありましたとおり、いわゆる武力、自衛権の発動のいわゆる要件と申しますか、そういうものに武力行使があると、これが現存するかどうかというお話、現存する武力行使があるということがこの要件になっているということは、国際法上も同じことだと思います。国際法上と申しますのは、少し話がはっきりいたしませんが、国連憲章の五十一条の解釈としては、そういうふうに解釈すべきものだと思っております。  そこで、キューバの事件になりますわけでございますが、私の記憶が必ずしも明確でございませんが、あのときはキューバのほうには先生のおっしゃるように武力行使と思われるものはなかったように考えております。しかし、アメリカのほうの行動といたしましても、あのときは艦隊を出動したことは事実のようでございますが、実際に臨検もいたしておらないというふうに考えております。あのときはたしかソ連の商船が接触する前に引き返したというふうに私記憶しておりますが、この点は私の記憶もあんまりはっきりしておりませんので、もう少し調べてお答え申し上げます。
  112. 野上元

    野上元君 問題は、そんなことじゃないんですよ。そのときに戦争したとかしないとかいう問題じゃないんですよ。いわゆる予見し得る脅威に対して自衛権を発動したんですよ。あなたも認められておるように、艦隊を出動して、そして封鎖したんですね。そのためにソ連の船は全部Uターンしたんです。そして全面核戦争を準備したんですよ。だからこそあの戦争は回避できたんじゃないですか。ということは、いわゆる予見できる脅威に対しては自衛権を発動してもよろしいんだということになるわけなんですね。それをないと言うから、私はおかしいと言うんです。法制局長官は、そこまではない、攻撃を加えられたときでなければ自衛権の発動はできないんだと言うんです。それが国際法的な通念なんだと、こう言っておるわけです。ところが、そのときにあなた方は支持したんですよ、アメリカの行動を。そしてアメリカは喜んだんですね、支持してもらって。ということはどうなんですか、それは。そういう自衛権の発動のしかたは国際法上認められておるんだと、それは憲法以前の問題なんだ、憲法より上の解釈なんだと、こういうふうに解釈したんじゃないですか。この点が問題なんです。
  113. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 国際法の解釈と国内法の解釈と両面ございまして、その関係を実は御質疑になったわけです。国内法の解釈として私は申し上げましたが、国際法の解釈としては、この私のほうよりも、むしろより専門家のほうがいいと思って、もし違った点があったら訂正をしてもらいたいと申したのでございますが、その点はいまも同じでありますけれども、国連憲章の五十一条を見ますと、武力攻撃が発生した場合には、これは英文によりますと、「オカース」——発生する、発生した場合にはというのがありますので、やはり同じように解していいんではないかと私は思っておりますが、ただ武力攻撃があった場合に、これに対して攻撃を加える、武力攻撃がないにもかかわらず、何というか、これに対して爆撃をするとか、向こうの準備行動に対して爆撃をするとかいうようなことは、何かやってもいいんじゃないかとおっしゃっているわけではありませんでしょうが、そこまで入らないとおかしいではないかというふうにも聞こえる御質疑でございましたが、やはりそれは、そういうような危険がある場合に防衛出動をするということはありましても、実際の戦闘行動といいますか、相手が手を出さないのにこちらがやっつけるということは、憲法九条の解釈としては私はとるべきではない。やはり厳重にそれは注意を要するところであるというふうに私は考えております。
  114. 野上元

    野上元君 だから、私はあなたの解釈はわかったんですよ。そのときにどうして米国の行為を支持したんだと言うんですよ。支持したということは、さっきから何べんも繰り返すように、未然の脅威に対して自衛力は発動できるんだという解釈の上に立ったからこそ支持したんでしょう。どうも言うこととやっていることが違うんですよ。
  115. 秋山長造

    ○秋山長造君 関連というよりも議事進行ですが、いまの野上君の質問されておる前提になるあの当時のアメリカ政府の行動、それからキューバなり、それからソ連側の行動、それからさらに、アメリカ側の行動に対して日本の政府に承認を求めてきた事実の有無、さらに、それに対して日本政府が承認を与えたかどうかの事実の有無、これについて野上君のほうはきわめて明確なんですけれどもね、政府側のほうが明確でないわけですから、だから政府側の明確なやっぱり認識をした上で議論をしていきませんと、これは決着はつかぬと思うので、ひとつ政府側はその点について至急に明確な前提を整えて、そうして野上君の質問に対して答弁していただきたい。
  116. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほど申しましたように、キューバ事件はこちら側からいえば前内閣の当時のことでございますが、その事実関係につきましては、私どもの得ておりまする了解からいいますと、アメリカが日本側に支持を求めたというようなことではなくて、こういう行動をしたということの通報があって、これをこちらが了承したということであったようでございます。したがいまして、これは、日本側がアメリカの行動に対して承諾を与えたとか、あるいはアメリカ側の憲法解釈とか、あるいはアメリカの国際法の解釈とかいうような問題についてこちらが承諾を与えたとか、見解を表明したとか、そういうものではございません。
  117. 野上元

    野上元君 あなたは、その当時のことも知らないで、そんなこと断定的に言えるんですか。さっきは、当時は別の内閣だったんでよくわからない、しかしいまはそんなものではありません、こう言ってはっきり答弁されておる。そんないいかげんな答弁でいいんですか。この問題は、将来私が質問していく上の土台なんですよ。重大な問題なんですよ。これが解決されなければ、自衛戦力という問題について、自衛権という問題について論争のかみ合いにならないんですよ。あなたのほうでそういうふうに逃げられると、どうにもならない。この点ははっきりしてもらいたい。
  118. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまもごらんのように、質疑応答の間に、私は事務当局からもその当時のことを聞いたわけでございます。
  119. 秋山長造

    ○秋山長造君 その点が明確になっていませんよ。先ほどの条約局長の御答弁では、やっぱり、私の記憶にして誤りなければというようなことで、きわめて不明確な自信のない御答弁、それから大臣の御答弁にしても、前内閣のことでしかとは覚えぬけれども、そうだったようだというような推量が入った御答弁なんでね。これはもう野上君の言うとおり、これは幾らやっても決着がつきませんから、委員長、ちょっと二、三分このまま休憩していただいて、ちょっとそこで理事会でもやって、それで政府側のほうがやっぱりはっきりと資料を整えて、あったようだというような話でなく、きわめて問題は微妙な話ですからね、正確な前提に立って答弁していただきたい。
  120. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまもごらんのように、アメリカ関係のことは、アメリカ局長が担当いたしております。先ほど答弁いたしましたのは私と条約局長ですから、アメリカ局長から念のため説明を聞いていただきたいと思います。
  121. 野上元

    野上元君 反対なんだ。私は局長から聞いてもしようがないんですよ。
  122. 秋山長造

    ○秋山長造君 ちょっと待ってください。それはアメリカ局長が適当に答弁されることじゃないです。やっぱりそれは総理大臣なり外務大臣なりがね、確信を持って答弁をしていただかなきゃいかぬ。政策論争みたいな話じゃないんですからね。法律論ですからね。正確を期していただきたい。
  123. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) たいへん時間をかけまして、お待たせをいたしまして、申しわけございませんでした。  昭和三十七年の十月二十三日の朝、当時のライシャワー大使を通じまして、ケネディ大統領から池田総理あての書簡の形でアメリカから通報がございました。その内容は以下申し上げるような趣旨のものでございます。米国政府は、ソ連政府に対し、キューバにおけるミサイル建設が西半球の安全を害するものと認め、その中止を要求し、その要求を実現する方途として、ミサイル材料を搭載したソ連船舶のキューバ入港を阻止する用意ある旨を通知をした、こういう趣旨の内容でございまして、当時のケネディ大統領の演説の内容を趣旨とするものであったということでございます。そして、この通報は、日本のみならず、友好国諸国に対しても通知をしたということでありました。翌二十四日、当時の黒金官房長官が、こういうふうな談話を発表いたしております。ソ連の軍事援助によりキューバに攻撃用核兵器基地が設けられたことは、米州諸国の安全に対する重大な脅威であるのみならず、戦後今日に至るまで世界の平和をささえてきた国際的な均衡を著しくくずすものであり、政府としては、米国と米州諸国が今回のごとき措置をとらざるを得ないと認めた立場は、これを十分理解する。本問題はすでに国際連合において取り上げられているので、政府としては、国際連合の場においてこの平和的解決がはかられることを期待しており、わが国としてもその方向に沿って最善の努力を尽くす所存である。——これが当時の官房長官談話の内容でございました。
  124. 野上元

    野上元君 私は特にこの際言っておきたいのですが、私自身も、その書簡も持っておらないし、政府の態度についてもはっきりわかってるわけじゃないのです。しかし、いずれにしても、そういう事実があったわけですね、アメリカの行為があったわけですね。それを日本が支持するということになると、非常にたいへんなことになるんですね。と同時に、いま——当時はわからなかったでしょう、日本もおそらく状況が。現在ほどわからないものはないと言いますからね。ところが、十年もたってみれば、あああんなことかということがわかるわけですね。しかし、現在ではなかなかわからぬという場合があるでしょう。しかし、いま私は、ケネディの政権におった重要な人物が書いた「ケネディ外交」あるいはその他の本を読んでみますとね、必ずしも自衛じゃないんですね。あなたはいま、当時テレビ放送やりましたね、ケネディが、そのときの演説を添えてきたと、こう言っておりますが、その後またケネディが演説してるんですよ。それによるとですね、こういうふうな演説をやってるんです。一九六二年十二月十七日ですよ。ソ連は十一月に、彼らが米国のすぐ近くにミサイルを置いてることを世界に示そうと計画した。米国に攻撃をしかけようというのではなかった。米国と直接に核戦争をするのだったら、自国領土内にあるミサイルでよかったのだ。キューバにミサイルを置けば政治的に勢力の均衡を変えることになる、ミサイルがあるということが現実を動かす、だからこれを排除したのだ、こういうのですね。自衛ではないのです。いわゆる国連憲章にいう自衛ではないのです。こういう演説をしているのです。したがって、こういう目的のために、アメリカが、しかも同盟国に全然通知をしないで、全面核戦争を覚悟してやったというところに、問題がある。それをあなたのほうは、了承したとか、理解したとか、支持したとか、どれでもいいですが、問題は、そういうことをあとから知らされたわけですね。幸福にして全面戦争にならなかった。しかし、不幸にして全面戦争になっておったら、たいへんなことなんですね。あなた方は同盟国として歯どめの役を果たさなかったことになるわけです。これはやはり重要な問題だと思うのです。しかも、こういうことがあるのです。最終決定するときに、ソビエトはキューバからミサイルを撤去いたしましょう、そのかわりアメリカはキューバを侵略いたしませんと、こういう条件であの事件が妥結しておるのです。もともとどっちがそれでは自衛だったのか、今になってみればはっきりしておる。アメリカがキューバを侵略する意図があった。だから、キューバはあわててソビエトの援助を求めた。そしてミサイルを持ってきた。そしたらアメリカが、これはけしからぬというので、先に事を起こしてしまった、こういう関係になるのです。いまになってみれば、はっきりしておるのです。したがって、自衛戦争どころか、自衛権の発動のほうはむしろキューバのほうにあったのですね。そのことをはっきりと書いてあるのです。今日もう歴史は明らかです。そういうことをこのしろうとの私でもわかるのですから、さっきも言っておるように、あなた方はたくさんのスタッフを持って世界のことを研究されておるのではないですか、外務省というのは。それぐらいのことがわからなくて外交ができるのですか。そのことが私は心配なので、その点について、この抽象論はもうやめますよ、やめますが、国連憲章五十一条の解釈について日本はどうあるべきか。アメリカはああいう解釈をして、自衛戦争だと言って国連で演説していますが、日本は一体どうするのだ。日本はそういうことはやらないのだということをはっきりしてもらいたいと思います。
  125. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいま御報告いたしましたのは、その当時の経緯でございます。それから、先ほど読み上げましたように、当時の政府といたしましても、そういった状態に置かれて、こういうふうに措置をしたことについて、その立場は十分理解すると、こう言っているわけでございます。それから、それはそれといたしまして、わが国が自衛権というものをどういうふうに解釈するかということは、先ほど来法制局長官等からはっきり御説明をいたしておりますが、そういうことで私どもはいかなければならない、かように考えているわけでございます。
  126. 野上元

    野上元君 その点、総理大臣もはっきりしておいてもらいたいのですが、先ほど来——法律の解釈というのは時代とともに変わるわけです、だんだんだんだん変わっていっていまのようなことも自衛になってしまうということを実はさっきから私は心配しているのです。国連憲章五十一条に対する解釈については、はっきりしておいてもらいたいと思うのです。
  127. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、法制局長官や外務大臣等、それぞれがお答えしております。私は、自衛権も、あれはまことに大事な問題でありますから、できるだけ厳格に解釈しないと、とんでもないことを引き起こす、かように考えておる次第でございます。
  128. 野上元

    野上元君 防衛庁長官に聞きたいのですが、年次計画を毎年つくっておられますね。そして防衛力は毎年増大していますね。それは増大していく根拠は何ですか、安保条約に義務づけられているのですか、その点はっきりお聞きしておきたい。
  129. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 御承知のとおり、政府のうちに国防会議がありまして、そして五年ごとに防衛計画を立てておる。現在はいわゆる第三次防計画ですね。われわれのこの防衛計画の方針としましては、国力、国情に応じた防衛力を整備する、こういうことを掲げております。その防衛計画にのっとりまして、毎年増強をされつつある、こういうことであります。
  130. 野上元

    野上元君 防衛計画というのは、いわゆる脅威に対する対抗策ですね。したがって、脅威の見積もりがなければならぬのですね。脅威の見積もりといわゆる税金を使う額とは対抗しなければならぬ。マクナマラの言う「費用対効果論」です。それが全然根拠になくて、どんどんかってに自衛隊がおもちゃをつくっていくようなことは困る。その点はどうですか。最近における防衛庁の状況は、毎回ずっと増強されておりますが、その裏を返していけば、脅威の見積もり書が高くなっておるのか、脅威が増大しているのですか。もしも増大しておるとすれば、その事実を明らかにしてもらいたい。
  131. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 防衛力の整備計画を立てるにあたりましては、特定の脅威に対応するというような考え方はしておらない。しかし、流動的な国際情勢の中におきまして、日米安保条約という保障体制は至上としながら、日本の平和と安全がはかれるという意味合いで防衛力を整備しておると、こういうことであります。
  132. 野上元

    野上元君 あなたのお答え非常に抽象的なんですがね。現在日本の周辺に脅威がなければ、何もそう防衛力を増大する必要はないじゃないですか、国民の金を使って。私はそれを言っておるのですよ。計画がある以上、そのデータがなければならぬ。そのデータがないのだ、脅威というものはそれはわからないのだ、それでははかりようがないじゃないですか。それでは何のために年次計画を立てて防衛を増大していかなければならぬのか、どこまで増大させるつもりなのか。
  133. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 特定の脅威ということは別に考えておりませんけれども、先ほど言いましたように、国際情勢は非常に流動的であります。この大事な日本を守るために、どうしてもいざ万一の場合に備える用意をしなければならぬ。そこでわれわれは、少なくとも通常兵器による侵略に対してはわれわれの力によって守る体制をつくっていかなくてはならぬ、かような考えで進めておるわけであります。
  134. 野上元

    野上元君 その答弁にしても、私にはよくわかりませんがね。脅威があるのかないのかわからぬのに、防衛計画のほうだけはどんどん増強していく。切りがないと思う。だから、一体どこで限度を考えておりますか。どういう限度を考えておりますか。もうずっと第百何十次防衛計画なんていうのを考えておりますか。
  135. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 先ほど来質疑がありましたように、日本はあくまで守りいくさでございまして、守るために防衛をしておるのであります。海外派兵ということをやりませんから、守るという前提に立って、少なくとも通常兵器による局地的な侵略が起こるときはこれを防ぐだけの用意をしなければならぬと、こういうところにおのずから歯どめもあるわけであります。
  136. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。いまの野上君の質問については、同様趣旨の質問を私歴代の防衛庁長官に何回もこの席でやっておるのです。それで小泉長官のときに、いま長官からお話があった通常兵器による防衛力ですね、これはほぼ目的を達した、達しておるというのが数年前の答弁です。そうすると、国際情勢が流動的であるから防衛力もそれに従って増強していかなければならぬとするならば、相手がより強い力を持てばこちらもそれに対応しなければならぬ。どこまでもいくわけですね。それを制約する何ものもないのです。ただ、日本は国民総生産の中の幾らかということで、外国に比べれば少ないという、そういうことだけを一つの言いわけにしておりますけれども、これはもう際限のないもので、どこまでいっても切りのないものです。どこまでいけば一体日本の憲法にも——憲法の解釈は私はここで言いませんが、一応自衛ということで政府が言うならば、どこまでいけばその限界になるのか、限界はあるのかないのか、際限ないですね、これは。いま野上委員は百何十次防だなんて言いましたが、そんなばかなことはないにしても、第四次、第五次、どこまでもいけるわけですね。しかも、アジアでは総合戦力では最強と言われているのですよ、日本の自衛隊は。部分的には違う点がありますけれども、総合的にはアジアでは最強と言われておる。しかもなおかつ、これから幾らでも、アジアでも最も強い、世界で有数な先進国の中に数えられる日本が、国民総生産の中のパーセンテージはわずかであっても、どんどん進めていけば、ほとんど際限がないでしょう。どこまでいけば政府は満足されるのか、はっきりしていただきたい。
  137. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 先ほど言いますように、われわれは、この防衛という、だから、外国がいろいろと増強されましても、日本の国土を守るという前提に立っておりますからして、これが昔のように、戦前のように、侵略といいますか、攻撃をやるということになれば、これはもう際限なくなりますけれども、私のほうはあくまでも国を守るという前提、そこに大きな歯どめがある。しかしながら、やはり世界は流動的であり、また科学技術の進歩もありますから、日本もやはり国を守るために、それにふさわしい、国力に応ずるところの防衛力をつくっていく、こういうことでございます。
  138. 野上元

    野上元君 私は、そんなことを言っておったら、さっき言ったように、切りがないと思うのですよ、国力に応じて防衛力は増強するのだということになると。国民総生産は毎年毎年上がっておるわけですね。いよいよ五十兆をこすというのでしょう。そうすると、防衛力は幾らでも増大していいんだと、それに見合って、こういうことになるのでしょう。したがって、あなたのほうとしては一体どの辺までいったら満足するのですか、満足はないのですか、その点はっきりもう一ぺん具体的に言ってください。
  139. 有田喜一

    国務大臣(有田喜一君) 国力と国情に応じた防衛ですね。国情というのは、御承知のとおり、憲法で制約されておりますから、そういう日本の国情というものを踏んまえながら防衛をしておる。だから、どこまでいけば、ここまでやればいいということは、それはやっぱり、国際情勢が流動的でありますので、ここまではどう、どうという、そういう具体的に限界点を置くわけにはまいりませんけれども、やはりあくまで、国を守るため、こういう前提に立って防衛力を充実していく、こういうわけです。
  140. 野上元

    野上元君 各国ともやっぱり同じだと思うのですよ、立場は。しかし、大体国民総所得の何%まで、これがいわゆる国情に応じたものだということを言われているわけですね。その場合に、日本は非常に低いですね、確かに。だから、低過ぎるから国際水準に上げるのですか、上げようと防衛庁は努力しているのですか。それとも、現状で大体満足だと、四次防が済めばもうよろしい、五次防は考えない、こういうことなのか、その点どうです。
  141. 有田喜一

    政府委員(有田喜一君) 現在は三次防の半ばにありまするが、現段階においては三次防計画を達成するためにわれわれは努力しておる。その先のことは、いずれ四次防計画におきまして国防会議でいろんな視野からながめたものが出てくる、こういうように思いますけれども、しかし、先ほどお話ありますように、日本のいまの防衛力は非常にふえたふえたとおっしゃいますけれども、たとえばいま御審議願っておる来年度予算一般会計予算の中に占める割合というものは七分一厘八毛なんですね。去年は七分二厘五毛だと、総予算が少ないから去年は七分二厘五毛だと。今度は、来年度はふえておりますけれども、全体におけるシェアというものがわりあい減っておる。こういうことで、ここに日本の防衛の考え方が、先ほど来言いますように、あくまでも日本の国の安全ということを中心にしておる。それからもう一つは、御承知のとおり、日米安保条約というものがございますね。昔は——昔はというと語弊があるかもしれませんけれども、アメリカの兵力がだいぶん日本に駐留しておりました。まだ現在もおりますけれども、だんだんと、ことに陸上勢力なんていうものは減っておりますね。そういうことが、ここまで、日本が伸びたら、日本人の力によって日本の国を守っていこうという、この体制はやっぱりつくっていかなくちゃならない。しかし、核とか何とかそういうことになれば、日本は持ちませんから、これはアメリカの抑止力に待たなければならぬと思っておりますけれども、われわれとしては、少なくとも日本の国土はわれわれの手によってやっていきたい、しかも守るためにということでいこう、こう思うのです。
  142. 野上元

    野上元君 守るということであるとか、あるいは抑止力として有効な防衛力を維持するのだとか、いろいろと問題ありますね。しかし現実に、私はさっき言ったように、日本の周辺にあまり脅威がないのに、やたらに防衛力を増大して、そうして民家に飛行機を落としていくということになると、国民の側から見れば、日本の安全を守っておるのじゃなくて、自衛隊の飛行機が国民を殺傷しておるじゃないかということになるのですね。ついこの間も落ちました。またたんぼに墜落した。民間じゃ何と言っていますか、自衛隊石けんという名前をつけたらよく売れるだろうと言っておる。よく落ちる。そういうことを言われておることをもやっぱり考えながら、防衛力というものは考えなければいけませんよ。そうでないと、いわゆる国情に沿わないことになる。その問題については、きょう時間がないから論争しませんが、一応記憶にとどめておいてもらいたい。  それから、法制局長官にまた法律的解釈をしてもらいたいのだが、自衛の範囲であるならば核武装もけっこうだということを再三いま言われておるのですね。ところが、核武装という場合に、核というのは簡単にはできないわけですね。したがって、侵略というのは、これはもう不時不測ですね、いつ来るかわからない、だれにも。それに準備をするためには、対処するためには、核をつくらにゃいかぬですね。つくって、しかも防衛できるだけの量を持っておらなければ、実際の問題として防衛力にはならぬのじゃないですか。したがって、核をつくって、貯蔵する、そうして不測の侵略に備える、これも自衛の範囲内ですか。それはよろしいのですか、憲法で。
  143. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま御質疑の中に、核武装もけっこうだと言っておるというふうに仰せになりましたが、私は、憲法解釈として、自衛隊法のもとの自衛力、これが憲法のもとに許される、これには当然限界がある。その限界が、やはり兵器についても同じようにある。で、それが通常兵器か、核兵器か、それを憲法が云々しているわけではない。あくまでも自衛の限界の問題であるということを申し上げているわけで、それを核兵器がけっこうだというようなわけでは決してないわけでございまして、核兵器を一体持つのがいいのか、悪いのか、これはまさに政策できめるべき問題だと思っております。もともといえば自衛力ですら、実は憲法がこれを禁止しているものではない、自衛権を否認しているものではない、それに見合う程度の自衛力を持ってもよろしい。これもしかし、あとは政策上の問題で、憲法が禁止していないということは、持つべきであるという意味ではないこと、つまり核兵器についてもその点は全く同様である。しこうして、政策上の問題として、憲法が禁止してないから、自衛隊法というものを設けて、自衛力を保持しようということにいたしておる。と同時に、核の問題については、これも再々申し上げていることでありますけれども、原子力基本法というのがあって、事核に関しては、これは原子力の利用は平和の目的に限るというわけで、なるほど憲法ではそういうものも禁じられていない限度のものもあるだろうけれども、およそ核というものはこれはやめようじゃないかというりっぱな法律があるわけで、憲法の禁止してない範囲につきましても、立法政策上の見地から、これを持つことは原子力基本法が許しておらないというわけでございますから、いま御質疑のようなことは、少なくも原子力基本法が健在である限りあり得ないということでございますので、それをあえて御説明することは控えさせていただきたいと思います。
  144. 野上元

    野上元君 私が聞きたいのは、純然たる憲法解釈でいいんですよ、自衛権の問題なんですから。これは、自衛の範囲内ということは一体どういうことなんだということを知りたいのですよ、憲法上ね。したがって、先ほど言ったような私の理論展開は憲法上許されるかということを聞いているのですよ。
  145. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 憲法が持つべきでないということは、持つべきであるというふうにいっているものでないことはおわかりいただいておると思いますが、憲法がこれを否認していない、あとは政策上どうするかという問題であるということも御理解いただいたと思いますが、これは原子力基本法のあるもとでは全く理論的満足を得るためだけの議論になりますけれども、あえてお答え申し上げますれば、結局、自衛の限度というのは、核に限らず、一般的に問題になることでございますけれども、とにかく、わが国に対して武力攻撃が加えられる、そうして国民の生存と安全が危うくされる、一国あっての憲法、国民あっての憲法が、そういう場合の自衛の措置を否認しているものとは考えられない。そういう意味で自衛権がある。これは最高裁の判決も認めておりますが、そういうこの国民の生存と安全を保持するという正当な目的を達成する限度内のものであるかどうか。これを、政府側の答弁では、しばしば攻撃的あるいは防御的というような表現で使っている場合もありますけれども、事の基準は、いま申し上げたようなところに照らして考えるべきだろう。しこうして、ややオーバーなお答えになるかもしれませんが、この核兵器というものはわれわれの知る限りにおいては相当強力なものである。ICBM、IRBM、あるいは原爆、そういうものがいま言いましたような自衛権の範囲に入るものとはとうてい考えられないということをつけ加えさせていただきます。
  146. 野上元

    野上元君 私は、憲法に核というものは一切禁じておるのだと、だからそれを受けて原子力基本法というものが生まれたのだと、こういうふうに実は解釈しておったのですよ。ところが、あなたの言うのは、そうじゃなくて、憲法上は許されるが、原子力基本法でこれを廃棄しておるのだということになると、憲法を制約しておることになるのですね、原子力基本法のほうが。そういうことになりませんか。そういうことの関係はどうなんです。
  147. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 憲法がもし核を持つべきであるということをいっているとすれば、原子力基本法でこれを持つことがいけないといえば、まさに法律が憲法を制約すると、いわば違憲の法律であるということになりますけれども、先ほどもお答え申し上げましたように、憲法は、それを持つことが憲法に違反するものではない——むろん、さっきからしばしば言っておりますように、限界の問題はございます。ございますが、その限度内のものは何も否認はしておらない。あとは——持たなければならぬといっているわけではございませんから、あとはまさしく、一国の存立との関連において、いかに政策を立てていくかという問題であるわけであろうと私は思います。   〔委員長退席、理事江藤智君着席〕 したがって、その政策の一つの実現の方法として、立法政策としては原子力基本法あり、それからまた一般的に言えば、その政策が具現した原子力基本法の精神をくみまして、いわゆる非核三原則というようなことも言われております。まさに政策上の問題としてこれを料理しておるというのが法の意味であろうと私は思っております。しこうして、核の問題について憲法は一切禁止しておるのではないかというふうにいまお考えのようでありますけれども、憲法はどこを見ても核と通常兵器というものを区別しているわけではございませんので、私がむしろ申し上げたいことは、通常兵器であってもいまの限度を越えるものは憲法に違反するというふうに御理解いただければ、その関係はおわかりいただけるのではないかというふうに考えるわけであります。
  148. 野上元

    野上元君 その問題はまたいずれ機会を見て質問をしたいと思います。  時間がなくなりましたので、沖繩返還の問題について総理にお聞きしておきたいと思うのですが、いままで私も新聞をずっと見ておりましてね、総理のおっしゃっておることを書き抜いてみたのです。ひとつ確認しますから、聞いておいていただきたいと思います。  まず第一は、返還までには三年かかる、一九七二年には返還可能だろうと、こういう答弁をされております。それから、本年十一月か十二月に予定される日米首脳会談で決定する。基地の態様は切り離せない、同時決定をするのだ。本土と差別待遇はしない。特別の措置のない限り、安保条約の事前協議を適用することは当然。五は、分割的な施政権返還ではない。基地そのものを施政権の返らない特別地区にはしない。六つ目には、憲法に違反することはない——核三原則の問題とからんで、憲法には違反することはない。国民の反対することはやらない、また私にはそれをやる権限はない。沖繩返還についての国民世論の動向は、本土並みが多数であると判断する。ただし、本土並みといっても、いろいろな形がある。それから、基地の態様についてはいまでも白紙である。しかし、白紙といっても、よほど狭められた。非核三原則は厳守する。日米間で合意されれば解決できる。本土には核を持ち込ませない。核つきの場合には、国民に信を問うことも必要になろう。——こういうふうに、私はあなたの答弁をあげてみたのですが、確認してもらいたいと思います。
  149. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま、よく分析して列挙されたと思いますが、一番最初の問題は、二、三年のうちに返還のめどをつけるということ、それをこの秋に出かけてそういうことをやると、こういうことで、早くってもいついつまでと——それはちょっとどうでしたろうか、いま言われたので。
  150. 野上元

    野上元君 一九七二年。
  151. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあ、これから二、三年のうちにめどをつけると、まあその立場に立って、一番早いときにはその辺になるだろうと、こういうのじゃないかと思いますがね。その他のことは、断片的ではありますが、よく私の話を羅列しておられる、かように思います。
  152. 野上元

    野上元君 あの共同コミュニケですね、あれを見ると、「ウィズィン・ア・フュー・イヤーズ」となっていますね。あなたはそれを二、三年と訳した。それが、あと二年しかないですよねもう、実際問題として。したがって、一九七二年というところが返還のめどになるのかということを聞いておるのです。
  153. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、二、三年のうちに返還のめどをつけるというのが共同コミュニケの趣旨であります。したがって、ただいま、ちょっと私のことばがあるいは足らないのじゃないかと、こう思って、疑問にあげたのはその点であります。だから、いま言われるのは、二、三年のうちに返還のめどをつける——合わして解釈しないといかない。
  154. 野上元

    野上元君 そうしますと、私も、これ新聞記事ですから、必ずしも正確に伝えておるとは思いません。したがって、ここで確認したいのは、一九七二年までには、いわゆる両三年内には返還のめどをつけるということであって、一九七二年に返ってくるということではないということですか。——そうすると、一体いつごろまでにめどを置いておられるのですか。
  155. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまのは共同コミュニケの趣旨、それは二、三年のうちにめどをつける、こういうことでございますから、できるだけ早く私が出かけていって交渉する必要がある。いま私自身、この秋にでも——秋以後といいますか、秋以後出かけるということでアメリカに申し入れをしております。そのうちの一つが外務大臣の訪米する段階になっておりますが、これをも含めてスケジュールを一応アメリカ側に申し込んだ。その第一の外務大臣の訪米、これは日にちがきまりました。したがって、私も、いまのところでは秋十一月、それ以前はむずかしいと思います。それ以後ならば行けると、かように実は考えておるのでありまして、そうしてその際に出かけて行って交渉する、これも二、三年のうちという中に入る。二、三年ぎりぎりでは国民も困る、国民の希望するのはできるだけ早く返還だと、このいろんな条件がございます。それにしてはですよ、無条件即時返還だとか、あるいはその他いろいろありますが、とにかく早く施政権を返してもらう、これが希望だと思います。できるだけその線に沿って私がアメリカと交渉したい、かように考えております。
  156. 野上元

    野上元君 ずばり聞きますが、あなたの言っておられるように、白紙と言っても、もうよほど狭められて、あと一つぐらい筆を入れればいいというような状態になっているわけですね。そこで、その状態をあなたは考えておられるでしょう、ニクソンと会談されるんですから。それをひとつ披露願えませんか。
  157. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ずばりお尋ねでありますから、ずばり答えます。衆議院におきましても、この補正予算審議にあたりまして、ずばり聞かれました。私は、白紙だと、かように答えました。
  158. 野上元

    野上元君 駐日大使のオズボーン大使も、佐藤さんの言っていることはさっぱりわからぬと、こう言っておりますし、国民全体もまたわからないんですね。新聞なんか見ても、全部わからぬ、わからぬで、これじゃ先行き不安だと、船に乗っているんだが、佐藤船長はどこに連れていくのかわからぬ、こう言ってみんな心配して、これはアメリカまで心配しだしたんですがね。これはあなたとしては成功しておりますか。
  159. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 成功しているとか、していないとか、これは別ですが、この問題はたいへん重大なものを持っておる、かように思いますので、この結論を早く出すよりも、あらゆる方面の方の意見を聞いて、しかる上で結論を出すのが当然だ、かように考えております。オズボーン代理大使が私の言うことがわからないとか、いろいろ話を聞いてみますと、日本の新聞が同じように書いてくれていればわかるんだけれども、それぞれの新聞がそれぞれ違う、したがってわからない。私がいまずばりお答えしたように、重大な問題だから慎重に私はとっている。それで、それが白紙だ。またそれも、私がアメリカに行くまでまだまだ半年以上もございますが、その間に私は結論を出す。そういう意味では、あらゆる面の方のお話を聞いておるつもりでございます。ひとり私の仲間ばかりではございませんし、また党内の中にもいろんな議調がございますから、それをまずまとめなきゃなりませんし、また最初から安全保障条約を否定しておられる方の御意見もとくと聞きたい、そういう意味で皆さん方のお尋ねにも実は答えている。いまなら私自身が白紙でございますから、皆さん方も、ひとつ誤らない日本の行き方をいろいろ佐藤に教えてやろう、こういうところでひとつ知恵をつけてもらいたい、かように思う次第であります。
  160. 野上元

    野上元君 私は、白紙なら白紙でいいんですよ。しかし、あなたが言っておられるように、白紙と言ってもほんのちょっとのところだ、あとは察してくれと言っている。だから、察してくれという範囲で、国民のみんなが心配しているんだから、あと半年に迫っている会談だから、この辺で、私はこれをやりたいがどうだと、けっこうだということになれば、それでいいんじゃないか。それをいつまでもあなた手のうちに持っておられるから、われわれが幾ら詰めても、あなたは白紙で結局逃げるんですね。あなたトランプの七並べを知ってますか。あなた六を持っていて放さないわけです。だから、五までは行くけれども、あなた六を持っているから七まで行かれないんですね。将棋でいえば、王さもをポケットへ入れて、それでこっちと将棋をさしているようなものです。それだから国民が全部わからなくなっているんですから、あなたも堂々とひとつ六を出しなさい、王さまを出しなさい、そうしてはっきりしようじゃないですか、どうですか。
  161. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 別にこう握っているようなことがあるわけじゃございません。あけてみてもよろしゅうございます。このとおり何もございません。  そこで、ただいまもお話なんですが、あと一つだとか、二つだとか、かように私はそこまでまだ申しておらないはずです。先ほどいろいろなことを申されましたが、それらのことは私も肯定しました。しかし、あと一つだとか、二つだとか、そんなことは申しておりません。
  162. 羽生三七

    ○羽生三七君 関連。内容ではないんですが、一つ承ります。  私、この前の本会議の質問のときに、この種の重要な問題は時間をかけてねばり強くやりなさい、国民世論を背景にして。もしそれで時間がかかるならば、国民はこれを了解するだろう、こういう質問をしております。だから、両三年がもう一両年になりましたが、この秋かりに渡米されて、ニクソン大統領と会談された際に——内容のことは言いません。これは野上君があとから続けられるでしょう。この秋訪米の際に、二者択一を迫られたときに、一度で解決されるのか、あるいはねばり強く何回でも訪米されて望ましい解決を求められるのか、その辺はどうでありましょうか。
  163. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 羽生君の言われるように、私が最終的に結論を出したら、とにかくその結論が達成されるように、これはねばり強くやるつもりでございます。  また、私がただいままだ各方面の御意見を聞いて、そうして私の最後の案を考えよう、かように実は取り組んでおります。これは申すまでもなく、私の選択いかんは、日本の国に対しましても重大な影響を持つものでございます。最も賢明な選択はどういう方法であるのか、どこにあるか、これを実は私がただいま総理である立場においていろいろあれやこれやとくふうしている、こういう状況でございます。そうして、私は、絶対に一応予定したそういう先入観念から結論を出すというようなことはもちろんしないつもりで、そういう意味で各方面の意見を聞いている、ただいまの心境はそのとおりでございます。これはずばりそのものでございますから、どうかひとつさように御了承いただきたいと思います。
  164. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、秋渡米されたときに、そのときにすべてが解決するということでなしに、何回でもさらに交渉を繰り返すこともあり得ると理解してよろしいですか。
  165. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろんでございます。これはもう私どもがいろいろ前もっての準備もいたしますが、とにかく気に食わないような選択はしない、これが私の考え方でございます。
  166. 野上元

    野上元君 この際、私佐藤さんに注文しておきたいんですが、私は日本の総理だ、国民の反対することはやらない、こういうわけです。あなた自身も国民の本土並みが大体多数だということはわかった。そうして国会の中でも、私の情勢分析した数字を持っているんですけれども、大体核抜きが、いや本土並みが過半数を制していると思うんです。これは佐藤さんの、佐藤施政権下にあるものだから、あるいはひっくり返るかもしれませんが、しかしおそらくあなたが施政権を放棄したら国会の中の多数は本土並みだと思う。したがって、よほど慎重にその問題に取り組まれていただきたいと思うんですが、それでもかつあなたはいまのところは白紙と言われるんですか。
  167. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いまの本土並みということばにも、いろいろな相違がございます。私どもは、日本社会党も日米安全保障条約の体制だけはぜひ承認していただきたいと思います。しかし、これはだめだ、反対だと。だから、そういう方の本土並みは、おそらく日米安全保障条約のない本土だ、かように私は考えますので、どうもそこら辺に基本的な相違がございます。そこらはひとつとくとお考えいただいて、ぜひその基本的な、この条約の基本だけはぜひ御賛成を得たいというように思います。
  168. 野上元

    野上元君 じゃあ、もうあなたは最後まで白紙と言われるんで、まあ、六を握られておるんだからどうにもなりません。私はもういつも感心しておるんですが、吉田学校のあなたは優等生だといわれておるんですが、吉田学校というのはいいところで、白紙さえ出しておけば優等で卒業できる。非常にいい学校だと思いますが、いまの大学紛争をその手でひとつ坂田さんうまく処理してもらいたいと思います。  最後に、これは外務大臣に聞いておきたいんですが、おそらくことしは国連総会がまたあるんですね。そのときに中共加盟の問題が再び議題になると思います。そのときに日本としてはどういう態度で臨むんですか。
  169. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 中共問題、これもなかなかむずかしい問題でありますことはいまさら申し上げるまでもございません。いろいろの角度から検討をしていかなければならないと思いますが、いまお尋ねの国連総会というのも、また相当先のことでもございます。いまからどうということをきめるのは早計ではなかろうか、かように考えております。ただ、私は、こういうふうに考えますが、これは中国問題を離れるかもしれませんが、国連のこの運営のやり方、これが最近では相当小さな問題も重要事項として取り扱っております。これはもっともかと思うんでありまして、単純な多数決方式ということはいかがであろうかと、かように一般論としても考えておりますことをあわせて申し述べておきたいと思います。
  170. 野上元

    野上元君 あなたはこの「ケネディ外交」という本をお読みになったことがありますか。——ないですか。情報局長のヒルズマンの書いたものですが、これの中に重要事項の問題がよく出ていますがね。あなたの言われておるように、いまや中共加盟の重要事項という内容は、中共が国連に加盟するから重要なんじゃないんだと、こう言っています。中共が国連に入ってくることは平和の保障になるんだ。したがって、そのことは好ましいことなんだ、しかし、アメリカが、いま国内がそれを許さんのだという、逆に。この中を、もう時間がなくて引用できませんがね、これを認めればアメリカは脱退するだろうというんですよ、国連を。そのほうが重要事項なんだと、こう書いてある。あなた読みなさい、これを貸しますから。アメリカはそういうふうに重要事項の内容が変わってきておるんですよ。それをいつまでもアメリカと二人三脚で地獄の果てまで行くんですか。地獄の底までつき合うんですか。そんなばからしい話はないじゃないですか。この辺であなたも十分重要事項の問題は小さな問題も重要事項にするんですなんて、そういう外交感覚じゃなくて、もっとひとつスケールの大きいグローバルな立場からやってもらいたいというふうに希望するんですが、どうですか。   〔理事江藤智君退席、委員長着席〕
  171. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 国連に対しましては、私もいろいろ積極的な考え方を持っておりますが、まあ、それは別の機会に譲るといたしまして、いろいろの御意見を真剣に検討してまいりたいと、かように思っております。
  172. 野上元

    野上元君 最後に、これもやっぱり日本の外交の基調になるのでこれは総理に聞いておきたいのですが、ケネディがこういうふうに大統領選挙のときに演説しているんですがね。全人類の大義は米国の大義である、全世界の自由を確保する責任を持っていると、こう宣言したわけですね、ケネディは。ところが、トインビーはそれを受けて、今日の米国は既得利益を守るために戦う世界的反革命運動の指導者である、こういうふうに言っておりますが、どっちが正しいと思いますか。
  173. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも、両方とも私ちょっと理解しかねております。
  174. 野上元

    野上元君 もう時間がありませんのでやめますが、理解しないということになると、あなたはトインビーの功績を認めないということになる。あなたはこの間、勲一等瑞宝章か旭日章をトインビーに贈ったじゃないですか。あれ取り消したらどうですか。  私の時間がないからこれでやめます。
  175. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 以上をもちまして野上君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  176. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 次に、梶原茂嘉君の質疑を願います。梶原君。
  177. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は、ただいま提案されておりまする四十三年度補正予算案の中で、三百七十億ですか、食管特別会計へ繰り入れをするという事柄に関連する問題に一応しぼりまして五、六点お尋ねをしたいと思います。  第一は、従来論議になっておりました総合予算方針の問題であります。昨年初めてその方針がとられました。当時財政硬直という事柄が一応基調になっていろいろ検討されたわけであります。その趣旨としては、先ほど来大蔵大臣説明されましたように、われわれ十分納得ができる筋道であります。ところが、今回、原則的には補正をしないというたてまえが補正をするということに相なったわけであります。それをとやかく申し上げるわけではない。食管の関係で変化があって経費を繰り入れるということは、これは一つの制度上当然の義務なんでありますから、ほうっておくわけにはいかない。したがって、それをとやかく論及するつもりはありません。ただ、一体その原因がほんとうにどこにあるのであろうかいうこと、それを、先ほど来お話しありましたけれども、もう少し私は伺いたいと思います。それは、あの方針自体と食管制度なり食管特別会計の性格との間に原因があったのか、あるいは、食管特別会計自体にあの方針を十分受け入れるだけの用意が欠けた点があったのか、いろいろ私はあろうと思います。その点をひとつお伺いしたいということが一つ。  それから、この年度も余すところわずかになりました。過去一年間をひとつ大蔵大臣として振り返ってごらんになって、総合予算方針というものの成果をどう評価をするか、具体的にどういうメリットがあったのか、どういう効果が現実にあったのか。あるいは、効果だけでなくて、逆にマイナスの要因をつくり出すというようなことがなかったのかどうか。率直にどう評価されるかということをお伺いしたいと思います。
  178. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回食糧管理特別会計への繰り入れという補正をするに至ったのは、ひとえに、これはまあ予想いたしたよりも多くの数量政府によって買い入れられた、この一点にあると思うのであります。  それから、この総合予算方針というものを回顧してその利害得失いかんというのですが、この方針で、別に私は害というか不利益になったという面は見受けられません。まあ、よかったと思いますのは、やはりこの方針によりましてほんとうの意味総合予算が編成された。そこで、国政全体がバランスのとれた形で編成された、そこにあると思うわけであります。したがいまして、こういう二百万トンにも及ぶ異常な政府買い入れ米の増加というような事態がなかったならば、補正予算も組まずに済めた。かようなことをかえりみまするときに、今後もこの方針は続けてみたいな、こういう気持ちを持っております。
  179. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 第一点の原因が、二百万トンの買い入れの増加は異常な数字であって予測することが困難であるというようなお話であります。これはいろいろな考えようがあろうと思います。一昨年の秋から昨年の春、ちょうど予算編成時分に、大体次の作柄はどの程度になるかということは異常なる関心を持たれた問題であります。三十二年に続いて、あるいはそれ以上、作が上回るのではなかろうかということも、十分予測の中には入っておった重大な問題だ。しかし、御承知のように、従来の計算方針でいけば、生産高は平年度をベースとする。それはこれまでずっとやってきたことであります。平年度をベースにすれば数量に食い違いが起こってくるのは当然の話で、平年作ぴったりいくということはあり得ないわけであります。最近は、しかし、非常に生産が伸びてきておるということは、これはもちろんはっきりした事実である。総合予算方式をとる以上、そういうことに対する相当の用意がなくちゃなるまいと思われるわけであります。まあ、買い入れ数量に伴う資金の問題につきましては、予算総則の弾力条項がある。それはそれで解決つく。問題ない、反面、余備金が千五百億ですか計上された。まあ、千五百億の私は積算の基礎は知りませんけれども、かりにあれを、相当作が上回ることもあるべしという予想で、総合予算方式で補正を組まないという方針に即応して、かりに四百億ふやしておけば、この問題はなかったのじゃないか、こう考えるわけであります。私は、あの二百万トンがどうこうということには、そう実は大きなインタレストを持っていないわけであります。むしろ、食管制度なり食管特別会計のあり方自体、それと総合予算方針ですね、それとの間にやや性格的な相違があるというところに問題があるのじゃないかと、実は私は見ておるわけであります。この問題はあとでも触れると思います。  それから、これは当時、同時にいろいろ論議された点でありまして、財政硬直化というけれども相手があるのだ。相手はしょっちゅう毎年補正予算で年末苦労をかけるのだ——一般会計から言えばですよ。そのAグループは食管特別会計にある。あるいは人事院の給与改訂の制度のあり方とか、地方財政との関連の問題とか、医療保険制度とか、こういう制度自体が、硬直化と言わないけれども、必ずしも正しい姿ではないのじゃないか。これを直していかなければならない。それを直す一つの役割りを総合予算方針は買って出ておるのだというふうなこともしばしば言われたのであって、それはあながち見当はずれとも思わなかったわけであります。だから、たとえば当時の経企長官の宮澤さんは、これは彼の私見であったけれども、米に限って言えば、生産者米価、消費者米価は今度は据え置こうじゃないか、据え置いて、そうしてその間そういう基本的な問題を冷静に再検討しようじゃないかという提案を出されて論議を呼んだことは御承知のとおりであります。そういう構想を私はいい悪いを言うわけじゃない。それと関連しながら、あのときの総合予算方針を採用する考え方考えあわせますと、一応の意味合いというものをそれなりに見出すことができるわけであります。ただ、その数量がどうこうとか、だから補正を組むのだとかどうこうというふうに原因を見ることはいささか見方が狭いのじゃないかと私は思います。それはお答えを求める気持ちはありません。  それから、評価の問題でありますけれども、これはいろいろあろうと思います。今度の補正総合予算方針の破綻を示すものかどうか、そういうことは別といたしまして、評価の点になりますると、必ずしも私はプラスだけではない。どこにプラスがあったか。たとえば昨年の生産者米価、消費者米価のあの問題をめぐって総合予算方針というものが若干の役割りをしたかもわかりません。どういう役割りをあのとき果たしたか、それを探求しろと言っておるわけではありません。ある見方によれば、あれはプラスであったという見方もありましょうし、見方によれば、ああいう制約をこういう方針によってつくるということは、これはよろしくないという見方も、ある意味であり得るであろうと思います。ただしかし、現実の経過をずっと見ますと、若干マイナスがあった点はいろいろあると思います。たとえば、あとで申し上げますけれども、三月になりますると、古米の処理の上で、春になってくると、相当その実態にあったひとつ措置をしなければいけない。価格も現実に下げなければいけない。扱い量といいますか、そういうものも減らさなければならない。それは当然の私は考え方だと思います。しかし、新米、古米の価格の差をつけることになってくると、いや、総合予算方針というもので押えられておるので動きがつかないであろうというようなことがしばしば昨年からいわれてきたわけであります。これは大蔵省から見れば、それはプラスだと当然言われるかもわからないけれども、冷静に実態的に見れば、私は必ずしもプラスとは思われないのであります。相当すなおな姿、実態がやや窮屈にゆがめられるというふうな事柄が現象的には少なくなかったように思うわけであります。しかし、これは筋の合ったことで、とやかく言いません。ただ、そういう原因なり実態をはっきりしていくということは、来年度予算に関連して、大蔵大臣も総理も、総合予算方針というものを断固続けていくと、こういうことをはっきりされておるわけであります。われわれは、まあ財政硬直が中心にあった昨年のあの時分の予算をめぐる内外の情勢と現在とでは、相当大きく変わってきているんで、財政硬直と言ってみても、一般国民はすなおにそのとおりに受け取るわけでもあるまい。まあ、いろいろ考えてみると、新しくそういう方針を打ち出すことはむしろ適当とは言い得ないであろうというような考え方を実は持ってきたわけであります。ところで、食管特別会計の来年度予算の立て方あるいは需給計画等を見ますというと、これは、実にたんたんとした普通の従来の考え方がしんになっているわけであります。無風状態のもとでこう数字を並べたような感じがいたします。ところが、御承知のように、新しい年度における食管制度、食管特別会計の内外をめぐる情勢というものは非常に大きな変化が予想される。的確な予想をつけることは非常にむずかしい。第一、生産の調整が行なわれる。こういうものですね。その結果がどういうふうに出てくるか、なかなかこれ大きな問題でしょう。それから、新しく自主流通の路線が廃止される。これも、いまだかつて経験したことのない問題であって、それがどういうふうに動くか、これも食管制度自体の知らぬことであります。さらに問題は、巨大なる過剰の米をかかえておるわけであります。これは、もう申すまでもなく、生きものですから、その毎日毎日、一日が変わっていくわけであります。かつてない巨大な古米を含んでの過剰米をかかえているわけであります。しかも、配給制度の上でも公定価格制度を改廃しようとか、従来の流通の仕組みをひとつ大きく改革しようというようなことも考えられておるわけであります。異常な一つの変化が予想される来年度食管制度を対象にしまして、そして片や総合予算方式、こうなっておるわけですね。そういう変化に対する何らかの用意が来年度食管特別会計の中に用意されていれば、これまた話は別だけれども、どうも、見渡しても、そういう用意の片りんを見出すことがちょっとむずかしいようであります。はたしてこれで総合予算方式ということで円滑に的確に処理が進んでいくことであろうかとなると、私には不安が出るわけであります。そういう点を、一体大蔵大臣は、総合予算方式、方針を堅持される上においてどう考えておるのだろうか。一般の財政の観点で、総合予算方針というのはそのままでけっこうだと思うのですよ。しかし、具体的な需要量の対象と照らし合わせてみると、なかなか四十三年度におけるこの方針と四十四年度における方針は、相当私は違ってくるのじゃないか。一体、新しい総合予算方針というものの考え方なりねらいなりは那辺にあるのかということをひとつお示しを願いたい。
  180. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほどの申し上げたことに関連しますが、食管制度を運営していく上において食管特別会計というものがありますが、これも二つの面を持っているのです。一つは、買い入れ並びに売り渡し、こういういわゆる国内米勘定と呼ばれる食管の業務部面であります。これに対しましては、先ほど申し上げましたように、予備費も大増額をしております。弾力条項も持っておる。また、買い入れの財源としては糧券の発行限度も拡大してある。この方面において、昭和四十四年度において補正要因というものはないのであります。ただ問題は、損益勘定といいますか、調整勘定におきまして損失が、赤字が出るか、こういう問題でありまするが、総合予算のたてまえからいたしまして、この方面におきましても、食管会計への繰り入れ、つまり、一般会計から調整勘定へ五百億かなりこえます、四十三年度よりも。増額いたしまして繰り入れをする。つまり、三千一億円にも余る食管経理をいたすわけでありまして、ただいま政府といたしましては、生産者米価も消費者米価もこれを据え置く、こういう方針をとっておりますが、この前提のもとに食管に赤字は生じない、こういう見解をとっておるわけでございます。私は、昭和四十四年度におきまして非常に異常な事態というようなことがない限りにおきましては補正なしでやっていける、かように考えております。
  181. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 異常な事態がある程度予想されるのではなかろうかというのが私の質問であります。数字的にはお話しのとおりであります。三千一億の内容を見ましても、大体平常の場合における計算が基礎になっているように思います。その異常が予想されるということと関連いたしまして、次の問題に移りたいと思います。  それは古米の処理の問題と米価の問題であります。御承知のように豊作が続きまして、その他いろいろの原因で現実相当大きな古米を食管特別会計は持っておるわけであります。現在でも二百万トン近い一昨年の米を持っておるわけであります。来年はおそらく古米、古古米等を合わせましても五百万トン以上の古米を持つことと計算されておるわけであります。まずそうなるであろうと思います。ところが、これを従来のように冷静に、ずっと配給の場で載っけて進めていけば、それが順調に消化されていけば、大臣の言われるように、まず心配はないという結論に当然なるでしょう。しかし、現実の問題として、それが円滑にスムーズに配給のルートでいまの価格で処理されていくであろうと考えごとは決して常識的じゃない。むしろ非常識だと申し上げて差しつかえないのであります。したがって、その面におきましても相当の私は計算上の食い違いが起こってくるはずだと思います。ところで、これは農林大臣にお願いしたいわけですけれども、もう率直に言えば、この三月——来月もいまの配給量の新古の割合いを変えなくちゃならない。また、一月から一%の歩どまりの是正がありましたけれども、三月になりますと、品質的にも急激に痛んでまいります。それらに対する措置もあわして考えなくちゃならぬ。いわんや、四月以降は、四月以降、前年、一昨年の米を新しい米と同じような考え方で処理をしていくという考え方は、これは許し得ないと思うのです。また、現実許されないと思います。だから、どうしてもこれは扱い量にいたしましても、強制的な配給のワクからははずすべきだ。消費者に希望配給をしていく。同時に価格を大幅に下げなきゃいかぬ。これは当然のことだと思います。それらの多量にある古米の処理についての考え方方針というものを、現実に即した、無理のない計画を立ててもらいたい。現在できておる計画は、おそらく数字が冷静に並んでおるだけで、そのとおり実行され得るであろうと考えてはおられないと思います。しかし、実行上はひとつ実際に即した計画というものをぜひつくる必要があろうと思うわけであります。価格の問題も、三月三十一日現在で食管特別会計においては評価が行なわれる。民間で言えば、たなおろしをするわけであります。それは法律上は「時価による」とある。時価による。しかし、時価というものは現在どこにもない。政府の払い下げが時価なんです。それが基準になる。それはこれまでの価格そのままであります。それが一年間続く計算になっている。そうですね。——一体、そういうことが続けば、大臣の言われるように心配ない。しかし、続き得ない。大蔵大臣も、農林大臣も、総理も、生産者米価、消費者米価を据え置くと言っておられる。そのことはよくわかるのですよ。しかし、それと別に、古米なり古古米になってくれば、それに応じた価格というものを下げていかなきゃならない。据え置きじゃない。下げていかなくてはならないと思うわけであります。おそらく、それは据え置くんだという趣旨じゃ私は毛頭ないと理解をするわけであります。古米の処理についての基本的な考え方等についての農林大臣なり大蔵大臣考え方を伺いたいと思います。
  182. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 古米の処理につきましては、根本的には、需給の均衡をどういうふうにとるように進めていくかというような問題がございますが、現実に大量の過剰米をかかえておるのでございます。私どもも、これを国内の食糧の需給の調整にできるだけ役立たせるようにいたしたいという気持ちと消費の維持をはかってまいりたいというような考え方とをもちまして対処いたしたい。御指摘になりました三月以降の新古米の配給比率につきましては、ただいま政府内部で検討中でございますが、できる限り早期に適切な決定をいたしたいというふうに考えております。なお、七月以降は二度のつゆを越すことになりますので、その時期にあらためて方針をきめたいと思っておりますが、これほど大量の米を長期に持ち越すということは、かつて経験のないことでございますので、今後慎重な態度で検討いたしたいというふうに思っております。
  183. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 一般的には苦労して古米を消化していくこともやむを得ないかもわからぬけれども、同時に、新しいいい米が倉庫で古米化していく。これはどうも愚かなことじゃないか。古米を食えば問題は解決するかといえばそうじゃないので、かえって消費が減る。いい米は倉の中でだんだん悪くなっていく。どうもこれは愚かじゃなかろうかというきわめて素朴な感じを持っている向きが多い。あながち私は無理だとも言えないのであります。十分お考えをいただきたいと思います。それから、こういう過剰状況が長く続くとは思えません。しかし、現実五百万トン以上もの古米なり過剰の米がある。これをひとつどう処理するかということは、私非常に大事な問題だと思うのです。これにはひとつ総合的な立場で、ひとり農林大臣の責任だけではないと思いますので、内閣全体の問題として検討を早急にされたいと思うのであります。  それに関連して一、二伺いたい。先ほども沖繩の問題がありましたけれども、沖繩の同胞百万人、これがやがて本土に復帰する日は、総理の御努力によりまして、私はそう遠くないと思う。いま沖繩の県民は、アメリカとか豪州の米を供給されていると思います。何とか、量は百万人ですから、大きな量とは言い得ないかもわかりませんけれども、努力をして、内地米を供給するという切りかえをひとつ行なわれたらどうであろうかと思います。農林大臣でありますかどなたですか、お答えを願いたいと思います。
  184. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) お答え申し上げます。琉球政府におきましても、本土からの米の輸入を要請しております。大体沖繩におきましては、年間九万トンぐらいの消費があり、お話しのごとく、加州米、豪州米等を輸入しておりますので、これにかえるということについて考えるべきだと思っております。ただ、現在沖繩の消費価格と本土の米の消費価格と差がありますから、これを調節しながら検討いたして、前向きにこの実現の方法について検討している最中でございます。
  185. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 昨年でしたか、日本もケネディ・ラウンドに関連しての穀物援助協定、あれに参加したわけです。当時わがほうはややこの問題について消極的な態度をとってきたと思います。したがって、参加についても若干の留保をつけたと記憶をいたしております。しかし、私は当時から、できるならばというんじゃなくて、むしろ、わがほうにゆとりがあるんだから、内地米をこの義務の履行に回すべきだ、その努力をすべきだという提唱をしておったわけであります。いろいろ困難な事情はありましょう。しかし、アメリカの余剰農産物の歴史じゃありませんけれども、やはりそういう面で努力をすることが、どうせ赤字が出る、その出るべき赤字を有効化するという、有効な赤字にするという意味で将来を考えてもいい機会じゃなかろうか、かように思うのでありますが、外務大臣のひとつお考えを伺いたい。
  186. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは梶原委員もよく事情を御承知のことと思いますので詳しくは御説明いたしませんけれども、一つは価格の問題がございます。それから、嗜好の問題等もございます。そのほかいろいろの問題があります。それから、開発途上国に対する食糧の援助というものを国際穀物約定の中に入れて考えることはいかがであろうかというような考え方等もございまして、一九六七年の国際穀物援助条約の第二条を留保しておるというような関係も従来あったわけでございます。そういったような点も十分慎重に考慮しなければならないと思います。また、開発途上国に対する援助ということになりますと、実は米その他の増産をそういうところでやるということに援助するということもまた一つの政策かとも思います。それらいろいろの関係を合わせまして、しかし、ただいま御指摘のような事情でもございますので、なお、状況の変化に応じて慎重に検討することにいたしたいと、こういうふうに考えております。
  187. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 おそらく外務大臣の御答弁はそういうことであろうと思います。海外に出すというと、すぐ経済的な価格の問題、品質の問題、こういうことに、その他の困難な事柄もございます。しかし、かつて——だいぶ前ですけれども、昭和八年わが国が相当過剰米をかかえたときの政府は、最大努力をして海外の輸出をやりました。いま、それじゃあ国内に置いとけば経済価値がずっと持続できるかというと、そうはいかないと思います。したがって私は、どうせ出る赤字であれば、その赤字を有効にしたらどうだろうかという提案をしておるわけでございます。ひとつ積極的な御努力を期待をするわけであります。  それから、やはり飼料化の問題も、これは飼料の問題は総合農政からも重要であります。ここにもひとつやはり研究をし、テストをしていくだけの努力があるべきだと思います。  それから、新規用途の開発ということも以前はずいぶんやったのであります。あれから相当技術も進んでおりますし、たいした予算ではありません。これも政府努力いかんによっては、ある効果があがる。これはひとつぜひおやりをいただきたい。農林大臣にお伺いするわけであります。
  188. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 飼料化の問題に関しましては、いずれにしても、食管制度が昭和十七年にできまして今日まで、古米化というようなことに出くわしたことがないわけでございまして、でありますから、こういう点についてはどういうふうに処理するかという点については、何といっても食糧管理という問題は国民の食糧確保というのが前提であり、それが基本になっております。したがって、そういうものが出たときに何とか考えなければならぬというように思いますけれども、もうそろそろそういうものが出るというような予想になるならば、大いにその点についても研究をしていかなければならぬ。したがって、後段の輸出の問題でございますが、できる限り——たとえば韓国へもお話を申し上げ、この間は、いま外務大臣からもお話がございましたが、琉球政府からもちょっとお話が、つい最近、二、三日前にございましたので、それらに関しては十分検討を加えてその処理に当たりたいと考えております。
  189. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 大臣のお話しのとおりであります。しかし、現実にある過剰米は、従来のやり方によっては処理ができない。これは明らかであります。それで、そういう必要はもう差し迫っております。早いほうがいいのであります。ひとつ促進をお願いしたいと思います。どうしても現実にある過剰米の処理をひとつ総合的な計画でお立てをいただきたい、立てるべきじゃないかというのが私の意見でありますけれども、総理のひとつ御見解を承りたいと思います。
  190. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私もただいま梶原君のお話を聞いていて、しごくもっともだと思っております。積極的にやはり取り組んでいかないと、またこのことが非常に生産者である農家にもこの処置いかんが非常な影響を与える。それを不安ならしめる、動揺さしてはいかぬ、かように思いますので、生産者が不安を感じないような、さような処置でできるだけのことをしたいと、かように考えます。
  191. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 生産者はむしろ安心をすると思います。生産者を安心させるためにも、巨大な過剰米についての特別の措置をとるべきであろうと思います。  それから次に、これはかつて大蔵大臣にお伺いしたことがあるのでありますけれども、こういう情勢に差し迫りますると、やはり現行食管特別会計法の改正といいますか、あるいは別途臨時措置的な特例法を出すか、これまでのドッジ・ライン方式の、単年度ですべて処理をするというやり方を基礎とした現行食管特別会計法ではやりづらくなるかと思います。大きなどんぶり勘定になってしまうわけです。やはりひとつ特別会計法自体も再検討をすべき時期だと思います。御意見を承りたいと思います。
  192. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 御質問の趣旨を正確に把握いたしませんでお答えすることになるかと思いますが、食管法あるいは食管特別会計法の改正という点、御指摘から推測いたしまするに、単年度予算では現在のような需給事情のもとでは会計の運営がむずかしくなるのではないかというような御質疑かと思いますが、本来食糧管理は、米穀年度区切りをもって需給計画をするわけでございまして、会計年度は両米穀年度にわたる会計を経理をしておるというようなことに相なっております。その限りにおいては、現在のやり方も、連続した会計の運営としては、私はそう不備はないと思うのであります。なおまた、御質疑から推測いたしますと、過剰米の勘定の独立というようなことも御示唆の中にあるかと思うのでありますが、この問題は、将来の需給関係が長期的には均衡するという時期になれば、私は検討に値する事柄であろうと思いますけれども、現段階のように、年々過剰が発生するというもとでは、独立した会計のいま運営がむしろこの際あるいは困難であるということになるかと思いますので、今後なお検討を続けたいと思います。
  193. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 御検討をお願いいたします。  それから最後でありますが、自主流通の新しい政策が発足するわけであります。それはわれわれこれまで経験したことのない新しい路線であります。食管制度から言えば、大きな変革を意味します。したがいまして、これを発足するにつきましては、相当十分な、かつ、慎重な準備が要ると思います。その中で特に金融の問題が大事だと思います。従来政府がほとんど一〇〇%近くやっておったわけであります。しかし、自主流通の線としては、どうしても財政資金の活用ということも、集荷の面においては必要かと思います。しかし、広く流通販売の面から言いますと、やはり商業金融ベースの中に道を開いていくということが私は妥当ではなかろうかと思うのであります。で、そういうことに、ある準備の上で、政府としてその責任で、その道をつけていくということがどうしても必要だと思います。農林省、大蔵省ともいろいろ御検討のようでありますけれども、ぜひこれは大臣としても推進をしていただきたい、こう思うわけであります。  それから最後にもう一つ。これは直接過剰米だからどうこうということを申し上げるわけではありません。文部大臣にひとつ御検討をお願いしたい問題でありますが、学校給食の問題であります。私は決してパン食を非難し排撃する気持ちはみじんもありません。ただ米食と日本人あるいは日本の風土というものは、長年にわたって、また、予想される将来もこれは切り離すことのできない問題だと思います。したがって、学童、学校の給食につきましても、頭から、ともかくだめだというのではなくて、やはり米を使っていくということは、これはむしろ私は本然の姿であろう、こう思うわけであります。学校給食を私は教育そのものだと思うのです。教育そのものだと思う。それを海外の麦だからいかぬというわけじゃありませんけれども、やはり本然の姿で、できる限りお米を使っていくということが教育そのものから見て大事じゃないかと思います。現在の教育の制度全体に一つの混迷がきている。教育制度全体の検討が必要である。やはり学童給食のいまのあり方あたりは、今日の教育に生じておる混迷の一つの原因であるかもわからないという感じもしきりに最近するのであります。文部大臣、いろいろ御多用のところ恐縮でありますが、大事な教育の問題としてひとつ今後御検討をわずらわしたいということをお願いするわけであります。よろしくお願いいたします。
  194. 長谷川四郎

    国務大臣長谷川四郎君) 自主流通米というのはほんとうに米の新しい——流通仕組みの中で初めてやることでございまして、これを円滑に実施するためには、周到な用意や配慮が必要であろうと考えます。特に御指摘の資金の面につきましては、われわれ相当検討しなければならない問題と考えております。十分この面については検討を加える考えであります。さらに、学校給食の面に対しましても、いろいろ給食費というような面もございますし、さらにそれに対するところの炊飲器の用意が要るとか、あるいはそれにかかる費用が高まりますものですから、それらには、いま文部省ともいろいろ話し合いをいたしまして検討を加えておるところでございます。
  195. 坂田道太

    国務大臣(坂田道太君) 梶原先生の御意見まことに貴重な意見だと拝聴いたしております。十分慎重にただいま保健体育審議会において検討いたしておりますので、それを含めまして検討をいたすつもりでおります。
  196. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 以上をもちまして梶原君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  197. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 次に、木村美智男君の質疑を行ないます、木村美智男君。
  198. 木村美智男

    木村美智男君 私は、午前中の本会議の質問の総理以下の答弁と、先ほど先輩の野上委員の質問に対する関係大臣の答弁に関連をして、補正予算の問題で、まずお伺いいたします。  先ほど私は、やはり総合予算主義というものはこれは崩壊をしたのじゃないか、こういうふうに申し上げたにかかわらず、異常事態には補正予算があり得るのだ、こういうふうに答えてきたので、言ってみれば、史上最大豊作ということがあったので、これはまあそうなっちゃったんだと、こういうお話。で、私は、この点は一体収穫高をどういうふうに見ておったのか。これひとつお伺いしたい。
  199. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 四十三年産の米の収穫高は、先ほど申し上げたのでございますが、四十二年の作況が一一二%というような異常な作況でございましたために、平年反収の理論的算定方法が、予算要求の当時には農林省でもまだ確定をいたしてはいなかったのでございます。でございますので、前年の四十一年が千二百七十四万トンということで、ちょうど当時の傾向による平年反収に戻ったという年でございましたので、そのときにおける実収並びに政府への売り渡し量というものを前提予算を組んだのでございます。
  200. 木村美智男

    木村美智男君 四十一年度の収穫高が千二百七十四万トンということであったということですから、多少その買い入れ量の見込み違いができたかと思うのですが、しかしこれは、単に見込み違いと言ってるけれども、もう一つ政策的な動きとして、政府が統制を撤廃する撤廃するというようなことをよく言うものだから、したがって、いままでやみ米で流れておったやつが急に食管のルートに乗った、こういうようなことで、この四十三年度買い入れ米に集中をした、こういう点はどういうふうに考えられるか。
  201. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 生産量と政府買い入れ量との関係は、いろいろな変動要因があるわけでございます。第一は、農家人口の移動でございまして、これが都市へ移動が多くなりますと、配給人口の増ということで、結局保有量が減るということに一つは相なります。で、いま一つは、民間在庫の変動によりまして、二年続きの大豊作というようなことになりますと、民間在庫の減少があるいは起こるのではないか。これはかなり時間がたちませんと推定ができませんが、そういうこともあり得る。それからやはり何といいますか、農業団体等が政府への集荷を促進するようなムードを盛り上げるというようなことが影響しないとはいえないと私も思います。
  202. 木村美智男

    木村美智男君 そうすると、やはり異常事態というようなことではほんとうに正確に説明をしてない。やっぱり米の生産の大体趨勢というものをよく把握をしてやっていけば、こういう問題は少なくとも起こらなかった。それを全面的に天然現象というか自然に罪を負わせるというようなことで実は言いのがれをするというのは、これはきわめて私は責任ある態度とはいえないのじゃないかというふうに思いますので、この点はもう一度これは明確に答えていただきたい。
  203. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 政府への売り渡し量の変動要因にいろいろなことがあるということを申し上げたのでございますが、根本的には生産量の変動に出るものであると私どもは理解せざるを得ないのでございます。四十一年が、先ほど申し上げましたように作況は大体平年反収——平年作に戻っておるということでございまして、その前が、作況は九七%、九九%というようにさかのぼる数字でございまして、そのあと四十二年が急激に一一二%という作況を示したのでございます。でございますので、私ども故意に生産量を低く見積ろうとしたわけではございませんで、当時の四十三年産米の推定としては、やはり四十一年までの傾向的平年反収、あるいはそれに基づく平年作の収量というものを前提にすることは、私は行政的にはそれ以外にはなかったのではないかというふうに思うのでございます。
  204. 木村美智男

    木村美智男君 いずれにしても、とにかくまあ相当入る量がふえたということでありますから、この点は、それはそれとしまして、大蔵大臣に伺いたいのですが、本会議のお答えでも、引き続き総合予算主義のたてまえはやはり堅持するのだ、こういうふうに言っていますが、補正予算を出しちゃったら、これは引き続きにならないじゃないですか。——つまり補正を組まない方式が総合予算主義なんで、したがって補正ということがそこに間にはさまれば、引き続いて総合予算主義を堅持するのだということにはならぬのじゃないかと、こう聞いておる。
  205. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ総合予算主義のたてまえからいきますと、まず大かた補正予算ということはないのが普通でございます、これは。しかし、しばしば申し上げておりまするように、年度の途中で行政需要の変化なんかに応じまして組みかえということはあり得る。それから、異常な事態がありますれば、あるいは非常なことがありますれば、増ワクの補正ということもあり得る、こういうことは申し上げておるのであります。いま、今度は補正予算を組んだのだから、四十四年度はそこで中断されちゃって、総合予算ではないのじゃないかというお話のようでございますが、四十四年度におきましても総合予算方針はこれを貫いてまいりたいと思います。つまりいまの米の問題にいたしましても、まあ五百五十億円になりますか、前年度よりもよけいに繰り入れをいたしまして補正要因をなくす。それから給与につきましても、あらかじめ人件費を各費目に五%ずつ組み入れる。また予備費にも若干の財源を持つというようなことにして、これも補正要因をなくす。その他義務費につきましてもそう窮屈にならないような考え方予算が編成されておる。そこでまあ大体異常、非常のことがなければ、四十四年度において補正は予想されない、かように考えております。
  206. 木村美智男

    木村美智男君 今後前例としないというふうに先ほども答えられた。そこで、前例としないようなことをやったということは、これはやっぱりそこのところは、大臣自身も答えられながらすっきりしないのじゃないかと思う。  そこで、私、四十三年度予算編成方針という、おととしの十二月二十九日に閣議で決定をされた事項が一つあるわけですね。それは四十二年の十二月二十九日、「総合予算主義の採用」という、これを読んでみますと、これは大蔵大臣、なんと言いわけをしてみても、これは総合予算主義はくずれたのじゃないかと解釈する以外に解釈のしようがない。総合予算主義の採用という項目は、「総合予算主義の原則により、公務員給与改定に備えて予備費の充実を図るとともに、」つまり公務員給与のほうは予備費でまかなうのだ、こう言っているわけですね。「食糧管理特別会計繰入れについては、年度途中における米価改定等、」となっておる。価格だけじゃないんですね、これは。価格だけじゃなくて数量も含まれる、「等」となっている。「事情の変化があっても、これにより補正財源を必要としない方式を確立する。」こうなっているわけです。これはきわめてこの予算編成方針を見ると明瞭なんです。したがって私は、年度途中におけるどういう事情があっても変えないのだと、こういっているのだから、ここはひとつ補正を組んでいるのだから、まあ来年も考え方はいわゆる総合予算主義というものはとっていくのだろうけれども、今年度一年にしてすでにこれは破綻したのじゃないかというこの事実は、補正予算を出したことによってこわれたという事実だけは、これは大臣率直に認めてもらわなければいかぬ。そのことと、来年度また引き続いて総合予算主義考え方をとっていくということとは、これは別問題である。いかがでしょう。
  207. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど私が、これをもって前例といたしませんと、こう申し上げましたのは、補正予算を組むことをもって前例としない、こう申し上げたのじゃないのです。これは衆議院の予算委員会で、食管会計の補正を組まないのはけしからぬじゃないか、こういうお話がありました。それに対して、組まないたてまえをとりましたが、これは前例にいたしません、皆さんの御意見もありましたから、まあよく私ども検討いたします、と言ったのです。それとこれとは別だということを、ひとつまず申し上げておきます。  それから、四十三年度財政が、総合予算方針がくずれたのか、それから予算編成方針に照らしてそうじゃないかと、こういうお話でございますが、私手元に、ここに予算編成方針を持っておりませんけれども、編成方針には、「恒例的な」補正予算を廃止する方針のもとに、こう書いてあるはずであります。「恒例的な」、つまり、いつものように気安に補正予算を組むというような考え方じゃいかぬ、こういうことで、米価に対しましても、給与に対しましても、それぞれ対策を講じてまいりますと、こういうことなんです。ところが、異常な事態が起こった場合、この予算編成方針におきましても、異例な事態に応じて、補正予算を編成しませんといっているわけじゃないのでありまして、それじゃ財政立って行政立たずと、こういうことになりますので、そんなことを考えているわけじゃない。昭和四十四年度において私が総合予算方針を堅持しますと言っているのも、またそういう趣旨であることを御理解願いたいと思います。
  208. 木村美智男

    木村美智男君 大臣、だから食管に対する補正については、本来ならば従来と同じようにこれは補正をすべきだ、しかしあなたがいまいみじくも言われているように、この編成方針の中でこういうことが書いてあるから、実は食管に対する補正をことしは出せなかったのだという解釈というのは成り立つでしょう。そこを私は言っているわけなんです。だから、そうでないならないと言ってもらいたい。
  209. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 食管会計につきましては、四十三年度から、予備金もふやします、また弾力条項も強化いたします、それから糧券の買い入れ限度も引き上げます、年度の途中で買い入れ数量がふえましても、いかようにも対処し得るような仕組みになっておるのであります。しかしそれは、業務の勘定というか、国内米の勘定の部面でありまして、損益、つまり調整勘定のほうではそうはなっていないのであります。損益勘定においては、かなりの一般会計からの繰り入れをいたしますので、まず大体いけるだろうという見当だったところ、数量の増加ということで赤字が出る、そこでやむを得ず繰り入れをせざるを得ない、こういう事態になったわけであります。さような関係であります。
  210. 木村美智男

    木村美智男君 これでばかり時間をとっては何ですから。ただ大臣、四十三年度補正というやつは、四十四年度予算編成前に、先ほども、大体見当がついてきたのですから、本来ならばこれはやはり国会に提出をして、そうしてこの審議議決を求めるということが筋でしょうね、この点を。
  211. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 本来というか、いままでの慣例で言いますと、もう十一月ごろ補正を、あるいは十二月ごろ補正を組むという状態であったわけです。でありまするけれども、昭和四十三年度におきましては、国民健康保険のほうで三百億くらいな不足が出る、また食管のほうで三、四百億くらいの赤字が出る、こういうことがその時点で予想されたのです。しかし、まあ総合予算主義ということは、補正はなるべくないほうがよろしいという考えでもありまするから、何とかしてひとつ補正——増ワク補正なしでやってみたいという考えのもとに努力を続けてきたわけでございますが、その努力予算の、昭和四十四年度予算の編成の時期もまだ続いておったわけであります。まあ、それが済んで、一月の中旬ごろになりますと、どうにも、もういろいろの努力をしてみましたけれども、米——米は三百七十億、結局出るんです。しかし、そのうち百二十億円は歳出の節約を財源として充当できる。しかし、二百五十億円、まあ残念ですか、どうしてもこれをまかなうことができない。そのゆえに、今度補正予算というものを組まざるを得なくなった。そういういきさつになっております。
  212. 木村美智男

    木村美智男君 だから、総合予算制度をとる以上は、補正を組まない努力をするということは、これはまあ当然だと思うのです。ただ申し上げているのは、そういう組まなきゃならぬような事情にあって、組まない努力をしているという、そういう事情というものを——実は本来なら補正予算を組んで承認を求めるのだけれども、そういう努力をしているなら努力をしている過程で、やはり当然、今日こういう事情にあるということは、大臣、四十四年度予算の提案説明もやったわけですから、そういう状態のときに、その程度の趣旨を説明するか、あるいは補正予算をことによったら組まなきゃならぬと、これぐらいのことは、当然私は国会に対して言うことが、まあ誠意ある態度であり、国会を軽視したとか何とか言われないという立場から言っても、たいへん大事なんじゃないか、この点。
  213. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのことは、昨年十二月の臨時国会でしばしば申し上げております。総合予算とは言いましても、これは補正はなるべく少なく、まあ、ないようにしたいという趣旨でございまするけれども、ことしの状況は、米が非常に収買がふえてきた。この状況に対しては既定予算でまかなうように何とか、といって努力をしております。しかし、そういうことができるかでき得ないかわかりません。それでありまするから、もう少し時間をかけてみないとこの問題ははっきりしたお答えができないんだ。これはもうお説のとおりのことを何回も申し上げてきております。
  214. 木村美智男

    木村美智男君 大臣、そうおっしゃられるけど、私は、やっぱりこれはもうどうも突然に出てきたような感じを受けておるんです。だから、私が具体的に言ったのは、四十四年度予算提案理由説明の中か、財政演説の中でです。そういうことを明確に、正式にやっぱりやるべきではなかったのか、こう言っているのです。
  215. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 本会議や予算委員会質疑を通じまして、はっきりと申し上げておる次第でございます。
  216. 木村美智男

    木村美智男君 それではこの辺にしまして、国債の減額の問題で多少突っ込んでお聞きしたいんですが、要するに、四十三年度内に自然増収がまあ二千四百億というふうに、またふえて、結局九千億になった。したがって、公債発行の予定額六千四百億ですな、この六千四百億があるからということで、これを返すために、自然増収があるからといって、予算を、まあかってにと言っちゃ何だけれども、変えて、そうして、すでに四十三年の十月に一千億ですか、それからことしの一月に五百億、こういう減額の決定をして、大体、国債引き受け側とは約束が済んでいる、そして、まあこの補正が通ったら、あとの百二十三億について、これまた減額の措置をとる、こういうようなことになっておるんですが、少なくとも一たび国会できまったそういう予算というものは、政府は忠実に実行する責任があると思う。この点は憲法の八十三条でも、予算のことについては特に規定がしてあるということは、大臣、これは御承知だろうと思うのですね。そういう意味で、やはりどうも今度の補正予算というものは、これは事後追認というか、あとになってからこれは追認をしてもらう、こういったようなかっこうになっている。この点は扱い方として、私、適当でなかったのじゃないか、こういうふうに思うのです。いかがでしょうか。
  217. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 歳入は、これは見積もりでありますので、非常に法律論的にきびしく言いますと、国会の承認事項であるというふうには考えていないのであります。特に公債につきましては、これは六千四百億円まで発行する権限を御承認を願った。それより少なく発行する、これはもう国会から喜ばれることじゃないかとまで思うくらいなんです、私。ともかく、私どもは公債六千四百億円の権限をいただきましたけれども、それより少なくする、それについてあらかじめ承認を経なければならぬという事項とは心得ておりません。
  218. 木村美智男

    木村美智男君 それは六千四百億でも、範囲内だから何をやってもいいのだということには大臣、それはならぬでしょう。まあ、この論争はやめますが。  本会議でも伺いました際に、総理は、もう大蔵大臣も言われましたけれども、私やっぱり、国債減額をしたものが実は日銀の買いオペによって金融機関に流れた場合、これは景気刺激になるのじゃないかということで、歯どめがあるのかと言ったら、日銀と連絡がついているから心配がない、こういうふうに言われたけれども、日銀とも連絡がついているといっても、それはどういうふうなことで日銀との間に連絡がついているのか、この際ひとつ伺いたい。
  219. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) こういうことかと思うのですね。公債を六千四百億円発行する予定だった、それが千六百二十三億円予定が減りました。そこで、もし六千四百億円当初のとおり発行しておれば、それだけ銀行の手元資金が減ります。ところが、公債発行をしなくなった結果、千六百二十三億円だけ引き受け銀行の手元がそれだけ楽になる。その金がどこか事業会社なんかに貸し出しされるのじゃないか、それがインフレのもとになるのじゃないか、こういう御懸念のようでございまするが、公債発行を減らしたということ、これは財政歳出をそれだけ抑制しておる。抑制というか、増加さすべきものを増加させない、こういうことになるので、これは景気に対してはマイナスの原因でございます。  それから今度は、金融機関はどうかといいますると、その楽になった金を決して事業会社に御自由に貸してしまいはいたしません。これは、日本銀行が市中銀行に対しまして常にコントロールをしているわけです。わが国の通貨の状況から見まして、どの程度の額を供給するのがいいか、それを常に見ておるわけでございますから、市中銀行の手元が楽になったといいましても、楽になった額は、その適正量は日本銀行の見るところに従いまして吸い上げられたり何かする、こういうことになりまして、インフレの要因になるという結果には相なりません。
  220. 木村美智男

    木村美智男君 せっかく大臣、伺っておるので、大体、適正な通貨量というものはどの程度ですか。
  221. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大体経済の成長に見合う程度をもって適正量と概観をしております。
  222. 木村美智男

    木村美智男君 経済の成長に見合うという、これまたやっぱり抽象的なんで、大体現在の通貨がどのぐらい動いておるかという関係からいけば、どの程度が適当だという大まかな数字言えませんか。
  223. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いかなる額が適当かということは申し上げられないんです。つまり経済の量がだんだん、だんだんと伸びていきます。伸びていくにつれまして、通貨の量も必要となってくるんで、その通貨の量というものが経済の伸びと並行して伸びていく、これが安定した通貨量といわれて差しつかえないと、かように見ております。
  224. 木村美智男

    木村美智男君 歳出をある程度引き締めるということのマイナス要因というのは、これはわかるんですが、同時に、ことしのようにある程度地方における、やはり地方財政のほうもだいぶ豊かになってきているというようなことからいくと、国が一々地方の財政計画を監督、タッチ、直接しているわけじゃないでしょうから、そっちの面からやはり景気刺激の関係も出てくる、こういう点はどういうふうになりますか。
  225. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国の経済の動きは、国民、国家の総需要、これが景気の波を動かしておるわけでございまするが、総需要といえば、財政の需要と、民間の経済活動の需要と、国民の生活と、こういうことになりますから、まあ国という中には、中央も地方も両方あるわけです。その両方を常ににらんでおかなければならぬと、こういうふうに考えておるのでありまして、先ほど来、本会議でも議論になっております例の交付税の問題ですね、あれなんかも、地方財政の需要を国と一体として見た場合に、過当のものにならないようにという配慮があるんです。常に地方財政——まあこの地方財政は、規模からいいますと、かっこうの上からは大体中央・地方と、とんとんぐらいなことでございますが、実質は中央よりもはるかに大きな規模でございますので、この動きには政府としても甚大なる関心を持っておる、かように御承知願います。
  226. 木村美智男

    木村美智男君 大体歯どめの問題については、必ずしもここで具体的にきちっとこうだということではないが、まあ安心をしてほしいという、そういうような心配はないんだというようなことで、この際そこはやはり厳正にひとつ今後やっていただくということで了解をしたいと思います。  もう一つ、人事院勧告補正予算との関係なんですが、昨年の大体暮れに、予備費千二百億の中で五百億程度、給与改善費にその程度しか回せない、こう言って、実は自然増収相当あるじゃないかとわれわれ言ったんですが、しかしその辺に区切って、まあ八月と、こういう線を政府は出してきた。その後、国会修正によって七月ということになりましたけれども、御承知のように。しかし、そのことがきまったとたんに、自然増収はことしはもう二千四百億ぐらいある、こういうことを盛んにPRをして、そして予算補正をにおわしてきたという経過が実は私ども見ておってあるわけなんです。問題は、そういうところが、私は総合予算制度というやつは、だから本会議のときに、そういう公務員ベースやらその他押えるためにやっぱり政府はこれを使っているなということを実は本会議でも言ったのはそういうところにある。ここら辺はひとつ、やっぱり今後運営にあたって十分考えていただかぬとこれはいかぬじゃないか。特に人事院勧告というやつは、ストライキ権をとってしまったかわりの代償として出てきた機構なんでありますから、したがってやはり自然増収をどう使うかという問題と、そういう経緯を経て出てきた人事院勧告という問題は、やはりこれは政治の問題として、相当何というか高度の立場で善処をしていくべきで、どうも今年は千二百億ぐらいしかないから五百億しか使えぬぞといったようなことで、何かそっけなくやったという経緯があるものですから、したがって、完全実施について総理もたいへん今後はやっていくようなことを言っていますから、ことしは七月だ、来年はぜひそれは勧告とおり——完全実施といったら勧告どおりやっぱり五月からやってはじめて完全実施というので、そうでない限りは、何ぼ演説をしてもそれは完全実施でなくて、やっぱり不完全な、大部分は実施したが不完全な実施だと、こういう理解にやっぱり立ってもらわなければならぬ。今後は、総合予算制度をたてにとってひとつ値切るようなことのないように約束してください。
  227. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今度は総合予算主義でございますから、まあ四十三年度同様、人事院勧告に対する備えはしておるんです。しかたがもう少し前進をしたわけでありまして、五%の額を組んでおる、それから予備費でもかなりの量が支出できる、かように見通しております。現実の勧告がどういうものが出てくるかわかりませんが、まあそれを見た上で、できる限りの努力をしていきたい、かように考えております。人事院勧告につきましては、総務長官からもしばしば申し上げているとおり、政府はなるべく早くこれを実現する、完全実施するという基本的なかまえを持っておるということを申し上げておきます。
  228. 木村美智男

    木村美智男君 自然増収を減税に回せという主張を本会議でもやったわけですが、総理が答えられたことちょっとはっきりしない。一つは、年度途中ではちょっとうまくないということを言われた。それから、しかし四十四年度は大体平年度並みというようなことだったわけですね。その点は私、本予算はもうすでに提案をされておるから変えられないんだという立場なのか、いや、ことしは年度途中だから自然増収があっても変えられぬが、四十四年度は多少考えますよと、こういう意味なのか、そこをはっきりしていただきたい。
  229. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 四十四年度予算案にちゃんと減税計画は入っておる、こういう意味です。
  230. 木村美智男

    木村美智男君 それじゃ、特別自然増収があっても減税のほうを重視しましょうということにはならないわけですか。
  231. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十三年度に二千四百億円という増収がある、それを踏まえまして昭和四十四年度の税収というものが見積られておりまして、一兆二千億円の自然増収だと、こういうことになるわけでございます。それだけの額があるんだから、歳出に九千億円は使うけれども千五百億円はひとつ所得税の減税に充てようと、こういう結論なんです。この四十三年度自然増収と四十四年度の減税とは、さような形で密着をしているわけです。
  232. 木村美智男

    木村美智男君 減税のあり方ですが、どうも四十四年度の減税は中堅層ということで、中堅のそれは減税も大いにやっていただきたいけれども、むしろ課税最低限に近いようなところ、そこら辺のやっぱり、これは物価高その他を考えてみれば、減税ということはきわめて重要なんです。そういう意味では、まん中だけやったんじゃないか、この点どうですか。
  233. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはもう御説のとおりの減税案になっております。今度のお願いしておる減税案は、税制調査会に長期答申というものをお願いいたしまして、その答申があったわけであります。その答申は、課税最低限を百万円までにすみやかに、なるべく早く引き上げなさい。それから中堅所得階層以下の階層の税率が重くなっておるから、これを引き下げなさい。ほかに土地税制とか、いろいろありますけれども、所得税については、それがおもなんです。そこで、それを尊重いたしまして、大体課税最低限というと、税率の調整と合わせますと、半分道中のところまでこれを実行する、こういうことになったわけであります。課税最低限のほうは、八十三万円のものを九十三万五千円まで今度持っていく、こういうことです。それから税率調整のほうは、税制答申で、長期答申で言われておる量の大体四割ぐらいを四十四年度に実行する、こういう形になるわけであります。両々相まって、これはかなりの負担軽減になるだろう、ことにいまお話しの課税最低限に近い人、これなんかはかなりの減税、それが税率調整なんか全部計算いたしまして、標準家庭で六割ぐらいが減税になるのじゃないか、かように考えております。
  234. 木村美智男

    木村美智男君 税金の問題で、これは資料要求になるかと思いますが、租税特別措置ですね、これの四十四年度の減額見込みはどのぐらいになりますか。わかっておればいまお伺いしたい。そうでなければ、あとで資料でもけっこうです。
  235. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはわかっておりまして、そして衆議院のほうでその計算の根拠を詳細に書いて出せという要請がありますので、今週中に一緒に提出いたすことにいたします。
  236. 木村美智男

    木村美智男君 何か、自治大臣にこの際ちょっと伺いたいんですが、自治省は、期末手当にプラス・アルファーというものを支給したということで、三百余団体に対して富裕団体に懲罰的な意味交付税の減額を強行しようとしていると、もし事実だとすると、これはちょっと自治法の精神からいっても、あるいは地方の財政をある意味で中央から何か締めつけるようなこととして、必ずしも適当でない、こういうように思うのですが、この点答えてください。
  237. 野田武夫

    国務大臣(野田武夫君) お答えいたします。御承知のとおり、地方公務員は大体において国家公務員に準じた給与の改正の方針をとっておりますが、特に公共団体のうちでは、期末手当その他にプラス・アルファーというようなものが出ておるのは事実でございます。これはやはり地方財政の現状から見まして、まだまだなかなか地方財政というものは豊かということまでいっておりません。需要の要因が非常に多いのでございますから、したがって、やはり本来の考え方のように、地方公務員の給与も国家公務員の給与とやはりなるべくバランスをとっていきたい、こういうことで、これらについての指導をやっておることは事実です。
  238. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 関連。自治大臣に尋ねますがね、国家公務員に準ずるということはわかるんだが、いま木村委員の言っておるのは、国家公務員の標準から見てはるかに低い市町村の給与があるのですね。そういう人にまでその一時手当金を準ずることは非常に不公平になるのです。前から問題があったんです。そういう三百団体については、ある程度そういう一時金については認めざるを得ないという慣習、慣例は生きているのですね。それを尋ねておる。  それからもう一つついでに聞きますがね、四十四年度の地方財政計画は一体いつ出るのですか。地方財政計画は、この国会の議決事項ではないが、予算審議には重要な参考資料なんですね。それが、聞くところによると、きょうの理事打ち合わせ会に出ましたけれども、今月中に出るという見込みはないと、こういうのですね。それならば、われわれとしてはこの予算審議を拒否せざるを得ない。そういうことがありますので、地方財政計画は一体いつ出るのか、これを明らかにしてもらいたい。
  239. 野田武夫

    国務大臣(野田武夫君) ただいまの国家公務員の給与と地方公務員の給与のできるだけバランスをとりたいという方針は持っておりますが、いま御指摘になりました非常に低いところ、こういうものに対しては当然やっぱり考えてやらなければいかぬと思っております。これは私は決して——御意見はわかります。  それから地方財政計画は、いませっかくやっておりますが、大体月末までにはでき上がるという方針で、目上私のほうで計画を立てておりますから御了承願います。
  240. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 間違いないですね……。
  241. 塩見俊二

    委員長塩見俊二君) 木村君の質疑の途中でございまするが、都合で本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回は、明日午前十時開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十八分散会      —————・—————