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川村清一君 ただいま
議題となりました
産業教育手当法案について、その
提案の
理由及び
内容の
概略を御
説明申し上げます。
現在行なわれております産業
教育手当の支給は、申すまでもなく、農業、水産、工業又は商船に係る産業
教育に従事する国立及び
公立の
高等学校の
教員及び実習助手に対する産業
教育手当の支給に関する
法律に基づいております。
また、この
法律が、去る
昭和三十二年に、その母法でありますところの産業
教育振興法の第三条の三の
規定の
趣旨に基づいて制定されましたことも、御承知の通りであります。
自来約十カ年にわたり産業
教育手当の支給が行なわれてまいりましたが、その経過並びに
実施の
状況をつぶさに
調査し、検討いたしますと、必ずしも産業
教育振興のために満足すべき
現状にあるとは申しがたく、むしろ、産業
教育手当の支給の
対象とされるべき
教職員、
学校、教科及び手当の額等について、早急に改善を行なう必要があることを痛感いたすものであります。
第一は、産業
教育手当の支給
対象が、産業
教育に直接に従事する
教員及び
政令で定められた助手のみに限定されている現実の矛盾を解消する必要があるということであります。
現在、農業、水産、工業または商船に関する専門
教育を主とする学科を置く
高等学校においては、ひとり産業
教育に直接に従事する
教員及び実習助手のみに限らず、普通教科を主として担当する
教員及び実習助手はもとよりのこと、
事務職員から用務員に至るまで、すべての
教職員が産業
教育振興の一翼をになって、それぞれ欠くことのできない重要な役割りを演じているのであります。まずこの現実の姿を直視し確認すべきであると存じます。
そもそも、これらの
学校において、本来の使命である産業
教育振興の実をあげるためには、その基礎となるべき
一般教養教科が、普通課程の
高等学校におけるよりも、なお一そう重視されなければならないことは、論をまたないところであります。したがって、これらの
学校において普通教科を担当している
教員は、教科
内容についても教授法についても、絶えず真剣な研修を怠ることなく、特に限られた短い授業時間内に最も効率的に
生徒の学力を涵養するため、常に創意とくふうをこらしているのであります。その
教育的責任度は、専門教科を担当する
教員に比べ、まさるとも劣るものではありません。
さらに、これらの
学校においては、
生徒の組主任はほとんどすべて普通教科の
教員の担任するところでありますから、個々の
生徒の保健体育の面をはじめ、進学就職についての進路の
指導に至るまで、それらはあげて組主任の責務とされておりますし、加うるに、教務
関係、図書館等の広範複雑な事務処理は、すべてこれら普通教科の担当
教員にゆだねられておりますから、専門教科の担当
教員よりも、むしろハード・ワークが課されていると申しても過言ではありません。
また、これらの
学校の
事務職員は、
一般的事務以外に、機械器具の購入整備、保管、その会計の処理等についての責任を持ち、用務員もまた、実習後の機械器具の整とん、清掃等、それぞれ、普通課程の
高等学校における場合よりは、はるかに労働量の加重にたえながら、産業
教育振興のための縁の下の力もちとして、たゆまぬ努力を続けているのであります。
今日、産業
教育を行なっている
学校にとっては、過去の徒弟式
教育を矯正し脱却して、総合的
教育を
実施することが最も大きな課題の
一つであり、そのためにこそ、
教職員の層が幅広く
配置されております。そうして、おのおの
教職員が個々の持ち場においてその責務に専念し、十分にその能力を発揮し、こん然一体となって使命の達成に邁進するとき、はじめて
教育の成果を期待することができるものと信じます。
第二は、商業及び
家庭科に関する
教育も、当然本法の
適用対象に含めるべきであるということであります。
産業
教育振興法第十二条の産業
教育の定義には、商業及び
家庭科に関する
教育が含まれておりますにもかかわらず、これらの教科が産業
教育手当の支給
対象から除かれていることは、納得のできないところであります。
それゆえに、農業、水産、工業又は商船と同様に、商業及び
家庭科に関する
教育を
実施している
高等学校の
教職員に対しても、産業
教育手当を支給できるように
措置する必要があると考えます。
第三は、盲
学校、ろう
学校及び養護
学校の高等部において、
高等学校におけると同様の産業
教育に従事している
教職員にも、産業
教育手当を支給すべきであるということであります。
盲、ろう及び養護
学校の高等部における産業
教育に関しては、これまた産業
教育振興法第二条の産業
教育の定義に含めて
規定されており、現にこれらの
学校の高等部の中には、産業
高等学校におけると同様に木工、被服等に関する産業
教育を
実施しているものがありますにもかかわらず、まだその
教職員に対し産業
教育手当が支給されていないことは、妥当を欠くものであります。
一面、これらの
学校の高等部においては、産業
教育に従事する適当な
人材を確保することがきわめて困難であるため、人事交流の面からもしばしば支障を招き、ひいては
教育不振の一因ともなっております。このような
実情にかんがみ、すみやかに産業
教育手当支給の道を開くよう
措置する必要があると考えられるのであります。
以上申し述べました
理由により、ここに新たに本
法律案を提出し、従来の不備を改めて産業
教育の一そうの振興をはかろうといたすものであります。
次に、
法律案の
内容については簡単に申し上げます。
第一に、農業、水産、工業、電波、商業、
家庭または商船に関する専門
教育を主とする学科を「産業に関する学科」と
規定し、これら「産業に関する学科」を置く
高等学校と、盲
学校、ろう
学校及び養護
学校でその高等部に産業に関する学科を置くものを「産業
高等学校」と
規定しております。
第二に、国立の産業
高等学校の校長及び
教員、
事務職員その他の職員で、本務として産業に関する学科または産業に関する課程における
教育、事務その他の職務に従事する常勤者には、その者の俸給月額の百分の十に相当する額をこえない範囲内において、産業
教育手当を支給するものといた
しております。
第三に、
公立の
高等学校の校長及び
教員、
事務職員その他の職員の産業
教育手当は、国立の産業
高等学校の産業
教育手当を基準として定めることといたしております。
なお、この
法律は、
昭和四十四年六月一日から
施行するものとし、現行の農業、水産、工業又は商船に係る産業
教育に従事する国立及び
公立の
高等学校の
教員及び実習助手に対する産業
教育手当の支給に関する
法律は廃止することといたしております。
何とぞ、十分御
審議の上、すみやかに御賛同くださるようお願いいたします。