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1969-06-05 第61回国会 参議院 農林水産委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月五日(木曜日)    午後一時十五分開会     —————————————    委員異動  六月二日     辞任         補欠選任      小林 国司君     園田 清充君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         任田 新治君     理 事                 高橋雄之助君                 宮崎 正雄君                 達田 龍彦君                 矢山 有作君                 藤原 房雄君     委 員                 亀井 善彰君                 河口 陽一君                久次米健太郎君                 栗原 祐幸君                 小枝 一雄君                 櫻井 志郎君                 園田 清充君                 田口長治郎君                 温水 三郎君                 森 八三一君                 和田 鶴一君                 足鹿  覺君                 杉原 一雄君                 武内 五郎君                 鶴園 哲夫君                 中村 波男君                 沢田  実君                 向井 長年君                 河田 賢治君    国務大臣        農 林 大 臣  長谷川四郎君    政府委員        農林大臣官房長  大和田啓気君        食糧庁長官    檜垣徳太郎君        水産庁長官    森本  修君    事務局側        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○漁業近代化資金助成法案内閣提出、衆議院送  付) ○農林水産政策に関する調査  (米価問題に関する件)     —————————————
  2. 任田新治

    委員長任田新治君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  去る二日、小林国司君が委員を辞任され、その補欠として園田清充君が選任されました。     —————————————
  3. 任田新治

    委員長任田新治君) 本日の理事会において、本委員会運営に関する申し合わせについて慎重に検討いたしましたところ、次のとおり申し合わせましたので御報告いたします。  一、定例日は従来の慣行を尊重し、常時定足数   を確保する。  二、質疑通告者発言を尊重し、慎重に審議を   尽くす。  三、必要に応じ参考人の意見を聴取し、公聴   会、連合審査会を開催する。  四、強行採決は極力避ける。  以上でございますが、別に御発言もなければ、当委員会といたしましては、理事会申し合わせのとおり運営するようつとめてまいりたいと存じます。     —————————————
  4. 任田新治

    委員長任田新治君) 漁業近代化資金助成法案を議題といたします。  これより質疑を行ないます。本案に対し質疑のある方は順次御発言を願います。河田君。
  5. 河田賢治

    河田賢治君 この近代化助成法の大体政令の中に一応規定する見込み事項として、総トン数七十トン未満ということになっておるわけですが、このトン数ですね、これをこの前昨年でしたか、私この委員会水産事情調査和歌山県にまいりまして、——やはりこのトン数のどこに標準を置くかということなんですが、非常に問題になるわけですね。御承知のように、漁業にしましても、いろいろ速力やあるいは人が足らぬという意味機械化も進みますし、そうすれば多少省力化のために、機械装置のために若干トン数もふえるというようなことがありまして、したがって昨年和歌山に行きましたときも、当時の陳情書がありますけれども、カツオ・マグロ漁業ですか、六十九トン型以上の建造費は非常に金が要る、それから省力もできないというようなことで陳情を承ったわけです。これは三十九トンの大型化ができないという問題が中心なんですが、こういうことがしばしばありますので、今度のも総トン数七十トンということが基準になって、この政令案では多少弾力性があるように承っておりますけれども、この一体七十トンとか何トンとかいう漁船トン数というようなものに一定の科学的な基準が置いてあるのかということをちょっと伺いたいのです。
  6. 森本修

    政府委員森本修君) たしか先般もお答えを申し上げたかと思うのですが、この近代化資金融資対象をどういうふうにきめるかという際に、一番私どもで準備の際に議論をいたしましたのがこの対象トン数でございます。近代化資金性格といたしましては、漁船としては主として沿岸漁業沖合い漁業に従事する漁船に重点を置くということは性格上当然であると思いますが、その際に沖合い漁業に従事するトン数というものを具体的にどういうような基準で線を引いていけばいいかということがお尋ねの問題でございます。私どもやってまいりまして大体まあ七十トンというところに線を引きますと、現在沖合い漁業に従事をいたしております漁船の隻数の比率でいいますと、九四%くらいはカバーするということで、ほぼ七十トン未満漁船対象にいたしますと、沖合い漁業に従事する漁船のほとんど大部分がカバーされるというふうなことも実際に検証をいたしております。ただ、御指摘のように、地帯により、あるいは漁業種類によって、一律に七十トン未満ということでやってまいりますと実情に合わないということもございますから、特定の場合には七十トン以上でも近代化資金融資対象にしようということで、いわゆる特認制度というのを設けております。特認制度の適切な運用によりまして、漁業種類なりあるいは地域によって、沖合い漁業に従事する漁船近代化資金対象としてしかるべきものを拾い上げていこうということで、両々相まって運営の適切を期していきたいということでございます。
  7. 河田賢治

    河田賢治君 このトン数の問題は、いろんな科学技術発展あるいはまた漁獲対象などによっていろいろ違うと思いますから、あまり法律はきちんとトン数なんかのこういう——弾力性が若干書いてありますけれども、できるだけそういうところは融通のきくようなやり方でやっていただきたいと思うんです。そうしませんと、わずか一トンとか二トンの差でこういうものに入らぬということになりますと、せっかく資金融資を受けたいと思ってもできぬような場合があります。それを希望するとともに、第二の問題として、最近原子力発電所日本でも相当つくられるようになっております。これに対して、最近の新聞どもだいぶ大きくアメリカやその他の例をあげまして、川などの魚がみんな死んでおるとか、いろいろ例を出しておりますし、また日本でももちろん原子力のみならず、発電所がかなり海岸に建てられる。ここで高温の排水をやるわけですが、こういうことについて漁類にどのような影響を与えるかというようなことを大体御研究になっておるのかどうかということをまずお聞きしたいわけです。
  8. 森本修

    政府委員森本修君) 原子力発電所が各地で建設をすでにされ、あるいは計画をされております。それぞれの地区におきまして、農林省としても関係機関と密接な連絡をとりながら、試験研究あるいは調査を進めておるというところでございます。御承知のように、原子力発電ができまして、その影響というのも一律ではないのでございますが、一つ安全性といったようなこともございます。それからもう一つは、冷却水といいますか、あたたかい水が相当多量に放出をされますから、さような関係が一体魚類の来遊とかあるいは将来の漁獲にどういう影響があるかといったようなことになるわけでございますが、それぞれその地域の具体的な事情によって温水影響等は違ってまいりますので、具体的な設置場所に即して、私どもといたしましてその影響について検討をしておるということでございます。また、必ずしもこれはマイナスの影響ばかりではないわけでありまして、温水等が出てまいりますれば、場合によってはそういったものが魚類の生態に対してプラスの影響を来たすというようなこともあり得るわけでありまして、いずれにせよ、それぞれ現地の事情によって具体的に検討するということになっております。
  9. 河田賢治

    河田賢治君 日本原子力では、かなり学者の間でも安全性というものがはっきりと、日本設置されておるあるいはまたこれから設置される原子力発電所についても、必ずしもそういう安全性が確保されておるということは言ってないんですね。特に原子力の問題についても、まあきのうきょうの新聞を見ますと、今度東海等は、御承知のように、いろんな故障を起こしております。それから管理が第一ずさんなんですね。この前の原子力発電所でも、放射能を浴びた人が三人あったとか、それが全然最初は気づかれなかった、あるいはまたそこからさらに三人の人が原子力研究所のほうへ同じような作業に出かけた、こういうふうにして、必ず原子力のこういう危険な放射能を浴びたり付着した人が出歩くということを十分監視して、これを未然に防ぐということもやっておりません。それからまた最近これまた日本経済新聞にも出ましたが、五月二十一日の夕刊です。衆議院の世耕国会議員が、総長もやりまた所長もやっておられるのですね。ここでは科学技術庁原子力局放射線安全課ですか、こういうところへ報告しなければならぬのですが、毎年九月の上旬ですか報告することになっている。原子炉については、毎年三月ですか報告することになっているようですけれども、十分この報告がなされていない。しかもその品物が三年間も行くえ不明になっていまだにわからぬ。アメリカから六月、ここの最初管理者が帰ってきたらそれを聞いてどうなっているかということを見てみようと言われているわけです。  ですからこういうふうに基本的な安全性についてもまだ非常な不安があり、さらにこれを管理すべき責任のある原子力発電所や、あるいはこれは陸上ですけれども、大阪の近畿大学あたり放射線研究所が国から補助をもらって仕事をやっておりますけれども、十分そういう管理について責任ある仕事をやっていないわけです。ですからこれから日本原子力をたくさん——特にみな各海岸ですが、つくるということになっております。特にこの京都の若狭湾では、御承知のように非常にここの漁師さんは心配しているのです。あそこの若狭湾原子力発電所一つとそれから関西電力が二つ持ちまして、しかもあそこは水を出したら、その水が海流に乗ってずうっと東北のほうにすぐに移るわけじゃないのです。あそこは大きな渦を巻いているのですね。これは現に宮津市に関西電力発電所を設けるということについてあそこの地元は金をもらって一応漁業権を放棄する形になりましたが、周囲の漁民の方が全部これに反対して、いまだにこの問題は紛争中でありますが、あそこで調べたところによりましても、海流が必ず太平洋沿岸で大きな波のくるところ、海流の動くところ、こういうところならば、直ちに冷却水を出しましてもそう影響はないでしょうけれども、かなり長い間渦を巻いて、三つも四つも渦を巻いて海水の入れかわりが非常に少ないというようなところではかなり影響が出てくるのではないかと思うのです。御承知のとおり、原子力船が入りますと、沖繩あたりでもおかしな生物が生まれて、指が五本も六本も生えるというようなカエル、何か魚が生まれたりしておりまして、こういう原子力放射能が出ないという保証もいまありませんし、またそれがなくても、あの高熱の排水が行なわれますと、先ほど長官の話では、それにふさわしい魚類がまた生息するのじゃないかというお話もありますけれども、そうそれは一朝一夕に南洋方面の魚が日本海へ飛んで来るわけではないと思うのです。ですからそういう点での大きな不安を漁業協同組合人々があそこでは持っております。  だからこういう問題について、私は農林省が、かつて厚生省が、人が体を悪くしてかたわができたとかいろいろな人がおかしなかっこうで死んでいくということになって、初めて神通川やあるいはその他の水俣、安中の問題ああいうところの問題が起こるわけです。ところが事実は人体被害を与える前に、農産物あるいは水産物にそういう影響があってそれがやがて人体に移ってきているわけですね。そうしますと、どこよりも、厚生省よりもむしろ率先して農林省がああした公害事件カドミウムその他の問題がどんなに農産物水産物影響を与えるかということを、科学陣を動員し、いろいろな専門研究者等おるわけですから、そういうものを組織しておやりになることがしかるべきだと思うのです。カドミウムなんかについての調査を総合的にやるということは、新聞を見ましたがごく最近なんですね。私はこういう点もおくれをとっちゃいかんだろうと思います。やはり農林水産一つの大きな仕事としては、われわれが農林水産資源を保護する、そして日本人々たん白質を補給するとかあるいは農産物を補給するとかすれば、健全なそういう漁業あるいは水産業魚類農産物をつくり上げるということがやはり一つ仕事なんですから、この点でおそらく、大規模原子力発電がどんどん開発されますと、大きなこれから日本海岸には影響を与えると思います。従来でもずいぶんと漁場がかってに奪われたり、いろいろ汚水が流される。あるいは愛知県あたりで、四日市方面では相当温度が二度くらい上がるほど、そこらは熱排水が行なわれておる。そういう問題に対してやはり率先して漁業関係、これからの魚族がどういう条件で生育するとか、どんな影響を与えるとか、これに対してどんないわば発電所に処置をとらせるかということが私は非常に先決じゃないかと思うのです。この点についていまほんとうに調査をやられておるか。そして予算の裏づけをやって今日調査が行なわれておるかということも、ひとつこの際お聞きしておきたいと思うのです。
  10. 森本修

    政府委員森本修君) 先ほど申しましたように、心配される影響としては、一つ安全性の問題があげられますが、安全性の問題は、政府の内部の受け持ちといいますか、所掌といたしましては科学技術庁のほうで、具体的に原子力発電所設置をされる際におきましては、安全性審査をいたし、またその後における管理についても十分監督をするというたてまえになっております。したがいまして私どもとしては科学技術庁のそういった審査なりあるいは監督を信頼するというふうなことになろうかと思います。また温水などが放出をされますことに伴う漁業への影響、それは水産庁なりあるいは県におきますところの水産関係者担当分野でございます。先ほども申し上げましたように、それぞれの場所によりまして出てまいります水の量も違います。また地形によりましても、たとえば非常にこう大きく開けておりますようなところは、案外早く拡散をする。しかし狭い湾のようになっておるところではかなり濃密な影響が出るといったようなことで、設置をされますところの場所なり、あるいはこれの海の状態といったようなものにもよりましょうし、また生物種類によりましてもそれぞれ影響の度合いが違ってくるということで、現在私どもがやっておりますのは、私どもなりあるいは関係の中央の試験所等が十分指導いたしまして担当府県水産試験所が実際の試験なり調査をするというような分担で、先ほど申しました温水の流出による影響を具体的に調べるということにいたしております。両々相まって原子力発電に対する対応策を考えてまいりたい。御指摘がございましたように、何と言いましてもまだ新しい分野のことでございますから政府としても、あるいは関係府県としても、かようなものの取り扱いについては十分慎重を期して、万一の事故なり、あるいはそれらに対する深刻な影響が起こらないように留意してやってまいりたいと思っております。
  11. 河田賢治

    河田賢治君 質問ではありませんが、東海村の原子力発電所ができまして時間も相当たっているわけです。あすこはまだ規模は小さいですけれども、これからできるところは五十万から八十万、ところによれば百万というような大きな原子力発電所にだんだんなっていくわけですから、やはり現にあるところで、そういうところを手始めにして少しでも早目研究材料をつくっていただく。そしてあとからできるものに対する行政指導を強めて、そして危険やあるいは損害がないように私はすべきじゃないかと思うわけです。まあこのことは長官も同意だろうと思いますが、やはりそういう場合必要な予算なんかを計上して、十分この点は日本漁業発展、また漁業損害を受けることを未然に防止するという意味で、さらにこれに対する……、ごく始まったばかりですから十分なまだ体制はできていないと思いますけれども、この辺の努力をひとつ長官に対して要請して、私の質問を終わりたいと思います。
  12. 藤原房雄

    藤原房雄君 漁業近代化資金助成法案、この法案については漁民も一日千秋の思いで待っている大事な法案だと思います。まあこれには直接関連しないのでありますが、この日本国民動物性たん白質を供給する大事な漁業問題、特に沿岸漁業中小零細漁業に対して必要な措置だと、このように思うのでありますが、ここでちょっとお尋ねしたいことは、沿岸漁業の将来といいますか、これからどのように発展さしていこうという見通しといいますか、ビジョンを持っていらっしゃるか。この点についてお聞きしたいと思うのであります。御存じのとおりの日ソ漁業交渉によりまして、だんだん北洋関係については手詰まりのような問題もございます。新しい漁場の開拓といいましてもおいそれとできるわけではありませんし、やはり沿岸漁業というものは非常に重要な問題だと思うのでありますが、この点についての考え方をお聞きしたいと思います。
  13. 森本修

    政府委員森本修君) 沿岸漁業につきましては大体現在の状況は、生産の形はほぼ横ばいといいますか、この二、三年来、あるいは数年来横ばい、それから沿岸漁業者所得のほうはかなり上昇をしてきております。しかし問題は、その所得上昇が主として魚価の上昇に依存をしておるということで、必ずしも物的な生産性上昇した結果ではないというところが沿岸漁業として今後振興を考える際の問題点であろうというふうに思います。沿岸漁業にいたしましては全体の魚に対する需要がふえております段階で、何としても生産増大ということに一つは力を注がなければいかぬと思います。特に問題はやはり資源の保護、培養ということが沿岸漁業振興対策の将来の基本になろうかというふうに思いますので、幸い御案内のように最近は資源の増殖と言いますか、増養殖に関する技術的な進歩、それから省力化等沿岸漁業関係技術も進歩してきておりますから、さような点をさらに資源研究段階において進めますとともに、実用化できますものはできるだけ早く実用化をするというふうなことを基本に置きまして、沿岸漁業における生産増大また資源増加を通じて沿岸漁業者生産性増加といったようなことを根本的な目標として振興対策を考えていきたいと思います。
  14. 藤原房雄

    藤原房雄君 ただいま河田委員からもお話があったわけでありますが、原子力に限らず、この沿岸漁業者に対しまして一番脅威とするところのものは公害問題であります。著しい経済成長発展に伴いまして、かつては多くの資源を有しておりました河川またその沿岸公害問題が発生いたしまして、漁場の喪失やまた海水汚染また河川汚染というような、こういうことが最近は非常に著しいわけでありますが、いまの長官お話ですと、お話しのとおり、まことに資源培養という非常に重大な問題とうらはらにこういう問題が起きているわけでありますが、これに対する抜本的な対策というものがなければ、ことばだけに終わってしまうのではないかという、そういう憂慮する問題も数多く起きているわけであります。こういうことからいたしまして、この公害に対する基本的な考え方と言いますか、今後の対策と言いますか、その所信をお聞きしたいと思うのであります。
  15. 森本修

    政府委員森本修君) 沿岸漁業に対します都市化なり工業化影響、特に公害影響が漸次広がってきております。その内容は主として水質汚濁原因であり、特に工場なりあるいは都市排水に伴う水質汚濁というのが件数としても多い、また被害の程度としても多いということになっております。したがいまして、私どもとしましてはいわゆる水質関係法律運用、これは主として企画庁がやってくれておりますが、できるだけああいった水質基準を早くつくって、またその基準の中に水産のサイドから見て必要な要素を織り込んでもらうというふうなことでやってきております。しかし現状は必ずしもその速さは、調査等に非常に手間取るあるいはまたどういう基準をつくるかということについてもかなり手間がかかるということで、私どもから見ましても十分であるとは思っておりません。水産庁としましてもできるだけ自発的にそういった水質状況を調べるというふうなことも必要でありますので、ここ一、二年来、水産庁予算水質汚濁調査といったようなものを各地区におきまして、そういうふうな予算の執行を通じて水質がどういう状態になっておるかということを自発的に調べるように現在措置をいたしております。また自動観測装置といったようなものを各県に補助いたしまして、各県でもそういった意味からの沿岸なりあるいは内水面の水質状態ができるだけ早く把握ができるように、そういうものを通じまして今後の水質基準の設定に資していく、あるいはまた沿岸漁業者に対する指導等にも資したいということで予算等も計上してやっております。これとても必ずしもあるいは十分ではないかもしれませんが、かような情勢でありますので、そういった公害防止について水産施策としても今後前向きに取り組んでまいらなければならぬ、かように思っております。
  16. 藤原房雄

    藤原房雄君 いろんな問題がありまして、この点についてはまた後日いろいろ指摘したいと思うのでありますが、いずれにいたしましても、この沿岸漁業という問題につきましては四面海に囲まれた日本の国にとりましては重大な問題として、この工業発展の著しい日本の国にありましては特に水産庁としては目を光らしていかなければならない問題だと思うのであります。  ところで、この漁業近代化資金の問題でございますが、農業においては早くからこういう制度がしかれておったのでありますが、いよいよ漁業金融分野にもこういう面が実施される段階になったのであります。そこで先ほど長官お話にもありましたように漁獲高漁獲量というものについてはさほど大きな変動はない、横ばい状態だけれども、金額の上で増大しているという、こういうことでございました。それは漁獲量横ばいであるというその原因についてはいろんなことがあげられると思うのでありますが、当局といたしましては、この点についてはどのように考えていらっしゃいましょうか。
  17. 森本修

    政府委員森本修君) 先ほど私が申し上げましたように、やはり資源が十分ふえないというところが基本的な原因であろうというふうに思います。したがいまして漁獲高をふやしていくということになれば、どうしても資源対策に根本的に取り組みをしなければならぬ。現在私どもそういう観点から御案内のように瀬戸内海において国が施設をつくりまして瀬戸内海栽培漁業センターというものを設けまして、エビでありますとか、あるいはタイでありますとか、数種類魚類につきまして人工ふ化をして稚魚を放流するというふうな事業を数年前から試験的に実施をいたしております。また各地方では構造改善事業を利用いたしまして、そういった増養殖についての施設をつくって、それぞれ地域別に創意くふうをこらしてやっておられる向きもあるようであります。そういった意味試験研究の今後の促進といったようなことと、さらに実用化し得る技術についてはできるだけ適地に早くそういったものを実用化に移していくといったような施策が今後必要になろうかと思います。
  18. 藤原房雄

    藤原房雄君 急激な資源増大ということは見込まれないと思うのでありますが、ここで心配することは、漁業金融分野で従来までは慢性的なオーバーローンが続いてきたわけでありますが、最近は若干増勢を示しておるという、こういうことからいよいよこの近代化資金に踏み切ろうというわけでありますが、この資金の確保ということにつきまして、やはり漁獲——今後の漁業振興ということと非常に密接な関係があるわけでありますから、著しい漁獲が見込まれないという現在であるといささか不安というものが残るのじゃないか、このように思うのでありますが、そういう点については心配はないというのであれば、その根拠といいますか、そういうものをお聞きしたいと思います。
  19. 森本修

    政府委員森本修君) 私どもも先ほど申しましたように、沿岸漁業における漁獲高増大なりあるいは漁業振興についてはできるだけ政策的な手は積極的に打っていきたいというふうに考えております。  なお、近代化資金に関連をいたしまして、系統機関の貯金の増加の見込みなり可能性の点でございますが、御承知のように、農業の関係に比べますと漁業関係は、漁業者の系統利用率といいますか預貯金の系統利用率は必ずしもいいほうではございません。そういうことでありますから、できるだけ系統機関に対する利用の度合いを引き上げてまいるといったようなことも今後必要なことになってくると思います。もちろん、系統機関とされましても二、三回の貯蓄増強運動といったようなことによりまして、貯金の増加は他の金融機関あるいは農協等のテンポに比べても高いようでありますから、また現在もなお貯蓄増強運動をやっておるところでございますから、さような関係からいいましても系統機関に対する貯金量の増大ということは、これは将来かなり期待できるというふうに思っています。
  20. 藤原房雄

    藤原房雄君 それからこれは前にも質問あったかもしれませんが、漁業組合の中で信用事業を行なっていない組合もあるわけでありますが、こういう組合については近代化資金という問題はどういうことになるのでしょうか。
  21. 森本修

    政府委員森本修君) 近代化資金のほうは貸し付け事業を行なっておりますところの漁業協同組合がその取り扱いをすることができるということにしょうと思っております。ただ全部が全部組合で近代化資金を扱えるかということになりますと、それぞれ組合の事業なりあるいは業務の実態からいきまして全部というわけにはもちろんまいらないと思いますが、さような組合がございますればあるいは上部機関あるいは中金なりといったようなものが補完的にそういった組合に対しては近代化資金を供給してまいるというふうなことで、運営上支障の起こらないように私ども事実問題としては処理していきたいと思います。
  22. 藤原房雄

    藤原房雄君 それから融資ワクが百億ですか、まあ全国の漁業組合に融資ワクが一応定められているわけでありますが、都道府県によりまして利用率といいますかに非常な差があると思うのでありますが、その運用面について全国的な運用、各都道府県の利用率、利用度、こういうことについてはどういう考え方のもとに運用されるのかということをお聞きしたいと思います。
  23. 森本修

    政府委員森本修君) ちょっと御質問の趣旨がよくわからないのですけれども、あるいは融資ワクを各県にどういうふうなことで配分をするのかというお尋ねのようにも考えられますので、——各県に対しまして私ども配分をいたしまするのは、それぞれ県におきますところの漁業の実勢がございます。たとえば漁船の勢力でありますとか、あるいは漁協の組合の施設がどういうふうになっておるとか、あるいは漁家の経営体の数でありますとか、漁業生産の額でありますとか、そういったいわばそれぞれの県における漁業の実勢といったようなものを一つ勘案をいたします。またそれぞれの県でまた全体の融資のワクが百億ということを前提にいたしまして希望額といいますかそういうものを持ってまいります。そういうのを彼此勘案いたしましてそれぞれの県に対する融資ワクの配分をしたいという考えでございます。
  24. 任田新治

    委員長任田新治君) 本案に対する残余の質疑は後日行なうこととし、一応この程度にとどめておきます。  暫時休憩いたします。    午後一時五十六分休憩      —————・—————    午後二時七分開会
  25. 任田新治

    委員長任田新治君) ただいまより農林水産委員会を再開いたします。  農林水産政策に関する調査を議題といたします。  米価問題に関する件について調査を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  26. 矢山有作

    ○矢山有作君 米価問題のことで質問をさしていただきますが、まず第一に私は大臣の御意向を伺っておきたいと思いますのは、米審がきのうから始まっております。で、米審の中から御案内のように国会議員が排除されておりますので、したがって国民生活に多大の影響を持つ米価の決定に関する問題ですから、それだけにわれわれはぜひとも議員としての審議の場を持ちたいと、このように考えておったわけですが、その場がきょう得られたわけです。ところが、やはり米価問題で審議をやるということになりますと、一番必要になってくるのは、四十三年産米の生産調査であります。私どもはこの生産調査を資料として出してもらわなければいけないので、実はけさ農林省のほうに要求をいたしました。ところが、これは大臣決裁事項になっておるので大臣の決裁を得なければ出すことができないという話であります。はたしてそうなっておるのかおらぬのか。おそらく米の生産調査というのは、すでに新聞紙上等にも一部は発表されておるだろうと私は思っておりますが、それを国会の審議の場に資料として提出できないという理由がどこにあるのか、その点をまず承りたい。
  27. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) そのおことばは私は当然で大賛成でございます。当然出さなければならぬだろう、出して国会という広場において十分御審議を願うということは当然だと考えられます。いま何か、どうしているかと聞いてみたら、何か手違いがあったようでございますが、ですから至急にそれをこちらに配付するようにいたさせます。
  28. 矢山有作

    ○矢山有作君 大臣のおことばはわかりました。  そこで、私はこの際大臣に、事務当局にきびしく言っておいていただきたいと思いますのは、たとえば先般の農振法審議の際に足鹿委員のほうから同じような資料要求がありました。その資料要求を拒否するときの大和田官房長のものの言い方というのは、あれは新聞には報道はされたがオフレコで新聞記者に話したのであるから、したがってそれを資料として国会に出すことはできぬと、こういうお話でした。一体これをどうお考えになるか。私は国会審議上に重要な資料というものは極力出すのが国会審議をスムーズにやっていくための不可欠の要件だと思っております。ところが一再ならずこういう問題が起こっておることは、農林省部内に対する大臣の統制力の問題だろうと思うんです。したがって、大臣が国会審議を十分にこれを進めていこうと考えられるなら、私は今後きびしく農林省当局に対して議員のほうから資料要求があったら進んで提出するように大臣のほうからきびしく話しておいていただきたいと思いますが、その点どうですか。
  29. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 事、外交問題とか、いろいろなそういうようなまだ未決定のもののときはいざ知らず、そういうような審議の重要な参考となるものは当然出さなきゃならない義務を持っております。私は矢山さんの御質問に対して全面的な賛成をいたしまして今後厳重にそれらの提出をさせるようにいたさせます。
  30. 矢山有作

    ○矢山有作君 大臣から厳重に事務当局にそういうふうにさせるということですから、それで了解をいたします。ただし、やはり米価問題の審議上必要がありますから、四十三年産米の生産調査につきましてはこの席上に直ちに配布をしていただきたいと思います。
  31. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 早急にそれを配布をいたさせます。四十三年産米でございますから至急に配布いたさせます。
  32. 矢山有作

    ○矢山有作君 それでは本論に入りまして、昨日来問題になっております件についてこの場で政府の見解をはっきりしたいと思います。  それは今度の米価審議会に対する諮問の文章の中に、私どもの立場からするならば、これは明らかに食管法違反であると思われるような文言が入っております。しかもこの文言のあることが米価審議会の審議を拘束するような非常な重大性を持っておりますので、この点について明確な御見解を示していただきたい。それは諮問の文章の中に「昭和四十四年産の米穀の政府買い入れ価格については、生産費および所得補償方式を基本とし、米穀の需給事情を考慮して決定することにつき、米価審議会の意見を求める。」、この「米穀の需給事情を考慮して決定する」云々という、この文章というのを諮問の中にわざわざ入れられたことが私は先ほど言いましたような考え方に立って不当であると、こう言っておるわけですが、これに対する御見解を承りたい。
  33. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) この諮問の中にあえて需給事情ということを入れたことは、需給事情というのは、経済というもののやっぱり需給というものは基礎になるものであって、当然経済の範囲内の中に加えられるべきものである。こういうような点と、米がいま現実のような異常なる需給状態でありますので、それを少なくとも諮問の中に入れておくということは当然これらは行なわなければならない範囲内のものであると私たちは考えて、今度の諮問の中に入れたわけでございまして、ただ申し上げるまでもなく、その中には生産費及び所得補償方式を基本としてということがはっきりうたわれておるのでございまして、その点を基本として米穀の需給事情というものを、これを考慮して決定を願いたいと、こういうようなことでございまして、決してブレーキをかけるゆえんでもなければ、ただ今日まで米の生産というものに対していろいろ御苦労願っております関係上、今日ではかくのごとくなっておりますということをこの中に報告旁々諮問の文の中に入れたわけでございます。
  34. 矢山有作

    ○矢山有作君 大臣のただいまのお話は一般論としては言えることなんです。しかしながらあらためて伺いますが、米に対して政府はどういう態度をこれまでとってき、さらにいまとっておるのか、それをまず明確にしていただきたい。
  35. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 昭和十七年以来、いかに生産をあげ、したがって一億の国民にひとしく分配をするか、こういう点に重点を置いて今日まで施策が進められてきたと考えております。でありまするから、そのおかげをもちまして今日はもう国内においてもかくのごとくなりましたということをこの中に羅列したわけでございます。
  36. 矢山有作

    ○矢山有作君 回りくどい言い方ですが、要するに私は核心の答えがほしかったわけです。米は国家管理のもとにあるわけでしょう。そうですね。そうすると米が国家の統制のもとにあるという性格からして私は食糧管理法というものが組み立てられていると思うのです。なぜかといいますと、同じような農産物価格のきめ方というものがその他の法律できめられております。たとえば農産物価格安定法の第五条第一項の第一号ですか、そこには「生産費及び物価、需給事情その他の経済事情を参酌し、再生産を確保することを旨として」価格をきめる、こうなっております。さらに畜産物の価格安定等に関する法律の第三条第四項にはまた価格決定のやり方として「これらの生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、これらの再生産を確保することを旨とし」価格をきめると、こうなっております。この法律の表現の違いというものは、国家の統制のもとにある物資とそうでないものとによって私は区別されていると思うのです。国家の統制のもとにある物資であるならばいろいろな経済事情を参酌することが必要でありましょう、価格の決定に際して。たとえば物価、賃金あるいは農産物でいうならば農業用資材の価格あるいは生産状況、いろいろなことを勘案する必要がありましょうが、しかしながら少なくとも国家統制のもとにあるという立場からするならば、需給事情というものは私は価格決定の中の大きな要素ではないと思う。そういう考え方に立った場合に他の農産物と米との間には大きな違いがあるわけです。そのところを踏まえているから私は法律の表現のしかたに大きな違いが出てきたと思う。それが私はこの法律を解釈する場合の非常に重要な点だと思います。この点についてわれわれが納得できるような御答弁が願えなければ、私は諮問のやり方が誤っておる、したがって諮問のやり直しをすべきであるということの主張を取り下げるわけにはまいらぬわけです。
  37. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) たとえば農産物価格安定法、これによりますと御指摘のように第五条第一項第一号には「甘しよ生切干、甘しよでん粉又は馬鈴しよでん粉については、その原料である甘しよ又は馬鈴しよにつき、政令の定めるところにより、農業パリティ指数に基づき算出した価格を基準とし、生産費及び物価、需給事情その他の経済事情を参酌し、再生産を確保することを旨として農林大臣が定める」、このようになっております。お米はパリティでなくて要するに生産費・所得補償方式を基本としてということにもなっておりますので、農安法と同一なつまり法律の取り扱いをすることはちょっと御無理ではないだろうかと考えられますが……。
  38. 矢山有作

    ○矢山有作君 大臣、それはいまの発言は重大ですよ。農安法にきめられている農産物と同じような価格の取り扱いをすることが間違いではないとおっしゃるとするならば、これは私はよって立つ基本に重大な誤りがあると思う。農安法にいう農産物、畜安法によるところのいわゆる畜産物、これは国家の統制品目ではないのです。米は国家の統制品目なんです。その基本のところから法律の立て方というものが違ってきておる。だからそれを抜きにしてこの解釈、運用というものは成り立たない。そこのところは明確にできませんか。もし大臣が将来米を他の農産物と同じような状況に持っていくんだというお考えがあるとするならば、これは米価審議会に諮問をされる前に法律改正の手続をとっていただきたい。それをやらないでおいて米と他の農産物と扱いが基本的に違うものを、それを法律のたてまえはそのままにしておいて、一番大事な基本的な立場を抜きにして解釈で運用していくということは私は許されないと思う。
  39. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 行政の最高責任者としての大臣のお答えはのちほどあるかと思いますが、法律の解釈上の問題もありますので、私から一応大臣から申し上げました点を私なりに理解をいたしまして御説明をしておきたいと思います。  大臣のいま申されましたのは、農産物価格安定法については、「農業パリティ指数に基づき算出した価格を基準とし、生産費及び物価、需給事情その他の経済事情を参酌し、再生産を確保することを旨として」定める。一方、食糧管理法では、「生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ」定める。これは御指摘のように、私どもにとりましても、農林大臣も、農産物価格安定法の場合に、これが国家管理対象ではなくて自由市場における流通を前提にしつつ物価価格の安定をはかろうという趣旨でございますから、いずれの場合にも経済事情を参酌すべきであるという点については同様であるが、表現の上で「物価其ノ他ノ経済事情」と一方では言い、一方では「物価、需給事情その他の経済事情」ということを申しております。差がある。したがってこれは法律制度として価格の取り扱いを同様にはできないものであるということを大臣も実は申し上げたと私は理解をいたしておるのでございます。ただ「物価其ノ他ノ経済事情」と言い、あるいは「物価、需給事情その他の経済事情」と言う、これはいずれも経済事情というものの中身を構成するものであるということだけは間違いないわけでございます。したがって食管法第三条の「物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ」という中で、需給事情を考慮して米価を定めるということが法律上の違反でもなく、また現在の米の需給事情のもとでは、そのこと自身を念頭に置いて米価の決定に当たるということは一つ考え方であり得るということでお答えを申し上げた、法律解釈とあわせて私の理解としてはさように受け取っておるのであります。大臣から総括的なお答えがあると思いますが、一応そういうことでございます。
  40. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 先ほども指摘がございましたんですけれども、経済事情という中には、やはり何といっても需給というものが大きくその中にウエートを占めており、また今日までお互い政治的に皆さん方とともに米穀の生産というものを、いかにして需給のバランスをとるようにするかということに懸命に努力をしてまいったのでございまして、その結果はかくのごとくなりましたということをその諮問の中の案文に加えたということ、これは私は決して違反だとは考えておらないのでございまして、現実をお知らせし、そしてその価格というものは生産費・所得方式を基本としてお定めをいただく上に立っての一つの参考資料ではあるだろうと考えられます。
  41. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃ食糧庁長官に聞きますがね、法律をつくる際に、その法律対象としておるものに対する政府基本的な立場というものを抜きにして法律をつくられるのですか。私はそれはできぬと思う。米というものは国が統制をしていくんだという基本的な立場を踏まえて食管法はつくられたんでしょう。そうでしょう。それからその他国の統制下にない農産物については、国の統制下にないということを踏まえながら、その中で生産農民の所得をできるだけ確保してやろう、そうして公正なる価格をきめようという立場でつくられたんでしょう。基本的な立場の相違があると思いますが、基本的な立場の相違をお認めになるかどうか。そのほかのことはよろしいから、基本的な立場が違っておるのか、違ってないのか、それだけをはっきり言っていただきたい。
  42. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 簡単にお答えをいたしますと、これは間違いのもとになるかと思いますので、多少時間をお許しいただきたいと思うんですが、政府の価格政策の基本になりますような立法のための立案をいたします場合に、その法律がいかなる性格農産物対象として考えておるか、またその流通というものがいかなる事情のものであるかということを念頭に置いた価格決定の参酌事項を規定をするということは、これは私はその対象性格の違いによって異なる場合があり得る、現実にそういうふうになっておるのではないかというふうに思うのでございます。  で、国家管理対象でございます米穀、米につきまして、これが経済事情を参酌すべきものである。しかしその経済事情の中で、特に政府が三条一項の規定で法的強制のもとに買い上げ得るという規定がございます限り、そのことと対応いたしまして、経済事情というものの例示として物価というものをあげ、通常この法律本来の制定の際における考え方として、需給の急激な変動というようなことを考慮するということの重要性というものを必ずしも予想をしなかったということがあったと思うのございますが、需給事情というものを経済事情の例示として書かなかったというのは、私はそこにやはり米の管理というものの特色というものを念頭に置いた立案がされたというふうに理解をいたします。需給事情というものに対応して発動せられるような価格安定制度のものにつきまして、需給事情を経済事情の例示として示すというのは、これまたそれなりに十分意義のあることだというふうに思います。
  43. 矢山有作

    ○矢山有作君 そんなチャランポランな答弁は許しませんよ。それで米審は済むだろうが、国会にそれは通らない。少なくとも価格決定のしかたについて、その物資に対して臨む国の基本的な立場が違う。したがってそれが立法に反映をしたということはあなたが御承認になった。基本的な立場の相違が立法に反映するものとするならば、その基本的な立場を踏まえてつくられた法律というのは、基本的な立場のワク内において解釈を適用すべきだ、そのワクをはずれて行政官僚がかってな解釈を適用したら、一体立法府の存在はどうなりますか。立法府の存在を否定されるなら別ですよ。もしあなたの言うことに私は百歩譲ったとして、たとえば経済事情の中には需給事情というものも一つ含まれているという考え方に私は同調したと仮定をしても、なぜこの法律の文章の中にないものを需給事情としてことさらに抜き出して米審の諮問に出さなければならぬのか、そういうようなことをすることが間違いだと言っている。私はあなたがその他経済事情の中にどういうものを含んでおると解釈するか、それはまた別個に議論すべき問題だと思う。しかしながら、法律の条文の中にないそういう問題までもなぜことさら抜き出して諮問の中に書かねばならぬのか。そういうことをやるということは、立法の基本を踏まえた立場から言うならば、大きな逸脱であるし、大きな法律違反だと言わなければならぬです。これは大臣、きわめて重大な食糧庁長官の答弁ですよ。立法の基本的な立場が違っておるのに、それを他の農産物と同じように扱うというようなことが許されるんですか。私はそれは許されぬと思う。そういうような解釈、適用をやるなら、一体大臣も議院内閣制のもとにおいて国会に籍があるはずなんです。立法府にも籍を持っておられるはずなんです。そういうことを行政官僚がやるのをあんたはだまって見ておる。見ておるだけじゃない。それをそのままの形で諮問に出しててんとして恥じぬということになると思うんです。私は、この問題が解明されぬ限りは、絶対にこの諮問のいわゆる米審を続けていただくことに対しては、立法府の立場から大きな疑問をはさみます。
  44. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 立法の精神の中に、ただいまお話がございましたように、経済という中にはその需給というものも当然含まれておりますし、またわれわれは経済の中で最も大きなウエートを持っておるというように私たちは考えております。したがって、需給という面を、今日の現実の需給の状態というものをお知らせ申し上げるということは、決して立法の精神に反しているとは考えておらないのであります。
  45. 矢山有作

    ○矢山有作君 それでは、価格決定の最も大きなウエートを持つものが需給事情であると言うんであるなら、これは他の農林物資と米と同じように扱う立場なんです。米は国の統制があるから——需給事情というものが一般論としては価格決定に大きな影響を持つけれども、一般論としては持つけれども、米は国の統制にあるから、したがって需給事情というものは、国の統制物資である米の価格決定についてはこれは重視をされておらぬわけです。私は全然ないとまで言い切ろうとは思いません。重視をされてない国の統制物資であるなら、需給事情を考慮する必要はないんです、極端に言うならば。そこのところの根本的な考え方が違うと言うんです、私は。
  46. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 冒頭にも申し上げましたように、諮問の中には「生産費および所得補償方式を基本とし」とはっきり銘打っておるのでございまして、今日のそれを基本としておきめいただくんですけれども、今日の米穀の実情というものを、需給の実情も考慮していただきたいということを申し添えたものでございまして、決して私は立法の精神に反してはいないんだ、このようにくどいようでございますが、申し上げるよりやむを得ないと思うのであります。
  47. 矢山有作

    ○矢山有作君 私もくどいようですが、やっぱり繰り返さざるを得ないわけです。これは法律の立法の基本原則に関する問題ですから、いかに皆さんがくどいと思われても、私はこれを繰り返さないわけにいかぬ。立法の基本の立場を離れて法律の解釈、適用がなされるなら法律は要らない。もし、先ほど来大臣も食糧庁長官もおっしゃったような、米が国の直接統制にないというふうな認識に立って、価格決定上需給事情が非常に大きなウエートを持つんだと言い切れるならば、それは話は別です。しかしそう言い切られる以上は、食管法の改正を正々堂々とやるべきなんです。その大事な点をぼかしておいてかってな解釈適用は許されぬ。もしあなたがあくまでも固執されるなら、「米穀の需給」云々というのははずしてください。そうして法律に規定されているような「其ノ他ノ経済事情」と差しかえるべきです、これは最小限度。どうされますか、差しかえられない限り幾ら話してもしかたがない。
  48. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) すでに御諮問も申し上げたのでございまして、きょうは出席はできませんけれども、今度出席する場合には、そういうような御意見が強くありましたということだけは私のほうから申し述べる考え方でございます。
  49. 矢山有作

    ○矢山有作君 一たん諮問したものであるから変えられないといった論法は成り立ちません。諮問したものが誤っておるとするならば、誤りを改めるにやぶさかであってはなりません。少なくとも政府という立場に立ったら、私は誤りを認められるなら、そういう米審に出ていろいろなことを口頭で言われるよりも、諮問案文を変えるべきです。それが政府のとるべき最も正しい私は姿勢だと思う。断じてこれはやってもらいたい。
  50. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 先ほども申し上げましたとおり、私たちは誤っておるとは考えておらないのでございまして、しかしながらそういう御意見が強かったということだけはやはりお話を申し上げるのが当然であろう、こういうように考えておるのでございまして、申し上げたように強くこういう、そのような御意見がありましたことを申し添える考え方でございます。
  51. 中村波男

    ○中村波男君 さっきから質疑を聞いておりますと、全く議論は平行線でありますが、私もう少し具体的にお聞きしたいと思うのであります。私が指摘をするまでもなく、食管法第三条では、「米穀ノ生産者ハ命令ノ定ムル所ニ依リ其ノ生産シタル米穀ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノヲ政府ニ売渡スベシ」、これは先ほどから指摘されておりますように、いわゆる米穀の強制買い上げの規定があるわけです。その次の二項へいきまして「前項ノ場合ニ於ケル政府ノ買入ノ価格ハ政令ノ定ムル所ニ依リ生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シ」、この経済事情を参酌するという解釈の中に、政府は今回新たに需給事情というものを入れたという、こういう解釈をとっているのでありますが、その議論はあと回しにいたしまして、問題はその次の「米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」、これがいわゆる第二項の価格をきめます基本であると思います。「米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」だといたしますならば、経済事情ということの中に需給事情政府は今回入れました。実質的には値下げを行なう諮問案というものを米審に出したのであります。米穀の再生産を確保するきめ方というのはどういうきめ方が正しいのか、まずそれから議論をしてまいりたい、それについての見解を聞かしてもらいたい、そう思うわけであります。
  52. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 食管法第三条第二項の政府買い入れ価格の決定について「米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」と言っておりますことは、国民食糧の確保のために必要な米の反復生産を可能ならしめるように、その生産費を償うようにすべきであるという趣旨を規定したものと私どもは解釈しております。
  53. 中村波男

    ○中村波男君 だからですね、生産費・所得補償方式というものをわれわれは前々から主張をし、ようやくその方式によって今日まで米価がきめられてきたわけでしょう。そのきめ方を一応諮問案では基本とするとは言っておりますけれども、これはことばのあやであって、需給事情を考慮して今回はいわゆる限界反収方式から平均反収方式に、すなわち総理の施政方針演説における、生産者米価は上げないというこの方針に合わせるように計算をして出したということは明らかであります。これは私は、政府も認めざるを得ないと思います。理論的に幾ら議論をいたしましても、今回の計算のやり方が説明できないというのであります。したがって再生産を確保するということは、具体的な計算の方法としては、生産費・所得補償方式を貫くという以外にはないと思うのでありますが、いかがでありましょう。
  54. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 私たちも生産費・所得補償方式というものを基本としてやはり貫かなければならぬ、この考え方には少しも変わりはございません、しかしながら今日までの長い間、いろいろ再生産に努力をしてきた結果がこのような需給事情になりましたということを、御報告というか、こういうようなこともやはり考慮に入れてと、報告かたがた入れたわけでございますので、決してこれによって米価を算定し、押えるということにはいかないのじゃないか。たとえば去る三日に、統計を新聞紙上で発表し、また今回諮問に出してあるように、統計からまいりますと、生産費というものがこれだけ高くなりました、あるいは労働賃金はこうなりましたというような点も、あわせて提出をしてあるのでございますから、決してこれによって価格が押えられるというようにお考えになる、押えられてしまうのだというようなことのないように、そういうような資料というものも十分そろえて提出してあるのでございます。
  55. 矢山有作

    ○矢山有作君 大臣のおっしゃることとやっておられることが、まるでうらはらなんです。「米穀の需給事情を考慮して」云々というのは、大臣が言っておられるような軽い意味で諮問の中にのってきておるのじゃない。それはあなた自身が米審で説明された諮問についての説明を思い出してください。あなたが説明をされたこれを見ると、生産費及び所得補償方式を守って再生産を確保することを基本にしてきめるのだということが薄められてしまって、需給事情というものが前面に出てきているのじゃないですか。しかも参考資料としてつけられた、 「政府買入価格の試算」を見れば、ますますはっきりその裏打ちがされている。ですから私どもの言うのは、幾らあなたがお逃げになっても、国が統制をしておる物資について、まっ正面から需給事情というものを打ち出して価格決定をやろうとしている、その姿勢を否定することはできない。であるとするなら、法の本来の立場がくずされておるのではないか。法の本来の立場をくずすようなそういう適用をやるのなら、まず法を変えてからやってくださいとわれわれは言う。法はいかにも国民を守るようなていさいを整えながら、米審に対する諮問は国民を守っていく法の立場を尊重するような口吻を漏らしながら、やっていることはまるで逆のことをやっている。ですからわれわれは納得できないのです。したがって私は、この「需給事情」云というものの全面的な削除を要求します。削除できぬのなら、法律に忠実に、「その他の経済事情」と直しなさい。これが政府のとるべき一番正しい姿勢ですよ。これ以上幾ら論議を繰り返してもこの問題は片づかない。ごまかしをやってはいけませんよ、これは。
  56. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 先ほど農林大臣もお答えをいたしましたように、四十四年産米の政府買い入れ価格を決定するにつきましては、生産費及び所得補償方式を基本として定めるべきであるが、現在の米管理の実情というものに立ちました場合、米が構造的な供給過剰状態になって、これが農政全般の上からも、また食糧管理運営の点からも最大の問題であることだけは私は否定できない事実であると思うのでございます。そういうような事実につきまして諮問の説明の中で、米価審議会に御報告かたがた御説明を申し上げておるのでございまして、そのような事情を念頭に置いて生産費・所得補償方式を基本とする米価の決定をいたしてはいかがであろうかという趣旨でございます。そういうようなことを諮問するにあたりまして、生産費・所得補償方式を基本としつつ算定をいたしてまいりますと、かような十アール当たりの評価がえ平均生産費に相なります。またそれを今日の需給事情のもとでは、平均評価がえ生産費というものを除する反収としては、あるいは平均生産費をもって足りるのではないかという議論もあり得ましょうが、一方、生産農家に対します経済的影響あるいは心理的影響等を考慮して、二分の一シグマを従来の一シグマに変えて引いた反収を用いるということにいたしますと、かような結果になります。ところが、そういう最終の結果は、一—四等級米のウルチの包装込み手取り価格というのはやや下目に出るというようなことになりますが、食糧管理制度というものの本質から見て、少なくとも前年度米価手取り価格を下回るということはこれは好ましくないことであり、われわれの期待せざるところであるということでございますので、そのための補正をいたしますとこういう姿に相なりますということを、審議の御参考として提出をいたしたのでございます。
  57. 矢山有作

    ○矢山有作君 算定方式は後ほど聞きます。私はまだ算定方式の議論をすべき段階ではないと思うのです、法律基本的な問題ですから。したがって、算定方式の問題に、問題をはぐらかさないようにして、まず基本論において問題を解決していただきたい。あなたは先ほど来、需給事情の緩和ということを盛んに強調されますが、その需給事情の緩和は農民の責任なんですか、国民の責任なんですか、それとも政府の責任なんですか。米が国家管理であるという前提のもとに御答弁を願いたい。
  58. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私は、食糧管理制度運営を通じまして、昭和十七年食管法制定以来、日本の国民食糧の基幹であります米はむしろ不足状態を続けてきたのでございまして、そこで食管法に基づく価格政策の面におきましても、あるいは生産対策にいたしましても、あるいは災害補償制度運営にいたしましても、米の生産増大という点に焦点を合わして運営されてきたというふうに考えるのでございます。そういう政策の実施とともに、農家、農民の方方の御努力と相まって自給の達成を見るに至ったと思うのでございまして、その意味では私は、米穀管理制度あるいは農政一般の展開の成功を見たというふうに思うのでございますが、そういう需給の均衡をさらに上回るような今日の構造的な供給過剰という状態は、これは放置すべき状態ではないというふうに考えられるのでございまして、この点の責任の所在云々ということは私はこれは簡単にだれの責任であるというふうには言い切れないのではないかと思います。
  59. 矢山有作

    ○矢山有作君 だからいまの政治に対する、政府に対する不信が国民の中に充満するんですよ。たったおととしまででしょう、かねや太鼓で米増産だと言って増産運動を進めたのは。その増産運動をやっておいて、国民がそれの期待にこたえて、少し米の需給が緩和したといえば、今度は価格問題に結びつけてこれをたたこうとする。そしていま需給緩和の実際の責任はだれにあるかといえば、責任の所在はわからぬと、そういうでたらめなやり方というのがありますか。私は米が統制物資でないならこういう議論はしません。米は政府が全面的に握っているんです。握っている以上は需給事情がどうなるかということはだれよりも政府が一番よく知っているはずなんです。米をつくっている農民も知らないんです。まして米をつくらぬ国民も需給事情がどうなるか知らない。管理を全面的に握っておる政府が一番需給事情については知っているはずなんです。それを知っておって、しかもなおかつ増産運動をやった。そうして今日需給緩和の現象が起こった、直ちに米価の抑制策に出る、これが私は誤っておりはしませんかと言うんです。過剰の問題と米価の問題はさい然と区別をして議論すべきです。何とならば、米は政府管理のものですから。それをごちゃくちゃにして問題を処理しようとするところに大きな誤りが出てくる。米価の問題は米価の問題、生産農民の生活を確保する、国民の生活を圧迫しない、そういう法律にきめられた立場で決定をする、過剰現象があるなら、過剰現象に対してはこれが解消されるような政策を積極的に打ち出す。これをなぜさい然と区別しないんですか。それをごちゃくちゃにして、一緒くたにして処理しようとするところに今日の食管制度のあなた方による運用の誤りが出てきたんです。これの自覚と反省なしに一方的に農民や国民に犠牲をかけようという、そういう政府の存在は許されぬと思うんです。  私はこの際率直に反省してもらいたい、そして今日の需給緩和の状態については全面的に政府に責任がある、その態度を明確に打ち出して——あるとするならば米価の決定に対しては食管法がきめておるその立場を踏まえて諮問をする、そういう姿勢を直してもらわぬ限りは、いかに口先でうまいことを言われても、われわれはそれを信頼するわけにいかぬのです。
  60. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) お説でございまして、もっともこの問題については責任がないということは言い切れないと私は思います。したがって与党、野党を問わず、今日たとえば法案にない所得補償までやって、そして生産を高めていく、そして生産を高めるということは再生産を確保するためにこのような措置をとって、お互いが奨励をし、そして米価をなるべく高めていきたいという考え方の上に立って所得補償というものをこの中に入れて、そして米価というものの決定に当たっておったのでございます。でありますから、私たちは決して責任が政府にないとは申されませんし、またわれわれ議員といたしましても生産を高めようという考え方で努力したことも誓って間違いありません。  でありますから、今年に至りましても米の過剰だという、この過剰状態がありますよというような点について、何とか一万ヘクタールほど御協力願えないかというようなお話も申し上げまして、実際からいくと、統計からいくと二十万ヘクタールとかいいますけれども、ことし一万ヘクタールだけ何とか御協力願えないかというような考え方を持って、お願いをいたしましたけれども、結論としては大体五千ヘクタールぐらいのようでございます。したがって、都市周辺がいろいろ潰廃をされていっている中ではございますけれども、結局本年度の作付反別というものは前年に対しまして二千ヘクタール強多くなっておる。こういうような実情でございますので、やはり話は戻りますけれども、そういうような点につきましては、現在日本では強制的に作付を制限するというわけにもなかなかまいりません。  要は協力を得ながら納得の上に立った生産と需給というもののバランスをとる。といいましても、価格が押えられればお前はこれは生産が減少すると思うかというお尋ねもございましょうけれども、私はこれだけ定着したものはなかなかそうはいかないだろう、こういうふうに考えます。価格の低い点について、たとえば先ほどお話のあったようなシグマですか、そのとり方によって少し不利になるところがあるとするならば、それらは他の方法によってこれらの処理は考えていかなければならない問題もその中に残っているだろうというようにも考えるのでございまして、御指摘の、責任はだれにあるのだといえば、当然われわれ農林省にも十分責任のあることは痛感をしなければ相ならぬと考えております。
  61. 矢山有作

    ○矢山有作君 食糧庁長官、いまの大臣の答弁の最後の部分はやはり行政官僚としては肝に銘じておくべきものだと思うのです。政府当局に責任があるのですから、これは余談ですが、あなたにはっきり申し上げておきますが、自分に責任がないような立場で問題を処理しようとすれば誤りが起こります。  そこで、ただいま申し上げたのですが、大臣、いまなぜこれほど米価の問題が大きな問題になっているかというと、あなた方がお考えになっておられるようなこの諮問では、一番肝心かなめの、あなた方が一番強調しておられる所得の補償もはかれない。再生産の確保もできない。だから問題になっているのです。それでこれだけの大きな問題になっている。なぜかというと、物価の上昇状態を考えてごらんなさい。賃金の上昇状態を考えてごらんなさい。しかも、特にことしにおける大幅な賃金の上昇というのはこの五月から起こっておる問題です。そういう条件を踏まえた場合に、あなた方が何と言われようと、この諮問のやり方は需給事情を強調したということはあくまでも食管法を逸脱し、ことさらに米価を抑制しようという意図以外の何ものでもないと思う。  私はもう一つ観点を変えてそれでは聞きます。ちょっと方角は変わりますが、大臣、食管法には第三十一条以下に罰則規定がありますね。この罰則規定は一番重いのでこの食管法に違反した場合には十年以下の懲役または十万円以下の罰金になっております。この規定の適用は現在の需給緩和の状況を踏まえてどうなんですか、まずそれを明確にしてください。
  62. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 罰則の科刑限度の規定につきましては、食管法違反のみならず、他の法令違反の場合の科刑の限度というものとのバランスをもって規定をされておるのが例でございまして、私ども三十一条以下の統制命令違反の罪その他の罪についての科刑は、現行の物価統制令等の科刑の限度とバランスをとっておるというふうに理解をいたすのでございますが、現在の需給事情の緩和のもとにおいてこの科刑の限度内でいかなる現実の刑を科するかというような問題は、やはり私は情状の問題として裁判官の心証としてはあらわれるのではなかろうかというふうに思います。
  63. 矢山有作

    ○矢山有作君 ですからこの罰則の適用の現状はどうなっておりますかと言っているわけです。いろいろおっしゃるけれども、他の経済関係の法規の罰則規定よりこれはきわめてきびしい罰則になっております。それは食管法が、米の国家による統制がいかに重大視されておるかという一つの半面のあらわれでしょう。ところで、あなた方が強調される需給緩和の実情の中で、この刑罰法規の適用を今後どう考えになるかということをあなたのかつての答弁を思い出しながら言ってください。
  64. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 法律の体系は一つの一貫した思想によってささえられておると思うのでございますが、そういうことから申し上げまして、今日直ちに需給事情との関係で三十一条以下の罰則についての改正というようなことは私はなかなかむずかしいというふうに思われるのでございます。他の罰則に関します法律の改正というような問題の場合に、それとの均衡をはかる必要があるというような場合には、これらの罰則につきましても検討すべきではなかろうかというふうに考えております。
  65. 矢山有作

    ○矢山有作君 どうも答弁が回りくどいですから、私のほうから言いますが、あなたはかつて、この罰則の適用の問題がいろいろここで論議されたときに、現在の米の需給事情から見てこの罰則の適用というのはなかなかむずかしい、実態にそぐわないという意味発言をされたんですが、それはいまでもそうお考えになっておりますか、どうですか。おそらくいまの答弁をわれわれの頭でこう縮めて言ってしまえば、なるほど重い罰則がつけられておるが、実際にはこの罰則の適用は現在の状況ではとてもできないだろう、こういうふうにお考えになっているだろうと思うんですが、どうなんですか。
  66. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私はこの委員会でお答え申し上げましたことの記憶の中に、確かに法治国家の中で法規違反の事実がある、つまり食管法違反の事実があるということは遺憾ではございますが、それが現在の需給事情のもとで、およそ食糧管理法違反の事実がすべて取り締まりの対象として把握されるということは事実上困難であろうということを申し上げたのでございます。取り締まりの対象となり、かつそれが起訴され、裁判を受けるという場合に初めて三十一条の罰則の規定が適用されるわけでございますが、その場合に現在の需給事情というようなものが罰則の適用について情状の問題としてやはり裁判官の心証に影響を及ぼすということはあり得ることではなかろうかということを申したわけでございます。
  67. 矢山有作

    ○矢山有作君 何を言っているのかよくわからないけれども、要するにこういうことなんでしょう。この刑罰法規の適用というのは、社会経済の実態から見てそぐわぬということをあなたは肯定されていると思うんです。そこで私が伺いたいのは、法律というのは、実定法というのは、社会経済の実態から大きく遊離してもいいものかどうか、この点をお伺いしたい。
  68. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 一般論から申し上げますれば、社会の実態から遊離した実定法というものについては、社会の実態に即するような検討が行なわれることが私は妥当であるというふうに思います。
  69. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうすると、いまの社会経済の実態、特にあなた方が強調される米の需給の状態からして特徴的なことは、この食管法の中の罰則規定というのは社会の実情からきわめて大きく乖離しておるということを私は認められたと思う。そういう社会の実態に大きく乖離をしておる法律をそのままにしておくことが許されるんですか。それだけ社会経済の実態から大きく乖離した法律であるならば、これは当然社会経済の実態に合わせて変えるべきではないか。それをしないで、実定法であるこの法律が、社会経済の実態から遊離しておるのをそのままにほっぽらかしにしておく、この法律というものがつくられておるたてまえからいったらこれは許されぬことです。  だからたとえば前に繰り返した議論を一つの議論とし、いまの問題をいまの問題の議論として取り上げても、私は食管法をこのままにしておくことはあなた方の立場からいえばできないんじゃないですか。それをしもあなた方の立場から、この食管法をこのままにしておいて、そして中身においてこれを大きくくずしていくようなやり方をやろうとするのは、これは政府みずからが法律を軽視するものであると言われてもしかたがないじゃないですか。もしあなたが、私が最初に展開をした、いわゆる需給事情を諮問に入れた、それが法律に違反しておるという問題とあわせて、社会経済の実態から大きく遊離しておるんですから、罰則規定一つとってみても。そうしてまたこの諮問に盛られたその考え方というものも、この食管法と社会経済の実態が大きく遊離したという前提に立ってあなたは言っておられると思う。そうするならばまず法律を変えようじゃありませんか、あなた方のほうから提案なさい。法律を変えないでこういう重大な、国民をしばり上げるようなものをそのままにしておくことは許されませんよ、あなた方の立場から。  私は、あなたがもしここで食管法の全面的改正をやると言うのなら別個の観点から議論いたします。それを言わぬ以上は、こういうような実態にそぐわない法律をそのままにしておいて、実態にそぐわすために国民の目をごまかすようなやり方に対しては納得できない。だからいまの米審を直ちに取りやめて、まず法律の問題を処理してから米審を開いてください。そこまで踏み切れますか。それがけじめがつかぬ間は、間違った法律を適用して米審を招集しておる、米審に対して法律基本的なものを誤って諮問しておる、その誤った諮問に基づいて米審が運営されるということは、私は米審に結集された良識ある委員にはできないだろうと思う。それをしもわかっておって米審の諸君がその違法な諮問にこたえて審議をやるというのであるならば、米審の存在自体が問題になってくるじゃありませんか、そこのところを明確にしてください。
  70. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) ただいままず食管法の改正を考えたらどうかというような御提案がございましたが、先ほどもちょっと触れましたように、食糧管理法は国民食糧の確保なりあるいは国民経済の安定をはかるために食糧を管理するということで、食糧の需給、価格の調整、配給の統制を行なうための基本的な法律でございますから、このような重要な法律について軽々に改正を考えるべきではない、またこの法律全体が一つの体系をなしておるわけでございますから、軽々に一部を改正するということも問題があろうというふうに私考えておりますので、この法律改正の問題について断定的なことを言えるような立場にはございませんが、少なくとも食糧庁として食糧管理法の改正を考える、あるいは検討しておるという事実はございません。  なお、大臣からお答えがあるかと思いますけれども、私どもとしては米価審議会に対します諮問は、生産費・所得補償方式を基本として、そうして食管法第三条第二項の参酌事項であります経済事情に含まれる需給事情、それを考慮して米価の算定を行ない決定をするという考え方はどうかという諮問は、何ら違法の性格を持つものではないというふうに思っておるのでございます。その点は政府としては統一した見解でございますので、おことばではございますが、諮問を変え、あるいは米価審議会の審議についてどうこう考えるということは現在考えていないのでございます。
  71. 矢山有作

    ○矢山有作君 私は食管法を変える論者ではないんですよ。食管法を変えることには反対なんです。食管制度を堅持したいんです、私は。ところがあなたは、重要な法律だからこれについて変えようと思わぬとおっしゃる。私は変えてもらっちゃ困ります。変えない立場を支持するんです。ところが、変えない、変えないと言いながら、なぜ食管法を無視するようなことを平気でやられるんですかということを私はいま問題にしている。変えない、変えないと言ってうまいことを言いながら、食管法を全くたたきつぶすようなことをやる、そのことが法律の立場を無視し、国民をごまかすからいかぬと言うのです。実質的に食管法をぶちつぶすようなことをあなた方やっておるんだから、そうであるならば、われわれはかくのごとく食管法をぶちくずしますということを国民の前に明確にすべきです。その明確にする手段は、あなた方の場合は法律を変えることなんです。それをやらないで、陰でこそこそやるようなやり方は私はけしからぬと言うんですよ。そういう議論なんですよ。だからあなた方が、いま私どもがやっておる食管法を根こそぎくずしてしまうようなやり方は誤っておるから諮問はやめますと言うなら、これは大賛成、拍手してあげます、ここで。ところが、あくまでも自分たちの考え方が正しいのだ、法律違反ではないのだというのであるならば、食管法をまずやってからにしてください、正々堂々と。  私は、食管の基本的な立場に関係する問題だからこれだけやかましく言うのです。罰則規定の適用は、いかにこの法律の適用があなた方によってサボられておるかということを印象づけるために引いたんです。そういうような罰則規定に対する考え方だから、これから政府米、自主流通米、やみ米について、これをさい然として区別をし、国民、消費者に大きな不利益をかけないようにするための手段はあなた方にはないということをもあわせて言いたいのです。安い政府管理米が高い自主流通米になるかもしれない、安い政府管理米があるいは高いやみ米になって消費者の口に入るかもしれぬ、それを防ぐ方法は何もない。しかも、あなた方が、罰則の適用は実態にそぐわないとおっしゃる。一体どこに消費者の利益が守られるんです。一体どこに農民の利益が守られるんです。そう考えてくるならば、あなた方のやっていることは食管法を全面的にくずすやり方だと言うんですよ。くずすのなら、正々堂々とくずすということを天下に声明をしてから米審を開きなさい。それまで米審は中止すべきです。どうなんです。
  72. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私ども、今回の米価審議会に対する諮問も、食糧管理法の規定に沿って諮問をしておるつもりでございまして、食糧管理法をくずすというような不逞な精神は全くないのでございます。したがいまして、お話のように諮問を改めるか、あるいは法律改正をもって臨むという御主張には賛同いたしかねるのでございます。
  73. 矢山有作

    ○矢山有作君 食管法をくずすような不逞な考え方がないのに、なぜ食管法をくずすような不逞なしかたの諮問をやるんですか。こういう不逞なことをやりながら不逞なことをやっておりませんというのは、どろぼうをしながらどろぼうしておりませんと言うのと同じなんです。だから、まず、不逞なことをやっておらぬとあなたがおっしゃるなら、私はそれを信頼しますから、この「米の需給事情を考慮して」を抜いてください。そして、食管法をお互いに堅持しましょうよ。
  74. 足鹿覺

    足鹿覺君 関連して……。重大な問題でありますから、諮問案の不法性について矢山委員から先ほど来御質問があっておるわけであります。  いま聞くところによりますと、米価審議会は非公式の懇談会を速記をつけてやりながら、あとで大臣の事後了承をとりつけていけばいいのだ、会議はこう形で進行しておると言われております。私はかつて米価審議会の委員を長らくいたしましたが、そういう不見識な運営をやったことは経験がございません。今回は、政府与党の諸君が七十二日間の会期の延長をみずから強行されたことにより、米価審議会とはからずも国会審議があわせ行なわれることになった事実にかんがみて、農林大臣は少なくともいま行なわれておる米価審議会の懇談会のごとき形式をそのままのまれて今後米価審議会を続行していかれる御方針でありますか、まず最初にその一点を農林大臣に伺いたい。国会を優先させ、国会の態度がきまってから、いわゆる再諮問をすべきかどうか、その違法性があるやいなや、そういう点について結論を見て、その上で米価審議会に対処される御決意がありますかどうか、審議会は一方的に進行しつつあるという情報を受け取りますので、この機会に大臣に御所見をまず承っておきたい。
  75. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 昨日も皆さん方がおいでになるところで申し上げましたとおり、私は明日は国会に出席をしなければなりませんので、米価審議会のほうへ出席は不可能でございます、こういうふうに申し上げましたところが、あなたが出てこないようでは本格的な審議会を開くわけにいかないから懇談会ででもやるよりやむを得ません。済み次第なるべく早く出てきてそうして本格的な審議ができるように、あなたのほうから処置をしてもらいたい、こういうような御意見でございましたので、さよう承知いたしたのでございまして、そのような点につきましても皆さん方のほうへ御報告を申し上げたはずでございます。
  76. 足鹿覺

    足鹿覺君 懇談会は法律的に言って審議会とみなしますかいなか。私は正式の審議会とみなすことはできないと思いますが、大臣はいかがですか。
  77. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 懇談会は懇談会としての取り扱いだろうと考えます。
  78. 足鹿覺

    足鹿覺君 これは会期の中に含まれるものとお考えですか。われわれは重大な国会の場において、矢山委員が先刻来るる諮問の違法性について疑義がある点について審議を尽そうとしておるにもかかわらず、非公式の懇談会を開くことを審議会としてお認めになるということは不当ではありませんか。
  79. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) お話を申し上げて昨日も御了承を得たつもりでございますが、私は懇談会は懇談会としての取り扱いをするだろうと考えております。別にこれに対して私の云々を申し上げるところではないと思います。
  80. 足鹿覺

    足鹿覺君 そうしますと、正式な諮問の審議ではない、委員会が非公式に懇談をしておるので、自分としてはあえてこれには介入しない、かようなことでございますか。
  81. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) もちろん私はそのように解釈をいたしております。
  82. 足鹿覺

    足鹿覺君 それではその点はそういうふうに了承いたします。しかと御記憶を願いたい。  それから先ほど来問題になっております食管法をそのままにしておいて生産費・所得補償方式に基づいてやるのであると言いながら、事実上においてこれをなしくずしにくずしつつあるという御指摘に対して、檜垣長官は答弁をされましたが、その一例を農林大臣にお尋ねいたします。  これは昭和四十四年二月二十六日における衆議院の農林水産委員会の記録でありますが、わが党の柴田委員質問に大臣が答えられておるのであります。それは二月十三日の予算委員会において他の社会党の議員から福田大蔵大臣に米価のきめ方は限界反収方式をとるかという質問に対して平均反収農家方式をとるという答弁があった。これが食管法第三条二項の違反ではないかという追及に対しまして、長谷川さん、あなたはこのように答えておられる。「大蔵大臣と同じ考えは持っておりません。というのは、私のほうはただいま御指摘のとおりの立場にあります。したがって、平均反収でこれを決定しようなどという考え方は持っておりません。この点だけは明らかにしておきます。」と答えておきながら、本年の算定方式を見まするというと、平均反収農家を算定方式の一要因としておとりになっておるではありませんか。こういう事実が、こういう事実こそが生産費・所得補償方式を事実上において否定しておる生きた証拠ではありませんか。だから、先ほど来檜垣長官が百万言を弄しましても、矢山委員はもちろん、われわれは了承することはできないのであります。  一体食糧庁事務当局は、こういう大臣に背信と疑われるような、言質を裏切るようなことをやらしめていいのでありますか。大臣は口を開けば自分はしろうとである、誠心誠意やっておるということであります。われわれも今日までその大臣の人柄を信じ、今日までおつき合いをしてきたつもりです。しかし、事食管法をなしくずしにくずすために自主流通米を通し、しかも食管法の根本であるところの再生産を確保するために生産費・所得補償方式を基本とすると言いながら、反収を限界方式から平均方式に切りかえるということは、非常な大きな問題ではありませんか。こういう点について一体農林大臣はいかような御反省をなさっておりますか。二十六日の記録はここにありますから、よくごらんになって御答弁を願いたいと思う。
  83. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 御指摘の点は、今回平均反収をとるという算出方法は諮問の中には出してないはずでございまして、一シグマから〇・五シグマをとるんだ、こういうような計算になっておるだろうと考えますが、私のほうは申し上げたとおり、平均反収でこれをとるような諮問はいたしてないはずでございます。
  84. 足鹿覺

    足鹿覺君 確かに一シグマの二分の一をいわゆる反収にとっておられることは事実でありますが、昨年の決定方式とは異なっておることは間違いありません。決定米価算定方式と異なっておることは間違いありません。のみならず、地代におきましても去年よりも、去年の問諮案が四千二百五十四円であったにもかかわらず、決定は四千四百四十三円でありました。今年は四千五百十七円でありまして、きわめてわずかなものであります。御承知のように、農地法の改正案が出て以来、また昨年八月の小作料の統制撤廃が事実上行なわれて以来というものは、地代は急激に上昇しておることは御案内のとおりであります。これをほとんど事実上において据え置いておるではありませんか。また生産性向上のメリットの問題にいたしましても、去年はそのメリットを二分の一決定米価には算入してあるではありませんか。これをことしは加算をしておらないではありませんか。二百円をマイナス要因に使っておるではありませんか。こういうものを累積したものが結局二万六百四十円になり、昨年の決定米価よりも三十二円低い算式の結果を示しておるではありませんか。  私は算式の問題についてはあとで詳しく申しますが、かくのごとく、再生産を確保することを旨として定めるという第三条の規定、経済事情を参酌して定めるという第二項の規定等は事実上において無視され、改変されておるではありませんか。さらについででありますから、昨年の諮問と本年の諮問を対比して食糧庁長官はお考えになったらよろしい。  昨年の諮問は相当長文なものであり、ウエートはどこにかかっておるかと言えば、四十三年産米の価格決定方式については、生産費及び所得補償方式を基本とし算定すること、及びこれに関し留意すべき事項について審議会において意見を求める。後段にかようになっておるのであります。そして全体を通じて四項目からなり、第一においては、食糧の需給事情についてもある程度述べております。同時に消費者米価問題に触れ、第二項に至ってはストックの問題も五カ月分に達すると正確に言っております。何もこの滞貨現象は本年天から降ってきたものでもありますまい。はっきりと昨年の諮問案文には載っております。また第三の諮問の条項について見まするのに、生産、消費両米価との関係の問題についても正直に触れております。そして最後には第四点で重要な点は、最近の需給事情にかんがみ、これを念頭に置いて政府の買い入れ価格の算定に当たるべきである。こういうことに触れておるのであります。  この全文を通じて考えてみまするというと、いわゆる経済情勢の変化についても、物価、賃金の上昇についても触れ、需給事情についても触れ、また消費者価格の点についても触れ、一般情勢についても正直に触れておるのであります。真に政府がまじめに諮問を発せんとするならは、なぜ——物価、賃金の上昇、特に政府おかかえの三公社五現業のベースアップの平均は一三・八%ではありませんか。また政府は、予算の策定根拠において五%以上の物価は上げないようにしたいと言って、物価五%の値上げを暗に肯定しておるではありませんか。そしてこの結果はさらにその後において国鉄運賃を値上げしておるではありませんか。これらのものが総合して生計費の上昇になるという重大ないわゆる経済事情については一言もこの諮問案については説明にも諮問にも触れておらないのはどういうわけですか。ただ単に需給事情のみを強調するのは常識に反します。このようなことで国民が納得すると考えますか、しかと御答弁願いたい。食管法第三条の「経済事情ヲ参酌シ」とするならば、このような物価、賃金、生計費の上昇、その後における国鉄運賃の値上げ等は当然ここに正直に書き、しかる後についていかような判断を審議会が示すかをただすのが常識ではありませんか。審議会の諮問が誤まっておるというのは何人も疑う余地はありません。出直してもらいたい。
  85. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 諮問につきましてのいろいろな点でございますから、この点資料についての問題でございますから、長官から御説明をいたさせます。
  86. 足鹿覺

    足鹿覺君 それは大臣違うぞ。それは資料ではありませんよ。諮問の本文でありますから、これはいかに大臣がおっしゃいましても、事務当局の答弁にゆだねるというわけにはまいりません。これは少なくとも国務大臣としてこのような大きな経済事情が推移しておるということに対して政治家としての正しい判断を私は承りたいのであります。あまりものごとにとらわれないで、少なくともこういう点に欠点があったとするならば、われわれはあこぎにあなたを締めようとしておるのではない。率直に落ちておったところは落ちておったとして、経済事情を参酌すると、この条項については物価、賃金、生計費の上昇等について十分審議をしてほしいということの諮問の本文ないしは説明に当然入れて、堂々と米価審議会を開催をし、その審議にゆだねられることが政治家としての本分であると私は思いますが、重ねて大臣の答弁をお願いいたします。
  87. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) ごもっともな仰せでございますので、それらの点は資料として別途提出をさせてあるはずであります。
  88. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは資料として提出してくれと言っておるのではないのです。われわれはいま足鹿委員指摘のような重大な経済事情の変化がある。だからなぜそれをこの中にうたわないかと言っているのです。算定方式についてはきょうは質問しません。またこの次だ。だからいま一ぺん、重大な問題が落ちておるのだからそれを全部入れて諮問し直しなさいというのが足鹿委員の意見です。
  89. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) それは先ほど申し上げましたように、生産費及び所得補償方式、この中にございますので、十分これらは御検討願えることと考えております。
  90. 足鹿覺

    足鹿覺君 ではこれをごらんなさい。去年の諮問案を私は取り寄せてみました。とにかくやはり見解は異にしても、お互い与野党なり、政府と野党との立場は、見解は異にしましても一応条理を尽くした諮問なんですよ。それを、ことしのあなた方の出されたこの諮問のお粗末さ、ただ単に生産費・所得補償方式を基本とするということは、うたい文句であって、その中心は、需給事情を考慮してきめてくれといっているではありませんか、去年の諮問案と比べて。大臣、あなたの責任ではありません。あなたの代になってこのような間違った事実に反する諮問をこうして出されることは、後世までの私はあなたのこけんにかかわると思う。少なくとも正しい諮問が——事実を事実として反映すべき諮問を出し、あとの審議は審議会の良識にゆだねることが私はしかるべき措置ではないかと思いますから、くどいようでありますけれども、申し上げておるのであります。去年の何を参考のためにごらんください。ここにありますよ。
  91. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 昨年の米価審議会につきましては、私は事務担当者としてこれに臨んだのでございますが、昨年の米価審議会にかなり長文の諮問をいたしましたのは、これは足鹿委員にはもうお読みいただいて御理解いただけたと思いますが、前半はやや長期的に、生産者米価、消費者米価の決定あるいは改定をするについていかなる考え方をとったらよろしいかということの諮問をいたし、同時に昭和四十三年産米の米価の決定について生産費・所得補償方式に基づいて算定すること、及びこれについて基本的に留意すべき事項を伺いたいということで諮問をいたしたのでございました。したがいまして、私どもが長期に米価の決定あるいは改定についての考え方を伺いますについて、それの伺うゆえんのものを説明するために説明も長文にわたっておることは避けがたかったわけでございます。  本年は昭和四十四年の政府買い入れ価格についての諮問を申し上げるということにいたしましたので、御指摘になりました物価、賃金の上昇はこれも申し上げるまでもないのでございますが、生産費・所得補償方式という方式の中に、これらの事情というのは反映をいたすような仕組みになっておるのでございます。そういうやり方、そういう算定方式というものを基本としつつ、少なくとも現段階における需給事情というものに目をつむるわけにまいりませんので、こういう需給事情というものを念頭において決定することの可否ということを米価審議会に諮問をし、その御意見を求めたいというのが、諮問文の本旨でございます。
  92. 任田新治

    委員長任田新治君) 速記とめてください。   〔速記中止〕
  93. 任田新治

    委員長任田新治君) 速記を起こして。
  94. 足鹿覺

    足鹿覺君 昨年の「諮問についての説明」の第一ページにありますが、「近年政府買入価格につきましては、賃金、物価の上昇傾向を反映するとともに、方式の運用面で若干の修正を重ねてきたこともあって、」云々と、はっきり賃金、物価の上昇傾向を反映すると言っておる。おそらくあなたはそう言うと、消費者価格の問題に関連するであろうと逃げるでありましょうが、ことしは農林大臣は御言明になったようでありますが、これも確かめておきたいが、消費者物価は上げない、こういう御言明をなさっておる。したがって、本年における生産者米価の値上がり分は消費者でこれを肩がわりすることはできない。したがって、それだけ財政負担がふえる。財政負担のふえる分は農民を泣かせる、こういうむごたらしいことが考えられておるのであります。少なくとも私はそういう点について他の物価が上がるときに据え置きを正当づけるような需給事情を諮問の主文に入れるということは、少なくとも説明において物価、賃金、生計費の上昇等についても経済事情を参酌してきめるべきである、そのような点を勘案してきめるべきであると思うが審議会の意見を問う、こういう説明程度はあってしかるべきだと思う。にもかかわらずどこのページにも本年の諮問案には、主文にも説明にもこの重大な経済事情については一言半句も触れておられないから、先刻から矢山委員が言われるように、これは生産者米価を押えんがためのことである。もし押えたとするならば物価の上昇分だけは米価は値下げになるのであります。そのような諮問が一体どこにありますか。諮問に値しないからわれわれは昨日委曲を尽くして農林大臣に申し上げた。しかとお考えになってこの諮問の主文並びに説明について再検討をこの機会において大臣より御言明願いたい。
  95. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 昨日もお話が出ましたから申し上げますが、昨日から引き続いての御意見でございますので、私は皆さん方からそのような経済事情というものに強い意見があったということをさらにプリントにしてお配りをいたしますからよろしくということを申し上げたわけでございますが、国会において十分審議をしてその後だというようなお話でございましたから行なってはおりませんけれども、両院を通じての強い御意見は私から十分申し伝える考え方でございますし、ただ御諮問申し上げた主文を変える意思は毛頭持っておりません。
  96. 矢山有作

    ○矢山有作君 そういうふうに大臣、明確に諮問の主文を変える意向がない、こういうことになると、私が最初から指摘しているように、法律基本的な立場を逸脱することになるんです。そういうような違法な諮問をしててんとして恥じぬということなんですか。あなたがもしそれを強行しようというんなら、われわれにも腹をきめなきゃならぬ問題があるわけです。私はしつこいようですが、食管法というものがどういう立場でつくられたかということから問題を掘り起こしてもらいたいというのです。それを抜きにして生産費・所得補償方式云々というようなところでごまかしていこうと言ったってごまかせぬ。生産費・所得補償方式による米価の算定をやるということも食管法の生まれてきた基本的な立場を踏まえてその算定方式が論議の末生まれてきたと思う。であるならば、その基本をくずしたような諮問をやってもらったんではその立場が貫けないというのです。ですから、あなたがせっかく文章にまで書いてわれわれの言い分を審議会に出されるというのなら、それと同じことなんだから、この米穀の需給事情云々という文言を変えなさいと言うのです。経済事情に変えて、そして先ほど足鹿委員から指摘をされたような物価、賃金の動向というものをしさいに説明の中で書き加えていく。このくらいのことがやれないはずはないんです。それをやらぬというんなら、私はそのやらぬといって強硬に突っぱってこられるあなた方の意向というのは食管法をぶちこわす意図以外の何ものでもない、こう言いたい。  ですから平行に論議が進んでおりますけれども、私どもは先ほどあなたもおっしゃり、食糧庁長官もおっしゃったように、米が国家統制のもとにあるという大前提は承認しておられる。その大前提に立って食管法がつくられておるということも承認しておられる。であるとするならば、国家統制のもとにある米の価格決定を需給事情をまっ正面から振りかざすべきものではない。それはその他の農安法や畜安法の関係から見て明らかなことなんです。だから法律の立て方が違っておる。法律の立て方が違っておるならばその解釈適用も違ってくるのがあたりまえです。それを無視して需給事情を表面に打ち出されることは間違いだと言うのです。幾ら平行論議になってもわれわれはこの論議を中断するわけにはいかぬのです。あなたのほうからこの主文を変えるという言明がない限りはどうしてもわれわれは承知できない。また第一、米審の諸君にしたところで、これだけ国会で法律の解釈に異論のあるものをそのまま受けて米審がやれるわけがないでしょう、常識的に考えるならば。その点を明確にすべきだと思います。
  97. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 私のほうも同じことになりますけれども、皆さんの御意見の意のあるところは十分にお伝えはいたします。けれどもこの主文を変えて出し直しをするというような考え方は持っておりません。
  98. 矢山有作

    ○矢山有作君 それでは別の観点からお伺いします。今度こういうような諮問とうらはらの関係で自主流通米制度が打ち出された。この自主流通米制度が打ち出されたことによって、すでに新聞で大きく報道されておるように、伊藤忠や丸紅飯田が本格的に米の取引に乗り出す準備を始めておる。さらに各県において正米市場の設立の準備が始まっておる、そしてやみ米は増大の一途をたどっておる。こういう現実を踏まえてこの食管法を堅持するというあなた方の立場から自主流通米というものを認めた段階で食管法の堅持ができるのかどうか、こういう実際社会の動向というものを頭に入れながら御答弁が願いたい。
  99. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 自主流通米制度の発想のゆえんは、前回も当委員会で御説明を申し上げたつもりでございますが、私どもとしては、現在のような需給事情のもとで、現在のような消費者の需要動向というものを見ます場合、政府の統する画一的な配給のみをもって対処するならば、むしろ不正規流通というようなものが拡大するおそれすらあるということでございますので、自主流通米ということで需要者の動向に即応する政府を通じない流通を認めることによって、しかもそれを食糧管理の立場からする規制のもとに置くということで、食糧管理制度の体制を現状に即しつつ維持をしていくということに私どもとしては本旨を持つものでございます。自主流通米制度によって食糧管理制度の体制をくずすというようなことを毛頭考えているのではないのであります。
  100. 矢山有作

    ○矢山有作君 あなた、考え方はそうなんです。いつもあなたは言われておる。ところが、世の中の実際の動きは、あなたの言っておるのと逆な方向に動きつつある。それに対してあなたはどういう歯どめをやっておるのですか。不正規流通が増大する云々と言っておりますが、それはあなたみずからが農業白書で指摘しておる。そういう不正規流通の増大をなぜ見て見ぬふりをしているのですか、食管法があるのに。食管法を堅持するのであれば、なぜ不正規流通をこの刑罰法規を適用して縛っていかないんですか。刑罰法規がせっかくあるのに、これを生かして運用して、この不正規流通の拡大を防ごうとしないのか。不正規流通の拡大は野放しにしておいて、不正規流通の拡大のおそれがあるという現実、さらにこの自主流通米が店頭に出ることによってすでに大手の商社が動こうとしておる、正米市場ができようとしておる。それに対して何ら規制を加えないで、不正規流通の拡大のおそれがある、うまい米を食べようと言ってにげる、こういうようなばかな話はない。しかも不正規流通の拡大とともに、自主流通米制度の発想の一つの根拠としてあなた方が言われているのは、消費者の動向に応じてうまい米をつくってもらうためだと言っておる。  私はきのう米審の席上で聞きました、農林省の記者クラブの諸君が米の味がいいか悪いか食べ比べをした。ところが、一番まずいといわれる古米が一番うまいというのが大多数であったというような笑えない話を聞いております。うまい、うまくないというのは個人個人の嗜好の問題でございますから、新しい米だからうまい、古米だからうまくないというようなレッテルを頭から張りつけてはいかぬと思います、できないと思います。それどころではない、いまの配給の実態を見るならば、必ずしもうまい米が消費者の手元に届くという保証がどこにあるか。世の中の実態の動きに即して答弁していただきたい。あなたの頭の中で考えておられるのをそのまま何べん答えてもらっても同じことなんだ。あなたの頭の中で考えておられることが、世の中の動きの中ではそのとおりにはいってない。われわれはその点を重視しておる。われわれは政府の皆さんの考えていることを、頭の中で考えたことを述べてもらって、それを信頼しているのではない。生きた社会の動きを私たちは注視している。その生きた社会の動きが、自主流通米に便乗してやがては食管を総くずしにしていくというおそれがある以上は、これに対してあなた方がどういう態度で臨み、不正規流通を防ぐためにこの食管法規の罰則規定をいかに適用していくのか、それについて明確に御答弁を願いたい。
  101. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) お話しのように新聞等にも報道されたようでございますが、大手商社が米の流通に進出をする動きがあるではないかということでございますが、食糧庁といたしましては、集荷の機関としては従来どおり単位農協あるいは一定の要件を持つ商業者にその機能を認めることにいたしておりますが、その面へのまず大商社の進出ということは、現在の規制のもとではあり得ないと私は考えております。  また自主流通米を含め、一般消費者の配給米の卸商たる資格は、これは純然たる新たな卸商の進出は認めないという立場をとっておりますので、原則的には私は新しい商社の進出ということは現段階ではあり得ないというふうに思っておるのでございますが、ただ自主流通米になりました場合に、農林大臣の指定いたします実需者は集荷業者の全国団体から食管を通じないで直接米の買い受けができることに相なっておりますから、したがって実需者の購入代行の機能というものはあるいは私は商社としてそのことに当たるということがあり得るかと思います。しかしこれは単なる実需者の代行の事務でございますから、私は商社の進出といっても、食糧管理制度そのものに悪影響を及ぼすというような性質のものでは全くないというふうに考えておるのであります。  なお、商社の中には自主流通米制度の真意を解しませんで、自主流通米制度がだれからだれに売ってもよろしいというような制度と当初誤解しておったというようなことで、その後自主流通米制度の行政規制の内容が明らかになるにしたがいまして、その点についての誤解が解けたというような例もあるわけでございます。私は自主流通米制度の発足のために食糧管理制度基本的な体制がくずれるというふうには考えないのでございます。
  102. 矢山有作

    ○矢山有作君 頭の中で考えておられることはおっしゃったとおりです。そういうふうにお考えになるだろうと思う。そういうふうに考えて、そういう説明をしないことには自主流通米を導入したという立場は貫けないですからね。ところが少なくとも自主流通米なり、やみ米なり、政府管理米についてのこの区分が明確でない。しかもやみ米を扱った場合について罰則規定の適用が全然行なわれない。そういう事態を前提にした場合に、いまおっしゃったように大商社が進出をした。あなたがお考えのような大商社の活動でとどまりません。商社というのはあなた方やわれわれと違って金をもうけるのが仕事なんです。もうからん仕事に手を出すわけはないのです。もうかるから手を出す。だからその体制をいま準備しつつあるでしょう。その現実の動きを机の上でものを考えた頭で判断してはたいへんなことになるのではありませんかと言うのです。  もしあなたの考え方を私が肯定するとしまして、じゃやみ米が出てこない、自主流通米とやみ米と政府管理米との区分をだれの目にもわかるように明確にやっていく手段がありますか。米に一粒一粒刻印でも打たれますか。そこのところが明確に御答弁いただけるならば、私は自主流通米が食管制度をくずすという危険性は減ってくると思います。しかしながらその点についての明確な区分なり、明確な取り締まりの体制なり、あるいは罰則法規の適用に対する、あなた方がこれまで言ってこられたそのものの考え方を根底から改めない限りは自主流通米に藉口するやみ米が出るでしょう。あるいは逆にやみ米や自主流通米を扱うよりも、政府管理米を扱ったほうがもし値段の点で有利だとすれば商社は政府管理米を扱うでしょう。そうして、この政府管理米を自主流通米、やみ米という形で消費者の手元に届けるでしょう。消費者はそのときにどうして政府管理米と自主流通米とやみ米ということを見きわめるのですか。消費者に見きわめる手段を与えられますか。その見きわめる手段を与えない限り、消費者は安い政府管理米が高いやみ米に化け、自主流通米に化け、それを食べさせられる。しかも自主流通米はうまいのだ、やみ米はうまいのだという先入観を徹底的にたたき込むことによって、うまいのだろうと思ってまずい高い米を買わされるということになるのです。  その辺の実際社会の動きを考えながら法律はつくり、そして運用していかなければならんのです。実際社会の動きに目をつぶって法律がつくられたり、法律運用されるというと、実態にそぐわない問題が起こってくる、これはたいへんなんじゃありませんか。だから私は言っておるんです。その辺を自主流通米、やみ米、政府管理米、消費者が惑わされないように区分をする手段、そしてもしやみ米が自主流通米に藉口して拡大した場合に、どういう手段をとるのか。それを具体的にみんながなるほどそういう方法をとってもらえるんなら、私どもは高い米をうまいと言ってだまされて食わされないで済むということを信頼すると思います。しかしながら、それが明確にならぬ限りは消費者もこれはきわめて不安な状態に私は立たされるんだろうと思うんです。その辺はどうなんでしょう。
  103. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私は端的に申し上げまして、自主流通米が発足いたしましても、およそ不正規流通の米というものは根絶するというふうに断言する勇気はございません。ただ前回申し上げましたように、私どもとしては食糧管理制度の現存する中で、悪質な食糧管理法違反を見のがしておくというわけにはまいらないというふうに思いますので、大量悪質なやみ行為というものについては私どもは警察あるいは法務当局と連携をとりまして取り締まりを厳行いたしたいというふうに思うのでございますが、その一つの問題に関連いたしまして、自主流通米につきましては米の検査の際に自主流通米である旨の表示をさせることを考えておるのであります。と同時に輸送につきましては、自主流通米には食糧事務所長発行の輸送証明書を与えるということによって、大量の不正規流通米というものを識別し得る方策を講じてまいりたいというふうに思うのでございます。  最終末端におきます米の標識区分ということは私は御指摘のようにかなりむずかしい問題であると思います。最も私は大事なことは、政府が売り渡しました配給米を消費者が公定最高販売価格でいつでもどこでも自由に入手し得るという状態を保証することが、私はきわめて本質的な重要性を持つものであるというふうに思うのでございまして、この点につきましての政府の対応は現在のような需給調整能力を十分に持っておるもとでは私は自信があるということを申し上げましてはばからないのでございます。  配給米と自主流通米との区分の問題は、一つは多少テクニックといいますか、そういう技術上の問題でございますが、自主流通米、配給米の仕入れ販売に関する記帳を従来とは別にいたしました。わがほうの食糧庁の指示する方法によって明確に帳薄整理をさしておくということによって府県及び食糧事務所の監査の資料を整備さしておくということをいたしたいと思っておるのでございます。  なお、農林大臣からも御指示があったのでございますが、現状で全量を、自主流通米を小袋詰めにするということは施設の点で難点のある地域がありますが、自主流通米、政府配給米を通じまして大型の集中精米における自動包装装置を持つものによって小袋詰めを行ない、自主流通米、政府配給米の表示を明確にして、消費者の選別ということに手がかりを与えるということ、また自主流通米の信用をそういうことによって保持していくということに資してまいりたい。そのための集中精米の増設などにつきましては、今年度も予算措置を講じてございますので、その面からも推進をしてまいりたいというふうに考えております。
  104. 矢山有作

    ○矢山有作君 なるほど話を聞いておりますと、一応筋道が立っております。問題はそれがいかにして実行されるかということなんです。自主流通米制度が導入されない現在の状態のもとにおいてすら政府米が大量にやみ米に化けておるんじゃありませんか。その政府米がやみ米に大量に化けて消費者の手元に届けられておるのに対して、何らの規制措置が加えられておらぬような現状を踏まえたときに、あなたがいま言ったような小袋詰めだとか、帳簿を備えてとかどうとかいうようなことでその規制ができるとお考えですか。  私どもはいま宿舎におってときどき米を買います。配給米を持ってきてくれと言って配給米を食べる。うまい米を届けましょうかと言うから、ときどきうまい米を届けさせるが、わからんですよ、どれがどれやら、さっぱり。第一、購入券が要らない。配給米を届けてくれ、持ってきました、ということで何か書きつけを置いていきます。政府米やらあるいは自主流通米やら、やみ米やらわからないんです、消費者には。それをあなたがおっしゃったような手段で規制ができるんですか、いまできているんですか、現実にできておらぬ。その体制の中で自主流通米まで入ってきて、政府米と自主流通米とやみ米と三本立てになるんですよ。その三本立てをきちっと規制していく方法ができるんですか。なるほど帳簿は備えるでしょう、帳簿を備えた以上は見にいきますよと言うでしょう。しかし現実にそれはできるんですか、そこに問題があるんです。  だから配給段階では、もう混乱してしまうということじゃないんですか。しかも集荷業者を指定する、あるいは卸商の指定をやっておるからだいじょうぶだとおっしゃる。いま現実にきびしい配給制度のもとにあってすら、統制のもとにあってすらやみ米が大手を振って通っているんじゃありませんか。それを野放しにしておく政府がこれから自主流通米を導入しようというのにその規制をきびしくやれるとだれが考えますか。私はその自主流通米を導入することによって消費者はごまかされてくるし、そして自主流通米に藉口するやみ米が広がってくる、こういう現実が生まれてくるだろうと思うんです。  と同時にいままで米は国が全部統制をしておった。それが厳格な国の統制から離れて流れる米ができたということは、すでに食管制度に対してのこれは一端をくずしたことでしょう。これは食管制度の根幹を維持すると言えるんですか、すでにくずれているんじゃないですか、自主流通米で。だから、そういう点から考えてみても、あなた方は食管制度堅持ということは口でおっしゃるけれども一つも実際の実行の面において食管制度を堅持するやり方をやっておられない。また今後もやろうとする意欲をお持ちでない。その端的な証明がこの諮問文に出ておると言うんです。  この諮問のしかたというのは先刻来くどいほど言いましたように、法律基本的な立場を逸脱した諮問なんです。したがって私どもはこの問題では絶対納得できない。これは先ほど足鹿委員が具体的に指摘されたように、この主文、説明文ともにこれを書き直して米審に出してもらう。そうしない限り、これは政治論でやっておるんじゃないんですから、政治論なら、足して二で割って、この辺でおさめようじゃないかということで妥協もできるでしょう。しかし少なくとも法律基本に関する解釈論なんですから、これをいいかげんにして、そうでございますか、それじゃよろしゅうございます、米審でやってくださいというわけにはいかないんです。法律論だから私は厳正な結着をつけなくちゃならない。妥協の余地はないんです。  しかし私一人が質問を続けておりますと、ほかに用意をしておられます方がありますから迷惑をされます。私はこの問題についてはなお保留をいたしておきます。そうして他の方がもっと具体的な詳細なあなた方の意図を摘発していく、明らかにする質問をされますから、それを踏まえてさらにこの問題についての結着をつける議論をやらしていただきたい。質問を保留いたしまして、次の質問者に譲っておきます。
  105. 足鹿覺

    足鹿覺君 私は算定方式を中心にお尋ねをいたしたいと思うんです。  これは農林大臣に先ほども申し上げましたが、大臣、同じ農民のつくっておる葉たばこの価格決定の経緯は御存じでしょう。去年の暮の十二月九日にたばこ耕作審議会で招集されまして、専売公社当局が諮問をいたしました諮問案は、前年に比して二・一六%の値上げの幅の案でありました。しかも、ストックは平常時の二倍以上もかかえておる、そういう困難な情勢の中で、しかも二・一六%の値上げを出しました。しかも、たばこ耕作審議会は前の米審会長の川野重任東大教授が当たっておられましたが、生産者、学識経験者の意見がなかなか一致いたしませんために、年を越しまして本年の一月九日から十二日の未明三時まで慎重審議の結果、四・六%の答申を満場一致決定をし、政府もそれをまた承知してそうして本年の葉たばこの価格が決定を見たことは御承知のとおりであります。  このような状態は、現在古米をかかえておるのと同じ葉たばこ事情にあるにかかわらず、そのような事例のあることに対して農林省は、自来農民の父であり、農民の本家をもって任じた農林省は据え置きの価格を諮問され、従来同じ農民でもややもすれば農民の本流を襲うおそれはないかといわれておった専売公社すら、そういう諮問をし、また修正に応じた、そういう寛容さといいますか、そういういわゆるすなおさといいますか、そういう態度が私は本年の米価決定に際しては必要だと考えますが、これについて、算定方式に入るに先立ち——いわゆる算定方式なるものはいかようにでも決定できる、結論をつけておいて、これに合わせるのであります。私も経験をいたしておりますが、いわゆる算定方式どおりにやる場合もないとは言えますまい。しかし、多くの場合は一つの結論を出し、その結論に合わせるようにデータを合わせていくのであります。まさに二・一六%の葉たばこの値上げ案を四・六%につじつまを合わせたということも前の米審の会長であった川野重任氏がやられたことであります。もって、いかように御判断になりますか。農林大臣は据え置きの米価を強行される御所存でありますか。まず算定方式に先立って、米価審議会はともあれ、大臣のひとつ腹がまえをこの際承わっておきたい。
  106. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 御諮問を申し上げたのでございまして、米価が幾らに答申されるかということを私はいまここで申し上げるわけにはまいらない。したがって、御諮問だけ申し上げまして、もちろん十分資料等をそろえて御諮問申し上げておりますから、それに対しての答申が当然行なわれることであろうと考えておりますので、別にいまここで価格がどうかということについてお答え申し上げるわけにはまいりません。
  107. 足鹿覺

    足鹿覺君 農林大臣、いまたばこ耕作審議会の事例を私申し上げましたが、それはどのように受けとめておるのでありますか。あなたも人の子でありましょう。あなたも農政に関心を持たれる人でありましょう。今日の農村のどん底の状態を、他の物価は上がる、米価だけは下がる、事実上において下がる、こういう状態。同じ米をつくっておる農家でも葉たばこをつくっておるのであります。葉たばこをつくっておる農家も米をつくっておるのであります。その同じ農家が農林省からと、大蔵省の所管する専売公社からとは、片手落ちの諮問を受けておっていま憤激をしておるのであります。この点について私は少なくとも真情を吐露したあなた御答弁をなさる必要があると思うのです。いまのような、木で鼻をくくったような、いわゆるそっけない御答弁では済まされないはずでありますが、いかがでありましょうか。
  108. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 御諮問は一応申し上げておきまして、答申が出、また答申とあわせて米価の決定が出たならば、価格のみでもって事が考えられるはかりではなくて——何といっても再生産ができ得るような措置は当然考えなければならないと思いますが、価格のみでなくても、他の方法でも考えられる方法はあるだろうと、私はそのようにも考えておりますが、いずれにいたしましても、いま諮問をしておるところでございますので、価格について云々という点については、私はいまここでどうこう申し上げというわけにはまいりません。
  109. 足鹿覺

    足鹿覺君 くどいようでありますが、たばこ耕作審議会の事例に照らしてどのような御心境でありますか。それも伺えないのでありますか。同じ農家ですよ、所管は違うけれども同じ農民ですよ。
  110. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 葉たばこの御意見は昨日から承っておりますので、私にもそういう点については、十分私の精神の中にも、昨日からのお話が含まれておるというふうに申し上げておきます。
  111. 足鹿覺

    足鹿覺君 どうも大臣の答弁を聞いておりますと、全くこちらのほうで手足がなえるようでありますな。どこからどこまで本気で、どこからどこまで真剣でおられるのか私にはよく理解ができません。しかしいまの最後の御答弁につきましては、とくと私も記憶にとどめておきましょう。御善処をお願いいたします。  そこで大綱については農林大臣から御答弁いただいて、けっこうでありますが、具体的な問題については食糧庁長官から御答弁を願いますが、第一に昭和四十四年産生産者米価の決定につきまして算定方式をきめるにあたり、去年の諮問案と決定案と二つあったわけであります。少なくとも決定案は政府が責任を持って閣議決定したものであり、政府が責任を負うべきものであることは言うまでもありません。しかるにその決定米価よりも三十二円安い試算案を出された理由なり根拠は何でありますか。去年よりも三十二円安い案を諮問された理由なり根拠なりを御説明願いたい。
  112. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 米価審議会に御審議の参考として出しましたウルチ一−四等平均・包装込み・生産者手取り予定価格というのが、昨年の一−四等平均・包装込み・生産者手取り予定価格より三十二円表向き下回っておりますのは、昨年の二万六百七十二円というのは、モチ米加算の買い入れ予定数量のウエートをかけて出しました平均百五十キロ当たりの価格が加算をされておったのでございまして、それが三十二円でございます。で、本年度は自主流通米の発足の年にあたりまして、はたしてどれだけのモチ米が政府に買い入れになるかということが明瞭ではございませんので、そこでウルチ米の一−四等についての価格を少なくとも昨年度より下回らないようにすべきであろうという考え方で二万六百四十円というのを出したのでございます。で、同時に、政府買い入れのモチ米につきましては、昨年と同額のモチ米加算を行なうという考え方でございますので、ウルチ一−四等の平均の包装込み生産者受け取り予定価格と、それから同じくモチ米についての受け取り予定価格とは、昨年より下回らないという考え方をとって、ここではウルチについての表示をいたしておるのでございます。
  113. 足鹿覺

    足鹿覺君 こまかい質問はさらにいたしますが、そうしますと、モチ米加算は基本価格のワク外ですね。加算額は昨年どおりですね、ふやさないですね。そうですね。——そうしますと、モチ米は不足をしておりますから、外国から輸入の要請すらも強いわけでありますから、自主流通米に酒米と同時に回れば、政府にはほとんどモチ米の売り渡しはないと見てよろしいでしょうね。——そんなばかなものはないと思うですね。自主流通米のウルチすらも二百六十円高くなる。モチ米は自主流通米の王者になるだろうと私は思うのでありますが、政府に去年並みのワク外加算をつけて売る者があるでしょうか、このお見込みはどうですか。
  114. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) モチ米につきましては従前から、生産者側と消費者側がモチ米需給協議会というようなものを持ちまして、モチ米の加算額に関する協議を行ないまして、その協議結果を私ども採用をいたしてきておるのでございますが、自主流通米につきましても本年以後同様の協議が行なわれるものと私ども思っております。  そこで、モチ米について確かにウルチに比べまして需給事情は窮屈なのでございますから、モチ米に関する加算といいますか、モチ米の自主流通米の生産者価格というのはむしろ上がる方向にあるだろうというふうに私どもも思うのでございます。ただ、自主流通米ということになりますと、これは需要との関係における地域性がどうしても出ざるを得ないのでございまして、地域によりましては実需者の需要というものと対応し切れないというものが私は出ると思われるのでございます。その数量がどうなるかということは先ほど申し上げましたように予測いたしがたいのでございますが、政府への売り渡し量というものは私はなお数万トンのものはあるのではないだろうかというふうに思っております。
  115. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは本論に入りますが、昨年並みの米価だと一応言われるわけですね。いわゆるモチ米加算を除いたから、実質的には三十二円の減はモチ米加算に匹敵するんだと、したがって昨年並みだと、こういう算式の根拠のようでありますが、先ほども言いましたように、算式というものは、大体昨年並みという一つの目標を出しておいて、あとからこれに合わせるのが従来の例であります。これはあなた方が何ぼ否定されましてもこれはもう否定でき切れない事実なんであります。  そこで農林大臣に伺いますが、去年の諮問案はいわゆる反収の場合においては一シグマを見ておったのですね、平均反収四百六十八キロ。決定米価の場合はこれを四百六十八キロに見て、米価を一応押える方式をとったわけです。そうして予約概算金は諮問案の場合には控除しておった。ところが決定米価の場合に、五十六円、百五十キロ当たり復活したわけですね。地代の場合は、諮問案は六級地の最高統制額であったものが、決定案では五級地の最高統制額になって、結局諮問案では四千二百五十四円であったものが四千四百四十三円になったわけなんです。生産性のメリットについては、政府の諮問案——西村農林大臣が米審に諮問した案にはメリットは加算しなかった。ところがこれは不合理だということになって、決定米価については二分の一を百五十キロ当たり六十一円を加算したわけですね。  こういうふうに予約概算金の問題、地代の問題、生産性のメリットの問題等、決定米価は諮問案を大きく上回ったわけであります。その場合、農林大臣としては諮問案を決定される場合に、自分たちが取り入れられなかった四十三年度の諮問案を基準として考えられていくのか、決定米価を裏づけた幾多の要素を基準として本年産米の算定の基準を求められたか、その基本について農林大臣の御所見を承りたい。
  116. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) まことに申しわけありませんけれども食糧庁長官から答弁いたさせます。
  117. 足鹿覺

    足鹿覺君 いやいや、こまかいことを聞いておるのじゃないのです。農林大臣の考え方を聞いておるのです。姿勢の問題です。要するに、諮問案は決定案によって敗れておるわけですね、ですから、決定案を基礎としてことしの諮問案を算定されたかどうか、姿勢の問題を聞いておるのです、考え方を。こまかいことはいいのです。あんまりこまかいことは聞かない。
  118. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 御答弁になるかどうかわかりませんけれども、決定案を基礎にしているのではなくて、諮問案を基礎として今回の提案をしておるのでございます。
  119. 足鹿覺

    足鹿覺君 去年ですよ、去年の諮問案を基礎にしたのですか。
  120. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 昨年の政府諮問案を……。
  121. 足鹿覺

    足鹿覺君 閣議で決定された決定米価をくつがえされて、閣議決定前の否決された諮問案を基礎とされるのですか。檜垣君、そうですが。それなら政治じゃないじゃないですか。一体それは何ですか。諮問案は否決されているのじゃないですか、何のために修正されたのか。だれが修正したかは別にして、最終的には閣議で決定したじゃありませんか。何を基準にするのですか。冗談言っちゃ困るよ。
  122. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) こまかい点は御質問がございますれば申し上げることにいたしまして、昨年の最終米価の決定は御指摘のとおり、閣議の決定をみてきまったわけでございます。これは昭和四十三年産米の政府買い入れ価格として閣議決定を願ったのでございます。四十四年産米については、これから米審の答申を待ってさらに検討を加えた上でまた閣議の決定を求めることに相なるわけでございます。現在の需給状況等を念頭に置きまして、私どもとしては原価性のない項目、あるいはコストとして問題のありますような項目につきましては、再検討を加えて試算を行ないまして、それを米審の審議の参考として提出したということでございます。
  123. 足鹿覺

    足鹿覺君 よくわかりませんね。マイクをこっちへ向けてよくわかるように言いたまえ。そうすると、いまの君の説明を聞いていると、閣議決定では、昭和四十三年産米の決定米価については、これをもとの諮問案等も参考にして手直しをしたと言わんばかりの答弁でありますが、そうですか。私は、四十三年産米は少なくとも農民の手取り米価であって、農民の既得権だと思いますよ。いいですか。物価が下がり、いろいろな情勢が変わっておるなら別として、物価、賃金、生計費が上がっておる今日において、昨年の政府の閣議決定米価は、よかれあしかれこれは政府の決定案ではありませんか。それよりも後退するような諮問案を君らは検討したのですか、本年の諮問案決定に際して。本年の諮問案は、少なくとも昨年の米価決定の閣議で決定した米価に対して、その後の情勢の推移や経済事情をしんしゃくしてきめるのがあたりまえじゃありませんか。それが諮問案の大筋ではありませんか。大臣いいですか。  一体そういう筋の通らぬ話がこの世の中にあるでしょうか。あまり国会をばかにしてはいけませんよ。米価審議会は御用学者や御用評論家がたくさんおられるそうでありますから、あえてそういうことでも通りますが、国会では通りませんよ。あなたたちは意識して国会議員を米価審議会から除外した。しかし、そういう閣議で最高決定をし、農民のよかれあしかれ実質所得になった米価を、事実上において下回るような、経済上の原則に反するような、——余ったからといって、統制経済のもとにおいてできた、今日まで二十七年の歴史を持った食管法をもとにしてできたものを、ただ都合が悪くなると、自由経済の原則を加味して、農民の既得権をあなた方は奪うのですか。  あなた方はそういう算定方式をきめたのですか。算定の基本方針を伺いたい。そういう方針ならば方針だとおっしゃい。全国の農民がそれを伝え聞いて現在の政府を批判するでしょう。米価審議会がこれをうのみにしたならば、米価審議会の態度に対して批判を加えるでありましょう。正直におっしゃい。そういうふうになりました、農民の所得が減ってもいたしかたがありませんのでこういうふうにいたしましたと、正直に言ってみたまえ。基本方針を聞いているのだ。君たちは去年の昭和四十三年の米価がいろいろな物議をかもして決定したことは知っておられるでしょう。しかし、閣議で決定をしたこの予約概算払い金の金利、地代、生産性メリット、この問題はすなわち再生産を確保し、所得を補償していくために必要な措置として閣議がきめたのではありませんか。それを否認するのですか。
  124. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 先ほども申し上げましたように、四十三年産米価につきましては、米価審議会における政府試算、政府の米価審議会における審議の参考として提出いたしました政府試算の項目のとり方等につきまして、昨年の米価決定時における種々の情勢、あるいは政治的判断というものを加味しまして、修正を受けたことは事実でございます。それが閣議で決定されましたことも事実でございまして、四十三年の米価に関しまして、これを私どもは無視することはできないということは当然でございます。しかしながら、その後の需給事情の変化、ことに長期にわたる構造的な供給過剰という事情のもとでは、私どもとしては、従来の項目のとり方の中で問題のあるものは問題があるという処理をすることは、私は行政的には取り上げてしかるべき問題ではないかというふうに考えるのでございまして、昨年の米価の最終決定と異なっております点を御参考までに申し上げますと、先ほど来申し上げておりますように、この試算では、限界反収のとり方を平均反収から昨年は一シグマ分、一標準偏差分を差し引きましたが、ここではマイナス二分の一シグマに改めておるという点が一点異なります。それから予約概算払い金の利子については、昨年は米審の試算段階では控除しておりましたが、これが最終的には控除をとりやめたということでございますが、もともと無利子の概算金の前払いでございますから、利子がかからないものを利子がかからないといって扱うのは当然のことであるという意味で、今回の試算ではその利子相当額を控除いたしております。また、生産性向上利益の二分の一還元ということは確かに最終的にはいたしましたが、現在私どもが需給事情等を考えまして限界反収について二分の一にするというようなことを考えることとはおよそ矛盾をする考え方にもなりますので、生産性向上利益の還元は行わないということ、それから暫定加算を昨年の二分の一に減じたという形で試算をしておるということが違う点でありまして、地代について、昨年審議会の試算段階では、統制小作料の六級地を用いておりましたのを、最終的に五級地を用いることにした、その点だけは本年もこの試算の中では同様に取り扱っております。
  125. 足鹿覺

    足鹿覺君 食糧庁長官、私の計算によりますと、すなおな計算によりますと、昭和四十四年産米価の決定米価を去年の決定算式と同じような方式でやってみた場合、はじいてみますと、予約概算金の金利を控除して、生産性メリットの二分の一を加算しない場合でも、百五十キロ当たり二万一千七百四十一円になりますよ。いいですか。この二万一千七百四十一円に運搬費百一円を加えますと二万一千八百四十二円、これはただし一−五等平均裸価格でありますから、これに二万一千八百四十二円プラス等級間格差六十六円マイナス歩どまり加算四十七円マイナス暫定加算五十四円イコール二万一千八百七円になります。ウルチの軟質三等裸であります。これに、二万一千八百七円にさらに、マイナス等級間格差三十一円、プラス歩どまり加算四十七円、暫定加算五十四円、包装代二百八十五円を加えますと二万二千百六十二円になります。これはあなた方と同じように一——四等平均・包装代込みになりますよ。  ところが、いまあなたが説明なさいましたように、都合の悪いところだけをいじくり回されるから、去年と事実上同じ二万六百四十円という米価がはじき出される。これでは私がいま言いましたものとは非常に大きく開いたものが出てくるのですよ。もっとすなおに、実はこういうふうな計算になるけれども、いろいろ需給事情や在庫米の関係があり、大蔵省がやかましいし、財政審議会からはとにかく文句をつけられるし、困りましてこういうふうになりましたと言って降参をなさい。そんならわれわれもなるほどそうか。日本の財界というものは米価のわずかな金額にまで文句をつけるものだ、大蔵省というものはそこまで農民をいじめるものかと、こういうので、全国の農民はその政治の裏の実態を知ることができるでありましょう。いかにももっともらしくやられるから、いつまでたっても日本の農民はこの米価のからくりがわからないではありませんか。いま私が言ったような、去年の閣議決定どおりのファクターを、要素をそのまま積み上げていかれたならば二万二千百六十二円になる。私も早急の間に試算をしたものでありますから若干の狂いはあるにしても、大筋において狂いはないと思うがどうですか。去年の閣議決定どおりのファクターをずっと積み上げていかれたならばこういう結果になるとお認めになりますか。
  126. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私ども米価審議会に提出いたしました試算につきましては、綿密な検証をいたしました上で出しましたので、計算等に誤りはないというふうに確信をいたしております。いま御指摘の計算は、実は私どものほうで正式にやったものではございませんが、そういう御質問もあろうかということで早急に試算いたした結果を見ますと、私のほうも誤差があるかもしれませんので確信を持ち切れませんが、おおむね同じような数字になるようでございます。
  127. 足鹿覺

    足鹿覺君 認めた。よく認めたですよ。御記憶願いたいです。認めた。だから、すなおにやればちゃんとそういう計算になる。それを小細工をして、そうしてわざと低いところに置いておいて、あの手この手でやって、少し色をつけてあげたんだと、こういう形をとりたがる。ややもすれば。そこに米価のからくりがある。私は非常に遺憾に思います。もっとまじめに、そうして率直に農民にも訴え、世間にも、国民にもそういうことの真相を知らすべきである。私はさように思うから申し上げる。幸いにして率直にこの点については述べられましたからこれ以上追及はいたしません。同僚委員諸君にもよく御記憶いただきたいと思います。私の計算もたいして間違っておらぬ。まじめにやればこういうことになるということです。  そこで具体的な点を二、三伺いますが、この二万二千百六十二円に、四十三年の決定米価と同じ方式で五十六円を、いわゆる落としておるものがあるわけですから、予約概算払い金の利子を控除しないということにいたしますと、さらにこれに加えなければならぬ。それから生産性のメリット、つまり生産力が向上した分を半分は農民に還元をし、わずかながらでも再生産確保の資金に充てさせなければならぬと思います。したがってこれを加えますと、二万二千四百十八円というものになるのであります。農林省生産性メリットについてなぜ加算をやめられたのでありますか。こまかい五十六円の利子の問題はまずしばらくおくとして、米価決定の一番大きな要因——ファクターを占める生産性向上の分け前をなぜ農民に与えないのでありますか、これを伺いたい。計算によれば二百円ですよ。
  128. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私は実際に投下された物財及び労働というものを費用として見て、それを基礎に米価をはじくということであるならば、生産性の向上がございまして、実労働として投下されないものを投下されないとして計算するのは、コストの計算方法としては何ら誤っていないと思うのでございます。特に米価の算定につきましては、過去三年間の投下労働量の平均をもって投下労働量という形で見ておりますから、したがって、これはやや乱暴でございますが、おおむね二年間の生産性向上のメリットは特にメリット還元をいたさなくても農家の利益に帰属する仕組みになっている点をひとつ考える必要があるだろう。それから、これもやや私見にわたるかと思いますが、他産業従事者の厳密には五人以上製造業の平均労賃、賃金をもって家族労働の評価をするということは、他産業における生産性の向上を何がしかの形で受けておるはずでございます。したがいまして、特に昨年あるいは一昨年用いましたような生産性向上利益の二分の一を還元するというようなことを考えるべき時期ではなくなったのではないかという考え方を持っておるのでございます。
  129. 足鹿覺

    足鹿覺君 そういう乱暴な答弁がありますか。あなた方は全国の五人規模すらにも難色を示される。私どもはいわゆる都市の製造工場の規模は百人規模をとってしかるべきではないか、こういうことを申し上げておる。あなた方は五人規模にも難色を示される。場合によっては全平均をとられる場合もある。そういたしますと、かりに五人規模だといたしますと、家内工業ですよ。正当の利潤はなくて、家族労賃の評価が即収益ということになるわけです。農民と同じですよ。それが商人の場合は店舗の改造をしたり、いろいろくふうをした、小さな町工場を直した、そうして生産性なり販売高が上がった。そのメリットは当然ある程度そこへ落ち、ある部分は金利なりその他の償却に充てるでしょう。全量を管理しておる政府が、米の場合はメリットの農民還元がむずかしいと言うのはどういうわけですか。納得できません。それはおかしいですよ、長官。  私は事例のないことを言っておるのではない。去年はいわゆる二分の一を加算して、百五十キログラム当たり六十一円を加算したではありませんか。少なくともこの実績の上に立つならば、本年は二百円の加算が必要である、妥当である、こういう判断に立たざるを得なくなる。あなたは昨年の決定米価は閣議決定だと言う。閣議決定が妥当だと認めたら、価格という宙に浮いたものをきめたのですか。その背景をなす諸要因の積み上げとして積み上げ方式によって得たものを認めたではありませんか。それを否定するのですか。そういう——独裁政治でありませんか。あなた方は閣議が——閣議のいい悪いについては私はここでは論じません。与党ではありませんから、野党として批判を持っておりますが、本日は論じません。あなた方は政府の一吏僚にすぎません、言っては失礼でありますが。少なくとも閣議決定の生産性メリットを去年まで認めたものを本年これを加算しないとは、一体どういうわけですか。だから下世話に、これをわざわざ削っておいて自民党の政調部会等でこれを入れて米価が上がったんだと、こういうふうに勘ぐられてもしかたがないじゃありませんか。もう少しあなた方は率直にやってもらいたい。私は自民党の中にも米価を心配しておられる人がたくさんおられることを知っておる。あえてそういう人々に対して批判をしているのではない。あなた方が頭から農民の既得権を否定するから、与党の中でも良心ある人々は、この既得権の奪還のために運動するではありませんか。われわれ野党がこういうことを見のがすはずがあるとあなたは思っておりますか。  農林大臣、このような問題は政治問題であります。事務的な問題ではありません。この生産性向上の、昨年の六十一円に見合う本年のメリットの問題も、どのように農林大臣は始末される所存でありますか。だから、当然諮問案を、もっと弾力的に経済事情等の説明をしなさいと、経済事情等を参酌して、留意をして御決定願いたいと、諮問案を再検討なさいと私は申し上げておるのです。まだまだこれから具体的に詰めますよ。いまの問題は、去年六十一円、とにもかくにも閣議で決定して前大臣のときにきまっておるのです。本年の場合、この生産性メリットは、少なくとも半分見ても二百円は私は妥当だと思うのです。そういう点について、いや諮問したのだから米価審議会が答申するまでは私見を述べることはできないとおっしゃいますか。そういう点について、私は、誠実な大臣として御答弁願いたいと思います。どのように考えられますか。どうするこうするではなくして、私の言い分が間違っておるか間違ってないか、御所見を承りたい。
  130. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 間違っておるとかいないとかということを私から申し上げるまでもなく、御意見を十分に承っておきながら、答申が出てくる  答申とおりに決定されたこともございませんけれども、十分に答申も尊重しながら、皆さん方の御意見はまた御意見として伺っておいて、私の米価決定の上での資料にいたしたいと考えているわけであります。
  131. 足鹿覺

    足鹿覺君 このことだけはひとつ明らかにしておいていただきたいと思いますが、メリットの還元なくして農家の再生産をこの物価高に確保していくということは私はむずかしいと思うのです。この点について、農林大臣もよく記憶にとどめて対処していくということでありますから、期待をいたします。  あとにまだ、予約概算金の利息の問題その他四項目御質問申し上げたいことが残っておりますが、何か運営の都合があるそうでありますので、区切りがよろしゅうございますのでここで打ち切っておきます。
  132. 任田新治

    委員長任田新治君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  133. 任田新治

    委員長任田新治君) 速記を始めてください。  暫時休憩いたします。    午後四時五十九分休憩      —————・—————    午後八時三十四分開会
  134. 任田新治

    委員長任田新治君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  農林水産政策に関する調査を議題といたし、米価に関する件について、休憩前に引き続き質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  135. 足鹿覺

    足鹿覺君 休憩前に、米価の算定の問題についてお尋ねをいたしておりましたが、ちょっと緊急な事態がありますので、これは大臣にもお聞き取りを願い、委員長にひとつ御善処をお願いしたいことがある。と申しますのは、本日開かれました米価審議会には大臣も食糧庁長官も御不在のままに速記をつけて懇談会が進行しておるやに聞いておるのであります。そのことにつきましては、休憩前の際にもそれは有効であるか無効であるか、米価審議会の会期内に込まれるものであるかどうか、非常に私どももかつて見ない事態でありますので、この事態に対する農林大臣なり農林省の見解を承りたい。  と同時にこれは委員長にお願いいたしたいのでありますが、私の聞くところによりまするというと、その速記をとりながらやった懇談会とか協議会とか称するもので、米の過剰という現実をすなおに表現したにすぎないという意味政府答弁があった、委員会でのやりとりがあった。また衆議院でもこれに似た答弁を農林大臣なり食糧庁長官がなさり、本院でもそういう御答弁をなさっておるのであります。また需給事情については食管法でいう経済事情の中の重要な要素であるために、他意があったのでない。特に他意はないということは先ほども申されました。だとするならば、経済事情についてしんしゃくをするということであれば、すなおに答弁をされたように衆議院その他で、米価審議会等で話をされた農林省当局なりがすなおに物価、賃金あるいは国鉄運賃の値上げ、したがって、生計費の上昇についてもすなおに表現すべきではなかったか。このことを、私が先ほどお尋ねをいたしたことに対しまして明確な御答弁がございません。委員長にお願いしたいことは、どうも私の言っておる真意を農林省は何か面目にこだわっておられるようでありますので、このような答弁を——まあ、質疑を繰り返しておることははなはだ遺憾でありますから、その点を御注意いただきまして、さらに御答弁をお願いしたい。委員長から特にしかるべき措置を講じていただきたいと思います。委員長いかがでありますか。こういうことを繰り返しておっていいのでありますか。委員長において先刻からの矢山委員、私の質疑を通じていかように受けとめておられますか。われわれは長きを欲するものではありませんが、こういう質疑がいつまでも続きますようならば、今夜のみならず、明日もあるいは来週も、米価が決定するまでは私どもはこの主張を変えません。そういう点も十分に農林省なり委員長も御判断になりまして、しかるべき措置を講じていただきたいと思います。まずこの点からお願いいたします。
  136. 任田新治

    委員長任田新治君) ただいまの足鹿委員の意とするところは大臣におかれてもあるいは食糧庁長官におかれても十分御了解のことと思います。その上で御答弁をお願いいたします。
  137. 足鹿覺

    足鹿覺君 大臣も檜垣長官もわかりましたね。いま委員長から御発言のあったことについて、御了承になりますか。
  138. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) ええ、わかりました。
  139. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは第二の、「需給事情」となっておるけれども、食管法でいう「経済事情」の中での重要な要素であるため、ほかに特に他意はないという表現を使っておられますが——ということは、われわれから見ますというと、米価据え置きの一つの理由にこれをしよう、米作を制限していこう、こういうためのテコにするような米審への足がかりをつくられようという意図に私どもとしては考えまするが、その点について、あらためてこの「需給事情を」ということを記載したことは、経済事情の中での重要な要素だという考え方であるならば、さかのぼって、物価、賃金、生計費の上昇もこれを取り上げると、あるいは米価据え置きや米価抑制のテコにするような意図は毛頭ないということが言えますか。その点をはっきり御答弁を願いたい。
  140. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 諮問文の中の「生産費および所得補償方式を基本とし」てという中には、物価、労働賃金の上昇、こういう点は十分その中において御審議願うような資料はととのえて提出はしてありますし、さらに「需給事情」ということは、経済の中には需給というものが大きなウエートを持っておるということを先ほど申し上げましたが、皆さん方の御主張もございますので、この点については、議会からはこのような点についての質問がございましたと、強くありましたということを明日私から申し上げる考えでございます。
  141. 足鹿覺

    足鹿覺君 どこへ申し上げるのですか。
  142. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 明日の審議会に立ちまして、冒頭それを申し上げて御審議を願うつもりでございます。
  143. 足鹿覺

    足鹿覺君 それはいわゆる諮問文なり説明の追加でありますか。挿入でありますか。
  144. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 追加という意味ではなくて、きょうの衆参両院の議員からこのような強いつまり御意見がございましたということを私から申し添える考えでございます。
  145. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは伺いますが、これは委員長に御意見を伺って御善処をいただきたいと思います。  いまお聞きのような御答弁が農林大臣からありました。明日そういう措置をおとりになるそうでありますが、本日米価審議会の協議会か懇談会において、諮問文の是正は審議会の確認事項であって部外者の圧力で動かすべきものではない、こういう発言を中立委員がしたと伝えられまするが、檜垣食糧庁長官なり農林大臣は御存じでありますか。また委員長は御承知になっておりますか。一体部外者とはだれを指すのでありますか。現に衆参両院においてわれわれは食事も抜きにしてこうやって慎重審議をしておるではありませんか。一体国会をどういうふうにこの中立委員の諸君らは考えておるのか。聞けば速記をとっておるそうであります。速記をつけて小倉会長はやっておるそうであります。だとするならば事態は明らかであると思う。その氏名、発言の要旨を直ちに米価審議会の事務当局は農林省でありますから、事実を調査して国会に御提出願いたいと思います。委員長においてさようお取り計らいをお願いいたします。
  146. 任田新治

    委員長任田新治君) ただいまの足鹿委員の提案に対して食糧庁長官からその準備ができますかどうか御答弁願います。
  147. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 米価審議会の懇談会は申し上げるまでもなく、委員諸氏の合意に基づきます各委員の懇談会でございます。その形ではもはや米価審議会そのものとは別個の問題でございます。でございましていま足鹿委員からのお話のようなことは私は報告を受けておりません。おりませんし、また米審の懇談会の性格上、いうなれば各委員のかみしもを脱いだ自由な発言の場でもございまして、そういうところでどういう意見交換があったというようなことを外部へ事務当局としてお伝えするということは適当でない、また許されないことであろうというふうに私は思いますので、その点は委員長におかれましても御理解をいただきたいと思います。
  148. 足鹿覺

    足鹿覺君 それとは伺いますが、ある中立委員は、農林大臣、長官とも出席できないというのは過去に例がない、部外者の圧力で出られないなら米審の権威に関すると、かような発言をしておるものがあるのであります。したがっていま檜垣長官は、委員の自由なる発言の場のことを部外に発表することはできないと言われますが、今夕の新聞を読め、これをあんたお読みなさい、これにちゃんと載っておるではありませんか。氏名が明らかにならないだけであって、明らかになっておるではありませんか。ではこの権威ある日本の大新聞が誤報するのでありますか、何を言っておるのですか。小倉会長をすみやかに本委員会に招致をしてそうして事の真偽を明らかにしていただきたい。第一、昨日の場合は国会が開かれておりません。しかしきょうは衆参両院ともに最も米価の担当委員会である両院の農林水産委員会が開かれておる以外、何ものも農林大臣や檜垣食糧庁長官の米価審議会の出席を拘束したものはないと思うが、だれかにあなた方は拘束されておりますか、拘束されておる事実があるならばそれを述べてください。ありますか、ないですか、それから聞きましょう。
  149. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 農林大臣が昨日の四日から、四、五、六と三日間の米価審議会の招集をいたしたのでございますが、本日私どもは国会の御審議のために出席を求められまして、これに対して私どももできる限り誠心誠意御審議のために御答弁申し上げ、あるいは御説明申し上げてきたつもりでございます。それ以上のことは私どもも言うならばよく存じない問題でございまして、ただいま御質問のことと関連をして申し上げますと、はなはだ事が荒ら立つことにも相なろうかと思いますので、私ども本日は国会に終日出席をいたしておったという事実を申し上げる以外には申し上げようがないと思います。
  150. 足鹿覺

    足鹿覺君 それではこの中立委員と言われる人は何びとかわかりませんが、いわゆる部外者とは国会のことを言うのですか。政府管理職員が、値段をきめる場合、国会が審議することを部外者と言うのですか。そういうものを委員に選任した責任はだれにあるのですか。絶対に許すことはできません。したがって、その速記録を直ちに取り寄せてもらいたい。同時に、本日とは言いません。これは委員長にも申し上げますが、本日とは言いません。小倉米審会長の出席を求め、この件について事の真偽を私はただしてまいりたいと思いますが、この点について委員長の御所見を承りたい。  また、委員長に伺いますが、われわれ衆参両院、特に当参議院の委員会が部外者だと、部外者が農林大臣と食糧庁長官を何か圧力をもって審議会の出席を食いとめたような発言をしたことが速記の上において明らかになった場合は断じてわれわれは許すことができません。その委員を直ちに罷免をしてもらいたいと思います。したがって私は、新聞記事だけがこれを判定することはいいとは思いません。したがって、速記録の直ちに提出を求めます。同時に、適当な機会に小倉米審会長の参考人または証人としての出席喚問を要求いたしますが、委員長の御所見を承りたい。
  151. 任田新治

    委員長任田新治君) ただいまの足鹿君の要求に対し、当委員会としては事務当局をしてそのように措置させるようにいたします。
  152. 足鹿覺

    足鹿覺君 農林大臣に伺いますが、いま委員長から御発言のとおりであります。事務当局をして措置せしめるということでありますから資料もやがて届くでありましょう。本日のあなた方の米審に出られないことは、国会の審議の必要上米審に出られないのでありまして、あなた方が国会をみずから部外者と言われるはずは私はないと思う。したがって、そのような事実が明らかになったときには、その委員に対していかような措置をおとりになりますか。われわれはそのような不見識千万な審議はしておらぬつもりであります。一体、米価審議会の中立委員なるものは何者でありますか。任命者としても至急に調査を願いたいと思う。そのような傍若無人な発言をするような委員につきましては、われわれも任命権者である農林大臣の処置を求めたいと思いますが、御所見いかがでありますか。
  153. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 私たちは、先ほど長官も申し上げましたように、早朝から国会に参っておりまして、審議会では懇談会を開いているのでありまして、その懇談会の中において御発言があったことを私が責任を持ってどうこうするというわけにはまいりません。したがいまして、どなたがどうおっしゃったかは知りませんけれども、そのことばじりを私が一々取り上げてその措置をするなんということは私にできるものではございません。任命権者は、あなたがおっしゃるとおり、まさに長谷川四郎でございます。農林大臣でございます。しかしながら、そのことば云々について私がその人に対して云々することはできないということをはっきりこの際お断わり申し上げておきます。
  154. 足鹿覺

    足鹿覺君 速記録をよく調査の上、国会を部外者扱いにすることに対して農林大臣みずからはどのようにお考えになりますか。部外者でありますか、国会は。われわれ国会議員は米審以外の部外者でありますか。
  155. 長谷川四郎

    ○国務大運(長谷川四郎君) 早朝から各党の代表の方々とお会いをしております。はたして国会をさしたものか、その人たちをさしたものか、それはその人の考え方はどうあるかわかりませんけれども、私には国会を部外者と言ったかどうかはわかりません。したがって、そういうような点について私が詮議する必要は全くございません。
  156. 矢山有作

    ○矢山有作君 しかし大臣、少なくとも米審で懇談会と称して、ただ単なる放談会なら別です、少なくともごていねいに速記までとっておるのでしょう。しかも部外者というものが諮問文の変更に対して圧力をかけておるとか、あるいは部外者の圧力によって米審に大臣や長官が出てこれないということが堂々と発言されておる。そしてその発言に基づいて新聞に報道されておるのです。そうすると、その新聞記事を読んだ国民は一体どう考えますか。いかにも国会というものが部外者の立場から不当な圧力をかけておるような理解をいたしますよ。だから私は、少なくともその部外者というのは一体何をさしておるのか。発言をした当人が明確にすべきなんです。そのためには、はたしてその発言があったのかどうか、速記をつけておられるのだから、われわれは速記録を取り寄せてその事実を確認しようというのです。そうしてその事実の確認の上に立って私どもは、あなたが部外者と言ったものはだれのことを言っておるのかわからぬとおっしゃるのだから、一体、発言者は部外者とはだれをさしておるのかということを明確にさせようというのです。そうして、さような懇談会を主宰しておったと思われる小倉会長はそれに対してどういう見解を持つのか、これをはっきりさせようというのです。そうして速記録を取り寄せること、あるいは小倉会長を喚問するということについては、ただいま委員長のほうから事務当局に対してそれを処置させると、こうおっしゃった。だから少なくとも委員長は速記録を取り寄せて、だれがそういう不当きわまる発言をしたのか、そうして小倉会長はその場にあってどういうような考え方でその懇談会なるものを主宰しておったのか、そのことをわれわれは明確にしながら、一体部外者とはだれを言っておるのか、国会を言っておるのか、それともそうでないものを言っておるのか、それを明確にしたいというのです。それをしろというのがいまの委員長の私は発言になっておると思うのです。ですから委員長足鹿委員質問を受けて、そのことを事務当局に要求しておられるわけです。事務当局がそのことをやるのかやらぬのか、やらぬのなら、どういう理由でやらぬのか、それを明確にされたい。
  157. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 本日開かれたのは懇談会でございまして、審議会が正式に開かれておるのなら速記録を取り寄せることを私は命じられますけれども、懇談会をおやりになっておる速記録を私から事務当局に命じてこれを提出しろということは私には申し上げることはできません。
  158. 足鹿覺

    足鹿覺君 ちょっと念のためにその新聞の原文をそのまま読んでお聞かせいたしましょう。「農相食糧庁長官の二人とも出席出来ないというのは過去に例がない。部外者の圧力で出られないのなら米審の権威にかかわる」と発言しておるのであります。で、きょうは何かあなた方の米審出席を制約するような他に重大なできごとが農林大臣、ございましたか。力んで御答弁になりましたが、何かありますか。
  159. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 従来審議会中でありましても、国会が開会中は大臣が出てきて答弁していることはいままでずっと続いております。今日初めてではございません。そういうような点について一日中国会におったということはどうかと思います。それは私は記録を持っておりませんから申し上げられませんけれども、こういうような例はその間を抜って、そして国会に出て御答弁を申し上げたというような点は、今日までかなりあったということを私は体験をしております。しかし、一日中あったというようなことは、私はまだ記録を見ておりませんからわかりませんが、これに対して、国会からの圧力かどうかはわかりませんけれども新聞が書いたから、それがその議題となってわれわれの責任だと言われたんでは私は迷惑だと思います。
  160. 矢山有作

    ○矢山有作君 それじゃ大臣、私は問題を整理してお尋ねしたいと思いますがね。米審で懇談会とはいえ速記をとっての発言ですよ。発言する人は、それなりの責任を持つ立場で私は発言をされたと思うんです。速記のつかない放談会なら別です。われわれはそういう放談会で出たことばを取り上げて追及しようとは思いません。少なくとも速記をとっておる以上は、発言者が自分の発言に責任を持って発言されておると思います。その発言の中で、部外者による不等な圧力であるとかというようなことばが言われたとするならば、それがもし——もしですよ、ほかに、部外者の圧力と彼らが称するものがあなたの場合ないんだから、もし国会をさして部外者と言って、その国会の不当な圧力云々というふうに発言しておると解釈されるならば、その発言があなたは正しいと思いますか。正しくないと思いますか。それだけは言えるはずです。部外者の不当な圧力云々という発言が正しいか、正しくないか、それはどうなんです。
  161. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 先ほども申し上げましたとおり、けさから何党何党という各党の方々の代表にたくさん会っております。しかもけさの九時から会っております。部外者とは何をさしたかということは私には判断ができません。
  162. 矢山有作

    ○矢山有作君 だからそういうような発言が、速記をとってなされておるということがいいことか悪いことか、それをどうお考えになるかということをまず言ってみてください、あなたの感想を。
  163. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 懇談会でございますので、速記をとるかとらないか——私は諮問したのでございまして、その米価審議会に対しましては、そこまで私も一応おまかせ申し上げた以上は私の権限以外でございます。
  164. 矢山有作

    ○矢山有作君 権限以外で済まされる問題じゃないのです。そういうふうにあなたおっしゃるならわれわれはますます速記をつけて発言なさったその方がどなたであるか、どういう考え方のもとに発言なさったのか、これはやはり小倉会長を呼んでわれわれはそれをたださなければならぬ。わからぬ、わからぬで逃げられている。かってなことを速記とって発言をされて、そうしてそれが新聞報道に載って、それを黙って見過ごすことはできないでしょう。であるなら委員長がおっしゃったように、事務当局として処理してもらいたいというのですから、速記録を取り寄せる小倉会長を喚問する、そういう手段を講じていただきたい。懇談会だからでは済まされぬですよ。
  165. 任田新治

    委員長任田新治君) 委員長としてこの際発言いたします。  先ほどの足鹿委員の御要求に対して私は答弁しましたが、「事務当局をして」というのは、当院の事務当局という意味でございます。したがいましてこれをまた一そう吟味しますと、当局として、当院として米価審議会の懇談会の内容につき、それらの資料を要求し、また出席を求めることについては、いろいろ問題もあろうかと思いますが、十分理事会においても検討の上、その方向につとめたいということに御了解を願いたいと思います。
  166. 足鹿覺

    足鹿覺君 先ほどのあなたの御発言とは違うんじゃありませんか。農林大臣は勘違いをして何か力んで答弁をしておられますが、何もあなたの責任を追及しておるのでありませんよ。あなたは衆参両院の国会に出ておられる、檜垣食糧庁長官も出ておられる、したがって米価審議会に出られない。そのことを称してわれわれ国会であなた方をくぎづけにして米価審議会に出席できないように圧力を加えたと言わんばかりの発言のように受け取れるから、何かはかに圧力を受けられるようなことがありましたかと聞いておるんですよ。もしほかにありますならば、これは大臣の御責任でしょう。われわれの関知せざるところだ。どの党の代表にお会いになり、どういう御事情があるか私は存じません。ただ私どもは衆参両院の審議の場にあなた方がおいでになったことをさして部外者と、もしその委員がそういう意味に言ったとするならば国会軽視、そういう立場から断じて許せません。これを言っておるのであります。農林大臣は何か勘違いをしておられるようであります。この点先ほど来の御発言に対してとくとよく考えていただきたい。もしそういう事実があったときには善処をすると言われても、適当な措置を講じたい、自分にはほかに圧力を受けたものは何もない、かように御答弁になってしかるべきではありませんか。何をそのように私の質問にといい、矢山委員の関連にそのように力み返って御答弁になるのでありますか、伺いたい。
  167. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 私は、昨日社会党の議員さんが大ぜい参りまして、いろいろのお話を承りまして、審議会もさることながら、最も重要なときではありますけれども、まず国会において先にいろいろな疑点があるんならば御審議をしてもらうのが優先すべきものである。ぜひ国会に出席して、そして皆さん方が納得いくいかないは別でございますけれども、自分たちの意見は意見として十分にお話し申し上げたい。こういうことで昨日、あすは出席することができません、国会に参りましてできません、こういうことを会長に申し上げましたところが、そんなかってなことは困りますと言われましたけれども、私は何といっても国会というものが優先しなければ相ならぬ、そして議員さんの意見を十分に聞き、それを尊重しながら審議会というものは進めるべきものである、こういうような考え方の上に立って本日私のほうから、きょう出られるようにし、そしてあしたは出ますということを申し上げておったのでございまして、しかしながらきょう私がおらなければ懇談会にしますぞと、こういうようなお話でございましたので、やむを得ません、こういうふうに申し上げてきたわけであります。しかしながらその懇談会の中において、委員の方々がどう言ったということばじりがどうだったか知りませんけれども、その新聞の一ページをとらえて云々言われるということはまことに私は心外であります。
  168. 矢山有作

    ○矢山有作君 それは勘違いしている。あなたがいまおっしゃったことの前提に立つなら、そういうことを懇談会で速記をつけて放言をしている。そのことが適当じゃないんじゃないですか。部外者の圧力云々ということばは間違いないじゃないですか、あなたがいま自分で説明なさった経緯を考えてみたら。だから、なぜあなたはそういう委員発言は不当であるということが言えないのですか。その判断ができないことはないでしょう。その判断ができるはずなんですよ、いまあなた自身のおっしゃったことばの前提に立てば。なぜそれが言えないのですか。部外者の圧力云々の発言は不当である。それがなぜ言えないのですか。
  169. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 私は出席をしておりませんので、何と委員がおっしゃったかということは、新聞の一ページを見て私がそれにお答えするわけにはまいりません。いずれ委員長がその記録をおとりになって、そしてお調べになるそうでございますから、そのときになって私は自分の意見を申し上げます。
  170. 矢山有作

    ○矢山有作君 それでは時期を失するのですよ、いま問題になっておるのですから。だからあなたの言い分に私は一応の譲歩をいたしましょう。はたして言うたか言わぬかわからぬけれども、それは認めましょう、それじゃ。しかしそうだとしても、もし、今度仮定の問題として、もしそういうような発言があったとするならば、あなたはどう考えますか。これは不当じゃありませんか、あったとするなら。
  171. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) あったとするならばということになりますと話は別でございます。これは私が昨日私のほうから、国会に出席をしたいがためにあしたはできませんからということを申し上げて、私から進んで国会に出席をしたのでございますから、そういう点があるいは徹底しなかったとするならば、それはそのおことばのとおりだと考えます。
  172. 矢山有作

    ○矢山有作君 そうするとね、その発言は不当であるということになるんです、あったとするならば。あったかなかったをわれわれは明確にしなければならなくなってくるわけです、その次には。そうすると、せっかく御丁寧に速記をとっておられるのだから、私が委員長に対して要求するのは、足鹿委員が要求されたと同じように、速記録をこの場に取り寄せてほしい。そしてもし発言が事実あったなら、その発言は不当であるということになります、いまの大臣の話からいくならば。そうするならば、不当な発言に対してどういうわれわれは処理をしなければならぬかということを次に私たちは考えなければならぬ。そして、事実それが速記録で証明されるなら、そういう審議会の懇談会を主宰されておった小倉会長の見解を求めなければならぬ、こうなるんです。したがって、速記録はすぐ取り寄せられるはずですから、それを取り寄せていただきたい。
  173. 足鹿覺

    足鹿覺君 先ほど委員長は、事務当局に命じて善処すると言われました。で、念のために、そのとおりだと私は思っていたら、何かいま言い直されたようでありますが、その最初の御意思には変わりないでしょうね。たとえば「諮問文の是正は審議会の確認事項であって部外者の圧力で動かすものではない」とか、あるいは先ほど述べたようなことが具体的に載っておるんですよ。載っておるから、事の真偽を速記録を取り寄せて調べてもらいたいということを——何もそんなに言い直したりなどされることはないでしょう。だから取り寄せていただきたい。それは農林省の責任じゃないでしょう。委員会として特にこれがうそならこれはあれですけれども新聞記事に偽りがあったということになりますが、「この日の懇談会は小倉会長の意向で「一応懇談会の形をとるが会期も六日までしかないので希望があれば委員の意見開陳を受ける」ことにしていたため最初から速記録をとって始められた。まず冒頭に中立委員が「諮問文の是正は審議会の確認事項であって部外者の圧力で動かすものではない」と発言したことから論議は再び諮問文の是正問題で終始することになった。」と報道しておるのです。これがいわゆる真実であるかどうか。最初私が言ったことを調べてください。速記録を取り寄せて、そうしてここで参考に供していただきたい。その上で事実がありといたしますならば、農林大臣にあらためてその処置を私は申し上げる。私は最初から農林大臣にもそう申し上げておるつもりです。あなたが昨日来御努力になったことを何も私はとやかくここで批判しておりません。あなたが国会に出ておることが、いわゆる部外者の圧力によって国会に出ておること自体が審議会に出られないというふうにもしこの委員発言があるならば、私は不当だと思う。これは当然でありませんか。
  174. 矢山有作

    ○矢山有作君 それを不当だと言った、大臣は……。
  175. 足鹿覺

    足鹿覺君 それは仮定の上だというのだ。だから速記録を取り寄せて調査の上、それが明らかになったときには対処する、こういうことであれば、別に最初からそうおっしゃれば問題ないじゃありませんか。だから委員長においてもさように取り計らい願いたい。何もむずかしい問題ではない。
  176. 任田新治

    委員長任田新治君) いま足鹿委員の話、十分了解しておるわけです。その上で処置をとるように計らっておるわけです。
  177. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) これは私どもは本日ずっと国会におりましたし、米価審議会の委員の懇談会は私どもとは言うならば行政上特別に関係のある問題ではございませんけれども、御参考までに私が報告を受けました点を申し上げますと、委員の懇談会として開かれましたのはたしか午後二時以後のように報告を受けておりますので、少なくとも私が報告を受けましたことをここで申し述べておきますことは何らかの御参考になるかと思います。
  178. 足鹿覺

    足鹿覺君 その必要ないですよ。委員長がさっき職権で御発言になったとおりです。しかし、あなたの発言も問題ありますよ。懇談会でありますから、部外に発表できないと言っても、ちゃんと載っているのですよ。各新聞に載っているのですよ。あなたが見ないだけじゃありませんか。われわれ国会の身になれば、部外者扱いをされればだまっておられませんよ。それは与野党の問題じゃありませんよ。何ですか、一体。あなたはそういう記事が新聞に出ているにもかかわらず、懇談会の内容は公表できないとさっき言ったじゃありませんか。いたずらに私は事をかまえる必要はないと思うのです。事実を確認をしてですね、あなた方自身、みずからが事実を確認するために協力してもしかるべきじゃありませんか。大体ですね。今夜にしてみても、七時に再開になることは明らかであったじゃありませんか。それをですよ。われわれ定刻に来て待っておるんだ。それをだ、相当時間待っても——われわれは一応審議を熱心に再開しておるわけでありますよ。——速記をつけた上でこの議論がなされたことは明らかであります。ですから食糧庁も、その文書の保管その他は食糧庁長官が処理しておると思いますが、直ちに委員長のただいまの御発言に従って対処されることを要求いたします。  檜垣食糧庁長官に大臣と打ち合わせをして答弁願いたいが、いま委員長委員部をして連絡をおとりになったところが、打ち合わせ中だということだそうであります。食糧庁長官として、この会議の中心人物でありますから、すみやかにその速記録が提出されますように処理することをこの際明らかにしてもらいたいと思う。そうしなければ先に質問が進みません。この問題はこの程度でけりをつけたいと思いますから、御所見いかがですか。
  179. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 食糧庁は設置法の規定に基づきまして、米価審議会の庶務を掌理しておるのでございます。そういう意味で、私は米価審議会の庶務の事務責任者ということに相なりますが、これはその限りにおいては、米価審議会会長の指揮を受けるという立場にあるのでございます。食糧庁長官という立場とは別個の立場であることをまずもって御了承いただきたいと思います。  米価審議会の庶務を掌理しておる者として御説明申し上げますと、米価審議会の正式の会議録につきましては、相当の広範な発言がございまして、これを翻訳いたしますのにも相当の日数がなければできないという事情でございます。  なお私は、懇談会の速記録というものの本質は、やや庶務担当者としては独断でございますけれども、懇談会の速記録というのは、委員相互の間で後日自分はどういうことを言ってディスカッションをしたかというようなことのために残すものであろうというふうに思いますので、本来的には外部に示すべき性質のものでは私はないのではないかというふうに思いますが、その判断は私は審議会の会長が委員にはかった上で処理さるべき問題であろうというふうに考えるのでございます。
  180. 足鹿覺

    足鹿覺君 それなら、あなたの協力的な御発言と受け取れません。自分は庶務を掌理する者なんだ、権限は会長なんだ——なら伺いますが、長官、米価審議会は行政機関ですか。
  181. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 設置法上は、食糧庁に付置せられました行政機関でございます。
  182. 足鹿覺

    足鹿覺君 米審は、設置法によって食糧庁に付置された行政機関ですか。冗談言うな、何を言うか。米価審議会が行政機関だという解釈ですか、あなた方は。そういう不当な発言がありますか。
  183. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私が申し上げましたのは、司法、立法、行政というふうに分けるならば、これは行政機構に属するということでございまして……。
  184. 足鹿覺

    足鹿覺君 農林大臣の諮問機関じゃないか。
  185. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 食糧庁に付置せられました諮問機関でございます。
  186. 足鹿覺

    足鹿覺君 行政機関でないということを明言したまえ。何の話ですか。会長の権限に属するとか、自分は一庶務を担当するにすぎないとか、では速記録を出さないつもりですか。協力しないということならしないでよろしい、われわれは何ぼでも調べる方法はありますから。協力しないですか。はっきりしてください。
  187. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 先ほど申し上げましたように、速記録を国会に提出するかしないかということについて私が庶務担当者としてお答えはいたしかねる、これは私は御理解を願えることだと思うのでございます。その点の判断をするのは私は、米価審議会の会長あるいは懇談会で座長をつとめたしかるべき人の判断ではなかろうかというふうに思うのでございまして、ここで私が協力を申し上げるというようなことを申し上げることは、その点についてのあやまちをおかすおそれがございますので、私はその点はお許しをいただきたいと思います。
  188. 足鹿覺

    足鹿覺君 それでは拒否声明ですね。あなたは独断でそういうことを言えますか。会長の指揮を受けずしてそういうことを言えますか。あなたはいつ会長の指揮を受けたんですか。会長の指揮を受けて帰りたまえ。会長の指揮を受けたまえ。委員長、暫時休憩して、会長の指揮を受けてから再開してください。会長の指揮を受けてからものを言いたまえ。何の話だ。会長の指揮を受けたまえ。独断でそういうこと言えますか。会長が判断すべきことを君自身が判断しているじゃないですか。会長の指揮を受けて、会長の判断を受けていま答弁すべきことでしょう。会長がノーと言うならば——会長がノーと言うならばノーと言うでわれわれは考えがありますよ。ですから、委員長、庶務担当者が会長の指揮を受けるまで暫時休憩願います。
  189. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私が申し上げましたのは、速記録の提出をすることについて協力するとかしないとかいうことは私の立場としては申し上げかねますということを申し上げたのでございます。
  190. 足鹿覺

    足鹿覺君 会長の指揮を受けるか受けぬかということを言っている。協力ということをかりに注釈するならば、速記を翻訳するというようなこと等について、こまやかないろいろな技術的なことについて協力を必要とするから私は言ったのであって、速記をわれわれに見せられても判読のしようがない。したがって、そういう配慮をこめて私は申し上げている。何をあなたは勘違いをしておるのですか。会長にかわって一切のことを処理するならば会長は要らぬじゃないですか。食糧庁長官みずから会長をやれ。何という暴言を君は吐くのだ。断じて許すことはならぬ。
  191. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) どうもたいへんお叱りを受けているのでございますが、お叱りを受けているゆえんが私にはどうも十分に理解できないのでございまして、米価審議会に関しますことについては私は庶務担当者であり、庶務の実質については会長の指揮を受けるべき立場にありますということを申し上げてまいりました。また懇談会という性格委員相互の研究、検討の機会であり、そこでの発言の記録というものは委員相互の事後の記録をとどめるためのものであるということを申し上げただけであります。
  192. 矢山有作

    ○矢山有作君 いや、懇談会の性格はいいですよ。そんなことはあなたの口から聞かぬでもいい。もうわかりきった話だ。だからそんなことでなしに、あなたは、委員長のほうから速記録を出すようにいま要求しているのだが、ところが出すのについての話が出た。そうしたら、あなたは会長の指揮を受けなければならぬというのだから、だから会長がどう言うか。あなたが懇談会の性格はこうだから出すべきでないという解釈をとったとしても、会長はこれは重要なものだから出さなければならぬという解釈をとるかもしれぬ。それをあなたが会長にみずからかわって、会長にも相談しないで、ここで出すの出さぬのという性格のものではない。あなたは会長の指揮を受けてください、まず。指揮を受けなければだめだ。かってな答弁を自分でしてはだめだ。
  193. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 私がかってな判断をしてはならないということは仰せのとおりでございます。私もさように心得ておるのでございます。で、当委員会委員長として会長にかくかくのことを伝えろということを正式に仰せがございますれば、私は庶務担当者としてさように処理をいたします。
  194. 任田新治

    委員長任田新治君) 速記をとめて。  〔午後九時三十一分速記中止〕  〔午後九時五十八分速記開始〕
  195. 任田新治

    委員長任田新治君) 速記を起こして。  長官にお伝えいたします。委員長としては当院の事務局をして足鹿委員の要求を処置せしめようとしているのでありますので、米審事務当局として会長に協力するようお伝えを願います。
  196. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) ただいま委員長からの仰せの旨は会長に米審事務局の責任者としてお伝えを申し上げます。
  197. 足鹿覺

    足鹿覺君 それではもう時間も切迫いたしましたので、本論へ入りまして重要な点をほんの数点だけ……。  生産性向上のメリットの問題については休憩前に申し上げましたのでこれ以上付言することは避けますが、地代について私は大きい問題でありますので申し上げたいと思いますが、四千五百十七円というものが算定の要素として織り込まれております。四千五百十七円の数字を出された根拠として六級地の最高統制額を本年は五級地の最高統制額にこれを直したのであるからというのでありますが、しかしながら、地代の評価は昭和三十五−三十九年については、自作地の近傍類地の小作農地帯の小作料すなわち統制小作料であります。小作地の実納小作料が採用されて今日に至っておるわけでありますが、昭和四十一年は指数化方式でありましたので、評価に問題はなかったようであります。昭和四十二年——おととしからは、自作地は実納小作料について評価することになったことは御承知のとおりであります。自作地の地代は四十二年産米価並みにすると四十二年生産調査の実納小作料は八千三百十五円であります。また三十九年まで採用されていた方式をとっても、四十二年の生産調査によれば、自作地、小作地込みで六千七十二円であります。三十九年、四十年、四十一年、ずっとこの方式がとられてきておるのでありまして、政府が本年採用いたしております四千五百十七円の数字というものは現実離れがしておって私には納得がまいりません。試みに四十二年を自作地の地代にしてみますならば、六千二百三円であります。小作地の場合は八千三百十五円であります。上記の平均地代のうち、稲作が負担すべき地代を純粋に抽出してみましても六千九十二円ではありませんか。四十三年に至りましては、さらに実納小作料が上昇いたしまして、自作地の地代は六千五百二十七円、小作地の場合は九千四百十八円であります。政府の積算地代は四千五百十七円でありますから、実納小作料の小作地の場合は約倍額の実態になっているのであります。これを平均して稲作の負担すべき部分に評価がえをしてみましても、小作地の場合は四十三年六千四百六十円という数字であります。いかに米価を据え置かんがためとは言え、このような現実離れのした地代の設定というのは、一体何を根拠にあなた方は行なわれたのでありますか。その点を明確にしていただきたい。
  198. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 昭和四十二年の九月に農地法に基づきます統制小作料の改定が行なわれたのでございます。これはたしか昭和三十年からずっと統制小作料の最高額が据え置かれまして、経済実態に合わないということで、最近の稲作の生産事情、経済事情に適合するような統制小作料の改定が行なわれたわけでございます。昨年の米価算定にあたりまして、私どもは、従来は統制小作料というものがいかにも経済の実態に合わず、特に昭和四十二年産米の生産者米価算定の時期には、すでに農林省としては小作料の改定を準備をいたしておったような事態もございまして、実納小作料を採用したという実績はございますが、農林省として法律に基づく統制小作料をきめた限り、同じ農林大臣の行政の対象であります小作料の統制額というものと米価に算入いたします地代というものの間に矛盾のあることは、これは行政上明らかにおかしなことになるわけでございます。私どもとしては、統制小作料が改定されました限り、制統小作料をもって小作地、自作地を問わず地代として採用することが適当であるという考え方で昨年以来統制小作料の最高額をもって評価をするというやり方をやりました。本年も同様にいたしたのでございますが、級地につきましては、昨年も最終的な米価の算定にあたりましては、平均的な中庸水田と目されます六級地よりやや上ということで五級地の統制小作料を用いたのでございます。今回の試算におきましても同様に五級地の現行統制小作料を用いて試算をいたしておるということでございます。
  199. 足鹿覺

    足鹿覺君 その算定の根拠は、具体的に資料のどこにありますか。どういうものを、どういうファクターを集めてそういう実際とあまりにもかけ離れた、現実離れのした地代を算出されたわけでありますか、一体。私どもも根拠なくして言っておるのではありません。私が先ほど来申し上げたことは、質疑を簡略に終わりたいから一気に申し上げたにすぎません。しかるに、その根拠も明らかにせず一方的なあなた方の恣意性のみを強調されたのでは、答弁になりません。根拠づける資料は何でありますか。資料があればそれを御配付願いたい。
  200. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 統制小作料の額につきましては、たしか「生産者米価に関する資料」というものをお配りいたしておるつもりでございますが、その七十七ページに、現行の統制小作料がお示しをしてあるのでございます。地代の稲作負担率につきましては、これは統計調査部の調査に基づきます稲作負担率を用いておるわけでございます。なおそれにつきまして、この地代の計算につきましても、四十一年、四十二年、四十三年のそれぞれの年の地代計算をいたしましたのを平均をいたしまして、四千五百十七円というものを算出をいたしておるわけであります。  なお、多少御質問外に及ぶかと思いますが、実納小作料というのは、少なくとも現行統制小作料の幅に入り得ないようなものがあらわれておるのでございまして、農林省として統制小作料を上回るものを公然と米価の算定基礎に使うことは、それ自身行政上の矛盾であるということでもございますのと、さらに小作地は御案内のように全耕作面積のほぼ五%程度にすぎないのでございまして、統制をこえた実納小作料というものを直ちに採用するということは、米価と地代との悪循環ということにもなりかねないのでございまして、私どもとしては実納小作料をもって、地代として評価をするということは適切ではないというふうに考えておるのでございます。
  201. 足鹿覺

    足鹿覺君 これはわれわれといえども地代が米価の中身に大きく影響する、その程度のことはよく存じております。なるがゆえに、本委員会としては先般農業協同組合が請負小作をやっている地域にわたっても実際に調査をし、またそのとき各地の実情も調査してきておるのであります。私がその現場において各地の人々に会い実情を聞いた際において、いま長官が言われたようなそういった程度の実納小作料はどこにもありません。だからといってあなた方がそれを米価算定の際にどれだけ織り込まれたかということは寡聞にして聞きません。それはあくまでも統計にあらわれていくものはあらわれていく数字であり、実際において取引されておるものは必ずしも統計にあらわれておるものとは一致するものではありません。なるがゆえにあなた方は農地法の改正あるいは農協法の改正を今国会に提案しておるのは、そういった一面もあるからではありませんか。にもかかわらず米価を低く押えんがためには、実納小作料はいかにも低いものである。そう過大に見積ることはできないと、こういうことを言われますが、いま示された資料によれば五級地で四千七百二十円であります。改正前の場合は千百数十円にすぎません。改正前に比べると現在は約四倍になっておるのであります。しかしそれでもなお実情には遠い、現実離れのしたものであります。特に東日本と西日本を比べた場合においては、実情は著しく差異があることは御承知のとおりであります。  しかし現地における実情はともかくも米価は一本米価であります。地域米価ではありません。だとするたらば、少なくともあまりにも現実離れのしない米価を算定することとまたこれに無関係とは言いませんが、適正な実情に近い実納小作料を勘案することは当然ではありませんか。私はあなたのいま説明された資料によっても納得するわけにはまいりません。だがこれ以上——具体的にまだいろいろあります、いろいろありますが、これ以上申し上げませんが、このような実情に遠い地代をもって本年の米価をことさらに低く押えんとする意思に対しましては絶対に反対の立場を堅持して、今後もあなた方のその間違いを正していきたい、かように思います。  最後に需給緩和時代における算定方式は、本年とられたような算定方式を今後一つの方向としてとられる御所存でありますか。その点を明らかにしていただきたい。  以上の御答弁を受けて、私は最後にもう一点重大なお尋ねを申し上げたいと思いますので、簡潔に御答弁願いたいと思います。
  202. 檜垣徳太郎

    政府委員檜垣徳太郎君) 本年度の米価を決定するにあたりまして、私どもとしては生産費及び所得補償方式を基本としつつ、一方において現状の需給事情を考慮したきめ方はどうであろうかという基本的な考え方を持っておるのでございますが、そういう考え方を持ちつつ、反収の取り方については、限界反収の取り方については、当面平均反収から二分の一シグマを差し引いた反収を採用することが適当ではないかという試算をいたしておりますが、将来の問題を現段階において講ずることが妥当であるというようなことを申し述べるのは、私は米価のような非常に農家経済にとりあるいは国民経済にとり重要な意義を持っておるものにつきましては軽率のそしりを免がれないことに相なるかと思いますので、将来いかに考えるべきかは、やはり今後の需給の推移あるいは物価その他の経済事情、需給事情を含む農家経済の事情、そういうものを総合的に勘案いたしました上で考えてまいるべき問題であろうというふうに思いますので、その段階で明確にどうすべきであるということは、私はそれをお答えするだけの用意を持っておりません。
  203. 足鹿覺

    足鹿覺君 最後に委員長に申し上げ、かつ農林大臣からも御答弁があれば御答弁をいただきたいと思いますが、要するに休憩前からの今日までの論議を要約してみまするというと、政府の本年の米価算定方式、算定の内容、その要素の取り方、すべて私どもをして納得せしめる根拠は薄弱であります。特に需給事情を本文の諮問に記載してある説明においても、先ほど述べましたように、経済事情の大きな変動に即応する対応策についても何ら触れておりません。物価、賃金、国鉄運賃料金の値上げ、これらをもととする生計費が大きく上昇しておるときに、ことさらに食管法の解釈を曲げ米価を据え置きにし、その案を米審に諮問されましたことはまことに遺憾であります。このことは、かつて本年度の施政方針演説に際し佐藤総理は、生産者、消費者米価を据え置く方針を表明され、また先般、物価対策協議会が一応の任務を終えて解散をするにあたりましてもさらに佐藤総理はこれに出席をして米価を押える旨を言明をし、今日に至っております。  一体、米価審議会にはかり、当然その意見をきめて後、一国の総理というものは一つの裁断を下すべきであるにもかかわらず、事前に法律を無視し、両米価の据え置き、なかんずくこの物価高に事実上の米価の引き下げに当たる諮問案を出すのみならず、その根拠としては遠く施政方針演説に端を発しておる。責任はすべて私は佐藤総理にかかっておると思います。したがいまして、当委員会といたしましては佐藤総理の出席を求め、施政方針演説当時における状況と今日の心境と方針を聴取する必要があると思うのであります。特に賃金その他は三公社五現業をはじめ民間の労働者におきましても大きく値上がりを示しておるのであります。すべての米価は本年二月のデータによって米価が決定されることは御承知のとおりであります。しかも例年ならば七月下旬に米価が決定されるにもかかわらず、長谷川農林大臣は先般の衆議院農林水産委員会において、田植え期に米価審議会を開いて米価をきめたいと考えていたが、積算の統計が間に合わないのでむずかしいと答えながら、あえて、西日本は早植えの最中である、東北においてもいまだ完全に田植えの済まないうちに米価審議会を招集し、早期に米価を決定しようとしておることは、われわれとしては、総理の方針を受けて、なるべくベースアップ等が農家の自家労賃の評価に反映しないうちに、これを処理せんとしているにほかならないと思うのであります。したがって、本年の米価の持つ大きな特徴は、佐藤総理が施政方針演説によって抑制米価方式をとることに端を発しておるのでありまして、一農林大臣のみを追及することによっては本委員会としての目的の達成はできません。したがって、当委員会として委員長にお願いいたしたいことは、総理大臣の出席を求めるべく御善処願いたいということであります。  いま一点は大蔵大臣の出席についてであります。政府自民党首脳は、米価据え置きの代償に、新農政長期計画を構想していると伝えられております。大蔵大臣は去る二日農協の米価大会において、根本自民党政調会長をして、党を代表して本年度の農政関係予算は六千七百億円であり、総体予算の六・六%に当たるが、農民の納める税金は百八十億円であり、これは総国民の税額の〇・〇二%にしか当たらぬと放言せしめているのであります。いやしくも全国一万三千の農民が米価を案じ、少なくとも控え目の農協米価を要求しておる大会において、かくのごとき放言をしてはばからない。あたかも納税額の少ない農民は文句を言うな、安い米価に甘んじよ、このようにも受け取れるべき暴言を吐き、満場の嘲笑とやじの中に葬り去られたことは、私どもも現場におってよく承知しております。しかもその当日、根本政調会長は、米価をつり上げるだけでは問題の解決にならないと、全国の農民に値上げを要求して集まっておる農民に挑戦する言辞を吐いたことは忘れることはできません。しかるに、このような発言を自民党政府与党の間では、勇気ある発言として高く評価をしておるといわれております。私どもはその心理を理解するに苦しむものであります。  一体このような根本発言の根拠は何か。それは総理の施政方針をかさに着たいわゆる一つのかいらいの発言であり、第二には全国民の一八%にしか足りない人口比に落ちた農村を甘く見た、農民を軽視し、票田として頼むに足らずと思った日ごろの政府与党のものの考え方が、このような発言を根本氏をして言わしめておると思うのであります。おそらく与党の中にも、このような発言にまなじりを上げて、腹の中で腹を立てておられる人々もあろうと思いますが、与党の立場から隠忍自重しておられるにすぎないと私は思います。  こういう情勢から考えてみまして私は、今回の米価の算定はただ単に農林大臣のみの責任として当委員会がこれを追及するのみでは解決つく問題ではないと存ずるのであります。聞けばまだ米価決定までには相当の日子があるやに受け取れまするので、ここにおいて財界の意図を直接受け、財政審議会の答申をまともに受けて処理せられる大蔵大臣の出席を求め、あわせて審議を行なう必要を痛感いたします。したがって、委員長におかせられましては、先般の国鉄賃金の値上げに際しては佐藤総理の出席を実現され、今日、国鉄運賃の値上げも必要で、その審議について出席をした総理は——全国の農民が刮目している本年の米価決定について総理や大蔵大臣の所信を当委員会を通じて聞くことは私は当然すぎるほど当然のことだと思います。いわんや諮問そのものが違法であり、われわれは米価審議会のかような違法のものを審議すること自体についても大きな疑惑と不信を持っておるものでありまするので、ここに、当委員会においては、以上の立場から総理大臣佐藤榮作君、大蔵大臣福田赳夫君の出席を求め、なるべくすみやかなる機会において審議を進めるべく委員長において善処せられんことを要求いたしまして私の質問を本日は終わることにいたします。  なお、先ほど委員長から米審懇談会における速記録の提出、調査等の御指示が当局に行なわれましたが、すみやかにその資料を検討し、あわせて審議会の会長である、今日まで審議会の委員をつとめ、しかも、算定方式に隠然たる力を持つといわれる小倉会長の出席を求め、懇談会に速記を付した理由、また今日までの審議の経過、審議の結果、今後の委員会運営の方針等について意見を求める必要があると思います、調査を進める必要があると存じまするので、これまた総理、大蔵大臣とともになるべくすみやかなる機会に小倉会長を当委員会に喚問せられんことを要求いたしまして、私の質疑を終わります。  委員長より御所見を承りたいと思います。
  204. 任田新治

    委員長任田新治君) 米審に対する足鹿委員の要求並びにただいまの発言による要求につきましては、理事会にはかった上、期日その他のこともありますので、手続を踏んで実現方に努力をいたします。
  205. 沢田実

    ○沢田実君 きょう数時間にわたって先輩からいろいろ質問がございまして、私からなにでございますけれども、若干時間をいただいて整理しながら大臣のお考えを承りたいと思います。  第一番目は、合法か違法かということについて議論をされたわけですが、われわれは違法だと、こういうふうに考えているわけですが、大臣は合法である、こういうふうに結論を出しておられると理解してよろしいかどうか承りたいと思います。
  206. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) お尋ねの諮問案につきましては、私は合法であると確信をもってお答えを申し上げます。
  207. 沢田実

    ○沢田実君 二つ目は、「物価その他の経済事情を参酌し」とありますが、「物価」は上昇しております。「その他の経済事情」も物価を下げる何の理由も見出されないと、こう思うわけでありますが、その点についてのお考えはどうですか。
  208. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 諮問案の中には「生産費および所得補償方式を基本とし」ということがうたってございます。その中には、生産費及び物価、賃金、こういうようなものがこの中に含まれて御論議になるように、資料は十分ととのえまして提出をしてあるのでございまして、審議会においてこれらにつきましては十分なる御審議が行なわれるものと考えられます。
  209. 沢田実

    ○沢田実君 その資料の審議の結果、米審において諮問した金額と違った高い金額が答申されたと、こういうふうになった場合には、政府は答申を尊重して、政府の買い入れ価格はその答申の価格によって決定する、そういうお考えであるかどうか。
  210. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 審議会の答申は十分尊重をいたす考えでございます。
  211. 沢田実

    ○沢田実君 そういうふうになった場合に、政府の買い入れ価格が高くなった場合、消費者米価については絶対に値上げをしない、こういう大臣のお考えであるかどうか、最後に承って質問を終わります。
  212. 長谷川四郎

    ○国務大臣(長谷川四郎君) 消費者米価は政府がきめる問題でございます。したがいまして、これは絶対に値上げをいたしませんということをはっきりとお答え申し上げておきます。
  213. 任田新治

    委員長任田新治君) 本件についての質疑は、本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後十時三十三分散会      —————・—————