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政府委員(
中川理一郎君) まず今回の再建交付金につきまして、前回の肩がわりと性格的にたいへんな違いを持ったものとして私
どもが構想をした——これは石炭鉱業審議会の審議の途中でもその点が大いに問題になった次第でございますが、前回のものが形は債務残高だけでやっておりますけれ
ども、議論といたしましては、累積赤字の桎梏を先に向かって解消しよう、こういう形でございましたので、大矢
先生も御承知のように、当該時期におきまして赤字でなかった企業、個別
会社名を例示いたしますと、たとえば松島炭鉱、太平洋炭砿といったようなものにつきましては、これを肩がわりの対象にいたさなかったわけでございます。これは実質的に赤字があるということを一つの
考え方の基本に求めてそれを解消してやれば、先行き石炭鉱業の再建が可能になるという
考え方だったわけです。今回は前々からお答えいたしておりますように、さきの五カ年というものを見てものごとを
考えますと、現在
時点においてかりに黒字である
会社であるといたしましても、五年間の経緯の中においては人件費の上昇も覚悟しなければいけない、能率もそれほど高いものとして期待すると、また破綻を来たすということになりはしないか。したがって、前回のようなその
時点までにおける累積赤字の解消という
考え方ではなくて、先に向かって石炭鉱業が安定的な経営をできるように一種の助成手段として、思い切って先の予測でものを
考えたらどうか。したがって、当該期において黒字であるということをもって再建交付金の対象にしないということになりますと、本来再建の担い手として大きく期待すべき企業が計画期間中に赤字になった場合に、おそらく今度の再建交付金のようなものを再度持ち出すことはあり得ないことであるから、そのときには手おくれになっておるということで、累積赤字の存在そのものという
考えを捨てまして、一種の助成手段といたしまして
考えてみよう。そのときにやはり一つの指標といたしましては、当該期における借り入れ残高というものを手がかりにするよりしようがない。しかし、それはあまりに前回の基準と同じであって、
考え方の変更というものが表に出てこないということから、出炭量というものを半分のウエートにとりまして、出炭量と債務残高というものを両方の手がかりにいたしまして再建交付金を交付したいと、こう定めたわけでございます。したがいまして、ただいま御
指摘のように、当該借り入れ金に見合う資産がどのような状態にあるか、そのプラス、マイナスを見て、マイナスになっておるからするということではないという
考え方できめたわけでございますので、資産、負債のバランスについての
配慮はないわけでございます。再度交付金が一時的には出し過ぎの形がかりに出ましても、五カ年の長期的な見方からしますれば、それは平均化されるであろう。そこまでしないと、石炭鉱業の再建はできないという
考え方できめたものでございます。さようなことでございますので、資産、負債のバランスというものについては、法律の上でもそうでございますけれ
ども、私
どもも抵当権がどうなっておるかというようなことはむしろ
考えないで、もしこの再建交付金の交付によりまして、逆にその担保に入れたものが新しい受信の能力として再活用できるのであれば、その面も使って再建のために全力をあげさせたいということで、片方に再建交付金制度と相並びまして、担保抜きの制度も
考えた、こういう次第でございます。以上のことをひとつお含み願いたいと思うわけでございますが、これを進めます上におきまして、厳正に制度の
趣旨に反するものを中に入れさせないということは私
どもも心がけるつもりでおりまして、具体的には先ほど石炭部長からお答えいたしましたような、肩がわり対象債務というものについての限定は厳格にやっていきたいと思っているわけでございます。
それからこの仕事を進めますスケジュールの上で非常に内割った
お話があったのでございますけれ
ども、私
ども率直に申しまして、法律が国会でお認め願ってから一番近い時期に仕事を進めていくということで
考えているわけでございます。また、石炭部長がお答えいたしましたように、石炭鉱業審議会にもこの問題はおはかりすることにいたしております。ただ、長橋部長からもお答えいたしましたように、四十四年度の全体の予算額繰り入れ措置等を講じましても、一年分をやるということがなかなかむずかしゅうございましたので、実質的には半期の繰り下げというようなことでやっておりますので、しりのほうが押えられ、そうしてスタートのほうは法律が通過いたしませんと、私
どもも作業には入れないということで、決して他意はございませんので、一番近い
時点で厳正にこれを実施していきたいと
考えておる次第でございます。