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1969-06-05 第61回国会 参議院 商工委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月五日(木曜日)    午前十時四十一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         八木 一郎君     理 事                 川上 為治君                 剱木 亨弘君                 土屋 義彦君                 大矢  正君     委 員                 赤間 文三君                 大谷藤之助君                 大谷 贇雄君                 山本敬三郎君                 阿具根 登君                 小柳  勇君                 近藤 信一君                 竹田 現照君                 塩出 啓典君                 須藤 五郎君    国務大臣        通商産業大臣   大平 正芳君    政府委員        通商産業政務次        官        植木 光教君        通商産業省重工        業局長      吉光  久君    事務局側        常任委員会専門        員        小田橋貞寿君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (自動車資本自由化に関する件)     —————————————
  2. 八木一郎

    委員長八木一郎君) ただいまから商工委員会員会を開会いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 近藤信一

    近藤信一君 大臣が出席していないが、どうなんですか。
  4. 八木一郎

    委員長八木一郎君) いま大蔵委員会に出ておるので催促中でございます。
  5. 近藤信一

    近藤信一君 大蔵委員会に出ていることはいいが、何時ごろこっちに来るのか、きょうは衆議院はないはずなんで、こちらは朝から大臣が出ることに、ほんとうは従来の慣例からいけば、なっておるが……。
  6. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 速記をとめて。   〔速記中止
  7. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 速記を始めて。
  8. 近藤信一

    近藤信一君 自動車資本自由化の問題につきましていろいろと新聞等にも伝えられておりますが、このことにつきましては、当委員会でも再三論議されたことでございます。私も資本自由化の問題につきましては、この委員会でお尋ねしたわけでございます。先日新聞等で報ぜられるところによりますると、三菱重工クライスラーとの合弁会社設立ということが大きく報道されまして、このことにつきまして現在自動車産業関係におきましては、いろいろと問題が起こりつつあると私は思います。そこで問題なのは、一体この合弁計画というものが、単に一企業の問題でなく、ひいてはこれが他の企業にも大きな影響を持つであろうということが想像されるわけでございますが、一体、外資との提携の問題について、通産省としてはいろいろといままで論議されてきておりますが、これが具体化してきた今日、通産省としてどういう考えを持っておるのか、いろいろと議論されておることでございまするから、通産省としてもひとつ説明をしていただきたいのであります。
  9. 吉光久

    政府委員吉光久君) ただいま御指摘いただきました三菱重工クライスラーとの合弁問題のあるなしにかかわらず、自動車資本自由化体制をどう進めていったらいいかというふうな点につきまして、実は、かねてから検討が続けられておったわけでございます。特に自動車産業につきましては、昨年末以来、そしてまた、ことしの初めから、この自由化の時期をどうきめるべきであるかという点につきまして、内外の非常に激しい議論の場へさらされておったわけでございまして、そういう客観情勢前提にいたしまして、自由化の時期をどうきめたらいいか、あるいはまたその時期につきまして、いっそういうものを発表したらいいかというふうなことについて検討を加えておったわけでございます。で、その際、一番問題になりますのは、それぞれの自動車メーカーのいままでの再編成の姿がどの段階で完了したと見ることができるかというふうな、そういう角度の検討も中に加えてやっておったわけでございます。その中に、実は三菱重工クライスラーとの合弁計画が発表されたわけでございます。したがいまして、これによりまして他の自動車業界に相当の動揺が出てくるということを私どもは一番心配いたしたわけでございます。御承知のとおり外国企業特にビッグスリーのみならず、ヨーロッパ自動車企業も、日本との接触を持ちたいというふうなことで、昨年来ひんぴんと人の往来があったわけでございまして、外資との提携が行なわれるといたしました場合に、どういうふうな企業がどういうふうな企業提携動きが出てくるかというふうなことの行く末も十分に見定める必要があるというふうなことでいたわけでございます。したがいまして、本件に関する問題につきましても、やはりただいま御指摘ございましたように、非常に他に与える影響が大きゅうございます。したがいまして、そういうふうな自動車産業全体として資本自由化についてどう取っ組んでいくかというふうな問題と一緒にあわせてこの問題についても考えてまいる必要があるのではないか、このように考えておるわけでございます。
  10. 近藤信一

    近藤信一君 昨年の日米経済会議で、既存自動車会社との合弁は、当分の間は認めないと、こう申し合わせが行なわれたと聞きますが、最近の経済外交動き、あるいは三菱クライスラーとの合弁問題が起きたという、こうした事実に対しまして、一体今後どうなっていくか。七月には予定されておりまする日米経済会議というものが行なわれるわけでございまして、ここで昨年の申し合わせを変更する考えはあるのか、また、わが国が昨年の申し合わせを固守していくというふうなことでございますると、いま問題になっておりまするところの繊維規制問題等がいろいろとございますし、残存輸入制限品目の撤廃というふうな問題がまた起こってくる、こういうふうに考えるわけでございますが、この点については一体どういうふうにあなたのほうとしては判断をしておられるのか、この点はいかがですか。
  11. 吉光久

    政府委員吉光久君) 昨年八月の二十日に日米政府間の交渉が妥結いたしたわけでございますが、ただいまお話しございました三菱クライスラー合弁問題につきましては、私ども三菱重工から伺っている範囲内におきまして、その昨年の原則をどうこうとするというふうな内容のものとしては承知いたしていないわけでございまして、これはむしろどういうふうなことが現在考えられておるかということをちょっと簡単に御報告だけさしておいていただきまして、それに続いて、ただいまの御質問にお答え申し上げたいと思うわけでございますけれども、一応何か二段階に分かれておるようでございまして、第一段階三菱重工クライスラーとの間で輸出入のための合弁企業を設立するということでございます。そういたしまして、三菱自動車輸出クライスラーエンジン等部品等輸入業務をやるというふうな点が第一段階でございまして、そうして第二段階になりまして生産のための合弁会社を設立いたしますということでございまして、その場合には自動車共同開発を行ないまして、その共同開発した車を生産してまいるというふうな二段階がまえでございますが、両合弁会社持ち株比率三菱が六五%でクライスラーが三五%というふうな、こういう概要でございまして、しかも内容はまだ全然固まっておらないというふうに承知いたしております。したがいまして、今後の両合弁会社同士の折衝を通じて内容を具体化してまいるというふうなことでございまして、この合弁会社を、最初の段階輸出入会社にいたしましても、いますぐにどうこうというふうな感じはないようでございまして、その点だけちょっと先にお断わり申し上げておきます。  したがいまして、こういう前提でこの三菱クライスラー問題を入れて昨年の日米間の政府間の交渉をどうこうするというふうな必要はないのではないであろうかと私ども判断いたしております。問題は、やはり先ほどお答え申し上げましたように、自動車資本自由化をどういう段取りでやっていくかという根本的な問題とからめて、合意市項について再検討するかしないかというふうな点についての検討が必要であろうかというふうに考えるわけでございます。
  12. 近藤信一

    近藤信一君 現に愛知外務大臣アメリカへ行っておられまして、スタンズ商務長官とも会って、いろいろと自主規制の問題についてはお話しがあるようでございます。そこで三日にスタンズ長官と会われたときにも、やはりこの自主規制に対しては反対立場で主張しておられる。そのときにスタンズ長官は、これまでの自主規制制限立法か、この二者択一だと、こういうようなことも述べられておりますし、自動車などの資本自由化については、まずスタンズ長官が、最近のこの三菱クライスラー合弁会社の設立問題については大いに歓迎をしておられる、こういうふうなことも報道されておるわけでございますから、一方を立てれば一方が立たない、こういうふうなことになってくるのじゃないかと思うし、自動車自由化の問題がおくれればおくれるだけ他産業への影響というものがますます大きくなってくるのじゃないかと思われる。また、アメリカの大統領も、この自主規制が失敗すれば当然これは制限立法というものを考えなければならぬ、そこでその制限立法については賛成だ、こういうふうなことの態度を明らかにしておられるわけでございまするから、この点は一体どうなんですか。
  13. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 結論として私ども考えておりますのは、繊維自主規制の問題と自動車自由化の問題とは全然別問題だと考えております。これはアメリカ繊維産業といたしまして輸入が急増して困難な状況に立ち至るので、オーダリーな輸入にいたしたいというのは、アメリカ繊維産業をそういう方式で保護していこうということでございまして、自動車が一方において自由化されたからそういう事態が改善されるわけでは決してないわけでございまして、あくまでも繊維産業固有の問題だと考えております。仰せのように、ムード的には日米間の経済貿易関係の一環という性格を持っておりますけれども内容を吟味いたしますと、一方がよくなれば一方が緩和されるというような、そういう相互の依存関係はない性質のものでございまして、私どもはそれを分けて考えてもおりますし、分けて対処していかなきゃいかぬと考えております。
  14. 近藤信一

    近藤信一君 しかし、大臣はそう言われるけれども、経団連の中においても、やはり通産省があまりにも自動車を過保護しておる、だからアメリカ規制という問題が他の産業へ及ぼす影響は大きいんだと、こういうことで反対しておられる向きもあるわけですね。これは大臣承知のとおりだと思うのです。で、いつまでもこの問題をほうっておくと、そういうことが内部的に国内産業から起こってくると思うのです。だから、私は何らかの形でこの自動車の問題を解決していかなきゃならぬと思うのであります。特に佐藤総理も五月二十日の閣議におきましては、自由化テンポというものを早めようというふうな発言をしておられるわけでございます。こういう点から考えましても、いわゆる外資日本上陸というものは急速にいろいろと話が進んでくるんじゃないかというふうにも考えられるわけなんですが、この点、大臣はいろいろとその外資日本上陸についての考え方といいますか、その点はいかがですか。
  15. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘のように日米両国経済界でそういう論議があることは私も承知いたしております。承知しておりますけれども、だからといって自動車等自由化が促進された場合に、繊維産業を保護しようとするアメリカ側政策が緩和されると期待するのは甘過すぎと思うのでございます。したがって、あくまでも冷静に、その点は実態に即して別個の問題として対処せにゃならぬと基本的には考えております。しかしながら、仰せのように日米経済関係全体を考えますと、総理も言われましたように、自由化を促進してまいるということ、これは日米経済関係の円滑な運営ばかりでなく、わが国自体の利益から申しましてもそういう方向にあるべき性質のものでございますから、そういう自由化への前進はあくまで着実に進めていかにゃいかぬと考えております。その場合、私ども日本産業がたとえばGNPという指標で示されているように、非常にたくましい成長を記録しておるとか、あるいは貿易世界貿易拡大テンポよりも早く拡大を続けておるとか、そういう表面の数字だけでいい気になってはいけないと思うのでございます。日本産業の内実に入っていきますと、規模におきましても金融面におきましても技術水準におきまして、たいへんな劣勢でございます。特に自動車産業においてこの格差が顕著であると思います。でござますから、自由化への前進を鋭意精力的に進めるという基本の方針はもとより堅持いたしますけれども、そういったわれわれの産業固有の弱点というものをできるだけ埋めまして、自由化準備をしていく、それがだいじょうぶとまでいかなくても、これで労使の努力によりまして十分たえ得るという状態になれば自由化に踏み切るということで、手がたいいき方でいきたいものと思っております。それは生産業界ばかりでなく、販売業界にも同様に言えることでございますし、アッセンブルをやっております最終の工程だけでなくて、備品という業界におきましても、まだそういう手をつけなければいかぬいろいろな問題があるわけでございますので、早急にそういった問題について、これは政府で全部できるわけじゃ決してないのでございますけれども、可能な限り対応策を用意いたしまして自由化前進を早めてまいるように配慮していくことが私どもの任務であろうと考えております。
  16. 近藤信一

    近藤信一君 大臣も言っておられるように、自動車産業自動車産業といわれましても、実際わが国自動車産業日産トヨタに二分された形なんですね。そうしてトヨタ日産とがおのおの激烈な競争をやっておる。トヨタにおきましては、いわゆる韓国、タイ、オーストラリア、それから日産はメキシコ、台湾、こういうふうにいろいろと資本進出したり、それから販売網を確立して輸出も伸びているわけなんですね。自動車産業については、国際競争力体制を整えなければなぬ、こう言っていままで通産省努力をしてこられた。しかし、これにはただ国内日産トヨタだけが重点的に考えられて、他の業界に対するところの問題が十分に措置されていない。そういう点から考えますならば、もう少し全体の産業の点から考えるならば、自動車産業をもう少し前向きな形で通産省はこの問題と対処していくべきじゃなかったか、こういうふうに私は思うのですが、その点はいかがですか。
  17. 吉光久

    政府委員吉光久君) 通産省といたしましても、自動車資本自由化を、ただいやだいやだと言ったわけではないわけでございまして、むしろ資本自由化されることによりますメリットというふうなものも十分承知いたしておるわけでございます。ただ、入り方がと申しますか、準備体制が整わない過程におきまして資本自由化が行なわれるというふうなことになりますと、何ぶんにも自動車産業が非常にすそ野の広い産業でございますだけに、非常に大きな衝撃を関連産業に与えてまいるというふうなことを一番おそれておったわけでございます。したがいまして、自由化をするためのいろんな整備というふうなものにつきましては、相当程度努力してまいっておったつもりでおるわけでございます。で、ただいまトヨタ日産というふうなお話があったわけでございますが、実はトヨタ日産の御指摘がございましたように特に東南アジア、大洋州というふうなところに一部海外進出をいたしておるわけでございます。これは、ある程度力もついて、世界的に太刀打ちできるからこういうところに出ていったというふうな状況と申しますよりか、むしろすでに欧米系の有力な企業が積極的にこれらの地域進出いたしておりますし、また、これらの地域では国産化政策というものが強力に推進されておりまして、ただいまこの市場に出てまいらなければ永久にその市場には入れない、こういうふうな特徴のある地域でございまして、そういうために急いで海外進出してまいっておるというのが現状ではないかと思うわけでございます。なお、通産省政策日産トヨタ中心にした政策というふうなお話であったわけでございますけれども、何もそういうトヨタ日産等中心にしたと申しますよりか、やはりヨーロッパにおける先例等に徴しましても、自動車産業集約化が必要であるというふうなことで、その集約化への構想を急いでおったわけでございまして、結果的にトヨタ日産等中心にしたグループが、現在では一番集約されたグループとして、結果として出てまいっておるというふうな状況でございまして、意識的にそこへ全部のものを走らしたというふうなことではなかったわけでございます。ともあれ、そういうふうな状況でございまして、私どもといたしましても自由化体制を早くつくり、そして早く自由化するという点につきましては全くの同じ気持ちでございまして、故意にこれをおくらせようというふうなことはないことを御了承いただきたいと思うわけでございます。
  18. 大矢正

    大矢正君 関連。先ほど来近藤委員から意見が述べられておりまするように、今日の段階で、自動車に関しての自由化については、通産省として抵抗を示されておるということは事実だろうと思うのであります。実際に自動車を需要する側あるいは販売する側あるいろ財界等々、この自動車関連をするそれぞれの立場の者の中には、いろいろと異なった意見があると思われますが、自動車というものを考えてみた場合に、物の面で、資本の面で、この両面で著しく抵抗を示しておられるのは通産省であると私は思うわけであります。  そこで、いま局長は、なぜ通産省が早急に自由化に踏み切れないかといえば、それは準備体制が整っていないからだという話であります。準備体制とは具体的に何を指すのか、どういう状態になったときに準備体制というものができたと判断をされるのか、そこが焦点だと思うのであります。あなたのほうで、ただ自動車工業もしくはその構成のそれぞれの企業意思に基づいて、準備体制が整わないから、物の面でも、資本の面でも自由化反対だと言われておるのではなく、もっと本質的なものを見定め、考えておられるから、自由化は今日の時点ではできないのだと、こう述べられておるものと思います。さすれば、どういう点ができ上がったならば、どういう点が満たされたならば、準備体制ができたと判断をして、物の面においても資本の面においても自由化が行なわれるのか。そうしてまた同時に、そういう準備体制というものを、時期のめどなくして考えるはずはないと思うので、ある程度のめどというものを当然のことながら持って、その準備体制をつくるために適当な助言をしておられるものと私は思いますが、通産省が、いま自動車それ自身の、物と資本の面で、あえて自由化を阻止する必要性がないと判断をされれば、直ちに自由化されるはずであります。通産省が強硬に自由化阻止にいまがん張っておられるから自由化ができないのであって、単に自動車工業それだけが自由化反対だという状態に、もしなったとすれば、これは日本の全体の考え方からして、開放経済体制にそぐわない一産業意思を受け入れて政府自由化を認めないということにはならぬと思う。やはり行政主管庁である通産省自由化を認めないと言っているところに、わが国一つのよりどころがあるわけでありますから、その立場にあります通産省としては、当然のこととして、いま私が質問いたしました内容について、具体的かつ明快な御答弁がいただけるかと思いますので、お答えをいただきたいと思うのです。
  19. 吉光久

    政府委員吉光久君) 自動車につきまして資本自由化で常に問題になりますのは、日本進出をするであろうと予想されます企業が、いわゆるビッグスリー中心にいたしまして、あまりにも大きな企業であるという点でございまして、したがいまして、これが他の産業の場合におきますのと違った特別の要素があろうかと思うわけでございます。  ただいまの御指摘準備体制の問題でございますが、そういうべらぼうにでっかい企業でございますだけに、準備体制めどというようなことにつきましては、非常につけにくい点が多いわけでございますけれども、せっかく現在集約化が進行中でございまして、これも昨年まではいずれかといいますと、青写真ができたというふうな、ある会社はあるグループに入ったというふうな状況であったわけでございますけれども、昨年の暮れから今年の初めにかけまして、だんだんその提携の実があがってまいりつつある、これは生産面におきましても——一番むずかしいのは販売面でございますけれども——そういう具体的な実が少しづつあがり始めたというのが現状ではないかと思うわけでございます。こういうビッグスリーその他のヨーロッパ企業日本への上陸というようなことになりました場合に、まっ先に目につけられますのは、おそらく既存販売ルート、これを活用したいということだろうと思うわけでございますけれども、その販売面におきまして、将来の国内販売網、あるいは販売ルート、そういうふうなものの整備につきましても、さらに意を用いる必要がありはしないかと思うわけでございまして、現実の問題といたしまして、そういう販売体制というものにつきましても、実は非常に解決するに困難な問題がたくさんあるわけでございまして、除々に秩序づけができつつございますけれども、まだまだそういう点では不十分な点が多かろうと思うわけでございます。  それからもう一つの点は、やはり自動車工業関連いたしました部品工業の問題でございますけれども部品工業も非常に数が多うございまして、それぞれ一対一をとりました場合には、まだ虚弱であるというようなものが相当あるわけでございまして、この部品工業につきましても、それぞれの機能的に総合化されたグループ化運動と申しますか、そういう方向で現在部品工業体制整備を促進いたしておるわけでございまして、そこらのめどをどうつけるかというようなこと。  大まかにお答え申し上げまして、以上のような三点についてのめどをいつごろにつけるかということではないかと思うわけでございます。ただ、お答え申し上げましたように、これをいまいつというふうに断定いたすような、そういうふうな段階ではなくて、むしろこれをどのように早くめどのつけられる体制にまで持っていくかということのほうを私どもとしては急いでおるわけでございます。
  20. 近藤信一

    近藤信一君 今回のこの三菱クライスラー合弁が突如として発表された。これに通産省はえらいあわ食って何か裏切られたというようなことを言っておられる。しかし、やはりこういう情勢というものが出てくるのであろうということは、あなたのほうもうすうすは知っておられたのじゃないかと私は思うのです。特に日産トヨタ以外の自動車メーカー外資と手を結んでいくであろうということも、あなたのほうは感じておられたと思うのです。しかし、何ゆえにそういう手段に出なければならなかったかという点が私は重要でなかろうかと思うのでございます。特に今度の三菱クライスラー提携の問題については、ある雑誌の伝えるところによりますと、これはやはりもと通産省の事務次官をやっておられました佐橋さんが三菱の糸を引いておる、あやつっておるというようなこともいわれておるわけなんです。これは私どももまあそういう点は感ずるわけでございますが、通産省のいわゆる自動車産業に対する行政指導に対する一つの反逆だと私は思うのです。なぜ三菱やその他の自動車産業がこういう手段に出なければならなかったか。ここまで通産省が追い込んだと私は思うのです。そういう手段に出なければならないように通産省が追い込んでしまった。一部の大企業の利益のみに通産省は走って、いわゆる全般的な規模の上に立った方針というものが立っていなかったところに、こういう結果がきたのじゃないかと私は思うのですが、この点は、通産省としてそういう行政指導というものが誤っていたと思うのですが、あなたのほうはどう感じられますか。
  21. 吉光久

    政府委員吉光久君) 非常にお答えしにくい御質問でございます。実は通産省のほうで集約化への道を急いでおったわけでございまして、何も三菱につきましても私どもといたしましてはこれが取り残されていたというふうには考えていなかったわけでございまして、昨年いわゆるIMFといわれましたいすゞ、三菱、富士の三社の提携が行なわれ、そしてこれが一つグループとして前進するように思われたわけでございます。ところがこの三社提携がまず富士重工が脱落することによりまして、いす父と三菱重工とこの三社の提携で、さらに両社の提携関係を緊密にして生産なり販売網等についての具体的な提携関係をどのようにしていくかというようなお話も進んでおったわけでございまして、したがいまして、要するに集約化、小数グループヘの集約化というような、そういう考え方自身は基本的には間違っていなかかったのではないかと思うわけでございますけれども、ただ、三菱重工の場合には、実はこの第三グループとしての動きをみずから断念され、そしてクライスラー提携されたということになったわけでございまして、これは三菱重工自動車専門会社ではなくて、自動車部門が全製造業の中の一部であるというふうな身軽な立場も一部あったのではないか。このように考えておるわけでございます。
  22. 近藤信一

    近藤信一君 この三菱クライスラー提携が発表されたあとに、熊谷事務次官は、秋までには態度を決定しなければならぬというふうなことを言っておられる。ところが通産省の基本的な線というのは、体制が整わないから現在は自由化に対しては反対だ。しかし三菱外資審議会に具体的にこれを申請した場合に、外資審議会としては個別的に審議をすることになるだろうと思うのであります。その際に、三菱クライスラーのこの提携の問題、合弁会社をつくるということですが、そういうふうに具体化してきた場合に、一体どう通産省としては対処していかれるのか、この点はどうですか。
  23. 吉光久

    政府委員吉光久君) 先ほど合弁提携内容につきましてお答え申し上げたわけでございますけれども、現在三菱重工業といたしましては、私の聞いておるところでは、急いで申請書を出すというふうなことは考えておらないというふうに承っておるわけでございます。したがいまして、この申請書がいつごろ出されるかということと関連して考えなければならない問題ではないかと思うわけでございますけれども、私ども考えております現在の立場からお答え申し上げまするならば、むしろこれは一企業企業との合弁提携というふうな、そういう角度からこの問題を扱うべきではなくて、むしろ自動車資本自由化全体をいつどのような形で進めていくかという問題の一環として判断さるべき事項ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  24. 近藤信一

    近藤信一君 もう一つは川又、これは自動車工業会の会長ですが、日産の社長の川又さんの言われていることも、これは繰り上げということはやむを得ないだろうということを言っておられる。しかしこれは通産省の指定を待たなければならぬ。一方においては通産省では三菱クライスラー資本提携に対しては反対だ。こういうふうなことを言っておられる。しかしこれが具体化してきた今日、ただ反対だけでこれを見のがせるものではないと思う。したがって通産省としても、ここでいわゆる行政指導の転換をしなければならぬと思うのですが、この点はどうですか。
  25. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま局長がお答え申し上げましたように、三菱クライスラーの問題は、自動車工業資本自由化全体の問題の一環として取り上げるべき性質のものであるということでございます。私どもそういう認識に立っておるのでございます。これは賛成とか反対とか申し上げておるわけでは決してないのであります。  それから今後のタイミングの問題でございますが、熊谷次官が秋には自由化時期を明示するようにしなければなるまいと言っておりますことも、私どもの省内の統一した見解でございます。秋までにという意味は、夏から秋にかけまして、いま吉光局長からるるお話がございましたような問題点を検討いたしまして、そういった点を、どのくらいのタイミングをかければ一応の用意ができるかというような点についての一応のめどをつけたい、その段階自由化時期を明示するという手順を踏みたいと思っておるわけでございます。私どものいまのプログラムはそういった考え方で進めておるわけでございます。
  26. 近藤信一

    近藤信一君 通産省が今度の三菱クライスラー提携に対して反対しておられる一つの理由としてはやはり札つきのクライスラーであるから、三菱がまたクライスラーに乗っ取られるのじゃないか。こういうふうなことも言われておるわけでございますが、三菱側では、いやそんなことはないのだ、いわゆる六五%、三五%の資本提携なんだから、断じてそういうことはあり得ない、こういうふうにも言っているわけなんでございます。そういたしますると、何も通産省が心配しておるような心配というものはないわけなんですが、クライスラーのいわゆる資本提携通産省はなぜ現在反対しておられるのか、この点はいかがですか。
  27. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま申し上げましたように、賛成も反対もしてないのでございまして、また局長からお話がありましたように、申請をいま出すというお話でもないようでございます。先ほどから御説明申し上げておるように、自動車自由化問題の一環として考えたいという態度でございまして、私どもはどうしてもこれは反対しなければならぬとか、いや賛成だとか、そんなことはきめてないわけでございます。つまり、これは独立した一つの案件というようには考えてないわけでございます。全体の一環として処理したいということでございます。そ牛点、誤解のないようにひとつお願いしたいと思います。
  28. 近藤信一

    近藤信一君 特にこの自由化の問題が話題になりかけてから、通産省は、いわゆる国内体制を強化しなければならぬこれが一枚看板であったと思うのです。その体制を強化するための行政指導を今日までやってこられて、先ほど私が申しましたように、その中心トヨタであり日産であるわけなんです。そういたしますると、やはり他の東洋工業、いすず等々と多くの産業があるわけなんですが、これらは当然外資との提携という方向へ向かわざるを得ない。こういう形で今度のいわゆる三菱クライスラーの問題が出てきたのじゃないかと私は思うのです。そういう点は、いわゆる通産省の、先ほど私が言いましたように、行政指導というものが誤りであったのじゃないかと思うし、将来もそういう方向で推し進めていくということになれば、さらにこの波紋というものは大きくなっていく、こういうふうに私は判断するのですが、この点はどうですか。
  29. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) われわれはいま自由企業体制の中にありますので、企業の行動について有権的に一々介入することはできないたてまえになっております。私どもは、そういう意味でやっておりますことは、まことに隔靴掻痒の感があるわけでございますが、通産省がいままで考えておりましたことは、そういう状況のもとにおきましても、できるだけ自由化に備えた体制整備を期待し、誘導してまいるということを、善意をもって考えてきておったのであります。この態度は誤りでなかったと思います。しかし、企業側で外資との下話をしちゃならぬとかいう押える権限は私どもにないわけでございまして、それは近藤さんも御了解いただけると思うのでございます。全部私どもの指示を待ってそういうことをやるという仕組みになっていないわけでございます。そういうことが起こったからといって別に驚く必要もないわけでございます。したがって、本格的な自由化への準備をどうするか、それから時期をいつにするか、そういった点を私どもは慎重に考えて決断をすべきものでございまして、各企業体はそういうワク内におきまして、それぞれ自主的に善処されることと思うのであります。通産省がいままでとってきました手順というものが狂ったのじゃないかという御指摘でございますれば、ある意味では狂ったということが言えると思います。しかし、それもやむを得ないことでございまして、歴史は、私どもが書いたそのとおり動いてくれません。したがいまして、そういう時代になればなったで、そういう時代に即応して私ども考えて、できるだけの努力をしてまいるということが任務であるわけでございます。自由競争をとっております以上は、そういったことがある程度あり得ますので、今後もあり得るのじゃないかと私は考えておるわけでございまして、決して私ども考えておる自由化政策での根本につきまして非常な狂いが生ずるとか、そういったことではないと考えております。
  30. 近藤信一

    近藤信一君 先ほど局長も言っておられましたように、自動車体制を強化するためには、いわゆる部品工業の問題が私はあると思います。部品工業はおおむね中小企業でございますし、これらに対していろいろと問題が起こってくることは、これは当然でございますし、いわゆる体制を強化するためのそのしわ寄せというものは、おおむねその部品工業にしわ寄せされておることもこれは事実なんでございます。私はそういう点を考えると、やはり自由化に対処していく上においては、そうした中小企業である部品工業整備問題が重要な問題になってくると思うのであります。ただ二大メーカーだけの整備じゃなくして、やはりその根本である部品工業の問題を重点的に考えていかなければ、いつも犠牲は中小企業におおいかぶさってくるということでは、私は日本自動車産業は何のためにこの体制整備しなければならぬかということになると思うので、この中小企業である部品工業に対する問題は一体どういうふうに具体的に進んでおるのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  31. 吉光久

    政府委員吉光久君) 仰せのように、自動車部品工業八千数百の企業数があるわけでございまして、中堅企業的なもの、中小企業的なもの、それぞれが混在いたしております。この自動車部品工業につきましては、機械工業振興臨時措置法の指定業種に指定いたしまして、積極的な育成をはかっておるわけでございまして、その発展のしぶりも近年非常に著しく進歩いたしておるわけでございます。ただ残念ながら、やはりこの主要部品企業につきまして、欧米の同種の企業と比較いたしました場合には、やはり企業規模等についての相当の格差が見られるわけでございますし、また、いずれかといいますと、日本の部品企業というのは単品生産というふうな形をとってまいっておったわけでございます。この点が、実は欧米の最近の部品企業と相当違っておるところでございまして、欧米の部品企業は、いずれかといいますと、機能的に、ある特定の部品についてではございますけれども、相当総合化された、ユニット化された部品企業であるというふうな点が日本の場合と異なっておる点ではないかと思うわけでございまして、昨年度のこの振興臨時措置法の基本計画を組み直します際に、自動車部品工業につきましても、やはりそういう単品的な生産形態から脱却いたしまして、ユニット化いたしました総合的な部品企業グループ化するということが必要ではないかということが審議会のほうでも議論されまして、現実はその審議会の議論に従いました基本計画に組み面しまして、昨年度からそういう方向グループ化、集約化への動きを早めておるわけでございまして、現に、ある部門につきましては、具体的にそういうグループ化ができあがったのもあるというふうなのが現状でございまして、こういうことによりまして初めて部品企業というものが国際的に太刀打ちできる企業として育っていくのではないかというふうに考えるわけでございます。
  32. 近藤信一

    近藤信一君 局長の答弁によりますと、いわゆる機械振興法に基づいていまいろいろとやっておると、こう言われるけれども、私が聞くところによりますると、それがうまくいっていない。あなたのほうでは、その方向にいろいろと力を入れてこうやっていると、こう言われるけれども、実際上はそのグループ化の問題もうまくいっていないし、まだ下請の部品工場は各国ばらばらだということで現在進んでおる。これは十や二十の工場なら通産省が号令をかけただけでそれでうまくいくかもしれませんが、トヨタにしろ日産にしろ、何百という部品工場をかかえておるわけなんです。そうして問題があると、いわゆる開放経済体制に対処しなければならぬということで、すべてがその部品工場にしわ寄せされてくる。単価の切り下げだ何だといって、すぐ部品工場にしわ寄せがくる。これが現実の問題としてあるわけですが、私どももその点はよく聞いております。そういう点を一体あなたのほうはどういうふうに指導しておられるか、こういうことなんです。
  33. 吉光久

    政府委員吉光久君) 御指摘ございましたように、進んでいる面と遅々として進まない面と両方の面が、現在この部品工業界にあることは私も承知いたしておるわけでございますが、ただ、この部品工業界の大勢といたしましては、先ほどお答え申し上げましたような方向に沿って集約化努力がなされておるというのが、これもまた現実ではないかと思うわけでございます。実は、きょうも午後、こういう部品だけではございませんけれども、特定事業として指定されておりました事業につきましての本年度の実施計画をどのように組んでいくかということで、審議会を持っておるわけでございますけれども、その際にも、おそらく関係業界の方からも、いろいろの御発言があろうかと思いますが、先ほどお答え申し上げましたように、そういう基本方向に沿ってさらに手厚い保護を加えながら育成をやってまいりたいと思うわけでございまして、実は機械工業振興関係の開銀資金が昨年度まで七十五億、本年度から九十五億というふうに、機械工業等電子工業関係でございますが、あるわけでございますが、そのうちのおおよそ半分ぐらいがこの部品工業のほうに従来注がれておるというのが実例でございまして、こういうグループ化を中心にいたしました資金需要も相当旺盛でございますし、将来ともそういう手段を通じながら、さらに積極的に進めてまいりたいと、こういうふうに考えます。
  34. 近藤信一

    近藤信一君 大臣、何か大蔵委員会のほうで呼ばれておられるのだそうで、私もあと一つお聞きして、あと保留いたしますが、特にこの販売網の問題ですね、販売機構というものは非常に各社ばらばらじゃないかということも考えられます。たとえば現在トヨタの車を使っておる、今度は販売の外交が日産のほうから来る。その場合に下取りを高く取って日産の車を買わせる、こういうふうな販売合戦が盛んに下では行なわれておるわけなんですね。こういう問題についても通産省としてはどういうふうな一体指導をしておられるのか。各個ばらばらでいま競争しておるわけです。あなたのほうでは体制を強化するために、ということでいろいろと苦慮して、日産トヨタに焦点を当ててやっておられますけれどもメーカーは、日産トヨタだけじゃないのです。その他多くのメーカーがあるわけでございますから、販売機構の問題が非常に私は乱れておるというふうにも考えるのです。まずこういう問題を指導していかなければ、国内体制の確立なんということはなかなか私は困難だと思うのです。そういう点については一体どういうふうに考えておられるのか。以上質問いたしまして、あと保留いたします。
  35. 吉光久

    政府委員吉光久君) 御指摘ございましたように、自動車の販売流通秩序でございますけれども、相当過激な競争によりまして新車の値引き競争、あるいは中古車の高取り、あるいはその他いろいろの手段を通じまして販売秩序が現在相当乱れておるということは御指摘のとおりでございます。ところがこの販売網整備ということが実は外資対策としても非常に重要な部門でございます。ただ、こういう販売網整備につきましては、一義的にただ一つの手段で、これでできるというふうなきめ手になるような政策手段というものが非常に発見困難でございまして、結局あらゆる角度からの販売秩序維持のための手を打ってまいるということ以外に方法はないのではないだろうかというふうに考えるわけでございまして、現在やっておりますところのいわゆる割賦販売法によります標準販売条件の制度が、あのままの制度でいいのかどうか。あるいはまた中古車等につきましての査定協会のあり方があの現状でいいかうどうか、あるいはまた、いわゆる不当廉売等に対します独禁法の運用問題についてさらに公正取引委員会とも協議する問題があるのではないであろうかというふうなこと、あるいはまた公正競争規約の締結への動きがあるわけでございますが、現在の法制のもとでできる公正取引規約ということだけで十分と言えるかどうか、あるいはまた、もとをなしますところの割賦金融問題につきまして、現状のままでいいかどうか いうふうな、いろいろの各種の面から現在検討を進めておるわけでございまして、そういういろいろの多彩な手段を使うことによりまして、はじめて販売部門もいうものにつきましての自由化対策ができてまいるのではないだろうか、こう考えまして、せっかく努力をいたしておるところでございます。
  36. 大矢正

    大矢正君 いま販売問題についての話がありましたが、そういうような面だけではなくて、基本的にこの二大自動車会社と呼ばれるトヨタなり日産というものが、販売業者あるいは部品業者に対する態度の中で、非常に問題と思われる点が最近出ているわけです。それは、売ることだけを強制いたしますから、結局値引きをしなければ売れない、競争が激しいからマージンが薄くなってもやらなければいかぬということになって、すでにAという会社の販売店が、それをやめてBという会社の販売店にくらがえをするというようなのも現にあらわれているわけです。日産トヨタという会社が半期でもって百億以上も利益を上げている一方においては、販売業者なり、あるいは部品製造業者なりというものが押え込まれている。そういうものの不満というものが、将来このビッグスリー日本上陸した際につかまれてしまうという危険性があるわけでありますけれども、そういう面において自動車会社自身のいままでのやってきたことの、言うならば弱点というか、そういうものが逆手でビッグスリーに利用される危険性があるということを認識しておかなきゃいかぬと思います。そういう面においての通産省判断というものも私は行政指導の上から必要じゃないかと思います。この問題はこれだけといたしまして、私は通産大臣に二、三点お尋ねをいたしたいと思うのであります。  まず第一の問題は、先発メーカーである日産あるいはトヨタは放置しておきましても、これはすでに海外の数多くの組み立て工場ないしは製造工場を持つほど巨大になり、自力でもってアメリカ市場へなぐり込みをかけて大々的に売りまくるというふうな体制がありますから問題はないにいたしましても、この二大メーカーを除く、たとえば先般クライスラーとの合弁問題であるいは合弁会社設立動きがありまする三菱、いすゞ、また東洋工業、本田、こういう、言ってみればいわば後発メーカーというものが今後どうやって生きていくかということに一つの問題点があるんじゃないかと思うのであります。通産省はできることならば日産トヨタの二大系列の中に組み入れてしまうという希望があったように私は感じておりますが、しかし後発メーカー抵抗も強いので、やむなくトヨタ日産の二つと、いま一つは後発メーカーをできるならば統合をして一社にして、三社程度で日本自動車工業というものを考えていきたいという一つの絵をかいて今日まで進められてきたのではないかという感じがいたします。そこで第三の道が現に行き詰まりを来たしておりまするし、そういたしますると、たとえばいすゞなり東洋工業なりという会社は、もし民族産業あるいは国内産業という立場だけでものを考えていきますると、かつてのプリンスでありますとかその他のように、トヨタ日産のいずれかに将来吸収合併されてしまう。最初のうちは提携であっても、行く行くは、何年か後には吸収合併されてしまうという宿命がありますが、そういたしますれば、自分の企業国内に残したいと考えれば、やはり外国の企業との提携考えてくるのは必然じゃないかというふうに私は考えざるを得ないわけであります。日本の二大自動車メーカーの中に組み込まれてみずから育ててきた企業というものが存在をしなくなるか、あるいは外資提携しても自分の企業というものを残していくか、そのいずれの道をとるかというのが今日の後発メーカー立場だろう、そこに今日の自動車問題のむずかしさがあるように思えてならないわけであります。  そこで、たとえば先般問題となりました三菱クライスラー提携でありますが、当面の問題としては、三菱が製造しているコルトを中心とした小型車をアメリカに持っていってクライスラー販売網に乗せてできる限り売りたいと、日産トヨタアメリカにおける販売網は持っておるが、三菱は自力でもってそれができないから、クライスラー販売網に乗せて、アメリカ日本製の自動車を売りたいというこの三菱考え方それ自身、私はそう大きな誤りをおかしているとは思われないわけであります。日本の車がアメリカで売られることは決して悪いことではないわけでございまして、ただ問題は、それをやる際に、相手のクライスラーが自分の販売店をただそれだけで貸し与えるということがいまの日米企業のバランスその他からいってできるかということになれば、そういうことはできないのであって、結局のところはやはりそれなら日本国内においてのクライスラー立場がどうなるのかという問題がついて回る問題であります。したがって、そこに当然のことながら深刻な今日の問題が起こっていると私は思いますが、どうも通産省の態度は、徹底して日産トヨタに集中をするという考え方と、外資との提携なり外資が将来入ってくるその足がかりをつかませることを拒否されているということは、どうも理解に苦しむところでございます。後発メーカー自動車企業それ自身の立場から考えるべきいまの問題。それからいま一つは、国民経済的に考えてみましても、はたしてその日産トヨタだけを残していく今日の自動車政策というものが、ほんとうに正しいのかどうかということになりますると、私は必ずしも正しくはないと思います。なぜかと言いますれば、二大会社によって外国から何ら力が加わらないという形になり、日本のシェアの独占が行なわれることは、日本の国民の一人一人の立場からして、産業的にも経済的にも私は問題が残ると思います。したがっていまの通産省立場のように、めどといえば、いまの段階めどは立たない。それじゃ方針が何かあるかといえば、方針も具体的には明らかなものがない。こういう形で自動車問題を行政指導されておる。どうも通産省立場というものは、国民全体の立場から見ても、私は理解しがたいものがあると思うのであります。先ほど私が申し上げましたように、どういう条件が備わってくれば、あるいは備えることができれば、いつごろ自動車それ自身の、物と資本を含めて、自由化ができるかという計画なり見通しなりというものが一つもないで、一体何を基本にされて自動車工業というものを指導をされていかれようとしているのか私にはわからない。先ほど来の局長大臣の答弁を聞きましても、いま少し、いま少しと、極端な表現をすれば、そう言っているだけであって、確たる見通しなり方針なり、今後どういうようにわが国自動車というものがなるだろうか、あるいは海外との関連においてどうしなければならぬのかというような問題が、何らないがままにやっておられるということは、全く納得できないのでありまして、この際でありますから、総合的にひとつ考え方を御披瀝をしてもらいたいと思うわけです。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 御指摘一々ごもっともでございます。でございますからこそ、私どもは秋をめどにいたしまして自由化時期を明示しようと申し上げておるわけでございます。明示するということは、それまでに一応どういう準備が要るか、その準備を整えるのにどのくらいのタイミングを必要とするかをはかりまして、それで一々いついつから自由化するということを内外にはっきりさせたいと思っておるわけでございます。こういう事態になったから、すぐ答えが出ないのはいかがなものかという御不満もあろうかと思いますけれども、問題が大きいだけに、しばらくのタイミングをわれわれに与えていただきたいと考えます。  それから後発メーカー育成の問題でございますが、後発メーカーが今後活路をどういう姿において聞いてまいりますか、これはメーカー自身が第一義的に責任を持って考えるべき問題であろうと思います。日産トヨタにいたしましても、こういう環境になりますと、自己企業を防衛するということに真剣になるだろうと思います。したがって、内地のメーカーとの提携というような問題についても相当シビアになっていくことは予想にかたくないところだと思います。といたしますならば、こういうメーカー外資との提携考えるというようなこともまた道行きとして十分考えられることだと思います。私どもはそういったことも予想いたしまして、自由化の時期を明示いたしますならば、それはどのメーカーにどうこうというのではなくて、それを目安にいたしまして、各メーカーがみずからの進路をとる目安になり、甲乙を差別するのでなくて、そういう条件が整いますならば、各社がそれぞれの判断でそれぞれの進路を開拓していくということになることを期待しておるわけであります。もっとも、まあ乗用車は当面の非常にやっかいな問題でございますけれども、ほかに、いろいろトラックその他の車種もございますし、それぞれユニークなる特徴を生かしながら、各メーカーが自立と発展の道を踏まえてまいることができるような環境整備、そういったことに私どもは全力をあげていかなければならないと考えております。
  38. 八木一郎

    委員長八木一郎君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  次回は六月十日午前十時開会することにいたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後零時一分散会      —————・—————