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1969-02-26 第61回国会 参議院 災害対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月二十六日(水曜日)    午後一時六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         足鹿  覺君     理 事                 佐田 一郎君                 佐藤  隆君                 武内 五郎君                 塩出 啓典君     委 員                 上田  稔君                 小林  章君                 小林 国司君                 田口長治郎君                 沢田 政治君                 前川  旦君                 松本 英一君                 多田 省吾君                 村尾 重雄君                 河田 賢治君    政府委員        総理府総務副長        官        鯨岡 兵輔君        気象庁長官    柴田 淑次君        建設政務次官   渡辺 栄一君        消防庁長官    佐久間 彊君        消防庁次長    山本  弘君    事務局側        常任委員会専門        員        中島  博君    説明員        警察庁刑事局捜        査第一課長    田村 宣明君        厚生省環境衛生        局環境衛生課長  赤穴  博君        林野庁林業試験        場長       坂口 勝美君        通商産業省工業        技術院標準部長  久良知章悟君        通商産業省工業        技術院標準部材        料規格課長    分部 武男君        運輸省大臣官房        観光部長     蜂須賀国雄君        運輸省大臣官房        観光部整備課長  林 幸二郎君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  山口 真弘君        運輸省鉄道監督        局民営鉄道部運        転車両課長    細谷 開造君        労働省労働基準        局安全衛生部安        全課長      中西 正雄君        建設省住宅局建        築指導課長    前川 喜寛君        日本国有鉄道副        総裁       磯崎  叡君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告災害対策樹立に関する調査  (火災による災害対策に関する件)  (ホテル旅館等火災による事故防止に関す  る決議の件)  (昭和四十三年における特定地域に係る激甚災  害の指定及びこれに対し適用すべき措置指定  等に関する件)  (濃霧による災害対策に関する件)     —————————————
  2. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ただいまから災害対策特別委員会を開会いたします。  災害対策樹立に関する調査議題といたします。  初めに派遣委員報告に関する件を議題とし、先般当委員会が行ないました委員派遣について、その調査報告派遣委員から承ることにいたします。武内五郎君。
  3. 武内五郎

    武内五郎君 去る二月十二日、佐藤理事上田多田委員と私と四名、福島郡山市における磐梯国際観光火災について、現地調査を行なってまいりました。以下、その概要を御報告いたします。すでに本件につきましては、去る七日、当委員会におきまして、その火災概要政府側から聴取いたしておりますが、現地で明らかにされました当時の実情並びに実感、及び幾つかの疑問と問題点を提示いたしたいと思います。  まず、実感といたしまして、焼失後の現場は、鉄筋コンクリートづくり四階建て磐光ホテル本館、同じく鉄筋コンクリートづくり三階建て磐光パラダイス及び鉄骨づくり一部木造二階建てニュー磐光の連続した建物であります。三棟延べ一万七千平方メートル約五千三百坪は完全なる焼失で、当夜の猛吹雪平均二十メートル烈風下においての惨状がほうふつとされ、まことに痛恨の情に打たれ哀惜のきわみに存じた次第であります。現在の焼死者は、入院中の死亡者一名を加え三十一名にのぼっておりますが、なお危険な状態の者もおりまして、私ども調査団一行も寸暇をさき磐梯熱海太田病院分院入院中の負傷者をお見舞い申し上げてきた次第であります。  今回の惨事は、過ぐる四十一年三月の水上温泉菊富士ホテル、昨年十一月の有馬温泉池之坊満月城旅館のそれぞれ三十名の焼死者を出した火災を上回るものでありまして、その原因を探りますと、幾つかの悪条件が重なっているとはいえ、ホテル経営者側人命尊重の基本を欠き営利のみを念頭に置くその無責任な感覚と、かかる業種に対する法的並びに行政上の欠陥を指摘せざるを得ないのであります。  その第一に考えられることは、惨事の直接の原因となった当夜の磐光パラダイスにおける演芸の催しについてでありまして、当夜は三十名ばかりの同ホテル外の客を含めて百五、六十名の宿泊客が観覧しておりました。演芸会場は、前日までは常設と思われる三階のホールで行なわれていたものでありますが、当日二十メートル以上の烈風で屋根を吹き飛ばされ、急拠一階の大宴会場に変更されて行なわれていたということであります。そのため、出し物の金粉ショーといわれるものの準備が、中廊下を隔てて隣接する磐光ホテル内の大広間防火上不完全な舞台で行なわれているのであります。  この大宴会場大広間熱海消防出張所長から、宴会及び余興以外には使用を禁じられていたものであります。しかも、そのショーは、たいまつ裸火使用しているのでありますが、それは、郡山市条例第二十三条による裸火使用禁止に反していることであり、この点の経営者側の行為と、消防法第四条に基づく昭和四十年五月制定の市条例による行政指導と監察に若干の疑点を持たざるを得ませんでした。  第二に、裸火からの出火に際し、その場所には劇団のダンサー四名がいたのでありますが、自力で消火しようとしたらしく、ために避難もしくは消火に最も大切な初期の十数分を経過し、火は猛火となって大宴会場を襲っております。この間、火済警報が行なわれていなかったのであります。このとき劇団員の二名は死亡し、一名は重傷を負っているのでありますが、何ゆえに早く出火が知らせられなかったのかの点については、当日は朝からの暴風で九回にわたり停電があり、停電と連動して非常用ブザーが鳴ることから、ホテル側で電源のスイッチを切っていたということが災禍を大ならしめた要因であり、その措置に少なからず疑問を抱いた次第であります。したがって、同ホテルから徒歩で三分くらいの距離にある郡山消防出張所への連絡も、出火後十五分たってからであり消防活動に入ったのは二十数分後になっているわけであります。  第三は、火災に際してのホテルパラダイス側管理責任者及び従業員避難誘導等行動についてであります。猛火と煙が両大広間に回ってからの火災発見でありますから従業員行動も冷静を欠いたこととは思われますが、同ホテル従業員三百五十名といわれているのでありますし、また、昨年十二月十二日には同ホテル出火を想定した消防演習自衛消防隊中心に行なっているのでありますから、従業員に対する訓練は特に最も主眼としなければならない宿泊者避難誘導等についてどう指導していたのか、まことに疑いなきを得ません。なお、この点については、郡山消防本部において従業員全員配置状況及び宿泊客の当夜の情況並びに行動について、調査中とのことでありました。  第四は、消防活動であります。いま述べましたとおり消防の出動が手おくれになった上に、水利の便がはなはだ悪かったことであります。同ホテル敷地に接して、正面玄関前二、三十メートルのところに、安積疏水玉川用水路が流れているのでありますが、たまたま、当日は下流において工事中のため上流の水門が閉鎖されていて水量がなく、わずかにホテル敷地内の観賞用の池水を使用してかろうじて間に合わせている状況であります。不利な水利事情が重なって消防活動に支障を招いていたのであります。しかも二十数メートルの暴風吹雪の中にあって、なぜにもっと厳重な警戒体制がとれなかったのか等の疑念を持った次第であります。  第五は、磐梯国際観光建築物における防火並びに避難施設不備についてであります。同観光株式会社建物は、磐光ホテルなる旅館業部分と、磐光パラダイスなる興行場浴場業部分との混合建築物であり、図面上では三つの独立した建築物集合体のように見えますが建物の内部は全く入り混んで接続し、実際には一体の建築物となっているものであります。そのため、五つの防火区画もあり、建築基準法上の設備施設は、一応、最低基準の線は守られていると見られるのであります。しかし、この火災に際して、防火シャッターはいかなる理由にもせよおりてはおらず、また、避難非常口も閉ざされているばかりか、二階の宿泊施設廊下西側非常口は、とびらは固く閉ざされており、非常階段すらつくられていないことなど、まことにずさんというべきものがありました。建築物構造は、一部分木造を除いて、鉄筋コンクリートもしくは鉄骨づくりでありましたから崩壊による被害を免れたものでありますが、室内の内装材の多くは、いわゆる新建材が使用されていたと推察されるものでありまして、これが火災に際しまして激しい発煙と有毒ガス発生による致死の原因をなしていることは、最近の多くの火災の例に見られるごとく指摘されねばならないと考えるものであります。最近の建築について防災の点から十分なる検討を要するものがあることを感じたのであります。  次に、一、二の所見について述べます。  その第一は、このようなホテル宿泊施設興行場ないし遊興施設の混在する建築物内の営業について、行政上の監督指導人命と財産の保護を主目的として建築物安全性を指向する建築法規ないし消防法等との法的関係あるいは行政上の問題が残されていると存じます。この磐梯ホテルは、昭和三十八年七月に旅館業として許可され、その建築は同年十月に申請確認されたのを皮切りに、四十年、四十一年と増築され、四十二年十月には、ホテルレジャーセンター用途として、延べ六千九百平方メートルの建築申請が出され、十一月に確認されているのであります。その建築工事中に、ホテルに付属して、四十三年五月、映画演劇等営業種目とする興行場営業許可申請が出され、名称磐光パラダイスとして同月下旬に興行場法による知事の許可がおりているのであります。  ここで問題となりますことは、興行場法はその第三条に明らかなごとく、営業者は、換気、照明、防湿及び清潔その他入場者衛生に必要な措置を講じさえすればよいことになっていて、防災上の措置は、建築基準法または消防法等にゆだねられているのであります。ところが、建築基準法においては、建築物を個々に対象としていて、その種目の中に劇場映画館集会場などはあっても、興行場という名称のものはないのであります。したがって、建築法規上に興行場という概念のものに対する取り締まり基準がないために、十分なる行政措置がとられていないと判断されるのであります。つまり、建築物そのものは、建築基準法には適法であっても、建築物使用目的等から見て、現実の法の目的達成にはきわめて不十分な、不適格な建築物が公然と許されておることであります。  第二は、ホテル経営者側経営感覚、あるいは旅行者に対する旅行あっせん業者、もしくは旅行を企画する企業者等の側の感覚についてであります。磐梯国際観光経営者は、各地方出張所を設け積極的に客の誘致をはかり、そのための手段として興行場娯楽場を併置する企業感覚は一応うなずけるものがあるとするも、不特定多数の旅行者を取り扱う経営者としては、何よりも人命尊重基礎をおく施設設備の充実と非常事態に対処する従業員の周到な訓練を必要とすることは申すまでもありません。レジャーブームの喚起されている今日、民間においてレジャー団体旅行等を企画する企業者はもちろん、旅行者はその心がまえと適切な措置をとることを望まざるを得ないのであります。  また、旅館業興行場業を主管する厚生省においても、ホテル旅行あっせん業を管掌する運輸省も、さらに旅館業興行場業のための建築物を主掌する建設省においても、人命尊重基礎をおく一貫した法的並びに行政的措置のとられることが絶対に必要であると思う次第であります。繰り返される温泉ホテル並びに工場、営業所商店等に併用される住宅、宿舎の火災人命損傷惨事が頻出惹起していることにかんがみ、関係当局に強く反省を求めざるを得ないものがあります。  最後に、今回の火災を教訓として、福島県から、 一、建築物構造設備消防用施設について、自動閉鎖防火扉設置及び特殊建築物に対する内装基準の強化、非常警報設備火災報知設備及び避難器具等設置についての規制を強化すること。 二、消防法については、県に対する立ち入り検査権の付与と、ホテル旅館病院等については夜間における巡回点検避難誘導に必要な人員確保並びに施設整備のための改正を行なうこと。 三、環境衛生金融公庫の防火設備に対する融資ワクの拡大と、貸し付け条件の緩和をはかること。 以上三点の要望がありましたことを申し添えまして、私の報告を終わりたいと思います。
  4. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 御苦労さまでございました。  ただいまの派遣委員報告に関する調査もあわせ、福島郡山市における火災による災害対策に関する件について調査を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  5. 佐藤隆

    佐藤隆君 火災のことにつきまして若干質問をさせていただきます。  磐光ホテル火災出火原因というのは、たいまつ火元であったわけですが、こうしたことがはたして野放しにされておってよいのかどうか。まあ結果からして、どうもこれはいけなかったなどということだけで済むのかどうか。特に、火元火元といたしましても、大体ああしたホテル大広間映画館劇場旅館かもう全く不明確なような組み合わせになっておるということについて、やはり建築基準法それから興行場法あるいは旅館業法消防法、そうしたそれぞれの建設省厚生省消防庁の横の連携というか、法の有機的なつながりというか、そういうことをやはりこうした際に考え直さなければいかぬじゃないか、私はそう思うのですが、いままでどおりでいいということは決して思っておられないと思いまするが、いま申し上げました法律を所管しておられる各省に置かれて、このたびの経験に徴してどう考えておられるのか、それを最初にお聞きしておきたいと思います。最初にひとつ建設省、それから厚生省、それから消防庁、こういう順序で。
  6. 前川喜寛

    説明員前川喜寛君) お答えいたします。  磐光ホテルの件につきましては、御存じのように、建築基準法申請につきましては、パラダイスホテルレジャーセンターというふうな用途記入になっておりました。その点でおっしゃるような非常にどういうふうなあれかよくわからないというような事態が起こってきたわけでございます。そこで建築基準法上は劇場映画館とか非常に限定的な用途が書いてございます。あそこにあります事故の起こりました広間の前のほうの映画館というようなものにつきましても、小ホール記入があったわけでございます。そういったことで非常に結果的には旅館という扱いになりましたけれども、中身としては劇場的な内容として指導した点がございますが、適用関係については非常に不明確である。こういったことで現在提案を予定しております建築基準法改正におきましても、このような多数人の集合する用途のもの、こういったものにつきましては、もっと明確にそれぞれの実態に応じて避難とかそういったものの、たとえば非常口とか、こういったものの規定整備したい、こういうふうに考えているわけでございます。
  7. 赤穴博

    説明員赤穴博君) 磐光パラダイスにつきましては、先ほど御報告にございましたように、興行場法、同時に旅館業法のほうとも磐光ホテルとして許可を得ておるわけでございます。これらの建築基準法、あるいは消防法とそれから旅館業法あるいは興行場法等との許認可関係につきましては、従来必ずしも十分相互に密接な連携がとられた上で許認可がなされているということには必ずしもなっておらなかったわけでございます。ただ、建築関係につきましては、建築確認を十分されたものにつきましては、興行場なり旅館業としての許可を与えたわけでございますが、確認後にどのような建築が変わってなされたかということにつきましては、これはさだかではございませんけれども、一応確認されたものについて旅館業法あるいは興行場法許可を与えておったわけでございます。ただ消防関係の問題につきましては、従来から消防法令に定める必要な設備等が十分設置されておるかどうかということについては、必ずしも十分な確認が行なわれておりませんでしたので、これは昨年夏の有馬温泉以降につきまして、関係各省でそれぞれ旅館業に対する防火安全対策というふうな措置いかようにするかということで、よりより協議いたしました。その結論といたしまして、今後の旅館業等許可につきましては、必ず消防用設備設置確認されておるかどうかというような点を、十分消防機関からの確認を得た上で旅館業許可を与える、かような措置を講ずることにいたしておる次第でございます。したがいまして今後につきましては、こと旅館につきましては、少なくとも営業許可をいたします際にあたりましては、必ず消防関係機関意見書というものがついた上で許可を与える、かような通知書消防機関からいただいた上で許可を与える、かような仕組みにいたしておるわけでございます。  その他の問題といたしましては、現在すでにあります旅館等において消防法上の不備な点は、昨年以来消防関係者の方々が査察をかなり厳密にやっておられるので、こういう査察の結果、非常に不備であると指摘されたものにつきましては、その資金面におきましても、環境衛生基準法対象業者の方にはそういう関係整備につきまして、必要な資金について十分優先的に御配慮して融資を申し上げる、かような措置をすでに講じているわけでございます。そのようにこの問題につきましては、直接的にはそういう措置が講じられておらなかったわけでございますが、今後の問題といたしましては、消防関係設備につきましては、十分確認をした上で旅館業法許可を与えるとか、あるいは消防査察の結果、非常に不備なと指摘を受けた設備については、優先的に多くの資金あっせんをする。かような措置を講じて漸次こういうものを解消するように御協力を申し上げたい、かように考えております。
  8. 山本弘

    政府委員山本弘君) 磐光ホテル消防法に基づきますところの消防設備等設置状況でございますが、避難器具設置はなかったのでございますが、その他の消火設備なりあるいは自動火災報知器等設備は実はあったわけでございますが、先ほどの御報告にもございましたように、自動火災報知器は確かに磐光パラダイス側、両方とも設置されておりました。ところが、停電によりまして、停電を通知するベルが鳴った。そのベルがやかましかったかどうか知りませんが、切ってしまった。したがって肝心のときには作動しなかったというふうなことで、管理が非常に悪かったということが言えるのではないだろうかと思うのであります。われわれは、消防法に基づきまして旅館ホテル等のこういった重要な防火対象物等につきましては、消防設備設置義務を課しておりますが、これを消防職員が立ち入り検査をいたしますいわゆる予防査察でございますが、予防査察をいたしまして、不備を指摘するわけでございます。このホテルにおきましても、何回かの予防査察が行なわれておりますが、その結果に基づく指導が必ずしも十分ではなかったのではないだろうか、というふうに考えられる点もあるのでございます。われわれといたしましては、今後消防法義務につきましては、予防査察結果に基づく指導というものを強化するとともに、場合によりましては、消防法の中で基準に達していない場合は、基準どおりにつけるように措置命令ができるという規定があるわけでございます。そういった規定活用をはかる、またあるいは消防の見地から見て人命上非常に危険だということでありますならば、その部分使用停止といった処分もなし得る道が開かれております。こういった規定活用も、場合によってはばかっていく。こういった点の反省も加えまして、今後第一線消防機関に対する指導を強化してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  9. 蜂須賀国雄

    説明員蜂須賀国雄君) 運輸省は、御承知のように国際観光ホテル登録につきましては、国際観光ホテル整備法国際観光の振興を目的としておりまして、ホテル旅館整備をはかりまして、そうして外客の接遇の改善をはかるということでございます。したがいまして、登録に際しましては一応の基準がごさいますが、消防避難等につきましては、おのおの消防法建築基準法によっているわけでございます。現在の登録におきましては、基準に合ったものにつきましては、すでに旅館業法によって許可を受けておるホテルまたは旅館につきまして、その一部または全部を登録するわけでございますが、先般の有馬温泉事故以来、旅館ホテル防災安全対策協議会で決定になりまして、その後は現在、登録の際あるいは登録施設増改築に伴うところのこれの届け出、この際には必ず建築基準法消防法上の適合性確認をとる処理をとったわけでございます。なお、既設のものにつきまして、消防長等査察されまして、消防違反等がございますれば、地方陸運局連絡いただきまして、連絡がありますれば、当然われわれといたしまして、業界にもお願いをして自主的に是正させますが、さらに法的にも登録取り消しを含む強い措置で臨むことを考えておるわけでございます。
  10. 上田稔

    上田稔君 関連質問でちょっとお聞きしたいと思います。  各省おのおの法律をお持ちになって、その法律に基づいて監督をおやりになり、指導をおやりになっておると思うんでございますが、このたびの火災の発生した原因を見ますと、これは用途変更をしておるというところに起こっておるのではないかと思うのでございます。建築基準法の八十七条に用途変更の場合に第七条でしたか、それを準用するということが書いてありますが、この用途変更の場合に準用するというのはどういうことになっておるか、ということを御説明をいただきたいこと。それから、こういう用途変更の場合におきましては、建築のほうに届けがないと、これはなかなか取り締まることがむずかしいのではないかと思うわけでございます。興行場法上の許可を与えられたり、あるいは消防法上の許可を与えるということになった場合において、その両者には必ず私は届けが出ると思うんですが、建築基準法のほうはなかなか取り締まりがしにくいというのが実態ではないかと思うんです。そういう面において、そういう場合に必ず建築基準法が守られておるかどうかということを確かめられるという必要があるんじゃないかと思うんですが、この点いまお話がありましたが、さらにひとつ何か方法はないか。たとえば法律に、興行場法ですか、その中に政令でも何でもいいですが、そういうところに基準法許可を受けたかどうかということを確認するような条項が入れられないかどうか、この点もお尋ねいたしたいと思います。
  11. 前川喜寛

    説明員前川喜寛君) 八十七条の関係で、いまのたとえば劇場にほかのものを用途変更する場合は手続が要るということで、この場合にはちょうど確認申請書で新しくつくる場合と同じような扱いになってくるわけでございます。したがいまして、劇場ということがはっきりしておればその手続が要ったということになりますが、今度の場合の大広間とか、そういったものにつきましては中間的用途で、こういったことがあいまいでございます。それからもう一つは、三階といいますか、中二階といいますか、あれはあとから考えますと、当然劇場というふうなことになるかと思いますけれども、これは手続そのものということよりも、県としましては実体的に劇場の扱いをしている。これはちょうど先ほど申し上げたように、それでついその手続をうっかりしたのではないかと思いますが、どの程度まではっきり劇場という認識を持っておったかということにつきましては、あいまいでございます。いずれにしましても、いまおっしゃったように、この何かのかっこうでいろんな関係法律との連携、これをとるということは、統一をできれば非常にけっこうでございますが、それでなくても、われわれできるだけそういう連携を密接にとっていきたい。今度の場合でも、実は先ほど出ましたように、興行場法許可申請が出ていると、そういうものをこちらがはっきり知っておりますと、またそれなりのびしっとした適用ということも考えられる、指導でいかなくても適用でいける、そういう考え方もできるわけでございます。そういう連携措置は必要じゃないかと思います。
  12. 山本弘

    政府委員山本弘君) 消防といたしましては、建築基準法確認をする役所が確認をする場合には、消防長または消防署長の同意を得なければならないということでございまして、確認書が出てまいりますと、消防長のほうの同意を得るための方法がとられるということなのでございます。したがって、消防法に基づく義務がございますが、消防許可によって何なりするというふうな法律関係には実はなっていないのでございます。そこで、先ほども厚生省の環境衛生課長からも御報告がございましたが、旅館営業のような場合は、これはもちろん環境衛生の見地から営業許可をなさるわけでございますけれども、消防関係義務は守られておるかどうかということをあらかじめ消防長の許可申請が出た場合に消防機関に通報いたしまして、そして査察をしてもらって、そしていいと言うまでは許可を差し控えるような行政指導をして、またしておると、こういうことになっておるのでございます。これは有馬温泉以後に関係各省庁が連絡協議会をつくりまして、その中で話し合った結果でございます。私も、いまの興行場法許可の問題も、これと同じように、興行場法による許可という場合におきまして同様な方法をとられるならば、先ほどの旅館営業と同じようなふうに、消防設備が加味されてない場合は、許可が控えられるということになろうかと思うのでございます。そういう関係は双方密接に連携を保ってまいりたい、現在かように存じておる次第でございます。ただ法律的な問題になりますと、それぞれの法律の背景の問題もございましょうと思いますけれども、なお各省協議会でもっていろいろ話し合ってみたい、かようには考えております。
  13. 赤穴博

    説明員赤穴博君) 建築物につきましては、通常建築確認申請が出ました際に、旅館業としてそれが将来使われる場合には、必ず建築関係機関から保健所に確認していいかどうかという意見書の照会があるのが実情でございます。この磐光パラダイス磐光ホテルにつきましても、前後数回にわたって土木事務所のほうから保健所に照会があった上で、旅館業法として必要な設備につきましては、その図面で十分であるという意見を付して必ず御回答申し上げるということもございますので、おおむね事実上の措置といたしましては、建築確認が行なわれます段階におきましては、建築関係部局と旅館衛生関係部局というものは、十分連絡をとって実際上の処理がなされておるように私ども承知いたしております。ただ、消防関係のあとから付設いたしますところの設備器具等につきましては、これは必ずしも建築自体の問題とは関連しない問題がかなりございますので、これらにつきましては、先般来の各省協議会にはかりました上で今後の取り扱いといたしまして、必ず消防関係機関の通知を経た上で旅館業法許可を与える、かような仕組みにさらにいたしたわけであります。  なお、建築等の問題については、確認をいたす際にわが方で御協議を受けておりますが、わが方が旅館業法許可をいたす上において、さらに建築関係当局と十分な連絡をとるというふうな措置を講ずることは、この際やはりどうしても必要であると、かように考えております。
  14. 上田稔

    上田稔君 いまのお話を聞いておりますと、非常にスムーズにいっておるようにお聞きしたのでございますが、現実は磐光パラダイスにおいてはそうはいっておらないというのが実態でございます。磐光パラダイスというのは、これはホテルの一部分として建築許可を受けておる。興行場については、建築申請をして、それから後において興行場法許可申請を出しておる。こういうことで、建築のほうはホテルの一部分としての許可をした、興行場のほうは建築ができておるからそれをそのまま許可になった、こういうようなのが実態でございます。消防法も同じじゃないかと思うのです。そこから今回のケースにおいては変なものが出てきた。結局ホテルとしてつくったものを、興行場として使用しておる。そこに問題があるんじゃないか。で、先ほど建築基準法の解釈で興行場建築基準法劇場とは違うんだということを言われましたが、これは劇場として興行をやっておるものが劇場でないという解釈は、実におかしいと思うのです。こういうようなことからやはりこういう問題が発生するんだと思いますから、そういう点はこれから解釈を改めていただきたい。  それから、消防庁のほうも、また厚生省のほうも建築上の許可があったからと言われるが、その用途変更の場合にはそういう連絡がないわけですね、今回のような場合には。そういう点を連絡していただきたいと思うのです。いま連絡協議会をお開きになっておるけれども、それでは私は十分にできないのじゃないか。末端に至るまでそういうことが徹底しないのじゃないか。新しく建築をして、それを劇場に使っていくとか、あるいは浴場に使っていくとか、ホテルに使うとかそういう場合にはいいんですし、あるいはまた大きな増設をするという場合においてはそれでいいのですけれども、ある建物用途を変更するという場合においては、これはそういうことが行なわれないのが実態じゃないか。この間の二、三日前の品川の火事でも、あれは工場として認可された。その建物が廃品回収場になって、上に人が住むようになっておった。結局、そういったようなことがあとで起こる場合が非常に多い。こういう点がこういう災害を起こす原因になるのじゃないか。そういう点で、各省が縦割り行政をしておられると連絡が不十分になる。その連絡不十分になるのをどうして補ったらいいか、これをもうちょっと真剣に考えていただきたい。単に連絡だけでは私はできないんじゃないか。やはり何か法令上の縛りがないとうまくいかないんじゃないか。そういう点をひとつお考えをいただきたいと思います。
  15. 佐藤隆

    佐藤隆君 そこで、建築基準法の問題やら、いま各省にまたがる問題について質問を始めたわけですが、いま上田委員から申されたように、やはりこれからの法の改正にあたっては、そうした点を十分踏まえて御検討願いたい、これをひとつ強く要請をいたしておきます。  建設省にひとつお尋ねいたしますが、建築基準法施行令の改正について、この火災以前に有馬温泉以来の経験に徴してその検討が進められ、新建材の関係やらそうしたことについてことしの一月にすでに閣議決定されて、そうして五月一日施行となっている。そこにたまたまこうした火災が起きて、いろいろ原因の究明がされておる段階において、新建材の繰り上げ規制、繰り上げ施行というものを、五月一日にかかわらずひとつ検討しようというようなことについて、二月六日の衆議院の予算委員会でそういう検討をしようという答弁がなされているわけですが、この点はいかが進んでおるか。五月一日施行予定を繰り上げて施行できるものであれば、ひとつそれをはっきりさせていただきたいし、それができないなら、できない理由を、ここでひとつ明確にしておいていただきたいと思います。すでに新聞やなんかであの当時大きく報道もされているところでありますから、明確にしていただきたい、こう思います。
  16. 前川喜寛

    説明員前川喜寛君) お答えいたします。  この前の政令改正の点でございますが、重点は、いまお話が出ました内装制限の強化、それから防火規格関係基準の強化、避難の排煙装置、こうしたことが主として大きな事項でございます。それで、いまのような点でわれわれ自身も、今回の事故にかんがみて、できるだけ早くこのうちの一部でも施行できないか、できれば全部できないか、それから一部施行するといたしまして、特にそのうちで何を早くできるかということを、いろいろ検討したわけでございます。それで、この政令が出ましても、実はこの政令のうちの一部の建設省の告示でございますね、政令に基づく告示、これをきめないと実際の政令全体の条文が動かないわけでございます。したがいまして、たとえばこうしなくちゃならない、ただし建設大臣の定める基準によってこうした場合はこの限りでないというような規定でございますが、こういったようなこと、あるいは建設大臣の定めるところによってこういうふうにしなさいというふうなのがございますが、これが出ないと実際の政令全体が動かない。こういったことで、告示がいつ出せるかということで、実は一刻も早くということでございましたが、やはり特にいまの煙の内装制限、こういった関係につきましても、ちょっとまだ煮詰まらないこともあるというふうなことで、どうしても三月中かかりそうだということになりますと、実際に早めましても、せいぜい一週間二週間ぐらいにしかならないわけであります。それで、実は今度いろいろなPR体制——建築物でごさいますので、実際に設計する人がいろいろ準備する期間もあるわけでございます。それをいわばごく短い期間に今度こうきめたからこうしなさいということは、やはり周知させる期間としては、ある程度の期間は置かなくてはいけないということで、四月一日まで何とかさかのぼらないかということで、われわれいろいろやっておりますが、少し早めると同じぐらいのことでは、実は非常に残念ながら、今度も府県とか各団体がいろいろそういったものについてPRしておる体制がまた狂ってくるわけであります。で残念ながら、いまのところちょっと早めるのはむずかしいのじゃないか、というふうに考えているわけでございます。ただ、その間に法律そのものは五月一日にしましても、今度こうなるのだ、五月一日からこうなるのだから、いまからこうやっておきなさいというようなことについては、実際の個々の申請その他にあたりまして、できる限り指導を強化したい。これは前からもそう申し上げておりますが、今回の事故にかんがみて一そうその努力を進めたいというふうな考えを持っているわけでございます。
  17. 佐藤隆

    佐藤隆君 そこで、建材についてですが、これは行政的にはいろいろJISマークだとか、JASマークだとかいろいろ規格があるようですが、いままでは、まあ焼けないものをつくるというか、焼けないようにという配慮、それが最近は焼けた場合はどうなるかということで考え方が変わってきているように私どもは聞いておりますが、まあ焼けた場合はどうなるかということになると、そのことについて一体研究がどの程度進められているのか。まあ、焼けた場合に炎がどの程度に出るのかとか、あるいは煙がどの程度に出るのか。このたびの火災でも煙について非常にわれわれほっておけないという感を強くしているわけです。煙で死んでいる者が多いということです。それを考えていくと、たとえば今度の五月一日施行の、実施予定のそうした建築基準法施行令の改正ですか、そこには煙の問題をどう取り組まれているのか。あるいは今国会に建築基準法自体の改正もしたいというような意向も聞いておりますが、煙の問題はその辺で、どうとらえているのか。建設省、ひとつお答えいただきたい。
  18. 前川喜寛

    説明員前川喜寛君) 煙の問題でございますが、これはある意味では最近の問題でございます。鋭意研究を進めているわけでございます。その一部わかりました結果について、この前建築基準法施行令の改正をやったわけでございます。なお四十二年度には、やはり研究補助金を出しまして、日本建築センターである程度この発煙を考慮しました壁、天井等のいわば使う部分使用基準というものをつくる、こういうことでございました。現在その試験方法についていろいろ検討中でございます。  そこでどういうことを検討しておるかということを申し上げますと、煙の問題、いろいろございます。有害ガス、毒ガスいろんなことがありますが、大体いまわれわれの体制では重要視して検討しておりますのはまず煙の発煙性というか、どのくらいどう出るかという量の問題、それから速度の問題でございます。こういった点、それから燃焼速度というのもからみますが、一応発煙性の問題、そにから、今度出た煙がどう拡散していくか、これは特に避難通路、廊下、あるいは階段室というような縦と横のほう、両方でございますが、この辺のいわば煙の拡散といいますか、こういったことを研究しております。  それからもう一つ、今度、広がっていく煙をどうされるかという、いわば排煙の問題でございます。これは排口部を開けておいて自然排去をするというような性質のものと、それから機械排煙をするというふうなものを大体こんなふうな装置をどうすればいいかといったことを考えて検討を進めているわけでございます。  そこで、先ほど出ましたこの基準法の体系の中で、これがどう織り込まれるかという点でございますが、まず今回の政令改正でやりましたのは、一番煙としましては重点なのは避難通路、いわばみなが使う共用の廊下、階段、こういったものにつきまして、われわれが法律では難燃材料といっておりますが、燃えにくい材料ではありますけれども、煙が相当出るというふうな材料でございます。この難燃材料は使用を禁止したものでございます。したがいまして、そこでまず第一段階が落ちているわけでございます。それから一般的に、今度、難燃材料から著しく煙を出すもの、これをどの程度まで難燃材料として従来認めていたものから落とすというふうなことを考えていく。多少燃えにくい、しかし煙も多少出るというようなものはまあいいのじゃないかというふうなことで、こういったものを実は試験方法の一環として検討しているわけでございます。  それから法律改正といたしましては、先ほど出ましたようなことで、いろいろ適用範囲でございますね、こういった避難のいろいろな条件を満足させなくてはいけないという適用範囲、これを広めたい、拡大するというふうなことが一つ、それから排煙装置とかそういったものにからみまして、最後は、たとえばその排煙装置を機械装置で動かすという場合の自家発電といいますか、その動力源を自分で持つというふうな根拠規定法律の中に入れたい。大ざっぱに申し上げますと、大体そんなふうな考えでいるわけでございます。
  19. 佐藤隆

    佐藤隆君 いま煙そのものについての研究のこともちょっと触れられましたが、それはおそらく建設省に所属しておる建築研究所ですか、そこで研究しておられることを言われたわけですか。
  20. 前川喜寛

    説明員前川喜寛君) 主として建築研究所を主体にやっていただいておりますが、なお東大の生産技術研究所、そこで星野研究室というのがございますが、そこの御協力もいただいてやっている。主として大体その二ヵ所ということでございます。
  21. 佐藤隆

    佐藤隆君 それで最近煙の研究については、私が聞き及んでいるところでは、消防研究所もやっているはずなんです。それから農林省、JASマークの関係もあって、合板の関係ですね、合板はこのたびの火災でも非常に合板が多く使われておって、この合板が、難燃性の合板なんでしょうけれども、焼けた結果煙が多く出たのじゃなかろうかというふうなことも聞いております。そこで合板の関係は、林業試験場で煙の関係はどうなるかということが研究されておる。あるいは通産省の工業技術院ではやはりそうしたことについての研究も何か三カ年計画とか何かでやっているはずだ。これ、もういろいろなところでいろいろな形で、私は学問的なことはわかりませんけれども、研究されておるようですが、いま建設省の答えられた建築研究所の研究をもととするお答えは、それで一応お聞きいたしましたが、消防研究所、工業技術院における煙の研究、それから農林省林業試験場における研究、そのスケジュールと成果ですね、それをわかる範囲でひとつここで聞かせていただきたい、こう思います。
  22. 山本弘

    政府委員山本弘君) 最近焼死者が非常にふえてまいりまして、四十二年度は千百六名、四十三年度千百三十八名というふうにふえてまいりました。その半数の者が一酸化炭素中毒あるいは煙による窒息死ということになっております。なおそういった煙による窒息死と判定されなくても、それはすっかり焦げてしまっておりますからわかりませんのですが、そのほかこの数字にあがっていない以外にも、多数の一酸化炭素中毒あるいは煙による窒息死の方々がおられるのじゃないかと考えるわけでございまして、消防の場合におきましても、煙の問題は、消火活動上あるいは避難活動上最も重要な問題として考えておるわけでございまして、消防研究所におきましても煙の研究を行なっております。がしかし、先ほど建設省のほうからお答えがございましたが、主として建築材料の発煙性の問題を中心にして建築研究所ではやっておられるというふうに私は聞いておるのでございますが、消防研究所としましては、いま申しましたように、煙が消防活動上あるいは避難活動上どういうふうな作用をするか、それにはどういう対策を立てるべきかという見地に立って、煙の流動あるいは拡散の態様を明らかにしていくという研究を行なっておるのでございます。なお実際上は、何と申しますか、いま先生御指摘のように、それぞれの立場でいろいろな角度から煙の研究をしておるわけでございまして、研究機関との連携というものが必要であろうかと思いますし、またそれが結局効率的な研究の態度であろうと思いますので、消防研究所といたしましては、建築研究所その他関係研究機関との連携を深めてまいるようにいたしたい、かように考えておるのでございます。
  23. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 従来の建築基準に関しますこの規格におきましては、先ほど御指摘ございましたように、難燃性という燃えにくい性質というものに重点を置きましてやってきたわけでございますが、その関係火災のときに発生しますガス、それから煙というふうなものについては、従来からあまり研究が進んでいないのが事実でございまして、日本工業標準規格にも、これについての規定というものは現在のところされていないわけでございます。最近やはりこの建築材料の開発に伴いまして、火災時に発生します有毒ガスの問題がクローズアップされてきておりますので、工業技術院におきましては、昨年の四月から建設省消防庁その他関係各方面の御協力を得まして、三カ年計画でこの火災及び焼却時における建築材料の燃焼性試験方法確立のための調査研究、かなり長い題目になるわけでございますけれども、こういう研究を日本科学防火協会に委託をして始めたわけでございます。で、研究の内容は、この建築材料が単体で燃えますときの燃焼性、それからその際に発生しますガスと煙についての研究でございます。現在の進捗状況でございますが、初年度に当たります四十三年度におきましては、約三百五十万円の予算を使用いたしまして、プラスチック製品、繊維製品、紙製品と木質の材料製品のおのおのにつきまして、着火、着炎、それから燃焼速度というふうな材料の燃焼性を把握するための試験をやったわけでございます。それから引き続きまして二年度に当たります四十四年度でございますが、約四百二十万円の予算をもちまして、この燃焼時のガスの有毒性についての試験方法の研究を進める予定にしております。それから明年度、第三年度になるわけでございますが、煙についての測定方法、判定基準を設定するのに要する基礎的な研究をやる。こういうふうな予定で進めておりまして、こういう研究結果を基礎にいたしまして、所要のJISに盛り込んでいきたい、そういうふうに考えておる次第であります。
  24. 坂口勝美

    説明員(坂口勝美君) 林業試験場におきましては、木材または木材をベースとした建材、これが火災上に伴う燃焼性の研究ということの重要性を考えまして、昭和三十三年ごろから木材や木質材料の燃焼性と燃焼防止に関する研究を進めてまいりました。特に昭和四十二年度から、当場に木材部がありまして、そこに難燃材研究室の設置が認められまして、鋭意その方面の研究を進行中であります。この間、難燃合板その他難燃材料の開発あるいは燃焼性試験法の研究などに成果をあげてまいりましたが、御指摘のとおり、最近建築事情の変化から、密閉型の建築が数多くなりましたことや、合成樹脂が非常に発達してまいりまして、いろいろな種類の合成樹脂の層を木材の上にオーバーレイするという建材が使われるようになりまして、その発煙とか毒性が問題になるようになりました。きわめて複雑な要因を含む新建材の発煙防火という問題につきましては、過去に難燃を中心としてまいりました研究に並行しまして、いろいろと研究蓄積がございますが、遺憾ながら、発煙防火に対しましてはまだ十分でないということでございまして、重要課題として鋭意研究中であります。御指摘のように、この問題はいろいろと関連いたしておりますので、建設省建築研究所、消防庁消防研究所、また毒性が人体に及ぼす影響ということになりますと、労働省の労働衛生研究所の関係もございますので、そこらと十分連携をとって進めてまいりたいというふうに思っております。
  25. 佐藤隆

    佐藤隆君 工業技術院というのは、もうそうした研究はよそに委託しなくても、技術院自体でできるのではないかというような気がいたしますが、これはしろうと考えなのか、あるいはこうこうこういう理由で委託しなければいかんという理由があるのか。そのことが一つと、それからいま私は、もうきょうは煙の問題専門にひとつ質疑をしようと思っているわけです。またしているわけですが、煙の研究を、せっかく燃焼性、試験方法の研究を三カ年計画でやる、しかもいま事故が起きている煙の問題、これだけもう世論もわかせている煙の問題、煙の研究を四十五年度でなければやらんというスケジュールですね。これはいろいろと御都合もおありでしょうけれども、煙の研究は早急にやるべきじゃないでしょうか、その点が第二点ですね。それからまあいろいろ各研究部門の関係について、こうやっておるのだ、なかなかめんどうなのだ、こう進んでおるのだというお話を承りましたけれども、これらの横の有機的な連携ですね。これは一体どうなっているのだろうか、これは私は疑問なんです。もうこうした研究をなさっている方は、それぞれ専門的な知識を持っておられて、いうなれば学者のような方、あるいは芸術家的感覚の方が多いでしょうから、なかなか、おれこそはという人ばっかりでしょうから、横の連携なんかなくて、おれはかく考えるでもって研究しておられるのではないか。いま聞いておっても、いろいろなところで煙の研究をやっておる。横のつながりはどうなっているのですか。おそらくいまここにきょう来ておられる政府委員あるいは代理者の方々は、これは私は一人ずつ聞いて、現状横の連携をとりながらこうした研究が進めておられるかという質問をすれば、そのとおり進められておりますと答えられる人はおそらくいないでしょう。だから私は聞きません、酷だから。これはいないですよ、絶対に。この辺にせっかくこうした科学技術の研究が、しかも世論を騒がせておる不安なもととなっておる煙について、一体たとえば工業技術院における三カ年計画については、どの程度横の連絡をとって進めておられるのか、まあ参考にひとつ簡単でいいですから、要点だけでいいですから、時間がありませんから。答えてください。
  26. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ちょっと私からもその点について伺いますが、委託をなさっておる団体の氏名がよくわかりませんし、その大体の機構、能力、実績、そういうものについて御説明願います。
  27. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 第一の点の委託の問題でございますが、工業技術院には傘下に各種の試験場があるわけでございます。煙の問題につきましては、東京工業試験場におきまして、おもに煙に関連しましたガスの分析方法、迅速簡便に、正確に分析をするにはどういう方法があるのかという点を中心にいたしまして、研究をしておるわけでございます。それから、これに関連しまして、合板の難燃性の問題につきまして、工芸技術指導所でやはり研究をいたしております。その傘下の試験場はその二つでございますが、委託をいたしましたのは、やはり専門の研究施設、それから研究員を持っておりますところ、つまり能力のあるところにやっていただくということで、先ほど申し上げました日本科学防火協会に委託をしてやってまいったものでございます。この協会の内容につきましては、後ほど担当の課長のほうから説明をさしていただきたいと思いますが、私からは第二番目の四十五年度に煙の研究をするというのが、あまりにもおそいではないかという御質問に対するお答えをさしていただきたいと思いますが、燃焼にあたりまして、やはり出てまいりますガスとそれから煙、この二つの問題があるわけでございます。従来ガスにつきましては、単独で出てまいります単体としてのガスの性状と申しますか、毒性、それからどういう条件のときに出るかというようなことについては、ある程度の研究というものがなされておるわけでございますが、このいろいろ新しい複雑な成分を持っておりますいわゆる新建材、これが火災のときに非常にいろいろ異なった条件で燃焼をし、ガスを出し、煙を出すわけでございますので、非常に複雑な条件下で、どういうふうな燃え方をするのかということから入っていきませんと、完全な研究ができないわけでございます。それから、私どもの最終の目標にしております日本工業規格というものの内容につきましては、やはり技術的、科学的と申しますか、非常な厳密性を要求されるものでございますので、研究の順序からいたしまして、やはり燃焼の条件、それがガスなり煙なりにどう影響するかということから入っていかざるを得ないという事情があるわけでございます。ただいま申し上げましたように、期間から言いますと、あと二年ということで予定をしておるわけでございますけれども、その内容におきましては、できるだけ努力をいたしまして、煙の研究にできるだけ早く入っていき、これをJISに具体的に反映さしていきたい、そういうふうに考えておる次第でございます。それから、横の連絡の問題でございますが、先ほど申し上げました、私どもでやっております研究を円滑に進めるために、関係各省庁から代表者の方に出ていただきまして、委員会をつくっております。その委員会の御意見に従って運営をしていくという方法をとっているわけでございまして、これには消防庁の予防課、それから消防研究所、東京消防庁、それから農林省の林業試験場、運輸省の船舶技術研究所、建設省建築指導課、それから建築研究所といいました各省庁の専門家に委員として参加をしていただいておるわけでございます。この研究から得られました結果につきましても、やはり関係行政機関と連絡をとりまして、JISの制定だけでなく、現在のJISの改正その他にも反映をしておるわけでございます。
  28. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 説明員政府委員の方に申し上げますが、現在の研究段階はどういう段階である、こういう点に欠陥があるならある、将来の展望はこうだというふうに簡潔に。煙に巻くような答弁をしないでもらいたい。
  29. 分部武男

    説明員(分部武男君) ただいま御質問ありました日本科学防火協会について、簡単に御説明申し上げます。  本協会は、建設省の認可を受けております社団法人でございます。防火に関す科学技術に関するもろもろのことをやっている団体でございまして、工業技術院といたしましては、この団体に防火関係のJISの原案の作成とか、いろいろな調査研究とか、いろいろお願いをしているわけでございます。学術団体といたしましては、火災学会がございますが、この学術団体とこの科学防火協会というものが緊密な連携をとっているわけでございまして、主としてやはり日本全国的な横の連携をとるということをおもなる目的といたしまして、いろいろな防火に関する科学技術の諸問題を取り上げている、そういう団体でございます。
  30. 佐藤隆

    佐藤隆君 いま説明ありましたけれども、私は煙に巻かれて聞いているつもりはないんだけれどもですよ。いま工業技術院の部長からお答えになりましたが、それだけ数多くの関係省庁に連絡をとりながら進めている研究所なんというものはないんですよ。これは、あなたは口でおっしゃるだけなんです。これは私は非常にきめつけるような言い方で恐縮ですけれども、そんなに各研究機関とも横の連絡をして、当初考えられたようなやり方はほとんどしておらぬのです。これはもう私は調査しているんですよ。ここでそれをあげつろうてとやかく私は申しません。しかし、今国会末において再び私は煙の問題を取り上げますから、あと三カ月後にどの程度有機的に横の連携をとって煙の問題を調査研究なさったか。これはほんとうなら、いまじゃ何回各関係各省庁が集まってそういうスケジュールによって段取りを組んでみたか、答えてみろと言いたいんですけれども、いま言いません、やっていないんですから。だから私は三カ月後に再びこの問題を提起しますから、こういうふうにして研究しているのだという、ほんとうにむだのない効率的な国の金の使い方によって、当面する煙の問題をひとつ解明していただきたい。三カ年計画でも五百万の要求をして四百何ぼ。これはやはり削られているわけです、四十四年度予算要求は。これなんかもそうしたほんとうに有機的な連携のもとにだれが見てもなるほどというふうなんであれば、私ども、たとえば四十五年度の予算要求においてもほんとうに積極的にバックアップして、そうしてこうした研究に金が足りないなら足りないようにバックアップいたしたいと思いますから、そういう純粋な気持ちで申し上げているんですから、ひとつ御承知おきいただきたいと思います。  それからこの間二週間前ぐらいでございましょうか、地下鉄の車両が焼けた場合にはどんなになるんだろうかというような実験がございました。私もテレビでこれを見ました。驚いたことに、いまごろこんな実験をやっているのかということでございますね。私は、あのテレビを見ていた一般大衆は、これはとてもじゃないと、相当な不安を持ったと思います。もちろん不安を持たせたのが悪いんじゃなくて、そうした研究がどんどん進められることはけっこうなんですけれども、いまさらながら私も驚いたんです。そこで、運輸省においては、そうした地下鉄、地下街の、車両の火災、それに伴うこの煙、このことについてどういうお考えでいるのか、どの程度の研究なり、何が進んでおるのか、それをひとつ聞かせていただきたいと同時に、いま地下道の問題を出しましたので、ついでに申し上げておきますが、住宅だとか、あるいは高層建築物だとか、そういうことの防災関係だけじゃなくて、火災予防関係だけでなくて、地下道あるいは地下街、そういうところにおける防災対災——火災防火対災も含めて防災対策というものがどう行なわれているのか、これはもうたいへんな問題だろうと思います。どんどん地下街は大きくなってくる、地下鉄はどんどん走るようになる。そこに勤労大衆がどんどん通勤しているわけです。サラリーマン・ユニオンが最近税金の問題だとか、いろいろ結束してまいりましたが、これはもう当然サラリーマン・ユニオンでも取り上げますよ。この通勤の問題は税金どころの問題じゃないですよ、人命にかかわる問題ですから。そういうことで、建設省あるいは消防庁においてこの地下街の問題について、どう考えているのか、それを簡潔でいいですからひとつお答えいただきたい、運輸省から。
  31. 細谷開造

    説明員(細谷開造君) 地下鉄車両の防火対策の問題について御説明申し上げます。  地下鉄車両の防火対策につきましては、地方鉄道建設規程、これは運輸省令でございますが、これによりまして不燃化構造とするということが定められておるわけでございます。その不燃化構造の内容につきましては、鉄道監督局長の通達でもってこれを具体的にきめてあったわけでございますが、その内容をごく簡単に申し上げますと、重点は火を出さないということに重点を置いております。それから材料の面につきましても、火を燃え広がらせないということにも第二番目に重点を置いておるわけでございますが、第一番目の火を出さないという点につきましては、電車の火の元と考えられますものは、電気回路中のショートであるとか、あるいはスイッチ類の溶着であるとか、あるいは電流遮断器の電源を切ります場合の火花でありますとか、それに抵抗器、これは電車の電流を調整するものでございますが、抵抗器の過熱による、大体こういった火因が考えられるわけでございます。  それで電気機器の火因につきましての対策は、高圧電線のこれをさらに電線管、これはいままでビニールパイプを使っておったんでありますが、その中に入れて損傷を防止する。それから電線被覆は難燃材料にする。それから電気機器、スイッチ類のまわりにつきましては、燃えるものを使わないということ、それから抵抗器、スイッチ類が床下面に近い場合には、それぞれ防熱板を入れるという措置、まあこういった火を出さない面の措置をとっておるわけです。  それから燃え広がらせない、燃えないという点につきましては、電車の屋根、天井外板あるいは内張り、あるいは床下面、こういった主要構造部分は金属とするということをきめております。いわゆる電車の鋼体化がはかられておるわけでございます。それから座席の上張り、あるいは車両と車両の間の通路にかぶせてございますほろにつきましては、これを難燃性にするという規定がございます。それにさらに異常時の場合の貫通路、要するに隣の車両に移動するための通路を設けるとか、あるいは消火器を備える、あるいは予備灯−電源を切った場合にまっ暗になると非常に乗客に不安を与えますので予備灯を設ける、こういったような火災防止対策火災対策事項を通達でもって具体的にきめてまいったわけでございます。  そこで昨年の一月に発生いたしました事故でございますが、この火災原因は床下の抵抗器が異常過熱をいたしまして、普通の運転状態ではちょっと考えられない事態になったわけでございますが、異常過熱をいたしまして、そこから火が燃え広がったという非常に異常な状態が発生した。そこでこれに対しまして現在までにとりました措置といたしましては、即時に現在走っております地下鉄車両でもって抵抗器の上の部分に電気配線、これは高圧配線、非常に太い電線になるわけでございますが、これを配線しているものについては——これは全部ではございません、約三千両当時地下鉄専用車両があったと思いますけれども、そのうちの五百七十七両につきましては、この抵抗器上に配線がございましたので——もちろんこれは事故車両もその間に防熱板を入れてあったわけでございますけれども、こういった電気配線は金属でもってこれを密閉するという措置をとるように指示いたしました。これは昨年の末までに完了をいたしております。それから大部分の地下鉄専用車両には装置してございましたのでございますが、そういう異常過熱を起こさない装置を取りつけるということを、それ以降の新造車両に対してはそれを取りつけさせるように指示をいたしました。しかしそのときの地下鉄専用車両も大部分この装置はつけております。それから第二番目には、それ以後の新造車両には、抵抗器上に配線をさせないという措置をとらせたわけでございます。  以上の措置をとりますと同時に、先ほど申し上げました不燃化構造基準の内容を強化すべく改正しようという企画をいたしまして、そのためには基準の内容をもう一度、そういうきわめて異常な事態に対しても対し得るように再検討をしようということが一つでございます。それから第二番目には、抵抗器の発熱状況調査をやろう、それから三番目には防熱板の性能試験をやる、それからその次には車両各部に使いますところの材料の燃焼試験をやる、一番終わりに現車の火災実験をやる、こういう企画を立てたわけでございます。このうち初めに申しました基準内容の検討、それから車両用材料の燃焼試験、防熱板の試験等は、運輸省の船舶技術研究所におきまして直ちにその作業に取りかかりまして、現在まで続けてきたわけでございます。それから現車の火災実験でございますけれども、これにつきましては二つの目的がございます。一つは床下の抵抗器が異常過熱をした場合にどういう経過でそれが燃え広がっていったかということを調べることが一つの目的でございます。それから二番目は、いままでやってまいりました燃焼試験であるとか、あるいは防熱板の性能試験等の結果を加味いたしました防火不燃化構造基準改正案を一応仮設いたしまして、それにつきまして同じような条件を与えた場合にどのくらいの効果を発揮するか、ということを確かめるのがもう一つの目的でございます。  で、先般実施いたしました車両火災実験は、その最初目的のために行なったものでございます。この火災実験の実施につきましては、これは船舶技術研究所と、それから消防研究所の両方で共同してやる必要があるということで、科学技術庁のほうにお願いいたしまして、特別研究調整費の支出をお願いいたしまして、それによって実施したものでございます。  それで火災実験の内容といたしましては、内外の温度を時間的経過に伴って計測するということが一つ。それから先ほど来お話に出ております煙の濃度の計測をする。それから燃焼ガスの濃度と成分の分析をする。これだけの計測と、あとは目測によります燃焼過程の把握ということの作業をやったわけでございますが、しかしそのうち温度の計測につきましては、船舶技術研究所が担当する、それから燈の濃度とガスの成分、濃度の分析につきましては、これは消防研究所で担当をしていただくということで実施をしたわけでございます。  で、第一回の実験目的でございますので、結果といたしましては、非常に煙が出て、国民の皆さんに非常に不安を与えました点につきましては、まことにこの点は遺憾でございますけれども、その実験目的が、普通ではあり得ないような状態、非常に過酷な状態で強制的に火をつけて、抵抗器が火の原因になったということ、それからそのあとどういうふうに燃え広がっていったかということを確かめるための実験でございますので、やはりあの状況まで強制的にやらざるを得ないわけでございます。たいへん長くなりましたけれども、以上経過を御説明申し上げました。
  32. 前川喜寛

    説明員前川喜寛君) 地下街は、仰せのとおり、非常に条件としては不利でございます。建築基準法の従来の規定でも一応は触れているところでございまして、その中身として項目を申し上げますと、地下道の幅員等の規定と、それから地上へ出る避難階段といいますかそういう規定、それに至る歩行距離と、大体こういうふうな規定があったわけでございます。いまの現状から言いますと、やはり非常にこれでは不備だということで、今回の政令改正で取り上げておるものでございます。その政令改正の中身としましては、地下道にさらに非常用の照明設備あるいは排煙設備、これを建設大臣が定める基準でつくれという規定、これが一つございます。それから各かまえと地下道との間を区画する、それから各かまえの中も、これは一定面積ごとに区画するというふうなこと、それから各かまえの中から今度地下道へ出てくるまでの歩行距離ですね、これを規定する、大体おもな内容はそういうものを入れまして規定整備し、さらに内装制限としまして、これは従来もかかっておりましたが、地下道については全部不燃化という思想でやっております。それから地下街のお店のほうでございますが、ここは実質的に防火活動の関係で実際問題としても不燃化、準不燃化せざるを得ない、こういうようなかっこうになっております。
  33. 山本弘

    政府委員山本弘君) 地下街は、御指摘のとおり非常に管理者の異なった商店街が建ち並んでいるというような状況になっておるのが普通でございます。   〔委員長退席、理事武内五郎君着席〕 したがって、防火管理の面と、それとまた地下街という特殊な、一たん火災等が発生した場合に大きなパニックを生じるおそれがございます。そういう意味で消防用設備を強化する必要がある、かように考えるのでございます。で、まず防火管理の強化でございますが、これにつきましては各防火管理者がそれぞれの消防計画を立てるんじゃなしに、そこの地下街の防火管理者が集まりまして防火管理協議会を設置いたします。設置をいたしまして、そして共同で消防計画をつくらすということに法定をいたしております。そしてその計画を消防署のほうに提示するというふうにしているのでございます。  また消防用設備の点でございますが、地下街等におきまして使用されますところの可燃性のカーテンとかあるいは暗幕、どんちょう、舞台幕あるいは工事用シート、そういったものにつきましては、政令で定めるところの防煙性能を持ったものでなくちゃ使ってはいけないというふうに規制をいたすことにいたしておるのでございます。また屋内消火せん設備でございますが、これにつきましても一たん火事が出ました場合に、自動的に火事が、停電等の場合におきましても、作動するように、非常電源をつけるという基準を明確にいたしております。また地下街は煙が発生しました場合、それが急速にまあトンネルというようなかっこうになりまして拡散流動するということになりますので、煙によって火災を知る、こういう自動火災報知機をつける必要がある。幸いに技術開発もできましたので、地下街におきましては廊下階段等におきまして、煙感知器の設置義務づける予定でございます。また、非常の場合の警報設備でございますが、これはつきましても非常電源つきのものといたしまして、さらに地下三階以下になりますと、これにプラス放送設備も付加してつけるというふうに義務化を考えております。また避難のための誘導灯でございますが、これは避難口はもちろん、通路誘導灯も非常電源つきで、すなわち停電になりましても、誘導灯がついておるというふうになるように、非常電源つきのものを設置するようにいたすのでございます。今後さらにスプリンクラー設備設置基準あるいはまた排煙設備設置基準につきましても、順次整備をしてまいりたい、かように考えます。また食堂等がございまして、いろいろな火気を使用いたしますそういう場合に対処いたします場合の火災予報の見地から、火災予報条例整備並びにそれによる指導の強化、こういった点を考えておる次第でございます。   〔理事武内五郎君退席、委員長着席〕
  34. 佐藤隆

    佐藤隆君 それじゃいま聞いておりますと、消防法施行令ですか、そうしたところの改正があるということですね。それから建設省でもそれは政令の改正、そうしたことについてなお不十分な点があるから考えるということですね。それから運輸省でもたとえば不燃化構造基準、そういうことの改正も考えておる、こういうことですね、まあここで私別に期限を切ろうと思いません。ひとつなるべく早くそうした改正が実現できますように、ひとつお願いをいたしておきたいと思います。  そこで最後に総務副長官にお尋ねをいたしますが、いま副長官がおられない間にいろいろ承りました。こうした煙の問題についていろいろ承りましたが、もう各種各様に研究を進めておられて、なかなか横の連絡というか有機的な連絡はない。あるいは法そのものについても、各省についていろいろな有機的な横の連携というものが考えられてない、そういうことは考えなければいかぬという一つの結論がされているわけでありますが、そこで災害対策基本法第三十五条には、基本計画、防災の基本計画を立てるということになっております。そこで三十八年の六月の十四日には初めて防災基本計画というものがつくられました。ところが今日もう約六年になんなんとしておるのに、一ぺんのまだ修正もありません。なぜそういうことを言うかというと、この三十八年の防災基本計画がつくられたときには、いろいろこの世の中も進歩しているし、科学技術の変革もあるし、そうした意味において「この計画は、わが国の災害の現状に立脚して作成したものであり、将来科学的研究の成果及び災害発生の実情等を勘案して逐次修正を加えつつ完備したものとして行きたい。」ということがこの防災基本計画の冒頭に書かれているわけでございます。ところが、六年間相当の変化があったにもかかわらず、別に修正を加えられたということは聞いておりません。そこで私は具体的に、いろいろこうした火災がどんどん起きてまいりますし、その他の災害も起こっておりますので、ひとつ総理府におかれて、あるいは中央防災会議におかれて御検討願いたい。それは防災基本計画の修正ということで、具体的には、防災に関する科学技術の研究についての推進、これも基本計画にうたわれております。国立試験研究機関等が協力をして総合的に研究する。ことばだけりっぱなんです。中身はないのです。これじゃだめなんです。この辺をやはりもう少しこの程度の表現でしようがないのかどうか、これはたとえばの話ですよ。  それからなお具体的には、災害予防に関する事項というのがあります。イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、トからずっとあるのです。その中で、都市不燃化促進と防災建築街区の整備というのがあります。これについては今日先ほど来私が申し上げておりますように、煙の問題というものをとらえて明文化して、防煙という、このことについて、煙の問題について、特に地下道、地下街、車両等についても、この基本計画の具体的な点にむしろ触れたほうがいいのじゃないか。しかし、私…がいま考えて申し上げていることですから、ひとつ検討の結果、どうなるかは別として、この防災基本計画の修正を現状に即したものに——六年間このままでいいということでは絶対ならぬのです。特に煙に関して修正方についてそうした検討を進めていただきたい。これを御要望申し上げますが、このことについてひとつ最後にお答えをいただきたいと思います。
  35. 鯨岡兵輔

    政府委員(鯨岡兵輔君) いま佐藤先生御指摘のように、昭和三十八年の六月十四日、防災基本計画というものがつくられ、その計画にこまかくいろいろ規定をしてありながら、しかも現状に即していろいろこの計画は修正されるべきものであるというふうになっておりながら、その後長い年月変わっておらないのはおかしいではないか。全く申されるとおりであると思います。  そこでこの計画を十分御研究なさっておられる佐藤先生すでにしておわかりのように、この計画の目標は、「自然的条件から台風、洪水、高潮、地震、津波、噴火、地すべり等きわめて多種の災害発生原因を内包し、」云々、そういうようなことに主眼を置いて立案されておるのでありますが、その後の社会情勢の変化によって、いま申し上げましたようなことでない、単発的なしかも大きな災害、先生方に御心配をかけるような災害がこのところ相次いでおるような状況、さらにはいま御指摘の煙の問題、それから石油タンカーなどが爆発するというような問題、それらのことを踏まえて考えましたときに、御指摘のようにこの基本計画はかなり大幅に修正されなければならない問題だとわれわれも考えておるわけであります。  特に申し上げたいことは、この福島県の温泉宿における火災が発生いたしましたときに、その直後の閣議におきまして、総理大臣はこの煙の問題を非常に重視いたしまして、建設大臣に、このごろの新建材が火災の際に非常に煙を出してそのために失わなくてもいいとうとい人命を失うようなことが目立つ、これに対する研究はどうなっているかと、かなり激しい口調で建設大臣に問われた経過等にもかんがみまして、その際建設大臣は、鋭意研究を続けておりまして、間に合わないうちにかくのごとき災害が起こったことはまことに残念であります、こういうふうに言われたのでありますが、建設省消防庁、通産省それぞれ密接な連絡をもってやらなければならぬ。それぞれの省は一生懸命やっておるわけでありますが、この連絡については必ずしも十分でなかったという御指摘は十分承りまして、御趣旨に沿うようにわれわれとしては鋭意これらの省を督促しそれを統轄して、基本計画を修正するように努力したい、こう考えておる次第であります。
  36. 佐藤隆

    佐藤隆君 もうあと答弁要りませんが、一言だけ副長官に申し上げておきますが、きょう消防庁の次長が来ておられますが、中央防災会議兼務ではあろうと思うのですけれども、長官が次長になっておられるわけですが、ひとつこうしたときにはぜひ出て来ていただいて、私どもあらゆる災害のことについては災害対策基本法をもとにし、それを受けての中央防災会議、この機能を重視している者でございますから、それはもうずっと前から私がこの委員会で申し上げているところなんですから、もうすべての問題が終局的にはそこへ持ってこられることになるのです。したがって、こうしたときにはひとつなるべく出てきていただいて、そうして話を十分聞いていただいて、消防庁長官としてじゃなくて中央防災会議の事務局次長として、これはもうほんとうにみずからそのコントローラーとなって、各省にまたがる問題でありますから、そうした横の連絡を積極的にとるようにしていただきたい。副長官はこの間の当災害対策委員会でも、専任の次長を置けなかったのは、みずからその償いをなすという御答弁をいただいております。真剣にやっていただいておるのはありがたいと思いますが、ひとつ、科学的な研究についても非常にばらばらなんです。もうあなたが席をはずしておられるときにいろいろ聞きましたけれども、ばらばらなんです。これを私は、今国会末くらいにこの委員会が開かれたときに、はたしてそういういろいろな研究機関が当初始めたときのような気持ちで横の連絡をとりながら進めているかどうか、ということについての実績をただしたいと思う、ということを先ほど皆さんに申し上げましたので、ひとつそれもお含み置きの上、中央防災会議において積極的なひとつコントロールをしていただきたい。これだけ最後に御要望を申し上げておきます。終わります。
  37. 武内五郎

    武内五郎君 実は、今回の福島県のホテル火災について、当委員会で特に強い関心を持って取り上げなければならぬ問題であることは、御承知のとおり前の有馬温泉の火事、それにその前の水上温泉の火災等がほとんど連続されて発生しておりまするので、しかもそれでは痛ましい多数の人命が損傷を受けておる、こういうようなことから、一ホテル火災としてわれわれは取り扱ってはならない。その火災を契機にして、かくのごとき惨事が絶対繰り返されないような措置をとらなければならぬじゃないかという考え方から、当委員会で特に強く取り上げておるわけであります。これは委員ほとんど全員の同じ気持ちであると考える。  そこで、私は総務副長官はお忙しいからだだから、実は特に副長官に対する要望を申し上げておきたいと思ったのでありまするが、だいぶ佐藤委員から、ほとんど大部分が出ておりまするので、いまはそれは省略したいと思います。でもこの点だけは十分おくみ取りを願い、最善の対策を立てていただくようにしていただかなければならぬ。すでに佐藤君のほうからいろいろの面が取り上げられております。特に私は今回の惨事が誘発されたという大きな原因、先ほど上田委員からも取り上げられておりまするが、旅館ホテルという施設の中に興行場、遊技場が設置されて、それが全く許可もないようなやみの行為が行なわれておって、そういうようなことがこれはもう惨事原因の最も大きな問題であると思います。たとえば私はこれを拾ってみますと、実に私はふしぎに考えることは、これは福島磐光ホテル調査の際に現地でわれわれに配付された資料でありますが、旅館申請をして認可を最初にとったのは昭和三十八年の十月六日、それが増築改装のまた申請が同じ日に出ておる。そして三番目にホテルに改められた。それは昭和四十年九月二十二日、そのホテルが改装されてまた増築がされてまいりましたのが昭和四十一年の十一月二十九日、それで、さらに五番目にそのホテルレジャーセンターを併置することになったのは昭和四十二年の十一月一日、約その間一年、その後ホテルの増築が始まっておる。昭和四十三年九月九日に増築の手続がとられておる。ところが実に、まことにふしぎなことには、その翌日別口の増築の申請が出ておる。昭和四十三年九月十日、これが七番目。それで八番目にそのホテルをさらに増築し、大広間や何かが併置されたのが同じ昭和四十三年九月の二十八日、その間十八日過ぎております。こういうふうな計画が同じ月に三回もとられたり何かするようなことが、どうしてできるだろうかと考えるのです。私はここに非常に疑問を持っております。何のことはない。その解釈は、ホテル旅館の中に併置されてはならない遊技場や興行場を併置することの計画であった。これが私は今度の災害を大きくさせた大きな原因じゃなかったかと考えるのであります。あるいはそうでないと言われるかもしれない。けれども、この時間と計画の拡大されていった事態を見ると、そう考えざるを得ない。私はこの点は一体何しておるのだと、運輸省観光部長から真意をはっきり聞きたいのです。しかし、こういうようなことが行なわれてきておるというところに、私は法の不備があるのじゃないか、こういう点を私は見のがすことはできない。そういうようなことで、したがって、私が行って現地を見ますると、見るもの見るもの全部これがほとんど違法だ、法を無視したやり方であると考えざるを得ない。たとえば通路、これはもうホテル集会場では通路ということは重大な問題です。また、劇場演芸場、映画館等においても通路が重大な問題である。その通路というものがほとんどつかまれていない。その通路にはまた非常口避難口がなければならない。私はさらに磐光ホテルの略図、これには避難口が必ず要所要所に、必要なところには出ておる、図面には。ところがないのであります、現実には。消防署の報告によっても一カ所だけは役に立ったように書いてある。ところが全然役に立っていない。私ども発見した非常口が一カ所、鉄のとびらが固く施錠されておってあかない。しかもその非常口のところにはいろいろな荷物が置いてあって、出入りができないようになっている。法の規定によると消防法のあれは何条であったか、規定によると通路には通行を妨げるような物件は置いてならないということになっておった。それがちゃんと置いてあって避難口を妨害しておる。私は試みにその避難口を無理にあけてみた。すぐ下が五メーターぐらい、もっと高い、二階であったからだいぶ高い。その下がもう通路である。はしごが何もない、避難ばしこが。縄ばしごすらの用意もない。避難袋の用意もない。何やら何まで全くみんな、ほとんど全部違法である。消防法違法である、建築基準法の違法である。あらゆる点で違法を犯している。しかもこれはこの図で見ますると、各増築されていった建物が、おのおのその増築部分だけが独立したブロックのごとくになっておる、図面では。何のことはない、それは全部重なった建物である。どっかで火事が起きると、みんなこれは全部に燃え広がるような建物なんであります。私はしろうとですが、見ただけでもはっきりわかる、そういうようなことで、いろいろな点で私は、今日、法そのものも多く改正しなければならない点、まして先ほど佐藤君が指摘されておりまする防災計画というものを多くの点で改定強化していかなきゃならぬ、そういう点でこれはあらゆる面に及ぶ、各省にも及ぶ問題でありまするが、総理府ではそれに準じた改定の措置を努力するようにしていただけるかどうか。それを、内閣総理大臣が煙にたいへん関心を持たれて、今度の火事から関心を持たれておられるという話なんですが、この機会に、こういう災害を再び繰り返すことのないような万全の措置を講じなきゃならぬじゃないかと思うんでありますが、その点について総理府副長官のお考えをひとついただきたいと思います。
  38. 鯨岡兵輔

    政府委員(鯨岡兵輔君) 先ほど佐藤委員の御質問にもお答えをいたしましたように、この基本計画の改定につきましては世の中の変遷、いろいろ建築資材の進歩といいますか、変化、そういうもの等関連いたしまして早急に各省連絡の上、改定強化していかなければならないものだと考えておる次第であります。さらにただいまのお話しのように、このホテル等が増築改築相次いで、先生の御指摘のように、それがことごとく違法であるということになりますれば、これも大問題だと思うわけで、これらにつきましては、私のほうといたしましても消防庁等に問いただしまして、さらに認識を深め、運輸省、労働省、建設省消防庁、文部省それぞれと緊密な連絡をとりながら御指示に沿うように努力をいたしていきたい、こう考えておる次第であります。
  39. 林幸二郎

    説明員(林幸二郎君) 先ほど私どもの部長から申し上げましたように、国際観光ホテル整備法によりまして登録をいたしました磐光ホテル部分につきましては、一応私のほうも法律にのっとった基準には合致しておったように考えておるわけでございます。ただし、そういったものがいろいろな施設を併設いたしまして、ただいま御指摘のような非常に大きなものになり、そういったものが多数の人身事故を起こしたというような事故が起こったという現状でございますので、この点につきましては、私たちもそういった政府登録ホテルあるいは旅館の業界を通じまして、ただいま御指摘の点につきましてのいわゆる人命尊重という点を第一義に考えるように、従来も業界を指導してまいったわけでございますけれども、この際、さらに一そう指導を強化してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  40. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ちょっと私から申し上げますが、いまの御答弁では武内委員の御質問の趣旨には、私は合っていないと思うのです。たとえば消防法五条あるいは十七条の四等における措置命令使用制限、消防用設備等の設置維持についての措置命令、これには罰則が四十二条、四十四条、四十五条においてついており、右両条によって命令行為が可能であるのであります。はたして運輸省はこの消防法に基づいて今後命令行為を実施して、政府登録観光ホテルの業者等に反省をうながし、今後に対処していかれる用意があるかどうか。具体的に言えばそういうことになると思うのであります。御答弁ができなければ運輸省で答弁のできる人の御出席を願いたい。ただいまの御答弁では、当委員会としては満足するわけにはまいりません。
  41. 林幸二郎

    説明員(林幸二郎君) その点につきまして御説明が足らなかった点、おわび申し上げます。  有馬の火災以後、各省間の連絡協議会を設けまして、従来政府登録申請がまいった場合に、私のほうの法律基準に照らして登録をやってまいったわけでございますが、本年二月一日以降申請のありましたものにつきまして、あるいは現在登録を受けておるホテル旅館がさらに増改築をし変更を届け出てきた場合に、所轄の建築基準法及び消防法のそれぞれを担当しておられる機関の確認の書面をいただく。したがってその際に査察なり検査をしていただく、あるいは建築基準法確認の書面をいただくということによりましてチェックしてまいること等、二月一日以降やっておるわけでございます。また既存の登録ホテル及び登録旅館につきましては、建築基準法上の法令違反あるいは消防法令上の違反があり、あるいは査察をした場合の措置命令を出されたというような時点におきましては、速刻運輸省のほうにも御連絡をいただき、その上において登録取り消しというような処分を含みました措置を講じていくということに、二月一日以降実施しておるわけでございます。
  42. 山本弘

    政府委員山本弘君) 先ほど佐藤先生にもお答え申し上げましたのでございますが、消防法、同施行令あるいはまた火災予防条例に違反している事実はあったのでございます。そのたびごとに予防査察をいたしまして改善の指示をなしておるのでございますが、しかしながら消防法自体におきましては、措置命令がなされた場合にそれを履行しない場合には罰則がかけ得るということになっているわけでございます。この磐光ホテルの場合は、行政指導の段階にとどまっておったわけなのでございます。二月五日火災が発生いたしまして、残存部分が残っております。これにつきましては消防設備等設置について措置命令をいたしておるのが現状でございます。
  43. 武内五郎

    武内五郎君 先ほどの運輸省説明では、どうも納得できない。普通のホテル旅館でさえも環境を害してはならぬという位置に建てることになっている。しかも、興行場等においては、特にそれが考えられなければならぬ。しかもそれを多数の旅客を取り扱うホテルの中に興行場設置するということは、これは私は納得できぬと思う。しかもそこから入ってきた人からも入場料を取る。こういうような純然たる興行、それがホテルの中に併置されておるということは、これはどういうことか。これがいいのかどうか。いまの法の中でいいとしても、今回の経験から、私は今後安全を期するためにも、法の改正を必要とするんじゃないかと思うんだが、それらについてどういうふうに考えるか。
  44. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) ただいま御指摘いただきました点は、私も今後検討すべき問題点であると存じます。旅館ホテル等の中に興行場類似のものを設けては絶対にいかぬというふうにいたしますか、あるいは設けることはかまわぬけれども、設けた場合におきましては、その部分に対する消防法あるいは建築基準法関係法令の上で、特別な安全を確保するために規制を加える必要があるように存じます。その問題につきましては、実は今回の事故のあとで、去る十四日の日に関係省庁の連絡協議会を開きまして、そこで問題として関係省庁でさらに検討するということにいたしております。
  45. 武内五郎

    武内五郎君 建設省、先ほど私が申し上げましたように、通路の中にいろいろな避難通行を妨害するような、妨げるような物件が置いてあった。あるいは非常口の出入り口にそういう物件が置いてあって出入りできなんだ。しかも非常口に、あれは何ですか、自動かぎですか、錠ですか何だか知らぬが、それがかかっておる。その非常階段にも階段構造規定があるはずです。不燃性な階段にしなければならぬ。あるいは戸が外に開いても通路を妨げるような狭さや何かではならぬ、十分な広さを持たなければならぬ、いろんな規定がある。それが何にもない、はしごすらない、縄ばしごの綱ぐらいぶら下がっているかと思って見てもそれもない。そういうような状態で非常口がこの図面では至るところにあるようになっている。ところがそれがないんであります。たった一カ所私どもが見たのがそれだ。これを建築基準法から見てどう考えるか。さらに通路、これは消防法関係かもしらぬが、避難行動を妨げるような物件や何かが置いてあるんであります。それが通路や何かの至るところにある。それから、御承知のとおり、いわゆるパラダイスのところへ何百人もの人間がなだれを打って避難の道を探す、至るところに避難口はないんだから、ようようそこまでたどりついた。そこは何かというと売店で、こういう陳列だながたくさん置いてあって、お互いに客がからだをすり合って歩けるような状態。これでは避難ができるものじゃない。しかもようやくその一階の売店の出口らしいところへ行ったら、やっぱり戸が締まっておって、どうしてもあかない。特殊なガラスで、それをたたこうと思って、から手やなんかでたたき割っても、特殊に製造されたガラスであって破れない。こういうようなことでパラダイスの売店の出入り口のところに折り重なって人が死んでおった、これが実情です。こういうことは私は何といっても建築基準法消防法から見て改める必要がある、これが強化をする必要がある、これが監視と指導を強化する必要があるという点があろうと思います。それらをひとつお伺いしたい。  さらに、私は時間の関係があるから急ぐが、その増築されていった建物のブロックとブロックの間に間隔がなければならぬはずなんです。防火防災のための間隔がなければならぬ。それがほとんどない、一メートルもない。そこには防災壁または防災とびらがなければならぬ。防災とびらがあったようでありますが、全然使用されていない。人が自由に入るというような状態。こういうようなことで、いろいろな点で法の改正をする必要があろうと思う。また指導監視を強化する必要もあろうと思う。それらについてひとつ御意見を承りたい。これは建設省消防庁運輸省のほうの観光関係に。
  46. 前川喜寛

    説明員前川喜寛君) いまのお話の、まず通路とか非常口のかぎ、あるいは物を置いている、こういう点でございますが、まあ建築基準法はどちらかといえば、施設的なものを制限している。施設をこういうようにつくりなさいというようなものが中心でございます。したがいまして全然かぎをかけるというふうなことにつきましての行為、そういった日常起こる行為についての規定というのは、実ははなはだ不十分でございます。その点でわれわれもこの境目をどこにするかというのは、非常にむずかしい問題でございますが、ただ、われわれのいまの考えでは、やはり避難施設をせっかくつくった、そこへいろいろなものを置いちゃったら、避難施設の効用を発揮しない。もっと言いますと、常時倉庫用に使ってしまったというのではおかしいのでございますので、何かそれの有効を保持しようというようなことで、どう言いますか、そういう方向でできるだけ建築基準法避難施設の確保ということでつなげていきたい、こういうように考えております。それから、かぎの場合でも同断でございますが、ふだんでも、いざというときに、中からあくような構造にしなさいと、たとえば押したらあくんだと、外からはあけにくいというふうなこと、何かそういう構造を規制するというふうな考え方をしているわけでございます。その一部は、今度の政令の改正でも取り入れているわけでございますが、ただ、それをしも、また特殊な条件のことを考えて設備としてありましたのを、臨時にかぎかけてしまったということまでになりますと、実際上は非常に取り締まりにくいのじゃないかというふうに考えております。いずれにしましても、そういった行為の規制というものを、建築技術系統でずっとやっているものをどこまで押え切れるかということは、非常に問題でございますが、極力その方向に進みたいというふうに考えているわけでございます。  それからもう一つの点でございますが、特に増築増築というふうに重ねていくわけでございます。防災のための間隔が必要というふうなことでもございますが、これは一番望ましいことではあるわけでございますが、実際問題としまして、いろいろな敷地関係その他によりましてやはり相当くっつくとか、もっと言いますとほとんど一体にして増築してしまうということもあるわけでございます。その際の区画の構造とかそういったようなものにつきましては、仰せのとおりわれわれとしてもそれをはっきりさせたいというふうなことがございまして、今回の政令の改正におきましても、実は、従来とも防火区画がいざ火事となったらちっともおろしてくれない。ほとんど使われていないということからいいまして、火災時にはもう自動的にシャッターがおりるという、そういう構造にしなさいという規定をつくっているわけでございます。したがいまして、特にいまのような別むねで増築を重ねていくということそのものよりも、ある程度まで大きくなってきますと、やはりその防火区画をはっきりした性能のいいものにしたいというふうなことを中心に考えているわけでございます。
  47. 武内五郎

    武内五郎君 いや、いまのはそれでいいがもの足らぬ。たとえば非常口設置されているという図面がある。ところがない。はしごがある、避難場所があるという図面だがそれがない。竣工検査とかなんとかいうのがあるだろうが、それを一体見たのかどうか。もしなかったらそれはとんでもない話だが、これからも十分注意して図面どおりにやること、そしてかりに敷地が小さいところであったら、それに適応した建物建て防災のための間隔を置くべきじゃないか。その図面を審査することが必要じゃないか。敷地の大小によってしかたがないということではない。敷地の大小によってカニが甲らに似せた建物をつくるようにやっていったらいいじゃないか。その点を十分注意するように。
  48. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 先ほどのお尋ねで消防法令関係についてお答えいたします。  第一の避難器具設置されていなかったという点は、私どもも調査いたしましたところ、設置されておりませんでした。これは消防法令によりまして、一定の種類の避難器具設置しておかなきゃならぬことになっておったわけでございますが、それの違反であったわけであります。なおこれについては、基準につきましては、水上温泉の事故のありましたあとで改正をいたしておりますので、今回、さらに避難器具の点について改正をするということは、ただいまのところ考えておりません。  それから避難設備のところにこれを妨害するようなものを置いているという点につきましては、火災予防条例でそれを禁止をする規定がございますので、この条例違反ということになるわけでございますが、この条例には罰則がございません。で、防火管理者の責任として、そういう避難施設の適正な管理を行なうように、消防法規定をいたしておるわけでございます。この点につきましては、今後防火管理者に、ただ上つらだけじゃなくて一切行き届いた管理をいたしますように強力な指導をしてまいりたいと思っております。  なお避難設備、その他の設備避難関係のある設備についてでございますが、今回の事故におきましては自動火災報知設備がございましたけれども、これが当日作動しないようにしてあった、あるいはまた誘導灯がございましたけれども、誘導灯が停電であかりがついてなかったというようなことも発見されるわけでございます。そこで、この自動火災報知器なり誘導灯につきましては、停電がございましても消えないように、非常電源を必ず付置しておかなければならぬということを今回義務づけるように、消防法施行令の改正をいたすことにいたしております。ただいま大体成案を得ましたので、遠からずそれが公布できる運びになっております。
  49. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 私から長官に申し上げますが、武内理事の御質問は、消防法施行令二十五条に違反をしておる、こういうことを指摘しておられると思うのです。事実、消防法施行令二十五条によれば、地階の場合は避難はしご等、二階の場合はすべり台その他、三階も同様、四階または五階は救助袋、六階以上は救助袋、避難橋というふうに具体的に規定してあるのです。それすらなかった。わずかにあった避難口にはものが置いてあった、こういうことを現地調査の結果を言っておられるわけなんです。それを御確認になって今後どう具体的に対処されるか。先ほどは検討するというようななまぬるい御答弁がありましたから、続けて御質問があっておると思うのであります。と同時に、十二月上旬には立ち入り検査を行なっておる、その際口頭で指示したが明確でないと言われておる。非常口の表示があっても、事実上それは役に立たないような状態にあった、これに対して口頭で指示が行なわれたか行なわれないかわからない、こういう点についても問題が付随しておる、それをどう御解明になっておりますか。また、火災予防条例準則でいきますならば、二十三条によれば裸火使用を禁止しておるにもかかわらず裸火使用をしておった、ここにも問題点があるやにうかがえるのであります。はたして郡山市の火災予防条例は準則に基づいて適確に二十三条その他で裸火使用を禁止しておったかどうか。そういう点について具体的に精査をされ、いかようにこの問題に対して責任を明確にし、今後の対策を講じられるかということを、武内理事は現地調査に基づき、先ほどの調査報告の中にもるる述べられて当委員会の意向が明らかになっておるのであります。それを体してあなたに熱意のある御答弁をわずらわしたい。あなたが御答弁ができない点については、鯨岡副長官から御構想なり、あるいは建設省の渡辺政務次官もおいでになっておるようでありますから、高度の政治判断に基づく御答弁をお願いをいたします。
  50. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 私途中から出席をいたしましたので、前後の関係よくのみ込んでおりません点がございましたならばおわびを申し上げます。  ただいまお尋ねの点でございますが、消防法施行令の二十五条の避難器具に関しましては、これは磐光ホテルの場合におきましては、明らかに違反をいたしておりました。この点につきまして現地消防庁から、昨年の査察の際指導をした、こういうふうに報告を受けておりましたが、文書でもってきちんと改善をするようにという命令を出していなかったようであります。そこで今回私どものとりました措置は、残存部分ニュー磐光という部分でありますが、この部分におきましてなお同様避難器具設置について基準違反の点がございまするし、その他自動火災報知器消火栓等々基準に適合していない点がございますので、その点につきましては消防法の十七条の四の規定による基準適合に関する措置命令を、郡山消防長に勧告をして出させました。なお、その残存部分については、そのような基準に適合した状態になって宿泊客の安全の保障が期待できるという状態になるまでの閥、消防法第五条の規定に基づいて使用停止を命ずるよう勧告をし、そのとおり措置をいたしております。それから裸火使用についての火災予防条例の点でございますが、この点は私どもが調査いたしましたところによりますと、郡山市におきましても準則どおりの条例を制定しておりましたが、消防署におきまして磐光ホテルにおいて裸火使用があることを確認をして、これによって禁止をするという措置はとっていなかったようであります。この点は消防機関としては私は手落ちであった、かように存じます。
  51. 鯨岡兵輔

    政府委員(鯨岡兵輔君) ただいま武内委員の御質問は、きわめて常識的な当然なことをおっしゃったわけでありまして、多分にお怒りの気持ちを含めてのお話であったと承ったわけであります。当然るるお話があった中に感ぜられましたことは、建築違反ではないか、当然なければならぬ空地もなければ、せっかくある入口も荷物が置いてあるし、そういうことに対してどのように考えるかということでありますが、総理府といたしましては、決して責任を回避するわけではございませんけれども、それぞれ各省庁において担当されておるところでございますが、先ほど申し上げましたように、このごろは時代の変遷によって、きびすを接して観光旅行等が盛んでありますし、それに追いかけられるように増築、改築が行なわれるような実情にかんがみて、各省連絡の上、これを統轄して対策を立てなければならぬことは申すまでもないことでありますので、いま行なわれておるものの中で違反のあるものは、どしどしこれは厳重に調査をし、法に照らして処罰をし、それが行なわれないところは営業停止をし、さらに今後起こることが心配されるそういう災害に対しては、再びかくのごときことのないように各省連絡を密にして、いままで申し上げたような点にのっとって処置をしていきたい、こういうふうに考えているわけであります。
  52. 渡辺栄一

    政府委員(渡辺栄一君) ただいまの武内委員の御発言につきましては、まことにごもっともな御意見でありまして、私どもも有馬温泉に続きまして今回のような事例が発生いたしましたことは、まことに遺憾であると思います。特に有馬温泉の事件後におきまして、査察点検を行ない、また五月一日を期しまして施行令の改正を行ないまして、必要部面につきましては改善命令を出すというような強固な意思を持っておりましたにかかわらず、このような事態を招きましたことは、私どもといたしましても、まことに遺憾に存じておる次第であります。  そこで、今度の問題等考えますと、御承知のように現行の法律では、内装制限、避難階段、廊下の幅等の規制につきましては、劇場映画館、公会堂等に限定的に規定をされておるのでございまして、今回の事例のように旅館大広間ショーをするというふうな、いわば中間的な用途につきましての明文がないのであります。こういうような例につきまして、本国会に提案を予定しておりまする建築基準法改正につきましては、十分考えてまいらねばならぬと思っておるのであります。特に災害予防の面につきましては、人命尊重の立場を最重点といたしまして、避難施設、内装制限、非常電源等の建築設備また維持管理等につきましても、基準を強化整備したいと思いますし、罰則につきましても強化いたしまして万全を期してまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  53. 武内五郎

    武内五郎君 たいへん力強い御答弁を両政務次官からいただいたわけでありますが、しかし私は違反はやはり違反ではっきりただしていかなければならぬ、間違ったところは間違ったところで正していかなければならぬが、別にこれで罰するとか何とかいうことよりも、まず、あるいは今晩起きるかもしれない災害に対する万全の措置をとることが第一だと、こう考えるので、その点を十分御考慮願いたい。しかし、それにはあるいはいろいろな抵抗が出るかもしれません。政府から特にいま力強いお話を承っておりまするが、抵抗が出るかもしれない。特に先ほどの毒ガスまたは煙が出るという新建材に対する問題なんかになると、あるいは抵抗が出るかもしれない。そういうようなことが考えられるけれども、それはやっぱり断固として屈せずに、災害から人命を守るという施策のほうが正しいと思いますので、どうかひとつそのつもりでやっていただくようにお願いして、私はほかの委員もおりますから、これで終わります。
  54. 多田省吾

    多田省吾君 私は前回もこの問題で質問させていただきましたけれども、その後消防庁長官現地を視察されたようでございますし、また当委員会におきましても、武内団長を中心にして視察をしたわけでございます。その結果またいろいろ新しいこともわかってきたと思います。  まず、私が政務次官にお尋ねしたいのは、先ほどおっしゃったように、なるほど佐藤総理はこの事件が発生した直後閣議で、人命尊重の立場から、この悲惨な事故の再発を防ぐためには、消防庁はじめ各関係省庁が、一片の通達行政に終わらずに、必要に応じてホテル営業停止など断固たる措置をとるように指示したと報道されております。で、私はなぜこういったことが、いまこのごろになって言われるのか納得できない。水上温泉あるいは有馬温泉の大事故の際に、なぜそういった措置がとれなかったか、そうしていまそういう佐藤総理の明言があるにもかかわらず、やはりのど元過ぎれば熱さ忘れるのたとえもありますように、またまあまあという姿——同じような姿で次の災害が出るまでなおざりにされていくのではないか、という懸念も十分感ぜられるわけでございます。で、私はそういった消防法建築基準法改正あるいは政令、施行令の改正も当然必要でありますし、また先ほどからの質問にありますように、消防庁関係、すなわちあの市の消防署でも当然措置命令を出さなければならない分野においてさえ行政指導に終わっておる。そのために罰則の規定も全然該当しないというような答弁もございましたが、そういった姿というものは、結局、業者といわゆる官庁のなれ合いではないかと、このようにも思えるわけです。そういう姿勢のままでいくならば、せっかくここで各関係者が決意したことがまたなおざりに付されて、また次の災害につながっていくということが十分考えられる。したがって、この佐藤総理の人命尊重の閣議における指示が消防庁はじめ各関係官庁、省庁において十分それを守っていく、そしてあくまでも私たちにとって一番大事なのは国民の生命保護にあるのだ、国民の生活保護にあるのだ、こういう立場から今後の災害に対しての措置を考えていくということにならなければならないと思いますが、その決意のほどをまずお伺いしたいと思うのでございます。
  55. 鯨岡兵輔

    政府委員(鯨岡兵輔君) いままで両先生からのお話にお答えをいたしたことを、さらに確認せよというように承ったわけでありますが、申し上げましたように、有馬温泉のとき、さらにはその前から、水上温泉のころからたびたび総理も心配しておられることは、先生御指摘のとおりであります。したがいまして、再びかくのごときことのないようにというので、いま建設政務次官からも御披露がありましたように、総点検をいま命じておるわけであります。不幸にしてそのさなかに起きましたことは、何とも残念でならないわけでありますが、きょうにも起こらないとも限らないこれら災害に対して、万全の態勢を整え、再びかくのごときことのないように期するということにおきましては、十分覚悟をきめているわけであります。そしてその覚悟に基づく努力もせっかくいたしているわけでございます。今後とも御激励のほどをお願い申し上げる次第であります。
  56. 多田省吾

    多田省吾君 せっかくの御答弁でございますけれども、私は有馬温泉以来、またこの事故以来、まだ消防庁においても、関係省庁においてもほんとうに国民の立場に立ったいわゆる防災を行なわれておられるかどうかということに対して、大きな不安を感じている次第でございます。たとえば有馬温泉大火事故から始まったいわゆる全国七千カ所における総点検、温泉旅館ホテル等の総点検がなるほど始められておりますけれども、その昭和四十三年十二月十二日におけるこの磐光ホテルに対して行なわれたいわゆる査察も、結局は文書で命令していなかった。避難器具設置についてただ単に行政指導で警告しただけである。私たちが視察し、また消防庁長官も視察されて、いま武内理事からもその一片が質問されたわけでありますけれども、あのホテルの二階の非常階段のごときは、まことにふらちきわまる姿であったと思われます。また、一階の非常口についても、外から施錠しているというような姿、ああいったことはもう当然行政指導だけでなくて措置命令としてやるべきだと思います。そういった面で、私はいわゆるそういった大ホテルの業者の方々は、社会的に力を持っておられる。ですから、ある場合には地元の消防署の役員になっておられるような方もおられます。なってない方だって結局は地元の消防署に嘆願したりあるいは話し合ったりして、そういった措置が強くとられないようになれ合っている姿もあるのじゃないかという懸念も、十分考えられるわけでございます。ところが、一般庶民は、ちょっと軒が少し出ているとか、高さがちょっと違うとか、そういったことでずいぶん関係省庁からもきびしい措置命令等が下っている例があります。ですから、私は最もたくさんの方々をやはり扱うところのこういった大きな温泉旅館等においては、もっともっと規制をきびしくすべきではないか。このように思われるわけでございます。そういう観点から、たびたび事故のたびごとに、幾ら佐藤総理が声を大にして人命尊重を叫び、またいわゆる断固たる措置を叫んでも、いまのままではなかなか改善されないのではないかというようなことを心配するから、あえて私は重複するようでありますけれども、質問申し上げたわけでございます。こういった観点から、一体それでは、全国七千カ所における有馬温泉大火以来のいわゆる温泉旅館ホテル等の総点検はどの程度現在進捗しておるのか。またその問題点、さらに総理が言ったところの不良ホテル営業停止なんかを指示して、断固たる措置をとられたような姿が一件でもあるのかどうか。その点を明確に御答弁願いたいと思います。
  57. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 有馬温泉火災がございました直後、私のほうから全国の消防機関に対しまして、温泉観光地の旅館ホテルの一斉点検をやるように指示をいたしたのであります。これがどの程度進捗しているかというお尋ねでございますが、実はこの温泉観光地も、所によりますると非常に多数の旅館ホテルをかかえているところもございまするので、私どものほうの通達でぱ四月一ぱいに点検を完了するようにということで指示をいたしたのでございます。したがいまして、現在まだその点検をやっておる最中でございます。そういうさなかで今回のようなことが起こりましたことは、まことに返す返す残念に思う次第でございます。実は十三日の日に全国都道府県の消防主管課長会議を招集いたしまして、その席上におきまして、私から一応この四月末日までに完了するように行なうよう言うてあるけれども、今回の事故にかんがみてできるだけ早く完了するようにさらに督励をしてくれということを申しておいたのであります。したがいまして、その際、幾つかの県から現在実施している状況について、若干口頭で報告もしてもらったのでありますが、まだそういうことでございまするので、ちょうどその途中で、しきりにやりつつあるところであります。特に所によりましては、今月末から来月初めにかけまして行なわれます春の火災予防運動の週間に重点を集中して、そこで相当進捗をはかろうというような計画もあるようでございます。しかし、御心配のように、できるだけこれを完了して、そして欠陥を改善するように、この上とも督励をしてまいりたいと思います。ただ、急ぎましても、上つらだけで徹底していないというようなことがあってはいけませんので、今回御指摘ございましたような今回の事故の教訓も、この際十分話をいたしておいた次第でございます。  それから第二のお尋ねでございます断固たる措置をやったのかということでございますが、有馬温泉の満月城に対しましては、消防法の五条の規定に基づきまして、残存部分に対しまして、使用停止の処分をいたしました。それからなお、焼失した部分をも含めまして、消防法違反の事実に対しまして、告発をいたしました。今回の磐光ホテルに対しましては、先ほど武内委員の御質問にお答え申し上げましたような措置を、それぞれとった次第でございます。
  58. 多田省吾

    多田省吾君 査察また総点検についてでございますけれども、なるほどこの磐光ホテルに対しましても、地元の消防署が相当何回も指導している。昭和四十三年の五月十日から十二月十二日までほぼ六回ほど行政指導をしているようでございます。ただし、いま申し上げましたように、措置命令というようなものは出していない。したがって、せっかく十二月十二日に避難器具設置について警告した。しかしそれだけにとどまって、結局は事故のとき、この二月五日までほぼ二カ月近くもありながら、階段の設置も行なわれなかったわけでございます。こういったことは、先ほど消防庁長官がおっしゃったように、これは地元消防署として非常に遺憾なことであったと思いますけれども、これは大きな欠陥だと思いますけれども、さらにもう一つ、十二月十二日の予防査察でございますが、ホテル側の都合をあらかじめ聞いて、そして消防演習を兼ねて行なっておりますけれども、あくまでもきびしい予防査察とは言えないような姿だと思うのです。ですから、事故が起こったときに、現にその証拠として、非常口があいてない、あるいは火災の報知が十五分もなされなかった、あるいは従業員避難誘導についても全然なってない。もうあらゆる欠点がさらけ出されているわけです。十分な査察、あるいは十分な演習等が行なわれていれば、そういうおかしなことは、私は起こらないはずだと思うのです。そういった面から、この予防査察にしましても、演習にしましても、あるときにはやはり抜き打ち的にやるとか、こういったきびしい考え方も必要ではないか、このように思うのです、第一点は。  それから第二点は、これはこの前の委員会でも消防庁長官にお願いしたわけでありますけれども、一般飲食店が保健所の査察によって保健衛生のために優、良、可等のランクをつけているように、やはり国民の立場から、火災予防の面でも、消防庁査察によってABC等のランクをつけて火災予防を徹底させるとか、あるいは旅館に着いたならば、いま航空機等でやっているように、避難口あるいは避難通路等の姿をあらかじめ義務として通知するとか、そういったことも、この日本の旅館の現状から考えて、やっていかなければならないのではないかということも、この前お願いしたわけでありますが、検討するというおことばでございました。この三つの点に関して、現在消防庁長官としてどのように考えておられるのか、お答え願いたいと思います。
  59. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 第一の点でございますが、先生のおっしゃいますとおりに私も考えております。従来、消防機関予防査察をいたしましても、いわゆる指導ということで、改善させるということに重点を置きまして、再三指導いたしましても、改善の実があがっておりませんものに対して、断固たる法的措置をとるということにつきましては、率直に申してなまぬるい態度であったと思います。この点につきましては、有馬の事故以来、きびしい態度で断固たる措置も辞さないというような指導はいたしているわけでございまするし、今後の査察にあたりましても、仰せの通りな態度で強く指導をしてまいるつもりでございます。  それから第二の旅館ホテル防火施設につきまして、ABCというような格づけをして、表示をしたらどうかというこの前の御提案でございました。これはその際申し上げましたように、関係省庁の連絡協議会の席上で、これも検討の問題点の一つに取り上げまして、現在検討をいたしているところでございます。  それから第三番目の避難経路の案内につきまして、これを励行をさせるために法律義務づけたらどうか、こういう御提案でございました。この点につきましては、部内でその後いろいろ相談をいたしているわけでございますが、法令でもって義務づけるということにつきましては、なおもう少し研究をさせていただきたいと思っているわけでございます。法的に義務づける、つけないは別といたしまして、旅館に到着いたしましたならば、まず宿泊客に対して避難経路の案内を確実に励行させる、こういうことが、これはぜひともやらなければならないことであると存じます。この二十五日から来月の十三日まで、春の火災予防運動の期間でございます。これは全国的に火災予防運動を実施するわけでございますが、その第一の重点項目に避難経路の案内ということを取り上げることにいたしまして、全国にその旨を通達をいたしております。そこで、できるだけこの際指導によって必ずそれを励行させるようにまずやってみたい。その上でなお御提案ございましたように法的に義務づけるかどうか、なお検討をしてみる、かように思っている次第でございます。
  60. 多田省吾

    多田省吾君 消防庁長官には、最後にもう二点だけお願いしたいと思います。  その一点は、今度の磐光ホテル火災におきまして、この前も質問したのでございますが、人命尊重というたてまえから、あくまでも、むしろ防火活動よりも人命を救助するという面をまずまつ先に行なわなければならない。これは消防庁長官もそのとおりだと答えられましたけれども、今回の火災について、消防庁長官も視察されているわけです。結局、新建材によって起こったものすごい煙また有毒ガス等によって窒息死されているという方が、ほとんど大部分でございます。それからほとんど二十五人ですか、一階の非常口の近辺に倒れておられたわけでございます。いわゆる地元の消防署がかけつけたのは、火災発生後もう二十分近くたっていたときであると思いますけれども、なぜその下に煙に巻かれて倒れている状況が全然わからなかったかという問題ですね。これは、なにも私は今回のことだけを非難する気持ちはありません。やはりそういう同じような旅館ホテルがまだ全国にたくさんあります。今後もし火災が起こったような場合は、今回の貴重な体験をもとにして、やはり消防庁全体で対策を練っていただいて、まず人命救助という立場から、そういう煙に巻かれて、あるいは有毒ガスに巻かれて倒れている方もどこかにいるに違いないというような立場から、消火だけではなしに、やはり人命救助を行なうために、そういった今後の人命救助の方策というものを確立しなければならないと思います。これは水上温泉、有馬温泉等の例もありますし、今度の磐光ホテル火災はもっとも重大なこれは例になったのではないかと思いますけれども、今回の人命救助に関して、消防作業の中において欠ける点はなかったのか。そうして今後どうなさるつもりなのか、それが一点。  それからもう一点は、先ほど佐藤理事からもいろいろ質問があったのでございますけれども、それに関連しまして、先日の日曜の夜も、東京品川の廃品回収会社が焼けて、母子四名が焼死された悲惨な事件がございました。こういったスラム街、危険家屋が都内にも、また全国各地にもたくさんあります。そういった危険家屋に対する、いわゆる違反建築に対する注意、警告というものがほとんど、建設当局からも消防庁からも行なわれていない。これは非常に残念なことでございます。あるいはそのほかにも、火災が起こったならばたいへんだと思われるようなところがたくさんあります。まあ地下街も最近は、東京駅あるいは大阪等においても、ますます発達する一方でございますし、これも週刊誌等においてもうすでに取り上げられて、警告されております。あるいはこの前、去年のあの地下鉄の火災等にかんがみまして、地下鉄、それから都心部の高層建築物にも、避難階段や非常口が非常にないものもありますし、防火管理も、火元責任者もいないようなビルや事務所等もたくさんあります。こういった一連の、いわゆる火災が起こったら重大な事故にも発展しかねない危険な個所がたくさんありますけれども、消防庁として一体どのようにこれを考えておられるのか、第二点はこの問題でございますが、この二点をお尋ねいたします。
  61. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) 第一の点でございますが、これは前回もお答え申し上げましたように、私どもも、消火よりもまず人命救助を優先すべきであるということは、これは一貫した考え方で指導をいたしております。今回の事故の場合におきましても、地元の消防隊がかけつけまして、そのような考え方でなお数名の者を救出をいたしておるわけでございますが、いかんせん、その通報が、覚知が非常におそかったために、現場へ到達いたしましたときには、先生も現地でお聞きになられましたような状況でございました。すでに、中でなくなられた方は、そのときもう煙でなくなられておったものと推定されるわけでございまして、救助いたしました者の数はしたがって少なかったわけでございますが、消防隊の活動といたしましては、いつでも人命救助を優先するという考え方に基づいておるわけでございまして、その点は今後なお徹底するように指導をいたしたいと思うのであります。  そこでまあ、やはり問題は煙に対する対策であろうと思うのでありまして、輝に対する対策といたしましては、建築基準法関係でも、建設省御当局でいろいろ検討をしていただいておりまするし、私どもも早く火災を覚知をして、早く避難をさせるということを、消防の立場からも考えていきたいということで、今回政令の改正をいたしまして、新たに旅館ホテルにつきましては煙感知器の設置義務づけることにしよう、あるいは先ほど申し上げましたように、自動火災報知器なり誘導灯なり、これも非常電源を付するようにしよう、自動火災報知器は既往のものにもさかのぼらせるようにしよう、というような政令案をいま準備をいたしておるところでございます。なお、煙に対しましては、科学的、技術的にもなお研究を要する問題が非常に多いようでございまするので、私どもの消防研究所にもその点を指示いたしまして、研究を急がせておる次第でございます。  それから第二のお尋ねの点でございますが、これは率直に申しまして、私は非常にこれからの大都市における地下街などは心配だと思っております。で、都市における高層ビルあるいは地下街につきまして、従来の建築基準法関係の規制は、私どもの立場から見ますと非常に不完全だと思います。また、私どもの消防法関係におきましても、なお万全でなかった点がございまするので、それらの点につきまして一昨年消防審議会でいろいろ御検討願って、その答申に基づきまして、建設省のほうにも建築基準法改正の中で取り上げていただくように強くお願いもいたしておりますし、私どもの関係でできますことは法令改正措置も一応とっておるわけでございます。特に先生のお話もございましたように、まあ私はやっぱりああいう高層ビルなんかの場合におきましては、屋内の避難階段というものが最も人命救助、避難の上については有効ではないか、あるいはまたバルコニー、ベランダのようなものをつくることが有効ではないか。過去の火災事例なんかからもそれらの点を痛感しておりますので、それらも建省設のほうに検討をお願いしておるような次第でございます。
  62. 多田省吾

    多田省吾君 最後に、それでは建築基準法並びにその施行令の改正問題について一点だけ御質問したいと思います。  先ほどからの政務次官の説明でも、避難施設とか、あるいは内装材料の制限とか、罰則とか、こういったものを含めて、そして旅館ホテルにもこれを適用させるということで建築基準法改正するというお話がございました。また施行令の改正につきましては、特に内装材料の制限をするというお話でございましたが、先ほどからの話し合いでわかりますように、いわゆる合成樹脂関係の新建材に対して、どのように煙や有毒ガスが出るかという調査もまだまだはっきりされておりません。こういった段階で改正したところの建築基準法あるいは施行令というものが、今後ほんとうに有効に活用するかどうか、これが非常に問題だと思います。具体的に、特に内装材料の制限等についてこういう改正をするのだから大体だいじょうぶだろうとか、あるいは今後相当改善されるというそういう見通しですね、それおわかりの範囲でけっこうですからお答え願いたい。
  63. 前川喜寛

    説明員前川喜寛君) いま、政令の改正で今度やりました分でございますあれでは、いまの話に出ました合成樹脂とかそういったもの、これは普通は煙を相当出すものでございます。したがいまして、あの燃えにくいものでありましても、難燃材料に合格しましても、準不燃材料、不燃材料にはいかないわけであります。従来は廊下とかそういったものにつきましても難燃材料を認めていたわけであります、まあ燃えにくいという理由でです。今回の改正では少なくとも、部屋の中は別としまして、廊下、階段等につきましては、その難燃材料を全部禁止したわけであります。その点でまず避難経路に相当するところにつきましては、煙を出す材料は一応だめという形をとったわけであります。  それから、今後のいろんな方法でございますが、合成樹脂といいましてもいろんな材料があります。中には非常な性能のいいものもあります。けれどもいわゆる新建材ということで一般に言われているものは、これは実は燃えにくい材料ではございますけれども、煙を非常によけい出すという材料が普通でございます。それでそれにつきましては、実は今度のいろんな試験方法とかそういったものをはっきりいたしますと、それは今度難燃材料にはしないという形を考えております。まあどの程度煙を出すかという、このどの程度が非常にいま実は問題でございまして、普通の木でも実は相当煙を出すということも今度の火事でもあるわけでございます。著しく出すという程度をどこで切るかという点が、一つまた問題点で残るのであります。いずれにしましても、実は今度の法律改正、それに基づく政令ということで、今回全面的に避難の体系を整えるわけであります。おそくともそれまでにはまとめてしまいたい、こういうように考えているわけでございます。
  64. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 関連いたしまして、三つの点について質問いたしたいと思います。  まず第一は、消防庁長官に対してでございますが、先ほど多田委員質問に対して、客が旅館に着いた場合に、避難方法の明示、周知徹底、そういう点についてできれば法令化をしたい、そういうような考えでございますが、これは私はもう断じて法令化をすべきだ、客が旅館に着いたときにやはり避難方法、退避口、消火設備、そういうことを説明することは、客に対する安全意識を高め、また従業員にとっても、これは非常に毎日毎日が消火訓練である、そういうわけで、これを実施するのには、たいした金もかからない、すぐにでも実施できるわけであります。そういう点で、ひとつこの問題については、断固たる決意ですみやかに実践に移すべきである、私はそう思うわけでございますが、その点に対するお考えを聞きたいと思います。  それともう一つは、これも先回の委員会において多田委員より要望のあった点でございますが、この総点検の結果をA、B、C、D、なりのランクをつけて、ちゃんと明示すべきである。そうして現在あの日本交通公社の時間表の裏に旅館の一覧表がありますが、ああいうところに一つのランクを設けて、消防設備A、B、C、D、とそう書いておけば、われわれが旅行する場合にも、この旅館が非常に安全設備がいいと、そういうわけで、そうなれば旅館のほうも、Dぐらいであれば、客も来ない、やっぱりAにしなければならない、そういうわけで真剣になるんじゃないかと思うのです。また、いま私の言っているようなことは、これはもうやろうと思えばすぐでもできる問題でございます。そういう点で、まずこの二点をすべからく実践に移し、再び災害のないような具体的な対策をとっていただきたい、そのことを要望する次第でございます。  それともう一点は、総理府総務副長官にお願いするわけでございますが、先ほどから研究体制の推進、そういう点について質問ございました。これは昨年の委員会においても私も質問したわけでございますが、毎年毎年数千億の災害が起こる。その災害の救助は大事であるとともに、再びそういう災害の起こらないように研究を進めていかなければならない。ところが、そういう点が非常に先ほどの話があったようによくないわけでございます。よくないよくないと言っておっても、いつまでもよくならない。すでに先ほど来言いましたように、この防災基本計画にはもうちゃんとそのことは明記してある。先ほど佐藤委員のほうから、これを改正すべきだ、もちろん改正も必要ですけれども、まず現在の法律も満足にやっていない、そういう点が問題と思うわけであります。そういう点で、今回は本日はそういうことをいろいろ質問する時間もありませんので、どうかこの次の委員会のときに、そういう防災規格の研究体制がどうなっておるのか、この防災基本計画に書いてあるそういう防災規格に対する研究体制がどのようになって、そしてその横の連繁はどういう形がとられているか、そしてまた、それらに対する予算はどうか、そういうような点を次の委員会において資料をもって説明をしていただきたい。まず現状を知ることが次への前進への第一歩じゃないかと思います。そういう点で、総理府総務副長官にそのこともお願いするわけでございますが、その点についての御返事を聞きまして、私の質問にしたいと思います。
  65. 佐久間彊

    政府委員(佐久間彊君) ただいま私に対しまして御要望のございました避難経路の案内を義務づける問題と、旅館防災状況につきましてランクをつけるという問題でございますが、先ほどもお答えいたしましたように、私といたしましては、誠意を持ってこの問題を検討してまいりたいと存じます。
  66. 鯨岡兵輔

    政府委員(鯨岡兵輔君) 防災基本計画がだんだん時代にそぐわなくなってきた、これは御指摘のとおりであります。そこで、これを直すためには諸般の研究が必要である、その研究をしていることもわかるが、現在の段階でどうなっているか、こういう御質問であったと思うわけであります。そこで、現在はこうなっておりますというようなことについて、できるだけの資料を整えて、次の委員会までに用意をせよということでございますので、さよういたしたいと思います。
  67. 上田稔

    上田稔君 時間がございませんので、ごく簡単にひとつ建設省のほうにお願いをいたしたいと思うのですが、建設省のほうでは今度の国会におきまして建築基準法改正を考えておられるということでございますが、それについて二、三お願いを申し上げたいと思うのでございます。  第一は、非常口の階段ということに対する問題でございます。このたびの火災を見てみますと、この建築基準法によりますと、直通階段を避難階につけろ、こういうことになっております。その直通階段に至る距離まで明示されておりますが、そうすると、たいてい二つつけてある。それが屋外であっても屋内であってもかまわない、こういうふうになっております。ところが、今度の火災を見てみますと、この両方の階段が煙が、あるいは炎が上がる通路になっております。そうしますと、上におる人はどちらへ逃げていいのかわからないというような状態になりますので、ぜひともこの非常階段といいますか、屋外に階段をつけていただいて、そして逃げられるようなことをぜひ考えていただきたい。そして、しかも現在きめられておりますのは屋外に設けるものは木造であってはならない、鉄製でやれというようなことになっておるわけですが、そういうことだけではなくて、避難をする人数というものを考えて、そうしてその幅というようなものまで規定をしていただきたい。で、屋内におけるこの直通階段のほかに非常階段というものを考える。しかもその非常階段は幅を相当広くとってもらう、こういうことにしていただきたいと思う。一例をあげますと、現在の参議院会館、衆議院会館、あの会館でも、火事が下で起きましたら、両方の階段から煙と炎が上がってまいります。そうしたら上にいる者はおだぶつになるのじゃないかと思いますが、こんなことはぜひとも建築基準法改正のときに考えていただきたい。  第二点は、先ほどちょっと触れたのですが、消防法によりますと、第七条でございますか、建築許可等の同意という項がございます。これはその建築をするときあるいは用途変更をするときには、消防法によって消防の同意を得るようにということが入っておりますが、こういうことが入っておりますので、ひとつ厚生省のほうとよく御相談をいただきまして、そうして興行場法等のああいう特殊建築物許可をされるときに、この建築基準法監督しておられる方の同意を得るというようなことにしていただくと、先ほど非常に心配しておったようなことがなくて両方ともうまくいけるようになるのじゃないか、こういうように思うわけでございます。その点をひとつお願いをいたします。  第三点としては、この非常口が今度の火災のときにはかぎがかかっておって出られなかった。これを、まあ国鉄のほうでは非常にうまく考えておられて、非常のときにはどこか破ってコックをひねるとあくというようなことになっておりますが、ああいう式の施錠に必ずするというようなことをきめていただくということがこれは必要なんじゃないかと思うのでございますが、以上三点でございます。こういう建築基準法というのは、非常に幅の広い法律でございますから、なかなかきめこまかくはいきませんでしょうけれども、こういう人命に関する問題でございますから、ぜひきめこまかくそういう点をおきめをいただきたいと思うわけでございます。以上でございます。
  68. 渡辺栄一

    政府委員(渡辺栄一君) ただいま上田委員からの御発言があったわけでありますが、今回の事例にかんがみましてきわめて適切なる御発言であると思っております。したがいまして、今回のただいま準備をいたしておりまする建築基準法の中におきまして、避難階段の義務づけと申しますか、さらに屋外あるいはその幅員等、きめこまかく規定をしろと、こういうようなお話でございますが、十分御趣旨に沿うように私ども法案を準備いたしたいと、かように考えております。  第二点の建築基準法に照らしまして消防のほうが許可をいただきます場合に同意を与えるというような問題、あるいは第三点の施錠の問題等につきましては、非常に今回の非常口が施錠されておるというような事例にかんがみましても、非常に大事な問題であると思いますが、これは関係各省との関係もございますので、十分検討いたしまして、極力御趣旨に沿うようにいたしたいと、かように考えております。
  69. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) ほかに御発言もなければ、本件に関する質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  70. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 次に、本委員会の決議に関する件についておはかりをいたします。  まず、決議の案文を朗読いたします。    ホテル旅館等火災による事故防止に関    する決議(案)  近時、温泉地等に頻発する火災が、多数の人命  を損傷している実情に鑑み、政府は、人命尊重  の基本に立って、次の諸点につき法的措置なら  びに行政指導を強化すべきである。  一、ホテル旅館等について、興行場劇場、   演芸場等を併存する場合においては、厳に宿   泊部分を分離するとともに、防火施設及び設   備の規制を強化し、かつ、避難施設、器具の   整備を図ること。  二、特殊建築物における内装制限の基準を引き   上げ、ことに有毒ガス発生のおそれのある建   築材料の使用の規制をすること。  三、ホテル旅館等経営者は、常に宿泊者の   安全に留意し、旅行者の自覚を喚起するとと   もに、避難方法の明示とその周知徹底及び従   業員の誘導訓練の強化を図り、火災発生時の   避難誘導に万全を期すること。  四、消防関係者は、ホテル旅館等に対し、厳   格な査察を実施し、改善等の措置が適切に行   なわれているか否かを常に確認するよう配慮   すること。  五、煙についての科学的調査研究については、   関係各省の緊密な連けいのもとに推進するこ   と。  右決議する。  本決議案を、本委員会の決議とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、本決議の取り扱いにつきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  ただいまの決議に対して、政府から発言を求められておりますので、これを許します。鯨岡総理府副長官。
  73. 鯨岡兵輔

    政府委員(鯨岡兵輔君) ただいま御決定いただきました決議につきましては、政府といたしましては、十分にこれを尊重して検討してまいる所存でございます。     —————————————
  74. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 次に、「昭和四十三年における特定地域に係る激甚災害の指定及びこれに対し適用すべき措置指定等に関する政令」について、総理府から説明を聴取いたします。
  75. 鯨岡兵輔

    政府委員(鯨岡兵輔君) 激甚災害の指定について御報告申し上げます。  「昭和四十三年における特定地域に係る激甚災害の指定及びこれに対し適用すべき措置指定等に関する政令」の制定につきましては、昨年の十一月に局地的激甚災害に対処するため、市町村を単位とする新たな局地激甚災指定基準を決定し、昭和四十三年災害から適用すべく当委員会でも御報告いたしましたところでありますが、その後関係各省庁において鋭意作業を進めてまいりました結果、二月十四日の閣議において決定し、十八日政令第十三号をもって公布、施行いたしましたところでございます。  この政令のおもな内容は、次のとおりでございます。  激甚災害として指定いたしましたものは、えびの地震による災害であって、宮崎県えびの町及び鹿児島県吉松町の区域にかかわるもの、台風第七号による災害であって、岐阜県美濃加茂市、白川町等の区域にかかわるもの、八月二十日から同月二十三日までの豪雨による災害であって、北海道戸井町、青森県今別町等の区域にかかわるもの、台風第十号による災害であって、長野県阿南町、天竜村等の区域にかかわるもの等全部で十六災害であります。  これらの激甚災害に対しましては、激甚法第二章の「公共土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助」、第五条の「農地等の災害復旧事業等に係る補助の特別措置」、第六条の「農林水産業共同利用施設災害復旧事業費の補助の特例」、第十二条の「中小企業信用保険法による災害関係保証の特例」、第十三条の「中小企業近代化資金等助成法による貸付金等の償還期間等の特例」、第十五条の「中小企業者に対する資金の融通に関する特例」、及び第二十四条の「公共土木施設、農地及び農業用施設等小災害に係る地方債の元利補給等」の措置が、各災害の被害状況に応じてそれぞれ適用すべき措置として規定しているところでございます。  なお同時に、閣議決定によりまして、中小企業金融公庫及び国民金融公庫による低利融資を行なうよう措置もいたしております。  終わります。
  76. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 本件に対する質疑は、後日に譲ることといたします。     —————————————
  77. 足鹿覺

    委員長足鹿覺君) 次に、濃霧による災害対策に関する件について調査を行ないます。質疑のある方は、順次御発言を願います。   〔委員長退席、理事武内五郎君着席〕
  78. 武内五郎

    ○理事(武内五郎君) 足鹿君。
  79. 足鹿覺

    足鹿覺君 二月十三日、伯備線上石見−生山間並びに桜打線——これは奈良の付近でありますが、また最近は、昨日国鉄長野原線等におきまして、国鉄保線作業員が事故によって即死する等の悲惨な事件が続出していることは御承知のとおりと存じます。つきましては、この問題について、運輸省、国鉄当局、また警察庁あるいは労働省等、関係当局に対しましてお尋ねを申し上げたいと存ずる次第でございます。  まず最初に気象庁にお伺いをいたしますが、当日の濃霧発生の状況等について簡単に御説明をわずらわしたいと存じます。
  80. 柴田淑次

    政府委員(柴田淑次君) 事故当時の二月十三日の気象状況をまず説明申し上げます。  当日は、本邦の南方洋上に高気圧がございまして、九州方面に大陸から低気圧が近づいておりましたので、十三日の天気はだんだん下り坂に向かっておったのでございます。このために、瀬戸内海沿岸では早朝から非常に濃い霧が発生しまして視界が悪かったのでございます。たとえば岡山地方気象台の観測によりますと、岡山では当日の午前九時には視界は百メートル以下となっております。それからまたこの伯備線の沿線でも霧がございまして、沿線付近の、たとえば新見、それから矢神、それから久世などには気象庁の委託観測所がございますが、この観測所でも、午前中はところによって濃い霧を観測しております。一方、これに反しまして、中国山脈を超えました鳥取県側では、当日は、前日に引き続いて天気は晴あるいは高曇りでございました。霧は観測しておりません。また事故当時、現場付近には霧はなかったようでございまして、これは先ほど申しました気象庁の委託観測所などの観測結果を総合して推定してみても、現場付近には霧はなかったようでございますし、また現場付近の人も事故当時は霧はなかったと言っているようでございます。ところで二月十三日の事故当日は、この瀬戸内沿岸たとえば、岡山、広島、兵庫、大阪、京都、奈良、香川、愛媛などの瀬戸内沿岸の地方気象庁では、前日の十二日の夕方あるいは十三日の早朝から一斉に濃霧注意報を出しておりました。たとえば岡山の地方気象台では、前日の十二日の夕方の四時五十分に濃霧注意報を出しまして、十三日も引き続いて一般の警戒を求めておったのでございます。特に国鉄に対しましては、足鹿先生も御承知のように、気象庁と国鉄との間に鉄道気象通報という別種の規定がございますので、この規定に基づいて岡山地方気象台では、前日の十二日の午後四時五十分に岡山鉄道管理局に対しまして、実はこれは岡山の電務区でございますが、それに対しまして鉄道濃霧警報を発令いたしまして、伯備線に対しましても十三日も引き続いて濃霧の警戒を促しておったのでございます。ちなみに、鳥取県におきましては、当日濃霧の発生が予想されず、また現実にもなかったようでございますので、鳥取県については濃霧注意報も、また鉄道濃霧警報も発令されておりません。  以上、当日の概括の気象状況並びに各地方気象台のとった処置でございます。
  81. 足鹿覺

    足鹿覺君 ただいま気象庁長官から当日の山陰、山陽、四国方面、その他広範にわたる気象状況をお聞きしたわけでございますが、先ほども申し上げましたように、二月十三日午後二時十六分ごろ、伯備線の列車が霧でおくれまして、特に見通しの悪かったカーブで保線作業をしておりましたところへ突っ込み、五人が即死、一人が瀕死の重傷を負い、直ちに死亡をいたす日本の国鉄史上保線要員の事故死は、このたびの事故が最大であるという悲惨事が起きたことはまことに痛恨のきわみでありまして、遺憾千万に存ずる次第でございます。この件につきまして、私は死者の霊を心から弔うとともに遺族の方々の悲しみを乗り越えて強く生き抜くためにも当委員会においてできるだけのことをもって対処し、これにこたえなければならぬと存じますが、いさいの点の国鉄内部の問題あるいは運輸行政等の詳細等につきましては、運輸委員会等ともよく打ち合わせをいたし対処するのが妥当だと考えますので、大ざっぱに最初に国鉄と運輸当局にお尋ねをいたします。この悲劇は現地であります鳥取県日野郡日南町は、全国でも有名な出かせぎ地帯でありまして、遠くに妻子と別れて出るよりも、給料は悪くても国鉄に臨時雇いに出ることをもって誇りとし、長い間職員とし、あるいはまた臨時雇いとして薄給に甘んじて農閑期の地元出かせぎをしておった零細農の悲劇であります。また見張り要員すらも作業に従事せしめなければならなくなったという合理化の生んだ悲劇とも一面考えられるのでありますが、これらのこのような考え方を踏まえまして、国鉄の磯崎副総裁に申し上げ御所見を承りたいのであります。災害事故発生当時の作業状況事故原因についてどのように御究明になり、反省をされ、今後に対処されようとしておりますか、まずこれを承りたいと存じます。
  82. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ただいまの足鹿先生の御質問に御答弁いたします前に、ただいまの御指摘の事故の犠牲者に対して心から哀悼の意を表します。また足鹿委員長みずから現地へおもむかれまして、現地を御調査並びにいろいろ御指導を賜わりましたことに対して深く感銘いたしておる次第でございます。  次に、いま御質問の事項の中の特に結果の大きかった二月十三日の伯備線、すなわち岡山から鳥取にまいります中国縦貫鉄道の事故について概略申し上げまして、いまの御質問にお答えいたしたいと思います。  お手元に簡単な資料をお配りいただかさせていただきましたけれども、この事故は二月十三日の午後二時十八分ごろ当時の天候は曇りというふうに聞いております。事故の起きました場所は、伯備線上石見−生山間の八十九キロ四十三メーターという地点でございます。関係列車は九四三と申しますか、各駅停車のディーゼルカー四両編成でございまして、関係の殉職された方々の名前は、そこに列記してございますが、大江さん以下六名でございます。  概況でございますが、当日、先ほど気象庁長官が申されました岡山から神戸、大阪付近が相当な濃霧でございまして、特に山陽の列車が相当乱れておりました。それを受けます伯備線の列車も当然やはり当該山陽列車の影響を受けまして、その接続を取るためにダイヤが乱れておったわけでございます。事故発生までの経過は、当日松原と申します軌道作業長が十人の職員を連れまして、その両駅の間で保線作業を行なっておりました。そこに書いてございますとおり軌道作業長以下三名が米子方の橋梁の上、それから後藤軌道掛以下七名が岡山のほうに寄ったところで道床のつき固め作業を行なっておりました。後藤と申します軌道掛が、下りの九四三ディーゼルカーの通過時刻が過ぎましても列車が参りませんので、斎木と申します職員に命じまして、十三時五十分ごろ、所定ダイヤの時間なんだが、まだ列車がこないがどうしたのかということを、上石見の駅の田中と申します当務駅長に携帯電話で問い合わせましたところ、きょうは濃霧のために下り九四三D列車が五十分ほどおくれて、行き違い駅を変更して、先に四九四列車が来るというような返事をいたしたようでございます。後藤軌道掛は、そこに書いてございますとおり、同人を、斎木軌道掛をまくら木調査を行なっております米子方のほうの作業長に走らせまして、運転状況が変わったようだということを報告させるとともに、上り列車が先に来るから、そちらのほうの見張りをやろうということで、これを受けまして福田という軌道掛が見張りをやっておったのでございます。その後、霧の関係で非常に列車が乱れておりまして、九四三Dのおくれが短かくなりましたので、行き違いを所定に戻しまして、ダイヤが下り列車を先に発車させることとなりまして、上石見駅では所定から若干おくれまして十四時十六分にこの列車を発車させまして、十四時十八分ごろ、現地の後藤軌道掛は後方で列車音を聞き、振り返ると目前に列車が迫っておりましたので、大声で列車接近という警告を発しましたが、間に合いませんで、残念ながら軌道作業員のうちの六名が殉職をいたしました。図面は次につけてございますが、一応省略いたします。  これが概況でございますが、これらを基礎といたしまして、ただいま足鹿先生の御質問にお答え申し上げますと、私のほうの年間の大体殉職者が、現在おおむね五十人内外でございます。これはおかげさまで、いろいろな原因がございましたが、とにかく一時、終戦後三百人近かったものが逐年減ってまいりました。そしてこの保線関係につきましても、昭和三十四、五年ごろがピークで、漸次少しずつ減ってまいっておった現状でございまして、大体年間やはり二十人くらいの職員が殉職いたしております。実はこの土地では去る九月に山陰線の出雲の付近で、やはり同じような事故、やはり列車の乱れによりまして事故がございました。二名の職員が殉職いたしております。その後米子鉄道管理局といたしましては、関係各方面に相当深く注意を具体的に促し、また管理局に関係職員等を集めまして、数回にわたって会議、点検等を行なってまいったのでございます。今回の事故は明らかに現場の作業と駅との連絡不十分ということに原因があるというふうに思わざるを得ません。ただ不幸にして、現場の作業のほうの直接電話をかけた職員が殉職いたしております。片方の助役はもちろん生きておりますが、現在警察で事情を取り調べ中でございますので、どういうふうな連絡が両者の間に行なわれましたかということにつきましては、必ずしも事情を現時点でつまびらかにいたしておりませんが、少なくとも現場相互間の連絡が不十分であったということは事実として認めざるを得ない、こういうふうに私は考えております。で、私といたしましては、こういった事故が起き、貴重な人命を損傷いたしましたことについて、もちろん鉄道管理局といたしまして、こまかく注意を出しておりますが、やはり管理局の責任者として、その自分の出した命令がほんとうに徹底して実行されておるかどうかということについての、十分なチェックができておらなかったということにつきましては、管理者の責任を考えております。すでに管理局長以下関係部長を処分いたしました。また今後の問題といたしましては、現在伯備線、あるいは高山線等は単線区間でございます。一本の線路の上を上下列車が走るわけでございます。したがいまして、こういうところにつきまして、見張りという形でもって保線作業を保護するということに、やはり何か前世紀的なやり方が残っている。相当科学的な見方を申しますと、やはり見張りというのは、非常に何か人間の注意力が散漫になって、やはり間違いが起きやすいというふうなことで、何とかこれを駅との間の連絡をもっと機械的なものにするか、あるいはそのほかいろいろ考えておりましたが、現在ここに書いてございます携帯電話といいますのは、作業者から駅への一方通行だけの電話でございます。これは現在機関士と駅ともやはり一方通行の電話しかございません。現在いま考えておりますこれに対する一番の対策といたしましては、やはり列車の接近を少なくとも無線でキャッチする、そういうことによって、保線作業者がそれに対して注意を促すという以外に、やはり列車の乱れというものは、どうしてもこれは天候その他の関係でございますが、列車の乱れがあった際にも、自分で持っているダイヤをチェックすると同時に、やはり機械的に無線でもって列車の接近を関知するという機械をつくるべきだということで、種々研究しておりました。たいへん皮肉なことに、実はこの事故が起こります直前、やっと一月になりまして、そういった一応一〇〇%間違いのないという無線の機械の開発がすみました。現在メーカーに発注しているところでございまして、非常な不幸なめぐり合わせでございますが、私どもといたしましては、先ほどの先生の御質問に最後にお答えすることは、これからやはり機械をほんとうに間違いのない一万回に一回、百万回に一回の間違いもない無線機械をつくって、それでもって列車の接近を予報していく、そうして保線作業の完ぺきを期す。保線作業というものを本質的になくしてしまうということは、これはよほどの軌条の強化をしない限りできませんので、これはどうしても残ると思いますが、やはり作業員の安全を期する上からは、これを機械的にきちっと予知する、予報するというものを整備するという以外に方法はないと考えまして、せめてもの犠牲者に対するお詫びのしるしとして、せっかく開発いたしました機械につきまして、いま至急関係業者に発注いたしまして、製作を急がしておる次第でございます。  最後に、過般運輸大臣からもこの種の事故防止について、厳重な御通達をいただきまして、現在国鉄財政再建に第一歩を踏み出す重大な時期に、こういうことではいかんというお叱りもいただいております。私どもといたしましては、この種の事故をほんとうに胸に体しまして、今後の対策に完ぺきを期してまいりたいと思っている次第であります。
  83. 足鹿覺

    足鹿覺君 磯崎副総裁の謙虚なお立場から、その事故発生当時からの概況と、これに対処する大まかなお考えを承わりましたが、先ほども申し上げましたように、当日は山陽線、宇高連絡船、伯備線、遠くは東海道線、関西線等は濃霧のために、列車、あるいは連絡船が遅延をし、このためにダイヤが乱れておったその余波を受けて、こういう悲惨な状態が起きたわけでありますが、いまもお話がありましたように、約五十分列車がおくれる、こういうことを上石見の駅長が、保線作業員が携帯電話機でただしたときに、そういう連絡があった。ところが、ここに現場確認書がございますが、まくら木を五、六本分ぐらい、バラスを埋めたと思うとき、思わぬ方向、つまり上石見の方向から列車のごう音らしきものを聞き、とっさにそのほうを見上げたところ、約五メートル前方に列車を見受けたというのでこの人は「列車だ」といって叫び、みずからはかろうじて待避したが、他の者は待避するいとまがなかった。まことに痛ましい限りでございまして、いまも磯崎副総裁がお認めになりましたような、現在の新幹線の技術の精粋を誇るこのときに、いまだに携帯電話で駅へ照会をした直後に六人も即死をするというような片道通行の業務規定を現存させられたことに対して、私は機械の開発もさることながら、厳重な反省をなさる必要があろうと思います。したがいまして、これに伴う善後措置は、先ほども申し述べましたように、運輸委員会等において専門家に詰めていただきたいと思いますが、全く前近代的な連絡方法と、科学の精粋をきわめた国鉄技術とが同じ機構の中に併存をしておるという矛盾を暴露しておると思うのであります。  なお、念のために申し上げておきますが、作業標識は緑十字を掲げておったそうであります。黄色の吹き流し等の標識を出して、運転士にこれを知らしめる、現場の認識を与えるということも話はしてあったけれども、それが実行されておらない。また、当時遭難をし、かろうじて命をとどめた者も、これは人家の付近でありまして、急カーブでありますから、私は現場へ参りまして、いろいろと話を聞きましたが、警笛を聞いた者がない。運転士は警笛を発するいとまもないほど、全くそのようなところで保線作業が行なわれておること自体が、全く連絡が不十分のために知らなかった、こういう痛ましい事実でありまして、どう考えてみましても、私はこの責任は、国鉄側の総合的な業務の業務規定の不十分あるいは死んだ人にはただすわけにはまいりませんが、電話を受けて指示を与えたものが、その直後に交換列車指定駅を変更するならば、当然駅から現場までは約七百メートルと、私は見ます。しかも、急カーブであります。路面はいいのでありますから、自転車で走って行っても間に合った、連絡してやるべきではなかったか、こういうことを現地の久保局長にも私は申し上げておるのであります。なぜ、それらのこまやかな人間的な連絡ができなかったか。ただ業務規定に、保線要員から駅へ照会することはあっても、駅から保線要員に連絡することが義務づけられておらないと、久保局長は当初私が会いましたときには強調されて、私は非常に感じを悪くしたものでありますが、そういう点から見まして、どの角度から見ましても、業務規定の欠陥、連絡方法のまずさ、いろいろな総合的な見地から、責任は国鉄当局側にあると私は考えますが、その点について、明確な御答弁をお願いをいたしたいと思います。  なお、この問題について、運輸省当局はどのように今後対処されていくか、監督局長としてどのように対処されていく御所存でありますか、あわせて運輸当局からもお伺いをいたしたいと思います。
  84. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) この問題の、駅と現場との連絡の不十分であった点につきましては、まさに足鹿先生のおっしゃったとおりだと、私たちは思います。まあ法規とか規則とかということを抜きにして、もうひとつその前に、保線作業員に列車の行き違い変更があったといって、それがすぐまた数分後に変わったならば、当然に列車の運転士なり何なりに、あそこでいま作業しているから気をつけて行けということを一言言えば、多分運転士も緑の安全旗に気がついたと思います。しかし、いまそういう繰り言を申してもしかたがないことでございまして、九月事故のあと米子鉄道管理関係の部課長から現地に出しました通牒等を読みますと、たとえば電話の用語まできめて連絡方法を指示しておりますが、やはりあらゆる場合を予期して書いたつもりではあると思いますが、なおこういった、一ぺん連絡したあとにすぐ変わったというふうな事態を予見してなしに、ばく然と応用動作的な指示しかしていなかったということは、その当務の駅の人間の刑事責任の問題は一応別といたしまして、私どもといたしましては、そこまでいま先生のおっしゃったように親切さと申しますか、同僚愛と申しますか、そういうものがあったならば、そういうことはなかったとしみじみ、それは私どもの部下諸君に対する監督と申しますか、指導の不十分であった点を痛感しておる次第であります。またいま申し上げましたように九月の事故直後、米子の管理局といたしましては、相当いろいろな方法をもって現場にいろいろ具体的な指示をいたしておりますが、それが一〇〇%でない、やはりあらゆるケースを考えたのでありましょうが、欠ける点があったということにつきましては、指示のしかた、あるいはその徹底のしかたが不十分な点がございました。その点、これは天災でもなければ、全く国鉄の責任であるということを率直に申し上げます。
  85. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) このたびの伯備線の事故に関しまして殉職されました方々に対しましては、大臣にかわりまして心から哀悼の意を表するものでございます。  鉄道の業務は何といいましても非常に高速かつ大きな重量の車両を運行して行なうものでございますので、非常な危険性を伴なうものでございまして、旅客、公衆の安全をはかりますとともに、従業員の方の安全をはかるということにつきましては、十分配慮を払わなければならぬものだと考えております。今回の事故にかんがみまして、本日国鉄総裁あてに通達をいたしまして、今後この種の事故の再発しないように御留意いただくことにいたしておりますが、何と申しましても、この種の事故の防止につきまして、運輸省として基本的に考えておりますることは、結局三つであろうかと考えております。今回の通達もその趣旨に沿ってお願いをしておるわけでございますが、  その第一には、職員と申しますか、仕事をされます職員の方の問題でございまして、その方が列車運行に対する細心の注意を払っていただかなければならぬ、そのために、また指導部面におきまするところの管理局等におきまして、十分教育を徹底をしていただく、そういうふうな方向で進めていただかなければいかん、こういうふうに考えておるところでございます。  第二に、ただいまいろいろお話がございました仕事のやり方の問題でございまして、これはただいま先生がおっしゃいました業務規定の問題とも関連するわけでございますが、仕事のやり方について、その仕組において事故が起こらないというようなことをこまかく考えた上で、仕事のやり方を組み立てていかなければならぬという点があろうかと思うわけでございまして、その点につきましては、ただいまお話しがございました前近代的な見張りの方法の問題とか、あるいは駅との連絡打ち合わせの問題、特に列車の遅延の場合の打ち合わせ、あるいは列車の運転順序の変更等の場合の打ち合わせといったような各般の仕事のやり方の問題につきまして、今後ますます改善をしてまいらなければならぬところじゃないか、このように考えるところでございます。  第三番目に、これはただいま先生からも御指摘ございましたし、副総裁からも申し上げましたが、やはり人なり仕事のやり方だけではなくして、設備の問題を改善して、事故が起こらないようなことを考えていかなければならぬということでございまして、これにつきましては、たとえばただいま副総裁から申し上げましたような無線の問題あるいは列車警報装置というような問題あるいは横断歩道を整備していくというような各般の安全施設整備をいたしまして、それによって事故の発生を防止していくということが必要であろうかと思うのでございまして、先ほど国鉄副総裁からも具体的な話がいろいろございましたが、運輸省といたしましても、これらにつきまして、それらの施策を推進いたしますようにいろいろと応援をし、また指導をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  86. 足鹿覺

    足鹿覺君 まあ運輸当局からお話がありましたが、この通達は直ちにひとつ私のほうにも資料としてですね、全委員のほうへ御配付をお願いいたしたいと思います。
  87. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) 承知いたしました。
  88. 足鹿覺

    足鹿覺君 なお、先ほどの磯崎副総裁もおっしゃいましたが、四十三年九月十九日に山陰線小田、田儀間で列車の死傷事故がありました。その後にまたこれが起きておる。昨日は先ほども申し上げましたように、午後一時二十分ごろ、群馬県吾妻郡中之条の国鉄長野原線の第一市城鉄橋において、三人がはねられて川へ転落して即死をしておる。こういうようにですね、通達を出され、いろいろ新しい方法を考えられましても、事故が続出するのはどういうわけでしょうか。何か私どもはこれを納得することができません。たとえばここに小田、田儀間の事故の際に、昭和四十三年十月三日、当時の労働基準監督署長松田主計という人から、国有鉄道米子鉄道管理局出雲保線区長福永貢あてに対して指導表が出されておる。これに対して十月三十一日づけ福永貢さんから労働基準監督署長に対して回答を出して、いま述べられたようなことについて対処するのだということを述べておられるけれども、またこのたびもやってしまった。また昨日も起きた。十三日には桜井線でも起きておる。こういうことになりますと、非常に国鉄に対する信頼そのものに私は大きな傷つきが生じはしないかということを憂えるものでありますと同時に、乗客も不安になりますし、私は現地の人々の声を聞きましたが、国鉄には地元におってつとめることができるから、臨時雇いでもつとめることができるからいいけれども、もうこれではあぶなくてつとめることもできない。もうことしは降雪期を過ぎましたが、あの地帯は豪雪地帯でありまして、一たび豪雪にでもなれば、付近住民の協力を得ずしては、この除雪作業等もはかどらないことは言うまでもありませんが、こういうことでは付近住民と国鉄との長い間の信頼感も一挙にしてくずれてしまう。こういうことになろうかと思います。したがって、いま運輸大臣通達をお出しになったそうでありますけれども、私はそれ以前の問題があるように思うのでありますが、これはひとり運輸当局なり国鉄当局のみならず、労働省における労働災害の未然防止の立場からも総合的によく御検討になって、この対策に万全を期せられるべきだと思いますが、この点について、労働省の御所見なり対策は今後いかがなさるつもりでありますか。この小田、田儀間の死亡事故の直後に指導表が出され、これに対する回答書が出されておりますが、その後における労働省がこの種災害に対してとられた措置また今回の伯備線事故に対する御所見、今後の対策等について何かありましたならば、明らかにしていただきたいと思います。
  89. 中西正雄

    説明員(中西正雄君) 御説明申し上げます。最初事故でなくなられました方々に対しまして、心から哀悼の意を表する次第であります。  触車事故の防止につきましては、労働省ではかねてから地方の労働基準局におきまして、必要な監督指導を実施してまいっているのでございますが、今回の伯備線の重大な事故に際しまして、事故報告を受けますと直ちに、国鉄本社から関係者の出頭を求めまして事情を聴取しますとともに、このような事故が二度と起こらないようにということで指示をいたしております。  それはまず第一には、見張り員の配置を強化するということでございます。  それから第二には、単に見張り員の配置では必ずしも十分でないと思われますので、この有効な自動警報装置の設置につきまして検討するように指示しております。  さらに第三としましては、保線作業現場と駅それから運転者等との相互の連絡を十分確保するような措置を講ずるように。  以上三点を指示いたしまして、勧告いたしたのでございまして、今後引き続きましてこのような災害の起こらないように監督指導を続けてまいりたいと思っておるところでございます。
  90. 足鹿覺

    足鹿覺君 大体関係当局のお考えが明らかになったわけでありますが、この際警察庁の本件に対する刑事責任を追及するという新聞記事が載っておりますので、捜査の方針、現地における県警の捜査方針等について、中央はただいま私が述べましたような実情でありますが、どのような捜査方針でもって、刑事責任を追及されようとしておりますか。また現地との連絡の上で、どのようにこの報告を聴取し、指導調整をされようとしておりますか、伺いたいのであります。
  91. 田村宣明

    説明員(田村宣明君) お答えいたします。  鳥取県警察におきましては、本件事故の重大性にかんがみまして、所轄黒坂警察署に特別捜査本部を設けまして、鳥取県警察本部の刑事部員、黒坂警察署員三十数名をもちまして、業務上過失致死事件として目下鋭意捜査中でございます。  この本件事故につきましては、線路の工事関係者、事故列車の運転関係者はもちろん、関係の駅の関係者、運転管理関係する関係者などにつきまして、その刑事上の過失責任の有無を明らかにする。こういう方針のもとに現場の詳細な実況見聞、それから、実際に列車に乗りまして、当時の状況を、実況を見聞する。それから関係者、もうすでに現在三十数名、事情を聴取をし、あるいは取り調べを行なっております。また国鉄のこの内部の業務の規定、通達等につきましても、十分検討を加えまして、その過失責任を明らかにするという方針のもとに、現在鋭意捜査をいたしておる。こういう状況でございまして、私ども警察庁といたしましても、そういうふうな状況を鳥取県の警察のほうから聞きまして、その捜査の方針で徹底をしてもらうことを期待をいたしておる次第でございます。
  92. 足鹿覺

    足鹿覺君 先ほど磯崎国鉄副総裁から久保局長等に戒告、訓告等の処置をとられたことが述べられました。ちょうど新聞はそれを伝えております。私は、この刑事責任を追及することによって、遺族が浮かばれるものならばどのようにしてでも追及をしたいと思います。しかしながら、これをいかに追及いたしてみましても、そのことによって遺族のみたまはこの世には帰ってこないのでありまして、あえて刑事責任をとやかく云々するものではありません。しかし、従来からの刑事責任の追及の結果を見ますると、ややもすれば現場の一運転士やあるいは出先の名もない……と言うと失礼ではありますが、立場の軽い人々が、その刑事責任を問われておる例がなしとしないのでございます。たとえば、この伯備線の事故にいたしましても、列車を運転して、検察当局も同乗されて現場の検証をなされたと報道されておりますが、私が帰ってから。運転士は気づかなかった、こう言っております。しかし、もし刑事責任を追及していくならば、まっ先にまず当面目標になるのは田川運転士が目標になる。こういうことになるのでありますが、これは先ほども述べましたように、総合的な国鉄の業務規定の欠陥や連絡方法の不手ぎわ、濃霧に遅延する列車ダイヤの混乱に対する弾力的人間的愛情的に欠けた結果が累積し総合されてこのような遺憾な結果を私はもたらしたものと考えます。したがって、一運転士の刑事責任を追及したり、あるいは一現場の駅長やあるいは掛員の刑事責任を追及するがごときことがあっては、私はそれだけでは足りないと思う。さようなことがあってはならないと思います。すなわち当日現場を確認された方々の状況を聞きますと、私もその現場はよく知っておりますし、この間も現場を見てきたわけでありますが、カーブを曲がり切ったところに作業標識の緑十字を立てておった。吹き流しは立てられていなかった。標識から三十メートル離れた線路上で作業していた六人を田川運転士が発見したときはすでにどうにもすることができなかった。ごう音とも異音ともつかぬものを耳にして、発見した人が仰いだときには数メートル先に機関車が来たから、かろうじて、汽車だとみんなにいうと同時に自分はころんで避難したという実情であります。もし、先ほど副総裁がおっしゃいますように、駅長なり駅の掛員が、さっき電話で聞いたが生山で交換すると言った、それをよく覚えておって、そして時間を変更した旨を運転士に一口言われるか、特別な使いを出して現場に連絡をとられたならば、私はこのような悲惨事は起きなかったと思うのです。タイタンパーを現場では使っておったそうでありまして、非常なごう音でありまして列車の来るのがわからなかった。そのごう音にかき消されてそれを気づくいとまがなかった。こういうことになりますれば、私は田川運転士、その人の刑事責任があるかいなかということについても疑わしいし、また、駅の立場から見ますならば、久保米子国鉄管理局長は業務規定に駅から現場の作業員に連絡することは義務づけられておらないから駅には責任がないと、こうおっしゃる。とするならば、そのような業務規定をつくった国鉄当局のいわゆる最高責任者に、もし刑事責任があるとするならばあるとでも言わなければ私は納得ができないではなかろうか。一現場の関係駅員や関係運転士に刑事責任を追及するなどということは、私は事態の本質を追及したことにはならないのではないか。そういう点もよくおわきまえの上、警察庁は現場の警察当局、きょうは法務当局がおいでになっておりませんが、検察当局等とも万遺憾なきを期してこの刑事責任を追及していただく、このような方針が私はとられることを期待いたしますが、警察庁の御方針はどのようにお考えになりますか、御所見がありましたならば——私の考えは間違っておるのでしょうか、その辺の御見解を承わりたい。さらに、いま述べたような実情をよく御承知の上で、現地との連絡調整に当たっておられるかどうかということも重ねてお伺いしておきたい。
  93. 田村宣明

    説明員(田村宣明君) お答えいたします。  ただいま御指摘がございましたとおりでございますが、刑事責任の追及という問題は、この事故原因の本質的な究明ということをただいまおっしゃいましたけれども、その中における刑事責任の追及でございまして、警察といたしましては、本件が業務上過失致死罪の致死事件として捜査をいたしまして、その捜査において何人が業務上過失致死罪の構成要件に該当する行為を行なったか、そういう観点からの捜査をいたすものでありますし、また警察の捜査といたしましては、具体的な本件につきましてそういうふうな捜査の範囲において捜査をやっていると、こういうことになるわけでございます。したがいまして、申すまでもないことでございますけれども、この捜査に当たりましては、その職務あるいは地位というふうなもののいかんを問わず刑事責任を追及すべきものにつきましては、これを明らかにしていくということで、捜査に当たっております鳥取県警察においても、そういう方針でやっておりますし、またただいま御指摘のございましたような点は、私どもからも鳥取県警察のほうによく伝えまして、捜査の徹底を期するように連絡をいたしたい、かように考えます。
  94. 足鹿覺

    足鹿覺君 これ以上関係当局に、この問題について深く申し上げるいとまもありませんし、技術的な運輸行政上の問題につきましては、先ほども述べましたように、運輸委員長等ともよくお打ち合せをいたし、運輸委員会等を通じてさらに明らかにすべき点等があれば、その際に行ないたいと思います。  そこで、遺族補償の問題について、国鉄当局、磯崎さんにお尋ねしますが、この私の手元にあります資料によりますと、大江浩というのが、ここに載っておりますが、二十歳の青年でありますが、これは弔慰金が現行でいきますと、十四万円、業務災害殉職年金が、十四万二千八百円、遺族補償一時金が三百万円、葬祭料二十万円、退職手当八万八千五百六十円、共済弔慰会が二万三千八百円、合わせて三百五十九万五千百六十円となっているようでございます。他の職員もほぼ同額に近いようでございます。しかるところ、臨時雇いの藤原、官本、赤木、嶋川さんは五十二歳、赤木さんは四十二歳、官本さんが三十二歳、藤原さんが二十一歳でありますが、その嶋川さんの場合を例にとってみますと、援護弔慰金が十四万円、業務災害殉職年金が七万六千六百五十円、葬祭料三万六千円、合わせ計二十五万二千五百六十円となっているようでございます。まさに十分の一にも足りない、十五分の一にも足りない。このような状態でありまして、臨時雇いの最高が宮本さんでありまして、二十九万三千六百十二円ということになっております。私は現地の久保管理局長にお会いし、実情を聞き、現地調査を行なって伯備線を通って上京をしてきたわけでありますが、そのとき米子国鉄管理局長の久保さんのお話によりますと、臨時雇用員も本職員並みの待遇をもってすることに大体本社との間に話がついておる、また、そうすべきであると思っておるということを最後に言われました。そのときには、その翌日あたりには、何か内定したかのごとき報道もあっておるわけでありますが、いずれにいたしましても、三百五、六十万円程度にしかならないと思うのであります。で、原田運輸大臣が、現行三百万円の自賠責法に基づく遺族補償を五百万円に引き上げるという談話を発表されまして、私どもは機宜を得た措置であり、その実現をこいねがっておる一人でありますが、ことほどさように、事態は紙幣価値の下落等もありますし、最近頻発する自動車事故等を勘案されまして、自動車事故については、自賠責法で、国の責任において五百万円にしようということがあり、また一方自動車保険を自動車の持ち主はほとんどいざというときに備えてかけておりますから、ほとんどこれは法廷訴訟等を経ずして、示談をもってやはり話し合いがついておるように見受けます。相当の上積みが——明らかではありませんけれども、私の身辺のものを見ましても、出ておるようであります。でありますから、現在をもってすれば三百万円、その上に、示談に伴うさらの上積みが行なわれておるわけでありまして、当然国鉄当局としては、この事故の責任をお負いになる立場からも、一命を金で買うなどということはとうていできることでもなく、取り返すすべもないことではありますが、せめて遺族に対する弔意の誠をあらわす、こういう意味からも、私は最大限度の補償措置をおとりになることが必要ではなかろうかと思います。私の手元にあります資料によりますと、現地の臨時雇用員の家庭状況を見ますというと、宮本雅美の場合は、父は六十三歳で病気療養中、母親も五十二歳で、妻トシヱは妊娠五カ月で休養を要す、長男隆宏はまだ幼児である、祖母は老弱で労働力がない。こういう状態でございまして、畑五畝、たばこ畑一反、山林四町といいますけれども、地味悪く雑木で何ら収入は期待できない、こういう状態であります。また、藤原重徳さんは、七十歳の祖母、母は四十五歳、三男が十七歳でいま高校二年に在学中でございまして、これも兄貴が家督を継ぎ、国鉄の臨時雇いとして農業のあと継ぎをするので、他へ進学あるいは就職をする希望を持っておりましたが、農業を営みたいというので、いま説得をしておると遺族の方々が言っております。お父さんは、これはすでになくなっておりまして、これも何かの事故でなくなられたと聞いております。嶋川さんは、五十数歳ですでに相当の高齢に達しておりますが、十七歳の長男、二十五歳と二十歳と十九歳の女の子ばかりでありまして、十二年前には火災にあってようやく復興したばかりである。乳牛を飼っておりますが、乳のしぼり手がない。近所の者がかわったり、家族の者がかわっておるけれども、その人がしぼっておった者でなかなかしぼれなくて乳房炎を起こして、これを売り払わなければいけないというので、私の立つ日には、販売業者に頼んで売るという始末であります。もちろん二束三文の状況になるであろう。  また、赤木さんは父母ともおりますが、奥さんに長男、茂己、長女、敬子という人でありますけれども、これもまだ年が若くて、これはなくなられた赤木さんに依存しなければならぬというなど、どれ一つとってみましても、気の毒な家庭事情にあるわけであります。したがいまして、私はあわれみを請うて、この弔慰金の増額などをあなた方に申し上げる気持ちは毛頭ございません。このような事実を私はこの場で明らかにし、よく磯崎さんが、この実態を認識をされて、でき得るならば、現地の遺族会の方々とでもよく話し合われて、二度とこのような不測の事態を起こさないように最善を尽くされると同時に、総裁みずからが進んで、この遺族の補償について最善の措置を講じられんことが、せめてもこのたびの事故対策の一環の一つではなかろうか。このように思うものでありますが、現時点において、どのように遺族補償をお考えになっておりますか。また、いま私が述べたような点についてよく御検討をいただきまして、御善処願えるかどうか。この点につきまして、率直にして謙虚な御所見を承れば幸いに存じます。
  95. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 実は鉄道、国鉄関係事故の犠牲者の場合に、いつもこの問題が論議され、私も数回経験いたしておりますが、実は、けさも衆議院の運輸委員会で、たいへん申し上げにくいことを申したのでありますが、金額につきまして、私の立場から申しますことだけはひとつごかんべん願いたいと存じます。いろいろあとあと問題等もございまして、こういう公開の席上で個人別の金額等につきまして発言いたしますと、あとあと思わぬ問題等も起きますので、先生のおっしゃった御趣旨はよく私わかりますし、大体個人ごとの事情も、私のほうに久保局長から入っております報告に近いものだというふうにいま拝聴いたしておりました。ただ、その意味で、この公開の席で金額につきまして、私の口から申し上げることだけはごかんべん願いまして、先ほどの自賠責法その他との関係でございますが、自賠責法につきましては運輸省御当局がいろいろいま改定案を研究、検討中と承っておりますが、私のほうの共済の遺族補償、これは一般の公傷の場合は違いますけれども、こういう災害の場合の、いわゆる労働災害の場合の遺族補償につきましては、これは年金制度を採用いたしております。これは明治四十年に勅令によりまして鉄道院救済組合規則ができまして以来、非常に特殊な制度といたしまして、いわゆる殉職年金という制度ができております。これはその当時、戦前にまだ日本に歴史がなく、わずか警察官その他と私のほうだけというふうに記憶いたしておりますが、これを終戦後そのまま引き継ぎまして、現在なおこういった労働災害の場合の遺族につきましては、年金を差し上げるという制度に相なっております。これは現在御審議願っておる予算にも計上してあるものでございますが、この遺族年金と申しますのは、これは御承知のとおり、御遺族が、いろいろ規定がございますので、受け取る順位とかきまっておりますが、その順位に従って受け取ってもらうことになっております。この遺族年金と、それから先ほど先生のおっしゃったいろいろなものを合わせまして、できるだけ全般のレベルを見てお気の毒でないことをいたしたい。同時に、もし——私のほうといたしましては、こういった金の問題と同時に、できればさっきおっしゃった家族、その他の中でもし私のほうで働いていただけるような方があれば、そういう方に働いていただくとか、何かそういう総合的なことも考えなければならないと、こういうふうに考えておりますが、先生の御趣旨を十分体しまして、先ほどのいわゆる臨時雇用員はもう極力——この席では極力と申し上げさせていただきますが、極力、一般職員と同等に近い扱いをいたしたいということをはっきり申し上げさしていただきますが、くれぐれも、繰り返し申し上げますが、金額につきましては、私の口から申し上げることは御遠慮さしていただきたいと思います。
  96. 足鹿覺

    足鹿覺君 最後に、時間も長くなりましたし、そう長い質問もならぬと存じますので、磯崎さんに特に申し上げますが、私は、十九日伯備線経由で現地を見て遺族の代表の方々にも会いまして、そのまま上京してきたわけでございますが、十九日、その後の情報によりますと、国鉄の管理局総務部長と伯備線分区長が来られて、遺族との合同会議が開かれた席上、国鉄も最善を尽くすと、努力をしてきた、現段階において職員並みに取り扱うようになったので了解願いたい。補償の金額については、いま発表してもらっては困るが、大体職員の最高の大江君並みと、年金十三万円が支給されることになるだろう。もし遺族側から不当として、これ以上の要求がされる場合は、遺憾ながら裁判にかけてもらうより他に期待に沿うことができないということを発表したと伝えておるのであります。私は、前段については磯崎さんのいまのお話とほぼ似た話だと思いますが、さように了承してよろしゅうございますか。
  97. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 前段は、大体そういうことだと思います。御了承くださってけっこうです。
  98. 足鹿覺

    足鹿覺君 後段におけるもし遺族側が、不当としてこれ以上の要求がされる場合は、遺憾ながら裁判にかけてもらうよりほかに期待に沿うことができないということを発表したということは、一体どのようなお考え方を持っておいでになるのでしょうか。私が先刻来申し上げておりますのは、あなた方の監督官庁であり指導官庁である運輸大臣が、自賠法の三百万円を五百万円に引き上げようということをすでに公式に発表し、今国会にも、その法案の改正が出るであろうといわれているのであります。こういう時期において、職員並みにしたのだから、まあそれでおまえたちはしあわせだと思っておれというような意味に遺族側がとるような、それ以上取るならば裁判でこい、こういうようなふうにとられるような言動のあったことを、私は非常に遺憾に存じますが、これらの点につきましても、もっと遺族と話し合ってこの問題を円満に処理される御意思がございますか。また現地当局にそのような御指示をなされるお考えがありますか。国鉄も新しい再建段階を迎えて磯崎副総裁みずから伯備線においでになることも私は困難かと思いますが、少なくとも当委員会における気持ちを、私がいろいろとお尋ねをし、意見を申し上げた気持ちを体されまして、本社を代表し、少なくとも現地に弔慰の意をあらわすと同時に、その裏づけのために先ほど具体的な数字は言えないけれども、私が述べたような点について同感であるということですので、相当責任のある人を現地に派遣されるとか、そうしてこの問題を処理される御意思はないでありましょうか。私はこの点はきわめて重要な点だと思いますので、しかとした御答弁を承りたいと存じます。  少なくとも私どもは遺族の人々とあなた方が話し合われて遺族が納得をする——いまその一つの方法として、もし遺族の中で希望するならば、優先的に国鉄に採用するということも考慮しているということをおっしゃいましたが、けっこうなことだろうと思います。ただショックが大きくて、国鉄には何か恐怖の感を持っておるときには、なかなか遺族に対しては、それは見舞いのことばにはなるかもしれませんけれども、直ちに国鉄に奉職するという気持ちにもなれない非常なショックを受けた状態でありまして、そういう点もお考えになりまして、この問題を遺族との話し合いにおいて最大限度の補償をもって話し合い、問題を解決される御意思があるかないかということを重ねてお伺いをいたし、他の具体的な問題については、この際発表を慎みたいということでありますので、別の機会にお話は承ってもけっこうでありますが、いかがでありますか。
  99. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 現地の責任者がまあいろいろな状況のもとに、いま先生のおっしゃったようなことを申したとしたら、これは非常にことばの用い方に、不適当な点があったと思うのでおわびを申し上げます、ただ、申し上げましたことの趣旨といたしましては、いわゆる労務災害としては、これが限度だということをたぶん申し上げたのだというふうに私は承っておったわけでございますが、現在の労働者災害補償保険法等の関係から申しましても、私のほうで明治何年以来やっておりましたこの規定は、よその企業から比べればけっしてまさるとも劣らないという内容だと私は存じております。ですから、そういう意味の労働基準法等に基づきます労災関係の問題としては、これが限界だというふうに申し上げたのではないか、こういうふうに思うのでございます。したがって、その他はいわゆる不法行為に対する損害賠償ということに相なるわけでございまして、その点の表現のしかたが非常にどぎつくて、また拙劣だったということで非常に遺族のお怒りを買ったこともちょっと承っておりますので、その点は十分言動等を慎むようにいたします。さらにただいまおっしゃいましたいろいろな、いわゆる現金以外に、私のほうで直接働いてもらえなければ、たとえば鉄道弘済会等で間接に働いてもらうとか、いろいろな総合的な遺族援助の方法につきましても、まあいままでいろいろな経験も持っておりますので、先生の御趣旨どおりにまいるかどうかはわかりませんが、私どもといたしましては、誠意をもって遺族側とお話を申し上げ、そして事柄を円満に解決してまいりたいと、こういうふうに考えますが、もし職員並みということになれば、自賠法等には全然ない年金——わずかではございますが、一応年金という形が残るということだけを申し上げまして、私といたしましては、極力先生の御趣旨に近いような形で総合的な対策で努力してまいりたいと、こう思う次第でございます。
  100. 足鹿覺

    足鹿覺君 最後に、運輸省当局にもいま申し上げた趣旨をよくおくみ取りいただきまして、あなたが大臣に、お帰りになりましたならば、通達を出されたこともけっこうでありますし、それも拝見いたしますが、いま述べたような監督官庁として、全く国鉄側に責任のあるこのたびの事故、あるいは桜木町における事故、またきのうの長野原線における事故など、この種災害が続発しておる実情にかんがみ、さらに一段と対策を強化され、現状追認的に事故が起きてからあわてるのでなくて、物心両面から、このような事態が起きないように、また現に起きたものに対しては万全の措置を大臣としても講ぜられるよう、国鉄当局に十分御指示と御指導をいただくようにお願いをいたしたいと思いますが、お伝えいただけますか。
  101. 山口真弘

    説明員(山口真弘君) ただいま先生がおっしゃいましたように、御趣旨につきましては、大臣にも十分伝えまして、また御趣旨の線に沿いまして、国鉄といたしましても十分指導をいたし、今後の事故防止に対しまして万全の措置を講じてまいりたいと思います。
  102. 足鹿覺

    足鹿覺君 これで私の質疑を一応きょうのところは終わりますが、委員長にお願いを申し上げます。  冒頭、または中途において申し上げましたように、事は、運輸行政との関係がありますし、また労働省関係、労働基準法等の関係で深く掘り下げて検討すべき内容のものがあると思います。したがいまして、災害対策委員長において、運輸委員長とも打ち合わせをされ、さらにこの問題を深く運輸委員会においても検討してもらうことを、委員長より運輸委員会並びに委員長に申し入れをしていただき、さらに万全を期していただくようにお手配をお願い申し上げまして、私の本日の質疑を終わらせていただきます。
  103. 武内五郎

    ○理事(武内五郎君) 本件については、なお調査を進める必要があろうと存じまするが、他の委員会との関係もありまするので、この調査の進め方については、後ほど理事会において協議することにいたしたいと存じます。  他に御発言もなければ、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十四分散会