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説明員(磯崎叡君) ただいまの
足鹿先生の御
質問に御答弁いたします前に、ただいまの御指摘の
事故の犠牲者に対して心から哀悼の意を表します。また
足鹿委員長みずから
現地へおもむかれまして、
現地を御
調査並びにいろいろ御
指導を賜わりましたことに対して深く感銘いたしておる次第でございます。
次に、いま御
質問の事項の中の特に結果の大きかった二月十三日の伯備線、すなわち岡山から鳥取にまいります中国縦貫鉄道の
事故について概略申し上げまして、いまの御
質問にお答えいたしたいと思います。
お手元に簡単な資料をお配りいただかさせていただきましたけれども、この
事故は二月十三日の午後二時十八分ごろ当時の天候は曇りというふうに聞いております。
事故の起きました場所は、伯備線上石見−生山間の八十九キロ四十三メーターという地点でございます。
関係列車は九四三と申しますか、各駅停車のディーゼルカー四両編成でございまして、
関係の殉職された方々の名前は、そこに列記してございますが、大江さん以下六名でございます。
概況でございますが、当日、先ほど
気象庁長官が申されました岡山から神戸、大阪付近が相当な濃霧でございまして、特に山陽の列車が相当乱れておりました。それを受けます伯備線の列車も当然やはり当該山陽列車の影響を受けまして、その接続を取るためにダイヤが乱れておったわけでございます。
事故発生までの経過は、当日松原と申します軌道作業長が十人の職員を連れまして、その両駅の間で保線作業を行なっておりました。そこに書いてございますとおり軌道作業長以下三名が米子方の橋梁の上、それから後藤軌道掛以下七名が岡山のほうに寄ったところで道床のつき固め作業を行なっておりました。後藤と申します軌道掛が、下りの九四三ディーゼルカーの通過時刻が過ぎましても列車が参りませんので、斎木と申します職員に命じまして、十三時五十分ごろ、所定ダイヤの時間なんだが、まだ列車がこないがどうしたのかということを、上石見の駅の田中と申します当務駅長に携帯電話で問い合わせましたところ、きょうは濃霧のために下り九四三D列車が五十分ほどおくれて、行き違い駅を変更して、先に四九四列車が来るというような返事をいたしたようでございます。後藤軌道掛は、そこに書いてございますとおり、同人を、斎木軌道掛をまくら木
調査を行なっております米子方のほうの作業長に走らせまして、運転
状況が変わったようだということを
報告させるとともに、上り列車が先に来るから、そちらのほうの見張りをやろうということで、これを受けまして福田という軌道掛が見張りをやっておったのでございます。その後、霧の
関係で非常に列車が乱れておりまして、九四三Dのおくれが短かくなりましたので、行き違いを所定に戻しまして、ダイヤが下り列車を先に発車させることとなりまして、上石見駅では所定から若干おくれまして十四時十六分にこの列車を発車させまして、十四時十八分ごろ、
現地の後藤軌道掛は後方で列車音を聞き、振り返ると目前に列車が迫っておりましたので、大声で列車接近という警告を発しましたが、間に合いませんで、残念ながら軌道作業員のうちの六名が殉職をいたしました。図面は次につけてございますが、一応省略いたします。
これが概況でございますが、これらを
基礎といたしまして、ただいま
足鹿先生の御
質問にお答え申し上げますと、私のほうの年間の大体殉職者が、現在おおむね五十人内外でございます。これはおかげさまで、いろいろな
原因がございましたが、とにかく一時、終戦後三百人近かったものが逐年減ってまいりました。そしてこの保線
関係につきましても、
昭和三十四、五年ごろがピークで、漸次少しずつ減ってまいっておった現状でございまして、大体年間やはり二十人くらいの職員が殉職いたしております。実はこの土地では去る九月に山陰線の出雲の付近で、やはり同じような
事故、やはり列車の乱れによりまして
事故がございました。二名の職員が殉職いたしております。その後米子鉄道
管理局といたしましては、
関係各方面に相当深く注意を具体的に促し、また
管理局に
関係職員等を集めまして、数回にわたって会議、点検等を行なってまいったのでございます。今回の
事故は明らかに現場の作業と駅との
連絡不十分ということに
原因があるというふうに思わざるを得ません。ただ不幸にして、現場の作業のほうの直接電話をかけた職員が殉職いたしております。片方の助役はもちろん生きておりますが、現在警察で事情を取り調べ中でございますので、どういうふうな
連絡が両者の間に行なわれましたかということにつきましては、必ずしも事情を現時点でつまびらかにいたしておりませんが、少なくとも現場相互間の
連絡が不十分であったということは事実として認めざるを得ない、こういうふうに私は考えております。で、私といたしましては、こういった
事故が起き、貴重な
人命を損傷いたしましたことについて、もちろん鉄道
管理局といたしまして、こまかく注意を出しておりますが、やはり
管理局の責任者として、その自分の出した命令がほんとうに徹底して実行されておるかどうかということについての、十分なチェックができておらなかったということにつきましては、
管理者の責任を考えております。すでに
管理局長以下
関係部長を処分いたしました。また今後の問題といたしましては、現在伯備線、あるいは高山線等は単線区間でございます。一本の線路の上を上下列車が走るわけでございます。したがいまして、こういうところにつきまして、見張りという形でもって保線作業を保護するということに、やはり何か前世紀的なやり方が残っている。相当科学的な見方を申しますと、やはり見張りというのは、非常に何か人間の注意力が散漫になって、やはり間違いが起きやすいというふうなことで、何とかこれを駅との間の
連絡をもっと機械的なものにするか、あるいはそのほかいろいろ考えておりましたが、現在ここに書いてございます携帯電話といいますのは、作業者から駅への一方通行だけの電話でございます。これは現在機関士と駅ともやはり一方通行の電話しかございません。現在いま考えておりますこれに対する一番の
対策といたしましては、やはり列車の接近を少なくとも無線でキャッチする、そういうことによって、保線作業者がそれに対して注意を促すという以外に、やはり列車の乱れというものは、どうしてもこれは天候その他の
関係でございますが、列車の乱れがあった際にも、自分で持っているダイヤをチェックすると同時に、やはり機械的に無線でもって列車の接近を関知するという機械をつくるべきだということで、種々研究しておりました。たいへん皮肉なことに、実はこの
事故が起こります直前、やっと一月になりまして、そういった一応一〇〇%間違いのないという無線の機械の開発がすみました。現在メーカーに発注しているところでございまして、非常な不幸なめぐり合わせでございますが、私どもといたしましては、先ほどの先生の御
質問に最後にお答えすることは、これからやはり機械をほんとうに間違いのない一万回に一回、百万回に一回の間違いもない無線機械をつくって、それでもって列車の接近を予報していく、そうして保線作業の完ぺきを期す。保線作業というものを本質的になくしてしまうということは、これはよほどの軌条の強化をしない限りできませんので、これはどうしても残ると思いますが、やはり作業員の安全を期する上からは、これを機械的にきちっと予知する、予報するというものを
整備するという以外に方法はないと考えまして、せめてもの犠牲者に対するお詫びのしるしとして、せっかく開発いたしました機械につきまして、いま至急
関係業者に発注いたしまして、製作を急がしておる次第でございます。
最後に、過般運輸大臣からもこの種の
事故防止について、厳重な御通達をいただきまして、現在国鉄財政再建に第一歩を踏み出す重大な時期に、こういうことではいかんというお叱りもいただいております。私どもといたしましては、この種の
事故をほんとうに胸に体しまして、今後の
対策に完ぺきを期してまいりたいと思っている次第であります。