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1969-04-02 第61回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月二日(水曜日)    午前十時三十三分開会     —————————————    委員異動  四月一日     辞任         補欠選任      吉田忠三郎君     松井  誠君  四月二日     辞任         補欠選任      渋谷 邦彦君     多田 省吾君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山本茂一郎君     理 事                 源田  実君                 鶴園 哲夫君     委 員                 河口 陽一君                 大松 博文君                 中村喜四郎君                 長屋  茂君                 長谷川 仁君                 増原 恵吉君                 山本 利壽君                 川村 清一君                 達田 龍彦君                 西村 関一君                 多田 省吾君                 春日 正一君    国務大臣        国 務 大 臣  床次 徳二君    政府委員        総理府特別地域        連絡局長     山野 幸吉君        法務省民事局長  新谷 正夫君    事務局側        常任委員会専門        員        瓜生 復男君    説明員        水産庁漁政部長  安福 数夫君        自治省財政局交        付税課長     横手  正君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○北方領土問題対策協会法案内閣送付予備審  査) ○沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する  調査  (当面の沖繩及び北方問題に関する件)     —————————————
  2. 山本茂一郎

    委員長山本茂一郎君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日吉田忠三郎君が委員辞任され、その補欠として松井誠君が委員に選任されました。また、本日渋谷邦彦君が委員辞任され、その補欠として多田省吾君が委員に選任されました。
  3. 山本茂一郎

    委員長山本茂一郎君) 北方領土問題対策協会法案議題といたします。  まず、政府から提案理由説明を聴取いたします。  床次総理府総務長官
  4. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) ただいま議題となりました北方領土問題対策協会法案につきまして、提案理由及びその内容概要を御説明申し上げます。  歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島など北方領土は、わが国固有の領土であるにもかかわらず、第二次大戦終結ソビエト社会主義共和国連邦に占領されて以来今日まで二十有余年の間、同国の占領下にあり、わが国が現実に施政権を行使し得ない状況にあります。このため、これらの地域の元居住者は、終戦に伴い全員引き揚げを余儀なくされ、墓参という限られた機会以外には、今日に至るまで帰島することはもちろんのこと、その周辺の漁場において漁業を営むことさえもできないという困難な状況に置かれているのであります。  政府は、この北方領土の引き渡しをあらゆる機会ソ連政府に対して要求しておりますが、同政府は、日ソ間の領土問題は一連の国際協定によって解決済みであるとの態度に終始しており、この問題の解決には相当の困難が予想されます。他方、このような国家的懸案事項とも言うべき北方領土問題は、国民世論を背景にして初めてその解決が可能となるのでありますが、これについての国民世論は、遺憾ながらいまだ低調であります。したがって、この問題の解決促進するには、今後全国的な規模において国民世論の喚起をはかることが必要であり、そのために北方領土問題の全国的な啓蒙宣伝を行なう機関を設置することが緊要であります。このような趣旨から、昭和三十六年に制定された北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律により設立され、北海道札幌市にその事務所を置いている北方協会発展的に解消して、新たに、北方領土問題対策協会設立し、この団体を通じて全国的規模において、北方領土問題についての世論の高揚をはかり、あわせてこれら地域の旧漁業権者等に対する貸し付け等援護を行ない、もって、北方領土問題その他北方地域に関する諸問題の解決促進に資するため、この法律案を提案した次第であります。  次に、この法律案概要につきまして御説明申し上げます。第一に、この法律案は、北方領土問題対策協会設立目的協会組織協会業務の範囲、協会財務及び会計並びに協会監督等協会設立に関し必要な事項規定しております。  第二に、協会業務としては、まず、北方領土問題その他北方地域に関する諸問題について、定期刊行物その他の印刷物の発行講演会講習会展示会等開催その他必要な啓蒙宣伝を行ない、また、これらの諸問題について調査研究を行なうとともに、あわせて、北方協会が現在まで行なってきた北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律規定に基づく旧漁業権者等に対する必要な資金貸し付け業務を行なうこととなっております。  第三に、北方領土問題対策協会設立に伴い、北方協会は解散し、その業務南方同胞援護会北方地域に関する業務とともに新協会が引き継ぐこととなりますので、北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律のほぼ全面的な改正を行なうとともに、南方同胞援護会法その他関係法律について所要の改正を行なうこととしております。北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律改正内容につきましては、その第一点は、新協会は、改正前の同法律規定に基づき旧北方協会政府より交付された十億円を承継し、これを引き続き北方地域漁業権者等に対する貸し付け業務を行なうための基金とすること、第二点は、新協会は、貸し付け業務にかかわる経理について、他の業務にかかわる経理と区分し、特別の勘定を設けて整理すること、第三点は、その他貸し付け業務に関し必要な規定整備を行なうことであります。これらの規定により、いままで北方協会が行なってきた資金貸し付け業務は、実質的な変更なしに円滑にこの協会が引き継ぐこととなります。また、北方地域に関する業務南方同胞援護会業務とした南方同胞援護会法附則当該規定を削除することといたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容の概略であります。何とぞ、慎重御審査の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  5. 山本茂一郎

    委員長山本茂一郎君) 続いて補足説明を聴取いたします。  山野特別地域連絡局長
  6. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) ただいま総務長官から提案理由説明がございましたが、私からこの法律案概要につきまして若干補足説明をさせていただきます。  まず、この法律案の骨子につきましては、ただいま御説明のあったとおりでございますが、法案の第一条は、協会設立目的に関する規定でございます。協会は、北方領土問題その他元方地域に関する諸問題について啓蒙宣伝及び調査研究を行なうとともに、北方地域漁業権者等に対し貸し付け等援護を行なうことによりまして、北方領土問題その他北方地域に関する諸問題の解決促進に資することを目的としております。また協会は、このほか現在北方協会が行なっております業務継承して、北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律に基づき、北方地域漁業権者等その他の者に対し、漁業その他の事業資金生活資金の融通を行なうことを目的といたしております。  協会事務所につきましては、協会は、主たる事務所東京都に置き、札幌市に従たる事務所を置くことにしております。  次に、協会役員につきましては、会長一人、副会長二人以内、理事九人以内及び監事二人以内を置くことを規定しております。このうち、常勤役員は、理事二人、監事一人であります。また、会長及び監事主務大臣が任命するものとし、副会長及び理事は、会長主務大臣認可を受けて任命することといたしております。  協会職員につきましては、東京事務局職員として常勤職員五名、札幌市に現在の北方協会職員十二名と南方同胞援護会から移行する職員二名の十四名の常勤職員を配置することにしております。  次に、会長諮問機関として、協会業務運営に関する重要事項調査審議するため、三十人以内の評議員をもって組織する評議員会を置くこととしております。評議員会は、協会業務に関し学識経験を有する者及び貸し付けに関する利益代表としての北方地域漁業権者等から構成されることになります。なお、貸し付け業務運営につきましては、北方地域漁業権者等代表者たる評議員をもって組織する分科会を置きまして、専門的にこの問題の処理に当たらしめる予定であります。  次に、協会事務につきましては、啓蒙宣伝業務として、機関紙等定期刊行物発行、パンフレットの発行講演会講習会開催北方領土資料展及び国民大会開催等予定しております。  第二に、調査研究業務として、北方領土問題その他北方地域に関する諸問題について各種の調査研究を行ない、その結果を前述刊行物等によって普及宣伝することとなります。  第三に、北方地域居住者に対する援護業務でありますが、これは、従来南方同胞援護会が実施してまいりましたような業務、たとえば北方地域居住者研修、宿泊の便に供するため、国庫補助によって建設された千島会館運営及びこれらの者に対する生業研修等業務を行なうことを予定しております。また、北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律に基づいて北方協会が現在行なっております貸し付け業務、これは新協会継承してこれを行なってまいることになります。  財務会計につきましては、協会は、毎事業年度予算及び事業計画を作成し、当該事業年度の開始前に、主務大臣認可を受けることとしておりますが、貸し付け業務以外の業務につきましては、毎年度業務執行のための必要な経費の全額について国庫補助金をもって交付することとなりますので、財務会計に関する規定は、予算事業計画及び決算等最小限必要な規定のみを設けることといたします。資金計画財務諸表等貸し付け業務に関してのみ必要な事項並びに貸し付け業務にかかる基金及び経理区分等につきましては、特別措置法のほうで規定しております。  次に、この法律主務大臣は、内閣総理大臣及び農林大臣としております。ただ、協会業務に関し農林大臣の所掌に属さない部分がありますので、これらの部分について権限を行使する場合の主務大臣内閣総理大臣とし、その具体的な事項については政令で定めることといたしております。  次に、この法律施行期日につきましては、公布の日から施行することとしております。ただし、関係法律改正部分は、政令で定める日、具体的には協会成立予定日、すなわち本年十月一日から施行することとなります。  次に、北方協会は新協会成立のときに解散することになり、その一切の権利義務は新協会継承することと相なります。この継承対象としましては、北方協会に交付された国債及び北方協会が所有する現金、貸し付け金等一切の資産、未払い金退職給与引き当て金等の負債のほか、北方協会職員雇傭契約業務上の約定等一切の契約上の地位を継承することになります。  南方同胞援護会北方地域に関する業務にかかる権利義務も、同様に協会継承させることとしております。継承対象としては、前述千島会館及び南方同胞援護会札幌事務所職員二名等があります。  南方同胞援護会法改正につきましては、北方地域に関する業務根拠規定である同法附則規定を削除することとしております。  次に、北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律の一部改正につきましては、その第一点は、北方領土問題対策協会設立に伴い北方協会は解散し、北方協会が現在行なっている貸し付け業務は新協会が引き継ぐこととなるので、特別措置法規定のうち、北方協会設立及び組織等に関する規定を削除することであります。  第二点は、現行の特別措置法規定により北方協会が交付を受けた十億円をもって引き続き特別措置法に定める貸し付け業務の遂行に必要な資金の財源に充てるための基金とする旨の規定を設けることであります。  第三点は、協会貸し付け業務にかかる経理については、その他の業務にかかる経理と区分し、特別の勘定を設けて整理しなければならない旨の規定を設けることであります。  第四点は、業務方法書業務委託資金計画財務諸表利益損失処理業務上の余裕金の運用、受託機関に対する立ち入り検査等協会貸し付け業務を遂行するために必要な準則的条項について整備を行なっていることであります。  なお、新協会予算規模は、国庫補助対象で、十月以降の分として総額一千八百六十三万円、うち人件費その他事務費一千百六十九万三千円、事業費は六百九十三万七千円を予定しております。非補助対象貸し付け業務関係では、年間予算額約一億六千万円、うち人件費その他事務費約三千万円、貸し付け金が一億三千万円程度規模と相なる予定でございます。  以上であります。
  7. 山本茂一郎

    委員長山本茂一郎君) 以上で政府側説明は終わりました。本法案に対する質疑は後日に譲ります。     —————————————
  8. 山本茂一郎

    委員長山本茂一郎君) 沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査議題といたします。これより質疑に入ります。  西村君。
  9. 西村関一

    西村関一君 沖繩返還につきましては、衆議院におきましても、本院におきましても、総理、外相その他関係閣僚からいろいろな御答弁があったわけであります。われわれといたしましては即時無条件全面返還ということを要望いたしておりますけれども、いまだに時期についても、また、どういう形の返還をとるかということについても、白紙ということが政府答弁であります。基地抜き本土並みということもございましたけれども白紙であるということで、六月には外務大臣が訪米をせられ、秋には総理ニクソン大統領と会見なさるというようなところで、だんだん政府方針が煮詰まってきておると思うのであります。いずれにいたしましても、政府といたしましては、返還時点における沖繩に対するどういう対策を講じていくべきであるか、あるいは返還後におけるところの沖繩の諸問題に対してどう対処していくべきであるかということについての御検討がなされておると思うのであります。私は、総理大臣及び外務大臣に対する質問は後日に譲るといたしまして、長官に対してこれらの返還前あるいは返還時点返還後における沖繩県に対するところの諸対策についてお伺いをしたいと思います。  まず第一点は、沖繩経済でございます。すでに五万人の軍雇用者中心といたしまして、沖繩経済は大きく基地に依存していることは申し上げるまでもございません。どういう形で返還されるといたしましても、沖繩経済が変貌するということは、これはもう当然のことだと思うのです。すでに沖繩経済にはいろいろな問題が出てきておる。一部においてはすでに沖繩経済危機が叫ばれておるのでございます。これに対しまして政府はどういう対策をもって沖繩経済を立て直していくというふうにお考えになるか。まずその点からお伺いしたいと思います。
  10. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 沖繩返還に伴いましていろいろと現地における変化が生ずるということは当然予想されることでありますが、しかし、佐藤総理といたしましては、国会の冒頭におきます施政方針演説でも言われ、なお、国会のいろいろの委員会等におきましても明らかにされたのでありまするが、今秋訪米いたしまして米大統領と会談をいたしまして、返還に関して折衝され、復帰時期を明らかにしたいという決意を表明しているのでありますが、私はこの総理決意が十分に実行できまするように補助を申し上げたいと考えておるのでありますが、特に沖繩を担当する私ども立場から申しまして、復帰に備えまして、復帰の際におけるところの経過が円満に、摩擦なしに行ない得るように今日からその準備をするということが当面の大きな仕事である。いわゆる本土沖繩一体化ということばで表現しておりまするが、お話しのごとく、経済面その他いろいろな面におきまする摩擦を少しでも緩和し、これをなくすという意味におきまして、今日努力をしている次第であります。さような立場においてものを考えておるわけでありますが、産業面におきまして、御指摘になりましたごとく、これはまことに御意見のとおりでありまして、現在基地に依存する程度が非常に多いというところが沖繩経済特色であり、同時に、沖繩自体といたしましては第三次産業中心消費経済であるということ、なお、主要の産業本土政府保護政策によってなっているという特色を持っているのでありまして、将来復帰が実現いたしました際におきましては、やはり基地経済と別に、沖繩独自経済発展させることが必要であろうと、かように考えまして、今日から一体化促進しますと同時に、将来の沖繩開発ということに対して検討を加えておるわけであります。政府ベースにおきましても、調査団等を出しまして調査をいたしますと同時に、民間におきましても、本土沖繩との産業人の数回の会合をいたしまして、そうして今後の開発計画と申しまするか、長期の振興計画と申しまするか、こういうものをひとつ樹立すべく検討している次第であります。
  11. 西村関一

    西村関一君 具体的にどういう検討をなさっていらっしゃるか。現在ベトナム特需が著しく減少をいたしまして、あるいは軍の工事なども減少いたしまして、それらによるところの収入が減っている。そういうような状態から、将来の展望もさることながら、たちまち経済的な危機に見舞われいる。当然そうなってくることはわれわれ前から予測をしながら警告をしておったのでありますけれども、そういうことに対して、当面の問題に対して、ひとつどういうお考えを持っていらっしゃるか。さらに、産業開発ということを言われましたが、沖繩産業については、どういうところに重点を置いて産業開発をなさるお考えであるか。たとえば沖繩糖業につきまして、かなり農業労働者製糖事業に参加しているところの労働者状態は、本土労働者状態と比べまして劣悪な条件のもとに置かれている。また、事業に従事しているところの業者といたしましても、沖繩製糖業者は苦しい状態にある。これをどういうふうに立て直していくことができるかということに対して、これは一例でございますけれども政府としてはどういうお考えをお持ちでございますか。
  12. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 非常に広範なお尋ねでありまして、部分的に順次お答え申し上げていきたいと思いまするが、現在の沖繩の姿から言いまして、将来どういう期待を持てるかという点につきましては、今日までいろいろ検討されまた一般的にいわれておりますことは、沖繩自体が、地理的に申しまして一番日本の南の端と申しまするか、本土から申しますると南の端でありまするが、地理的に申しますると、東南アジアの非常に中継基地としての地理的条件を持っておる。この点が大いに期待できるのではないか。  なお、その気候風土亜熱帯地域——熱帯に非常に近いところもあります。その意味においての特殊性農業方面その他においても持ち得るのではないか。  なお、将来開発いたしましたならば、港の条件、これも地理的に申しましても非常に便利ではないかという点。また労働力も非常に豊富であります。  なお、沖繩の島がサンゴ礁でできておりますので、まだまだ開発——土地造成ですか、埋め立ての可能性が非常に多い。  なお、いわゆる観光資源といたしましても、単に戦跡だという意味でなしに、いわゆる熱帯気候風土というもの等から非常に期待を持てるのじゃないか。  まあ、大きな点から申しますると、ただいま申し上げましたようなところへ将来の産業開発の基点を求むべきではないかと考えているわけであります。ただ、現状におきましては、なかなか今日におきましては基地経済というものが中心になっております。労働力その他におきましても、基地経済中心で動いておりますために、糖業その他におきましてももちろんでありますが、その他のものにおきましても、どっちかと言うと、労働力においては不足を感じ、むしろ労働供給力並び労働の質から申しましても十分ではないと思うのであります。なお、基盤改良ということも十分ではないのであります。そういう意味におきましてずいぶん改善すべき点が多いわけであります。たとえば第一次産業の点から申しますると、現在主としてサトウキビ、パイン、この二つに依存いたしておるわけであります。糖業につきましては、本土甘味資源特別措置法によりますカバーがありますので維持をしております。パイン産業にいたしましても、いわゆる自由化に対しまして特別な処置をいたしましたので、それでもって処理され保護されて今日までの発展を見ておるのでありますが、しかし、その業態自体を見てみますると、実は非常におくれておる。むしろ根本的に申しますると、沖繩におけるところの農耕地というものの改善というものが行なわれずに今日来ておる。非常に小規模のもの、しかも土壌の改良等が行なわれていない。言いかえまするならば、基本的な土地改良からやっていかなければ、ほんとうの農業というものといたしましては不十分ではないか。なお、用水等におきまして、不十分な点があるわけであります。基本的にやはり第一次産業基盤というものを改良していくということが必要であろうと思います。技術面におきましても、やはり最近は漸次専門技術者等技術援助の形によって入れておりますが、十分ではない。特に農業資本そのものにおいても少ないという点が言えると思うのであります。しかし、当座のつなぎといたしましては、砂糖もパインも、ただいま申し上げましたように、一種の保護のもとにありますためにつながってはいきますが、いつまでもこれに依存しているということは私どもはよくないと思っております。  第二の問題といたしまして、自然の土地を利用するという土地条件でありますが、すなわち亜熱帯農業というものの発揮ができるのではないか。この点に関しまして、本年度予算等におきましては熱帯農業研究所の支所を沖繩に設けまして、そして今後の発展のために努力をいたしたいと思うのであります。なお、そのためには、青年の技術訓練等もいたしてこれに対処していきたいと思うのであります。  また水産業は、地の利から申しまして、沿岸はあまりふさわしくはありませんが、東南アジア海域、その他遠洋漁業としては非常にいいわけでありますから、現在も出漁いたしておりまするが、何ぶんにも漁船並びに漁港というものが不十分である。こういう意味におきましても、漸次拡充していく必要があります。  なお、農業の一環といたしまして、畜産業は非常によろしいのではないか。いままでのところ、畜産業、特に昔から豚はありまするが、牛、肉牛の飼育が本土需要状況から見ましても非常によろしいのではないかというふうに考えまして、今日積極的にその助成振興の歩を進めておるわけであります。  第二次産業といたしましては、目下めどのつきましたものは、石油の原油の貯油施設でありますが、これに関連いたしましたものが将来は発展できるのではないか。並びに、先ほど申し上げましたその地理的条件から見まして、特殊な産業が導入できるのではないか。具体的に何を選ぶのかということにつきましては、非常に研究しなければならぬことでありますが、いまの石油、並びに、すぐ近くにありまするところの尖閣列島地帯海底資源開発——石油でありますが——そういうことが将来には期待できるし、なお、現在やはり同様に資源として見込みのありますのは、天然ガス等について考えられております。  なお、一般産業といたしましては、産業の形態そのものが、現在は一種の保護関税地域によって育成されておるという形であります。したがって、地元の産業全般について、将来復帰の際におきましては切りかえをしなければならぬということ。それから中小企業その他の組織についてはまだまだ不十分でありますので、この点につきましても今後努力をしなければならないと思います。  第三次産業等につきましても、いわゆる加工貿易地域その他といたしまして、相当の将来のチャンスはあるのではないかという意味におきまして、今日研究をいたしておる次第でございまして、先般行なわれました本土沖繩経済団体の会合等におきましても、数項目にわたりまして、とりあえず将来着手すべきことの提案を受けておりますが、大体私がただいま申し上げましたような考え方に一致しておると思っております。
  13. 西村関一

    西村関一君 いま農業生産基盤整備拡充に関して、サンゴ礁から成っておるところの島嶼の埋め立てによる生産基盤の拡充をやるということも計画の中にあるとお話しになりましたが、それよりももっと大事なことは、いままでの農耕地の大きな部分が軍用地として接収されておる。そのことのために農民が非常に困難しておる。そういう点に対して、これはどういう形で返還されるにいたしましても、いまから、そういう農民の農耕地を接収しているところのアメリカ政府に対しまして、そういうものを返してやってもらいたい、返してもらいたい、そうして農民の立場を守っていこうという積極的な姿勢がなければいけないのじゃないか。さきにあげましたサトウキビをつくっているところの農民たちも、私も見てまいりましたが、軍の監視のもとで、非常にきびしい条件のもとで仕事、労働を強いられておる。そういう状態が続いておるのでありまして、この軍用地の問題。  それから、水が足りないということを言われましたが、水資源はアメリカ側が押えておるのでありまして、水道公社等もアメリカの支配下にあるわけでございます。アメリカの軍関係の住宅には水が豊富であるけれども沖繩県民の施設や一般の住民の水は非常に不足しておる。また、ごくわずかな水を使っておるその水の中にも、軍のガソリンが流入してくるというような状態で、くさい燃える水を飲まなければならぬというようなところもあるわけです。嘉手納地区においては、そういうところがあるのであります。そういうような点に対しても、政府はそういう沖繩県民のなまの訴えを取り上げてまずアメリカ当局に強く訴える、解消するという努力をしていただかなければ、ただ海岸地帯を埋め立てて農業基盤を広げていく、農業の生産基盤を拡充していくということよりは、もっと最初にしなければならぬ問題があるのじゃないかと思いますが、その点、いかがですか。
  14. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) ちょっと私説明いたしましたことについて誤解をしていただいたと思うのでありますが、海岸の埋め立て等は将来の新しい工業の立地条件、また住宅等の立場になると思います。そういう意味において、非常に有利な点であると申し上げたのでありまして、農業耕地のために実は埋め立てをするということは必ずしも私は得策ではないと思う。むしろ、現在ありまするところの農耕地自体を改良する、基盤の改善をするということがむしろ大きな問題ではないかと考えておるわけであります。  なお、水の問題につきましては、元来、沖繩はふだんは水があるのですが、干ばつ時には不足するという意味立場におきまして、やはり住民の生活には飲料水が不自由でありまするが、今日水道業の発展から見まして、これを農業用水に使うまでには至っておらないのでありまして、むしろ、将来のためには、私は農業用水用にも、また工業用水用にも、資源の開発が必要なんじゃないか。さような意味において研究されておるわけであります。米軍が使っておるために一般の飲料水に不自由するということは、むしろ、そういうふうには考えられないと申しますか、今後、一般の水道事業の普及、これはだいぶ各地方も普及してまいりましたが、その拡充に待っていくべきものと思うのであります。なお、基地周辺の場所におきまして井戸にガソリンが混入したというのは、これはやはり基地周辺の問題として解決すべきものではないか。私ども、現在の基地周辺に対する住民の福祉増進という意味におきまして、これはその補償なりまたその防止なりについてアメリカ軍側がもっと積極的に敏速に行動できるように努力してまいりたい。今日まで努力しておりましたが、やはり今後ともこの努力は続けてまいりたいと思うのであります。それからなお、農地を広げるために、軍用地の制限と申しますか、縮小等が必要ではないかというお話がありましたが、これは将来、私は、復帰の際における問題として考うべきものではないかと思っておるのでありまして、現在におきまして農業のために基地を開放してそうして農地に充てるということは、現在のところそれほどの問題ではない、むしろ、現在の耕地そのものをよりよい耕地にするという努力へ進むべきものではないかと、かように考えておるわけです。
  15. 西村関一

    西村関一君 漁業の問題についてのお話がございましたが、沖繩遠洋漁業に一部依存しておると思うのでございますが、本土遠洋漁業と比べまして沖繩の漁民たちはいろいろな制約を受けておるし、また、本土政府の援助も本土の漁民並みにはなされてない。漁業の振興ということを言われましたが、そういう点に対してもより厚い保護がやっぱり必要だと思うのでございます。  それから、それと関連いたしまして、沖繩遠洋漁業に出るところの船舶は三角旗と日章旗を掲揚している。これがいろいろ誤認されまして、国籍不明の船舶であるというふうに見られまして、拿捕されたりあるいは射撃を受けたりするような事例が起こっているのでございます。これらに対しましても、本土の漁船と、本土の船舶と同じように日章旗を掲揚するということぐらいは現在の時点においても当然できることだと思うのであります。そのために漁民が非常に苦労しているという実情も長官は御存じだと思う。この点に対していかがですか。
  16. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 沖繩漁船の海外出漁につきましての問題でありまするが、従前におきましてはまぎらわしい旗でありましたために問題があったのでありまして、御指摘のとおりでありますが、しかし、新しく日章旗に三角の「硫球」と書いた旗をつけるようになりましてからは、その点がなくなったのであります。なお、問題として考えなければならないことは、豪州並びにインドネシア海域に出漁しておりますものが従来からも問題が起きておったのであります。この点に関しましては、本土から出漁しておりまする日本漁船につきましても同じ問題がありまして、ときどき拿捕事件があったわけでありまするが、御承知のごとく、インドネシアにおきましてもこの問題は了解ができてまいりまして、入漁料を払って操業するという形で、沖繩もたしか一緒にこの点は解決しております。豪州につきましては今日本土のほうと大体妥結しておりますが、沖繩の漁船につきましても本土並みでもって解決すべく、たしか今日交渉を継続しておるのでありまして、これが本土並みに扱われますならば、将来におきましてはこの関係の問題はなくなる。豪州の分もあと追っかけて取り扱ってきまして、すでに解決したそうであります。
  17. 西村関一

    西村関一君 日章旗と三角旗をつけるようになってからは問題が起こっていないということを言われますけれども沖繩復帰協から出しております運動方針の中に、ぜひこれを本土と同じように日章旗一本にしてもらいたいという要求が強く出ていることも御存じだと思う。そういうところにも差別待遇がなされているということも言えるのです。そういう点に対しても、現在は問題がないからこれでいいじゃないかというのじゃなくて、あくまでも本土並みということを政府が言われる以上は、そういう国旗の問題についても本土と同じように取り扱うという努力をぜひしていただきたい。その点は総務長官としてはどうでございますか。
  18. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 船舶旗の問題でありますが、最終的には施政権復帰の時期において実現するものと思うのでありますが、しかし、できるだけすみやかに本土と同じような取り扱いをすることが望ましいのでありまして、この点は、しばしば過去において折衝した結果、現在のような形になったわけであります。ただいま復帰協の意向がありましたことにつきましても、もっともな御意見であろうと思います。その具体的な経緯につきましては局長から申し上げますが、なお、豪州等におきまして問題のありましたのは、日本の漁船の操業に関する協定ができて、その後しばらく沖繩の漁船の関係がちょっと時間的にずれておりまして、だから、そういうつなぎの期間において紛争もあったことかと思うのでありますが、先ほど申し上げましたように、インドネシア並びに豪州等は本土と同じに解決いたしましたものでありますから、今日におきましてはその問題は円満に進行しているものと思うのであります。なお、日の丸、旗の問題につきましての経緯については、局長から御説明申し上げます。
  19. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これは先生御承知のことと存じますが、従来デルタ旗という、非常に知られていない旗を、船の事故を起こしたときの旗を切り取ったものを沖繩の船舶は掲揚しておりまして、インドネシアその他でいろいろ銃撃その他の事件もあり、それからまた、国民感情というような点も考慮しまして、日米協議委員会におきまして長い間の検討の結果、いまの御指摘になりましたような日の丸の国旗に三角旗、「琉球」と書いた旗を一つのセットにしてあげることになったわけでございます。で、その場合にどうして日本国旗が掲揚できないかというような御議論もありましたが、何ぶんにも施政権がアメリカにありまして、船舶に対する行政権はアメリカにあるわけでございます。したがいまして、所属の海運局で船舶行政権を行使しておる本土の船と違って、そのまま日の丸の国旗があげられないじゃないかというようなこともありまして、私どもとしては、次善の策として現在のような旗を掲揚することになったわけでございます。したがいまして、ただいま長官から御答弁ありましたように、施政権返還になった時点に切りかえていくということに待つしかないのじゃないかというぐあいに考えられるのであります。
  20. 西村関一

    西村関一君 次は、自治権の獲得の問題でございます。まだ全面復帰が成就していない今日におきましては、いろいろな制約下に置かれているということはやむを得ないと思いますけれども、主席権限の拡大ということであります。これは高等弁務官の権限が強大でありますから、主席の権限というものは著しく制約を受けておる。布告、布令が優先しておるという状態で、自治権の拡大ということが、これは沖繩県民の一致した希望であると思うのでございます。特に高等弁務官の拒否権によって何もできない。「何も」と言っては言い過ぎであるかもしれませんが、拒否権が使われるという場合においては、やはり最終的には沖繩県民の意思が通らない場合もある。こういう点に対しまして自治権の拡大ということは、日本国民であり日本国の領土であるところの沖繩に対しまして、現在非常に不幸な状態にありますけれども、現在の時点におきましてもそれを拡大していくところの努力政府も援助していかなければならぬと思うのでございますが、そういう点につきましてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  21. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) ただいま仰せのごとく、施政権返還を最終的な目標とするわけでありまするが、これが大体間近にはなってまいりましたが、しかし、自治権の拡大をはかるということは全く御意見のとおりであります。今日までもすでに、たとえば主席の公選が行なわれるようになった。これは形式的には直接権限と関係がありませんが、実質的には非常に大きな自治権の拡大であったと思うのであります。その他布令、布告等につきましても、従来立法院でなかった権限が委譲されまして、そうして、できる限り立法院のいわゆる民立法に切りかえるというふうなことも実現を見ておるわけであります。今後あらゆる機会におきまして努力をしてまいりたい。なお、警察方面の権限等につきましても、すでに若干の民警察というものの権限の拡大ということが試みられておりますが、今後ともこの点はできる限り県民の自治能力の拡大と申しますか、これに対しましては本土政府といたしましても努力してまいりたいと思います。
  22. 西村関一

    西村関一君 国政参加の問題はどうなっておりますか。
  23. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 国政参加はすでに政府から議長のほうにお願いをしてあるわけでありますが、日米の協議によりまして、一体化を円満に実現するために県民の意向を反映するということは必要であるという意味におきまして国政参加の協定が成立いたしまして、今日この手続を、これは内容国会法、国会の権限に関することでありますので、政府が立案するよりも、むしろ国会において御立案願うことが適当ではないか、かような意味におきまして、議長あてにこの趣旨を申し上げておる次第でありまして、今日国会の御検討に待っているというか、御検討中であると考えております。
  24. 西村関一

    西村関一君 時間がありませんから、その問題に対しても深く掘り下げてお伺いすることは後日に譲りたいと思いますが、沖繩県民の言論の自由に対して布令が制約を加えておる。布令百四十四号、修正刑法というものによりまして、民政府に対して誹毀的な、または煽動的な印刷物、文書を発行、配布する意向で所持する者は五万円以下の罰金もしくは五年以下の懲役に処するということが規定されております。これは明らかに出版表現の自由が制約されておるということが言えるのでございまして、日本国憲法の精神から言っても、またさらに基本的な人権の立場から申しましても、こういう点は改めさせなければいけないと思う。  それからまた、思想信条の自由につきましても、軍雇用者に対しては思想調査が行なわれておる。個人の思想信条の自由という点からも、こういうことが普通に行なわれているということに対しましても、これはほっとけない問題だと思う。そういう点に対しまして、政府はお考えになっておられるのですか。
  25. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 御指摘の布令が存在することは聞いておりますが、しかし、布令によって非常な言論の自由が束縛を受けておるという現実の姿はないのであります。今日、新聞あるいは放送等におきましても、全く検閲制度というものはなしに、これが自由に行なわれておるわけであります。  なお、軍雇用者の思想調査というもの、私はいわゆる思想調査というものであるというふうにはまだ聞いておらないのであります。
  26. 西村関一

    西村関一君 私が申し上げておりますことは現地の声であります。私の調査の結果ではなくて、現地の声がそういうことを訴えておる。全然事実がないものであるならばそういう声を上げてくることはないと思うのでございまして、これはただ一部の革新勢力の意見じゃなくて、沖繩復帰協という保守も革新も含めた沖繩県民大多数の意見がこういうところにも出ておるということをお考えおきを願いたいと思うのでございます。  さらに、それらの問題に関連いたしまして、民主的な諸制度が十分に適用されてない。たとえば教育関係の法規にいたしましても、あるいは社会保障関係の諸法規にいたしましても、その他憲法に保障されておりますところの民主的な諸法規が沖繩においては適用されてないという事実がございます。これらに対しましても県民は非常な不満を訴えておるのでございます。この点はいかがでございますか。
  27. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 長い間戦争の犠牲を受けて、その後の回復というものが実は自力でやらざるを得なかったという、まことに困難な情勢下にあったために、県民福祉の向上のための諸施設はおくれておったと思います。なお、社会保障等におきましても非常におくれがあったわけです。したがって、私ども本土への復帰を目ざしまして最大の努力をいたしておりますことは、そういうことを含めました意味本土沖繩一体化でありまして、今日の一体化政策におきましては、単に事業を実施するということのみならず、おくれておりまする諸制度を本土並みに引き直して、そうして内容本土並みにするということを目標に今日努力をしておるわけであります。昨年から実施いたしましたが、本年はその第二年次になりまして、昨年の経験を十分検討いたしまして、さらに本年第二年次、あと第三年次と、わずかな年数でありますので、急ぐものからできるだけ努力をしてまいりたいと思います。今日、そのためには諮問委員会が十分活動しておりまして、そうして次々と必要な施策に対して答申をいたしまして、その答申に従って地元におきましても立法院が立法する。また本土からの援助におきましても、この一体化方針に従って援助費を出すし、またそれに基づきまして必要な法規等もつくる。今度国会にお願いしておりまするところのいわゆる免許資格の法律もやはりその一環であります。なお、現地で一番要望しておりますることは社会福祉の問題でありますが、施設につきましては漸次充実しておりまするが、私ども見て一番大きな欠陥だと思いますことは、やはり医療制度がおくれておる。端的に申しましたならば、国民健康保険という皆保険にはかなり遠かった。一部の健康保険、制限されたワク内の健康保険法は実施されておりましたが、国民皆保険には非常に遠い。同時に、民間の医療施設も非常に少ないというところに欠陥があったわけであります。私ども今日の目標といたしまして、社会保障につきましては、何と申しましても、国民健康保険ができるだけ早く実行でき、実施できるようにしたいというふうに考えておりますので、今日からその準備をしておる。いわゆる病院をこしらえ、これを、琉球大学の保健学部というものを設置しまして、その関係病院といたしまして保健職員の養成を行ない得るという意味の病院の建設拡充をいまいたしておるというようなわけでありまして、できるだけ保健関係、医療関係職員というものを充実しておいて、そうして早く国民皆保険が実施できるようにしたい。まあ、そういうような体制でございますが、一体化の施策として講じておるわけであります。  それから教育制度等におきましても、さきに義務教育の職員の国庫負担二分の一というのは実現いたしたのであります。義務教育に対しまして、施設に対しましても努力しておりまするが、まあ、いわゆる普通教室は一応できておりまするが、特別教室、屋体、プールというものがおくれておるために、今日では重点的にそういうことに努力している。なお、設備・施設内容等におきましての充実をはかるというふうにしております。なお、根本的には、やはり教育制度そのものが本土とだいぶ異なっておって、アメリカ式の教育区というものを用い、教育委員会制度を持っておる反面におきまして、市町村というものが非常に脆弱でありますために、十分な市町村行政というものが行ない得ないというわけでありまして、私どもといたしましては、教育と社会福祉とそれから産業基盤の充実とさらに市町村行財政の拡充、まあこの四つの点を中心にして予算の援助等をいたしておるわけであります。
  28. 西村関一

    西村関一君 沖繩に対する差別的な植民地政策、そういう点が改められてない現状でございます。旧国有地、旧県有地が接収されておる。それから、琉球銀行や幾つかの公社がアメリカの支配下にあるからこれを民移管にしなければならぬという要求が強いことも御存じのとおりでございます。こういうアメリカの植民地政策のために沖繩県民が非常に多くの搾取を受けておるという現状を改めていかなければならぬと思うのであります。銀行にいたしましてもアメックスだとか、BOAでありますとか、沖繩の金融、経済支配をしているのがアメリカである。先に申しました水道公社、開発金融公社、電力公社、カルテックス、こういうものなどもアメリカ民政府のもとに置かれておる下部機関としてばく大な収益をあげておる。植民地搾取がこういう形で行なわれておるということであり、また、アメリカのドルが通貨となっておる。これに対しまして日本円を通貨とするように改めてもらいたいという要求も出ております。これも御案内のとおりであります。こういうふうに、つまり、差別的な植民地政策に対する撤廃を求めるところの県民の声が強くあがっておる。こういう点に対してはどのように政府はお考えでございますか。
  29. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) ただいまの御指摘の問題、事実でございますが、これが植民地政策、搾取であるかという点につきましては、私ども必ずしもそう考えない。これはむしろ施政権がアメリカにありますために、アメリカ民政府中心事業が行なわれておったと思うのであります。しかし、御承知のごとく復帰も目前に迫っておるわけで、今日私どもといたしましても、いわゆる一体化政策というものを推進しております。したがって、県民に非常に関係の深いところのいわゆる関係三公社と申しまするか、そういう種類のものにつきましては、これはできるだけひとつ将来の復帰に備えまして、今日から形式を改めるということに対して検討をいたしておる次第であります。最終的には復帰という問題を考えますが、その道程におきまして着々と準備を進めてまいりたいと思う次第であります。  なお通貨の問題につきましても、これはまことに住民から申しますと不自由な感じもいたしますわけでありますが、これも私どもは、復帰の際において検討すべきものでありまして、ただそれをどういうふうにして切りかえるかということ、復帰の時点における方法論等におきましてはなかなか微妙なものがあります。経済界等にも及ぼすものが少なくない。直接住民生活にも影響がありますので、その点はあらかじめ十分検討してまいりまして、そうしていわゆる一体化政策といたしまして、その復帰の際におけるところの摩擦がないように、円滑にこれが切りかえができますように今日から検討をしておる次第でございます。
  30. 西村関一

    西村関一君 時間が参りましたので、まだお伺いしたいことがたくさんありますけれども、あと一、二点お伺いしたいと思います。  琉球政府に対する、沖繩に対する国の財政措置その他の援助に関するところの臨時措置法の問題であります。こういう点に対して政府は何らかの特別な措置を講じていこうというお考えはございませんか。
  31. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 現在、本土政府からの沖繩に対する援助といいますのは、アメリカとの協定に従いまして援助するようなことになったのであります。当初はアメリカ自体でやっておりましたが、民生の向上のためには日本の協力が必要であるということを表明されて以来、これが具体的な軌道に乗っておりまして、御承知のごとく、現在におきましては、アメリカの支出する援助金をはるかに本土政府の援助が上回っておるという状態であります。したがって、融資等におきましても、本土側と申しますか、地元側の意向というものを尊重するように改組いたしたいといろいろの検討が行なわれておるわけであります。今後の援助等におきましては、いままでの援助政策からいろいろと検討すべき問題もだんだん出てくるのではないかと思っております。それで、できるだけ今後の一体化におきましても地元の意向を尊重しながら実施をするということになっております。ただいまの日政援助の立場に対しまして地元からの強い要望がありますのは、いまの援助はアメリカの援助と同様でありますが、補助項目がきまりまして援助費を出している。それに対する地元財源というものが比較的裏づけが乏しい。地元では対応費と言っておりますが、そういう自主財源が少ないところに窮屈を感じておるようでありますが、私どもといたしましても、将来の県財政、特に市町村財政につきましては、特別の交付税金を与えまして、その財源の拡充につとめておりますが、やはり琉球政府自体につきましてもそれを考えたいと思っております。何ぶんにも現在のところ地方制度が本土の地方制度とまだだいぶ異なったものがありますので、事務等におきましても中央事務、府県事務というものが混合して存在しており、これをだんだん区分を分けていく。税制等におきましても十分検討いたしまして、できる限りすみやかに、本土並み沖繩県といいますか、そういうものが存在できるし、将来の復興計画が順調に進むようにいたしたい。なお、将来の振興に対しましては、私は特別なやはり振興計画というものを立てなければならないと思うので、そういう事業の実施のためには、私は、現在の琉球政府、将来の沖繩県が、現在のままを引き継いだ沖繩県というだけではこの実施は非常に困難ではないかと考えますので、国から特別に今後の開発事業を実施するように、事業団あるいは政府機関だとか何らかの形を考えるべきだと思います。
  32. 西村関一

    西村関一君 早晩、軍の雇用員の離職の問題が起こってくると思うのです。すでに起こりつつあるわけでありますが、離職者に対する特別な措置を考える臨時措置法といったようなものを考えていかなければならないと思いますが、そういう御用意はございますでしょうか。
  33. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 軍雇用者の待遇の問題につきましても、私ども常に関心を持っておるのであります。離職者も従来からあったわけでありますが、その対策が十分でなかったと思うんです。今回の予算におきましては、離職者対策予算を五千万円ですか計上いたしております。本土の離職者と同じ待遇、大体これに準じたものを地元でもって実施していくことのできますようにいたしておるわけでございます。
  34. 西村関一

    西村関一君 最後に、沖繩を将来どういう形の島にしていくかということについては、これは軍事基地としての沖繩ではなくて、平和の基地としての沖繩にしていく。平和産業を確立し、長官も言われたような、観光地帯をつくりあげていき、また、いままでの戦争の痛手を受けたところの沖繩が平和基地として今後発展していくような構想を考えなければならない。われわれの心配いたしておりますのは、沖繩返還に伴うアメリカの極東軍事政策の一環として日本が肩がわりをするといったような形の沖繩をつくるべきでないということを考えておるわけなんであります。そういう点に対しまして、これは総務長官の権限外のことであるかもわかりませんけれども政府といたしましてどういう形の沖繩を今後予想しておられるか、そういう点を総務長官のお立場から一言お述べをいただきたいと思うんであります。
  35. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 現在沖繩にありますところの軍事基地がどうなるかということは、すでに総理あるいは外務大臣その他が委員会において御答弁いたしておりますので、それによって御推察をいただきたいと思います。私ども沖繩を受け入れる立場沖繩県民の立場といたしまして、今日処置いたしますのは、やはり普通の府県として十分発達できるような府県として活動してもらいたい。さような意味合いにおきまして、ただ、先ほど申し上げましたように、沖繩沖繩なりの特色を持っておりますから、その特色を生かして、しかも基地産業に依存するという形ばかりでなしに、地元におきましても地元として十分な産業発展させて、そうしてりっぱな県として県民福祉を増進することができる、そういうふうにありたいと期待しておるわけでありまして、今後いわゆる将来の振興計画と申しますかビジョンに対しましては、せっかく検討中であります。政府ベースにおきましても、民間ベースにおきましても、互いに協力して最も適切な案を立てて、なお、めどのついたものからこれを実行していくというふうにすることが必要ではないかと考えております。
  36. 山本茂一郎

    委員長山本茂一郎君) 中村君。
  37. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私は沖繩の主席選挙のときもずっと行っておりました。この間も調査団の一員として向こうへ行ってきてみていろいろと考えさせられたのです。それは、国会予算委員会やあるいは衆参両院で沖繩の問題が語られておるけれども、ほんとうの沖繩の問題についてのことが、一面において忘れられておるんではないか、沖繩がやがて返るということはわかっておる。基地の態様がどうかということが問題なんで、いまも西村さんがお話しのように、私は沖繩復帰した後にどうあるべきかということ、復帰とそれから本土との一体化というものは切り離すことはできないけれども、しかし、次元が違う問題であって、復帰ということは、極端に言えば、きょう復帰ということがきまれば復帰することができるけれども沖繩の人たちをどうするか、沖繩経済をどうするか、いまの法制的に違った角度をどう日本のものに切りかえていくかと、こういう私は非常に深刻な問題が横たわっていると思う。選挙の際にも各地を歩いて、屋良さんが勝った理由というものも、いわゆる屋良さんらしい日本人の操とか、日本人の魂とか、あるいは日の丸を先頭に立てて運動に立ったその姿、あるいは農家に私たちがたずねていっても日の丸の旗がどこの家の中にも掲げてある。いわゆる沖繩のナショナリズムがあの選挙を支配したんだ、早く帰りたい、日本と一緒になりたいという、こういった、政治の信条やその他を乗り越えた姿のもの——いわゆるナショナリズムが屋良さんを勝たせた一つの大きな原動力であるということ、したがって、私どもも政治の場において取り上げる形は、復帰の問題についてはとにかく真剣に考えなくちゃならぬと同時に、今度私たちが沖繩調査にまいりまして、私たちが考えておったことが如実にわかったわけです。それは、私たち個々に会った場合に、沖繩立法院の皆さん方にも会いました。その公式なことばは、いずれも早く帰してほしいということであるけれども、座談会や委員会の席に出ることばというものは、帰るときに私たちの経済というものをどうするんだ、このことを考えてもらえないか、そういうことが非常に真剣なことばで私たちにはね返ってくる。経済界の人も同様だと思うわけでございます。こういうことを考えてみたときに、私は、沖繩のいわばいままでの姿というものは、政治というものの中の一つの、何というか、イデオロギーというのが先に進んでおった。立法院の選挙の場合でも、議員が学校の先生出身者がほとんど半数を占めたということ、労働者、教育者が先頭に立ってそれが立法院の議席を占めたということ、その中で、経済界の問題がどう取り上げられていくかということが非常にこう薄れていく、薄れていくと残念だという声が経済界でははね返ってきておる。  そこで、私はきょうは特に経済の問題について総務長官にお尋ねをいたしたいわけですが、復帰するまでの過程をどうするかということ、復帰した後の沖繩経済をどうするかということをお尋ねしたいわけです。先ほど西村さんの御質問に対しましても、たとえば土地改良をやっていくんだ、埋め立てをやっていくんだと。土地改良をやるとしても、あすこでは土地改良はできないはずです。日本のように農地法がないのです。昭和十五年にできた農地調整法のままです。地主と小作人のままです。いま、ここで基盤整備をやろうとしてもできないんです。だとすれば、農地調整法をどう持っていくか、日本の農地法をどう適用するか、基盤整備のための助成金はどう出すかという問題もすでにそこに横たわっておる。土地改良をやるについても地籍調査をやらなくちゃならない。今度予算にも出ていますけれども、地籍調査を十分にしなければ土地改良ができるはずない。金を流してもできるはずない。これも問題だと思うのです。また、港湾の問題でもそうだと私は思います。確かにサンゴ礁で埋め立て可能で、長官が、工業団地としてやると言われたが、私も那覇をこうずっと見ておりまして、飛行機の上から見たり回りを見まして、私は屋良さんに言ったのです。嘉手納基地で、あんな小っちゃなところでB52、B52と騒いでいずに、なぜここの埋め立てのことを考えないんだ、私らの考えでも二千万坪は埋め立てできるのじゃないかと。二千万坪の埋め立てが可能です。茨城県の鹿島の砂丘地帯の前人未踏のところに掘り込み式の港をつくって、二十万トンの船の港が間もなくでき上がります。その投下資本が約一兆円。三十万、四十万の人が集まります。そこからの年間の出されるものは一兆五千億から二兆円になる。あすこを見ていったならば、それと同じ形態だから埋め立て可能なんです。可能ならば、あすこの埋め立てをやってそこへ新しい町をつくってやって、沖繩の人が住めるように、那覇の人が、労働者の人が住めるようにして、りっぱな家をつくってやって、そこへショッピング・センターをつくってやることも可能なんです。私は、そういうことは当然考えるべきだと思う。嘉手納の村に行って村長さんに私は尋ねたのです。小学校が爆撃機の音で毎日授業が中断する。村長さん、二キロぐらい離れたところに小学校を移す計画を立てたことがありますか。マイクロバスで移動できるじゃないですか。やったことはない。先ほども、燃える井戸というのが出た。燃える井戸というののふたを取ってみました。二年半前にふたしたままです。私は、燃える井戸、いまでも出るのかと言ったら、テストしたことない。じゃあ、十メートル先をボーリングしたことありますか、二十メートル先をボーリングしたことありますか。ボーリングはしません。ボーリングしてほんとうにそこから油が出るかどうかという科学的な調査をなぜやらぬのか。私は、そういう問題が沖繩の場合横たわっていると思う。それが基地にたよって生きている人の一つの姿ではなかろうか。こういうことの問題をかかえているわけです。  そこで、私は前段が非常に長くなりましたけれども、とにかく私の持つ考え方、思想をまず申し上げて、長官の御意見を承りたいわけでございまするが、沖繩の援助計画に、日米琉の諮問委員会から今度の二百二十七億かの援助計画、こういう計画は何年続けてやる計画か、まずお伺いしたいのです。
  38. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 政府方針といたしましては、一体化政策は三年というのを一応のめどにしておりまして、ことしはその第一年次といたしまして、とりあえず地元で緊要とする事業、また準備を必要とする法制等につきましての手を加えまして、これに必要な予算をつけたわけでありまするが、来年、再来年、大体あと二カ年をもって本土並みを目標としていくものであります。来年の事業につきましては、さらに現時点において地元の意向というものをよく聞きながら編成してまいりたいと思う次第でありまするが、しかし、大体の方針におきましては、従来のような一体化方針というものでもって私はできるのではないか。ただ、これはいろいろ各方面の協力を得なければならない。たとえば、予算だけ取りましても、制度のほうがおくれてまいりますと、実施がおくれるというような形もあります。また、産業方面の受け入れ体制も伴わなければならないということになります。やはり県民と政府方針というものが一体となって、そうしてこれを迅速に処理していく、消化していくということが必要ではないかと思っております。
  39. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 いまの三年計画、私は今年度の計画を見ましても、二百二十七億の中で教育に六十三億、社会福祉に四十四億一千七百万、市町村財政に十八億、こういうことを見てみると、二百二十七億の中で、沖繩の人たちが経済の立て直し、自立経済になっていくための産業基盤整備等に対する予算関係というものは非常に少なくて、社会福祉とかあるいは教育だけにおもに重点を置かざるを得ない、そういう姿だと思うわけです。これでは産業復興というものはできない感じを私は受け取るわけでございます。たとえばパインですが、先ほど長官沖繩保護経済だと言われたが、砂糖を日本本土に輸入するのに国際価格の三倍ですよ。三倍で日本が引き取っている。パインでもそうでしょう。パインでも、日本の需要の七五%は沖繩から取っている。しかも、国際価格から言えば二倍なんです。二倍の価格で買っているのです。これが本土復帰一体化になった場合に、そういうふうな保護政策がとれるかどうか。貿易の自由化のあらしの中で、沖繩だけのパインを二倍の価格で取り、砂糖を三倍の値段で買ってやる。しかも、それでも糖業が不振であり、パイン産業が不十分だというこの現実の中で、私は沖繩産業を守ってやることができないのではないか。したがって、そういう産業基盤整備のためにはどのような措置をとるか、ひとつお伺いしたい。
  40. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) とりあえず現在やっております一体化の問題は、本土と同じ制度のもとに同じレベルまで生活水準を上げていくということが目標になっておりまするが、仰せのごとく、過去二十数年間ほとんど破壊し尽くされた国土というものに対して十分な資本が投下されていないというのが現実の姿でありまして、根本的には、だから、これに対する大きな計画を持たなければならない。私どもは、これをいわゆる産業振興計画としまして一体化計画と並んでこれを実施してまいりたい。これには当然相当大きな資本が必要であると思います。例から申しますると、奄美大島が復帰いたしましたときに同様でございまするが、とりあえず行財政の制度の補助というものを出しておりまするが、しかし、特別な振興計画をやらなければならないというので、奄美につきましても振興計画はことしで三回の改定をいたしておりまするが、その経験から見ましても、沖繩については根本的な、最初から相当規模の大きな振興計画をつくってこれを実施する決意が必要であると考えておるのでありまして、この計画をできるだけすみやかに立てていきたいというので、今日もいろいろと準備をいたしておるわけでございます。  なお、お話しの砂糖とパインにつきましては、私は復帰の際におきましてもそれほど大きな問題ではない。現在の本土にありまするところの甘味資源の特別措置法がそのまま適用されておりまするから、あのワク内におきましては一応安定しておるので、実は安定しておるために積極的な改善事業も行なえなかったのではなかろうかという気持ちを持っておるわけであります。それから、パインにつきましては自由化に対するワクがありますので、これでどうやら外からの安いパイかんの輸入というものを外割りによって押えているのでどうやら今日はもっているというわけでありまするが、しかし、現在をもって安易な気持ちでもって地元産業がおったのではいけない。糖業におきましても、パイン産業におきましても、よほどの合理化と生産性の向上につとめてもらわなければ、いつまでも本土側が世話をするということはなかなか困難ではないか。さようなことを前提として、今後両産業保護育成と申しますかを考えてまいりたいと思います。  なお、お話しのありましたごとく、復帰の際におけるところの各産業関係者といいますか、県民の不安というもの、これはまことに私は大きい。過去におきましては復帰復帰と言って復帰だけを大事に考えておりました。しかし、いよいよ復帰が現実の姿としてあらわれてくるとなると、その際において産業がどうなるかということを今日においてあらためて考えるという事態になった。この点は沖繩におけるところの復帰運動、同時に、日本政府沖繩復帰に対する努力というものが結論に近くなったことを私は示すものだと思うのであります。しかし、単なる復帰願望を達成するというだけではいけないので、当然その不安を解消するところの努力を講じなければならない。その意味におきまして、一体化と将来の産業計画と申しますか沖繩振興計画というものはやはり不離のものとして今日において検討すべきものと思っております。
  41. 山本茂一郎

    委員長山本茂一郎君) 速記やめてください。   〔速記中止〕
  42. 山本茂一郎

    委員長山本茂一郎君) 速記始めて。
  43. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 私、長官の意見に全く同感なんです。とにかく復帰ということはもうスケジュールの中に入っているわけです。一体化のほうがスケジュールに入っていない。一体化のほうのスケジュールをどうするか、具体的にやっていく。先ほどのように、長官が特別振興計画を立てる。これはどういう構想で立てるかわかりませんけれども、立てなくちゃならないでしょう。おそらく沖繩の独自な開発をやっていくための、伸ばすための政策をとらなくちゃならぬと思います。これは後刻特別振興計画についてはお尋ねしたいと思うのでございますが、とにかくいまの沖繩をささえているものは、沖繩産業基地だといわれるくらいに五〇%、四〇%は基地から入ってくる収入によってささえられているということ、このことから、基地がなくなった場合、あるいは基地の態様いかんによって相当これは変わってくるわけですけれども、たとえば嘉手納の場合に、嘉手納の村長さんから私がいただいた資料を見ますと、嘉手納の人口が一万五千四百十四人、世帯が三千百六十一世帯です、ここで軍からもらう給料が二百六十一万ドル、サービス業が百八万ドル、軍借用地が五十七万ドル、あとの収入というのは三万七千ドル、これは農業その他です。いわば基地関係と第一次産業との比が一三二対一なんです。完全に基地にだけたよっておるいまの嘉手納の姿。これと同じようなことが那覇全体についても、コザ地区あるいは那覇全体の地区についても、私が例をあげれば——私が例をあげるまでの必要もなかろうかと思いますが——そういう基地経済の中にあって基地がなくなった場合に、それでは先ほど西村さんがおっしゃったように、農耕地に軍用地が向けられてそれで農業が成り立つか。成り立たないでしょう。現在の沖繩の全土に占める農業地帯で、サツマイモをつくっているのは五〇%です。面積からいうと二万九千八百三十ヘクタール、これがサツマイモの地帯です。そのサツマイモのとれ高を見ても、内地のとれ高から比べればはるかに低いわけです。そうしてみると、あの農耕地を、サツマイモに使われている畑の土地改良をやる。先ほどのように水資源の開発可能性が多くあるわけですから、私ども見まして、水資源は十分開発する余地があり、畑にかんがいする余地があると思います。これをやってやるならば、私はあすこの農業生産というものは極度に上げ得る方法もあると思いますが、しかし、農業だけやったんでは、昔のようなサツマイモのとれる量が多くなるだけであって、そんなに食べられるものじゃないです。原始的な農業、それは望まないところでしょうから、農業のほかにさらに漁業とかその他の開発をやっていかなくちゃならないわけですけれども、やるにしても、お金がないわけです。沖繩の全部の銀行合わせましても年間の扱い高というのは、私どもの調べた範囲では三億六千万ドル、一千三百億です。地方の、たとえば茨城県の一地方銀行の半分の扱い高しかないんです。あるいは沖繩県と鳥取県と対比してみると、一地方銀行分の取り扱い高よりも少ないわけです。したがって、金の道がつかないために産業を興こすこともなかなかできない。手当てをしてやることもできないという。だとすれば、ここに私は国の、本土政府からの財政援助のほかに、長期に融資する資金のルートというものをつくってやらなければ地場産業というものも伸びていけないと、こういうふうに考えるわけですが、長官いかがでしょうか。
  44. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 金融の問題につきましては御意見のとおりだと思っておりますが、まず、先ほど基地経済のお話がありましたが、基地の態様が将来どうなるかということは、これは総理白紙だと言われておりまするが、まあ、相当時間もかかることでありますし、これが急激に変動あるかどうかということにつきましては皆さま方の御判断にまかせなけりゃならないと思うんでありますが、ある程度までやはり地元にくっついております。そう大きな変化はないのではないかという感じがいたしますが、これは時間の問題で、総理の日米会議の結果でもってひとつ御判断をいただきたいものと思っておりますが、しかし、金融問題につきましては全く御意見のとおりであります。私どもといたしましても、地元におけるところの長期低利の金融が欠けておる。これが戦後長い間の空白状態にありまして、資本の蓄積の余裕がなかった。目前の事業経営に手一ぱいでありまして、全く資本らしい資本が入っていなかった。しかも、ある資本は相当高いというところに難点があったわけでありまして、したがって、昨年におきましては本土で二十八億低利資金の融資を郵政を通じて出しました。ことしは五十三億出しておりますが、将来ますますこれは拡大すべきものと思うのでありますが、なお、先ほど申し上げましたような将来の振興計画を立てます場合におきましては、そういうことを考慮いたしまして、相当ばく大な融資が必要である、そうして、いわゆる戦後の空白の基盤を回復して将来発展できるところの基盤をつくりあげる必要があると考えております。
  45. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 さらにこの沖繩の将来を考えた場合に、私は全体的な開発計画の問題ですが、先ほど長官から、いわば南の前進基地と、こういう中継基地というような構想がちょっと出ましたが、私どもも、飛行機の上から見たり、沖繩の地図を見たり、もろもろ考えた場合に、沖繩が将来伸びていくためには農業だけではこれは絶対やっていけないわけであって、漁業だけであってもやっていけないと思うんです。沖繩はその場所的な環境から言うと、本土までが千五百キロ、ソウルまでが千四百キロ、台北までが六百二十キロ、マニラまでが千四百五十キロ、上海までが八百キロ、こういう点から考えていった場合に、いわゆる軍の基地としてでなく、将来の産業基盤等々の場合に、中継基地として伸びる道は、その港のよさと関連してできるのではなかろうか、こういうことは長期的な視野に立って考えていかなくちゃならないし、その場合に、日本の本土資金、もちろん地場の資金だけでは足りないから本土資金、さらに私は外資導入ということも、当然これは開発資金としての面から考えていかなくちゃならぬと考えているわけですが、いかがでしょうか。
  46. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) ただいまの御意見まことにごもっともなことだと思うのでありまして、相当私は積極的に開発する余地があるのではないかと思っておるのであります。現在もう一、二の事業が進出を希望していろいろ計画をしているようでありますが、やはりいわゆる先行投資として確実に成り立つ産業が早く足場をつくってもらいたいと思っておりますが、その節におきましては、私は規模の関係から申しますると、御指摘のとおり、地元の資本じゃもちろんだめですし、なお少し大きな規模のものでありまするならば、本土からの協力ということも当然ありますが、それだけでも少ないのじゃないか。国際資本によるということも、これはものによってはやはり必要になる。そのくらいの額のものが必要になるのではないかと思っておりますが、どういう計画をするかということにつきましては、政府が先に立ってやるというわけにはいきませんので、これはいわゆる産業界の意見も十分取り入れまして、今日までいろいろと調査団も出しておりますし、また、過般も本土からの経済団が参りまして、これは四回目の会談をしておるわけでございます。その会談の結果におきましても、いろいろのサゼスチョンをしておりますが、こういうことをだんだんと具体的な裏づけをしながら実現ができますように進めてまいりたいと思います。
  47. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 ぜひ長期的な視野に立って検討を加えてもらいたいと思うのです。なお、沖繩の将来を決するものは私は水資源じゃないかと思うのでありまして、水資源の開発については、これは長期的な視野に立って、しかも、そう調査には金はかからないはずですし、農業者にとってもあるいは基地のもろもろの問題との関連、先ほど西村さんがお話しのように、水の問題とも関連して私はやるべき、打つべき時期ではなかろうか。これはいまの施政権の中でも水資源調査はできるはずですよ。さらに、先ほどちょっと触れました埋め立ての問題ですが、私は約二千億くらいの金を本土政府が思い切って出す考えになれば、基地公害の問題は、あそこに現在のB52やその他の問題がかりにあったとしても、解決ができるのではなかろうか。これはひとつそういう基地との関連とは別に、新しい町づくり、ニュータウンをつくる。公害を除く。あるいは前進基地もこういうことからすれば可能性を持っている。高瀬代表にも私どもは話しました。屋良さんにも飛行場で話したのだが、屋良さんも、非常におもしろい考えだ、ひとつ内地でも検討してみてくれないかというお話ですが、私はやるべきだと思うのです。新しい陸地をつくることは可能です。私は各地の埋め立て工事等を見ますときに、こういう新しい島づくり、新しい陸地づくりということは沖繩の島民に希望を与える一つのよすがとなっていくのではなかろうか、こういうふうに考えるわけです。これは私の希望として申し上げておきますから、御検討をいただきたいのであります。  時間がなくなってしまうので、あと十二、三分のようですから、さらに私は、先ほど、沖繩の振興のために特別振興計画を持つと。いわゆる開発事業団であるか開発公社というか、そういうものをつくるような何か煮詰まったもの、ございますか。
  48. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) この問題はかねがね提案されておりまして研究しておる次第でありますが、現時点で、あるいは北海道開発庁に類するような沖繩開発庁みたいなものが置けるかどうか、あるいは事業団形式でやるのがいいかどうかということにつきましては、いろいろ検討しているところでありまして、やはり本格的には施政権の復活の際にスタートするのがいいと思いますが、それまでの間どういう形でこの案を進めるかという、案そのものがまだ十分な調査ができませんので、本土からいわゆる技術者を派遣いたしまして、いろいろの形でもって今日調査をさせておるわけであります。したがって、各種の資源の開発等につきましても、技術援助の形でもって調査団を派遣しまして手をつけております。そういうものがまとまりますならば、私は基礎的なものができるのではないかと思っております。同時に、いわゆる土地造成でありますが、経済的に一番いいのは、やはり工業敷地なり住宅敷地としてできるので、農耕地としては、先ほど申しました、何をつくるかということが多少問題がありますので、農地造成という意味においては、必ずしもすぐにペイするかどうかということについては疑問ではありますが、ほかの用途がありますならば、十分過去の実績から見ましてもペイしているわけで、したがって、大いに期待のできる仕事だと思う。やはり必要な融資につきましても、今後とも積極的にこれが入れ得るんじゃないか。
  49. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 特に特別振興計画を至急具体的するような方向をとっていただきたい。私たち現地を見てそう感じたんです。その際に、できるだけ現地の声が反映するような、現地の意識でもってそれを組み立てられるような方向が私は特に必要だと思う。というのは、沖繩の皆さん方に言っては失礼かもしれませんけれども、少し本土にたより過ぎるきらいがなきにしもあらずのところがあるわけであります。それは基地経済の面や、あるいは沖繩が中国あるいは薩摩藩に支配され、明治政府、そしていまのアメリカ政府に支配されておるという歴史の中から、そういう県民性が一部には生まれ出たんではなかろうか。たとえば、先ほどの嘉手納の「燃える井戸」というのは、なぜほんとうに「燃える井戸」なのかその原因を十分剔抉するだけの措置がなされないまま補償要求がされているという形や、もろもろの観点から言うと、私は本土がめんどう見るべきだという考え方ではなく、沖繩の人が沖繩を立ち上がらせるといを方式に持っていくためには、振興計画の中に、どうしても現地の人たちの意欲が盛り上がるような体制をつくる必要があろうかと思うのです。いかがでしょうか。
  50. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 何といたしましても、お話しのように、地元の人が積極的な意欲を持つことが非常にいいわけでありまするが、幸いにして、先ほども申し上げましたように、本土沖繩との経済人の懇談会というのが、これで四回目になりますか、今度の決議におきましても、さらに引き続いてこれを具体化するためにやろう。本土におきましては、市川忍団長が代表して、経団連、会議所等の五団体がまとまって調査団を派遣して、現地の会議所その他実業団が中心となって話し合っております。私は、今後もやはりこういう民間ベースのものを十分に進めながら、日米両政府並びに琉球政府という三者がバックアップしながら計画を進めてまいりたいと思っております。
  51. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 もう一つお尋ねしたいんですが、この間の新聞に、総理府で新しい構想を出したと、それは沖繩援助米のことですが、年間四万トン近く沖繩に援助米を出す、こういう計画を練ったということを簡単にひとつ概要をお知らせいただきたい。
  52. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 沖繩は年間九万トン消費しておりますが、一万トンが地元産米であり、あとは今日加州米と豪州米を買っておったのであります。しかし、本土の実情からいいましても、これを本土米に切りかえることができますならば非常にいいのではないか。昨年西村農林大臣沖繩を訪問した際にもそういう構想を提案してまいったのでありますが、ようやくことしの正月になりまして、琉球政府から貸し付けの要請があったわけでございます。今日、大蔵省、それから農林省、それから総理府、三者一緒になってその方式等につきまして具体的な案につきまして検討しておる次第でありまして、新聞に出ましたものは、これは総理府案となっておりますが、これはほんとうの一つの意見が出ただけで、別に総理府としてさような形にまとまったものではありませんが、しかし、本土の米を向こうでもって買ってもらう、そうして、その米代金を農業開発に使うという基本的な構想は、私は非常にこれは役に立つことだ。先ほどお話しのように、地元におきましては長期の低利資金というものが非常に要求されているんです。したがって、米代金というものを蓄積してそれを運用する。特に農業開発に運用できるようになれば、私は政府の管理米を貸し付けなりするということはまことによいことじゃないか。さらに、具体的にどういう形がいいかということにつきまして関係各省との相談を進めてまいりたいと思っております。
  53. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 新聞等を見てみると、一年間に沖繩に約四万トン、いまの長官の話だと、沖繩産米が一万トン、加州米が八万トン、沖繩の総需要が九万トンで、そのうち四万トンを日本の米の貸し付けをやっていく。加州米が向こうで、私たち聞いてみても、石当たり一万円を割っておる。こっちの日本米は二万円をオーバーしている。この米が加州米のかわりになって四万トン出されたとすると、大体四万トンと仮定すれば二十七、八億円の米代が浮くわけです。加州米を輸入するかわりに内地米が行った場合に浮くわけですけれども沖繩としては浮くけれども、こちらの食管会計のほうがこれは問題になるのと、それから、沖繩の米の場合、貸借関係がどうなっていくか。この問題がいま大きく浮かび上がってくると思うのですが、いかがでしょうか。この点は、私どもも現地に参りましたときに、加州米を輸入しておるのだ、いま日本では余っておる、この米が沖繩に使われるならば、沖繩開発資金にそれが流用されることができるならば、一石二鳥の案ではなかろうか、こういう考え方を持ったわけです。おそらくこの問題について大蔵省等においては反対——食管会計の赤字会計をどうするか、将来沖繩に米を貸した場合に、出した場合に、払い方をどうするか、韓国に貸し付けたのと同じような形でいくのか、そのことまではまだ煮詰っておりませんか。
  54. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) ただいまお話しのように、基本的な考え方としては、まことにいい案だと思っておりますが、ただ、御指摘のように、先生もいろいろお話しになりましたが、沖繩沖繩の特殊事情もありまして、その関係をどう調整するかということは今日検討中でありまして、できるだけ早くこの点は詰めまして、沖繩発展のためにひとつ活用したいものだと考えております。具体的なことはまだ詰まっておりません。検討中であるということを御了承いただきたいと思います。
  55. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 まだ検討中ということについてはよく了解しました。ひとつこれは沖繩産業開発の上においては大きなてこ入れになって、いわゆる米でお互いの心をつなぎ合うこともできることだし、経済開発基盤をつくり出すこともできるし、私は、大蔵省とも十分折衝をして、こういうものが沖繩の特別振興計画の一環として具体化されるように、しかも、これは研究が長くなったんでは、ことし考えてもおそらくやられるのは四十六年度にしかやれない、今年直接やることができないという、それほど法律的な行為やあるいは経済的な問題から時間がかかるわけですから、至急具体的に計画を立てて、沖繩振興計画に充てていただきたい、かように考えるわけでございます。  時間があと二、三分でございますから、締めくくっていきたいと思いますが、沖繩の問題は、そういうふうに復帰一体化ということで並行的に行なわれるべき性質のものであるけれども復帰の課題だけが大きくなっておって、一体化への道が比較的おろそかにされているきらいがあることはいなめないと思います。それが沖繩県民の一番本土に対する不満ではなかろうか。復帰ということはわかっている。復帰に対する方法とあるいは基地の態様とについてはもろもろの問題はあるけれども、しかし、問題は復帰した後に本土と一緒にやっていけるかどうか、これが最大の課題だと思います。このことを私は大きく取り上げていただくことを強く長官に要望いたしまして私の質問を終わらせていただきます。
  56. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 先ほどの米の問題につきましては、御趣旨のとおり、私は積極的な前向きの立場でもって検討しておりますので、ぜひ御趣旨に沿いたいと思っております。  なお、一体化につきましては、総理府の仕事は、この一体化を進めること自体が一番の使命だと私も考えて今日努力しておるわけでございます。ただ、一時やはり一体化ということに対して誤解も少なくなかった。しかし、最近になりまして、一体化がやはり将来のために必要だということがだんだん地元で理解されてきて、この協力が進みつつある。私ども、さらに一そうひとつ御期待に沿うように努力いたしたいと思います。
  57. 中村喜四郎

    中村喜四郎君 委員長、私の質問で少し残したんですけれども、大松さんがちょっと関連したいと言いますから、ちょっとすいません。
  58. 山本茂一郎

    委員長山本茂一郎君) 大松君。
  59. 大松博文

    ○大松博文君 ちょうど私がバレー時代にも行きましたし、選挙の前にも行きまして、この前も委員長と一緒に沖繩に参りました。いろいろな方の話を聞いておりますと、沖繩県民は昔は中国の支配下にあって圧迫された。次はまた島津藩にいろいろ圧迫された。その次は廃藩置県によって沖繩県になったが、異民族扱いされた。その後はまた終戦直後に日本が委任統治としてアメリカに出した。そういう中で非常な苦しみをなめてきた。にもかかわらず、最近まで沖繩県の県民のことは何一つ言わなかった。最近になって佐藤総理が、沖繩返還されなければ戦後は終わらないと言ったことからして、いろいろ言われるようになった。それはいいんだ。しかし、そういうことになって現在一体化と言われている。しかし、沖繩の現在の収入というのは、これは三十七年で三億六千万ドルだ。しかし、そのうちの米軍の関係、これが大体五五%の二億一千四百万円。米軍の大体五万人、これの給与のうちの四一%が現在沖繩へ落ちているんだ。そうすると、大かた三億ドル近く落ちている。それだけ落ちておりながら、本土の連中は、一体化と言いながら、たったの二百二十七億かの援助しかしていない。こういうことで、わしらは今後一体どうなっていくか。これほどまでに苦しめられたわしらを救ってくれようとする気があるのか。そういうようなことじゃわしらはやっていけないんだというようなことを盛んに言っていましたが、そうしますと、今後あの県民が幾らあれば本土一体化になるか。いまのうちに援助をしてもらわなければ、同じ一つの県になった場合にはもうそういうことはしてくれなくなるんじゃないかという非常な懸念を持っている。こういうことを考えたときに、もっともっと早く一体化になるような政策を私は出さなきゃいけない。そういう点で一体幾らぐらい今後は出していかれる予定か、それをお聞きしたいんです。
  60. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) お話しのごとく、過去におきましては、ずいぶん沖繩の実情というものが本土の各府県と差があったわけです。この格差を是正するために援助というものが出始めて、援助の歴史というものはそう長くないんで、岸・アイク会談以後の問題でして、池田・ケネディ会談になってからさらに大きくなってきて、今日ようやく二百二十七億ということになったんですが、毎年非常な大きな増加率を示してやっとその状態になった。今後ともますます伸びると思っておりますが、現在の状態、大ざっぱに申しまして、県で申しますと、八割以上ということになっておるようでございます。町村で申しますると八割弱という形だと思います。さらに来年、再来年を努力いたしまして、これを本土の府県並みに上げていきたい。さらに根本的には、先ほどお話がありましたけれども、いわゆる経済振興計画というものでもって十分な融資をいたしまして基盤の確立をいたしてまいりたい、かように考えておるわけでございまして、今日その予算を消化すると同時に、諸制度も本土並みにしないとうまくまいりませんので、制度の本土並み一体化とあわせまして、現実の生活も一体化していくという状態であります。
  61. 大松博文

    ○大松博文君 沖繩の方は、もうあと二年か三年すれば一体化になるんだろうというような考えを持っておられる。にもかかわらず、一つもその具体化をしておらないということを盛んに言っております。  それともう一つだけ。嘉手納基地がございます。あの横へ行きますと、先ほども言われましたように、井戸からガソリンが出る。そうして学校においても授業もできない。一つの小学校なんかは、防音装置をしておっても聞こえないような状態。まあ、危険があるというようなことからして、非常な基地に対する反感を抱いておる。そういうところでその部落の方に私がいろいろ話を聞いた。そうしてこの地区がどこかへ、こういうようないい場所へ施設をつくってくれて移転すればいいじゃないかと言ったところが、移転をすれば私たちの生活ができなくなる。なぜだと言うと、基地の人の住宅、また基地の人のいろいろな収入、こういうことから生活ができなくなるから困るんだ。それはわしらはできないということを言っておりましたが、しかし、私が考えるのに、そういう人の町をどこかへ移転して、そうしてそういう不平不満がないように私はしてやるべきだ。それを、施政権返還されるまでではなくして、いまのうちにすぐに計画を立てて実施してやらなければいけない。そうすると、あのすぐ横にもサンゴ礁があって、すぐ埋め立てできるような場所がある。そこへそういう計画を立てればいいと思いますが、長官、そういうお考えはおありですか。
  62. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) まず一体化の問題でありまするが、当初は一体化というものの考え方が住民にわりあいに理解がされていなかった向きもあったと思うんであります。しかし、だんだん復帰の時期が迫ってまいりますると、一体化が必要だということがわかり、また、一体化の実というものがあがってきたことを認識してもらっておると思うのであります。今日、諸制度そのものも立法院がずいぶん努力してこなしておりまするが、本土におきましても、ことし提案しております免許資格の問題なんかもそのあらわれでありまするが、だんだん進んでまいりますれば、これに対する地元の了解というものが、同時に協力もさらに進んでくるのではないかと思います。学校施設、それから社会福祉関係、それから産業面、町村がかなり改善をいたしております。私は、あと二年でもって大体予期したところまではぜひなし遂げなければならぬと考えておるのでありまして、諮問委員会等におきましてもこの点が使命でありますし、同時に、琉球政府もこの諮問委員会の一体化に対する使命というものを、必要性を感じまして、積極的な態度をとるようになってきておる。私は、今後一体化というものは従来以上に進むものではないかと思っております。  それから、基地周辺の住民の福祉の問題につきましては、これは従来からまことに重大な問題であります。特に沖繩におきましては軍が直接接しておりますためにどうもスムーズに行かなかった向きもあるわけであります。補償その他の措置については、さらに一そう努力されたい。御承知のごとく、本土におきましては基地周辺の整備法というものができておりまして、かなりと申しまするか、進んでおるわけであります。これと比べると、沖繩におきましては、よほど差があるわけであります。これは軍が直接施政権を握っておりますところにも不自由がありまするが、一そう米側の理解を求めますとともに、将来におきましては、やはり基地の取り扱いにつきましては、これは本土におきましても依然として問題はありまするが、できるだけ本土の施設というものを念頭に置いて努力していきたいと思います。
  63. 山本茂一郎

    委員長山本茂一郎君) 多田君。
  64. 多田省吾

    多田省吾君 私は、沖繩問題と、それから若干北方領土についても質問させていただきますが、審議の都合上、沖繩の問題を先にやらしていただきます。  沖繩のいままでの犠牲あるいは屈辱というものは、やはりどうしても即時無条件全面返還をなし遂げなければ解決しないと、根本的にはこう思うわけでありますけれども、特に私はここで、沖繩におけるアメリカ軍人及び軍属の犯罪についてしぼって質問したいと思います。  この前の二月九日行なわれた沖繩県高等学校弁論大会において二十三人が話したわけでありますが、その中でもB52の墜落事件とか、あるいは「燃える井戸水」であるとか、それから爆音、そういった問題とともにアメリカ兵による殺人事件、犯罪事件というものが強く高校生によって語られているわけでございます。特に米軍人による国場君横死事件なんかは、中学三年の国場秀夫君が米兵運転の大型トラックにはねられて即死した。しかも、青信号を渡っていたときに、学友と一緒に歩いていたときに殺されたわけでございますから、運転していたアメリカ兵の責任がきっととられると思っていたところが、軍法会議では無罪であったというようなところから、非常に強い屈辱と犠牲ということを感じているわけでございます。   〔委員長退席、理事源田実君着席〕 また、最近におきましても米軍の犯罪はいろいろ起こっております。この前も三月三日には那覇市内でホステス殺人事件、あるいは二月の二十二日にはコザ市でアメリカ兵のホステス殺し、これは逮捕済みでありますが、こういった問題も起きている。またさらに、私どもが十日ほど前に嘉手納あるいはコザ市の沖繩の方々と一緒に座談会をやったときに、たとえば、もう沖繩県民の命なんというものはまるで犬ネコ同然に取り扱われている。この前も申し上げたんですが、たとえばアメリカ人の子供さんが事故で変圧器に触れてやけどをしたおりには、これは軍事裁判にかけられて加害者側に二十五万ドルという膨大な損害賠償が命ぜられた。それに反して、米軍の交通事故で子供さんを持つ親を死なせたときには、加害者側の申し出が六百ドル、最終的に示談でやっと二千ドルに落ちついた。こういった賠償問題にもからんでいるわけです。それから、当然いま刑事裁判権の移管問題も起こっております。まあ、こういった観点から私は質問したいわけでありますけれども、まず、この沖繩県民の方々の最も大事な基本的人権が全く捨て去られている。見るもむざんに打ちくだかれておるというところから質問したいわけでありますけれども、最近、まあ去年、おととし、ここ数カ年、沖繩における米軍人、軍属による犯罪数あるいは検挙率というものがどのようになっているか、まずお尋ねしたいと思います。
  65. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 米軍の関係の犯罪件数というのは、大体毎年平均して千件前後でありまして、昭和四十年は千三件、四十一年は千四百七件、四十二年は千七十九件、四十三年は、十一月まででありますが、八百三十六件というわけでありますが、まあ、四十三年は前年同期が九百九十七でありますから、まあ、若干は減っているようでありまするが、   〔理事源田実君退席、委員長着席〕 御指摘のごとく、ことしに入っても事件があったことはまことに遺憾でありまして、私どもといたしましても、人権の尊重という意味におきまして、しばしば米側に注意を喚起をしておるわけでございます。
  66. 多田省吾

    多田省吾君 検挙率はほぼどの程度でございますか。
  67. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 検挙率は、ちょっと手持ちありませんが、大体一般から比べますと、本土から比べますると、これは著しく落ちておって、大体半分くらいですか、ちょっと詳細は局長から申し上げます。
  68. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 六六年の検挙率が六四%、それから六七年が五二・七、六八年が四七・七になっております。
  69. 多田省吾

    多田省吾君 で、このように犯罪が千件内外毎年あるわけでありますが、最近特に凶悪犯罪もふえているというようなことがいわれております。犯罪が少しも減らない、しかも凶悪化しているというこの原因というものは那辺にあるのでしょうか。
  70. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 事件があって検挙率が十分でないというところは、私は基本的には、やはり今日の検察制度と申しますか、裁判所の管轄におきまして、米軍人並びに米人関係のことは民政府関係の裁判で行なっておりまして、そういう意味におきまして、どうも徹底しないのではないか。検挙に対しましても民警察が協力するという立場だけでありますので十分ではないのではないか。だから、基本的には、私どもは、何といたしましても施政権返還ということが第一であるというふうに考えております。それから、凶悪犯が最近特にふえたではないかという点でありますが、この点は統計的に必ずしもはっきりしないと思うのですが、これは私の感じといたしましては、やはりあそこに駐在しておりまする軍隊、部隊の種類なり性格によって違うのじゃないかと思うのです。常時おります者につきましてはあまり問題はないけれども、たまたま入って来た者というふうなものにつきましては案外事件があることもあるのではないかと想像いたしております。
  71. 多田省吾

    多田省吾君 まあ、このように沖繩のいわゆる琉球警察で出している統計には、アメリカの軍人・軍属の犯罪に対しては一行も載っていないという状態で、これは裁判権がこちらにないのですからやむ得ないと思いますけれども、特に基地のあるところの犯罪の特色というものはまあ顕著なものがあると思いますけれども、特にどういう点に特徴がありましょうか、基地犯罪の特徴と申しますか。
  72. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 局長から。
  73. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) まあ、この都市によって相違があるようでありますが、そうして、こまかい分析までは行なっておりませんが、まあ、基地周辺のたとえばコザ市とかということを中心にして飲食関係をめぐっての金の問題から発生したいろいろ傷害事件とか、それから、たとえば自動車に乗って運転手に傷害を与えたりして逃走するとか、そういうようないわゆる基地の町としての特色はうかがわれるわけでございます。
  74. 多田省吾

    多田省吾君 あまりはっきりお答え願えないわけでありますけれども、これは当然の常識といたしまして、たとえばベトナム戦争におけるアメリカ軍の兵力増強につれて凶悪犯罪が続発しているのじゃないかということは当然常識的に考えられることでありますし、また、基地犯罪の特徴としまして、いわゆる体力もまあ優秀で、訓練を受けた、もうがんじょうなアメリカ兵の犯罪でございますから、当然凶悪化してくるということも考えられますし、また、婦女子に対する暴力、わいせつ行為とか、あるいはバー、キャバレー等付近におけるいわゆる酔っぱらった犯罪、こういう面はいま非常に強いと思うわけです。で、それについて、まあ、占領者意識ということもありましょうけれども、特に、いわゆるアメリカ兵は武器を持っているわけですね。ですから、ピストルによる殺人、強盗、また武器の売り歩き、こういったものが特に沖繩県民の方々に対して安心して生活ができないという恐怖感を与えているわけでございます。こういった点から、アメリカ軍の武器管理のずざんさということも当然あげられましょう。アメリカ軍当局に対してこのような武器管理を申し入れられたような事実はございますか。
  75. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 武器の管理につきましては、これは米軍の責任でありますので、適正に行なっているものと思う次第でありますが、なお、一般の米軍犯罪等に関しまして地元の者の不安を除去するということに対しましては、機会あるごとに米側に注意を喚起しておるところであります。
  76. 多田省吾

    多田省吾君 こういった点も私どもはアメリカ軍に対して強力に申し入れをしていただきたいと、このように思います。  次に、法制上の問題で若干お尋ねしたいのですが、いわゆる琉球警察の捜査権の範囲というものはどの程度まで許されておりますか。
  77. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 琉球民警察官の逮捕権の問題でございますが、これは布令の八十七号によって規定されておりまして、民警察官は、「米国軍法に服すべき者が本人の面前又は視界の中で、人体に損傷を与えたり財産に甚大な損失を与える罪を犯し、若しくは犯そうとし、又は次に列記する犯罪を犯したものと認められ、若しくは犯人がなお現場の近くにおり当人がその犯人であると確め得る時で、米官憲が居合せない時は、これを逮捕する権限を有する。」、こうして一定の犯罪が掲げてあるわけでござまして、いわゆる現行犯並びに視界の中におる範囲内の犯人を逮捕したら米官憲に渡す、こういうことでございます。
  78. 多田省吾

    多田省吾君 ですから、一応それを簡単に言いますと、アメリカ軍のほうでだれもいなくても、また基地外であっても、また、こちら——琉球民警察が現行犯逮捕した場合でも民警に取り調べ権はない。直ちにアメリカ軍に引き渡さなければならない、こういうことでございますね。
  79. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) そのとおりです。
  80. 多田省吾

    多田省吾君 もっと具体的にお聞きしたいのですけれども、琉球民警察官の方が検問をしているその場合に、アメリカの軍人・軍属がスピード違反を犯したり、無免許で運転したり、また酒気を帯びて運転したり、こういった道路交通法違反のような行ないをやった場合の取り締まりに対しましてアメリカの軍人・軍属に対してはこちらは取り締まり権限を持っているのですか。
  81. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) これの交通取り締まりにつきましては、その基地のゲートの前とか、特定のところには米軍の雇用した軍属が配置されておりますが、これは当然取り締まるわけです。一般の交通警察官におきましても、現実にそういう交通違反が行なわれておる場合は、これは当然検問し、あるいは必要な措置をとることはできる。ただ、それが米軍人・軍属である場合には米官憲に渡さなければならない、こういうことに相なるかと思います。
  82. 多田省吾

    多田省吾君 これは取り締まりの権限は持っているのですか。事故を起こして初めて民警察の限られた権限を行使できるという範囲にとどまるのじゃないですか。
  83. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 最近は琉球政府の警察のほうと民政府の警察のほうと協力共助に関する覚書ができておりまして、それに基づいて取り締まりを行なっておるわけです。捜査を行なっているわけでございます。したがいまして、ただいま私が申し上げましたような方法で処理されておると私どもは承知しております。
  84. 多田省吾

    多田省吾君 当然、軍人・軍属に対する裁判というものは軍法会議で行なわれておるわけでありますけれども、一般に軍法会議は公開されるということはいわれてはおりますけれども、一般沖繩県民の方々は自由に傍聴できる状態にございますか。
  85. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 軍法会議は、原則としては公開というたてまえになっております。これは明らかにされておりますが、ただ、軍法会議そのものが基地の中にあるのでございますから、したがいまして、基地に入る許可をもらって傍聴をするということになるわけでございます。
  86. 多田省吾

    多田省吾君 裁判の結果、その刑の執行状況とか、そういったことは沖繩県民の方々に告知はされるんですか。
  87. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) 裁判の結果につきましては、従前はあまりその結果について一般的に公表がなされていない事例も多かったわけでございますが、最近の実情を申し上げますと、軍法会議で裁判の結果が判明すると、直ちに一般に知らせる、こういうことに相なっております。
  88. 多田省吾

    多田省吾君 具体的に申しますと、十日前の沖繩の方々のふんまんも、国場君の場合と同じように、軍用車が横断歩道で、しかも、青の信号のときに児童学生をひき殺すというような事件が数多く起こっているわけです。目の前に沖繩の琉球の民警察の方がおっても、すぐアメリカの軍当局に引き渡す。そうして、ほとんど、結局、勤務中だからということで無罪になってしまう。そういった裁判の状況もなかなか見学できないし、告知もあまりなされていないというふんまんがずいぶんある。全く沖繩の県民の方々の人権を無視し去っている。これでほんとうに日本人と言えるか。こういう人道上、人権上の問題で、はなはだしい屈辱といわゆる犠牲を払っているような姿があるわけであります。このような原因は、何といっても、これは刑事裁判権がアメリカ軍当局にあるということに由来すると思うんです。ですから、沖繩の警察当局の方も、もし日本に刑事裁判権が移管されれば、アメリカ軍のこういった犯罪も急激に減少するという自信がある、確信もある、このようにはっきり述べているわけです。また、この前の二月、三月と引き続いたアメリカ軍による殺人事件について、屋良主席も非常に心配されて、それで警察当局から詳しく事情も聞き、また、アメリカ軍当局にも民政府にも強力にそのことを要望もしたいし、また、刑事裁判権も早く日本に移管するように申し入れる、あるいは場合によっては日米琉の合同委員会にもそれをかけたい、このように申しておるわけでございますけれども政府として、もし屋良主席がそういった刑事裁判権をどうしてもすぐさま移管してもらいたいというような強力な希望があった場合、政府は真剣にそれをあと押しする、そういうお考えはおありですか。
  89. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 県民の不安を除去するということに対しましては、私どもも真剣な努力をしてまいりたいと思うのであります。今日まで米軍人関係者の犯罪等に対しまする処置につきましてもだいぶ改善された。占領当時はずいぶんひどかったのがだんだん改善されてきまして、特に最近目につきましたことは、判決の言い渡しに対しまして、従来は相当重大な凶悪犯でありましても比較的軽い判決が行なわれたのに対して、昨年の暮れにおきましては、無期懲役という形でもって判決を受けたというのが新聞にも出ておりましたが、この点は、米軍側におきましても、よほど裁判の実施にあたりまして考慮を加えてきた、改善されてきたものと私ども考えておるわけであります。今後とも人権の尊重につきましてはできるだけ努力してまいりたいと思いますが、ただ、基本的な裁判権、特に軍人の公務に対するものにつきましては、従来の国際的な慣例もあるわけでありまして、なかなか容易ではないと思いますが、やはり基本的には、施政権そのものが返ってまいりますることによりまして大部分のものは解決つくものと考えておる次第であります。わが国立場から見ましても、安保条約の改定前と改定後におきましては、米軍関係の犯罪の取り扱いも大きな改善を見たのが実例でありまして、今後におきましても、私は沖繩においてそういう改善が行なわれることを期待しておるわけであります。なお、警察官の問題につきましても、過般は覚書でお話し申し上げましたように、権限を拡大しまして、従来よりはだいぶよくなっておる。今後と毛連絡を一そう緊密にいたしまして、不安の除去につとめたいと思います。
  90. 多田省吾

    多田省吾君 それは、根本的にはやはり施政権返還ということになれば解決する問題でありましょうとも、佐藤総理等も言っているように、早くとも一九七二年中だというような考えを述べておるわけです。私たちの即時無条件全面返還ということはなかなか通りそうにもないですから、屋良主席も、その政施権返還の前に、こういった人道問題であり基本的人権の問題でございますから、捜査、逮捕あるいは裁判権を民側に移管するようにと、このようにランパート高等弁務官に要請をしたいし、あるいは場合によっては日米琉の諮問委員会にも提訴したいと、こういうことを申しておるわけです。それに対して政府側は、もしそういった要求が屋良主席から行なわれた場合に、もう全面的にバックアップして、そしてアメリカ軍当局に要求するかどうか、それをもう一回お尋ねしたい。
  91. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 屋良主席が具体的にどの程度の要求をしているかということが、いま手元に持っておりませんので、判明いたしませんが、しかし、県民の不安を除去し、人権を尊重するという趣旨につきましては私は全く同感でありまして、できる限り不安をなくすことに対しまして今後とも努力をいたしたいと思います。
  92. 多田省吾

    多田省吾君 それからもう一点、米軍人・軍属の犯罪による損害補償でございますが、これはどのようになっているか。たとえば、日本においても占領軍当時のいわゆる殺人事件等においても非常に補償が少なかった。二年前ようやく三十五万五千円の死者に対する補償が認められた、こういう状態です。ところが、日本に対日平和条約が発効してから、在日米軍の犯罪とかあるいは交通事故によって起こされた補償というものは非常に高まって、この前も横浜である方がアメリカ関係の方にひき殺された事件が起こりましたけれども、自賠償やその他米軍の補償等も合わせて千二百万円ほどの補償をもらっておるという姿があるわけです。それに反して、まだ沖繩はアメリカ軍の施政権下にございますので、なかなかそういうわけにはいかない。これは、事件はあくまでも防止しなければなりませんけれども、不幸にして事件が起こった場合でも、さっき申しましたように、加害者側の、アメリカ側の申し入れが、交通事故でなくなった場合でも六百ドルの申し入れが最終的には示談で二千ドルに落ちついたといったような状況があるわけでございます。その補償の現況と、これからの対策というものをあわせてお尋ねしたいと思います。
  93. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 米軍人が県民に損害を与えました場合におきまする取り扱いにつきましては、アメリカにおきまして外国人損害賠償法という特別な法律ができておりまして、この法律によって損害賠償が払われておりますが、詳細につきましては局長からお答え申し上げたいと思います。
  94. 山野幸吉

    政府委員山野幸吉君) ただいま総務長官からお答えありましたように、外国人損害賠償法というのがございまして、これによりまして米軍人・軍属の犯罪等に対する補償が行なわれておるわけでございます。で、最近の事例いろいろございますけれども、これは本人が直接軍のほうへ請求することもできるし、それから、本人から琉球政府を通じて損害賠償の請求ができるたてまえになっております。ただ、この法律のたてまえからしまして、一万五千ドル以上の補償については米国の議会の承認を得なければいかぬということになっておりまして、この点について問題があると思うわけでございます。最近の補償の実例は、これもここ数年前とはだいぶ改善されまして、額もだいぶ妥当な額に近づいておるものと私どもは判断いたしておりますが、まあ、この損害賠償の請求額と査定額との差につきましては、その事例、事例によりましてこれはおのずからそこに食い違いが出るのは当然でございまして、当事者の請求額と査定額とは相当の差が出ておるのは、これはやむを得ないことと考えるのでございます。なお、これらの賠償関係、補償関係等の取り扱いにつきましても、私ども機会あるごとに米側のほうへも適正な補償の執行について要請をしておる次第でございます。
  95. 多田省吾

    多田省吾君 次に、北方領土返還問題で若干お尋ねしたいと思うわけです。この前、昨年の十二月五日に五党幹事長会談がありましたときに自民党の田中角榮幹事長は、沖繩返還政府与党がほんとうにずるいなら同時に北方領土返還も持ち出す、このように言っております。いよいよ北方領土の問題を政府は強力に持ち出してきたわけでございますが、政府は、安保条約とか沖繩返還という問題が強まってきたときにいつもこの北方領土を持ち出すような傾向がありますけれども、こういった姿では私たち国民としては納得できないし、そうじゃなくて、あくまでも、いかなる場合でも日本国民の意思としてこういう無法なソ連のかってな占領、あるいは理不尽な横暴な姿に対して、私たちは、やはり国民の権利として、人間の権利としてどこまでも終始一貫北方領土返還を強力に打ち出していく、こういう態度こそ、根本姿勢こそ必要なんじゃないか、このように思うわけでございます。このことについていかがお考えでございましょうか。
  96. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 北方領土に対する政府の基本的態度はただいま仰せになりましたことと同じでありまして、両院におきましても、沖繩返還と同時に、北方領土返還に対して各党共同の提案によりますところの決議もできておりまして、その趣旨に従って従来から努力しておったわけであります。何ぶんにも北方領土につきましては、従来から南方と比べますると世論の盛り上がりというものが少なかったということに関しまして政府といたしましても反省をいたしておるわけでございまして、その原因につきましては、沖繩におきましては百万の住民がおるということ、これに対して北方領土におきましては全部が本土に引き揚げさせられておるということ、しかも、引き揚げさせられた者が北海道に、大体根室市を中心に住んでおるということが、わりあいにやはり世論の喚起ということに対して弱かったということ、それからもう一つの原因といたしまして、沖繩につきましては平和条約三条でもってアメリカが施政権を持っておる。それに対して、北方は全く不法な占有である。平和条約二条に根拠を持たないわけであります。したがって、なお一そう根拠がないわけでありますが、しかし、アメリカのほうは、いわゆる日本の潜在主権というものを考えて、日本の領土の一部であるということを認めて将来返還しようというきわめて親善的な態度であるにかかわらず、ソ連のほうにおきましては、すでに解決済みだということでがんこに否定しておるというようなことが私は基本的に大きな差が出ておるものと思うのでありますが、しかし、だんだん実情がわかってまいりますと、この点につきましては盛り上がりを見てきた。なお、政府におきましても、北方領土に対する一般啓蒙というものに対しまして、普及宣伝と申しますか、そういうことに対して一そう必要性を感じましたので、今回北方領土問題対策協会という特殊法人を設立いたしまして、そうして御趣旨のように努力をいたしたいと思っておる次第であります。
  97. 多田省吾

    多田省吾君 こちらが何も沖繩との関連において考えていなくても、ソ連側は、いままでの歴史的な経過を見ますと、この沖繩問題とからんでいつもこの北方領土返還に対する問題を持ち込んでおるような気配があります。たとえば、日ソ共同宣言のときに、平和条約が結ばれたならば歯舞、色丹を返すというような約束があったわけであります。ところが、一九六〇年の一月十九日いわゆる日米安保条約の改定が行なわれて一週間後の一月二十七日には、ソ連政府はグロムイコ覚書というものを一方的に発表いたしまして、日本にアメリカ軍が駐留しておる間は、歯舞諸島及び色丹島は日本に返還しないということを通告してきたわけであります。また、沖繩返還問題がぼつぼつ話に出ますと、今度はいわゆる三木・コスイギン会談のときに中間的な姿で歯舞、色丹の返還検討しようじゃないかということを言われております。これはいまあまり進展しておりませんけれども、当然来年の安保条約の再検討期においてソ連からまた理不尽な要求が、また一方的な覚書等が出るのではないかというおそれもあります。それに対して政府は、あくまでも沖繩返還北方領土返還は根本的には何も関係はないのだ、特にいま総務長官がおっしゃったように、ソ連のいわゆる歯舞、色丹、国後、択捉の占領は全く国際的に見ても理不尽な所業であるということを明らかにして要求すべきである、このように思いますが、いかがでございましょうか。
  98. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 全くお説のとおりでございまして、基本的に北方領土自体は日本の固有の領土として考えられておる、また、条約的にも当然法的地位はある立場にありますので、北方領土に対するソ連側の態度は私は全く理不尽のものと思います。いわんや、安保条約と関連させて、あるいは沖繩と関連させて議論するということは、これは全く次元の異なったものと思うのでありまして、こういうような問題につきまして、私どもはやはり十分な国民の啓蒙、開発を行なわなければならないのではないかと思う。特に北海道におきましては、当初におきましては漁業者等の立場もありましていろいろと議論もあったわけでありますが、やはり国としての領土に対する基本的な態度というものをこの際明瞭にいたしまして、そうして国内対策のみならず、ソ連政府に対する外交折衝におきましても、従来から続けておりましたものを、一そうこれをはっきりした態度によりまして、相当困難はありましょうとも、努力して解決いたしたいと思っております。
  99. 多田省吾

    多田省吾君 私たちが残念に思うのは、結局平和条約の第二条でクリル・アイランズを放棄したわけでありますけれども、ところが、昭和二十六年の十月十九日の衆議院平和条約及び日米安全保障条約特別委員会政府答弁では、放棄したクリル・アイランズに国後、択捉を含むと答えております。それが池田内閣の時代になって解釈が変更になって、国後、択捉は含まないのだ、日本の固有の領土であるというように変更なさったように理解しておりますけれども、その点はいかがでしょう。
  100. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) 国後、択捉、色丹、歯舞が、放棄した領土の千島に含まないということは、政府の統一見解であります。今日におきまして引き続きかような立場に立ってソ連に対して返還を主張しておる次第であります。なお、具体的なものにつきましては、適当な機会に外務省から御説明申し上げます。
  101. 多田省吾

    多田省吾君 ですから、それと加えて、私たちは、日ソ共同宣言にしても、ソ連の主張を入れて、領土問題を含む平和条約を結ぶという条項を削除したわけでございます。そのために、ソ連側から領土問題は解決済みだというような言いがかりをする材料を与えることになってしまった。事実はそうでないんですけれども、口実を与えてしまったような姿があります。ですから、わが国はどこまでもいわゆるヤルタ協定なんかには日本は拘束されないで、ソ連の占領は不法占拠だということを十二分に主張していかなければならないと思うわけでございます。で、その後いわゆる三木・コスイギン会談のときに言われた中間的な措置というものは、一昨年以来全然進んでいないように思いますけれども、この問題も進ませよう、あるいは日ソ平和条約の締結もというような積極的なお考え政府にございましょうか。
  102. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) この問題は外務省からお答えすべきだと思いますが、まあ、条約的に申しまして全然ソ連の主張というものは根拠がないと私も承知しております。なお、日ソ共同宣言の際におきまして、平和条約締結の際まで色丹、歯舞の問題は延ばしたのであります。同時に、松本・グロムイコ会談覚書によりまして、国後、択捉等の問題につきましても保留しておるはずでございまして、今日におきまして十分その間の事情を明らかにしていきたいと思いますが、なお、外交折衝におきましては、三木・コスイギン会談のあと中川大使が引き続きこの問題を取り扱っておるように聞いております。
  103. 多田省吾

    多田省吾君 次に、この前の政府の発表で、いわゆる国土地理院の地図にも四十四年度から国後、択捉も日本領土であるように地図を塗りかえる、それからさらに、国後、択捉、色丹にも自治省から交付金を出すというような発表をなさっておられます。御存じのように、旧歯舞村に対する交付金は、北海道本島にあるところの歯舞が根室市に合併されたために、そのときから歯舞に対する交付金は出ているわけでありますけれども、今度国後、択捉、色丹にも出すと。具体的に大体いつから出すのか、また、いままでどうなっていたのか、どのくらい出すのか。
  104. 床次徳二

    国務大臣床次徳二君) ただいまの地籍問題につきまして、並びに地図の問題につきましては、各省連絡会議におきましてその方針を決定いたしました。そうして具体的な措置につきましては、大体関係当局におきまして検討中であります。できるだけすみやかに実現いたしたいと思います。その方法等につきましては、決定いたしました際におきまして、また御連絡申し上げたいと思います。
  105. 多田省吾

    多田省吾君 次に、ソ連に強力に北方領土返還を要求する以上は、国内的ないわゆる内政的な措置というものもそれ以外にとるべきことはたくさんあると思うんです。これは法務省のほうになると思いますけれども、いわゆる民有地の相続権というものがはっきりまだ認められていない。あるいはまた、国後、択捉方面に戸籍を持っていきたいというような要望もあると思います。その問題に対してはまだあまり進んでいないようでありますけれども、いま現在これはどういうふうに法務省として考えていらっしゃいますか。
  106. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 御説明の都合上戸籍のほうの問題から申し上げたいと思います。  戸籍につきましては、先ほど総務長官から御答弁ございましたように、戦後北方領土地域に居住しておられました方々、全部北海道あるいは内地に引き揚げてこられました。同時に、従前北方領土地域にありました本籍を北海道なり内地に転籍いたしまして、それぞれの市町村におきまして現在戸籍事務を取り扱っておるわけでございます。したがいまして、実際生活上本籍をもとに戻すという必要性も乏しいわけでございまして、現在根室を中心に多数の方がお住まいのようでございますけれども、法務省所管の法務局のほうに対しましても、個々にそういう要望をなされているという向きはないように承知をいたしておるのでございます。沖繩の事情と若干基本的に相違する面もございますし、特別にここで措置をとることはいかがであろうかということも考えまして、現在のままにいたしておるわけでございます。もっとも歯舞は、先ほどお話もございましたように、根室市に編入されておりますので、歯舞に関する限りは、根室市長が戸籍事務を管掌いたしておるのが現状でございます。  さらに土地の問題につきましては、相続権がないようにお考えの向きもあるように思います。しかし、これはもともと日本の固有の領土でございます。ソ連が現在占拠しておる事実はございますけれども、私どもとしましては、日本の領土であり、また根拠もなくソ連が事実上占拠しておるというだけであれば、日本の私法法規はやはりそのまま施行されておると、こう見ざるを得ないと考えておるわけでございます。したがって、実体法上の問題といたしましては、相続はもちろん行なわれておると、こういうふうに解釈いたしております。ただし、これを現実に公簿の上に反映いたしますために登記をしなければならないわけでございます。ところが、登記という仕事は、現実にその登記所の職員が現地に行って調査をいたしましたり測量もしなければなりません。そういうことはこれは事実上不可能な状況に置かれておるのでございます。したがいまして、登記簿はこれは根室の法務支局に引き上げまして保管いたしておるのでございますけれども、実際問題として登記事務を取り扱うことが不可能な状況に置かれておるということでございます。ただ、北方領土地域がこちらに返還になりますれば、もちろんこれに備えていろいろの準備もいたさなければなりませんが、かなりの長期間にわたった空白の期間もございますので、その間の問題をどのようにしたらいいかということはただいま検討いたしておるというのが現在の実情でございます。
  107. 多田省吾

    多田省吾君 ですから、まあ国後、択捉、色丹等も当然日本の国有地である以上は、まあ民有地としての相続権も認める立場にいるんだと、しかしながら、実際上は不可能なので、いまたとえば親が死んだとしても、子供、むすこに対する相続権というものははっきり登記上執行することは困難であると、ただそれだけの理由だということでございますか。
  108. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) そのとおりでございます。
  109. 多田省吾

    多田省吾君 次に、先ほど総務長官から、交付税の問題については具体的には検討中というお話でございましたが、幸い自治省の交付税課長がいらっしゃっているようでございますので、具体的にどの程度まで進んでいるか、また考えていらっしゃるのか、途中の段階でもけっこうですから、お話し願いたいと思います。
  110. 横手正

    説明員(横手正君) 普通交付税の扱いは、先生も御承知のように、従来から通常の標準的な行政経費を算定するということをたてまえにいたしておりますので、北方領土につきましては普通交付税の算定の対象にいたしてなかったわけでございます。ただ、北方領土復帰対策とか、そうした特殊な事情に基づきます財政需要につきましては特別交付税をもって措置してきております。しかし、今後はいろいろ問題もございますので、関係省とも十分連絡をいたしました上で前向きで検討いたしてまいりたい、かように考えております。
  111. 多田省吾

    多田省吾君 またもとへ戻りますけれども、もう一回法務省にお聞きしておきたいのですが、結局戸籍とか地籍はすべて停止されているわけでありますけれども、いわゆる歯舞村の役場というものが歯舞島にあるために閉鎖されて、支所が納沙布岬にあって本所の事務を代行している、こういうことに理解しておりますが、これがいろいろ、国後、択捉、色丹等の諸島の戸籍や地籍事務等も、はっきりと根室市長であるとか根室市に移管をして整備を行なっていくという、そういう体制だけでもとれないものかどうか。
  112. 新谷正夫

    政府委員(新谷正夫君) 御承知のように、戸籍事務は市町村長が管掌をいたすことになっております。したがいまして、市町村が存在し、その執行機関として市町村長がございますれば、これは当然その本籍地市町村として戸籍事務を取り扱い得るわけでございますが、ただ、遺憾ながら、ただいまのところ歯舞以外のところにつきましては市町村の機能が完全に停止をしておるのが実情でございます。もしもこれが何らかの形で地方公共団体の形を備えるに至りますれば、これは当然戸籍事務は旧に復して取り扱うことになるかと思うのでございます。ただ、いま仰せの点は、おそらく沖繩関係の戸籍につきまして、沖繩関係戸籍事務所というものをつくりまして、沖繩に本籍を持っておられる方々の戸籍事務を福岡の法務局で取り扱っております。それとの関連の問題をお尋ねではあるまいかと考えるのでございますが、しかし、この沖繩関係につきましては、御承知のように、占領軍、連合軍の占領下におきまして連合軍総司令部の指示によって昭和二十三年に政令第三百六号というのが出ております。これは「沖繩関係事務整理に伴う戸籍、恩給等の特別措置に関する政令」というものでございます。ポツダム政令でございます。連合軍の指示によってそれをやったという経緯はあるのであります。ところが、北方地域につきましては、そのような経緯をたどっておりません。そこには本質的に沖繩の場合と北方地域との差異があることでもありますし、そういう状況下において日本政府側としてそういう立法措置をいま講ずるということがはたして妥当な措置であるかどうか、これがいろいろ将来に問題を残すような危険性はあるまいかということも考えなければならないと思うのであります。ここから先は、行政の仕事というよりは、むしろ政治の問題になろうかと思うのでございます。御承知のように、ちょっと比喩は少し適切でないかもしれませんが、フィリピンとマレーシアの領土問題のごときも、一方が国内立法やったためにあの紛争が激化したという経緯もあるわけであります。日本側としましては、北方領土はもちろん固有の領土であるという前提に立っておるのでありますから、何らかの措置をとってとれないことはないと思いますけれども、これからの対ソ折衝の障害になるようなことはなるべく避ける必要があるのじゃないか。まして、現在、北方地域に本籍を持っておられた方々の実際生活には不便はないように理解いたしております。そこまでいま踏み切ることについて私どもとしてはさらに慎重な考慮を要するであろう、かように考えるわけでございます。  また、登記につきましては、先ほど申し上げましたように、この現場の実況を調査し確認し得る体制にしなければ、これは登記事務をとれないわけでございます。沖繩の場合といえども、これは現実に日本政府が向こうへ乗り込んでそういうことをやるということはできない状況に置かれておりますので、戸籍とは違いまして、沖繩の場合におきましても、日本政府として登記事務を取り扱うということは一切いたしておりません。これと同様の状況にあると御理解いただいてよろしいのではないかと思います。
  113. 山本茂一郎

    委員長山本茂一郎君) ちょっと、北方問題につきましては、法案審議のときにまたやっていただきますし、時間がちょっと超過しているようでございますから、簡単にひとつ。
  114. 多田省吾

    多田省吾君 それじゃ、最後に、せっかく水産庁から来ていただいておりますので、漁業権と漁船保険の問題をあわせて質問します。  戦前には専用漁業権があったのが、戦後、共同漁業権に切りかえられております。そのとき農林省ではもとの専用漁業権者に対して補償しているのでありますけれども、千島の専用漁業権者に対しては補償はしていない。これは日本本土並み考えるならば、当然歯舞、色丹、国後、択捉等の周辺北方水域の漁業権に対しては補償金の交付を早速内政補償としてしなければならないのじゃないか、こう思います。その問題はどうなっておりますか。  それからもう一つは、保険につきましては、船体保険とか給与保険等でございますけれども、いわゆる拿捕漁船に対して現在は個人の負担で漁船保険をかけているわけです。これは昭和二十七年以降にこの保険をかけるようになったと思いますけれども、それ以前のはちょっと泣き寝入りになっているのではないかと思いますけれども、それ以前のはどうなっているかどうか、これをお聞きしたいと思います。
  115. 安福数夫

    説明員(安福数夫君) 北方地域についての漁業権の補償についてまずお答えいたします。  北方地域につきましては、昭和二十一年の一月に当時のGHQの覚書が出まして、その際に、日本の周辺地域の島でございますけれども、それについての施政権の分離に関する覚書が出ております。それによりましてわが国施政権がそういった地域に及ばない、こういう覚書が出ております。その段階でわが国の法令がそういった地域に施行されない、こういう状態になったわけでございます。その時点におきまして、漁業権というものが一応消滅したものとわれわれ考えているわけでございます。かたがた先ほどから問題になっておりますように、ソ連の実力による支配というものが現在まで及んでおる、こういうことでございます。したがいまして、ちょうど漁業制度の改革が行なわれましたのが、二十五年から二十七年にかけまして日本の外地にございます漁業権が逐次消滅されたわけでございます。そういった事情もあってこの北方地域についてのこの漁業権の補償が行なわれなかったと、こういう実情でございます。しかしながら、御承知のとおり、終戦後、こういった地域から、漁民が大部分でございますけれども、そのほかの方々も全部日本本土に引き揚げた、こういう事情があるわけであります。したがいまして、それに対する生活の安定あるいは生業、経営の安定、そういったことは当然政府として考慮すべき問題があるわけでございまして、三十六年に北方協会設立しましても漁業権についての補償はされなかった。こういう事情も十分勘案しまして、国債による十億円の交付をいたしたわけでございます。それを基金に、そういった地域からの引き揚げ者の生活の安定なり生業の安定という、そういった趣旨から融資措置をとることによってそれをささえてまいる、こういう措置が行なわれて現在に及んでおる、こういうことでございます。それが、漁業権に対する一つの配慮がされなかったということの一つの行政的な措置が行なわれた、こういうことでございます。  それからもう一点、漁船の拿捕、こういう問題でございますけれども、それはちょうど二十七年の漁業保険の制度が改正されておりますその時点から、漁船に対する特殊保険が行なわれておりまして、これは漁船保険に対して政府のてこ入れしている特別会計でございますから、そういう趣旨で、漁船が拿捕された場合にそれの経営が回復できるような措置をやったわけでございます。それまでの問題といたしましては、御承知だと思いますけれども、終戦後、マッカーサー・ラインというのが引かれておりまして、これは一応GHQの覚書なり命令的なものでございます。したがって、当然これは法令的な効果があったわけでございますから、それを越えた形で拿捕が起きておる。こういう問題はございます。したがいまして、そういう時点におきます救済の方法というものは法律的にはないのじゃないかと、こういうふうに考えられます。ただ、ちょうど平和条約が二十七年の四月の下旬でございますが、それと相前後いたしまして、並行してマッカーサー・ラインが撤廃されております。それより若干以前だと思いますけれども、それよりもさらに広い範囲の韓国周辺で起こった問題でございますけれども、李承晩ラインが設定されております。したがいまして、この李承晩ラインというものは、日本としては国際法上認めがたい、こういう立場をとったわけでございます。したがいまして、この問題にからんでの拿捕事件につきましては、あくまでこれは国際法上認めがたい、こういう問題があるわけでございます。したがいまして、それを受けての漁船保険というものをやはり特殊の保険として制度化した、こういうことでございます。それ以降につきましてはそれでフォローしておる、こういうことじゃないかと思います。それ以前につきましては、具体的なケースとしてはいろいろ問題があると思いますけれども法律的には遡及できない、こういうふうに考えております。
  116. 山本茂一郎

    委員長山本茂一郎君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。   午後一時二十七分散会      —————・—————