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1969-05-07 第61回国会 参議院 運輸委員会、地方行政委員会、大蔵委員会、産業公害及び交通対策特別委員会、物価等対策特別委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年五月七日(水曜日)    午前十時二十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。    運輸委員会     委員長         岡本  悟君     理 事                 江藤  智君                 金丸 冨夫君                 谷口 慶吉君                 瀬谷 英行君     委 員                 河野 謙三君                 佐田 一郎君                 平島 敏夫君                 前田佳都男君                 山崎 五郎君                 渡辺一太郎君                 上田  哲君                 三木 忠雄君                 中村 正雄君                 市川 房枝君    地方行政委員会     委員長         内藤誉三郎君     理 事                 熊谷太三郎君                 林  虎雄君                 原田  立君     委 員                 鈴木 省吾君                 船田  譲君                 増田  盛君                 安田 隆明君                 若林 正武君                 千葉千代世君                 和田 静夫君                 山田  勇君    大蔵委員会     委員長         丸茂 重貞君     理 事                 青田源太郎君                 岩動 道行君                 戸田 菊雄君                 多田 省吾君                 田渕 哲也君     委 員                 青木 一男君                 鬼丸 勝之君                 小林  章君                 中山 太郎君                 西田 信一君                 木村禧八郎君                 田中寿美子君                 野上  元君                 松井  誠君                 横川 正市君                 鈴木 一弘君                 渡辺  武君    産業公害及び交通対策特別委員会     委員長         加藤シヅエ君     理 事                 大谷 贇雄君                 黒木 利克君                 松澤 兼人君                 内田 善利君     委 員                 村上 春藏君                 山内 一郎君                 小平 芳平君                 小笠原貞子君    物価等対策特別委員会     委員長         山本  杉君     理 事                 林田悠紀夫君                 阿部 憲一君                 中沢伊登子君     委 員                 大森 久司君                 櫻井 志郎君                 高田 浩運君                 塚田十一郎君                 鈴木  強君                 藤原 道子君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        運 輸 大 臣  原田  憲君        自 治 大 臣  野田 武夫君        国 務 大 臣  菅野和太郎君    政府委員        経済企画庁長官        官房長      岩尾  一君        経済企画庁総合  宮崎  仁君        開発局長        大蔵省主計局次  海堀 洋平君        長        厚生省環境衛生  金光 克己君        局長        運輸大臣官房長  鈴木 珊吉君        運輸省鉄道監督        局長       町田  直君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  山口 真弘君        建設省道路局長  蓑輪健二郎君        自治省財政局長  細郷 道一君        自治省税務局長  降矢 敬義君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木  武君        常任委員会専門        員        坂入長太郎君        常任委員会専門        員        中原 武夫君        常任委員会専門        員        宮出 秀雄君        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    説明員        日本国有鉄道総        裁        石田 禮助君        日本国有鉄道副        総裁       磯崎  叡君        日本国有鉄道常        務理事      湯川 龍二君        日本国有鉄道常        務理事      長瀬 恒雄君        日本国有鉄道常        務理事      長浜 正雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ただいまから運輸委員長地方行政委員会大蔵委員会産業公害及び交通対策特別委員会物価等対策特別委員会連合審査会を開会いたします。  冒頭に、運輸委員長としての私から一言申し上げます。  先般、連合審査を二十三日に開きまして、その後、関係委員長と御相談申し上げまして、続行することにつきまして運輸委員長としては善処いたしますということをお約束をいたしたのでございますが、二十四日の運輸委員会質疑打ち切り問題等もございまして、この連合審査のスムーズな円滑な審議にも影響を及ぼしまして、皆さま方にたいへん御迷惑をおかけいたしましたことはまことに遺憾でございます。幸い議長あっせんによりましてこの連合審査も続行することになりましたので、よろしく御了承いただきます。  それから政府側に申し上げますが、きょうの審査におきまして各質疑者には時間の割り当てがございます。予算委員会と違いまして、答弁時間も含めての時間の割り当てでございますので、答弁は簡潔に要を得た答弁にお願いいたします。  前回に引き続き、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案を議題とし、質疑を行ないます。阿部君。
  3. 阿部憲一

    阿部憲一君 国鉄財政の現状は、昭和三十九年度以降大幅な欠損を続けてきたというが、どのような状態になっておるか、ちょっと数字をあげて説明してください。
  4. 町田直

    政府委員町田直君) お答えいたします。  国鉄財政は三十二年から三十八年まで黒字でございましたが、三十九年度から赤字に転じ、四十二年度末で赤字の累計は一千四百七十七億円となっております。四十三年度は、単年度で約一千四百億円の赤字を計上すると見込まれております。
  5. 阿部憲一

    阿部憲一君 その三十九年度から四十二年度までの年度別数字をちょっとあげてください。
  6. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 三十九年度から年度別に申し上げます。単年度累積と両方申し上げます。  三十九年度、単年度三百億の赤、累積はまだ千二百九十五億の黒であります。四十年度、単年度千二百三十億の赤、累積が六十五億の黒でございます。四十一年度、単年度が六百一億の赤でございます。累積が五百三十六億の赤でございます。四十二年度、単年度は九百四十一億の赤でございます。そうしていまの数字に続くわけでございます。
  7. 阿部憲一

    阿部憲一君 前回の四十一年度には三一%も大幅な運賃値上げをしたにもかかわらず、その直後の年度には六百一億円、それから四十二年度には九百四十一億円赤字を出したのは、これはどういうわけですか。この赤字は予想していたのですか。
  8. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 四十一年度、正確に申しますと、運賃改定は四十一年の三月でございますが、その効果が出ましたのは四十一年度でございます。四十一年度にいま先生のおっしゃったような大幅な値上げをさしていただきましたが、やはりそのころの急激なモータリゼーションの深化、それから石炭輸送を中心とする貨物輸送の衰退と、この二つがおもな原因になりまして、それまでは収入がほとんど一割近く伸びておりましたものが、四十一年から急激に伸びが鈍化してまいりました。と同時に、経費のほうにおきまして、人件費、並びに資本費等の増大によりまして赤字がふえてまいりました。四十二年度定期だけで約三百億の値上げをいたしましたが、それも同じ原因でもって、いま申し上げました数字のような結果になっておるわけでございます。
  9. 阿部憲一

    阿部憲一君 いま承ると、要するに、安易な運賃値上げにたよって一時を糊塗して、根本的に財政を立て直す処置をいままで怠ってきたからだ、こう思います。したがって、今回一五%の値上げをすると言いまするが、これも結局何か前と同じことを繰り返すことになりゃしないか、こう思いまするが、その点につきまして当局の確信を伺いたいのです。
  10. 町田直

    政府委員町田直君) お答えいたします。  ただいま副総裁から御答弁申し上げましたように、四十一年に値上げをいたしましたけれども輸送構造変化等予想外に大きかったこと、それから労務費、賃金の上昇が予想外に大きかったこと、こういうような事情で、要するに収支の採算が合わなかった、こういうことでございます。したがいまして、今回はそういうことを全部検討いたしまして、国鉄財政再建推進会議の趣旨にのっとりまして、運賃値上げもしていただきますけれども、国も財政措置をする、国鉄体質改善のための合理化をする。こういうことで三本立てでこの十年間に国鉄財政を立て直す、こういうことでお願いをいたしておる次第でございます。
  11. 阿部憲一

    阿部憲一君 参考までに伺いますが、いまの再建計画がないと仮定した場合に、このままで推移すると、償却もできなくなる、償却赤字になるというけれども、これについて、たとえば四十四年、四十五年ぐらいの数字がおわかりですか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  12. 町田直

    政府委員町田直君) 一応の試算でございますけれども、四十四年度償却前は大体とんとんぐらいということでございますが、四十五年度からは償却前でもうすでに赤字が生じ、四十六年、四十七年ぐらいになりますと、おそらく千億ぐらいの償却前の赤字が生ずるという数字に相なると思います。
  13. 阿部憲一

    阿部憲一君 国鉄財政再建推進会議は、国鉄みずからの徹底的な経営能率化合理化を求めておりますが、これはもうまことに当然なことであると思います。国鉄の今日のように赤字経営におちいったのも、その一因は企業性の欠如であります。マンモス企業として膨大になり過ぎたため、知恵が回りかねると申しますか、すぐれた総裁を持ってきても企業体としての生産性向上できない、また全体としても各部門において生産性を高めようというような意欲が足りないと思いまするが、この辺についてお考えを承りたいと思います。
  14. 原田憲

    国務大臣原田憲君) ただいまの阿部さんの御指摘の点が私はあろうと思います。ただ、具体的に一般民間の同じような産業である地方鉄道と比べて、国鉄生産性を取り上げて、これがどうだ、こういうことを分析いたしますことは非常にむずかしい問題があります。御案内のように国鉄は全国的な経営をいたしておるわけであります。また、貨物もその経営の中でやっておるわけであります。私鉄は、大私鉄というのは、大体十四社は大都市近郊旅客というもののみを経営いたしておりまして、その会社も十四社それぞれ経営の形が変わっておりますので、これをもってしてすぐに生産性はどうだということは非常にむずかしい問題があろうと思いますが、なお必要でありましたら事務当局にそれらの点を御説明させますが、御指摘のように、昨日も私ども委員会三木さんから指摘されて、いろいろ検討しなければならぬ点があるということはおっしゃるとおりであろうと思います。
  15. 阿部憲一

    阿部憲一君 いま運輸大臣から承りましたが、運輸大臣も御存じのようなわけですけれども、この私鉄と比べた場合は、そのまま比較して云々ということを言うわけではありませんけれども、ちょっと格差があり過ぎると私は感ずるわけであります。日銀の主要企業経営分析からでありますが、私鉄十七社の従業員一人当たりの年間売り上げ、これを比べてみますと、私鉄のほうは二百三十六万九千円、ところが国鉄は百六十九万円ということで、はるかに低い。七〇%にすぎない。また売り上げについての人件費の比率を見ましても、私鉄のほうは三二・九%という数字になっておりますけれども国鉄は四三・七%と非常に高いわけであります。この低生産性原因は、もちろん国鉄公共性、いま大臣の言われたような全国的な組織であるからということも考慮されますけれども、結局はこの企業性が非常に欠除しておると、こういうふうに思いますけれども国鉄総裁に……。
  16. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 国鉄私鉄との経営状態を比較する上に、まず第一に私が申し上げねばならぬことは、私鉄のほうはもうかるところだけをやる。国鉄は大部分というものがもうからぬところである。その結果、たとえば赤字線というやつがありますが、この赤字線経営において国鉄の損するのは、四十一年において千三百億、四十二年において千七百億という赤字になっているということ。それから生産性の問題でありまするが、この生産性を比較するときに、その金に見積もった比較をするということは非常に私は間違っておる。とにかくこれは労働量にして、国鉄は一年に、列車の車両そしてそれに対するキロ車両キロでもって年々どのくらいふえていくかということで計算をしていくのでありますが、私鉄のほうはよほど違うということは御承知のとおり。私鉄鉄道であるけれども実際の仕事は不動産会社であるか、鉄道であるか、デパートメントであるかわからぬ。その証拠には、大手十四の私鉄会社の四十三年の上半期の鉄道面での利益を見ますと、鉄道による利益は百三十億円、これに対して鉄道以外からの利益は百五十億円以上、こういうことになっておりまして、鉄道会社であって鉄道会社でないということでございます。これを両方同じように比較されることはちょっと困る。特に生産性の問題について国鉄私鉄に劣っておるということは、私は国鉄職員を代表してそういうことは絶対ありません、こういうことを申し上げるほかにないのであります。
  17. 阿部憲一

    阿部憲一君 私は国鉄私鉄との違い、本質的な違いというものを認めないわけではありませんけれども、私は、やはり企業性が非常に発揮できないというのは、一つには国鉄官僚性がもたらす人事の硬直化、こういうふうに思います。これは大いに普通の私鉄企業と違うところじゃないかと思います。学歴偏重、これは能率主義あるいは抜てき主義というものを妨げているのではないか。また一面、親方日の丸的な安易な気持ちが経営にあたっておる理事の人あるいは幹部の人たち、それからまた全体にみなぎっておると、こう思うのでありますが、この点はいかがですか。
  18. 石田禮助

    説明員石田禮助君) ただいまの御質問でありまするが、ある程度まで確かにそういうことはまだあると思います。現に私が三十一年に監査委員長をやったのですが、そのときに私が国鉄の事業を調べた結果、まず第一に叫んだことは、国鉄人よ、おまえたち国鉄を不沈艦というふうに考えておるのは間違っておる。民間であれば、成績が悪ければ破産する。国鉄は絶対に破産しない、ここにおいて鉄道経営に対する安易感それによって国鉄能率が上がらぬ、これはほんとうに微に入り細にわたって調べてみますれば、そういうことはないということは絶対に言えぬ。でありまするからして、私は国鉄総裁としてこういうことは何とかして企業性に徹したいということでやっていきたい。最近においては私は相当にこれは直っておると思いまするが、しかし今後ともこの点は十分に気をつけてやらなければならぬ、こういうふうに考えております。
  19. 阿部憲一

    阿部憲一君 先ほどちょっと大臣からお話がありましたこの赤字路線の問題ですけれども、これを廃止すべきだという意見も出ておりますし、また、そういうふうに国鉄に対しても運輸省に対しても要望があるわけでありますけれども、これについて何か基本的な考え方をお持ちだったらひとつ……。
  20. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 国鉄経営するローカル赤字線の問題につきましては、再三お答えを申し上げておりますが、八十三線すべてすぐに廃止をするというふうには私ども考えておらないのであります。そういう問題点があるということを指摘はされておりますけれども、これをつぶさに検討をしてみまして、まず代替機関があることが第一番であります。代替機関があるといいましても、その地方の今後開発をするときに、代替機関にかえたほうがいいのかどうかというような将来の問題も展望いたしまして、特にいま全国総合開発計画というものを改定して出そうとしておるところでございますから、この点に十分考慮を払いながら赤字ローカル線といわれておるものに対処をしていかなければならぬと、このように考えておる次第でございます。
  21. 阿部憲一

    阿部憲一君 合理化にあたって、バスなどによっての代行輸送などを考えておるようですけれども、これは非常に地域住民生命線にも当たるものでございますので、これは絶対にやはり地域住民の意向と考え方というものを参酌した上で当たっていただきたいと思います。ただ赤字路線は、一般傾向として運賃の安い定期客がふえるけれども普通客は減少していく、貨物にも見るべきものがない、こういうのが多いわけでございますが、この利用者受益者負担という、いま運輸省が立てられているこの原則というものは、こういう場合に、これらの利用者である地域住民は現在よりももっと大きな負担をしなければならぬことになると思いまするし、逆に黒字路線のほうも、これは常に適当な運賃を払っておる、それなのにまたさらに今度は赤字負担させられ、運賃値上げをさらに黒字路線人たちが受けるということ、これはちょっと過重である、またこれは受益者負担という原則にも矛盾して非常に不公平なものである、こういうふうに思いますが、これはどういうふうに解釈すべきですか、お考えを伺いたい。
  22. 石田禮助

    説明員石田禮助君) これは非常にむずかしい問題であろうと思います。たとえばいなかの線というものはとても引き合わぬ。だからして引き合うためには運賃値上げをしなければならぬ。東海道あたりは非常にもうかっておるからして、これは運賃を下げなければならぬということなんです。そうすると各線各線によって運賃を変えていかなければならぬ。事実地方のやつなんかは上げるというと、結局それによってそれじゃ収入がふえて収支が合うようになるかというと、私はそうじゃないと思う。収入はますます減るばかり、赤字がますます拡大するということなんで、結局国鉄経営面におきましては、経営上の方法としてどんぶり勘定でいくよりほかに方法がない。こういうことで地方の結局損というものは、ある意味においてもうかっておる線における乗客負担においてやっておられるのであります。こういうことでありますからして、これは結局私は各線各線によって別な賃率を設けるということはできませんので、どんぶり勘定でやって、ただ地方線やなんかでもって地方輸送需要に適応した輸送部門に入る。そして合理化をはかると、こういう以外に方法はない。もしもそれができなければ政府から補助を仰ぎ、そうしてもうかる線における乗客負担というものを公平なものにする、こういうことに私はいくより方法はないと思います。
  23. 阿部憲一

    阿部憲一君 いまの総裁のお考えは私も同感でございます。結局政府考えろということでございます。この定期運賃値上げの問題について、昨年四月に増収三百億と承っておりますけれども、これが結局昨年度ベースアップの財源三百五十億円にそっくり充てられてしまったと、こういうわけですけれども、これは国鉄利用者サービス向上に充てられるということだったんですが、その辺はいかがでございますか。
  24. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 金額的に申しますと、昨年定期を上げました収入の増加が三百億弱でございます。約三百億でございます。仲裁裁定に使用した額はそれ以上でございまして、金額の額から申しますと、いま先生のおっしゃったようなことになりますけれども、全体といたしまして、経営状態が三百億だけよくなったというふうに考えますれば、必ずしもそれが、その金に色がついておりませんので、定期で上げたものをそのまま給与改定に使ったという実物実物の話ではないと思います。ただ、金額的に申しますと、先生のおっしゃったとおりでございまして、ただ全体的に余裕ができましたので、自己資金が若干ふえておる。その自己資金によってある程度設備改善なり何なりをやった。こういうことでございます。
  25. 阿部憲一

    阿部憲一君 昨年の定期運賃値上げなんかにつきましても、結局数字的には全部ベースアップに消えてしまったという感じを国民は持っておると思います。したがって、その運賃は上げられたけれどもサービス向上とか、また国鉄自体設備の拡充というものに持っていかれなかったということを非常に残念に思っておりますが、今度の値上げで九百億円増収国鉄では見込んでおられるようですけれども、これもまた先般来のいろいろな話がありましたベースアップというものについて、ちょうど昨年の定期運賃値上げと同じようなことが起こるんじゃないかと思いますが、今度のベースアップはどのくらい一体見込んでおられますか、ちょっと数字を……。
  26. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 本年度ベースアップにつきましては、御承知のとおり、去る五月一日の深夜、公共企業体調停委員会から公共企業体仲裁委員会に事案が移行されたわけでございます。したがって、現在仲裁委員会審議中でございますので、どういった案が出るか、私どもは全く見当がつきません。したがいまして、現在数字は申し上げられない段階でございます。私どもといたしましては、昨日も委員会で申し上げましたが、非常にその問題については苦慮いたす段階がくるであろうということだけでございます。
  27. 阿部憲一

    阿部憲一君 せっかくその運賃値上げによって何とかしようと国鉄ではお考えになっているようですけれども、それがまた国鉄内部事情といいましょうか、ことに従業員ベースアップ等においてほとんど大部分が費消されてしまう。これではちょっと国民としちゃ泣きたくなる、情けなくなる。こう思いますが、その辺のところは十分御考慮して、生産性向上国鉄の改革に当たっていただきたいと思います。なお、今度は貨物運賃値上げをしないというんですけれども貨物部門こそ相当赤字が出ているはずでございますが、これを値上げしないというのはちょっとおかしいと私は思いますが、四十三年度は一体どのくらいこの貨物でもって赤字が出ておりますか、お伺いしたい。それからなぜ旅客運賃だけを値上げして貨物のほうを据え置いたのか、この理由を承りたいと思います。
  28. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 原価主義的に申しますと、いま先生のおっしゃったとおり、客貨別の収入並びに原価を計算いたしまして運賃を定めるのは、これは当然のことと思いますが、すでに国鉄のような非常にいま企業革命に直面いたしましたところでは、いわゆる客貨別の原価あるいは同じ旅客の中でも定期定期外の一般のお客さんの原価、これらにつきまして、おのおの原価主義を貫くことは、いまや全く不可能な時代になっておりまして、結局総合収入で総原価をまかなうという総括原価主義、いわゆる個別原価主義から総括原価主義に戻らざるを得ない、こういう時代になっていると存じます。したがいまして、御承知のとおり同じ赤が出ましても赤の出る割合が貨物は多いのですが、一方違った目から申しますと、いまや道路あるいは船舶等の非常な飛躍的な発展によりまして、鉄道貨物輸送力というものは非常に大きな競争力にさらされておりまして、荷主の側から見ればコスト主義で、高い交通機関を利用しないというきわめて簡単な経済原則に戻ってしまいます。したがって、貨物輸送もいままでのサービスでいま以上に運賃を上げますれば、結局高級貨物がほとんど鉄道からトラックに逃げてしまう。したがいまして、貨物運賃を上げること自身が——結局、米とか鮮魚とかそういった国民生活必需品はこれは運賃を下げておりまして、これはまだ計算的に見れば運賃負担力がございますが、これを上げることによって国民生活に影響する。逆に国民生活に直接影響しない高級貨物につきましては、それだけ上がれば輸送量が減ってしまうということになるわけでありまして、これは相当詳しく一品一品検討した結果、現時点におきましては、いまのサービスをもっては貨物運賃を上げる余裕がないという次第であります。上げれば上げるほど収入増加にならないということがはっきりいたしておりますので、残念ながら貨物のほうは手がつかないということであります。ただ私どものほうといたしましては、いわゆる運賃表できまっているものから生活必需物資については割り引きをいたしておりますので、これをせめて割り引きだけでもはずしてもらいたいと思いましたが、これも物価等の関係で、はずしてはならぬということでありまして、これもそのままにとどめたわけであります。
  29. 阿部憲一

    阿部憲一君 貨物運賃値上げしない理由としては、一応高級な品物が逃げてしまうということと、一方においては物価が上がるからということでございますが、物価が上がることを御考慮しているなら、今度の旅客の運賃でも同じことでありますから、これも上げるべきだと思いますが、一方、貨物運賃についてだけ物価を心配して上げないというのはちょっと矛盾していると思います。それから値上げしたら貨物がなくなるというのがこれが本音だと思います。しかし、いまの貨物運賃が現実じゃ非常に安いといいますか、鉄道では言っておられるかもしれないが、この貨物運賃でさえサービスに比較すると高いのじゃないかと思います。なぜかというと、鉄道貨物というのは、いつ先方に着くかわからない。現在のように非常にスピードのアップした時代にいつ着くかわからない。トラックとかほかの輸送機関ならば、いつ幾日、時間までわかっているのに、鉄道は駅に貨物をまかせたらいつ着くかわからない、そういうことが大きな貨物の逃げているといいますか、現状のような輸送革命の時代にマッチしない政策をとってきた結果だと思います。しかも聞くところによりますと、貨物の平均スピードはたった五キロだということであります。人間が自転車で動くのと同じ速さだと思います。いまトラックだって四、五十キロの逆さを出しております。トラックの十分の一輸送力で対抗するということ自体がナンセンスであります。ですから、これはむしろ逆に減るのがあたりまえです。最近非学に貨物運賃赤字がふえてきたと先ほど説明がありましたけれども、これはむしろ当然だと思う。ですから、私どもはこの国鉄にお願いすることは、この技術革新の時代、また特には国鉄が世界に誇れる新幹線ほどのこのようなすばらしい技術を持っておられるんだから、貨物輸送についてももっと熱意を持って当たっていくべきだ。貨物だけはどうにもならないという弱音をはかないでもいけるんじゃないかと思いますが、ひとつお考えを伺いたい。
  30. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 国鉄貨物輸送サービスや、はなはだ貧弱だということは、これはもう一言の弁解の余地はないと思います。なぜ一体そういうことになっているかというと、根本はやはり輸送力の貧弱である、こういうことでございます。公共企業体になってから国鉄というものは、自己資本の貧弱のために路線の力をふやすことができなかった。その間に、しかも旅客の輸送需要、貨物の輸送需要というものは非常にふえてきた。それで、その結果はどうかというと、路線を酷使したということで、しかも旅客の輸送需要というものは貨物の輸送需要よりも多いために、大部分の輸送力というものは旅客輸送に取られてしまう。貨物輸送のほうを顧みる余地はなかった。こういうことで、ただいまのように貧弱なサービスになっておりますが、これは、今度の計画におきましては一新して貨物輸送サービス改善しよう、それには貨物の輸送力を思い切って増強する。こういうことでやっているのでありまして、ひとつ過去のことにつきましてはお許しを願って、どうぞ将来を御嘱目いただくようにお願いしたいと思います。
  31. 阿部憲一

    阿部憲一君 結局これ以上取りにくい貨物のほうは据え置いておいて、取りやすい旅客運賃を上げて、すなわち利用者である大衆の負担によって国鉄の再建をはかろうとしているのは、これは間違いだと私は思います。国鉄みずからの徹底的な経営能率化合理化を断行することが第一でございます。そして第二には、国鉄経営をこのように困難にした政府こそ責任をとるべきだと私は思います。すなわち、政府の総合交通政策の貧困、また国鉄に対する非協力などが原因となって今日の国鉄経営不振を招いたのでありまするから、政府こそ責任をもって国鉄の再建に対処すべきだと存じますが、運輸大臣のお考えを承りたいと思います。
  32. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 私はその心がまえでございまして、したがいまして、従来はさて置いて、今回初めてただ運賃法の改正だけでなしに、国鉄財政再建のための措置法を提案をいたしましてお願いをしております。ここに政府の責任であるという心がまえを国民の前に明らかにしておるつもりでございます。もちろん、この施策においてこんなことではなまぬるいというお話しも聞かされておりますけれども、今後十年の間に、なお私は運輸大臣としてこの法律の中に提示しております以上に、施策も伸ばして国鉄財政を再建し、国民に対するサービス国民経済の上に国鉄の果たす役目、これを十分にするために努力をしていきたい、このように考えておる次第でございます。
  33. 阿部憲一

    阿部憲一君 政府国鉄の独立採算ということに非常にこだわっていると思いますが、これをむしろこの独立採算制というものを、ある程度こういった危機におきましては無視する、無視するといいましょうか、しばらくでもたな上げして、そうして現在財政措置も相当講じられておるわけでございますが、国のこの財政措置による大幅な助成、これをまず行なうべきだと思いますが、重ねて運輸大臣のお考えを承りたい。
  34. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 阿部さんが冒頭に申されました企業性というものが国鉄に欠けているではないかという考え方国鉄経営というものの根本である独立採算制をとっておりますのは、その能率をあげるということにおいて、その効果を国民に及ぼすということ、これが一番の目的であろうと思います。したがいまして、国鉄経営が独立採算をたてまえとするということのほうが私はよろしいかと存じます。しかし、いまお答えいたしましたように、いまのそのままの状態でいきましたならば、運賃値上げ以外に対処する道はないということになるわけでございます。この点を考えまして、国の施策というものをもって財政の再建をする、国民と国と利用者と三位一体になった方法によって十年後には健全なる財政状態にしよう、こういうことを考えておる次第でございます。
  35. 阿部憲一

    阿部憲一君 この国鉄運賃の一五%値上げ、結局この運賃にしわ寄せするということについて、私は国鉄の独立採算制さえも無視するわけではないけれども、ある程度強く言ったわけでございまして、国鉄の独立採算制は将来にわたって堅持すべきだと思いますけれども、ただ、政府が独立採算制がとれぬから国民負担でなければとれないい、運賃値上げでなければとれないということになりますならば、それこそ政府が助成すべきだと、こういうふうに言ったわけでございます。よろしく誤解のないようにお願いいたします。  次に、国鉄運賃の一五%値上げで物価は〇・二%上がると政府は説明しておりますが、これは毎年政府によって大幅に引き上げられてきた消費者米価ほどのひどい影響はないかもしれません。しかし、大衆にとっては必需品の増税と同じことでありまして、大きな負担であります。それに、忘れることができないのは、国鉄運賃値上げされれば必ず私鉄運賃に波及するということでありますが、これについて運輸大臣のお考えを伺いたい。
  36. 原田憲

    国務大臣原田憲君) この運賃値上げ国民の生活に影響をする点は、米と比べては少ないけれども、これが影響することは御指摘のとおりでございます。できることならば値上げをせずにやっていきたいという気持ちはございますが、国の財政上から考えましても、また国鉄自体経営ということから考えましても、すべて国、国というわけにまいらない。すなわち利用しない、乗客でない国民の税金ばかりでこれを補うというわけにはまいらないというので、三位一体の形をとらしていただいておるわけでございますが、国鉄を上げることは御指摘のように私鉄に影響するではないかと、こういう御指摘でございます。このことにつきましては、特に具体的に、今度この案が通りました際の運賃の差額というものを提示されまして御質問も受けておるわけでございます。これらに関しましては、すでに昨年の定期運賃改定から事態が起きておりますので、このことについて乗客変動ということが行なわれておらないという事実を私は見まして、今度値上げをいたしますけれども、すぐにそれに便乗的に私鉄値上げに結びつけるということはいたさない、よくその内容も検討しなければならないし、物価という問題についても考えなければならない、すなわち極力抑制をする、こういう態度で進んでおるのでございます。
  37. 阿部憲一

    阿部憲一君 いまの大臣のお話を聞いておりますと、何か私鉄運賃も多少上げなければならぬかというように私は受けたのですけれども、これはいまの私鉄の大手十四社が相当強硬にこの運賃値上げを要求しておることは知っておりますし、理屈からいっても公共事業の国鉄ばかり値上げを許して、私鉄はだめだという根拠は非常に乏しいわけです。しかもいま大臣も触れましたような並行路線の問題、運賃格差の問題もありますから、これに対しては大臣が処置される場合に非常にむずかしいと思いますけれども、しかしこれは絶対に上げてはならぬと思いますが、承るところによると、昨年来国鉄運賃値上げはどうしてもしなければならぬ、しかしその場合も私鉄運賃には絶対に波及させない、こういうふうに私らも聞いておりますけれども、その辺についてもう一度重ねて運輸大臣のお考えをお伺いしたいわけです。
  38. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 私の答弁が、上げるほうに受け取れるということでございますが、私は何度も申し上げますように、上げるということを言ったつもりはないのでありまして、極力抑制をする、こういうことをお答えをいたしておるのであります。私鉄各社が申請を出しておることも御指摘のとおりでございます。申し上げましたのは、定期運賃につきまして昨年改正をいたしまして、国鉄のほうが高くなっておるという事実があるわけでございます。しかるところ、高くなったものならば、安いほうへ乗客が移動するというのがこれは常識でございます。ところが、この一年間を見ますと、そういうことが起こっておらないということが一つ問題としてはあるわけであります。これは、いわゆる定期運賃というものを本人の負担でなしにまかない得ておるという制度がこれをささえておると私は思うのでございますが、これらのことも考えまして、すぐに国鉄が上がったから私鉄も上がるということではないと、こういうことを申し上げておるのでございます。
  39. 阿部憲一

    阿部憲一君 どうも大臣は、定期運賃値上げをしたけれども、たいした移動がなかったからといって非常に楽観しておられるようですけれども、今度は定期だけではない、運賃そのもの、一般の運賃が上がるわけですから、これは相当影響があると思いますし、並行路線の問題なんか非常に矛盾していると思います。ですから、それを調整することは非常にむずかしいと思いますけれども、しかし、あくまで私鉄運賃は上げないと、こういう方針をひとつ堅持してほしいと思います。  最近の消費者物価の値上がりは、必ず政府の主導によるわけでございまして、申し上げるまでもないと思いますけれども、一昨年秋の米価の値上げに始まった一連の物価高騰、また昨年春の国鉄定期値上げ、酒、たばこの増税値上げから起こった物価騰貴も、引き続いて昨年夏の政府による消費者米価の強行値上げに端を発した大幅な一般物価の高騰も、すべて政府の引き起こしたものであります。国民は物価騰貴にほんとうに苦しみ泣いております。もし今度国鉄運賃の強行値上げを行なえば、必ず本年度物価騰貴の起爆剤になるのであります。政府私鉄運賃値上げを許さないと言いますけれども、ほかにもバスありタクシーありで、メジロ押しに運賃値上げを要求しております。結局は政府の表明とは反対に、物価騰貴のムードを醸成し、足代から一般物価にはね返りを起こすことは必至だと思いますけれども、これに対して運輸大臣ひとつお考えを承りたいと思います。
  40. 原田憲

    国務大臣原田憲君) おっしゃるとおり一つのものの値上げというものが影響するところは少なからざるものがある、このお説はそのとおりであろうと思います。したがいまして、鉄道運賃値上げというものは、数字の上では低いところにあっても、これが影響するところは大である、こういうことについて極力値上げ幅も私どもは少なくする努力をいたしたつもりでございます。先ほどは鉄道の話でございましたが、バス、タクシー、これらの問題もやはり運賃の問題でございます。したがいまして、私が申し上げているとおり、タクシー料金というものは、数字の上では他の物価と比較して一番安いということはこれは事実でございますが、少なくとも乗車拒否というような問題を起こして、お客さんにサービスするようなことを忘れて、それは値上げせぬからだというような態度である限り、これらの問題——タクシー運賃値上げという問題——は慎重に考えなければならぬというようなことも私は考えておりますが、一方で御了解賜わりたいことは、このレジャーブームで、日本の人たちはほとんどがどこかへ遊びに行っている。それを一方ではその遊んでいる人を運んでいるという仕事をしている者の身にもなって、自分たちは遊びまくっているけれども、運ぶのはおまえらの任務なんだ、こういうことはやはり……。世の中は持ちつ持たれつであるということもひとつ御了解を賜わりまして、一日も早くこの法案を通すように、阿部先生にお願いを申し上げたいと思います。
  41. 阿部憲一

    阿部憲一君 どうもいまの大臣の御説明、お返事だけじゃ、とてもこれは私は賛成できません。むしろ私は、この国鉄運賃値上げの波及は、結局国民生活に大きな脅威を与えます。したがってわが党は、国民大衆のために、あくまで運賃値上げに反対いたします。むしろ政府がこの案を撤回することを、私ども要求いたします。  時間がございませんので、最後に企画庁長官にお伺いいたします。  佐藤内閣の金看板でありまする物価の安定は一体いつになるのかということをお伺いしたい。それから本年はまた五%値上げでがんばるというような方針であると承っておりまするけれども、結局いま迫っているような国鉄運賃の大幅値上げとか、またそれに付帯する物価騰貴というような現象が起きますと、五%を維持することも非常に困難だ。政府はかつて社会発展計画におきまして、何か三%という理想の物価値上げを描いていたようでありますけれども、この三%値上げだって決して理想じゃないと思います。物価はやはり三%じゃ決して小幅じゃなくて、現在大幅値上げしておりますから三%というと安定したような錯覚を起こしますけれども、三%だって決して安定しているとは申せません。しかし御質問申し上げましたように、一体物価のほんとうに安定する状態というのはいつになるのか、これをどのように政府が期待し、また計画をしておられるのか、それを承りたいと思います。
  42. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 阿部先生も御承知のとおり、物価という問題は、これは政府の経済政策並びに国民の経済活動の総結果として物価という問題があらわれてくるのでありますからして、したがいまして、これに対しましては、政府がとるべき政策と、また国民自身の経済活動について考えるべき問題と、二つあると思うのです。そうしていまさしあたり二を抜いて、考えておったより以上に物価が上がってまいりましたその大きな原因は、経済成長が予想以上に迅速であったために、したがってそこに構造上の問題が起こってきたということ、生産性の高い産業は非常な勢いで発展するが、生産性の低い産業というものは発展しないというところに、この物価問題というものがひそんでいるのでありますからして、したがいまして、この生産性の低い産業というものを、これを生産性の高い産業と同じようにして、そこに所得の格差のないようにしなければならぬという問題、これはにわかに実現することが困難であるのでありまして、したがいまして、この問題を漸次解決していきたいということにつきましては、いろいろ農業の問題、中小企業の問題、その他サービスの問題について、いろいろ政府としては対策を講じておりまするし、また四十四年度の予算においても相当な予算を計上いたしているのであります。  それからさしあたりの問題としては、先ほどから阿部先生のお話がありましたとおり、物価が政府主導型の物価だというように世間で言っておりますのは、これは公共料金を値上げするというところに原因があると思うのでありまするので、そこで四十四年度においては、公共料金は全部実は私どものほうでは抑制したいという考えをして、そうして政府は決して物価を上げることを指導してないのだということを国民に示す必要があるというように考えておったのでありますが、鉄道料金のことにつきましては、たびたび申し上げますとおり、国鉄自体を何とかして救わなければならぬということで、やむを得ず料金の値上げを認めたのでありまするが、しかしその料金の値上げに関連して他の公共料金を便乗値上げすることは、これは極力押えるという方針でまいっております。したがいまして、先ほど運輸大臣からも御答弁がありましたとおり、そこで私鉄運賃値上げなどは、まあ申し込んできておりますけれども、私どもではこの際値上げすべきじゃないという意見をとっているのでありまして、先ほどもお話ありましたとおり、私鉄自体は、なるほど社名は電鉄会社でありますけれども、百貨店やあるいは土地の造成で相当収入をあげているのでありますからして、その営業の一部分である運輸事業が赤字だからそれだけ上げてくれという、それをそのまま認めるわけにはいかないというわれわれは態度をとっておりまして、そういうことで、私鉄の大手の運賃値上げは極力われわれ経済企画庁としてはこれを抑制するという決意をもって臨んでおる次第であります。そういうことで、物価をできるだけ押えようとしておりますが、しかしこの経済成長がすばらしいために、物価上昇の基調というものは依然として強いんです。したがいまして、四十三年度は四・九%になりましたが、しかし、昨年の十二月ごろの情勢でありますと六%ぐらいになりはせぬかという実は心配をいたしましたから、これは五%以上に物価上昇さしちゃいかぬと、極力いろいろな手を通じてこれを押えなきゃならぬということで、五%という数字にしたのでありますが、しかし、五%を実現するということについては、これはなみなみならぬ努力が要ります。これについては各省ともにこの五%以内に物価を押えるという方針で御協力を願っておりまするし、また打つべき手はできるだけひとつ打って、五%以内でやりたいと思いますが、五%という数字は、これはもう最上限の数字でありまして、それ以上値上げしちゃいかぬ。しかしこれは四十四年度について五%です。できればもっと下げたいという考えできておりますので、いま私のほうで経済社会発展計画の補正をやっておりますからして、これによって今後の物価をどういうようにするかということをひとつきめて、その方針に従って政府の経済政策を今後とっていきたい、こういう考えできておる次第であります。
  43. 阿部憲一

    阿部憲一君 時間がありませんから以上でよろしいです。
  44. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 中沢君。
  45. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 私は物価の対策の面から質問をするのが筋でございますけれども、もうすでに予算委員会や物価対策委員会やあるいは本会議で何べんかこの問題を質問しておりますので、少し角度を変えまして質問をいたしたいと思います。  まず第一番に、相当多額の投資をしたり、あるいは値上げをしてまいりましたが、依然として解決しない通勤通学輸送の大混雑あるいはまた国鉄の責任にかかわる事故の多発等々、特に昔はほとんど見られなかった国鉄職員のたるみに起因する事故の続発は、これが人命をあずかる国鉄の姿かと驚かされるものがしばしばございます。このような国鉄状態は、まさに私は重体だと、このように感ぜられますが、こうした国鉄の悩みは突然出てきたものではなく、起こるべくして起きてきたような感じがいたします。その最大の責任は国鉄当局政府にあると考えますが、この問題をどのように考えられますか、そうしてその対策をどのように考えておられますか、お伺いをします。
  46. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 国鉄の事故が多発をして国民の批判を受けておりましたことにつきましては、まことに遺憾なことでございまして、申しわけのないことだと考えております。私は就任をしまして以来引き続いて——昨年は、前の大臣のときには、もう気の毒なくらい事故ばかりで、国鉄総裁大臣が呼びつけて、どうしているんだというようなことがありましたが、事故についての根本問題を解決するための委員会も開いていただき、答申も得ておりますが、私はこの問題を根本的に解決するためにも、現在御提案申し上げております国鉄の再建という問題が根本にあると考えておるのでございます。いま中沢さんのお説のように、政府の責任である、当局者の責任であるということばは、私は現在自由民主党内閣で政治をやっておるという点から、そうおっしゃられてもやむを得ないと思っております。世の中の悪いことは全部政府の責任であると言われてもやむを得ないぐらいの心がまえでいかなきゃならぬというふうに考えております。したがって、それに対応するために、国鉄をどう再建するかということで、いま御提案をいたしましたこの案によって根本のことをやってまいろう、こう考えておるのでございます。まあ小さい話になりますけれども、人間というものは、しかりつけてばかりおりますと、逆に気持ちが小さくなっていじけて、また思わぬ事故をやるいう面も持っております。国鉄で働く人自体が、この国鉄はだめなんだというような気持ちになるということは、すなわちこれは事故につながってくる心理的なものがあると思います。国鉄というものは十分に働くところがあるのだ、こういうことによってやっていくのだ、これが事故の問題なんかに関します根本の問題であると私は考えて、この国鉄再建の法律案を中心にいたしまして、皆さま方に御協力を賜わって事故の絶滅を期していきたい。個々の問題に関しましては、十分今後も注意をいたしまして、事故が起こらないように対処していく考えでございます。
  47. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ただいま大臣から申されましたとおり、昨年前半、非常に居眠り、うっかりした申しわけない事故が多発いたしました。私、非常に深く責任を感じておる次第でございます。その後、いろいろ私どもといたしましても、物心両面にやはり体得すべき点が多々あるということを感知しまして、及ばずながらいろいろ力を尽くして、やってまいっております。幸いこのゴールデン・ウィークにも事故なしに過ごせまして、われわれ非常に喜んでおります。しかし、ほとんど毎日百数十万キロも列車が走っておりますので、利用される多数の国民の一人でもやはり間違いがあってはいかぬというので、毎月一回必ず事故の委員会をやりまして、そうしてお互いに反省しておりますが、やはりある程度職員の精神がたるんでおるとおっしゃられてもやむを得ないような事情が、弁解できないような事態があることは事実でございますけれども、全力をふるいまして私どもそういう精神の訓練からやらなければいけないということを深く考えております。
  48. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 戦後の荒廃した中から立ち上がった日本経済が、非常にいま驚くべきほどの発展を遂げております。しかし、国鉄当局国鉄の果たすべき輸送需要を消化するに足るような積極的な経済対策をとってきませんでした。すなわち、戦後の交通産業の変革期に際しまして、将来に対する展望を誤り、競争機関である自動車あるいは内航海運、航空機等の成長発展を見抜くことができずに、かつての独占的経営時代の安逸の夢をむさぼっていた当時の国鉄首脳者の先見性のなさに責任の大半がありますが、その後、事態の重大性に気がついてからの方策も無責任だと思います。先ほど阿部委員からもいろいろ御質問がありましたが、その点について御答弁を承りたい。
  49. 石田禮助

    説明員石田禮助君) お答えいたします。  国鉄は終戦後、交通機構の変化、輸送需要の増大というようなことについて、将来の展望を誤った、そうして展望を誤ったのみならず、これの再建についての努力において足らなかったというような御指摘がありましたが、私は、展望を誤らぬとは申しません。またそうして努力が十分であったということも申し上げられぬ。ですが、この点については私はひとつ御理解願っておきたいと思いますが、いつかも私は予算委員会で申しましたが、国鉄は何とかして輸送需要に応ずべく、できるだけの努力を私はしたと思うのです。しかしできなかった。なぜできなかったかというと、それについては、私は第一の責任は国会にあると思う、第二は政府にある、第三は国鉄にある。どうしてそういうことを申し上げるかというと、つまり終戦後、輸送需要というものが非常にふえた。国鉄は輸送力をふやさなければならぬ、こういうことで、しかも一方においてインフレのために経費というものが非常に増大してくる。そこで輸送力をふやすためにどういうことをしたか、あるいは収支のバランスをとるためにどういうことをお願いしたかというと、運賃値上げである。ところが運賃値上げということになると、これは現在でもそうなんですが、たまたまインフレーション、非常な物価の問題について政府なり国会というものが戦っているときに、国鉄の公共料金値上げはだめじゃないかと、こういうことで、多くの場合は却下される。却下されなくても、やった場合においても必ずぶった切られるということで、国鉄が要望するような運賃値上げというものが認められなかった。そのために自己資金というものができない。自己資金ができないために、国鉄というものは結局輸送力増強というものに対して十分なことができなかったということで、その結果は、とにかく公共企業体になりましてから、三十二年までというのはろくすっぽたいした仕事もできなかった。戦争のためにぶちこわされた路線というものの修理にきゅうきゅうとして、それ以上一歩も出ていないということで、これはやはり国鉄にも責任がないとは申しませんが、私はなぜもう少し政府なり国会に対して強く対処しなかったか、こういうことを言ったんですが、そんな、いまさら過去のことを言ってもしようがないんですが、そういうことで国鉄にも責任があるが、国会にも責任がある。  同時に、もう一つ申し上げたいことは、国鉄というものがそういうことで非常に悪戦苦闘しているときに、政府というのはどういう態度をとっておったかというと、公共負担、めしも食わせないでからだの栄養を十分とってない子供に対して、おやじさんの政府というものは自分の政策を行なうのに国鉄の犠牲においてやっておる、公共負担、それが一番大きなものは通勤通学です。それは昭和二十四年から四十二年まで合計するというと何だかんだ一兆円以上に達しておる。しかもそれも五割の割り引きという、とにかくそれは別として、五割の割り引きというのはいまどのくらいになっておるかというと、通勤通学の両方で千八百億になっておる、そういうものを国鉄にお荷物をしょわせておる。からだがやせた子供にそういう荷物を負わせておる。その結果はもって知るべしです。国鉄の輸送力の増強はできなかった。こういうことで私は決して国鉄の責任を回避するわけではない。ということは、なぜそういうときに国鉄というものはもう少しがんばって政府なりそして国会に対してよく国鉄事情を話して了解を得るようにしなかったか、これは国鉄も非常な大きな責任だ。これはただ単に国鉄だけをお責めにならないで、同時にやはり国会としても、政府としてもお考え願わなければならないということでありまして、少しどうも言い過ぎかもしれませんが、どうぞ御容赦願いたいと思います。
  50. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 たいへんおもしろい答弁をいただいたと思います。との問題について相当やりとりをしてみたいと思いますが、あと残った時間が十分間、そのやりとりができません。あるいは水かけ論になるかもしれませんし、そうしてまた、いまの経済企画庁長官答弁は、私どもも物価対策委員会で同じような御答弁をいただいたこともございます。そういう点から、もっとこの問題第一に国会に責任があるのだというお話をもう少し突っ込んでみたいと思いますけれども、きょうはそのことができませんので、そのまま置いておきます。  その次にまいりますが、次に経営に欠くことのできない労働組合運動に対する正しい認識の欠除があったかと思います。これも経営者としての筋を通す根性の足りなさ、そういうところに今日の国鉄の窮状の第二の原因があると私は思います。戦後のわが国の労働運動は、例外なく左翼労働運動の洗礼を受けていますが、その後の民主化運動から発展して、正常にして建設的な労働運動が定着したところと、依然として今日もなお観念的な左翼労働運動が力を持っているところとが存在をしておりますが、その分かれ道は、多くの場合、経営者の姿勢に起因すると見られますが、これはどのように理解しておられますか。  さらに、国鉄の窮状を克服するためには、特に労使関係について国鉄当局経営者としての責任と自覚の上に立つことが必要でございます。いままでよく労使なれ合いということばを耳にしましたが、当局は常に筋を通して真剣に取り組むべきであり、無法や暴力に屈しないことでございます。このことが実行できないようでは、労働組合の協力を得ることができません。この点について次期の国鉄総裁と目されている磯崎総裁にお伺いをいたします。
  51. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ただいまの御質問、実は私も終戦直後からずっと労働運動のほうの仕事をしておりまして、終戦後二十年間の労働関係の動きも多少は知っておるつもりでございますが、最近の事態に対しまして、いま先生からの非常に痛烈な御批判を賜わりまして、私は深くその点はごもっともと思っております。最近におきまして、私のほうの管理者陣営に多少いまおっしゃった筋を通すという根性が欠けているということも事実だと思います。過般五月一日におきまして横須賀線の全電車の全部の窓にビラを張ってしまって、お客さんが外が見えなくなったというふうな、ああいう事態をとめられない。また、現場の職員が出てお互いにとめることをしないということなどは、明らかにいま先生の御指摘の点で、結局これは非常に国民に対して御迷惑をかけておるということなどにつきまして、やはり一朝一夕に直らない点があるかと存じますが、私どもは今後国鉄が再建できるかできないかというポイントは、まさにその点にあると思います。金とか物とかいうことについては、先生方の御尽力で前進しつつあるのでございますが、その点につきましては、私は必ずしも前進しておるとは思いませんので、今後その点につきまして十分根性を入れ直して、本社も管理局も全部で精神の革命をしなければいけないというのが私の信念でございます。
  52. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 さらにくどいようですけれども、いまの、精神革命をしなければいけない、その気持ちは十分貫いていただきたいのですが、国鉄当局の今日までの独善的な立場を反省して、労使協議の実をあげるために国鉄経営の民主化を促進することを強く要求したいと思います。具体的には労使協議制の確立をはかることでございますが、すでに当局と鉄労の間に設置している経営懇談会、このようなものを活用して、労働組合の建設的意欲が経営に反映するような運営を行なうことを私は強く求めたいと思います。また、これなくしては国鉄の再建も合理化もあり得ないと思いますが、それをもう一度御答弁をいただきたいと思います。  時間がございませんからもう一つ続けて質問をさしていただきますが、今度の値上げの問題では、国鉄の三つの労働組合も値上げに反対をしておる、このように承っておりますが、それはなぜでございますか。自分の組合を納得させられないようなものをどうして国民に納得させ得ることができるか。このことについて御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  53. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 御質問の前段のいわゆる組合との経営協議会と申しますか、その問題でございますが、実は私のほうでも昭和二十三年ごろでございましたか、そういうものを制度的に持ったことがございましたが、結局それが全部団体交渉の場になってしまいまして、何もきまらないというようなことで、廃止したような経過がございます。その後、御承知のとおり鉄道労働組合と経営協議会をつくりまして、いろいろ経営上の説明をし、また意見を求めてやってきておるわけでございますが、私どもといたしましては、国鉄労働組合も動力車労働組合も同じような気持ちになって経営問題に真剣に取り組んでくれるということを強く期待しておるわけでございますが、なかなかまだその時点にまでいってない。現在におきましては、事故防止の問題につきましては、これはもう労使問題以前の問題であるということで、お互いに会議を持っておりますけれども、まだそれを出ないことは非常に残念に思っております。しかし、いずれにいたしましても、四十七万職員のほんとうの協力がなければ、やはり私は国鉄の再建はできないというふうに深く思っておりますので、今後できるだけそういう方面に労使のかまえを変えていくという努力をしなければならないと思っております。  それから国鉄労働組合以下三組合が運賃値上げに反対しているじゃないかという御質問、これは衆議院の委員会におきましても数回御質問があったところでございます。全く自分の身内が反対しておるものを国民が納得するわけはないじゃないか、非常に率直な御質問で、私もその点につきましては、去る三月十八日に国鉄労働組合と動力車労働組合が運賃値上げ反対のストライキをするということにつきましては、どうしても私は納得できないということで、徹宵して私が組合本部に行ってひとつ話をしようと言ったんでございますが、どうしてもそれはいろいろな事情でやめるわけにいかぬというふうなことで、まあ何と申しますか、理外の理でやっているというふうに思わざるを得ない。結局それじゃベースアップの金どうするんだ、ベースアップの金まで国民の税金からもらうというわけにいかないんじゃないかということをるる申したんでございますが、なかなかその最後の壁が、立場の相違と申しますか、考え方の違いと申しますか、私が彼らを説得できなかったことは全く残念でございますが、しかし、こういう労使が違ったかまえでいるということは、これはやっぱり結局国民から見捨てられる一つの大きな問題だと思いますので、やはりこれから私どもの努力でもってそういった積み重ねをしていって同じような方向に向いていくという以外に方法はないと思います。今後そういう方面に全力をあげてやってまいりたいと思います。
  54. 中沢伊登子

    中沢伊登子君 時間がちょっと一分余り余っておりますので、先ほどの最も大きな責任は国会にあると言った石田総裁のおことばを返すようですけれども、私ども国会のものは、物価の値上げを非常に心配をして、そして国鉄運賃値上げの問題に対しても私どもは取り組んできたつもりでございます。また先ほど阿部議員もすでにいろいろその点で強く要望もされたり、御質問もされたりしておるわけでございまして、国民生活を守る、あるいは物価を上げない、こういう点で私ども国会ではずいぶんこの問題と取り組んできた。あくまでも私ども政府のほうがこれを独立採算だということでほったらかしにするんではなくして、政府のほうが十分国鉄のめんどうを見るべきだと、特に先ほどの御答弁にありましたように、国民生活を守るための、たとえばお米の輸送、そういったような問題には国鉄には値上げをしないようにさしておいて、そして、それならばほかのもので運賃値上げするかといえば、運賃値上げすれば貨物が逃げてしまう。このような貨物の問題についても、私どもはそれならば政府がもっともっと国鉄にお金を出すべきではないか。特に今度の問題で私が御質問申し上げました点の中の一つは、今年度のように一兆二千億も税の自然増収があるときこそ国鉄にもっとお金を出すべきではないか、このようなことを私どもは力説してまいったつもりでございます。そうでございますのに、最も大きな責任、第一の責任が国会にあるというような御答弁にはちょっと納得しかねる問題がございますので、最後に一言つけ加えさせていただいた次第でございます。
  55. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 国鉄総裁が国会に責任があるじゃないかということについては、四十一年でございましたか、このときも、新しい計画を立てるということについて国鉄運賃というものを値上げをしなければ財源がないということで提案をしようとしたが、それをとめられて一年ずらされたということを言っておられるのであると思います。国鉄総裁としての一つの信念を吐露されたと、このように思います。私どももやはり国鉄というものの運営について独立採算制をたてまえとしておるということを申し上げておりまして、これをどうしたらよくなるかということの方策についてはいろいろあるわけでございまして、そのどちらがよいかということの論議を尽くして結論を出していくのが国会のつとめであろうと思っております。まあ総裁はそのことを言われたと思っておりますので、どうぞ御了解を賜わりたいと思います。
  56. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 田渕君。
  57. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 国鉄の再建は基本的には三本柱といわれておりますけれども、まず第一に公共的な役割りの上に負わされておる非経済性、これについては国がめんどうを見るべきだと。それから第二点としては、国鉄自体企業努力で効率化をはかるべきだ。第三点としては、適正な運賃利用者負担すべきである。この三つの柱でいくということは、これはまあ総理はじめ政府のほうも述べられておりますけれども、まあ一応この考え方は私は妥当ではないかというように考えております。しかし、いままでの政府の説明やあるいは各委員会での論議を聞いておりますと、どうもこの第三点の、適正な運賃利用者負担する、利用者負担の分はこれは非常に明確にきまっておるわけでありますけれども、最初の一と二の部分についてはどうも不明瞭な、はっきりしない面が多いように思います。  そこで、私はまず第一に、この公共負担について御質問したいと思うのでありますけれども、公共負担額というのは現在どれぐらいに上がっておりますか、お答えいただきたいと思います。
  58. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 運賃上の公共負担額は四十三年度で約六百十億でございます。これは、さっき総裁が申しましたように、通勤通学定期の法定割引と申しまして五割まで引くことになっておりますが、その五割からさらに引いている分でございます。五割までの分は入っておりません。
  59. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 まあ政府が説明されておりますこの六百十億というものは、主として割引の分だろうと思いますが、私はこのほかに、赤字線部分があると思うのです。赤字線が、すでにいままで廃止を検討すべきだというのが八十三線ということがいわれておりますけれども、これだけたくさんの赤字線ができた理由は一体どこにあるのか。いままで鉄道が新線を建設する場合の建設の基準といいますか、そういうものはどういうふうに考えてやってこられたのかお伺いしたいと思います。
  60. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 御承知のとおりこの赤字線というのは地方開発のためにつくられた線でありまして、つくる時分からすでにもう収支は合わぬということはもうはっきりしておった。ただその時分には、国鉄財政というものは独占制の上にあぐらをかいておって非常な余裕があったものですからして、そういうことは問題にならないで——大正十一年にこれは始まったんですが——その後、勇敢にまあ赤字線といって、国鉄公共企業体になるまでにはもうほとんど許せるものはつくったというので、初めから赤字線はわかっておった。その後、ことに終戦後における輸送機構の非常な変革のために国鉄の独占制というものは夢になっちゃった。そのために収入は減ると、しかも支出というものは非常な勢いでふえてくる、こういうことで赤字というものはますます大きくなってきた。現在においては、四十一年において、赤字線において千三百億、四十二年において千七百億の赤字になった、こういうわけであります。
  61. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 いまの御答弁によりますと、初めからまあ赤字線であるということがわかっておったということを言われたのでありますけれども、まあ国鉄というものは確かに公共的な役割りというものが必要でありますけれども、一面では企業としての採算制が要請されておる。その中で、初めから赤字とわかっておるものを建設するというのは非常な無謀なことではないか。もしそれが建設されるとするならば、これは企業の採算性を無視したものであるし、したがって経済的な判断でやられたものではなくして、むしろ政治的な判断によって建設されたものと思いますが、かりにまあそうとするならば、この分の負担というものは、これは国鉄の責任ではなくて国あるいは地方公共団体が持つべきものだと思います。それに該当する金額というのは大体どれぐらいになるのですか。
  62. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 国鉄のつまり私鉄と違うところはそこなんで、私鉄ならもうかるからやると、もうからぬからやらぬ、こういうことにはっきりしているのでありますが、国鉄公共性というものがあるために、損してもやっぱりやらなきゃならぬ、そういうことでできたのが、この赤字線でありまして、これがさっき御説明申し上げましたように、つくった終戦前までというのは国鉄財政というのは非常に豊かだった。赤字線負担や何かも負担して、なおかつしばしば国鉄は献金をするというような状態になっておったのでありますが、その後における情勢はすっかり変化しておって、収入は減る、支出は非常にふえるということで、赤字線の損というものは非常に多くなった。これで、国鉄の一般の収支というものは悪くなる。ことに最近においてそうですが、収入は年々はふえますけれども、しかし、そのふえる率が非常に貧弱である。しかも一方において経費というものはふえてくる。その経費の増というものは非常に大きい、そこへもってきて四十年から国鉄が思い切ってやった通勤輸送の改善というもので非常に金がかかるが、その収入というものはきわめてわずかでありまして、その利息を払うこともとてもできない。こういうような利息の増ということが最近における国鉄赤字線の損の増と相並んで大きな問題になっておる、こういうことであります。
  63. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私がお聞きしておるのは、国鉄が、本来国が持つべきだと考えられる金額ですね、赤字線について公共負担すべきだという金額は、どれくらいだと想定されておりますか。
  64. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 赤字線の損というものは、さっき申し上げましたとおり四十一年においては千三百億、四十二年においては千七百億でありますが、しかしこのうちには、つまり政府に持ってくれということができないものがあります。いわゆる赤字線というやつは、結局これがあるがゆえに幹線というものがもうかっていくというようなことで、それは損でも国鉄というものはもうけのほうからカバーしていかなければならぬ、こういうことでありますが、そうでない全く政治線でもって、最近においては輸送需要というものがだんだん減ってくる。しかも経費というものは非常にふえてくるというようなことで、最近は一番大きな問題は、特に顕著な二千八百キロというものに対して何とかしなければならぬということになったのでありますが、実際においては二千七百キロ以上のものがある。初めから大きなことを申しますと政治的にも非常な抵抗があると思いますので、まず小さなところから出ていこうということでありますが、まず第一に大体六千キロくらいというものが赤字線として政府が補助すべきじゃなかろうかということになりますと、その金額というものは大体四、五百億になるんじゃないか、こういうことで考えております。
  65. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私鉄の場合は大体線を敷きまして最初は大体赤字のところが多いと思うのでありますけれども、あと、同系会社の宅地開発とかあるいは観光施設の開発あるいはデパートの建設、こういうものによって乗客をふやしていって利潤があがるようにしておる、これが大体一般的な手段だろうと思います。ところで国鉄の場合にもやはりそういう努力というものをすべきではないか。特に線路を敷いたならば、もちろん線路を敷くときに、ここは将来宅地として開発できるところであるとか、あるいは工場誘致ができるところであるとか、あくまでそういう見通しを持った上で線路を引くべきであるし、また、線路を敷いた後、にそういう宅地開発なり工場誘致なり、こういうものを国あるいは地方公共団体がもっと力を入れて、鉄道建設と一体となってそういう政策がとられなければ、ただ線路を敷いてそうしてもうからないと言っておるのは、どうも努力が足らないような気がするんですけれども、その点についてお伺いしたいと思います。
  66. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 国鉄が線路を敷く時分には、いまはもうからぬが将来見込みがあるというような、いわゆる企業的のアイデアによってやるのではないのでありまして、政府の命によって、もうかるとかもうからないとかいうことを全然考慮しないで、とにかくつくらなければならぬ、こうことでつくっているわけでありまして、これは結局国鉄の責任でもない、これは政府の責任といえば責任じゃないか、これは私鉄と全然考えを違えてお考えになることを希望したいと思います。
  67. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 政府の責任であるならば、その分は国から金を出してもらうべきであって、したがって、先ほど言われた割引分の六百十億、それからいま総裁が言われた四、五百億の分、合わせて千億余りのものをやっぱり政府から補助してもらわなければ、これは国鉄企業的に独立採算制をとれといっても私は無理な話だと思います。ところが現在政府から国鉄に出ておるこういう補助の金というものはどれくらいあるんですか。
  68. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 政府からちょうだいしている金は全然ありません。というのは、つまり終戦前においては国鉄財政が非常に豊かであったので、そういうものをまかなってなお余裕があった、こういうことでありますが、最近における国鉄状態というものは非常に苦しくなった、これはもう必要上、独立採算の立場を堅持するためにどうしても政府に助成してもらわなければ……。これは全く政府の政策のためにやっておる、こういうことで、私は国鉄総裁になりましてから非常に声を大きくした結果が、ようやく今度実が実って相当政府から補助をいただくことになった、こういうことで、私は今後の情勢においてはさらに政府からより大なる援助があるものだ、こういうふうに期待いたしておるのであります。
  69. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 今回の政府の措置によりましても、国鉄負担しておる公共負担分を埋めるには足りない額ではないかと思います。そうしてその分を運賃値上げによって、いわゆる利用者負担させようとしている、これは非常におかしい話じゃないかと思います。したがって、赤字の中でやはり公共的な役割りのゆえに出ている赤字というものは、これは政府あるいは地方公共団体の当然負担すべきものであって、これは利用者負担すべきものではないと思いますが、この点はいかがですか。
  70. 石田禮助

    説明員石田禮助君) これは理論上ごもっともの点があると思いますが、しかし公共負担というものが、過去におけるやつが積もり積もってずいぶん大きな金額になっているのでありますが、これを古い証文を出して政府にこれだけ出せと言ったところで、政府のふところぐあいもありますし、そうしてこれについては私は政府だけの責任というふうに考えるべきではない。さっき申しましたように、国鉄に非常に大きな責任がある。こういうことはもうわかっておったのですが、もう少し早くから声を大にして政府にお願いすればよかったのでありますが、なかなかそういうことについて国鉄自体においても努力が足らなかった。要するに、われわれとしてはおやじのふところをねらうわけでありますからして、ふところのぐあいをやはり考えていかなければならぬ。一ぺんに理想的にこれだけ出せと言っても無理で、しかも今日の政府財政状態でもってあれだけの金を出してくれたということは、非常に政府としては御奮発の結果であるということで、結局将来を期して、とりあえずはこういうことで遠慮せざるを得ない。その結果、国鉄もできるだけの合理化をし、政府にそれだけ出してもらっているがゆえに利用者負担をしてもらう。結局利用者負担してもらうもう一つの理由は、とにかく原価というものが上がるのだから、値段を上げるという点について、やっぱり利用者負担というものも考えていただいていいのじゃないか、こういうふうに考えております。
  71. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 御答弁を聞いておりますと、非常にあいまいもことしているのでありますが、非常に腰だめ的な感じが強いわけでありますけれども、私は国鉄がいわゆる公共企業としてのいわゆる役割り、それからもう一つは企業としての採算制、この二つは二律背反するものだと考えます。しかしこの二つはやっぱりはっきりさせなければ国鉄体質改善というものは私はできないのじゃないかと思います。いままでそういうあいまいもことしているから、たとえば経営内部の合理化が進まなかったりおくれている点も公共性に転嫁されたり、あるいはまた逆の場合もあろうかと思います。したがって、これをはっきりして政府が持つべきものは持つ、国鉄の努力で改善すべきものは改善する、利用者負担さすべきものは負担させる、これを明確にしないとどうも今日の国鉄経営体質改善というものはできないように思うのですけれども、この点いかがですか。
  72. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 御趣旨の点は私はごもっともだと思います。しかし、いま一ぺんにそこへ行くということはやはりこれはむずかしいので、かすに時を与えてもらわなければならぬ。今度のことも四十四年からの十カ年計画におきましては国鉄としても思い切った合理化に努力する、そうしてまた政府としても公共負担その他の点、赤字線というものを考えて、十分のこれに対する努力をする、そうしてそれで足らぬところは利用者である乗客負担してもらう、こういういわゆる三本柱というものがそれでできた次第でありまして、これはただいまあなたのおっしゃるような理想にだんだんと近づきつつあるのであります。しかしこれを一ぺんにすることはむずかしいので、やはりかすに時をいただかなければならぬ、こういうことであります。
  73. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 やはり三本柱といわれながら、まず第一の公共負担についてはまだまだ不十分であるし、不明確であると私は判断せざるを得ないと思います。  それからもう一つ、赤字線の問題に関連してお伺いしたいのでありますけれども、現在鉄道建設公団で新設計画中の路線が六十二線があるといわれておりますが、このうち赤字を予想されておるものがどれくらいあるか、お伺いしたいと思います。
  74. 町田直

    政府委員町田直君) お答えいたします。  現在鉄道建設公団で建設を予定しておりますもの六十三線、このうちで全線開通したものが五線ございますので、現在建設途中のものが五十八線ございます。この中で、いわゆるAB線——地方開発線でございますが、これが四十九線、それから残りの十四線区が国鉄の幹線、亜幹線等を形成するもの、これをCD線といっておりますが、こういうことでございます。  将来の赤字になるか黒字になるかという見通しはなかなかむずかしゅうございまして、簡単にお答えすることは困難でありますけれども、まずCD線——幹線、亜幹線を形式するもの、これにつきましては、その線区がそれだけで黒字になるか赤字になるかという問題もさることながら、幹線の一部ということでございますので、そういう意味で確かに鉄道事業というのは当初の懐妊期間が長うございますから、直ちに黒字になるということは困難かと思いますけれども、将来黒字になるというふうに考えてよろしいのではないかというふうに考えております。残りましたAB線——地方開発線でございますが、これは現在の状態で申しますと、いわゆる国鉄ローカル赤字線と同じような性質のものというふうに考えられるものが多々ございまして、そういう意味ではなかなか黒字に転化することは困難ではないか、こういうふうに考えられます。
  75. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 現在計画中の、あと残っておる五十八線というのは全部つくられる予定ですか。
  76. 町田直

    政府委員町田直君) 現段階では、運輸大臣が基本計画を示しまして工事に着工し、あるいは調査をいたしておりますので、現段階ではそれを実施いたしていくつもりでございますが、ただ、先ほどから御議論ございましたように、最近の輸送構造の変化に伴いまして、国鉄自体のローカル線につきましても、これを自動車に転換し得るというものについては、できるだけ転換していきたい、こういう考えでございますので、このAB線につきましても、今後の考え方といたしましては、国鉄ローカル赤字線考え方と同様な考え方で重点的に進めていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  77. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 現在、八十二線の廃止を片方で検討しながら、片方で明らかに赤字になるだろうと予想のあるものをどんどんつくられるというのは、非常に矛盾しておると思うのです。したがって、この五十八線についても八十三線と同様に再検討し直して、そして将来黒字に転化するか、あるいは赤字線とわかっておるならば、その分に対する国家保証なり何なりをはっきり取りつけなければ建設すべきではないと思うのですが、その点どうでしょうか。
  78. 町田直

    政府委員町田直君) 実はちょっと話が先ほどに返りまして恐縮でございますが、国鉄は、現在の状態を見ますと、いわゆる黒字線、赤字線の内容は、全体で見ますと、国鉄の全線区二万八百キロの中で、黒字でございますのは十四線、三千三百三十キロ、要するに線区数で五%、営業キロで一六%ということでございます。したがいまして、国鉄全体で見ますと、黒字線と赤字線の割合はそのようになっておりまして、現在問題になっておりますのは、その中で特に、いわゆるローカル線であって、それが自動車に転換し得るかどうかというような問題について検討したいと、こういうことを考えておるということでございます。したがいまして、先ほどの先生の御指摘の、いわゆるローカル赤字線はやはり公共負担の一つではないか、こういう御指摘でございますけれども、やはり国鉄の使命としては全国津々浦々に鉄道を敷いて、それによって国民の足を確保するということが本来の使命である。したがいまして、それを直ちに、赤字であるからこれは公共負担であるというふうに考えるのはいかがかというふうに考える次第であります。で、先ほどから申しておりますローカル赤字線の廃止の問題につきましても、これは考え方といたしましては輸送構造の変化によって道路等が非常に発達してまいりまして、鉄道で足を確保しなくても自動車にかえられるのじゃないかというものについて検討していきたい、こういう趣旨で考えておる次第でございます。ただいま御指摘の、現在建設いたしている線につきましても、同じような考え方で今後進めていきたいということを考えておる次第でございます。
  79. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 どうも新線建設に対する考え方がシビアさを欠いているように思うわけです。公共性のゆえに、もうからなくてもつくらざるを得ないのだという考え方が非常に強いと思うんです。これは国鉄がそれだけ公共的な性格を持っているものならそれでもかまわないと思うんですが、それなら何も受益者負担ということで国鉄運賃値上げをやられなくてもいいんじゃないかという気がするわけです。運賃値上げだけやって、片一方でどんどん公共性のほうにのみあれして赤字線をつくっていく、これは非常に不合理なことじゃないかと思いますね。  それからもう一つ重ねてお伺いしたいことは、国鉄財政再建推進会議の意見書にもありますけれども開発利益の還元ということがあります。これは国鉄の路線を敷けば、その周囲の土地というものは非常に値上がりをします。そうして一部の人が非常に大きな利益を受けるわけですね。これはいままでの過去の例を見ても明らかでありますけれども開発利益の還元ということは、これは非常に大事じゃないかと思います。これは私鉄の場合でも、私鉄経営体があらかじめその辺の土地を買って、その値上がりの利益を受けて、それによって私鉄では多少赤字が出てもやっていけるのだということになっておりますけれども国鉄の場合にはこれが大体一部の人のふところに入る。そうして建設にかかった大きな費用の負担というものは全部汽車に乗る人の利用者負担になってくる。これは非常に不合理なことだと思うんですけれども、この開発利益の還元についての具体的な対策、どのように今後進められるかお伺いしたいと思います。
  80. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 先ほどの問題の赤字ローカル線、それから新線建設の問題について、田渕さんは明快な割り切り方をされておると思います。これはけっこうな御意見だと思いますが、何度もお答えを申し上げておりますように、政治というものはそこにあると思っております。一つのものを撤収する場合、これほどむずかしいことはございません。ものを建設していくほうはこれは景気がよくて非常にスムーズにいきますが、やめるということは非常にむずかしい問題でございます。この点について十分納得がいかなかったら微妙な混乱だけを生じて目的を達成しない、こういうことにもなりますので、これらの赤字路線の問題、あるいは新線建設の問題につきましては、田渕さんが御指摘になっておる点はよく勘案をしながら今後政策を進めていくということを考えて御答弁を申し上げておるわけであります。特に国鉄の場合は、その線区だけをつかまえて見たら赤字であるけれども、それが一番黒字の線のもとになっておるという点もあるわけでありまして、もう御承知のように線区だけで赤字黒字というものをとって見ますと、国鉄の中のほとんどが赤字であって、黒字というところは少ない、こういうことになっている点を特に国鉄の場合は重視しなければならぬ、このように考えておるのでございます。公共負担ということも考えまして今度の御提案をいたしておるということを御了解賜わりたいと思うのでございます。  そこで、いま受益者負担、いわゆる利用者負担と区別して受益者負担という問題とからめて、開発利益の還元をどうするか、これは非常に重要なことでございまして、今後これらの問題をつかまえて検討をしていく必要が生じておるわけでございます。全国的に見ますと、これは新総合開発計画というものの中で新線の建設というような問題に対処していかなければならぬと思います。すなわち開発利益ということに対しましては、特に大都市近郊におけるところの新しい住宅の建設というようなものとからみ合わして、よく地方公共団体、国の間で検討をしてやっていかなければならぬ。ただ、非常にむずかしい問題でございますので、ここでこうするという御答弁をいまいたしかねることはまことに残念でございますが、御指摘のあった点は今後検討していかなければならぬと考えております。
  81. 町田直

    政府委員町田直君) 先ほど新線建設で御答弁いたしましたときに、ちょっと申し落としましたので、つけ加えさせていただきます。先ほどの、将来赤字になるか黒字になるかという問題に関連いたしまして、鉄道建設公団のつくっております線の中で、将来黒字になることが非常に困難と思われる線、大体D線でございますが、これにつきましては、全部国でつくりまして、そして無償で国鉄に貸す、こういう制度になっております。この点は先生承知のとおりだと思いますけれども、そういうことによって地方開発をしていこう、こういう考え方でございます。つけ加えさせていただきます。
  82. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それでは次に国鉄の近代化、合理化の点についてお伺いしたいと思います。  まず賃金と生産性の関係を見てみますと、過去、これは昭和二十三年から四十一年までのデータでありますけれども、年率にして賃金は一五・八%上がっておる。ところが、生産性を測定するところの一人当たりの車両キロ数、これは年率六・八%しか上がってない。これは生産性と賃金との間に非常に大きなギャップがあるわけであります。これは業種の性格にもよりますから、必ずしも一がいにこれが一致すべきであるというふうには言えないかとも思いますけれども、もう一方、各産業別あるいは企業別の賃金ベースの比較をしてみますと、昭和三十一年を一〇〇としまして、昭和四十一年で全産業の計が一九八、つまりこの十年間に一般産業産業の賃金水準は約二倍になっておるわけであります。ところが、国鉄の場にはこれが二二六である。製造業の場合は二〇〇である。非常に国鉄の賃金ベースの上昇率が高いわけですね。これは原因は必ずしも国鉄が不当に賃金を上げたということでなくて、むしろ国鉄労働者の構成にあると思うのです。非常に平均年齢が高く、また若い新しい人がどんどん入ってこない。こういう関係で平均年齢が四十二年で三十八歳と非常に高くなっておる。したがって、賃金ベースのアップ率も高いし、水準も高いわけです。しかしこれは考えてみれば、一面においては労働力の質的過剰の面があるのではないか。私鉄なら切符切りなんかたいがい若い男なんかがやっておりますが、国鉄の場合は中年の堂々とした人がやっておる。あるいは窓口にしてもそうであります。こういう労働力の質的過剰のために、生産性と賃金の関係が非常に悪化しておる面があるのではないか。これを改善するためには、やはり配置転換といいますか、他の産業民間産業へ配置転換ということはかなりむずかしいと思いますが、この財政再建推進会議の意見書にもあるように、国鉄の事業の拡大ということが出ております。したがって関連事業をどんどん拡大して、年輩者あるいは指導的地位にあるべきような人はどんどんそっちのほうへ出てもらうことも必要ではないか。それからもう一つは、やはり職務給というものを取り入れる必要があるのではないかというふうに考えますけれども、この点についてお伺いしたいと思います。
  83. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ただいま御指摘のありました国鉄職員生産性向上の問題と賃金ベースの問題でございます。御承知のように、いま御指摘のとおり、国鉄職員のいま人員構成、年齢構成が非常にアンバランスになっておりまして、御承知のとおり非常に頭でっかちの人員構成になっております。ほとんど日本中のどの企業にもないような大きな頭を持っております。したがって、このままほうっておきますと、あと十五年間このままでは、この情勢はもっと悪くなるというふうに推定されるわけでございます。これにつきましては、もちろん現時点でございますので、首切りとかいうことはできません。結局、いま先生のおっしゃったように、なるべく関連産業をふやして、そこへ適当な地位を見つけてもらうというようなことは、あるいは大幅にはできないまでも、ある程度年齢構成の変化をさせ得る一つの要素だと思いますが、ただ、いろいろ法律上国鉄のなし得る仕事がきまっておりますので、これらにつきましては財政再建推進会議でもいろいろ論議されまして、やはり武士の商法であまりとんでもないことをやっては大損するにきまっているということで、まあそれほど現実の仕事と開きのない、たとえばパイプラインの工事だとか、あるいは駅における不動産事業だとか、こういう程度のことについてはひとつ手を伸ばしてやるべきじゃないかというふうな御意見もございます。私どもとしましては、いまそういうことにつきまして具体的な研究を始めている段階でございます。しかし、いずれにいたしましても頭でっかちの現在の人員構成というものは、これからの国鉄再建にとりましては非常に人件費のロードとなって国鉄にかかってまいります。非常に今後の大きな問題の一つでございます。
  84. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 国鉄ではすでに今後十年間で六万人の削減という合理化の方針を出されております。それからいま申し上げた関連事業への流動の問題、あるいは職務給の採用の問題、このどれ一つとっても労働者にとって非常に大きな問題です。したがってこれを進めるにあたっては、やはり労使の話し合いと理解の上に立たなければおそらく困難であろう。現在すでにこの人員の削減についてはかなり労働組合の反対も表明されているし、今後かなりごたごたが予想されるわけです。これについて、国鉄当局として円滑にこういう合理化を進める自信がおありなのかどうか、お伺いしたいと思います。
  85. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 財政再建推進会議におきましても非常にその点論議された点でございまして、ただ、私どもとしましても無手勝でもって六万人減らすということでなしに、年間、近代化を含めまして約七千億の投資をしていく。その投資の過程におきまして過剰となった労働力を一部補充し、一部補充しない、そういうような考え方でいっているわけです。これを違った面から見ますと、いまの日本の若年労働者の供給量からまいりましても、労働省の統計等によりますと、御承知のとおり逐次高校卒が減ってまいっております。したがって、私のほうで毎年一万ないし一万二千自然減耗いたします職員の補充を全部若年労働者でするということは不可能でございます。したがいまして、そういう点から申しましても、当然省力的な設備投資をいたしまして、そこから浮いてきた人をもっと輸送力の必要な面に充てるということをしない限り、人員のアンバランスは直らないというふうに考えますし、いまの六万人の算出の基礎も、一応七千億近い投資をした結果、おのずから六万人という人間が浮いてくる、その中の一部を補充しないというたてまえで、全体として六万人の合理化をやってまいりたいという考え方でいるわけでございます。これはいまおっしゃったとおり、確かにわれわれだけでやろうと思ってもできないことで、十分組合の納得、合意を得なければできないわけでございますけれども、しかしこれをしなければ、いつまでも四十七万人の人間をもってやっていたのでは国鉄がだめになってしまうことはわかりきっております。これはやはり企業の将来を考えて、ここでひとつ心機一転して、労使一体となってこの問題に邁進するという以外に方法はないと思います。私は、全力をあげてそういう方向に進んでまいりたいと思っております。
  86. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 現在の国鉄の労使のいろいろなトラブルを見ておりますと、私はこれは非常に心もとない気がするわけです。もちろんこれは経営者側からいわせれば労働組合の姿勢にも問題があると思われるかもわかりませんけれども、私はやはり最終的には経営者の責任であろう。やはり働く人に自分たちの役割りなり使命なり、そういうものを理解させ得ない、共鳴を覚えさせない経営者に大きな責任があると思います。その点について、今後の国鉄経営者の御努力を切にお願いしたいと思うのです。もちろん労使の間の対立というものはありますけれども、少なくとも国鉄国民経済の基幹である。したがって、その国民のために安くて効率的で行き届いたサービスを提供するということは、これは労使が合意し得る一つの目標だろうと思います。この点について労使の一致した関係、協力関係というものをつくり上げていただきたい。切に要望したいと思います。  それから、時間もありませんので、最後に意見を申し上げて終わりたいと思いますが、ただいまの論議を聞いておりましても、この公共負担の面についても、あるいは国鉄の内部の合理化の面についても、私は非常に心もとないといいますか、どうも三本の柱と言うけれども、二本の柱がぐらぐらしているのではないかという気がするわけです。そして最後の第三番目の国民に対する運賃引き上げ、この面だけは非常にはっきりこれはどうしようもなく出されてきているわけですね。これは国民にとっては非常に酷なやり方であるし、納得のできないやり方ではないか。国民にこれだけの値上げを要求するからには、政府としてはこの公共負担についてはもっとはっきりした態度を示すべきであるし、また国鉄当局は、これからの合理化の問題とかあるいは再建の問題について、国民を納得させ得るような方策というものを示すべきではないかというように考えるわけで、その意味で私は現段階においてこの運賃引き上げには賛成できない旨を申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  87. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 午後一時まで休憩いたします。    午後零時十一分休憩      —————・—————    午後一時二十四分開会
  88. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ただいまから運輸委員会地方行政委員会大蔵委員会産業公害及び交通対策特別委員会物価等対策特別委員会連合審査会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案を議題といたします。  戸田君。
  89. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 最初に、大蔵大臣運輸大臣に質問してまいりたいと思うのですが、現在、国鉄財政がたいへん赤字になって、その赤字が非常に加速度的に増加をして、今後そのまま推移をしていこうという、いわば破局的状態に立ち至っておるわけでありますが、この赤字原因は一体どういうふうにお考えですか。
  90. 原田憲

    国務大臣原田憲君) いまお尋ねのように、赤字累積をしてまいっておりますが、この一番大きな原因は、入ってくる運賃というものが予期に反して、ふえていかない、収入が思うようにいかないという点がある。一方、出していく金のほうは、人件費は毎年増高してくる。また一方、投資をしていかなければ、国民経済、国民生活に貢献することができないので、投資をしなければなりませんが、この投資に非常にばく大な資本を要する。これの資本の利払いという、借金の利払いというようなものが国鉄財政に非常におぶさってくる、これが今日の国鉄財政の危機に瀕しておる大きな原因であろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  91. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ただいま運輸大臣からお答えしたとおりだと思います。なお、つけ加えて申しますれば、そのさらに根元といたしまして、国鉄が、まあいわば陸の王者というふうに言われておった時代は非常に変わってきておる。つまり、競争輸送手段、これがふえてきておる、こういうことです。それに対して、総裁もおられて申し上げにくいのですが、それに対する対応手段について十分でなかった点もあるのじゃあるまいか、そんなような感じもいたします。たとえば、いま貨物のほうが非常に不振でありますが、これなんかも、ドア・ツー・ドアといいますかね、そういうような施策をとりますれば、かなりこれは改善されるのではあるまいか、そんなような感じもいたしますが、いずれにいたしましても、時代の流れ、そういうものが大きく国鉄財政を圧迫しておると、かように考えます。
  92. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 国鉄当局並びに運輸省、大蔵省、関係各省に質問してまいりたいのでありますが、  第一の点は、第一次長期計画以来今日まで、第三次長期計画まで入っておるわけでありますけれども、この長期計画全体を通じまして一体どのくらい投資をしておるのか。その投資額の内容について御説明を願いたい。それから利子負担は一体年間どのくらいやられておるのか。それで総額どのくらい。それから大蔵省には、政府は公社公団の政府関係法人に対しては相当出資をしておると思うのですが、その出資額と、国鉄には一体どのくらい政府出資がやられておるのか。  それからもう一つは、国鉄でありますが、公共負担、先ほど来話が出ましたから、これは省略をいたしますが、先ほど副総裁は、六百三十億、こういう御答弁であったと思うのですが、私の調べでいきますと、運賃割引等含めて、貨物ですね、九百億程度になるのじゃないかと思いますが、その辺の数字の適否について、ひとつ御答弁を願いたいと思います。  もう一つは、大蔵省でありますが、諸外国の、イギリス、フランス、西独、こういった各国における交通事情と、その政府の補償態様というものは一体どういうふうになっておるのか、この辺についてお聞かせを願いたい。
  93. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 国鉄昭和三十二年度から、一応戦災復旧が一段落いたしまして、前向きの長期計画にかかりまして、第一次の五カ年計画、これは三十二年度から三十六年度でございますが、これが約四千億——端数は省略いたします。約四千億。それから第二次の五カ年計画、すなわち昭和三十六年度から三十九年度まで、この間には東海道新幹線の建設全額を含んでおります。これを入れまして九千九十億。それからさらに昭和四十年度からの第三次長期計画、そのうちの四十年度から四十三年度までの前期四カ年間の投資実績、これが約一兆三千五百億でございます。累計いたしまして約二兆九千億程度の投資をいたしました。これに対する利子は本年度四十四年度におきまして千四百六十九億、四十三年度におきまして千三百億、大体一年間に百億ないし百五十億ずつくらい増加いたしております。昭和三十二年度からの利子の増加、昭和三十二年度は利子は百三十六億程度でございます。それが、昭和四十二年度で一千十二億。すなわち、単年度同士の比較をいたしますと、約八百七十六億ふえております。  それから、先ほど午前中の御質問の中で、公共負担の額でございますが、けさ六百十億と申しましたのは、昨年、四十三年度定期運賃の割引率の是正を約三百億ほどさせていただきましたので、それを差し引きまして、先生のおっしゃいました九百億なにがしから三百億引きまして六百十億というように申し上げましたのであります。
  94. 海堀洋平

    政府委員海堀洋平君) 大蔵省へのお尋ねは二点ございましたと思いますが、一つは、政府関係の機関にどの程度出資しており、国鉄はどの程度であるかという点と、それから、諸外国の国鉄に類するものに対する助成はどうであったかという点であろうと思います。  まず、初めの出資の問題でございますが、政府といたしましては、所要の政策を実施するために、公庫、公団等に出資をいたしております。現在大きな出資をいたしておる先と申しますと、道路公団、これは四十四年度におきまして二百五億円出資をいたしております。この出資をいたしております趣旨は、道路公団の資金コストが六%になるように出資をいたしておるわけでございます。それ以外にも出資をいたしておるところがございます。たとえば、日本航空に対しましては、大体政府の持ち株が五〇%を少しこえたあたりを維持するために、その増資計画に応じて出資をいたしておるわけでございます。国鉄につきましては、国鉄が創設されます際に、現物で国から引き継ぎました以外に、多少の出資をいたしております。資本金としては約八十億円程度で、そう大して大きなものではございません。ただ、国鉄は御存じのように国から多大の現物資産を引き継いでおりますので、それの評価益、要するに資本積み立て金が一兆一千二百億程度ございまして、この資本金と出資金を合わせますと、大体総資本に対する自己資本の割合は三六%程度になっております。三六%程度ということは、他の政府関係機関あるいは民間会社に比較して遜色ないのではないかと存じますので、こういう膨大な資本積み立て金があるがために、現在の国鉄の総資本に対しまする利子負担は四十三年度で四・三三%程度になっておりまして、これもまた、他の公庫、公団あるいは民間会社の利子負担に比べまして、決して高いものではないのではなかろうかと存じます。  それから各国の助成の状況でございますが、簡単に申し上げますと、一九六六年におきまして、英国は国有鉄道に対して千三百七十億八千八百万円を交付金として交付いたしております。  ドイツは、ドイツ連邦鉄道に対しまして、やはり六六年におきまして、補償金、分担金あるいは損失補てん金としまして、千九百九十七億一千万円程度を交付いたしております。  フランスは、やはり一九六六年におきまして、補償金、分担金、損失補てん金等といたしまして、三千百三十一億一千九百万円を助成いたしております。  ただ、ここで蛇足でございますが、つけ加えさしていただきますと、各国は、こういう措置をとりながら、なおかつ、非常に現在国鉄が当面している問題と同じような問題に当面いたしまして、赤字は年々増大しまして、たとえば西独においては、財政硬直化の一因となりまして、現在、いわゆるレーバープランという交通総合政策のもとに、連邦鉄道財政再建に取っ組まざるを得ない。助成して立ち直っておるのではなくて、助成額は年々大きくなりながら、なお今後再建方策を講じなければならない事態に立ち至っております。
  95. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 いまの国鉄当局と大蔵省からの説明によりまして、運輸大臣、大蔵大臣は、国鉄赤字原因というものが、運賃増がない、あるいは投資が増大、あるいは支出増が多い、こういうことを言われておるわけでありますが、今後の国鉄の近代化、そういう、いわば時代に即応した対応体制をとるということで、第一次五カ年計画、第二次、第三次ということで国鉄はやっておるわけでありますが、こういう面に対する国鉄設備投資というのは、いまの説明にありましたけれども、年間四千億も出しておるという状況ですね。それからもう一つは、政府の公社、公団等に対する出資は、いまも説明がありましたけれども、総体において二兆円以上出しておる。ところが、国鉄に対しましては八十九億、このくらいの微々たる金しか出しておらない。それからもう一つは、公共負担にいたしましても、総体九百億も国鉄はかぶっておる。そのほかに、さらに国鉄納付金ということで、本来ならば政府が見るべきものを地方自治体に対して三百億も出しておるわけです。こういうことをずっと見てまいりますと、いま説明があったように、イギリスやドイツやあるいはフランスのように、どうしても、国家が一応相当額のやっぱり政府出資という形においてめんどうを見ていかなければ、国鉄の持つ使命上からいって、私は赤字になるのは当然じゃないかと思うのです。ですから、そういう点についてどういうふうに一体お考えになっておるのか、もう一度お聞かせ願いたいと思います。
  96. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 国鉄への政府出資が八十九億円で過少である、これはそのとおりです。現金支出を見ると過少なんです。そういうふうに見えるのです。実際問題としてはそうじゃない。つまり、政府国鉄に資産を引き継ぐ、その資産を評価いたしますと、これはかなり膨大なものでありまして、この自己資本というものを合わしてみますると、実に三六%の自己資本比率ということになるわけなんです。一般の会社でどういう状態であるかと申しますと、私どもは、せめて自己資本比率を二〇%にしたいと思っておるのですが、なかなかそうもいかない。一五%とか、それ以下にだんだんと下がるようなような傾向なのでありますが、それに対しまして、国鉄は、とにかく自己資本比率三六%と、きわめて健全な企業経営体制になっておるわけなんです。ただ、最近新規投資が非常に多い。そういう点は考慮しなきゃならぬ、こういうことでありますが、それに対しましては、国鉄財政再建計画がいわゆる三位一体、こういうものを打ち出しております。それをちびるという考え方はしちゃいかぬということで、おおむね、大体において政府のほうではこれを受け入れている。そうして国鉄に、ほんとうに再建して、また新しい気持ちでひとつ重要な基幹運送手段としての任務を尽くしてもらいたいという考え方をいたしておるわけなんです。今回とりました財政措置、これは、そういう意味においてきわめて思い切った措置である、こういうふうに私ども考えております。
  97. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間がありませんから、一々説明を聞いているわけにまいりませんけれども国鉄赤字が出てまいったのは、一九六四年、三十九年からなんですね。大体赤字決算になられたのは。その赤字原因は、われわれがいろいろと調べた内容によりますと、やはり一つは、国鉄の利潤というものが非常に外部流出をされている。たえば、この巨額な利子——いま説明にありましたが、年間一千四百億に近い利子を払っているわけです。都市銀行とか、そういうところから借りているわけですけれども、そういうものがあるから非常に経営上苦しくなってくるということが言えると思うんです。そういう、いわば巨大金融資本というんですかね、そういう部面に対する相当な貢献をやっている。外部流出をやっている。こういうところに一つ問題があるんじゃないか。それからもう一つは、これは国鉄部内のことでありますれども、一つは、いわば過大な償却見積もりですね。それはどうしても、金を借りようとすれば、やっぱり財産があるふりをしなくちゃなりませんから、そういう結果になってくるだろう。問題は、やはりこういう二つの点から、いまの国鉄というものが非常に苦しんでいる要因があるんではないか。ですから、この四十二年の決算を見ますると、赤字額は四十一億ですね、営業収支赤字が。それで、利子支払い及び債務取り扱い諸費が一千十二億もあるんですね。さらに、減価償却として一千五百三十億、こういうふうになっておるわけです。こういうところに、私はいまの国鉄の非常に苦しい経営の内容が存在をするということを言わざるを得ぬのでありますが、こういう面について、大蔵大臣運輸大臣はどうお考えですか。
  98. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 利子負担が、これが国鉄財政を大きく圧迫するようになった。これはそのように考えます。さらばこそ、六分五厘以上の利払いをなす民間の借金ですね。これに対しましては利子補給をいたしまして、六分五厘でこれをとどめる。この負担でとどめる。こういう措置をする。また、政府からもばく大な金を借りておるわけでございますけれども、このばく大な借金に対する利払い、これに対しましては利子負担の軽減措置をする、こういう措置を今回とることにいたしておる。そういうことで、国鉄の利子に対する負担は非常に大きく軽減されていく。かように考えております。  それから償却の問題、これは大体私ども国鉄当局から聞いておりますけれども企業経営原則に従って適正にやっておる。こういうふうに見ておるわけです。何か細工をして赤字を大きく見せかけようというような配意はさらさらない、かように思います。
  99. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 償却面については、意識的に赤字を出そうということはやっておらないということは私もわかるんですけれども、ただこれは、ちょっと記憶がありませんが、最近減価償却関係について改正を見ているということですが、いずれにしても、私どももそういう赤字要因となる二つの点等について、政府が十分配慮をするなら、もっとやはり運賃なんか上げなくても私は済むのじゃないか、こういうふうに理解しておるのでありますが、時間がありませんので先に進めますけれども、そこで問題は、長期計画の点についてですけれども、この長期計画の主たる要請は何かといえば、やっぱり私は、独占奉仕体制というんですか、そういうとこにいっていると思うんです。また、政府がそういう方向に追いやっている。国鉄をですね。私はそう思うんです。と申しますのは、第一次長期計画はいま説明があったとおりでありますけれども、一九五五年から五六年、いわゆる当時神武景気と言われたときです。このときに非常に荷動きが活発化しておりまして、駅に滞貨が山積するという状況を見て、どうしても輸送力増強という方向に国鉄改善していかなければならないというところに国鉄は追いやられた。そういうことで第一次長期計画というものがやられた。第二次長期計画は三十五年、三十六年ですが、当時岩戸景気で景気の上昇時でありました。こういうときに高度経済成長というものが始まって、同じような輸送力不足による増強政策をとらざるを得なかった。第三次長期計画は何かというと、貨物輸送の増強、幹線の複線化、それから第三次計画の重点として、消費市場の機能活発化ということも一面要請された。そういう面から、国鉄の第一次、第二次、第三次の各長期計画がそれぞれ実行されてきたわけであります。これは明らかにいまの国鉄に要請され——ことに貨物輸送などについてはあとで触れると思いますが、いわば大資本の要請、政府の要請、こういうことについて、それぞれ設備の増強政策をやってこられた。だからそういう部面については政府がこれらに対してめんどうを見ていくのは当然じゃないか。それを、政府はしゃにむに国鉄運賃を上げさして、そうしてなおかつ受益者負担という、いわば大衆課税という形においてそれを負担させていくというやり方で従来やってきたのです。ここに、そもそも私は矛盾があるのじゃないかと考えるのですが、その辺は大蔵大臣どういうふうに考えますか。
  100. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 国鉄運賃、私どもとしてもなるべく上げないで済ませたい、ことにこういう物価問題のむずかしい際において特に控えたい。こういうふうに考えておりますが、それにしても、この際国民の中での利用者負担、これをお願いしておいたほうがいいと考えましたゆえんのものは、これは一々国で補給するということで差しとめることができないことはありません。ありませんけれども、これは来年、再来年どうしてもやらなければならぬ。そういう際には、これはまた大幅な運賃改定ということになってくるわけであります。かつて過去におきまして、昭和三十九年に公定料金の総停止ということをやった。その年は物価は下がりました。しかし、これを続けるわけにはいかないので、翌年、四十年には公定料金の引き上げをとらなければならなかった。こういうことになると物価は反騰をする。そういうような事態になり、これが非常に収拾がむずかしかったことを思い起こすのであります。  今日、旅客の国鉄運賃がどういう地位にあるかということを考えてみますと、戦前と対比いたしまして、今日の物価水準は五百八十倍になっているのであります。大体諸物価がその前後にくる。まあまあ戦前基準からいうと均衡のとれた形ということになりますが、国鉄料金のほうは、これが二百三十四倍ということになっております。一般の物価水準が五百八十倍になり運賃のほうが二百三十四倍であるという状態で、一体国鉄財政がうまく運行するか、こういうようなことを考えますと、まあひとつ国鉄運賃は、四十四年度においては公共料金はまあ大体において抑制政策をとりますけれども、この運賃問題についてはこの際解決というか、改定をしておいたほうが、国鉄の今後の運営のためにいいのじゃないか、さような考え方のもとに決断をいたしたわけであります。私は、この決断は決して間違っておるというふうには考えておりません。
  101. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それで、いまの大蔵大臣の説明ですと、従来進めてきた政策は間違っておらないと、結論的にいえば。まあそういうことになりますが、この点は大いに見解を異にするところですから、前に進みますけれども、しかし、私が前に申し上げたようなことが国鉄のいまの赤字要因になっていることは、これはまあ実態として言うのでありますから間違いないと思いますが、おそらく、そういう結果から、国鉄自体経営としてはどういう方向に行かざるを得ないかというと、やはり何といっても収益本位にならざるを得ないと思うんですね。ですから、たとえば一つの例でありますけれども、ダイヤ改正の例を見ますと、一九六二年、三十七年でありますが、あるいは四十年、四十三年、こういうことでそれぞれダイヤ改正をやられておるのですが、このときまで、いわばローカル列車というのは、普通列車あるいは通勤列車、こういうものは相当あったのでありますけれども、逐一減少しておる。たとえば、優等列車——準急以上でありますけれども、こういう列車は四万一千六百キロも増キロをされておる。それに対して普通列車は一万八千五百キロも削減をされる。時代の趨勢からいって、そういうスピード化を要請されたと言われればそれまでですけれども、何といってもいまの国鉄の現状から言えば、短距離、五十キロ以内程度の乗客の輸送収入によって大半がまかなわれるという趨勢なんです。そういう点からいけば、もっと普通列車をふやしていく、あるいはまた、そういう優等列車がふえる割合と同様くらいに本来ならば進めなければならないのでありますけれども、そういうことにはなっておらない。こういうところに非常なしわ寄せが一つ出てきておる。やはりこの辺が問題だろうと思う。料金収入で見ますと、三十二年は百二十三億円、それが四十一年には千六十四億、八・一二倍にふえているんです。これだけ運賃が上がったということですね。そういう経過を経てきているわけですけれども、そういう中でも、貨物運賃というのは常に低位に置かれている。こういう不当、不合理性というものがいまの国鉄運賃にはあるわけです。こういうことをやらざるを得ないのは、何といっても、そういう赤字体制に政府、独占自体が追い込んでいる。ここに根源があると私は考えるわけです。ですから、こういう内容について、国鉄としては今後そういう方向であくまでも進むのか、もっとやはりローカルと通勤列車、こういったものに重点、ウエートを置いて、やはり改善措置というものをはかっていくのか、この辺の見解をひとつお聞かせ願いたいと思うんです。
  102. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 御承知のとおり、国鉄はすでに開業以来約百年になっておりまして、回りの情勢の変化によりまして、国鉄の使命もおのずから変わってきておるわけでございますが、過般の財政再建推進会議におきましては、国鉄の将来における主務分担と申しますか、国内交通におけるシェアを三つに限定いたしまして、まず大都市の通勤輸送、それから中長距離の貨物輸送、それから都市間の旅客輸送、この三つを国鉄はやっていく。何でもかんでも国鉄がやるのだという考えは間違っておる、やはり道路なり船なり飛行機なりにまかせるものはまかして、そうして国鉄自身の守備範囲を固めなさい、こういう御意見であったわけであります。したがって、今後とも、いま申し上げました三つ、すなわち、まず大都市の通勤輸送、これは、東京、大阪を中心とした通勤輸送。これは御承知のとおり、約七千億の金を入れて現在改善の工事をやっておる最中であります。それから中長距離貨物輸送、これは、先ほどお話のとおり、いままで非常に立ちおくれておった。したがって、運賃政策の問題もございますが、道路あるいはモータリゼーションの関係で、トラックにどんどんいい荷物が移っていってしまう。この貨物輸送を何とかもう少し貨物輸送としてペイするような輸送サービスをしなければ結局じり貧になってしまうということ。すなわち、その意味で、今後中長距離の貨物輸送についてはフレート・ライナー等のような新しい考え方を入れまして鉄道の分野を確保したい。それから三番目には、いま新幹線等でごらんのように、都市間の旅客輸送をやっていく。これは収益的な面も相当ございますし、また、日本全体のレベル・アップに伴って、非常に交通量がふえてくる。ことに都市間の交通量がふえてくる。それに対応して、やはり都市間を便利にするという、この三つを、国鉄のこれから進むべき道として、設備の増強、あるいはそれに伴う設備投資等をやってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  103. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それで、先ほどもちょっと、この問題も問題になったのでありますが、いま国鉄労働者の賃金ベースはどの辺になっておりますか。それで、年齢はどのくらい、それから世帯構成はどのくらい、その辺、ちょっと教えていただきたいと思います。
  104. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 国鉄職員の給与ベースの問題でございますが、給与単価は、現在、四十三年度予算におきまして、基本給が四万八千三十六円、扶養手当が千三百七十二円、暫定手当が八百四十円、合計五万二百四十八円、これが四十三年度予算でございますが、これに加えまして、四十三年度分の仲裁裁定がございます。それを加えた総計、四十四年度の予算は五万五千七百九十円でございます。  それで、職員の年齢構成は大体三十八・六才、下の数字は違うかと思いますが、大体三十八・六才と記憶しておりますが、三十八才前後。すなわち、四十才前後のところが一番数が多くて、十数万人の職員がおります。  以上でございます。
  105. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 この前、大蔵委員会で所得税等の問題について審議をした際に、内閣総理府発表の現下の生計費調査内容によっても、五万円の収入者では一日当たりの食費は九十円見当にしかならない。いま聞きましたところが、やはり国鉄の労働者も五万二百四十八円、かろうじて今度六千何がし上がって五万五千七百九十円のベースだ。これが三十八才。少なくとも子供二人あるいは三人いることは間違いないのです。私の記憶で言うならば、国鉄の労働者の家族構成は二・四人強、こういうふうに記憶しておるのでありますが、そういうことでいった場合に、はたしてこれで満足な賃金を与えておるかということになるのです。そこに、いまの国鉄労働者の立地条件というものは非常に悪い。四十七万の職員がいるわけでありますけれども、年々作業量は増大してくる。そうしてそのわりに職員はふえていっておらない。もちろん、機械化、近代化も入ってきておることは間違いないけれども、非常に悪い。さらに勤務状態を見ると、五十四時間の一昼夜交代勤務、少なくとも三十年勤務したら十五年は寝ないという勤務体制が採用されておる。ですから、国鉄職員が一たん退職したら平均寿命が一番短い。三年程度しか生きないといわれておる。こういう過酷な条件でいま働いて国鉄の生産に励んでおる。こういう非常に劣悪な条件が、一面においては闘争を激化させるであろうし、一面においては、非常に不満が常にうっせきをする。膨大な、たとえば国電の環状線内でも一分間隔ないし三分間隔で電車が走るのです。六十キロ、八十キロのスピードで走っていくのです。それが満載状況ですね、全部。そういう危険状態で、一たん誤れば足一本、手一本という、よその職場と違うのですね。こういうものに対して五万何がしの平均ベースで生活しろということが無理じゃないか。だから、もう少しそういう面についても私は政府の思いやりある施策があってけっこうではないか、こういうふうに考えるのですけれども、その辺は一体運輸大臣どうお考えですか。
  106. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 三公社五現業の方々の給与に関しましては、それぞれの要求に対して、いまお話がございましたが、仲裁裁定の形で毎年出しております。その中で国鉄の給与は高いということをいわれておりますが、これは年齢の構成が高い、平均三十八だとおっしゃいましたが、これらの点もございますから、これはやむを得ない点があるのではないか、このように考えます。ほかの部門の方々も多いほどよいと考えておられるでありましょうが、国鉄の給与がほかと比べて高いのは当然ではないか、このように考えております。裁定に対しましては、これは大蔵大臣がお答えになる筋合いのことであろうと思いますが、私どもは裁定に対しては従わざるを得ないのではないか、このように考えております。
  107. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 もう一つは、今回運賃値上げから貨物を取り除いたというのは、何か特別の意図があるのでしょうか。この点について運輸大臣にお伺いいたします。
  108. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 午前中にも、国鉄側からも、また私もたびたびお答えをいたしておりますが、貨物輸送に関しましては、正直に言いまして、十分なサービスを行ない得る状態にない。先ほど冒頭にお尋ねがあったと思いますが、午前中からもお尋ねがあったと思いますが、貨物輸送というものはモータリゼーションということによって一番影響を受けた点でありまして、「戸口から戸口まで」、こういうことが国鉄の現在までの貨物輸送ということに対して一番影響を及ぼしたのではないか。そこで、新しい方式によるところの近代化された輸送方式というものをとらなければ運賃としても十分御満足を得られない、こういう点が一点ございます。  また一方、先ほどから貨物というものが独占資本に云々というお話がございますが、私どもはこれを産業というものと結びつけて考えておるのでございます。したがって、人ももちろんこれを生み出しておるのでございますが、資材というものが物のもとになっておる、特に零細な農林関係の資材というものは、産物というものは、これが広く国民の日常の生活に影響してくる性格を持っておる、それらの点を考えますときに、運賃値上げをするということが直接響いてくるという物価対策の面もございまして、この点を勘案いたしまして、このたびは貨物運賃はおいて旅客運賃だけを値上げをする、こういうことにいたした、こういうことでございます。
  109. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 全部とは言いませんけれども、いまの国鉄運賃上からくる赤字というものは、旅客が赤字線化することもございましょうけれども、主として貨物が多いのじゃないかと思うのです。私の調査によりますと、現在までの顧客別発送貨物分布でもってみますというと、百トンから四百九十九トンまでの顧客数が五千六百九十、それから五百トンから九百九十九トンまで一千百三十七、一千トンから四千九百九十九トンまで一千百九十七、五千トン以上が三百八十五ということで、その総体はやはり鉄鋼とかそういう大きなところに向けられていることは間違いないようでありますね。ですから、こういうことで、国鉄が大きく投資をしつつ、それが赤字になっている、こういうことになっているので、それを乗客、お客さんのほうでカバーしていく。こういうことでありまするから、内面的に見てもそのような矛盾が非常に多いのじゃないか。ですから、この辺の均衡政策というものをひとつとっていかなくちゃいけないのじゃないかというように私は考えるのですけれども、それは、運輸大臣、どういうふうに考えておりますか。
  110. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 先ほども申し上げましたが、貨物というもののサービスをして運賃を払ってもらうというためには、それに適応したものにしていかなければならない。こういう点について、いまの国鉄では、副総裁答弁していましたように、正直に申しますと、いま運賃値上げしたらそこへ持っていかれてしまう、こういう面もあるという面もございます。もう一つは、旅客は直接直ちに国鉄に乗っていただく利用者であります。国鉄に乗ってもらう。貨物のほうは全国民に影響をする性格のものでございます。たとえば、米であるとか、鉄もそうでありますが、石炭、鉄、さようなものは全国民に影響するものでございます。その点で、いま申し上げましたように、貨物運賃というものがやはり物価に影響するという面を無視するわけにいかない。こういうことでございます。今後、したがいまして、いまお話しのように、これに検討を加えて、先ほど国鉄総裁が言いましたように、国鉄の中で今後何に力を入れていくかという中に、大量の貨物を正確に敏速に輸送をする、こういうことにすることによって、当然まかなうべき運賃でまかなっていく、検討していくことが大事であろう、このように考える次第でございます。
  111. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間がありませんので、経企庁長官に一点だけお伺いをしますけれども、生計費の調査からいって、家計に占める交通通信費の割合というものは一体どの程度が妥当なのか、その辺について一ぺんお聞かせを願いたいと思います。
  112. 岩尾一

    政府委員(岩尾一君) 家計費に占める国鉄運賃はどれくらいの割合がいいかということでございますけれども、これはどのくらいがいいか、安ければ安いほどいいわけでありますが、大体の傾向から見ますると、現在の家計費調査の中で二%程度ということで御了承いただきたいと思います。
  113. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 現行は何%になっていますか。
  114. 岩尾一

    政府委員(岩尾一君) 家計費調査におきまして結果的に見ました数字は、東京都で四十年が二%、四十一年が二・三%、四十二年が二・三%、それから消費者物価指数をはじきます場合には、結果ではございませんでウエートを先にきめておりますから、そういう点から見ますると、大体二・九一%というふうに御了承いただきたいと思います。
  115. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そういうことになりますると、それは収入が少ないということになりませんか。いまの交通通信費の割合からいけば、結局二.九一%、約三%に近いですね。だから、それは結局、収入が低いということになるんじゃないですか。
  116. 岩尾一

    政府委員(岩尾一君) それはそういうことではございませんで、普通に消費者物価を計算いたします場合には、最初からたとえば国鉄の一番代表的なものを取り上げまして、そのウエートがどれくらいになるか、交通費のウエートはどれくらいになるかというのを計算いたしまして、これを二・九一と置いておるわけであります。結果的には、実際の家計費調査を見まして、国鉄運賃に出されたものは幾らあったか、交通費に出されたものは幾らあったかという計算をするわけであります。そこで、実際には、たとえばそれ以外に仕送りとかいろいろな雑費がございますが、そういうものが家計費調査では入っておるわけですけれども、その分は除いて計算をいたしますので、そういうことになるわけであります。
  117. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間がもう来ましたから、これでやめますけれども、最後に運輸大臣と大蔵大臣にぜひ確認の意味で質問しておきたいのでありますが、今後十カ年計画というものが出されるわけですね。国鉄財政再建推進会議意見書というものが出ておるわけでありますけれども、この内容にはいろいろ内容がありまして、これは文字どおり政府としては実行していくと、こういう心がまえでいるわけですか。その辺に対する見解をお伺いして、私の質問を終わります。
  118. 原田憲

    国務大臣原田憲君) このたび国鉄運賃法改正とともに、別に国鉄財政再建のための措置法を提案をいたしまして御審議をお願いしておりますのは、この国鉄というものを財政破綻から救い、国民経済、国民生活に貢献しなければならぬ、こういう政府考え方をもちまして提案をいたしたものでございまして、私といたしましては、現在御審議中でございますから、これが最上のものと言わなければならぬ立場でございますが、私は、これを出発点といたしまして、なお今後できる限り政府の施策をいたしまして、国鉄国民の生活に貢献ができるようにいたしたい、こういう考えでございます。
  119. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 運輸大臣と協力いたしまして、国鉄財政が再建されるように努力をいたします。
  120. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 鈴木君。
  121. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 国鉄運賃値上げに伴う問題として、必ず物価へのいろいろなはね返りがあるだろう、こういう予想をしておりますが、それに、物価が上昇しますと、御承知のように人件費がのぼってくる。さらに原材料費であるとか購入品費、こういうもの等への増加が招かれるということが考えられるわけです。そうなってくると、今回の運賃値上げも大きな効果を得られなくなってくるという心配があるわけです。そこで、財政的な問題あるいは計画的な問題を聞く前に、物価について多少伺っておきたいのですけれども、現在、いろいろ小売り物価については、小売り物価統計調査報告、そのほかございますけれども、経企庁のほうで、この小売り物価の中に占める輸送の費用というのは一体どのくらいになっているものなのか、その点についてはつかんでいらっしゃるかどうか、それを伺いたいわけです。
  122. 岩尾一

    政府委員(岩尾一君) 小売り物価に占める輸送費のウエートでございますが、御承知のように、現在の消費者物価指数を申しますのは、商品、サービスの価格でございまして、その動向を測定しておるだけでございますから、個々の価格料金の中で輸送費がどれくらいになっておるかということは、資料としてはとっておらないわけでございます。しかし、実際上わが国のいろんな物資につきまして、その物資の中に占める物的なコストあるいは輸送費というものはどれくらいのウエートを持っておるかというのは、個個の品目については統計がございます。御紹介いたしますと、大体野菜等にいたしましても非常にブレがございまして、ナシ、ブドウ、大根、白菜、キュウリ、豚肉とございますが、その中で、たとえば白菜等は、全体の価格の中で二七%というのが全部運賃です。それから非常に少ないほうで申しますと、ブドウ等は二%しかないというようなブレがございます。それから、輸送費が売り上げ高に対します割合につきましても、ビール等につきましては一六%ということで非常に高い率になっておりますけれども、紙その他につきましては二%というふうに非常に低い率になっておるということ。個々につきましてはございますが、全体としての数字はどれくらいになっておるかということは、各品目によって違いますので、ちょっと申し上げられないと思います。
  123. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 小売り物価の中の大工の手間賃がありますけれども、その大工の手間代の中ではどのくらい見込まれておるのでしょうか。
  124. 岩尾一

    政府委員(岩尾一君) 御質問は、大工の手間代が消費者物価に占める割合というようにお答えしてよろしゅうございますか。
  125. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そうじゃなくて、その中に占める輸送、いわゆる運賃なり交通費。
  126. 岩尾一

    政府委員(岩尾一君) それはちょっとわかりません。
  127. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまのあれですと、野菜の白菜であるとかブドウ、ビールあるいは紙等について二七%から二%までのブレがあるというわけです。大工の手間代については一体との程度まで——現在大体一日当たり二千四百円ないし二千六百円という小売り物価の価格が出ておりますけれども、その中でどれくらいが現在運賃分、交通費というふうになっているか、それはわからないわけですね。——それで、おそらく今回の運賃値上げが非常にいろいろ効果を及ぼすとすれば、そういうものから実は出てくるだろう、当然、定期代も上がってまいりますので、そういう点で、今回の運賃値上げに伴う物価上昇への波及効果の問題でありますが、ただの運賃だけのウエート、それらによる物価の押し上げのパーセンテージというのじゃなく、波及効果というのは、いままでの実績もいろいろおありになることでしょうから、その点、つかんでいらっしゃるだろうと思うのです。そのいままでの実績から見て、今回の値上げに伴ってどれほどの波及効果があり、実際そうなりますと、どのくらいの値上がりまで及んでいくだろうか、この点について伺っておきたいのです。
  128. 岩尾一

    政府委員(岩尾一君) 今度の運賃値上げが全体にどう波及していくかという問題でございますが、先生も御承知のように、消費者物価に占めます国鉄運賃のウエートは一三一でございます。一三一と申しますのは、かりにそういったウエートを一番代表的なものとしてとっただけでございまして、これがすべての家計消費の中で国鉄運賃で占められるという意味ではないわけでございます。こういったものが大体上がっていくだろうということで、現在の運賃の引き上げ率というもので計算をいたしますと、大体〇・二%ということになっております。それ以外に、なお、先生のおっしゃるように、大工さんの手間賃にも響くだろう、あるいはそれ以外にも響くだろう、あるいは現在の一三一に入っていない私鉄でございますとか、タクシーでございますとか、バスでございますとか、そういうものに影響していくだろうということは、企画庁長官が毎度申し上げておりますように、絶対に波及をさせないということで、便乗値上げはしないということでやれるつもりでございますから、波及はいたさないと思います。
  129. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これは、長官、お米のときにも、消費者米価が上がれば波及をさせないようにいたしますということは、いつも言われたわけですね。お米のウエートだけでパーセンテージをはじき出されて、何%の値上がりであるという物価寄与率だけを出すわけですけれども、ところが、実際問題には、五十円であったものは六十円に、ライスなんかも上がってくる。そのほか、ひどいところでは、物価値上げのために、おにぎりからお弁当代まで上がるというものが出てまいりました。そういうことから考えますと、今度の波及効果も、ただ運賃プロパーだけの問題じゃなく——全体的にわずか〇・二%であるというような見方ですね。こういう見方だけをするというわけにはいかないのじゃないか。いままでも何回も国鉄運賃が値上がりをしているわけですから、その場合どの程度一体及んだかということは、全然おつかみになっていなかったみたいなんですけれども、それはもう少し厳密におやりになったほうがいいのじゃないかと思うのです。その点ではどんなふうなお考えがありますか。
  130. 岩尾一

    政府委員(岩尾一君) これは、おしかりを受けるかもわかりませんが、実は、私らはその波及効果が非常にむずかしゅうございまして、ちょうど運賃値上げをやります際に、国鉄あるいは運輸省等といろいろと数字を合わした場合には、波及しないのだというような数字を、むしろ持ってこられた記憶がございまして、そういう意味合いで、私らは多少波及するのじゃないかという気はいたしますが、いまの段階では、波及しないというような——結果的にはですよ、結果的には波及していなかったというような数字を見せていただいておるわけでございますので、そういうような懸念は持っておりません。
  131. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ほんとうに波及しませんか。たとえば、小売り物価の中の大工の手間代とか、あるいはそのほかのものもありますけれども、そういう人件費が主体のもの、あるいは理容代、こういうようなものに波及が全然ないだろうか。絶対ないはずでございますという、ございますだけで通るのならば何事もこれはうまくいくんでしょうけれども、いままでの経験やわれわれの感覚だけで判断したのでは、波及をするんじゃないかと思うんですが、その点は、絶対にそういうふうに波及しないと、こう言い切れるんでしょうかね。
  132. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 国鉄料金の値上げ自体が他の物価に直接波及するかどうかということについては、これはわれわれのほうでもその点について調査いたしておりますが、ただ問題は、この国鉄の料金あるいはその他の公共料金の値上げによって物価は上がるものであるという考え方ですね、物価の上昇感あるいは騰貴感というもの、これがあることによっていろいろ物価が上がってくるということは、これは考えられます。国鉄の料金が上がりましたからわれわれも上げますというようなムードは起こってくると思うんです。そのムードを私たちは心配しておるのであって、したがって、できるだけ公共料金はこの際上げてはならぬという方針できたのであって、物価の騰貴というものは、いままで政府の主導型だとかなんとか言われておるのは、公共料金を上げるから、したがって、政府がそういう物価を上げるからわれわれも一般物価を上げてもいいという考え方国民一般が持つことをおそれておる。それを持たさないようにしたいということで、公共料金を上げないように極力努力いたしておる次第でございます。
  133. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 極力努力をするということで、それならわかりますけれども、絶対波及しないというんでは、ちょっとわからないと思うんですね。この点は、今後もたびたびあることであろうと思いますし、それだけに、波及効果等については厳密な、まあある程度しかつかめないかもしれませんが、努力を続けてもらいたいと思うんです。  その次に、今回の値上げにつきましては旅客輸送の運賃値上げということでありますけれども、私は、国鉄自体の営業のいき方、それがちょっと時代にマッチしていないんじゃないかと思う。いまも戸田委員からの質問で貨物輸送のことが出ておりましたが、総理府の統計によると、とにかく輸送活動の指数を見ても、総合輸送活動指数が一〇、〇〇〇のうち国内輸送が九、一七二である。そのうち、貨物が四、六六四・四というウエートがあるわけなんです。ところが、そのウエートのうちで国鉄はわずかの九九一・七、これだけしか現実としては輸送していないわけですね、貨物輸送。で、いままでの経過というものを見ていくと、昭和三十四年、このときの国鉄の陸運の輸送トン数は一億八千百四十万トンです。ところが、四十二年でわずか二千万トンふえた二億二百五十六万八千トンにしかなっていない。ところが、陸運の貨物のほうを見るというと、十億六千二百万トンだったのが三十二億七千二百万トンというふうに、三十四年と四十二年を比べると約三倍近い状態になっている。これでは、ほんとうに国鉄が陸運に力を入れてきたのかどうか、貨物輸送の面を見ても非常に努力が進んでないんじゃないか。先ほどもモータリゼーション等の問題がありました。しかし、それだけではどうも私は説明として納得できないと思うんです。旅客についても同じです。同じように旅客の問題を見ましても、輸送人員でいけば、三十四年のときに四十八億人であったのが四十二年七十億人。これは国鉄の運んだ輸送人員です。乗用車の場合には、これが、十二億八千二百万人三十四年に運んだのが、現在は六十六億人というふうに、実に五倍以上になっている。国鉄は一・何倍にしかならない。こういうことで、先のほうまでいろいろ考えられた上での輸送体系、あるいはそういうような努力というものを欠かしてきたのじゃないか。それで、貨物運賃収支のほうが、一方モータリゼーションの波及に押されて、そしてつらくなってきのじゃないか。この辺の努力というものは一体どういうふうにいままでしてこられたのか。そして今後ほんとうに力を入れるのか。先ほどあったような方法だけでいくかどうか。その辺のところをよく伺いたいのですが。
  134. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ただいまの先生のお示しになった数字はそのとおりでございます。ただ、私どもは、総理府の統計はトン数だけの統計でありまして、多少足の長さを入れますと、トンキロで入れますと、少し私のほうのウエイトが上がってまいります。それほど大きな違いはございませんけれども、トラックのほうは足は短こうございますから、輸送量を示す数字としては、そのトン数に足をかけたものでやっておりますが、しかし、それほど大きな違いはございません。そういうことで、とにかく国鉄の日本国内の貨物輸送分野におけるシェアが非常に減ってきたことはお説のとおりであります。これは、先生のおっしゃったように、先ほど戸田先生の御質問にお答えいたしましたが、約十年間に確かに国鉄に二兆数千億の投資をいたしましたけれども、これが、あるいは老朽施設の改廃、あるいは保安対策というふうな、直接輸送にバックしないような面に相当金が使われている。あるいは通勤輸送等にも金が入っているということで、貨物輸送の近代化の面がおくれておりましたことは、先ほど大臣並びに総裁から申し上げたとおりでございます。しかし、それと同時に、やはり石炭の減産が非常に実は大きく響いておりまして、一時国鉄全体の輸送量の約二割から二割五分が石炭でございましたけれども、現在は一二%ぐらいでございます。ことしも大体三千万トンを切るだろうというふうに思っております。そういたしますと、一三%ぐらになりますが、年間二百万トンずつぐらい石炭輸送が減ってきております。この石炭輸送減少の穴を何とかして一般貨物で埋めなければならないという努力をしてまいったのでございますが、いかにも減る分量が大きいものでございますので、それを埋めきれずに、先生がお示しになったような、ほとんど横ばい、あるいは年によりましては横ばい以下の数字を示しております。しかし、そういうことばかり言ってもしかたがないのでございまして、やはり今後は、先ほど申しましたように、やはり高級貨物を運べるように、トラックから少しでも国鉄の分野を確保できるように、ある程度、たとえばコンテナ輸送を徹底的にやるとか、あるいは過般始めましたフレートライナーをもっと全国的に広げるということによりまして貨物輸送サービスをよくして、そして貨物運賃に寄与してもらう。いまのままでは、貨物輸送は完全にじり貧になっていく傾向が非常に強いのでございまして、これでは国鉄としては全く収支が償いませんので、この点は、お説のとおり、確かに立ちおくれてしまったということで、今後の問題としましては、先ほど戸田先生からの御質問に私がお答えいたしましたとおり、三つの国鉄がこれからやるべき分野の中の一つといたしまして、中長距離の貨物輸送というものを徹底的に近代化、合理化していく。これによりまして、生活必需品はもとより、そういった生活必需品の運賃はどうせ安うございますから、その穴をカバーする意味で、何とか高級貨物を確保していくということになりませんと、ヨーロッパと同じように貨物輸送はだめになってしまうということでございますので、今後の重点としまして、通勤輸送と肩を並べて貨物輸送のほうの近代化をやってまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  135. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 まあ、トンキロの場合を見ましても、三十四年と四十二年と比べると、国鉄はそんなに倍なんてふえておりませんね。せいぜい一・二、三倍というところでしょう。それに対して、貨物自動車のほうは約五倍近くなっている。ここに意見書がございます。国鉄再建推進会議の意見書。この意見書を見て感じたのですが、五十三年で昭和四十年の一・五倍とか一・六倍に貨物輸送はする、それから六十年には二倍以上にすると言うんですが、いままでの三十四年以来のふえ方の趨勢を見ていると、こんなことではとうていだめじゃないかという感じを受ける。いま石炭が減ったということを言われましたけれども、約二億トンの中から二百万トン、三百万トンの問題で、それは一つの理由かもしれませんが、大きな理由にはならないと思うんです。そういう点で、わずか二倍にだけしかしないというような——こういう意見書のとおりやるかどうかわかりませんけれども、輸送量の予測が私は低過ぎるのじゃないか。これ以上にもっと考えるべきである。そうでなければ、いわゆるフレートライナーこれだけで完全にいけばけっこうですけれども、さらにほかの大きな輸送部門というものを考えるとか、競合できるところの部門を、そういう点を考えなければ同じことの繰り返しで、再び旅客運賃へのしわ寄せということが起きてくるのではないか。これはもう想像するにかたくない問題ですから、その点についての今後の国鉄の方針というものはどうなるのかということを伺っておきたい。
  136. 石田禮助

    説明員石田禮助君) さっき副総裁から貨物輸送のことについて説明がありましたが、要するに、国鉄の輸送力が足らぬ、こういうことであります。御承知のとおり、終戦後から今日までにおける国鉄の路線による輸送力の増強というのはきわめて貧弱なものであります。しかも、その限られた輸送力というものに対する輸送需要を見るというと、旅客のほうが非常に多い。貨物のほうはさほどでもない。国鉄としては、限られた増加した輸送力というものを旅客のほうにふやしていく、そうして貨物のほうに対してはふやす余地はなかった、こういうことが、私は貨物輸送のトンキロにしましても一番大きな原因だと思っております。これは、今後の輸送力の増強によって私は相当直すことができるのじゃないか、それでなくてさえ、御承知のとおり、国鉄というのは過密ダイヤということで、ずいぶん路線というものを酷使しておるのでありますからして、そこに原因があると解釈して差しつかえないのじゃないかと考えております。
  137. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いま総裁から原因のほうをいろいろ伺ったわけです。私の質問したのは原因のほうじゃなくて、いまのような二・何倍、あるいは旅客については一・七倍、あるいは三倍というものを五十三年なり六十年については考えているようでありますけれども、それの計画では非常に私は少ないのではないかということを言っておるわけです。ですから、ほかの方法もお考え合わせてこういう輸送量をふやすことは再建計画としては入れないのか、入れるのか、これは非常に大きな問題ですから伺いたいということです。
  138. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 実は、先生の御質問の点が、この再建推進会議の第一部会で一番問題になった点でございます。学者の間にも非常に議論のございました点でございます。現在、ごらんになっている二十四ページのところに一応の結論が出ているのでございますが、私どもそれに対して、十八ページ、十九ページあたりで、もっと意欲的に、私のほうのウエイトをふやしたいという主張もずいぶんいたしましたけれども、しかし、過去の五、六年間の伸び率、道路、モータリゼーションの関係を十分踏まえた上での伸び率は、云う二十四ページ程度がマキシマムじゃないかというような大方の御意見によってこういうことになったわけですが、ただ、私どもといたしましては、これは下限の数字であって、今後これにプラスするにはどうしたらいいかということも、いま申し上げたようなフレートライナー輸送ということだけでは、とても先生のおっしゃったように十分ではございませんで、やはり画期的な、たとえばこれにもちょっと触れておりますが、新しい国鉄のパイプラインによる油の輸送ということも考え、あるいはいまの貨物駅をもっと近代的なものにして、ターミナルコストを安くするようなことを考え、そうして全体の輸送力を達成してまいる、あるいは大都市付近における——いま一番日本の貨物輸送のネックになっているのは東京の山手線でございますが、この山手貨物線が一番日本じゅうの貨物線の隘路でございます。この山手貨物線がいまのままではどうしてもやっていけないということで現在武蔵野線等をつくっていただいているのですが、これができますれば、この計画いたしました、二十四ページにございます下限の数字よりも相当上の数字を期待できる。それをしなければ先生の御説に沿えないということになっておりますから、全体としてマクロ的にごらんになるとその程度で、やはり自動車の伸びあるいは内航海運の伸びが大きいというような数字になっているのは、たいへん私は残念ですが、いま何とか、二十四ページの数字を下限として、いま申しましたような施策をやってまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  139. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 基本方針がまだできていないようでありますけれども、これから再建計画ができるわけですが、そのときには、いま下限にしてと言われたからには、かなり上のほうに上がっていく、あるいは内航海運にも国鉄の進出が大々的に行なわれるとか、パイプ輸送の問題もありました。あるいは専用化、高速化の問題がある。そういうことも全部盛られてくる、こういうことですか。
  140. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) そういう内航海運の問題は、これはちょっと非常に問題が大きゅうございますので、現時点では、私のほうが直接内航海運に出ることは考えておりません。この点は誤解を生ずるといけませんので、私のほうの申し上げ方が不十分だったかと思いますが、一応、いまの輸送分野、国鉄の分野の中でどういうふうにこれから伸ばしていくかというふうに考えておりますが、二十四ページの数字を下限といたしまして、これからの再建計画の中で、もっと緻密に、もっと詳細に、しかも地域別に、たとえば同じ五%伸びるんでも、やはり太平洋沿岸のベルト地帯の伸びと、裏と申しますか。日本海沿岸の伸びとは多少違ってまいる。こういうふうに、もっと緻密に、新しい産業立地の開発される個所を中心として、日本全体の総合開発計画とからんで貨物輸送計画をこれにプラスアルファされて考えていくという努力は、ぜひともしなければならないというふうに思っております。
  141. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 新しい全国総合開発計画の中にも、いま言われたような答弁があるのですが、基礎資材の安定的供給を確保するためには、大量長距離輸送に対応する専用化、高速化等の進展、パイプ輸送の新しい輸送手段の開発、こういうことが言われております。このいま言われた専用化、高速化、パイプ輸送、こういうことは、国鉄としては、いまの答弁だと、パイプ輸送については何か考えたような話ですが、あとは、ほとんど現在の路線の上に乗っかったものしか考えていないようですが、これは専用の貨物高速線みたいなものを考えられるというふうにとっていいのですか。それが国鉄に対する質問。  それから経企庁長官、ここに言われております全国総合開発計画の中にある専用化、高速化、大量長距離輸送ということは、これは国鉄の役割り等もその中に相当ウエイトを置いてこの計画というのは立てられているのでしょうが、その辺についても伺いたい。
  142. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 国土総合開発計画の中のパイプラインについては、先ほど申し上げましたが、これはなるべく早く、私どもといたしましては、いますでに技術的に検討を始めておりますので、実施いたしたいと思っておりますが、ただ、これには若干の手続が要りますが、これをぜひやりたい。  それから専用化、高速化の中で、いわゆる専用化と申しますのは、私のほうでは、専用線、いわゆる専用の線——先ほど申しましたとおり、船でなくて、鉄道、列車一本専用にしてしまう、こういう意味の専用化はぜひ考えてまいりたいと思っております。現在では、たとえば小麦などは、横浜で揚がりました小麦をほとんど専用列車で関東内陸の製粉工場に送る。それによって流通コストも下がるし、速度も早くなる、そういうような専用列車。私どもといたしましては、そういう専用列車化を考えております。  それから高速化につきましては、これは複線化、電化等もできますれば非常に高速化いたしますし、また、夜間の旅客輸送のひまなときを縫って、たとえば今度のフレートライナーのように、百キロ速度のコンテナ輸送ということを考えていただきたい、こういう内容でございます。
  143. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 補足いたします。  ただいま旅客輸送、貨物輸送量の発展の問題でありまするが、たとえば、旅客輸送人員でいきますというと、昭和三十年に人数で三十八億人が四十二年には七十億人になっております。それで人キロにいたしますというと、昭和三十年に九百十二億人キロのものが、四十二年には千八百四十三億人キロになります。つまり頭数でいくというと約一・八倍、人キロでいくと約二倍にふえておるということであります。さらに貨物のほうでいきますというと、これはトンキロですが、三十年には四百二十五億トンキロ、それが四十二年には五百八十五億トンキロとなっている。すなわち約一・四倍であって、旅客に比べれば輸送量の伸びというものははなはだ鈍いのでありまするが、しかし、旅客輸送のほうにつきましては倍以上になっている、こういうことであります。これは国鉄の輸送力の増加というものを考えてみるというと、決してこれは悪い成績じゃないんじゃないか。要するに、国鉄は輸送力というものを十分に使ってこれだけの成績をあげているんだ。すでに、これに対しても過密ダイヤというようなことがずいぶん組合なんかからはやかましく言われておりますからして、まあ相当の成績じゃないかということに私は考えております。
  144. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘の点は、新全国総合開発計画案におきます物的流通の課題のところでありますが、ただいま御指摘のとおり、この計画におきまして工業立地の観点からいくと、非常に遠隔立地が進む、また農業の生産等についても、比較的遠隔地の北海道とか、東北というふうなところが中心になるということから、物的流通の関係からいきますと、非常に遠隔地からかなりのものを輸送しなければならぬということが一つ課題として出てまいります。同時に、流通革命といわれますような非常な技術の進歩がある。そういうことを踏まえて、ただいまお読みになりましたような方向に輸送の手段を持っていかなければならない、こういうことで書いておるわけでございます。もちろんこの中におきまして、国鉄の役割りということは、特に中長距離輸送におきまして主役になるということでございます。私どもも十分その中に考えて書いたつもりでございます。
  145. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 国鉄の役割りが、新総合開発計画案の中にあるということなんですが、私はどうもこれと、この再建の意見書と両方を見ますと、この中には国鉄の役割りということが全然うたわれてないわけです。国鉄において、何%程度のたとえば輸送を保たなければいけないとか、たとえば広域生活圏内の場合の交通網については、こういうふうにするべきであるとか、あるいはいま言われたような基礎物資の輸送、いわゆる物の流通の計画課題を果たすには、国鉄の役割りはこの程度であるとか、そういう数字的なことがほとんどないわけです。これを読んでいると、地下鉄の開発であるとか、あるいは高速道路、せいぜい出てきても新幹線程度までしか出ていかないわけですね。そういう点で、これとこの意見書、両方の私は一貫性というものがないんじゃないか、非常にばらばらな感じを受けるんですけれども、この点は一体どういうふうに調整をなさっていくおつもりなのか、伺いたいんです。
  146. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 国土総合開発計画の性格といたしまして、全国の国土の利用に関する基本計画でございますから、たとえば輸送の問題にいたしましても、機関別にどういうふうにするかということを非常にこまかく書くというようなことはこの計画ではやっておらないわけでございます。しかし、もちろん輸送量の推計等につきまして、内部作業としては十分やっておりまして、それに応じて施設の計画を具体的に第二部等に書いてあるということでございます。たとえば、いま御指摘の点について、内部作業でございますが、若干申し上げておきますと、昭和六十年度貨物輸送量の増大はトンキロで見まして三・九倍ぐらいに見込んでおりますが、このうち国鉄負担してもらおうというのは約二・二倍ぐらいに見込んでおります。そういった形で一応の作業はいたしておりますが、計画の課題としては、具体的なプロジェクトを書いていくということを今度の計画の主眼にいたしましたので、そういったことまでここに書いておらぬという趣旨でございます。
  147. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そういう点で総合開発計画は、いまの答弁を聞いても、一方では三・九倍のうちに国鉄は二・二倍という役割り、こうなりますと、やはりどこまでも国鉄が現状のようなモータリゼーションに押されっぱなしの形を是認した上だという形になるわけです。ほんとうの再建計画に乗せていく、国土総合開発計画の中で、はっきりと再建をさしていくという姿勢ではないように思われるのです。この点はどういうふうな感覚でいかれるのですか。
  148. 宮崎仁

    政府委員(宮崎仁君) 御承知のとおり、輸送機関の将来の問題といたしまして、それぞれ非常な進歩が期待されるわけでありますが、全体の趨勢といたしましては、こういった鉄道輸送の占める分野が若干シェアとしては下がっていく、こういう想定を私どもとっておるわけでございます。やはり自動車、航空機というような関係が伸びてくるだろうということで見込んでおるわけでございますが、この輸送需要の見込みにつきましては、国鉄再建計画なり、あるいは運輸省のお見込みと大体一致しておる、こういうふうに私ども承知をいたしております。
  149. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そこで、これは経企庁長官にちょっと伺いたいのですが、いわゆる鉄道については、これははっきりと運賃そのほかの収益をもって資本的支出をしてやってゆくわけであります。要するに、運賃を取って走らせる。ところが、並行して走る道路、あるいは並行でなくてもかえってバイパスのように近くなるような高速道路というものができておる。これははっきりと申し上げて国民の税金でできて、その上をただで走らせておる。競合としたら絶対に一方は有利で、一方は不利だということになるわけです。どこまでいきましても、それがいまのように経企庁の見込みのとおりだと、国鉄は最後にはどうしても貨物の面では完全に太刀打ちができなくなって、貨物事業を閉鎖しなければならぬというふうな状態になるのじゃないか。私はそういう点で二重投資、三重投資のおそれもあるし、一方では、国鉄のほんとうの再建をはかるというのであれば、税金をもってつくるところの道路の開発国鉄の路線とよく見合わせた上でやらなければいけない。わざわざ競合するように、本線の走っているそばに国道を建設していくという行き方、こういう行き方であったら、どこまでいっても貨物輸送国鉄は負けるばかりです。その点どういうふうにお考えになっていますか。これは非常に国土の開発の問題は大きな問題です。
  150. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) お話しのとおり、国鉄と道路輸送との競合ということはできるだけわれわれ避けたいと思いますが、しかし、品物によって道路輸送のほうが適当なものは道路輸送でお願いする。また、品物によってどうしても鉄道輸送をしなければならぬものがある。そういうものは鉄道輸送にするということで、品物によってその輸送の道を選んでもらうというような方法で、国鉄貨物輸送というような問題を研究していきたい、考究していきたいと、こう考えておる次第であります。
  151. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これについては、運輸大臣は道路の問題が非常な競合される問題であるだけに、無関心ではいられないと思うんですけれども、どういうふうにいままで申し入れをされたり、あるいは発言をされてこられたのか、その態度について伺いたいんですが。
  152. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 交通の基本問題ということについてわれわれは答申をいただいておるのであります。なお、もう一つ、いまお話の新しい全国総合開発計画というものに対する交通部門を担当する私といたしましては、これに対する意見ということを申し述べなければならないということで、省議できめて、その際議論をしたことは経済企画庁に対して十分な申し入れをさしております。今後、私はいま御指摘のように日本の国の交通ということについて、列国と違う部面があると思います。それは日本の国は山間地が多い、三分の二は山である。そして残りの三分の一のところが平地であって、ここに産業が集中をしておるという特殊な地域である。そして四方は海である。こういう特殊な立体的な条件に置かれておる日本の国の将来というものを、交通という部面から取り上げてどうしていくかということについて、私どもは私どもの内部におきまして法的な措置を講じて、これに対応するところの計画を運輸省として立てていきますが、より一そう政府間でこれらの問題をよく調整して、将来の国民経済に対する輸送というものがどうあるべきかということと取り組んでいきたいと考えております。
  153. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いずれにしても、道路の問題は非常に大きな問題だけに、わざわざ競合さして国鉄赤字をそのままふやさせる方向をとるべきじゃないという点はわかっていただきたいと思います。  それからこれは四十三年度の経済白書の中に、国鉄の問題について言及をされておりますが、その中で「資本的支出と経常的支出を明確に分離し、資本的支出については間接的受益者の開発利益を吸収して充当するほか、場合によっては、財政からも適正な補助を行なう方策も考慮する必要があろう。」こういうふうにあるわけです。ところが出てきたのを見ますというと、「場合によっては」と言われている財政からの補助というほうが先になっていて、この資本的支出に対するいわゆる間接的受益者の開発利益の吸収、この問題については、私はどうもないがしろにされているような感じがしてならないわけです。意見書の中でも、その点についてはなお検討すべき余地が多いということになっているだけであって、あれほど強く経企庁が、また、これは閣議を通ったわけですね、経済白書は閣議で決定して、一番最初に「間接的受益者の開発利益」ということを強くうたわれている。場合によっては政府の補助と、こうなっているわけです。これが逆になっちゃったということは、これは一体ほんとうに努力をなすったのだろうかということを疑わざるを得ないわけですけれども、この点については、これは経企庁長官並びに国鉄当局のほうから私は御答弁をいただきたいと思います。
  154. 岩尾一

    政府委員(岩尾一君) 経済企画庁が白書その他を通じまして、開発利益の吸収が先決であるということを申し上げたのは事実でございます。ただこの問題は、どうやってとるかということになりますと、どうしても税の問題になるわけでございます。そこで税金として、結局地価全体の問題にはね返ってくるわけでございますけれども、そういう意味合いで、地価に対する税制というものはどうあるべきかということになりますと、これは非常に大きな問題でございまして、現在政府部内で種々検討いたしておりますが、先生も御承知のとおり、譲渡所得等について若干ことし芽が出ましたけれども、今後もなお土地全体のそういった開発利益の吸収その他についての諸施策について総合的な検討を遂げていきたい、かように考えております。
  155. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 国鉄はどうですか。
  156. 石田禮助

    説明員石田禮助君) お尋ねの開発利益の吸収でございますが、これは私鉄あたりでいけば、鉄道を敷く前にまず土地を買っておいて、そして鉄道を敷いて土地の値上がりを見て土地を売って、その利益を施設費に充てる、こういうような最も手っとり早い実際的な方法があるのでありまするが、国鉄に関する限りは、そういう芸当というものは、これはなかなかできない。結局そうだからして、鉄道を敷く、それによって沿線の地価が上がるという場合に、受益者から幾らかとる、こういうふうになるのですが、現在の法制上においてはこれはできないと思う。これはぜひひとつやってもらいたいのですが、現在の情勢では、国鉄はそういう目的を達成することはできないということは遺憾ながら事実であります。これは今後の推移に待つ以外にない、こういうふうに考えます。
  157. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの答弁から国鉄側ではぜひ実現してほしい、これはよくわかりました。政府側のほうの答弁の中で気になるのは、これは国鉄に対する注文として開発利益の吸収を充当しなさいということがはっきり閣議で決定しているわけですから、そこまで権威をもっていったのに、これが土地税制云々の問題だけで、全般的な税制となれば財政援助、目的税として国鉄へ納付されるための税制というものをつくられるんでしょうけれども、そういう点があるだけで逃げられたのでは納得できないわけです。もっとほかに鉄道によるいわゆる開発利益というものを、宅地開発を主体にしているところから分担金としてとるとか、そういう方法だって考えられるんだろうと思うんですけれども、そういう点については、全然まだ検討だけであって、なかなかむずかしいというだけで終わったのでは、これでは政府自身の権威もまるきりないんじゃないかと私は思うんです。何のために閣僚集まって経済白書認めたんだか見当がつかないわけです。一方の意見書がただの意見書ですから、これから出る再建計画がまだ出ておりませんけれども、そのもととなる意見書のほうで今後検討するんだというふうになっている。それでは、政府の姿勢としては全然一貫したものがないじゃないかというふうにしか思わざるを得ないわけですけれども、との点ははっきりとした答弁をぜひ大臣からいただきたいと思います。
  158. 岩尾一

    政府委員(岩尾一君) お説のとおりでございまして、現在私たちが社会経済発展計画の改定の作業中でございます。去年の白書につきましてはこれは閣議報告でございまして、こういう報告で、将来国鉄財政についても、そういった点を考慮する必要があるんじゃないかということを提言のような形でしたわけでございますが、実際の実行につきましては、現在策定いたしておる社会経済発展計画の中で、昨年も白書を受けまして地域部会というところでもって、そういった問題を検討いたしております。そういう報告を受けて、ことしじゅうに十分結論が出るように努力をいたしたい、かように考えております。
  159. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 これで終わりますが、運輸大臣、私はさかさだと思うのは、白書でははっきりと開発利益を先にして、場合によっては財政によるところの援助、こうなっているわけです。それがさかさになってきておる。ほんとうに、だからこういうものの報告を受けたなら受けたなりで努力をしていかれたのかどうか。いまの答弁だと、これから千年も一年もかかるような話ですけれども、こんなことでは政府自身の姿勢としては、再建についてはいいかげんな考え方しかないんじゃないかと考えられるんですが、その点、運輸大臣いかがですか。
  160. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 午前中にも同じような御質問がありまして、今後これを検討するのでは、まことに十分でないというおしかりをこうむるかもしれませんが、これは具体的にいいますと、いま岩尾君が言いましたように非常にむずかしい問題となってくるわけでございます。私は地方において、すでにこういうことについて、地方団体が開発利益ということで新しく住む人たちに課しておる、方策を講じておる事例も知らないではございません。これらのことを具体的にどうなっていくかということを積み上げて、いま御質問の趣旨にある開発利益国鉄に還元をして、国鉄のために使うのが当然ではないかという御趣旨に対しては、十分の検討を加えていきたい、このように考えております。
  161. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 渡辺君。
  162. 渡辺武

    渡辺武君 初めに運輸大臣に伺います。  今回の旅客運賃の引き上げと、それから国鉄財政再建促進特別措置法案、これらが提起された原因ですけれども国鉄財政の破綻は、その大幅な赤字にある。また、その背後にある国鉄累積債務、これが非常に大きくなっているということがいわれておるわけです。  そこで伺いたいことは、この赤字の根本的な原因、これはどこにあると考えておられますか、おもなものについておっしゃっていただきたいと思います。
  163. 原田憲

    国務大臣原田憲君) ただいまもお答えを申し上げたのでございますが、国鉄の現在の赤字のおもな原因は、まず国鉄収入のもとである運賃収入というものが思うように伸びていかない、これは競争相手というものができていて、国鉄が輸送の独占をしておったという時代と変わってきたということが大きな原因であろうと思いますが、収入は思うように伸びない。一方におきまして、国鉄国民経済に奉仕、貢献をするための投資は続けていかなければならない。この投資というものが非常にばく大な投資である。したがって、この資本の増高というものが財政に対して圧迫を加えたこと、また、人件費というものは毎年上がってくる。これらのバランスのくずれというものが、現在の国鉄財政というものを危機に瀕せしめた。簡単に申し上げると、これが大きな点であろうと思っております。
  164. 渡辺武

    渡辺武君 いま大臣、一番最初にあげられたのは運賃収入の伸び悩みということだったわけですが、国鉄監査委員会の四十二年度の監査報告によりますと、やはり同じように収入の伸び悩みということを赤字原因の第一にあげているわけです。私は、この収入の伸び悩みということはまことにこれはあいまいな表現じゃないかというふうに考えます。しかし、この表現でもわかりますように、国鉄の発表したものによりますと、旅客輸送では国鉄は大幅な黒字を出しておる。ところが貨物輸送のほうでは、ほとんど毎年のように大きな赤字を重ねているというのが実情です。たとえば、昭和四十一年度数字を申し上げてみますと、これは衆議院でわが党の林議員が運輸大臣に要求して運輸省のほうから出された数字ですけれども貨物のほうでは、昭和四十一年度に五百三十五億円の赤字が出ている。旅客のほうは三百三十億円の黒字が出ておる、こういう状況ですね。このほかに手荷物、小荷物での赤字が二百十六億円、郵便物での赤字が十八億円、こういうことになっている。昭和三十五年度から四十一年度までの貨物赤字がどのくらい出たか、累計しますと千六百三億円、旅客のほうの黒字はどのくらいか、二千九百三億円、こういう数字になっている。つまり旅客のほうで大幅な黒を出して、貨物のほうで大幅な赤を出している。ここに収入の伸び悩みというあいまいな表現のもとに隠されている国鉄赤字の最大の原因があるのではなかろうか、こういうふうに考えられます。  さて、それじゃなぜ貨物のほうに赤字が出るのか、旅客のほうは黒字がなぜ出るのか、それも調べてみますと、これまた国鉄の発表しました数字で申し上げますと、貨物のほうは原価をはるかに下回って運賃が設定されておる。ところが、旅客のほうは原価をはるかにこえて運賃が設定されている、こういう状況です。たとえば表現が逆になりますが、運賃を原価で割った数字を見てみますと、一九六二年、三年ごろの数字では旅客は七七%程度、その前後多少上がっておりますけれども、とにかく運賃収入に比べてコストのほうがはるかに安くなっている。ところが、貨物のほうはどうかといいますと、これは一九六五年、六六年の数字ですが、六五年になりますと、コストのほうが四三%も運賃より高くなっている、六六年には二五%も高くなっている。こういう数字になっている。こういうふうに旅客のほうは原価よりはるかに高い運賃を設定しておいて、貨物のほうは原価よりもはるかに低い運賃を設定している。ここに旅客のほうが大幅な黒字を出し、貨物のほうが大幅な赤字を出している一番大きな原因があるのではないか、こう考えておりますけれども、その点についてどういうふうに考えていらっしゃるか。
  165. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 過日の予算委員会の分科会でも一ぺん御答弁申し上げましたけれども昭和四十一年度までは先生のおっしゃったような数字でございますが、残念ながら昭和四十二年度におきましては、旅客におきましても、新幹線を除きました現在線はやはり三百六十億ほどの赤字になっていまして、これはいろいろコストの伸びあるいは輸送の停とんというふうなことでございまして、いろいろな赤字線もかかえておりますので、ついに四十二年度からは、新幹線だけは黒でございますが、あとは旅客、貨物ともに赤字に転落いたしました。今後ともこういう趨勢が、私どもといたしましては、残念ながら相当続くんではないかというふうに考えるわけでございますが、いままでのコスト主義の問題は、過般も申し上げましたけれども、同じ旅客の中でも、たとえば東海道の旅客はもうかっておるけれども、北海道の旅客は赤である、あるいは同じ貨物の中でも、北海道の貨物は赤だけれども、東海道の貨物は黒であるというふうに、もう全国一本で旅客、貨物が赤とか黒ということを概括的に論議する段階を出まして、線別に、客貨別に検討いたさなければ赤とか黒とかいうことを論じられないような窮迫した事態になっておるわけでございます。したがって、過般も申し上げましたように、やはり総合原価主義で全体の収入で全体の支出をカバーする、黒字線の黒で赤字線の赤をカバーする、この方法以外に、現実の時点で各輸送種別ごとに原価をきめて運賃をいただくということは、現在の鉄道輸送におきましては、これは不可能でございます、というふうに私は考えます。
  166. 渡辺武

    渡辺武君 四十二年度数字を言われましたけれども、もう少し詳しくお聞きしたいと思います。  貨物のほうでどのくらい赤字が出たのか、旅客のほうは三百六十億と言われましたが、この三百六十億の中には、手荷物、小荷物、郵便物などが入っているのかいないのか、手荷物、小荷物、郵便物はどのくらい赤字なのか、その辺も伺いたいと思います。
  167. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 貨物の赤は七百四十億ぐらいでございます。旅客のほうの赤が三百六十億でございますが、新幹線の黒が三百四十六億ございます。これは昭和四十二年度ごろから新幹線が本格的に列車回数もふえ、また速度も向上化いたしましたので、非常に収入状態が順調になったわけでございます。で、旅客の中でやはり手小荷物等につきましては、先ほど先生のおっしゃったよりちょっとよくなっておりますが、手小荷物等は赤でございますが、一般の旅客につきましても、先ほどの三百三十億よりもだいぶ黒が減ってきております。
  168. 渡辺武

    渡辺武君 手小荷物、郵便物はどのくらいの赤字でしょう。
  169. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 大体前年度と同額ぐらいでございます。
  170. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますとこの数字はインチキですよ、そうでしょう。手小荷物や郵便物の赤字まで旅客の赤字の中へ入れているんですよ、だから旅客が赤字だという形になってくる。そういう計算では実情を正しく反映しません。やはり私が最初申し上げましたとおり、手小荷物、前年どおりだというと、それを含んで旅客や赤字が三百六十億というんだから、旅客は手小荷物、郵便などによる赤字を差し引きすれば黒字になっておるはずです。ですから、私は国会には実情を正しく反映してもらいたいんです。旅客運賃収入でもって黒字が出ている、貨物のほうで大幅な赤字が出ておる、この現実は動いていない。  そこで、その点に立って私伺いたいと思いますけれども石田総裁はいつか赤字の一つの大きな原因は、国鉄がたくさんの公共負担を負っているところにあるということを言われましたけれども、いまでもそうお考えになっていらっしゃるか。
  171. 石田禮助

    説明員石田禮助君) まさにしかりであります。
  172. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、いま磯崎総裁もローカル線のことも言われましたが、また石田総裁は公共負担のことも強調されている。私はこの公共負担なるものを赤字原因として主張される、その点に非常に疑問を持ちます。むしろこれは、国鉄赤字にとっては取るに足らないものと考えなきゃならぬ。私はこのいわゆる国鉄でいう公共負担なるもの、つまり旅客のほうでいえば、これは定期の割引、学生割引、これがおもだと思います。それからまた貨物のほうでいえば、いろいろあると思いますけれども、農産物などの生活必需品の特別割引、これがかなりあると思う。こういうものは、国鉄が公共企業であれば、当然これはやらなければならないことです。これは国民に奉仕するという点からして、当然やらなければならぬことだと思うのです。ところで、その一体公共負担というのがどのくらいなのか。国鉄の監査報告によりますと、昭和四十二年度、通勤通学定期で出ているこの負担が合計して七百十四億円、学生割引が二十二億円、こういうことになっておる。この表の中には、やはり旅客としての欄の中に新聞や雑誌に対する特別な料金の負担も入っているので、新聞、雑誌なんというのは、これは旅客でない。どうも国鉄の統計というのは、実情を正しく反映するようにできてない。これはまことに遺憾です。しかし、この問題はおきまして、新聞紙や雑誌なども含めてみますと、七百八十六億円の負担になる。いいですか。この七百八十六億円の負担をしているのにかかわらず、先ほどの磯崎総裁答弁によれば、国鉄は旅客の輸送でもって黒字を出している、そうでしょう。公共負担をしてもなおかつ黒字が出ている。ですから、旅客のほうで負っている公共負担、これを赤字原因だということは、これは当たらない。その点どうでしょうか。
  173. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 公共負担による損というものが赤字原因だと、こういうことは、結局収入が減るから、結局損か得かということは、収支のバランスの問題です。収入が減れば、それだけバランスが悪くなる、そこでマイナスになる、こういうきわめて簡単な私は理由だと思います。
  174. 渡辺武

    渡辺武君 まさにそれは詭弁に類するじゃないですか。黒字が出ておる、その黒字の幅が多少減る、これがなんで赤字原因ですか。現に旅客のほうでは黒字が出ているじゃないですか。公共負担を含めて旅客輸送のほうでは黒字が出ている。それを赤字原因だ、赤字原因だと大宣伝して、そうして学生の定期の割引率を引き下げてみたり、あるいはまた、サラリーマン諸君の、労働者諸君の定期の割引率を引き下げてみたり、これは道理に合いませんよ。こういうものを含めても黒字が出ている。むしろ赤字を問題にするんだったら、なんで貨物のほうの赤字を問題にしないのですか。貨物のほうもなるほど公共負担なるものがある。先ほど申しましたように、農産物など生活必需品に対する特別割引はこれは大いによろしい、やってほしいと思う。続けてほしいと思います。これは国鉄公共企業体であれば、当然やらなきゃならぬことです。しかし私は、セメントだとか、石油だとか、鉄鉱石だとか、こういうものについてもやはり特別割引をあなた方やっていらっしゃるでしょう。こういうものは、主として大企業の製品か、あるいはまた大企業が原料、材料として使う物、こういうものについては一言もおっしゃらない。これは国鉄国民を踏みつけて、大企業利益を守ろうという気持ちから出ているというふうに考えざるを得ません。結論として言えば、結局のところ国鉄赤字の一番大きな原因は、これは貨物輸送、特に大企業の使う原材料、機械、あるいは大企業がつくった製品、これらの運賃を原価以下に設定しているところにあるのじゃないですか。どうでしょうか。
  175. 石田禮助

    説明員石田禮助君) まず第一に、国鉄公共企業体なるがゆえに、公共負担を背負うのはあたりまえじゃないか、こう言うのですが、一方に独立採算というワクがちゃんとはめられているのです。そこにおいて、収入が減ればやはりマイナスになるというのは、これはきわめて明らかなことである。それで貨物輸送、旅客輸送の損だということを申しますが、貨物輸送にしても、旅客輸送にしても、ほんとうの貨物輸送の原価がどれくらい、旅客輸送の原価がどれくらいということは、ほんとうはよくわからない、区分が。結局、国鉄としてはどんぶり勘定でやるほか方法がない。どんぶり勘定でやれば、旅客輸送の収入減であっても、結局、これは収入の減は減だ、総体において。そこにおいて、やはり公共負担というものが収入減の原因となり、損の原因となる。きわめてこれは簡単な論理で、疑いを入れる余地はないと私は考える。
  176. 渡辺武

    渡辺武君 私は、石田総裁のその答弁を聞いていまして、あなたの神経を疑いますね。大体磯崎さんの言われたのと、全然正反対のことを言っているわけです。いま磯崎さん何と言われましたか。路線別、物資別にコスト計算をしなければどうにもならない事態にきている、こう言っている。石田総裁は、そういう計算はできないのだ、どんぶり勘定でやらなければだめだ。これは何ですか。総裁と副総裁答弁、全然食い違っているじゃないですか。一体どっちがほんとです。
  177. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) いま総裁が申しましたのは、鉄道の原価計算というのは非常にむずかしく、たとえば同じ二本の線を旅客列車、貨物列車が走っている。その場合に、その輸送原価を旅客関係にどのくらい持たせるか、貨物関係にどのくらい持たせるかというような区別のしかた、あるいは単線を複線にする、あるいは電化するという場合に、そのコスト、利子、償却費をどういうふうに旅客、貨物に配分するかということはむずかしいのだということをいわれたのでございまして、それをもし先生のおっしゃるごとく正確にやるとすれば、私のいいましたごとく線引に輸送種別にやるという以外に方法はない。非常にこれはむずかしいのでございまして、世界各国いずれの国もやっていないのであります。しかし、どうしてもやるとすれば、たとえば客・貨、客貨とおっしゃいますけれども、客・貨だけでもだめだ。線路別、輸送種別にやらなければ意味がなくなっているいるということを申しましたので、私は矛盾しているとは思いません。
  178. 渡辺武

    渡辺武君 意味がなくなってきたといわれたが、まさにそのとおりです。一方で旅客輸送のほうで黒字を出して、他方、貨物輸送のほうで赤字を出して、そうして今度どこの運賃を上げるかといえば旅客運賃のほうを上げる。しかも、私この前質問したら、四年に一回の割合でもって旅客運賃をまだ上げたいという。とんでもない話です。黒字の出ているほうをなぜ上げるのですか。その辺をしっかり計算して、赤字の出ているほうは、この赤字を克服するために運賃を上げるというなら、これは話はわかります。国民も納得するでしょう、それは。しかし、黒字の出ているほうをこれを上げている。しかもその収入は、あとで問題にしたいと思うのですけれども、これは利用者負担利用者負担なんかといっているけれども、先ほども盛んに皆さん強調しておられたように、まさに大企業のためにフレートライナー方式だとか、コンテナー方式だとか、あるいは都市間の高速貨物輸送体制だとかいうような、大企業に奉仕することを大体中心の目的とする貨物輸送の増強に全部この金を使おうとしている。こんな値上げ国民が納得できますか。できないことは明らかだと思う。石田総裁は、どんぶり勘定だ、どんぶり勘定だというようなことをいわないで、一体貨物輸送のどこでもって、どういう理由でもって赤字が出ているのか、その辺を答えていただきたい。これはやはり国鉄の責任者としてその辺のところはしっかりつかんでおいてもらわなければ困りますよ。
  179. 石田禮助

    説明員石田禮助君) まず第一に説明しなければなりませんのは、国鉄は大荷主のために特別な割引をやっているということは絶対ありません。セメントにしても、コンテナーにしても、だれが持ってきても同じ運賃です。大きなセメント会社がやっているから、特別割引をするということは絶対ない。それは誤解のないようにしてもらいたい、大企業のための国鉄じゃない。一般国民のための国鉄になっている。  それからその次に、運賃を上げるといっても、損しているほうから上げればいいじゃないか、こう言うのですが、そこに私の言うポイントがある。貨物運賃を上げれば、その結果は、収入がふえるかというと、減るんだ。それで結局、国鉄の目的は、いかにして収入をふやすかということです。ふやすということになると、運賃を上げれば収入がふえるところへいかにゃいかぬ、それは当然だ。貨物運賃のほうは、つまり運賃を上げればそれだけ減る、何のための運賃値上げか意味をなさぬと思う。そこに、ほんとうの原価計算はわからないんです。いかなる学者をもってしてもわからない。私も、国鉄総裁として勉強していますが、全然わからない。ということは、これはあなたがほんとうに徹底的にそのことを調べてみればなるほどとお思いになると思いますが、結論からいえば、やはりどんぶり勘定でいくよりほかない。そしてたとえば運賃にしたって、東海道線の運賃のコストというものと中央線のコストというものは全然違いますよ。中央線なんというものは、運賃をうんと上げにゃいかぬ。結局上げればどうなります。だれも乗り手はない。収入はますます減るんだ。そういうことで、中央線と東海道線のようなところと、ことに山手線なんというものとの運賃のコストは全然違う。そこは結局国鉄としては、大局を見てどんぶり勘定でいくと。これははなはだ幼稚のようであるが、結局幼稚でない。これ以外には方法はない、こういうことを申し上げている。
  180. 渡辺武

    渡辺武君 いま石田総裁のお答えを聞きますとね。私はやはり石田総裁、なるほど財界の推薦でもって総裁になったという方だなという感を非常に強くしました。あなたのおっしゃることばは、少し深く考えてみれば、全くこれは大企業に奉仕しようと必死の答弁だというふうにしか考えられません。なぜかといえば、あなたいま、どんぶり勘定だ、どんぶり勘定だと言うけれども、そんなに国鉄どんぶり勘定でやっているなら、何で赤字ローカル線を廃止するとか、もうけの出ない小駅を廃止するとか、あるいは無人化するとかいうことばが出てくるんですか。どんぶり勘定でやっていれば、そんなこと出てきませんよ。そうでしょう。だから、あなた方のおっしゃるそのどんぶり勘定というのは、赤字の出ている貨物運賃は上げないでおいて、そうして黒字の出ている旅客運賃を上げようという口実にすぎない。  また、貨物運賃を上げたら運賃収入が減る、こういうことをおっしゃられた。何を言っておられるのかよく考えてみたが、これは石田総裁がほかのところで答えておられるように、トラックその他との競争が非常に激しい、だから運賃を上げると、頼んでくる貨物の量が減るんだ、こういうことですか、私そんなふうに理解しましたけれども、どうでしょう。一言だけその辺。
  181. 石田禮助

    説明員石田禮助君) まず第一に、一つお断わりしておかなければならぬのは、私は何も財閥のために国鉄の仕事をやっているんじゃない、その点はひとつはっきりしておきたい。決して私はそういうダーティ・コンシャスでやっているんじゃない。この点は十分御理解願いたい。もしもそういう点があるなら、ひとつ具体的に示してもらいたい。  さらにいまの話ですが、これはさっきから説明しますように、国鉄の経済というものは、どんぶり勘定でいくより方法がない、運賃の問題はそれ以外には道はない、これは幾ら説明しても同じです。
  182. 渡辺武

    渡辺武君 総裁、卓たたいてもだめですよ。やっていることが、そのことを物語っているんだから。赤字が出ている貨物運賃を上げないで、黒字の出ている旅客運賃を上げている、そのことをひとつあなたよく考えてごらんなさい。私は、時間がないから、それ以上言わないけれども、とにかくあなた方お答えなければ、私一、二調べたことを申しますけれども、あなた方いま一生懸命でもって物資別適合輸送ということをやっていますね。横須賀から名古屋の笠寺まで、この物資別適合輸送でもって自動車を輸送している例を私は調べてみた。どのくらい一体運賃が安くなるのか。普通別車で大体一台当たり自動車が、これはブルーバード級の自動車で、二台積めるそうです。これが運賃が二台積んで一万八千九百円、一台当たりにしますと、九千四百五十円という数字になります。ところが、いま国鉄が必死になって力を入れている物資別適合輸送の専用列車に自動車を積んだから何台積めるか、八台積める。そしてその八台分の運賃がどのくらいか、三万三千二百七十円だ。これを八分の一にしたらどのくらいか、自動車一台当たり四千百六十円ということになる。普通列車で運べば一台当たり九千四百五十円、物資別適合輸送の専用列車ですと、自動車一台当たり四千百六十円、どのくらい運賃が安くなったと思いますか。これは簡単な計算だ、五六%も運賃が安くなっている。ブルーバードをつくっているのは日産自動車だ。これが大企業奉仕と言わないで何ですか。まあ、あなた方は数年前に、専用線のいろんな費用を、従来それぞれの企業負担していたのを国鉄負担すると、その他等々のことをやりましたけれども、専用線というのは、大体大工場が使っているのが多いのです。そういう点を一生懸命でやっていらっしゃる。あるいはまた二、三年前に、特に石油などが多いですけれども、大会社、大企業の持っている私有貨車、これの返回送の分ですね、この運賃を最高四八%ですか、平均して三五、六%引き下げたでしょう。これを大企業奉仕と言わないで何といいますか。ですから、旅客運賃は据え置いて、赤字の出ている貨物運賃を引き上げるべきだ、いまの国鉄運賃体系を根本的に変えなければならぬ、これがいまの国鉄財政を再建する、赤字を克服していく最も重要な手段の一つだと思います。その点どう思いますか。
  183. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 第一に、専用線の問題でありまするが、国鉄貨物の輸送についての最大の強敵は何かといえばトラックだ。トラックがつまり国鉄輸送に比べて有利な点は何かというと、ドア・ツー・ドア、国鉄はターミナル・ツー・ターミナルだ。そこにトラックに取られる非常に大きな国鉄のハンディキャップがある。ところが、これを打破するのが専用線だ。これはドア・ツー・ドアです。ここにおいて国鉄にとって専用線を使うものは、非常にありがたいお客さんだ。運賃というものは下げてやらなければならぬ。ただ、いままでの専用線に関する規則というものは、あまりに荷主というものに対してフェアでない。そこでつまりああいう大事なお得意さん、国鉄の輸送貨物の五一%以上というのは専用線ですよ。大事なお得意さんだ。これに対してはやはり報いるところがなければいかぬ。あなたが言うと、どうも大きな財閥に対して奉仕する、それは私はやぶにらみだと思うんです。決して正視する何じゃない。  それからもう一つ、私有貨車の問題ですが、私有貨車の問題については、去年かな、規則を変えましたよ。つまり荷物を積んでいくと、ピストン輸送ですね、荷物積んでいって、帰りのから車のときどうするか、こういうことで、五十キロまではただにしよう、こういうようなことに直したんですが、百キロの場合はどうするかといえば、五十キロだけ取って五十キロだけはただ、それじゃいかぬ。とにかく百キロのお客さんに対しては、やはり百キロの帰りもただでやったらいいじゃないか、こういうことで、これはなかなか国鉄営業局のほうは思案が長くてまだ決定しませんが、いずれにしても、私有貨車に対する取り扱いをあれしたということは、国鉄の原価計算から考えてみまして、自分で貨車を持ってやるよりは、私有貨車のほうがよほど得だ。私有貨車であれば、とにかく必ずお客さんというのは国鉄を利用してくれる。そういうことで、これはあらゆる利害を総合してやったことで、決して一部の財閥に対して奉仕する、そんな、ミーンなことは現在の国鉄は絶対にやっていませんから、これは何もこの席であなたと議論してもしようがない。ひとつあなた十分調べてください。その上で実際そういうことがあれば、私は頭下げます。どうぞひとつその点は誤解のないようにお願いしたいと思います。
  184. 渡辺武

    渡辺武君 時間がないので最後に一つ伺いましょう。  国鉄総裁、私をやぶにらみとあなた思っていらっしゃるでしょうけれども、しかし客観的な現実が何よりも雄弁なんで、あなた客観的な現実を直視してもらいたい。  そこで、私は最後に一言伺いたいことがあるんですけれども、それは、こういう国鉄財政破綻を来たした責任者はだれなんだということに関しまして、私はこれは何といったって、やはり国鉄首脳部が第一の責任者だと思いますよ。いまも申し上げましたとおり、赤字の出ているほうを上げないで、黒字の出ているほうを上げるなんて、こんなばかばかしいことをやって、そして国民にたいへんな負担をかけて、しかもあなた、いま得々と言われたように、専用線を持っている大会社に奉仕する、その他等々、一連のことをやってこられた。これは国鉄公共性を全く踏みにじって、国鉄を大企業——きょうはまあ質問する余地がなかったけれども、アメリカ軍の軍事輸送に奉仕させている。そこにこういう財政破綻を招いた第一の原因があると思う。しかし、私は同時に、やはりそれ以上に責任を負わなきゃならないのは、運輸大臣を含めての自民党政府だと思う。なぜかといえば、これは日本国有鉄道法にはっきりと書かれている。国鉄というのは、公共企業体だということがはっきり書かれている。そうして、その国有鉄道事業法には、必要に応じては——これは時間がないから読みませんけれども政府国鉄に出資することができるということが書いてある。ところが、いまの国鉄の資本金は幾らですか。わずかに八十九億円、昭和二十五年以来変わってない。昭和二十五年以来一体国鉄はどのくらいの投資をしてきましたか。おそらく二兆円をこえる大投資をやってきたと思う。こういう不健全な状態でもって、国鉄に輸送力の増強、増強ということをやらせる。これに国鉄の首脳部の間違った方針がからまり合って、現在の財政破綻を来たしたと見なきゃならぬ。一方では、旅客運賃がどんどん上がるばかり、これは当然です。政府が出資すべきを、金を出さないから、どこで金をまかなうかといえば、これは運賃を上げるよりしようがない。足りない分は大銀行その他からばく大な借金を負って、いまその利払いに一日三億とか四億とかいわれるほどの利払いに追われているというのが、これが国鉄の姿です。こういう状態国鉄を追い込んだ責任者は、これは運輸大臣を含めての自民党政府にあると言わなきゃなりません。あなた方は一体この責任をどう負おうとするのか、私はここでひとつ提案する、あなた方が責任を負うという点で。第一に、やはり政府国鉄に必要な金を一般会計から出すべきだと思う。今度の財政再建促進のための特別措置法案、これを見たら、あの孫利子方式でわずか十三億円ばかりの金を出して——そのほかにも若干出しますけれども、一番典型的な十三億円の孫利子方式、それをひもにして、そうして特別措置法案で運輸大臣の命令でもって国鉄のその再建計画、これをどしどし実行さしていく、これは政府の権限を異常に強める道です。いままでのやり方で失敗したその政府が、いままで以上に強大な権限を持って、国鉄に全面的に介入して、どうして国鉄国民奉仕の方向に、ほんとうの公共企業体としての方向に進むことができますか、できないことは明らかです。なぜかといえば、自民党政府自身がもう大企業、アメリカ軍奉仕、これに徹底している。そういうところが国鉄財政再建の全権を握ってやったって、国鉄がほんとうに国民に奉仕するようなものになりっこない。私はだから必要なお金は、ひもつきでなくて、十分に国鉄に出資すべきだ、また赤字が出た場合には必要な補助も出すべきだと思う。そうしていまの投資計画は根本的に変えて、ほんとうに通勤着が、あのひどい混雑、大体混雑率二四〇%とか三〇〇%とかいわれている定員の二倍も三倍も積め込む、ああいう状態を一日も早く解決しなければならぬ。定期代の割引率の引き下げはやめたければならぬ。ローカル線その他ももっともっと開発して、そうして地域住民の役に立つような国鉄にしなければならぬ。いまのように大企業中心、貨物輸送を何とか増強しよう、あるいはまたもうけの出る新幹線を優先的に——これは全く営利主義ですよ。こういう投資計画は改めて、ほんとうに国民の役に立つような投資計画にしなければならぬと思う。  最後に、国鉄の管理機構を民主化しなければなりません。いま国鉄総裁は、御存じのようにこれは内閣が任命することになっている。私は、こういう任命のしかたは間違っていると思う。やはり国会の承認のもとに任命する、この国会という民主的機構を十分に国鉄の管理機構の民主化のために役立たせなければならぬと思う。また国鉄の副総裁及び理事、これは運輸大臣の認可のもとに総裁が任命することになっている、こういう人たち、これらをもっとほんとうに働く者の立場に立つことのできる民主的な人たち、これを国会が任命する、こういう形にしていく必要があると思う。特に国鉄の経理、経営方針その他一切の問題については、国会がこれを監査、監視する、そうして国鉄の民主化のために、この国会の機構を十分に役立たせるという方向にいかなければならぬと思う。この点について皆さんのお答えをいただきたいと思います。
  185. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 私から代表してお答えをいたしたいと思います。  今日の国鉄状態を来たした責任者はだれかということでありますが、私は午前中から申し上げておりますように、現在の日本の政治の責任をとっているのが自由民主党の政府である、これは悪い、こういう立場からのお答えをいたしますならば、私たちの責任である、こういう心がまえで臨んでいるということを申し上げておきたいと思います。そこで、今日までの国鉄の——過去のことを私は申し上げませんが、過去の点については、お答えをいたしている中で申し上げておりますように、確かに財政当局がこうしてやっておけばよかったではないかという点も私はなかったではないというように心得ております。しかし、運輸大臣に就任をいたしまして、この国鉄再建に関する意見書を拝見いたしまして、これは適切な意見である、私は私なりに把握をいたしまして、これをもととしてこのたび御提案をいたしておりますのは、ただ運賃値上げをするだけでなしに、国鉄財政再建のための特別措置法、これを担保にして、これを出発点にして、国民の前に政府の責任を明らかにしているということを申し上げたいのであります。国鉄の幹部が最も責任があったのじゃないかという結論、責任論に関しましては、国鉄総裁はたびたびここで国鉄総裁としての責任も感ずる、しかし、国会のほうの皆さん方にも責任はないかというようなことをたびたび言われて、いろいろ話題になっているのであります。これは総裁総裁なりに、自分が提案している運賃値上げなら運賃値上げをスムーズに過去においてやっておいてくれたならば、こういうことにならなかっただろうという表現だろうと思います。いずれにいたしましても、私は渡辺さんの話を聞いておりまして、結論は、どういう方法によって国民に対するサービスをやり、国民生活をよくするかということにかかっていると思うのであります。目的はだれも同じであります。その方法において違いが出てくる、これを判断をするのはだれか、結局サービスを受ける国民である、こういうことになると思うのであります。したがいまして、私どもは現在提案をいたしております方法が現在の時点で最もよい方法であると考え、なお、運輸大臣といたしましては、今後ともなお一そうこれがよいということがありますならば、これを現実のものとして、国民経済のために、国民の生活のために貢献をいたしたい、こういうことであるということを申し上げておきたいと思います。
  186. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 和田君。
  187. 和田静夫

    ○和田静夫君 まず、過疎問題へのアプローチとして国鉄財政再建計画上の赤字線廃止問題に触れたいと思います。  原田運輸大臣は、昨年十二月十七日の衆議院運輸委員会において、運輸大臣就任のあいさつとして、みずからが取り組んでいく問題として幾つかあげられました。その中で過疎地帯の問題というのをあげておられます。経済審議会の地域部会が昭和四十一年に出した中間報告以来、この過疎ということばはしばしば用いられるようになりましたが、この過疎ということばの概念は必ずしも明確ではありません。過疎地帯の問題に取り組むとあなたは言われたのでありますが、過疎現象とは一体どのような現象であるとお思いになっているのか、過疎というものの定義をまずお聞かせください。
  188. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 具体的にどの範囲を過疎と言うのかという問題は非常にむずかしい問題でございまして、これは私どものほうの自動車行政の中で過疎対策ということで御質問があったときに、正確な数字政府委員からまた答弁をさせますが、ある一定の基準をもってこれを過疎と言うということがあります。これ以外に具体的に何をもって過疎と言うのかということは、各省に対する御質問の中でも、特に自治省もそうでありますが、明らかでないので、この定義というものを示すのに、正直にいいまして難儀をいたしておりますが、過疎というもの、また過密というものは、いままでの過去の現象と違って、過疎は、少なくなるがためにいわゆる住民としての生活がうまくいかないという現象が起きてくる、こういうことをもって過疎と言う、こういうことではないかと、私はそういうふうに考えております。
  189. 和田静夫

    ○和田静夫君 定義は明らかではないけれども、明らかでないその問題について取り組まれる、こう所信表明で述べられたということになりますが、地域住民利益を守るという立場、過疎対策という観点を持つとき、赤字線問題を単に国鉄財政という、面からのみ見るべきではないということは、去る三月十八日の地方行政委員会において、私の質問に対する野田自治大臣答弁で実は確認をいたしました。その点、運輸大臣もお認めになりますか。
  190. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 赤字ローカル線の問題に対しましては、一方において、たとえばいま自動車の話を申し上げましたが、自動車あるいは地方の中小の鉄道その他について対策を政府が講じておるということがあるのであります。したがいまして赤字ローカル線であるからすぐ廃止するか、まあ八十三線というものが諮問委員会から出されまして、これが一番問題の中心になっておるのでありますが、私は赤字ローカル線の廃止ということはまずまず代替がなければならない、輸送機関の代替がなければならない。代替があるにいたしましても、それがその住民の生活との間にどうなるかというような問題。また、具体的に調査をしていきました際に、国会でも質問があったのでございますが、この八十三線計画の答申をしておるときに、個々の線では将来こういう計画があるというのにそれは少しも考慮されてないというような問題が指摘された、私はこれは事実であろうと思います。さようなことを十分検討勘案して処置すべきものである、こういうふうに考えておりまして、この問題はただ諮問委員会から出たからすぐに実行するというが、なかなかそうはまいらない政治的な配慮というものが十分必要な施策であろうと考えております。
  191. 和田静夫

    ○和田静夫君 私も過疎とは一体何であろうかということをいろいろ考えてみましたが、はっきりいたしません。しかし、少なくとも過疎地帯というのは、これまでにいわれたような辺地あるいは僻地とは本質的に異なります。過疎は私は社会的生活が存在していた地域で発生するものであり、経済社会の発展に伴って生ずる新しい社会構造的変革の一つの形態であるということは確認をすることができます。つまり、過疎というのは社会現象の一つの動態である、そして過疎対策とはその動きを押しとどめることでなければならないと、こう思うのです。運輸大臣の所信表明は私はそのことを実は意味しているのだと思うのであって、それに逆行をするような形をとられるとすると、あなたの所信表明は国会の場を通じて全国民にうそを言ったことになる、こう言って過言ではないと思うのです。  昨年十月の下旬、参議院の常任委員会過密・過疎共同調査班は、高知県下の過疎地域の実態調査を行なっております。その調査報告には、公共施設の退廃の、残留住民の士気に与える影響について触れておられます。昨年九月の国鉄諮問委員会の答申以来、いまの答弁にもありましたように、具体的に八十三線の名前があがって、政府がどのような詭弁を弄して責任を回避しようとも、廃止が現実には問題になっております。これはバスにしたほうがいいとか悪いとかという議論の前に、この残留住民に与える精神的影響は私ははかり知れないものがありますし、現在そのことは生じていると思うのです。で、運輸大臣、あなたは口では過疎対策と言われながら、結果的には過疎の動きを促進させている、そう私は指摘をせざるを得ませんが、いかがですか。
  192. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 私がなぜ過疎促進をしておるか、私はちょっと理解に苦しむのでありますが、私は過密、過疎というものを分けて考えるべきではない、一体として考えて今後の国土の開発をやっていかなければならない。とかくいままでは、いわゆる都会と農村というものを対立的にものを考えて、都会の人間は都会だけを考えたらいい、農村の人間は農村だけを考えたらいいという、簡単に言うとそういうようなところがあった。それがいわゆる新しい技術革新等から生まれてきた新時代への対応ということがうまくいってない点に原因がある、こう考えておりますので、過疎を促進しておるということは私は決してないと、このように考えております。
  193. 和田静夫

    ○和田静夫君 あなたはそう言われますけれどもね、私は衆議院の運輸委員会の議事録、全部持ってきています。昨年十二月十七日の衆議院運輸委員会においても、実は同様のことを言っておられるのであります。委員側の、国鉄諮問委員会の八十三線二千六百キロ国鉄財政再建推進会議の二千五百キロとそう違わないではないかという指摘に対して、大臣あるいは町田運輸省鉄道監督局長答弁も、私はたいへん詭弁に満ちた答弁であろうと、こういうふうに思います。時間がありませんから、町田さんのやつを読んでみます。「一本一本の線名を持ち合わせているわけではございませんで、大体ランニングコストだけで比較しても、低コストとなるというものは一応見当がつくわけでございます。これが国鉄諮問委員会の個々の線名と一緒になるとか、あるものを一本拾い上げたとか、そういうものではございません。」と、こうなっておる。それならば、私は国鉄は越権行為をしているのかと、実は疑問に思うのであります。廃止が問題になっている各地域の実情を運輸大臣はよもや御存じないとは答弁なされないと思うのでありますが、その地域では、住民がその地域国鉄当局に廃止をしないように陳情を繰り返しています。すると、そこの責任者は、一生懸命に廃止の線で実は説得にかかっているのであります。  一月二十日に、日本社会党の調査団が奥羽本線鷹ノ巣駅におり立ったときに、山岸秋田鉄道管理局長と早坂同局企画室長に迎えられましたが、あそこの阿仁合線と矢島線の廃止を逆陳情されました。そうすると、運輸大臣、こういう現象が起きている以上は、あなたの国鉄全体に対する監督は、全くいまの答弁を信用すれば不行き届きということになりますが、いかがですか。
  194. 原田憲

    国務大臣原田憲君) これは、ほかのところでもそういう話を私は聞かぬわけではございません。視察に行ったときに、その当局者はこれはほかのものにかえるほうがよりよいのではないかということを、先生方にも国鉄の職員が言っておったと、こういうことは聞いておりますが、国鉄の諮問委員会が八十三線廃止ということを答申をしたということでありますから、それに対してどういうことになるか、どうしなければならぬかということについての考え方というものがあってはならないということにはならぬと思います。しかし、私が申し上げておりますように、これは一線一線をやめるということは簡単に国鉄ができることではないのでありまして、このことにつきましては、私が一貫して答弁しておりますことは、先ほども言いましたように、まずかわるべきものがあるということが第一点である。しかも、そのかわりというものがあるとしても、今後のその地方開発に対しては、どうその線はなっていくのかというような点、住民人たちの了解、こういうことを十分得なければ、これを廃止することはいたしませんということを、私は御答弁を常に申し上げておるのでございます。
  195. 和田静夫

    ○和田静夫君 私はここに昭和三十九年度の「鉄道要覧」を持っております。その二二八ページから一四一ページにかけて「線別営業係数」が出ていますが、四十年度版以降それは「鉄道要覧」に載っておりません。国鉄総裁なぜですか。
  196. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 三十九年度まで線別営業係数を載せましたが、実は線別営業係数の計算のしかた等につきましていろいろ問題がございます。ことにいま問題になっております赤字ローカル線の本線に対する寄与のしかた等について、もう少し詳しく検討しなければいかぬというようなことで、四十年度からこれを載せない、もう少し線別にそういった計算を精密にするということを前提として載せることをやめたわけでございます。
  197. 和田静夫

    ○和田静夫君 去る三月十八日の地方行政委員会におきまして、私の質問に答えて、いま副総裁が答えられたと同じような趣旨でありますが、大久保一男運輸省鉄道監督局業務課長はこう述べられております。「収入につきましては、これは非常にこまかい原価計算の手法があるわけでございますけれども、まあ数次にわたりまして学者の御意見等も取り入れまして、逐次完ぺきなものにしつつあるわけでございますが、その発着費と輸送費とに分けまして、それから貨物、旅客別に分けまして、いろいろこまかな計算で成り立っておりまするので、お尋ねの観光客の旅客収入につきましても、発着費を除きまして、輸送費につきましてはキロ程の案分比例によって配分してございます。」、こう述べられている。ということは、まだ原価計算の手法が十分確定しておらないということですね。それなのによく国鉄諮問委員会は具体的に赤字線の名前をあげることができましたね、あるいは国鉄当局はよく運賃値上げなんということをそらぞらしく提案をすることが、原価計算の基礎もないのにできますね。十分確定してない原価計算の上に立つ営業係数に基づいて、これほど政治的影響が大きい赤字線廃止の問題や、運賃値上げの問題を、とにかくあるところでは線名をあげてというような形で打ち出される、そういうことなんですか。
  198. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 諮問委員会の答申をごらんくださったことと存じますが、諮問委員会においてもやはりこの問題は相当長期間にわたって検討されまして、結局いまのコスト計算ということになると、赤字なるがゆえにやめることはおかしいという根本的立場に立っておられます。いままで、四、五年前にやはりこの問題が非常に問題になりましたときは、とにかく計算上赤字だからやめるというふうな議論が非常に多かったのでございますが、そういう立場はおかしい、やはりあくまでも公共企業体として、たとえ赤字であっても運営すべきものがあるのではないか。しかし逆に、すでに鉄道というものは十九世紀から一世紀たっております。したがって、公共機関としての使命が終わったもの、あるいは終わらなくても他のもっと簡易な軽易な交通機関に代替できるもの、これについては交通機関の代替を考えるべきではないか、というのがそもそも諮問委員会の発足の趣旨であると記憶しております。したがって、この八十三線が出てきますもっといろんな過程がございますが、第一の方法といたしましては、まず輸送量から攻める、すなわちその地域の輸送量が、貨物については何百トン、旅客については何千人という一つの輸送の量を算定いたしまして、それが道路の輸送コストと、鉄道の輸送コストとはどっちが安いかと、輸送コストの計算をまず第一にする。そうしますと、大体大ざっぱに見て一万キロずつくらいが、何と申しますか道路のほうがいいという計算が出てまいります。しかし、その次に第二の手段といたしまして、それは一つの輸送量から見た見方、今度は逆に道路の構築費なり、あるいは鉄道の建設費、あるいは維持費というようなものから見ていくべきだということで、それをまた落としてまいりまして、そしてそれが一万キロというもの。それからその一万キロのいま申しました中で、その地域の大体のいままでの発展の過程、いわゆる過疎問題を発生した発展の過程において、この地域は旅客輸送において将来大体どうなるだろうか、あるいは貨物輸送においてどうなるだろう、そうすると、それが経営上どうなるかというふうな推定をいたしまして、一万キロ、一万キロというものをだんだんだんだん片方を大きくして、片方を詰めてまいりまして、最終的に二千六百キロというものが一応抽象的な線として出てまいりました。これは主として、いま申しましたとおり、輸送量並びに代替交通機関というものから一万キロを落として二千六百キロにして、さらにこの二千六百キロの具体的なプランについては、もちろんいま申しましたとおり、まず冬の雪の問題、あるいは沿線の道路の問題というふうな一つの客観的な現実の事態の問題のほかに、将来この地域がたとえば都市の住宅地域になる、あるいは工業地帯になるというふうな将来の発展の可能性を考え、そうして、現実に現時点で一体車が何台あるかとか、どういう人が、たとえば農家に平均何台あるかという相当詳しい検討をいましている最中でございますが、そういった二千六百キロの中で具体的に今度は一線一線ずつ、いま申しましたような客観的な、しかも将来の展望を含めた検討をして、そうしてそれを地域住民と御相談をする、こういう形でもっていくという過程でございまして、単に原価計算上赤だからどうこうという問題で発想したのでないということははっきり御返事申し上げられると思います。
  199. 和田静夫

    ○和田静夫君 たとえば観光地の場合ですけれども、シーズン中は列車が非常に込む、あんなに込んでいるのにほんとうに赤字だろうか。たとえば私の郷里であります能登線なんというのは、たいへんな費用とたいへんな年月をかけて四年前にでき上がったばかりなのに、これをなくしていくのだというようなことが言われれば、住民は率直にそう思いますよね。なるほど観光なんというものはたいへんなものです。そこで、この前もぼくは鉄道監督局業務課長に計算のしかたを聞いたら、この観光周遊券による収入の配分方法について具体的に聞いたら、「いろいろこまかな計算で成り立っておりまするので、」云々と逃げられました。時間があれば、その辺の計算方法の基礎を中心として、ぐっとこの問題は煮詰めなければならぬ問題だと思いますが、残念ながらきょうは時間がたいへん制限されましたからそこまでいきません。あとで国鉄から資料をいただきながらその検討をしてみたいと思いますので、その辺はこの機会に要望をしておきます。  次に、過密問題との関連で——大臣は過疎の問題ばかりを言うと言うのですが、それは過疎を考えるのに過密を考えないということはない。私は過密の問題との関連で、これは全く地方行政の立場から関心を持たざるを得ませんから、まず自治省にお尋ねをしますが、昭和四十一年の十月十一日の参議院地方行政委員会において次のような論議が行なわれていますね。これは質問者側は社会党の加瀬さんです。「法律、政令に基づかないで、具体的に次のような負担が行なわれるということをお認めになりますか。市川市の例でございますが、高架橋に七億負担をする。駅の構内の工事費に対して十五億を負担いたします。それから付帯工事というものに三億四千万円を負担をいたします。四億か五億の負担というなら、これは考えられないことはございませんが、法律にも政令にも基づかないで、建設省と国鉄の協定というもののためにざっと見ても二十四、五億の負担をしなければならない。しかもそれがいま五十六線で二千億にものぼっておるわけでございますから、これは十二分に自治省において国鉄あるいは建設省、その他関係官で、地元が負担でき得る限界でその問題の処理をひとつ御相談をいただきたい。」、こういう一点、こういうふうに聞いたのに対して、当時自治大臣官房参事官をやっていた鎌田さんという人は次のように答えております。「市川市の場合の総武線の費用負担は、私どもが聞いております範囲では、まだ費用負担はきまっておらない、これから国鉄と県、市とで協議をされるということのように伺っております。したがいまして、先ほども申しましたように、私どもといたしましては、県、市の協議の推移を見ながら、先ほどお話になりましたような全国的に四千億、二千五億という話、実は私いま初めて伺って内心びっくりいたしておるわけでございますけれども、そういった関係もございますので、今後地方負担にたえ得るような形でこの問題を解決してまいりたいものだという考え方から、御要望のとおり検討させていただきたいと思う次第でございます。」、こう答えている。私はその後の議論の経過を知りませんのでお尋ねをするものですが、国鉄の高架化に伴う地方負担の問題ですね、総武線の場合のその後の経過は一体どうなったのでございますか。また全国的に見て全工事費幾らのうち地方負担はどのくらいになっていますか。さらにお聞きをしたいのは、昭和四十一年十月十一日のこの地方行政委員会以来、具体的にどの線でどのような地方負担があり、自治省はどのような措置をとられましたか。
  200. 長浜正雄

    説明員(長浜正雄君) 総武線の国鉄複々線化に伴います立体交差の費用負担の件でございますが、実は立体交差に関しまして建設省と国鉄との協定がございまして、これが昭和三十一年に建設省と国鉄との間で結ばれております。これは戦前国鉄鉄道省時代にやはり建設省と鉄道省との間にこういう協定を結んでおりまして、それが国鉄になりまして三十一年にこの負担の割合を変更いたすことにしまして、この協定が結び直されたわけであります。  この協定によりますと、新しく線路をふやしますときに生じます立体交差につきましては全額鉄道側の負担、それから逆に新しく道路をつくります場合の立体交差の費用負担は全額道路側の負担、それから在来あります平面交差になっております踏切、これを立体交差にいたしますときの費用負担は、これは前は鉄道側と道路側とでたしか二分の一ずつだったと思っておりますが、三十一年の協定によりまして、これが鉄道側が三分の一、それから道路側——これは道路側と言いますと道路管理者になろうかと思いますが、道路管理者側が三分の二。ただし、これは一般の線路のところでございまして、鉄道の構内、駅構内、あるいはヤードといったようなところで特殊な事情のありますところはまた別の条文、すなわち、鉄道側が二分の一まで三分の一以上、こういうふうに費用負担をしよう、こういうことで協定が結ばれております。それに従いまして、昭和三十一年以来ずっと続けてまいりまして、立体交差を進めてきておったわけでございますが、最近になりまして、鉄道沿線に沿いまして非常に都市の発達が進められまして、それに伴いまして、平面交差の状況をあちらこちらで立体化を必要とするというような状況になりました。それを一カ所ずつ全部立体交差にするよりも、全部鉄道を上げたほうがいい、いわゆる連続的に高架化にしてしまったほうがいいじゃないかというような場所が全国で相当できてまいりました。それを地方の市なり県なりから国鉄のほうにもあるいは建設省のほうにも連続の立体交差、連続の高架化にしてほしいというようなお話があっちこっちから出てまいりまして、全国合わせますと数十カ所、ざっと見積もりましてその当時で約四千億ぐらいの工事費になろうか、こういう状況になったわけであります。そうしますと、地元の都市の発展のためにはやはり高架にしなければならぬということはわかるわけでございますけれども、四千億の内訳を考えてみますと、鉄道側と道路管理者側との費用負担をざっと勘定しますと、鉄道がやはり複線化しなければならぬような場所も相当ありますので、大体半々ぐらいになるような大ざっぱな勘定になります。鉄道側が二千億の負担をする、道路側が二千億の負担をするというようなかっこうになるわけでございますが、現在の国鉄の情勢から言いますと、とてもそれだけの費用負担にたえ得ないというような、いわゆるこれは都市改造のための費用であるから、都市改造的な費用としてそれを負担してもらいたい、こういうような話になりました。それで建設省と運輸省国鉄とが相談をいたしまして、そういう連続の高架をする場合の費用負担の方式を考えよう、こういうことにいたしました。いま最終の詰めをしておる段階で、原則的にその意見を一致いたしまして、現時点では、いま考えておりますのは、新しく鉄道をふやす場合の費用は、これはその高架に要する費用は全額国鉄の費用にする。それから在来の線路、たとえば総武線でいいますと、在来の総武線を高架にいたします費用につきましては、いままではこれが折半負担になっておりましたけれども、これを鉄道側が一割、道路管理者側が九割、こういうことにしよう。そのかわりに、在来はこれを建設省側といいますか、道路管理者側からいいますと、個々の非常に雑多な道路がございまして、雑多というと非常に失礼でございますが、非常にたくさん道路がございまして、なかなか国庫負担の対象にならない道路があったようでございますが、これらを、先生さいぜんお話がありましたように、地元の費用負担が非常に多過ぎるというようなことで、これを全部一括して高架にいたします場合には、都市計画事業としてやろう、こういうふうに建設省のほうでいまお考えでございます。そうなりますと、費用負担の関係が在来よりも少なくて済む、こういうことになっております。そういうことで総武線につきましても、一時市川市あるいは船橋市等非常に地元の市町村の負担が多大であるということで、非常に難航しておったんでございますが、この点につきまして、そういう、いま話をいたしましたような趣旨でもって建設省と県と国鉄と、それから地元の市町村とお話し合いをいたしまして、大体の費用負担の割合をきめて、いまスムーズに仕事を進められる段階に至っております。
  201. 和田静夫

    ○和田静夫君 たいへん時間がかかり過ぎるからあれですが、いま言われたように、私は非常に疑問に思ったのは、たとえば道路側の工事費が三分の二、鉄道側が三分の一という建国協定を私きょうここに持っていますが、道路側、鉄道側、どちらが原因者であってもそうだというふうにいままで解釈されてきた、それらのものについても何か改善をされる協議をしている、近いうちにはそういう形にしたいと、こういうふうなことのようでありますね。そういうふうに理解をしていいですか。そうすればこの部分についてはやめるんですがね。なぜならば、たとえば費用負担の場合でも、国鉄側が原因者である場合のことはかなり明確になっているんですよ。ところが道路側が原因者の場合には、別途協議するとかというような形になっている。この辺のことは十分に考えなければならないし、いま言われたように都市計画事業との関連でたいへんな問題が起こると思いますので、それらのことを総括的に含んでやっているというふうに理解をしておいていいんですか。簡単でけっこうですが。
  202. 長浜正雄

    説明員(長浜正雄君) 国鉄側の原因、あるいは道路側の原因のいかんを問わず、これを都市計画事業としていたしますので同じことだろう、お説のとおりでございます。
  203. 和田静夫

    ○和田静夫君 ただ一言、言っておきたいのは、この建国協定の附則第一条は「この協定は、新たに道路と鉄道との交差に関する立法措置が行なわれるまでの間における暫定の協定とする」とありますよね、ありましょう。一体、私は立法措置をいつ行なうんだろうということをこの協定を見て思ったんです。三十一年ですよ。これは四十四年ですよ。これだけの間放置されておいて、具体的に地方自治体にはたいへんな負担がかかっている、そういう問題について、一体どうされるのか。これは自治省の側よりもむしろ、どっちですか——運輸大臣、どうしてくれますか。
  204. 原田憲

    国務大臣原田憲君) これは国鉄がいまのような時代でないときに、おっしゃったように国鉄側がうんと言えばできるというような状態だった。いま状態が変わってきまして、いま加瀬さんのお話が出ましたが、加瀬さんともきのう、これは正式な質疑でなしに、済んだあと、みんなで話をしておったんですけれども、現在の国鉄側にはそれだけの、いま長浜君が言いましたように、財政的な余裕がないというところから、これをどうしたらいいかということで、建国協定ということで三十一年からやっていたものが、いま四十四年になりますが、されたと思います。これらの点につきましては、自治省と建設省とよく相談をいたしまして、この事業が、いまいわゆる都市計画事業となったときに初めて出てくるという動き以外に、それ以外にまだ問題がある、こういう点につきまして、よく目的達成のために私も今後努力をいたしたいと思います。
  205. 和田静夫

    ○和田静夫君 去る三月十八日の衆議院の運輸委員会で、菅野経済企画庁長官は、これは何べんも問題になりましたから読みませんが、「公共料金はこの際、全部ストップしたい、しかも、消費者物価の目標を五%とするという限りにおいては、どうしても鉄道料金もひとつ値上げをストップしたいという私たち考え方でありまして、」、「鉄道料金の値上げについては、最後まで私は反対し続けたのであります。」、こう答弁をなされた。ところで、野田自治大臣、あなたは今国会において、私は反対をしましたが、地方自治法の一部を改正する法律案を通過、成立させました。その中で、あえてあなたは、地方公共団体が行なうべき事務の中に消費者の保護ということをつけ加えたのであります。消費者の保護という観点から、自治大臣は今回の国鉄運賃値上げについてどのように考え、また閣議においてどのような態度をとられましたか。
  206. 野田武夫

    国務大臣(野田武夫君) 消費者生活の保護、これは問題は物価の問題であります。これは私も、交通関係の閣僚会議がございまして、経済企画庁長官がお答えしたとおり、いわゆる国鉄運賃値上げに対しては極力押えたいということでございます。私も同様にできるだけ国鉄運賃値上げは避けたい、こういうことで、いわゆるこれが私どもの立場としてやはり消費者生活の保護とつながるものだと、こう思っております。
  207. 和田静夫

    ○和田静夫君 菅野経済企画庁長官も、閣議では最後まで反対をされた、そうして、いま野田自治大臣もまた消費者保護という立場から、物価の問題とのかね合いで、これについては反対をされた。しかしながら通されて、こういう提案になった。衆議院は議会民主主義の形式というものを全く打ち破って強行採決をした。参議院でも、ああいうような形で質疑打ち切りの強行をするばかげたことが起こる。こういう状態をながめた場合に、私はひょっと思うのでありますが、どうです、経済企画庁長官も野田自治大臣も、これについては本質的には反対だ、かつて英国のアトリー内閣のときに、ベバン労働大臣とかあるいは今日の総理ウィルソンがアトリー内閣から辞職をしたような——社会保障問題の意見が食い違ったときには辞職をした、そうして国民の前にみずからの政治姿勢を明らかにしたと同様に、菅野経済企画庁長官、野田自治大臣は、佐藤内閣をおやめになる、そういう政治姿勢を、みずからの心情を通すという意味で示されるのが当然じゃないかと思うんですが、いかがですか。
  208. 野田武夫

    国務大臣(野田武夫君) 先ほどお答えしたとおり、国鉄運賃値上げは物価に影響するという面において、できるだけ避けたい、これは先ほどお答えしたとおりでございますが、国鉄財政事情、この再建、これもまた大きな地域住民の生活につながる問題であります。したがって、その物価の値上げの率と申しますか、この運賃値上げにおいて、いろいろ経済企画庁で本年度における物価上昇率というものをいろいろ説明をいたしました。私はまあ主管でございませんから詳しく内容をここでお答えすることは避けますが、この国鉄運賃値上げだけで大きな——物価値上げの要因の一つとなることは間違いないが、大きな影響はない、またその他のことに関連して物価が上がらないようないろんな方策をとる、こういうことが経済企画庁長官から説明があったのであります。そういう意味におきまして、閣議においてこの問題はやむを得ない、値上げに踏み切ろうということになった。これがいわゆる今日までの経過でございます。
  209. 和田静夫

    ○和田静夫君 まあたいへん信頼をする野田自治大臣ですから、みずからの政治節操に反してまで内閣にとどまることは私は必要ないと思うのだ。経済企画庁長官もいらっしゃったら、彼は経済学専門家の立場でもっと彼の政治的姿勢を正す、そのために佐藤内閣が解散をしなければならぬという事態になってもいいじゃありませんか。国民国鉄運賃の問題を通じて物価政策で信を問う、そういうことが必要なんだと思うのです。それぐらいの気骨をあなたは官僚出身じゃないのですからやっぱり持って、この民主主義の危機を救う、そのくらいの気概はお持ちになっていただきたいと、そういうふうに思います。  石田国鉄総裁は、去る三月三十一日の参議院予算委員会第三分科会において、「物価の上に影響があるということでありまするが、私から言わせれば、それは物価に対しては〇・九%の影響はあると、こういうのですが、国鉄はこれによって輸送力がふえるということになれば、物資の流通というものは非常に迅速に円滑にいくというふうになり、これは私は物資の需要、供給の上において相当プラスになるのじゃないか、」、こういうふうにまあ答弁をされているのです。この連合審査の、いわゆる混乱した前の初日の質問でも、菅野経済企画庁長官はそれらのことを含みながら答弁をされておられますが、菅野経済企画庁長官石田国鉄総裁のそれぞれの答弁を勘案をしてみますと、今度の国鉄運賃値上げによって、そのまま計算されれば〇・九%の物価が上昇する、国鉄の輸送力増強による流通費低減によって〇・二%程度の上昇率で済む、そういうふうなことですか。いわゆる流通費低減による経済効果は一体そんなに早くあらわれるのでしょうか。この〇・九%と〇・二%という数字が出てきた根拠というのを、そういう意味で私は知らせていただきたい。
  210. 石田禮助

    説明員石田禮助君) それは私の言い間違いかもしれませんが、私の考えは〇・九じゃなくて〇・二でございます。それで、それがどうも私の——私の言い違いとしておきます。ですが、それはもしも〇・九になってたら〇・二に直さなければならぬ、こういうことです。
  211. 和田静夫

    ○和田静夫君 その出てきた根拠というのはどういうことになりますか。
  212. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 〇・二ということは、私は自分で計算したのじゃなくて企画庁の計算をそのままうのみにして信じたわけであります。
  213. 和田静夫

    ○和田静夫君 簡単に〇・何%とかいう物価上昇率がはじき出されていますけれども、私は今日の物価問題にはたいへんむずかしい問題がたくさん含まれていると思います。いろいろ学者の議論を聞いてみましてもあるいは書かれたものを読んでみましても、私自身わからない点は非常に多い。勉強して確信が持てる一定の結論が出ましたならば、物価問題だけで私は特別の議論をしてみるつもりでありますが、きわめて常識的に言い得ることは、物価は運賃の変動に敏感であり、累積的な影響を及ぼす場合が多いということは間違いありません。短期的考察において、国鉄運賃値上げが中間的過程で吸収され得るのか、あるいは消費者物価に影響をするのかは、私は一にかかってそのときどきの一般市況にかかわることだろうと、こう思う。そうするといま総裁が言われましたが、経済企画庁長官答弁でもはじき出された〇・二という数字が、今回の国鉄運賃値上げに対する国民的憤激をそらす政治的な効果をねらったものであって、それほど客観的根拠を持つものではない。私はむずかしい議論をしなくてもそうだと思うのです。  私は過日、この参議院の決算委員会で、佐藤総理大臣に対して、経済社会発展計画に基づいて各省ごとにつくられているさまざまな長期計画が、物価騰貴に伴う行政効率の低下によって改定を余儀なくされている事実を指摘をしました。佐藤総理もそれを認めざるを得ませんでした。その結果、経済社会発展計画自体改定せざるを得なくなってきていることをそのときも指摘したのでありますが、国鉄においてもそうなんですね。過去二回にわたって投資計画をほとんど実施しないままに、運輸大臣、改定していますよ。現行第三次長期計画でさえ、すでに実質的に変更を余儀なくされていますよね。今度の国鉄財政再建計画が、単なる財政再建といった性質のものではなくて、現行制度の全面的再編成と、国鉄体質の抜本的改革を打ち出した計画であることからそのことは私は明らかだろうと、こう思うのですね。それは計画の当初に予想をされた自己資金を結果的には捻出することができない、計画そのものを完遂することができなかった結果であるといわれております。そこにはまずもって用地費を中心とする物価騰貴が重要な原因の一つとなっていることは明らかであります。そうすると、このような当てにならない長期計画によって、何%かの流通費低減を前提にしてはじき出された〇・二%などという数字を、いま総裁は、向こうの企画庁を信用したのだ、こう言われたのですが、だれも信用できないのじゃないか、こういうふうに思うのです。ともあれ第一次五カ年計画、第二次五カ年計画、第三次長期計画、計画改定のたびに運賃値上げが行なわれたのですが、収入の伸びが費用の増大におくれ、そのため投資に充てるべき自己資金が枯渇をして、借り入れ金への依存を高め、その元利償還が財政を圧迫するという悪循環を招いてきたことはすでに何度も指摘をしてきたところです。  日本社会党は、こうしたことを前提とした上で、政府案に対する対案として、日本国有鉄道鉄道施設の整備に関する特別措置法案を今国会に提出をしました。二月十九日の衆議院運輸委員会で、久保三郎委員が、提案理由の説明を行なっております。しかし、これに対して、政府・与党のほうからは何ら積極的な発言がありませんでした。三月二十日の衆議院の運輸委員会大蔵委員会連合審査会で、提案者の久保委員はそのことを嘆いて述べています。ということは、私は今回の運賃値上げは、その他の手段を選択する余地がないという、そういう意味で必然的なものではなくて、政府・与党としての政策的な選択である、そういうふうに私は考えますが、運輸大臣、そう考えてよろしいですか。
  214. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 政策的選択ということは何をいっておられるのか、私よく受け取りにくいのでありますが、先ほどの渡辺さんの最後の質問に対して私答えたのでございます。いわゆる国鉄財政を再建するための方法手段ということについて、社会党と自民党と、自民党政府の出しておる案と相違がある、そういう違いであるなら、この選択を自由民主党の政府が、いま私どもが提案をしておることを選んだにすぎないじゃないか、こうおっしゃっておるとするならば、私どもは現在、政治の責任の座にありまして、今日、昭和五十三年までの長期展望に立っておりますが、四十四年度予算というものと現実にからんで、この問題を具体的に実行することが最もよい方法であると思う。こういう点で国民の前に御審議を願っておるということは間違いのないことでございます。
  215. 和田静夫

    ○和田静夫君 さっきも出ましたが、国鉄は全額政府出資の法人ですが、現在の出資金は三兆円近い資産規模に対してわずかに八十九億円、四十年度の場合資産対出資金比率は〇・四%にしか当たっていません。他の交通関係の政府出資の事業、たとえば日本道路公団一〇%でしょう、首都高速道路公団六%でしょう、日本航空一四%と比較しても著しく低いのです。だれでも疑問に思います。四十二年に国鉄は九百億円の政府出資を要求して拒否されました。四十三年にようやく五十四億円の利子払いのための補助金を獲得しました。四十四年度はこの分は百十億円の要求に対して七十一億円となり、別に四十三年度末の長期債務のうち、特別会計分六千三百四十二億円の利子四百八億円について、国鉄財政再建債として十年据え置き二十年償還の借り入れ金を受けて、その利子額十三億円を一般会計から補給してもらうこととなっています。前の七十一億円と合わせて、一般会計からの補助は八十四億円です。そこで、旅客運賃一五%値上げによる増収見込み九百十億円と同額だけ財政融資を、たとえば財政再建債と同一条件でふやし、その利子額年利六・五%とすれば四十四年度は約五十九億円を一般会計から補給すれば、運賃を上げることなくして、四十四年度の工事資金三千七百八十億円の捻出は可能なのだと、私が計算すればこういうふうになります。私は、この程度の国家助成は、一般会計六兆七千三百九十五億円、財政計画三兆七百七十億円という予算規模から見て、十分可能だと思います。ましてや、これなどは西欧諸国と比較すると、全く取るに足らない額でしかありません。ここに私は雑誌「国有鉄道」を持ってまいりました。その二百三十一号における手島典男さんというのですか、国鉄外務部次長の報告によっても、西独、英、仏の政府は、近年二千億ないし三千億円にのぼる財政援助を鉄道に与えることを余儀なくされているというではありませんか。以上、私はそういう意味で今回の値上げをあえて政策的選択と呼ぶのです。  ところで、国鉄財政再建推進会議による「国鉄財政再建推進会議意見書」ですが、その八ページを読んでみました。「いわゆる公共負担については、できる限り、受益者負担原則によりこれを是正する。」とありますが、運輸大臣、この受益者負担原則とは、一体どういうことなのでありますか。だれが打ち立てた原則であり、どういう場合に適用される原則なのですか、わかりやすく御説明をしてください。
  216. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 政府委員から答弁させます。不満足であれば私から答弁をいたします。
  217. 町田直

    政府委員町田直君) 国鉄財政再建推進会議の意見書の内容のことでございますので、私からひとまずお答えいたします。  ここで受益者負担といっておりますのは、ことばの使い方が若干不正確かと思いますけれども、大体利用者負担、こういう趣旨でございます。
  218. 和田静夫

    ○和田静夫君 その利用者負担という答弁が出るということは初めから予測できました。これはごまかしをやっちゃいけないですよ。利用者負担という意味は一体何ですか。四十三年三月、物価安定推進会議の提言を見ますと、「公益事業の投資資金を調達する手段として料金引き上げが必要だと主張する向きもあるが、本来料金の決定は、損益勘定に基づく原価主義により算定さるべきもので、設備投資はできるだけ料金引き上げ以外の資金調達、たとえば受益者負担金ほか長期低利借り入れ、出資などによるべきである。」とあります。あなたは受益者負担受益者負担と言っているが言いかえただけです。そんなことじゃありません。ここで使われている受益者負担金の概念の中には、明らかに運賃を支払う一般国民は含まれておりませんよ、いま読み上げたとおり。同じ政府の諮問機関でも一つのことばの使い方がこんなにも違う、そういうことでいいのですか。
  219. 町田直

    政府委員町田直君) 同じ政府の諮問委員会でことばが違うのはおかしいじゃないか、こういう御指摘でありますが、ここでいっている受益者というのは利用者負担するという趣旨であると思うのであります。
  220. 和田静夫

    ○和田静夫君 時間がなくてこれ以上論議しているひまがありませんが、そのときどきのいわゆる官僚的手法で新しいことばを使ってごまかしていくという行き方でなくて、もっとまじめに論議を煮詰めるということが国会の場では必要だと思います。この場をのがれてどうこうなんという筋合いでものごとを考えることは誤りだと思います。九百十億円の値上げ分を負担する現在の旅客は、厳密に言うと昭和四十四年度三千七百八十億円の投資によってつくられる輸送設備の受益者ではありません。なぜならば、それは建設に数年を要します。その完成後は何十年という長期にわたって使用されるから、私はそう思います。したがって、その資本費用を運賃として現在の旅客に負担させることは私は受益者負担原則からいっても不合理だと思いますが、運輸大臣いかがですか。
  221. 原田憲

    国務大臣原田憲君) たびたび御指摘を受けるところでありまして、現在の利用者が将来の問題について値上げをされるというふうなことは理屈に合わぬじゃないかというお問いだろうと思いますが、その点については確かに御意見のあるところもあろうと思います。したがってそういうときには、たとえば道路の場合には、公債制度というものは将来の利益を受ける人たちが支払いをしていくというたてまえをとるべきだということで取り入れられる政策であります。鉄道の場合には、少なくともたくさんの投資を必要といたしますので、これは借り入れ金によってまかなっていくということは一つの方法としてとられているのであります。いま一番御不満な点は、利用者という名前でありながら、事実は大都市近郊においては、少しの利用者というよりもかえって迷惑を受けているような状態であって、どうして運賃値上げということをされるのか、こういうことになろうかと思うのでありますが、この点につきましては国鉄経営というものが全国一本の総合原価主義をとっているというところから、確かに御指摘のように個々の黒字でもってほとんど人の乗らないところの線の分まで負担をしているということになっておりますので、ひとつ私はごしんぼう願わなければならない点があるのじゃないかと考えるのです。なおその点につきましても、私どもは今度の政策の中で、いわゆる国鉄運賃だけの値上げということでなしに、この新しい再建のための措置法をお願いしているということはここにもあるわけであります。
  222. 和田静夫

    ○和田静夫君 時間がありませんが、これはあとで、時間がないから、資料として国鉄当局に求めます。それは「鉄道要覧」の四十二年度の一三七ページ、「運賃及び運送原価」、これの年度は四十年度までになっている。ほかのところのものは全部四十一年、四十二年で出ているが、ここだけが四十年度で打ち切られている。この理由は私は、たいへんがえんずることができないのであります。この辺、出してもらいたい。そして、なぜ四十年度どまりにこの要覧はされたかということが一つ。さらに、全運輸収入に占める貨物収入の割合、これは四十一年度、四十二年度まで示してもらいたい。それから、いまの運賃値上げの、もし改正後は何%になると一体踏んでいるのか。そういう資料をここに出していただきたい。よろしいですね。  私はずっと要覧を見ながら、全くしろうとながら、運輸収入に占める貨物運輸収入の割合が、この表の方式に従って計算すると著しく低くなる。旅客輸送の利益による貨物輸送欠損補てんという方式への極端な傾斜が国民の批判を一目で誘発することになることをおそれるがゆえに、私はこの部分だけは実はあなた方のほうで資料に載せられなかった、そういうふうに考えざるを得ませんよ、ここだけ落としてあるのは。そう思うのです。  それをもう少し突っ込みたいのですが、たいへんあれですが、たとえば縦軸にずっと伸び率を引いて、横軸に年度をとって、そして実質国民所得と貨物輸送量の推移を示すカーブを描いてみたのですよ。これは当然やられたと思うのですよ。そうしたらどうなったと思いますか。両方は平行しますよ。ということは、貨物輸送は景気変動に敏感に反応することを示しています。一がいに運賃は反応するとは言えないのではないか。四二ページを見てみると、そのことはまた明確なんです。たとえば、この四二ページに「鉄道貨物運輸成績」、三十二年度、ここで一三%上がったのですね。そのときの運賃の指数は八九で、次の三十三年は八四に下がりますが、三十四年には九三で、三十五年は一〇〇になっています。あるいは三十六年になると今度は一二%上がった、一二三という指数が一二〇に下がったと思ったら、すぐ追い越して一二四と回復しています。四十二年度一二・三%上がって一三〇が一三九という、この数字は明確に私はそのことを物語っていると思うのです。時間がないですからその論争を私はいまできませんが、ともあれ、さっきからの御答弁を聞いていても、トラックの進出によりまして鉄道貨物の輸送が競争にさらされているとはいえ、輸送トン数、距離の上においては、これ以上は鉄道が有利という分岐点があるはずです。少なくとも、その分岐点についての貨物輸送考え方くらいは出すべきだと私は思うのです。  また、輸送速度とか有効時間帯輸送とか運賃の面でない、その他のサービスの面でトラックにかなわない面がある。しかし、そのために国鉄は、物資物適合輸送方式とか、高速輸送体系とかを開発しているのではないですか。旅客運賃のみを引き上げて、貨物運賃を据え置きにする理由が私はそういう意味では、どうしても理解することができません。しかし、私は、ただ貨物運賃を引き上げろと言うつもりはもちろんありません。現行差別賃率制度が国鉄貨物運輸市場の独占的状況を前提としたものであって、今日代替的運送手段による競争にさらされ始めたために、さまざまな困難な問題に直面していること、それも私は知っております。しかしこれは鉄道が常に直面をしなければならなかった、ある意味ではいまさらの話ではなくて、歴史的な宿命だったはずです。欧米諸国においては、鉄道相互間の競争及び鉄道と自動車、鉄道と水運との間の競争が激しくなってくるにつれて、普通賃率の例外として、特に品目や適用範囲を限定して、これを割り引きする特定賃率の制度が設けられて、貨物市場の確保につとめることが一般的に、御承知のとおり、なっております。アメリカにおいては今次大戦前にはあの車が扱う運送貨物の七五%がこの特定賃率の適用を受けていたといわれます。わが国でも昭和五年以降戦時まで、出貨誘致という名目で賃率の割引きが行なわれてきました。また今次大戦後には、たとえばイギリスにおいては原則として貨物の積載効率主義に基づいて最高賃率を公定するだけとして、その額の範囲内で鉄道が自由に運賃を割り引きし得るようにするという、いわゆる自由賃率主義を採用したことさえあります。国鉄当局なり政府は、綿密な市場調査に基づいて賃率構成の検討まで十分に行なった上で今回の値上げの際に貨物運賃は据え置くという結論を出したのかどうか、たいへん私は疑問に思わざるを得ません。その辺だけは答弁をしておいてもらいたいのです。
  223. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) ただいま先生のおっしゃったとおり、国鉄貨物運賃制度は、御存じのとおり、従価等級制、きわめて古い、十九世紀の制度をそのまま踏襲いたしております。これは結局三級以下の生活必需物資を安くし、一級、二級の高級貨物運賃を高くしておるという従価等級運賃制度です。これは非常に古い。それだからこそ国鉄貨物収入がふるわない、これは先生のおっしゃったとおりでございます。今回の貨物運賃をどうするかにつきましては、その従価等級制度そのものを直すべきだ、むしろトラックや船のように容積あるいは形状等によって客観的な情勢だけでもって運賃を算出すべきだということを考えましたけれども、一昨年貨物運賃を引き上げたばかりでございますので、もうしばらく一般の市場の情勢を見、モータリゼーションの情勢を見た上で、ということで一応品目別に詳細に数字的に検討はいたしておりますが、どういたしましても一級、二級の貨物運賃を一割上げれば輸送量が減るという結論が出てまいります。これは非常に品目別に相当詳細にやりました結果でございまして、決して勘でやったわけではございません。しかし、いま先生のおっしゃいましたとおり、いまの運賃制度をもう維持することができなくなるということは確かでございますので、いずれ制度的に改定をお願いすることが必ずくるということを考えております。
  224. 和田静夫

    ○和田静夫君 質問はまだ残っておりますけれども、いまの御答弁にありましたように、検討をされましたならば、検討過程の資料でけっこうですから、ひとつ検討過程の資料を提示していただきたいと思います。私のほうでも勉強さしてもらいたい。それはよろしいですね。
  225. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 原田君。
  226. 原田立

    原田立君 「国鉄財政再建推進会議意見書」という中に、「国鉄の市町村納付金は、再建期間中、大巾に軽減する。」と、こういうふうにしろというような一項があるわけでありますが、この精神を受けて今回二十五億円減額されたものと思うのでありますが、この処置は意見書によると、十年間の再建期間中全部に通ずるようなふうな文章に見えるのですが、その点はいかがですか。
  227. 町田直

    政府委員町田直君) 推進会議の意見書で述べております内容は、十年間続くというふうに考えております。
  228. 原田立

    原田立君 自治大臣にお伺いしますけれども、この二十五億円減額ということは、地方財政の充実という面から見れば、まことに好ましくない、こういう考えは私も持っておりましたし、たしか大臣もそういうような答弁地方行政委員会であったはずなんですが、いまの説明によると、十年間これは当てはまるような意味なんだという答弁なんだけれども、その点は自治当局は了解されたことなんですか。
  229. 降矢敬義

    政府委員(降矢敬義君) 今年度の納付金の特例につきましては、この法律の附則の十六項で四十年四月一日から四十七年三月三十一日までに取得した償却資産について特別の軽減措置を講ずるということでございます。
  230. 原田立

    原田立君 問題は、この国鉄財政再建推進会議の計画というものが十年間ということなんですよね、だから、その十年間までずっとこういくのかどうか、その点の問題を聞いている。
  231. 町田直

    政府委員町田直君) 推進会議の意見書では十年間再建期間中大幅な軽減をする、こういう意見書でございますが、それにのっとりまして運輸省と自治省、国鉄といろいろ御相談をいたしました結果、今回の法律改正の内容になったわけでございます。したがいまして、推進会議の意見書と若干内容は違っておるということは申し上げられると思います。
  232. 原田立

    原田立君 運輸大臣運輸省のほうは払うのがこれだけ減ったんだから喜んでいるんだろうと思うのだけれども運輸省はこの十年間先々のことまで希望するのか、そういうふうな話し合いになったのか、そこのところはどうですか。
  233. 原田憲

    国務大臣原田憲君) この国鉄納付金の問題につきましては、言わなくてもいいかわかりませんが、私はいま運輸大臣をしておりますが、運輸大臣に就任する前には、いま原田さんは運輸省のほうからいうと、これは納めないほうがいいということを言っておられますが、私は地方はあり余りでいるわけじゃございませんから、国鉄の納付金が入ってこないということは困るという立場をとっておりまして、運輸大臣に就任いたしまして実は弱ったわけでありますが、そこで常日ごろ地方財政という面についても私はそれはそれなりに心配をいたしておりましたので、国鉄の立場も自治大臣とよく話し合いましたところ、非常に御了解を得まして今回の措置がとられたわけでございます。したがいまして、この推進会議の意見書には、いま御指摘のように今後十年の先を見通した意見を出してもらっておりますので、できることならば今後この納付金の問題につきましてもできるだけ御措置を願いたいと思っておりますが、それはいま政府委員からお答えもございましたように、その時点でまたひとつよく御懇談を申し上げ、処置をいたしていきたい、このように考えております。
  234. 原田立

    原田立君 そうすると、運輸大臣はもともとこういう減額するようなことはやらないほうがいい、そういう考えだったのが、運輸大臣になって考え方が変わった、こういうような御答弁でありました。いまのところ地方財政の好転論だなんというようなことがいわれて、あちこち財政を削るような話があるんでありますけれども、本質的には私たちはそういうことは考えない、まだまだ逼迫した状態であるということを考えているわけでありますが、問題は、今回の二十五億円のやつは通っちゃったんだからやむを得ないとして、あとあとこれが続くのかどうかという点が一つの焦点になる。運輸大臣は今後も新しい時点で十分考えてもらいたいと希望しているようだけれども、自治大臣どうですか。
  235. 野田武夫

    国務大臣(野田武夫君) いま原田さん御指摘のように地方財政の好転論がありますが、ややきざしが見えている程度で決して地方財政というものは豊かではない、これは御承知のとおり一貫してお答えしております。今度の二十五億円の納付税の減額でございますが、これもしばしばお答えいたしておりますからその内容は省きますが、これから十年間という運輸省国鉄の御希望でございましょうが、この点につきましては、ただいま原田運輸大臣が常に地方財政に対して非常な関心を持っていただいておりまして、そういうことでございますから、いまの国鉄財政計画からすれば、そういう希望があるということは私はまあ一応立場をかえて申しますと考えられますが、やはり私どもはあくまでも地方財政を守るという立場でございますから、その時点において地方財政の内容その他を勘案しまして私どもの態度をきめたい、こう考えております。
  236. 原田立

    原田立君 どうもおしまいのほうがはっきりしないんですけれども、要するに、今回とられた処置が今後も引き続き行なわれるのかどうか、今回だけで終止符を打つつもりなのかどうか、そういうことをさっきから聞いているわけなんです。
  237. 野田武夫

    国務大臣(野田武夫君) 国鉄再建計画の推移にもよりますが、また基本的には、私どもとしては地方財政の内容を見なくちゃなりませんが、先ほどお答え申し上げましたとおり、その時点における地方財政の内容その他を考慮して、その時点においてのわれわれの態度をきめたい、こう考えております。
  238. 原田立

    原田立君 じゃ新しい時点で考えるということであって、今回のことをもって終止符を打つという考えじゃないわけですね。そういうふうに理解いたしましょう。  それから今回のように国鉄値上げが行なわれると、私鉄及び私バス等に対する値上げの反響ということはかなり大きなものが出るのじゃないか、こう思うのであります。それで地方自治体としては、地方公営企業として交通事業をやっているのでありますけれども、この問題のはね返りもまたかなり大きなものがあるんじゃないか。こういうふうに憂慮するわけですけれども大臣そういう心配はありませんか。
  239. 野田武夫

    国務大臣(野田武夫君) 地方公営企業の実態というものは非常に困難な状態でございますから、今後私鉄バスに対する運輸当局のお考え方に同調してやるようなことは私ども考えておりませんが、これは私どもやはり現時点における地方公営企業の実態を把握して独自の見解で処置したい、こう思っております。
  240. 原田立

    原田立君 先ほど和田委員からも指摘のあったところでありますけれども赤字ローカル線を廃止する問題です。そういうふうなことが巷間伝えられておりますし、またそういう動きがありますが、具体的にどういうふうな内容になるのか、この点お教え願いたい。
  241. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 赤字線の問題というのは、結局これも初めからわかっておったんですが、地方開発のために輸送事業に対して過大な輸送力を持って、初めから損ということはわかっておったんですが、さっきから申しますように、国鉄というものはその時代には財政きわめて豊かなんで多少の損害なんというのは平気なんで、むしろ盛んに赤字線というものをつくったわけであります。その後道路の発達、自動車の発達によって、せっかくつくった鉄道というものを一向地方の人というものが利用してくれぬ。ここにおいて収入は減るし、支出がふえる。損というものは大きくなってしまった。国鉄としてはとてもたえ切れぬ。独立採算で経営している国鉄としてはとてもやり切れなくなってしまった。どういうことになるか、こういうことなんでございますが、しかし、これはまあ輸送需要は減ったとはいえ、やはり地方においてはこれを利用しておる。ですからして、利用している利用者に対してそれをほうっておいて鉄道をひっぺがすということはできないのでありまして、輸送需要に適応した輸送網をもってしよう、結局それによって地方の人は同じく輸送の便というものを受けるし、国鉄としてはそれによって財政上に非常に助かる。こういうことで、現在の鉄道にかわるのは現在の輸送需要に適応した輸送網をもってする。まず第一には、バスをもってするとか、自動車をもってするとかというようなこと。そのうちで現在赤字線を最もよく利用しているのは通勤・通学者。これはバスに関する限りは、通勤割引きというものが少なくなるために非常な負担になる。こういうものに対してはひとつ当局の考慮をしていくべきものじゃないか。さらにこの問題につきましては、国鉄としては独自の調査を十分にやりまするが、しかし、それについてはこれは間違いがあるかもしれませんが、これはよく地方に行って、地方人たちとひざを交えてほんとうに検討した上で、地方人たちの御納得を得た上で初めて実行する。こういうようなことでして、いまからすぐに地方へ行って鉄道ひっぺがす、こういうようなことではないのであります。
  242. 原田立

    原田立君 総裁ちょっと一言、いまのお話の中でお聞きしておきたいのですが、公共企業、独立採算制云々というような話もございましたけれども国鉄の場合には公共企業である、公共企業体である、独立採算制ということを言っておりましたけれども、それは企業体ということを中心に考えるのだという反語だろうと思うのだけれども国鉄においてはやはり公共性ということを強くする、そのためのあらゆる財政的な援助というものは、もっと国は十分行なうべきである。こういうところは総裁かねての持論だから、その点は間違いないでしょうね。
  243. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 御承知のとおり国鉄公共企業体、つまり仕事は公共であり、これを経営するのに企業的精神をもってする、こういうことなんでありまするが、地方にその線を引いたことにつきましては全く公共精神の発露でありますが、しかし、一方に独立採算というちゃんとワクがはまっておるということで、損が幾ら出てもいいと、こういうわけじゃない。ちゃんとやはり収支というものは合わせなければならぬ。一時的には脱線することはありますが、大体においてはやはりちゃんと合わせていかなければならぬと思います。こういうことでありますので、それで地方線の問題なんかについても、これをやはり合理化しょうということは、何も足を取っちゃおう、こういうことでなくて、現在の鉄道なんというものは、これは大きなげたをはいているようなものだ。もう少し便利なハンディなぞうりなりくつなりにかえようということで、私は、はいてみればなるほどこのほうがよかったというような例はたくさんあると思うのです。  さらにもう一つ申し上げておかなければならぬのは、地方線の、つまり損の負担というものは結局一般の利用者負担になっている、これはひとつお考え願いたい。だからして地方の人も、足をふやしてくれるというなら、これにひとつ御満足願って、げたがくつにかわるかぞうりにかわるか知りませんが、とにかくはきものというものは私どもが提供するわけでありますからして、その点をよほどひとつよくお考えくださって、鉄道というものにさほどの執着を持たれないで、つまり自動車なりバスなりにひとつお乗り願う、こういうふうにお願いする以外にないと思っています。
  244. 原田立

    原田立君 過疎地域は廃止されるうき目が強いのでありますけれども地域住民は、ただ一つの足の機関を奪われては、日常生活にたいへん困るわけであります。いま総裁は、もう少しスマートになれというようなお話でありましたけれども、ここでの議論ならけっこうですけれども、実際問題ではなかなかそういうことは実現不可能ですよ。私たちはこういう過疎地域の発展のためにも、地域住民福祉向上のためにも、廃止はしないようにすべきではないか。要するに公共性を重んじていくというそういう精神で、一部こういう赤字ローカル線等があっても、それは国鉄全体の中で抱きかかえていくようなそういうふうな姿勢をもって臨むべきではないのか、そうすることが過疎地域住民の福祉にもつながるのだと、こう私は思うのです。その点いかがですか。
  245. 石田禮助

    説明員石田禮助君) たとえば北海道だとか東北だとか、雪の非常に多いところでは、道路もなし鉄道というものが唯一の足であるというようなところに対しては、国鉄はいかにそれが犠牲が大きくても、これはやはり公共精神の発露としてやらにゃならぬということでありますが、さっきから申しましたように、ほかにハンディな便利な経済的なものがある。これにかわるのだということであれば、これはひとつ地方の人にもごしんぼう願わにゃならぬ。いずれにいたしましても、これは国鉄は独自な判断でやるのじゃなくて、地方に行って地方人たちとよくひざを交えて懇談して御納得を得た上でやる、こういうことなんで、ひとつその点はそれで御満足をお願いしたいと思っております。
  246. 原田立

    原田立君 運輸大臣、先ほど廃止というようなことは国鉄だけで簡単にきめられるものじゃないのだ、代替線とかあるいは住民の了解等がなければやれないのだ、こういうお話だったけれども、そうすると代替線もあった、住民の了解もある、こういう条件がそろえば、じゃ廃止に踏み切ると、そういうことですか。
  247. 原田憲

    国務大臣原田憲君) もう皆さんに御異論がないところであれば、それはもちろんそれにかわるものがいいという結論になるということでございますから、そのときは皆さんが御納得の上で、鉄道というものが果たしていたその歴史的な使命というものは、かわったということで御納得がいけるのじゃないか、そのように思います。ただ私が申し上げておりますのは、新線建設あるいは赤字ローカル線の問題につきましても、新しい全国的な総合開発というものを、政府自体も考えてこれからやっていこうということを一方において考えておりますから、これらとよくにらみ合わせて、この地方の線がこれからどう必要になってくるかというようなことは十分考えながら、いわゆる赤字ローカル線というものと取り組んでいかなければならぬという考えを持っているということを、何度も申し上げている次第でございます。
  248. 原田立

    原田立君 問題は、先ほど国鉄総裁にもお聞きしたところなんですけれども、過疎地域ですね。これは日本はこれからますます過密地帯もふえてくるし、同時に反面過疎地帯もどんどんふえてくる。これはもう必然的なものだと思うのですよ。で、その過疎地域の福祉を増進していくためにも、一番安い一番便利な一番なつかしい国鉄鉄道があるということが、地域住民にどれだけその福祉を増進さしているかわからない。そういうような面で、国鉄をたとえ赤字であるからといって廃止のような動きはすべきではないと、こう基本的には思っている。そうすると代替線がありあるいはまた住民の了解ができれば、じゃ廃止するんだというようなことのようですが、住民の了解がなければこれは当然やらないということですね。
  249. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 住民の皆さん方の御納得がいかないということでありますならば、十分それは考慮しなければならぬと、こう考えております。
  250. 原田立

    原田立君 考慮しなければならないということは、やらないというふうに、じゃお聞きしておきます。  実は具体的に私のほうに話があったんですが、鹿児島県の指宿線、西鹿児島−山川−枕崎経由の線なんですが、これが存続期成会あるいは廃止反対協議会等つくって、この廃止については強い反対の態度をとっておるんですが、これはもう具体的な問題になりますけれども、これについてどういうふうなお考えでおられるんですか。
  251. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) いま御指摘の指宿線等は、過般の八十三線の中の一線だと存じます。これにつきましては、先ほど申しましたとおり、各線ごとに非常に具体的にいろいろな資料、数字等をいま調査して、非常に膨大な調査をいまやっている最中でございます。もちろん、先ほど大臣が言われましたとおり、地元にやみくもに廃止するということはできませんし、国鉄限りでできることではございません。ただ、実態をいま詳細に調査をさしていただいている最中でございます。
  252. 原田立

    原田立君 実態を詳細に調査中であるということですが、それがはっきりすると、廃止かあるいは存続か、それをきめるということですね。それとも、もう八十三線の中に入っているので、大体調査すれば廃止の方向に向くような資料が出るから廃止しちゃおうと、それで裏づけの数字を待っているんだと、こういうふうなことなんですか。
  253. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 八十三線、まあいろいろ内容はございますが、たとえば指宿線につきましては、将来観光開発——一番主たる目的でございますが、一体観光開発がどこまでほんとうにできるか、また、どのくらいの収容力があるか、また、どれだけ私のほうの輸送力が将来つけられるかというふうな具体的な調査をいたしまして、そして調査したからすぐ廃止の方向に向かうということでなしに、やはり将来の地域開発のビジョンも含めて、そして鉄道の輸送力が要るか要らないかということを検討した上で具体的に進めてまいりたいというわけでございまして、調査が済んだらすぐ廃止の話をするということではございません。
  254. 原田立

    原田立君 いまも磯崎総裁の話の中にありましたけれども、実はこれは鹿児島県でも開発協議会をつくって、そして廃止反対の陳情をしているんですよね。それはもう御承知だろうと思う。皆さん方の出先である——出先と言っちゃちょっとことばはおかしいけれども、県でも反対しているんですよ、廃止に。そういう強い態度のところですね。そういうようなところでも廃止のほうに向いていくのか、その点はどうなんですか。
  255. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 現在八十三線の中でほとんどどの県も大体反対をしておられます。ごく二、三例外がございますが、大体どこでもとにかく置いとけという御議論でございますが、その中にも、やはり非常に具体性のある御議論と、ただ抽象的に鉄道がなくちゃ困るというふうな御議論、いろいろバラエティーがございますので、十分そういった県を含めての地元の御意向を承った上で今後の考え方をきめてまいりたいと思っておりますし、たとえば同じ計画にいたしましても、現時点で計画がなくてもあるいは来年できる可能性もあるわけでございますし、あるいはまたいまある計画がもう全然来年度以降だめになるということもあるわけでございまして、したがって、やはりその時点時点で検討を加え直していくことも必要だというふうに考えております。
  256. 原田立

    原田立君 そのほか鹿児島県では宮之城線、あるいは山野線、あるいは古江線というようなことも聞いているのですが、これは八十三線の中に入っているのですか、どうですか。それだけちょっとお聞きしておきたい。  それから、なお長崎県の松浦線、臼ノ浦線、世知原線、これらはいかがですか。
  257. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 鹿児島県の山野線、宮之城線、指宿枕崎線、それから湯前線は、あれは熊本県でございましたね。鹿児島県はいまの御質問の山野線、宮之城線、それから古江線ですか。これが入っております。指宿線も入っております。  それからもう一点御質問の、長崎県の何線でございましたか、松浦線と……。
  258. 原田立

    原田立君 臼ノ浦線、世知原線。
  259. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 世知原線、臼ノ浦線は入っております。松浦線は入っておりません。
  260. 原田立

    原田立君 松浦線は入っていないのですか。
  261. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 臼ノ浦と世知原は入っておりますが、ちょっともう一回確かめさせていただきます。
  262. 原田立

    原田立君 総裁、実は熊本県の高森線という線があるのです。これはやっぱり廃止はきまっているそうでありますけれども、冬になると雪があそこは多いためにバスがきかないのですよ。そういう地域なんです。それからまた先ほど磯崎総裁も言っておったけれども、熊本県の湯前線、ここのところも廃止の動きがあるのですけれども、やはり雪が降ると、バスは通れないのですよ。たいへん不便するわけなんです。だから地元は非常に根強く存続を希望している。いわんやまた高森線のごときは、立野−高森、その間はあるのでありますけれども、そのほか高千穂−高森間、これは工事をやる予定であるそうだが、現在日ノ影−高千穂間、これは工事中であります。延岡−日ノ影間はこれはすでに線ができている。片一方では建設していて片一方は廃止だなんていうのは、これは全然筋が通らない、こういうようなところは存続すべきではないか、こう思うのですけれども、いかがですか。
  263. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 道路はあるけれども、雪のために自動車が通れぬ。こういうことでありまするが、これは北海道あたりにもそういう例があるのですが、せっかく建設省がりっぱな道路をつくったにかかわらず、冬は除雪もやらないでほうっておくために鉄道というものが唯一の交通機関である。こういうような地域に対しましては、これはひとつ建設省のほうと話をして除雪をしてもらう。せっかく道をつくったのですから、道の使用効率をふやさなければならぬという意味において除雪をしてもらう。それで交通というものは、道がつけば鉄道というものははずしてもいいのじゃないか。バスに変えてもいいのじゃないか。こういうことでありますので、そのいまお話しの二線なんかにつきましては、その辺の事情をよく調べまして、地方とひとつお話をした上で御納得のいくような方法をとる。こういうことでありますから、まあそれほどに私は驚かれる必要はないと思いますが、そういうことで、ひとつ地方の人にお話しくださって、最後は運輸大臣がきめるのですから、総裁がもしやめると言ったら、運輸大臣のところに直談判願って問題の解決をする、こういうことにお願いしたいと思います。
  264. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 松浦線は廃止のほうに入っておりません。
  265. 原田立

    原田立君 入ってない。
  266. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) はい。
  267. 原田立

    原田立君 あまり時間がないようですから、これで終わりにしますけれども総裁、九州の九州横断道路ですね、これは御承知だと思いますけれども、あそこは冬になると、車は通れないのですよ、鎖をつけなければ。鎖をつけても、ちょっと寒くなると、もう運行停止なんです。あのすばらしい道路をつくっても、それでさえそうなんです。しかもあそこら辺はそんなに寒い地域ではないのです。先ほど申し上げた高森とか、あるいは湯前の人吉の山奥なんというのは、もっと雪の深いところなんです。そういうことなんですから、総裁がユーモアまじりにお話しになるのはたいへんわかるけれども、それだけではちょっと理解しがたい、現実の問題として。だから、赤字ローカル線廃止の問題もたいへん大きな政治問題化することでもありますし、国鉄が公共企業であるならば、独立採算制に何もあまり執着しないで、公共的なものとしてそういう地域は大きく抱きかかえてむしろ運行していくのが当然なんじゃないか。また、そういうふうにしていくというふうな総裁の決意があればお聞かせ願いたいと思います。
  268. 石田禮助

    説明員石田禮助君) 私としては、よくその土地土地の人の立場を考えまして、そうむごいことはしないつもりでございます。さらに原田さんにお願いしておきたいのは、この問題はどうしてもやはり国鉄としてはそれをバスにかえなければならぬものは——地方の人のお気持ちでもって、これで承知してくださらぬ、しかし国鉄がいかに何べん考えてもこれはやめなければならぬ、こういう場合には、結局政府の補助でやはり問題の解決の条件がつくわけですからして、その時分にはひとつ政府に対して助成金を出せ、こういうようなことに方向を変換してひとつ政府に働くようにお願いしたいと思います。
  269. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 松澤君。
  270. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は公害交通特別委員会のほうから出席しておりますので、国鉄運賃値上げなりあるいは再建計画なりに直接関係がございませんけれども、しかし国鉄及び国鉄をめぐる公害の問題につきまして、この際特に質疑申し上げたいと思っております。  最初に、東海道新幹線の問題でありますが、いろいろ地元には新幹線公害といわれる騒音、振動、それから電波障害というような問題が取り上げられて、当面の苦情の持って行きどころといいますと、あるいは市であるとか、あるいは町、あるいは府県というふうに、住民の直接生活に密着しているそういう地方公共団体に対しまして苦情の申し出があるように聞いております。運輸省あるいは国鉄当局として、新幹線開通以来どの程度のいわゆる新幹線による公害苦情ということを考えてきておられますか、この点をまずお聞きしたいと思います。
  271. 長浜正雄

    説明員(長浜正雄君) 東海道新幹線の騒音、振動その他につきまして地元の方々に非常に御迷惑をかけておるわけでございますが、地元の方々からの苦情と申しますか、そういうことを国鉄のほうにいろいろお話を承っております件数は相当出ております。ざっと申し上げますと、列車の騒音等につきまして約九十件ばかり、それから振動につきまして五十八件ばかり、その他風圧だとか変電所の騒音だとか、そういうものに対する苦情が陳情の形式で出てまいっております。それで、それに対しましての新幹線の騒音と振動あるいは風圧というような問題につきましての処置でございますが、新幹線建設当時からわれわれとしてはできるだけ実験をいたしまして、考えられる程度の処置をしてきたつもりでございますが、いま申しますような、まだ処置し切らない点がございます。  いままで実施いたしました処置といたしましては、建設以来、御承知のように線路の両側に防音壁をつけたり、音の伝播をできるだけ上空に上げるということで、これを全延長の百五キロぐらいにわたって防音壁を実施しております。それからまた、さいぜん申しました変電所の遮断機の音、あるいは遮断機が切れたりする場合に非常に大き音が発生いたします。この苦情がまいっておりましたので、これに対する対策として遮蔽壁をつくるということで、この苦情も出ないようにしたわけでございます。あるいはまた夜間、列車が終わりましたあとで線路の補修作業をしなければなりません。そのためにいろいろ機械を動かします発動発電機を回しますための音が、夜間やかましくて眠れないということで、これに対しまして人家の密集しております付近につきましては、そういう機械を使わなくてもいいような低圧電気回線を敷設いたしまして、それによって音の発生をしないように処置いたしました。あるいはまたあるトンネルでは、これは小田原付近でございますが、トンネルを出入りすることによりまして、ちょうど地形がそういうかっこうになっておるのだろうと思います、普通のトンネルではそういうことはないのでございますが、非常に風が一カ所に舞い込んでおるというようなことで、これに対する防音壁を処置するというようなことをいたしました。あるいはまた東海道の場合には、実は道路との交差になります橋梁の部分にも鉄筋コンクリートで橋梁をつくれませんので、鉄げたの橋梁を使った部分もございます。そういうところでは非常に一般のところに比べて音が大きいので、これらに対する処置を国鉄ではいろいろ考えまして、まだ研究中でございますが、試験的に一カ所パットといいますか、鉄材と鉄材の間にそういう防振といいますか防音といいますか、そういう材料を挿入するというような処置を講じました。それでいま試験的にやっておるわけでございます。  以上のような処置をいたしました。とともに、いまいろいろ研究所のほうで毎年相当の額をかけて、音のなるべく低くなるようなくふう、車両面あるいはレール面あるいは作業面の音の少なくなるような研究を続けておる次第でございます。
  272. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 電波障害につきましてはどのような苦情をお聞きになっていらっしゃいますか。テレビが非常に見にくいというようなことがやはり苦情の中にあると思うのですが、この点はいかがですか。
  273. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) 新幹線が開通いたしまして、電波の障害の問題が沿線であるというような声が出まして、電波の、特にテレビでございますけれども、これは遮蔽されたりあるいは最初は通る音、振動ということもありましたのですけれども、実際はよく調べていただいたんですが、ちょうど列車が通る近傍にあるところでございますと、御承知のようにテレビは壁の近所に置いたりあるいは近傍の建物があったりいたしますと反射してよく乱れることがございますが、そういうのが列車が通ると起こるということがございまして、電波の伝播あるいは障害につきましては公共放送をやっておりますNHKが、それぞれ料金をいただいてそういったサービスをするということのたてまえになっておりますので、そういった点から特に沿線の特定の地域に起こるというようなことにかんがみまして、個々の問題につきましてはいろいろの状況が違いますので、たとえばトンネルの横で地下道がありますと、そこから電波が逃げてくるとか、あるいは場所によって非常に違いますものですから、そういう具体的なことにつきましてはNHKの技術の関係で十分一般サービスと同じようにお調べするというたてまえになっておりますので、まとまった費用等につきましては、そういった新幹線ができた結果として被害が起こるというようなものについて、協議の結果、一括して、新幹線のできました当時、それが調査結果としましてNHKに差し上げまして、あとNHKの一般サービスも含めて処置をしていくということで処置をしてございます。
  274. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それで電波障害等によりまして非常にテレビが見にくいとか、音が聞きにくいとかというような新幹線と、それから付近住民のテレビ障害という因果関係が明確になりましたときには、国鉄はそういう難視聴の住民に対しまして何らかの補償とか、あるいはまたは料金の肩がわりとかというようなことを考えておいでになりますか。
  275. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) ただいまちょっとことばが足りなかったかと思いますが、NHKではそのアンテナの場所を移すとか、あるいはさらにそれでも十分でない場合は共同のアンテナを立てるとか、いろいろなことがございますが、そういった具体的な問題につきましては非常にケース・バイ・ケースで異なりますので、全体として包括的に一括してNHKに差し上げまして、それらを一助として——これは新幹線のみならず、飛行機の場合もある。あるいは等々ございまして、それらはNHKが公共放送としてサービス処置をしていくということで相談機関もでき、苦情処理もいたしておりますので、そういった形の一助としてお話し合いでまとまった金額を差し上げてございます。そのように処置しております。
  276. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そういたしますと、国鉄としてはそういう新幹線のために難視聴になったという住民のテレビ等に対しては、アンテナを立てるとかいろいろそういう工作をされるわけですが、それに必要な工事費等を一括してNHKにいわゆる差し上げて、それによってテレビが見やすくなるように処置するということであって、実際にそういう新幹線公害ともいわれるそういう電波障害のために、個々の聴視者が金銭的な負担をするとか、あるいは不便を感ずるとか、あるいは不快に思うとかということに対しては、国鉄としては何もしていないということですか。
  277. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) 国鉄としまして、そういった個々の電波障害について専門ではございませんので、NHKの技術部門で検討をいたしまして、技術部門でそれがNHKとしてまとまって、そこでその分の費用ということについては、国鉄がその分担をするということでございます。
  278. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それと同時に、電話に対する苦情というものはございませんか。電話をかけている間に新幹線が非常に高い音を立てて通ったために一時電話の話を中止して、新幹線が通ってしまうのを待たなければならない、そのために遠距離にかけている場合経済的な負担もふえるというような苦情はございませんか。
  279. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) 私いままで新幹線の支社長をしておりまして、いままでいろいろそういったことで折衝したことはございましたけれども、電話のことについては実は寡聞にしてお聞きしていないのですが、あるいは電電公社のほうにいろいろお話があるかもしれませんが、そういった点につきましてまたよくいろいろ電電公社の方ともお話をしてみますが、個々のそういった問題についていまのところ伺っておりません。
  280. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私がほかの用事で京都のほうへ調査に参りましたときに、やはり市役所の方がそういう苦情もあるということを言ったことを記憶しているわけですから、全然ないというわけではないと思うんです。国鉄の場合はわりあいに住民の不平とか苦情とかいうものが、端的にすぐに国鉄へ上がっていかないというところに、住民としても一番泣き寝入りになるというようなきらいがあるんじゃないかと思うんですけれども、一体国鉄としてはどういうルートといいますか、あるいは機構によって、そういう住民国鉄公害による不平、苦情というものを吸い上げていらっしゃいますか。
  281. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) いろいろなケースがございますと思うのですが、住民の方が、もよりの駅に申し出られる場合もございますし、またそれを県なりあるいは市の当局に申し出て、そちらの線から国鉄のしかるべき現場機関、これも保線とか、あるいは電気とかそれぞれの現場もございますが、あるいはまた鉄道局も地域にございますので、そういったところに申し出がございます場合もございます。そういったことがありました場合は、それが現地のいかなる機関でありましても、それぞれの所管の系統を通じて上部に上がってくるというたてまえになっておりまして、そういった上がりましたものにつきまして十分内容を検討して措置をしていくという考えでおります。
  282. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 官庁の名簿など見ましても、国鉄の中にそういう一般国民といいますか、住民国鉄によって生活を乱される、そういうことに対する苦情というものを吸い上げる機構がないように思うんですけれども、実際国鉄の機構あるいは組織の中で、どういうところがそういう問題を専念して処理することになっておりますか。
  283. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 国鉄は御承知のとおり関係範囲が広いものでございますので、いま先生のおっしゃったような苦情もたくさん承っております。大体のルートといたしましては、普通、駅へ大体お話がございます。駅から管理局その他へ上がってまいりまして、最終的には私どものほうに参っておりますけれども、一カ所でもってそれを処理する力がないと申しますか、非常に専門的な、いまの答弁でもたとえば土木と電気と分けて御答弁したように、非常に専門的に分かれておりますので、一カ所でそれを全部お扱いするということは不可能でございますので、一応窓口のほうは私どもの文書課が窓口で、場合によっては広報部が窓口になることもありますが、大体駅から上がってまいりまして、文書課なり広報部にまいりまして、まいりましたならば電気なら電気、土木なら土木あるいは車両なら車両というふうに分けて対策を立てるという仕組みになっておりまして、一カ所でまとめて全部処理する専門的な知識を持っているものでもございませんので、窓口だけをつくりまして、そこから分散して処理するという形にいたしております。
  284. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 いまお話を聞いておりましても、窓口は、もちろん一番下の窓口は駅でしょう。それが国鉄本社に上がってまいりましても、あるいは文書に行ったりあるいは広報に行ったりということで、国鉄の中で公害の問題もあまり従来から取り上げられていなかったせいかもしれませんが、しかしいろいろと考えてみれば、公害に対する専門的な知識を持った、あるいは熟練をした職員の人が固まっている一つの部課と申しますか、そういうものが必要であると思うんですけれども、いますぐにというわけじゃありません、こういう苦情を吸い上げて迅速適切な処理をする一つの部なり課なりというようなものをつくる必要があるんじゃないかと思いますけれども、どうですか。
  285. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 先生のお話のように、非常に最近公害問題が各般の面に出てまいりまして、いままでは、いま申しましたようなルートで結局それを法律的にどうするかとか、あるいは技術的にどうするかということ、消極的対策にばかり実は追われておったわけでございますが、場合によりましては、今後積極的に公害防止ということに取り組まなくちゃならない面もございますので、そういう部局をつくるかどうかは別といたしましても、そういうことを理解する能力のある人間をこれからつくっておかなくちゃいけない。特に工場公害その他いろいろ私のほうと多少面の違った公害もございますし、国鉄プロパーの公害が相当ございますので、そういった面について、今後公害問題というものをどう国鉄として取り上げるかということにつきましては、やはり専門家を養成するというような方法でまいらなければならないというふうに考えております。
  286. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先ほど申しました京都市へ行きましたとき、いろいろ新幹線なり国鉄の公害の問題で市役所の窓口が苦情を聞く、これを国鉄に連絡しても、それこそナシのつぶてで何らの回答も、あるいは連絡もないというような不平をこぼしておられる。市民なりあるいは住民なりが快適な生活をするということには、市役所としてもこれは当然の責務があろうと思いますけれども、加害者が知らぬ顔していて、その窓口になっている市役所の人がやかましく文句を言われて、そして全く立場がない。その市の職員は一生懸命にやっているけれども国鉄自体から何らの連絡がない、これは困ったものだということを聞いたんですけれども、そういう事実あるんでしょうか。
  287. 長浜正雄

    説明員(長浜正雄君) はなはだ私事にわたってあれなんですが、私もつい最近まで大阪の管理局長をしておりまして、京都市とも親しく話し合いなんかもしておったわけなんですが、その当時は、私実は何も聞いておらなかったのでございますが、あるいはその後そういう問題が起こったのかもしれませんが、できるだけ今後よく連絡させるようにつとめたいと思います。
  288. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そのほかに新幹線の振動によりまして屋根がわらがずって困るとか、あるいは壁にひびが入ったというような苦情もあるわけでして、これは騒音というよりむしろ振動によるものかと思うのであります。そういうやはり苦情なりあるいは不平というものを私自身も聞いておるのです。そういうことはございませんか。
  289. 長浜正雄

    説明員(長浜正雄君) 新幹線が通りましたために起こりました壁の亀裂、あるいは屋根がわらのずり落ちというような事態、そういう実損が起こりました場合には、御連絡いただきましたら、できるだけすみやかに賠償の責めに任じたいと、こう思います。ただ、なかなかそういう場合に御連絡を——われわれのほうもいま先生おっしゃいましたようになるべく早く御連絡を申し上げるように今後指示したいと思いますが、そういうものに対しては、そういう実害の生じましたものに対しましては処置したい。また、いままでもそういう実害のございました事例の場合には、損害の賠償をしております。
  290. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは騒音の問題につきまして、もうちょっと伺ってみたいと思うのですが、新幹線沿線の住民は、先ほど申しましたように騒音のために非常に困っている。よくいわれますように、病人はそのためになおれるものがなおれないとか、あるいは赤ん坊が寝られないで困るとかといったような、まあささいな苦情でありますけれども、そういうことが出ていると思うのです。一体国鉄としましては、新幹線の運行によりまして、付近どの程度の距離にどのくらいの大きさの音が伝わっているとお考えですか。そういうものを調査されたことはございますか。
  291. 長浜正雄

    説明員(長浜正雄君) 国鉄でも研究所を中心といたしましていろいろ調査をいたしまして、新幹線の場合の騒音程度、それから在来線の場合の騒音程度、いろいろ調査しておりますが、なかなか場所によりまして、地形によりまして、その日の気象条件その他によりましても非常に違うようでございます。新幹線の場合は、在来線に比べまして約五ホンぐらいは同じ地点ではかりますと高いんじゃないだろうか、こういうふうに推定しております。大体中心から二十メートルぐらい離れまして、これもさいぜん申し上げましたように、場所により、あるいは地形により、そのときの気象によりまして、非常に違うのでございますが、八十ホンないし九十ホン程度の——これはもちろん屋外でございますが、そういう騒音が出ておるようでございます。ただし、これも高さによってももちろん違ってまいります。これは、何もそういう防音装置をしない場合でございまして、そういう場合がございますので、今度の山陽新幹線の場合などにも、防音壁をできるだけ高くする、あるいは、さいぜん申しましたように、パットを入れるとか、そういう処置をして、なるべくその音を低くしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  292. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 いまお述べになりました二十メートル離れて八十から九十ホンだと、これが百メートルこえましてもやはり七十以上の音が出ているわけです。で、大体普通の住居地におきまして、昼間だったら六十ホンも出ればちょっとやかましい。あるいは騒音防止条例というような条例によりますと、昼間、住居地区ではその騒音の発生源も、六十以上のホンを出してはいけないというような規定があるようであります。そうしますと、百メートル離れても七十三ですから、当然、逆に言うならばそういう住居地において七十三ホン以上の騒音の発生源であるいわゆる国鉄新幹線は、そういう府県騒音防止条例の基準から見ても何とかしなければならないということになるわけであります。もちろん国鉄でありますから、府県がそういうように国鉄新幹線のホンをもっと下げろというようなことを申し出ることもなかろうと思いますけれども、そういう状態考えてみますと、普通の静かな住居地で百メートル離れても、まだ七十以上の音が伝達されるということであると、国鉄自体としても、将来山陽新幹線の場合は、消音装置等いろいろお考えでありましょうけれども、在来の東海道新幹線についてもやはりそれと同じように、極力このホンを、住居地に至るまでの距離のホンを下げるということを努力しなければならないと思うのですけれども、東海道新幹線についてもそういう意図で十分に住民の不平やあるいは苦情というものを解消するというお考えをお持ちでありますかどうですか。
  293. 長浜正雄

    説明員(長浜正雄君) 先生おっしゃいました、いまの各府県の公害防止条例その他の基準からいいますと、そのホンはそれ以上の場合もあるわけでございますが、これは新幹線に限りませず、在来線も同様な数値を出しております。そういう基準からいきますと、鉄道事業は現在のところはどうにもならない状況なんでございまして、そういう見地からだろうと思いますが、公害防止法からは、鉄道自体から発生する音は除外されておるというふうに実は承知しておるのでございますが、ただ、それはそれといたしまして、そういう前提を踏まえまして、われわれとしてはなるべく発生する音を低くするという努力をしなければなりませんので、さいぜん申し上げましたように、研究所を中心としまして、どうしたら音が下がるかということを勉強しておるわけでございます。ただ、これは外国の例もいろいろ調べてみたのでございますが、外国でも適切なる研究結果はないようでございます。われわれとしてもその点非常に苦慮しておる事柄でございます。
  294. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 振動の場合もまた同様でありまして、高架の真下、それから十二メートルぐらい離れたところあるいは三十六メートル離れたところ、そういうところの振動の状態を調査したものを見たのでありますけれども、これもやはり府県の振動防止条例の規定から考えてみると、約倍くらいな振動が伝わる。そういうことのために先ほどもお話しいたしましたテレビの難視聴の問題あるいは屋根がわらのずれ落ちの問題、あるいは壁の亀裂の問題、そういうものが起こってくるのではないかと思うのです。これはもちろんいますぐに国鉄当局の責任をどうこうということではございません。建設的に将来そういう新幹線沿線の公害苦情につきましては、ほんとうに誠意をもって直接にあなたのほうで住民からの不平や不満を吸い上げて、即座に適切な措置を講じていただきたいと思いますが、どうですか。
  295. 長浜正雄

    説明員(長浜正雄君) 振動につきましては、これは特に地質によりましてその伝播範囲が違うよでございまして、これは音とは違いまして、わりあいに減衰速度が早いようでございます。数メートルでもって相当程度減衰するようでございます。またさいぜん申し上げましたように、地質が悪い場合、たとえば軟弱地盤、泥炭地帯、こういう場合には振動が非常に大きいようでございます。ところが堅岩地帯になりますと、わりあいこれは振動が少ないということで、今後建設される工事の場合などは、できるだけ住宅地におきましては基礎をなるべく堅岩にまでくっつけるというような措置もしたい、こう考えております。  ただ、在来の鉄道——新幹線あるいは在来線を含めまして、軟弱地盤を通っているところは非常にたくさんございますので、これらの鉄道によります振動というものは、これはいま特にどうするという手当てはないわけでございます。今後の建設につきましては、そういう点をできるだけ考慮しながら建設を進めたい、こういうふうに考えております。
  296. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それはおっしゃるとおりでありまして、私鉄、郊外電車あるいは在来線、そういうものと新幹線と比べてみて、いつの場合でも新幹線のほうが振動がひどい、あるいは騒音がひどいというわけでもない。こんなことはよくわかる。しかし、たとえば私鉄のような場合には、毎日毎日それに乗っている、利用しているということで、わりあいに身近に感じておりますから、ちょっとぐらい大きな音をさせても、あれはしようがないと、こういうことですが、ところが国鉄の場合は、特別にもちろんそれは一年に何度かごやっかいになりますけれども、少し縁遠い交通機関ではあるわけです。そういう場合には、屋根の上を新幹線がさっと通っていくと、こいつけしからぬとなるのは普通の人情だろうと思うのです。この点をひとつ十分考えていただきたいと思います。  そこで、普通住宅が新幹線の沿線に建っているという場合に、いろいろ調査によりますると、三十メートル以内ではちょっと住居として平穏な生活はできないと、少なくとも住居を新しく建てるならば、新幹線沿線から三十メートルをこえたところに建てなさい。従来の住居のあるところはこれはやむを得ないけれども、なるべくそういうところは新幹線なり、あるいは国鉄が緩衝地帯というようなものをつくって、できるだけ付近住民にその公害の苦情を起こさないようにさせるべきではないか、そういう意見がありますけれども、これはいかがですか。
  297. 長浜正雄

    説明員(長浜正雄君) 山陽新幹線の大阪以西建設の場合に、前にもそういう御意見が国会でも出たように承知しておりますが、いままでのお話のように、騒音、振動ともに、幅広くとればとるほどこれはいいわけでございますけれども、いまの国鉄の立場から言いますと、なかなかそう幅広くとるわけにいきませんので、国鉄の必要以外のところは買うわけにまいりませんし、必要といいましても、線路そのものの必要のほかに、将来の保守のために必要な通路その他はこれはもちろん必要と思いますけれども、それ以上に緩衝地帯あるいはベルト地帯というようなものは、必要性から見ますと、これは都市計画上の必要性からとっていただく以外に方法はないのじゃないか、こういうふうにそのときも御答弁申し上げたのでありますが、いまの鉄道事業の現状からいいますと、そういうふうに特に数十メートルにわたって幅広く空地をとるということは、とても困難でできないものだと私は承知しておるのであります。ですけれども、できるだけといいますか、鉄道に必要な幅ということで、いま特に阪神三市のような住宅地帯を通るような場合には、将来の保守の通路というような点も考慮いたしまして、両側に四メートルの空地をとって、将来県市なりの道路計画の一環として使ってもらうというような処置をしたい、こういうふうに地元との相談を進めておる段階でございます。
  298. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 この問題は、私、前にも国会で国鉄当局の方々とお話したことがあるのですが、西宮の地元では秒速五十メートルということで、これは国鉄当局としてもそういう幅の広い緩衝地帯を設けるということはできないということであったのですが、最近何か話し合いがついたということですが、西宮知久におきましてはどの程度の道幅といいますか、あるいは側道といいますか、話がついたわけなんですか。
  299. 長浜正雄

    説明員(長浜正雄君) 西宮を含めまして阪神三市は、いままでもめておって、まだ測量に立ち入りできなかったのでございますが、最終的に兵庫県知事が中に入っていただきまして、両側国鉄側が四メートルの用地を確保いたしまして、そのほかに五メートル程度、大体九メートルくらいの道路になるように道路計画としてその土地を将来確保して、道路計画の一環として空地をとるといいますか道路にする、こういうことで知事さんからのあっせんを出していただきまして、いろいろ三市でそれぞれ御協議いただきまして、ただいまのところ西宮市につきましては国鉄の測量立ち入りのオーケーをいただきまして、たぶんきのう覚え書きの調印をしたはずでございます。まだ確認はしておりませんが、それによって西宮市には立ち入り測量ができる段階になりました。あと尼崎市あるいは伊丹市にも同様の条件でいろいろ覚え書きを交換いたしまして、ぜひなるべく早く立ち入り測量をさしていただきたい、こういうふうに思っております。すなわち両側に九メートルの道路ができる、こういうことで話し合いがまとまったわけでございます。
  300. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 新聞によりますと、妥結の条件といいますか、内容としまして、側道は北側十二メートル南十メートルとし、用地は国鉄が先行買収し、費用の負担あるいは道路用地等については別に協議するというふうになっておりますが、これでよろしいんですか。
  301. 長浜正雄

    説明員(長浜正雄君) 細部の協定は、覚え書きは、現地の工事局長と市長との間で結ばれるので、ちょっと私その正確なところまで見ておりませんけれども国鉄といたしましては、両側四メートルの用地を国鉄で確保いたしまして、その残りを道路計画としてその用地を確保する。ただ、その買収の方法といたしまして、これを道路計画としませんと、土地買収された側のいろんな問題、税金その他の問題もございますしいろいろありまして、そういう処置をしなきゃならぬということでそういう覚え書きになっておるんだと思います。また、道路計画とするとしても、本年度すぐ予算措置ができないというような場合には、国鉄で本年度、先に買っておくという場合もあろうかと思います。そういう点につきましては、現地の工事局長と市長との間で覚え書きがかわされることと思っておりますが、具体的な数字はまだ聞いておりませんが大体それで間違いないんじゃないかと思いますが、新聞記事でございますので、私確認しておりません。
  302. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 時間もありませんから、次に黄色い害の問題であります。  先般、参議院の予算委員会におきまして質問があって、それに対して運輸大臣が答えておられるのでありますが、新幹線はタンクが取りつけられている。在来線では特急型客車には消毒式が取りつけられている。これについて全部の車両をタンク式等に改造する場合には総額八百億かかるから、一挙に解決することができない。四十四年度からは東京、大阪を発着する列車について着手するように準備する。それから四十三年の十月以降、新造車あるいは車両改造をやる場合にはそういう設備をして、基地が整ったらすぐに使えるようにするということを言っておられますけれども、これに間違いございませんか。
  303. 原田憲

    国務大臣原田憲君) そのとおりでございます。
  304. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは四十三年の十月以降、新造車あるいは車両改造の車両数はどの程度になっておるか。
  305. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) 十月以降新造中のものでございますけれども、新しい客車等につきましては取りつけられる形にすることにしておりまして、地上設備ができ次第、タンクをつけていくということでしておりますが、いま何両ということはつまびらかにしておりません。後ほどお知らせいたしたいと思います。
  306. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは、その基地設備と言う話が出ておりますけれども、これもどこかでやっておられるのですか。
  307. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) 基地設備につきましては、東海、山陽について、まずさしあたり先生が先ほど御案内のように計画しておるわけですが、地元その他との交渉、それからつける場所の設定その他で、現在そういった段取りを進めているところでございます。
  308. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうしますと、運輸大臣が言われました四十四年度から東京、大阪を発着する列車から着手するということは、これはいまの段階ではちょっとまだ困難だということですね。
  309. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) そういうことで具体的に進めていくということで、地上設備の交渉ができ、まとまり次第、四十四年度中に実施に移りたいということで段取りを鋭意進めているということでございます。
  310. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは、そういう基地設備なりあるいはまたは車両の改造なりが全面的に着手されて、タンク式に切りかえられる時期はいつごろと考えてよろしいのですか。
  311. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) 全体の計画が進みますのには、われわれはまあ主要な列車等についてできるだけ早くと思っておりますが、かなりの量にもなりますし、線区も津々浦々になりますので、まあ最初主要なところは五年ぐらいかかるのではないかというふうに考えて、鋭意進める段取りをしているわけであります。
  312. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 いや、そうじゃなくて、いつから使用できるような状況になるかということです。五年たたないと使用できないということですか。
  313. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) いまの東海道等について準備を進めておるものにつきましてのお尋ねでございますれば、先ほど申しましたように今年以内にできるようにということで、地元のほうにも折衝し、処理設備の段取りをして、車のほうは取りつけられる段取りということでございますので、今年一ぱいに準備して、来年早々には使えるということで、本年中の仕事として考えております。できるだけ早くやりたいと思います。
  314. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 ここにいただいた図があるのですけれども、この図で見ますというと、駅のプラットホームのところで用便をした場合には、立っている人間の頭を越えて、ほとんどプラットホームの反対側の端まで飛沫が飛ぶという図が書いてあるんです。このような飛散の状況ということは国鉄でもお認めになりますか。また駅の構内でなくて、原っぱといいますか、いなかの軌道を通っている場合には二十五メートルぐらいまでその飛沫が飛ぶという図がここに書いてあります。これは名古屋大学医学部衛生学教室の調査であります。この事実はお認めになりますか。
  315. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) その御調査につきましては、名古屋大学で前にお調べになった資料も拝見しておりますが、駅等で通過して行く列車について、そういうことが起こるということだと思うのですが、駅ならホームがありますし、必ず全部そうなるかどうかわかりません。あるいはそういうこともあるかもしれませんです。それから平野部で走行している場合に、あるいは時にそういうことはあるかもしれませんが、そういった点も含めて、われわれも従来のことにとらわれずに、積極的にこういった処理設備をつけていくということをいま考えているという次第でございます。
  316. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 これは国鉄の調査ではないのですけれども国鉄自身が調査されたということはないのですか。
  317. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) 国鉄自身では、以前に水に着色したもので調べたことがございますのですけれども、そういった点について、お話の、そこに出ているようなひどい距離まで飛んでいるというようなデータはないのですけれども、それは条件がいろいろございますので、一がいに私どもの調査がそれで十分だとも申しませんし、また、そういった御調査のことは十分尊重いたしまして、これから対策を整えていくのが前向きではないかという考えでおる次第でございます。
  318. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私一度東北線だったか上越線だったかで東京へ帰ってまいりますときに、専務車掌が、赤羽を通ったらなるべく便所を使わないでくださいとアナウンスされておりましたが、これはたいへんけっこうなことだと思ったんですが、そのほかの専務車掌さんからは全然聞いたことはないのです。これは国鉄でそういう指導をされているのか。もし指導されているとすれば、それこそ百人ぐらいの専務車掌さんが列車に乗るわけですけれども、一人だけしかそういうことを言わないということもおかしい。その人の考えでここから先は便所を使ってもらったらあたりが非常に迷惑するから、なるべく使ってくださらないようにということであれば、たいへん奇特な車掌さんだと言える。この点はいかがですか。
  319. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) 実はこの問題が起こりましてから、私ども新幹線等ではやってまいりましたし、それから先ほど御案内のように気動車等につきましては粉砕消毒式をつげるためそれぞれ進めてはきたのですが、最近の状況にかんがみて、特にお客の利用も多いし、また都市もだんだんと住宅も稠密な状態で、戦後、沿線にできたというとともございまして、いまのような問題が非常にいろいろと御議論される時代になりましたので、さしあたりそういった設備をしてまいりましたものはもちろんですが、基本的な、先ほどのような設備をいたしますとともに、それができるまでほうって置くわけにはいかないということで、大都市の近郊、特にいま御案内のような赤羽付近は、前からも言っていた人もいるのですが、それを計画的に、組織的にやるということで、東京近郊では大船から東京に入る、あるいはまた横須賀線、そういった地方につきまして、それぞれ、これは常磐線も東京の近傍になるに従いまして……。そういったことで、それぞれの線区別に指定をいたしまして、お客さまに御協力をいただく。もちろんこれはお聞きの方の中には、生理現象をとめるとは何だとおっしゃる方もあるのですけれども、こういった状況の中で可及的に御協力をいただき、一方、われわれも積極的に設備的に進めていくということで、こういった問題に対処していきたいということで、大阪近郊、東京近郊などの主要都市あるいは名古屋近郊等もそうですが、そういった措置も講じて車掌に指導しているわけでございます。もし車掌等でお乗りになったときに十分御指導ができていない場合は、十分今後そういった点について積極的に注意をしたいと考えております。
  320. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 厚生省の方が来ておられると思うのですが、厚生省では便所の設置されている列車、電車については、衛生等を守らなければならない。いわゆる清掃法の第五条に書いてあるわけですが、国鉄がそういうことをやらないということについては、何か国鉄と厚生省との間に話し合いがあって、国鉄国鉄で自分でやりなさいということなのか、その点ひとつ……。
  321. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 列車のし尿処理の問題につきましては、従来、社会問題として提起されまして以来、運輸省あるいは国鉄と十分協議しながら、衛生的にできるだけ早く処理されるような方策が講じられるよう、いろいろ処置してやってまいっている次第でございます。
  322. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 協議——協議といいますけれども、あなたのほうは公衆衛生を守る立場にあるのです。いわゆる国鉄列車あるいは電車等がたれ流しをやっているということ、これは衛生当局として当然何か強い発言をして、困りますというようなことを言うべき立場にあるのじゃないですか。協議、協議といって、片方が聞かなければどうするのですか。
  323. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 協議と申しますのは、意見を申し上げることも含んでおるわけでございますが、清掃法との関係の問題でございますが、昭和三十九年におきまして列車のし尿処理問題につきまして運輸省国鉄あるいは学識経験者等といろいろと研究いたしました結果、昭和四十年に清掃法の改正をいたしたわけでございます。そういうことによりまして第五条の四項に新たに、特別清掃地域を通過する列車のし尿につきましては、環境衛生上不備のないように処理することにつとめなければならないという一項目を設けたわけでございます。そういうことによりまして列車のし尿処理を推進してまいりたい、かような経過でございます。
  324. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 どうもその辺、たよりなくて、これではいつまでたっても列車の便所のたれ流しということがやまないような気がするんです、どうですか。総裁、あなたのところの便所がいろいろ公害を生んでいるんですけれども、いろいろ国鉄運営についてお考えもあるでしょうけれども、しかしどんなことがあったって、それはもう都会といわず農村といわず、こういう原始的な方法で大便、小便をまき散らしていっていいとはだれも考えないと思うんです。ひとつ元気のいいところをおっしゃっていただきたいと思います。
  325. 石田禮助

    説明員石田禮助君) いまの公害の問題でありますが、国鉄創立以来公害の問題が起こったのは、私は初めてじゃないかと思うんです。去年の常務会でしたか、その話を湯川常務から聞いて、さっそく国鉄もそれに対しては対策を講ずると、こういうことでもう大体満足に進捗しておるんじゃないかということで安心しておったんですが、いまあなたの御質問によって、質問すればするほど底なしの池に入ったようなことなんで、これにつきましては、ひとつよく検討いたしまして、何とかうまくいくようにできるだけの努力をしたいと存じます。
  326. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 じゃあこれで質問を終わります。ひとつ総裁、元気のいいところを出してください。
  327. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 小平君。
  328. 小平芳平

    ○小平芳平君 私も公害対策の関係で御質問いたしますものですから、いま松澤委員からいろいろお話があった点についてはダブらないように、そのほかの公害問題について若干お尋ねしたいと思います。  新幹線の騒音、振動等についていろいろとお尋ねがあり、また御答弁があったわけですが、この新幹線を国鉄が建設したときに幾ら資金がかかられたか、その新幹線を建設するに要した資金の中でこうした公害ということをあらかじめ頭において、公害防止のためにはどのくらいの予算を準備されたか。それから差しあたって今度は、山陽新幹線のお話が出ておりましたが、山陽新幹線は幾らの予算で建設をする、それについては幾らの公害防止のための予算というものを準備されておられますか、この点についてお尋ねします。
  329. 長浜正雄

    説明員(長浜正雄君) 東海道新幹線の建設資金は、総経費もそれから車両も含めまして三千八百億の工事費でございます。これには利子の支払いその他も全部含んでおります。それから公害関係は騒音、振動に対する対策としてどれだけの金を含んでおるかというお話でございますが、非常にむずかしい問題でございまして、たとえばさいぜん申し落としましたけれども、レールの継ぎ目から発生をします振動、これが相当大きな振動を起こします。ガタンガタンという音がいたします。これを新幹線の場合には全部継ぎ日なしのレールにしております。あるいはまたレールは、いままでは五十キロでございます——これは一メータあたりの重さでございますが、これを五十三キロレールにしております。これもやはり音の発生を小さくしております。あるいはまたレールの下に使いますパッド、これは在来は木枕木の上に鉄の板を置いて、その上にレールを置いてございますが、その間にゴム系統のパッドを敷いて、そして音の発生を防いでおる。あるいは、ご存じと思いますが道床といいまして、砕石をまいておりますが、これをできるだけ厚さを厚くしまして、在来の線よりも砂利の厚さというのか高さを高くしております。それによって音の吸収をしております。あるいはまた振動にいたしましても基礎を深くするというような点も考慮してございますので、そのうちどれだけを公害関係、どれをそうでないというように分けるのは、そういう作業をしておりませんので、いま幾らというふうに申し上げかねるのであります。  山陽新幹線の場合につきましても同様てございまして、たとえば基礎の振動を少なくするために基礎をフリクション・パイプといいまして、摩擦によりまして高架橋の基礎をもたせるという工法がございます。そういう工法でやる場合と、それから岩盤までくいを到達させまして、それのベアリング・パワーによりましてもたせる構造物の設計をする場合の両方ございます。あるいはまた、くいでなくて、ウエルという井筒を下げる工法がございます。それで深く基礎を下げて高架橋をつくるというような工法をとる場合がございます。その場合に音を少なくする、あるいは振動を少なくする、どの部分がどれだけというふうにこれはなかなか分けかねるのでございまして、たとえば直接防音壁をつくるのにどれくらいか、あるいは直接レールの継ぎ目をなくするのを全部公害関係のほうと言いますか、騒音防止のためだというふうに判断して勘定するならばどうという数字は出てまいりますけれども、いま言いましたような構造物をどう分けるかというような点、なかなか技術的にこれは分けかねるものでございますから、数字の積算はちょっとできないかと思います。  なお、山陽線の場合にはレールの重量を、東海道は五十三キログラムの重さでございましたが、今度は六十キログラムの重さのレールを使う、こういうふうに考えております。これなんかはなお一そう研究した結果でございます。
  330. 小平芳平

    ○小平芳平君 私がお尋ねしたのは、そうした技術的にどういう公害防止をしているかということについては、先ほど来重々お答えがあったので、私がいまお尋ねしていることは基本的な考え方ですね。それはどこで工場を建てる場合でも、公害はどうかとすぐ問題になる。また企業でも工場でもこれだけのものを建設するに当たっては、公害防止にはどのくらい必要じゃなかろうかということがあるわけでしょう。ですから国鉄の場合、それは汽車も通らない、工場もこない、まるっきり発展しないのでは困るわけです。困るわけですが、騒音なり振動なりがあまりはなはだしいところから、こうした問題が社会問題として提起されているわけです。したがって今後の行き方として幅三十メーターは広過ぎるとか十一メーターで話がついたとかいうことも、さっき説明していらっしゃるわけですから、そういう点でもってやはり公害は防止していくべきだ、初めからある程度お金がかかっても公害は防止していくのだということが必要じゃないんですか。
  331. 長浜正雄

    説明員(長浜正雄君) 騒音、振動をなるべく少なくするということをわれわれとしても当然考えなければなりませんので、まず第一に、線路が通りますルートを選びますときから、そういう点を考慮してわれわれとしては考えていたつもりでございます。できるだけ人家の少ないところ、あるいはなるべくトンネルを利用するとかいうようなことをいろいろ考えたわけでございますが、山陽新幹線の場合には何ぶんにも曲線半径で限定されますので、そう自由自在な線路の線形をとることができませんので、現在工事をやっておりますようなルートになったわけでございます。  それからまた、いまの側道の件につきましては、東海道新幹線の場合には一部ございますけれども、山陽新幹線の場合にはわりあい住宅街が多うございますので、両側に四メーターの側道といいますか、用地を初めから取るというふうにきめて、おっしゃるとおりにしたわけでございます。
  332. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣考え方はいかがでしょうか。私は考え方だけ言っているわけです。
  333. 原田憲

    国務大臣原田憲君) いま具体的に幾らということを答えられないようでございますが、私は考え方としては今後日本の企業というもの、産業というものが、事業をやるときに公害というものについて十分の考慮をしなきゃならぬ、これは当然のことになってくると思います。ますますそういう傾向を強くしなければならぬ。これは同時に、いわゆる福祉的な面からだけでなしに、もう一つ高いところから、道義的な面からもお互いに考えて解決するというたてまえをとっていかなければならぬのじゃないか、このように考えます。
  334. 小平芳平

    ○小平芳平君 それからもう一つ、松澤委員から後段で質問のあったし尿の問題ですが、これも厚生省では、はっきり何か御答弁なさらなかったようですが、厚生省として調査したことがあるかどうかですね。  それから厚生省としては、ただ協議したなんていうんじゃなくて、公衆衛生を守る上においてこれだけはぜひ守ってくれなくちゃ困るという、そういうまとまった意見がおありになるかどうか、その点はいかがですか。
  335. 金光克己

    政府委員(金光克己君) 厚生省におきましては調査したことはございません。ただ大学の調査等には、調査の結果等によりましていろいろ意見を聞いているわけでございます。なお、この公衆衛生上の立場からの列車のし尿処理の問題でございますが、現在全国的なし尿処理施設等も進んでまいりまして、そういうような社会感覚におきましては、ただ衛生上の問題だけでなくても、これは当然もっと衛生的に処理されるべきものだと思います。そういう意味ではやはりタンク式にいたしまして、排出しないという方法が一番望ましいわけでございまして、そういうことで新幹線にはそういう方法がとられているわけでございますが、特急その他で消毒等の措置がとられております一が、これもやはり少なくとも衛生上の問題が起きないようにという暫定処理でございまして、将来に向かってこれはどうしてもやはりタンク式にしていくかようなことが必要だろうと、かように考えておりまして、そういったような意見につきましては運輸省あるいは国鉄当局にも十分申し上げておるわけでございます。
  336. 小平芳平

    ○小平芳平君 あんまりはっきりした御意見でもないのですが、国鉄当局はもう少し具体的に、何年までにこのくらいは完成するということを発表されたのじゃないですか、いかがですか。
  337. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) この問題は、実は予算に計上いたしましたのは四十四年度予算が初めてでございます。四十四年度予算は車両が約十億、それから地上の基地が十億と二十億の計上をいたしております。そのほかに新しい車両にはいつでもつけられるように車両の設計を変えまして、いまさしあたりつけてございませんが、いつでもつくように、タンク式がつくような車両設計に直して、去年の下半期から発注の車両は直っているわけでございます。そういうようなことでございまして、やはり全国一斉ということにはとてもいきませんので、輸送密度の高い、しかも住宅街の多い東海道、山陽からやっていくということでございますが、いつそれが全列車に完成するということは、ちょっとまだ具体的な予算の関係もございますので申し上げられませんが、一応基地がやはり何としても問題でございまして、なかなか基地では——し尿処理で、たとえば東京都にしますれば、東京都民でない者のし尿を処理しなければならぬということで、地元との折衝が実は東京、大阪で始めておりますが、必ずしもうまくいかない。非常な高い分担金等もございまして、そういった点も考えまして、やはりコストの安いことも考えなければいけませんので、まず基地の整備からぜひ始めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  338. 小平芳平

    ○小平芳平君 四十九年までになくすということを発表したことはありませんか。
  339. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 正確にはっきりは申したことはございませんけれども、大体全体で八百億かかるのに二十億ぐらいだと四十年かかるじゃないかとしかられました。それは東海道、山陽というようなところはなるべく早くやりたいということで、正式に四十九年ということを申し上げたことはないと思いますが、できるだけ早く、全部そろってからというわけでなしに、一本でもでき次第やっていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  340. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ御趣旨は、先ほどいろいろ松澤委員からもお話がありましたので申し上げませんが、できるだけ早くということで了解いたします。  それから次に、今度は別個の問題ですが、これは別に産業公害の問題じゃないのですが、新幹線ができたと、ところがこの新幹線の停車する駅はもう限定されているわけですよ。その中間にも——東海道新幹線の中間にも、たとえば沼津、富士、清水、そういうような大きな町があるわけですよ。ところが、新幹線中心にダイヤを編成されるせいか非常に不便になっているのですね、こういうところは。もうそれこそ、東京からかりに富士なり清水なりに行く場合には、新幹線で途中まで行って乗りかえればいいけれども、それをまっすぐ行く急行は一時に比べたらうんと本数が減っている。本数が減ってしまった上に、今度はわざわざ支線に接続ができないようになっている。それでかりに、私ちょっと調べてみただけですが、富士駅から身延線に乗りかえる場合に、十一時十八分に東海二号が富士駅に着いて、それで身延線が出るのが十二時十一分、五十三分待つわけです。そういうようなのがずっと初めから言いますと、十七分待ち、三十三分待ち、五十三分待ち、十四分待ち、五十二分待ちという、こういうように、どうしてこの在来線の、こうした新幹線のとまらない駅の人たちが、こんな不便をしなくちゃならないか。その辺の国鉄当局の組み方のお考えをお尋ねしたいのです。
  341. 長瀬恒雄

    説明員(長瀬恒雄君) お答えいたします。新幹線の接続につきましては、私どもとして極力努力いたしておりますが、ただいま御指摘のような東海道線の在来線のほうに対する列車、これは最近若干減らしておりますが、旅客のダイヤというものをつくる場合には、やはり旅客の流動状態というものを基本といたしておりまして、これを綿密に調査いたしまして、まず必要な列車をつくるわけでございます。したがいまして、最近のように東海道線あるいは新幹線でも旅客の流動というものを考えまして、どうしても新幹線が中心になるわけでございます。それでさらに御指摘がございました支線との接続につきまして、私どももいろいろと調査をいたしておりますが、先ほど申しましたとおりダイヤ編成の基本というものは、やはり支線と幹線との旅客の流動というものを中心に考えてつくっているわけであります。できれば支線と幹線とが直通することが望ましいわけでありますが、これにつきましてもやはり設備の問題、あるいは旅客の流動状態というような問題を考えなければならぬわけでありまして、極力その方向に進んでおりますが、なかなか一朝一夕にできないという点が遺憾でございますし、支線と、それから幹線とが完全に接続するということは、これは同一の本数にすればできるわけでありまして、支線のほうにつきましては、やはり旅客の流れというものが少ない。幹線のほうがどうしても多い。東海道線でも大体三十分に一本列車が入っていますが、身延線その他につきましては、旅客の流動というものとのからみ合いにおいて接続をはかっているわけであります。しかし同じようにすれば、結局からの車が走るというようなことも考えられます。あるいは国民経済的にも不経済という点から旅客の流動状態を中心としてダイヤをつくっているわけであります。したがいまして、御指摘のような点が確かにございまして、たとえば富士からの接続につきましては十二本ございますが、三十分以上のものが三本、それから上りにつきましても、同じように三十分以上のものが四本ある。こういう点につきましては、今後ダイヤの編成の時点におきまして、さらに検討いたしましてサービス向上につとめたい、こう考えております。
  342. 小平芳平

    ○小平芳平君 本線と支線と同本数走らせろということを私も言っているわけじゃない。ただ昼日なか五十三分待ちというのは、よっぽどいなかの、ほとんどもう、それこそ廃止になるかならないかみたいな支線でのことであって、この東海道沿線というものは新幹線のとまらない駅も相当発展しているわけでございます。またずっと愛知県に行きましても、相当に人口もふえて発展している。こうしたところにおいてあまり待たせ過ぎやしないかということを言っているわけです。これは御同感だとおっしゃるから、これだけにしますけれども——それからやはり新幹線に乗りたいという人もたくさんおります。おりますが、やはり静岡とか熱海とか——静岡どまり、熱海どまりの鈍行列車があって、そこで新幹線にうまくお乗りくださいというようにできているわけですね。本来なら前どおり普通急行列車で直通で東京へ行きたいのだけれども、やむを得ず新幹線へ——みんな熱海とか静岡でとまっちゃう。そして新幹線に乗りかえてくるという人もあるわけです。ですから、基本的に新幹線列車のとまる駅以外の駅の住民、この人たちは、それこそ音だけは十分聞いているわけですね。音だけは十分聞いて、実際の利用という点ではちょっと直接乗れないという不便があるわけです。ですから、そういう点十分考慮していただきたいと思いますが、いかがですか。
  343. 長瀬恒雄

    説明員(長瀬恒雄君) 新幹線との接続につきましては、やはりそういうような中間の旅客の便利をはかりまして極力やっておりますが、ただいま申しましたとおり東海道線の在来線のほうにつきましては、貨物輸送の面に相当力を入れなければならないということで問題がございますので、極力新幹線を利用していただくというかっこうに逐次切りかえているわけでございまして、その点については御了承いただきたいと思います。  それから富士の、先ほど申し落としましたが、現在相当列車本数は入っておりますが、さらに旅客の流れといいますか、そういう点を考えまして、今後複線工事ができる路線におきましては、さらに列車の接続がよくなるように考えております。
  344. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、これは大臣考え方だけでけっこうなんですが、運輸委員会で公明党の三木委員がいろいろ国鉄の所有地について質問をしたわけです。そして国鉄の所有地について問題点を非常に多くあげられたわけです。いま私がそれを繰り返すわけではありませんが、たとえば三木委員のあげた中に東京駅とか、いろいろ具体的にあげたのですけれども、私がいま申し上げるのは名古屋駅について申し上げますと、四十四年度使用料坪当たり近鉄が六千五百六十六円、名鉄が八千七百八十円、名古屋市営の地方鉄が三万四千九百三十六円、こういう四倍から五倍の高い料金を名古屋市は払っているわけです。近鉄、名鉄は四分の一あるいは五分の一の使用料で済んでいるわけです。それに対する答弁としては、それは先に借りたほうが安いのだという答弁しかなかったのですが、それじゃ何となく納得できないわけです。ですから、もう少しこれは国鉄自体でできることであるわけですから、別に国鉄の方針としていろいろな計算方法があるとか、あるいは貸した時期によって歴史的な変遷があるとか、いろいろ理由をあげられるでしょうけれども、なぜ近鉄、名鉄が安くて名古屋市が高いのか。近鉄、名鉄を上げるか、そうでなかったら名古屋市を下げるかしなければ、全くこれは、私たちには納得できない感じですが、いかがでしょう。
  345. 原田憲

    国務大臣原田憲君) この金額だけを提示されると、なるほど合点がいかぬ問題がある。それに対する答弁が少し手間どっておったので、私はもっと答弁をしっかりせにゃだめじゃないかというようなことを申したんでありますが、国鉄の予算というものは国会で御審議をいただいておる。また監査委員会もある。また私が、これを認めるという制度になっておりますから、万間違いのない体制を組んでおるということがたてまえであろうと、私は考えておるということをお答えいたしたのであります。で、そこで用地の処分等を見ますと、いまの話のように昔からずっといきさつがあって、ともに同じような公共事業をやっておる関係から、今度はこういうことで国民の足にサービスをするから、こういうことにしたいと、ついてはこの土地はどうだというようなことで、前からの土地の賃貸がありますと、現在の賃貸契約でも、昔から住んでおる人は、町のまん中でも実に安い家賃で住んでおる事例があるわけでございます。そんなばかなことがと思われるような家賃でお住まいの方もあるわけでございます。新しくやりますと、こんなマンションがべらぼうな値でと、こういうような事例もあるわけでございますから、一概にそれだけを取り上げてみますと——私は、まあまかり間違ったことはしておらない、歴代の大臣も判をついておられるはずでありますから、そういう間違いはないと思うということを申し上げたんでございますが、しかし、中には指摘されて、全く不合理な二重貸ししたり、三重貸ししたり、全く管理上こんなことでいいのかと思われる面もなしとはいたしません。それらのことについては、十分考慮してやっていくように、私は指導していきたいと考えております。
  346. 小平芳平

    ○小平芳平君 金額だけ聞けばなるほどおかしいとおっしゃるのですが——確かにおっしゃるごとくに、民間にも古くから借りているところでは安いというところもありますけれども、やはり国鉄がそれを当然だと、それが新しいからこういうふうにたくさん取って、永久にこのままいくのじゃおかしいと思うんですよ。それから次に、また元に戻るようで恐縮ですが、国鉄車両の整備、洗浄をおやりになっているわけですが、この排水について、油を含んだ排水が大量に出ていて、それで周辺の農業用水等も汚染されていると、こういうことも聞いたことがありますが、こういうような点については、いかがでしょうか。
  347. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) 国鉄ではディーゼル機関車、それからディーゼルカー等がかなり動力の中に入ってきて、昭和三十七、八年からずっとふえてきておりますが、こういった車が配置されているところでは、もちろん一般の機関車等の洗浄には油を使っておりますが、洗浄するのにピットがありまして、そこで洗うわけです。それで中に入っている廃油等につきましてはタンクに貯め、それをまた再生して再使用するとか、使えないものを売却するとかするわけですが、洗いましたときに水と一緒に床とか、ピットの側についたものを水と一緒に洗い流すわけです。これも一応タンクに貯めまして排水するわけですけれども、そのときに水は排水しなければいかぬものですから、大体各所で若干の相違はございますけれども、槽を設けまして、そこに貯めて、そこに隔壁を置きまして、油は上に浮くものですから、いろいろな試験の結果、大体、下の水をポンプで吸い上げて外へ捨てるというようなことをしまして、その水につきましても油の混入度を調べて、これならば外へ流していいということを市当局と相談してやっているのですが、それが場所によりまして、まことに不行き届きなんですが、タンクが外にあって雨水が入って外にあふれたとか、あるいはその下水の流れていくときに処理のしかたが不十分であったとかいうことが二、三出まして、そういった問題が各所でいろいろと御苦情も出てまいったわけであります。これに対しまして、それぞれそういったタンクの下にたまっているあかを取るとか、あるいはまた下水の流入口をふさぐとか、あるいはまたタンクそのものを改造するとかいうことで、現在そういったところが——全体で二百数十カ所の動力車のがあるのですが、気動車を配置して、まあ一両、二両のところもございますが、大部分が気動車になっておるところが百数十カ所ございます。そういった中で、わずかな車のあるところは問題ないのですけれども、大体七十カ所ばかりのところは全部そういった設備をしてあるわけです。設備したところでそういう問題が起こったところもありますし、また設備が十分でないので問題の起こっておるところもございますので、それらについていま厳重に命令して、処理のしかた等についても基準をきめまして指導をしていま整備中でございます。
  348. 小平芳平

    ○小平芳平君 もう少しこの実情についてですけれども、いま御説明の中で、ところによっては雨水が入ってあふれたということもおっしゃったわけですが、何カ所くらいそうしたところがあり、整備がちょっとあぶなっかしいというようなところが何カ所くらいあるか、それからこのくらいの設備ができればもうそうした問題が起きることはないというようなところはあるか、その点についてはいかがでしょうか。
  349. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) いままでそういったことで事情がいろいろ異なりますけれども、下水が流れたとか、あるいはにおいがするとか、御苦情があったのが十九カ所ばかりございます。これらにつきましては、最近ございましたのもございますし、それから二年ばかり前のもございますが、それらを含めましてそういった措置をすべて講じてまいりました。それからなお、その後意見の出ているところが数カ所ございますので、それも緊急整備中でございます。それから先ほど申しましたとおり車が逐次増加してまいりますので、そういった関係で、いままで数両の配備であったところが十数両になったということで、そういった問題が起こらないようにこれから整備するということで考えておりますが、それが数カ所ございます。
  350. 小平芳平

    ○小平芳平君 全部ではいかがですか。
  351. 湯川龍二

    説明員(湯川龍二君) 全部では、すでにそういった整備されたのは六十九カ所ございまして、これらは完備になっております。あと残りがまだ数十カ所ございますので、それはいま問題は起こってないのですけれども、そういったことが起こらないように整備していこう、こういうことでございます。
  352. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは最後に、これで終わりますが、国鉄の公害について、松澤委員からも、国鉄内の体制が、あるいは運輸省内の体制が公害を処理するような体制になっていないのではないかという指摘があったのですが、それに対しては、それは駅に苦情がきたり、本省の文書課にくるのだという御説明があったのですが、ここで私は二つのことをお尋ねいたしますが、一つはやはりこの専門的な体制が必要だと思うのですね。で、もう各県でも、あるいは国でも、あるいは会社でも、企業でも、公害問題についてはそれ専門に取り組んでいる担当者がいるわけですが、国鉄の場合も専門的でむずかしい、間口が広いということもありましょうけれども、やはりそういう点を総合的に点検している人がなければならぬ。また、あるところでは入れかえ作業をやっている。夜中に電気が明る過ぎると言う人もあるのですけれどもね。それはまあ国鉄は暗くちゃできないと言われるのでしょうが、あるいはさっきの洗浄装置にしましても、いろいろな面で、そういう点は出てきたものその場処理でなくて、やはり体制そのものが必要じゃなかろうかということが一点です。  それから、もう一つは、車両の運行や整備に伴う公害について、これを取り締まるというか、防止するための法的な規制とか、あるいは運輸省の内規とか、何かそういう全体的に、これによって公害は処理しているんだというような、そういう規則なり何かそういうものが必要じゃなかろうかという二点についてですが、いかがでしょう。
  353. 磯崎叡

    説明員磯崎叡君) 公害につきましての国鉄の内部の体制でございますが、先ほど松澤先生に申し上げましたとおり、いままではどちらかと申しますと、消極的に、発生した公害をどう処理するかというふうな点に重点があったことは事実でございますが、先ほど大臣もおっしゃいましたとおり、これからの企業といたしましては当然技術の革新の中に、公害防止ということを考えなければいけないという新しい角度で、この公害問題を取り上げますから、したがってこれは車両につきましても、土木につきましても、やはり担当の部局で積極的に公害問題を頭に置いてこれから仕事していくということになると思いますが、ただそれをしょっちゅうウオッチするといいますか、監視するとかアドバイスする、そういう部局も必要だと思いますので、そういうことにつきましては、もうしばらく時間をいただきまして考えていきたいと思っております。  あとのほうは運輸省の問題になりますので……。
  354. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 先ほどもお尋ねいただきましたが、今後この公害という問題は非常に大きな問題でございまして、これは運輸省が指導監督をする上においても特に力を入れてやっていかなければならぬ問題であろうと考えております。  これはまあ要らぬことでありますが、万国博覧会のテーマが、「人類の進歩と調和」と言われておる。人類がますます進歩していけばいくほど、どこに調和を求めていくか、いわゆる公害というような問題をどう克服していくかということが問題であろうと私は考えております。したがって先ほど八百億円かかる、この便所の設備だけで。聞いただけでもびっくりするような数字であります。世界中にないそうですね。私は、これを聞いたときに、すぐやれと言ったら、世界中にないというのです、やっているところが。それはひとつ、世界にないなら日本の国でやってみたらどうだ、日本の鉄道というものは世界にない歴史をもってやってきたのです。いま鉄道というものはもうだめになっちゃいまして、ほんとうにだめになったのを新幹線というものをこしらえて、やはり鉄道というものは必要だということを、世界にまた新しい話題を投げた日本の国鉄の伝統というものを今後生かしていく意味において、ひとつこういう面に力を入れてやっていくべきであると、心がまえをいたしまして対処していきたいと思います。
  355. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでよくわかります。けれども公害全体が、要するに国鉄の場合はただ煙突から煙が出るという簡単なものじゃないわけなんですよ。煙突から煙が出ることで困っているところもあるのですけれども、いまだに。ですから、そういう公害関係の全体についての規則なり準則なり、そういうものが必要じゃなかろうかということを申し上げたいのです。
  356. 原田憲

    国務大臣原田憲君) 国鉄の機構の中で今後とも検討していくという答弁国鉄側からございました。私どものほうも、それに応ずる指導監督ということをやっていきたい、こういうふうに思います。
  357. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 以上をもって本連合審査会を終了することといたします。  これにて散会いたします。    午後六時五十四分散会