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1969-05-08 第61回国会 参議院 運輸委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年五月八日(木曜日)    午前十時四十四分開会     ―――――――――――――    委員異動  五月八日     辞任         補欠選任      渋谷 邦彦君     田代富士男君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         岡本  悟君     理 事                 江藤  智君                 金丸 冨夫君                 谷口 慶吉君                 瀬谷 英行君     委 員                 河野 謙三君                 佐田 一郎君                 菅野 儀作君                 平島 敏夫君                 前田佳都男君                 山崎 五郎君                 渡辺一太郎君                 上田  哲君                 加瀬  完君                 木村美智男君                 森中 守義君                 田代富士男君                 三木 忠雄君                 中村 正雄君                 市川 房枝君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        運 輸 大 臣  原田  憲君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  菅野和太郎君    政府委員        内閣法制局第四        部長       角田礼次郎君        公正取引委員会        委員長      山田 精一君        行政管理庁行政        監察局長     岡内  豊君        経済企画庁長官        官房長      岩尾  一君        大蔵省主計局次        長        海堀 洋平君        大蔵省理財局長  青山  俊君        運輸政務次官   村山 達雄君        運輸大臣官房長  鈴木 珊吉君        運輸省鉄道監督        局長       町田  直君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  山口 真弘君        自治政務次官   砂田 重民君        自治省財政局長  細郷 道一君        自治省税務局長  降矢 敬義君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田善次郎君    説明員        経済企画庁国民        生活局参事官  小川としやす君        日本国有鉄道総        裁        石田 禮助君        日本国有鉄道副        総裁       磯崎  叡君        日本国有鉄道常        務理事      井上 邦之君        日本国有鉄道常        務理事      小林 正知君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案内閣  提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。  本日、渋谷邦彦君が委員を辞任され、その補欠として田代富士男君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案を便宜一括して議題といたします。
  4. 木村美智男

    木村美智男君 議事進行について。時間をあまりこれでとる気はありませんが、きのう新聞補足質問という見出しで出ておるわけです。それで、これは新聞のことだから、間違いもあるから、そういうことはどっちでもいいですが、委員長にこの委員会性格というもの――それからぼくは、まだ一回も委員会として質問してないわけだ。かりに新聞のいうように、これからやることが補足質問であると言われるのでは、ちょっとこれはどうも納得できぬので、委員長から正式に、これは新聞新聞でいいですよ、委員会として、いまやっている委員会というものはどういうもので、質問というものはどういうものだということを、きちっと一応整理をしてもらう、それを明らかにしていただきたい。
  5. 岡本悟

    委員長岡本悟君) これは、一昨日の委員会の冒頭で申し上げましたように、議長あっせんによって質疑を続行するということを私は申し上げておりますが、そういうふうに御解釈をいただきます。
  6. 木村美智男

    木村美智男君 そうすると、委員会は、二十四日の事態というものは一応なかったものとして、その間、時間的な経過はあったけれども、継続して質問を続行しているものと、こういう理解でいいですね。
  7. 岡本悟

    委員長岡本悟君) いままで議長あっせんによって質疑を続行しておりますので、そういうふうに御了解願います。
  8. 木村美智男

    木村美智男君 議長あっせんという問題があったことは当然ですけれども質問自体性格議長あっせんが中に入ったから、前のとあとのとでは違うのだということでは困る。質問はやはり質問であって、補足質問、前はほんとうの質問で、今度は、つけ足しの質問だと、これじゃちょっと困るので、そこのところだけをはっきりしてくれと、こう言っている。議長あっせん経過のあったことは十分承知をいたしております。
  9. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 議長あっせんによって質疑を続行しておりますから、そういうふうに御了解いただきます。
  10. 木村美智男

    木村美智男君 こだわる問題じゃないと思うのだが、そこをきちんと言えないかな。それは、そんならこういうふうに伺いますが、新聞では補足質問と出ていますが、いまからやろうとする質問補足質問ですか。
  11. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 委員長としては、一昨日以来補足ということは全然使っておりません。あくまで議長あっせんに基づいて質疑を続行いたします、こういうことを申しております。
  12. 田代富士男

    田代富士男君 議事進行。いま木村委員からも質問があった点について、私も確認したいのです。いま岡本委員長は歯切れの悪いような御答弁をなさっておりまして、議長あっせんに基づいて委員会を再開しているということですけれども、私も議長に会いました。議長はいろいろな条件をつけずにもと状態に戻す、そうして審議を促進してもらいたいということを申されたわけなんです。このことについて、いま岡本委員長は、議長あっせん案どおりだということを申されたのであります。であるなら、議長は慎重に御審議を願いたいということでございましたし、そうなれば二十四日にあのような強行質疑打ち切りというようなことがあったわけなんですから、あれはなかったものとまず解してよろしいのですか。もう一度私確認しておきます。あの強行質疑打ち切りという動議は無効であったのか、あるいはいま生きているのか。無効か、無効でないのか、どちらか、その答弁をお願いします。余分のことばは要りません、無効かどうかという……。
  13. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 議長あっせんによりますと、有効、無効は論じないで質疑を続行すると、こういうふうに私はきまったように了解しております。
  14. 田代富士男

    田代富士男君 それが、一番最初私は、議長が話をされるときにその場所にじかにいた男なんです。有効か無効かわからないままに議長あっせんしますか。そういう一切の付帯条件はつけないでもとへ戻す。だから二十四日の質疑打ち切り動議は有効であったのか無効であったのか。重宗議長は、それは一切の付帯事項はつけないということを言明している。おかしいじゃないですか。有効か無効かわからないままに……、まあ聞きなさいよ。私はその場所にいたし、だから私は確認をしますということを岡本委員長に聞いているわけなんです。無効であるか有効であるかわからないままに当委員会を運営するような、そういう議事進行であってしかるべきでしょうか、私は疑いますね。そのような、有効であるか無効であるか、一切の条件はつけない、議長の話はそういう話なんですよ。だから考えてみるならば、いままでの国会の例をもちまして、もしもそれが有効であるとするならば、連合審査なんか開かれたためしがありますか。いままでの国会先例を見て示して下さい。
  15. 岡本悟

    委員長岡本悟君) もう同じことを繰り返すより、あくまで私はそういうふうに了解して、一昨日の運輸委員会を開会しまして議事を進めておるわけです。(田代富士男君「だから……」と述ぶ)その点は、ちょっと待って下さい。まだ発言許していませんよ。だから私としては、あくまで議長あっせんに基づいてやっておるわけですから、もしその点について、あなたみずからおっしゃっているように、国対委員長ですからその場にいたとおっしゃるなら、上のほうで聞いて下さい。私は、そういうふうに了解しております。
  16. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 議事進行について。有効か無効かということであまり時間をとりたくないと思います。われわれやはりこの間の質疑打ち切りは無効であったというふうに解釈しております。無効であったという解釈をとらなければ、この間の質疑はそのまま加瀬委員から始まり、三木委員に引き継ぐという順序はとれないわけで、さらに連合審査という手続もとれないわけです。さらに継続して委員会を行ない、さらに連合審査をやり、またきょう委員会を開く、こういう段取りをとっているんですから、これは無効であるという解釈をするのが、私は妥当だろうと思います。そういう解釈でもってこれから議事を進めて行きたいというふうに考えておりますので、もし与党側異議があるならば、これはまた異議を申し立ててもらえばよろしいし、そうでなかったらさっそく議事を続けていただきたいと思います。
  17. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 森中君。  〔田代富士男君「議事進行について」と述ぶ〕
  18. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 発言、許しません。  〔田代富士男君「議事進行について。そういう無謀なことがありますか、議事進行について発言しているのに封ずるあれがありますか。私は納得できないから質問している」と述ぶ〕
  19. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 納得できないと言っても……  〔田代富士男君「もう一つ私が聞いていることは……」と述ぶ〕
  20. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ちょっと待って下さい。あなたに発言許していません。  〔田代富士男君「議事進行について発言と言っているんです。」と述ぶ〕
  21. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 田代君。
  22. 田代富士男

    田代富士男君 岡本委員長。この前から私はたびたび言っておりますけれども議事進行について納得できない点があるために質疑をしていることに対して、発言を封ずるということはないでしょう。だから私は……
  23. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ちょっと待って下さい。
  24. 田代富士男

    田代富士男君 私が聞いていることは、順番を追って聞いているんですから、だからいま有効であるか無効であるかということに対して、委員長自身ははっきりしなかった、そのことに対して有効であるか無効であるか。また社会党の瀬谷委員はこれは無効と、無効であるから連合審査からこのように臨んできた。また与党理事のほうからそういう異議があるならば言っていただきたいとおっしゃいます。私がお聞きしたいことは、もしもこれが有効であるとするならば連合審査等は行なうわけがないし、過去に衆議院あるいは参議院においてそういう動議が終わった後に連合審査等をやった先例があるのかないのか尋ねている。もしもこれが無効であるとするならば――二十四日以前の状態であるならば、われわれは慎重審議この法案に対して質疑をしていただきたい。その精神できておりましたし、重宗議長もそのあっせんにあたりまして、慎重審議審議にあたってもらいたい、そういうことをたびたび申されましたし、いま岡本委員長が、あなたも国対委員長だし、じかにお聞きになりたければ聞いていらっしゃいとおっしゃることですから、私はいまから行って議長に再度確認してきます。議長に再度確認と同時に、この問題は議運委員会において一たんはまかされたわけなんです。その議運委員会においてそれをなされたのですから、私はその問題をきょうはっきり議運委員会においてしてきます。だから私がもう一つ、いま聞いていることにお答え願いたいことは、岡本委員長は、この二十四日の質疑打ち切り動議は無効であるか有効であるかわからないままにやっていると、そのように解してよろしいわけですか。もう一度、よろしいでしょうか。
  25. 岡本悟

    委員長岡本悟君) そのとおりでございます。議長あっせんにおきましては、有効、無効は論ぜず質疑を続行すると、日程については当該委員会において決定すると、こういうふうに私は理解して、すでに一昨日この委員会を始めております――続行しておりますが、そのときあなたは欠席しておりますから……。
  26. 田代富士男

    田代富士男君 わかっております。
  27. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 平穏無事に開始されておるわけですから……。
  28. 田代富士男

    田代富士男君 もう一言。だから、いまから議運委員会へ行きます。また議長にも確認しまして――私は、おそらく午前中はだれか御質疑なされると思いますから、午後、確認した上においてもう一度委員長に再確認したいと思います。
  29. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 森中君。
  30. 森中守義

    森中守義君 大蔵大臣おいでですね。たしか外遊されておられたようですが、その間に通行税法の問題や、運賃法及び措置法案審議の際にすこぶる渋滞をきたしました。元来通行税法運賃法、むろんこれは一連のものと私は理解します。にもかかわらず参議院審議の際に、通行税法が同時に参議院において審議できなかった。したがって、これは法案提出責任者である大蔵大臣一言釈明があっても私はしかるべきであると思います。むろんあなたの代理として菅野経済企画庁長官が一応の釈明はされましたけれども、あらためて責任大臣として、当委員会において法案審議がきわめて渋滞をしたことに対する何ぶんの釈明を求めたいと思います。
  31. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 運賃法通行税法は、これはもう事実上一体として扱っていただきたいと、こういうわけであります。それが諸般の事情で、その一体のものが離れたり、くっついたりする、まあ幸いにして、今日は一体として進行されておるわけでありますが、その間、まあ私どもに手違いがあったかどうか、私もさだかには承知いたしませんが、私どもに手落ちがあったとすれば遺憾の意を表明いたします。
  32. 森中守義

    森中守義君 荒木さんずいぶんお急ぎのようですね。どのぐらいまでいいですか。
  33. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 大体十一時までと聞いておりましたが……。
  34. 森中守義

    森中守義君 それでは、お急ぎのようですから、ちょっと行管長官に関連のある事項を先に質問します。運輸省再建基本方針として試案を出してまいりました。この中で国鉄行政簡素化機構簡素化を促進するという一条項がある。むろん再建会議報告書の中にも同様な趣旨が表現されております。そこで具体的に申しますと、国鉄本社支社管理局、しかも四十六万七千名という世帯人員の中で五%を占める非現業要員がいる。ついては今日、こういう国鉄機構行管としてはどうお考えになっているだろうか。あるいは現業要員非現業要員配置状態等は他の公社あるいは現業官庁等に比べて、国鉄はどういう状態になっておるのか、その辺のことを最初お尋ねしておきます。
  35. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘国鉄財政推進会議でございますか、そのことは私つまびらかにいたしておりませんが、お話のように、国鉄機構そのもの簡素合理化するという角度から検討された提案がなされておるとすれば、行政管理庁としての立場からも一般論としては賛成でございます。ただし、それは第一義的には精魂を傾けて努力しておられる国鉄総裁、副総裁、さらに監督指導立場にあられる運輸大臣が、それを受けとめて立体的によく御承知のはずでございますから、運輸大臣のほうからの御意向が出まして、それが法律事項に関しまする限りは、行政管理庁としても十分検討の上、御意見を申し上げたい、そういう形じゃなかろうかと存じます。繰り返し申し上げますが、一般論としては行政機構ないし公社、公団、特殊法人等簡素合理化をはかるということは、国民的要望だと心得ます意味において、御指摘内容所管大臣としても御賛同なさるような立場であるならば、賛成立場において、より合理的なものに仕上げるために御協力申し上げねばなるまい、かように思います。
  36. 森中守義

    森中守義君 これは行管長官一般論原則論であると同時に、また国民の支持があるなしという、そういう問題とは別なものとしても、国鉄再建ということはきわめて深刻な問題なんです。だから私は、原則論一般論がこうだからという、そういう見方からお尋ねしているのじゃない。むしろ国鉄を一日も早く再建を完成せしむべきであるし、この計画を実行に移さなくちゃならぬ。そのためには、むろん機構それ自体がすべてだとは言いません。しかしながら、どう考えてみても本社がある、支社がある、管理局がある。こういう状態というものは、その他の公社あるいは官庁等にもこういう例がない。だから原則論一般論じゃなくして、むしろ進んで行管としては公正な立場から、国鉄機構のあり方というものを再検討されるという具体的な方策がとられてもいいんじゃないか。このことは、運輸大臣総裁おいでになるが、むろん真剣ではございましょうけれども、国の政府の機関として国鉄はあるわけであります、ある意味では機構なり人員調整をすべき所掌をあなたはお持ちだから、そういう立場から見るという、そういう考えはありませんか。
  37. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 一般論として一応お答えせざるを得ない私の立場であると思います。設置法からいきましても、法定された機構等につきましては、その法律課題それ自体の御相談を受け、それに対して意見を申し上げるということでございますが、むろん一面、行政監察機能も命ぜられておる立場でございますから、行政監察を通じて結論が出ました場合に、勧告その他の方法で調整機能を発揮することはあり得ると思いますけれども監察をやる具体的計画は、ただいまのところ持っておりません。そこで機構そのものが、御指摘の点が、法律に基づくものかどうかということもつまびらかにしないままで申し上げておるのは恐縮ですけれども、そうであります限り意見を述べる立場ではありますが、それとてもさっき申し上げましたように、国鉄総裁、副総裁、さらにその監督立場運輸大臣の御意向がはっきり出てきて、こう考えるがどうだという意味合いにおいての御相談課題とならざるを得ない。監察の問題は、いま申し上げましたように、今後の対象とすべき課題とは思いますけれども、具体的な計画は持っておりませんことを率直に申し上げます。
  38. 森中守義

    森中守義君 いま、それがあるかないかというのじゃなくて、これからするかしないかと、こう聞いているわけですよ。その点、もうちょっと率直に言ってもらったほうがいいんじゃないでしょうか。それと、勘違いされちゃ困る。この際、ひとつ何とか行管にもの言おうというつもりじゃない。国鉄を真剣に考え、何とかして再建の途上に乗せたい。そのためには、行管という立場から今日の機構でいいのか悪いのか。これが新しい再建計画にふさわしいかどうか、あるいは人の配置はどうなのかということなんです。だから、いままでないのだけれども、せっかくこういう機会ですから、むしろ進んで行政監察をおやりになったほうがいいんじゃないですか。
  39. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) いまお尋ねのような気持ちで、それに対応するお答えを申したつもりでございますが、繰り返し申し上げますと、国鉄機構そのものを一方的に私ども立場から運輸大臣ないし国鉄総裁にかれこれ申し上げる守備範囲を持っているわけじゃございません。すでに現在あります機構等は、法律事項に関します限りは行管庁立場においても御賛同申し上げた内容で行なわれているわけでございますから、行政管理庁みずからの立場機構のことについても検討を加え、改善に協力したらどうだという点の御質問につきましては、さっき申し上げたとおり監察機能を通じまして国鉄という膨大な世帯監察した結果、いまの機構が適当かどうかという意見を結論づけまして、勧告する等のことはあり得るわけでございますが、そのことにつきましては相当の下準備が要る、スタッフも整えてでなければ、膨大でありますが、ゆえに、複雑でありますがゆえに、簡単においそれとできないという困難性念頭に置いて、ただいま具体的な計画は持っておりませんと、少し先走ったかもしれませんけれども、申し上げたわけでありまして、以上を率直な、露骨な私のお答えとさせていただきます。
  40. 森中守義

    森中守義君 時間がないようですから、あまり深追いしませんが、要するに監察する機能のあるなしに関する意見でしたが、そういうことは抜きにして、国鉄に対する監察を行なう、一ぺん点検をしてみる、こういうように理解していいですね。
  41. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) もちろん国全体の立場から見まして検討を加えべき課題であるということは、さように思っております。ただ、実施するとなりますと、相当の準備が要るようであるということを、あわせて申し上げた次第でありまして、お尋ねの点を少し逸脱しているかもしれませんが、率直なところを申し添えさしていただきます。
  42. 森中守義

    森中守義君 もう一つ鉄道公安職員というのがあるのを御存じですか。
  43. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 聞いております。
  44. 森中守義

    森中守義君 聞いているじゃ困る。おそらくこれも二十五年にこういうものが発足したときには、むろん行管としても相談に乗っておられると思う。そこで二十五年の段階というのは、戦後のたいへんな社会の混乱のときなんですよ。それで列車の警乗が必要である、そういう社会の環境の中にこういうものが生まれたのだが、今日なおこういうものが必要であるかどうか、この点についてはどうお考えでしょうか。
  45. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) そのことも、第一義的には運輸大臣からお答えいただくことが適切だと存じますが、単なる感想を出ませんけれども、今日といえどもやはりその必要はあるのじゃなかろうか。ゲバ棒を持って、ただ乗りをする者もいるようでございますから、それらのことを念頭に置きましても、公安官必要性は、国鉄自体としてあったほうが適当ではなかろうか、かように思います。
  46. 森中守義

    森中守義君 この鉄道公安職員の職務に関する法律というのが二十五年にできている。そういうものを予定したり予見していないのですよ。全然別な趣旨ででき上がっている。それをいまゲバ棒の学生が線路に乱入するから公安官の必要があるということは由来これは公安官本旨じゃないのです。本旨じゃありませんよ。ですから、この件については、私はもっと慎重に行管それ自体としても考えていただかないと……。全国で三千名おりますよ、三千名。  そこで、国鉄赤字再建をやろうとする際に、一体この三千名の職員というものが今日ただいま、どういう任務を果たしているのか、それが国鉄財政にどういう影響を与えるか。要するに鉄道公安職員配置した本来の法律上の趣旨、その目的というものは、いま言われるようなところにないわけだから、私は意見としては、こういうものにこそ合理化によって適正に国鉄再建をはかるべきである、こういう個人の意見を持っている。だから、行政管理庁として、ただ思いつきということでしたけれどもゲバ棒で騒ぐから、線路や駅に乱入するから必要だという、そういうようなことでなくて、もっと本質を見きわめながらこの問題を検討されていいんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  47. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 走っておる列車内の秩序を維持するという意味合いにおきまして公安官というものは置かれたものと思います。立法当時に連想された具体例は、おっしゃるようなことであったかしれませんけれども、その当時なかったような秩序を破壊するものがおるとするならば、公安官はあったほうがいいんじゃないかという意味で申し上げたわけでございます。ひとりゲバ棒のみならず、スリが横行していることも聞きます。あるいは置き引きがおるとも聞きます。さような車内の秩序維持を警察みずからが当たるよりも国鉄内部で公安官という制度を設けてやられたほうがベターであるという判断のもとに立法されたものと思うわけでありまして、それが国鉄財政的な立場においてどう評価されるべきかという量の問題あるいは質の問題にもかかわることがあり得るとは思いますけれども、それはあくまでも第一義的に運輸大臣の御所管であり、国鉄総裁の責任課題であるということだろうと存じます。行管立場から、ただおっしゃるようなことを受けまして、直ちに何らの根拠なしに、言いかえれば監察という当然の機能を経ないで考えを申し上げるという立場ではなかろうと。信頼する運輸大臣国鉄総裁におまかせをしてもだいじょうぶじゃなかろうか、財政面に関します限りは。そういうふうに私は理解をいたしております。
  48. 森中守義

    森中守義君 そんなことなら行管を廃止したらどうだ、直ちに解体するのですよ。国家行政組織法、行政管理庁設置法を読んでごらんなさい、勉強しなければだめですよ。同時に、いまあなたが言われたことは、国家公安委員長としての答弁ですよ、行政管理庁行政がほんとうに能率的に、効率的に運営されているかどうかということを、つまびらかに調査、検討を加えて、適切に勧告を、あるいは指導をするのがあなたの仕事ですよ、そんなばかな話ありませんよ、もう一回行政管理庁設置法を読み直してみなさい。答弁は要らない。そういうような話ならば、自体行管に何を聞いても話はできない。まことに遺憾です。私はそういうつもりで聞いているのじゃない。当然あなたの所掌だから、所管さるべき行管として聞いている。何ですか、いまの答弁。そういうように所管の大臣、総裁が責任を持ってやっているというならば、何のために行政管理庁があるのか、ばかな話ありませんよ。しかし、いま内閣から呼びに来ているようですから答弁は要らない。要するに、いまのあなたの答弁は、国務大臣行政管理庁の長官としての責任ある答弁ではない、そういうものを私は聞こうとは思わない。
  49. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 私は……
  50. 森中守義

    森中守義君 いいですよ、答弁要らない、そんな答弁要らぬ、聞いてもしようがない、また、あらためてやりましょう。そういうことでは答弁封鎖だ。
  51. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  52. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記を始めて。
  53. 森中守義

    森中守義君 大蔵大臣、五月二日の日本経済新聞に、「三公社の「独立採算」強める。料金に自主決定権。大蔵省検討国鉄合理化基準も」、こういうことが出ておりますが、あなたの御存じのことですか。
  54. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだその新聞も見ておりませんし、そういう議論が部内にあることも承知いたしておりません。
  55. 森中守義

    森中守義君 これ、ちょっとごらんになったら……。きわめて具体的だ、知らないことはないだろう。
  56. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 全然知らないのです。
  57. 森中守義

    森中守義君 この運賃審議に重要な関係がある。
  58. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 全然承知いたしません。
  59. 森中守義

    森中守義君 御存じないのですか。
  60. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 全然承知いたしておりません。
  61. 森中守義

    森中守義君 在来の傾向からいきますと、事務当局でこういうものが詰められていって、最終的に閣僚決定という、こういういきさつをいろいろな問題で知っておる。したがって、これほど日本経済新聞が一面のトップに出したということは、大蔵省内に全く火のけがないとは思えない。それならばお尋ねいたしますが、今回の再建期間の中で運輸大臣がいろいろ協議をするという事項がありますね。同時に再建期間、つまり十カ年間で五十二年くらいから黒字に転ずるという再建計画は、大蔵大臣として成功するというお考えですか。
  62. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まずぜひ成功してほしいという強い願望を持っております。また同時に、これからの国鉄の努力次第によりまして、これが成功するというふうに考えております。
  63. 森中守義

    森中守義君 すでに初年度において、先日の国鉄の磯崎副総裁答弁によれば、運賃の歳入欠陥が約百五億、及びベースアップの調停段階における試算等で勘定すれば、大体合わせて五百億程度の予算上の狂いを生ずる、こういうことなんですね。初年度において五百億の狂いを生ずる、これが再建期間中の単年の事業計画でかなり大きな変更を来たしますよ。そうなれば、この意見書の試算表、いままでずいぶん長く議論してきたのですが、この中で、四十八年及び五十二年、二回運賃値上げをしなくちゃならぬだろう、一〇%程度。だから私の考えでは、こういう歳入不足を生ずる、あるいは再建期間中にそごを来たす場合に、四十八年、五十二年の二回によってコントロールをするのじゃないか。こういうことを総理あるいは運輸大臣等々にもしばしばお尋ねしてきたのですけれども、いま私の言うようなことをお考えになっていますか。
  64. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 十カ年の間に運賃の値上げが、また再び三たび行なわれますかどうか。これはもう少し今回の措置による国鉄再建計画が動き出して、またその成果がどういうふうに出てくるかということを見ないと、どうも判断できない問題じゃないか。しかし、私が大ざっぱに想像するところによりますと、まあ再建期間中運賃値上げが回避できるかというと、私はそれは至難であろう、こんな感じがしております。
  65. 森中守義

    森中守義君 そこで、この中に出ているように、すでにもう国会に料金もしくは運賃等の議決承認を求めるということは、できるだけ回避をしたい。公社にその決定権をゆだねるべきであるというのがこの内容です。むろん意見書の中にもあと二回については鉄道運賃法は眠らしておけ、行政裁量によって、国会の承認を求めないで、値上げが可能になるような特別な措置を講じようということを意見書の中で言っている。それとこれとは符節を合わせておる。いま大臣、御存じない、知りませんと、こうおっしゃるから、それ以上は問いませんけれども、万々そういうことはありませんね。やはり料金ないしは運賃等の問題については、国会の議決承認を求めるという、いままでの方針には変わらない、こういうことが言い切れますか。
  66. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国鉄財政再建推進会議の答申の中に、十年間の運賃値上げ、これは政府の裁量にまかしておるのだと、こういう一項があるわけですね。つまり国会の承認を要しなくもできる、こういうふうにしたらどうか、こういう一項があるわけですが、これは今回政府のほうでは取り上げておらないのです。その取り上げない態度によってひとつ御了解願いたいと思います。
  67. 森中守義

    森中守義君 そのとおりなんですが、ただ言われている意味はちょっと違うのですよ。意見書の中には、特別な配慮をされることが望ましいということであって、そうせよとは言っていない。その点、あまりそうせよということを意見書が言っているというと、ちょっとこれはまたあとで問題が残りますが、私のほうから、それはそうじゃないというふうに切り返しておきましょう。  そうなりますと、そのときになってみなければわからぬと、こういうことなんですが、あとは基本方針あるいは事業計画等によっていろいろ調整をはかろうと、こういうことのようですが、大蔵省自体としては、再建期間中における国鉄の経営状態については特別に工作をするようなことはありませんか。
  68. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 再建期間中に料金を政府の裁量で改定をするというような提案をするという考え方はいま持っておりませんので、おそらくそういう構想を政府から打ち出すというようなことはあるまいと思います。
  69. 森中守義

    森中守義君 名称を忘れましたけれども、大蔵省の財政政策何とか会議があって、そこの第二部会かあるいは第三部会というのが国鉄再建政策を議論するようになっておりますね。こういうものは存続されるのですか。あるいはそこでだいぶん問題になっている、推進会議ができる前から、そのあとも続いていたと思うのですよ。ですから、措置法では運輸大臣大蔵大臣と協議をする、こうなっているのだから、再建計画がどういう状態で進んでいるのか、予定どおりいっているか、いっていないかですね、そういうことは協議によってわかるでしょうけれども、大蔵省独自の立場から国鉄再建状態について特別にチェックせられるようなことはないのか、この点はどうですか。
  70. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回予算編成にあたりまして、わりあいに長期にわたった展望を議論しまして、結局財政再建措置法という形が出てきておるわけです。かなりこれは議論をした結果こうなっておるわけであります。この中で、この再建措置による推移につきましては、随時緊密に連絡はとっていきまするが、いまこの段階で大蔵省が新しい提案を国鉄当局に対してする、こういうことはありませんです。
  71. 森中守義

    森中守義君 この推進会議の試算の中で、政府財政措置が九千六十七億、それで思い出すのですが、過般の本院の本会議で、国鉄から要求があがったのはずばり全額のんだ、こう言ってあなた胸張られた記憶がありますね。ところが、国鉄の施策による増収額が九千八十九億、それから合理化節減が九千六百九十五億ですね。それから利用者の公共負担の是正を含んだもので三兆三千七百六十億、こういうようにこの試算が一応の準拠になっているわけですが、これによってものを言っても差しつかえないと思うのですけれども、この金額に見る限り、ちょっと胸の張り方を遠慮してもらわなければならない、そう思いませんか。要するに利用者の四分の一ですよ、利用者の負担させられる金額と政府財政措置というのは四分の一に過ぎない、国鉄の二分の一。これじゃ少々ちょっとやっぱり面はゆいんじゃないかという気がしますが、胸を張るなら張るようにもう少し同額くらい出したらどうですか。
  72. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 数字のことを詳細にいま申し上げられませんが、とにかく国鉄財政再建推進会議が衆智を集めまして検討した、それを大体受け入れたと、こういうことです。ただ、利子補給ですね、六分にせいと、こういう六分をめどにせいと、こういうのに対して、六分五厘としてあります。この点は違うのでありますが、その他は、形は違いますが実質的にはこれを受け入れる、こういうふうに考えておりますので、本会議におきましてもおおむねこれを受け入れたのだ、こういうように私は申し上げたので、別に胸を張っておるわけではございません。
  73. 森中守義

    森中守義君 やっぱり少し遠慮してもらわなければいけない。それはいま大臣が言われるように六分か六分五厘かというのは、きのうも運輸省のある高官からちょっとそういう話がありましたが、これは一つのネックです、どう考えてみても。それで、せんだって来同僚委員からもずいぶんきびしい追及が大蔵省にありました。一例をあげれば飛行機の場合には単に着陸料取っているだけじゃないか、実際の設備は百分の七十五を国が、百分の二十五を自治体が見るというわけで、ほとんど全額といっていいくらいに国がめんどう見ている。一面港湾はどうか、これまた飛行機よりもっといい。道路はどうかというように見てくると、この際、やっぱり六分ということで、国鉄再建を、大蔵大臣として、しかも政府一体の責任において実現しようとするならば――ことしはもうこれはやむを得ないにしても――来年くらい手直ししたらどうですか、六分というのは常識じゃないですか、それが実現するかどうかということが十カ年間の再建がなれるかどうかというように言いかえてもいいんじゃないか、こういうように思うんですが、そのときに胸を張ってもらいましょう。どうですか。
  74. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国鉄財政再建推進会議ですね、この意見書の取り扱いにつきましては、運輸当局また国鉄当局と議論に議論をいたし、結局昭和四十四年度予算並びに今回御審議を願っております措置法ということに落ちついたわけであります。まあこれでやってみると。こういうわけで政府部内、国鉄を含めまして意見統一いたしたばかりでありますので、ここでまたこれは来年は改めますと、こういうふうに申し上げることはできません。まあ御意見として拝聴いたしておくということで、ひとつ御了承願いたいと思います。
  75. 森中守義

    森中守義君 公聴会ではありませんから、それは困る、そういう言い方では。それはやっぱり改めるのに勇気を伴ってもいいですよ。他とのつり合いもとれないし、しかもこの試算表がずばり数字に当てはまっていったときに初めて国鉄再建はできる。ところがさっき申し上げたように早くも初年度において五百億の歳入の狂いを生じている。しかも、先般来言ってきたのですが、企業への努力を要請する、つまり施策による増収あるいは合理化節減、これは率直にいって、非常に残念ながら不確定要素が多過ぎる、これを確定額、予定額としては受け取れませんよ。三分の二の歩どまりで済むのかあるいは二分の一になるのか、賢明な大蔵大臣もこの企業努力による約一兆八千億余のものがずばり確保されるという自信はないでしょう。おそらく総裁、副総裁といえども運輸大臣といえども一兆八千億に対する確定額的な自信は私はないと思う。そうなると、やっぱり狂ってきますよ、これは。そうなれば、そういうところをどこで見ていくかということになると、他との均衡上、私ども考え合わせながら六分でひとついこうということはあまりにも当然なことじゃないですか。そこへもってきて依然として六分五厘ということで再建計画が出たということは、いささか私どもとしては受け取りがたい、なぜしょっぱなから六分で出してこなかった、こういうことを言いたいわけですが、傾聴じゃ困る、すでに七月か八月からは概計の作業が始まるわけですから、傾聴するのじゃなくて、検討しようというぐらいのことは言い残してもらわないと、これは運輸省とその国鉄の予算折衝なんかの際には、全然話にならぬ話に終わりゃしないかという気がしますから検討しなさいよ、そうしなければ再建計画はできないということですよ、どうですか。
  76. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま財政再建計画をきめましてその法律案を御審議願っておるその段階で、これはどうも再検討だと、これはなかなか申し上げにくいことは御了承を願いたいと思うのです。ただ御指摘のように国鉄の自己努力ですね、この面におきまして長期計画、長期展望は非常にむずかしい問題が多々出てくる、それをどういうふうにやっていくか、こういう問題が私は起きてくるだろうと思う。これは財政との関連ばかりではない。また自己努力の中の転換ということも多々考えられなきゃならぬことだと思いますが、とにかく自己努力、これがどういうふうになっていくかということが、この計画の成功、不成功をきめる要因である。こういうような感じを持ちます。まあ御指摘の利子の問題、これはいまそういう事情で、ここでお答えするということはひとつひらに御容赦願いたいと存じますが、森中さんから強いそういう御意見のあったことは頭の中に刻んでおきます。
  77. 森中守義

    森中守義君 あなたはいつも頭の中に入れっぱなしで忘れる、この前農林水産のときに、例の繭糸事業団への二十億の債権債務の問題をそのままほったらかしですから、私はそういう意味ではあなたは信用したくない、公人としまして。ところが余談はさておいて、いまやっぱりお認めになった企業努力には限界がある、で、そうなれば財政措置か運賃か、そのほかにどういう方法がありますか。要するに国鉄の企業努力による合理化節減なり増収ということは、資金の確保ということではきわめて不確定要素が多過ぎる、強過ぎる、それならば十カ年間の計画は非常にあぶなっかしい、それになおかつ推進をしていこうというならば他に方法を求めざるを得ない。他の方法とは何か、政府財政措置、しからずんば運賃の改定、これ以外にないじゃありませんか。そういうことでしょう。そこへもってきて四十八年、五十二年には、そのときになってみなくちゃわからない。財政措置はいまにわかに六分を実現するという考えはないんだ、こう言われると、初年度において五百億の歳入欠陥ですよ。たいへんな狂いを生じているのですよ。だから私どもは、この再建計画というのがこの状態ですべり出したのでは、十カ年間の再建はできない。将来は非常にお先まっ暗だというそういう見解をこの際持たざるを得ないのです。そういったように詰めていけば、いま少し財政措置について再検討の余地があるんじゃないかということになってくるのですが、それでも、やはり意見として聞いておこう、頭の中に入れておこう、こういうことですか。それじゃ再建計画はできないということだ。
  78. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 自己努力のいろいろ具体的な考え方がこの意見書の中に載っておりますが、その中の自己努力の項目のいろいろな充実、そういうことがまず考えられると思うのであります。それからさらにそれと関連しますが、経済情勢ですね、これがどういうふうに国鉄財政にはね返るか。そのはね返りが容易になるような自己努力、そういうような自己努力の内容、方法についていろいろ考案をする余地というものが私はある、こういうふうに思います。まあこれだけの財政措置、今回いたしたのでございますから、財政措置は財政措置としてそういうふうに前提をとりまして、そうして企業努力を進める。これはまた財政措置が将来動くのだという前提じゃ困る、企業努力というもの、また企業計画というものが成り立ちません。今日の段階では、やはりせっかく煮詰めた財政措置を前提といたしまして国鉄再建を進めてもらう、こう言うほかはないと思うのであります。せっかくでありまするが、こうするのだ、財政措置は再検討するのだというお答えは、ただいまはいたしかねます。
  79. 森中守義

    森中守義君 その段階でそれを約束してほしいというのも少々無理な話かもわかりませんが、同時に、私どももいま大蔵大臣のそういう財政当局を代表しての意見である限り、この再建計画は空文にひとしい、実現の可能性は非常に乏しい、そういうつもりでこの問題に対応をする以外にない。  それからもう一つ聞いておきますが、国鉄財政をことさらに圧迫しているのが公共負担だといわれている。むろん私どもそのとおりだと思う、一つの要素としまして。そこで衆議院あるいは参議院のこの二法の審議の際に、かなり突っ込んだ意見が出ました。ついては結論的に言うならば、ひとり企業側にのみ公共負担をになわすべきじゃなかろう。たとえば通勤、通学等については文部省が財政負担をやったらどうか、あるいは一次産品あるいは二次産品等の輸送については、これまた農林なり、通産なり少し負担したらどうか、こういういろいろ意見が出てきました。そこで大蔵大臣としては、企業側に一〇〇%の負担をなお今後もになわせるというお考えであるのか、あるいは若干政府が負担をするというお考えであるのか。むろん一部分入ってはおりますが、ほんの少額、それは国鉄財政負担を極度に軽減するような額じゃない。ですから、まあ具体的にいえば、企業が二分の一、財政当局が二分の一、こういう――これも思いつきなんですが――ある種の比率をもって公共負担を財政当局みずからがおやりになる考えはありませんか。
  80. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国鉄の公共負担、これは昔からある。国鉄はその負担を負いながらなお政府に納付金をする、そういうような裕福な時代もあったわけなんでございます。それが時世の変化とともに今日のような財政状態になり、公共負担ということも問題にされるというふうになってきているわけなんでありますが、まあ公共負担がどうだから、これをどうしようとか、あるいはその他の諸問題一つ一つ取り上げまして、これに対して手を打つという方法もこれも一つの方法だと思います。この段階というか、このように変動してきた国鉄財政をながめたときに、これに対する対策として一つ一つのそういう問題を取り上げることもこれは一つの方法だと思いまするけれども、しかし総合的に国鉄財政全体というものを踏まえまして、そうして総合的な対策をとる、これも一つ考え方である。国鉄財政再建推進会議は後者、つまり総合的な対策をとるべきである、こういう考え方による答申をいたしておるわけであります。それにのっとって総合的な財政援助ということを御提案申し上げておるわけなんであります。まあ公共負担もものによりましては、これを合理化するというような問題があります。ありますが、しかし、これを財政負担で片づけるという個別的対策、この考え方は今回の財政再建対策としては採用しておらない、総合的対策でいっておる、こういう点はひとつ御了承願いたいと思います。
  81. 森中守義

    森中守義君 元来、総合策なんというのはまことに抽象的で、ある意味ではごまかしですから、ちょうど大蔵省が特別交付金をわけのわからぬような内容をぶち込んで出しているようなものですよ。ちっとも具体的じゃない。しかし国鉄の場合に、企業の側としては公共負担というものが財政をかなり圧迫しているという事実だけは、これは動かしがたいものですから、それをひっくるめて総合的な対応策をとろうというのじゃ、ちょっと私は再建の期間中においてはいかぬのじゃないですか。むしろ公共負担については個別的な独自な対策が立てられていいだろう、こういうように思うのです。しかし、これも頭の中に入れておいてほしい。  それから、時間がないそうですから、あと一問で終わりますが、先ほど来申し上げたように、まだ国鉄あるいは運輸大臣意向を聞いておりません。ですから大蔵大臣としてどうお考えになるかということを聞いておきたいのですが、要するに、五百億近い赤字がある。非常に歳入に狂いを生じた。これを一年間を通じて単年度の中で企業努力で補えと言ってみても、まず私は物理的に無理じゃないか、こう思うのですね。そうなると当然国有鉄道法の定める条項によって予算の補正をしなければならぬ、こう書いてある。したがって五百億、五百億というのは私は非常に低めに見積もったものだと思う。まあこれに仲裁がどういうふうになるかわかりませんが、その部分を入れて定期昇給と見れば、相当その数字というものはふえますよ。そういうふうに見ざるを得ない。まず大ざっぱに見て六百五十億前後だろう、こういうふうに私は見るのですが、そうなると五百億を上回る歳入欠陥を生じているのに依然として企業努力によってそれを補えということになるのか、あるいはこの際思い切って予算の補正をするか、いずれかによらざるを得ないのじゃないですか。むしろ選択すべきは予算の補正じゃなかろうか、そのほうがより国鉄の経理を正確にするという意味からしても、あるいは再建をより軌道に乗せるという意味からしても適切な措置であると思うのですが、いかがですか。
  82. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ裁定が出ていないわけでありまして、そういう段階でありまするので、数字については触れることはできませんが、まあ裁定が出た、そういう際における国鉄財政の処置をどうするかと、こういう問題となってくれば、これはまあ運輸大臣、また運輸大臣国鉄側と御相談をしなければならぬと、こういうことになるわけです。また、それを前提としなければならぬわけですが、その相談の際には、私は補正は組まないと。
  83. 森中守義

    森中守義君 どうするのですか。
  84. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま成立いたしました予算の範囲内でやり繰りをしてひとつやっていただきたい、かような意見を申すつもりであります。
  85. 森中守義

    森中守義君 ここで議論すべきことじゃないかもしれませんけれどもね、今朝の新聞等によれば、すでに米価の問題が出ている。これでは、まだ政府のほうでははっきり態度をおきめになっていないようだけれども、これもそう簡単におさまらないです。そうなると、当初の総合予算主義だということは、この米価の問題からしても簡単にいかないんじゃないですか。そうなれば、当然これは補正ということになってくる。しかも、国鉄の五百億以上の歳入欠陥を補えといっても、できませんよ。おそらく困難じゃないですか。まあそこで次の何かを考えなくちゃならないのですけれども、やっぱり補正ということに向かわざるを得ないんじゃないですか。そのことは考えないんだと、こうおっしゃればそれまでのことなんだが、いずれやっぱりそうならざるを得ないというように私は読んでいます。そのときにはあなたも賛成するだろう。補正を組まなければならぬのじゃないですか。
  86. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一部はもう予算の中に見てあるのです。
  87. 森中守義

    森中守義君 それは百五十億くらいだ、定期昇給だけだ。
  88. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) つまり定期昇給ですね。その他、予備費というようなもの。
  89. 森中守義

    森中守義君 予備費は、災害がある。
  90. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) というようなこともありまするし、まあ国鉄総裁ここにおりますが、国鉄総裁も定期昇給だけで事は済むだろうと、こういうふうなお考えは私はあるまいと思います。もっと現実的にものごとを見通しておられると思います。そういうものに対していろいろあれやこれやと苦悩されておるかと思います。そういうようなことで、私は何とかしてまあ切り抜け得るのではあるまいか、補正なしでやっていけるのではあるまいか、ぜひそうしたいと。この考え方は変えるわけにはなかなかいかない。
  91. 森中守義

    森中守義君 いまのお話を聞いて、まあさすがに大もの大臣だと思いましたよ。何かやっぱり手中にある。五百億以上の問題については、国鉄総裁も何かお考えになっているだろうと、こういうことのようですから、大体成算ありというように私は見たんですがね、総裁、よく聞いておってくださいよ。大蔵大臣がそう言っているのだから、まあそういうことで一ととおり質問を終わります。
  92. 木村美智男

    木村美智男君 大蔵大臣が何か大蔵委員会のほうに呼ばれているようでありますから、続いて少し伺いたいと思いますが、第一番に、いままでも運輸大臣等には御質問があったわけですが、国鉄財政が少なくともここ一両年のうちに破局的な状況になる、こう言われて、実は財政再建推進会議がいろいろの対策を出してきた、一体そういう状態を招いた原因というやつは、これはどう把握するかということが、実はこれからの再建にとって非常に実はかぎになるという意味で、これはさいふを握っている大蔵大臣にも、再建問題としては今後影響してくる問題なので、したがって原因についてどう考えられているか、ひとつ大臣の御見解をまず伺いたいと思います。
  93. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 基本的には、私はこの戦後の科学技術時代と申しますか、その中におきまして多種多様の新しい輸送手段というようなものが出てくる、陸の王者であったという国鉄の地位が許されなくなった、こういうところにあると思います。その時勢の変化にまた対応して国鉄の地位を守るという、順応というか、これも時勢の変化が早過ぎて、なかなか国鉄も及びがたかった、こういう点であろうと思うのであります。これが基本だと考えております。
  94. 木村美智男

    木村美智男君 まあ大蔵大臣にわざわざ赤字の原因を聞くということはなんですが、一般的な世の中の移り変わりが激しくて、国鉄の輸送機関としての独占性が失われてきた、しかもそれに対して順応する体制がとれなかった、これはまあ私もそのとおりだと思うのです、その意味では。しかし現実には、そういう中で国鉄経営というものがやはり行なわれてきているわけであります。したがってその経営的な観点からいえば、どういうところに問題があったのかということが、実はこれはたいへん大事な問題である、その点を実はお聞きしたい。
  95. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ特に貨物のほうが不振である、こういうような状態かと思いますが、この国鉄の貨物輸送、これに対して強大な競争相手はトラックであります。これがドア・ツー・ドアのサービスをする、これなんかがかなり国鉄の貨物輸送に打撃を与えているというような――まあ私はしろうとですが、しろうととしてそんな感じがします。しかしこれは、私は決して国鉄の将来を悲観をしていない、明るい展望が持ち得ると思いますのは、いま貨物は自動車が輸送の役目をしておりますけれども、道路事情、これが非常に、何というか、自動車輸送という面を制約する、やがてそういう時期がくる、やはり国鉄だ、軌道だ、こういう時期がくると思うのです。そういうような将来のことを考えまするときに、やはりこの国鉄というものは将来明るい展望を持ちながら、この際いろいろなくふうをこらしていく。いま一番苦しい時期であろうと思う、これを乗り抜けていかなければならぬ、こんな感じがしているのであります。
  96. 木村美智男

    木村美智男君 大臣には総括的に全部取り上げてどうこうという答え方も、だんだんにしていただくつもりですが、まあ道路事情がよくなってそうして国鉄の貨物がだいぶトラックに取られて、貨物収入の面で非常に減ってきたということも一つの原因であることには間違いないわけですね、しかしながら私は、実は大臣に伺いたいのは、とにかく基本的に今日国鉄に過大な公共負担をしょわしているというこの関係は、考え直してみなければならぬところにきているのじゃないのかという問題です。なぜかというと、さっきの新聞もありましたけれども、企業性をどんどん民間企業のように追求をして、そうしてもうけ主義で国鉄がやっていってもよろしい、こういう方針で経営をさせていくならば、これは話は別ですけれども、いまのようにやはり独立採算制という、そういうワクをはめて、とにかく原則的には自前でやれ、こういう方針を立てている以上は、あまりいま世界各国見ても、鉄道でもうかっているというのはないわけです。だから、そこで社会政策的なもの、あるいは産業政策的なもの、文教政策的な意味で、名前が国鉄だからということだけで、相当過大な公共負担をしょわしているということが、これがまず一つ大きな今日の赤字の原因になってきているのじゃないかということを、私一つ言いたい。それは計数的に言えば、おそらく四十二年度で八百七十億くらいでしょう。四十三年度が六百三十億くらいですか。これはおそらく累計をすると、終戦後二十年間には大体一兆円近い負担をしょわしてきたということだけは、私はこれは間違いないと思うのです。その辺が今日の国鉄の実は経営の赤字になってきた一つの大きな問題になっているのじゃないか、ここのところを大臣によく知ってもらわなければならぬ。あとの対策との関係があるものだから、特にそういう認識について、やはり理解を深めていただかないといかぬのじゃないかと思うので、この公共負担の問題について、どういうふうに大臣お考えですか。
  97. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 森中さんにもお答えしたのですけれども、まあ過去においては国鉄はかなりもうかる企業であったわけです。もう政府財政の手助けをするという時代もあったわけでございますが、そういう間に公共負担幾らかしたのでございます。この根拠は、一方において国鉄は、たとえば東海道というような一番収益率の高い路線を独占する、これを国は認めているわけです。現に新幹線のごときは八百億円ももうかる、こういうような状態です。でありますから、まあそういう独占性を与えられているのであるから、一方において若干の公共の負担に応じてもいいんじゃないかという考え方で出発していると思うのです。ところがたまたま今日、国鉄財政が逼迫してきた。財政全体として考えなければならぬそういう時期にきた。そこでまあ公共負担というものができた当時は、そう問題にならなかった負担問題が、いま論議をされるということになったのですが、これに対してどういう考え方をとるべきかというと、公共負担問題もありますが、そういう一つ一つの問題で、対症療法をとるということでなくて、国鉄財政全体としてながむべきいまや問題である。そういうようなことで、まあ体質改善というか、総合対策でいくことが、この際とるべき施策である。こういう考え方のもとに、三位一体政府も大いにがんばれ、こういうようなことで推進会議の答申なんかもこれあり、この方式によったわけです。公共負担というものが国鉄財政に圧迫になっておる。これはそのとおり私も考えます。しかし、これに対する対策は、それに直接的にこたえないで、全体、総合的にこたえる、こういう考え方をとった次第であります。
  98. 木村美智男

    木村美智男君 大臣言わんとするところはわからぬわけではないのです。しかし、たとえば新幹線のごときは、依然として、東海道のような独占性を与えているのだ、だから公共負担のほうは、どうもまああまり国が見るというようなことをしなくてもいいんだというお説のように実は聞き取れるのですけれども、実際は、今日の国鉄で、いわゆる黒字だといわれる線路というのは十四線しかない。そういう反面はどういうことかというと、要するに赤字ローカル線、少なくともいま全国的に問題になっている八十三線、二千六百キロは、とりあえずはずさなきゃしょうがないというような、そういうことまで国鉄は言わざるを得ない、そういう状態が一方にあるということだけで、片っ方新幹線のもうかっている分は、これは実はプラスマイナス・ゼロだというふうにながめていかなきゃならぬ問題じゃないのか。そこが国鉄の、一面独占的なものを部分的に与えられながら、全体としては公共性を持っているがゆえにそこは忍ばなきゃならぬという、そういう問題だと思うのです。依然として公共負担の問題はそれとは別に、つまり新幹線方式をかりに今後山陽にとり、あるいは東北に延ばすという段階になったとしても、これは公共負担を補って余りあるという、そういう飛躍的な増収というものは、なかなかこれは考えられない状況なんです。それが考えられるなら、何も十カ年計画のこんな膨大なものを、わざわざ財政推進会議が出す必要は私はないと思う。だから、財政推進会議もたいへん有識者が集まっていろいろやったけれども、きれいな外側だけさわっているのです、私に言わせると。まだほんとうのところ、国鉄財政再建というものを、単に企業としての国鉄じゃなくて、国民のいわば公共機関としての国鉄再建問題については、財政再建推進会議も御苦労はされているが、核心はついていないという私は見方をしているわけなんです。その意味で、この公共負担の問題については、いま大臣が言われたようなこととの関係じゃなしに、独立採算制との関係で公共負担というものをながめなければ、これは核心をついた解答はそこから出てこないということを実は大臣に知っていただきたい。  新幹線方式の増収対策は、これは赤字路線の穴埋めの方向にむしろ吸い込まれていく部分になっておって、あるいは東海道新幹線すらやらなかったら、もっと赤字はひどいでしょう。そういう意味で、これを大臣にも理解してもらわないと、ちょっとうまくないのじゃないか、そういうことでこれはまあ質問ではないのですから……。  次には、大臣言われるように、やっぱり総合的な立場で問題を解決するというのは、総合的な立場というのは、一つ一つの問題を具体的に洗った中で、全体的に、じゃこれはある程度へこませる、これは延ばすという関係にして、総合的な対策というものが生まれるだろうと思う。そういう意味で言えば、これは大臣さいふを握っているのだから、これは少しいやみに聞こえたってしかたがない、聞いてもらわなければならない。とにかく国鉄のいま長期借り入れ金のやっぱり残高というものが、おそらくことしは二兆円近くなるでしょう、四十三年度末一兆八千八百億ですか。これに対する、さっき森中委員からの質問もありましたけれども、きわめて高利のやっぱり利息がついている。政府は銭出してやっている、出してやっていると言っているが、ただの銭はちっとも出してやっていないわけですからね、今日までは。去年の五十四億とことしの八十七億がこれは初めてやるのですからね。そういうことから考えると、この借り入れ残高の問題、つまり借金政策という問題ね、世の中の進展に順応するために、国鉄が輸送力の近代化をはかるという、そのための実は資金繰りに借金政策をとらせているというところに大きな問題があるんじゃないのだろうかという問題を二番目に実は聞きたい。これは総合的な対策の一環になる問題というとらえ方で実は伺っているんですけれども、大臣この点はどういうふうにお考えですか。
  99. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回の対策では、民間資金、まあ利用債とかいろいろありますが、わりあいに金利は高いです。それを考慮いたしまして六分五厘までの利息というふうにとどめる、それをこえる分については政府が補給するという施策をとる、また政府の機関が貸しておる金は、金利は全額これをたな上げをする、こういう措置をとったわけであります。かなりこれは思い切った対策であります。まあ一般会計から出る金は少のうございますけれども、実質的には利息全部がたな上げになったと、こういうことになりますので、この措置全体とすると、むしろ再建会議考えておるよりは進んだ対策をとったというふうに考えておるわけであります。いずれにいたしましても国鉄は公共機関であり、国の輸送機関の中軸をなすものであり、これからもますます重要な任務をになっていく、かようなことでなければならない。そういうことを考えるときに、国鉄財政的に行き詰まるというようなことがあってはならない、さように考えておるわけであります。精一ぱいの努力をしたつもりなんです。今後この措置をスタートといたしまして、国鉄再建されることを切に私は期待する、そういう心境でございます。
  100. 木村美智男

    木村美智男君 大臣ね、それはことしになりまして確かに国のというか、大蔵省の国鉄に対する対策というものは、あるいは財政措置というものは、私は画期的なものとしてこれは大蔵大臣のまあ相当やっぱり英断がものを言っていると思うのですよ、その意味では大臣、私高く評価したいと思うのです。しかし、さっきもお話ありましたけれども、依然としてその問題の核心をつくようなやはり対策のところまではまだいっていない。これはあとで大臣とまたもう一回やったことをやり直さなければならぬと思いますが、運賃値上げのやり方、つまり私から言わせるとどうも高い利息での借金政策と運賃値上げ、これは比較的議論はされるけれども、銭を集める方法としてはわりあい安易にできるものだから、どうしても運賃値上げによってそれに依存をしていく、そういうやっぱり経営方針がどうしてもとられる。だからさっきからお話があるように、基本的には独占制が今日失なわれて、しかも世の中の発展に応じ切れなかったというけれども国鉄だってそれなりにいままで何もしなかったかというと、相当まあ事情を知っておるものから言わせれば、苛酷なやっぱり企業努力というものが第一次、第二次、第三次と三回にわたって五カ年計画が、世の中のテンポが早いために四カ年で次に移っているという関係もありますが、ここ十年来とにかくあれでしょう、何とかしなければいかぬということでやってきているわけでしょう。それでなおかつ今日破局的現象を招いているということは、一体どこに原因があるのかということを、大臣ここをやっぱり考えてもらわなければいかぬので、これはほんとうは運輸大臣とあわせて質問をすることなものだから、さいふを握っているあなたにばかりほこ先が向いているわけだけれども、その点はそうばかりに受け取らないで、大蔵省として、やはり公共企業体としての国鉄再建の核心は何なのかという点について、いまの公共負担とやはり借金政策と運賃値上げ政策、これを継続する限り、十カ年計画を立てようが――今度の再建推進会議の、何というか、最も致命的な欠陥は、やっぱり四十八年と五十二年に運賃値上げを考えるということを含めてやっておるから、まあ大蔵大臣が今日前進をした立場を、大蔵省が一歩前進をした立場をとったと、これをもう少し今日の利子補給なりあるいは道路関係に対する対策、空港問題、こういったようなこととひとつあわせて考えて、大体それとバランスのとれるようなところへ国の姿勢を、財政措置の姿勢を持っていかなければ――私はほんとうの意味国鉄財政再建ということは、これはもちろん企業努力や内部合理化、これを前提にしてものを言っているわけですが、そこのところが大臣どうしても今日の一つ欠けている点じゃないのか、欠けているというよりも、不十分なところがそこにあるのじゃないか、ということを、これは大臣ぜひわかってもらいたいと思うのですが、私自身も、そのことでじゃまあひとつ来年からどうだというような話を言おうとしているのじゃなくて、一番大蔵省では話がわかるのは実は大臣なんです、そう言っちゃ悪いけれども。この間から局長クラス来ているけれども、態度は傲慢だし考えていることが全然なっていない。そう言っちゃ悪いけれども、ほんとうにそうなんです。大臣と話しすると一番話しやすいから呼びかけるようなものの言い方をしたのですが、一応そういう意味でいまの借金政策、安易な運賃値上げ政策、それと公共負担をしょわせながら独算性をがっちりとひもをゆるめない、この関係についてどうしてももう一回財政当局の立場でこの点の再検討をしてもらわないと……。そうでないと財政推進会議がせっかく十カ年計画を立てたけれども、私はどうも将来に向けて明るい展望を持つことができないですね。多少事情を知っている立場から申し上げて、この点どうですか。
  101. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私はさっきも申し上げたのですが、国鉄財政をここへ追い込んだ最大の理由はどこにあるかというと、これはもうこの世の中の変化だと、十年前に自動車輸送が今日のような状態になることをこれはとても想像もつかないことだったと思うのです。国鉄当局は、まあしかし時勢の変化に対応するようにという最大の努力をしたと思います。思いますが、そういう予想もつかないような急速なスピードの変化、これがいまとにかく国鉄を非常に苦しいところに追い込んでおる、こういうふうに思いまして、国とすれば最大限の対策をとったというふうに考えておりますが、私は今後を展望してみまして、時勢の変化、これが大きくものをいうだろうと思う。これは私のほんの感想でございますが、やっぱり国鉄だという時代が、もうそう遠くない時代にまたくるのじゃないか、そういう気がしてならないのであります。つまり軌道による大量の輸送手段、これでなければならない、こういう時期がやがてやってくるのではあるまいか。そんな感じがしてならないのであります。そういう意味において、私は国鉄に非常に大きな期待を持っておるわけでございますが、とにかく今回は十カ年ということを踏まえましてこれだけの措置をきめた。これがまたぐらぐらするようじゃ国鉄の企業計画というものはできないわけです。ですから、これでひとつやってみるとどうなるのか。そうしてできる限り最善を尽くしてもらうというほかないんじゃないか、かように考えます。
  102. 木村美智男

    木村美智男君 大臣いま答えられているところを、ほのかにそれはそういう希望を持ちたいと思います。だけれども、私はやはりさっき大臣が言われたのを原則的に私認めたということは、客観的な事実として世の中の進展が急速に早まってきたという、これはそれなりに認めるというのです。ところが、そのときに政府は総合的な交通政策を持っていなかったんじゃないかということを私は言わんとしている。道路が進展をしていくとなれば当然トラックに貨物は食われるということはわかるのですから、そうしたら一面では高速道路をどんどん引っ張ると同時に、大量の輸送機関というものはどうなければならないかということをあわせ考えながら、これは道路との関係だけじゃない、もちろん船も飛行機の問題もそうですけれども、そういう総合的なそれこそ交通政策というものをもってそうしてやってくれば、なおお前公共負担を背負えの、独立採算制をやれのといったようなことばかり言っちゃおれない。それを実は七、八年前から私どもも企業にごやっかいになっているときからものを言っていたのですが、それはこの前の運賃値上げの際にもその点は強く言ったのです。しかしいまだに、これはぜひ佐藤総理にも出てきてもらいたいのですけれども、いつまでたっても総合的な交通政策というものができていない。これは政府が持っていないという、ここにやはり致命的な欠陥があるので、だから道路はどんどん、どんどんふえていく。しかも高速道路についてガソリン税を全面的につぎ込むが、そうしてそのほとんどが、空港なんかにしたって、大臣の好きな受益者負担の原則ということばから言えば、どっからか取らなければならないが、これは全部国が見てやっている。そうして片方はそういうふうに進めながら、国鉄だけは手かせ足かせはめられて、そうして世の中の進展に応じられないという関係のびっこな状態が実は今日矛盾としてここに出てきているのだということを、これをどうしてもつかんでもらわないと……。したがってそこから、じゃ何をやればいいかという問題が初めて出てくるので、そういう意味でこれはむしろ総理大臣か運輸大臣に言うべきことですから、これ以上大蔵大臣に申し上げようとも思いませんが、考え方としてはそういう点をぜひ頭に置いていただきたい。  一つ何というか、とっぴなことを聞くようですが、この間、同僚の加瀬委員から質問があったときに、国鉄の経常経費というやつは一体こういう資金会計というようなものを見ると、何が何だかちっともわからないのですけれども、少し整理をしてみるとよくわかってくるのですが、大体国鉄の経常経費は、運賃等の収入によって十分まかなわれているのですよ。この点大蔵大臣どういうふうにつかんでおられるか。国鉄は四十七万からの人をかかえておって、確かに人件費も五一・二%というところまできていますよ。それでもなおかついまの運輸収入をもって経常経費をまかなえる状態にあるということは、私は企業としてはこれはりっぱなものだと思うのですよ。それなのに赤字問題でここ一両年ほうっておけば民間ならつぶれちまうかもしれぬという、そういう状態になっている、きわめて不可思議な状態に実はあるわけなんです。大臣これはそういうふうに国鉄の経営問題を受けとめておりますか。
  103. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国鉄は現時点におきましては償却前においては黒字の状態であります。しかし、償却ということを考えるとかなりの赤字になるわけであります。これがさらに年次を経るに従いまして償却前といえども赤字になるというような状態に転落をしていくということが予見されるわけであります。今回は財政措置と同時に運賃改定ということでございますが、運賃の状態を見てみますると、いま戦前の基本年次に比べまして物価が五百八十倍です。そこで運賃が二百三十倍だ、こういう状態である。このアンバランス、これもまた国鉄財政に大きく響いてくる、こういうふうに見ているわけであります。とにかく、まあ今日そういう問題をまあ抜きにいたしましても、償却前においても近い将来に赤字に転落するだろう、こういうことを考えると、もう今日すでにほうっておけない、こういう判断をしているわけであります。
  104. 木村美智男

    木村美智男君 一般物価との比較問題は、この場合多分に政策的なものを含めて、ぼくらがどうこうしてきたというよりも、政府自身がいろいろとやはり今日まで押えてきた面もあるのだから、それは一がいに一般物価五百八十倍に対して二百三十倍の運賃だからという、そういうことの説明を実は聞こうと思っていたのじゃないのです。そうではなしに、大蔵大臣、さっき申し上げたでしょう。四十四年度の資金会計といったようなもので損益勘定上あるいは資本、工事勘定別に収入支出をながめていくと、これはもう大臣の言うとおりで、意見書もそうなっておる。ところが、これは少し整理をして考えてみると、たとえば運賃収入というのは大体新しいやつでいって一兆九百億ぐらいです。まあ資産充当という点もありますから、合計して一兆九百五十億ぐらいになります。ところが経常経費である人件費五千七百三十二億です、物件費が二千七十八億、納付金、予備費合わせて三百六億、合計八千百十六億です。そうしますと、大体運賃等の収入によって、これらの人件費、物件費、納付金等をまかなって災害等にも多少の備えをして、なおかつ二千八百三十四億ぐらいという金がここでは浮く勘定になる。これはあとからの説明をしないと、大臣さっき言ったようなことを答えるから、もう少し説明をしますが、ところが今度、さっき私が申し上げた借金政策の問題からいくと、借り入れ金というやつは、ことしがこれは国鉄当局三千九百九十九億、大体四千億近い数字で聞違いないですね。大臣、これが借金ですよ、ことしの。その借金を、借金は借金として考えてみて、借り入れ金の返済にことし幾ら充てるかというと、大体千五百七億です。借り入れ金の返還金千五百七億、それの利子等の支払いについては、山陽新幹線の造設利子を含めて、これがやはり千五百八億、合計をして三千十五億ですよ。そうすると、借金関係でいくならば、少なくとも借りている金の中で、借り入れ金と利子を返して、それでなおかつここに九百八十五億という金が出てくる勘定なんです。ところが、もう一つ考えなければならぬのは、先ほど時代の進展に即応して国鉄は輸送力増強をどうしてもやらなきゃならぬということから、工事費に三千七百八十億、その他含めて大体三千九百億ですね、これだけの金が何としても要ると。それに対する要するに政府財政再建補助金並びに孫利子を含めてこれは八十七億ですか、そうするとここで実は大きな赤字が出てくる。そこでこの間、加瀬委員が、今日の国鉄の赤字は工事経費、要するに工事経費からそういう赤字が出てくるのじゃないかということを言ったら、どうしても大蔵省のあなたの部下はだよ、言を左右にして、もうもっぱらそうでないようなのらりくらりしたようなことばかり言っているものだから、それでさっきちょっとああいう言い方をしましたが、別にこれは怨恨があって言っているわけじゃございません。しかし、いま申し上げたように、結局工事をやらなきゃならぬというところに実は今日の国鉄の赤字がとうにもならなくなってくるという――時代の進展に即応するためにこれは出てきているのだ。ここの認識がないと、一般世の中に向けて、国鉄は四十七万も人があって、そのために人件費がたくさんかかるのだとか、あるいは裁定の実施のために運賃を値上げするのだとかいう、全く無関係だとは言いませんけれども、いまみたいによく整理をしてくると、大臣、これはよくわかってもらえると思う。そうすると、一体いまの国鉄の工事経費というやつは、特に幹線輸送力の増強、通勤輸送あるいは電化、複線化、こういう問題は一体企業の要求なのか、国は別にそんなことは頼んでいないんだ、国鉄はかってにやろうとしているのだという筋合いのものなのか、ある程度これは国民経済の発展ないしは現在の時代の進展に伴って、いまの産業の経済を円滑にやっていくためにはどうしてもこの通勤輸送力を増強するということは国鉄にやってもらわなければならぬのだという性質の仕事なのか、ここら辺をやっぱりだんだんかみくだいてくれば、銭を多少めんどうを見なければならぬのか、それともほっぽっておいてもいいのかという関係が出てくるのじゃないかと思うのですよ。大臣、これはこういうものの分け方というものも一つの方法で、一面では借金の利息、利子を払うために借金しているわけでしょう。それで、十分いまの運輸収入、運賃を主体とする収入でもって国鉄がただやっていくだけなら、人件費、物件費、あるいは市町村納付金なり多少の予備費をまかなって十分余っていく。工事をやらなければならぬがゆえに実は金が要るわけでしょう。そうしたら、その工事は国鉄がやらなければならぬ法律的な義務は何もないですよ。国鉄の公共性という立場から、社会的にあるいは国家的にやらなければならぬ輸送力増強の問題というものは、これはそういう意味で公共性を強く私は国鉄というものは持っているのだと。だからここのところへ、国が、やはりいまの道路や空港や港や、こういう問題を考えてみるときに、たいへんアンバランスがあるのじゃないか、しかしことしはだいぶ前進をしてくれました。だけれども、この程度ではまだまだ問題が残りますということを、実はいま言わんとしているわけですよね。こういうことについて大蔵大臣どういうようにお考えですか。
  105. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国鉄財政が苦しい一つの大きな理由は、この工事費の問題、これは木村さん御指摘のとおりだと思う。これがなかなか重荷になっている、これはそう考えます。しかし損益計算の問題とこの工事費、工事勘定の問題とは、これはもう別個の問題です。工事費の負担というおもしですね、おもしは利子負担だ、そういうことになって損益勘定のほうにちゃんと出てくるのです。その損益勘定というものを全部見たときに、利子の負担まで入れて損益勘定というものを見たときに、国鉄は、やがて償却後、償却前といえどももう赤字になっていくであろう、こういうふうに見ているわけです。ですからその工事費が非常な大きな負担だという点については、そのとおりに考えております。そういう結果、損益勘定が苦しくなる、それに対するその対策というものは、今度措置法としてお願いをいたしておるわけなんですが、工事勘定の措置につきましては資金運用部、こちらのほうから資金を供給するということで御協力を申し上げている、こういうので、まさに木村先生のおっしゃるとおりのことを認識しながらやっている、そう考えて見ておるのでありますが、いろいろ御意見もあるようでございますから、まあこれも私頭にひとつよく刻み込んでおきたいと、かように思います。
  106. 加瀬完

    加瀬完君 関連で……。  私も、いまのお答えがございましたが、さらに御考慮をいただきたいと思う点を二、三申し上げてみたいと思います。運賃の合理性でありますが、私鉄と比べますと、定期でも国鉄運賃の改正によって二倍、こういうことになりますね。それから同じ区間で六三%、あるいは一一四%というように、国鉄運賃のほうが高くなる。私鉄はこれから押えていく、国鉄運賃はこれから二回上げていくということになりますと、ますますこの隔たりというものは大きくなってくる。これを合理的な運賃と一体認めていけるかどうかという問題が一つです。これは御考慮をいただかなければならないと思うわけであります。  第二点は、日本国有鉄道法が制定をされましたときには、産業の振興、低廉な運賃をもって国民にサービスをする、そのために国鉄財政は国が責任を負うのだというので、たくさんあった私鉄に受忍の義務というものをかぶせて、どうしても国が売れといった場合には国に提供しなければならないということで、国鉄に私鉄を買収をしたわけですね。ところが受忍の義務までさせた国鉄にしたところが、現状では国鉄の運賃が私鉄の二倍、こういうことになっては、一体産業の振興あるいは低廉な運賃というような、国民に対するサービスの精神というのはどうなったか、これを一体いまになったら、産業の状態が変わったから全然考慮しなくていいということになるかどうか。それから独立採算ということがたびたび言われておりますが、独立採算を経済ペースでやらせるというなら、これらの経緯から、赤字線というものの欠損というもの、あるいは大都市の輸送対策の費用というものは、国鉄の責任の別ワクにしなければ独立採算はやっていけない体質ですよ、国鉄そのものは。これを無考慮に、日本国有鉄道を、その買い上げたときのそのままの状態を、独立採算ではやれないような状態の体質を、そのままに国鉄にやれということになったら、これは運賃でまかなう以外にない。それなら運賃はますます上がるという悪循環が繰り返される。この体質を変えて、国鉄に負担をさせるというのならわかりますが、これははなはだ無責任の至りではないか。それから、そうなってまいりますると、いまいろいろ議論が繰り返されたように、国がある程度の救済資金を出さなければならない。そうするとそれは独立採算だからといろいろ言いますけれども、そこで私は大臣がいらっしゃらないときに問題にしたのでありますが、たとえば私企業の外航船舶には利子補給をしております。それから炭鉱の山主救済にも二千億以上の金を出しておりますね、山主救済のために。そうすると救済選択の順位というものはなぜ私企業より国鉄があとでなければならないのか、なぜ国鉄を優位に考えられないかという問題が私はあると思います。  それから今度は、御指摘のとおり、若干、国が資金援助をするようになりましたけれども、この内容も、たとえば六分五厘と六分の問題にいたしましても、もっと内容というものを考えてやっても、いままでの国鉄の成り立ちというものからいってよろしいではないか、こういう点がいままで議論が繰り返されたし、大蔵当局の御答弁では、私どもの満足のいかない点でございます。しかし時間が、お忙しいようでございますが、これらの点を御考慮をいただけるものかどうか、それだけをひとつお答えいただきます。ぜひ御考慮をいただかなければならぬ問題だと思いますが、いかがでしょう。こまかいことは要りませんが、考慮するかしないか。
  107. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 運賃の問題でございますが、これは運賃体系全体として再検討しなければならない、こういうふうに思います。ただ、いま現時点においては物価問題が非常にむずかしい段階でありますので、むずかしいのですが、いずれは運賃体系、私鉄、国鉄含めまして再検討を要する、こういうふうに思います。  それから独立採算の問題につきましては、やっぱりこれを大原則としてやっていかなければならぬ、こういうふうに考えます。国鉄は一方において独占的な路線を持っておる、一方において不採算のローカル線というものを大きくかかえております。その上さらにいわゆる公共負担というようなものもあります。それら総合されて独立採算というのでありまして、それで過去においては独立採算をりっぱにやってきたわけでございますが、今日非常なピンチにある、私は一番今日が国鉄としてはむずかしいのじゃないか、そういうふうに考えておりますが、独立採算というたてまえ、これをくずすわけにいかない、これを踏んまえまして、このピンチを切り抜ける。そのために政府も協力をするが、同時に国鉄合理化また時勢への順応を考えていく、こういうことかと思います。私としては、国鉄がまた何とか中心的な役割りを演ずるときが早くくるように、またそういう時代になりそうだということを予感をいたしておるわけでございます。
  108. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十四分休憩      ―――――・―――――    午後一時五十四分開会
  109. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案を、便宜一括して議題といたします。
  110. 森中守義

    森中守義君 措置法案の九条について、少しく大臣の見解を伺っておきたいと思います。  この案の九条の改善命令の条項ですね、具体的にどういうことを予定しているのですか。
  111. 町田直

    政府委員(町田直君) 具体的には、この法律によりまして国有鉄道が再建計画というものを出してまいります。それを運輸大臣大蔵大臣と協議をいたしまして、承認をいたします。その承認いたしました再建計画が具体的に実施が十分でないという場合に、これに対して改善命令を出すというふうな趣旨でございます。
  112. 森中守義

    森中守義君 そうなると、日鉄法の第九条、この中で、第三項三号、五号、六号、すなわち国鉄における理事会の設置及び権限、これが全くこれによって抹殺をされる。簡単な言い方をすれば、国鉄自体の自主性というものがこれによって拘束を受けるということに事実上なるわけですね。九条の三項の三でいう「予算、事業計画及び資金計画」、五号の「長期借入金及び短期借入金の借入並びに鉄道債券の発行」、六号の「長期借入金及び鉄道債券の償還計画」、こういうものが理事会の権限として保障されておる。しかし改善命令の――これはあとに戻る四条ですね、四条で規定をしている「業務の運営の基本方針」とか、「輸送需要及び輸送力に関する事項」、「輸送の近代化及び安全の確保に関する事項」、「業務の運営の能率化に関する事項」、「収入の確保に関する事項」、「損益に関する事項」、「その他財政再建に関し必要な事項」、この事項に日鉄法の九条というのはいずれも重複します、内容において。そうなると、日本国有鉄道法によって総裁及び副総裁及び理事会が固有の権能として保障されているにかかわらず、この特別措置法が拘束をするということになるならば、国鉄の自主性は全く保障されない、こういうことになるのですね。これをもっとふえんして言えば、事実上国鉄に対する、つまり債権者といいますか、そういう債権債務という関係において債権管理、そういう感触が非常に濃厚だと私は出与える。そうなれば明らかに特別措置法というものは日本国有鉄道法を拘束をするということになるのだが、どういう見解なのか、これをひとつもう少し正確にお尋ねしておきたいと思う。
  113. 町田直

    政府委員(町田直君) この再建計画につきましては、これは国鉄自体がつくるものでございます。したがいまして、国鉄自体がつくりました再建計画は、そのまま実施されるのが通常であろうというふうに考えるわけでございます。それがこの法律にございますように、その業務の運営が計画に適合しなくなったという場合には、これは適合させるように改善命令を出すということは当然なことだというふうに考えます。なお、この理事会との関係でございますけれども、もし適合しないようなことを理事会できめた場合に、それをさらに改善させるということは、これはやむを得ないことではないかというふうに考えます。
  114. 森中守義

    森中守義君 鉄監局長ね、これは政府公社に対する監督権限の準則的なものが別にあるわけじゃないから、専売に対する大蔵、あるいは電電公社に対する郵政、おのおの所定の監督権を持っているわけです。しかし準則的なものは政府にないにしても、いままでは共通したものですよ、政府公社に対する監督の限界というものは。ところが、この特別措置法によると相当きびしいのですね。つまり措置法の三条による基本方針は閣議決定によらねばならぬ。再建計画は大臣の承認によらねばならない。実施状況は八条によって報告を義務づけられておる。九条によって改善命令を義務づける。これは他の二公社に見られないような強烈な権限なんですね。私は今回の国鉄のこういう財政問題なりあるいは経営上の問題等ということは、かなり運輸省設置法による監督権限が強過ぎる、もう少し企業に自主性を持たせるべきである、こういったようにかねがね判断をしてきておったのです。しかるに、この措置法によれば、他の二公社にないようないま示したような四つの条項というものでがんじがらめにしておる。だから国鉄法の九条の拘束であると同時に、国鉄には全く自主性がない。形式はそうなんだけれども、実態は必ずしもそうじゃございません、そういうおつもりであるかもわからない。しかし、何でもないような場合ある程度そういうことも言えるかもわかりませんが、いよいよという場合には、やはり法律事項というものは生きてくるわけです。そうなると、私は特に改善命令などというものは、特別措置法案としては明らかに日本国有鉄道法違反である、こういうように断定せざるを得ないのですが、したがって、この条項は当然削除すべきではないだろうかというふうに考えるのですが、どうですか。これはひとつ問題が大臣の監督権の問題なので大臣から答えてもらいたい。
  115. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 具体的な法律論は政府委員にまかせまして、いまの問題について、これは撤回すべきであるという御主張でありますが、私は森中さんが言われた中に含まれておることが実態ではなかろうかと考えておるのであります。と申しますのは、責任論からいいますと、国鉄の経営というものは国鉄総裁がその責任をとっておる、こういうことになっております。その国鉄総裁内閣人事で内閣できめておる。こういうことになっておりますから、いわゆる責任論からいうと、私が政府の責任であるといわれてもやむを得ないということを申しておりますのはそこにあるわけでございますが、これをより明らかにして法律にして政府が出しておる。そこで国が責任を持つということになりますと、一方の六条、七条だったと思いますが、国のほうの利子補給、補助金というものを、いわゆる一般国民の税金というものからあるいは預金というものから国鉄のために支出をしていくという限りは、これに対するところの担保、こういうものがなければならない。そこで、現在の国鉄に対する監督権というものが設置法であって、それで十分じゃないかというお話でございますが、この暫定的な十年間の再建案でございますが、特に国の財政支出をもってやっていくのだということ等を勘案して、この法案の中にこれらの条項を盛り込んだ、こういうことになるのでありまして、そうある限りは、やはり国鉄の経営というものの万遺憾なきを期する、こういうために設けた限りは、これは不可欠の条項ではないかと、私はそのように考えております。実態はいままで以上に国鉄と国とが一体となって経営の責任を持っているという形になってまいりますから、改善命令を出してこの国鉄の案というものをしかりつけるというようなことは、あなたがおっしゃっているように実際上はないのじゃないか、こう考えますが、しかし、どれだけの措置は国として必要じゃないか、かように考えます。
  116. 森中守義

    森中守義君 法律というのは何でもないときにはあまりその効能を感じないものですがね。しかし何か重要な問題にぶつかった場合、すなわち十年の間に、法律上ではこういう表現をしているんだが、実態としては改善命令を発動することはないのだ、そういうことが正確に約束づけられるなら別ですよ、そういうことじゃないでしょう。形式は実態に通じますよ、この場合。だから私は大臣が別段削除しなくてもいいから、事実上改善命令を発動するようなことはないのだと言ってもらえるなら、それならそれでもいいですよ、言えますか、それを。
  117. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 私は、最後に申し上げたのは、この法律というものが国鉄再建のために考えられておるものでありまして、まずこの基本計画というものをつくって、そして国鉄が責任を持った具体的な再建計画というものを出して、そしてこれを政府が承認をして実行していくのでありますから、おのずからそれは十分な効果をあげるということがなければならない、こういうことを申し上げたのであります。しかし、やはりあくまで国鉄というものが事業をやっていく責任者でありますから、それに対して、これだけの国が措置をしたということに対して十分な担保というものを取っておかなければいかぬということからきめられてありますから、私が発言したからこれはなくてもいいんだというわけにはまいらない、そういうふうに考えます。
  118. 森中守義

    森中守義君 やっぱり大臣、これは政府は債権者であって国鉄は債務者ですよ、いまあなたが言われたとおり。そこでものの考え方として、一体政府は何ですか、財政措置――新たに九千何がししか出さぬ、国鉄は企業努力によって一兆八千、倍出そうという、われわれ利用者はどうなりますか、利用者も担保を出してもらわなければならない、その言い方で、その論法から推しはかっていけば政府の四倍利用者は払う。まあそういう枝葉の議論はとにかくとして、担保的な意味合いでこういう監督条項をつくるのだということは、いささかものの本質を誤っているんじゃないか、こういうふうに私は考える。それは相当長期間にわたりこの委員会の議論の中でも、いまの担保に取るのだ、財政措置をやるのだから担保に取るということであれば、すべて国鉄のやり方が悪かった、だからこれから金を入れてやるから監督条項、すなわち担保的な意味で抵当権的な意味で取るのだ、こういうことであれば、まるきり政府一つも悪くない、すべて国鉄が悪いのじゃないか、こういう極論にも通ずるわけですね。しかし、私はそう思っていない、長い期間の議論、また、きょう午前中大蔵大臣も来てもらっていろいろ議論をする中で、政府がするべきことをしてない、やるべきことをやっていないじゃないか、むろんそれは政府だけが悪いとは言わない、国鉄もある意味では今日の財政再建をしなくちゃならぬようなその責任の大半はになうべきでしょう、でしょうけれども、しかし政府が何も悪くない、国鉄が悪いから金を出してやって、それで抵当権を設定するのだという、こういうものの考え方というものは、いささか本末を誤ったことになるし、国鉄に対する政府の在来の施策というものは、ちっとも反省されていない、こういうことになるんじゃないでしょうか。私はその辺に大臣及び鉄監局長はじめ当局者あるいは政府のものの考え方に、いささか承服しがたい点があるんですがね。どう思いますか、大臣。
  119. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 私は、あなたのおっしゃっておることもわからぬではございませんが、やはりものごとのけじめということをつけていくためには、これが法律というものになる場合には、こういう形というものが必要ではないか。法律の技術的な具体論について政府委員から答弁申し上げましたのはそこのところでございますが、何度も申し上げるようでございますが、改善命令を出さなければならないというような事態にならないように、今後この財政再建措置法というものが運営されていくということが前提になっておる、こういうことを私は特に考えておるわけであります。やはりその際の、いま言われました国民に対する責任ということからも、法律でこういうことが担保されていかなければならないんだ、こういう考え方というものをあらわしたものである、こういうふうに考えております。
  120. 森中守義

    森中守義君 これはどこまでいっても平行線であるかわかりませんが、やはりこういう機会ですから、措置法が一人歩きをしたらこれは手が出せないわけだから、もう少し明確にしておきたいと思う。  基本方針という一定のカテゴリーがある。それを国鉄にあてがうわけでしょう。そこで国鉄に作業をやってこい。しかも項目は示しておる。仕上がったものを持ってこさせて、いいか悪いか吟味をしようと、こういうわけですからね。だから、単に国鉄は作業機関であって、政策的な問題であるとか、あるいは施策的な問題であるとか、そういうものの自主性というものは、この措置法に関する限り、国鉄にはその権限が与えられない、こういうことになるんですね。そういうことですね。そこで、私は多少耳ざわりなことであるかわかりませんが、四十七万を擁する国鉄の頭脳、体験――鉄監局何人いますか。大臣、鉄監局長はどういう頭脳をお持ちであるか知らない。しかし、国鉄が創意くふうをこらして、四十七万の創意によって英知を結集してつくるものと、運輸省がこれをチェックする。その頭脳を比較した場合に、どっちが貴重だと思いますか。変な言い方で悪いけれども、そういうことを考えていけば、力によって、権限によって自主性を拘束するということは、あまり近代企業の中に採用さるべき方式じゃないんじゃないですか。私はそう思う。そこで、じゃ改善命令が具体的にどういう弊害を生ずるかということを一度やっぱり考えてみなくちゃならない。つまり、この四条の各条項により、基本方針が示されてこういう内容が詰められていく際に、国鉄が作業をしますね、その際に国鉄の経営当局だけで事がなし得るという内容のものじゃない。この中の条項のどれにもこれにも、直接あるいは間接に労使関係の問題がぶつかってきますよ。そのことを切り離して考えるということはできない。そういうことですよね。そうなるとだ、当局と組合との間でさしずめ六月一日から実施しようとする、つまりEL、DLの問題、これらの問題はすぐ引っかかりますよ、これに。あといろんな問題が引っかかってくる。そこで、労使双方が詰めて詰めて詰め上げた結果コンセンサスに達したそれを、できましたということで運輸大臣が受け取った際に、こいつは気に食わないというわけで改善命令を出す、それは直ちに労使間の紛争を激化させることになるし、片や労働組合が、これまた固有の権能として関係諸法によって保障されている団体交渉権を否認するということ、こういう問題にさしずめ私は逢着するような気がする、この辺どうですか。
  121. 町田直

    政府委員(町田直君) 最初におっしゃいましたこれをつくる場合に、十分労働組合等とよく相談をしてつくるということになると思います。その点は全く先生のおっしゃるとおりであろうと思います。運輸大臣が承認いたしますのは、閣議決定によって基本方針国鉄に通知いたしまして、それに基づいてつくるわけでございますから、その基本方針に沿っているかいないかということがこの承認の判断の基準になるだろうと思います。したがって、閣議決定できまったその方針には沿ってもらわなければならない、こういうことでございます。  それから労使の問題については、私ども全く先生のおっしゃるとおりのことがあると思います。そこで、労働組合の固有の団体交渉権があって、それできまるべきことということは、当然この基本計画国鉄がつくります際にも、そういう団体交渉の事項であるということの、何と申しますか、前提のもとにつくられるというふうになると思います。したがいまして、それが具体的に団体交渉の結果実現できなかったということがもしあったといたしましても、それはこの再建計画に直ちに適合しないということにはならないのではないか。したがって、すぐに改善命令を国が出すというようなことはまずあり得ないというように考えるわけでございます。
  122. 森中守義

    森中守義君 やはりそういう答弁だけでは得心もできないし、実態を多少想定した場合に、なかなかそれはむずかしいですよ。要するに閣議決定という基本方針がある、そのワク外に一歩も出てはならぬのだと、この範囲の中で事業計画を組めと、こういうことでしょう。それを国鉄の労使双方がどう詰めてみても、とてもじゃないがまとまらないと思う。おそらく再建計画趣旨からいき、あるいはこさえられようとする基本方針、これは一応試案をいただいておりますよ、そういうことはなかなかむずかしいですよ。まとまらない。ある程度単年度ごとに一定の方向をきめるわけでしょう。当然その当初において困難であるということが予想されますよ。それを、基本方針はこうだ、さあこれで行なへといって国鉄にあてがった際、国鉄の経営当局あるいはその組合も、たいへんな難渋を来たすということがほぼいまにして予想される。それでもなおかつしなければならぬという場合に、どういう事態が発生するか、想像しただけでもたいへんな私は混乱が起きるような気がする。それでようやく相当期間が経過して詰められたものがまとまって運輸大臣がとった、ところがこれはやはり直せと、こう出た場合、一体どうなりますか、その辺に目を向けていくならば、改善命令というものは非常に無理だ、のみならず国有鉄道法九条に違反をする、これを拘束をする、これを越ゆるものである。また場合によっては労働関係諸法を拘束をし、越ゆるものである。こういうことになりはしませんか。要するに改善命令というのは存置すべきものではなくして、むしろ基本方針をつくったならば、それを国鉄にあてがって、この範囲の中でやってほしい、大体その程度にとどむべきじゃないですか。
  123. 町田直

    政府委員(町田直君) これはまあ再建をいかに実施するかという一つ考え方の問題だと思います。先ほど大臣が申し上げましたように、この再建に関する法律国鉄だけを縛っているものではございませんので、御承知のように、基本方針政府がきめます場合に政府がやるべき措置もこの中に入れるわけでございます。また具体的な財政措置も六条、七条等に書いてございます。要するに、今度の再建は、国と国鉄一体となってやるんだと、そうして運賃値上げをしていただき、国民に対しても確実にこの再建ができるんだということを担保すべきである、こういう考え方でございます。そこで、ただいま先生のお話がございましたように、再建計画国鉄がつくるということは、これはあくまでも一つ基本方針のワク内でございますけれども国鉄の自主的な判断でつくるわけでございます。この法律案に書いてございますように、五十三年度には、経常収支において黒字が出、かつ近代的な経営体制になるようにという、こういうことがこの法案の目的でございますので、それに従うような再建計画を立ててもらうということが趣旨でございます。そこで、こういうことはまずあるまいとは思いますけれども、万々一、その後の運営において再建計画にそぐわなかったという場合には、やはり運輸大臣としてはそれを改善してもらうという命令を出すということは、これはある意味ではやむを得ないことではないかと思います。
  124. 森中守義

    森中守義君 それはいま、やむを得ない場合ということですからいいんですけれども、しょっちゅう改善命令出されたんじゃ、これは仕事も何もできない。そこで万が一とか最悪の場合ということなんですよ、改善命令というのは。だから、私は方向を義務づけるということはこれはいいと思う。そこまでやめろとは言いませんよ。しかし、改善命令によって事業計画の変更をさせるということですよ、具体的に言えば。もっと正確な言い方をすれば、拒否権ですよ、これは。沖縄の琉球立法院と民政府の関係のようなものですよ。そういうきつい改善命令条項をなぜ必要とするのか、それはひとり国鉄だけを拘束するものではない、運輸省政府もこういうことにしているんだといういま説明がありましたが、そこまで私は言っちゃいない。改善命令というこの条項ですよ。拘束条項、これは具体的にいよいよ実行に入った段階において、容易ならぬ事態を惹起する可能性が十二分にある。だから私は、たとえば銀行が銀行管理をする場合に、重役を送り込んだ。あるいはその再建計画をいろいろ示してやるとか、そういうようなことはままありますよ。あるけれども国鉄運輸省の関係、政府国鉄の関係において、こういうきびしい拒否権、命令権というものは必要ないんじゃないか、むしろ持たないほうがかえってスムーズにいくんじゃないかというふうに思うんですがね。いや、法案として出したんだから撤回できないんだと、こういうことであれば、これは身もふたもないけれども、必ず私が心配するようなことが、この特別措置法がひとり歩きをする段階になると起きますよ。そういう予見をされる問題がある場合には、みずから進んで撤回すべきですよ、これは。どうですか。この条項削除したらどうですか、大臣。これはたいへんですよ、こんなものは。
  125. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) これはやっぱり森中さん、ものの取り方がちょっと違うと思うんですね。あなたは悪いほうを中心にして考えて、たいへんなことになるぞと、だからそんなことはやめておいたらどうだと、こう言われましたが、私はそんなことはめったにないことで、運輸大臣国鉄というものは一体である、こういうことから考えると、そういうことは、いまもおっしゃったように何べんもこんなもの出しているということなら、それは一体になれないですよ。それで今度は特に、まあ皆さんからおしかりを受けますけれども、特に国のほうでも助成策を講じて再建策をやっていこうということを法律に出したということでありますから、その場合の決意というものをはっきりするためには、運輸大臣国鉄に対しまして、この改善をしなさい、こういうことを法律に書こうということは、これは私はそこまで決意をしておるかということで、国民も御納得がいただけるし、また国鉄マンのほうでもこれは一生懸命にならなければならぬという気持ちにもなってもらえるだろうし、私はいいほうに考えていただいてもらいたい。私は、だからこの問題はやはり削除すべきでない、こういうふうに考えます。
  126. 森中守義

    森中守義君 何か私が意地悪くものを言っているように取られちゃ困るのですよ。なるほどそれはいいこともありますよ。しかしこういった法案審議の場合には、予見をされる、あるいは予想をされる最悪のものを一応審議しておかなければならない、いいことばかりならこれは法案なんか審議する必要はないですよ。だから私は、めったにとか万が一にという、その一に該当する場合に困るのじゃないかと。だから民間とは違うわけですから、こんなきびしい改善命令などというものをぎょうぎょうしくやっておかなくてもいいのじゃないか。これは大臣も言われるように、めったにこういうことはないのだ、国鉄運輸省の関係だから、一体であるから心配ないということのようでありますが、これは万が一の一ですよ、私どもの憂慮するのは。それが実際の計画の策定の中において、あるいはまたその進行する経過の中で、十年間において改善命令が発動されないという保証はないのですね、場合によってはやるのでしょう。そのやるということは、かえって危険を招くのだ、こういうことなんです。だから言っていることはそうそう百八十度異なっているとは私は思えない。めったにこんなことはありませんと。それなら、めったにないなら取りつぶしたほうがかえっていいのじゃないか。それと、国鉄どうなんですか。こういうことで、やはり相互体の中で、そういうことはただ法律のていさい上こういうことが言われているだけなんだ。しかもしょっちゅう鼻を突き合わせているし、背中を向けるようなことはないと思う、そういう心配はないというお気持ちかもしれませんが、事と次第によっては私はあり得ると思います。だから心配要らぬというようなことだけでは安心できない。国鉄がかまいませんと言うなら別ですが、この際、はっきり法律の体裁上かどうか知らないが、必要なものなら必要と、少々これは直してもらいたいなら直してもらいたいという率直な意見を聞かしてもらいたいと思います。運輸大臣国鉄のほうからお聞きしたい。
  127. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 森中さんの御心配一応ごもっともだと思いますが、問題は、国鉄は仕事の直接の責任者であるがゆえに、仕事に対する執着その他の点から、必ずしもせん気筋に入らぬということはないと思う。そこでその場合に国というものが非常な援助をするということで、国が補助をするということはやはり園児の税金を使うということになる。結果としてはやはり国民立場になって事を処しなければならない、その代理をやるのが運輸大臣である。運輸大臣国鉄総裁との関係というのは、つまり被告と裁判官との関係じゃなくて、協力者なんですよ。ちょうど親と子の関係なんであります。私はそういう意味で、やはり運輸省の協力者としての立場考えてものを判断していくべきではないか。その改善命令なんということはもう最悪の場合なんであって、やはり最悪の場合に備えておくということは必要である。実際の問題からいうと改善命令がかりに出たところで、国鉄としては自分のほうの案が正しいと思えば、ただそのまま易々諾々やるということはできない。そのことは運輸大臣に話し、あるいは運輸大臣がわかってくれなかったら総理大臣にお話しして、自分の主張は通すなら通すように努力する。こういう道がありますから、そんなに私は御心配になるようなことはない。あなた最悪の場合を考えているので、まあまあ私はこれでけっこうだと思うのですよ。そういうように両方がうまくいかないときには、何をか言わんやだ、万事休すですよ。そういうことで国鉄総裁としてはこれでいい、問題がない。そういうことでひとつ御了承願いたいと思う。
  128. 森中守義

    森中守義君 国鉄側がそうおっしゃれば何をか言わんや。ただ、いま大臣聞かれたように、どんな改善命令が出ても筋の通らぬこと、国鉄がいやだということは受け付けないということですよ。それならば改善命令は出しても、国鉄総裁がぽんとければおしまいだ、こういうことなんです。いいんですか。それで、そんな権威のないことでいいんですか。
  129. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 改善命令出されたときには、国鉄としては虚心たんかいにそれによってさらに再検討する。再検討した上で自分のほうの主張がいいと思えば、これは子供が親に話しするように、そういを気持ちで話しするということになれば解決の道というものはちゃんと解決つくことで、裁判官のような立場運輸大臣を見ないで、協力者ということに考えればうまくいくのじゃないかと思います。どうせ完全ということはありませんよ。九十九点までは、これで私はいいと思う。
  130. 森中守義

    森中守義君 それはそういう精神的なものとしてはわかりますよ。それは皆さん他人じゃないんだから、話せばわかるというつもりでしょうけれども、およそここに出ている改善命令というのは、法律のある意味のていさいだろう、そういう理解をされている。しているけれども、万が一出た場合に、かなりこれは大きな問題になるということがありますよ。だから盲腸的な存在で不必要なものならば取ってもいいじゃないか、こういうよけいなものを残さないで。そういうことを言っているわけですよね。しかし国鉄がそれでいいとおっしゃるならば、われわれちっとも関係ないことだから、私は国鉄に養われているわけじゃありませんからね、ちっともかまわない。かまわないが、立法府としましては、やっぱり最悪の場合考えますよ。不要なものならば除去しておけ、将来に禍根を残すようなことはやめたほうがいいという、そういう趣旨から言っているわけですから。ただ、要すれば十年間の中でこういう条項があっても改善命令が発動されないことが望ましいし、大臣も当初そういうことを言われたわけだから、できるだけないという前提に立って、私は削ってもらったほうがいいと思うんですがね。そういう強い要望をこの際しておきたいと思う。  それから五条の政令、これはかつて見たことがない。大体在来の法案審議からいけば、法案の本体が出る際には必ず政令が一緒に出されるものですよ。政令つくっているんですか。これはこの前の通行税法とある意味では理屈は一緒ですよ。法案を出してきておいて細目については政令できめますと、こう言いながら国会へ政令持ち出さないなんてばかな話はありませんよ。どういうつもりですか。
  131. 町田直

    政府委員(町田直君) これは実はこの再建の、何と申しますか、御議論の中で、再々御説明申し上げておりますように、いわゆる国鉄財政再建債の借金の政令でございまして、利率は六分五厘、償還期限は十年据え置き後二十年償還、こういうことが大蔵財政当局とわれわれとでは予算の際に話し合いができておるわけでございます。内容はこのことを盛り込みました政令をつくるということでございます。具体的な法案の政令の文になりました案はまだ先生にお目にかけるような段階になっておりませんけれども内容はそういうことで確定しております。法案がもし成立いたしますれば、成立いたし次第閣議決定したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  132. 森中守義

    森中守義君 法案の成立をすべて待つということのようですがね、基本方針にしても何にしても。しかし、この場合どうなんですか。いま財政当局との協議で大体率もきまっている。そのことは何回も聞きましたが、しかし正確に政令の原案ぐらいつくってみてやっぱり委員会提出すべきですよ。一切がっさいの審議ができないですよ。それを、法案が成立してから閣議にかける、こういうことなんだけれども、政令なんてそうむずかしいものじゃありませんよ。しかもそう長ったらしいものだとも思えない。こういう最終の段階にきた今日、できるのを待つというわけにもいきませんが、これからひとつ運輸省法案の提案等の際には、もう少し配慮しなければいけませんよ。少なくとも、もうちょっと早目に問うべきだったんでしょうけれども、しかしそれを言ってももうしようがないんですが、私は非常に遺憾だと思う。要するに、政令というものが出たならば、できるだけ早い機会に委員会提出をしてほしい、一応これはここでおきますがね。  それから運輸省が出された基本方針の試案でちょっと二、三触れておきたいと思う。  午前中行管長官にもちょっと聞きましたが、この試案の中で管理機構簡素化を推進するというのがありますね。これはどういう構想ですか。
  133. 町田直

    政府委員(町田直君) これは国鉄の能率化、合理化、近代化という中の一環といたしまして、一般的にこれは当然のことでございますが、管理機構をできるだけ簡素化しなさい、こういう趣旨でございます。ただ国鉄機構につきましては、これは要するに国鉄の自主性の一つでございますけれども、具体的には国鉄総裁がこの内容をきめるということで、法律上もそういう趣旨でございます。私どもといたしましては、法律に書いてある総裁とか副総裁とか理事会とか、そういうものは別といたしまして、地方機構本社の内部機構というものにつきましては、国鉄総裁が自分の判断でおきめになる、その報告を受けるということが法律のたてまえでございます。そこで具体的には申しませんで、管理機構をできるだけ簡素化する、こういう趣旨を言っておるつもりでございます。
  134. 森中守義

    森中守義君 それでは国鉄どうなんでしょう。これはしばしばいままで問題になってきたようですが、いま現行支社及び管理局、この制度を、試案によると簡素化しよう、こう指摘しているわけですが、どういう対応策をおとりになりますか。それが一つ。  それからいま一つは、四十六万七千人の中で、いわゆる管理職員と一般職員の数はどう分け合われるのか、これをひとつ数字をお示しいただきたい。
  135. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ただいま運輸省基本方針の試案中にいろいろ触れておられますが、その中の組織問題につきまして、現在私どもでやっております組織は、大体昭和三十年前後にできた組織でございます。内容本社支社管理局、現場、その支社の中で新潟と広島と四国、これだけは一局一支社と申しまして、これは支社ではございますが管理局と全く同じものでございます。これを一応除きますと六支社でございます。六支社の三十二管理局ということになるわけでございます。問題はその管理機構の中の、やはり私どもからいたしますと支社でございます。これは過般も申し上げましたように、支社ができまして約十年たちましたし、その後コンピュー夕ーその他の関係で非常に業務も簡素化されましたので、昨年の春思い切って三分の二を削除いたしました。いまは三分の一ぐらい残っております。これはいずれ、もう少し通信機関が発達し、事務の近代化ができますれば、もっと簡素化できるというふうに私は考えております。考え方といたしましては、いずれ将来は各地各地の駐在理事ということで、地方のブロックの中心におりまして、地方の開発計画あるいは地方の発展計画等の推移と国鉄の輸送関係を見合わしていくというふうな仕事をさしてまいりたいと思っております。  それからもう一つは、鉄道が全国的に敷かれておりますので、それをある程度ブロック、ブロックで運転の指令と申しますか、輸送の指令をしなきゃいけない仕事が残っております。それはやはりどうしても本社で一括してできませんので、これは管理局本社の中間に、ある程度のものは置かなくちゃいけない。これもいまなるべく本社のほうに集中するように指令の近代化委員会をつくってやっておりますが、これもいずれ簡素化することになっております。  問題は、森中先生がけさほど行管長官に御質問になりました現場の管理機構でございます。現在、一局一支社を含めまして三十二の管理局がございます。大体一府県に一つ弱ということになりまして、一局が平均一万五千から二万というぐらいの見当でございます。初めの委員会で、先生から少し小さ過ぎやしないかというお話もございましたが、その後、いろいろほかの電電、郵政等の組織も先生の御勧告によりまして調べてみました。多少やはり仕事のやり方も違っておりますし、私のほうは現場機関が、駅、機関区、保線区というふうに非常にたくさん並立いたしております。それを統轄するにはどうしても管理局が必要だということで、昔、二万人しかおりませんでした時代にも、本省と旧鉄道局、その下に管理部というのがやはり二十七、八ございました。その下に現場という組織になっておりましたので、現在の管理局ランクのところは、やはり現場管理並びに輸送業務の具体的な仕事ということで置いておきたい。しかし、その中でも、たとえば給与の支払いとかいろいろな事務がございます。これは極力簡素化してまいりたいということで、やはり輸送施設、運転というものを中心とした管理機構にいずれ徐々に変わっていくということに考えております。  それからもう一つ質問の全体の管理職員は、先生に資料お渡ししたと思いますが、現在現業職員が約四十四万二千、それから非現業、それを管理する職が、これは駅長など入れておりません、いわゆる先生のおっしゃった管理職以上の職員でございます。これが二万六千人、大体五・六%という割合になっております。
  136. 森中守義

    森中守義君 駅長とか助役とか、そういう管理職はわかりますか。
  137. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) ただいま副総裁が二万六千と申しましたのは、管理職と申しましたけれども、ちょっとこれは言い間違いでございまして訂正いたします。管理職と申しますのは、全体四十六万八千のうちに四万六千おります、管理職が。非現業、要するに管理職以上の職員が二万六千、管理職は四万六千人でございます。ちょっと訂正いたします。
  138. 森中守義

    森中守義君 これも比較論では悪いかわかりませんが、必ずしも適正とは思えない。中には実務要員としての管理職もおるだろうし、そうでない純粋な管理職もおるかわからない。これはいろいろな関係で最近一般的に漸増の傾向にあることは、ずいぶん国会でも注文しなくちゃならぬ問題だと思う。しかし、このことも詰める時間がありませんが、やはり総体的な機構の問題の中でとらえてもらって再検討してもらいたい。しかも、このことは自後のこの委員会でいろいろお尋ねするような機会もつくりたいと思うんですが、これは私の注文として受けとめてもらいたい。  それからもう一つ、試案の中で、「貨物については、全国にわたるフレートライナー網の整備、物資別適合輸送方式の促進、他輸送手段との協同一貫輸送方式の推進」をはかれということがある。これはおおむね大綱的には理解できます。いままで何回も説明されましたからね。そこで問題なのは、一体どれをポジションにするのか。国鉄を基調としてこの一貫体制をつくろうというのか。あるいはその余の輸送手段を適宜に選択をしながら基調にしようというのか。その辺がはっきりしない。したがって国鉄を基調にして一貫体制をつくるという場合には、再建期間中における設備計画というものには、そう大きな変化は招来しないと思う。そうではなくて、他の輸送手段をいろいろ検討の結果、基調にするという場合には多少の設備変更を伴ってくるであろう。こういうことが予想される。その辺どういう方針ですか。
  139. 町田直

    政府委員(町田直君) これは国鉄を中心にして考え基本方針でございますので、国鉄を中心にした一貫輸送というものをこの場合は考えているわけでございます。いまお話のございました他の輸送手段を基調にして国鉄の一貫輸送をつくるというような場合におきましては、これはこれからの問題でございますが、将来の総合交通体系が十分にでき上がりまして、そういうことがもし必要があるという場合にはそういうことも出てくるかと思いますが、この基本方針の中で申しておりますのは、国鉄を中心にした一貫輸送体系、こういうような趣旨であります。
  140. 森中守義

    森中守義君 そうすると、非常に重要な問題ですが、例外的なものとして国鉄以外のものがあり得る。こういうことですか。
  141. 町田直

    政府委員(町田直君) そういうものがあり得るかもしれないけれども、いまここでは予想していないということであります。
  142. 森中守義

    森中守義君 この再建計画と、将来の輸送のビジョンという、こういう点からしますと、例外的に他の輸送手段等を基調にしないで、やはり国鉄を基調にしたものでないと、ほんとうの再建にならないだろうし、一貫輸送の本体を整備するわけにいかぬのじゃないか。こう思いますので、ここで具体的なものがないと、例外的なものがどうかという議論に発展するわけにいきませんが、ものの根本にはそういうものを理解しておきたいと思う。  それから、たいへん急いで悪いのですが、けさちょっと問題提起しました鉄道公安職員、これは全国で約三千余りおりますね。二千七百十四名からずっと増加されて現在三千七十三名。これはほんとうに必要ですか。それで、これはけさもお尋ねしたように、昭和二十五年にこの制度がつくられたときに、要するに列車警乗であると、そういうものが大体本体になっていたわけですね。しかもそれが社会の混乱状態のさなかにこういうものができ上がった。今日きわめて平穏な時代にこういうものがほんとうに必要かどうか。そろそろ再検討の時期にきたのじゃないですか。そこで問題は、これにかわるべきものとして、司法警察職員等指定応急措置法というのがある。公安職員ができる前まではこれによって行なわれていたのですよ。ですから、いま合理化等が再建計画期間中の重要な一つのねらいであるから、これを、優秀な人材でしょうから適切な職場に配置がえを行なう。それにかわるべきものとしては、いま申し上げる在来のものに戻したらどうか。若干これに人的な強化をはかる程度で事が済むのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  143. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) けさほど森中先生から行管長官に御質問になったのを拝聴いたしております。先生の御指摘になりました鉄道の公安職員は約三千名おりますが、この公安職員は実は性質を二つ持っておりまして、一つはけさほど先生の御指摘になった昭和二十五年の法律二百四十一号による鉄道公安職員の職務に関する法律、これに基づきまして、いわゆる国家権限を行使しているいわゆる司法警察官の職務を行なう職員、これは国鉄総裁の指揮命令以外に検事正などの指揮命令を受けております。いわゆる直接犯罪の捜査等をやるわけでございます。それからそのほかに、もう一つ国鉄職員としての職務内容、これは主として営造物管理上の警備あるいは旅客誘導あるいは旅客の身体の安全保護というような立場からの仕事をいたしております。これは鉄道公安職員基本規程と申します国鉄内部規定によって仕事をいたしております。二つの性格を持っております。元来昭和二十五年にこの公安職員ができましたときには、ただいま先生のおっしゃいましたように、非常に治安状況も悪く、いろいろ旅客、貨物等も非常に不安な状況だったという意味で、警察力の補助という意味もございました。それと同時に、それまで貨物関係では、たとえば貨物の駅あるいは貨物の操車場における荷物の警備等につきましては、貨物掛あるいは貨物掛の補助者として貨物駅に相当数の職員配置いたしております。それから旅客につきましても、旅客の案内、誘導あるいは保護というものにつきましては、旅客の案内掛というものを置いております。これらを全部あのときに鉄道公安職員に転換いたさせました。もちろんその意味合いはほとんどいま残っておりませんけれども、定数的には当時おりました貨物関係の警備員、旅客関係の案内掛というものを含めまして三千名の公安職員をつくったわけでございます。したがって、現時点で、もしこれをやめれば、やはり貨物の操車場には相変わらず相当などろぼうが入ってくる、あるいは旅客に対しましてもやはり警乗と申しますか、相当最近のチンピラとかいろいろの関係で相当の警乗をいたしております。またスリ等につきましては必ずしも減っておりません。ここに犯罪検挙数等持っておりますけれども、残念ながらあまり減っておりませんです。そういった一般の治安関係と申しますか、犯罪関係のほかに、鉄道プロパーの、さっき申しました旅客の、たとえばこの間の三連休のときには、公安職員を全部動員いたしまして主要駅において誘導に当たらせる、あるいは貨物につきましてもおもな操車場等には警備掛を配置するというようなことで、そういう人間をまたここで新しくつくらなければならないという問題がございます。  それからもう、一つは、これは国鉄として荷物事故ということばを使っておりますが、非常に貨物輸送上の事故がございます。ぬれたとかこわれたとか、そういう事故の事務をやっております。この荷物事故をやっておった事務職員も、その当時公安職員の中に包括いたしまして、結局総合的に鉄道職員としての職務権限といたしましては、いま申しました施設とか車両の警備あるいは旅客公衆の秩序維持あるいは酔っぱらいとか病人とかの保護とかいうことがございます。それからいろいろな不正防止、いわゆる改札とかいったこともさしておりますが、それと荷物事故というふうな国鉄職員としての国鉄プロパーの仕事、それからさっき先生のおっしゃった公安職員法律、この二つの面を兼ね備えておりますので、大体やはり私どもといたしましては、いま程度の人数がなければ困るんじゃないかというふうに考えております。これを廃止いたしましても、これにほぼ近い数の人間を別な名目でやはり配置しなくちゃいかぬというふうに考えております。
  144. 森中守義

    森中守義君 これは廃止じゃ困る、廃止すればそれにかわるべき三千名程度必要だと、こういう副総裁の結論のようですが、私も実際の態様というものを詳しく知りません。だからあくまでも概念的なものしか言えないのだけれども、たとえば捜査範囲の問題ですね。事務所から五百メートル平方、きわめて制限された区域内ですよ。それで、これはちょっと話は余談になりますが、庁が一つの事犯に対して投じた、つまり犯罪捜査のコストと、国鉄公安職員によって犯罪捜査をやり、あるいは逮捕に至るまで、立件に至るまでのコストというものは、比べものにならないと思う。ですから人件費それ自体がどうじゃこうじゃという問題もさることながら、かなり犯罪捜査費というものは警察に比べるとコスト高になっているのじゃないか。そこまで節約しなければ再建計画ができないかという議論になると、ちょっとどうかというような気もしますけれども、やはりものの考え方としては再検討に値する問題じゃないか、こういうふうに思うのです。これな結論らしい結論になりませんけれども、一応再建期間の門出にあたって、機構の問題と同様に、ひとつこれは真剣に検討の対象にしてもらいたいと思う。  それからもう一点だけ最後にお尋ねいたしますが、四月一日からきょう現在まで四十四年度予算に予定をした運賃収入の減額は正確に幾らですか。
  145. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 五月六日、一昨日現在にさしていただきたいと思います、まだ昨日の結果が出ておりませんので。一昨日までははっきり調べております。九十六億でございます、正確に申しまして。ですから過般先生に申し上げたのよりちょっと減ったわけでございます、三連休がわりあいに人出が多かったものですから。五月六日現在で九十六億でございます。
  146. 森中守義

    森中守義君 そうすると、目の子で言って、きょう現在で約百億と見ていいわけですね。
  147. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 大体そのくらいです。
  148. 森中守義

    森中守義君 おおむねね。  それから調停段階におけるベースアップのありましたあの時点で大体試算をして幾らになりますか。
  149. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 過般の五月一日の調停委員長の御意見といって出ましたもの、これは実は私のほうはお受けできないと言ってお断わりいたしております。また組合のほうもお受けできないと言ってお断わりいたしておりますので、実は正確な試算はまだできておりませんけれども、あるいは新聞等で約五百億というふうにいわれておりますが、そのくらいの金だというふうに考えております。
  150. 森中守義

    森中守義君 その受ける受けないというのは、これはきょう本論でないからおきますが、予算の中では三・六%、定期昇給を百五十億見ていますね。そうなると大体目の子で百億、それとベースアップでおおむね五百億というのだが、計上されている予算の百五十億引いて三百五十億ですね。おおむね、大体合わせて五百億ぐらいの歳入欠陥つまり予算上狂いを生じているわけですね。何によって補なおうというのですか。
  151. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) いまおっしゃいましたように二つございます。一つ運賃法の実施のおくれでございます。一つはいまの給与問題でございますが、運賃法のほうは、いま申しましたように大体百億前後というふうに考えております。これは何とかひとつ努力によって埋めていきたいという気持ちで一ぱいでございますが、あとの仲裁のほうにつきましては、先ほど申しましたとおり労使ともに調停委員長の御意見をお受けしないで現在仲裁に移行しておりますものでございますから、それを前提として現在どうするかということはまだ考えておりませんけれども、その事態に対しては、私どもといたしましては非常に苦慮いたしておる次第でございます。
  152. 森中守義

    森中守義君 それは気持ちはわからぬでもないけれども、なかなか世の中はそう承知しないでしょうからね。一応調停段階のものを試算として考えるのは決して過ぎたことじゃないと思うのです。そこで対応策ですが、総則の十六条を発動しても限界があるのですね。予備費の二百億から幾ら出せますか、それが一つ。それからあと何からどうするかということになると、やっぱり繰り入れ金以外にないじゃないですか。そうすると五百億近い歳入欠陥を、よくいわれる企業努力であるとか、この年度内において何とか差し繰るといっても容易なことでないと思う。端的な言い方をしますとね。そうなると、二十九条の補正予算というのがあるんだから、結果的には、予算の補正をしなければ済まぬのじゃないですか。これは国鉄運輸大臣ともに、非常に重要な問題ですから見解を示してもらいたいと思うんです。
  153. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私どもといたしましては、一昨日中村先生にお答えいたしましたとおり、仲裁が決定いたしまして公になりますれば、これは公労法上の仲裁に従わなければならないという義務を負っております。したがって、政府なり国会がこれを御承認になれば、それは何とかしなきゃいかぬということになりますと、予算執行上の非常に現在苦慮をしておる最中で、まだ具体的に案をつくっておりませんので、その時点で政府といろいろ御相談いたしたい、こういうふうに考えております。
  154. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 先般もこの御質問がありまして、私は、ほんとうに困ったことだなと思っておるのでございます。いま、ここで補正を組むんだということは申し上げることはできません。大蔵大臣も、きょうこの問題について森中さんの御質問に答えられたと思いますが、私も違った答弁をするわけにはまいらないのです。何とか一日でも早くこの法案の結末をつけてもらわないと、この問題がたいへんなことになってまいります。一方では、仕事をせいせいという督促も受けておるわけであります。私といたしましては、できるだけ早くこの法案の御審議に御協力をほんとうに心からお願い申し上げますとともに、この問題については、いま国鉄側からもお話が出ましたが、この問題について、何とか結末をつけるためのこの時点において努力をいたしたいと思っております。
  155. 森中守義

    森中守義君 これはいまここでにわかに答弁を聞き出そうとか、即断を求めるとかということはむろんむずかしい。しかし、ある程度時間の経過の中で、一つの方向が出てくると思うんです。しかし、要するに再建の期間にこれより入っていこうというときに、こういう状態というもの、しかも、これがいろいろな設備関係等に影響するということがあらかじめはっきりしている以上、やはり何かの形で、これは結末をつけなければいかぬのじゃないか、こう思うのです。ですから、そのことは後日の問題にしておきたいと思うんですが、要するに、相当長期間にわたっていろいろ私はお尋ねしてきましたけれども、むろん、これで十分ではありません。しかも、毎回申し上げるように、この再建計画がはたして一〇〇%実行できるかどうか、国鉄再建がなるかどうか、率直にいって私は非常に疑問です。しかし、なお運輸大臣総裁、副総裁はじめ関係者の一そうの御健闘と御努力を期待いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  156. 田代富士男

    田代富士男君 私は、あくまで慎重審議というたてまえから質問を始めたいと思います。一言最初に申し上げておきます。  原田大臣にお伺いいたしますが、いま私申し上げましたように慎重審議の精神でございますが、それにのっとって私も質問させていただきたいと思います。それに対してまず大臣の、慎重審議をやるのか、やらないのか大臣の決意をまず聞かせていただきたいと思います。
  157. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  158. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記を起こして。
  159. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 慎重審議まことにけっこうでございます。先ほど森中さんに最後に私お答え申し上げましたけれども、決して私の立場だけを申し上げるつもりで申し上げておるのではございませんで、この法案は、田代委員の御主張等を予算委員会あるいはその他の委員会でも本会議でもお聞きをいたしまして、これに対する御意見も承っておるのでございますが、主張、立場というものはそれはそれとして、ひとつ御審議を賜わって賛否の結論を出していただけるように十分の御質問をお願いいたしたいと思います。この委員会の運営は私が答えるべき筋合いのものではないのでありまして、これは委員長さんが、この委員会の主宰者でございますので、この御指示に従ってお答えを申し上げていきたいと思います。
  160. 田代富士男

    田代富士男君 私、お聞きしますが、この委員会で、大臣は直接の責任者ではございませんが、慎重に審議をしてもらいたいと申しており、おそらく岡本委員長慎重審議をたてまえとしていらっしゃると思います。ところが、この委員会だけれども、一人で三日間、四日間、五日間と数時間おやりになる人もあれば、一人の人には時間も一時間くらいに制限をされる、この委員会において、委員に対するそういうようなことがあってよいでありましょうか、私は委員発言に対しましては、これは慎重審議のたてまえから平等であるべきだと思います。これは本論と違うと申して、また速記をとめるとおっしゃるかもしれませんが、私はこれははっきりと一人で四日間、五日間も質問させ、時間にすれば何時間とやっている人がある。しかし、初めて質問する人が一時間や二時間で制限を受ける、これはだれが聞いても納得できないと思いますが、この委員会は、いま原田運輸大臣が申されたとおりに委員長が運営されるのですから、そのような運営でよろしいものかどうか、平等にすべきか、まずそれを聞かせていただいて、何も私は時間のことについて言った覚えもないのに、速記をとめてという……。ほんとうは一番最初に、午前中のいきさつがありますから、それも聞こうかと思いましたが、正常に進んでいるし、私もスムースに進めたい、それで済んだのに、速記をとめてと、そのようにやられたならば、売りことばに買いことば、まして私より大先輩である委員長が、そのような態度をされたのでは、一委員が言うのは当然じゃないですか。まず、そのことをちゃんと解明していただきたいと思います。これを、今回の運賃法案に対して注目している国民大衆の前に、この委員会を通じてはっきりしてください。それから私は慎重審議質問に入りたいと思います。
  161. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 委員会の運営は理事会にはかりまして、理事会の決定どおり運んでいるつもりでございます。田代委員の御発言の機会は、実は一昨日の最後になっておったわけでございます。これは理事会の決定において、はっきりいたしております。しかし、出席をしておられませんので、特にかわりに出られました渋谷委員のほうから盛んに御注文がございまして、きょうはやむなく欠席をしておるから、ぜひともあさっておおむね一時間程度でよろしいから、発言の機会を持たしてもらいたい、こういう強い要望があったのです。そこで理事会を再度開きまして、これをきめまして、渋谷委員にも御了解を得ております。そのことは渋谷委員からお聞きになっていることと、私は信じております。万事、理事会にはかって民主的にやっているつもりでございます。
  162. 田代富士男

    田代富士男君 私が聞いているのは、私自身も含めてこの委員会の記録をとってください、調べてくださいと、しかし時間がかかりますから――一人で四日間、五日間、十何時間とやっている当委員会の人もあるのです。初めてやる人が一時間、二時間と制限されなくちゃならないのか。朝のことを繰り返したくないけれども慎重審議というのは、一人の人が四日間も五日間も、十何時間もやっている、ところが小会派の人は一時間、二時間に制限される。理事が出ていないのですね。理事が出ているところは、要するに当委員会は、与野党を代表いたしまして自民党、社会党の理事の皆さんで運営されている。そのときに、公明党や民社党や二院クラブの方は理事が出ておりません。質疑時間も制限されております。そのようなことがあってよいですかと聞いているのです。私の言っている質問趣旨に答えてください。
  163. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 理事会にはかつて民主的に進めているつもりでございます。
  164. 田代富士男

    田代富士男君 そうすると、理事会となれば、自民党と社会党の理事会において小会派の質問時間というのは制限されても、それは議会制民主主義のあり方だということなんですね。そのことをはっきりしてください。
  165. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 私は、最初に一昨日の委員会の冒頭で申し上げたのですけれども議長あっせんに基づいて質疑を続行しますと、そうして議長あっせんと申しますものは、私が申し上げるまでもなく、田代委員国対委員長をなすっておりますから、よく御存じと思いますが、質疑を続行すると、誠意をもって審議をする、これが第一点。第二点は、日程については、当該委員会に一任する、こういうことになっております。しかも、さかのぼって先月、四月二十八日の議長による正常化につきましては、誠意をもって審議を尽すが、結論を得るということも言われております。そこで慎重審議と申しましても、やはり会期全体がきまっておりますし、これはやはり常識的な線があると思うのです。そういう私が二点に基づいて時間の制限をすることもやむを得ない。しかも、理事会にはかりましてさように決定し、しかも、あなたの代理の渋谷委員にも了解を得ております。このことを強く申し上げておきます。
  166. 田代富士男

    田代富士男君 私は、さすが委員長だと思うのです。常識的にものごとを判断し、そして理事会にかけて決定したとおっしゃる。これが第三者の皆さんが、おそらくきょうもこちらに傍聴席に見えていらっしゃいます。こちらに部外の方がいらっしゃるかわかりません。その人が、ある党は四日間も五日間も、一人の人が十何時間質問する。小会派は一時間か二時間しか時間をとれない。これが常識でしょうか。もうこれは答弁を求めません。これが国会の議会制民主主義であるというのが、今日の姿じゃないかと思うのです。私はこういうことであったならば、国民の皆さんがかわいそうです。理事ですべてがきまる。そうならば、これは私が言うのじゃないですよ。第三者の人がこの実態を知ったならば、理事は何を打ち合わせているのか、小会派は一時間、二時間の制限、たった一日。ところが、四日も五日もするところがある。これが常識である。これこそここらの人は、岡本委員長は、私は常識あるお方だと思いますが、第三者はどう考えるか、私はあえて申しません。もう聞く必要もありません。このことを強く機会あるごとに私は、岡本委員長国民の代表として選出されてきていらっしゃいます。全国民の皆さんに私はこの事実を訴えていきます。これほど国民大衆をばかにしきって……。(「もう大きい声はやめましょうや」と呼ぶ者あり)大きい声じゃないですよ。ふだんの声ですよ。私の声の大きいのは、いま始まったことじゃないんです。そういう茶々を入れるから、私はまた今度金丸先生に言わなくちゃならぬようになるじゃないですか。あなたが大体延ばす張本人ですよ。仏さまみたいな顔をしていてこんな大混乱をやって。そういうことは言うものじゃないですよ。私はおさまろうと思ったが、また言わざるを得ないよ、こんな男にだれがしたというのですよ。(笑声)声が大きい――無理じゃないですか。私はだからそれをあえて国民の皆さんに訴えていきます。  それで、まず私はお聞きしたいのですが、日本国有鉄道法の第一条の精神につきまして、最初に原田大臣から御答弁願いたいと思います。
  167. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 第一条の目的の中で、特にこの精神は何だと、こういうことを御質問でございますが、これは公共の福祉を増進すること、これが目的になっておると思います、ここに掲げておるとおり。「能率的な運営により、これを発展せしめる」と、こういう能率的な運営によりということが実質的なこの内容ではないかと、精神ではないかと、このように考えております。
  168. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 議事進行について。野党側理事として一言言わせてもらいたいと思うのですが、連休明けの委員会は、一応今週は六日と八日が定例日です。したがって、中に連合審査をはさんで三日間というものを考えて私のほうではスケジュールを組まなければならぬ。そこで、私のほうといたしましては、六日を公明、民社、二院クラブと、これは四名おります。八日は社会党五名おります。この二日間に割り振って議事を進めるように提案をいたしました。それで、ただその入り方としては、議長あっせんという問題がありましたが、打ち切りといったような事態がありましたから、あのときに戻って、加瀬委員質問中でありましたので、加瀬三木、こういう順序で入るということにして、自後の時間等については二院クラブの市川さんなり、民社党の中村さんにもそれぞれ私のほうから、時間の制限をしたのではなくて、その持ち時間等については御了解を得て、しかる後に理事会に臨んだ。それから公明党の時間等についても、六日は田代君も夕方に三木君に続けてやってもいいんでありますが、もし田代君の持ち時間が不足するといけないと思いましたので最後に回しました。二時間でも、あるいは三時間でも四時間でもやれるような配慮をしたわけであります。ところが、たまたま六日田代君が欠席されて出られないというので、渋谷委員が出席をされまして、渋谷委員に、それでは田代君にかわってやってもらいたいと言ったら、渋谷委員は、質問を予定していないからまげて八日の日に社会党の時間に割り込ませていただきたい、こういうことでございましたので、おおむね一時間ということで、渋谷委員との了解の上、理事会で決定をしたわけでありまして、六日、われわれが決定をした時点においては、公明、民社、二院クラブ、社会党、自民党いずれも満場一致というような形で了解をしておりますので、この点については、一言私のほうから釈明をさせていただきたいと思います。
  169. 田代富士男

    田代富士男君 私は、またそういう話を聞きますと、またそれに対して私一言言いたいのですが、それは話し合いの段階で、理事会できまったこと、こうなったからと言われても、公明党は理事がおりません。公明党の理事がおれば発言のチャンスもありますが、公明党も民主社会党も二院クラブも――民主社会党、二院クラブは他党のことですからわかりませんけれども、そういう事前にそのようにきまった、きまってからの相談ですから、あえてこのことには触れません。  だから、いま原田大臣が申されたとおりに、国鉄国民福祉を増進させる立場から、この第一条を尊重していらっしゃると思います。ところが、今回の国鉄運賃の問題につきましては、まだまだ私は検討の余地があるのじゃなかろうか。すべてをこのような国民大衆の負担にするというのでなくして、たとえば貨物の運賃等を吟味するなり、いろいろ方法があったのじゃないか。第一条の国民の福祉増進の立場からいうならば、今回まだまだ検討する余地がある。貨物運賃、おもに大企業中心の輸送になってまいると思いますけれども、そういうところから考えていくならば、第一条の精神をもっと国鉄自身、原田運輸大臣自身が実践していくべきであると思いますが、これに対しまして、運輸大臣の決意はただいま聞きましたので、石田総裁はどのようなお考えであるか、お聞かせを願いたいと思います。
  170. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) ただいま大臣から申されましたように、国鉄の使命というものは公共の福祉というものにある、そしてそれを実行するについて能率的にやる、こういうことでありまするから、ただいま田代さんの言われた国鉄の貨物輸送その他について、国鉄としてはまだ検討する余地はないかと、私は非常に検討する余地はあると思う。ありますが、しかしわれわれとしては、これまでまず最善を尽くしてやってきたのであります。どうせ人間のする仕事であるから、いろいろの欠点はある。ただその欠点を今後さらに検討して、これを能率的に運営をして、そうしてこの業務を委託されたわれわれの責任者としての最善を尽くしたい、そういう意味でありまして、この欠点というものに対しては、これはもう私は是認せざるを得ない。しかし、最善を尽したということだけはひとつ御了承願いたいと思います。
  171. 田代富士男

    田代富士男君 最善を尽した熱意は認めてもらいたいということでございますが、いま法案審議の最中でございますし、総裁は誠意を示したと申されますけれども、事実毎日の生活に困っている人から見るならば、まだまだ示し方が足らないじゃないかととられる方もありますけれども、その最善の誠意を示すという姿勢だけは今後も続けていってもらいたいと思います。  そとで、このように国民負担という問題から考えてみますと、独立採算制という問題が大きくクローズアップされてまいります。昭和二十四年の六月ごろから独立採算制の方式がとられたわけなんですが、その当時のこの制度をおとりになった根本の意義というものについてお聞かせを願いたいと思います。
  172. 町田直

    政府委員(町田直君) 第一条に書いてございますように、能率的な運営により、これを発展せしめるということで、日本国有鉄道というものが公共企業体ということになったわけでございます。公共企業体というのは、一般の企業とは違いますけれども、御承知のように、企業的に運営をする、これによりまして能率をあげる。そういう考え方でございます。したがいまして、その企業的な運営をするためには、以前のように足が出たら全部国がみる、そのかわり利益が出たら全部国に納めるというのではなくて、やはり自分の収入で自分の支出をまかなっていくというたてまえが本来の公共企業体としてのいき方であろう、こういうことで、改正になったというふうに私は存じております。これは他の公共企業体でも大体同じであります。
  173. 田代富士男

    田代富士男君 いま町田局長が一番発足のときの意義についてお話になられましたが、昭和二十四年当時と現在までの経過をたどってきた今日では、他の企業体でも同じことをとっているというお話でありますが、いささか片寄った面もあらわれてきていることはいなめない事実じゃないかと思うのです。やはりすべてがいま申されたとおりに、国家財政の負担になるというようなことを避けねばならないということもおもんぱかってと申されましたが、この線が強く前に出てきまして、そうして国民、われわれ自身の負担という面が、いわゆるさっきからもいろいろ議論されておりますが、そのように出てきているような感じがしてならないのですけれども、いまの町田局長の発足当時の話と現時点の経過の上から、原田運輸大臣はいかがお考えでございましょうか。
  174. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 国鉄の経営をいわゆる独立採算制でやっておるということは、これは加瀬さんから、西園寺さんが最初に国有鉄道を始められたときの事例を引いてお尋ねがありまして、お聞きになっておったと思いますが、私はそのときからやはり国営ではありますけれども、運賃収入をもって企業を最後にはまかなっていくという独立採算制の形はそこにも含まれておる、こういうことを申し上げたんであります。能率的に運営をするということの中に、いろいろな意味があると思いますが、下世話でいうお役所仕事、親方日の丸というような考え方で運営をしないで、能率よく運営をするというところにやり方ということがあるわけで、それを国民が公共の福祉をどちらにつけられるかということが、私は問題になってくるとこう思うのであります。  この間、連合委員会のときに、あなたのほうの東京の出身の阿部さんが、国鉄は企業性というものに乏しいのじゃないかという追及を私は受けたほうなんですが、だから私はそういうことについて言いますと、やはり国鉄の経営というものは、新しい線をつくる場合には金を借りてきてそれでつくる、そしてそれは利子を払わなければならぬわけですね。その利子は運賃でまかなっていく、もうかったらもうかった金で借金を払っていく、こういう経営が能率的にうまくいったならば一番望ましい形じゃなかろうか、こう思うのでありますが、いわゆる三十九年ころから財政が悪化してきたという中には、その資本の利子が大きくなってまかないきれなくなってくる、一方では人件費がかさんでくる、こういうような悪条件、またいわゆる独占事業であったときと違って、新しい競争相手が出てきたということから、収入も思うにまかせない、こういうようなことで、いままでの独立採算制でやっていけということだけでは、国鉄のほんとうの再建はむずかしいのじゃないか、御指摘の点も、私どもはそのことを考えて、このたび財政再建の措置法を出し、一方において国の財政上すべてまかなうというわけにもいきませんし、国鉄自体の努力もしてもらわなければなりませんし、この乗っておる人たちの運賃ということが根本の収入でございますから、これはお気に入らないと思いますけれども、この点でもひとつ御協力賜わりたい、こういう形をとった。これは思い切った措置である、これは額の多い少ないという問題はあると思いますけれども、われわれといたしましては、相当思い切った措置をとって再建をはかっておる、こういうように御了解を賜わりたいのでございます。
  175. 田代富士男

    田代富士男君 いま、原田大臣から現在の状況と合わしてお答え願いましたんですが、やはり能率的、合理化、そういう面が独立採算制になりますと強く主張されてまいりまして、そういう事業面におきましても出てくるんじゃないか。そうしたら一番問題になりますのは、いまも国会で問題になっております定員法の問題じゃないかと思うんですけれども、定員法によるところの、今日まで国鉄職員の中で、簡単なことばで言うならば首切りと、そういう面も能率的あるいは合理化と、そういうことばはいろいろありますけれども、そういうことを強行せざるを得ない、当局の立場からはやむを得ないじゃないかと。しかし、やはりそういうことに対しまして、今度は労組のほうからするならば、それぞれの言い分があるんじゃないかと思うわけなんです。しかし、現実にはそういう首切りがなされてきて、そうして全国の職場におきましては、そういう人員削減によりますところの負担分というものは、あとに残ったそういう職員に対して加重されてくる。また、名前は能率的、合理化という、そういう面はわかりますけれども列車を減らしたり、あるいは無人駅をつくったり、そのようないろいろな面が出てきております。電気機関車におきましては、いままで二人乗りが一人乗りというような、いろいろな問題等もされてきておりますけれども合理化、能率的という面があまりにも行き過ぎた場合に、首切りだけであったらまだその人はよろしいですが、人間性尊重という面から、われわれとして痛々しい事件も起きてきております。一つの例をあげるならば、おそらく国鉄の保安課始まって以来の事故だと言われます、ことしの二月十四日起きました伯備線における鉄道工夫六人が一度に死んだ事件です。鉄道工夫六人が一度に死亡するということは、これはただごとじゃないと思う。――何か私の質問最中にがちゃがちゃやられてうるさいが、質問の妨害ですか。委員長、速記をとめてください。
  176. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  177. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記起こして。
  178. 田代富士男

    田代富士男君 いまこのようにして中断いたしまして、まことに総裁、副総裁に申しわけないと思いますが、何も中断したのは作為でも何でもございませんから、その点は御了解願いたいと思います。だから私は、いま質問している最中に向こうのほうで、何か異変がありまして――どこまで私はさっきお聞きしたかと思うんですが、たぶん私は、この独立採算制のこのたてまえでいった場合、能率的、合理的という面でただすれば、人間制を無視された面が起きるんじゃなかろうか、人間性尊重の上からも、これはあわせて考えていくべきじゃなかろうか。それでちょうど四十四年二月十四日の伯備線におけるところの工夫の六人が事故死をした。これは、保安課におきましても最大の事故であったということを聞いております。こういうことが起きた場合には、能率的、合理化と言われても、やはり一面、人間性の尊重という面からは考えるべきじゃないかと思うんですがね。この点について、大臣のおかわりでおいでになった政務次官、いかがでしょうか。
  179. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 伯備線の事故につきましては、まことに遺憾なことと思っておるのでございますが、御案内のように、あのときは下り列車が時間がおくれるという予定のところ、また早くなったということが最大の原因だと思っておるのであります。われわれ聞きましたところでは、むしろ保安施設に従事しておる人との通信連絡がもし可能であったならば、あのようなことはなかったということでございますものですから、むしろその点は国鉄の今後の省力投資、あるいは近代化、合理化をすることによって、あの事件は避けられたのではなかろうかというふうに考えております。しかし、いずれにいたしましても、まことに残念なことだと、かように思っておりまして、今後国鉄に対しまして、さらにそういう施設の拡充を、人間尊重という立場から強力に進めることをわれわれは期待もし、希望もしておるわけでございます。
  180. 田代富士男

    田代富士男君 事故が起きてからはどうにも取り返しのつかないことでございますが、前者の轍を踏まないようにしていかなければなりませんが、ただ単に連絡の手違いという一片で済まされませんし、この見張りというものがどのような状態であったのか、また現在こういう工夫の人々が仕事をする場合に、こういう見張りというものがどのようになされておるのか、この事件のときと現在と、どういうふうに改善されたのか、改善されたそういうものがあったならば、ひとつお答え願いたいと思います。
  181. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ただいまの御指摘の事故につきましては、当時参議院の災害対策特別委員会におきまして取り上げられまして、私御答弁申し上げたのであります。その後、そういったいわゆる私どものほうでは触車事故と申しております。車に触れる事故と申しておりますが、いままでもなかったわけではないのでございますが、その伯備線の事故はいままでに例のないほど実は多くの犠牲者が出た、非常に悲しむべき事故でございました。かねがね触車事故につきましては、見張りの整備ということを非常にやかましく言っております。原則として見張りを置かなければ仕事をしないというたてまえでやっておりましたのですが、そのときもたまたま逆方向に見張りがいたということでございます。今後はこの事故にかんがみまして、見張りにつきましては必ず列車の運行を確かめる――特にその日はやはり雪の関係で非常にダイヤが乱れておりました。そういった特にダイヤの乱れの多いときには、見張りを場合によっては両側につける、あるいは必ず作業をする前にもう一ぺん――政務次官言われましたが、通信設備は、作業員のほうから駅へは連絡できるようになっておりますが、駅のほうから作業員には連絡できないようになっております。一方通行の通信設備しかいまないわけでございますから、必ず作業に取りかかる前に、作業員のほうからもう一ぺん駅にダイヤを確かめるということ、なおダイヤが乱れているときは、両側に見張りをつけるという措置を緊急にとりましたが、やはりこれも人間の問題でございますので、うっかりしてしまうということもございますので、やはり機械的にこれを列車の接近を予知するという装置をつくりました。大体実は開発の途上にあったのでありますが、無線でもって列車の接近をキャッチして、それを作業員のそばでブザーで知らせる、そういう設備を昨年度からたしか試作で三十個ほどつくりました。現在大きなおもな単線区間の、列車回数の多いおもな保線区にこれを何とかして年度内に全部整備するということで、予算を緊急にそちらのほうに配付することにいたしました。仕様、規格はすべてきまって、現在製作の途上にございますので、やはり最終的には人力によらないで、そういった機械力によるチェックにしたいというふうに考えております。いまその対策を進めている最中でございます。
  182. 田代富士男

    田代富士男君 そこで、もう一つお尋ねしたいのですが、現在国鉄職員の年齢の構成層でございますね、大体十歳単位ほどでけっこうですが、ひとつおわかりでしたら年齢の構成層、どの年齢が現在何%であるか。
  183. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 国鉄職員の現在の平均年齢は三十八歳でございます。したがいまして、層から申しますと、三十五ないし四十歳、四十歳から四十五歳、この層が大体一番厚い層で、ちょっと人数はいま申し上げますから……。
  184. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) 三十五歳以上四十歳未満が九万一千、端数は省略いたしますが、九万一千でございます。それから四十歳以上四十五歳未満が十一万七千でございまして、大体まあ三十五歳以上で現職員の五割を占めておる、こういうふうにお考えいただければいいのではないかと思います。
  185. 田代富士男

    田代富士男君 三十五歳から三十九歳までが九万一千、大体全体の二八%ぐらいになりますね。それから四十歳から四十四歳までが十一万七千、両方でいま大体五割と申されましたが、四九%じゃないかと思いますね。そうしますと、若手の年齢層なんでございますが、やはりすべての面には世代の交代というものを考えていかなかったならば、いずれの事業においても行き詰まりというものがあらわれてまいります。まして国鉄というような日本経済の動脈になっているこういう企業体にありまして、世代の交代をもしも間違えたならば、これは国鉄にとどまるだけでなくして全企業に影響があるのじゃないかと思います。私が心配するのは、国鉄の仕事というものは繁多にわたっております。だからきょう来てきょうやれるというように仕事はできるものじゃありません。経験というものが事故をなくし、すべての能率をあげることになっていることは間違いないじゃないか。そこで言えることは若手を養成していくという、このような主眼点を怠ったならば、国鉄は現企業体から成長することは、私は不可能じゃないかと思うのです。そういう意味で二十歳未満の人がどれくらいであるかといいますと、私の知った範囲内では、ごくわずかの二%ぐらいじゃないかと思うわけなんです。こういうような結果を見ていきますれば、三十五歳以上の人が五〇%、いま再建計画も十年先とかいろいろ言われておりますが、十年たったならば三十五歳の人は四十五歳になります。医学的におきましても、肉体的におきましても、どのような状態になるかということはおわかりじゃないかと思います。三十五歳、四十歳そこらが中心であるべきで、あと取りの二十歳代の人々が二%である。これはいまの再建計画の、そのような予算の問題よりも何よりも、この人材を育っていくという面に、大いに国鉄として私は欠陥が生じているんじゃないかと思うわけです。こういう点につきまして、国鉄の責任者であります石田総裁は、御老体にかかわらず、われわれ若い者以上にがんばっていらっしゃるわけなんです。しかしいま申すような、現実にはそのような欠陥がありますが、これをどのように改善しようとされるのか。また大臣のかわりとして政務次官いらっしゃいますが、大きい立場から、その点をどのようにお考えになるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  186. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 田代さんのおっしゃることはまことにごもっとも千万で、ただいかにして実行するか、こういう問題なんであります。さっきも副総裁から数字を示したように、三十五歳から上が非常に多い。結局国鉄では五十五歳で退職するのですが、そういうような補充を若い者でする、こういうふうになっておるのですが、これは大体私はそれでいいと思うのですが、田代さんのいま言われたことからいえば、とにかく若い者はいま以上にとっていく、それで血を若くする。こういうことなんですが、これはどうも国鉄というものは、御承知のとおりいま財政上非常に困っておる。それで人件費というものが総収入の六割近くになっておる。こういうことなんで、この際人件費をふやすということは実に苦しい立場なんで、それからして、ことに今後の人の問題を考えますというと、国鉄が四十七万という人間を維持していくということは非常にむずかしい。それからしてわれわれはやはりこれはもうできるだけ人間は減らさにゃいかぬ。いかに減らすに対しては、これは一方業務量がふえましたから、とにかく機械をもって人にかえると、いわゆる機械化による合理化によってやる。そして一年にまず五千人ぐらいのものを年間に減らしていく、それでできるだけ若い人間をひとつ伸ばしていく。こういうことで最善の努力をいたしてはおりますが、財政上の都合でなかなか意に満たないものがある。御趣旨だけはどこまでもやっぱり尊重していかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  187. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 国鉄の人事構成の問題につきましては、いま総裁がお答えしたとおりでございますが、一般論として考えますと、やはりこれは出生率と多分に関係があるわけでございまして、現在でも労働力不足であり、単純再生産は一を割っておる、世界で最低ということでございます。したがいまして、ひとり国鉄に限らず日本の全体の労働の年齢構成はだんだん高くなるということは、いまのままの出生率であるならばやむを得ないことであるかと思いますが、これに対する対策といたしましては、ただいま総裁がお答えになりましたように、できるだけ省力化投資あるいは合理化投資をいたしまして、これは熟練を要した複雑労働を単純労働化していく。こういうことを通じながら、生産性を上げていくことが結局企業のために、また給与水準を引き上げるためにもやはり焦眉の急になってくるのじゃなかろうかと思うのでございます。国鉄におきましても、今後要員合理化をはかるといっておりますけれども、それも自然退職の二分の一ぐらいは何とか若い人たちを確保して、労働強化にならないような形で、近代化投資を進めるということでございますから、私は現段階における国鉄のやり方としては、まず最善の道をとっているのではなかろうか、かように考えている次第でございます。
  188. 田代富士男

    田代富士男君 いま総裁並びに政務次官からお話がありましたが、合理化のために機械化、動力化を導入して、そうして近代的にいままでの国鉄のあり方から脱皮していこうと、そのような意欲はわかりますけれども、私はそれだけで解決できるものじゃないと思うんです。この五十対二の比率、そのことを十分考えていらっしゃると思いますが、そのように動力あるいは機械化をやっていくと、そういうところで、そもそも昭和三十二年度から長期計画が始まったんじゃないかと思うわけなんです。動力の近代化と、そういう点も考えられたと思うんですが、もっと具体的に機械化、動力化をどのように、いまちょっとだけお話聞きましたけれども、もう少し詳しく副総裁からでもけっこうですけれども、お聞かせいただきたいと思います。
  189. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 機械化、動力化の中で非常に範囲が広うございますけれども、二、三おもな点だけ申し上げます。  まず、何といっても一番大きな問題は動力の近代化でございます。すでに十九世紀から一世紀近く使い古した石炭を中心とする蒸気機関から電気とディーゼルというものに置きかえていく。これは政務次官の言われましたように、作業から申しますれば、機関車乗務員という非常に複雑な、体力を要する作業から、電気機関車乗務員、ディーゼル乗務員という簡単な仕事になり、また重労働でもなくなるということが一つの省力化と申しますか、近代化の第一点でございます。  それから、やはり近代化の第二点の大きな問題といたしましては、いま全国的にやっております自動信号というのがございます。これは先ほども先生から御注意がございましたいわゆる保安度の向上ということにも役立ちます。駅の人間が一々ポイントをひっくり返したり、信号をいじったりということよりも、やはり一カ所でもって機械的に電気で全部やってしまうというような自動信号、これによってやはり人が相当減ってまいります。  あるいは、第三に、現在すでにでき上がりましたが、一番国鉄の中で危険作業と申しますのは操車場の中で、連結手というのがございますが、若い諸君がやっておりますが、非常にこれはやはり先ほどの線路工事と同様に、最も死亡率の高い仕事でございます。一番危険な仕事でございますが、これを極力機械化するということで、東北の福島の郡山に非常に近代化した、人力をほとんど使わない操車場をつくり、全部電気制御の操車場をやっと完成いたしました。大体予定の八割以上の能力をあげて働いております。今後、こういうものが全国に普及いたしますれば、やはり危険作業が非常に減ってくる。また必ずしもそれは若い十七、八の者でなくても仕事ができるということになってまいりますので、これも非常に大きな機械化、近代化の内容だと思います。またごらんになっております車一つ一つにつきましても、たとえば電車にいたしましても、あるいは電気機関車等にいたしましても非常に近代化いたしまして、なるべく手のかからない車をつくるというふうなことによりまして、単にサービスの面からだけでなしに、技術的に見て非常にレベルの高いものにするということによって、やはり合理化、近代化ができてくるというふうに、またいろいろ、ちょうど電電公社がやっておられるダイヤル式にかえるということと同じような技術の近代化があらゆる部門で、国鉄の中でやっておりますが、今後大体十カ年間で電化を含めまして七千億くらいの投資をしてまいりたい。合理化、近代化非常にたくさんございますが、あとは省略いたしますが、全体で七千億くらいの投資をして、そして機械化、近代化に進む。同時になるべく人手を減らしてまいりたいという考え方でございます。
  190. 田代富士男

    田代富士男君 いま詳しく御説明願いましたんですが、そういうことは最も必要なことじゃないかとも思います。近代化という点につきましては、第一次長期計画でもなされてきたことだろうと思います。いま申されます第二次長期計画の後半では東海道新幹線等もできましたし、車両等もいま完備してきたと、そのように合理化あるいは能率化の実践をしていらっしゃると思いますが、私がここであえて申し上げたいことは、一面では、そのように確かに従来の大阪まで行く時間にしましても、新幹線の恩恵で三時間そこそこで行けるようになりました。しかし、そのためのひずみと申しますか、幹線の普通列車が大幅に削減された。あるいは通勤通学のそういう専用の列車が、従来いつも改善すると言われているけれども、改善されないままになってきている。そういう面があわせて改善されていかなくてはならないけれども、手が回らないといえば、それまでですけれども、あるいは資金がないといえば、それまでですけれども、一番改善すべきそのような点が能率化、合理化の名のもとにおくれている。この点の改善策ということに対していかがお考えであるか、国鉄当局からお願いしたいと思います。
  191. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 通勤輸送のことだけについて一言、ほかの点は副総裁から答弁いたします。  通勤輸送の問題につきましては、いなかのほうの通勤輸送の点については、多少まだ手が入ってないところがありますが、一番大きな通勤輸送のガンというものは東京、大阪付近。この大都市における人口の集中による通勤輸送というものは大きなものがあります。それがために国鉄というものは三十七、三十八、三十九年にはわずかに三百億しかかけておらぬものを、四十年から四十三年までに二千九百億かけた、四十四年から五十三年までにさらに五千五百億かけるというような思い切ったことをやっておるんでありますが、一体この工事というものは実に金のかかる仕事、こちらだけで四割、五割かかる。しかも思い切ったことをやっておるが、その工事の完成にはやはり相当の年月がかかる、なかなか急にはいかぬ。その間にわれわれとしてはどういうことをやったかというと、まず第一に列車の車両数をふやす、たとえば六両編成を八両編成にする、八両編成を十両編成にする。たとえば横須賀線のごときは十二両編成を十五両編成にする。さらにそうしてスピードアップ、そうしてまたブレーキの点で発着をできるだけ早くやる。さらに列車列車との間隔をいままで五分間隔であったようなのを一番最短のは二分間隔にするということ。これは駅の改築をやらなければならぬというようなことで実に金がかかる。国鉄としては非常なこれは損です。金ばかりかかって、収入というものはとにかくあれですからね、最大なるものは最近は八割一分ですか、私が総裁就任時分には通学輸送は八割九分もかけてきている。通勤者でも七割九分ぐらいの割。最近はだんだん減らしてきたんですが、大体田代さん、これはひとつ詳しく説明しなければなりませんが、通勤輸送については、通勤通学に対して五割の割引、さらにその上に大きなプラスX。五割の割引になると、どんな国鉄は負担になりますか、一年に一千八百億。そのほかに四十三年に通勤通学の割引の是正をしましたが、現在でもなおかつ五割以上のもので、四百四十億負担している。こういうことで一年に二千二、三百億の負担をしておる。これはずいぶん大きな問題だとお考えになりませんか。国鉄はそれをあえてしてでも、通勤輸送の改善をやる、今日の国鉄財政が非常に苦しくなったゆえんのものの一つはこれなんです。こういうことで地方、地方によっては多少通勤輸送についてまだよくいっておりませんが、大体において、国鉄というものはとにかく最善の努力を尽くしておる、こういうことだけは御了承を願いたい。全くこれは公共精神の一〇〇%の発露だと、どうぞその点をひとつ御了承を願いたいと思います。
  192. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ただいま総裁の申し上げましたことに若干補足して申し上げます。  通勤輸送のほかに、いまやっております、たとえば新幹線の問題でございますが、もしたとえば東海道新幹線ができていなかったとしますと、現時点におきましては、湘南地方からの通勤はほとんどできないというふうな状態になっていたと思います。これも新幹線という非常にはでなことばかりやっていることじゃなしに、あれによりまして通勤輸送なり、貨物輸送が非常によくなってくると。いま大阪以西の山陽新幹線に着手いたしておりますが、現時点における山陽線の混雑状況は、ちょうど東海道新幹線を計画いたしましたときの東海道線よりもちょっとひどいというぐらいの込み方でございます。これが山陽新幹線ができますれば、現在の山陽線は通勤と、主として貨物というふうに充当できると思いますので、これもよくなると思いますし、また東北線も青森まで複線電化が完成する。またことしの秋には北陸線が全部複線になります。というふうに、まあ先生谷間とおっしゃいましたが、確かに谷間になった点も多々ございました。それを一つ一つ埋めてまいるわけでございますが、ただ、最後に残る地方のローカル線につきましては、やはり並行している道路等がありましてバス等が非常に発達しておりますところにつきましては、通勤通学等はこれはもう鉄道でやるけれども、まあ日中はバスに乗っていただくというふうなことで、多少列車回数は減らしているところもございます。なるべくそういう谷間のないようにやっていきたいと考えております。
  193. 田代富士男

    田代富士男君 いま当局のお二方のお話を聞きまして、特に石田総裁の御確信ある御答弁を聞きまして、ここに今日の国鉄の赤字の原因があると申されましたが、それも今日の赤字原因の一つであることは私も認める次第です。ところがまだ、国鉄の赤字のそもそもの根本原因はほかにもあると思うのです。いま言われたことももちろん了としておりますけれども、それは、第三次長期計画をいろいろ計画をされておいでになりまして、ここで過大な資本の投下がなされまして、いま、さらにまだ今後七千億ほどの投資も近代化のためにやっていくといういろいろの話もなされておりますが、これで出てくるのが借入金の利子の返還じゃないかと思います。この利息の返還が国鉄全体の経営を圧迫しているということは、私はとうていこれを否定することはできないと思います。これもいま総裁申されるとおりに赤字の大きな根本原因になっていると思うのです。だから昭和四十年には、約一千二百億そこそこだったと思いますけれども、その赤字ができまして国鉄危機論というものが特に大きく浮び上がってまいったと思うわけなんですが、私はここにおいて国鉄の経営そのものが、独立採算制ということをいまちょっとお聞きしましたけれども、これでいきたいという腹もわかりますけれども、私はこの点、無理があるんじゃないかと思うのです。で、本会議におきまして私は質問をいたしました。もっと国鉄に対して国からお金を出すべきである。道路とかそういうものに対してはどんどん金を出しているじゃないか、国鉄に対してどうなんだということを聞いたときに大蔵大臣は、道路は公共の使用物であるために出しているんだと、そういうような答弁をされたことを私はいまもまだ記憶しておりますけれども、私はこの鉄道というものは、私は大きく考えるならば道路の延長じゃないかと思う。そういう面におきまして、国鉄自身としましても、独立採算制というたてまえだけでなくして、そういうような面も考えていかなくてはならないじゃないかと思うわけなんです。この点がまず第一点でございます。  それと同時に私が申し上げたいことは、この独立採算制のためにいろいろ赤字が出てきて、困難な面が横たわってきております。この赤字の原因というものが、いまの通勤通学のために全力を入れていると申されますけれども、そもそもは貨物輸送を中心とした赤字が大きい、パーセントの比率でいった場合に。そうした場合に、おもに貨物輸送というものは、もちろんわれわれの生活に間接的には影響があるかもわかりませんが、ほとんどが大企業関係の製品の輸送だと思う。そういうような考え方で、そちらのほうは、一番当初に申し上げたとおりに検討されていると思うんですけれども、私たちの側から見るならば、検討されてないと、こういうところです。私は、そのような一面におきましては、大きい企業体でしたらば、貨物の専用車等もつくって企業体に貸しておるところもあるわけなんですけれども、こういうところにも私はメスを入れていかなくてはならない点があるのじゃないかと思うんですが、これが第二の問題ですけれども、そういう点に対しまして国鉄並びに運輸省立場としてどういうふうにお考えであるか、お願いしたいと思います。
  194. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 国鉄の現在の財政の窮状というものの原因は、これは第一は公共負担でございます。これはもうきょうあたりの社会党の議員諸公の話を聞いてみますと、やはり私が国鉄総裁になってからやってきたことを大いに強調している、私は実にありがたいことだと思う。  それからその次は赤字線の問題でしょう。これは現在の輸送需要に対して国鉄運賃はもう非常にアンバランス、収入は少ないのに、鉄道というものは、高い輸送機関を走らしておる。しかも、これは年々歳々収支の状況が悪くなっている。一向に地方の人は利用してくれぬ。しかも、国鉄というものは、これはやっぱり公共性を考えてこれをやっていく。こういうことで、現在でも、つまりほんとうにプラスになっているのは十四線か十八線ぐらいのもので、金額にして、もうけは九百億から九百六、七十億ぐらい。それで赤字線の損というものは、四十一年には千三百億、四十三年には千七百億にふえている。しかも、ただ、いまの千三百億とか千七百億というものの中には、黒字線に対する培養効果をなしておるというようなことであって、ほんとうにわれわれ赤字線として国鉄の負担になっているものというものは、大体一年に五百億ぐらいのものじゃないかと思いますが、それにしても、これは非常に大きな負担で、年々しかもふえている。そこに実にやっかいな問題があるのでありまして、これをもう少し経済的な輸送にかえようというのが赤字線の問題であります。ということで、今度、つまり、田代さんは独立採算制のことを申されましたが、これもやはり国鉄が能率を発揮する点からいえば、やはりけじめというものをつけていく必要がある。それにはやっぱり独立採算です。不幸にして、今日というものは独立採算の線を割って非常にマイナスになっておりますが、これもまた一時で、結局ここに復帰するということに努力するということによって能率をあげるということになるので、これはやはり私は企業性を発揮して能率をあげるという点からいけば、やはり独立採算というものはどこまでも維持する必要があると思う。ただ、政府なり何なりとしては、国鉄にお荷物をしょわせないで、独立採算制が維持できるようにひとつ考えてもらわなければならぬ、こういうことであろうかと思います。最近は大蔵省もだいぶ固いひもをゆるめまして、ずいぶん思い切ったことをやっているんですが、これに対しては、金額についてはいろいろの問題もありますが、しかし、みみっちいと言っちゃ相すまぬかもしれぬが、さいふを固く締めておった大蔵省があれまでにやったということは、これは金額においては不満があるとしましても、これは非常に感謝せにゃならぬ。それで企画庁をして言わせれば、これをやるということは、これからもやるということなんだからと、こういうことなんで、その点に大いに希望を持っている次第であります。  それからその次に貨物輸送の問題ですが、これが非常に損だというようなこと、これはちょっと注釈を要するのでありまして、実際に貨物輸送の原価がどのくらいということは、ちょっとむずかしいのですね、これはほんとうの専門家をもってしても百点という計算はできないんですよ。それで現在の貨物輸送の振わない原因というものは、これは独立採算、公共企業体になって以来のことです。要するに、国鉄というものが公共企業体になったときには、ぶちこわされた路線というものを受けた。それでその後は修理に専念し、路線を拡大するということは事実できぬ。それで、これは私が国会で言って、始終反対を受けるのですが、要するに運賃の問題だ。どうも国会というものはほんとうに国鉄をかわいがってくれなかった。しょっちゅう運賃というものを安くたたいた。そのために自己資金というものが十分にはない。それがために修理というものもろくすっぽできない。いわんや路線の拡大なんというものはできぬ。そこにおいて、三十二年においてまず路線の修理等をやろうということで一年に一千億の金をもって始めたということで、ずっともう自己資金というものに対しては苦労していた。この点、電電公社は実にうまいことをやっているんですよ。あそこに名総裁がいまして、池田さんかなんかをうまく口説いて――これは私に直接に話してくれたんです、御本人が。昭和二十六年に一挙に電話料を昭和十一年に比べて二百三十三倍やった。国鉄はその時分に再三再四運賃の値上げをやったが、百十六倍ですよ、旅客運賃は。それで三十二年、三十六年、四十一年とやったが、それで二百三十四倍だ。電電公社というものはすでに昭和二十六年において二百三十三倍。それだけじゃないんだ。梶井さんひそかに私に告げていわく、総裁がうまくやったんだ、何だと言ったら、即時通話。彼に言わせると、それは九割増になるんだ。ところが、この間電電公社総裁に聞いたら、まあ七割くらいは増になっておる。二百三十三倍で七割増といったらこれは四百倍でしょう。それで今日まで電電公社なんかは電話料を値上げしないでゆうゆうとやってこれた。赤字線なんかありはしない。国鉄は赤字線をかかえて安い運賃でやってきたわけで、この運賃の値上げというものに対しては、どうも国会というものは一向色よい手を打ってくれなかったと、こういうことですね。そういうことで路線の力の拡大なんかできなかった。貨物輸送力の増大に力を入れることができない。とにかく旅客輸送のほうの需要は貨物輸送以上に多かった。ゆえに旅客のほうにその輸送力を回して貨物のほうに力が入れられなかった。そのために貨物輸送というものが非常に減ってきた。その間に道路が発達し、日本の産業は非常に発達するということで、それで路線利用者というものは非常にトラックがふえてきた。そこへもってきてさらに私は困るのは、荷主そのものが自分でトラックを持つ。現在における日本のトラックというものは、路線業者の持っているトラックよりも荷主そのものが持っているトラックが多い、これがこわい。一たん持ったら最後、彼らはぶちこわれるまで使っちゃうということで、そこに国鉄というものの貨物輸送力がふるわないゆえんがあるということで、これは今後国鉄が輸送力をふやすに従ってだんだん改善すべきではないか。  さらに田代さんは、大企業の問題について話しましたが、まあ大企業といえば、国鉄の荷物の一番大きなお得意さんは引き込み線です。引き込み線というものについて見ると、鉄道とトラックの輸送において国鉄の持つハンデキャップは、ターミナル・ツー・ターミナルということだ、トラックはドア・ツー・ドアだ、これを補うものが引き込み線です。現在の引き込み線というものは国鉄の輸送貨物の五割以上、これはいいお得意さんですよ。それを私は監査委員長のときに調べてみたところが、どうも待遇がよくないということでずいぶんやかましく言った結果、ようやく最近になって荷主を満足させるに近いところまで――近いんですよ、十分じゃない、近いところまできたのでうまくいっています。  さらに、この間も話がありました、きのうか、共産党の私有貨車の話。私府貨車というのは実にありがたいものですよ。たとえば油のごとき私有貨車を持ったら最後、荷主は決して国鉄から離れやせぬ。たとえば一年に千二百万トンの油というものを私有貨車で運んでおる。これに対して国鉄はから荷の運賃というものを高く取っていた、これは不合理だ、これを是正するということもやった。このことを例にあげてきのうの連合委員会である議員から国鉄総裁というものは財閥を代表して財閥のために国鉄の利益を犠牲にしていると言われたが、これは実にけしからん言い方だ。これは全くあたりまえのことをやっているわけで、どこにそう言われることがあるのかと思う。そういうことで、貨物輸送というものに対する将来を嘱目したいと思う。その点で一番力を果たしてきたのはコンテナですよ。非常な勢いで一年に三割以上ふえている。さらに自動車輸送、これだって四年前から私は大いに大声で疾呼してやったのですが、一日に三千両以上動いておる、こういうようなことで貨物輸送というものは、これまではまだどうもよくなかったが、これからはよくなることこそあれ、決して悪くなることはない。まず過去はお忘れください。将来を御嘱望願いたい、こういうことです。
  195. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) ただいま総裁から詳細なお話がございましたので、私は田代先生の資本組みと、それから貨物の点について限定してお話し申し上げたいと思います。  おっしゃるように近代化投資等をやっておりまして、これからも三兆七千億やろうとしておるわけであります。その償却費並びに資本利子が多額にのぼることは事実でございますが、本来、資本投資というものは普通の私企業でありましても、その点は当然常業の収入から回収さるべきものでありまして、国鉄についても、私は大体においてそれは可能だと思っておるのでございます。ただ、この資本の回収期間が長いという問題、これは輸送という企業を考えてみますと、これは避けられない点でございます。そこに、先ほど総裁が申しましたようないろいろな採算上の悪条件が重なりまして、そうしてほうっておいては十年間ではどうにもならぬ、こういうことで財政当局の思い切って援助を得たことになったわけでございます。しかし、何ぶんにもその資本利子の点を申しますと、新しい投資に対して金利がどれだけつくか、ここが重点なのでございます。すでに財政当局では十年間で二千四百七十億にのぼります財政再建債として三十年間という画期的な長期償還を認めてもらうことになりましたし、それに対する利子も十年間で九百十億くらい一般会計から補給して無利子にする、こういう体制をとってもらったのでありますが、さらに百尺竿頭一歩を進めまして、新しい投資に対する国鉄側の金利負担をできるだけ安くしてもらいたい。今度は六分五厘ということにしようということで、その対象工事を従来の四十六年から五十年まで延ばしてもらったのであります。欲を言いますれば、これを六分にしていただけばなおけっこうであるということでございます。けさほど来大蔵大臣は、いま予算が成立したばかりで検討するということさえなかなか約束できないということでございますが運輸省といたしましては、来年もこの点を特に財政当局にお願い申し上げたいと、かように思っておるわけでございます。  それから貨物運賃の問題につきましては、私が先ほど申しましたように、国鉄総裁から引き込み線あるいは私有貨車、こういう大きな問題があるわけでございますが、一般的に申しますれば、現在の国鉄の貨物運賃と、それからその荷主に対するサービスの相関関係におきまして、やはりトラックに押されておるということは事実だろうと思うのでございます。特にドア・ツー・ドアでいくとか、それから非常に早くつくというような点からいたしまして、国鉄の運賃が安いにもかかわらず、なおかつ荷主がトラックのほうにいくということは、そこに大きな問題があると思うのでございます。それであればこそ、今度の再建計画におきましては、中長距離についての大量の貨物の輸送を中心に考えていこうじゃないか、そしてまたその内容といたしまして、フレート・ライナーを考えるとか、物資別の専用列車考えてみてはとか、あるいは通運業者、あるいはさらには海運と一貫輸送を考え国鉄が貨物に加えていく、その点を重点的に改めていきたい、こういう施策でございますし、また、これから私たちも刮目してその成果を期待しておると、こういう現状でございます。
  196. 田代富士男

    田代富士男君 いま総裁からは、いろいろな元気のよいことばを聞かさしていただきました。また政務次官からもお話がありまして、利子の問題につきましては説明をお受けしたんですが、別の観点から申し上げますと、第一次五カ年計画が発表されました昭和三十二年から四十二年までの減価償却費、これは大体二・八五倍になっていると思います。それに対しまして借金の利子でございますが、これは四・二倍にふくれあがっておるわけなんであります。これはひとつ注目すべきことじゃないかと思うわけなんです。この点につきまして、いかがお考えでございましょうか。
  197. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 減価償却の点はもう御案内でございましょうが、定額法もありますし、定率法もございます。したがいまして、新規投資をやりまして定率法をやりますと、同じ率でありましても、後年度に至りまして、減価償却の金額、絶対額はだんだん減っていくことは御承知のとおりでございます。これに対しまして、それを全体を借り入れ金でまかなったといたしますと、同じ金額、利率が同じでありますと、そのまま累積でいくわけでありますから、当然その間比率が違ってくるのは当然だろうと思うわけでございます。
  198. 田代富士男

    田代富士男君 そこで減価償却の方法が定額法から定率法に変えられたわけなんです。このいきさつにつきましてはどういうわけで変えられたのか。もしこれは変えずにいっていたならば、どのような事態になっているのか、あるいはこのような定率法に変えたためにこのようになったのか、その対照をひとつ示していただきたいと思います。
  199. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 御案内のように固定資産の償却につきましては、私企業におきましても、無形固定資産においては通常定額法をとっております。しかし、有形固定資産につきましては原則として定率法をとることが近代会計学においては原則になっておるわけでございまして、むしろ資本回収の会計的処理といたしまして、そのほうが合理的であるという会計原則の合理性に基づくものだと思います。従来、国鉄はどちらかと申しますと、定額法による部分が多うございましたけれども、これまでのところ順次定率法に改正してまいって一般の企業並みになってきたと、特に今年度におきましては、レールにおきましても半額に達するまで定率法を採用いたしまして、その後、特会法による償却をということは、償却制度につきましてさらに一歩を進めたものだと、かように考えておるわけでございます。
  200. 田代富士男

    田代富士男君 昭和三十九年度の時点におきましてこれが実施されたときには、減価償却を定額法から定率法に変えただけで三百億の赤字が計上されたわけなんです。そういう点からどうでございますか。
  201. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) 新規投資が多い場合には、その分は定率法によったほうが当然多くなるわけでございます。おそらくそういうことの結果だと思うのでございますが、会計処理といたしましてもむしろ実態をあらわしたほうがいいわけでございますから、近代会計学がとっておるそれを採用いたしまして、国鉄の損益並びに貸借対照表を実態に即したものにするということが必要かと思うのでございます。一時的にそのためにかりに償却額が多くなりましても、それは国鉄の長い間の近代経営あるいは合理的経営という観点から申しますればやむを得ないではないかと、かように考えるわけでございます。
  202. 田代富士男

    田代富士男君 そこで私がお聞きしたいことは、この定額法と定率法との関係をいまお聞きしたわけなんですが、このやり方は民間企業のやり方と同じくなってきたとただいまも政務次官が申されましたけれども国鉄の設備投資につきましては、この委員会でもいろいろ検討されてまいりましたが、受益者負担というたてまえからこれはお願いする以外にないというような、そういう御答弁一辺倒でございました。だから考えてみるならば、減価償却のやり方は民間企業と同じようなやり方をやり、そうして収入を得るほうは、そのように受益者負担というたてまえでやるということは民間企業であるならばもうからないからひとつ皆さんで、買う人で利益を与えてくださいというようなことは言えないわけなんです。こういう点の矛盾を感じますし、こういうところに国鉄全体を、われわれ自身がガラス張りでないという点を非常に不信感を持ってはならないと思いながら、ガラス張りでない、そういうものを感ずるくらいなんですけれども、この点はどうでございましょうか。
  203. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) おっしゃるように国鉄につきましては、普通の私企業と多分に違う点があるわけでございます。国鉄運賃法に定められております運賃のきめ方の中に、一つは原価を償うことということがございます。で、その立場をとりまして、その原価の一つでございます償却費については先ほど申しましたような定率法によったほうが実態がよくあらわれているということでございますが、他方、また運賃をきめる一つの柱といたしまして、産業の発達に資すること、あるいは物価の安定とか、国民生活の安定に資することと、まあ要するに何と申しますか、独立採算制と公共性と、両方国鉄が負わされておるところに一番むずかしい国鉄の悩みがあると思うのでございます。そういう意味におきまして、国鉄が今日の採算状況からかんがみましてもいずれにもなかなか徹することができない、今年度の予算を見ましても、原価を償うところまではなかなかいっていない。そうしてまた片や運賃もある程度お願いせざるを得ない、物価はある程度上がることには間違いないわけでございますが、その面も完全にはいかない。産業の発達に資するといって、貨物運賃を下げるわけにもいかない、そういう国鉄性格があると思うのでございますが、ただ、御案内のように一方におきまして、国鉄は総資産三兆のうち約一兆一千二百億ぐらいの再評価準備金がございます。そのほか八十九億という国の出資があるわけでございますから、普通の私企業で考えますれば自己資本比率はいわば三〇何%になっておると思うのでございます。これについては配当負担が要らぬのでございます。それはもう初めから要らぬわけでございますから、これは国鉄としては他の企業にない大きなやはり資本利益をいわば国が与えておるということであろうと思うのでございます。そうしてまた今度の財政再建につきまして先ほど申し述べましたような思い切った措置がとられた、なるほど建設補助金については、まあわれわれの側から申せばもう一歩を進めてもらいたいという点がございますけれども、九〇%以上われわれの要望は通ったと思っておるわけでございますので、これらの国鉄が特に公共企業なるがゆえに持っているそういう有利性というものを十分利用しながら、しかし他面において持っております公共性と申しますか、そのためからくる不採算性というものをどこまでカバーできるか、これが今後の国鉄の一番大問題でございますし、なかなかこれだけの案を組んで国民の皆さんにお願いしておるわけでございますけれども、たいへんな努力が要るであろうということは容易に想像されるわけでございまして、われわれもまた監督官庁として国鉄一体になりまして所期の目的を果たすように努力してまいりたい、かように考えております。
  204. 田代富士男

    田代富士男君 次に、もう一つ別の立場から見てみますと、昭和四十三年度では予算規模が九千三百億そこそこでございましたが、そのうち減価償却費が千六百五十億、利子、借入金返還が二千六百七十五億と、このような数字が出ておりますけれども、これで見ていたならば赤字になるのはあたりまえじゃないかと思うんですね。このままいったならば、もうますます赤字になっていくと思うわけなんです。まあ、そういう点でこのような営業のあり方でよいか悪いかは、しろうとであってもこれは成り立たないのはわかっているんじゃないかと思うんです。そこで資本費に吸収される減価償却費が営業費の一七%ぐらい占めているところが、同じそのような営業費に含まれているアメリカの例では減価償却費が六%である、このような違いが出ているところにも、今日の国鉄の原因があるんじゃないかと思うんです。そういうところのしわ寄せが今回の運賃値上げとしてわれわれ自身負担しなくちゃならないと、そのような結果が出てきているんじゃないかと思うんですけれども、これに対して原田運輸大臣、いかがでございましょう。
  205. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 減価償却が過ぎているんじゃないかというお話が再三出ておるわけでございます。これに対しまして政務次官からも御説明を申し上げておりますが、やはり減価償却というものは将来につながる問題であり、これをなおざりにするということは、企業としては許されない、こういうことでございますから、減価償却というものを取り入れてやっていくということについては、私はやはり適当な減価償却というものをすべきである。会計検査院もたしかこれを指摘しておった、このように記憶いたしております。
  206. 田代富士男

    田代富士男君 適当にすべきであるという大臣の御答弁でございますが、そのような減価償却費を計上している中には、いま言うように設備の償却に充てる資金というものも含まれているかもわかりませんが、大部分が新しい投資の資金としてなされている面もあるわけなんです。そうしたならば、これはもう意識して赤字をつくられていると言われても、これは無理もない点じゃないかと思うんです。それを私は国民大衆のしわ寄せとして意識して赤字をつくっているというようなことはありませんよと言われるかわかりませんけれども考えたらそのようなことになるわけなんです。その点に対してはいかがでございましょうか。
  207. 村山達雄

    政府委員(村山達雄君) いま大臣の言ったことで尽きると思うのでございますが、補足して御説明申し上げます。  まあ、すべてそうでございますが、資本の回収期間の長い事業につきましては、投資の当初におきましては、その償却費、それから金利負担が出てまいります。まだ建設中でございますから見合いの収入は入ってこないという非常な欠点があるわけでございまして、本来そういう長期の投資については長い期間を通じて見て、はたしてどうかという判定が必要だろうと思うんであります。国鉄といえども、私は原理は同じことだと思いますが、先ほど申し上げましたように、それ以外の原因によるところの赤字が重なり合っているわけでございまして、それで、そういう観点からいたしまして、臨時に十年間を再建期間といたしまして、そして立て直しをやってまいりたい。しかも、計画最初におきましては、なお償却後赤字が出てくるのでございまして、ようやくこの期間の最終年度くらいで何とかとんとんになり、以降大体減価償却を入れましても、とんとんになるというような計算で、非常に再建とはいうものの、累積赤字を消すところまでだけじゃなくて、単年度赤字を消すというあたりを一つ再建の目標にいたしておるのでございます。しかし、それにいたしましても、従来の国鉄のシェアの経過、あるいはその他の国鉄をめぐるいろんな環境からいいまして、なかなか容易ではない、そのためには財政援助あるいは合理化ということのほかに、利用者に対してもある程度の運賃を負担していただかにゃならぬ、こういうことなのでございます。
  208. 田代富士男

    田代富士男君 また別の立場からお聞きしますと、営業費に対する資本費の割合ですね。この第一次計画、第二次、第三次、第三次計画まででけっこうですけれども、割合をちょっとお示しいただきたいと思います。
  209. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ちょっと御質問意味がよくわからないのですが。
  210. 田代富士男

    田代富士男君 営業費に対する資本費の割合ですね。私の調べたのでは、昭和三十五年の第一次五カ年計画の最終年度、これが営業費に対する資本費の割合が二〇%になっております。それから昭和四十年、第三次五カ年計画の初年度が二九%にはね上がっているわけなんです。だからこのパーセントからいきますと、国鉄経費の三分の一を資本費に振り向けているというような数字が出ておるわけなんですけれども
  211. 小林正知

    説明員(小林正知君) ただいま先生がお示しの数字は、おそらく経営費といたしまして、国鉄の営業、運転をやって、施設の補修をやってまいりますが、それに要するいわゆる事業費と申しますか、そういった普通のランニングコスト的なもの、それに対する減価償却費等の割合をお知りになりたいと、かように理解いたしますが、数字で申し上げますと、三十五年度第一次長期計画の一応実績といたしましての、最終年度に当たります三十五年度の数字で申し上げますと、利子を除きまして事業費が三千百十九億、それに対しまして減価償却費等資本費が六百三十四億になっておりますので、大体二割見当、かようなかっこうになるかと思います。また第三次長期計画のスタートをいたしました四十年度におきましては、同じような範囲で経費を取りますと、事業費が五千三百九十六億円に対しまして、減価償却費等が約千五百三十億程度ということになりますので、おおむね三割近いパーセントになる、かように思っております。  ただ、先生ただいまおっしゃいました中で、これは事業費の中に含まれておる減価償却費は、ただいま私申し上げました事業費の中に含まれておるものではございませんで、事業費と別に減価償却費として計上しておるものでございます。
  212. 田代富士男

    田代富士男君 このように私、一つ一つあまり、時間が制限されておりますからこまかく入れませんけれども、お聞きいたしましたけれども、こういうところからまだ私はいろいろガラス張りでない面を私、感ずるわけなんです。だから、一面は合理的であるとか、またいまの減価償却の方法も、定額法から定率法に変えるにあたりまして、一般の会社並みにいろいろ企業の合理化考えていらっしゃいます。独立採算性の中にもこれをとり入れようとして能率化、あるいは経費をどのようにして少なくするかと、いろいろ検討をされておりますけれども、ひとつ、一例をあげまして、まだまだ不合理なことが行なわれているという面を私はひとつ実例の上から示し、これをお聞きしていきたいと思うんです。  これは、国鉄には五十年の歴史を持つ物資部というのがございまして、大正七年の九月に、鉄道員共済組合購買部として発足した当時から、人件費、設備費はすべて国鉄がこれを支弁していたわけです。事業の発展とともにこれを自主経営体制の確立に改められまして、昨年度におきましては四百六十億の売り上げの実績をもちまして、日本の国で共済組合の中では最大の共済組合になったわけなんです。ところで、この物資部の従業員の中に、昨年四月一日現在で自主経営体制確立されたあとにも、なおかつ国鉄職員が約千名そこそこございます。千名ちょっと出たくらいでございますが、おりますけれども、こういう人々の給料というものは、このような自主経営体制を確立される前であったならば、それはどうであるかわかりませんが、現在ここの職員の給料がどこから出ているのか、お答えを願いたいと思います。
  213. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 御質問は、これはごもっとも千万であります。実は私は、この問題をテイクアップしまして、とにかく物資部の従業員というものを、国鉄において払う従業員でやるということは間違っている。これは物資部の勘定でやったらいいじゃないかということで、その時分の国鉄が払った従業員というものが、千名じゃない、もっと多かった。だんだん減らして千人になったのでありますが、これは漸を追ってゼロにするという、こういうことで進んでおりますので、その点はひとつ御了承願いたいと思います。
  214. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ、これはやはり国鉄の経理から支払われておるのですね。これは総裁いまおっしゃるとおり、けしからぬことなんですね。
  215. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) けしからぬことです。私はこれは同感です。
  216. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ちょっと田代先生、先ほど物資部の問題に入ります前に、償却のことで定率法とおっしゃいましたけれども、うちで定率法をとっておりますのは船舶、車両、自動車、機械、これだけでございますから、全部定率法ではございませんので、構造物その他は定額法でございます。その点、先ほどの御質問、全部定率法のように伺いましたが、その点ちょっと正確に申し上げないで答弁したのがたいへん……。  物資部につきましては、もう少し詳しく私のほうの担当常務から申し上げますから、ちょっとお聞きください。
  217. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) 先ほど田代先生から、物資部に国鉄職員を使っておるのははなはだけしかぬことであるという御注意でございましたけれども総裁もまさに同感であるという御返事でございましたけれども、いささか事務担当者のほうから御説明をいたしますと、物資部の人間といえども、これは公共企業体等職員共済組合法の八十五条に基づきまして、国鉄職員を使うことができるという条文がはっきりございますので、別にこれはけしからぬことだとまでおっしゃいましたのは、少し語が過ぎはせぬかと私、思います。ただ、御承知のとおり、現在国鉄財政は非常に苦しい状態にございますから、財政が苦しいように、国鉄職員は減らすという努力は私どもとしてはやっていかなければならぬと思います。かつて国鉄財政が非常に楽でございました場合には、物資部の職員全員、国鉄職員を使っておった。これは法的にも許されておったことでございます。ただ、財政状態がだんだんシビアになってまいりましたので、漸次減らしてまいりまして、先ほど先生御指摘の千名をちょっとこしておるという御指摘でございましたが、現時点におきましてはすでに八百二十五名まで減らしてきております。将来にわたって、この人間は逐次減らしてまいる所存でございますが、これは国鉄の経営の状態とにらみ合わせまして減らしてまいる所存でございます。ただ、これをけしからぬとおっしゃることだけはひとつお取り下げいただきたいと思います。
  218. 田代富士男

    田代富士男君 ちょっと国鉄内で、総裁はけしからぬと申されたし、私はどちらをとったらいいか、ちょっとその点を調整をひとつお願いします。
  219. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 私は実は、ただいま井上理事の言われた法律のことは存じません。存じませんが、国鉄の人件費がその収入の六割にも達している、こういうときに、国鉄職員の相互の利益のためにやっておる。国鉄のためじゃないんです。いまの消費組合に対して、国鉄の費用を払うことは私、考えなければいかぬ。法律のことは知らぬですよ、はなはだ無知の至りかもしらぬが。そういうことで、私の良識から、あそこの監督者に対して、人間を減らせ、こういうことでだんだん減らした結果、こういうふうになった、こういうことでございます。私はこれは、法律はどうか知らぬけれども、たとえば国鉄職員相互の慎みの意味において、だんだん減らすのがほんとうだと思います。
  220. 田代富士男

    田代富士男君 いまの総裁の御答弁で了としたいと思いますが、けしからぬというのは良識の上から、だからだんだんこういうものは減らしていくべきであるとおっしゃいますが、実際は国鉄の経理のほうから出ておるわけなんです。正確に言えば、千八十八名の方々が出ていて、いま井上常務理事の申されたとおり、現在は二百六十三名が減員されまして、八百二十五名になっておるわけです。そうしますと、これらの人々の給料あるいはそういう身分ですね、身分はどうなっておるのか。こういう人々の給料の総額が概算どのくらいになっておるのか、お聞きしたいと思います。
  221. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) 現在おります八百二十五名の人間の人件費は大体七億でございます。  それから大体どういうところにおるかというお尋ねのようでございましたが、配給所の主任をやっております、大体原則的に申し上げますと。
  222. 田代富士男

    田代富士男君 まあ現在約七億である。一千八十八名のときは約十億の金が出ていた、こういうことでございますね。身分はどのようになっておるのでしょうか。身分は職員と何ら変わりないのでしょうか。
  223. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) 職員でございますから、これは変わりようがないわけでございます。
  224. 田代富士男

    田代富士男君 まあ物資部の事業に、いま総裁の申されるとおりに、国鉄職員がタッチする必要はない、漸次これは考えていくという総裁のお話でございますが、昭和三十五年当時は千五百人からいた、このようにも言われて、総裁もあるいは井上常務理事も、毎年減員しておると申されるとおりに、いま八百何名になりましたが、四十二年度には千八十八名。そうすると、七年間で延べ人員にいたしますと、九千三百七十四人になるわけなんです。そうしますと、これだけの人に国鉄が支払った給料を概算すると、いま計算していただきましたのですけれども、約七十五億を下ることはないと思うのです。そうしますと、一番最初申し上げましたとおりに、大正七年から発足しておるわけなんです。それからするならば数百億になるということになるわけです。まことにけしからぬことだという総裁のおことばがあるのですけれども、こういうようなことはたいへんな不当支出というようなことも考えるわけなんです。そうしますと、これは共済組合物資部の総括的監督立場にある人はだれなのか。これはきびしく戒めていくべきじゃないかと思いますけれども、この責任者はだれなんでしょうか。
  225. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) 物資部は、これは共済組合の福祉事業としてやっておるわけでございまして、共済組合の代表者は国鉄総裁でございます。それから実際の事務の担当者としての本部長が別にございまして、本部長は副総裁がなっております。
  226. 田代富士男

    田代富士男君 まことに申しわけない質問になってしまいましたのですけれども総裁が、これはまことにけしからぬというツルの一声で私は了としておりますが、まあ、この点ひとつ改めていただきたいと思うわけなんですが、そこで国鉄総裁お尋ねしたいことは、この物資部の昭和三十七年度から四十二年度までの損益計算書を見てみますと、毎年損益に大幅な変動が見られるのです。具体的に申し上げますと、資料もそちらのお手元にあるかと思いますが、私の持っておる資料でいきますと、昭和三十七年には二百九万円の損失ですね。昭和三十八年には概算五百七十五万円、三十九年には七千六百五万円、四十年には一転いたしまして、これが七千六百六十三万円、これは黒字になっておるのです、一転しまして。四十一年には、これががたんと利益が落ちまして百七万円となっておるわけなんです。そうしまして、四十二年は損益がゼロということに決算報告書になっておるわけなんです。そうしますと、大体損益が全くない、ゼロなどというような、そういう奇跡が、これは会計をやった人であるならば、あるかないかはおのずからわかるわけなんです。これはいま申し上げました数字はこまかい数字でありますが、――ここにも時間だということで、おそらく御連絡に来ていらっしゃると思いますけれども、そういうようなこともありまして、こまかい数字は申し上げませんけれども、何らか工作がなされなければ、こういうようなことは起きないと思うのですけれども、この点についてはいかがでございますか。  また物資部の商品販売方法というものについてはどのようになっているのか、それも御説明願いたい。  まず一番最初の問題から、これはひとつやはり国鉄総裁に責任者として、もしも御答弁願えましたら御答弁願いたいと思います。
  227. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) これは私は責任者でございますが、実は人の問題についてはずいぶんやかましく申しました。さらに販売方法なんかについても、仕入れの点はしっかりやらなければならぬ。そうしてまたむずかしい商品なんかに対しては、自分で買って自分で売るということはしないで、店を引っぱってきてやらせる。頭をはねるだけのことをやれという大綱は示しましたが、実際に私は詳しいことは知りませんので、これははなはだ責任上相すみませんが、ひとつ詳しいことは井上常務から御説明をいたします。
  228. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) 確かに御指摘のとおり、各年度収支がばらついております。しかしながら物資部と申しますのは、本来営利事業ではございません。職員の福祉のためにできるだけ低廉な生活必需品なり、日用品なりを配給するというのがたてまえでありまして、販売利益というものは考えておらない。収支のバランスがゼロになるというのが本来の目的なのでございます。本来ゼロになるのが目的でございます。ただ、それは計算上そうはいきませんので、多少のマイナスになったり、多少のプラスになったりするばらつきはこれはしかたのないところだと思いますが、御指摘のとおり三十九年に一挙に七千六百万円も赤になって、四十年には逆に七千六百万円黒字になっておるという御指摘でございますが、これは確かに事業数値でございます。ただ、これは別に操作をいたしたわけではございませんので、三十九年度に、実は志免という炭鉱を国鉄では持っておりまして、その志免の炭鉱に伴う配給所が三カ所ないし四カ所あったのでございます。それを全部廃止いたしまして、それに伴って物資関係の退職者が一挙に出まして、退職手当が相当多量に出た。大体物資部の経営規模が小そうございますから、退職者が一度に出ますと、収支の計算上といたしましてはかなり響く。それと税法上の改正もございまして、そのために一時的に七千六百万円という赤字が出た。それじゃ、その次に七千六百万円黒字になったのはどういうわけか、こういうお尋ねになると思いますが、これは先ほど申し上げましたように、収支をゼロにするのが目的でございますから、やはり前年度の赤字はできるだけ早く解消したいという努力はしなければならない。そうしますと、翌年度の割り掛けに多少手を加えるということは、これまたいたし方のないことでございまして、割り掛けを多少ふやしてやるという、営業努力をするということはもちろんでございます。物資部の関係の連中が一生懸命努力をいたしまして販売の数量を上げて、そして収益も上げた。多少割り掛け率も高くしたということで、大体前年度の赤を単年度で消したということでございます。  それから四十二年度ゼロになっているのは作為的でおかしいという御指摘がございましたが、これは実は貸し倒れ準備金、これに収支の差を全部引き当てたのでございます。そのために収支の差がゼロになっておりますけれども、全部収支の差を貸し倒れ準備金の引き当てに充当いたしましても、なおかつ法定限度内にあるのでありまして、法定限度内一ぱい貸し倒れ準備金を、引き当て金を計上いたしますと、実はマイナスになるわけでございますが、その点作為があるとおっしゃられれば作為がある、そこでゼロになっておる、こういうことでございます。決してこれはもうけるとか、何らか悪い下心があってゼロになっているわけでもなければ、マイナスになったり、プラスになったりしておるというわけでもございませんので、その点は十分御了承いただきたいと思います。
  229. 田代富士男

    田代富士男君 いま作為があればある、なければないという、どっちにもとれるような……。
  230. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) 悪い下心はない。
  231. 田代富士男

    田代富士男君 悪い下心はないということになれば――全然ないかといえば、作為があるといえばある、ないといえばない、――ないものはないということははっきり言えると思うのです。ところがこれは物資部の商品販売方法というものは、これも尋ねてみましたら、いま話されました割り掛け率というものを前もってこれをきめられて、これを原価に加算して何ぼで売るという売り値を決定されているわけなんです。そうして前年度の実績を基盤にしまして、それを一つの基準といいますか、そうして中間で仮決算して、損失が出れば割り掛け率を変更して、いま井上常務理事が申されたように利益になるように調整していくという、そういうやり方をやっているわけです。この割り掛け率はここに資料がございますが、昭和三十五年が四・二%、昭和三十六年が四・五%、昭和三十七年が四・七%、三十八年が五・〇%、三十九年が五・三%、四十年が五・六%、四十一年が五・九%、四十三年が六・一%と、このように数字をいま読み上げましたけれども、読み上げたような数字が、ずっとこれを計算していきますと、毎年〇・三%確実に上昇しているわけなんです。四・二、四・五といま申し上げましたが、そうすれば、このような割り掛け率が〇・三%確実に上昇してきめられているということになりますと、売れば必ずもうかるようになっているわけなんです。だから作為があるか、作為がないかわからない――悪意はないとおっしゃったけれども、数字をいまあげて私がかってに言っているのじゃありませんよ、ここに資料があるのですから。この資料でいきますと、必ず売ればもうかることになっている。これは子供がやっても間違いない。これじゃもうかります、だれがやっても。それがどうしていま申し上げましたとおりに、説明をされましたけれども、損益におきましてもうかったり、あるいは損したりというようなそういう利益に大変動を起こす、また大きな赤字が出てくる、これが私には理解できないのですが、この点に対しましてひとつお答え願います。
  232. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) いま先生御指摘の、割り掛け率がだんだんふえれば子供がやってももうかるという仰せでございますけれども、それは少しおかしいと思います。販売経費というのは、年々やはり上昇いたしてまいります。物資部の物資の職員という者もおりまして、その経費、人件費を払わなければなりません。その人件費は、大体やはり国鉄職員と同じようなベースアップ率で上がってきておりますので、販売経費はだんだん上がってくるわけであります。割り掛け率が上がってまいるということは、販売経費が上がるから、それだけの割り掛けを必要とするというだけのことでありまして、この割り掛け率が上がっておるから、それだけもうけておるというお説はちょっといただきかねるのでございます。
  233. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ちょっと田代君に申し上げますが、ただいま大臣が待っておられますから……。
  234. 田代富士男

    田代富士男君 それはいまさっきも、ほんとうは大臣が席を立たれたときに、私はこういう、言いたくありませんが、大臣、よく聞いていただきたいことは、私が、衆議院の本会議だからということで、一応党内のことだから、私は控え室へ戻って帰ってきます――これはできるだけ大臣に行ってもらおうと、そのように言い含めに帰ったわけで、そのように私は控え室でしてきました。それでここへ帰ってきた。帰ってきたとたんに岡木委員長は、委員長の職権で大臣を向こうへやりました。このやり方は、これはどうですか。少なくとも委員長職権でやるならば、電話があります、現代最も進んだ。私がどこへ行っているか行き先がわからないのじゃなくて、アポロ八号で月へ行ったわけじゃありませんよ。公明党の控え室へ行っているのです。電話一本かけて、時間がもう迫ったからどうでしょうかと、電話の一本くらいかけるべきじゃないかと思うのです、私は。そうでしょう。これは行ってもらおうと――そうしなくても私は慎重審議というたてまえから、大臣いなくても質問を進めて実際質問してきました。せっかく私は真心を尽くしてきましたのに、開口一番委員長職権でやりましたと言う。私は委員長職権でそういうことを何もやらなくても、私は協力しています。一言言ってもらうのと、委員長職権というのは、感じが違います。私は筋論者だ。それでまた時間がきたらやめろと、私はまだきょうは三日間分ぐらい――最初から言っているように資料そろえてやっております。きょうやる資料でも、番号打ってありますが、まだちょっとしか入っていませんよ。谷口先生見てくださいよ。ちょっとしかいっておりません。大先輩の谷口先生がにこにこ笑いながら……。私はだから五時でやめろと、江藤先生、理事であろうとも。私はたった二時間ですよ、やったとしても。三時から五時でしょう。二時間と言っても、私は中断したりいろいろやっていて、もしも大臣が出席しなかったら、私やらないと言ったらどうなっているのです。委員長どうなっています。それだけでも私協力したんですから、そのぐらい見てくださいよ、協力したんだから。
  235. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  236. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記起こして。
  237. 田代富士男

    田代富士男君 だからいまの問題は続きまして、それぞれ時期が違うから、そういう意味も含んでの井上常務のお話じゃなかったかと思いますが、そこで価格変動準備金を設定されてありますけれども、これをする必要があるのかないのか、この点についてお願いします。
  238. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) これはやはり物資部といえども、やはり普通の商店と同じように物品販売をやっておるわけでございますから、価格変動準備金の備えがございませんと、いかなる不測の損害を招きませんとも限りません。そういたしますと、やはりひいては国鉄職員全体の販売価格に影響してまいりますので、やはりそれだけの準備を必要とする。また税法上も、それだけのものは積み立てなさいということをちゃんときめてございます。これは必要な措置でございます。
  239. 田代富士男

    田代富士男君 それから貸借対照表を見ますと、毎期貸し倒れ引き当て金というものが計上されておるわけなんです。そうしますと、いまさっき利益を目的としたことではないということもたびたび申されましたし、また昭和四十二年度初めにおいては八千五百万円であったものを一挙に一億五千九百万円、七千四百万円もこれがふえておる点なんですね。考えますと、これは物資を購入する人は国鉄内部の人じゃないかと思うのです。だから大体貸し倒れが生ずるか、生じないかということは常識でもってわかるわけです。内部の人ばかりであります。これが外部の人にもやるならばなんですけれども。そしてその代金は聞くところによればすべて給料から差し引かれるたてまえになっている。それにどうしてこれだけの準備金が予定されているのか、この点が私はちょっと理解できないのです。一億五千九百万円という多額な金額が準備されているというそういう理由についてお願いいたします。
  240. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) 別に故意に多額を積み立てているわけではございませんで、法定限度内でやっておるわけでございまして、それを自己資金として、それだけ蓄積されることにはなっておりますけれども、その金を何も物資関係の人間がみんなで分けて使っているわけでも何でもないのでございます。もし自己資金が充実してまいりますれば、それだけ将来の割り掛けを安くするという措置も可能になるわけでございますから、法定でちゃんと定められておりますところの各種の引き当て金、これを積み立てるということは、やはり物資販売の仕事をやっております以上は必要であろうと私は思います。
  241. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 田代委員に申し上げますけれども、特にきょうは社会党の質問の時間もさいていだだいた次第もございます。これは一昨日渋谷委員がよく御存じでございます。特に特段の御要望によって、きょう特に割り込んでとっていただいたのでございます。しかも、時間がおおむね一時間、こういうことで確約をしていただいております。そういういきさつもございまして、もう上田委員そこで待機しておられますので、ぜひとも御協力をいただきたいと存じます。
  242. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ、要するに私にやめろとおっしゃるわけですね。
  243. 岡本悟

    委員長岡本悟君) まことに遺憾でございますが、理事会の決定どおりひとつ……。
  244. 田代富士男

    田代富士男君 理事会の決定と言われれば、公明党から理事は出ておりませんから従わなくてはならないのですけれども、しかし、こういう二時間ぐらいでこれだけ大事な法案審議しなさいと、審議できるものじゃないですよ。だれが聞いてもわかりますよ。
  245. 岡本悟

    委員長岡本悟君) いや公明党は、すでにあなたの質問なさる前に、現在で七時間二十一分、社会党の三分の一近くおやりになっております、すでに。そういうこともございますので、ひとつ、特に特段の配慮できょうつくったわけですから、あなたの質問時間を。これは渋谷委員がよく御存じです。
  246. 田代富士男

    田代富士男君 わかりました。じゃ次回に回します。
  247. 上田哲

    ○上田哲君 運賃値上げの提案がありましてからかなり長い各方面からの議論が進んでおりまして、いま総力でこれに反対しようという社会党にバトンが渡って三人これから続きます。私は、その一番手としていろいろお伺いをしたいのでありますけれども、長い期間にわたっての討議が続けられる中で、私は、国鉄というのは単なる一利用者でしかなかったわけですから、これまで。この運賃値上げ問題が出てきたことがきっかけになり若干の勉強もさせてもらって驚いたことは、国鉄というものは何とまあひどいことになっているか。それから、さあそこで、これから十カ年を展望して立て直すのだという眼目を掲げながら当面ここにこういう運賃の改定が出てきたけれども、これもよく見ればずいぶん目の子の大ざっぱな話だ。これからわれわれが乗っていく国鉄というものはレールはどっちを向いて走っていくのだろうかという不安を持ったわけです。いろいろ重箱のすみをほじくるような、あるいは数字をこね回すような御答弁では私どもついていけない部分があるかもしれませんけれども、さっき国鉄総裁も、わしは法律はわからぬ、常識のところでごかんべんを願いたいと言われたわけですから、私も一利用者という直截な感覚でいろいろお伺いをしたい。長い期間にわたる答弁集をずっと勉強しまして、石田禮助言行録というものをつくりました、石田語録というものを。いろんなことをおっしゃっているわけで、この辺を、一つ一つここにありますから、取り上げながらお話をぜひ伺ってみたい。  佐藤総理大臣が四月の十五日においでになって、また来ると言われたけれどもついに一回きりになりましたけれども国鉄出身の総理が自分が若いころ国鉄にいたころには減価償却という制度がなかった、これは驚いた話なんでありまして、これじゃ乱脈になるのも無理はない。乱脈と言っては失礼、ずさんになるのも無理はない。総裁が去年の九月に衆議院運輸委員会で御発言になったのによれば、わしは総裁になってしばらくぼう然自失どうしていいかわからなかった、去年の話で言えば去年、いまから言えば一昨年、これはたいへんなことになったということでシリアスに考え出したのだ、こういうことであります。まことにそのように思います。さあそれじゃ、これから先どうやっていくのかという考え方自身が、きのうの連合審査のときの総裁のことばをかりれば、これはもうどんぶり勘定しかないのだ、ずいぶんこれもまた大ざっぱな話であります。乗せられておるほうはたいへんなことであります。その点で、ひとつ外側からお尋ねをしてまいりますが、これからの立て直しといわれる、この立て直しに推進会議意見書の大綱を十分に尊重されて十カ年計画というのをお立てになるわけですね。
  248. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) おっしゃるとおりです。
  249. 上田哲

    ○上田哲君 そうなりますと、そのとおりだと思うんですけれども、ここで十カ年間に積み上げていこうというお金は三兆三千七百六十億円ですね。三兆三千七百六十億円という金は、さっき次官もおっしゃいましたけれども国鉄の総資産はざっと三兆と考えてみれば、もう一つ国鉄ができるようなものですよ。もう一つ国鉄をつくるようなそういうお金がこれ全部運賃でいこう、運賃で全部いこうなんてことはたいへんなことだし、おおよそといいましょうか、それから四月の十五日の佐藤総理の答弁の中にもありましたけれども、利用者負担がこれからの国鉄の基本的な行き方の一つになるだろう。正確にといえば議事録どおり読みますけれども、そういうことを言いました。にわかにその利用者負担――これは後ほど受益者負担ということと区別して伺いたいから、ことばをひとつ正確に使っていただきたいのですが、そういうものを内容にしながら運賃でもう一つ国鉄をつくろうというような考え方にのっとって、ここに今回の改定案というものが出ている。これはたいへん運賃増額重視政策だということになるだろうと思うんですが、その辺はいかがですか。
  250. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 御承知のとおり国鉄の最近の情勢というものが、収入というものは毎年ふえるが、そのパーセンテージは七%しか、あるいは六%しかありません。しかも、この経費のほうは、これは日本の経済発展のためのいわゆる物価上昇、それからくる人件費の増ということが主であります。それで、そのほかに国鉄というものが、おっしゃるとおり、通勤輸送という金ばっかりかかって一向にもうからないことをやっている。それに使った金が、御承知のとおり四十年から四十三年までは二千九百億と、さらに四十三年から四十四年には五千五百億を投資する計画である。こういうような金ばっかり使って一向に収入はないと、その金というものも、これをもうあまり子供を産む力はないんですよ。結局借金でやらなければならぬ。借金でやればその利息を払わなければならぬというわけで、その利息の負担、さらにそうして今日国鉄というのは、輸送力が少ないために貨物輸送なんか一向発展しない。そのために輸送力をどんどんふやさなければならぬ、安全装置もやらにゃいかぬという、いわく何、いわく何ということで金がかかることばっかり。ただそれも利子や償却というものは考えなくちゃならぬ。こういうようなことで結局コストアップである、ゆえにプライスアップだと、ゆえに運賃アップと、これは経済上の原則によったものです。
  251. 上田哲

    ○上田哲君 私は、人間石田禮助氏をはなはだ尊敬しておるんですけれども、お年を召されたせいかしれぬけれども、どうも繰り言が多い。私もささやかな勉強をさせていただいて、議事録は全部読ませていただいた。総裁が大体いまおっしゃったようなことは二十回ぐらい出ております。そういう話をもう一ぺんこの席でまた伺うのではなくて、わが党はじめいろいろな委員がいろいろな御質問を申し上げて、いろいろ御答弁をいただいておりますから、いよいよ私たちはいままでの御答弁をあわせて、それを踏んまえて大事なところを一つ一つ確認していきたいと思うわけです。ですから私はいまここで伺いたいのは、いかに長い間かつて国鉄が資産を食いつぶしてきたか。コストアップになったからプライスアップになるべきかどうかという話はしばらくあとなんでありまして、どういうふうにして食いつぶしてきたかということを、実態をもう踏まえればいいんです。そこは伺わなくていい。同じことを繰り返しません。だから、私が伺いたいことは、一つ一つ大事なことを確認をしていきたい。  第一の問題として、今回のたとえば十カ年計画を展望する基本的な考え方ですね。これは佐藤総理もお認めになったように、四十八年、五十二年、そろそろ一〇%に勘案されるべき数字を上げなきゃならぬわけでしょう。それを上げなければ三兆三千七百六十億円という金はできないわけですよ。そうですね。もう一ぺん確認して、その小さいところから一つ一つイエスかノーかからいきましょう――英語がお上手だから――四十八年、五十二年、一〇%ずつ、合わせて三兆三千何がしになるという、そういう値上げや財政計画をお立てになるのか、こういうことですね。
  252. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) これは、今後における経済上の趨勢もありまするが、まあいまのこの経済状態を土台にしての見通しから言えば、やはりさっき言ったように、収入増というものはあるが、これははなはだ弱い。しかも、その経費というものの増は非常に強いと、こういうことから言えば、国鉄というものは独立採算をたてまえとする以上、どうしたって、これはやっぱりプライスアップにいかなきゃならぬ。それで運賃アップということで現在の情勢から見ればやはり四十四年から五十三年までの間において運賃の一〇%を上げるというようなことにいかざるを得ないのだと、こういうことであります。
  253. 上田哲

    ○上田哲君 総裁も、おそらく国鉄運賃値上げをかざしてここで、国会で御討論になることはこれが最後でしょう。だからまあひとつ、相手にとって私は不足かもしれませんけれども、ずばりとやろうじゃないですか。どうもお話しがあっちにいったりこっちにいったりするのですよ。お疲れになっているのかもしれませんけれども。私が伺っていることは、さっきちょっとおことばが聞き取れなかったから間違いかもしれませんが、いまおっしゃったのは四十四年度ということをおっしゃったのですか。
  254. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 四十四年から五十三年の間において、つまり四十四年度は一割五分上げますが、そのあとで五十三年までの間において、まあ約四年ですね、あの間隔が。一割ずつ上げにゃならぬと、こういうような予想です。
  255. 上田哲

    ○上田哲君 予想ですということばの中に、先ほど現在の経済事情ということでありました。それを、まあきわめて形式論的にとるならば、経済の変動が下向いていけば、これは上げなくても済むという道もあるわけですから、問題はきわめて常識的にひとつうしろ側から裏張りをしていただきたい。経企庁としてひとつお答えをいただきたい。常識の話ですよ。だから、物価の趨勢が上を向くのか下向くのか。一言だけ。
  256. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 経済企画庁。――
  257. 上田哲

    ○上田哲君 いなきゃいいですよ。かわりと言っちゃ悪いけれども運輸大臣にやってもらいましょう。
  258. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 下がるということはないと思います。
  259. 上田哲

    ○上田哲君 けっこうです。下がるということはないということになれば、もう矢じるしは一つしかない。そうすると、形式論の話じゃなくて、きわめて実態的な見通しとして、まあこの三兆三千七百六十億というお金は最低というような数で考えなきゃならないくらいだ。さっき次官は再建計画ということばはきれいだけれども、実際には赤字を埋めるのが精一ぱいだと、つい十五分くらい前に御答弁になったわけですね。そういう点から言えば、もう一つ国鉄をつくるほどに値するようなたいへんな三兆をこえるようなお金、ほかの計算のしかたもありますけれども、大ざっぱにそういうことですね。そういうたいへんなお金をほかの形じゃなくて、総裁が三月十九日の衆議院運輸委員会で言われたのはあたりまえのことですよ。そのとおりに使いますと、「政府というものは、ひとつ財政措置を講じて一はだ脱ぐ。国鉄というものも合理化に徹してやる。それでさらに残りは、ぜひひとつ利用者負担でやってもらいたいということだ。」さっき次官もそういうふうに言われた。まあ私は利用者負担ということには議論をしたいと思いますけれども、まあ議論尽くされてきましたから、その辺、詳しくは言いませんけれども、最低百歩譲るとして、この順序であればまあ何とか議論はあると、とてもこの三兆三千何がしというたいへんなもう一つ国鉄をつくるほどの大きなお金が、この順序が逆になって、まあ合理化のほうもよくはわからぬ。まあその辺の議論はよしましょう、きょうは。しかし、とにかく国が一はだ脱ぐという点は何回も総裁強調されているように十分だとはいえない。そこで、全部こぞって利用者負担というところにかかってきて、国鉄がもう一つできるということになるのだから、ことばをかえて言えば、運賃の増額ということに重点を置く政策で、これからの再建計画なるものが進行していくのだということについて、イエスでしょうかと申し上げたわけです。
  260. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) これはですね、とにかく四十四年から五十三年までやるにつきましては、さっきからあなたが申したように、国鉄というものは合理化に徹底して収入をふやし、計画を樹立する。それからさらに、政府というものはこれまでの公共負担その他のお荷物を国鉄にしょわした点もあって、相当に国鉄に借金があるんだ、これをひとつ考慮に入れて財政措置を講じてくれ。そこでどうしてもそういうことでいけないやつは、これははなはだ申しかねるがひとつ利用者に負担してくれ。こういういわゆる三段がまえ、いわゆる運輸大臣の言われる三位一体、いずれにしても国鉄のこの合理化の問題ということと、そうして政府財政措置というものに対しては、これは極力努力していますが、さらにあなたに申し上げておきますが、この国鉄の今日の計画に対しては、新大阪から九州までの新幹線というのが入っているのです。
  261. 上田哲

    ○上田哲君 最後の新大阪から行くというのがどういう意味づけになるのかわかりませんが、私はずばりずばりとお尋ねしたいのは、つまりそういうような財政計画の根底には、おっしゃるように、三位一体とおっしゃるけれども、その配分率があるいは構成率が、全然たとえば三三%かそういうふうな形ではなくて、切歯扼腕総裁がされているように、国からの補助金はたいへん少なくて、そうして利用者負担のほうに、運賃値上げのほうにがぼっと行くんだということは、事実申し上げにくいとおっしゃられれば、それはけっこうですが、お認めになるかどうですか。
  262. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) これはおっしゃるまでもなく、できるだけ国からもっと補助してもらいたいと言うんですがね。これは私が総裁になってきましてから、それは国なんというのは独立採算でやっている国鉄に対して国の政策を国鉄の犠牲においてやってけしからぬじゃないか、これは何とかしなければいかぬということをやかましく言った結果が、今度のつまりこれによって大蔵省というものが相当に出すようになったが、この金額が適当であるか、少ないか多いかということについては、私としてはいまのところではまずこれでひとつしんぼうするよりほかない。経済企画庁いわく、総裁、今度は大蔵省がこれだけさいふのひもをゆるめてくれたんだから、何もこれが最後じゃないんだ、また出すよと、こういうようなことを言ったんですが、これはひとつ私だって年だからやめなければならぬ、あなた方がひとつ大いに、社会党が大いにこの問題はがんばってもらって、その決意でひとつ政府から出してもらう、こういうことに御尽力願うより方法はないんです。  ただもう一つ申し上げるが、これまで私が総裁になってから六年ですよ。この問題についてずいぶん政府の悪口も言い、国会の悪口も言ってきたんだが、なかなか大蔵省としてはさいふのひもをゆるめない。それが今度ゆるめたということは神わざじゃないかと私は思うんです。それで金額の大きい小さいは、これは私は神さんに聞いてみたら、これじゃ少ないぞというかもしれないけれども、あのみみっちい大蔵省がこれだけ出したということは私は相当のことじゃないかと思うので、まあまあ、われわれとしては親のふところも考えなければならぬ。そう一ぺんに言ったってそれは無理じゃないかということで、まずこれで納得して、それ以上のことは今後に期すと、こういうことですね。
  263. 上田哲

    ○上田哲君 御激励をいただいたんだが、まさにそのとおりですね、国民のために、国有鉄道のためにがんばろうと思うので、そこで若い者に頼むと言われるのであるならば、これは、まあ、いままでさいふのひもの固いところがこれだけ出してくれたんだから、旧に比べて十分じゃないかなどとおっしゃらずに、神さまなどと言わないで、国鉄総裁石田禮助氏は、これで一体十分であるかないかということについてはぴしっと言っといてくれないと、幾ら励まされてもわれわれの励みようがないですよ、もう一度。
  264. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 欲を言えば切りがありませんが、おやじのふところも考えてやらなければ無理だと思うのです。急に一ぺんにやれと言ったってできやせん。おやじさんだって無限の力があるわけではない。これだけやったことは相当のものだとあなたお考えになりませんか。年々いままでやらなかったのですよ、ほとんど。
  265. 上田哲

    ○上田哲君 その辺はいいです。だから、おしまいのほうの三分の一を削ってもらうと名答弁になるので、お互い時間を節約しながらいきたいと思うのですが、相手のさいふの底がどうなっているかということより、もし出せるならもっと出すのが正しいのか、出せるとしたらこの辺がいいかということ、もう一言……。
  266. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) これは今後の国鉄の収支の推移によりけりで、ぜひひとつこれから私にかわって総裁になる人が現在の情勢にかんがみて遠慮なく大蔵省にお願いしたらいいと私は思います。
  267. 上田哲

    ○上田哲君 遠慮なく要求すべきだということですから、それはわかります。  もう少しほかの側面から言いましょう。とにかく国鉄としてはさっきもお認めになったように、三兆三千何がしという金は最低だと言いたいくらいだと、そうであるならば、この三兆三千億円をどうやってつくっていくかというのはそろばんはじけばすぐ出てくることです。そういうところは計算してみればすぐわかることです。それなら国鉄総裁私はこれで最後になるからとおっしゃるけれども、できることならばきちっと全部やりたいと思うのです。そうすれば十年いらっしゃらなくても、たとえば四十四年度にもやろうというならば、十年間かかってやる分を四十八年、五十二年と三回に分けないで、四十四年に一回だってできないことはない。なぜ四十四年にずぼっとやらないで、二回、三回に分けたのですか。
  268. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 私はこれは事には順序ありで、いま一ぺんにあなたのおっしゃるように雷さんが落ちるようにやれと言っても無理ですよ、あなた。国鉄利用者に対していま一割五分のかわりに四年後にくるやつも一緒にやれと言ったってこれは無理と申すものだと思うのです。
  269. 上田哲

    ○上田哲君 まさにそのとおりですよ。そのお答えを私は待っておったのです。十年分、三回分どころか一割五分がどんなに苦しいのかということは、総裁もわざわざ電車でお通いになっていらっしゃるようですが、総裁はバスでお通いになっていらっしゃるから、一回一回払うとなれば今度は三十円以下というものはないのですよ。国鉄運賃というのはわれわれの生活の基盤になるのだから、最低区間三十円になれば、三十円以下で買えるキャンデーというのはなくなってくるというのが経済原則ですね。経済のパターンですね。そういうことを、窓から見ておって子供がキャンデーを食べているときにそれは三十円に上がっているということをお思いにならなければいけないのですよ。まさにそこまで考えていけば、これは一回分すらできないということになるから、三回はできなかったでしょう。一回だってたいへんだから二回、三回はとてもできない。それ自身、あなたがおっしゃるように無理な形がこれから十年間、ぐいぐいと進むでしょう。今回一五%というところだけでそっちへ注目させられておるけれども、実はこれは初年度であって、再建十カ年計画でなくて、これは値上げ計画の初年度なんです。総裁、値上げ計画の初年度だということについてはいかがですか。
  270. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 私は、利用者の立場から言えばあれじゃないですか、四十四年度の一割五分と、さらに四年たったら一割、さらに四年たったら一割、こういうふうに三回に分けたほうが負担が軽いのじゃないかと思う。あなたに申し上げておくが、あなたの頭の中には運賃がつまり高いと、こういうことがこびりついておるようだが、ところが日本の運賃は世界じゅうで一番安い、そうでしょう。物価の上がり方なんか見てごらんなさい。昭和十一年に比べて新聞紙が――ここに新聞記者がたくさん来ておるが五百九十四倍だ、昭和十一年に比べて五百九十四倍だ。ところが、国鉄の運賃というものは、昭和十一年に比べていままでのところでは旅客運賃は二百三十四倍だ、あるいは電話料なんというものは昭和二十九年に……。
  271. 上田哲

    ○上田哲君 勉強してますよ、それは。
  272. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) ほかの人にもあれですから、とにかく聞いてくださいよ。とにかく電話料なんというものは昭和二十九年に二百三十三倍ですよ、昭和十一年に比べて。そのときに国鉄の旅客運賃は百十六倍です、たった。そのほかに即時通話というもので七割か八割ですよ。それで今日まで電話料なんというものは年々ふえないでゆうゆうとやってきております。ところが国鉄というものは三十二年、三十六年、四十一年と、こういうように運賃値上げされても二百三十四倍なんだ。とにかくやはり天下の大勢を見て安いか高いか、それによって消費者としては負担すべきものであるかどうかというような結論を下さなければ無理だと思います。
  273. 上田哲

    ○上田哲君 天下国家をながめることはけっこうですよ。しかし、きのうのことも思い出していただかなきゃならぬ。きのうの連合審査で経済企画庁は、一体日本人の平均生計費の中に占める交通費というもののパーセンテージが高いか安いかという質問を受けて、望むべしと考えている線よりは高目になっておりますということをちゃんとあなたの前で答弁したじゃありませんか。その辺のところを何百何十倍と数字をお出しになって電電がどうだ、電話がどうだということを仰せになることは、少なくとも石田禮助総裁のプライドにおいて――比較するのは悪いというのじゃないが、あなたは国鉄運賃の生計費に占める割合というものを電電その他と比べていいとお考えですか。これは全然話が違うので、天下国家を御論じになるならば、その庶民の生活の上に立って出発しなければならぬ。あなたに御答弁いただくと意味のない数字がたくさん出るからこれはこれでやめておきますが、だからひとつここで仮の問題として天下国家を論じていただきましょう。いまとにかく幾らがんばったって、われわれ少数党だから、まあとにかく一生懸命になってことばのやいばをあなたにぶつけることになったって、まあこれは強行されるかもしれない。しかし、十年なんていう単位を考えるならば、これはわかりませんよ。こんなばかばかしい運賃値上げをされてたまるかという人々がふえたら、四十八年、五十二年には運賃値上げはできないかもしれない。これは総裁としては非常にお困りになるでしょう。そのときは国鉄はどういうことになるのですか。
  274. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 私はとにかくすべてのものが上がる中に、ひとり国鉄の運賃だけが端座しているということは、これは仕事はできやしませんよ。経費がふえればやはりそれを償うような対価にしなきゃならぬ、そこにおいて独立採算というものが維持できる、こういうことなんで、あなた物価だっていまのような調子で五年、十年までいきますか、たいへんなものですよ。あなた方の給料だってずんずん上がっていくじゃないですか。そういうことから考えるならば、やはりふえた収入からふえた汽車賃を払うのは、これは私は当然じゃないかと思います。
  275. 上田哲

    ○上田哲君 どうも話がずれるのでしょうがないが、ひとつあとに譲っていくと言われるので、この辺のところはきちっと――すぐプライス、プライス言われたのじゃ困る。  少し議論飛びますが、磯崎さんから伺いたいが、かりに、どういう場合を考えておかなきゃならぬかお伺いをしたいのだが、数字が何兆にものぼる――赤字になることも含めてけっこうだが、もう少し具体的に私がお伺いしたいのは、もし、先ほど総裁自身がお認めのように十カ年計画の出発点ということは、ことばをかえれば値上げ年度の出発、値上げ計画の出発年度になるのだから、それはどうしたって四十四年度の値上げということは、シリーズとして四十八年度、五十二年度の値上げがついていかなければ何の意味もないわけです。現にここで日にちがおくれるだけでも減収になる。こういうことを挽回するためには、国鉄のお考えとしてみれば四十四年度のあとの四十八年、五十二年とあるところの三つのシリーズがあることによって初めてこの値上げの意味が出てくる。まあ一回はともかく、二回、三回目の値上げが先ほどお話しのペースでいかない場合には、国鉄はどういう危殆に瀕するのかということを御説明いただきたい。
  276. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) これは財政再建推進会議意見書もごらん願ったと思いますが、一応の試算として、あと二回の運賃値上げをすればこうなるという数字でございます。したがって、いま先生のおっしゃったとおり、あと二回運賃値上げが全くできなかったらどうすると、これは非常に仮定の御質問でございますし、するほうも仮定ですし、しないほうも仮定でございます。しかしそれと同時に、しからばベースアップはどうするか、全体の三兆七千億の計画をどうするかという問題と総合的に考えなければならない問題であろうというふうに私は考えております。
  277. 加瀬完

    加瀬完君 せっかく上田さんが質問しているところを横合いから恐縮なんですが、総裁この間から、戦前と比べて運賃が非常に割り安だということを主張しておりますけれども、二つの点で、もっと専門的に御答弁いただかなきゃならないと思う。といいますのは、今度の一五%の値上げというのは、一キロの基本料金からすればそういうことになりますが、基本料金の割合が全部の換算の基礎にはなっておらないのですね。区間で一キロから五キロとか、あるいは六キロから何キロというふうな計算になるわけだから、ですから一五%以上になっているということをこれは確認をしてよろしいと思う。それから戦前三銭であったところはいま三十円になっていますね。戦前の、昭和十年に三銭のところが、区間によっては三十円になっているわけですよ。それは千倍です。あなたのように二百何倍とか、そういうものではないところもあるわけですよ。これは計数的なことだけで私は議論はしませんけれども、ですから、ただ基本料金だけをとって戦前の何倍という見方は成り立たないと思う。実際にわれわれが、利用者が運賃を払うときには、戦前と比べれば七百倍とか千倍になっている区間というのが出てくるわけです。それだけ。これは御答弁いただかなくてもけっこうです。簡単にお話があって、われわれがそれをやはり国鉄運賃は安いという認識を持ったとされては困りますから、それだけ申し上げておきます。どうも失礼。
  278. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 答弁いいんですね。
  279. 加瀬完

    加瀬完君 いいです。
  280. 上田哲

    ○上田哲君 さっきいないと思ったら、いま紙がきて、経済企画庁いるわけですね。答弁席に着いてください。  経済企画庁長官は、きのうの連合審査でも、この運賃の値上げが物価にどれくらい影響するかという問題については、どちらかといえば心理的効果であると、おれも上げることができるであろう、おれも上げたいというふうになるだろう、これを警戒せにゃならぬだろう、こういうことをおっしゃっている。そういう面でいいますと、いま副総裁は、総裁がおやめになるものだからずばっとお言いにならなかったかもしれないが、副総裁のたいへん慎重な話として、上げることも上げないことも仮定であるとおっしゃいました。そんなものは常識中の常識ですよ。副総裁自身後段でおっしゃったように、もしあとの二回のシリーズができなくなれば国鉄計画ができなくなる。そういうシリーズがあとに完全に続いている。そうでなければ、完全に続いてなければやめなきゃならぬ、抜本的な方式を考えなければならぬというところへきているんだ、ということは国鉄が今日まで長いこと説明されている姿ですから、まあこれはもう疑う余地がない。疑う余地がないという意味は、それ以上、上へ上げるということはあっても下げることはないという形で、そのあと二回の値上げ、そうして三兆三千億余りの収入を見込んでいかなければならないということになる。だから今回の値上げを、単に四十四年度当初における値上げという話はできない。心理的効果を問題にされるなら、実はそのあとで続々と次男、三男が飛び出してくるような妙な形じゃなくて、連れ子がいるのかいないのかという、そういうことをはっきり出しておかなければならぬと思いますが、そういう点で、企画庁長官はいないけれども、経済企画庁はきのうの連合審査との関連において、一体それからあと、当然に付属してくるべきシリーズの値上げについて、物価影響との関連において認めるべきであるか、相談を受けているか、オーケーと言ったのか、その辺を簡単に御説明いただきたい。
  281. 小川としやす

    説明員(小川としやす君) それにつきましては、菅野長官答弁されておりますけれども、公共料金のうち、国鉄だけは例外として取り上げて、それについては極力抑制していきたいということで、企画庁の方針としては一貫しております。
  282. 上田哲

    ○上田哲君 何を言っているかよくわからぬですけれども、もう一ぺん聞いても同じことを言うでしょうから、それはやめましょう。けれども、三月二十日の衆議院運輸委員会で、さっきも総裁一言、言われたけれども、やせこけた子供に大きな負担をかけて云々ということばがありました。これは総裁としてもそういう感じがなさるのでしょう。隣にいらっしゃる運輸大臣にもっと出してくれとか、大蔵省へ行ってくれという話もあるでしょう。しかし、ほんとうに、いま運賃値上げを前に、ほんとうに大きなおもしが頭からのしかかってくると思っているのは国民ですよ。こういう問題を非常に何かコストアップだ、プライスアップだと、これが経済原則だとうそぶかれる、これを年の功で見のがすことはできないが、石田流のオリジナルな経済跳躍論によってぽいぽいと飛んで、ここで何度も言われたことなんです、確認していることですが、利用者と受益者の区別、ことばの上できちんと区別しておいていただきたいと思います。
  283. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 利用者と受益者というのは、これは実に私はむずかしい問題だと思うのです。それで、いずれにいたしましても、やはり国鉄はこれからできるだけ合理化に徹してやる、そして政府にできるだけ出してもらうということになれば、結局やはりあとは乗客に、受益者に負担をしてもらうもらう以外にはない。乗客、利用するがゆえに受益者である、こういうことなんです。
  284. 上田哲

    ○上田哲君 全然議論にならないですね。利用者と受益者というものは今日もう少し、きわめて明確な区分がなされておりますよ。これはひとつ運輸大臣から明確な御定義をお願いしたい。
  285. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) これは上田さんは明確に把握しておられると思いますが、この意見書を読んでみましても、この意見書の中に使ってあるのは、利用者ということばは一つもないわけですね。全部受益者と書いてある。この頭の中には、電車に乗っておる人も、それからあなたが言っておられるいわゆる受益者、国鉄あるがゆえに利益をこうむっておる、乗るとか乗らぬとかということは別にして、益を受ける人たち、これを一緒にしてともに受益者であるというところの提案がなされておるのではないか、私はこのように受け取っておるのであります。したがって、私はお答えをいたしておりますときに、これは明確に、電車に乗る人を利用者といい、別な面の開発利益を得る人を受益者、こういうように使い分けをしてお答えをいたしておるのでございます。
  286. 上田哲

    ○上田哲君 それでけっこうですよ。だから、そういう形でやはり総裁も答えていただきませんと、議論がこれはどうしてもあなたのところに集中できなくなると思うのです。時間がありませんから、私は前に進みますけれども、その実は受益者、利用者も含んでいる受益者ということでなくて、利用者自身に――言うところの意見書の中では明確にされてない部分もあると確かに私は思いますけれども、この利用者のほうにがばがばと負担がかかっていかなければ、これから先の十年間の再建、赤字を消すだけのことでありましょうけれども、これができないということは、これは全く独立採算制というところにすべてがかかっておると思うのですよ。さっき次官が、何しろ公共性と独立採算制という二つの命題を掲げられているものだから、それで苦しんでいるのだ、こういう話であります、私は、この哲学は間違いだと思うのです。公共性こそ中心なんでありまして、公共性のために独立採算制がよければとればいいし、独立採算制が目的になることによって公共性というものが踏みにじられている分があるならば、これは全然両立すべき概念ではないと思うのです、この際。そういう意味で、独立採算制ということが非常にいまこうした、やむを得ざる利用者負担とおっしゃるでしょうけれども、これは利用者負担の増大政策とでも言うべきこの十カ年計画の展望ということを踏まえるときに、この独立採算制というものは問題になると思うのです。総裁、いま運輸大臣が答えられた程度までは明確にして、ひとつ独立採算制とは何かということを御説明いただきたい。確認をしたいのです。
  287. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 私は、独立採算制ということは要するに収支を合わせるということなんで、国鉄というものは公共企業体なるがゆえに独立採算制ということは放棄していいというわけにはいかぬ。やはりこれは公共企業体、企業体ということは要するに能率的に経営していくということなんで、そのための一つの手段としてやはりワクというものをちゃんときめなければいかぬ。こういうことが独立採算制ということであるので、しかもそれも弾力性のある独立採算制、全然、ほんとうにきちっとしたものではなくて柔軟な、いまの国鉄というのは独立採算制を全く放棄しているような形でありません。ここに私は非常に妙味があると思う。そういうことで、独立採算制といいながら、なにもきちっとしたものじゃない、その辺に余裕はあるのだということに御了解を願いたいと思います。
  288. 上田哲

    ○上田哲君 独立採算制というのは、まさに独立ということばがついている。これはフレキシビリティを認めないということは、独立採算制の概念の一つです。根本的にフレキシビリティを前提にして――隣から受験生がカンニングさせてもらったら合格できるなんていうのはこれは合格になりぬです。特に長らく経済人としてお暮らしになってこられた総裁が、ただいまおっしゃるような定義では話にならぬと思うのです。私は、厳正な意味において今日独立採算制というものが破綻をしている、国鉄財政というものは独立採算制というものを持っていないと思うが、いかがですか。
  289. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) これはさっきから申しますように、つまり国鉄は、独立採算制というものがこれは弾力性がある独立採算制ということで、いずれにしてもやはり原則としては独立採算制でいかなければこれはなかなか締まりがいかぬ。能率をあげる上からいっても独立採算制を一つの手段としてぜひやらなければいかぬのだということで、独立採算制というものに対してはいわゆる弾力的にこれを考えるということは必要だと思う。その意味で私は、通勤輸送なんというものに対しては思い切ってやってやる。これは一時の手段としてやむを得ない、こういう態度でやっているのであります。
  290. 上田哲

    ○上田哲君 私もこれは経済学の講義を云々しているつもりはありませんから、ことばの定義をしっかりしておきたいと言っているんですよ。国鉄財政の整備拡充ということは非常に重大なことなんですから、これは野党も同じですよ。そういう意味で、原則をしっかりしておかなければ、原則は大乗だと言っているが、そういう意味でお話をしているのであって、多少のフレキシビリティは原則が立ったものならばわれわれも認めるわけです。たとえば公共負担はもうちょっとどこからかめんどうを見ようということは、これはいまのお話のように、私たちも独立採算制というのが財政的に破綻をしたということはそこに求めようとは思わない。たとえば八十七億なんというのは独立採算制という概念からするならばはずれていると思うのですよ。利子補給その他ですね。これはどうですか。
  291. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 私は独立採算制というものを、ほんとうにかっちりした独立採算制ということを主張するときは、大蔵省に対して公共負担なんというものを是正してくれ、独立採算制というのはとてもとり切れぬ、こういうことになるのですが、実際に国鉄の輸送力をふやすとか、そのほかの仕事をする上において、これはもう弾力づきの独立採算制ということを言わなければならぬから、めんどうくさいからただ独立採算制と言っているだけで、これはひとつあなた方が大乗的に御解釈くださいというふうにお願いする以外にない。
  292. 上田哲

    ○上田哲君 原則を確立をしようということであるかどうかというのは、これからとにかくたいへんいろいろなお金を召し上げられながら、運賃の増額にたえながら進んでいかなければならない国民の最大関心事である国鉄再建ということのために非常に重大な問題であるのです。ですから、ことばはめんどうくさいからそういうふうに一ぺんに言っているのだということではなくて、少なくとも国会答弁の中では、独立採算制というのは何であるかということは私はきちっとしていただきたいと思うのですよ。  それじゃお伺いするけれども経済企画庁長官は、もう独立採算制は破綻をしておると言っているじゃありませんか。これは三月二十日に、これは衆議院ですけれども経済企画庁長官が言っていますね。独立採算制というものは今日ではとるべき時期ではない、またそういうことを申し入れている、途中を省きますけれども、こういうふうに言っています。これについてはいかがですか。
  293. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 私は、その独立採算制というものは破綻しておるということは、これは形容詞でもって、一時例外的に独立採算制というものははずれたと、こういうことなので、何もそれで未来永劫まで独立採算はずれたというのじゃなくて、これは偶然にやっぱりふくらんでおる。そのふくらんでおるのを縮める。いわゆる弾力性のある独立採算制という、そういう意味で、それがふくれ上がった、ある限度以上にね。そういう意味で破綻したなんということは、ちょっとこれは形容し過ぎると思うな。
  294. 上田哲

    ○上田哲君 国鉄総裁は、経済企画庁長官答弁に対して、これは形容し過ぎると言われたということは理解をいたします。ということは、独立採算は今日までまだフレキシビリティの段階にとどまっていた、そして国鉄は今後とも独立採算制に向かって進まれるということになるわけですね。
  295. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) それは、一時的には独立採算制を脱線することはありまするが、やはりできるだけ早い機会において独立採算のベースに戻さにゃならぬ、これが私の国鉄としてのとるべき方針だと思います。
  296. 上田哲

    ○上田哲君 どうもコンニャク問答でよくわかりませんので、具体的に伺いましょうか。  きのうあなたは、連合審査の中で、まあ他党の話だからこまかくは申し上げませんけれども、磯崎副総裁がちょっと違ったニュアンスで答弁されたときに、あなたが二回にわって御答弁になったのは、どんぶり勘定しかわからぬのだという話と、そもそもローカル線なんというものは赤字になるのは初めからわかっていたんだとおっしゃった。独立採算制のフレキシビリティはとにかくわきにかかえるとしても、どうしてもこれを堅持しなければならぬ、それを言われるならば、赤字がわかっておるものをやるのは独立採算制からいったらおかしいじゃないですか。
  297. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 現在国鉄が抱いている赤字線というものは政府の命によってつくった赤字なので、その時分の国鉄というものは、それはその線そのものからいえば非常に赤字であるけれども、ほかに余裕しゃくしゃくたるものがあった。全体において決してしっぽを出すことがなかった。ところが、現在においてはすっかり情勢が変わってしまって、全体において非常にしっぽを出さなければならぬ。ここにおいて赤字路線というものは整理しなければならぬと、こういう意味です。
  298. 上田哲

    ○上田哲君 いまの御答弁には非常に不満でありますけれども、きのうの連合審査におけるあの御答弁については、原田運輸大臣、いかがですか。
  299. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 私は総裁が、赤字線はわかっておったんだと言われたときに、それは少し言い過ぎじゃないかと。ということは、それぞれの一線一線はその当時の状態ではわかっておったがやったというものばかりではない、これはやはり法律によってきめられ、そうしてこれを審議会にかけてやっていこうということを議してきたのでありますから、時代の変遷というものがそこに作用しておることは相当あると私は考えております。したがって、いま赤字線であるから今後も赤字であるかどうかということについて私は相当問題点があると、こういうような見解を持っておるわけなんです。
  300. 上田哲

    ○上田哲君 けっこうだと思うんですよ。私はその辺の御答弁に食い違いが出てくるというのは、そこへ手を突っ込んでかき広げようというつもりじゃなくて、結局するところ、それは石田総裁に独立採算制ということばをあやふやに使おうとされる政策的意図があるだろうと思うんですよ。それをそんなに気にされることはないだろうと思う。これはひとつあなたが何をおっしゃるかということは、やがて歴史に残ることなんです、これは。いままで何十年かかってやってきた国鉄の、とにかく小づちをもってたたき直そうという時期のその出発点を、あなたはボタンを押していこうとおっしゃるわけです。われわれの立場としては、その方法論についての異議はともかく、たとえば赤字線についてはきょうは議論いたしませんが、意見はあるのですよ。たとえば私たちは赤字線というものを単なる独立採算制のためにやたらに取り上げちゃならぬという意見です。これはおそらく公共性ということばから言うならば、公共性があるならば、山の中でも、たとえ一人でも、国鉄がうんとあったほうがいいにきまっている、こんな議論があるわけです。バスのほうがいいかどうかという議論をしているわけではない。公共性という立場に立つならば、あらゆる交通機関があまねくあらゆるところに及んでいるほうがいい。だけれども、程度の話ですよ。そういう意味から言うならば、私は独立採算制というのが延びようとするレールの足を押えているということになるだろうと思うのです。だから、独立採算制ということがあまりに自己目的になり過ぎているのじゃないか、石田総裁の頭の中は独立採算制でないとでも言ったらえらいことになるのじゃないか。まさに、まことに古典的な財政論があるなら、御退任とともに払拭されるのが正しかろうと私は思います。だから、そういう意味でここで問題とすべきは、さっきの次官のお答えのように、公共性と独立採算制と二つの命題をしょっているということではなくて、明らかに国鉄に課せられておる国民的命題は公共性だと、その公共性のために、ある意味では独立採算制を、あなたが言われているようなある種のフレキシビリティではなくて、余裕ではなくて、思い切って打ち破っていくということもこの際必要なことではないかと思う。こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  301. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) あなたのおっしゃる独立採算というのは、独立採算なんというのは全然無視してやれと、こういう議論でありますが、どうも現在の法律においては独立採算で経営しなければならぬと、こういうのが私自身に課せられた問題であるがゆえにこれはやむを得ない、その点はひとつ御了承願わなければならぬ。それは何でもかんでも独立採算を無視してやるならきわめて簡単明瞭であるが、そこに国鉄総裁としてのいまの悩みがあるのです。ちゃんと法律というのがあるのですから、どうもやむを得ないのです。
  302. 上田哲

    ○上田哲君 それでは磯崎さん、この点はどうですか。私は公の立場で独立採算制を破棄していいという政治論はぶてないだろうと思います。しかし、そういうような方針が、国民に対してのサービスというところでは低次元過ぎるかもしれませんけれども、それはやっぱりひとつやらなければならぬと思うのです。独立採算制というまさに響きの冷たい、そういう財政論というものがあまりに重くのしかかっているために、大蔵省のさいふがどうなっているか、あるいは国鉄のさいふがどうなっているか庶民は知らないのですよ。そういう庶民の中に国鉄財政論というものがぐんぐん冷たく響き渡って、運賃が上がっていくならば、このあと続くであろう二回、三回の運賃値上げのたびごとに世論はもっときびしく反応するだろうと思う。そういう意味でもう少し違ったニュアンスでお答え願いたいと思いますが、どうですか。
  303. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ただいまの御質問でございますが、公共性と独立採算制の問題につきましては、これは非常にいろいろ議論のあるところでございまして、やはりこれはもと国鉄法の第一条に戻ると思いますが、やはり国鉄の存立目的というものはあくまで公共の福祉を増進することにある、これははっきりしておると思います。ただ、その方法論として、独立採算制でいけた時代あるいは独立採算制である程度足を出さなければやっていけない時代、それはやはり交通機関としての持っておる一つの歴史的宿命がそこに出ているのではないか、こういうふうに思いますので、私はやはり総裁と同じことを申しますが、いわゆる独立採算制にはある程度の公共目的に沿った融通性といいますが、そういうものが出てくるのではないかと思いますが、しかし、かといって企業経営の精神を失うこともこれまたいけないし、やはり親方日の丸でやればどうしてもラフになってしまうということもあると思います。その点はやはり両方から締め合いながら、たがのようにバランスをとっていくということが大事だと思います。抽象論でございますけれども、そういうように思います。
  304. 上田哲

    ○上田哲君 次官が何回かお答えになっておることばによると、きょうも言われたけれども、別に配当負担があるわけではなく、そういう税金上の恩典もあるわけだから、こんなに優遇されている企業はないし、やってやれないはずはない。特に、もしこの独立採算制を失わしめることになれば、中で一生懸命やらなくなると思うので、だからぐあいが悪いと、こうおっしゃる。これは修身の教科書のようなレベルでありまして、やはりその上に立って公共性と独立採算制の二つの柱があるので苦労しておる、こういう答弁があっては困ると思う。独立採算制というものを考えてみれば、一国鉄、一政府の中の家庭の事情でございまして、これは国民全体の問題として考えるならば、中をやりくりしても公共性を高く掲げるということが国鉄に課せられた国民課題だと思うので、そういう意味で、一つはまさにおっしゃるように法律の精神にのっとって自己目的として独立採算制を掲げて、執着されるのではなくて、少なくとも御答弁の中の、二つの柱があって困るのだ、どっちつかずなんだというような言い方ではなくて、明らかにこれは公共性を大事にするのだ、その方向でやっていくんだというのでなければ、これはやっぱり運賃値上げということに対する正当性は生まれてこないだろう、私はそういうふうに思うんです。それについてちょっと伺っておきます。
  305. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) ただいま申しましたとおり、私は、あくまでも国鉄の存立意義は国鉄法第一条にある。第一条はあくまでも国民の福利増進ということが目的であって、その方法として能率的な経営をする、こういうことがはっきり書いてあります。私はそのとおりだと思います。
  306. 上田哲

    ○上田哲君 重ねて恐縮ですが、運輸大臣からもひとつ。
  307. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 私も何度もお答えいたしておりますが、いま磯崎君が言ったことは、これはいつも言っておることなんでございまして、そのとおりだと思います。それで独立採算制ということで、ほかからそれでは金を取ってきたら独立採算制じゃないのか、原則は。私はそれはそんなにこだわらなくていいんじゃないかと思うんです。だから、それが独立採算制から公共性になったんだ、こうおっしゃれば御意見として伺いますが、いまの法律だって政府は出資したっていかぬことはないんですから、だから私はその点で独立採算制というのはやはり原則であって、それでうまくいかないときはほかの手を考えるということは、決してそれをつぶしにかかっておる議論ではない、私はそのように考えております。
  308. 上田哲

    ○上田哲君 まさに私はそこまで議論をしたがったんです。私はことばのてにをはをとらえたり、あるいは財政学上のカテゴリーをどうしようというふうな点をここでやろうと言っているんではない。それはどうでもいいんです。どうでもいいんですが、まさにおっしゃるように若干の融資がどこかからあったり、あるいは公共負担の埋め合わせぐらいは当然の社会的義務でもありますから、そういう意味ではその種のフレキシビリティは認められないとは言っていない。そういう原則が確立してフレキシビリティがあれば、これはやむを得ない政治というものだということで私も賛成していいと思う。ただ私が、いま運輸大臣が言われたことばにあえてまっこうから反論をして指摘したいのは、まさにそのことから発展して何が出てくるかということなんです。それは何かといえば、問題は独立採算制なんかどうでもいいんですよ、どっちにとっても。赤字が出ることが不可避だということが現実なんですよ。国鉄の今日の財政は、今日の国鉄の経営からすれば、どうしたってこれだけの累積赤字が出ざるを得ませんよ。というのが、まさにあなた方がお出しになっておる数字の示すところ。問題は経営いかんということで、そこで独立採算制をとろうがとるまいが、そんなことはことばの問題で遊んでいてもいい。あえてそれにもかかわらず絶対的な問題は、赤字が不可避的に出てしまうということ、この不可避的に出てしまう赤字をだれが埋めるかというところに政策的選択がある。赤字をだれが埋めるのかという政策的選択を、たとえば一挙に国が――減価償却を昔やった人が総理大臣になっている世の中だから、そういう四十年、五十年の昔に戻って一切国が国鉄のめんどうを見ようというなら、それも一つの選択ですよ。ところが今回独立採算制をこれほどおっしゃるのは、その政策的選択というものは一にかかって利用者負担であって、国鉄運賃の増額によってこの赤字を埋めようとする選択をされているから、どうしても金科玉条のように、公共性と独立採算制などと一緒に並ぶべき概念で出てくるはずがないのが当然なのに、独立採算制を目的にするのは、そこに問題があると私は思うのです。これをひとつ国鉄総裁から伺いたいと思います。
  309. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) あなたのおっしゃるところによれば、もう公共のためであるならば独立採算制ということはほったらかして、そして自由奔放にやれと、こういうことになると思います。これは私は不賛成です。それは少なくとも現在の規則において私にそういうことをやれと言ったって、これはできはしませんよ。これは私がさっきから言うように、独立採算ということでやらにゃならぬけれども、その独立採算制というものに対しては弾力性があるのだから、現在は独立採算制というものを一時たなに上げておいてそうしてやっているんだと、しかしこれはやはり時来たればやはり独立採算制に返らなけりゃならぬ。ここにおいて、つまり、まず政府に補助してもらうのだとか、あるいは利用者に負担してもらうというようなことになるので、それはもうやむを得ないんだということで、これはあなたの言うように独立採算制をほったらかしてやれということはできない。それは国鉄総裁としてはきわめて簡単明瞭でいいけれども、そんなことはできやしません。
  310. 上田哲

    ○上田哲君 それはいいです。運輸大臣からひとつ……。
  311. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) これは残念ながら私は上田さんの考え方をとらない。きのう和田さんが言って、ちょうど、自治大臣どうだと言ったら、自治大臣は好ましくないと、そんなら辞職したらどうだと。例のベバン、ウィルソンが、――たまたまめがねと入れ歯ですね、これを無料にしたと。そのときに反対して二人が党を脱した、こういう故事を引いて、あなたと経済企画庁長官やめたらどうだという質問がありましたが、私はそれを聞いていて、いみじくも、そのときに脱党したウィルソンがいまあなた内閣の総理大臣で、そうして入れ歯とめがねの金を取ろうというのですよ。それでいま与党の中で問題を呼んでおるという姿。また私も事実三年ほど前に、ちょうどウィルソンが政権をとった労働党の大会で、ウィルソンが党内に向けて、どんないい方法が君らあるかということでおさめている姿を見て、やはり政権を取ったということはいままでとだいぶ違うなということを私は実は感じたのです。きのう話を聞いておって、私はそこのところが、やっぱり独立採算制ということが基本という態度で、それは先ほどから何べんも言いますが、それは絶対のものではない、こういう考え方でいくことがいいと、私はかように思っております。
  312. 加瀬完

    加瀬完君 ちょっと、副総裁意見と違う、だいぶ食い違っておる。上田委員指摘しておるのは、独立採算制なんかどうでもいいということを言っているのじゃないんですよ。副総裁は、これはあくまで法律のとおり公共性というものが重視されて、そのワクの中で独立採算制というものは一つの柱にならなければならないというように解釈すると、こう説明しているわけですね。それは上田委員も認めているわけでしょう。そこで問題は、公共性の重視というものをあくまでも基本線としてとっていくというならば、独立採算制だけを大きな柱にする運賃の値上げというようなことは考慮の余地があるのじゃないか。その基本の考え方が皆さんはどうもはっきりしないと、その点を明らかにしていただきたいと申し上げておるわけです。
  313. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) その点は、私と国鉄総裁とは少し違うところがあると指摘されるのは、国鉄総裁は運賃という問題をつかまえて、先ほどから、前の値段と比べると、昔の値段と比べると安い、いままで安いという立場に立って、これくらいは当然であろうと、こういうことを言われますが、私はなるほど数字はそうだと、しかし定着しておる現在の状態から、これを値上げをするということはやはり確かに影響のあることはいなめない。だから、値上げをすることについては御協力を賜わりたい、まことに御迷惑と思いますけれども御協力を賜わりたい、こういうことを言っています。これはことばの上の違いであって、実際はこの人も私はそう思っておられるのだと思っております。それで、それをやはり先ほどからおやじのふところという、こういう表現を使われましたけれども、国家財政上の見地ということでそこも加瀬さんの質問でやりとりしたところです。あらゆるほかの問題まで入っていかなければその問題を尽くせないというところへ到達していかざるを得ない。だから、私はこの点ではやはり何度も申し上げるようでございますが、このたび政府は思い切った措置をした。それがまことに皆さん方からはそれは一対二対三・五あるいは四じゃないかという御指摘がありますけれども、私どもとしてはこれは相当思い切ってやった、こういうふうに考えております。ひとつ御理解を賜わりたい、こういうことでございます。
  314. 上田哲

    ○上田哲君 そういう問題の奥にやはり利用者負担ということが横たわっている。利用者負担が出てくるのは、国鉄の原価主義の思想に立つわけです。その原価主義の思想というのにやはりメスを入れて考えてみなければならぬと私は思うのです。その辺のこまかいところはまた出てくるところでもありますから大きくは言いませんが、少なくとも原価主義で言うならば、赤字の中心が貨物なんだからその貨物に原価主義のもとを求めなければならないのに、その原価主義の、つまり運賃法にいうところの原価を償うものでなければならないというものの中心が実は旅客運賃のほうにきているというとこは、すぐれて政策的なこれは問題だという点はどうしても言っておかなければならぬと思います。そのことだけは確認をしていただいて、私は、さっき運輸大臣が、たいへん申しわけないけれども、――ことばだけだろうけれどもそう言われれば、これは私は国民に向かって、この際は、原理に対して、原則に対して、言うならば政治の姿勢はそういうものだろうと思うのです。だからいいとは言いませんよ。しかし少なくとも総裁がコストアップ・イコール・プライスアップ、これは当然だということでは、これは利用者負担の原則というような変な、最近妙なところからひねり出されてきた考えの根底があり、原価主義に立ち戻って、じゃ何で旅客を上げてくるのだという議論からまた始めなければならぬと思う。そういう意味で、今回の原価主義という思想から出ておる利用者負担という原理からしても、やはりその中心が貨物でなくて旅客のほうにきているという点についての政治的な判断というのは、方向づけじゃなくて、申しわけないとおっしゃった部分についてもう一ぺんひとつ運輸大臣から話を聞きたいと思います。
  315. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) これはやはり今後の問題もからんできます。やはり利用者負担という面だけでなくて、国鉄の経営のやはりこれは根本なんです。運賃の問題でございますから、これは根本の問題であろうと私は考えます。したがって、貨物運賃について磯崎副総裁がもう正直に、いわゆる政府答弁的な言いわけでなしに、はっきりもう言ったのは、これは上げたらよそへとられちゃうと、こういうことは事実あるわけでございます。ほかのものとの競合ということを考えなければならぬ。そういう面から考えますと、それじゃ今後この国鉄というものはだめかといったら、そうではないということは明らかである。その面に立って、再建策の中にいわゆる貨物運賃というものを確保していくための投資というものをやり、そのときの時点においては当然検討されていくべき問題であろう、私はそのように考えております。
  316. 上田哲

    ○上田哲君 貨物の問題については副総裁が、上げたらとられてしまうと、こういう政策判断もあるでしょう。この辺のところは議論をされておりますから、これを突っ込むつもりはありません。そういう立場から言いますと、貨物は上げたらとられてしまうから貨物はがまんして、こっちとこっちで頼むよと、こういうことになっておるのでありますが、(「旅客だって上げたらとられてしまう。」と呼ぶ者あり)そういうこともあるでしょう。大体、誤解しないで受け取りましょう。しかし、貨物自身の中にもじゃあ取られないという問題もいろいろあるだろうと思うんですよ。現に割引きをしているわけですね。割引きというのは、――これはもう総裁けっこうですからね。割引きというのは、私有貨車運賃割引きと出荷責任つき割引きと二つあるそうですね。この点はそのとおりですか。
  317. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私有貨車割引きと申しますのは、本来ならば国鉄が貨車をつくって一般の用に供すべきものを、荷主の中で特に貨車をつくってもらう、そしてそのかわり利子と償却費、それから市町村納付金、この分だけを減免するということで、国鉄が貨車をつくった場合と同じように運賃を取ると、こういうことでございます。それからもう一つは出荷責任つき。これは結局、ある分量のものを出していただいたならばこれだけ引きます、――主としてこれは農産物が多いわけです。そういう出荷責任をつけた割引。これは実はもう戦前からやっておった一つの営業政策でございます。あとはいわゆる政策割引きこれは別でございます。
  318. 上田哲

    ○上田哲君 そうすると、その二つのカテゴリーに入るものは先ほどのお話のように上げても取られないと。逃げっこないものですね。その逃げっこないものの中にアメリカ駐留軍の物資輸送がありますね。これは二つのうちどっちに入るんですか。
  319. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) アメリカ駐留軍の物資は全然両方に入っておりません。したがって、全く日本の一般荷主の貨物と同じ運賃でございます。
  320. 上田哲

    ○上田哲君 ちょっとこまかくこれはお伺いをしたいと思うんですけれども、最近しきりにガソリンだの石油だの火薬だのが運ばれています。危険であることの問題はしばらくおきますけれども、たとえば一番使われているところで例を一つ引いてお尋ねをしたいんだが、鶴見から八王子あたりは一番ある距離ですね、パイプラインの問題もそこにあるわけでしょうが。たとえば私なら私が火薬を運ぼうということになりますと、鶴見「八王子は五十キロとします。五十キロの場合に私が運びますと、幾らで、アメリカ軍の火薬は幾らで運んでくれるのですか。
  321. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) いまちょっと数字を持っておりませんから、至急計算してお出ししたいと思います。
  322. 上田哲

    ○上田哲君 時間を省くために申し上げると、間違っていたら御訂正いただきますが、私がかりに火薬を運ぼうとすると、五十キロの鶴見から八王子までですと、一トン九百八十円です。ところがアメリカ軍の場合は七百二円であります。まあ一トンぐらい運ぶことはないですから、実はたいへんな差がここに出てくると思うのです。数字にもし間違いがあったら言ってもらおうと思いますが、私のほうの数字をもう少し申し上げておくと、たとえばこの火薬というようなものを、普通は三十トンですから、三十トンをかりに二百キロ運ぶということになると、われわれの場合は七万三千八百円ですが、アメリカ軍の場合は五万二千八百三十円、実に二万九百七十円も差が出てくるわけです。非常に議論がありますあのガソリンタンク車ですけれども、この場合もアメリカ軍が三万二千八百五十円に対してわれわれ一般人は四万一千十円と、こういうことになる。これだけたいへんな差があることについて御存じですか。
  323. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) いまのお示しの数字は基礎が若干違っているのではないかと思います。すなわち車扱いの場合、小口扱いの場合、それから私有貨車の場合――米軍も私有貨車を持っておりますから、私有貨車の場合、そうでない、いろいろありますので、米軍の貨物は三種類ABCの三つに分けている。Aは火薬類十割増し、Bが二級で一級の一割五分増し、Cが一級ということで、日本の一般貨物と全然変わっておりません。いま先生のお示しの数字は、何か扱い種別ごとに差があるのではないかというふうに思います。たとえば小口扱いですともっと高くなります。しかし米軍では小口扱いの火薬はございませんので、全部車扱いになります。車扱いと小口扱いはそのくらいの違いは当然ございます。
  324. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ちょっと上田委員に申し上げますが、大体半ごろまでにお願いしたいと思います。
  325. 上田哲

    ○上田哲君 数字をお持ちになってないんだから、違っていると言われても困るので、私のほうもちゃんと調べたつもりです。一種から三種まであって、一種は十割増し、二種一割五分増し云々というのは、私のほうの数字にもあります。数字が違うかもしれないとおっしゃるのならば、それは後ほど数字を出していただくようにお願いしますが、アメリカ軍が輸送する貨物とわれわれが輸送するものとの値段の違いがある。それもわれわれよりもアメリカ軍のほうが安いということは問題ですね。
  326. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) それは火薬の種類によって違っておるんじゃないかと思いますが、黒色火薬と黄色火薬で違いますので、その差をごらんくださらないと、一律に比較するのはちょっとおかしいと思います。
  327. 上田哲

    ○上田哲君 数字をお持ちにならずにお話しになっておるので、何とも言いようがないのですが、ひとつ早目にお出しいただきたいのですが、仮定の問題として、原則の話だけでけっこうですが、同じものをわれわれが輸送する場合とアメリカ軍が輸送する場合と、値段の開きがあって、アメリカ軍のほうが安ければ問題ですね。
  328. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 同じものならそういうことはございません。ただ、たとえば問題なのは、雑貨でございます。これは一品一品対前年度の実績によってやりますので、年度ごとに多少食い違いがございます。しかしながら火薬とか石油とかいうものにつきましては、同じでございます。
  329. 上田哲

    ○上田哲君 時間の制限を委員長から受けていますから、こまかくは言えません。電話かければすぐわかることですから、五分かそこらで……。国鉄は何せ早いことは自慢なんだから、すぐ電話かかるかと思います。その一点だけでいいです。終わるまでにそれを御連絡いただくということでないと、進みません。それを留保しながら先へ進みます。
  330. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ちょっと上田委員に申し上げますが、七時十分ごろから再開する予定でございます。そのときでよろしゅうございますか。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  331. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記を始めて。
  332. 上田哲

    ○上田哲君 雑貨の話なんかしばらく別にしましょう、こまかいことはいいですから。やはり火薬というのは、雑貨とは違いますからね、ぴんとくることだから。これはすぐお調べをいただきたい。  そこで、データないですから、原則の話になってしまうんですけれども、御確認いただいたように、火薬という物騒なものをわれわれが輸送する場合とアメリカ軍が輸送する場合で値段に開きがあって、しかもその開きがアメリカのほうが安いということじゃたいへん困るということまでは明らかになった。そこで問題は、諸事万端物価が値上がりするわけですよ。物価が値上がりして運賃も値上がりしなければならぬことになったとおっしゃるわけだし、しかし、われわれとアメリカ軍との輸送費や運賃が違うというのはしばらくおいでおいでも、これは確認してもらいますけれども、去年に比べてアメリカ軍の輸送運賃がことしのほうが安くなっているというのはどういうわけですか。
  333. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) それは全体の収入でございますか、個別の運賃でございますか。
  334. 上田哲

    ○上田哲君 個別の運賃です。何なら数字を申し上げてもいい。たとえば、米軍の場合は去年の七月までは五キロまでは一トン当たり二百八十六円でありました。七月以降は二百六十五円になりました。また五十キロまでは七百五十七円が七百二円になりました。百キロは千二百八十二円が千百八十七円になりました。二百キロは千九百一円が千七百六十一円、この場合は国民一般が輸送する場合の二千四百六十円に比べて六百九十九円も違っているんです。実に三〇%という違いがある。これは明らかに個別の数字の上でこれだけの違いが出てきていると思います。
  335. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) その点につきましては、米軍と日本との協定によりまして、協定の第五条で、この協定に基づき甲が提供を受ける役務に対する運賃・料金は、乙が一般に適用しているものと同一のものとする、こういうような規定がございます。多少端数整理その他の関係は何かあるかもしれませんが、そんな米軍のものが下がったという事実はないと思います。
  336. 上田哲

    ○上田哲君 アメリカ軍のこうしたものを運ぶ、アメリカ軍の軍事物資を運ぶ場合について協定があって、その協定は毎年一回ずつ公開をされているという事実はいかがですか。
  337. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) これはたしか毎年――去年一ぺん公開したことがあると思います。しかし、これはたしか何か字句の協定か何かで、あまり本質的なものでなかったと記憶しております。私はちょっとサインしておりませんので、正確には覚えておりません。
  338. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) 若干補足的な御説明をいたしますが、先ほど副総裁からも申し上げましたように、駐留軍の貨物については、火薬類、タンク車積みの貨物、その他と三種類に分けて賃率をきめておる。それはなぜそういうことをいたしておるかと申しますと、米軍の輸送申し込みは一つ一つ英語で書いてございますし、いろいろな制度の違いもございまして、それを一つ一つの物品について国鉄の内部の輸送規則どおりにやっておりますと、非常に事務が煩瑣でございますので、したがってこれを一括してやっておるわけでございます。そして、一括してやる場合に毎年この実績を調べまして、その実績に基づいて翌年度の平均賃率を出しておるということであります。したがって、年々多少の賃率の動きはある。これは輸送量によって変わってくるわけでございますから、したがって下がった場合もあるかもしれませんが、上がる場合もあると思います。先ほど副総裁から毎年公開すると言っておりますが、別に協定を公開するわけではございません。実績に基づいた平均賃率、三種類に分けました一つ一つの平均賃率を実績に基づいて公開いたしておる、こういう仕組みのように聞いております。
  339. 上田哲

    ○上田哲君 だからその辺はたいへん不分明なわけですね。賃率を改定、公開しているわけです。改定しているわけですね。で、私ども考えれば、英語が書いてあって読みにくいというなら手間賃がよけいかかるのですよ。まとめてやればその分だけ安くなっていいはずですから、コンテナだって字が横に書いてあるだけでも読みにくい。読みにくいということではわからない。問題は、そういう一体数字なしで議論しておるといけないと思いますから、私が持ってきたのが間違いなら訂正しなければならないわけですから、具体的な数字はこんなにあるのですよ、三種類に分けて。おっしゃるように三種類ちゃんとあるのです。三種類の中で。パーセンテージを全部はじき出してきたら違うか違わないか突き合わせばすぐわかるわけです。仮定の問題で議論してもしようがないから、さっきの資料をすぐ出していただいて、なかなか手に入らないけれども一覧表があるのだし、事実おっしゃるように、アメリカの輸送運賃のほうがわれわれの輸送運賃よりも安い、しかも去年に比べればことしさらに下がっておるならたいへんな問題だと思うのです。これは私の理解が間違いだろうと思う。私の理解が間違いなら間違いのように、すっきりした数字を出してはっきりしてもらいたいと思う。そうでないとこの議論は先に進まないように思うのですが、いかがですか。
  340. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  341. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記起こして。  午後七時三十分まで休憩いたします。    午後六時三十四分休憩      ―――――・―――――    午後七時三十九分開会
  342. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案を便宜一括して議題といたします。  国鉄側から答弁を求めます。井上常務理事
  343. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) ただいま先生の御指摘のございました駐留軍の運賃と一般の場合の運賃についての問題でございますが、特に火薬の運賃について、一般のものと比べて米軍のほうは安い運賃を取っておるという御指摘でございましたけれども、若干これは御説明を要しますので、基礎賃率は、一般の場合も米軍の場合も、いずれも同じ賃率を輸送賃率として適用いたしております。少し長くなりますけれども、たとえば鶴見――八王子間、これは四十五キロございます。その場合の火薬の運賃、これは一級品の十割増しということでございまして、一級品の賃率が四百五十六円なんです。それの十割増しでございますから、これは九百十二円と、こういうことになります。米軍の場合は同じく四百五十六円を基礎にとっておりますけれども、この四百五十六円に指数を用いて、百三十五分の百九十三という指数をかけて六百五十三円という賃率を一応使っております。なぜ百三十五分の百九十三という数字が出てくるのかと申しますと、米軍の場合には重量は大体ポンドが適用されておりまして、日本の貨物輸送の場合にはキログラムが適用されております。非常に換算その他で事務的に煩瑣なものがある。事務合理化のために一応サンプル調査で、大体米軍の火薬が一車当たりどのくらい入っておるかということを年々サンプル調査で調べております。それによりますと、大体十トン車の場合で、七・一五トン積まれておる。こういう実際の調査が出ております。要するに、七一・五%だけ一車当たり積んでおる、こういうことになっております。そこで、それは一つの指数でございますが、先ほど申しました百三十五の十割増しで二百七十という数字を申し上げましたが、この二百七十に実際に積載されておるトン数は七一・五%でございまして、〇・七一五をかけますと、百九十三という数字が出てまいります。そこで先ほど申しました百三十五分の百九十三という数字をかけますと――四百五十六円にかけまして六百五十三円というのを一応のトン当たりの賃率として適用いたしておるわけでございます。これだけを見ますと、なるほど米軍のほうが六百五十三円で、一般の場合が九百十二円ということで米軍のほうが安いというようなお感じを持たれるかもしれませんが、実はこれはトン当たりのことを申し上げておるのでありまして、一車当たりの運賃はどういう計算をしておるかといいますと、米軍の場合は標記トン数を用いております。十五トン車でありますと、十五トン分を取るということで、先ほど申しました六百五十三円に十五倍いたしました山車当たりの運賃、こういうことに相なります。六百五十三円を十五倍いたしますと、九千七百九十五円というのがこれが一車当たりの火薬の米軍の場合の運賃ということになります。ところが一般の場合は、一車当たりは、先ほど申し上げましたように、九百十二円ということで、だいぶ米軍の場合よりも高いような数字になっておりますけれども、実際に十五トン車に積んでおります場合も、民間の場合の火薬というものは調べてみますと、九トンちょっとこしたぐらい、それぐらいしか積載されておりません。で九トン何ぼの場合でも十トン分の運賃を取る、こういうたてまえになっております。九百十二円を十倍いたしました九千百二十円というのが一般の場合の一車当たりの運賃でございます。したがいまして、米軍の場合は先ほど申しましたように、一車当たり九千七百九十五円、それから一般の場合ですと、一車当たりが九千百二十円、こういうことで、むしろ米軍のほうが一車当たりにいたしますと高い、こういう結果に相なっております。ところで、先ほど先生の御指摘になりましたように、年々これが安くなっておるというお話がございましたが、これはたまたま安くなったときのお調べではなかろうかと思うのでございますが、先ほど申しましたように、一年に一回実態調査をやります。実態調査といいましてもサンプル調査でございますが、十トン車の場合で七・一五トンしか積んでないという場合は、いま申しましたとおりの数字でございますけれども、かりにこれは十トン車の場合で七トン分積んでおったという年度がございますと、その翌年度の基礎賃率は先ほど申しました百三十五分の百九十三という指数を多少下回っていますので、基礎賃率をそれに応じて若干下げてくる場合もあり得る。逆に高くなる場合もあり得る、こういうことでございます。
  344. 上田哲

    ○上田哲君 賃率表というのがあるのですか、ないのですか。
  345. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) 賃率表はございます。
  346. 上田哲

    ○上田哲君 なぜ賃率表が出ませんでしたか。資料としてなぜ提出ができませんでしたか。
  347. 井上邦之

    説明員(井上邦之君) 賃率表の資料の御要求は先ほどあったのでございましょうか。
  348. 上田哲

    ○上田哲君 ごまかしちゃいけませんよ。おすわりなさい。そういうことをおっしゃらないということだから、休憩前に、私はそんなことはそれ以上追及しないと言ったのです。何です、あなたそういうばかげたことなら、私は少しおこりますよ。いまの説明は何ですか。常識で考えても、あなた賃率表というのは、何もトラックに乗せなければ持ってこられないような大きなものじゃありませんよ。議論をするときに、賃率表を見ないでどっちが安いか高いか議論ができますか。あなた何年国鉄にいらっしゃるか知らないが、資料を提出しろと言われたら、高いか安いかというときには、賃率表を見せなければこれは資料にならないくらいは常識じゃありませんか。私が先ほど賃率表と言ったか言わないかということは、そこでやればいいでしょう。そんなことを言うまでもなく――お弁当を持っていらっしゃいと言ったら、お弁当を包むものを別にしろと言われたんですか言われなかったんですかということに類するような、そういうばかげたことをここでおっしゃるならば、私は初めからやり直しますよ。あなたはすわりなさい。ここは質問をする場であって答弁が先じゃない。無礼ですよ。私はこれは理事会の皆さんにも申し上げるけれども理事会の決定に従って私もすなおにやるつもりですよ。何ですか。これはおかしな話だけれども、前もって十分なデータの説明を受けようとおっしゃるから私は受けたじゃありませんか。全くああいう三百代言めいたばかげた数字のこね回しをして、私も賃率表の問題まで、そこまで追及しようとは思わなかったんですけれども、賃率表の御要求がありましたかなどという切り返しを言われるのならば、私は賃率表が見せられるまで議論をまた中断せざるを得ない。私は、このために社会党が引き延ばしのために時間を費やそうとは夢にも思わないが、慎重審議をしたいんですよ。このことをそういう大きな問題にしたくないから、ここでああいう発言じゃなくて、もう少しきちんとした答弁をするようにしてください。一時間待ったんですよ。私はこういうことには怒りを感ずる。委員長から御指摘をいただきたい。
  349. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 委員長から注意申し上げますが、ただいまの答弁は不穏当でございますので、もう一度誠意ある御答弁を願います。
  350. 上田哲

    ○上田哲君 答弁はいいです。
  351. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  352. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記を起こして。
  353. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私、責任者としておわび申し上げます。実はいまの時間の間、私もいろいろ算出の基礎を勉強いたしておりまして、やっと基礎が頭に入ったわけでございまして、賃率表を持参するのを忘れましてたいへん申しわけありません。また井上常務理事発言ははなはだ不穏当でありまして、私から衷心よりおわび申し上げます。
  354. 上田哲

    ○上田哲君 了解いたします。私は、そのこと自体を追及することによって時間を空費したくありませんから、責任者としての副総裁の御答弁によって井上常務なる方の先ほどの失言を含めて了解をいたします。自後ひとつこういう法案だからというのではないけれども、ことばをつくろって重要な審議に対する答弁を取りつくろうことのないように、いまのような、徳川時代のお白州の答弁じゃあるまいし、そういう御指摘がありましたかなどというようなオウム返しは御無用に願いたい。そのことをしっかり申し上げて、私は実質的な話をしたいと思います。
  355. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 十分注意いたします。
  356. 上田哲

    ○上田哲君 そこで、話を進めますけれども、私は時間も進みますから、ここで賃率表をぜひ出せとは言いません。しかし賃率表がなければ、これはあなたのおっしゃることは議論にはならないということだけはしっかり申し上げておきます。ここで私が申し上げたいことは、出せば何でもないんですから……。そこで、賃率表を持っているのは何かといえば、何でもないんです。貨車一つにすれば幾らになるかどうかということは、これは算定の基準にならないです。そうでしょう。基準になるものは必ずきまっている賃率というものなんです。これは一トン当たり幾らということが問題なんです。また、あなたがおっしゃったポンドとキログラムは違うから、計算のし方によっては向こうが高くなるとおっしゃるが、キログラムとポンドの違いぐらい中学校の理科の時間に行けばすぐわかることです。そういう換算率ができないから、ついついアメリカ軍のほうが安くなっているというようなことは、国会答弁としては正当な言い方ではないだろうと。あるいはまた、貨車に満載しているかどうかという、そういうことによって違うなんということは詭弁もきわまれりと言わざるを得ない。よろしゅうございますか。あなた自身が御存じのように、国鉄の規定に従って火薬は満載できないことになっている。御存じでしょう、それくらいのことは。火薬は満載できないことになっているのですから、満ぱいのときを計算することはできぬですよ、これは。こういうばかげたことを何か言いつくろって、一時間の時間もあったのに……。そういうことまで私は申し上げようと思っていなかったのだけれども、そういう説明をなさるのではいけない。高いときも低いときもある、あなたはたまたま低いときをごらんになったに違いないとおっしゃるなら、私は、数字がここにありますから全部あげて、これは議論しなければいけない。そういう言い方をされないように御答弁いただくということで、それは繰り返しになるからやめますが、少なくとも一キロ当たりで言うならば、百三十五分の百九十三あるいは六百五十三円云々、あるいは賃率表というスケールになったところを比べるならば、残念ながら日本の一般人が火薬輸送する場合よりもアメリカ軍が火薬輸送する場合のほうが低い。これは賃率表がなければ――あなたのほうは時間を置いたのだから、それを提出されていないのだから、低いという根拠はないはずですよ。しかし、それだけ言うのは問題じゃなかろうから、一歩譲って、低いときも多いくらいでよろしいが、そうだとするならば、もう一ぺん元の問題になりますけれども――休憩前の問題になりますけれども、同じ火薬を輸送しながら日本人が輸送するときよりもアメリカ軍が輸送する場合のほうが低い、これはさっきお認めになったように非常にぐあいが悪いんじゃないか、これが一つです。  それからもう一つは、しかも、この協定というものは毎年公開をされている。つまり賃率表が変わるのです。偶発的に起こっているタンク車の重みでどれくらい値段が一貨車当たりで変わるかどうか、そんな計算の練習みたいなものではなくて、賃率表は毎年七月に公開されている、その限りでは去年よりはことしのほうがさらに安くなっているという事実、この事実というものは、今日私が言いたいのは、利用者負担ということに重点が置かれて、いまにも国鉄運賃が上がろう、こういうときに、これが占めている財政上のウエートは一%くらいなんだ、これはたいしたことはないのだけれども、公平の原則ということを問題にしなきゃならぬじゃないか、公共性ということが中心じゃないかということをるる今日まで議論をしてきたあり方からするならば、一般庶民はウエートの大きい小さいは別として、アメリカ軍のものは日本よりも安い、しかも去年よりさらに値下げしているのに、われわれのほうが上がっていくということは、公平の原則として納得できないことになるじゃないか、こういうことを私ははっきりお認めいただければ、それはそれまでのことだったと思うのですよ。していただけないばかりに、ずるずるやるならば、またもとへ戻らなきゃならぬ。この点について、その点は相済まぬとか、その点は努力をしなきゃならぬとか、こういう御答弁をしっかりいただきたいと思うのです。
  357. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 一トン当たりに換算いたしました賃率は、確かに先ほど申しましたとおり日本のほうが高くなっております。しかし、それに対する実際の運賃収支の面におきましては、さっき申しましたとおり、かけるトン数が違ってまいりますので、現在火薬は全部車扱いでございます。一車当たりの運賃ならまた逆になるということでございます。ただ、毎年変わるじゃないか――七月と先生いまいみじくもおっしゃいました。これはたしかアメリカの会計年度の時期というふうに思っておりますが、私のほうでも、また米軍でも、いつまでも同じ換算指数はおかしいということで、これはひとつ毎年両者立ち会いの上で実績調査をして、そしていまの賃率をきめようということになっておりますので、これは毎年必ず両者立ち会いの上で、ことにアメリカ軍の火薬は、いま聞きますと荷姿が非常にさまざまだそうでございまして、日本の火薬はほとんど見ただけで重量がわかるようになっております。非常に荷姿がきちっとしております。米軍の火薬は見ただけではわかりませんので、実際に看貫にかけまして調査しているということも聞きました。それを基礎といたしましてやっておりますので、たまたまそういうことがございましたが、しかし今後十分そういう問題については、いまの先生のお考えを体しまして、いやしくもそういうことで国民に不安、疑惑の念のないようにつとめてまいりたいと思っております。
  358. 上田哲

    ○上田哲君 どうも時間がないので――私は、その答弁は不満なんです。過去のいろんな姿がある、だから値段が違うということになると、これまた資料があるわけですよ。火薬は全部同じなんですよ。八十九種類ある。全部同じなんです。これはそういう数字も出してやらなければならぬ。比べるにはスケールがあるわけですよ。胴回りで調べるとか、頭のはちの大きさで調べるとか、スケールがあるはずです。そのスケールじゃぐあいが悪いから、ほかの尺度を持ってきて――確かに賃率表じゃそうだけれども、ほかのことで考えればということでは、何だって世の中に尺度というものがなくなる。一番尺度にしなければならない賃率表で問題にするならば、明らかに、きわめて簡単なんでありまして、アメリカ軍の火薬のほうが日本の人の場合よりも安い。こういうことをやっぱり率直にお認めになって、そうして、そういうことではぐあいが悪いから、たとえば日本とアメリカとのいろんな関係もあったのだと、だからそういうことが過去の遺物として残っておるから、何とかひとつ国民の皆さんにも申しわけないが、値段を上げてもらいたいというときには、何とかしようじゃないかということになる。私は、公平の原則がそこにしっかり確認されれば議論するつもりはないけれども、くどいようだけれども、その辺がすっきりしない問題だろうと思う。いまおっしゃったことは問題にしないけれども、もうちょっと二つ三つ追及したいと思う。  大体、こういうものが出てきたのは、どこから出てきたかということですね。二十七年の四月二十八日に講和条約発効、その前、ニカ月前に行政協定が結ばれた。そして価格協定が結ばれたのが二十七年の三月三十一日。その三月三十一日からもうちょっと前に、駐留軍貨物運送手続、それから駐留軍旅客及び荷物運送取り扱い手続、こういうのが発効になっているわけですね、これは御存じですか。
  359. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 私のほうとアメリカとの運送契約については、これは存じております。いま先生のおっしゃったのは、部内規程のことをおっしゃっていますね。
  360. 上田哲

    ○上田哲君 そうです、総裁達です。
  361. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) それは二十八年ごろあったかどうか、ちょっといまはっきり私は記憶いたしておりませんが。
  362. 上田哲

    ○上田哲君 二十七年の三月三十一日に、極東軍司令部運輸局長のミラー大佐と長崎国鉄総裁の間で――立ち会い人は津田、高井両理事、兼松調査役が一緒に来ておりますが、日本国有鉄道とアメリカ合衆国との間の価格基本協定が締結された。これは十一カ条でございますが、これは御存じですね。
  363. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) それは、現在は変わっておりますけれども、その当時そういう協定があったということは聞いております。
  364. 上田哲

    ○上田哲君 これは、行政協定が講和条約において発効することを前提として結ばれているわけですね。そういうことですね。停止条件なり解除条件なりというような関連の中で、講和条約が二十七年の四月二十八日に発効することを前提として、こういうものが結ばれておるわけです。それに基づいてさっきの総裁達というものが出ておるわけです。これは完全に当時の残滓物であるわけです。もうこまかいことを言うと切りがないからやめますけれども、こういうものが今日引き継がれて、今日は安保条約第六条に基づく地位協定に基づいて締結されている協定があるはずですね。その協定の名前を言ってください。
  365. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 三つほどございますが、一つは公務鉄道輸送支払い手続のための日本国有鉄道とアメリカ合衆国との間の協定、それから二番目が、日本国有鉄道とアメリカ合衆国との間の専用線補修業務協約、三番目が、タンク車の登録に関する日本国有鉄道とアメリカ合衆国との間の協定。もう一つございます。冷凍機つき冷蔵庫の取り扱い及び保守に関する日本国有鉄道とアメリカ合衆国との間の協定、以上の四つの基本的な協定が現在駐留軍と国鉄側との間で締結されておりまして、その契約期間はいずれも原則として一カ年になっております。このほかに、実際問題として運送制度の改正、専用線の災害復旧工事が行なわれますときがございます。そういう場合には、これらの協定に対しまして補足協定をそのつど締結いたします。また、もう一つ別の問題で、車の改造等が不定期に発生する場合には、そのつど新たに別個の協定を締結いたしております。ちなみに、協定の当事者は、国有鉄道側は本社の外務部長、それから駐留軍側は在日米陸軍調達局契約官ということになっております。
  366. 上田哲

    ○上田哲君 おっしゃるとおりだと思います。公務鉄道輸送支払い手続設定のための日本国有鉄道とアメリカ合衆国との間の協定、これが一年に一ぺへん――さっき申し上げた七月に一ぺん更改されて、残念ながら日本の国民が火薬を送るときよりもアメリカの火薬を送るほうが安く――しかも一年ごとに、去年から見ると今年と――少なくとも今年のほうが安くなっている。こういうことになっているわけですね。これが根拠になるわけです。そもそもこうした協定を存立せしめている基礎になるものは、講和条約の前の行政協定に基づいているわけです。  そこで法制局、来ていますか。これは今日こういうものが生きているということに、そもそも問題があると思うのですが、これは法制局の見解としては適法であると思いますか。
  367. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) ちょっと私、そのほうの専門家でございませんのであれでございますが、いま先生が御指摘になりました行政協定とおっしゃいましたのは、旧安保条約に基づく行政協定をおさしになったのじゃなくて、おそらく占領当時に何らかの形で日本政府と占領軍との間に、あるいは国鉄と占領軍との間で取りきめが行なおれていた、その取りきめをおさしになったのじゃないかと思います。そこで、それが今日の安保条約、現行の安保条約及びそれに基づく合衆国軍隊の地位に関する協定というもののもとにおいて、そのような協定がどのような法律的効力を持つか、こういうことに問題をかえてお答えしてよろしゅうございますでしょうか。現在の安保条約及びそれに基づく地位協定というものがございます、それとの関係というふうに。
  368. 上田哲

    ○上田哲君 そうです。けっこうです。
  369. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) そういたしますと、安保条約の六条で、御承知だと思いますが、「日本国の安全に寄与し、」云々で、結局アメリカ合衆国は、その陸空軍及び海軍が日本国においていろいろな行政取りきめに従って一定の利益といいますか、そういうものを与えられるわけです。それの具体的なものとして合衆国軍隊の地位に関する協定というのがございます。それの七条に、「合衆国軍隊は、日本国政府の各省その他の機関に当該時に適用されている条件よりも不利でない条件で、日本国政府が有し、管理し、又は規制するすべての公益事業及び公共の役務を利用することができ、並びにその利用における優先権を享有するものとする」、どういう規定がございます。おそらく――私専門家じゃございませんので、はっきり申し上げにくいと思いますが、現在国鉄とアメリカの駐留軍との間の取りきめというのも、おそらくこの七条の規定との関係において評価されるべきであると。で、そういたしますと、ここでは「日本国政府の各省その他の機関に当該時に適用されている条件よりも不利でない条件で、」ということしか書いてないわけでございますが、いまの具体的な取りきめの内容を理解できませんけれども、日本が高いというのは、ここで不利でない条件でやると書いてありますから、直接どうも抵触しないように思います。しかしちょっとこれは私、いまの取りきめの内容が理解できませんので、その程度で……。
  370. 上田哲

    ○上田哲君 これはですね、アメリカ軍のさっきから問題になっています車扱い貨物賃率ですね。これは先ほど、割引をする場合にはカテゴリーが幾つかという質問をしたら、副総裁は、私有貨車運賃割引というのと出荷責任付割引の二つである、こういうことになってるわけです。これ以外の特別の契約で運賃の割引なんというものが日本の法律の中でできるものかどうかと、こういう問題が出てくるわけですね。法制局いかがですか。
  371. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) 結局このいまの行政協定の、地位協定の問題を抜きにして考えますと、国有鉄道運賃法の問題に戻ってくると思います。したがいまして、国有鉄道運賃法で御承知だと思いますが、一応基本的な賃率というものがきまっておりまして、それ以外の部分につきましては、九条に、「この法律に定めるものの外、旅客又は貨物の運送に関連する運賃及び料金並びにこの法律に定める運賃及び料金の適用に関する細目は、日本国有鉄道がこれを定める。」というのがございますから、おそらく国内法的にはこの九条を根拠にして若干の特例的な扱いをしているのではないか、こういうふうに私は考えます。
  372. 上田哲

    ○上田哲君 だから、そこで問題になるのは、それじゃあ特別な運賃は、だれがどうやって、どういう権限においてつくっていいかということになると、これは日本国有鉄道法の第五十一条ですよ。「日本国有鉄道における運賃の設定及び変更に関しては、財政法……の規定を準用する。」ということになっている。財政法三条ですね。三条では、「租税を除く外、国が国権に基いて収納する課徴金及び法律上又は事実上国の独占に属する事業における専売価格若しくは事業料金については、すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」、国会の議決に基づいて定めなければならないということになっているのですが、行政協定にも二十七条にありますね、二十七条。そういう点で一ぺんもこのことについては、今日二十何年間国会の承認を求められたことがない。これで適法ですか。
  373. 角田礼次郎

    政府委員角田礼次郎君) いま御指摘になりました日本国有鉄道法の五十一条で財政法三条と財政法第三条の特例に関する法律もあわせて準用になっているわけです。財政法三条につきましては、いま御指摘になりましたとおりでございます。「国の独占に属する事業における専売価格若しくは事業料金については、すべて法律又は国会の議決に基いて定めなければならない。」、御指摘のとおりでございますが、同時に三条の特例法という法律がございまして、その三条の特例法では、一定の条件はございますけれども、次に掲げるものを除いて財政法の三条の料金については「法律の定又は国会の議決を経なくても、これを決定し、又は改定することができる。」ということが書いてあるわけでございます。その法律の定めなり国会の議決を経なくてはならぬ料金といたしまして、国鉄関係につきましては「旅客及び貨物の運賃の基本賃率」というふうに書いてございます。したがいまして、いまそれをこの国有鉄道運賃の現在の定めと結びつけて考えますと、大体直接的には三条に基づいてきめられております。いわゆる三条の鉄道の旅客運賃、それから四条の航路の旅客運賃、さらに七条の貨物運賃の基本的な賃率、こういうものが大体直接的には国会の議決を経なければならないものというふうに考えていいのじゃないか。したがって、それ以外のものは直接には国会の議決をと申しますか、法律で少なくとも具体的な定めをしなくてもいいというふうに解釈ができると思います。
  374. 上田哲

    ○上田哲君 特例法の特例の部分にはなければならぬ、こういうことになるわけですね。  そこで、運輸大臣お尋ねをしたいと思います。  私は、二十何年間、法解釈の網をくぐれば――いまのように明文の規定をかざしては問題だけれども、まあまあ片目をつぶれば、こういうことがまかり通ったとしても、通れないことはない。これは最終的にどっちが適法なのかといえば、特に違法ではないという部類に入るでしょう。だから、そういう見解で言うならば、私は違法だから云々と言い切れないと思うけれども、しかしいまや国鉄運賃というものが、国民多数がこれだけの不安や反対の声で実はにらみつける中でも、通さなければならないところにきているとなれば、何としても、ここで重大なことは、先ほど申し上げましたように、あと十年間にこれを含めて三回という値上げを予定している背景で考えれば、国鉄国民に対して、先ほど来ことばがようやく出ましたけれども、相すまないけれども、ということを実態的に明らかにしていく必要があるだろうと思う。そういう面でいえば、全運賃収入の一%であるとしても、少なくとも国民感情にかなりナーバスな問題を提起するであろう、こうした問題。われわれの大事な公共性というものは一体どういう範囲であるかという議論もあるでありましょうけれども、われわれの平穏に生活するレールの上を火薬が走っていく、その火薬は、われわれの運賃が上がるのにアメリカの運賃が下がっていく、こういう問題をそのまま見過ごしている道理はない。そういう問題について、いま政治としての立場を一歩進めるときにきていると思うのです。特に、日米行政協定の二十七条にも「この協定の各当事者は」、つまり日本国も、アメリカも「この協定の規定中その実施のため予算上及び立法上の措置を必要とするものについて、必要なその措置を立法機関に求めることを約束する。」となっておるのでありますから、これは運輸大臣なり佐藤総理が、今日その決意を持たれれば、十分これについての納得のいく姿をつくれるだろうと思います。これについてひとつ決心なさる、こういうわけにはいきませんか。
  375. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 御趣旨を体しまして、できるだけの私は努力をいたしたいと思います。
  376. 上田哲

    ○上田哲君 じゃけっこうでした。いろいろな問題はありましたけれども、とにかくそういう御答弁がありましたが、私は言うまでもなく、基本的にこの運賃値上げには反対でありますし、別な論点を持つのでありますけれども、幾つか今日までの長い間の議論で確認すべきところもありましたし、一つの例をあげて言えば、公共性と公平の原則、この問題を少なくともアメリカに向かって、ぜひ運輸大臣からその方向に向かってこの不平等を是正していく、日本とアメリカとの――不平等そうして国民相互間の不平等というもの、あるいは貨車と旅客の不平等というもの、この原価主義の誤まった適用の部分を含めて、若干の前進が見られるだろうということを了といたします。で、いろいろ申し上げたけれども、根本的に公共性というものに立って、この国鉄再建整備ということが、もっと真剣に行なわれていかなきゃならない時期にあたって、独立採算制というようなことを、あたかも自己目的に――金縛りにみずからをしながら、実は不可避的に起こってくる赤字の大穴をだれが埋めるのかという問題の隠れみのにして、国が十分な財政的な補てんを行なうということではなしに、実に三兆三千七百六十億円というような、もう一つ国鉄をつくろうというほどの大きな金額を、利用者負担という、われわれにとって何も言うことのできない原理の中で、構築をしていこうということには、私たちは賛成ができません。少なくとももっと謙虚な立場で、一回目はともあれ、二回目、三回目と、シリーズとして予定されている旅客運賃の値上げ、そしてその上にあぐらをかくであろう国鉄の十カ年間の再建整備計画に、もっと別な観点から論点をあらためて、ひとつ御検討を迫りたいと思います。  なお、いろいろといま御議論申し上げた賃率の問題、大臣のお約束がありましたから、私も格段の注目を今後とも続けていくことにいたして、さらに質問を留保しておきたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  377. 木村美智男

    木村美智男君 実は、佐藤総理の出席要求を私、瀬谷理事を通してやっていたのですが、これはきょうはどういうことになりますか。
  378. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  379. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 速記を起こして。
  380. 木村美智男

    木村美智男君 委員長理事の間で手配をして、手配がつかないということであれば、これはもうそれもやむを得ない事情だと思う。ただ、これだけの大きな問題で、しかも締めくくりの段階だから、この前のいきさつから言うと、総理は一回だけじゃないのだということで、この前一時間半だけ出て、それで終わりになっているわけです。ですから、きょうは少なくとも総理には万障繰り合わせて、とにかくこの委員会の会場だけでなしに、国民全体がこの問題について注視しているのだから、したがって私は、私が自分の質問だということではなしに、からだをあけてやはり出てきてくれるものと、実は期待しておったのです。たいへん残念ですが、それでは総理への質問は一応しかるべき機会にして、了解をいたします。  それでは公正取引委員長さん、たいへん合併問題でいろいろとお骨折りいただいて、しかも、きょうはおそくなりまして――そういう関係でひとつ公取委員長一つ、二つぜひお聞きをしたいと思うのですが、きょう新聞を見ますと、たいへん八幡と富士の合併問題について勧告を出され、あるいは緊急停止命令の申し立てが出ているというところまで措置をとられたということで、非常に御苦労なさっていることだと思いますが、少なくともこれについて私は、きょう若干運賃問題にも関係があるので、いままでのいきさつもありましたので、委員長以下各委員の皆さん、あるいは事務局の皆さんがほんとうに独占禁止法を守り抜くという、そういう決意で今日の独禁政策について、世論的にも非常に明るい、すがすがしい気分を公正取引委員会がつくってくれたということに心から私は敬意を表したいと思うんです。まだ問題は続くだろうと思いますが、ひとつ最後まで今日の姿勢を貫いていただくように、これを委員長に特にお願いしておきたい。  そこで問題は、きょう独禁法十五条違反として勧告をされました中に、いわゆる鉄道用レールの問題が実はあるわけです。で、新聞はある程度私も読んでおりますので、新聞の報ずるところは大体理解できるんですが、その中でこのレールとブリキについては両社が提出をしている問題点解消のための対応策というものは相当評価されているという新聞記事があるわけです。この点は、実際にその扱いに当たられた委員長として、まあこういう点なんだということが御説明願えれば――あるいはこういう点を評価したんだということが言っていただければ、それをひとつ聞かしていただきたい。
  381. 山田精一

    政府委員(山田精一君) ただいまのお尋ねでございますが、私どもは独占禁止法をたびたび申し上げましたごとく、どこまでも厳正に公正に適用をいたしていきたいと、こういう決意でおります。  それから、鉄道用レールにつきましてお尋ねでございましたが、御承知のように昨日付で相手方に――当事者側に勧告書を手渡しましたわけでございます。相手方におきましては、この五月の二十日までにこの勧告を受諾するか否かの回答をしなければならない段階にございます。したがいましてその期間中におきまして、私が勧告書に書いております以外のことを、とやかくお答え申し上げますことは、先方の判断を惑わすことになるかと存じますので、勧告書に書いてあります程度でもって御了解をいただきたいと、かように存ずる次第でございます。
  382. 木村美智男

    木村美智男君 大体、委員長の言わんとすることはわかりますが、二十日までの回答の問題として、せっかくの機会ですから、じゃこれからの問題の扱いについて幾通りかやっぱりあると思うんですね。それを、まあこれは独禁法を読めばわかるんですけれども委員長は専門の立場でちょっとどんな方法がこれから考えられるか、どんなケースがですね。たとえば勧告を受けるとか、あるいは勧告に従わぬとか、いろいろあると思いますから、この点だけひとつ聞かしていただきたい。
  383. 山田精一

    政府委員(山田精一君) ごく一般的なことを申し上げたいと存じますが、勧告を相手方が受諾をいたしまするならば、それは同時に勧告審決、審判の手続を経ないで審決の効力を生ずるわけでございます。それから勧告を受諾いたしません場合におきましては、これは当然審判開始決定と相なる、かようなことになるわけでございます。
  384. 木村美智男

    木村美智男君 もしこの勧告を拒否した。その場合は審判に持ち込まれるということなんですが、審判については、これは法的拘束力はどういうことになっているのか。したがってその場合に、まあ相手方としては何か手段があるのか、従わないでやる手段があるのかということなんであります。
  385. 山田精一

    政府委員(山田精一君) ちょっとお尋ね意味がよくわかりませんのでございましたが、審判が開始されて、審判になっておりますときにおいて相手方が何か合併をする道があるかと、こういうお尋ねでございますか。
  386. 木村美智男

    木村美智男君 それでもいいです。
  387. 山田精一

    政府委員(山田精一君) これは、緊急停止命令がなければ、それは一応でき得るかと存じます。同時に私どもといたしましては、昨日付をもちまして東京高等裁判所に対して緊急停止命令の命令方を申し立ていたしております。これは申し立てがございますれば、当然合併というものは停止されているということになると思います、審決が終了いたしますまで停止されることになると思います。
  388. 木村美智男

    木村美智男君 事情はよくわかりました。実はなかなかこの問題については――きょうは要するに公正取引委員会が、鉄道レールの問題は、新会社が合併した場合にこれは十五条の違反になるという勧告をしたということを――新聞は当然なんですけれども委員長から実はお聞きをする機会に、今日までたいへん物価その他の問題を通して、委員長にはいろいろきついことも申し上げましたが、私自身は、個人的な立場じゃなくて、国民的な立場から考えても、これはまあ一つのこれからの産業政策の問題、独禁政策の問題としてきわめて重要な展望を開いた、あるいは開きつつある、それだけに困難もたくさんある、こういう意味でぜひきょうまでの御苦労をねぎらうと同時に、ひとつ御検討いただきたい。それできょうは委員長は、もうほかに質問者がなければお帰りになってけっこうです。  それでまあ、いまの公正取引委員長のお答えに関連をして、実は、これはこの前、副総裁にレールの問題で技術的な関係のことは伺ったわけですが、やはり一つの、たいして重要なきょうの質問点ではございませんが、大体新会社ができるという段階では、レールについてだけは一〇〇%これはもう新会社が製造すると、こういうような状態になって、しかも公正取引委員会がだから独占禁止法違反だと、こういうふうな判断を今日下しておるわけですね。で、今日は下しておるのですが、その以前、きわめて重要な時期にまあ国鉄の有力な幹部が、実は国鉄はレールの問題は鉄鋼会社が合併しようが何しようが、全く影響はないのだと、こういうふうに言明したことについては、副総裁から技術的な問題についてのこの御説明は了解をしたのですけれども、あれはやはりあの時点ではあまり適当な、適切な時期ではなかったと、あのもの言いは――ということを私は感じておるのですが、つまり客観情勢が運賃値上げということをやる、そういうときにレールが独占になっても国鉄は影響がないのだというようなことは、単純に考えれば、それはやはりまだ国鉄には余裕があるのじゃないかといったような印象を与えたり、あるいは独禁法問題できわどい状態のところにあるのに、これを国鉄が援護するような印象を与えたあの言明というのは、うまくないじゃないかということで、その点について、これはもう過ぎ去ったことだから、まあ、いいようなものですけれども、一応やっぱり、そういうことが実は非常に運賃値上げといったようなものを成功さしていく、国鉄当局の立場としては、そういう場合には相当慎重にやはり外に向けて、単にレールの技術的なことだけじゃなくて――製造面の技術的なことだけじゃなしに、対外的な世論、国民の見ている目、そういうようなことをよくひとつ考えて、これはやはりやってもらわなければならぬ問題じゃないのかというふうに実は思っておったものです。この点はひとつ最高幹部としても、これからそういうもの言いについては十分慎重にしてもらいたい、こういう意味で、これは答弁を要しませんが、具体的な名前もあげませんけれども、そのことをひとつ申し上げておきます。  ただ、この前、資料をいただいたのですけれども国鉄の資材購入について非常に随意契約が多いわけです。で、この問題はどうも――私は決して不正があるとか、あるいはやましいものがあるとかいう意味で申し上げているのではございません。しかし相当、事が一般大衆、運賃値上げという関係で出てくるとするならば、もう少し――この随意契約が中身としては圧倒的に多いということについて、これはひとつ第三者にあるべき姿をはかるとか、あるいは外部機関から何というか、一応の監査を受けるとかといったようなことを、この際やはりやるような制度にしておくことが必要なんじゃないかというふうに思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  389. 磯崎叡

    説明員(磯崎叡君) 初めのほうの問題の答弁、よろしゅうございますか。――ただ、私、釈明だけいたさせていただきますけれども総裁なり私が正式な場でその問題について発言いたしましたのは、衆議院の予算委員会、それから商工委員会並びに当委員会でございまして、その際にはいずれも、今日もそう思っておりますけれども、私どもは、いやしくもレールというものは国鉄の仕事の中枢である。したがって、このレールについては、私のほうは絶対的な技術的な信頼がなければ買わないということだけは、当初から絶対意思を変えておりませんし、また態度も変えておりませんので、その点が何か間違って伝えられていたとすれば、非常に私ども心外でございますが、現時点におきましては、事レールにつきましては新会社の問題がいろいろ新聞に出ておりましたが、私どもは、あくまでも技術的な信頼が得られない限り買わないし、また技術的な信頼が得られれば、買えるところからは買うという態度には変わりはないということだけを弁明させていただきます。  それで契約の問題ですが、いずれ詳しく担当常務から申し上げますけれども、一応御承知のとおり、国鉄の契約は国鉄法四十九条並びにこれに基づきます施行令の二十五条でもって相当詳しく公開競争入札、あるいは指名競争入札、随意契約等がきめられております。随意契約と申しますのは、いま先生おっしゃったように、多少ことばの意味が何とも通俗的に、かってに相対に契約して買うというようにとられておりますけれども、これは法律用語でございまして、私どもといたしましては、見積もり合わせ競争契約といっておりますので、決して相手をきめて、相手の一つのものから買うということではございませんので、それだけちょっと申し上げまして、あともう少し詳しく担当の常務から申し上げます。
  390. 木村美智男

    木村美智男君 詳しく聞くつもりはないのですよ。そうではなしに、副総裁がいま言われたように、技術的な信頼がなければ買わないというのは、これは国鉄側から見た当然のことなんです。レールが悪いために事故でも起こされたらこれは困るので、それはそれでいいのです。しかし、問題はそうではなしに、レールは新しい会社ができた場合には一〇〇%新会社でしかつくらぬ、ほかではもう一切つくらないという状態があるわけです。そういう意味では、これはいまある程度二社に入れて、こっちで注文を出して、注文どおりにレールをつくらせている、こういう関係はわかっているわけです。ところが、一たび新しい会社ができて、ここが独占的にレールをつくるのだということになった場合には、必ずしも価格その他の問題では、注文をつければつけるなりに価格というものは、やっぱりそれなりに独占性を持ってくるだろうということがあります。それは普通常識的には予想されるわけですから、したがって、そういう場合にはあまり合併されようが、されまいが国鉄には影響はないのだというようなもの言いということは、それは客観的にはあまり芳しいことではないじゃないかという意味で申し上げたわけで、その点はそうこだわってはいませんけれども、一応重要な微妙な時点の中で、国鉄も通産省や経済企画庁と同じように歩調をそろえて、何かものを言っているようにとられたという点は、これは決して何というか、ほめられたことでもなさそうなんです。やっぱりああいう問題については、それは慎重にしたほうがいいだろう、こういうふうに申し上げたわけです。ただ、いま言ったように一カ所しかないわけです。だからしたがって、ここにも会計規程もあるわけですし、この中でこまかに規定してあることは知っていますから、そして先ほど申し上げたように不正とか、あるいはやましい点があるとかというようなことはない、それは私のほうも承知をしておるわけです。ただ、この随意契約というものが法律的な用語として一般的に使われておるということ、それは単に相対で何かやっておるというような簡単なものではないと思いますけれども、しかし会計規則の根本の精神は公開競争入札ということが原則になっておることは間違いないし、そうすればできるだけそっちに沿ってやっていかないと、だいぶこまかく規定はしておるようでも、これはいろいろ言いのがれのために規定をつくっているみたいにもとれるから、したがって普通の会社の場合ならあまり問題にならないことですけれども、特に運賃値上げといったような関係の問題があるだけに、原則的に筋を通していくようにしていくことが、今後の問題として大事じゃないかということで申し上げたのです。中身に入って詳しく、どの条項でどうなっておるということについては、これについては、これは十分了解をしておりますから、大筋の問題としてひとつそういう点で御理解を願っておきたいと思います。  ここで質問を、ちょっと企画庁のほうに回していただいて、企画庁長官がせっかくおいでになっておるので――これはまあ、国鉄の運賃は何といっても物価の問題に実は関係をしてくるわけです。昭和三十八年からとにかく五年間続けて年率五・七%。去年は若干下がったけれども、ことしはまた五%という問題――これがまた国鉄運賃その他という関係があって、ちょっと自信が持てないと、こういったところに実はきているわけなんですがね。長官として今回国鉄運賃の値上げを認めて、なおかつ五%ということで、やっぱりこの点は天下の公約だから、一応それ以内にとどめてやっていけるという自信があるかどうか。その点はひとつはっきりしておいてくれませんか。
  391. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) この点については、もうたびたび申し上げておるのでありますが、四十四年度においての消費者物価は五%以内にとどめるということで全力を注いでやるつもりでおります。
  392. 木村美智男

    木村美智男君 やるつもりでいるということは、それはまあいいですよ。だから大いに努力もしてもらいたいと思いますけれども、じゃ、長官にお伺いしますけれども、今日の物価値上げの原因となっているものは、これは――どうも私、本会議質問したら、あなたに大ざっぱな答えをされて実際は核心をつかめなかったもんだから、一体いまの物価上昇の原因は何と何に主たる原因があるのかということを、これを一つ長官から聞かせてもらいたい。
  393. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 物価というものは、御承知のとおり、これは政府の経済政策というものが非常に影響します。これは金融財政その他いろいろの経済政策によって物価に影響を及ぼしますが、一つはやはり国民の経済活動によって物価というものに影響します。ものをたくさん買うたり、あるいは生産が間に合わなかったりして、そういうことで物価に影響しますので、まあ政府の経済政策と国民の経済活動の結果として物価というものがあらわれてきておると、こう思うのであります。そこで、最近まで消費者物価が高いということについては、これは政府自身の経済政策も原因しております。で、たとえば公共料金を上げたというようなこともそれは原因でありまして、昨年の消費者米価を値上げしたとか、あるいはその他の公共料金を値上げしたとかいうことが、やはり一つの原因であります。それから国民一般の問題といたしましては、これは需要と供給の関係という問題でありまして、生産が旺盛であったかどうか、それからまた、需要側においても、国民の個人消費がふえたために、したがって総需要がふえたとか、あるいは政府財政支出がふえたために需要がふえたとかいうような問題もあるのでありまして、そういう点がひそんでおりますし、それから一つは、日本の経済機構が二重構造ということ、これは生産性の高い産業と生産性の低い産業があるということ。そこで、生産性の高い産業ではこれは多くの労働者を集めることができまするし、したがいまして、またそれだけの高い労賃を払うこともできます。生産性の低い産業におきましては、したがって労務者がその生産性の高い大企業のほうに行きますからして、したがって労務者が集まらない。やむを得ず高い賃金を出さなければならぬというようなことで、たとえば最も労力を要するサービス事業などでは、おのずから高い賃金を出さなければならぬというようなことで高くなっておるということでありますので、そこで、この構造上の問題については、この生産性の低い産業の生産性を高めるということについては、これは四十四年度におきましても各部門において相当の予算を計上いたしまして、生産性を高めることについて努力をいたしておるのであります。しかしこれは、ことしやったから、すぐことしその結果があらわれてくるものではありません。で、これには数年かかる問題もございます。しかし、さしあたり、いま私のほうでは、まずこの効果をあらわすべきものとしては、元来、今日の物価が政府の主導型であるという考え方を国民一般が持っておるということです。それはすなわち、公共料金を政府が上げておるということです。それだから物価が上がるのだというこの国民一般の考え方。そこで、政府の主導型の物価であるという、この考え方を、ムードをまず消すということが必要である。それには、公共料金を抑制するということであります。そこで政府は、このたびは思い切って、公共料金の抑制ということを決定いたしたのでありまして、国鉄の料金の値上げ以外は大体公共料金は極力押えるという方針でやってまいりましたので、たびたび申し上げておりますとおり、たとえば麦の値段を上げよというような話も出ましたが、それもストップしましたし、塩の値段も上げよという話も出ましたが、それもストップしましたし、最も大きな影響を物価に及ぼすのは米価であります。したがって、生産者米価と消費者米価は抑制し、いままでどおりの値段でいくということで――これは決定はいたしません。これは米審できめることでありますからして――従来、昨年どおりの生産者米価、消費者米価でいくという方針をきめて、公共料金は上げないという方針できておりますし、それ以外に、たとえば電信・電話の問題も値上げの問題を言ってきましたけれども、これもまず上げないというようなことで、公共料金は鉄道料金以外の公共料金を極力押えるという方針で今日まできておるのでありまして、これによって私は、政府が物価を上げるという、いわゆる政府主導型というムードは多少消していけるんじゃないかということを考えておるのでありまして、そうすれば一般物価の騰貴の傾向を弱めることができるのではないかということで、そういう方面で極力やっております。それ以外に、もし物が不足して値段が高いという場合には、たとえば海外から安い品物を輸入するということも極力奨励しようということを考えておりますし、それから生産性の高い品物であれば、その生産性の高いことによって得たところの利益は、これはできるだけ販売価格を安くしてもらうということによって、物価の安定をさせるというような方針をとっていくというようなことで、あれやこれやと、いろいろこう考えて、四十四年度はぜひとも五%以内に押えたいという考えでやっておる次第であります。
  394. 木村美智男

    木村美智男君 あれやこれや答えてくれたわけだけれども、しかし長官は今日公共料金について国鉄を除いてはと、こう言ったけれども、それが国鉄運賃について集中的に国民の目がそこへ行って、そうして国鉄運賃がやり玉に上がっているわけですよ、逆にね。そういう場合にはやはり経済企画庁長官としては、できるだけ他の物価を押えていくという政策というものを、一面で強力に推進していかないと、これはやはりあなたは政府主導型の物価値上げというムードを消すことが、ある程度できるなんということを言っているけれども、とんでもない話。これはやはり生産者米価、消費者米価を押えると予算委員会では総理も答えられたけれども、最近は自由米制度というのがあるでしょう。この自由米制度は、やはり消費者米価は押えると言ったって、事実上自由米によって、これは二割高にもなって、上がっていってるじゃありませんか、実際に。だから国鉄運賃とお米がやり玉に上がっている関係で、国民のこの政府主導型というイメージというものはやはり消えてないんですよ。だからそういう点で、もう少し経済企画庁ではもっと物価安定対策というものを、もう少し具体的に力を入れてもらうということを考えられぬだろうか。  第一番に、構造的な要因というやつ、これがひとつ問題なんです。どうも政府答弁を聞いていると、言いわけのために構造的要因ということを言っているように感じられてならない。これは、たとえば生産性のおくれている中小企業あるいは農業、サービス業――じゃ、こういったところに一体どれだけの予算をつぎ込んでいるか。ほんとうにこれが物価値上げの要因になっているというならば、その指摘は私はある程度正しいと思うんですよ。いまの二重構造が近代化のおくれた部門の賃金を押し上げるという形が、商品の価格にはね返ってきている。これは人間も大企業ならどんどん採れるけれども、中小はとれないという、こういう面からは指摘としては正しい。ところが正しく指摘をしながら、これに対する対策が十分にやられてない。私が言わんとするのは、たとえば構造的な要因が物価値上げの原因になっているというのならば、道路予算に六千億つぎ込んでいる、こういったような考え方で思い切って、これはやっぱり中小企業の近代化なりサービス業についてのやはり近代化をはかっていくというようなことについて、物価対策としてそれはやっぱりそれこそまとまった金をぽかんとつぎ込むという、こういう政策がやられてない。ここに一つの致命的な問題点のあることは知っておるといって、この前から物価安定推進会議で全部問題点が出されているわけです。出されているが、これについてちょっぴりしかやってない。そうして何というか、いまも言われましたが、この効果はなかなか直ちにはあらわれないのだ、そのうちには大臣がまたかわっちゃって、同じことを言う。これは三年来聞かされていることなんです。だから、ほんとうに五%以内にとどめる、あるいは社会経済発展計画の中で四十四年度を三%のところに持っていくのだという、ほんとうに目標をきめたら、その目標に向けてやっぱり物価対策予算というもの、この対策費というものをちゃんととって、そうしてそこで相当の額をつぎ込んでいくという、そのやり方をやらないから、だから押えられたところは別にして、国鉄の運賃だとかいうようなものがピックアップされて、ますます世論の指弾を受ける、そういう状態になる。これは実際問題として、だからといって私、国鉄運賃値上げに賛成という立場をとっているわけじゃないけれども、片方で上げるときには片方で押える、そういう政策をもう少し政府はやるるべきじゃないのか。大企業製品についてだって野放しじゃないですか。これについて一回でも最近、管理価格の問題について相当強力な手を打つということをやられたか。やられていないでしょう。中小企業や農業のほうで多少上がっても、大量生産方式で最近やっているんだから生産コストは下がっているわけだから、当然価格というものはある程度下がっていいはずです。これはプラス・マイナスすれば安定するじゃありませんか。そういう政策をやらないでいるから、どうしても全体的に上昇ムードになってしまう。ここのところが問題なんじゃないですか。だから需要と供給の関係でそれは上がってきておる、たとえば野菜、生鮮食料品、肉類なんかもそうです。輸入政策もちょっぴり考えておるようだけれども、この問題だってそうですよ。それじゃ、ことしの農林予算をひもといてみなさいよ。豚肉の生産なり牛肉の生産なり、たとえば牛肉の増産にどれだけの予算をつぎ込んでいるか、大体十一億八千万くらいしかついていないですよ。国民一億の人間の生活安定をはかるのに、十一億や十五億の金でどうなりますか。それで物価安定対策をやったなんということは言えない。私は、そういう意味経済企画庁長官は歴代なかなかいいセンスだけは持っているけれども、ちっとも実行していないから、きょうはそういう意味ではかんべんできないんだ。少しそこら辺、土性骨のあるところで、ことしはこいつだけは、おれがやるというやつを一つ示してみてくださいよ。
  395. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 先ほど具体的な理由を申し上げたんですが、第一線の仕事は各省がすることであって、経済企画庁ではこういうようなことをやってください、こういうことをやったらいいんじゃないかという案を立てて、そうして閣議なりあるいは経済閣僚会議で決定いたしまして、そうして実行は各省がすることであります。でありますからして、たとえば先ほど申し上げました農林省から麦の値段を上げたいという希望を言ってきましたけれども、それはいかぬということで――農林省の言い分は麦の値段を上げて、パンの値段を上げさえすれば、米を多く食べるだろうというような理由で言ってまいりましたから、パンを食べる習慣のついている国民には、にわかに米を食えと言ったところでだめだと。やはりパンを押えようと思えば、麦のほうも押えるというようにしなければならぬと、こういうことで私のほうは押えたのであります。それから塩の問題も、大蔵省から塩は生産コストが高くついておるからして赤字だ、だから塩を上げたいと、こういうことを言ってまいりましたが、しかし日本は昔から米塩といって米と塩とありさえすれば食える国民だと、だからして米を押えておいて塩を上げるということは、それは筋が通らぬじゃないかということで塩の値上げも押えたのであります。そういうようにわれわれのほうでは具体的にいろいろやっておるのであります。電信電話の問題でもそうです。そういうことでやっておるのでありまして、米の問題でも据え置くという方針をきめたのでありまして、これをきめるについては紆余曲折があったのでありますが、生産者米価あるいは消費者米価は据え置くという方針を決定して、総理大臣もしばしば国会においても答弁しておるとおりであります。そういうことでいろいろ具体的な方法はこっちが指示します。それでたとえば外国肉を安く輸入するということも、これもたとえば牛肉の問題でも、高ければ外国の肉を仕入れたらどうかということで、これは現にきょうも私は農林省のほうから聞いたのでございます。やはり輸入したおかげで一般の肉が安くなったという報告を農林省から聞いたのであります。そういうように、やはり高くなれば海外から輸入しなさいということを私のほうでおすすめして、そうしてまた農林省が実際にそれをやるということになっておるのでありまして、経済企画庁は第一線の仕事をするというところではありませんから、そういう点はひとつ誤解のないようにしていただきたいと思うのであります。
  396. 木村美智男

    木村美智男君 誤解も何もしちゃおらぬけれども、その第一線の仕事はほかがやるので、経済企画庁は何か指示だけするところだなんという、大体その姿勢が今日の物価を上げているのですよ。で、いま肉の問題を言ったけれども、それは農林省の言い分をただ、うのみにして聞いているだけで、それが証拠に、この間のLT貿易の覚え書き交渉で船上加工の方式で持ってくるんだというやつね、あれはだめになったでしょう。あれ、とたんに向こうから肉が入ってこないとなったときに、町の店に飾られた肉は、豚肉がこま切れで九十円にはね上がったのですよ。そういう実態をあなた、つかまなければだめですよ。ただ、農林省から報告だけ受けて、したがって、輸入したから下がったなんという話をしておったって――下がっておったのは去年の七月ですよ。去年の七月はだらんと暴落をして全国の冷蔵庫という冷蔵庫は、畜産事業団の冷蔵庫全部一ぱい買い込んで、それでも豚が余ってどうにもならぬ。キロ当たり三百二十円の値を割ってしまった。ところが、ことし三月末に全部はき出しちゃって、いまや百姓は――百姓というか、最近は酪農のほうでは先を見て、政府の言う逆を行ったらもうかるということだから、一生懸命つくれというときには遠慮する。それからもう買い控えろというときには一生懸命増産する、こういうことが長い間の経験でわかってきているのですね。だからそれは食肉なんかの場合は、これは輸入政策といっても、いまの輸入政策は、少なくとも日本の総需要量が食肉では百四十万トンくらいですよ、年間。ところが八十万トンくらいなんですね、だから約四十ないし六十万トンくらいことしは輸入しなければならぬでしょう。しかしそうはできない。アメリカとオーストラリア、ニュージーランドだけでは間に合わない。したがって中国にも何とか、自民党としてもいろいろ意見があったようだけれども、長谷川農林大臣は船上加工方式という一歩前進の形を打ち出したりして、そうしてやったけれども、しかし根本的にあすこには口蹄疫なんということを盛んに言っているものだから、結局中国不信じゃないかということで、あの交渉はパンクしちゃった。大臣、それはよく知っているじゃないですか。だから、そういう点から考えていくと、やはり物価の関係について、今日、それは国鉄の運賃というものが特にアピールされ、浮き彫りになってくるというのは、これはやはり政府の全体の物価対策がよくないからなんですよ。運賃値上げそのものについても基本的に問題はあるが、しかし、それでもなおかつ国民のやはり物価値上げムードというものを冷やすということのためには、もう少し、たとえばガスであるとか、電気料金であるとか、こういうふうなものを場合によっては、十年先までは据え置くなんて言わないで、ここで下げられるだけ下げてみりゃいいんですよ。一つでもそうすれば、値上げムードの頭を冷やすことになるのですよ。ところが、そういう手は一つも打たれない。それで、いま言ったような、問題点の指摘政府はまさに正確に指摘をするが、そのことについて銭を出して具体的な対策をやるということになったら、全くそれはやらない。ここに問題があるわけなんです。その点をあなたに――これはもう菅野長官には本会議質問では大ざっぱな答えで逃げられたから、きょうはどうしてもきちっとしてもらわなきゃいかぬ。そういうことをやってもらえれば、それは何とかなるんですよ。しかし五%をこえていけば――銀行預金の利子が五分五厘ですよ。それが過去五年間五・七%というのは銀行預金の利子を上回ることですよ。ということは、銀行に定期預金を預けてもなおかつ、ばかだということになるんですから、金の値打ちの問題からいけば。そうしたら大臣は逆に、それはたんすの中へしまっておくことより政府が安心できるから、政府に預けておくんだというようなことで、これは大蔵大臣は、予算委員会で少しごまかされましたがね、そういう甘いことではいかぬと思う。これはもう物価が五%以上上がったら、物価担当大臣はそれはもう首ですよ、やっぱりね。別にやめろと言っているんじゃないんですよ。だけれども、五%以上物価が上がるような状態であれば、これは何といったって政治をやっているとは言えない。そこら辺少し菅野長官、あなた非常にまじめなわりには受けとめ方がやわらか過ぎるから、少し決意のほどをひとつ聞かしてもらいたい。
  397. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) 先ほどから私がだいぶ申し上げておるのでありますが、それで御納得もいかぬようでありますが、五%は、私が見れば最上限の物価指数です。これ以上上げちゃならぬという私は固い考えをしておるのでありまして、どうしても五%以内で押えなきゃならぬということで、先ほども申し上げましたとおり、いろいろ手を打ちたいと、現に打っておりますし、また今後も打ちたいと、こう考えておるのでありまして、お話のとおり、五%以上になるということは、決して日本の経済にとっては利益になりません。その点を私は非常に心配しているので、どうしても五%以内にしたい。ところが実勢から申しますと、五%以上になる可能性は強いです。そこで、どうしても五%以内までにするのにはどうしたらいいかということについて、いまいろいろと苦慮もいたしておるのでありますが、まだ四十四年度始まって間もない月でありますからして、今後の物価の推移によってはまた打つべき手も考えなきゃならぬ、こう考えておるのであります。  なお、この機会に申し添えておきますが、諸外国におきましても、この物価の騰貴の問題にみな悩んでおりまして、それぞれ手を打っております。それで先ほどもお話がありましたが、私のほうでもこの物価の問題は経済企画庁だけがただ考えて、ああせい、こうせいと言っただけでは役に立たないので、各省にともにやってもらいたいということで、各省大臣には特にいつもお願いしておるのであります。去る三月二十日にも閣議決定いたしまして、こういうような方針で物価の安定をやるからということで、各大臣の了解を得ておるのでありまして、これはもう政府一体になってやらなきゃならぬ。国鉄ひとりがやったって、それは物価というものは押えられるものじゃありません。その点において幸い各大臣ともにいろいろ心配していただいておるのであります。でありますからして、私はこのように内閣が一致してやれば、物価というものは五%以内に押えられるという大体見通しをいたしておるのでありますからして、今後のひとつ実績を見てもらいたいと思う次第でございます。
  398. 木村美智男

    木村美智男君 それは大臣ね、これは私の意見ですけれども、あなたどこまで取り入れてくれるか、できるだけひとつこれはやってもらいたいと思うのです。まず、いま大企業製品について価格が野放しになっているのですよ。管理価格に対して具体的にメスを入れて、ほんとうに調査機関を持ってやるという姿勢をまずひとつとってみたらどうですか。これは、あとで考え方を聞きたいですがね。  それから、独禁法の二十四条の二に再販制度というやつがあるでしょう。これは、もうあらかじめメーカーが小売り価格を指定をして、品物をこれで売らなかったら荷どめをするという制度がいまあるのですよね、現に。この中には少なくとも五千円ぐらいするクリームだとか、八千円もする香水だとか、そんなものが日常使われる物だということで入っておるわけです、これにね。これはまあ公取の委員長、疲れているようだったから、これは公取の委員長には言わなかったけれども、こういう再販制度というものについても、これもひとつ洗ってみたらどうだろう。これは物価安定対策ですよ、具体的な。  それから、あなたは大型合併についてどう考えているのか。いままで歴代の――歴代のと言っても、前の宮澤長官ですが、宮澤長官は、物価の元締めでありながら、一生懸命合併推進の先頭に立って太鼓をたたいた人なんです。あなたは多少違う。これはどういうふうに考えるか。これは重要な問題なんです。単に産業の再編成問題だけじゃなしに、いまの佐藤内閣の二本の柱の一つが物価対策なんだから、その物価対策という観点を忘れて、産業再編成の問題はやはりあり得ないと思うのです。そういう意味で、いまの大型合併の問題、この点について、きょうあたり新聞を見ると、もうぼちぼち通産省あたりが業を煮やして、独禁法を改正してあまり文句を言われぬようにしていこうというような動きもあるようだから、そういうことについて企画庁長官はもう少しき然たる――これは今日の独禁政策があるからこそ日本の今日の経済の成長があるという、ここに目をつけなければいかんと思うのです。つまりお互いに、独占じゃなくて、複合したいわゆる寡占体というか、こういうものがお互いに競争をする、こういう中に今日の日本の成長がもたらされたということは、これはもうみな学者も認めているところです。そういう意味合いから、やはりこの問題も一つの大きなウエートである。  それから構造的要因と特に政府が言うのだから、この解決のために、つまり中小企業、農業、それからサービス業、ここへ思い切った資金投入をやることを――ことしは予算がきまってしまって間に合わないですから、来年度、あなたの寿命が――多少寿命の関係はあるけれども、しかし予算編成は九月ごろ大体つくるでしょう、これは大体間違いないと思うから、だからひとつその関係で、構造的要因というこの指摘がまさに正しかったが、手を打ったことも的確に打ったと、こういうようなものにひとつしてもらいたいと思う。これは思い切って、ことし一回長官にお願いしたい。  そういう問題と、あとは需要供給の関係、財政金融政策の問題です。だから財政金融政策の問題は、あなた方わかっているのだから、政府部内でひとつ各省とこれは十分に議論をして対処してもらえばいいので、いま大体具体的に六つぐらい出したわけですけれども、こういう対策を一面できちっとやっていけば、かりに賛成反対は私らは別としても、国鉄運賃が特に何か物価値上げのムードをつくったり引っぱったり、押し上げたりするような役割りを持つというふうにだけ社会からながめられなくとも済むんだ。そういう対策がないからこそ、きわ立ってそれだけが目立つんだ、ちょうど三十六階のビルみたいにね。そういうことをひとつこの際長官に要望をして、その見解を伺って、あなたへの質問は次に移りますよ。答えいかんじゃそうはいかないよ。
  399. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) もう再質問ないようにお答えいたします。  第一の問題で、大企業のを押えてないじゃないかというお話でありますが、大体、日本の市場は御存じのとおり自由競争的な市場でありまして、それによって各業者が競争をして価格を決定しておるのであります。そこでわれわれといたしましては、彼らが競争を自由にして、そうして公正な価格を決定するようにまあしてもらいたい、それがいまの木村委員の言われる日本の経済が発展してきた大きな原因になっておりますからして、そういうようにわれわれのほうでは考えておるというか、そういうように奨励をいたしておるのでありますが、しかし、そこで大企業がもしも市場を独占して、そして価格を決定するような、リーダーシップをとるような場合があれば、それは公取のほうにお願いをして、公取のほうで調査をして、そしてそれに対する適確な策をとってもらうし、またあるいは直接関係のある通産省なり農林省においては、それに対して特に価格が高い場合にはあるいは勧告するとかいうようなことも考えられると思うのであります。現に私が通産大臣時代には鉄の問題で、鉄の小棒が特に高かったので建築業者が非常に困ったので、私はメーカーの富士鉄や八幡の社長さんを集めて、そして小棒の値段を上げないようにしてくれとお願いしたら、よく聞き入れていただいて、小棒の値段を押えることにしてもらったのであります。そういうように、直接の関係の各省で勧告してもらうというような方法をとってもらったらいいと思うのであります。  それから再販売制度は、これは御存じのとおり、われわれはそれを認めております。そこで問題は、この再販売制度において売られる商品を、ひとつもう少しこの際検討する必要があるじゃないか。これはもともと中小企業を保護する意味で大体できた制度でありまして、そこでこれは今日公取におきましても、どういう品種がいいかということを実は公取で調査中で、その結果をわれわれは待っている次第であります。  それから大型合併の問題でありますが、私は、今度の八幡・富士の問題については、これを合併しないようにということで勧告をされたのでありまして、もうその決定については、私はとやかく言うべき筋合いのものではありません。公取としては公正に慎重に考慮されて、ああいう結論を出されたことと思いますからして、私のほうでこれをとやかく言うわけではありません。私の立場からすれば、独占禁止法というものはむしろどんどんやってもらいたいという考えを持っておるのであって、独占禁止法を弱めるようなことをしてはいかぬという考えを私自身は持っております。  それから中小企業に対する金の出し方が足りないじゃないかというお話ですが、これは最近、毎年中小企業に対する予算は相当出しております。私の通産大臣時代、まあ相当思い切って予算を増加したのでありますが、昨年四十四年度におきましても、相当予算の増額をやってくれております。これは、私が大蔵大臣に非常に感謝いたしておるのでありまして、まあいろいろこれは中小企業の問題についてはやる仕事はたくさんあります。団地の問題あるいは流通機構の改善の問題など、あるいは農林省といたしましても、流通機構の改善の問題などについても、農林省としては苦慮いたしておりますし、またそれがための支出も相当やっております。というようなことで、これらの効果が出てくるのは、先ほど申し上げましたとおり、これはやはりその年に効果があらわれてくるものでありませんからして、その効果があらわれてくるのはやはり数年後でありますからして、これは結果としては数年後の結果を見てもらいたいと思うのでありますが、これは通産省も農林省もこの問題については相当力を注いでくれておるように私は見受けておるのでありますからして、来年度におきましてもこの中小企業の問題、その他生産性の低い産業についてはできるだけ国が金を出して、生産性を高めるように国がやるべきであるという考えを持っておりますからして、この点については来年度におきましては十分大蔵省とも折衝して、この問題をきめたいと考えておる次第でございます。
  400. 木村美智男

    木村美智男君 いまの問題は、時間の関係もありますから、これ以上論争しませんが、ただ長官、再販制度については、これは中小企業擁護のために出発した制度じゃないんですよ、それも多少目的はありますがね。これは目玉商品の防止のためにこういう制度を立てたんです。ところが、いまはそうじゃなくて、大体販売系列を縦のカルテルのようにつくり上げて、ここから利潤をあげていく一つのテコにもうこの制度が変わってきておる。ここら辺もよくつかんでもらわないと再販制度の問題はうまくないのです。それはまあきょうはいいです。  それでもう一つですが、経済企画庁という立場から考えれば――これは運輸大臣にも関係はあるのですけれども、私は今日のような国鉄の輸送力増強というような問題について、やっぱり相当な資金投入については国全体として――国が今日道路に、あるいは港に、鉄道に、いろいろの投資を相当やっておるわけでしょう。これについて経済企画庁は当然その国家投資全体を再配分するというか、その緊急性と重要性に応じてこれをどこへ幾らするかというくらいの原案を経済企画庁がつくるべきじゃないかという考えを実は持っているのですが、これはどういうふうに考えておりますか。
  401. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) その点は、木村委員の御存じのとおり、交通を整備することがひいて物価の安定ということに役立っておるのでありまして、したがいまして交通をいかに整備するかということは、これは日本の今後の経済をいかに発展せしめるかということについて重要な役割りを持っております。私のほうでも、今後の交通をどうするかということについてはいろいろ案を立てて、そうして運輸省あるいは建設省のほうにおいても案を立てておるのであります。したがいまして、建設省が先般五カ年間の港湾計画を立てたときも経済企画庁の案に沿うてやっておるというように書いているのであります。あるいは建設省が治山治水の五カ年計画を立てたときも、経済企画庁の案によってこの計画を立てたということを書いてあるのでありまして、そういうことで港湾などは私ども初めから経済がここまで拡大すれば、もっと港湾の拡張をやらなければならぬというようなことは前からも主張してまいったのでありまして、また今後の交通については、たとえば空港の問題なども、もっと整備しなければならぬし、将来は遠距離はもうほとんど飛行機によって交通するということになると思いますから、もっと空港の整備をやらなければならぬというようなことについては、われわれのほうでも運輸省とよく相談して、その点は案を立てておるのであります。そういうことで、交通関係についてはお話のとおり、それはもっと思い切った整備をする必要がある、整備ということよりもむしろ拡張する必要があるという考えをしておりまして、私は、経済の発展については、この交通というものが重要なエレメントであるということについては、そういうように十分認識しておるつもりでありますからして、公共投資におきましても、交通関係の投資は、それはできるだけ思い切ってやるべきだという考えを持っておる次第であります。
  402. 木村美智男

    木村美智男君 少し私申し上げておるのと、かみ合わぬようなんですけれども――必ずしもそう交通投資とは言わなかったんですよ。国全体が今日投資をしているのには、やはりいろいろ港湾もあれば、空港もあれば、船のほうもあれば、あるいは鉄道もある、それを経済企画庁としては、やはり国家投資資金というものをかりに総計をして、それが全体で十兆なら十兆であるとすれば、これを一体交通関係に幾ら、海の関係に幾らという、こういうつまりその必要性というか、重要性と緊急の度合いに応じて大もとをがっちり握って、配分計画をきめる――ところがいまはそうなってない。それは大蔵省が握っておって――大蔵省というさいふを握る立場のほうが、折衝いかんによって――頭の下げぐあいによってとまでは言わぬけれども、大体こう分けているというのが、大体の実際でしょう。そこら辺が、やはりぼくは問題があるんじゃないか、特に資金というやつは、郵便貯金その他大蔵省の預金部の金というのは、相当のウエートを占めているし、それから今度の財政再建推進会議なんかでは、特に道路、港湾、空港と比べて、たとえば鉄道の場合にはその競争条件において、これはやはり前提となるべき競争条件にもうすでにハンディがあるんだから、そういうことをやはり考えて、全体の国家投資の資金の再配分というか、そういう計画をひとつ企画庁が持って、そして大蔵省との間に予算編成の前に話をつけるということが必要じゃないかと言っているんですよ、私は。いまはそうじゃないですよ。さいふを握っている大蔵省のほうが、一般予算の中でどれくらい各省から要求が出てきたから、こいつを適当に削って、そして財投のほうで、多少削った分を見てやるとかいう、こういうやり方をやっている。そうではなしに、もっと国家資金全体を有効に、しかも効率的に活用するという意味で、そういうことが必要なのじゃないのかということで、そういうお考えがございますかと言っている……。
  403. 菅野和太郎

    国務大臣菅野和太郎君) これは、私の体験を申し上げますと、私が十年前に経済企画庁長官をしておったときには、総理の佐藤さんが大蔵大臣でございまして、予算を編成する前に私の意見を聞いて、そして二人でゆっくりいろいろ話し合いをして、そうして予算の大体の方針をきめたのであります。また私、この四十四年度の予算を編成するにあたりましても、「四十四年度の経済の見通し」というものをつくりまして、それによって大蔵省がその見通しによって予算の編成をやっております。この四十四年度をきめる場合にも、大蔵大臣、次官、局長、私どもも次官、局長、みながそろいまして事務的に解決のできた問題は、そのまま問題にしませんが、事務的に解決のできない大きな問題、これはその場で大ぜい寄ってきめたのであります。でありますからして、決して大蔵省がかってにはできないような制度になっているつもりであります。私は、私の体験ではそうなんです。佐藤さんが大蔵大臣のときにはそうしてやったのです。今度も、そういうようにして相談してやっているのでありますからして、大蔵省は何ぼ金を持っていると言っても、自分のかってに金を使うわけにいかぬので、こういう経済の見通しによって、やはり大蔵省は金を出さなければいけないのでありますので、その点をよくひとつ話し合ってやっておりますから、さようひとつ御了承願いたいと思います。
  404. 木村美智男

    木村美智男君 必ずしも看板どおり受けとれないですけれども、まあいいですわ。これ以上ちょっと時間の関係で議論できないから。  それで運輸大臣に少し個別的に伺っておきたいのですが、輸送分野の調整という問題は、この前もちょっと大綱としては伺ったわけです。具体的にたとえば、国鉄の今度のかせぎ場所をどこへ置くかということになると、つまり新幹線方式、大都市の通勤輸送――かせぎ場所というか、重点の置きどころね。中長距離の貨物と、こういっているんだが、最近の道路の発達に伴っての路線バス、路線トラックの発展というものは、それはものすごい。自動車も大型化してきている。ここら辺が長中距離の――長距離は別として、中距離の荷物の関係と路線トラックの関係は、これは一体どういうふうにやるのか。ある程度は、ここら辺も、もうぼちぼち輸送調整をやらなきゃならぬところにきているんじゃないかというふうに思うんですが。
  405. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 具体的にどうするかということにつきましては、今後総合交通政策という中で陸海空の問題を、この前もお答えを申し上げましたが、それぞれの分野に応じた交通政策というものを持っていかなければならぬと思っております。いま自動車の問題を出されまして、道路の整備とともに路線トラック、大型トラックによるところの輸送というものがますます伸びていくんではないかというお話でございますが、これは、私は見通しとしてはそう簡単にいかないのじゃないかというふうに考えております。そこにまあ、これからあなたのおっしゃっておる総合交通の問題として、どうとらえるかという問題――経済企画庁にお聞きになっておる点があるのではないか。たとえば現在の自動車生産の中で、かげりということがこの間から言われておりまして、これは横ばいで大した影響はないということでありますが、この一番の何はトラックの売れ行きが悪いということであります。トラックというものの売れ行きが悪くて、乗用車は伸びておるということは、いわゆる先進国型の自動車産業の形になってきておるのと、日本ではどういたしましても、もちろん今後地価の対策――土地価格というものの対策が抜本的な思い切ったことが打たれるということを別にしまして、現状ということでいきますと、私はどうしても、日本という国が諸外国と違う点は、一つは三分の二が山であって、残された土地が三分の一である。そこに集中的に公共投資というものが行なわれていくということになりますと、これは非常に高いものについてくるだけではなしに、混雑という問題も、まあこれは永久の問題ではありませんが、たとえばこの間のレジャーという問題で、休みが続いたら全くそこには自動車の混乱ということが見られて、一方ではやっぱり鉄道のほうがというような話さえ聞かれるというようなことは、私は将来の問題につきましてはやはりこの再建会議意見書でも申しておりますとおり、長距離大量輸送という問題につきましては、鉄道輸送というものが十分その機能を果たし得るところがある。また、それを伸ばしていくべきであると。ただし、それは近代化された、いわゆるターミナルからターミナルではなしに、戸口から戸口へというところの一貫した方式というものに力を入れていく必要がある、こういうように考えます。もちろん、自動車がそれじゃ減ってしまうかということになると、そうではないんです。やはり自動車の需要というものも私はまだ伸びていくと思います。もちろん対外的な輸出度という面にも力が入っていくでございましょうし、また新しく自動車というものの産業の中で、何といいますか、付加価値といいますか、公害対策のための整備をどうするかというような問題と取り組んで、新しい分野でまだまだ自動車というものも見込みはあると思いますが、輸送という問題でトラックというものと大きく競合しないように考えて、うまくやっていくということが一つの今後の問題ではなかろうか、私はかように把握いたしておるのでございます。
  406. 木村美智男

    木村美智男君 大体ですね、突っ込んで議論することはなかなかむずかしいかと思うんですが、しかし、場合によっては、長距離については、これはあまり問題ではないと思うんです。トラックが減ろうが、ふえようが、問題はあまりない。中距離が問題です。したがって、じゃ、トラックを押えろと言っているわけではないんですが、少なくとも並行路線になっているものについて、たとえば新免であるとか増車であるとかといったものは、ある程度これは過当競争を避けるという意味もある。片方で銭をつぎ込んで再建計画をやっているわけですから、その金が生きるように、やはり貨物がそこに寄るように――それがやはり輸送調整ではないかと思うのです。そういうことをもう考えていくべき時期に来ているのじゃないかということです。これはまあそれだけにします。  それから大都市輸送の問題ですが、この中で一番肝心なことは、この間本会議で私は、官庁とか、大学とか、工場とか、住宅の分散をして、そうしてできるだけ土地税制の問題、あるいは政府財貨サービスをこういうところから優先的に買い入れるとかというようなことで、工場を分散していくようなことも一応言ってみましたが、やはりそれは消極的な方法なんです。まともにぶつかって大都市交通を解決するとすれば、これは何といっても重装備の大量輸送網ということで、地下鉄ではないかと思うのです。この地下鉄問題をやはり相当やらないと、これを東京なんかの首都圏の場合、大阪もそうですが、国鉄によって通勤輸送を全面的に解決するなんということは、私はこれはどうも相当無理だと。したがって、この際やはり重装備大量輸送機関である地下鉄を、高架ができるなら高架でもいいですよ。地下鉄に相当力を入れる。そのためには、それこそ政府が銭を貸してやるなんというみみっちいことを言わないで、この際、政府自体が、あとの経営はどこへまかすか別として、ひとつおれのところで、この地下鉄だけは政府がつくったぞというくらいのことをやってみる気がないか。これは大都市の交通改善という問題でね、いまの国鉄見てみなさい。東京駅から中央線を見たって、とてもどう広げようといったって、それは無理な話ですよ。せいぜい三鷹、あの辺を高架にした、こういうようなところでいくくらいが精一ぱいで、もっと地下鉄をやはり郊外から全部中心部に入れてくるような、そういうことで、ここへ一兆円くらいの金を政府がつぎ込んで、大都市間の輸送問題でモデルをつくるくらいの――運輸大臣どうですか、気がまえありませんか。
  407. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 私は、実はそれをやりたい、そういうことをやりたいということを考えて、土地政策という問題と取り組んできたつもりであります。いまこの国鉄の十年先の見通しを立てた推進会議意見書をもとに御審議を願っておる最中に、そういうことを申すのは、なんだおまえは、ということになるかと思いますが、私はあなたのおっしゃっておることは十分御意見として承って、今後はそういういろいろなことを考えて、これはただ金だけの問題でなしに、やはり府県の問題でありますと、これは現在の府県だけでいいのかどうかというような行政上の問題とか、いろいろな問題がからんでくると思います。大都市の再編成、大都市の再開発というような問題、それに適応するための交通機関はこういう方法でやるということを基本にした考え方を具体化するということが、いまあなたのおっしゃっている構想が実現していく方向になるのじゃないか。それがどういう形になるかということにつきましては、いろいろな、あなたのおっしゃっていることも一つの御意見であろうと思います。現に現在、まあ国鉄、私鉄間の相互乗り入れということが、いままでは特殊な形でありましたけれども、今後そういう形であらわれてくるものは一体的に考えていく。そうなってきますと、それは一体的に考えていくならば、おっしゃるような考え方でいくほうが、国鉄だけに背負わせるよりいいんじゃないかというようなことになっていくわけであります。これらのことは非常に貴重な御意見として、私は行政にいま携わっておりますが、御意見は御意見として承りまして、今後の大都市交通というものに対処していきたいと考えます。
  408. 木村美智男

    木村美智男君 それから、公共負担の問題でこれを是正するということですね。公共負担の是正について、やっぱりこれを利用者負担、受益者負担という形で、これは意見書にはそういうふうに出ているんですよ。しかしそれは、ほんとうの意味で公共負担を是正することにならないのですよ。つまりどこが負担するかという負担の場所をかえただけであって――やはり公共負担というものを是正するというのは、それは国なり政府の補助なり援助というもの、これがほんとうの意味での是正じゃないか。で、そういうことを理屈だけ言っておってもしようがないので、ひとつ大臣、公共負担是正について基準をつくってみたらどうか。どういう基準をつくるのかといったら、たとえば公共負担というもので、これはどうしても存置しておかなければならぬというやっと、それからある程度商業ベースで割り引いていくという、割り引きをしていってもいいんじゃないかというやっと区分して、それでたとえば新聞、雑誌、農林物資、石炭、こういう問題はある程度、私は商業ベースのルートに乗っけて、これの割り引きをどうするのだという、こういうものとして関係の個所がこれは負担をしていくということが、やりようによってできるのじゃないか。ところが、どうしても残さなければならぬ身障者の無料扱いとか、天災時にただで運ぶとか、勤労青少年の関係など、こういったようなものはかりに存置すべきものだということならば、それはその負担の合理的なものは国として一般的な助成という形の中で見てやる。そうでないものについては、多少関係の個所が負担をするというようなことを、少し公共負担というようなことの抽象論争ばかりやっていないで、具体的にこれを是正をしていく一つのものさしをつくってみたらどうか。これはひとつ、この問題を一歩進めることに役立つのではないのかという気持ちなんですが、これは大臣、どういうように考えられますか。
  409. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 公共負担の問題で、私はこれを両者、すなわち乗っている人が負担をすべきか、あるいは助成によってこれを補うべきかということについては、たてまえとしては、やはり利用者が持つのがほんとうではないかという気が私はするのであります。しかし、これを法律によって五〇%で押えまして、これが定着をしておる姿が現在あるわけであります。したがって五〇%までで金額が幾らになりますか、この間から再三議論されておるのでありますが、これをそれ以上また値上げをして負担しろということは、これはなかなか定着をしておる現状というものを、理屈だけでひっくり返すということは、なかなかむずかしい問題でありますから、これらの問題についてどうしたらよいのかということについては、よく検討を要する問題があると思います。ただ正直いいまして、私は日本のいわゆる定期通勤通学といいますか、通勤着がよそにあまり何べんも行くということはありませんが、この間どなたかの御質問の中に出てきましたのが、きせる乗りが多いということが、びっくりするほどの数がございました。それから通学ということで、もう学校というものを日本ほど優遇しておるところはございません。ほとんど各種学校という制度でそこで定期を発行する。それを受けた人は何回でも――通勤しておる人でも学生でいけるというようないろいろなこまかいことを言っておったら、非常に、これほどサービスしなければならないのだろうかという問題もなきにしもあらず。こういうことは、いま木村さんは専門家でありますから、検討条項の中でこういうことを検討してみたらどうだというお話がございましたが、これは大臣として私が申し上げるのは、その一番問題である公共負担というものを利用者が負担すべきか、あるいはその他の方法によってこれを考えるべきかということで、この点については私は、この前も少し申しましたが、学校という場合には、そのすべての学校というわけにはいかぬが、義務教育学校というような問題については助成することができないものであろうかというような考えも持っておりましたし、またそれらのことについても検討をいたしてみたいと思いますが、私は原則としては利用者側というものが持たなければならぬということをたてまえにいたしておりますが、今度も激変するということは問題があると思いまして、昨年定期の運賃の改正をした。今度はまた、意見書には書いてございますけれども、私はあえてそれをやらなかったということは、検討すべき点があると、こういうことを考えておるからであります。
  410. 木村美智男

    木村美智男君 しかし、大臣、いまの政府考え方として、受益者負担の原則という立場をとっているからといって、無理にあなた利用者が負担するのが正しいと言わぬでもいいのだね。これはあなたは、おれみたいにやはり野人なんだから、自分の思いどおりに言ったほうがいいのだ、この辺は。  そこで聞くのだけれども、たとえば農林物資割引なんというものの関係を考えてみると、これは受益者といったら全国民なんだね。そうでしょう。それからちょっと資料をいじってみたら国鉄に乗る延べ人員は年間七十億人乗っているのだね。そうすると一億の人間として一人が一年に七十回乗っておるわけだ。平均ですよ。そうだとすれば、政府が税金でそれを払うのはおかしいなんということはどうもおかしいのだね、それこそ。年間七十回も一人平均乗っておるような、そういう利用をしている状態にあるということは、全国民のほとんどが乗っておるということじゃないですか。そうだとすれば、もし利用者負担という名前がつくのだとすれば、それは全国民ということになるのだから、税金で払うのはおかしいと、そういう考え方にはちょっとならぬのじゃないのか。そういうことを一面では言いながら、じゃ、空港はどうなんだ。空港の受益者というのは一体だれなんだ。それでは航空運賃の中に空港整備の費用負担というものが入っておるかということを考えてみたら、入っていないでしょう。道路の場合ではあとで使用料を取るけれどもね。初めはガソリン税で取り、あとで使用料を取るから、これは幾分利用者負担ということになるかもしれませんが、しかし港湾はどうですか。港湾の整備はほとんど金額を国がやっておる。それを利用者負担ならば船を持っておる人がある程度分担したらいい。なぜ国鉄運賃だけ、あるいは国鉄の公共負担についてだけ受益者負担だ、利用者負担だということをむやみやたらに強調するのか。七十億人乗っているんじゃないですか。ここのところを、あなたがあえて利用者負担にすることが正しいと思うと言うから、ぼくは聞くんですが――いや、いまのような考えが常識的だと言うなら別に聞かなくてもいいと思っておったのですよ。これが実際問題なんだな。いつも予算編成の段階になると受益者負担が原則。そんなら通勤定期、これの受益者は一体大臣だれだと思っておりますか。ぼくは、これは大企業ほど通勤定期によって利益を受けておると思う。個人個人は多少の割引を受けておるという意味ではそうかもしらぬが、最近は会社が負担している。そうなると、あまり個人が負担しているという、利益を受けているというかっこうにならぬですよ。これは、会社がその意味で実は個人の汽車賃を負担するくらいなら、ぼくはやっぱり、この際相当膨大な輸送力増強の金が要るんだから、企業もそういう考え方に立って、たとえば、いま市町村が受け持っているような利用債を会社が持つと、これはなかなか――どれくらいの会社に幾らくらい持たせるかという、そのむずかしさはあると思いますよ。しかし、考え方としてはそういう考えをとるべきじゃないか、利用者負担ということを徹底させるならばですよ。そうでなければ、空港や港湾の関係を考えてみるならば、国鉄のような、全国民が一年に七十回ずつも乗るのだから――税金で払うことはおかしいなんというような大蔵省の言い分、運輸大臣が言っているのじゃないのだ、これは。そういう言い方はもうぼちぼちやめて、そうしてもう少し――そういうことを言っているから、実はこの運賃値上げなんというものがまた大きな障害になってきているのだからね。もう少し常識的にものごとというものをやっぱりやっていくという意味で、受益者負担という関係、この利用者負担という、この大臣のさっきの答弁には私どうも納得できない。これはどう考えますか。
  411. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 私は、あえて議論をするために申し上げたのではないのです。まあ私の率直な気持ちを申し上げたのでありまするが、いまあなたのおっしゃっておる後段の、その事業所から取るべきではないかというような構想、これは私は考えておったことがあります。これらは、先ほどと同じように、今後の都市再開発という問題と同時に考えていかなきゃならぬ問題ではないか。いままで、かってにこしらえて、そうして人が乗ってくるのを、それを運ぶのがあたりまえだというようなところの政策、こういうことで国鉄がぶうぶういっておこられるのは、私は聞いておって当然じゃないという気がするのはそこにあるわけであります。まあ港湾あるいは空港に対して何も取ってないかというと、取ってないこともございませんが、私は、いまあなたがおっしゃったような点を、今後の輸送ということについて考えながら、政策的にやっていかなければならぬということについては、決して反対意見は持っておりません。
  412. 木村美智男

    木村美智男君 それでは大体その点はそれでいいですが、ひとつこのいま赤字路線を取りはずすという話が一方で出ている関係上、いままでも多少これは質問があったわけですが、新線の建設の関係――この辺で新線建設についてはやっぱりもう、がちっとワクをはめてみたらどうかという気持ちがあるのですよ。というのは、この鉄道建設公団に関係があるから、何もかもやっちまえと言うのじゃないのです。一面では、重点的にやるべきものはもうどんどん進行を進めると。たとえば根岸線、それから外環状線、外山手線ですね、こういうような外環状線や根岸線というやつは、もう人間もあるいは金もつぎ込んで、これはもう早急完成をするという方針をまずひとつ立てるということ。それから同時に、いまやっているもので、たとえば調査線――予定線から調査線、工事線と、こういうふうになっていっているでしょう。これが、何とはなく、ずるずる毎年格上げになっているわけですな、だんだん。これを、この再建期間のせっかく踏み出した年だから、多少準備も要るだろうから、何もことしじゃなくても、来年でもいいですけれども、これはひとつ、特に鹿島みたいに大規模な開発というような問題が起こってきたら別、そうでなければ、一般的には格上げを一切やらないと。予定線から調査線、調査線から工事線というやつ、これはよく言われてきた政治路線という問題について、世の批判をやっぱり封殺するという一面もあるんですよ。四年前に私が北海道へ行っていたころ、美幸線なんというものはひどいもの、初めから赤字になるのがわかっておって、それをつくって、いま廃止すべき中に含まれているわけですね。その背景にはやっぱり政治路線とか何とかいうようなことが出てくる。それはなぜ出てくるのか。そういう意味で、私は新線建設の問題については、もう重点的に大企模な開発をやるようなところであるとか、現にもうペイするということで始めている根岸線や、それから外環のほうは積極的に進める。そのかわりこっちはきちっと、これはだめだ、一切格上げは認めない、こういうことにして、そうして一方いまの赤字路線について、これをどうやるかという問題にむしろ重点を置くべきだ。赤字路線の廃止を一生懸命やっていながら、もうかりもしない線路をこれから敷こうという、こんなことは、少なくとも十カ年のこの再建計画を立てた段階では、断じてこれは認められぬ、これは。ここは大臣、英断をもってやるべきだと思う、どうでしょう。
  413. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 考え方については、私はここで何度も申し上げておりますように、あなたの御意見は十分わかっておるつもりであります。今後鉄道審議会というものが機関としてございまして、これらがこの問題について一番御意見をちょうだいいたすところでありまして、私は、いまのこの時代の感覚というものを十分とらえていただいておると思います。御意見も聞きまして、これから対処していきたいと思います。
  414. 木村美智男

    木村美智男君 そこで個人意見ということじゃなしに、具体的に運輸省として、いまの問題はぜひひとつ検討してもらいたい。  最後になると思うんですが、ぽんぽん飛ばしていますが、国鉄当局に実は例のローカル線の廃止問題ね、これは相当地方の人たちにはやはり不安な、場所によっては縁談のこわれた話まで聞かされてきているんですよ。つまり鉄道がいままで通っていた、曲がりなりにも通っていたけれども、今度は通らぬ、というところへ娘をやるわけにはいかぬというので縁談がこわれたという笑い話のようでほんとうの話。そういうような状態が実はあるものだから、いろいろ社会党としても全国的に幾つかの線の調査をしてみたわけです。ところが、もう赤字だからという理由だけではどうしてもこれは廃止ができない、実際問題として。たとえば烏山線へ行くと、朝約五千ちょっと下回るくらいの例の通勤客がおるわけですね。これを自動車代替輸送をやると言ったって、まさか百人詰め込んだにしても五十台のバスを一挙にあそこへ持っていくということはちょっとできないです。したがって、こういう問題がある。あるいは参宮線へ行きますと、二見浦という昔は修学旅行に行ってたいへんにいいところだけれども、いまや町全体がつぶれそうなんです。なぜかというと、参宮線をとっぱずすと発表したわけですよ、まだはずれないですが。だけど、これを取られると、高速道路が町のはずれを走っているわけですね。そうして今度は何と近鉄が百億をかけてわざわざあそこの津から二見まで、あそこのところへ線を敷くわけですよ。これは私もちょっといいような感じを持ったが、これが民間会社との違いかなとも思ったのですが、とにかく二見の町はこれによってすっぱ抜かれて、あそこに何百軒という旅館があるわけですが、あの町全体がつぶれちまうという問題が起こっていますね。こういう観光地もあるわけですよ。しかし、そういう点もあるし、それから諮問委員会に出した基準というやつだって、だいぶまちまちの点もあるので、この際ひとつその線路をどうするかという問題については、やっぱり地元の代表を入れた、利用者代表やら、自治体の代表やら入れた中でほんとうによく検討をして、そうしてやはりもう北海道の場合なんか、特に雪が降ったら鉄道しかもう足はないという、こういう個所があるのは、これは御存じのとおりです。そういう点があるから、八十三線、二千六百キロについては、これはひとつ運賃値上げによって、これを契機に再検討をするというくらいのことを国鉄当局、石田総裁は、ここでひとつ言うべきじゃないか。それは何もゼロにすることじゃない、ゼロにすることじゃないが、運賃は上げるわ、足をとっちまうわということでは、これはしろうととして、地域住民としてはやっぱり理解しにくい。そういう住民感情の問題もある。だから、とにかく十分住民の意見を聞いて、赤字問題については対処するというようなことで、ほんとうの気持ちをいえばこの際、出発点に出直す、八十三線二千六百キロは出直すというくらいのことを言ってもらいたいのだが、そうもいかぬだろうから、いま言ったような趣旨でやっぱり運賃を上げるのだから足は守る、ほんとうに一日一列車に二人か三人しか乗らぬというような、そういう関係についてはよく話し合って代替輸送を考えるということにして、そうしてやっぱり国のほうもその運営をしていく以上は、雪の関係でここは残さなければならぬ、通勤の関係で残さなければならぬという関係については、国の援助をきちっと取りつけていくというような、三者一体になった、それこそ三方一両損じゃなくて、運輸大臣は三者一体だと言われるが、そういうことにも三者一体になってもらわないと――銭を負担するばかりじゃうまくない。どう思いますか。
  415. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 赤字線の問題は、議論すればするだけ、ますますむずかしくなりつつある。結局、私は、これは国民経済的の立場から、また実際の赤字線以外を利用しているお客さんの負担の問題等も考えて、これはやめなければならぬということも考えていますが、日を経るに従って大きな反対というものが政治家から、国会議員から出てくるので、国鉄としては至難の問題だろう、やろうと思っても事実困難じゃないか。ことに、この問題は運輸大臣の許可を得なければならない。運輸大臣のような、つまり政治家からみれば、この問題はわれわれ考える以上に頭の痛い問題であると思いますので、この問題はできるだけ慎重にやります。慎重にやりますが、どうしてもこれがいけない、こういう場合にはそれじゃ国鉄の収支の問題をどうするのか、御承知のとおり非常に大きな負担です。年々負担というものがふえてくる。この場合には政治家の御意見に従ってやらなければならぬということであるならば、同時にその結果をどうしてくれるかということもお考え下さるようにお願いします。
  416. 木村美智男

    木村美智男君 総裁、だからもう政治家に線路を敷けということを言わせぬように、理不尽な線路は一切認めないということて、片一方では歯どめもつくっているんですよ。だから、この際そういう意味で、それは運輸大臣そばにいるんだから、大体わかっているところを見れば、まあいいだろうと思うけれども、この際やはり運賃値上げを契機に、これは(「賛成」と呼ぶ者あり)そうでしょう、与党のやはり委員の皆さんもそういうことで、運輸委員会は大体こういうことは満場一致になるんですよ。そういうことはよくくんで、ひとつやっていただくように、ぜひいまの答弁趣旨でけっこうですから、再答弁は求めませんが、ぜひ赤字線区については善処してもらいたい。たいへん私も片っ端から飛ばして質問があっちこっちになりまして、たいへん恐縮でしたが、国民負担が三・五で、国鉄が二で、そうして政府が一という話については、これは私は総額ではなるほど国民負担もたいへんだけれども、やっぱりこの際、総裁国鉄の二というやつも、これは決してゆるくないと、第一次から第三次までの合理化をやってきた国鉄として、企業努力によってこの二を生み出すということは、私はたいへんな努力だと思う。だから、たいへんだからといって、あまり気を立てて労使関係などで、かえって円滑にいかないようなことにならないように、これは総裁、ぜひ私は気持ちを長く持っていただいて、そうしてこの際がんばってもらいたい。そうしてまあ、とにかく政府が一しか持たないというのは、言ってみれば、この委員会におけるわれわれのほうにも多少力不足もあるわけだから、これは与党も含めてだよ――われわれと言ったら、あんたら関係ないような顔しているが、与党も含めて、これはやっぱり政府の負担をこの程度しかやらし得なかったということについては、これは十分今後努力を私どもも続けたい。せっかくこの運賃の関係を通して、いろいろの困難な事情を乗り越えていかなければならぬのですから、ぜひやはり国民の期待に沿うようにいろいろ指摘された点について、これが終わってもがんばってやってもらいたい。運賃の値上げについては、私は反対ですけれども、しかしその気持ちはきちっと私どもも腹に入れたいし、それから総裁以下国鉄の幹部にもやはり国民がほんとうに喜ぶ国鉄にしていくという契機に、ひとつこの機会にしていただくということを特に要望しまして、私の質問を終わります。
  417. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 だいぶ時間もおそくなりましたし、すでに期当長時間質疑も行なわれましたので、なるべく集約的に質問をしてみたいと、こう思います。  国鉄財政の赤字の原因については、もうすでに十分に私どもから、それぞれの立場でもって論じ尽くされたような感じがするのでありますけれども、運賃改定を必要とするというようなことを書いたパンフレットを見ますと、一番大きい原因は借金であるというふうに書いてあるのです。利子を含めた返済額が一日七億円ある、こういうようなことが出ております。その次に、人件費がふえているということを書いてあるのでありますが、予算の中で数字を拝見いたしますと、昭和四十四年度では一兆一千億の収入が見込まれておる。運賃値上げによる増収分はその中で九百十億、こういうふうになっております。全体の予算の中に占める運賃値上げの分は、そんなに大きくないという感じがするわけであります。さらに人件費のほうを見ますと、四千百億、こういう数字が出ております。あたかも人件費が増大をして、これがすべて国鉄赤字の最大要因であるかのような印象を与える言い方は、数字的に私は間違っているのじゃないかという気がするのであります。その点なぜすなおに、国鉄の赤字の最大の原因というものが借金にあるのだ、その借金は過去における投資――輸送力増強のための必要な投資にあるのだということを明らかにしないのか、特に人件費ということをあげているのは、何か働く者の費用がふえ過ぎたからだと、いわば従業員に何かはこ先を向けるような感じが受け取れるわけでありますが、そういう意識はないけれど、このような表現をしたものであるかどうか、その点をお伺いしたいと思うのであります。
  418. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 私は、予算委員会でも、またこの委員会でも、また本会議でもお答えをいたしておるのでありますが、国鉄のこのたびの財政危機と称されておるものの原因は何かと、これはもう正直に言いまして、いわゆる入ってくる金が思ったように入ってこない。これは競合するものができてきた。そこへ投資をしたための借金の利払いというものがますます財政を圧迫してくる。一方では、いまお話の人件費というものが毎年上がっていく。これは事実でありまして、ことさら、それがあるからそうなんだということを意識的に申したものではございません。事実を申し上げた。予算委員会でも、それでは国鉄の従業員は企業の成績が悪いんだから月給を上げないのかというようなことの御質問もありましたが、私はそれに対しては、企業が赤字だから即、給与を上げないというわけにはいかぬと。もちろん働く人たちに対するところの報酬というものは、どういうことばを使ったらよろしゅうございますか――いま企業が赤字だからお前たちの月給は上げないのだというわけにはいかない時代がきておる。こういう点から、国鉄財政が赤字だから、すぐに給与を上げないということはいかぬでしょう。ただ、意見書の中にも、労働生産性の問題なんかを見て、そこは適当にということを言っておりますが、これらのことは考えなきゃならぬということは申し上げておきます。敵対というような意識は一切持っておらないということを申し上げておきます。
  419. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 国鉄総裁にお伺いいたしますけれども総裁もだいぶいままでの御答弁で、努力してきた旨発言がございましたけれども合理化の問題ですね、この合理化の問題をどのように解釈をされるかということであります。われわれが感じるところは、国鉄合理化というのは、ともかく人件費を節約することにあるかのように聞きとれる。少なくとも、管理職も――下級管理職の人間の考え方というものは、なるべく働く人間を少なくして能率を上げようということが合理化であるという理解に立っているように思われる。国鉄考え方もそこにあるのだとすると、非常に私は危険な事態が出てきやせぬかと思う。つまり輸送力はふやさなければならない。しかし人間は節約しなければならぬということになると、安全とかサービスが必然的に犠牲になる、そういう結果になりはしないかと思うのであります。その点、はたしてどのようにお考えになっているのか、その点をお伺いしたいと思います。
  420. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) まず第一に、さっき人件費は四千百億というお話でしたが、これは全体の人件費じゃなくて、全体の人件費としては、四十三年度におきまして五千百十二億になっております。この点はひとつ瀬谷さんに御訂正願いたいと思います。それで、今度、四十四年度になりますというと、ベースアップの関係もありまするので、さらに収入に対する割合というものはふえるのじゃないかというふうに考えております。  それで、国鉄合理化問題でありまするが、私どもはこれを、国鉄合理化とは、つまり第一に、消極的の合理化、第二に積極的の合理化。消極的の合理化ということは、つまり経費を節減し、能率化するにある。積極的の合理化というものは収入をふやすにある。つまりわれわれが努力しておるのは、第一は積極的の合理化で収入をふやすこと、第二は消極的の合理化で経費を減らすことでありまするが、その消極的合理化のうちの、経費を減らすといううちで一番大きなものは人件費の問題。人件費の問題につきましては、つまり年々業務量というものはふえる、それに対してその割合に人間をふやした日には、これはたいへんなことになる。すでに四十三年度におきましても、総収入の六割近くに人件費がなってきている。この人件費をふやさないためにはどうしたらいいか。こういうことになりまするというと、さっそく職員の労働量をふやして、それによって節約しよう、こういうように考えるのがあたりまえでありまするが、そうじゃない。これはさっきから言っておるように、また実際にやっておるように、つまり機械化その他の合理化によって人間を節約していく。業務量のふえに対しては人間をふやさないでやっていく。現にこれはもう三十二年からずっとやっておることでありまして、その結果、輸送量というものは非常にふえているにかかわらず、やはり人間というものはふやさん。結局これは、そういうぐあいに能率化をやった。たとえば三十二年から四十年ぐらいまでに四万八千人ぐらい減ったのじゃないか。その結果、労働量はちっともふえてない。その点は、瀬谷さんにおいては十分御承知のことだろうと思うのです。今度これをやるにしましても、決して労働量をふやすということはやらん。現に最近におきましては、一週間における作業時間というものを二時間短縮するというようなことをやっておる。その点はどうぞ心配ないようにお願いしたいと思うのです。
  421. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は、昭和四十四年度の日本国有鉄道予算説明に基づいて先ほど申し上げたのです。それによりますと、四十四年度の職員給与については、定期昇給と期末手当、奨励手当合わせて四・ニカ月分を見込んで四千百三十八億円というふうに書いてある。これを私は言ったのです。数字的には私間違ったことを言っておりません、これを読んで言ったのですから。さらに、ここに書いてある収入を見ますと、旅客が七千九百十億、貨物が二千六百六十九億、雑収入として三百三十五億、国鉄財政再建補助金が七十一億、財政再建債利子補給が十三億、合計一兆一千一億、こういうふうになっているわけです。この私が申し上げた数字は間違いないでしょう。これは運輸省の刷り物ですからね、これに基づいているわけです。  そうすると、収入は一兆をこすわけです。運賃の値上げ分七百億をみなくても一兆をこすわけです。これだけの収入があるというところは、日本の企業の中にそうざらになかろうと思います。そうすると、これだけの収入がありながらなお赤字だ、赤字だということは、世間にやはり納得できない印象を与えると思う。しかしその原因は何かというと、大きな割合を占めているのが借金であるということも、いままで論じ尽くされております。その借金の利息が千五百億であるということもいわれております。それらの点について、あえて私は重ねて申し上げようと思いませんが、これだけでも――じゃどうしたらいいか、いかにすべきかという観点に立って申し上げるならば、まず旅客収入と貨物収入の割合が少しつり合いがとれなさ過ぎるわけです。旅客収入は約八千億になる。ところが貨物収入は二千六百億。それなのに貨物運賃の値上げは見送られた。一たんこれは貨物運賃の値上げも計上されたのに見送られたということになると、将来の国鉄の収入というものは貨物収入には多くを期待できないということになってしまう。旅客収入により多くの期待をかけなきゃならぬということになるわけです。そうしますと、この貨物収入の増収をはかるという一つの目安があるのかどうか。もしそれがなかったならば、たとえば値上げをすれば自動車に逃げる、船に逃げるということであるならば、逃げるものは逃げてもいいんじゃないか、これは何も無理に国鉄が運ぶ必要はないんじゃないかという気もいたしますが、その辺やはり、特に公共負担の中に相当これはもう貨物収入の問題も出ておりますが、国鉄としては貨物収入の増収というのはどういう方法でもって考えておるのか、将来の見込みがあるというふうにお考えになっているのかどうか、その点をお伺いしたい。
  422. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) いまの人件費の問題でありますが、修繕費の中に入っておる人件費というものが入っておらぬと、こういうことであります。  それで、さらに貨物輸送の収入に関する問題でありまするが、これは私は輸送力の増強、さらにサービスの改善というようなことによって、近代化というようなことによって相当に私は伸びる見込みがあると。要するに、これまでの国鉄の貨物サービスというものに対してはよほど改善する必要がある、この改善をすれば相当に貨物収入というものはふえると。それで、むしろ輸送力が離れる点がある。この輸送力をふやすことによってまた貨物収入をふやすことがあるということで、いろいろの点から考察いたしまして貨物収入といえども今後の国鉄の努力いかんによってはそう悲観したものじゃない、こういうことに考えております。
  423. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 公共負担の問題について、もちょっと私は取り上げてみたいと思うのですけれども、公共負担の中には旅客関係、特別扱い、新聞紙雑誌関係、貨物関係と、こうあるのですけれども、その貨物関係の公共負担というのは、たとえばここに出ておりますけれども、農産物があるし、それから海産物がある、あるいは日用品等がある。こうなりますと、貨物運賃の赤字でもって運んでいる物資というのは、汽車に乗る乗らないにかかわらず、日本の国民がその恩恵を受けているということになるのじゃないかという気がするわけですね。これはいままでの運輸大臣のお話だと、これは利用者負担あるいは受益者負担ということをしきりに言われた。それは汽車に乗る人にやっぱり運賃を払ってもらうという思想だと、こう言われた。ところがですね、汽車に乗らない人でも米、麦、野菜、鮮魚、薪炭、肥料、味噌、しょうゆ、こういったようなものは国鉄が割引運賃でもって運んでいるわけでしょう。そうすると、これは国民がひとしく恩恵を受けているということになるのじゃないですか。そうでしょう。そういうものは汽車賃を払う払わないにかかわらず。国として十分にその赤字分は見るというのが正しい行き方になるのじゃないでしょうか。諸外国にそういう例がないのかどうか、この点も私は運輸大臣に聞いてみたい。
  424. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) このたびの運賃値上げに関しまして、貨物運賃を上げないという理由の一端は、いま瀬谷さんが言われた輸送物資は国民全般に行き渡る貨物というものでありますから、これがそういう方面で一方、物価という問題に影響するところがある、こういう問題のとらえ方をいたして、そのほかには、またいまの国鉄の貨物輸送の状況から見ますと、これはサービスも十分できておらないというようなことから勘案して、貨物運賃は値上げをしなかった、こういうことであります。したがって今後、先ほども国鉄側がお答えになっておりますが、この貨物輸送ということについては、お客さんに喜んで来てもらうように改善をしていくことによって、運賃改定ということも検討していかなければならぬと思いますが、で、あなたがおっしゃるように全国民に及ぼす影響のあるものであるから、それを値上げをせずにいくのに公共負担分として国がめんどうを見たらいいじゃないかという考えにつきましては、これも検討に値する考え方であろうと思います。
  425. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 検討に値する考え方であるということをお認めになるならば、政府としてもやはりこういう公共負担について保証するということは積極的にやるべきじゃないかと思うのです。いままでそういった点きわめて消極的だったというよりも投げやりだったという気がするのです。こういう投げやりなことをやっておいて公共負担を国鉄にそのまましょわせていく、こういうことであればいつまでたったって、少しぐらいの運賃値上げをやったくらいで追いつかないことになるんじゃないですか。国鉄財政構造の問題点については、すでにいままでもう多く論議されましたから、あえて私はそのことについて重ねて触れようと思いませんけれども、こまかな問題を一つ一つ取り上げてみますと、いまの貨物運賃の問題等でも、私は政府としてこれを補てんをするということは一向に差しつかえないし、理にかなったことであるというふうに考えられるのですが、総裁はどういうふうにお考えになりますか。
  426. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) この公共負担というものを依然として国鉄が負担しているということは、これははなはだいかぬ、私はきわめて不合理であるということで、総裁に就任以来この六カ年というものは、公共負担はひとつ政府は肩がわりせにゃいかぬ、そうして要するに一般の乗客の犠牲においてやるということはいかぬということで主張した結果、そういうことを政府において全体として御考慮なさいまして、今度のような政府が援助する、こういうことになった次第であります。これは私は社会党のこの間の説明を聞いたのですが、実に私は社会党の御主張に感謝しておる。ただその問題は金額の問題になるのでありまするが、どうも一ぺんにやるということは、これはやっぱり政府のふところぐあいも考えなければならぬということで、感謝はするが将来に期待を持つ、こういうことでございます。公共負担の是正ということは、瀬谷さんの申すところは今後ますますやらなければならぬ。これは社会党あたりでも大いに御支援願いたいと、こう考えます。
  427. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 自由民主党政務調査会の国鉄基本問題調査会のパンフレットを私は拝見したのです。ところがここにも資金調達方法については政府出資ということを書いてあります。そうして明治以来国民の支払った運賃の集積が二兆円という国鉄の資産だ、これに対して政府の出資があまりにも少な過ぎるということで、こう書いてあるわけです。これは社会党のパンフレットじゃない、自由民主党のパンフレット、こういう点を見ると、われわれが言っておることとあまり変わらないことが書いてある。政府出資、こういう点でやるべきだ、こういうことが書いてある。それから特に通勤輸送等についてもこれは政府が十分に考えなければならぬということを書いてあるわけです。自由民主党の政務調査会で書いてあることがなぜ自民党政府によって実行されないのかはなはだ不可解だと思うのであります。その点は自由民主党を代表するという形でもって運輸大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  428. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 皆さんよく御存じのところでありますから、包み隠さず過去から申し上げますと、いまおっしゃっておる考え方というものは予算折衝時において運輸大臣はこれをもって財政当局と交渉をいたしました。たとえば、あるときには九百億に及ぶ出資金を財政当局に要望した。しかし、財政当局は国家財政上それだけの余裕はない、こういうことでこれが実現しなかった、こういうこともあったわけであります。昨年度は、たとえば国鉄の納付金百三十億を、これを何とかまけてもらう、これは運輸大臣としての主張。しかし、これは自治大臣との間の意見が一致を見なかった、こういうような問題があったわけであります。今回四十四年度予算におきまして、私が大臣に就任をいたしまして、そのとおりにはまいらなかったんでございますが、出資とひとしいように、結局国鉄の重荷を軽くするために、現金がございませんから、財投から金を借りてきて、それを利子補給して、現金と同じような形で、利子のたな上げをするというようなことを一つ考えたというようなこともお考えくださいまして、このたびは政府ができるだけのことをしたと御了解を賜わりたいのでございます。
  429. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それじゃ自治大臣を要求したのでありますが、政務次官。  市町村納付金の問題についてちょっとお伺いしたいと思うのですが、市町村納付金の問題は、自民党の政調会のこのパンフレットを見ても、廃止すべきだと書いてあるんですね。国鉄も廃止すべきである、こういうふうに言ってきた。ところが昨年は、中曽根運輸大臣のときにもこれは廃止すべきだと思う、こういうふうに言われたが、歴代の自治大臣は廃止すべきではない、こういうふうに言っておられるわけです。昭和三十一年以降、これは市町村納付金という制度ができたんですね。それまではなかった。そうすると、これは理屈からいうと、市町村の財政に対して補助をするためにこういう制度を考えられたんだろうと思うのでありますが、これははたして妥当な方法であるというふうにお考えになっておるかどうか、これは将来一体どのようにお考えになるのか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  430. 砂田重民

    政府委員(砂田重民君) お答えいたします。国鉄の市町村に対します納付金の制度というものは、自治省の見解をお答えをいたしますが、国鉄もまた地方公共団体が行なっております行政サービスを受けて営業しておられるわけであります。たとえば上下水道、じんあい処理等がそれに該当するかと思いますが、ちょうど地域社会住民が地方公共団体におきますそういった行政サービスの施設費、それの運用のための費用等を広く住民税の中あるいは固定資産税等で負担をいたしておりますと同じように、国鉄にもまた固定資産税的に負担をしていただく、そういう観点から創設された制度でございます。ただ、さりとて国鉄が地域社会に及ぼしてくれております非常な、どう申しますか、地域社会発展のためにいい影響を与えていただいております国鉄の公共性と申しますか、ひいては地域社会住民の福祉の向上に役立ってもらっています国鉄の持っております公共性にもまたこたえて、一般の住民の方々が負担をしておられます固定資産税と同じ程度の納付金ということもこれは妥当ではないか、そういうことから、先生御承知のような四十二年度から固定資産税を二分の一に軽減をいたしまして、さらに四十二年度からは新線部分についてはさらに軽減措置をとりまして、さらに今年度に地方税法を改正いたしまして、私鉄の持っております公共性に認めております軽減措置をさらにとったわけでございます。制度のよって起こった考え方も、また国鉄の持っております公共性にこたえるための軽減措置、いずれも妥当な措置である、このように考えております。  なお、つけ加えて申しますならば、先ほど先生御指摘になりました自民党の政務調査会の資料でございますが、自民党のほうの国鉄関係の調査会、交通部会等で出されました資料を、先生御指摘になったと思いますが、同じ自民党の政務調査会の地方行政部会はまた少し違った考え方をしたわけでございまして、各部会によっていろいろ議論をなさいました結果、最大公約数的に出ました答えが、ただいま私がお答えを申し上げましたような減額の措置でございます。
  431. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は自民党政務調査会の国鉄基本問題調査会と、こう書いてあるから、これがまあ自民党の考え方である、一般の考え方だと思ったのです。そうすると部会によってはまた別の考え方がある、そういうことなんですかね。まことにやっかいだと思うんですが……。  そこで総裁に今度お伺いしたいと思うんですが、赤字路線の問題ですね。国鉄の赤字路線というもの、これは公共負担と見ていいかどうかという質疑もこの間行なわれました。しかし、もしその赤字路線の赤字分を公共負担とみなしたとすればどのくらいの金額になるか、その点をお伺いしたいと思います。
  432. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 現在黒字線というものが九百三十億、それから赤字線というものが四十二年においては千三百億のマイナス。そうして四十三年においては千七百億のマイナス。こういうことで非常に大きなものになりまするが、この千三百億といい、千七百億といい、これだけが全部が赤字線のロスということには考えられぬ。ということは、この赤字線の中にはつまり幹線のもうけをヘルプしているいわゆる浮揚効果というものがあるんでありまして、そういうようなもの、それからさらに都会を連結しているものというのは、これは赤字線ではあるが、普通のつまり地方開発のための赤字線というものとは性質が違う。そういうことで、ほんとうに赤字線として解決せにゃならぬ線から出てくる損というものは大体一年に四、五百億じゃないか、こういうことに考えておりますが、問題は赤字線の損というものは年々歳歳非常に膨大しているということで、これは国鉄としては将来非常に大きな負担になる、それで要するに、国鉄というものがこの赤字線によってそれだけの負担をしていくということになることは、やっぱり独立採算の上からいって問題じゃないか。ことに、そういう赤字線というものは結局その負担というものが一般の乗客の負担になる、こういうことになるんでありまするからして、これはやはり政府で見てくれるべきものじゃないか、公共負担じゃないか、こういうことに考えておりますので、国鉄がつまり政治のために犠牲をやっているということに対しては、政府として涙あってしかるべしだということに考えております。
  433. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 赤字線の問題についてわれわれ社会党も実態調査をやったわけでございます。そうすると、どこへ行っても関係市町村は非常に大きな関心を持っておるわけです。自動車を使えばいいじゃないかという話もあるわけですが、バスと鉄道と比較してみると、ある線では、通学の場合を例にとると、汽車だったならば一カ月八百円のものがバスにすると三千八百円になる。それから通勤の場合は、片方は二千円なのにバスにすると五千円だ、こういう大きな開きがある。それとまた場所によっては、冬季、道路のほうが雪でもってまるっきり通れなくなる、頼みにするのは鉄道だけであるという場所もあるわけですね。こういう地域にとって赤字線を撤廃をするかしないかということは死活問題であろうと思うのです。これらの地域から企業ベースに合わないからといってあっさりと撤去してしまうということになると、いままでの投資というものはむだになるだけではなくて、地域住民にとってはきわめて重要な問題になってくると思うのであります。だから、これらの赤字線の存廃というのは単に採算上の問題だけではなくて、地域の開発とか、あるいは住民の死活問題ということを考えに入れてやらなければならないと思います。もしも国鉄財政ということだけを考えてやっていったならば、私は赤字線なんというものは大部分廃止しなけりゃならぬことになる。これは、一応は廃止すべきであるという結論を出されていることとは思いますけれども、もう一度これは活用するという方法を考える。それから財政上の問題についても政府考えるかあるいは地方自治体が考えるかどっちかにしなければならない。ただ私が感じたことは、どこもかしこもみんな反対の陳情書を出しておりますね、市町村が。そうすれば日本全国から集まった運輸大臣なりあるいは国鉄総裁あてのこの廃止反対の陳情書というものは山のようになっていると思う。山のようになっておれば、その責任者なり運輸省当局の人たちが、それはもうとてもとても全部見切れないということになっているのじゃないか、こういう気がするのですね。だからいっそのこと、これは一つの県の中だけ走っているローカル線、あるいは二つの県にまたがっている程度のいわゆる地方の赤字ローカル線というものは地方自治体の経営にゆだねる、地方自治体の経営の中でこれを処理していく、もちろん財政的な授助はこれは政府がしなければならないけれども、そういう形でやっていくならば、一々中央へ陳情に来なくてもいいし、それぞれの県でもって処理できるということにもなるのじゃないかと思うのですが、そういうような考え方について自治庁としてどのようにお考えになっているか。国鉄としてどのようにお考えになっているか。運輸省としてどのようにお考えになっているか。今後の赤字線の問題をどうするかということとかかわりがあるので、私はお聞きしたいと思います。
  434. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) まあそれはいわゆる公営事業として払い下げをして運営をさしたらどうかということでございますが、確かにそれは私は一案であろうと思います。まあそれはいまの国鉄赤字路線と直接の問題ではございませんが、いわゆる過疎対策として新しい私鉄に対する助成策までとっていることでございます。これは自治省と国がお互いに負担をして助成をしようという制度でございますから、これらの問題を勘案するときに私は確かに一案であろうと思いますが、実際上の問題として、はたしてそういうことを地方団体がやろうと言ってくることがあるだろうか、寡聞にして私はまだ聞かないのでございます。これは自治省側からもお答えがあると思いますが、一案であることだけは間違いがなかろうかと思います。
  435. 砂田重民

    政府委員(砂田重民君) 国鉄の赤字ローカルの八十三線の廃止の問題は、やはり地域社会に非常に大きな影響があることでございますから、先ほど国鉄総裁もきわめて慎重にこれをケースバイケースで考えていくというお話がございました。実は衆議院の地方行政部会でもこれはたいへん議論が先般あったところでございますが、その節にも国鉄当局からケースバイケースで地元公共団体とも十分の話し合いの結果決心をつけていくというお話がございました。私どもはやはりそれに期待をしていきたい。十分地方公共団体の意向をくみ取ってくださるような御意見でございました。自治省はどうかということでございますならば、自治省は地方公共団体側に立ちます。地方公共団体の意向、希望を十分国鉄当局なり運輸省なりに反映させていく努力を考えているのでございます。したがって、いま先生御指摘一つの方策については、私どもはまだ具体的には考えておりません。やはり当然地域社会に及ぼす影響も十分慎重に考慮もしてくださる、地方公共団体が苦しいさいふの中から納付金の今回の減額措置を講じましたのも、まさに国鉄の公共性を思えばこそでございます。そういう立場でケースバイケースで十分慎重に地方公共団体との話し合いが持たれると思いますので、それに期待をしていきたい、このように考えております。
  436. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 国鉄としての意見を申し上げますが、さっき瀬谷さんの言われたように、自治体が国鉄にかわって経営してくれると、こういうことになれば国鉄としては実にありがたき次第で、ぜひひとつこれを自治体にお渡ししたいと、こういうことに考えておりますが、これは事実なかなかむずかしい問題じゃないかということに私は考えます。しかし、むずかしい問題であれば、国鉄からいえばなおむずかしい問題でありまして、これは自治体としても自治省としていろいろ慎重に考えてもらいたい。いずれにしましても、この問題はいかに地方の人たちに対して重大であるかということについては、もう最近日を経るに従ってますます身にしみて考える次第でありますからして、国鉄としては単なる一ぺんの調査によってやるとかやらぬとか、実行するとかということは絶対に考えておりません。また、やるにしましても、御記憶願いたいのは鉄道をひっぺがしてそれでおしまいというわけじゃなくて、鉄道にかわるのに最も経済的な、便利な輸送機関をもってする。これが国民経済的に見て最もとるべき施策でございます。また、地方民からいっても、ちっともこれは不便じゃない。一日五回か六回の輸送しかやっていない鉄道によるよりも、一日に三十回以上も走る、そして駅の数も多いバスかなんかにするということがいかに便利であるか。さらに地方の赤字線に共通しての問題というのは、これは利用者の最大のものは通勤・通学者であります。かりにこれをバスにかえましても、そのバスによる通勤利用と鉄道による通勤利用ということに対しては、これはすでに例があるのでありますからして、ある年限を限って国鉄としてはその財源を負担する。急激に迷惑をかけることはしません。いずれにいたしましても、この問題については慎重にひとつ調査をいたして、最後の段階においては地方へ行きまして、地方の人たちとひざを合わして、ひとつ何とかして地方の諸君の御納得を得た上で決する。決するについては運輸大臣の許可を得るということでございますので、これは運輸大臣のほうにあらかじめお願いを申し上げておきます。
  437. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は今回の法案審議にあたって、最後に注文をつけたいと思うのですよ。国鉄の運賃というのは、いままで何回か上がりました。上がったけれども、運賃が上がっただけでサービスがよくなるということではないですね。そういう点はやはり国民にとって割り切れないと思う。ただ金を上げられるだけなんですね。この間の連休でもって非常に大ぜいの人が旅行したということは、あれはたまたまこの連休が安い運賃の最後じゃないかというように思ったからなんです。いまのうち乗らないと損だという心理が働いて、相当押すな押すなの人が旅行したようなことになったのじゃないかと思うのです。あれが連休の直前に上げられたならば、ちょっと乗るのがいまいましいような気がして、これは家でごろ寝してしまうとか、あきらめるとかいう気持ちも私は働くのじゃないか、こういうように運賃というのは国民生活に影響するところきわめて大きい。だから、われわれはあくまでも反対を主張してまいりましたけれども、議会政治のたてまえでもって、多数決でもってきめられるということになれば、われわれの反対は、これはなかなか通らないわけであります。この場合、運賃が上がったということになれば、上がったならば上がったなりの何か報いがなければ、私は国民感情として納得すまいと思う。いま通勤問題が非常に大きな問題になっております。過密過疎という現象が顕著になってきております。東京周辺の通勤事情というようなものは、いかに過酷であるかということは、まあ総裁もよく御承知のことだと思う。われわれも運輸委員会でもって過密過疎の調査も今回の審議期間中に行ないました。われわれが見て感じたところは、やはり国鉄としても責任を持ってこの処置をしてもらわなければいけないと思う。つまり超党派的にこれはひどいと、これは何とかしなければならないというような結論が出ている場所が何カ所かあるわけであります。これは一つの例にすぎません。しかし、それらの場所について直ちにその対策を講じ、改善を約束するということができるかどうかということを私は聞きたいと思う。  具体的に言うと通勤問題なんでありますけれども、通勤輸送なんというものは、私は去年の四十三年十月のダイヤ改正の際に、国鉄国民をだましたという感じを持つのです。これは今度の輸送ダイヤ改正でもって便利になりました、こういう広告をした。ところが実際にはちっとも便利になっていない。かえって前よりも不便になったという個所がたくさんあります。私もこの委員会でそのことを指摘したことがある。そうしてその指摘した問題については大臣もよく御存じだし、政府委員からもこれは手直しを考えますという答弁を得ている。それらの答弁というものがから手形に終わったのではわれわれとしては納得できない。だから、この通勤問題の解決ということに対して責任をもって当たるという気持ちがあるのかどうか、われわれが指摘した問題について責任をもってすみやかにこれの対策を講ずるかまえがあるのかどうか、その点について総裁からお答えを願いたいと思います。
  438. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 国鉄がいかに通勤輸送に対して努力をしておるかということは、これはもう瀬谷さん十分御承知のことだろうと思います。たとえば、その仕事には三十七年、三十八年、三十九年の三カ年なんというのは一年に百億ぐらいしか使っていない。ところが、第三次計画において四十年から四十三年の間に二千九百億を使っている。さらに四十四年から五十三年までに五千五百億を使うという計画で、いかに国鉄というものが損得なんというものは眼中に置かないで努力しておるかということは、この投資の額から見ても十分御承知のとおりであります。ただ問題は、この通勤輸送の改善をするためには、やはり輸送力をふやさなければならぬ。ところが、その輸送力をふやすところの工事というものは二年や三年ではどうしてもできません。その間にトレーンの車両の数をふやすとか、あるいはヘッドウエーの短縮をするとか、いわく何いわく何と、非常な改善をやっておるのでありますが、それ以上にお客さんがふえてにっちもさっちもいかなくなっているということで、いかに改善しているかということは、いかに多くの年々増加するお客さんを運んでいるかということで十分御承知のとおりで、これはしかし、サービスの改善以上に人間がふえるのですからして、サービスはよくなっておりませんけれども、しかし、量の点においては非常にこれは進歩して、かすに二、三年をもってすればこれはもう相当に国鉄の通勤輸送力というものはふえていく、改善は目の前にあると思う。まあ国鉄というものをその点は御信頼くださるようにお願いしておきます。
  439. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私が確約を求めたい、注文をつけたいと言ったことは、具体的にわれわれが現地の調査もした、それから委員会において指摘もした通勤問題等について、宣伝にもかかわらず実際はよくなっていないという点が多々ある、いままで指摘したことがあるわけでして、それらの点について責任をもって対処するかどうかということなんです。これは運賃が上がったけれどもサービスは依然としていままでと同じ、これでは国民は納得できまいと思う。それらの点について具体的なたくさんの問題がある。一々私は指摘をいたしません。時間もないのでありますから指摘をいたしませんが、それらの問題について責任をもってやるということを約束できるかどうかということを聞いているわけであります。
  440. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 国鉄の今後の問題について通勤・通学の問題は最重点事項でございますから、私は全力を投入してこれに対処していきます。特に瀬谷さんが何度も指摘されております東海道関係は、新幹線ができたために少々の緩和ができたが、東北線方面に問題が多いという点を具体的な事例を示されたことは私は十分承知をいたしております。今後これらの問題については全力をあげて国鉄に取り組ませるように、私の責任を十分果たしてまいりたいと思います。
  441. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 それでは大臣の約束でありますから、私はそれを信じたいと思います。  それから総裁もいままでの御答弁の中で、国鉄財政再建のためにいろいろなことを約束されました。非常に総裁の心意気としては私はりっぱであると思っております。不老長寿の注射でも打って、もう少し長生きをして総裁を続けてもらいたいと思っておるくらいなんでありますけれども、しかし、やはり問題は実行なんであります。ここでわれわれが決議をしたことあるいはまた指摘をしたこと等について、やはり責任を持ってこれを実行するということを約束をしていただきたい。それができるならば、私は国民も一るの救いがここに得られるのじゃないかという気がするわけであります。その点を再度総裁のほうから決意の点を表明していただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  442. 石田禮助

    説明員(石田禮助君) 瀬谷さんのおっしゃることはよくわかりました。ひとつ今後とも、反省しつつ最大の努力をいたしまして、御期待にそむかないようにいたしたいと存じます。
  443. 岡本悟

    委員長岡本悟君) これより、二案を一括して討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。討論時間は各自十分以内に願います。木村君。(田代富士男君「発言があります、最後に一言。」と述ぶ)木村君。(田代富士男君「委員長、最後に一言、午後からの関係につきまして一言一言お願いします、委員長。」と述ぶ)木村君。(田代富士男君「最後に一言。」と述ぶ)木村君。(田代富士男君「最後に。私は午前中の委員会においてもちゃんと言っているのです。」と述ぶ)木村君。(田代富士男君「長い時間とりませんが、木村先生、一言だけ。長い時間とりませんから、一問だけお願いできませんか、委員長。」と述ぶ)田代君、一問に限って。
  444. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ、一問に限ってと、私もそのように、長く時間をとろうと思っているわけじゃありません。たびたび私が発言をすれば、速記をとめたり、そのようにまた立つとか何とか言われますから、すわってやります、私は。で、私は委員長にお伺いしたい。一つは、きょういま討論に入ろうとされる。木村委員が、この委員会の現在行なっている質疑補足質疑でないですねということを確認されました。委員長補足質疑でないということをわれわれの前で確認されたはずです。私もその点の一、二の疑問がありましたから、今回のその点は補足質疑でないですね、そのように私も確認をし、去る二十四日は、ちょうどいまの時間よりも少し前の時間でございましたが、質疑打ち切り動議提出がなされまして会場が混乱したことは、岡本委員長もよく御承知のとおりじゃないかと思います。そこで私が聞きたいことは、この委員会補足質疑でないということでございます。私は昼間、あの質疑打ち切り動議が有効であるか、あるいは無効であるかという点につきましても、確認を入れまして、委員長お尋ねいたしました。そのときに岡本委員長は、私は議長あっせんに従ってやっております、その動議が有効であるか有効でないか、さだかでないままに、このようにやっております、その運営については一切理事会で取りきめました。それによってやっていらっしゃる、そういうことでございました。そこで私は、岡本委員長がこの質疑補足質疑でないということを確認された。この前の質疑打ち切り動議が有効か無効であるかということも決定せずに、そのまますんなり入った委員会である。さすれば、私は、事務当局の人に、呼びましていろいろ尋ねてみましたが、正式に言うならば、この委員会は終了できません、終了する方法がありません。私は、運輸委員の一人として、終了することのできない委員会がどうして終了されるのか、心配のあまりに言っているのです。厳密に言えば終了できません。終了できるならば終了できるという方法を示していただきたい。  私が最後に三百というのは、その一言です。その一言も封じられようとしました。このように委員会をりっぱに終わる方法があるならば――しかし国会のルールの上からいくならば、この委員会は終了できないのです。このことに対して、岡本委員長は、どのようにこの委員会を終了されようとなされているのか。私は、あえて時間を引き延ばそうと思って言っているわけじゃありません。先例もいろいろ聞きました。こういう先例があるのか、このようなことをやってどのように終わったのか、私もさんざん調べていろいろ検討いたしました。そこで、最後に私はそれを聞きたいと思うんですが、岡本委員長はいまも封ずる、だが、私の質問は簡単です。いまのままであるならば運輸委員会、きょうのこの会合です、きょうのこの会合は終了できません。そのできないこれをどう解決するのか。補足質疑でないということは委員長も申されたはずです。私は、先例にもありませんし、もしもこれでやるならば、参議院先例として後に残っていくでありましょうから、そのことをちゃんとはっきりと御答弁願いたいと思います。
  445. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 今朝から御答弁申し上げておりますように、あくまで議長あっせんによって質疑を続行したわけでございます。  質疑を終了いたしました。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。  木村君。
  446. 木村美智男

    木村美智男君 私は日本社会党を代表して、今日まで本委員会において審議を重ねてまいりました国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案並びに日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案に対し、反対の討論を行なうものであります。  反対理由を述べる前に、今回の国鉄運賃値上げという国民注視の重要な議案を審議するにあたって、佐藤総理がわずか一回出席しただけであること。また、慎重審議の継続の過程において与党が突如として質疑打ち切り動議を提案し、議事を中断せしめたことは議会制民主主義を否定する暴挙であり、このことがかえって議事運営の円滑を欠く結果となったことはきわめて遺憾であると思うのであります。  次に、反対理由を申し上げます。その第一は、国鉄運賃の値上げは消費者米価と並んで物価値上げを刺激し、物価上昇ムードに一そうの拍車をかける点であります。すなわち、国鉄運賃の値上げを認める以上、これと競合する私鉄、バス並びに三年来申請の出ているタクシー代の値上げを押えることがいかにむずかしいかは、われわれの経験によっても明らかであり、政府自身も極力これを抑制することは言っておりますが、はなはだ自信のない態度である。いまや国鉄運賃の値上げを口実にして、日用品あるいは食料品など値上げムードの中の便乗値上げを誘発することによって、四十四年度の物価上昇率を五%以内にとどめることは絶望と言わなければならないのであります。本来、公共料金こそは政府が関与し、したがって政府が税の自然増収など財政措置を講ずることによって、一般的な物価の値上げを押え得るにもかかわらず、あえて大衆課徴による値上げを行ない、利用者たる国民の負担によって財源調達をはかろうとすることは、政府主導型の物価値上げの典型というべきもので、佐藤内閣の物価安定という公約の違反であり、国民を欺瞞するものであって、われわれは断じて納得できないからであります。  反対の第二は、国鉄の赤字は運賃が安いからではないという点であります。国鉄は経済成長に見合う輸送力増強のために毎年四百億近い設備投資をしていますが、政府はこれに対し、今日までほとんど財政援助を行なわず、もっぱら運賃収入と高利の借り入れ金によってその経営を行なわせてきた結果、その利子負担は、年間千五百億円にのぼっているのであります。このように赤字の主要な原因は、借金政策による資本費の負担の増大にあるのであります。  一方政府は、公社、公団など、政府関係法人に対しては、二兆円近い出資もしくは財政援助をしているにかかわらず、国鉄への出資はわずかに八十九億円にしかすぎないのであります。また、定期割引き、農林物資の割引きなど、過大な公共負担を背負わせ、本来、国が行なうべき政策を国鉄に肩がわりさせながら、財政措置を全く顧みなかった政府の怠慢によって今日の赤字が累積されてきたのであります。したがって、その責任は政府にあるにかかわらず、これを国民大衆に転嫁し、運賃値上げによってつじつまを合わせようとする不当性については了解できないからであります。  第三の反対理由は、諸外国の鉄道事情に徴しても、最近の交通事情の変化によって、鉄道経営の多くは赤字となっているのであります。しかしながら、イギリス、フランス、西ドイツ等においては、その赤字の大半を政府の補給金によって処理しているのであります。この点からも、ひとりわが国だけが政府補助を切り詰め、そのかわりに一般大衆や勤労者の負担に押しつけていることは納得できないのであります。  反対の第四は、物価上昇はもとより、国鉄運賃の値上げによってどの階層に最も影響を与えるかについて、あまり重視されてないうらみがあることであります。多数の家族をかかえる低所得層、恩給や年金をたよりに細々と生活をしている人たち、通勤費の会社負担を受けられない中小零細企業に働く勤労者、生活保護世帯、これらの人々に対して何らの救済措置もないことは、大の虫を生かすために小の虫は犠牲になれという血も涙もない官僚的な財政至上主義を露呈したもので、断じて納得ができないのであります。  反対の第五は、国鉄財政再建十カ年計画は、総合的な交通政策を持たず、かつ公共負担をはじめとする国鉄財政圧迫のネックになっている公共性と独立採算制という矛盾した経営のあり方を、抜本的に改善することなく、なおかつ政府自身が経済社会発展計画の手直しを行なわない不安定な展望のもとに立てられている点であります。  最後に、今回の国鉄運賃値上げは、運輸大臣の諮問機関である国鉄財政再建推進会議意見書によれば、今後四十八年と五十二年の二回の運賃値上げを予定し、しかもローカル線の廃止や小駅の廃止を計画しておりますが、経済社会発展計画すら最低の手直しをしなければならない情勢のもとで、しかも国民へのサービスを切り下げる運賃値上げをするという、このような措置によってほんとうの国民のための国鉄再建はおぼつかないと思うのであり、私は政府がすみやかに社会経済発展の将来を展望した総合交通政策を確立し、日本社会党が提案をしている国鉄施設整備特別措置法案を骨子とする再建整備を、国の負担と援助を主体としてこれを断行する以外に真の国鉄再建の道はないと確信をし、両法案に対して反対であることを明らかにして、討論を終わります。(拍手)
  447. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 谷口君。
  448. 谷口慶吉

    ○谷口慶吉君 私は自由民主党を代表して、ただいま議題となっている国鉄関係二法案に対し、賛成意見を申し述べたいと存じます。  国鉄財政は近年、運輸収入の伸び悩み、資本費の増高、人件費の増大等によって急速に悪化の度を加え、このままに推移すれば、遠からずして破局的な状態に至るものと見られております。もしそのような事態に立ち至ったとしますれば、国鉄業務の運営に重大な支障を生じ、このためわが国の交通に大きな混乱を招き、ひいては、国民経済と国民生活のこうむる損失は、まことにはかり知れないほど重大なものになるものと思われるのであります。  このような国鉄財政の現状にかんがみますと、国鉄をして将来ともその使命の遂行に遺憾なきを期せしめるためには、すみやかに現在の国鉄財政の行き詰まりを打開する抜本的な再建策を確実に推進することが強く望まれる次第でありまして、国鉄財政再建推進会議意見書の趣旨にのっとって提出されたただいまの国鉄関係二法案は、まさにこの要請にこたえるものと申すべきであります。  率直に申しまして、いままで国鉄に関してとられてきた諸施策は、ややもすればびほう的、部分的なものにとどまるうらみなしとしなかったため、十分にその成果をあげ得ずして、結局今日の事態を招いたとも考えられるのでありますが、このたびの二法案は、その反省の上に立って、国鉄財政再建を、政府国鉄一体となって、全国民の協力を得つつ、総合的かつ計画的にこれを推進しようとするものでありまして、政府としては、このため、わが国の財政の現状から見て思い切った財政援助措置を講ずることといたしておるのであります。このような抜本的な国鉄財政再建施策の実施によって、国鉄は今後十年間の再建期間中に着実に財政の健全性を回復することが期待される次第であります。  次に、国鉄運賃の改正につきましては、昨今の物価事情等から見ましても、できることならこれを行なわずに済ませたいものであることはもとよりでありますが、貴重な国民的財産である国鉄を破局から救うためには、この際、例外的な措置として国民に最小限度の負担をお願いすることは、まことにやむを得ないものと申すべきであります。  今回の国鉄運賃の値上げが消費者物価に及ぼす影響は〇・一八%という僅少なものでありますが、それとても今後政府の政策運営がよろしきを得ますならば、国民の消費生活にさしたる影響を与えずに済むものと思われるのであります。  また、運賃の値上げにかえて、国の大幅な財政援助をもってすべきであるとの論議も多く聞くところでありますが、国の財政援助と申しましても、結局は国民の負担する税金からこれを支給することになりますので、国鉄を利用する方のために、直接の受益者でない一般国民がかわってその運賃を負担することになり、利用者負担の原則に反するばかりでなく、わが国の財政事情全般から見ましても、その論にはにわかに賛成しがたいのでございます。  以上申し述べましたとおり、このたびの国鉄関係二法案により、国鉄財政再建に向かって力強い一歩を踏み出すことになったわけでありますが、その実現のためには何と申しましても、まず国鉄みずからが姿勢を正して、国鉄再建に寄せる国民の期待にこたえるよう懸命の努力をすることが肝要であります。今後、近代的経営体制を確立するための合理化対策をはじめとして、財政再建の具体策の実施にあたっては、容易ならざる問題が数多くあることと思われますが、国鉄関係者は一致協力して、その具現につとめなければならないと思います。そうしてまた、このことなくしては、国民の真の協力を期待できないものであることを深く銘記すべきでありまます。  また、政府においては、すみやかにわが国の総合的な交通政策を確立し、その中において国鉄の果たすべき役割りと将来の方向を明らかにするとともに、その使命遂行のために必要な制度的あるいは財政的措置について、今後さらに検討を進めるべきものと考えます。  以上、政府国鉄に対し、今後一そうの努力を要望しつつ、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  449. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 三木君。
  450. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は、公明党を代表して、国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案並びに日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案に対しまして反対の討論を行なうものであります。  反対の第一として、当初の慎重審議という約束をひるがえし、十分な審議が尽くされない段階で質疑打ち切りという良識の府としての立場を破棄する暴挙が当然のごとく行なわれたのであります。わが党はあくまでも、最重要法案であり、国民生活を圧迫する要因であるだけに、実質審議を尽くすべきと主張してまいりました。にもかかわらず、多数を頼みとする政府・自民党の姿勢は、国民の切なる要望を踏みにじる国民不在の何ものでもないと断ぜざるを得ず、まことに残念であり、遺憾に思うのであります。さらに、審議を差し戻すに至った時点においてさえも、質疑の打ち切りをなした事実を見ても、国民の声を代表する正常なる審議は無視されたものであります。  第二に、今回の審議にあたり、政府が唱えられております三位一体論は、その実質を見るならば、利用者が再建資金の半分以上を背負わされるということであります。現在、国鉄が本来の使命とする安全、確実かつ便利な輸送サービスを低廉な運賃で提供云々ということは将来の夢としか考えられない実情にもかかわらず、三位一体などということで安易に利用者の負担をしいることは断じて納得いかないのであります。国鉄のラッシュ時における通勤輸送対策を見ても、それがいかに解決困難な問題であるかは、これまでの値上げ実施後の経過を見ても明瞭であります。通勤着の苦痛は非常な過重労働ともいえるものであります。通勤地獄はいつまでもつきまとい、その上に値上げ地獄をおおいかぶせるようなものであります。  第三は、今回の値上げが、さらに国民生活に与える影響は重大な問題であります。政府が唱える消費者物価への影響〇・二%程度というものは、あくまでも数字の魔術にしかすぎないものであり、公共企業という性格から、値上がりムードを助長し、私鉄、バス、タクシー等は手ぐすねを引いておるというのが現状であり、公共料金と名のつくものは、すべて足並みをそろえ、その他諸物価の上昇を大きく誘引してきているのが従来の経過であります。年頭における佐藤総理の施政方針の中の最重要課題とされていた物価問題をみずからの手でくつがえしてしまった責任は重大なものであります。たとえば、私鉄運賃値上げは、断じて認めないという段階から短期間のうちに他物価に影響しない程度に検討するという段階へと変転してきた事実は、物価抑制ということばそれ自体机上の空論でしかあり得なかったものと断ずるものであります。私鉄大手十四社の値上げ申請、全国通運業界の料金値上げ等を考えるとき、国民生活を一そう不安におとしいれる結果を招来するものと懸念するものであります。  第四に、国鉄内部における企業努力、経営姿勢の抜本的改善が放置されているという問題であります。わが党が指摘してまいりました国鉄用地のずさんな管理及び電気料をはじめとする国鉄の資材管理・処分、また民衆駅等における不当な用地貸し付け、さらに国鉄官僚の天下り等は、国民が最も怒りを覚えるものであります。運輸大臣及び国鉄総裁もこの点については十分に認識されたことと思います。これらの問題を放置して、運賃値上げによって国鉄再建の方途を求めようとすることは、あまりにも安易な考えであると同時に、国民が納得できないのは当然のことであります。  反対理由の第五として、政府国鉄に対する財政措置の無責任きわまりない態度であります。独立採算制をたてまえとするがゆえに、すべて営業収入、運賃収入によってその赤字財政は解決されるべきであるとする政府考え方は、諸外国におけるあくまで国鉄国民全体のものであるとする考え方をどう理解しているのでありましょうか。フランス、西ドイツ、英国等は数千億もの援助を行なっているのが現状であります。国鉄当局が述べているとおり、鉄道創業以来今日まで約三兆円の資産を形成した大部分の財源は、すべて運賃収入でまかなってきたことを明確にし、いかに国民大衆が国鉄を育てあげてきたかということであります。さらに、政府が大幅にその答申を取り上げたと言われる推進会議でさえ、国鉄は公共的性格のゆえに本来の使命を行なうためには国が援助すべきであると主張しているのであります。これらの点についてどの程度国民の側に立っての検討がなされたかは、はなはだ疑問であります。  第六に、政府の総合輸送政策の欠除ということであります。国鉄がいかに合理化、近代化を叫んだとしても、これでは国民経済社会における使命遂行をなし得ることができないのは当然であります。交通運輸について一元的企画及び行政の体制を確立し、長期展望に立っての効率的総合輸送体系の形成をはかることこそ急務であると考えるのであります。さらに将来における明確なるビジョンを国民の前に示し、国民生活に多大の影響を与え、物価上昇の要因を除去すべく、政府並びに国鉄当局に対し、より一そうの努力を傾倒されるように要望して、反対の討論を終わるものであります。(拍手)
  451. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 中村君。
  452. 中村正雄

    ○中村正雄君 私は民主社会党を代表して、二法案に反対いたします。  国鉄財政再建推進会議国鉄再建に関し政府に答申した意見書は、危殆に瀕した国鉄財政再建することについて総合的な一つの方策として、その価値を認めるにやぶさかではありません。特に再建の柱として政府国鉄、利用者の三者の協力を明らかにしたことは、従来の国鉄企業運営のあり方について一歩前進せしめたものだと考えます。私が反対いたします理由は、現時点において国鉄利用者に協力を求めること、すなわち運賃の値上げが妥当でないという点であります。危殆に瀕した国鉄財政を立て直すことは一日もゆるがぜにすることはできません。ぎりぎりのところまできておると思います。これを再建するについて三者の負担協力によってなすことも、国鉄を公共企業体の形において運営する限りにおいては正しいと思います。しかし、現在の政治の面におきまする最重点施策は、物価の安定であります。消費者物価の抑制であります。これは政府自体も認めております。今国会におきまする佐藤総理の施政方針演説の中にも、最重点施策として述べられておることによっても明らかであります。今回の運賃値上げが家計に与えます影響はわずか一%足らずだと説明されております。数字としてはそのとおりでありましょう。しかし、物価は経済法則のみによって上下するものではありません。心理的な影響が大きな要素であることは、過去の事例に徴しても明らかであります。国鉄運賃値上げは必ず消費者物価上昇の導火線となると思います。幸いに昨年は戦後最大の好況に恵まれて、税の自然増収も一兆円をこえております。今回計画されておりまする国鉄運賃の値上げ総額は、年間わずか九百億円前後であります。この際、運賃値上げはここ数年見送って、その間の不足額は国の財政措置によってまかなうのが正しい政治の姿勢だと私は考えます。私がこの法案に反対いたしまする根本の理由はこれでございます。  以上によって討論を終わります。
  453. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 市川君。
  454. 市川房枝

    ○市川房枝君 ただいま議題となっております国鉄の運賃値上げ及び財政再建促進特別措置の二法案に対し、私は、政府当局及び国鉄当局の苦心のあとは認めますが、国民立場として不満、心配があり、賛成いたしかねます。  私は、国鉄の問題に対してはしろうとでありますが、この委員会での各委員政府及び国鉄当局との質疑や、私自身の質疑を通じての感想を一言で申し上げますと、国鉄が気の毒だということでございます。もっとも、国鉄といいましても、前には感心しないいろいろなことがありましたし、経営も親方日の丸でルーズな点があり、国鉄の今日の苦境はその結果と思われます。しかし、前総裁の十河さんの時代から幾らかよくなり、特に現総裁の石田さんの献身的な御努力には国民一般が敬意を表しております。しかし、その石田総裁のお骨折りにもかかわらず、前からの習慣、惰性、既成事実等々があって、なかなか困難なようにお見受けします。たとえば、多額の公共負担を押しつけられながら、しかも独立採算制を強制され、昨年までは政府は全然財政負担をしなかったのであります。それだけでなく、好況時代にいわゆる政治路線として敷設せられた多数の赤字線を経営させられております。もっとも、その赤字線の最もひどい八十三線については、国有鉄道諮問委員会の答申に従って、廃止ないしはバスヘの転換を計画していられるようでありますが、これを実行することはなかなか困難だろうと思います。その上、現在もなお鉄道建設公団に赤字線を建設させ、これを国鉄に強制的に経営させて赤字を累積させている実情でございます。これらも明らかに公共負担でありまして、政府が当然財政的援助をなすべきだと思いますのに、それをしておりません。その結果が国民にしわ寄せされ、運賃の値上げとなったものと思われるので、納得できません。それに、政府は、運賃値上げが家計や一般物価に及ぼす影響を過小評価しており、一般国民ははなはだしく不満であります。  再建促進特別措置法案も、公共負担に対する政府の現在の考え方では、はたして再建できるかどうか疑問で賛成できません。しかし、この法案は多数決によってやがて成立するでありましょうから、この際、直接国民と接触される国鉄一つ二つの注文を申し上げておきたいと思います。一般国民は、値上げされても乗らなくてはならないのでありまして、この際せめて乗客に対してのサービスをよくしていただきたい。これを強く総裁、副総裁にお願いを申し上げておきます。  なお、最近一般国民が困っている問題は、しばしば行なわれておる国鉄のストの問題であります。これはなかなかむずかしい問題でございますが、そういう事態が起こらないように、ひとつ国鉄当局の御努力を願いたいと思います。  これをもって私の反対討論といたします。
  455. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案を一括して問題に供します。二案に賛成の方の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  456. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 多数と認めます。よって、二案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定しました。
  457. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は、ただいま可決されました二法案に対し、自民、社会、公明、民社、第二院クラブ共同提案の附帯決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。
  458. 岡本悟

    委員長岡本悟君) ただいま述べられました瀬谷提出国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法案に対する附帯決議案を議題といたします。  瀬谷提出の二案に対する附帯決議案に賛成の方の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  459. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 全会一致と認めます。よって、瀬谷提出の二案に対する附帯決議案は、本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、原田運輸大臣から発言を求められておりますのでこれを許します。原田運輸大臣
  460. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) ただいまは慎重御審議の結果御採決をいただきまことにありがとうございました。また、決議されました附帯決議の内容につきましては、その趣旨を十分尊重し誠意をもって実施に当たる所存でございます。
  461. 岡本悟

    委員長岡本悟君) 審査報告書の作成は、先例により、委員長に御一任願います。  本日はこれにて散会いたします。    午後十一時二十八分散会