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1969-03-04 第61回国会 衆議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月四日(火曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 櫻内 義雄君 理事 田中 龍夫君    理事 塚原 俊郎君 理事 中野 四郎君    理事 八木 徹雄君 理事 大原  亨君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    植木庚子郎君       臼井 莊一君    大村 襄治君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       倉成  正君    小坂善太郎君       重政 誠之君    田澤 吉郎君       田中伊三次君    竹内 黎一君       中川 一郎君    灘尾 弘吉君       丹羽 久章君    野田 卯一君       野原 正勝君    橋本龍太郎君       福家 俊一君    福田  一君       船田  中君    松浦周太郎君       松野 頼三君    三原 朝雄君       湊  徹郎君    角屋堅次郎君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    高田 富之君       楯 兼次郎君    楢崎弥之助君       畑   和君    山内  広君       山中 吾郎君    麻生 良方君       塚本 三郎君    永末 英一君       吉田 賢一君    浅井 美幸君       大橋 敏雄君    北側 義一君       田代 文久君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 西郷吉之助君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 長谷川四郎君         通商産業大臣  大平 正芳君         運 輸 大 臣 原田  憲君         郵 政 大 臣 河本 敏夫君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 坪川 信三君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       野田 武夫君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 有田 喜一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君  出席政府委員         内閣官房長官 木村 俊夫君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         人事院事務総局         職員局長    島 四男雄君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         警察庁警備局長 川島 広守君         行政管理庁行政         管理局長    河合 三良君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      麻生  茂君         防衛庁経理局長 佐々木達夫君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         経済企画庁総合         開発局長    宮崎  仁君         法務政務次官  小澤 太郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省経済協力         局長      上田 常光君         外務省条約局長 佐藤 正二君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省主計局次         長       船後 正道君         大蔵省理財局長 青山  俊君         大蔵省国際金融         局長      村井 七郎君         文部省大学学術         局長      村山 松雄君         厚生大臣官房長 戸澤 政方君         厚生省環境衛生         局長      金光 克己君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省社会局長 今村  譲君         厚生省児童家庭         局長      渥美 節夫君         厚生省保険局長 梅本 純正君         厚生省年金局長 伊部 英男君         祉会保険庁長官 熊崎 正夫君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省農政局長 池田 俊也君         農林省畜産局長 太田 康二君         食糧庁長官   桧垣徳太郎君         通商産業省企業         局長      大慈彌嘉久君         運輸省鉄道監督         局長      町田  直君         運輸省自動車局         長       黒住 忠行君         電気通信監理官 浦川 親直君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君         建設省計画局長 川島  博君         建設省都市局長 竹内 藤男君         建設省道路局長 蓑輪健二郎君         建設省住宅局長 大津留 温君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         専  門  員 大沢  実君     ――――――――――――― 三月四日  委員臼井莊一君上林榮吉君、小坂善太郎君、  橋本龍太郎君、福家俊一君、神田大作君、  永末英一君、正木良明君及び松本善明辞任に  つき、その補欠として大村襄治君、中川一郎君、  田澤吉郎君、丹羽久章君、三原朝雄君、吉田賢  一君、麻生良方君、北側義一君及び田代文久君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員大村襄治君、田澤吉郎君、中川一郎君、丹  羽久章君、三原朝雄君、吉田賢一君及び北側義  一君辞任につき、その補欠として臼井莊一君、  小坂善太郎君、上林榮吉君、橋本龍太郎君、  福家俊一君、塚本三郎君及び浅井美幸君が議長  の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和四十四年度一般会計予算  昭和四十四年度特別会計予算  昭和四十四年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十四年度一般会計予算昭和四十四年度特別会計予算昭和四十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑の通告があります。順次これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、締めくくり総括質問をいたしたいと思います。序論、各論といきたいところですが、きょうは締めくくりですから、ひとつずばりと本論に入っていきたいと思います。  第一は、大学問題についてでございますが、佐藤総理は、解散含みの政局に対処するために今国会大学正常化のための、言うなれば大学秩序法案、こういう法律案を出せ、こういうことを幹事長、党三役を通じて御指示になったということでございますが、その真意を最初にお伺いをいたします。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま解散含み云々ということがありましたが、別にことばにこだわるわけではございません。これは別に解散関係があるわけじゃありませんが、いまの大学問題、これはまことに、国民として、私は、いわゆる大学自治というだけで事柄は済まないように思うんです。いま管理能力がはたしてあるかどうか、かように私ども考えますと、子供を持つ親はもちろんのことです、また受験生そのものも、これはたいへんなことだと思うのですが、それよりももっと国家的な見地に立って、この状態をとにかくほっておくわけにはいかないじゃないか。政府責任、これはもう最高責任者でございますから、そういう意味でこの問題とひとつ真剣に取り組もう。もちろん、たびたび申し上げますように、政府は、中教審答申を得て、しかる上で所要の手続をとろう、かように申しておりますが、その前に、かようには申しましても、当然政党は今日の国内問題の最も重要な課題、これと取り組むのが政党態度だ、かように私は思いますので、十分ひとつ検討してくれろ、こういうことは申しました。しかし、それは解散とは別に関係ございませんので、どうかその点は誤解のないようにお願いしたい。
  5. 大原亨

    大原委員 解散を避けるということではないわけですが、まあ、あと逐次申し上げますが、従来佐藤総理坂田文部大臣は、本会議予算委員会、各委員会におきまして、大学管理法案は、いわゆる大学に関する特別立法は、これはやはり党派を越えて、国民的な支持を得るような方向で処理をしたい、そのためには中教審答申を待って法律をつくる、こういうお話でございました。しかし最近の様子を見ておりますると、数日前に総理総裁から御指示があって、このことが進んでおる、こういうふうに私ども承知をいたすわけですが、このことは国会における審議経過を無視して、そしてこのことを処理しようとしておられるのではないか、こういう疑念を持つわけです。教育問題は、少なくとも目先だけの党略的な立場からこの問題を処理すべきでないことは、いままでしばしば総理言明になっておったわけですが、その点についてもう一度重ねて見解を明らかにしてもらいたい。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君ももちろん予算委員会理事もしていらっしゃるし、この問題の取り扱い方についてはよく御承知のことだと思います。文教委員会においては、もうすでに各党円卓会議などを開き、この問題と取り組もうじゃないか、こういうことでいろいろ掘り下げておるように聞いております。また、私どものほらは、お尋ねにお答えするように、いつも大学自治、また学問の自由、これを尊重していかなきゃいかぬ。まず第一の、管理者において適当なる処理が望ましいのだ、また政府政府として、中教審にただいま諮問しているから、成案を得るまでとにかく大きな期待をかけておるんだ、管理者責任において問題は片づくことに期待をかけておる、かようにいままで申してまいりました。それはもうそのとおりであります。  しかしながら、私は別に各政党立場でこの問題に触れるな、こういうことを言っておるわけじゃありません。おそらく大原君もいまお話がありましたが、社会党社会党として、当然この問題とは取り組んでいらっしゃると思います。公明党は、さきに試案を出される、あるいは民主社会党一つの案を持たれる。これはもう政党として、こういう大きな国内問題に取り組まれるのは当然なことだと思いますね。私は、そういう意味で、それぞれの政党がそれぞれのものを考えること、これは私はいいことだと思います。しかし問題は、いま言われますように、こういうことはほんとうに政党政派を越して、そして一つ結論を得て、国民のための教育制度ができればこれにこしたことはございません。ございませんが、いまの暴力学生なりあるいは民青なり等考えると、中立であるべき学園がやや政治色を帯びてきた。政治活動の場に変わりつつある、こういうことを考えると、どうも中教審答申を急いで出してくださいと言っただけでは、責任は果たせないように思います。また、管理者、ひとつしっかりしてください、政府が必要なる助言はいたしますと言っただけではどうも責任を果たしたとはいえない。やはり国民期待するものは、こういう際にこそ、政党政党らしく本来の政治と取り組むべきじゃないか。これが私は国民の大多数の御要望だと思います。したがいまして、別にいまの各党の話し合いを捨てたとか、あるいはそういうものを拒否する、こういう態度ではございませんが、まあそれぞれの政党がそれぞれの政党立場において問題を検討すること、これはひとつ御了承をいただきたい、かように思います。
  7. 大原亨

    大原委員 新聞報道やその他一致して指摘しておる点を私は申し上げたわけです。私ども承知いたしておる点を申し上げたわけですが、私は、解散というものは、当然に、沖繩とか安保とか、物価とか税金とか、大学問題、これらの問題を含めて重要な政治課題について国民政治に参加する機会を与える、保障する、こういうことで行なわれべきものであって、一つの局面だけをとらえて、しかも党略的にとれを取り上げるというふうなことは、これは混乱を拡大するものではないか。少なくとも沖繩問題焦点として、日本安全保障問題を頂点として、国民生活や切実な諸問題、大学問題を含めてこれは私ども国民の信を問うということが正道ではないか。六十年安保のときに、あなたのおにいさんは――まあわれわれが十年前のことを振り返ってみると、非常な混乱におちいったときに、解散機会を失しられて退陣をされたことがある。やはりそういう大きな政治課題は、主権者が参加する道を開くということが議会政治信頼を高める、政治不信を払拭する、こういうことであると私どもは思うわけです。ですから、私どもはそういう点で、解散問題に対してこの際そういう政治課題中心として国民が参加する道を開くべきである、こういう点について総理大臣見解を明らかにしてもらいたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 突然、解散論に変わりましたが、ただいまの御意見は、大原君の御意見としてよく伺っておきます。私は、この機会に、私の解散についての考え方を明確にする考えはございませんが、ただいまのお考えは、大原君の御意見としてよく伺っておきます。
  9. 大原亨

    大原委員 まあ申し上げたいことは、沖繩では繰り返し繰り返し白紙と、こういう白紙ですよ、もう何十回、何百回言われたわけです。言うなれば、沖繩の問題は日本安全保障に深いかかわりがあるわけですが、この問題について国民大多数の意思が表明されておるにもかかわらず、それを基礎とした外交をされない。つまり白紙ということで、言うなれば国民の目をふさぐというか、欺くというか、そして大学問題に焦点をすりかえてやるというふうなことは、今日の議会政治を守る道ではない、こういうことを私は重ねて申し上げる。これは何もこのことを避けて通るということでなしに、お互い政党人とし、議会人として、議会政治の権威を高める、こういう意味において私は申し上げておるわけでございます。この点につきましては、ひとつ総理大臣から重ねて所信を明らかにしてもらいたい。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでたびたび解散問題について各党からお尋ねがございました。いわゆる大学問題のない際でございますね。その際にいつも申しましたのは、私はただいま解散考えておらない、こういう話でいままでずっと通してまいりました。また、今日のこの大学問題につきましても、私自身は解散考えておらない、こう言ってはっきりお答えができるのです。大原君からいまいろいろお話がございまして、解散をするならこういう問題で取り上げちゃいかぬぞ、こういう御注意もございますが、なおさら、ただいま私の考え方解散考えておらないことを重ねて申し上げておきます。
  11. 大原亨

    大原委員 総理は私と意見が一致したようなことを言われるのですが、そうじゃないのです。沖繩というふうな、あなたは国民意見を背景にして外交をやらなければならぬということを口先では言われるわけですよ。ですから、沖繩とか日本安保とか、そういう安全保障にかかわる問題、日本の独立にかかわる問題、こういう問題を中心としながら政策を明らかにして解散すべきである、そういうことを避けて通ると、議会不信を招き、結果としては暴力を肯定することになる、それは議会政治自殺行為である、こういう点を私は申し上げておるのです。これは六〇年安保のときの経験を引き合いに出しまして申し上げたのでありますが、私はその点だけを指摘をしておきまして、次にまいりたいと思います。  第二の問題は、これは各論からまいるわけですが、二年則前昭和四十二年の八月の国会におきまして、非常に大きな問題になりました健康保険臨時特例に関する法律の問題を思い起こすわけでございますが、今日高度成長政策のもとで、たとえば公害とか交通戦争とか、非常な情勢の激変があるわけです。たとえば国民疾病構造を見てみますと、半分は原因が自覚されないし、わからない病気であるといわれておるわけであります。これは、精神病とか神経系統病気等もあるわけですが、そういう疾病構造も、経済の変動に伴うて非常に変わっておるわけであります。その中で、医療費も非常に増加をいたしてまいりまして、この中を分析いたしましても、たいへんなことでございます。  私は最初にお伺いをしたい点は、二年前のあのときに、健康保険臨時特例に関する法律は、政府の施策の貧困を被保険者患者の犠牲に転嫁するものである、こういうことでその当時私どもは反対をいたしましたが、結果といたしましては、二カ年の時限立法として通ったわけであります。国民の命と健康にかかわる医療保障の問題について、その後政府はどのような取り組みをしてきたのか、こういうことであります。佐藤総理はどのようなイニシアチブをとってこの問題の解決に当たってこられたか、そういう点をまずお伺いをいたします。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 二年前の健康保険問題につきましては、私ども社会党の皆さんとともどもにたいへん苦しい思いをしながら、ようやく時限立法ができた。その時限立法の期限ももう来ようとしております。したがいまして、この問題は、私どもがどうしても片づけなければならない問題だ、こういう意味関係者ともいろいろ検討もするし、また、関係審議会等も督励いたしまして、早く結論を出すようにと、あらゆる努力をしてまいりました。また今日もその努力を続けております。  私が申し上げるまでもなく、大原君も御承知のように、その間には新しいいろいろな変化もあります。これは二年前から始まったわけじゃありませんが、最近の疾病構造、これはたいへんな変化もあるし、その疾病構造変化がなくとも、医療問題というものは簡単なものじゃない。非常に社会的な複雑な問題であります。ただ政治的な問題だけじゃありません。そういう意味で、まだなかなか結論が出てきておらない。そういうところでただいま苦心しておる最中であります。その詳細につきましては厚生大臣からお聞き取りいただきます。
  13. 大原亨

    大原委員 抜本改正につきましては、健康保険保険制度の側面からだけ取り上げたのでは解決できないということは、これは全部一致した考え方であります。いままでの国会議事録を調べてみますと、佐藤総理は、昭和四十三年に抜本策を取り上げて緒につけたい、昭和四十三年から着手をしたい、こういうことをたび重ねて言明をしておられますし、坊元厚生大臣は、抜本対策については昭和四十三年に必ずスタートを切る、こういうことをたび重ねて答弁しておるわけです。政府はいままで一体何をやってまいりましたか。私は、これから逐次やっていくわけですが、国会総理大臣以下が本会議委員会において答弁をされたことは国民に対する公約です。自民党の中の事情もあるでしょう。しかし、それを克服いたしまして、議会における審議というものを尊重しながら政治を進めていく、こういうことが私どもお互い議会政治信頼を高める道であると思うのですが、一体どのような措置を今日までとってこられたか、ひとつ具体的に御答弁をいただきます。
  14. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 御意見の吉に、抜本対策のおくれておりますことはまことに申しわけのない次第だと存じます。御承知のように、昭和四十二年の十一月に厚生省試案なるものをつくりまして、世の御批判に問うたわけでございますが、この試案は、何といいますか、医療保険そのものだけをいじっている問題だ、もう少し幅広く、国民保健行政あるいは医療体制診療体制その他万一般にわたったものを考慮に入れて、そして抜本改正をやるべきではないかという意見が方々から出てまいりました。御承知のように、医療担当機関日本医師会歯科医師会あるいは薬剤師会関係からもございますし、また、保険関係の諸団体からも、あるいは労働関係の諸団体からも、いろいろと御意見があったようでございます。それらの御意見伺いながら、私のほうといたしましては、党の考えもまとめてもらわなければなりませんので、医療基本問題調査会を党内につくっていただいて、そこでも各関係の御意見を伺ってもらって、最善の案をつくろうというので、ただいま政府と党で努力をいたしておるというのが今日の段階でございます。
  15. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま厚生大臣からお答えいたしたような経過でございます。先ほど言われますように、四十三年からやると言ったじゃないか、こう言われる。確かにそういう発言も記録に残っております。私どもはこのことが実現できなかったこと、何とも申しわけなく思います。したがいまして、ただいまの問題がむずかしいからとか、あるいは関係が広いから、これだけで御了承いただこうというわけでもありません。私、とにかくただいままで結論を得ておらないこと、まことに申しわけなく思っておること、この点を率直に私の所感を、感じ方を御披露申し上げまして、ただいまのように非常に広範にわたっている問題だし、また基本的な問題だし、なかなかむずかしいのですということだけ申し上げまして、御了承を得たいと思います。
  16. 大原亨

    大原委員 これは総理大臣に対して失礼なことばですが、そのおことばは、国会議事録をたどってまいりますと、これはいんぎん無礼ということばです。これは中身がないですよ。四十三年には抜本改正に着手します、四十三年度からやります、こういうことでありました。その意味は、裏返せば、被保険者やあるいは患者の負担で赤字対策をやるというふうな、そういう臨時特例法は二年にとどめますということです、国民の命と健康を守る重要な問題ですから。そういうことで臨時特例法を今日まで行なってきたわけでございますが、これは言うなれば社会保障の後退です。あなたの公約違反です。人間不尊重です。そういうことは明らかです。ですから、自民党の中でどのようなことが行なわれておるかということについては、これは当然やらるべきことでありましょう。  しかし、事は政府にかかわる問題です。たとえば、一つをとってみますと、厚生大臣を、いまは斎藤さん、前は園田厚生大臣、いま国対委員長、その前は坊厚生大臣、鈴木厚生大臣と、一年ごとに、多数派工作のためか何かわからぬが、とにかく厚生大臣をかえておるでしょう。そんなことをして抜本改正なんかできますか。こんなものを党にまかせておいてできますか。これは国会の場におきまして、私ども審議を通じて政策を進めていこうという趣旨に反することです。逆行することですよ。全く私は誠意がないと思うわけですよ。  それでは、厚生省が関知するそういう問題で抜本対策が具体的にはどう進んでおるのですか。どのように進んでおるのですか。いつ出せるのですか。いつ結論を得ることができるのですか。この問題につきましてお答えをいただきたい。
  17. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 ただいま申し上げましたようないきさつによりまして、いま党と厚生省でいろいろと審議をいたしているところでございます。党の御検討の結果も、もう間もなくおきめをいただけると思いまするし、それに従いまして厚生省としての考え方をできるだけ早急に世に問いたい。私は、少なくともこの国会中には素案なるものを世に問うて、各界の御批判を仰ぎ、関係審議会にも諮問をいたし、政府部内の意見統一をはかってまいりまして、そして原案をきめてまいりたい、かように思っておる次第でございます。
  18. 大原亨

    大原委員 昭和四十二年の十一月ですか、厚生事務次官を委員長とする牛丸委員会ができまして、試案ができましたが、これは何でもないものだということはあとの大臣が議事録に言っておるのです。それでこれはたな上げみたいになってしまったわけです。それでいま与党でやっておるわけでしょう。しかし、経過をたどってみると、参議院選挙の前だから、出すとこれはたいへんだというので引っ込めた、あるいはまた、衆議院選挙があるかもしれぬといってまた出し切れない。そういうふうな法律のやり方というものは、総理大臣総理大臣がこのような重要な問題に取り組まれるところの姿勢であるとは私は考えられない。全く主客転倒した、無責任政策の進め方ではないか。与党の抜本対策の作成にどのような形で厚生省は参加しているのですか。
  19. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 与党の御審議の間に厚生省関係の者たちが入りまして、そしていろいろ資料の提供、あるいは意見を聞かれれば開陳というようなことをして参加をしておるわけでございます。
  20. 大原亨

    大原委員 それでは厚生大臣、これは総理大臣にもお聞きしたいのですが、この医療保険の抜本改正で何が第一問題か、こういう問題について、失礼ですがあなたは御理解になっておるのですか。これは私はこういう側面から答えてもらいたいと思うのです。日本の国の国民所得と総医療費関係、つまり医療経済の分析、こういう観点から、私はこまかな点について質問することはできませんが、その問題についてどのように把握しておられるか、お答えいただきたいと思います。
  21. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 あるいは御質問に対するお答えにならぬかもわかりませんが、私は、まず国民すべてが適正な医療を受けられるように、そしてその負担はできるだけ少なくて済むように、そしてこれが日本国民の健康管理の制度とマッチをしていくように、それが根本だ、かように考えております。  それで、いまの医療報酬制度も相当抜本的に考え直してもらう点があるのじゃないか。これは中医協にお願いをいたしておるわけでありますが、私のほらでも随時意見があれば申し出て、まず報酬制度の抜本的な改正も必要である、そして医師の技術というものを生かすようにしてまいらなければならない、かように思いまするし、また医薬の分業ということも、これは多年必要だと要請されていることでございますから、これと同時に、医薬分業にいよいよ入れるように、いまそのほうの準備も薬剤師関係団体のほうで進めてもらって、抜本改正の際には、その医薬分業という事柄を少なくとも基本にして考えていかなければならない、さように考えているわけでございます。
  22. 大原亨

    大原委員 総理大臣、これは厚生大臣を信用しないわけじゃないのだが、また一年ぐらいたったらかえられるでしょう。そういうことじゃないですか。  それで、問題はこういうことです。国民があらゆる形で金を出し合ってやっている総医療費は一兆五千億円です。ことしは一兆六千億円から七千億円でしょうが、まあ四十三年はそのくらいであります。その中でこの内容を分析いたしてみますと、四二%が薬剤費なんです。外国の例は二〇%以下です。だから六千億円以上が薬剤費や注射代に使われておるというわけであります。日本の製薬産業は高度成長で世界第二位です。通産大臣も知っておられるだろう。しかし、日本の薬は外国には三%台ぐらいしか輸出しない。日本の薬は信用ならぬといっておる。保健剤なんて、そんなのは笑いぐさですよ。私はこの間スイスへ行きまして、日本の保健剤は売れておりますか、こう言いましたら、日本のテレビのこれですかといって、こうやってまねしている。大笑いでした。薬の中に入れてないわけだ。だから、そういうことのために保険料を上げる、患者負担をふやすということは、これはもってのほかです。これは医療保険全体が、医療制度が、医薬品メーカーの手によって医薬品メーカーのために行なわれておる。国民のために行なわれているということではないわけです。ですから、この抜本改正をするのには――総理大臣以下聞いておいてください。これは内閣全体の責任だ。これは斎藤さんなんか、ずっとこれが解決するまで残留さしておいたらいい、かえぬほうがいい。つまりこういうことです。医師や歯科医師や薬剤師の技術と責任を尊重する、思い切って評価する、そういうような中で評価していく。そうして薬を売れば売るほどもうかるような、国民の健康に逆行するような売薬医療を克服していく。こういうことを基本にいたしまして、そしてたとえば看護婦問題その他解決をしていくということであります。そういう点について、何からやるべきか、こういえば、やはり日本では薬の問題ですよ。薬の問題です。その点において総理大臣以下がやはりイニシアチブをとらなかったら――一兆六千億円の総医療費は、国民所得の中から言いまするとこれは国際水準並み以上です。ですから、この中を整理いたしまして、分析いたしまして、国民立場で納得できるようにしながら、そして全体といたしましては医療費考えていくというふうにしなければ、国民がばらばらになってしまう。大切な問題でばらばらになる。そういう点について、私は何回も議論していることですから、総理大臣は御承知になっておると思うが、これはいかがですか、あなたの御見解は。いま厚生大臣の御答弁ありましたが、いかがですか。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの厚生大臣の発言、私もそのとおりに考えます。まあ私自身のわずかな経験からいたしましても、医者にかかると、ずいぶんたくさん薬をくれます。その薬、なかなか全部が飲めるわけでもない。その程度のものなら、売薬で済むような気もする。何のためにお医者さんを呼ぶか、こういうような気もするのです。こういうところにいま問題があるようだ。まあそういうことで患者ももちろんのこと、同時にまた国家の負担も重くなる、これでは相なるまい。またいわゆる医者の技術といいますか、いわゆる名医にはなかなかかかれない。やはり国民ひとしく、病人としてはすべての者が自分らの信頼するお医者さんにかかり得るような、そういう制度を設けることが必要だろう、かように私は思います。ここらにも一つの問題があるので、医療協あたりから特に御協力を願わなければならない問題があるんじゃないだろうか、かように思っております。こういう点が、まあ技術を売るのか薬を売るのかというようなことでしばしば議論された、かように私も記憶しております。先ほど厚生大臣がそれらの点について詳しくお答えいたしましたので、御了承いただきます。
  24. 大原亨

    大原委員 薬は毒なんです。ですから、最小限度使用の法則というのがある。最小限度使用の法則。それは医薬二権分立という考え方もあるが、そういうことなんです。最小限度使用のこと。二十五ミリとか五十ミリとか百ミリとか、たくさん飲めば飲むほどきくというのは、これは薬じゃないのです。これは栄養剤とか清涼飲料水みたいなものでありますよ。薬の概念に反するのです。一番ひどいのは何かといえば、大学病院ですよ。大学病院やその他公的な医療機関、甲表を採用しているところは、五七%が薬剤と注射代。一般は四二%だが、五七%。三回ほど行けば一カ月分くらい、売るほど薬をくれるわけだ。そうして医薬品メーカーと研究室の主任教授が、医局が結合しておるものだから、若い学生が正しいと思う薬学や医学の研究を封ずる結果になっておる。そこに大学問題の発端があるのです。医学部の問題がある。  それから、厚生大臣、最近厚生省には汚職が起きました。医薬品メーカーとの関係でしょう。その中で、その背後には、私は全部が全部とは言わぬが、政治との関係がありますよ。歴代の厚生次官の中で癒着をしておる人がたくさんおるでしょう、政治家になっていて。そういう点にメスを入れなければ、私どもは、医療保険の問題を解決することはできない。そういう根本問題について考えないで、何を先にやるかということを考えないで、しかも責任をもってやらないで、この問題を解決することはできない。漫然と二年間抜本改正の問題については責任のなすり合いで、ほったらかしておいて、そうしてできませんから保険料を上げます、患者の負担をふやします、そんな政治がありますか。そういうばかな政治はありませんよ。  そういう点について、最近の汚職問題等について、どういう反省や対策を立てておられるか、この機会に聞いておきましょう。
  25. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 医療保険問題の核心といいますか、要点の一つは、ただいま大原委員のおっしゃいましたとおり、私も全く同感でございます。私は、最近大学病院あるいは国立病院、それから公立病院、私立病院、また一般の開業医に分けて、そうして薬剤費の使用と他の医療費との割合がどうなっているか。国立病院等については、過去数年間の決算でそれをひとつ調べてくれといっていま事務当局に調べさしておりますが、それもいまおっしゃいますような薬剤というものがどういうように使われているか、開業医がよけい使っているか、あるいは国立病院がよけい使っているか、大学病院がよけい使っているか、そこらから何らかのヒントがありはしないかというような考えで、いま調査をさしておるわけでございます。  私のほうに薬剤関係の汚職が起きましたことは、まことに申しわけございません。歴代の大臣以下そういった点につきましては、綱紀粛正の観点から十分監督をいたしておったことと思うのでありますが、また実際やっておった模様でございますが、しかしながら、ああいう事件が起こりまして何とも申しわけないと思っております。  私は、まず第一の点は、薬剤の新しい認可の申請があまりに数が多いということが一つ。したがって、新薬の認可の場合は、これはそれぞれ薬事審議会に諮問をしてきめてもらっておりますが、いわゆるモデルチェンジといいますか、そういったものにつきましては、いろいろなデータと書面審理で済むわけであります。したがって、そういう簡単なものには、あるいは地方に許可権を委譲ができないかということをいま検討させております。  それからまた一つの問題は、何といいますか、中小メーカーが非常に多過ぎる。これは日本の製薬関係の特色だと思いますが、通産省ともお話しをしなければならぬと思っておるのでありますけれども、これがまたいろいろなたくさんな薬剤の種類――おそらく大衆薬の種類なんかも種類の多いことは世界一だと思いますが、そういうことからも発しているのだろうと思います。したがって、新規の薬剤の製造の製造会社を認可いたします際には、そういったいままでの認可基準をもう少し引き上げて、そうしてあまりに中小の製造メーカーがたくさんになっていくということを防いでいく必要があるじゃないか。またあまり簡単なモデルチェンジは、これは認めるか認めないかということを慎重に検討しなければならぬ。いま薬事審議会と相談をして、そういった適当な方策を見出してもらいたい。  同時に、われわれ認可に従事をいたします役人の心がまえの問題でありますが、制度といたしましては、できるだけ合議制によって許可をするように――今日は薬剤の認可につきましては六人の専門官がいるわけでありますが、この数も足りないと思っております。との数ももっと増しまして、いま定員は増加はできませんので、省内で定員のやりくりをやりまして、そうして適当な数に増加をいたして、今後そういうことのないように万全を期してまいりたい、かように考えております。
  26. 大原亨

    大原委員 総理大臣患者とか、被保険者とか、保険財政は火の車です。こんな大きな問題を起こしているわけです。しかしながら、医薬品メーカーは日本のベストテンですよ、みな。ずっと並んでいるでしょう。おかしいでしょう。おかしいです。じゃ、その薬が外国に売れるかといえば、売れないのです。幾ら高度成長であっても、国民のしあわせとは関係ない。逆行しているわけですよ。高度成長が必ずしもいいとはいえない、これは証拠ですよ。  たとえば厚生大臣、新薬の許可とか、保険薬として採用する際の薬価基準の設定のしかたとか、こういうふうなものが、言うなればでたらめなんですね。たとえば新薬の許可をいたしまする薬事審議会にいたしましても、大学の医学部の教授みたいなものです。医薬界のボスであって、みなメーカーのひもつきです。ほとんどがそうです。その他類似薬は、これは厚生大臣がやるわけですから、専門官がやるわけですよ。そのことにも問題があるわけです。だから、新薬をどんどん入れていきますると、ちょっと構造式を変えて入れていきますると、どんどん値段をつり上げていくことができるから、薬の値段というものが非常に上がってくるわけですよ。その裏がまた出てくるわけであります。でたらめなんですね。だから、薬事審議会の構成とか薬事法の根本的なやり直しをしなければならぬし、良心的な医薬品メーカーの技術を保護するためには、いまのような製法特許、製法過程の特許でなしに、先進国のように製品特許、物質特許に変えていく。そうして技術を保護しながら発明やその他というものを尊重して、そしてそのほうに金をついで、日本でも使えるし外国へも出ていくというふうな、そういう仕組みにしなければいけない。スイスやドイツの医薬品は有名ですが、七割も八割も輸出していますよ。日本は三彩だ。そんなことのとばっちりを医療保険や患者国民が全部かぶってやるというようなことはないでしょう。だから、抜本改正をさぼっているということは、これはいまの政治の実態なんですよ。私は、この問題はそういうことは絶対に許すことはできないと思うのだ。総理大臣いかがですか。総理大臣から御答弁ください。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 薬の問題は、私しろうとであまりよくわかりません。ただいまの大原君のお話をただ謹聴しただけでございます。いま厚生大臣からお答えさせます。
  28. 大原亨

    大原委員 そこで論点を進めてまいりますが、政府は今回の国会健康保険臨時特例法をお出しになる。抜本改正については何にもやっていないといってもいい。厚生省試案というものは空中分解ですから、政府としては何もやってない。そうして健康保険臨時特例法はことしの八月三十一日が期限であるのに、今度は重ねて再延長の法律案を出される。こういうことでございますが、これはいつお出しになりますか。
  29. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 抜本改正のおくれておりますことは、先ほど申し上げているように、まことに申しわけないと思っております。抜本改正は何にもやっていないのではなくて、先ほど申しますように、いろいろと準備が進んでいるわけでございますから、したがって、抜本改正の基本的な要領は、私はこの国会中にでも大体まとめ得るのじゃないか。したがって、何にもしないで日を過ごしているのではなくて、相当そういう面で構想がまとまりつつある、こう申し上げたいと思います。  臨時特例の延長は、まことに申しわけないのでありますが、そういうような関係から、もう二カ年間延長をしていただきたい。この特例法案は、ただいま社会保険審議会に諮問をいたしておりまして、予算が決定いたしますと同時に、一月の十六日に諮問をいたしまして、いままで七回審議を重ねてもらっております。もろ間もなく結論を出していただけると存じまするので、日ならずして国会に提案をいたして御審議をわずらわしたい、かように考えております。
  30. 大原亨

    大原委員 きょうは初めて聞いたわけですが、抜本改正についての法律案要綱をこの国会にお出しになるのですか。
  31. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 抜本改正の要綱をこの国会にお出しをするというのには少し間に合わぬかもわからぬと思っておりますが、大体政府の構想はこういうようなことでいきたいと思うというような構想は、この国会の終わるころまでにはきめたい、かように考えております。それが発表することができましたなら国会に出せというお話でございましたら、その段階でお出しができるかと思っております。
  32. 大原亨

    大原委員 健康保険臨時特例法は、いまお話しのように、社会保険審議会にかかっておるわけでございますが、その中に保険料が再び千分の一ほど上がる。二年前の八月三十一日に実施いたしました特例法では、千分の六十五から、よほど大騒動いたしまして、七十二の提案を七十に下げたわけです。標準報酬はどんどん上がっているのですから、収入はふえているわけですが、今回千分の一を上げられる。千分の一に相当する一年分の金額は幾らですか。また、これは何のためにお上げになるのですか。
  33. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 千分の一で約六十億程度と考えております。これはいわゆる出産手当の給付を上げたい、この関係で千分の一の増率をお願いをいたしたいと思っております。
  34. 大原亨

    大原委員 出産手当の底上げのために幾ら金が要るのですか。出産手当の底上げのために幾ら予算が要るのですか。局長でいい。
  35. 梅本純正

    ○梅本政府委員 ただいま大臣が六十億と答えましたのは、政府管掌の健康保険法におきます千分の一の金額が六十数億でございす。そして分べんに要する費用につきましては、平年度におきまして四十二億でございます。
  36. 大原亨

    大原委員 私の計算によりますと、千分の一を上げるためには六十数億と言われましたが、六十五億円です。それから分べん費の底上げのためには四十四、五億です。そういたしますと、二十億円ほどこれに便乗して値上げをしようということになります。  それから、日雇い健康保険は、いままでの国会の質疑、討論によりますると、これは抜本改正の際にするということになっておったわけです。ですから、二年前の臨時特例法のときも見送ったわけであります。これは問題がたくさんありまする低所得階層ですから、そうでございました。だから、あのときには御承知のように、初診料を百円を二百円にし、そうして入院費を三十円を六十円にし、薬代を一日一剤を十五円にしたわけですね。そうして日雇い健康保険のほうは低所得階層その他の問題があって見送ったわけですが、今回やっているわけです。これもやはり公約違反であります。審議経過を無視いたしております。抜本改正をさぼっておって、そうしてここに改正案を出しておる。  そこで、私はひとつこれは法律論でお尋ねいたしますが、この社会保険審議会はいま諮問を受けて審議をいたしておりまするが、この健康保険臨時特例法が社会保険審議会で修正をされたり反対をされたりするというふうな、そういう結果が私はあり得ると思いますが、もしそういう結果になりましたならば、どうされますか。
  37. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 社会保険審議会では社会保険審議会の見るところで御答申いただけると、かように考えておるのでありますが、それが政府案をそのままよしとしていただけるか、あるいはまたどういう御意見がつくか、いまのところ憶測いたしかねているわけであります。できるだけ答申は尊重してまいりたいと思っておりますが、その答申が出てまいりました段階において十分考慮をいたしたいと思っております。
  38. 大原亨

    大原委員 社会保険審議会の答申は、諮問原案どおり出てくることを期待するが、もし変わった場合にはその答申を尊重するたてまえで善処する。これは総理大臣、神田厚生大臣のときに、中央医療協や社会保険審議会に関連いたしまして、職権告示の問題がございました。九・五%の問題でありますが、そのときに私も質問に立ちましたし、かなりこれは大きな問題になりました。これは裁判ざたにもなったわけですが、つまり社会保険審議会は、支払い側と被使用者と公益委員の三者構成です。あるいは中央医療協は、診療側と患者を代表する側と公益委員のこれは三者構成です。つまりこれらはそれぞれ法律でできておりまして、三者構成ですから、法律的な性格といたしましては拘束性を持った諮問機関でございます。利害関係者が集まってやるわけですから、一つの民法上の集団的な契約であります。そこで、集団的な契約であるわけですから、この審議会の答申の結果というものを、審議の結果答申が出ましたならば、これは尊重せざるを得ないわけです。尊重しなければいかぬというふうな拘束性を持っておるわけでございます。  そこで、厚生大臣答弁ではっきりいたしましたが、私は論点を進めてまいりたいと思いますが、私どもはいま予算を議了しようとしておるわけです。与党の皆さんが急がれるのはわかる。わかるのですが、二年昔から非常にこのような重要な問題をされてきて、そして抜本改正についても政府はやるべきことをやってない。臨時特例法案についても出し方がおそかった。なお社会保険審議会で審議をされておる。その結果がどう出てくるかわからない。政府法律案が、それを尊重して変わるかもしれない。これは神田厚生大臣のときに例がございました。変えたんです。これは流したのです。政府はこれをあきらめたのです。そういう例がありました。この健康保険臨時特例法案は、政府原案を裏づけといたしまして、そういう構想のもとに出ておる政府関係法案でございまするが、これが予算を議了しようとするそういう瞬間においても出てこないというふうなことは、これは議会を侮辱するもはなはだしいと私は思うのであります。そういうことは、国会の運営のルールの中にもないことであります。私ども野党が賛成することならいいですよ。小さな問題ならばいいですよ。しかし、事は二年前からこのように大きな政治問題となっておりまする問題について、政府責任ある措置をとらないばかりか、将来どう変わるかもわからないような健康保険臨時特例法案を、これを基礎といたしまして予算を組んでおきながら、その予算が通る瞬間において法律案が出てこないというふうなことは、われわれは責任ある国会においてこの審議責任をもって進めることはできぬと思うわけです。私は、その点ついてひと明快な見解を、これは総理大臣にお聞きをいたしたいと思う。
  39. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 先ほど申しますように、社会保険審議会に対しましては、政府で予算が一応内定をいたしましたときに直ちに諮問をいたしました。一月の十六日でございます。そうして、できるなら一カ月以内にぜひ審議を議了していただきたい、国会提案の関係もあるからということを特に私からお願いをいたしました。そしてその後たびたび審議の促進をお願いいたしているわけでございます。政府といたしましては、予算のきまらない、内定しない前にこの法案は委員会に諮問をするわけにはまいらない、かように考えまして、予算の決定するのを待って、一月の十六日諮問をいたし、十七日に総会を開いていただいて、そして審議を進めていただいているわけでございます。たびたび審議の促進を全力をあげてお願いをいたしているというのが今日の現況でございまするので、したがいまして、審議会の構成はただいまおっしゃるとおりでございますから、できるだけ審議を進めて近いうちに意見をきめようというところまできてもらっておりますから、そこで近いうちに、ここ旬日のうちに答申がいただけるのじゃないだろうか、かように考えているわけであります。そこで、三者構成の審議会でございますから、したがって、できるだけ審議会の答申を尊重いたしまして、そして国会に提案をいたしたいと思いますので、何とぞその節にはよろしくお願いを申し上げたいと思います。
  40. 大原亨

    大原委員 おかしなことを言っちゃいかぬですよ、あなた。社会保険審議会がいま審議をいたしておりまする健康保険臨時特例法案については、これはこの審議会の性格上拘束性を持った諮問機関だと言いましたが、政府はこの関門を通ってこなければいかないわけです、民法上の集団契約みたいなものであるから。だから、そこで結果は政府原案と違う結果になることがあり得るのです。そうしたら、政府はそれを尊重しなければならぬのです。そうすると、いま政府がかりにきめておりまする臨時特例法案とは違った法律案が出ることになるから、当然予算の積み上げの基礎が変わってくるわけです、予算関係法案ですから。あなたは一月の二十何日かに自民党の西村調査会長、幹事長その他に対しまして、辞を低うして抜本改正を早く出してくれということを言われたが、け飛ばされた。これは新聞に出た。ちゃんとここに切り抜きがある。そして非常に問題となっておる特例法を、八月三十一日で切れる特例法を、法律で規定してあるにもかかわらず、なすべきことをなさないでおいて延長の案を出した。これは当然問題となるでしょう。これを問題としないような社会保険審議会があるとするならば、われわれが社会保険審議会の設置法をつくった精神に反するんだ、これは。だから、これは慎重審議をするのは当然ですよ。二年前にあんなに大きな問題となったわけですから、しかも問題ははっきりしておるわけですから。ですから、私どもはいままでの国会における慣例からいいましても、予算関係法案は衆議院における議決があるまでに早く出してもらいたいということを督促してきたんです。議運やその他全体を通じて督促してきた。それでなければ審議は円滑にいきませんよと言ったんです。しかも、あなたの答弁を聞いてみると、辞を低与してか、本心はどらかわからぬが、協力を求められるだけというのでは、これは国会を無視するだけでなしに、法律の精神に違反するわけだ。こういうふうな、予算案が最終段階にまいりまして、そしてこういう重要な法律案がまだ出ない。しかもその中身にたくさんな問題があるというふうなことでは、私は国会審議に-いままで答弁したことは全部たなに上げておるわけだから、そういうことで私どもは、いまの答弁で円滑に進めることはできません。もう少し具体的で誠意のある、筋の通った政府の統一見解を私は要求いたします。
  41. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 政府の統一見解とおっしゃいますが、総理も大蔵大臣も同じお考えだと私は思っております。政府といたしまして、関係審議会の審議を急いでいただくということを誠心誠意お願いする以外に道がないというのが今日の現況でございまして、審議会の答申を待たずに法案を提案するということもできないことだ、かように考えて、非常に苦慮いたしておるというのが今日の段階でございます。
  42. 大原亨

    大原委員 いや、その答弁法律の趣旨に反しておるのです。あなたの答弁法律の精神に反しておるのですよ。われわれは国会の権威において、あなたが辞を低うしてやられても、筋が通っていない答弁に対しましては、この基礎のない予算を議了するわけにはいかぬわけですよ。当然でしょうが。何でもないです、これは。当然の理屈でしょう。法律のたてまえですよ。あなたがそんな答弁を何回繰り返されても、これは私は国民を代表する国会としては納得できぬですよ。だめですよ、そんなことでは。
  43. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 政府審議会の答申を待たずに出すということは、これは控えなければならぬと思います。審議会は一月以内に答申をしていただきたいとたびたび、もう最初からお願いをしておるのですが、なかなか審議にひまどっているという現状でございますから、したがって審議会の設置法も守ってまいり、同時に予算の審議に間に合うようにというので、政府は非常に苦慮し、審議会にお願いをしている、これ以外に政府として打つべき手はない、かように考えております。
  44. 大原亨

    大原委員 同じことですが、その答申というものは法律の精神から、政府の原案どおり出るとは限らないですよ。これはいままでの経過を見てわかるでしょう。神田厚生大臣当時から見てわかるでしょう。ですから、そういう法律の精神を踏みにじって、しかも、将来にわたっての責任ある展望、抜本対策もないようなそういうときに、責任ある国会といたしまして、それじゃよろしゅうございます、この予算案は通しましょうというふうなわけにはいかぬわけですよ。もっと筋の通った答弁をひとつ考えてください。政府態度考えてください。これは大蔵大臣や総理大臣、全部協議して考えてください。これはだめですよ、そんなことでは。委員長、これは国会の権威にかけて、あの答弁ではだめですよ、あんなのでは。
  45. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 その答弁ではだめだとおっしゃいますが、しかし実情がそうでございますから、したがって審議会で審議がおくれたということは、やはり審議会の自主性も尊重しなければなりません。これはやはり設置法の趣旨を勘案をするわけであります。政府が怠慢であったかどうかということは御批判にまたなければならぬと思いますが、しかし予算が内定するまでにこの法案を審議会に付議するわけにはまいらぬわけでありますから、私は一カ月くらいあれば十分審議が願えるものと思っておったのでありますが、今日までそうなっていないわけでございます。
  46. 大原亨

    大原委員 いま、四回ほど聞きましたが、同じことですよ。同じことです。つまり、答申は違ったものが予想できるのですよ、事の性質上。何もサボタージュでも何でもないのですよ。当然のことですよ。い、ままで政府は、あなたのほうは、国会答弁したこととは違うことをやっているのだから。国会を無視してそういうことをやっているのだから、しかも、なすべきことをやっていないのだから。だから、つまりそういう法律の裏づけのない予算ですから、これは。しかも小さな問題じゃないわけですよ。非常に国民の生活や経済に、健康に、大きな影響のある問題ですから。これは私は、同じことをやったってだめですから、委員長、それは総理大臣、この内閣に要求して、国民が納得できる統一見解を要求いたします。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、先ほど厚生大臣から実情について率直にお話しをいたしました。また、大原君の言われるように、本来審議会から答申が出て、それに沿って政府が処置をする、これはもうものの当然の理であります。また、その審議会が、過去においてもあったような、政府が独断でこれを無視して告示をする、こういうような筋のものではない。だから、審査会は、答申はどうしても尊重していかなければならない、そういう筋のものでございます。これはもう御指摘になったとおりで、私は言わずもがなのことだと思います。ただ政府が、物理的現象とでも申しますか、予算編成のとき、さらにまた予算の審議中、その間に委員会を開いておりながらも結論はなかなか出てきてない、こういう状況でございますから、ただいまの段階におきまして政府は、これが、政府の案が、御理解がいただき、答申を得られるものとしてただいま審議を進めておる、かように御理解できないだろうかと、その点を特に先ほど来斎藤君からお願いをした、かように私は聞いております。これはもう御指摘になりましたとおりに、本来答申あって、しかる上で処置すべきものだ、かように思います。それはもう御指摘になるまでもございません。一生懸命ただいまその結論を急いでおるという段階でありますので、その点を御了承いただきたいと思います。
  48. 大原亨

    大原委員 いまの総理答弁は、こういうところが致命的な欠陥です。というのは何かと言いますと、今回八月三十一日で終わろうとする特例法案を再び延長しようというわけです。その延長しようとする法律案の中には、従来の審議経過から見て、国会答弁等から見て、それは答弁に反するような中身が盛ってあるわけですよ。政府は、一方においてはやるべきことをやってないわけですよ。これははっきりしておるのですよ。二カ年間の時限立法ですから。国会答弁だけでなしに、法律ですから。ですから、この問題は慎重審議をされて、時間がかかり、原案が変わるということは当然あり得べきことですよ。だから、そういう政府側の手落ちをたなに上げておいて、審議ができなかったのはどこかの責任のように言われることは、私はこれは筋が通らぬですよ。だから、政府が出しました原案よりも変わることが十分予想できるような、そういう法律案を目の前に控えて、政府の出しました原案を基礎にした予算審議を進めるわけにはいかぬじゃないですか。慣例上も、予算案が通るまでに予算関係法律案が出ていないということは、これは国会を無視することになるじゃないですか。これは二重、三重にも問題がありまするから、いまの総理大臣答弁ではこれは納得できませんよ。これはもう少し誠意を示す答弁をしてもらいたいです。これは、こんな時間をとっていたらたいへんですよ。何回やったって同じですよ。私はむちゃを言っているのじゃないですよ。理屈を通して私は言っているのですよ。いままでの経過を踏まえて、問題を時間をかげて論議しながらやっているのですよ。  理事の人はひとつ協議してもらいたい、この扱いを。休憩してもらいたい、このままで。
  49. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 厚生大臣斎藤昇君から発言を求められております。これを許します。
  50. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 健保特例のさらに再延長していただきます法案につきましては、この上ともできるだけ審議会の審議の促進をお願いいたしまして、三月中旬ころには法律案として提案をいたしたいと存じております。  なお医療保険の抜本対策につきましては、可及的すみやかに成案を得まして、今国会中には関係審議会に諮問の手続をとるよう努力をいたしたいと存じます。
  51. 大原亨

    大原委員 私が申し上げたままの事情において予算案を可決いたしますと、社会保険審議会や関係審議会の自主性を拘束するという結果になります。したがって、いままで繰り返して質問をいたした一つの理由もそこにあるわけでございます。二年前に健康保険特例法の審議が非常に大きな問題となりましたときに、結局は政府は二百二十五億円の国の費用を持ち出しました。御承知のとおりです。ですから特別会計であるからといって、借金を累積するというだけでは済まないのであります。したがって、私ども答申案を尊重するというたてまえに立って、ただいまの答弁については大筋では了承をいたしますが、その結果起きてくるであろう予算上の問題につきましては、当然私は、政府はしかるべき措置をとることが、これは理の当然であると存じます。したがって、その点に対しまする政府側の答弁を求めたいと存じます。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 万一さようなことがありました場合においては、財政上善処をすることにいたします。
  53. 大原亨

    大原委員 念のために総理大臣答弁を聞きます。大蔵大臣がおかわりになる場合が十分予想できるわけですから。これは大体いままでの経験でいえば、一年間くらいでかわっているわけですから、これを総理大臣からも、この点につきましてはひとつ重ねて御答弁をお願いいたしたいと思います。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題につきましては、先ほど厚生大臣また大蔵大臣、万一の場合には大蔵大臣が善処する、かように申しております。もちろん、当然政府責任をもってさような処置をする、かように御了承いただきたいと思います。
  55. 大原亨

    大原委員 この問題につきましては一応おきまして、これはついでに社会保障の問題につきまして申し上げるのですが、やはりいま人口問題や人口構造の点からいいまして、子供の数がどんど減っている。年寄りがふえている。こういう問題は十年、二十年後のことを考えましたら、たいへんなことであります。しばしば本院におきましても、子供の人格を尊重する、あるいは子供がたくさんあるからといって貧乏するというふうなことは、これは近代政治のたてまえからもおかしい、こういうことで、児童手当の問題につきましては私もしばしば質問をいたしましたし、政府より答弁をいただいたのであります。私は、ここにその答弁集を持っておりますが、昭和四十二年からやるということから始めまして、四十三年、四十四年、これは政府答弁集をひもといてみますと、まるでうそつき全集のようなのであります。全部国会答弁をじゅうりんいたしまして、そうしてほおかぶりでいっておるわけであります。この前の答弁では、児童手当懇談会の答申を待ってやると言いましたら、出たのですけれども、今度は審議会が設置をされるということであります。  私どもは、このことは歴代の厚生大臣にここに出てもらって責任を追及したい気持ちであるが、佐藤総理は一人であります。一貫しておられるわけであります。厚生大臣がかわりましても、私は内閣の一体性から考えてみまして、答弁は生きているというふうに信じておりますが、しかし実際には具体的な政策が進まないのが現状であります。  大体佐藤総理は、昭和三十九年に社会開発、人間尊重というたてまえで、ひずみを是正して高度成長の弊害をなくする、人間尊重の政治をやるということで、社会保障についても積極的な姿勢を当時とっておられましたが、長期計画すら社会保障については出ておりません。生活保護費その他の予算措置のしかたを見てみましても、一貫した筋が入っていないと私ども考えておるわけであります。児童手当の問題につきましては、いままでの答弁を踏まえて、当然もうできておるはずでありますが、できていない。そういうことを含めまして、将来どのような責任ある措置をとるのか、こういうことにつきまして御答弁をいただきたいと思います。
  56. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 児童手当制度の創設につきましても、たいへんおくれておることは申しわけございません。御承知のように、厚生省に児童手当懇談会を設けまして、そこでいろいろと慎重御審議を願ったのでありますが、その御答申をいただきましたのが十二月の二十日でございます。しかもその答申の中に、児童手当制度は他の法令と関係するところが非常に深いし、いま少し関係方面の意見を集めて慎重審議をする必要があると思うから、児童手当審議会をつくって、そこでさらに審議をすることを提案するということが結びについているわけであります。それに従いまして、このたび児童手当審議会を法律でつくっていただいて、慎重に御審議を願いたい、かように考えております。  しかしながら、私はできるだけすみやかに児童手当審議会に政府の案を諮問をいたす段取りにいたしました。この審議会は二カ年の任期ということにいたしておりますが、しかし、二カ年も待たないでできるなら、次の国会には提案のできるようにいたしたい。そして、児童手当制度は、まだ新しい制度でありますから、二カ年という任期を法案でお願いをいたしておりまするのは、さらにその児童手当制度の発足の現状にかんがみて、いろいろアフターケア等も御審議を願う必要がありはしないかと思って二カ年の猶予をとっているわけでありますけれども、しかし、できるなら来年の、次の通常国会には提案のできるように最大の努力を払ってまいりたい、かように考えているわけであります。
  57. 大原亨

    大原委員 やや具体的な御答弁ですが、厚生大臣を信用しないわけじゃないのですが、近く総選挙もあるはずですから、また内閣改造も予想されるわけであります。この点はやはり、総理大臣は一たん国会審議をされて御答弁になったことについては、これを尊重して、そして実施をしていくということが、国民政治に参加する道を開いている議会政治の権威を高める道です。そういう意味において、私は総理大臣がこの問題について、今日まで何回も御答弁いただいておりますが、いまの答弁を踏まえて、あらためてひとつ所信を明らかにしてもらいたい。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん私の考えが変わってはおりません。いま厚生大臣から率直にお答えをいたしましたが、新しい制度というものは、私取り組んでみましてなかなかむずかしいものだ、相当の期間かけないとどうしてもスタートしない、そのことをつくづく感じておるような次第であります。しかし、もうすでに、いわゆる児童手当審議会が発足するような段階でございますから、いずれそのうち実現を見るだろう。しかし、とにかくものごとを新しく始めるということがいかにむずかしい問題があるか、私もつくづく感じておる次第であります。ちょうどこれと時を同じくして、もう一つ申し上げておきたいのは、農民年金の問題もいまだに実現ができません。私は、社会開発上から見まして、こういう問題に取り組むことこそ国民の最も望むものではないだろうか、かように思って真剣に取り組んでおる次第でございます。
  59. 大原亨

    大原委員 時間もだいぶんたってまいりましたが、社会保障の長期計画についても、これはつくる、そして所得保障と医療保障と福祉施設のバランスをとりながらヨーロッパの水準に高めていく、こういうのが社会保障制度審議会以来の一貫した方針ですよ。それを行き当たりばったりにやったんではだめなんです。つまり、長期計画を決定されてやることが、これはバランスをとって前進させることであります。長期計画がいまだにできてない。その母体のほうの経済社会発展計画を崩壊させている、こういうことですが、厚生大臣は主管大臣としていかがですか。
  60. 斎藤昇

    斎藤国務大臣 社会保障制度審議会からもその示唆をいただいておるわけで、私は必要なことだと思っております。しかし、ただいま、先ほどからも申し上げましたように、医療保険の抜本改正、児童手当、ことに児童手当は社会保障一つの柱でございます。このでき方によりまして、今後長期計画をどう立てていくかということが必要であろうと存じます。したがって、医療保険の抜本改正、それから児童手当、この制度の大体の構想の基礎の上に、長期計画をさらにその後に考えてまいりたい、かように存じております。
  61. 大原亨

    大原委員 菅野経済企画庁長官、あなたは前の経済企画庁長官とは違った答弁をしておられるのです。これはことばじりをとらえるわけじゃないですが、経済社会発展計画とかいうふうなものは単なる見通しであるというふうな答弁をしておられる。自由経済のもとにおいては見通しで、目安にすぎない、こういう答弁であります。これはいままでの答弁とは違うし、経済社会発展計画の策定をされた前文とも違うわけです。私は大蔵大臣にも総理大臣にもお伺いしたいのですが、所得倍増計画は、これはひずみの問題で中期経済計画をつくるということになりました。中期経済計画は佐藤内閣の新内閣のときにきめました。きめましたけれども、物価を二・八%にとどめるとかあるいは民間設備投資や、特に公債問題で破綻をいたしまして、これは廃止になりました。そうして経済社会発展計画を同じ内閣で策定されまして、そうして物価は三%程度にとどめる、公債は発行する、こういうことで出てきたわけですが、これも行き詰まってしまいました。これは一体なぜ長期計画を立てまして、そうして二、三年もしないうちにどんどんどんどん次から次へこの作業の結果がくずれていくのか。私は内閣全体の運営の中に大きな欠陥があるのではないかという点を、この予算委の審議を通じて知ったのであります。一体どこに欠陥があるのかということであります。これについてお答えをいただきたい。この点は経済企画庁の長官から言ってもらいましょう。あなたは何か反省がなければ次の案をつくることはできませんよ。
  62. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 経済の計画がいつも実勢と違っておるということについての御質問じゃなかったかと思いますが、どうして違っておるかということにつきましては、これは一つ経済というもの、経済そのものが流動的なものであって、予想以上の成長を遂げてきたというところに実勢と計画とが違ってきておるのでありまして、たとえば四十二年から始めました経済社会発展計画におきましても、経済成長率が大体八%というように考えておったのが一〇%以上になっておるというようなことで、すべての経済活動が、経済情勢が変わってきておるのでありまして、要するに経済の成長が予想以上の成長を遂げてきたというところにこの計画が違っておるのであって、これは決して行き詰まっておるというわけのものではありません。で、予想以上に経済がよくなっておるということになっておるのであるからして、行き詰まっておるというおことばは私はどうかと、こう考えております。
  63. 大原亨

    大原委員 そんな答弁何ですか、あなたの。答弁じゃないじゃないですか。経済企画庁長官はもっと権威を持ちなさい、権威を。このとびらにもちゃんと書いてある。経済社会発展計画、中期計画は、経済運営の指針だというふうに書いてある。単なる見通しじゃないですよ。そういう方向に誘導していくのですよ。だから住宅とか道路とか、社会資本の問題あるいは社会保障の問題、広範な長期計画を立てながら、全体を見ながらそれを閣議決定しておるのですから、各省に対しましてイニシアチブを発揮してやるのですよ。あなたは風の吹くまにまに、これは見通しだの何だのと言うてのほほんとしておられるけれども、歴代の経済企画庁長官としては私は成績の悪いほうだと思うのです。  それはともかくとしまして、大蔵大臣、総理大臣、つまりこういうことですよ。これは八木一男委員がここでもしばしば言われているのですが、その議論と似通っている点もあるのですが、経済社会発展計画や、それを構成しておる各長期計画を踏まえながら、予算編成のときに、財政、金融、産業政策全体をにらみながら予算を編成していくこと、ずっと各省から集めてきたやつを二割五分増しで切っておいてということでなしに、そういう長期計画に基づいて重点をきめながら、たとえば生活保護なんかは八%から一〇%、一三%にせり上げるというふうな、そういう策定のしかたでなしに、格差を是正するという観点に立って、やっぱり大きな方針を閣議で確認をしながら、経済社会発展計画とか長期計画に合わせて指導性を持ってやる。経済企画庁長官はもっと指導性を持ってやるということ、もう少し、伴食でなしに。総理大臣もそういう点をイニシアチブをとる。大蔵省だけが、大蔵官僚だけがやるのでなしに、そういうことをやはり予算編成の中でやらなければ、二・八%の長期計画の物価安定も、三%程度という経済社会発展計画も、今度は五%程度だといっている。そういう全く木に竹をついだような結果になるのであって、いままで議論したように、経済というものは、経済のためにあるのではなしに、国民生活のためにあるのだ。その集中的なあらわれが、バロメーターが物価である。こらいろ点等も勘案しながら、ほんとうに人間尊重や国民主権の上に立った、憲法の精神に従った予算をつくっていく、こういうことが必要ですよ。いままでの予算編成のしかたについて、私は再検討を加えてやってもらいたい。私は予算審議経過を通じて痛切に感じたことですから、この点に対する見解をお聞きいたしたいと思います。
  64. 福田赳夫

    福田国務大臣 予算の編成にあたりまして長期計画を持たなければならぬ、また総合的にものを考えていかなければならぬ、この考え方には全く同感であります。  ただ、ちょうどいま長期計画の問題は、経済社会発展計画、これに見通し上の狂いが出てきまして、新しい計画をつくらなければならぬ、こういう過渡期でございますので、ことしの予算はそういう具体的な長期計画に基づくことはできなかったのですが、しばしば申し上げましたとおり、財政が日本経済運営に及ぼす影響、非常にこれは大きい、重大である、そういうことを踏んまえまして、持続的な経済の成長ということを目標とし、また同時に、物価の安定、これをひとつ踏んまえまして、予算の編成に当たっておる、こういう状況でございます。  それから、総合的にものを考えるという点につきましては、これはもう常日ごろ努力をしてまいっておるところでございまするが、この上ともそういう考え方でやっていきたいと、かように考えております。
  65. 大原亨

    大原委員 大蔵省だけ、大蔵大臣だけが予算をいじくり回すというのでなしに、やっぱり政府全体として、基本方針は閣議できめるなり、長期計画に沿うた検討をするなり、経済企画庁長官も発言するなりいたしまして、私は予算編成の主客を転倒してもらいたい、こういう考えですが、総理大臣いかがですか。
  66. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君の言われるとおり実はやっておるのです。ただ、経済企画庁長官が基本的な一つの長期計画を持っておる。しかし、私どもはいわゆる計画経済はやってない。統制経済はもちろんやっておらない。そこで、ただいまのような、経済が行き過ぎると私どもの計画とそぐわないことがある。しかし、いままでのところは、先ほど申しましたように、経済が内輪の成長というか、それより低い成長ということでなくて、大きい成長だから、その辺でしんぼうしてくれ、狂ったががまんしていただきたい、こういうことをただいま申したと思います。  しかし、この長期経済計画を立てますその基本になるのには、やはりそれぞれの部門の長期計画がある。道路整備五カ年計画、あるいは港湾、あるいは住宅、それぞれの長期計画を持って、その長期計画の積み重ねの上で一つ経済計画を立ててやる。その各種の長期計画の支出のほうをまかなうに足るような経済の発展は一体どこにあるのだろうか、また物価をどの程度にしたい、こういう意味からのねらいもあるからというので、ことしなどは物価を五%程度にとどめたい。そのためには米価、これはもうどうしても据え置きにしなければならない。あるいは国鉄は、これはやむを得ないが、しかしそれも旅客だけにとどめて、その他の公共料金はひとつ押えようじゃないか。これは適切なる発言を経済企画庁長官もしておって、そうして各大臣がこれを了承し、その方向で実は強力に進んでおるわけであります。ただ問題は、どうもわれわれが考えたより以上の強い力で成長しておりますから、どうもそこに狂いがある。その狂いは、ただいま申すように計画を上回っておるのですから――下回るとたいへんなことですが、上回っておる、余剰がある、こういう意味で、まずうれしい悲鳴というか、そういうように思っておる。  ただ問題は、こういう状態が長くはたして続くだろうかどうだろうか。長く続けなければならない。そこに安定成長というものがあるのだ。だから住宅計画道路計画、港湾計画あるいは治水計画にいたしましても、やはりそのときどきの経済の全般を見て、予算をどういうようにするか、あるいは公債をどういうように発行するか、あるいはまた減税はどういうような計画を立てるか、それは結局そのときどきの経済に相応したそういうものを立てる、こういうことであります。  どうも長い説明をして、的はずれであったらもう一ぺん御指摘を願いたいと思いますが、われわれの長期計画はただいま申し上げるようなことでございます。
  67. 大原亨

    大原委員 御丁寧に御答弁いただきましたことは感謝いたしますが、あまり長いと迷惑いたします。  総理大臣、私もこれでは議論するのではありませんが、昔から過ぎたるは及ばざるがごとし、こういうことわざがございますね。所得倍増計画が過ぎたことだったと思うのですよ。だから、高度成長から安定成長へ、安定成長を通じて社会開発、人間尊重、物価の安定へというのが、あなたが総理大臣総裁になられたところの所信であると思うのですよ。私は、あなたにかわりまして思い浮かべてみますが、そのとおりだと思うのですよ。ですから安定成長を通じてということです。そういう観点からいえば、物価が上がったり、そうすることは、雨やあらしと違うのですから、地震や雷とは違うのですから、財政、金融、産業政策の総合したものがそうですから、国民生活を安定させるという観点の施策を集中的に総合的にやることが必要ではないか、こういう反省を私はしておるわけです。経済企画庁長官、もっとしゃんとしてやりなさいよ。いかがですか。
  68. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 経済企画庁は、経済問題につきましては総合調整する役所でありますからして、すべて総合調整してやっておりまするし、また予算などにも、経済企画庁が立案いたしました、たとえば昭和四十四年度の経済運営の方針という案を立てまして、大蔵省その他各省がそれに従ってそれぞれ予算を編成しておるということになっておりますから、さよう御承知を願いたいと思います。
  69. 大原亨

    大原委員 そうなっておらぬから言うのです。  そこで、これは締めくくり質問で、私の観点から論点を進めてまいりますが、この国会予算委員会を通じまして下田問題が大きな問題になりました。下田駐米大使の召還を私どもは要求をいたしましたが、その問題につきましては、一応党レベルでの話し合いができました。しかしながら、駐米大使は、日本の第一線において自分の所管事項として沖繩問題を扱っておるわけであります。これはこの人の記者会見にもありまするし、あるいは総理大臣の本会議答弁にもあります。  そこで、ずばりとお尋ねをいたしますが、下田大使が、一月六日の午後、外務省における内外記者会見におきまして――これは、政府が釈明の問題についてこういうことを言ったということで、記者諸君も非常におこっておられるようですが、私は当然だと思います。私もそれを支持いたしますが、その発言の中に、本土並み交渉は外交として無責任である、責任を持たないものである、この世界週報には全文が載っておりますが、るる申し述べておるし、あらゆる新聞にも、アメリカの全権大使といたしまして出席をいたしまして、下田大使は言っておるわけです。この本土並み交渉は外交としては責任を持たないものだというふうな、そういう見解は、総理大臣は御支持になっておるのですか、いかがですか。
  70. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 下田発言はいろいろ波紋を投げかけております。昨日、そこで、下田発言に対する政府の最終的な統一見解を皆さん方にお話しをしたはずであります。私は、またその中でも、ただいまの下田発言については、これは政府が支持してない、そういうような発言をしたと思っておりますが、これは昨日ここで統一見解を申した。また、それを私も、外務大臣の言っていることは同感であります、かように答えております。  ただいま、下田発言のとおりに外交交渉をしておるかというお尋ねであれば、さような交渉はしておらない、かようにはっきり申し上げます。  また、基地のあり方については、いまなおまだ白紙でございますし、したがいまして、これから外交交渉を始める。外務大臣がこの六月に出かけます。その辺からいわゆる外交の本筋がスタートする、かように御理解していただいていいのじゃないか、かように思っております。あるいはその前にももちろんそれぞれの者がそれぞれの交渉をいたしますけれども、いわゆる政府筋の本格的な交渉、それは外務大臣が出かけてから、かように私は理解しております。いろいろそれまでもそれぞれの地位、それぞれの立場からいろいろな発言はするかと思いますけれども、とにかくいま申し上げたように考えております。
  71. 大原亨

    大原委員 愛知外務大臣は、下田大使の発言は個人見解だと言われたのですが、私はそれじゃ済まぬと思うのです。これは荒立てて言うわけではないが、理の当然です。理の当然ですよ。これは、下田大使は訓令を受けて公務出張で帰っておるのです。私はニュースで見ましたら、グエン・カオ・キという南ベトナムの副大統領がフランスへ行って、スキーをやるときに休暇をとってやっておりましたよ。これは休暇をとってプライベートにオフレコで話をしたことでもないのです。各新聞社、雑誌社、テレビ等でも、やはり駐米日本特命全権大使として発言をしておるのです。ですから、この問題が所管事項にかかわることであるし、国家で一番大きく議論しておることですから、いわゆる外務大臣や総理大臣白紙白紙と言っておるが、その白紙に触れる面について自分の所見を述べておるということは、これは単なる個人見解ということで、事務的なことで見のがすわけにはいかないわけです。したがって、こういう議論が起きてきたわけであります。下田大使はこういう発言をいたしております。基地の態様は本土並みと現状維持の中間の妥当な線で解決する以外にはないのだ、これは繰り返し言っておる。あなたは白紙白紙というふうにして、言うならばしらっばくれておられますが、下田大使ははっきりこういうことを言っているのです。こうだということを言っておる。この点につきましてはあなたはどうお考えですか。
  72. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまお読みになったのは、下田君のどういうところの発言でしたのでしょうか。たいへん恐縮ですが、その材料を私自身持っておりませんので……。  まあ御承知のように、これから始まる――始まるのはやはり何といっても外務大臣において、また最後は私自身が出かけて話をしょう、かように申しておりますが、どうもこの種の問題になりますと、その表現があるいは非常にくどくどしくなってなかなか中身がつかめなかったり、あるいはまたその表現いかんでは真意を必ずしも伝えない、こういうこともあり得るのじゃないだろうか、かように思います。私、そういう意味で、昨日の外務大臣並びに私どもの統一見解というものは、この問題に終止符を打ったような気がするのであります。まあそれまでのいろいろのいきさつがあるからこそ、皆さん方からもこういう点を明確にしろというのでいろいろ追及ざれたのだろうと思います。結局、これはやはり十分の真意を伝えない、真意をつかまえないところに問題がある、私などは特にそういう感じがいたしております。  御承知のように、私白紙だと言っている。白紙と言っているのだから、あれは何も考えてないのだろう、こういう話があります。しかしながら、これを何も考えてないのじゃない。このことが一番問題なんで、これをはっきりしない限り返還の交渉もできないだろう、こういうことを申しておるのでありますけれども、しかし、私は白紙だ、こう言うと、国民の皆さんに対してもあんな無責任総理大臣はない、もう今日になってもまだ白紙だと言っている、とんでもないやつだ、こういうようなおしかりを受けますが、そうではない、まだ結論を出してないということで、それを私は白紙と言っている。こういうような基本的な誤解もあろうかと思います。  したがって、まあ下田発言については、昨日私どもがここで申し上げたこと、あれをもって政府の最終的な態度だ、統一見解だ、かように御了承いただきたいと思います。
  73. 大原亨

    大原委員 その下田発言の行き過ぎを認められたとは、これは事実であります。それは私ども率直に受け取っておるわけであります。そういうことであります。しかし、全部が全部行き過ぎとは私ども考えられないのであります。なぜかといえば、第一線で交渉している、職務権限を持ってやっている人ですよ。世の中では、下田外務大臣、佐藤次官、愛知条約局長と言う人もおる。そう言う人がおるのですよ。そういうこともあるんですよ。それで、活字になって出ておりますから、私は言うわけです。これは、新聞社の諸君は、特命全権大使である下田武三氏を呼んで座談会を開いているのです、ちゃんと肩書きで。訓令を受けて帰国中ですよ。たとえば、沖繩は、日本だけでなく極東全体の防衛に国際的使命を負っている。沖繩の米軍基地からの作戦行動などについて、日本が事前協議で拒否する権限を持つことになれば、他の極東の国々が不安を持つ。沖繩基地という国際制度は多数国の利益に関係をしておる、こういうことがあるわけですね。これは最近のニュースによりましても、日本の外務省は台湾の大使に対しましても、あなたが、心配するな、こう言われた。それから韓国や台湾等の関係においても、沖繩の基地からの作戦行動について、事前協議を弾力的に運営すると称して歯どめをはずすような、そういう交渉をしておられるということがいわれておるわけです。外務省筋が交渉しているということがいわれておるのです。ですから、この発言はこれを裏書きしている。すぐ合っているから、私どもは、このことについて大使として適当であるかどうか、こういう議論をしたのですが、そのことについては、私は釈明でそれ以上突っぱっては言いません。言いませんが、私が読み上げましたことについては、あなたは、そういうことについては、世上周知のことですから、かなりはっきり言われることが、私は国民外交ではないかと思うのですよ。その点についてひとつ率直に御答弁ください。
  74. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いまの点で誤解を受けるんじゃないかと思うのは、いままでしばしば申し上げたのは、日本を含む極東の安全と、こういうような表現をしている。それで、これではどらも不十分じゃないか。今度の施政演説でも、特にその点を実はくふうさしたのです。日本及び日本を含む極東の安全、こういうように、どこまでもはっきりしているものは、日本の安全、日本の存立、これを確保する。その意味において、まず第一に日本なんだ。その日本の存立をはかるということ、その意味では、日本の本土だけでは不十分なんだ。やはり日本の周辺、極東、そういうものがあるんだ。だから、そこまで考えなければならぬ。こういうのが、表現の誤解を受けないつもりで、この演説で、私自身が特に筆を入れ、官房長官などとも相談をしたつもりであります。どうもそうでないと、日米安全保障条約は極東の安全のため、これは日本のと同時に、極東の安全のために役立りんだ、かように申しますと、何だかわれわれの平和憲法のワクをどうも出ているんじゃないのか。平和憲法からいえば、日本だけ安全であればそれでいいんじゃないか。日本の存立が確保されれば十分じゃないか。しかし、そのためには、日本の本土はもちろんのこと、日本を含む極東の安全が確保されなければならないのだ、こういうのが私どもの主張であります。したがって、台湾の諸君が来ても、やっぱり極東の安全、その意味において心配することはないんだ、かように私どもは申します。  同時に、もう一つ申し上げたいのは、私どもの平和憲法のもとでは、日本の安全、そうして日本が使っておる自衛力、これは外には行かないのです、外には脅威は与えないのです、こう言って、もうはっきりしておるわけです。ただ、いまのようにお尋ねになりますと、どうも誤解しやすい。極東の安全のために日本努力する。それじゃ自衛隊は台湾にもあるいは韓国にも出かけるのか、かようにとられやすい。さようなものではない。そこは、だからはっきり二つに分けて申し上げておる。これならみんな納得がいくんじゃないだろうか。そこに観念上の分界点がはっきりしている、かように私は思っているのです。どらも、日本の安全というものと即極東の安全、それはそのとおりに違いありませんけれども、ただ、極東が安全であるから日本もその恩恵を受けて安全であるという、そういうのと、日本自身の安全というものと極東の安全とが直ちにつながるという、そこらのところにやや誤解を招きやすい、かように私は思っております。
  75. 大原亨

    大原委員 法制局長官、時間もなんですから、簡潔に……。  領海侵犯は国際法違反ですか。
  76. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 領海は、むろん一国の主権の届く範囲でございますから、その領海をその一国の意に反して――侵犯というのはそういう意味でございましょうが、それは国際法に当然に違反すると思います。
  77. 大原亨

    大原委員 この違法行為があった場合には、沿岸国のとり得る措置はどういうことですか。
  78. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 沿岸国としては、主権の発動でこれを排除するということができると思います。
  79. 大原亨

    大原委員 領海侵犯の事犯があった場合には、やはりそういう措置ができますか。対抗措置ができますか。
  80. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 領海の侵犯がありましたときに、その排除措置がとれるかというお尋ねだと思いますが……。
  81. 大原亨

    大原委員 領海侵犯のそういう事実があって、外へ出たというふうな場合に、それを追跡できるか。
  82. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 追跡ができるかということでございますか。これは領海侵犯の事由によると思いますが、たとえばある法律に違反した。たとえば麻薬の問題だとかなんとか、そういうふうなことで、それに違反して出ていった。これに追跡権があるということは国際法上認められております。
  83. 大原亨

    大原委員 これはプエブロ号事件に関係をした下田発言の問題です。これは、プエブロ号が領海を侵犯したかどうかということについては、私はわからない。わからないが、侵犯した事実がありということについては予測できるのは、情報艦、スパイ艦である。しかも日本から出ておる。それで、艦長は逮捕されてから向こうで白状しておる。サインしておる。帰ってからひるがえした。そこで、そういう事犯に対しまして、プエブロ号の艦長がとった態度は国際法上正当である、プエブロ号に対してアメリカが防衛権を行使するのは正当であるというふうな下田大使の発言というものは、そういう事実についての問題点や、日本を基地として出ているプエブロ号のそういう事実から見てみまして、そういう条約解釈だけをやるというふうなことは、これは大使といたしましてきわめて不謹慎ではないか。(「その前提を言わなければならぬ」と呼ぶ者あり)前提はいいよ。つまり、そういうことについて大使がそういう発言をするということは問題があるのではないか、こういうことを言うわけです。だから、そういう点についても、この文章にあらわれているようなことでいろいろ――結末が一応ついておりますが、しかし、私どもが言っているのは、いままで二回、三回とこの重ねてまいりました下田発言に対するいろんな問題の中において、国会審議しておるときに、こういういろいろ議論のある問題について、一方的なそういう仮定を設けて条約に対する解釈をするというふうなことは、私は、大使としては行き過ぎではないか。全く国会を、国会における問題点を無視しておる行動ではないかと思うのです。この点は時間をかけて議論をしたい点ですが、そういう点を含めて私は十分注意をしていただきたいと思うわけです。総理大臣、いかがですか。
  84. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 時間もございませんから、詳しく申し上げるのもいかがかと思いますが、下田発言につきましては、先ほど来総理から御答弁のありましたとおりでございますが、いまプエブロ号事件のお話が出ましたが、この件はこういう事情にございますことを申し上げておきたいと思います。  これは二月二十一日のことでございますが、ロサンゼルスで、下田大使がかねての求めに応じまして、世界情勢分析協会とでも申しましょうか、そういうカウンシルの主催のところで講演の依頼を受けました。その原稿等につきましては、十分本省とも打ち合わせ済みでございます。ところが、それに関連をした記者会見を求められて、そしてたまたまロサンゼルスの近傍のサンディエゴで、プエブロ号艦長と乗員の米海軍査問委員会が行なわれていた最中である関係でもございましょう、非常にこまかいプエブロ号事件についての質問を大使としては受けたわけでございますが、非常にこれは念を入れて、結論的に言いますと非常に上手な答弁をいたしております。ということは、たとえばプエブロ号艦長の証言にかりによれば、そういう前提をすれば、公海の中で起こった事件であろうと思われる。かりに公海の中で行なわれた事件とすれば、こうこうこうであった、そしてたいへんな事件にならなかったことは非常に賢明な措置であった、こういろわけでございますから、そういう環境の中におきました大使としての応答ぶりは私は評価しております。
  85. 大原亨

    大原委員 いまのを、私、議論したいのですが、時間がないから、何を評価しているのか、いまの点についてはまた別の機会に議論したいと思います。  最後に、総理大臣、いま沖繩返還あるいは基地の態様の問題については、これは少なくとも本土並みという、それ以上のことはたくさんありますが、そういう国民の世論ははっきりいたしております。というのは、野党に対する投票率は五一%です。選挙法の関係自民党が多いですが、それから自民党の中でも、前尾さんは非核三原則を貫けば本土並みが論理的に当然だということを言っておられる。それから三木さんは自分の外交交渉を通じて、本土並み早期返還が可能であると、こう言っておられる。沖繩における民意は、あの選挙戦を通じまして、自民党の与党まで本土並みということを主張しておるから九九%はそうです。ですから、国民の大多数の意思というものははっきりいたしておるわけです。そして返還を求める論拠についても、当時の事情をいろいろ下田大使は言っておりますが、これは条約自体というものの権限や、あるいは民族自決権は厳として今日承認されていると思います。ですから、総理沖繩返還交渉に当たられる際には、これらのことを十分踏まえて交渉に当たってもらいたい。私の締めくくりの最後の質問といたしまして総理大臣見解伺いたいと思います。
  86. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は基地のあり方についてはまだ白紙でございます。  そこで、それだけは別に皮肉にとられないでお願いをしたいのは、大原君のただいまの本土並みの発言は、これはよほど重大だと私は思っております。社会党の方も安全保障条約を認めて、そして本土並みの基地のあり方、それが沖繩の場合もやむを得ないのだ、かように考えていらっしゃる、かように思いましたので、この点はたいへん重大なことだ、そういうことを考えながら国民の動向というものを私は把握しつつあるという、そのことをひとつ御了承おき願って、私もこれはこの質疑を通じてたいへんな収獲であった、かように思っております。ありがとうございました。
  87. 大原亨

    大原委員 最後に私が言ったのは、少なくとも本土並みというのは基地を撤去して安保条約は解消する、やめる、そういう議論も含めて少なくとも、とこういうことを言ったのです。あなたは誤解されてはいけません。それはよろしい。そこでこの議論は別にいたします。  私は内政、外交を通じまして非常に重要な政局になっておると思うのです。だから、沖繩の問題その他を通じまして主権者の意思が十分反映するような、そういう参加できるような措置をとられることを強く要求いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  88. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて大原亨君の締めくくり総括質疑は終了いたしました。  午後の会議は一時より再開し、締めくくりの総括質疑を続行いたします。  この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ――――◇―――――    午後一時四分開議
  89. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  締めくくりの総括質疑を続行いたします。田中武夫君。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 きょうは私は、総理も御承知のように、いままで私としてはやったことのないテーマ、沖繩に関する若干の問題を中心に御質問いたしたいと思います。いわば外交のしろうとでございます。そこですでに論議済み、解決済みの問題もお伺いするかもわかりませんが、簡潔に明確にひとつお答え願いたいと思います。  その前にちょっと大蔵大臣にお伺いをいたしておきますが、実は大蔵大臣は先日もこの委員会で、食管会計の赤字の問題につきまして、予備費と弾力条項、すなわち特別会計予算総則第十一条によってもう処理をしたから補正の必要はないのだ、このように言われました。そして二月二十五日に昭和四十三年度一般会計予備費使用総調書(その一)外二件、これを国会に承認を求むるために提出せられたわけなんです。これを見ておりましてちょっと疑問が起きたので、その点だけをまず冒頭確かめておきます。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕 と申しますのは、財政法三十六条三項は、予備費をもって支弁した調書及び各省庁の調書を国会で承認を求めなければならない、このように規定いたしております。ところがこれを拝見いたしますと、「各省各庁所管使用調書」というのは単なる参考事項、「参照」としてあがっているにすぎないわけなんです。こういうやり方は財政法三十六条三項からいって違反ではないか。各省庁使用調書は、これは国会承認を求めるそのものでなくてはならぬと思う。参考事項として扱うことはいまでもそうであったか知りませんが、いささか財政法上の疑義が出ましたので、ちょっとお伺いしておきます。
  91. 福田赳夫

    福田国務大臣 主計局長をして答弁させます。
  92. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 三十六条の第二項、第三項のお話と思いますが、「内閣は、予備費を以て支弁した総調書及び各省各庁の調書を次の常会において国会に提出」とございます。従来から――今回御提出いたしましたのはたしか十二月中までのものを御提出したのでありますが、その調書を、各省庁の調書はいわゆる一般会計でありますところの予定経費の要求のような資料をつけまして、その総金額を総調書としてお出ししてあるわけでございます。
  93. 田中武夫

    田中(武)委員 私はこれで時間をとろうとは思いませんが、秀才局長としてはいささかどうかと思う答弁ですね。財政法三十六条の三項を読んでごらんなさい。いままでこういうことで済んできておったか知りませんが、いま気がついたのですがね、明らかに三十六条三項の違反です。
  94. 福田赳夫

    福田国務大臣 まことに突然な御質問なので、私もここに条文等を持っておりません。したがいまして、十分検討して、適当な機会にお答えをいたすことにいたしたいと存じます。
  95. 田中武夫

    田中(武)委員 条文ならお貸ししますよ。どうしますかね。事は法律事項なんです。財政法違反だと指摘しておるのですよ。どうしてくれますか。
  96. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 ただいま大蔵大臣は、後刻調査の上お答えをすると言っておりますので、暫時お待ちを……。
  97. 田中武夫

    田中(武)委員 資料と違うんです。法律問題ですから、時間をかけたからといって出てくる問題ではありません。
  98. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 国会に御提出してございますのは、最初にこの総調書、この事項別を並べまして、その次にこの各省所管別に調書をつけて御提出してあるはずでございます。
  99. 田中武夫

    田中(武)委員 これには「参照」となっておるんですよ。中身を見ても「参照」になっておるんですよ。各省庁のこれも承認を求めなくちゃいかぬのですよ。
  100. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 ただいま拝見いたしまして御趣旨がわかったのでありますが、御提出してあるものは法律上要請されておるものは一括して御提出してあるわけでありますが、「参照」と書いてあるのがおかしいという御趣旨かと思います。この点については今後検討いたしまして、次回から、その点はよく検討いたしまして、直すべきものは直したいと思います。
  101. 田中武夫

    田中(武)委員 詭弁ですよ。ちゃんと大きい字で三つあがっているんですよ。そして「参照」として「各省各庁所管使用調書」と出ておるのです。あくまでも参考事項としてつけたということなんですね。事は、財政法からいえば、これも承認を得なければならないということですよ。どうしてくれます。
  102. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 しばらくお待ちを願います。
  103. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいま田中さんの御指摘の調書の問題でありますが、やっぱりよく考えてみますると、若干疑義もあるやに思うのであります。したがいまして、よくこれは法制当局とも検討を遂げました上、善処をいたしたい、かように存じます。
  104. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、そのときにもう一つ検討をしてもらいたいのですが、これで言いますと、三つあるのですね。その三つ目に「昭和四十三年度特別会計予算総則第十一条に基づく使用総調書(その一)」というのがある。これを承認を求めるという。これを調べてみましたのですが、どうも法律的には直接このことは結びつかないですね。財政法にはこういうのはないんですよ。ということは、本来たとえば弾力条項とかいわれておりますが、そういうことは財政法は許していないんだ。そうしてそういう必要があれば補正を行なう、こういうのが財政法の考えではなかろうかと思うのです。ここに提出してまいりましたのは、予備費とそれからいわゆる弾力条項等の特別会計の問題なんですね。ところがこの特別会計の点は、予算総則十一条に基づくというが、予算総則というのは法律でも何でもないわけなんです。財政法との関係においてはその基礎がないわけですよ。私は、そういう場合は補正を行なうべきである、こういうことが法律の精神ではなかろうか、こう思いますので、あわせて御検討の上御答弁をいただきます。
  105. 福田赳夫

    福田国務大臣 さようにいたします。
  106. 田中武夫

    田中(武)委員 これから総理、本番に入りたいと思います。  先日、当予算委員会に初めて沖繩から喜屋武公述人が国会に参りまして、公述をせられました。その公述の一部を要約して申し上げます。沖繩は四分の一世紀にわたり異民族の支配を受けており、これは沖繩県民の意思いかんにかかわらず、一方的に排他的に支配せられ、土地を使用せられております。この統治のやり方は世界に類例のない方式であり、地球上で沖繩だけであります。――次に続くわけですが、このように訴えております。これは私は、われわれと同胞である日本国民沖繩県民がひとしく抱くところの血の叫びであろうと考えます。  そこで、まず総理にお伺いいたしますが、沖繩日本国領土であり、沖繩県民は日本人であることにはいささかの疑点もございませんと思いますが、いかがです。
  107. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩に潜在主権のあることは数次にわたってアメリカも認めておる。またここに住んでおる同胞、これは日本人であること、これも間違いございません。
  108. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、沖繩日本が、いわゆる潜在とかなんとかいわれておるが主権を持つことは、これはだれしも認めるところであります。そうであるとするならば、平和条約第三条によってアメリカに統治を譲ったというか委託した、しかしながらアメリカはその統治にあたっては、日本国憲法の趣旨を体し、日本国憲法を無視した施政は行なわれない、このように私は思います。沖繩において施政権を行なう場合においては、日本国憲法は無視はできない、このように思いますが、いかがでしょうか。
  109. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 やや違いますが、残念ながら沖繩は占領され、無条件降伏した結果、施政権がアメリカにあります。そのために日本国憲法そのままが適用されないというのが現状であります。
  110. 田中武夫

    田中(武)委員 沖繩のアメリカの占有についての歴史的過程については後ほど詳しく伺います。しかし、少なくとも日本が国連に加盟し、国連憲章第二条は主権平等の原則をうたっております。したがって、アメリカも日本の主権を尊重すべきである。その日本国主権が定めたところの憲法は守るべき義務があると私は思います。いかがでしょう。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 法律の問題になってくるし、平和条約第三条の問題になってきますので、私も論理的にはっきり、これは法制局長官に答えさせたらいいかと思っております。
  112. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 先ほど来お話が出ておりますように、田中先生もうとっくに御承知のことを申し上げることになりますが、平和条約三条で、とにもかくにも米国が立法、司法、行政上の権力の全部及び一部を行使する任に当たるということになっておりますので、その中身は結局施政権からくる諸法規の定めるところによって定められるということに残念ながらなると思います。
  113. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは沖繩に対するアメリカの施政権は、アメリカ大統領の行政命令にその根拠を置くと思います。したがいまして、アメリカ大統領の権限は、アメリカの憲法のもとあるいは国際公法のもとに制約を受けると思いますが、いかがでしょう。
  114. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 アメリカの憲法との関係でございますから私から御答弁いたしたいと思います。  米国の憲法につきましては、これがそのまま適用される地域としては、アメリカ合衆国を構成しておりまする各州の地域に限られておるようでございます。そしてそれ以外の地域につきましては、憲法上アメリカ合衆国に包含されている地域に該当するかどうかということについては、アメリカの国内にいろいろの判例がございますようです。個々の地域についてそれぞれの場合決定が行なわれているようであります。いずれにいたしましても、沖繩がアメリカ合衆国の各州のようにアメリカ憲法がそのまま適用されている地域でないということは一般的に認められているところでございます。そこで、平和条約第三条に基づく沖繩における米国の施政権の行使は、米国憲法の規定の範囲内で大統領が公布することを認められた行政命令に基づいて行なわれておる、かように解すべきではなかろうかと考えております。
  115. 田中武夫

    田中(武)委員 私の申し上げておるのは、アメリカ憲法のいわゆる属地主義といいますか、そういう問題ではなくて、アメリカ大統領の行政命令にその根拠を持つ。ならば、その行政命令はアメリカの憲法、慣習法、あるいは国際公法等々の制約は受けるでしょうねと言っておるのですよ。
  116. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ことばが不正確かもしれませんが、先ほど申しましたように、アメリカ憲法の範囲内で、大統領が公布することを認められておるところの大統領行政命令に基づいて行なわれておる、こう理解すべきではなかろうかと思います。
  117. 田中武夫

    田中(武)委員 したがって、その大統領命令は、アメリカの立法、憲法、法律等々を含みます、の制約を受ける、このように思います。  そこでお伺いいたしますが、いわゆる沖繩には布令行政といいますか、布令統治が行なわれておりますが、この布令というのは法律的にどのような性格を持っておるのですか。
  118. 床次徳二

    ○床次国務大臣 沖繩におきまする布令あるいは布告といわれておりますが、この二つは米国の沖繩施政の現地におけるところの管理機関としてのアメリカの民政府というのがありますが、その民政府の長でありまするところの琉球列島高等弁務官が、琉球列島の管理に関する大統領行政命令によって与えられた権限を行使するために、大統領行政命令のワク内において発するところの法的規範でありまして、わが国の法令に匹敵する効力を持っておるものであります。
  119. 田中武夫

    田中(武)委員 布令はその根拠を大統領行政権に持つ。したがって大統領行政権の範囲を逸脱したところの布令は出せぬ、こういうことを確かめておるわけなんです。
  120. 床次徳二

    ○床次国務大臣 布令は、行政命令によりまして権限が高等弁務官に与えられておりますので、その与えられた権限の範囲内におきまして高等弁務官が布令を発しておるものであります。
  121. 田中武夫

    田中(武)委員 十分ではないが次へ進みます。  ここで、総理、過去のことにもなりますのであまりとらわれたくないのですが、一応この辺でアメリカが沖繩を占領、占有してきた経過を少し法的に、私は私なりにこういう表をつくってみました。それを一々ここでその合、違法性を聞く時間はございませんが、ちょっと触れてみたいと思います。  私はこれを一期から四期まで分けています。  第一期は、戦闘行為終了からいわゆるポツダム宣言受諾まで、これはアメリカのいわゆる軍事占領であります。しかし、軍事占領であったとしてもそれは何でも自由にやれるということでなくて、ヘーグの陸戦規則等の制約はあるはずです。  そこで、基地の民有地と公有地に分けて考える必要があると思うのです。民有地につきましてはヘーグ陸戦規則四十六条でこれを没収できないことになっております。公有地、すなわち当時の国、県その他の公有地、これもヘーグ陸戦規則二十三条ト号等によって制約を受けておる。これが無視されておる。  それから、第二期を終戦より講和条約発効まで、これはいわゆる軍事占領の継続でありますが、その目的はいわゆるポツダム宣言の実施の監視にあったはずです。ポツダム宣言を要約すれば、日本軍国主義の解体と民主化でございます。したがって、この期間におけるアメリカの占領はその目的の上にのみ行使せらるべきであったと思います。ところがアメリカは戦闘行為が終わってから半年間沖繩県民を収容所に収容いたしました。これはあとからできました条約でありますが、ジュネーブ条約の趣旨にも反します。そうして自分の思うところだけは取り上げて、要らないところを開放というかっこうで沖繩県民に渡していった。あるいは公有地につきましても、ここにもやはり私は戦時占領の継続であるからヘーグ陸戦規則が適用せられると思います。五十二条、五十五条、もう一々読みません、の違反があると思います。それから、この間に日本国憲法が公布、実施せられました。この時点において、日本国憲法の公布、実施のときに、沖繩日本国憲法はどう考えておったか。当時は日本の領土であることには間違いありません。こうして見ますと、講和発効までに対しても、相当の国際法違反あるいは占領目的を越えた行為が行なわれております。しかし平和条約十九条(a)項において、一切の請求権を放棄した、こういうことでありますので、いわゆる損害償賠等については一応ここでは問わないことにいたしましょう。  それから、講和条約発効から問題が起こってまいります。  そこで、その問題を聞くにあたりまして、現在沖繩にアメリカ軍基地は広さにしてどの程度あります。神奈川県程度だといわれておりますが、数にして幾らございます。そうして、その基地のために追われたところの、土地を奪われたところの沖繩県民は五万戸、いままで住んでおったところが基地になったためにやむなく他に移住したものが一万二千戸ともいわれております。沖繩におけるアメリカ軍基地の面積、それから数、そのような中における公有地と民有地はどれほどに分かれておりますか。いまからの質問には民有地と公有地を分けて法律的な根拠を伺いたいと思っていますので、まずその区別をお伺いいたします。
  122. 床次徳二

    ○床次国務大臣 沖繩におけるところの軍用地の面積でありますが、これは四十二年六月現在でありますると、軍用地の中に含まれておりまするところの一般私有地、これは村有地を含みまして平方キロメートルで申しますると、二百八・九六平方キロメートル、エーカーにしまして五万一千五百八十六エーカー。それから国県有地でありますると九十七・五二平方キロメートル、二万四千九十九エーカーになります。それから干拓地が若干、〇・二〇平方キロメートル、四十九エーカーで、合計三百六。六八平方キロメートル、七万五千七百二十四エーカーあります。以上、大体面積から申しますると、全島の一五%くらいと思います。  数から申しますと百五十少しぐらい、大体そういう概算になっております。
  123. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで総理、講和条約が発効いたしました。本来ならばその町点においてアメリカの占領軍は引き揚げるべきである。ところが講和条約第三条によって統治を委任した。そこでアメリカの沖繩におる軍隊ですか、米軍の性格が変わってきたと思うんです。いままでは占領だった、しかしこの講和発効の時点から沖繩アメリカ軍は、いわゆる統治をするところにとどまるところの軍隊である、統治地域における自国の軍隊であるということになるわけです。それが民有地を使用するにあたっては契約をしなければならないと思います。いわゆる戦時没収とか、それもヘーグの陸戦規則四十六条違反だと言っておるのですが、そういうことでなくて、契約をしなければ使用できないと思うんです。それはアメリカも認めたわけです。そこで一九五二年十一月一日布令十九号で契約権というのを出したわけですね。ところがこれに基づいてアメリカ軍との間に契約をしたものは、わずかに二%。そこで契約ができないということになると、今後は一九五三年四月三日に布令百九号、土地収用令を出してきた。そこでアメリカは契約権を持つということをその布令によってきめておるんですね。その間に解釈としては、一九五〇年七月一日までと及びその後アメリカは黙契権を持つ、こういうように言っておるんですね。これはどうでしょうかね。契約がなければ講和発効後は使われない。もし使うとするならば土地収用の手続をとるべきである。アメリカでもだから土地収用令ということばを使っている。ところが、その内容たるや、近代的国家における土地収用のルールが全然ありません。この点いかがでしょう。  さらに今度は、日本が国連加盟した時点においてまた事態は変わる。私の解釈からいくならば、法制局長官、国連憲章二条の主権平等の原則、さらに七十六条の信託統治の目的、七十七条の信託地域の規定、七十八条の信託統治制度は、国連加盟国の間には認めないという、これらの規定を総合することによって、アメリカに対し日本の統治を委託したところの平和条約三条は、国際法的に効果を失った、このように考えております。  その間においてどういうことが行なわれておるかというと、一九五七年、昭和三十二年ですね、二月二十三日に布令百六十四号、米合衆国土地収用令というのが出されております。それは訴願の手続があるが、これはほんの形式的なものであって、いわゆる補償についてだけである。さらに期間は三十日と定められておるけれども、都合によってはこれを短縮し、言いかえるならば立ちのき期間しか認めないという事例があります。さらにこの間にあって――事実を言えというなら事実を申し上げますが、土地収用にあたって武装兵が出動したというような事態もございます。いわゆる私の言う第三期、第四期、講和条約発効から国連加盟まで、国連加盟から今日まで、アメリカは国際公法を踏みにじり、土地収用、土地占有を続けてきたというように私は結論づけておりますが、いかがでしょう。
  124. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいまお話にありましたところの民有地の使用の問題につきまして、現在の状態はお話と違っておるようでありますので、現在の使用状況につきまして申し上げたいと思います。  沖繩の米軍が一般住民の民有地を使用する関係は、高等弁務官布令の第二十号、「賃借権の取得について」という布令に基づまして権利を取得しておるのでありまして、米軍はまず要求告知書を出し、地主がこれに応じた場合は、琉球政府と個々の地主とが基本契約を結び、さらに球琉政府と米軍との間でもって総括的な賃貸借契約を結んでおるのであります。過去におきましては、土地の問題につきましてずいぶん紛争したことがあるのでありまするが、今日におきましては、この布令によりまして規制されております。
  125. 田中武夫

    田中(武)委員 その布令も知っております。しかし、ほんとうにいまの、あなたが言われた民有地のうちで自己の意思に基づいて賃貸契約をしたのはどのくらいありますか。それがスムーズにいかないから、土地収用令を出して強制的にやったのです。  そこで私は、ここに念のためにアメリカの土地収用のしかたも若干調べてまいりました。各州においても違います。しかし、大体は行政的方法と司法的手段で土地収用しておるようです。しかし、私がここで言わんとするのは、少なくとも近代国家において、民有地を取り上げる、土地収用にあたっては、土地収用の目的、そしてそれに対する一定の手続、さらにそれに対する異議の申し立て、それに対してのいわゆる公正な判断をする機関等々は、いずれにいたしましてもなくてはならぬ原則であります。そういうことがなくして民有地が収用せられておるということは、これは問題であろうと思うのです。いかがでしょうか。
  126. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいまの民有地の取り扱いにおきましては、お話しのような形ではなくして、いずれも個人との契約をいたしておる次第であります。ただ、契約がうまくいかなかったかどらかという、その数字等につきましてはただいま存じておりません。
  127. 田中武夫

    田中(武)委員 おかしいではありませんか。全部賃借によって契約をしておる、こうおっしゃったのでしょう。ところが、それはほんのわずかなんです。少なくとも私は、去年の資料を持っています。それ以後何件そういう自由意思に基づく賃借契約、使用契約ができたのかそれは知りませんが、少なくとも去年出た木を私は持っております。
  128. 山野幸吉

    ○山野政府委員 お答えいたします。  ただいま総務長官からお答えございましたように、現在は民有地につきましては、琉球政府が米軍のほらと総括契約をやっておりまして、それから琉球政府と各個人、農民が個別の基本契約をやっておりまして、全部契約に基づいて賃貸がされておりまして、その契約書に基づいて賃貸料が全部払われておるわけでございます。
  129. 田中武夫

    田中(武)委員 それはまず布令で、アメリカは契約権を持つと一方的にきめておるんですよ。  次にいきます。現在アメリカ軍の民有地使用は、おっしゃるとおり契約方式によるものと強制収用方式によるものと二つあります。だが、いずれにいたしましても、米軍の意思によって何ものにも妨げられず自己の欲する土地を収用できるようになっております。何回か布令は変わりました。その文言は変わっております。しかしながら、要は、欲する土地を何ものにも妨げられずにこれを取り上げるという内容を持つことは間違いございません。なになら布令集を持っておりますから一々検討いたしましてもけっこうでございます。先ほど言ったように、少なくとも近代国家として、土地収用にあたって守るべき、守られるべき最低のルールすら持っていないというのが今日の実情であります。それはお認めになりますか。
  130. 山野幸吉

    ○山野政府委員 お答えいたします。  土地の賃貸の契約にあたって、農民が承知しない、どうしてもそれを承知しない場合に、例外的に土地の収用の規定のあることは御指摘のとおりでございます。さような場合におきましては、一定の手続をとりまして土地を収用しまして、そして法定の賃貸料が払われることになっておるのであります。そういう面におきましては、いわゆる一般的な自由意思に基づく契約が拘束されておるという場合のあることは御指摘のとおりでございます。
  131. 田中武夫

    田中(武)委員 私はきょうはできるだけ横に寝らずに、きれいな質問で終わりたいと思っております。だが、そういうような言い方でおっしゃるならば、ここで強制収用方式で取り上げた土地が幾ら、自由意思による契約によって使用貸借が認めうらたものが幾らか、はっきりしない限りは質問は進めませんよ。ほとんどが契約に基づくなんてよくも言えたもんですね。そういう答弁をするならば私も開き直りますよ。
  132. 山野幸吉

    ○山野政府委員 これは、以前におきまして、賃借制度ができた、この制度化された当初におきましての経緯におきましては、あるいは先生の御指摘のような強制的に収用したような事例が多かったかもしれません。しかし、現時点におきましては、もうほとんど民間あるいは政府等かう選出されました土地に関する委員会がございまして、それらの決定に基づいて賃借料をきめ、そして農民が個々に基本契約を結びまして、琉球政府のほうで総括契約を結ぶという形になっております。私どもここ一二、四年の間は、そう一方的な強制収用が行なわれた事例はあまり聞いておりません。しかし、それ以前におきましてどういう経緯であったのか詳しく存じておりません。
  133. 田中武夫

    田中(武)委員 この以前というのはどの時点です。少なくとも講和発効以後でしょう。あるいは日本の国連加盟以後でしょう。かりにあなたの答弁をもって是といたしましょう。だが、すでにそれ以前というそれが、もう法律的な根拠がなくして、いわゆる権限なくして行なわれていたことは明らかであります。  さらにもう一つ問題なのは、マスタープランによる計画であります。あらかじめどこがどういうように使用せられるかということがわからない。これは金網でもって囲まれている地域もありましょう。あるいは軍司令部の地図の上にのみ存在しておる個所もあるでしょう。極端に言うならば、軍当局の頭の中に範囲が刻まれている場合もあるでしょう。そのことによって必要であるならば立ちのけ。いまおっしゃるように、なるほど、契約せようというまず第一の方法がとられるが、なければ次に、いま申しましたような布令による土地収用が行なわれます。そうするならば、沖繩県民は安んじて耕作、安んじて住居を持つ自由がないということになります。この点いかがでしょう。
  134. 床次徳二

    ○床次国務大臣 いまお話しの分は、多分いわゆる黙認耕作地と称するものだと思います。軍で所有管理しておりまするが、しかし直接使用しない間は、その田畑等を耕作することが認められておるのであります。その区域が実は非常に多いのであります。そのための一ときどき黙認耕作地かう立ちのきを命じて、そうして新しい施設をつくる、そういう際に紛争が起こるわけでありますが、しかしこれはあくまでもいわゆる黙認耕作地で、基本的な土地の権利というものが米軍に移っておりまして、そうして差しつかえない間は耕作を認められておるという便宜的な状態であるわけであります。
  135. 田中武夫

    田中(武)委員 いろいろの地区があると思うんですよ。しかし絶対的に言って、私は、沖繩県民は居住権、耕作権が否定せられておると言って言い過ぎでないと思うのです。そうじゃありませんか。たとえば黙認地区だといっても、それがいつ何どき取られるかわからない。その黙認地区たるやどうしたものかといえば、沿革的に言うならば、まず沖繩県民を収容所に入れて必要なところを取ってしまって――それから始まっておるのでしょう。違法の上に立ったところの土地占有ですよ。それを、布令を変えることによって合法化しようとしてきたことは事実です。しかし、そのもと自体が違法なんです。これはだれが何とおっしゃろうとも違法です。  そこで、沖繩の返還にあたって基地問題がいろいろ論ぜられております。私は、いまここで国際公法、たとえばへーグ陸戦規則の四十六条違反が過去に行なわれたとか、あるいは文民に対する、一般住民に対する、非戦闘員に対する扱いが、国際戦時公法からはずれておったとかいうことを一々取り上げる気持ちはありません。私は、アメリカの沖繩占有は少なくとも権原、権利の源において違法から始まっておる、そのことだけはわれわれは十分腹におさめる必要があります。そうするならば、B52の常駐の問題、あるいは沖繩返還を交渉するにあたっての心がまえ等々について、私はおのずから正論として吐き得るところの根拠ができてくるのではなかろうかと思うわけです。総理、いかがでしょう。
  136. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま田中君はたいへん憤慨をまじえてお話しですが、私どもも、このわれわれの同胞が二十数年にわたって他国かう支配されている、その結果が一体どういうものかという、これはほんとうにたまらないことじゃなかろうかと私は思うのです。いま言われるような財産権、さらにまた、自分たちの居住権あるいはまた自分たちの商行為、あらゆる面においてたいへんな制約を受けておる。とにかく自由というものがほとんどないんじゃないか。そのもとは、いまお話しになりましたように、戦争によって占領されたそのときかうの続きだと――ある程度布令その他では改正はされた、かようには思いますが、それにいたしましても、基本的にどうしてもぬぐい去れないのは、自分たちが戦争によって占領されたそのあとが残っておる、こういうことだと思う。私は、早期返還を皆さん方に呼びかけておるのもそういうことなんです。私は、とにかくこういう点を、現地に行ってみればなおさらそういうことを感ずるのであります。ただいま田中君が言われたこと、私は、改善を見たといいながらも、その改善が基本的なものでないということ、そういう意味においてなかなか現地同胞は納得できないだろう、かように思います。
  137. 田中武夫

    田中(武)委員 政府見解と私の見解は食い違う点があろうかと思いますが、私の理論をもってすれば、時間が許されるならばもっと詳しく、実はこういう大きな表をつくってみたのですからやりますが、その権原に、権利の源に、違法から始まっており、疑問がある、こういう上に立っております。したがって、われわれの主張する沖繩返還にあたっては、即時、全面、無条件返還が法的にも正しい。さらに、このことは、日本の誇る三人のノーベル賞を受けられた先生方をはじめとする七人委員会もこれを支持しております。ここで六月に愛知さんが行かれる、秋には総理が行ってめどをつげるとおっしゃっておる。このときに、私はいたずらに過去の法律論をもってのみものごとを決しようとは思っておりません。しかし、かりにハーグの国際司法裁判所に提訴したなうば、私は勝てると確信を持っております。しかし、その方法をこの時点においてとるほうが、時期が早められるかどうか問題です。  そこで、総理に決意を促すわけなんですが、このことについては何回か入れかわり立ちかわり総理の腹を聞いておりますが、依然として白紙。よくいわれますが、一枚の紙にも裏表、こういうことがありますので、白紙の裏には何かあるのがあたりまえなんです。また、見たところ白紙でも、火にあぶれば文字が出てくる白紙もございます。あえて申しますが、ばかの一つ覚えのような白紙白紙と言わずに、この辺で少しは一枚の紙の裏側を見せたらどうです。見せないとするならば、ここできのうも公明党の正木委員、あるいは大原委員も言っておりましたが、一九六七年に、一昨年の佐藤・ジョンソン声明の中においてこれを総理は認められておる、あるいは日本文と英文とが違っておる、こういうように言われておるが、何らかやはり核つきを含むところの基地の存続を認められたのではなかろうか。そこで、言えないので、白紙白紙と言われておるのじゃなかろうかということが勘ぐられますが、いかがでしょうか。
  138. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかく、いま沖繩の状態は、これはもういろいろの説明のしかたがあるだろうと思うのであります。社会党はヘーグに訴訟を提起しても勝つのだ、しかし何年かかるかわからぬからそれはやめた、こう言われるのですね。私どもは、いま沖繩の返還、祖国復帰、これはアメリカとよく話し合った上で、相互の理解の上に立って、これを実現しようと考えておる。サンフランシスコ条約第三条、これはもう基本的な施政権行使のそのもとの条約のあることははっきりしておりますので、これは社会党と私どもとそこで主張は違います、そんなことをいまここで論議するつもりはございません。  しかし、幾ら法律的な根拠があるにしても、いま言われるような沖繩の同胞が苦しい状態にあり、そうして納得のいかないような状況にある、これは私どもも理解ができるのです。そういう意味かう、私ども、いま沖繩の祖国復帰のできるだけ早く実現することを実は期待しております。これが一昨年のジョンソン大統領と私との話し合いなんです。いわゆる両三年のうちに沖繩返還のめどをつけようという、これはまだめどでございますが、いついつ返るというわけじゃありません。そのときに問題になるのが、いまお尋ねになる基地のあり方なんです。基地のあり方は、どうしてもある程度まで煮詰めなければならない。話はそれはできるわけじゃありません。これは何度でも、私どもは納得のいくほどの、われわれが納得のいくそういう形で交渉する決意ではございますよ。ございますが、いま言われるように、簡単な結論が出て、そうしてそれをどうも国民に話ができないかう白紙白紙と言っているのだと、こういうように言われると、私の真意ではない。表は白紙でも裏に何かあるだろう、やっぱりこういう事柄は表かう見ないと、裏を見ちゃいかぬ。これはいかない。そこで、お話しになりますような、案外あぶり出し、そうすると、表が白く見えておっても何か出るのじゃないか。そういうものは、これはまあこれからまだあるだろう。いままだあぶり出しまでいっておらないのです。私は、とにかく皆さんの御意見を十分聞いて、そうして私が誤った、そのために日本国民に非常な負担をかけた、こういうようなことがあってはならないと思っておりますので、私は、そういう意味白紙、いわゆる慎重な態度でただいまいるのであります。そういう意味で、私が意見を持っておうないということのほうが、むしろ皆さん方のほうの御期待、御希望に沿えるゆえんでもあろうかと思います。そういう意味で、御遠慮要りません。これはひとつおまえ行ったらこういうようにやってこい、この沖繩の同胞の苦しい状態にもっと理解を持て、こういうようなお話は、先ほどからのこの結論を引き出されたそのもとだと思います。私もそう思っております、ずいぶん苦しい状態でおられるだろうと。日本人の施政下ならしんぼうのできる事柄も、外国人であるがゆえにどうしてもしんぼうができない、こういうものもあるだろうと思います。それらの点を考えながらも、私はやっぱりこれがうまく実現できるように最善を尽くさなければならない、かように思っておる次第です。
  139. 田中武夫

    田中(武)委員 総理白紙白紙と言われながら、一つの方向を導いておるように私は思うのです。その一つは、非核三原則についても、だんだんと表現が変わってまいりました。まず、最初は憲法上の問題として持たないということだった。ところが、二つのうち一つ政策だと、それも憲法でなくて、今度は次元が原子力基本法へとおりてきた。憲法から法、そして政策というならば行政権ですね、だんだんと次元を下げてきたことによっても、私は総理白紙と言われながらも、腹の中で一つの方向を考えておられるのではなかろうか。これは、昨年以来のこの委員会におけるあらゆる議論の中から推測せられるのでございます。その点が一つございます。  さらに、最近どうも、これは総理は知らぬことだと言われればそれまでですが、与党の中に、沖繩の問題は休戦にしようじゃないか、そして大学管理の特例法とでもいうのですか、それを国会に出してきて、国民の関心をそこへ集中さそうというか、言いかえるなうば、問題をすりかえて国民の世論を他に導こう、こういう意図があるのではなかろうか、このようにも思うわけでございますが、いかがです。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、沖繩の基地のあり方で原子力基本法を出したことは、これは憲法が明確にいってはおらないけれどもこの基本法があるじゃないか、こういう話で、憲法よりも下位の法律を出したといったわけじゃありません。そこに一つの誤解があるようです。なら、なぜ憲法で終始しないか、また私自身いまの話で思い起こすのでありますが、憲法でどうあろうと、佐藤内閣では核は持たない、このことをはっきり言っている。だから、その大事なことはやっぱりお忘れになっちゃ困る。  それから、いまの大学問題とすりかえるんじゃないかと言われます。しかし、大学問題は重要な内政の課題であることは、これはもう社会党の方もお認めだと思う。私は、外政上において、外交上において沖繩の返還問題、内政上においていまの大学問題、これが何よりも大事なことだ、かように思っております。別に問題をすりかえちゃおりません。問題の重要性を十分とらえておるつもりです。ただ野党の方が、午前中もお話がありましたが、解散問題にこれをからましておられる。解散よりも、その前にこういう問題を片づけなくちゃならない問題でございますまいか。私は、そういう意味解散考えてないということを申したのですが、どうも何か解散がつかえていて、しゃべることもしゃべれないようなお気持ちのように聞こえる。御遠慮は要らぬのですよ。どんどん外政の問題、内政の問題この二つをやってもらいたい。
  141. 田中武夫

    田中(武)委員 誤解してもらっては困るのです。私は、初めて国会に当選して玄関を入るときかう、解散と懲罰はいつでも受けて立つ、これが野党精神であるということに徹しております。したがって、そんなことを気にしているんじゃないのです。見そこなってもうっては困ります。(「田中をなめるな」と呼ぶ者あり)ほんとうだ。兵庫三区の状況を見てこい。  そこで、今度は愛知さんにお伺いいたしますが、これは新聞記事ですが、去る二十八日外務省筋――これは筋と書いてあるかうですが、外務省筋が明らかにしたところによると、沖繩返還にあたっての基地の問題で、一つここでも議論になっておったのは、事前協議の弾力運用ということですね。そのことについて、米軍が行動できる範囲は韓国、台湾とその周辺にすべきだ、こういうようなことを外務省はきめたとか言ったとか、そういうようなことがいわれておる。それは在日米軍基地にもそのようにすべきじゃないかということは外務省が考えておるというようなことをいわれておりますが、この点いかがでしょう。
  142. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 よく外務省筋とか政府筋とかという頭がついていろいろの記事が出ておることは、私も承知いたしておりますが、外務省としてさような意見を持ったり、そういう方向で研究しておるということはございません。これはしばしば私自身も申しておりますけれども、真剣に検討しておるだけに、白紙と申し上げざるを得ません。
  143. 田中武夫

    田中(武)委員 総理総理の大先輩であり恩師である吉田さんは、自衛隊――もちろん警察予備隊かう自衛隊、またあるいは憲法九条の解釈等でも、だんだんと既成事実をつくってきて、そしてそれが正しいんだというようなことをやれてきた、私はそう理解しておるのです。一応片がついたかっこうになっておりますので、いまさら触れませんが、下田大使の発言といい、いま否定せられましたが、外務省筋の談話といい、これは政府には責任がないというかっこうをとりながら、実はアドバルーンを上げる、そのことによってだんだんと国民考え方を知らず知らずに誘導をしていく、そして既成事実の上にものをきめようという考え方があるんではなかろうかと勘ぐるのですが、いかがでしょう。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 世論をつくるという、これはなかなかむずかしいことですね。また同時に、政治家はリーダーシップも発揮しなければいかぬ、こうもいわれます。またいま言われた吉田さんは、よく覚えていらっしゃるようですが、大体仮定のことにはお答えいたしません、こう言ったものです。  私は、いまいろいろ沖繩問題お尋ねを受けると、なるほど既成事実もつくられたか知らないが、やっぱり仮定の事柄には答えないと言った、やっぱり吉田さんは偉かったなと思い起こすのです。ひとつそれぞれ考えて、そうしていまのように――とにかくいまこの沖繩の問題だけは、私何度も言いますけれども、最も大事なことなんです。吉田さんばかりじゃないと思いますが、吉田さんがサンフランシスコ条約を締結された当の本人でもある。おそらく第三条で沖繩のいまのような形をきめられたその人でもあろうと思います。私は、とにかくこれを直すのがわれわれの役目のように思っておるのです。先ほど話されたこの沖繩県民の苦痛、その苦しみ、それにはほんとうに胸にこたえてならないのです。ただ、そういう意味かうも、慎重な上にも慎重だ、幾ら責められましても、いまの段階で私は白紙。アメリカに行って、私白紙だという、そんな話をするわけじゃありません。だから、いましばらく、私がきめる、そのきめるまでもう少しお待ちをいただきたい。これは何度お尋ねになりましても、同様の答えをするだろうと思います。これはひとつよろしくお願いいたします。
  145. 田中武夫

    田中(武)委員 沖繩の県民の人権は現に守られておると、総理はお考えになりますか。
  146. 床次徳二

    ○床次国務大臣 沖繩の人権に関しましては、アメリカの先ほどの布令並びに布令に基づくところの琉球政府の力によりまして行なわれておるわけでありますが、しかし、何ぶんにもいわゆる基本的な施政権がアメリカにありますために、たとえば裁判権等におきましては、地元の裁判権によって裁判権が完全に行使し得ないという点がありまして、こういう点におきましては、人権を守る上におきまして非常な不足の感があることは当然でありまして、したがって、できるだけ早くやはり施政権が返るということが望ましいわけでありますが、なお、施政権が返りますまでの間におきましても、できる限り本土との格差を是正して、制度におきまして、また現実の経済社会の産業等におきましても、これを向上発展させまして本土並みに持っていきたいというのが、今日の私ども努力の対象でございます。
  147. 田中武夫

    田中(武)委員 講和条約を結ぶにあたりまして、いわゆる第三条によって施政権をアメリカにゆだねた。その時点において、沖繩県民の意思を無視したことは事実ですね。沖繩県民がそのことに対して意思を聞かれたことはなかったはずです。それは厳然たる事実であります。  そこで、これは法制局長官でもけっこうですが、いわゆる憲法上保障せられておるところの基本的人権、言うならば人類固有の天賦の人権として認められておるものは、いかなる国家権力をもっても奪うことのできない不可処分のものであります。日本国民として沖繩県民の憲法上保障せられておるところの基本的人権までも、政府は処分することはできないと思います。同時に、世界人権宣言における天賦の人権は、これは何をもってしても奪うことができない問題です。しかもまた、現在の沖繩の状態は、沖繩県民の意思いかんにかかわらず処分せられたものである。そうするなら、世界人権宣言の理想たる人民自決の大原則に反すると思いますが、いかがでしょう。
  148. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいまの御質疑につきましては、二つの面から申し上げるほうがいいと思いますが、一つは、平和条約を結ばれて、実は日本国民の主権が承認をされることになった。実は、その前には日本国憲法は確かに制定されておりましたけれども、その憲法が真実の効力を発揮することになりましたのは、実は平和条約締結がされることによって真実の効力を発揮することができるようになった。したがって、憲法上の基本的人権というのは、その真実の効力を発揮するときに初めてまさにその効力を持つことになったというのが一点でございます。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕  もう一つは、この平和条約の締結によって基本的人権が奪われるというふうに仰せになりましたけれども、基本的人権というものは、実は現在施政の衝に立っているもの、つまり現在でいえばアメリカでございますが、その点については先ほど来いろいろの事実関係お話がございましたけれども、その施政の当事者である米国がこれを天賦の権利としてどうやって守っていくかというような問題はございますにしましても、平和条約でその天賦の人権を放棄した、あるいは処分したというようなことには相ならないと私は思っております。
  149. 田中武夫

    田中(武)委員 この点についてはいささかあなたと解釈を異にしますが、私はもう一つ高い次元から言うのです。少なくとも天賦の人権は何ものをもっても侵すことのできない不可処分の権利ですよ。  さらに、平和条約三条を結ぶにあたって沖繩県民の意思を聞かなかったということは、人民自決の原則に反する。そういうことによって沖繩県民が人権を奪われていいのか、それを言っておるわけなんです。
  150. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 天賦の人権というのは、まさにことばのとおり実は天賦の人権でございまして、これは現に沖繩の住民はそれを持っていないということでは私はないと思います。ただこれをいかに実定法の上で実現していくかという問題がございますために、その辺がいささか所見が違うところになるのかもしれないと思いますけれども、私はいまのように考えるのが相当であろうと考えております。
  151. 田中武夫

    田中(武)委員 私は、天賦の人権を持っていないとは言っていないのです。それが侵されておると言っておるのです。  もう一度過去を振り返ってみましょう。まず、戦闘行為の終了後も、非戦闘員である沖繩県民を六カ月以上にわたって収容所に閉じ込めたのです。そのことは、これは日本はそのときには批准しておりませんし、その以後にできたのでありますけれども、ジュネーブ条約の文民保護の規定の四十九条でも、占領地域の住民の強制移送及び立ちのきについてはこれを禁止しておりますね。あるいは特別な事情がない限り、敵対行為が終了した後はすみやかに各自の家庭に送還すべきである、返せということ、これも同じくジュネーブ協定の文民保護の条約の四十九条にありますね。七十九条には、抑留する場合は特別の抑留するところの理由がなくてはいかぬ。それは抑留する国、すなわちこの場合はアメリカが、アメリカの絶対安全のために必要である限り、それ以外は許されないということになっておる。しかもヘーグの陸戦規則四十六条に初めから違反しておったということは、さきにも申し上げたとおりであります。このような、そもそもが国際法無視の上から出発をしておるわけなんです。  そして、平和条約第三条によって施政権をアメリカにゆだねたからといって、今日に至るもまだ沖繩の県民には自由なる権利というものがないという事実、これは総理といえどもお認めになるはずであります。いまここに、私は沖繩における「外人事件犯罪別、年度別発生及び検挙件数調、へ」「米国の軍隊一軍人及び軍属の不法行為に基く損害賠償のおもな例」これは死亡、傷害を含んでおりますが、そういう資料を持っております。これを一々私は、こういう事件に対して幾らの賠償が払われておるとか払われていないとかいうことを申し上げる時間も、その気もございません。しかし、最近新聞の報ずるところによれば、小学校五年生の少女が帰校の途中行くえ不明になった。どうやら米軍兵士の犯罪ではなかろうかということが、新聞にも伝わっておる。これらを見た場合には、沖繩の現状はいまだアメリカの占領下に置かれていた時代とそう変わりないじゃないか。はたしてこれで沖繩県民の基本的人権が守られておるのか。重ねて私は総理考え方と決意をお伺いします。
  152. 床次徳二

    ○床次国務大臣 沖繩におきましては、裁判権が米軍人並びに米軍属に関するものは民政府でもって把握しておる次第であります。したがって、裁判の結果に対しましては一般県民がある程度まで不安を感じておることは事実でありますが、過去におきまして、その裁判の結果いろいろの事態があったのはいろいろ聞いておりまするが、最近になりましては、この点非常に改善をされまして、米軍の軍人の犯罪におきましても、最近の判決におきましては相当の判決を下しておる事例も見えまして、この点はだんだん改善を見ておると私ども認めておるわけでありますが、しかし、何と申しましても、基本的には、やはり施政権の復帰ということが根本的なものではないか。総理沖繩の返還なければ戦後は終わらないというお気持は、私はそのことであると思っております。
  153. 田中武夫

    田中(武)委員 だから、沖繩においてはいまだに戦後の状態が残っておる、そういうことを申し上げておるのです。その中にあって、沖繩県民の人権は侵されておる。  たとえばいま問題になっております総合布令です。これを一々私はあげては申しませんが、労働布令であるのに、これが治安立法的なものをも含んでおるというのは、政府もお認めになっておるところなんです。前の労働布令百十六号十二条b項ですが、これにはいわゆる当時の一種いまでいうならA種労働者に、アメリカ政府に対する忠誠宣誓の義務を負わしております。アメリカ国民でもない沖繩の県民に対して、アメリカ政府に対する忠誠を誓わす、宣誓義務を負わすということ、これ自体も私は大きな問題であろうと思います。さらに、一つ一つ私は例をあげませんが、沖繩県民の人権が侵されているということは、これはだれをもってしても否定できない事実であります。このような場合に、総理、外務大臣、自国の国民が他国の統治下にある、それが外国の領土であれ、租借地であれ、いかなる事情であろうとも、人権が侵されたときには、これに対してまず第一には、その本国、この場合はアメリカに対してそのことを抗議し、修正さす、そういうような権利が主権のもとにあると思います。俗にこれを外交保護権といっております。これはいつか外交保護権についても消極的な答弁をなされたという記録があるようでございますが、このような国際公法上認められた外交保護権すら、政府は放棄せられるつもりなのか。現にあります。事例をあげろと言うならあげますが、もし現実に人権の侵害の事実があるとするならば、直ちに外交保護権を発動し、アメリカに抗議をせねばならないと思いますが、そのことについてはいかがでございましょう。
  154. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 外交保護権ということばでございますが、これは国際法上、他国にある自国民、これを保護する権利と通称いわれております。ですから、純粋な法律的な用語の解釈としてはいかように解すべきか、これはそういう意味では私は問題があると思います。たとえばそういう限定された意味の国際法上の外交保護権ということかういいますと、沖繩県民は日本国民であり、そうして潜在主権を持っておるのでございますかう、非常に特殊な場合でございますかう、狭義の意味における外交保護権ということに当てはまるかどうかということは、学問上の問題としても否定的にならざるを得ないかと思います。  しかし、いま申しましたように、また本日もいろいろと御論議がかわされておりますように、沖繩県民の方々はわが同胞であります。また潜在的に主権があるということは、サンフランシスコ会議当時からもわがほうの主張しておるところであり、またこれは私は国際的にも認められている通念であると考える。そうすれば、この沖繩県民の福祉の向上、ことに人権の尊重ということについては、至大な関心を寄せざるを得ない。これが各種の問題につきまして、従来からも米国側に日本政府としても話し合い、要請をしておる、これが私は何よりの根拠であろう、かように考えるわけでございまして、そういう意味で前にも御説明をしたわけでございます。
  155. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえば今度の総合労働布令を見ましても、沖繩の労働者が労働基本権を侵されておることは、明らかであります。自国民が他国の支配するところにあって、その原因に何によらず、生命、財産、基本的人権が侵されたときには、いわゆる外交保護権を発動して、強力にアメリカに対してその救済なり原状回復を求むべきである。もう一度はっきりと、ひとつ総理いかがでしょう、やりますと。簡単なことです。
  156. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私はいま申しましたような考え方でございますかう、まあ率直に言えば、外交保護権であるかないか、それが根拠であるかないかというようなことよりも、実際政府が誠意を尽くして沖繩県民の向上あるいは一体化、格差の是正ということに対してなし得る、できる限りの努力をしておるということが、私は何よりの私ども考え方をあうわしているのではないだろうか、かように考えております。
  157. 田中武夫

    田中(武)委員 どうも、まだすっきりした返事じゃありませんね。たとえば愛知外務大臣は、労働布令のことについても撤回を求めない、こう言った。これは沖特でですか、こういうように言われた。私は、こういうものに対して、そんなにことばを濁す必要はないと思うのです。濁さずに、きっぱりと、国際公法上認められたところの権利なんですよ、やりますと言えばいいじゃないですか、あるとかないとかいうことでなしに。もしかりに外務大臣みずからが外交保護権を否定し、自国民の生命、財産あるいは基本的人権を守ることを怠るならば、その一事をもってしても不適当だと言わざるを得ないのでありますよ。どうなんですか。
  158. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 どうも私の申し上げることで御理解がいただけないのは非常に残念でございますが……(田中(武)委員「言い方が悪いからだ」と呼ぶ)いや、区々たる法律上の問題とか解釈上の問題ではないと私は思う。もっと次元の高い、もっと大切な問題である、私はかような考え方が正しいと思っております。
  159. 田中武夫

    田中(武)委員 次元が高いとか低いとかいうことは別として、少なくとも私はやはり根本は法律だと思うのですよ。たとえば国連を動かしておるのは国連憲章である。世界の各国との間に協調を保ち、通商をし、あるいはお互いに交流をしているのは、すべて条約とか国際慣例とか、言うならばこれはすべて法ですよ。また国内においても、基本はすべて法なんですよ。それが次元が低いということはどういうことなんです。そういう考え方は、いわゆる政治、言いかえるなら行政権が法の上に優先するという考え方があるからですよ。そうじゃないですか。すべて法治国である以上、民主国家である以上、やはり立法は尊厳を認めなくてはならないし、行政は立法をおかしてはならないわけなんですよ。法に対して軽べつするようなことばは慎んでください。
  160. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 何か先回りして軽べつとかどうとか、そういうことを毛頭言っているわけじゃございませんで、ものごとの取り上げ方には、私は法律論だけではなじめないこともあるという趣旨を含めて申し上げたわけであります。  それから、労働布令についてのお尋ねでございましたけれども、これは最初からの接触が、たとえばこの中には人権の立場からいって、よい面もあるというアメリカ側の理解というようなこともございましたから、よい点があるならよい点をできるだけ伸ばせばいいので、悪い点は徹底的に削除しあるいは修正するということで、従来から折衝に臨んでおります、こういうことを申し上げたわけでございます。
  161. 田中武夫

    田中(武)委員 まだはっきりしませんが、次へまいりたいと思います。  総理、冒頭に申しました、沖繩から初めて本予算委員会の公聴会に見えたところの喜屋武公述人は、沖繩県民に対し他県と同じようにしてもういたい、いま沖繩県民は三つの差別を受けておる、その一つは人間としての差別である、二つは貧困による差別である、三つは法の上の差別であるということを切々と訴えられたわけであります。少なくとも日本国籍を持つ日本人、これは法のもとに平等に保護せられなければならないと私は思います。しかし、現実においていろいろな事態があることを、直ちにと私は申しません。そこで本土との格差の是正という問題に移っていきたいと思います。  まず、法のもとに平等でなければならないという点において、それではあえて外交保護権等とは言いませんが、これは十一月行かれてめどをつけられて、いつ返るのか知りませんが、少なくとも二、三年はかりにあるとするならば、それまでの間でも、この問題について、日本政府はアメリカに対して、当然法のもとに平等であるべきである、人権を守るべきである、守うるべきである、そのことをアメリカに要求する権利と義務があると思いますが、いかがでしょう。
  162. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも田中君とのお話で、双方で話がこうちぐはぐになるのです。それはどこにちぐはぐがあるのかといろいろ考えてみていると、平和条約第三条の問題じゃないかと思うのですよ。私どもは平和条約第三条、それを認めておる。どうも絶対にこれを承認しない、認めておうない、そこに食い違いがある。法はとにかく守らなければいかぬ、あれだけ明確に言われる。(「国連憲章を守れ」と呼ぶ者あり)また、国連憲章を守れ、条約を守れ、そういうはっきりしたことを言われながら、結論が違っておる。これはやはり平和条約第三条を認めるか認めないか。これは皆さん方は、かねての主張である認めないという、その立場に立って御議論を進められるからどうも食い違っておる。ここらはやはりもっと、区々たる法律論とは申しませんが、高度の法律論をひとつやられて、あまり法律を差別しないほうがいいのじゃないでしょうか。どうかその辺少し考えていただきたいと思う。  そうして、いま言われるような、平等な法が適用されたい、こう言われる。これは、いま沖繩にアメリカが施政権を持っていることは、先ほど来の議論でちゃんとわかっておる。だから、私どもは早く祖国へ復帰しよう、その努力をしょう、これが私の念願なんです。そのもとは違法であるのだ、かような状態でアメリカが施政権を持っておるわけではない。私どもの認めたこの平和条約、これで持っている。そのことを考えながら祖国復帰、それを実現しない限り、これはわれわれと平等の法を受けるわけにいかない。だから戦後は終わらないということを言った、これも私はそういうように思うのです。何でもとにかく早く返ることなんだ、それを実現することが、ただいま言われるような諸問題を解決するゆえんだ、かように私は思います。やはり都合の悪いものもありますが、それも認めないと話がうまくつかないように思う。
  163. 田中武夫

    田中(武)委員 俗に、権利の上に眠れる者はこれを保護せずという。私は何も総理、国際信義を破棄しろとは申しません。しかし、平和条約三条によって委任したという、しかし、それをずっと考えていったら、先ほど来言っているように、あの内容は、国連加盟したときかう変わっておるのじゃないか。いわゆる国連の主権平等の原則あるいは信託委任統治云々の条項かういっても、変わるべきじゃないか。それをなぜ主張しないのでしょう。みずからが不利な法理論にとうわれる必要はないと思います。少なくとも積極的に、少しでも有利な解釈があるならば、それにのっとるべきじゃないですか。なぜそう消極的な考え方ばかりお持ちになるのですか。たとえ戦争に負けたかうといえども、法の上における権利すうも放棄する必要はないと思うのですがね。
  164. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はいまの田中君の説にも賛成ですよ。これならば国連に日本が加盟したそのときに問題を解決すればいい。それをいままで解決しなかった。だから私は、やはりいま言われるように、これを解決しないで第三条が続いているし、そのもとにおいて施政権を持っておる。これをいまになって、もう無効なんだ、おまえたちはあそこを占拠している理由はないのだ、こう言うのはどうだろうかと言うのですよ。だから私はこういう状態は、それはおそくても、とにかくいま気がついたのだから、早く返してくれ、これは言って当然じゃないだろうか。私はいまその問題と取り組んでいる。幸いにして向こうも潜在主権を認めているのだ、潜在主権ならなぜ顕在主権にしてくれないのか、これがただいま私どもの要求なんです。だから、今日私どもは卑屈な状態であるわけはございません。この法の、あるいは条約上の権利は主張するが、同時に条約上の義務を履行しなければならない。やはり条約というもの、これは権利と義務と両方があるものです。だからその両方をやはり主張する、そこに解決があると思うのです。まあひとつよろしくお願いします。
  165. 田中武夫

    田中(武)委員 それは、その時点においてなぜ解決しなかったかということに私も疑問を持ちます。したがって、いまからなら交渉しようというときに、ハーグの国際司法裁判所へ行ってみたって、もう時期で、十何年前にやっておればそのほうが早かったかもわからない。いまさら行ってもしようがないのです。しかしながら、少なくとも交渉にあたって強い信念として、総理が、違法なんだ、こういう信念をもって行かれるのと、三条があるかう何を言われてもしようがないんだというような感じで行かれるのとは、だいぶ違うのですよ。それは国連加盟してから今日まで、三十二年からですから十年あまりたっている。こういうことで、まさか時効にかかったとも言えないと思うのですね。少なくとも目ざめたときに主張すべきものは主張すべきである。しかし、これはもう何回か、政府とわれわれ野党の間には論議し尽くされた問題でもあります。いまさらということでありますが、この問題は、沖繩問題を論ずるにあたっては最初にして最後の問題です。少なくともその信念を持っていただきたい、そのように申し上げまして、次に移りたいと思います。この点が食い違ってくると、次々が全部が食い違うことになるのです。  まず、本土との格差是正にひとつ総理がつとめてもらうことについてはいかがでしょうか。それは日本政府がやれることもありましょう。あるいはアメリカに対して強く要求せねばならないこともありましょう。あるいは日米琉の、これは諮問委員会ですかうあれではありましょうが、そんなところで強く主張する場はあるだろうと思うのです。そういう上に立ってひとつ御意見伺いたいと思うのです。
  166. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 一応断わっておきますけれども、さっきの平和条約第三条の問題、これは私どもは有効だということで考えておりますから、無効論とはちょっと違っておる、その点だけは誤解のないように願っておきます。  ところで、いま本土との一体化、これはもっと積極的に進めたらどうか。言われるまでもなく、われわれのできることはひとつしたいと思います。いま、現に行政水準を高めようとして、政府自身が財政的な援助もいたしております。さらにまた、最近は国政参加について、これがいまの問題になっておる。衆参両院の国会に対しまして、国政参加の問題にひとつ取り組む、各党でりっぱなものをひとつつくるようにしてください、こういうことを政府からお願いもしております。また、すでに自治はある程度認められておりますけれども、まだ不完全自治ですから、これから、もっとこれを完全自治の方向に持っていかなければならない。私ども、日米琉球諮問委員会あるいは日米合同委員会等において、なすべき事柄はずいぶんあります。  そういう問題もさることながら、それ以前に、何といっても施政権を早く返してもらう、ここに全部集中することが何よりも大事なことじゃないかと思っております。もちろん施政権の返還が実現するまでに、一体化をも忘れないで努力すること、これは当然であります。そういう意味で、日本沖繩との交流をもっとひんぱんに結ぶ。そういう意味で、ひとり大浜さんばかりではない、野党の諸君にも十分聞きたいし、今度は幸いにして主席も公選できまったのでありますから、そういうものを通じまして十分打ち合わせをすべきだ、一体化については積極的な姿勢をとるべきだ、私、かように考えています。
  167. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいま総理かうお答えがありましたが、施政権返還までの一体化につきましては、アメリカ政府日本政府もともに積極的に、十分の了解のもとに今日進めているわけでありまして、特に自治権の拡大につきましては、先ほど御引用になりました布令の問題等は、これはできるだけ立法院の民立法に返還いたしますとか、あるいは主席の公選制もさようであります。また裁判所の構成におきまして、裁判官に対する任命権等も改められたのでありまして、相当この点は自治権の拡大が実現できたと思います。  なお大事なことは、経済、民生、福祉に関する問題でありますが、政府におきましても一体化政策三カ年計画を立てまして、ことしはその第一年次としての予算を要求しておりまして、教育、社会保障、また産業基盤の整備、地方行財政の強化というような観点に重点を置きまして、そうして一体化の実現につとめておるのでありまして、この点は米政府、地元の琉球政府意見を十分聞きながら、米日ともに協力いたしまして同じ目標に向かって努力している次第であります。
  168. 田中武夫

    田中(武)委員 沖繩県民の自治権の回復というか、自治権の拡大、これが本来の姿に戻るように、日本だけでやれること、あるいはアメリカに言わなくてはならぬこと、ありましょうが、いろいろとひとつ努力をしてもらいたい。  それに関連してですが、沖繩県民の国政参加について総理はどのように考えておられますか。憲法上の問題等については別です。必要ならばゆっくりと高辻さん、各条項にわたって行なってもけっこうですが、まず総理としてはどのようにお考えになっておりますか。
  169. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 国政参加について考え方をまとめる段階ではないか、かように考えております。これはもう私個人の問題ではなくて、閣議でそういうことを決定し、これは国会の組織の問題でもありますかう、衆参両院にそれをお知らせをして、そしてそこで考えていただく、いま、かようにしておるわけであります。
  170. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで、おっしゃるように国会みずからも各党これに取り組んでおります。そこでひとつ、かりに政府考えがまとまるよりか、国会のほうでそのことについてのたとえば立法ができた場合に、アメリカに対してそのことをやはり要求するというか、話をすることは必要だと思うのです。それは国会がそうまとまるなら、その上に立って総理はおやりになりますね。
  171. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろんそうしなければなりません。
  172. 田中武夫

    田中(武)委員 次に、これはやはり総務長官になるのか、あるいは外務かどなたか知りませんが――総務長官ですね。渡航の制限撤廃という問題について、これもひとつすぐにでも実現をはかるように努力をしてもういたい。と申しますことは、この渡航の制限があるためにやはり人道的な問題が起こっておるわけです。たとえば就職の機会を失うとか、あるいは入学試験の、あるいは肉親の病気あるいは不幸に間に合わなかったとか、いろいろあるわけなんです。この問題をひとつどのように考えておられますか。
  173. 床次徳二

    ○床次国務大臣 渡航制限は、これは早く撤廃すべきもので、今日までその努力をしてまいりました。今日におきましては、すでにわが国自体といたしましては渡航は全く自由の手続にいたしまして、アメリカ側が沖繩の施政権を持っておりまするから、沖繩に出入りするに対しまして単にアメリカ側においてチェックをするという程度になりまして、事務的にもその点非常に早くなったことを御報告申し上げておきます。
  174. 田中武夫

    田中(武)委員 一時問題になりましたが、沖繩の船舶が国旗を掲げる問題、これは解決していますか。
  175. 床次徳二

    ○床次国務大臣 沖繩の船舶につきましては、今日日章旗の上に三角の琉球と書きました旗をつけまして、日章旗を掲げることを解決いたした次第であります。
  176. 田中武夫

    田中(武)委員 これは三角の、紫ですか青ですかの旗なんか立てなくていいのじゃないですか、どうなんです。
  177. 床次徳二

    ○床次国務大臣 今日沖繩は、施政権は一応アメリカが握っております関係上、ただいま申し上げましたような形において解決をした次第であります。
  178. 田中武夫

    田中(武)委員 どうも根本の問題が食い合わないから全部食い違うんですが、何でそう消極的にならなければいけないのでしょうか。もっと積極的にやってもういたいと思うのです。  それでは、次に沖繩経済の問題に移りたいと思います。  沖繩の財政援助、先ほど私申しましたように、沖繩県民としては、日本の他府県並みに、こういうことを言っておるのですが、私はまず第一に、沖繩のおくれを取り戻すために少なくとも返還までにやらなくてはならぬと思うのは、これは社会資本の充実と環境整備です。これはまず農業基盤あるいは農業施設という問題がありましょう。あるいは道路、港湾、空港等がありましょう。また、学校、病院その他の福利施設等がありましょう。これをひっくるめて社会資本の充実あるいは施設の充実、こういうように申し上げておるのですが、これに対して私はもっと積極的に取り組む必要があるのではないか、こう思うわけなんですが……。
  179. 床次徳二

    ○床次国務大臣 お説のとおり、今日沖繩においては社会資本が非常におくれておると思います。これは長い間の、敗戦かう以後の立ち上がりに応急の金がかかって、十分な長期資本を投ずることができなかったことと考えておるのであります。したがって、わが国といたしましても昨年以来、長期低利の資金を特別に融通することに努力しておりまして、本年は五十三億の融資をいたして地元の要望に応じておる次第であります。今後ともますますこれは拡大してまいりたい。  なお、単に現時点におきまして各府県並みの財政力を維持するばかりでなしに、将来沖繩の復興には復興計画というものを作成いたしまして、そうして過去に長い間蓄積されたおくれというものを取り返して、ほんとうに府県として経済が維持できまするように努力いたしたいと思っております。
  180. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま床次君がお答えしたのでもういいかと思いますが、御指摘になりましたように沖繩はたいへんおくれておりますから、どうしてもかけ足でこういうことを充実していかなければならない。その意味において、アメリカの援助は援助として、日本からも積極的に沖繩援助をする、こういうことでせっかく努力しておる最中でございます。
  181. 田中武夫

    田中(武)委員 沖繩開発といいますか、社会環境の整備、社会資本の充実、このことは本土の総合開発計画の一環として立てるべきだと私は思うのです。その点について経済企画庁長官どうですか。
  182. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 施政権が返るまではまだ総合開発計画の中には入れるわけにいかないと思います。施政権が返れば、これはもう即時に計画の中に入れたいと考えております。しかし、総合開発計画は昭和六十年を目当てにしておりますから、それまでの準備はしておく必要がある、こう考えておる次第です。
  183. 田中武夫

    田中(武)委員 施政権が返らなければと、こういうことですが、もう現実の話題となっている。しかも、主権が潜在しておることも事実です。したがって、将来の開発計画まで差別する必要がどこにありますか。本土開発計画の中へ入れてやるべきが当然じゃないですか。
  184. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お話のとおり、それだかうその六十年度を目当てにしておりますかう、それだけの準備はしておるということを申し上げた次第です。
  185. 田中武夫

    田中(武)委員 六十年、ちょっと待ってください。六十年とは一九六〇年ですか昭和六十年ですか。昭和六十年といえばまだまだあなた、先じゃないですか。いまその計画をつくるべきではないかとぼくは言っているんですよ。
  186. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いままで施政権が返っておうない以上は、いまの日本の総合開発の中へ入れるというわけにはいかない。だけれども施政権が返れば直ちにその計画の中に挿入したい、こう考えておりますが、しかしそれまでの準備をしておく必要があるというので、準備をいたしておる次第であります。
  187. 床次徳二

    ○床次国務大臣 将来の経済の復興計画に対しましては、今日地元の経済界において検討いたすばかりではなしに、わが国の経済界もともに研究しておりまして、来月には共同の研究会も開かれるわけでありますが、もとより政府ベースにおきましても将来の計画のために今日準備をいたしておる次第であります。
  188. 田中武夫

    田中(武)委員 どうも総理、何か言うと施政権が云々になるんですがね。私はこちらから何もそんなに遠慮をし、区別をしていく必要はないと思うのですよ。そのこと自体が返還交渉にあたっても一つの強い主張をできる足がかり、と言ったらおかしいが、になるのではないか。過去のことは言わない。少なくともこれからはもう一体である。口でこそ本土との一体と言われておるが、すべての日本の行政があるいは政治が一体を積み重ねて、それこそ積み重ねていく中から強い返還交渉ができるんじゃないかと思うのですが、どうなんでしょうか。
  189. 床次徳二

    ○床次国務大臣 総理のお答えがありますが、その前に現在の事情を申し上げますと、現在の時点におきましても、先ほど申し上げました官民いずれも、計画におきまして、さような先生のおっしゃられました気持ちにおいて計画を検討しておるのでありますが、ただ一つどもが非常に困難を感じておりますのは、基地の取り扱いであります。基地経済に依存しておる分量が非常に多いために、基地経済が将来どういうふうに変動するかということの見通し、なお基地経済かう離脱いたしまして自主経済に入ります場合どうするかということに対しまして、かなりこれは検討を要するのでありまして、そのために十分な的確な計画が樹立されていないという点が一つの浮動分子と申しますか、疑問点が一つ残されたまま今日研究を続けておる次第であります。
  190. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまので誤解はないかと思いますけれども、これにしてもちょっとことばが足らないかと思っております。いまの沖繩経済がなかなか自立経済の方向に進まない、基地経済にたいへんだよっておる、そういうことでございますが、そういうことがあろうとなかろうと、沖繩の自立の方向はどうあるべきか、こういうことでいま積極的にいろいろな経済ミッションその他かう、日米琉合同諮問委員会の話題になるような問題を調査研究しております。沖繩はただいままで、御承知のようにパイナップルができる、あるいはわずかの砂糖ができるという程度で、産業としての見るべきものがない、こういうところは一つの問題であります。しかしながら、もっと漁業的に何か使える方法はあるのではないかとか、あるいはまた、その場所が場所であるだけに、あの辺でいきなりりっぱな精巧な工業でなくとも、その素地になるようなものをつくることはできないかとか等々の問題を研究しておるわけであります。私はこの施政権返還までに日本沖繩との一体化をはかるということは、これは祖国に必ず復帰するものだというそういう前提に立って、そうしてそのときに円滑に日本に返ってこられるようにするんだ、こういうたてまえで、ただいま一体化を進めておりますかう、この一体化の問題と、これが必ず進めばさらに祖国復帰は早まる、かように思いますので、私はそういう考え方でただいまの一体化を進めていく、かような考えであります。
  191. 田中武夫

    田中(武)委員 そういうことで既成事実を積み重ねていって云々ということを基地のことで私申しましたが、今度は逆に、一体化という事実を積み重ねていっても、もう区別する何ものもないんだというところまで持っていくことが、私は、強い返還交渉の一つの足がかりというか、手がかりというか、ともかく主張の大きな原因というか、主張すべき一つの根拠になると思うのですね。そういうことをひとつ十分考えてもういたいということ。  そこで、これは大蔵大臣になるかと思いますが、あるいは通産大臣か総務長官かわかりませんが、沖繩は返った、施政権は返還してもらった、しかしながら、経済は依然としてアメリカの手にあるというような、過去におけるいわゆる植民地の独立等々で見られるような状態は残さないように考えるべきである。それが、先ほど偶然基地経済といろことばが出ましたが、まず基地経済かうの脱却が必要であろう。ところが、そうでなくとも狭い、戦前ですら日本のいわゆる本土の一戸当たりの耕作面積よりか狭い耕作面積しか持たなかった沖繩で、膨大な基地があることによって、ますます一戸当たりの耕作地というのが残っておる。そこで、一体どうすればいいのか。そういう経済自立の方向をひとつ考えなくちゃならない。それには、先ほど来言っておるところの社会資本というものをもっと導入しなければいけない。それから、先ほど言ったように、施政権は戻ったが経済はいまだにと、こういうことのないようにするには、日本の本土資本がもっとどんどん――まあ経済の法則が成り立つか成り立たないかは、これはわからぬとしても、遠いところまで資本投資をしている日本の企業ですかう、本土資本がもっと沖繩へ入るべきじゃないか、いくべきじゃないかと思うのです。ところが、現在の外貨割り当て制度というのがやはりそれをじゃましておると思うのです。そこで、沖繩に対してはまず円為賛これをやるべきではないか。そのことによって本土資本がもっと沖繩へ入っていく、いきやすいように――いまは外国並みといいますか、外貨割り当て制度ですかうそれはだめですね。これを障壁を除くという方向をとるべきじゃないか。さらに進んでは、いま日常沖繩県民はドルを使っております。自然に日本円を使えるように、日本円使用のほうに、これはアメリカとも話さなければいけないだろうし、日米琉の協議会等々の問題になるのか知りませんが、日本円使用というような方向、あるいは円為替というような問題についてはどうなんでしょう。
  192. 床次徳二

    ○床次国務大臣 お話しのごとく、将来の沖繩のあり方に対しましては、当然、これは本上経済と一体になりまして、その特色を発揮すべきであると思っておりますが、私どもは、特に沖繩が一番南の端である、本土から申しますと南の端ではありまするが、しかし、他面から見ますると、東南アジアの一番中枢地点、要点に位しておるわけでありまして、沖繩の地理的要素というものを十分に考えましたなうば、そこへ沖繩としての発展の足場が築かれ得ると考えておるのであります。ただし、これに対しましては、港湾その他の、お話がありましたところの公共投資を十二分にいたすということが前提になると思うのであります。  なお、産業の発展等に対しましては、今日におきましても輸銀融資等は積極的に行なっておりまして、そうして、あうかじめ今日から、いわゆる沖繩固有の経済と申しますか、自立経済の基礎をつちかうべく努力をいたしておるのであります。  なお、ドル経済お話がありました。今日におきましてはドル経済でございまするが、復帰いたしました際におきましては、当然これは円経済になるべきでありますが、ドルから円に入りまする取り扱い等におきましては、これは地元のいろいろの問題がありますので、慎重にいたしてまいりたいと思うのであります。  なお、経済に関連いたしまして、いろいろと税制その他の制度的な格差も今日かなり存在しておるのでありまして、こういう格差につきましては、いわゆる一体化の考え方から漸次改めてまいりまして、そうして復帰の際におきまして円滑にこれが行なわれるようにしたい。  なお、その意味におきまして考えなければならないのは、本土資本が急に乗り出していって、そうして地元の経済をつぶしてしまというようなことも、地元といたしましては非常に心配をしておるところでありまして、この点につきましては、やはり本土と地元というものがほんとうに提携いたしまして、そうして十分な発展を遂げる基礎をひとつつくり上げるように、今日から配意いたしたいと思っております。
  193. 田中武夫

    田中(武)委員 施政権が帰ってきたときに、それから円を使う、それはまあ当然なんですね。私の申し上げておるのは、それ以前かうでも円が使えるような方向でひとつ話を進めたらどうなんだ――ちょっと待ってください。ということと、それから、もちろん本土資本がいわゆる外貨割り当て制だから、一つそれが障害になっておる。それをはずして円為替にしろ。だからといって、それは、地元産業をつぶすというようなことは考えていないことは当然ですよ。  それから、税金のことについても、私は聞こうと思っておったら、あなた先回りして言われたわけですが、税金もこれだけ差別を受け、まあ私に言わしめるなら、人権が無視せられ、私有財産が略奪せられておる中で、税金だけは依然として内地より高いのですね、内地というか、本土より。その本土が税金がもう問題となっておるように、これは高過ぎるのですよ。それより高いのですかうね。この点についても十分に考えるべきである。税金の問題は沖繩だけではない、本土もひとつ考えてもうわなければいかぬけれどもね。そのことについてひとつもう一回御答弁をお願いします。
  194. 床次徳二

    ○床次国務大臣 沖繩の税制につきましては、本土と異なった税制があるのでありまして、一がいに商い低いは言えないと思いまするが、しかし、いわゆる所得の少ない者は決して楽でないということは明うかな事実でありまして、この点は、将来いわゆる一体化政策の線に沿いまして、税制等は改めてまいりたい。  なお、本土と沖繩との物の移動あるいは金融の移動等に関しましても、今日の税制等におきましてある障壁があるわけでありまして、こういうものも、やはり将来の復帰の場合を予想いたしまして、円滑に動けるように順次改めてまいりたいと思います。  金融等の問題におきましても、先ほど御指摘のように、地元がいずれかと申しますれば枯渇しておる、非常に窮乏しておりますので、今後とも積極的に流れるように努力いたしたいと思います。
  195. 田中武夫

    田中(武)委員 これは県民感情の問題ですが、これも喜屋武公述人がこの席で資料を見せながう言われたことなんですが、地図の上かう沖繩が消えておるというのです。地図に載っていないというのですね。こういうのは文部省ですか、どこです、地図なんかの問題について指導なり監督なりするのは。内地でつくっておるような地図ですよ。やはり総務長官のところでやるのですか。
  196. 床次徳二

    ○床次国務大臣 お答えをいたしますが、教科書の地図等におきましてはすでに直しました。今日、一般に対しましても、沖繩日本のいわゆる潜在主権を持っておるところ、いずれ復帰するところだという立場に立ちまして、十分な思想宣伝等を行なっておる次第であります。
  197. 田中武夫

    田中(武)委員 総理、時間がそろそろ来たようですが、もう一ぺん確かめます。本年じゅうにめどをおつけになる決意ですね。
  198. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 十一月以降渡米いたしまして、そうしてニクソン大統領と十分話し合うつもりでございます。
  199. 田中武夫

    田中(武)委員 最後に、どうやら時間が来たので、これで終わりにしたいと思うのですが、実はいまから申し上げることが言いたくて質問したわけなんです。  総理、質問を終わるにあたりまして、特に総理の決意を促したいと思います。  国連憲章の冒頭の一節を読み上げます。「われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害かう将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認」する。これは先ほど申し上げましたように、国連憲章の冒頭に掲げられた一節であります。ところが総理沖繩の現状はこれと隔たるところほど遠いものがございます。基本的人権は無視せられ、社会正義には反した差別を受けております。どうか総理、重大なる決意と英断をもって、アメリカに対して断固――ということばはあまりお好きにならないようですが、決意のもとに、早期かつ無条件と言いたいところですが、ひとつ勇断と勇気をもって当たっていただくように、特に激励というか、要望をいたしまして、質問を終わります。
  200. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最後にただいま御意見ございました。田中君からほんとに自分の真情を吐露しての激励を受けまして、私も同感でございます。沖繩同胞のために、また全国民のためにも、ぜひ間違いのないような、その形において沖繩の祖国復帰をはかりたい、かように私考えております。この上ともよろしく激励のほどをお願いいたします。
  201. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田賢一君の質疑に入る順序でございますが、理事会の協議に基づき、永末英一君の質疑を許します。永末英一君。
  202. 永末英一

    永末委員 総理は、本予算委員会におきまして、沖繩基地について、これは攻撃基地ではない、防御的な基地、戦争抑止力、その一つだ、かように考える、こういう見解を披瀝されました。ところが、昨日の本委員会において、あなたの内閣の防衛庁長官は、私があげました例示としての七つの種類の基地、これらについて、攻撃基地であるということをお認めになりました。これでは佐藤内閣の見解が二手に分かれておる。国民は、一体総理大臣がどのような御認識を持っておられるかについて、深い疑惑の念を持たざるを得ないと思います。したがって、この機会に、総理のこの点に対する御見解国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。
  203. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 昨日の予算委員会、私はおりませんでしたので、どういうように話をされたかと思いますが、おそらく私の考えたこと、また有田君のお答えしたこと、これは問題のとらえ方が違っておるのじゃないだろうか、かように私思います。私は、沖繩、これは防御的なものだ、政治的に考え、また同時に、われわれ自由陣営のものは攻撃的な侵略的なものは持たない、そういうような高度の立場に立って、防御的な基地だ、かように私は実は申しました。しかしながら、その基地自身にある武器、そういうものは一体どういう働きをするか。ただいまは私が申し上げるまでもなく、舗道の石すら攻撃的に使われるのでありますかう、いま軍基地が持っておる機能というものは、使い方によれば、これは攻撃的なものだ、こういうことにもなろうかと思います。しかし、これはおそうら一つ一つの設備等をつかまえていろいろな話をされたんだろうと思います。私が申すのは、われわれ自由主義陣営のものはこういうものを攻撃的に使わないといいますか、そういう意味で防御的だ、これは政治的な発言だ、かように御理解をいただきたい。おそらく私、有田君の考え方も同様だろうと思います。
  204. 永末英一

    永末委員 基地の性格につきましては、これは軍事的に評価をせられるのは当然であって、その基地をどのように扱うかはいろいろ政治的に考えられるでしょう。しかし、一国の総理が――沖繩の基地が、アメリカ軍の判断に基づいてこれを攻撃的に使用するということによって、彼らは彼らなりの極東の安全に関するかまえをいたしておる。その場合に、わが日本国の総理が、それが防御基地だということになりますと、国民はその判断に苦しむ。明うかに沖繩にはアメリカの攻撃基地がある。なぜこれを一国の総理が防御と言うか。これは非常に国民が判断を間違えるもとになる。たとえばあなたは、防御的な基地と戦争抑止力、その一つだというぐあいにこれを同列に置いてお考えだ。ところが、戦争抑止力というものは、核戦略が発展してきてからの概念であります。すなわち、核の攻撃は相手方にとって防御不可能である。したがって、核攻撃力を持つ国は、いよいよますますその攻撃力の増大するように準備をいたしております。米ソともにしかりである。その相手方の核攻撃を防止することができないということが抑止に作用するであろう。これが抑止力の概念だ。ところが、あなたのように、防御的な基地と戦争抑止的な機能を持つ基地とを同列に置かれると、どういうことになるか。結論としては、この委員会でも明うかにされたように、あなた自身が沖繩に核基地のあることをお認めになっておる。だといたしますと、沖繩の核基地の存在がすなわち防御的な機能を果たす、これは是認するのだ、こういうことにつながるわけだ。したがって、私は、あなたのお使いになる攻撃基地の概念と、防御的な基地の概念と、さらに戦争抑止力を持つ基地の概念とは分けて考えていただきたい、このことをあなたに申し上げざるを得ないのです。この点についての御回答をいただきたい。
  205. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま戦争抑止力というお話が出ましたが、大体、最近の軍備、これは戦争に勝つために使う、あるいは持つ、こういう軍備もあろうと思いますが、もう戦争を起こさないためだ、戦争はこれを持っておれば起こらないんだ、こういういわゆる戦争抑止力の兵器というものもあるのではないだろうか。これは使わなくて済む兵器ですね。そういうものがあるのではないだろうか、かように私思います。それがいま私の言っておる一つの問題だと思っております。武器である以上、それは必ず使うんだ、かようなことにはならない。先ほどう申したように、とにかく暴力学生が持っている石だってこれは攻撃的だ。そういう意味かうも考えれば、鉄砲まで持たなくても、刀自身が攻撃的な兵器でもあろう。しかし、同時に、そういうものが性格的に使われないというか、そういうことに使わないという、そういう意味で、問題を防御的なりやあるいは攻撃的なりや、こういうように考えないと、いわゆる俗に言う気違いに刃物というようなものにならないようにすることが必要なんではないか。私はそういう意味で、われわれ自由主義陣営、平和を愛好するものから見れば、そういう基地はある。基地はあるが、それは使ういわゆる攻撃的なものではないのだ、実はかように観念的に私は考えておるのです。でありますから、軍事的な面からいえば、言われるように攻撃的な兵器だ、こういうことも言えるかと思いますが、私は、そうでなく、やはり高度の政治的な判断から、そういう兵備あるいは基地、そういうものが攻撃的に使われないというように実は申したつもりでございます。
  206. 永末英一

    永末委員 佐藤総理、だれでも戦争を欲する者はございません。戦争を欲しないから、各国はそれぞれ軍事力を持っておる。わが国の場合には、その憲法に許された軍事力というものについて、あなたの前の内閣からも、またあなたの内閣も、その保有する兵器については攻撃的な性能を持つ兵器は持たない、こういう方針でやってこられたと思います。アメリカの方針は、相手方に打撃を与える、相手方に対する攻撃力を持つことが安全を保つゆえんだ。ここが、日本国の持っておる方針とアメリカ国の持っておる方針が全然違うわけだ。したがって、沖繩におけるアメリカの基地は、攻撃基地であることがアメリカにとって必要なのです。それを、本土における日本政府側が持っておるいろいろな自衛隊の基地と、沖繩における米軍の基地との性格を混同させるがごときことばをあなたが使われるということは、沖繩の返還について基地の態様がきわめて重大な問題になっておるときに、あいまいな一つの観念を国民に与えることになる。このことを私は非常に懸念をいたしておる。その意味合いで、あなたの御趣旨が御趣旨であるのなら、今後沖繩の基地が防御的な基地であるという発言は一切しない、このことをはっきり言っていただかなければ、いつまでたってもこの問題は解決いたしません。御見解を承りたい。
  207. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 以上で私のことがおわかりいただけるかと思ったら、実は問題は別のところにあったようで、私がかつてこの席でも申し上げたと思いますが、日本の憲法がどうあろうと、佐藤内閣とすれば核を持つ考えはございませんとはっきり申し上げておりますので、それでひとつ御了承いただきたいと思います。
  208. 永末英一

    永末委員 佐藤総理、それを聞いているのではないのです。沖繩の基地をあなたが防御的な基地だと判断をきれ、戦争抑止力の一つを構成するものだ、こういう御判断を持たれることは――基地の返還問題にあたって、その態様についてこの委員会でも数々の質問が出ました。一つの問題はいまあなたがおっしゃった核の問題であり、一つは自由使用の問題。したがって、アメリカが沖繩の基地について判断をしておるその判断と違った、えてかってな判断をあなたがお持ちになって対米交渉をきれても、食い違ってなかなかまとまらない。その基地の性格は、アメリカが判断しているとおりのものであることを国民に知らしめつつ、そうしたら一体日本総理はどういう覚悟でこの基地の態様についてアメリカと折衝するか、こういうことでなくてはならぬ。それを初めからあなたは国民に間違ったイメージを与えて、対米折衝ざれた結果が出てくれば、その結果については国民は大きな不満を持たざるを得ない、こういうことになると思うのです。  そこで、もう一度繰り返しますが、問題をそうされずに――私の考え方、あなたはおわかりだと思います。沖繩の米軍基地について、今後防御的な基地などというようなあなたの御判断を言われないようにしていただきたい。このことについての御回答をいただきたい。
  209. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、とにかく、いま申すように、これが日本に返ってきた場合に、日本がどういうように考えるか、これをいろいろ申しました。しかし、そう簡単じゃないぞ、アメリカは攻撃的な基地に使っているんだぞ、ただいまはそういう御注意がございます。私がアメリカに出かけて話をする場合に、また私がこれから基地についての白紙をどういうように変えるかという場合に、ただいまのような問題がはっきりする、その意味の御注意だ、かように伺っておきます。  ただいま私自身は、どこまでも日本とすればこの憲法上の問題で攻撃的なものを持つつもりはございませんが、しかし、アメリカの持っている核そのものが大きなものでないにしろ、とにかくどんな説明をするかわからぬからこういうことを注意しろ、こういうようにたいへん御親切な御注意だ、かように伺いますので、そういう点は十分心得て折衝することにいたします。
  210. 永末英一

    永末委員 これで終わりますが、総理、こういうことなんですよ。あなたが沖繩の返還後の態様を頭に描きつつ御答弁をされておられる。佐藤内閣の方針としては、わが本土にある基地は、これは防御的な作用を及ぼすべし、もしこの作用に逸脱するところがあれば困るというので、自民党政府は、安保条約を締結時、その六条についての事前協議のいわゆる歯どめをざれたわけだ。ところが、沖繩の現在の米軍基地は、それと無関係に、これはアメリカの自由に使用されておる。しかも、アメリカ側の主たる軍事的な意見は、米軍が沖繩に持っている基地が自由に北東太平洋に使われるから重要なんだ、こういう意見があることはあなたも御存じだと思う。その場合に、この現在のアメリカ軍の基地が防御的基地だという、あなたがこれを強弁さ1れますと、いまの現状のままの返還を佐藤さんは心の底で考えている、こういうことになるのですよ。これは重要問題だ。したがって、率直にアメリカが言っておるあの判断を国民にもあなたの口から知らして、ならば、一体佐藤総理はどういうかまえで基地に対しての態様を考えていくか、二段がまえにしてもうわないと、初めからスクリーンをかけて国民の目をごまかしてはいかぬ。もう一度ひとつ御答弁を願います。
  211. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 最初わからなかったのですが、何を言っておられるかと思ったんだが、永末君の話もよほどわかりました。これではっきりしておりますので、先ほど申しましたように、私がアメリカに行って交渉する際には、そういうことをよく頭に入れて交渉をする、こういうことにいたします。私は、また、この基地の態様がいかにあるべきか、こういうことについて筆をおろす際にも、そういう御注意のあったことを思い起こして結論を出すことにする、かように申し上げております。
  212. 永末英一

    永末委員 私の質問はこれで終わりますが、私は佐藤さんに数次にわたっていま質問を試みましたが、なかなか最終的なところまで来ませんが、要望しておきます。  あなたの一言一句というものは、国民に非常な関心を呼び起こすことばであって、したがって、ことばをお使いになる場合には、やはり正確に、またそのことばの及ぼすべき影響というものを勘案をして、これから御発言を願いたい。間違った感覚を与えるような発言をされますと、そのこと自体によって大きな問題が起こりますから、厳重にひとつ御忠告を申し上げておきます。  終わります。
  213. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、吉田賢一君。
  214. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 総理に第一問、行政面革を伺いたいのであります。  いまの世代の移りかわり、激しい技術革新の時代に、また幾多の大きな変化が内外ともに起こりつつあるときに、行政改革の問題はきわめて重要な、根本的な課題でないか、こう考えております。  あなたも過去におきまして、私も記録を閲覧しますると、本会議の所信表明においてすでに六回繰り返して、行政改革を推進することをお述べになっております。これは非常に重大な御発言と考えます。いま、行政改革につきまして一体どのような御決意をお持ちになっておりましょうか。まず伺っておきたい。
  215. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへんじみな御質問でございますが、行政改革、これは基本になる問題でございまして、国民のために十分効果をあげるような行政はいかにあるべきか、実はこれを絶えず考えていかなければならないと思っております。しかし、とかくこの問題はじみな問題でありますから、政府筋もあまり取り上げない。しかし、たいへん必要なことであります。行政管理委員会等におきましても、そういう意味でまずこの問題を積極的に取り上げろ、こういって政府を実は鞭撻しております。なかなかみずからの仕事――仕事によっては自分自身の首を締める仕事ですかう、なかなか各省ともこの問題についてはやりにくがっておるようであります。けれども、これをやってほんとうに国民のための行政をやるということでなければいかぬように思います。ずいぶん乱暴な話で、何をやったかわからないと言われるかもしれませんが、実はそういう意味でこの前は一省一局廃止ということを実は提案いたしまして、そのとおり曲がりなりにとにかくそれをやれた。同時にまた許認可の事務、これも整理をはかってまいりました。許可、認可事項、さらにまた届け出、それらのものが十分有効に使われていないにかかわらず、届け出を民間にしいる、こういうことがあってはならないというので、ひとつそれを整理しよう。それから許可、認可の事項だって、簡単にして民間になるべく移していいじゃないか、こういうことで、そういう点もやりかけております。これはまだ全部終了ではございません。  さらにまた、地方事務官制度の整理の問題とも実は取り組んでおります。これは本省それから地方の自治体、こういうものが入り組んでおる。そのためにどうも同一人が何らかの仕事をしようとすれば、本省の出先にも行くが同時に自治体にも顔を出さなければならない、ずいぶん不便がある、こういうことも整理しなければならない。ただいままた総定員法、これをいま提案いたしまして、皆さん方の御審議を得ようとしております。行政整理という行政機構の改革、こういうことは叫ばれますが、総定員法となるとなかなか反対が多いのでありまして、いまずいぶん難航をきわめておる。この国会においても実は難航のようであります。しかし、私はいま申し上げるようなこの行政事務をほんとうに国民のためにどういうようにしたう行政が円滑にいくか、国民のためを考えると、もっと単純化していかなければならぬ。そうすると、人がとにかくあいてくる、すいてくる。ある役所では人が余っている、しかしある役所では新しい仕事でふえてきている。そうなってきても、各省間の定員の融通もつかない。それでは総体としてずいぶん国家としては人を抱きかかえるというようなことにもなりますので、ここではやはり総定員法をぜひ皆さん方のお力で通していただいて、そうして積極的に行政改革に乗り出していく。そういう意味で鞭撻を受けたいし、またその他の点におきましても、こういう点を直せ、こういうことでございますれば、私は謙虚にその御意見を聞くつもりでおります。   〔委員長退席、中野(四)委員長代理着席〕 この点を十分簡素化していかないと、これはたいへんな問題だ、かように思っております。
  216. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これはやはり根本的に行政改革というものが、いまも総理の一言ございましたが、何か官庁の公務員諸君の首を締めるかのような印象を与える。実はさにあらずして、日本の起こりつつある社会の変化、この激しい流動に対する行政の需要を全うする機能を強化する、そして行政の目的とするととろをほんとうに達し得るような体質をつくって運営していくということになるのですから、言うならば真に仕事をなし得べき体質をつくり、そしてその運営をはかるというのですから、こんな喜ぶべきことはないと思うのです。これを首を締める、とかく意見まちまちになるというのは、それは行政改革なるものの本旨が十分に徹底せず、これを理解せしめる努力が足りないというところに根本原因があるのではないであろうか、こう思うのですが、いかがでしょう。
  217. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりだと思いますが、もう一つは仕事のしぶりも変えないといかぬですね。ファイルができないとでも申しますか、とにかく各役所で白ネズミがいないとどうしてもものごとがきまらない、こういうようなことではいけない。そういう担当者がいなくとも事務の処理ができるように、そういうことも考えなければいかぬ。これはよくいわれることですが、役所で一番えらいのは大臣だと思って大臣に頼んだら、うんとは言ってくれたが、次官を呼んだ。次官が局長を呼び、局長は課長を呼び、課長は担当者を呼んだ。そうすると、担当者が一番えらいかと思うと、そうでもない。だんだんまたもう一度判をとっていく。そうして大臣の判がなければ決がつかない。やはり大臣がえらいと思った。ところが、それよりもまだえらいのがいた。きょうはタイピストがいないから、その書類ができない。そうするとタイピストが一番えらい、こういうような話が実はございます。私は仕事のしぶりをとにかく変えないといけないと思う。いまおそらく各省にまたがるもの、自分の省だけでもたいへんな実は判こが使われておる、こういうことを簡素化しないと、それは仕事にならないと思うのですよ。いまのように、タイピストが一番えらいというような話になっても困りますから。そこらに問題があるように思います。
  218. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 佐藤さん、タイピストが一番えらいというような御冗談はひとつこの際よして、私はこの問題を取り組むのは全公務員がえりを正して取り組んでもらいたいと思うのです。  それは、責任者は各省においてはやはり長であります。全体を率いている内閣の首班はあなたであります。したがいまして、あなたを頂点として行政は運営をされておるには間違いないのでありますから、事が重要であればあるだけ、言えば間違いなく行なう、行なわなければ言わない、この限界をはっきりしなければ、たとえばあとに触れるいまの大学問題にしても、幾多の世論が紛糾しておる諸問題にいたしましても、何か知らぬけれども根本にしゃんとしたものがないからであります。したがいまして、もし行政改革が各方面に及ぼす影響等々から見て非常に重大であるとするならば、断固としてあなたが決意をする、そしてそれは言えば行なう、行なわなければ内閣は辞職をするというところまで腹をきめなければ、とてもそんな中途半途の冗談まぎれで事が進んでいくようなことでありましては、思いやられます。それなうばもう行政改革は至難である。だから、過去における改革の失敗の例のごとく、まだ機熟せず、またそのときになればやればいいじゃないかというふうに投げ出すか、ここらはこの段階におきまして相当腹をおきめになって、やるならばやる、やる以上は、極論するならば蛮勇をふるって是とするところを進めていく、そして期限を切るということをあなたが決意をなさる。でなければこれはできないと思います。こんな問題をしばしばここで繰り返すというようなことは時間の浪費であります。だから、一言でもあなたがおっしゃることは断じて行なう、行なわなければ言わない、これは国民に対する真に誠意ある立場です。いかがでございましょう。
  219. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま総定員法を提案しておりますのも、これは一つの行政改革の具体的な対策であります。これはぜひとも皆さん方の御審議を得て早く成立さすようにしていただきたいと思います。
  220. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 総定員法のそれもわかります。論議するところは尽くして、そして真に多くの人々の疑問とするところがあるならば、それは議論を尽くしてしまってお通しになるべきだと私も思う。  公務員制度につきましても、これはあとに触れようとしたのだが、そこへ触れていきますが、公務員制度につきましても、これは言うならば全国の百何万の国家公務員、地方公務員にもやがて及びましょうが、これは公務員がおびえてこれに反対するとかあるいは公務員のために何か不利になるんじゃないだろうか、こういうような不安を持たすようなこと自体が、これは方法として適切にあうずと思うのです。やはり公務員にいたしましても、みずからその地位にあって長く安住し得るように、そして適切にみずからの事務を処理し得るように、その地位を約束してくれるということになるならば、それは日本の公務員ですからりっぱに仕事をなし遂げます。公務員制度の改革の問題にしましても、重要なことでありまするので、ここはこまかいところまで念を届かして準備をしていくということにすればいいんであります。だから、端的に言うならば、職を離れたときに再就職の機会も十分に約束する、老後におきましても安心して家族とともに安楽に暮らしていける、こういうような約束も取りつけるというところまでやはり腹をくくらなければいけません。不安だけで、公務員を阻害因のごとく考え、公務員団体のやっておることが議論なしにこれはむちゃだというような考え方でいっては、とてもとても問題は解決をいたしません。だから、日本の官庁機構にしても行政機構にしても、それが強化され改善される、また公務員自体の立場、公務員制度等にいたしましても、公務員が安んじてこれに協力し得るように、どこに不満があるのか、どこに一体問題があるのかということを十分論議を尽くせばいいと思うのです。そして総定員法も通しなさいよ。一つの突破口にしなさいよ。何も行政管理庁が旗を振ってやるという問題じゃございません。内閣が全責任を持ちまして、あなたがおやりになるべきだと私は思う。そして全公務員がほんとうに信頼して、ともに改革しましょう、ともによりよいサービスを国民にしましょう、そのかわりに私どもに対しましてもどうか安んじて地位を保全し得るように、将来もほんとうに明るい仕事の職場を与えられるようにということを約束すべきです。これがまた臨調の答申の精神でもありまして、これを私はあなたはおやりになるおつもりであろうと考えまするので、公務員制度の改革につきましても、率直大胆にこれはどんどんとお進めになるべきだ、こう思うのであります。どうでございます。
  221. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総定員法にいたしましても、ただいま出血整理というか、そんなことは考えておりません。したがいまして、私ども出血をしないつもりでただいまの総定員法を置いて、そうして各省で融通し合おう、こういうのがねらいであります。  また先ほども申しているように、その仕事自身をやはり民間とわれわれと、行政官庁とその持ち分をそれぞれきめていく、またその持ち分について行政管理庁自身はそれぞれを簡素化していく、こういうように取り組んでまいるわけであります。その場合に、いまこれを手がかりにしようという――この前は一省一局削減、今度は総定員法、これを手がかりにしようとして今回提案しておるわけであります。これはいろいろ出血するんじゃないか、整理じゃないか、こういうような疑いがあるようですが、出血整理、それは考えておうないということをはっきりいたしまして、そうしてただいま御鞭撻を受けたように、その意味においてこの問題と取り組んでまいりたい、かように思います。
  222. 床次徳二

    ○床次国務大臣 ただいま公務員制度に対して御意見がありましたが、全く御意見のとおりだと思います。公務員が全体の奉仕者としてその職務に専念して、国民の信託にこたえるという安住した地位を確保するということ、これが公務員制度の根本であろうと私は思うのでありまして、したがって、目下政府におきましても、公務員の給与の問題と並びに勤務条件の整備、さらにお話しになりましたところの退職後の生活保障等に対しましては、それぞれ人事院勧告とか、あるいは退職年金制度、あるいは退職手当等の立場、さらに日常の勤務条件の改善等につきまして、一そうの努力をいたしたいと存じます。
  223. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 総理にこれは御相談ですけれども、やはり日本の行政機構の改革と、そして運営の改革が実現いたしましたならば、日本の進運のためにどれだけ大きな貢献をするかわからぬと私は思う。世界を歩いてみても、日本の公務員ほど優秀な人材のそろったところは少ないと思うのです。ところが、制度が旧態依然、運用にいろいろな利害、いろいろなものになずんで適切にそれが行なわれていかぬというような実態でありますので、ここはほんとうに英知をしぼって改革すべきだ、こう思うのであります。  しかし、いろいろといま阻害因があまり大き過ぎるということが世上いわれております。なぜ一体そんな阻害因が大きく映るのであろうか。これは一つは宣伝が足りないのです。私は最近の週刊誌なんかを見てみますると、だれもかれも週刊誌をずいぶんと読んでおります。ここにやはり民心を把握し、問題の焦点どこにありや、その因が何か、行政改革とは何ぞやということを、ほんとうに国民のために、かつまたそれを担当しておる諸君のために、日本の将来のために、これは必要であって有益だということをもっと宣伝しなさいよ。それをすることなくして、理解が乏しい、抵抗が大きい、だから総定員法のごときものでも、わずかなあんなくらいのものでも、やっきとなっているのが現状であります。だから、もっと宣伝をしなさい。どこがいけないのか、そうしたらどうすればいいのか。反対意見があるならば、率直に謙虚に反対意見を聞きなさい。そしてそれが最も国民のために、公務員のために、国の将来のためにほんとうに有益だと思う案は、何を犠牲に払ってもしていく。行政改革というものは、臨調の答申の精神にしましても、一がいにものをしぼり上げる、チープガバメントを目標にするというべきものでなくして、この激しい移り変わりの時代ですかう、それは膨大な施設、要求もありましょう。もっといろいろな制度を設けなければならぬ場合もありましょう。金も要りましょう、時間も要りましょう、人材も要りましょう。要りましょうけれども、むだをやめましょう、有益に有効に使い得るような状態に立て直しましょうというのでありますかう、みんなこぞってこれに賛成させるべきです。させ得ないのは宣伝が足りない、あるいは誠意が足りないからです。おっかなびっくりでやっておるような問題じゃございません。これは勇を鼓してあなたが陣頭指揮をやるべきです。冗談にもタイピストがえらい人なんて、そんなことを言っているような腹では、とてもとてもこの問題は実現いたしませんから、あなた御自身がほんとうに決死の勇を持ってやりなさいよ。あまり戦後平和になれ過ぎて、総理大臣が撃たれるとかいうことがなさ過ぎまするので、あなたはそんなことをお考えにならぬ。明治、大正の歴史を見てごらんなさい。あなたの先輩が、多くの人が街頭に至るところで撃ち殺されている例もあるじゃありませんか。そのくらい決心を持っていかなければ、この政治危機に対処して日本は乗り切ることはできませんよ。まず行政機構の改革というものは、その試金石であります。この試金石さえあなたがようなし得なかったならば、それはあなたの内閣によってはとうてい日本の危機を乗り切ることはできないと国民は判断しますよ。いかがでございます、佐藤さん。
  224. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もっともでございます。私もほんとうにさように思っております。  また、荒木君が今度その問題も手がけておりますので、具体的にどういうようにするか、いまから荒木君からもお聞き取りをいただきたいと思います。
  225. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 最近の計画につきましては、たとえば三カ年計画のあるのも存じております。あなたも何べんもそれらについて問答もなさっておりまするから、現在の計画――三十九年の答申以来今日までずっと進んでまいりました経緯もよく御承知のはずであります。ですから、私は行管の長官におっかぶせるという行き方ではなしに、あなた御自身が陣頭指揮なさい。総理のリーダーシップがほんとうに発揮されて初めてこの行政改革は実現するのであります。しからざれば、これから言いますけれども、各省ばらばらの問題はよくあるのであります。ばらばらではとてもいけません。行管の長官は、言うならばあなたの幕僚であります。大臣ではございますけれども、あなた御自身が全責任を負うという、これでなければいけません。行管の長官にまかしておくというようなことじゃ、とてもいけません。監理委員会にまかしておく、それもだめであります。それほどいいかげんなものじゃございませんので、あなた自身が断じてやるという決心はぜひしてもらわなければなるまい、こう思います。これはひとつ重ねてあなたの決意を促しておきます。  それから、この三カ年計画の問題でございます。順次触れますが、行管の長官おられますね。三カ年計画の問題でございますが、これも去年の六月に各省から全部出そろわなければならぬはずでありました。ぐずぐずしておくれました。まだどうやらおくれておる。まだ出そろっておらぬ。なぜ一体この程度のものさえ出ないのですか。三カ年計画の内容も一々ここに朗読することの煩を避けます。けれども、ほんとうに枝葉末節の問題が多いのであります。どれほど重大なことに取り組んでおるのかと見ると、何でもないことであります。なぜ一体これがみんなから集まってこないのであろうか。きょうまだ全部集まっておらぬらしい。各省それほど熱意がないのか。一体、各大臣は実情をほんとうに御承知ではないのであろうか、そういうことさえ考えるのであります。そういうことのよってきたるところは、まあ失礼でありますけれども、前にも一度言ったことがあるのですが、佐藤さん、大臣の任期が短過ぎます。一年と続きませんわ。半年は国会で締めつけになり、あとの四カ月ぐらいは課長の顔をみんな覚えて、彼の性質を知るということが関の山であります。したがって、重大な懸案を解決するというような、それには何か知らぬけれどももの足りない。ここはよけいなことのようでありますけれども、二年くらいは続かなければだめであります。十カ月や十一月くらいでどんどんと大臣がかわってしまったら、われわれでも大臣の名前を覚えるのに苦労しますわ。これではだめです。だめであります。でありまするから、寄ってこぬのは、それは大臣みずからがしゃんと指示して、国民と約束しているんだから、六月まで三カ年計画みんな集めなければいかぬ。ぴしゃっとすればいいけれども、それするだけの知識がまだできておらぬかもわからぬ。まことに失礼ですけれども……。ここに難問があります。困ったことです。  でありまするから、行管の長官伺いますが、何で一体寄らぬのです。あんな簡単なものです。内容を調べてみたら、たいしたものじゃありませんよ、三カ年計画みたいなもの。そんなものを長くいじくってみてどういうわけなんです。
  226. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど来、総括的な立場から、行政改革の必要性を国民立場でお述べになりました御意向、ことごとく私も同感であり、総理からお答え申しましたことで基本的には尽きておると思います。まあ、ぱっとした案がなかなか思うように進捗しない、実現困難であるということは御指摘のとおりであります。努力不足をおわびせねばならぬ気持ちもむろんございますけれども、それほど容易でない課題でもある。いわゆるパーキンソンの法則というのは、ひとり日本だけでなく、外国でも行政機構の改革、行政改革というのが困難視されておる。まあそれに依存してほっておくつもりは毛頭ございませんけれども、まず何としても、総理からるる申し上げましたように、通称総定員法というものをお認めいただきまして、その上に立って、行政需要の変転するその姿に応じた、国民本位の、簡素にして能率的な行政機構にしていく。なま首は一切切らない。現在員をその行政需要に応じて配置転換をすることによって、御指摘のような行政改革も、相当効果的な課題が実現していくものと存ずるのであります。  これはすでに、臨時行政調査会設置法御審議のときに、超党派でもって附帯決議を付していただいております。行政改革はしっかりやれ、ただし、なま首を切るべからず、その趣意を受けまして、臨時行政調査会もいろいろの根本的課題からずいぶんたくさんの課題を投げかけてもらっておるわけでありますが、これもあくまで配置転換でいけ、配置転換ができるような法律、制度を考えろということも答申の基本線にあるわけでございまして、前々国会以来御審議をお願いしておりますのも、そのこと自体が、首切ったりなんかしないで現在員を有効に活用するということを根本にいたしまして、もろもろの行政需要に応じたいということを出ないのでありまして、その間にいろいろと反対意見のあることも聞きますけれども、本質的には反対さるべき内容ではないであろうと信じておるわけでありまして、この法案を御審議いただき、通過さしていただいたその基盤の上に立って、着々実効をあげるということをもってお答えとさしていただきたいと思います。
  227. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それはあなた少し勘違いしておいでになるので、三カ年計画は、去年の六月に寄らねばならぬのが、まだ寄ってこない。各省は何をしているのだ、そこをあなたとして十分に押していかれるべきじゃないか、こう言うのであります。各省に向かってもっと積極的に、協力をし得ない、そういうのならば、内閣全体として、これはやはり総理のリーダーシップによってと、こういうふうに私は進んでいかれるべきだと思うのです。非常にむずかしい問題は三カ年計画の内容にはありませんよ。こんなものすらできないのであるならば、前途思いやられますと私は言うておるのです。公務員制度につきましては、これは首切りとかそんなもんじゃありません。パーキンソン法則なんて、そんな消極的な問題を言っているんじゃありません。老後も安心して、その職務には専念し得るだけの待遇もして、心配をしないように、みんなより健康体をどうしてつくろうかということを、公務員みんなが喜んでこれに当たるというような体制をつくりなさいというんです。問題はそこなんです。これは床次総務長官がさっき述べておいでになったかう、私はその点は将来を約したものとして考えていきます。ですから、これは積極的にみんな喜んで、おいどうだ、もっとりっぱな行政官庁をつくろうじゃないか、こういうふうに呼びかけ得るような、その腹がまえでないといけませんぞ。首切りしないとかなんとか、そんな消極的な問題じゃございません。そこはひとつはっきりしておいていただきたいのであります。そこで、ぜひとも年度内に三カ年計画は各省かう出そろうというふうにあなたは御努力せなければいくまいと、こう思います。それはぜひひとつ実現されるように。  一局削減の問題は、これは佐藤総理指示によりまして非常に重大化したのでございますけれども、しかし、これとても内容は統合あるいはまた廃止だけれども、局が部に下がるというようなことで、そんなにすっきりとした姿じゃありません。この原因もわかります。わかりますけれども、まあまあ、せないよりもこのほうがましでございます。私は、もっとほんとうに腹を割ってお互いに改革しようじゃないかということをなし得る情勢をつくりなさいと、こう言うんです。ぜひそうされんことを私は御希望申し上げておきます。  そこで、だんだん時間がなくなってくるので、大蔵大臣に伺いますのですが、例のPPBSの問題でありますが、やはりこれも行政機構改革につながってまいります。いかにして国民の税金をできるだけ効率的に使うかということ。まずそれは予算の制度にあり、予算の運営にありますが、制度自体の改革はやはりこれは一種の行政改革につながってまいります。臨調の答申は事業別予算等によりまして、予算会計のその一つの案を提案しておりました。いまあなたのほうを中心にPPBSのあり方をいろいろと検討されておることも存じております。これはひとつ各省に積極的にどこからまず導入すべきかというぐらいまで、具体化するところまで持っていかれて、そして予算制度、予算の運用を最も経済的に、効率的に使い得るように、なし得るようにすみやかにすべきだと、こう思うのであります。  この際に、あなたからひとつ最近の情勢を、簡単でよろしゅうございますからお述べいただいて、本年度予算を通じ、また次々と何をしていこうとするか、いつごろに何をしょうかということをひとつ明らかにしておいていただきたい。
  228. 福田赳夫

    福田国務大臣 予算の編成にあたりまして、PPBSの方式を適用すべしという御所見はまことにごもっともなことだと存じます。政府のほうでもそういうような考え方を持ちまして、特に昭和四十四年度の予算におきましては、そのための研修、要員の確保、それから、そのための前提資料の収集、そういうことをいたすための経費も見積もっておる次第でございます。この問題はアメリカにおきまして試みられつつある画期的な方法でございますが、アメリカでも開発途上であるという段階で、まだ定着はしておらないようであります。わが国において、いつどういう時点で実施し得るか、これはいま申し上げることはできない段階でございますが、なるべくすみやかにこういう進歩的な制度を取り入れまして、ぜひ実施して効率ある予算を編成してみたい、かように存じております。
  229. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 この問題につきましては、やはり大蔵省、企画庁などが中心になりまして、実施官庁である建設省、運輸省あるいは農林省、防衛庁等との間にも、積極的に、これは一日もすみやかに開発していく。コンピューター革命時代ともいわれるときでもありますので、私は、日本の行政改革の一端として、ひとつすみやかに実現可能な状態へ導いていくようにされんことを強く御要請申し上げておきます。  そこで、企画庁長官にも伺っておきますが、企画庁におきましても部屋を設けていろいろと調査をしておられますが、これはいつまでもいじくっているという段階じゃなしに、できるだけ早く実施の段階まで持っていくべきでないか、こう思うのであります。ことにまた各政党等におきましても、続々と今後は新しい政策の方法なんかが主張されていくでしょう、提案されていくでしょうかう、そういった場合におきましても、コンピューターを駆使して、そしてPPBSのそういう趣旨、精神などを応用していくということになりましたならば、その政策の選択の上におきましてもかなり進歩した科学的なものが見得るんじゃないかと思うのです。いま企画庁もせっかく努力されておるのでありますから、これはできるだけ積極的に、人材も早く養成して――世界的に、たとえばアメリカにおきまして、最先端、中核部等におきまして、一日も早くあらゆる資料を手に入れて、そしてわが国においてこれを実践していく、こういうふうに指導されるべきだと思うのですが、長官、いかがです。
  230. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お話しのとおりに、経済企画庁の中に経済研究所がありまして、その研究所の中にシステム分析調査室というのを設けまして、そしてPPBS並びにシステムの分析の理論的の研究と応用面における方法論の開発にいま従事いたしております。また、最近におきましては、アメリカへ参りまして実地の研究もしてまいったのであります。これが何ぶんにも新しい方法でありますので、いま直ちにこれを実施するという段階までいっておりませんが、できればこの理論と方法論の研究開発にもっと主力を注ぎまして、来年度においては応用面に重点を置いてひとつこれを実施するようにしたい、こう考えておる次第であります。
  231. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 去年七月自治省が各都道府県並びに市町村などに人を派遣し、あるいは文書をもって回答を求めまして、百二項目にわたる地方行政改革並びに財政の改革にもつながりますが、このアンケート質問をやったのでございました。ところが、八月にこれが来ておりますのを見ると、中央に一応全部集まりまして、この集計いたしましたものを点検してみますると、これが中央に返ってまいりまして、この改革の意見というものが中央におきましては各省庁ばらばら、各地方におきましては、これは百二になりますので私は朗読することもいたしません。いたしませんが、かなり国民の生活に密着するような種々の問題、種々の行政業務が取り上げられておりまして、いかにしてこれをもっと簡素合理化、改善ないしは無用なものを廃止する等々の改善意見を盛って所見を求めましたところが、いろいろな意見が出ました。中央に返ってまいりますと、地方の大多数、九〇%まで廃止が、中央では反対。存続が中央では廃止。しかしそれは各省庁によってばらばら。たとえば公害行政等につきましては、首都圏においてはこれは検討、北海道長官はこれも検討、防衛庁は反対、企画庁は反対、技術庁は賛成、厚生省は賛成、農林、通産、運輸全部、建設も反対、こういうようなことになるのであります。こういうようなことになりますと、公害行政の内容を一々申しませんけれども、これは地方におきましては帰趨に迷うのであります。やはりこういったところは行政改革の大精神である総合調整の力を発揮せられて、そうして一体どこに反対の理由があるか、検討の問題はどこにあるか、なぜ一体これは賛成するのか、賛否検討、三派に分かれまして中央の省庁がそれぞれ対立しておる。こういうようなことではとてもいけません。こんなことでは思いやられます。  そこで、やはりこれも地方行政を含みましての行政改革のあり方といたしまして、もっと総合調整するという機能を発揮する必要があるのではなかろうか。これは地方におきましては、中央からわざわざ出てきていろいろと質問した。これは非常に多としたのです。そこで意見を全部まとめて東京に持ってきたところが、ただいま申しましたような、ばらばらになっておるのがずいぶんあります。むざんなものであります。百二の問題、これはことごとく重要なものであります。何とかこういうところをもっと総合的に調整して、中央の結論を得る方法はないのでしょうか。総理、こういう問題はどうお考えになりますか、御承知と思いますが……。それでは自治大臣、あなたかう……。
  232. 野田武夫

    野田国務大臣 吉田さんにお答えしますが、いまお話しのとおりのことで、昨年全国の都道府県と市に対してアンケートを出しました結果、地方では、地方のいわゆる中央の出先機関を整理してもらいたい。中央の事務を地方に委譲してもらいたい、そういうのが総合的な希望でありました。これは直ちに行政改革本部に出しまして、できるだけ実現を見たいというので強く要望いたしてありますが、せっかくいま行政改革本部のほうでもこの一々についての検討を重ねておられるようでございますから、自治省といたしましては、やはりあのアンケートの結果に沿うたようないわゆる行政改革が実現するように、いまでも非常に熱意を持って希望いたしております。
  233. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 せっかく行政改革に伴う閣僚協議会もあるのでありますから、このような重大な関心を地方が持っておるような諸問題について、中央でばらばらになっておるようなことはまことに遺憾でありますので、閣僚協議会等にかけて、こんなものは即刻処理する。一々中央で各省の鼻息をうかがい、顔色を見ているようなことではだめであります。だから、自治省の長官、あなただけの責任じゃないのでありますから、各省の大臣が寄って、閣僚協議会できめればいいのです。そして、もっと地方に信用を与えなさいよ。中央がこんなばらばらならば将来一体どうなるかわからぬ。それは中央に対する不信感を地方は持つのみであります。とんでもないことであります。すみやかに閣僚協議会にこれをかけて、そうしてこれらの処理をなすことが私は至当だろうと思います。ぜひひとつ希望を申し上げておきます。  それから、例のこの間人事院が発表いたしておりました営利企業への就職の問題であります。巷間俗に天下り問題といっておりますが、これは私は実に遺憾に思います。総理、この問題は、もっと大胆に、公明正大にガラス張りの中において、さきに申したように、日本の官庁を構成しておる公務員はすべて優秀なんですから、優秀な人材がどの企業、どの方面に対しても、大胆にどんどん乗り出して仕事ができるように、もっと明るくすべきです。いまのままでありましたならば、公務員法によって縛られておりまして、わずかな線で――検査するのか試験するのか知りませんけれども、そういったところで実はコネで行く。前にいろいろと役所におる間にお世話になりましたかうというようなことがあるのじゃありますまいか。その人に来てもらったら便利だからというのじゃありますまいか。そういうようなことは不明朗であります。私はもっと明るく大胆に就職の機会を与えなさいと言うのです。そのかわりに、中央とのつながりは、過去において長官であっても、局長であっても、中央へ参りましたならば、それはやはり中央は中央なりのしゃんとした姿勢でこれに応対するということにするならばいいわけであります。綱紀厳正というふうにしていけばいいのでありますから、私はこの問題は、中途はんぱに扱うといういまのやり方は断じていかぬと思っております。何か制度でも変えまして、人材銀行というのは口が悪いけれども、どこかで大きく締めて、ひとつ明るくお互いが四通八達。いずれにおいてもその能力を使っていけるように、また、それらの人を使う場所をつくれるようにしてしかるべきだと思うのですね。いまの不明朗な天下りなんて、疑惑のもとになります。いまの状態では綱紀紊乱のもとになります。断じていけません。最近のあちらこちらであらわれました汚職事件なんかについて見ましても、私は憂うべきことだと思っております。洗っていけば何ぼでもあるのじゃないだろうか、そんなことになるおそれがあります。断じていけません。これを一つの問題点としまして、いわゆる天下り人事をなくする。そして公明正大に、どの企業に対しましても大胆に入っていけるように、ガラス張りの中において人材は四通人達動いていけるようにすること、こういうふうに制度的に改めるべきでないかと思いますが、いかがでございましょう。総理、そういうふうなお考えで何かの方法を講じたらどうでございましょう。
  234. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの天下り人事、これもあまり何か汚職、そのほうばかり危険視して、せっかくの人材が使えない、こういうことは国家的なたいへんな損失だと私は思います。ものごとは、それぞれりっぱな才能を持っておりましても、やはり経験も生かしていかなければならぬだろう、かように思いますから、ただいまの人事院制度、人事院が許可するような制度のほうがよろしいのじゃないでしょうか。いまの制度で別に不都合はないだろう、かように考えております。
  235. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 人事院総裁見えておりますね。人事院におきましても、一体直接会社のたとえば定款において、重役、役職員になるか、あるいはそうでないかということはつかめないのであります。たとえば顧問という立場におって、それは定款上の地位にあらず、もしくは総会にかけない。そして過去における給与よりもずっと高い。それが役に立たなければ二、三年で首にしちゃう。こういうこともなきにあらずです。私は、公務員その人のためにも、また日本の人材のためにも嘆かわしいと思いますので言うのであります。いまの状態でいきましたならば、その仕事に携わっていた公務員時代におきまして、公明正大に仕事をするということを、外部かういろいろな激しい誘惑などがありましてそこなわれる危険がなきにしもあらずであります。だから、これは何かの制度的な方法で、もっと大きくこれらの人材を用いる道を開くのでないと、いまの公務員法のみによりましては、非常に不便しごくだと思うのですが、人事院総裁どうお考えになりますか。
  236. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 ただいまのおことばの節々にうかがわれます基本的なお気持ちは全く御同感でございます。そういうお気持ちからさらにふえんしていけば、いまの制度はいかにもぎこちない制度だという批判もあるいは出てくるかと思います。私どもは現在の制度をお預かりしております以上は、これを忠実に守って、また公正に処置をしてまいっておるわけでございますけれども、とにかく一時公務員はやっておりましても、公務員をやめたあとは一般国民と同じ職業選択の基本的人権を持っている人たちでございますから、その職業選択の自由を制限するためには、どうしても公共の福祉上やむを得ないというからみ合いの問題が出てくる。そうすると、いまのおことばにありましたように、人材として民間に下って大いに技量を発揮してもらえば、公共の福祉にむしろ役に立つのではないかというような考え方もありまして、私どもはいまの憲法論と、それから世論の批判のきびしさというものとの間に立って、実にいま苦しい立場におるわけであります。  しかし、法の精神とするところは、当該公務員がその地位にある間に不当の影響力を与えていわゆる天下りをする、コネクションを生ずるというおそれからきておるものと思いますから、私どもとしてはその人の歴任したポストを調べまして、そしてそのポストの性格上不当な影響力を与えるととのできない権限関係にあったというような者についてはこれを認めざるを得ない。しかし、それにしても、御承知のように、昨年度において三十人近い人がけられております。世間では、このけられた人はよっぽど悪いことをしておったんだろうということで、週刊誌等に出ておりますけれども、これは決してそうではないので、いかに清廉潔白であっても、いまの形式的な基準にひっかかれば、われわれとしてはこれをけらざるを得ないというたてまえになっておりますので、いまお話しのような、もっと根本的な、それを明朗な形に持っていく方法はないかということは、私どももかねがね考えておりますし、あるいは民間との人材交流の機構というようなものをやってみたらどうかというようなことも研究をしております。あるいはまた、公務員が若くして五十代でやめてしまうということをなくすためには、やはり長期的な人材の採用、人事計画――これは上の人が長くおりますと、下のほうがもううずうずして、突き放されてしまうということもございますので、長期の人事計画というものも必要ではなかろうか、そういう百般の観点から検討を続けておる次第でございます。
  237. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 次は、ひとつ総理にまたお尋ねするのでございますけれども、いまの政治、行政の実情は、あまりにもばらばらでないだろうか。もっと総合調整の手を打つことが真にその政策の実現のために目的とするところを達成するゆえんでないか、こう思うのであります。  それにつきまして二、三伺ってみたいのであります。たとえば、消費物価の対策の問題でございます。いま物価庁として企画庁がございます。企画庁は藤山さんにしても、宮澤さんにしても、またいまの菅野さんにしましても、かなり積極的に物価に対しましては神経も使い、いろいろと対案をお立てになっておる。しかし、過日も私は言ったのでありますが、あれは四十年でありましたか、もう少し前に、三十何年でしたか、藤山さんの長官のときにでも、ずいぶんとあれは努力して、そして物懇の十一にわたる項目を取り上げて、各省庁に物価官でありましたか担当官を特別につくって、それで推進をはかろうとする。ところが現実は、たとえば運賃は運輸大臣はぽんとはねる、こういうことになる。またその後は、米価問題については農林大臣と意見が合わず、こういうことになってまいります。したがいまして、この物価問題にいたしましても、もっと私は、物価問題を非常に重大な国策としていま佐藤内閣が出しております以上は、これの打ち出し方、その進め方につきまして、総合調整を総理大臣としてなしていく、こういう面が多分に必要なのではないであろうか。私はその点に欠くるところがありますると、これは米、生鮮食料、その他運賃問題との関連におきましても、どうもばらばらになってうまくいかない。結局、消費物価は天井知らず。いろいろ指数統計等は出ましても、実感としましては非常に遠い。全国の主婦を泣かす。月末になると暗い気持ちになる。無理ないことでありますので、やはりここはどうして総合していくかということが重大な課題一つでないか、こう思うのであります。一つの消費物価問題をとらえて私は論議するのでありますが、内閣の総合調整力を発揮するということの好個の題目でないだろうか、こういうふうに思われるのであります。いかがでございましょうか。
  238. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまお話しのように、行政はそれぞれの大臣が担当しておりますが、ものによりましては、その担当大臣だけで片づかない。総合的にお互いにそれぞれが協力し合って初めて目的を達するものでございます。そういう意味で、特に物価問題などは、私自身が物価問題の安定推進会議を招集して、そうして各大臣をこの会議に出席さし、そして民間の方の御意味をその席で伺って、そうして取り扱っていく。もちろん、その担当主管は経済企画庁でありますけれども会議自身はもうそういうことにならざるを得ないのであります。また、月々の経済報告等にいたしましても、簡単なようでありますが、これもやはり経済関係閣僚が会議を持って初めてあれができるのであります。これから先の行政は、ただいま申し上げるような総合的な関係のものが一そう大事になってくる。総合的に効果を発揮して初めてりっぱな成績が上がる、かように思うのでございます。御指摘のとおりだと、かように思っております。
  239. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 たとえば、フランスでありましたか、六三年でございましたか、首相みずからが労働組合の幹部と話したり、あるいは業界の組合の代表者と会ったりして、物価凍結について相当成果をおさめたことが伝わっておりました。私はやはり物価のような非常にきめのこまかい面に思いやらねばならぬところの、しかも非常に重大な生活に直結した政策を進めていこうとするときには、やはり総理はからだは一つしかないのでありますけれども、できるだけ民間の重要なところと接触するというぐらいな気持ちをもって進めていく、これが一つのコツだろうと思いますね。そういうところに物価問題についても、たとえば流通対策あるいは生鮮食料についても、農業との関係、中小企業あるいは外国の輸入物資の関係等についても、思わぬ町のいろいろと大事な資料があるものでありますので、特にそういう外国の事例も思い出しますと、総理はそこまで踏み切って取り組んでいく、そういうふうにせられることが特に大事なことではないか、こう思っております。これはひとつよその例でありまするから、特にそういうふうに心がけていただきたいということを御要望申し上げておきます。  それから、運輸交通の問題でございますが、運輸交通にいたしましても、たとえば輸送の問題、国鉄輸送の問題、あるいはトラック輸送の問題、あるいは海上輸送、空輸の問題等ございますが、いま実情を見てみますると、これもやはりばらばらの一つの典型的なそれであります。この間も、たとえばコンテナ輸送につきまして、七、八億もつくようなものをつくった。ところが、トラック輸送が間に合わずして半分しか積めなんだ。半分積んでアメリカへ行かなければならぬというような実例も私は聞くのでございます。でありまするので、いま輸送問題、運輸問題が重大になっておるときでありまするから、国鉄の関係その他海陸空を一貫いたしましたいわゆる総合運輸行政、国策というものを積極的に推進しなければならぬ非常に重要なときでないであろうか、こういうふうに考えております。  そういたしますと、やはり道路を建設するところの建設省との関係、あるいはまた、通信等の関係におきましては郵政省の関係もあろうし、あるいはトラックあるいは海空、これらの諸関係がそれぞれの官庁にまたがっておりまするので、ここはそのような方向に進んでおられると思いますけれども、いま最も切実に総合行政が叫ばれておるべきときでありますので、そう進めるべきでないかと思うのであります。運輸大臣のお考え方をひとつはっきりと伺っておきたい。
  240. 原田憲

    ○原田国務大臣 お話しのように、運輸省の所管する陸海空の交通政策は相互に密接な関連を持っておりますので、それらが全体として均衡を保ちながら実施されなければならないということはお説のとおりで、言うまでもないことであると思います。  しかしながら、従来はどうも戦後の交通政策のおくれを取り戻すということに主力が注がれておりました結果、陸海空の合理的な輸送分野の確立、適正な競争関係の確保などに必ずしも十分な成果をあげていなかったうらみがございます。  今後は、将来のわが国の経済の発達とともにますます大型化する交通投資の適正な配分や投資の効率化を確保するためにも、総合的な交通政策を確立する必要がますます高まってまいると思います。たとえばいまお話の出ました国鉄、これは国鉄が国民経済の中で、輸送全体の中で果たすべき役割りは何か。すなわち、全国幹線輸送、それから中長距離の貨物輸送、大都市の通勤、通学の輸送、こういうことにその使命を果たしていくというようなこと。また物資の流通の近代化を進める場合には、各種の交通機関の相互の結びつきを強めるために、いまおっしゃいましたいわゆる共同一貫輸送体制の整備をはかっていく。これはすでに、いまおっしゃいました国際海上コンテナ輸送、国鉄のフレートライナー、フェリーというようなものの活用などにあらわれているところでございます。私どもは、先ほどPPBSの話が出ましたが、わが方の運輸省でも若手の役人にこれを研究させまして、総合的な輸送というものをどうやっていくかということを前向きに検討いたしておるような次第でございまして、今度の予算の中にも、大臣官房の中にもこれらの部門を強化をはかって計画を確立さしていきたい、このように考えておる次第でございます。
  241. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 さらに、国土開発と産業開発あるいは社会開発の関係について見ましても、国土総合開発についてのいろいろと試案が出ております。出ておりますが、現実とはほど遠いものがございます。現実におきましては、たとえば過密、過疎の現象を考えてみましても、産業開発をしようとするとそこに公害が発生してまいります。しかし公害発生を予防し、あるいはまた生活の環境、地域の整備をするという方面がとかくおくれがちでございます。たとえば厚生省の四十一年の白書でございましたかによりましても、し尿の海に投棄するものが一割九分、こういうことにもなっておりまして、こんなようなことを見ましても、特に生活環境というものが非常に立ちおくれておる。しかし、生活環境をほんとに明るくし、整備することなくして、そこいらにほんとうのしあわせが生まれてまいりませんので、国民としましては、それは大きな脅威であることは間違いございません。だから、産業開発をいたしましても、あるいは国土開発の大きな総合施策をいたしましても、現実にそれらの諸要素をいずれも均斉のとれた開発をしていくというのが、総理が常に言われるところの人間を尊重するゆえんではないであろうか。明るい社会づくりのゆえんではないであろうか。とかく今日これがばらばらになっておるということを実に遺憾に思います。大きな幹道はできます。大きな工場誘致はできます。しかし、それから起こってくるところの諸弊害というものは、未然に防がれておりません。やかましゅう言いまして、下水道の、あるいはまた悪水のそういったものをだんだん排除することが、ぼちぼちとあとから追っかけてくるという程度であります。なぜまずこれを先にやらないか。あるいはともに均斉をとっていくというふうになぜしないのか。これはいまばらばらであります。  だから、これらにつきましても、やはり企画庁が総合開発の音頭をとるのならば、いち早く自分たちの各省庁においてはこれはどんなものだろうかということを協議され、そして横に連絡をとって、そして総合的に開発をしていく、社会開発も伴っていくとしましたならば、過疎地帯における医療機関、衛生施設あるいは保育施設なども、このごろ非常に、あらゆる意味において経営難、困難にぶつかっておるのでありまするので、こういった不平が少なくなる。やはりこれはこの段階におきまして諸政が分裂しておるからであります。これもやはり大きな意味におきまして日本政治、行政の改革の一環となるべきではないであろうか。いま総合調整をするということが非常に多くの方面で求められておる、その一つの典型的な例にもなるのでないか、そうさえ実は考えておるのであります。  でありまするので、私は今度の国土総合開発のあれを見ましても、一たんこれが閣議なんかで決定いたしましたならば、それは整然として各省庁が一致してやっていくような、こういう総合調整力を発揮してもらいたいと思いますね。そうしなかったならば、それはもうばらばらであります。このばらばらというものが、国民のためにどんな深刻な不幸になっていくかわかりません。こういうふうなことを思うのでありますが、これは総理責任をもってこの点についてはっきり言ってもらうか、どなたかからひとつはっきりと御答弁願いたいと思います。
  242. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 いま経済企画庁のほうで新全国総合開発計画を作成中でありますから、私からお答えしたいと思います。  お話しのとおり、科学技術の発展に伴いまして経済が非常に発展をしてまいりまして、その結果として、いい面も経済は成長してまいりましたが、また反面において、お話しのとおり、いろいろ問題が起こっております。たとえば農業の問題にしてもそうですが、工業の問題にしても、大規模な工業政策が行なわれると同時に、公害が発生するとか、あるいは都市化という問題が起こってきて、過密過疎の問題、いろいろの問題が起こっております。そこで、こういうような経済の発展に伴って起こってくるこの弊害をなくして、地域的な所得の格差、生活の格差というものをなくしたいということで、新全国総合開発計画をいま策定中でありまして、いま第四次ができておりますが、これは各方面からいろいろ知識を得て計画しております。これはあらゆる観点からこの計画を完成したい、完全なものにしたい、こういう考えでやっております。もしこれが幸いにしてでき上がれば、この計画によって、すべての日本の社会、経済の計画はこれに基づいてやるというようにやっていきたい。これは単なる作文をつくるだけではいかない。ほんとうに権威のあるものにしたいということを皆さんにお願いしておりますので、いま各方面の英知を集めて、そしてまた皆さん方が貴重な時間をさいて一生懸命にやってもうっておりますから、これは幸いにしてりっぱなものをつくり上げて、権威のあるものにつくり上げて、そして政府各省の経済政策はそれに基づいてやるというように、ひとつ権威のあるものにしたいということで、せっかくやっておりますからして、御協力のほどをお願い申し上げます。
  243. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ただ、私は、作文の行政になることを実はおそれるのであります。でありますので、いろいろ審議会からの答申等々、だんだんとずいぶんあるのでありますけれども、これがなかなか実現しないというのが現状でございますので、作文の行政に終わらないように。したがいまして、企画庁の長官がもしほんとうに権威のあるものを発表いたしたなうば、各省庁これを支持していくというふうになっていかなければいかない。ここにやはり内閣の運営上の一つの盲点があるのではないであろうか。私が、しばしば繰り返しておりまする総理大臣の総合調整のリーダーシップの発揮こそ、この際あらゆる弊害を根本から一掃するいろいろな課題を持っておるのです。この一つに私はなるのじゃないだろうか、こう思います。物価問題にいたしましても、いまの運輸・交通の問題にしましても、国土開発、産業、社会開発等の問題にいたしましても、総合性が欠けておるというところにいろいろな問題が起こってまいります。でありまするので、ここは内閣といたしまして、どの面にもあなたの地位、あなたの権力がそれを調整していくということで初めて成果あり、こういうことになるのではないか、こう思うのであります。特に、そういうふうに強く御要請を申し上げておきたいと思います。  それから次は大学問題でありますが、大学問題につきましてはすでに相当論議がされました。論議はされておりますけれども、昨今見るがごとくに、依然としまして大学みずからがその機能はすっかり麻痺しちゃっておる。入学試験も機動隊に守られて行なわねばならぬ現状であります。大学暴力によって支配されるというようなこの現状は、一体何でありましょうか。この現状をすみやかに収拾するということ、またこの事実に対しまして、日本は憲法の範囲内におきまして、法治国といたしまして司法権厳正であるべきでありまするので、これはこれとしてどのような原因があろうと、どのような改革案がそれぞれあろうにかかわりませず、その一つ暴力的な状態に対しましては、これはしゃんとした姿勢で臨んでいくべきでないか、こう思います。これなくしては、私は国民は法を信頼せず。こんな状態で、どのようなよい案がかりに見つかるといたしましても――一体、民間でありましたならば、たとえばそこらの町で、そこらの会社で、そこらの集団におきまして、こんな暴力が横行しまして、マスコミが毎日これを扱っていく。テレビ、新聞は大きく堂々と扱っていく。何かしまいになれてしまって、少し小さいなという感じさえ受ける。とんでもないことであります。一体これはどういうものでありましょうか。司法厳正の見地から見まして、この状態に対しまして、治安を維持する、そして法を行なう、法を守らす、法の秩序を維持する、もしくは回復するということについて、どうお考えになってきたのであろうか。これはやはり総理とそれから法務大臣、あなたの責任、警察庁長官責任あり。私は、これらの法を行なうことをもってその使命となさる最高の責任者に、この事実に対しましての考え方、はっきりとさしたところをお示し願いたい、こう思うのです。
  244. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 御指摘のように、議会制民主主義をたえまえとしますわが国において不法行為が行なわれることは、それ自体、特に暴力がまかり通るような風潮は、大学であれ、そうでなくても、根本的な間違いだと存じます。そういう考え方に立ちまして治安の維持に当たっておるつもりでございすいす。  元来、最高学府の大学と法秩序無視、暴力などということは、想像も及ばない概念であろうと思うのですけれども、不幸にして御指摘のような事態がありますことを遺憾に存ずるのであります。したがいまして、警察の立場からいたしましては、いわゆる大学が治外法権の場でないということは言うまでもないことでございますので、学園の内外を問わず、法に照らして厳正な態度で取り締まりを行なってまいったのであります。昭和四十二年中におき、まして、学生の検挙数が約六千名にも及んでおります。四十四年、本年の一月と二月だけでも、すでに一千六百名を検挙しているというありさまでございまして、一面まことに残念しごくに思っておる次第であります。こういう方針は、現在はもちろん、将来に向かいましても当然堅持すべきことと心得ております。そうして治安の万全を期してまいる考え方でおるわけであります。  特に、学内における不法事案につきましては、大学当局のき然たる管理措置を期待しまして、治安維持上の立場から常時緊密な連絡を保ち、適時適切な措置が講じ得られるように配意しておる次第でございます。現実に間々見受けられますように、大学の管理措置が必ずしも十分でございません。たとえば刑事訴訟法によりますれば、公務員が職務の執行にあたりまして知り得ました不法行為は告発せねばならないと義務づけておりますけれども大学に関しまする限りは、ほとんどそういう意味での協力が得られないような状況であります。また、警察力を要請しないままに無法がまかり通るという事態が続いておりますことは御承知のとおりでございますが、警察独自の判断に基づいて学内に立ち入って秩序維持に当たることも、これは法の命ずるところ当然のことでございまして、そういう方針のもとに今日まで参っております。去る三月一日の京都大学教養部の捜索及び京都大学の本部の構内における規制、検挙活動の場合などは、その一例でございます。なお、昨年一カ年間において、京部大学では、学内だけで約九百人を検挙しておりまして、また学生同士の学内における乱闘事件につきましても、十一件、百名の被疑者を検挙いたしておるような状態であります。  繰り返し申し上げるようでございますが、何としましても大学暴力ざたを筆頭とします不法行為が起こらないようにということにつきましては、大学当局もゲバ棒におそれないで、無法を許さないという見識を持って管理者責任を果たしつつ御協力を願うということが、どうしても願わしいことに存じておるような次第であります。
  245. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 たくさん暴力学生を検挙したということは、決してこれはほむべきことではございませんです。といって、事実がないのに未然に防ぐということも、医学じゃなし、あなたの立場では困難であります。しかし、大学自治が、たとえば研究の場とか学問教育の場に限られておるということがはっきりとするならば、私は、時期を誤らず適切に法を発動するということに、やはり相当欠くるところがあったのじゃないだろうか、何かもじもじしながら相手の出方を待つというようなことがあったのではないであろうか、この辺の食い違いがじんぜんとして事を拡大してしまった、燃え上がらせてしまったということにもなるのではないであろうかということも思います。もしそれ事実あるならば、その瞬間たちどころにこれは阻止される、あるいは検挙されるという態勢でありましたならば、そのすきはなかったはずであります。でありまするから、検挙者の数が多かったということは、ほむべきことじゃございませんです。そこに私は、やはり警察の当局としまして何の反省するところもなかったのであろうか、こういうことも考えます。  また、全体から考えてみまして、警察官においても、あるいはまた司法部全体におきましても、この種の問題だけじゃございませんが、法を取り扱うこと二、三にすべきにあらず。もしそれ民間においてちょっとけがをさしたというだけでも、それは皆さん拘置所へぶち込まれるのですよ。そのような峻烈な取り締まりが、普通されておるのであります。しかし、でかでかと新聞に出るわ、あるいはテレビに放送されるわ、じゃんじゃんとその実情が町へ伝わっていくわ、物見だくさんに出ていくわ、そしてともに何かする気勢すら見えるわというようなことになって、初めて手を下す。一体何という状態であろうかと、実にひんしゅくいたします。これらにつきまして、私は専門家でありまするから、多くは申しません。けれども、昔の象牙の塔でないことは、もうだれも認めるところであります。雲霞のごとき学生群、伝えられるところでは大学生は百五十万ということでございますから、この全く大衆化しました状態に対しまして、法の発動が適切にあらずということは考えられぬだろうか。この点を深く私は、ほんとうは将来のためにも憂慮するのであります。  とかくいまいろいろな問題が次々と蔓延していきます。ことに皆さん、まあ総理考え願いたいのは、大阪あたりでは高校へ波及したらしいですな。たいへんなことであります。私はびっくりしたのでございます。この付近に少なからず私も知人がおりまするので、おまえのほうのせがれはだいじょうぶかな、なんといったようなことでございましたのですが、高校へ波及しております。最高十八歳であります。いま、御承知と思うけれども、青少年の犯罪情勢が上級年齢層にだんだんと波及してまいったのであります。以前とは情勢が違っておるのであります。でありまするので、こういうようなこと、あれこれと考えますると、りつ然といたします。よってきたるところは、大学混乱がもとであります。まさにこれは時代の象徴でありましょうかとさえ、私はほんとうは憂うるのであります。総理、この点につきまして、何かもっとしゃんとした姿勢をもってこれに臨むということにして、解決は解決、事後処理は事後処理というふうにけじめをつけることは、これは必要でないのでありましょうか。その点はいかがでございます。
  246. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えを申し上げます。  高等学校にまで蔓延しておるというお話でございますが、その前に、先ほどのお話に、大学紛争も、さっき申し上げた法の命ずるままの原則論に立って遅滞なくそのつど警察力を発動しておったりせば、今日のような大学紛争はなやかな状態にならないで済んだはずだ、また検挙者数が何も自慢にならないはずだという御指摘、そのとおりに私も存じます。まさにその御批判はあり得ると存ずるのでございます。  ただ、少し弁解さしていただきますれば、先刻も触れましたけれども、少なくとも国立大学におきまして、たとえば東京大学は八千名以上の教職員がおります。大学生が一万五千というぐらいの比率の十二分の員数をそろえた大学の執行部、管理者がいるにかかわらず、先刻申し上げました当然管理者責任上、法律上義務とされている、不法行為があったときにそれを告発するということをしない。また安田講堂の例をとりましても、不法占拠しておることは確かでございますが、これらのことにつきましては暴行罪も成立しましょうし、あるいは建造物損壊罪、あるいは器物の投棄罪、あるいは不退去罪等が連想されるわけでございますけれども、建造物の損壊罪にいたしましても、そのこと自体を通告してもらわないことには、内部にしょっちゅう。パトロールをしておるわけじゃございませんので、学園なるがゆえに知ることがほとんど不可能でございます。告発をしてもらえば、直ちにその事態に対処できるわけでございます。器物の損壊罪は親告罪と承知しておりますが、親告がなければこれまた出動ということができない。そういうふうなことで、大学当局がまずもって不法行為を許さないという気持ちのもとに緊密な連絡をしていただくということなしには入れない。いわんやこのごろの学園騒動は、御案内のとおり、代々木系、反代々木系と通称されますように、二大学生派閥のヘゲモニー争いになっておる。そのことが政治運動を意味すると同時に、暴力団まがいであるということが、はなはだ遺憾千万なことでございまして、そういう暴力をふるう連中に大学当局がおびえておる。そのために、お示しのとおり、法の命ずるままにそのつど警察力を出動させるといたしましても、その結果は、大学当局及び代々木系、反代々木系、それに加えてノンポリと称せうるるところの一般学生までが、いうところの警察アレルギー症にかかっておりますために、その連合軍を相手にして警察機動隊が実力をふるうという現象にならざるを得ない。それは、ひとえに大学当局がまずもって不法を許さないという態度を明確にしてもらわないかう、そういうことになるわけでありまして、妙な言いぐさでございますが、いつかも申し上げたのですけれども、そういう警察アレルギー症のひどいところに法の命ずるままいきなり行きましても、ショック死するおそれがある、全学騒動にエスカレートする結果しか招かないという愚かな事態が推察されますので、静かにその時期を待ちながら慎重にかまえておった。そのことが結果的には、警察は一体何ぐずぐずしているかという国民かうのおしかり、またさっき御指摘くださいましたような、なぜもっとばりばりやらぬかという御要望ともならざるを得なかった。弁解じみますけれども、実情を根拠にいたしまして、いままで必ずしもそのつど出なかったということを御理解いただきたいということを申し上げさしていただきます。  なお、高等学校につきましてのお話でございますが、これはもちろん大学生の過激な行動が刺激剤になっておると思われますけれども、これとてもやはり外部勢力の誘導によって、高校生までが大学生のゲバ棒騒ぎみたいなまねをするに至っておるのではないかということをおそれる次第でございまして、現在反日共糸の高校生の組織は、一千をこえておるようでございます。これに結集しております高校生の数も、一万人以上になっていると推定いたされます。日共系が、班にいたしまして一千班、約九千人、学校数にしまして全国が八百七十校。反日共糸、これが五十余りの組織でございます。員数は約三千人、学校数は三百五十校と推定されます。また、昨年一年間に街頭における政治的なデモに参加した高校生の数は、延べ一万二千人、二百五十九回に及んでおりまして、違法行為を犯行いたしまして検挙されました高校生が百二十三人。これまた自慢にならない数ではございますが、実情は以上のとおりでございます。
  247. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの実情はただいま詳しく説明をいたしましたが、またそれ以外でも御承知のことだと思います。問題は、いわゆる学園の自治、学問の自由、それをそこなわないで警察権を行使することの可否の問題、これにひとつ来ておるようであります。過日も吉田君の所属しておられる民主社会党佐々木君が見えまして、とにかく学校の改革もさることながら、法秩序を守ること、法の無視、かような状態を許してはいかぬじゃないか、これについて政府ははっきりした態度で取り組め、こういうような非常な激励を受けつつ厳重な申し入れを実は受けたばかりであります。  私も、学制、学校制度ですね、その学制の問題は管理者のほうにいい案を出していただくようなことを期待いたしますが、とにかく国家自身は法の秩序を守る、秩序維持の全責任を持っておるのが政府でありますので、そういう意味から、無法まかり通るこの状態を座して見るわけにはいかぬ、積極的な活動をとろうじゃないか、こういうことで荒木君ともいろいろ相談しておるわけであります。  ただ、政府がいかにも手ぬるいようにお感じになるかわからぬと思いますのは、いまの一部の警察アレルギーといいますか、あるいは国家アレルギーというか、そういう部分がございますので、かえってそういう問題で問題を紛糾さすこともいかがか、かように思い、必要最小限度のものが出ておる。しかし、御指摘になりましたように、またわれわれはあらゆる機会に法の秩序を守る、これに徹する、このことは政府考えでもありますので、御協力をお願いしておきます。
  248. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私は、これは六〇年の経験もあることですから、あのときに岸さんがどんなに苦労なさっておったかということも存じております。閣僚の諸君も、並みたいていではなかったと思うのです。そこで、すでに十年の過去になっておるけれども、その体験も静かに考えて、来年に対処するということが多くのこれらの諸君の一つの目的であろうと思うのです。反体制運動にいたしましても、かなりいろんな面に浸透しつつあるということはもう御承知のとおりであります。そういうことでございまするので、私は、大学の内部の問題に一々警察権、司法権、政府が干渉して、そして学問、教育、研究の妨げをするということのよくないことは、もうよくわかり切っております。同時に、主として国立大学に火が燃え移っておる。一体これはどういうものかということもあれこれと考えてみましたならば、その本質的な構造的な大学の欠陥も露呈してまいります。   〔中野(四)委員長代理退席、委員長着席〕 教授その他の当局が告発権があるにかかわらずとおっしゃいますけれども、そういったことのないというところに、また本質的な一つの病弊もあります。ありますけれども、ともかく国立大学関係におきましては、文部省もあるのでありますから、もっとそこは当局と文部省と、あるいはその他司法関係のほうとでも、取り締まるというのでなくても、お互いに話し合っていいのじゃありませんか。ここは限界である、ここはしからず、そしてもっとフェアにお互い立場考えながら進めていくという手があるのじゃないだろうか。  もう一つは、高校に波及したということを心配しますのは、やっぱり来年につながるからであります。いまのような御報告によって思いますると、これは下向きに広がっていきます。一体十六や十七や十八のあの少年が、何の分別をもってこれへ臨むでしょうか。いかぬのだ、おまえたちが苦しむのだ、このまま行ったならば、おまえも兄弟も親もみんな不幸になってしまうのだ、だからこれをこう行かねばならぬというふうに言われて、それに燃え移っていくということが広がってまいりましたならば、これはおそるべきことであります。実に不幸なことであります。それを案じるからでございます。これはひいては日本の教育問題でございます。一大学問題というだけではなくして、教育問題でございますので、ことに初等中等の教育、後期中等教育なんかのことを考えてみますと、これはたいへんに重要な国民の根本に触れる教育問題とも考えますので、私はこれを重視したのでございます。文部大臣、見えておりますね。あなたのお立場も重要でございますが、やはり法秩序維持ということにつきましては、これは大学当局といえどももちろん治外法権地域でないことはわかり切ったことでありまするので、時を移さず、しゃんとして、これが適切に取り締まられておりましたならばかくも蔓延せざりしものを、ということを私は実に遺憾に思うのであります。文部省は一番近いところなんです。一々官僚が上からのしかかっていって研究の自由、学問、教育の自由をじゃまするのじゃありませんが、しかし、大学の中の状態を知らない、いまのお話によりますと、大学の内部で犯罪が行なわれておっても、内部から通告してもらわにゃわからぬということなら、とんでもないことであります。そんなたよりないものですかとわれわれは言いたいのであります。だから文部省、文部大臣はやはり文部省の立場としてしゃんとして、そして、高校に波及したということはきわめて重大な現象だ、これは教育問題の根本をゆるがすおそれあり、かつまた、来年七〇年の課題とつなぎ合わせて考えて、国家の重大なことだ、行政の将来のためにもきわめて大きな課題が投げられたというふうにお考えになってしかるべきだと私は思うのです。だから、法務系統、治安系統がうんと活躍しなさいというので、脱線していきなさいということは私はごうも言わない。同時に、文部省もしゃんとしなければいけないと思うのです。いたずらに中教審答申を待つというような、そんなだらしない態度ではよくないと思うのです。もっとなすべきこと、言うべきことだけはきちんきちんとしていって、そのときその時点で起こった現象に対しましては、文部大臣はかく考え、かくなすということをしゃんとしていかなければならぬ。いまのような暴力騒乱の状態は全く無政府状態であります。日本の国の事実とは思われません。ひんしゅくいたします。
  249. 坂田道太

    坂田国務大臣 吉田さんの御意見まことに私も同感なんでございますが、とにかく私は、市民社会における法の規制ということ以上に、良識と良心の府である最高学府の大学当局が、暴力に対してまず第一義的にき然たる態度を持つべきである。いかなる暴力も許さぬという意識を全国の国公立大学の学長が持ってほしいということを考えるわけでございます。しかしながら、この二十年間を振り返ってみますると、大学自治の美名のもとに一切の国民的批判というものを許さないような、いわば風潮というものがあったことも先生御存じだろうと思うわけでございまして、たとえば、私に与えられておりまする指導助言ということをやるにいたしましても、大学自治の名において、それは国家の介入であるということで大学の先生たちが強く反対をする、その影響下にある学生たちがまた反対をするというのが、今日のいわば警官導入アレルギーの状態かと私は思うのでございます。  戦前におけるいわゆる国家介入、国家権力の介入ということから大学自治を守らなければならない、こういうことについて一応二、三の事例はありました。そのために国家権力の介入というものを大学が何とかして守ろうという気持ちはわかります。しかし、戦後の今日において、主権在民のこの日本の社会においては、むしろ国家権力かうの学問の自由の破壊ではなくて、あるいは大学自治の破壊ではなくて、むしろ内外の学生みずからの暴力によってその研究の自由が奪われ、あるいは教育せんとするところの一般学生の自由というものが奪われておるという、この現実に対する認識というものが、私から申しますとまことに浅薄である。こういう意識というものをはっきり持たない以上は、なかなかこの解決はむずかしい。  しかしながら、今日東大におきましてあのような苦しみをやりました結果といたしましては、ようやく大学当局も警察導入に踏み切りまして、そうしてあの安田講堂の不法占拠も排除されたわけであります。また、本日は、駒場における三派と民青との暴力争い、そして教官を監禁するという状況が続きましたが、初めて、きょう初めてでございますが、駒場において要請があってこの教官を救い出した。こういうふうにして、だんだんとそういうような正当な警察力の導入によって教育の正常化がはかられていく。あるいは、むしろ、まさに危機に瀕しておるところの学問の自由と、それによって生ずるところの大学自治というものが守られていくということが示されつつあるわけであります。  また、先ほどから高等学校の学生に与える影響についてお話しになりましたが、今日の大学紛争の最大の原因は何かと申しますならば、一部学生が暴力をもって自分の政治主張を貫き、そうして大学を拠点としてやろうとしておる。これに高等学校生が感染をしている、あるいは教官がこれに同調する者もある、あるいは高等学校の教員の中にこれに同調するような者もあるというところに問題が一つあるということでございまして、吉田さんの御指摘の点につきましては、十分私はそれを考えまして、しかも、大学というものは、本来学問の自由というものを保障されておるところでありますし、また、同時に、大学自治というものを尊重しなければならないところでございますかう、いたずらに警察導入ということでもって安易にこれを解決するということではいけないということをも考えながら、今後大学の再建に向かって努力を傾けたいと考えておる次第でございます。
  250. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 佐藤さん、私はこういう点を一つ心配するんでございますが、戦前のドイツですね。戦前のドイツにナチスが起こりまして、そうして共産党と対決をいたしました。私もちょっとナチスの大会なんかをのぞいたこともあるのでございますが、日本におきましても、これはいうならば右翼の底流がございます。戦後二十年を経過いたしましたけれども日本に右翼の底流がありますし、もし、いまのような反体制的な暴動というようなものが、これが非常に寛大に見られていくというようなことになりまするというと、来年には極左、極右の衝突ということになって、日本の社会に思わぬ未曽有の不幸が出現しやしないだろうか。左右の対決ということになりましたなうば、これは国際的信用の点から申しましても、また、あらゆる方面に与える被害から考えましても、たいへんな事象であろう、私はこう思うのであります。これを深く憂える一人でございますが、ドイツ人とよく似たところがありまするので、やはりこれはあるんじゃないだろうか。そうして、そのときは、極右のほうには暴力団がつくかもわからぬ。とんでもないことだ。日本人同士が血で血を洗うということになってしまう。しかし、これは焦点国会になります。そういうことになるおそれありということも心配いたしますので、こういうことのなからぬことを祈りますけれども、静かに思いますれば、こういうふうな一つの不安が実現するのじゃないかとさえ実は考えるのであります。この点は、御感想としてはどうでございましょうか。
  251. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま、ナチスの話を出されましたが、私どもは、戦後りっぱな民主主義国家に生まれかわった。そういう意味から、よもやナチスみたような反民主主義のそういう体制に返ろうとは思いません。それこそ、われわれは、どこまでもこの民主政治、民主主義、これを守り抜こう、ひとつその意味で立ち上がらなければならない、かように思います。法の秩序維持ということも、そういう意味で、これは大事なことだと思います。  いま御心配になりますように、左右の対決の場になるのじゃないかということですが、いま大学で出ておるもの、これは左の左というものと左と、そういうものの対決の場になっておる。これから見ると、まさしく全体が左右の対決の場になる心配なきにしもあらず。だからこそわれわれはいまこれを大事にしているのだ。今日、その意味において、国家の秩序維持の責任のある政府が警察力も使わざるを得ないんじゃないか、実はかように申しておるわけです。ただ問題は、これが限られた範囲の学園の自由、自治、そういう形において学園内の左右の対決が始まっておる。しかもそれが高等学校までに蔓延していった。たいへんだ。あるいは私は、高等学校でとまればいいが、案外中学までいくんじゃないだろうか。これはあるいは卒業式にしばしばこういうことがよくあった。どうも自分たちが在学中に鍛えられた先生に対して反感を持った。こういうようなところから、ただいまのような、卒業式に間々起こりやすい事象でございます。  それからもう一つ、同時に考えまして、大学の場合、また高等学校の場合でも同様ですが、学校の管理者というものは一体どう責任をもっているだろうか。実はこれを私は心配をするのであります。私は、ある高等学校の生徒、その生徒に対して扇動的な演説を講演集としてやっておられる、その講演を私は読んで見ました。私は、高等学校の生徒、それがそういうような演説を聞けば、これはずいぶん乱暴になるんじゃないだろうかと思う。そういう講演は、生徒が連れてきたわけじゃない。校長がその先生に講演を頼んでおる。その先生はとかくそういうような講演をしやすい方なんだから、校長が気をつけたらそんなこともないんですね。ここらにも問題がある。高校学校の生徒は感じやすいから、そういうように間違ってくる。  大学の場合もそうじゃないか。大学の学問の自由、これは私どもも尊重いたします。しかし、大学の管理は、それは自由であってはならないはずであります。私どもの内閣でも、これは総理大臣が全責任を持つが、各大臣がかってほうだいなことをしたら、先ほど来お話しになりましたように、総合的な機能の発揮はできない。大学の管理におきましても、学長の考え方、それと全然反対の事柄が横行しておる。そういうような状態で大学の秩序の維持ができないことははっきりすると思う。私はやはり管理者責任というものが、そういう意味では非常に大事なんじゃないか。これはもう東大においても、京都大学においても同様なことが言える。とにかく学問の自由、それと管理の自由と、こういう事柄が混同しているんじゃないだろうか。どうもそこらに問題があるように思いますので、今後この問題をとらえて、そうしていま御指摘になりましたように、左右の対決、あるいは、ここでまた民主主義がこわれて、そうして逆行することのないようにひとつがんばろう、がんばらなければならないだろう。私は過日民社党から申し入れられた事柄も、そういう意味で、われわれは元気をもってひとつこの民主主義体制、これを守ろう、こういうことだったと思います。
  252. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 中教審答申が出ましたら、やがて出ると思いますが、これを、何ですか、基礎に、骨子といたしまして改革案と申しまするか、それをお出しになることになるのでしょうか。その点はどういうことになりますのですか。
  253. 坂田道太

    坂田国務大臣 小学校から大学までの制度の問題については、すでに前任者の灘尾文部大臣のとき、あるいはその前の大臣だったかもしれませんが、そのときに諮問されて審議中であるわけでございますが、しかし、大学問題がこういうふうに発展をしてまいりまして、紛争が続いてまいりまして、しかも大学に内在する幾多の問題が、国民の疑問とする、あるいは改革を要する、改善を要するという幾多の点が指摘されるようになってまいりましたので、したがいまして去年の秋でございますが、第二十四特別委員会に、新たに四項目につきまして、第一には大学の中の一般教育というものをどう考えるか、あるいは第二番目といたしましては学生参加の問題つまり学生の地位というものを大学でどう考えたらいいか、それから三番目には、それに関連いたします管理運営、それから続発いたしますところの紛争というものについて、現在の法制でいいか、あるいは行政でいいかどうかというような問題についての紛争解決の問題と、この四つがただいま第二十四特別委員会におきまして一週間二回開いて進めているわけでございまして、この中の学生の地位に関する問題については、数日中に草案の形で発表になるというわけでございます。そしてしばらく草案の形でまた世の批判を仰ぎ、それから各党の御批判等も伺い、そうして二カ月か三カ月いたしまして中間答申という形になってくると思います。その場合にまた紛争処理の問題もあわせて御答申をいただくものだと思いますし、その答申につきましては十分私尊重していくというわけでございますが、しかし国民のための大学はどうなければならぬかというこの課題につきましては、やはり長期的に慎重にやる必要があるんじゃないかということで、これからこの第二十四特別委員会の中間報告だけでそこの大問題まで考えていくのがいいのかどうなのかということについては、いましばらく私、検討いたしているという段階でございます。これが実情でございます。
  254. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 最後に一点伺いたいのは、これは総理にちょっと伺いたいのでございますが、例の解散権の問題でありますが、私はやはり過去の戦後の実例を少し調べてみましても、ずいぶんと解散の契機なんかはいろいろとなっているようでございます。吉田さんの第二次、二十三年の解散のときは憲法六十九条に書いた解散権の行使になり、また例の第四次吉田内閣のときのばかやろう解散ですか、二十八年でございましたね、三月十四日。これも憲法六十九条ということを明記しておったようでございますのですが、大体日本の憲法が解散権の文字を、あらゆる場合等を想定して入れておりませんので、はっきりしないという面があるとは解釈上大体一定しているようでございますが、やはりいろいろな意味において国民の相当の意向を確かめたほうがよい、こういうときには総理としまして、憲法七条並びに六十九条の広げた解釈から、かなり自由になし得るのではないだろうか、そういうふうに考えられるのであります。  この際私は、大学問題一つとってみましても、大学問題はこの世の中が混乱している一つの混沌たる日本を象徴しているものであるという見方をするものもございます。あるいは安保問題、安保条約等につきまして、自動延長論、廃棄論等が両立いたしておりますが、これとても、日本人でありながら何でそうなんであろうかというような幾多の疑問も実は町では聞くのでございます。沖繩問題にいたしましても、次元は違いますけれども沖繩問題自体について一体どういうふうにわれわれは考えたらいいのだろうかというようなことを、あちらこちら歩くと実はよく聞くのでございます。そういうようなことをあれこれ思い、またこれだけ経済が成長しているのに、物価対策ははっきりしないし、だんだん物が上がるし、上がうぬと言っておったものがまた上がってくるしというようなことになって、一体どういうわけなんだろうというふうに、ばく然とながら国民はいろいろと政治経済、社会の現象、及び日本の現在と将来に対しまして疑問と、そして十分な知識を持っておらぬというのが現状でございます。私はそんなことはないと思いますけれども、損や得やというような利害の立場から解散権は行使すべきでないことは、これはもちろんのことであります。したがいまして、佐藤内閣のために有利であるとか、自民党、与党のために有利であるとか、しからずというような観点に立つべきでなく、またそのようなことをあなたとしてはお考えにならぬことはもちろん信じております。おりますけれども、謙虚にいまの国内と国際情勢を考えてみましたときに、やはりこれは過去、二十一年の司令部解散といわれておるあれからずっと見てみましても、この際やはり一応はいろいろな問題をさらけて、国民に知らして、判断を求めて、そして日本が進んでいく道、体制はこれでいこうというふうに――私は、あなたが国会でだんだんと多くの諸君の論議に耳を傾けて、そしてアメリカへ行かれる資料を得たいと熱心に努力していることはわかりますが、同時に、直接国民の声も聞いてみよう、国民の意向も察してみようというようなことも、この際は大事でないであろうか。あなたにしても、過去何回かの選挙なり、あるいはいろいろな重大なことをお扱いになりましたけれども、この来年に向かうことしこそ、あなたの生涯かけての最大の政治家としての山場と私は思いますよ。これをほんとうにあなたが日本のために切り抜けなさるか、もしくはいささかでも狂いがあって、判断に誤解、誤差がありというようなことになって、誤ちましたならば、これはたいへんであります。かかる意味から考えてみましても、私はやはりこの機会国民の意向を尋ねてみる、そして重大なこの安保問題、沖繩問題、国内の諸問題、大学の問題も、あれもこれも一応出してみて、国民の審判、批判を求めてみる、これが私は憲法の大精神であろうと思います。やはり憲法七条によってもあなたの助言、承認というようなことばになっており、六十九条でもはっきりした――それだけでは律せられない面も出ておりますから、だからこのような不確定なそれでありますけれども、憲法の大精神というものは、国民の意思をできるだけ尊重するということは間違いございませんので、どうぞそこはその意味におきまして、私はこの機会に、適当なときに解散へ持っていくということが一番大事なことではないかと、こう思います。いかがでございましょうか。  私はこれで終わります。
  255. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の考え方はもういままで何度も繰り返して申しました。きょうもこれでまたお尋ねがありますが、私の考え方はきょう午前中にお答えしたとおりでございます。ただ、いまいろいろと憲法の大精神を説かれて、またその時期が云々というようなことを言われます。そういう事柄に私が答えること自身が、どうも解散問題というデリケートな問題はいろいろの誤解を受けるのじゃないだろうか、かように思いますので、私は午前中にも答えたとおり、考えておりませんとはっきり申し上げておきます。ただそれだけでございます。
  256. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 荒木国家公安委員長より発言を求められておりますので、この際これを許します。荒木国家公安委員長。
  257. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お許しをいただきまして、先ほど吉田さんの御質問にお答えしました中で二点、私の誤りのゆえに間違ったことを申し上げておりますことを修正させていただきたいと思います。  それは「昨年一カ年間において、京都大学で」と申し上げましたが、「京都大学」ではなしにただ「大学」。「京都」というものを削除させていただきます。  なおもう一点は「反日共系の高校生の組織云々」と申し上げましたが、「反日共系」の上に「日共系及び」ということを挿入するのを(「了解了解」と呼ぶ者あり)ついあわてまして間違えましたことをお許しいただいて、修正をお許し願います。
  258. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて吉田君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次に広沢直樹君。
  259. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 私は質問の本題に入る前に、まず二項目にわたって、沖繩の返還問題あるいは事前協議の問題についてお伺いしておきたいと思います。  まず、きのうの当委員会の正木委員の質問に対しまして、総理かう次のようなお答えがありました。白紙かう一歩も二歩も前進している、ものの考え方は狭まってきている――だんだん煮詰まってきているという意味だろうと思うわけでありますが、そして今国会の質疑を通して考えていただければよくわかるはずだと、こういうお話がありました。そこで、すでにその返還の方向は明うかになってきた、こういうようにも答えておられます。またその方向というのは何か、これは早期返還である、こうはっきりきのうは答弁なさっていらっしゃるわけです。先ほど申されたように、本会議以来ずっと議事録を見ておりましても、こういうふうに本会議総理答弁されております。まず、早期返還を望むならば核抜きはむずかしい、これが一つ。また本土並みならば――早期返還はおくれたとしても本土並みか、こういうような二者択一論を出されていらっしゃるわけですが、そういうことになりますと、きのうは、その方向というものはきまっている、早期返還だ。しかしながら、そうすると、きのうのお答えと本会議のお答えと考え合わせてみますると、核抜き返還はむずかしい、こういうような意味にとれるわけでありますが、その点に関してお答えいただきたい。
  260. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 広沢君にお答えいたしますが、まだ基地の態様については私は白紙でございます。ただ、いま言われておりますのに、皆さん方がみんな本土並み本土並みと言っておられる。しかしこれも、社会党の方に、本土並みと言ったってあなたと私は違いますと、こういうことを申したように、また公明党の方ともややその本土並みも違っているのじゃないかと思いますので、本土並みということば自身にもいろいろな議論を必要とするのです。それだけまだこの問題は、私がきめかねる理由がそこらにあるのであります。  でありますが、しかしきょうもここで議論したように、返ってくるといいますか、施政権を返せということ、これだけは非常にはっきりしているのですね、これは非常にはっきりしている。それから先は、いわゆる本土並みというのは一体何を言っているのか、ここに一つの問題がしぼられる。日米安全保障条約を認めておるわれわれの本土並みというなら、これはもう非常にわかりいいが、段階的解消を言っておられる本土並みは一体何になろうか、あるいはまた安保を反対しておられる本土並みとは何だと、こういうことになるから、まだ実はそこまできめておらぬのですよ。そのことを実は何度も申し上げておる。けれども、もうとにかく一日一日と私が渡米する日はだんだん近づいてまいります。それまでほうっておくわけにはいかない。そして昨日もお話をいたしましたように、これは出かける際にはやはり党首とは話くらいはしないと、意見交換は必要ではないだろうかと、かように私もお尋ねに答えたのでありますが、そういう点も含めて、ただいまのところまだきめておらぬ、かように御了承いただきたいと思います。
  261. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 これは重大な問題でありますからすぐに結論が出ないんだ、十分いま検討中である、これは再三私たちも伺っております。しかしながら、きのうの質問の中で、もうそういうことをおきめになる時期が来ているんじゃないか、きのうも話がありましたとおり、委員長との会談の中では筆をおろそう、こういうような話もあったわけであります。したがって、そういうことに関してはだんだん煮詰まってきているという総理のお考え、それは、この議論を通じて初めから聞いていただければだんだんわかっていただけるじゃないか、こういうお話なんです。そういうことになりますと、その方向づけははっきりしてきた。それは早期返還である、一日も早く返還してもらいたい、これは沖繩県民をはじめ全国民の願いであります。これは、おくれていいなんて考えているのはだれもおりません。即時全面返還を望んでいる、こういうことは、その根底で、一番基礎的な問題として当然言わなければならない問題であります。  しかしながら、そういう中に、本会議では、二通りの方法があると、いろいろな方法を検討されているとか、いろいろな意見もあるわけですが、その二つを特にあげていらっしゃるわけです。でありますから、それなら二者択一か、その中で早期を望むならば核抜きはむずかしい、こういうふうにおっしゃるならば、早期返還の方向だと言えばそう思わざるを得ない。ただ白紙論を繰り返しておっても、これはどうにもならないわけであります。  そこでもう一つ伺っておきたいと思いますのは、早期返還はそれでは核抜きでもあり得るのか、この点についてはどう考えているか、お伺いしておきたいと思います。
  262. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 早期返還、これは御理解いただいたかうたいへんしあわせです。ただ、その前に、私自身が二つの考え方を述べた。そこで、これは二者択一ではないと申しましたが、二者択一であるかのような話に皆さんがみなとっていらっしゃる。そこで、いまの早期返還といえばそのうちの一つだということで、こだわっておられる。しかし、それをきめておるわけじゃないんだということをいま申して、まだ基地のあり方について私はきめておらないのです、こう言っておるのです。だから、二者択一、その方法しか道がないんだ、そうしてしかも早期返還だ、こう言えばそれは核つきだ、こういうことになるでしょうけれども、しかし私はまた別のことも言っているはずなんです。国民の世論を無視して私はやろうとはしない、とにかくとの選択の方法が日本国民を間違った方向へ向けた、こういうこともしません、こういうことを申しておりますから、その辺がいま白紙である、まだそろいうことはきめておらない、これだけは御理解をいただきたい。
  263. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 これは本題じゃありませんので、あまりこだわっていると時間がなくなりますけれども、重大な問題であります。一応いろいろ検討されているということをおっしゃっておられますね。じゃ具体的にどういうもの、どういうもの、どういうものというものを、いまいろいろな意見があるはずでありますから、それをどういうふうに――結論は出ない、白紙である、これはわかります。しかしながら二つではなくていろいろな意見がある、それだったら、ほかにたくさんの意見がある、こういうふうにも言うべきじゃないかと思うのです。そういうわけで、具体的にはどういった、どういった、どういった問題をそれじゃお聞きになって、いま最後のめどをつけられようと検討なさっていらっしゃるのか、それはお答えいただけるでしょう。
  264. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ちょっとそれまで話をするのは適当でないように思います。ひとつお許しを得たいと思います。
  265. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それでは、白紙論をやはり繰り返していらっしゃいますので、また別な機会にだんだん煮詰めながら御質問申し上げていきたいと思います。  次は、去る二月十四日、本予算委員会において、わが党の伊藤委員の質問に際して資料要求をしてありました。ところが、満足な回答を得られませんでしたので、重ねてこの点を煮詰めて伺っておきたいと思います。  まず、事前協議にある装備の重要な変更というのは核の持ち込みの場合だ、これは政府が言っていらっしゃいます。これに対して、いつ、どこで、だれと、どういう形式で約束したのかという質問に対して、佐藤条約局長だと思いますが、藤山外務大臣とマッカーサーだと思います、非常に重大な問題ですね、口頭で約束した問題については、あいまいになっていると言わざるを得ないのですが、外務大臣、前大臣からそういった問題についてはっきりと引き継ぎを受けているのかどうか。これは重大な問題です。そういうようにあいまいに、だったと思う、ここに大きな問題が出てくると思うのですが、どうですか。   〔私語する者あり〕
  266. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御静粛に願います。
  267. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 日米安保条約上の事前協議についての資料の御要求がございましたことは、私もよく存じておりますし、また、さっそく理事会に資料を差し上げておきましたが、これは昭和四十三年の四月二十五日に衆議院の外務委員会に差し上げておりますもの以上には書類としてお配りする資料はございませんでした。その内容は、日本政府は次のような場合に日米安保条約上の事前協議が行なわれるものと了解しておるわけでございます。その了解の基礎は、安保条約改定のときの当時の外務大臣の藤山さんと、当時の駐日大使マッカーサー氏との間の了解でございます。  配置における重要な変更の場合、陸上部隊の場合は一個師団程度、空軍の場合はこれに相当するもの、海軍の場合は一機動部隊程度の配置。それから装備における重要な変更の場合は、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設。それからわが国から行なわれる戦闘作戦行動、これは条約第五条に基づいて行なわれるものを除きますが、戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設、区域の使用。  以上でございます。
  268. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それはそちらの姿勢の問題を幾ら追及してもしようがないわけでありますが、前回の伊藤委員の質問に対して、こういった点があいまいであったということははなはだ遺憾だと思うんですね。確かに両国間で口約束をしたということが、これが国際間における拘束力を持っておる、こういうことであれば、そういったあいまいな答弁をしていくということは、すでにそういったところからあいまいになってきているのじゃないか、こう思わざるを得ないわけです。そこで、いつ、どこで、だれと、こういった問題についてもっと具体的にひとつ答弁願いたいと思います。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕
  269. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまも申し述べましたように、配置における重要な変更、装備における重要な変更、わが国から行なわれる戦闘作戦行動のための施設、区域の使用ということは、御承知のように交換公文できわめて明白になっておるわけでございまして、その配置における重要な変更等々につきましての了解事項というものがかようにできておるわけでございますから、条約上の、あるいは交換公文上の取りきめというものは明白に条約あるいはそれに準ずるもので規定されておる、かように了解いたしております。
  270. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それが具体的になってないかう、あなたはそうやって口で答えていらっしゃるから聞いておるわけですよ。いつ、どこで、だれとそういうふうに約束なさったのか、こういうことを明確にすべきではないか。なかなか言いにくそうでありますけれども、かつて昭和三十年代に、当時の重光外務大臣ですか、アリソン大使との間で一つの口約束をしたことがあります。このことについて当時の杉原防衛庁長官は、重光外務大臣は五月三十一日にアリソン大使からこういう言明を受けておりますと、口頭の約束なさった日時もはっきりなさっていらっしゃるわけです。したがって、この問題に対して重要な事項についての約束が行なわれておるわけです。日時がわからないというはずはない、あるいはまた、どこでということもわからないはずはない、こう思うのでありますが、その点どうですか。
  271. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほどからお答えいたしておりますように、これは日米安保条約は昭和三十五年に改定されたとき、そしてそのときに同時に交換公文も署名されているわけでありますが、その交換公文についての了解事項でございますから、その調印されたときの日時に、両当時者間に了解されたもの、こういうわけでございます。
  272. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それでは、これは口頭の約束でありますか。何かこれに対する――確かに先ほどおっしゃった日米安保上の事前協議についての三項目、重要な配置の変更だとか、あるいは装備における重要な変更だとか、あるいは戦闘作戦行動、こういった問題については確かに交換公文に載っております。しかしながら、その具体的な問題というものがそこにないわけです。じゃその具体的な問題について、何かはっきりと書かれたものがありますか。
  273. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは交換公文が調印されたときの了解であって、当事者間の口頭の了解でございますが、しかし何べんも繰り返すようでございますが、これは交換公文の上に重要な装備の変更とか云々云々と書いてありますから、念のためそれの解決として、当時口頭で了解されたものであります。したがいまして、そのことは当時からの政府の一貫した説明であり、また先ほども、書類としても、その口頭の了解の内容は御参考に提供してある次第でございます。
  274. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 いまそれは、確かにその時期において口頭で約束した、こういうことなんですね。それは口頭で約束したことも拘束力を持っているのだ。しかしそれが口頭の約束だけじゃなくて、やはりこういった問題については、いろいろ具体的な取りきめがなされていると思うのですね。したがってそういったことは、当然その二人がいらっしゃらなくなった、こういった場合において、そうでなかったと一方から言い出した場合においてはどうしようもないわけでしょう。何かそこにメモか何かにきちっと書いて、間違いないのだ、あるいはもっと文書ではっきりすべきだと思うのですけれども、そういう必要はないのですか。
  275. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 もう一度繰り返して申し上げますが、配置における重要な変更というようなことは、はっきり交換公文に出ております。それで両国が調印いたしたわけであります。そしてなお念のために、先ほど読み上げましたような口頭の了解ができているわけでございます。これは昭和三十五年以来、一貫いたしました政府立場でございまして、その内容を国会の御審議の御参考に、文書にしても配付しておるようなわけでございますから、お尋ねの点はこういう点によって私は十分御理解いただけると思います。
  276. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 その配付されたものについては、こういうふうに書いてありますね。「日本政府は、次のような場合に日米安保条約上の事前協議が行なわれるものと了解している。」これは了解事項であるならば両国政府――日本政府だけがこういうふうに了解している、こういうようにとられてもしようがないと思うのですね。それから、あるいは一個師団程度、あるいは空軍の場合も一個飛行師団ですか、程度のもの、これは非常にあいまいなんです。ですから、そういった中でこれを補足する意味で口約束、そういったものが行なわれたのじゃないか。具体的にそういった問題を相談なさっているはずですから。ですから、そういった問題についてはあるのかないのか。ないのならないでけっこうですよ、はっきりお答えいただきたい。
  277. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 何べんもお答えしておりますように、これは口頭の了解でございます。したがって書類というものはございません。さようなことで私も引き継いでおりますが、昭和三十五年以来、私どもはこれで十分である、かような見解でございます。
  278. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それではこういった問題、何にもないとおっしゃるけれども、非常に疑義を持っているわけです。何もなければ、こういった重要な装備の変更に対して、それは核である――言っているだけだ、それは口頭の約束だけだ、こういうことになりますと、何か状況が変わった場合において核を持ち込むとともできるのじゃないか、こういう心配があります。先日の当委員会で明らかになった問題について、憲法上は、核持ち込みというものは憲法に規制されない、こういうような解釈が出ております。ですから、どうあっても非核三原則を貫いていくといえば、事前協議の問題というものが一つの歯どめになっていかなければならない。それが非常にあいまいだ、あとは口約束だ、こういうことでは非常に納得ができないわけです。ないと言われれば、これはいたしかたがございませんけれども、ないならばないとして、そういったことをずっと受け継がれていくならば、これはやはり何かの文書として、あるいは日米合同委員会議事録にも残していくとか、はっきりとこれはさすべきではないですか。その点どうでしょう。
  279. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いま申しました口頭の了解の中には、核弾頭云々ということもはっきり書かれておりますし、それから事前協議に関連いたしましては、事前協議にかかった場合において、日本の欲せざるようなことについてはこちらは拒否するということも別に約束されてありますので、十分ただいま御懸念の点はカバーされておると思います。
  280. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それでは物価の問題について、まず最初に国鉄運賃等の問題について伺ってまいりたいと思います。  佐藤総理のこの四年間の施政方針演説の中には、物価安定、こういうことを非常に大きく取り上げていらっしゃいます。確かに池田内閣の高度成長政策で非常に物価は上昇気味になってきている。安定成長に向けていくためには物価安定、こういうことを非常に強調されているわけです。また一昨年ですか、その取り組む姿勢として、物価安定推進会議におきましても、総理はどういうふうに言っていらっしゃいますね。私自身が中心となり、関係大臣一体となって、有効適切な物価対策を強力に推進することをあらためて決意した。非常にたのもしい決意をなさっていらっしゃるわけであります。ところで、四十三年を見ましても、政府経済見通しにおいて一応四・八%で押えていく、こういうふうにずっと言い続けてきたわけでありますけれども、消費者米価値上げ以後、これは五・三%、それだけではなくて、騰勢をずっと続けてまいりました。四十四年度においては五%以内に一応とどめていく、こういうふうに言うております。なるたけ五%以内にとどめるんだ、まただんだん少しずつ論理が変わってきているように思います。その前提として菅野大臣は、とにかく公共料金は、こういうような物価騰勢のおりであるから一応ストップするんだ、何度も論議されたことでありますけれども、そういうような強い姿勢を打ち出されている。別名物価の番人といわれている経済企画庁でありますから、当然強い姿勢を示して、何とか当面の施策としては、長期的な問題はありましょうけれども、これは物価を押えていくのは当然だ。  ところが、その次には、国鉄運賃以外の一切の公共料金、あるいはそれに関連したものはできるだけ押えていくというふうに、まただんだん変わってきているわけです。そこでそういった面から、今度は引き続いて私鉄も強い値上げ要請が行なわれている。あるいはバスにしても、タクシーにしても、順次そういうふうになって騰勢を強めてきているわけです。総理大臣も、経済企画庁長官も、確かに物価という問題はいろいろ検討されていかなければいけないけれども、まず物価値上げのムードが一つの大きな問題だ、このように言っておられました。しかし、こういうふうに国鉄運賃を値上げするということが、いま盛んに新聞論調にも書かれておりますとおり、あるいはもう公共料金を値下げして、ある程度強い姿勢で政府が物価対策に取り組んだのだ、取り組んでくれるのではないかと期待しておった国民の前に、こういうふうな国鉄料金の一つの値上げというものは、すべての料金の値上げを誘発しそうになってきている。こういった面から考えて、佐藤総理がこの四年間、物価安定、特に四十四年度においては最重点施策として、あるいは大蔵大臣の財政演説の中にもそれがございました。三本の柱の一つであります。したがって、そういった姿勢から考えてみまして、どうもこれは口先だけじゃないのかという感じもいたすわけです。かつて黒い霧の問題が起こったときには、それで、政治姿勢というものを強く国民に指弾された。そうしてまた、いまは物価の抑制、それはやはり国民の大きな問題となって、言うだけで、ひとつも下がらないじゃないか、政府は何をやっているのだ、こういう強い国民の声が巻き起こっております。したがって、もう一度この物価対策に取り組んでいく佐藤内閣の姿勢というものをここではっきりしておいていただきたい。佐藤総理にお願いします。
  281. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 物価の問題につきましては、私が所管いたしておりますので、私から、物価に対する現内閣の方針について申し上げてみたいと思います。  御承知のとおり、いま物価という問題が国内の重大な問題になっておりまして、暦年で申しますと、昭和四十三年には五・三%の値上がりになっております。これは決して喜ぶべき現象ではありません。銀行の定期預金が五・五%でありますかう、五・三%ということになりますと、預金利子に接近をしますると、これがいろいろの経済上の問題を起こします。したがって、いまのような諸情勢のもとにおいて、このままで推移すれば、四十四年度は五・七%あるいは八%になりはせぬかということを非常に心配を私たちいたしたのであります。でありますから、何とかして五%以内で押えたいということで、いろいろ努力をいたしたのであります。  そこで、問題は、物価を今日まで上昇さしたのには、政府が指導しておるというような政府指導型の物価だといううわさが町に広がっております。これはたとえば公共料金を上げたりなんかすることであります。そこで、公共料金の中で最も大きな問題は米価です。米価が上がると、物価はいつでも上がっております。昨年の秋米価を上げることによって物価が上がり、また一昨年の米価の値上がりによって物価が上がっております。でありますから、この米価を据え置くということが根本の問題です。これはしばしば総理をはじめ皆さんからも声明されておるとおり、生産者米価と消費者米価はとにかく据え置くという方針でいくということをうたっております。それから、それについては、たとえば麦とか塩とかいうような問題も起こりましたけれども、これは一切上げないという方針でいきました。  そこで、問題は鉄道料金です。この鉄道料金を上げることが大体〇・二%の上昇率でありますから、やはりこの鉄道料金の値上げは押えたいという方針で最初考えておったのでありましたが、一方におきましては国鉄自体が破綻の状態にありますので、国鉄というこの交通の大動脈を混乱さすことは、日本全体の経済に悪影響を及ぼすということで、まず国鉄をして何とか存続維持せしめたいという考え方で、そこで、まず国鉄の体質改善を先にやる。それから第二には、独立採算制でありましたが、今日では独立採算制はとれないということで、政府も財政の支出をするし、あるいは市町村も納付金を減ずるというようなことで、まず国並びに市町村が財政的援助をするという方針をとったのです。それでもなお足らない場合には、適正な鉄道料金を値上げせざるを得ないじゃないとかいうことで値上げをしたのでありますが、しかし、それには条件がついております。どういう条件とか申しますと、この国鉄の料金の値上げに便乗してほかの私鉄あるいはタクシー、バスなどの値上げはさせないということで、その条件をつけて国鉄の料金の値上げを認めた次第であります。したがいまして、これに便乗するような私鉄の大手、あるいは五大都市、大きな都市のタクシーだとかあるいはバスとかいうようなものは押えるという方針できておるのであります。そうしますと、私の考えでは五%以内に押えたい、しかしながら、五%に押えるということは非常に困難です。困難でありますが、しかし、これは政府も各省ともにひとつ協力してやってもらいたいということで、物価対策閣僚協議会をしばしば開きまして、各大臣の御協力を得て、政府が一致して物価の引き下げをやる、押えようということで、五%以内でひとつやろうということで、皆さん方に御努力をお願いしている次第であります。  なお、そのほか物価が上がった場合には、たとえば海外からの輸入品を安く輸入するとかいうようなことなども考えて、あらゆる手段を講じてひとつやりたい、こういうつもりでやっておる次第であります。
  282. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 委員長にお願いしておきますが、質問に簡潔に答えていただくように要望申し上げておきます。
  283. 田中龍夫

    田中(龍)委員長代理 はい。
  284. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 いま、いろいろお話がございました。しかし、私は、ついでですから申し上げますけれども、要するに、政府の四十四年度の経済見通しそのものは間違っているのではないか。見方が非常に低過ぎる。これは一般の金融界あるいはそれぞれの経済センターにおいて経済見通しを立てておりますが、それによりましても、相当高いわけですよ。経済成長率にしても一四・四%で押えるというけれども、実際は一致した意見――大体それは金融界も一致しております。銀行の一行ですが、非常に低い見通しを立てているところもありますけれども、平均しましても一六%上がるのだ。物価についても五%以内というところはほとんどないのです。五・六%ないし六%まで上がる。極端な見方ですと、それ以上に上がっていくのだという見方をしておりますよ。いつでも政府経済見通しというものは低く見ているわけですよ。そして途中で、いやこういうことがあった、ああいうことがあったということで、これを繰り返していっているわけです。私は、予算編成の中で経済見通しというものをはっきり立てていくべきだ。  経済見通しの問題は、時間があればあとから少し触れておきたいと思ったわけでありますが、要するに、いまお話によりますと、公共料金は全部据え置いていくのだ、しかしながら、やはり国鉄は赤字でどうしようもないからこれを認めたのだ、いまのは、要約するとそういうことなんです。そうでしょう。ということになりますと、これはほかの企業体も赤字だから認めてくれ、こういうふうに言ってきたらどうするのですか。認めますか。あなたは、いま国鉄以外は一切認めないことにした、私鉄もあるいはタクシーも値上げを認めないということを条件にして、そうして国鉄を認めたと言いましたね。絶対これは認めないのですか、あるいは条件つきなのですか、どうですか。
  285. 田中龍夫

    田中(龍)委員長代理 企画庁長官、簡潔にお願いします。
  286. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 先ほど広沢さんからいろいろのお話がありましたから、それに対していろいろお答えを申し上げたのでありますが、そこで、いまの私鉄やその他の問題でありますが、これはもう私がたびたび申し上げておりますとおり、極力上げないという方針でいくのであります。ただし、そこで物価に影響を及ぼさないところで、たとえば地方の小さい鉄道などは赤字で経営が困難だ。そうすると、その鉄道を廃止しなければいかぬ。そうなってみますと、その地方の経済に非常な打撃を与えますから、そういう場合には、料金の値上げを許しております。現にもう許しております。しかし、それは一般物価に影響ないという見通しを立ててやっておるのであります。その他の都会におきましては、これはもう赤字でありましても、この際は物価を上げてはいかぬという方針でやるつもりでおります。
  287. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 経済企画庁長官と、それから運輸大臣と両方にお伺いいたします。  それでは、国鉄運賃の値上げは赤字だから認めた、そういうことばじりをとらえたらこれは申しわけないと思うけれども、やはりこれは大きな問題だと思うんですね。国鉄の財政もそれはたいへんだ、何とかしていかなければならない――これもあとから私は具体的に提案します。しかしながら、やはり国民にどういう影響になってくるかということを詳細に知っておりますか。いいですか。たとえば、具体的に申し上げますと、政府は一五%平均値上げと言っておりますけれども、大衆の利用度が非常に高い二十円区間が三十円になるわけですね。五〇%値上げですよ。あるいは三十円が四十円になる。三三%の高率な値上げです。いいですか。これに対して、私は具体的にこれを伺ってみたいと思うのですが、この区間に一年間でどれだけの人が乗っていると思いますか。
  288. 原田憲

    ○原田国務大臣 たいへん具体的な問題でございますから、政府委員から答弁させます。
  289. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 非常に具体的な数字でございますから、私から答弁することをお許し願います。  二十円区間が約三億ちょっとだと思います。三億八千万、これは枚でございます。それから三十円区間が二億六千万、合計六億四千万枚。全体の発売枚数が、定期を入れますと約七十億万枚です。そういうことです。
  290. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 要するに、これは枚だって、人だって、一人で二つ切符を買って乗る人はないわけですね。  それから運輸大臣も、私は運輸大臣に聞いているのであって、これはこまかい数字だからと言いますけれども、一応その値上げをしていく、国民に対して、国鉄財政はたいへんなんだから政府は値上げを認めなければならぬというからには、具体的にそういうことは知っていなければならぬと思うのですよ。そんなことは全部役人にまかせきりだ。こういうようなかっこうをやっているから、うまくいかないのです。  そこで、いま説明があったように、具体的に言うと、二十円区間で三億八千万枚売れているわけですから、これを人に直して一応考えてみます。それから三十円区間で二億六千万人、これは四十二年度だと思うのですが、これを合計いたしまして、全体の二等の普通旅客運賃から見ますと、大体二十二億とおっしゃいましたですかね。それを計算しますと、大体約三〇%、三分の一の人はこれを利用しているということになる。こういうかっこうになっているわけでありますが、それが五〇%の値上げになるわけです。こういうふうに大多数の国民にしわ寄せをしていく、こういった運賃の改定というか、値上げについては、絶対これは納得できないです。先ほど経済企画庁長官かうお話があったように、物価値上げのムードやあるいはいろいろな諸条件があるから、何とか押えたい。しかし、こういうようなことをやれば、確かに、ムードを押えたいなんと言ったって、ムードは起きてきますよ、これは。そうじゃないですか。あとからいろいろ問題がありますけれども、体系を変えたりいろいろなことをやっているところもあるようであります。そういうことをしながら、いろいろな形で値上げということをやってこようとしているわけですね。それは国鉄やそういった体系の中においての問題だけじゃなくて、国民にそのまま値上げという影響が出てくるわけです。値上げのムードというものが起きてくるわけですよ。こういった問題については、もう少し検討すべきじゃないか。私はこれは強く意見として申し上げておきたいと思います。  こればかりではございません。もう一つ具体的に、皆さんがどうも値上げ不感症になっておるようでありますから、これは申し上げておきたいと思う。たとえば通勤定期、原田運輸大臣よろしいですか、今度はあなたにお答え願いますよ。通勤定期ですね。これの一カ月間通勤、通学――通勤がよろしいですね。これは具体的に申し上げますと、東京-立川は、四十三年三月の値上げ前の数字でありますが、四月に値上げになっております。四十三年度の改正前は二千四百円だった。今度改正いたしますと四千二百円になる。その差額は千人百円、七五%の値上げになります。普通運賃が上がったら、当然通勤定期にも影響してくるわけですからね。それから東京を中心として大宮ですね。これは二千百円が三千五百九十円になり、差額で千四百九十円、七〇%の値上げです。特にひどいところを申し上げますと、小田原は、四十三年度の改正前は四千六百五十円だったのが、改正後八千三百八十円、三千七百三十円の差で、八〇%も上がってくることになります。前と比較するのはおかしいではないかと言うかもしれませんが、一年間にこういうふうに二度もつり上がって、そしてそれと比較して一年間に八〇%も上がっておる。こういう結果ですよ。これはどうお考えになりますか。
  291. 原田憲

    ○原田国務大臣 いま御指摘のように、確かに区間によりましてはたいへん定期運賃の値上がりになるところがございます。これは区間制を改めるために、値上がりではございますけれども、率にして安いところと高いところが出てくるところを広沢さん御承知のようにとって申されておると思います。定期運賃に関しまして、昨年値上げしたところでまた今度値上げするということはどうかと私は感じまして、今度は定期運賃それだけを値上げはいたしておらないのでございまして、基本料金の値上げをいたしたのでございます。ただし、通勤定期をそれでは据え置くかといいますと、これはまたバランスがくずれてくる、こういうようなことになりますので、基本料金を上げたために、そういう問題が生じてくるのでございます。  何にいたしましても、運賃値上げということは、私も大臣をしておりますけれども、据え置きができて、そして皆さん方に喜んでもらいたいという気持ちは十分ございますけれども、先ほどもお話をいたしましたように、この国鉄というものの体質を改善して財政を再建する、こういうことがなかったならば、これはその本元がつぶれてしまう。そのために、国家財政のうちで、赤字が出たらそれは一般会計から全部見たらいいじゃないかという考えもございましょうが、しかし、一般会計というものは、あらゆる皆さん、国民の要望が集中しておる財源でありまして、国鉄だけにそれを持ってくるということはなかなか困難なことでございますので、三位一体方式をもって何とか財政再建をいたしたい、こういう考えを持っておるのでございます。
  292. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 財政の問題については、あとから私の考えを申し述べます。しかし、いま申し上げたところは極端なところをとった、こういうふうに申されるかもわかりませんが、いまの都市計画によって、だんだんだんだん過密地帯におれないで、ベッドタウン、ずっと郊外に出ていっておるわけです。そちらのほうからの考えをもって計算してみますと、こういう値上げになっているという事実を十分知っていかなければならぬ。東京を中心といたしましても、ドーナツ現象になっておるわけでありますから、そこから通ってくる通勤定期がこんなに上がってくる、利用している三分の一の人たちのなにが非常に上がっていく。あるいはまた、こういうようなものがこういうように八〇%も上がっていく、七五%も上がっていく。こういう高率の値上げをやっていく。一体こういう姿勢でいいのかということなんです。財政のことはあとから触れるとしても、それは、財政的には何とかここで抜本策を立てなければいかぬということは私も考えております。しかしながら、こういった問題でいいのかということについて、あなたはこういう考えを改めて、もう少しこれを是正していく案でも考えたらどうですか。このままで考えていくのであれば、われわれは納得できないんですよ。こういった問題については、断固、こういった国民考えを無視したやり方については、私たちは納得できない。  それでは、今度はまず大蔵大臣にもひとつお伺いしておきたいと思いますが、これもわが党の沖本議員の本会議における質問に対して、非常に前進的なお答えをいただいております。と申しますのは、いまの免税点の問題でありますけれども、大体いま一カ月三千六百円ですか、ここまでが非課税になっていますね。ところが、この値上げによりまして、非課税対象からはずれていく人たちが相当できてくるわけです。現在これは通勤、通学にして推定どれぐらいあり、こうお考えになっておられますか。突然お伺いするので、これは事務当局でけっこうであります。
  293. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ただいまの御質問、免税点によって国家から通勤費をもらっている者の人数、こういう御質問と了解してよろしゅうございますか。(広沢(直)委員「会社なり」と呼ぶ)それは頭数でよろしゅうございますか、それとも金額でございますか。(広沢(直)委員「頭数でいいです」と呼ぶ)これは現在の通勤定期の大体九七%が政府あるいは会社からもらっておりますが、ただ、そのうちの七五%が全額、それから残りの二五%は一部補給、こういう形でございます。
  294. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 ちょっと私の聞いた聞き方がまずかったかもしれませんけれども、私は、いまの課税の問題についてお伺いしたわけであります。したがって、いま通勤、通学の定期を買って、会社から負担してもらって通っているわけでありますけれども、現在でも大体一五%だと私たちは認識しているわけです。それが今後値上げになりますと、この倍になるのじゃないか、税金を払うほうがですよ。どうでしょうかね。
  295. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 実は毎回定期の運賃をいじらしていただきますときには、それは多少おくれますけれども、免税点を引き上げていただております。したがいまして、今日もいま大蔵省のほうに事務的に、たとえば現在の免税点が三十キロまでといたしますと、その三十キロまでは免税にしてほしいという、輸送距離でもって免税点を出していただく、こういうふうに現在大蔵省と折衝中でございます。
  296. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 事務当局はわかりました。  じゃ大蔵大臣にお伺いしますけれども、こういった運賃値上げ等によって非常に影響を受けている通勤、通学定期、これを課税対象からはずす、必要経費と認めるといいますか、そういうことを前向きで検討するというお答えだったと思うのですが、この点に関してどういうふうにお考えになっているか、まずお聞きしたい。
  297. 福田赳夫

    福田国務大臣 運賃の値上げに伴いまして、通勤費がかさむわけであります。そのかさむ負担を緩和しようと考えております。それで、まあ通勤者と申しましても、遠くから通う人も近くから通う人も、まちまちでございますので、基準となる人を求めよう。こういうふうに考えております。そこで、その基準はどうするかということでありますが、これは人事院勧告で、公務員の通勤手当を幾らにするかということを算出します。その額を、今後ことしの勧告で動くでありましょう、それがどうなるか、それを見ました上、それに合わして免税点をきめたい、かような考えです。
  298. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 こういったものはあまり数多くないわけですよ、課税として考えていく上においては。ですから、これはひとつ――いまサラリーマン減税ということがやかましく言われているわけです。特にこれはいろいろ見方がございますけれども、どうしても必要経費を認めろ、あらゆる税法上のいろいろな根本的問題はあると思うのですけれども、こういった多少の――通勤としてはこれは必要経費なんです。間違いないです。これに対しては全面的にもう非課税にしたらどうかと私は思うのですけれども、その点のお考えはどうですか、だんだんにこうなっていっていると、こういうお話なんですが……。
  299. 福田赳夫

    福田国務大臣 交通費を全部非課税にするというわけにはいかないのです。というのは、これをやったらどういう現象が起こるか、たいへんな現象が起こってくるわけです。そこで、基準を求めて、その基準となる額を控除していこう、かような考えを持っておる、御了承願います。
  300. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 これは一応前向きで十分検討願いたいと思うのですよ。これだけはっきりしているのですから。必要経費の云々ということを言っておりますけれども、それはいろいろな問題点が出てきましょうけれども、これはサラリーマンにとって、確かに必要な経費としてはっきりわかっているものですから、一応これは、所得控除が大きくなったということだけじゃなくて、ひとつ前向きで検討していただきたいと思います。  それでは運輸大臣にお伺いいたします。  私鉄運賃は、いままでの政府答弁によりますと、何とか押える。まあ菅野経済企画庁長官は、これを条件にして国鉄の値上げを認めたのだ、こういうふうに言っております。しかしながら、それは地方の赤字云々のところは、これはやむを得ないから認めた、そのために会社を倒すわけにいかない、これはわかるのですよ。わかるけれども、これは物価という一つの体制から考えたならば、これは認める、認めぬという、何らかの援助措置というものを講じて、これも物価の見地から押えていくべきじゃなかったのか、私はそういうふうに思うのです。しかしながら、この私鉄の問題については非常にあいまいなんです。はっきりとこの点を菅野経済企画庁長官からは伺っておりますが、運輸大臣どうですか。
  301. 原田憲

    ○原田国務大臣 私鉄の問題につきましては、菅野大臣からお話のありましたように、私鉄の中には、いわゆる大手十四社といわれておるものと、それでない中小私鉄があるわけでございます。中小私鉄に関しましてはもう答弁はよろしかろうと思いますが、いわゆる大手の私鉄という問題で、先ほど菅野大臣は、赤字が出ても、物価というものを考えるときには何とか押えていくつもりであるという決意を述べられておるわけであります。私は、赤字が出ても押えるべきであるかどうかということについては、これは問題があろうかと思います。しかし、この問題につきましては、御承知のように、物価という問題がいま非常に大事なときで、特に四十四年度におきましては、経済企画庁長官は何とか五%程度押えたい、こういう気持ちを持っておられる。その面で、国鉄というものは、先ほども言いましたように、万やむを得ないからこれは認めよう、しかし、その他においては極力抑制につとめる、こう総理も施政方針演説で言われたわけでございまして、運輸大臣といたしましては、やはり国務大臣としてこれに協力をしなければならぬというたてまえをとっておるわけでございます。したがいまして、この私鉄運賃の問題は、私だけの一存ではまいらない。これは物価の問題の経済閣僚会議了承も得なければならぬ手続があるということは御存じであろうと思います。したがいまして、この問題については、慎重の上にも慎重な態度で臨んでいきたいと思っております。
  302. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 いまお答えいただいたように、経営の問題ですね。これは確かに問題点になってくると思います。それからもう一つは、他との格差、どういう違いが出てくるか、これが一つ問題点になってくると思うのです。  いま経営の問題に触れられた。これは非常に重要な問題だ。これは大手十四社どうですか、経営の問題に触れられたのですが、黒字ですか、赤字ですか。赤字のところがありますか。
  303. 原田憲

    ○原田国務大臣 大手の中に、正確を期するために申し上げますと、赤字のところがあるかもわかりません。私は大体黒字であると思っております。ただ、これはいわゆる運輸部門以外の収入というものを合わせた経理等をやっておりますので黒字でありますが、運輸部門だけをとってみますと、有力なる私鉄におきましても赤字現象が起きておると聞いております。
  304. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 そうしますと、先ほど経済企画庁長官も、赤字だから上げたんだ、内容を見て国鉄についてはやむを得ない、こういうお話でありました。いまも経営の赤字なところもあると思われる。赤字のところだけ――国鉄は上げたじゃないか、私鉄もたいへんなんだ。赤字だから上げてくれ、黒字のところは上げずにとめる、そういうわけにいかないと思うのですね。これは認めたう全部上げなきゃならなくなってくる、こういうことになるのじゃないですか。
  305. 原田憲

    ○原田国務大臣 いま経営の問題、あるいは他との比較の問題を広沢さんおっしゃいました。その他やはり経営努力をしておるかどうか。その会社がサービスという部門で、たとえば国から低利の金を借りて、こういうことをやっておる、やらなきゃならぬということで借りたが、はたしてそれができておるかどうか、あらゆることを総合的に勘案しなければならない。いわゆる便乗値上げは認めない、こういうことはそこにあると思っております。
  306. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 非常に努力されているのかもしれませんが、お答えあいまいなんですね。いろいろなとりようができるわけです。したがって一部には、これは国鉄の運賃値上げ、そして私鉄は上げるなということになってくると、たいへんなんです。しかし、その後において何とか値上げが出てくるんじゃないか、こういう危惧を持っているところもあるわけです。あるいはまた一部には定期、一部分の運賃を認める、こういうことも考えられるんじゃないか。いろいろあるのですが、その点についてはまだ検討中というお答えになるかもわかりませんが、検討されている問題があれば、それをひとつ言っていただきたいと思います。
  307. 原田憲

    ○原田国務大臣 御承知のように、私鉄からも申請は出ております。したがいまして、検討はいたしておるのでございまして、それに対して私はすぐに認可をする意思もいま持っておらないから、慎重に検討いたす、こういうことを申し上げておるのでございます。
  308. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それでは、いろいろ私鉄の言い分もございます。そこで具体的に聞いてみたいと思うんですけれども、昨年の四月、国鉄の定期運賃の値上げがあったのであります。そのときには公共料金抑制ということで私鉄の値上げが見送られた。四十一年の値上げのときも国鉄の伸び幅よりも非常に低かった。ですから、どういう現象がそこに起こってきたのかということを強く私鉄は指摘しております。たとえて申し上げますと、キロ数が同じですかう、例にあげておきますが、国鉄と京浜、これが走っておりますが、この品川―横浜間、これはともに二十二キロであります。ところが国鉄の一カ月の定期運賃は、今度値上げになりますと、二千六百四十円になるわけです。ところが、私鉄のほうは千六百三十円。差額は千十円ですね。この差は六一・七彩、大きな開きが出てきております。このほか大体並行路線を走っているところがたくさんございますが、これが六〇%前後の大きな開きになってきているのですよ。こうなってくると、並行路線においてはどういう現象が起こってくるか。これは申すまでもなく十分おわかりのことだろうと思うんです。これに対する具体的な対策はどうか。いわゆる客が移乗してくる、あるいはラッシュ時においては殺人的な方向になるんじゃないか。少なくともこれは均衡のとれた形を考えてほしいと私鉄は言うと思うんです。国鉄だけ上げて、これは国鉄の石田総裁が陸の王者だとか申しておりましたけれども、要するに、それだからこれをつぶしたうたいへんなことになる。私鉄はどうでもいいかというと、そういうわけにはいかぬと思うのです。こういった問題の対策を立てた上で私鉄は上げない、そういうお考えがあるのかどうか。この点はっきりお伺いしたい。
  309. 原田憲

    ○原田国務大臣 現在もうすでにその現象は起きておるのであります。しかしながら、先ほどお話しのありましたように、このごろは大都市におきまする通勤者に対しましては、租税特別措置をもって、通勤費というものは自己負担にならないような措置ができるだけとられておる。そのために現在におきましても差がありますけれども、大量にふだんならば移るはずのものがまだ支えられておるという一面もあるわけでございます。したがって、今度またそういうことになると、そういうことでは防ぎ切れないじゃないかという御指摘の点は私は否定をいたしません。それらのことを勘案いたしまして慎重に検討をしなければならない、こういうことを先ほどから申し上げておるわけでございます。
  310. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 いま定期運賃の比較を申し上げましたけれども、こういった問題は、途中から上がってくるんじゃないか、こういうこともいまのような問題と並んで考えられるわけです。確かに上げたくない、何とかこの際押えておきたい。しかしながら、いままでの経過考えてみたら、当然私鉄の言い分も出てくるわけです。いまあなたがお答えになったようなことで、私鉄の運賃はしばらく待て、こういうことが言い得るかどうか。  それからいま並行路線の問題の乗客移乗の問題がありましたが、確かに大都市においては、もう五〇%くらいは私鉄が受け持って並行路線にかわっておりますよ。これが今度の値上げで、先ほど言ったように大きく開いてくることになれば、これ以上に大きくなるという対策、単なるいま申しておったような対策でこれは変わると思いますが、どうですか。
  311. 原田憲

    ○原田国務大臣 私鉄に対する大都市交通の対策といたしましては、いわゆる開発銀行から低利融資という方途を講じなければならない段階に至っておることは、もう御存じのとおりで、ある部面においてはこれを適用をいたしております。  なお、先ほどから申し上げておる中に、経済企画庁におきましては、来年度の物価をできるだけ五%程度に据え置きたい、こういうことを申されておるのであります。私は率直に申し上げまして、運賃というものは経済企画庁の長官も言われるように、国鉄で〇・二、私鉄全部入れてもその半分くらいじゃないかと思います。しかも他の物価と比べますときには、その比重というものは非常に低いわけであります。あまりにも他と比較したときに押えやすいものを押えたいという傾向が過去においてなかったか。たとえば、米という場合には、みんな米を上げるという議論がここでも強うございます。しかし鉄道となると押えろという議論ばかりであります。   〔田中(龍)委員長代理退席、櫻内委員長代理着席〕 そういう傾向はなかったか。そこにアンバランスが生じて、逆に問題を生じてきておらないかということを考えるわけでございますけれども、それでもなおやはり物価という問題が来年度非常に大事な問題であるということから、なお国鉄の問題をいま御審議願っておるのでございますが、私鉄問題については、慎重な態度で臨ましていただきたい、こう考える次第でございます。
  312. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 慎重な態度と再々伺っておりますが、慎重な態度もけっこうでありますけれども、こういった問題に対して明確にしていかなければならない。私は実情を勘案していく、これも一つだと思うのですが、物価対策の上から考えたならば、これに対しては経済企画庁長官が、これは認めないとはっきり言っているんだったならば、政府は統一して考えていかなければならない。だから、冒頭に私は佐藤総理にお伺いしたのです。物価安定会議において全大臣が一致して、これは物価対策に取り組んでいくんだ、ですから内容的にどうしてもこれはしかたがないというものがあれば、これは企業を倒していいという議論は成り立ちませんよ。考えていかなければならない問題が出てくるでしょう。そこには物価にどういうような影響を与えるかという具体的な計画がなされていかないといかぬと思うのです。いまいろいろ申されておりますが、原田運輸大臣、名古屋-豊橋間一カ月定期がどれくらい大きな開きになるか、十分御存じですか。これは極端な例ですが、どうですか。
  313. 原田憲

    ○原田国務大臣 国鉄が三千三百円、私鉄が七千三百十円、こういうことでございます。
  314. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 その開きは四千十円。運輸大臣……。
  315. 原田憲

    ○原田国務大臣 私鉄のほうが安いんです。国鉄が三千三百円、私鉄が七千三百円……。国鉄が安いのです。私鉄が高いんです。――いや逆です。私鉄のほうが安くて、国鉄のほうが高くなる。そういうことです。
  316. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 私はこれは何も運輸大臣を困らそうと思って聞いたわけじゃないんですよ。これは非常に特異な例なんですよ。ですから、こういう値上げ問題を検討して、国民にどういう影響があるかということを考えるならば、当然いまこういった問題についてある程度の認識がなければならないと思うのです。私は正確に一銭一厘間違いなく答えろとは言っていないですから。こういうふうになっていくのだということぐらいは知っておいていただきたいと思って申し上げたわけですよ。  このように運賃表から考えてみても、大きな開きがここに出てきておるわけでありますから、この点について、もっとはっきりとして、私鉄に対してはこうするのだ、あるいは乗客の移乗についてはこうするのだ、しかるべくしてこれは運賃は上げないのだ、こういうはっきりとした答弁をいただきたいと思うのです。そうでなければやはりこういった問題も納得できせせん。
  317. 原田憲

    ○原田国務大臣 いまお尋ねの件は、実はこの問題は重要な問題でございますから、閣僚会議において、現在あなたが指摘されておることを私は申し上げつつ、経済企画庁長官とも熱心に協議をし、その結果国鉄運賃は値上げをするが、その他は極力抑制につとめる、こういうことで、総理は施政方針演説をされておるのでございます。したがいまして、私は経済企画庁長官の経済見通しに立って、一番根底である物価という問題に対して御協力を申し上げよう、そのためにはこの値上げという問題に対しましては、そう簿単にできるもんじゃない、慎重の上にも慎重な態度で臨まなければならぬということを何べんも申し上げるわけでございすます。
  318. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 慎重論はわかりました。しかしながら、これは目下早急にあなたは結論を下さなければならない立場にある。  いまタクシーの問題にも触れようと思いましたが、もう時間がありませんが、タクシー問題もこれもどうしても二〇先程度は認めてほしい、それ以上の要求があっておるわけです。各陸運局長もおたくにこれを進達してきているでしょう。そうすると、最後にはあなたがこれをきめなければならない。これも四月一日からですよ。ですからそういった面に関してどうですか、はっきりとこの際御答弁願いたいと思うのです。
  319. 原田憲

    ○原田国務大臣 御案内のように、タクシーの運賃に対しましての法律上の権限は陸運局にゆだねております。またその他の運賃の問題について、私が認可をする権限を持っておりますけれども、昨年の三月閣僚協議会をつくりまして、物価というものは特に大事であるから、運賃についてはこの閣僚協議会にはかってきめる、こういう取りきめをいたしておるのでございます。よりまして、私は慎重の上にも慎重を期しておるということを申し上げておるのでございます。
  320. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 運輸大臣は慎重の上にも慎重を期してと、いろいろ申されておりますが、まず菅野経済企画庁長官、あなたは絶対認めない。運輸大臣は、これは私の認可になっておるけれども、こういったものは閣僚会議できめる。――どうですか、あなたは絶対認めませんか。
  321. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 この問題についてはたびたび申し上げましたとおり、交通関係の公共料金は極力抑制するということで、その極力抑制するという意味は、先ほど申し上げましたとおり、地方の鉄道とか、もうそれは値上げしなければ鉄道をやめなければならぬ、そういう場合にはやはり鉄道をそのまま残してあげたほうがその地方民のためになるということで料金を値上げしたのであって、そのほかの大都市の私鉄鉄道は、これは料金の値上げを認めない。これは運輸事業では赤字であります。しかし、ほかの兼営の事業をやって、それでみな黒字で配当をしております。したがって、私は、配当しておるのだから、一つの会社としてこちらは認める。黒字であるからして、この際は物価値上げという問題があるからしてしんぼうしてほしいと言うて、私鉄の社長連中には私からお願いをしておる次第であります。
  322. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 これは、いろいろ論議を進めてまいりましたが、佐藤総理も十分ここでお聞きいただいたと思うですね。佐藤総理から、やはりこれは国民にこういった大きな犠牲を払って、そうしてどうしても国鉄を再建させなければいけないのだと――政府はこういうふうな姿勢であるようです。われわれは認めるわけにいかぬわけでありますが、どうかそういった問題について、総理のお考えを伺っておきたいと思います。
  323. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 物価問題は、先ほど来菅野君あるいは原田君からいろいろお話をいたしました。前内閣、池田内閣のとき、物価問題は六%以下になかなかならない。六%以上あるいは七%、こういうような状態でありました。したがって私が、経済は成長はしたが、これだけの物価の高騰を見たらこれはたいへんじゃないかということを申して、私がかわったわけであります。  先ほどもいろいろ、経済成長の見通しが小さ過ぎやしないか、こういう話があります。私ども経済成長をある程度押えていかないと無理がかかってくるのだ、かように思います。いわゆる安定成長というのは、あまり力どおり、力を持っておるから力一ぱいに経済成長を許すというものではなくて、やはり行き過ぎがないように、その経済の動向を見て、あるいは財政金融、そういう面からいろいろの処置をとっていく、それがいわゆる物価を安定さすゆえんだ、かように実は思っておるのであります。  本年度四・八%という目標を立てましたが、一体どろいうようになっておるか、たいへん実は心配しています。しかしながら一月、二月、この辺の成績がわりにいいんじゃないのか。この辺から見ると、いわゆる五%以内にとにかくおさまりそうな気がする。来年度の四十四年、これは一体どうするか、これは菅野君が先ほど言っておるように五%以内に――五%程度という、そういう表現をしておりますが、その辺に押えたいという、それにはただいまの国鉄運賃、これは一応当初の計画には入っておらない。そこでこれを上げるとなると〇・二%影響する。そう考えるといわゆる五%前後というこれがなかなか守れなくなる。その他のものはどうしても押えざるを得ない。  両米価を据え置きにしようという、これもいまの物価からわれわれが思い切った実は処置であります。消費者米価は政府だけでできることだから政府がいたします、かように申しました。しかし、生産者米価は、いろいろな事情があるから、それぞれの手続を経なければならない。しかしながら、これも私は、何とかして据え置く、この政府の方針を貫きたいと思っております。そういうように、大体物価についての態度は、国鉄運賃を除くその他のものについては、非常にはっきりした態度をとっております。  しかし、国鉄についてなぜはっきりした態度がとれないのか。あまりにも国鉄の財政状態が悪化しております。政府がいろいろ援助をするにしても、また、国鉄自身が合理化等の非常な犠牲を払っても、なおかつ赤字が続いている。しかし、国鉄の機能たるや、これは一日も停止するわけにはいかない。私は、こういうときこそ、最も大事じゃないかと思う。都市集中の傾向のはなはだしい際、これはどうしても国鉄というものの機能をそこなわないようにしたい。そこでやむを得ず今回上げよう。そして、これも、貨物運賃にさわることができれば、まだ旅客のほうにややかえることができるかわかりませんけれども、貨物運賃にざわれば、これは直ちに物価に影響する。もちろん、これは競争の関係で、他の交通機関に移動もいたしますが、物価に直接関係する、その心配があります。そういう意味で、貨物運賃は一切さわらないことにしょう、こういうことで、ようやく今回の処置をとったのであります。これほなかなかむずかしい問題で、各方面からいろいろの批判を受けると思います。思いますが、国鉄の機能を考えれば考えるだけに、やはりこの程度のごしんぼうはひとつ願って、ぜひ通していただきたい、かように思う次第であります。
  324. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 いろいろ総理の御意見、いまお伺いいたしましたが、やはり国鉄財政の悪化、これはどうしようもなくなっている。これはやはり根本的には国の責任も大きくある、こう私は言わなければならないと思うのです。その具体的な問題にきょう触れるつもりでありましたが、相当残り時間も少なくなってまいっておりますので、大ざっぱに触れてみたいと思います。  というのは、やはりこれも本会議のときにわが党が指摘いたしましたとおり、運輸行政の抜本的な対策がない。総合的対策をこれはいま早急に考えなければならないのじゃないか、こういうふうに指摘いたしました。そういったところがないところに、現在のモータリゼーションの時代に、交通体系というもの、あるいは輸送体系というものが変わってきた。ですから、どうしてもこれはばらばらの計画であったならば、これからのこういう時代に対処することはできなくなってきているんだ、こういう指摘を申し上げました。総理も、そのことについては、確かにそうだ、これからそういうことで考えていくと言われたが、具体的にこういった総合的な計画というものがおありなんですか、総理にお伺いしておきたい。
  325. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん、運輸行政、総合的でなければならない。私どもが鉄道にいた時分と今日を比べてみると、今日はもう海陸空、その三つの点の総合行政のできる役所になっております。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 私どものきとは、むしろ国鉄、いわゆる国有鉄道なんです。こういうことで、国鉄の運営にかかっていた。いまは国鉄が御承知のように公社になっている。でありますから、海陸空、それらの三つを総合してちゃんと行政を行なっておる。ただいまよほど改善されておる、かように思います。いまの国鉄が国有鉄道であったことは非常にいいことでもあったろうと思うが、しかし、運賃のたてまえが、国有鉄道というもとでよほど負担が、国鉄自身が持たなくてもいい負担、政府の国家的負担を国鉄自身が果たしておる。そういうものが財政的な悪化を来たしておる。そういう一つの原因でもあるということが指摘できるのではないか、かように思います。いまは大臣のもとに一本にそれが総合的に運営できる、こういうようになっております。
  326. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 私は、他国の例を引きながら若干それに触れておきたいと思うのですが、簡単に申し上げますと、やはりいま国鉄の再建計画が出ております。それの中にも、それを中心としていろいろ派生したことに言及しておりますよ。これはあくまでも、国鉄財政を再建していくために一つのいまのそういう観点の視野に立って輸送体系というものを考えている。中距離輸送だとか、あるいは都市輸送だとか、旅客輸送だとか、こういったものを考えている案は出ておりますよ。しかしながら、これはやはり先ほどいろいろ指摘申し上げましたとおり、これも入ってくると思うのですが、やはり総合的な大きな計画というものが必要じゃないか。ばらばらであると思うのですよ。運輸大臣のもとに一つに集まっているといいますけれども、やはり建設省は建設省でどんどん道路をつくっていく。これは幾らつくっていっても、自動車のほうがまだふえていく。外国と比べたらもっとふえていくと思うのです。ですから、そういう併用の問題をどうするかだとか、やはり建設省の関係、あらゆる行政機関のそういったものを一つにまとめたものというものを考え合わせていく総合交通政策といいますか、そういったものが必要になってくるんじゃないか。これは一つ一つ申し上げようと思ったのですけれども、時間がありませんので例を引きますと、ドイツにおいても、すでにそれはもう立てられて、進んでいる。あるいはフランスにおいても同じですよ。あるいはスウェーデンですか、それぞれの国においても、もう国鉄に対する援助にしても、わが国がやっているような利子補給をいままでちょこちょこやってきただけだ、今回からそれじゃみこしをあげて何とかそれを応援していう、こういうような体制じゃなくて、やはり西ドイツにしても全一般財政の約三%ですか、それくらい国鉄の中に入れている。あるいはフランスにおいてもそうなんです。財政硬直の原因になったということでがちゃがちゃ言っておりましたけれども、その一つの大きな総合交通政策というものができていく過程になったのは、国がそれだけ責任を持っておったから、その時代に即応をした交通体系というものができてきたわけなんです。  ですから、わが国も、国鉄再建、これはわかりますよ。これは出してこなければならぬ。これはほうっておけというわけじゃありませんよ。しかし、それにも増して、もう一つ大きな時代に即応した交通総合体制というものをここに考えていくべきじゃないかと私は申し上げているんです。これはどうですか。
  327. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いや、実は誤解をしておりました。いまの運輸省のもとに、いわゆる運輸行政が一つしゃんと総合的に立てられている。鉄道も、私鉄も、バスも、自動車も、船も、さらに航空機もと、かように私は思いましたが、いまの広沢君のお話では、さらに道路のように、自動車には何にも負担なしにどんどん国でつくっておるじゃないか。鉄道だけが何もかも全部自分の責任でやっている。こういうところに無理があるんじゃないのかと、こういうようなお話です。何かそういうような意味で、特別融資計画だとか、あるいは特別な財政負担だとか、こういうものもその場所によっては考えられる。いま、私、道路まで実は鉄道でつくれと、こういうのかと思ったが、そうではなくて、その持ち分といいますか、その負担のしかた、そういうものについてものごとの考え方をやれ、こういうような御意見のようですが、これはいまのだけで十分じゃなくて、たとえば地下鉄の建設あたりになると、これは積極的に政府が財政的にも関与する。こういうものをもっと考え方に取り入れていく、こういうことが必要だろうと思います。しかし、いまの程度では、運輸省自身としてはわりに総合的に全交通機関を一手に握っている。ただ、道路建設は別ですよ。そういうような状態だ。あるいは空港、それも整備も、これはまあ国の負担でやっている。こういうことがあるんだから、鉄道にもそういうものを考えろとおっしゃるんだろう、そういうことは、もう少し研究する余地があると思います。
  328. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 大蔵大臣にお伺いします。  この内容についていろいろお伺いしたかったわけですけれども、やはり今回の利子補給にしてもよくわかります。財投から四百八十億入れておることについてもよくわかる。前向きに取り組んでいこうという姿勢のようには見えますけれども、私は、もっとこの利子補給にしても、これは全額利子は補給したらどうだ。あるいはまた、先ほどの他国の例を少し具体的にきょうは申し述べようと思ってここへ持ってきたのですが、時間がありません。もう少しそれを検討していただいて、国が――やはりスウェーデンなんかの国なんていうのは、国鉄は、地域開発だとかいろいろな、そういうどうしてもやっていかなければならないことは赤字でもやっているのだ、いわゆる国がサービスを購入しているのだという形で財政援助をやっているわけですね。そういう形でもっと財政援助をやっていくならば、いま言った、こういった値上げをやらなくても済む。あるいは国鉄財政再建推進会議が立てておる案についても、十年計画を見ましても、これは全部四年に一ぺん値上げになっている。値上げになって初めて――値上げがなかったらだんだん赤字はふえていく。十年先はどうなるかわからぬ、こういうような財政の見方をしているわけですね。これは当然そのまま認めたわけではないと思いますけれども、だからそういった面に関して、もう少し財政援助を具体的にやっていく。国がやはり基幹的な、国鉄なら国鉄という体制においては考えていくということをやるべきではないかと私は主張しているのです。どうです。
  329. 福田赳夫

    福田国務大臣 四十四年度の国鉄対策といたしましては、政府は非常に思い切った対策をとったつもりなんです。先ほどお話がありましたように、三位一体、ここで何とか十年後を目ざして国鉄の再建をしょう、こういうので、ほんとうに思い切った措置だ、こういうふうに考えてるおわけなんです。一体、国がそういう企業会計に繰り入れをする、そしてその赤字を埋めるという考え方をとりだしたら一体どうなるか。国民の負担だ。これはどうなるか。これは想像にかたくはないと思うのです。だから、その辺も考えなければならぬことかと思うわけでありますが、とにかく、きのうは石田総裁が来て、まああの石田さんが、今回の大蔵省のとった措置には感謝感激をしているというくらいな措置をとったわけです。この点をひとつよく御理解願います。
  330. 広沢直樹

    ○広沢(直)委員 それは確かに石田総裁の話は私も聞きました。大いに感激しておりましたけれども、それは確かに赤字になって、どうしようも動かなくなった国鉄を、国が何とか見てやろうという、感激するのはあたりまえだと思うのです。そのあおりを食って、いま三位一体論か何か知りませんけれども、新語を発明して、こういうふうな五〇%以上も利用者に負担させていく。受益者負担が悪ければ利用者負担ということばにまたすりかわっておりますけれども、どちらにしても、国民にしわ寄せをしていくということは、私はこれは基本的に考え直してみる必要があるのだ。これから審議に入るわけでありましょうけれども、そういった国民立場に立ってものを考えてほしい。いま佐藤内閣が物価に対する姿勢を強く打ち出していらっしゃるならば、口だけじゃなくて……。  私は、いま各大臣にずっと聞いていこうとしたけれども、全然時間がなくなってしまいました。郵政省にしても、今度はプラスマイナス・ゼロだと言っております。しかしこれは、公社の会計の中はプラスマイナス・ゼロでも、実際に計算してみますと、国民に大きな値上がりになっていますよ。あるいはまた、これはまた商工委員会か何かでやらしていただきたいと思いますが、通産省にいたしましても同じですよ。生産性を拡大していった、下がってきている、確かに私はそれは少しは認めます。しかし、それは拡大に応じて下がってきたのではないわけですよ。もっともっと物価は下げていくことができるのではないかと、私はその議論もきょういたすつもりで持ってきたが、これもできない。しかし全体をこう――米の問題にしても、物価統制令をはずすだとか、あるいはいろいろな指示価格をやっていくだとかいう問題もあります。据え置く、据え置くと言っても、内容を検討したら、やはり上がりムードにならざるを得ないのではないか、こういうふうに考えられるわけですね。そういう見地から考えていって、もっともっと、これはそういう企業者あるいは財政が赤字だからという、その側だけでものを考えるのではなくて、国民の側に立って現在たいへんな状況になってきているから、最重点施策の柱にしましたよと施政方針演説でやるなら――これはあなたの公約ですよ。それならそれなりにもっと抜本的に、何で本年一年押えて、その一年の間にそういう計画を立てて審議に持ってくるとか、まず初年度において、国鉄のように上げてくれということから再建が始まっていくなんということじゃなくて、計画を立てて、それを検討して、それで何年目にどうしても上げなければならぬのだ、こういった国民的な立場の姿勢を貫いていっていただきたい、私はそれを強く要望いたしておきます。そういった形が出てこないうちにおいては、私はそういった国鉄の値上げ問題にしても絶対に認めるわけにいかない、こういう態度をはっきりして、私の質問を終わらしていただきます。
  331. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて広沢君の質疑は終了いたしました。  この際、大蔵大臣より発言を求められておりますので、これを許します。大蔵大臣福田赳夫君。
  332. 福田赳夫

    福田国務大臣 先ほど田中委員から、予備費の総使用調書につきまして、その扱い様式について御指摘があったわけであります。ごもっともな御指摘と、さように思います。したがって私どもは、限られた時間でありましたけれども、これをどうするかということにつきまして、鋭意慎重に検討いたしました。その結果が出ましたので、主計局長から申し上げます。
  333. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 第一の問題、すなわち予備費の使用の承諾案件の取り扱いについてでございますが、財政法の制定されました二十二年以来、内閣から国会に提出いたします議案といたしましては、大蔵大臣の作成した総調書のみとして、各省庁の調書は議案としないで、参照書類として取り扱っております。これは各省庁の調書と総調書とは一体のものであること、及び財政法二十八条で各省各庁の予定経費要求書などが予算の添付書類となっていること、並びに同法第四十条により各省各庁の歳出決算報告書が歳入歳出決算の添付書類であることなどの権衡かうの解釈によって慣行となっているものと考えられます。今後この問題の取り扱いにつきましては、検討の上、適宜の処置をとることといたしたいと存じます。  第二の問題についてでございますが、特別会計の弾力条項は、特別会計予算総則第十一条に定められ、国会の御議決をいただいているものでございます。財政法上の根拠といたしましては、予算総則に規定する事項を定めました同法第二十二条第六号の「前各号に掲げるものの外、予算の執行に関し必要な事項」という規定に基づくものでございます。国会に対しましてその調書を提出し、予備費支出に準じ、御承諾を求めることといたしておりますのは、特別会計予算総則第十一条第五項の規定によりまして、予備費使用の手続の例によることとされているからでございます。  なお、この問題につきましては、先般四十三年度の予算補正の際、問題となりました食糧管理特別会計の取り扱いと密接に関係がございますので、今後財政制度審議会にもはかって検討いたしたいと存じます。
  334. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて締めくくりの総括質疑は終了いたしました。  以上をもちまして昭和四十四年度総予算に対する質疑は、全部終了いたしました。
  335. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、日本社会党の中澤茂一君外十三名、民主社会党の小平忠君外二名、また公明党の広沢直樹君外二名より、それぞれ昭和四十四年度予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が提出されております。     ―――――――――――――
  336. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより、各動議について順次その趣旨弁明を求めます。角屋堅次郎君。
  337. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、日本社会党を代表して、中澤茂一君外十二名より提出されております昭和四十四年度予算三案につき撤回の与え編成替えを求める動議の趣旨説明を行なうものであります。  動議の内容につきましては、すでに委員各位に配付されておりますので、その要旨だけを説明いたします。  われわれがここに動議を提出いたしました基本的な考え方は、何より長い間保守政権のもとでの経済の成長が、そのまま人間のしあわせにはつながらず、かえって人間疎外、人間性破壊を生み出しているため、国民は、いまやその根本的な改造を求めており、現状に対して大きな政治不信となってきていることに基づくものであります。われわれは、こうした国民生活を遊離した経済財政政策を根本的に転換し、政治外交経済、社会、教育の各部門における大改造と取り組み、その推進のために、まず昭和四十四年度予算については、平和と自立経済の確立、国民の生活福祉につながる経済発展を目標として、根本的に予算の編成替えを求めるものであります。  昭和四十年不況を切り抜けた日本経済は、その後毎年名目一七%以上の成長を続け、自由世界第二位の生産を誇っておりますが、その繁栄はたれの目にも明らかなとおり、第一に大企業と一部資産階級への富と所得の集中をもたらし、第二に消費者物価の恒常的な値上がり、第三にはあらゆる分野での格差と不公平、不均衡を拡大し、そして第四に交通事故、公害、犯罪等の激増を招き、社会の不安を激化し、深刻な人間性破壊の現象が進行しているのであります。  すなわち、第一に指摘しなければならないのは、昭和四十二年度の法人企業統計によれば、経済成長による生産利潤の大半が、資本金十億円以上の九百数十社の巨大企業に集中し、取引所上場の株式の六〇%は、一部少数の大株主の所有となっております。これらの大企業は、さらに合併や産業再編成によって一そう寡占化を激しくしております。  第二の問題は、自民党政府経済成長政策は、計画的インフレをてことして進められてきたことであります。佐藤内閣は物価抑制に真剣に取り組むと言いながら、物価上昇を経済成長に伴う不可避の現象として放置し、昭和四十年以来、消費者物価は一七%余りも上昇し、さらにその速度を早めております。毎年物価が五%以上も恒常的に値上がりすることはきわめて異常なことであります。佐藤内閣のもとで、個人保有の貯蓄約四十兆円のうち、四十二年までに約七兆円が、通貨価値の減少によって大衆に大きな損失を与え、その反面、大衆の貯蓄を活用して、土地や実物資産に投資した企業側に、巨大な利益をもたらしているのであります。法人会社の所有する土地は、昭和三十五年の七千億円から、昭和四十二年度で三兆七千億円以上にふくれ上がり、巨大な含み資産となっていることは、これを何よりも証明するものであります。  第三の問題は、大企業と金持ち優先、インフレによる急速な経済成長は、至るところに格差と不公平を激化さしています。労働者は、低賃金と物価高と重税によって、三重にしぼられています。大企業の繁栄の陰で中小企業の倒産がふえ続け、イザナギ景気の中で、石炭などの斜陽産業は整理され、農業と他産業の格差は開き、農山漁村では深刻な過疎状況に投げ込まれています。  第四には、人間不在の経済成長によって、交通、住宅、保健衛生、社会福祉の施設が立ちおくれ、新しい産業公害、交通事故、災害をふやし、命と生活の不安を生み出しています。  このような情勢をつぶさにながめてまいりますならば、昭和四十四年度予算において何をなさなければならないかは、おのずから明らかなはずであります。しかるに、政府予算の本質は、本委員会審議においても明らかなとおり、相変わらずの大企業と金持ち優遇のインフレ予算であり、また軍備増強、機動隊拡張の七〇年安保対策予算であり、予算規模六兆七千三百九十五億七千四百万円の数字が示すとおり、まさに「ムちゃナ時代サクゴナヨ算」といわなければなりません。  われわれは、ここに、政府昭和四十四年度予算三案を撤回し、編成替えを求めるの動議を提出する根本的な理由があるのであります。  予算編成替えの重点施策につきましては、わが党の組み替え動議で明らかにいたしておりますとおり、今日、国民が求めている要求に沿った緊急な重点課題を取り上げているものであります。  第一の課題は、申すまでもなく物価の抑制であります。  われわれは、何より水ぶくれ成長を押え、消費者物価の値上がりを断ち切ることこそ、焦眉の課題であると考えるものであります。そのため国鉄旅客運賃一五%の値上げはこれを中止すべきであります。国鉄輸送力増強のためには、財政投融資その他必要な財政措置を講ずべきものであります。また、消費者米価をはじめ公共料金の引き上げを取りやめ、特に地価の上昇に対しては宅地対策、土地税制など、断固たる措置を講じ、独占物価の引き下げ、農業、中小企業の生産振興とあわせ、インフレを克服すべきであります。  第二の課題は、経済成長の陰で苦しめられている勤労大衆の生活を守るため、所得再分配の機能を強化することによって格差と不公平を是正することであります。そのためには、何より大衆減税を断行し、大企業や資産所得に片寄った租税特別措置を大胆に改廃することであります。所得税につきましては生活費には課税せずの原則を守り、五人家族百二十万円までは無税とすべきであります。さらに税の自然増収を適正に見積もり、根本的な税制改正を行なうならば、国債発行額はさらに削減することができるのであります。  もう一つは、生命と健康を守る施策の実現であります。人間回復が強く叫ばれている今日、社会保障の拡充、公害、災害の克服は、予算編成の最重点に置くべきであります。生活保護をはじめ各種医療保障の飛躍的な充実はもとより、出産費国庫負担、児童手当制度の制定、同和対策などに力を注ぐべきであり、各種年金の引き上げと物価スライド制、重症心障児対策、交通遺児対策、保育所対策など、社会福祉予算を大幅に増額すべきであります。公害を克服するため公害対策基本法に基づく実施法の制定を急ぎ、所要の財政措置をとるとともに、特に緊急課題である公害による被害者の救済のための予算を十分計上することを要求するのであります。  さらに、農政を立て直すためには何より食管制度を堅持することが基本であり、食管制度をくずすならば、わが国農業はまさに窮地におちいることは明らかであります。したがって、米の間接統制の道を開く自主流通米などの施策を取りやめ、米以外の農産物についても、農民が安心して生産のできる真の総合的施策を推進するとともに、土地基盤の整備、農畜水産物の価格政策、農林漁業の生産基盤の整備などに十分な予算を確保し、食糧自給度の向上を柱とする農政の転換をはかるべきであります。  また、中小企業の近代化、石炭鉱業のためには、安い金利の融資をはじめ企業の体質改善等の予算を大幅に増額するとともに、石炭鉱業については、石炭鉱業審議会の答申に基づいた大企業救済、金融機関保護に終始した政策を改め、真に石炭鉱業再建のため国有化を軸とする諸施策を実行すべきであります。  労働者の生活保障のため公務員給与の引き上げは国会決議に基づき、最低限人事院勧告を完全実施するに足る予算措置を講ずべきであり、失対賃金、失業保険等についてもその拡充をはかるべきであります。  第三の課題は、住宅、生活環境の強化と交通難打開であります。  政府は、国民に約束した一世帯一住宅と安心して生活できる下水道、公園、生活道路等必要な施設の整備に十分な予算を支出すべきであります。また激増する交通事故防止のため、交通安全施設の増強及び被害者の救済のための諸施策を充実し、さらに交通行政一元化などに必要な予算を確保すべきであります。特に過疎化に伴う地方交通路線の休廃止や経営危機に対処し、必要な助成を講ずべきであります。  第四の課題は、教育、科学技術の振興であります。  今日の大学紛争の大きな原因の一つは、大学が社会の進展に大きく立ちおくれ、研究、教育機能が全く不十分なことにあります。大学が憲法と教育基本法の精神に立って新たな発展を遂げるためには、国立大学、私立大学に対する国の援助を飛躍的に充実する必要があります。また教育費父母負担の軽減、教職員の待遇改善などへの予算措置を講ずべきであります。さらに、科学技術振興のため、特に学術研究、基礎研究を促進するための制度及び予算の充実をはかるべきであります。  第五の課題は、地方財政の充実であります。現在地方自治体は、当然なすべき行政すら実施できず、その上に過密過疎に伴う財政需要が急増しております。こうした実態を無視して、地方交付税の国への貸し付けや、地方財政圧迫の政策は地方自治の本旨に反するばかりか、住民の生活と権利を脅かすものであります。われわれは、地方自主財源の強化、超過負担の解消をはじめ、過疎地域に対する財政援助の強化など、地方自治を守り、住民福祉を確保するための財政強化をはかるべきであります。  第六の課題は、沖繩に対する財政措置の強化であります。  沖繩と本土との格差を早急に解消するため、沖繩県に対する財政支出は最低限各府県市町村並みの国庫支出をはかるべきであります。  第七の課題は、防衛費等の経費を減らし、海外経済協力費を是正することであります。三次防計画は中止し、ファントムの購入など兵器輸入は一切停止すべきであります。また、国民の目の届かないところで予算を先食いする防衛関係の国庫債務負担行為は、全面的に打ち切るべきであります。また明らかに七〇年安保対策をねらう警察機動隊の増員や公安関係等の反動経費は削除すべきであります。さらに海外経済協力につきましては、アメリカの肩がわりによる政治的な援助のあり方を改め、真に援助国の経済自立と住民福祉につながる援助をすべきであり、輸銀資金は日中貿易にも活用すべきであります。  最後に、第八の課題は、以上の諸施策と一体のものとして財政投融資を運用し、財政計画を根本的に組みかえる必要があります。資金運用の重点は、特に農業、中小企業、住宅、生活環境、国営、公営企業などに振り向けるべきであります。この際特に申し上げたいのは、財政の民主公開の原則を貫き、財政投融資計画は国会の議決事項とすることを要求するものであります。  以上、わが党の組みかえ動議の要点のみ申し上げました。委員各位の御賛同を要望いたしまして、提案理由の説明を終わります。(拍手)
  338. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、麻生良方君。
  339. 麻生良方

    麻生委員 私は、民主社会党を代表して、昭和四十四年度予算三案について政府に対し、政府案の撤回を求め、わが党の組みかえ案に基づき予算案を組みかえの上、再提出することを要求する動議を提出するものであります。  わが党が、政府予算案に対し組みかえ動議を提出する理由は、以下大きく分けて三点であります。  その第一は、昭和四十年代を展望する長期ビジョンに欠けている点にあります。このため、政府の財政、経済政策は全くその一貫性を欠き、かつ無計画であります。わが党は、四十年代の国内政策の主要課題は、福祉、教育国家の積極的創造にあることを主張してきましたが、これの創造の道は、財政、経済の総合的計画性なくしてはあり得ません。  しかるに、政府の四十四年度予算案には、これが反省と、福祉、教育国家創造の積極的施策が見られません。  第二は、減税と物価についてであります。いまや国民の税に対する不満はちまたに満ちあふれています。この原因は、第一に所得にわりに税金が重いこと、第二に租税特別措置などに見られるように各税制に不平等があること、第三に徴収面で不公平があること、最後に納税に対する反対給付が全く不十分なことなどの四点に尽きます。これらの是正は現在緊急の課題であるにもかかわらず、政府は減税について自然増収一兆二千億円のらちわずか千五百三億円しか行なわず、利子、配当の優遇制度等の租税特別措置の改廃もほとんど行なわれておりません。  次に、政府は、ことしもまた国鉄運賃の大幅値上げを計画しておりますが、これは政府みずから物価上昇に拍車をかけるものといわなければなりません。ことしこそ国鉄運賃の値上げをストップし、全面的に公共料金値上げを抑制して物価安定への第一歩を踏み出すべきであります。  わが党が、組みかえを要求する第三の理由は、社会的な不均衡がますます拡大する点についてであります。いまわが国の国民総生産はアメリカ、ソ連に次いで世界第三位になっておりますが、社会保障、住宅、生活環境設備等の社会的消費、資本は先進諸国家中最低であるといっても言い過ぎではありません。これら対策費のわずかの増額に比べ、民間設備投資の著しい伸びはあまりにもその対照があざやかであり、社会的不均衡は拡大の一途をたどるばかりであります。  私は、政府案に対して以上基本的な三点の批判の上に立って、次のようなわが党の組みかえ案の骨子を説明させていただきます。  わが党の組みかえ案の基本方針は、四十年代の国内政策の主要課題を福祉、教育国家の積極的創造に置き、この長期的展望に立って明年度予算を国民福祉予算に転換するとともに、他の施策と相まって、国民経済の計画的にして調和ある発展をはかるところにあります。  以下歳入予算からその特徴点を申し上げます。  第一は、歳入予算規模を、政府案六兆七千三百九十五億円を六兆七千九百四十一億円に増額したことであります。言うまでもなく現代福祉国家の要請は、国民の多くの切実な要求に十二分にこたえ得る政府でなければなりません。したがって、国家予算の規模の拡大は必然の方向でありますが、それに対応する施策が必要なこともまた言うまでもありません。この観点から、わが党は財政を積極的な福祉予算とするとともに、後に述べますように税による民間設備投資の調整をはかっているのであります。  第二は、公債発行額を、政府案の四千九百億円より四千五百億円に減額したことであります。  第三は、専売納付金の一部を地方の自主財源として国から地方に移譲していることであります。政府はわずかばかりの地方財政の好転を理由に、ことしもまた六百九十億円を地方から吸い上げておりますが、これは地方住民の福祉を無視するものといわねばなりません。特に、所得税に比べ住民税の免税点はあまりにも低く、これの引き上げは緊急の課題であります。この観点から住民税十万円の引き上げ財源として明年度七百億円の専売納付金を地方に移譲したのであります。  第四の特徴は、税制改正において百万円減税を実現していることであります。このほか、働く未成年者の所得は原則として無税とするため、勤労未成年者控除を設けました。これらの減税による歳入減は、利子、配当の優遇制度など現在の不合理な税制を極力是正することによって補てんするとともに、明年度は臨時的に、大企業法人所得に三%の税を課する景気調整税を設け、国民経済全体の均衡ある発展をはかるようにいたしたのであります。  次に、歳出予算の特徴を申し上げたいと思います歳出予算の規模は、歳入予算と同じく六兆七千九百四十一億円にいたしました。政府案と比べ歳出予算の特徴は、まず行政改革の断行によって二千六百十億円、また防衛費で六百十七億円、さらに産投出資の三百九十億円をそれぞれ削減して合計三千六百十七億円を減額したことであります。  歳出予算の第二の特徴は、これらの減額による三千六百十七億円と純歳出増の五百四十六億円の合計四千百六十三億円を国鉄運賃の値上げ抑制、社会保障の充実、政府施策住宅の大幅増大、物価安定対策、文教対策等に増額したことであります。  そのおもな内容は、国鉄への出資を五百億円行なうとともに、元本についても国の利子補給を行ない、国鉄運賃の値上げをストップしていることであります。また、社会保障については、特に明年度から児童手当制度を実現し、六歳未満の第二子より月三千円の手当を支給することであります。これに要する財源は千二百億円であります。このほか公営住宅建設戸数の大幅引き上げ、私立大学への補助拡大、市民大学活動の推進、集配センターの整備拡充と消費者保護行政の徹底などをはかっております。ざらに中小企業、農林漁業近代化資金として二百億円、沖繩援助費を七十三億円それぞれ増額しているのであります。  以上、わが党の予算組みかえ要求動議の理由と組みかえ案の骨子を説明いたしました。  各位の御賛同をお願いをいたしまして、私の提案理由の説明を終わります。(拍手)
  340. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、浅井美幸君。
  341. 浅井美幸

    浅井委員 私は、公明党を代表して、政府提案による昭和四十四年度一般会計予算、同特別会計予算及び政府関係機関予算案に対し、これを撤回し、公明党提出の組みかえ案による予算の編成がえを求める動機について、その趣旨の説明をいたします。詳細につきましてはお手元に配付されております組みかえ案のとおりでございますが、これを要約して申し述べたいと思います。  まず、予算組みかえを要求する理由について申し上げます。  昭和四十四年度のわが国を取り巻く国際経済の見通しは、かなりきびしいものになると予想されるのであります。四十三年度にわが国が国際収支の黒字を達成することができた要因は、世界貿易が予想外に伸びたことであり、特にアメリカの好況にささえられたものでありました。しかしながら、現在アメリカは景気過熱に加えて、大幅な国際収支の赤字を控えており、当然、ドルの威信を維持するために、インフレ抑制に力を入れるでありましょうし、国際収支の改善につとめるものと思われるのであります。結局アメリカの経済成長はかなり鈍化すると見なければならず、貿易政策に敏感に反映することは明らかであります。このことから、世界貿易の伸びは五%程度にとどまるものと予想されているのであります。対米貿易に依存する度合いの大きいわが国に、直ちに影響することは言うまでもありません。またアメリカの対日輸入制限の問題も軽視できない状態であります。  さらに、国際経済の大きな不安定要因は、国際通貨の動揺であります。ポンド切り下げから一年目に発生したフラン危機は、フランスの厳重な為替管理の実施、ドイツの国境税調整等の措置によって小康状態にありますが、金問題と平価体系の再調整という根本問題が未解決であるため、依然として通貨不安は取り去られていないのであります。そこで、イギリス、フランスにおいて通貨防衛のためにきびしい緊縮措置をとることになるであろうし、そのために輸入制限措置が強化された場合には、当然わが国の輸出も打撃を受けることは明かであります。また、世界各国とも保護貿易の機運が高まっているとともに、高金利が世界的に定着して資本導入に不安が生じ、一方では、発展途上国に対する特恵関税適用によって、これらの諸国と市場の競合するわが国の輸出は、それだけ環境がきびしくなるなど、わが国をめぐる国際経済はかなりきびしくなるものと予想されているのであります。  振り返って、国内経済は、すでに景気は過熱ぎみであり、経済指標はかげり現象を呈しているのであります。その中にあっても、中小企業は相変わらず倒産があとを断たず、経済の構造的な欠陥をはっきりとあらわしているのであります。消費者物価は継続的に根強い上昇傾向を強めており、四月一日からの国鉄運賃値上げに伴い、便乗値上げを招き、国民生活への圧迫はさらに強まると予想されているのであります。  このような状態にあっては、当然予算は景気に対して警戒型でなければならないし、最も国民期待する物価安定こそ、すべてに優先されなければならないことは言うまでもございません。  しかるに政府は、第一に、財政面から景気刺激は避けると称しながら、財政規模は政府経済見通しの名目成長率を大幅に上回っているのであります。のみならず、さらに膨張する予算規模を欺瞞するため、国有財産特殊整理資金等に見られるように、予算規模の操作まで行なっているのであります。さらに、四千九百億円にものぼる実質赤字国債を依然として発行していることから見ても、まぎれもない景気刺激型予算なのでございます。これでは、景気過熱は必至といわざるを得ません。  第二に、政府は税負担の軽減をはかると言明しながら、一兆二千億円もの自然増収が見込まれる四十四年度において、わずか千五百億円の減税しか行なおうとしていないのでございます。千五百億円の減税は、三十三年度から四十二年度までの減税割合の平均二二・三%を一〇%も下回っているのであります。物価高と高度成長に取り残されている国民には、全く納得できない減税としか言いようがないのでございます。  第三に、国債についてでありますが、本年度も国債発行額は四千九百億円と巨額に達しているのであります。政府は国債依存率を七・二七%に引き下げたと誇示しているのでございますが、四十三年度の実質発行額四千七百億円を上回るもので、決して減額したとはいえないのであります。景気過熱を懸念しながら多額の国債を発行するとは、矛盾もはなはだしいのであります。  第四に、政府は引き続き総合予算主義の堅持を主張しておるのでありますが、四十三年度補正予算に見られるように、そのずさんな財政運営は国民の大きな不信を買っているのであります。総合予算主義をたてに、消費者米価の引き上げを行ない、人事院勧告の完全実施を履行しないでおきながら、補正予算を強引に成立させたことから、四十四年度にも同じ行為を繰り返さざるを得ないことは必定であります。  第五に、政府は物価安定を喧伝しておりますが、その内容は、全く無策としか言いようがございません。なぜかならば、四月一日からの国鉄旅客運賃の一五%の引き上げは、直ちに私鉄運賃等の値上げを誘発し、消費者物価に大きな影響を及ぼすことは必定であります。また、消費者米価も据え置きと言明はしてはいるものの、生産者米価引き上げから、食管特別会計の赤字防止、そして消費者米価引き上げということも懸念されているのであり、その他電話の基本料金、タクシー料金の値上げ、医療費の値上げ等を勘案すると、政府主導型物価上昇となることは避けられず、結局政府の物価上昇の見込み五彩をはるかに上回ることは明らかであります。  このような予算編成の中で、特に目立つものは防衛費、治安対策費の大幅計上であります。あたかも七十年安保を控えて、安保予算といわれるゆえんであります。その反対に、物価対策費、社会保障費、中小企業対策費等の大衆福祉関係予算は冷遇されており、国民不在の予算といわざるを得ないのであります。  このような国民不在の政府予算案の撤回を要求し、国民生活の安定向上を基盤とした、わが国経済の発展と大衆福祉の実現を目ざすわが党提案の予算組みかえ案に賛成されんことを強く要求するものであります。  次いで、組みかえ案の概要を申し上げます。  まず、歳入につきましては、本年度予算で四千九百億円の国債の発行が予定されております。国債は、これを見合いとして施行される公共事業費が、国債元利償還のメカニズムを持っていないという意味で、赤字公債にほかならず、またこれが市中消化をたてまえとするといっても、日銀よりの信用供与に依存する市中銀行受けという形式をとる以上、インフレ要因となることは明らかであります。そうでなくても、わが国財政や金融の持つ膨張主義的傾向からすれば、このような公債政策は旧きわめて危険なのであります。したがって、自然一増収が大幅に見込まれる四十四年度においては、国債発行を二千億円の減額を実施することを主張するものであります。  税制につきましては、今回の政府案に示された所得税減税は、標準世帯の課税最低限を十万円引き上げ、また累進税率を若干緩和したにとどまり、減税というよりは当然必要な調整にすぎないのであります。このことは、税の軽重の尺度である租税負担率の上昇にもあらわれているのであります。すなわち、減税したにもかかわらず、四十三年度においては一九・三%であった租税負担率は、かえって一九・七%に上昇しているのであります。また税収に占める所得税分が法人税分を抜いてトップになることからも、所得税負担が相対的に重くなることを意味し、税制が富裕者重課の累進構造ではなく、大衆課税化していることを示すものであります。これらの点から、矛盾多き税制から脱却し、国民生活の安定のためにも、次のごとく税制の改正を行なうことを主張するものであります。  すなわち、昭和四十四年度より所得税の課税最低限を標準世帯で百三十万円まで引き上げ、さらに現行の強度の累進税率を緩和し、特に中堅以下の所得者の負担軽減をはかる等の措置を講するべきであります。以上の国債減額と減税の財源は、交際費課税の強化、租税特別措置の合理的改廃、高額所得者に対する強化、政治献金の課税、そして自然増収、専売納付金等のその他の歳入増加などによって十分確保できるのであります。  次に、歳出の組みかえに関し、増加分について申し上げます。  第一に、社会保障の充実についてであります。社会保障の制度のきわめて貧弱な現状では、なすべき対策は文字どおり山積しておるのであります。今回は、そのうち緊急を要するもののみを取り上げることとし、生活保護基準の大幅引き上げと、出産費用の全額公費負担をはかり、さらに児童手当の全面実施を目途とし、当面第二子以下の児童に一人月額千五百円の実施を強く主張するものであります。  第二に、物価対策として、国鉄運賃は据え置き、公共料金の抑制をはかるため、一般会計から国鉄に対し出資を行なうことを要求するものであります。また、生鮮食料品を安定供給するために、卸売り市場の拡充など流通機構の合理化をはかることを主張するものであります。さらに独占禁止法の厳格なる運用のため、公正取引委員会の一定員増加を主張するものであります。  第三に、住宅対策につきましては、わが党が主張する政府施策住宅六割、民間施策住宅四割の住宅五カ年計画に沿って、公営住宅を政府案の十万八千戸を大幅に上回る十五万戸を建設するよう強く主張するものであります。  第四の公害対策につきましては、公害が人命をむしばんでいる現状にかんがみ、人間尊重という立場に立ち、公害被害者に対しては十分な補助を行なうとともに、公害発生予想地域を指定し、公害総点検を行なうなど、公害を未然に防ぐ方策をすみやかに樹立することを主張するものであります。  第五に、教育関係費につきましては、幼児教育から大学教育までを一そう強化すべきであります。そのため、国立大学の財政確立のための助成費の増額とあわせ、特に国立及び公立大学と私学の教育費負担の不均衡是正のため、私学振興費の増加をはかろうとするものであります。  第六の交通対策費につきましては、モータリゼーションにより、年間八十五万人の死傷者、十万人に達する不具者の発生は、文明の必要悪として見のがすことはできない緊急な問題でありますので、早急に人命を第一とした交通対策を実施すべきであることを主張します。  第七、中小企業対策につきましては、日本経済の発展をささえているものは、不利な条件を克服して営々と努力を重ねてきた中小企業のじみな貢献にあるといっても過言ではないのであります。中小企業の生産性の向上をはからなければ、今後のわが国の経済の発展はあり得ないのであります。したがって、中小企業の抜本的な構造改善、近代化をはかるため、中小企業対策費の大幅増加を行なおうとするものであります。  第八には、農林漁業対策費についてであります。農業等低生産性部門の生産性向上は、わが国経済の生産性格差を是正し、均衡のとれた経済の発展を遂げるためにも必要なことであることは言うまでもありませんが、従来の政府の施策は有名無実であって、この欠陥を是正するため、特に農林漁業部門の構造対策に対する予算措置を充実強化しようとするものであります。  第九には、科学技術振興、特に海洋開発費の増額であります。資源の乏しいわが国にとって、海洋資源の開発は絶対に必要であります。画期的な対策を講じなければならないことは当然であります。  第十には、沖繩援助費の増額であります。沖繩県民の福祉は踏みにじられている現状から、本土と同一の水準において国民生活を維持するに必要な財政援助を行なうべきであります。  第十一には、地方行政の強化であります。四十四年度地方からの借れ入り金は、住民の財政需要を犠牲にしたものであり、これを中止するべきであります。  以上による歳出予算の増額に対して、次のように予算減額を行なうものといたします。  まず、防衛庁予算については、人件費、旅費、庁費、被服費、医療費、食糧費以外の三次防予算を認めず、装備施設等については四十一年度予算の範囲にとどめ、その差額を減額するものといたします。  また補助金は、零細なものについてはこれを整理合理化して五%を減額し、行政の簡素化、合理化による物件費及び人件費は、物件費については一割を減額、人件費については、欠員補充をせず、首切りを行なわないで二%の減額を行ないます。  さらに、大企業優先の国家資金は中小企業に向けるべきであり、産業の投資特別会計への出資は約二分の一を削減することとし、そのほか、予算の効率的使用によって五百億円程度の削減は可能であると考えるものであります。  なお、公共事業費については、緊急度について科学的測定に基づく選択的投資の上に、綿密な事業計画を作成し、効率的運用をはかり、二千億円を削減することといたします。  また、国債の二千億円の減額に伴い、利子支払いの減少に伴う削減を行なうものであります。  以上が、わが党の組みかえ案の概要でございます。予算委員の各位におかれましては、わが党の動議に賛成され、政府案の欠陥是正につとめられるよう強く要望いたしまして、提案趣旨説明を終わります。(拍手)
  342. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 以上をもちまして、動議の趣旨弁明は終わりました。     ―――――――――――――
  343. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより討論に入ります。  昭和四十四年度予算三案及びこれに対する撤回のうえ編成替えを求めるの動議三件を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。仮谷忠男君。
  344. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和四十四年度予算三案に関し、政府原案に賛成し、社会党、民社党並びに公明党の編成替えを求める動議に反対の討論を行なうものであります。  御承知のごとく、日本経済はいま、かつて経験したことのない長期の経済繁栄を実現しようとしています。国民総生産は世界第三位、国際収支は大きな黒字を示し、外貨準備は三十億ドルをこえるに至りました。一方、国民の生活水準も着実に向上し、家計調査によれば、四十二年度は全世帯の実質消費水準は四・七%、勤労世帯では五・五%の上昇を示し、四十三年度はざらにこの数字を上回ることが確実となっております。このことは、言うまでもなく、日本国民の創意と努力、わが党とわが党内閣の適切な施策によるものであることは、いまさら多言を要しないところであります。  さて、昭和四十四年度経済政策の大きな課題は、言うまでなく、経済の持続的成長と物価の安定、きびしい国際化に応ずる体制の確立にあると思います。  そうした観点から四十四年度予算を見ますと、一般会計予算総額は歳入出ともに六兆七千三百九十五億円で、これは前年度当初予算に比して一五・八%の伸びであります。この伸び率が経済成長率一四・四%より高いという点が問題とされるようでありますが、しかし、この一五・八%は前年度当初との比較であり、補正後は一四%弱であります。しかも景気との関連で重要なのは、政府の財貨サービス購入額であり、これは前年度比一二・三%の伸びにとどまっているのであります。これらの点から見て、四十四年度予算は、決して過大なものではなく、特に景気刺激的であるとはいえないと思います。ことに公債の発行額を前年度当初より一千五百億円減額して、その依存度を七・二%に引き下げたことは、慎重な財政運営のあらわれであり、また将来の景気調整能力を拡大する適切な措置と考えるものであります。  第二は、減税についてでありますが、減税規模は平年度国税千八百十億円、地方税を加えると二千七百五十七億円に及んでおります。ことに所得税においては、標準世帯で給与所得者の課税最低限を年収九十三万五千円までに引き上げ、また同時に、税率緩和によって特に中小所得者の優遇措置がとられたことは、明年度減税の特色として評価すべきであります。私は、四十五年度においても、引き続きこれら一連の措置が一そう積極的に、確実に推進されることを期待してやまないのであります。  第三は、物価対策であります。  物価安定がいまや国民的願望であり、最大の課題であることは申し上げるまでもありません。政府は四十四年度においては、国鉄運賃以外の公共料金は極力抑制し、少なくとも便乗値上げは認めないというきびしい態度を表明され、物価問題になみなみならぬ決意を示していますが、全く同感であり、あくまでもこの初志貫くべきだと思います。  なおまた、単に公共料金の抑制だけでなく、物価上昇の要因となっている農業、中小企業等、いわゆる低生産部門への強力な施策や流通機構の改善、あるいは地価対策のための税制措置、予想される地価公示制度の実施など、そのいずれを見ましても決してなまやさしいものではないのでありまして、私は、この際、政府のより一そうの努力を強く要望しておきたいと思います。  次に、簡単に歳出面の重点施策について申し上げてみたいと思います。  第一が社会保障の充実であります。  社会保障関係予算は、前年に比して伸び率一六・一%、九千四百六十九億円と、一兆円の線に迫っておるのであります。内容的に見ましても、生活扶助基準一三%引き上げ、社会福祉費二四・九%の増、二万円厚生年金の実現、寝たきり老人対策、寡婦貸し付け制度の新設など、社会保障が年とともに充実強化されていくことは、まことに喜ばしいことであります。  第二に、私は文教予算中、特に国立学校費について一言触れたいと思います。  一般会計から国立学校特別会計への繰り入れば、実に二千二百九十七億円であり、これは一般会計総額の三・四%に当たるのであります。これに比べれば、授業料や入学検定料はわずかに五十九億円にすぎません。国立学校に学ぶ学生諸君は、このように国民の血税の大きな部分が自分たちの勉学のために投入されておることを認識し、社会の期待にこたえられることを強く望むものであります。  なお、歳出の部門では、社会資本の整備が、災害復旧を除く公共事業費では一五・四%の伸びを示し、住宅、道路等それぞれ既定計画の整備が期待され、農林業部門では、いわゆる総合農政推進のための構造政策や稲作転換対策、あるいは農業近代化資金ワクの画期的な増大、漁業近代化資金制度の創設など、政府の意欲をうかがうことができるのであります。  このほか、中小企業振興事業団の事業規模の拡大や石炭の第二次再建強化策、沖繩援助、基地対策、防衛力の増強等、各般の施策がそれぞれ適切に講ぜられており、私の率直に賛意を表するところであります。  さて、最後に、社会党、民社党並びに公明党三党の編成替えを求める動議については、残念ながら時間の制約があり、反対理由を申し述べることができませんが、率直にいって、基本的に全く相いれない社会、公明両案には断固反対の意を表明するとともに、民社案についても遺憾ながら反対の態度を明らかにいたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
  345. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、畑和君。
  346. 畑和

    ○畑委員 私は、日本社会党を代表して、政府提出の昭和四十四年度予算三案に反対し、中澤茂一君外十三名提出の政府の予算案を撤回しその編成替えを求める動議に賛成の討論を行なわんとするものであります。  本予算委員会の質疑の中で明らかになったように、佐藤内閣の憲法べつ視、対米追従外交態度は、もはや国民の黙視し得ないものであります。口には憲法尊重を唱え、非核三原則を口にしながら、核兵器の持ち込みを容認し、また自衛のためなら核兵器を保有しても憲法違反とはならないなど放言し、ますます自衛隊を増強し、憲法無視の姿勢をとっております。   〔委員長退席、中野(四)委員長代理着席〕  また、あれほど国民的な要望であった政界の粛正にしても、微温的な政治資金規正法すら骨抜きにし、これを握りつぶしているばかりか、ますます財閥と密着して金力政治を推し進めようとしているのであります。  さらに沖繩返還については、ひたすら米国の要求を国民に押しつけ、安保条約をアジア安保にエスカレートして、わが国が極東アジアの平和安全確保の責任まで引き受けようとする危険な道を進む対米追従の姿勢をとっているのであります。  政治外交の面でこのような反動の方向をとっている佐藤内閣は、経済国民生活の面においても同様に、前の池田内閣以上の大企業を一部大資産階層の利益を優先する非民主的な政策をとり続けてまいりました。その結果、昭和四十年以来三年間の年率一七%以上の高度成長は、すなわちわが国産業の最高上層部分、すなわち大企業の成長、巨大な資本の蓄積、生産と利潤の高度成長にほかならなかったのであります。その反面、インフレ、物価の上昇と、社会のあらゆる面での格差、不公平、不均衡が広がり、さらに交通事故、公害、犯罪の激増を招来し、高度成長が国民生活福祉につながらず、経済が拡大すればするほど、国民の不幸と不安が増大していくという矛盾が、ますます激しくなってきたのであります。第一には、物価の問題であります。  物価対策についての佐藤内閣の無策と不誠意は、すでに本委員会審議においても暴露されました。池田内閣当時、消費者米価の引き上げは昭和三十七年の一回でありましたが、佐藤内閣は昭和四十年以降四年間連続して消費者米価を引き上げ、本年は食管制度を破壊して、自主流通米と称してやみ米を公認し、実質上の米価引き上げを行ないつつあるのであります。また国鉄運賃にしても、昨年大幅引き上げをしたばかりなのに、ことしも旅客運賃一五%値上げを強行しようとしているのでありますが、これはやがて私鉄、バス、タクシーに波及し、消費者物価五%の目標をみずからの手で打ちこわすことは必至であります。  地価対策についても、本年の土地税制は、個人の土地思惑投機を抑制しながら、法人会社の規制には何らの手も打っておりません。これは長期保有者の譲渡所得の減税をやって、土地を手離しやすくし、その土地を法人会社の手に集中しようとする意図といわなければなりません。すでに主要会社の株式の過半数は金融機関など法人の所有に帰し、六〇%は十万株以上の大株主に集中していますが、佐藤内閣はさらに土地をも大会社に集め、これをつり上げてばく大な利益を与えようとするものであります。  物価上昇の原因についても、政府はもっぱら構造的要因、すなわち労賃の上昇を吸収し得ない中小企業、第一次産業など低生産性部門の商品サービスの引き上げに責任を転嫁していますが、これはわれわれのすでに明らかにしておりますとおり、国債発行、銀行の貸し過ぎ、信用の膨張、これを裏づける日銀通貨の増発、すなわち政府の放漫な財政金融のインフレ政策にあることは、何人も否定することができません。本予算案は、この重大な物価問題についてこれを抑制する何らの対策を持たないばかりか、逆にこれを刺激して、一そう物価上昇を招くものであって、われわれの断じて認められないところであります。  第二に、佐藤内閣の金持ち優遇、大衆重税の政策が、この予算案において露骨にあらわれていることであります。  昭和四十二年度、六千九百億円の自然増収に対してわずか八百三億円、四十三年度は九千億円に対して実質減税ゼロ、さらに四十四年度、一兆二千億円の自然増収に対してわずかに千五百億円の減税であります。三年間累計すれば、五兆円の増収に対して四千億円足らずの減税にすぎません。その中で、佐藤内閣の大企業、金持ち優遇の減税は、悪名高い租税特別措置を中心として、本年度も国税のみで三千二百億円をこしております。法人税率は昭和四十年度の実質四四・二%から昭和四十二年度の三入・二%に下がっているのであります。配当所得優遇の結果は、本年も五人世帯二百八十二万円までの配当所得者には所得税が一文もかからないという不労所得優遇、勤労者軽視の不公平を続けようといたしておりますことは、国民として断じて許すことができません。  第三の問題は、食管制度破壊、農民軽視の点であります。  政府は、口には食管制度の根幹は守るといいながら、自主流通米制度を導入し、実質上の間接統制への移行、食管制度を骨抜きにしようとしています。また両米価据え置きの方針なるものは、そのこと自体、食管法第三条、第四条に違反することは明らかであります。  すでに昭和三十六年、農業基本法以来の農政の大失敗のため、米以外にたよるべきものを失った農民に対する死刑の宣告にもひとしい暴政であります。生産農民のみならず、食管制度の崩壊は消費者にとっても高い米を食わされる結果になることは、最近のやみ米の値上がり、米商人の暗躍にも明らかに示されているところであります。  しかし、政府の大企業中心の成長政策の犠牲となっているのは農民だけではありません。白い米と同様に黒い石炭についても、佐藤内閣は石炭資本家保護のためにばく大な国民の血税をむだ使いしながら、石炭産業と労働者を見殺しにしようとしています。そのほか黄色い硫黄鉱業、白い塩、みな犠牲になろうといたしております。イザナギ景気、昭和元禄の陰で、中小企業の倒産は六千件から八千件、さらには一万件をこしているのに、中小企業対策予算はわずかに〇・六%にすぎないことは、断じて容認することができません。  第四の問題は、勤労者無視、国民生活軽視の予算案であることであります。  佐藤内閣のもとで年々の物価引き上げと勤労者への天引き重税のために、三千万労働者の生活は極度に圧迫されているのでありますが、さらに政府の労働者対策予算は全く貧弱きわまるものであり、八百五十八億円の失業対策を含めても一千百四十二億円、総予算の一・六%にすぎず、しかも、佐藤内閣成立以来予算規模の八〇%増に対して二〇%の増加にすぎず、佐藤内閣の勤労者対策の冷淡さを見せつけられておるのであります。三千万人のうち、特に中小企業に働く三分の二の人々に対する社会保険、教育、技能訓練、住宅、保育所、生活福祉施設は著しく立ちおくれているのに、何らの配慮もなされておりません。  また、最近の大きな社会変動のために起こっている都市の過密現象、農山村の過疎現象に対する対策もほとんど見るべきものがないばかりでなく、昨年八十万人をこす道路交通事故の犠牲者が出ており、ことしは百万人といわれる交通安全問題、各地に激化する産業その他の公害などの対策はまことに貧弱であるといわなければなりません。  資本主義社会の体内に生じた悪質なガンともいうべき交通、公害は、もはや部分的な対症療法ではどうにもならないところにきているのでありますが、政府はその認識を欠き、対症療法としてもまことに不十分であると思うのであります。  また、桂会保障の面においても佐藤内閣は熱意を欠き、内閣成立以来、社会保障関係費の総予算額や国民総生産に対する比率は低下し、佐藤内閣の社会保障軽視を実証しておりますし、老後の不安に悩む老人対策としての老齢年金、子供の保育所の不足に苦しむ勤労者への対策、医療対策、すべてにわたって社会保障怠慢の罪はきびしく追及されなければなりません。  第五の問題は、この予算が自衛隊増強、警察機動隊拡充の安保予算であることであります。  政府は、財政硬直化を理由として総合予算主義を唱え、国民の要望を押えながら、防衛費に対しては一機二十億円のF4Eファントム購入をはじめ、膨大な軍備増強をはかり、昭和四十五年以降の財政支出を義務づける継続費並びに国庫債務負担行為は実に二千七百三十五億円に及ぶのであります。しかも自衛官六千人、警察官五千人の増強などは明らかに七〇年に備える治安対策であるとともに、これらはアメリカの要求によって安保条約をアジア安保にエスカレートし、極東アジアの防衛まで肩がわりしようとする危険な政策のあらわれであり、われわれの断じて容認することはできないところであります。  以上のように、政府の四十四年度予算案は大企業と一部資産階級優先のインフレ予算であり、金力と権力の支配を強化しようとする反動政策予算であることは明らかであります。わが国の政治外交経済、社会、教育の実態は、いまや総点検を行ない、抜本的な総改革を断行すべき事態であります。わが党の組みかえ案はこのことを指摘しているのでありますが、その第一段階として、わが党提案の組みかえ案に示されている諸項目について、政府はこれを組みかえ再提出することが正しい対策であることを強調するものであります。  最後に、民主社会党、公明党からも組みかえ案が出ておりますが、その内容において幾多われわれと共通する点がありますが、相違する部分もあり、さらに検討を要する問題を含んでおりますので、いま直ちに賛成することができないことをつけ加えまして、私の討論を終わるものであります。(拍手)
  347. 中野四郎

    ○中野(四)委員長代理 次に、塚本二郎君。
  348. 塚本三郎

    塚本委員 私は、民主社会党を代表して、政府提案の昭和四十四年度予算関係三案に反対し、小平忠君外二名提出になる予算案の編成替えを求める動議に賛成の討論を行なわんとするものであります。  なお、この際、日本社会党並びに公明党の提出になる編成替えを求める動議には、政策上の見解を異にいたしておりますので、遺憾ながら反対するものであります。   〔中野(四)委員長代理退席、委員長着席〕  政府提出の予算関係三案に反対する第一点は、わが党が従来しばしば指摘してまいりましたごとく、政府の財政政策における一貫性の欠如と無計画な姿勢であります。  このことについては政府自身が十分承知のように、ときには財政新時代の到来と称し、財政主導型の経済成長を進め、財政をしてインフレ的要素を含めて無計画に膨張させたのであります。さらに膨大な額にのぼる公債の発行が主要原因であるにかかわらず、財政硬直化の打開と唱えて、総合予算主義という名のもとに、社会保障関係費、公共事業費等の民生的支出を抑制して国民生活の不安と停滞をもたらし、その結果国民の不信を買うや四十四年度では再び急転して総花的な予算を組むのみならず、防衛費等の無定見なる拡大をはからんとしています。また、経済政策の基本となるべきはずである経済社会発展計画もわずか二年にして破綻し、結局は、民間設備投資は大幅に伸長させたものの、国民生活に密着した社会資本は大きく立ちおくれ、物価の高騰が続いているのがその現状であります。これの是正こそは現在の緊急の課題であるにもかかわらず、政府政策にはその姿勢と施策が全く見られないことは、まことに遺憾といわねばなりません。  反対理由の第二点は、政府の税制改正、特に所得税減税が軽視されている点であります。  政府は、今回の税制改正において、所得税の課税最低限度額の十万円引き上げと税率の緩和により初年度千五百三億円の減税を行ない、これをもって大幅減税であると称しておりますが、これでは全く不十分であります。特に、わが党が従来から主張してきたいわゆる百万円減税が今年もまた実現を見なかったことは許しがたいところであります。これまでの例である自然増収の二〇%を減税に充てるということや、また税制調査会の勧告等を守るならば、本年度の自然増収一兆二千億円のうち二千四百億円を当然減税し、百万円減税という国民の要求を実現しなければならないはずであります。政府は財源難を理由にこの要求を無視し、その一方で本年度もまた大企業、資本家優遇の租税特別措置を温存し、特に利子配当の優遇措置では実に八百十五億円にのぼる大幅な減税を行なっていることは、まことに遺憾であります。これでは国民の税に対する不満が解消しないのは当然であります。  反対理由の第三点は、国内の社会的不均衡を是正するどころか、むしろそれが拡大せんとしている点であります。  わが国の国民総生産は、周知のとおりアメリカに次ぎいまや世界第二位まで上昇いたしたことは事実でありますが、しかし住宅、生活環境等の社会資本と社会保障は、先進諸国中でも最低の部類に属しているのがその実情であります。社会開発と安定成長を経済政策の主要な柱にした佐藤内閣において、むしろ社会的不均衡が著しく拡大している事実は、いかに政府公約が無責任なものであるかを物語るものであると言われてもしようがないでありましょう。今年度こそは、こうしたおくれを取り戻し、必要最小限でも経済社会発展計画の目標を達成するためには、住宅、環境衛生整備費、社会保障費の大幅増加が必要であります。しかるに政府案では、それらの予算がいずれも目標を大幅に下回っております。さらに今年度もまたわれわれの要求する児童手当制度の創設が見送られたことは、政府社会保障に対する熱意のなさを端的に示すものといわねばなりません。  一方、陸上自衛官の増員、米軍基地の温存を前提にした基地対策費の大幅な伸び、さらに七十年対策を露骨に示す治安対策費の増加など、防衛、治安重視の予算になっております。政府は、国民生活の福祉向上こそ治安対策の最良の方法であることを深く認識し、反省すべきであります。  反対理由の第四点は、大幅な物価上昇が明年度も続かんとしている点であります。  政府は、四十四年度の消費者物価の上昇率を五%と予想していますが、これは昨年度の予想四・八%を上回るものであり、みずから物価対策に無策たることをさらけ出したものにほかなりません。また、昨年の物価上昇が予想を大幅に上回ったように、今年もまた五%を上回ることは必至であります。すでに政府は国鉄運賃の値上げを決定しましたが、さらに私鉄、バス、地下鉄等の誘発的値上げは他の諸物価にも影響し、大幅な物価上昇を招くことは明らかであります。したがってこの際、国鉄運賃の値上げを押え、全面的に公共料金の値上げをストップし、政府の断固たる物価抑制の姿勢を示すことが何よりも重要であります。それとともに低生産性部門の合理化、近代化を推進し、同時に、一般物価対策費を重点的に注ぎ込むべきであると確信いたします。  反対理由の第五点は、地方住民の福祉向上に対する施策が軽視されている点であります。  政府は、今年度の予算編成にあたって、わずかばかりの地方財政の好転を理由に、地方交付税率の引き下げなどを画策し、それが失敗に終わると、次は地方に当然交付すべき地方交付金を借り上げたのであります。こうした措置は、最近ますます増大する地方財政需要と、重い住民税の軽減を要求する地方住民の願いを全く軽視したものといわなければなりません。われわれはかかる政府の措置に強く反対いたします。  以上述べた諸点から、私は民主社会党の予算組みかえ動議に賛成するとともに、政府原案に反対し、私の反対討論を終わります。(拍手)
  349. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、大橋敏雄君。
  350. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私は、公明党を代表いたしまして、ただいま議題となっております政府提出の昭和四十四年度予算三案に対しまして反対し、公明党広沢直樹君外二名提出による、昭和四十四年度政府予算案を撤回のうえ編成替えを求めるの動議に対し、賛成の討論を行ないます。  また社会、民社両党提案の政府予算に対する編成替え要求動議につきましては、いささか意見を異にする点がございますので、反対の表明をいたします。  大蔵当局は、四十四年度予算編成にあたって、一昨年来提起してきた財政硬直化打開のキャンペーンを積極的に進め、貫徹する自信もないまま、四十四年度予算において総合予算主義をとり、強化する姿勢を示し、しかも国際通貨不安や米国景気の後退懸念に対処するため、景気抑制型の予算編成の必要性を強調していたのであります。さらにその際に見られた減債、減税いずれを優先するかというかなり沸騰した議論も、四十四年度予算が四十三年度予算のそれと同様に、抑制型であることを当然の前提としていたのであります。ところが、実際に提示された政府の予算案は、このような予想とは全く違い、規模も各費目を見ても、きわめて膨張放漫型予算となっています。経済の持続的成長の確保と物価の安定という二つのスローガンも、全く有名無実であります。  まず、政府予算案は、一般会計六兆七千二百九十五億円、財政投融資三兆七百七十億円の規模は、どのような見方をしても景気を刺激しないとは言い切れないのであります。一般会計の対前年度伸び率は一五・八で、政府経済見通しによる各日成長率一四・四%を大幅に上回っております。四十四年度は、海外の経済貿易の伸び率は、四十三年度よりもかなり鈍化するものと予測される上に、国際通貨不安という背景が控えているので、海外の経済情勢の動きは予断を許さない。国内経済は、すでに過熱ぎみで、岩戸景気をも上回るような勢いにあるかと思われます。さらに消費者物価は、継続的に根強い上昇傾向にあります。このような状態において、予算は当然景気に対しては警戒型でなければならない。また、予算規模は極力圧縮しなければなりません。また財政投融資も、一般会計に計上できなかったものを織り込むという形で処理したために、この面からも景気を刺激するおそれがあります。また、国有財産特殊整理資金特別会計、退職給与引き当て金を削るなど、財政規模を故意に縮小する操作をしているのであります。以上のような観点から、四十四年度予算案は、完全なる景気刺激型と判断されるのであります。  さらに財政硬直化打開という立場から見ても、四十四年度予算において、全くかけ声だけで、ほぼ挫折したと一声えるのであります。四十三年度予算編成の際は、引き締め政策の最中でもあり、大蔵省のPRがある程度功を奏しました。しかしこの場合も、結局は新規施策を抑制したというにとどまり、問題の冗費的な当然増経費については、何らの積極的な手を打たれなかった。そればかりか、所得税減税を間接税の増税で帳消しにする実質減税ゼロ方式と、国鉄運賃値上げなどの受益者負担の原則が導入されたのであります。  ここで見のがせないのは、制度、慣行などの改善による当然増経費の削減と、歳入構造の合理化という財政硬直化打開の二つの側面であります。大蔵省の危機意識が、当然増経費の削減にあまり効果を生じないとなれば、それは少しでも力の弱い部分へと突進するのです。その弱い部分こそ、歳入構造の合理化という美名のもとに行なわれる国民負担の増大なのであります。  四十四年度予算では、空前の自然増収と国民生活を脅かす物価の上昇を考慮に入れてか、さすがの大蔵省も、実質減税ゼロとか増税とかいう方法はとっておりませんが、きわめてへんぱな受益者負担の原則として定着化しつつあります。この原則は、食管制度、補助金、社会保障、国鉄運賃など、至るところに顔を出しております。四十四年度予算では、さまざまな思惑から、結果的には見送られることはあっても、四十五年度予算では再び姿をあらわすことでありましょう。これでは財政硬直化キャンペーンに国民が幻惑されている間に、受益者負担の原則という形での国民大衆への負担のしわ寄せ、税負担の増加だけが一方的に推進されているといっても過言ではありません。  さて、政府の唱えていた財政硬直化打開構想が大きく後退したのは、四十四年度予算をめぐる重要な特徴であり、これは七十年安保再検討期を乗り切るための特異的な財政的配慮なのであります。すなわち公共事業費の増額をはじめとし、各分野にわたって総花的支出を行ない、あるいは圧力団体の要求にこたえるなど、すべて七〇年を懸念した上での国民の不満対策であります。さらに七〇年問題における反安保勢力に対する強力な対抗策がとられたことであります。それは防衛、治安関係費、すなわち自衛隊定員の増大、警察機動隊の増強などに具体化されております。このような国民生活の安定、向上を忘れた党利党略、七〇年指向型予算には賛成するわけにはいきません。  以下、数点にわたり具体的に問題を指摘しつつ、反対の理由を申し述べます。  第一は、減税について。  昭和四十四年度の税制改正では夫婦、子供三人の標準世帯の課税最低限を十万円引き上げ、また累進税率を若干緩和しました。それは減税というよりは必然的な調整にすぎません。これではとうてい国民の不満は解消されません。それは税の軽重の尺度である租税負担率の上昇にもあらわれております。すなわち、昨年度一九・三%であった租税負担率が、減税したにもかかわらず、かえって一九・七%に上昇している。また一兆二千億円もの自然増収を見込まれながら、わずか千五百億円の減税、その減税率は一二・五%にすぎない。これは自然増収に対する過去十年間の平均減税率二二%を大幅に下回っており、このことから減税の規模はきわめて小さいと言えるのであります。さらに、現在の年収百万円以下の給与所得者は全納税者の七〇%であります。所得税減税の最優先目標が、この七〇%の所得階層に向けられてしかるべきであります。しかし、今回の減税は部課長減税ともいわれ、年収百五十万円から四百万円クラスのいわゆる中堅所得階層に減税の恩典が厚くなっています。これは、富裕者重課の累進構造ではなく、またも大衆課税化を示したものであります。物価高と高度成長の谷間に取り残されている一般大衆のために、調整減税ではなくて、課税最低限の思い切った引き上げ、さらに、累進税率を大幅に緩和することであります。もしこれまでの減税方法を続ければ、いよいよ給与所得者の欲求不満が高じ、不測の事態発生も憂慮されるのであります。最近のサラリーマンユニオンとかサラリーマン同盟に見られる怒れるサラリーマンなどの行動から見ても、政府は早急に大幅減税を実行すべきであります。要するに、重税、不公平課税の現実と国民の不満を一向に解消しない四十四年度予算には反対であります。  次に、物価問題について。  物価安定を行なう第一の条件として、財政規模の抑制があげられます。四十四年度予算案の規模は、これが刺激型となり、経済成長のテンポを早めて、物価を押し上げることになるのは明らかであります。また、最近の消費者物価上昇の動向を見ますと、食料と雑費の上昇率が圧倒的であります。中でも米価、国鉄運賃がその中心となっております。国鉄運賃一五%の値上げは、それだけで、すでに消費者物価を〇・二%引き上げる要因となり、ざらに、私鉄運賃などの値上げを考慮すると、〇・三%以上も影響することになります。また、予算上は生産者米価とともに据え置きになった消費者米価も、来たるべき生産者米価の引き上げに伴い、食管会計の赤字対策にからんで消費者米価の値上げも懸念されるのであります。また電話の基本料金の値上げ等々、考えれば考えるほど、政府の物価安定は単なるかけ声だけであります。なお、物価対策予算そのものも、ほとんど見るべきものはなく、むしろ物価値上げ先導予算であり、反対であります。  次に、社会保障の問題を取り上げれば、全体で一五・八%の増額で、四十三年度に比べてわずかながらアップし、一歩前進といわれていますが、国民生活立場からは大いに不満であります。たとえば、生活保護費を見ても、その扶助基準が昨年に比べて一三%引き上げられたとはいえ、大都市標準四人世帯で、わずか二万九千九百四十五円にすぎないのであります。さらに、このたびの社会保障関係費の中で最大の欠陥は、国民大衆が一日千秋の思いで待望している児童手当制度を実施する予算が見送られてしまったことであります。この児童手当制度の実現については総理も、関係大臣も、しばしば国民公約したものであります。政府責任において、四十四年度予算に是が非でも具体的に予算化し、公約履行を果たすべきであります。事実、児童養育費は家計費の中で医療費の四倍以上になっていて生活を極度に圧迫しております。このような国民不在の予算には断じて反対であります。  以上、本予算案に対し、反対の趣旨を申し述べましたが、いずれにせよ、大衆福祉を無視した四十四年度予算案は撤回し、公明党の予算編成替えの動議に基づき、政府の予算案を組みかえることを強く主張し、討論を終わります。(拍手)
  351. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、田代文久君。
  352. 田代文久

    田代委員 私は、日本共産党を代表して、昭和四十四年度の政府提出の予算三案に反対いたします。  本予算案の基本的な性格は、七〇年の安保条約の固定期限終了期を前にして、その長期固定化による日米軍事同盟の侵略的強化と対米従属のもとでの軍国主義、帝国主義の復活を推し進める立場から、独占資本の利益に奉仕し、他方人民に対しては収奪と搾取を一そうきびしくしようとするきわめて反動的な予算であります。  すなわち、第一に、公然たる防衛関係費は四千八百三十八億円で、とれによってナイキハーキュリーズ部隊の新設、F4Eファントムの採用と国産化、陸上自衛隊六千人の増員など、前年度より六百十七億円も増加させて、本格的な軍備増強を目ざしておるのであります。また、基地対策費二百三十九億円を計上し、さらに人民を弾圧するため大都市の警察機動隊二千五百人など五千人の警察官増員と装備の増強をはかるなど、軍事費、弾圧費の比重を一段と高めています。  第二に、アメリカのアジア侵略の肩がわりと日本独占資本の海外進出を促進するために、一般会計で、貿易振興、経済協力費九百五十五億円、財政投融資関係で三千九百億円の海外進出費を組んでおります。その中には、ラオスのビエンチャン空港拡張援助費の新規計上や南ベトナム難民住宅建設に見られるように、露骨な侵略的性格を持った予算が含まれております。そのことは、二月二十人目外務省幹部会での愛知外務大臣の発言、日本はアジアに対し安全保障のため援助を行なうとの言明にも見られますように、本予算案は、アメリカヘの従属のもとに、その侵略的海外進出の性格を明確に持つものであります。  第三に、独占資本に対しては、幹線高速自動車道、港湾、空港、工業用地、用水など、公共事業に対し新たに千三百億円もの増額を行ない、財政投融資を含めて、その産業基盤整備のため巨額な援助をするのをはじめ、大型合併の促進、科学技術振興費、原子力関係費などに大幅な増額をしております。その上、租税特別措置などで一兆数千億円の税の減免措置をはかり、造舶利子補給や炭鉱資本の救済に多額の血税をつぎ込み、炭鉱労働者には五カ年間に三万人の首切りを強要しております。  一方、人民に対しては、高物価、重税、低賃金、社会保障費の削減など、人民生活を破壊する政策を強めております。  サラリーマン減税などの大宣伝を行ないながら、実際には所得税の自然増収という名で五千五百億円もの大増収をはかっております。所得税の免税点はわずかに七万八千円引き上げただけにすぎず、いまの物価高ではますます生活費に食い込む重税となり、人民の税金に対する不満はいよいよ高まっております。  わが党は、四人世帯で少なくとも百二十万円までの免税点の引き上げを要求します。  佐藤内閣は、四年間連続して消費者米価を引き上げ、また、当初、今年は国鉄運賃以外は値上げしないと公言しながら、その後、赤字なら値上げもやむを得ないと前言をひるがえし、私鉄、バス、タクシーなどの値上げをもくろんでおります。さらに電話料や健康保険、厚生年金、国民年金保険料などを続々引き上げておるのであります。消費者米価にいたしましても、自主流通米制度をつくることによって、実質的に値上げを行なうのであります。  さらに政府は、公務員賃金五%引き上げ、七月実施を計画し、賃金の抑制をはかるとともに、総定員法、地方公務員の定年制、出かせぎ農民の失業保険打ち切りなど、大量の中高年労働者を半失業に追い込もうとしております。その上、保育所など社会福祉施設をはじめ、住宅、下水道、公害など、生活環境の改善は大幅に圧縮し、交通事故対策や災害対策は減額し、そのしわ寄せを地方自治体の財源に押しつけ、地方自治体に干渉するほか、地方交付税交付金から一方的に六百九十億円の借り上げさえ行なうものであります。  しかも許せないことは、失業者を吸収すべき失対事業で七千人の首切りをやり、その上、生活保護まで打ち切りを行なうのであります。これは全く人民の生きる権利を抹殺することであります。政府は、生活扶助八万一千人の打ち切りで四十億円の削減をはかっておるのでありますけれども、これはファントム戦闘爆撃機二機分にすぎないのであります。したがって、軍事費を撤廃し、人民の生活を守る予算に組みかえるべきであります。  本委員会審議を通じて明らかなように、本予算案は佐藤内閣の反動的政策をそのまま反映したものであります。政府は、今日安保沖繩問題責任ある態度国民の前に明らかにすることを避け、特に沖繩問題では、白紙という欺瞞を押し通したままで争点をそらせ、さらにトロツキスト暴力集団を意識的に泳がせ、これを利用し、大学問題を治安対策にすりかえ、これを口実に抜き打ち解散、総選挙を画策しておるということは、断じてこれは許されません。  こうした反動的政策に基づく本予算案に対して、わが党は断固として反対し、次のことを要求します。  一、大企業、大金持ちに対する租税の特別減免措置を取りやめ、高度累進課税によって二兆円の増収をはかり、これによって所得税の免税点を引き上げ、生活必需品の間接税を大幅に減免し、中小企業の法人税率を引き下げること。赤字公債の発行を停止すること。  二、国債費、防衛関係費、司法警察費、貿易振興経済協力費、海運対策費、産投会計繰り入れなどをはじめ、旅費、物件費、施設費など、一兆数千億円を節減し、これを物価対策、社会保障制度の画期的な拡充、交通事故と公害の絶滅、住宅難と災害の解消、文教政策の拡充、公務員賃金の大幅な引き上げ、農民の経営の安定と農業の自主的な発展、中小零細企業対策等の充実、沖繩対策費の大幅増額、同和対策、地方財政対策の強化に組みかえること。  三、特別会計、政府関係機関会計の全面的な民主化をはかり、財政投融資計画を人民の利益のために組みかえること。財政投融資計画を国会の議決を要するように改めることなどを要求します。  最後に、社会党、公明党それぞれの組みかえ案につきましては、個々の項目については賛成できるものもありますが、政府原案に対する基本的な立場において相違するものがありますので、賛成できません。  民社党案については反対であります。  以上をもって私の討論を終わります。
  353. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、中澤茂一君外十三名提出の昭和四十四年度総予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  354. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立少数。よって、中澤茂一君外十三名提出の動議は否決されました。  次に、小平忠君外二名提出の昭和四十四年度総予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  355. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立少数。よって、小平忠君外二名提出の動議は否決されました。  次に、広沢直樹君外二名提出の昭和四十四年度総予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  356. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立少数。よって、広沢直樹君外二名提出の動議は否決されました。  これより昭和四十四年度一般会計予算昭和四十四年度特別会計予算昭和四十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  357. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立多数。よって、昭和四十四年度予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  なお、おはかりいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     ―――――――――――――   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕     ―――――――――――――
  358. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  359. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて昭和四十四年度総予算に対する議事は全部終了いたしました。     ―――――――――――――
  360. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  去る二月一日総予算の審査を開始いたしまして以来、慎重審議を尽くし、本日ここに円満に審査を終了するに至りました。  ここに、連日審査に精励されました委員各位の御労苦に対し、深く敬意と感謝を表する次第でございます。また、私に寄せられました御好意に対しましても、厚く御礼を申し上げ、ごあいさつといたす次第でございます。(拍手)本日は、これにて散会いたします。    午後八時三十分散会