○山中(吾)
委員 私は、
日本社会党を代表して、
昭和四十三年度補正
予算案に対し、反対の態度を明らかにするものであります。
まず第一に、私は今回の補正の主要な
原因をなしている食糧
管理特別会計の補正
予算が提出されていないことに、北山
委員の質疑によって明らかになったとおり、重大な疑義があることを指摘いたします。一般会計の歳出の中から食管会計への繰り入れ三百七十億円の増額を行なうことは、言うまでもなく、食管会計自体の中にそれだけの赤字を生む
事情が生じたものであり、一般会計への繰り入れを増額するならば、これを受け入れる食管特別会計側の歳入歳出の補正が不可欠であることは理の当然であり、食管会計の予備費、弾力条項の
運営によって処理できるからという理由により食管会計の補正をしないことは、明らかに誤りであり、はなはだしく
国会軽視であるといわなければなりません。事実
昭和三十五年から四十二年まで一貫して、食管会計への繰り入れをふやすときは必ず食管会計自体の補正
予算をあわせ提出してきたのにかかわらず、本年突如としてこれを取りやめたことは、まことに奇異の感を与えるものであり、深い疑念を持たざるを得ないのであります。このような財政法の公開の原則、すなわち国の財政
運営がガラス張りで
国民に公開する原則を無視し、
国会の審議を極力回避して、
政府各省の内部で適当に運用するという官僚的な風潮は、まさしく民主的な議会
政治の敵であり、最近ともすれば
政治が
国民から遊離する
傾向を助長するものとして、
政府、
国会ともに戒心、反省しなければならないと思います。私は、
政府、特に大蔵省の反省を求め、憲法及び財政法の原則に立ち返り、これを改めることを要求するものであります。
第二は、今回の補正によって
政府のいわゆる総合
予算主義が事実上破綻したということであります。いわゆる補正なし総合
予算主義なるものは、それ自体非合理、非現実的なものであり、必要の場合には補正
予算を組むことのほうが、財政法のいわゆる正しい総合
予算主義なのであります。まして今日のように
経済変動が激しく、物価上昇の時期に、
政府の
経済見通しすら大幅に狂う状況のもとにおいて、国の財政を当初
予算でくぎづけしようとすることは、ナンセンスというほかありません。むしろ
政府の主観的総合
予算主義の無理押しの真のねらいは、一方において生産者米価、公務員給与を押え、医療費、運賃の値上がりを許し、
国民の負担にしわ寄せをして、他方、自衛隊、機動隊の増強、海外
経済協力の名による米国のアジア援助の肩がわりのための財源を確保する点にあったことは、事実によって明らかになりました。私は、今回の補正により、不合理な総合
予算主義の破綻を指摘し、正しい財政法の原則に立ち返ることを要求するものであります。
第三に、この補正によって大衆の重税の実態が一そうはっきりしたことであります。二千四百億円以上の税の自然増によって、四十三年度当初の六千五百七十六億円に合わせて約九千億円の自然増があったのであり、これに対して実質減税ゼロの
佐藤内閣の租税政策がいかに不法、不当であるが、一そう明瞭になったことであります。
佐藤内閣は、
昭和四十二年の自然増収に対して、わずか八百億円の減税、四十三年は九千億円に対して実質減税ゼロ、四十四年度は一兆一千九百五億円の自然増の見込みに対して千五百億円しか減税を計画しておりません。このような重税政策と物価高のため、いわゆるいざなぎ景気にもかかわらず、一般大衆の生活は楽にならず、むしろ苦しくなってきていることは、世論調査がこれを示し、またきのう堀
委員指摘のとおり、
国民総支出の中の個人消費支出の割合は、
佐藤内閣になってから五五・九%から五一%まで低下しているのであり、労働者は三百七十万人も人員がふえたにもかかわらず、雇用者所得が四十年の五六・六%から五五%に下降していることにも示されており、
佐藤内閣の重税と物価高による勤労者生活圧迫を実証していると思うのであります。
第四に、今回の補正で国債発行を千六百二十三億円を減額されたのでありますが、税収のいかんによって適宜に発行額を伸縮することは、
政府の国債発行が、特定の公共事業を対象とした建設国債ではなくして、単なる赤字国債にすぎなかったことを示すものであります。
佐藤内閣の手によって発行された既発行債は約二兆円、そのうち日銀買い入れは八千六百億円、結果としては日銀引き受けの通貨増発につながり、インフレ物価高の一役を大いになっているのであります。
第五に、以上の見地からすれば、二千四百億円の税の自然増収は、当初
予算の欠陥とひずみを是正するため、これを大衆に還元すべきであります。このように十分の財源がある以上、五月にさかのぼって人事院勧告を完全に実施し、そのための二百億円の
予算を計上すべきであり、また生活保護費、失対賃金について物価値上がりと格差是正のための
予算の計上、
国民健康保険事務費の完全補償、累積赤字の精算分及び公害
対策、石炭
対策など、
国民の緊急課題の
対策予算を増額すべきであると考えます。また、沖繩の財政窮迫が伝えられておりますので、その援助のための財政措置を追加するよう配慮すべきであろうと思うのであります。
以上、補正
予算に対するわが党の見解を申し述べましたが、
政府の
予算案は、全くわれわれの要求とかけ離れたものであり、大衆負担のしわ寄せによる
国民生活軽視の本質を明らかにして、反対するものであります。(拍手)