運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1969-02-19 第61回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月十九日(水曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 櫻内 義雄君 理事 田中 龍夫君    理事 塚原 俊郎君 理事 中野 四郎君    理事 八木 徹雄君 理事 大原  亨君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    植木庚子郎君       臼井 莊一君    上林山榮吉君       仮谷 忠男君    川崎 秀二君       倉成  正君    小坂善太郎君       重政 誠之君    田中伊三次君       竹内 黎一君    灘尾 弘吉君       野田 卯一君    野原 正勝君       橋本龍太郎君    福家 俊一君       福田  一君    船田  中君       松浦周太郎君    松野 頼三君       湊  徹郎君    岡田 春夫君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       久保 三郎君    田中 武夫君       高田 富之君    楯 兼次郎君       楢崎弥之助君    畑   和君       堀  昌雄君    山内  広君       麻生 良方君    鈴木  一君       沖本 泰幸君    中野  明君       林  百郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 西郷吉之助君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 長谷川四郎君         通商産業大臣  大平 正芳君         運 輸 大 臣 原田  憲君         郵 政 大 臣 河本 敏夫君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 坪川 信三君         自 治 大 臣         (北海道開発庁         長官)     野田 武夫君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      保利  茂君         国 務 大 臣         (総理総務長         官)      床次 徳二君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 有田 喜一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      麻生  茂君         防衛庁衛生局長 浜田  彪君         防衛庁経理局長 佐々木達夫君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         科学技術庁長官         官房長     馬場 一也君         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君         法務省刑事局長 川井 英良君         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省主税局長 吉國 二郎君         大蔵省理財局長 青山  俊君         大蔵省証券局長 広瀬 駿二君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         大蔵省国際金融         局長      村井 七郎君         国税庁長官   亀徳 正之君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省畜産局長 太田 康二君         食糧庁長官   桧垣徳太郎君         林野庁長官   片山 正英君         水産庁長官   森本  修君         通商産業省通商         局長      宮沢 鉄蔵君         通商産業省貿易         振興局長    原田  明君         運輸政務次官  村山 達雄君         運輸省航空局長 手塚 良成君         海上保安庁長官 河毛 一郎君         気象庁長官   柴田 淑次君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      宇佐美 洵君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十八日  委員江崎真澄君及び山中吾郎辞任につき、そ  の補欠として赤澤正道君及び中村重光君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員中村重光辞任につき、その補欠として山  中吾郎君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員阪上安太郎君、山中吾郎君、神田大作君及  び松本忠助辞任につき、その補欠として堀昌  雄君、岡田春夫君、鈴木一君及び中野明君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員岡田春夫君及び堀昌雄辞任につき、その  補欠として山中吾郎君及び阪上安太郎君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 二月十八日  昭和四十三年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十三年度特別会計補正予算(特第1号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十三年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十三年度特別会計補正予算(特第1号)      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十二年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十三年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して議題とし、審査に入ります。     —————————————  昭和四十三年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十三年度特別会計補正予算(特第1号)   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 まず、両案の趣旨について政府説明を求めます。大蔵大臣福田赳夫君。
  4. 福田赳夫

    福田国務大臣 政府は、今回昭和四十三年度一般会計補正予算(第1号)及び特別会計補正予算(特第1号)を国会に提出いたしました。ここに、その概要を御説明いたします。  まず、一般会計補正予算(第1号)について申し述べます。  今回の一般会計補正予算におきましては、歳出において総額千二百八十億円の追加を行ないますとともに、既定経費の節減二百九十三億円を修正減少し、差し引き九百八十七億円を増加しております。  一方、歳入につきましては、租税及び印紙収入増加見込み額二千四百五億円を追加計上いたしますほか、税外収入の増二百五億円を計上いたしておりますが、公債金を千六百二十三億円減額しておりますので、差し引き増加額は、九百八十七億円となっております。  この結果、昭和四十三年度一般会計予算は、歳入歳出とも五兆九千百七十三億円となるのであります。  歳出追加につきましては、当初予算作成後に生じた事由に基づき、特に緊急に措置を要するものにつきまして、所要の額を計上いたしたのでありますが、次に、その内容につきまして御説明いたします。  まず、食糧管理特別会計への繰り入れに必要な経費でありまして、三百七十億円を計上いたしております。  これは、国内米政府買い入れ数量が著しく増加する見込みであること等により、食糧管理特別会計食糧管理勘定における損失額が当初予算において予定いたした額より大幅に増加する見込みとなりましたので、同特別会計経理運営の改善をはかるため、一般会計から同特別会計調整勘定追加繰り入れすることとしたものであります。  次に、国民健康保険助成費昭和四十三年度不足見込み額として、百七十四億円を計上いたしております。  最後に、地方交付税交付金でありますが、これは、所得税法人税増収、及び酒税減収歳入に計上いたしたことに伴い必要となるものでありまして、これらの三税全体としての増収額の三二%相当額の七百三十六億円を計上しております。  歳入につきましては、最近の経済情勢及び現在までの収入状況等を勘案し、まず、租税及び印紙収入におきまして、所得税法人税等を中心に増収を見込むとともに、酒税印紙収入について減収見込み、全体として増収見込み額二千四百五億円を計上いたしております。さらに、税外収入におきましては、日本専売公社納付金日本銀行納付金等につき、二百五億円の増収を見込んでおります。  一方、公債金を千六百二十三億円減額しておりますので、差し引き歳入増加額といたしましては、九百八十七億円を追加計上いたしておる次第であります。  次に、特別会計補正予算(特第1号)につきましては、一般会計予算補正に伴いまして、交付税及び譲与税配付金特別会計について、所要補正を行なうことといたしております。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同いただきたいと存じます。
  5. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて大蔵大臣説明は終わりました。     —————————————
  6. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより質疑に入ります。  楯兼次郎君の質疑に入るわけでございますが、先ほど理事会の協議の結果、北山愛郎君の発言を許すことになりましたので、北山君に発言を許します。北山愛郎君。
  7. 北山愛郎

    北山委員 私は、今回提出をされました一般会計特別会計補正予算案そのものにつきまして重要な疑義がありますので、議事進行上の質問をいたしたいと存じます。  これは昨日も本会議質疑になりましたが、今度の補正予算の重要な原因になりましたところの食管会計における補正要因、これが政府総合予算主義を放棄してまで追加補正をしなければならなかった重要な原因をなしておるわけでありますが、一般会計補正においては三百七十億の食管会計繰り入れを計上しておきながら、これを受ける側の食管特別会計補正提案をしないということは、これは何としても納得がいかないわけであります。政府は、大蔵大臣は、昨日の本会議で、食管特別会計予備費並びに弾力条項を運用して間に合っておるという御答弁でありますが、これでは納得がいかないのであります。もしもそれが予備費なり弾力条項で間に合うものであるならば、なぜ一体一般会計から三百七十億の繰り入れをしなければならなかったか。今回の補正の重要な要因をなしておるところの食管特別会計内容補正を、案を出さないで、単に三百七十億の繰り入れをふやす、こういうことでは、これは折り目正しいところの予算案と言うことはできないのであります。私は、この委員会におきまして、再々、折り目の正しい予算審議並びに予算案提案、これを要望しておるわけでありますが、今回のこの補正予算というのは、その点においてこれは重大な欠陥がある、重大な誤りがある、かように考えますので、この点について大蔵大臣からはっきりと御説明を願いたいのであります。
  8. 福田赳夫

    福田国務大臣 ただいまお話しのように、今回の補正予算はなせ起こったかといいますと、米の政府収買が予定よりはるかに大きくなった、これに基づくものであります。したがいまして、本予算におきましてその補正増額お願いをしておる、つまり食管会計繰り入れお願いをしておる、かようなことに相なっておるのは御承知のとおりであります。  ただ、その一般会計から補正をいたしまして特別会計繰り入れを行なう、その繰り入れの相手方である食管会計補正を行なうかどうか、これは慎重に検討をいたしたわけであります。しかしながら、すでに食管会計におきましては、歳出権変動のあることを予期いたしまして予備費制度があるのであります。また弾力条項というのも御審議を経てこれを整えておるのであります。でありますから、食管会計歳出面におきましては、もうすでに国会の御審議お願いする必要はない、かように判断をいたしたのであります。また、食管会計歳入につきましては、これは見積もりでございますので、これまた御審議をあらためてお願いする必要はない、さようことから、本予算補正、それだけをお願いをする、かような措置をとったわけであります。歳入につきまして、さような歳入変動があるかもしらぬ、そういうような際に補正はしないと、こういうことは幾多の前例があるわけでありまして、いま初めてのことはない。その前例に従がいまして措置をした、かように御了承願いたいのであります。
  9. 北山愛郎

    北山委員 大蔵大臣前例をあげての説明でありますが、それならば四十二年度の補正について、やはり同じように食管会計への繰り入れをやったわけです。ところが、これに関連をした食管特別会計補正をやったじゃないですか。四十一年度もそうです。私の調査では、昭和三十五年以来、毎年食管会計繰り入れ補正を、増額補正をしたときには、必ずこれを受けて、食管特別会計補正予算を出しておる。補正予算を出しておる。なぜことしだけ出さないか。その理由をはっきりしていただきたい。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう際には、過去において新た、に歳出権お願いをしなければならぬという事情があったからお願いしたのです。今度は予備費があります。また弾力条項があります。さようなことで、歳出権についてのお願いをする必要はないと、かように判断をいたした次第であります。
  11. 北山愛郎

    北山委員 四十二年度の特別会計予算総則の中にも同じような弾力条項があるのです。あなたは、前にはそういう弾力条項がなかったとかなんとか言いますけれども、同じような弾力条項があって、予備費もあった。それにもかかわらず四十二年度においては、一般会計だけじゃなくて、食管特別会計補正予算を出している。四十一年度もそうです。いままでは三十五年以来ずっと出しておきながら、なぜことしだけ出さないのか。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 その当時はさようなことでありましたが、いま主計局長から詳細に御説明申し上げます。
  13. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 お答え申し上げます。  四十三年度の予算におきまして、御承知のように米価に対しまして総合予算主義をとって、いわゆる当初予算におきまして米価考え方を示してあったわけであります。従来、米価問題が補正段階、あるいは米価審議会が開かれたあとで措置をとられたわけでありますが、その際に、歳出権が足りなくなるというような問題を生じまして、補正お願いしたのでありますが、その際いろいろ問題が出ましたのは、やはり補正の時期の問題が一つあります。予算がなくなりましたので、従来は農協等の立てかえというようなことが行なわれたわけであります。これらのことを、四十三年度の予算の編成の際は、年度内の米価問題につきまして一定の考え方をとったことは御承知のとおりでありますが、その際に、そういった予算の執行に支障のないような措置を四十三年度においてとられたわけであります。  その主要な点は、一つ予備費増額でございます。この予備費は、国内米管理勘定で前年七百五十億円の予備費を設けておりましたが、これを倍額の千五百億円にいたしたというようなこと。それからいわゆる糧券発行限度でありますが、糧券発行限度は前年の九千八百億円を一兆五千億円に拡大をいたしました。十分な糧券発行ができるようにいたしますとともに、糧券につきましても、昨年から、四十三年度予算ではいわゆる弾力条項を設けた次第であります。これらの措置によりまして、予備費弾力条項で、米の買い入れについては農協が立てかえるというようなことが起こらないような措置がとられたのであります。それから支出の時期につきましては、十二月中にどんどん供出が出てまいったわけでありまして、弾力条項の発動が昨年十一月から始まりまして、十二月に非常に大量な買い付け資金が必要になりました。一月の二十一日までに、非常な資金が必要になりまして、これらのものは、すでにこの歳出としては、もう始末がついたものであります。  したがいまして、今回のこの段階補正お願いいたしますといたしましても、歳出の面ではすべてもう事が済んでしまったものでございますから、歳出面では補正お願いをする手段がないわけであります。したがいまして、今回補正をいたします場合には、調整勘定歳入事項が変わるということだけなんであります。その調整勘定歳入につきましては、いわゆる糧券発行で、すでに糧券が出ておりますけれども、この糧券が、一般会計から三百七十億円入ることによりまして、糧券一般会計からの繰り入れ金に振りかわるということが起こるだけでありまして、これだけの、いわゆる歳入の項目だけの修正というものは、これはいろいろ検討いたしたのでありますけれども歳入は、予算の性格上見積もり——特別会計としては見積もりであるが、一般会計から出す場合においてはこれは歳出権であります。したがいまして、一般会計歳出権お願いいたしまして、これによりまして調整勘定のほうは特別会計歳入としてそれだけの変動を生ずるということでありますので、いろいろ検討いたしました結果、食管につきましては補正は提出しないというわれわれの結論を出した次第でございます。御了承願います。
  14. 北山愛郎

    北山委員 いまの鳩山さんの答弁は、要するに、補正が出ないようなたてまえをとってきたのである、だからそういう運用をしてきたのだと言う。  しかし、今日補正予算が必要となったのじゃないですか。それならば、時期はおくれたにしても、当然やはり補正をすべきである。もしも、もう二月だから補正予算が必要でないとなれば、これはよその予算案でも同じような理由である。私は、そんなことじゃ納得ができない。問題は、この弾力条項などは異例中の異例なんです。そうじゃなくして、普通に予算案でもって必要なものは補正をし、そうしてその予算の費目の中で運用するというのが当然であるのに、その一つ例外として、特例としての制度なんだ。それをこのような乱用をしておいて、しかも足りなくなって一般会計から三百七十億も繰り入れをせざるを得ないようにしておきながら、特別会計補正をしない。受け入れ側のほうの補正をしない。これは何としても理屈が合わないことだ。しかも、先ほどの御説明でありますけれども食管勘定だけじゃありませんよ。いまの調整勘定だけではなくて、輸入飼料勘定において三十七億円減額している。その減額事情も、この特別会計の中の不用額が出たということで一般会計減額をしているでしょう。だから、どの点に不用額が出たか。いわゆる食管会計補正をこれに伴ってやらなければいけない。あるいはまた、国債費において八十四億の減額をしております。これは大蔵省所管だ。これも国債整理基金特別会計不用額が出たから、そこで八十四億円の国債整理基金特別会計への繰り入れを減らしたのです。この事情も、説明にあるとおり、特別会計側事情によって減額しているのでしょう。  一般会計特別会計一体のものですよ。特別会計歳入にしても、単なる自然増収みたいなものじゃないのです。自然に歳入予算以上にふくらむから補正が要らないというような性質のものじゃない。一般会計特別会計関連を持って、一体になっているのです。食管会計不足だから一般会計から三百七十億ふやしたのだ。とするならば、特別会計もその点を計上して、その内容補正をするのが当然なんです。私は何としても納得がいかない。もう一度大蔵大臣から御答弁願いたい。
  15. 福田赳夫

    福田国務大臣 いまたまたま本予算の、補正予算の御審議お願いするものですから、ただいま御指摘のような御議論が出てくるわけでございまするが、しかし本予算の御審議お願いはしない、お願いをする事情はないという場合においても、特別会計においてはただいま御指摘のようなケースが幾らでも起こるのでありまして、そういう際において、特に特別会計の御審議お願いするということはいたしませんです。たまたま関連して特別会計のほうが目についた、こういうことだと、かように考える次第でございます。  しかし、特別会計一般会計とは深いつながりがありますので、正式な予算案としての御審議お願いはいたしておりませんけれども、しかしながら深い関係がありますことにかんがみまして、特別会計につきましてはちゃんとこれを御理解できまするように資料は整えておることを御了知願いたいのであります。
  16. 北山愛郎

    北山委員 いまの大蔵大臣説明は、これは補正事情が出なかったら、弾力条項で運営できるなら、それでいいんですよ。予備費弾力条項で運営する、これは例外ではあるけれども、それが予算総則で認められておる。しかし、いまはそれじゃいけなくて、一般会計からの繰り入れをふやさなければならぬような事情が出ているでしょう。それならば、当然その事情を裏づける特別会計補正をすべきなんです。たまたま補正要因が出たから問題になったので、それでなかったら問題にならぬなんといことは、そんなことは大蔵大臣答弁としては私は受け取れないのです。もっと筋の通った、折り目正しい答弁をしていただきたい。  とにかくいままで、私調べたところでは三十五年度からですが、毎年若干の食管会計繰り入れをしているのです。そうすれば必ずこれを受けた食管特別会計補正を出しているのです。なぜことし出せないのか。
  17. 福田赳夫

    福田国務大臣 それは御指摘のとおり、特別会計一般会計、これは深い関係一体関係があるのです、出し方と受け方でございまするから。しかしながら、これを厳密な法理論からいいますると、御審議お願いするのは一般会計であり、特別会計のほうは一般会計とは関係なく実行できるたてまえになっておるのだ、こういう法的な解釈をいたしておるわけです。私どもも部内において、これをどうするかということをいろいろと議論をしてみた。議論をしてみましたが、結局ただいま私が申し上げているように、法的に申し上げますと、これは政府で行ない得る弾力条項実行であり予備費実行である、かような解釈をとるに至っておるのであります。私は、ただいまお話しのような御議論のあることは承知しております。しておりまするけれども、どうもいろいろ検討した結果、私どものその解釈をとるほうが適切であるという判断のもとに御審議をただいまお願いをしておる、かようでございます。
  18. 北山愛郎

    北山委員 これは政府の中でも大蔵省のかってな解釈なんですよ。財政法原則じゃないのです。財政民主主義原則というのは、やはり財政の問題については国会の議決を原則としているのです。弾力条項というのは例外、特例なんですよ。それが通例のようにして、そうして予算総則にそういうことがあるから何でもできるというような、そういう予算総則弾力条項の乱用は許されないのです。これは財政法原則として、憲法の原則としても許されない。  やはり食管内容においてどういう運用がされたか。当初予算とはずっと違ったのですよ。米は二百万トンもよけい買い入れがふえた。しかも四十万トンぐらい売り払いのほうが減ったでしょう。値段が両方とも、買い入れ価格も売り払い価格も変わってきた。重大な変更が内容にあったのです。ですから、それをやはり予算の中で補正をして、正しい処理をするというのが当然であって、これを予備費弾力条項があるからといって、大蔵省だけでかってなまねをしてもいいということは、財政法原則じゃないのですよ。私は総理大臣に、大体事情がわかったと思いますので、総理大臣の見解を承りたい。
  19. 福田赳夫

    福田国務大臣 年度の途中におきましてどんどんと事情が変化していくわけです。その変化に対応いたしまして財政がどういうふうな仕組みになるか、その際に国会との関係はどういうふうになっておるかということは、これはもうきちんと財政法等においてきめてあるわけなんであります。そのきめるところに従いまして私どもは行動いたしております。  今回のこの問題につきましても、あるいはこれはついでだから特別会計につきましても御審議をわずらわしたほうがよかろうというような御意見も立ち得ると思うのです。しかし、いろいろ私ども詳細にその得失、法理論というものを検討してみたのでございます。ございますが、特別会計のほうは、これはもう特に予備費制度もあり、弾力条項制度もある、さようなことでありますので、これは国会へ正式な予算案として御審議をわずらわす事項ではない、しかしこれは一般会計予算と深いつながりのある問題であるから、これは参考資料として十分御説明し、御納得を得なければならぬ事項である、かように考えておるのであります。
  20. 北山愛郎

    北山委員 参考資料は予算じゃないですよ。説明資料にしかすぎない。予算じゃないのです。私は当然一般会計の変化に応じて、しかも今度のいわゆる総合予算主義まで捨てて追加補正をしなければならなかった重大な原因をなしておる食管会計の中に、ですから特に当然これは政府としてもその内容を出して、そしてこういうわけでこういう計算になったから三百七十億の一般会計繰り入れを減らさなければならぬのだと、なぜ出せないのですか。出すのが当然じゃないですか。しかも、弾力条項云々と言いますけれども、昨年だって、一昨年も、みな弾力条項があるのですよ。同じような規定があるのですよ、予算総則に。いままでずっとあるのです。それがあっておりながら、去年までは食管会計補正予算を出したのです。なぜ去年のとおりできなかったのですか。総理大臣、見解をお聞きしたいのです。
  21. 福田赳夫

    福田国務大臣 それでありまするから、私どもは参考資料といたしまして、特別会計においてなぜこういう事態になるかということを明らかにしようとしておるのであります。これが私ども補正予算の必ず必要なものとは考えません。しかし一般会計と深いつながりがある問題でございますので、これは十分完全な資料としてごらん願いたい、かように考えておるのであります。   〔「そんなのじゃだめだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  22. 北山愛郎

    北山委員 とにかくいかに言われましても、参考資料の中を見ましても、昨年までは食管補正予算を出したが、ことしは出さぬでもいいということは何一つ書いてませんよ。これは出すのが当然なんです。それを何だかんだと言って、弾力条項を乱用して、出さないで済まそうとする。これは不当ですよ。これは国会を軽視している。総理大臣、これは検討してもらいたい。
  23. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま、この点につきましては、御納得がいくように主計局長がその事情を御説明申し上げます。   〔「だめだ、だめだ」と呼び、その他発言する者あり〕
  24. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御静粛に願います。
  25. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 ただいまの問題について、お答え申し上げます。  先ほど申し上げたことでございますが、食管会計に対します一般会計から入れます三百七十億というものは、これは食管会計の損益からくるために繰り入れが必要なのであります。食管会計歳入歳出は、これは金の出し入れでありますから、損益がそこに書いてあるわけではないのです。損益が生じますのは、各勘定におきます損益計算をいたしまして、損益計算でどれだけ損が出るかということがきまってきて、それでその損益を処理するために一般会計から入れるわけであります。  特別会計におきましては、損益は参考資料としてバランスシートと損益計算書をつけることになっておりますが、これは参考資料でありまして、歳入歳出という面から申し上げますと、これは関係がないのです。歳入歳出は、調整勘定で申し上げますと、糧券の借り入れとそれから一般会計繰り入れとでまかなわれますけれども、会計のたてまえとしては、これは片方の歳入面におきましては、糧券でまかなわれても一般会計からの繰り入れでまかなわれても、これは予算が執行できるわけでありますから、問題はバランスシートないし損益計算にあるわけであります。損益計算の推移がどういうふうになるかということは、これは三百七十億の問題につきまして一番関係の深い点でありますので、この点につきましては、御納得のいくような資料もお出しして、御納得を得たいと思っております。これはいわゆる参考資料の問題でありますので、法的に歳入歳出との関係から申し上げますと、これは歳出権としては全部始末がついて、いわゆる処理済みになってしまったものでございますから、ただいまこれを歳出の面でどれだけの修正をするかといっても、現在もう修正の余地がない。したがって、御審議をわずらわすために歳出面におきます補正をすることができないために、今度はお出しできなかったわけであります。従来は、三十三年以来、一般会計からの繰り入れをいたしますと、必ず補正を出しております。食管会計補正をいたしております。これは、その時点におきまして、歳出権補正をいたしませんと執行ができなかった面があったのでございます。この点につきましては、今年度の予算総則におきまして、四十三年度中に執行ができますように各種の弾力条項を若干修正をいたしております。この点が、先ほど申し上げました糧券発行限度につきましても弾力条項お願いしてございますので、その面で執行ができて、すでにこれは弾力条項を発動してお米はほとんどみな買ってしまったわけでありますので、修正の余地がない、こういうことで御了承をお願いいたしたいのであります。
  26. 北山愛郎

    北山委員 いまのような答弁は、これは食管会計補正予算を出して審議する内容なんです。案を出しておかないでおいて、そんな議論できませんよ。   〔「いまの答弁はなおおかしい」「休憩、休憩」と呼び、その他発言する者多し〕
  27. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと、理事におまかせください。理事が相談をしますから……。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕
  28. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 暫時休憩いたします。  一時に再開するめどでございます。    午前十一時三十五分休憩      ————◇—————    午後二時十四分開議
  29. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  この際、大蔵大臣福田赳夫君より発言を求められておりますので、これを許します。大蔵大臣福田赳夫君。
  30. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回の補正予算の扱いは、これを前例といたしません。なお、今後補正予算の扱いにつきましては、皆さんの御意見を十分尊重し、検討いたしたいと存じます。
  31. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより楯兼次郎君の質疑を行ないます。楯兼次郎君。
  32. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は、社会党を代表して数点について質問をいたしたいと思います。  まず最初に、けさ新聞を見たのでありますが、横須賀の、原潜が入っておりますが、「ズサンな放射能監視体制」と、こういう見出しで、監視体制が不備ではないかという記事が出ておったわけであります。十日の日にアメリカの原潜ハドックが入港以来、港内にあるモニタリング・ポスト、これは放射能自動記録装置だそうでありますが、放射能の異常値を七回も数えておる、十四日以来五日間このことが続いておるというふうに新聞報道がなされておるのであります。われわれ、専門家ではありませんのでこまかい点はわかりませんが、非常に住民は不安がっておる、こういうことも報道をされておるのでありますが、担当大臣はこのことについてどういう所見と措置をとられようとしておるか、科学技術庁長官防衛庁長官にお伺いをいたします。
  33. 木内四郎

    ○木内国務大臣 お答えいたします。  お説のように、十日の午前九時にハドック号が入ってまいりました。それからいま七回とおっしゃいましたけれども、十日、十二日ですね、それから十四日、十五日、十六日、十七日、十八日と、この間におきまして毎日異常値が私どもの監査機器のほうにあらわれてまいりました。そのことは新聞などでありまするので御案内と思うのでありますが、そのうち十四、十五、十六、この三日間は、これも御案内と思うのですけれども、このごろは鉄のパイプとかそういうものの診断をやるわけなんです、アイソトープを使いまして。ちょうど人間の胸をレントゲンでとって写真にとると肺のあれがわかるように、このごろは鉄管でも何でもアイソトープを使ってわかるわけなんですよ。そこで、その三日間のものは、米国の駆逐母艦のプレイリーというもので行ないましたところのノンディストラクティブ・テストといいますか、新聞ではあるいはこれを非破壊検査ともいっておりますが、場合によりますと探傷——傷をさぐる検査、こういうことをいっております。その三日間のは、そのプレイリーから出ましたところのアイソトープ、イリジウム192を使いましたガンマ線によってこれはやったわけなんです。そこで、私どもの機器はその放射能を受けることになっておりますので、このガンマ線もやはり放射能を持っておりますから、それがこれに響いた、こういうことが明らかになったわけですね。それから十日の異常値というものは、アメリカの駆逐艦のウェーデル号、それから十二日のはアメリカの電波中継艦のアーリントン号、これは航海用のレーダーを使ったわけです。それから十五、十六、十七、十八。十五、十六はやはり同様にプレイリーから出ましたところのをさっき申しましたのですが、十五、十二日、それから十七、十八、これはやはりフリゲート艦のスターレットあるいはいま申しましたところの電波中継艦のアーリントン、これから出ましたレーダーの結果である、こういうことが明らかになったのです。いずれにしましても、この間におきまするところの放射能の探知機にあらわれましたところは、いずれも原潜から出た放射能の結果ではないということが明らかになったわけです。  そこで私どものほうとしては、私どもの調査はそれですけれども、異常の不安を市民に起こさせるということをおそれまして、そしてアメリカのほうに外務省を通じて申し入れてもらいました。なるべくそういう不安を起こすようなことをしないようにしてもらいたい、こういうことを申し入れたのです。ところが、いま申しましたノンデストラクティブ・テストのほうは、これはわが国におきましても、艦船の溶接とか、鋼管の溶接とか、あるいはボイラーの鉄管の検査とか、あるいは日本航空の飛行機のプロペラのシャフトの検査などにも広く使われているわけなんですね。これを今回は相当長い期間で、十二日にもわたる停泊でありますので、その間にいろいろそういう設備の検査をしなくてはならぬので、それはどうもある意味からいうとやむを得ないのです。けれども、これはアメリカのほうも協力しまして、こういう場合にはあらかじめ知らせよう、こういうことになりました。事前に私どものほうへ知らせてきているわけです。ところが、レーダーのほうは、数十隻の艦船が入っているらしいのですね。それが出たり入ったりする、その航行用のレーダーまでとめるわけにいかぬ。たくさんの船が出たり入ったりしている。それを一々そのレーダーをいつ使うというようなことは、ちょっと言いかねる、こういうことになっております。  そこで、しからばこの間からたびたび御質問があったのですが、レーダーはこれは区別して、レーダーを使ってもその機器に影響のないようにしたらいいではないか、こういうお話であります。その点につきましては、前の長官当時におきまして、それはできるだけひとつそういうことにしようということを申し上げたことがあるのです。そこで、前の長官も非常に尽力されまして……(発言する者あり)いや、これはちょっと大事なことですから、そう簡単には……。そこで、それは前の長官も申し上げた手前、非常に努力されまして、日本でも有数なそういう機器をつくるメーカーに対して注文を出したのです。これはレーダーの影響を受けないようなものをこしらえてもらいたいということを注文を出して、契約書にも書いてあるのです。ところが、その一流のメーカーが、これはどうもできません。放射能は、いまのノンディストラクティブ・テストのほうでも、これは放射能だから、放射能の検定器にすぐに影響を及ぼすのは当然です。しかし、レーダーのほうは、やはり電気なんです、性質は全く違うのです。全く違うのですけれども……。
  34. 楯兼次郎

    ○楯委員 委員長、長過ぎるから、これは質問時間を延ばしてもらわぬと……。
  35. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いや、これは国民の不安を解消するために非常に大事なことですから、これだけは申し上げさせていただかなくてはならぬと思うのです。  そこで、このレーダーのほうの電気の、いわゆるエレクトリックノイズですね、これが機器に対する影響と、ノンディストラクティブ・テストのほうの放射能を使っての試験とを区別できぬか、こういう問題になるのですけれども、これは区別しようとしましたことはいま申し上げたとおりですけれども、放射能のほうも、放射能自体としてその機器にすぐ響くのでなくて、それは電気に変わって機器に響くわけなんです。ところが一方、レーダーのほうも電波によっていくのですから、それからそれは……(発言する者あり)これは大事なところですから、ちょっと……。そこで、それは区別する機器をつくることはできないというので、手をあげられたわけなんです。  そういうようなわけですから、私どものほうとしては、最善の努力をいたしておるつもりでございます。
  36. 楯兼次郎

    ○楯委員 いま長官答弁されたようなことは、あなたのほうの言いわけで、われわれ新聞雑誌を読んでいるわけなんだ。ところが、どういう言いわけがあろうとも、原潜が入ってきた場合にこういう現象が起きる。ここをわれわれは非常にふしぎだ、こう思っておるわけですよ。その原潜が入ってきた場合、いま技術庁ではあのような言いわけをしておる。それを的確に答弁をしてもらえばいいわけなんです。  私は、ほかの質問が目的でありますので、進んでいきたいと思いますが、そういうむずかしい言いわけをしなくても、原子力潜水艦がこういう港に入らないようにしたらいいんだ、私はこう思うわけです。この入港禁止はできぬのですか、防衛庁長官
  37. 有田喜一

    ○有田国務大臣 これは核のないものでございますから、休養なりあるいはその他の目的を持ってきた場合は、入港を拒むわけにはいかないと思います。
  38. 楯兼次郎

    ○楯委員 断わることができないならば、入港のたびごとにこういう問題が起きる、起きると、先ほどの長官のような、だれにもわからないようなしちめんどうくさい言いわけばかりやらずに、国民が一言でわかるような具体的な防止装置をなぜ考えないのか。具体的にどうしたらいいのか。入港するごとにこんな問題をすぐ起こして、ほうっておくのか、なぜ具体的に防止策をとらないのか。この点どうですか。
  39. 有田喜一

    ○有田国務大臣 この問題は私の所管外の問題ですけれども、さようなことでありますので、私の聞いておるのは、御承知のとおり、これは他のレーダーのほうから放射線がたくさん出た、こういうふうに聞いておりますが、私の所管外でございますから……。
  40. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は、時間の節約でそういう質問をすまいと思ったのですが、あなたがそう言われれば、新聞等は何といって報道しておるか。原潜が入る、調査をする、まぎらわしくて把握できないように、いやあれだろう、これだろうというので、いろいろのことをやっておるということが報じられておる。だから、原潜以外のこういうものに対しては、調査するまで中止をしてもらいたい、こういう申し入れをしても、アメリカ軍は一向にのほほんとして日本政府のいうことを聞いてくれない、困ったものだというのが、私の聞きたいところなんです。この点どうですか。
  41. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 科学技術庁長官木内四郎君。簡単でわかりやすいような説明を願います。
  42. 木内四郎

    ○木内国務大臣 いま申しましたように、この原潜から出たのでないということは、もう確定しておりまして、これは新聞紙などにもみな報じられております。  しからば、これがいまのノンディストラクティブ・テストのほうから出たのか、あるいはレーダーのほうから出たのかということも、私のほうでは明らかになっておるのです。科学的には私がいま申し上げているとおりですけれども、それにもかかわらず、市民の間に異常な不安がありまするので、その不安につきましては、解消するために最善の努力を尽くしておる、かように申し上げるほかないと思います。
  43. 楯兼次郎

    ○楯委員 運輸大臣にお聞きいたします。  運輸大臣は港湾の整備等の責任があるわけですが、こういう怪しげな、はっきりしないものが来て、休泊をしておるということについて、あなたはどのような考えをとっておられるか、御答弁願います。
  44. 原田憲

    原田国務大臣 いまの放射能調査の体制の問題にかかってくると思うのでございますが、これはもうすでに御承知と思いますけれども、原子力軍艦の寄港に伴う措置につきましては、海上保安庁では、佐世保、横須賀の両海上保安部にそれぞれ安全対策本部を設置して、海上保安の業務に当たっております。昨年の五月六日の佐世保港におけるソードフィッシュ号在泊中の異常放射能事件を契機として、原子力委員会が決定をした原子力軍艦放射能調査指針大綱に基づきまして、科学技術庁の技術的指導を受けて、海上保安庁の放射能調査船の測定機器の整備を実施して、現在この機器を使用して港内の空中及び水中の放射能調査を行なっておるわけでございます。これは定期調査、非寄港時の調査、そうして寄港時の調査、こういうぐあいに行なっておりまして、その測定の結果の分析評価は、いま科学技術庁長官が言われたように、科学技術庁のほうでやってもらっておる、こういう体制でございます。
  45. 楯兼次郎

    ○楯委員 では次に、補正予算から入っていきたいと思います。  大蔵大臣に御質問をいたしますが、きのうの本会議——午前中いろいろありまして、私の質問は半減をしたわけでありますが、あなたのきのうの本会議答弁を聞いておりますと、もうすでに総合予算主義は第一年度で失敗をした。にもかかわらず、四十四年度の財政演説を聞きましても、きのうの高田君の質問に対しましても、なお将来とも総合予算主義を堅持をしていく、こういうことを言っておられるのでありますが、ざっくばらんに言って、もう補正予算を出したのですから、あっさりそういう主張は引っ込めたほうがすなおでわかりがよくてよろしい、こう私は思うのですが、どうですか。
  46. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、昨日の本会議におきまして、総合予算主義は崩壊したのじゃないかという質問がおそらく三回ぐらいはあったと思うのです。そのつど、崩壊はいたしておりませんと——つまり総合予算主義というのは、年度の初頭におきまして、年度の開始に先立ちまして、その年度のあらゆる歳出要因を検討し、それに対してあらゆる財源を整備する、これによって初めて国政が全般にわたってバランスのとれたものとして実行されるという考え方に基づくものでありまして、その結果、自然の勢いとして補正予算が編成されないで済む傾向に相なるわけであります。しかし、この総合予算主義は、一年たてば、その間に行政需要の変化があるのです。それに対応いたしまして、多少のワク内における組みかえ、そういう意味の補正を排斥しておる趣旨ではない、かように考えるわけであります。また同時に、年度の途中において非常に異常な事態がある、あるいは非常な事態がある、そういう際に、財政財政だといって財政にこだわるわけにはいかない。やはりその際は、国家の目的に財政は奉仕しなければならぬ。そういう意味において、そういう際には増ワク補正もあり得る、こういうことでございまして、そういう意味におきまする総合予算主義、これは決して今度の補正予算が出されたからといって崩壊もいたしておりませんし、傷ついてもおりません。昭和四十四年度以降も、この考え方財政運営の面から見ますと進歩した考え方でありますので、この上とも堅持いたしていきたい、かように申し上げておる次第でございます。
  47. 楯兼次郎

    ○楯委員 初心を貫こうとする意欲については、私は敬意を表しますよ。しかし、いままで四十二年度の通常国会における水田大蔵大臣の演説、それからあなたのいろいろの答弁を聞いておりましても、たとえば八百五万トンの米が一千万トン以上買い入れるということは、天変地異に相当する、こういうことをあなたはおっしゃったわけなんです。そうすると、四十四年度も、予算としては七百五十万トンしか計上しておらないわけです。おそらくまた四十四年度も一千万トンくらいの買い入れがあると思うのです。そうすれば、天変地異とあなたは自分でおっしゃりながら、天変地異になるような四十四年度予算をすでに組んでおるじゃありませんか。だから、あなた方が、生産者米価が引き上げられても補正予算を組まないでやっていくのだ、天変地異その他異常な事態がなければ補正予算を組まないなんということばは、常識じゃないと思うのですよ。四十四年度すでに七百五十万トンの買い入れ米の予算で、あなた天変地異を予測して組んでおるじゃありませんか。  だから、私は、もっとすなおになって、まあ補正を出したのだから、なるべく補正を組まない方向でいくのだけれども、これはなかなか至難である、そういうように率直にお認めになればいいと思うのですが、どうですか。
  48. 福田赳夫

    福田国務大臣 昭和四十四年度につきましても、御説明申し上げておりまするとおり、年度間の補正要因で大きなものは給与の問題、また食管の問題でございまするけれども、給与につきましては、これは各省各費目ごとに五%アップという額を組んでおるわけです。また、食管につきましても、三千一億円の繰り入れをいたす、こういう措置をいたしておるわけでありまして、これはほんとうによほどの事態がなければ、私はこの予算に修正を加えるという必要はなかろうと思うのです。そういう体制をとっておりますので、四十四年度におきましても総合予算主義は貫き得る、かように考えております。
  49. 楯兼次郎

    ○楯委員 あなたの答弁を聞いておれば、それは合法的かもわかりません。しかし、あなたは、八百五万トンの予算を計上したが一千万トン以上買い上げをしなければならない、これは天変地異であるとおっしゃっておるのです。これは本会議答弁であなたはっきりおっしゃっておるのですよ。天変地異だということをおっしゃっておる。ならば、なぜ四十四年度の予算も天変地異と承認をしておるような予算を初めから組んでおくのか、こういう点がすなおじゃないじゃないか。あまり総合予算主義というものにこだわる必要はないじゃないか、こういうことを私は申し上げておるのです。どうですか、もう少しすなおになったら。   〔委員長退席、塚原委員長代理着席〕
  50. 福田赳夫

    福田国務大臣 総合予算主義というものにこだわって国政に妨げがあるというようなことがあっては相ならぬ、これはお話のとおりでございます。しかし、総合予算方針をとるということは、私は、財政運営から見ますれば進歩した方式である、かように考えておるのです。四十三年度からそういう考え方がとられましたが、四十二年度以前はどうであったかというと、毎年毎年秋ごろになって膨大な補正予算が細まれる。そうしてその際の財源等に非常に苦慮する。しかも、四十年度のごときは、補正歳出要因はあるにかかわらず、財源は落ち込んで、そうして赤字補てん公債を出さなければならぬということまであったわけでございます。そういうようなことを考えますると、年度初頭にあらゆる歳出要因というものを想定いたしまして、その財源を整えておく、しかもその歳出要因というものを全部並べてバランスをとる、そういう考え方は、私は、財政運営から見ればきわめて合理的であり、進歩した近代化された制度である、こういうふうに思うのです。  ただ、私は、補正予算補正予算といって楯さんはこだわられますが、補正予算というものにそうこだわっていないのです。年度の途中におきましてほんとうに異常な事態が起こったというようなことでありますれば、これは補正予算やむを得ない。また年度の途中において行政需要の変化がありまして、どうも組みかえしたほうがよかろうというようなことであれば、これはそうこだわりなく組みかえをいたす、そういう考えでありまして、必ずしもこだわった考え、補正なしだといってそれにかじりついていくというような考え方は持っておりません。
  51. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは次に、公務員給与についてお聞きをしたいと思いますが、われわれは、人事院の勧告がなされますと、政府とまた国会に対してもこの勧告がなされる、こういうふうに理解しておるわけです。人事院勧告というのは、政府と同時に国会のほうへも勧告がなされる。あなたの総合予算主義でやっていけば、われわれは、せっかく出してきた人事院勧告の報告に対してどういう審議権があるのか。非常に国会議員の審議権というものは制約をされざるを得ない、無視される、こう私は思うのでありますが、この点どういうふうにお考えになっておりますか。
  52. 福田赳夫

    福田国務大臣 国会審議権が無視される、軽視されるということは、私ないと思うのでありまして、人事院の勧告がありますれば、それに基づきまして所要の法律案を政府においては作成いたします。また、それに伴いまして必要なる予算案も作成するわけであります。いずれも国会の御審議に付議されるわけでございまして、その御審議の結果によってはこれが修正ということもあり得る。現に昭和四十三年度は一カ月繰り上げという御修正がありましたような状態でございまして、政府国会両々相まって人事院勧告に対する措置、これは慎重にかつ円滑に運営されている、かように考えております。
  53. 楯兼次郎

    ○楯委員 四十四年度の予算を見ましても、人事院勧告分大体五%ですか、それから予備費にもある、こういうような話も出ておるのですね。しかし財源が初めから抑制をされれば、われわれが報告を受けたって、その審議権というものは一定のワク内における論議に制約されざるを得ないと私は思うのですが、そういうことをお聞きしておるのです。これはあれでしょう、白紙白紙ということをよくおっしゃるのですが、白紙の状態じゃない。一つのワクをはめて、そのワク内において審議をしてもらいたい、こういうことになるんじゃないですか。
  54. 福田赳夫

    福田国務大臣 国会でありまするから、あらゆる御意見が政府に対して述べられる、かように存じます。法律案、予算案につきましても、御意見は御意見として述べられる、これは私はそうあるべきものだと思います。ただ問題は、その国会が述べられる意見が、与野党の中で一致するかしないか、こういうところに問題があるのじゃあるまいか、さように見ております。
  55. 楯兼次郎

    ○楯委員 せっかく補正を出されたんですから、人事院勧告を尊重して実施をしたい、これはもうたびたび関係大臣がおっしゃっておるんですが、人事院の、公務員給与のほうの補正を忘れたんじゃないですか。財源はあるでしょう。人事院勧告は尊重する、ただ、去年は総合予算主義補正を組まない組まないということで一カ月繰り上げたとはおっしゃいますが、七月実施でしょう。せっかく補正を組むのでありまするから、当然勧告の五月から実施という線をこの補正に盛られたらいいと私は思うのです、財源はあるんですから。どうしてですか、これは。自分の都合のいいやつはいろいろ理屈をつけて計上して、いやなやつは財源があっても実施をしない、ほうりっぱなしということは、どうも私は理解がいかぬと思う。  給与担当大臣は総理総務長官ですか。あなたも去年から、私がやったら完全実施するとはおっしゃいませんけれども、とにかくやるんだ、やるんだという答弁をたびたび聞いておるわけです。何で補正予算のときに、五月からさかのぼってやるように盛らないのか。大蔵大臣になぜ要求をされなかったのか。
  56. 床次徳二

    ○床次国務大臣 政府といたしましては、人事院勧告を尊重するという基本的な方針を持っておるのでありまして、しかし御承知のごとく、本年度におきましては、さきの国会の御審議によりまして勧告を実施するようになった次第であります。したがって、私どもは今後の新予算等におきましても、この人事院勧告の線を尊重してこれを実施すべく将来においても努力したい、さような意味におきまして、新予算におきましては、給与並びに予備費におきまして必要ワクを計上しておるという次第でありまして、その後完全実施できるかどうかということにつきましては、勧告のありました時期におきまして最善の努力をいたしたい、かような基本的な態度を引き続き維持しておる次第であります。
  57. 楯兼次郎

    ○楯委員 公務員なりあるいは公共企業体の職員の関係は、いつも予算上、資金上金がないからやらないのだ、これはもうあなた方の実施をしないにしきの御旗になっておったわけです。ところが、財源があっても、補正予算を組むその時期にも実施をしないということは、いままで金がないからやれないのだというあなた方の言い分というものはどこへいっちゃったのか。一体これはどういう原因でやられないのか。いままでわれわれは、予算上、資金上金がないのだ、こういう受け取り方をしておったわけです。そうじゃないですか。
  58. 福田赳夫

    福田国務大臣 御承知のように、各省また各界から予算につきましては膨大なる要求があるわけであります。その膨大なる要求を政府においては整理をいたしまして、これを予算に編成をする、こういうことになるのでありまして、要求あまたありまするけれども、その間おのずから緩急、順序をつけなければならぬ。そうして適正な財源の中にそれを押し込む、こういうことになるわけであります。つまり国政全体のバランスですね、これをよく見るということに相なるわけであります。  昭和四十三年度の段階におきまして、私どもは給与、これは八月実施が適切であるという当初の考えでありましたが、国会の御意見もありますので、一カ月繰り上げて七月とした。さあ四十四年度に一体これをどうするかという問題でありまするが、四十四年度の予算実行、また各方面の国の予算需要に対する要請、そういうものを見まして、それらとの均衡のとれた形でこの問題の最終決着を得なければならぬ、かように考えておるわけであります。
  59. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は、次に非核三原則と憲法の関係についてお伺いしたいと思います。  私も三年ばかりこの予算委員会を休んだわけです。今度初めて予算委員にしていただきまして、ずっと今月初めから議論を聞いておりました。われわれが三年、五年前に聞いておりました議論と比較すると、いまやもう憲法も非核三原則も何もワクが飛んでいっちゃって、何といいますか、ワクなし解釈総理大臣なり法制局長官が一言何か言えばそれでよろしい、こういうような印象を受けるわけです。経済のほうは高度成長、高度成長というので、だいぶ成長率が高くなっておるわけでありますが、こういう憲法、非核三原則解釈も、経済と同じようにものすごく拡大再生産的な説明が行なわれておるという点について、私は非常に心配になるわけであります。昨年の通常国会では非核三原則総理は強調されたわけです。これは佐藤内閣にしてはきわめて斬新的な議論であると、われわれ社会党ももろ手をあげて賛成をしなければいかぬ、こう喜んだわけでありますが、それも一晩の夢で、今度は核四原則政策というので一つおまけがつきまして、日米安保条約による核抑止力依存政策という方向に転換をされたわけであります。そういうようなことを考えまして、非核三原則答弁を聞いておりますると、もうこれすらも、何といいますか、崩壊してしまおうとしておる。  総理は、核をつくる、持つは憲法上の問題であるが、持ち込むことは政策上の問題である、これは国民にはどうしてもわからないのであります。これはあなた方専門家の方にはよくわかるかわかりませんが、常識的に考えてよくわからない。問題は、核、核兵器そのものが罪悪といいますか、いけないのであって、その核が存在する手続や経過なんというものは、そうたいして国民には問題じゃないと思うのです。これも私もあまり学がありませんから、むずかしい理論で展開をしても始まりませんので、私がここの席にすわっておってぴんとくる簡単なる表現をすると、こういうことになると思うのです。同じ核兵器でも、同じ核でも自家製の核はいけない、自家製の核はいけないが、よそのおじさんの持ってきた核はよろしい、こういうふうに私はとれるわけですね。それからもう一つ、ことばは悪いかもしれませんが、人殺しはいけない、しかし殺し屋を頼んだ場合は別だ、こういうふうにもとれるわけです。また一方では核兵器を禁止しながら、いけない、いけないと言いながら、一方では核の抑止力を礼賛をしておる、こういうふうな理屈にとれるわけでありますが、国民は、総理や法制局長官のこういうことばを聞いて、一体何を言っておるのだ、わからぬじゃないか。国民全部が、それはいけない、それはよろしいという最大の問題に対して、あなた方だけにしかわからないような理屈は困る、こう思っておると私は思うのでありますが、この点についてわかりやすい明快なる答弁をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  60. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたしますが、楯君のお話を聞いておりまして、いままでの質問とよほど形が変わっておる。いままでのお尋ねは、多く観念論的な問題でございました。だから憲法上、この条文はどういうように解釈するのか、そういうお話に終始していた。そこで、法制局長官も、やはり法制局ですから、そういう意味で権威をもって観念論的な法律論をやったわけです。けれども、いまお尋ねになるように、政治にはやっぱり法律論も必要だが、実際には一体どうするのか、これが問題だと思います。でありますから、私は最後にあまり観念論ばかりやっていてもいかないから、佐藤内閣の間は、つくりもまた持ちもいたしません、こういうことをはっきり言っている。また防衛上のたてまえ、日米安全保障条約がある場合に、もしもこれが核の持ち込みになる、こういうことをアメリカ自身が必要だと考えた場合に、これは事前協議の対象になるんだ、そういう場合には多くの場合にノーと言うのだと言っている。これはいままでの岸内閣以来の一貫した説明なんですね。  それで、これだけをはっきり言って、どうも観念論と、それから実際論とががちゃがちゃになるから国民がわからないとおっしゃるのも、もっともだと思う。きょうは私もそういう意味ではっきり申し上げる。法律論はどうあろうと、ただいま申し上げますように、佐藤内閣は、持つとかつくるとか、そういうことは絶対にしない。これはもうはっきり申し上げます。
  61. 楯兼次郎

    ○楯委員 私も、その政治論だけでは困るのです。やはり憲法論にも触れなければいかぬと思うのですが、むずかしいことは言いません。  いま、岸内閣のときから防御用の核装備は憲法上違反でない、こういうことを総理も言われた。法制局長官は毎回砂川事件とこれを併用をして答弁されるわけです。それは違っておるにしろ、見解の相違とおっしゃるかもわからない。しかし、防御用の核兵器と、攻撃用、ということになりますね。一体それは、簡単に答弁して口にはするんですが、攻撃用と防御用の兵器というものは、一体何を基準に区別するのか。またこれはだれがそういう区別をするのかという点について、国民はわからないと思います。といいますのは、あなた方が何でもこれは防御用ですよと言えば、それは全部イエスということになってしまうわけです。だから、一体防御用と攻撃用の核兵器というのは何の基準によって区別するのか、これをひとつ明快にしてもらいたいと思います。
  62. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま総理がお話を申し上げましたように、憲法論と政治論、これはおのずから別でございます。たとえば、原子力基本法をわれわれ実定法として持っておりますが、保持にせよ、製造にせよ、これは禁止しておりますから、したがって、憲法との関係だけを論ずることになりますと、これは全く理論的問題だけになりまして、まあ研究室かどこかでやるのがふさわしい問題だと思うのでありますけれども、いつも御質問がございますので、その点をお答えしなければ失礼になりますので、お答えを申し上げますけれども、確かにおっしゃいますように、攻撃的、防御的というのは、私もしばしば質問を受けまして、お答えしておりますけれども、要するにその要点は、とにかくわが国に対して急迫不正の侵害がある、武力攻撃が加えられた、国民の生存と安全が危うくされる、そういう場合に国民の生存と安全を保持する、要するに自衛、自国防衛の正当な目的を達成する限度のものであるかどうであるか、これが私どもの解する憲法九条では最も重要な一点であると思います。したがって、海外派兵ができるとかいう問題も、全部自衛権の限界の問題になるわけです。そこで、そういう限界内のものであれば、これは通常兵器であっても限界を越えればいけないし、普通その限界の中であれば、理論上は通常兵器でなくても持ってもよろしいということになるわけです。  ところで、仰せのように、これは一体だれが区別をするかということでありますけれども、結局いま申したそういうどん詰まりの場合に、一体国民の生存と安全を保持するというときに、最小限度必要なものはどういうものであるかということに帰せざるを得ない。それは実際にはあるいは予算により、あるいは法律によって、国会の御審議をわずらわして、国民があるいは国民の代表者である皆さんが、それを大いに論じて、そうしてその法案を通すなり、あるいは予算を通すなりということによって、結局は国民的な判断によって決定をするということになるわけでございます。
  63. 楯兼次郎

    ○楯委員 いまあなたの話を聞いておってもわからぬですよ。あなた方は決定すればいいじゃないか、こうおっしゃっておるわけですね。あなたでわかるのは、自衛の目的達成のための最低の兵器である、こういうことだけはわかったのです、字句の上だから。実際にはどういうことかわからない。わからぬですね、これはだれが聞いても。あなた以外しかわからぬと思うのです。  それでは具体的に聞きますが、いま日本に関係しておる核ということになると、たびたびいわれるメースBですが、メースBは防御用核兵器か、攻撃用ですか、どっちですか。あるいはポリラス潜水艦はどっちに入ると思いますか。
  64. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま申し上げましたように、自衛の限界というのが九条の中心問題であると申し上げていいと思うくらいでありますが、これは現在自衛隊というものが現にあるわけなんですね。この自衛隊の装備編成というものが、その限界内にあるのかないのか、これは同じ問題が実はあるわけで、新しい問題が提起されているわけではないわけです。その限界の範囲に入るか入らないかというのは、なるほどことばでは言われても、おまえそれじゃ言ってみろと言われますと、私はその現実の兵器がどっちに入るかどうかということは、実は私にはわからないというのが正直なところであります。むろんその兵器の性能をよく知悉してまいりますれば、おのずからこれはこうだろう、ああだろうということは言えると思いますけれども、メースBがいかなるものであるかというようなことになりますと、これは専門的な人の説明を聞かないとわからないことになります。  しかし、かってもう十二年ほど前でありますけれども、どこかの社説にも出ておりましたが、その当時はやはり核兵器というものが将来どういうふうに変わるかわからない。そういうものがすべて違憲であるというのは言い過ぎであろうということは、十二年前にすでに議論されております。そのときに、たとえば鉄砲のようなものが、核の利用というようなものがあり得るとすれば、十二年前のことでありますから、いまからいえばあるいは変な話だとお思いになるかもしれませんが、その当時はそういう例一つ考えられておりました。同時にまたこれは何かちょっと忘れましたが、鉄砲でない兵器についても、そういうものは核の装着をされても憲法に違反することはないだろうというようなことも、その鉄砲論議と一緒に論ぜられたことでもございます。  思いますのに、ポラリス潜水艦などが自衛の限界内のものであるというようなことは、いかにその方面がうとい私でも、そんなものが入りようは決してあり得ないというふうに考えます。
  65. 楯兼次郎

    ○楯委員 それではポラリス潜水艦は別として、防衛庁長官、こちらをぐっとにらんで見えますから、質問しますが、メースBはあなた防御用の兵器だと思って見えますかどうか。それから有効距離ですね、弾道有効距離はどのくらいありますか。
  66. 有田喜一

    ○有田国務大臣 兵器というものは使用の目的、そういうものによっていろいろと変わりますけれども、メースBは射程距離から言いますとたしか二千何キロだと思いますが——二千メートルですか、ちょっとあれは忘れましたが、それでそういう射程距離から言いますと、これは攻撃用ということにもなりますから、私は、わが自衛隊はそういうものを持とうとは思っておりません。
  67. 楯兼次郎

    ○楯委員 二千メートルじゃない、私は二千キロだと思うのですが、防衛庁長官は、距離からいくと攻撃用である、しかし私は防御用だと思う、これはちょっとわからぬですね、意味が。
  68. 有田喜一

    ○有田国務大臣 ちょっと言いそこないましたが、それは二千二百キロでございますから、したがいまして、そういうものは攻撃用にも使われる可能性がありますから、私は、防衛ばかり持っているわが自衛隊には、こういうものを使おうとは思っておりません。   〔発言する者あり〕
  69. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 御静粛に願います。
  70. 楯兼次郎

    ○楯委員 もう一回お伺いしますが、二千二百キロもある。そうすると、防御用の核とは言えないのじゃないですか。もう一回ひとつ答弁願います。
  71. 有田喜一

    ○有田国務大臣 核というものは抑止力といわれますね。抑止力というものは戦争を未然に防ぐという意味がありますから、そういう意図を持っておるときには必ずしもこれは攻撃用と言えない。しかし、そういうものが攻撃に使われる可能性がありせばいけないというので、われわれ自衛隊はそういうものを持とうとは言っていない。
  72. 楯兼次郎

    ○楯委員 防衛庁長官に私は精神的な面から——物理的な面から質問しておるわけじゃないのです。抑止力という点を考えれば防御用とあなたはおっしゃるのでしょう。それは先ほどの法制局長官の話で名前をつければ何でもそういうふうになるのというのと一緒じゃないですか、どうですか。   〔発言する者多し〕
  73. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 不規則発言は御遠慮願います。
  74. 有田喜一

    ○有田国務大臣 そういう私は考えを持っていますから、わが自衛隊にはそういうものを持とうとは考えておりませんと言っておるのです。
  75. 楯兼次郎

    ○楯委員 先ほど来たびたび繰り返しておりますし、それからきょうだけの話じゃない。これは一月にわたって議論が行なわれておるわけですが、法律論の解釈からいきますと、疑わしきは罰せずという原則があるのですよ。ちょうどその疑わしはき罰せずの、政府の憲法に対する考え方、あるいは攻撃、自衛というような解釈についても、この疑わしきは罰せぬ逆をいっておる議論だと私は思う。こういう解釈では、日本の憲法九条も、平和憲法も、これはもうくそ食らえだ、こういうようにしか国民は理解をしないのですよ。あなた方の答弁を聞いておると。そう思いませんか、あなた。自分で言っとって、これはちょっとおかしい、こう思って答弁しておられるのじゃないですか。
  76. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 どうも同じようなお答えを申し上げる部面もございますけれども、現在自衛隊法という法律がございまして自衛隊というものが現に存在しておりますが、この自衛隊というものはどこまでの装備でも持つことは自由であるということはわれわれ毛頭考えておらないわけです。したがって、やはり自衛隊の装備、編成にはやはり限度があるべきである。その限度は何かといえば、あえて繰り返しませんが、自衛の正当な目的を達成する限度、これが非常にほんとうに重要な問題であると私どもは考えております。したがって、それであればこそ、兵器はかってに持っていればよろしいというわけにもいかないし、海外派兵も自由にできるわけでもないし、国際法上認められている集団的自衛権ですらわが国はこれを持つことができないというようなことをわれわれはしばしば御説明申し上げておるわけです。そういうような自衛というせっぱ詰まった限度内のものでなければいけない。これは行動の面でも装備の面でも、あらゆる方面でこれを強調しなければいけないし、そうしてそれの面についての国民の監視も十分に受けなければならぬ、こういうふうに考えておるわけでして、その自衛の正当な目的を達成する限度内のものに関してはいささかもこれについて疑義を持っておるわけではございません。そのことだけをはっきり申し上げたいと思います。
  77. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もう先ほど私は観念論はやらない、憲法がどうあろうととにかく持たず、つくらず、こういうことをはっきり申しております。また、いま疑わしきは罰せずというそのほうからも言われますが、憲法論は、いわゆる戦力かどうかというそこに議論があって、疑わしい状態もあって、これは非常に不明確で、防御用はよろしい、あるいは攻撃用はいかぬと、こういうことを言っておるわけですね。だけれども、非常にはっきりしているのは原子力基本法だ、日本はもう軍事上そういうものを使っちゃいかぬという、これもはっきりしている。その議論になると、皆さん方のほうから、憲法よりもっと低いほうの法律を持ってきたと、こう言って、憲法論をまたやろうとされる。憲法論をやるなら、やはり先ほどから法制局長官が言うように、それは純法律論に終始する。そこで、佐藤内閣は、どうあろうとつくらず、持たず、これははっきりしていると、かように実は申しておる。
  78. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、ちょっとこれは古くなりますが、第二回の日米共同声明からいまおっしゃったことを、ちょっと長い時間になりますが、ひとつ逆に反証していきたいと思います。  ジョンソン前大統領との間で一九六五年第一回、六七年十一月の二回にわたって首脳会談を持たれました。しかし、この二つの会談の間には大きな違いがあるということは、もう一昨々年の問題でありまするから、この委員会で相当同僚議員から指摘があったと思います。しかし、非常に重要でありますので、ちょっとこまかい点になりますが、御質問をしていきたいと思います。  私は第一回の会談と第二回の会談を詳細に読んでみますると、次の四点に、非常に一回と二回との相違点を見出すのであります。その四点というのは、第一番に、中国問題に対するジョンソン大統領との認識で、これはまあ核の脅威ですね。これが第三項に強調してあります。それから二番目には、第一回になかったベトナムの戦争を支持をする、こういう合意が第四項に強調されております。それから第三番目には、日米安保をアジア地域に拡大をする、これが第五、第六項に強調されております。それから四番目としては、沖繩の米軍核基地の本土への適用、これが第七項に強調をされておるわけであります。  で、私はこれをずっと私なりに読みまして、端的に申し上げますると、日米安保体制の核安保、アジア安保への拡大発展ではないか、こういうふうに受け取るわけです。この間、三十日の夜中に本会議で代表質問をしたときにも、核安保、アジア安保という項目を声を大にして強調をしておったわけでありますが、こういうことがどんどん実行をされていくと、私は、アメリカのやることを日本が肩がわりをして、そうして再びアジアにおいて戦争前の日本と同様な姿に復活をしていくのではないか。昔は、まあ大東亜共栄圏とか生命線とかいろいろあったのですが、あの共同声明から、この四点を詳細に読んでみますると、戦前復帰の姿があらわれてきておるように把握をされるわけです。こういう点、ちょっと古い問題でありますが、締結をされました総理大臣でありまするから、まず概略的にそのことを承って、以下、私はこまかく項目に入っていきたいと思います。
  79. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ、いまさら大東亜戦争の前に返るという、そんなとんでもないことをもくろんでおるわけじゃありません。また、そういうような危険は全然ございません。御安心を願いたいと思う。  そこで、いま四つあげられてお話しになりました。これは特に御注文もあったと思いまするので、私、二回にわたっての共同コミュニケ、実はこれを比べてみたのです。  そこで、なるほど、第一の中国問題、一九六五年、一番最初に参りましたときは、まだ中共が核開発をそう盛んにやっておるときではございません。そこで、いわゆる中共に対するアメリカの主張と日本の主張、それを明確にしたつもりであります。どういうようにしたかといえば、日本の場合は、いわゆる政経分離で中共とつき合う。しかし、アメリカは、なかなかそういうことを言っておらない。その相違が、一九六五年、最初のときであります。ところが、二度目になりますと、そのことばは出ておりませんが、むしろ中共の核開発が非常に進んでおる。そこで、核の脅威ということを実は申しておるのです。これは私は、やはり当然のことであって、当時、日本ばかりではない、アジアの諸国、これはたいへん核の脅威を感じていた、かように思います。また、今日におきましても、それは同様であり、もっとそれは進んでおる、こういうことであります。それかといって、私、いま、これを敵視政策をとる、こういうことではございませんが、しかし、現実にとにかく隣の国が、われわれが反対したにもかかわらず、核の実験をやる、核武装の方向へいく、こういう状態でありますから、その隣国である日本が、そういうことに無関心であるわけはございません。そこで、六七年に出かけたときには、中国問題としては、そういうような取り扱い方をしております。  そうして、その次のベトナム問題、最初に参りましたときは、ベトナムが何でもとにかく平和でありたいという、そういう希望を率直に出した。今度、二度目に参りました際は、北爆停止の問題が、逆になって問題が起きております。そうして、それに対しましては、何らかの北側からのこれに対する反応があるだろう、そういうもとにおいてこのことが解決されるんじゃないだろうか、そういうようなことでこういう書き方をしたんだ、かように思っております。  それからその次に、日米の安保体制をアジアに拡張するという、これはそんなことはございません。これはもうアメリカはアメリカ、日本は日本、日本のやることはもうちゃんときまっておりますから、そういうことはございません。  また、核基地の本土への適用、これもちょっと、どういうような誤解か、そういうことはございません。  以上のように思っております。
  80. 楯兼次郎

    ○楯委員 いま総理が、全部ではないけれども、飛び飛びに答弁をされたのは、大体沿っておる思います。中国の認識において、第二回目には、「中共が核兵器の開発を進めている事実に注目し、アジア諸国が中共からの脅威に影響されないような状況を作ることが重要であることに意見が一致した。」こういうふうに第二回の共同声明にはうたってあるわけです。ところが、第一回は、アメリカのジョンソン大統領が「中共の近隣諸国に対する好戦的政策及び膨張主義的圧力がアジアの平和を脅かしていることに重大な関心を表明」したのに対し、佐藤総理大臣は、先ほど言われたように「中国大陸との間においては政経分離の原則に基づき現在行なわれている貿易等の分野における民間の接触を引き続き増進していくことが日本政府の基本的政策である旨表明」をされておるわけです。だから、第一回は、アメリカのほうが、中共はあぶないぞ。いや、そうではない、われわれは政経分離で貿易を進めておる、こういうように反論をされておるのに、第二回には、中国の核の脅威に対して賛意を表されておる。  そこで、われわれがわからないのは、一体この中国の——認識の相違は先ほど答えられたのですが、中国の核の脅威というのは一体具体的に言うと、どういうことなんですか。
  81. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもは、中共が核の実験をする、これについては、各党ともみんな反対してきたと思っております。それにかかわらず、とにかく、どんどん実験は進んでいく。もう水爆も保有するようになった。これをやはり感じないわけにはいかないですね。だから、私は、それはむしろ率直にそういう状態を認めたんだと思う。日本自身も、これはほんとうに各党あげて、共産党まで御一緒じゃなかったかと思うのですが、とにかく核実験には反対だ、こういう状況でありますから、私、それをもおかして、自分の国でどういう考え方があろうが、とにかく核を開発された。こういうことは脅威であることには違いございません。
  82. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は、中国の核の脅威ということばに関連をして、いわゆる共同声明の七項で、沖繩の核基地を日本へ適用をする、こういう文句がうたわれたのではないか、こう思うのです。内容を読んでみますと、第二回はこういうことを言っておるわけですよ。「これら諸島」つまり沖繩「にある米国の軍事施設が極東における日本その他の自由諸国の安全を保障するため重要な役割りを果たしていることを認め」合っておるわけです。ところが、第一回は、「沖繩、小笠原にある米国の軍事施設が極東の安全のために重要であることを認め」ておるにすぎないわけです。初めは、第一回は、沖繩の基地が極東の安全のために重要である。第二回目は、日本その他の自由諸国の安全を保障するために重要である、こういうふうに変わっておるわけです。  そこで、先ほど議論になりました沖繩のメースBその他のナイキ、ホーク、原潜が日本本土の安全に役立っておる、こういう意味を日本政府は考えておるんじゃないだろうか、こう思うのですが、どうですか。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 楯君、たいへんいい質問をしてくださいました。実は私、どうも極東の安全という、そういうことばについて、よその国の安全確保、それが、日米安全保障条約でもそういうものじゃないのかというような国民に誤解があると思います。私はその点をもっと第二回目には明確にしたつもりなんですね。日本の存立、安全、これをまず確保する、同時にまた、日本の存立、安全を確保するために必要なのは、極東地域が平和であることだ、それが安全でなければならないのだ、そういうことで、やはりこの二つのものの結び合いというか、くっつき合いを明確にしておかないと、よその国の安全確保のために私どもが手伝うのだ、それではどうしても国民は納得をしない、かように思っておるのです。でありますから、第一回よりも第二回目のほうがその点は明確になったと思います。  また、沖繩にそれではメースBがあるのかどうか、こういうことは、実は私はこの席でかつて、知らない、こう言ったら、知ってて知らないと言うのだろうと、ずいぶんおこられたことがありますが、実はその当時は全く知らない。いまもまだ——先ほど、メースBというものがどういう機能を持つか、いろいろな話が出ておりますが、これは有田君の答弁でそれらのものはいいと思います。  今度問題は、沖繩が日本並びに日本を含む極東地域の安全確保に果たしておる役割りそのものは、これは通常兵器である米軍の基地なのか、あるいは核をも含む基地なのか、ことに核というものが非常な重みを持つものかどうなのか、こういうことがこれからの問題でございます。私はいつも、基地のあり方は白紙だということを実は申してきております。そういう実情もよくわからないのに、一体その基地のあり方をどうしたらいいかという、そういう意味で、私いままで白紙と言っているのです。でありますから、これは今後皆さん方が、政府に間違いのないようにという意味なら、これはもうやはり助言もお願いしたいと思うし、そういう意味で、こういうものはなくしようとか、こういうものはあってもいいとか、そういうような話を聞かしていただくことが一番だと思っております。しかし、もうすでに観念論の域を脱しまして、大体において皆さん方のほうのお考えは私にもわかりました。いま時分わかったというのはむしろ逆なんで、もっと早くわからなければならない。社会党の皆さんと私どもは基本的に違うのだ。安全保障条約に反対しておられる方と賛成しておる者が基地についての議論をするというのは、それはずいぶんおかしな話なんですね。もう最初から違っている。しかし、それでも私はけっこうだ、とにかくこの私が選ぶ道が日本の安全の上において賢明な方法であることが望ましいから、あえてどういう御意見でも伺おうと、こういうことを実は申したつもりでございます。また、そういう意味でお話しになってけっこうだと思っております。
  84. 楯兼次郎

    ○楯委員 先ほど私が質問をしたのは、第一回の会談共同声明では、沖繩の基地というものは極東の安全のためにある、こういうことが強調されておるわけですね。第二回の会談共同声明では、極東の安全の前に、日本及び極東ということで、日本の安全のほうがウエートがかかってきておるわけですよ。そういうふうに変化をしてきたのはどういうことかと、こういう質問をしたわけでありますが、沖繩の場合——沖繩の問題が出てまいりましたので、どうせ一緒だと思いますのでちょっとお聞きしたいと思いますが、私は、これは幼稚な意見か知りませんが、私なりにいままでの予算委員会の沖繩の返還についての議論を聞いておりまして、私は三つ想像するわけです。それは、二者択一といわれておりました、おくれても本土並み、あるいは現状のままで将来本土並み、それから本土並みで事前協議の特例を設ける、もう大体総理の腹も、政府も、聞いておるわれわれも、この三つの幅に収縮されてきておる、こういうふうに私は受け取っておるわけです。あなたは異論があるかどうか知りませんが、あとでおっしゃればいいのでありますが、私はそういうぐあいに受け取っておる。  それはなぜかといいますと、二月八日に、ここにおります楢崎弥之助君の、畑君の関連質問のときに、あなたはこういう答弁をしておられる。沖繩には弱いにしろ何にしろメースBがある現実は否定できない。そうした状況下の沖繩が返ってくるところに問題がある。それは全く核基地がない、いわば非常にきれいな土地であるならば、二原則を明確に言うことも可能だ。沖繩がそうでないところに一つの問題があるのだ。原子力基本法も沖繩についてはもっと考えなければならない、こうあなたは楢崎君に答弁をされておるわけです。こういう議論が行なわれておるときに、たまたま愛知外務大臣は、事前協議の質問に対して、イエスの場合もあり得る、こう答えておるわけです。いままでわれわれ国民は、事前協議というのはいわゆる歯どめである、これはノーの場合しかないというふうに受け取っていたわけです。ところがその愛知外務大臣が、こういう議論のときにイエスということを言われると、しまいにはイエスが原則でノーが例外になって、国民に対してはノーという場合もありますよと、こういうふうに私は意味が転換してくると思うのです。こういう議論を聞いて、先ほど言っておりましたような三つの場合しか想定はされない。そこでその三つの中からどれが優先するかということを、マスコミ等の資料を拾って考えてみますると、事前協議に特例を設けて、実際の自由使用にする、こういうことじゃないかと思うわけです。といいますのは、すでに外務省はその作業を進めておると新聞もいっております。除外措置を沖繩返還協定の付属交換公文で約束する方法を外務省は考え、作業を進めておる、こういうふうにほとんどの新聞が伝えておるわけです。私の観測に誤りはありませんか、外務省はそういう作業を進めておりますか、外務大臣と総理大臣にお聞きしたいと思います。
  85. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この問題につきましては、外務省でそういう作業を進めているということはございません。  しかし、それは別といたしまして、ちょうど先般の私の答弁についても触れてお問いになりましたから、念のためお答えいたしたいと思いますが、これは当委員会におきまする楢崎委員と私との質疑応答は皆さまよく御承知のとおりで、仮定のこととして、ポラリスが緊急避難をするというようなことが観念的にあり得るとするならば、そういうときにはどうするか。これはともかくポラリスというようなものであれば問題なく核兵器でございますから、これは事前協議にかける。これは当然だと思います。そうしてさらに、これがたとえば人道的のような問題の場合には、事前協議におきましてもイエスということはあり得るであろうと、仮定のこととしてお答えをした。しかし同時に、その後この問題についての質疑応答がありましたことも御承知のとおりでございますが、ポラリスが狭い意味の人道的というような意味においても緊急避難というようなことは実際問題としてはあり得ないと、私はさように考えますということをお答えいたしたわけでございます。  それから、それと今度は全然別でございますが、事前協議の問題につきましては、昭和三十五年の安保改定のとき以来、公式の質疑応答の席で何回も応答が繰り返されておりますが、一々申し上げませんけれども、たとえば昨年の三月二十九日の当予算委員会におきまして、三木外務大臣も、「事前協議は、やはり具体的ないろいろな条件、こういうもとで、政府が賛成する場合もありますが、」云々。それから同年四月二日参議院予算委員会におきまして、やはり三木外務大臣は、「同意するかしないかというときは、日本の国益、この見地に立って日本がノーかイエスかを言うのです。」こう言っておるわけでございまして、私のこの事前協議に対する見解は何らこれと異なることはございませんということをはっきり申し上げておきたいと思います。  なおもう一つ、事前協議につきましては、御承知のように国会の御承認を得た交換公文がりっぱにあり、そしてその交換公文におきましては装備、配置、行動、大約して三つございますが、重要な装備の変更とは何かということについては、日米双方に了解ができておる。核については当然事前協議にかかる。そして核というものについて事前協議にかかります場合は、非核三原則というものも一方にございますから、ノーと答えますということは、これまた従前繰り返し政府答弁として私は明確になっておる点であると思います。
  86. 楯兼次郎

    ○楯委員 総理、私は三つを提案したのだ。そのいずれか一つだろうということだ。
  87. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 二度目のときに私が特に日本のことを言ったのは、日本に平和憲法のあることは、それをはっきりさしておくことが必要でございます。施政権の行なわれておる沖繩と、本土とは、そこで区別される筋のものだから、その点を明確に私は主張したつもりであります。  いま三つの問題、その三つの結論になっているんじゃないか、これはもうあなた方の頭のいいところにおまかせしておきますが、私はしばしば申しておるのは、基地のあり方については白紙だと、かように申しております。
  88. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は三つであろうと思うんですが、依然としてあなたは白紙ですね。そこで、私はもう沖繩の返還の基地の態様を決定するのは、総理、あなた一人の意思といいますか、一存にかかっておると思うんです。といいますのは、新聞にはいろいろアメリカの——たとえば前のライシャワーさんなんかはこういうことを言っておった。本土並みでなければならない、核を置くことは中国を刺激する、日本人の反対している基地では意味がない、ライシャワーはたびたびこういうことを言っていますね。非常に好意的なんです。それからアメリカの上院外交委員長のフルブライトさんも、二十年以上も占領するなんということは、これは常識に反しておる、こういうようなことをアメリカの人たちでも、同情論といいますか、友情論といいますか、そういうものを盛んに言っておるわけです。ところが、これまた答弁を引用いたしますが、二月六日の日に民社党の麻生君の質問に答えて、総理はこういうことを言っておられるんです。アメリカ軍部の考え方がはっきりしないと構想の立てようがない。アメリカの軍部がどう考えておるかわからないから私は白紙だ、こういうことを言っておられるわけです。こういう総理答弁から考えると、アメリカの極東戦略が変更にならない限り、アメリカの友情論、常識論なんというものは——佐藤総理が本土並みなり、あるいはもうきれいにして返してよこせ、社会党のいっているように、返すのだから、基地をなくして返してよこせという意思を強力に表示をされれば、アメリカのこの友情論とプラスして大きな力になると私は思う。ところが、アメリカのほうでは友情論、同情論が出ておるのですが、日本の総理が白紙だ、白紙だということになれば、アメリカのこの友情論、同情論というものは単独では、アメリカの極東戦略の前にはこれはかすみみたいなものですから、力がないと思うわけです。こういう点を考えてみますと、あなたが白紙だ、白紙だと言っておられることは、すでに本土並みという線から一歩後退しておるという印象をアメリカなり日本国民に与えておるのですよ。私は自民党の佐藤総理のまわりの方々がそういうことを言われるかどうか知りませんが、あなたが白紙だと言うことは、社会党は基地なし返還ですけれども、本土並みという線から総理みずからがもう一歩後退をしておる意思をアメリカなり日本国民に表示をしておる、こういう意味に幾ら好意的に考えましてもとられるわけです。中にはこういうことを言う人もありますよ。総理はいまだに白紙だ、白紙だと言っておる。総理はどうせジョンソンと、現状自由使用で日本へ返還するについて三年かかって日本国民を説得しなければならぬから、それで白紙だと言っておるのではないか、率直に言うとそういうことを言っておる人もある。白紙だ、白紙だとおっしゃるものですから。だから私は、返還の基地の態様を決定するのはもう総理一人しかない。アメリカは極東戦略が変わらなければ、もうライシャワーさんでも、フルブライトさんでも、その極東戦略の前には、同情論はあっても力はないと思います。だからその態様を変更するものは佐藤内閣総理大臣以外にはない。こういう点を私は特に考えてもらいたいと思うのです。  それからいま一つは、たとえ無理な形で沖繩が処理されましても、現地の住民あるいは本土の国民が猛反対を行なっておるような基地は、ライシャワーさんではありませんが、もう基地としての価値はない、こういう面も私はほんとうに真剣に考えないと、せっかく、アメリカの歓心ということばは悪いかもしれませんが、アメリカの歓心を買うためにやったことが、半年なり一年なり二年過ぎにはかえって日米紛争の起爆力になってしまう、こういうことになるのではないかと私は思うのです。こういう点、私は真剣に考えてあなたに言っておるのですが、どういうふうにお考えになりますか。
  89. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 楯君、いま真剣にお尋ねでございました。私が白紙だと言っているのも、総理大臣の責任というものはそういうところにあるのではないか。いま言われるように、行って交渉してきめるのはあなたですよと言われる。やはり国民の全責任を負って私は出かける、これが私の使命でございます。でありますから、私はあらゆる面から十分考えて、そうして国民の負託にこたえるということばを使ったり、あるいはまた国益に反しないようにする、こういうことを申し上げておるのでありまして、そういう意味から私がまだまだ決しかねておる点もあるのであります。で、私は白紙だと言っておる。  いま、なるほどアメリカに非常な同情論がある、かように——私も感激しております。けれども、これらの人たちは政府筋の話ではない。そこらに問題がある。しかし、今度京都で会議をした。日米間の関係でいろいろ協議をした。しかも、その中にはアメリカの軍人さん方もいる。そういうことで、だいぶん明確になりつつあります。これはもう私自身がもっと勇断というか、勇気をもってずばりものを言ったらどうだ、こういうような気持がときにしないわけでもありませんが、しかし私はまだまだ時間はあるのだから、そのためにもこれはぜひ慎重に結論を出すべきだ、そして真剣に取り組んで、そうして、ああ、よかったというような結果にぜひとも持っていきたい、これが私の態度であります。そういう意味で、皆さんからいろいろ聞かれたにかかわらず、白紙だ白紙だと言ってまことに申しわけないように思いますが、私は重大な責任を考えれば考えるだけに、そう簡単に結論は出せない、かように思っておる次第であります。
  90. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは答弁は要りませんが、沖繩返還についての国民的合意を得なければならない、だから情勢を観望すると、意見を統一するために白紙である、こうおっしゃっていますが、すでに自民党の中にも半数に近い人たちが、本土並みということをもう公然と言っておるわけでしょう。言っておるのですよ。これはもうわれわれは話したことがないですが、新聞等を見ますと、三木さん、藤山さん、川島さんあたりでも、本土並みだということを言っておるのですから、国民的合意を得るためには、まず自分の党内から意見を統一していかなければいかぬ。だから、本土並みということに総理が腹をきめれば、それで自民党の意見は統一できるのだと私は思うのです。そういう同じ党内の意見もちょっとワク外に置いて、なお白紙で、あらゆる観点から観望をしておるという態度がどうもふに落ちぬ。これは答弁は要りません。  そこで、次に進みたいと思いますが、現在の沖繩は、米韓、米比、米台、ANZUS等、各軍事条約の共同防衛地域になっておると私は思うわけです。もし沖繩が返還された場合には、この各国の軍事条約の共同防衛地域というものの適用は一体どうなるのか、この点について、外務大臣ですか、お聞きしたいと思います。
  91. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この件につきましても、当委員会ですでに私からも御答弁申し上げておるところでありますが、米韓、米比、ANZUS、SEATO等の条約面はそれぞれ書き方が違っております。しかし、総じて申しますならば、米軍の管制下と申しますか、あるところの駐とんしているアメリカの部隊等について言及しておるところがございますが、そういう点につきましては、かりに何らの特別の定めなく、日本の安保条約が沖繩等に適用される場合におきましては、これは総じて申しますれば、日本とアメリカとの関係において条約上の問題として何ら支障の起こることはないと思います。これはアメリカとその他の関係締約国との間にあるいは問題になることもあるかもしれませんけれども、それは日米間の問題ではない、かように考えております。総じて申しますれば、現在本土に駐留しておりまする米軍の地位と同じになる、法律的にはかように考えております。
  92. 楯兼次郎

    ○楯委員 それから、次にお聞きしたいのは、米比条約、ANZUS条約のいずれも五条で、太平洋における当該当事国の軍隊に対する武力攻撃が発生した場合には、もちろんこの中には在日米軍も当然含まれておるわけでありますが、この条約上からいきますと、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランド等もともに武力出動する義務があるということになっておるわけです。したがって、日本が好むと好まざるとにかかわらず、日米安保条約による在日米軍基地の存在によって、もし米軍基地に何かあった場合には、日本が戦争に巻き込まれる危険性が私はあると思う、こういう条約が現存する以上は。この点どうお考えになりますか。
  93. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど申しましたように、米韓、米比その他その種の条約には規定され方が違っておる点もございますから、一つ一つの条約について御説明すれば適当かと思いますが、時間の関係もございますから省略いたしますが、戦争に巻き込まれるというのじゃなくて、逆に、それらの地域に駐とんする米軍が万々一攻撃を受けるというようなことがあった場合に、たとえば在日米軍が攻撃を受けるというような場合に、あるいは沖繩に、将来を考えた場合に攻撃を受けるというようなことがあった場合に、当該締約国、アメリカ以外の国の軍隊が助けに来るという義務も、同時にそういう条約にはあるわけでございます。そういう場合に、たとえば豪州軍が日本を助けに来るというときに、これを日本の領土内に入れて助けてもらうかどうかということは、これは日本が自主的に日本の立場において助けを受けるかどうかということになるわけでございまして、いま御指摘のような戦争に巻き込まれる、巻き込まれるというような論議については、こういうこともあり得るのだということをひとつ御承知おき願いたいと思います。
  94. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、私が冒頭強調いたしました、第二回目の共同声明が、日本の安保からアジアの安保に拡大をしておるという点をこれからお聞きいたします。  それはどういうことかと言いますると、こういうことが言われておるわけです。総理とジョンソン大統領は、平和と安全の維持について、これを「単に軍事的要因のみならず、政治的安定と経済的発展にもよるものである」と規定づけた上で、佐藤総理は、「日本がその能力に応じてアジアの平和と安定のため、積極的に貢献する用意がある」こういうことを述べられておるわけです。で、総理が帰られたときに、日米共同の責任あるパートナーシップということを盛んに吹聴されたことは、われわれ記憶に新しいところでありますが、第一回の共同声明八項では、アジアの安全と平和について、総理もジョンソンも、「日本の安全の確保につきいささかの不安もなからしめることがアジアの安定と平和の確保に不可欠であるとの確信を」認め合ったというふうに言われておるわけです。ところが、先ほど申し上げましたように、三年足らずの間にこのように変化をしておるわけです。   〔塚原委員長代理退席、中野(四)委員長代理着席〕 アジアの方面に「軍事的要因のみならず、政治的安定と経済的発展」を拡大する、こういうふうに合意をされておるわけですが、われわれ野党から見ると、こういう佐藤内閣の姿勢というものは、ほんとうにわき上がるようなアジア人民との友好、連帯ということは考えられないわけです。アメリカの極東政策の下請というようなニュアンスしか出てこないわけであります。総理は、「アジアの平和と安定のため、積極的に貢献する」こういうことをおっしゃっておるわけでありますが、これは具体的にどのようなことを当時考えて、合意をされたのか。私の言っておることわかりましたか。長いこと言ったですから……。
  95. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 簡単に答えますけれども、軍事的には日本は何にもできません。それで、一般的に経済安定あるいは生活の向上、そういうことを日本の力相応にやろう、こういうのでございます。
  96. 楯兼次郎

    ○楯委員 「軍事的要因」云々ということばがあるわけです。このことばからわれわれが想定をされるのは、先日、同僚川崎委員がここでPATOのことを質問しておったわけです。PATO、つまり、アジア太平洋条約機構について質問をした際に、総理はこれに参加をしない、こういうことを言われたように私は聞いておるわけなんです。しかし、最近の新聞等を見ますると——これはきわめて重大でありますので、もう一回私は再確認をしておきたいと思うのです。このPATOというのは、御承知のように、ことしに入って、韓国の大統領が新年の記者会見で打ち出したわけですね。その骨子は、ベトナムの参戦七カ国のほかに、日本、台湾、マレーシアによって、NATOに対応したPATO常設軍司令部を設置し、その常設軍の母体を南ベトナム駐とん連合軍とし、かつ、ベトナム戦後のアジアの反共連合軍隊に仕立て上げようとしておるわけです。総理がこのPATOへの参加を否定されておることは、まことにけっこうだと思うのだが、また一面、フィリピンのマルコス大統領が、ことしの年頭教書で、こういうことを言っておるわけですね。米国がアジアから撤退して力の真空ができれば、日本が米国の役割りを引き継ぐことになろうと、こういうことを年頭教書で言っておるわけです。したがって、総理大臣が否定をされましても、これは早晩日本に対して、この反共アジアの集団安全保障について軍事的な役割りを果たすように要請があると思うのです。こういうことがもう盛んに言われておるわけですからね。こういう点について総理はどうお考えになりますか。
  97. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはもうわが国の憲法から、日本は外へ出ていく、そんなことは絶対にないのでございます。だから、その点がもし疑問があれば、明確にひとつ法制局長官から答えさしたいと思います。
  98. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 これも実は初めて申すことではございませんことをお断わりして申し上げたいと思いますが、先ほども自衛権との関連でちょっと申し上げましたように、集団的自衛権というものは、国連憲章五十一条によって各国に認められておるわけでございますけれども、日本の憲法九条のもとではたしてそういうものが許されるかどうか、これはかなり重大な問題だと思っております。われわれがいままで考えておりますことから申しますと、やはり憲法九条のもとで軍事力を発揮できるというのは、まさに、先ほど来申し上げておりますような、一国の安全が害される、国民の生存と安全が危うくされるという場合に、国民あっての憲法である、この憲法がそういうものを否定しているというふうに解する余地はない、個別的自衛権というものは、これは憲法が否認しているものとは考えられない、これは終始一貫した考え方でございます。しかし、他国の安全のために、たとえその他国がわが国と連帯関係にあるというようなことがいわれるにいたしましても、他国の安全のためにわが国が兵力を用いるということは、これはとうてい憲法九条の許すところではあるまいというのが、われわれの考え方でございます。  したがって、そういう見地から申しますと、いま御指摘のような関係に立つような集団的安全保障機構というのは、憲法上重大な疑義がある、こういうふうに私どもは考えております。はっきり申し上げます。(「疑義じゃだめだよ」と呼ぶ者あり)
  99. 楯兼次郎

    ○楯委員 いまうしろで言っておるように、疑義ではだめだと思うので、こういう要請を受けた場合に、日本国は参加できるかどうか。できないならできないと、はっきりここで言ってもらえばいい。
  100. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 現実の問題ではありませんために、そういうことばを使いましたが、私は、憲法に違反するものと考えております。
  101. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは次に、共同声明で「政治的安定」ということばが使ってあるわけです。「政治的安定」とは、われわれが把握するところ、次のようなものだと思うのですが、それに間違いないかどうか。日米共同声明四項によれば、佐藤総理は、アメリカのベトナム侵略戦争を全面的に支持しておる、これは合意いたしておるのですから、そういうふうにとれるわけです。椎名元外務大臣が、日米安保条約がある以上、日本はベトナム戦争に対し中立ではないと政府の態度を明らかにしてまいりました。また三木前外相も、ベトナムは極東の周辺であるから、日米安保条約第六条の極東条項と関連があるという答弁をしたこともございます。ベトナム戦争でアメリカの立場を支持してきたのは——参戦国は別です。参戦国以外ではまあ日本だけだと私は思うわけでありますが、とにかく、こういう総理の共同声明から、非常に政治的な片寄ったにおいをわれわれは受けるわけでありますが、韓国も、第三回のASPACの共同声明で同じようなことを言っておるわけですね。こういう点を考えてまいりますると、総理の言う政治的安定に貢献をしようとしておるのは、反共国家を対象にしておると思うのです。こういう点どうお考えになりますか。アジア全体の国家に対してまんべんなくそういうことをお考えになっておるのか、ある特定の国をさして、その安定、結集をはかろうとしておるのか。私どもはその反共国家に対して支援をしてきた、こういうふうに思うのですが、その点どうですか。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どう言ったらいいですか、私ども一と同じようなものの考え方、いわゆる自由主義陣営、かように私どもはその中にいると思います。なるほど私は共産党はきらいですよ。きらいですけれども、いわゆる反共的な色彩は出しておらないはずです。だから自由主義陣営という、これははっきりしている、かように思います。
  103. 楯兼次郎

    ○楯委員 そういう総理の態度に対して、こういうことをわれわれは心配するわけです。最近、タイのタナット外相は、ベトナム戦後に備えて、アジアにおける反共を軸とする政治的防衛同盟を提唱しておる。またパリのベトナム和平会談では、新聞の伝えるところによりますると、アメリカ及び南ベトナムの構想として、日本、ビルマ、インドネシア三国によるベトナム平和維持軍の打診が行なわれておる、こういうことが新聞で報道されておるわけです。私は、政府はもちろんこれに参加をする意向はないとは思うが、とにかくアメリカのベトナム戦争に協力をしておる日本は、そういう資格はないと思う。それからまた、海外派兵というようなものは禁止をされておるので、こういうことはないと思うのでありますが、こういう動きについて、外務大臣は、日本が参加するせぬは別として、こういう動きがあるということを御承知ですか。
  104. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 情報等でそういうふうな意見が散見することはございますが、私の態度、意見というものは、先般来当委員会でもきわめて明確にお話し申し上げているとおりでございまして、さようなことをどこの国かがかりに考えるといたしましても、日本といたしまして、武力的な、何と申しますか、そういう組織に入るとかいうようなことはあり得ざることでございます。  なお、ただいま御指摘ございましたが、タイ国のタナット・コーマン外相も近く日本にも参ります。私もとくと懇談したいと思いますし、こういう機会等を通じまして、わが国のはっきりした態度というものを明らかにしていきたいと思います。
  105. 楯兼次郎

    ○楯委員 総理大臣、いま外務大臣の答弁を聞かれたとおりです。こういう参加要請があった場合には、もちろんこれはきっぱりと参加できない、そういう態度を表明されると思うのですが、答弁をひとつ承りたいと思います。
  106. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりであります。簡単な答えですが、いま外務大臣が答えたとおりです。  それからもう一つ、蛇足を加えるのかもわからないですが、私が二度目にアメリカに参りました際に大事な点も——これはお読みにならなかったのですが、第一の項目で、第一と申しますか、中共の問題で、こういうことも言っているんですよ。「さらに両者は、アジアにおける持続的な平和確立の見地から、中共が現在の非妥協的態度を捨てて国際社会において共存共営を図るに至るようにとの希望を表明した。」こういう大事なところもぜひ読んでください。
  107. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは時間の関係で——中国問題を私は予定しておるわけです。だから、いまおっしゃった問題は、中国問題のくだりでとくと承りたいと思っておったんですけれども、まあ時間があればですよ、なければ別でありますが、申し合わせしておきたいと思います。  それからもう一つ、「経済的発展に貢献」と、共同声明にはこういうことばがあるわけです。経済的発展、これも一非常に片寄っておる。アジアとまんべんなく手を握って開発なり発展をしていくという角度から見ると、片寄っておると思うのです。第一回の佐藤・ジョンソン会談以来、なるほどASPACができました。東南アジア開発閣僚会議ができた。アジア開発銀行及びこれに対する各種基金など、いろいろな協力機構がつくられたことは御承知のとおりです。それからまた、二国間の借款、賠償協定もやってもらった。ところが、アジア開発銀行一つとってみましても、たとえば投資の額の比率によってこれを運営するということになっていますね。したがって、アジアの国が相当希望を持っておっても、大株主は日本とアメリカなんですよ。この意向に反してはこれは運営されない。こういう点を考えてみますると、ほんとうにアジア開発を進めるためにこういうものが設けられたのかというところに、多少その疑義があるわけです。それから、とにかく政府借款は、もう常に反共国家——まあ反共国家が好きだと総理はおっしゃったのですが、とにかく極端に片寄っておる。最近、新聞等によりますると、台湾三億ドル円借款、インドネシア、韓国一億ドル以上の援助の要請が来ておるというようなことを私どもは拝見しておるわけですが、この経済援助といいますか、アジア諸国に対する援助というものも非常に片寄っておって、その政治的意図がありありとある。こういう点について、私は、冒頭申し上げましたように、日本が、戦争前の、好むと好まざるとにかかわらず、生命線だとか、大東亜共栄圏まではいかぬにしたところが、そういう体制に、この日米共同声明を発展をしていった場合には、そういう形づけができ上がってしまうんじゃないか、こういうことを冒頭申し上げたわけでありますが、そういうおそれがあると思うのです。で、こういうことは、特別な借款を受ける国はいいでしょう。しかし、一般的に見れば、これはアジア諸国の不信を招かざるを得ない、こういうふうに私は思うわけなんです。どうお考えになりますか。
  108. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、ただいまのように、特別な考え方で借款その他がやれておるわけじゃございません。いわゆるいまの国交のあるところ、国交正常化の状態のもとにおいては、私ども援助すること、これは当然だと思います。それ以外に別に区別したようなつもりはございません。
  109. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、これは時間も守らなければなりませんので、多少の弾力条項は別として、ひとつ中国問題、日中問題にちょっと入っていきたいと思います。  外務大臣にお聞きしたいのでありますが、最近、イタリア、カナダ、ベルギーの中国承認決定または承認の動きに対して、いま大きな話題を投げておるわけでありますが、外務省はこれらの動静を調査するように指令したということも聞いております。イタリア、カナダ、ベルギーのほかにこういう動きはあるのかないのか。西ドイツはどういうような情勢にあるのか。それから十三、十四日ですか、香港で、中国の変化はどのような状態かという、あんたのほうの会議をやっておられるはずですが、この三点について、ひとつ答弁お願いします。
  110. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 中国問題につきましての各国の動静と申しましょうか、こういうことにつきましては、外交機関を常に機動的に働かせておりますので、情報は的確に掌握しておるつもりでございます。ただいまおあげになりました三つの国のほかに、特に西ドイツというお話がございましたが、西ドイツにつきましては、まだ的確な情勢は把握されておりません。  それから第三のお尋ねは、随時香港その他におきまして——これは香港に限りません。随時各所におきまして、関係国駐在の大公使あるいは総領事等の会議を行なっておりますことは事実で、ただいま御指摘会議も最近行ないました。その報告も詳細に聴取いたしております。
  111. 楯兼次郎

    ○楯委員 時間の関係上簡単に申し上げますが、私どもは、中国の国交正常化、友好促進を進めていく基本的態度は、こういうふうに持たなければいかぬと思うんですね。つまり、満州事変以来、日本の軍事侵略に対する犯罪行為の反省から出発をしていかなければいかぬのじゃないか、こう思います。それからわれわれが対象とするのは、一部の権力者だけではいけない。七億何千万の人口があるといわれておりますが、七億の大衆を対象として、そういう考え方を基本にして、日中の友好促進を進めていかなければいかぬ、こう私どもは思っておるわけです。これが日中友好あるいは国交正常化の基本的な態度でなければならぬ、こう私どもは思うわけでありますが、総理大臣の見解はどうですか。
  112. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかくどういう態度にしろ、隣の国同士ですから、いまのままでいいとは私は思わない。これはやはり改善されなければならない。それがほんとの世界平和のため、極東の平和のためにも必要だと、かように思います。わが党の古井君、田川君、いまちょうど行っている最中でございます。行く前にも私は会って、この二人にも話も聞いた。向こうへいったその結果が、けさの新聞あたりには報道されておるように思っております。そういうようなこともだんだん積み重ね、ここに長い両国の国交の断絶がございますから、やっぱりもっと、いま言われるようなえらい人ばかりじゃなくて、文化交流その他の交流によって、もっと親しさ、積み重ねが必要ではないかと、私はさように思います。
  113. 楯兼次郎

    ○楯委員 中国問題は、先ほど沖繩返還問題でも触れたんでありますが、自民党の中でも極端に意見が変わっておるようにわれわれにはとれるわけですね。たとえば一月の二十四、二十五日、最近いわれております米国のサンタバーバラですか、あそこで開かれました日米議員懇談会で、藤山愛一郎さんが代表して、中国の軍事的脅威があるか、いや、そういう危険性は全くない、こういうことも言っておられるわけです。それから二つの中国ですね、台湾政府と中国の関係はどうか、いや、台湾を放棄した日本の国に、そういうことを言う資格はありません、これは当事者間で話し合ってもらえばけっこうです、こういうことも言っておられるわけです。それから国連の加盟については、国連のほうで中国の加入を歓迎するというような決議でもしたらどうか。これはこの間自民党の川崎さんがここで演説をされたわけでありますが、そういうことを言っておられるわけです。だから、これは自民党の一部の方がおっしゃるんでありますが、大体ここらが国民的合意の線じゃないか、こう私は思うわけです。  それで、中国のほうは、友好推進の基本的な態度として、いわゆる平和五原則を提唱しておるわけですね。領土、主権の相互尊重、相互間の不可侵、内政不干渉、平等互恵、平和的共存と五原則を提唱して、友好を進めよう、こういうことを言っておるわけです。だから、中国に対してはそうどうこうというような問題は私はないように思うのですが、どうですか、その点。
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 簡単にお答えいたしますが、私どももいろいろの期待をしておった。ことにワルシャワ会談あたりが始まるというようなことで、これにもたいへんな期待をかけたのですが、どうもこれはいまやる時期じゃないというようなことを中国側で言っているというような報道を見たばかりでございます。なかなかそういうようないろいろな問題がありまして、いまのままではいかぬことは確かですが、むずかしいのじゃないだろうかと思います。お互いに、しかし、積極的に共存共栄していくというそういう立場に立てば、必ずいまのしこりはなくなって、必ず平和的のつき合いができるだろう、そういうことは大いに歓迎すべきことだと思います。また、いまの二つの中国、その陰謀を佐藤政権はやっていると言って、古井君、演説を聞いたばかりだというような、きょうの新聞に出たと思いますが、私は、いま言われるように、やはり中国は一つだという、これは台湾の中華民国も、また北京の政府もそのことを言っているのですから、われわれはそういう問題にはあまりタッチしたくありません。私ども、いま中華民国ととにかく国際的な条約を結び、権利義務がある、そういう立場に立ってつき合っている、かように御理解をいただく。別に敵視しているわけじゃございません。
  115. 楯兼次郎

    ○楯委員 いや、総理は敵視をしておるわけじゃないと言われますが、この間議論になった江田書記長の吉田書簡、これは問題がなければ、はっきり日本の政府の態度、関係ありませんと言えばいいと思うのです。それから食肉輸入でも、イタリアや英国へどんどんどんどん年間三十万トンも出ておるのに、日本は口蹄疫だ、どうだこうだといって、船上加工ということをやっているわけでしょう。ところが、農林省に前につとめておった人が、獣医が行って、もう七年前から口蹄疫なんというものはないと太鼓判を押して農林省に報告しておるんですよ。それから日工展では、十九品目はココムの制限に抵触をするからだめだ。いわゆる昔、ナイロンは落下傘になる、紙は軍票になる式の恥、ずかしいようなココムの制限にとらわれて、ああいうつまらぬ態度をとっている。これは向こうから見れば、これは敵視政策をしておるじゃないかととるのが、私は当然だと思うのです。  それから次に、時間がありません、国連加盟について私はお聞きをしたいと思います。  この間川崎さんがここで演説をされておったのですが、例のサンタバーバラで前の国連大使のゴールドバーグ氏が、中国の国連加盟に反対するため日本代表がアメリカよりも重要事項指定方式に熱心なのには驚いた、こういう演説をされたということを聞いたわけでありますが、これはもう時代錯誤ですね、日本の態度は。いまや、先ほど申し上げたように、イタリア、カナダその他の国が中国の正式承認をするというような情勢の中で、アメリカ人からこういう意味のとられ方をしておる。全く私は恥だと思うのです。   〔中野(四)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、私はこの間新聞を読んで非常に感銘を受けたんですが、カナダが中国を承認をしようというその意図はどこにあるのか、新聞記者の問いに答えてカナダの首相はこういうことを言っておる。世界の人口の四分の一を占める政権を承認しないでおくことによって得られる利益は何もな  い。世界の人口の四分の一を占める政権を承認しないでおくことによって得られる利益は何もない。中国とその隣接諸国、特に米国との間の緊張を緩和することは、政治的にカナダの利益になる。これは、カナダの総理大臣より、日本の佐藤総理大臣の言うことばのような気が私はするわけです。だから、こういう点をお考えいただければ、もう少し日中の貿易なり友好というものは進むような気がする。日本が常に先生にしておる、われわれから言わせれば、こびを売っておるぐらいにしかとられないそのアメリカですら、オランダの臨時大使の亡命によって延びたのですが、いよいよあすは百三十五回目の、正式政府代表による会談がワルシャワで持たれようとしておる。これが延びたので行きませんけれども、延びなかったら、新聞記者、科学者、文化使節団の交換をひとつ提案をしよう、あるいは中国に行く旅行制限を緩和する、こういうようなことをアメリカのほうでは提案をしたい、こういうことを、延びたんですが、言っておる。アメリカですら正式政府代表大使が会談をしておるのに、なぜ日本が政経分離だの何のかんのと言って、友好会談が進まないのか。私は、もう日本だけでありますから、日本の大使級以上の、外務大臣ぐらいが中国に行って、どんどん話し合いをすればいいと思うのです。こういう点、どう考えますか、外務大臣、総理大臣。アメリカの大使だって、やっておるのですよ、あなた、百三十五回も。
  116. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 総理から御答弁があるかと思いますが、その前に申し上げたいと思います。おことばを返すわけでは決してございませんが、百三十何回もやりましても、まだこれといった実りが出てこない。そしてまたいろいろの期待を受けておったと思いますが、今度のワルシャワ会談もまた延期になった。ちょうどだだいまも、アメリカ側からも非常に遺憾であるという趣旨のことをロジャーズ国務長官が言明しておるようでございます。また、先ほどちょっとお触れになりましたが、イタリアは一月二十三日であったと記憶いたしますが、中国の承認の時期がそろそろ来たように思うという発表がございましたが、その後何の進展もございません。またカナダの態度に対しまして、スウェーデン駐在の中共大使館等を通じて、いまのところ何らの反応が出ておらない。いかにこれはむずかしい問題であるかということを考えなければならないと思いますが、他面、日本側におきましては、単なる大使級会談というようなもの以上に、わが自由民主党の有力な代議士が随時往来をしておる、覚書貿易も相当にふえつつある、新聞記者の交換もできておる、ずいぶんこれは政経分離政策というものが現状において賢明な政策である、私はそういうふうに確信しているわけでございます。  もう一つ、この機会に私はぜひ国民的な関心を深くしていただきたいと思いますのは、まことに残念でございますが、十三人——実は十三人ということの人数すらも正確には掌握できておりませんが、同胞が生存、安否すらもわからない、抑留されている状況でございます。こういうことにつきましては、もう百方手を尽くしておりますが、私は、政府間の会談でも何でもいい、どうかして一日もすみやかに、少なくとも実情を明らかにしてもらいたい、国民的にこの点はお願いをいたしたいと思います。
  117. 楯兼次郎

    ○楯委員 外務大臣の話を聞いておると、なるほどそれは悪いことは悪いんですよ。ところがあなた、解決をするというより、非難のほうに力を入れて答弁しておる。そういう態度が私はいかぬと思うのです。中国との話し合いは、冒頭申し上げましたように、二十数年前にさかのぼった、われわれのやったことを基本にして話し合いをしなければだめですよ。あなた、解決するより非難のほうが先に、われわれ聞いておるととれる。  それから、時間がありませんので言いっぱなしになりますが、イタリアが中国を承認しようとした、そういう風聞が伝わると、今度は国府へ行って、あなた国交断絶してはだめですよ。カナダが中国を承認しようというような話が伝わると、アメリカと一緒になって、もう二つの中国の反対運動をやめなさいとかなんとか妙なことばかりやっておる。これは新聞報道ですからやめますが、そういう態度ではいかない。もう少しよく考えて、日中友好の政府間の話を進めてもらいたい。  それから、ことしの秋の中国の国連加盟については重要事項指定方式なんかをとらぬと思うのですが、この一点だけお伺いをして質問をやめたいと思います。
  118. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 国連総会は、御承知のとおり、この秋のことでございますから、各方面から慎重に検討いたしまして、そのときまでに態度を決定すればよろしい、かように考えております。
  119. 楯兼次郎

    ○楯委員 どうもありがとうございました。
  120. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて楯君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田春夫君。
  121. 岡田春夫

    岡田(春)委員 社会党を代表して若干質問いたしますが、私の質問の主たるものは外交、防衛問題であります。  しかし、第四次答申が出されましてから、石炭問題が特に最近は非常に重大になってきておりますので、最初に、石炭問題の基本の問題についてだけ特に総理大臣に御意見を伺いたいと思います。  二月十日のこの予算委員会において、石炭問題について政府が幾つかの答弁をされました。この答弁を要約いたしますと、大体三つの柱になると思います。第一点は、石炭産業は存置しなければならないけれども、石炭の位置づけの問題については、今日では明らかにすることができない。第二の点は、体制問題については反対ではないけれども、しかし、その前に企業自身の手によって終閉山を積極的に進めるべきである。第三点は、四次答申については不十分の点がないわけではないので、これが最終的なものとは考えられない。このようなことを総理大臣並びに通産大臣がお答えになったのでありますが、私は、この答弁は、政府が石炭問題に対してほんとうに積極的な意欲をもって対処しているものとは考えられない。この点はたいへん私は遺憾に考えます。それにもかかわらず、この間いよいよ法律も提出をしたわけでありますが、四千億円の金を投入するということになってまいりました。しかし、それだけの金を投入するならば、少なくともその金を投入した結果、石炭産業はどうなる、生産目標はそのときにおいてはどういうようになるであろうというような、いわゆる石炭の位置づけの問題を明確にしなければ、四千億円の金がどういうような効果をもたらしているものであるか、こういう点は明らかにならないわけであります。この点について通産大臣は、この間の答弁では、それは政府としては明らかにするわけいにはいかない。企業自身の努力にまかせる以外にはない、こういうことを答弁されております。私は、これはまことに無責任な態度であるといわざるを得ない。  そこで、まず総理大臣にお伺いをいたしたいのは、それだけの金を投入する限りにおいて、石炭の位置づけというものを明確にするべきであると思うが、この点は総理大臣、いかにお考えになるか。
  122. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 石炭の第四次——四次だと思いますが、改革というか改正案、それと取組むのでございます。過去の第一次、第二次、第三次等々顧みてみますると、いずれもこれが最後のてこ入れだ、こういうところでとにかく飛び出しておる。しかし、そのいずれもが私は期待に反した。その期待に反したことは、一体どこにその原因があるか。いまそれを反省してみると、岡田君に申し上げるまでもなく、これは何といってもエネルギー革命というか、いま進行しているエネルギー革命、そのもとにかつてのエネルギーの大宗であった石炭がただいまは押し流されておる、そういうことだと思いますね。そういうことを考えてみると、いま私どもが石炭をエネルギー源として食いとめようとする、その目標をいま出しますが、それがはたして守られるかどうか。ことに私どもがこれと取り組んでおるのに、民間企業としてこれをやるという、国家理管あるいは国営ではない、こういう立場から見ますると、いまの原料炭自身ははっきりいたしておりますが、その他の一般炭、それは一体どの程度に位置づければいいか、これは一つの問題だと思うんですね。それにはやはりいまエネルギー革命に押し流されないような、とにかく企業自身がりっぱに成り立つことが必要じゃないかと思う。そういう意味でただいまの四千億の金も出しておるつもりです。私は、通産大臣が申したのは非常に正直な言い方で、政府はこの辺がねらいでございますとはっきり言いたかったろうと思いますけれども、それがなかなか言えないのは、これはやはり新しいいまのエネルギー革命がどんどん進行しておるそのときに、採算ベースに合わないような石炭では、これは存置するわけにいかない、かように思った結果だと私は思います。
  123. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いま総理大臣の御答弁によると、原料用炭の問題はともあれ、一般炭についての見通しが必ずしも明確ではない、このことが炭石の位置づけの問題に大きな支障になっている、こういうことでありますが、この間の答弁を聞くと、三千六百万トンという石炭全体の生産目標が、予算上一応四十八年としてつくられる。ところがその内訳は、大体一般炭は一千百万トンというのが一応の目安になっている。ところが、ことしの一月に中央電力協議会から電力の長期計画案なるものが通産省に提出されております。それによると、昭和四十八年の電力需要計画、その中で特に火力発電の関係ですね、これは一般炭を使う。火力発電は、四十八年で四十二年に対比して七〇%増という計画が出ております。そうすると、四十二年度の火力発電における一般炭の消費率、この数字で換算をいたしますと、四十八年の段階においては少なくとも三千九百八十万トンという石炭が必要になる、一般炭だけ。重油転換の問題もありましょうけれども、一般炭一千百万トンということでは、これは問題にならないということは、もう非常に明らかであります。こういう点は、重油転換に全部してしまうというわけにはこれはいかないです、かまの関係やいろいろな関係がありますから。そういう点からいっても、少なくとも三千六百万トン、その中における一千百万トンという一般炭のワクでは、これは結局外国から炭を入れなければならないという結果になってしまう。だから、前の椎名通産大臣のころには、五千万トン程度ということで審議会に付託をしたのでありますが、いつの間にか通産省の石炭担当の高級官僚が三千六百万トンのワクをつくってしまったんです。  こういう点からいって、佐藤総理大臣が四次答申以後においても何らかの方策を出さなければならないということなどをお考えならば、こういう生産目標それ自体は、もう今日でさえ目標に現実の問題として合わないという点があるのでありますから、この際四次答申に基づくところの施策というものは、これはたな上げをして、あなたのおっしゃるように、最終的な方針というものをもう少しあとにお出しになったほうがいいんじゃないか、それのほうがベターなんじゃないかと思うのですが、いかがにお考えになりますか。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま発電用炭のお話が出ております。私申し上げるまでもなく、御承知のように火主水従、火力発電を主体にして水力発電がそれについていく、こういう状態でありますが、それは多くいわゆる重油あるいはガスの問題だ、かように思っております。いま一体何が一番安いコストででき上がるのかという、その点が先ほど来から問題になっているのだと思います。政府がいろいろ援助をいたしましても、やはり独立して採算がとれるようにはなかなかならない。そこらにこの石炭の悩みがあると思う。原料炭を掘りながら同時に一般炭が出るという、そういうものは何としてでもこれは消化したい、あるいは山元発電を設けてもそういうものを消化したい、かように考えたのでありますが、なかなかそこらに見通しが十分立たない。そこで通産大臣が非常に正直な言い方をしている。  それから、今度はひとつ今回の中間的なやり方はやめて、もう少しあとで、時間はおくれても本格的なものをやれと、こういう御意見かと思いますが、その御意見は御意見として私、聞いておきますが、ただいまやはりある程度この石炭業界が体制づくりの方向へいかないと、このままでは私はいかない、かように思っております。
  125. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いま佐藤総理の御意見を伺っていると、やはり企業みずからが体制づくりをしてもらいたいという御意見ですが、この間もそういう答弁をされた。その答弁の結果がどうであるかというのを、御存じなはずです。  二月十日の質問に対するあなたの御答弁の結果として、明治、麻生あるいは杵島、こういう大手の炭鉱はどんどんつぶれていっているわけです。こういう点を考えました場合において、政府答弁というものは非常に重大である。そして特にこのままの状態でいきました場合に、きょうの新聞にも出ているように、なだれ現象が起こってくるのではないか。三千六百万トンそれ自体の維持なども、これは非常に困難になる。体制問題はそのあとで考えるなどとおっしゃるが、何年かあとに体制問題を考えるというときには、その対象がほとんどないというような状態さえ考えざるを得ないようなことを考えました場合においては、むしろこの際、抜本的に体制問題をいま考えるべきである。そうしなければ全く手おくれになってしまうといわざるを得ないと私は思うわけです。ですから、再検討をされてはどうか。特にこのような状態でやってまいりますと、もう言うまでもないことですが、坑内で命をかけている炭鉱労働者の状態、それから産炭地域の状態、こういう状態、いわゆる壊滅的な状態になった場合において、社会不安の増大というのは非常に大きなものになると考えざるを得ない。この点を私はいまから警告をしておきたいと思います。このなだれ現象を阻止するためには、一体どういう政策をおとりになるか、この点についてもう一度総理にお伺いをいたしたいと思います。
  126. 大平正芳

    ○大平国務大臣 石炭産業の現状について、私はは岡田さんと憂慮を共通にするものでございます。ただ、この際体制問題を練り直してやるということの御提言でございますけれども、私はおことばを返すわけではございませんけれども、いまそんな余裕はないわけでございます。あなたが仰せのとおり、いま坑内で働いている方々、またこれに牽連しての社会不安を静めてまいりますためにも、一日も早くいま私どもが御提案申し上げております石炭政策を実行に移さなければならぬわけでございまして、この政策ができるまでの間、体制論議を中心といたしましてすでに八カ月間もの討議が行なわれたわけでございまして、これから根本的にもう一ぺん考え直すということにいたしますと、また何カ月もかかるわけでございまして、その結果は、あなたがせっかく希望されている方向とは逆な結果が生まれることをおそれるのでございまして、その点はなだれ現象を防ぐためにも、また社会不安を大きくしないためにも、この政府案をぜひとも早く御承認を賜るようにお願いしたいと思います。
  127. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もう一点だけ総理大臣にお伺いいたしますが、今度の政府の方針を出したことによってなだれ現象が起きているのでありますから、いま大平通産大臣の言ったように、この政策を実行するならば押えられるなどというのは、これは本末転倒であります。これは私は意見だけを申し上げておきます。  そこで、もう一度申し上げますが、四千億円も金を使うようなわけでありますから、少なくともいままでに使った金、これは一体どういうように使われているかということを調査するのは、これは当然政府の国民に対する義務だと私は思う。ところが、いままでどういうように使われておったかということについては、通産省はその調査に対して熱意が全くない。こういう点は一体どうなのかという問題であります。たとえば四十一年の三次答申で一千億円の肩がわりをしたのは、御承知のとおりであります。ところが、石炭の大手独占が昭和四十二年上期現在で社外投資をしているのは、全額として一千二百五十一億円であります。そうすると、政府が一千億円入れているのに、会社自身の金は一千二百五十億円逃げている。これでは私は話にならぬと思う。もちろん、この社外投資の中においても、やむを得ないものもあります。たとえばその炭鉱を第二会社にして経営をするというようなものに金を出しているのもあります。あるいは関連産業もあります。しかし、少なくとも観光事業なんかに金を投下しているというものは、これはやはり徹底的に押えなければならぬと私は思う。具体的な名前をあげていけないが、これはあまりにもはなはだしいので、三つばかり名前をあげますが、北炭観光が三十二億円金が投下されている。太平洋興発は八億四千万円投下されておる。それから常磐炭礦の湯本温泉観光、これに対しても八億円の金が出されている。こういうようなことでは、一千億円の金、それに対して社外投資が一千二百億円というようなことを黙ってほうっておくわけにはいかないと思うが、総理大臣は、この社外投資に対して通産省に明示をいたしまして、やはり徹底的に調べさせることをやらせるべきだと思いますが、総理大臣はどうお考えになりますか。
  128. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの兼業が大体問題になっている。今度の場合でも、石炭産業を維持する分か、あるいは企業、会社の存続のための援助かというような議論まで出ているように、兼業の部門がたいへん問題になっております。しかし、これも考え方によりますから、石炭産業自身はなかなか独立ができない、兼業の面からそれを助けておる、こういうものも幾つもあると思います。通産大臣が先ほどお答えしたように、いま早くしてあげなければいかぬというが、何が一番急いでいるのか。私は、いまの状態では金融がつかないのだと思います。いま言われるように、あるいは観光事業、他の産業にどんどん投資はしているじゃないか、かように言われますが、そういうところでもうけて石炭の赤を埋めようという、そういうこともあるので、全部悪意ではないと私は思うのですよ。(岡田(春)委員「調査をさせる必要はあります」と呼ぶ)こういうことについては十分調べて、効果を十分明らかにしていかなければならぬ。だが、いまの困っておることは、おそらく会社が金融がつかないということだろと思います。金融がつかない、そのために石炭も掘れない、あるいは保安の状態にも不備がくる、こういうようなことがあってはならない。だから改革にひとつ早く手をかけていっていただきたい、こういうのでございます。
  129. 岡田春夫

    岡田(春)委員 実は、石炭問題でまだまだたくさんあるわけであります。たとえば保安の問題もあります。あるいは炭鉱労働者の賃金が一般の企業から見て一万円も少ないという、重労働にあるにもかかわらず、その状態である、こういう問題がいわゆる労務倒産といような問題を起こしている、こういう問題もあります。しかし、これらの点はいずれ石炭特別委員会その他で伺うことにいたしまして、外交防衛問題に入ってまいりたいと思います。  これから外交、防衛問題に入りますが、最初にお伺いをしたいのは、総理大臣に伺いたいのでありますが、沖繩の返還という場合に、日本に帰属すべき領域の問題については、いまだに質問されておりません。そこで第一点としてお伺いをしたいのは、返還にあたって日本に戻ってくる領土というのは一体どこなのか。沖繩、宮古、八重山、この三つの群島のすべてであるかどうか。  それから、もう一つは、もしそうだとするならば、領海は三海里の原則、これは日本の主張でありますが、その領海というのは、それらの島々の三海里以内というのが領海である、こういうように理解してよろしいか、この点、総理大臣にお伺いしたいと思う。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体いまの琉球列島、それでいい。それが返ってくるのだと思っております。いま官房長官も言っておりますが、沖繩県、その範囲が返ってくる。それを返そうというのだし、また領海も三海里、これは、いまのところは三海里説を主張している。
  131. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、現在出されているアメリカの琉球民政府の布告二十七号を見ますと、現在のアメリカの施政下におけるところの管轄区域が実は明らかにされております。これは年表であります。この管轄区域が全部返される。大体これと一致するものであると考えてよろしいのでしょうか、どうでしょうか。
  132. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 大体一致するものと考えております。
  133. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは全然違うのであります。これはアメリカの民政府の正式の年表でありますが、ここにも琉球政府のほうもありますが、これは遠くて——一冊しかありませんから総理にごらんに入れますけれども、これはどなたかお取り次ぎいただけばけっこうですが、この区画は施政権の管轄区域です。この罫線です。  具体的に申し上げますが、西のほうは、沖繩本島から中国大陸沿岸に直線を引いて、その直線の、沖繩から三分の二のところ、その公海の海域が西のほうの境であります。東のほうも大体それくらいの広い幅の長方形の面積が管轄権、政治の及ぶ管轄権として指定されております。  そこで、愛知さんもよくお調べいただかないと困るのです。大体において同じでありますなんというような御答弁では困るのですが、そこでお伺いをしたいのは、いま総理大臣のお答えのとおり、いわゆる沖繩全体の島と、そしてそのまわりの三海里の周辺、その領海が返ってくるのであるならば、いまごらんになった面積、それ以外のところは、広大な面積があるのですが、その広大な面積はアメリカにそのまま残されるものと考えていいかどうか、そういう点をお伺いしたいと思う。
  134. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの点は、これは公海になるのじゃないですか。私はいまそれを公海だと思いますよ。だからアメリカが公海を保有するなにはないでしょう。
  135. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、アメリカは公海をやっていることは間違いだとおっしゃるわけですか。それじゃ布告二十七号は間違いであると、こういうことですね。どうですか、総理大臣。
  136. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 こまかい点につきまして、いろいろお教えいただいて感謝いたしますが、アメリカの現在やっておりますことにつきましてとかく申し上げるよりも、私ども考え方としては、固有の日本の領土であるところの沖繩、先ほど総理が言われましたように、常識的なことばでありますが、本来の沖繩県であったところ、こう理解して私はよろしいのではないかと思います。
  137. 岡田春夫

    岡田(春)委員 愛知さん、ことばを御注意になったほうがいいと思う。返してもらう相手、どこを返してもらうかということはこまかい問題ですか、あなた。どこを返してもらうのですか、あなた。こまかい問題などとおっしゃるよりも——あなた、それじゃ布告二十七号を私が質問するまでは御存じなかったのでございますか、どうですか。
  138. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 こまかいと申し上げましたのは取り消していきたいと思いますが、そういう点につきましては、十分なお真剣に検討いたしたいと思います。
  139. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまごらんいただきましたような施政権の範囲、これはいつきめられたか。これは戦争直後、一九四六年一月二十九日、連合国最高司令官マッカーサーが日本政府にあてた覚え書きに基づいて戦時国際法の占領国として適用した管轄区域であります。そこで、その管轄区域がそのまま今日も事実上適用をされているわけであります。  そこで、総理大臣にお伺いしたいのは、言うまでもないことですが、アメリカは二十数カ国とともに日本に対して平和条約を結んだ。戦争状態がそのまま続けられた管轄区域が、そのままここで平和条約の中で適用されているということは、まさに平和条約に違反するということになるじゃありませんか。その点はいかがでございますか。
  140. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 条約の問題でございますから、条約局長から答弁いたさせます。
  141. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 お答えいたします。  平和条約の関係は、平和条約三条に書いてありますとおり、沖繩及び諸島に限って信託統治地域にするまでアメリカが施政権を持つ、そういうことになっております。それから、その一方のマッカーサーの指令のほうの関係は、これはおそらく占領軍として自分らの管轄する地域をきめたものでございまして、それと平和条約と食い違っていても、別に平和条約の違反ということは言えないと思います。
  142. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんなことはないですよ。佐藤さんよくお聞きくださいよ。戦争状態はすべて終結をしたのでしょう、第一条で。戦争状態がそのまま継続しているというのは、平和条約に違反しているじゃありませんか。それはどうなんですか。
  143. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 お答えいたします。  戦争状態によるその管轄区域というのは、占領によって管轄する区域でございます。マッカーサーが言いましてそこの管轄区域ができまして、その後に軍政に移りまして、軍政の管轄区域というものもそれを引き継いだものだと私考えております。
  144. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それを私さっきから言っているんじゃないですか。戦争状態が継続しているのはその状態だと言っているのですよ。  問題は、戦争状態が継続していること、しかも佐藤総理がお認めになったように、公海上まで管轄区域にするのは間違いだということ、この事実はお認めになりますか。御答弁願います。
  145. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は公法学者としての議論から申せば、いまの日本の領海でないところ、またその近くにあるもの、これはいわゆる公海だ、私はかように考えます。その点でアメリカがどういうような説明をしておりますか、それは私の関知しないところでございます。はっきり申し上げます。
  146. 岡田春夫

    岡田(春)委員 関知しないんならお教えいたします。  琉球米国民政府布令六十八号に基づいて琉球政府章典があります。この章典の第一条に、琉球政府の政治的、地理的管轄区域は、左記のものとするといって、ずっといまの北緯何度から何度と、こう書いてあります。管轄区域。関知なさらなくてもいま関知されたはずであります。関知されたんなら、この地域が、こういう区画というものが、こういう施政権の及ぶ管轄区域というものが適当なものであるとお考えになりますか、どうでございますか。
  147. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まあ、いまの状態についての適否を私にお尋ねですが、日本に返ってくるときには、私は、先ほど答えたように、いわゆる日本の主張している公海の範囲にとどめます。
  148. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういう御答弁ですから、ちょっと思い出しましたから伺っておきますが、いいですか。日本に返ってきた場合には、領土、領海、先ほどお話しのとおり、その場合に、安保条約がもし適用されるとするなら基地の提供をしなければならない。その基地の提供は日本の領土、領海の範囲内に限るべきであって、それ以上に出てはならない、こう見ていいですか。
  149. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは明快にそのとおりでございます。
  150. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、公海の従来とってまいりましたアメリカ側のその範囲というものは、そのときに完全に消える、こう見てもよろしいですね。
  151. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 あらかじめ問題を御指摘いただいておりませんために、多少準備の不足なところがございますけれども、ただいまお話しの琉球政府章典でありますけれども、事実に間違いがあれば御指摘を願いたいと思いますが、確かに第一条にその規定がございます。ただしその内容は、いま仰せのようなことではなくて、「琉球政府の政治的及び地理的管轄区域は、左記境界内の諸島、小島、環礁及び」「領海とする。」というわけで、なるほど地図の上では点線が書いてありますが、その政治的、地理的管轄区域はその境界内の諸島、小島、環礁及び領海とするというふうにありますので、私の見ている章典とそちらの章典が違っていれば話は別でございますが、あるいは私のほうで誤解があるかもしれませんが、そういうところがありましたら御指摘を願います。
  152. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたが誤解しているのです。あなたが誤解しているのは、海の中になぜ管轄権の線を引く必要がありますか。一番中国の沿岸に近いところに1島でもあるなら別ですよ。島がないのでしょう。公海のまん中に何で線を引くのですか。管轄区域と書いてあるじゃないですか。それはもうはっきりしているじゃありませんか。  私、この問題だけであまりこだわったら、あとの問題に入れないから、あまりこの問題にこだわりませんが、この問題、明確にしたいですか。したいなら、もっとやりましょう。
  153. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 違っていたら御指摘を願いますが、ただいまの御指摘は、必ずしも私としては納得できない点がございます。章典の第一条のことでございますので、これは見ればわかることでございますから、もう一度申し上げますが、政治的及び地理的管轄区域は、左記境界内の諸島、小島、環礁及び領海とするというわけで、そういう基本点のないものについての海の範囲、これを管轄区域にしているというふうには、どうしても三の第一条の文言がこのとおりであれば読めないというふうに思うわけです。
  154. 岡田春夫

    岡田(春)委員 −あなたの答弁がいかに勘違いであるかというのをはっきりしましよう。アメリカだって三海里説ですよ。もし管轄区域をはっきりそういう意味でするのならば、沖繩群島、宮古群島、八重山群島の三海里以内とするのがあたりまえじゃないか。そう書いてないで、広い公海に線を引いたというのは管轄区域があるということですよ、あなたの解釈はどうであろうとも。これはあとでまたやりますが、問題はここにあるということをひとつ御理解いただきたいと思う。  特に、佐藤総理大臣、これがアメリカの極東戦略における中国封じ込め戦略のあらわれなんだということなんです。どうですか。沖繩本島と大陸沿岸の三分の二の地域まで境界線を引いて、中国接近をしながら侵略体制をとるというねらいがこういう点にあら、われている、こういう意見だけを申し上げておきます。そうして次の点に入ってまいります。  その次は、沖繩の戦闘作戦行動並びに共同作戦の問題について若干お伺いをいたします。  戦闘作戦行動の問題はいままであまり質問が出ていないわけであります。ところが、総理は肝心なところになると、基地は白紙であると言って逃げる悪いくせがありますから、これは御注意願いたい。というのは、白紙というのは、そういう場合もあり得るから自紙なんでしょう。だから、そういう白紙であると言って逃げちゃ悪いですから、ここでひとつ先にくぎをさしておきます。  そこで、まず第一点として伺いますが、これは総理大臣より愛知さんのほうがいいでしょう。事前協議条項にいう戦闘作戦行動とは、米軍機が偵察、補給、移動、こういうことを行なうために日本の基地を使用する場合には、戦闘作戦行動として事前協議の対象にはならないと思うがどうか。
  155. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 条約局長から御答弁いたします。
  156. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 先生のおっしゃるとおりだと思います。
  157. 岡田春夫

    岡田(春)委員 次に、また愛知さんにお伺いをいたします。  米軍機が——これは有田さんのほうがいいかもしれません。有田さんにお答えいただきます。米軍機が、日本に対して侵入機あるいは侵入のおそれある飛行機が来た場合に、日本の基地から緊急発進をすることはよくあることですね。スクランブル、これは事前協議の対象になりますかどうですか。
  158. 有田喜一

    ○有田国務大臣 これは事前協議の対象にならぬと思っています。
  159. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ならないということになっています。この緊急発進をしたアメリカの飛行機が、日本の領空外に出てから戦闘作戦行動に入った、こういう場合には事前協議の対象になるかならないか。
  160. 有田喜一

    ○有田国務大臣 いまの状態ですね、そういうことは想像されないのでございますが、ほんとうに戦闘作戦に入っていくならば事前協議の対象になる……。
  161. 岡田春夫

    岡田(春)委員 有田さん、いままでの答弁政府答弁解釈が違いますよ。基地を出発するときには、スクランブルですから戦闘作戦行動に入らないんでしょう。領空外に出たんでしょう。そうしたら事前協議の対象にならないんでしょう。どうでしょう。
  162. 有田喜一

    ○有田国務大臣 初めから戦闘作戦に出ようと思ったならそれは事前協議になりますが、普通の領空侵犯で出たときは事前協議の対象になりません。
  163. 岡田春夫

    岡田(春)委員 問題は、私は戦闘作戦行動というもの、概念というものはどういうものかということを明らかにしたいからです。いまあなたのおっしゃったように、戦闘作戦行動という場合はたった一つしかないのだ。それは日本の基地を出発するときに、作戦命令、戦闘命令を受けていた場合以外にはない。戦闘作戦というのは、非常に狭い意味で条約上はこれは日米間で解釈をして、そういう形をとっているんだということをまず前提としてお考えいただきたい。そうでしょう。
  164. 有田喜一

    ○有田国務大臣 先ほど申したとおり、戦闘作戦行動に出るという命令を持って出たときには事前協議の対象になります。
  165. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣お聞きください、その場合しかないのです。その場合しかないということは、逆に言うと、戦闘作戦行動以外の軍事行動はどんどんやれるということです。どうですか。  そこで、沖繩の問題に関連して、若干今度は、条約論を離れて、実際論でお話を伺いたいと思います。  佐藤総理大臣はひとつ実際論の問題についてぜひ御答弁を願いたいのですが、大体軍事基地というものは総合一体関係にあるのがあたりまえであります。そうでなければ機能を発揮し得ないわけであります。特に戦闘作戦行動のために使われる基地というものは、有機的不可分な連動関係を持つのが当然であります。たとえば横田の基地と板付の基地が連動関係に立っていかなければ戦争をやれないのですよ。そうでしょう。こういうのが基地の本質なんです。だから、沖繩が返還された場合に、そこにある米軍の基地と本土内の米軍の基地との間に差別をつけて、本土の基地に対して戦闘作戦行動を禁止する、こういうことを言ってみても、これは事実上意味のないことであります。  たとえば、別の例で申し上げるならば、沖繩ではなくて板付だけが戦闘作戦行動に入った、そして隣の岩国の基地、横田の基地、こういう基地は戦闘作戦行動に入れないんだ、こんなことを言ったって、これは無意味であります。九州だけが打撃を受けるかというとそうではありません。全体に対して打撃を受けるということになるわけであります。だから、もしここで沖繩基地に対して完全な戦闘作戦行動の自由を与える——新聞ではよく自由発進ということばを使っていますが、こういうように戦闘作戦行動を野放しにしたとたんに日本本土全体が戦争の渦中に巻き込まれるということを考えなければならない、こういう関係にあるということをはっきり御理解いただかなければならない。たとえば、具体的に言うと、先ほど条約解釈論で申し上げたように、沖繩に対しては戦闘作戦行動が野放しで行なわれる。その場合に、日本の本土内の基地では偵察行動が一体になって行なわれるでしょう。補給行動が行なわれるでしょう。あるいはまた沖繩に対する移動が行なわれるでしょう。こういうことになった場合に、相手のほうから見るならば、本土の基地に対しては戦闘作戦行動が出されていないんだから、本土については別だ、沖繩だけはやるんだなんて、そんなことは、相手のことは考えるわけはないのであります。ですから、ここで重要なことは、沖繩に戦闘作戦行動が行なわれるという、野放しの自由が与えられるとするならば、そのときには日本本土全体を含む事前協議条項というものは事実上無意味になる。このことをはっきりしてもらいたい。だから、いままで質疑応答の中で再三出ているが、戦闘作戦行動のものをどうするかというのは白紙であるとあなたはおっしゃっているけれども、これをもし許すということになるならば、日本の国は完全に巻き込まれざるを得ないということをここではっきりしなければならない。このことは、前の六〇年安保のときの岸総理が、戦闘作戦行動に対して事前協議の事項を設けたのは日本の国を巻き込まないためであると言った、この考え方に反することになる。沖繩に戦闘作戦行動の自由を与えるならばそういうことになると思うが、この点は総理大臣、いかにお考えになりますか。
  166. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまそういうことがどうなるかということは、いろいろ私まだ考え、結論が出ておらないのです。そこで、いまのような御意見、たいへん私教えていただいたので、ありがとうございます。御意見は御意見として伺っておきます。
  167. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし佐藤総理大臣、私のいまの話は当然の話でしょう。どうですか。
  168. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はいまのを別にへ理屈とは思わない。そのとおり御意見は御意見として伺っておきます。かように申したのです。
  169. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣はそのとおりだとおっしゃいましたが、それならば、日本の国を巻き込まないためには、沖繩における事前協議条項の戦闘作戦行動は野放しにはしないと理解してもよろしいですか。
  170. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま沖繩が返ってきたとき、日本の安全をそこなうことがないか、そういういい案はないか——しばしば皆さん方、戦争に巻き込まれる、だから安全保障条約に反対だ、こう言われるのですが、そうでなくて、安全保障条約は賛成とも反対とも言わぬが、その基地のあり方として、いまのような本土と全然同じに扱わなければいかぬぞ、こういうような御注意とただいまの御意見を伺った、かように聞いておきます。
  171. 岡田春夫

    岡田(春)委員 沖繩を含む日本の平和を守るためにはどうしたらいいか、いま考えているとおっしゃいましたね。それならば戦闘作戦行動というものを完全に自由にする、自由発進というものを認めるということはあり得ないんだ、そういうように先ほどからの御答弁の結果として私は理解してもよろしゅうございますかと聞いているのです。
  172. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が先ほど来から申しておるのは、私自身基地のあり方についてまだ考えて結論を出しておらないということを前提にしてお聞き取りをいただきたい。私は、先ほど来、あなたのお話はお話として伺っておきます、それが別に理論的に間違いだ、かように私は申してはおりません。
  173. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは、佐藤さんはまだ白紙であるとおっしゃるなら、一応、まだほかに非常に問題がありますから進めますけれども、この原則は非常に重要な原則です。沖繩だけ自由発進がやれる、日本は自由発進がやれないんだから日本が平和だなんということはあり得ないんだ。沖繩が日本に返った限りは、沖繩を含めた日本全土が、もし沖繩に自由発進を認めるならば、戦争の渦中におちいらざるを得ない。したがって、その場合には事前協議条項の戦闘作戦行動というものは少なくとも無意味になる。この点ははっきりしておきたいと思います。沖繩の問題だけと限ってはいけないのです。だから、あなたが白紙だとおっしゃることはたいへん危険であると私は申し上げている。そういう場合もあり得るということを含めて、白紙と言うんだから、そうでしょう。この点は十分お考えをいただきたいと思います。  そこで、これに関連をして若干共同作戦の問題に入ってまいります。  これは有田防衛庁長官に伺いたいと思うのですが、施設地位協定の第六条第一項、これは航空交通管理並びに通信体系、この問題です。軍用の場合と非軍用の場合がございますが、軍用の航空交通管理並びに通信体系は、集団安全保障の利益を達成するために整合するという義務を日本は地位協定に基づいて負っております。  そこで、伺いたいのは、ここにいう集団安全保障とは、日本には集団安全保障はないのですから、集団自衛権の行使はできないわけですから、これはアメリカの集団安全保障であることは間違いありません。そこで、アメリカの集団安全保障体制とは、具体的に言うならば、米韓相互援助条約、米台湾相互援助条約、米フィリピン相互援助条約、ANZUS、SEATO、こういうものになるわけです。そこで地位協定の中でこの集団安全保障の利益を達成するために日本は整合する義務を負った。とするならば、日本の国としては、アメリカの米韓相互援助条約、米台相互援助条約その他、これらの集団保障条約を守る利益のために整合をするという義務を負わされているということになりませんか。
  174. 有田喜一

    ○有田国務大臣 お説のとおり、日本は基地提供の義務を課されております。その基地におる米軍は、ひとり日本ばかりでなくて、あるいは韓国、現在でいえば沖繩、そういうものを管轄しておりますから、自衛隊は日本を守るだけでございますが、米軍は自分たちの管轄しておるあるいは韓国あるいは沖繩に対していろいろな指令ができることは事実であります。
  175. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大体私の質問を承認され、お認めになったわけですが、そうすると、地位協定に基づいて日本の国はそういう集団安全保障条約を守る義務があるということをお認めになったわけですね。お認めになったら、日本を含めて、米韓、米比、米台、全体の反共諸国との共同作戦を認めるということではありませんか。それは法的基礎はここにあるということじゃありませんか。そうでしょう。
  176. 有田喜一

    ○有田国務大臣 それは安保条約による基地の問題でありまして、日本自身はそういうことには参画しない、こういうことであります。
  177. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だって、あなた、基地自身がそういうことのために義務を負った、同時に日本の政府は、国は、この義務を負った。そうしたら共同作戦の法的義務がここに生まれるわけじゃありませんか。そうでしょう。それでいいのでしょう。
  178. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 条約上の問題でございますから、条約局長からこまかく……。
  179. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 お答えいたします。  これは先生よく御存じのとおりでございまして、六条の集団安全保障の利益と申しますものは、これは安保条約の問題だと思っております。したがって、米韓、米比の関係とは関係のないものだと思っております。
  180. 岡田春夫

    岡田(春)委員 佐藤さんそうおっしゃるけれども、それは違いますよ。安保条約だけならば集団安全保障とは書きませんよ。個別自衛権の問題も書かなければ間違いです。安保条約だけではありませんよ。これはアメリカ自身の集団安全保障の問題です。そうでないという証拠をこれから私あげてまいりますから、佐藤さん、あまり行き過ぎて答弁しないほうがいいですよ。(「おどしに乗らないように」と呼ぶ者あり)いやいや、あなた、だって集団安全保障条約、安保条約に基づくアメリカの自衛権、その行使というのは、六〇年安保のときにあなた御存じのはずだ。アメリカにとっては個別自衛権の行使と集団自衛権の行使を行なう。それならば、ことさらにここで集団安全保障のためにと書くことはないはずです。条約について外務省はみんなたくさん勉強している人ばかりなんですから、個別自衛権の行使並びに集団自衛権の行使のために、利益のためにと書かなければならないはずだ。それをことさら集団安全保障の利益のためにと書いていることは、これは単に——安保条約も含みます。含まないとは私は言っていません。含みますが、同時に他の相互安全保障条約を含むという理解であると解釈せざるを得ない。その証拠はあとで皆さんにお見せいたします。お見せいたしますが、佐藤さん、そういうあまり中途はんぱなここだけの答弁をしないほうがいい。あとで困らないようにいまから御忠告を申し上げておきます。  愛知さん、いま言ったのですが、あなたはわざわざ買って条約局長にとおっしゃったのだが、あなたの御意見を伺いたい。
  181. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま条約局長から申し上げたことで明らかであると私は思います。
  182. 岡田春夫

    岡田(春)委員 冗談じゃないですよ。あなた安保のときに第一陣で質問しているじゃないですか。あなたはこの問題に対しても質問しているでしょう。それなのに、あなた、こういういいかげんなことをおっしゃったら——十年も前のことだからというので忘れたのかもしれないけれども、アメリカの集団安全保障条約の中には、六条に規定するこの中には、それでは安保条約以外のものを含まないと断定できますか。断定できるならしてごらんなさい。具体的な例をあげますから。
  183. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 条約局長から答弁いたします。
  184. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 私はここに書いてありますのは安保条約の問題だと思いますが、事実上入ってまいりますのは当然だと思います。これは法律上の解釈じゃございませんで、通信体系の問題になりますと事実上それは入ってくるのは当然だと思います。
  185. 岡田春夫

    岡田(春)委員 条約局長はやはり条約に忠実ですから正直に答えました。ほかのものは事実上入るということはあり得るとはっきり答えた。それでよろしいのですか、愛知さん、いいのですね。
  186. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 そのとおりでございます。
  187. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣、それでよろしいのですか。
  188. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それでよろしゅうございます。
  189. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、アメリカと韓国との間の集団保障条約というものが具体的に地位協定の中で設定されているはずだが、この点はどうですか。
  190. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それはないと思います。
  191. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ほんとにないのですか。ないと思いますとおっしゃるが、私具体的に例を出すのですが、ないのですか、あるのですか。
  192. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 現在私はないと思います。
  193. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あるのです。あるのですよ。先ほどの沖繩の返還領域と同じように、あなた、あんまりこう思い過ぎてやると間違えますからね。あるのですよ。それじゃ伺います。たとえば、この六条二項に基づいてADIZ、防空鑑識圏が日米合同委員会で設定されているはずである。防空鑑識圏というものが設定されているかどうか、この点からまず伺います。防衛庁長官どうですか。
  194. 有田喜一

    ○有田国務大臣 鑑識圏というものがあることは事実でございますが、政府委員から答弁させます。
  195. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 ADIZというのは自衛隊の内部で使っております。自衛隊の内部で使っている防空識別圏というのはございます。
  196. 岡田春夫

    岡田(春)委員 このADIZというのは六条二項に基づいているのでしょう。
  197. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 自衛隊内部のものでございます。
  198. 岡田春夫

    岡田(春)委員 自衛隊外部とおっしゃると、アメリカのものとこうおっしゃる。
  199. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 自衛隊内部と申し上げたわけです。
  200. 岡田春夫

    岡田(春)委員 自衛隊内部のものというのは、行政協定の範囲外と、こうおっしゃる意味ですか。
  201. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 さようでございます。
  202. 岡田春夫

    岡田(春)委員 行政協定ではADIZはつくられておりませんか。
  203. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 つくられておりません。
  204. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ADIZは日米合同委員会のあれに基づいてつくられているじゃありませんか。防衛庁でつくったADIZの中に韓国は含まれているじゃありませんか。どうです。
  205. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 自衛隊でつくっておりますのは日本の周辺のADIZでございます。韓国のほう等につきましては米軍のほうでつくっているかもしれません。自衛隊ではございません。
  206. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ防衛庁に伺います。資料ここにありますから。  防衛庁の正式公文書の中に、空幕発防第二六号、ADIZの飛行方式に関する通達。あるでしょう。ここまで、私、文書番号まで言った。その文書番号の中に、ごらんのように韓国を含めた地図がはっきりと出ています。防衛庁は防衛区域の範囲内として、韓国を含む防空鑑識圏なるものをはっきり設けて、これはしかも六条二項に基づいてこのような防空鑑識圏をつくっている。このことは、明らかに日米韓三つの国の共同作戦の航空管理、通信体系におけるところの基礎である。法的な基礎である。このことが明らかであります。日本はだからADIZの問題にしても、韓国を含めて三国の共同作戦をやらなければならない法律的な義務を、地位協定においてはっきりとになわされているというのは、これでも明らかであります。総理大臣いかがですか。
  207. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 お示しの地図を拝見いたしましたが、この地図はわれわれも承知いたしております。先ほど申し上げましたように、日本の自衛隊でつくりましたのは、日本周辺のものでございます。ただ地図は、便宜上アメリカのものも一緒に書いてあります。根拠が違います。アメリカのものはアメリカがつくった。日本のものは日本がつくった。便宜上その同じ地図に載っているだけでございます。
  208. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんなばかな話ありませんよ。冗談じゃないでしょう。あなた、それじゃ通達を何のために出すのですか。この中には、このADIZの飛行方式について防空鑑識圏の中での航空はこのようにしなければならない、日本の自衛隊はこのように航行しなければならないということが書いてある。その中には韓国の防空圏の中のことまで書いてある。これは公式文書の中に出ている。通達じゃありませんか。それなら、先ほど入っていないともおっしゃっているし、これは当然日本は、日本の自衛隊の飛行機が航行する場合にはこの範囲を守らなければならないという義務を負っている。それなら共同作戦じゃありませんか。どうですか、総理大臣。
  209. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 先ほども申し上げましたように、地図の根拠が違います。自衛隊機はこの識別圏、日本の識別圏の行動を規制されます。韓国のほうは米軍によって規制される。そういう内容を示しているものと思います。根拠が違うわけでございます。
  210. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、有田防衛庁長官に伺いますが、防衛庁の文書の中にこれのあることは事実でございましょう。これはお認めになりますか。
  211. 有田喜一

    ○有田国務大臣 地図はございますが、先ほど宍戸政府委員から申しましたように、われわれの識別圏はあくまでこの点線の中、日本の領海以上でございますが、日本の周辺のものでございます。韓国に向かう線はわれわれのものじゃない。米軍が利用しているものです。
  212. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、そのあとの解釈は別として、この点線の中以外にコリア、韓国が書いてある。これはなぜ書いてあるかというと——有田さん少しいま局長答弁を聞いて勘違いして答えているから、ひとつ十分正しく教えないとだめですよ。これは通信体系の問題なんですよ。通信体系は、御存じのように府中にCOC、コンバット・オペレーション・センター、それから韓国の烏山にADCC、日本にも三つありますね。沖繩にもあります。合計五つ。この五つの通信体系を整合しなければならない、こういうことが地位協定の中で明確にされている。そして、その地位協定で法的な義務を負った日本は、府中にあるCOCに基づいて自衛隊は作戦指揮を受ける。そうでしょう。COCというのはコンバット・オペレーション・センターですから、そこで指揮命令を出した場合に、日本の自衛隊、韓国の空軍、これが共通の行動をしていかなければならない、こういう関係がこれによって生まれている。だからこの通信体系の上から、明らかに日本と韓国とアメリカとの間の共同作戦をやる、軍事行動をやるところの法的な基礎ができていると、こう言うのです。それはお認めになるでしょう。
  213. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 ADCCの関係を申し上げますと、先生の御指摘のように府中から指令を発します。米軍のほうもそうでございますし、日本軍のほうもそうでございます。日本の自衛隊もそうでございます。全然指揮系統は別でございますけれども、場所は一緒にしております。先ほどの識別圏に入りますと、日本は日本の新しいバッジ組織、従来のレーダーサイトの組織によりまして要撃のコントロールをいたします。米軍のほうは米軍のほうでコントロールをいたします。識別圏はそれぞれ、先ほどお示しの韓国の識別圏は米軍がスクランブルならスクランブルをかけるときの根拠になっている、こういう仕組みになっているわけでございます。
  214. 岡田春夫

    岡田(春)委員 宍戸さん、あなたそんなことを言ったらだめですよ。松前・バーンズ協定を、この前あなたのほうで、あることをお認めになったじゃないですか。松前・バーンズ協定に基づいて、日本の三つのADCCと韓国のADCCとがお互いに情報を交換する義務のあることまで規定されているじゃありませんか。軍事行動について情報交換の義務があるということですよ。だから、自衛隊の行動はそうであっても、軍事行動の中のいわゆる要撃というような場合はそうであっても、情報交換という軍事行動については共同してやらなければならないことは、松前・バーンズ協定にはっきり出ているじゃありませんか。認めたんじゃないですか。
  215. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 情報交換につきましては先生のおっしゃるとおりでございます。安保条約に基づきまして、日米関係では情報は常時交換をいたしております。
  216. 岡田春夫

    岡田(春)委員 情報交換だけではありません。作戦交換もやるのでしょう。防衛庁長官答えてくださいよ。あなた、こんなことじゃ総括質問にならないですよ。
  217. 有田喜一

    ○有田国務大臣 先ほど言いましたように、日本のほうは日本の部隊のほうで指令します。そうしてアメリカは、御承知のとおり日本における米軍は第五空軍というものがありますが、それは韓国も沖繩も支配しておるわけですね。日本と米国の間の情報交換はやりますが、アメリカの司令官自体は韓国もそれから沖繩の情報も知っておるわけです。それで、日本に影響があるようなときには、アメリカの司令官が日本のほうへ情報を送る、そういうことなんです。
  218. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いま有田さんと宍戸さんでも意見が違いますよ。情報交換していると言っているのですよ。情報交換やるのでしょう。有田さんもう一度答えてください。——いやいや、有田さんに質問しているのですよ。あなたじゃないほうがいいですよ。
  219. 有田喜一

    ○有田国務大臣 私の申した情報交換は、最近日本に関係のある情報交換、そういうことでございまして、だから情報交換をやることはやるのです。アメリカは韓国も沖繩のことも自分の立場上いろいろ知っておるわけです。それが日本に関係あるものは日本に交換する、こういうことですね。
  220. 岡田春夫

    岡田(春)委員 有田さん、それじゃCOCというのは日本に関係あるものだけしかこないのですか、韓国から。そんなことないでしょう。全部くるんでしょう。しかも、あなた、この松前・バーンズ協定というものが生きている限り、あらゆる韓国の情報は日本のCOCにくることになっている。日本のあらゆる情報は韓国に通報しなければならない義務がある。松前・バーンズ協定はそうなっているじゃありませんか。
  221. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 先生御承知のように、COCにはアメリカの連絡官がおります。それで韓国の米軍から無線電話でボイスで入ってまいります。それはアメリカの連絡官に入ってまいります。その中で必要なものが日本に連絡される。それから日本で得ました情報は、COCにいるアメリカの連絡官に連絡をいたしますと、米軍の中でその中の必要なものは在韓米軍にもいくことがある、こういう仕組みになっているわけでございます。
  222. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だからはっきり言っている。お互いに情報を交換しなければならない義務がある。日本の、たとえば三沢にある情報というものを日本自衛隊は韓国に流さなければならない義務がある、そうでしょう。あなた、情報だけだとおっしゃるのですか。有田さんどうですか。松前・バーンズ協定では「指令」と書いてありますよ。「指令及び情報を送受する。」と書いてある。指令があるじゃありませんか。情報だけじゃありませんよ。命令ですよ。指令も交換するんじゃありませんか。どうですか、有田さん。
  223. 有田喜一

    ○有田国務大臣 これは政府委員をして答弁せしめます。
  224. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 先生御承知のように、松前・バーンズ協定は日本の防空組織に関する取りきめでございますので、日本内部の指令のこと、情報のことが書いてあるわけでございます。
  225. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんなことないですよ。松前・バーンズ協定の中に「航空警戒管制組織は、五空及び総隊双方の航空機に対して所要の指令及び情報を送受する。」五空の管轄区域の中には韓国の烏山にあるところのADCCも入っているんじゃありませんか。当然これは、指令を交換しなければ——送受する。送る、受ける、その義務があると書いてあるじゃありませんか。何も自衛隊のほうは自衛隊の中だけだ、そんなこと書いてありませんよ。有田さん、松前・バーンズ協定をあなた御存じなんでしょう、内容を。そう書いてあるじゃありませんか。
  226. 有田喜一

    ○有田国務大臣 やはり日本の府中にあるものは、日本の防衛のために、ことに現在ある領空侵犯のためにあるわけですね。現在はその役割りがある。そのために領空侵犯の範囲内におけるものに対していろいろな指令をやるというので、韓国のものまで私のほうからはやらない。これはアメリカがやることは別でございます。
  227. 岡田春夫

    岡田(春)委員 何をあなたはおっしゃる。さっきから宍戸さんが言っているじゃありませんか。三沢のものも向こうへ流れますと言っているじゃないですか。指令も流れるのでしょう。同じじゃありませんか。どういうように違うのですか。私の言っているのは何も違わないじゃありませんか。そう書いてあるんだもの、協定の中に。そうじゃありませんか。
  228. 有田喜一

    ○有田国務大臣 それは米軍の連絡員がおりますから、そのほうから流れるのであって、日本自身がやるわけじゃないのです。
  229. 岡田春夫

    岡田(春)委員 日本自身がやらなくても、日本が出した指令、日本のほうから、三沢のほうにあるそれを、アメリカが中継をしてやっていることではありませんか。  それじゃこれをお認めになりますか、有田さん。そういう形においてアメリカと韓国と日本の三つの自衛隊が軍事行動として連動関係をとらなければならないという場合がある、それはお認めになりますね。
  230. 有田喜一

    ○有田国務大臣 そういう現実はいまのところありませんけれども、アメリカが日本の防衛並びに極東の安全を守るためにやっておる、それが日本に影響のあるものについては日本に連係がある、こういうわけですね。
  231. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だめですよ、そんな質問をしているんじゃない。もっと具体的に言いましょう。有田さんいいですか。アメリカがこれに基づいて、いままでの話に基づいて韓国を動かす、同時に日本を動かす、そういう場合はあるでしょう。ないですか。
  232. 有田喜一

    ○有田国務大臣 日本を動かすと言われますけれども、日本は憲法によりましてわが日本の防衛よりできないのです。外へ出ることはできない。したがいまして、そういうようなかりに指令があるとするならば、これは米軍からの指令であって、日本自体は関係がない。
  233. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もう一度申し上げましょう。安保条約五条に基づいて、アメリカの飛行機と日本の航空機は共同して防衛をしなければならない義務がある。そうですね。米韓相互援助条約に基づいて、アメリカと韓国は共同してやらなければならない義務がある。一緒に三つが行動する。それがいま申し上げた通信体系が基礎になってやっている。その中で命令が送受される。そのことは条約上の法的基礎であるということになるじゃありませんか。どうですか。
  234. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 お答えいたしますが、先ほど申し上げましたように、日米間では情報の交換はいたします。それから先生、先ほど御指摘の松前・バーンズ協定によります「指令及び情報を送受する。」ということにつきましては、これも先生御承知と思いますけれども、これは日本防空実施のための取りきめでございますから、そのことを先ほど申し上げましたわけでございまして、韓国のこ  とを言っているわけではございません。
  235. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはたいへん苦しいですよ。日本防空のためにも韓国を一緒に動かす場合があるじゃないかとさっきから言っているんですよ。しかし、こればかりやっていると時間が実はなくなってくるので、進めます。  それじゃ、佐藤総理大臣笑っておられますが、総理大臣にひとつ伺います。いま申し上げてまいりました松前・バーンズ協定は改定されたといわれていますか。あなた御存じですか。
  236. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事務当局に答えさせます。
  237. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 改定いたしておりません。
  238. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんなことないでしょう。改定しているでしょう。改定しているはずですよ。十月の十六日に改定がきまったでしょう。あなた御存じでしょう。去年の十月の十六日に航空幕僚長が通達を出しているでしょう。改定しているじゃないですか、松前・バーンズ協定は。
  239. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 昨年十月に改定したという事実はございません。
  240. 岡田春夫

    岡田(春)委員 じゃ、伺います。改定は空幕運第六九四(九七)の文書番号である。それは昭和四十三年十月十六日、航空自衛隊幕僚長の名前で通達済みである。実施は十一月一日。昨年の十一月の一日から実施されている。内局のあなた方が知らないのなら、制服の者だけ知っていて、内局は抜かされたのですよ。内局、知らないのですよ。防衛庁長官も御存じないのですか。防衛庁長官答えてください。防衛庁長官、重要ですから。
  241. 有田喜一

    ○有田国務大臣 改定したというようなことは私は聞いておりません。
  242. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは問題でしょう。総理大臣も知らない、有田防衛庁長官も知らない、内局も知らない。それなのに制服だけで改定をしている。決裁もないということだ。こういうことが改定されて、内局も防衛庁長官も知らないということで、シビリアンコントロールが実行できますか。どうなっているのです。調べてください。はっきり調べてお答えください。
  243. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 昨年十月に松前・バーンズ協定を改定したという事実はございません。
  244. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は通達番号まで言っているのです。防衛局長が知らないというのは、あなたは知らされないということです。改定交渉というものが行なわれたのは去年の五月からでしょう。五月から改定交渉が始まったのでしょう。改定交渉もやってないのですか。防衛庁長官、改定交渉はやっているのでしょう。やってないのですかやっているのですか。——いや、防衛庁長官答えてください。宍戸さん、防衛庁長官に言いなさい。だめですよ、そんないつまでも。
  245. 有田喜一

    ○有田国務大臣 まだそういうことは私は知っておりません。聞いておりません。
  246. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だから、交渉しているのでしょう。
  247. 有田喜一

    ○有田国務大臣 交渉しておるか、それはわかりません。
  248. 岡田春夫

    岡田(春)委員 去年の五月から交渉しているのでしょう。
  249. 有田喜一

    ○有田国務大臣 改定はいたしておりません。
  250. 岡田春夫

    岡田(春)委員 交渉はしているのかと聞いているのだ。   〔発言する者あり〕
  251. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 静粛に願います。
  252. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もう一回言いますよ。松前・バーンズ協定の交渉は昨年の春からやっているはずですが、やっておるのでしょう、こう聞いておる。
  253. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 お示しの取りきめについての研究はいたしておりますが、交渉を継続しておるというわけではございません。内部の研究をいたしておるわけでございます。
  254. 有田喜一

    ○有田国務大臣 いま政府委員の申したとおりであります。
  255. 岡田春夫

    岡田(春)委員 防衛庁長官、改定の研究をし、交渉は継続しているわけではないとおっしゃいましたね。交渉をやったのは事実でしょう。続けておるのではないのだけれども、交渉はやっておるのでしょう。しかも、私の言ったように文書番号まで出ているじゃありませんか。調べてごらんなさいよ。   〔発言する者あり〕
  256. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御静粛に願います。静粛に願います。
  257. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 内部の研究はいたしております。それから向こうの意見をたたいたこともございます。しかし改定の交渉をしたというわけではございません。
  258. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もう一度申し上げます。私は改定が、昭和四十三年十月十六日、航空幕僚長の名で、通達番号は空幕運第六九四(九七)、その改定の実施は四十三年十一月一日より。この点をお調べいただきたいと思います。   〔発言する者多し〕
  259. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ではこのまま理事が話し合いますから……。   〔「暫時休憩」と呼ぶ者あり〕
  260. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩はいたしません。御静粛に願います。   〔発言する者あり〕
  261. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 雑音は許しません。  宍戸防衛局長。しっかりした返事を願います。
  262. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 先ほどのお尋ねにお答えいたします。  先ほどお答えいたしましたように、松前・バーンズ協定の改定の事実はございません。  それからお心しの通達番号は、調べましたら、これは秘の書類でございます。しかし松前・バーズン協定には関係ございません。趣旨は、総隊司令部から各部隊への命令伝達の要領を書きました秘密の書類でございます。
  263. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その秘密の文書を、秘密というものを明らかにしてください。秘密を明らかにしてください。秘密の文書じゃわからないよ。   〔発言する者あり〕
  264. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと静粛に願います。いま岡田君が発言中ですから静粛に願います。——どうぞ続けてください。
  265. 岡田春夫

    岡田(春)委員 秘密の文書ですからとおっしゃっても、われわれ——違うとおっしゃって、それから、それは秘密ですとおっしゃっても、これはわからないです。何のことだかわからないです。
  266. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 宍戸防衛局長、はっきりわかるように言ってください。
  267. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 お示しの番号の通達を調べましたら、御指摘のような松前・バーンズ協定の改定の書類ではございません。改定した事実はございません。そこで、(「内容は何だ」と呼ぶ者あり)内容は、総隊司令部から部内の各部隊への伝達の要領を書きました秘の書類でございます。
  268. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 宍戸防衛局長、いま言っていることは秘密文書だというのですが、その秘密文書は、言えない文書なんですか、どうなんです。
  269. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 委員長のお尋ねでございますが、秘密の指定でございますので、内容は秘匿いたしたいと思います。ただ、趣旨は、総隊司令部から各部隊への命令の伝達の要領をきめましたそういう書類でございまして、松前・バーンズ協定の改定ではない、こういうことでございます。
  270. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとそのまま立っていてください。  そうすると、岡田君に申し上げますが、岡田君は、松前・バーンズ協定による番号でそういうことを言われた。あなたのほうは別な事柄であるというので、これはすれ違い、食い違いですね。
  271. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた、航空自衛隊幕僚長の名前で出した文書でしょう。秘密の文書でしょう。航空自衛隊の行動に関する文書でしょう。(「いや、それはわからぬ。」と呼ぶ者あり)いやいや、だって秘密でも、行動に関しなかったら、幕僚長が出すわけないでしょう。それは、松前・バーンズ協定というのは自衛隊の行動全体の問題ですから、その一部ですよ。間違いありませんよ、あなた。
  272. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 宍戸防衛局長、私から尋ねますが、それはいま岡田君の言う趣旨とは違うことですか、違わないことですか、どうですか。
  273. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 松前・バーンズ協定とは関係のない書類でございます。
  274. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 それは関係がないといっております。
  275. 岡田春夫

    岡田(春)委員 関係ないということは、あなた、言えないじゃありませんか。航空自衛隊が日本防衛上に作戦行動をやる問題として松前・バーンズ協定ができているのでしょう、航空自衛隊の。その航空自衛隊ができているその問題——一部かもしれませんよ、どうかもしれないが、(発言する者あり)いや、あなたが秘密だとおっしゃるから、それならば航空自衛隊の動く問題については、松前・バーンズ協定の改定部分になってくるじゃありませんか。どうして違うのです。
  276. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 正確に申し上げますと、先ほどのお尋ねは、松前・バーンズ協定を改定した事実があるのではないかというお尋ねでございましたので、その事実はない。その改定の文書番号をおっしゃいましたので、そういう文書ではないということを申し上げるわけでございます。
  277. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし、いまここでやりとりしても、われわれはあくまでも——いいですか、その文書をお認めになって、航空自衛隊幕僚長の名前で出しているということですから、日本のいわゆる航空自衛隊の行動に関する問題です。松前・バーンズ協定というのは、日本の航空自衛隊がアメリカと一緒に行動する、そういう具体的な取りきめです。そうすると、それへは結びついていることは間違いありません。ただ、秘密だとおっしゃるから、われわれはその内容を知る由もないわけですけれども、それじゃどうして秘密にしているのですか。秘密はなぜ明らかにできないのですか。秘密の理由はどういうことでございますか。
  278. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 岡田君に申し上げます。——それじゃ宍戸防衛局長、秘密の理由を聞きたいそうですから、あなたに発言を許します。
  279. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 部隊の運用の問題でございますので、秘密書類にしたものと思われます。
  280. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは、防衛庁長官、運用の問題ですから当然アメリカとの関係があると思いますが、アメリカのほうの了解が得られないということで秘密になるのですか。
  281. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 関連しておりますから、宍戸防衛局長から答えてください。
  282. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 アメリカとの関係はございません。
  283. 岡田春夫

    岡田(春)委員 アメリカとの関係がなくとも、今日の自衛隊の行動というものはアメリカと一体関係の行動なんですから、そのことが協定それ自体にも全然関係のない、たとえば航空自衛隊が駐とんの基地をふやしたなんというような通達ではないでしょう。そういうものですか。基地をふやしたなんというものじゃないでしょう。運用の問題ですから、関係があるのですよ。その点を違うとおっしゃっても、秘密だとおっしゃるなら、私は違うと言われても、違うかどうかわかりませんよ。だって、そうでしょう。運用の問題だとおっしゃるのだから、たとえば三沢基地にある航空自衛隊のF86を横田に持っていきますなんという通達を出した、そういう通達ではないのでしょう。運用の問題でしょう。運用の問題なら、アメリカと関係がありませんなんて言えないじゃないですか、アメリカと一緒にやっているのだもの。しかも、その内容については秘密でありますとおっしゃるならば、われわれは一体何であるかわからないじゃありませんか。関係ないとおっしゃったって、何であるかわからない。
  284. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 部隊運用の問題は、部隊では原則的に部外に出しませんので、秘密の指定をするのが普通でございます。先生は、米軍との関係で秘密にしたのではないかというふうなお尋ねでございましたので、そういう理由ではないということを申し上げているわけでございます。   〔「進行」「進行」と呼ぶ者あり〕
  285. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 進行いたします。岡田春夫君。
  286. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その点については、理事会でどう処理するか、そういうことは一応理事の皆さんにおまかせをいたします。
  287. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 さよう取り計らいます。
  288. 岡田春夫

    岡田(春)委員 続きます。
  289. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 岡田君の発言を許します。
  290. 岡田春夫

    岡田(春)委員 総理大臣にもう少し伺いたいのですが、今度は核と憲法との関係について若干伺います。  われわれの見る限りでは、政府は今国会で非核三原則に対する憲法の歯どめを完全にはずしたと私は思っています。核問題は、言うまでもなく憲法上の問題と政策上の問題があるわけですが、政府は、政策上は反対だと何べんも言っています。したがって、憲法上の問題に限って御質問を申し上げたいと思います。  たとえば日本の核の保有について、高辻法制局長官はこういう趣旨の答弁をいたしています。わが国民の生存を安全に保持するという正当な目的を達成する限度を越えることのない兵器は、核兵器であろうとなかろうと、わが憲法がその保持を禁止するものではない、こういう趣旨の答弁をしている。これはたいへん長い御答弁でございますので、簡単に言えば、自衛の限度内ならば憲法上は核の保有はできる。逆に言えば、自衛の限度を越えた核は保有できないというのが憲法の解釈である。こういう憲法解釈政府の公式見解でございますか。総理大臣にお伺いをしたいと思います。
  291. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 政府の公式見解として初めてこれを打ち出したということではなしに、たしか岸内閣以来だったと思いますが、そういう趣旨の答弁をずっとしてきております。むろんことばはそのときどきによって、表現の方法でございますから、違っているものもあるかもしれませんが、趣旨は同じように御説明をしてまいったと思っております。
  292. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の伺っているのは、公式見解ですかと伺っているのであって、総理大臣いかがでございますか。
  293. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま法制局長官が申しましたように、歴代と申しましても、ここ岸、池田、佐藤内閣、さように申しておりますから、これで公式見解だと、かように御了承いただきます。
  294. 岡田春夫

    岡田(春)委員 公式見解であると御了承願いたい、こういう御答弁でございますが、自衛の限度内外という概念はきわめて抽象的、相対的な概念であります。しかも今日の世界は軍備増強をどんどん進めているときに、この自衛という限度という概念は、拡大解釈の危険性が非常にあるわけであります。しかもわが国の歴史を考えるときに、自衛のためにと称して幾たびか侵略戦争を行なったことを想起させる概念です。だから私は、自衛の限度に対して客観的な基準、具体的な事実を加えて憲法解釈を明らかにする必要があると考えますが、総理大臣はどうお考えになりますか。
  295. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もう先ほども楯君にお答えしたのですが、憲法論議、これはもう観念論よりも、ただいま言われるように、こういうものはどうだ、こうなるほうが非常にはっきりする。私はそれで、憲法の議論はどうあろうと、よかろうと悪かろうと、許されるものでも、私がいま核兵器は持たない、つくらない、このことを申しておりますので、あまり観念論をやるのは国民はあまり喜ばない、大学あたりでやっていただいたほうがいいかと思います。
  296. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いま政策論で反対だと、こうおっしゃったんですが、私は憲法問題を伺っている。憲法問題で、自衛の概念の中に具体的な事実を明らかにすることによってこれをチェックする、歯どめをかけるということは、ひとつ大切な点だと思います。この点について、先ほども総理大臣並びに高辻法制局長官から、憲法解釈は研究所の問題である、研究室の試験管のような問題であると、こうおっしゃったが、私はそうではないと思う。  大体岸総理大臣以来一貫して変わっていないとおっしゃるが、私は違う点がはっきりあると思う。どういう点が違うかというと、岸総理大臣の答弁の場合には、具体的な事実をあげて、それによって歯どめをかけておりました。佐藤総理大臣の場合には、具体的な事実をあげて歯どめをかけてはおらない。この点が大きな点の違いであります。この点、重要でございますから速記録を読んでみますけれども昭和三十二年五月七日の参議院内閣委員会において、岸総理はこう言っている。自衛の概念の問題を最初に言いましてから、次にこのように言っています。速記録のとおりに言います。「今普通に核兵器という言葉が用いられております原水爆を中心としておるようなものは、これは私は先ほど来申し上げましたように、自衛権の内容としてそういうものを持つべきものじゃない、憲法が禁止しておると私は解釈しておる。」こうはっきり言っている。  それでは佐藤総理大臣に伺いますが、憲法解釈の問題として、現在普通に核兵器といわれているような原水爆というものは、自衛の限度内ではないから憲法上——憲法上ですよ、憲法解釈、この保有は禁止されていると思うが、総理大臣の憲法解釈を伺いたいと思います。
  297. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは憲法上禁止されていると私は思います。はっきり申します。
  298. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは岸総理大臣と解釈は全く同じ、こういうことになりますか。
  299. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 憲法で禁止している戦力と、かように私考えております。
  300. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは伺いますが、現在普通に核兵器といわれているような原水爆というものの中には、具体的に伺いますが、広島、長崎で使われたような原爆も含むわけであります。広島、長崎のあの原爆は、憲法上日本が保有することを憲法上禁止されておりますか。
  301. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 むろんそのとおりでございます。
  302. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、メースBは原爆を使っていることは御存じのとおりです。この原爆、メースBというものが、爆発の威力というものは広島の原爆と同じであります。そうすれば、メースBを日本が保有するということは、憲法上禁止されていると理解してもよろしゅうございますか。
  303. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、メースBがどういう威力を持っているか知りません。
  304. 岡田春夫

    岡田(春)委員 メースBは、原爆を保有しているものではないんですか。
  305. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核弾頭を使い得るものだろうと私思います。
  306. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それなら、核弾頭を持っているなら、その核弾頭の威力は、広島原爆と同じ威力です。それなら、メースBというものは保有を禁止されているじゃありませんか、される、そうでしょう。
  307. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほどお答えしたとおりです。私、仮定あるいは想像ではお答えはできないことであります。お答えできません。
  308. 岡田春夫

    岡田(春)委員 想像ではお答えにならないと、こうおっしゃった。私、ぜひ伺っておこうと思ったのですが、今度の国会答弁で、総理大臣は沖繩の核基地ということを、核があるということを再三言われますね。この核というものは沖繩にあるということをすでにもう再三確認されているが、これは事実でございますか。
  309. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核基地あり、かようにいわれておりますので、私の耳にも入っております。
  310. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはどういう根拠でございますか。
  311. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまも申し上げるように、その話が私の耳にも入っている、こういうことで申したのであります。
  312. 岡田春夫

    岡田(春)委員 およそ総理大臣が、耳に入っているというような根拠で核基地とおっしゃるというのは、不見識じゃありませんか。そうでしょう。総理大臣ともあろう者が、沖繩における米軍、いわゆるアメリカの基地ですね、この基地において核があるのかないのかということは確認しておらない。アメリカに対しては確認しておらないわけでございますか。
  313. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核基地、核のあり方、そういうものはもう極秘にみんなしているのですね。だから、私どもいままでそういうことを耳に入ってこない。この前申したら、皆さんが核基地あるじゃないか、こう言われるから、なるほどあるのかな。しかし、一体この核基地がどういうそれじゃ機能を持っているか、それを知らない、こういうことを申し上げたのです。
  314. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし、われわれが言うのと、国を代表する総理大臣が核の基地があると言うのと、違いますよ。しかも、あなたはアメリカとの交渉をやろうとおっしゃっているんでしょう。アメリカとの交渉をやるときに、核があるかないかわからないで交渉されるのですか。核のない場合の交渉と核のある場合の交渉と、全然違うじゃありませんか。それは政府としては、アメリカに確認をされた問題ですか、どうなんですか。
  315. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だから、検討、白紙と申しておるじゃありませんか。これはもう何度もそのことを申し上げている。基地のあり方については、私、まだはっきり検討しなきゃならぬから白紙でございます、かように申しております。
  316. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういうことではないですよ。基地は白紙だというのは、交渉して白紙かどうかをきめるということでしょう。現在のアメリカの基地に核があるのかないのかということについては、あなたは核基地と、こうおっしゃっている。核があるんだという前提でしょう。その核があるという前提なら、アメリカに交渉して、核があるという確認をされてお話しになっているんですかと伺っているんですよ。日本を代表する総理大臣なら、それは確認しないで交渉するわけないじゃありませんか。どうなんですか。
  317. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 まだそこまでいっておりません。
  318. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、もっと話を進めます。  総理大臣は、二月五日の公明党矢野書記長の質問に答えて、沖繩のメースBは核抑止力だとはっきりお答えになりましたね。それ以外に核があるんですか、沖繩には。
  319. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 メースB、メースBということは聞いておりますけれども、それ以外のことは知りません。
  320. 岡田春夫

    岡田(春)委員 交渉にあたって、核があるかないか、どういう核があるかということを前提として確認した上でなければ、交渉できないではありませんか。そういう確認をアメリカに対してやられるお気持ちはおありなんでございますか、どうですか。
  321. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もう先ほどから、それで皆さん方の御意見を聞くと言っているんです。だから、いまのそういう問題も、どの程度の機能があるのか、そういうこともよく聞いて、そうしてアメリカ側の主張はいいのか悪いのか、そういうことも私が判断しなきゃならぬ。けれども、アメリカの意見を判断する前に、そういうものも十分調べなきゃならぬが、これはやっぱり——お尋ねだから……。答えるの、もういいんですか。あなたのほうの……。
  322. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、もう時間と委員長が言うものだから……。
  323. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だから、よく質問も聞いて、そうして私が間違いのない処置をとる、かように何度も申し上げておる。
  324. 岡田春夫

    岡田(春)委員 沖繩には核の貯蔵庫があると伝えられております。その証拠に、沖繩の瑞慶覧に駐とんする第五百十五部隊、知花に駐んとする第二百六十七部隊、辺野古に駐とんする第百三十七部隊、これにはそれぞれ核兵器の管理部隊がその中にある、こういうようにいわれておりますが、防衛庁長官、このような管理部隊のあることは御確認になりますか。
  325. 有田喜一

    ○有田国務大臣 私のほうも、正式にそういう話はしたことはありませんので、そういう事実があるかどうかははっきりいたしません。
  326. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この事実をお調べになるお考えはございますか。
  327. 有田喜一

    ○有田国務大臣 沖繩はまだ日本に返っておりませんので、だからそういう事実をいま調べる権限も、私のほうでないわけですよ。しかし、交渉段階にはそういうことは自然と入ってくるだろうと思いますけれども、いまの段階では、そういうことを私のほうでどうだというわけにもいかない。
  328. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはたいへんいい知恵をつけてくださいましたから、いろいろそういうものがあるのかないのか、疑わしい状況であるかないか、十分交渉に入る前にはそれだけの知識を持って私は交渉をするつもりでございます。
  329. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私にいい知恵をとおっしゃったわけでございますが、私は今度はいい知恵をもう一つ申し上げなければならない。これは重大な警告を、私は総理大臣並びに高辻法制局長官にしなければならない。  それは、核兵器持ち込みの憲法解釈について、二月五日の矢野書記長の質問に答えた答弁がある。この答弁は重大な問題がある。それは最高裁のいわゆる砂川判決の問題です。砂川判決を、高辻法制局長官は歪曲してこれを引用している。そしてこれを政治的に悪用していると私は思う。その点を具体的に速記録に基づいて申し上げます。高辻氏は砂川判決を引用しながら、外国の軍隊は憲法九条の戦力に該当しないから、米軍に対しては憲法の適用はない。これはそのとおりです。これは判決どおりです。そのあと、続いてこのように言っている。「したがって、駐留米軍が日本に駐留すること、それについての条約を締結すること、それは日本の憲法の九条のうち外の問題であるという判決があったことは御承知のとおりだと思います。」このようにあなたは答弁しておる。ところが、そういう判決はおりてない。あなた、御存じでしょう。砂川判決について、時間がないから全文は読みません。重要な点はこういつている。安保条約について「右違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、従って、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであって、」云々となっている。あなたは、先ほど私が朗読をいたしました駐留米軍が日本に駐留すること、それについての条約を締結することは、憲法九条のうち外の問題であるという判決を下したと言っているが、これはそういう判決は下しておりません。こういうことを、内閣の法制担当の最高責任者である高辻氏が、このような発言をしたということは、著しく当を欠くものである。これは取り消していただかなければなりません。判決は判決どおりに明確に言っていただかないと、判決に籍口して、あなたの見解に利用するというのは歪曲であり、政治的な悪用であるといわざるを得ません。判決は判決として、そのような判決はなかったのだということ、私がいま砂川判決を利用した点を、正当であるということをお認めになるのかどうか、高辻氏にはっきりお答えをいただきたい。
  330. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいまの御指摘の点は、実は岡田さんの御指摘が初めてではございませんで、私の発言のことにつきまして、社会党のほかの委員の方から御指摘がございました。私もそこで申し上げたわけでございますが、安保条約は、御指摘のように砂川判決で、一見明白に違憲であると思われるかどうかということになれば、これはそうは思えないというところがございます。しかし同時に、もう一つ、わが国が主体となって管理権、指揮権を行使するものでなければ憲法九条二項の戦力に該当しないということを申した、これは最高裁判所の判決があることは、ただいま御指摘のとおりでございます。したがって、それを中心にした条約の締結、そういう判示があるわけでございますから、その判示に関連する条約、これは安保条約は米軍の駐留を認めている条約でございますから、その点に関しては最高裁の判決から見て、その点が違憲であるということにはならぬだろう、こういう趣旨のことを申し上げたつもりでございます。もし、そういうふうにとれないことはむろんないと思いますが、ことばが足りない点で誤解を生じたとすれば、いま申し上げたようにお受け取りを願いたいと思います。私が申し上げた趣旨は、全くそのとおりの趣旨で申し上げたっもりでございます。
  331. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私、速記録を引用してやっているんですよ。あなたが、それについての条約を締結すること、それは日本憲法九条のうち外の問題であるという判決があった、こんな判決ないじゃないですか。あなたがいま言ったように、範囲外のものだ、なじまないと言った。こういう判決はないのでしょう。判決があったのですか。という趣旨の、というんなら別ですよ。こんな判決はないですよ、あなた。なじまないと言っているんじゃありませんか。しかも、私は時間がないから引用を省略した。この審査をするのは条約を締結する政府とそれを承認する国会の責任である、とまで言っているじゃないですか。そうでしょう。したがって、こんな判決を出すわけがないじゃありませんか。この砂川判決とこの文章は違う。高辻さんの答弁とは違うということをお認めにならないのですか。お認めにならなければ困りますよ、これは。
  332. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ですから、私の申した趣旨を申し上げているわけですが、確かにこの条約、安保条約そのものについて、全体について、これが一見明白に違憲であるかどうかということは……。(岡田(春)委員「範囲外」と呼ぶ)範囲外というよりも、一見明白に違憲であるとは言えない、こういうふうに言っているわけですが、私が申し上げた趣旨は、これは私どもの仲間ならすぐわかってくれると思うのですけれども、日本が管理権、支配権を持っているものについての戦力の問題はそこにある、したがって、そうでないものについては憲法のうち外である、こういうことを判示しておるわけです。したがって、その部分についての条約は、少なくもいまの判示にこれを照らしてみる限り合憲であるということになるのは、趣旨として間違いないと思いますが、私が申し上げた趣旨はそのとおりでございますけれども、ことばが足りない点がもしあって、そのゆえに誤解を生ずるようであれば、そのような御趣旨にお取り願いたいと思います。
  333. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 岡田君に申し上げます。もうすでにお約束の時間を経過しておりますが、いま……。
  334. 岡田春夫

    岡田(春)委員 経過してないですよ。
  335. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 経過しております。
  336. 岡田春夫

    岡田(春)委員 経過してないですよ。理事の申し合わせに基づいてやっておるのです。
  337. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 理事の申し合わせをした時間を突破しております。しかし、もう一問あなたに発言を許します。
  338. 岡田春夫

    岡田(春)委員 もう一問じゃない。
  339. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 それでは、これにて岡田君の質疑は終了したとみなしてよろしゅうございますか。
  340. 岡田春夫

    岡田(春)委員 異議があります。   〔発言する者多し〕
  341. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 それでは、もう一間岡田君に発言を許します。どうぞ御質問ください。
  342. 岡田春夫

    岡田(春)委員 時間がありませんから進めます。それでは、時間がこういうふうにないのですから、簡単にお答えいただきたい。  内閣のとる外交事務というものは、憲法七十三条二項、三項に基づいて行なう。これは言うまでもないと思う。その内閣が行なった外交事務の行為は、憲法に反して行なわれてはならない。それは憲法九十九条に基づいて、憲法順守、擁護の義務があるからである。これはそれでよろしいですか。簡単にお答えください、五分しかないと言っているのだから。
  343. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 簡単にはっきり申してください。もう時間がありません。
  344. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 申すまでもないことであります。
  345. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それならば、憲法上明らかに自衛の限度を越えた核兵器をアメリカが日本に持ち込む場合、政府がこれに同意を与えたとするならば、その同意という政府の行為それ自体は憲法に反することになる。なぜならば、内閣の外交上の行為は、憲法九十九条に基づいて、憲法九条を含めた憲法を誠実に順守し、擁護しなければならないという義務に背反するからである。それは総理大臣、よろしいですね。総理大臣お答え願います。時間がないのですから……。
  346. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 もしも米軍がそのようなものを持つことが憲法に違反するものであれば、仰せのとおりであります。
  347. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、その点は総理大臣確認されますか、いいですね。
  348. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 高辻君の答えたとおりであります。
  349. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それならばですね、自衛の限度を越えた核というものが日本に持ち込まれる、その場合、政府がそれに同意を与えた場合には、憲法上の拘束を受ける。具体的に言うと、広島の原爆は自衛の限度を越えたという、その意味で保有を憲法上禁止されている。その広島の原爆と同じ程度のものを日本に持ち込む場合、日本の政府がそれに同意をするならば、憲法違反ということになるか、この点はどうですか。——いやいや、ちょっと待ってください。時間がないのに高辻さんと総理大臣と、二人で時間をとっては困りますよ。もう協力しているのですから……。
  350. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは事前協議の問題でございます。
  351. 岡田春夫

    岡田(春)委員 事前協議じゃないですよ。そんなことを言っておっては……。
  352. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 時間がありませんから……。
  353. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいま総理大臣がおっしゃいましたように、まさに事前協議の問題ですが、お尋ねの点は、先ほども申したように、米軍がそういうものを持つことが憲法に反するということであれば、そのとおりでありますが、その点はしばしば申し上げているように、砂川判決の管理権、支配権を日本が持つものについて憲法九条二項は戦力の点を論じているわけで、そのほかのものについては九条二項は及ばない。そのほかの問題であるという判決がございます。それはまさに明確でございまして、その点は、米軍に関しては話が別である。こういうことになるわけです。
  354. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これで終わります。いま、自衛の範囲を越えるかどうかということは、アメリカのものがと、こうおっしゃったでしょう。それを自衛を越えるかどうかと判断をするのは、日本の外交行為でしょう。日本の外交行為において憲法を守らなければならない義務があるのでしょう。それならば、あなたは、アメリカの原爆ならば何でも入ってもいいという、こういうお考えですか。そういうことにならないでしょう。ICBMであろうが何であろうがいいということですか。そういうことは、自衛の範囲外の問題ではありませんよ。日本の政府判断をすることです。外交行為としてこれを判断する場合に、憲法の義務を守らなければならない。これは九条を含めた憲法を守らなければならない。したがって、これは核の持ち込みも明らかに憲法の制約を受ける。憲法九十九条に基づいて制約を受ける。先ほど高辻法制局長官が制約を受けると答弁されたのでありますから、私は、核兵器の持ち込みの場合に、憲法九十九条によって日本政府の外交行為が制約を受ける限りにおいて、核兵器の持ち込みもまた憲法の制約を受けているといわざるを得ない。このように結論を出さざるを得ないわけです。  もう時間がありませんからこれで終わりますが、要すれば、いままでの答弁は、いままで持ち込みは憲法の制約を受けないとおっしゃいましたけれども、日本政府の同意行為という上において憲法の制約を受ける、このようにいわざるを得ない。これが正しい解釈であるということを申し上げて、私は質問を終わります。
  355. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  356. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  昭和四十三年度補正予算審査に関し、堀昌雄君の質疑の際、日本銀行総裁宇佐美洵君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますので、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  357. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。さよう決定いたしました。      ————◇—————
  358. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、堀昌雄君。   〔委員長退席、中野(四)委員長代理着席〕
  359. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、これまで外交、防衛と、非常に大きい話が多かったわけでありますが、少しこまかい話で、日本の現在の当面しております諸情勢、経済的な諸問題と財政金融、私たちの生活に関係のある経済の問題について、しぼってお伺いをいたします。  最初に、総理大臣にお伺いをいたしますけれども、最近国民の中に政治に対する不信感というものが非常に高くなっておるわけでありますけれども、これは一にわれわれ政治家の負わなければならない問題がいろいろあると私は思うのであります。われわれもそうでありますけれども、特に行政の責任者であるところの総理大臣の発言というものは、これはきわめて重要な意義を持っておると私は思うのであります。ですから、総理大臣の発言がしばしば簡単に変更をされるというようなことになれば、とりもなおさず、このことは象徴的に国民の不信感を招きやすいと私は考えておりますけれども総理大臣はどのようにお考えになっておるか、承りたいと思います。
  360. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 民主政治、もちろんこれは国民から信頼されないと、りっぱな政治はできませんし、また不信を買うようなことは、政治家たる者もちろん慎まなければならない。御指摘になったとおりだと思います。
  361. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私は、一番最初に、総理大臣に国民の願いをひとつ約束をしてもらいたいと思うのです。それは、一月二十七日の施政方針演説で、総理大臣は「消費者物価の問題は、国民生活にとって切実な問題であり、政府が最も力を入れてきたところであります。このため、公共料金については、国鉄の旅客運賃以外は極力抑制することとし、生産者米価及び消費者米価を据え置く方針をとるなど、政府が関与する公共料金により物価上昇を刺激することがないよう配慮いたします。」こういうようにお述べになっておるわけです。特に一番重要なのは、この消費者米価を据え置くということですね。これはいまの日本の物価政策の中の一番かなめの問題でありますから、国民は非常に大きな関心を持ってこのことを注目しておると思うのです。表現が「据え置く方針をとる」という、ややはっきりしない点がありますので、この点、昭和四十四年度中においては消費者米価は上げないということをおっしゃったことだと私は施政方針演説を了解いたしておりますけれども、最初に、この点だけをはっきりひとつお答えいただきたいと思います。
  362. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ものによっては、やはり方針だけを明示して、そしてあとで手続を経なければならないものがございます。そういう意味で方針ということばを使いました。しかし、いまの消費者米価そのものについては、これはもうはっきりしていることでございますから、政府自身でやり得ることだ、かように私考えておりますので、そこでは間違いのないようにしたいと思います。
  363. 堀昌雄

    ○堀委員 政府が御自身でやれることだから間違えないようにしたいとおっしゃることは、上げないということだと確認をいたしますが、よろしゅうございますか。
  364. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでよろしゅうございます。
  365. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私は、補正予算の問題を先に論議をしたいのでございますけれども、お招きをいたしました宇佐美日銀総裁、御所用があるようでございますので、総裁に関する部分を先にやらしていただくことにいたします。  宇佐美日銀総裁にお伺いをいたします。  いまの日本の金融の状態というのは、これは締まっておるのでありましょうか、ゆるんでおるのでありましょうか、ニュートラルなのでございましょうか。いずれでございましょうか。
  366. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 いまの御質問でございますが、いっと比較してということでございますか。
  367. 堀昌雄

    ○堀委員 比較の問題ではなく、現状だけで見まして、要するに、いろんな金融の繁閑についてはバロメーターがいろいろあろうかと思います。そのバロメーターから御判断になって、ゆるんでおるのか、締まっておるのか、ニュートラルかをお答えいただきたいと思っておるわけでございます。
  368. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御質問でございますが、私は、締まっておる、締めておる、かように——ただ、程度はいろいろございますから……。
  369. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの御答弁で、金融は締まっておるし、締めておる、こういうふうにおっしゃったわけです。それではなぜ金融を締めていらっしゃるのか、ちょっとそれをお伺いをいたしたいのです。——いま金融は締めておる、こうおっしゃいましたから、なぜ締めていらっしゃるのかということを伺っておるのです。
  370. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまは、民間の状態といいますか、かなり経済については強気でございます。企業のマインドは非常に根が深い強気でございます。私どもは、現在このままいきますと、海外の情勢あるいは国内の情勢によりまして非常に不安が起こってくるのではないか、かように考えますので、用心深く取り扱っております。その意味において、私どもは、締めておるか、ゆるめておるかという御質問に対しては、締めておる、かようにお答えするわけであります。
  371. 堀昌雄

    ○堀委員 最近、御承知のようにポリシーミックスとか、昨日の補正予算審議でも、福田大蔵大臣はフィスカルポリシーをたいへん強調していらっしゃるわけですね。要するに、ポリシーミックスということは、金融の側からごらんになりましたら、これはどういうふうに御理解になっているのでしょうか、宇佐美日銀総裁。
  372. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 御承知のように、大ざっぱに言いまして、三十年度代は財政のほうの規模が小さくて、日本の総支出のうちに占める割合は大体一七、八%だったと思います。それに対しまして民間のほうは二七、八%。ところが、四十年度代になりまして、政府のほうがだんだん財政面から大きくなってまいりました。これは日本の経済が大きくなると同時に、政府の支出も大きくなりました。大体民間と政府は半々、あるいは民間のほうがまだ大きいかもしれませんが、大体そういう状態でございます。したがって、いままででございますと、三十年代でございますと、もし金融を締めるならば、民間を締めればそれでよかった。ところが、現在はそういう状態でございますので、民間と政府がお互いに調和をとっていかなければ、全体がうまくいかぬという状態でございます。そこで、ポリシーミックスといいますか、財政と金融がお互いに調和を持っていかなければならぬ、かようにこれからは進めなければならぬと考えておるのであります。
  373. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣にお伺いをいたしますけれども、要するに、日銀のほうでは、先行きたいへんいろいろと気を使って、金融を締めていらっしゃる、こういうことですね。財政のほうは、これはどうなっておるのでしょうか。やはりポリシーミックスということは両輪なんでしょうから、金融が締めておるのなら財政も少し締めるというのが普通じゃないのでしょうか。要するに、金融が締めておる、財政は中立、中立と言っていらっしゃるのですが、こっちはまあいい、めんどうは金融で見させたらいいではないか、こういうのはポリシーミックスとしては正常じゃないのではないでしょうか。どうでしょう、大蔵大臣
  374. 福田赳夫

    福田国務大臣 考え方経済情勢によって違うと思うのです。経済情勢が全体としてどうも過熱ぎみだというときには、これはもう政府も民間も両方がこれを縮めるきみでいかなければならぬ、こういうふうに思います。ただ、縮める、伸ばすにしても、ひとつ考えておかなければならぬ問題がありますのは、どうも民間の経済活動に比べまして、いわゆる社会資本の立ちおくれというものがある。これの取り戻しということをやる、これはもうどうしても国策として考えていかなければならぬ問題である、かように考えます。そういうことは考えておかなければならぬが、しかし、景気の調整という面から考えますと、どうも経済が少し過熱のきみであるというときには、両々相まって進むのが普通である、さように考えます。
  375. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、これまでいろいろ論じられたように、財政の規模が大きいからどうこうという議論を、いましょうとは思っていないのです。  総理大臣にお伺いをいたしますが、経済社会発展計画というのを、佐藤さん総理になられてからお出しになったのですが、この間菅野企画庁長官に私伺ったところでは、これは改定するのだということで、改定の方針がきまりました。総理は、なぜこの経済社会発展計画というのを改定しなければならなくなったか、御理解になっておるでしょうか。
  376. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはもう何度も申し上げたと思いますが、最近、異常とは申しませんが、たいへん大きな経済発展をしております。その結果、いろいろ計画したことと、この間にそごを来たしておる。さような状態ですから、やはり改定しなければならない。
  377. 堀昌雄

    ○堀委員 それはおっしゃるとおりなんですが、それをもたらした原因は何か、御理解になっておりましょうか。
  378. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、あの計画を立てたときが比較的経済界も不振であった、そういうような状態であったために、われわれの見込みにもやや相違があったかと思います。私どもの本来の日本の経済体が持つ力というもの、それらの誤認といいますか、そこらじゃないかと思っております。
  379. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私のほうから申し上げると、もちろん、いろいろ過小見積もりもありましたけれども、計画で考えた民間設備投資と公共投資の割合が著しく変わって、民間設備投資がたいへん前へ行き過ぎて、公共投資はたいへんおくれぎみになった、これがいまの高度成長をもたらしておる最大の原因なんですね。  実は、四十一年、四十二年、四十三年について申し上げますと、皆さんのほうで経済見通しを最初に立てて、それから実績が出た。四十三年は実績見込みでありますが……。そうしますと、それだけの間に当初よりも経済成長が伸びたわけですね。その伸びた分の中身、寄与率ですね。審与率を調べてみますと、民間設備投資が四十一年度は三〇・二%、それから在庫投資が三〇・九%で、国内民間総資本形成というのが六四・八と、六割はこの民間の設備投資や在庫投資で伸びたわけです。四十二年になりますと、いまの国内の民間総資本形成というのは一〇七・〇と、一〇〇%以上に伸びた分は全部そこで持っていった。中身は民間設備投資が六一・五%も占めておる。伸びたものの六割は民間設備投資が行き過ぎた。四十三年も四七・六%、伸びたものの約半分は民間設備投資が行き過ぎた、こういうことになっておるわけです。  そこで問題は、ですから、いま一生懸命日本銀行としては民間の設備投資行き過ぎをさせないように、金融サイドで努力をしていらっしゃるけれども、実は私は必ずしもあまり効果が出ていないと思うのです。昨年暮れの異常な貸し出しの状態を見れば、これはあまり効果が出ていない。財政もやはりここに一役買うのが、きのうの福田さんのおっしゃるフィスカルポリシーの問題ではないかと私は思うのです。  要するに、福田さんはきのうは、国債を発行する必要がなくなってもフィスカルポリシーをやるためには火種を残しておきたい、二、三千億は国債を残して、国債の減額をすることで、要するに調節をしたいのだ。国債を出すことによって景気を浮揚させることは非常に簡単でございます。しかし、締めるというのは、このニューエコノミックスのやり方では非常にむずかしいというのが、現在のアメリカにおいても起きておる実態の問題です。  ですから、ここで私はずっと見ておりまして、福田さんが主計局育ちでおいでになるから、財政というのは、何か歳出面だけに問題があるようにお考えになっておるのは誤りではないのかと思うのです。歳入歳出とで財政はできておるわけですね。フィスカルポリシーというのは、歳出だけかげんしたらいいのじゃなくて、歳入もかげんができる道があるということじゃないでしょうかね。福田さん、どうですか。
  380. 福田赳夫

    福田国務大臣 それはそのとおりでありまして、それであるがゆえに、非常に弾力的な財政、財源ですね、つまり、公債というものを火種としてもっと残しておきたい、こういうことを言っておるのです。
  381. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの福田大蔵大臣の論理からいきますと、今度一生懸命国債依存率を減らす、たいへんけっこうですよ。しかし、国債依存率を減らして、国債の発行額を減らせば減らすほど、市中の金融機関にしてみれば、いま強制的に持たしているわけですから、手元はすくわけですね。本来なら公共投資のほうへ持っていって市中を締める役割りを果たす国債を、あなた方はいま積極的に減らしているわけですからね。減らすことは悪いとは言いませんが、減らした効果は、市中の金融をゆるめる結果になる。その結果を日本銀行はまた一生懸命締めなければいけない。昨年の十月に窓口規制は解除になりましたけれども、それ以後は日本銀行はポジション指導というものをやっておりますね。ところが、ポジション指導をやって、それでは窓口規制をやっておったときと今日と、一体どういうことになっておるかというと、貸し出しはどんどんふえますから、結果として、市中に債券をどんどん都市銀行が売り払うという現象が起きておる。現在、皆さんはよく自由経済だと言われますけれども、私に言わせたら、日本の経済というものは全然自由経済ではないのです。自由経済ならばどこかにその経済の指標になる体温器の目盛りがなければいかぬ。いまの日本経済には目盛りないですよ。  私は日銀総裁にお伺いしたいのですが、いま電電債が大体九分くらいになっておりますね。これがいま日本ではフリーマーケットとして最も価格の動くものでありますけれども、こういう状態は、少なくとも、さっき私が最初に締まっておるかどうかということを伺ったのは、かなり締まっておるということの一つのあらわれとして理解をせざるを得ないと思うのですが、いかがでございましょうか。
  382. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまお話しのとおり、私どもは窓口規制をやめまして、そうしていまポジション指導というものをやっております。それも実際言いますと、私どもここで申し上げておきたいのは、本来言いますと、私どもの政策は、金利政策として公定歩合操作、それから準備率、それからオペレーション、ほかに窓口規制とかポジション指導とかいろいろ申しておりますのは、その効果をあらわすために補完的にやっておる手段でございます。したがって、ただいまお話しのとおり、公定歩合を昨年一厘だけ下げたわけであります。これもやはり先ほど申し上げましたとおり、私どもが警戒的な態度をとっている証拠でございます。したがって、現在は、いまお話しのとおり引き締めが効果をあらわしておる、これをやらなければ相当貸し出しも増加しているのではないか、かように考えております。
  383. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私は、福田大蔵大臣にいまのこの段階一つやるべきことがある。いろいろやってみても、民間の設備投資は依然としてかなり根強いものがあって、ポジション指導やいろんな手をやっておられても、実は貸し出しはいま出ておるわけですね。御承知のようなことで、昨年の暮れなんかは一兆円をこえる貸し出しが出たというようなことになってきたわけであります。  ですから、私は、やはりここでは財政の役割りを働かせて、民間の設備投資を押える方法があるではないか。それは一ぺんに法人税をさわる必要はありませんけれども、少なくとも耐用年数の操作をして、特別償却なりその他の耐用年数の操作をして、減価償却をもう少ししほりさえすれば、直ちにそれは企業の内部留保に影響してきまずから、これは企業側としても慎重にならざるを得ない。要するに、フィスカルポリシーとしていま民間設備投資を押える手は、私はこれしかないと思うのですよ。こういう手を使わないで、財政の大きい小さいだけの議論をしておれば、こうなれば小さくする、小さくすれば公共投資は減る、アンバランスはますますふえて、国債の発行を減らして、そうして公共投資を減らして、民間はますます上へ行くということで、これはますます日本の経済というものの将来には不安が残る、こういうことになってくると思うのです。どうですか、福田大蔵大臣、それはやり方はいろいろありますけれども、少なくとも歳入の使い方によってもう少し景気抑制に効果をあらわすということが、やはりフィスカルポリシーとしての大きな意味がある。それを考えないで、ただ財政のワクの支出面だけを考えているということは、私は主計局的発想だというふうに理解せざるを得ないのですが、どうでしょうか。
  384. 福田赳夫

    福田国務大臣 いま公債を減らすと、そうすると市中のほうで金融が楽になる、そこでそっちの面でインフレが起こるんじゃないか、そういう御心配をまあされるようでありますが、それは御心配は御無用であります。これはもう日本銀行でちゃんとそのあと始末はいたします。それこそがポリシーミックスなんです。金融と財政と相まってこの景気の調整をする、そこにこそ妙味があるわけなんです。それはまあそういうふうに御理解を願いたいと思います。  それから、歳入の面で、財源の面で景気の調整はどうかというお話でありますが、これはお話しのようにある程度の効果があがる方策はあると思います。たとえば、いま御指摘のように償却、これの伸び縮みと、こういうようなことも一案かと思われるわけでありまして、現にそういうことも多少のことはやっておるんですがね。アメリカではまあ所得税法人税、これにかける。これで景気調整の効果というのに大いに期待をし、しかも効果はあがっております。あがっておりますが、わが国ではどうもそれほどの効果をあげることはむずかしいんじゃないかと思いますが、まあ税の、ことに償却制度ですね、運用、これによって景気調整にある程度の効果があることは、これは考えられると思います。
  385. 堀昌雄

    ○堀委員 総理大臣にお伺いをいたしますが、私どもは、やはり日本が、あなたも御指摘のように安定的な成長をすること、これは国民すべてが願っておるわけです。しかし、いまのような形のアンバランスな成長を続けていけば、これはやはり先へいって問題が起こると思います。  ちょっとここで、いまの国民総生産の中の内訳の傾向を申し上げますと、皆さんは、まあ個人消費、要するに皆がぜいたくをするようになったということをおっしゃるわけですけれども、個人消費は昭和四十年に五五・九%だ。四十一年に五三・九%に減っている。四十二年に五二・四%に減っている。四十三年はいまの皆さんの実績見通しでは五一・一と、どんどんどんどん個人消費のウエートは下がってきておるわけです。いいですか。それから政府の投資は、これも大体が横ばいぐらいで、四十年に一〇・三、四十一年が一〇・三、四十二年が九・九、四十三年の実績見込みが一〇・二、四十四年の見通しは九・九ですよ。これはもうやや少し下がりぎみで、ちっともふえない。そして民間の設備投資だけは四十年の一五・三、四十一年一五・四、ここは不況で下がりましたけれども、四十二年一七・三、四十三年一八・一九、ことしの皆さんの見通しでは一八・四九ですよ。どんどんGNPの中に占める民間設備投資のウエートはふえていく。  こういうことを私はほっておいては問題があると思うんですよ。やはり経済の成長は高ければ高いほどいいということはないのでして、少なくともある程度モデレートな高さ、言うなれば、実績が一〇%をこえない範囲ぐらいのところであるのが適当だから、そこで経済社会発展計画では八・二%と出したのでしょう。だから八・二%はやや低いかもしれないけれども、いまのように実質が一二%もどんどんこえていっておることは、これは非常に重要な問題がある。それについては、いま日銀が一生懸命苦労しておるのを考えるならば、私は、政府財政の面でもうちょっと真剣にその点を考える必要があるんじゃないか、こう考えるのですが、総理大臣、どうお考えですか。
  386. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 結論から申しますと、とにかく財政も金融も適時適切な政策をとらなければいかぬ。そうして弾力的な運営によってある程度の成長を維持していく、それが必要だと思います。いまのお話のうちにもありましたが、一〇%、それは少なくとも維持したい。人によっては、一二%以上になったらたいへんだぞ、こう言って指摘する人もあります。しかし、わが国の力をもってすれば、とにかく一〇%は、どうもその辺にするということもなかなか困難ではないだろうか、かように実は思っております。だからその辺は、いま御指摘になりましたように、経済成長、もうことしは四年目になる。そこらでとにかく非常にあぶない危険信号が出ておるのではないか、かように思っております。いままでは、過去の経験から見ると、三年というのが大体最長の期間だったというふうに思う。四年も続けて高度成長、これはなかなかむずかしいだろう。そういうことで、財政もことしの規模は、これは大きいといわれますが、私どもは実は押えたつもりであります。それで、いまのようにこれは減税もやっておる。同時に、これはやはり適切な運用をする。そこらに流動的でなければならない、かように考えております。
  387. 堀昌雄

    ○堀委員 宇佐美総裁には、全国銀行大会で、昭和四十一年の六月から四十三年の七月まで三回にわたって、実はごあいさつの中で、公社債市場問題と市場の機能といいますか、プライスメカニズムの問題について、きわめて詳細にお触れになって、それをもとにしてでなければ財政の健全な運営はできないということを、実はここでお述べになっておる。時間がありませんから読み上げませんけれども……。ところが、現実には、公社債市場が非常に重要だとおっしゃっているけれども、ポジション指導をやっていらっしゃるために、市中銀行は大量の債券をいま売り出して、御承知のように、債券は非常に値下がりをしているということにいまなってきているわけでございますね。私は、これはいま各界が努力をされて、発行条件の弾力化とかいろいろやっていらっしゃるわけでありますが、一つここで提案がありますのは、現在幸いにして海外の金利は非常に高うございます。そういう点では、国内金利が一時的に高くなっても、これは問題が少ない時期でございますが、コールを一ぺんここらで完全自由化をすることに踏み切ったらどうかと思うのですが、どうでしょうか。いま日銀のコールは、御承知のように、引き締め前には大体一銭八厘とか九厘とかいうのがございましたけれども、今日二銭を割ることがないような情勢になってきているわけです。実は全く人為的な価格になっておりまして、実勢をあらわしておりません。これをほんとうに実勢に基づいて日銀が手を抜かれれば、私は、コールというものが市場の価格を反映をして、そこでおのずから、たとえば都市銀行とその他の金融機関間の金の流通ももっと自然のかっこうで行なわれてきて、要するに現在の金融の梗塞化の一端をここで切れば、一時的にはコールも上がりますでしょうし、いろんなかっこうが出ましょうが、やがてそれをもとにして自由ないろいろな環がぐるぐる回ってくることになるのではないのか。もう少し、そういう意味では、金利の自由化ということを福田さんも盛んに言っておられますが、福田さんのは言うばかりで、ちっともやらないのですが、宇佐実さん、一ぺんそういうような意味から金利の自由化を考えるという点はどうですか。
  388. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私も、金利は需要供給によっておのずからきまっていくものだ、そうしなければいけないと思っております。ただ、いま日本の現状を考えますと、やはり確かにおっしゃるとおり、海外金利と日本の金利は同じような高さ、ものによっては海外のほうが高いものもございます。しかし、私がいまの日本経済を見まして、そう金利を高くしていいかどうかということにつきましては、やはり日本の経済がまだいろんな点で不十分でございますので、そういう点から見まして、いま程度の金利で、そうして、先ほどおっしゃいましたとおり、やはり非常に警戒的にやっていくということが一番いいのではないか、かように考えております。むろん、コールも時期によってもう少し上がるだろうと思います。しかし、ここを意識的にコールレートを上げるということはいかがかと思うのであります。
  389. 堀昌雄

    ○堀委員 総理大臣、私は昭和四十年の暮れに、赤字公債の発行に関して、この総括であなたとお話をしたあとで、もしあなたがほんとうに安定的な成長を願うならば、金利が自由化をされなければそれは無理ですよと申し上げました。いま日本がそんなふうになっておるのは、管理通貨制度の上に硬直金利があるからですね、ちっとは歯どめがきくべき——本来、経済も人間のからだと同じですから、人間のからだには自律神経というのがありまして、暑くなれば汗を出して体温を下げる、こういうふうに自律神経がオートマチックに働くようになっているわけです。金利だって、金利が自由になっておれば、需要がたくさんふえれば金利が上がるからだれも借りなくなる。借りなくなれば金利が下がる。金利が下がってくればまた借りる。これをオートマチックにしなければならぬにもかかわらず、あなた方は自由経済、自由経済というけれども、ちっとも自由経済じゃないじゃないですか。これはひとつ政府も日銀も思い切ってここらで一ぺん自由化をしておかなければ、将来に対して禍根を残すことになるおそれが十分にある。特に諸外国の公定歩合操作というのは日本と全然逆なんですよ。市中金利が上がってから公定歩合がそれに追従しているというのが、アメリカその他の先進国における姿です。日本の場合には、公定歩合を上げてから、それからあとからプライムレートや何かがくっついていく。さか立ちをしておるわけですよ。こんなばかなことは、少なくとも先進国らしくやろうとすれば、先進国らしい体系に直さなければならない。それは金利が自由化されていないからそういうことが起こるのですから、まず金利を自由化する。そのことは何も私はコールを上げろというのではないですよ。いまのように日銀が押えるのではなくて、手放しにしたらどうか。手放しにした結果、国債が売れなかったら売れなかったでいいではないか、こう私は思うのですが、総理大臣、どうですか。
  390. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 堀君の御意見、これは一つの見識だと私は思います。だが、実際にその衝に当たっている者からいえば、先ほど宇佐美君から説明したように、やっぱり宇佐美君の説を私は支持します。だから、ただいまのは一つの見識だとは思いますが、いまこの状態で直ちに自由化しろ、こういうことには賛成しません。
  391. 堀昌雄

    ○堀委員 総裁、そうすると、あなたは金利の自由化を口にしていらっしゃるけれども、どうやったら金利の自由化というのはできるのですか。ではその仕組みをちょっと御説明をいただきたいのです。
  392. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私もアメリカのように、何も公定歩合が動かなくても、資金の需要供給によって動くのがいいと思っております。また、全然動かないわけではございません。現に市中金利というものは、お手元に表が差し上げてあると思いますけれども、もう毎月のように上がったり下がったり、あるいは下げどまったり、いろいろ動いておるのであります。私どもは、そういうふうにだんだん動いていくというふうにやっていきたい、かように考えておるのであります。私は、やはり市中がほんとうに資金需要が多いときは金利が上がる、あるいはまた資金需要が少ないときは金利が下がるという状態に何とかしてしてみたいと思っておるのであります。なかなかいろいろな関係で思うようにまいっておりませんが、そういう方向で私も話しておるところでございます。
  393. 堀昌雄

    ○堀委員 そのいまのいろいろな関係というのは何でしょうか。これは国債にも大いに関係があると思うのですが、いろいろな関係というのは何でしょうか。
  394. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ことばどおりいろいろな関係があるわけなんですが、(堀委員「少し具体的に」と呼ぶ)一々具体的に申し上げますと、日本ではなかなか各銀行が、たとえば下げるといいましても、アメリカのように一行主義でもございません。いろいろな関係がございまして、上げたり下げたりが自由ではないという面もございます。そのほか証券市場の問題もございましょう。ですけれども、私がねらっておりますことは堀さんと同じなのでありまして、やはり金融、資金の需要供給によって動くのが一番ほんとうだと思っておるわけでございます。
  395. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がございませんから、最後に一つだけ。  三回にわたっておっしゃった公社債市場の育成、それを通じての金融正常化、オペレーションその他でございますね。これについては、これは三回も公式の場所でおっしゃったのですが、ちっともはかどっておりませんね。この間少し公社債金融をおつけになったのは私も承知をしておりますが、その程度ではどうも問題はなかなか解決をしないと思うのですが、これをこれからどうやって、ここに三年にわたって銀行大会で「お話しになったことを具体的に実現をなさるのか。その手だてをお伺いをして、きょうの総裁への質問を終わらせていただきます。
  396. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 銀行協会で申しました私の考えはいまも少しも変わっておりません。私が申しましたのは、一つは、日本の経済がこれからも大きくなる。それで、従来は主として銀行等を通ずる間接金融が非常に多くて、直接金融が非常に未発達だという点で、これをやはり直さなければならぬという点と、もう一つは、これからだんだん財政も大きくなってまいりましょう。そうして、ときには国債も出てまいります。そうしますと、国債というようなものは、税金と違いまして民間に非常に影響が深いものでございますが、その仕組みの上において違うわけでございます。したがって国債をほんとうの意味において発行し、これを消化するためには、市場が発達しないといけないと思うのであります。つまり市場原則によって、国債といえども一般証券と同じように、やはり需要供給によって発行金額も変わるし、また発行条件も変わるというふうにやっていかなければいけない。  そこで、いま何にもしていないとおっしゃいますけれども、一、二申し上げてみますると、国債については、政府はいまの経済の情勢から見まして、何とかして減額しようということに努力されておるわけで、また現にだんだん減額されております。それからまた、四十三年だと思いますが、発行条件も改正されております。また、われわれとしましても、何といいますか、日証金を通じまして資金を出しておるわけであります。そうして、これをもってだんだん育成していきたい。一番大事なことは、やはり直接証券を取り扱います証券会社の強化もはかっていかなければならぬ。そういうようなことで、こういう公社債市場というような問題を、一挙に一年の上ですぐによくしろとおっしゃっても、これは無理だろうと思うのです。かえってそうすることが、たとえばわれわれがいろいろやりまして、安易な方法によって拡大をはかりますと、かえって悪いとがめが出てくるのではないか。やはり一般の方も、国民の皆さんも、また証券会社も、また発行会社も、みんなそれぞれ証券市場というものの育成に力を合わせていかなければいけない。したがって、もうしばらく——何にもしないとおっしゃいますが、しておりますので、ひとつだんだんつとめてまいりたい、かように思っておるわけであります。
  397. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと順序が逆になりましたから、ほかのことでもう一つだけ伺っておきます。補正予算を先にやろうと思っておりましたから……。  自主流通米というのを政府は何かお考えになっているそうです。そうすると、これは政府のワクから外へ出て、要するに農協がかなりな——百七十万トンですか、米を買い付けられる、こういうことになるそうですが、これについての金融ですね。まあ、伝えられるところによると、これは農協だけではおそらく無理でしょう、百七十万トンの購入というのは無理があるかもしれません。日本銀行はこれをどうするつもりですか。これに対する対処のあり方だけをお答えいただきたいと思います。
  398. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいま、非常に財政に詳しい堀さんが、そうだというようなお話でございましたが、私もその程度しか知らないのであります。政府から正式に、こういうことをやるからおまえ考えろとか、あるいはまた、こういう制度にするからどうだというようなこともまだ承っておらないのであります。したがって、はなはだ残念と申しますか、お答えはできないと申し上げるよりしかたがないのであります。
  399. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、いま私がそうだと申したのは、百七十万トンもそういうところに行くかどうかがわからないものですから、政府はそのつもりらしいのですけれども、わからないからそうだと申したのです。どうも、政府は方針はきめていますから……。そうすると、ピークで百七十万トンというとかなりの金額が要ることになる。そこで、当然それは、日本銀行農協系統金融をひとつコントロールのワクへ入れたいというのがかねてからの念願じゃないかと思うのですが、あそこだけは日銀のコントロールのワク外に——ワク外といっても多少買いオペやなんかもあるでしょうが、非常にききにくいところですから、そのためには日銀としても配慮があるだろう、こう判断したものですから、それについての対処のしかたがあろうかと伺ったので、それは新聞で御承知の程度かもしれませんが、もしそれが行なわれるとしたら、それじゃ日銀は何も考えておらないのでは困るので、やっぱりお考えがあろうかと思うのですが、いかがでしょうか。
  400. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 非常にむずかしい御質問で、内容がよくわからない。ことに、一体どれくらいの程度でわれわれがやるかというような点はまだ……(堀委員「金額はいいです、やり方」と呼ぶ)したがって、これは金額によってやり方もおのずから変わってくるのではないか。私は、わずかの金でございましたらまた考えようもございますし、あるいはまた、民間金融が必要ならば、わずかの金ならば市中銀行あるいは地方銀行、そのほか金融機関がたくさんありますからできましょうが、大きな金額になりますと、これはむずかしい問題になりはしないか。したがって、その辺がわかりませんので、わかりましたらまた御質問があればお答えいたしますから、ごかんべんを願いたいと思います。
  401. 中野四郎

    中野(四)委員長代理 宇佐美日銀総裁に申し上げますが、御退席をいただいてけっこうでございます。たいへん御苦労さまでございました。
  402. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、順序をちょっとひっくり返しましたけれども補正予算の本論のほうに入りたいと思います。  私は、最初に総理大臣に、消費者米価は上げないということを御確認をいただいたのですが、私は生産者米価については確認をしなかったわけです。  それでは、労働大臣、ちょっとお伺いをいたしますが、この間NHKで一応春闘のはしりのようなものの妥結がございましたね。大体、こういうのは今後の春闘相場にも関連をしてくるだろうと思うのですが、あなた、一体ことしの春闘はどのくらいの賃上げが起こるか。去年の春闘の賃上げからでいいですが、ひとつ労働大臣大臣ことしの春闘相場というのは何%ぐらい上がるのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  403. 原健三郎

    ○原国務大臣 ことしの春闘相場——総評、同盟といろいろいま情報を集めておる最中でございまして、どの程度になるか、いまここに明言する域に至っておりませんのは、はなはだ残念でございます。(堀委員「昨年のやつ」と呼ぶ)昨年のは政府委員から答弁させます。——いま資料の持ち合わせがございませんから、いずれあらためまして提出いたします。
  404. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、いま政府は、御承知のように消費者物価は五%ぐらいに押えたいと一生懸命やっていらっしゃる。ことし私は春闘というのは一〇%をこえる賃上げが行なわれるだろうと思っております、全体の情勢が非常にいいですから。そうなると、ここで方針とこうおっしゃったのですけれども、九%の生産者米価の値上げがあって、五・九、約六%四十三年は値上げがあった。しかし四十四年度はゼロですよということになるかならないかという点については、私は非常に疑問があります。消費者物価は五%上がる、一般の労働者は一〇%も上がる、農民おまえさんたちだけは一文も上げませんよというようなことは、これは私はなかなかむずかしいだろう。そこで、こまかいことは言いません。私は、いろいろな事情があって生産者米価は上がることになるだろう、こう思うのです。どうでしょうか、総理大臣。生産者米価は上がることになるかどうか、ちょっとそこをお答えいただきたいのです。
  405. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府の方針を、御承知のように施政演説でも申し、それを本会議の席上でもはっきり申し上げておる。ただいまその方針に変わりはございません。
  406. 堀昌雄

    ○堀委員 こちらのほうは、ただいまその方針に変わりない、こういう御答弁ですから、それはただいまは、この間一月二十七日に言って、もういま方針が変わったのでは、これは最初に私が申し上げたように政治不信のもとになりますから、それはそうでしょうが、私は昨年この予算委員会でこの補正問題について議論をしたわけです。そうして、そのときにいみじくも福田さんがきのうおっしゃったように、この間総理も、本会議で私があなたに質問をしたときに、総合予算主義というのは手段であって目的ではないはずだ、こういうふうにお尋ねをいたしましたね。だから、そのことを福田さんがきのうおっしゃったので、たいへん政府も変わったなあと実は感じたわけでありますけれども、四十四年度についても補正予算を組まざるを得ない情勢が出てくるのではないか。それはあげて一番大きなファクターは、消費者米価は上げないとおっしゃったのですから、これは上がりません。あとのほうは、ただいまの方針ですから、これは上がるかもしれない。だから、もしこれが上がったら、かりに三%上がったとしましょう。三%上がったら大体損益勘定三百億くらい赤字が出ると思いますが、農林大臣どうですか。消費者米価据え置きの場合……。
  407. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 先ほどからのお話のように、消費者物価あるいはまた賃金も幾分か上昇ぎみにあるということだけは争われない事実だと思います。しかし、両米価を据え置くということは政府の方針として決定をしておりますけれども、ただこれは、私たちだけで決定するわけにはまいりません。米価審議会にはかりまして、その上によって決定していくものでございますので、政府の方針には変わりはございません。
  408. 堀昌雄

    ○堀委員 農林大臣、私が伺ったことに答えていただきたいですね。私は、方針はいま総理が言われておられるのだから、あなたにそれまで聞こうとは思わない。あなたには、かりに三%生産者米価が上がったら損益勘定に大体三百億くらいの赤字が出るのじゃないですか、かりにの話を聞いておる。
  409. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 一%上がりますと大体百三億だそうでございます。
  410. 堀昌雄

    ○堀委員 ですから、大体私が申し上げたように、三%上がると三百億損益勘定に赤が立つ。  買い入れの問題も、これは食糧庁でもいいのですが、皆さん自主流通米というものをおつくりになる。自主流通米というものをつくった場合には、どうもいまの政府のコストは流通経費が高くなると思うのですが、一体いまの配給米に比べて最低二〇%くらい上回るだろうと思うのです。これは最低ですが、これは食糧庁、どう見ておりますか。
  411. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 お答えを申し上げます。  現段階で自主流通米の価格水準がどうなるかということは、実は私はかなりむずかしいと思うのです。ただ、現在の生産者米価政府買い入れ価格を前提にし、政府の管理諸経費を基準にいたしまして、自主流通米の流通期間というものを考慮して試算をいたしますと、十キロ当たり二百六十円ないし二百七十円程度のコストアップになるようであります。ただし、これは自主流通米が、御案内のように、それぞれ需要に応じて価格形成がされるということでございますから、一律に形成されるというわけではなかろうということでございますので、その点は付言をいたしておきたいと思います。
  412. 堀昌雄

    ○堀委員 いま十キロ当たり二百六十円くらい上がる、こういうお話でございますね。一体、いま東京でやみ米というのはどのくらい値段の差がありますか。いまの配給米との十キロ当たりの差は幾らぐらいですか。
  413. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 お答えいをいたします。  お話のございますように、いわゆるやみ米でございまして、はっきりした価格を把握することはなかなか困難なのでございますが、私どもが部分的に調査したところから申し上げますと、百八十円程度から二百円くらいまでの幅があるようでございます。
  414. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、やみ米というのは、要するに生産者が持っていくのもあるでしょうが、まあ流通部分に何か少し入ったとしても、これは生産者のほうに非常にたくさん歩どまりがあると思うのですね。だから、かなり出ている。今度は流通部分のほうに二百五十円も取られるということになりますと、やみ米に売る米よりもさらにいい米があるか、そんな米はないですね。だから、いまやみ米に売れている米というのは一番いい米がいっているわけです。それでなければ百八十円も二百円もで買う人はないわけです。ですから、そうなると、やみ米と自主流通米と競争させるということになると、農民の側から見て、一体自主流通米というのはメリットがあるのですか。農林大臣、どうですか。あなた方ここで百万トンというようなものを据えておることについて、私は財政上から見て非常に疑問がある。そんなところに米は出てこないだろう。それならいっそのことやみへいこう。まあ、いわば政府がやみを公認したわけですから、ストレートでやみに売ったって、十キロ当たり二百五十円分ぐらいみなふところに入ってしまうのです。私はそういう意味でやみはふえるけれども、自主流通米にはいかない。結局それは政府買い入れのほうに残る、こういうことになるんじゃないかと思うのですが、それはどうですか。
  415. 長谷川四郎

    ○長谷川国務大臣 やみ米のほうはある程度規制をいたしますから、したがって、その分を自主流通という方面に重点を置いてあるわけでございますから、私はそのようにはならないだろうという考え方を持っております。   〔「もっと大きい声でやれ」と呼ぶ者あり〕
  416. 堀昌雄

    ○堀委員 長谷川さんの声が小さいと言っておりますから、もう少し大きい声でやってください。  やみ米を規制をなさるということですが、何で規制をなさるのですか。その規制のやり方を教えてください。
  417. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 御指摘にもございますように、遺憾ながら現在でも不正規な流通があるわけでございます。今回の自主流通米は、正規の流通経路を通って、そうして計画的に消費者の選好する米の供給をしようという考え方でございまして、こういうことになりますと、現在のいわゆるやみ米というのは、消費者の選好に応じた米の購買ができるというところに誘因があるわけでございます。これに対しまして私どもが構想いたしております自主流通米は、消費者のそういう嗜好に応じた選好を満たし得るということでございますから、したがって、そういう意味で現在のやみ米を規制し得る力になり得るということを農林大臣は申し上げたのだと思います。
  418. 堀昌雄

    ○堀委員 それならあまり大したことはないですね。一体いま皆さんはやみ米というのは何万トンぐらい流通していると思われますか。
  419. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 過去数年間の食糧需給表に基づきます推算の数字では、農家が政府以外のものに売っておると思われます数量は、七十万トンないし百万トン程度ということでございます。
  420. 堀昌雄

    ○堀委員 総理大臣、お聞きのように、いま七十万トンから百万トンのものが、言うなれば食管の赤字をつくらないで——その意味ではたいへんけっこうなことですが、流通しているわけですね。そこで今度は、ここで問題になりますのは、たいへん皆さんのほうでうまい米ということを言っていらっしゃるわけですね。何か銘柄にたいへん差別ができるというようなことを言っておられるわけですが、戦前にもなるほどうまい米というのは一応少しはあったわけです。われわれの関西で言いますなら、旭種というようなものは、これはうまい米だといわれておるわけですが、それではそういうようなものが今日出てきて、そんなに値段に格差がつくほどうまい米とまずい米とできるかどうかですね。これは常識の問題ですが、総理大臣、あなたどうお考えになりますか。米には、うまいまずいより、一番大事なのは新米か古米かのほうが決定的なんですね。どんなにうまい米だって、古米になったやつよりも、まずい米といわれていても新米のほうがうまいにきまっています。よろしいですか、だから……。(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)いやいや、まあそれはいい。だから、うまいかまずいかということに、いまのように十キロ当たり二百五十円も六十円も差がついても買う人たちは、すでに私はいまやみの米を買っていると思うのです。いますでに買っている人が、わざわざ何を好んで自主流通米を買わなければならないか。やみ米を買っている人は、私は依然として辛み米を買うだろうと思うのです。それ以外の人が、いまものが高く上がっているときに、高い米を手をあげて買うかといったら、私は買わないと思いますが、総理大臣はやっぱり高い米を買うと思いますか。   〔「総理に米のことなんかわかるものか」と呼ぶ者あり〕
  421. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総理は米はわからぬと言われる、そのとおりでございますが、私の小さいときの経験から申しますと、やはりお酒をつくるときには特別ないい米を使う。また、すし屋のすし米というものもいい米だ。これは普通でございます。だから、いまでも酒米は高く売っている。こういうものが、今度は特別に自主流通米が出てくる、また、その余得を一般人も受ける、このようなことになるのではないか、かように私は思います。  また、先ほど新米であれば何でもうまいようにおっしゃるが、過去、私どもの子供のときから言うと、新米はどうも水っぽくて困る、やはり適当に乾燥されたほうが、これはもうお米をたいたときにふえる、こういうような話もございます。したがって、私はそういう意味のことは、先ほどのように、どうもやはり昔のような米になっていくのが農業のあり方ではないか、かように実は思っております。
  422. 堀昌雄

    ○堀委員 話を本筋に戻して、そこで、実は私が伺いたいと思っておることは、皆さんのほうでは、今度は政府買い上げ七百五十万トン、それであと百七十万トンで、九百二十万トンという計算のようでありますが、しかし、来年また千三百六十万トンですか、収穫を予想していろいろなものが立てられておるようですけれども、来年またことし程度の米がとれないという保証は私はないと思うのです。それは三十万トンやそこらは縮むかもしれませんけれども、来年も、天候さえよければ四十四年産米というのは大体千四百万トン台に上がる可能性は十分にあるだろう。片や、いまの生産者米価の値上がりはあるかもしれない。さらに自主流通米のほうにいかなくて、結局政府買い上げのほうにその分が回ってくるということになれば、またぞろ——まあことしは二百万トン動いたからという問題ですけれども、今度でも収量の上では九百二十万トンで、今度一千万トン買い上げられたわけですから、そこで八十万トンぐらいはまだことしに比べれば来年は低めに見てある。八十万トンはちょっと多ければ六十万トンでもいいですが、そこでシフトするのが四、五十万トンで百万トンぐらいは買い入れがふえる場合もあり得る、二つの要因を考えると、これはもう、さっきごたごたいろいろしましたけれども、要するに損益勘定の赤が立つという見通しの立った時点では、すなおに補正予算を組まれることが私は適切な財政処置だと思いますが、福田大蔵大臣どうでしょうか。
  423. 福田赳夫

    福田国務大臣 補正予算をその際組むということは、そういうふうになると思います。しかしそれが増ワク補正であるか、組みかえ補正であるかです。そういうことが問題なんで、私はその際におきましても、ことし同様、極力組みかえ補正、つまり増ワクにしないように努力するつもりであります。
  424. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、ちょっと総合予算主義についてお伺いをしておきたいわけですが、組みかえになるか増加になるかは、それはそのときの時点でなければわかりませんが、要するにことしは、二百万トン買い入れがふえたということは、やはりこれは六百億円ぐらいの損益勘定に赤が立ったということですね。ただ、六百億円にならなかったのは、消費者米価をぐんと上げて、逆ざやの補正をした分のはね返りが二百億ぐらいあっただろうと思うのですが、それがあったということと、その他で三百七十億でとまったということなんですね。そうでございましょう。調整勘定への繰り入れが三百七十億円でとまったというのは、私はそういうことだと思いますが、大蔵大臣どうですか。
  425. 福田赳夫

    福田国務大臣 繰り入れば三百七十億です。で、そういうふうに努力してなったんですが、さらにその上努力いたしまして、——一般財源ですね、組みかえからかなり入れているのです、おそらく百二十億ぐらいになりますか。ネットの今度補正予算として増ワクになる分は二百五十億円ぐらいであります。
  426. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの御答弁は非常にはっきりしないのですが、ちょっと事務当局、いまのやつを少しはっきり具体的に答えてください。要するにネットは百何十億だとお話しになったんですね。これはだいぶん問題があるから、ちょっと主計局長のほうで答弁してください。
  427. 鳩山威一郎

    鳩山政府委員 食管国内米勘定の問題につきましては、いま堀先生のおっしゃったような、非常に大ざっぱに申し上げますと、そういった二百億ふえたということでは、五百八十五億の損失増加になりまして、消費者米価関係の引き上げと、生産者米価の引き上げの関係によりまして、約二百億程度の黒が立っておりますから、差し引きそういったことで、おおむね先生のおっしゃるとおりでありますが、いま大臣のおっしゃいましたのは、増ワクというのは、一般会計から食管に入れました分は三百七十億だけ一般会計歳出増加になっていないということを、それは不用等で捻出をいたしまして、一般会計へ入れる金額は二百五十億程度になっておるということを大臣が申し上げたわけであります。
  428. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとはっきりしておきますけれども、要するに三百七十億一般会計から特会へ入れたのは間違いがないんでしょう。ただ、福田さんは二百九十億ほどの不用額を捻出をしたからということを言いたいんですか。——わかりました。
  429. 福田赳夫

    福田国務大臣 予算のつらでは三百七十億食管繰り入れ、こういうふうになっております。しかし一方において、実質三百七十億の繰り入れをしてはいかぬ、何とかして繰り入れをなくしようというので、既定経費の節減につとめたわけであります。そのつとめた額をまず国民健康保険、そちらのほうへ充当し、残った額、百二十億ぐらいになるかと思うのですが、それを食管に充当して、結局ネット二百五十億ぐらいの残が生ずるわけなんです。しかし、予算の上では、一方は減額だ、一方は繰り入れだとこう全部出ますもんですから三百七十億になるのですが、ネットは二百五十億だ、かようなことを申し上げておるわけです。
  430. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとそこで、私いまの大蔵大臣のお話に一つ疑問があるのです。要するに総合予算主義ですからね。総合予算主義ということは、本来はあまり不用額が出るように組まないということじゃないですかね。不用額をできるだけ少なくするということが総合予算主義の目的だと私は思いますが、違いますか。
  431. 福田赳夫

    福田国務大臣 それはもうそのとおりであります。そのとおりでありますが、多少のでこぼこは、一年間という長い間でありますから、出てきます。そういう際に、不用額不用額とする、あるいは節約できるものは節約をする、またそれを回すべき歳出の需要があれば、それをそっちのほうへ回す、これはひとつお考えおき願わなければならぬ、かように存じます。
  432. 堀昌雄

    ○堀委員 不用額二百九十億でしたかね。二百九十億ぐらいだと思います。いま私ちょっと資料を持っていませんが……。そうするとこの中で、国債の発行をやめましたから、公債費だけはこれはもう当然文句なしに不用額になります。七十億ぐらいでしょう。そうすると、あと二百二十億。いま福田さん、皆さんこれをおきめになったのは一月の末、二月でしょうからね。これを十月や十一月にきめて節減するというので節減しろというならできますよ。二月のいまごろになってきて、一体節減しろといったって、節約やなんかできると私は思わないです。大体年度の中のおしまいに来ちゃってるわけですからね。そう考えてみると、まあみなさんのおっしゃる総合予算もかなりゆとりはあるなあということになりませんかな。
  433. 福田赳夫

    福田国務大臣 ゆとりがあるといえば、総合予算というのはゆとりがあるんですわ。かなりのゆとりを持ちながら、年度間においては普通の事態であれば補正を要しない、こういうことでありまするから、そう窮屈と、——まあ逆になるような形の部面もあるわけなんでございます。私は、総合予算主義というのは、そういう形において編成されたこと、そういうようなことによって結果としては補正予算にならない、特に増ワクの補正予算にならない、こういうことになると思うのです。
  434. 堀昌雄

    ○堀委員 いま、しかし今度は増ワクの補正になったんじゃないですか。あなたは増ワクの補正にならぬとおっしゃったけれども、今度の補正予算は増ワクの補正になったんでしょう。  もう一つ。私は総合予算主義というのは何も特別のことじゃなくて、財政法どおりだというのは去年の予算委員会から言っているわけですけれども、それは各項目の経費にゆとりを見るということじゃないのではないですか。要するに、全体として必要な額は見るんだけれども、必要でないものを見ないというのが総合予算主義のたてまえじゃないですか。不用を出さないということが原則になって総合予算主義があるので、それの弾力は予備費でとるということが、これがやはり総合予算主義のたてまえじゃないですかね。あなたの論理を聞いていると、何だかだんだんもう前に戻ってきているような気がしてしかたがないですがね。
  435. 福田赳夫

    福田国務大臣 前には戻らないんです。つまり、義務費というのがあることは堀さんもよく御承知でございますが、四十二年度以前におきましては、義務費なんかは非常に窮屈に考えまして、年度途中で補正をする、あるいは翌年度で予算に入れるというようなことをやったのが通例でございます。しかし、それじゃいけない。義務費なんかはどうせ出さなければならぬ、いつの日にか出さなければならぬ経費でありまするから、十分見ておかなければならぬ、こういうようなことで、そういう意味において従前よりはかなりゆとりのある予算になっておる、こういうことなんで、何も必要でないものを組み込んでおくという、そういう趣旨じゃないです。
  436. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの二百九十億の不用額の中身を一ぺんちょっと資料としてお出しをいただきたいと思いますね。それを一ぺん点検をさしてもらいます。  それから食糧庁にお伺いをいたしますが、これは千三百六十万トンことしとれて、皆さん方の計画どおりに七百五十万トン買い入れて、そして自主流通米いろいろあったと仮定して、来年の十月ごろの四十四年度のキャリーオーバーというのは一体どのぐらいになるのですか、米のキャリーオーバーは。
  437. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 ただいまの前提で、私どもは需給計画上はじいておりますキャリーオーバーは約五百七十万トン弱でございます。
  438. 堀昌雄

    ○堀委員 五百七十万トンもしキャリーオーバーするとすると、四十四年はそれでいいとしましょうか。四十五年凶作があるかもわかりませんから、こんなことはわかりませんが、かりに凶作がないとして、四十五年になるとこれは一体どのくらいキャリーオーバーになりましょうね。同じように、ことし四十四年にあなた方が見通しているのと同じ条件がいったとかりにしたら……。
  439. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 四十五年の米穀年度末の数量を試算しますことは、かなりやっかいな問題があるのでございますけれども、従来の条件に変動なしということで計算をいたしますと、玄米で七百三十万トン程度のキャリーオーバーになるということでございます。
  440. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの年間の国民の消費量というのは幾らですか、やみ米を除いて。皆さんの売り渡し額ですな。
  441. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 いままではっきりわかっておりますのは、四十二年の食糧需給表で計算をいたしました総需要量というのがわかっておりまして、それは約千二百四十万トンの水準でございます。
  442. 堀昌雄

    ○堀委員 国民全体、農家の分までいったらこれは話にならないのですよ。要するに政府が配給米として一年間に供給する米の量を聞いている。
  443. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 政府の需給で年間売り渡します量は、自主流通米なしとすれば約七百七十万トンないし七百八十万トンでございます。
  444. 堀昌雄

    ○堀委員 総理大臣、いまお聞きのように、これは天候が問題ですからわかりませんけれども、今後の食糧問題の中では何が非常に問題になるかというと、国民は大体そんな古い米食いたくないわけですね。できるだけやっぱり新しい、といっても限度があるのでしょうけれども、新米食わせというのがいまの国民の声です。古々米のその次、まだこの調子でいくと古古古米ぐらいに、こなごなの米みたいなことになるのじゃないかと思うのですが、国民はもっとうまい米を食わせろ。しかし、政府が買い上げた以上倉庫に入れなければいかぬ。倉庫に入れれば、こんなにどんどんふえてきたら倉庫を建てなければいかぬ、金利を払わなければいかぬ。そのうちに、これはともかく米を積み上げるために、金利負担と倉庫の新設費、倉庫料、こういうものが今度は食管会計の中の大きな要素になってくる。こういうことが非常に明らかになってくるわけです。これはいろいろ専門家がたくさんいらっしゃるので、私のような財政のほうばっかりやっておる者は米のことはややアウトサイダーですから、ちょっとドラスチックな表現になるかもしれないけれども、もし来年に五百七十万トンも米がキャリーオーバーするようになったら、そのうちのたとえば百万トンとか百五十万トンは古いほうからえさか何かに処理をして払い下げたらどうか。そうしたら、輸入してくるえさがそれだけ置きかえられるから外貨の節約にはなる。倉へ積んでおいて虫に食わせるよりは、飼料にしてやったっていいんじゃないか。要するに倉庫料と金利と倉庫を建てる費用というものは、ある程度の限界でこれに対策を講じる必要があるんじゃないか、私はこう思うのですが、総理大臣、これは私とあなたぐらいの常識の話でけっこうですから、お答え願います。
  445. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 食糧管理法に基づきまして私どもがといいますか、食糧庁が政府買い入れをいたしましたのは、国民食糧の確保という目的のもとでやったものでございますので、できるだけに国民食糧の需給の操作に役立てるように努力することが私は本来の任務だと思うのでございます。しかし一定の期間を過ぎまして、もはや国民の食糧として不適になるという時期には、御指摘のような問題が起こってこようかと思うのでございますが、現段階で私どもとしては、直ちにえさ用というようなことで特別処分をするということは、やや時期尚早ではないか。私ども決断いたしかねるということでございます。
  446. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、私はいましなさいと言っておるのじゃないですよ。そういうことを考えておかなければならないのじゃないか。それはこれから不作が続いたらそんなことになりませんから、これも前提の問題だけれども。  ですから、私がいままでこの補正予算について伺ってきたことは、要するに去年私はこういうこととになることを予測してこの委員会でやったわけです。よろしゅうございますか。当時西村さん、農林大臣だったから御記憶だと思う。ことしもまた、そういうことは起きる可能性がある。その場合にはあまり総合予算主義などこだわらないで、ひとつ肩の力を抜いて、リラックスして国民の希望にこたえるようにしてもらいたい。ここがはっきりしないと、総合予算主義のためにいろいろあっちこっち問題が起こるということになりますから、その点についてひとつ大蔵大臣のお答えを伺って次に移りたいと思います。
  447. 福田赳夫

    福田国務大臣 総合予算主義はあくまでも国の財政を健全化しよう、国民の税を正しく使おうというための方便でございます。したがって、これは国の政策は実体的に見なければならぬ。その実体的な姿勢のあり方、それに財政は追随していかなければならぬ、そういうふうに考えます。そういう意味において、総合予算主義というものはこの上とも堅持していきたい、かように考えております。
  448. 堀昌雄

    ○堀委員 次に、財政と金融に関係をして、税金の問題についてお伺いをいたします。  実は、私は大原理事を通じて、当委員会租税特別措置減収額について資料を提出してもらいたいというふうにお願いをいたしておりましたけれども、資料は提出ができない、まだ作業が終わっていない、こういうことのようであります。そこで私は、ちょっと過去の減収額で、政府が出された資料の提出月日を申し上げますと、昭和三十六年は二月十三日、三十七年は二月八日、三十八年は二月とだけで日にちが入っておりませんが、二月のこれも前半です。三十九年は二月十七日、四十年は二月二十七日、四十一年は二月十九日、四十二年は御承知のように選挙がありましたから、これはおくれるのがあたりまえで、四十二年は四月、そして四十三年が三月というふうに、選挙があって一ぺんおくれたらおくれっぱなしで、実は今日まだ提出がされないということになっております。  しかし、いま税金の問題については、国民が一番何を言っておるかといいますと、公平な税の負担ということを一番国民は言っておるわけです。サラリーマンの減税の問題も実はここに関係があるわけです。ですから、租税特別措置というのは一体何かといえば、これは特定の者に対して税法をまげて有利な恩典を与えておる制度ですから、この予算委員会審議をするにあたって、私はさっきから申し上げておるように、予算委員会というのは歳出だけの委員会ではございません。予算は当然として歳入歳出をもってセットになっておるわけですから、その予算委員会がこの問題の審議をやっておる最中に、この国民の生活に重大な関係のある租税特別措置減収額を政府は出せないというのは、これは一体いまの税金問題については怠慢じゃないですか。どうですか、大蔵大臣
  449. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま御指摘のとおり重要な審議資料でございますので、私たちもできるだけ正確に早く提出したいことは心がけているわけでございますが、御承知のとおり、税の自然増収見込みまして改正税法の減収額を計算をいたします際には、従来の課税実績をもとにいたしまして、計数等によって伸びておりますので、租税特別措置が適用された後の実績をもとにいたしております。その関係で、自然増収見積もります際には、実は租税特別措置法の適用による減収額は計算されておらないわけでございます。したがいまして、自然増収の計算が終わり、改正税法の減収額がすっかり確定をいたしました際にあらためて資料を集めまして、正確な計算をやっているわけでございます。それで、御指摘のように年度によって早くできた場合もございます、おそくなった場合もございますが、私どもいませっかく努力いたしておりますので、近日中に提出をいたしますが、大体、概算をもってかえることをお許しいただければ、まだ詰まっておりませんが概算で申し上げたいと思います。
  450. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、いまの答弁も私不満足です。なぜかといえば、さっき私が触れましたように、三十六年から四十一年までは全部二月の十七日か十九日くらいに出されているわけです。四十二年は総選挙があって予算編成がずっとおくれたわけですから、これはやむを得ません。ところがそれを前例として、四十二年が四月になったら四十三年は三月だ、ことしも三月だというようなことでは、これは怠慢じゃないですか。少なくとも租税収入を片方で見積って、国民の皆さん、あなた方からこれだけ税金取りますよといっておるときに、特定の一部の恩典を与えるもののためには、できるだけ資料をずらしてこういうところでの論議をはずそうということでは、これは重大な問題です。大蔵大臣どうですか。かまえがおかしいと言うのです、私は。
  451. 福田赳夫

    福田国務大臣 そういう予算審議上のテクニックとしてそうことになっておるのじゃないのです。でありまするから、御審議に十分なような、大体の概略のものはひとつ至急ごらんいただくようにいたします。
  452. 中野四郎

    中野(四)委員長代理 主税局長にちょっと申し上げますが、いま数日中に出せるという御答弁でありましたが、きょうは十九日なんだが、数日中に出せるのですか。
  453. 堀昌雄

    ○堀委員 正確なものを……。
  454. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 数日中には確実に提出をいたします。
  455. 堀昌雄

    ○堀委員 何日か聞いてください。数日中なんて当てにならない。
  456. 中野四郎

    中野(四)委員長代理 大体幾日程度と明確にしておいたほうがいいと思うのです。たとえば四十年は二月の二十七日というのですから。
  457. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 概略のものはもうメモしてございます。
  458. 堀昌雄

    ○堀委員 概略じゃだめだよ。
  459. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 正確なものは今週中には提出いたします。
  460. 中野四郎

    中野(四)委員長代理 今週中には出せると言うので、御了承願います。
  461. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私が概略のことを聞いてもしかたがないということは、一体政府が出しておるこの減収見積もりというものは正確かどうかという点に、これは大蔵大臣、重大な問題があります。もし大蔵大臣、これは全部を調べておるわけではありませんが、一つの例で私はいまからこれを解明しますが、重大な誤差があった場合は、これは大蔵大臣どうなさいますか。いま、利子の分離課税、配当の分離課税のようなものはやめなさい、要するに税を公平にしてくれという国民の声がほうはいとして起こっておるわけですね。そういうような重要な項目について、要するに試算が著しく実際と誤っておった場合は、大蔵大臣どうされますか。
  462. 福田赳夫

    福田国務大臣 誤っておるということが発見されますれば、つつしんで訂正申し上げます。
  463. 堀昌雄

    ○堀委員 私が問題提起をしなければこのまま通ることを、私が問題提起をしたらそこだけ訂正して済むというようなものでしょうか。私は、いまから二年ぐらい前に大蔵委員会におりましたときに、租税特別措置のこの減収をはじき出すメカニズムと方法を教えてもらいたい、こう言って主税局に申し入れをいたしました。教えないですよ。仕組みも何も全然教えない。要するに、これは完全に秘密の中で計算をして、そして国民の前に出しておる。言うなれば、いま三千百億とかいうようなものが概算で出ておるけれども、これが正確であるかどうかを確認する方法は一つもないのです。国民はこれだけを信用しなさいといって、大蔵省は国民の前に押しつけておるのです。そういうような秘密主義でやっておるものが、私が現実に計算をした結果、結果が明るみに出て、そしてそれが誤っていたら訂正では済みませんよ。大蔵大臣、これから租税特別措置法の全部の項目についての試算をするメカニズム、何をここへ置いて、何をデータとしてここへ入れて、どういう計算をしたら、この結果はこうなりますという、この任組みをやはり国民の前に明らかにしてもらわなければ困る。そうしてだれでもが計算をして、なるほどいまの経済の諸指標を使ったら、現在の租税特別措置法というのは幾らの減収になるかということを国民が納得できるようなものでなければ困る。これは重要な問題ですよ。秘密主義で問題が片づくような問題じゃないと思いますが、大蔵大臣どうですか。
  464. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 御承知のとおり、租税特別措置法の適用状況につきましては、これは課税所得としてはずれておる数字でございまして、これを推計することが必要でございます。私どもとしては、一々の統計は得られないものがございますので、推計をいたしてその推計値を出しておるものもございます。したがいまして、推計である限り現実のものと違うことはあり得ると思いますけれども、現実のもの自体を把握するためには、これは膨大な人員と予算が要ると思います。したがって、推計をもってまず間違いのないところをお出しをしておるわけでございまして、推計に誤りがあれば御指摘をいただけば、私どもとしてもさらに研究を続けて推計の確実を期したい、かように考えております。
  465. 堀昌雄

    ○堀委員 あなた方が推計をしたのなら、こういう推計をしましたという経過を国民の前に明らかにして当然じゃないんですか。かってに、ないしょでこそこそやって、そうして違ったものを出しておいて、私のようにこつこつと計算機使って計算してみて、そこに誤りがあったということがわからなければ、それで済ましていくというのがいまの大蔵省考え方じゃないですか。これは税の公平の問題からいって許せませんよ。  ですから、まず中身の話をいたしましょう。昭和四十一年度の利子所得の分離課税及び税率の軽減について、政府は平年度ベース二百七十億円の減収が立つと、こうなっておるわけです。資料は四十一年でないと正確なものがありませんから、四十一年の利子所得の分離課税について私はお伺いをいたします。  まず最初に、主税局長にお伺いをいたしますが、この利子所得の軽減税率は四十一年は一〇%ですね。その次は上積み税率は一体あなたのほうは四十一年度において幾らとして計算をしたのでしょうか。
  466. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいま四十一年度の数字を持ってきておりませんが、四十二年度では上積み二二%で計算いたしております。
  467. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、要するに減収額の推計二百七十億円は、税率がいまは所得税法では二〇%を源泉で取るということになっておるのが、このときは一〇%しか取ってないわけですから、上積み税率が二二%ということは、まず源泉で取った分の一〇%と、それから上積み税率として割り戻すときの二%分、これだけが減収に立つ、こういうことですね。
  468. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 そういう計算をいたしております。
  469. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで国税庁長官にお伺いをいたします。  「第九十二回国税庁統計年報書」昭和四十一年度版といのが国税庁から出されております。その中で七六ページに「利子所得の課税状況」というのがあります。ちょっとこの中身についてお伺いするのですが、これは公債、社債、預金利子、合同運用信託の利益、公社債投資信託の収益の分配、こういうふうになっておりますね。そこで、この年に、昭和四十一年度に源泉徴収をした金額というのは一体幾らですか。
  470. 亀徳正之

    ○亀徳政府委員 お答え申し上げます。  源泉徴収税額でございますね。利子所得につきましての源泉徴収税額は、四十一年分で九百二十二億七千二百万円でございます。端数は省略させていただきます。
  471. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで実はいまお話しのあった九百二十二億というのは、これは法人分と個人分の源泉徴収が入っておるわけです。ところが現在の法律では、個人に対してはいまの租税特別措置法が働きますけれども、法人分はこれはあとで法人税のときに処理をしますから、これは実は関係がないわけです。  そこで私は、この各項目の公債、社債、銀行預金、それから農業協同組合貯金等その他の預金、各項目について全部個人、法人の別で区別をいたしました。そうして全部計算をいたしましたら、この九百二十二億円のうち四百八十億六千四百万円というのが個人分の源泉徴収額になるわけです。私のほうでは、あなたのほうでここに外書きとして少額貯蓄免税の分がちゃんと書いてあるから、これを加えて、そうして配分をして、そうして計算をした結果、四百八十億六千四百万円というのは、上積み税率を二〇%としたら四百八十億の実は減収になるということになっておるわけです。ところが政府は、二百七十億しか減収を出していない。国民は二百七十億ぐらいかと思っておるでしょうが、現実にこの国税庁が出してきた資料をこまかく分析をして計算をしたら、四百八十億円減収になっておるわけです。二百七十億と四百八十億、二百十億円も違いがあって一体他の資料が信用できますか。この租税特別措置減収額は、この一事から見ても国民を欺瞞するもはなはだしいですよ。これは税の問題としては重大問題です。大蔵大臣、どうしますか。
  472. 福田赳夫

    福田国務大臣 とっさの間のお話なんで、よくこれは精査してみる必要があると思います。よく精査をした上でお答え申し上げます。
  473. 吉國二郎

    吉國(二)政府委員 ただいまの計算の根拠を承りませんと、ちょっとすぐとっさにはお答えしかねるのですが、数字をちょうだいいたしまして検討いたします。
  474. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは数字のことはあとでやりますが、私のことですから計算はきちんとしてあるわけです。もし四百八十億、間違いがなかったときには、さっきの話と違うのだから、これはまともに計算して出てきていることだし、もとは国税庁の資料だから、だからもしこれが、四百八十億が、私のほうが正しいということになったら、大蔵大臣どうしますか。この処置はどうしますか。あなたの大蔵大臣のときですよ、これは。
  475. 福田赳夫

    福田国務大臣 まず堀さんから、あなたの計算の詳しい経過をいただきまして、それを私のほうで検討してみます。そして違いがあるかどうか、よくひとつ比べてみたいと思いますが、比べてみて違いがあるという際には、これはたいへんなことですから、十分その違いが出てきた根源をよく調べて、まだ他の方面にそういうミステークがないか、そういうことも十分調べてみなければならぬ、かように考えます。
  476. 堀昌雄

    ○堀委員 総理大臣、いいですか、いま税金について国民の関心が非常に高いときに、これは非常に重大な問題なんです。だから私は、もし私が言ったように四百八十億というものがなるほど正しいということが結果として出ましたならば、少なくとも租税特別措置の計算方法、推計を含めて、それをガラス張りに国民の前に毎年出してもらいたい。それをひとつ総理大臣、約束をしてください。これは私は何も責任を追及することを目的としているわけではないのです。しかし少なくとも民主政治の原則、特に税は、大体国会が生まれたのも税から国会ができてきているわけですからね。よろしゅうございますか。その税の問題について、国民が承知をしないところで、租税特別措置というような不公平な制度があって、それによる減収額が国民の目をかすめておるなどというようなことは、これは承知ができない。総理大臣、その点をガラス張りで国民の前に明らかにしてもらいたい。ということは、国会に資料を、そういう計算の基礎を含めて提出をしてもらう、各項目全部についてということで、ひとりお約束を願わなければこれは承知できません。
  477. 福田赳夫

    福田国務大臣 できる限り御期待に沿うようにいたします。   〔中野(四)委員長代理退席、委員長着席〕
  478. 堀昌雄

    ○堀委員 でき得る限りというのは、条件がつきましたから、ちょっとそれ、どういうことでしょうか。それは私の希望する範囲のことは認めるということになるわけですね。
  479. 福田赳夫

    福田国務大臣 これはあなた、推計だとかそういうものはいろいろありますから、必ずしもあなたのおっしゃるようなことにならぬかもしれない、そういうケースがあると思います。そういうことで、できる限りのことはいたしますと、こう申し上げておるのです。
  480. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、推計ならば、推計をするためには必ず前提が要るのです。こういう前提とこういう前提を置いてこれを推計したらこうなります、そういうことですから、それはいいんですよ。その前提について、われわれの了解できる前提があれば、その前提をもとにした推計は当然なんですから、わからないものがたくさんあるわけですから……。  この預金利子なんというのは非常にはっきりしているので、私が驚いておるのは、こういう資料が国税庁にありながら一体なぜこういうことが起きてきたのかがふしぎでしかたがないわけです、私に言わせれば。だからそういう点を含めて、推計をするなら、その前提条件を明らかにして推計の経過を出してもらえば国民は納得しますよ。それは推計の方法はいろいろありましょうけれども。だから少なくとも国民が納得をする——国民が納得をするということは、私が納得するということですね。私が納得できるような形で公開をするということについて、確認をしていただきたい。
  481. 福田赳夫

    福田国務大臣 そのようにいたします。
  482. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、資料の問題はあとで大蔵大臣と主税局長とへお目にかけて御説明をいたしますから、次へ参ります。  総理大臣は、いまサラリーマンの諸君が非常に問題にしておる点は、源泉徴収課税ということに対して非常に強い不満を持っておる、これはもう御承知でしょう。違憲訴訟も出て、いろいろ問題はありました。私は、ここで違憲論は言いません。違憲論は言いませんけれども、いま申告所得税の人たちはどういう仕組みになっているかといいますと、前年の課税決定額を三分の一にして、その三分の一分を最初の七月期に予定納税をしなさい。十一月に予定納税をしなさい。三月十五日までに、残りはその年度の分で確定申告を出しなさい、こうなっているわけです。税金を納めるのに三回に分かれているわけですね。よろしゅうございますか。あなたがもし現在の収入で、これを源泉所得税でなく申告納税の立場になって、いまのようなかっこうで七月と十一月と来年の三月十五日に分けて税金を払えるとかりになったとしましょう。そうすると、あなたは源泉徴収されていたわけだから、その分をひとつ納税貯金のようなつもりで郵便局に一ぺん預けておく。毎月前年分くらいを天引きして預けておく。そうすると郵便局へ金を預けていますから、最後のときにはゼロになりますけれども、確定申告で引き出して払いますからね。しかしそれまでには金利がつきますね、郵便局へ預けていますから。もしあなたのいまの税金をそういうかっこうで申告納税並みに処理をしたら、一体幾ら金利がいまの源泉徴収に比べてお手元に残るか。あなたは、これはわからぬことですが、どのくらい残ると思いますか。感じで一ぺん……。
  483. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 前もってお話があったらよく調べておくのでしたが、どうも突然で、また計算のしかたも私は知らないのですが……。
  484. 堀昌雄

    ○堀委員 総理大臣は、昭和四十一年分は二百四十六万二千九百八十円、実はあなた税金を払ったのです、国税として。所得税ですね。そうして、昭和四十二年分は三百十七万九千三百円あなたは払ったのです。そこで、これだけ差がありますからね、二百四十万円と三百十万円。予定納税のときには、この二百四十万円の三分の一、八十万円を七月に納めればいいわけです。それからあとの十一月に八十万円納める。そうして百六十万円ですから、残りの百五十七万円ですか、これを三月に納めればいい、こういうことになるのですね。そうやって、郵便貯金に預けますと、二万五千五百四十三円あなたは利子がもうかるのです。その二万五千五百四十三円というのは、ちょうど前年分の税金の大体一%ぐらいになるのです。いま源泉税、国民全体取られております金額は、四十一年分が七千八百十七億なんです。四十二年分が九千十二億実は取られておる。ちょうどこれと同じような計算をいまの源泉所得税を納めておる国民全部について、みなが申告所得税になってこうやって郵便局に納めたとしたら、七十九億六千三百万円この人たちは得をする。要するに、申告所得納税と源泉徴収で、経済的な不利益としてこれだけのものを損しているわけです、この人たちは。早く先に取られているから。片一方はあとから払えばいいから、それはどこかに預金しているから利子になっている。これだけまず源泉徴収と申告納税の間には一つの問題がある。  もう一つの問題は、これは盛んにクロヨンとかいろいろなことで問題になっておる数でありますけれども、この中で私は、非常に象徴的なものをこれらの資料から見ましたのは、現在日雇い労務者というのは、御承知のような仕事をしておられる、階層上では一番所得の少ない階層なんですね。この一番所得の少ない日雇い労務者が現在一体どのくらい税金を払っておるかといいますと、これは二千七百二十四億支払い賃金があって、十二億九千三百万円実は税金を払っているのです。ところが、これは農民のことを申してたいへん恐縮ですけれども、農林省の統計から見ますと、昭和四十一年は二兆百六十億円農業所得というのはあるのですよ。よろしゅうございますか。農業所得は二兆百六十億円ある。ところが課税対象になっております金額はわずかに千三百八十五億円。いまの日雇い労務者に支払われた賃金よりも著しく低い額しか実は課税対象になっていないわけです。払われた税金は三十八億七千八百万円です。日本の三百万世帯ぐらいある農民の皆さん全部の方の中で、農業所得について払っておられるのは三十八億七千八百万円。日雇い労務者が十二億九千三百万円払っておる。  こういうところに実は源泉徴収というものがいかにきびしく所得を把握をしておるかということが明らかになっておると思うのですよ。おわかりになりますか。そうして、その所得をきっちり把握をしたものから金を先取りして、金利分まで吸い上げておる。片一方は所得の把握が非常に困難だから必ずしも把握はされていなくて、その人たちは金利分が入る。これでは税の公平が守られていないということを総理大臣も端的にお感じにならないでしょうか、どうでしょうか。
  485. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま聞いただけでは確かにずいぶん不公平だ、こういうことでございますが、まあそれにはいろいろの理由もあるだろう、かように考えます。
  486. 堀昌雄

    ○堀委員 不公平があるという感じは感じ取られますね。一国の総理大臣がこの私の話を聞いて不公平だと感じなかったら、国民はおこると思うんですよ。だからこれは当然不公平である。理由がいろいろあるだろうとおっしゃるのですが、では、理由をひとつ大蔵大臣説明してください。
  487. 福田赳夫

    福田国務大臣 理由は、一つは、ただいまお話しの源泉徴収で、徴収の方法にあると思うのです。源泉徴収を受ける階層が、申告所得をする階層、これとどうも徴税の方法において緩厳の差がきびしい、こういうことですね。それからもう一つは、源泉徴収を受ける所得階層ですね、この人たちに適用される税率、つまり所得税が、これが累進になっておる。所得が上がるけれども、しかしながら高い税率がそれに従ってかかっていく、こういう点ですね。それからもう一つは、申告税制にありましては必要経費という控除、これがかなり適正にやられているが、いわゆるサラリーマン階層、これに対して必要経費というものがどうも控除が足らないのだ。こんな点にサラリーマン階層の税に対する感触の焦点がある、そんな感じです。
  488. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がありませんから、ちょっとはしょって……。  そこで私は総理大臣に一つ提案があるんですが、このいまの私の計算で明らかになりましたから、まずこの源泉徴収者に源泉徴収控除といいますか、源泉で払った人もこっちもあまり差のないような、せめて経済的効果では、片方はずいぶんたくさんの徴税費をかけて取っている、片方はただで吸い上げているわけですから、徴税費から見てもその他から見てもアンバランスがひど過ぎるから、源泉所得控除というようなものをひとつ考えることは、これは私は国民としても非常に喜ぶことだと思いますから、これをひとつお考えをいただきたいと思うのですが、総理大臣どうでしょうか。
  489. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 せっかくの御提案でございましたから、これはひとつ税制調査会で十分検討させます。
  490. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、この間只松君が一般質問で、実は二分二乗方式というのの問題を提起をいたしました。これは一体どういうところに問題があるかというと、実は妻の座がいまの日本の税制ほど認められておらないところはないのです。よろしゅうございますか。それは四十二年の税制からこういうことが行なわれるようになりました。おやじさんが、主人が三千万円の遺産を残して死んだ場合、三千万円の遺産を残したら法定の相続分一千万円です、妻というのはいま三分の一が法定ですから。一千万円までは無税にしましょうという法案が、実は大蔵委員会で四十二年に通ったわけです。これの思想は一体何かといいますと、要するに三千万円ある人の場合は一千万円までは、一緒に働いてつくった財産だから、それはひとつ無税にしましょう、横向けの移動だから無税にしましょうという考え方です。そのことの考え方をずっとたどっていきますと、これはアメリカで二分二乗方式というのが一九四八年に出たわけですけれども、アメリカの州の中には、夫婦の財産は共同の財産だという共同財産の州と、そうでなしに日本みたいなふうにしている州があったわけですね。それで公平を欠くものだから、そこで国の法律としてそれを一律に共有財産とみなす方向で二分二乗方式というものが出たのです。だから、いま大蔵省は何か二分二乗方式を税率軽減の手段のように考えているようだけれども、私はそうではなくて、これは妻の座を正当に認めるという思想の背景が重要だと思うのです。佐藤さん、あなただって総理大臣としてつとめがつとまるのは、やはり奥さんが家におって、内助の功があるからやれるんじゃないですか。どうですか佐藤さん、ちょっと答えてください。
  491. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのとおりでありまして、ただいまの妻の座、遺産の場合、これは特例を設けるのは私の主張でもあったと、かように私はいま思い起こしております。(堀委員「内助の功、奥さんのおかげでしょう。」と呼ぶ)それはもう、いまさら申し上げることはございません。
  492. 堀昌雄

    ○堀委員 ここで私は総理にたまたま聞いたんだけれども委員長を含めて、ここにおるのは、ほとんど男性ばっかりですからね、まあ御婦人が一人いらっしゃるけれども。みんな妻の協力によってこんなところでやれるのです。そうでしょう。私も、もちろんそうですよ。だから私は、もっと言えば、いまの政府は、男女同権なんて言うぐらいなら、男女同権の中で一番大事なのは妻の座だと思うのですよ。妻の座を大事にするということは、妻というのは、その他の者と少し別個の扱いがあってしかるべきだということです。財産が三千万円ある人は、たまたま一千万円自分の財産であったということになるでしょう。しかし、それだけなければくれないのですよ、実は。二千万円しかないときには、それの三分の一の六百何十万円ですか、それだけしか実は非課税にならないわけですよ。これはおかしな話でしてね、そんなに、財産の多寡に応じて妻のあれが違うんじゃ、おかしいわけで、私は、一千万円まで認めたら、要するに、主人の財産が一千万円以上あって、そうして、もしそれを奥さんが引き継ぐというなら、一千万円までぐらいは全部無税にしてやってしかるべきではないか、これが第一点ですよ。  第二点は、贈与税という仕組みがあるわけですね。いまは遺産相続でなしに、生前贈与ということがありますね。そこで、この前ようやく法律が改正をされて、結婚二十五年しておった奥さんですよ、二十五年といったらたいへんですが、二十五年以上婚姻をしておった妻に対しては、生前に住居その他——もっぱら住居用地からひとつ問題があるといっているのだけれども、住居としてその奥さんに生前に与える場合には、百六十万円まで認めてあげましょうという法律が出たわけですよ。よろしゅうございますか、わずか百六十万円ですよ。その他は贈与については、妻であろうが他人であろうが、要するに、まあ四十万円ことし主人が妻にやったら、あと二十万円、二十万円、その次の年、まあ、もう一ぺん四十万円やれるけれども、また二十万円、二十万円、妻であろうが他人であろうが、贈与税は一つも区別はないのです。私は、妻に対する贈与というものは、いまのように、妻に対する贈与という考えがおかしいんで、そのおやじの財産というのは、いうならば、妻と一緒につくった財産ですから、それを妻に与えるなんというのはあたりまえのことなんで、だから、妻に対しての贈与については、これは大幅に特別な扱いをするというのは私は当然だと思うのだ。財産が一千万円まで横すべりができるのなら、生きているときにやったって、これは免税にするのはあたりまえじゃないですか。どうですか、総理大臣、いまの私の提案、答えてください。
  493. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 妻の座を守るというか、これは当然だと思いますから、ひとつ十分検討さします。もっともな御提案だと思います。
  494. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ要するに私は、きょうのこの委員会を通じて、国民のために、消費者米価は上がらない、これを総理大臣が確約をしていただきました。それから、いまの一千万円の問題についても、要するに、妻の座を含めて、一千万円も検討していただく。それからもう一つ、いまの生前贈与についても、妻を特別扱いにするということについても、一千万円との権衡で考える。この三つと、あわせて、源泉の控除をやるという問題と、これだけを全部確認をいたしますが、もう一ぺん、締めくくりで、これで最後ですから、お答えをいただいて私の質問を終わります。
  495. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど答えたとおりに、速記にはっきりしております。(堀委員「誠意をもって。」と呼ぶ)誠意をもって……。
  496. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて堀君の質疑は終了いたしました。  明二十日は、午前十時より委員会を開会し、鈴木一君、中野明君の質疑を行なうことといたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十五分散会      ————◇—————