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1969-02-04 第61回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年二月四日(火曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 櫻内 義雄君 理事 田中 龍夫君    理事 塚原 俊郎君 理事 中野 四郎君    理事 八木 徹雄君 理事 大原  亨君    理事 中澤 茂一君 理事 小平  忠君    理事 広沢 直樹君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    植木庚子郎君       臼井 莊一君    江崎 真澄君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    倉成  正君       小坂善太郎君    重政 誠之君       田中伊三次君    竹内 黎一君       野田 卯一君    野原 正勝君       橋本龍太郎君    福家 俊一君       福田  一君    船田  中君       松浦周太郎君    角屋堅次郎君       川崎 寛治君    北山 愛郎君       久保 三郎君    阪上安太郎君       田中 武夫君    高田 富之君       楯 兼次郎君    楢崎弥之助君       畑   和君    山内  広君       山中 吾郎君    麻生 良方君       小沢 貞孝君    春日 一幸君       伊藤惣助丸君    矢野 絢也君       林  百郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 西郷吉之助君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         文 部 大 臣 坂田 道太君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 長谷川四郎君         通商産業大臣  大平 正芳君         運 輸 大 臣 原田  憲君         郵 政 大 臣 河本 敏夫君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 坪川 信三君         自 治 大 臣         北海道開発庁長         官       野田 武夫君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)保利  茂君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      床次 徳二君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      荒木萬壽夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 有田 喜一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      木内 四郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君         人事院総裁   佐藤 達夫君         総理府特別地域         連絡局長    山野 幸吉君         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         警察庁長官官房         長       浅沼清太郎君         警察庁警備局長 川島 広守君         防衛庁長官官房         長       島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      麻生  茂君         防衛庁経理局長 佐々木達夫君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         防衛施設庁総務         部会計課長   高橋 定夫君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         科学技術庁原子         力局長     梅澤 邦臣君         法務省刑事局長 川井 英良君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         大蔵省主計局長 鳩山威一郎君         大蔵省主計局次         長       海堀 洋平君         大蔵省銀行局長 澄田  智君         文部省大学学術         局長      村山 松雄君         厚生省薬務局長 坂元貞一郎君         厚生省保険局長 梅本 純正君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林大臣官房予         算課長     大場 敏彦君         農林省農林経済         局長      亀長 友義君         農林省蚕糸園芸         局長      小暮 光美君         食糧庁長官   桧垣徳太郎君         通商産業省企業         局長      大慈彌嘉久君         通商産業省重工         業局長     吉光  久君         運輸政務次官  村山 達雄君         運輸省鉄道監督         局長      町田  直君         運輸省航空局長 手塚 良成君         建設省計画局長 川島  博君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    内田  宏君         運輸省航空局飛         行場部長    丸居 幹一君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     林  敬三君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月四日  委員西村直己君、小沢貞孝君及び石田幸四郎君  辞任につき、その補欠として小坂善太郎君、春  日一幸君及び伊藤惣助丸君が議長の指名で委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十四年度一般会計予算  昭和四十四年度特別会計予算  昭和四十四年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十四年度一般会計予算昭和四十四年度特別会計予算昭和四十四年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行ないます。楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、本題の外交、防衛問題に入る前に、実はけさの新聞を見てみますと、美濃部都知事秦野警視総監の間でいろいろと機動隊の増員の問題についてやりとりがあっておるようであります。私はこの記事を読みまして、実に奇怪に感じたのであります。いま四十四年度の予算案がやっと当委員会にかかりまして、質問第三日目という段階であります。あるいは私の質問の中で、これはやってみぬとわかりませんけれども予算が通らないことになるかもしれぬのです。それなのに、あたかも予算が通ったことを前提にして定員の問題を話し合っているというのは、一体どういうことだろうか。そこで私は、そのことについて冒頭お尋ねをいたしたいと思います。質問を一括してやりますから、御答弁を一度にお願いしたいと思います。  警察法の五十七条の二項に基づくところの政令はいつごろ出される予定でありますか、それが第一点であります。  第二点目は、政令条例定員が明らかにならなければ、都道府県予算を組むことができない、これは当然のことと思いますが、その点についていかがお考えでありますか。あわせて、どういう指導をやっておられるか。  三番目に、大体五十七条の二項というのは、条項の形式としてはあたかも自治を尊重するような形になっておりますけれども、結局は政令都道府県を縛る、あるいは条例審議権を拘束するという形になっております。こういう政令に従うなんという条項は本来削除すべきものであると思いますけれども、この点はいずれ審議段階で明らかになると思いますけれども、当面いろいろと内面指導、内簡指導といっているそうでありますが、これは法律の根拠がないわけでありますから、別に拘束力強制力もない。したがって、たとえ自治体がその内簡指導なり内面指導に従わないでも、問題はないわけであろうと思うのです。  一体その辺について政府はどのようにお考えでありましょうか。  以上、三点について一括して御答弁をお願いします。
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 楢崎君、総理お尋ねですか。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、国家公安委員長でけっこうです。——どうなっているんですか、答弁者は。
  6. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお待ちください。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どうなんですか。休憩してください。
  8. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩じゃございません。いま廊下を飛んできている最中です。お待たせいたしました。国家公安委員長荒木萬壽夫君が参りました。  国家公安委員長に注意をいたします。時間どおりに出席していただかないと迷惑いたします。国家公安委員長荒木萬壽夫君。
  9. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 定員に関する政令は、予算を御審議決定していただきました直後、なるべくすみやかに政令で定めることにいたしております。
  10. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は三点お伺いして、一括して答弁していただきたいと言っているのですよ。
  11. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  採用、教養、人事、配置など人事管理の面から見まして、改正定員条例施行は四月初旬であることが最も望ましく、かっこのためには、三月の定例都道府県議会において定員条例及び予算に関し所要の措置が講ぜられることが望まれるのでございまして、改正政令内容となるべきものとして内定したところをあらかじめ連絡するのが通例でございます。もちろん通称内簡と称せられるものは、それ自体には拘束力はございませんけれども改正政令公布施行によりまして初めて法的な拘束力が生ずるということは申し上げるまでもございません。従来の定員改正は、いずれの場合におきましても、三月都道府県議会において政令改正を見込んだ数で条例改正がなされておりますので、今回もその慣例に従いまして、内簡を通じまして国の予算趣旨をあらかじめ御通告申し上げるということで、内簡を出したわけでございます。このことは、仰せのとおり、拘束力云々ということが中心であるよりも、四月早々から定員をきめていただくことが、各都道府県にとりましても、治安の維持の関係都道府県民のためにもなるという課題でもございますので、なるべくその手はずをそごしないようにすることが望ましいということからの、従来やっております慣例に従っておるわけでございます。
  12. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまお答えのとおり、それは単なる慣例であって、政令が出るまではたとえ内簡指導に従わなくても、それは別に全然問題ないと思うのですね。拘束力強制力もないわけであります。あわせてここは私は非常に問題であると思うことは、予算審議がまだ行なわれておるこの段階で、三日目というこの審議段階で、あたかも予算が通ったと仮定してそのような指導をするということは、われわれの国会審議権を無視するものであり、都道府県の側から見れば、条例審議権を拘束するものである。どちらの面から考えても、私はこういう慣例はけしからぬ慣例である。したがって、それは指導の面はわかりますよ。しかし、法的な拘束力はないんだ、たとえ都道府県が従わなくても。あるいは政令が出て初めて問題にするということであっても、それが本来筋なんだから、そういうふうな手続をとってもいいわけでしょうか。公安委員長の重ねての御見解を承りたいと思います。
  13. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  厳密な法律的な意味においての拘束力とおっしゃるならば、お説のとおりであると思います。ただ、行政運営上の望ましい姿を期待します限りにおいては、国会にこういう趣旨で御審議を願いつつあるのだということを各都道府県に御内示申し上げるということは、自治体警察の的確な運用を住民のために期待される立場の各都道府県当局にとりましても望ましいことであるわけですから、そういうことで、従来からさような慣例に基づいて、国と地方公共団体地方警察との間に十分の理解のもとに慣行されておるものでございます。
  14. 楢崎弥之助

    楢崎委員 好ましいというのは、内簡指導している側から見て好ましいだけであって、受けるほうにはいろいろとやはりお家の事情があるわけですから、必ずしも好ましいとは限らない。したがって、私はこれはいろいろ問題があろうと思います。昨日の北山委員から出されました報償手当問題等も含めて、本問題も理事会において善処されるようにお願いを申し上げまして、この問題はこれで打ち切りたいと思います。よろしゅうございましょうか。
  15. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 理事会で検討いたします。
  16. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで本題に入りたいわけでありますが、私は、今度の国会再開後、総理施政方針演説あるいは本会議における代表質問に対するところの答弁、そしてまた今日までの当委員会における沖繩問題についての一連答弁を見ておりまして、非常に憤りに近いものを感ずるわけであります。私は、総理沖繩問題の取り上げ方なり発想について、出発点において誤りがあるのではなかろうか、このような感じがしてなりません。総理は、沖繩に行かれまして、沖繩問題が終わらない限りは戦後は終わらないという名言を吐かれました。私は、あのことばは国民共感を呼んだと思います。私もそういう共感を覚えました。したがって、そのような考えが基礎になってこの沖繩問題を取り扱われる限りにおいては、私は、必ずや国民的な合意が生まれるものと期待をいたしております。しかし、これまでの一連答弁を見ますと、どうもその総理のお考えが、出発点からはずれておるような感じを受けるわけであります。たとえば、日米安保体制の目的は、沖繩を含むアメリカ核抑止力であるということを言われております。あるいはまた、非核原則は、これを本土に適用できておるのは、アメリカ核抑止力があるからだ、それが背景になっておる。特に日本本土に近い沖繩核抑止力というものがあるから、本土非核原則が採用されておるんだ、そういうお考えのようであります。  これを要約してみますと、本土沖繩に関する限りは、こういうことになるんでしょうか。本土は現在沖繩核抑止力で守られておる。つまり本土沖繩で守られておる、こういうことですね。本土沖繩で守られておるということは、沖繩の負担において、あるいは犠牲において守られておるということなんですね、要約してみますと。いま問題になっております沖繩の返還問題、確かに総理がおっしゃるとおり、早期返還ということは、われわれも沖繩の同胞も望んでおることは事実であります。しかし問題は、その施政権返還という概念ではなしに、何が一体返ってくるのかという、私は、その内容の問題であろうと思うのです。たとえば、問題になりましたように、メースBのような、他国に近くてしかもあんなもろい核基地なんというものは、これは敵の第一撃を抑止する効果よりも、むしろ敵の第一撃を誘発する危険な効果のほうが大きいのであります。私は、そのことは総理も私どもも、もう経験済みではないかと思うのです。かつて難攻不落といわれておりました沖繩基地、そしてそれがあの大東亜戦争のときに、全島を祖国防衛人がきとして悲惨な戦火のるつぼに追い込んだ。多くの若い人たちの生命は、ほんとうに南溟の果てにいまも眠っておる。こういう事実を考えると、私はそのことははっきりしておると思うのです。したがって私は、いまこそは、もう一度沖繩犠牲になってくれ、本土犠牲になってくれなんというようなことは、口がくさっても言うべきではない。今度こそは、われわれ全体が平和な力で沖繩を守る、こういう発想で出発しなければ、かつてのあやまちを私どもはおかすことになると、このように思うのです。したがって、私はそういう立場から、この沖繩をめぐる日本安全保障の問題に入ってまいりたいと思うわけです。  そこで、本会議におけるわが党の成田委員長質問でございますが、総理安保を堅持する必要があるというその具体的な根拠は何かという、この成田委員長質問に対しまして、総理はいろいろ言われましたが、その中で、社会党安保があると戦争に巻き込まれるというが、いまだかつてわが国戦争に巻き込まれたことはないじゃないかという反論が行なわれました。しかし、戦争に巻き込まれたことはないというその事実の紙一重の裏では、どういうことが一体現実としてあったか、これが私は問題であろうと思うのです。私は、わが党は、一番この安全保障問題の中でわが国の安全にとって危険である、つまりわが国と直接関係のない紛争に巻き込まれる可能性がある、そういう条項として第六条の問題を非常に重視をしてきたわけであります。そこで、幸い現実には紛争そのものに直接巻き込まれることはなかったけれども、一体あのベトナム戦争安保関係からいいまして、どのような関係にあったか。私は、これをあなたが総理大臣であり、あなたの内閣のかつての椎名外務大臣がどう答えておるか、ここで明らかにしたいと思うのです。それは与党鯨岡さんの質問に対して——四十一年六月一日です。衆議院の外務委員会鯨岡さんはこういう質問をしたのです。「アメリカ相手国である北ベトナム等から見れば、日本は直接の敵ではないけれども敵性国のような形になっている。それによって起こる危険というものはやっぱり日本にある。」こういう考え方は違うでしょうかという質問をしたのです。与党のこれは鯨岡さん。それに対して、あなたの内閣椎名外務大臣はこう答えておるのです。「ベトナム戦争がもう少し近いところで行なわれておるということになると、はっきりするわけであります。私は、危険がないとは言えないと思います。」「そして攻撃を受ける、あるいはその他の脅威を受けるというようなことはあり得ると思う。しかし」「いま非常に距離の遠ざかっておるベトナム戦争に関しては、きわめてそれは現実的ではない、」こういう答弁をされておるのであります。つまり距離の問題にされておるのです、危険であるかないか。そうすると、どういうことになるでありましょうか。いま近い将来に、このアジアの地域について何らかの軍事的な行動を余儀なくされる事態が起こり得るとすればそれは朝鮮半島であるということは、もう識者のひとしく考えておるところであります。そうすると、朝鮮というところにベトナムと同じような事態が起こって、沖繩基地として米軍戦闘作戦行動に出た場合は、一体どうなります。椎名さんの論法からいくと、ベトナムは遠かったけれども、じゃあ近かったら、朝鮮だったら一体どうなるか、こういう問題が絶えずこの安保条約の陰につきまとっておるというこの事実を、私はわが党の成田委員長は指摘したかったのであろうと思います。一体この点について総理はどのようにお考えでありましょうか。
  17. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話、るるお述べになりましたが、要は、日本安全保障の形態はどういう形が望ましいのか、そういうところにきているようであります。この点では、遺憾ながら楢崎君の所属する社会党と私どもの主張は基本的に違っております。私どもは、憲法九条のもとにおいて自衛隊を持っておる。自衛隊で不十分なところを日米安全保障条約によって補っている。これがわが国安全保障確保方法であります、手段であります。しかし、楢崎君のほうは、申すまでもなく非武装中立論、ここに基本的なものの考え方があります。したがって、たとえばいまの椎名君の考えにいたしましても、私どもは、これはただいまアメリカ沖繩施政権を持っておる、沖繩施政権を持っておるアメリカ沖繩基地がどういうように使われるかということは、これはもうアメリカ考え方だろうと思いますが、しかし日本とすれば、この近い沖繩日本に無関係で使われることは困ります。その場合に、一番日本の私ども考えて望ましい形というか、これは侵略的な基地であっては困るのです。これはもう侵略的な基地でなければ、私どももある程度しんぼうせざるを得ない。ベトナム戦争はどうして起きたのか、、それを考えて、そうしてそれに協力している、そういう意味沖繩基地を使っておる米軍、これはいわゆる侵略的基地として沖繩は使ったとは思いません。私は、そういう意味で、これは私どもががまんのできることじゃないだろうかと思います。まして、ただいま朝鮮半島についての問題を提起されておりますが、ここにそういう事態が起これば、これはたいへんなことだ、かように私ども思っております。われわれは身近にそういう紛争を感ぜざるを得ない。そういう場合にわれわれはどういう処置をとるか、われわれのとるべき方法はもうしゃんときまっておるわけなんです。それこそ憲法第九条、その命ずるところだ。また米軍自身も、これは国連憲章のもとにおいて行動するだけだ、かように私は考えております。それより以上にこれが侵略的に米軍行動するとは思わない。  そこで、問題は、沖繩日本に返った場合、施政権が返還された場合、そのときには沖繩本土——これは本土と同様というか、本土の一部であります。したがって、憲法はこの地域に適用されること、自衛隊法も適用されること、もちろんであります。だから、日本に関する限りその心配は毛頭ないのであります。本土と差別的に使われるということはございません。  いま問題になっている点、いわゆる沖繩軍基地米軍に対しまして、米軍自身日本憲法はそのまま適用されないことは御承知のとおりだから、そのときにわれわれの考え方と違う方向にそれが使われるかどうかという問題だと思う。おそらく本土に返ったときに、この沖繩基地のあり方というものが、これはまあたびたびどうなんだといって聞かれておりますが、私はまだ……(楢崎委員答弁してください」と呼ぶ)一緒に申さないとちょっと話が続かないから、これは一応聞いてください。私はまだその基地態様については申しておりません。これは白紙であります。したがいまして、いまの状態のもとにおいて、米軍日本本土内における基地と同様にこの基地を使って侵略的行動をする場合の事前協議は、私どもがこれはノーと言うだろう、かように思いますし、これは国連憲章のもとにおける行動だという場合だと、ここにはやはり相談の余地はあるかもわからない、かように私は思います。そういうように問題を分けてお考えいただいて  あるいはどうも先走った話をしておしかりを受けたようですが、私はさように考えております。
  18. 楢崎弥之助

    楢崎委員 時間が少ないのでございますから、質問にぴしゃり答えていただきたいと思います。  そうすると、いまの総理のお答えからいいますと、いまのような沖繩基地状態がそのままの形で日本に返ってくれば憲法上問題があるというふうに聞こえましたが、そう考えてよろしゅうございますね。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いま、沖繩が返ってくる、そのときには沖繩には必ず日本憲法施行される、かように実は申したのです。ちょっとお尋ねが食い違ったかな。
  20. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまのような米軍基地使用状態なり基地態様がいまのままで日本に返ってくるということになれば、もちろんそれは施政権が返りますから、憲法下に入ることは当然のことだから、聞かなくてもわかっております、そんなことは。それがいまのような状態のままで返ってくる際には、仮定の問題ですが、憲法上の問題がありますかと聞いている。——だめです。最高の方針ですから、あなた、一法制局長官が答える問題じゃない。最高の方針ですよ、これは。だめです。だめですよ。総理のお考え、最高指導者、最高の問題じゃないですか、これは。そのくらいの問題は、あなたお答えできないでどうしますか。最高の問題ですよ、これは。一番ポイントです、これは。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いつも、最高の問題ではありますが、憲法の問題は法制局長官に答えさせたのが前例でございます。どうかそのままお聞き取りを願います。
  22. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 簡単に申し上げます。  憲法との関係で、沖繩にある基地がそのままに戻ったら憲法上に違反するかどうかというお尋ねだと思いますが、施政権が返還されるということは、申すまでもなくわが憲法が適用になることでありますし、わが憲法の支配のもとに立つわけでありますから、憲法の支配のもとに立つ運営がなされれば、むろん憲法に違反するということはないわけです。その中身が一体どうなるかということ次第でありまして、ただいまのお尋ねだけできわめて断定的にどうということは言えないと思います。要するに、施政権が返還されたら憲法が適用になる、適用になれば憲法の支配を受けるから、それに応じた措置がなされるであろう。また、それに応じた措置がなされないということをいま私が予想して申し上げるわけではございませんが、事柄はそういうことになると思います。
  23. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私の聞いておるのは、いまのような状態アメリカ軍がかってに基地を自由使用する、核がある、そういう状態がそのまま行なわれるということはちゃんと言っておるのですから、憲法前文なり九条と関連をして問題ありませんかということを聞いておるのです。
  24. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 アメリカ合衆国の軍隊、これは日本国の本土におきましては米軍として駐留いたしておりますが、その駐留自身、いわゆる戦力の保持を否認しました憲法九条に違反するかどうかという問題があったことは御承知のとおりだと思います。それは砂川判決で最高裁の判示がありましたが、日本が禁止している戦力というのは、日本国の管理支配のもとにある戦力をいうのだ、アメリカが持っておるものについては直接の適用はないという判示がございます。しこうして、沖繩基地が返還された場合におきまして、米軍の存在及び米軍の装備等に関してはいま申したとおりでございますし、また、それが侵略的作用に用いられればむろん問題の余地がございましょうが、それがさつき総理がおっしゃいましたように、国連憲章のもとで行動するというような場合における行動については、憲法上違反というような問題は直ちには生じてまいらないというふうに考えております。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから私は、総理の政治家としての御答弁がほしかったのです。あんな法律解釈、単なる条約の技術論を聞いているんじゃないのです。問題は、これが最大の政治問題であるから、私は、総理の政治的な観点から、冒頭私が申し上げましたような問題とからめて、総理はどのようにお考えであろうか、これを私は聞きたいし、国民の皆さんも全部それを聞きたいのだと思います。しかし、総理はその点について白紙のようであります。御答弁がないわけであります。もし総理に何かおつけ加えになることがあったら御答弁をお願いします。
  26. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたしますが、政治的な問題だからといって、憲法の解釈の外に出て政治的な行動はできません。これはもう私ども政治家はもちろん憲法のもとにちゃんと縛られておるのです。したがって、この憲法の解釈というのは非常なむずかしい問題であり、また慎重でなくちゃならない問題だ。これが政治的な立場で解釈を二、三にしてはいかぬのです。だから、高辻君に先ほど説明さしたのはそういう意味でございます。御了承いただきます。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの点は、私がなぜそういうことを言うかということは、後ほどの問題と関連しますから、そのときに申し上げます。  そこで、これまたわが党の成田委員長質問でございますが、一体、来年の六月二十二日以降現行安保はどういう取り扱いになるであろうか、自動延長なのか、固定延長——条約改正ですね、固定延長なのであろうか、この質問に対して総理は、まだきめておりません、しかし、諸般の事情を考えて最もよい方法をとるという御答弁がありました。それでお尋ねするわけですが、方針としては安保堅持という方針がある。その安保堅持という方針のもとに考えられる最もよい方法とは、自動延長と条約改定のほかに何かあるでしょうか。
  28. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の気づいているのはその二つです。
  29. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうだと思うんですね。それ以上ないわけであります。わが党のように条約はやめちまえということはないのですから、おたくの方針からいきますと、自動延長するか条約改正するか、二つに一つですね。しかし、それがまだきまっていない。なぜきまっていないのでしょうか。きめられないわけがあるのでしょうか。
  30. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 こういう問題はよほど早くからきめる必要はないのですね。そのときになってきめればいいのです。だから、これはもうあまり長いことはございませんから、いましばらく待っていただく。
  31. 楢崎弥之助

    楢崎委員 総理は、沖繩の場合はまだ数年ある、これもあとから取り上げますけれども、数年あるから、まだ急がなくていい。しかし、この条約の取り扱いは期限がはっきりしておるのです。来年の六月二十二日、一年しかありません。これをどうするか。これは国民の合意が必要であります。そのときになってきめればいいなんという性質のものじゃないのです。国民の合意をこれに求めるためには相当の期間が要る。もはや一年後の問題でありますから、いまからこういう考えであるが国民の皆さんどうでしょうかという時間的な余裕があってこそ、初めて私は国民的な合意が得られるのであろうと思います。それをいまもって出されないということは、私は出されない理由があると思うのです。  外務大臣、沖繩の返還時の基地態様の問題と、これいかんによっては安保条約といろいろ関連が出てくると思いますか、出てこないと思いますか。
  32. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 日米安保条約安保体制というものは堅持いたします。この方針が決定しておるのでありますから、どういう方法でこれを延ばすかということは、むしろ私はテクニカルな問題じゃないかと考えております。
  33. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どうぞ質問に対してはっきり答えてください。  沖繩返還時の基地態様いかんによれば、現行安保条約の改定の問題、変更の問題が起こるかもしれないと思うが、それはどうですかと聞いておるのです。何を言っておるのですか。
  34. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 沖繩の返還の問題は、沖繩早期返還ということで処理をいたしたいと思っております。
  35. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だめですよ、こういう答弁ばかりしておったのじゃ。私は、沖繩の返還時の基地態様いかんによると、あるいは安保条約の六条の事前協議条項なり交換公文の問題なり関係があるから、態様いかんによってはその改定の問題が起こるかもしれないじゃないか、それをどう思うかと聞いておるのです。総理のほうがわかっておられるようですから、総理お尋ねします。
  36. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 事柄は、ぼくの答弁から起きた問題から派生したようです。私は、いま外務大臣が答えたように、安保条約体制、これは堅持すると、かように申しております。これはもうすでに御承知のとおりだと思います。それを一体どういう形にするか、まだそれをきめてない。そうすると、いまきめてなければ、必ずこの沖繩の問題について何か考えがあって、そこでそういうことを考えるのか、こういうお尋ねでございます。それについては、いまもお答えしたように、早期返還考えている、こういうことを申しておる。そこで、どうも楢崎君の質問にぴったり合った答弁をしてないんだ、こういうことを言われるわけなんです。  私がまず第一に、来年の六月まで待たないで——いまの状態を続けておるのは一体どういうわけか。このほうにはこのほうの理由があり、沖繩の問題は沖繩の問題として、これは関係があるのだ、かように私も考えておりませんし、外務大臣も実は考えておりません。ただ、沖繩の問題で、皆さん方のように安保を廃棄しろという、これは国民の一部にその考え方のあるのはそのとおりですから、私はやっぱり慎重にならざるを得ないのです。これは合意で、国民的なコンセンサスのもとに安保の堅持の体制ができれば、こんな望ましいことはないのです。しかし、おそらく私の説得でも社会党の皆さんお聞きにならないだろうと思う。やっぱり廃棄論もなかなか強いのだろうと思う。しかし、いまのところ、そういうことを考えながらも、問題を起こして、そうして国内にいろいろな紛争を起こすこともいかがかと思う。安保体制自身を堅持するということは日本の基本的方針だ、これによってわが国の安全は確保されている、われわれはかように考えているから、できるだけ多数の方がそういうのに賛成してくだされば、こんな望ましいことはないのです。だから、非常に早く……(「また総理すりかえている」と呼ぶ者あり)そうすりかえたわけではないのです。よく聞いてください。そういう意味で、これはやっぱりできるだけ早い目にきめることはないんだ、十分見きわめた上でこの問題をきめたいというのが私の考え方です。  そうして今度、日米関係から見て、沖繩の返還、そのときに特別な地位を沖繩についても与える、こういう意味でこれが安保改正にまで影響をもたらすような事態が起こるんじゃないのか、だからまだきまらぬきまらぬというのだろう、こういうことなんですが、先ほど来言っているように、基地態様については私はまだ白紙でございます。これが安保体制、条約体制を変えなければならないような、そういう結論が出ているわけではございません。これももうすでにたびたび本会議でも説明したとおりであります。そこで、皆さん方からいい案があれば幾らでも聞く。また、こういう会議を尽くしても、それぞれの立場は違っても、沖繩の県民並びに日本国民が満足のいくような最も適当な方法を見出そうということで、これに私はいま努力をしている最中でございます。だから、いまのように無理やりにこれを結びつけてお考えにならないで、私どもの申しておるのを率直にお聞き取りいただきたい。別に問題をすりかえたわけでもございません。私は率直にお答えしたつもりです。
  37. 楢崎弥之助

    楢崎委員 委員長から注意をしていただきたいのです。私が質問していることに答えられればいいのであって、それと違うような答弁を長々とされまして、どうも私の質問時間を故意に戦術的に短くしようというような、そういうにおいがしてしようがないのです。  私はずばり答えていただきたい。私が聞いておるのは、私の考えを言っておるのではないのですよ。おたくの考えを、総理考えをお聞きしておるのですよ。返還時の基地態様いかんによっては、六条問題との関連が出てくるんではありませんかと聞いておるのですから、そういうこともあるかもしれないというお答えであればそれでいいのです。それだけでいいのです。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の先輩吉田さんは、そういう場合に、仮定の質問には答えられぬ、かように申しました。
  39. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、総理沖繩の返還問題についてはあなたは白紙と言う。じゃ何も質問できぬということじゃないですか、われわれは。白紙であるならば、こういう場合はどうでしょうか、こういう場合はどうでしょうかと言わざるを得ぬのですよ。その質問の核になるものがあなたお持ちでないから、どうしてもそうならざるを得ぬのです。こういうふうな質問形態になるのは、あなたが白紙であるからなんですよ。白紙とおっしゃるから、腹のうちは知りませんが、だからこういうことにならざるを得ぬのですよ。だから、その点はお許しをいただきたいと思います。仮定の問題は答えられないなんていうことじゃ困ると思うのです。こういう場合はどうでしょうかという質問をしなければ私はやっぱりいけないと思う。  それで、私は具体的に聞いてまいります。  愛知大臣にお伺いしますが、昨年のちょうどいまごろであったと思うのですけれども安保関係の各新聞社の座談会に各党呼ばれました。与党からは愛知さん、それから民社党からは春日書記長、社会党からは私が出ました。そのときにあなたは、この安保の形態については、大体大勢としては自動延長方式であるという考え方を出されました。しかし、いま外務大臣ですから、そのときと立場は別でしょうが。それからまた、昨年七月の参議院選挙のときに、与党安保調査会の船田会長がやはり自動延長の考えを出されました。このことについてはどのように外務大臣はお考えでありましょうか。
  40. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 昨年来と申しますか、私は先ほど申しましたように、安保体制というものは、どうしても来年六月以降におきましても堅持しなければならないという意見をかたく持っておりますし、これは現在ますますかたいわけでございます。  そこで、私は、自動延長ということばもいかがかと思うのでありますが、一つの考え方は、いわば自動継続というほうが正確かと思いますが、これも一つの大きな考え方といいますか、多くの方々が支持されている考え方である。そういう多くの方々の考え方というものが、われわれの自由民主党のいわゆる船田調査会においても大多数の意見がそうであった。これはいわゆる船田調査会長の試案として世にも出ているとおりでございます。これはもう客観的事実でございます。それに対して私がどう考えるかと申しますのは、先ほど来申しておりますように、今度は責任のある立場に立って考えれば、まだ結論を出すのは早いのではないか、こういうふうに私は現在考えております。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで、取り扱いはもう二つに限られておるのですから、どちらかですから、自動延長の場合の問題点——自動継続でけっこうです。自動継続の場合の問題点について、若干お尋ねをしておきたいと思うのです。  そこで、自動継続というのは、申すまでもなく、現行安保条約十条によって、来年の六月二十三日以降は、双方いずれか廃棄の通告をすれば、一年の経過措置を経てこの効力を失うという、こういうものです。ところが、六〇年の現行安保改定のときの審議で、同じく十条の十年間の期間固定の問題でいろいろと質疑が戦わされました。そのときに、十年固定の期間を置く理由について、当時の岸総理も藤山外務大臣もこういう答弁をなさっておるのです。ちっょと読んでみましょう。「かりに一年ごとに更改され、廃棄されるというものでは、ほんとうの国の安定的な防衛を考えることはできません。だから十年というものを考えたんです。」あるいはまた「ある一定の安定期間が必要であり、一年で破棄し得るような条約を作ることは適当とは考えていない、」こういう考えであったわけですね。  そうすると、自動継続というのは、この考えからいくと、たいへん不安定な状態になる。ところが、一方において、与党のほうは、あるいは佐藤内閣としては、安保の長期堅持と申しますか、そういう方針が一方にある。そういう方針が一方にある場合に、この不安定とあなた方がおっしゃっている自動継続の方法をもしとるとするならば、その辺の関係は私は矛盾すると思うのだけれども、その辺の関係は一体どのように見ていいんでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  42. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この問題につきましては、内外のいろいろの情勢の流動ということもございますし、十年前に固定するのがよいという説明がされておりますが、それもその当時の状況においてはそれなりの十分の理由もあったと思います。これはいろいろの情勢を勘案いたしまして、今後いかにするかということを最終的にきめたい、その時期はまだきめておらない、こう申し上げるのが一番正確な私どもの気持ちだと思います。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どうでしょうか、私が聞いておることのお答えになっておるでしょうかね。長期堅持という方針が一方にあって、これは自動継続をとる場合の話です。そして不安定なこの自動継続方式をとる、その間の関連は一体どのようにお考えでしょうかと聞いておるのですよ。私は矛盾すると思う。  そこで、あなたのお考えをいまのような答弁ばかり聞いておってもしようがありませんから、結局私のほうからもう少し詰めて質問してみたいと思います。  いままでは安保条約を十年間固定した、それによって国の繁栄がもたらされた——総理の誓えです。そのことと一緒にわが自由民主党も安泰であった、こういうことでありましょう。言うなれば、佐藤政権も含めて、歴代の保守政権は安保によって守られてきたという形になる。しかし、もしこれが自動継続ということになれば、今度は政権が安保を維持しなければならない形になりますね。そうすると、これは一方に自動延長で長期堅持の方針があるならば、その方針を守るためには、政権を長期に維持しなくては安保条約は守られないことになる。よほど自信が政権維持についてなくてはならないということになるのです。これから私は以下質問を続けますけれども、もしそうでなかったら、来年の六月二十二日の段階では、いろいろと問題がまだあるから、そこで改定をして固定的なものにせずに、流動的な状態のままにしておいて、しかるべき条件なり問題が出てきたときに解決する、言うなれば自動延長方式というのは、来年の段階では暫定的な措置である、このように私は見ざるを得ないと思うのです。そこで、この問題は、佐藤内閣の長期政権構想を聞きたいところでありますが、また長々と時間をとられますと困りますから、先に進みます。  そこで、もし自動継続方式をとると仮定するならば、これは条約の改定が行なわれないわけでありますから、言うなれば不作為であります。条約を改定する場合は作為であります。作為の意思を明確にするときには、これは改定ですから国会の議を経なければならない。しかし、不作為といえども、それは行為であります。したがって、不作為の意思というものも、これは条約の形式論から考えても、単に政府の、内閣の行政的な一方的な行為でそれができるものであるかどうか、条約そのものではなくても、条約的な行為として、自動継続の意思表明についても国民の合意が必要であるし、その形としての国会の議決を要する、このように私は思うわけでありますが、いかがでありましよう。
  44. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、自動継続ということをきわめているわけではございませんから、自動継続ということになった場合というような仮定につきましては、いささかお答えをするのも当惑するわけでございますけれども、かりに自動継続ということになりました場合は、この条約ににつきましては、自動継続が可能であることを含めて、条約につきましては、国会で批准承認を得ているわけでございますから、それを前提にして手段、方法考えればいいのではないか、かように考えております。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは議論のあるところですが、先に進みます。  そこで、私のほうの考えからいえば、形式論、条約論としても、国会の議決を経る必要がある、つまり国民の合意を求める必要がある、国民は選択権がある、私はこう思います。そして、また同時に実体論としても——政治論でもけっこうですが、実体論としても、国民の合意を来年の六月二十二日の段階で求める必要がある。その理由を以下質問を通じて明らかにしたいと思います。ということは、現在の安保の機能、性格は、かつて六〇年の段階国民に信を問われた、国民の合意を求められたときの内容と完全に性格、機能が変革をされておる。それを私は、以下明らかにしてみたいと思うわけであります。  そこで、まず冒頭、いろんな問題で関係をしますから総理にお伺いをしておきますが、非核原則、昨年も私はお伺いしましたが、もう一ぺんこれは明確にしたいと思います。つくらず、持ち込まず、持たず。これは持たず、つくらず、この二つは憲法上も問題があるから、そういう原則になるのかどうか、単なる政策なのかどうか、まずこれをお伺いします。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 持たず、つくらず、それはただいま言われるように、憲法上問題はある。
  47. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それははっきりできたわけです。持たず、つくらず、これは憲法上の問題である。  そうすると、持ち込まずは、これはどうなんでありましょうか。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政策上の問題です。国民感情に基づいた政策上の問題です。
  49. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、法技術的に考えれば、そうであろうと思うのですね。だから三原則のうち、つくらず、持たずは憲法上の原則である、持ち込まずは憲法上の問題ではないが、佐藤内閣としては政策的にこれを打ち出しておる、そういうことであるということが、いまはっきりしたわけであります。異論がありますか。
  50. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 つくらず、持たず、これは憲法上問題がある、こういうお尋ねでありましたから、問題があると、かように答えた。これは問題があるのですよ、確かに。その次の問題は政策上の問題だと、これは国民感情ございます。だから憲法違反とはっきりきめたわけじゃございませんよ。問題があるというお尋ねだから、問題があると、こういうふうに答えたのであります。
  51. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その、違反ではないが問題——私が言っておるのは、憲法に触れるという観点からそういうことばを使っておるのです。それをそういうふうにわざわざ出てきて訂正をされるという意味はどういうことなんですか、それは。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あとで速記を見たらわかると思いますが、楢崎君の一番最初のお尋ねが、私がただいま申したとおり、憲法上問題があるかと言うから、憲法上問題がありますと、かように私が答えた。その、いまの憲法違反かどうかという、そういう点については、法制局長官からもう一度答えさせます。
  53. 楢崎弥之助

    楢崎委員 委員長、よろしゅうございます。時間がないから。長官の三百代言的なお考えを聞いても何にもなりません。  それで、現在の安保の機能が完全に変わっておる。それは実体的にそうなんでありますが、これを名実ともに変えるかどうかのキーポイントになるのが、実は沖繩の返還問題であろう、このように私は考えるわけであります。そこで、私は沖繩の問題を中心にして、現行安保がいかに変革されておるかということを立証してみたいと思うわけであります。  沖繩の重要性の認織を盛んに総理は言われるわけであります。そこで、その沖繩の重要性とは一体どういうことかということをもう少し私は明確にしてみたいと思うのです。沖繩基地は、日本及びアジアの安全にとって非常に重要な役割りを果たしておる。そうすると、日本の安全及びアジアの安全について果たしておる役割りを考えた場合に、本土における米軍基地沖繩の米軍基地とは、安全に果たす役割りは違うのでしょうか。どういう差があるのでしょうか。これは軍事的な専門家である防衛大臣にお尋ねをしたいと思います。
  54. 有田喜一

    ○有田国務大臣 本土におきまするところの米軍基地は、もちろん日本の安全のために大事なものであります。また、沖繩における軍事基地も、日本における安全の上において大事なものである。ただ、距離的の関係もあります。したがいまして、直接の場合もありますが、また、支援部隊としての問題もあります。そういうのであって、本質的には相違はありません。
  55. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何を言われているのか、さっぱりわからぬ。本土の米軍基地沖繩の米軍基地とを比べてみた際に、日本及びアジアの安全に果たしておる役割りに甲乙がありますかと聞いておるのです。いまの答弁だと、本質的にはありませんと言う。それでよろしゅうございますね。いいですか、それで。本質的に違いがないと専門家である防衛大臣はおっしゃいました。そうしますと、沖繩基地態様本土のほうの米軍基地態様は本質的に同じですか。そうなるではありませんか。
  56. 有田喜一

    ○有田国務大臣 その安全、防衛という点には本質的には相違はありません。しかし、中身は、これは相当違う面があるということは当然であります。
  57. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どうも、防衛大臣のお答えとしてはたいへんたよりないのであります。  お伺いしますが、一昨年の佐藤・ジョンソン共同声明の中にあります、沖繩基地日本及びアジアのその他の自由諸国にとって非常に重要な役割りを果たしておる、そう共同声明の中にうたってあるわけですが、その他の自由諸国とは具体的にどこでしょうか。−総理が結んでこられたのですから、御認識があってああいうことをつくられたのだと思いますので、総理から御答弁をいただきたいと思います。
  58. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、御承知のように、日本の安全に寄与すること、これは当然です。また、日本の安全確保のためには、日本周辺、極東の地域等について、これがやっぱり安全であることが必要だ、そういう点に寄与するものだ、この点は、さようにお考えいただいていいのじゃないかと思っております。
  59. 楢崎弥之助

    楢崎委員 外務大臣はどう思われますか。
  60. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その他の自由諸国とは何であるかというお尋ねでございますが、これは特定な国々を予想しているわけではないと私は思います。ただいま総理の御答弁のとおりであると思います。
  61. 楢崎弥之助

    楢崎委員 愛知大臣の前はどなたが大臣でございましたかしら。(「三木だ」と呼ぶ者あり)三木外務大臣ですね。三木大臣からあなたは事務引き継ぎをされたのでしょう。三木外務大臣のときに——これは佐藤総理が共同声明を結ばれて帰ってこられた一昨年暮れの臨時国会であります。そこで三木さんはどう答えておるかというと、これは三木さん自身は答えておりません。東郷北米局長答弁をかわりにさせておられるわけであります。これはわが党の川崎委員質問であります。同じ質問をやったわけです。そうすると東郷北米局長は具体的におっしゃっているのですね。「アメリカといろいろな条約関係にございます韓国、台湾、フィリピン、それから——特にそういう条約関係にございます極東の自由諸国を念頭に置いております。」明確にこう答弁されておる。どうですか。
  62. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず最初の点ですが、実は佐藤総理大臣が臨時外務大臣を兼任しておられましたので、私は佐藤総理から引き継ぎを受けておるわけでございます。したがいまして、私はそういう点から申しましても、佐藤総理大臣の御答弁されたことをそのままと先ほど申し上げたわけでございます。(笑声)
  63. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そういう答弁じゃ困りますよ。何でお笑いになるのですか、あなた。まじめな質問をしておるのに。大問題ですぞ。私は、だから、沖繩の重要性というのは、したがってまず沖繩自身の基地態様及びその使用の状態、これが一つであろうと思います。これと同じぐらいのウエートを持って、同じくアジアにおけるアメリカを中心とする軍事同盟条約を結んでおるそういう関係の中に沖繩がある。私はその二つが突き詰めていけば沖繩基地の重要性だ、こういうことになると思うのですね、あの共同声明からいきますと。そこで、まずそれを明確にいたしておきたいと思います。  そこで、基地態様及び自由使用の問題ですが、これはもう再三質問があったわけですが、なかなか総理は明確なお答えがないわけであります。だから私どもは、総理がいろいろと答弁をされましたその答弁をつなぎ合わせて、そして論理的に帰結するところはこうではなかろうか、こう思わざるを得ないのです。こう思うのは、思わしめるものは、総理の態度がそうだからです。したがって、いままでのところを要約してみますと、あなたは、先ほども言いましたように、このごろはもう安保条約の目的というものは、アメリカ核抑止力であるということから、だんだん沖繩の抑止力に重点を置いてこられたような気がしてしかたがないわけであります。そこで私は、その沖繩基地の重要性の認識についてだんだんあなたが変わってこられておるわけですが、四十年の一月の佐藤・ジョンソン共同声明では、沖繩の重要性は極東の安全に非常に重要な影響を持っておるという言い方であります。そのときには日本というものはなかったのです。   〔委員長退席、塚原委員長代理着席〕 ところが、四十二年の十一月の共同声明では新しく日本が加えられて、日本及びその他の自由諸国と、こうなってまいりました。そしてこの国会においてはまず日本——まず日本の安全に非常に寄与しておる、そして同時にと、こういう言い方に変わってまいったのです。これは佐藤総理沖繩の返還の方式に非常に関係する変遷であろう、このように私は思うわけです。まずそれを明確にしておきたいと思うのです。  そこで私は、いままでの佐藤総理の言ってこられたいろいろな答弁を要約して、私はここに書いておりますが、しかし時間がありませんから、もうこれは中身を読みません。論理的に帰結するところ、私はこういうことになるのじゃなかろうかと思うのですね。  一つは返還の時期と方法、これをあなたは分離して考えておられるんではなかろうか。つまりめどだけ先につけて、基地態様等については、いずれほんとうに返ってくるまで時間があるから、ゆっくり考えればいいんではないか、こういう御答弁があったようであります。そこで私は、その時期と方法との関係について、一体どういう関係にあると総理はお考えになっておるのか。たとえば早期返還を願うとするならば、基地態様本土プラスの何ほどかのアルファだ、もし本土並みを願えば早期返還というものが影響を受ける、その時期と方法との関係はそういう関係にあるんだ、こういうふうに思っておっていいわけですか。
  64. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本会議の席上で、この返還について私は、大体他の意見もあるが、大別すると二つの意見があるだろうということを答えました。それはただいま御意見として述べられたとおりであります。   〔塚原委員長代理退席、委員長着席〕 これも本会議の私の答弁をよくお聞き取りいただいていると思いますから、その点では間違いございません。  ただ私、この前につけ加えておきたいのは、だんだん沖繩に対する見方が変わってきたじゃないか、確かに沖繩というものがアメリカ施政権下にだけまかせておけない状況にあることが私どもにはよくわかってきておる。だから私は、沖繩というものはほんとうに日本の一部だ、またそこに住んでいる県民百万のためにもこういう状態でほうっておいてはいかぬ、かように考えているから、沖繩が果たしておる役割り、また沖繩の返還を急いでおることもこれは国民に訴えた、そのことは確かにございます。この点は四十年の共同声明と四十二年の共同声明、そこに区別のあることも御指摘のとおりであります。それほど沖繩というもの、沖繩の住民、これに対して関心を私ども持っておることをはっきり伝えたい。これは同時に、県民ばかりではありません、国内の一億の同胞に対しても同様であります。  それからもう一つは、いまお話しになりましたように、アメリカ施政権下にある沖繩、そこにアメリカ軍がいる、そうしてこのものはアメリカが自由に使っておる、これはもう施政権を向こうが持っておるのですからしかたがない。ただそれを私どもは、県民があそこに百万いるという立場から、それについていろいろ注文をつけておる。これは最近のB52の立ちのきについて、あるいは労働布令についてわれわれのとった態度でおわかりだと思います。しかし私どもは、日本の防衛は、しばしば申しましたように、沖繩の米軍基地もさることながら、これはアメリカの持つ全体の軍事力、この一部が沖繩の軍事力だ、かように理解しておりますから、その点は誤解のないように願っておきたいと思います。
  65. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで私は、ここ二、三日来の総理答弁を聞いておりますと、どうも、まずこの秋アメリカに行って、時期と方法を分離して、まず時期だけを先取りしてくる、そして基地態様はゆっくり考えりゃいいじゃないかというようなお考えではまさかなかろうと思うのです。そんなに私は甘いもんではなかろうと思うのです。それではやはりこの秋までには、行かれるまでには基地態様についてきちんとしたものを持っていく、そう理解しておってよろしゅうございますか。
  66. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま言われますように、本土返還の時期のめどをつけ、そうして基地態様は二の次にするとか、それほど甘いものではないと言われるが、そのとおりです。確かに甘いものではない。しかし、この出し方はたいへんむずかしい問題だと思う。私はできるだけ、固まればたいへんけっこうですが、訪米の際までにはもっと話が煮詰まらないと、この本土の返還のめどの時期もつかない、かように実は思っております。だから、いまきちんとしたものができるかと、こう言われますが、きちんとしたものになるかならないか、私もなればけっこうだと思いますけれども、それまでにはもっと話が煮詰まらないとこれはできない、かように思っております。外交の問題ですから、相手方のあることだから、やはりフリーハンドは持って、そしてこの交渉に当たりたい、これが私の考え方であります。そういう意味で、ときにずいぶん話をはぐらかすんじゃないかとか、ごまかしてはいないかとか、こういっておしかりを受けますが、やはり外交の一つのフリーハンドを持つということ、これは必要なことですから、野党の方もその点はお許しを得たいと思います。
  67. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは私は、ずばり聞きます。いやみを言うつもりはありません。しかし、与党の中にもそういう考え方が多いようでありますが、私は現在における国民の大多数の合意はやはり本土並みだ、憲法のもとに沖繩を帰ってこらせる、帰ってきてもらう、これがまあ私は大体の、大かたの合意の線ではなかろうかと思うのです。もし本土並みであってほしいという国民の合意が大勢であるとすれば、こういう国民の合意というものは、本土並みという合意というものは、いま佐藤総理の脳中に去来しておるところの考え方と違うのでありましょうか。こういう本土並みという認識をもし国民が持つとするならば、それは沖繩基地の重要性の認識が足らない、総理のほうから見ればこういうことになるのでありましょうか。
  68. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの感じ、これは私は国民考え方が間違っておるとか、間違ってないとか、かように考えるつもりはございません。私もまた、国民の支持なくして外交ができるものでもないこともよく知っております。顧みて他を言うようですが、その点だけははっきりしておる、かように御了承いただきます。  それでは私がどう見ておるか、ただいまは、いま言われるような点が非常に強く出ておる、かように思っておりますけれども、これが全部だ、かようにまだ結論を出したというわけじゃありません。
  69. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何となく総理自身もたよりないような感じを受けるのですが、それ以上はまた貝の中にとじこもられると思うのです。  そこで私は、この問題について一点だけお伺いしておきますが、昨年も同じ指摘をしたのです。ポラリスの問題について指摘をしたわけですが、メースBは七二年にもうなくなる。戦術核といわれておるハーキュリーズ、これは核弾頭は持ち込まないと言ってしまえばそれでおしまいです。B52は必要なとき飛んでくればそれでいい。そうするとここに残るのは、私はやはりこのポラリスではなかろうか、こういう気がするのです。それで、このことはマクナマラ長官が六五年に言明しておるところでも明らかでありますが、沖繩メースBを置いておるのは、ポラリスがやがてかわるまでの間の措置だということをはっきり言っておるわけです。そういう点から考えると、やはりポラリスというものは非常に取り扱い上問題になろうと思うのです。  そこで、昨年私は、領海の無害航行についてポラリスは可能かと質問したわけです。これでいろいろやり取りがあって、最終的な統一見解は、そういう場合には事前に許可を求めてほしい、こういうことになったように聞いております。それで、では緊急避難あるいは緊急事態のときに、ポラリスが寄港することは核の持ち込みにはなるのでしょうか、ならぬのでしょうか、愛知外務大臣にお伺いします。
  70. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 昨年のその応答等につきましては、必要に応じて政府委員から答弁させたいと思いますが、核を搭載しておるということでありますならば、事前協議の対象に私はなると思います。
  71. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私がお伺いしておるのは——これは、先にはっきりしておきますが、ポラリスがもし核を積んでおればなんていうようなことを、日本の外務大臣が国会の席上でおっしゃられると笑われますよ。核を積んでおらないポラリス潜水艦というものがありますか。だから、そういうことは言わないでほしいと思います。  そこで、私がお伺いしておるのは、ポラリス潜水艦がもし緊急避難なり緊急事態の場合に日本に寄港したときには、まず聞きましょう、許可されますか。
  72. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その核を搭載すればというのは、いかなる場合についても私は申したのであります。それから、その状況等にもいろいろよるのでありましょうけれども、これもまた仮定の事実ですけれども、核を積んだものが入ってまいります場合には事前協議の対象になります。
  73. 楢崎弥之助

    楢崎委員 事前協議の対象になるかと私は聞いていないのですよ。許可されますかと言っておるのです。
  74. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 事前協議といいますのは、その必要性が認められました場合には、イエスということは当然あり得る、かように考えます。
  75. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、事態ははっきりなったわけです。もしポラリスが緊急避難なり緊急事態の場合、寄港を申し込んできたときには、これは非核原則とは関係なく許可できる、こういうことになるわけですね。つまり、そういう場合は核の持ち込みとは認めない、そういうことですね。
  76. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはしばしば申し上げますように、そういう場合があり得るかどうかということも仮定の事実ですけれども、観念的に申しますれば、事前協議の対象になるし、またその必要性というものがやむを得ざるものであると考えられます場合には、私はイエスということもあり得る、かように考えるわけです。
  77. 楢崎弥之助

    楢崎委員 イエスという場合があり得るということは、三原則の、持ち込まないというこの原則とは関係なしにあり得るということですから、結局それを許可した場合には、それは核の持ち込みとは思わない、こういうふうになるわけでしょう。
  78. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 核の持ち込みになるかならないかという観点から判断いたしますれば、先ほど来申しておりますように、非核原則というのは現内閣としての基本的な政策なんであります。その基本的な政策のたてまえからいって、これはやむを得ないという場合が、私は緊急避難等の場合にはあり得るのではなかろうかと、仮定の場合でございますが、お答えをしたわけであります。もちろんノーということも当然あり得る、かように考えます。
  79. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ノーという場合もあるし、イエスという場合もある。いいのですよ、それで。ということは、イエスという場合もあるということを私は問題にしているのですから。その場合には核の持ち込みにはならない、こういう見解と承ってよろしゅうございますね。それを聞いておるのです。それを言いさえすればいいのですよ。
  80. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 非核原則というのは、基本的に最も大切な政策でございますから、それを守りたいという気持ちから判断いたしまして、その場合がどうしても緊急やむを得ないということであるならば、これはイエスということもあり得る、私はそう申し上げております。
  81. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が申し上げたいのは、もし非核原則を厳密に考えれば、緊急避難あるいは緊急事態等が起こっても寄港していだだくわけにはいかないということをあらかじめはっきりしておかぬと、そういう事態が起こると思うのです。  そこで私は、さらにお伺いしたいのは、そういうイエスと言う場合もある、ノーと言う場合もあるということであれば、この核の持ち込みということは、ポラリスの寄港ということは、そのときの目的によって取り扱う、こういうことになるわけですね、ことばをかえていえば。
  82. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いままでの答弁でおわかりいただいているかと思うので、繰り返すことになりますけれども非核原則というものはあくまで大切に守っていかなければならない現内閣の基本方針である、これはもうおわかりいただいておると思いますが、その原則の上に立って、ですから仮定の場合なんですが、緊急避難と申しますか、やむを得ざる例外の例外の措置として考えられる場合ならば、これはその角度においてイエスと言うことがあり得る。私は、あくまで非核原則というものは守っていきたい。しかし、それにもかかわらず緊急避難ということからいって、仮定の場合としてこれは認めざるを得ないと思う場合には、事前協議のかかった場合にイエスと言うこともあり得る、これで十分おわかりいただけるかと思います。
  83. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はなぜこれを例として問題にするかというと、目的いかんによってはポラリスの寄港を認めるということになりやすいし、そうすると、たとえば補給や休養のときにちょっと寄る。こういう場合にもエスカレートして、それはたいしたことはないのだ、こうなる。さらにエスカレートすれば、一時寄港するのは、非核原則から照らしてこれは問題じゃないのだ。つまり、ある程度の配置とか配備とかいうような観念がない限りは、一時寄港くらいは認めるというふうにエスカレートする可能性があるから、私はそれを聞いておるのですよ。そこで私は、緊急避難あるいは緊急事態等の場合にはイエスと言うこともあり得るという御答弁ですから、そういう点で私は三原則の一つのいまは小さい抜け道がそこにあるような気がしてしかたがありません。これをまず指摘をいたしておきます。  そこで、私は先に進みますが、いわゆるもう一つの沖繩の重要性の、アジアの他の自由諸国との関係でございますが、この関係についても私は、佐藤総理はこの秋訪米されるときに基地態様と同様に態度を明確にしていかれる必要があろうと思う。ということは、沖繩は御承知のとおり米韓、米台、米比、ANZUS、SEATO、全部現在のところはその適用範囲、それぞれの関係国の防衛区域の中に含まれておりますね。それは間違いありませんね。
  84. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまお尋ねの点は、条約としてはANZUS、米比、米韓、米華、あるいはSEATO、いろいろの条約がございますことは御指摘のとおりでございます。そして政策の問題はともかくといたしまして、条約論的に申しますと、それぞれの条約の書き方がいろいろ違っておりますけれども日本及び沖繩が入る場合もございます。日本及び沖繩に駐留している米軍がこの適用を受けるという場合がございます。
  85. 楢崎弥之助

    楢崎委員 答弁をひとつ簡単にお願いしたいのです。  沖繩は全部適用範囲です。まずそれが一つ。そして米比とANZUSの場合にはアメリカの公船なり飛行機なり艦船が含まれるから、したがって、在日米軍もその適用範囲に入る、米比とANZUSについては。そういう答弁だと承っておきます。  そこで、もし沖繩施政権日本に返還されるということになれば、条約論的には沖繩は自動的にそれぞれの軍事同盟条約の適用範囲からはずれることになる。そう理解しておってよろしゅうございますね。
  86. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 条約論的にはそのとおりでございます。
  87. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで問題は、沖繩基地がそれらの自由諸国の安全にとっても重要であるという共同声明の内容から見ると、施政権が返還されたら自動的に沖繩は適用範囲からはずれるという、こういう状態になるということと、共同声明のそれらの自由諸国にとって重要な役割りを果たしておるということの関係は一体どうなるのか。自由諸国に与えておる重要なこの基地の影響力というものがなくなるわけですから、その穴埋めは一体どのようになるのか、問題はこれであります。そういう点については総理は一体どのようにお考えでしょう、共同声明の関係におきまして。
  88. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど私は条約論として申し上げたわけでございますけれども、いまのお尋ねの点は、これは米国とその条約を結んでいる相手国あるいは複数の国々、その間の問題でありまして、日本は、沖繩返還に関するところのわがほうの考え方といたしましては、わがほうの立場というものを考えます場合には、適用が沖繩からはずれるわけですから、はずれることを前提にして話し合いを進めたい、私はこう考えております。
  89. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ところが、たとえば一例をあげましょう。韓国のほうから見るならば、いまの沖繩基地態様というものはたよりにしておると思うんですね。共同声明からいくとそうなるんです。そうすると、たとえば、沖繩本土並みの基地になるというようなことについて、それらの関係国からクレームが出るということはないでしょうか。そのことは講和条約第三条の問題ですから、これは多数国条約でありますので。小笠原や奄美大島の場合は異議が出なかった。しかし、沖繩の問題については、多数国条約という関係から、たとえば、韓国からこの沖繩の返還問題についてそういうクレームが出ても、これは条約上はよろしいわけでございますね。考えられるわけですね。
  90. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先般来いろいろ御議論が出ておりますように、沖繩返還についてどういう内容で、どういうふうに考えていくかということについては、総理もしばしば言われるように白紙でございます。したがって、いまおあげになりましたような問題につきましても、ここに的確にまだお答えすることは私できませんが、ただ条約論とすれば先ほどから申し上げているとおり。それからクレーム云々も条約論的にいえばこれはアメリカに対する問題であって、わがほうに対する問題ではない、こういうふうに条約論としては、私さように考えてしかるべきではないかと思っております。
  91. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで、沖繩をいまたよりにしておると思われるそれらの国々の関係もあるから、例のニクソン白書、ニクソン論文に見られるASPACの軍事化という方向がそれにかわるものとして、ここにたいへん危惧される現実の日程にのぼってくるわけであります。そこで私は、本年夏に予定されております東京で行なわれるASPACの会議については、従来どおり経済あるいは文化の観点からその方針を押し通す、間違いないかどうか、それを確かめておきたいと思います。
  92. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 この点は前にも私、意見を申し上げたことがあるのでありますけれども、ASPACの、何と申しますか、憲章というものこそございませんけれども、ASPACの従来からずっとつくり上げられてきている考え方は、いかなる固いかなる国家群とも対立をするものではない、参加国相互間が平和的に相互の福利を増進するために協力し合おう、これがいわば憲章的な性格でございます。本年の六月に東京で総会を開かれるわけですが、先般……。
  93. 楢崎弥之助

    楢崎委員 簡単に……。
  94. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いや、大事なことですからちょっとお聞き願いたいのですが、先般常任理事会を東京ですでに開催いたしましたが、この点は、私としても、日本政府といたしましても、特に大事な点でございますから、さらに強調しておきましたし、参加国の中にもASPACの性格をただいまお話しのような変更をするというような動きは全然出ておりません。御安心をいただきたいと思います。
  95. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま、そのような方針で臨むということでありますが、これも私は、この秋訪米されて、ニクソン新大統領がはたしてそういう方向を支持するかどうか、これは非常に問題のあるところであろうと思いますから、こういう問題も総理はきちんとした考えを持って行かれる必要があろう、このように思うわけです。  以下、まだ私は、日本の安全とアジアの安全を一体論的に考えられるようになった現在の佐藤内閣の方針についてもたいへん危惧を感ずるわけですが、時間がありませんので、これらは別の機会に譲りたいと思います。  それで、以下今度は、三次防のFXの問題に入ってまいりたいと思います。こまかいこともありますが、時間がありませんから、主要なところだけいまからお伺いをしてまいりたいと思います。  そこで、いまこのFXの予算関係でありますが、私のほうから申し上げますから、合っておるかどうか、その返事だけ承ればよろしゅうございます。  まず、四十四年度のFXの予算関係。これはF4Eと決定したわけでありますが、三十四機分、四十四年度の歳出は九億六千三百万、国庫債務負担行為が六百八十二億五千九百万、これは四十五年以降の国庫債務負担行為のことであります。そして総生産の機数は、四十六年が二機、四十七年が八機、これはノックダウン方式であろうと思います。四十八年が二十四機、四十九年二十四機、五十年二十四機、五十一年十二機、五十二年十機、合計百四機。こういう予算並びに生産の計画であるようであります。  そこで、これからいきますと、まず四十四年度に出されております三十四機分というもの、これが予算で見ると合計六百九十二億二千二百万になります。そうすると、一機当たりのF4Eの金額は二十億三千六百万ほどになりますが、そういうことでよろしゅうございますか。一機分の値段だけでけっこうです。
  96. 有田喜一

    ○有田国務大臣 お答えします。  計画は御指摘のとおりであります。予算に来年度計上しておる分も先ほど来言われる三十四機でございますが、百四機を防衛庁としては計画しておるのですが、百四機全体を通じましたら、一機分が十九億何千万円、こういうことになるのですが、その初年度、来年度の三十四機分が多いのは、後年度にまたがるといいますか、たとえば予備エンジンとかその他そういう最初に特に出るものがあるわけです。だから、二十億をこえておりますけれども、百四機全体を通じますと十九億何がし、こういうことになる。
  97. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何がしとは幾らです。
  98. 有田喜一

    ○有田国務大臣 政府委員をして答弁いたさせます。
  99. 楢崎弥之助

    楢崎委員 よろしゅうございます。  そうしますと、いまの御答弁からまいりますと、三十四機から計算すれば、私が言ったように二十億三千六百万、百四機からこれをはじき出せば十九億八千万、いまの説明はこういうことであろうと思うのです。  そこで、当初防衛庁は、大蔵省に対して、四十四年度の予算要求は、歳出が十億二千四百三十四万四千円、国庫債務負担行為分六百九十六億五千五百九十三万三千円、合計約七百七億の要求をされた。しかし、これが結局大蔵省から削られて、いま言ったような六百九十二億になった。それはどういうところを削られたのですか。
  100. 海堀洋平

    海堀政府委員 お答え申し上げます。  防衛庁からの御要求につきまして、初めて生産するものでございますので、防衛庁側と各般の見地から検討いたしまして、たとえば国産すると非常に高くつくというふうなものにつきましては、多少輸入の割合を上げるとか、あるいは特殊な材料を使っているものについてはそのための工数が非常に多くなるというようなことで、輸入と比べて高くなるというふうなものを調整する等のことをいたしまして、予算に予定いたしました価格にいたしたわけでございます。
  101. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、実はその間の事情ももう少し詳しく検討したいところであります。しかし、時間がありませんから、そのままちょっと横に置きます。  そこで、一機当たり十九億八千万でもけっこうです。それの積算の基礎、そのうちRアンドD——研究開発費は幾ら見込まれておりますか。
  102. 蒲谷友芳

    ○蒲谷政府委員 いまの十六億九千万、それに初年度部品を加えました十九億八千万でございますが、その内訳を簡単に申しますと、機体関係で約十億七千万、エンジン関係、これは二基積みますけれども、二億四千六百万、搭載電子機器系統で約三億七千八百万、その合計が十六億九千三百万になります。  それからRアンドDのことにつきましては、大体この十六億九千三百万に対しまして一%弱でございますが、現在米側にもその発表をしていいかという打ち合わせをしておりますけれども、現在返事がまいっておりません。
  103. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そういうところもまだ明確になっていないわけですね。そして予算的にはどんどん進められておる。時間がありませんから、この予算の問題は、これまたちょっと横に置きます。これはあとでまたどうせ問題になります。  そこで、このFXの性能の問題、これは目的と任務に関係するわけですが、御承知のとおりF86F、これは現在七個中隊になっていると思います。そのうち四中隊は支援任務、つまりF86B、ボンビング、爆撃機になっているわけであります。これが大体四十八年度の終わりなり四十九年に消耗してしまうわけであります。そうすると一体F86Bが消耗した後の支援任務というものはどうお考えになっているか。つまり爆撃の任務であります。これはどう防衛庁としてはお考えになっているか。
  104. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 お答えいたします。  現在、86F部隊で対地支援の訓練をいたしております。この後継のお尋ねかと思いますけれども、まだ検討中で結論は得ておりません。将来、現在の三次防の次におそらく四次防というものが計画される段階がくると思いますけれども、その段階におきまして、現在の86Fがやっております機能を何らかの機種によって引き継がなければならない、その検討をしなければならない、こう思っております。
  105. 楢崎弥之助

    楢崎委員 かつて昭和四十二年の三月の予算委員会で、石橋委員の爆撃問題の質疑の中から、増田防衛庁長官は結論として、F86Fの改装機以外は今後支援爆撃機は保有しないという見解を出されておる。そうすると、この方針でいくと検討の余地はないことになるのですが、いかがですか。——新しく長官がおできになったのですし、これは最高の方針に関係しようと思うので、長官の御答弁をお願いしたい。事務の引き継ぎもやられておると思うので……。
  106. 有田喜一

    ○有田国務大臣 今度のF4Eは、あくまでも要撃機でございます。前のF86のときにどういういきさつがあったかは、私つまびらかに知りませんので、政府委員をして答弁いたさせます。
  107. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 増田前長官がお答えになりましたのは、外国に脅威を与えるような足の長い爆撃機は自衛隊には持たせない、こういう意図でおっしゃったように記憶いたしております。その論議の中で、86F程度のものが現在対地支援の任務をやっているというふうなことはおっしゃいました。将来も86F程度のもの、またそれに準ずるものは、おそらく頭の中で対地支援任務をやらそうというふうなことはお考えになっておられたではないかと思います。要するに持たないというふうにおっしゃったのは、外国に脅威を与えるような足の長い爆撃機、そういうものを持たないというふうにおっしゃったように記憶しております。
  108. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうじゃないですよ。その点もあとに残しておきます。この目的の任務の点については、いろいろ問題がありますけれども、時間の関係で先に進みます。  昨年の十二月二十二日でございましたか、内閣委員会において、このF4Eの事故率の問題が審議の爼上にのぼりました。  そこで、これは「アビエーション・ウイーク・アンド・スペース・テクノロジー」というのですか、非常に権威のあるアメリカの航空雑誌でありますが、この中にこういうことが書いてあるんですね。これを読んでみますと「一九六七米会計年度以来記録された双発戦闘機のほうが高い事故率を示す統計は、エンジンをふやすことによってどれだけの信頼性が得られるかという議論を再び提起している。米空軍のF5、F101及びF104の合計平均事故率は、十万時間に約一四・五となっている。これに対して単発戦闘機のF100、F105、F104、F102及びF106の事故率は一二・〇である。これらの事故率は、ベトナム戦争関係のないものである。」ということがここに書いてある。このアビエーションのほうは、昨年の九月三十日であります。  それから同じく「ニューズウイーク」の七月の一日の分にはこういうことが書いてあります。「F111戦闘爆撃機はその安全性について、いろいろ非難されているが、今度は、ベトナム戦争における主力戦闘機であるファントムF4が問題になっている。ペンタゴンは、米国のあらゆる航空機製造業者に対して、十二年にわたって生産されてきたマクドネルダグラス・ジェットの安全性について調査するよう要請した。情報筋によれば、戦闘によらざるファントム機の墜落は八十八機を数え——そのほとんどは、エンジン火災とスロットル(絞り弁)凍結によるものである。」こうここに書いてあるわけですね。私は、こういう記事は当然お読みになっていると思うわけであります。  そこで、お尋ねしますけれども、この「ニューズウイーク」の記事の中に、ペンタゴンがすべての航空機メーカーにファントムの安全性を調査するように依頼しておることになっておりますけれども、実は実際に依頼したのは、ファントム生産会社のマクダネル・ダグラス社以外の四社であったわけです。そして、その四社は、それぞれペンタゴンからF4の——これは私、資料を持っておりますが、F4のを一機ずつ、おのおの違っておりますが、それをもらって、そして報告書を出しております。そういう事実を知っておられましょうか。
  109. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 ただいまのお尋ねに関しましては、昨年の十一月の決算委員会楢崎先生から私お尋ねを受けた記憶がございます。そのときもお答えしましたように覚えておりますけれども、今度のきまりましたファントムにつきましては、先生御承知のように、ほかにCL1010とかフランスのミラージュとかいうふうに候補機種がございました。いろいろな飛行性能その他各種の観点からこの候補機種を選んだわけでございますが、その選んだ基準の中にも安全性ということは当然われわれ考慮いたしました。その安全性を調べる際に、先生の御指摘のようなことも調べてまいりました。調査団等を派遣して調べてまいりました。さらに先生からの御指摘もございましたので、その後米空軍にも照会をいたしました。その結果を申し上げますと、マクダネル・ダグラス社以外の各社に安全性調査を命じたという御指摘でございましたけれども、米空軍からの返事によりますと、そういうことは、国防省がファントムの安全性調査のためにそういう航空機のメーカーに質問したという事実はないということの返事をもらっております。  それから、先ほどおあげになりました単発と双発の事故率の問題でございますが……。
  110. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それはいいです。あるんですよ。そういう調査を依頼して、そしてその結果が出ておるんですよ。いいですか。まずリパブリック、これはペンタゴンがその会社に調査の契約をしておりますから、その契約の番号もわかっております。使用機は、リパブリックの場合は、F4C型であります。そしてこれは昨年の一月二十九日づけでペンタゴンに報告書が出ております。二番目にゼネラル・ダイナミック、これはF4C型をもらって調査しております。そして、これの調査結果は昨年の二月二日。三番目にロッキード、これはF4D型であります。これの調査結果は昨年一月二十六日ペンタゴンに出されております。ノースアメリカン、これはF4D型であります。そして、その調査結果は昨年の二月二日にペンタゴンに出されております。いまの答弁と事実が違います。それは単に、そういうことはありませんということをオウム返しに言っておるだけです。そういう調査結果が出ておるのです。
  111. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 われわれは、先生の御指摘もございましたので、先ほども申し上げましたけれども、米空軍に再度確かめました。その調査の事実は先ほど申し上げたとおりでございますが、さらにファントムを含みます双発、単発の安全性、逆に言いますと危険性につきまして、さらに確かめましたら、先生の御指摘のような数字は一九六七年度だけの数字でございまして、これは特殊な事情があったということを米空軍は言っておりますが、それ以外の六八年あるいは六六年、六五年、すべて平均いたしますと、双発のほうが安全であることが数字がきわめて明確に示しております。ファントムにつきましても同様でございますので、米空軍がそういう返事をもらっておりますので、お知らせいたします。
  112. 楢崎弥之助

    楢崎委員 時間がないから私の質問に答えてください。私が言っているのは、こういう報告書はペンタゴンから出ておるではないかということです。答弁が食い違っておるわけです。私は資料を持っておる。それは違います。  それでは重ねてお伺いをしますが、昨年の二月のアメリカ空軍運用訓練シラバス、テクニカル・エア・コマンド・シラバス一一一五〇七B、こういうものがあるのを御存じですか。
  113. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 たいへん具体的な御指摘でございますので、ちょっと調べてみませんと、手元の資料ではわかりかねます。
  114. 楢崎弥之助

    楢崎委員 F4に関して昨年の九月に——まずアメリカ空軍は、五八年以来、F4は事故が多いからずっと改造を重ねてきたんですね。十年たった今日でもなお事故が減らないから、いろいろ調査もさせた。そうしてアメリカ空軍の措置としては、昨年の九月に、いわゆる米軍の監察官が訓練の改善に関するいろいろな指示を与えております。これも具体的にあります。そうして十一月一日には、F4の空中戦闘操作訓練、エア・コンバット・マニューバー・トレーニング、これを中止さしておるのであります。そうして昨年の十二月一日に、ただいま申し上げたいわゆるテクニカル・エア・コマンド・シラバス一一一五〇七B、これの中に七項目にわたって訓練のいろいろなことが書いてある。それが昨年十二月一日に削除されておる。だから私は、このページまでわかっておる。こういうことを知らないで、事故率のことが、あるいは事故の問題が、私は確信ある結論がよく得られたものだと思うのです。野党の私でさえこのくらい調べておる。それで私は、この七項目というものはどういうものであるか、これを明確にさしたい。事は搭乗員の生命に関することである。したがって、このF4の安全性の問題、これは非常に重大であります。そうして、いま当委員会において私どもはこのF4の予算審議をしておるのであります。われわれとしても非常に重要な責任があります。  そこで、このF4は百四という獲得機数がありますが、総予算は二千億をこすのであります。非常に大きな負担を国民に与える。われわれとしては、当委員会において、この問題は重要であるから、いま言ったような私の疑問点を明確にする責任がある。資料を出されないと、私はこれは明確にならないと思う。時間がありませんからこの問題はあとにおきます。  そこで、いま一つ私はお伺いをいたしておきます。いまの点について、シラバスについてお答えがあるのですか。——シラバスがあるかどうかだけでいいです。
  115. 有田喜一

    ○有田国務大臣 事故の問題ですが、それは一九六七年だけの特別なことなんです。そこで、それはベトナムの問題でパイロットを急速に養成したのです。そのために一年間だけの特別の事故なんです。だから、平均しますれば事故率はそんなに多くない。なお、あれをやめたということは、これは単にFXだけじゃないんですよ。アメリカにおける全部の訓練のしかたを変えるために、全部の航空機について一時停止したのでして、ひとりファントムだけがそういうことになったということは私は聞いておりません。
  116. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは間違いであります。いま私が言った六八年、昨年二月の米空軍運用訓練シラバス、テクニカル・エア・コマンド・シラバス、これはF4による戦術空軍訓練コースの一一一五〇七Bであります。これをお持ちにならぬのでしょう。そうしてどうしてそんな答弁ができるのです。知らないと言っておるのでしょう。この中の七項目が中止されておる。七項目とは一体どういう内容であるかということを明確にできますか。大臣できますか。
  117. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 戦闘機の訓練を一時中止したという事実について御指摘がございますので、その点をお答えいたしますが、われわれはそれを米空軍に照会をいたしました。そうしましたら、先ほど大臣からもお答えいたしましたように、ファントムを含みますけれども、ファントム以外のすべての戦闘機につきまして、テストのために一時空中戦闘訓練を停止いたしております。それは昨年でございます。しかし、その訓練の課程をテストした結果を回収いたしまして、さらに全戦闘機につきまして昨年の暮れに解除をいたしておりまして、ファントムが危険だということになっておるわけではございません。
  118. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私の持っておる資料と違いますね。いま明らかにしました。この内容があるんですか。だからこれを明確にしなくちゃなりません。私は七項目の内容を明確にできますかということを言っておる。それについては全然答弁がないんです。それで、時間もありません。委員長お聞きのとおり、ああいう答弁では困ります。  もう一つ私は問題を出しておきたいと思うのです。かつてのロッキード、グラマンのときもいろんな問題があります。御承知のとおりであります。それから、いま問題になっておるホークの問題も犠牲者が一人出たほどのいろんな問題があります。そして、いま私がここで問題にいたしておりますF4についてもいろんなことがいわれておるんです。いわゆる生産群の醜い動きというか、黒い動きというか、それらのものがいわれておる。これから四次防、五次防にかけて兵器の国産化率は増していくんです。そして調達もふえていく。もうこのF4のいろんな問題ぐらいでこういう黒い動きというものはこれは抹殺しなければいけない。そういう意味で私は若干ここに資料を持っております。しかし、これは委員会のこの審議の場でありますから、どの程度私は申し上げてよいかわかりません。  それで私は、一つだけお伺いをしておきます。外務省にお伺いしますが、西独のジュッセルドルフにレストラン日本館というものがあります。そのレストラン日本館の役員、それから資本金、出資者、これを明確にしてもらいたいと思います。
  119. 内田宏

    ○内田説明員 お答え申し上げます。  ただいま御質問の点、手元に持っておりませんので、取り調べまして後刻御報告申し上げます。
  120. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あとで報告するそうであります。それでこのレストラン日本館の設立の問題について、料理屋のことは何で知るかというやじも飛びましたが、外務省は出先官庁も含めて、この設立に協力をしたかしないか。した事実があります。それは文書の上ではっきりなっている。そういう点も御存じでありましょう。
  121. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 全く突然の御質問でございましたので、私も全然知りませんから調べてみます。
  122. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はこれを明らかにしたいのは、政治の姿勢の問題と関連をしてであります。いたずらに私は暴露するような、そういうあれはありません。政治の姿勢の問題としてこれを取り上げておるのであります。実はあとで報告になれば明確になってくると思いますけれども、これは与党の有力者が関係をされております。そして、それの出資者はいろいろありますけれども、兵器産業の会社が出資者になっておる。場所はジュッセルドルフである。しかもこのジュッセルドルフのドレスデン銀行をめぐっていろんなことがいわれておるのです。私は一部資料を持っております。しかし、この委員会、この場所においては、私はいろいろ問題があろうと思います。  そこで、このF4について、先ほどの予算の点もまだいろいろ問題があるのです。一部は出されました。まだ不確定要素があるということで出されました。事故率の問題についても防衛庁は答弁ができません。また、いまの問題についても、あとで資料を出すという。これらの問題すべてを合わせても、私はこの際F4の問題について徹底的に当委員会としては疑惑なり疑問点を明確にする責任があろうと思う。したがって、まだ時間が許されるならば私は続けますが、時間がないということでこの問題を打ち切るわけにはまいりません。したがって、委員長のもとにおいてこのF4を徹底的に洗うための正式の小委員会、かつて三矢の場合につくられたような正式の小委員会をつくって、非公開なら非公開にして、私はこれを審議していただきたい。私が若干持っておる資料も提出をして、一緒に皆さんと検討したい、こういうふうに私は思うわけです。それでこのF4Eの問題はこのまま残し、また外務省からも報告を出すということでありますから、この小委員会の設立がされればともかく、設立がないときには、この問題はこのまま保留し、あとで外務省からその御返答なり、防衛庁から私が申し上げました資料があって、内容七項目がはっきりされた段階において、もう一ペん質問をせざるを得ません。いまはここで暫時やめますけれども、そういうことを委員長にお願いをいたします。
  123. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 楢崎君に申し上げます。  この問題につきましてはいずれ理事会において検討いたします。  これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  124. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  昭和四十四年度総予算審議に関し、本日午後四時に、日本住宅公団総裁林敬三君に参考人として出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。さよう決定いたしました。  午後の会議は午後一時から再開することといたします。  暫時休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ————◇—————    午後一時九分開議
  126. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。春日一幸君。
  127. 春日一幸

    ○春日委員 私は、民社党を代表いたしまして、当面いたしまするわが国政の大問題につきまして、特に問題を沖繩問題と大学問題に集約をいたしまして質問を行ないます。  冒頭に、御答弁をいただく総理並びに各閣僚に御要望申し上げたいと思うのでありまするが、私の持ち時間にも制約がございまするし、かつは、この質疑応答を通じて重要なる疑義を的確に解明をいたしたいと考えます。したがいまして、私も趣旨を集約、簡明にして質問を行ないますので、御答弁をいただく側におきましても、できるだけそのものずばりでまともな御答弁をお願いを申し上げたいと存じ上げます。  そこで、まず最初に、沖繩問題から質問をいたしまするが、それは政府非核原則に関するものでございます。  総理は、去る一月三十日の本会議答弁において、突如としてわが国の国是たる非核原則について新説を打ち出されました。すなわち、それはわが国非核原則を打ち立てたのは、これを可能にする前提、つまり、沖繩基地を含めて米国の戦争抑止力がアジアの平和と安全に有効に寄与するという、この保障があったからであると言われておるのでございます。すなわち、この意味は、沖繩に核があるので、本土非核原則でもよかった、しかし、沖繩本土復帰で沖繩の核がこの原則にそむくものであるとするならば、この非核原則は変更する必要があるというような意味に解釈をせざるを得ないのでございます。これは非核原則に対しまする政府の従来の解釈を根本的に変更せんとするものでありまするが、この際、あらためて総理より非核原則に対する政府の方針を明らかにいたされたいと思います。
  128. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほども社会党楢崎君からその点についての質問がございました。また、本会議の席上でも申しましたとおり、核に対する国民的感情といいますか、国民的な核排撃の思想を背景にしておることが一つであります。もう一つは、この三原則が防衛上、一体わが国がどうなるのか、そういうことでやや心配もしておったのでありますが、とにかく沖繩アメリカ施政権下にあり、沖繩には基地がある、そういうことがこの三原則を政策的に取り上げやすかったという意味であります。先ほども、さらに分析されて、つくらない、使わない、この二つは、これはもう憲法上も問題があるが、持ち込まないというのは政策的な問題だ、こういう話を分けて先ほども説明したとおりでございます。
  129. 春日一幸

    ○春日委員 ならばお伺いをいたしまするが、総理昭和四十三年二月五日、本予算委員会福田一君の質問に次のごとく答えられております。すなわち、それは、核を製造しない、持たない、持ち込みを許さない、これが非核原則といわれておると述べられまして、同時に、私は、わが国が唯一の被爆国である、そいう意味から、核兵器を憎み核兵器の絶滅を期する、そういう態度をとっておる。また、そういう状況のもとにおいて、日本日米安全保障条約のもと、アメリカ核抑止力によって安全を確保する、こういうふうに昨年本委員会福田一君に答えられておるのであります。したがいまして、総理の昨年度におきまするこの非核原則は、すなわち、わが国非核原則を断固として堅持するという、そうした状況のもとにおいてアメリカ核抑止力によって安全を確保する、こう昨年度は述べられておる。  ところが、本年度のこの非核方針は、わが国の安全を確保するためには非核原則にこだわらずして、沖繩をも含めて米国の核抑止力に期待する、こういうものでございまして、総理の見解と方針は、この一年間にその形式も中身もがらっと突然変化をしてしまった、こういうふうに理解せざるを得ないのでございます。  そこで、私は伺いまするが、一九七〇年、現行安保改定以来、しばしば自民党内閣によりまして言明されてきた非核原則の方針は、沖繩が返還されるまでの一時的暫定的なものであったのか、または、この非核原則は、沖繩基地態様いかんによっては破却される場合もあり得るか、総理の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私、誤解があっては困りますが、沖繩核基地に全部たよっておるわけじゃありません。核兵器は、アメリカの持つ軍事力の中心をなすもので、その一部が沖繩にあるのだという、さように御理解いただきたい。また、本土において私ども原則は貫いております。いま沖繩が返還されればこれは本土並み、本土の支配下に置かれる、こういうことがはっきりしておる。ただ、その場合に、日本側の立場ばかりでものごとを考えてもいかぬのだろう、外交は相手方があるのだ、そういう意味でいろいろくふうし、そこにむずかしさがある。だから、いわゆる政策の問題といいますよりも、この沖繩施政権を早く祖国に取り返すという、それがまず第一じゃないか、こういうことに発展したのでございます。したがいまして、私は、安全保障条約に賛成される方の御意見も大きく見て二つになっておるのではないか、こういう点を本会議で説明した、かように思っております。
  131. 春日一幸

    ○春日委員 冒頭御要請申し上げましたように、質問に対してまともな御答弁を願いたい。すりかえたり、的はずれな御答弁を願いますると、これはこの重要なる機会に国政の重要なる疑義をただすというこの大いなる使命を果たすことができないのでございます。  私があなたに伺っておりまするのは、日本における非核原則に対する内閣の方針はどのようなものであるか。いま御答弁によりますると相手方がある云々と言われておりまするが、日本国の非核原則のこの政策方針は、日本政府それ自体が自主的に決定し得るものであって、相手方云々というような問題につながりを持つ問題ではございません。だから私は、どうかひとつまともに答えていただきたい。私は沖繩返還の問題にからんでこのことを伺っておるのではございません。すなわち、昨年度は、非核原則は断固としてこれを堅持する、この立場において、そういう状態のもとにおいてアメリカ戦争抑止力に日本の安全の期待をかける、こう述べられておるが、ことしは、わが非核原則には一個の前提があった、こう述べられておる。その前提条件が動けば非核原則も動くのである、かくのごとくに言われておるので、この一年間にそんな大いなる変化があったのか、あったならばあったとして、その政策上の必要に基づいて変化させたのだ、こうおっしゃるがよろしい。その点をひとつ明確にお願いをいたしたい。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 明確にしたつもりでおりますが、非常に簡単にひとつそうだとかそうでないとか言うだけでは、これは私は国民に誤解を与えると思います。また、この場を通じて国民に十分理解してもらいたい、かように思います。  したがって、わが国がとっておる非核原則は、御指摘のとおり、私どもは堅持するというその考え方に立っております。
  133. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、いまの御答弁によりますると、われわれが非核原則を打ち立ててきたのはその前提があった、その前提の中には、沖繩をも含めてアメリカ戦争抑止力が日本の安全を保障するという、そういうものであった。そこで沖繩とのつながりが出てまいるわけでございまするが、私は、この問題は、ひとつ物理的に事実関係を照らし合わせて、そのような総理の御答弁の信憑性というものを明らかにせなければ相ならぬと思います。すなわち、沖繩にありまする核をも含めて、全体としてアメリカ戦争抑止力、これに日本の安全の期待が寄せられたから、日本本土においては非核原則の鉄則を打ち立てることができたのかどうかという問題でありますが、これはわが国非核原則わが国の政策の基本方針としてその打ち立てられた淵源を明らかにしてかかる必要があろうと思います。すなわち、これは一九六〇年の現行安保条約が改定されましたその時点において、すなわち、条約第六条の事前協議に関する交換公文の審議が行なわれるにあたって、当時のあなたのおにいさん岸首相、それから、いまではあなたと反対の立場に立たれておる藤山外務大臣、この御両者がその趣旨を繰り返し、繰り返し厳格に言明されたところに始まるものでございまして、それは決して佐藤内閣の時代に至ってその非核原則という政策方針が打ち出されたものではないのである。   〔委員長退席、塚原委員長代理着席〕  以上のことを前提として事実関係を照らし合わせますると、こういうことに相なります。すなわち、現行安保条約国会批准は一九六〇年六月でございました。ところが、米国において沖繩メースB基地を設けたのは一九六一年の三月、その方針が定められて現実にそのようなものが配備されましたのはあけて六二年の春ごろであった。したがって、このことは、わが国のこの核非武装という政策方針は、沖繩にまだ核兵器がなかった状態のもとにおいて打ち立てられたものであるのでございまして、すなわちそれは沖繩の核兵器には関係なく定められたものである。したがって、三十日の総理答弁にいう非核原則を打ち立てたのはこれを可能にする前提、つまり沖繩核基地による安全保障があったのだ、こういうような意味をも含む表現というものはこじつけである。これは事実に反する。この非核原則に見合うところの核はつくならい、持ち込ませない、持たないという方針を打ち立てられたのは、沖繩に核兵器などというようなものが配備、装備される以前の時点において、わが国政府はその厳然たる方針を打ち出しておるのである。したがいまして、そういう前提があって云々ということは事実に反すると思うが、この点いかがでありますか。
  134. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は核が沖繩になかったから、ないときに三原則を打ち立てられた、こういうことで沖繩の核のあるなしにかかわらずじゃないかと言われますが、私の言っているのは、アメリカの核のかさの問題、核によって自衛力の不足を補っておる、こういうことが前提であります。その中に現在では沖繩も入っておる、こういうことであります。だから、したがって、とにかく沖繩だけの問題じゃない。アメリカの持つ軍事力、それによってわが自衛隊の足らないところを補っておる、かように私は考えております。
  135. 春日一幸

    ○春日委員 この問題は、続いて行ないまする質問の前提として重要な要因を持つものでございますので、くどいようでありまするが、もう一問御質問をいたしておきたいと思います。  すなわち、この三十日の総理答弁のねらいますものは、そのものずばりで申しまするならば、沖繩早期返還のために沖繩に核兵器を認めることが必要なら、そのためには非核原則は変更してもかまわないというものであって、これは総理の底意にあるもの、言うならば衣の下のよろいを見せたというのではなくして、よろいそのものをむき出しにしたものだ、こういうぐあいに受け取らざるを得ないが、いかがでございますか。すなわち、早期返還を求めるために沖繩の核兵器を容認せなければならないというような場合があるならば、日本非核原則そのものは、これは政策的に変更せなければならないし、変更するにやぶさかではないと、この意味を三十日の本会議答弁で述べられておるのであるかどうか、そのことを知りたいと思います。そうでないならばそうでないと明確に御答弁を願いたい。
  136. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そこの、いま言われるような結論まで実は進んでおりません。だから基地のあり方そのものについてはまだ白紙でございます。これは白紙かあるいは筆をおろすか、いろいろございますが、いまやそういう点をやっぱりきめざるを得ないようにだんだん時期的には迫られているのだと、かように実は思っております。けれども、先ほどお尋ねがありましたように、三原則は守る、こういうことをちゃんと申しておりますから、そういう点についての御心配は、いまの沖繩本土に返れば、施政権日本に返れば、それは本土沖繩との間に区別する方法はございませんから、これは憲法も何もすべてのものが同一である、そういうことでございますので、その点は御心配はないように願いたい。  ただ、いま直ちに沖繩基地態様というものを昭和四十四年のこの時点できめているのかというと、まだきめておらないと、かように私は申しておりますから、それだけは誤解のないように願っておきます。
  137. 春日一幸

    ○春日委員 問題の核心がいずれもそれております。  それでは重ねて伺いまするが、沖繩核基地わが国の安全性について伺います。  総理は、沖繩が返還された場合、核基地を撤去して、なおかつポラリス潜水艦の寄港も認めないというようなことになるならば、米国の核の抑止力はわが国の安全のために期待できないものになると心配されておるかどうか、この一点をひとつ明らかにいたされたい。
  138. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま沖繩本土に返り、核基地が全部撤去される、そういう場合に、わが国の安全確保上の支障ありやいなや、実はこの点が問題なんです。私は専門家でございませんが、あらゆる文献、またその専門家の意見も聞きながら、そういうものを研究しているというのでございます。そこに私が基地態様については白紙だと言うそのゆえんがおわかりだと思います。
  139. 春日一幸

    ○春日委員 それがあなたの自主的な、良心的な判断に基づくためらいであるのか、あるいはアメリカの強い要請に屈してのそういう意向の表現であるのか、これはあなたと神さましか知らぬと思う。だから私は、ここで沖繩の米軍基地の機能について専門家の意見をただしながら判断をいたしたいと述べられておりますので、われわれはアメリカの専門家がこの問題についてどのような論評を加えておるか、どのような意見を立てておるかをごく簡単に御披露申し上げて、あわせて御参考に供したいと思う。  すなわち、沖繩メースB核基地、これは一九六八年のマクナマラ報告において、これは二、三年の間は沖繩に存置されるであろう、こう述べておりまして、その二、三年の時限というものは来年、再来年で終わろうといたしております。すなわち、西独に配備されておりまするメースBと同じ運命にある。したがいまして、いま沖繩基地態様について、メースBを対象として核つき、核抜きを論ずることは、これは無用のことでございます。もういずれこれはなくなってしまうものである  そこでこの際、アジアに対する米国の核戦略体制をながめてみる必要がございまするけれども、これは一九六四年、中国におきまする第一回の核実験成功を契機として、あそこにポラリス潜水艦の第一艦が配備されました。「ダニエルブーン」、これがグアム島に入って、その後七隻がいま西太平洋に配備されておるものと見られておる。この間、マクナマラ計画によりまして、ICBMやミニットマン、このような米大陸における大陸間弾道弾、こういうものはもう配備を完了されておる。すなわち、アメリカがアジアのために必要とする核抑止力は、アメリカにおいてすでに沖繩核基地を必要としないほどにもはや達成されておるものと見るべきである。でなければあのようにライシャワー氏が言明するはずはない。あのようにフルブライト氏が、沖繩核基地は必要ではない、本土並み返還差しつかえないと断言するはずはないのであります。われわれは戦争抑止力としての米国の核戦力を評価したといたしましても、それはその実感として、沖繩を核武装することが、戦術的にも戦略的にももはやその必要がなくなってしまっておるというのが軍事評論家の定説になっておるところである。だから私は、総理のような聡明な方が、沖繩に核兵器の配備、装備をするのでなければ日本の安全が確保できるかできないか、アメリカ全体としての核抑止力の中に占める沖繩核基地というものの貢献の度合いがそんなたいしたものか、どうでもいいものであるのか。ライシャワーあるいはフルブライト、その他いろいろな専門家の言明、意見等を十分参酌されて、私は、国民の前に、総理がそのようなためらいを持たれておること、そのことによって、やがて日本が核武装せなければならないかもしれないというこの不安、これを一掃していただきたいと思う。いかがでありますか。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 たいへん参考になるお話を聞かしていただ弐ましてありがとうございます。お礼を申し上げておきます。  先ほど来申しましたように、いわゆる憲法上の問題のある点は、これは先ほど申し上げたとおりでありますが、しかし、そのときでもやはり政策的な問題がございますね。そういうものがこれからまたやはり起きてくる危険はあるかもわからない。いまのアメリカの問題そのものを考えて、いま言われるとおりかどうか、まだもっと研究してみないと十分なことが言えないのじゃないか、かように私は思っております。
  141. 春日一幸

    ○春日委員 総理は、沖繩返還に伴う基地態様はいまは白紙であると言われておるが、これは早晩は何らかの決定をなされなければならないでございましょう。しかし、口先では白紙だと言われておるけれども、腹の中はもう黒々として、国民のだれしも総理の心底にあるものが何であるかはもう見抜いておると思うのです。だから、お互いに腹にないことを言ったって、これはむだである。腹にあることを言うて、相手に向かって説得を及ぼしていく、これでなければならぬと思う。うそを言い合うなら何にもならない。雑音立てるだけで、意味ないです。  そこで、私はさらに具体的にお伺いをいたしたいと思いまするが、その場合——いずれは決定されなければならぬであろうが、その決定される場合、総理の方針は、本土沖繩の地位を、本土との間に何らかの区別をつけるようなことは絶対ないか。すなわち、沖繩を特別区域とするようなことはあり得ないか。かりに沖繩を特別区域とするようなことになりました場合、すなわち、その沖繩が軍事的に本土と何らかの条件のもとに異なる地位であることを、アメリカ以外の他の外国に向かって納得せしめる手段というものはあり得るか。ありとすれば、どういうようなやり方で、沖繩地域本土とは違う特別の区域であるぞよということをアメリカ以外の国々に向かって納得してもらう手段、方法があり得るか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  142. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申し上げたので十分かと思うのですが、私は、基地態様、その辺についてはまだはっきりしておりません。これはもう重ねて申し上げるわけです。しかし、祖国に復帰されたということは、申すまでもなく、日本憲法、諸法律が本土と同じように適用されるということであります。それなくしては祖国復帰というものではないのですから、その点は御心配なしに私の言いなりをひとつ御了承いただきたいと思います。
  143. 春日一幸

    ○春日委員 それは、あなたの言いなりに御了承願いたい、こう申されましても、あなたは腹の底にあることを、総理宰相としてかくあるべしという、心底にあるものを国民に向かって、また私に向かって述べようとはされてはいない。白紙であると言われておる。けれども、ほんとうの白紙であるならば、そのような濁ったアクセントでこの問題に答えられるはずはないと思うのです。だから、私がこのようなことを、あちらの角度から、こちらの角度からこれをお伺いをして、そうして判断をするしかないのであり、あなたの判断に間違うところあらば、これは民主主義の原則、反対党の意見を尊重し、少数意見を重視するという立場において、超党派的に国民のエネルギーを結集してこの大事を決定する、こういう態度に私はなってもらいたいと思う。そういう意味でいろいろと申し述べておるのでございまするから、胸襟を開いてひとつお聞き取りをいただきたいし、そのようなお気持ちで御答弁を願いたい。  私は、ここでもう一つ仮定としてお伺いをいたしまするが、かりに沖繩から核兵器を、よしやそれが米軍であったとしても使用いたしました場合、相手国の報復は、特別の区域である沖繩だけに限定されるという期待が持てるかどうか。沖繩だけは特別の地域である、あるいは事前協議その他において沖繩だけについては特別のエクスキューズを与えるという、こういうような含蓄があったとして、後日戦争になった場合、その沖繩から核兵器が用いられた、用いられた国が報復措置をとろうとした場合、その国は沖繩だけを攻撃の対象とするか。日本の領土、領域から攻撃されたことに対して、日本の領土、領域全体を対象として報復を試みるか、これはいかがでありますか。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これをもう相手方のやることですが、私どもは、戦争が起こらないようないわゆる核の抑止力、これにたよっております。したがって、この核の抑止力がなくなったという際に、沖繩ばかりじゃない、本土が爆撃の対象になるという、それは当然でしょう。私は、こういういまのような設問、先ほどからいろいろお尋ねになりますが、いろんな問題を含んでおる。ここに沖繩問題の解決のむずかしさがある。その沖繩問題の解決が一体何か。早期返還だが、同時に基地でもある。その基地態様というのは、そういう意味でさらにさらに検討を加えていかなければならない、非常にむずかしい問題だ、このことを私は申し上げたいのです。お尋ねになることは一々もっともな設問だ、私はかように思います。
  145. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、問題をさらに角度を変えてお伺いをいたしたいと思います。  政府答弁は、昨年来二転、三転いたしております。今度のこの国会に入りましてからでも、何回か転回が見せられておる。去る二月の二日でございましたけれども、NHKの放送討論会で、保利官房長官が各党の党首とのあの討論会で、あいまいではあるけれども基地態様については総理本土並み以外は考えていないようだとも述べられておりました。下田発言といい、また前提条件つき非核原則の新設といい、政府筋の言明が二転、三転したこの経過を検討しながら、この保利官房長官が言われる本土並み返還論、これは何としてもまゆつばものの感じがしてならないのでございます。すなわち、保利官房長官によって伝えられたその本土並みなるものは、われわれがかねてから主張しておりまする純粋の本土並み返還論とは違って、安保条約第六条による事前協議というふろしきの中に一切の核問題を包み込んでおこうという、そういう魂胆がひそめられておるのではないか。国民はすでにこのような疑いについて眼光紙背に徹するというか、すでに本朝の大新聞一面において、この本土並み返還論が、あの安保条約第六条による事前協議を操作することによって、そうして、これが名実ともに沖繩におきまする核兵器というものを現在とあまり変わらない形の中で機能せしめおる。すなわち、アメリカのそういうような要請にこたえ得る、そのような本土並み返還論もあり得るんだということが、けさの新聞にも論評が加えられておりました。この点はいかがでございますか。すなわち、ここに、現行安保条約に基づく事前協議は、いままでは非核原則の歯どめの機能を持ってまいりました。事前協議がなされたときに、核を持ち込むとかなんとかいうときにはノーと言うことができたし、ノーと言うと岸総理も、歴代の自民党総理は、それを述べられてまいりました。しかしながら、この歯どめというものは、言うならば政策的な歯どめである。訓示的な歯どめである。何にも法律上の保証がない。だから、政府が政策の転換を行なって、つくることはつくらないけれども、持ち込ませることを許すんだという政策転換が行なわれれば、この安保条約第六条に基づく事前協議の分野を通じて、すなわち、核兵器を沖繩において機能せしめるということが可能になってくる。同じ本土並み返還論の中でも、そういうような効果を期待することができる。そういうことを底意に持たれておるのではあるまいか。この辺はいかがでございますか。  保利さんが、この間の党首とのあの放送討論会で、総理本土並み以外の返還、基地態様考えていないようであると述べられたことについて、総理の底意を伺っておきたいと思います。
  146. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 保利君は、私の内閣の官房長官。したがって、私ども考えていることもいろいろそんたくすることはあるだろうと思います。したがって、私は、どうも保利君のそんたくされたことについて、ここで、それが間違っているとか、それはそのとおりだとか、さように申すべき筋のものとは思っておりませんが、私は、先ほど来、基地態様についてまだきめておりませんということを申しました。しかし、私がきめておらないからといって、全然考えをしていないというものじゃない。でありますから、いろいろ相談もしたり、またいろいろ発言もしたりして、そうして落ちつくところはどこだろうかというので、とにかくいろいろ言っていることは確かであります。そういう発言から、保利君が私のいまの点を特に強く感じ取ったかもわかりません。しかし、まだはっきりした基地態様というものをきめちゃおりません。これはもうはっきりしておりますから、それだけは私のほうをひとつ信用していただきたい。
  147. 春日一幸

    ○春日委員 何にもきめていない、フリーハンドだと言われておりますけれども、すべての政党が党議によってすべて決定しておる。それぞれの新聞の世論調査に徴すれば、国論の帰趨はおのずからもはや定まっておる。この間は京都において日米京都会議が持たれて、そこでも一個の結論が出されておる。このようなときに、なお一国の宰相が、沖繩百万の悲願として復帰を願望、訴えておるのに、なお心定まらずということはどうしたことでございますか。  のみならず、総理は去る三十日の本会議答弁で次のごとくに述べられておるのでございます。すなわち、現在沖繩返還については核つき早期返還論、核抜き返還遅延論と、この二つのものがあると言われておる。ほんとうにこの二つしかありませんか。そんなばかなことはないじゃございませんか。本土並み即時返還論、これが国民の帰一した願望ではございませんか。この国民多数の願望を黙殺して、達観すれば沖繩返還については二つの意見がある。その一つは核つき早期返還論であり、他の一つは核抜き返還遅延論である。二者択一であるかのごとくに国民にその選択を迫っておられるが、そんなものではないのである。国民の願望は、本土並みにして即時返してくれ、これです。なぜ総理はこの第一の国民の願望を取り上げないのか。それをサイレントにして、核つき早期返還論だとか、核抜きならば返還が遅延するとか、このようなことを本会議で述べられるということは、事実に反するではないか。民主政治は世論による政治である。世論を無視されてこのようなことを述べられるということ、これは新聞を通じてアメリカもそれを見るでございましょう。日本の心が何であるか、アメリカはそこで見抜くではございませんか。総理、宰相の言動、慎重でなければならぬこと言をまたないが、このような重大な問題について、各政党がひとしく、国民の圧倒的大多数が本土並み即時返還論を訴えておるのに、あえてそのことをサイレントに付せられておるという理由は何でありますか。お述べ願いたい。
  148. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 春日君、この際、保利内閣官房長官から発言を求められておるので、これを許します。
  149. 春日一幸

    ○春日委員 ちょっと待ってください。私の質問したことにお答えを願って、それから……。
  150. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、わが国内にはいろいろな議論がございます。まず安全保障条約、日本安全保障はいろいろ考えたが、日米安全保障条約については、これは各政党ともそれぞれの立場でそれぞれの議論をしております。その立場からいろいろ考えてみて、そうしてただいまのような、その主張はどうあろうとも、帰一したものは無条件即時返還だ、かように言われましても、必ずしもそのとおりじゃない。私は、日米安全保障条約を尊重するその立場において、日米間の問題は、相互の理解と協力によってその目的を達成しようというその立場におる。その点から考えて、いまその立場に立つと二つじゃないだろうか、こういう話はしました。しかし、それ以外にも、日米安全保障条約にまっこうから反対している。また中立論を言っている。その中立論も、非武装中立論があり、武装中立論がある。こういうようにいろいろ意見が違っております。したがって、私がただ二つだと言ったことは、それはことばじりをとらえて、二つでないことは確かです。いろいろの意見がある。しかし、まあ私が申し上げるようなのが最も有力な大別した意見じゃないか、こういうわけの話をしたのであります。
  151. 保利茂

    ○保利国務大臣 どうも要らぬことかもしれませんけれども、先ほど、私が先日のNHKの自由討論会で申し上げましたことを誤解があるようでございますけれども、だんだんお話で、沖繩返還時においての沖繩の現在の米軍基地態様がどうなるであろうか、佐藤総理核基地の自由使用を考えておるんじゃないかということがほぼ明らかなようだということをある党の党首の方がおっしゃいましたので、私が推定いたしますところは、総理の頭には核つき自由使用というようなことはないと私はそんたくをいたしておりますと、こう申し上げておりました。それはとにかく先日来の国会の論議で、総理大臣も同様のことをしきりにお答えになっていらっしゃるところだと思っております。
  152. 春日一幸

    ○春日委員 安保条約、これが日本の安全を保障いたしておる、だから、沖繩の返還については、安保条約というものを念頭に置かずしてその返還の意見を立てられても、これはにわかに同じかねる、こういう総理の御意向のようでございます。けれども本土並み返還論を主張いたしまする私ども民社党は、安保条約がアジアの平和、日本の安全に一定の役割りを果たしておるとこれを評価しつつ、なおかつ本土並み返還論を打ち立てておるのである。われわれが日本の安全、国民の福祉を念頭に置かずして何でも返してくれさえすればいいと、そのような単純な政策を打ち立てておるものでは断じてない。あなた一人が愛国者で、その他の者は全部そういうあなたの抱いておられるような心を抱いていない者だなどと独断されないで、あなたと同じように国家の安全、国民の福祉を念頭に置きながら政治と取り組んでおるのだ。現に私ども民社党は、日米安全保障条約がアジアの平和、日本の安全に一定の役割りを果たしておると高くこれを評価しながら、なおかつ沖繩の返還はいかにあるべきか。本土並み返還でよろしい。そのときに日本の安全が何らか阻害されるか。その心配はない。ないというのは、アメリカの持っておりまする戦争抑止力というものは、前に申し述べましたとおり、その体制をもはやアジアに向かって達成しておるのである、だからその心配はないと、ライシャワーもフルブライトも、その他の権威筋が述べられておる。どうかこの問題についてもよくひとつお考えを願いたいと思います。  そこで、私は、これを進んでお伺いをしたいと思うのでありまするが、この間、京都で日米京都会議が持たれました。そこで久住忠男氏のレポートは、これは日本国民感情を尊重して本土並み返還論というのではなくして、核戦略のあらゆる角度から検討しても、そうして米国並びに日本の新しいアジア外交の展開という角度から見ても、本土並み返還が最も賢明であるという、こういう結論を出しておること、御承知であられますか。これは総理の私設諮問機関かもしれませんけれども沖繩問題等懇談会の下部機構である基地研の責任者である久住氏が、いろいろの意見を網羅して、そのような結論を出されておるのである。あなたは国民世論の動向をキャッチしながら、かつ専門家筋の意見を聞いて、そうして方針をきめると言われておるけれども国民世論はおおむね定まっておると見るべきである。専門家筋が、アメリカの権威者、日本の権威者、しかもあなたが委嘱したその権威者たちが、かくのごとき統一した意見を出しておるにもかかわらず、なおかつあなたの沖繩返還に伴う基地態様は白紙でなければならぬという理由は何であるか。一体それはどういうことなんですか。
  153. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 基地態様が白紙でなければならないと私は言っているわけじゃない。私はまだ結論を出していないという、それを申しておる。
  154. 春日一幸

    ○春日委員 白紙であるということ……。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それはただいままだ決心してないということ……。
  156. 春日一幸

    ○春日委員 それを聞いたのですよ。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そのことです。これは、私はいまからまたアメリカに出かけて、そうしていろいろと話をするわけなんです。それまでに出せばいいわけなんです。だから、早く出したからそれでよほどいいというわけのものでもないのです。かえって混乱する場合もありますからね。それはむしろ慎重な態度であることが望ましいのです。先ほど私は有事駐留の話には触れませんでしたけれども、同じ安全保障条約にいたしましても、やっぱり考え方がそれぞれあるのです。それぞれあるのですから、その辺のところも私は慎重にやる。だから、それはやっぱりおくれて間に合わなくて、それまで白紙でやる、そういうわけにはいかない。それは責任のある者として、これは適切なときにはちゃんときめます。しかし、それまではひとつ白紙であるという事実そのものなんです。なぜ白紙なのか、白紙でなければならないのか、そういうわけのものではない。事実がそうなんです。
  158. 春日一幸

    ○春日委員 私は、国民世論を反映せしめて、それを背景にして外交を行なう、これが民主政治の本筋であろうと思います。これを忘却した政治は権力主義の政治であって、これがこり固まると独裁政治になるのでございますよ。戦前において私どもはあのような痛ましい経験を積んだのでございまするが、すなわち、国民不在の政治が暴走して、あのように祖国と民族を敗残の廃墟の中にたたき込んだものであるという、この経験を私どもは忘れてはならぬと思う。あなたは、いま自分は責任の座にあるから慎重でなければならぬ、責任が重いと言われておりまするが、他の者は、たとえばあなたの党の三木さんも、あなたの党の前尾さんも、本土並みでなければならぬと述べられておる。私ども民社党も、その他各政党も、それぞれの意見を立てておる。われわれは責任がないのでございますか。あなたの責任は最も重い責任であるということ、これは私どもはそれに何も文句をつけようと——異論はない。けれども、みんなが人それぞれ分に応じて、職責に即して、責任的立場に立ってこの問題と取り組んでおるのでございますから……。  ただ、私が申し上げたいのは、民主政治というものは、国論を反映し、国論を背景にして、相手方と国益のために談判、交渉すべきではないか。わしはこう思うのだから、だれが何と言ったってわしの考えを変えることができないんだという政治思想、これが独裁政治に通ずるのであり、独裁政治は、歴史を見れば、ヒットラーもムッソリーニも日本の何がしも、みんな国々を滅ぼしていった。だから、私は、ほんとうに民論を反映せしめなさい、いまや民論はかくのごとくに成熟しておる、これを言っておるのでございます。どうかその点について誤解のないように。いつまでも白紙だ白紙だと言われておるけれども、もう交渉を始めなければならない。現に下田君はやっておるじゃございませんか。いろいろと瀬踏みをやっておるじゃございませんか。外務大臣も、それぞれ外交機関を通じて日本の意向、日本国民の世論、日本安全保障立場からかくあるべし、こうあるべしと下話が進められておるじゃございませんか。このときに、日本総理が、日本の国論はこれである、日本の安全確保の措置はこれである、ゆえにと言って、あなたの信ずるところを内外に向かって明らかにし得ないというはずは断じてない。いかがでありますか。
  159. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が基地態様は白紙だと言ったからといって、非民主的な独裁者だと、さようなものじゃございません。私が必ず申し上げておることは、国民世論、それの支援のもとに私の政策を遂行していくということを何度も申し上げております。いまのお話を聞いていると、いかにも私が独裁者であるかのように、ヒットラーのようにたとえられた。とんでもない話であります。この点はもう少し——ことばが走り過ぎたかと私は思いますが、とにかく私は、それほど非難を受けながらも慎重にやっておるんだ、さように御理解をいただきます。そうして私が、それじゃ時期を失して、とにかくチャンスを失した、それこそ私が国民から非難される、批判されるゆえんだと思います。まあそこまでまだきているわけじゃないのですから、私が慎重な態度であることはむしろほめていただく、かように私は——ひとつ民論を十分尊重しろ、こういうことで御鞭撻をいただくのかと思ったらそうじゃなかったので、残念ながら私、立ち上がったような次第であります。
  160. 春日一幸

    ○春日委員 いや、私はあなたがヒットラーだなんて言っていませんよ。総裁選挙にすらなかなか惨たんたる苦労をされるあなたが、そんなヒットラーほどの政治力をお持ちになるなどと、それほどあなたを高く私は買ってはいない。ただ問題は、やはり民主政治は世論政治である。世論を反映しろ、国民の意思を背景にして外国と交渉しなさい。国民の意思に耳をふさいで独善的に走っていくと、これは権力政治になり、権力政治がこり固まると独裁政治になる。独裁政治は国を滅ぼすのもとになり、第二次世界大戦で痛々しい経験をわれらは積んだ。このことをお忘れめさるなと申し上げておる。だから、この点については十分ひとつ御猛省願いたい。  私はここであなたと口げんかをするのではなく、あなたも三選によってその体制を固められた。おそらくは御心境、最後の御奉公という悲壮な決意を固めてこの問題と取り組んでおられると私は思う。私はすでにこの数日間、あなたが本会議、衆参両院にまたがって一人で孤軍奮闘されておる、たいへんな御苦労だと思う。心ひそかに敬意を表しておる。けれども、あなたがただ質問をはずして、そうして当面を糊塗すればそれで足るとは思っておられないにしても、結果、そのようなことにしかならないのである。どうかひとつ、天、人をもって言わしめるという気持ちになって——私もただ思いつきで言っておるのではない。多くの資料の中から、多くの権威者の意見を取捨選択をして、かくあるべしと意見を立てておるのですから、いつまでもばかの一つ覚え、とは申しませんけれども、何と言っても、党首が言うても、どの政党が言っても、私は白紙だ、白紙だ、白紙だ。これではものごとの前進がはかり得ないではないか。どうかひとつお考えを願いたい。  そこで問題は、私は去る四十二年の十二月の本委員会で、沖繩返還交渉に当たるについてその法的根拠、これを私は総理にただしたことがございます。そのとき総理は、私の質問にはお答えにならないで、これは一応国民の願望であるからと逃げられました。それで私は、本日もう一度、いよいよあなたはあの日米共同声明に基づいて両三年、そのときが来て、この秋は返還のめどをおつけになるために訪米される。したがいまして、私はこの際、沖繩の返還を求める法的根拠は何か、これをひとつ総理よりあらためて御答弁を願いたい。
  161. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 総理からも御答弁があるかと思いますけれども、私からその前に御説明申し上げたいと思います。  御承知のように、アメリカは現在平和条約第三条に基づいて沖繩における施政権を行使しておるわけであります。その第三条は、いまさら申し上げるまでもないと思いますけれども沖繩等につきまして、日本国は、「合衆国を唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対する合衆国のいかなる提案にも同意する。」というのが前段にございます。そして、その提案がなされ、また可決されるまでの間は、合衆国は、「これらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有する」こういうことが規定されておるわけでございます。  この条約がサンフランシスコで締結されましたときに、これも御承知のとおり、わが国としては潜在主権があるということを明らかにしておりますし、それからその当時におきまして、アメリカ代表及びイギリス代表はいずれもその演説において、沖繩等について日本が潜在主権を保有するということの明確な発言もいたしておるわけでございます。したがいまして、この平和条約第三条の後段でアメリカがこういう提案をする、あるいはそれが決議されるというまでの間は、アメリカが行政、立法、司法、三権を有するのであるというこの条文、並びにいま申しました潜在主権の主張と、これが合わされたものが今回の返還を求めるいわば法的根拠ということが言えようかと思います。また、すでに小笠原返還も、こうした法的根拠におきまして現に施政権を有しているアメリカ日本に対してこれを返還をする、こういうことになりましたことは御案内のとおりでございます。
  162. 春日一幸

    ○春日委員 いま述べられたさまざまなその根拠なるものですが、平和条約第三条そのものに基づいて施政権が行使されておるんだが、しかしその第三条そのものが国連憲章に違反するんだ、こういうことは数年来ここで論議し合わされているところである。現実に、ここにずっと資料をそろえておりますけれども国連憲章の何条、何条、何条に全部違反する。少なくとも国連に加盟をし、その常任理事国に左でなっておる国の領域を、憲章七十八条はそういうところを信託統治に付することはできないと、厳然とそれを禁止しておるのですね。その他何条かある。十何条、抵触する条項はここにある。それはすでに討論終結の問題である。ただ、問題は、あの大西洋憲章でも、あのカイロ宣言でも、アメリカみずからがこの戦争によってその領土たると領域たると何たるを問わず、自分の所有をふやそうとする意思は毛頭ないということを、あそこではっきりしているのでございますから、しかも彼らは信託統治に付するといっておるけれども、いまや信託統治に付する意思はないではないか。さすれば返すしかないではないか。だから、あの平和条約第三条が国連憲章の各条章に違反をするのみならず、第三条に基づいて信託統治に付するの意図がないものならば、これは占領して自国の領土、領域としてこれを領有するか、そのことがカイロ宣言や大西洋憲章に抵触するならば、もとの所有権者にこれを返還するか、二つに一つしかないのである。  どうかひとつ私は総理にお願いをいたしたいことは、日本国民感情がそうだから、ああだからというようなことではなくして、これはやはり法上の根拠を厳然と示して、条約第三条はこういう結果になっておる、三条を国連憲章に照らせばこういうことになるのだ、だからこれはしょせんは早く返してもらわなければ相ならぬのである。これを強く権利として私は主張してもらいたいと思う。総理は、その相互理解と信頼の上に立ってと言われておる。けんか腰で返るというものでないことも理解できますけれども、しかしそのようにムード的なことでアメリカが返してくれるのであるならば、私は、もうずっと以前にこれは返されておってしかるべきだと思う。なかなか、向こうには向こうの理由がある。その理由があって返さない。そのときには、ただお願いするといって、アメリカの同情にすがるというような態度でもってこの問題の解決がはかり得るとは考えられない。法上の権利を厳然として相手に示す、アメリカに向かって権利として要求する姿勢をもって臨んで、十二分に談判を尽くして、なおかつ意見が妥結しない場合に、そこに加えて道理、条理政治論、こういうものがあわせて活用されるべきであって、初めから手すりこんぼのへっぴり腰で、ただ好意にすがる、そんなことで私はこんな民族的大問題の解決がはかり得べきものではないとう。私は総理を通じてアメリカにもの申しておるのです。権利だから返せ、信託統治に付するんだったら付してみよ、国連に加盟した常任理事国の領域をアメリカの信託統治に付するんだったらいま付してみろ、付することができないんだったらば返せ、問題ははっきりしておるじゃございませんか。その姿勢でもってまず交渉、談判に立ち向かわれたい。友好と親善、相互信頼、けっこうでございます。その精神の中で、要求すべきものは要求するの姿勢、これがあってよろしいと思います。いかがでありますか。
  163. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お説、全くそのとおりであります。しかしそのことばが、いま言われたとおりのことばを使わないで、私は、ソフトムードでも、ちゃんと腹の中はきちんとしたい。そういうことでございますから、おっしゃることは全くそのとおりであります。
  164. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、時間がございませんから論旨を進めます。  新労働布令について伺います。米民政府のこのほど公布いたしました総合労働布令でございますが、これはアメリカが一方的に独断で作成した。沖繩政府はもちろんのこと、関係者の意思はこの布令の作成において一顧だにされなかった。このような行政のあり方を何と思いますか。御答弁願います。
  165. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 交渉いたしました外務大臣からお答えさせます。
  166. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 労働布令の問題につきましては、この布令がアメリカ側から提示されて以来、日本政府といたしましてもできるだけの努力をいたしまして、その内容の検討を始め、それからアメリカ側に対しましてもいろいろの折衝をいたしました。その結果も反映いたしまして、アメリカ側が自主的に那覇におきまして、三月一日までその内容等について、主として沖繩県民側の建設的な意見を求める、三月一日までにそういったような意見を申し出てほしいということで、暫時延期になりましたことは御承知のとおりでございます。現在、政府といたしましては、総理府、労働省その他専門の向きで、これは従来から引き続きでございますが、鋭意問題点を検討いたしまして、それができましたならあらためて政府の意見を申し入れることにいたしております。
  167. 春日一幸

    ○春日委員 私は民主制度におきます律令というものは、すべからくこれは民意に発せしめるものでなければならぬと思う。だのに、この問題については、一一六号布令についてかねがね現地において強い要請が行なわれてきた。それにもかかわらず、さらにそれを過酷なものにして、もっぱらアメリカ軍隊の利益と行動の自由、これをますます拡張することのために、過酷な形でこれが押しつけられようとしていた。そのとき沖繩の住民が憤激とともに立ち上がって、そして、その愛知さんの外交交渉も幾らかは貢献するところがあったであろうが、一時これがその結果として延期されるに至った。この経過はそのままわれわれは見詰めなければ相なりません。  どうか私がお願いをいたしたいことは、アメリカの今度の総合布令というものの公布の経過にかんがみても、ほんとうに単なる相互理解と信頼というような甘いセンチメンタリズムで問題の解決はつき得るものではないということを、われわれは徹底して心底に刻むべきである。本日、二月四日ゼネストが計画されましたけれども、この沖繩返還交渉の大事をおもんぱかって、このストは一応中止をされました。私は、いま彼らは心の中で泣いておると思うのですね。このような問題が起きたときに、すなわちB52によって沖繩県民の命が危険にさらされた、彼らは生命を守る県民共闘会議を結成して立ち上がらなければならないという、そういう非常に突き詰めたぎりぎりの境地、境涯に置かれておるのである。だとすれば、私は、政府というものは当然その独立国の国際的な基本権として外交保護権というものがあるであろうと思う。異民族の支配のもとにある国民がそれぞれ苦難な状態に陥っておるときには、木国政府はそれを救済することのために外交保護権を行使することを国際慣例として認められておるところであると思う。私はB52の撤去にしろ、この総合布令の再検討にしろ、アメリカに向かって反省を求めるとか、宥恕、緩和を求めるとかいうようなことではなくして、堂々たるその外交保護権、これを活用して、正式の議題として談判、交渉を展開すべきじゃないかと思うが、この点いかがでありますか。
  168. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私は、春日さんの言われる外交保護権というような法律的な用語についてはつまびらかにいたしておりませんが、しかし私としては、就任以来できるだけの努力を沖繩の問題についてはいたしておるつもりでございます。また、この話のしかたも、いまちょうど本任の大使がまだ欠員でありますけれども、ジョンソン氏が大使でおりました当時におきましては、いまおあげになりましたような問題について折衝を直接私がいたしておりました。それからごく最近におきましては、報道されておりますとおり、B52の問題についても、事務次官をしてアメリカの臨時代理大使を招致して、そして実質的な折衝をやっておるわけでございますが、ただ、先ほど総理からも言われましたけれども、その話しぶりなり何なりについては、施政権が遺憾ながら向こうにあるということを心にとめて、言い方その他については配慮すべきところは配慮しておりますが、実質上は先ほど御激励をいただいたような態度で私はやっておるつもりでございます。   〔加藤(清)委員「どうだかね」と呼ぶ〕
  169. 春日一幸

    ○春日委員 いま加藤君が、どうだかねと言われたけれども、全くどうだかねですよ。  ほんとうに私が申し上げましたような沖繩百万の同胞の窮状見るに忍びずとして、これを本国、本土政府として保護せなければならぬという責任感の上に立って談判、交渉を展開されておるならば、私はもっともっと早目にこの問題の解決はつぎ得ておると思うのです。のみならず、愛知さん、私もあなたと古いつき合いで、あなたの人柄もわかっておるけれども、外務大臣になってから人が悪くなられた。一体外交保護権というものがどういうものだかつまびらかにしていないなんて、あなたのようなエリートが……。そんなことは大学の二年か三年で覚えることだ。外交保護権というものは慣習法で認められておる国家に対する基本的な権利である。そんなものは、どういうものだかこういうものだか、つまびらかにしなければそのことがやれぬものじゃない。外務省の官僚にどういうふうだと聞けば、すぐはっと行ってメモを持ってくる、すぐにやれることです。そういうような詭弁ではなくして、問題はそのこと自体である。こういう場合はどうしたらいいのか、私は真剣な気魄をもって取り忍んでもらいたい。  沖繩問題については、なおたくさん質問いたしたいことがございますけれども、時間の関係で、以下、大学問題に問題を転じて質問をいたしたいと思います。  そこで私は総理にお伺いをいたしまするが、大学紛争の原因とその実態、これはどういうふうに把握されておりますか。ここに昨年十月末、某大新聞の全国世論調査によりますると、その主たる原因は政治に対する学生の不満が四三%、現在の社会に対する学生の不満が二八%、全体の七一%が大学紛争の原因を政治や社会の矛盾にあるものと指摘いたしておる。この世論統計をも参照されまして、この際、大学紛争の原因について総理の御所見をまずもってお伺いをいたしたい。
  170. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 少し時間をとって、あるいはおしかりを受けるかわかりませんが、できるだけかいつまんで短くお答えしたいと思います。  いろいろ問題があると思いますし、またいろいろの見方があると思います。ことに、紛争の面接の原因というものは、きわめて単純なものである。それがいつの間にか大騒動になっておる。御承知のように、東大の場合は一医学部の問題であった。それも助手その他の無給職員の待遇の問題、それがあのとおりに発展しておる。また、ある大学におきましては、学長に対する不信の問題、そんなもの、みんな御承知だと思いますが、そういう簡単な問題から、そのおさめ方が間違ったというか、当を得なかったために非常に波及し、紛糾を重ねてきておる。  そこで今度は、これはもう一文教上の問題ではなく、社会上、また政治上の問題にまで発展してきている。私は、この問題が起こりまして、昨年私が取り上げて、いまや大学問題は政治上の問題だ、かように申しました。そのときに何と言われたか、大学紛争を政治上の問題だと言っている、総理は何か勘違いしてないか、こういって私は批判を受けて、しかられたものです。しかしながら、そのとおりに問題は発展してきている。したがって、いま世論調査でお示しになるように、政治の不信からきているものもある、こういうように言われております。政治上の不信、これも確かにありましょう。これも政府なりがその大部分の責任者だ、かように言われるだろうと思います。しかしそういう意味から、政治家たる者すべてがやはり責任を分担してもらわなければならぬだろうと思います。私は野党の諸君に全然責任がないとか、私がすりかえるとか、こういう意味ではございません。だからこそこの施政演説におきましても、まず政治の姿勢を正せということを申しました。私、また野党の諸君から、修身の先生みたいな講義をする、こういってしかられましたが、私はまた精神的な面もやはり取り上げなければならない、物質の非常な発展にそぐわない、精神の、心の豊かさというものを欠いておる、こういう結果もあるだろう。とにかくすばらしい発展をしたが、そのときに取り残されたものはこれだ。しかも大学というものがどんどん大きくなり、拡大される。その拡大されて変貌したその姿についての十分の認識を欠いておる。したがって、戦前の開放されない、特殊の人たちのみが利用するような大学をいまなお夢みていた、そういうところに問題があるのじゃないかと思う。そうしてそれはだれの責任かということになると、政治家にもあるだろうし、教授陣にもあるだろうし、生徒にもあるだろう、社会一般にもあるだろうと思います。本会議におきまして民社党の西村委員長が特に教授団の、教官のあり方について触れられたこと、これは私は確かにそのとおり、適切なる指摘だ、かように思っております。  そういうように考えてみますと、これはたいへんな問題だ、各界各層の方の協力を得てこの問題を片づけなければならぬ、かように思っております。
  171. 春日一幸

    ○春日委員 統計にあらわれておりますように、この熾烈な大学紛争の根底に流れるものは政治不信、それから社会に対する不満、こういうようなことは、いま総理が御指摘になられましたとおり、われわれをも含めて政治全体がその責任を感じなければ相なりません。しかし、ここに過去二十数年間わが国政をほしいままにされておると言っては語弊があるかもしれないけれども、自由民主党はその政権を全的に担当されてまいりました。そこで、あなた方のそのやり方に問題があったと思うのです。たとえば日米安保条約、これは国民に耳をかさぬという態度である。沖繩問題をはじめ、王子の野戦病院、プエブロ事件、B52の立ちのき要求、原潜寄港、これらの諸問題に対して、政府はことごとに国民の要望を押えてアメリカに屈従されてはいないか。そのたびごとに大衆運動は盛り上がり、ヤングパワーのうっぷんはだんだんと内攻激化してきて、本日のような事態になってきた。私は総理にこの際お願いいたしたいことは、大学の運営管理にも、その他いろいろと問題は複雑多岐にはあるのであろうが、しかし全体の七一%が政治不信、社会に対する不満にありと指摘されておるとするならば、最も多く政治を担当されてきた自由民主党内閣の政治姿勢、すべからくこの日本人の矜持、この意思と感情、これを国政の上に、内政、外交ともに反映せしめるように、大学問題の解決の大前提となるものはすべからく政府の政治に当たるそのえりを正すことにあると思うが、いかがでありますか。
  172. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、戦後引き続いて政治を担当してきた自民党の責任、自民党政府の責任、それはまず皆さんから責められ、またわれわれが大いに反省しなければならないところだと思っております。しこうして、いま民主主義の時代でございます。国民の世論の支持なくして政局を担当するわけにはまいりません。その国民が選挙を通じて支持した政党が政治を行なって、国民にこたえることができなかった、こういう意味でいま私どもも非常に強く反省をしておる、これが現状でございます。私はそういう意味で、逃げるつもりはございません。また私どもがこの問題と取り組んで真剣にやってこそ国民の期待に沿うものだ、かように私も思っております。
  173. 春日一幸

    ○春日委員 私は内政、外交ともそのような猛反省の上に立ってお願いをいたしたいのでありますが、特にこれらのヤングパワーがそのうっぷんを燃え上がらしめる事件の対象となりますものは、ともすれば自主独立のその姿勢をくずしたさまざまな外交上の諸政策の上にあることにもかんがみまして、今後の沖繩問題安保問題あるいはB52の撤去問題、その他の諸問題について、十分権威ある態度をもって問題の処理をお願いいたしたいと思う。  次は大学紛争に対する当面の対策についてお伺いをいたしますが、この大学問題には二つの性格がございます。その一つは、大学の自治と学問の自由を守ることに関するものであり、他の一つは、大学自治と学問の自由を守るための大学の秩序の保持に関する問題である。大学正常化のためには、この二つの問題について、それぞれその要請を充足せなければならぬと思いますが、ここに大学の自由を守り、そのために大学の自治を確保するという措置については、今回の大学紛争を契機として、大学の大衆化、再建策など、大きく改善、改革が促進されることになるでありましょうが、それは特に憲法に反するような反動立法が行なわれない限り、そこにはおよその見通しが立ち得ると思う。けれども、ただ大学紛争の現状にかんがみて、今後大学の秩序をどう保っていくかという問題については、制度上、行政上まことに不安なしとはしない。すなわち、大学の自治を確保しながら大学の秩序をどう維持していくか、現行法体系並びに現行行政慣行について、この際大きく改善、改革を必要とは考えられないか。この点についてまず包括的に総理より御答弁を願いたいと思う。
  174. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 申すまでもなく、私は施政方針演説でも、学問の自由は尊重しなければならない、そのためにこそ学園の自治も尊重しなければならないとこういうことを申しました。しかし、政府自身は、やはり国政の最高機関として、異常なる事態については黙っているばかりが尊重したというわけのものではない。やはり必要な勧告あるいは適当な助言、これは政府がしなければならない、かように私は思っております。そういう意味で、当面する問題につきましても、政府はその態度のもとにそれぞれの行政を行なっております。  そこで、まず一つの問題として警察権を行使したこと、これは、学園の自治は許され、学問の自由は尊重されましても、これが法秩序を無視していいとか、法の適用外にあるとか、こういうものでないことは、私が申すまでもないことだと思います。そういう点において、いろいろな批判はございますが、私はやはり法の秩序を保つ、こういう立場に立って、また恒久的な施設の改善についてはそれぞれの機関がございますから、それらの答申を得てこれを決定してまいるつもりでございます。
  175. 春日一幸

    ○春日委員 私がここに大学紛争について釈然たり得ない二つの疑問がございます。その一つは、暴力学生に対する大学当局の措置。他の一つは、警察権に対する大学当局の評価のあり方であります。  現に、暴力学生がヘルメットと角材で武装、覆面して、教育施設や教材でバリケードを築いている。教授も職員もまた政府も何にも、眼中にない。こともあろうに暴力革命を呼号して、学内狭しとばかりにのさばり返っておる。これに対して、大学当局も警察当局も、現に長期間にまたがってこれを見過ごしてきた。ときには、これら暴力学生のきげん気づまを取り結んできた気配がある。なぜこのように大学では暴力が放置されているのであるか、一般国民にはその理由がまるでわからないと私は思う。そうしてまたこのような疑問に対して、いままで的確に答え得たものはない。本日この機会に政府国民に対してこの種の疑問を明確に説明する必要がある。すなわち、大学においては、不法行為暴力行為に対して適時適切の措置がとられない理由は何であったか。文部大臣並びに公安委員長より御答弁を願いたい。
  176. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 春日さんにお答えをいたします。  今日、一部の学生による違法な暴力的行動につきましては、一般人と同様に法に照らしまして処理すべきことは当然でございます。しかしながら、学生は本来教育を受ける立場にございますし、大学はこれに対し教育、指導を行なうことをその本来の責務としておりまする以上、まず第一に大学自体がその責務を自覚し、これを果たすために積極的、具体的な努力を重ねることが必要であると思います。現に、各大学におきましても、事態を放置して何らのけじめをつけないということではなく、真剣にこの問題と取り組んでいるところでございます。  大学の施設内の秩序維持につきましては、大学自治の一環として、従来から第一次的には大学がこれに当たり、大学の要請があった場合、警察力が発動されるという慣行が保たれておるのでございます。このことは、いわば学問の自由また大学の自治ということをわれわれが尊重をするという立場から、こういう慣行が保たれたわけでありますが、平常の場合にはこのような措置で十分であったと考えるのでございますが、春日先生御指摘のごとく、今日のような過激な学生による違法行為に対し、その対処のしかたが必ずしも適切でなかったことが、結果的に事態を紛糾させる原因となったと考えるのでございます。今日のような  一部過激学生による違法な事態に対しましては、大学当局は法秩序を維持し、大学を本来の学園の姿に保つために、警察当局と十分連絡を保ちつつ、適切な協力を得て、き然たる態度で臨むことが必要であるというふうに私は考えておる次第でございます。
  177. 春日一幸

    ○春日委員 そこで、その大学と警察との関係についてお伺いをいたします。公安委員長からはあわせて御答弁を願いたいと思います。  大学当局は、−わずかに人命に危険を生ずるおそれがあると考えるに至った場合にのみ、初めて警察力の導入を認め、警察はまた大学の要請なくんば出動しないというのが、大学に対する警察権発動の慣行とされております。そこで大学当局並びに警察は、人命に危険が及ぶのでなければ、大学構内ではどのようなろうぜき、脅迫、暴行、監禁、いかなる法律違反の行為が行なわれても、警察権を行使する必要はないと考えておるのか。公安委員長より御答弁願いたい。   〔発言する者あり〕
  178. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 御静粛に願います。
  179. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  冒頭に御指摘のとおり、大学といえどもよくいわれますように治外法権の場ではないということは、憲法を顧みましても、あらゆる法律を通じましても明らかなことと存じております。警察が治安維持の責任を負っているのでございますから、不法行為や暴力事案を確認した場合には、警察官が学内に立ち入り、制止並びに検挙に当たるべきであることは言うまでもないことと存じております。  しかしながら、実際問題といたしましては、大学構内において発生する乱闘などの暴力事案につきましては、何よりも大学当局における適確な管理措置が必要のものとして望まれるところであるにもかかわらず、最近大学当局が、暴力の横行しておる状態をきわめて長期の期間放置していくという傾向が多うございます。ましてや、警察に事態内容を速報されることは非常に少ないのでありまして、また学生たちからの連絡はむろんございません。たまたま連絡があったといたしましても、時期を失したあとであるという状況から、警察におきましては事件の実態を確認することがむずかしい場合が多うございます。警察官が直接視察、警戒のため、いわばパトロールをいたして学内に立ち入っておりまするならば、事件発生の模様は直ちに知ることができると考えますけれども、これとても、現実には大学当局なり学生らの考え方から見まして、いわゆるゆえなき警察アレルギー症のゆえに非常な抵抗が起こることは明らかであります。それを強行しますれば、学内における警察権の適確な執行につきまして種々な問題が発生することは十分予想されるところであります。  したがいまして、現状では各大学当局が暴力は許さない。先ほど文部大臣のお答え申しましたように、き然たる態度を期待して所要の管理体制の樹立につきまして密接な連絡を保ちながら学内における暴力排除について万全の体制をとりつつある次第でございます。  もちろん、警察としましては、学内の暴力行為を知りました場合には、警察部隊を直ちに大学に出動させております。最近の東大事件におきましても、幾たびとなく警戒出動しました警察部隊が、学内の秩序維持に協力し得ましたことは御案内のことと存ずるのであります。  なお、大学が、何だか治外法権らしいような姿が見えますことについて、大学との間に警察が何か遠慮しなければならないようなことがあるんじゃないか、そういう慣行があるような御指摘でございましたが、さような慣行というものはございません。   〔塚原委員長代理退席、委員長着席〕 一般的にはないのでございまして、ただ、東京都の公安条例の解釈、適用につきまして昭和二十五年に文部次官から各大学当局に通達が出されておることは御案内のごとくでありますが、その内容は、学内における大学当局の管理または承認のもとの集合等につきましての解釈及び学内における集会、集団行進、集団示威運動等の取り締まりについての大学当局の責任を規定したものでございます。それだけのことでございまして、何ら特別な、無法まかり通ってもよろしいということはもちろん論外であるといたしましても、治外法権的な立場を確認したという課題ではむろんないのでございます。その主たる内容は公安条例の、公共の場所における集会についての解釈に関することにすぎないのでございます。したがいまして、学内における集会ないしは学生の自治活動という名前において行なわれまする諸般の行動にいたしましても、それが正常なものである限りはむろん警察とは無縁のことでございます。ただし、学生自治活動という名前ではありましても、暴力行為を初めとする不法行為が随伴しまする場合には、もとより警察本来の国民に対する責任を果たす意味において大学内に警察が入ることも当然のことと存じておる次第であります。
  180. 春日一幸

    ○春日委員 私の質問だけに答えていただかないと困るんでございますね。用意したことを全部しゃべってしまっておっては話が食い違ってしまうんですよ。それは質疑応答にならない。  治外法権は絶対ないといわれておりますが、ここが非常に問題のあるところであり、このような紛争の根源をなしておるところであると思う。私は伺いますが、現在の慣行においては大学の要請がなければ、すなわち大学の要請、了解、立ち会いがなければ、警察権の行使は学内には行なわないという行政慣行——何もそういうような慣行はないと言われておるが、現実にそのことなければ警察権の行使は行なわれてはいないのである。この際われわれは、立法府としてこのような警察行政上の特別措置について法制上の疑義を解明しておく必要があると思う。すなわち、わが国憲法わが国における一切の行政は法律に基づいてのみ施行されるものであることを定めておる。したがって、大学に対する警察権行使の制約、すなわち、大学の要請なくんば警察は出動しないというその行政慣行、そのようなものを制約した法的根拠というものはあるのかないのか。法制局長官より答弁願いたい。
  181. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。  ただいま公安委員長からもお話がございましたように、その慣行についての特別な拘束関係のある取りきめはないようでございます。実際の慣行としてそのときに応じて行なわれている模様のようでございます。ところで大学……
  182. 春日一幸

    ○春日委員 法律に基づかずしてその慣行が許されるのですか。法律に基づかずして行政ができるのですか、そんな簡単に。
  183. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 わかりました。  そこで、警察としては警察の責務を果たすべくその使命をになっておりますから、その法の命ずるところに従って行動をするわけでございますが、その行動をする際に、はたしてその行動をすることが諸般の関係からいって最も有効になし得るかどうか。そういう点の執行上の裁量と申しますか、執行上の考え方、これは当然執行者に考えていい向きがあると思います。ただ、おそらくは御指摘の問題は、その限界いかんということであろうと思いますが、その限界は個々の場合に応じて申し上げるほかに、一般的には申し上げられないと思います。
  184. 春日一幸

    ○春日委員 総理大臣、いまお聞きいただいたと思うのでありますが、すなわち大学の要請なくんば警察権は大学に向かって行使しない。こういう行政慣行については何らの法的措置は講じられてはいないということが明らかになった。しこうして法制局長官の答弁によれば、それは行政権者の行政裁量権に基づくものである。その範囲のものであろうと言われておる。だとすれば、その政策目的というものがあるであろう。そのような配慮を特に加うるの必要というその政策目的、これは何であろうかということです。もしそれ大学の自治と学問の自由を妨げないためのそのような特別措置であるとするならば、一体警察の現在の機構の中には、大学の自治を侵害し学問の自由を脅かすような、そのような要素があるのであるか。実在するのであるか。もしも、現在の警察機構の中に大学の自治、学問の自由を侵害するような要素がありとするならば、まさにそれは憲法違反である。だから、警察それ自体に向かってそのような要素を粛正するの措置をとらなければならぬと思う。ところが現実にはそのような要因、要素というものが全然ないにもかかわらず、あたかも警察にそのような要因、要素があるかのごとき疑いをかけて、ことさらに国家によって設定されている警察法、警職法、この機能を制約するということは不当ではないか。この問題はいかがでありますか。総理大臣より御答弁を願いたい。——とにかくそのような法的措置はないんだ。ないにもかかわらずやっておるのは行政権者の行政裁量権だ、裁量権ならそのような行政を行なう政策目的があるであろう。大学の自治を守るため。ならば、警察というものは大学の自治を侵す要素があるのか、実在するのか、あるなら粛正する必要がある。ないならば、ないにもかかわらず警察権を大学当局とそれから公安委員長か警視総監か知りませんけれども、そのような二人のなれ合いで、かってにこの警察法、警職法をほしいままに壟断ずるがごときことは許されるか。問題はここです。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  警察は、学問の自由、学園の自治、これを侵害するようなことは考えておりません。したがいまして、警察は、学園だろうが一般社会だろうがどこだろうが、秩序を乱る者があれば、これはそれぞれが出ていくのは当然であります。  大学について遠慮しておる。これは、どちらかというと過去の悪い一つの例がそういう慣行を生んだのではないかと思います。過去、以前におきまして、学問の自由あるいは学園の自治に立ち入ったようなことがございました。これは、われわれが教育史上を見ましても、幾多そういう事例を見ておる。こういう事柄から、警察というものが特別に、いわゆる警察アレルギーというか、そういうような形において見られておる。思想警察というものがあったときには確かにそういう事態がありました。また、政府自身が教官に対してもその任命権を持っておる。私どもの記憶に残っているものでも、森戸事件だ、あるいは滝川事件だとか、なかなかずいぶんむずかしい問題を持っておる。こういう事柄でやはり遠慮はしておるんだと思います。しかし、緊急必要な場合においては、警察も黙って見ているわけにいかぬと思うのですね。人殺しが現に行なわれようとしておるとか、あるいは火事が起こるとか、そういう際に、飛び込んでいって捜査も行なわなければならない。しかし、国の建物というような場所だと、やはり管理者の立ち会いのもとにおいて行なう、その協力を得て行なうというのが当然でありますから、そういう意味の遠慮はあってしかるべきだと思います。  しかし、私は、少しなれ過ぎてはいないか。ことに大学本来の自治を尊重しておる立場から申せば、大学の自治で片づけなければならない問題なんです。あえて国家の警察権を要請しなければならないような事態になる。それまで自治が働かないようになっている。これが実際の現状ではないのか。私どもが広い範囲で大学の自治を認め、その自治を尊重しておる。それならそのとおりやってもらえればいい。警察の問題はないはずなんです。そこに問題がある。  だから、先ほど指摘なさいました、警察がどうして立ち入らないのかという問題も一つあるし、どうして大学自身が管理運営において自分たちの力でそれを片づけることができないのか。これがいま起きておる問題じゃないのか。暴力学生、それはどうしようもない。しかもそれが派閥の争いをしておる。それに対してどうも手を染めるわけにいかない。これが現状ではないか、かように私は思っております。
  186. 春日一幸

    ○春日委員 総理、ひとつこの問題だけは明確にいたしておきたい。  警察権の大学への不介入のこの現在の行政慣行、これを法律的には何ら法的措置が設定されてはいないから、そのものずばりで言うならば違法である。行政裁量権者の裁量なりとこれをかりに認めたとしても、そのように警察がいま大学の自治や学問の自由を脅かすというようなそういう実態はないから、それは不当である。違法である、不当である、こういうことは明確にしておかなければならぬと思うが、これに異論はございませんね。
  187. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 法律的にはそのとおりだと思いますが、やはり学園の自治尊重、学問の自由尊重、そういうこととどうもぶつかりやすい問題ですから、そこに行政上の裁量の問題がある、かように御理解いただきたいと存じます。
  188. 春日一幸

    ○春日委員 だから総理、問題をぼやかしてはいけません。あいまいにしてはいけません。行政権者が、すなわち警察権を行使する者が、ともすれば大学の自治を脅かし、学問の自由を侵害するのおそれある要素があるならば、それは大学と警察との間に混乱を起こすことを避けるために、すなわち大学の要請なくんば警察は介入しないという行政慣行を打ち立てることも必要であろう。ところが憲法によって、いまは、すなわち国家権力が大学に向かって介入するという余地は全く残されてはいないのである。もしもそのようなことがなされるならば憲法違反である。国会は許しておかないし、国民も黙ってはいない。かつて滝川事件がある、河合事件がある、美濃部事件がある。けれども、それは旧憲法の時代である。かつてそのようなことが行なわれたから、新憲法の現段階においてもなおそのようなことが行なわれるかもしれないという一個の妄想——妄想ではないか。そのような妄想を基礎にしてとうとい警察権の行使、これがあたかも治外法権があるかのごとくに執行されておるということ、またそのことによって現在各大学においてあのようなどろ沼の紛争を巻き起こして、解決のめどもつかぬということ、この点は明確にしてかからなければならぬ。すなわち、大学の自治を回復し、その秩序を将来に向かって維持するためには、現在の法体系並びに行政措置においてはなはだ不安なものがあると冒頭に指摘しておるのは実にそのことである。明確にしてください。すなわち、警察の大学に対する介入が、大学と警察との間に紛争を巻き起こすのおそれがしょっちゅうあるとするならば、現行のこの行政慣行、これを法的措置を講じて厳然たるものにしなければならぬ。疑いの余地をなからしめなければ相ならぬ。ないならば、悪いことをやった者は右翼であろうと左翼であろうと、学生であろうと市民であろうと、憲法、法律の前に平等なりで、平等な扱い、処理があってしかるべきではないか。それをやらないからこそこんな状態になっておる。一九七〇年を前にして、全く、神田三大学のごときは解放区になったといって彼らはこれを誇示しておるではないか。秩序維持の最高の責任にある総理が、この問題についてあいまいなことを述べられておるからこそ問題の解決がつかないのである。はっきりお述べを願いたい。
  189. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の主張ははっきりしていると思います。学問の自由、学園の自治は尊重する、警察の本来の使命は当然そのまま発動さす、これはあらためて申すまでもないところであります。  ただ、私がいま言っているのは、一般市民でもそうですが、何でも警察警察と言う。これはしばしば誤解を受ける。おいこら警察、と言う。とにかく民主的な時代に警官のあり方という毛のについてはいろいろの国民的な要望がございます。それを私は先ほど来申し上げておる。だから、その議論のたてまえは、お話しになるとおりのたてまえで私は警察権というものはあるべきものだ、かように考えておりますし、またその目的を達するつもりだ。しかし、誤解を受けないようにしたい。
  190. 春日一幸

    ○春日委員 この点は明確にいたしましょう。  そこで私は、いま総理が指摘されましたように、民主社会の秩序というものは常識とモラルによって守られるべきである。法は三章をもって足れりとする。その理念の意味もまたそこにあると思う。けれども、常識とモラルによっている秩序が保たれずして、その秩序が乱れたときには、何によって回復するか。それはやっぱり法がその機能を発動することなくして、それを回復する手段はない。さすれば、国民の安穏なる生活を確保する手段はないではないか。しかりとすれば、大学と警察との間に取りかわされておるところの現行不介入の慣行というものは、まさに法制上疑義があるばかりでなくして、大学の自流と学問の自由を守るそのことのために、実体論としてまさにこれは的はずれのもので、かつは筋違いのものである。この不可解な慣行が大学の自治を破壊する大いなる要因となっておることにもかんがみて、この際、総理、文相、公安委員長、厳然として法秩序を正さなければならぬと思う。いままでの行政慣行でも、間違っておったならば直すべきである。いかがでありますか。公安委員長、文部大臣より御答弁願いたい。
  191. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、大学といえども、さっきも申し上げたとおり治外法権の場ではむろんないのでありますから、暴力行為をはじめとする不法行為は一切許さないという法の要求するたてまえに従って警察当局として行動すべきである。  また、先ほどちょっと触れましたが、いまもお触れになりましたように、大学の要請がなければ警察は大学内には出動しないという慣行はございません。ございませんが、現実問題として、不法行為が続々起こっておるのにそのつど出ないじゃないか、現象的にごらんになりましてそういう御疑問もあるいはあり縛るであろう、そのことは思うのであります。ただ、学内における暴力や違法行為を排除しますためには、最も必要なことは、その理由のいかんを問わず、暴力や違法行為は絶対に許さないという確固たる良識を大学当局や多くの学生がみずから持つことが前提であると思います。これなくしては、警察力だけでは抜本的な解決をはかることは容易ではないと存ずるのであります。そして、同時に、暴力に対しては暴力で立ち向かうという誤った自衛方法をとらずに、暴力や犯罪の発生があれば、大学が警察力を活用してそれを排除するということこそが学園内の正常なあり方を確保するゆえんであると存ずるのであります。  なお、何か慣行がありそうに御指摘になりました一つの理由は、いま触れましたように、そのつど警察が発動しないからだという点にあろうかと思いますが、その間おのずから時と場合によりましては、警察行動という立場、警察行政の立場からの自主的な具体問題に対する配慮はやむを得ざるものが多々あるのでございます。繁雑になりますけれども、お許しいただきまして簡単に申し上げます。  たとえば、安田講堂をはじめとする大学施設、安田講堂封鎖ということにつきまして申し上げれば、第一、刑法第百三十条の建造物侵入罪が構成すると思われます。第二に、同条の不退去罪が成立すると思われます。第三に、刑法第二百六十条の建造物損壊罪が成立するとも思われます。さらに第四に、刑法第二百六十一条器物損壊罪という、これらの犯罪が考えられるのでございますが、これらの犯罪のうち、不退去罪につきましては建造物の管理者の退去要求が必要であります。器物損壊罪は被害者の告訴を要する親告罪でございますが、遺憾ながら昨年来大学当局のかかる意思表示は、本年一月十六日までの間全くなかったのであります。また、建造物侵入罪や建造物損壊罪につきましても、大学当局等関係者の協力がなければ取り締まりの成果をあげることができませんので、そのような状況を待って慎重を期しておった次第であります。  しかしながら、警察としましては、この間におきましてこれらの犯罪に対する捜査活動は常に行なっているのでありまして、関係者の協力が過去においては得られなかったため、残念ながらその成果を十分にあげていない実情にもあります。元来、国立大学におきましては学長以下公務員であります。公務員は、自分の管理する学園なら学園内におきまして不法行為があるならば、それを告発する責任が公務員としてあると私は存じますが、その意味においても怠慢であったということを私は指摘せざるを得ないように感じておるのであります。
  192. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 大学が治外法権の場でないことは、公安委員長がただいま申されたとおりでございまして、当然でございます。人命の危険がなくとも、学生による暴力行為など大学構内で法律違反の行為が大学当局として措置し得ない場合に、警察力の行使が及ぶことは当然なことだと考えております。  それから通達の問題でございますが、学園の自治を理由に大学構内への警察権の発動を否定しようとする趣旨のものではなく、学校が教育の場であることを配慮いたしまして、条例の適用対象とならない学校構内における集会について、条文上の疑義を明らかにするとともに、学校構内における集会等について、第一義的には学校がこれに当たり、要請があった場合に警察権が協力することとしたものでございますが、もとより大学が治外法権の場でないことは当然でございますし、このような措置をとることが、大学が教育、研究の場であることを考慮して適切であるとの判断に基づくものであって、妥当なものであると考えます。したがって、その運用が今後適切になされるよう、さらに配慮をいたしたいと考えております。
  193. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま公安委員長、文部大臣から御答弁がなされました。たとえば東大事件に関しては、東大当局がこのほどその被害について告訴を提起した様子であります。この東大紛争の実態を見まするに、この四億円をこえる被害が昨今一度にこつ然として発生したわけのものではない。しかるに本日までこの告訴が怠られてきたということはまことに遺憾であるといわれておる。福田大蔵大臣、国有財産の管理責任者として、このような国有財産がそのように破壊された。国家は膨大な損害を背負った。いま国家公務員法によると、公務員はその職務遂行の過程において法律違反の事態を発見したるときは告発の義務を負う。特に大学当局は、その管理者としてその財産管理の責任をになっておる。その大学当局が、このような膨大な損害を国家に与え、治安、秩序においては乱離こっぱいである。これは、文部大臣としては大学当局に対して指導助言を行なうことができると法律に明定してあるが、どのような指導助言を行なってきたか、お伺いをいたしたい。
  194. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 長期にわたり授業も行なわず、しかも、国民の税金によってまかなわれておる東大の建物あるいは学術上の資料等がああいうふうに破壊をされたことに対して、まことに申しわけなく思っておる次第でございます。文相といたしましてもその責任を痛感をしておるわけでございますが、現在、国立大学の施設、設備等の管理につきましては、学長等にその権限を委任し、学長等の責任においてその管理の適正を期することとなっております。文部省としましては、従来から、機会あるごとにこれら国有財産等の管理の厳正を期するよう指導助言してまいっておりますが、今回の東大の学長等が行ないました告訴につきましては、事前に文部省にも連絡を受けておりますし、従来の管理の厳正を期する線に沿うものとして、今後さらに管理につきまして指導助言を与えたいと考えておる次第でございます。
  195. 春日一幸

    ○春日委員 時間がございませんから、質疑を通じて明らかにいたしたいと考えておりましたけれども、この際委員長を通じて資料要求をいたしておきます。  すなわち、東大がこうむった建物並びに器物の損壊は四億円をこえるという、まさに重大犯罪である。ならば警察当局は、これに対してどのような捜査体制をもってこの問題の処理に当たっておるか。捜査本部を設置する、あるいはその他の要員をこれに配備する適法な措置がなされておるかどうか、これを知りたいと思う。なおまた、検察当局も警察当局も、大学における違法な犯罪容疑事件について何かしら等閑に付しておるのきらいなしとしない。したがって、私が次に申し上げること、これをひとつ資料によって御提出を願いたい。すなわち、昨四十三年一月から十二月まで、この一年間、学生騒動によって発生した傷害事件のすべてについて、被害者の氏名並びにその被害の状況、並びにそれぞれの傷害事件に対する犯罪捜査の状況、中には日大騒動において警察官西条氏が重傷を負うて死亡されておる。傷害致死事件である。この事件に対する捜査は適法に行なわれておるかどうか。これらの諸問題を一括して、委員長を通じて本委員会に御提出を願いたい。    〔「迷宮入りだ」と呼ぶ者あり〕 そのとおりです。こういうような重大犯罪容疑事件に対する捜査というものが、暴力学生については二泊三日の旅行だといわれておる。このような殺人傷害致死事件に対する捜査が厳密に行なわれておるかどうか疑わしい。国民は大いなる疑惑を抱いておる。だから、これらの傷害事件に対する捜査が、刑事訴訟法その他法律に照らして適法に行なわれておるかどうか、われわれはこれを知る必要がある。資料によって御提出を願いたい。  そこで、私はお伺いを進めまするが、いまやこの東大当局は再建と廃校の岐路に立っておるのではないかと思われる。もしそれ東大当局が、大学の自治の金看板に隠れる暴力学生、これをこの上とも野方図に甘やかしていくならば、それはみずから東大を廃校に追いやることになるであろうし、これに反して現実に大学の機能を妨害し破壊しておる暴力学生を法秩序に照らして厳然として排除する、もって大学の秩序を守るのであるならば、そこから再建の道はおのずから開けてくるものと思われる。私はこの際、ひとり大学当局ばかりではなくして、政府もわれわれ国会も、広く一般の国民も、前時代的警察官アレルギーを払拭する必要がある。このような警察官アレルギー症状から脱却する必要がある。警察が民主主義の敵だなどというような観念錯誤を払拭して、そうして問題と正常に取り組む必要がある。もし警官がそのような民主主義の敵的な、そういうような要素があるならば、これは警察そのものを粛正せなければならぬ。どうかそういうような意味合いにおいて、この際治安当局といっては語弊があるけれども、警察並びに検察当局が、国民が法律を守ると同時に、そのような行政権を持つものが法律を忠実に厳正に執行することなくしてどうして法秩序が保てますか。  現在全学共闘会議の闘争の目的は、これを大学改革などではない。彼らがみずから宣言しておるように、それは政治闘争ではない、政治革命である。彼らの宣言文をこの間読んでみましたけれども、すなわちそれは、明治以来日本資本主義の矛盾を集中的に表現しておる東大を破壊して反体制の陣地を大学に構築する、そうして一九七〇年に向かって革命運動を展開すると言明をして、あのように安田講堂をはじめとする大学施設を不法占拠し、さらに町に出てバリケードを築いて、ここで市街戦、これを演習をやっておるんですね。一体このような大それたことが、大学の自治や学問の自由に何の関係がありますか。このようなものは学生運動でも何でもない。端的に言うならば、こんな大学にだれがした。問題はそこなんだ。もとより大学の組織にも、運営管理の中にも幾多の問題はあるけれども、思慮も分別もいまだ未成熟なこれらの学生たちを、大学当局と警察当局が、私はなれ合いとは言わないけれども、結果的になれ合い同然である。すなわち、気随気ままに、したいほうだいにやらしておいたら、これら若い諸君がやがて暴走してこのようなことになることは当然の成り行きである。疑いもなくこれを行政府と大学当局との共同責任である。この際政府並びに大学当局は、国民の前にみずからの職責の何たるかを猛反省あってしかるべきだと思う。総理、この点はいかがでありますか。
  196. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題はお説のとおりであります。私も教育の問題でありますだけに、事柄が大学の問題でありますだけに、次の世代をになう青年の教育の場である、そういう大きな使命を持つ大学でありますだけに、実はたいへん心配もし、国民に対して、このような状況になったことについて遺憾の意を心から表しておる次第であります。  新しく出発していく大学、先ほどお述べになりましたが、これまた春日君の御指摘のとおり、私はお説に敬意を表しつつ賛意を表するものです。ありがとうございました。
  197. 春日一幸

    ○春日委員 賛意を表するなどというような筋合いのものではないのである。あなたは国民の前に責任を痛感して——いままで大学当局のやり方も警察当局のやり方も検察当局のやり方も、ずさんでちゃらんぽらんで、ついにかくのごときどろ沼の混乱を発生せしめたのである。猛省あって、今後にいろいろな立法措置あるいは行政措置、これを改めていかなければならぬ、改善改革をしていかなければならぬ。わけて一九七〇年、これは国政の大事です。たいへんな混乱が予想される。今にしてこの混乱をおさめて秩序を回復せなければ、国政の前途まさに憂うべきものがある。だから、同感だなんか、そんなことを言っておる次元の問題ではございません。  重ねて質問をいたします。文部大臣、そこで学問の自由と教授の活動の限界について伺いまするが、大学の教授は、言うまでもなく、憲法のもとにおいて学問の自由、研究の自由、思想の自由、これは保障されておる。しかしながら、その行動は国家公務員法、人事院規則の中におきまする公務員の政治活動制限でおのずから制約を受けると思う。そこで京都大学の井上清なる人物は、一月の二日付で東大全学共闘会議に激励文を送った。その内容は次のごとき趣旨である。——諸君をあまりにも破壊だという者がある。しかし破壊しなければ建設はできないのだ。歴史は諸君の味方である。諸君の先進的な闘争が全日本の学生、知識人の革命的な統一と団結をつくり出すとき、勝利は諸君のものであり人民のものである。このようなことを井上なる人物は学生に向かってアジっておるのである。三派全学連に。国立大学の教授がこのような行動をとることが許されるのかどうか。このような教授に指導される純真な学生が、革命をあこがれて破壊暴力の中に暴走していく、あたりまえのことじゃないか。政府はこの問題について京大当局に対しどのような指導、助言を行なうか、明らかにしていただきたい。
  198. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 国立大学の教授としての地位にある者は、国家公務員として、また教育者として、民主主義の根本精神にのっとりまして、法令を順守し、不偏不党かつ公正に職務を遂行し、公共の利益に寄与すべき立場にあるものでございます。このような見地から、その言動に十分慎重でなければならないことは申すまでもないことでございます。  しかるに、先般京都大学の井上教授が東大、日大の全学共闘会議に対して、その暴力行為を容認し支援するがごとき激励文を送ったと伝えられております。このことにつきまして、現在京都大学当局に対しその事実について照会をいたしております。これが国家公務員法等に定める政治的行為の制限、信用失墜行為の禁止等の規定に抵触するかどうかは慎重に検討する所存でございますが、もし伝えられるような事実があるならば、少なくともこれらの規定の精神に照らしてきわめて遺憾な行動考えます。  なお、国立大学の教授の懲戒処分につきましては、教育公務員特例法の定めるところに従い、大学管理機関の審査の結果により、その申し出に基づいて文部大臣が行なうこととなっておることを申し添えておきます。
  199. 春日一幸

    ○春日委員 しっかりやってもらいたい。  次は東大の入試問題につきまして、政府と東大当局との関係について質問をいたします。  ここに文部省設置法第五条によれば、文部省は大学の運営に関しては指導と助言を与える権限があるにとどまって、しかも別段の定めがある場合を除いては、行政上の監督を行なわないものとすると規定しておることから推論いたしますると、入試の実施または中止に関する権限は明らかに大学固有の権限であると思うがどうか。この点文部大臣より御答弁願いたい。
  200. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 この問題は、明文はございません。したがいまして、入試を実施するかあるいは中止するかということにつきましては、従来慣行といたしまして、平常の場合は大学当局によってなされてまいったわけでございます。しかしながら、文部大臣といたしましては、総定員の問題もございますし、また同時に予算の問題もございます。そういうような関係からいたしまして、今回の場合、非常な場合でございまして、もし中止ということをきめました場合におきましては、その入学志願者の方々をどうやってほかの国立大学に増員をお願いするかどうかというようなことについて考えなければならないところもございまして、実は協議事項として大学当局もこれを了承し、われわれも了承をいたしまして、協議し、そして協議がととのわずして事実上中止になったということでございまして、法的な根拠は明文はございませんが、しかし、お説のように、一応大学当局が今日までやってきた慣行ということだと了承をいたしております。
  201. 春日一幸

    ○春日委員 法律に明文がないということが明らかである。しかしながら、大学は、東大においては、九十年間の慣行は、入試を行なうかどうするか、このことは大学に与えられておる固有の権限としてそのことを決定し、かつ実施をしてきたのである。したがって、法律に格段の明定がないとしても、これは事実上現実の問題として大学に与えられておる固有の権限であるとみなすべきものであると思うが、どうでありますか。私は、本年度において、あのような異常事態があったなかった、これは別の問題である。すなわち、大学における入試の決定権並びに実施権は大学に与えられておる固有の権限なりと判断するが、間違っておるか、そのとおりか。
  202. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 やはり明文上ございませんので、実際問題としてそういう慣行ができたと思われるわけでございますが、しかしまた、同時に文部省といたしましても、全体の定員というようなもの、そしてまた予算措置というものを、国民のために責任をもってきめる権限があるわけでございまして、そういうようなところに多少不備な点もあるかと実は思っておるようなわけでございます。
  203. 春日一幸

    ○春日委員 だからこの問題は、総理もお聞きをいただいて、各閣僚もお聞きいただいた。法に明定がない。けれども行政慣行上、現実に大学が自主的に判断をして自主的に執行してきた。しかも、それは九十年にまたがるところの実績であるというこの事実を踏まえて、昨年の十二月二十九日に、東大と文部省とが東大の入試の問題を協議決定事項として特に取り扱った。このことは法律の範囲内で判断をするならば、それは指導助言の範囲を乗り越えた法律違反の行為である。それこそ大学がその自治を放棄し、文部省の側からいえば大学の自治を侵犯した、こういうことになると思う。けれども、十二月二十九日の時点においては、これは大学の意向と文部当局の意向とが期せずして合致をしたので、あの時点においては、あるいは文部省は指導と助言を行なって、その指導と助言に基づいて東大が入試を取りやめた、こういう説明も成り立つかもしれない。  けれども、去る一月二十日のそれは、その後情勢の好転に確信を持った東大が入学試験を実施したいと申し出た。その意思に反して、東大は入試を行なうべからずとした。そこで両者の意見ととのわずして、東大の意思に反し、文部省の意思によって入試が中止された。事実の経過は以上のとおりである。このことは、明らかに九十年間にまたがりまするところの慣行に基づく入学試験の実施権を、文部当局が大学の自治を侵犯してこれを押しとどめた。大学もまたみずからその自主的権利を放棄して、そうして入試を取りやめた。全く見るもむざんな醜態ではないか、いかがでありますか。
  204. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 十二月二十九日に、両者で協議ととのいまして、そして中止を一応きめたわけでございます。(「おかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)おかしくないのでございます。そうして、ただ一月十五日ごろの時点で、はなはだこの見通しは困難であるけれども、しかし復活の状況が整ったならば、つまり教育正常化が行なわれ、そして封鎖解除も行なわれて、そして授業が再開されて、入試実施に結びつくならば、その時点でひとつ考えてほしい、こういうことだったのでございます。したがいまして、十五日の時点で考えよう。しかし、十二月二十九日には両者一致して中止——一応決定じゃなくて、中止に決定を実はいたしたわけでございます。そのときに、結局中止を、両者がととのって合意して中止という場合と、それから合意して復活という場合と、そしてもう一つは、事実上ととのわない場合は事実上中止ということが、実は両者の間におきましては暗黙の了解が成り立っておったわけでございまして、それが二十日の段階において事実上中止ということにきまったわけでございます。
  205. 春日一幸

    ○春日委員 総理大臣、ただいまの質疑応答を通じて御判断をいただけると思うのだが、入試それ自体にしても法文上の明定がない。それが大学にあるのやら、あるいは文部省にあるのやら、あるいはそれが協議決定事項であるのやらわからない。私どもは、大学固有の権限であるとして大学の自主的判断に基づいて自主的に執行できるものと思っておるけれども、そうでないと言っておる。けれども、それは自信がないと言われておる。大学紛争が随所に随発をいたしておるけれども、その原因の中には多くの原因があるが、どれ一つ取り上げてみても、あいまいもことして捕捉するところを知らずだ。全くどうでも解釈のできるようになってきておる。警察権の介入にしても、そのような行政慣行がないというけれども、実際的には大学からの要請なくんば警察は立ち入らない。で、何もかもわからない状態になっておる。これはすみやかに、中教審の答申を待たれておると聞いておりますけれども、これは超党派的規模で問題の解決をはからなければならぬと思う。  大体、私は、この問題に関連して最後に一言東大当局にも申し上げておきたいけれども、あのように協議ととのわずして入試が中止されたその直後において、東大加藤代行は政府に向かって抗議文を提出されておる。すなわち、大学の自主的判断が政府によって尊重されず信頼されないことはまことに遺憾である、とは何たるたわごとか。大学というようなものは、その判断や意見が政府によって尊重されたり信頼されたりする必要は毛頭ないものである。それが大学の自治であり、それが学問に自由に精進する者のプライドでなければならぬ。まことにもって加藤代行のごときは、彼がみずから実施をしたいという決然たる決意だにあらば、やったらいいではないか。現にあの一月の九日、八千名の代々木派、反代々木派が激突しようとしたとき、二十分で警官の導入を行なえばそれで鎮静しておるではないか。秩父宮ラグビーグラウンドにおけるあの八千名の集団団交も、あのように粛々と行なわれておるではないか。一年間不法占拠された安田講堂、これも十八日、十九日の警官導入によって一ぺんに解除されておるではないか。大学当局が確信を持って断固として行なえば、入試のごときもいつどこでもやってやれないはずはない。しかるに、文部大臣が私の意見を尊重してくれなかったから、信頼してくれなかったから、入学試験の実施ができなかったのはまことに遺憾であるなどのごときセンチメンタリズム、そんなことでどうして東大当局の運営管理の責任をになうことができるか。  私はこの際、委員長に申し上げる。今度の七学部との十項目にまたがる確認書でも、もう各項目をずっと取り上げてみれば、法律的に、政治的に、随所に疑義がある。そしてそれを紛争解決の手段として延々と調印をいたしておる。国民に対する責任、何と心得ておるか。私は、こういう意味で、あの十項目に対する解明についても、本委員会に出て、国会並びに国民の前に、彼は確信を持ってそれを述べる必要があろう。そういう意味で、私は、適当な機会に加藤東大代行総長を本委員会に参考人として喚問されたい、そのことを強く要望いたして、私の質問を終わります。(拍手)
  206. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 春日君に申し上げます。ただいまの加藤代行を本委員会にということは、理事会で検討して申し上げることにいたします。  これにて春日君の質疑は終了いたしました。  次に高田富之君。
  207. 高田富之

    ○高田委員 私は、物価問題、それから農政のごく基本的な諸点につきまして御質問申し上げたいと思います。  先般、経済企画庁の外郭団体である国民生活研究所の、東京都民の生活意識調査というのが発表されました。非常に興味深い調査でございまして、千何百人かの人々を対象にアンケート調査をしたものらしいのでありますが、それを見ますというと、物価高で苦しんでいるというのが九五%ですね。その内訳は、収入が上がっても物価高に食われてしまうというのが三九・二、それから物価の上がり方のほうが収入の伸びより大きくて苦しいというのが四二・三、こういうふうに出ておるのです。非常にこれは興味深いと思うのでありまして、しばしば総理や大蔵大臣が、確かに物価は非常に上がってお因りでありましょう、たいへんな問題です、しかし、収入のほうがそれより上がっているんですよということを必ずつけ加えることをお忘れないのでありますが、しかし、これは国民のいまの実生活の実感からいいますと、ぴんとこないわけなんです。これが証明しているとおりなんですね。もっと、いまの物価高というものは、国民生活に非常な差し迫った重圧感となっておることは事実なんですよ。私は、それを前提にして物価問題に取り組まなかったら、たいへんな間違いをおかすと思うのであります。  ですから、いまの政府の諸施策の中で、毎日毎日国民が生活を通じて感じておりますことは、何としても物価政策は抜けているんじゃないか、物価対策が最も大きな穴になっているんじゃないか、まことに不安だ、信頼置けないということは、おそらく一致した意見です。この九五%という数字がこう出ておりますように、それほどさように深刻な問題だということから出発してもらいたいのです。私は、やはり今日までの本会議その他の御答弁を聞きましても、その点がやはり、聞いております国民が、どうも物価対策に対する取り組みが弱いんじゃないか、真剣みが足らぬじゃないかという気持ちを率直に持っておると私は思うんですよ。この点について、まず最初に総理からお考えをただしておきたいと思うのです。
  208. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 物価問題は、いま高田君が御指摘のように、当面する政治課題の最重点施策でございます。したがいまして、政府といたしましても、これと真剣に取り組んでおるつもりであります。いままでの施政演説その他をお聞きになりましても、今回わずかな時間ではありましたが、その間に物価問題を取り上げ、しかも具体的にこれを説明した、具体問題を取り上げたということ、これはいままでの例にないことでありまして、それほど政府も真剣に取り上げている、この点を御了承いただきたい。  もう一つ、最近物価安定推進会議などに出て、いろいろ各方面の意見を聞いてみると、何といっても、物価についてはいわゆる物価高というムード、そういう感じ、それが非常に強く動くから、現実の物価の上昇率、その上昇率以上に強く響いている、そのものをやはり消すことを考えないと、物価問題と取り組んだとは言えませんよ、こういう御注意も受けております。私は、確かに物価というものはそうしたものだと思っております。  したがって、数字の上から、いま九五%の者がたいへん物価高に苦しんでおる、こういうものではないように思いますけれども、しかし、何といっても、いまの物価が、昨年のものが五・三%になっておる。こういうようなことは、とにかく物価が安定しているとは言えない。もっとわれわれは努力しなければならない、かように考えておる問題で、ことしこそ五%以内にとめよう、かように企画庁長官も申しておりますのも、これを政府全体がそういう意味で各省とも協力してそこへとどめよう、国民に与える感じから申せば、いわゆるそのムード感、それをやはりぶちこわさないといかぬように思っております。
  209. 高田富之

    ○高田委員 ただいま非常に力強いおことばなんですが、しかし、やはりちょっとひっかかりますのは、そのムード感ということなんですが、これは単に、物価の問題というのは、何か感情的に実質よりも重く感ずるのだ、ムードだ、それを打ち消すということが大事だというようにちょっと受け取れるのですが、これは私ちょっとひっかかるのです。私はそうじゃないと思うのですよ、総理。これは非常に大事な点だと思うのですが、数字では確かに物価が上がったのは五・三%で、月給は一割上がったじゃないか、八%上がったじゃないか、六%上がったじゃないか、いずれにしても月給が上ったほうが幾らか上じゃないか、こうおっしゃりたいような感じなのですが、しかし、私はそういうものじゃないと思うのです。それは必ずしも物価指数の中に入っていませんものもたくさんありますし、それから所得の水準によりましても、特に物価のたくさん上がったものをもろにかぶっている生活内容というものもありますし、それよりなお大事だと私が思いますことは、実際に消費水準が上がっているんですね。それは自分たちの生活が高まったから消費水準が上がったという、非常に健全な上がり方じゃないと私は思うのですよ。無理やりに押しつけられて、売りつけられてというか、買わなければならないように何となくなっている。その消費水準の上がり方というのは収入の上がり方以上なんです。その高まったものが、大体値段がみな上がっているもの、高いもの、大体日本人でいいますと、電気製品でありますとか、自動車でありますとか、あるいは化粧品だとか、薬だとか、食品類でしょう。いずれも生産が倍にも三倍にも毎年ふえるようなものも全部消化させられているわけですよ。非常に値の上がっているもの、ぐんぐん押し込められているわけですよ。だから、幾ら収入が上がってもとても足らない。ことしあたり、この中にも出ておるのですが、とても貯金ができなくなった、もう借金だ。これは単なるムードじゃなくて、実際生活がいまの経済状態では追いまくられているというのが事実なんです。ムードじゃないのです。これを解決することをどうしても考えなければならない、これは物価対策の根本ではないかと私は思うのです。ですから、これはいま私は御意見を申し上げたのですが、そういう見地で私はこれから若干の御質問をしたいと思うのです。  ついでですから、これはきのうおそらくお答え願ったかもしれませんが、ことしの目標はいま五%とおっしゃるのですけれども、これはちょっとふしぎに思うのです。これは国鉄の運賃値上げを見込む前に五%ということをわれわれは聞いておったのですが、入ってからのも五%というのはちょっとこれはおかしいじゃないかと思うのです。もう少し目標は厳密にお立てになって、立てたものは実際にやるというのでございませんと困ると思うのですが、この目標五%というのは、どの程度の確信をお持ちになっておるのでございますか。これはいま言いました国鉄の運賃値上げの前の数字じゃないんですか、いかがでございますか。
  210. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お答えいたします。  なるほどおっしゃとおり、公共料金を全部抑制して、そうして五%程度で消費者物価を押えたいということを昨年私申し上げました。そこで、その後においていろいろ積み上げてまいりますと、なるほど国鉄の料金を値上げしますると、五%では多少無理であるということも私たちも知ったのでありますが、しかし、国鉄料金以外の私鉄料金——便乗値上げをとかく行なわれるのでありますが、便乗値上げはこの際一切やらぬという条件で、そしてその他の点において、たとえば物資、食料品が上がれば海外の安い食料品を輸入するとか、そういういろいろな方法がございますので、そういう方法を講じてどうしても五%で押えなければならないという目標でやっているのでありまして、これには多少政策的な目標もありますけれども、五%以上に消費者物価を上げること自体が日本の経済を混乱さすという心配を持ちますので、是が非でも五%で押えたいということで、各省ともに努力してやりたいというつもりでやっておる次第であります。
  211. 高田富之

    ○高田委員 ただいまたいへん率直な御答弁をいただいたのですが、そういうふうに実際に公共料金一切上げない前の数字なんです。それをいまのような御答弁でいきますと、今度は、だから見通しというようなものよりも、心がまえになってきたんですね。これ以上上げちゃしようがないんだぞというのが五%だ、こういうふうなことであって、実際的には政府自身が相当無理に出しておる数字。ですから、ほんとうは自信がないのだというふうに受け取らざるを得ないんですよ、これは。ですから、よほどこれは真剣に取り組んでいただかなければ、これはもう五%じゃ済まないのだというふうに思うほうが当然なんです。ですから、私は、そういう点につきましても、物価対策はもっともう一段深刻に、真剣に取り組んでいただきたいと思うのです。  そこで、これは根本問題になりますけれども、どうして一体こんなに物価が上がるんだろう。きのうは財政経済の面、特に金融の面から北山委員のほうからいろいろお話がありまして、何しろ流通貨幣量というものが、むろん物量のふえるものの倍ぐらいのスピードでどんどんふえていく、この物と金の乖離がこんなに広がるということは異常じゃないか、これを解決せずして何だというような相当突っ込んだお話があったわけでございます。それらにつきましては、いろいろ学者の間でも異論のあるところでございましょう。しかし、私もそこらに大きな原因があると思っております。思ってはおりますが、きょうはその論点を重ねて繰り返すことをやめまして、私は、現実にこれとも関係があると思うのですけれども、たくさんの流通貨幣量がどんどん出ていくということの根本には、やはり金融関係で貸し出しが非常に——おそらくこれは世界に類例を見ないと思うのですが、大企業に対する貸し出しというものがどんどん逐年ふえていく。それはなぜそんなことが可能であるのかといいますと、やはり寡占体制というものがその基礎にあると思うんですよ。そうして、その大きな企業が、少数の企業がますます有力な少数企業になってまいりまして、その間におのずから価格面での競争というものが後景に退いて、価格以外の面での競争が熾烈をきわめていく傾向、そういうことから結局大企業相互間において設備拡張競争、こういうことになってくる。ですから、私は、この異常な民間設備投資の競争というものの背後に見のがしてならないのは、寡占体制がだんだん進んでいるんだ、この基礎構造の変化というものにメスを入れなければ、やはり問題が解決しないのじゃないか、この点を私は非常に心配しております。  そこで、なぜ物価が上がるかということの政府の御見解を承りたいのですが、ただいまもちょっと私自身の考えを申し述べてしまいましたから、ここで政府自身が出しております——政府でございませんが、公取のほうで最近非常に貴重な調査をされておりますから、これに基づいて、政府の御見解を承りたいと思うのです。  公正取引委員会が、つい最近「生産集中と価格変動」というたいへんいい調査を公にされております。この「生産集中と価格変動」で取り上げられ  ておりますのは、二百十一の業種を取り上げておりまして、すでに御承知と思いますが、非常に厳密に集中度というもの、集中の形態というようなものを分類いたしまして、これらの該当する業種の商品の価格の変動する幅、幅が大きいか小さいか、それから変動する回数がひんぱんであるかひんぱんでないかというようなことを、集中度の程度と類型に合わせながら非常に一目りょう然に表にされてございます。私はこれを見まして、なるほどこれは集中度が高まれば高まるほど、価格というものは動かなくなる。非常に一目りょう然、事実がこれを証明している。しかも、こんなたくさんの重要な品目が、ほとんど大部分硬直性のある部分にあるわけでございます。これを見ますと、どうしてもわが国における物価対策の一番の根本は、このたくさんの重要産業を網羅して、しかも次第に価格の硬直性を強めつつある。これにメスを入れずして何で物価対策が前進できるかということを私は痛感いたしますが、政府は、いまの物価が毎年上がっておる。これは一体何が原因だ。いま私が申し上げましたようなことが根本原因だというふうにお考えになっておられますか。それとも違ったお考えをお持ちでございますか。
  212. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 消費者物価の上昇につきましては、これはたびたび申し上げましたとおり、構造上の原因が基礎でありまして、生産性の高い産業と生産性の低い産業とがあるために、したがって、一方生産性の高い産業は非常な高度の成長を遂げまするが、生産性の低い産業、農業とか中小企業とかいうものは、成長が低いのであります。そういう点からして、そこに格差が生じて、したがって物価の上昇を来たしておるのだ、これが基本であります。  そのほかについては、先ほどもお話がありましたとおり、寡占産業というものがおのずから価格を硬直化するという危険は、私はないとは言いません。がしかし、かりにそういうような事実があるとすれば、これは公取のほうでも取り締まりをしていただいて、独占価格というものはなくするように取り締まりをしていただきたいと思いまするし、また同時に、寡占産業でありましても、適正、公正な競争条件を備えてお互いに競争さすというように指導しなければならぬ、こう考えておるのであります。また、それが日本の産業で独占価格を支配する、価格の騰貴を促すというような場合には、安い海外の商品を輸入するというような方法によって国内の消費者物価を下げるというような方法も講じていきたい、こう考えておりますので、とにかくお説のとおり、寡占価格というものが価格を硬直化するという危険はないとは私は申し上げません。
  213. 高田富之

    ○高田委員 いまの御答弁では、やはり私の考えとは違いますですね。つまり、いまの経企庁長官のお答えによりますと、やはり根本原因は生産性の格差なんだ、生産性の格差があるというこの経済の実態、下部構造、これが物価を上げている原因なんで、寡占のほうはそういうおそれはある、寡占価格なんというもの、管理価格のおそれはあるけれども、それは公取のほうで取り締まるし、外国からものを輸入するとかいうようなことで処置できるので、根本はやはり生産性の格差だ、農業、中小企業がおくれているからだ、こういうようにとれるわけでございます。  そこで、私は、公正取引委員会にも来ていただいておりますので、公取の委員長から、こういう貴重な資料を出しておられますので、いまの私の申し上げました物価問題の一番大事なことは、この価格の硬直性、管理価格の傾向、これを押える、これを解決するということが根本だというのが私の考えなんですが、政府の意見と私の考え方をお聞きいただきましたので、公取のほうの御意見をお聞きしたいと思います。
  214. 山田精一

    ○山田政府委員 お答えを申し上げます。  寡占が最近における物価上昇の最大の原因ではないかというお尋ねでございましたが、物価上昇には各種の要因がからみ合いまして上がっておるものと私は考えておるわけでございます。そのどれが一番最大の要因であり、あるいはどれが小さい要因であるかということは、それぞれ直接御担当の役所において判断をいただきたいと思うのでございます。  ただ、私ども公正取引委員会として考えました場合には、寡占という概念は、かなり意味が明確を欠いておる概念ではないかと存じます。御承知のように、寡占理論が経済学の中にはっきりといたしてまいりましたのは、比較的最近のことでございまして、寡占とは何ぞやという点には、まだ定着した意味合いというものはないように考えるのでございます。もちろん、寡占の中にも、協調的寡占もございますし、また競争的の寡占もございます。私ども立場といたしましては、寡占と申しますよりも、一定の取引分野においてただいま御指摘の競争が実質的に制限されるような現象がございました場合、これを現行独占禁止法によりまして有効適切に処理をいたしてまいりたい、こういう基本的な態度をとっておりますことを申し上げたいと思います。
  215. 高田富之

    ○高田委員 当たりさわりのない御答弁でありますが、私はこれはかなり重大な問題だと思うのです。いままでいつでも政府は、中小企業と農業の生産性が低いからだということで御説明になっているのですが、これでは、中小企業と農業の生産性を上げるということは、これは毎年取り組んでおるはずではございましょうけれども、これはつかみどころのない、相当長期にわたる大きな政策課題でございます。特に物価問題として——もちろん、そういうことが物価を上げる一つの要因であることをわれわれも否定してはおりません。しかし、それは一つの課題といたしまして、それはまだ物価問題として端的に取り組み得る問題ではないのですよ。  それよりも、たとえばこういうことですね。では、農産物が一番高いじゃないか、食料品の価格が一番価格の上昇の寄与率が大きいじゃないか、それは農業の生産性が低いからだ、こういうのですけれども、農業の生産性を高める施策というのは、それはなかなか一年や二年ではできません。しかし、いま農産物を高くしている端的な原因は、肥料が高いじゃないか、農薬が高いじゃないか、農機具が高いじゃないか、もしそれが三割下がったらどうなるのだ、そういうふうな問題が端的に出てくるわけなんです。つまり、大企業が大量につくる基礎物資で、生産性が毎年相当上がっている。数年間で何割も上がっている。そういうものが生産性が上がっただけ下がってきたら、中小企業の製品がいまのようにははね上がりませんし、農産物価格もそんなにははね上がらないわけなんですよ。だから、卸売り物価が硬直している。最近は上がっているでしょう。年一%これから上がるというのですよ。下がるべきものが硬直しているのがたいてい問題なんですが、今度は卸売り物価すらも上がっているんですよ、相当生産性は上がっていながら、逆に上がっているのですよ。ですから、物価問題の根本はこれだというものを明確につかまずして、実効をあげるような物価対策というものは出てこないのだ、そういうのが私の主張なんです。いかがですか、総理
  216. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 高田君の名演説に実は耳をかしていたときに、とたんに私に質問を向けられたのですが、いまの物価の問題は、一つの原因で、これが物価高の原因だ、こういうわけにはなかなかいかぬのじゃないだろうかと思います。私どもがいままでとっていた構造上の原因、それはいま御指摘になったとおりであります。生産性の低い部門、そこにやはり必要な労働力があるんです。しかし、いまの賃金の決定方式からいえば、所得のいいところ、生産性の上がっているところ、そこで働く労賃はこれは高いところへきている。やはり労働賃金の平準化とでも申しますか、どんな産業におきましても、やはり賃金はそういう方向に行く、平準化の方向に向かっていく。そうすると、いまの生産性を上げてこの賃金の高騰を吸収できるところの部門はよろしいが、生産性が低くて賃金の高騰の部分を生産性で解消することのできない部門、こういうところでは、やはり価格を上げざるを得ないということになる、こういうものも一つあるわけです。  それからまた、ただいま言われますように、寡占の問題で、そうして独占価格で自分がかってにそれをきめていく、それはあぶなくて心配でしようがないじゃないか、それはやっぱり競争の形がいいじゃないか、こういう御議論もあると思います。しかしとにかく、いずれにいたしましても物価の問題は単純な問題じゃない。やはりあらゆる面から取り組んでいかないとこれは解決はできない。先ほどのお話を聞いておりまして、やはり寡占形態というものも一つこれあると思いましたが、そればかりじゃない、かように思いますので、その点もお含みを願いたいと思います。
  217. 高田富之

    ○高田委員 物価といいますと、いつも賃金、賃金ということをすぐおっしゃるのですけれどもね。私はいまあまりそういう面にこだわっていたくないですけれども、しかし、これは重要な問題ですから申し上げておきますけれども、先ほど申し上げました寡占価格を形成している、管理価格を形成していると見られるような産業部門におきましては、生産性が非常に上がっておりまして、一単位当たり製品の中に含まれる労賃部分は逐年少なくなっております。非常に少ないです。特に鉄鋼その他の代表的なものを見ますと、諸外国の製品と比べますと、日本の労賃部分というのは格段に低いです。非常に低いです。現在、全体の工業製品の原価構成を見ますと、労賃部分は平均一割ぐらいだろうと思います。通産大臣、どのくらいになりますか。鑑工業製品の中に、原価構成の中に占める労賃の割合。
  218. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま手元に資料を持っていませんから、あとで調べて御返事いたします。
  219. 高田富之

    ○高田委員 いま申しましたように、数字はあとでいいですが、非常に生産性の上昇率が高いです。わが国におきましては、そういう上昇率の高いところにおいてもなおかつ賃金の比重は年々下がってきておるのです、原価構成の中で。諸外国におきましてはそういう点を特に問題視するわけなんですが、同じ製品でございましても、労賃の占める部分は日本はよその国よりも格段に低いです。ですから、労賃、労賃というところにあまりに重きを置いてお考えになると、先入観にとらわれて、正しく物価の動きを見ることはできませんですよ。  ですから、私がいまここで一番問題にしようと思いますのは、それでは、工業における生産性の上昇率は近年、まあ五年でも十年でもいいですが、どのくらいのテンポで上昇しておるのでありますか。どなたか政府委員でもけっこうです。——通産でわかるでしょう。通産でわかるはずです。
  220. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 しっかり答弁してください。
  221. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 労働生産性の指数について申し上げますと、これは日本生産性本部の調べでございますが、昭和四十年を一〇〇にいたしますと、四十二年では二二六・一というふうになっております。対前年・四十二年では一六・五%の増加ということでございます。
  222. 高田富之

    ○高田委員 通産省でちょっとこの間電話で聞きましたら、すぐ返事があったのですけれども、四十年を一〇〇として三十七年が七八・五、四十二年が一三一・七、それから四十三年十月、去年の一番近いところで一六一・九、これはもう電話で即座に通産省で御返答があったわけなんです。いまのは生産性本部だそうでございますが、いずれにしましてもこの生産性の上昇率というものは非常なピッチです。高いのです。ですから、そういう生産性の上昇が急ピッチであるにもかかわらず、価格が硬直しておる。たとえ一%でも上がるというようなことは、これは容易ならざることであります。きわめて重大であります。  先ほど公取の委員長さんは、いろいろな原因がございましてというようなお話でございますが、その公取自身も今度の調査の前に、四十一年に日銀の卸売り物価指数を形成しております七百七十品目を取り上げたことがある。その中で硬直性ありと考えられるものが実に三百三十九品目なんでしょう。日銀の卸売り物価指数に並べられている七百七十品日中三百三十九品目であるということを公取が発表されて、これは調査せねばならぬと言われて、その中からぼちぼち幾つかの品物の調査に取りかかっておった。手が足らないとか、いろいろな問題がその後に起こったとかということで、あまり進捗されておらないことは非常に残念ですが、しかし、こういうふうにたくさんの品物の中の実に半分というものが硬直性ありと見られているのですから、事はきわめて重大なんですよ。これが逆に一割下がる、三割下がるということになってごらんなさい。物価問題なんか相当程度これで解決するのです。しかもいまは解決する方向じゃなくて、逆の方向へ進んでいるのですから、事態はますます憂慮すべきです。  そこで、一つのそういうふうな価格の硬直性という問題の具体的な二、三の事例といたしましてお聞きしておきたいと思いますことは、代表的な商品で、大企業製品で輸出価格と国内販売価格との間に二倍の開きがある、三倍の開きがあるというような品物が相当数あるわけでございます。その中で、通産省でも経企庁でもけっこうでありますが、いつもいろいろなもので引き合いに出されますもの、これは正確を期すために事務当局の数字を発表していただいたほうがいいと思うのですが、自動車、カラーテレビ、白黒テレビ、扇風機、冷蔵庫、トランジスタラジオ、こういうようなのがいろいろな書物などにときどき出てまいりますので、これは一体外国へ売っている価格と国内へ売り出している価格とはどれだけ違うかということを、ちょっと正確な数字で発表していただきたい。
  223. 大平正芳

    ○大平国務大臣 自動車でございますが、わが国の自動車のアメリカにおける小売り価格は、千五百CCないし千九百CCクラスで七十万円ないし七十二万円であり、わが国からの輸出価格は三十六万円ないし四十万円程度であります。一方、同種の車の国内小売り価格は五十万円ないし五十五万円であります。輸出向け出荷価格と国内向け出荷価格は、まず第一にその差額は、御承知の物品税一五%が国内向けには課せられております。それから国内向けの車の価格には、広告費、アフターケアサービス費、販売奨励費等が含まれておりますが、輸出車のそれには原則として含まれていない等を考慮すれば、御指摘のように非常に格差があるものとは考えておりません。  それからカラーテレビでございますが、輸出価格は十九インチ型でおおむね六万四千円で、一方国内の現金小売り正価は十五万五千円前後であります。このような差は、これまた国内価格につきましては卸、小売りのマージンを含んでおりますこと、それから国内につきまして広告費、サービス費、それからメーカー負担の流通経費が含まれておりますが、そういったものが輸出には含まれていないということ、それから、ものによりまして、先ほど申しました物品税が国内向けには課税されておって輸出は免税であるというような事情から、そういった格差が出ておるのでございまして、国内品が不当に高価であるというようには私ども考えておりません。  それから白黒テレビでございますが、十九インチ真空管、国内小売り価格が五万七千円、輸出価格が二万一千六百円、トランジスタラジオ、国内小売り正価が六千五百円、輸出価格が三千五百円というようになっております。
  224. 高田富之

    ○高田委員 外国へ売っているものが損をして、原価を割ってダンピングをしているんだとは、私は思わないのです。そういうことはないと思うのです。たとえばいまお話のあったトランジスタラジオなども、国内が六千五百円、輸出は三千五百円。六千五百円と三千五百円、だいぶ違うわけですが、この三千五百円は、じゃ原価を割ってダンピングしているのか、私はそうじゃないと思うのですよ。なぜならば、トランジスタラジオ生産の八〇%は輸出しているのですから、八〇%輸出に原価を割って輸出することはあり得ないのです。ですから、この三千五百円の輸出価格で引き合っているのだと見ざるを得ないのです。  ですから、この国内価格、まあいろいろいま原価の御説明がございましたけれども、原価のほんとうの構成というのは、政府といえどもわからないと思うのですよ。会社の中に入っても、なかなかそれはわかるものじゃないと私は思うのです。実際、原価の押え方というものは、いろんなファクターから推定していくよりないと思うのです。  それで、異常に国内が高いということの、これを外からわれわれが想像する一つの要素としましては、広告費でありますとか、交際費でありますとか、販売促進費でありますとか、何かしら直接生産に関係のない費用というものが非常に大きくて、しかもこれが年々どんどんふえつつある。ここに私は、国内価格との間に開きをますます大きくしていく何か重要なポイントがあるなというふうに感ずるのです。こういう点につきまして、これは経済企画庁長官、どういうふうにお考えになりますか。
  225. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 お話しのとおり、いまの広告費とかそういうような費用は相当使っております。しかし、外国へ輸出しております日本の商品も、相当外国では広告費を使っておるのでありますから、また、あるいは販売の人員も使ったりなんかしておりますから、その点は外国へ輸出しておるから安いとか、日本で、国内で売るから高いとかということとは問題が別だ、私はこう考えておる次第でございます。  それからなおこの機会に、先ほど蒲田さんから、農産物などで価格が高いのは、肥料だとかそういうものが高い、農機具が高いから高いのだというお話がありましたが、ここではっきり数字が出ておりますから、ちょっと申し上げておきますが、昭和四十二年度におきまして農村の物価指数を見ますと、購入品は昭和三十五年を一〇〇としまして一三四・九です。ところが農産物の売り値は一六六・七でありますから、したがって購入品のほうが安いということになります。だから、購入品が高ければ、またしたがって農産物が高いというのはあたりまえでありますが、購入品が安いのでありますから、先ほどの御論旨はちょっと違っておるのではないか、こう考えております。
  226. 高田富之

    ○高田委員 それは違うのでありまして、農産物は、さっき総理もお話ししていますように、生産性はもちろん低いのですよ。労賃の上がった分をそのまま吸収はできない、それはわれわれも知っております。しかし、それにもかかわらず、基礎物資のほうが上がるのじゃなくて、あるいは硬直じゃなくて下がっておったら、それは農産物や中小企業製品の上がり方はずっと少なくて済むのですよ。ですから、それは決して反論にならないのです。あなたのおっしゃることは、残念ながら反論にならないのです。  そこで、いずれにしましても、いろいろ御説明はありますけど、異常なんです。この輸出価格と国内価格の開き方というのは異常なんです。しかも、それはますます開いているのだから、なお問題なんです。年々開きが大きくなっているのだから問題なんです。それを私は、そういうふうに見ざるを得ないな、こう見ておるわけです。それは、広告費や交際費の膨大になり方というものは日本が世界一ですよ。ここに目をつけなければ問題解決にならないのです。ですから、いまの御答弁は両方ともいただけない。  こういうことでございまして、要するにいま私が申し上げておりますことは、ますます集中が年々進んでまいりまして、いわゆる高度の寡占状態にますます進んでいる。特に最近はいわゆる大型合併がはやりもののようになりまして、やったものもあるし、やれなかったものもありますが、形勢としてはそういう方向でしょう。どんどん進められておる。私は全体の経済界の動き、それをリードする政府の姿勢、こういうものを相当深刻に考えてもらいませんと、いま言うように物価問題というものを真剣に考えれば考えるほど、いまの経済政策は根本的に非常に大事な問題を含んでいるということなんですよ。  そこで、当面の、これをごくアップ・ツー・デートの問題でございますが、いま富士・八幡の問題が毎日新聞をにぎわしております。鉄鋼業界における上位二社、ビッグ・ツーの合併問題ですから、これを実に大きな問題でございまして、世界的大企業が生まれるわけであります。だいぶ難産しておるようでございますが、これは非常に重大な問題を私含んでおると思うのです。きょうは私はそういう産業政策には深入りいたしません。これは同僚の田中議員があとから詳細にやる予定でございますから、しませんが、いま申し上げました寡占価格の問題でございまして、いまの八幡・富士の問題を考えますと、これは公取自身が発表されたさっきの資料ですが、毎日新聞をにぎわしております品目、重軌条とか珪素鋼板なんというものは一番集中度が高くて一番硬直性の強いもの、最も強いものの部類です。過度な、集中度が高くて変動性の一番ないものがここに入っておるのです。一番問題にしなければならない物価問題で、最大の焦点にしなければならないのは重軌条と珪素鋼板、これにちゃんと出ておるのですね。このトップ二社が合併しようというのですから、物価問題の見地からこれはどういうことなんです。これは一体どういうことなんだろうか、全く私理解に苦しむのですが、山田委員長せっかくおいででございますので、物価の面からこういう資料をお出しになったあなたの立場から、この合併問題、まだおっしゃれない部分もあるかもしれませんが、現在どういう段階にあるのか御発表願いたいと思います。
  227. 山田精一

    ○山田政府委員 ただいま具体的の判定についてお尋ねをいただきましたわけでございますが、さような点もございますので、現在だいぶ時間をかけておりますが、十分厳正に、慎重に調査をいたしておるところでございます。
  228. 高田富之

    ○高田委員 ある学者に言わせれば、そういう個々の品目について、何か新聞を見ますと、九品目がどうとか三品目がどうとかといっておるが、そういうところへ突っ込んでおること自体がどうも姿勢がおかしいということを学者が私どもに語ってくれたのです。と申しますのは、粗鋼の生産だけ見たって、両方足せば四〇%近い、銑鉄だって五〇%近いんだ、もう論議の余地がないんじゃないかなというのが私の聞いた学者の意見でございました。いずれにしましても、十分物価政策の見地から深刻な御検討を願いたいと思うのです。  ついでに通産省に聞いておきたいのですが、通産大臣は、こういういまの大型合併の方向というものについては、どういう基本的な政策、姿勢というものをお持ちなんですか。
  229. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たいへん恐縮ですけれども、高田委員の先ほどの御質問の中で若干気にかかることがありますので、一、二前もって御説明させていただきます。  寡占状態が価格の硬直化をもたらす傾向がある、私も同感に存じますけれども日本の現在の状態において、あなたの言われるようなぐあいに顕著な傾向が見られるかというと、必ずしもそうでないのでございまして、非常にふしぎなことには、超寡占型の企業の生産物の価格が累年下がってきておるのでありまして、競争型のものがむしろ上がっておるのでございます。このあたり、あなたが先ほど御指摘になりました生産性の向上のテンポが非常に速うございますから、寡占の硬直傾向を消しちゃって、相殺しちゃって、なおこういう傾向になっておるのかどうか、このあたりは理論的になお究明する余地が十分あると思いますけれども、いまの事態の動きが、あなたの言われるような純粋な形において出ていないということをまずひとつお断わりをいたしておきます。  それから第二の広告費、交際費が世界一であるというような御指摘でございましたが、私どもの調べによりますと必ずしもそうでないのでございまして、わが国の企業が費消いたしておりまする交際費、広告費というものは、国民所得に対する割合から申しましても、数字は御要求があれば申し上げてけっこうでございますけれども、それからパーヘッド、人口一人当たりから申しましても、決して過大ではないと承知いたしておるのでありまして、世界一である、非常な乱費が流行しておるという御認識でございますならば、それは改めていただきたいと思います。  それから、本論の大型合併の問題でございますけれども、私ども産業政策当局といたしましては、わが国の産業の体制が強化され、体質が改善されまして、けわしい開放経済体制の中で十分立ち向かっていけるだけの力を持っていけるようなぐあいに産業政策は進めてまいらなければならぬと思っております。それには確かに合併も一つの方法でございます。それから逆に、専門化も一つの方法でございまして、合併の逆に分離のことも考えていくべきだと思いまするし、また個々の企業が独立した姿におきまして、あるいは仕入れを共同にいたしましたり、あるいは共同の設備を持つというような方法によって合理化の実をあげる、あらゆる方法をもちまして産業の体質の改善をはかってまいるということを基本の考え方にして、生産ばかりでなく、流通の分野におきましても政策を進めておるわけでございます。大型合併についてのお尋ねでございますが、そういうラインに沿いまして、独占禁止法が許す範囲内におきまして、私どもがねらう合併による合理性の追及が可能な限りできまして、体質の改善に役立つことができればたいへんしあわせと考えております。
  230. 高田富之

    ○高田委員 ただいま広告費と交際費の話がありましたが、これは、私が一つ言い足りないことがあるのです。それは、うんとべらぼうな広告をやったり、交際費を使ったりして下がるべきものが下がらないという品物の種類と、それから、そういうことよりも設備投資競争のほうへどんどんどんどんむだな二重投資、三重投資をやることによって、広告、宣伝よりそっちへ力の行っている産業とあるのです。わが国の場合は、その比重も相当多いのです。だから、それのほうで言いますと、減価償却費なり金利なりというものは、原価の中でうんと上がっておるのです。私はその両方を言ったのです。  ですから、特に典型的なもので、言えば、化粧品だとか薬なんてもの、これはまるきり広告代を買っているようなものです。原価の十倍くらいする化粧品、これはほとんど広告代です。それから薬のごときは、原価の百倍ぐらいするものも相当あるのです。この委員会でも、いつだったか、専門家の滝井君——いまはおりませんが、同僚議員の滝井君、お医者さん、専門家ですが、何でもビタミン剤だか何だかで百倍ぐらいのあれを発表しておりました。ですから、そういうものでありましても、驚くべき広告費を使っておる。そういうことと二つあるわけですから、それを私はいま申し上げたわけです。  そこで、今度は次に、やはり寡占価格の問題、管理価格の問題で重要な問題は、何といっても再販制度でございます。これもしばしば物懇あたりからも相当きつい指摘もありまして、わざわざ法律で売りくずしを防止しておるわけでございますから、これは相当厳密にやらなければ、これにみんな便乗してしまうということになるわけです。   〔委員長退席、中野(四)委員長代理着席〕  そこでお伺いするのですが、公正取引委員会ではこの問題をお扱いになったはずであります。最近までに物懇などの、要請もあり、おそらくこれは国会でもそういう議決があったこともあると思うのでありますが、再販の中に含まれておる品物については洗い直しをしろ、それをやるべきものと、やる必要のないもの、やってはならぬものとあるわけだから、洗い直しをしろという強い要請がございました。それについてはどの程度の作業が行なわれて、どの程度のものがはずされて、現在はどの程度の品目が再販指定品目の中に入っておるか、これをひとつ御説明願いたい。
  231. 山田精一

    ○山田政府委員 再販制度についてのお尋ねでございますが、再販制度と申しますものは、御承知のように、製造業者とそれから流通業者と消費者の利益、この三つを法益といたしておると考えます。この三つの利益の間の調和を適当な点に、そのときの時勢に応じまして適切な点に調和点を求めていくというところが一番肝心なポイントではないか、かように考えておる次第でございます。  ただいま御指摘のございましたように、公正取引委員会といたしましては、最近、再販行為が小売り価格の硬直化をもたらすことがないかどうかという点を十分調査をいたしておりまして、昨年の十二月に、再販指定商品の告示の改正をとりあえず医薬品及び化粧品につきまして行ないました次第でございます。それとともに、当該商品の中で特殊な用途に使用されます品目でございますとか、現在この制度が有効に利用されておらない品目を削除いたした次第でございます。これは第一段階でございまして、今後さらに個々の商品ごとに、それが再販価格を維持いたす正当な行為の範囲を逸脱いたしておりますものとか、あるいは消費者の利益を不当に害するようなものにつきましては、逐次これを削除いたすようにしてまいりたい、かように考えております。
  232. 島田豊

    ○島田委員 若干削ったものもあるのでしょうけれども、最近改めて——特にお伺いしたいのですが、いまここで私は典型的なものをあげたいのです。それは薬品類、これらははずされたものもあると思うのですけれども、最近になってから相当ふえておるのではないかと思うのですが、どのくらいふえておりますか。
  233. 山田精一

    ○山田政府委員 これは昭和四十一年の数字が入手し得る最新の……(「四十一年か」と呼ぶ者あり)四十一年でございます。これが報告書をとっております一番最近のものでございますが、医薬品の全生産金額、五千七十一億ございますが、この中で実際に再販が実施されております額は約千百七十一億、かような数字が出ております。したがいまして、これは全体の生産額の二〇%見当に相なっておるわけでございます。  四十二年の数字はまだ集計が済んでおらないわけでございます。   〔「四十一年じゃだめじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  234. 高田富之

    ○高田委員 こちらの話のとおり、四十一年では話にならないのです。それから激増していると私は想像しております。それから激増している。  そこで、この再販の中身の検討でございますが、これは、本来こういう制度が設けられておりますのは、非常に特殊な例外的なものを守っておるわけなんです。こういうふうにどんどんどんどん申し込んで、みなどんどん許可になって、これが最終販売価格がきちっとくずされずに守られるということになりますと、これこそたいへんなことになるのです。しかも、この制度の中に入っているものが保護されているばかりでなく、最近はこれに類似した、一般にやみ再販なんていわれておりますが、類似の方法でもってやられているものが相当数ある。これはもう公然の秘密であります。いろいろなところで調査したものもありますけれども、膨大なものですね。ですから、再販で守られているものの価格が数千億円だとすれば、あるいはそれよりも、それの二倍も三倍ものものが、やみ再販で同じような手段でやはりやられている。結局、これを厳格に取り締まらなければ、兆ですね、何兆円というような台でべらぼうなものを不当な高い価格で消費者は売りつけられているのではないかということさえいわれておるわけなんです。これは非常に重大なんです。かつて公取でもこれがいろいろ問題になりましたときには、公取の方針としても、部内でも、これはいつそのことこの制度をやめてしまったほうがいいのではないか、こういう意見もあったとわれわれは聞いておるのでありますが、実際にこういう衝に当たっておられるあなたは、やはりこれは現在の段階では非常に弊害が多い、これこそいわゆるそういった価格の硬直性というものを実際につくり出す制度になって、かえって悪い制度なんだということを痛感されておると思うのでありますが、いかがでございますか。制度そのものをなくしてしまったらいいじゃないか、こういう意見に対してはどうお考えになりますか。
  235. 山田精一

    ○山田政府委員 再販制度につきましては、先ほども申し上げましたごとく、メーカーのブランドの保護、それから消費者の利益あるいは流通業界の利益、この三つの法益があることを申し上げたわけでございます。したがいまして、これは消費者の利益を害せざる範囲において最小限度は必要のある制度でございますと私は考えております。
  236. 高田富之

    ○高田委員 一つの例で申しますが、この制度が非常に悪用されている。医薬品が最近非常にふえてきた。これは私どももときおり国会でも問題にしたのですが、大衆保健薬というものが非常にいかがわしいものが多いのだというようなことが、学者も主張するようになった。方々で議論されるようになった。そこで、大衆保健薬で薬屋さんが直接しろうとに売るものと、医局のほうへ、病院のほうへ売る医療薬と、一応考え方を分けましたね。考え方を整理された。そうしたら今度は、大衆保健薬で売りたいものは、どんどんと、中には品名を新しく変えて、そうしてみんな再販指定のほうに持っていっちゃった。ですから、こういうふうなことをして、最近は逆にふえているわけです。非常にふえている。  そういうことでありますので、話を進めますが、特にこれは一つの典型なんです。ほかにも化粧品は大体似たり寄ったりでありますが、薬が非常に典型的ですから申し上げるのですが、薬につきましては、さっき申しましたように、価格がわからない。薬の価格とか化粧品の価格というのはわからない。わからない中でも最もわからないものなんです。これは販売をやっておる卸屋さん、小売り屋さんなんかに聞けば、化粧品や薬なんというものは原価はどうというものではないんだ、特に化粧品なんというものは、ものそれ自体を売るのじゃない、ムードを売るんだ、ですから、それを一々原価計算されてもそれはだめなんですよ、こういうことを一も二もなく言うわけですよ。それほどさように、大体平均十分の一だろうといわれておるのです。私どもは、そんなばかな、同じ皮膚によくきくものであるならば、何もそんなに高い必要はないんだから、同じ材料で安いものをつくったらいいじゃないかというので、ほんとうをいいますと、実は私どもつくったのです。私も発起人の一人で、つくったのです。それで実際に非常に気骨のある専門家が、よしおれが引き受けよう、わしも薬屋さんを何十年もやってきている、世の中のためにもろはだ脱いでやろうというので、同じ品物を十分の一で出すというので、つくり始めたのです。現在もう十年たっております。安いからなかなか売れなかったのですが、最近は安くても同じだということがわかって、だんだん売れるようになった。広告宣伝みたいになりますけれども、これはハイムという名前です。しかし、これはほかの品物がそれによって安くなれば、やめてもいいのです、もうけるのが目的じゃないのですから。つまり、ほんとうに正しい品物を正しく売るという運動として始めたんだから、みんな品物が安くなればやめたっていい。別に宣伝するためにやっているんじゃない。実際そういうものです。  それから、薬はもっとひどいと思うのです。薬はそれこそわからないのですが、その薬も、かりに薬十層倍であろうと二十層倍であろうと、きけばまだしもなんです。ところが、その大衆保健薬なるものが、ものによっては原価の十倍も百倍もして、きかないものが大部分だときては、これは大問題じゃないですか。そして、それがみんな再販指定の中に入ってしまっているのです。全部再販指定に入って法律で保護をされて、安くしなくてもいいんだということになっているのです。これは私が独断で言っているんじゃなくて、大学の教授連中だって、心ある人、しかも気骨ある人が言っている。非常に圧力が強いですから、勇気をもって言い、書き、やっておるわけです。たとえばそういうものの中で、東大の教授なんかも本まで書いている。これは厚生省あたりで皆さん御承知だろうと思うのですが、あやしいというので——あやしいだけではなくて、これは場合によると有害でさえもあるんだ、きき目はないんだということを公然と出版されておるものもございます。たとえばアリナミン、ハイシー、ユベロン、リポビタンD、マミアン、アスパラ、グロンサン、チオクタン、パント、パロチン、フローミン、サモンゴールド、リキホルモ、——閣僚諸公でもこれはだいぶ愛用している人があるんじゃないかと思うのです。これは相当問題でございまして、おそらく厚生省では、これだけ問題になって公になっているのですから、深刻に再検討はなされておるとは思うのでありますが、しかし、一応お聞きしておきましょう。厚生大臣いかがですか。
  237. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 新薬を許可いたします際には、御承知のように薬事審議会にかけまして、臨床効果のデータを十分に参考として学術的にきめてもらっているわけでございます。ことに最近は、御承知のようにいわゆる二重盲検法というような制度を取り入れまして、この薬が、いま実際に新しく許可をするかしないか、効果があるかないかという場合に、その薬と、それから全然きき目のない薬とを患者にも医者にもわからない方法で施用して、そして試験中のその薬が効果があったというデータがないと許可しない、こういう方針で許可をいたしておるわけでございます。
  238. 高田富之

    ○高田委員 いまあげたような公に権威ある人が発表しているようなものについては、厚生省は深刻な問題としてすぐに参考の人を呼んで、必要があれば大がかりな再検査でも何でもやって、実際かどうかということを確かめなければならぬと思うのです。いいですか。ここへ持ってきたこれは、皆さん方国会議員にはみんな配られていると思いますが、東京都の消費者センターで、消費者啓蒙のために東京都経済局消費経済部が出しておる「かしこい消費者」というものです。これはごく最近のものです。四、五日前に皆さんのところに配られていると思います。これを見ますと「くすりについて」というのです。「私たちは日常、安易にクスリを使いすぎる傾向があるのではないか?クスリに対する経済モニターの購入態度・使用状況・広告宣伝等についてのアンケート集計結果がまとまりました。下のグラフはその一部を示したものですが、これについて、「保健薬を診断する」の編者である、東大物療内科の高橋晄正先生に、ご感想をおうかがいしてみました。」こうあって、一面全部書いてあります。これを見ますと、「わが国国民が医者以外のところで支払う医療費は、総医療費一兆三千億円の二〇%ほど、ざっと二六〇〇億円である」。「わが国ではほかの国々の国民一人あたりのクスリの消費量の二倍以上であるという。」日本人は外国人の二倍以上薬を飲んでいるのです。最初に生活が苦しい苦しいという一例に申し上げましたように、こういうものの使用量はべらぼうに世界一なんです。薬の消費量が二倍である。「薬の効能書はかなりよく読まれているが、それが科学的に正しく書かれているかは大いに問題である。それは、厚生省によって許可され、医師・薬剤師のかなりの部分では当然のことであっても、科学的にみると世界には通用しない誤まりであるものがある。少なくとも、保健薬といわれるものの大部分が、科学的にはまったく根拠のないものであることは、東大医学部の学生たちの調査したところから明らかである。」云々と、こうありまして、こっちのほうに、「疲れ易くて困るという人も、ビタミン剤を飲むよりは通勤や仕事に無理はないかを研究し、そちらを解決するのでなくてはならない。クスリで心理的にゴマ化していても、長いあいだにはからだの方に無理を蓄積させることになる。」こういうふうに消費者を啓蒙しておるわけであります。なお、これは非常に重大な問題なんで、少なくともアリナミンなんというものは、日本でも超一流の製薬会社の製品総額の半分を占めるのです。このアリナミンその他のビタミン剤の使用量は、まさに日本は世界一でございます。膨大な生産をしているのです。  通産大臣にお伺いしますが、こんなに膨大な生産をしている中で、外国へちっとも売れない。輸出は生産総量の何%を輸出しておりますか。これは薬全体です。生産量に対する輸出量、どれくらいありますか。
  239. 大平正芳

    ○大平国務大臣 さっそく調べさしていただきます。
  240. 高田富之

    ○高田委員 それが大体二%くらいだと思うのです。つまり幾らつくったって売れないのです。買っているのは在留邦人だけなんです。外国人はこういうものは買わないのです。薬じゃないのです。アメリカでは、健康な者はビタミンは不必要だとびんの上にみんな張ってある。こんなものが売れるのは日本人だけなんです。そういうむだな生産がどんどんやられて、そうして高い金で消費者の中へぐんぐん押し込められている。まず国民の半分がビタミン剤を飲んでいるというのですからね。たいへんな問題なんです。こういう事態に非常に憤慨しまして、わが国当代一流の医学の大家が私に投書を寄せてくれたのです。この前にもある分科会でも一部読み上げたことがありますが、要点を申し上げますと、「ビタミンA1、B1、B2、B6、B12、C、D、Eなどとあります。」こうありまして、いわゆる活性とか活性持続型とかいって無知な大衆に売りつけておるアリナミン、ビオタミン、ノイビタその他、これはビタミンではない。これは異物である。ビタミンではありません。このまやかしもののアリナミン、ビオタミン、ベストン、ハイベストン、ノイビタ等々と称するものは、その価格は純正ビタミンの二倍以上、健康保険医が安く買って、健保の価格との差額をふところに入れるということに適するようになっている品物だ。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などでアリナミン、ビオタミン、ノイビタなどが健康を保ち、万病によいというような誇大広告で大衆がだまされている。食物を節約しても健保でただでアリナミン、ビオタミン、ノイビタを飲めばいいと信じて、これが健保に食い込んでまいります。結局こういうことですね。だから、要するに健保を破壊しているのはこういうものなんだということでございます。ちょっと長いですからこれは省略しますけれども、要するに、これは非常に権威のある方が憤慨しておるわけですよ。ところが、いま言いましたほかの東大の高橋先生の本のようなものが堂々と出版されて、どんどんいま市販しておるというような状況です。それで、しかも外国へちっとも売れないのですから、はっきりしていると思うのです。薬というものは昔からいいますように、これは飲めばなおると思うと心理作用で多少いいのですね。これは東京医科歯科大学で実験しておるのです。武田製薬の技師も呼んで実験しているのです。この本の中に書いてありますが、武田製薬の技師も認めざるを得なかったのですが、結局これはアリナミンがきいているのじゃなくて、その中に入っておるブドウ糖が——ブドウ糖の作用は幾らかあるのです。それだけなんです。そういうことが証明されちゃったのです。ですから、これはもう弁解の余地のないものです。しかもそれが非常に大量につくられて、非常に大量に消費されて、しかも再販の指定にちゃんとおさまっておる。これは一つの例なんですよ。このほかにたくさんあるわけです。ですから、こういう重大な問題について——これはもうかなり前から問題になっているのです。いま厚生大臣御答弁がありましたけれども、私はそれでは納得できないんですよ。これだけ大問題です。これだけ節約しても——あるいはいまの健康保険の問題です。  ついでにこれもお聞きしておきますが、医療保険制度が赤字で財政的危機に瀕して、そうして二年の時限立法をつくって患者に負担させているのですよ。これは明らかに公共料金の値上げです。早く抜本改正をしなければならぬ。こういうときに、こういう問題がこれほど公になっているのですから一いまの保険財政の中の薬代というものは、非常なパーセンテージを占めています。だからこの薬を退治すれば——諸外国の医療保険制度の中で見ますというと、薬代というものはわずかな部分なんです。ほとんどが医者の技術料なんかなんです。日本では医者の技術料というのは、単純筋肉労働ぐらいにしか評価しないのですよ。医者が食っていくためには、薬を売ってそのマージンをふところに入れる以外に、いまの制度では生きていけないのです。だから、やたらに大量の薬を使って、それで医者というものが成り立っているのです。医者は要するに薬の小売り屋なんです。薬の小売り屋になっちゃっているのです。ですから、いまさっき申しましたように、再販指定のほうへ持っていって、大衆に売るほうは価格をくずさないで高い値で広告宣伝でだまして売りつけておいて、医者に売るほうはビタミン剤なんか三倍ぐらいやるのですからね。一千粒といって三千粒やるのですから、三分の一で割り引きしてやっているのです。これを使っているのですから、相当もうかるわけなんです。これがなければまた医者は成り立たないように、いまの保険制度はできているのです。だから、いまの保険財政の中を調べてごらんなさい。薬品代が多いこと世界で飛び抜けて一番です。これを解決すれば、抜本改正ができるのですよ。どうして厚生大臣はそういうことに手をつけておらないのか、厚生大臣、もう一ぺんひとつ。
  241. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 お説のように、保険制度の中で使われます総医療費の中で占める医薬品の量の割合が大体四〇%前後、これは相当多いと思っております。そういったような事柄も医療保険制度の抜本改正の中で取り組んでいきたい、かように考えておるわけであります。
  242. 高田富之

    ○高田委員 ですから、大臣もちゃんと御存じなんですね。これはある本から出た統計でございますけれども、医療費に占める薬剤費の割合が日本はどういうことになっているかというと、一九六〇年には二一・五%であったのです。これが年々ずっと上がってまいりまして一九六五年には三八・二%になっておるのです。現在はもっと多いはずであります。四十何%になっておる。一方イギリスはどうか。イギリスは同じ一九六〇年に一二・五%です。同じ一九六五年に二二%です。それから西ドイツは一九六〇年に一六・五%なんです。それが同じ一九六五年に一七・四%なんです。どうですか、三倍も違うでしょう。それでいま言いましたように、世界じゅうだれも飲まないような薬を大量に使って、それの差額でもって医者が生きている。それで病院が成り立っている。こんなばかげた制度じゃ、幾ら政府が金をつぎ込んだってだめですよ。そうでしょう。  ですから、この大衆保健薬なんて、世界に類例のない薬でない薬ですよ、これを片っ端から爼上に上げて、徹底的に追放しなければだめです。これは日本でなくて、よその国でも多少こういうものは薬にはあるらしいですが、アメリカやイギリスなんか、こういうものについては厳格ですよ。全く日本ほどルーズなところはないんです。ですから、この薬事行政というものについては、もうほんとうに体制、機構を抜本的に改めて、そうして現在製造、市販されているものを片っ端から再検討してもらいたいのです。これは総理にひとつ御感想を承っておきたい。重大ですから、問題は。(「総理もアリナミンを飲んでいるのじゃないか」と呼ぶ者あり)
  243. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私はアリナミンを飲んでおりませんけれども、先ほど来のお話をよく聞いて、これはたいへんな問題だ、ひとつよく厚生省におきましてもこれを督励して、そうしてからだにほんとうにきくものならこれは残さなければならない。しかし、どうもいま言われたように、一部の学者にしろこれはきかない、かように言っている以上は、そういう点では実情をよく知らすことも必要だと思う。そういう意味で、やはりこれは基本的な評価の態度でこの問題と取り組む必要がある、かように私も思います。
  244. 高田富之

    ○高田委員 総理がそういうお約束をされるのですから、念のため申し上げておきますが、これはもう製薬会社というものは、いま言いましたように、利益率からいきましても、他の産業に比べて飛躍的に利益率も高いのです。非常にもうかっております。そうして交際費、宣伝費、こういうものもぬきんでて多いわけですね。それだけに、非常に力がございます。これは言論界に対しても、相当のスポンサーでございます。広告主です。それから大学の教授連中、いまは大学の研究室は金が足らないですから、製薬会社からみんな寄付されているのですよ。おそらく三分の一くらいは製薬会社やなんかからもらわなければ、やっていけないのですよ。ですから、大学の先生も相当の恩恵にあずかっておるのですよ。厚生省のことは御遠慮申し上げておきましょう。御想像にまかせます。しかし、これは人的な連絡は相当あるということは皆さんが指摘している。これはやはりえりを正す必要があると思うのですよ。こういう中で、いまの薬を洗い出して、これはだめだ、これはだめだとやるのは、これはよほどのことなんです。なかなかこれはできないです。日本の学者のうちでは、ほんとうに骨っ節のある良心的な人は数えるほどしかあるいは出てこないかもしれないですよ、政府が呼んでも。これはぼくは外国へ頼んだらいいのじゃないかと思っているのです。外国の権威ある病院、権威ある薬学者、医学者に日本の優秀な人たちと一緒になって検討させたら、これは大胆な結論を出してくれるのじゃないかと思うのです。これはひとつ私は提案しておきます。これはぜひやっていただきたいのです。  それと同時に、消費者にとって東京都のこれは非常にいいことだと思うのです。こういう啓蒙もやはり足りないのです。めしを食わずにビタミン剤を飲んでいるなんて、話にならないのです。ですから、どうしてもこういうふうないわゆる消費者行政の強化ですね、これはまだまだ足らないと思うのです。これは薬ばかりに限らないですよ。ですから、へたな宣伝広告に惑わされて、どうしても消費者行政が非常に足らないと思うのです。  ですから、時間もだんだんたちますが、私は、いままで申し上げたことで、独占価格、独占的な商品の価格というものを下げる、それには独禁法の厳格な適用、これは申し上げておきます、ぜひ厳格に適用——いまの独禁法は大体もう改正されたのですから、あれは改正前のものぐらいに戻さなければいかぬです。もっとりっぱな独禁法に直して、厳正に適用する、これが一点です。  それから、公取の機構が足りません。さっき申しましたように、せっかくこれは怪しいぞと三百六十六品目も重要品目を押えても、調査の手が足りないのですね。この問聞きましたら、そのうちに不況になったら不況カルテルがあっちからもこっちからもきて、それのほうへ全員総動員になっちゃって、調査ができなくなっちゃった。もう一年も二年もおくれちゃう。これじゃしようがないです。やはり公正取引委員会のようなものは、もっともっと機構を拡充していただく。そうしてやはりそこには消費者の各階層を代表するような者を何か委員にでも入れて、絶えずそういう人の意見は反映できるようにして、業務を一そう厳正にかつ強力に遂行する体制をつくってもらいたいのです。これが第二であります。  それから、いまは公取がこれは不問に付しちゃったとか、ある決定が出ちゃうと、それっきりなんですが、これでは私はいけないと思うのです。やはりいま申しましたような勤労者や農民、中小企業者、学者、いろいろな人たち委員会でもつくっておいて、これはもう一ぺん審査してもらいたいというようなときには、民間から再審査を要求できるというような機構を開かなければだめですよ。そういうふうにして、公取の決定にももっともっと念を入れ、権威あるものにしてもらう。  それからいま独禁法の適用除外は、たくさんあります。これは一々もう一ぺん再検討して、整理する必要がある。  それから管理価格につきましては、やはりこれは何と言いましても世論というものが相当な役割りを果たすと思いますので、管理価格の、名前はどうでもいいですが、監視委員会のようなものをやはりつくりまして、そうしていろいろな情報を集め、世論を反映させ、そうして資料の提出などを要求したり、必要あれば勧告したり、発表したり、そうしてこういうものを押えていくという機能を果たさせるような委員会のようなものをつくる必要がある。おそらく諸外国にはそういう例もあると思うのですが、ぜひこれをつくってもらいたい。  それからもう一つ重大なことは、最近は品物そのものの値を上げるとすぐわかりますから、だからそのものの値を上げないで、新しい型のものをつくるのです。いままでは五十万円のものだった。今度の新しいものは五十五万円のものだ。けれども、形も違うし、名前も違うのです。これは値上げにならないのです。新製品が出たことになるのです。だから、こういう値上げも相当あるだろうと思う。これは物価指数に乗ってこないのですよ。ですから、そういう点では製品の規格化、標準化というものを——これもぴゅっと統制経済みたいにしろというのではありませんが、ある程度で標準化、規格化というものを推進しなければならぬ。これをぜひやってもらわなければならぬ。そうしないと、物価に対して逃げ道ができちゃうのですからね。それをやっていただく。  それから、誇大な広告を規制する。一定額以上の広告には、相当の重い税金をかける。広告費は、おそらく交際費とあまり違わないぐらいの額なんです。六千億ぐらいあるのです。ですから、こういうものに対しましては、相当厳格に規制し、課税の対象にもしていくということをひとつお考え願いたい。  交際費については今度幾らか課税があるようですが、これもあまりちょっぴり過ぎるので、もっともっと思い切って課税をする。財源は幾らでもあるわけです。七千億もあるのですからね。これはほとんど飲んだり食ったり、あるいはこれが不当競争の手なんですからね。つまり価格は下げないで、中間の卸屋さんや問屋さんを招待したり、それの獲得競争にあるいはリベートに使ったり、こんなことにみんな使ってしまう。生産性が上がっても、消費者にちっとも還元されない。だから、こういうものを相当厳密に洗って、ある程度以上のものは相当の重税を課して、こういうものは使わないようにさせてしまわなければいけない。税金によってストップさせるぐらいの税金をかけていいと思うのです。そういう点を広告費や交際費についてはひとつ考えていただく。  それから、広告費、交際費なんて名前を使わないのもあるのです。販売促進費であるとかなんとかと、いろいろな名目ですから、これは専門家が見ないと、われわれが見てもちょっとわからないのです。しかし、実質的にはいまのような中間のむだな費用——社会的にはむだな費用です。こういうものをひとつ規制することをお考え願いたいのであります。これは要望ですから、申し上げておきます。  そこでもう一つ、物価問題で、今年度予算の中でも、さっきも問題になりました国鉄の運賃ですね、この問題をひとつお聞きしたいのです。国鉄の問題については総理も専門家でいらっしゃるし、私思うのですが、国鉄の運賃を思い切って上げないというのが、私は今度の物価対策に対する姿勢を国民によく知ってもらうには一番いいと思うのです。どうしても上げるという場合にしましても、私は、旅客運賃を上げるのは、ここへきてはもういかぬと思うのです。大体あれじゃないですか、国鉄の運賃のあれを見ましても、貨物のほうではえらい損、旅客のほうで膨大なもうけをしているのですね。これはあまり正しいあれじゃないと私は思いますね。特に貨物の中でも、いま問題にあげましたような、いわゆる管理価格をなしていると思われるような物資が、運賃は一番安いのです。つまり生産財、基礎資材、大企業の製品、これはみんなうんと安いのだ。そうして同じ貨物の中でも、農産物であるとか中小企業製品だとかいうものは、これは比較的高いのです。同じ一トンでも、鉄鋼の輸送料とミカンの輸送料は、何だか六分の一ぐらい違う。ミカンのほうが六倍も高いというのです。ですから、私は、そういう同じ貨物の中でも、生産性がどんどん上がっているものについて、利益率はそういう会社ほど多いのですから、運賃を上げて、そういうところに吸収させていくようにしたらいいのです。そして旅客につきましては今回は値上げをやめる、こういうことにしなければ、国民の物価に対する考え方にしましても、とうてい政府を信用することはできないと思うのです。この点については、総理、いかがでしょうか。
  245. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 国鉄の運賃の値上げについていろいろ示唆を得たのでありますが、お話のとおり、貨物を上げずに旅客運賃だけを上げたらどうでありますか。貨物は値上げしても、貨物量は、輸送量が減りますからして、これはほかのトラックなんかのほうが発達しておりますからして、したがって貨物は上げても効果はないということで、旅客運賃だけ上げることにしたのでありますが、しかし、まあお話のとおり、鉄道料金も上げないほうが望ましいことはもちろんです。しかしながら、いまの国鉄の財政状態から申しますと、まさに破産まぎわに迫っておる状態でありますから、何とかして国鉄を救済しなければならない。が、しかしながら、料金を上げたくないというのがわれわれの考え方であったのでありますが、結局問題は、やはり国鉄自身の体質改善ということが先決問題、その体質を改善して国鉄の中でできるだけひとつ経費を少なくして、そして合理的な経営をやるということをまずやってもらいたい。その後においては、いままで国鉄は独立採算制でありましたが、これは今日では独立採算制ではやっていけない。だからして、国並びに市町村がこれを援助すべきだということで、幸い国のほうでは四百八億円の利子の補給をやってもらうことにするし、また市町村のほうへ交付しておりました納付金を二十五億円減ずることにいたしたのであります。その上で、なお足らなければ適正な料金で値上げをするという方針でやっておるのでありまして、これは、国鉄が民間の鉄道と違って、今日ではまさに破産に瀕するような状態になっておりますので、これを何とかして救済するということが必要だということで、適正な料金の値上げをするということに決定した次第であります。
  246. 高田富之

    ○高田委員 企画庁長官が相当がんばられたということは新聞などにも出ておりますけれども、しかし、国鉄運賃を上げちゃったら、これは私鉄のいま申請になっておりますもの、あるいはバス、地下鉄を上げざるを得ないのでしょう。どうなんですか。
  247. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 国鉄の料金の値上げにつきましては、たびたび会議を開いておるのでありますが、その料金の値上げを決定した場合の、その条件といたしまして、これに便乗の値上げは認めないということにいたしたのであります。でありますからして、今日私鉄のほうから運賃の値上げを申請しておりますが、私のほうでは値上げしませんというようにお断わりしております。でありますからして、交通関係の公共料金は極力これを抑制するというように発表をいたしておるのであります。
  248. 高田富之

    ○高田委員 本会議でもそんなふうに承ったのですけれども、これは極力だからあやしいのだ、上げるのだ、こういうふうに一般に解釈しているわけですね。だから、もう一ぺん私は同じことをお聞きしているのですけれども、絶対に年度内は上げないというのか。やはり、いま言いましたように、国鉄の運賃は上げるんですから、地方の鉄道、軌道、バスも上げちゃうんでしょう、上げざるを得ないというふうに見るのは常識なんですよ。ですから、それに対して、あなたが明確な御回答ができるかどうかというのです。
  249. 菅野和太郎

    ○菅野国務大臣 公共料金にはいろいろたくさんありまして、たとえば司法書士の手数料も公共料金ですが、そこで国鉄の運賃値上げに関連しての公共料金、これは他の物価の上昇に影響を及ぼすような鉄道、私鉄の運賃、これは上げないということにしたのであります。地方の鉄道で軽便鉄道や何かで、これは赤字でまさにいよいよ経営困難というようなところは、これは値上げしても物価に影響を及ぼさないということを考えておりますから、そこで、私は一切という意味じゃありません。極力上げないというのはそういう意味であって、主要な私鉄の運賃は値上げしない、物価に影響を及ぼすような心配のある私鉄の運賃は値上げをしないということでやっておる次第であります。
  250. 高田富之

    ○高田委員 この機会に、私は旅客運賃が上がるという問題がいかに重大なことであるかということを、もう一ぺんよくお考え願いたいと思うのです。それで、たとえば通勤者の問題なんかも、ほとんどこのごろは会社で出している。会社で出しているのが多いのだから、たいしたことはないというようなことをしばしば聞きますが、そんなものじゃないですね。今日の通勤者の定期券値上げなんというのはたいへんなことです。ほんとうに国民に対して愛情のある政治をする、人間尊重の政治をなさるということであれば、この機会に、少なくとも定期券の利用者である通勤者の気持ちを聞いていただきたいのです。  これは去年の十二月の初め、ごく最近ですが、深谷駅で——私は深谷に住んでいるのですが、駅頭でアンケートをとったのです。それは十月一日のダイヤ改正について、通勤者の諸君からあちらからもこちらからも深刻な御意見を聞くので、アンケートをとったのです。私自身も立ったのですが、朝通勤者に三千枚配りまして、その晩また行って、帰り時刻に立って、アンケートの回答をもらったところが、半分返ってきたのですね。半分返ったのです。驚いたのですよ。しかもそのアンケートには、マル・バツ式にして、前に深谷には始発があったのですが、それがないものですから、あなたは何時頃の始発があったらいいと思うかとか、あるいはどこへ通勤しているか、どのくらい通勤時間を要するかというようなところへはマル・バツをつけてもらった。大体あそこはちょっと遠いところですから、一時間以上、一時間半までとか、一時間半以上というので七〇%を占めているのです。かなり遠い。東京方面が相当多いですね。こういう通勤者でございますが、マル・バツのほかに私が感激したのは、マル・バツのところはマルをつけたほかに、空白の欄——「その他の要望事項」のところへこんなに書いてきた。これには驚いたですよ。空白のところが少ないものですから裏までぎっしり書いてきた。これは全部読むわけにいきませんから、二、三上のほうから見ますと、これは定期のことなんかちっとも聞いていないわけですよ。ところが、こういうことをすでに言っておる。「通勤定期など上がったばかりなのにまたまた値上げになるようですけれど、絶対やめていただきたいと思います。また最近事故が増えております。その原因が合理化によるものが多いとか、国鉄(国)に対し、私は人命を軽視し、もうけ主義になりきっている事に強い反感を持っております。」それから、「ダイヤが改正された以前と比べて各駅停車が非常にそまつに扱われ、急行が優遇される様になった。深谷大宮間が以前は五十分で行けたのに、改正後は急行まちの時間が入り一時間二十分位かかる様になった。誰もが急行に乗れればよいが、そういう余裕はありません。上に厚く下にうすい政策はやめてもらいたい。」「ラッシュアワーの電車は料金をとって乗せる状態ではない。それどころか、人を乗せる車じゃない。私達は怒りつかれた。代ってお願いします。」というのですよ。  それから、これに対して感謝しておりますね。「良い事をやってくれたと感謝している。」「大衆に密着した政治だと思っている。これからも大いにやってほしい。ありがとう。」そこで、「年に一度は必ずあるダイヤ改正。国鉄幹部の机上論ダイヤが気に入らない。決める前に参考として乗客にアンケートをとるか。自分達(決める奴等)、」——きめるやつらと書いてある。「自分達(決める奴等)が少なくとも一ケ月回タイムの汽車にのってから決めるぐらいの気持があってもバチは当たるまい。今度のダイヤ改正で小生は前より不便を感じている。小生一人でもあるまい。」これは裏まで書いてあるのです。「篭原増結(小生はかご原競技と呼んでいる)」「篭原増結時の風景を一度でよいから見て感想が聞きたい。愉快と云うより悲劇を感ずる。まさに弱肉強食だ。昭和元禄なんてものじゃない。下剋上(戦国時代だ)政治家の席とりよりもっともっとホットな戦争ですぞ。頼みます。」こういうのです。  これはもうほんとうにいまの通勤列車なんというものは、第一これは違法行為なんですからね。定員の三倍も五倍も詰めて、いま高崎線の話をしているけれども、環状線はこれよりもっとひどいでしょう。とにかくもう生きるか死ぬかの騒ぎを毎日やっているんですよ。そうして相当ばく大な利益がこういう線は上がっているのですよ。そうしてその上今度は、ダイヤ改正のたびに虐待されて運賃が上がる。今度の旅客運賃は、いま調べたところ、私の深谷からですと、上野まで現在は定期で一カ月六千六百円ですが、これが今度上がりますと八千円くらいになるでしょう。地下鉄がいま千円くらいです、国会までですと。これがまた上がるということになりますと、ちょうど一万円になりますよ。そうすると、三万円や四万円の月給を取っている人も、これだけ取られちゃうんです。それにいま間借りをしましても、間代が非常に高いでしょう。こういうことを考えますと、この運賃値上げは慎重でなければいかぬです。だからさっき言いましたように、ほかの吸収できるような物資の値上げにまかすか、さもなければ何とかしてこれをやめるというところへ持っていかなければいけないのだということを私は申し上げているのです。ひとつ真剣にお考え願いたい。総理のひとつ御感想を御発表願いたい。
  251. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 鉄道運賃が私生活に与える影響、これはただいま御指摘のとおり、まことに重大なものだと思います。しかして、いまも御指摘になりましたように、鉄道が、そういうものじゃないほどの実は詰め込み方だ、こういうことを言っておられます。その大事な通勤輸送の使命を果たす鉄道は一体どうなっておるのか。これが財政再建委員会において取り上げられたゆえんであります。鉄道の運賃を上げなければ、鉄道自身がもう破綻だ、したがって、これは何とかしてその機能をやっぱり果たすように、その意味の財政状態の改善をはかっていく。そのためにはやはり鉄道自身のみずからの努力、合理化も必要だ。また局部的な通勤区間ばかりじゃなく、全国的な面からこれを見て、赤字線区等については、他にこれを代行することが適当と思えるものはそうしたらどうか、等々の意見が出て、そこで、ある程度の運賃改正、これはやむを得ない。その場合に、貨物運賃を動かすことは、これは他の機関に、方向へ変わるということもありますが、第一、物価のやかましい際に物価を引き上げるような、その要素になる鉄道運賃自身を上げるという、これは適当でないのです。ただいまの旅客運賃を上げる、それも大体ただいまは通勤定期、これはもう会社の負担でありますから、比較的に個人生活には影響が薄いのじゃないか、こういうような点も考えられて今回旅客運賃、それを改正しよう、こういうことを実は考えたのであります。一つは、物価に影響があるのだ、これはもう御指摘のとおりでありますから、そういう意味ではやっぱり物価に影響の少ないほう、そのほうを選ぶ、貨物運賃はその意味においてとらない。そうしてただいまのような定期等については、これはいま実際は会社が支払っておる、公務員の場合も通勤手当が特別出る、こういうことで、つとめ人に直接関係はない。しかしながら、もちろん鉄道を利用する者は通勤者ばかりじゃありませんから、これは普通運賃が上がれば当然生活に影響を与える。そういう意味で慎重でなければならぬことはお説のとおりであります。慎重な上にも慎重に、しかも鉄道の機能は残しておきたい。残しておきたいじゃない、もっと働いてもらいたい、こういうような考え方から、やむを得ず今回運賃値上げに踏み切ったのであります。この点はいずれ専門の委員会におきましても、特にそういう意味の御批判もよく詳しくひとつお聞き取りいただきたい、かように思います。
  252. 高田富之

    ○高田委員 国鉄財政問題は、また専門の同僚議員があとから御質問することになっています。私ここ外申し上げたいことは、通勤者の気持ちはこれでもわかりますように、もう爆発寸前なんですよ。爆発寸前だということをひとつよく念頭に置いてください。  時間がなくなりますので、私は農政の基本点だけを総理にと思いましたけれども、これは割愛いたしまして、せっかくおいでをいただいております住宅公団の総裁のほうに一問題、それからもう一つ、ちょっとした問題がございますので、それをひとつお願いしたいと思います。  実はこれから農地の壊廃というのが非常にふえるわけでございます。新しい都市計画法もできた、道路はどんどんできる、住宅や工場ができるということでございまして、その場合、農民から土地を提供させるということはこれはなかなかむずかしい問題ですし、非常に重大な問題なんですね。私、全国方々こういう問題を見て歩いておりますけれど、大きな本土縦貫道路ができるとかどうのとかいうことになりますと、農民はこれはたいへんなんです。あるいはいま成田空港なども、ああいうこともございます。そこで農業というものをどうやって保護していくか、それから農民の生活をどういうふうに保障していくかということを相当真剣にお考えになった上で農地の買収に当たってもらいたいですね。それを強く私は申し上げたい。  実は去年の八月、茨城県の石岡市におきまして工場団地を造成中でありますが、日本で初めて住宅公団が強制収用を発動いたしました。これは、直接収用されましたのは農民ではございませんで、大きな山林の所有者でございます。しかしこの山林所有者は関係農民二十一名で協力会というものをつくりまして、代地をもらって——みなこれはほとんど専業もしくは第一種兼業の農家ばかりです。一軒残らずぼくは内容を調べたのですが、また来てもらったのですけれど、その長になっている方なんですね、町の有力者ですから。この山林所有者の方が長で、それで二十一人が会員になって、そしてみんなで代地をもらってこの建設に協力しようというたてまえなんです。以前にもこの会長になった方は、市に協力して率先自分の山林を提供したことのある方であります。ところがどうしたことか、この交渉中——この代地をやるということにつきましては、現市長とそれからこの二十一人の会の会長で今度接収を受けた方と、それに県当局が中に入りまして、そしてきちんとした書類の契約書までできまして、そして市が責任をもって農地は何割まではかえ地であげましょう、山林は何割まで希望があればかえ地であげましょうという契約がとってあります。その契約の履行が実は全然できてなかったのですね。それはつくってから一年ぐらいしかまだたっていないのですけれど、その間に突然公団が申請して、そして接収がきまっちゃったわけです。そして今日ではその長の方がやられたものですから、二十人の農民のところへは公団の職員が行って、おまえたちもいま公団のいう値で売らなければ全部強制収用だということで回っておるので、非常に戦々恐々でございます。私はちょっと考えられないことなんですが、公団の総裁においでをいただきましたので、この間の事情を簡潔でけっこうでありますから、述べていただきたいと思います。
  253. 林敬三

    ○林参考人 住宅公団総裁の林でございます。  ただいま御質問になりました石岡の工業用団地のことでございますが、御承知のように、これは昭和三十八年に事業が始まりましたものでございまして、首都圏の整備法に基づいて、ここの土地が工業団地をつくるのに最も適切であるという建議大臣の計画の決定と事業決定がございまして、それに基づいて公団がこれを実施するということになったわけでございます。   〔中野(四)委員長代理退席、委員長着席〕 地元からも市長さんがたびたびお見えになって、そうしてもうみんなまとめるから、ひとつ公団出てくるようにという話で、これを始めたものでございます。  その後御承知のように、全体で坪で申しますと、四十七万坪ほどございますが、そのうちの三十七万坪はまず買えたのでございます。話し合いで買えたのです。地主が二百名以上おりますもののうちの百七十名の方は同意を得まして、あと残り二十数名ということになって、約十万坪残っております。御指摘のように、農地というものを、ただ私どもが家を建てるから必要だ、あるいは工場を建てるから必要だといって取っていいものでは毛頭ございませんし、また格別農民の方々は農地に対してはずっと昔からの愛着も持っておられますので、極力話し合いを進めてまいる。それからお話がありましたように、かえ地というものは極力あっせんするということで、現に石岡の市が非常に骨を折ってくださっておるわけですが、ずいぶんたくさんのかえ地をあっせんをいたしまして話をまとめた、あるいはまだまとまらないものについても相当かえ地を準備いたしまして、そしてお話し合いを進めているというような現状でございます。  しかしながら、この事業計画はもうすでに約二年、計画よりおくれております。まことに私ども微力で恐縮でございますが、それだけ非常に貴重な資金も寝てしまっておるわけでございます。それでやむを得ず、いわゆる農地でない、山林だけをお持ちの一番大きな方にだけ収用の申請をいたしまして——申請いたしましたのですが、またしかし、県でも中へ入られまして、ずいぶんとあっせんこれつとめる、市もまたあっせんこれつとめて、その間一両年の歳月を経過したのでございますが、ついに最後に話し合いがつきませんので、その方のが収用決定になったという事態でございますが、ある農地をお持ちの方が二十二名ほどおられます。極力今後も事情の許す限り話し合いにつとめる、そうして生活の再建が立つようにということで、こちらとしてもできるだけのことをするということは当然でございまして、県、市と協力をいたしまして、今後も一そう話し合いをはかりまして、円満な解決をしてまいりたいと思うのでございます。
  254. 高田富之

    ○高田委員 時間がもう迫っておりますから、また別の委員会におきまして詳細にお聞きをしますが、これはなかなか通り一ぺんの御回答では納得のいかない問題がたくさんあるわけです。  一番要点だけ一つ申し上げますと、これはどうして代地をやるという約束書までつくって、やれなかったかといいますと、そういう土地の操作をするために、市でもって開発公社をつくったわけであります。この開発公社で代地になりそうなところを買ったりいたしまして、市で土地関係の仕事をやったわけです。ところが、その開発公社が経理乱脈をきわめまして、刑事問題にもなり、市でもって監査委員会をつくって調査しましたところ、ブローカーと手を組んでめちゃくちゃなことをやったことが発覚いたしまして、市長以下——市長も責任がある。——現市長以下役員全部が、市長は半年の減俸、その他の者は解職とか何とかいって全部みずから処分をして、刑事事件はどうやらもみ消したらしいですが、そのために開店休業になって開発公社が仕事ができなくなってしまったのです。だから、かえ地も何も全然あっせんしてくれない。かえ地をあっせんしてくれさえすれば、いつでもオーケーという態度でいますよということを収用委員会で述べているのですが、収用委員会のほうは、市長とおまえたちの約束は公団とは関係なしという名分をもって判決を下しているのです。おかしいのです、何としてもおかしいのです。ですから、私は収用なんというものは、そんな簡単に——協力しているものに収用するなんというばかな話はないのですよ。しかも農民の諸君が戦々恐々とするはずなんです、たった反当三十万ですからね。反当三十万円で買い上げられてしまって、どうして食っていけますか。現在すでにあの周辺は三倍から五倍の値がしております。新しくあそこで、今度は道路もできますし、インターチェンジもできるのでしょう。それでこういうところで無理無体にそういうことで取り上げている背後には、この市の暗い行政というものがあります。ですから私は、この問題は重大視しておりますので、全国初の住宅公団が、しかも工場誘致の敷地をつくるのにこんなむちゃな手段をとるということはもってのほかだ。徹底的に調査いたしますが、きょうは残念ながら時間がありませんから、これで打ち切っておきます。次回にもう一ぺんおいでを願うことにいたしたいと思います。  それからもう一つ、これは時間がございませんから、一応申し上げておきたいのですが、これはいまの土地問題と関連して、成田空港の問題をお聞きしたかったのです。成田空港の問題から一点関連でございますので、私は空港というものの運営について、この機会ですからと思って一つお聞きしたいと思っておったのですが、成田の問題は飛びまして、単刀直入にいまの羽田空港の運営の問題についてお聞きしたいのです。  これはもう時間がございませんから、全部申し上げてしまいますが、あそこで日本空港ビル株式会社、資本金十二億円、昭和二十八年七月にできまして、元運輸次官の秋山さんという方がずっと今日まで十数年社長をなすっておる会社がございます。日本空港ビル株式会社、これは空港の中にあります建物一切を建設し、これを管理し、運営しておる民間会社でございます。ああいう日本の、たった一つしかない表玄関が一切がっさいの施設を一営利会社にやらしているということ自体にも、私、非常に問題が多いと思います。  そこでこの敷地に航空局ほか国の機関が、この会社が建てました建物の一部を買い取って使用いたしておる。そのほかの部分は、御承知のとおりレストランでありますとか、航空会社の売店だとか、いろいろなものに貸しておるわけであります。買い取り使用しておる部分というのは一万三千平方メートルです。全体は九万平方メートルですから、たくさん余っておりますが、この部分はほとんど全部レストランや航空会社の売店に貸しておる。もちろんこれは何年契約かで契約を更新するわけなんですが、これこそ全くの独占的な事業でございますから、競争など一つもないのです。これは建築ができていないうちから猛烈な入居競争、更改のたびに猛烈な入居競争だそうでございます。ですから、もう非常にばく大な裏金やなんかが乱れ飛んで、従業員諸君も見るにみかねているというのですね。それで実は、この問題をめぐりますいろいろな問題が、ちょうど日通の問題が持ち上っておる当時なんです。それだものですから、どうなることかなと私ども思っておりましたが、当時この会社の社員から東京地検に対して、常勤重役の背任、横領、脱税などの問題について密告があったというふうに私は聞いておるのですが、あったかどうか、それについて取り調べをやっておるのかどうか、これが一点。  それから、運輸省の東京航空局長が、敷地三万六千九百二十五平方メートルを貸し付けている。この敷地は会社に貸しているわけです。日本空港ビル株式会社へ貸し付けておる。これは、国有財産使用許可書というものによってこの貸借契約は使用期間が満了する二カ月前までに、更新する場合はあらかじめ届け出をして、そうして条件をきめて更新をする、こういうことになっているわけです、許可書の規定によりますと。ところが、実際はどういうことをやっているかといいますと、使用しちゃって、そうして期間の満了する一日、二日前ごろになってから、書類をつくって契約をしておる。したがって、使っちゃったあとで借り賃を払っているというようなことが行なわれております。それには、写しも私持っておるのですが、昭和四十三年三月二十八日に、東京航空局長の名前でいまのビルディング株式会社にあてまして許可書が出ております。これは使用期限が切れる三日前です。この使用を許可する期間というのは、昭和四十二年四月一日から昭和四十三年三月三十一日までの一年間使用を許可する、こういう許可書なんですが、許可するといったときにはもう使っちゃったあとなんです。こういうルーズな国有財産の管理のしかたをしている。そうして、そんなことでありますから、いろいろな問題があると想像されるのは当然でございまして、たとえば地代はどのくらい航空局に払っているかというと、年に坪九百四十円です。月に八十円ぐらいです。それで航空局が借りている建物のほうは建坪月八千円。これは大体東京都のまん中どころの地代一万円ぐらいのところに相当する。こういうでたらめなことをやっておる。その他いろいろございますけれども、問題は、こういうふうなことがありまして、しかも空港のようなところを、もうけほうだいもうけられるような独占的な事業を元運輸次官にやらしておくというようなことは、これは全く私は重大な問題だと思っております。  ですから、この問題について、ただいま申しましたように密告があったというのですから、それに対して調査がなされておるかどうか。また航空局では、こういうふうな管理についてどういう見解を持っておるかということだけお聞きして、これも、もう時間がございませんからこまかいことはまた別の機会ということにしますが、しかし、いまの問題について一言ずつお答えを願っておきたいと思います。
  255. 原田憲

    ○原田国務大臣 高田さんにお答えをいたします。  いまの御質問を受けまして、私初めてお聞きいたしました。要点を私なりに解釈いたしますと、東京航空局長の名前で空港ビルに貸しておる、こういうことでございますから、私の権限を航空局長におろしておる問題であると思います。したがいまして、航空局のほうから、事実問題でございますのでどうなっておるか答弁させたいと思います。いま政府委員と申しましたけれども、説明員でございますので、どうぞよろしく。
  256. 丸居幹一

    丸居説明員 丸居でございます。  遡及して手続をいたしております。
  257. 高田富之

    ○高田委員 いずれにしましても、時間もきておりますから、これはまた別の委員会等であらためて詳細にお尋ねすることにいたします。
  258. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 先ほど高田富之君の質問に対しまして、通商産業大臣から答弁を保留しておる点について発言を求められておりますので、この際これを許します。大平通産大臣。
  259. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほどの御質問の中で、人件費が売り上げ高に占める割合、これは私どもの役所で製造業四百五社について調べました結果、四十二年下期におきまして一〇・七%、四十三年上期におきまして一一・一八%になっております。  第二の点は、医薬品の輸出割合でございますが、医薬品の生産高は十六億三千九百万ドルでございますが、輸出額が六千六百万ドルでございますから、その比率は約四%に当たっております。これは四十二年度の数字でございます。
  260. 高田富之

    ○高田委員 終わります。
  261. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて高田君の質疑は終了いたしました。  明日は午前十時より委員会を開会し、山中吾郎君、矢野絢也君角屋堅次郎君の総括質疑を行なうことといたします。本日はこれにて散会いたします。   午後五時三十六分散会