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和田耕作君 ただいま
議題となっております
健保特例法案の
修正案につきまして、
民主社会党を代表いたしまして、
佐藤総理並びに
関係閣僚に
質疑を行なわんとするものであります。(
拍手)
民社党は、今回の
修正案の
取り扱いにつきまして、
怒りに似た気持ちを持っていることを、まっ先にお伝え申し上げたいと思います。(
拍手)
この
修正案は、
社労委での
取り扱いにつきましても、また、その内容につきましても、全くお話にならないと思っているのであります。(
拍手)たとえば、この
修正案を一日でも半日でも
審議しているなれば、たとえば
強行採決の場合でも、極端に言うなれば、
指一木でも、あご一つ上げても一種の
説明になったと思います。かりにまた、
審議はなくても、
事前に
要綱案のようなものが配られておりましたなれば、詳しい
説明がなくても、
審議拒否に対抗して不十分な
強行採決をしたとしても、まだまだ理解ができるのであります。しかし、今回の場合はそのいずれもなかったのであります。
説明もない、
事前の
資料配付もない。このような
状態で、聞き取れないようなことばで提案をして、その場で
採決をしたというのですから、全くあきれ果てた運営だといわなければなりません。(
拍手)これは当然
社会労働委員会の段階に差し戻すのが適当だと考えております。(
拍手)
また、内容的に見ましても、今後
抜本策をつくる保証が何もないのに、簡単に
時限立法をやめるとか、また、あれほど
政府が重視していた
薬代の一部
負担を突如としてやめるなど、今後の
抜本策樹立について
政府と
自民党の無責任さを露呈しておると考えざるを得ないのであります。私は、このような
前提に立ちまして、以下の諸点について、
総理と
関係閣僚に
答弁をいただきたいと思っております。
まず第一に、今回の
修正のもとになりました
特例法は、二年前に、
医療保険の赤字を解消するために、
暫定措置として、
抜本対策を確立することを
前提として、
社会保障制度審議会でも、
社会保険審議会でも相談をされて、必要な悪として生まれたものであります。しかるに
政府は、この間、
抜本改正を怠り、今日再び二カ年の
期限延長を提案せざるを得なくなったのであります。実は私も、この問題が非常に困難であることは、よく
承知をいたしております。したがって、
政府の
公約違反を強く批判はしておりますけれ
ども、ひそかに、次の二カ年のうちには必ず
抜本対策をつくってもらいたいと願っておったのであります。しかしながら、現在そのような
抜本対策すら影も形も見えない。
斎藤厚生大臣も、
総理大臣までがこの本
会議の
議場で特別にその
理由を
釈明いたしまして、そして
抜本対策を早急に出すということを誓ったのであります。
このように何回も何回も
国会の
審議を経て、長い日時とたいへんな努力を重ねてきたこの問題を、このたび
政府と
自民党は、
社労委の
審議の
過程でこれまでの言明を捨て去って、突如として本
法案を根本的に変えてしまって、全く
別個の
法案にすりかえる暴挙をあえてしたのであります。これは全く前例のないことでありまして、
法制定の慣行と
国会のルールを無視した
背信行為であるといわなければなりません。私
ども民社党は、断じて許すことができないのであります。(
拍手)
つまり政府は、
時限立法としての
特例法案を廃案にする、あるいはまた、
健保の
基本法を改正するという二つの必要な
手続を省略いたしまして、
修正という形でごまかしたことでありまして、このような
立法秩序の無視を、
総理大臣、また
自民党の総裁としての
佐藤さんは、どのように考えておられるのかをお伺いいたしたいのであります。(
拍手)
次に、これに関連いたしまして、今回の
修正案なるものは、前述のとおり、内容的には全く
別個の
法案でありますので、前に
総理がこの
壇上から弁明いたしました二カ年
延長の
特例法案とは全く
関係のないものになっております。したがって、この際、
総理として最小限なすべきことは、前に
総理が行ないました本
会議での
釈明とは別に、あらためて
修正案についての
釈明が必要だと思うのであります。この点について、
総理の
所信をお伺い申し上げたいのであります。
第二の点は、二カ年の
時限延長を廃止したことの真意についてであります。
現行の
医療保険制度に数々の
問題点があることは、
天下周知の事実であります。この点について、
社会保障制度審議会、
社会保険審議会でも、これらの
問題点について、早くから
抜本改正の方向づけがなされてまいりました。また、
国民も、
特例法が二年間の
時限立法として成立したことによって、
抜本改正が近く断行されるものと期待していたことも事実であります。ところが、今回の突如の
方向転換によって、
抜本改正は夜霧のかなたに消えうせんとしております。不可解というほかはありません。これは、一部で伝えられておりますように、政党間の
裏取引があったとか、強力な
圧力団体の横車に屈したといわれておるのでありますけれ
ども、はたして事実かどうかを明らかにしてもらいたいのであります。
また、
政府は、今後の
抜本改正につきまして、全く熱意を喪失したのではないか、事実上断念したのではないかとも思われておるのでありますけれ
ども、この点についての
所信を明らかにしてもらいたいのであります。この問題の困難であることは、私
どももよく
承知をしております。しかし、問題の困難さに辞易いたしまして、
抜本改正を断念したというのでは、
政府の責任を全うすることができないだけではなくて、
民主政治に対する
国民の信を失うことになると思うのでありますけれ
ども、この点について、
総理の
所信をお伺いしたいと思うのであります。
次に、
厚生大臣にお尋ねいたします。
第一に、薬剤一部
負担の項を廃止したことについてであります。
二年前の
国会での
特例法の
審議の
過程で、
政府が一番重視しておったのはこの項でありました。また、これについて
医師会、労組その他の方面から強く
反対があったことも
承知をしております。その
理由は、表向きは、
患者負担の増額による
早期受診を
制限するとか、
手続がめんどうだということでありましたけれ
ども、裏面では、これによっていわゆる乱診乱療を少なくする、少しでもチェックできるという効果があると信じられておったからではないでしょうか。たぶん
政府は、そのように考えて、この
薬代の一部
負担を出したのだと思うのであります。しかるに、今回、この重要な
問題点を、
取引か知りませんけれ
ども、いとも簡単に廃止したのはいかなる
理由によるものでありましょうか。(
拍手)現在の日本の
医療制度のゆがみの
最大の問題は、薬の使用があまりに多過ぎるということではないでしょうか。そうでありますのに、この
薬代の一部
負担という問題を簡単に葬り去るという、ここに
政府の態度が疑われるのであります。
抜本改正をやるというなれば、この
最大の
問題点にメスを入れるきっかけを残しておかなければならないのではなかったかと思うのであります。このような点に、私は、今回のこの理不尽な
修正に対しまして、心からの不信と
怒りを覚えるのであります。(
拍手)この点について
厚生大臣の
答弁をいただきたいと思います。
また、第二に、
特例法の保険料率を千分の七十、入院時、初診時の倍額を
患者負担とすることを本法に移すことであります。
このことは、申すまでもなしに、暫定的な
負担増を、
抜本改正という代償を払うことなしに
国民に課して、固定化するということでありまして、
国民は大きな犠牲を払わなければならないのであります。このことは、
抜本改正をやるということで
特例法の中に載せられたのでありますけれ
ども、
抜本改正をやるという保証なしにこのような問題を制度化していく、固定化していくということは、
国民を愚弄するのもはなはだしいのではないかと考えております。(
拍手)このように、
抜本改正に対しての確かな保証というものをまるきり葬り去って、いままでもやってきましたように、そのつど赤字をびほうしていく、このようなことで、はたして日本の
医療制度というものに対して
政府として責任がとれるのであろうか。この点について、
厚生大臣の所見をお伺いしたいのであります。
最後に、私は大蔵大臣にお伺い申し上げます。
あの
特例法の中には、二百二十五億の国庫
負担という項目がございまして、この項目をどのように今後なさるのか、
医療制度に対する国庫
負担は、現在の保険制度から社会保障制度に発展させていくベルトのような役割りを果たすものであります。したがって、これの国庫
負担を増額することは当然のことでありますけれ
ども、しかし、国庫資金は税金でございます。現在の保険制度は、
問題点を一ぱいかかえておる。このどろ沼のような保険制度を改革することなしに税金を無責任に使うという問題が起こりはしないかと思うのであります。といってまた、国庫
負担を増額しなければ、前述のように、困っている
国民に対する国の責任は果たされない。この矛盾を大蔵大臣はどのように考えておるのでございましょうか。つまり、このような矛盾を解決するために
抜本改正というものを問題にしておるのではないでしょうか。しかも、この
抜本改正は、現在では、もうわれわれにとって、
政府がいつやるのか、全く保証のないような
状態である。こういうような問題のときに、大蔵大臣は、この二百二十五億、あるいはこれを今後増額しなければならないと思うけれ
ども、どういう意味で、どういう内容を持たして増額をするのか。現在の制度を改革しなければ税金のむだ使いになる、また、その改革するという方途を全然示していない、しかも、国庫
負担を出さなければならない。大蔵大臣はその選択をどのように考えておられるのか、この問題について御質問をいたしたいと思うのであります。(
拍手)
以上、私は、いろいろと御質問をしてまいったのでございますけれ
ども、これを要するに、このような案をどうして
政府と
自民党は出してきたのであろうか、全く理解に苦しむのであります。これよりももっと正しいのは、いままでの
特例法案を二カ年間
延長するという、この案を通すなれば、まだ筋がわかる。しかし、現在の問題の出し方は、あの
社労委での
審議のしかたからいっても、いま申し上げた内容の問題からいっても、全く筋の通らない問題だと考えておりますので、何とぞこの問題を
社労委の段階に返して、もっと
審議を尽くすのが適当だと考えておるわけであります。
以上をもちまして、
民主社会党を代表しての御質問を終わる次第であります。ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕
〔
発言する者多し〕