○米田東吾君 私は、
日本社会党を代表し、ただいま逓信
委員長が
報告をいたしました
簡易郵便局法の一部を
改正する
法律案につきまして、逓信
委員会において留保いたしました
本案を否決すべきであるとの
少数意見の
報告を行ないたいと存じます。(
拍手)
私は、まず
本案を提案された背景について、この際指摘をしたいと思うのであります。
本案は、
自由民主党の党略的立法であり、
自民党の組織固めと、その下請機関化している全国特定郵便局長会対策の
法案であるということであります。
全国一万五千の特定郵便局長を
自民党に入党させて政治献金をさせ、選挙に利用し、その代償として局舎料を引き上げたり、特定局の請負化を与えるための約束を果たすために、強引に第五十五
国会以来三回にわたって
国会に
提出し、とうとう多数を頼んで
成立せしめようとしている
法案であって、その唯一の
理由としている郵政事業の窓口サービスの拡充などとはまっかなうそ偽りで、それは単に
国民を惑わすための口実でしかないということであります。(
拍手)したがって、この
法案には中身もなく、また郵政省自体熱意も乏しく、その準備もないことで明白であります。すなわち、本
法案の
審議を通して、郵政省の資料の不足、答弁の行き詰まり、さらに、
国民を納得させるに足る
説明の欠除などが随所に見られ、また、
自由民主党においてすら、一部議員の横暴なる
審議促進と強引なる
委員会運営に辟易している実情は、何よりもこの
法案の性格を物語っていると思うのであります。(
拍手)
第二に、この
法案は行
政府の立法府への許しがたい挑戦であり、
国会軽視の
法案であるということであります。
本
法案は、
昭和四十二年、第五十五
国会に提案され、その
国会では
審議未了、廃案となったものであります。当時、与党たる
自民党も、この
法案の
時代逆行的な性格を認めて、
審議されないまま廃案となったのであります。この廃案は、明らかに第五十五
国会の権威ある意思であり、主権者たる
国民の意思と認むべきであります。越えて四十三年、五十八
国会に再びこの
法案は出されてまいりました。しかし、依然として
審議に入らず、
審議未了、廃案となるべきであったのでありますが、当時の逓信
委員長は何を血迷ったか、一人でハッスルして、最終段階で、継続
審議に持ち込むため強行
採決をしたのであります。しかし、続いての五十九臨時
国会では、
自民党もその非を認め、再び廃案となったのであります。したがって、ここでこの
法案は明確に立法府の意思として二度まで
審議に値しないものとして廃案になったのでありまして、
国会の意思として尊重されねばならないものと思うのであります。しかるに
政府は、この
国会の意思を無視して、三たび不遜にも本六十一
国会に提案してまいりました。
自民党の一部議員の突き上げと、多数党の言い分ならば何でも通すという思い上がった態度がそうさせたのであります。すなわち、
国民の意思を無視し、国権の最高機関たる
国会の意思を軽視して三たび
国会に提案して、しかも多数を頼んで強引に
成立を期そうとすることは、議会
制度の自殺行為であるばかりでなく、これこそ行
政府の立法府に対する重大なる挑戦であり、これを
成立せしめることは、立法府が屈服したことを意味すると思うのであります。
第三に、本
法案は郵政事業の民主化と近代化に逆行する改悪案であるという点であります。
現に、郵政省は、郵政事業全般について、公社化への移行の是非を含めて、抜本的に、経営診断とあわせて事業のあり方、
制度全般を郵政
審議会で
検討中のところであります。しかも、小局の運営は今後どうあるべきかが、この
検討の中において重要な
部分を占めなければならないはずであります。したがって、末端窓口機関のあり方は、事業の公共性をいかに
確保していくべきかの見地から結論を求めて後に提起さるべきものであって、本
法案の提案は拙速のそしりを免れないと思うのであります。
さらに、郵政事業の長期
合理化計画も現在立案され、好むと好まざるとにかかわらず、事業の民主的近代化に向かって大きくスタートしようとしているときであります。すなわち、この時期にこそ、近代的な郵政事業に残骸として残っている請負制から来る封建的性格を払拭しなければならないと思うものであります。しかるに、本
法案は、末端窓口機関をして個人に請け負わせるという、かつての請負制を再現することは、明らかに
時代逆行といわざるを得ないと思うのであります。
以上の背景をもって提案された
簡易郵便局法の一部を
改正する
法律案について、以下、おもな事項にわたり、具体的に
反対の
理由を申し述べます。(
拍手)
まず第一に、第一条の目的を
改正して、従来の受託者の範囲を個人にまで拡大することによって、へんぴな地域にまで郵政窓口サービスを提供しようとするものであると言われるのでありますが、窓口サービスの拡大は
現行でも可能であります。すなわち、
現行受託者が再委託して、実際は他人に経営させていることは郵政省
当局も認めておられ、かつ合法としているものであります。したがって、この方式で十分まだへんぴな地域に拡大できるし、なお必要があれば、無集配局の
設置や分局または出張所の
設置によって、簡易に、しかも最も近代的に窓口サービスは提供できるのであります。しかし、この
改正のねらいはそこにあるのではありません。むしろ、公共性を持つ郵政事業に再び私
企業性を導入せんとするところに真のねらいがあるのであります。明治四年、郵政事業創業以来、局長の請負割による特定局
制度は戦前まで存置されていました。この
法改正は、まさにそこに戻そうとするのが真のねらいであります。
郵政事業に私
企業性を導入した請負制は、かつて歴史が証明しているごとく、その
弊害はおそるべきものがあります。具体的には、渡し切り経費のもとでの従業員の低賃金、奉公人的雇用関係、劣悪過酷な労働条件、他方、局長の不当利得、公金横領などをはじめとする多くの犯罪、不正事件などなど、郵政事業に一大汚点を残した歴史は、今日なおなまなましいのであります。さらに申し上げたいのでありますが、今日においても、他の
政府機関に見られないところでありますが、特定局長が私的団体である全国特定局長会をつくって、ある政党と結託して自己の権益擁護に狂奔し、郵政省に対して圧力団体となり、事業の近代化への大きな障害となっていることであります。このような
弊害をもたらす請負制に再び戻そうとすることは、とうていわれわれの認めることができないのは当然ではございませんか。(
拍手)
その二つは、
改正案の第三条第一項五号に「十分な社会的信用を有し、かつ、郵政窓口
事務を適正に行なうために必要な能力を有する個人」と規定し、第三条の二項で欠格条項を列記してあるが、ひっきょう欠格条項に該当しなければだれにでも委託することができるわけでありまして、
政府委員の「読み書きそろばんができる人」という答弁が、端的にそのことをあらわしていると思うのであります。そういう点で、簡易郵便局の受託者と他の郵便局の
職員とは
責任と義務からいっても差があり、簡易局の信書の秘密ということについての
危険性に危惧の念を抱かざるを得ないのであります。
また、このような個人受託は多分に政治的に利用され、利権のからむ根因となるのではないかとおそれるのであります。へんぴな地方のボスや政治屋が特権のように受託される危険は十分あるのであります。
現行特定局長の任用において、すでにその自由任用制を悪用して、政治と利権が介在した任用が行なわれていることは、しばしばわれわれの指摘したところでありますが、この
法改正は一そうこれを助長し、将来郵政事業の大きなガンとなるであろうことを指摘するものであります。
その三つは、犯罪についてであります。
私は、さきに事業の私
企業感が犯罪の
原因となっている点を指摘申し上げたところであります。
政府の
説明では、簡易郵便局は一人未満の微量な郵政窓口
事務を行なうとしています。したがって、委託を受けた個人が一人で
事務を行なうことになるわけで、自分が自分を指導監督することの困難性は申し上げる必要がないほど明白であると思うのであります。現在、無集配特定局における最低の人員配置を二名としておりますが、これも事業の公共性と
国民の郵政業務に対する負託にこたえるために、赤字であっても配置している
理由の一つには、公共の名における指導、監督の
必要性からであると思うのであります。そういう意味から、私
企業感と、指導監督体制に欠ける個人委託が犯罪の増加をもたらし、そのことがひいては郵政事業に対する
国民の信用失墜をもたらすであろうとの危惧を禁じ得ないところでございます。したがいまして、
政府は窓口サービスを拡大するといっておりますが、その
内容は、拡大ではなく、いたずらに非近代的経営を許し、郵便局の信頼を欠き、また犯罪を呼び、信書の秘密が侵され、小局管理に大きな障害となる個人委託には絶対に
反対するものであります。
最後に、郵政事業は今日まさに転機に立っていると思うのであります。
日本経済の異常なまでの高度成長と、政治、文化、
科学の急速な
発展、これに対応しようとする通信
産業、電話の高度な成長と全国即時化、
情報革命の到来、このときにあって、郵便はまさにその存亡が問われているときではないかと思うのであります。
戦後、郵政事業が近代化し、社会進歩と人類の向上
発展に大きく貢献してきたことは、
国民のひとしく承知しているところでありますが、このことは決して安易になされたものではなく、社会の進歩に合わせて全国二十五万郵政労働者の郵政事業にかけた情熱と、十三万特定局労働者の封建的請負制を断ち切って事業の近代化を進めてきた
努力の結果であることは間違いないと思うのであります。歴史的には、確実に郵政事業は働く従業員の手によって近代化し、民主化し、
国民の信頼を深めながら、社会の進歩の先がけとして前進してきたと思うのであります。しかして、いま郵政事業にとって大切なことは、
時代に逆行する小手先の窓口の切り売りをやるべきでなく、
情報革命
時代に対応できる郵便事業を、二十五万の郵政労働者の総意を結集して一日も早く確立することではないかと思うのであります。
政府は、いま
国民が郵政事業に求めているのは何であるかに深く思いをいたされ、そのために枝葉末節、有害無益となる本
改正案を強行するのでなく、すみやかに抜本的な、しかも新
時代に十分対応できる確固たる方策を
国民と郵政労働者の前に差し示し、真に
国民と郵政労働者の協力を得て新しい道を切り開くべきであります。したがって、本法はすみやかに否決さるべきことを強く申し述べ、私の
少数意見を終わりたいと存じます。(
拍手)
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