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1969-07-08 第61回国会 衆議院 本会議 第57号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年七月八日(火曜日)     —————————————  議事日程 第四十八号   昭和四十四年七月八日    午後二時開議  第一 建築基準法の一部を改正する法律案(内   閣提出)  第二 特許法等の一部を改正する法律案内閣   提出)  第三 簡易郵便局法の一部を改正する法律案   (内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 建築基準法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第二 特許法等の一部を改正する法律案   (内閣提出)  日程第三 簡易郵便局法の一部を改正する法律   案(内閣提出)     午後二時二十九分開議
  2. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) これより会議を開きます。      ————◇—————  日程第一 建築基準法の一部を改正する法律案内閣提出
  3. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 日程第一、建築基準法の一部を改正する法律案議題といたします。     —————————————
  4. 小平久雄

  5. 始関伊平

    始關伊平君 ただいま議題となりました建築基準法の一部を改正する法律案につきまして、建設委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、都市における土地の合理的な高度利用をはかり、秩序ある発展に資するため、建築物容積及び用途の規制に関する基準を整備することとともに、建築物防災対策を推進するため、内装等に関する制限強化し、あわせて建築基準行政の適正な執行確保をはかろうとするもので、その内容は次のとおりであります。  第一に、人口二十五万以上の市に建築基準法執行を義務づけることとし、その他の市町村については、同法の全部または一部の執行ができることとするほか、違反建築物に対し敏速かつ効果的な是正措置を講ずるため、違反建築物公示制及び建築監視員制度を創設することとしたこと。  第二に、特殊建築物高層建築物等について、換気及び非常用昇降機設備を義務づけることとするほか、排煙設備、非常用照明装置内装制限等に関する基準を整備することとしたこと。  第三に、従前の四種類用途地域を八種類用途地域に改めることとし、用途地域内の純化をはかることとしたこと。  第四に、建築物容積制採用することとし、容積率は、各用途地域種類に応じて定められた数値を都市計画で定めることとするほか、建蔽率については各用途地域とも若干の緩和を行なうこととしたこと。  第五に、建築物の各部分の高さは、現行制限のほか、第一種及び第二種住居専用地域に限り、北側敷地境界線からの高さの斜線制限を行なうこととしたことであります。  本案は、四月二十五日本委員会に付託され、五月七日建設大臣より提案理由説明を聴取し、以来、参考人意見を聴取する等、慎重に審査をいたしたのでありますが、その詳細につきましては会議録に譲ることといたします。  かくて、七月二日、本案に対する質疑を終了し、七月四日、自由民主党民主社会党公明党を代表して金丸信君より、違反建築物等に対する公示行政代執行運用違反建築物設計者等の処分、建築関係職員質問権建築物敷地に関する図面等の閲覧及び公示施行停止命令等履行確保措置検討内容とする修正案提出され、提出者より趣旨説明を聴取した後、修正案並びに原案を一括して討論に付しましたところ、日本社会党より、修正部分を除く原案反対民主社会党公明党より、両案に対し、それぞれ賛成意見が述べられました。  次いで、修正案について採決を行ないましたところ、全会一致をもって可決され、修正部分を除く原案について採決を行ないましたところ、賛成多数をもって可決、よって、本案修正議決すべきものと決した次第であります。  なお、本案に対して、自由民主党日本社会党民主社会党公明党の四党共同提案違反建築物に対する強力な是正措置など五項目の附帯決議が付されました。  右、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  6. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 採決いたします。  本案委員長報告修正であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立
  7. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり決しました。(拍手)      ————◇—————  日程第二 特許法等の一部を改正する法律案内閣提出
  8. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 日程第二、特許法等の一部を改正する法律案議題といたします。
  9. 小平久雄

  10. 大久保武雄

    大久保武雄君 ただいま議題となりました特許法等の一部を改正する法律案につきまして、商工委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  最近における技術革新及び開放経済体制を背景として、特許及び実用新案出願は著しく激増し、その内容はいよいよ高度化し、かつ複雑化しつつあります。この結果、特許庁機構拡充等行政的努力にもかかわらず、未処理案件累積は実に七十万件近くに達し、審査に要する期間は四年七カ月にも及び、特許行政の麻痺を来たさんとする状態に至っております。  このような傾向は、すでに数年前から顕著でありまして、当委員会は、去る第五十二回国会においても、決議をもって抜本的対策要請したところであります。これを受けた政府は、工業所有権審議会に対し、制度改正に関する諮問を行ない、約二年間の審議を経て、特許及び実用新案制度につきまして、現状における弊害を除去し、審査促進する趣旨の本改正案提出したのであります。  本改正案内容を申し上げます。  第一は、出願早期公開制度採用であります。  現行法では、出願されたものを審査した後、出願公告によって出願内容を公表することになっておりますのを、出願後一年六カ月を経過した出願は、すべて公開公報によって公開することとし、発明の休眠を避けようとするものであります。  なお、これに伴い、発明を公開された出願人に対しましては、権利保護のため、補償金請求権を認めることとしております。  第二は、審査請求制度採用であります。  現行法では、すべての出願審査することになっておりますのを、特許については出願から七年、実用新案については四年の期間内に審査請求があった出願のみを審査することに改めるものでありまして、これによって審査促進しようとするものであります。  なお、審査請求に際しましては、所要の請求料を徴収することといたしております。  第三は、審査置制度採用であります。  これは、一定の要件に該当する審判請求につきましては、これを審査官に再審査させることとし、審判処理促進しようとするものであります。  これらのほか、出願公告後における仮保護権利強化補正等制限先願範囲の拡大及び諸料金の改定等につきまして、特許法等の規定の改正を行なうことを内容としており、本法の施行期日は、昭和四十五年一月一日となっております。  本案は、去る三月十九日当委員会に付託され、四月十五日に大平通商産業大臣より提案理由説明を聴取した後、五月六日より質疑に入りました。以来、約二カ月間にわたり、委員会を開くこと実に十一回、質疑時間は三十数時間に及ぶという慎重かつ綿密な審査を行なったのであります。この中には、六月十八日における、学識経験者参考人として招致した委員会が含まれております。これらの委員会のほか、六月二十七日には公聴会を開催いたしましたが、このときの公述人十二名は、すべて一般公募者九十七名のうちから選定したのであります。  かくして、七月四日に至り、ようやく質疑を終了し、討論に入り、自由民主党丹羽久章君から賛成日本社会党中谷鉄也君から反対民主社会党塚本三郎君から賛成公明党近江巳記夫君から反対意見が開陳されました。討論終了の後、採決に付しましたところ、本案は多数をもって可決すべきものと決した次第であります。  なお、日本社会党石川次夫君より、少数意見報告したい旨の発言がありました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  11. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 本案に対しては、石川次夫君から、成規賛成を得て、少数意見報告書提出されております。     —————————————   〔少数意見報告書本号末尾掲載〕     —————————————
  12. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) この際、少数意見報告を求めます。石川次夫君。   〔石川次夫登壇
  13. 石川次夫

    石川次夫君 私は、日本社会党を代表いたしまして、今回提案された特許法改正案に対し、本法案を否決すべきであるとの少数意見を開陳しようとするものであります。  今日、特許案件収拾のつかない状態にまで渋滞、山積をいたしまして、審査に五年近くも要するようになった原因は、言うまでもなく、特許重要性を認識せずに放置し来たった保守政権無為無策に基づくものでございまして、その前提として、科学政策が皆無にひとしかった自民党政府の無能によるものであります。(拍手)  たとえば、今日にわかに情報産業海洋開発等重要性が叫ばれてきたのも当然のことで、むしろおそきに失したうらみがあるわけでございますけれども、それぞれの審議会答申を見るときに、政府意図にこたえて人間不在の性格が明らかにされておるわけであります。  すなわち、情報産業においては、当然近い将来に情報化時代になることは必至で、それに備えなければなりません。そして、情報化時代になればなるほど、極端な人間疎外の社会になってくると思われますけれども、それにいかに対応するかということについては全然触れられていないのであります。また、海洋開発が進めば、当然海洋汚染の深刻な問題が予想され、さらに、海底軍事基地設置危険性が必然的に出てくるわけでございますけれども、これらのことには全く触れておらないのであります。  すなわち、政府意図をくんで、成長産業をいかに助長させ、いかに利潤を生ませるかということにのみきゅうきゅうといたしまして、人間不在、公害、平和の問題は、全然無視されておるわけであります。しかも、この答申と前後いたしまして、本来は科学に全く縁のないと思われるような自民党のおもな議員が続々とこのことに関心を示して、いろいろと組織化をはかっておられる姿を見ますというと、まことに甘いみつに群がるアリの姿を連想させるのであります。この現象は、まことにこっけいであるだけではなくて、国民不在保守政治の根源を見せつけられる思いがするわけであります。本来、科学人間のしあわせのために存在するものでありまして、断じて産業に隷属すべきものではないのであります。  特許は、科学政策中核であります。その特許が六十万件以上も滞貨をし、収拾のつかない現状に立ち至っておりますが、特許法につきましては、四十一年、国会にも改正案提出をされて、五十二国会審議未了になっておりますが、その審議にあたっては、四十一年七月二十九日、衆議院商工委員会において、次のように決議をされておるのであります。すなわち、「現在、工業所有権制度に関する審査審判遅延と未処理案件累積は著しいものがあり、産業及び技術発展に重大な悪影響を及ぼしつつある。よって政府は、審査審判促進並びに未処理案件処理促進のため、画期的な予算措置等によつて当面の事態改善を図るとともに、」云々となっておるわけであります。しかるに、この決議は全く無視されまして、特許予算はいつも歳入が歳出を上回り、利益をいつも出す形で運営をされてきたような政策の結果、滞貨は急速に累増の一途をたどってきたのでありますから、その責任はあげて政府にあるのは当然であります。  今回の改正は、滞貨一掃のための画期的な方針として早期公開制度、それから審査請求制度を二本の柱として法律化されておりますけれども、このうち、特に早期公開制度に関しましては、次の理由から絶対に賛成するわけにはまいりません。  一つには、憲法第二十九条による権利侵害につながる違憲のおそれが濃いという点であります。従来、特許として決定をし、公告されるもの以外はすべて非公開であったのであります。ところが、本改正案によりまして、出願したものが全部早期に公開されるということになりますと、血と汗の結晶であるところの発明が盗用される危険が出てまいったわけであります。膨大な公開された特許につきましては、中小企業零細企業あるいはいわゆる町の発明家などは、これを整理することは不可能であります。ただ、特許関係に人材をそろえることができる大企業だけが、盗み取りすることができる可能性を多く持っておるわけであります。このことから、この早期公開制度というものは大企業の要望にこたえたもの、すなわち、産業界要請に屈服したものといわなければなりません。(拍手公聴会における公述人の多くも、この点に非常な疑念と不審を抱きまして、どろぼう市場特許を公開させてはならない、こういう血を吐くような叫びというものをわれわれは理解しなければならぬと思うのであります。  次に、早期公開制度によるところの技術情報というものは、従来のごとく、ちゃんと整理をされたものではありません。権威のない玉石混淆の情報のはんらんで、日本国内でたいへんな手数と非能率を引き起こすことは必至であります。  また、審査請求制度につきましても、その審査請求率政府は非常に低く推定いたしておるわけであります。諸外国と全く国情の違う日本外国の例を引用して推定することは、根本的な誤りをおかしたものといわなければなりません。  かつ、今度の制度において、改正に伴って新たに制定された審査置制度あるいは補正制限の複雑難解をきわめるその事実、あるいは滞貨早期公開のために膨大な資料を読んで理解し、整理をするという手数等を考えますときに、滞貨整理促進に有効であるどころではなくて、処理能率は明らかに現在の半分以下に低下するであろうということが懸念され、かえって滞貨を増大させ、事務渋滞に拍車をかける懸念が濃厚であるのであります。一体何のための改正か、全く真意を疑わざるを得ないのであります。  その上、本改正によりまして、出願手数料審査請求料というものを合わせますと一躍従来の五倍、一万円にはね上がるわけでありまして、いかに佐藤内閣物価上昇をあおってみたところで、この上昇率には遠く及ばないのであります。しかも、特許申請件数の半数以上は特許とならないのが通例でありますから、特許とならないものについて申請をした人たちに対しましては、全くのやらずぶったくりで、はなはだしい収奪といわなければなりません。町の発明家にとっては、手痛い打撃になっておるわけであります。  およそ特許行政は、日本の将来を律する科学技術の推進の中核となるきわめて重要なものでありますから、その改正にあたりましては、十分慎重にあらゆる場合を勘案して、法の安定性をはからなければならないのであります。しかるに、終戦後数回にわたって改正が企てられ、四十一年の改正案は、抜本的改正国会から要請されて、審査未了になったものであるにかかわらず、以上のごとく審査促進が期待をされない、かえって渋滞されることが考えられ、発明家の重大な権利侵害が危惧されるような法案を提案された当局に対しましては、強く遺憾の意を表さなければなりません。このことは、特許事務をあずかる弁理士、あるいは直接担当の審査官、その大半が強い反対を表明しておることにもあらわれておりまするし、また、中小企業及び町の発明家の血を吐くような反対となっておることをどう一体見ておるのか、全く理解に苦しむものであります。この根強い反対は、もし本案が強硬に成立をはかられて通過をしたといたしましても、運用上に多くの障害が出てくることは火を見るよりも明らかであって、その点懸念にたえないのであります。  このほか、特許行政には、実用新案の取り扱いを一体どうしたらいいのか、あるいは多項制の適用の問題をどうするか、リスボン会議決議をされました化学物質特許の重大な課題等をどうするかということなどを含めまして、多くの未解決の問題が残されておるわけであります。  また、諸外国にあるところの事前調査機関としての新規性調査機関設置するということについても、また紛争処理のための合理的機関についても、早急に設置をはからなければなりません。ちょうど世界的規模において、いわゆるPCT、特許協力協定制定が、昭和四十八年か四十九年ころ行なわれる予定でありまして、日本も当然それに参加が予想されておるのでありますけれども、今回改正を強行いたしましても、その機会にまた大幅な改正を余儀なくされることは当然でありますから、法の安定性は全くないし、国民にもそのつどたいへんな混乱を与え、事務渋滞をもたらすことになるわけであります。  われわれは、この世界的規模における特許法制定に向けて、まず特許庁充実技術者軽視官僚機構改正を実現をさせまして、以上述べたようないろいろな問題点抜本的対策を考慮しながら、権利侵害収奪のない形の解決をはかるべきであって、百害あって一利ない今回の改正は、当然国民の名において撤回を要求いたします。  終戦後、日本同様敗戦のうき目にあいましたドイツは、瓦れきの山を片づけたその後に、まっ先に建造したものは特許庁であった。このことは、もって他山の石としなければなりません。現在においても審査官は非常な優遇を受け、特許庁事務の徹底的な合理化機械化が行なわれておりまして、その結果が、日本のごとく技術輸出が輸入に対してわずか一割というようなことではなくて、実にドイツにおいては四割を占めておるというような実績にもあらわれておるのであります。  科学的精神を忘れ、技術産業政策にのみ走っておるところの現在の政府のもとでは、資本自由化のあらしのもとで技術導入のきわめて困難になってきた今日、日本がやがてだんだんに転落をしていく危険がきわめて濃厚であるということを強く指摘いたしまして、私の少数意見にかえる次第であります。(拍手)     —————————————
  14. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 討論の通告があります。順次これを許します。丹羽久章君。   〔丹羽久章登壇
  15. 丹羽久章

    丹羽久章君 私は、自由民主党を代表いたしまして、特許法等の一部を改正する法律案賛成の意を表するものであります。(拍手)  御承知のとおり、今後のわが国経済の一そうの発展をはかってまいりますためには、従来の外国をまねた技術から脱皮し、独創的な技術開発を推進することが必要でありますが、このために特許制度が果たすべき役割りは将来ますます重要なものになると予想されるのであります。しかるに、特許行政現状を見ますと、出願は年々激増し、加うるに、その内容高度化、複雑化し、審査処理促進しようとする特許庁行政努力にもかかわらず、いまだ処理し得ない案件は年を追って累積し、現在ではその平均処理期間は四年と七カ月にも及ぶという状況になっております。  今回の改正案は、このような事態に対処して、早期公開制度審査請求制度採用するものでありますが、早期公開制度は、現在の審査遅延による弊害を除去し、もって国民経済的損失が生ずることを防止するために有効であり、また審査請求制度は、審査処理促進し、もって累積した未処理案件の解消をはかり、敏速かつ適正な権利の付与という、工業所有権制度本来の機能を回復せしめるために適切なものであると信ずるのであります。(拍手)  改正案内容は、工業所有権審議会において約二年にわたり慎重に検討を重ねた結果作成された答申基礎としたものであり、また、海外においても、審査主義をとる国々の間においては、このような趣旨制度改正を行なうことにより事態改善をはかろうとするのが大勢であります。  本改正案審議するため、商工委員会におきましては、五月六日に質疑を開始以来、二カ月にわたり、学識経験者参考人招致を含み、委員会を開くこと十一回、質疑時間は実に三十数時間に及んだのであります。このほか、六月二十七日には十二人の公述人による公聴会を開きましたが、この公聴会公募者は九十七人、そのうち賛成者は七十七人、反対者十九名、賛否不明一名でありまして、一般公募によりましても、賛成が圧倒的に多いことが立証されたのであります。(拍手)  かくのごとくにして慎重審議を重ねた結果、さきに申し上げました制度改正必要性とその効果をはじめ、発明者権利を守るための方策、改正法運用を円滑ならしめるための措置、その他法改正に関連する諸問題並びに特許行政のあり方、その改善充実策等の基本問題がすべて明らかにされました。今後、この審議基礎といたしまして、本改正法施行が円滑に行なわれ、憂うべき特許制度現状が格段に改善されるよう切望するものであります。もちろん、法改正のみによってすべてが解決されるものではなく、改善策の多くは、今後における政府行政責任にかかっていることは言うまでもありません。(拍手)  特に、特許庁職員執務体制につきまして、この際指摘しておきたいのであります。公述人の一人は、審査事務のおくれは特許庁職員の怠慢にその原因があり、勤務時間の短いことは他の官庁に比較して雲泥の差があって、民間企業ならば三倍の能率があげられるという意見を述べておられます。その他、職員服務規律には幾多の問題があることにつきまして、関係当局に対して厳重な注意を喚起したいと存ずるのであります。  政府におきましては、以上の諸点を勘案の上、一そうの熱意をもって、特許庁行政能力拡充強化を通じ、発明の奨励による国民経済発展を期するための努力を続けられんことを、あらためて要望するものであります。(拍手)  申すまでもなく、発明は人類だけの特徴であり、人間は、発明によって万物の霊長となってまいったのであります。その発明をささえる特許制度は、技術革新とともに今後ますます発展していかなければなりませんし、時代要請により、特許制度国際化も急速に進むでありましょう。本改正法成立を契機として、将来の特許制度に関する国家百年の計が確立されんことを念願いたしまして、賛成討論の結びとする次第でございます。(拍手
  16. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 古川喜一君。   〔古川喜一登壇
  17. 古川喜一

    古川喜一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、特許法等の一部を改正する法律案に対し、反対を表明するものであります。  反対理由としての第一は、本案は、政府責任のがれであるということであります。  今日、特許庁における未処理案件、いわゆる滞貨は、特許及び実用新案制度だけで七十万件を数えるのでありますが、これは、決して制度の欠陥あるいは予見できなかった外部要因によるものでなく、原因は、政府の怠慢にほかならないのであり、委員会審議によっても明らかにされたところであります。政府は、提案理由その他において、技術革新の伸展や開放経済体制への移行による出願の増加と内容高度化が、滞貨累積審査遅延原因であるといっておりますが、このような時代の流れは予想できたところであり、これに対応して特許庁機能を拡充してまいるべきことが、また当然であります。この当然のことを、政府は怠ってきたのであります。  いまから十年前、現行法制定の際に、すでに滞貨が相当あったようで、国会政府注意を促してきましたが、その後も出願増の見通しや特許庁人員の増強は著しく無計画であり、ここ数年、審査官の定員すら確保されていない現状であります。また、歳出予算が必ず歳入を下回る因循こそくな予算編成は、一向に改めておられないのであります。特許庁長官は一年ぐらいで次々とかわる。こういう状態が続き、さらに、特許庁人事は本省の高級官僚の横すべりの場となり、庁内人事の停滞は、特許行政を沈滞させる大きな原因となっていると見るべきであります。この結果生じた発明者を含む国家的損失は、はかり知れないものがあります。先日通産大臣は、その損失はおそらく数百億円にのぼるであろうと答えておりますが、行なうべき努力と金を惜しんで、ばく大な損失を招いた政府責任は、まさに重大であります。(拍手)  政府の無策を示す事例は枚挙にいとまありません。たとえば去る第五十一国会の本会議において、佐藤総理は、特許庁長官をあまりしばしばかえないようにしたいとか、技術者も登用するつもりとか答えております。また同じ日に、当時の福田大蔵大臣は、必要なところには経費を惜しまないと答えておるのであります。にもかかわらず、それらのことは何一つ実行されてはおりません。食言もはなはだしいというべきであります。これら政府の怠慢がもたらした損失を、発明者産業界及び労働者に責任転嫁しようとするのが今回の改正案でありますから、とうてい賛成できないのであります。(拍手)  第二に、本案発明者権利侵害するものであります。  商工委員会公聴会におきまして、与野党理事が、応募者の中から先入観なしに賛成反対それぞれ六人の公述人を選定したところ、驚くべきことに、十二人中、全面的賛成はわずか二人にしかすぎなかったのであります。その際、一公述人より、早期公開はどろぼう市場に公開するにひとしいという悲痛な訴えもありました。関係者が個人の権利についていかに敏感であり、それだけに早期公開制に危惧の念を抱いているかを示すものであります。早期公開制は、出願された発明内容を一方的に公開し、公開から審査終了までの間は、模倣、盗用を公然と許すものであり、補償金請求権なる制度を設けてはみたものの、特に資力の乏しい発明者中小企業者にとっては画餅にひとしいのであります。だれが喜ぶかといえば、それは他人の発明でも実施する能力のある一握りの大企業であります。早期公開制は、発明者権利侵害され、憲法第二十九条に抵触する疑いがあり、大資本に奉仕するだけの早期公開制には反対せざるを得ないのであります。(拍手)  第三に、本案には、政府の言う効果が期待できないのであります。  早期公開制による二重研究防止の効果についてさえ、政府は、たぶんあるだろう程度にしか答えておりません。まして、審査請求制による審査促進の効果については、政府がいかに苦心して数字のつじつまを合わせようとしても、結局は机上の空論にすぎず、しかも、その数字が何カ月かごとにネコの目のように変わるありさまでありまして、これを信用しろといっても無理であります。加うるに、深い関係者、すなわち個人発明家弁理士特許庁審査官の大部分、管理者を含む技術懇話会がこの改正反対しているという事実は、憂うべきマイナス効果の必然性を示しております。賛成をしているのは、特許庁長官と通産省から来ている一部の人であり、何を好んでこのような危険性をはらんだ法案成立をはかるのか、われわれは、はなはだ理解に苦しむところであります。  なお、本案は、審査請求にあたり、一件八千円の請求料を徴収することとしておりますが、これは政府が何と言いのがれをしても、一挙に料金を五倍に値上げをすることによって、拒絶されても一万円徴収されるのであるが、審査請求件数を減らす効果をねらっているとしか考えられないのであり、特許制度の目的とまっこうから矛盾する悪政の典型であります。(拍手)  第四に、本案は、特許法という個人の権利義務に関する法律安定性を破壊し、国民に深刻な不安を与えるものであります。  本案は、現行法体系に相当の変更を加えるものであるのに、補正など基本的な問題をたくさん残したまま軽々に提案されたところに問題があります。また、わが国のPCT参加は国際的要請であり、制度改正はこのような長期的展望に立って行なわれるべきでありますが、本案には、PCTに関連する多項制化学物質特許実用新案問題などは全く盛られておりません。これらをあわせ検討し、解決してこそ審査促進もはかられるのでありまして、本案はあまりにも拙速未熟であると言うべきであります。  最後に、本案は、必要性が全くないということであります。  政府が現在までなすべきことをしなかった、その責任のがれに本案提出したととはさきに申し上げましたが、政府がこの際反省し、前向きに考える姿勢があれば、いまからでもおそくはなく、着実に実効をあげる道はあるのでありまして、作業環境の整備、労働条件の改善など、あらゆる角度から手段を尽くして、特許庁の行政機能充実をはかることがその方法であります。本案がこれらの綿密な努力を回避しようとするものであるために、通産大臣の口から本案必要性について、まあやってみようじゃないかとか、試行錯誤かもしれぬということばが吐かれるのでありまして、このことは特許行政責任ある政府のとるべき態度ではありません。怠慢の上に怠慢を重ねようとする本案を許すことはとうていできないのであります。  本案が、特許庁上層部のあと押しによって強引に強行されることになるならば、わが国の特許制度に及ぼす混乱ははかりしれないものがあり、その責任はあげて政府が負うべきであることを強く申し上げまして、反対討論を終わります。(拍手
  18. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。  この採決は記名投票をもって行ないます。本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。——閉鎖。   〔議場閉鎖〕
  19. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 氏名点呼を命じます。   〔参事氏名を点呼〕   〔各員投票〕
  20. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。——開鎖。   〔議場開鎖〕
  21. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 投票を計算いたさせます。   〔参事投票を計算〕
  22. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。   〔事務総長報告〕  投票総数 三百八   可とする者(白票)       百九十三   〔拍手〕   否とする者(青票)        百十五   〔拍手
  23. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 右の結果、特許法等の一部を改正する法律案委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)     —————————————  特許法等の一部を改正する法律案委員長報告の通り決するを可とする議員の氏名       足立 篤郎君    阿部 喜元君       相川 勝六君    青木 正久君       赤城 宗徳君    秋田 大助君       天野 光晴君    荒木萬壽夫君       荒舩清十郎君    井出一太郎君       井原 岸高君    伊藤宗一郎君       伊能繁次郎君    石田 博英君       稻村佐近四郎君    宇野 宗佑君       植木庚子郎君    臼井 莊一君       内海 英男君    浦野 幸男君       江崎 真澄君    小笠 公韶君       小川 半次君    小澤 太郎君       小沢 辰男君    小渕 恵三君       大石 八治君    大久保武雄君       大竹 太郎君    大坪 保雄君       大野 市郎君    大橋 武夫君       大平 正芳君    大村 襄治君       岡本  茂君    奥野 誠亮君       加藤常太郎君    加藤 六月君       鹿野 彦吉君    鍛冶 良作君       海部 俊樹君    神田  博君       亀岡 高夫君    亀山 孝一君       鴨田 宗一君    仮谷 忠男君       菅  太郎君    木野 晴夫君       木部 佳昭君    木村 武雄君       北澤 直吉君    吉川 久衛君       久野 忠治君    久保田円次君       久保田藤麿君    草野一郎平君       熊谷 義雄君    倉成  正君       河本 敏夫君    齋藤 邦吉君       斎藤 寿夫君    坂村 吉正君       坂本三十次君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    四宮 久吉君       志賀健次郎君    始関 伊平君       椎名悦三郎君    塩川正十郎君       塩谷 一夫君    重政 誠之君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       進藤 一馬君    菅波  茂君       砂田 重民君    砂原  格君       世耕 政隆君    園田  直君       田澤 吉郎君    田中伊三次君       田中 榮一君    田中 角榮君       田中 龍夫君    田中 正巳君       田中 六助君    田村 良平君       高見 三郎君    竹内 黎一君       竹下  登君    谷垣 專一君       谷川 和穗君    中馬 辰猪君       塚原 俊郎君    辻  寛一君       渡海元三郎君    登坂重次郎君       徳安 實藏君    床次 徳二君       内藤  隆君    中尾 栄一君       中垣 國男君    中川 一郎君       中村庸一郎君    中山 榮一君       中山 マサ君    永田 亮一君       永山 忠則君    灘尾 弘吉君       南條 徳男君    二階堂 進君       丹羽 久章君    丹羽喬四郎君       丹羽 兵助君    西岡 武夫君       西村 英一君    西村 直己君       根本龍太郎君    野田 卯一君       野呂 恭一君    羽田武嗣郎君       葉梨 信行君    橋本登美三郎君       橋本龍太郎君    長谷川 峻君       八田 貞義君    早川  崇君       原田  憲君    福家 俊一君       福井  勇君    福永 一臣君       福永 健司君    藤井 勝志君       藤枝 泉介君    藤尾 正行君       藤田 義光君    藤本 孝雄君       古井 喜實君    古内 広雄君       古川 丈吉君    古屋  亨君       坊  秀男君    細田 吉藏君       堀川 恭平君    本名  武君       増岡 博之君    増田甲子七君       松浦周太郎君    松澤 雄藏君       松田竹千代君    松野 幸泰君       三池  信君    三木 武夫君       三ツ林弥太郎君    三原 朝雄君       箕輪  登君    水田三喜男君       水野  清君    宮澤 喜一君       武藤 嘉文君    村上  勇君       村山 達雄君    毛利 松平君       粟山  秀君    森下 國雄君       森田重次郎君    森山 欽司君       八木 徹雄君    山口喜久一郎君       山下 元利君    山田 久就君       山中 貞則君    山村新治郎君       吉田 重延君    渡辺 栄一君       渡辺  肇君    渡辺美智雄君       池田 禎治君    受田 新吉君       内海  清君    岡沢 完治君       折小野良一君    河村  勝君       小平  忠君    曾禰  益君       玉置 一徳君    塚本 三郎君       中村 時雄君    永末 英一君       西尾 末廣君    門司  亮君       山下 榮二君  否とする議員の氏名       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       赤路 友藏君    淡谷 悠藏君       井岡 大治君    井上  泉君       井上 普方君    猪俣 浩三君       石川 次夫君    石野 久男君       板川 正吾君    枝村 要作君       大原  亨君    太田 一夫君       岡田 利春君    加藤 清二君       加藤 万吉君    勝澤 芳雄君       角屋堅次郎君    金丸 徳重君       神近 市子君    唐橋  東君       川崎 寛治君    川村 継義君       河上 民雄君    河野  正君       木原津與志君    木原  実君       北山 愛郎君    久保 三郎君       久保田鶴松君    栗林 三郎君       兒玉 末男君    後藤 俊男君       佐々栄三郎君    佐野 憲治君       佐野  進君    斉藤 正男君       實川 清之君    柴田 健治君       島本 虎三君    田中 武夫君       田邊  誠君    多賀谷真稔君       高田 富之君    武部  文君       只松 祐治君    戸叶 里子君       堂森 芳夫君    内藤 良平君       中澤 茂一君    中谷 鉄也君       中村 重光君    永井勝次郎君       楢崎弥之助君    野口 忠夫君       野間千代三君    芳賀  貢君       長谷川正三君    畑   和君       華山 親義君    浜田 光人君       原   茂君    平岡忠次郎君       平林  剛君    広沢 賢一君       広瀬 秀吉君    福岡 義登君       古川 喜一君    帆足  計君       穗積 七郎君    細谷 治嘉君       三木 喜夫君    美濃 政市君       武藤 山治君    村山 喜一君       森  義視君    森本  靖君       八百板 正君    八木 一男君       八木  昇君    矢尾喜三郎君       柳田 秀一君    山内  広君       山口 鶴男君    山崎 始男君       山田 耻目君    山本 幸一君       山本 政弘君    山本弥之助君       米内山義一郎君    米田 東吾君       渡辺 惣蔵君    渡辺 芳男君       有島 重武君    伊藤惣助丸君       石田幸四郎君    小川新一郎君       大野  潔君    大橋 敏雄君       岡本 富夫君    小濱 新次君       斎藤  実君    鈴切 康雄君       田中 昭二君    中野  明君       樋上 新一君    伏木 和雄君       正木 良明君    松本 忠助君       山田 太郎君    田代 文久君       谷口善太郎君    林  百郎君       松本 善明君      ————◇—————  日程第三 簡易郵便局法の一部を改正する法律案内閣提出
  24. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 日程第三、簡易郵便局法の一部を改正する法律案議題といたします。
  25. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 委員長報告を求めます。逓信委員長井原岸高君。     —————————————   〔報告書本号末尾掲載〕     —————————————   〔井原岸高君登壇
  26. 井原岸高

    ○井原岸高君 ただいま議題となりました簡易郵便局法の一部を改正する法律案に関し、逓信委員会における審査経過と結果を御報告申し上げます。  本案は、簡易郵便局の増置を促進する等によって利用者の利便を増進しようとするものでありまして、  その改正の第一点は、現在、簡易郵便局の受託者の範囲が、地方公共団体や農業協同組合等の非営利団体に限られているのを改め、新たにこれに個人を加え、その資格要件を法定することであります。  改正の第二点は、簡易郵便局に委託する事務の範囲に、老齢福祉年金等の支払い事務を追加することであります。  本案は、去る二月二十日内閣より提出、三月十八日逓信委員会に付託されましたが、委員会においては、五月十五日提案理由説明を聴取、自来、数回の会議を通じて慎重審議の後、七月七日に至って質疑を終了し、直ちに討論に入りましたところ、日本社会党を代表して森本靖君より反対、また、自由民主党を代表して加藤六月君、民主社会党を代表して小沢貞孝君、公明党を代表して中野明君より、それぞれ賛成意見が述べられ、次いで、採決を行ないました結果、賛成多数をもって本案原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、日本社会党米田東吾君より、本案に対し、少数意見を留保する旨の発言がありました。  また、委員会は、政府に対する二項の要望を内容とする附帯決議を付することを賛成多数で可決いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  27. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 本案に対しては、米田東吾君から、成規賛成を得て、少数意見報告書提出されております。     —————————————   〔少数意見報告書本号末尾掲載〕     —————————————
  28. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) この際、少数意見報告を求めます。米田東吾君。   〔米田東吾君登壇
  29. 米田東吾

    ○米田東吾君 私は、日本社会党を代表し、ただいま逓信委員長報告をいたしました簡易郵便局法の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会において留保いたしました本案を否決すべきであるとの少数意見報告を行ないたいと存じます。(拍手)  私は、まず本案を提案された背景について、この際指摘をしたいと思うのであります。  本案は、自由民主党の党略的立法であり、自民党の組織固めと、その下請機関化している全国特定郵便局長会対策の法案であるということであります。  全国一万五千の特定郵便局長を自民党に入党させて政治献金をさせ、選挙に利用し、その代償として局舎料を引き上げたり、特定局の請負化を与えるための約束を果たすために、強引に第五十五国会以来三回にわたって国会提出し、とうとう多数を頼んで成立せしめようとしている法案であって、その唯一の理由としている郵政事業の窓口サービスの拡充などとはまっかなうそ偽りで、それは単に国民を惑わすための口実でしかないということであります。(拍手)したがって、この法案には中身もなく、また郵政省自体熱意も乏しく、その準備もないことで明白であります。すなわち、本法案審議を通して、郵政省の資料の不足、答弁の行き詰まり、さらに、国民を納得させるに足る説明の欠除などが随所に見られ、また、自由民主党においてすら、一部議員の横暴なる審議促進と強引なる委員会運営に辟易している実情は、何よりもこの法案の性格を物語っていると思うのであります。(拍手)  第二に、この法案は行政府の立法府への許しがたい挑戦であり、国会軽視の法案であるということであります。  本法案は、昭和四十二年、第五十五国会に提案され、その国会では審議未了、廃案となったものであります。当時、与党たる自民党も、この法案時代逆行的な性格を認めて、審議されないまま廃案となったのであります。この廃案は、明らかに第五十五国会の権威ある意思であり、主権者たる国民の意思と認むべきであります。越えて四十三年、五十八国会に再びこの法案は出されてまいりました。しかし、依然として審議に入らず、審議未了、廃案となるべきであったのでありますが、当時の逓信委員長は何を血迷ったか、一人でハッスルして、最終段階で、継続審議に持ち込むため強行採決をしたのであります。しかし、続いての五十九臨時国会では、自民党もその非を認め、再び廃案となったのであります。したがって、ここでこの法案は明確に立法府の意思として二度まで審議に値しないものとして廃案になったのでありまして、国会の意思として尊重されねばならないものと思うのであります。しかるに政府は、この国会の意思を無視して、三たび不遜にも本六十一国会に提案してまいりました。自民党の一部議員の突き上げと、多数党の言い分ならば何でも通すという思い上がった態度がそうさせたのであります。すなわち、国民の意思を無視し、国権の最高機関たる国会の意思を軽視して三たび国会に提案して、しかも多数を頼んで強引に成立を期そうとすることは、議会制度の自殺行為であるばかりでなく、これこそ行政府の立法府に対する重大なる挑戦であり、これを成立せしめることは、立法府が屈服したことを意味すると思うのであります。  第三に、本法案は郵政事業の民主化と近代化に逆行する改悪案であるという点であります。  現に、郵政省は、郵政事業全般について、公社化への移行の是非を含めて、抜本的に、経営診断とあわせて事業のあり方、制度全般を郵政審議会検討中のところであります。しかも、小局の運営は今後どうあるべきかが、この検討の中において重要な部分を占めなければならないはずであります。したがって、末端窓口機関のあり方は、事業の公共性をいかに確保していくべきかの見地から結論を求めて後に提起さるべきものであって、本法案の提案は拙速のそしりを免れないと思うのであります。  さらに、郵政事業の長期合理化計画も現在立案され、好むと好まざるとにかかわらず、事業の民主的近代化に向かって大きくスタートしようとしているときであります。すなわち、この時期にこそ、近代的な郵政事業に残骸として残っている請負制から来る封建的性格を払拭しなければならないと思うものであります。しかるに、本法案は、末端窓口機関をして個人に請け負わせるという、かつての請負制を再現することは、明らかに時代逆行といわざるを得ないと思うのであります。  以上の背景をもって提案された簡易郵便局法の一部を改正する法律案について、以下、おもな事項にわたり、具体的に反対理由を申し述べます。(拍手)  まず第一に、第一条の目的を改正して、従来の受託者の範囲を個人にまで拡大することによって、へんぴな地域にまで郵政窓口サービスを提供しようとするものであると言われるのでありますが、窓口サービスの拡大は現行でも可能であります。すなわち、現行受託者が再委託して、実際は他人に経営させていることは郵政省当局も認めておられ、かつ合法としているものであります。したがって、この方式で十分まだへんぴな地域に拡大できるし、なお必要があれば、無集配局の設置や分局または出張所の設置によって、簡易に、しかも最も近代的に窓口サービスは提供できるのであります。しかし、この改正のねらいはそこにあるのではありません。むしろ、公共性を持つ郵政事業に再び私企業性を導入せんとするところに真のねらいがあるのであります。明治四年、郵政事業創業以来、局長の請負割による特定局制度は戦前まで存置されていました。この法改正は、まさにそこに戻そうとするのが真のねらいであります。  郵政事業に私企業性を導入した請負制は、かつて歴史が証明しているごとく、その弊害はおそるべきものがあります。具体的には、渡し切り経費のもとでの従業員の低賃金、奉公人的雇用関係、劣悪過酷な労働条件、他方、局長の不当利得、公金横領などをはじめとする多くの犯罪、不正事件などなど、郵政事業に一大汚点を残した歴史は、今日なおなまなましいのであります。さらに申し上げたいのでありますが、今日においても、他の政府機関に見られないところでありますが、特定局長が私的団体である全国特定局長会をつくって、ある政党と結託して自己の権益擁護に狂奔し、郵政省に対して圧力団体となり、事業の近代化への大きな障害となっていることであります。このような弊害をもたらす請負制に再び戻そうとすることは、とうていわれわれの認めることができないのは当然ではございませんか。(拍手)  その二つは、改正案の第三条第一項五号に「十分な社会的信用を有し、かつ、郵政窓口事務を適正に行なうために必要な能力を有する個人」と規定し、第三条の二項で欠格条項を列記してあるが、ひっきょう欠格条項に該当しなければだれにでも委託することができるわけでありまして、政府委員の「読み書きそろばんができる人」という答弁が、端的にそのことをあらわしていると思うのであります。そういう点で、簡易郵便局の受託者と他の郵便局の職員とは責任と義務からいっても差があり、簡易局の信書の秘密ということについての危険性に危惧の念を抱かざるを得ないのであります。  また、このような個人受託は多分に政治的に利用され、利権のからむ根因となるのではないかとおそれるのであります。へんぴな地方のボスや政治屋が特権のように受託される危険は十分あるのであります。現行特定局長の任用において、すでにその自由任用制を悪用して、政治と利権が介在した任用が行なわれていることは、しばしばわれわれの指摘したところでありますが、この法改正は一そうこれを助長し、将来郵政事業の大きなガンとなるであろうことを指摘するものであります。  その三つは、犯罪についてであります。  私は、さきに事業の私企業感が犯罪の原因となっている点を指摘申し上げたところであります。政府説明では、簡易郵便局は一人未満の微量な郵政窓口事務を行なうとしています。したがって、委託を受けた個人が一人で事務を行なうことになるわけで、自分が自分を指導監督することの困難性は申し上げる必要がないほど明白であると思うのであります。現在、無集配特定局における最低の人員配置を二名としておりますが、これも事業の公共性と国民の郵政業務に対する負託にこたえるために、赤字であっても配置している理由の一つには、公共の名における指導、監督の必要性からであると思うのであります。そういう意味から、私企業感と、指導監督体制に欠ける個人委託が犯罪の増加をもたらし、そのことがひいては郵政事業に対する国民の信用失墜をもたらすであろうとの危惧を禁じ得ないところでございます。したがいまして、政府は窓口サービスを拡大するといっておりますが、その内容は、拡大ではなく、いたずらに非近代的経営を許し、郵便局の信頼を欠き、また犯罪を呼び、信書の秘密が侵され、小局管理に大きな障害となる個人委託には絶対に反対するものであります。  最後に、郵政事業は今日まさに転機に立っていると思うのであります。日本経済の異常なまでの高度成長と、政治、文化、科学の急速な発展、これに対応しようとする通信産業、電話の高度な成長と全国即時化、情報革命の到来、このときにあって、郵便はまさにその存亡が問われているときではないかと思うのであります。  戦後、郵政事業が近代化し、社会進歩と人類の向上発展に大きく貢献してきたことは、国民のひとしく承知しているところでありますが、このことは決して安易になされたものではなく、社会の進歩に合わせて全国二十五万郵政労働者の郵政事業にかけた情熱と、十三万特定局労働者の封建的請負制を断ち切って事業の近代化を進めてきた努力の結果であることは間違いないと思うのであります。歴史的には、確実に郵政事業は働く従業員の手によって近代化し、民主化し、国民の信頼を深めながら、社会の進歩の先がけとして前進してきたと思うのであります。しかして、いま郵政事業にとって大切なことは、時代に逆行する小手先の窓口の切り売りをやるべきでなく、情報革命時代に対応できる郵便事業を、二十五万の郵政労働者の総意を結集して一日も早く確立することではないかと思うのであります。  政府は、いま国民が郵政事業に求めているのは何であるかに深く思いをいたされ、そのために枝葉末節、有害無益となる本改正案を強行するのでなく、すみやかに抜本的な、しかも新時代に十分対応できる確固たる方策を国民と郵政労働者の前に差し示し、真に国民と郵政労働者の協力を得て新しい道を切り開くべきであります。したがって、本法はすみやかに否決さるべきことを強く申し述べ、私の少数意見を終わりたいと存じます。(拍手)     —————————————
  30. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 討論の通告があります。順次これを許します。加藤六月君。   〔加藤六月君登壇
  31. 加藤六月

    ○加藤六月君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました簡易郵便局法の一部を改正する法律案について、賛成討論を行なうものであります。(拍手)  この簡易郵便局法改正案は、個人にも受託の道を開くことによって郵政窓口機関の普及を促進するとともに、簡易郵便局の取り扱い事務に新たに老齢福祉年金等の支払い事務を加え、利用者の利便を増進しようとするものであります。この改正は、郵政事業の現状等より見て、また過疎地帯の現況から考え、さらに社会保障制度充実の立場からも、目的、方法ともにまことに適切であります。  この改正案は、第五十五国会以来実質審議が全然行なわれず、二回も審議未了となり、今回初めて十分な審議が行なわれ、きょうの運びに至った問題の法案であります。この際、わが党の見解を明確に申し述べておきたいと存じます。  簡易郵便局は、昭和二十四年の制度創設以来順調に伸び、現在、その数三千二百余局に達し、僻地、離島などへんぴな地方における郵政窓口サービスの普及に大いに貢献しているのであります。しかしながら、最近における簡易郵便局の設置状況を見ますと、設置を要する地区がいまなお全国に二千カ所以上もあり、国民大衆は不便に泣いているのであります。これらの要設置地区の大半は、そこに地方公共団体等の施設がないことなどの事情によって、容易に簡易郵便局を設けることができない状況になっているのであります。特に、現在老齢福祉年金等の支払い事務が簡易郵便局において取り扱われていないために、いかに多くの辺地の老人たちが不自由な足をつえに託して遠方の特定郵便局まで出向かざるを得ないか、その真摯な、不幸な老人たちの熱望を知る者は、今回の改正法案に反対できるはずはないと信ずるのであります。(拍手)こうしたところに郵政窓口機関を設け、国民の不便の解消をはかるためには、どうしても現行制度のワクを広げる必要があり、今回の受託範囲の拡大はむしろおそきに失した観があるのであります。  一方、郵政事業の経営の実情は必ずしも豊かではなく、また、国民負担の増大を避けるためにも、郵便局の増設については、つとめて経費の抑制をはかりながら推進すべきであり、取り扱い数の少ない地域にあっては、特定郵便局に比べて一段と経済的な簡易郵便局を設置し、少ない経費で一局でも多くつくり、国民に利便を供することは当然しごくのことであります。外国の状況を見ましても、先進諸国を含めてほとんどの国が個人委託の仕組みを取り入れ、これによって小規模窓口機関の普及をはかっているのでありまして、今回の改正は、こうした世界的な大勢にも沿うものであります。  簡易郵便局の個人委託に反対する方々は、これがあたかも封建的な請負制度への逆行であるかのように申すのでありますが、この委託契約は、経費の渡し切りによる請負契約ではなく、その取り扱い手数料はきわめて合理的な算出基準に基づいて算定され、また、簡易郵便局の業務の規模からいっても雇用関係の介在する余地は全くなく、反対者の言うような雇用面の弊害などは全然あり得ないのであります。したがって、これがかつての請負制度の復活につながるはずはなく、請負制度云々は、封建的特定局制度という名の枯れ尾花にも似た幽霊を幻想し、みずからその亡霊におびえるという時代錯誤的心理と申しても過言でないのであります。ただいま少数意見報告が述べられました中に、特定局長云々の言辞がございましたが、まさに、これを証明するものであります。  さらに、反対する者は、個人委託は郵便サービスの上で最も大事な通信の秘密確保の点で不安があり、また、現金等の取り扱いに関して事故や犯罪の発生を招きやすいなどの批判をいたしますが、改正案の規定にもありますとおり、個人受託者は、十分な社会的信用を有する人を厳選するのであります。その上、受託者のほとんどがその地域と深く結びついた人になるでありましょうから、かえって一般の郵便局における以上の信頼を得られることと考えられるのであります。利用者と地縁関係で結ばれる個人委託の簡易郵便局は、こうした信頼のほかに、親しみやすいという強みがあり、この親近感は業務の上にも反映し、予期以上の業績をあげ、国民の期待に強くこたえるものであります。  かように見てまいりますと、個人委託の反対論は全く根拠がなく、何のために執拗に反対し続けるのか理解に苦しむところであります。(拍手)窓口機関の設置を望む辺地、離島の人々の心情を顧みれば、かかる無意味な反対はできないはずであります。  今回の改正案のいま一つの改正点は、先ほど述べた簡易郵便局の取り扱い事務に新たに老齢福祉年金等の支払い事務を加えることでありますが、この措置は、高齢の年金受給者等に対する行き届いた心づかいであるばかりでなく、僻地、離島にまでも社会福祉事業のサービスの手を差し伸べることになるのでありまして、この改正もまたきわめて適当であります。  わが党は、ただいま申し上げましたような見解のもとに、この簡易郵便局法の一部を改正する法律案に対し全面的に賛成するものでありまして、この法案がすみやかに成立し、僻地住民の多年の渇望が一日も早く満たされることを願ってやまないものであります。  以上をもって、私の賛成討論を終わります。(拍手
  32. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 武部文君。   〔武部文君登壇
  33. 武部文

    ○武部文君 私は、日本社会党を代表して、ただいま逓信委員長より報告のありました簡易郵便局法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行なうものであります。(拍手)  私が政府提出の本法案反対する理由は、主として次の三点によるものであります。その第一点は、本法案によって政府が企図しております郵政事業の個人委託という下請化の促進が、今後の郵政事業のあるべき姿を実現していく方向に逆行したものであり、郵政事業の真の近代化を阻害していくものであるということであります。私の本法案反対する第二の理由は、すでに私どもが具体策を示して政府のとるべき施策を明らかにしてきたにもかかわらず、郵政事業の窓口拡充に伴う政府の小局運営政策が、郵政事業の公共的な性格を破壊し、一元的な運営を阻害しているという点についてであります。さらに、本法案に強く反対いたします第三の問題点は、政府の郵政事業に対する無原則な下請化によって、憲法第二十一条に規定されております通信の秘密を侵し、国民の基本的な権利さえもなしくずしにくずしてしまおうとする点にございます。  私の反対する第一の理由は、簡易郵便局の制度は、すでに御承知のように、昭和二十四年から創設されたのでありますが、その際に、政府国会答弁で、「特定郵便局も昔は一種の請負形態をとっていたが、終戦後の社会情勢の変化に伴っていろいろな弊害が見られたので、これを郵政省の直轄にしてきた経緯があり、したがって簡易郵便局の受託者も公共団体のみに限定したのであります。」このように言明してきたのであります。しかるに、政府は初心をひるがえし、前言に逆行し、地方公共団体、農協、漁協、生協に限られておりますところの郵政事業を、何と無原則にも個人にまで下請化しようとしておるのでございます。かつて特定郵便局が請負制で運営されてきたとき、その弊害の最たるものは事業の私物化であったはずであります。公共事業であるべき郵政事業を請け負う結果が、事業を私物視し、従業員をして牛馬のごとくに扱い、一方、公金横領などの犯罪を呼び、世論のひんしゅくを買い、郵政事業の信用を失墜する事例は枚挙にいとまがなかったのであります。かかる弊害を持つがゆえに、戦後の事業近代化の歩みの中で、政府みずからも請負制を廃止し、無集配局といえども、昭和二十一年直轄化に踏み切ったではありませんか。こうした歴史的経過を見た場合、簡易局の個人委託は、郵政事業を真に近代化していく方向に逆行するばかりか、郵政事業の公共サービスの拡充を願う国民の心を裏切るものであるといわなければなりません。(拍手)  特定郵便局の制度については、かつて地方の有力者から局長を任用し、建物と用品とを無償で提供させ、一定の事務費たる渡し切り費用を支給して、小局運営の一切を局長の責任に負わしめていたのでありましたが、今日では、局長の自由任用、渡し切り費による経理、局舎の借り入れなどがやや多いという状況になっているのであります。したがって、今日では、この特定郵便局と国の直轄局である普通郵便局との間には、もはや技術的にこれを区別するものは何もなく、そこには普通局と区別して特定局を設ける合理的な根拠を何一つ見つけることができないのであります。いまでは特定局も普通局もともに無集配局を持ち、ただその差は、特定局に無集配局が多いという数の差にすぎないのであります。  とりわけ問題なのは、特定局制度をとり続けているために、本来全部の郵便局を直轄局として管理し、運営し、統合すべきであるにもかかわらず、現状では、特定局の管理方式には、指定局及び特定局長業務推進連絡会を設置するなど、管理系統が二つに分かれているという不合理な状態に置かれているのであります。こうした不合理な状況の中で、特定局長の存在自体が合理的な人事政策の確立をはばみ、郵政職員の昇進、昇格、配置転換その他の人事一般を不合理かつ不明朗なものにしており、働く者の士気を著しく停滞させているのであります。また、局舎の借り上げもはなはだ不合理なものであり、郵政サービスにおける最適立地を妨げ、あるいは貧弱かつ狭隘な局舎となるケースが少なくなく、ここから職場環境や労働条件の悪化と公共サービスの低下を引き起こしている局も少なくないのであります。  次に、私が反対いたします第二の理由について申し上げます。  さきの米田君の少数意見でも明らかにしたところでありますが、われわれ日本社会党は、すでに小局運営のあり方について具体的な提案をしてまいったのであります。この点は特に重要な点でありますので申し上げますと、第一に、普通局と特定局との区分を廃止し、新たに統轄局、分局、出張所の三区分としていくこと。第二に、それぞれの地域の立地条件や取り扱い業務量などを考慮しつつ、およそ十局ないし二十局程度を一単位として、その中心局を統轄局とすること。第三に、同一地域内における統轄局以外の局については、現行の普通局及び特定局を新たに分局とし、現在の簡易郵便局を新たに出張所とすること。さらに第四に、統轄局には統轄局長を置き、新たな分局及び出張所には統轄局長のもとに責任者を配置し、一元的な運営をはかるべきであると思うのであります。このようにして、現行制度がもたらしている欠陥と弊害を取り除き、近代的かつ合理的な小局経営の基盤をつくり、国民に対する郵政サービスの公共的かつ一元的な発展をはかるべきであるとするものであります。  こうした私どもの視点から見ましても、今回政府提出してまいりました本法案は、はなはだ無責任な下請政策であり、客観的な情勢から見ても合理性を欠いておる、このように断言せざるを得ません。  さて、最後に第三として、本法案施行することによって引き起こされる実質的な問題として、通信の秘密保持について触れ、私たちが反対する本質的な反対理由といたしたいのであります。  御承知のように、わが国の憲法は、その第二十一条において、「通信の秘密は、これを侵してはならない。」と明記しておるのであります。また、郵便法の第九条には、「郵政省の取扱中に係る信書の秘密は、これを侵してはならない。」とうたい、「郵便の業務に従事する者は、在職中郵便物に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。」とし、そして、「その職を退いた後においても、同様とする。」というように、きびしく通信の秘密保持について規定しているのであります。しかるに、今回の政府提案は、全くの第三者である個人に郵政業務を下請委託するのでありますから、当然この信書の秘密保持について重大な配慮をしなければならないのでありますが、この憲法第二十一条の通信の秘密についてほとんど考慮されていないのであります。もしも、この通信の秘密に関して問題があった場合に、政府はどのような責任をとり得るのか、全く疑問であり、本法案提出は、憲法第二十一条の否定にもつながるものといわねばなりますまい。(拍手)  さらに、個人が行なうことは、さきにも触れたとおり、事業の私物化となり、事故件数の激増や、犯罪の増加する危険を指摘するとともに、はがきや切手を売るのとはわけの違う国民の重大な信書や、貯金、保険などの貴重な財産が、へんぴな部落の居酒屋さんやあるいはたばこ屋さん、雑貨屋さんの片すみで扱われるとしたら、犯罪や事故の発生は、事業の信用失墜のみならず、簡易郵便局制度そのものの是非を問われることになるでありましょう。  以上、本法案の持つ重大な欠陥を指摘し、同時に、過疎地帯に対する党利党略に基づく選挙対策以外の何ものでもないことを指摘し、絶対反対の態度を表明し、討論を終わります。(拍手
  34. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。  この採決は記名投票をもって行ないます。本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。——閉鎖。   〔議場閉鎖〕
  35. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 氏名点呼を命じます。   〔参事氏名を点呼〕   〔各員投票〕
  36. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。——開鎖。   〔議場開鎖〕
  37. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 投票を計算いたさせます。   〔参事投票を計算〕
  38. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。   〔事務総長報告〕  投票総数 二百七十九   可とする者(白票)       百八十七   否とする者(青票)        九十二   〔拍手
  39. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 右の結果、簡易郵便局法の一部を改正する法律案委員長報告のとおり可決いたしました。     —————————————  簡易郵便局法の一部を改正する法律案委員長報告の通り決するを可とする議員の氏名       安倍晋太郎君    足立 篤郎君       阿部 喜元君    相川 勝六君       青木 正久君    秋田 大助君       天野 光晴君    井出一太郎君       井原 岸高君    伊藤宗一郎君       伊能繁次郎君    稻葉  修君       稻村佐近四郎君    宇野 宗佑君       植木庚子郎君    臼井 莊一君       内海 英男君    江崎 真澄君       小笠 公韶君    小川 半次君       小澤 太郎君    小沢 辰男君       小渕 恵三君    大石 八治君       大竹 太郎君    大坪 保雄君       大野 市郎君    大橋 武夫君       大平 正芳君    大村 襄治君       岡本  茂君    奥野 誠亮君       加藤常太郎君    加藤 六月君       鹿野 彦吉君    鍛冶 良作君       海部 俊樹君    亀岡 高夫君       亀山 孝一君    鴨田 宗一君       仮谷 忠男君    木野 晴夫君       木部 佳昭君    北澤 直吉君       吉川 久衛君    久野 忠治君       久保田円次君    久保田藤麿君       草野一郎平君    熊谷 義雄君       倉成  正君    河本 敏夫君       齋藤 邦吉君    斎藤 寿夫君       坂村 吉正君    坂本三十次君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       志賀健次郎君    始関 伊平君       塩川正十郎君    塩谷 一夫君       重政 誠之君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    進藤 一馬君       菅波  茂君    砂田 重民君       砂原  格君    世耕 政隆君       園田  直君    田澤 吉郎君       田中 榮一君    田中 龍夫君       田中 正巳君    田中 六助君       田村 良平君    高橋 英吉君       竹内 黎一君    竹下  登君       谷垣 專一君    谷川 和穗君       中馬 辰猪君    塚原 俊郎君       辻  寛一君    渡海元三郎君       登坂重次郎君    徳安 實藏君       床次 徳二君    内藤  隆君       中尾 栄一君    中垣 國男君       中川 一郎君    中村庸一郎君       中山 榮一君    中山 マサ君       永山 忠則君    灘尾 弘吉君       南條 徳男君    二階堂 進君       丹羽喬四郎君    西岡 武夫君       西村 英一君    西村 直己君       野原 正勝君    野呂 恭一君       羽田武嗣郎君    橋本登美三郎君       橋本龍太郎君    長谷川 峻君       早川  崇君    原田  憲君       福家 俊一君    福田  一君       福永 健司君    藤井 勝志君       藤枝 泉介君    藤尾 正行君       藤田 義光君    藤本 孝雄君       古内 広雄君    古川 丈吉君       古屋  亨君    坊  秀男君       細田 吉藏君    堀川 恭平君       本名  武君    増岡 博之君       増田甲子七君    松浦周太郎君       松澤 雄藏君    松田竹千代君       松野 幸泰君    三池  信君       三ツ林弥太郎君    三原 朝雄君       水野  清君    武藤 嘉文君       村上  勇君    村山 達雄君       毛利 松平君    粟山  秀君       森田重次郎君    森山 欽司君       八木 徹雄君    山下 元利君       山中 貞則君    山村新治郎君       吉田 重延君    早稻田柳右エ門君       渡辺 栄一君    渡辺  肇君       渡辺美智雄君    池田 禎治君       受田 新吉君    小沢 貞孝君       岡沢 完治君    折小野良一君       小平  忠君    鈴木  一君       曾禰  益君    田畑 金光君       玉置 一徳君    塚本 三郎君       中村 時雄君    永末 英一君       西村 榮一君    門司  亮君       山下 榮二君    吉田 泰造君       伊藤惣助丸君    石田幸四郎君       大野  潔君    大橋 敏雄君       近江巳記夫君    岡本 富夫君       北側 義一君    小濱 新次君       斎藤  実君    鈴切 康雄君       田中 昭二君    中野  明君       樋上 新一君    伏木 和雄君       正木 良明君    松本 忠助君       渡部 一郎君  否とする議員の氏名       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       赤路 友藏君    淡谷 悠藏君       井岡 大治君    井手 以誠君       井上  泉君    井上 普方君       石川 次夫君    石野 久男君       板川 正吾君    稻村 隆一君       枝村 要作君    大出  俊君       大原  亨君    太田 一夫君       岡田 利春君    加藤 清二君       加藤 万吉君    勝澤 芳雄君       角屋堅次郎君    金丸 徳重君       神近 市子君    河上 民雄君       河野  正君    木原  実君       北山 愛郎君    久保 三郎君       久保田鶴松君    工藤 良平君       栗林 三郎君    兒玉 末男君       後藤 俊男君    佐野 憲治君       佐野  進君    實川 清之君       柴田 健治君    島本 虎三君       田中 武夫君    田邊  誠君       多賀谷真稔君    高田 富之君       武部  文君    只松 祐治君       楯 兼次郎君    戸叶 里子君       堂森 芳夫君    内藤 良平君       中澤 茂一君    中谷 鉄也君       中村 重光君    永井勝次郎君       楢崎弥之助君    野口 忠夫君       野間千代三君    芳賀  貢君       畑   和君    華山 親義君       浜田 光人君    原   茂君       平岡忠次郎君    平林  剛君       広沢 賢一君    広瀬 秀吉君       福岡 義登君    古川 喜一君       穗積 七郎君    細谷 治嘉君       三木 喜夫君    美濃 政市君       武藤 山治君    村山 喜一君       森  義視君    森本  靖君       八百板 正君    八木 一男君       八木  昇君    矢尾喜三郎君       柳田 秀一君    山内  広君       山口 鶴男君    山田 耻目君       山本 幸一君    山本 政弘君       山本弥之助君    米内山義一郎君       米田 東吾君    渡辺 惣蔵君       渡辺 芳男君    田代 文久君       谷口善太郎君    林  百郎君      ————◇—————
  40. 小平久雄

    ○副議長小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十分散会      ————◇—————  出席国務大臣         通商産業大臣  大平 正芳君         郵 政 大 臣 河本 敏夫君         建 設 大 臣 坪川 信三君      ————◇—————