○伊藤惣助丸君 私は、
公明党を代表して、ただいま
議題になりました
防衛庁設置法及び
自衛隊法の一部を
改正する
法律案に対しまして、
反対の
討論を行なうものであります。(
拍手)
まず、
反対の基本的
理由は、本
法案が、
わが国の平和と安全に対する自民党
政府の全く誤った考え方を前提として提出されていることであります。
いまさら申し上げるまでもなく、
世界の平和と安全の確保は人類共通の念願であります。特に、
戦争の惨禍と、
世界唯一の核兵器の攻撃を受けた
わが国民は、他のいかなる国にも増して強く
世界の平和を望んでいるのであります。しかし、今日の
国際情勢を見るとき、まことに遺憾なことではありますが、平和への道はきびしく、依然として
国際情勢は複雑かつ流動を続けているのであります。特に、
極東における緊張の緩和は、
わが国の平和と安全に不可欠のものであるにもかかわらず、ベトナム問題や朝鮮半島の緊張など、いまだに憂慮すべき事態にあるのであります。さらに、国内においては、一九七〇年日米
安保の再検討期を迎えて、
沖繩、北方領土の
早期返還、基地闘争、大学
紛争など、保守、革新の激突の
危険性がいよいよ増大しております。このような内外
情勢のきびしい
現実を考えるとき、まず何といっても、自主、平和の外交
方針の
確立によって近隣諸国との外交
関係を緊密にし、もって
アジアの
緊張緩和、平和の確保をはかることがきわめて重要であり、また、国内
政治の安定度とともに、
わが国の平和と安全を
確立すべきであります。
しかるに、自民党
政府は、
わが国の
安全保障政策を軍事的対応策だけで確保しようという発想に立ち、総額二兆三千数百億円にも達する膨大な第三次
防衛力整備計画を強行し、さらに、仄聞するところによりますと、
昭和四十七年度からの四次防計画は、五兆円を上回るとさえいわれているのであります。しかし、今回の
内閣委員会における
審議を通じて見ても、いかなる脅威に対応するのかも明確にせず、いわば、まぼろしの脅威に対し、ひたすら
軍事力のみの
増強をはかり、対米同調一辺倒の
姿勢から一歩も脱却しておらず、
中国封じ込めを
中心とする
日米安保体制の長期堅持を前提とした、
自主防衛構想にエスカレートするきわめて危険な要素を含んだ自民党
政府の
防衛政策なのであります。(
拍手)
過去における忌まわしい
戦争の歴史を顧みるとき、いかなる国において、
戦争のためと称して軍備を
増強した国があるでありましょうか。ただ一つとしてないのであります。すべて国の平和と安全を守るという名の
もとに、いつしか果てしない軍備拡張競争の渦中に巻き込まれ、その結果として悲惨な
戦争を巻き起こした事実は、何よりも歴史が物語っているところであります。
自民党
政府は、緊張があるから必要であるという理論を振り回し、この緊張を緩和する
努力を全く尽くさなかったばかりか、その意欲さえも持たなかったことに、私はきわめて危険なものを感ずるのであります。このことは、
政府の対
中国政策に明らかであります。われわれは、今後十年、二十年の将来も考慮しつつ、独立国
日本が地球上のあらゆる国々と平和友好条約を早急に結ぶことと同時に、まず第一に、すみやかな日中平和
関係の回復の中で、
安保体制の
実質的形骸化をはかるべきであることを強く主張するものであります。(
拍手)しかし、
政府はこれを一顧だにすることもなく、依然として
アメリカの対
中国敵視
政策に追随し続けております。
自衛隊が発足して以来、第一次より
防衛計画を策定し、三次防、四次防、五次防と際限なく
増強されていく
軍事力と対米追随
姿勢は、本来の意味における
わが国の
安全保障でないことを自民党
政府は知らなくてはなりません。むしろ、真に必要であり、
わが国がとる最善の
安全保障政策は、
軍事力偏重の
防衛計画ではなく、国際的視野に立った長期の平和計画でなければならないのであります。(
拍手)すなわち、外交、文化、経済、
政治の安定等を基本とした総合力であり、
国民的合意の
確立をはかることが最も重要なのであります。
次に、本
法案の根本となる
政府の
防衛構想が、
わが国憲法の平和主義に反し、
国民不在のものであるということであります。
佐藤
総理並びに歴代の
総理は、
国力、国情に応じて
自主防衛力の
増強を述べ、
防衛の基本
方針としているのであります。もちろん、われわれは、
わが国憲法が
自衛権の
存在をも否定しているとは考えるものではありません。しかし、
政府・自民党のこの
自主防衛構想には、
憲法前文並びに第九条の平和主義が無視されているとしか考えられないのであります。また、これは
自衛権の乱用とも言うべきでありましょう。
日本国憲法は、
自衛戦力の保持を無制限に許してはいないと解するのがその
趣旨なのであります。
世界の各国におきましても、
国力、国情に応じた
防衛力を持とうとしているのであります。これらの国は、
わが国と異なって、
憲法の精神においても、前文、条文においても制限はないのであります。恒久平和主義と
戦争の放棄を明確にした誇り得べき
わが国憲法が、自民党
政府の既成事実の積み重ねによって、まさに失われようとしているところに
国民の不安があるのであります。また、いかなる
根拠によってかくまでも
軍事力を
増強し、
自衛官を
増員するかも
国民は知らされていないのであります。私どもは、真の
安全保障は広く
国民の認識と理解の上に立つものでなければ、幾ら
軍事力を
増強しても、これは効率的な
安全保障とはならないことを指摘してまいりました。
軍事力増強に固執することは百害あっても一利なく、かえって近隣諸国に脅威を与え、いたずらに
国民に不安を抱かせるものであります。このことは、
自衛隊の募集が思うにまかせず、定員は不足して充足に悩むという結果となってあらわれてきているではありませんか。このことを忘れ、
欠員一万数千にものぼる
陸上自衛官の定員を、本
法案によってさらに六千人もふやすということは、いかなる詭弁を
政府が弄そうとも、おおい隠すことのできない事実であり、本末転倒の姿であるといわねばなりません。
さらに、
沖繩返還問題と日米
安保に対する
政府の
態度であります。
今回の
審議の中で、本
法案と最も重要な
関係を持つ愛知外相の訪米がございました。この
沖繩返還交渉の
政府の
態度は、当
内閣委員会におきましても十分に明らかになったとはいえません。特に、
日米安保条約の
事前協議制度の運用に対する
国民の疑惑をますます深めたものであります。さらに、愛知外相が、いまだ
国会で明らかにしなかった日米
安保の自動継続申し入れには、猛省を促すものであります。われわれは、
日米安保条約が、
わが国が関与しない
戦争に巻き込まれる危険があることを指摘してまいりました。このおそれが
現実となったものが、米偵察機EC121機の撃墜事件でありました。しかし、
沖繩返還とともに、さらにこの歯どめを骨抜きにしようとしていることは、まことに許すことのできない暴挙であります。さらに、
国民の
悲願である
わが国の非核決議に対しても、わが党をはじめ野党の提案に対し、これを拒否し、
国民の疑惑を一そう深いものにしたのであります。このたびの
内閣委員会における
審議を通じて私がまことに残念に思うことは、
政府が
国会答弁だけを考え、その場しのぎの答弁に終始したことであります。このような
政治姿勢では、国の重大な
安全保障問題を
審議することはできないばかりか、
国民の疑惑と不信を招くのみであります。
以上、
防衛庁設置法及び
自衛隊法の一部を
改正する
法律案に対し
反対の
理由を申し述べましたが、わが党は
政府に対し、この際、以上の見地から、
防衛問題に関する根本的の
態度を改めることを求め、私の
反対討論を終わります。(
拍手)