○赤路友藏君 ただいま
議題となりました三
法案について、産業
公害対策
特別委員会における
審査の経過並びに結果について御
報告申し上げます。
近年、わが国
産業経済の急速な
発展と都市化の進展等に伴って発生する
公害問題のうち、特に熊本県水俣湾、新潟県阿賀野川周辺における有機水銀中毒事件、富山県神通川流域におけるイタイイタイ病、大気汚染による四日市ぜんそく等、悲惨なる
公害病患者の発生は、緊急な解決を要する重大な
社会問題となっております。
公害対策においては、
公害の発生を未然に
防止する万全の
措置を講ずることがもちろん肝要でありますが、同時に、不幸にして
公害が発生した場合における被害者
救済、
紛争処理の
措置が必要であります。
公害に係る
健康被害の
救済に関する
特別措置法案及び
公害紛争処理法案の両
法律案は、
公害対策基
本法第二十一条に規定する「
公害に係る
紛争の処理及び
救済」の
制度として本院に提出されたものであります。
まず、
公害に係る
健康被害の
救済に関する
特別措置法案は、
公害による被害のうち、当面緊急に
救済を要する
健康被害について、迅速かつ適切な
救済をはかろうとするものでありまして、そのおもな内容は、
第一に、
本法による
救済の
措置は、相当範囲にわたる著しい大気の汚染または
水質の汚濁により、
公害疾病が多発している指定地域の都道府県知事等が、当該疾病にかかっている旨の認定をした者に対して行なうものであります。
第二に、
救済の
措置といたしましては、医療費のほか、医療手当及び介護手当を支給するものであります。
第三に、給付に要する費用については、産業界が二分の一、その他を国及び地方公共団体がそれぞれ分担するものとしております。
第四に、産業界の分担は、本
制度に協力することを
目的とする民法による
法人が、
公害防止事業団に所定の額を拠出することによって行なうこととしております。
次に、
公害紛争処理法案の概要について申し上げます。
現在、行政上の
制度として、
水質汚濁、大気汚染等につきまして和解の
仲介制度がありますが、調停、仲裁を行ない得ない等不備な点が多く、また、現行の司法
制度をもってしては、必ずしも簡易、迅速な解決をはかるのに十分ではありません。
本案は、かかる現状にかんがみ、
公害紛争処理
制度を
整備すること等を
目的とするものでありまして、そのおもな内容は、
公害紛争を処理するための専門的な機構を中央及び地方に置くこととしたことであります。中央
公害審査委員会においては、現に人の健康または
生活環境に著しい被害が生じ、かつ、当該被害が相当多数の者に及ぶ
紛争、広域的な見地から解決する必要がある
紛争、被害地及び加害地が二つ以上の都道府県の区域にわたる
紛争について、調停及び仲裁を行なうこととしております。また、都道府県
公害審査会等においては、これらの
紛争以外の
紛争について、和解の仲介、調停及び仲裁を行なうこととしております。
以上のほか、地方公共団体は、
公害に関する苦情について適切な処理につとめる旨の規定を設けております。
なお、いわゆる基地
公害といわれる防衛施設にかかわる障害に関する事項については、別に
法律で定めるところによることとしております。
両
法律案は、三月二十五日、
社会党提出にかかる二
法案とともに、本
会議において
趣旨の
説明の後、本
委員会に付託され、四月二日
提案理由の
説明を聴取し、以後、予備
審査のため本
委員会に付託されました公明党提出にかかる三
法案とともに慎重に
審査を重ねてまいりました。
その間、
公害救済法案について、
本法の
救済対象を大気汚染、
水質汚濁による
健康被害に限定した
理由、葬祭料等
救済内容の
拡大と物的被害の
救済制度の検討、医療費、医療手当及び介護手当の支給と
所得制限及び
生活保障との
関係、支給費用の事業者、国、地方公共団体の分担割合と損害賠償請求権との
関係等について、また、
公害紛争処理法案については、中央
公害審査委員会を三条機関とせず八条機関とした
理由、都道府県
公害審査会の各都道府県への設置、中央、地方の
紛争処理機構、人員の
整備、予算の充実等、仲裁と裁定と訴訟との
関係、立ち入り検査権、手続の非公開等、基地
公害除外の
理由と防衛施設周辺
整備法等の
運用状況等の
質疑が行なわれました。
特に、昨二十五日には、佐藤
内閣総理大臣の出席を求め、
公害対策に取り組む
政府の基本的態度、
企業の
公害設備投資額と
企業責任、航空機騒音による被害の調査、来年度の
公害対策予算の増額、
公害罪新設問題等について総理の所信をただしましたが、これら論議の詳細については
会議録に譲ることといたします。
かくて、昨二十五日、両案に対する
質疑を終了し、次いで、
委員長より、両案に対してそれぞれ修正案を提出いたしましたが、
公害救済法案に対する修正の要旨の第一点は、指定地域に住所を有している者だけでなく、通勤者等についても
救済対象者に加えること、第二点は、
政府は、大気汚染と
水質汚濁以外の
公害にかかわる疾病に関し検討するものとする旨の規定を附則に新設することであります。
次に、
公害紛争処理法案に対する修正の要旨は、中央
公害審査委員会に、専門の事項を調査させるため、非常勤の専門調査員二十人以内を置くことができる旨の規定、都道府県及び政令で定める市に
公害苦情相談員を置くこととし、それ以外の市及び町村は、必要により相談員を置くことができる旨の規定を新設することであります。
趣旨の
説明後、
内閣より
国会法第五十七条の三の規定に基づく
意見を聴取、次いで、採決の結果、両案はそれぞれ修正議決すべきものと決した次第であります。
なお、両案に対し、それぞれ、自由民主党、
日本社会党、民主
社会党及び公明党四派共同提案にかかる
附帯決議を付するに決しました。
次に、
公共用水域の
水質の
保全に関する
法律の一部を
改正する
法律案について申し上げます。
公共用水域の
水質の
保全に関する
法律は、
昭和三十三年制定以来今日に至っておりますが、最近、
水質の汚濁原因の多様化により、
水質汚濁問題が全国的に発生する
傾向が見られるようになってまいりました。本
法律案は、かかる事態に対処して、
規制対象業種の範囲の
拡大、国と地方公共団体との協力
関係の緊密化等をはかり、また、
公害対策基
本法の
趣旨に即して、
本法の
目的等につき所要の
改正を行なおうとするものであります。
本
法律案のおもな内容は、
規制対象として、従来からの工場、鉱山等に加え、斃獣処理場等、採石場、屠畜場、廃油処理施設及び砂利採取場を追加するとともに、し尿処理施設、養豚場等を政令で追加する道を開くこと等であります。
本
法律案は、四月八
日本委員会に付託され、同月十一日
政府から
提案理由の
説明を聴取し、以後、
公害に係る
健康被害の
救済に関する
特別措置法案外六
法律案とともに、慎重に
審査を重ねてまいりました。
その間、第一条の
目的中、産業の相互協和と
国民の健康の
保護との
関係、
環境基準の早期設定、工場排水
規制法等の
改正の必要性、
水質保全行政の一元化とその機構、人員、予算等の充実、重金属等特定有害物質
規制法の制定等について
質疑が行なわれましたが、その詳細については
会議録に譲ることといたします。
かくて、昨二十五日、
質疑を終了、次いで、
委員長より、本
法律案に対する修正案が提出され、
趣旨説明後、採決の結果、
公共用水域の
水質の
保全に関する
法律の一部を
改正する
法律案は修正議決すべきものと決した次第であります。
なお、本
法律案に対し、自由民主党、
日本社会党、民主
社会党及び公明党四派共同提案にかかる
附帯決議を付するに決しました。
以上、御
報告申し上げます。(
拍手)