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後藤俊男君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、最近のたび重なる
重大事故に対して、
佐藤総理並びに
関係大臣に
緊急質問を行なわんとするものであります。
まず、
質問に入る前に、五つの惨事、合わせて四十五名の他界された
方々に対し、さらにその
遺族に対しまして
衷心から
哀悼の意を表するものでございます。(
拍手)また、かろうじて命を取りとめたとは申せ、病床に呻吟しておられる多くの
罹災者に対し、心からお
見舞いを申し上げる次第でございます。
さて、
ガス爆発事故につきましては、いさいは
新聞、
テレビ等で御承知のごとく、
地下鉄工事現場のあとで
都市ガスの中圧管が爆発し、一面火の海となり、
道路わきの
商店街にその火が燃え移り、
一家五人が
むざんにも焼死体になって見つかったのであります。
石井さん
一家以外の六世帯二十一名も、逃げるのがやっとであるという悲惨な
事故を起こしてしまいました。
第一に、かくのごとき悲惨な
事故を引き起こした
原因はどこにあるのでございましょうか。
新聞の報ずるところによりますと、
東京瓦斯の
中村広報課長は、
ガス工事に伴う
事故でなく、
地下鉄工事による
事故と言い、また
鹿島建設板橋作業所の
田口主任は、
住民から
連絡があったのに手を打たなかった
ガス会社の
責任だと、
責任のなすり合いを演じておるのであります。また、三月二十六日の報道によれば、
東京瓦斯の
安西社長は、
東京瓦斯が
悪者扱いにされているが、私のほうが
被害者だと言い、その
責任は鹿島にありと言明いたしておるのであります。その
説明内容によれば、
現場付近を十カ所点掘りしたら、
手抜き工事が一ぱい発見されたと言っております。この事実を
佐藤総理に二十五日報告したと言っていますが、これが事実とするなら、これがその
原因とするならば、
日本の
建設業界の
代表企業である
鹿島建設が、
企業利益のために
手抜き工事を行なったその
責任たるや、実に重大であろうと思います。(
拍手)断固たる処置が当然と思います。
総理並びに
建設大臣はいかように思われるか、
所見をお伺いいたします。
東京都の消防庁の調べによれば、三十八年以来、
都内で
ガス漏れ爆発事故がすでに五件も起きております。しかも、
都内のみを考えてみましても、
地下鉄工事、
交通量は多い、その下に
ガス管と、危険な個所は数多く隠されております。都民一同安心して暮らすことができないのが現実でございます。これらの
事故を防止し、さらに前途の不安をなくするためには、
原因を徹底的に追及し、厳格なる
態度で処置し、絶対に防止するための方策を早急に樹立せねばなりません。さらに、
住民被害者に対する
補償並びに
労働者に対する
補償は、
企業はもちろんのこと、
政府としても早急かつ十分なる
配慮をしなければならないと思いますが、
政府の
最高責任者である
総理大臣並びに
労働大臣の御意見をお伺いいたします。
次には、
荒川放水路における八名生き埋めという悲惨な
事故について
お尋ねいたします。
経過については、申し上げる必要もなく
十分御存じのことと思います。二日、九時半から
現場検証が行なわれました。その第一は、間組では
現場作業員に対する
技術指導を怠っていた。
シートパイル関係に欠陥があったといわれております。
リングビーム工法については、当時
現場の技師は、
土圧と違い、
水圧の
研究はいろいろ
自然現象が伴うので、十分な
研究が行なわれていないと語っております。すなわち、
水圧には
責任が持てないと語っておるのであります。
建設省はこの
工法を支持されておった以上、
安全度についてどのような
見解を持っておられたのか、
建設大臣にお伺いいたします。
なお、
被害者八名中七名までは青森からの出かせぎの人であり、そのほとんどが
一家の
生計維持のため遠く故郷を離れ、
生活をささえるための
労働者であります。
被災者の一人、
渡辺定雄さんの奥さんは、出かせぎが危険なことは知っているけれ
ども、ここにいたのでは食べていけないと語っております。一番自分の住みたい故郷で農業をやり、リンゴをつくっていては
一家の暮らしを守ることができない。出かせぎに来れば命までも奪われてしまう。一体どこでどうやって生きよと言われるのでありましょうか。政治の貧困はこのように多くの
生命をなくしております。口を開けば、
国民総生産が世界の第三位になったといわれますが、食わんがために遠く故郷を離れ、なれない仕事で命をとられている、こうしなければ暮らしていけない多くの人々がおるのでございます。
総理大臣はこの現実を一体どうお考えになりましょうか。現状やむを得ないと思っておられるのか。いなと言われるならば、どうしようと思われるか、その方策をお伺いいたします。(
拍手)
次に、今月二日、
北海道雄別炭鉱茂尻鉱業所において、死者十八名、重軽傷者二十八名を出したガス爆発による
事故と、あわせて昨日の空知
炭鉱の生き埋め
事故について
お尋ねいたします。
三池
炭鉱の大
災害後、派遣された海外
保安調査団の報告書によれば、過去十年間一度に十名以上の死亡者を出した
災害は、西ドイツで三件、イギリスで四件、フランスで六件であります。しかるに、わが国においては二十六件を数えており、その後九件を増し、実に三十五件に及んでおるのであります。特に昨年の五月から七月までのわずか三カ月の間に、
北海道、九州の六鉱山でガス爆発、坑内火災、落盤など、相次いで大
事故が集中的に発生したことは御存じのとおりであります。その後、鉱山
保安協議会の答申に沿って
保安強化に乗り出したといわれるが、いかようなる
対策を、どのように具体的に進められたか、
通産大臣にお伺いいたします。
今回の惨事の
原因は、生産第一主義で、安全
点検に手抜かりがあったのではないかと思われます。茂尻
炭鉱は、
昭和三十年、ガス爆発により六十名の死亡者を出したガス爆発危険
炭鉱として要注意の
炭鉱であったにもかかわらず、万全の
対策が行なわれなかったことは、いかなる
原因によるものと判断するか。また、昨日、空知
炭鉱において、坑内
出水事故により五名の行くえ不明を出しているが、本
炭鉱は
北海道炭鉱汽船株式会社から分離され、いわゆる第二会社であり、
昭和四十一年に十二名の死亡者を出した
炭鉱であります。かような
炭鉱に、いかなる
原因で再びこのような
事故が発生したか、
通産大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
さらに、茂尻
炭鉱につきましては、
石炭産業合理化のあおりを受け、三月二十八日、会社側から分離して別会社をつくるという合理化案が提示され、その是非論をめぐって労使間の交渉中であったと聞いております。現在かなりの負債をかかえ、すなわち、採算悪化で生産
能率第一主義にあせらせたところに、
事故発生の
原因があると思われます。
石炭産業におけるこのような
人命軽視は、久しくわれわれが指摘してまいったところであります。
事故のたびに、
経営者は
保安第一主義を強調しますが、これが一片の弁明にすぎないことは、依然としてあとを断たない
事故の発生が雄弁に物語っております。もはや、かくのごとき
経営者の手に
炭鉱労働者のとうとい命を預けておくことはできません。
政府はこの際、全国全
炭鉱の総
点検を行ない、具体的な安全
対策を実行することを、この場で
国民の前に約束をしていただきたいと思うわけでございます。
総理大臣並びに
通産大臣の明快なる御回答をお聞かせいただきたい。
次に、医師、患者、四名が死亡した東大病院の
事故について
お尋ねいたします。
国民すべてが医学の最高峰と思っている東大病院で、なぜこんな
事故が発生したのでございましょうか。病院とは命をとるところではございません。
生命を守るべき場所であります。その直接の
原因につきましては現在
調査中と聞いておりますが、ぜひ徹底的なる
調査を
政府の
責任で行なうべきであります。
昭和四十二年一月、アメリカでアポロ一号の酸素気密室で火災を起こし、三名の宇宙飛行士が死亡されたことは有名であります。わが国におきましても、同年十月、岐阜の病院で高圧酸素タンク爆発で患者が死亡いたしております。また、四十三年の二月には、埼玉県で高温度酸素保育器が爆発しまして乳児が死亡いたしております。
このように同種の
事故がたび重ねて発生している
原因は、医療機器は、薬事法に基づいて厚生省がその製造、基準、取り扱いについては指導、
監督の義務を負っているにもかかわらず、これが実行されていないところに
原因があると思います。聞くところによれば、高圧酸素治療室の機械を製造する場合、厚生
大臣の許可を必要とするが、機械そのものの基準はメーカーの
責任にまかせた形であります。納入後は
法律上の安全規程もなく、定期検査もなされていない。これが事実とするならば、担当
大臣としての厚生
大臣は、このような怠慢をどのように
責任をとろうと思っておられるのでしょうか。また、全国の病院には五十基以上に及ぶといわれるこの治療タンクの取り扱いについてどう処置されるのか、明快なる御
答弁をお願いいたします。
また、
罹災された患者並びに医師に対する
災害補償と、東大病院に対する賠償はいかように考えておられるか、これまた厚生
大臣に
お尋ねをいたしたいと思います。
荒川の
事故といい、東大病院の
事故といい、土木、医学における最新
技術が引き起こした悲惨な
事故は、最高に性能のよいものほど最高に危険が大きいという安全の基準原則を忘れ、これに対する
対策を怠っていたところにその
原因があります。
人命尊重の安全
対策が実行されているかいなかは、
国民の
生命に対する佐藤
内閣の姿勢にあります。生産第一主義、安全無視のため、昨年一年間で六千名近い
労働者が死亡いたしております。また自動車
事故は、昨年、死亡者一万四千名、負傷者八十一万人の多数にのぼっておるのであります。打ち続く
災害、
事故、毎日毎日
生命が奪われていく
国民の姿を一体どう思っておられるのでしょうか。
総理大臣、あなたは口を開けば平和とか
人間尊重を言われますが、
国民が日に日にこのように多数、しかも、人災によって
生命を奪われていることを御存じないのでしょうか。
国民は毎日毎日不安な中で暮らしておるのであります。どこに平和があり、どこに
人間尊重があるのでしょうか。いまここで、あなたの
人間尊重がから念仏に終わっていることを追及してみても問題の
解決にはなりません。これからこのような
災害事故から
国民の
生命を守るため、具体的にどのような施策をどのように行なっていかれるのかが重大であります。その方針をお聞かせ願いたいと思います。(
拍手)
また、
最後に
労働大臣に
お尋ねいたしたいことは、今日の
災害補償の額についてであります。
人の命は地球よりも重いといわれています。人の命に値段をつけるおけにはまいりませんが、今日の
労働基準法、
労働災害補償法に規定されている
遺族補償金額があまりにも少額であります。国際基準からも著しく低い額であることを指摘しないわけにはまいりません。現在二子を有する未亡人の場合、
遺族年金は、西ドイツでは
労働報酬の七〇%、フランスにおきましては
労働報酬の六〇%であるにもかかわらず、わが国では四〇%であります。ILO百二十一号、業務
災害における給付に関する条約におきましても五〇%になっておるのであります。何ゆえかかる少額な
遺族補償を放置するのか、
政府はすみやかに労基法、労災法を
改正すべきであると思いますが、
労働大臣のお考えはいかがでございましょうか。
最後に、
政府の
最高責任者である
佐藤総理大臣はじめ各
大臣に申し上げます。あなたたちは、国を守る気概を持てと
国民に言われますが、そんなことを口にする資格はありません。今日、
国民の安全すら守られていないのであります。戦争こそ行なわれておりませんが、それに匹敵する多数の
犠牲者を出しておるのでございます。
人間尊重、りっぱなことでございます。しかし、これが実行されないところに多くの悲劇が生まれております。今回の五つの
災害を見てみましても、すべて
経営者の
責任であり、指導、
監督する
政府の
責任であります。安全を無視した激しい合理化をやめ、もうけ主義を一てきし、いまこそ
国民の安全を守る気概を持つべきであります。その気概を持つべきはあなたたちであり、
社会的
責任を自覚しない
経営者であることを申し添えまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕