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1969-03-20 第61回国会 衆議院 本会議 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年三月二十日(木曜日)     —————————————  議事日程 第十号   昭和四十四年三月二十日    午後二時開議  第一 犯罪者予防更生法の一部を改正する法律   案(内閣提出)  第二 裁判所職員定員法の一部を改正する法律   案(内閣提出)  第三 繭糸価格安定法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  第四 漁港法第十七条第三項の規定基づき、   漁港整備計画変更について承認を求めるの   件     …………………………………   一 国民年金法の一部を改正する法律案(内    閣提出)の趣旨説明   二 国務大臣演説中小企業基本法基づ    く昭和四十三年度年次報告及び昭和四十四    年度中小企業施策について)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 犯罪者予防更生法の一部を改正する   法律案内閣提出)  日程第二 裁判所職員定員法の一部を改正する   法律案内閣提出)  日程第三 繭糸価格安定法の一部を改正する法   律案内閣提出)  日程第四 漁港法第十七条第三項の規定基づ   き、漁港整備計画変更について承認を求め   るの件  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提   出、参議院送付)  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出)   の趣旨説明及び質疑  大平通商産業大臣中小企業基本法基づく昭   和四十三年度年次報告及び昭和四十四年度中   小企業施策についての演説及び質疑     午後二時八分開議
  2. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  日程第一 犯罪者予防更生法の一部を改正す   る法律案内閣提出)  日程第二 裁判所職員定員法の一部を改正す   る法律案内閣提出
  3. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 日程第一、犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案日程第二、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。     —————————————
  4. 石井光次郎

  5. 大村襄治

    大村襄治君 ただいま議題となりました二法律案について、法務委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、地方更生保護委員会における仮釈放の審理その他の事務処理適正迅速化及び能率化をはかるため、現在三人以上九人以下の委員で組織することとなっている委員会を、三人以上十二人以下の委員をもって組織することに改めるとともに、委員のうち法務大臣の指名する者が事務局長を兼務することとされているのを改め、専従の事務局長を置く等の措置を講じようとするものであります。  本案は、二月十三日当委員会に付託され、二月二十七日提案理由説明を聴取した後、慎重審議を行ない、三月十八日、質疑を終了し、討論なく、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、裁判所職員の員数を増加しようとするものでありまして、その内容は、第一に、高等裁判所における訴訟事件の適正迅速な処理をはかるため判事十五人、簡易裁判所における交通関係業務過失致死傷事件等の増加に対処するため、簡易裁判所判事二十八人をそれぞれ増加し、第二に、下級裁判所における事件の適正迅速な処理をはかるため、裁判官以外の裁判所職員を百十九人増加しようとするものであります。  本案は、二月十三日当委員会に付託され、二月二十七日提案理由説明を聴取した後、慎重審議を行ない、三月十九日、質疑を終了し、次いで討論に入りましたところ、日本共産党から反対意見が述べられ、採決の結果、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  6. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) これより採決に入ります。  まず、日程第一につき採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。  次に、日程第二につき採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  8. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第三 繭糸価格安定法の一部を改正する   法律案内閣提出)  日程第四 漁港法第十七条第三項の規定に基   づき、漁港整備計画変更について承認を   求めるの件
  9. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 日程第三、繭糸価格安定法の一部を改正する法律案日程第四、漁港法第十七条第三項の規定基づき、漁港整備計画変更について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。     —————————————
  10. 石井光次郎

  11. 丹羽兵助

    丹羽兵助君 ただいま議題となりました両案について、農林水産委員会における審査経過並びに結果を御報告いたします。  まず、繭糸価格安定法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、繭糸価格の安定が蚕糸業の振興に重要な役割りを果たしている実情にかんがみ、繭及び生糸価格安定機構簡素化合理化をはかるため、従来、繭糸価格安定法及び日本蚕糸事業団法基づいて、国及び日本蚕糸事業団が分担実施してきた価格の安定をはかるための生糸の買い入れ及び売り渡し、繭の保管に要する経費の助成、委託による乾繭の売り渡し等業務事業団に一元的に行なわせることとし、これに伴い事業団の組織、業務等に関する規定繭糸価格安定法中に吸収し、糸価安定特別会計法廃止するとともに、事業団の債務につき政府が保証する措置を新たに講ずる等、所要規定整備しようとするものであります。  農林水産委員会におきましては、三月三日政府から提案理由説明を聴取した後、三月十九日質疑を行ない、同日、質疑を終了し、採決いたしましたところ、全会一致をもって可決すべきものと議決した次第であります。  なお、本案に対し、農産物の需要と生産長期見通しに即した繭の増産施策を促進すべきこと等、三項目にわたる附帯決議全会一致をもって付されましたことを申し添えます。  次に、漁港法第十七条第三項の規定基づき、漁港整備計画変更について承認を求めるの件について御報告申し上げます。  本件は、漁業情勢その他経済事情の著しい変化に伴い、昭和三十八年第四十二回国会で承認された漁港整備計画を全面的に変更しようとするもので、昭和四十四年度以降五年間に三百七十港の漁港を全国にわたり計画的に整備拡充し、その機能を増進させ、もって漁業生産の増大と経営の近代化に資そうとするものであります。  農林水産委員会におきましては、三月十三日提案理由説明を聴取し、三月十九日審査を進め、同日、本件は適切な措置であると認め、全会一致をもってこれを承認すべきものと議決した次第であります。  なお、本件に対し、目標期間内における計画の完遂を期するための予算を確保すること等、二項目にわたる附帯決議全会一致をもって付されましたことを申し添えます。以上、御報告を終わります。(拍手)     —————————————
  12. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) これより採決に入ります。まず、日程第三につき採決いたします。本案委員長報告可決であります。本案会員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  13. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。次に、日程第四につき採決いたします。本件委員長報告のとおり承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、本件委員長報告のとおり承認するに決しました。      ————◇————— 地方自治法の一部を改正する法律案内閣提  出、参議院送付
  15. 西岡武夫

    西岡武夫君 議事日程追加緊急動議を提出いたします。  すなわち、この際、内閣提出参議院送付地方自治法の一部を改正する法律案議題となし、委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  16. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 西岡武夫君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  地方自治法の一部を改正する法律案議題といたします。     —————————————     —————————————
  18. 石井光次郎

  19. 鹿野彦吉

    鹿野彦吉君 ただいま議題となりました地方自治法の一部を改正する法律案につきまして、地方行政委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、最近の特別区の区域における都の行政実態とその制度上の特殊性にかんがみ、都の議会議員定数について特例を設けることとするとともに、直接請求制度などに所要改正を加えるほか、許認可、報告事項の整理、地方公共団体処理すべき事務についての規定整備など、地方行政にかかる制度合理化規定整備を行なおうとするものでございます。  本案は、参議院先議でありまして、三月十九日当委員会に付託され、同日野田自治大臣から提案理由説明を聴取した後、慎重に審査を行ない、本日、質疑を終了いたしましたところ、日本共産党から、本案に対し、都の議会議員定数についての特例を設ける改正部分以外を削除する旨の修正案が提出され、林委員より趣旨説明が行なわれました。  次いで討論に入りましたところ、日本社会党を代表して依田委員から、原案について反対意見の表明があり、採決の結果、修正案賛成少数をもって否決、政府原案賛成多数をもって可決され、本案原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  20. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  21. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提   出)の趣旨説明
  22. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 内閣提出国民年金法の一部を改正する法律案について、趣旨説明を求めます。厚生大臣斎藤昇君。     〔国務大臣斎藤昇登壇
  23. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 国民年金法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  国民年金制度は、昭和三十四年に創設され、同年十一月から福祉年金支給開始し、昭和三十六年から本制度の中心である拠出制年金実施に入り、現在では、被保険者数約二千二百万人、拠出年金受給者約十三万人、福祉年金受給者約三百十万人を擁する規模に成長しており、被用者を対象とする厚生年金保険と相並んでわが国公的年金の二大支柱を形成する制度であります。その間、昭和四十一年に制度初めての財政計算期を迎え、給付水準の大幅な改善を行ない、夫婦一万円年金を達成したところであります。しかしながら、現行給付水準は、この数年間の著しい経済成長に伴う生活水準の大幅な上昇により、老後生活を保障するには不十分なものとなりつつあります。一方、人口構造老齢化現象、農村における生活水準の急速な向上などの事態に際して、老後生活保障施策はますますその重要性を増しているのでありまして、これに対する国民の要望もきわめて強いのであります。このため、今回予定されている厚生年金保険改善に合わせて、国民年金につきましても、本来の財政計算期に当たる昭和四十六年を待つことなく、その大幅な改正を提案することといたした次第であります。  以下、改正法案のおもな内容につきまして御説明申し上げます。  まず、拠出制年金に関する事項について申し上げます。  第一に、年金額引き上げについてであります。  老齢年金の額につきましては、現行保険料納付済み期間一月につき二百円で計算することといたしておりますのを、一月につき三百二十円に引き上げて計算することといたしております。この結果、二十五年納付の標準的な老齢年金の額は、現行の六万円から九万六千円に引き上げられることになるのであります。  この改正によりまして、二十五年納付の場合、夫婦で受給する年金月額は、通常、夫の定額分八千円、今回導入される所得比例分四千五百円、妻の定額分八千円を合わせますと月額二万五百円となり、いわゆる夫婦二万円年金が実現することとなるのであります。また、全期間四十年納付の場合では月額三万二千八百円となるのであります。  なお、昭和四十六年には、国民年金の最初の拠出制老齢年金、いわゆる十年年金支給開始されますが、資格期間特例的に短縮されているこの経過的老齢年金の額につきましては、さきに申し上げました単なる期間比例計算にとどまることなく、年齢に応じて特例的に加算措置を講ずることといたしまして、この十年納付の場合の年金額を二万四千円から六万円に、月額にして二千円から五千円に引き上げることといたしております。この措置によりまして、明後年には、夫婦で一万円年金が実現されることとなるのであります。  次に、障害年金につきましては、現行法では、二級障害年金最低保障額を、二十五年納付老齢年金の額に合わせて六万円と定められておりますが、今回も同様な考え方のもとに、老齢年金額引き上げに準じて、その額を六万円から九万六千円に引き上げることといたしております。また、一級障害年金の額につきましては、現行は二級障害年金の二〇%増になっておりますのを、厚生年金保険に合わせて二五%増とすることといたしております。  次に、母子年金、準母子年金の額につきましても、従前どおり、二十五年納付老齢年金の額に合わせて、子二人を扶養する場合で六万円から九万六千円に引き上げ遺児年金につきましてもこれに合わせることとし、三万円から九万六千円に引き上げることとした次第であります。  第二に、所得比例制についてでありますが、他の公的年金制度におきましては、保険料及び給付の額が所得に比例する仕組みを設けているのでありますが、国民年金におきましても、今回、これにならうこととし、被保険者実態を勘案いたしまして、まず、当面はきわめて簡単な仕組み所得比例制を取り入れた次第であります。なお、これに伴い、政府の行なう所得比例制を代行いたしますと同時に、業種ごとの特殊の要請にこたえる上積みの給付を設計することができるようにいたしますため、厚生年金保険における厚生年金基金に準じた国民年金基金を設立する道を開くことといたしております。  第三に、高齢者任意加入再開について申し上げます。  昭和三十六年に拠出制年金が発足いたしました当時、任意加入する機会を逸した高齢者につきまして、今回、再び国民年金任意加入する道を開くことといたしております。しかしながら、この方々がすでに相当高齢であることを勘案いたしまして、保険料納付は五年間にとどめております。  第四に、保険財政について申し上げます。  第一点は、保険料の額の改定についてであります。今回のように給付水準を大幅に引き上げますと、これをまかなう保険料についても当然相当額改定する必要があるわけでありますが、今回はさしあたり百五十円程度の引き上げにとどめ、四百五十円といたした次第であります。なお、この保険料の額は、以後段階的に引き上げることといたしております。  第二点は、今回新たに導入されました所得比例制についての国庫負担でありますが、国庫は、その給付に要する費用の二五%を負担することといたしております。  次に、福祉年金に関する事項について申し上げます。  第一に、年金額引き上げについてでありますが、昨年の引き上げに引き続き、昭和四十四年度におきまして老齢福祉年金の額を、現行の二万四百円から二万一千六百円に、障害福祉年金の額を、三万二千四百円から三万四千八百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金の額を、二万六千四百円から二万八千八百円に、それぞれ引き上げることといたしております。  第二に、夫婦受給制限廃止等について申し上げます。障害福祉年金老齢福祉年金夫婦で受給する場合の支給制限につきましては、すでに昭和四十一年の改正の際に廃止いたしておりまして、今回は、夫婦がともに老齢福祉年金を受給する場合につきましても、その支給制限を撤廃することといたしたものであります。これによりまして、現在この支給制限を受けておられる二十八万組、五十六万人の方々年金額が、夫婦で六千円増加することと相なるわけでございます。このほか、所得による支給制限につきましてもその緩和をはかることといたしております。  次に、経過措置についてでありますが、現に、年金受給中の既裁定年金の額につきましても、本則の改正と同様に引き上げることといたしております。  最後に、実施の時期につきましては、福祉年金の額の引き上げ及び夫婦受給制限廃止昭和四十四年十月から、高齢者任意加入再開昭和四十五年一月から、拠出制年金の額の引き上げ及び保険料改定は同年七月から、所得比例制及び国民年金基金に関する事項は同年十月から、それぞれ施行することといたしております。  以上をもって改正法律案趣旨説明を終わります。(拍手)      ————◇—————  国民年金法の一部を改正する法律案内閣提出)   の趣旨説明に対する質疑
  24. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。これを許します。八木一男君。     〔八木一男登壇
  25. 八木一男

    八木一男君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました国民年金法の一部を改正する法律案に関して、内閣総理大臣厚生大臣並びに大蔵大臣に質問をいたしたいと存じます。  近年、医学の進歩等によりまして、わが国平均寿命は大幅に延びてまいりました。まことに喜ぶべき現象でございますが、その長くなった老後をいかにして人間らしく暮らすかという問題について、大ぜいの老人が悩んでおられます。また、将来の悩みを考えて、現在壮年期人たちも、非常に心配をしておるわけであります。家族制度の実際的な変動もこの悩みに拍車をかけておりまして、年金制度の確立はきわめて緊要な問題であることは論をまたないところでございます。特に、この数年来の生活水準向上等に対応して、年金制度改善を急速に行なわなければ、もともと不完全な年金制度が相対的に不十分さを増すことに相なるわけでありまして、その充実はいよいよ急がれなければならないわけでございます。ことに、制度発足がおくれた未完成度の多い国民年金制度については、特に迅速に対処さるべきことは申すまでもございません。  今回、厚生年金制度改定期に、厚生年金保険法改正案を提案されたときにあたって、国民年金制度改定期を早め、同時に改正案を提出されたことは時宜を得たものであり、その点に関しては、政府や厚生省の努力をある程度認めるのにやぶさかではございません。しかしながら、提出された法案内容をつぶさに検討いたしますと、その改善内容はまことに不十分であり、ことに福祉年金改善については、その熱意が那辺にあるかと疑わざるを得ない内容でありまして、国民立場から見て、まことに憤激にたえないのであります。さらに、社会保障的に改造していくべき制度仕組みを、それを怠るだけではなしに、部分的には社会保険的に逆行する内容があることについては、政府の猛省を促さなければならないと信じます。  以上の立場に立って、以下、おもな点についてのみ具体的に質疑を進めてまいります。  まず、拠出制国民年金制度に関してであります。  その第一は、年金額改定に関してでございます。  政府は、かねてから、厚生年金は二万円年金にする、そうして、国民年金については夫婦二万円年金にすると宣伝してこられました。厚生年金二万円も、サラリーマン・ユニオンが四万円の厚生年金を要望しておるところを考えるまでもなく、もともと不十分なものでございますが、その厚生年金の二万円に比較して、国民年金夫婦二万円は、実質的にはなはだ低次元のものであります。厚生年金年金支給開始は原則として六十歳、国民年金は六十五歳であります。六十五歳開始夫婦二万円年金は、六十歳開始換算をすれば約一万二千円にしか当たりません。さらにまた、厚生年金保険料二十年払い込み基準とし、国民年金は二十五年払い込み基準としております。この点も換算をいたしますと、国民年金夫婦二万円は、厚生年金ベースで計算すれば夫婦約一万円、一人約五千円ベースにしか当たらないのであります。決して十分とはいえない今回の厚生年金改定額に比較をして、夫婦で約半額、単独で約四分の一という年金額が、提案説明にありましたように大幅な改正というのでは、あまりにも貧弱といわなければならないと存じます。何ゆえにもつと大幅な改定計画されなかったか。四十五年七月の実施時期までに、さらに検討をされるべきものと思うが、その意思がおありになるかどうか。  私たち社会党は、二十年払い込み、六十歳開始夫婦三万円年金を、大幅な国庫負担増で実現すべきものであるという意見でありますが、それについてどう考えられるか、内閣総理大臣並びに厚生大臣お答えをいただきたいと思います。  第二に、所得比例制導入及びその国庫負担についてであります。  定額制基本老齢年金額に対し、わずか五六%増の所得比例制を創設するのならば、なぜ強制適用基本年金額を八千円にするのではなく、それだけ基本年金額を増額しようとしなかったのか。基本年金額引き上げのわずかなことを糊塗する方法として、このような所得比例制を考えたと疑われてもしかたがないと思うが、どう考えるか。  さらに、任意適用部分に、保険料に対し二割五分の国庫負担をすることは、他の者よりは負担能力のある者に対し国が援助をすることになり、社会保障の見地から見れば逆な方向であります。なぜこの分の国庫負担を全被保険者に及ぶ基本年金額に対する国庫負担増率に充てることをしなかったのか、えりを正したお答えをいただきたい。他の年金制度でも報酬比例制国庫負担があるからという答弁では、他のものが強制適用であり、この制度任意適用であるという点で答弁にならないことをあらかじめ申し上げておいて、この点については、やや専門的でありますから、厚生大臣答弁を求めます。  第三に、免除を受けた人に対する年金についてであります。  現在、免除を受けた期間については、保険料納入済み期間に対して三分の一の年金原資しか確保されておりません。全期間免除の人は、三分の一の年金しか支給されていない仕組みに相なっております。元来、保険料免除を受ける人たちは、収入が少なく、もちろん蓄積はなく、老齢に達したとき、あるいは障害を受けたとき、あるいはその人の死亡後の遺族の生活を考えたとき、他の人より年金の必要度がはるかに多いのであります。それにもかかわらず、三分の一の年金というのでは、ほんとうの社会保障ではございません。この点については、衆議院、参議院の社会労働委員会で、連続、保険料免除を受けた者の年金給付については、さらに優遇の措置を講ずべしという決議が、特に緊急に実現すべきものの一つとしてなされておるのであります。それにもかかわらず、厚生省は、この実現のためにいささかも努力をした形跡も見えないのであります。厚生大臣は、社会保障の精神を踏みにじって、国会の意思を無視していることについて、いかなる責任をとられるか。また、内閣総理大臣は、この問題についてどう対処されるかについて、明確な答弁を求めたいと存じます。  第四に、障害年金に関してであります。  本改正案で、障害年金については、その最低保障額老齢年金の標準額に合わせ、また、一級障害者の加算率をわずかに高める等、幾ぶんの改善は認められます。しかし、一番大切なことは依然としてほおかむりをいたしております。改正案によれば、国民年金拠出制では、一級障害の場合、最低月額一万円が所得制限なしに保障をされております。しかし、それは国民年金加入後一年を経過した後の障害を受けた者に対してだけであります。その他の一級障害者は月額二千九百円、しかも、所得制限以内の人しか支給されないのであります。二十一歳以後全盲になった人は比較的高い年金が無条件で支給され、十九歳、十歳、あるいは生まれたときから全盲の人は、二十一歳の年齢に達した場合にも、どんなに年金制度を熱望し、その制度に協力を誓っても、冷ややかに突き放されているのであります。このような不合理を、このような不公平を、総理大臣はどうお考えになられるか、率直にお答えを願いたいと思います。お答えは、当然、二十歳未満に発生した障害を持つ障害者に対しても、二十一歳以後は、二十一歳に障害を受けた人と同じ年金給付を実現するという御答弁になられるべきだと思います。一部の人が苦しまぎれに逃げる理由として言う逆選択云々の理屈は、国民年金強制適用であることからして、問題にならないのであります。総理大臣が決断をもって、その実現につき、厚生大臣大蔵大臣に指示すべきものと考えるものでありまして、衆参両院の社会労働委員会で、数回連続、満場一致の決議があったことを申し添えて、内閣総理大臣の明確かつ適切な御答弁を求めます。また、厚生大臣の決意を伺っておきたいと存じます。  以上、四点の実現については、わが党は、国庫負担の増額、修正積み立て方式の修正部分の増大、また、これと間接に関係がありますが、予定利率五分五厘を六分にするなどの方法により、保険料引き上げを極力押える方法をとるべきであるという考え方であることを明らかにいたしておきまして、保険料あるいは積み立て金運用、スライド、通算等の問題については委員会質疑に譲りまして、福祉年金について質問を続行いたしたいと存じます。  その第一点は、福祉年金額に関してであります。  福祉年金の中心である老齢福祉年金についての改正案は、本年十月から、現行年額二万四百円、すなわち月額千七百円を、年額二万一千六百円、すなわち月額千八百円にする内容であります。総理府統計局の資料及び経済企画庁経済見通しによれば、消費者物価指数は、老齢福祉年金発足の昭和三十四年を一〇〇として、昭和四十四年は一六九・三であります。したがって、現行老齢福祉年金は、岸内閣当時と比べて、実質上何らの前進もしていないことに相なります。今回の改正案が、月百円アップでは、来年の物価値上げを推定すれば、またまた十年以前の状態の横すべりという状態であります。社会保障重視、年金の充実を唱えながら、現在の生活に苦吟をする老人に対するこの態度は、まさに羊頭狗肉、看板に偽りがあるといわなければならないと存じます。元来、国民年金発足当時、拠出制年金は、四十年払い込みの人月三千五百円、標準の二十五年払い込みの人月二千円、補完的老齢福祉年金は月千円でスタートをいたしました。標準の二十五年払い込みの人の月二千円のベースが、この前の改定で月五千円ベースに相なりました。そのときに、すでに、同じく二倍半にして、老齢福祉年金月額二千五百円になっていなければならないところであります。今回の拠出制年金の標準が六割増しの月八千円になる場合には、老齢福祉年金は月四千円になっていなければ平仄が合わないのであります。それにもかかわらず、厚生省は、月額二百円アップの腰抜けの要求をいたしました。大蔵省は、さらにこれを半減して、半額の百円アップしか賛成をしなかったわけであります。戦中戦後を乗り越えて、いまの社会の基盤を築き、われわれを育ててくれた現在の老人、われわれの親たちに対して、一体このような態度で臨んでいいものかどうか、総理大臣の真剣な御反省の上での御答弁を求めます。さらに、厚生省の怠慢、大蔵省の無理解について、どのように対処されるかについて伺っておきたいと存じます。  第二は、昭和四十六年に国民年金の最初の拠出制年金、いわゆる十年年金支給されることになったことに関してであります。  今回の改正案では、期間特例的に短縮されているこの経過的老齢年金につき、その年金額特例加算措置を講ずることになっており、今回の改正案の中で最も時宜に適した措置として認めるのにやぶさかではございません。しかしながら、制度発足当時、五十五歳未満の人が適用を受けることができたこの制度には、このようなあたたかい配慮をしながら、その当時五十五歳以上の人に対しては冷酷むざんに放置をしていることは、政治の大きな手抜かりであります。そのことを数字をもって明らかにすると、制度発足当時五十四歳であった人は、昭和四十六年から、六十五歳で月五千円の年金支給所得制限なしに受けることができるわけであります、当時五十五歳の人は、どんなに年金を熱望し、年金制度に協力を誓ってもほったらかしにされまして、六十五歳から六十九歳までは一切国民年金支給は受けられません。七十歳になって、はるかに少ない金額の老齢福祉年金が、しかも所得制限以内の人だけが支給を受けられることになります。昭和四十六年という時点になって、六十五歳の人が月五千円の支給を受けて、その隣の六十六歳の老人が一切国民年金支給がないときに、どのような気持ちがされるか、総理大臣の率直なお考えを伺いたいと思います。  衆参両院の社会労働委員会では、このときのために、現在の七十歳開始老齢福祉年金をいまから段階的に引き下げて、昭和四十六年には六十五歳開始になるようすべきであるという決議を連続いたしております。政府が当然対処をしなければならないことを怠っており、しかも、国会の何回もの意思表示があるにもかかわらず、これを放置してきた責任を痛感されて、直ちにこれに対処されることを明らかにされるべきであると考えますが、総理の御答弁を伺いたいと思います。  なお、厚生大臣大蔵大臣答弁も求めますが、厚生大臣には、制度開始時五十四歳の人が昭和四十六年から受ける月額五千円のうち、保険料負担分は約五分の一にしかすぎないことを頭に入れていただいて、拠出制と無拠出制だから比較にならないというような不見識な答弁をなさらないよう、あらかじめ御注意を申し上げておきます。  また、大蔵大臣には、いまから老齢福祉年金支給開始年齢を六十五歳に下げても、老齢福祉年金に対する財政支出増大は拠出制国民年金の完成後はなくなるものであり、きわめて一時的な支出増であることを念頭に入れていただいて、いわゆるかってな財政硬直論を持ち出すような不見識なことはなさらないよう御注意を申し上げまして、その御答弁を求めます。  以上、主要な点のみに触れましたが、その他所得制限の緩和等につきましては委員会質疑に譲ることとし、国民年金予算、ことに福祉年金の予算について触れてみたいと存じます。  本年度の国民年金予算は、前年度に比し一三・八%増であります。うち福祉年金は一一・一%増にしかすぎません。総予算の伸び一五・八%よりははるかに少ないのであります。厚生省の怠慢もさることながら、このような予算を作成する大蔵省の態度に、社会保障全体の後退、国民年金制度の伸び悩み、ことに福祉年金の置き去りを招来した原因がございます。大蔵大臣に、この年金軽視、社会保障軽視の態度が憲法違反につながることをかみしめていただいて、その反省の上に立って、今後の国民年金予算についての意思を明らかにしていただきたいと存じます。  最後に、内閣総理大臣に伺っておきたいと思います。  本法案は、今後委員会において十二分な審議が行なわれ、その欠陥について討議が行なわれるでありましょう。その際、過去引き続きの委員会の決議や、また社会保障制度審議会の答申等に照らして、欠陥を修正する努力が当然行なわれると予想されます。その際に、そのまじめな努力を、政府案だから原案のままだといって圧力を加えるようなことは断じてなさらない、欠陥が直されることを率直に期待されるという態度をとられるべきであると考えるものでございますが、総理の、メンツ、形式にとらわれない、社会保障を重視する、われわれを育ててくれた親たちにほんとうに社会保障の意味で親孝行をするという意味での真剣な御答弁を求めて、私の質問を終わる次第であります。(拍手)     〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  26. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 八木君にお答えいたします。  ただいま国民年金に関連して、たいへんきめこまかなお尋ねがございました。社会福祉についての八木君の御熱心さに、まず何よりも先に敬意を表しておきます。(拍手)同時に、政府といたしましても、国民福祉の向上をはかるため、社会保障の充実に引き続き一そうの努力を払う決意であることを申し上げておきます。また、こまかな点につきましては厚生大臣からお答えすることにいたしまして、私からは大綱についてお答えしたいと思います。  国民年金は、制度創設以来まだ日が浅いにもかかわらず、一応の水準まで改善をはかることができたものと思っております。厚生年金との差について御指摘がありましたが、両者では、被保険者の態様がまず異なること、また、諸外国の老齢年金の状況から見まして、わが国国民年金が特に遜色あるものとは考えませんが、時代の進展に即応した制度一般の必要な改善については、今後とも、なお一そう努力してまいるつもりであります。  次に、今回新たに設けた所得のある人々の任意加入制度による付加的給付反対され、その財源は従来の国民年金に対する国庫負担率の増加に充てろと、かような御主張であったと思いまするが、政府としては、この任意加入制度について新設を要望される声が強かったことと、その必要性を認めて新しくこの制度を創設したものであり、その国庫負担も一般の国民年金の負担率よりも低く、かつ、他の公的年金ともバランスをとって決定したものでありまして、制度としてもきわめて妥当なものではないか、かように考えております。また、この場合、実施方式としては、団体加入の場合だけでなく、一般的に加入可能なものとして制度を設けております。  次に、保険料免除者についての優遇割合の引き上げは、一般の保険料拠出者との均衡及び財源措置との関連から見て困難と考えます。なお、今回の改善により、これらの方々についても一般的な給付引き上げられることはもちろんであります。  福祉年金については、ここ四年間連続して毎年改善を行なっており、今回も年金額引き上げをはかるとともに、夫婦受給制限を撤廃することとしております。今後とも、その充実については引き続き努力してまいります。  次に、老齢年金福祉年金との断層についての御指摘がありました。御指摘のような圧力団体のみ優遇するようなことは決してしてはおりません。日の当たらぬところに日を当てる、これが社会保障、社会開発を推進するにあたっての私の決意であります。従来老齢年金については、まず年金額引き上げと、所得制限の緩和を中心に改善をはかってまいりましたが、御指摘の件につきましては、所要財源をも勘案しながら、慎重に検討してまいりたいと考えております。  また、障害福祉年金障害年金との関連においても、アンバランスの具体的な御指摘がありました。さきの老齢年金福祉年金についてもそうでありますが、この種の問題は、公的年金制度全体の問題として取り上げなければ、根本的には解決がむずかしい問題かと考えますので、なお若干の時間をいただいて、検討を続けさせていただきたいと思います。  最後に、特に重要性を持つ本案委員会審議にあたっては、十分審議を尽くされることを私からも望みまして、よろしくお願いをいたします。(拍手)     〔国務大臣福田赳夫君登壇
  27. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。  私に対しましては、社会保障予算、特に福祉年金予算をちびったのはけしからぬというようなおとがめでございますが、しばしば申し上げておりますように、社会保障予算は四十四年度予算で最も力を注いだところであります。福祉年金予算はその伸び率が一般より多少落ちておりまするが、率ばかりでなくて、内容も見ていただきたい。つまり年金額引き上げ、それから所得制限の限度額の引き上げ、それから夫婦受給制限の撤廃、非常な前進を見ておるのであります。  また、老齢福祉年金七十歳、これは少し酷ではないかというお話がありましたが、総理からお話がありましたように、これは財源の関係もあります。それから社会保障諸施設の中のバランスの関係もございます。慎重に真剣に検討してみたい、かように考えております。(拍手)     〔国務大臣斎藤昇登壇
  28. 斎藤昇

    国務大臣斎藤昇君) 八木一男君のまことにきめのこまかい御質問に対しまして、総理及び大蔵大臣からもきめこまかく御返事を申されましたが、私は、総理のおっしゃいましたことで大体尽きていると思います。詳細な点は委員会でいろいろと御意見も承ってまいりたいと思いますが、大筋におきましては、八木君のおっしゃる筋に私は反対はございません。大体そのとおりだと思います。しかしながら、八木君自身もおっしゃいましたように、このたび、ここまでよくぞ踏み切った、その点だけは免じてやるとおっしゃいましたが、とにかく、一年計算の再計算期を前にして踏み切って、そしてここまで来たわけであります。四点御指摘に相なりましたが、それぞれわれわれといたしましても、実現をいたしたい点が多々ございます。今後努力をいたしてまいりたい。  ただ一点、総理、大蔵大臣答弁に漏れておりましたのは、年金に加入後に障害を受けた者に対しては障害年金がもらえるのに、その前に受けた者に対してはその恩典がない。この点についての御意見でございます。これも、私は実態をながめてみますと、この点は非常に不公平だと思います。ただ保険理論だけで割り切って、そのままほうっておいてよい問題だとは思いません。八木君のおっしゃるとおりに思います。そこで、これを保険の中で特別な理屈をつけて救済をするか、保険と同じような給付を他の方法でやるか、これを検討いたしまして、いずれにいたしましても、実際的に保険加入の後にそういう障害になった人とならない人と、いずれも国費で見るわけでありますから、この間に厚薄があっては相ならぬと思いますので、この点は誠意をもって検討を進め、実現をいたしたいということを申し添えておきたいと存じます。(拍手
  29. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  国務大臣演説中小企業基本法基づく昭   和四十三年度年次報告及び昭和四十四年度   中小企業施策について)
  30. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) 通商産業大臣から、中小企業基本法基づ昭和四十三年度年次報告及び昭和四十四年度中小企業施策について発言を求められております。これを許します。通商産業大臣大、平正芳君。     〔国務大臣大平正芳君登壇
  31. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 中小企業基本法第八条に基づきまして、先般政府が国会に提出いたしました昭和四十三年度中小企業の動向に関する年次報告及び昭和四十四年度において講じようとする中小企業施策の概要を御説明申し上げます。  昭和四十二年から四十三年にかけて、わが国経済は景気調整下にもかかわらず、全体として拡大基調をたどり、中小企業の事業活動もこれまでの引き締め期に比べて順調な伸びを示しました。資金繰りもさしたる逼迫感のないままに推移し、設備投資も引き続き増勢の傾向をたどっております。しかし、この間、労働力の不足はますます進行し、中小企業の賃金は著しい上昇を示しており、他方、発展途上国の追い上げ、資本自由化の進展など、国際環境もきびしさを増しております。このように中小企業をめぐる経済環境の変化が目まぐるしいだけに、これに適応し切れず、倒産に至る企業も、これまでになく多数にのぼっておることが注目されます。  中小企業が、内外のきびしい環境変化を乗り切って、今後ともわが国経済の中で重要な役割りを果たしていくためには、生産性や技術水準の低さ、企業体質の弱さなど、依然として未解決のまま残されておる構造的問題を克服する努力が必要であります。  ひるがえって、欧米先進国を見ますと、高賃金、高所得の経済の中で、中小企業はその特性を生かしつつ、経済の各分野でかなりの比重をもって存立いたしております。この事実は中小企業に独自の存立と発展の分野があることを示すものであり、わが国経済の発展に伴いまして、中小企業の活動分野は今後ともますます広がっていくものと考えられます。しかしながら、わが国の中小企業がその持てる成長の可能性を現実のものとするためには、高度の技術と高い生産性に裏づけられた、いわゆる先進国型の中小企業へと脱皮してまいることがその前提となっております。  そのためには、四百万の中小企業がその旺盛な適応能力を十分に発揮して、当面している困難な問題点を一つずつ着実に解決し、一そうの近代化、体質の強化をはかっていくことが何よりも重要であります。それは、とりもなおさず国民経済全体の効率化につながり、わが国経済の今後の成長発展のための原動力となるのであります。  政府といたしましても、このような観点から中小企業者の自主的な近代化努力を助長し、事業環境の整備をはかることが必要であると考え、中小企業施策を最重点政策の一つとしてあげております。  昭和四十三年度におきましては、共同化、協業化を中心とした中小企業の構造の高度化を推進いたしますとともに、設備、技術、経営、労働等各般にわたる中小企業の体質強化及び金融、税制面その他中小企業をめぐる事業環境の整備に重点を置いて施策を講じました。その際、経営基盤の弱い小規模企業の体質改善には特にきめこまかい配慮を払っております。  さらに、四十四年度におきましては、中小企業の一そうの近代化と体質の改善をはかり、内外のきびしい環境変化を乗り越えていくため、次のような施策を推進していくことといたしております。  まず第一に、中小企業振興事業団の融資事業大幅に拡充し、中小企業の共同化、集団化を進てまいることであります。その際、特に中小企業者からの要望の多い工業団地、商業団地、共同施設等について強力な助成をはかる所存であります。  第二に、国際競争力を強化するため、緊急に対策を講じる必要のある業種について、業界の自主性と責任を基調とする構造改善を進めることとし、これについて税制面、金融面等からの助成を行なうことといたしております。  第三に、中小企業者の近代化投資等に必要な資金の円滑な供給を確保するため、政府関係中小企業金融三機関に対し財政資金を大幅に投入し、貸し付け規模の拡大をはかる一方、信用補完制度を充実して、民間資金による中小企業向け融資の増加につとめる所存であります。  第四に、小規模企業対策につきましては、経営改善普及事業を充実するとともに、設備の近代化と金融の円滑化にも特段の配慮を払っております。また、地方税における青色申告者の家族専従者について完全給与制を実施する等により、税負担の軽減をはかることといたしております。  第五に、中小企業の経営管理の合理化と技術水準の向上をはかるため、診断指導事業を充実するとともに、中小企業者の技術開発に対する助成、公設試験研究機関による技術開発、技術指導等を中心とする技術対策の拡充強化につとめます。また、中小企業における労働力の確保と、その資質の向上、従業員の福祉の増進等のための労働対策を推進することといたしております。  第六に、流通部門につきましては、中小企業振興事業団による助成を強化するとともに、中小企業金融公庫及び国民金融公庫の特別貸し付け制度を拡充する等の措置を講じ、その近代化を進めることといたしております。  また、下請企業につきましては、下請代金支払遅延等防止法の運用強化、下請企業振興協会の事業の拡充等により、下請取引の適正化と受注の安定につとめる所存であります。  以上が昭和四十三年度中小企業の動向に関する年次報告及び昭和四十四年度において講じようとする中小企業施策の概要であります。(拍手)      ————◇—————  国務大臣演説中小企業基本法基づく昭   和四十一二年度年次報告及び昭和四十四年度   中小企業施策について)に対する質疑
  32. 石井光次郎

    議長石井光次郎君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。武藤山治君。     〔武藤山治君登壇
  33. 武藤山治

    ○武藤山治君 私は、日本社会党を代表して、中小企業の動向に関する年次報告、いわゆる中小企業白書に関し質疑をいたし、佐藤内閣の方針を伺うものであります。  第一に、中小企業省設置について伺います。  佐藤内閣は、貿易資本の自由化政策を進め、関税一括引き下げ措置を決定し、明年度には開発途上国に対し特恵関税を実施する約束をいたしました。これらの開放経済体制に対処するためと称し、大企業の合併機運は高まり、政府はそれを支援する方策をとっております。数の少ない大企業に対する政府施策は容易であり、目に見えて多いのであります。だが、中小企業はこれから先一体どうなるのか、政府の指導方針はどんなものか、中小企業は不満と不安を抱いているのであります。  白書は、中小企業の業種別、規模別の実情を正確に把握しておりません。中小企業と一口にいわれるが、事業数が四百二十三万余あり、そのうち、個人営業が三百三十八万、法人企業八十四万余となっており、小規模の個人営業数が圧倒的に多いのであります。これらの零細な小規模企業は、国の方針として今後どうするのか。経済合理性や競争原理の完全導入で解決できるものではないのであります。また白書は、中小企業の実態説明するのに、法人企業統計年報や統計季報及び生産動態統計の数字を用いているが、これらの統計には個人営業が含まれていないし、零細法人も含まれていない統計数字が多いのであります。したがって、白書の実態説明は、現実を正確に反映しているとはいえないのであり、中小企業の今後の指針を導き出す正しいカルテとしては採用しがたい点が多いのであります。  明年度からは、できるだけ業種別、規模別の実態調査を行ない、現状に基づいた統計数字を基礎にすべきであります。再検討する必要があると思うが、大臣の見解はいかがでしょう。さらに、中小企業政策が通産行政の中に埋没しないために、中小企業専門の中小企業省を設置し、国際化時代に対応し得る体制にすべきときが来たと思うが、中小企業省設置について総理大臣の方針を伺いたい。     〔議長退席、副議長着席〕  第二に、アメリカの輸入制限、保護貿易の動きと特恵関税についてであります。  ニクソン政権誕生と同時に、輸入制限の動きが活発化しているようであります。紡毛及び梳毛の織物、化繊合繊の織物、毛織と衣服及びこれらの織物の加工品を対象にしているようだが、政府が入手している情報ではどんなものか。鉄鋼の場合、現在自主規制を行なっておりますが、アメリカでは、最近ハートケ氏が法案を提案し、鉄鋼輸入に対する法的輸入制限を主張しているようであります。これではアメリカを信用できないではありませんか。日本の化繊業界が、政府間交渉に賛成できないと主張する気持ちは、この鉄鋼の例から見て、協定を結んでも意味がないという不安があるからにほかなりません。佐藤内閣は、このようなアメリカの身がってな動きに対し、現在までどんな手を打ってきたか、業界交渉にまかせようとしているのか、政府間協定が望ましいと考えているのか、総理大臣に明らかにしていただきたい。  アメリカは、ドル防衛、国際収支改善のためと称し、輸出リベート制度や輸入担保金制度実施し、自由貿易に逆行する措置をとっております。ざらに、これを合法化するため、ガットの場で輸入制限禁止の例外規定改正しようと提案する模様でありますが、まことに身がってなアメリカの態度といわなければなりません。この態度に対し、日本政府はいかなる態度をもって臨むか、お聞かせを願いたい。これが合法化されると、世界貿易や日本の輸出にどんな影響が起こるか、外務大臣、通産大臣に伺います。  佐藤内閣は、三月十日、特恵関税の実施案をOECDに送ったようだが、特恵関税は明年度から実施されると見通しておられるのかどうか。その適用について、日本の資本が進出して生産をしている国々も含まれるのかどうか。現在、香港に設立されている日本の会社は二十三社、台湾が五社、今後進出し増大が予想される韓国、インドネシアなども特恵対象国になるのか。これらの国から輸入される商品、これらの国と競争する先進国への輸出競争等を考えると、中小企業に相当の影響が起こると思うが、その見通しはいかがでしょう。  第三に、中小企業のビジョンと倒産対策について伺います。  中小企業の上位層は、重工業部門の好調を反映して、価格の下落や資金繰りの窮迫化といった事態は見られなかった。しかし、繊維、食料品等の軽工業分野では過剰生産、競争激化などで生産の伸びは停滞し、加えて、金融引き締めの影響はひどく、借り入れ難の増大や取引条件の悪化が目立った年だと白書も述べております。零細小規模事業では、この傾向は一そう激しいものがあったのであります。生産性の向上、技術開発、重化学工業への転換を力説している政府は、はたして適切な方策を具体的に講じているであろうか。四十四年度の予算を見ると、一般会計予算でわずか四百三十億円、前年比四十億八千二百万円の増にすぎません。これで中小企業がどの程度近代化や構造改善ができると思っているのか。金融の面でも、中小企業金融政府系三機関の資金は、前年比八百三十五億円の増にすぎない。先進国型中小企業に成長させるための予算としては、あまりにもお粗末、僅少の額であります。政府の考える中小企業政策の本質は一体何か。この際、重化学工業、軽工業、流通産業のそれぞれについて、総理大臣から政策のビジョンを示してほしい。  中小企業が不安定であることは、年間三万五千余の法人企業が消滅する事実を見ても明らかであります。昨年一カ年の倒産数は前年より二〇%増加し、ついに一万七百七十六件に達し、戦後最高を記録した。金融引き締め、大企業の進出による圧迫、資金力の弱さ、過当競争などが原因と思われるが、白書はこれらに対処する方針を明らかにしていない。大企業の下請代金支払いについても、繊維の場合九十日、機械、金属の百二十日の手形期限が守られておりません。約半分が長期違反手形であります。この違反手形に対する処置も、適切になされていないのではありませんか。昨年の倒産原因を調べると、販売不振が第一位で三千八百三十件、続いて売り掛け回収難一千七百二十一件となり、経営者の放漫で倒産するものは減少をしております。政府の施策のしわ寄せで倒れる企業が増加していることを物語っておるのであります。これらの倒産現象に対し、自由経済は弱肉強食、無計画生産を本質としているので防止できないというのか、資本主義では景気循環は避けられないから、しかたないというのか、需給調節能力がないから、どうにもならないとでも考えているのか、今後は、行き詰まりそうな企業の手形に対する政府の救済機関をつくるとか、何か新しい方策を樹立し、中小企業を守る必要があると思うが、政府の見解はどらか。  第四に、中小企業金融についてお尋ねをいたします。  先月、公正取引委員会報告をした拘束預金の実態によれば、拘束性預金が前回調査の四十二年よりも増加している。また、預金額に対応する部分の貸し付け金利は引き下げることになっているはずだが、今回の調査では、何ら引き下げ措置を講じていないものが三七・九%に達しております。これでは、不公正な取引が是正されていないことになります。金融機関の誠意は見られないではありませんか。前よりむしろ悪くなったと答えた企業が前回の二倍に達し、前回より改善されたと答えた数も一〇・九%も減少したのであります。拘束性預金を金融機関が解消しようとしていないことを物語っております。われわれは再三要求を続け、中小企業金融の姿勢を正してまいりましたが、またまた方針がゆるんできたのではないかと疑わざるを得ません。福田大蔵大臣はどう理解しているか、拘束性預金解消のため、第三ラウンドの措置をとるべきと思うが、大臣の所見を承りたい。  国民金融公庫、中小企業金融公庫の金融は、拘束性預金や歩積み・両建てがなく、小規模企業が最も喜ぶ融資であります。しかし、その資金量が少ないため、業者の需要を満たすことができない状況にあります。融資申し込みに対する充足率は、国民公庫で、四十一年度六六・七%、四十二年度六九・八%であり、十件のうち三件は融資を受けられなかったことになる。中小公庫においても、四十一年度は六六・九%、四十二年度は七九・六%の充足率であって、低利長期の資金を必要とする者にとっては、まことに不十分と感ずるわけであります。中小企業全体の融資額十九兆二百九十五億円のうち、政府関係三機関融資比率はわずか九・一%であり、過去五年間この水準は同一であります。この比率をこの際大きく引き上げる必要があると思います。資本自由化、貿易自由化、特恵関税などが、中小企業の体質脱皮を、好むと好まざるとにかかわらず要求しているのであるから、それに呼応した金融政策が緊急事であると思います。この際、思い切った三機関の資金増をはかられたい。大蔵大臣答弁を求めます。  第五に、税制についてお尋ねをいたします。  中小企業の資本装備率は低く、近代化はおくれており、わが国には同族会社と呼ばれる法人が七十四万二千あり、課税所得にして一兆七千八百三十億円に達するのであります。同族法人とは、株主に親戚一族が多く、その株主に同族三人で五〇%の株保有、四人の場合、六〇%以上の株保有をしておる法人のことであります。これらの法人に対しては、大法人に適用しない留保金課税を法人税以外に賦課し、同一所得に二重課税をしておるのであります。その金額は、所得額にして一千二百十億円に達するのであります。なぜ、かかる二重課税をするかという理由について、国税庁の説明によれば、同族法人では、株主の待遇をよくするために賞与や配当を出すと、株主個人の所得が多くなり、個人所得税が累進課税で高くなるから、これをのがれるために、賞与や配当を出さず、会社の利益を必要以上に社内に留保する傾向があるからだと国税庁は説明をしておるのであります。これでは近代化や構造改善のための資金の積み立て、すなわち、社内留保を制限することになり、小規模企業を圧迫することであります。何たる時代逆行の税制であるか。さらに、大法人との間に差別を設け、憲法の定める法のもとの平等の精神にも反することだ。大蔵大臣に善処を要求し、見解を承りたいのであります。  税制の問題で、中小企業に差別をしている問題の一つに、さらに、同族会社の役員賞与は損金に認めないというのがあります。とうちゃん社長、かあちゃん専務、じいちゃん監査役という小規模法人では、社長も専務も従業員同様に働いているのであります。それを政府は、役員賞与とは、企業経営に寄与した業績に対する株主の謝礼だと定義し、巨大資本の会社と同族会社の社長とを同一視している。何たる悪平等か。通産大臣はどう思うか。法人税法第三十五条は、小規模法人については適用を除外せよ。大蔵大臣答弁を求めます。(拍手)  最後に、今回の改正案で、商工中金が設定する抵当権登記の登録税が千分の四から千分の一に減税されますが、県単位に設立されている県の信用保証協会、この保証協会が抵当権を設定する場合にも、当然免税措置をとってしかるべきであると思うが、大蔵大臣、通産大臣の見解はいかがであるか、明らかにしていただきたい。  以上、私の受け持ちの時間が終わりましたので、簡単でありますが、政府の見解を求めて、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  34. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 中小企業省を設置しろ、こういう御意見でございますが、私が申し上げるまでもなく、中小企業行政は、産業行政と一体となって運用する必要があり、この意味で、中小企業庁が通産省と一体となって施策を進めることが適当と考えております。また、新たに省を設けることは屋上屋を重ねることにもなり、行政機構の複雑化を招くおそれも多いので、中小企業省を設置することには私は賛成ではございません。現在の機関のままでも、各省との緊密な連絡体制を整えるなどして、十分中小企業行政が達成されるものと、かように考えております。  アメリカのいろいろの政策などについてお尋ねがございましたが、これはやはり中小企業の本質に関する問題だと思いますので、その点からひとつ私の考え方も聞いていただきたい。  中小企業は、労働力不足の進展と、これに伴う賃金の上昇によりまして、さらには、豊富な労働力を持つ発展途上国の台頭と資本の自由化のもとに激しい国際競争にさらされることによりまして、従来の経営のあり方に根本的な反省を必要とする時期に当面しているものであります。現在の中小企業は、残念ながら、従来から中小企業の弱点とされている生産性の低さ、企業体質の弱さ、また企業近代化の立ちおくれなどは、いまだに解消されないままに残っております。特に、小規模零細層のほとんどが設備、技術、生産性の面で著しく立ちおくれている上に、生業的な色彩が濃く、いまだに前近代的な性格から脱し切っていないのが問題であります。  政府としては、これらの構造改善についての中小企業者の自主的な努力に対し、これを助言、助長し、その環境の整備をはかるため、中小企業に対する明確な情報の提供と、親身になっての指導、助言、さらには金融、信用の補充、税制等の面でのきめこまかい配慮を払って育成、強化をはかるつもりであります。そうして国際的なその地位、地歩を確保する、かように努力してまいる考えでございます。  以上、お答えしておきます。(拍手)     〔国務大臣大平正芳君登壇
  35. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 第一は、中小企業統計の整備についての御質問でございました。現在も業種別、規模別に、工業、商業、事業所別に統計を収集いたしておるのでございますが、何さま、四百数十万に及ぶ千種万態の業態でございますので、的確に経営の状況を掌握することが至難でございます。仰せのように新たなくふうをこらしまして、実情の把握につとめたいと思います。  米国の輸入制限、特恵等に対する問題でございますが、二月六日、ニクソン大統領が、繊維の輸出自主規制につきまして主要国と協議したい旨の発言がありました。また最近、スタンズ商務長官が、繊維品の対米輸出について調整が行なわれることを希望するという発言があって、私どももりの成り行きを注目いたしておるわけでございますが、これまでのところ、まだ政府に何らアプローチがございません。今後十分この成り行きは注目してまいりたいと思います。  それから、これに対応する対策でございますけれども、政府間協定とか業界交渉とか、まだお話がないことでございますから考えておりませんけれども、形式のいかんを問わず、すべての輸入制限措置には官民一体となって反対する体制で臨みたいと考えます。  それから特恵でございまするが、これは三月の上旬、わが国も特恵のリストをOECD当局に提案いたしましたけれども、これはいまから各国間でいろいろ協議されることでございましょうから、その内容については、まだ申し上げる段階ではございません。  それから、米国がガットの輸入制限例外規定改正提案の意図があるかどうかというような御質疑であったと思いますが、ただいまのところ、そういう改正の提案の意図を持っておるというようなことは聞いておりません。  それから、わが国の資本が進出いたしておりまする香港、台湾、韓国、インドネシア等との特恵の関係でございますが、私どもとしては、国民所得の水準等から見まして、台湾、韓国、インドネシア等は、先方が希望すれば特恵の受益国として認めてしかるべきものだと考えておりますが、香港につきましては、なお検討の要があると考えます。また、争ういうところにおける産品の取り扱いにつきましても、これは外資が発展途上国に進出いたしまして工業の開発を促進するというのが特恵の目的でありまする以上、進出企業の廃品につきましても、特恵の対象にするのが至当であろうと考えております。  それから、特恵の中小企業に対する影響は、武藤さん毛仰せのとおりはなはだ深刻でありまして、先進国に比べましてわが国が一番深刻であろうと思います。それだけに、中小企業に重大な影響をもたらすものでございまするから、品目の選択にあたりましては、最大限の配慮を加えてまいりたいと考えております。  それから、中小企業予算は不十分でないかという御指摘でございました。来年度の予算案につきましては、一般会計におきまして一二・六六%、財政投融資につきまして一四・二%の増加が認められたわけでございまして、その運用よろしきを得ればかなりの効果をあげ得ると期待いたしておるのでございまして、今後も一そう施策の充実につとめてまいりたいと考えております。  それから、中小企業のビジョンにつきましては、総理大臣からお話がございましたから省略いたします。  それから、倒産対策でございますが、異常に高い倒産率を示しておった去年の上半期から、下半期にかけましてだんだんと鎮静ムードになってまいりましたことはたいへん幸いだと思っております。しかし、件数は減りましたものの、金額は依然として高いわけでございます。これは要するに、中小企業の適応力が脆弱であるということでございまするので、本格的に体質の強化、技術水準の向上、資金調達力の充実ということに、企業の努力に加えて、政府の助成、信用の補完等の手段を講じてこれを強化して、対応力を高めてまいらなければならないと考えておるのでございます。  下請取引の問題でございますが、これは、通産省並びに公正取引委員会が協力いたしまして鋭意運用の充実につとめました結果、最近におきまして逐次下請取引は適正化の方向に改善を見つつあるのでございますが、今後一段と運用の強化、適正化をはかってまいる所存でございます。  それから、同族会社の社内留保に関する課税についての限界でございます。税制につきましては、大蔵大臣から御答弁があると思いますが、同族会社の社内留保につきましては、今日までも、一定額の控除制度が設けられて、その控除額が従来から順次引き上げられてきておるのでございますけれども、仰せのように、今後も個人と法人との税負担のバランスを勘案しながら、その軽減について財政当局とも十分話し合ってまいりたいと考えます。(拍手)     〔国務大臣福田赳夫君登壇
  36. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えをいたします。  まず、中小企業対策予算が少ないのじゃないかというお話でございますが、これは予算は、農業なんかに比べると確かに非常に少ないです。少のうございますが、中小企業は、元来、一般会計予算になじまない性格のものである。あとでも申し上げますが、金融と税、これにおいて格別の対策を考えておる、かように御了承願いたいのであります。  そこで金融であります。まず、歩積み・両建て問題についての御意見でございましたが、お話しのように、拘束性預金が、公取委員会の調べによりますと、少しふえてきておる、また、拘束性預金に応ずる貸し出し金利、これが放置されておる傾向がある、こういうことでありますが、この公取委員会の調査は四十三年五月現在であります。わが大蔵省においては四十三年十一月で調査をしております。これによりますと、非常に変わってきておりまして、この割合にいたしましても、また、金利据え置きの傾向にいたしましても改善をされてきておる、こういう結果が出ておるのであります。(「都合のいいところだけとるな」と呼ぶ者あり)大蔵省では毎年二回やっておるのでありまして、現実性を持っておる。つまり、公取が調査したこの三月という時点は、金融引き締め政策が強く浸透しておる時期であった。それが緩和された十一月の時点において変わってきておるのだ、かように見ておるのであります。(「三月じゃない、五月だ」と呼ぶ者あり)お声がありますが、公取は四十三年五月であります。そこで、武藤さんのお話では、そういうふうに、大蔵省では拘束預金に対するところの施策にゆるみが出てきたのじゃないか、第三次対策をとる必要があるのではあるまいかというようなお話でございますが、いま相互銀行につきましては進行中です。それから、信用金庫につきましても第二ラウンドが進行中であり、四十四年十一月に相互銀行、四十五年十一月に信用金庫が終了する。私は、この都市銀行、また一般の地方銀行、これらの第二ラウンドが終了した、その成績から見まして、この相互、信金におきましても、必ずこれを目標どおりやっていける、かように確信をしておりますが、なお、その推移を見まして、第三ラウンドをやるかやらないか、これは考えてみたい、かように考えておるのであります。  次に、中小金融の政府関係機関である国民公庫が、貸し出しに対し六九・八%、中小公庫が、貸し出しに対し七九・六%、要求に対し、それしか応ぜられないという状況である、しかも、この中小金融機関全体における政府機関の役割りが九・一%の状態である、こういうお話でありますが、これも改善をされつつあるのでありまして、いま武藤さんのおっしゃるこの数字は、そのとおりなんですが、これは四十二年度なんです。四十三年度について見ますると、十二月までの実績はわかっておりますけれども、もう国民公庫でも七二・四%、また、中小公庫におきましても八三・八%、とにかく申し込みがあって、それだけのものにこたえ得るという体制は、これはりっぱなものである、かように考えておるのであります。  それから、政府関係機関の中小金融におけるシェアが一割だ、少ないというお話でございますが、これも政府金融なんです。政府金融は構造改善などの特殊的任務を持っておるものでありまして、金融の補完的役割りをするものである。しかも、三機関の融資額は実に八千億、こういう巨額のものであります。そういうことをお考えくださいますれば、決してこれが過少のものではありますまい。ことに、民間におきましては中小向けの金融が非常にふえておるのでありまして、この数年間、四十年は四二・九%のシェアが四十三年には四五・九%というふうにはね上がっているということも、またあわせお考えを願いたいのであります。  それから、次は税の問題でありますが、同族会社の留保金課税問題、これは古く、かつ、まことににぎやかな問題であります。これは、諸外国でもこの問題はやっておるのです。また、いま何か大法人と小法人と差別があるような、こういう御感触の発言でございますが、これは区別はいたしておりません。大法人におきましても、同族会社ならばこの留保金課税を適用するのであります。やはりこれは留保金につきまして留保水準というものをきめる、これが適当じゃないか。適当な留保水準をいまきめておりますので、この方式、これでやっていって差しつかえないのではないか。また、近代化がこの措置によって立ちおくれる傾向があるというお話でありますが、留保水準の適正化、これによってこのことも免れ得るのではあるまいか、さように考えておるのであります。  それから、同族会社の役員賞与を損金にせよ、これも古く、かつ、にぎやかな議論でございますが、これは法人税法第三十五条におきまして、役員賞与は利益金処分である、また、その第二項において特例がありますけれども、同族会社の場合におきましてもこの考え方でいくほかはない。ただ、同族会社の場合におきましては、役員が同族株主である場合が多うございまするものですから、第二項の特例に該当しない傾向が多いわけでございますけれども、その際は役員をやめていただくというほかはない、こういう見解をとっておるのであります。もし役員はおやめにならないというお方でありますれば、それは真に使用人であるのか、経営者であるのかということを慎重に判断をして結論を出すという考え方をとるほかあるまい、かように考えておるのであります。  それから、保証協会の登録税の問題の御指摘がありましたが、この問題においては慎重に考えてみたい、かように存じます。(拍手)     〔国務大臣愛知揆一君登壇
  37. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 最近、米国内で繊維を中心に輸入制限の動きが強まっておりますが、わが国といたしましては、先ほど通産大臣から御答弁いたしましたように、一方的な輸入制限であろうが、あるいは輸出の自主規制であろうが、形式を問わず、官民一体となって、このような動きが具体化するのを、まず未然に防止することが一番大切であると思いまして、ただいまできる限りの政府としての努力もいたしております。先般も御報告いたしましたように、この問題が二月早々アメリカに動きがありましたので、二月の中旬のワシントンにおきまして、駐米大使から直接米政府に厳重な申し入れをいたしました。それから、次いで三月に入りましてから、私も駐日代理大使を招致いたしまして、本件につきまして未然に防止するよう、アメリカ政府の格別の努力を要請しておるような次第でございます。  特恵関税につきましては、御案内のようにOECD、あるいはUNCTAD等においる特恵の検討作業が一九七〇年初頭の実施を一応の目標として進められております。これに照応いたしまして、わが国としても、先進国の一員としてこれに協力すべく作業を進めておりますが、その方向あるいは考え方は、ただいま通産大臣から詳しく申し上げましたとおりでございます。  また、ガットに対する米国の動向につきましても通産大臣の答弁のとおりでございますから、省略させていただきたいと思います。(拍手)     —————————————
  38. 小平久雄

    ○副議長(小平久雄君) 吉田泰造君。     〔吉田泰造君登壇
  39. 吉田泰造

    ○吉田泰造君 私は、民主社会党を代表し、昭和四十三年度中小企業の動向に関する年次報告並びに昭和四十四年度において講じようとする中小企業施策について、若干の質問を総理並びに関係大臣に行ないたいと思います。(拍手)  その総括的な点は、わが国の中小企業問題の基本的なとらえ方についてであります。  顧みまするに、戦後二十三年間、政府の中小企業問題に取り組む姿勢は、一貫して経済の高度成長を大企業中心に追求し、一人当たりの国民所得を高め、その過程において中小企業問題の解決をはかるというものでありました。確かに、わが国の経済は、今日、国民生産においてアメリカ、ソ連に次ぐ世界第三位の地位にまで躍進したのであります。しかし、これではたしてわが国の中小企業問題は解決されたのでありましょうか。いな、決してそうではありません。むしろ中小企業の構造的な危機は、白書の指摘をまつまでもなく、今日ほど切実なものとなったことはないのであります。このことは、依然として、わが国の中小企業と大企業との格差が著しいことに端的にあらわれております。現在のわが国一人当たりの国民所得は、いまから約十五年前の西欧の水準と同じでありますが、すでにその当時、イギリス、ドイツ、フランス等においては、中小企業と大企業との生産性格差は約二〇%前後と、非常に縮小していたにもかかわらず、同じ所得水準にある現在のわが国において、大企業との格差が実に五〇%もあるという厳然たる事実は、何を物語っているのでありましょうか。これは明らかに、わが国の経済発展がいまだにおくれているからではなく、政府の経済政策並びに現在の経済制度それ自体に、中小企業を軽視する重大な欠陥があることを如実に示しているといっても過言ではありません。(拍手)したがって、現在の中小企業問題は、ただ経済成長を高め、一人当たり国民所得引き上げることによって解決されるというなまやさしいものではなく、予算に占める中小企業対策費の比重の画期的増大、金融、税制等の経済制度の根本的改革が必要であると思いますが、総理並びに関係大臣の基本的考え方をまずお伺いいたします。(拍手)  次に、具体的な問題について、中小企業金融問題からお伺いをいたします。  申すまでもなく、わが国経済に占める金融の役割りは、まことに大きなものがあります。株式、公社債市場の立ちおくれ、貧弱な内部留保などは必然的に企業の金融依存度を高め、金融機関のあり方が、わが国経済構造を左右してきたのであります。現在の中小企業の近代化合理化の著しい立ちおくれも、その源は中小企業の資金調達力の弱さからきていることは明瞭であります。ところが、わが国の金融機構は依然として大企業集中融資メカニズムを維持、強化しており、融資量、金利、期間など、あらゆる面において、中小企業は不当に不利な取り扱いを受けていることは自明のこととなっております。たとえば、都市銀行の中小企業向け融資比率はわずか二五・七%にしか過ぎず、相互銀行についても、昭和三十九年の融資比率七九・四%から、四十三年には七三・八%と、比重が低下している始末であります。にもかかわらず、政府は、昨年に引き続きことしも、中小企業を考慮しない金融機関の再編成を促進し、三菱、第一の合併の話が出るや、大蔵大臣はもろ手をあげ賛成したことは、全く大企業中心の金融政策が露骨にあらわれているとしか思えないのであります。(拍手)一体政府は、各銀行に対し、中小企業向け融資比率を高める行政指導を行なっているのかどうか、具体的にお聞きしたいのであります。  また、政府系三中小金融機関の金利についても、四十年九月、四十一年四月、四十二年一月と、毎年引き下げられてきたのでありますが、それ以降、すでに二年間八・二%で据え置かれているのであります。中小企業者の政府金融機関に対する非常に大きな期待にこたえるためにも、すみやかに、この際まず八%にまで引き下げるべきであると思うのでありますが、あわせてお伺いいたします。(拍手)  さらに、政府は、ことし中小企業振興事業団の融資金利を二・二%から二・七%に引き上げるという、全く時代逆行的な方策をとったのでありますが、これはあくまでことし一年限りのこととして、来年はもとどおりにすべきであると思うのでありますが、関係大臣の明確な御答弁をいただきたいと思います。(拍手)  次に、税制問題についてお伺いいたします。  現在の中小企業の経営基盤の脆弱性は、白書が正しく指摘していますように、中小企業の自己資本比率が一七%と、わが国大企業の二三%、またアメリカの中小企業五七%と比較しても、著しく低いところにあることは言うまでもありません。これが対策はあらゆる角度から検討されなければなりませんが、税制面からもこの改善に一そうの努力を傾注すべきであります。しかるに、わが国の法人税制は、表面税率はさておきながら、実効税負担において、大法人に比べ中小企業法人がかえって大きくなっており、税負担の公平が犠牲にされているのであります。このような矛盾をなくし、中小企業法人の税負担を軽減するため、法人利潤税を検討して、多段階税率を設けるようにすべきであると思いますが、政府の見解をお聞きしたいのであります。(拍手)あわせて、零細事業については、事業主の勤労部分を控除する制度を設けてもよいのではないかと思いますが、大蔵、自治両大臣の御答弁をお願いいたします。(拍手)また、白書では、今後企業の転換、廃業が必要になってくると述べておりますが、この点について、廃業者の事業用資産の譲渡所得の特別措置を設ける必要があると思いますが、政府の見解をただしたいと思います。  次に、中小企業の構造改善政策についてお伺いいたします。  この端緒は、すでに昭和四十二年の繊維の構造改善に見られるのでありますが、私は、この繊維の構造改善の経験と反省を踏まえながら、政府が今後進められようとされている対策の方法について大きな疑念を持つのであります。その第一は、改善業種の指定について、商業、サービス業を含んだ総合的長期的プログラムのもとに選定すべきであり、一部希望業種だけをケース・バイ・ケースに取り上げるのではなく、政府が進んで業界側にそのような準備と体制をとらせるよう、積極的な指導、助成が必要であります。第二に、これら業種における一部企業の転廃業が起こることにかんがみ、これをいかにスムーズに進めるかであります。以上の二点につきまして、政府の所信をただしたいのであります。  次に、商業政策についてお伺いいたします。  白書は、わが国商業の中で、中小商業の占める地位が圧倒的に多く、しかもその基盤は、急テンポな流通機構の変化の中でゆるぎつつあることを緻密に分析されているのであります。ところが、さて、その対策となると、従来の製造工業に対する施策を商業にも当てはめるという安易な考え方が支配し、現在の最も緊急な問題である大スーパー、大百貨店との調整、中小商業のあるべきビジョンの提示、各省にまたがる商業行政の一元化、流通業資本自由化のプログラムなど、基本的施策が全く提示されていないのであります。たとえば、最近、四国において、地元商店街とスーパーとの間に大きなトラブルが生じ、わが党のあっせん調整で、両者が共存する道を開いたという事実があるのであります。  このような政府の商業政策の混迷を是正し、商業の近代化と各種商店の共存共栄をはかるため、わが党は、商業基本法ともいうべき中小商業振興法を今国会に提出しているのでありますが、これら諸点について、通産並びに各関係大臣にその所信のほどを承りたいのであります。(拍手)  最後に、私は、以下数点にわたる質問を終わるにあたりまして、繰り返し指摘したいことがあります。それは、中小企業の近代化も、経済全体の計画化なくしてはあり得ないということであります。最近、ある学者は次のように述べております。すなわち、「経済発展は、計画されない場合、強者を助け弱者をくじくものである。それによって、富は雪だるまのようにふくれ上がるが、そのうしろには、世界で最も繁栄している国においてすら、許しがたい貧困の汚点が残されているのである」とありますが、まさに名言であります。私は、政府が現在進められております経済社会発展計画改定作業において、このことを真剣に留意し、中小企業近代化の確固たる道を計画的に切り開くように切に希望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  40. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 中小企業問題に対する政府の基本的な姿勢につきましては、さきに武藤君の質問に対しましてお答えしたとおりであります。  労働力の不足と高賃金の欧米諸国におきましても、なお中小企業が経済の各分野で重要な役割りを果たしつつ、りっぱに発展しているのでありまして、わが国におきましても、このことができないわけはないはずであります。すなわち、今後の経済の成長過程におきまして、高加工度の産業を主柱としながら、一そう重要な役割りを果たしていただくことを期待するとともに、それに対する支援を惜しまない所存であります。  次に、中小企業が金融面、取引面において不利な立場に立たされており、これらの側面を改善しない限り、単に高度成長させることのみによっては、その近代化が達成できないことは御説のとおりであります。このため、政府といたしましては、金融面における補完的融資、さらに取引面における下請取引の適正化など、中小企業の持つ制度的欠陥の補正につとめており、今後とも、これらの措置の徹底につとめてまいりたいと考えております。  中小企業対策のための予算につきましては、四十四年度予算におきましても着実な充実を行なっており、特に中小企業に対しては、その性格上、単に一般会計予算においてだけでなく、財政投融資、税別、金融等を通じて総合的施策を進めていくことが必要と感じ、所要措置をとっているものであります。今後とも、一そうその充実について努力してまいります。  最後に、中小企業の近代化をはかることが、今後のわが国経済が持続的かつ均衡のとれた成長発展を遂げていくためにきわめて重要であることは、さきにも申し上げたとおりであります。このため、経済社会発展計画の補正にあたっては、経済効率化の一環として、中小企業の国民経済的位置づけと、その施策の方向について、中小企業政策審議会の検討の結果を加味しつつ明らかにしてまいりたい、かように考えております。  以上、お答えいたします。(拍手)     〔国務大臣大平正芳君登壇
  41. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 第一に、金融の問題でございますが、仰せのように、資金調達力が中小企業の体質の強化にとりまして根本的な課題であることは、御承知のとおりでございます。したがって、政府機関の金融機関ばかりでなく、民間の銀行の協力も十分求めなければならぬわけでございますが、幸いにいたしまして、信用保証協会の活動がだんだん活発になってまいりまして、順次民間銀行の資金が中小企業向けに流れる傾向が出てまいりましたことを喜んでおります。また、御承知のように、年末には、金融引き締め等の時期に民間金融機関の中小企業向け融資をたびたび要請いたしておりますことは、御案内のとおりでございます。  それから、金利の引き下げの問題でございますが、これは従来からも機会あるごとに引き下げに留意いたしておりましたが、今後もその方向で努力いたしたいと思います。  それから、振興事業団の融資比率を今年引き上げたのはどうか、もとどおりにせよというお話でございますが、ことしは中小企業振興事業団に対する融資需要というものが殺到いたしまして、財政資金の限界もございまして、資金量をできるだけふやすために、やむを得ず一部引き上げをさしていただいたわけでございまして、これは旺盛な資金需要に対処するやむを得ない措置でありましたことを御了承いただきたいと思います。  それから、構造改善についての御質問でございまして、まず業種の選定でございますが、これは御指摘のように、業界内部の主体的な条件が十全整わなければならぬわけでございまするし、また、十分の実態調査を遂げた上で政策の立案にかからなければならぬわけでございますので、私どもといたしましては、順を追うて実行していく所存でございまして、特定の業種を優先するとかいう考え方ではないのでございますことを御了承いただきたいと思います。  それから、民社党の御提案にかかりまする構造改善促進法の御精神は、私ども十分行政上生かしてまいりたいと考えております。  それから、商業政策の問題でございます。仰せのように、流通対策が確かにおくれをとっておりますことは、御指摘のとおりでございます。したがって、私どもは、非常に数の多い、体質の脆弱な流通業界の体質の強化につきまして、小売りの面ではボランタリーチェーンの育成、卸売りの面では総合センターあるいは団地の育成、あるいは輸送、包装、荷役等の機械化等にいろいろくふうをこらしておるわけでございますが、全くこれからのわれわれの政策的な最大の課題であろうと承知いたしておるわけでございます。  また、御指摘のスーパーその他の進出によりまして、いろいろの紛争が起きておりますことはたいへん残念でございますが、これについての摩擦につきましては、十分の行政的配慮を加えて、解決の指導に当たりたいと考えておる次第でございます。  それから、中小商業振興法についての政府の考えはどうだということでございました。中小商業の総合的立法を構想して、商業の近代化が急務となっている今日、こういう構想の意図するところは私どもも十分理解できるところでございますけれども、はたして新規の立法が必要かどうか、また、それに必要な十分の準備があるかどうか、そういった点も十分検討さしていただきたいと思うのでございまして、にわかに、いま是非の判断は差し控えさしていただきたいと考えます。(拍手)     〔国務大臣福田赳夫君登壇
  42. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お答えいたします。  社会党の武藤さん同様、中小企業予算が少な過ぎる、かような御批判でございますが、そのとおり中小企業予算は多いとは申し上げられません。しかし、これは金融と税のほうで補っておる。先ほどお答え申し上げたとおりであります。民間金融機関の融資比率を高めるために行政指導をしておるかということでございますが、そのとおりにやっておるのでありまして、昨年十一月の実績が出ておりますけれども、民間金融機関の中小企業に対する融資比率は四五・九%、これは逐次上昇しつつある比率と御承知願いたいのであります。  それから、政府関係三機関の基準金利を引き下げられぬかというお話でございます。これは昭和四十二年一月に今日の八・二%という率への引き下げが行なわれたわけでございまするが、当時、四十年のあの大不況について特例的に引き下げた、それに引き続いての引き下げが今日に至っておるわけであります。しかしながら、これはいま日本の金利全体といたしまして、国際的にたいへん低いところに来ておる。数年前は、日本の金利は外国の金利に比較いたしまして二%くらい高い地位にあったのでありまするが、今日逆に二%くらい低い地位まで来ておるのであります。その中の金利問題、金利全体としてバランスをとってやっておりますので、これをにわかに改正するということはむずかしいのではあるまいか、さように考えておるのであります。  振興事業団の高度化資金の金利を二・二%から二・七%に上げたのを引き戻せ、こういうお説でございまするが、これは吉田さんも御承知のように、いま全国に中小企業のいろんな団地がたくさん建ちつつあるのであります。この団地のためにずいぶん金が使われる、また、これに対する需要が非常に多いのであります。そういうことを考えますときに、金の量という問題を考えなければならぬ。その量を考える際に、金利を多少犠牲にせざるを得ないのであります。そういうような見地から、二・七%というところへ持っていったわけでございますけれども、やはりこれが中小企業の皆さんの御志向、御期待に合致しておるゆえんではあるまいか、さように考えておるのであります。  税につきましては、御承知のように、いろんな角度から中小企業対策をとっておるのでありまするが、税率において、法人税、個人所得税とも、特別軽減税率をとっておることは御承知のとおりですが、専従者控除、合理化機械の特別償却、貸し倒れ引き当て金に対する特例措置、構造改善準備金、また四十四年度におきましても、構造改善に対する特別償却措置を御審議をお願いいたしておる等、いろんな施策をこらしておるのであります。  なお、法人利潤税を導入すべきではないかというお話でございまするが、これは非常にむずかしゅうございます。これは、利潤税を導入する場合には、資本金とか利益金とか、そういうものをまず対象にして基準を求めなければならぬわけでございまするけれども、それは会社が税を少なくしょうというために、その会社の規模を、あるいは利益金を分割をする、そういう措置が容易であります。脱税措置がいかようにでもできるようなことに相なるのでございまして、軽々にこの考え方を取り入れるわけにはまいりませんし、諸外国いずれでも、かような考え方をとっておるところはないことを御承知願いたいのであります。  それから、事業主の勤労所得控除を認めよという話でありますが、これは給与所得者に対する控除同様の考え方をとれというお考えと承れるのでありまするが、事業主の所得、つまり事業所得につきましては、すでにあらゆる控除をしておる。その結果が事業所得になるのであります。その上にさらに控除をせい、これは二重控除というものでありまして、そういうようなことをいたしますると、これは給与所得者等との間にはなはだしくバランスを失するということになりますので、私は賛成いたしかねるのであります(拍手)     〔国務大臣菅野和太郎君登壇
  43. 菅野和太郎

    国務大臣(菅野和太郎君) いま経済企画庁で策定いたしております経済社会発展計画を補正する場合に、中小企業の位置づけと申しますか、中小企業をどのように取り扱うかということについて御質問であったように思うのでありまするが、この点については、総理から詳細にお話があり、今後の中小企業のビジョンについてもお話がありましたので、私はこれ以上つけ加える必要はないかと思うのでありまするが、なお重複するとは存じますが、多少この問題について触れてみたいと思うのであります。  お話のとおり、最近経済が非常に発展してまいりましたが、中小企業というものが格差があるということは御指摘のとおりであります。この点においてはわれわれも非常に遺憾に思っておるのでありますが、経済の発展があまりに急激過ぎたために、したがって、生産性の高い大企業は特に発展し、生産性の低い中小企業というものが立ちおくれたということは、先ほど大蔵大臣、通産大臣からもお話しのとおりであります。しかし、外国には中小企業はあるけれども、日本のような中小企業の問題はないということは、これは一体どういうわけかということであります。そこで問題は、この立ちおくれておる中小企業を、お説のとおり、近代化する、あるいは高度化するということが絶対必要でありまして、そういう点において、この経済発展計画におきましても、経済の効率化ということを考えておりますから、したがいまして、この中小企業については、特に近代化、高度化ということを考慮して、ほかの大企業と対等の地位に置いて、そして外国におけるがごとく、中小企業問題の起こらぬような計画を立てたいと考えておる次第であります。(拍手)     〔国務大臣野田武夫君登壇
  44. 野田武夫

    国務大臣(野田武夫君) 事業主の勤労部分に対する所得控除はどうかというお尋ねでございますが、先ほど大蔵大臣からお答えいたしましたとおり、地方も国と同じような考えでございまして、事業の経営による所得は事業そのものでありまして、給与所得者に対してとられておりますような給与所得控除のようなものは、これを認めることは適当ではない、こういう考え方を持っております。(拍手)     —————————————
  45. 小平久雄

    ○副議長(小平久雄君) 近江巳記夫君。     〔近江巳記夫君登壇
  46. 近江巳記夫

    ○近江巳記夫君 私は、公明党を代表いたしまして、昭和四十三年度中小企業の動向に関する年次報告について、特に重要と思われる点につきましてお尋ねいたします。わが国経済の成長は、世界各国からも非常に注目されております。これは、先進工業諸国に追いりき、追い越せという、経済の先導部門における設備投資に対する異常なエネルギーの結集の結果であることは、言うまでもありません。しかしながら、一見バラ色に見えるわが国経済のたどってきた高度成長にも、体質的に大きな問題点をかかえているのであります。それは言うまでもなく、重化学工業を中心とする成長産業部門が先導するわが国経済の発展が、その陰にこれら花形産業部門の活動をささえるために、裏方的役割りを果たしてきた膨大な下請産業群によって初めて可能であったことであります。劣悪な条件のもとで、日本経済の繁栄をささえてきたこれら下請産業群と、はなやかに脚光を浴びる先導産業部門との間の経済的な格差は、開いていく一方であるというわが国産業の二重構造の存在と、両者間の不均衡な成長は、産業政策上の重大問題なのであります。しかも、いまや経済の国際化は急速な伸展を遂げ、中小企業をめぐる経済環境に著しい変化が生じているにもかかわらず、これに十分対応することができない中小企業は、きわめて困難な事態に遭遇しておるのであります。わが国中小企業をこのような事態に追い込んだものは、口先では中小企業保護とか近代化を唱えるばかりで、何の実質もない政府の中小企業政策不在の政治姿勢にほかならないのであります。(拍手)  以上のような認識を背景にして、質問をいたしたいと思います。  まず第一に、経済環境の激しい変化が、これまでの中小企業の経営や構造を大きくゆるがせておるのであります。たとえば、中小企業に最も基本的な影響を与えているものとして、労働力の不足がありますが、白書は、景気調整下においてもこの動きはとどまることなく進行し、中小企業の経営を圧迫したと述べております。今後も経済の拡大されることが予想されると同時に、進学率の上昇や、一次産業からの労働力流出の減退等が一そう進み、新規学卒者のホワイトカラーやサービス業などへの就労がますます強くなり、製造業の労働力不足が一そう激しくなる傾向にあるのであります。さらにまた、企業の中でも特に小規模企業は、必要な人手の確保に著しく困難を来たしておるのであります。白書も、小規模企業の雇用減少のきざしがあらわれたことを指摘しておりますが、政府は、このような事態に対して、一体どのような具体策を講じようとするのか、総理大臣並びに労働大臣の所信をお伺いいたします。(拍手)  また、中小企業全体の半分以上が何らかの意味で下請企業であり、わが国経済をささえていることは、すでに述べたところでありますが、資本自由化、大企業分野での産業再編成の動きが加わって、下請再編成が進み、下請の再下請化、整理等の問題点が生じつつあります。政府は、その実態を十分に把握しているかどうか、また、このような現状に対してどのような対策を用意しておられるのか、今後の基本的対策を、総理並びに通産大臣にお伺いいたします。  一方、最近における大量生産、大量消費の伸展、都市化、地域構造の変化などが流通構造を急速に変貌させております。特に小売りや卸売り分野で大企業の進出が著しく、中小企業の半数を占める二百万中小商業者の存立基盤をゆるがしております。白書も、この五年間に、企業のシェアが卸売り業で四四%から五六%に、小売り業で一三%から一八%へと、大きく増大したことを示しており、流通構造の急激な変化などで、倒産を余儀なくされる商店も多いという実情であります。流通部門は、農業に次ぐ低生産性部門であり、わが国経済の大きなネックとなっており、抜本的な流通構造の近代化、中小商業の近代化が必要であると考えるのでありますが、政府はいかなる対策をお持ちか、総理並びに通産大臣にお伺いいたします。  また、発展途上国や欧米先進諸国など、わが国中小企業に対する攻勢が最近ますます激しくなっております。その結果、中小企業の輸出に占める比重は、この五年間に五五%から四〇%強へと急速に低下しており、特恵関税制度実施されれば、この動きは一そう加速されることになるのであります。白書は、中小企業の生きるべき道として、高級品化のための努力を強調しておりますが、ヨーロッパなど先進諸国の高級品に、まだまだ太刀打ちできないものが多いのではないかと思うのであります。事実、アメリカ市場などで、低級品は発展途上国に、高級品はヨーロッパに市場を奪われ、わが国だけがシェアを減少させている商品も多いのであります。政府は、このような動きをどう見るのか、高級品化などによって輸出市場を維持し得る見通しはあるのかどうか、また、それに対する対策を通産大臣にお伺いいたします。  次に、輸出問題と関連して、海外進出について政府の見解をお伺いいたします。  欧米諸国の韓国、台湾等、東南アジアに対する企業進出が最近とみに盛んになっており、わが国輸出の脅威となっております。また、特恵関税の利用、発展途上国の低賃金利用などの見地からも、海外進出は中小企業に今後一そう広い活動の場を与えるものと考えるのであります。さらに、海外の進出先の市場や、産業、企業について、ジェトロなどの機能を十分活用して、中小企業に対して迅速的確な情報を提供すべきであると思います。この点について、従来の政府の対策ははなはだ当を得ていないようでありますが、今後どのように対処されようとするのか、通産大臣にお伺いいたします。  政府は、これまで中小企業の近代化、特に機械化を中心とする設備近代化を推進してきていると説明しておりますが、それははたしていかほどの効果をあげているのでありましょうか。たとえば、福井染色団地や名古屋建設機械工業団地の例に見られるごとく、政府の中小企業対策の大きな柱となっている中小企業振興事業団の管轄事業によって構造改善、さらに新鋭機械等を入れて設備面の近代化をしても、政府金融機関融資の不足から、やむを得ず高金利の資金を利用するため金利負担にあえいだり、あるいは業界の過当競争、問屋の買いたたき、さらに企業自体の販売力不足等により壊滅的打撃を受け、これを巨大企業に身売りするというような悲惨な結果に終わっている現状を、政府は一体どのように見ているのか。政府の政治的責任まことに重大といわねばなりませんが、どのように責任をとろうとなさるのか、総理並びに通産大臣に対し、中小企業者の納得のいく答弁を要求いたします。(拍手)  次に、わが国の中小企業が激変する環境に適応し、先進国型中小企業へと脱皮し、一そうの成長を遂げていくためには、何よりも独創的で高い技術水準を確保することが絶対条件であると考えますが、自力で技術開発を遂行する能力を持たない中小企業に対しては、政府は、国公立試験研究機関において中小企業向け技術の開発に特段の努力をなすべきであるにもかかわらず、従来見るべきものはほとんどありません。この点について、政府はどのような実効ある施策を講ずる意思ありや、通産大臣にお伺いいたします。  最後に、倒産問題について政府の見解をお伺いします。  昭和四十年以降急激に企業倒産が増大しており、四十三年には一万件を上回る件数を記録しており、中小企業者は不安におののいておるのであります。この実態をどのように見ているのか。政府は、これらの倒産は中小企業の自業自得であるとしか考えていないと断ぜざるを得ないのであります。政府は、大企業に対する金融措置については手厚く取り扱っているにもかかわらず、中小企業に対するそれは、焼け石に水程度の対策といわざるを得ないのであります。中小企業に対する政府三金融機関の貸し出し状況を見ても、昭和四十三年十一月現在、中小企業に対する総貸し出し高のうち、三金融機関の占める割合はわずかに九二%にすぎないのであります。信用補完制度にしても、昭和四十二年度の保証承認件数は八十三万九千四百八十五件で、全中小企業の一七・八%にすぎないのであります。信用補完制度は、本来社会政策的な意味を持つものであります。したがって、担保もないような中小企業への信用保証を目的としております。ところが実際には、担保の安全確実な企業にだけ保証するようにしている傾向が強いのであります。担保力の乏しい中小企業に対して、その保証の拡大をはかるべきであります。さらに、現行の税の引き下げ、融資金利の引き下げ等、早急に考慮しなければなりません。つなぎ資金さえあれば助かったものをという多くの中小企業経営者の悲痛な叫び声は、現在の政府首脳の耳には聞こえないのでありましょうか。特に、池田内閣以来の中小企業に対するその冷ややかな政治姿勢は、今日の佐藤内閣にも強く受け継がれていると考えざるを得ないのであります。(拍手)もし、そうでないと主張されるのならば、はっきりと裏づけのある施策でもって、総理並びに大蔵大臣みずから国民の前に明確なる答弁をされたいのであります。  以上をもって私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  47. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) 近江君にお答えいたします。  労働力不足とこれに伴う賃金上昇は、中小企業一般にとりまして切実な問題であるが、その中でも、御指摘になりましたように、中小企業の中の中小企業とでもいうべき小規模零細層にとっては、とりわけ深刻な影響を与えている、かように見ております。政府の労働力確保対策につきましては所管大臣から具体的にお答えすることとして、私からは、中小企業対策の基本的な問題についてお話をしてみたいと思います。  中小企業者の各位に対しまして何よりもなさねばならないことは、前近代的な性格から一日も早く脱し、設備、技術、生産性の面での改善こそが何よりの労働力確保の対策であるし、あるいは積極的に必要とする労働力の節約の対策でもあることに留意されまして、真剣に近代化へ向かって取り組んでいただきたいこと、また、政府といたしましては、その支援を惜しまないものであることを十分申し上げておきたいと思います。  次に、中小企業の対外進出についてでありますが、現在、かなりの中小企業が東南アジアを中心として海外に進出しております。この傾向が助長されることはもちろん望ましいことではありますが、一面、中小企業の進出の場合は国内関連中小企業と摩擦を引き起こしやすいのでありますから、この点について十分配慮しながら、その助成策についても検討してまいりたい、かように私は考えております。  なお、中小企業の倒産問題につきまして具体的にお尋ねがございました。先ほど申しました本来の中小企業対策、これを積極的に進める、政府もそれと取り組んでまいりますので、業者みずからも、それに対応してみずから立ち上がるという、そういう点に一そうの御努力を望みたい、かように思います。また、信用補完制度等につきましては何かと今後ともくふうを要するものがある、かように思いますので、政府の施策とあわせて、中小企業者が健全に育成強化されることを、この上とも望んでやみません。  ありがとうございました。(拍手)     〔国務大臣福田赳夫君登壇
  48. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私に対しましては、ただ一つ、中小企業に対しての金融、財政、税制、万全の対策があるか、はっきりこれを示せ、こういうことでございますが、いま中小企業問題の最大のネックは、何と申しましても労働力不足という問題であり、どうしても構造改善対策からこれを進めなければならぬ、かように考えておるのであります。したがいまして、政府としては、中小企業に対しましては近代化合理化という長い目の政策、これを粘り強く推進するというかまえをとっておるのであります。特に、先ほど税につきましては申し上げましたが、また、金融につきましても、いま金融機関の融資残高が四十兆二千二百二十八億円になる、その中で、中小企業に向けられておる融資残高が実に十八兆四千七百四十四億円、こういうような状態でありまして、中小企業に金融がいかに大きく指向しておるかということは御了解願えるかと思うのであります。しかし、不幸にして、中小企業において倒産、破産するという事態に対しましては、これが連鎖倒産である場合においては連鎖倒産防止法の活動等がありまするが、そうでない場合におきましても、そういうような情報を得ました場合には、通産局を中心といたしまして財務局その他関係の機関がすぐ集まりまして、その防止の対策を協議する、これを機敏にいたすというようなことで、なるべく倒産の防止につとめる。また、万一それが倒産やむなしという場合におきましては、その連鎖反応がないように、これを阻止するという配意をいたしておるわけでありますが、今後とも、そういう努力をさらに進めていきたい、かように存じます。(拍手)     〔国務大臣大平正芳君登壇
  49. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 下請企業の問題でございますが、御指摘のように、系列化、再下請化の過程が進展を見つつあるようでございまして、私どもとしては、その実態の掌握につとめますとともに、下請企業自体の体質の改善につとめますと同時に、親企業の指導を通じまして、下請企業の保護、育成につとめたいと思います。  第二の流通問題でございますが、政府といたしましては、第一に、共同化、協業化等による大量仕入れ、大量販売体制を確立する、あるいは専門化、施設の近代化等によりまして合理化計画を慫慂いたしておりますことは、御案内のとおりでございます。また、輸送、包装、荷役の機械化を促進いたしておりますこともまた御高承のとおりでございますが、さらには、取引慣行の近代化、標準化、あるいは消費者信用制度の確立というような点に意を用いまして、一番立ちおくれておりまする流通構造の近代化に一段と努力をしてまいりたいと思います。  それから御指摘の、構造改善事業の不始末を来たしておる事例をあげての御質問でございます。団地計画は、当初の段階で、経済の不況等の影響によりましてその規模を縮小せざるを得なかったり、あるいは一、二のものが土地を他に転用したというような不心得なものがありましたことは、たいへん残念でございますが、今後は十分実態を究明の上、指導に遺憾なきを期したいと思います。  それから技術対策でございますが、近江議員御指摘のように、この技術水準の向上こそが、わが国の中小企業ばかりでなく、経済全体の死命を制するものであると私どもは確信いたしておるのでございまして、公設試験研究機関、共同研究所の人的拡充、予算的充実には極力つとめておりまするが、中小企業者自身の技術開発についても、鋭意助成の措置を講じてまいりたいと思います。  それから倒産問題でございます。この問題は、昨年夏以来、幸いに落ちつきを示しておりますけれども、資金調達力の弱さ、経済環境に対する適応力のおくれ、こういったものを根本から直してかからなければいかぬわけでございまして、近代化合理化の促進、金融の円滑化を本格的にはかってまいりますことはもとよりでございますが、一定規模以上の倒産発生の場合は、中小企業信用保証法の特例措置を援用いたしまして、配慮をいたしたいと考えております。(拍手)     〔国務大臣原健三郎君登壇国務大臣(原健三郎君) 近江さんにお答え申し上げたいと思います。  中小企業の労働力が不足いたしておる、それを確保する方策いかん。基本的なことは、いま総理大臣からお答えがありましたとおりでございます。私どもといたしましては、通産大臣からも話がございましたが、そういう基本的な政府の施策に対応して、労働省といたしましては、次のような諸施策を積極的に進めていきたい、こら思っております。  その第一は、輸出等主要産業の中小企業に対する窓口指導と援助を強化いたしたいと思っております。  その第二は、国が設置する雇用促進住宅の貸与、また中小企業レクリエーション・センター等福祉施設を増強いたしたい。  その第三、雇用促進融資の重点的貸し付け、すなわち、昭和四十三年度には総額百三十億円中の約八五%を中小企業向けに貸し付けをいたしております。  その第四、中小企業の行なう職業訓練に対する助成の強化、運営費補助、一人当たり四十三年度には三千二百円でございましたが、四十四年度には六千四百円の補助を出しております。  その第五、若年労働者の職業適応の援助、それには中学卒就職者全員に対する働く青少年手帳というものを今度新たに交付することになっております。また、全国の公共職業安定所における年少就職者相談室を新たに設置いたします。さらに、年少就職者相談員を配置する。これは昭和四十四年には新たに三百人をふやします。  以上のようなもろもろの対策を積極的に進めてまいる考えであります。そして中小企業の健全な発展、育成をはかりたい、こう考えております。(拍手
  50. 小平久雄

    ○副議長(小平久雄君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  51. 小平久雄

    ○副議長(小平久雄君) 本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 西郷吉之助君         外 務 大 臣 愛知 揆一君         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         通商産業大臣  大平 正芳君         労 働 大 臣 原 健三郎君         自 治 大 臣 野田 武夫君         国 務 大 臣 菅野和太郎君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      角田礼次郎君         中小企業庁次長 新田 庚一君      ————◇—————