○大出俊君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
趣旨説明のありました
防衛庁設置法及び
自衛隊法の一部を改正する
法律案、いわゆる防衛二法案に対しまして、以下若干の
質問を行ないます。
この防衛二法案なるものは、佐藤
総理みずかが、第三次防衛力
整備計画のきわめて重要な柱といたしまして、また、今年秋に予定されている佐藤・ニクソン会談への手みやげとして、今
国会における成立を強力に指示しているという事実に基づきまして、まず何よりも
自衛官を七千七百二人増員するというこの法案の中心について、
総理の
所見を伺いたいと存じます。
そこでお尋ねをいたしたい第一は、
総理が昨年来提唱されている総定員法案との関係についてであります。
御
承知のように、総定員法案は、三カ年間に
公務員の定数を五%削減することがそのポイントでありまして、今年の削減定数は、行政管理庁の正確な資料によれば、
内閣の
機関においてゼロ、
各省庁において四千四百四十二名、
国立学校において九百九十四名、計五千四百三十六名となっております。つまり、
国家公務員定数を五千四百三十六名減らすということであります。
国民の名において
公務員を減らすと言われる
総理が、
総理みずからの名において
自衛官をそれ以上にふやすと言われるのかどうか。また、首切り、配置転換の不安の中で、家族のためになおかつまじめに働いている
公務員諸君に対して、
総理の言う五%削減は、
自衛隊をふやすためのものだからがまんをしろとでも言われるおつもりかどうか。そうしてまた、同じ
内閣委員会におきまして、片や
公務員の削減を、片や
自衛隊の増員を、しかも
公務員の削減を上回る数字において、同じ次元で通過を求めるといわれるのかどうか。もしそうであるならば、厚顔これに過ぐるものはないと存じますが、
総理の
所見をしかと承りたい。
第二に、
自衛官の増員中、陸上
自衛隊の六千人増員について承りたい。
予算編成の過程において、全く突如として、警察機動隊等五千名の増員とともにあらわれてまいりましたこの六千人増員は、一体いかなる経緯によるものか。特に
防衛庁筋からは、昨年廃案となった八百三十名プラスアルファという形で、今年はよろしくお願いをしたいと言っていたやさきのことでもあり、この点は
防衛庁長官より納得し得る御説明をいただきたい。
また、ただいまの有田
防衛庁長官による
趣旨説明によれば、普通科部隊等の
整備充実のためと説明をされております。全く心外な説明であるといわざるを得ません。もしまた、七〇年対策であると受け取られたくないという配慮から出たものだとすれば、事はなおさら重大であり、
国民の目をごまかす意図という意味において許しがたいことであると申すべきでありましょう。単に普通科連隊といった場合は、千百八十五名の編成であり、完全な戦闘能力に欠けるものであります。
防衛庁の他の資料によりますと、この陸上六千人の増員は、連隊戦闘団三個の新編に伴う増員であるとされております。今日まで連隊戦闘団なる名称が公式に法案等の説明として用いられた例がございません。したがって、今回初めて表に出てきたものと解釈をいたしますが、それだけに問題はきわめて大きいといわなければなりません。
旧来、RCTなることばが
防衛庁内部で使われておりますが、米式
自衛隊の性格をあらわしておると存じますけれ
ども、レジメント・コンバット・チーム、この三つの英文の頭文字をとって、レジメント、すなわち連隊、コンバット、すなわち戦闘、チーム、すなわち団、称して連隊戦闘団と訳しているわけであります。その
内容は、普通科連隊千百八十五名、特科部隊四百十三名、戦車中隊九十三名、施設中隊百十一名、対戦車小隊三十一名、偵察小隊二十四名、通信小隊四十一名、武器隊三十名、輸送小隊十六名、衛生小隊三十六名、連絡機、小型ヘリ等の飛行隊六名、師団司令部付隊十名、計二千十名の編成による完全な戦闘能力を有する連隊であります。
まず承りたいのは、この私の見解をお認めになるかどうか、この点であります。
さらにまた、この部隊の配置についてでありますが、第九、第六師団のいる東北方面隊のうち、山形県神町の第六師団を離れてわざわざ福島に一隊、中部方面隊のうち、第三師団のいる大阪の伊丹を離れて
京都の宇治に一隊、さらに中部方面隊の広島県海田市に一隊を配置することになっており、施設費四億一千八百万円が計上されております。しかも、この三隊は来年三月にでき上がることになっているわけであります。
総理、一体この部隊は何を
目的にし、何に使われる部隊だと理解すればよろしいのか。
三次防下の陸上
自衛隊には、大型大量兵員輸送用のバートル107型ヘリコプター、HU1の中型ヘリコプター計八十二機、装甲輸送車百六十両等の新規装備も行なわれつつあります。七〇年安保の国論沸騰の中で、いつの間にか東京周辺に、または大阪周辺にきわめて危険な即席編成部隊の出現がないとは断言できないのであります。また、すでに
予算委員会等を通じて論ぜられておりますように、東京練馬の第一師団九千人、群馬の第十二師団七千人、千葉習志野の空挺師団千四百人等は、いままで年間四十五時間の暴徒鎮圧訓練と称するものを約三倍から四倍にふやす、東富士、相馬ケ原各訓練場で市街地や
国会周辺を想定して、部隊の
運用、行動の訓練を行なっております。
さらにまた、四十三
年度中に
防衛庁が用意した治安部隊の新装備品は、ジュラルミン防石たて一万八百九十八個、催涙ガス液三・二九トン、警棒代用としての木銃千七百七十五丁、防石面のついたヘルメット一万四千七百十個さらに照明器、通信機器、拡声機に至るまで、大都市周辺部隊に配置をいたしております。今年以降、この体制を一体どのように強化しようと
考えておられるのか、有田
防衛庁長官に承りたいのであります。
さらに、治安部隊の主要な
兵器は、原則として小火器、ガス銃に限られておりますが、ある記者が第一師団のある指揮官に直接尋ねたところによりますと、いまでも治安行動草案は訓練の参考にしているが、草案自体は無効扱いになっており、実際どんな制圧方法をとるかはわれわれの裁量できめますと答えております。全く危険きわまりないといわなければなりません。指揮官心得をつくる気持ちがあるのかどうか、これを公表するのかどうか。ひとつ間違えば、
国民のために国を守る
自衛隊ではなく、守るべき
国民に犠牲をしい、弾圧をして、国を危うくする
自衛隊にもなりかねない危惧を感じますが、
総理並びに
防衛庁長官の見解を明確に伺いたいのであります。(
拍手)
特にこの際、現行
自衛隊法七十八条による治安出動は、
国会に対して事後承認を受ける形になっておりますが、七十六条の防衛出動同様に、事前承認を原則とすべきものと
考えますが、
総理の見解を念のためとくと承りたい次第であります。
第三に、陸上十八万体制なるものの
考え方について承りたいのであります。
第一次防衛力
整備計画は、
昭和三十二年六月の国防
会議で決定をいたし、三十三年から実施されたはずでありますが、このときに陸上十八万体制なる目標が明らかにされたわけであります。しかし実際には、これに先立ち、池田・ロバートソン会談の結果、
日本側が十八万体制というところでアメリカの要求をのんだ結果であります。
総理がもし、この連隊戦闘団の新編は七〇年対策ではなく、十八万体制をつくるものだと答えられたとしても、まず七〇年対策という
国民的疑惑は消えるものではありません。だが、しかし、十八万体制なるものにはそれなりの大きな意味があります。今回、陸上を十七万九千人に改め、九千人と七千人の師団の比率を七対六とするわけでありますが、まず、この体制が一体なぜ必要かということ、この点であります。その根拠を明らかにしていただきたいのであります。
さらにまた、北大西洋条約軍、すなわちNATO軍のいうところの攻めるには二倍の兵力、したがって守るためにはその二分の一というのであるとすれば、そしてまた、
日本は陸続きでなく海があるというのであれば、その海を渡って侵入する他国の軍隊の輸送力を計算して、
防衛庁のいうところの初動体制をとり、米軍の救援を求めるまでのつなぎとする
防衛庁の計算が明確にあるわけでありますから、その侵入するであろう他国とは一体どこの国が対象であり、その国の輸送力は一体どうなっているのかを明確に承りたいのであります。
第四に、
自衛隊募集の方法について承りたいのであります。
陸上
自衛隊の四十三年十一月末における定員は十七万三千人であり、充足率は九〇・九%でありますから、現在員十五万七千百八十四名となります。したがって、その差は一万五千八百十六名であります。つまり、定数を六千名ふやさなくても、それをはるかに上回る一万五千八百十六名は欠員として今日存在をし、いつでも採用ができるはずであります。にもかかわらず、ばく大な国費をもってなぜ六千人の増員を求めようとするのか、ワクの拡大、ますの拡大をしておくことが有事即応のため必要だというなら、徴兵制度でも持ち出さざるを得ないはずであります。なぜならば、今日
自衛隊に応募する青年も、あるいは隊員である
一般の士の諸君も、その大
部分は、彼らが除隊までに身命を賭して銃をとらねばならぬという予測は持っていないはずであります。有事であればなおのこと、募集率は下がる道理であるからであります。だとすれば、文字どおりバンデンバーグ決議に基づく安保条約第三条の防衛努力を背景にいたしまして、佐藤
総理訪米にあたり、池田・ロバートソン会談の約束を果たしたというていの手みやげ以外の何ものでもないということになりますが、この点、明確な
総理の御見解を賜わりたいのであります。
また、今日の
自衛隊の募集には、四十二年の
自衛隊の募集要綱などがあるはずであります。実際には、やたらと目につく募集の広報看板等、
自衛隊のパレードやブラスバンドを先頭に戦車を繰り出し、防衛博覧会を開き、青少年の好きそうな見せものを出し、伊東ゆかり君などのかっこいい女性に歌を歌わせ、あいきょうを振りまかせ、男の子を集め、そこに集まった青年に何と言っているかと申しますと、
自衛隊は待遇がよい、だからいらっしゃい、技術が覚えられる、だからいらっしゃい、五千円の小づかいを使って、四年在隊して百万円の貯金ができるのだから、どうぞいらっしゃいとやっております。どこにも身命を賭して国に殉ずるなどという観念はないわけです。ますます質の低下していく
自衛隊員を集めることになると思いますけれ
ども、
総理、これでもなお未充足定員の一万五千八百十六名の上に、さらに六千名もふやそうとお
考えなのかどうか。また、おそらくこの募集方法は、募集広報費二億二百万と募集経費を含めまして四億四百万あるわけでありますが、ますますこの金を使って空疎にしてはでな方向をたどると
考えなければなりません。
総理はそれで一体よいとお
考えなのかどうか、
所見を明確に伺っておきたいのであります。
また、
大蔵大臣に対しましては、この募集経費にしろ、先ほど申し述べました施設費にしろ、かくのごとき不明確な定数改定に対しては、当然
異議を差しはさむべきものと
考えますが、あえてこれを安易にお認めになったのかどうか、お
考えを承りたいと存じます。
昔、軍閥支配下の中国において、軍隊は人民から重税を取り上げ、さからえば武力で鎮圧をする、したがって、農民や労働者出身者が雇い兵になることは、金に目がくらんで仲間を裏切ることになる、だから男子は戸籍に入れない、こういった抵抗があったことが歴史的事実として明らかであります。そこで男子を集める方法として思いついたのがサーカスであります。青年たちが、好きな芝居やサーカスをやる、思わず集まる青年たちを、なわ囲いしてつかまえて軍隊に入れたという徴兵の原始形態が存在をいたしました。時代は今日移ってまいりましたが、その本質において変わるところがないわけであります。好鉄くぎにならず、好人兵にならずということわざが、かくて生まれました。好鉄、つまり、よい鉄であります。よい鉄はくぎにならない。りっぱな鉄はくぎにならない。鉄くずだけがくぎになる。したがって、りっぱな人間も雇い兵にはならないということわざであろうと思うわけであります。
私も軍隊時代の経験を持っておりますから、今日の
自衛隊におられる方々を誹謗する気は毛頭ありませんけれ
ども、今回六千人をこえる無理な雇い兵計画をお立てになって、たいへんな御苦労を末端の各方面にかけるのであるとすれば、なぜ一体
総理は、
日本国憲法にいう平和国家の理念と戦争放棄の信念に立って、日中国交の回復、国連加盟実現への努力を尽くし、沖繩の即時無条件全面返還を求め、国内基地の撤去につとめ、非核三原則堅持の上に安保廃棄の方向をお求めになる平和努力をなさろうとされないのか。(
拍手)見せかけでなくて、真に平和を求める誠意こそ、思想を越えてコンセンサスを求める道であろうと私は信ずる次第でありますが、
総理の御見解を承りまして、
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕