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1969-05-09 第61回国会 衆議院 法務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年五月九日(金曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長代理理事 大村 襄治君    理事 進藤 一馬君 理事 田中伊三次君    理事 永田 亮一君 理事 中谷 鉄也君    理事 畑   和君       大竹 太郎君    鍛冶 良作君       松野 幸泰君    猪俣 浩三君       神近 市子君    田中 武夫君       山内  広君    米田 東吾君       渡辺 芳男君    岡沢 完治君       山田 太郎君    松本 善明君  出席政府委員         法務政務次官  小澤 太郎君         法務大臣官房長 辻 辰三郎君         法務省人権擁護         局長      上田 明信君         法務省入国管理         局長      中川  進君         外務政務次官  田中 六助君         通商産業省公益         事業局長    本田 早苗君  委員外出席者         警察庁警備局警         備課長     丸山  昂君         外務省アジア局         北東アジア課長 伊達 宗起君         通商産業省公益         事業局計画課長 中村 泰男君         自治省行政局行         政課長     森   清君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 五月七日  委員田中武夫辞任につき、その補欠として原  茂君が議長指名委員に選任された。 同日  委員原茂辞任につき、その補欠として田中武  夫君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員神近市子君、黒田寿男君、柳田秀一君及び  西村榮一辞任につき、その補欠として山内広  君、渡辺芳男君、米田東吾君及び岡沢完治君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員山内広君、米田東吾君、渡辺芳男君及び岡  沢完治辞任につき、その補欠として神近市子  君、柳田秀一君、黒田寿男君及び西村榮一君が  議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月二十三日  死刑確定判決を受けた者に対する再審臨時  特例に関する法律案成立促進に関する請願外一  件(岡本隆一紹介)(第五〇三一号)  同外二件(唐橋東紹介)(第五〇三二号)  同外一件(小松幹紹介)(第五〇三三号)  法の威厳秩序回復に関する請願外四件(松  野頼三君紹介)(第五〇三四号)  同(塚田徹紹介)(第五一三〇号)  同外一件(荒舩清十郎紹介)(第五一九四  号)  同(金丸信紹介)(第五一九五号)  同外四件(小山長規紹介)(第五一九六号)  同(澁谷直藏紹介)(第五一九七号)  同(關谷勝利紹介)(第五一九八号)  同外一件(辻寛一紹介)(第五一九九号)  同(永田亮一紹介)(第五二〇〇号)  同外二件(西岡武夫紹介)(第五二〇一号)  出入国管理法制定反対等に関する請願島本虎  三君紹介)(第五一二九号)  出入国管理法制定等反対に関する請願外三件(  石野久男紹介)(第五二〇二号) 同月二十五日  法の威厳秩序回復に関する請願赤城宗徳  君紹介)(第五二九九号)  同外八件(遠藤三郎紹介)(第五三〇〇号)  同(金子一平紹介)(第五三〇一号)  同外一件(進藤一馬紹介)(第五三〇二号)  同(西岡武夫紹介)(第五三〇三号)  同外一件(八田貞義紹介)(第五三〇四号)  同(葉梨信行紹介)(第五三〇五号)  同(小川半次紹介)(第五四〇八号)  同(菅太郎紹介)(第五四〇九号)  同外二件(中山榮一紹介)(第五四一〇号)  同外三件(西村直己紹介)(第五四一一号)  同外二件(松野幸泰紹介)(第五四一二号)  同(森田重次郎紹介)(第五四一三号)  同(山口喜久一郎紹介)(第五四一四号) 同月二十八日  法の威厳秩序回復に関する請願外一件(宇  野宗佑紹介)(第五五二九号)  同外一件(吉川久衛紹介)(第五五三〇号)  同(斎藤寿夫紹介)(第五五三一号)  同外二件(保利茂紹介)(第五五三二号)  同外二件(武藤嘉文紹介)(第五五三三号)  同外二件(大坪保雄紹介)(第五六三四号)  同外四件(相川勝六紹介)(第五七八一号)  同外三件(進藤一馬紹介)(第五七八二号)  死刑確定判決を受けた者に対する再審臨時  特例に関する法律案成立促進に関する請願(中  井徳次郎紹介)(第五五三四号)  同(八百板正紹介)(第五六三五号)  出入国管理法制定等反対に関する請願(長谷川  正三君紹介)(第五五三五号) 五月七日  法の威厳秩序回復に関する請願塩谷一夫  君紹介)(第五八四一号)  同外一件(藤田義光紹介)(第五八四二号)  同外一件(三原朝雄紹介)(第五八四三号)  同(菅太郎紹介)(第五九二〇号)  同外一件(木野晴夫紹介)(第五九二一号)  同外二件(山下元利紹介)(第五九二二号)  同(早稻田柳右エ門紹介)(第五九二三号)  同(秋田大助紹介)(第五九八六号)  同(田村良平紹介)(第五九八七号)  同(登坂重次郎紹介)(第五九八八号)  出入国管理法制定等反対に関する請願(米内山  義一郎紹介)(第五八四四号)  同(米田東吾紹介)(第五九八九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 大村襄治

    大村委員長代理 これより会議を開きます。  委員長は所用のため、指名により私が委員長職務を行ないます。  裁判所司法行政に関する件、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。米田東吾君。
  3. 米田東吾

    米田委員 私は、きょうは、この間新聞報道によって承知したのでありますけれども大阪に住む韓国籍尹酉吉さんという方が突然蒸発をしたという事件がありました、この事件を中心にいたしまして、主として出入国関係人権擁護関係、また外交上の問題等につきまして、御質問をしたいと思うわけであります。この事件は、すでに衆議院の外務委員会、それから参議院法務委員会でそれぞれ取り上げられまして、政府の所信がただされておるわけでありますけれども内容がきわめて人権擁護また日本主権にかかわる重要な問題でもございますので、ぜひひとつこの委員会でも政府の御見解をお聞きしたい、こう思いまして御質問を申し上げるわけです。  まず、きょう大臣おいででありませんから、法務省政務次官にお伺いを先にしたいのでございますけれども、この事件については概略御承知だと思いますし、すでに昨日は参議院法務委員会でも質疑をしておるわけであります。この件につきまして、ひとつ出入国にあたっての経過の大要をお聞かせをいただきたいということがまず一つと、それから同時に、この件は非常に重要な内容を含んでおると思いますので、法務次官としての御見解も最初にお聞きをしておきたいと思います。
  4. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 経過の概要につきましては、具体的に関係局長から御説明申し上げます。  さらにまた、この問題は、実は日本に在留する外国人の、事実の真相いかんによっては人権にも関係する問題であります。しかし、遺憾ながら真相が十分に現在の状態では把握されておりませんので、法務省として所見を申し上げる段階にはない、こういうことでございます。
  5. 中川進

    中川(進)政府委員 簡単に事実の経過を御説明申し上げます。  五月二日の日の午後一時半ごろ、ただいま米田委員御指摘の尹という人が入国管理事務所にあらわれまして、韓国への再入国許可申請を申し入れたのでございますが、そういうときに、ふだんと若干変わったことと申しますと、韓国大使館から権という参事官がついてまいったのでございます。本人申し立てによりますと、本人の弟の尹という人が急病になったので至急帰りたい、至急会いたいから帰ってこいという電話がソウルからあったということであったのであります。ところが、このときの応対に当たりましたのは、東京入国管理事務所審査課長をしております池田という男でございますが、この人はこの三月の末まで法務省入国管理局におりまして課長補佐をやっておった人でありまして、やはり再入国関係をやっておる資格審査課長補佐でございました。ちなみにこの権という人は、これは法務省入国管理局へは、日を問わず、いろいろな形でしょっちゅうやってまいりまして、特別在留許可してくれとか、あるいはその在留期間を延ばしてもらいたいとか、いろいろないわゆる陳情でございますが、しょっちゅう来ておったのでございまして、そこでこの池田という男とは顔なじみなのでございます。したがいまして、この池田に対しまして、ついてまいりました権という人も、本人は非常に急いでいる、そしてたまたま三日、四日、五日と休日が続くので、もし二日に出して一らわなければ三日ないし四日おくれてしまうので、何とかその日のうちに出してくれという口添えがあったわけでございます。そこで手続といたしまして、まず本人身分関係を調べるわけでございますが、この尹という人の身分関係は、いわゆる法律一二六の二の六というのに該当するわけでございまして、戦前からの居住者でございます。いろいろな意味で出入国についてはきわめて自由な扱いをしておるカテゴリーに属する男でございます。その次に調べましたのは、その男に犯歴があるかないかということでございます。そこで、それではすぐその日のうちに出すように努力してやろうということで、検察庁その他に犯歴の有無を調査したのであります。それが約一時間半か二時間かかったようでございますが、とにかくそのほうの調査をしましたところが、別に前科もないということでございまして、それからいま申しましたように、韓国大使館参事官口添えもあったということがございましたので、それですぐ——先に申しました二時間余り待たしたのでありますが、とにかくその日のうちに出してやりました。そこで、再入国許可証を持ちましてその男はその日の、すなわち五月二日の十七時三十分の羽田発の飛行機に乗りましてソウルに立った、こういう次第であります。昨日、参議院でも御質問があったのでございます。その日のうちに再入国許可を出すというようなこととは異例なことではないか、どうしてそんな普通以上のサービスをするかという御質問亀田委員からございましたが、これは私どものほうとしましては、決して異例なことではないのでございます。たとえばその前の月の四月に、全国に十五役所がございますが、東京入国管理事務所だけでも三十三件、その日のうちに出願者に対して再入国許可を与えております。そして再入国許可は、先ほど申し上げましたように、一二六とか協定永住を持っておるというような人に対してはむしろ与えてやるのが原則でございますから、欠格理由がない限りはできるだけサービス精神に徹して早くやるようにやっているわけでございまして、われわれのほうとしましては何らその非違はない、むしろ早くやってやったというように考えている次第でございます。
  6. 米田東吾

    米田委員 小澤次官に再度お聞きいたしますけれども、いまあなたのお話では、まだこれは真相がはっきりしないのだから、ここで見解を申し上げるわけにはいかないということだと思います。そのことは、いま人身保護法によるところの救済の申し立てが出ている事案でもございますから、正確にはそういうことはこれからわかりますが、しかし、入管の主管法務省として、すでにこのことにつきましては、外務省等でも、きのうの夕刊の記事読みますと、藤山情報文化局長記者会見をして談話を出しているような実情でございまして、相当この問題につきましては政府部内においてもいろいろ対策が進められておる内容でもある。したがって、まだこの疑いがあるとしても、はっきりしないから見解を申し上げないということでは済まないのではないか。しかも、御承知のように、この事件はいま報告がありましたが、憲法記念日の前日に起きているわけであります。翌日の五月三日は第二十二回目の憲法記念日である。しかも、申し上げるまでもありませんが、日本憲法は、基本的人権国民主権を守るという立場で最大限に保障されておる憲法であります。その憲法記念日の前日に、くしくもこういう基本的人権が最もそこなわれておると思われる事件が起きているわけであります。私は、これは政治的に非常に重視しなければならない内容ではないかと実は思っておるわけであります。しかも、いずれ経過は明らかになるでありましょうけれども、現在においても、やや日本主権が侵されておるのではないかという疑いすらある、そういう点を私は重視いたしておるわけであります。ひとつ、きょうは大臣おいででありませんが、次官から、せめてこの問題に対する法務省のもっと率直な御見解を再度私はお聞きをしておきたいと思います。
  7. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 先ほど申し上げましたのが率直な見解です。と申しますのは、これは人身保護法によって地裁に申し立てをしておるわけです。直接そちらのほうに持っていっておりまして、裁判所がどう扱うかという問題になっております。私のところの人権擁護のほうは素通りいたしておる事件でございます。それから、御承知かと思いますけれども、相手が韓国大使館でもありますので、外交特権問題等もございます。そういういろいろな問題がございますので、いま私のほうでこれを人権侵犯であるというようなたてまえに立ってとやかくするという状態ではないわけでございます。真相が明らかになればともかく、現状におきましては、法務省として見解を述べるという段階でないということが、率直な私ども見解であり、立場でございます。
  8. 米田東吾

    米田委員 くどいようですけれども新聞記事だけでありません。外務省正式見解においても、こういうふうに言っておるわけです。これはきのうの藤山情報文化局長記者会見ことばであります。「外務省としては韓国大使館が尹氏を監禁したかどうかの事実関係の究明に全力をあげている。もし不法監禁の事実が明らかになれば、外交特権乱用でもあるので、韓国大使館側に対してなんらかの抗議をせざるをえないだろう」こういう外務省情報文化局長談話であります。この中には、外交特権乱用ではないかという疑いすらあるのだということまで言われておるのであります。ここまで事態が来ているのに、あなたのほうではまだ真相がはっきりしないから何も言えないということでは、私はおかしいのではないかと思うのです。  それで、これからお聞きいたしますけれども、私が知っている内容からいきましても、疑いがあるということだけは、私は事実だと思う。そういう点で、このような重要な内容を含んだ、疑いを持った事件があるわけでありますから、人権擁護立場で、それからもう一つはやはり出入国関係で、これは局長が違法はないとおっしゃっておられますけれども、私にすれば十分ただしておきたい点が二、三あるわけであります。いずれにいたしましても、そういう関係では法務省主管でありますから、何らかの見解は示されていいのではないか、こう私は思っておるわけでありますが、くどいようでありますがもう一回。
  9. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 外務省情報文化局長が言われた談話新聞で私も拝見しましたが、これは先生がお読みになったとおり、もしそういうことであればという仮定に基づいた判断でございまして、そのもしがあるかないかということを、われわれ法務省としましては慎重に扱わなければならぬ。仮定に基づいた判断でとかくわれわれ人権擁護立場にある法務省所見を述べるということは、それこそ十分に注意しなければならぬ問題だと思います。もとより、われわれは、これに対して無関心であるわけではございません。しかし、現段階において仮定に基づく判断を要求されましても、それは申し上げる筋合いじゃない、これが私どもの態度でございます。
  10. 米田東吾

    米田委員 じゃ、内容についていま少しお聞きをしたいと思います。いまも局長からお話がありましたが、この尹さんという方は、在日外国人としては善良な市民でおられる。犯罪歴等も、道路交通法の違反が一、二あった程度で、いわゆるりっぱな方だ。それから申請にあたっては、韓国権参事官もついてきておられる。そういうことでスピーディーに、連休が続くのでもあるし、許可を出した、こういうことをおっしゃっておられるわけであります。その限りにおいては私は問題がないと思うのでありますけれども、ただ気になるのは、いまの御説明にもうかがわれるのでありますが、韓国大使館権参事官という方とは十分面識がある。本省におられたときにも十分面識があるし、したがって、その方がついておられるから気安く処理をされたというような御答弁だと思うのであります。私は、スピーディーに出していただくのはけっこうだと思います。やはりそういうふうに生きた運用をしていただきたい。しかし、韓国参事官に顔見知りの人がいるからということはどうか。私は、法の執行等についてはきびしくやらなければいかぬと思うし、それから法の適用にあたってはやはり平等にやってもらわなければならない問題じゃないか。しかも聞いているところでは、この韓国権参事官というのは、幾つかの任務を持っておられるようでありますね。外交官としての任務もさることながら、韓国中央情報部任務秘密警察としての任務も、いろいろ持っておられるようであります。したがって、そういう方でありますから、出入国関係については、一番あなたのほうと何かと関係がある方ではないか。面識があるわけですから、わかっておられるはずだと思うのです。そういう方に心安く頼まれたから出してやるということについて、やや法の執行に当たるものとして厳正を欠いておるような気が私はするのでありますけれども、これは当事者がきょうは来ておりませんが、監督の局長としてはいかがでございますか。
  11. 中川進

    中川(進)政府委員 ただいまのおことばでございますが、外交官憲は、大きな仕事といたしまして、在外におる場合は在外におる自国民保護義務があるわけでございます。したがいまして、たとえば日本におります、どこの国でもよろしゅうございますが、ドイツ人ならドイツ人がどこかへ行きたいということで、本件のごとくかりに再入国許可事務に関して入官が必要とするような書類があるとして、それが何らかの事情で間に合わないというときに、こうこうこういう事情で間に合わないのだがひとつ何とかよろしく頼むというようなことは、外交官憲として当然の自国民保護義務でございますから、陳情があるわけでございまして、先ほど私、権さんの話をいたしましたが、権さんだけではございません。私どものところへも、在京の外交機関ないし領事関係の人が、私あるいはもっと下の課長レベルのところへよく陳情なり、援助を求めてくるわけでございます。そういうときには、わがほうといたしましても、何もその人が来たから特にということではございませんが、しかし、そういう自分の国の外交機関が来て援助しておるということは、こちらとしても法を曲げるわけにはもちろんいかないわけでございまして、あくまで厳正な執行をするわけでございますが、その法の許容する範囲におきましてはできるだけの便宜をはかってやるということは、これは国際儀礼上として許されてしかるべきことか、かように考えております。
  12. 米田東吾

    米田委員 問題の韓国大使館権秀参事官談話が、実は新聞に出ております。これはこの事件の報道された五月七日付の朝日新聞であります。こういうことを言っておるわけですね。全然、あなたのお答えと違うのです。要するに、本人は弟が急病で危篤の状態だから早く行きたいのだ、そういうことで、あなたのほうは人道上の問題でもあるので認められたということでございますけれども、ここに書いてあるのによりますると、こういうふうになっております。「尹氏は大阪北朝鮮スパイ事件に関連して本国で問題にされているようなので一日に大使館に呼び、そのことを伝えたら「すぐにでも帰国して誤解をときたい」と自発的に申し出た。二日に出国許可と再入国許可がおりたので、同日夕の大韓航空機ソウルに向った。」いま一つ、これは毎日新聞でありますけれども、やはりこの人はこういうことを言っておるわけです。「四月二十七、八日ごろ本国政府から「もし尹さん自身がスパイ事件になんらかかわりがなく、帰国して釈明するというのであれば、大使館は仲介の労をとるように」」という本国からの訓令があったというのです。これは四月二十七、八日ごろであります。このことをおっしゃっておられるのは、新聞によれば、大使館金景沃公使がそういうふうに述べられておる。これによりますると、明らかに人道上だと判断された病気だとかなんとかということでは全然ない。しかも、四月二十七、八日ごろに、本国からそういう尹という人に対して訓令が出ておる。韓国大使館の発表を見ましただけでも、そういう食い違いがありますね。この点は、局長、どうお考えになります。あなたのほうは、本人申し立てが、弟が病気だということだとおっしゃるのでありますけれども、いまお聞きしましたように、権参事官が立ち会っておられた。何か参事官がそういうことを言わせるようなそぶりがあったのじゃないですか、この申請にあたって。
  13. 中川進

    中川(進)政府委員 ただいま米田委員の御朗読になられました新聞記事でございますが、これはたしか五月七日に出たと私、承知しておりますが、先ほど申し上げましたように、私ども許可を与えましたのは五月二日でございます。そういうスパイの何とかというようなことは、もちろん審査課長池田某も全然知らないで与えたと承知しておりますが、私どもも、もちろん全然こんなケースは存じませんので、五月七日に新聞読みまして、ああそういうことがあったのかということを知った程度でございます。したがいまして、万が一、新聞に出ておりますように、本人韓国へ帰りましたのが弟の病気見舞いということではなくて、そういう、いま先生がお読みになりましたような特殊な職務のための出国なら、これは出国にあたりまして、ことばは強いかもしれませんが、一種の虚偽の理由を申し述べたことになるわけでございますから、私どもといたしましても、それ相応処置——この方は数日したら帰って来るようでありますから、帰って来ましたあとでよく事情を聞きまして、そしてもし新聞に出ておりますようなことが事実でございましたら、今度この次にこの本人がまたかりに再入国申請をしました場合に、私どもといたしましても、それ相応扱いをしたい、そういうふうに考えております。  それからまた大使館の人が、いま先生の御質問では、私の聞き違いかもしれませんが、うそを言わしたのじゃないかというようなことを言われたかと思いますが、これは私はその場に立ち会っておりませんので、どういう顔つきをしておったか——きのうも亀田先生から、本人病気であるのに、そんな行くはずがないじゃないかというような御質問があったのでございますが、どういう顔つきをしておったのか、私は尹という人には全然会ったこともありませんし、その審査許可を与える場に立ち会ったわけでもございませんから、何とも申し上げかねますが、しかし、池田個人が異常を感じておれば、これも非常に長い間の役人でございまして、ベテランでございますから、それはそれ相応処置をとったと思いますけれども、おそらく何ら異常を感ずることはなかったと思うのでございます。
  14. 米田東吾

    米田委員 私どもは、残念ながら新聞の報道しかあまり資料はありませんので、したがって、大体それに基づいて聞いておるわけでありますけれども、さらに新聞の報道によりますれば、家族の方の言い分でありますけれども、いまも御答弁ありましたように、ずっと病気で寝ておられた。病院に通うために便利なように旅館に泊まっておられた。それから出られるときはスリッパがけで、ノーネクタイで出ておられる。それから、ほとんど現金は持っておられない。一体、危篤か何かで韓国に行ってこなければならぬ、そういう事情であれば、それなりにしかと家族にも含めて支度もし、当然準備もされなければならぬ。いきなり大使館に呼ばれて、不法監禁のようなかっこうで連れていかれて、そうしてそのままその人が申請をしているというふうにとれるわけですね。だから、ベテランの方であれば、なおさら私はわかるだろうと思うのですね。もしわからないとすれば、あなたのほうではしょっちゅうこういうことをやっておられて、もう免疫性になっておるのじゃないかという憶測すら出てくる。ということは、大使館参事官とかそういう者から電話があったりそういう人がついてくれば、これはもう外交上の特権かあるいは儀礼かどうか知りませんけれども、ほとんど無審査状態でやっている。こういうことが常態として、あなたのほうであたりまえのようなふうに行なわれておるのじゃないかという推測を私はするわけであります。私も、つとめ柄いろいろ公衆に接する仕事をやってきましたけれども、大体わかるのです。金持っているか、持っていないかもわかる。ベテランであればあるほど、そういうものはわかっていくわけであります。それからもう一つは、韓国の航空機によって二日の夕刻出られた、五時半ごろ出られたと言っておりますが、これも新聞でありますけれども、大韓航空の乗客者名簿には尹という方の名前はない。そうすれば、あなたのほうの出国関係では確実に出ておられる。しかし、飛行機には乗っていない。そこで、どこか蒸発したか、あるいは偽名で飛行機に乗せられたか、荷物にしてどこかに積み込まれたか、そういうことになるのじゃないかと思うのでありますけれども、これはいかがですか、局長
  15. 中川進

    中川(進)政府委員 まず最初の、本人がネクタイもつけずにスリッパで出かけた、そしてどこに行くとも言わずに出ていったという件でございますが、これはなるほどいまになりましてそういう新聞記事などが出まして、そういうことがあったのかということが問題になるわけでありますが、これはあったかなかったか存じませんが、あったかもしれません。しかし、本人入国管理事務所に再入国申請を受けに参りましたときには、ネクタイも締めておったはずでございますし、スリッパでなくて、くつもはいておったはずでございます。実は私うっかりしておりまして、その本人の服装がどうであったか、ネクタイはどんなのをしておったか、はきものはぞうりであったかくつであったかというところまでは確かめてまいりませんでしたので、帰りましたらさっそくよく調べてみますが、おそらくネクタイもしない、ぞうりがけで、これから韓国に行きますというので再入国申請をもらいに来るとは考えられませんので、おそらくきちんとした身なりをして申請に来たと思います。  第二に、病気云々の件でございますが、これもきのう亀田先生にも申し上げたのでございますが、病気と申しましても、ほんとうに息絶え絶えで歩くことも困難なようなことでありますと、そういう人が韓国に行くことはおかしいということになるかと思いますが、しかし、新聞などで拝見します限りは、本人も通院しておったようでありまして、病院へ行くだけの活力はあった。審査を与えました池田某も、本人が非常によぼよぼしておれば、おかしいという気を起こしたに違いありませんが、しかし、とにかく病気であるにしても、韓国まで飛行機で行くわけですから、それだけの旅行には耐える。耐えるからこそ再入国申請があったのだ、こういうふうな判断をしてやったものと思えるのであります。別に、いまになりまして、いろいろなことが、これもおかしい、あれもおかしいといわれますけれども、現場にあたりまして、その再入国を与える審査官というものは、そんな東京の荒川区の旅館でどういう人が住んでおって、どういうかっこうで宿を出たかということは、とてもわからないわけです。それまで出入国審査官が知らなければいかぬというのは、私は若干無理かと思うのでございます。御承知のように、先生一度入国管理事務所をごらんになるとわかりますが、申請人がわんわん来ておるわけであります。やはり定員と予算の関係で、どうしたって一人の職員が非常に多くの来訪者に応対せざるを得ないということでございますので、けさうちを出かけるときにどういう服装で出たかということまでを調べるということは、私は不可能かと思うのでございます。
  16. 米田東吾

    米田委員 あなたそこまでおっしゃいますから私また申し上げますけれども、これはいまのあなたのお話では、東京入管事務所ですか、そこの審査課長のところに行って審査をされた。羽田の入管事務所とか、あるいは一般的な港だとか、そういう空港とかあるいは地方の入管事務所の行列をつくっているようなところじゃないでしょう。しかも課長のところに行って、連れていかれて、韓国大使館の権という参事官が連れていかれて、顔見知りだからやったんだ、こういうことなんですね。それは、そういう状態だとすれば、普通の場合と違う雰囲気だったと思うのです。しかし、それは水かけ論で、そんなことを言ったってしようがありませんから、いいです。ただ、その場合に、私はこの再入国申し立てに伴う書類の手続その他は、本人が当然これは書くだろうと思うのですね。これはひとつ資料として出していただけませんか。
  17. 中川進

    中川(進)政府委員 いつでもお出しいたします。もしなんでございましたら、ここにコピーがありますから、ごらん願ってもけっこうだと思います。
  18. 米田東吾

    米田委員 コピーもあとでちょっと見せてもらいたいと思いますが、私のほしいのは、直接のそれをちょっと見せてもらいたいと思います。
  19. 中川進

    中川(進)政府委員 わかりました。
  20. 米田東吾

    米田委員 それからもう一つ局長にお聞きしておきますが、あなたのほうでは、再入国を認められた最大の理由は、人道上の問題として取り扱われておる、危篤だという、病気だということで。ところが、新聞やあるいは本人の人身保護に関する救済の申し立て等の申し立て書によれば、明らかにこれはそうでなくて、韓国一つスパイ容疑か、あるいは何らかの政治的意図によって身柄を拘束して、そうして強制的に韓国に連れていったという内容が歴然としておりますね。これは争いがいま起きておるわけでありますから、いずれにしても裁判所判断を下して、救済命令を出すかどうかきまると思います。しかし、もしかりにあなたのほうの判断をされた人道上の問題でなかったら、申し立て本人はさることながら、そういう申し立てをある強制的な圧力によって本人がそういう申し立てをしなければならないような状態にさせられてやったということになる、その相手が韓国大使館だということになると、そうなった場合に、あなたのほうではこれは法律上どういう処置をされるのですか。もう一回それをしかと聞かしておいてもらいたいと思うのです。ただ本人がこの次出るときは考えますとか、何とかしましょうということでは、いかぬじゃないかと思います。これはどうも本人には関係がないようでありますね。
  21. 中川進

    中川(進)政府委員 ただいまの先生の御質問の趣旨は、韓国大使館員による、一種の、何と申しますか、うそをついたと申しますか、そういうことに対する処置いかんという御質問かと存じますが、これは私どもの所管でもございませんし、事実関係が明らかになりました上は、いずれ外務省さんなりあるいは裁判所さんなりにしかるべき処置をとっていただくつもりで、私どもといたしましては、あくまでもこの尹さんですか、当該本人が、病気で見舞いに行くのでもないのに、いま先生のおっしゃったようなことであるなら、政治的な目的で行くのにかかわらず、病気見舞いに行くということで申請したということは、これはやはりけしからぬじゃないかということで、この人に対する処置につきましては、今後の取り扱いに相当の考えをするということでございます。
  22. 米田東吾

    米田委員 その点はわかりましたから、それ以上申し上げませんけれども、もう一点確認しておきたいと思いますが、少なくとも人道的に取り扱ったのにかかわらず、どうもそういう事情でないような情勢が現に強まってきておる。私は、韓国大使館の正式発表を一つ見ても、そういう情勢がうかがえると思うのです。そうだとすれば、これはやはり人道上の立場で再入国許可されたあなたのほうでも、本人が場合によると帰ってこないかもしらぬ、再入国を早くさせるような——あるいはこの間の経過というものが、作為的にうそを言って、そうして虚偽の申請をしているやに思われる、そういう部分等について、あなたのほうとしても、ただ漫然と待つのでなくて、やはり問題は人身保護という関係がこの段階ではより優先されなければならぬと私は思いますので、そういう点でできるだけの法務省としての手を打っていただかなければならぬと思うのでありますが、この点についてはいかがでございましょうか。これは同時に人権擁護局長からも、ひとつこの件について御見解を聞かしておいていただきたい。
  23. 中川進

    中川(進)政府委員 私どもも、先ほど申し上げましたように、あの新聞を見て実は驚きました次第でございまして、本人人権擁護ということがこの際最重要な問題であるということは、米田委員と全く見解を同じくする次第でございます。したがいまして、さっそく私は、権さんというのはよく知りませんから、関係の課長から権さんに連絡をさせまして、とにかくこういうことになったのははなはだ残念だということで、こうなったら本人を一刻も早く日本に帰して皆さんを安心させてもらいたいということを申し入れさせたのでございますが、向こうのほうでもそれをさっそく本国へ取り次ぎましたようでございまして、何か昨日の夕刻、本国から東京のほうへ電話がかかってまいりまして、本人病気見舞いに行ったんだが、幸いにその弟の病気というのがだいぶよくなったので、近いうちに帰るが、しかし、本国へ帰ったついでに——この人は、御承知のように何とか商事会社の専務かなにかをやっている。そこで、商売の話があるので、あと二、三日おって、この日曜か月曜には東京へ帰る。現在のソウルの在住しているホテルの名前はこれこれ、部屋の番号はこれこれということであって、決して一部の方が日本で御心配になっておられるように、監禁されておるとか、拘束されておるというようなことは絶対にない。そういう報告を受けましたので、私としましてもやや安堵しておる次第でございます。そういう事情でございますので、いずれ本人が帰りましてから、よく事情を確かめてみたい、かように考えております。
  24. 米田東吾

    米田委員 その点の努力はひとつお願いしたいと思いますが、ついでに申し上げますが、電話の件です。私の手先に来ている資料では、やはり七日の朝です、本人から家族のほうに、奥さんのほうに電話があったようですね。それには、危篤とか病気ではなくて、おれは商売の用で来ているのだから心配するな、あまり心配すると、騒ぐと、おれのほうの状態がよくならぬ。だから心配するな、騒ぐなということで、暗に日本の国内のこの反響というものを奥さんを通して押えさせようとするのかどうか、そういう電話がソウルからかかっておる。ですから、あなたのほうでいま調べておる電話も、あるいはそういう電話がどこからどういうふうになってきているかわかりませんけれども、一切がっさいが諜報網の何かこういう網の中に適当にやられているような状態じゃないか。ですから、その点はひとつ御参考までに申し上げておきます。  それからあわせて、私はこういうこともないと思いますが、もう一回お聞きしておきたいのは、この人にはむすこさんがおられる。このむすこさんのかかわり合いが多分にあるように、申し立てにも新聞にも出ておるわけでありますが、いまもなおこのむすこさんは依然として韓国大使館に呼ばれておる。そうしておまえさんが来れば、即日日本出国して韓国に行ける手続をとる。そういうことについては十分話ができている。おまえさえ韓国に行ってくれれば、おとうさんのほうも、いろいろな疑いや、商売のこともみんなうまくいくのだ、とにかく早く出てきてくれないかということを、いまでもこのむすこさんには大使館からは強制の電話がいっている。私はそこで聞きたいのは、あなたのほうでは、また一日か、二時間か三時間でむすこさんが再入国できるような許可をして、そして便宜をはかるようになっておるのですか。これは入国管理局長から答弁していただきたい。
  25. 中川進

    中川(進)政府委員 私どものほうといたしましては、むすこさんがあることはわかっております。しかし、むすこさんに対して、いまの韓国大使館からこういうような電話がかかっておるということは、承知しておりません。  さて、むすこさんから、韓国から再入国申請があった場合どうするかということでございますが、それはいかなる理由で再入国申請するかということにかかるわけでございます。先ほどから申しましたように、まずこの男のステータスがどうであるか。その人の日本における在留状況がどうであるか。前科があるかどうか。納税状況がいいか悪いか。その次には、そこで向こうへ行く目的が何であるか。そのとおりに適応するかどうかということをよく調べました上で、出してしかるべきものであれば出す。それから出さないほうがしかるべきであるというならば、出さないということになるわけでございます。しかし、本人がどうしても行きたいといってきて、そしてその理由がいろいろ調べてそのとおりであるというときには、特に私どもとしてこれを拒絶することもないかと思うわけでございますが、いずれにせよ、実際に申請が提出せられない現在におきまして、どうするかこうするかということを軽率に申し上げるわけにいきかねる、かように考えるわけでございます。
  26. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 本件は、御承知のとおり、東京地方裁判所に対しまして、人身保護法に基づきまして、救済の請求が現在出されておるようでございます。そこで、われわれといたしましては、一般に裁判が現に係属している事件については、調査をいたさないことにしております。その理由は、裁判の係属中に行政官庁がとやかく中へ入りますと、一歩間違いますと、裁判干渉であるという批判を受けるおそれが十分にございますので、控えておるわけでございます。しかし、この人身保護法による裁判は、法律によりますと早くやれという規定がございますから、相当早く私はあるのではないかというふうに考えております。裁判の結果を見ました上で、われわれはどうするかということをあらためて考えて、それに、たとえば本件については相手が大使館のことでございますので、外交特権がある、どうにもならぬという場合には、われわれといたしましては、強制権はございませんけれども、強制権がないだけにまた調べやすい面もございまして、その段階において、裁判の結果を見守った上で処置したい、こういうふうに考えております。
  27. 米田東吾

    米田委員 再度人権擁護局長に念を押して答弁をいただいておきたいのですが、法的に認められておる在日外国人については、憲法の基本的権利に関する条項一切が原則的にこれは適用されて、基本的人権というものは、日本国民と同じに守られる、保障される、こういうものだというたてまえをひとつはっきり示しておいていただきたいと思いますが、いかがですか。
  28. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 基本的人権にもいろいろございますが、少なくとも人身に関する限りは、問題なく、外国人たると日本人たるとを問わず、日本憲法が適用ありと解釈しております。
  29. 米田東吾

    米田委員 たいへん恐縮でありますが、外務政務次官からお答えをいただきたいのでありますけれども、私、さっきも冒頭申し上げましたが、外務省としてはこの問題につきまして、韓国大使館等に対しましていろいろ調査をされておるように聞くわけでありますが、ひとつ田中次官から、現状、この問題についての外務省見解と、それからいまどういうふうに韓国大使館等に対していろいろ折衝されておるのか。外務省見解と、あわせてひとつ現状対応をお聞かせを願いたい。
  30. 田中六助

    田中(六)政府委員 お答え申し上げます。まず、現状に対する見解でございますが、あくまでこれは事実関係というものを十分調べての上でないと問題は解決しないという一つの前提がございます。特に外交特権という大きなワクがございます。したがって、韓国大使館外交特権を破棄するかどうかは問題でございますが、その底流には、先ほど申しましたように、事実関係があるかどうかということから出発しなければならないという見解でございます。したがって、第二の問題になりますが、事実関係を現在調査しておりますが、きのうからけさにかけて、いろいろ韓国大使館とアプローチしておりまして、けさほど向こうの姜公使と外務省の担当局長でございます須之部局長が会いまして、姜公使の言うことによりますと、もうすでに入国管理局長も申しましたし、それから米田委員もその内容の一部を御承知のようでございますが、姜公使が須之部局長に申したことは、やはり七日の朝酉吉さんから奥さんのほうに電話がございまして、無事だ、ソウルにおるわけでございますが、心配するなということがあった。それから八日は、今度は奥さんのほうから尹さんに電話をしたという事実。  三番目は、姜公使の見解によりますと、自己の意思によって動いたんだという本国の回答があった。何ら禁足したり、これを拘束したというようなことがないという三点を姜公使は外務省の須之部局長に言っておるという事実が、現在私ども得ておる情報でございます。
  31. 米田東吾

    米田委員 もう一点確認したいのですが、当初の韓国大使館の発表によりますと、八日ごろには帰るんだということを言っておられましたね。最初は五日か六日に帰る予定になっておったのが、八日には帰るんだ。いまのお話によりますと、まだ二、三日はおるんだという程度お話のようであります。どうですか、外務省としては、本人をやはり早く日本に帰していただくような、これも私は人道上の一つの取り扱いだと思うのでありますけれども、そういう立場でいろいろ折衝しておられることと思うのでありますが、見通しとしては、確実に帰るかどうか、いつごろ大体帰れるか、そういう見通しがいまございましたら、ひとつお聞かせいただきたい。
  32. 田中六助

    田中(六)政府委員 いつ帰るかという見通しはどうかというお尋ねでございますが、ソウル本人から、これは七日の電話でございますが、二、三日したら帰るということのようでございますので、それは韓国大使館の姜公使が本国に問い合わせた結果そういうような情報をつかんでおるわけでありますし、それを信ずる以外に、いまのところ私どもといたしましては、それをどうとかこうとかいう立場にはございませんし、あくまでそういう事実を積み重ねた上で処置をとっていこうと思っております。しかし、米田委員もおっしゃるように、この問題が人道上の問題あるいは人身保護という問題に結びつくということも考えられますので、その点の配慮はもちろんやっていくつもりでございます。
  33. 米田東吾

    米田委員 恐縮ですが、これで最後にいたします。田中次官に再度お聞きしたいのでありますが、外務省の藤山情文局長も言っておられますように、外交特権乱用でもあるような内容だ。みずから外交特権乱用ではないかという疑いを持っておられて、この談話を出しておられるわけであります。私どももこれは同感でありますが、この問題はいずれこれからだんだん事態は明らかになっていくわけでありますけれども外交特権乱用したり、あるいは外交特権の名のもとにある種の諜報活動をやっている、これはもう全然外交官とは異質な任務だと思うのでありますけれども、そういうようなことが明確になった場合、これは外交特権の剥奪はもちろん、もう当然国外に帰ってもらわなければならぬ。そういう措置をしなければ、日本もちょうど——二年前の一九六七年ころのヨーロッパにおける西ドイツだとか、フランスだとか、ああいうところで、韓国系の、あるいは北朝鮮系の留学生、あるいは学者、知識人、そういう者が大量に蒸発した事件がありました。当時ヨーロッパでも大きな問題になりましたし、西ドイツ等でも、特にこの問題について国として韓国政府に対して意思表示をされておる。相当な態度を表明された経過もあるわけであります。法治国家の日本が、しかも基本的人権が最も保障されておる憲法をいただいておる日本が、このような事態を黙視するということは私はできないと思いますから、それだけのき然たる外交上の措置をなされなければならぬのじゃないかと思う。なお、この事態が発展することによって、場合によれば日本主権が侵されるという事態だって出てくるかもしれぬ。これはまあ仮定でありますから強調いたしませんけれども、どうも私はそういうくさいにおいもするわけであります。そういう点から考えまして、事態の明白になった段階外務省としてき然たる立場で処理をしてもらわなければならぬと思いますが、外交官に対する特権、それから国外に対して当然これは退去をしてもらうとか、特権剥奪だけじゃなしに、相当きびしい措置をしてもらわなければならぬと思いますが、この点、最後にひとつ外務省を代表して次官から御答弁をいただいて、私は終わりたいと思います。
  34. 田中六助

    田中(六)政府委員 この案件は、あくまで本人の意思がどうかということが大きな主体となると思います。したがって、いまのところ私どもが得ておる正式に韓国の公使からの答えは、本国に連絡した結果、あくまで本人の意思によるものであるということをいま言っておるわけでございます。したがって、先ほど申し上げましたように、これを信じていく以外にないし、特にこの問題は、米田委員もおっしゃるように、私どもももちろんベルリンのああいう十数名の問題というのは頭にございます。これがそういうものに発展するかどうかという委員の関連のお尋ねのようでございますが、これももちろん意識にございますが、そうなればなるほど、私どもといたしましては、あくまで冷静に判断をしなければならないという反省もございますし、事実関係を十分見きわめた上、その時点でこの問題を処理し、納得いく回答を得たいという考えでございます。
  35. 米田東吾

    米田委員 終わります。
  36. 大村襄治

    大村委員長代理 中谷鉄也君。
  37. 中谷鉄也

    ○中谷委員 私は一、二点お尋ねをいたしたいと思います。すでに人身保護法による救済申し立てが東京地方裁判所申し立てられております。同法による救済申し立てなどというのは、言うてみれば、せっぱ詰まった場合にそういうふうな申し立てをするのであって、こういうふうな申し立てがあったという事実それ自体の中で、事実関係についてはほぼ信用するに足る、言うてみれば思わしくない、好ましくないできごとが起こったというふうに私は思うのでありますけれども、次のようなことを最初に法務政務次官に、そして外務政務次官に、それぞれお尋ねをしておきたいと思います。  先ほどの米田委員との質疑応答の中において明らかになっておりますけれども、いずれにいたしましても、日本憲法の適用下にあるところの日本国民のみならず外国人が、日本国以外の国の意思によって、俗なことばを使いますけれども、ゴボウ抜きというようなかっこうで拉致されて、そして人身に対する侵害がある。たとえば南ヨーロッパにおけるところの留学生事件のように死刑の判決を受けた者が二名というふうなできごとは、日本憲法立場からいってきわめて好ましくないことである。たとえば、政治亡命という概念そのものは、いまなお若干のそれぞれの立場において違いはあります。あるいはまた難民ということば、あるいは政治犯罪ということばについての若干の違いはありますけれども日本憲法のもとにおける保護というのは、単に日本国民に対してのみ及ぶものではない。このことについては当然のことであろうと思いますけれども、ひとつ法務政務次官のほうから、これは私、かりにということで申し上げておきたいと思いますけれども、御所見を承りたいと思います。
  38. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 かりにそういうことがあるとしますならば、先ほど人権擁護局長から答弁申し上げましたように、事人身に関しては日本憲法日本に在留する外国人にも及ぶというたてまえをとって、それに従った日本政府としての処理があるべきだ、このように考えておる次第であります。
  39. 中谷鉄也

    ○中谷委員 次に第二点、入管局長にお尋ねをいたしたい。こういうふうな質問です。一体これは五月始めに起こったできごとにいたしましては、若干怪談めいていると思うのです、われわれの常識から言いますと。怪談では少し早過ぎる。そこで、たとえば入管事務所の責任ある人と親しいというふうな人が参りまして、人道上の問題だと称して——これも仮定の問題として申し上げているのですが、とにかく再入国許可の急速な手続を依頼した。そしてその結果が、そういうふうな人道上の問題どころか、人道に反するような出国であったというふうなことであれば、これはたいへんなことですが、こういうふうなことは、私は蒸発ということばは何だからゴボウ抜きということばを使ってみたらいいと思いますけれども、顔の色を見ておりました、ネクタイを締めていた、役人だからまじめに話を聞いたはずです、ということになれば、すべて防止の措置がないということになるがどうか。こういうふうな問題は、今後とも起こってくる可能性をはらんでいるのかどうか。入管としてはこういうような問題が起こってもやむを得ないのです、まじめに事務を遂行いたしました、だからわれわれの注意力の範囲外のできごとです、というのならば、ちょうど自動車の運転手が人をひいておいて、突然飛び出したのだから、という話と同じです。入管局長お話は、人ごとのような面がかなりありますよ。委員会での御答弁でしょうから、実際の腹の中とはだいぶきょうの御答弁は違うのだと思うけれども、いずれにしても防止の措置がないのかどうか、今後ともだまされるというのか、こういうことでだまされることは十分あり得ますというのか。それでは全くおそろしいことですね。この点いかがですか。
  40. 中川進

    中川(進)政府委員 はなはだ仮定の問題でございましてどういうことを申し上げていいのかわかりませんが、私ども入管職員といたしましては、おのおのの与えられた職務に向かいまして、授かった法規に基づいて全力を尽くして仕事をしておるわけでございます。ただ、人間のやることでございますから、今後何年間絶対に誤りがないということを保証することは、不可能だと思います。しかし、あくまで常識に基づきまして、その場その場で最善と信ずる処置をとるよりしかたがない、かように考えます。
  41. 中谷鉄也

    ○中谷委員 私は、こういうふうな問題から、社会的に非常に衝撃を受けたと思うのです。そうすると、やはりこれは事実関係を調べてみなければ、今後——この事実関係を調べるのに、あと何か月かかるかわからない。その間にまたこういうできごとが起こる可能性がある。現在の段階において、局長として、こういう措置をとればよかったと思う、こういうふうな点について注意力を発揮すればよかったと思う、あるいは事務の内規その他においての遂行はまじめにやっているのだけれども、さらにこの点についての防止策はあったはずだというふうな点についての一般的な教訓というか、反省というか、そういうものもないということになれば、こういう問題は必ずまた起こってくるということですが、そういうことなんでしょうか。私は、非常におそろしいことだと思いますね。一生懸命やっているという話はわかりました。もう二度と聞かなくていいです。一生懸命にやっているのだから、だからだめなんだとおっしゃるのか。さらに、こういう点をひとつ事務改善の問題として教訓としたいというふうなものは、全然ないのですか。いかがでしょうか。
  42. 中川進

    中川(進)政府委員 もし先生のほうから、何かその点をこういうふうにしろという御指示がありましたら、お教えいただきたいと思います。
  43. 中谷鉄也

    ○中谷委員 私は、こういうふうに思うのです。この問題について、じゃひとつ事実関係を調べていただきたい。一体ネクタイをしておったかどうか。ネクタイをしていたはずですという一つの推定で先ほどお話をされましたね。実は、きょうはそういうことを聞きますよということでお願いしたのです。ぼくはきのうこういう話をしたのですよ。おそらくしさいに観察すれば、その人の手は小刻みにふるえておったに違いないくらいのことを私は言ったんだ。それは私も全く推理だけれども、そういうことは一体どうだったのだ。きょうは、ネクタイをしておったかどうかというような問題じゃないのです。どんな服装で、どんなかっこうをして、どの位置に本人がすわり、権参事官がどの位置にすわった、そうして池田さんがどこにすわって、何秒話をしたか、何十分話をしたかというふうなことを、局長詳しく御存じですかというふうに私のほうからむしろ聞きたい。そういうふうなことを、あなたどうも詳しく調べてきてないようです。私が一点だけきのう指摘をしたのは、私は思うけれども、おそらくこれは権参事官——権参事官というのは、外交関係の問題ですから、あまり権参事官の名前を出しませんが、要するについて来られた外交官の人が、ほとんど、とにかく知り合いだから、いろんな話をされて、本人はほとんど供述やその他申し立てということをされなかったのじゃないか、というふうな事実関係があるのじゃないか。とにかく知り合いだし、役人に会ったときに、いわゆる外交官の方が何もかもいろんな話をされて、本人は黙っておってあまりしゃべらなかったというような事情がある、そういうふうなことがあったのじゃないか。一体何時から何時まで池田さんはこの人に会ったか、どんな話があったか、そうしてすわった位置はどこか、どんなやりとりがあったか、そういうことをここで答えてもらおうとは思いませんけれども、そういうことを私が聞いたら、きょうはあなた答えられますか。
  44. 中川進

    中川(進)政府委員 ただいま承知いたしませんから、その点はそれではよく調べましてお答えいたします。
  45. 中谷鉄也

    ○中谷委員 私は、そんなことを委員会で聞いたり、資料要求をしようとは思わないのですよ。おかしなことがあったんだ、五月のできごとはこれはもう一つのスリラーなんだからということで、私たちは非常に心配しているんだから、それならそのときに接触したのは、その一点だけでしょう、入管としては。その間の事情局長は詳しくお調べになって出てくるのがあたりまえなんですよ。そんなやぼな資料要求を私はするつもりはありませんよ。何を聞かれても、そのときの状況については詳しく答えられますという意気込みで出てきておられるはずだと思って、私はお聞きしたのです。だから、さっきから、たいへんなことだと思います、心配していますと言うけれども、そういうふうにおっしゃるけれども、心配しておるのかどうか。私は、先ほどから、どうもとにかく本人戻ってくればいいわぐらいのことを思っているのじゃないかという感じがあった。その点を私は問題にしているのです。  そこでお尋ねしたいのですけれども、一体権参事官事情をお聞きになって、いつ本人が帰ってくるかお聞きになったと言いますね。入管としては、虚偽申告があったら本人を処分するなんということを言われているけれども、まず一つお尋ねしたいのは、虚偽申告を強制に基づいてさせられたという場合には、処分をするというようなことは、とんでもないことでございますね。それは仮定の問題としてお尋ねいたします。一点。  それから第二点は、そうすると、外交特権があるからといって、虚偽申告をせしめた人間については、事情の聴取はおやりになりますか。本人が帰ってきて、虚偽申告をさせられましたという場合に、事情の聴取をおやりになりますか。この点が第二点。  それから権参事官と接触をされた、電話で話されたわけでありますけれども真相はどうなんだということを権参事官からあなたのほうは事情の聴取をされましたか。この点は、あなた方の姿勢として私は聞きたい。政治の姿勢として聞きたい。入管のお仕事の意気込みとして私は聞きたい。権参事官に何とか早く帰してやってくれよ、私のところも困っているのだ、新聞に載っているからというふうなことでは、話になりません。一体どういうふうになっているか、事情をお聞きになったか、この点はいかがですか。
  46. 中川進

    中川(進)政府委員 第一点の、本人——本人でございますか何でございますか、官憲の脅迫というか、威迫に基づいて虚偽の申請をしたというときに、本人に責任を負わせないかということでございますが、それは事情をよく聴取いたしまして、そして本人がいろいろな意味でそう抵抗できないような威迫を受けた状態に置かれているというふうなことでございましたならば、先ほど私が申し上げましたように、次の再入国申請があった場合に考慮するということは、もう考慮しなくてもいいと思います。  それから第二点は、権に対してどういうあれをとるかということでございますが、この点はやはり外交特権の問題もございますので、先ほど外務政務次官からお答え申し上げましたように、慎重に扱い、私どもだけの一存では参りませんから、外務当局の御意向もよく承りまして善処したいと思います。  それから第三点でございますが、これはとにかくいまこういう話をしても水かけ論でございます。新聞で堂々と出ておるわけでございますから……。
  47. 中谷鉄也

    ○中谷委員 簡単に言ってください、あとつかえていますから。これで私の質問は終わりますが、一点だけ外務省に、本人の所在は明確なんでしょうね。それから弟さんのことについては、外務省としても事実確認はしておられるのでしょうね。それだけどうか答えていただいて、私は質問を終わります。
  48. 田中六助

    田中(六)政府委員 第一点の本人の所在でございますが、姜公使の言によりますと、所在は明らかでございます。弟さんのことにつきましては、実は私のほうはまだどこにどうなっているかということを外務省としては確かめておりませんので、入国管理局その他と十分連絡をして措置をしたいと思います。
  49. 大村襄治

    大村委員長代理 渡辺芳男君。
  50. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 三月の二十九日の深夜に、富士川左岸に火力発電所を建設するという問題をめぐって、たいへんな乱闘がありました。若干当時の新聞の全国版にも掲載をされておりますから御存じだと思いますが、たいへんないきさつがありまして、今日小康状態を続けておりますが、また問題の発生が懸念をされますので、私からいままでのいきさつをちょっと簡単に概略申し上げて、質問をしていきたいと思います。  東京電力が昨年の三月、富士川左岸に百五万キロの火力発電所を建設するというのを富士市に申し入れました。それから富士市でも、議会を中心にいろいろ検討してまいりましたが、昨年の十一月に二十項目の申し入れを東電にいたしました。本年の二月十三日に東電から回答がありました。いろいろありますが、その中心的なのは、亜硫酸ガスを中心にしたいわば重油の使用の質の問題です。当初一・五%の硫黄含有の重油を使用したい、こういうのを一・三%に引き上げる。完成時の昭和五十年には一%にしたい、こういう回答で、富士市の議会は了承しようじゃないかという空気になりました。御存じだと思いますが、三月の二十日に富士市周辺は大気汚染防止法によるB地域に指定されました。現在、つまり大気汚染なり河川の汚濁なり騒音なり悪臭なり、もろもろの産業公害が発生をいたしておりますが、特にこの数年来クラフトパルプの増産が各工場で行なわれました。それから急速に大気汚染が進んだのです。この問題が、ここ数年来、いろいろと騒がれておったのです。そこへ発電所建設ということですから、問題がなお火に油を注いだようなかっこうになりました。それで、三月の市議会が十三日に招集をされました。三月三十日まで議会を開くということになりましたが、十七日、十八日ごろ、予算案ととも一に審議をしてまいりましたけれども、この火力発電所を建設をすることの可否の問題をめぐって、周辺の一市四町、それから市内のいろいろな団体、こういう火力発電所建設反対の各団体首長の申し入れによって、ごたごたしてまいりました。二十五日ごろから、強引に市議会の議長なり市長なりがこれをやろう、議決をしようとはかっておったのですが、これが非常なエキサイトをして、警察官の動員を含めてやってまいりましたが、常に二千名内外の人たちが議会に押しかけてごたごたしました。そういうわけでして、非常に大きな問題になってまいりましたが、二十八日までは警察の機動隊が二百名ないし三百名程度の動員がされておりましたが、何ら衝突ということがありませんで、このまま経過しています。しかし、二十九日の午前零時三十分に抜き打ちに市議会を開会して強引に決議をしようとして、四百五十名の機動隊の動員をした。市議会が機動隊に守られて決議しようとしたところが、深夜のことでありますからたいへんな大騒ぎになりまして、二千七、八百名といわれておりますが、市民が三十分以内に急速に集まって、反対、こういうことになって、そこで乱闘が起きました。こういう経過であります。議会は途中でやめてしまいました。とうとう火力発電所の建設の受け入れ決議というものができなくて、中止になりました。そういういきさつで、一番——いままでの経過を見てまいりまして、深夜にやったり、あるいは朝午前五時ごろ議会を急遽開いたり、そういうことを数回やっておるのです。極端なのは、議会の議場から十キロメートルも離れた某会場へ行って設定をしてそこでやろう、こういうようなことを、逃げ隠れ議会をやっているんですね。まことに恥ずかしいと思うのですが、全国的にこんな議会はないと思うのですけれども、私は自治省当局にお伺いしたいのですが、こういうことはもう少し指導を明確にやっていかないといけない、民主政治の危機だと私は思うのですが、この点はいかがでしょう。
  51. 森清

    ○森説明員 議会制度を地方団体はとっておりまして、この議会制度を通じて民主主義が確立されるものでありまして、この議会はいわゆる公開の原則に立って運営をされておるわけでございます。ただいまお聞きしておりますと、こういうことについて反対の住民の方々との意思疎通なりその他について欠けることがあったのが原因かと思いますが、議会運営について、深夜に行なったりあるいは早朝にやるということがかりに事実であったとすれば、議会運営のやり方としては必ずしも正常なやり方ではない、このように考えられます。  そこで、自治省がそういう問題についてどういうふうに指導するかということでございますが、ただいまの法体系といたしましては、市町村の自治行政部門につきましては、原則として都道府県知事がこれを指導し、都道府県の指導権限について自治省が指導するというふうなことになっております。もちろん最終的には都道府県知事を通じて自治省が指導する責任があろうかと思いますが、そういうことで、一応この場合でございますと、静岡県当局の指導をお願いしているところでございます。
  52. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 たとえばこういうことをやっておるのです。三月二十八日に九時から議会が開かれるということになっておった。ところが、急遽午前五時半に東京電力会社の職員百名を緊急に集めて、そうして傍聴席の先占めをした。そして九時に開かれるという議会を二時間繰り上げて七時から開会。四十名の市会議員のうち四名だけは、これはどうも反対のほうではないか、こういうことでありまして、三十五分前に自宅に、実は七時から議会を開会します、こういう通告をやるんですね。私も自治法は先ほど読んでまいりましたが、これでも法律に抵触をするということにならないでしょう。だがしかし、めちゃくちゃですね、やること自身が。しかも先ほど言った周辺の一市四町は、あらゆる団体が全部、市議会も、町議会も、反対の決議をしておる。そして富士市長なり議会なり東京電力株式会社に対して、私どもは反対ですから、こういうふうなことについて御回答願いたいとか、いろいろ申し入れを前後五回やっておる。市内の団体もやっている。何ら回答がない。つまりいまの時代によくいわれる対話というものがない。回答もしてない。議会で決議すればいいのだ、こういうふうなやり方になっておるから、議会が開ければ、いつあれは決議するんだな、こういうことで不信感がある。常に二千名なり二千五百名なりの人たちが集まって、反対、こういうことになるのじゃありませんか。でありますから、あなたの先ほどのお答えにありましたように、まずいことだとは言いますが、県は昭和三十九年三島、沼津地区に石油コンビナートの誘致について運動した。ところが、これが地域住民の反対なり、議会が決議してつぶれました。沼津市は賛成した。ところが、隣の三島市は反対した。その当時、火力発電所が沼津地区に建設されることになっておった。それが電力不足という理由で今度建設の申し入れがあったんですね。今日まで県は積極的に動いていないという事実もあります。最近は話し合いをしようじゃないかと動きつつある。いずれにしても、今日の事態になって、なかなかこの不信感が払拭されない。ひとつ自治省としてもこの問題は重大な関心を持って乗り出さないと、なお一そう混乱をする可能性をはらんでおるのですが、もう一度伺いますが、何か具体策はありませんか。
  53. 森清

    ○森説明員 ただいま直ちに具体策をどうこうということは、持ち合わせておらないわけでございます。地方公共団体のまさに自治運営の問題でありますが、お聞きしますと、非常に不信感があり、またそういう意味でおそらく自治行政そのものが混乱しておるのではないかと思います。そういう事態については、もしも何らか手を差し伸べれば解決するのならば、できるだけ差し伸べることも考えておりますが、県当局から話を聞きましても、県当局自身も、ただいま県が公式にどういう手を打てばおさまるという見通しも持っておらなような段階でございますので、ただいま直ちに自治省のほうでこの問題について具体的な措置をどうこうというところまでは、見当はまだついておらぬわけでございます。ただ御指摘のとおり、このような事態が長く続くことは、議会運営上不幸なことでありますので、もしも解決策としていい方法があれば、また解決するめどが立ちますれば、そのようなことを研究してやりたい、このように考えております。
  54. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 こういう産業公害は、富士市に限らず、全国で五、六カ所問題が発生しておるようでありますから、問題が起きてから大騒ぎするのではなくて、今日のあり方は、少なくとも特に公害対策の関係については、単に厚生省あるいは通産省の関係の各係官にまかしておくということでなくして、自治省も積極的に対策を練らないと問題になっていくんじゃないか、こういうふうに私はこの経過から見て強く考えています。いずれにしても大きな問題でありますから、地方的な問題として——こんなことは前代末聞なんですよ。でありますから、少なくとも自治体として、あるいは議会として、あるべき姿というものが、もっと住民に直結をした姿勢なり市議会のあり方というものが指導されないと、何か新聞にいわれているように、国会で乱闘があるからあれをまねしているんじゃないかというようなことが、堂々と書かれている。しかもルールも何にもないんですからね。あそこの富士市の場合は、県が指導する、その上に立って自治省も考えていきます、確かに今日の機構なり法体系はそういうふうになっておりますけれども、民主政治を守るということについて、あれはあっちだこっちだなんと言って責任を回避することは、けしからぬと思うのですよ。だから、私は行政局長にもあるいは自治大臣にも御出席を願っていたのだが、地方行政で問題があるから、あなたに強く要請しておきますが、この点は十分検討しますか、どうですか。
  55. 森清

    ○森説明員 上司にもよく報告をいたしまして、事態の解決についてできる手があれば、それに沿ってやりたいと思います。また、公害問題につきましては、主務官庁ともよく相談した上、そのような不幸な事態が起こる未然の防止対策といいますか、その点につきましても研究を続けていきたい、このように考えております。
  56. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 通産省関係一つ伺いますが、本田さんには産業公害でかつて私が一度取り上げたことがございますが、これは私どもの意見なんですけれども、環境基準も設定をされて指定をされて、防止法による地域指定がやられて、改善策をやっていこう、こういうことになっているけれども、基準自身が甘いものだと実は私は考えておるのです。それはさておいて、あの地域の既存公害が、厚生省の認定によると、Bクラスの地域だといわれているのですね。全体的に見れば、確かに空がよごれているというふうなわけではない場合もあります。確かに煙突も低いし、そういう意味では、この周辺がたいへんな被害を受けておるわけです。そういう特殊事情がありますが、そういうだけに、わずか半径四キロくらいの富士市の中で、ぼつぼつ大きな工場の周辺というものが特に被害が大きい。ですから、法の運用からすれば、少し問題があると思うわけです。極端に被害を受けているところとそうでないところがあるのであります。そこで、指導の面として私は要望しておきたいのですが、確かにB地域の指定があったのですが、最近大昭和製紙と富士市の間で協定を結びました。これは全国的にも方々でやられつつあります。茨城県の鹿島地区なども、県知事とやるようなことも新聞で報ぜられておりますが、私は端的に言って、たとえば亜硫酸ガスの被害を防止をしよう、公害防止策をやろうという場合に、良質な重油に転換をしていくということは、これは中心課題なんです。ひとつ指導の面として、協定を結んだからいいなんというても、今日の市民では、被害をこうむっている人たちはそれを信用しないわけですよ。ですから、具体策というものが協定などに盛られていかないと、信用できませんね。いま三%の重油を使用しています、あるいは一年後に〇・二なり〇・五%ずつ引き上げて、将来はこういうふうにしまして皆さんに御迷惑かからぬようにします、こういうふうな協定でないと、新聞に報ぜられている限りでは、具体性がない。最近、大企業ではこういう問題についてたいへん関心を持ち、公害防止への積極的な姿勢を示しているということが言われておりますが、やはりことばでなくして、具体的にそういう改善策というものが行なわれていかなければいけない。こういう指導の面はどうでしょう。
  57. 本田早苗

    ○本田政府委員 御指摘のように、SO2対策としましては、年次別の具体的な内容を持った対策でなければ効果があがらぬと思います。電力につきましては、各地において現在話し合いを進めておりますのは、そういう意味で、先ほども先生から御指摘ありましたが、一・三%、五十年に一%というふうに、燃料の硫黄分の含有率をはっきりと約束するという形で、排出SO2の濃度を低下するような方向で話を進めるというような態度で現在やっておるわけでございます。
  58. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 今日の状況は、三百七十ばかりの重油使用工場があの富士地区にありますね。実際問題として、十五の工場が約八〇%弱の重油を使っている。これは三%といわれています最もよくないクラスの重油です。私は、企業に対するあなた方の指導の立場からすれば、この際ぜひひとつ重点的に取り上げていただきたいのは、確かに、大気汚染防止法によれば、あなたのところはこのクラスですからこうしなさい、こうしなさいという指導になることは間違いない。しかし、大会社がたいへんな重油を燃やしている。全体的に二千五百トンくらい燃やしているんです。そのうちの八〇%弱なんですから、この十五の工場に対して、ひとつ大企業なのですから、率先して良質な重油を使用するようにやってもらえないだろうかというふうな指導が、必要だと思うのです。私はこの際率直に申し上げますが、中小企業の人たちがこれに関心を持たないということが、あの地区でもしばしばいわれています。新聞にも報ぜられています。しかし、中小企業の経営者に言わせれば、私どもは力がない、大きな会社の人たちが率先してやってくれるようなことをまず姿勢を示してもらいたい。簡単に言えば、われわれはあまり迷惑をかけていないが、大きな会社のほうが非常に大きな迷惑をかけているのじゃないかというのが、腹にあるのです。それで、この問題の進展が、なかなか取り組みができないという状況にあります。ですから、指導の面として、きめこまかいやり方が必要じゃないかと思うのです。これはどうですか。
  59. 本田早苗

    ○本田政府委員 これは私が直接お答えするのが適当かどうかわかりませんが、通産省といたしましては、先般、川崎、横浜地区で大気汚染の実態調査、並びに具体的な指導を進めておるわけでございます。これは先生御指摘のように、大量に重油を使用する工場を相手に、それぞれが今後どこまでSO2の排出を下げるべきか、そのためにどうすべきかということを具体的に指導しておるわけでございますが、こういう方法によりまして、地域汚染の汚染度を低下していくという実効をあげるような方向へ進むべきだと思います。さしあたって、いま川崎、横浜地区でやっておりますが、これを全国に広げてやることは、先生御指摘のような方向に沿うものであるというふうに考えるものでございます。
  60. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 またいずれかの機会に、この問題は私のほうも取り上げていきたいと思っております。  以上で、通産、自治、両省の関係については終わります。  次に、警察関係をひとつ警察当局にお伺いします。  問題の三月二十九日午前零時三十分に、富士市議会が抜き打ちに開会されました。議員は某所からマイクロバスで入ってきた。四名の議員は、約四十分ばかり前に知らされた。機動隊が四百名、それから私服が五十名といわれておりますが、この中で強行採決をやろうとしたのですね。三十分後に周辺の市町から、市内の市民から、二千七百名といわれておりますが、集まって、とんでもないことだ——真夜中のことですから、そこで乱闘か起きたのですね。ああいういなかの町のことですから、たいへんなことになりました。これが実はいま政治不信であり、警察不信の感情が市民の間に高まっているわけであります。で、三月の二十八日、つまり前日の午後五時ごろまでは、警察も機動隊も、四百名ではないけれども、二百名、ないし三百名と言われておりますが、やはり出ておりました。出動しておりました。しかし、この間は、何かほかの団体なり、一市四町の理事者あるいは議会の議長、こういう人たちも中に入って、とにかく話し合いをしなさい、あなたの市だけがかってに議決をされたのでは困ります、川一つ向こうの私のところは、すぐ亜硫酸ガスが飛んでくるのです、こういう問題があるのですね。富士川の向こう側、要するに右岸、そこで問題になっているわけですが、二十九日に急遽たいへんな警備陣をもって開会を強行したのですけれども、この間のいきさつは、たいへん警察も高い姿勢だと言われていました。どういう事情でこういうふうになったのか。
  61. 丸山昂

    ○丸山説明員 富士市議会の問題につきましては、ただいま先生お話がございましたように、三月の二十五日あたりから少しずつ状況が出てまいっておりまして、三月の二十五日には約千五百人が集まりまして、そのうちの百五十人ぐらいが傍聴席に入って、議長の退去命令に従わないで議場内で騒いだという事案がございました。議長の要請に基づきまして、このとき警察の部隊を出して、議場から騒いだ人を排除したということが出ておるわけでございます。また、問題の二十九日の前日、二十八日のことでありますが、この日も約二千百人の人が議場を囲みまして、議員の入場を阻止した、そのために議会が流会となったというような事案も、起きておるわけでございます。問題の二十八日の夜おそくから二十九日の明け方にかけてでございますが、このときには、ただいま先生お話のように、相当多数の者が取り囲んでおって、非常に不穏な情勢であった。あわせてその二十八日のおそく、十一時三十分ごろでございますが、議長から警備要請がございまして、そこでこちらとしましては、何ぶんにも夜間のことでございますし、足場も悪いところでございます、また照明なども十分整っていないという事情もございましたので、十分な体制で臨むべきであるというふうに判断をいたしまして、四百人以上の部隊を現地に派遣をいたした、こういう次第であります。
  62. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 それでは端的に伺いますが、二十九日の午前零時三十分にやみくもに急遽開会をする、抜き打ちに本会議を開く、これについては、富士市の中村議長なりあるいは県当局の強い要請であなた方は出動した、こういうことが議長談話新聞に発表されています。そういういきさつがありましたか。
  63. 丸山昂

    ○丸山説明員 ただいま先生御指摘のような事実は、ないようでございます。こちらが出動体制を整えましたのは、先ほど私が申し上げましたような事情に基づきまして、大事をとって体制を整えた、こういう事情でございます。
  64. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 それで、この大混乱については、いなかの地方政治としては、たいへんな混乱状態なんです。事件です。しかし、このやり方は、まだ言い尽くせない面もたくさんありますが、当然のこととして、市の理事者なり議会の責任ある立場の人の政治責任であることは、これはもう間違いないと私自身は思っております。大混乱というものも、そういうふうなことをやらなければ、夜中にやらなければ、引き起こされなかったと私は想定もしておるのです。既存公害なり、あるいは火力発電所建設の反対の請願が約二万三千名ぐらい市議会に提出されておっても、そういうものについて何らの取り扱いもしていない。あなた方には直接それは職務上の関係はないが、あるいはほかの市の申し入れについて話し合いをしようとしても、議会も、会社もそうだけれども、何にもやっていない。話し合いは二、三したけれども、正式な回答はしない、こういうふうなことを言われています。でありますから、不信が非常にあるわけですね。それに警察が、端的にいえば、積極的に協力をした姿勢になっているわけです。出動要請があれば何でも出るというふうになっているのか、なっていないのか、私は県警本部長にもかつてお会いして申し上げたのですが、こういう事情は知らないわけではないので、この種の住民運動なり、あるいは多くの団体なり、周辺の市なり町なりの議会が反対決議をしているというたいへんな状態の中では、警察当局もいろいろなことがあろうけれども、一そう慎重にやらなければいけないんじゃないか。これが一番重要な問題だと思うのですよ。ですから、何でもかんでもやってしまおうというふうな当時の姿勢から見れば、警察力に頼らなければできないと思ったのでしょう。そういうふうに私も想定をするのですよ。でありますから、こういう問題について、もっともっと慎重を期さなければいけないだろう。あなた方にしても、警察当局にしても、これは無理じゃないですかという意見の具申はできないのですか。この点、二つお伺いします。
  65. 丸山昂

    ○丸山説明員 県警といたしましては、本件の事案の背景につきましては、十分承知をしておったと思います。それだけに慎重な配慮を行なったというふうに、私どもも考えております。今回の場合には、いずれも市議会議長からの要請に基づいて出動をしておるわけでございますけれども、要請があったからすぐ出たという点につきましては、先ほども私申し上げましたように、二十五日、二十八日にやはり議場の混乱あるいは流会というような事案が繰り返して発生しております。また多数の集会、集まってくる人数もふえてまいっておりますし、十分これに対して警戒をする必要があったということで、警察としてはいわば独自の判断でこの体制をとったというような次第でございます。  それから第二の御質問の点でございますが、もちろん私ども治安の責めに任ずるものとして、その時期において市議会の開会を強行されることが適当であるかどうかという点については、私ども立場から御意見を申し上げることも、十分考えられるわけでございます。
  66. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 少し歯切れが悪いですが、あなたの言うことは、筋論としてわかります。しかし、現実に生きたものを取り扱って警察は行動しているのですから、これは慎重にやらなければいけないと思うのですよ。二十九日の深夜の大混乱について、県警が捜査本部を現地の富士署に設置をして、五百八十名にのぼる呼び出しなりあるいは一部の逮捕、そしてまた取り調べをやってまいりましたが、今日までの経過を簡単に御説明いただきたいのです。
  67. 丸山昂

    ○丸山説明員 県警といたしましては、本事件につきましては、深夜敢行された非常に多数の人数による特殊な犯罪であるという観点から、できるだけ慎重にその犯行の実態をつかむという方針のもとに捜査を進めてまいったわけでございます。直接には、開会中の市議会議場内におきまして市会議員の方二人に暴行を加えたという被疑者二人を特定いたしまして、この二人について任意出頭を再三求めたわけでございますけれども、それが拒否をされましたので、一人につきましては公務執行妨害と傷害、それからもう一人につきましては暴行罪の容疑で四月十日に逮捕状をとりまして逮捕いたしまして、十二日に送致をしているという状況でございます。それから任意の取り調べにつきましては、十人の被疑者につきまして取り調べまして、書類送検をしておるわけでございます。現地ではこれでこの捜査は一応終結をしておるというふうに、報告を受け取っております。
  68. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 この事件の捜査が、私は当初たいへんな弾圧とも思われるような大々的な捜査網をしたいのじゃないかと思われる節がある。たとえば警察官が百何十名か、新聞には百二十名といわれていますが、動員をして、きわめて大々的に、しかも強引にやられたような節があります。たとえば五百八十名に手紙を出して、出頭しろという呼び出しをかけました。あるいは直接警察官が二名ないし三名行って、来ない者については、君のところはどこへ行っておるのか、二時間も三時間もその被疑者と思われるうちへ行って居すわっている。あるいは呼び出しに応じて来た者について、君指紋をもらう、あるいは足形をもらうぞ、こういって大量の人たちにそういうふうなことを——いなかの人ですから、警察官に言われるままにして、あとでびっくりして大騒ぎになる、こういうふうなやり方をしておる。これもたいへんな数でしょう、一々言いませんけれども。そしてまた、取り調べも長いのは六時間ぐらいやっている。君はまたあした来い、多いのになると、四、五回呼び出されて取り調べを受けておる。そういうわけで、いろいろなことがあのいなかの市や町の中で行なわれてきたわけです。私は、こういうやり方は、どう見ても行き過ぎだと思うのですよ。当初のこの問題に対する警察のやり方というのは、慎重を欠いているのじゃないか。先ほど慎重にやらなければいけないよ、どうですかというふうに私があなたにお尋ねしましたが、やってきた経過を見ると、そうではないと思うのですよ。この点は今後十分注意しなければいけないと思うのですが、指導の面でどう考えますか。
  69. 丸山昂

    ○丸山説明員 本件の場合には、非常に関係者が多数でございましたし、また先ほど申し上げましたように、深夜行なわれた事件であるということで、事件をできるだけ短期間にまとめるためには、捜査の体制は相当大きくとらなければならぬというふうに考えておりますし、また必要最小限度の強制捜査ということで進めてまいったものと考えておるわけでございまして、全般として、本件について静岡県警のとった措置は、私どもとしては一応妥当なものであったというふうに考えておるわけでございますけれども、こまかい点につきまして、先生御指摘のような個所もあるいはあるかとも存じますので、その点については十分指導をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  70. 渡辺芳男

    渡辺(芳)委員 時間の余裕がありませんが、あなたのような回答では、私は不満なんですよ。ああいう行為をもって妥当であったなどというふうなことは、私どもが見ている限り、常識的に考えられないです。私は富士市の居住者なんだ。でありますが、いや間違っておりましたとあなたは言えないでしょう。まあでき得るならば、きょうは警察局長にも出席を願いたかった。あるいは大臣にも出席を願いたかった。そういう回答をするならば、具体的にこういう人間がこうです。ああですと、言えば幾らでもあるのです。五百八十人も調べた。その中には、何にも知らないものですから、君も行け行けというものですから、警察の取り調べにみんな積極的に行って、あとでびっくりしたというような、そういう赤子の手をひねるような——いなかのことですから、おどかざれたらたいへんなことになるわけです。しかし、時間もありませんから、私は、今後の推移を見てみまして、必要によれば今後また取り上げていきたいと思います。しかし、よく事情を検討して、しかるべき指導を願ったほうがよろしかろうと思っております。  最後ですが、政務次官、具体的なことは省きましたけれども、先ほどから申し上げているような事態で、約二週間にわたって警察の取り調べが行なわれたわけです。まあいなかのことですし、多くの警察官が各署から動員されてやってきたことですから、大騒ぎになったことは間違いないのです。私はそういう事情から見て、少し行き過ぎたんじゃないだろうか。混乱の原因については、先ほどからいろいろ私なりに言いましたけれども、こういうふうなことはきわめて遺憾だと思うのです。どうかひとつこれからの指導の面で十分な検討をいただきたいと思うのです。
  71. 小澤太郎

    小澤(太)政府委員 私のほうの立場は警察を指導する立場ではございませんから、せっかくの御要望ですけれども、ここではっきりそういうことを申し上げかねる、これは御了解いただけると思います。
  72. 大村襄治

    大村委員長代理 猪俣浩三君。
  73. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 時間がありませんから、ごく簡単にお尋ねいたします。四、五日前の新聞ですが、日本大学のデモ騒擾事件に関しまして、その弁護人が門馬という判事の命令で拘禁された。あまり例のないことだと思うのですが、この事件のいきさつをちょっと説明していただきたい。
  74. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 当方が承知をいたしておりまするいきさつを申し上げます。  五月二日のことでございます。弁護士である弁護人が検察官側の証人に対しまして反対尋問をしようといたしましたときに、被告が立ち上がりまして発言をし始めたというようなことがあって、裁判長が発言をやめるようにと制止したのでありますが、被告はこれに従わず、傍聴の学生たち十数名も口々に発言させろと騒ぎ出すということで、法廷が騒然となった。そこで秩序回復するために裁判長は、傍聴の学生の一部と被告人に対して退廷命令を発した。その際に弁護人が、このような裁判には応じられないということを述べまして法廷から出ようとしたのであります。そこで、裁判長は弁護人に対して在廷するように命じたのでございますが、弁護人はこれを無視して退廷せんとしたので、裁判長は法廷等秩序維持法の三条二項の規定によりまして、廷吏に拘束するように命じた。そして弁護人は別室に連れていかれたわけでありますが、その後、弁護人のほうから今後は裁判長の訴訟指揮に従うという念書を差し入れたということで、裁判長は拘束を解き、制裁を科さないということにいたしまして、その後さらに公判を開きまして審理を続けた、こういうふうに聞いております。以上が、事件の概要でございます。
  75. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 こういうふうに判事が弁護人に在廷を命じ、それを聞かぬということで留置するというようなことは、あなたのほうのお調べで前例があったのでしょうか。
  76. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 前例を申し上げます。法廷等秩序維持法というのは、御承知かと思いますが、昭和二十七年九月二十五日から施行になっております。そして今日まで弁護士たる弁護人の方がこの適用を受けたという例が、三つございます。その一つは、昭和三十五年のころでございますが、ある勾留理由開示の公判において、裁判官の訴訟指揮に従わない、裁判所職務執行を妨害し、裁判の威信を害したということで、過料三万円に処せられたという事件がございます。それから三十五年八月八日でございますが、同じくある事件の勾留理由開示の公判において、裁判官に対して忌避の申し立て理由を述べた際に、弁護人が裁判官の警告を無視いたしまして、裁判官は偏見を持っておられる、裁判官としての能力はない、裁判官として被疑者を勾留するについて要件を満たされるかを判断する能力がない、裁判官として人権を拘束する場合に虚心に慎重な判断を下す能力を欠いている、裁判官が訴訟手続上憲法と刑事訴訟法の精神に従って解釈する能力はない等の発言をされ、裁判長から発言の取り消しを要求されたにかかわらず、それをしなかったということで、監置二十日に処せられたという例がございます。それから三つ目は、昭和三十六年四月十五日でございますが、ある暴力行為等処罰に関する事件におきまして——これは三井三池争議の事件。この公判におきまして、弁護人が弁護側の冒頭陳述に際して、裁判所は会社側の巧妙な作戦に巻き込まれて理性を失い、八時間以内に仮処分を認めるという暴挙をあえてした、その仮処分はきわめて政治的な内容である、これは憲法に違反した仮処分で、法の支配は法の番人によって破られた等の暴言をし、裁判の威信を害したということで、過料三万円に処せられておる。以上の三つの例が、弁護士たる弁護人についてはあるのでございます。
  77. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 実は、それは私のお尋ねの答えにはなっておらぬのです。それは私も知っておる。そうじゃなくて、被告が全部退廷を命ぜられたので、弁護人もそれでは自分が在廷するあれがないというので退廷して、まさに法廷外へ一歩足を踏み出したところに命令が出た。命令は聞こえたとは思うのですが、こういう事例。在廷せよという命令——被告人はだれもいないのだ。だから、弁護人としても、いてもしようがないというので退廷しようとした。そうすると、在廷せよという命令を下して、それに従わないというのですぐ拘禁してしまうというような例、そういう例は前になかったのじゃないか、私はこうお尋ねしている。
  78. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 仰せのようなことで法廷秩序維持法で拘束を受け、あるいは制裁を受けたという事例は、承知いたしておりません。
  79. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それはそれだけにとどめておきましょう。それをとやかく言っても、私は非常に異論があるのだけれども、あなたに言ってみたところで、これは判事がやることでどうにもならぬ。これは非常に異常なことだと思うのです。全部被告人に退廷を命じ、弁護人としてそこに一人ぽつんとおってもしようがないから退廷しようとしたら、退廷するなと言う。それにそむいたといって拘禁した。これは異常でしょう。何か偏向裁判など自民党では問題にしていますけれども、われわれから言うと、これはまた偏向裁判だ。しかし、これをあなたに言うてみてもしようがないから、鍛冶君が来ておれば安心するだろうが、門馬というのは相当の人物で、相当のさむらいなんだから……。  それからもう一点お聞きをいたします。これは三月六日横川という地方裁判所の代行——代行制度というものがあることをぼくは知らなかったのだが、代行という制度がある。この横川という代行から弁護人に交付されたところの東大事件、これは一月十日の秩父宮ラグビー場関係事件ですが、これに一覧表みたいに出ておりました。これは私は非常に驚くのですが、これは憲法の三十七条の規定、あるいは刑事訴訟法の起訴状一本主義に非常に反することを裁判所はやっておるのではなかろうか。これを見ますると、被告人の名前のほかに、どこの大学の出で、何べん逮捕せられたか逮捕歴、それから自白しておるのか否認しておるのか、これは全学連のうちでも何派に属しておるのか、そういうことを詳しく調べて、そうしてこれは分離裁判をする参考にしたと思われるのですが、こういうことは、いまの憲法の規定及び刑事訴訟法の起訴状一本主義の規定に裁判官自身が違反しておるのではないかと思われる。起訴状には、その前歴も前科も何も書いてない。しかるに、こういう起訴状以外の、自白をしたかどうか、あるいは大学はどこの大学で、逮捕を何べんされたか、前科があるかないか——前科のある人も書いてある。こういう前科の有無やその他のことを起訴状には書いてはいけないということは、たびたび裁判所の判決に出ておる。ところが、東京地方裁判所の横川という代行が主任でやっておるらしいのですが、そういうことをやっておる。これはあなた、こういうのをあなたのほうにありますか。これは裁判所から渡されたものなんです。みな書いてある。わが国の憲法及び刑事訴訟法の大原則に非常に違反しておるのではないですか。前科の有無まで書いてある。
  80. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 ただいま仰せの一月十日秩父宮ラビグー場関係と題するリストでございますが、私は実は初めて見るものでございまして、これについて何も承知いたしておりません。
  81. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 あなた最高裁の刑事局長さんだが、裁判所が起訴状以外に、こういう前歴から、自白の有無から、逮捕歴から、学校から、その派閥、そういうものまで全部事前に公判を開かぬうちに調べておるというようなことは、相当先入観念を与えることになって、新しい刑事訴訟法の一大進歩的案としてされたこの起訴状一本主義というものが崩壊するのではないですか。そうしてこれは検事と打ち合わせて、検事から聞いたんだろうと思うのです。そうしてすでに裁判の前にこういう予断を入れられておる。しかも各人物が、たとえばこれはリーダーであるとか、補助リーダーであるとか、あるいは実行委員長であるとか、そういうことまでみな参考意見として書き込まれておる。これでは、裁判前に全部こういうことが調べが済んでおることになって、裁判の必要ないじゃないですか。これはどういうふうに考えますか。
  82. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 お答えする前に、それははたして裁判所のほうで作成されたものでございましょうか、私そこがちょっとわかりかねるのでございますが。
  83. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは三月六日に東京地方裁判所の横川代行という人から東大事件の弁護団に渡された謄写物です。私は、その弁護団からこれを見せてもらったのです。こういうことが裁判所で行なわれておるということは、大問題だと思うのです。ですから、あなたのお考えを聞きたいのです。
  84. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 実はこのラグビー場事件のそのようなグループ分けでございますか、そのリストというものは、初めてただいま拝見したわけでございます。いま特定の事件につきましてのグループ分けの案というものを立てるについて、所長代行がどういうものをつくられたかというところまで承知してないわけでございますが、これは東京地裁の刑事部におきまして全責任を負って処理している事柄でございまするので、私の立場からとやかく申すことはできないのでございますが、おそらく代行と申しますのは、所長の職務を代行するという裁判官でございまして、当該事件をグループ分けして処理することについての案というものを、係の裁判官のほうから、裁判官の依頼を受けて、その窓口として弁護団と折衝された過程においてそういうものができたのではなかろうかと推測するにとどまるのでございまして、そういうものが当該事件を現実に扱いまする裁判官のところに行っているかどうかということは、実はわからないわけでございます。
  85. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ひとつこれは調査してください。こういうことは、もちろん指揮命令権はないでしょうけれども、やはり最高裁判所の裁判官会議にもかける必要があるのじゃないか、こういう刑事訴訟法の大原則に反するようなことを——横川さんというのは、東京地方裁判所の所長代行ですよ。所長の役目をつとめる人だ、こういう人がこういうことをやっておるということは、私は大きな問題だと思うのです。裁判所それ自身が、こういう起訴状というものはいけないということは判決で示してある。そういう前歴やなんか書いたり、逮捕歴を書いたりなんかするようなことはいけないというているにかかわらず、東京の地方裁判所がこういうことをやっておる。これは大きな問題だと思うから、ひとつ調べていただいて、後日また事務局長からでも私意見を聞きたいと思います。きょうはこれでやめます。
  86. 佐藤千速

    ○佐藤最高裁判所長官代理者 ただいまの御指摘の書面がはたして事件を担当している裁判官のところに届いているのかどうかということは、やはり一つ問題だろうと思います。届いていなければ、いま仰せのようないわゆる予断ということは生ずる余地はないわけでございますし、私も初めて拝見したので、その点を承知しておりませんので、なお地裁に聞いてみたいと思います。思いますが、事は具体的な事件の処理に密接にかかわる問題でございまするので、その点は十分ひとつ猪俣先生におかれましてもお含み置きを願いたいことをお願い申し上げます。
  87. 大村襄治

    大村委員長代理 次回は、来たる十二日午後一時より理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時五分散会