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1969-04-11 第61回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十一日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 高橋 英吉君    理事 大村 襄治君 理事 進藤 一馬君    理事 田中伊三次君 理事 永田 亮一君    理事 猪俣 浩三君 理事 神近 市子君       大竹 太郎君    松野 幸泰君       黒田 寿男君    河野  密君       中谷 鉄也君    畑   和君       米田 東吾君    山田 太郎君       松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 西郷吉之助君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   荒木萬壽夫君  出席政府委員         内閣官房長官 木村 俊夫君         警察庁警備局長 川島 広守君         法務政務次官  小澤 太郎君         法務大臣官房長 辻 辰三郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      上田 明信君         法務省入国管理         局長      中川  進君         公安調査庁長官 吉橋 敏雄君         外務省アジア局         長       須之部量三君         厚生省援護局長 実本 博次君  委員外出席者         法務省刑事局公         安課長     豊島英次郎君         参  考  人         (日本赤十字社         副社長)    田邊 繁雄君         専  門  員 福山 忠義君     ――――――――――――― 四月十一日  委員栗林三郎君、黒田寿男君、河野密君及び柳  田秀一辞任につき、その補欠として中谷鉄也  君、田中武夫君、広沢賢一君及び米田東吾君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員広沢賢一及び米田東吾辞任につき、その  補欠として黒田寿男及柳田秀一君が議長指名  で委員に選任された。     ――――――――――――― 四月四日  交通事犯者のため加古川刑務所改造に関する請  願(永田亮一君外五十名紹介)(第三一二二  号) 同月七日  出入国管理法制定等反対に関する請願田代文  久君紹介)(第三三六四号)  同(谷口善太郎紹介)(第三三六五号)  同(林百郎君紹介)(第三三六六号)  同(松本善明紹介)(第三三六七号) 同月十日  出入国管理法制定反対等に関する請願島本虎  三君紹介)(第三六〇七号)  出入国管理法制定等反対に関する請願(受田新  吉君紹介)(第三六〇八号)  同(吉田泰造紹介)(第三六〇九号)  死刑の確定判決を受けた者に対する再審の臨時  特例に関する法律案成立促進に関する請願(神  近市子紹介)(第三六一〇号)  同(黒田寿男紹介)(第三六一一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 高橋英吉

    高橋委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件につきましておはかりいたします。  ただいま本委員会において調査中の北朝鮮帰還問題について、本日参考人として日本赤十字社社長田邊繁雄君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 高橋英吉

    高橋委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお、参考人出頭手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 高橋英吉

    高橋委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ――――◇―――――
  5. 高橋英吉

    高橋委員長 次に、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。猪俣浩三君。
  6. 猪俣浩三

    猪俣委員 荒木大臣お尋ねいたしますけれども、ちょうど例の三億円事件が勃発しましたのが、全学連のあばれている最中でありました。今回の三億円事件の最も主要なる証拠物として、盗まれた濃紺色カローラ発見、これに対しては警察当局も相当徹底的に捜査することにして、ヘリコプターまで使ってやっておったと報道されておりますが、ところが現実は、交番から二百五十メートルぐらいのところに四カ月もほっておいてあった。付近の主婦なんかも、妙な車がとまっておるというのでみんなうわさしておったというのです。しょっちゅうそこへパトロールが通っておったという。それだけ血眼になったカローラという車を、どうして発見できなかったろうか。それがために、相当捜査に支障を来たしておる。なお、また連続ピストル殺人事件のあの犯人逮捕も、警察がやったんじゃないのです。あれは偶然のことから警備員発見したようなわけであって、警察捜査の手がかりがなかったわけであります。こういう天下を震憾せしめるような大事件について、いずれも初めの捜査に少し手抜かりがあったような新聞論評であります。そして一つ証拠物発見しろうとで、一つ犯人逮捕もやはり警備員で、民間人なんです。そのために警察の威信を非常に落としておると私は思うのですが、これはあまり公安警察に力を入れてしもうて、こういう方向のほうが少し手抜かりじゃなかろうか。警視庁の内部でも、公安警備に当たる警官が非常にいばっておって、そうじゃないほうは下積みみたいなことも聞いておる。実情はどうだかわかりませんが、そういうふうなことが実は前からいわれていた。例の吉展ちゃん殺害事件についても、それが国会の問題になりました。  そこで、荒木さんにお尋ねしますが、いま公安警備警察と一般の刑事警察の人数は、どういうふうな比率になっておりますか。
  7. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ちょっと具体的数字を明確にお答えいたしかねますので、政府委員からお答えいたします。
  8. 川島広守

    川島(広)政府委員 いま正確な数字手元に持っておりませんけれども、警備警察だけについて申しますと、全体の警察の中で警備警察の占めますパーセンテージは、一二%という数字でございます。刑事は二〇%近くまでいっているのではないかと記憶しておりますけれども、後ほどまた詳しい数字はお手元にお届けしたいと思います。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 それじゃその詳しい数字を、私は別に質問要項を出しておきませんでしたから、あとでまたお答えいただきます。  これは大臣でなくてもいいですが、今度の例の三億円事件濃紺色自動車発見がおくれました原因は、どこにあるか。だいぶ新聞でも批判されておりますが、それについて、その原因をお答えいただきたい。
  10. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 犯罪捜査の具体的な作戦行動逐一を存じませんので、新聞記事を御指摘相なりましての、何か初動捜査手落ちがなかったかどうか、しろうと判断で、私もそんなふうに感じて新聞は読んだわけでありますが、ある程度指摘のようなところに手抜かりと申しますか、注意力の綿密な到達度に遺憾な点があったんじゃなかろうかと想像いたしております。なお、担当の政府委員じゃございませんが、警備局長から補足的に申し上げさせていただきます。
  11. 川島広守

    川島(広)政府委員 ただいまのお話でございますが、これは弁解にお聞き取りになるかもしれませんけれども、三多摩地方の新しい大きな団地でございますが、団地には、最近調査いたしますと、いわゆる無料のモータープールと申しましょうか、一カ所三百台、二百台というふうな大量の自家用車をプールするようなものが、あちこちにでき上がっておる。そういうふうな団地におきますオーナードライバーは、おおむね一カ月に一ぺんとか二へんとかいうような車の使用状況でございまして、その大部分がシートをかぶったままそこに放置されておる、あるいは駐車をしておるというふうな状態でございます。したがいまして、ただいま大臣からもお答え申し上げましたように、結果論から申せば、基本的な捜査において明らかに御指摘のとおりに手抜かりの点があったと申し上げざるを得ないと思います。今後の問題等もございますので、いわゆる捜査は御案内のとおりに一人歩きはできない、いかなる捜査でございましても、民間の方々の御協力を得なければならぬことは申し上げるまでもございませんが、そういう意味合いで、今回のことを教訓にいたしまして、今後、いま申しました特に団地のような対人関係隣人関係が十分でないと思われるようなところにつきましての捜査方法については、きびしくいま反省、検討いたしておるような次第でございます。
  12. 猪俣浩三

    猪俣委員 これが問題になりますのは、みんな警察パトロールなど信用いたしまして、安心している住民ですね。ところが、交番から二百五十メートルくらいのところに、一日二回ずつパトロールが出ており、それでヘリコプターまで動員して徹底的に発見につとめていたけれども、これが見つからなかった。そうすると、パトロールなんというものは、ただぶらぶら散歩しているんじゃなかろうか。いまの自動車は、昼間はみんな出動してしまって、夜だけそこへ駐車するのが原則なんだ。ところが、これは四カ月も夜昼そこに駐車しておったとなれば、付近の普通の人さえ怪しんだくらいなのだから、どうもそのパトロールの目にとまらぬということは、非常にぼくらはふしぎに思うのです。そうすると、あのパトロールなんというのは、一体何をしているんだろうか、ぶらぶらそこらをふらついているんだろうかというふうに思うのですよ。というのは、警察でも必死になってこの自動車をさがしておった最中でしょう。しかも交番と目と鼻の先ですね。しょっちゅうパトロールが通って歩いておってそれが発見できないということになると、パトロール能力というものに対して非常に疑惑を持つのですよ。もう少しそれは皆さんの――これは、警察と申しましても神さまじゃありませんし、手落ちがありますことは、私どももそれをどこまでも責めようとは思いませんけれども、住民の信頼が非常に警察官にかかっておるわけなんです。それだけ、こういうことがあらわれますと、反動的に非常に警察官に対する不安が出てくるわけですよ。どうしてこれが発見できなかったかということを、もう少し警察としては究明すべきじゃなかろうか。あなたの説明では、どうも納得できないんだ。どういうところに盲点があったのか、もうちょっと御説明いただけませんか。
  13. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 経験の浅い私が一人前のことは言えないことを承知の上でちょっと申すことを、お許しをいただきたい。警察も近代的なコンピューター時代の例外でなくて、コンピューターを備えつけながらの科学的な捜査ということには、しばらく前から準備体制を整えておるようであります。したがって、全国的の、交通機関の発達した、自動車がいわば多過ぎるくらいにある、自動車を利用する犯罪者行動も想定される、そういうことで、全国捜査網を張りめぐらしての手配というものには、万全を期しておったようであります。ただ、警視総監が新聞記者会見反省をしなければならないということを言いましたことが新聞に載っておったようですが、なるほど科学的な捜査施設設備をもってこれをフルに活用するということも、むろん今日のこの諸条件に応じまして必要があると同時に、デカかたぎと申しますか、足をすりこ木のようにしてでも緻密な、執念の鬼みたような、目的追求に対しての真剣さというものが、とかく薄れがちではなかろうか。したがって、昔ながらのこれらの、この種の犯罪捜査に偉功をあげました御指摘吉展ちゃん事件捜査も、しかり、さらにまた横須賀線電車爆破事件捜査につきましても、近代的な捜査能力プラス一人一人の警察官使命感に燃えた執念深い捜査努力というものが功を奏したと、しろうとながら判断いたすわけでございますが、今度の御指摘の問題につきましても、やはりその双方、近代的な捜査能力プラス昔ながらの鍛え上げたやり方を、適当に合理的にミックスしてベストを尽くすという結びつきに特に配慮が要請されるのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。  ただ、一言申し添えますれば、公開捜査に踏み切りまして、公開捜査の手段が、警察官そのものじゃございませんが、ガードマンによって一つ案件は逮捕する端緒を求めることができた。カローラ発見にいたしましても、公開捜査案件として、セールスマンの念頭に明確に、商売がらではありますが、その問題についての関心、気持ちが定着しておったことによって、ともかく偶然ではありますけれども、証拠物件発見することができた。時すでにおそいといううらみは否定できませんけれども、そういうふうな近代的なやり方と昔ながらの日本流に鍛え上げました捜査能力との一体化のもとに、国民の御安心を願えるようなところに結びつけたいものだ、かように思うわけであります。専門的な立場からのもっと繊細な用意周到なもろもろの反省もございましょうし、対策もあろうかとは思いますが、即席料理みたいなことを申し上げて恐縮ですけれども、お許しをいただきます。
  14. 猪俣浩三

    猪俣委員 この問題はこれでおきまして、学生騒動問題。これは政府取り締まり側でありますし、われわれは人権擁護という立場に非常にウエートを置いておりまするから、多少論点が違うかもしれませんが、東大事件等学生鎮圧に対して用いました警察武器と申しますか、これはこの前もちょっとお聞きしましたけれども、もう少し具体的にお聞きしたいのですが、どういうものをお使いになったのか。
  15. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 この前も私からお答え申し上げたように記憶しますが、御承知催涙ガス使用することによって集団的な抵抗の制圧の目的で、ガス使用いたしております。
  16. 猪俣浩三

    猪俣委員 俗にガス砲ということばが使われておりますが、ガス砲というのは催涙ガスを詰めた銃のことでしょうか。
  17. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 さようでございます。なお、詳しくは政府委員から補足して御説明申し上げます。
  18. 川島広守

    川島(広)政府委員 ただいまお尋ねございました、ガス銃と私のほうでは申しておりますけれども、これは催涙剤を充てんいたしました紙製の筒を飛ばすために使っておりますガス銃というものでございます。これはおおむね三十度の仰角の場合には回転をしながら飛んでいくわけでございますが、大体の距離を申し上げますと、七十メートルから最長百メートル程度飛距離を持っておる、そういう機能を持った銃でございます。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 ガス銃ですか、これは二十メートルぐらい隔たったところでもベニヤ板を貫くことのできる力を持っておるという実験報告があるのですが、さようですか。
  20. 川島広守

    川島(広)政府委員 私のほうでその種の実験をしたことはございませんけれども、この前もお答え申し上げましたように、おおむね四十メートル程度までまいりますと、放物線になって落ちていくわけでございます。ただ、ガス筒そのものは、かたい紙でつくられたものでございます。したがって、まっすぐ二十メートルの場合にベニヤを撃ち抜くかということは、実験いたしておりませんので、明確なことを申し上げる用意がございませんが、大体、繰り返しになりますけれども、このガス筒回転をしながら放物線状に飛んでいくものでございます。そういう意味合いで、これを使います場合には、まずそのものの性能が、御案内のとおり第三者に何がしかの影響を及ぼすという種類のものでございますし、さらにまた使います場合には、風向なり周囲の環境なりそういうことを十分に考えて使うわけでございますし、これにつきましては、部内的な取り扱い規定をもちまして訓練を施しておりまするし、それにまた、ガスをだれでもが使えるわけではございません。あらかじめ練度を高めた特定のガスを使うガス班というものがございまして、これが使うわけでございますし、使用いたします場合には、指揮官の命令によってのみ使う、実はこういう取り扱いをいたしておる次第でございます。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 この前の御答弁では、内規があって、相当放物線型に発射して、直射しないのだとおっしゃったが、事実はそうでないようです。私はその後調べたのですが、東大正門の右側に法学研究室がある。これは中核派と称する学生がこもっておった。左側には工学部列品館があり、ML派というものが立てこもっておった。それに対して、法文一号館と二号館に警察官が入って、お互いに屋上に上がっておる。これは同じ高さですよ。距離が十五メートルで、同じ高さのところでねらい撃ちをやっておる。そうして直撃を受けてけがをした人が相当あるわけであります。だから、あなた方が放物線的に発射するように内規になっているということは、実際問題として守られておらぬ。十五メートルの近距離で同じ高さのところで撃つのですから、放物線ではあたりはせぬ。ところがあたってけがした人が相当あるのです。これは皆さんがそう信じておるとすれば、第一線の部隊はそういう趣旨が徹底しておらぬ。これは非常に重傷者を出した原因になっている。これは実際図を書いてきてますが、これが法文一号館、法文二号館でしょう。これが列品館、これが法学研究室ですよ。これは同じ高さの屋上なんだ。この間十五メートル。それじゃ直撃になりますよ。これはどうなんです。あなたは実際見たのですか。
  22. 川島広守

    川島(広)政府委員 ただいま図面でお見せいただきました位置関係は、そのとおりでございます。その列品館法学研究室の間は二十二・四メートルの距離になっておりますけれども、ここにのぼりました機動隊の位置しておりましたのと、それから学生が位置しておりました列品館屋上でございますが、この距離は約六十メートルないし七十メートル。そこへ発射をいたしております。したがって、仰角は、おおむね六十度程度の高い仰角で撃っておるわけでございます。そういうわけでございまして、大体いま御質問にございましたように、まっすぐ撃ちましても、ガス筒というものは大体四秒たちましてから破裂をするわけでございますから、そういう意味合いで、直撃してみたところで――この前もお話申し上げましたけれども、このガス銃の中にはらせんが施してないものでございまして、滑腔銃でございますから、弾道と申しますのは非常に不確かでございます。一応の方向性は持ちますけれども、ねらい撃ちをしてあたるというふうな性格のものではないのでございます。あくまでも四秒後にガスが拡散をいたしまして、それでもって催涙効果を期待する、こういう趣旨でございますから、ねらって撃ってまっすぐあたるというふうなものではございません。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 私が調べました負傷者藤田次男という人物は、一月十八日に負傷いたしております。警察病院の脳外科の中村という医者診断しておるが、これは列品館直撃を受けて倒れた。その当時の模様は詳しく書いてありますが、時間がないから省略しますけれども、症状は、医師診断によれば、頭蓋骨前頭洞部複雑骨折気脳症――脳の骨が折れたために空気が脳の中に人って、空気中のばい菌が脳膜炎を起こす危険がある。骨折の場所は、額の皮膚を縫い合わせてこれ以上空気が入らないようにしたが、鼻孔から脳の中に空気が入る可能性がある。脳膜炎可能性は、受傷後数週間が最も大きいが、今後数年間危険があるという。この中村医師は、直撃を受けて倒れたと言っております。この藤田次男は、釈放になっているのです。これが起訴になっているかどうか。起訴にもならぬ人間にこれだけ負傷さした場合には、一体どういうことになりますか。坂本武という人物、これも十八日に負傷している。これは東大病院眼科登張医師診断しております。これはほとんど失明に近かったのが、ようやく薄くもりしながら目がなおってきた。これも列品館屋上でもってガス直撃弾を受けた。そこでしゃがみ込んでしもうて倒れてしまった。ねらい撃ちされたのが、右の目に命中したとなっておる。あお向けに倒れてしまった。これは法文一号館からねらい撃ちされたのです。小山和俊、これは一月十九日に負傷しております。これは警察病院耳鼻科の清水という医者診断している。これは安田講堂の中の三階で直撃弾を受け、距離はおよそ十五メートルのところから撃ち込まれた。たまは右の耳のうしろに命中し、爆風ではね飛ばされて気絶した。今日、脳に非常な故障ができて、そして入院状態である。脳の中枢の障害はまだなおらない。それから村谷という人物、これも警察病院治療を受けた。これも法学部の研究室屋上催涙弾直撃を受け、左足、右腰打撲挫創右手指挫創、こういう医者診断斉藤隆男、これも警察病院眼科宮永医師治療を受けている。これはやはり直撃弾だ。そうして呼吸が困難になり、からだ全体が熱く、痛く、そのまま倒れた直後逮捕された。右目の角膜に傷がついて、濁ってしまった。左目かすみがかかったようである。両目とも受傷後五日間は全く開けられなかった。いまでもかすみが取れず、視力が低下しておる。一ノ瀬憲明、これは一月十九日負傷している。これは警察病院で外科の赤川という医者から診断を受けている。これも催涙弾直撃です。片山茂雄、これも一月十九日負傷している。これは安田講堂の中で、これも催涙弾直撃を受けている。これは日赤中央病院眼科宮本医師診断しております。右目はほとんど失明に近かったのが、ようやく助かった。左目は非常に危険性があるという診断です。  こういうようなわけで、実際上調べましたら、これらの人たちは全部直撃弾を受けているのだ。そうしてこういう重傷を負っておる。常にあなたが言うように放物線で撃たれて、それでガスがだんだん出てあれしたというだけなら、こんなけがをするはずはないのだ。こういうりっぱな医者診断がみんなあるわけです。これは一体、どうしてこういうことになるのです。
  24. 川島広守

    川島(広)政府委員 ただいま氏名をあげてお尋ねでございますが、私のほうでもいま名前をあげられた学生につきましては、調査はすべて終わっております。いずれも片山君あるいは一ノ瀬君その他につきましては、それぞれその後門逮捕をいたしておりますし、さらに自余の者につきましても、それぞれ地検のほうに送致をしておる次第でございます。ただいまのお話でございますが、当時の列品館におきまする学生らのあの暴力行為につきましては、テレビ等でも猪俣先生もおそらくごらんになったろうと思いますけれども、火炎放射器を使って警察の車に火をつける、あるいは数百本の火炎びんが投げられるという、まさに警察官自体のほうにとりましても死に至るようなおそれのある、かつて見ない異常な、特異な状況でございましたことは、御案内のとおりでございます。したがって、またガス使用いたしましたのも、冒頭に大臣がお答えいたしたとおりでございまして、しかもこのガスにつきましては、法文研究室からだけ撃ったのではございませんで、この下からも相当数撃っております。したがって、相当数ガス筒によって結局あの列品館鎮圧が可能であったわけでございまして、相当ガス筒を使っておりますので、あるいはその中の幾つかのものは直接からだに当たったということはあったろうと思います。警察官の行ないました職務は、まさに正当な法の根拠に基づいて行なったのでありまして、しかも御案内のとおりに、このガス使用につきましては、事前に十分な警告をいたしたことはもちろんのこと、さらにまた鎮圧の過程の中でも、大学側からも、警察側からも、たびたび抵抗しないでおりてくるように何度も警告したのでございます。それに対しましても、依然として抵抗をやめない。しかも先ほど申し上げましたようなことで、火炎びんをはじめとして、角棒鉄バイブも飛んでくるというような次第でございましたので、万やむを得ない措置としてガスを使った次第でございます。そのうちの幾つかは、直接に学生のからだにあたったということはあったろうと考えます。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 もう一問で終わります。ここに私があげました具体的な人間の調査によりましても、逮捕せられた後に全部なぐられ、け飛ばされということを、手錠をかけたままでやられている。こういうことは、私は一それは、みな警察官も若い人間ですから、敵がい心に燃えてやるかもしれませんけれども、戦争の場合でも、捕虜は虐待しないのが原則でしょう。つかまえて手錠をかけた人間をなぐったりけ飛ばしたり、そういうことは、一体警察としてどうお考えなのか。これは荒木大臣の御答弁を聞きます。
  26. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 御指摘のようなことを警察官がするはずがない。警察官職務執行法のたてまえに基づいて行動したものと、私は信じます、少なくとも信じたいのであります。現場における実情を私自身が把握しているわけではございませんので、いずれは司法権のさばきのもとにすべてが明らかになろうかと思いますが、万一御指摘のようなことがあり、しかもそれが警察官の職務執行法を逸脱し、もしくはその他の関係法令に照らして逸脱しておるとするならば、それはそれなりに法のもとにさばかるべき課題であるとはむろん思いますが、繰り返し申し上げますけれども、さようなことは万々心得ている者どもと信じますので、まず御指摘のようなことは、被害者側の学生の陳述もさることながら、公正な立場での判断にまって、処断すべきはする、それが単なる被害者側の誤認であったことがわかればわかったで明確になろう、そういうことにまかせて、具体的な答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 いまの答弁でありますが、あなたも見ていないのだし、私も見ていないのだ。しかし、私は、こういう実際やられた人間の詳しい供述をここに取ってあるわけであります。しかし、これをも一とにして裁判をやればいいというお考え、それはそうでしょう。しかし、これは人権問題でわれわれが告発しても、検察庁は取り上げないのです。あの佐世保におけるエンタープライズの問題、博多駅の問題、これは私は党の弾圧対策委員長といたしまして告発したのです。ところが、一年もたってから、何らそんな告発事実はないのだ、警察官に落ち度はないのだ――あれは明白なることで、たくさんの証人と、そうして井上大学教授なんかは現場で見ておったのです。そういうものの証拠を全部そろえて出したにかかわらず、もう簡単明瞭に、そんな事実はないのだ、何の違法もないのだと不起訴にされてしまう。いま準起訴手続をやっていますが……。ところが、私は告発者であるけれども、一ぺんも検察庁から意見を聞かれたことがない。一体どういう調べを検察官はやったのであるか。全くどれだけの捜査をやったのであるか、疑問だと思うのです。捜査の実態について聞かしていただきたい。そうすれば、いま荒木大臣が言うたように――どんな目にあっても、これを人権問題として訴えても、人権擁護局も取り上げないし、検察庁でも取り上げないのです。救いようがないのですよ。やりほうだいということになる。あの問題について、警察官は大いに元気が出たでしょうが、われわれとしてはどこへ救いを求めていいか見当がつかない。明白な証拠をそろえて出したのに、どういうことを捜査しましたか。それだけ聞いて、私はこれでやめます。それに対する大臣の所見を承りたい。
  28. 川井英良

    ○川井政府委員 学生数名について取り調べをいたしましたが、この学生は、告発人のほうから特に十四名について取り調べをしてほしいという要望がありましたので、十四名全部について再三の出頭を求めましたけれども、九名の者についてはとうとう検察庁に出頭してもらえませんでしたので、出頭した五名についてのみ取り調べをいたしております。その他一般人についても取り調べをいたし、告発の対象になった警察官、鉄道公安官、延べにしまして百数十名の者について取り調べをするとともに、当時現場において一首数十枚の写真その他かなりの証拠品が押収されておりますので、そのようなものについても詳細な取り調べをいたした結果、先ほど御指摘がございましたように、三月二十五日、告発にかかるような事実を認める証拠は十分でないということで、不起訴の処分をした、こういう報告を受けております。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 今度こういう問題についてわれわれが法務省人権擁護局なり検察庁へ出した場合に、法務大臣は、これはあなたもわれわれと同じような国会議員から大臣になられたので、人権擁護等のことにつきましては、警察官僚や検察官僚とは違ったニュアンスを持っておられると思いますが、あなたの御覚悟を聞かしていただきたい。
  30. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 いま先生のおっしゃるような場合には、もちろん慎重に検討いたしまして対処したいと思います。
  31. 高橋英吉

    高橋委員長 畑和君。
  32. 畑和

    ○畑委員 時間がきわめて少ないので、次の方が質問をする間のつなぎとして、一点についてだけ、法務当局並びに警察のほうにお聞きいたしたい。それは、私がこの前この法務委員会で、かつて去年の臨時国会でしたかに質問をした件であります。それの決着が最高裁でついたものですから、そのことについて関連して聞きたいのです。  それは、国学院大学の映画研究会のフィルム押収事件でございます。この事件は、当時私もここで申し述べましたけれども、捜査、押収のやり方がきわめてきたないというようなことが一点であります。同時にまた、押収の必要性というものが検察当局だけの専権にまかされておるものかどうかという点でございます。国学院大学の映画研究部員であったA君という人は、十九歳の少年でありましたが、その人が、昨年の一〇・二一国際反戦デーの新宿デモ事件のときに撮影班の連絡員として行動しておったということで、そのあとのデモでつかまったときに、いろいろ調べた結果、この学生がその事件のときに、いま申しましたように映画のフィルムにとった新宿事件の騒乱の状況、そういったものの撮影の連絡員をやったということで、そのフィルムで撮影したという事実がわかった。これを警察の当局では、ぜひ立証上必要だというようなことだったと思いますが、押収した。ところが、この人はちっともフィルムに写っていないというようなことで、準抗告をした結果、映研側が勝ったわけですね。そのあと、今度はさらに別の理由で、騒乱事件に関係したほかの人々の証拠を理由として、別の差し押え令状をとった。そうして一たん返したやつをすぐまた押収をして、そしてそれがまた、準抗告をした結果、前のは目黒決定だったが、今度は竜岡決定というので、二度目もまた捜査当局の黒星になった、こういうことであります。その結果最後に、最初の事件の決定に対して検察側と警視庁の公安一課で連名で特別抗告をした。要するに捜査の必要性というようなことは、これは全部捜査当局の専権に属するのだ、こういうのが主たる主張だったと思うのです。その私が質問した当時は、まだそれが問題になって事件が最高裁に回ったばかりのときでありましたが、その結果が、ことしの三月の中旬ごろに最高裁の判決が出まして、その結果、上告が棄却になった、こういう事件についてであります。まあ、この判決は、私がその当時も検察当局に対しまして質問した点を是認しているような形になったわけでありまして、私は、この判決の結果の行くえを見守っておった。ところが、ちょうどそういうぐあいになったわけでございますけれども、この事件については、先ほど申し上げましたように、私の一つの主張は、一たん準抗告で検察側が負けた。にもかかわらず、今度は別の理由でそれを用意しておいて、返すやいなや、目の前に並べて、すぐもう次の押収令状を出してまた押収してしまった。このやり方がきたないじゃないかというのが、一つの主張なんです。同時にまた、先ほど言ったとおり、報道の自由というか、表現の自由というか、それと捜査の必要性というものはどちらが優先をするのかというような問題についてでありましたけれども、今度の判決は、結局、上告棄却ということになった。まあ、この判決文の中では、表現の自由という問題については明らかに触れてはおりませんけれども、間接的には、こうした具体的の場合に両者の利益を比較考量をしてやはりやらなければならぬのだ。同時にまた、その必要性というものについての判断は、検察官の専権に属するものではなくして、裁判所もこれに対して判断をなし得るんだ、こういうことが理由でありまして、上告の理由はないということで退けられた。直接的には表現の自由には触れておりませんけれども、結局、やはり間接的には表現の自由というものを重く見て、それと捜査の必要性との比較考量の結果は、捜査の必要性をそれほど重く見る必要はない。片一方のほうが重要なんだ。利益の比べっこの結果はそういうことになるということで、上告棄却になっておるわけです。この点について、捜査当局、検察当局のほうに承りたい。どういう見解を持っているか。私は、これを強く指摘したんですが、いずれは私は上告の結果を見守って、ひとつ捜査当局、検察あるいは警察当局に対して、この結果どういう考えになっておるかということについて、また、判決についての考え方等をもひとつ聞きたいと思っておったのです。ちょうど時間がたいした時間じゃありませんから、局長にこの際聞くわけです。
  33. 川井英良

    ○川井政府委員 ただいま御指摘のとおり、三月十八日に最高裁で、検察官から行ないました特別抗告が棄却になりました。  棄却の主たる理由は、検察官は憲法違反を主張したのでございますけれども、憲法違反の主張にならない。単なる事実誤認か訴訟法違反の主張にすぎないということで棄却になったわけでございます。また、その傍論におきまして、ただいま御指摘のように、検察官は、この押収捜索令状の場合において、押収の必要があるかどうかという判断は、原則として捜査官にあるんだ、こういう主張をいたしましたけれども、この最高裁の決定は、必ずしもそうではなくて、抗告を受けた原裁判所がその必要性の有無について判断をしているけれども、その判断をするということは正当なんだ、こういうふうな判示をいたしておるわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、最高裁判所の決定でございますので、この趣旨を尊重いたしまして、今後は捜査当局が押収捜索を行なう場合におきましては、事件との関連性、すなわちその必要性の有無について慎重な判断をして、誤りなきを期していきたい、こういう覚悟でございます。
  34. 畑和

    ○畑委員 結局、捜査の必要のためなら何でもできるというような考え方が、これでチェックをされたことだと思うのです。やはり捜査のために幾ら必要だといっても、ほかのいろいろな条件を考え合わせて、それでやらなければならぬのだということを、私は判示していると思うのです。とかくいままでのやり方は、先ほど言ったように、捜査の必要性というのはもう検察官の専権に属するんだといった考え方が強過ぎたのではないか。その結果、ここの場合にも、結局は、表現の自由、報道の自由、こういったものとのからみ合いで、やはりその点を十分に考え合わせなければいかぬ、こういうことを警告した、ひとつ歯どめの役割りを果たしたと思うのです。そうでなければ、どんどんエスカレートして、どこまでいくかわからぬ、こういうことであります。先ほど猪俣先生からも言われておりましたように、学生のいわゆるゲバルト、三派全学連の連中の最近のゲバルト等については、必ずしもわれわれとしても同意できないのでありますけれども、そうかといって、やはり学生にも人権があるわけでありますから、そういった点もひとつ十分にこれから判断をしてもらいたいと思う。  大体こういったもの、まあ当面の当事者は検察庁でありますけれども、この事件なども一応連名で警察も出しておる。また、実際に捜査を最初担当するのは警察なんだから、警察はどういう考えでおりますか、警察官は。
  35. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 法務省からお答え申し上げましたような趣旨と同じ趣旨において、警察当局としましても、最高裁の判決の趣旨を体して捜査上遺憾なきを期したい、そういう考えでございます。
  36. 畑和

    ○畑委員 まあいま大臣もそうおっしゃったけれども、実際の運用をするのは末端の警察官でありますから、やはりよほど十分に徹底をしてもらわぬといかぬと思う。そうでないと、こういった事件が次々と出てくるわけであります。  それから、これに関連をするけれども、この間猪俣委員からも話があったと思っておりますけれども、例の東京都その他の警察関係の条例、公安条例の問題、あれの適用の問題でも、ずいぶん最近、下級審で憲法違反あるいはその運用が間違っておる、こういったような判決が出ております。かつて最高裁で、憲法違反ではないということが出てはおりますけれども、その後次々と、それにもかかわらず、下級審がそういった判決を下しておるということは、これはやはり考えなければならぬ。幾ら最高裁の最終的な決定でこういう判例が出ておるといっても、現場の裁判官はそれにも不服なんだ。結局、それでそういった新しい、逆の判決を次々とやはり下しておるんです。この事実をやはり直視しなければならぬと思う。最高裁でこうきめておるんだから公安条例は憲法違反ではないということで、それを乱用してはいけない。その乱用を戒めるために、各地でそういうものが出ているわけであります。しかもまた、そういう点について仮処分等が出ますと、総理大臣異議を申し立てたことは、もう何回もある。五回ぐらいありますかな、ああいうことはいかぬと思う。そういうことはやはり法を無視しておる。結局、行政権が司法権のほうに介入していることになると思うのです。こうした公安条例の問題等についても、やはりこれと同じ考え方がひそんでおるんじゃないか。それをやはり根底から払拭していかなければならぬ。捜査の必要は認めます。認めるけれども、それをよほどあちらこちら考えて、そうして実際の適用を誤られぬようにしなければいかぬ、かように思うのであります。この点はひとつ十分気をつけて、細心の注意を払ってやってもらいたい。  もう時間がきたようですし、松本君が何か質問するようですから、以上、簡単にその点だけ質問して終わります。
  37. 高橋英吉

  38. 松本善明

    松本(善)委員 副長官来られる前に、ちょっと法務大臣にお聞きしておきます。  松川事件についての国家賠償の裁判が、この四月二十三日に東京地裁で判決が行なわれるわけであります。これにつきましては、赤間前法務大臣が、なるべく早く損害賠償のほうも片づくことを希望しておる、それからなるべく早くこの訴訟が完了するよう私希望しておる、こういう趣旨を言っておられたわけでありますが、この松川事件につきましては、もう二十年になるわけです。そしてこの刑事事件では、被告であった人、そしてこの国家賠償の裁判では原告であった人が、三人ももうすでに死亡しておる、こういうことで、これはもう人権の尊重という観点から見ましても、何としても早く解決しなければならぬ。この人たちが勾留されました延べ日数は、百十二年百九十六日という膨大な期間ですね。無罪になった人たちが勾留されておった。これについては、やはり国家は賠償すべきものは賠償するということにして、早く決着をつけるということが何よりも大切なことではないかと私は思うわけであります。この地裁の判決が出まして、かりに国側が負けた場合に、また控訴するというようなことになりますと、これはまたたいへんな長い期間がかかり、先ほど読み上げました赤間前法務大臣の意向とも違うような結果になると思うのです。これは早急に解決をするという趣旨で、判決が出ましても控訴をしないようにする、かりに国が負けても控訴しないようにするということが、必要なことではないかと思います。この点についての法務大臣の御見解を伺っておきたいと思うわけであります。
  39. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 いまお話しの松川事件に関します国家賠償の第一審の判決はいつあるかまだ存じませんが、その判決がございました場合に、私どもといたしましては、内容をよく検討いたしまして、法務省の最終態度をきめてまいりたい、さように考えております。
  40. 松本善明

    松本(善)委員 一般的にはそういうことであろうかと思いますが、法務大臣はいつあるかということを御存じないということでありますが、実は四月の二十三日です。もう間もなくなんです。もうすぐなんで、この訴訟の見通しについても、ある程度見当がついていなければならないはずなんです。それは一般的に言えば、判決を見てからという話もわかるのですけれども、しかし、これはいままでの松川事件の経過その他を見ました場合に、いずれにしても早く決着をつけなければならない。これは前法務大臣も、判決を見る前から言っておることであります。こういう観点から――もちろん判決が出た段階で言うことといま言うこととは違うでありましょうけれども、しかし、いまの段階でも、判決を予想して――予想してといいますか、判決が出ることがもう間近になっておりますので、そういう場合の措置として、ただ一般的に判決を見てからというだけでは済まないことではないかと思うのでありますが、重ねて伺いたいと思います。
  41. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 松本さんのお考えもわからぬわけではございませんけれども、やはり私ども当局者といたしましては、判決の前にあれこれ申し上げることは差し控えるべきだと考えますし、また国家賠償のことでございますから、なかなか大事なことでございますので、慎重を期しまして、判決がおりましたときに慎重に検討してわれわれの態度をきめなければいかぬ。松本さんのお考えもよくわかります。しかし、判決が出る前に類推してあれこれ申し上げることは、差し控えたほうがいいんじゃないかと思います。
  42. 松本善明

    松本(善)委員 在日朝鮮人の帰国の問題でありますが、これは政府の中でも各省がいろいろ関係をしておりますが、この朝鮮民主主義人民共和国の赤十字会の代表の入国問題、これについて木村副長官にもいろいろこれからお聞きしたいわけでありますが、法務大臣に一言でけっこうですが、これはやはり人道的な見地から法務省としても、あとから詳しく聞きますけれども、早急に解決するようになされるべきだと思いますが、法務大臣の見解を一言お聞きしておきたいと思います。
  43. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 いま副長官見えましたので、簡単に。その点につきましては現在も努力しておりますが、なかなかむずかしい状況でございますが、非常な熱意を持ちましてこれを推進してまいりたいという考えでございます。
  44. 松本善明

    松本(善)委員 木村官房副長官にお伺いしたいのでありますが、在日朝鮮人の帰国の問題は、人道主義的な事業としてたいへん多くの人たちの関心を集めてきたわけであります。朝鮮民主主義人民共和国代表の入国についての手続の問題が問題になっていて、最近その点についての合意が、朝鮮赤十字会とそれから日赤との間のやりとりの中でできなかったということが報道をされております。この問題の経緯について御報告いただきたいのと、それから、いずれにしても合意を取りつけて、帰国事業が円滑に行なわれるように何としてもしなければならないと思うのであります。その点につきましての政府の考えをまずお聞かせいただきたいと思います。
  45. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 まず、基本的に申しますと、先ほど法務大臣がお答えしましたとおり、この北鮮帰還問題は、国と国との外交関係を越えた人道的問題でございますので、従来政府といたしましても、そういう見地に立ちまして、あくまで人道的問題として処理する、こういう方法をとってまいっております。しかしながら、御承知のように、もうすでに八年も経た一昨年の時点において、一応帰還事業という特別方式による帰還は打ち切りまして、その後これは従来もそのとおりでございますが、日赤と北鮮赤十字との間の問題として取り扱われております。政府としては、その両赤十字社間の協定を支持しております。しかしながら、特別方式による協定帰還の打ち切り後は、一応両赤十字社同士でも無協定の時期を迎えております。こういう人道的問題の扱いといたしましては、再び両赤十字社間で何らかの形による暫定期間を設けまして、これをなるべく早く進めるように努力してまいりましたが、なかなか両赤十字社のいろいろ立場の相違もございますし、はかばかしく進んでおりませんが、最近になりましてから、ようやく野党の方々のいろいろなサイドからの側面的な御協力もありまして、北鮮赤十字におきましても相当柔軟な態度に変わってまいりました。そこで、日本赤十字社のほうから、もちろんこれは政府の方針のもとにでございますけれども、朝鮮赤十字社の代表の入国問題について簡易な手続をとることについて、朝鮮赤十字に提案をいたしました。ところが、北鮮赤十字のほうでは、その提案の内容について御意見があるようで、これを拒否してきました。私どもとしてはたいへん残念に思っておりますが、いまだその打開については曙光を認めないまま推移しておるのが、現状でございます。
  46. 松本善明

    松本(善)委員 このことにつきましては、副長官にも私再々お会いもいたし、いろいろお話もしたわけでありますが、やはりこのコロンボ会談で合意をしたときには、政府もこれについて妥当な考慮を払うようにするということで、日赤にその態度を伝えたようであります。この立場で進んでいきますれば、やはり朝鮮赤十字会との間で合意を取りつけるようないろいろな努力を払わなくちゃならない。現在の段階では、その合意が得られないということになったようであります。やはり新しい提案をするとか、朝鮮赤十字会が同意できるような提案をするということで、何としても打開をしなければならない事態になってきておるんじゃないか。この帰国の問題が進みませんので、帰国を予定をしておった在日朝鮮人の方で自殺をするようなことになっている方もできておるということを聞いております。そういう事態になりますと、われわれあらゆる努力というものを、この問題についての経過から考えまして、やらなくちゃいけない。政府としては、やはり次の打開策といいますか、朝鮮赤十字の代表が入国できるような方法をどうしても考えなければならないと思うのです。その点についてどういうふうにお考えになっておるか、ということについて、もう少しお話しいただきたいのであります。
  47. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 日本赤十字から朝鮮赤十字に、先ほど申し上げた入国手続の簡易化についてある提案を行ないましたのが、三月三日でございます。それに対して北鮮赤十字からの電報による拒否の回答が三月十一日、こういうことでございまして、まだ政府部内でこの問題の今後の取り扱いについては協議いたしておりません。と申しますのは、日本政府といたしましても、また日赤といたしましても、先ほど申し上げましたこれは人道的に扱うべきであるという基本方針のもとにやっておりますが、どうもこの問題について政治的意図がもしかりにありとすれば、これはたいへん残念であり、そういう意味におきまして、あくまで人道的処理を行なう場合には、日本赤十字から提案した簡易手続については、当然これは北鮮赤十字も御同意が願えるという確信のもとに行なったものでございます。そういう意味におきまして、その後の措置をどうするかについては、政府部内でもまだ協議をする段階に至っておりません。
  48. 松本善明

    松本(善)委員 この在日朝鮮人の帰国の事業がずっと続けられてきたときには、すでに協定が切れたという立場政府はとってはおりますけれども、しかし、朝鮮赤十字会の代表の人国について特別の考慮を払って、スムーズにやってきたわけであります。これがいまそのとおりやれないというはずもなかろうと思うのであります。私は、政治的に、この帰国事業が開始をされると困るということで、いろいろ韓国やその他から妨害が入っておるということも、新聞報道では聞いておるのであります。人道主義的な見地から考えれば、前にできたことがいまできないということもなかろう。それから政府が今度提案をした国際赤十字を通じてというお話も、これに限ったことではなかろう。こういうことにこだわらずに、やはりお互いに合意のできる方法で一これは在日朝鮮人の帰国という全体の事業から見れば、人国の手続の問題などというのは、まことに小さなことではないか、解決しようと思えばすぐできるはずのことではないかと思うのであります。この点について、とにかく日本政府はやってきたわけであります。人道的な見地からするならば、これは打開策は幾らでも考えられると思うのであります。なぜそれができないのかということについて、どういう障害があるのかということについて、御説明をいただきたいと思うのであります。
  49. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 もちろん問題は人道的に処理をしなければならないと思います。しかしながら、特別協定が打ち切られた後におきまして、これは当然個別出国というのがたてまえでございます。これは北鮮に限らず、韓国あるいはその他の諸国におきましても、当然とっておる原則であります。したがいまして、こういう国の政策の基本に関することでございますから、人道的処理の立場においてできるだけ便宜をはからなければなりませんが、そこにおのずから限界があることは、御承知のとおりであります。したがいまして、わがほうが人道的立場から普通の個別出国と異なるような便宜の措置、あらゆる最大限のことを考えましたときに、当然同じ人道的立場に立つなら、北鮮赤十字においてもそのような立場でこれに対応するのがほんとうではないか、こう考えます。これはそういう意味の人道的な立場における相互主義ということに立って、私も考えております。
  50. 松本善明

    松本(善)委員 しかし、この問題につきましては、副長官は長く携わっておられるのでおわかりと思いますが、在日朝鮮人が日本に来ました経過を考えますと、これは好んで来たわけではないわけであります。そういう点を考えると、日本政府の責任というのはやはり大きい。やはり帰りたいという人がいる限り、この事業は続けなくちゃいけない、こういうことではないかと思うのであります。政府のほうも、いわゆる個別出国の手続では不十分だということであったからこそ、コロンボ会談のときには、入国手続を簡素にすることについて妥当な考慮を払うようにするということについての了解を、コロンボの代表団に与えられたのだと思うのです。このときの気持ちは、どういうことを考えておられたのか。もちろんその合意のできない方法を幾ら提案しても、しかたがないと思うのです。合意ができて、そうして簡素にできる方法を提案しようということになったんじゃないかと思います。そのコロンボのときにこの問題について政府が考えていたことと、それからその後の考えは変わっておるのかどうか、その辺をお聞きしておきたいと思うのですが……。
  51. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 基本的な立場では、変わっておりません。したがって、その当時――代表の入国問題については、御承知のとおり、北朝鮮の代表が入国する場合におきましては、当然モスクワあるいはナホトカにあります日本領事館に本人が出頭して手続をするというのが、これは世界共通の通例のことであります。しかしながら、本人が出頭してやりますのは相当手間どることでもございましょうし、その意味におきまして、いままでの沿革等を尊重するために、いま申し上げたような簡易手続を特に認めるというのが、政府立場でございます。基本的な考えは、何ら変わっておりません。
  52. 松本善明

    松本(善)委員 この代表の入国問題ですけれども、いわゆる帰国船に代表が乗ってくるということについては、政府もコロンボでは同意をしているわけです。来るということは前提にしておりますから、これは当然に朝鮮赤十字会のほうでも同意できる、話をつける、こういうかまえだったと思うのです。そうだとすれば、いま事実としてはとにかく合意ができなかったという状態になっておるので、合意のできるようなあらゆる努力を払う――おれのほうは最善の努力を尽くしたんだからもうやめた、こういうことではなくて、やはりそのための努力を払うということが、どうしても必要ではないかと思う。まだ具体的な相談をしておられないということでありますけれども、そういうような方向で合意のできるような努力を払う気があるかどうかということについて、最後にお聞きしたいと思います。
  53. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 非常にきびしく申し上げましたが、元来がこれは人道的に扱うべき問題であるので、ただ、そういう国と国との外交関係、あるいは入出国に対する基本原則、これはあくまで国として、政府としても当然守らなきゃなりませんが、その許す範囲において、両赤十字社におきまして、いろいろこれから話し合いが行なわれると思います。その話し合いを政府は支持してまいりたい、そのための最大限の努力をしたい、こう考えております。
  54. 松本善明

    松本(善)委員 もう一つだけお聞きしておきますが、この交渉の経緯ですね、人道的な立場でやられておれば、別に公表しても差しつかえないものであろうと私どもは思うわけであります。やはり国民にもこういうことになっておるということを明らかにすべきだ。これは具体的にはあとから日赤にもお聞きしたいのでありますが、これについては秘密にする方針であるのかどうか、公表していいことではないかと思いますが、その点についての御意見を伺いたいと思います。
  55. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 もちろん両赤十字社の間の了解を得れば、政府としてもかまわないと思います。
  56. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、副長官に対する質問はこれで終わります。
  57. 高橋英吉

    高橋委員長 この際、田邊参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。北朝鮮帰還問題について、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  なお、質疑をされる委員各位に申し上げますが、田邊参考人は午後一時には退席いたしたいということでありますので、参考人に対する質疑は、それまでに終わらせていただきたいと存じますので、御協力願います。米田東吾君。
  58. 米田東吾

    米田委員 田邊さんにおいでいただいておりますが、お急ぎのようでありますから、田邊さんにお聞きする部分を先に申し上げますが、関連して官房副長官並びに関係の各省からもお聞きをすることになりますので、よろしくお願いしたいと思います。ただいまも共産党の松本委員から御質問がありましたけれども、私も帰国の問題につきまして、当面の政府の対策、措置というものについて、きょうはぜひお伺いしたいと思っているわけであります。  それで、まず日赤の田邊社長にお伺いしたいのでありますが、あなたのほうで、北朝鮮の帰還の問題につきまして政府と意見をまとめられて一つの提案をされましたが、これが三月三日、それが三月十日をもって朝鮮赤十字会から断わられたという経過だろうと思うのであります。この点について、どこが断わられたのか。順序からすると、どういう提案をしたかということをまずお聞きしなければならぬと思いますけれども、時間もありませんので、私も大体わかっておりますから実は言うのでありますけれども、朝鮮赤十字会のほうでどこを断わってきたのか、その点はどういうことでございましょうか。
  59. 田邊繁雄

    田邊参考人 入国申請の手続の過程に第三者を介入させてくることに反対である、一言で申せばそういうことでございます。
  60. 米田東吾

    米田委員 そうしますと、第三者を介入させるということは、具体的には国際赤十字を介入させることについてはだめだ、こういうことでございますか。
  61. 田邊繁雄

    田邊参考人 そうでございます。
  62. 米田東吾

    米田委員 そうだといたしますと、私は朝鮮赤十字会があなたのほうに返電されました電文をここに持っておるわけでありますけれども、この内容からいきますと、もともと国際赤十字あるいは第三者といわれるものをこの関係で介入させるとか、あるいは経由させるとか、いずれにしても、この帰国の問題で第三者、いわゆる国際赤十字を通すということについては、いままで全然そういう話はしておらぬし、またコロンボ会議においても、あなたのほうで去年の九月二十八日にも書簡をもって一つの提案をなさっておるようでありますけれども、その中身でも、そういうようなものはない。唐突として出てきたということを朝鮮側として非常に強く印象しておられるようでありますけれども、この経過は、そういうことなんでありますか、一体どうなんでありますか。
  63. 田邊繁雄

    田邊参考人 コロンボ会談での話し合いでは、入国するためには政府の許可が必要である、具体的には渡航証明書の発給が必要である。したがって、そのための申請の手続はとる。未承認国の人が日本へ入国するためには、日本のだれかが在日保証人となって入国の申請手続をとってやるというのが一般の例でありますので、赤十字が一般の例に従って入国手続をとります。それから政府のスクリーン、いわゆる許可でございますが、それが済んだあと渡航証明書が発給されるのは、具体的には在外公館と領事館である。具体的にはナホトカあるいはモスクワであります。政府の方針によりますると、そこに出頭を要するということであったのでございますが、それをできるだけ簡単にしてもらいたいというのが向こうの要望であり、赤十字も、これは政府の権限に属することでございまするので、政府において妥当な考慮を払っていただくように赤十字としては努力するということを申したわけであります。したがいまして、赤十字といたしましては、できるだけの努力をいたしまして、政府におきましてもナホトカあるいはモスクワに一々出頭を要しないということにしていただいたわけでございまするが、在外公館、総領事館でございますれば、ナホトカとかモスクワに限ったわけではございませんので、政府におきましては、この際ジュネーブの総領事を通してそれを渡す。その際、政府としては国際赤十字委員会を窓口として、国際赤十字委員会を通じて――俗に通じてと申しますのは、具体的には朝鮮赤十字会が国際赤十字委員会に通知をすれば事足りる、こういうふうにおきめになりましたので、非常に簡略になりますので、われわれもけっこうだと思いまして、向こうにそれを提案したわけでございます。したがいまして、私どもはこれをさきに説明した方法にかえてということを向こうにはっきりいってやったのでございますが、御指摘の点は、コロンボ会談では、国際赤十字委員会等第三者を申請の中に介在させることについては、具体的には話をいたしておりません。
  64. 米田東吾

    米田委員 それで、問題意識でありますけれども、これは田邊さんも政府の木村副長官も同感だと思いますが、要するに、この朝鮮赤十字代表の入国の問題だけが解決をすれば、約二年にわたって努力してきたこの問題は実を結ぶ、この段階において解決すべきものがあるとすればその問題だということで、私は焦点ははっきりしてきておると思うのでございますけれども、その点の認識は、田邊さんも木村副長官もそうだと思いますが、いかがでございますか、ひとつお聞きをしておきたいと思います。
  65. 田邊繁雄

    田邊参考人 私どもも、ただいまの御指摘のように考えております。朝鮮赤十字会からまいりました電報におきましても、九月二十八日のわが方の書簡による提案に対して、そう異なった意見は持っておらない、入国手続の問題と、もう一つ名称あるいはことばづかいの問題について若干訂正を要するということをつけ加えておりますが、大きな問題としては、この入国手続の簡素化の問題であるというふうに向こうもいっております。
  66. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 当然問題意識としては同様でございますが、ただ問題は、政府といたしましては、入出国問題については、当然政府の方針として守らなければならぬ根本だろうと思いますが、それを人道的扱いのためにそこまで譲ったというのが現状でございますので、そういうことについての問題意識は、これはあくまで人道的処理という意味において、北鮮の側においても当然持ってもらわなければならない問題だと思います。
  67. 米田東吾

    米田委員 わかりましたが、私もやはり、朝鮮側から出ておる声明、あるいは朝鮮赤十字会の返電、それらを見まして、朝鮮側もそういう意識をされておるというふうに私は確認をしておるわけであります。そういう意識というのは、代表の入国問題、その手続の問題だけである。したがって、この点につきましては、いま田邊さんも、それから木村副長官からも、基本的に同意されておる。意識としては同一であるということが、はっきりわかったわけであります。  そこで、私は田邊さんにお聞きしたいのでありますけれども、いまあなたもお話しになりましたように、あなたのほうで三月三日に打たれました電報では、さきにわがほうが説明した方法にかえて、という前書きがついておるわけであります。これらの前書きが特にここへ付記されなければならなかった事情というものは、やっぱりコロンボ会議の経過にある。そのことはいまあなたからお話がございました。そこで問題は、コロンボ会議のこの面についての経過というものは、私ども、あまりあなたのほうでは発表されませんし、あまり詳細に知ることができないわけであります。しかし、この問題を打開するには、そこらあたりの経過をやはりもう少し知らなければならぬ。そしてその上に立って、どこに問題があるか、木村副長官が強調されておるように、朝鮮側に譲ってもらわなければならないものがあるとすれば、そういう点についても、私は努力をしなければならぬと思う。問題は、そのコロンボ会議のそういう経過というものは、ほんとうはわれわれは知らされておらないのであります。そこで、どういうやりとりがあったのか、これは詳細は時間がありませんから私は必要ありませんけれども、特に、あなたのほうでは、提案にあたって、コロンボ会議の経過にかんがみて、従来の説明にかえてこの提案をしますということを加えるような事情があったわけでありますし、朝鮮側もまた、従来の経過とコロンボ会議の説明からして、約束に反するのではないか、政府の、日赤の言明に反する、第三者を介入させるという方法をとってきておるじゃないか、そういうことでもって拒否されておる。焦点がそこにあるようでありますから、ひとつコロンボ会議のこの部分についてのやりとりというものを、この委員会にぜひひとつ報告して、答弁していただかなければならぬと私は思いますから、聞かしてもらいたいと思います。
  68. 田邊繁雄

    田邊参考人 政府の御方針によりますると、船員以外の者の入国については政府の許可を要するということが、はっきり示されたのであります。私ども折衝にあたりまして、そのことを向こうに伝えました。向こうもそれを了承いたしました。したがって、入国に際しては、政府に対して赤十字を通して入国の許可の申請の手続をとる、こういうことでございます。そのあと、いわゆるスクリーンの済んだあとの手続としましては、ナホトカとかあるいはモスクワにある領事館や総領事のところに出頭して、そしていわゆる渡航証明書の発給を受けなければならない。そのためには、配船のつど、三人ないし四人の朝鮮代表がナホトカ、モスクワの総領事館に出頭して証明書を受けなければならないというのが、政府の一般の原則でございます。そのことも伝えました。向こうでは、それを簡素化してもらいたいというのが、向こうの要望でございます。その間いろいろ、向こうでは、たとえば具体的には新潟で渡してもらいたいというようなことを言ったように記憶いたしております。その点につきましては、われわれもいろいろと政府と交渉に際して打ち合わせしたのでございますが、なかなかむずかしい問題でございまして、これにこだわっておったのでは会談がうまく進みませんので、これはひとつ折れてもらいたい、この点については今後政府において妥当な考慮が払われるように赤十字も努力していくということだったわけでございます。そこで、私のほうで向こうに提出した会談要録案の中には、そういうこまかい手続ごとは書いてございません。入国手続を簡素化、簡略化することについては、政府において妥当な考慮が払われるように赤十字として努力する。それからもう一つ、入国の申請については、日本赤十字社が在日保証人となって、入国許可をとりつけるのに必要な手続を行なう。これも当然なことで、書いてあるのであります。したがって、向こうさんが約束に反したということを言っているのは、どれをさすのかわかりませんが、私は、これは少し行き過ぎた非難かと思います。会談は妥結していないのであります。目下折衝中であるのであります。形としてはまだ正式な約束ができておらないのであります。九月二十八日の書簡においても、それを提案したのでございます。ただ、話はそういう話でございますので、私どもは簡素化に努力した結果、具体的に非常に簡素化になったのであります。御質問の経過につきましては、そういうような状態でございます。
  69. 米田東吾

    米田委員 それで、田邊先生、とにかくコロンボでは、私どもももちろんでございますが、いまここにおいでの木村副長官も、それから法務大臣並びに政府機関のだれも、もちろんおらないわけであります。もっぱらあなたが折衝されているわけでありますが、したがって、この経過は、どうしてもあなたしかわからぬ。したがって、私ももう一回念を入れて聞くのであります。いまのお話で大体わかったのでありますが、そうしますと、まとめますと、日赤としては、朝赤代表の入国許可の問題については、日赤がかわって手続をとる、こういうことをまずあなたのほうでは提案をされておる。その日赤がかわって代理手続をとるということについては、朝赤側も了承をされておる。この点については了承されておる。もちろん、前提となる代表の数についても、三名ないし四名――五名以内ということでは、もうすでに意見の一致を見ているわけであります。そうして、代理申請までは、手続の面、それから身元引き受けの面、あるいは必要な写真とか、そういうものを加えまして、これはもう日赤が全部やりますということについては、あなたのほうの提案があり、朝赤側もそれを了とされた。意見の不一致はないことは、確認してよろしゅうございますね。
  70. 田邊繁雄

    田邊参考人 さような専門的な、代理申請ということばは使っていなかったように記憶いたしております。必要なる手続は赤十字が在日保証人となっていたします、ということは申しました。
  71. 米田東吾

    米田委員 代理申請ということばは、私もしろうとでほんとうは正確かどうかわかりませんけれども、よくそういうことを聞くものですから使ったわけでありますが、要するに、あなたのほうはかわって手続をするということですね。それからそれを受けて、政府としては、当然、要するに具体的には入管としては必要な審査をして、この許可をするかしないかという通知をする。そうしてその段階で問題になったのは、その渡航証明書をどこで渡すか。いまのあなたのお話では、しかも官房副長官お話でも、大体それは政府の関係の機関に出頭してもらって渡す。あなたのほうでも、ナホトカとか、あるいはモスクワとか、ジュネーブとか、そういうところに出向いてひとつ受け取ってくれ、こういうお話をなさった。これに対して朝鮮側のほうでは、やはり一番具体性があるのはナホトカ。そのナホトカに対しては、いまの事情からすると、なかなか日数がかかって間に合わないから、したがって、何かもう少し簡略な、簡便な、簡素な、便宜的な措置を考えて渡してくれる方法をひとつ用意してくれないか、こういうことになって、いろいろやりとりがあって、議事要録でありますかあるいは合意書でありますか、それには政府権限に属する事項もこれあり、ここではきめられないということで、簡素化について努力をするという表現でもって了解した、こういうことだと思うのですが、間違いございませんか。
  72. 田邊繁雄

    田邊参考人 大体そのとおりでございます。ただ、この問題につきましては、非常に時間がかかりまして、ナホトカに行くのに非常に不便である。一たんイルクーツクに出て、イルクーツクからずっとナホトカに行かなければならぬので、それよりはモスクワに行ったほうが近いのだという話も出ました。それの詳しい説明もありました。最後には、ナホトカとは限定いたしませんでしたが、とにかく在外領事館に出向してもらいたいということを申したわけであります。
  73. 米田東吾

    米田委員 大体ここで明らかになったわけですけれども、いずれにしても、朝鮮側は手続その他日本の法令に従って措置をするということについては、原則的にはみんな了解されておる。ただ全く異質な一それに従うんだけれども、実際上受け取りにナホトカに行くとか、そういうことではなかなか現実には間に合わないから、三日も四日もかかってそれでは困るから、ひとつ新潟で渡せるように処置をしてくれないか。このときのこの議事録の関係を考えると、こういうことになって、さっき私が申し上げましたように、新潟で渡すかどこで渡すかということになれば、これは政府の関係に属するから、日赤が直ちに承知しましたというわけにいかないので、帰ってそういう努力をしましょう、なおまた政府も努力をするということをはっきり議事録の中にも明記をして、今日に至っておる。私は、そういうことに明確になったと思います。そうだとすれば、しかも、そのことを一応前提として、九月二十八日にもあなたのほうはそういう趣旨の書簡を出しておられると私は思うのであります。そうだとすれば、私は決して朝鮮側の肩を持つわけじゃありませんけれども、コロンボ会議の経過、それから九月二十八日のあなたのほうの書簡、そういうことからいきまして、これは表には出ておりませんけれども、交渉の関係に当たった朝鮮側としては、これは国際赤十字を通すとか、第三者を入れるなんということは、全くこれは新しいできごと、意表な、唐突なできごと、そうしなければ解決されないなんということは一つも出てないわけですから、したがって、これはたいへんだということで朝鮮側が警戒され、そして結果的には拒否をされた。これは私は、当然のことじゃないかと実は思うわけであります。そこで、そういう経過がわかったわけでありまするので、これは木村副長官にお聞きしたいのでありますけれども、繰り返してあなたから松本さんの御質問に対しても御答弁があったわけですが、要するにあなたのほうの御答弁では、努力をしましょうというその入国代表のビザを渡すことについての努力の中に、今回の国際赤十字を介すということについては入っているんだ、具体的な一つの策が国際赤十字を通して入れるということになったんだ、したがって、コロンボ会議や、政府がいままで日赤に言うて提案をしておったいわゆる簡素化について努力をしますということについては、何らそれに反するものではない、こういう御答弁だったように私は聞いておるわけであります。しかし、これは私はちょっと違うのじゃないかと思います。要するに、国際赤十字、第三者を通すというのは、手続上の問題を離れて、全く別の、異質の問題が一つ加わってくるわけであります。日本の公館、たとえばナホトカとか、モスクワ、あるいはジュネーブとか、あるいは外務省に来いとか、そういうのとは違って、国際機関、第三者を入れる、こうなってまいりますと、これは全然異質の、別の問題に私はなっていくだろうと思います。しかも朝鮮側としては、これはあくまでも日本と朝鮮の赤十字間の問題――朝鮮側は当初は政府間の問題と主張されましたけれども、最終的には赤十字間の問題として今日十年間も続けてきたわけであります。一回も第三者を介して、それを仲介として調停してもらおうとか、あるいはその力を借りなければできなかったという経過は、何にもなかったわけであります。今日の段階になって、この入国の問題について突如として国際赤十字を入れる、朝鮮側がこれは受け入れられないということは、当然じゃないか。しかも手続上の問題とあなたのほうはおっしゃるけれども、国と国との関係は、いま外交関係があるなしにかかわらず――政府にすれば未承認国だとおっしゃいますけれども、しかし、朝鮮赤十字は、厳然たる独立国として、国際的な中ではりっぱな人格を持った、しかも新しい未来のある国だとして評価をされておるわけであります。それが通用しておるわけであります。それに対して、日本は、米承認国なんだから、国際赤十字の何か保証が要る、それを介さなければだめだ、これでは手続の問題を離れて、朝鮮側が基本的に疑わざるを得ないということは当然じゃないかと私は思うのでありますが、そういう関係について、賢明な副長官もおわかりだと私は思いますけれども、その点はどうでございますか。そういう配慮はなされなかったわけでありますか、お聞きしておきたいと思います。
  74. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 まず、基本的な考え方と申しますか、日本におられる北鮮の方々をその祖国へお返しするというのは、私はもっともだと思います。そういう意味から申しますと、そのためにこういう特別の出国者あるいは入国者の取り扱いをするということは、もちろん政府としても人道的立場に立った特別な扱いでございます。未承認国といえども、こういう問題については当然政府が特別に考えますが、すでに承認国においても本人が出頭しておるというのは当然のつとめでございますので、未承認国に対してそういう当然行なうべき措置をとらずに、本人が出頭せずしてこれだけの簡易な手続を認めること自体が、特別人道的な扱いだと、こう理解しております。また、私が理解に苦しむのは、第三国機関とおっしゃいますけれども、第三国の赤十字を通すのではなしに、国際赤十字委員会でございます。(米田委員「第三者です」と呼ぶ)第三者という中には、承認国の第三国の赤十字を通すというのなら、これは私はメンツもあろうと思いますが、国際赤十字機関という万国の認めるそういう国際機関を通ずる面においては、北鮮赤十字がそういう面についてこだわるべきではない、これは私の私見でございますが、そう誓えます。また、私どもも、いま日本におられて帰還がおくれておられる非常に気の毒な方々の実情をよく知っておりますので、手続を簡易化して早く送り届けたい、お返ししたいということでございますが、また一方北鮮におきましても、みずからの祖国の人民を自分のほうへ引き取るのですから、多少の手続の問題を離れて、早く妥結されるのは、私は人道的見地から考えても当然ではないかと考えます。こういう問題については、もう少し赤十字の中で話し合いが行なわれてしかるべきだ。その話し合いの上に立って、政府もまた人道的な考え方を再びとりたい、こう考えます。
  75. 米田東吾

    米田委員 私、この問題はあなたと論争してはあまりいい結果にならぬと思いますので、なるべくそれは避けたいと実は思っているわけであります。ただ、さっきの松本委員質問に対しましても、あなたは、この問題は終始人道上の問題、人道主義、これを貫いてすでに十年間、カルカッタ協定以降今日まで取り組んできた、それに政治的なものが入ったとすれば、さっきの御答弁では、何か朝鮮側のほうが政治的なものを介入さしたような、そういう御答弁がひとつあったわけでありますけれども、それは見解の問題としても、政治的な問題が介入することによってこのような事態になったという、その点では私も一致しているのですが、その要素というものがどこにあったかというと、それはむしろ日本政府にあった。そうでなければ、どんなふうにあなたのほうで説明されましても、この双務協定が、日本の政府の判断、あるいは日本の日赤の判断だけで、もう打ち切りますよ、いやおうなしにのみなさい、人道と赤十字精神でこの問題が取り上げられて続いてきている以上は、政府にそういう方針と姿勢はあったとしても、やはりこれは両赤十字間で十分尽くして、合意の上で、それならばそうしましょうということが出てくれば、これはもう最後まで人道が貫かれることになったと私は思います。しかし、私は、繰り返して申し上げませんけれども、どうもこの過程というものは、日本側に強引さがあった。そうさせたのも、私は、日本側が、むしろ日韓条約関係、今日の国際情勢その他日本の政府のいろいろな政策上の問題から、これはこうせざるを得なかったということでいったんだろうと思うのであります。その限りにおきましては、人道は後退し、政治的なものが正面に出てきた、私はそういう経過じゃないかと実は思っておるわけであります。それはとにかくといたしまして、ただ、いま木村さんから御答弁いただきましたが、朝鮮側も、人道の問題として――朝鮮の人を帰すんだから、それが主体なんだから、人道の問題としてもう少し譲るものは譲ってもらわなければならぬ。したがって、ナホトカへ出ていくなり、あるいはジュネーブに行くなり、あるいは国際赤十字を通すということぐらいは、当然聞いてくれてもいいじゃないか、こういうことだと私は思うのでありますけれども、この点は、私も、ちょっと私自身がどうも理解できないのは、もともとこれからこの事業はひとつ始まるというなら、私はそういうことも朝鮮側はすなおに理解されると思いますけれども、全く平穏に、全く人道的に続いてきたこの事業というものが、やはり日本政府一つの作用によってこういう事態になってしまった。その結果、この協定以後の新しい段階、帰国者を送るという段階における、要するに、あなたのほうの説明では、無協定段階における代表を送る問題ということが、新しく日本の入管令によって出てきた。そういうことから経過を考えますと、そうすなおに朝鮮側が聞けないというのも、私は経過から見てわかるような気がするわけであります。そんなことを言ったってこの問題の解決になりませんので、私は、やはりこれはいまの段階では、両赤十字間で話をするということも賛成をいたしますけれども、やはり措置としては、政府のほうでいわゆるこの簡素化するという点についてもとへ戻して、コロンボ会議の、いま田邊先生から話がありましたようなやりとりの経過、それからもう一つやはり重要なのは、木村副長官が、社会党の、わが党の長谷川代議士にも、これはかつてあなたのところに朝鮮訪問をする際にごあいさつに行きましたときに、やはりこの問題が出まして、いろいろ私見をかわされておるわけであります。私見といえども、これは公党の、しかも国会議員の代議士、しかも任務を持って朝鮮に行くにあたってのあいさつの段階でかわされていることがあるわけでありますから、そういう点から言いまして、そのとき木村副長官がある種のサゼスチョンを与えられておる。そうだとすれば、そういう経過にかんがみましても、私は、この問題の解決にもっと日本側のほうで主導的な方策、あるいは新提案、そういうようなものが、早急に考えられなければならぬのではないか。いま日赤で幾らその会議をやったって、一番大事なコントロールの権限は政府が握っておるわけでありますから、政府のほうでさっぱり腰がきまらないのに、日赤だけが四の五の言ったって、これは始まらないわけであります。したがって、そういう点で、大乗的に、それこそ私は人道的に、この問題で一番最初から苦労なさっておられる、一番経過の御理解の深い木村副長官から、解決策というものを新しく見出してもらうことが一番適切じゃないか、こう思っておるのでありますが、いかがでございましょう。
  76. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 まあおことばを返すようでございますが、北鮮のみならず、韓国の国民も日本におるわけですが、韓国の国民が韓国へ帰るときには、こういう特別な方式はとっておりません。そういう意味におきまして、特に北鮮の方々の帰還について政府が人道的に処理をしてきたたてまえでございますから、このたてまえはあくまでくずすつもりはございません。そういう意味におきまして、政府におきましても、まず日本赤十字と北鮮赤十字との話し合いを行なっていただきまして、その上に立って、できるだけ早い機会に政府の方針を進めたいと考えております。
  77. 米田東吾

    米田委員 そこで、これは田邊先生にもう一回お聞きしたいのでありますが、朝鮮赤十字会中央委員会は、この四月三日にこの問題についての一つの声明を出しておられるようであります。これはおそらく、公表されての声明でありますから、日赤やあるいは外務省や政府当局も十分この声明についてはそれなりに見ておられると思うのでありますが、ここに私非常に重要なことがあると思うのでありますけれども、まあ、時間がありませんから、前段は抜きまして――前段は、主として、私が読んだところでは、誠意を尽くしてコロンボ会議のいわゆる経過、それから九・二八提案の趣旨、要するに、この簡素化について、はっきりいえば、黙認するということを中心にしてひとつ考えてくれないかという、そのことを繰り返して、この経過を付して強調されている声明だと思います。それから、二番目に「朝鮮民主主義人民共和国赤十字会中央委員会は、在日朝鮮公民の帰国問題を円満に解決するため、両国赤十字代表団が必ず一日も早く互いに合意する場所で再会すべきであると認める。」こういう注目すべき文章の表現で一つの提案もなされておるわけであります。私は、これは朝鮮のほうとしては、あなたのほうの手元に入った――断わった電報は三月十日。それには、国際赤十字を通さないで、ひとつ再検討して、新しくこの会談が早急に開けるように日赤案をまとめて、ひとつ早急に会議をやろう、こういう内容の電報でありますね。拒否しっぱなしではない。朝鮮側は、受け入れられないからこれはだめだ。それで、約束どおり、コロンボ会議趣旨、それから簡素化ということについての具体的な検討をしていただいて、そうして早急に会談をやりましょうという電報なんでありますから、そういうことを公式に明らかにされてから一カ月近くもたっておる。なお政府のほうで、あるいは日赤のほうで回答がない、反応もない。しかも、この問題は一刻を争う重要な人道上の問題、現に、この問題が宙ぶらりんになってから、在日朝鮮公民の方が、ずいぶん社会問題になるような、家族心中をやったり、生活に窮して一家が支離滅裂になる、まことに悲惨な状態にあるわけでありますから、したがって、それを解決するために早急に何か手を打たなければならぬということで、この四・三声明の中に、いま私が読み上げましたような一つの提案もなさっておるのじゃないか、こう思うのでありますが、これにこたえて、日赤のほうで、何らかのこの会談についての対策をお考えになる条件はございませんか。これは田邊先生と、木村副長官からもこの関係について御見解を聞いておきたいと思います。
  78. 田邊繁雄

    田邊参考人 九月二十八日の書簡を出しまして以来、電報による数次の折衝の過程におきまして、私のほうでは、会談妥結の見通しがつくなら会談をするということをはっきりと向こうに言ってやっているわけでございます。したがって、その確実な見通しを得るために、あちらの疑問とするところを言ってくれということを通知したこともございます。  それから三月三日のわがほうの提案におきましても、今回の手続についての具体的な提案をなした際におきましても、あなたのほうでわが提案を受け入れれば会談したい、具体的にジュネーブで会談したいということを申し入れました。時期は双方で協議の上すみやかに決定いたしたいと言ってやったわけでございます。私どもは、会談をすることを――会談と申しますか、大体話はついているわけでございますので、問題の最終的な仕上げをするために会談をすることは、一向こだわっていないわけでございます。ただし、事態はこうなっておりますし、非常にこんがらかっておりますので、どう局面を打開していったらいいのか、赤十字はさしあたり当面の責任者でありますので、苦慮しながらも、真剣に検討いたしております。
  79. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 もう何度も申し上げておりますとおり、人道的立場からこの問題の目的を果たし得るよう、今後とも努力をしたいと思います。
  80. 米田東吾

    米田委員 朝鮮赤十字会の四月三日の声明に対して、私は、ぜひ政府当局におかれましても、日本赤十字社におかれましても、真剣に朝鮮赤十字会が意図するところをおくみ取りいただく立場でひとつ御検討を早急にいただきたいということを重ねて申し添えておきたいと思います。  なお、よけいなことでありますけれども、私、日赤のほうはどうも会談恐怖症にかかっておるのじゃないかという気がするのです。田邊さん、いまもあなたのことばであったけれども、妥結する見通しが出れば出ていきます、こう言うのだ。今回の失敗も、私はそこだったのじゃないかと思う。それはいままでにモスクワ会議とか、コロンボ会議とか、あるいは新潟における会議等を経て、この問題はずっとあなたのほうも苦労されておられますから気持ちはわかりますけれども、そもそも国際会議でもありますし、この種のものというのは、もう妥結する見通しを持って、鉄の棒をのんだような、しゃんとしたものを持っていってまとめようということは、本来はあり得ないわけです。そういうことの苦労はわかりますけども、私は、そこでもってやっぱり人道と博愛の赤十字精神に立ち返っていただきまして、その精神を貫く意味において、どこでも、どんなふうにしてでも人道のために出ていって話をする、そういうふうに姿勢をひとつはっきり確立していただきたい、これもお願いしておきたいと思います。  それから、時間がありませんが、法務大臣にお聞きしたいのでありますけれども、実は私この問題につきましては、二月二十二日に入管局長大臣にお聞きをしておるわけです。きょうは時間がありませんが、一つだけ大臣から御答弁をいただきたい。これは入管局長ではだめなのです。これはやっぱり大臣であり、かつ政治家としての西郷大臣からお聞きしたいのでありますけれども、この問題については、やっぱり姿勢は、入管令の第何条とかということで解決する、あるいはそういうふうにして処理をするということじゃなしに――それをそういうふうにするのは、これは入管局長以下の関係であります。あなたはやはり法務大臣であると同時に、この問題処理の政治的な重要な位置におられるわけですから、したがって、政府が繰り返し言っておられますように、人道の立場で、赤十字精神にあくまでものっとって、そうしてこの朝鮮赤十字会代表の入国の問題の処理に当たっていただく。その限りにおいては、法律的に矛盾する面やあるいは抵触する面があると思いますけれども、いま大事なのは、人道の精神、赤十字精神によって政治的に代表の入国の問題を解決する、その方途しかないと実は私は思っておるわけであります。したがって、私はここで入管令の第三条がどうだとか、あるいは日本政府の承認した国際機関の関係がどうだとか、あるいは第五項にある「権限のある国際機関の発行した旅券又はこれに代る証明書」、いろいろ解釈の問題としてはあるようでありますけれども、そういうことを言ったのでは、これは入管局長にかなわぬ。しかも、入管局長は権限を持っておられるのだ。そこで、私がお願いしたいのは、政治的な判断、その中身とするものは、人道と赤十字精神を基調とした政治的判断で、この代表の入国の問題については措置をする、そういう確固とした法務大臣の御答弁をひとついただいておきたいと思います。いかがですか。
  81. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 先ほど来、木村副長官も、日赤の方も、いろいろお話しになりましたとおり、いろいろ非常な苦心をしておられますけれどもいまのような現状にございますが、いまたいへん御激励を受けまして恐縮に存じましたが、勇断をもって今後事に当たりたいと考えております。
  82. 米田東吾

    米田委員 外務省と厚生省からおいでをいただいておるのでありますけれども、特に外務省のアジア局長が来ていただいておりますが、この問題については、外務省として何か意見は、私はないと思うのでありますけれども、何か聞くところによりますと、国際赤十字を通すということは外務省のさしがねであって、外務省の抵抗がそうさせたというようなことも、これは私仄聞でありますが、聞いておるわけであります。この問題について、外務省がそれだけの発言権と介入をするということは、まさしく私は政治的なにおいを受け取る以外にないと思いますから、関係はないと思いますが、日韓関係のいろいろな複雑な事情はわかりますけれども、外務省も、この問題については、人道の立場であくまでもこの解決に一丸となって努力をするのだという局長からの答弁をいただいておきたいと思いますが、いかがでございますか。
  83. 須之部量三

    ○須之部政府委員 基本的な考え方は、いま先生がおっしゃいましたとおりでございます。私どもも、これをほかのいろいろな考慮から妨害するとか、やめるとか、そういう考え方は、てんで持っておりません。その点については、先生にもいろいろなときにお目にかかる機会もありますので、その点はよく御存じであろうと思います。また、事務的ないまの国際赤十字云々でございますが、これは関係者が集まって相談しておるわけでございます。外務省の案であったかどうかということになりますと、私からも、何かほかの人にその責任を押しつけるような意味から、私のほうで出したのではないと言うことをちゅうちょするわけでございます。いずれにいたしましても、この案を最終的に出しましたのは、関係省で打ち合わせてやったわけでありまして、その意味で、もし外務省に共同責任ありとおっしゃるならば、その点は、決定に参画したということは申さざるを得ないと思います。
  84. 米田東吾

    米田委員 これで終わりたいと思いますが、この問題は、何といいましても、従来の経過にかんがみまして、木村副長官がずっと苦労されておることについて、よく私も承知しておるわけでありますけれども、どうかひとつ朝鮮赤十字会の四月三日の声明等につきまして、特に私は、官房副長官から、あらためてひとつ読み直していただきまして、そうしてこの問題についてあなたのリーダーシップで早急に政府間の意識統一ができて、日赤によって打開の会談が持てるようにぜひひとつ措置をしていただきたい。この点最後に一点申し上げておきたいと思いますし、もう一つは、この問題に関しましては、これは従来の帰国事業の十年間の歴史がそうでありますが、人道と赤十字精神が基調でありますから、全く与野党一致して、この問題については扱ってきておるわけであります。政策的に、あるいは具体的に多少の意見の相違がありましても、人道と赤十字精神を前面に出して、私どもは協力をしてきておるつもりであります。したがって、今後におきましても、私どもは、決して一党一派のエゴを出しませんから、問題は、やはり人道の問題としてこれを解決する以外にないわけでありますから、私どもは十分社会党をあげて御協力をいたしますから、今後とも私どもがこの問題について協力できる態勢ですね、何も会議をやれとか、どういうふうにやれということは申し上げておりません、どうかざっくばらんに、野党の力も必要なんでありますから、特にこの問題については、私はそうだと思いますので、私どもが十分協力できる態勢を、この帰国事業の歴史にかんがみて、あらためて野党の評価をしていただきまして、今後ひとつ私どもを使っていただきますように、これも最後に要望しておきたいと思いますが、最後に御見解を聞いて終わりたいと思います。
  85. 木村俊夫

    ○木村(俊)政府委員 もうかねてから野党の方々にも非常に御協力を願っておりますが、この問題は、当然人道的な問題であり、立場を超越した問題であると思いますから、そういう精神のもとに政府としても最大限の努力をしたい、こう考えます。
  86. 高橋英吉

  87. 松本善明

    松本(善)委員 副長官、けっこうです。  日赤副社長にお伺いしたいのですけれども、この問題の経過でありますね、コロンボ会談の経過については、いま同僚委員から話がありましたが、コロンボ会談のみならず、その後私たち日本共産党の代表団が行って、朝鮮民主主義共和国を訪問して以来、日本赤十字社と朝鮮赤十字会との間にいろいろの折衝があったと思うのであります。この経過をやはり国民に明らかにする必要があるのではないか。この経過をできるだけ詳細にお話しいただきたい。
  88. 田邊繁雄

    田邊参考人 昨年の九月二十八日の書簡で日赤から朝赤あてに提案をいたしたのでございます。御承知のとおり、一つは暫定措置に関する合意書であります。もう一つは、その後における在日朝鮮人の帰還方法に関する会談要録、具体的に詳細な案を提案したわけでございます。これに対しまして、朝赤から、手紙だけでは理解できない幾つかの点があるから、会談したいということを言ってまいりました。これが十一月の二日でございます。日赤は、先ほど申しましたように、会談妥結の確実な見通しが得られるならば、次の会談に臨むという考えを明らかにして向こうに打ってやりましたのでありますが、その際、朝赤側が言っておる理解し得ない幾つかの点というのは具体的には何をさすのか、率直に回答がほしいということを言ったのでございます。その気持ちは、私のほうで、九月二十八日の提案でわがほうの考えを率直に包み隠さず全部言ってやりましたので、ひとつあなたのほうでも会談の交渉の進展を円滑にするために具体的に言ってほしい、こういう気持ちでございます。これを打ったのが十一月の二十日でございます。これに対しまして、いろいろ電報のやりとりがありました結果、朝赤から、わがほうの九月二十八日の書簡による提案に対しては、そう異なった意見は持っておらない。ただ、朝赤代表の日本入国の手続簡略化の問題が、コロンボ会談以来相当時日が経過しているのにいまだに片づけないのは、これは理解できないことであるということを言ってまいりました。その他幾つかの若干の名称及びことばづかいについて訂正を要するという考えを示してよこしたのであります。これが十二月三日でございます。そこで赤十字社といたしましては、政府に対しましては、先ほどもありましたように、何とか手続の簡略化についてひとつ妥当な措置をしていただきたいということをお願いをいたしまして、いろいろ検討した結果、年を越しまして三月三日に具体的提案を行なった、こういう経過でございます。
  89. 松本善明

    松本(善)委員 このコロンボ会議の議事録、並びにその後の電報での折衝、あるいは手紙による折衝ですね、この資料、文書、特に別に秘密にする必要もないものではないかと思いますので、これは私どもに、委員会を通じてでけっこうですけれども、明らかにしていただけましょうか。いま副長官お話では、日赤がいいということであれば、政府のほうは異存はないというお話であったわけですけれども、いかがでしょうか。
  90. 田邊繁雄

    田邊参考人 実は九月二十八日の書簡による提案を合意いたしました際、いろいろデリケートな関係があるので、その提案及びそれ以後のこれに関するやりとりは発表しないようにしてやろうじゃないかということを向こうに提案したのでございます。向こうもそれをずっと守ってくれてきておるわけであります。これは向こうも言わず語らずのうちにわがほうの気持ちを察したのであろうと思いますし、向こうもそのほうがいいであろうと判断したのだと思います。ただ、三月三日の提案に対しまして、これを拒否したあの手紙は、全部向こうで発表したわけでございます。入国手続の問題一点に限られておりますので、もうこの点についてのやりとりは私は明らかにしてもいいのではないかと思いますが、その以外の点につきましては、会談の内容に属することでございますので、ひとつこれはもう片づいていることでございますので、むしろいまのままのほうがいいのではないか、こう思っております。
  91. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、朝鮮赤十字会のほうのこともあって、入国手続の問題についてのやりとり以外は、いまのところはそのままのほうがいいと思うけれども、入国手続の問題については公表してもいい、こういう話でございますね。
  92. 田邊繁雄

    田邊参考人 これは政府の権限に属する事項でございますが、私はかまわないんじゃないかと思います。
  93. 松本善明

    松本(善)委員 それからこの問題について、いま副長官は両国の赤十字の間でもう少し話をしたほうがいいということでありますけれども、とにかく代表の入国手続の問題については合意を得るのが目的でありますから、やはり合意が得られないというままで、そのままほっておいていいというものではないと思います。やはり日本側として積極的にそれを打開するための方法を考えなければならぬ、その当面の責任は、やはり日赤にあるのではないかと思うのですが、副社長がその打開策について、この代表入国問題について、いま考えておられることをお話しいただきたいと思うのです。
  94. 田邊繁雄

    田邊参考人 これは赤十字の立場は非常にむずかしゅうございまして、実は苦慮している次第でございます。しかし、先ほどのお話にもありましたように、われわれ当面の責任者である、そういう自覚は十分持っております。われわれ努力してまいることは当然でございますが、いろいろくふうをこらさねばいかぬと思います。くふうをこらして、一生懸命ない知恵をしぼって検討中でございます。御了承願います。
  95. 松本善明

    松本(善)委員 このコロンボ会談の合意事項によりますと、先ほど同僚委員も触れましたけれども、入国許可の取りつけに必要な手続を日本赤十字社が行なうのだということになっておると、これはもうかなりこの代表入国問題については、日本赤十字社として責任を負っていく、そういう、そこまでのことばにはならなかったようでありますけれども、かなり責任を持っていくということのように受け取れるわけであります。入国許可の取りつけに必要な手続を行なう、そして朝鮮赤十字会代表の入国許可手続を簡単にすることについて、政府が妥当な考慮を払うよう努力もする、こういうことでありますから、単に簡素化するということだけではなくて、入国許可の取りつけに必要な手続もする、こういうことになっておるので、これは相当日赤側が努力を払わなければならない事態ではないかと、私は経過から察するに思うのでありますが、その点はどうでしょうか。
  96. 田邊繁雄

    田邊参考人 これはいま会談の妥結しない状態においてこの条文を見ますと、そういうふうにもとれるのですが、これは会談が妥結した上での条文でございますので、そうむずかしいことではないわけであります。先ほど申し上げましたように、未承認国の人が日本に入る場合は、一般の例からいたしまして、当然在日保証人というものが必要である。その人が向こうからの申請書を受け取って、それを政府に伝えて、そしていろいろ許可をしていただくように取りつけ手続をとる、こういうことでございますので、別にむずかしいことでも何でもない。むしろ手続を簡素化することについて妥当な考慮を払うように努力する、これは確かに赤十字が努力すると約束するという提案でございます。形式的には、会談は妥結しなかったので、破裂したわけでございます。そういう約束は正式には成立しておりませんので、約束違反ということをいかにも重大なことであるように言うのは、実はいかがかと私は思っております。ただし、努力すると言ったことは事実でございますので、われわれは努力したわけであります。その結果、簡素化になったわけであります。われわれいま実は、向こうの言っている事柄の実態は、あたかも赤十字が非道義なことをしたように非難をしておりますが、それは少し行き過ぎではないか、こういうふうに思っております。
  97. 松本善明

    松本(善)委員 私、もちろんこれは妥結をしてきまっていれば事態がまた別問題でありますけれども、妥結をしなかったまでも、しかし合意が一応できて、大筋はまとまってきておったわけです。そのときには、日本側も一応私が先ほど申しましたようなことについて同意をしていたわけですから、その趣旨から言うならば、これは簡素化をするということについてほとんど日本側が責任をもってやっていくということでありますから、いま合意ができない事態に至った場合に、やはりこれを打開するための主たる責任は、日赤が負ってやっていくのが当然ではないだろうか、こういうふうに思うのでありますが、どうでしょうか。
  98. 田邊繁雄

    田邊参考人 私どももそういう自覚を持っております。
  99. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、私の質問を終わります。
  100. 高橋英吉

    高橋委員長 この際、田邊参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は御多用中のところ、本委員会に御出席くだされ、貴重なる御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次回は、来たる十五日午前十時理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時五十二分散会