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1969-04-04 第61回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月四日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 高橋 英吉君    理事 大村 襄治君 理事 進藤 一馬君    理事 田中伊三次君 理事 永田 亮一君    理事 濱野 清吾君 理事 猪俣 浩三君       大竹 太郎君    鍛冶 良作君       渡海元三郎君    中村 梅吉君       広川シズエ君    藤枝 泉介君       松野 幸泰君    黒田 寿男君       河野  密君    中谷 鉄也君       畑   和君    本島百合子君       山田 太郎君    松本 善明君  出席国務大臣         法 務 大 臣 西郷吉之助君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      真田 秀夫君         防衛庁人事教育         局長      麻生  茂君         法務政務次官  小澤 太郎君         法務大臣官房長 辻 辰三郎君         法務省刑事局長 川井 英良君         法務省人権擁護         局長      上田 明信君         文部政務次官  久保田藤麿君         通商産業省重工         業局長     吉光  久君         運輸省港湾局長 宮崎 茂一君         労働省労働基準         局長      和田 勝美君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   田村 宣明君         警察庁警備局公         安第一課長   三井  脩君         警察庁警備局警         備課長     丸山  昂君         法務大臣官房司         法法制調査部長 影山  勇君         法務省刑事局公         安課長     豊島英次郎君         法務省人権擁護         局調査課長   宮代  力君         文部省大学学術         局審議官    清水 成之君         最高裁判所事務         総長      岸  盛一君         最高裁判所事務         総局総務局長  寺田 治郎君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢崎 憲正君         最高裁判所事務         総局経理局長  岩野  徹君         最高裁判所事務         総局民事局長  矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局刑事局長  佐藤 千速君         専  門  員 福山 忠義君     ————————————— 四月二日  委員畑和君及び横山利秋辞任につき、その補  欠として山花秀雄君及び栗林三郎君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員山花秀雄辞任につき、その補欠として畑  和君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員渡海元三郎君、中垣國男君、松野幸泰君、  柳田秀一君及び西村榮一辞任につき、その補  欠として吉川久衛君、広川シズエ君、村上勇君、  中谷鉄也君及び本島百合子君が議長指名で委  員に選任された。 同日  委員吉川久衛君、広川シズエ君、村上勇君、中  谷鉄也君及び本島百合子辞任につき、その補  欠として渡海元三郎君、中垣國男君、松野幸泰  君、柳田秀一君及び西村榮一君が議長指名で  委員に選任された。     ————————————— 四月三日  死刑確定判決を受けた者に対する再審臨時  特例に関する法律案(第五十八回国会衆法第三  号)の提出者神近市子君外七名提出」は「神  近市子君外六名提出」に、刑事補償法等の一部  を改正する法律案(第五十八回国会衆法第三一  号)の提出者横山利秋君外七名提出」は「岡  田春夫君外六名提出」にそれぞれ訂正された。 三月二十七日  死刑確定判決を受けた者に対する再審臨時  特例に関する法律案成立促進に関する請願(勝  間田清一紹介)(第二六三四号)  同(柳田秀一紹介)(第二六三五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七三号)  裁判所司法行政に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件  人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 高橋英吉

    高橋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山田太郎君。
  3. 山田太郎

    山田(太)委員 訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案については、もうすでに多くの諸先輩から質疑もなされておりますので、できるだけ重複を避けたいと思いますが、多少の重複はかんべんしていただくといたしまして、まず最初——少々声を痛めていますのでお聞き取りにくいと思いますが、その点御了承願っておきます。  そこで、素朴な立場から、最初に実務的なことからお伺いしていきたいと思います。実はジュリストの三月十五日号ですが、「証人呼出状」ということで興味を引く記事が載っております。質疑の本題に入るにあたって、この点を問題の設定要件として、もう読んでいらっしゃると思いますけれども、一応読ましてもらいます。これは一応要点を読みたいと思いますが、こういうことです。「よそ目には、平和に見える民事法廷にも、ときには降ってわいたように、はらんが巻き起こるものである。民事訴訟法改正直後には、代理人交互尋問も、それが裁判所心証形成の手段であることをわすれた誘導尋問や、しつような場足取りのたぐいが多かった。」途中省略しますが「証人個人的尊厳や、精神的苦痛を全く意に介しないような尋問がえんえんと続けられた。証人は、呼出しを受けたことが既に感情を害している様子で、気の強い人とみえて、代理人の的はずれの尋問に反撃して、しばしば両者の口論となる有様であった。長時間の尋問もようやく終わったので、裁判官は、その由を告げるとともに、証人出頭の労をねぎらった。ところが、そのとき、興奮していた証人裁判官にくってかかった。出頭日当として、五、〇〇〇円を支払えというのである。当時施行の民事訴訟費用法および訴訟費用等臨時措置法の定める「証人日当ハ出頭一度ニ付百二十円以内」となっており、五、〇〇〇円といえば若い判事の一箇月分の報酬にも相当する金額である。裁判官が、この要求に肝をつぶしたのも当然であった。証人の主張は、「裁判所呼出状出頭しないと五、〇〇〇円の罰金をとると書いてあった。何も悪いことをしないのに罪人扱いするとは何事か。裁判所がとるときは五、〇〇〇円だといいながら、払うときは一二〇円とは勝手すぎる。出頭しないと五、〇〇〇円とられるというので、忙しいのに出頭したのだ。五、〇〇〇円の支払いをするのが当然である。」という、まことに理路整然?たる事由によるものである。しかも、色をなしての強い要求でもある。この証人には、法文を読み聞かせての、法律呼出状にはそのような記載をしなければならないことになっている旨の説明も通じなく、双方代理人協力による懸命の説得も効がなかった。  その頃のある日、判事室にかねて顔見知りの法医学者の来訪があった。鑑定人を勾引するとは何事かと、笑いながら差し出された呼出状を見ると、証人呼出状鑑定人呼出に流用したものであった。流用に際し、証人不動文字鑑定人と訂正したまではよかったが、不出頭制裁に関する不動文字中の「勾引」を抹消してなかった。鑑定のベテランである老教授は、書記官のケアレスミスであることを百も承知の上で、好意的に若い裁判官の注意を喚起されたものと理解される。さきにみた証人は極端な例外であろう。しかし、これらの事例は、呼出状制裁事項記載が、これを受領する人達に、想像以上にこのましくない感じを与えていることを示唆するものではなかろうか。  かつて、二回試験後採用前の口頭面接で、修習中に裁判所について特別に感じたことがあるかとの質問に対し、「傍聴人を背のない木製の長椅子にすわらせておいて、長時間にわたり姿勢を正していることを要求するのはかこくである。また、証人等を廊下で待たせておくのも不当な処遇だと思う。」等と答えて、列席の試験官をあぜんとさせたことのある、この裁判官も、呼出状不動文字がこれほど受領者感情を刺激するものとは知らなかった。しかし、よく考えてみると、裁判所の都合で出頭して貰うのだから、世間一般の常識からいえば、丁重な招請状を差し出すべきところである。それを、出頭しないと処罰するなどと記載した書面をつきつけられては、気を悪くするのも当然かも知れない。呼出を受ける人の周囲には、家族や友達がいるのである。不必要に感情を害したり、自尊心を傷つけることは避けなければならない。  快く裁判協力を受けるために、証人等呼出についても、更に研究と工夫をこらす余地があるのではなかろうか。」これはことしの三月十五日のものですね。そこで、実務的な問題でございますが、現在の証人呼び出し状あるいは鑑定人呼び出し状について同じようなことが言えるのではなかろうか、こういうふうに私は私なりに思っているわけですが、その実情についてはどうでございましょうか。
  4. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 ただいま山田委員から御指摘がございました点でございますが、現在も民事訴訟法の条文がそのままでございますので、根本的には証人呼び出します場合の記載事項がきめられております。したがいまして、私どもといたしましては、それにのっとって呼び出しをいたしておるわけでございますが、終戦直後のただいま御指摘の当時と比べますと、その点にはずいぶん留意いたしまして、同様の事項記載をいたしておりますが、その書き方等には相当気を配ってやっておるわけでございます。なお、当時は交互尋問あるいは当事者訴訟を遂行するという考え方がまだ十分行き届いておりませんでしたが、最近は民事訴訟における当事者主義というのが徹底してまいりまして、証人等法廷で取り調べます際には、通常の場合、その証人尋問を求めておられる弁護士さんが必ず事前に証人とも会われて、どの程度のことを知っておるかといったようなことにつきまして十分御調査なさっておりますので、裁判所といたしましては、できるだけこういう呼び出し状を使わないで、出頭要求される側の弁護士さんに、証人というものの性格、裁判所における重要性ということをよく話していただいて、承諾の上同行していただくというふうな扱いにできるだけしておる、これが実情でございます。
  5. 山田太郎

    山田(太)委員 その答弁もわからないではないのですが、その実情は、証人呼び出しあるいは鑑定人呼び出し、これはそれぞれ内容がちょっと違っているんですね。ところが、いま事実使われている、これが証人呼び出し状、それからこれが鑑定人呼び出し状です。そしてその点について先ほどジュリストを読ませていただいて、要するにこの呼び出し状を受け取る人に対する心理的な悪影響といいますか、しかも依然として、金額云々はさておいても、同じようなことがしたためられているわけですね。呼び出し状あるいは鑑定人あるいは証人、これが法によって定められておるとはいえ、その後この呼び出し状にどのような配慮が払われておるか。ただできるだけ使わないようにしておるというのでなしに、やはり依然として使っているのですから……。事実私の知人の一人にも、同じようなことを申している人がおります。それから鑑定人も、同じようなことを言うております。事実このとおりだ。これについて、法で定められておるんだからしようがないじゃないかというふうなことでは、あまりにも人間らしくない処置です。それについての配慮というものが、今後ともなされなければならないはずなんです。それについては、いままでどのような配慮がなされてきたか、あるいはこれからなされなければならないか。たとえていうならば、この紙の色にしても、いわゆるお役所仕事の通り一ぺんのようなものになっている。受け取る側にすれば、やはり紙の色自体についてさえもそこにこまかい配慮がなされてしかるべきじゃないかということも、われわれ考えるわけです。そういう点について、どうでしょうか。
  6. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたように、法律に定められておるからと申しましてオウム返しにそのとおり呼び出し状記載していいというものではないことは、山田委員指摘のとおりでございます。ただ、訴訟を迅速適正に進行していかなければいけないという使命もございますので、私どもといたしまして、いま直ちに——法律の規定にございますように、もし正当な事由がなく——病気等の場合であればもちろんけっこうでございますが、そういった事由なくして来てくださらないときには、私どもとしてはこういうふうなことも考えておるのだから、出頭を求めるわけではないけれども訴訟における真実の発見のためにぜひ協力してほしいという、最小限度のことは書かざるを得ないのではないかと存じますが、紙の色でございますとか、あるいは活字の大きさそのものでございますとか、なおくふうする点はあろうかと存じます。  なお、この呼び出し状にいたしましても、いまお示しの呼び出し状のほかに、裁判所所在地等記載がございますが、裁判所一つの建物の中にございませんので、略図等も同封いたしまして、また来ていただく法廷等も矢じるしで示しまして、できるだけやわらかな印象を出すようにこれまでもつとめてきたわけでございますが、なお今後も、これを縦に書くか横に書くかといった書き方についても、公の文書でもございますので、あまり砕くということもいたしかねる面もございますが、可能な限度でできるだけやわらかいものにしていきたい、このことは私も同感でございます。
  7. 山田太郎

    山田(太)委員 私の申し上げたことに同感であるならば——この文言にしても、協力を求めるなどというようなことは一つもないのだから。御承知のとおり一つもない。頭からの命令です、これは。その点も改めるようにしたほうがいいと思うのですが、どうですかね。
  8. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 先ほども申し上げましたように、民事訴訟は、あくまで当事者が責任を持って証拠を収集し、遂行していくというのが、たてまえでございます。したがいまして、まず証人等出頭を求めますにあたりましては、できるだけその証人を必要とされる当事者の方が、その証人にお会いになってよく事情をお聞きになると同時に、こういう事情裁判所に出てほしいから出頭してもらうようにということを頼んでいただくというふうにするのが、まず第一だと存じております。私ども証人を呼ぶか呼ばないかということを決定いたします際には、呼び出し状を出さなければいけないでしょうか、一緒に連れてきていただけますかというふうに、必ず聞いております。できるだけ同行するように取り計らってください、そのほうが証人に出てきていただく方にとっても気楽に裁判所に出てきていただけることになるのだということで、そういう方法をとっております。しかし、証人の中には、当事者からお願いしても、裁判所から呼び出しが来れば行く、そうでなければ忙しいのだから出ていくのはかんべんしてくれというふうにおっしゃる方もあるようでございます。そういう方になりますと、私どものほうでも正式の呼び出し状を出すということになるわけでございますが、そのときには、根本の問題といたしましては、ここにもございますように、「当裁判所民事第 号法廷出頭して下さい」というふうにいままで印刷してきて出したわけでございますが、これをもう少し、どうしてこういうふうに出てくるようになったのか、裁判所がだれだれの申請でどういうふうに決定したのだといったようなことを書いて、ひとつ証人というのはやはり裁判の迅速適正な処理という点からして出てきていただかねば困るのだ、これは公の国民としての重要な義務であるといったようなこともよくわかるようにして書くということも十分考えられるわけでございますので、そういった点について検討いたしたい、このように考えるわけでございます。
  9. 山田太郎

    山田(太)委員 るる御説明ありましたが、実情はそうでない場合も多々あるわけです。証人同伴でと、できるだけ頼んではおる。だけれども実情はそうでない場合も多々あるわけなんです。これは御承知のとおりです。またこれは事実でございます。したがって、もうあと多くは言いませんが、この文言をお上から下へというふうな高圧的でなしに一この中で多少でもそういう意味がとれるなというのは、「出頭して下さい」というところだけです。あとは全部高圧的です。その点、私しろうとだからこういうことに気がつくのです。やはり専門家の方々は、これが当然なような気風がありはしないかという点も感ぜられますので、この点を十分向後改めてもらうというふうにお願いしておきたいと思います。
  10. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 御趣旨の点、よく承知いたしまして、十分検討さしていただきたいと思います。
  11. 山田太郎

    山田(太)委員 では次の問題に移りますが、この日当積算基準、それから支払い状況、これはこの前どなたか聞かれたとも思いますが、この前にきめられた日当に対してこうこうこうだというふうな御答弁じゃなかったかと思うのですね、この前の御答弁は。そういう積算基準のあり方でなしに、実はもと日当基準からすでにもし狂っておる場合には、それに対して物価云々、いろいろな給料云々指数等を掛けてみても、もとがてんで問題にならぬ低さだったら、これは問題にならぬわけです。この積算は、どういうふうになされておるかという点を、もう一度詳しく説明してもらいたいと思います。
  12. 影山勇

    影山説明員 この証人日当の額でございますが、どのくらいの額が適当であるかということは、実は根本的にはいま御指摘のようにむずかしい問題がございます。これは一応賃金物価、そういうものの上昇率平均をとりましてきめたということでございます。大体証人日当性質を分析いたしますと、この出頭に要した湯茶弁当代というものと、それからその日は裁判所に時間をとられまして働けなかったことに対する損失補償、こういうものをいつもにらみ合わしております。そしてその損失補償、つまり得べかりし利益の補償につきましては、最低労務者、たとえば失対労務者などの賃金等を一応考えまして、それに公務員最低日当額を加えました額を証人日当というふうにいたしておるわけでございます。
  13. 山田太郎

    山田(太)委員 そうしますと、現在の法規では、罰金五千円ですか。やはり法規は五千円だと思います。これについての勘案というものは、全く考慮は払われていないということですか。
  14. 影山勇

    影山説明員 いまの五千円とのつり合いでございますけれども、この五千円というのは、刑事訴訟法民事訴訟法上、証人というのは訴訟の適正な解決に絶対不可欠なもので、国民義務として出ていただかなければならない、そういう国民義務を怠った場合の制裁という性質を持っております。ところが、証人日当のほうは、これはだれが負担するかといえば、結局は民事訴訟で申しますと相手方敗訴当事者負担ということになりますし、刑事訴訟で申しますと、被告人負担ということになっているわけでございます。そこで、高ければ高いほどいいとも言えません。相手方訴訟上の負担ということも考えなければならないということが、制裁日当の額との差ということになっているかと思います。
  15. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで、先ほどの御説明日雇い労務者とそれから賃金あるいは物価指数、それはどのようになっておりますか、具体的には。
  16. 影山勇

    影山説明員 まず、物価賃金とのスライドのほうから申し上げますと、約七・三%ぐらい去年に比べますと増加でございますので、それを現行の額に掛けますと、証人の場合には千二百八十八円、これを今後千三百円に改定をお願いした。それから失業対策事業就労者一人当たり予算でございますが、これが四十三年度で七百九十五円、それから四十四年度予算の額としては八百九十円ということになっております。これに公務員最低の者が出張いたします場合の日当四百円という額になっておりますのを加えまして、いまの失対労務者の一人当たり予算をとりますと千百九十五円、本年度予算に組み込まれております失対労務者の額を標準にとりますと千二百九十円ということになりまして、これを千三百円という額にまるめて法案をつくった、こういうことでございます。
  17. 山田太郎

    山田(太)委員 答弁なさりながら、それがいま現在の実情に合った金額だとは、常識的に判断して——一日つぶす、一日全くつぶれてしまう場合が多いのです。その場合、これがほんとうにいまの御答弁であっても実情に合った金額だとは普通ちょっと考えられないとわれわれは感じるわけですが、その点について、よくなっていくのですからこれをとやかく言うわけではありませんが、今度の改定の場合には、もっとこれを大幅に考えなければいけないじゃないか。負担されるほうの側からいえば、これは少ないほうがいいのはさまっているでしょうけれども、その点については、証人あるいは鑑定人につきましても、非常に大きな迷惑を感じているわけです。義務だからやむを得ないという考え方はありますけれども、これは迷惑しごくだという、そういう考えが抜け切れない。ことに証人の場合ならば、心やすい間柄という場合もありますけれども、そうでない場合も非常にあるわけですから、その点については、次回においてはもっと大幅な検討がなされていいのではないかと私なりに思うのですが、どうでしょう。
  18. 影山勇

    影山説明員 証人日当額をなるべく高くしょうということは、私どもも考えているわけでございます。しかし、先ほども申しましたように、何ぶんにも敗訴当事者負担にそれがかぶってくるもんでございますから、あるいは刑事訴訟被告人にその負担が命ぜられるということでございますので、飛躍的に上げるということはなかなか困難でございます。しかし、数年前からただいま御指摘のように、証人は一日裁判所でつぶれるのに非常に低いじゃないかということは、しばしばいわれる事実でございます。そこで、たとえば昭和三十七年には、それまでの三百円を一挙に千円に上げておるわけでございます。今後もなるべく高くするように努力したいというふうに思っております。
  19. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで、検察官の場合の参考人は、被疑者の場合と、いわゆる純粋の参考人の場合と両方あると思いますが、この検察官参考人の場合は、どのようになっておりますか。
  20. 影山勇

    影山説明員 検察官の取り調べます参考人に対する日当でございますが、これについては、公判前の証人等に対する旅費、日当宿泊料等支給法という昭和二十四年にできました法律によりまして、刑事訴訟費用法といま御審議いただいております訴訟費用臨時措置法の額がそのまま準用されるということになっております。
  21. 山田太郎

    山田(太)委員 実際の支払い状況は、どうでしょうか。
  22. 影山勇

    影山説明員 ちょっと古くなりますが、四十二会計年度参考人に対する日当支給状況でございますが、統計によりますと、一人平均刑法犯の場合約七百円、道交約六百十円、それから特別法犯も、大体六百三十円というふうになっております。人数は、総計で四万六千八百五十六人に支払っておりますし、支給額総計は、三千二百十八万八千二百三十九円という額が支払われております。
  23. 山田太郎

    山田(太)委員 いま総計のお話がありましたね。事実上、参考人に対して何%くらいのものが支払われておりますか。
  24. 影山勇

    影山説明員 その点の資料は、持ち合わせておりません。
  25. 山田太郎

    山田(太)委員 この点が一番大切な問題だと思います。一応トータルの人数金額と、これに準じて支払われるようになっております、こういう答弁ではありますけれども、事実において、それが何人のうち何人に支払われておるか、何%支払われておるかという点が、一番大切なところじゃないかと思うのです。この点は、いまお手元にないだけで、すぐ調べができますか。
  26. 影山勇

    影山説明員 ちょっとその点は調べてみないとわかりません。
  27. 山田太郎

    山田(太)委員 これは非常に怠慢だと思いますね、申し上げにくいことですけれども。これが一番大切なところだと思います。事実その声がちまたにあります。やはり弱い立場から、これは泣き寝入りとまでは言いませんけれども実情はいまおっしゃったとおりになっていないということです。ぼくはトータルはわかりません。したがって、これは後でけっこうですが、その点を調査していただきたいと思います。  それでは、その点はきょうは保留しておきます。きょうは警察のほうは見えてませんね。
  28. 高橋英吉

    高橋委員長 警察は見えてません。
  29. 山田太郎

    山田(太)委員 では、これは……。  この特例法が昭和十九年のままで、そのままずっと使われているという理由は、どなたかの質問にもあったかと思うのですが、もう一度、どういう理由か、お聞きしてみたいと思います。
  30. 影山勇

    影山説明員 御指摘のように、訴訟費用臨時措置法は、昭和十九年のものでございます。それが今日まで続いております。特に執行官に関する手数料規則等もこの訴訟費用臨時措置法に載っておりましたのを、昭和四十一年に削りましたので、ますますこの法律の適用範囲が狭くなってきております。これを廃止するということは実は前から考えておりましたが、これを廃止するにつきましては、民事訴訟費用法刑事訴訟費用法という二つの法律を改正いたしまして、臨時措置法でその双方について臨時措置をしているのを、その臨時措置をやめるということになるわけでございまして、現在まで続きましたのは、この二つの法律について、証人日当のような共通なものを一気にここの訴訟費用臨時措置法一つの改正であげられる、こういう便宜もありましたために、この改正がおくれたということになると思うのです。いま申しましたように、民事訴訟費用法というものは明治二十三年の法律で、刑事訴訟費用法というのは大正十年の法律です。これは非常に古い法律でございまして、単に字句の訂正——文語体を口語にするというような簡単なことではどうもいきかねるものでございますから、そこでこれの検討に手間取っていたわけでございます。しかし、現にこれも最高裁判所民事局と私のほうの民事局等と連絡いたしまして、この民事訴訟費用法刑事訴訟費用法の改正に着手し、進行中でございます。これに伴いまして、これも古い法律でございます民事訴訟用印紙法——裁判所に差し出す書類に張る印紙をきめる法律、これもこの際ぜひ一緒に改正したいというようなことで、いまこの改正を進めておるというわけでございまして、これが一段落つけば、もう訴訟費用臨時措置法は要らないということになるわけでございます。
  31. 山田太郎

    山田(太)委員 ではその点はしばらくおくといたしまして、この参考資料を見させていただきますと、昭和三十七年に鑑定人証人との金額が逆転しておるわけですね。初めは鑑定人のほうが高かったわけです。これが急に変わったのは、どういう理由からですか。鑑定人が低くていいという理由ですね。
  32. 影山勇

    影山説明員 御指摘のように、ずっと鑑定人日当のほうが高かったのでございますが、昭和三十七年から逆転いたしましたのは、証人日当性質というものについて、若干考え方が変わってきたということになろうかと思うのであります。つまり証人は、やはり裁判所に出る以上は、得べかりし利益の喪失、俗に逸失利益と申しておりますが、逸失利益の補償を考えなければいけないのじゃないか。これに対して鑑定人のほうは、その出頭による日当のほかに、別に鑑定料というのが出るようになっておる。ですから、なるほど逸失利益の補償も若干ございますけれども、主として日当のほう、つまり出頭に要する出頭雑費のほうの補償という点に重点を置けばよろしいということで、これが逆転したということでございます。
  33. 山田太郎

    山田(太)委員 そこで、次は論点を少し変えてお伺いしたいのでございますが、日本においての民事訴訟の件数、それから先進諸外国といいますか、民事訴訟の件数、これの対比は、どのような実情になっておるでしょうか。
  34. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 一番最近の例をとってみますと、日本におきまして民事訴訟が起こされます件数は、昭和四十三年で約十八万五千件でございます。これは相当変遷はございましたけれども、現在のところ戦前並みに戻ってきておるという実情でございますが、諸外国と申しましても、いろいろの国の構成によりましてなかなかこれに相応ずるような統計がとりにくいわけでございますが、一番この法律が似ておるといわれております西ドイツの例をとってみますと、大体百万件ぐらいある、このように承知しておるわけでございます。
  35. 山田太郎

    山田(太)委員 人口比からいいますと、だいぶん日本のほうが上だと思います。そうして民事訴訟の件数は、日本のほうが十八万五千件で、西ドイツのほうは百万件だ、これは昭和何年ですか。
  36. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 日本の例は昨年昭和四十三年でございますが、西ドイツの例は、これはちょっと年度ははっきりいたしませんが、ここ二、三年の例でございます。
  37. 山田太郎

    山田(太)委員 では、年次が明確でないといたしましても、非常に差があるわけです。この差の起きてくる原因は、どういうところにあるか、これがやはり大きな一つのポイントじゃないかと思うのです。どうでしょうか。
  38. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 まず第一に考えられますことは、やはり訴訟という制度ができましてからの経過年数と申しますか、そういったことによるものではないかと存ぜられます。日本で真に訴訟制度というものができましたのは、ごく最近の、ここ七十年ぐらいのことでございますが、欧米諸国におきましては、相当以前から訴訟という概念が非常に明確になっておりまして、そのことによって、何か事が起こった場合にはまず裁判所に持ち込んでそこで黒白をつけるという考え方が徹底しておる、そういうことで、逆に日本ではまだ一応話し合いで話をつけていって、裁判所というと、どちらかといいますと、できるだけ行きたくないというふうな考え方がまだ残っておる、そういう国民感情が、根本的な一つの大きな事件数の相違の原因だと存ぜられます。そのほかにも、いま申しましたような日本国民感情等からいたしまして、先ほど十八万五千件の事件数と申し上げましたが、そのほかに実は調停の事件が日本にはございます。この事件が年間約五万件あるわけでございまして、これをもし西ドイツ等の事件数と比較する場合には、当然日本における訴訟事件の中に含めて考えられるべき件数であると考えておるわけでございます。このように、どうせ裁判所に持ち込む場合でも、できるだけ争いは避けて、話し合いができるものなら話し合いで解決したいという国民感情が、調停というこの制度の利用を多くしておるというところがございますし、そのことが件数の相違ともなってきておるわけでございます。  なおもう一点、西ドイツには実は協議離婚という制度がないわけでございます。日本は、相当離婚数がございますが、協議離婚という制度がございますために、裁判所で離婚を求めるという件数は、もう当事者の話し合いがつかないごく限られた件数になるわけでございますが、日本に反しまして西ドイツでは、少なくとも離婚をするためには、形式的にでも、当事者の話し合いがついておりましても、裁判所に持ち込まなければいけないということで、形式的に訴訟にして、そこで話をつける、こういったようなことがございますので、これもまた西ドイツと日本との事件の差となってきておるものと思われます。私ども、やはりもっと裁判という制度を利用していただいて、民主的な解決の方法としては裁判にまさる制度はございませんので、国民が手軽に裁判という制度を利用できるように、この点はあらゆる機会を通じまして国民にも呼びかけておる、こういった状況でございます。
  39. 山田太郎

    山田(太)委員 いまの答弁の中には、非常に欠けている点があると思います。それは離婚件数について、西ドイツが幾らであるか、その点がわかっておるならば、それもあわせて答えていただくとして、その調停の五万件を入れても、日本の場合は二十三万五千件になるわけです。てんで数が違うわけですね。わかりますか。
  40. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 その離婚件数が非常に多いということは承知しておるわけでございますが、正確な数字をちょっと失念しておりますので、後ほどでもまた調べてお知らせする、このようにさしていただきたいと思います。
  41. 高橋英吉

    高橋委員長 長くなりますか。
  42. 山田太郎

    山田(太)委員 時間の制限は、委員長の御意向もありますので、一応制限は守って、早く済ますようにやります。  そこで、西ドイツの離婚の件数と日本の離婚の件数、これは離婚のデータか何かで読んだことがありますが、そうたいした差があるわけじゃないと記憶しております。したがって、この件数の差がなぜできてくるかという点の一番大きな原因は、裁判に費用がかかるという点が、私の聞いた範囲では、一番大きな原因じゃないかと思うのです。この裁判に関する費用という点で、日本の場合といま局長があげられました西ドイツの場合と、大きな相違の点があるはずです。この点をひとつ御説明していただいて、それから次の質問に移りたいと思います。
  43. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判に費用のかかるという点についての西ドイツとの相違は、山田委員の御指摘のとおりでございます。実は先ほどの御質問は、むしろ訴訟手続の問題と申しますよりも、もっとそのもう一つもとにございます国民の法意識と申しますか、そういった点からお答えすべきものと考えまして、その点に触れなかったわけでございますが、訴訟の手続の中に入ってまいりますと、実は御指摘いただきましたように、その点が大きな相違となってきておるわけでございます。と申しますのは、西ドイツでは、訴訟費用というものが法定されております、法律できめられております。そうして訴訟が終わって勝敗がきまりましたときには、その勝ったほうが要した訴訟費用というものは、いわゆる訴訟に要した費用ということになりまして、負けたほうから取ることができるという制度になっております。これに反しまして日本は、たとえば訴状に張ります印紙でございますとか、ある一定の範囲内の費用は負けたほうから取るということにはなっておりますが、一番費用がかかると思われる代理人を頼む代理人の手数料報酬といったものが、その額そのものが依頼者と代理人との自由な契約にゆだねられておりますとともに、そのようにした費用が、一般的には原則としては訴訟費用に組み入れられない。したがいまして、訴訟に勝ちましても相手方から取れないということになっておりますので、その点では、御指摘のとおり、非常な相違が出てくるということになっておるわけでございます。
  44. 山田太郎

    山田(太)委員 先ほど答弁にありましたように、西ドイツの場合は法定されておる。それからもう一つは、日本の場合は、代理人に要した費用は原則として負けたほうが負担するというふうになっていない。これは勝ち負けにかかわらず、その代理人の費用は自由契約のもとにそれがどちらにもかかってくるようになっている。したがって、いまの御答弁のように、西ドイツと日本の場合のここの差が、大きなキーポイントになっておる、これは御答弁のとおりだと思うのですが、その点について、このままでいいかどうか。なかなか答弁しにくい問題ではございましょうが、この点については、なぜこのように大きな差が出てくるのか。代理人の収入にいたしましても、件数が少ないために、そのような自由契約のような形になってしまっているところに、訴訟費用が——いわゆる敗者が払わなければならない訴訟費用というものは限定されて、そうして代理人に要する訴訟費用というものが——純粋な意味においては、ほんとうはこれは訴訟費用の中です。だけれども、これがどちらにもかかってくるという点。比較した場合、件数が少ないから金額が非常に多くなっている。こういう点について、やはり考えなければならない問題点があるんじゃないかと私なりに思うわけですが、どうでしょうか。
  45. 影山勇

    影山説明員 ただいまのお尋ねは、弁護士報酬を敗訴当事者負担にする、つまり訴訟費用の中に繰り入れるべきではないかというお尋ねでございましょうか。もしいまのお尋ねの趣旨がそうでございますと、この問題はわが国の民事司法の運営の上に非常な重要な問題でございます。これは、一方において訴訟の能率的運営という面からまいりますと、すべての訴訟弁護士をつけて、弁護士でなければ訴訟に参与できないというふうにする。つまり弁護士強制主義というのを——いま申しました訴訟の能率的処理という点では、そういう点が非常に大事になってまいります。そういう弁護士強制と、弁護士の報酬を訴訟費用に繰り入れるかどうかは、非常に密接な関係を持っております。これについても、やはり将来の方向としてそうあるべきではないかという御議論も、かなり強いわけでございます。しかし、また一面、敗訴当事者負担を考えたり、あるいは敗訴当事者は経済上の弱者である場合が多いというようなこと、あるいはどの程度に報酬を法定していったらいいかというような問題等、いろいろむずかしい問題がございます。一方外国の例を見ますと、これはちょっと長くなりますから簡単に申し上げますが、やはり外国でも分かれておりまして、たとえば西ドイツのような例をとりますと、これは弁護士強制主義でございます。(「西ドイツの話はもういいよ」と呼ぶ者あり)よろしゅうございますか。要するに、立法例が分かれているということを申し上げたかったわけでございます。
  46. 山田太郎

    山田(太)委員 この点は、代理人の費用を訴訟費用に含むべきであるとぼくが主張しているという意味じゃないんですよ。西ドイツとの差がこういう点にあるということから、これが訴訟の件数の非常に少ない点にも大きな原因になっているのじゃないかという点も、いまの御答弁にあったと思うのです。したがって、一番大切なのは、ぼくがこれから言わんとするのは、法律扶助、この問題がいまの日本の現状においては一番大切じゃないかという点を説き起こさんがために設定している問題です。この法律扶助に対しての現況、それがいま法務省として、政府として補助がどのくらいなされて、そうして事実それで足りているかどうか、この点についての答弁をお聞きしたいと思います。
  47. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 法律扶助制度の問題でございますが、これは御案内のとおり、法律扶助協会が全国の弁護士会に付置されまして、全国的に法律扶助をいたしておるわけでございます。国の側からいたしましても年々相当の補助金を出しておるわけでございまして、昭和四十四年の予算におきましては、この補助が六千五百万という額にのぼっておるわけでございます。ここ数年六千万円程度の補助をいたしておるわけでございまして、いまのところは円滑に運営されているというふうに考えておる次第でございます。
  48. 山田太郎

    山田(太)委員 時間も一時間近くなりますので、もうあと一点で終わりたいと思います、きょうはですね。まだあるのですけれども委員長の顔を尊重いたしまして。  そこで、六千五百万とおっしゃいましたね。その六千五百万の補助で法律扶助協会に対しての援助の申請が全部処理されているかどうか、そういう点についての統計があれば……。実は法律扶助協会によって扶助される方々も非常に多いわけでございますが、まだまだそれが十分ではないのじゃないか。そういう点も事実見受けられるわけです。  そこで、法務大臣に最後にあわせて答えていただきたいわけですが、これに対して、いまの補助額ではこれが足らないのではないか、そういう点を非常に心配しているわけです。これは事実の上から、そういう人々もわれわれ目にしております。この点について、法務大臣からあわせて答弁を願いたいと思います。
  49. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 法律扶助協会の取り扱っております法律扶助の概況でございますが、手元にございます統計によりますと、昭和三十三年四月から四十三年三月までのこの十年間の扶助事業について見てまいりますと、扶助事業の扶助の申請件数は合計二万百五十五件でございまして、このうち扶助を決定いたしました件数が、八千五百九十七件でございます。申請件数に対します扶助の決定率は約四一%にのぼっておるわけでございまして、この四一%の扶助をいたしましたうちの九〇%をこえるものが勝訴の判決を得ている、こういう結果になっております。
  50. 山田太郎

    山田(太)委員 もう一度勝訴の分を……。
  51. 辻辰三郎

    ○辻政府委員 扶助いたしました事件で、勝訴の判決を得ましたものが、約九〇%に達しておるわけでございます。
  52. 山田太郎

    山田(太)委員 法務大臣に答えていただきたいのは、先ほどの官房長の答弁にもありましたように、また事実私どもが耳にしますことどもに考え合わしてみましても、また先ほどの西ドイツと日本との民事訴訟の件数の差を見ましても、ここに非常な差があるわけです。ということは、もっと民事訴訟に持ち込みたいのであるけれども、費用がないためにそれを遠慮している、それができないという、そういう階層が非常に多いわけです。いまの官房長の答弁から見ましても、これはもっと大幅な援助を出すべきではないか、そういう点について、法務大臣の答弁を最後にお願いしておきます。
  53. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 先ほど来伺っておりまして、なかなか示唆に富む重要なお話でございました。扶助協会の問題でございますが、いまお聞きのとおり、六千五百万円の援助ということでございますが、それで十分だとは考えませんので、裁判費用に苦しむ方々を救済する上からも、今後ともこれを充実してやっていきたいと思います。
  54. 山田太郎

    山田(太)委員 この法律扶助の問題についてはまた他日に質問を保留しておきまして、きょうは時間もたっておりますので、これで質問を終わります。
  55. 高橋英吉

    高橋委員長 これにて本案に対する質疑を終了するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 高橋英吉

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  57. 高橋英吉

    高橋委員長 本案に対し、大村襄治君から修正案が提出されております。まず、修正案について、提出者に趣旨の説明を求めます。大村襄治君。
  58. 大村襄治

    ○大村委員 私は、訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案に対する修正案について、趣旨の説明をいたします。  まず、修正案文を朗読いたします。    訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案に対する修正案  訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。  附則第一項を次のように改める。 1 この法律は、公布の日から起算して七日を経過した日から施行する。  ただいまの修正案につきまして、その提案の趣旨を御説明申し上げます。  公布の日から起算して七日を経過した日に改めることにしましたのは、第一に、政府原案は本年四月一日から施行することになっておりますので、施行日を修正する必要があり、第二に、証人等日当は、民事訴訟敗訴者や刑事訴訟被告人負担するのが原則になっておりますので、その施行について七日の経過期間を置くことが妥当であると考えたからであります。  何とぞ賛成あらんことをお願いいたします。
  59. 高橋英吉

    高橋委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  60. 高橋英吉

    高橋委員長 これより修正案及び原案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、訴訟費用臨時措置法の一部を改正する法律案に対する修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  61. 高橋英吉

    高橋委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  62. 高橋英吉

    高橋委員長 起立総員。よって、本案は修正案のとおり修正議決いたしました。  ただいま修正議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 高橋英吉

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  64. 高橋英吉

    高橋委員長 次に、裁判所司法行政に関する件、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鍛冶良作君。
  65. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 近ごろ法務に関するいろいろの問題が出ておりますが、防衛庁の自衛官の各学校に対する入学について拒否せられたことが、世上に非常に波紋を起こしておると考えるのです。この点は重要なることと考えますので、大体わかってはおりますが、確実なるところを——まず、ことし自衛官はどういうところとどういうところへ志望されたか、そしてどういうところで拒否されたか、それが一つ。それから、いままで入っておる者でいろいろのいきさつがあったようですが、あなた方防衛庁のほうでそういうことに対して経験せられたことを、ひとづかいつまんで説明していただきたいと思う。
  66. 麻生茂

    ○麻生政府委員 ただいま先生から、どういう学校に何人ぐらい志願しておったかという御質問ございましたが、その点につきましては、いま調査をいたしておりまして、具体的にどの学校にどのぐらい志願しておったかという資料を実はいま持ち合わせておりませんので、具体的に入学拒否の問題が起きました事案について、御説明いたしたいと思います。  まず第一は、都立大学関係でございます。都立大学につきましては、東という三等陸曹と皆川という一等陸士と西田という二等陸士が、いずれも東京都立大学の工学部、夜間でございますが、これを受験するため、二月の上旬ごろ入学願書を大学に提出しておりました。これに対しまして、東三等陸曹と皆川一等陸士につきましては、二月十四日付で大学当局から、受験は自分の意思によるのかどうか、それから通学等に要する費用はだれが負担するのか、それから勤務と通学の関係はどうなのか、要するに通学することは勤務上差しつかえないのか、こういう文書照会を受けたわけでございます。これに対しましては、勤務上差しつかえないという上司の証明を受けまして、自分の意思により、自己の負担で受験をし、かつ通学する旨を、それぞれ回答いたしたわけでございます。それから西田二等陸士につきましては、二月二十五日同趣旨の電話照会がありましたので、上司から同趣旨の回答を行なっておるわけでございます。  ところが、東三等陸曹と皆川一等陸士に対しましては、二月の二十八日同大学の入試管理委員長の岡本哲治教授から、自衛官受験反対の運動が学内で行なわれており、形勢は非常に不穏である。小生としては、あなたの受験をあくまで支持するが、受験時あるいは入学後きわめて不愉快な雰囲気が心配されるので、その点よく承知の上でおいでください、という趣旨の二月二十七日付の文書を受け取ってございます。  なお、西田二等陸士は、同じ文書がやはり送られたのでございますが、実際には事案が発生しました翌日の三月四日にこの文書を受け取っております。  ところで、入試の日の前日、すなわち三月二日の十九時、夜の七時ごろに岡本教授が十条の駐とん地を訪れて、西田二等陸士及び皆川一等陸士の両名に面会を求めました。警衛司令は、西田二等陸士は外出中であるので不在である、皆川一等陸士は横浜のほうに転属になっておることを伝えましたところ、都立大学はスト中で、強硬派の学生もいるので、自衛官の入試は辞退してほしいという旨を伝言して帰ったのであります。  それから、西田二等陸士は、たまたま試験場下見のため外出しておりましたが、帰隊して上司からその旨を知らされ、翌三日の朝の七時ごろ、当直司令に依頼いたしまして、電話で岡本教授に確かめたわけでございます。その際、岡本教授から確かめましたことは、教授としてはできるだけ受験できるようつとめたが、評議会が自衛官の受験を認めないということになったので、どうにもしようがないんだという趣旨の返事であったわけでございます。これに対して、これは教育の機会均等に反しておかしいのではないかということを当直司令から質問したのでございますが、いずれにしても、もう評議会としてきまっていることで、自分としてはどうにもしようがないんだ、こういう返事でございました。なお、試験を受けるにあたっては受験票を持っていけばよいので、せびろでいけばだれが自衛官であるかわからないではないかと言うたのでございますが、公開してしまったのでそういうわけにいかない、という趣旨の返事があったわけでございます。  したがいまして、こうした事情を聞いた西田二等陸士は、それまでは、多少の反対運動があっても、私服で行こうという気持ちがあったようでございますが、いずれにいたしましても、評議会で自衛官の受験を認めないということをきめた、それから受験票の問題に関連しても公開してしまったということでは、これはどうにもしようがないからということで、受験を取りやめたということでございます。  それから皆川一等陸士は、十条駐とん地から連絡を受けましたけれども、大学の真意をはかりかねましたので、翌三日、すなわち受験日の八時五十分ごろ入試に出頭いたしまして、岡本教授に面会を求めまして説明を求めましたところ、三人のために八千人の受験生に混乱が生じては困るのでやめてほしいということを涙を流して頼まれた、こういうことでございます。そこで、いろいろビラも張り、立て看板等も立て、四囲の状況から見てなかなかむずかしい、こう考えて、受験しないで帰ったということであります。  それからもう一人の東三等陸曹に関連いたしましては、三月二日の十九時三十分ごろ、すなわち夜の七時三十分ごろ、岡本教授が朝霞駐とん地を訪れまして、入試を辞退してほしいという旨の申し入れを涙を流して頼まれたということでございます。そこで、同三等陸曹は、防衛大学に合格しているのでよろしいです、こう答えて受験しなかった。  これが、都立大学関係に関連しまして、われわれが承知しているところでございます。  それからもう一つ起きましたのは、これは先ほど申しましたのは夜間大学に対しまして、自衛官が昼間自衛隊の勤務に服しながら、向学心に燃えて勉学のため通うという問題でございまするが、もう一つ起きました熊本大学の問題は、これは大学院の入学の問題であります。この問題につきまして、私ども受験のため出頭しました本人に確かめて知っておりまするところでは、現在の時点では次のようなことでございます。  三月十四日、熊本大学の大学院工学研究科の第二次募集の試験を受けるため、岩淵という三等陸尉と竹崎という、これは技本の技官でありますが、この両人が、それぞれ熊本大学の試験場におもむきました。竹崎技官は、学校内の掲示板の案内によりまして教務係に出頭いたしましたところ、募集要領によりますと、九時から学力試験が始まることになっておるわけでありますが、九時に工学部長室に行くようにという、こういう指示をされたわけであります。また前日の十三日の掲示でも、学力試験の始まるのは九時である、こう掲示があったようであります。いずれにしましても、学力試験が始まる時刻の九時に、工学部の部長室に行けという指示をされました。それから岩淵三等陸尉は、掲示板には気がつかずに、直接試験場のほうに直行いたしまして、そして八時五十分ごろに試験場前の廊下で工学部長代理の福井教授その他に呼びとめられまして、工学部長室に同行を求められたわけであります。そこで九時から工学部長室で、梶原、奥田というそれぞれの主任教授が立ち会いの上で、福井教授から、工学部長代理として申し入れるが、試験当日になってこのようなことを言い出すのは気がひけるが、もし合格されても勉学、研究できる環境ではなく、あなた方の受験は受理したけれども、こういう環境であるので、あなたたちも入学後たいへんだろうから、受験を見合わしてもらえないだろうか、こういう受験取りやめの要求をされたということであります。それから奥田教授からは、君たちが合格した時点で防衛庁を退職するという誓約書をここで書くのなら受験させてもよろしい、こう言われたということでございます。それで岩淵三等陸尉は、これは命令で受験に来ておるので、役所のほうに連絡した上で回答したいからと言って、若干の時間の猶予を求めまして退席をしたわけであります。それから竹崎技官も、同様に退席をいたしました。  そこで岩淵三等陸尉は、この大学受験について世話をしました防衛大学のほうに電話をいたしたわけであります。ところが、連絡しようと思った先生が不在で、おりません。事務のほうから、陸幕のほうに連絡せいということでありました。そこで多少また先生に時間の猶予を与えてもらいまして、陸のほうに連絡をしたわけであります。  それから竹崎君は、たまたま長距離電話をかける時間もなかったということで、おとうさんが同じ大学につとめておられるわけですが、そちらのほうに相談に行き、それから知り合いの某講師のところをたずねようと思ったが、不在で会えなかった。それで大体九時三十五分ごろ工学部長室に入って、また話をしたということでございます。  その前に、最初に会いましたとき、試験は九時半から——岩淵君は土木でございますが、土木は九時半、それから竹崎技官は電気のほうでありますが、電気のほうは午後一時からに試験の時刻を調整してあるから、こう言われておるわけであります。ちょうど両名が工学部長室に入ったのは、九時三十五分ごろのようでございます。その際、岩淵三等陸尉から、さらに受験を希望する旨を申し入れました。そのときさらに、これは自衛官だから拒否するのか、技官も含めて防衛庁職員全体を拒否するのか、という質問をしておるわけでございます。もし自衛官であるということであるならば、あるいは自分はやむを得ないが、技官である竹崎君だけでも受験さしてもらえないのか、こういうことを聞いております。それから、これは今回だけ拒否するのか、今後も拒否するのか。こういうことにつきましては、今回は拒否するということで、今後も拒否するかどうかということについては、どうも明確な回答が得られなかったようでございます。  それから竹崎技官が、合否にかかわらず、せっかく来たのだから受験だけはさしてくれないか、こういうことを言ったのでありますが、これに対しても同意を得られなかったということのように聞いておるわけであります。  いずれにしましても、九時半ということを前に聞いておるわけでございます、岩淵君につきましては。したがって、事実上受験ができないと判断いたしました両名は、それでは受験させないという旨の文書を私にもそれから役所のほうにも書いてもらえないか、こういうことを頼んだわけでございますが、大学側は、それはいいでしょう、こういうことで、したがって受験を断念して退席をしたというのが、私どもの現在判明しておるところの状況でございます。
  67. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 いま都立大学とそれから大学院の話でしたが、何か千葉大学でもそういうようなことがあったようでございますが、それはどうですか。
  68. 麻生茂

    ○麻生政府委員 千葉大学では、自衛官が一名受験をいたしておるわけでございまして、拒否ということにはなっておらないわけでございます。
  69. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 拒否された……。
  70. 麻生茂

    ○麻生政府委員 これは試験を受けまして、要するに採点の結果、不合格になったということでございます。
  71. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはおとなしく試験を受けさせたのですか。拒否されたけれども試験をしたら落第した、こういうのですか。その点聞きたいのだ。
  72. 麻生茂

    ○麻生政府委員 三等陸曹の一名が千葉大学を受験をしたわけでございます。これは千葉大学で行なわれました受験に出席をいたしまして、試験はちゃんと受けたわけでございます。ただ、試験判定の結果、不合格になった、こういうことでございます。
  73. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 拒否したのじゃないのですね、その点は。
  74. 麻生茂

    ○麻生政府委員 それは試験に出席して受験はしておるわけでございますから、受験の拒否ということにはならないと思います。
  75. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それから大学院ですが、これはほかの学校でもいいんですが、このあなたのほうから出ておるなにからしますと、いままでずっと入っておったようですね。それがだんだん辞退してくれというようになり、ついに拒否——しまいには試験を受けさせぬ、もしくは受けさせてもみんな落第させる、こういうやり方をしてきておるようだが、これはいつからどのようなことでこういうあらわれが出てきたものですか。大体でよろしいです。
  76. 麻生茂

    ○麻生政府委員 この夜間大学、いわゆる学校教育法でいいますと第二部と申すのでございましょうか、この夜間大学の入学につきまして、拒否という事実ができましたのは、今回のこの都立大学が最初でございます。いままでこの問題は起きたことはございません。  それから大学院の問題につきましては、われわれ自衛隊の装備の近代化、高度化に伴いましてやはり自衛隊の科学技術の職種の中には、修士課程以上の高度の研究能力あるいは知識を有する者が必要でありますので、三十二年ころから一般大学の大学院に派遣をしてきております。これが昭和三十八年ころで申しますと、博士課程が十八人、修士課程が五十一人ばかり入学をしておりました。ところが、三十八年に北海道大学及び東京工業大学で学生からの入学を拒絶する動きが出てまいりまして、翌年からこの大学には行かなくなってきております。それから昭和四十二年に京都大学、それから名古屋大学、東京都立大学でやはり同様な問題が生じてまいってきておりまして、やはりこの大学に事実上行けなくなってきております。さらに四十三年度におきましては、非常に激減をいたしておりまして、この昭和四十四年度におきましては、理工学関係の受験者延べ二十三人が大学院の受験をしたのでございまするが、全員不合格という事態になっております。最近の例をとりましても、昭和四十一年度につきましては六五%、四十二年度には七三%、四十三年度には四一%という合格率を示しておりましたのに、この昭和四十四年度に全員不合格という事態が出ましたことは、われわれにとっては非常に意外なことでありまして、何かふに落ちないところがあるというのが、率直な私の感じでございます。
  77. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 夜間大学へ行く者は、これは自衛官であるが余暇を得て勉強したいという者、また大学院へ行く者は、防衛庁のほうからですか、自衛隊のほうからですか、派遣されておる。これは私は昔からあったように思うのですが、ぜひとも専門的の教育をしておるところで学ばせなくてはいかぬということで派遣されるものだ、こう思うのです。その意味において、行く者は何らの欠点もなかったと私は思うのですが、これが第一でございます。欠点があったのか、ないのか。自衛隊の許可を得、また自衛隊から派遣されておるのですから、何らの欠点もなかったと思うがどうだ、こういうことですよ。  その次は、行ってから自衛隊員なるがゆえにはなはだ困るような行動があったことがあったかどうか。そういうことをあなた方は耳にされたことがあるか。この二つをまず聞きたいと思います。
  78. 麻生茂

    ○麻生政府委員 結局欠点があったかどうかということは、入学試験を受ける資格があったかどうか、こういうことでございますが、われわれのほうから受けました者は、夜間大学に行きました者はもちろん欠点がなかったものと思いますし、また大学院の関係につきましては、われわれのほうで選考してこれは送っておるわけでございます。したがいまして、従来自衛官でありますならば、防衛大学のときの成績、それから防衛大学を出てからの勤務の成績というものを審査することにいたしております。また一般大学から入りました自衛官なり技官につきましても、学校の成績なり入ってからの勤務なり研究能力というものをよく調べまして、その上で選考して受験をさしておるわけでございまして、その辺欠点があったというふうには実は考えておりません。しかし、これは一般試験でございまするから、一般の受験者と同じような手続で同じ試験を受けるわけでございますので、そのときの試験の模様によっては、落第ということもそれはあり得ると思います。しかし、先ほど三年ほどの合格率を申し上げましたが、いままでこうした高い合格率を示しておったのに、昭和四十四年度において全部ゼロというのはどうもふに落ちないというのが、これは率直な私の気持ちでございます。  それから行った自衛官が非常に困ったことがあるかということでございます。先ほど来各大学から私のほうに受験をしないようにしてくれと頼みに来たということのお話を申し上げましたが、その際一様に先生方の言われることは、自衛隊から来ておられる方は非常にりっぱな人である。そして能力も優秀であり、自衛官としての訓練を受けているので、誠実に非常に努力してもらっておる。非常にたよりになる。そして修士課程を出た後においても、いろいろ助けてもらっておる。非常に本人はりっぱである。しかし、いずれにしても学内における事情からどうも受け入れにくいため、この際は遠慮してもらえぬだろうかというのが、率直な担当しておる大学の先生の私どもに伝えられた意向でございます。したがいまして、私といたしましては、大学院に行っている自衛官が非常に能力があり、誠実に、まじめに研究に精進しておるというふうに、確信をしておるわけでございます。向こうに行ったために本人のことで問題を起こしたというようなことは、全然聞いておらないわけでございます。むしろ、担任をされた先生は、非常に賞揚をされておるということでございます。
  79. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうであるといたしますならば、憲法上何人といえども教育を受ける平等の権利を持っておることは、いまさら申し上げるまでもない。あなた方としてもさようなことを聞かれて一それから全員落第したことは、落第ということはしかたないかもしれないが、これもいま一ぺんに落第したんじゃないんだから、だんだん来るな来るなといわれて、そして最後にそれでも行ったものだから、全部落第さした。これはもうわれわれ常識から考えて、はなはだ不都合なことだと思うのです。このような現象があったときには、防衛庁から許可をして学校にやった、派遣してやった、そういう者がこういう差別待遇をこの世の中で受けておったのですから、私は防衛庁として黙っておれぬだろうと思うのですが、この点に対してどのようなことをしておいでになりますか。率直に申してもらいたい。
  80. 麻生茂

    ○麻生政府委員 私は、この都立大学の問題につきましては、三月の三日新聞社からの質問で初めて知ったわけでございます。そこでさっそく指揮系統を通じて調べましたところ、先ほど申しました事情がわかりましたので、同夜さっそく文部省の大学学術局長にお電話をいたしまして、今回の措置は教育の機会均等に反するのではないか。それから第二は、こうした事態が二度と生じないように善処してほしいということを申し入れいたしました。さらに三月の四日は閣議でございましたので、防衛庁長官から文部大臣にお話しいたしまして、こうした事態が再発しないように善処方を要望いたしたわけであります。  なお、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と、憲法に規定をしているわけであります。また、この趣旨を受けて、教育基本法も書いてあるわけでございます。したがいまして、自衛官なるがゆえにすべての人に与えられているこの教育の機会均等の権利が侵害されるということは、自衛官の国民としての基本的な人権が侵害されておるのではないかということで、三月の十五日法務省の人権擁護局のほうに調査方を依頼申し上げて、御調査を願っておるということでございます。
  81. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 文部当局に伺いたいのですが、まことに重大なことだと思うのです。これは学校の管理者は、なるほど騒ぐ者がおるからうるさいかもしれませんが、さようなことで法を曲げるようなやり方をすべきものでないし、やって容赦のなるものじゃない。そこで、文部省は、それに対する監督の権限もあれば、義務もある。いま防衛庁からこれだけのことを言われたら、これに対してどのようなことをせられましたか。また、どのように指導せられたのであるか、ひとつその点を明瞭にしていただきたい。
  82. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 ただいまの問答で十分になったと思っておりますが、まことに遺憾なことでございます。憲法違反間違いなし、こう思っておりますので、ただいまのところは人権擁護局のほうのお調べを待っておりますが、大学のほうに対しては、厳重に調査をいたしまして、いまおっしゃったとおりに確認いたしておりますから、今後こうしたことの起こらないように、また擁護局の結果をいただいてからのつもりでありますが、厳重に始末をつけたいと思っております。
  83. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 こういうようなことが起こらぬように、というのじゃないのです。起こったんですよ。起こったのだから、たいへんだ。そこで、監督の任にある文部省はどうしましたかと、こういうのです。これからこんなことの起こらないようにします、遺憾でございます、そんなことなら、私は聞かぬでもいいと思う。はなはだ遺憾千万なんだから、黙っておれぬはずなんだ。黙っておれぬとするならば、どのようなことをなさったか。これは文部省として、私はやるべき義務があると思う、責任があると思う。その点をどのようにして果たされたか、それを承りたいのです。
  84. 清水成之

    ○清水説明員 ただいまの点でございますが、都立大並びに熊本大学につきまして、試験当日、終わりましてから、私どもも新聞社を通じてその情報をキャッチいたしました。さっそく電話を両大学に入れますと同時に、都立大につきましては、その夕刻大学から来ていただきまして、実情を聞いたわけでございます。しかし、どうもあやふやな点があるのでございます。そこで両大学につきまして、公文をもって事をはっきりさしておきたいということで、文書照会をいたしました。両大学から文書回答が一応参っております。その回答の内容は、先ほど防衛庁の人事局長からお答えのあった点とほぼ一致いたしております。私どもといたしましては、そういうことで納得もなかなかできませんし、またあとに、後ほどちょっとお答えしたいと思いますが、短大の夜間の試験等も控えておりましたので、「自衛官等職業を有する者の入学者選抜について」ということで、国公私立大学、短期大学長あてに通達をいたしまして、このようなことは一と申しますのは、自衛官だからというようなことで、職業によって受験資格がある者について受験を拒否するということにつきましては、憲法並びに教育基本法の趣旨から許されないということで、通達をいたしまして、直ちに指導をいたした次第でございます。  なお、国立大学の面につきましては、在来、先ほどお話もございましたように、大学院の一部でそういう問題がございました。かねがね口頭でやっておったところでございますが、今回は文書通達をしますと同時に、そういう大学につきましては、個々にただいまお話をしておるというところでございます。  なお、先ほど千葉大学の短期大学の点がございましたが、これは学生の一部が受験をさせるなということで大学当局に迫ったわけでございますが、大学といたしましては、受験を断わることはできないということではっきり学生に言明をいたしまして、受験をしてもらった。してもらったあと、また学生の突き上げがございまして、責任者がつるし上げの直後に確認書に署名をしたというような事態がございますが、大学協議会並びに教授会は、あの試験は正当であり、自衛官の受験を拒否することはしないという態度で合格者も発表した次第でございます。
  85. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 千葉大学のほうはわかった。まことにそれはけっこうだ。ほかのほうはどうした。ただ不都合だ、だけではいかぬですよ。不都合なことをしたら、不都合なものに対する処置があるはずなんです。その点を私は聞いておるのです。  それから、あとは学校管理の問題でございますが、学生が騒いだからといって、理由のある騒ぎであれば、これは耳をかさなくちゃならない。しからずして、不法なことをやれといって騒いだときに、その騒ぎにおそれて、相手方に、どうだ、この環境だからやめてくれぬか、さようなことを言って、学校の管理者がよく学校におれるものだと私は思う。あなた方、それをどう思うておられる。そういう者は学校の管理者として認むべきものでないと私は考えるのだが、それをどう考えておられるのか。また、そういうへなへなな態度でおるものだから、下から突き上げられる。ならざることはならざること、なすべきことはなすべきこと。おまえら、そういうことは間違っておる。幾らそういうことを言ったって通らぬ。もしおまえらの言うことを聞くならば、おれは憲法違反のことをやらなければならぬということを堂々と述べる勇気さえあれば、私はそういうことはないものだと確信するのだが、情けないことだ。それは私が言うてみたってしようがない。しかし、あなた方が私と同じような考え方であるならば、そのようなものに対してどのような態度をとろうとするのか、その点をもう一ぺん聞きたいと思う。ただ遺憾だ、何もしておらぬ、困りますではいかぬ。困ったら、困ったものに対してどのようにするか、ここでひとつ明瞭にしてもらいたい。
  86. 清水成之

    ○清水説明員 ただいまの点でございますが、管理者が学生運動に押されまして筋を曲げるということにつきましては、私どもも非常に遺憾でございますし、けしからぬことだと考えます。ただ、管理者の措置等につきまして、これは御承知のとおり、特例法上の大学管理機関との関係がございますので、率直なところ、文部省としてこれは具体的に手の打ちようがないというのが実情であり、また権限上の問題でございますが、指導助言を繰り返し繰り返ししていくよりしかたがない、これを強化してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  87. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 はなはだどうも……。監督官庁というのはそういうものかね。何の監督があるのですか。(「監督権がない」と呼ぶ者あり)監督権がないとおっしゃるなら、それは……。それから、いまここで大学の自治と言われるが、大学の自治というのは、みずから治めるということですよ。みずから法を曲げることをやって、これが自治だと言う者がおったら、それは容赦ならぬことですよ。あなた方はそれをどう聞いておるのですか。もしそれが自治だというなら、われわれはあなた方を相手に何事だと言わなければならぬ。だから、その点は監督官庁としてなすべきことはなさなければならぬと思うが、もう一ぺんひとつ一きょうはここまでだが、もう一ぺん、ここはどうなすべきか、監督官庁としてなさなければならぬ道があると私は思う。そんなことはどうも遺憾でございますというて、今後なさぬようにしようたって、こんなことをほっておけば、今後なすにきまっておる。なさぬようにするということは、行なわれません。どうすればなさぬようにするのか、ひとついま返事できるならけっこうだが、いまできないならば、この次にもう一ぺん聞きますから、ひとつ返答してもらいたいと思うが、どうですか。
  88. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 お説のとおりでございまして、私もそのとおりと思っておりますが、要は、いまここに起こったことだけが全部ではございませんで、もっとこうした問題の本質を究明することが必要だと私は思っております。それらのことを用意しながら、いい結果が出ますようにいま努力中でございますが、個々の問題をここで申し上げることは、少し遠慮させていただきたいと思っております。
  89. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは重大な問題ですから、いまこれだけ申し上げて、この次は大臣からひとつ責任ある答弁を得たいと思います。  文部省に対してはそれだけにして、その次は、いま防衛庁のお話では、法務省に対して人権擁護の申し立てをされたというのだが、これは当然だと思う。申し立てがあったことは間違いないと思うが、その申し立てに対して、どのようなことをしておいでになりますか。ひとつ擁護局長から……。
  90. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 現在まで、防衛庁のほうから、お尋ねの点につきましては、昭和四十四年三月十五日、私のほうで調べてくれという通報があったわけでございますが、御承知のように、憲法は社会的身分等による差別の禁止及び教育の機会均等を保障しておりますし、また、受験を拒否する合理的理由もないのではないかという疑問もありますので、憲法違反、人権侵害の疑いが濃厚であるというので、現在東京法務局において鋭意調査を続けておりますが、現在までのところ、まだ完了しておりませんが、三月二十七日現在までに東京法務局において調査いたしましたのは、本件については学校の言い分も十分聞かなければなりませんので、防衛庁関係から九名、都立大学関係者から八名、その他文書のやりとりがありますので、そういう公文書、そういうものを調査いたしまして、まだ若干調査すべき事項が残っておるのでありますが、それも人権擁護の事件といたしましては、非常にスムーズにいった。学校のほうも、それから防衛庁はもちろんですが、非常に調査に協力してくださいましたので、スムーズにいっておるわけでありますが、できるだけ早い機会に結論を出しまして、両方の言い分を十分聞いて、そしてできるだけ早い機会に結論を出したい、こういうふうに考えております。
  91. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私は、それは役所としましては十分準備をなさることは当然だと思いまするが、憲法違反であることは、まことに明瞭だとわれわれは考える。そういうものであれば一これは教育の府ですよ。最高の教育の府ですよ。そこにおいて堂々と憲法違反をやっておるのですよ。かようなことをいつまでものがしておいたのでは、国民に対する悪影響はどのようなものであるかをひとつ考えていただきまして、一日も早く解決をしてもらわなければいかぬ。  それからいまお聞きしますと、都立大学と、それから熊本大学と言われるが、防衛庁から出ております資料及びいまのお話から聞きましても、三十八年ごろからだんだんこういう傾向があらわれておりまして、北海道大学、東京工業大学その他いろいろな方面からこれは来ておるようだが、それらの点も、これはこの際すべてみんな調べて、もし悪いとするならば、二度とかようなことのないように、ひとつあなた方の力でもってやってもらわなくちゃならぬと思う。まことに、国のためにこれほど重大なことはないと思う。教育の府、しかも、いま申し上げるとおり最高学府といわれる教育の府において、公然と憲法違反の事実をやっておる。気がねをして、やめてもらわなければならぬと言ったかもしらぬが、やったあとで、これはいかぬというので、それをもとへ戻すとかなんとかいうようなやり方は聞いておらない。そういうことをほうっておいてはたいへんだと思うのですが、この点は法務大臣、どうでしょうか。私の言うことは、ちょっと行き過ぎでしょうか。あなたもそのとおりお考えになるか。お考えになるとするならば、ひとつ一日も早くこの点を明瞭にして、国民を安心させてもらわなければいかぬと思うが、いかがですか。
  92. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 ただいま人権擁護局長からお答えもいたしましたが、人権擁護に違反の疑いも濃厚であるという御説明を申し上げましたが、非常に重要なことでございますから、私どもも督励いたしまして、調査を完了させたいと思っております。
  93. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それでは、できるだけ近いうちにお調べ願って、その結果をもう一ぺん承ることにいたします。  そこで、ついでに私は法務当局並びに裁判所に承りたいのですが、近ごろ裁判に対して国民からいろいろ批判が出ておることは、いなむことはできないと思うのです。私は、裁判官の独立性を尊重いたしまするから、個々の裁判に対してこうである、ああであるということは、ここで申し上げません。申し上げませんが、こういう批判の出ておることは、私は耳が曲っていて一人特別聞いているのではなかろうと思う。これは最高裁のその任にあられるあなた方も聞いておいでになると思うのですが、もし聞いておいでになるとすれば、一般国民は知識がないからうるさいことを言うているのだということだけで片づけられるものではない。国民の常識と裁判官の常識との間に、これは隔たりがあるということではないかと私は思う。この点が根本ではないかと思うのですが、もしそうであるとするならば、裁判所の側においても、これを謙虚に受け入れられまして、何らかのこれに対する処置があってしかるべきものではないかと思うが、どうお考えになるでしょうか、ひとつ伺いたい。
  94. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 ただいま裁判につきまして御質問がございましたが、抽象的に申しましても、この裁判に関することにつきましては、やはり慎重にお答えしなければならないと思います。ただいま御指摘のように、裁判に対していろいろの批判があるということも、われわれはよく承知いたしておりますが、その批判も、一方的な批判じゃなくて、ある立場からの批判、または別な立場からの批判というものがあるようでございます。一番大事なことは、何と申しましても、裁判官が良心に従って独立にその職権を行使するということであろうと思いますが、その裁判の独立ということについては、日本の裁判官は世界の裁判官に少しもひけをとらないと考えております。問題は、その裁判国民生活に密着しておるかどうかということでありまして、この点につきましては、これまでたびたび裁判官の会同におきましても、最高裁判所長官から、裁判の独立を強調すると同時に、それが独善であってはならない、そして国民の生活に密着した裁判をするように日ごろから裁判官としてよく研究を積まなければいけない、そういうようなお話もございますので、われわれ事務当局としましても、そういう方向に裁判所が動くように、行政の範囲内であとう限りの努力はいたしておるつもりであります。
  95. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 事務総長のおっしゃるとおり、裁判官の良心に従って裁判をしておられることに対しては、私は決して疑問は持ってません。私はそうだと思う。けれども、かつて裁判官は化石しておるといわれたことがありますね。というのは、一般常識から離れておる、こういうことなんです。これは幾ら裁判官でも、やはり実情を知らないと、国民の常識と離れたことになってくる。その頭で裁判をしたのでは、国民からいろいろの批判を買うのは、これはやむを得ないと思うのです。そこで、化石しておってはいかぬからというので、化石しておるのではどうもしようがない、人間らしくひとつ活用できるような頭にしてもらいたい、こういう時代もありましたが、本日はこれとちょっと違いますが、ある一面においてはたいへんどうもいいところがある。いわゆる知識の面において、また新しい指針に対して進もうとする意欲に対して、われわれは非常に敬意を払うところはありますが、ただ一面、その点だけ考えて、現実の社会にそれが合うかどうかということまで考えられぬことが多いのじゃなかろうか、私はこう思うのですが、この点は、何としてもやはり社会の実情をもっと知ってもらいたい。憲法におきましても、国民の基本的権利はどこまでも守らなければならぬが、公共の福祉に反しない限りという大前提を置いているのですから、その公共の福祉はどうであるかということを忘れて、いまの憲法はこういう憲法なんだ、憲法の精神はこれだ——それは精神はそれであるかは知らぬが、公共の福祉、これとの調和をひとつ考えなければいかぬと思うのですが、この点は、あなたどうお思いになりますか。
  96. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 おっしゃるとおり、憲法は公共の福祉の維持と基本的人権の調和ということをうたっておりまして、裁判官も当然それを頭に入れておると思います。事柄が、どうも抽象的とは申しますけれども、現在の裁判の当否の問題になりますので、こういう席で申し上げることは、ちょっと御遠慮を申し上げたいと思います。
  97. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 われわれは、そういう意味において、裁判官といえども謙虚に社会の実情をよく知ってもらいたい、そして公共の福祉ということをひとつ大前提に置いて、個人の人権の尊重をしてもらうことをお願いしたいと思うのです。こういうことです。  それから、いろいろのことがありますが、やかましいのは裁判所の構内におけるデモです。これは、デモの禁止をやられる。そうすると、また内閣総理大臣は異議の申し立てをして、そしてその判決をとめておる。これは何べんでも繰り返しておりますね。まことに私はみっともないことだと思うのです。内閣総理大臣に間違いがあるのか、裁判官に常識的に足らぬところがあるのかどうかです。私は、ここで断言はいたしません。断言はいたしませんが、とにかくいつかデモをやったとき、あすこからさくを越えて中へ踏み込んだことがあるのですよ。そういう者のあるのを黙っておったら、どういうことになるでしょう。これらの点をも、ひとつ実際についてよく社会の実情を調べる、きょうのデモをやっておる者の行動を調べる。ゲバ棒を持って歩く者は、どういう考えを持って歩く者か、これらの点を考えてもらいたい。それはゲバ棒を持って歩いたって、人権のあるのは当然であるし、尊重しなければならぬが、公共の福祉に反するようなことをしてまでも、基本的人権であるといってこれを保護してやるべき必要はないと思うから、この点は、ひとつ大いにどなたでも勉強してもらうことを私はお願いしたい、こう思うわけですが、裁判所のほうでもこれに賛成であるならば、今後、私はその教育方法については申し上げませんが、あなた方のほうでもそれに従ったやり方をお願いしたいと思うが、いかがでしょう。
  98. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 事柄が裁判の系統の問題になりますので、非常にお答えしにくいわけでございます。しかし、基本的人権と公共の福祉の調和をはかりながら法を適用するということは、何人も異存のないところでございまして、そのために裁判官が世間にうといというような非難を受けないように、また厳正中立な立場を失わないように、そういう方向で裁判官は今後研さんを重ねるということは、当然のことと考えております。
  99. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 きょうはこの程度にしておきましょう。
  100. 大村襄治

    ○大村委員 関連してお伺いいたします。法務省の人権擁護局長さんにお尋ねしたいのですが、三月十五日に防衛庁人事教育局長から人権擁護局長に対して、人権侵犯のおそれある事案として調査方が要請されたということはお認めですね。ところで、このおたくの人権事件の処理規程を拝見しますと、告発とか、勧告とか、いろいろ結論の出し方について定めがあるようですが、本件については、現在調査中であるのでまだ結論は出てないと思いますが、人権侵犯のおそれある事案として結論が出た場合に、いかなる措置を講ぜられる考えであるか、答えられる限りでよろしいから、御説明願いたい。
  101. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 大体私のほうは、調査をいたしまして、しかし、その調査につきましては、強制力はございません、すべて任意調査であります。そしてその結果は、大体告発、勧告、通告、説示、援助、排除措置、処置猶予、そういうよらないろいろな措置をとるわけでございますが、このいずれに当たるかということなんですが、これ以外に非該当——人権侵害でないということが一つございます。そのいずれに当たるかということを任意な調査を続けておるわけでございまして、現段階におきまして、そのいずれに当たるかということをこの席で断定するまでの調査結果は、出ておらないのであります。
  102. 大村襄治

    ○大村委員 この規程の中に排除措置というのがあるようでございますが、これはどういうことでありますか。
  103. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 排除措置といいますのは、人権侵害が継続しておりますものを、それをなくす。普通の場合でございますと、たとえば公害が続いておる、騒音が続いてみんな近所の人が迷惑しておるというのを、その音を低めるとか、あるいは特殊の時間にその事業をやらすとか、その公害そのものをとにかくとめるというのが、排除措置でございます。つまり言いかえますと、この人権侵害の状態をやめさせるというのが、排除措置でございます。もちろんこの排除措置も、あくまでも強制力は用いません。もっぱら説得によって行なうものでございます。   〔委員長退席、田中(伊)委員長代理着席〕
  104. 大村襄治

    ○大村委員 今度は文部省の政務次官にお尋ねいたしますが、法務省の人権侵犯の調査の結果、何らかの結論が出た場合に、文部省はこれにいかに対処するか。先ほどもこれに触れて御発言があったようでありますが、重ねて確認の意味でお尋ねします。
  105. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 大学との間に個々にいま厳重な折衝をいたしておりますので、その内容をいま申し上げるのもいかがと思っておりますが、せっかく擁護局のほうでいい結果をいただきたいと思っておりますので、それが来ましたら、その趣旨に合わせるように努力したい。この程度でお許ししていただきたいと思います。
  106. 大村襄治

    ○大村委員 くどくなりますが、先ほども御説明がありました三月十九日の大学学術局長の通達を見ましても「現に受験できなかった事例がありますが、」ということで、その事実を認めておられます。そして終わりのほうには「教育の機会均等の原則を定めた憲法および教育基本法の趣旨からみて許されない」これははっきり断定されたのであります。でありますから、法務省の人権擁護局のほうからその点についての判断を下されるということになりますると、文部省といたしましては、さきに出された通達で、入学者選抜の公正な実施について遺漏のないよう配慮する、先ほど鍛冶委員指摘された点でありますが、これをいよいよ誠意をもって実行しなきゃいかぬ、こういうことになると思うのですが、重ねて御決意を伺っておきたいと思います。
  107. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 お説のとおりでありまして、さきに出してあります通牒に沿いまして、侵された人権の回復ができますように善処したいと思っております。
  108. 大村襄治

    ○大村委員 最後に、防衛庁の局長さんにお尋ねしたいのですが、三月二十一日の中央紙に、防衛大を大学にしてはどうかということで、防衛庁当局で検討されているという報道がございましたが、これが自衛官の入学拒否事件と何らかの関連を持つものであるかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  109. 麻生茂

    ○麻生政府委員 防衛大学におきましては、もうすでに数年前から大学設置基準に従って教育を行なっております。したがって、防衛大学を卒業した者に学士号を与えてもいいのではないかという問題が、数年前から検討の対象になってきておったわけでございます。たとえばアメリカの陸軍士官学校とか海軍士官学校とかあるいは空軍士官学校を出ました者には、バチェラー・オブ・サイエンスという称号を与えるように法律で規定されております。また、たとえばイギリスの技術関係の軍のカレッジを出た者に対しても、オーナーズデグリーまたはオーディナリーデグリーを与えるということになっております。したがいまして、実質的に学士号を受けるに値するだけの教育を行なっておる防衛大学の卒業生に対して、学士号を与えてはどうかという問題が、もう数年前からあったわけでございます。それからもう一つは、三十七年度から、自衛隊に関連いたしましての高度の学術なりあるいはその応用について知識なり研究能力を高めるということから、研究科の制度というものを防衛大学について認めておりまして、すでに約九十人ばかりの者が現在入っております。専門課程としまして、科目といたしましても、電子工学とか、飛しょう体工学とか、あるいは造兵工学とか、他の一般大学においては求めることのできない専門科目につきまして、そういう専門科目を設けまして、大体修士課程と同程度の教育を行なってきておるわけでございます。したがって、実質が備わっておるわけでございます。したがいまして、この研究科課程というものを学校教育法による修士課程と同じような扱いにできないか、そうして研究科を出た者については修士の称号を与えるというようなことをすることがよいのではないかという意見が、出てまいったわけでございます。防衛大につきましては、この研究課程はさらに拡大する計画をいままで持っておったわけでございます。しかし、その研究科の拡充というのは、他の大学においては求められないところの専門科目について拡充するという方針でいままで参ったわけでございます。たまたま昨年来、先ほど申し上げましたように、大学に対する試験の結果、その全部が不合格というような事態も起こりましたので、直接この受験拒否あるいは不合格という事態に即して出てきた問題ではない、長い間の一つの懸案の問題でありまするが、この際こうした時勢の推移等も見まして、根本的にひとつ考えてはどうかということであります。  なお、医者の問題につきましては、医官の補充というのは、大体四〇%までは満たないわけであります。これは医官の制度ができましてから、大体五〇%を下回っております。したがいまして、やはり医官を求めるということに対しても、この際根本的な対策を講ずる必要があるのではないかということで、最近新聞に載ったような記事が出たのではないか、こう思っております。われわれといたしましては、できるだけ前向きにひとつ検討していきたい、こう考えておりまするが、これは学校教育法との関係もありますし、文部省とも十分連絡し、御意見を聞き、進めていかなくてはならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  110. 大村襄治

    ○大村委員 経過は一応わかりました。時間の関係できょうはこれで質問を終えますが、大学に昇格あるいは編成がえするにつきましても、文部省との関係は密でございます。またかりにこれが実現いたしましても、大学、高校を通じ、夜間、通信科を入れると一万有余人をこえるという自衛官の向学心、あるいは教養の向上、こういった点は根本的に解決されない。先ほどもお尋ねしましたように、人権擁護局の結論でも出れば、文部当局にさらにこういった問題を積極的に解決してもらわなければいかぬ。ぜひひとつ防衛庁におきましては、あらゆる知恵をしぼって、文部当局との連絡を密にして、この自衛官の進学の問題、教養の向上の問題に全力をふるって対処するように、強く要望して、私の関連質問を終わります。
  111. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 松本君、お待たせしました。
  112. 松本善明

    ○松本(善)委員 文部省に、関連してお聞きしておきたいと思うのですが、自衛官の入学拒否問題といいますのは、自衛隊が憲法違反ということを問題にして起こっておるのではないかと思いますが、実情について、なぜそういう自衛隊の自衛官の入学拒否問題というのが起こっておるのか、ということをお答えいただきたいと思います。
  113. 清水成之

    ○清水説明員 ただいまの御質問でございますが、私ども自衛官入学問題をめぐりまして学生が紛争を起こしております話を大学の当局者から聞きますと、それが全部ではございませんが、いまお話しの自衛隊の憲法との関係についてのことを学生の一部で言っておるようでございます。しかし、私どもといたしまして、特にまた国立大学におきまして、これは私が申し上げるのは僭越でございますけれども、かりに最高裁でさような判決がございますれば、これは国家機関として当然そういうことに従うべきでございますが、きちんとした国会できちんと法律ができ上がっております以上、やはり大学ないし大学人としまして、それに従ってもらわなければならぬ、かようにかたく考えております。
  114. 松本善明

    ○松本(善)委員 いまお話しのように、この問題については、自衛隊が憲法違反かどうかということについては、最高裁のみならず、裁判所の判決は、一つも出ていない。それから大多数の憲法学者は、すべて自衛隊は憲法違反であるというふうに言っておる。いわば憲法学界の通説になっておるわけであります。その大学の中でも、当然に、これが憲法違反であるかどうか、自衛官の入学が憲法違反であるかどうかということが、問題になるでありましょう。そういう中で、大学の先生方が、教授が、それぞれの見解を持つのは自由であるし、その中で大学が、これはいまうちの大学へは入学させないほうがいい、あるいはそれと違った考えのところも出るかもしれませんが、そういうことをきめるのは、大学が自由にきめられるということになっておるのではないか。この大学の自治との関係で文部省はどう考えておるのかということをお聞きしたいと思います。
  115. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 ただいま起こっております事実の経過をただしてまいりますと、経過から考えますと、大学の現実に持っておる問題、騒擾、そうしたことが直接の問題でございまして、憲法云々といったような問題から出てきておるという部分がないとは申しませんが、ただいま起こっておる姿においてはないのだと了解いたしております。
  116. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 松本君に申し上げます。まだ長いですか。
  117. 松本善明

    ○松本(善)委員 いえ、そうたいしてかかりません。私のいまお聞きしましたのは、大学の自治との関係でお聞きしたわけであります。その大学がそれぞれに自衛官の入学問題について判断をして、こうして大学の中できめることができる、それが大学の自治ではないかということをお聞きしておる。前にこの委員会でも東京大学の事例について問題になりまして、官房長官は、大学の自治ということがありますのでなかなか簡単にはいかないのだという趣旨の答弁をされたわけです。このことが大学の自治ということに関係をするのではないかということを、お聞きしておるわけであります。一音でけっこうです。
  118. 久保田藤麿

    ○久保田政府委員 官房長官どういう意味合いでおっしゃったか、いまちっと十分理解はつきませんが、大学の自治とは無関係だとは申しません。しかし、今日の起こっておるこの問題について申せば、そうした考え方は間違っておる、こう思っておるのであります。
  119. 松本善明

    ○松本(善)委員 法務省の人権擁護局長に聞いておきますが、結論を出すということでありますが、この問題については、法律問題は、いま簡単に指摘をいたしましたように、自衛隊が憲法違反かどうかという問題もあります。それから大学の自治に干渉できるかどうかという問題もあります。そういうことも含めて、法務省の人権擁護局は、当然に関係が出る問題であろうと思いますので、検討しておるのかどうか、またそういう権限があるのかどうか、その辺は、どういうふうに考えておられるか、お聞きしたいと思います。
  120. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 本件につきましては、いままでの調査のところ、憲法違反云々の問題は出ておりません。今後の調査で出るかもしれませんけれども、現段階においては出ておりません。  それから大学の自治の問題でございますが、大学の自治といえども憲法の範囲内の問題であるという法律解釈の上に立って、われわれは法律のほうは研究しております。
  121. 松本善明

    ○松本(善)委員 私の聞いておるのは——局長、よく聞いておってくださいよ。この問題が人権問題になるかどうかということは、当然に自衛隊が憲法違反かどうかということ、それから大学の自治との関係ではどうなるかということの判断をしなければ、結論が出るべき性質のものでないと考えるけれども、その点について、人権擁護局としては問題になってないということは、こういうことは考えてないということですか。
  122. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 いま申し上げましたのは、都立大学の問題について申し上げたわけであります。大学一般について申し上げたわけではない、いわゆる都立大学における自衛官の受験拒否の問題について申し上げたわけでございまして、大学一般について云々を言っているわけではございません。大学一般について、もしたとえば文部省の……。   〔松本(善)委員人権擁護局ができるわけないでしょう」と呼ぶ〕
  123. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 松本君、もう一問。
  124. 松本善明

    ○松本(善)委員 大学一般の問題を人権擁護局ができるなんていうことは、だれも考えてない。そういうような見当違いを言ってもしようがない。いま都立大学の問題を問題にしておるというから、それに結論を出すためには、私がいま言いましたように、自衛隊が憲法違反かどうかということと、それから大学の自治との関係はどうなるかということを、当然に法律問題としては考えなければならないはずなんだ。それをあなたのほうは考えてないというのは、ほんとうなのかどうかということを聞いているのです。
  125. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 法律問題としては、まあ本件についてはいろいろな観点から考えております。だから、自衛隊が憲法違反かどうかという問題についても、一応は法律問題として考えておりますけれども、本件については、学校側の言い分は、自衛隊は憲法違反であるからおれのところはこういう者は排除するのだという趣旨の学校側の答弁は全くないから、その意味において本件は問題にならない、こう申し上げたわけであります。
  126. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 猪俣浩三君、お待たせしました、どうぞ。
  127. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これは、主として法務大臣にお尋ねいたします。   〔田中(伊)委員長代理退席、進藤委員長代理着   席〕  三月二十五日に、閣議後の記者会見で法務大臣が談話を発表された。新聞の伝うるところによれば、こう言ったということになっておるのでございますから、それについて間違っておるなら間違っておる、いいかどうか。それは、公安担当裁判官はまちまちの判決を出しており、これが法律無視の風潮を生み出しておる。政府は裁判所に対し何らかの規制をする歯どめが必要だ、こうおっしゃったというのであります。なおまた別な新聞は、こうも伝えております。近ごろ変に先走る判決が多い。法務当局でも、判決が適当かどうか、十分に検討したい、こういう放言をされておる。これはあなたは簡単に取り消されたようでありまするけれども、非常な大問題ですよ。いま鍛冶君は自衛隊云々は大問題だというけれども、私はこれのほうが大問題だと思う。三権分立問題にも及びます大問題です。しかも私どもこれをあなたにはっきりさしていただきたいことは、いまの鍛冶委員の質問を見ましても、自民党の中にも、閣僚の中にも、こういう考え方があるのだろうと思う。それを背景にしてあなたがうっかりしゃべられた。ちょうど農林大臣の倉石君がしゃべったごとく、あれもああいう考え方が自民党の中にあったのを、倉石君がひょいとしゃべった。今度の場合もやはりそういう背景があるわけですから、私どもはこれはどこまでも明らかにしていただかなければならぬ。そこで、いま申しましたようなこの新聞記事でありますが、あなたはさようなことをおっしゃったのであるかどうか、それをまずお尋ねいたします。
  128. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 ただいま猪俣先生から、私の去る二十五日の件につきましてお尋ねがございましたので、私なりの考えを申し上げたいと思います。  先般、去る二十五日の定例記者会見におきまして、二十四日にちょうどございました東京地裁の行ないました都の公安条例違反事件の無罪判決に関連いたしまして、私が歯どめと申しましたことは、立法府であるとかあるいは行政府の側から何らかの形におきまして裁判所に干渉いたしたり抑制を加えるというような趣旨のものでは全くございませんで、裁判所の判断をあくまでも尊重すべきことはもう当然でございまして、言うをまたないところでございますが、同じ法律の解釈といたしまして、有罪、無罪の二つの異なりました判決がなされましたので、そのときに、はたしてそういう判決で有罪、無罪二とおりの判決がなされるということはやむを得ないことであるのかどうかというふうな気持ちが起きましたものですから、そういう軽い気持ちで私が申したわけでございまして、法文解釈がまちまちになっているようにあっていいものかどうかという気持ちを持ちましたもので、そういう趣旨で申し上げたのでございますけれども、しかし、その際私が用いました用語が非常に不的確でございまして、歯どめというような文字を用いましたものですから、たいへんな誤解を与えまして、私自身もほんとうに申しわけなかった。定例会見のあとにそれを区切りましてやればよかったかもしれませんが、引き続いてやっておりましたものですから、ああいうことばをうっかり使いまして、まことに私自身も不用意だったということを強く感じましたので、取り消しをさしていただいたわけでございます。私自身がいかに不用意であっても、裁判所に介入するとかいうふうな気持ちは毛頭ございませんが、ああいう全く不用意なことばを使いまして、そういうふうな誤解を生じまして、私もまことに申しわけなかったと思っております。今後とも、私自身におきましても、一そう司法の独立を高め、また権威の高まることに微力をいたしたいというふうに考えますが、まことに不用意なことばを使いまして皆さん方に御迷惑をかけ、まことに申しわけないと考えております。
  129. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そうすると、大体この新聞に報道されたような、まちまちの判決を出している、これが法律無視の風潮を生み出している、歯どめをしなければならぬというようなことはおっしゃった。しかし、まあ取り消した、こういうのであります。これは私は、自民党その他、政府としてもたいへんな問題であるが、ことに法務大臣としては、容易ならぬ問題を含んでいると思うのです。そうして、あなたのおっしゃった時期が非常に悪い。これは、いまは三月二十四日の東京地裁の都の公安条例違反を無罪にしたことに対するあなたの感想でありますが、ところが、それから五、六日たって、横浜地方裁判所で同じ公安条例違反がかかっている。あなたのああいう放言——放言だと思うのです。放言があって、三十一日には、もう同じ事案で横浜地裁で判決することになっているんです。なお、越えて四月二日には、最高裁判所でやはり東京都の教職員組合の公安条例違反事件及び仙台高裁におけるピケ事件、これは全国税労組の問題であります、この二つの大判決が控えておって、天下注視の的になっておった。そういう直前に、あなたこういう放言をされる。これは、私は容易ならぬことだと思うのであります。と申しますのは、現在三権分立、これはモンテスキューの唱えた民主政治の根幹でありますけれども、これが政党政治になりましてから、相当くずれてきておる。何となれば、立法権と行政権は、多数党に握られております。国鉄運賃値上げに見られるごとく、いかに野党が全部反対いたしましても、自民党が通そうと思えば、そんな法律がどんどんできる。だから、立法権といえども自民党の手にある。政府はもちろんのことである。ただわずかに、三権分立というこの民主思想、専制政治に対決する民主主義のその実質が備わっているのは、裁判所だけですよ。その裁判所に対してまでも行政府が歯どめをするような考えを、取り消されたにしても、一時お持ちになっていたということは、容易ならざることです。これはぼくは、考え方によれば、倉石発言なんかよりももっと重大だと思うのだ。法務大臣が、そういう考え方を持っておられる。大体、まちまちな判決を出しておる、これがどうもあなたは都合が悪いと言った。しかし、これは憲法が要請しておるのです。憲法七十六条には「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ」こう書いてある。そうすると、一人の裁判官が独立して自分自身の良心に従って判決するということは、憲法の原則なんです。そうすれば、甲乙丙丁の裁判官があるとすれば、多少そこに信念が違うとするならば、違った判決ができることは当然であります。みんな千編一律の判決をするようでは、かえって憲法の要請にそむく。そこで、このまちまちな判決を統一するために、最高裁判所というものが存在しているわけなんです。こういう憲法の原則さえ御存じなかったとするならば、これは私は容易ならぬことだと思うのだ。この意味におきまして、私どもはあなたの発言というものを重視するわけです。と申しますのは、やはり日本の裁判所も、相当行政権に対して遠慮している。鍛冶君のような公益優先、もっと世情に通じて裁判しろなんということが出てくると、それをだんだん突き詰めていけば、結局時の政府の気に入ったような裁判をしないのはどうも不都合だということになるわけなんです。そういう鞭撻があるのです。私は簡単に質問しようと思ったが、どうもああいう質問があるとすると、ああいう鞭撻を受けたなんとすると、裁判所側も出ておりますが、たいへんなことだと思う。そこで、これは民主政治の根幹をゆるがすような大問題なんです。法務大臣は、一体裁判所とどういう関係をお持ちでありますか。これは他の農林大臣や通産大臣なんというのと違った関係があると思うのですが、あなたはどう理解されておるか。
  130. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 御承知のとおり、言うまでもございませんが、裁判所は司法の独立をもって厳然としてやっておられるわけであります。
  131. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 裁判は、検察官弁護士、その中間に裁判官があって、裁判を進行しておる。その検察官は、検察庁法によって法務大臣の相当の監督、指揮が行なわれるわけであります。その意味において、裁判に対して相当の影響があるわけです。のみならず、裁判所予算につきましては、閣議において法務大臣が裁判所を代弁しているわけです。最高裁の事務総長は、閣議に列席することはできない。ここらにも私は問題があると思うのですが、現に当時あなたの談話を聞いた記者の話にすれば、新聞には出ておりませんでしたが、自分が裁判所に対してずいぶんめんどうを見てやっているのに、どうも近ごろの裁判所はおもしろくない、こういうようなことをおっしゃったという。めんどうを見ているというのはどういう意味か知らぬが、そういうことはおっしゃったのか、おっしゃらないのか。
  132. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 私は、間違いましても、裁判所に対しましては、いま申しましたように厳然として独立してやっておりますし、私自身もその権威の高まることを祈念していることは皆さんと同じでございますので、そういう非常に不遜なことを言った覚えはございません。
  133. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 まあ取り消されたことでありまするので、あまりしつこく質問するのもどうかと思いますけれども、事ははなはだ重大でありますので、私がこの質問をしたわけでありますが、一体こういう法務大臣の発言に対しまして、裁判所側はどういうふうにこれを受けとめられましたか。裁判所の御感想を承わりたい。   〔進藤委員長代理退席、田中(伊)委員長代理着席〕
  134. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 法務大臣の御発言、私どもの耳に入りましたのは、同日の夕方近くでございます。それと、それに関する新聞記事が一つ三つ見えておりましたけれども、その事実が、そのとおりの御発言とすれば、そういう法務大臣の御発言が裁判官にどういう影響を与えるか、そういうことは考えられませんけれども裁判の独立に対する国民の疑惑と申しますか、世間の疑惑を招くおそれがある。そういう意味で非常に残念なことであり、遺憾なことであると感じたわけであります。しかし、時を移さず大臣がそれを全面的にはばかりなくお取り消しになったということを確かめましたので、全面的にお取り消しになった以上は、これ以上騒ぎ立てる必要はない、そういう私どもの立場でございます。
  135. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ぼくらに言わせれば、ことに最高裁判所は、非常に時の政治に気がねをしておる。憲法八十一条によって違憲審査権があるのにかかわらず、みずから憲法問題を回避しようとしておる。砂川事件に対しまする判決にしても、恵庭判決にしても一これは原審でありますが、いままで憲法問題に対する裁判所の見解、ことに自衛隊あるいは安保条約、そういうものに対して裁判所の見解を明らかにしてもらいたいと思って幾多の訴訟をやりましても、高度の政治性のあるもので、統治行為であって、これは裁判所裁判になじまぬものであるなんという妙な理屈をうけて、みんな憲法問題を回避している。いまのこの自衛隊員の入学拒否の問題なんかは、自衛隊がそれを憲法問題、憲法違反だとするならば、裁判所へ訴えればいいと思う。そうすれば、一体自衛隊が合憲であるか、違憲であるか、どうしたって裁判しなければならぬ。だから、この自衛隊員を入学せしめないという大学が憲法違反をやっておるならば、これは結局は最高裁判所判決がなければきまらぬことだから、これに対して違憲訴訟を起こしたらいいと私は思う。防衛庁の役人は帰りましたか。——どうなんだ、訴訟を起こしたらどうだ。そして自衛隊合憲であるか、違憲であるか、最高裁の判決をとったらいい。しかし、なかなか最高裁は時の政治勢力と申しますか、そういうものに私はこびているんだと思うんです。統治行為論なんというものを持ち出して、そうして裁判所裁判になじまぬものだなんて言い出して、憲法問題という最も大事な問題について、ずっと今日まで回避し続けている。警察予備隊のとき、社会党の私らが代弁者として違憲訴訟を起こしたことについても、あっさり片づけてしまっている。その後、幾多の事件についても、みな審理しない。みずからその権限をぼくは放棄していると思うんだ。これはやはり裁判所が時の政府に、行政権に私は屈服しているんじゃないかと思う。あまりにそういうことについて触れたがらない。これは事務総長にお尋ねしても無理な問題だと思いますが、私はそんな考えを持っておる。だから、鍛冶委員の言うことなんかと反対の考えを持っておる。ただ、私どもは野党であって、何の権力もない。しかし、そういう疑いが一どうも裁判所が行政府に対して影が薄い。ことに、法務大臣が閣議で予算を代弁してくれる。私は、これは事務総長がやはり閣議に出て、予算の主張ぐらいするべきものだと思うんだが、法制上そうなっておらぬ。そこで、法務大臣が裁判所の世話をやっておるとおっしゃったとするならば、そういう意味じゃないかと思うんだ。それならば、そういう大臣が判決を批評される——判決そのものを学問的に批判することは、これはいいことなんだ。学者なりあるいはその他の在野法曹なり、それが判決を批判することは、これは大いに裁判の進歩に貢献することでありますが、法務大臣という地位にある人が、どうも歯どめしなければならぬということを言い出しては、これはたいへんな問題だと思うんだ。法務大臣が裁判について歯どめなんかしたら、どういうことになりますか。私は、あなただけ責めるんじゃないのだ。どうもそういう空気がいまの鍛冶委員の質問の中にも含まれておるので(鍛冶委員「よけいなことを言うな」と呼ぶ)そうなんだ。あれが一種の圧迫なんだ。そして裁判所裁判が、結局は何か進歩的に走り過ぎた裁判をやるというようなことを言うておる。裁判所の現状は、そんな現状じゃないですよ。鍛冶君、あなたよく知らぬのだ。今度の東大事件などについても、勾留開示の事件などについても、実に勇猛果敢に裁判官はやっておる。みんな発言したやつを退席命じたら、法廷に一人も被告も弁護人もいなくなった、そういう極端なことをやっておるんだ、いまは。だから、そう君らが心配するような裁判所じゃない。私らはかえってそれを心配しておるのだ。それはとにかくとして、そういう情勢のときに、ことにいまの長官である石田和外君は、私もよく知っておりますが、相当これはさむらいであります。鍛冶君が心配するような人物では全然ないのだ。われわれが心配しなければならぬような人物だ。そういうところに、法務大臣がこういう発言をなさる。これは、私はたいへんなことだと思うのです。そこでなお、法務大臣は、国民の前に、あなたの言ったことは全く間違っているということを、もう一度はっきり言ってください。大臣は音声が小さいので、私は少し耳が遠いので、よく聞こえないから、もっとはっきり言ってください。まちまちの判決をするのが、これが法律無視の風潮を生み出すとか何とか、裁判所に対して歯どめをする必要があるとか何とかということは、絶対間違ったことであるという、打ち消すような——打ち消すにも、力があるのですから、どうもあなたの音声は弱そうなんで、もう少し強く打ち消してください。
  136. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 ただいま再度御質問がございましたから、明確にいたしたいと思いますが、去る二十五日の記者会見におきまして、私が不用意に歯どめという用語を使いまして、たいへん御迷惑をかけましたが、これは全く私の不注意でありまして、心から遺憾の意を表し、その用語を取り消します。今後とも、私自身もますます司法の独立を強化し、権威を高めることに微力を尽くしたいという考えを、明確に申し上げたいと思います。
  137. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それからもう一点だけ、これはひとつ裁判所に……。  けさ新聞をちょっと見ましたところが、司法修習生が団交要求をしているというのが出ていた。この実情について、事務総長、ちょっと報告してください。
  138. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 ただいまの御質問にお答えいたします前に、ちょっと先ほどの法務大臣に対する御質問のときにおっしゃったことについて説明させていただきますが、裁判所予算は、これは裁判所独自でやるものでございまして、法務省のごやっかいにはなっておりません。裁判所が直接に内閣に対して概算要求をいたします。そうしまして閣議では、その裁判所予算のことについて説明されるのは、官房長官でございます。その点、ちょっと誤解がおありのようでしたので、そのことをちょっと申し上げておきます。  それから先ほどの新聞のことでございますが、けさの新聞のことで事実を十分確かめるいとまがございませんでしたが、聞くところによりますと、不合格者を出すな、そういう要求を持って何名かの修習生が所長に面会を求めた事実があるけれども、所長はそれに応じなかった。それは昨年もやはり同じような要求がございまして、そして昨年来繰り返された問題だが、いやしくも試験をする以上は、不合格者を絶対に出さないというのはむずかしい。しかしまた、不合格者を出さなければならないものでもなくて、修習を終えて将来の法曹人としての能力十分と見られるならば、これは当然合格になるわけでございます。そういうわけで、不合格者を出すなという修習生の側からの要求があったということは、これは事実のようでございます。
  139. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 もう一点お聞きいたしますが、私どもの時分は、弁護士試験合格、司法科試験を合格すれば、すぐ弁護士事業ができた。今度は二年間の修習をやっておる。これはたいへんけっこうなことで、私どもと違って、いまの若い弁護士はなかなか優秀だと私は思うのです。二年間の教育というものは、たいへんだと思う。ただし、大学を卒業し、最も至難と称される司法科試験を合格して、しかも二年間修習した者、これを落第さしてしまう。これはいまの所長の鈴木忠一君以前にはなかったのです。それが、三、四年来必ず落第者が出ている。もちろん、試験をするのだから落第者はあり得ると言われれば、論拠はあり得るでしょうけれども、修習生になるまでの経過その他を勘案して、過去の歴史と勘案してみますると、落第者を出すということは少し酷ではないかと私は思うのですが、その落第した人は、留年になるのですか、また、全然資格がなくなるのですか。どうなんですか。
  140. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 及落の決定は、最高裁判所だけではございませんで、最高裁判所の中に設けられてあります考試委員会というものがございまして、その委員会の議にかけて及落を決定いたします。考試委員会のメンバーは、裁判官検察官弁護士、学識経験者という方々から構成されておりまして、最終の及落決定は百人くらいの人数で、そこで慎重に検討した結果、及落をきめております。一度そこで不合格となりましたら、翌年もう一度試験を受けて、成績があがっておれば及第ということになります。現に、ことしもそういう例がございました。
  141. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ありがとうございました。これで終わります。
  142. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 それでは、山田太郎君、お待たせいたしました。
  143. 山田太郎

    山田(太)委員 先ほどから猪俣議員からの質疑を通しましてほとんど言い尽くされたと存じますけれども、ただ、私も法務委員の一人といたしまして、先ほど質疑にありましたように、法務大臣の失言については、もう一度私としてもただしておきたい。その意味において簡単な質問をいたします。  先ほど質疑の中にありましたように、いまの立法府においての国鉄運賃の値上げ法案についての運輸委員会においてのあの行動あるいは模様というのは、私も、議会制民主政治を崩壊させるやの危惧を抱く一人でございます。したがって、三権分立の立場から、この法務大臣の失言は、ことに、立法府、行政府、司法府、この厳然とあるべきあり方、すなわち憲法の侵害にもなるべき失言であるという点において、もう一点だけ私もお伺いしておきたいと思います。これは三月二十六日の朝日の朝刊でございますが、先ほど法務大臣は、そういうことは言っていないということでございました。すなわち、「国会では面倒を見てるんだから、たまにはお返しがあってもいいじゃないか」朝日新聞の記事によりますと、こう書かれております。法務大臣は、そのようなことは言っていないと、こうおっしゃるわけですが、どちらが事実であるのか、この点は重要な問題でありますから、もう一度お尋ねしておきたいと思います。
  144. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 先ほど猪俣先生にもお答えいたしましたが、先般の二十五日の私の発言には、そういう非常に不用意なところがありまして、非常な誤解を与えまして、私もみずから非常に遺憾に思っておるのでございますが、いまお尋ねのことばについても、私はそういうことを申さなかったと言いましても、その材料があるわけではなく、うっかりいろんなことを申し上げましたので、そういう私の発言、全面的に不用意なことばがあったかと思いますので、心から遺憾の意を表しまして、いまのお答えにしたいと思います。
  145. 山田太郎

    山田(太)委員 うっかり申しましたということは、一応は認められていることですか。
  146. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 そういう裁判官を批判するようなことばは、かりそめにも出さなかったと思いますが、こういうことを書いてあるということも、私も承知いたしました。しかし、先ほど来申し上げましたとおり、歯どめというような文句を不用意に使いまして、非常に誤解を生じた、私もそう思いますので、心からそれを取り消した次第でございます。
  147. 山田太郎

    山田(太)委員 私が質問した論点は「国会では面倒を見てるんだから、たまにはお返しがあってもいいじゃないか」こういうふうなことの発言があったのかどうかという点です、歯どめじゃなしに。
  148. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 私自体もそういうことは言わなかったと思いますけれども、しかし、いま申したとおり、不用意なことばを使いましたので、私も非常に恐縮に存じておりますが、いま御指摘のようなことばは言わなかったと思いますけれども、それ以上に歯どめということばを使いましたために、何か批判を加えたように思いましたので、ほんとうにその点はことばの不用意が原因をなしておりますので、心から遺憾の意を表している次第でございます。
  149. 山田太郎

    山田(太)委員 深く追及しようとは思いません。しかし、取り消したらそれで済むのだ、もし法務大臣のお考えの中にそういう考えがあったとしたならば、取り消したらそれで済んだのだ、そういうものじゃないと思うのですね。したがって、もしこういう考えがあるとしたら、徹底的に法務大臣の考えを払拭してもらわなければならない。現在、国民裁判官並びに裁判所に対する信頼は、絶大なものです。これを法務大臣がこのような発言をして、一点の汚点でもつけた結果に現在はなっております。そこで、先ほど再び言明されましたけれども、この国民の危惧に対し、この場所において、もう一度明確に、はっきりと今後に対しての覚悟と、いまの決意と明確なる答弁をしていただきたいと思います。同時に、裁判官の独立性という立場からいっても——ことに最高裁判所においても、この点について先ほど答弁ありましたけれども、これはゆゆしい問題でありますから、あくまでも独立性を持ったりっぱな司法の立場を貫いてもらいたいということを要望しておきます。
  150. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 先般の私の発言が不用意でありまして、たいへん世間に御迷惑をかけまして、私も衷心から遺憾に存じます。しかし、今後とも私の立場におきまして、司法の独立を堅持し、権威を高めるように、この西郷の微力をいたしてまいりたいと考えます。
  151. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 裁判所の側は、先ほど申し上げたとおりでございます。日本の裁判官がその独立を守るという点において、これは長い伝統もございまして、決して世界の裁判官に劣るものではございません。今後とも、裁判所裁判所として厳正中立な立場を守っていく、そして良心に従って独立に職権を行なうということで、決してそんなことに対する危惧というものは、私は持っておりません。
  152. 山田太郎

    山田(太)委員 終わります。
  153. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 松本善明君。
  154. 松本善明

    ○松本(善)委員 法務大臣いまいろいろお答えになりましたけれども、はっきりしないのですが、いま同僚委員が引きました朝日新聞の記事ですね。「国会では面倒を見てるんだから、たまにはお返しがあってもいいじゃないか」これは政治家の発言を最後には新聞記者の責任にするという悪習がある。それは問題になっておる下田発言についても、全部新聞記者の責任にしている。そうして外務省の記者会から抗議をされるという事態もある。全く事実無根のことを朝日新聞が書いたのであれば、しかるべき処置をとるべきであろうかと思う。この歯どめ論と、国会ではめんどうを見ているということばは、法務大臣の考えの底に、裁判所に対して歯どめもできる、おれはめんどうを見ているんだ、こういう気持ちがあったから出てきたのではないか。一つの関連を持っている。とうてい事実無根であるとは思えない。率直に、あったことはあった、それに近いことがあったのか、それを明らかにし、その責任を明らかにするのが、当然のことではないか。一番高い地位に立った人は、そういうような出処進退というものを明確にしなければならない。それでないと、綱紀の紊乱というようなことも起こってくる。地位が高ければ高いほど、その責任を厳格に考えなければならないと思う。これは笑いごとではないことであります。そういう点で、私はあらためて、全く事実無根なのか、朝日新聞を相手にけんかをするのかどうか、このことを法務大臣にお聞きしたいと思うのです。
  155. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 先ほども御質問がございましてお答えいたしましたとおり、私の発言には不用意なことばがございまして、いまお尋ねのような文句を言ったかどうかということでございますが、私自体もこまかくどういう文句を使ったかということもよく覚えておりませんが、何しろその発言に不用意なことばがありましたので、私も謙虚な気持ちで全面的に取り消しをいたしたような次第でございますので、それをもって御了承賜わりたいと思います。   〔「かんにんしてやれよ」と呼ぶ者あり〕
  156. 松本善明

    ○松本(善)委員 かんにんの問題ではない。これは、日本の司法の根本問題に関係することです。法務大臣、私がお聞きしておるのは、不用意なんで全面的に取り消した、これはわかりました。しかし、これは用語が、そういうことばを使ったかどうか記憶にないということはあり得ることでしょう。それは、私はあり得ることだと思います。しかし、全く事実無根なのかどうか、それに類することを言ったのかどうかということは、忘れるはずはないですよ。すぐ翌日に新聞で問題になっておる。これは、おれはしまったと思ったのか、それとも新聞がけしからぬと思ったのか、そのくらいのことがわからぬはずは絶対にない。それに類することがあったのかどうか、それとも全く事実無根なのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  157. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 いまお尋ねでございますが、私は、私自身の発言の中に不用意なことがあったために誤解を生じましたので、私自身みずからきびしく自己反省をしておる次第でございまして、報道は自由でございますから、そういう方々に何らの責任はないわけでございまして、私自体の用いたことばから端を発しておりますので、私自身が省みて謙虚にこれは遺憾であったと思い、取り消しをさしていただきましたので、これは西郷自体の問題でございます。
  158. 松本善明

    ○松本(善)委員 報道記者には責任がないということのお話でありますが、これは私どもは、おもしろがって取り上げているものでは、決してないのです。これは私は、取り消して事が済むものではないと思っております。法務大臣としては、ほかのことは知らなくても、この問題については、どんなことがあっても知らないわけはないというような重大な問題だと思います。もしそういうことであるならば、取り消すのではなくて、辞職をすべきだろうと思います。総理大臣も、内閣として一体そういう人が法務大臣として——取り消しをされたというけれども、取り消す前の発言、そういうようなことをかりにも発言するような人を法務大臣とすることが、一体いいのかどうかということになるはずの問題であります。法務大臣にお聞きしたいのは、この問題についてあなたはどういう責任をとるつもりであるのか。それからもう一つ、総理大臣にこのことを報告をされたのかどうか、これをお聞きしたいと思います。
  159. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 私に対しましていま松本委員よりお話がございましたが、私自体も、私の不用意は不用意といたし、全面的に取り消しをいたし、今後さようなことのないようにみずから注意をいたしておりますが、こういうこともございましたので、私は、今後とも全力をあげて職責を全うしていきたい、かように考えております。
  160. 松本善明

    ○松本(善)委員 総理大臣に報告をされたかどうか、これはどうですか。
  161. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 私自身が別段報告はいたしておりませんが、よく承知しておられると思います。
  162. 松本善明

    ○松本(善)委員 こういう事態があった場合に、先ほど申しましたように、総理にも直接報告をし、みずからは辞職をするべきような性質のものであろうと思います。それほど厳格な考えで法務大臣の席におられなければならないものであろうと思いますけれども、そうたいしたものではないというふうに法務大臣はお考えなのでありますか。
  163. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 いま、たいしたことでないと考えておるかというお尋ねでございますが、かりそめにも司法の独立、権威ということは、もう最高のことで、何人もわかっておることでございまして、それを云々するような考えは、全く持っておりません。いま申し上げましたとおりに、こういうこともございましたので、この際全力をあげて職責を果たしたい、そういう強い決意でおることを重ねて申し上げます。
  164. 松本善明

    ○松本(善)委員 たいへん責任のとり方が——私から言わせれば、まことに責任感の薄いことであると思いますけれども、これ以上申しましても同じ答弁ではないかと思いますので、お聞きしませんが、厳重な反省をすべきである、そうして私はやはり辞職すべきことであると考えます。  裁判所にお聞きしておきますが、裁判所は、もう取り消したのでこの程度でいいというふうな意見が多かったという話でありますが、事務総長のお考えをお聞きしておきたいのでありますが、かりそめにも朝日新聞で「国会では面倒を見てるんだから、たまにはお返しがあってもいいじゃないか」こういうことが報道されておるわけです。これについて、こういうような関係を裁判所は政府との間で結んでおるのではないか、当然に人はこう思います。私は、法務委員会裁判所関係の司法行政の問題が問題になりますたびごとに、二重予算の問題を問題にいたしますけれども、いままでの裁判所の姿勢の中からも、法務大臣をしてこういうことを言わせるような姿勢があったのではないか。これについて、大臣に本来ならば裁判所はたいへんな抗議をして、許すべからざることだ、取り消したぐらいでは済まないものである、こういう厳重な態度をとられるのが、日本の司法のために当然のことではないかと思いますけれども、事務総長は、それほどのことではないと思っておられるのかどうか。
  165. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 国会でめんどうを見る云々という御発言につきましては、二十五日まで私ども承知しておりませんでした。翌日の新聞に囲みの中に出たことでございましたが、あれを知りまして、はたしてどういう意味かということが、実はわれわれとしても理解できなかったのでございます。といいますのは、裁判所予算であれ、法案であれ、裁判所関係のものは、これは当然法務省の所管になっております、法務省設置法によりまして。そういうものは、すべて国会において超党派的にいろいろめんどうを見ていただくわけですけれども、そういう意味なら別にたいしたことではない、そのように思われます。そればかりか、その前日に、法務大臣がもうはばかりなく全部自分の発言の穏当でなかったということをお認めになって、それで取り消されたのでありますから、裁判所としましても、そういう事情であるならば、何もこれ以上騒ぎ立てることはない、そういう考えでいるわけであります。
  166. 松本善明

    ○松本(善)委員 事務総長のここでの発言は、当然広く全国の裁判官の批判にもさらされようかと思います。このめんどうを見ているというのは、ある意味では法務大臣の発言を了承できるとも考えたという意味ですか。
  167. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 いや、その趣旨がはっきりしないということを、先ほど申したわけです。卒然として考えますと、国会でめんどうを見るというのは、予算であれ、法案であれ、ことに裁判所につきましては、当法務委員会において超党派的な御支援を得ております。そういう趣旨であるならば、別に特に取り上げて騒ぎ立てることもなかろう、かように考えているわけでございます。
  168. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういう考えが、私は事の間違いを起こすもとであろうかと思います。私は、めんどうを見ているとは、いささかも思っておりません。ほかの委員の方はどうであるかわかりませんが、国民の人権を尊重する裁判所のあり方として、二重予算の問題なんかは、それでいいのかどうかということについて、きびしく質問をしていることはありますけれども、そのことを、めんどうを見るとか、あるいは各党が裁判所のことについて支援をしているとか、こういうふうにお考えになるのは、根本的な間違いではないだろうかと思います。裁判所が自分たちの職責の重要性を自覚し、そうして国民の人権を守るために、このような予算が必要である、このような人員が必要であるということを、当然に国民の前に明らかにしていく。人に頼んでやることではないのではないか、私はそう思いますけれども、事務総長はいかがでしょうか。
  169. 岸盛一

    ○岸最高裁判所長官代理者 私は、裁判所というものは、どこの国においても、やはり超党派的に支持を受けるべきものである、かように考えておりますので、先ほど来のようなことを申しているわけであります。
  170. 松本善明

    ○松本(善)委員 裁判所の御態度については、たいへん不満であります。この問題は、決して一法務大臣の発言問題にとどまらない、わが国の司法のあり方の根本的な問題に関係することだと思います。さらに慎重な検討をされるということを望みまして、私は質問を終わりたいと思います。
  171. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 中谷君、お待たせいたしました。
  172. 中谷鉄也

    中谷委員 私は、きょうは非常に突き詰めた気持ちで質問をいたしたいと思います。大学問題であるとか、あるいはまた法務大臣のいわゆる失言問題等についての質問は、一切きょうはいたしません。ただ一点だけ、現在一人の人間の命が失われようとしているという問題について、私は、法務大臣をはじめ各省の御見解を承りながら、人間の命の大事さというものについて、特に法務大臣の御答弁をいただきたいと思うのです。ただ、質問の時間が、本会議の関係で非常に少ないわけですが、私は、一応法務大臣に事実関係をおわかりいただくために、ごく簡単に経過の説明をいたしたいと思います。  和歌山にたくさんの海水浴場がありました。これらの海水浴場が全部、工場敷地の埋め立て等によりましてなくなってまいりまして、一つだけ現在磯の浦海水浴場というのが残っております。その海水浴場が、住友金属和歌山製鉄所の公有水面埋め立てによって、それもたいへんな影響を受けるというふうな状況になっている。地元住民としては、決して海水浴業者でも何でもありません。しかし、祖先伝来の海水浴場を守りたい、保存したい、近畿の何百万の人たちのためにその海水浴場を守りたいということで、埋め立てについては中止をしてもらいたいということの、きわめて素朴な運動を起こしてまいりました。そういうことの中で、どうしてもその工事が中止されない。いろいろな経過がありました。私も非常に胸が一ぱいになっているのですけれども、そういうふうな状態の中で、宇治田一也君という、塾の経営をしている先生で非常に温厚な人ですが、三月四日からハンガーストライキに入りまして、きょうは四月の四日です、すでに三十三日目を迎えます。昨日も私御本人に会ってまいりましたけれども、すでにもう相当、気力は盛んでありまするけれども、体力が衰えている。友人の医者がつきっきりでありますけれども、もうあぶない、こういう状態です。ですから、私がお尋ねしたいのは、人の命と、そうして企業がいわゆる埋め立て権があるからということで、その埋め立てというものについて、一体それがただストレートに許されていいのかどうかという問題であります。実はこの問題については、先ほども陳情の人たちが、女の人を含めて六人参りました。通産大臣にお会いをいたしまして、陳情いたしてまいりました。  そこで、私は、次のようなことをまず最初に、この問題についてたいへん御配慮、そうしてまた御努力をいただいた通産省の吉光重工業局長さんに、一点だけお尋ねをしておきたいと思います。四月の一日に私が商工委員会でこの問題の質問をいたしまして、四月の二日には特に住友金属の会社幹部の上京を求められて、いろいろなあっせんをいただきました。その中で、こういうふうに住友金属は重工業局長説明をされたというふうに私はお伝えをいただきました。すなわち、工事は非常にスローテンポでやっているのだ、こういうふうな話を私は聞いたわけなんです。スローテンポの工事、それは結局既得権を主張するものではない。要するに、海水浴場に影響があるということになるならば、工事の変更というのはあり得るのだ。その工事ということについては、商工委員会で私は、では全部の埋め立て権の放棄ということも含めて検討ということがあり得るのかということについても、通産政務次官の答弁を求めました。そういうことに私は理解しております。ところが、実はこの埋め立ての問題は運輸省の問題でございますので、運輸省のほうからこの問題について調査をしていただきました。そうすると、その調査の結果は、すでにこの埋め立てが百六十メートル進んでおる、こういうふうな話でありました。二十メートルか三十メートルと言った住友金属の通産省に対する説明とは、全然違うわけなんです。そうして工事については、一日八メートルずつ進んでいくのだ。残工事については、二百メートル残っておるのだから——護岸工事でございますね。だから、あと二十五日あれば、結局済んでしまうのだ。それで、普通のテンポとかスローテンポというようなことを、工事を考える上で分けることは不可能なんだ。これがいわゆる工学上の常識的なお考えのようであります。だから、私は、少なくとも通産省にこれ以上住友に対するいろいろな問題についてお願いをするわけにはいかないけれども、スローで工事を進めておるということと、この報告とは違うと思うのです。この点について、ひとつどういう実情になっておるのか、一体護岸工事はどういうふうな進行になっておるのか、スローテンポとは一体何なのか、この点について、ひとつさらにお問い合わせ——話が違うわけですから、御調査をいただきたい。この点をお約束いただけるかどうか、いかがでございましょうか。
  173. 吉光久

    ○吉光政府委員 ただいま御指摘ございましたように、会社のほうから工事の状況について、現状がどうなっておるかということの説明を求めたわけでございます。会社のほうといたしましては、先ほど指摘ございました潮流変化による影響調査というものを現在並行してやっておるわけでございますが、その影響調査の経過等を勘案しながら、あるいはまた県の当局とも十分に連絡をとりながら、この工事については慎重に行なっておるということを言っておるわけでございまして、同時にまた、この工事を先行させることによって、要するに既成事実を先行させるというふうな意図は会社としてはございません、というふうな回答を得たわけでございます。同時にまたつけ加えまして、工事は誠心誠意あっせん案にのっとって進めておりまして、今後ともこの方針に変わりはございません、というふうな言明を得たわけでございます。おそらくいまの御数字、私ども調査してみないとわかりませんけれども、海面上の護岸の長さとそれからそうでない部分との差ではないかというふうにも考えます。ただ、数字の面で御不審ございますと、私ども実は護岸工事については専門家でございません、御承知のとおりでございます。したがいまして、そういう数字面についてどういう点になっておるか、この点につきましては、あらためてよく調べさしていただきたいと思います。
  174. 中谷鉄也

    中谷委員 そこで、私は問題の焦点は次の点にあると思うのです。この宇治田一也という人が、ハンストをやっておる。これはもう海を守りたいという純粋な気持ちからやっておるのです。それで、地元の人と一緒に、私はこの御答弁をいただいたあと、もう一度宇治田君に命の大事さということを訴えてハンストをやめさしたい。そこで最後の煮詰まった条件というのは、海流の影響の調査結果があらわれてくるまで工事を中止する。この工事については、運輸省でお調べをいただきましたけれども、それほど大きな金額の工事ではございませんでした。何億というような工事かと思ったら、全然そういうものではなかった。だから、かりに四月の中旬にそういう結果があらわれてくるということなら、少なくともそれまで工事の中止ということを、通産省の御所管外のことではありまするけれども、いま一つ——先ほど大臣にも会って、そのことをお願いしてまいりました。参りましたところの地元の人たちが、涙ながらにそのことをお願いしました。大臣も、そのことについてはいろいろなお立場があるようでありますけれども、非常な誠意を持って聞いていただきました。その点について、私は重工業局、通産省と企業との関係というものについての立場はわかりますけれども、人の命と、少なくとも影響の調査結果があらわれるまでの間の中止ができないのかどうか。この点については、何べんもその点についてお話をいただいたようでありまするけれども、いま一度ひとつ御努力をいただきたい。このことを私は心からお願いをしたいのです。この点について、何とか重工業局長さんのほうのお気持ちをひとつ御答弁いただけないでしょうか。
  175. 吉光久

    ○吉光政府委員 先般もお答え申し上げましたように、この工事につきまして、私は会社が誠意を持ってやっておるというふうな会社側の返答を得たわけでございます。会社といたしまして、この工事につきまして長年の県のあっせん委員会におけるあっせん、あるいはまた県当局のいろいろな意味での御指導を得た上で、いろいろの工事をすでに行なっておるわけでございますけれども、将来とも工事にあたりましては誠心誠意やりたいというふうなこと、同時にまた過去の経緯等から考えまして、少なくともあっせん委員会委員長と全面的に御相談をしながら、自後の工事を進めてまいりたい、こういうふうな回答を得ておるわけでございまして、私どもも、そういう従来のあっせん委員会のほうにおきまして、この工事が影響なく——誠心誠意と会社側が言っております、誠心誠意進められることを実は期待いたしておるわけでございます。したがいまして、そういう意味で、会社が今後とも誠心誠意事に当たりますことを希望いたしておるわけでございます。
  176. 中谷鉄也

    中谷委員 私は、通産省の重工業局長に、いろいろなむずかしい問題の中であえてこれ以上お聞きすることは差し控えたいと思いますけれども、要するに、工事中止ということなども含めて、会社は誠心誠意をもってこれに当たるということとして、ひとつ御努力をいただきたいということを私はお願いをいたしたいと思います。  それから港湾局長に私はお尋ねをいたしたいと思うのですが、要するに公有水面の埋め立てというのは、言うまでもなしに、何といっても監督官庁は港湾局、運輸省でございますね。この問題について、前回私のほうから資料を差し上げました。埋め立ての経過を全部書いたものを差し上げましたね。その資料によりますると、前回の商工委員会でも私が質問をいたしましたように、重大な錯誤があった事情関係が資料の中に出てまいります。要するに、立ち会い人たちは埋め立てはしないんだということで、ずっと地元の人たちを説得しておる。そうして私の立場から言えば、要するにだましてきた、こういうふうなことに基づくところの免許であり、認可だった。そこで、直ちにこの免許が取り消されるかどうかは別として、こういうふうな資料にもそのことがあるわけですから、当然運輸省としてはその間の事情というものをひとつ御調査いただきたい、それが紛争の起こった発端だったのですから。それが一点です。  いま一点、私が港湾局長にお願いいたしたいのは、運輸省として、この問題については、免許権を持っておるところの知事に対して、この問題の善処方をひとつ要望していただきたい。実情調査とともに、要望していただきたい、何としてでも。重ねて同じことを申し上げますけれども、もうドクターストップがかかる直前なんです。これは人を殺すわけにはまいりません。その点について、ひとつ監督官庁としての運輸省の港湾局長さんの御答弁をいただきたいと思います。
  177. 宮崎茂一

    ○宮崎(茂)政府委員 お答えいたします。第一点は、錯誤に基づく云々とございましたが、これはどういうことか私もこまかい内容は存じませんが、調査するかどうかということでございますので、もう一ぺん書類その他調査いたします。  それから第二点は、先生御承知のように、公有水面埋め立てと申しますのは、都道府県知事がやっているわけでございます。また、埋め立ての制限でございますとかその他あらゆることを、実は全部知事がやっております。したがいまして、免許申請を知事が免許する、その前に運輸大臣に認可にくるわけでございます。したがいまして、今後どうするかということでございますが、先生のそういった非常に切なる御意見と申しますか、そういったものを知事に十分伝えたいと思います。
  178. 中谷鉄也

    中谷委員 私は、人権擁護局長さんにお尋ねをいたしたいと思います。この問題について、前回も人権擁護局長さんのほうから御答弁をいただきました。私は、あの答弁をもちまして、本人のハンストの解除ということを重ねて説得をしました。しかし、どうしても海水浴場を子孫のために、要するに、ほんとうに和歌山県の百万県民の子孫のために守ることが、私は大事だと思います、そういうことで、結局私のハンストは続けたいのです、続けざるを得ないのです、やめるわけにはいかないのです、こういうふうに言って、力のない手で、もう力がなくなっているんです、私の手を握ったわけです。そこで、そういう実情について、ひとつ私は人権擁護局長さんにお尋ねをしたいのですけれども、この第三工区、和歌山港の海岸埋め立てにからんで発生しておるハンスト問題の実情調査、埋め立てを含むこういう実情調査のために、本省から、調査課長さんもきょうは御出席をいただいておりますけれども、現地に係官を派遣していただく用意はないのだろうか。そういうようなことで、私は人の命を守りたいし、この問題を円満に解決をしたいと思うのです。この点について、局長さんの御答弁を承りたいと思います。
  179. 上田明信

    ○上田(明)政府委員 前回申し上げましたときには、知事の発言がハンストを続ける原動力にもなったということで、人権侵犯事件ということになっておると私は思うのです。そうしますと、もしその知事の発言の——発言内容はいろいろ問題がありますが、それを除きますと、本件は一体人権侵犯事件なのかどうかということは、昨日来職員とも検討しておるわけであります。しかしながら、事何ぶん人命に関することでありますので、御指摘の海岸埋め立て工事及びハンストがなされた理由というようなものの実情について、十分検討はしてみたい、こういうふうに思います。  それから本省の職員の派遣でありますが、目下のところ国会開会中でありまして、私のほうの職員が非常に少ないものでありますから、遺憾ながら本省から人を派遣するということは考えておりません。ただ、監督官庁は大阪法務局でありますが、大阪法務局の職員と十分よく相談してやるように、善処せよということは指示するつもりであります。
  180. 中谷鉄也

    中谷委員 大臣にお尋ねをいたします。要するに、人の命というのは地球よりも重い、私はこのことだと思うのです。そしてそのことは、企業の利益と、しかもいま問題が煮詰まっておりますのは、影響結果が出るまでの十日間あるいは二十日間工事を中止するということが、ハンスト解除の条件になっておる。おそらく会社のその損害というのは、私の算定では、五十万かせいぜい百万までのことなのです。何もその工事を続ける必要はないじゃないか。通産省は、御所管外でありますけれども、御努力をいただいた。運輸省についても、先ほどのような調査をしようというところの御答弁をいただいた。知事に対してそういうふうなことの要請をしようという御答弁をいただいた。また、人権擁護の府というのは、人権行政というのは、法務省以外にないわけなんです。私はだからほんとうに心から大臣にお願いをいたしたいと思うのですが、法務大臣としていろいろなむずかしいお立場でしょうが、この問題については重大な御関心をお持ちいただけると思う。同時に法務大臣、人権擁護の立場からこの埋め立て問題についてひとつ善処方を——私は善処方という表現をいたしますが、善処方をお願いできないかどうか。お願いしたいと思うのです。大臣のこの点についての御答弁をいただきたい。  なお、紛争がこういうふうに激化してまいりましたところの原因というのは、労働省に私はお尋ねしたいと思いまするけれども、たび重なるところの労働災害、しかもけがをしても、労働災害補償をもらってはいかぬぞと、そういうふうな指導をしているところの会社のやり方、態度、また補償が非常に少ないという涙ながらの手紙が私のところに参っておりますが、そういうこと、あるいは公害問題、いろいろな問題がありました。こういうふうなことについても、労働者の見解を私は一言だけお伺いをいたしたいと思うのです。  警察にお聞きする時間がないようでありますので、警察に対する質問は省略いたしますが、大臣にいま一度お願いいたしたい。人の命を守るために、人権侵犯事件であるかどうかということの問題は別として、法務大臣が最後に乗り出していただかなければ、私はお願いするところがないと思う。法務省として、この問題について、埋め立て問題の経過、背景、そうしてこれに至るいろいろないきさつを含めてひとつ善処方を、あるいは会社に対しても、所管外であるとかいろいろな問題はあるでしょうけれども、人の命を守るという立場からお願いをいたしたい。御答弁は簡単でけっこうです。ぜひとも善処方をひとつ約束をしていただきたい。これが私のきょうの質問です。そのことをひっさげて私は現地に戻りまして、私自身も、先ほど重工業局長が言っておられたように、あっせん委員会の人たちの立場を尊重したい、そのことについてひとつ御答弁をいただきたい。
  181. 西郷吉之助

    ○西郷国務大臣 人命を救いたいという御熱意を私自身も伺いまして、心を打つものがございました。いろいろの事情はあろうかと思いますが、いま御希望のとおり、法務大臣といたしまして、あらゆる努力を傾注したいと考えております。
  182. 和田勝美

    ○和田政府委員 労働省といたしましても、人命尊重ということで、労働災害はぜひなくしたいと思っております。そういう趣旨でございますので、御了解をいただきたいと思います。
  183. 中谷鉄也

    中谷委員 終わります。
  184. 田中伊三次

    ○田中(伊)委員長代理 次回は、来たる八日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後二時一分散会