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1969-04-17 第61回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月十七日(木曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 帆足  計君    理事 小笠 公韶君 理事 木部 佳昭君    理事 竹内 黎一君 理事 武藤 嘉文君    理事 阿部 助哉君 理事 武部  文君    理事 和田 耕作君       青木 正久君    山下 元利君       唐橋  東君    内藤 良平君       村山 喜一君    岡沢 完治君       有島 重武君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     山田 精一君         農林省畜産局長 太田 康二君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部長 吉田 文剛君         厚生省環境衛生         局乳肉衛生課長 神林 三男君         水産庁漁政部長 安福 数夫君         日本専売公社販         売部長     斎藤 欣一君         参  考  人         (麻布獣医科大         学教授)    入江 良作君         参  考  人         (中国食肉輸入         実現連絡会議) 清水英之助君         参  考  人         (全国肉用牛協         会専務理事)  大川 忠男君         参  考  人         (主婦連合会常         任委員)    細川 かう君     ――――――――――――― 四月七日  物価値上げ反対等に関する請願(田代文久君紹  介)(第三四二五号)  同(谷口善太郎紹介)(第三四二六号)  同(林百郎君紹介)(第三四二七号)  同(松本善明紹介)(第三四二八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  物価問題等に関する件(中国肉に関する問題  等)      ――――◇―――――
  2. 帆足計

    帆足委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件につきまして調査を進めます。  この際、おはかりいたします。  先ほどの理事会の申し合わせによりまして、本日は特に、中国肉に関する問題について、麻布獣医科大学教授入江良作君、中国食肉輸入実現連絡会議清水英之助君、全国肉用牛協会専務理事大川忠男君及び主婦連合会常任委員細川かうさんを参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、各位には御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 帆足計

    帆足委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決定いたしました。     ―――――――――――――
  4. 帆足計

    帆足委員長 この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  当物価問題等に関する特別委員会は、物価の安定並びに果てしなきインフレーションの進行を防止する目的をもってできております特別委員会でございまして、特に物価安定のためには、当委員会といたしまして、国内商品につきましては国内で必要な措置をとり、また輸入商品につきましては緩急よろしきを得まして、物価の安定に貢献するようにという配慮をいたしておるつもりでございます。  各位には御多忙中にもかかわらず本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。本日は、中国肉に関する問題につきまして特に深い識見を有せられる参考人から忌憚のない御意見を承り、本問題調査参考にいたしたいと存ずる次第でございます。  なお、議事の整理上、最初に御意見委員長指名順にお一人約十分ないし十五分程度に要約してお述べ願いまして、その後委員からの質問に対して何かとお答えを願いたいと存じております。さよう御了承をお願いいたします。  それでは、まず最初入江参考人に御陳述をお願いいたします。
  5. 入江良作

    入江参考人 私は、第二回目の中国家畜衛生状況視察のため、四十年の八月に中国のほうへ中国食肉輸入考察団衛生班として参ったのであります。  初めの予定では、約二カ月、中国各地衛生状態調査する予定で参りましたけれども先方の御都合で、ちょうど国慶節の前になりましたので、その半分の一月ぐらいで帰ってまいりました。結論的に申しますと、われわれが十分見せていただきたいと思ったところを十分に見られなかったというのが実情でございます。それで、第一回に衛生状態を、視察に行かれましたのが高松博士でございまして、われわれが行きます十年前に行かれましたので、そのときと相当の違いがあったようにお見受けいたしました。結論として、帰ってまいりましていろいろな報告をいたしたのでございますが、その結果不十分だというので、第三回に田中良男氏がまた行かれました。私は本日の参考人としてはむしろ不適当なので、最後に行かれた田中さんが一番適切な状況をつかんできておられると思うのであります。私は、私が二回目に参りましたことの大体について申し上げたいと思うのであります。  それは、私の報告結論にまとめておりますけれども、要するに、初め参るときには非常に各方面のことを、口蹄疫はもちろんのことでありますけれども一般家畜衛生状況について知りたい。もちろん家畜衛生なんというのは、一つ病気だけについて調べてもわかるものではないので、すべて広く調べまして、そうして重点を口蹄疫なら口蹄疫に持っていってはじめてわかる性格のものであります。そういったことで、報告にも書いておりますけれども、こちらで各専門家にお集まりいただいて、向こうへ行ったらどういうことを調べるのだということがきまりまして、そのことを前もって先方へ通知しておきましたのですが、いよいよ現地に参って調査をするとしますと、これが、国柄もありまして、われわれの希望の五分の一も許されなかった。それで、先方のスケジュールによって見せてもらったというのが実情でございます。したがって、われわれが目で見たものよりも、聞いた知識のほうが相当多いというのが実際でございます。  それで、衛生状況というよりも、向こうへ参りまして、私も戦時中中国のほうに長くおりましたので、そのときと比較してものを見たのでございますけれども一般的に、表現は悪いのですが、道徳的というのですか、非常に違っておりまして、そして非常に衛生方面が進んでおる。よくいわれるのでありますけれども、その当時ももう蚊とハエがおらなくなったというようなことで、戦前と比較しまして、家畜衛生など一般衛生状況が非常に進んできておったということに非常にびっくりしたのでございます。  家畜防疫につきましては、御承知かと思うのですが、非常に衛生状態がよくなっておりました。衛生状態というのは、学問進歩というよりも実行にあるんじゃないかと思われるのでありまして、われわれが見たところで、いろいろな研究所やその他学校なんかを見ましたけれども学問的の水準というのはそう高くない。びっくりしたことはないのでありますけれども家畜衛生の原則ということを非常に着実に行なっておるということが、現在の衛生状態がよくなったのだというように考えて、つくづく感心したのであります。いかに学問が進んでも、それを実際に実行するかいなかということが家畜衛生進歩影響があるということを感じたので、その点を非常にびっくりして帰りました。  それで、話を口蹄疫に集約してまいりますと、この点につきましては、向こう国柄がありまして、十分な説明を聞くこともできず、また話が微妙なところになりますと、正確な答えもいただけなかったというのが実情でございます。したがって、結論的に申しますと、われわれの結論に書いておりますように、衛生状態は著しく進んでおる。われわれが見たところでは、口蹄疫でなしに、一般伝染病向こう報告どおりと考えて差しつかえないんじゃないかというので、少しも口蹄疫には触れておりません。と申しますのは、口蹄疫という病気は、すでに御承知と思うのですが、非常に蔓延の激しい病気でありまして、そして、そう高い死亡率ではないのでありますけれども、その結果として、たとえば乳牛が乳が出なくなるとか、子牛は発育がおくれるとか、非常に経済的に強い影響を及ぼす病気でありまして、ある場合にはしばらくほうっておいてもその発生はなくなる、しばらくするとまた発生する、ちょうど流感のようなものだとお考えいただけばいいんじゃないかと思うのであります。そういう病気でございますから、六二年にもうすでになくなった、もうしばらくしたら全然ないんだということを宣言するんだというように向こうはいっておられましたけれども、またいつ起こってくるかわからないというような病気でありまして、われわれが非常に聞きたかったことは、口蹄疫最後にどこで発生して、それをどういうようにしてなおしたかということを知りたかったのでありますけれども、それに対して十分なお答えは得られなかったというのが現状でありまして、一応ないとは認めますけれども、将来絶対起こらないんだということは、学問的に言い切れないんじゃないかというように思うのであります。現在の状態ではないんだ、だけれども将来いつ起こるかわからないんだ、また起こらないかもわからないんだ。病気の性質からそういうものでありまして、それに対する最後のきめ手ということをお聞きすることができなかったというのは非常に残念に思っておるわけであります。その他の病気につきましては、先ほど申し上げましたように、非常に衛生状態はよくなっておるというのが結論であります。  非常にまずい話でありますけれども、御質問がありましたらあとお答え申し上げます。以上でございます。
  6. 帆足計

    帆足委員長 それでは次に、清水参考人に御説明をお願いいたします。
  7. 清水英之助

    清水参考人 いま御紹介にあずかりました清水であります。  私は、中国食肉全面無条件即時輸入実現を国民とともに要求する中国食肉輸入実現連絡会議を代表して、ここで話さしていただきたいと思います。  まず、諸物価の値上がりが私たち生活を苦しめております。特に最近私たち生活上、非常な食肉の高騰は一段と拍車を加えて、そしてまさにすき焼きは遠くなりにけりといわれておるごとくに、肉は食卓から消えていっておる状況であります。現在国際的にも肉の資源は不足し、わが国でも年間約二十万トン以上の食肉輸入を必要としておる現状です。そういう現状において、長期安定し、かつ良質で、また安価な衛生的な食肉を供給できる国は、現在のところ中国を除いてほかにないということが言えます。これは決して過言でないと思います。現在中国貿易をしておる世界の各国では、すでに十数年以前から中国から食肉輸入しております。そしてその食肉が良質であり、かつ衛生的で、しかも安価であるということから、その輸入量も年々増加しております。こういうことで、つい最近の情報によりますと、一つの例をあげていいますと、フランスは昨年一万五千トンの豚肉を中国から輸入しております。ことしから年間少なくとも三万トン以上の食肉を長期契約したという情報が入っております。われわれも、一刻も早くこのような中国肉輸入できるようにお願いしたいと思いますし、またわれわれとしても、足かけ十四年にわたってこの食肉輸入のために努力してきたわけであります。  解放後において、中国政府畜産防疫に対する重視により、技術と資材と、人民の理解のもとに、数十年来撲滅でき得なかった牛ペスト、牛疫を、わずか五年の間に中国消滅をしております。また、いま日本でもって解決を見ていない豚コレラ、それから鶏のニューカッスル病においても、もうすでに消滅をしております。農林省がいまだに輸入の解禁を許可していない理由となっておる口蹄疫についても、一九六二年の発生最後に、その後発生は見られておりません。また家畜発展についても、一九六六年に、牛馬、それからロバ、これを大家畜と称しますが、これは世界の総数の約一〇%、それから豚が四〇%、羊が一二%と発展しております。これも最近の一つ情報でございますけれども丙蒙古地区では、昨年は二千百万頭の家畜が増加しておるといわれております。このような状況から見ても、中国悪性伝染病がなくなったことを証明する事実ではないかと思います。また、中国は過去外国の支配を受けていた時代とは全く変わって、いま申し上げましたように、家畜発展についても家畜病気についてもすごい進歩を示し、全く面目を一新しております。  わが国食肉輸入の経過を簡単に申し上げますと、わが国中国食肉問題が出たのは一九五六年だと思います。そのときからいままでに、ここにいらっしゃる参考人入江先生を含めて、三回にわたって向こう調査を行なっております。その調査のときにも、必ず農林省と密接なる連携をとって調査を行なっております。そうしてその調査の結果、異口同音に中国家畜衛生がまことにすばらしいということを証言されております。この証言はここにあります三冊の報告書においてもはっきりうたわれております。詳しい点は時間の関係であまり言えませんので、もし御質問がありましたらあとでお願いしたいと思いまして、いま簡単に申し上げます。  それからもう一つ、われわれがこの運動をやっている間に、もうすでに一九五七年に一回、中国から六頭の牛の枝肉を輸入したことがございます。ただし、これはサンプルとし、試験的であるために焼却しましたが、その後において、その結果がまことにいいということで三百トンの契約をしております。ただし、当時の岸内閣時代の対中国政策による長崎国旗事件という問題が起きて、そうして日中の貿易は中断されたわけです。  それから、一九六五年に入江先生をはじめとする調査団が行かれ、そして六六年に田中良男先生が行かれた。その行かれたあと報告書を基本にして、坂田農林大臣はこの中国食肉輸入の許可に踏み切っているわけです。が、しかし、松野農林大臣に至ってこれが中止されている。この理由をいろいろ聞きますと、いつも農林省の言い分は変わっている。まず一つの例をあげてみますと私ははっきりすると思います。坂田農林大臣のときにオーケー、松野農林大臣のときに否定、それから西村農林大臣のときに中国からは絶対入れないと言われております。そして今度はいまの長谷川農林大臣になってから、長谷川農林大臣発言の中に、西村農林大臣の申し送り事項として中国食問肉題を前向きに解決するというような発言もされております。時間の関係上簡単に申し上げます。そうしてしかも最近においてはどういう問題が起きているでしょう。船上加工などという実に奇怪なる方法でもって中国から食肉を入れるかのごときことを発表し、しかもこれは完全に船上加工が沈没してしまっているという事実であります。また、中国食肉輸入ということは、ただ単に食肉価格問題のみならず、これはすべての物価問題関係があるということを、私はここで言いたいと思います。なぜならば、このたびの日中覚書貿易問題にしても、この食肉問題が出されております。が、しかし、農林省及び政府当局のいわれている、中国では口蹄疫がないと言うにもかかわらず、中国には口蹄疫があるという前提のもとにこういったような船上加工というものを並べて、そうして中国に対してまことに失礼な言い方をやっております。そのため、これも一部でしょうけどもMT貿易の実に大きな困難を来たしておる。いままで一億二千万ドルぐらいな貿易額がいまや六千万ドル前後に下がってしまっておる。また今度の日工展問題にしてもしかりです。  それから、私はここで一言皆さまに御紹介申し上げたいことがあります。われわれはいままで運動を続けてきました。その間、去年の七月東京都議会をはじめ、静岡、富山、名古屋、大阪、神戸などの市議会、府議会などにおいて、政府に対して中国食肉輸入実現を要望する意見決議をしております。こういう状況でございます。ひとつ議員の皆様に、よろしく中国食肉問題を解決していただきたいというふうに思っております。  それからもう一つ簡単に申し上げますけれども農林省がいつもいっている問題として、中国状況はわからないわからないといっていますけれども、ここにもありますように、中国からは詳しい発病の報告が毎月来ております。これは農林省にちゃんと渡っております。それから見ても中国には口蹄疫がないということがはっきり書いてあるのです。  このくらいで……。
  8. 帆足計

    帆足委員長 それでは次に、大川参考人に御説明をお願いいたします。
  9. 大川忠男

    大川参考人 私はただいま御紹介を受けました全国肉用牛協会専務理事をしております大川でございます。  中共食肉輸入につきましては、一月三十日全国酪農農民決起大会におきまして、また二月六日全国肉用牛生産者代表者大会、また二月十七日に養豚家研修中央大会におきまして、それぞれ輸入反対決議をいたしております。また、中央畜産会、全販、全酪その他畜産生産関係ある十数団体が反対決議をいたしておるわけでございます。それで、ここにさらに私ども輸入反対を表明いたしますとともに、その理由につきまして説明させていただきたいと思います。  われわれ生産者にとりましては、中共食肉に限りませんで、いろいろ外国から肉が入りますときに気になりますことは、その輸入量価格がござます。その上にもう一つ、われわれが重大な関心を持つものは伝染病でございます。最近のわが国食肉事情を考えてみますと、その輸入もある程度はやむを得ない面もあるかとも思います。しかし、事伝染病に至りましては、国内生産に重大な影響を及ぼすものでございますから非常に関心を持たざるを得ないわけであります。特に今回の中共食肉輸入問題につきましては、口蹄疫という病気が入るおそれがあります。それはその伝染力の強いこと、それからまたその早いこと、それがしかも乳牛とかあるいは肉牛、それから豚及び綿山羊、いわゆるつめが二つに分かれている家畜でございますが、そのすべてに伝染するといわれております。これを飼っている農家日本では約二百二十万戸、総頭数延べ頭数にいたしますと八百万頭もあるわけでございます。こういうおそろしい伝染病であるということは、私がここでいまさら申し上げるまでもなく皆さま承知のことと思います。  もしその口蹄疫の侵入がわが国にありましたらどういうふうな結果になるかということを考えてみますと、非常にそらおそろしいものを感ずるのであります。それで、その被害の惨状、農民に与える心理的な不安、こういうことは、イギリスで一九六七年、一昨年でございますが、集団的に発生いたしております。そのときの農村、そしてイギリス国家がとったいろいろの措置につきましては、四十二年のこのアサヒグラフの中に非常に詳しく出ております。農家はこの病気をおそれまして、外へ出入りすれば外から病気を持ち込むのじゃないか、子供学校へやれば学校からその病気がうつってくるのではないかということで、家にじっと閉じこもって、数カ月も社会から隔絶した生活をしなければならない。また、国家的に見ますと、不必要な旅行はやめなさい、あるいはまた畜産のあらゆる大きな催しものについてはやめなさいというような警告を発する。こういうような社会的な、あるいは国家経済的な非常な不安というものがここに非常に詳しく書いてございます。もし機会がございましたら御一読願いたいと思います。  イギリス口蹄疫の非常な汚染国でございまして、農家知識も、また理解度も非常に深い国でございます。また、先ほど入江さんからもお話がありましたように、イギリス防疫体制の完備した国であります。そういう国でさえそういう実態であるわけなんです。それがかりに日本に起こったらどういう実情を招来するかということを想像してみますと、私は非常におそろしいものがあると思うわけなんです。日本農民はいままで口蹄疫経験はございません。少なくともいまの農家の人は全然知らないと思います。それからまた防疫体制にしましても、そういう経験がないものですから十分だとは私は思いません。そういうところへ一時に入ってきたらどういうことになりますでしょうか。私は非常におそろしいものがあるのではないかというふうに考えます。  そこで、これは余談でございますけれども、私の子供のころでございますが、口蹄疫にまさるとも劣らないような牛肺疫という病気が、大陸方面から昭和八年ごろ日本に入ってきたことがあることを記憶しております。私の姉は牛乳屋に嫁に行っておったわけなんですが、その牛肺疫日本一円に蔓延したとき、私の姉の家の乳牛二十数頭が町はずれの川原に連れていかれまして殺されまして、それで焼かれる。その実態を見まして、私の義理の兄はへたへたと川原の石の上にすわり込みました。私はたまたま遊びに行っておってそういう情景にぶつかったのですが、そういう情景がいまでも目に浮かびます。そういうふうな実態農民にどんなに衝撃を与えるか。これは経済とかあるいは社会的な問題以上の社会不安を農村にもたらすものではないかというふうに私は考えるわけなんです。これは安かろうとか高かろうとか、あるいはまたそのものが足りるとか足りないとか以前の、もっともっと重要な問題ではないかというふうに私は考えます。  それで、こういうふうなところで、私たち生産者関係する立場の者としまして、二百二十万戸のそうした偶蹄類の家畜を飼っている農家と、それからいままで営々として築いてきました日本畜産というものを守るために、絶対にこの輸入に反対せざるを得ないわけなんです。  そこで、最近新聞紙上とかあるいはいろいろの記事を読んでみますと、第三次訪中調査団のいわゆる田中報告書というものを根拠にいたしまして、そしてその口蹄疫の有無に言及し、輸入を促進したいような記事をたまたまよく見ることがございます。しかし、私はこの問題は非常に重要だと思います。私は、その報告書内容等につきましても、各界の人の御意見に耳を傾けてまいりました。そして私はその中で、いろいろ聞いてまいりましたおも立った人の意見を述べてみたいと思います。  その中で、生産者として最も考えなければいけないことは、昭和四十一年十月にわが国獣医界権威者である人が二十一名お集まりになりまして、田中報告を含む中共衛生状況ということについて検討懇談会を持たれたというふうに聞いております。その会議結論といたしましてどういうふうな結論が出ているかと申しますと、中共家畜衛生状況というものは想像以上に改善されてはいるものの、特に口蹄疫については、その疫学的特性からして、わが国に対する安全性は必ずしも十分に確保されているとは言いがたいというふうに私は聞いております。  またここに「アジア農業」という本があります。これはアジア農業交流懇談会から出ておる本でございますが、その四十三年十月の六巻十号の中の座談会で、田中報告を書かれました田中先生が言っておられる記事がございます。その中に、一九六二年に中国辺境地区発生した口蹄疫がどういう型のものであって、どうしてなくしたかと私は尋ねましたところ、なくなったということについては若干教えてくれたけれども、どういう型であったのか、現在予防注射にどんなワクチンを使っているかについては絶対に教えてくれなかった、このことは防疫立場から一番聞きたいとろであって、その点が疑問のままに残っている、その辺が最大の問題なんですというふうに述べておられる記事がここに出ております。  いま一つは、私ども農村医学会の会長をしております若月俊一先生をお呼びいたしまして、第二議員会館において講演会を開催いたしました。そのときに若月先生は、日本ではいま問題になっていないけれどもヨーロッパでは口蹄疫農村医学立場から非常に重要だ、それで、おとなにはそう感染率は高くないし、うつってもそう重くはならないけれどもヨーロッパでは子供が親のしぼったなまの牛乳を飲む、そうしますと乳幼児がそれにかかる、かかったときにはその治療の手がない、死亡率は二八%に及ぶ、今後口蹄疫が入ってくるようなときには、日本でも農村医学会においてそれを取り上げなければならないというような趣旨の講演をお話しになったのを私はこの耳で聞いております。  そういうふうにいろいろ各界各方面意見を聞きまして、私は考えるのでございますけれども家畜衛生の基本というのは予防衛生にあるわけなんです。病気になって、金を注いでなおしてからこれをまた使うのだというような、人間とはまた違うわけなんです。なる前にそれをならないようにするのが家畜衛生の基本であるわけです。法律は人を守るためにあって、疑わしきは罰せずというふうにいわれております。家畜衛生におきましても、予防衛生の見地に立てば、疑わしきは入れずなんです。ですから交通を遮断しまして、人を入れないようにするとか、全部やるわけです。イギリス農民にいたしましても、外へ出れば人からうつって持ってきやせぬか、あるいはまた人が来れば自分のところへ持ち込みはせぬかということで、立ち入り禁止の立て札を農家自身が立てるほどイギリス農民は発達しておりますけれども、そういう疑わしきは入れずということが家畜衛生の基本的姿勢でなければならないと思うわけです。ですから、いまの各界の意見を聞いてまいりますと、私はうしろに二百二十万の農家とそれだけのなまの家畜をかかえておって、そしておそらくないだろうと思う、おそらく発生は見ていないだろうというあいまいな根拠で牛を入れられたら非常に困ると思うわけなんです。この牛が入ることによって日本畜産がどのようになるか、あるいは農家がどういうふうな立場に追い込まれるかということをよく考えていただきたいのであります。  先ほど私の姉の家の例を引用しましたけれども牛肺疫で牛二十数頭を焼き殺されましたそのあと、だれがめんどうを見てくれたでしょうか。もとへ回復するのに十数年間を要して、戦後ようやくもとの状態に返ったくらいです。一たびこれがつぶれてごらんなさい。回復するのに長い年月を要するのじゃないかと私は思うのです。そういう意味におきまして、疑わしきは入れず、これが家畜予防衛生の原則であって、この原則を行政の方面においてもあくまでも堅持していただきたいというのがわれわれ生産者の願いであります。  それで最後に、私ども生産関係者は、消費者の方々に低廉な肉を食べていただくために、日夜営営として増産に努力いたしております。百五十五万頭の牛が、四十三年度統計によりますと百六十六万頭にふえております。最近の総合農政のブームもございましょうけれども、増産意欲は非常に高まっております。そうして消費者の方に安い肉を供給していけるように努力しているわけでございます。しかしながら、一方で総合農政を唱えながら肉を輸入してくる。輸入一辺倒の、安易なる輸入に依存して、そうして農家生産意欲に水をぶっかけておって、長い展望の上に立てばそれに大きな期待が持てますでしょうか。いま国際的な食肉需給を見ますと、食肉全体で六千万トン、そのうち牛肉が三千万トン、その生産状況は、その三千万トンを境にしてふえたり減ったりしておるような状態、その三千万トンの中での貿易量というのは百五十万トン前後、先年なんかはアルゼンチンの気象的条件とかあるいはオーストラリアの干ばつによって、百三十万トンくらいの貿易量に減っている、その貿易量の約七、八〇%というものは特定五カ国によって独占されている、あとの二十数%がその他の国によって貿易されているような状態で、食肉需給状態は決して楽な展望には立てないわけなんです。ですからもう少し国内の自給率を高め、そのために国内生産対策というものをもう少し強化していただきまして、そして長期的展望に立った対策をこの席を借りてお願いしたいと思います。  終わります。
  10. 帆足計

    帆足委員長 ありがとうございました。  それでは細川参考人に引き続いて御説明をお願いいたします。
  11. 細川かう

    ○細川参考人 私は細川かうと申します。浦和市に住む一人の主婦でございまして、五人の家族をかかえた家庭経営をしておりますとともに、同じ浦和市内に住む主婦の方々と手を取り合って、家庭の問題物価問題を中心に活動しておるものでございます。  道ばたの石も苦しくなると声を出すということを聞いております。私たち日本の女性は、忍従とか、また夫につかえるとかいうことを美徳とされて教育されてまいりましたけれども、ついにその美徳だけでは耐えておられなくなったわけです。といいますのは、あまりにも物価が高くて暮らしがきびしいからなのです。そこで、井戸ばた会議で三人、五人と寄り集まって、物価問題、暮らしの問題で話し合っていた者たちが、いま浦和市では千名手をつないでおります。そして私たちの仲間は大体内職をしております。いまどんな内職をしておるかといいますと、婦人のくつの甲のところを針で編んでいく仕事ですけれども、一枚五十円です。一時間に二枚するのは非常にたいへんなことなのです。血のにじむような思いで内職をしますけれども、国鉄、学校の授業料、理髪代、パーマ代、生鮮食品、もうありとあらゆるものの値上がりを埋めていくためなんです。また、浦和市では毎年小学校を一校ずつ建てなければなりません。といいますのは、国の政策のあおりを受けまして、非常に学童がふえていくわけです。そうしますと、一つ学校を建てますのに八億円の予算が要るわけでございます。また、そこに住む人たちは、建蔽率などは無視した押し合いへし合いの家に入っております。家賃にいたしますと一万三千円、また建築資金を返済しますにも月に一万五千円くらいの借財を背負っての市民生活でございます。  このような中で私たちはいかにしたら台所を守ることができるのかということでございまして、私の婦人会では月に二回、豚肉を共同購入しております。その方法といいますのは、埼玉県の経済連にお願いしまして、上尾市に食肉加工場、つまり経済連の直轄工場がございますけれども、そことタイアップして、月に二回、四百グラムずつの包装にいたしまして買っております。しかし、共同購入をしましても百グラムの値段が九十円でございます。また中肉にしても七十円です。それから一方、埼玉県の寄居町というところに綿羊の農業協同組合がございます。そこの農協とも契約いたしまして、マトンを共同購入し、また滑川村というところにブロイラーの協同組合がございますので、そことタイアップしてブロイラーも購入し、こういうような方法で、ちまたの肉の高いのを何とかして補っておるわけでございます。  昨年の十月、私たちの婦人会でお献立コンクールという催しをいたしました。一体、いま家庭でどのくらいの食費をかけておるかということを、五十人の役員の方に紙を配りまして無記名投票をしたわけです。記名にしますと、なかなかプライベートな問題というのは正直に出ませんので、無記名で、大体お夕飯に一人当てどのくらいの予算で毎日暮らしておるかということをしましたところが、八十円、百円、百二十円という線が出てまいりました。百円というのが一番多うございましたので、それでは主婦の腕前を競うために、一人前百円ということで野菜から調味料から肉から全部入れた材料を買い集めて、そこで献立のコンクールをしましょうということで、埼玉県の消費生活係に頼みまして講師を派遣していただいて、そこでコンテストをやったわけです。  そこで、買ってきました百円の材料、この中にノーマルな肉があったでございましょうか。ございませんでした。ひき肉でした。それからまた中肉を買ってきた方がありますけれども、四人のお献立で中肉を百グラム買ってきました。百グラム、町ですと八十円です。四人家族で四百円ですから、その晩のお惣菜にしますとどうしても肉が八十円くらいきり買えません。そうしますと百グラムです。四人家族で百グラムです。  ではどういうふうに調理をするかといいますと、凍りどうふを水につけてぎゅっとしぼりまして、肉でくるくるっとくるんで、ようじでとめます。それを煮込むわけです。つまり、しみどうふのまわりを薄い豚肉でくるんで、豚の味をとうふにしみ込ませて、そしてまあ肉を食べたような満足感を味わっておるわけです。ひき肉の方は、パンのへりの残りとか、玉ネギを刻んで入れて量をふやして、ハンバーグステーキにしますとか、あるいはまた肉の買えない人はサメの切り身を持ってきて、それでサメのカツをつくって豚カツを食べたような満足感を味わっている。これがほんとうの市民の実感でございます。  先ほど申し上げましたように、婦人会で共同購入をして暮らしを守る、そういう方法があるならばよいではないかと先生方はお考えになるかもしれませんけれども、それを維持していくためには私たち役員は非常なサービスでございます。もうほんとうにエネルギーぎりぎりのサービスによってその活動がささえられておるわけです。そこで、みんなでよく言うことですけれども、なぜ私たちはこんなに苦労して、肉の共同購入をしたり野菜の共同購入をしたりして暮らしを守らねばならないのでしょうか。どうぞ先生方も、ほんとうに国民のための生活ということをお考えになりますならば、この物価高の中で、政策によって、もっと肉がたっぷり食べられるような方法を講じていただきたいのでございます。  先ほどからの参考人の方々のお話を伺っておりますと、中国にはたいへんに安い豚肉、牛肉があるということでございます。また向こうでは牛のロースが百グラム三十三円、豚のロースが百グラム三十七円とか聞いております。まことによだれのたれるような話でございます。これを持ってきますと、向こうの市場並みの値段ではできないことは私たちしろうとでも考えられます。輸送の関係、途中の流通の経費などを考えますと……。しかし、いま町で牛肉が百グラム二百円しておりますよ。ですから、どう考えましてもその三分の一では利用できると考えます。また、中国の肉につきましては、家畜病気がどうのこうのということも伺います。先ほどの参考人の御意見でもわかります。ある方はだいじょうぶだとおっしゃる、またある方は生産者立場からどうかという発言でございましたけれども、この点はどうぞ専門家の先生方がとくと御研究になっていただきたいことです。私たち主婦は、隣の国に、近いところにそのようなよい肉がありますならば、ぜひこれを導入していただきたいと思います。豪州のほうから冷凍の肉が入りまして、畜産事業団の倉庫にあるということでございます。ちまたの豚肉が高くなります。とそれを放出してくださるということでございますけれども、浦和市には来ておりません。浦和市の小売り店には、畜産事業団の放出肉の新聞記事を見ましても、さっぱり出てまいりませんし、店頭の価格は下がってまいりません。  肉については、このように流通の面で私たちは非常に疑問があるのでございます。隣の中国からでしたらおそらく三日四日で荷が届くのではないでしょうか。オーストラリアのほうからでしたら、三十日とか四十日とかいう長い船旅で、赤道を渡ってくるということです。私たちしろうとが考えましても、近いところによいものがあるならば、ぜひそれを導き入れるようなことを考えていただきたい、またあわせて、その際には流通をぜひ御検討いただきたい。いつになっても末端の価格は下がっておらないのでございます。  かつては米よこせ運動とかいいまして、主婦たちが米で一揆を起こしたということも、近い歴史で聞いております。ことによりますと、このような物価高で、私たち子供に与える肉も、凍りどうふにくるんで薄い豚肉を使うようなことにしておきますと、いつのことかは主婦たちが、あるいは肉よこせの一揆を起こすかもしれません。そのときではもう先生方、おそいと思います。ぜひいまのうちに肉の対策をとくと考えて、私たち庶民が豚カツの味、すき焼きの味を楽しむことができますように切にお願い申し上げる次第でございます。  私は、ただいま申し上げましたように実際活動を担当しておる婦人会の会長でございますので、もし先生方が御希望でしたら、肉のほかにもっと具体的なものとの取り組みもいたしておりますので、御質問くださればわかる限りお答え申し上げたいと思います。  失礼申し上げました。
  12. 帆足計

    帆足委員長 以上にて、四方の参考人の御意見の御開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  13. 帆足計

    帆足委員長 引き続きまして、質疑の申し出がございますから、これを許します。竹内黎一君。
  14. 竹内黎一

    ○竹内委員 お尋ねをする前に、参考人の四先生にはそれぞれの立場から、貴重な御意見の御開陳を願ったことを厚く感謝を申し上げます。  入江教授にひとつ御教示を願いたいのでございますが、いま論議の焦点の感がある口蹄疫でございますけれども、かつて口蹄疫発生し、流行を見、その後その対策に成功して、いまでは全くそのおそれなしという判定のできる地域というものは、一体諸外国では例があるのでございましょうか。その点をひとつ御教示願いたいと思います。
  15. 入江良作

    入江参考人 外国で判定ができるというよりも、私も判定をしたのですが、中国でも台湾等はないものと判定いたしました。そういう例がございます。御承知と思うのですけれども、現在の家畜伝染病予防法では、そういう疑いのあるところ、わからぬところというのは輸入禁止になっておるわけです。それがはっきりないとしますと、その禁止を省令で解いておるわけです。私は中国へ、三年前だったと思いますが、参りましたが、やはり台湾もその当時は禁止国に入っておったのであります。そのとき私は農林省の職員でございまして、農林省からの命令で台湾へ参りまして、約二週間ほどいろいろ向こうの御案内をいただいて、台湾をすみからすみと申し上げてもいいと思うのですが、見て回りました。そして口蹄疫はない、その他の伝染病よりいいというので、禁止を解くように意見書を出しまして、その結果解いたという例もございます。
  16. 竹内黎一

    ○竹内委員 いま台湾の例を教えていただいたわけですが、そのとき先生はたまたま農林省の役人としてその調査に当たられたということでございますが、こういった口蹄疫の危険の有無の判断につきましては、学問的と申しますか、あるいはまた国際的に一つの基準があって、それに照らしていわゆる危険があるかないか、そういう一つのメトードと申しますか、方式が確立されておるものでございますか。
  17. 入江良作

    入江参考人 よくは存じませんけれども、ほとんどそれはないと思います。視察とか調査とかの結果から割り出すものであって、どういう場合にはどうだというような方式はないと思います。
  18. 竹内黎一

    ○竹内委員 そういたしますと、たとえば中国のほうでは――中共と申しますか、中共のほうではないと言う。日本側の一部では、いやそのおそれがあると言う。こういうのもそういった一つの判断の基準なりやり方自体に相違があるのだろうというような、私、しろうと考えになるわけですが、先生がたとえば中共へ行かれて、そういう調査のしかた自体でも日本中国ではだいぶ違うなというふうにお感じになったことが何かございますか。
  19. 入江良作

    入江参考人 大いにございます。私、中国へ参りましたときに、先ほどもちょっと触れましたのですが、かりに口蹄疫の話にしぼって考えますと、口蹄疫がないと判断するためには、どういうこととどういうこととどういうこととをして、どういうことを見てこい――それは私だけの考えじゃないので、日本のいわゆる口蹄疫に非常に造詣の深い人、また一般防疫関係の深い人にお集まりを願いまして、その席で、こういうことを調べてきたら大体これがないと判断できるのじゃないかというのがありまして、それは私の報告の初めに書いてあるのですけれども、それを持ちまして私は参ったわけです。向こうへ参りましていろいろな視察日程だとかなにかを折衝いたしましたところ、それに対してそれが十分に満たされなかった。それで、口蹄疫のある、ないで大新聞なんかでも誤解があるようですけれども向こうへ参りましたら、向こうの話は、四十二年からないのだ、そうして、もう少ししたら――まだいま四年目だと思うのですが、もう少したってまだなかったら、いよいよこれはないということを公表するのだというようなお話だったのですが、なくなったのならば、最後はどこにあったのか、どの地方にあって、その地方でどのくらいの発生があったが、それをなくするためにはどういうような方法を講ぜられたのか。それを具体的に申しますと、たとえば、一般の総論的なことはみなわかっておるのですが、もう少し学問的に掘り下げて、どういうワクチンを使って、何頭に注射して、そのときに死んだのが何頭で、なおったのが何頭だというようなデータをひとつお教え願いたいと申しましたら、それはやはり国の秘密だからだめなんだ、とにかくなくなったのだからなくなったのだ、こういうことで私は帰ったわけなんで、その結果、それでは不十分だというので、第三回の調査団が行かれたわけです。  以上でございます。
  20. 竹内黎一

    ○竹内委員 これは、きょうの御出席の方々の中では清水さんに伺うしかないのですが、いまの入江教授の話でも、要するに四十二年からなくなったということを中国のほうでは主張しておる。それがどういう地域にどれだけの頭数発生したか、あるいはまたいかなるワクチンを使用したのか等々の点が不明だということ、これが一つの疑問論の根拠になっているわけです。この点につきまして、あるいは清水さんのほうの団体で何か情報を御入手なさっているのですか。
  21. 清水英之助

    清水参考人 ただいま御質問の点についてお答えいたします。  私どもはまず日本の獣医師団に中国視察に行ってもらったわけです。そのときの御報告の中に書いてあるのは――これは田中良男先生の御報告にもはっきり書いてありますが、中国は一九六二年に、中国とソ連の国境において発病したということがいわれております。それからもう一つ、そのときにいかにして証明したかといいますと、中ソ国境に幅二十キロにわたる無人無畜地区をつくり、そしてソ連から家畜病気の入ることを防いだ。そして中国側におきましては生ワクチンを使いましたということがはっきり書かれているわけなのです。そして、これは大石先生、つまり入江先生田中先生の御報告書からも拝見できることでございますけれども中国の型についても一部発表しております。それはどういうことがいわれているかといいますと、中ソ国境で発病したのはソ連の型であるということをいわれております。頭数とかそういうことについては発表されておりません。  この問題について、私は連絡会議の一員として、また私は中国におりまして、事実この口蹄疫問題にタッチしておりました関係上、ここで御説明申し上げますと、このことは事実でございます。私のほうの研究所から人が派遣されて調べて、この無人地区をつくったり、それから予防注射をしたということは事実です。  それから、ワクチンの問題につきましても一言ここで簡単に申し上げますと、中国は初めにはクリスタン・バイオレット・ワクチンを使っておりました。そのあとで生ワクチンが開発され、生ワクチンを使っております。その程度でございます。
  22. 竹内黎一

    ○竹内委員 私はもちろんこの口蹄疫のことについてはしろうとでございますので、心配ないという議論がいいか、あるいは、いやまだおそれがあるという、いずれの議論にくみすべきか、私自身きめかねるのですが、ひとつ大川参考人にお伺いしたいのは、ただいま清水さんがある程度の御説明をされたわけでございますね、ソ連の型であったとか等々について。こういう材料はもちろん大川さんのほうにおいても当然御検討なさったのだろうと思いますが、その点についていかがでございますか。
  23. 大川忠男

    大川参考人 私は専門家でございませんから、その型の種類はどういうふうなものであるかというふうなことにつきましては、あまりよく承知いたしません。それで、しろうとですが、いろいろ聞きますと、型にもいろいろ種類がある。ただいまの話で伺いますと、ソ連の型だといいましても、どういう型だかわからないという感じで聞いておりました。そういう実情でございます。
  24. 帆足計

    帆足委員長 それでは次に、御質問の通告がございますから、武藤嘉文君。
  25. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 私は、清水参考人大川参考人にちょっと承りたいと思います。  先ほど細川さんからもお話しございましたように、何とか安い価格の肉が、また十分国民の選択のもとに供給できる状態をつくるということは、これは当然の話であり、もっと努力しなくてはならぬと思うわけでございます。それは当然でございますけれども、ただ先ほどから入江先生のお話を承っておりましても、絶対的に安心だとは言えない、こういうお話でございます。私は思い起こしますのに、ちょうど養鶏業において、日本がアメリカからわりあい輸入をしたそのときに、御承知のようないろいろな病気発生したわけでございます。そして、その対策に政府もたいへん苦労しましたけれども、今日、日本は非常に養鶏というものにおいては大きな汚染地帯になってしまったわけです。私はそういう点を非常に心配いたしておる一人でございまして、特に先ほどのお話にございますように、日本よりも防疫体制の進んでいるああいうイギリスにおいて、実際に実例があったということを考えますと、向こうが絶対だいじょうぶだというか、あるいはこちらの防疫体制が完全で、万が一出てもすぐそれに対処していく体制ができ上がっている、こういうことにならないと、私は先ほど申し上げたように、安い肉が入ってくることは大いにけっこうなんで、そのこと自体は私ども歓迎すべきことだと思うのでございますけれども、それが入ってきたために、そういう養鶏の轍を踏むようなことになったのでは、これこそたいへんなことではないか。逆に、そういう肉が入ってきたそのときには、安かったけれども、そのために国内の――これはわかりませんけれども、万が一国産の牛がやられてしまった。そうなれば、国内生産される量よりも多く輸入できるということは、これはいまの世界の肉の需要状況からして不可能だと思う。そうすると、これは仮定の問題だからわかりませんが、万が一病気発生した、そのために国内にある現在の肉牛が、みんな死なないにしても、相当やられた。そうなった場合には、最初入ってきたときには安い肉が入ってきて、これは皆さんに喜ばれる。その結果、伝染病が万が一発生して、国内の肉の供給がされなくなった。そうなりますと、わずか三十万トンか五十万トンか入ってきたその肉のために、いずれにしても将来百何万トンかの肉が供給できなくなったという場合には、私は逆の効果があるという可能性も心配されると思うのです。その辺お考えでございましょうか。まず清水参考人にちょっと承りたいのでございます。
  26. 清水英之助

    清水参考人 ただいまの御質問につきまして私の意見を述べさせていただきます。中国口蹄疫または悪性伝染病があるということ、ないということ、この二つの原則的な問題になりますが、ないということにつきましては、これは先ほども簡単に申し上げましたけれども田中良男先生の御報告にもあります。中国がなぜ中ソ国境に防疫体制をしいているかということは、われわれにないから――われわれというのは中国にないからソ連に対して、ソ連側にはある、だからやっているというようなこともいわれております。  私が先ほど申し上げましたように、中国からは過去十数年にわたって世界各国に食肉が輸出されております。そしてこれには一度も問題が起きておりません。これは事実でございます。いま先生のほうからおっしゃいましたように、アメリカから入っているブロイラーにつきましてはニューカッスルが出ております。それから三十二年におきましては、ひなの白血病、これはガンでございますね、これが入っております。それにもかかわらず、いまだにどんどん入ってきておる。中国からはいま鳥肉が入っております。それからウサギの肉が入っておりますが、いまだかつて一度たりといえどもこういう伝染病の病原菌が分離されていないということです。これは実に安全であるという証拠であると思います。それから、中国国内において家畜がすばらしい勢いで発展しておる。もし伝染病があるならば、これだけの発展はできないのではないかということも言えるのじゃないか。  ですから私は、いまの御質問によりますと、もし万が一――万が一ということはいつでも考えていいと思います。われわれのいままでの状況から見ますと、万が一入った場合、ストップしてしていないのです。アメリカの場合がいい例だと思います。われわれは、もし中国から来た場合に、それこそ万が一の万が一かもしれませんが、悪いところがあれば、そのときに直ちに対処すれば問題ないと思います。この例としましてまず、皆さまも御承知と思いますが、青島牛というのがございました。これは終戦の前に中国から入っておりました。その当時やはり日本口蹄疫が入っておるのです。そしてたちどころに消滅しておる。農林省のお方はいつもおっしゃいます、私たち経験がない、えらい御遠慮みたいなことをおっしゃっていますけれども、これは日本の獣医さんは十分なる経験を持っているわけです。これは何も否定することはないと思います。  こういう御返答でいかがかと思いますけれども……。
  27. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 私はいまの話で万一ということを非常に心配しておるのは、いまもお話がございましたように、どうも日本防疫体制も片手落ちだと思うのです。養鶏だとみんないまでも入ってくる。これに対してどうもまだ検疫の問題、いろいろありますけれども、うまくいかないということは、きょうは農林省からお見えになっていますけれども、一ぺん入ると、何というか、それが一つの既得権というとおかしいのですけれども、既定の事実になってしまって、防疫体制がしっかりしていない場合には起こり得る可能性がいままでの現実においてはわりあいにあるのじゃなかろうか。そういう点、もう少し日本がほんとうにしっかりした防疫体制をつくってくれれば、ほんとうに緊急なときには入れてやるということがいいと思うのですけれども、どうもその辺が、養鶏の場合にはいまいろいろお話がございましたように、ニューカッスルにしてもマルク氏病にしても入ってきてしまってちっともなおらない。こういう点、ただ入るのを押えるということだけでなしに、進んでほんとうにもう少ししっかりした防疫体制をつくっていくということが大事だと思います。  私はもっとお聞きしたいのでございますが、きょうは時間がございませんので、次に、そういう前提で私、大川参考人一つ承りたいのは、私どもそういう意味で、もちろん入れるのよりは何とかもっと国内で――先ほどの皆さんおっしゃっておられるのは、特に婦人の立場からおっしゃっておられるのは、安い肉をできるだけ十分供給してもらえれば、必ずしも中国から入れなくたって、これは中国に外貨も払うわけでございますから、あるいは病気の万が一ということを心配しなくてもいいのですから、けっこうだということだと思います。われわれももっと勉強しなければならぬと思いますが、現在の日本の肉牛の増産対策といいますか、確かに奨励をしてやっておるというものの、どうも非常に不十分なものがあるのではなかろうかと私は思うわけです。豚は非常に発育もいいし、数が非常にふえやすいわけです。牛は一頭から一頭しかふえない。こういう問題があると思うのですけれども、国民のために肉が十分供給できるようなふうに一朝一夕に増産体制というものができるのかできないのか、その辺私どもはわかりませんが、専門家立場でちょっとお聞かせいただければお願いしたいと思います。
  28. 大川忠男

    大川参考人 私もいま御質問の趣旨と全く同感でございます。それで、私ども全国肉用牛協会ができましたのは去年の六月なんでございますけれども、いろいろ農林省の政策に従いましてと申しますか、予算的措置等講じてもらいまして、増産につとめてまいっております。それで最近では非常に頭数もふえる傾向でございます。そして何とかふやしていただきたいと思うわけなんですけれども、基本的に肉牛政策というものは昔から貧困だったわけです。たとえば酪農の法律もございますれば、鶏にも法律がございます。現在ないのは肉牛と豚だけでございます。そういうふうな形で、いままで、どういいますか、政策なり行政が少しあとのほうからついていった感じのものが、最近の食肉需要の増勢に従いまして表に出てきた。それでいま急いで対応しているというふうなかっこうでございまして、非常に増産の政策も効果をあげましてふえてまいってきております。生産意欲も高まってきておりますけれども、こうして片方でせっかく一生懸命やろうと思っているときに、やれ輸入だ、中共肉の問題だというようなことになってきますと、何だ、また、やれ、やれと言われてせっかくやったって、もうだめじゃないか。ただでさえあまり子牛生産というのはもうからないものを……。これからのいろいろ過疎の問題とかあるいは農村問題とからみまして、最近非常に肉牛が重要視されてまいっております。どのようないなかへ参りましても肉牛を生産対策の一つに取り上げているわけなのですけれども、そういうふうな情勢の中で、こうやって輸入というものにばさっといつも頭を押えられまして、価格が下がるというのが現実でございます。現在も、現に十二、三万しておりましたものが昨年の暮れあたりから八、九万円に子牛が下がってきております。やはり現地では非常に問題にしております。やはり輸入ということが大きな値下がりの――そのほかたくさん要因がございますけれども一つの大きな要因になっていると思います。  一生懸命やりまして、そうして増産して、消費者のほうに安全に供給できるようにしてまいりたいというふうに考えております。
  29. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 そうすると、増産すれば価格は下がり得る可能性はあるわけでございますか。
  30. 大川忠男

    大川参考人 いやそれは、現在の食肉需要の伸びという長期見通しの上に立ちますれば、それほど生産過剰というような形は、いまのところではここ数年考えられないと思います。
  31. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 そうすると、何といいますか、結局要は、きょう皆さんのお話を聞いていても思うのは、国内価格が高いから外国から入れたい、こういうことになるわけでございますね。私どもはいまいろいろお話を聞いていても、できるならばやはり国内で高くない肉をつくっていただくのが一番いいのじゃなかろうか。やはり病気のことも心配ないし、それから外貨の問題もあるし、いろいろございますし、新しい総合農政で農家も生きていっていただかなければいけないのですから、そういう面で私ども何とか安い――安いと言うけれども、極端に安くなくても、少なくとも上がらないように、少しでも下がるような形になるために増産をしたりできるかどうか、その辺ちょっと承りたかったのでございますけれども、その点はどうでございましょう。
  32. 大川忠男

    大川参考人 現在わが国の農業の和牛を飼っている層というのは非常に零細であるわけです。その零細な農家生産頭数の八〇%をいま占めている現状でございます。ですから、そういう生産農家というものの存在をいろいろ複合経営的な形で認めていきながら、もう少し多頭飼養というような形で、土地の利用的観点から考えまして増産の形に持っていけば、もう少し増産というものの効果があげられ得るのではないか。そうしますと農家生産費に見合った形で牛の増産ができてまいりまして、そうして消費者のほうにも十分の供給ができるという可能性はあると思います。
  33. 武藤嘉文

    ○武藤(嘉)委員 もう時間がないそうでございますから、私希望意見だけ申し上げておきます。  私どもいろいろ承っておりますと、農家の方は個々に、いまのお話では非常に零細でおやりになっている。もっとみんなで一緒になってやるような姿勢をおとりいただくように、これは農林省にも責任があると思いますけれども、ぜひそうして、とにかく安い肉を供給してこそ輸入を防げるのだ。高い肉にするから輸入という問題が起きるのでございます。だれも好んで輸入したいという気持ちはないと私は思うのです。やはり、輸入したくないけれども国内でちっとも肉ができない、そうして高くなるからやむを得ない、安い肉がほしいから輸入をする、こういうことだろうと思いますので、輸入が前提じゃなくて、逆に国内生産奨励をしていただく。そしてそのためには、零細で、一戸で二頭か三頭お飼いになっている姿よりは、もっと何頭か規模を大きくしていただくような、それがほんとうの総合農政の行き方じゃないかと思うのですけれども、これは私希望意見としてひとつ団体にお願い申し上げておきまして、私の質問を終わります。
  34. 小笠公韶

    ○小笠委員 関連してちょっとよろしゅうございますか。
  35. 帆足計

    帆足委員長 けっこうです。
  36. 小笠公韶

    ○小笠委員 全国肉用牛協会から出している資料の四ページ、五ページですね。いま口蹄疫があるかどうかについていろいろ議論があるんだが、結局五ページの冒頭に、学者諸君の「結論の基に、これまで必しも充分に明らかにされていない点に関して資料の提供が受けられる」云々と書いてある。私は問題はここにあると思う。そこで、中国側から証明すべき資料の提供をこちらは要求したのかどうか、要求しても出さなかったのかどうか、そういう点についてはどういう経緯になっておるか、その点を伺いたい。日本で持っておるいろいろな資料で類推して、ないのだ、あるのだと言ってもこれは意味がありませんので、この問題はあくまでも客観的に技術的に確かめる必要があると思うのですが、この二行に書いてあることは非常に大事なことですから、その経緯をお伺いしたいと思います。
  37. 清水英之助

    清水参考人 ただいまの御質問につきまして私のほうから御返事させていただきます。  いままでに調査団中国に三回も行っております。そしてその結果をまとめてみましたところ、四十一年のたしか五月だと思いますけれども、時の桧垣畜産局長は、調査すべきものはすべて調査して、そしてもう疑問はないということを言われています。それから田中良男先生の御証言におきましても……
  38. 小笠公韶

    ○小笠委員 いや、日本人の話は要らない。向こう側からどういうアクセプトがあるか。
  39. 清水英之助

    清水参考人 じゃ、向こう側のお話をいたしましょう。中国側から出している資料は、毎月、月報が来ております。
  40. 小笠公韶

    ○小笠委員 けっこうです。それ以上聞く必要はありません。
  41. 帆足計

    帆足委員長 それでは続きまして、武部文君。
  42. 武部文

    ○武部委員 最初入江先生にお伺いしたい。  先生がお行きになってから半年後に田中調査団が行かれまして、この報告書をお出しになっている。これを読んでみますと、先ほどもちょっとお話がございましたが、対外蒙、対ソ連の防疫活動等から判断すると、現状においては口蹄疫発生がないものと見るのが妥当であろう、要約いたしますとそういうようなことがこれに書かれております。入江先生もおそらくこの報告書はお読みになっていると思うのですが、第二回目の大石団長のときからわずか半年後にお行きになって、それぞれまた専門の立場で御調査になったこの報告書について、入江先生はどういうふうにお考えになっておられるか、それをひとつ最初にお伺いしたい。
  43. 入江良作

    入江参考人 妥当ということばが非常にむずかしいことばなんですけれども、私の受けた感じでは、妥当であろうと考えられるのですけれども、ただしここでひとつ考えていただかなければならぬことは、先ほどから病気問題、いろいろ出ましたけれども口蹄疫という病気はほかの病気と性質がちょっと違いまして、なくなってもある一定期間するとまたぽっと出てくるような病気でして、たとえば日本でも牛の流行性感冒なんかがございまして、最近出ておりますけれども、昔なんかは十年の周期をもって出てくるのだ、歴史的に見ますと、十年でなくなって、また十年して出てきて、しかもそれが九州のほうからだんだんこちらへやってくる、ウイルスのような、そういうような病気があるのです。それで、口蹄疫に関しましても、現在ではないと思うのが妥当であろうというようなことは言えるのですけれども、将来ともそれがなくなったということが言えるかどうかというには問題があるのじゃないか。そういう点で、やはり学者、ことにその口蹄疫を専門にやっておる学者連中では、一まつの不安があるのじゃないか。それで、その不安を除くためには、いまのように、同じなくなったにしても、どういうようにしてなくなったんだということがはっきりすれば、その妥当性を一そう強く認定できるのじゃないかというので、こちらのほうから向こうへ、いろいろ学者等の交流をはかろう、委員会をつくって話し合いをしようということをいま出しておられるのじゃないかと思います。
  44. 武部文

    ○武部委員 もう一つ。これは私もしろうとですから、ちょっと専門的にお聞かせをいただきたいのですが、肉が不足しておるというので、政府はアルゼンチンから食肉輸入することになって、すでに入っております。私はそのことについて若干疑問を持ちましたので、この国会でいろいろその点について政府側の答弁を求めたわけでありますが、どうもまだはっきりのみ込めませんのでちょっとお伺いいたしたいのであります。  アルゼンチンは、政府の私に対する回答によりますと、去年、一九六八年の一月から八月までの間に合計六百二十六件の口蹄疫発生をしておる。それは国際獣疫事務局の発表によって明らかだということでございました。そうしたアルゼンチン、口蹄疫発生しておる国からわが国食肉輸入することについては一体どういう方法でやるのか、こういうことになりましたところが、アルゼンチンの肉については七十度Cで一分間煮沸した肉を入れたのだ、こういう話でございました。そこで当時私は、この日本獣医師会が発行いたしております「口蹄疫」という本の中に、このウィルスがどういう温度でどのくらいな時間で消滅するのかという点の実験の例がございまして、それを読んでみました。そういたしますと、八十度Cで六時間加熱をしてもウイルスは実は全部残っておった、こういうことがこの本にはっきり書いてあるのであります。そういたしますと、七十度Cで一分間煮沸をして、わが国はアルゼンチンから、現実に口蹄疫発生しておる国から入れておるけれども、この発表によりますと、何十倍もの熱を加えても――時間的に見ましてこれは六時間やるのに向こうは一分間なんですから、そういう点でもなおウイルスが残っておる、こういうことがこれにございまして、これはどうしたことかといろいろ問いただしましたところが、結果的にはあまり釈然としない回答でございましたが、ひとつ専門的な立場からこの点についてどうお考えか、ちょっとお伺いをしたい。
  45. 入江良作

    入江参考人 私はウイルスの、ことに口蹄疫専門家ではございませんので、一般的な消毒ということに関してのお答えになるかと思うのでありますが、消毒試験というのは非常にむずかしいものでして、その消毒試験の材料いかん、それからもう一つはそのやり方、たとえば口蹄疫のような場合はストレーンというようなものによって全部違いまして、われわれの学会でも、消毒試験で何度で何分で死ぬかというのは非常に違ったデータが出ております。たまたま、私いまよく存じませんけれども、八十度何ぼというのは、そういうような例もあるかとも思いますけれども、ウィルスの熱に対する抵抗力というものは案外弱いものなのであって、したがって、今度はその煮た材料のほうからいきましても、それが中に骨が入っておるか、それからリンパ腺なんかついておるかということによってもまたその成績が違ってくるのでありまして、そこのところは私はよく存じませんから何とも判定いたしかねるのでございますけれども、おそらくアルゼンチンから入ってくるやつは骨をのけたやつで、ことに口蹄疫の場合は骨の中に骨髄という赤いところがありまして、あそこに毒が非常に多いので、骨をのけたものであって、ある場合にはリンパ腺なりをのけたものであるというような条件がついているのじゃないかと思います。ほんとうの肉だけだということで、その温度なんかは、農林省としてもやはり口蹄疫専門家意見を十分徴されて、それをきめられたのだと思います。  それからもう一つは、そういうかたまりで、何かそのものの中心の温度が何度というふうになっておったと思うのですが、中心温度というふうになりますと、中心が七十度くらいになれば外のほうは百度くらいになる場合がありますから、だから一応口蹄疫専門家というのでなしに、獣医学をやる者とすれば、それは一応安全なものじゃないかと私は思います。
  46. 武部文

    ○武部委員 おっしゃるように、アルゼンチンの場合は、中心の温度が七十度C一分間ということだという農林省から回答がございました。ただ、アルゼンチンから入れる肉がどんな形をしておるのかということは全然わからないのであります。そういう点やら、先ほどから申し上げるように、この本によれば、アルゼンチンの三百六十倍の加熱をしてもなおウイルスは残っておるのだということがここに書いてあったものですから、私非常に疑問に思っていろいろ聞いたのであります。  次に、清水さんのほうにお伺いをいたしますが、今回、日中貿易がああいうことになりましたが、その際に船上加工方式ということがしばしば新聞に出ております。船上加工方式は中国としては認めるわけにいかぬというようなこともございましたが、一体この船上加工方式というものはどういうやり方なのか、ちょっとそれを伺いたい。
  47. 清水英之助

    清水参考人 ただいまの御質問につきまして簡単に御説明申し上げます。  船上加工方式という問題につきましては、まず第一番目に、中国口蹄疫があるという前提のもとにやっているということです。中国は、口蹄疫がないと言っている。日本から調査団が行った。世界各国のいろいろな調査団も行っておる。そうして証明しておるにもかかわらず、日本では、口蹄疫があるという前提でやっているということですね。  それからもう少し問題があるのは、口蹄疫があるならあるという前提のもとだったら、もっとほかに方法があると思うのです。が、しかし、向こうから買うときはなまで買って、途中で船の上で加工をして、そうして持って帰るということですね。これは相手の国に対してまことに失礼なやり方じゃないかというように思います。
  48. 武部文

    ○武部委員 もう一点お伺いいたしますが、いま日本輸入しておる中国からのものでは、先ほどもお触れになったようですが、ウサギと、鶏と、豚の内臓、これは輸入するようになっておりますね。それについては、病気ですか、そういうものは全然発生したことはないんですか。
  49. 清水英之助

    清水参考人 ただいまの御質問お答えしますと、いま中国から肉が入っております。その肉は鶏の肉、ブロイラー、それからアヒル、ガチョウ、それからウサギの肉、それから一回、おととしの暮れになりますか、豚の内臓が入りました。そのときにやはり農林省といいますか、動検といいますか、厳重なる検査をしていると思います。その結果、いままで一度たりとも問題は起きてなかったということは、動検でもそういうふうに言っております。
  50. 武部文

    ○武部委員 わかりました。  それから清水参考人にもう一度お伺いいたしますが、フランスの例をお述べになりましたが、現実に中国からどういう国に肉を輸出しておるのか、またその量はどのくらいなのか。これはわかっておりましたら、お知らせ願いたい。
  51. 清水英之助

    清水参考人 ただいまの御質問についてお答えを申し上げます。  中国は諸外国に対して肉を輸出しているという証拠をはっきり述べております。これは第一回目の調査団で行かれました高松泰人先生の報告書にもはっきり出ております。その報告書によりますと、東欧諸国、それから西ドイツなどに輸出しておる。もちろん中近東、それからアラブはもちろんのこと、それからマカオ、香港。その後の調査団においても、また中国側の発表においても、はっきりそれは言われております。出している国は、スウェーデン、それからスペイン、それからイギリス、フランス、イタリア、こういうふうに出ております。それで期限としましては、公式な発表としまして、一九六五年から、正確な数まで出ております。
  52. 武部文

    ○武部委員 中国の現在の肉、牛でけっこうですが、生産量は大体どのくらいあると推定できますか。
  53. 清水英之助

    清水参考人 ただいまの御質問お答えいたします。  生産量というものは、中国のほうとしてもはっきり出しておりません。が、しかし、これは推すことはできると思います。たとえば一九六五年の家畜の数字というもの、これも出ております。これは羊が一二%です。それから豚が四〇%、それから大家畜と称しています、これは馬、牛などの大きな家畜ですが、これが一〇%、こういうふうにいわれております。諸外国に対しての輸出量としまして、これは一九六五年の資料でもって、約三十万トンの肉を諸外国に出しておるということをいっております。
  54. 武部文

    ○武部委員 大川参考人にちょっとお伺いいたしますが、いろいろお伺いをいたしておりますと、結論的に言えることは、皆さんの立場からいうと輸入はすべて反対である、こういうふうにおっしゃっておるように理解できますが、そういうお考えですか。
  55. 大川忠男

    大川参考人 はい、そうでございます。
  56. 武部文

    ○武部委員 先ほどもお話がございましたし、また御婦人の細川さんのほうからもお話がございましたが、いまの日本の肉の値段というものは非常に高い。皆さんのほうは生産農家のことをお考えになっておっしゃるという気持ちもよくわかります。そうは言っても、これだけ高い肉を消費者が、買わされているのに、和牛の生産畜産振興という、そういう政治的なものを待っておったのではたまったものではない。そういう意味で、できるだけ安い肉を食いたい。そのためにはアルゼンチンからでも、口蹄疫のあるような、一分間七十度で煮沸したようなそういうものでも食わなければしようがないのだ。加えて人工肉まで出てくるような現状です。きょうの新聞を見ると、外国からの人工肉が相当入ってきて大問題だということが載っておるようですが、そういう点や、さらに、肉牛がとにかく不足をしておって、高いものだから、乳牛を殺して肉用にするという傾向が非常に出ておるのです。こういうようなことを待っておったのでは、とてもわれわれ消費者はたまったものではないから、私どもとしてはでき得ることなら安い肉を食いたいので、輸入をしたいという気持ちを持つことは当然だと思うのです。そういうときに、ただ単に生産者立場から輸入はすべて反対だというようなことをおっしゃっておっただけでは、問題は私は解決しないと思うのです。そういう面で、あなた方がそういうことをおっしゃるが、肉は高いということになれば、牛の肉は豚にかわり、豚もなかなか高くて手も出ぬ、今度は人工肉ということになってしまうと思うのです。そういう点で、すべて反対であるというふうなお立場をあくまでお通しになれば、これはやはり消費者からむしろ反感を買うのではないかというような気持ちを私どもは持つのです。そういう意味で、大川さんのほうとしては、たとえばいま入っておるアルゼンチンその他からの肉すべて、これは今後もそういう問題については反対だという基本的な考えをやはり主張していかれるお考えでございましょうか。
  57. 大川忠男

    大川参考人 私がきょうの陳述の冒頭に申しましたように、ただいまのわが国食肉の需給事情から見ますと、価格の点からだけで考えますと、どの国にかかわらず、そこから輸入されるある程度のものは、これはやむを得ないものがあるだろうというふうに最初申し述べました。ただしその場合に、病気ということがわれわれ生産者にとってはその次に考えられるというふうなことも述べたわけでございます。ですから、われわれがただいま生産に対して、増殖に骨を折っておりますけれども、なかなか需要のほうの伸びの足が早うございまして、追いつかない面もございます。ですから、できるだけ今後いろいろ政策的にもお願いして、増産の実をあげるように務力してまいりたいというふうには考えておりますが、輸入の面につきましても、いまの現状から考えますと、病気でないものにつきましては、当面の間はやむを得ないというふうな考えております。それからまた安全な、処理されたものにつきましても、現時点においてはやむを得ないものがあるのじゃなかろうかというように考えております。
  58. 武部文

    ○武部委員 時間でありまして、他の委員質問があるようですから、私はこれで終わります。
  59. 帆足計

    帆足委員長 関連質問の申し出がございます。唐橋東君。
  60. 唐橋東

    ○唐橋委員 簡単に素朴な質問を二、三点申し上げます。  一つは、清水さんにお伺いしたいのですが、この資料の三ページにもありますように、昨年十一月に中国側と食肉二万トンの輸入協議書が成立した、こういうことになっておりますが、もしこの食肉二万トンが輸入された場合に、実際国内で小売りできるという場合には、現在の市価と比べてみて小売りの場合どのくらい安く売れそうに推定できるのですか。
  61. 清水英之助

    清水参考人 ただいまの御質問につきまして御返答申し上げます。  日本の友好商社、つまり中国貿易できる商社ですが、中国の糧油公司というところと食肉の協議書を去年の十一月十四日に結びました。これは二万トンでございます。この中の価格を簡単に申し上げますと、CIFでもって牛の枝肉が百九十五ポンド、豚の枝肉が百六十ポンド、それから豚の正肉と申しまして、これはあぶらを削って骨のない赤い肉ですね、これが二百九十ポンド、それからマトンが枝肉で百五十ポンド。これを、肉の値段の計算というのはなかなかむずかしゅうございますが、私のほうで一応簡単に計算してみたのです。この計算方法は、現在の流通機構で、もちろん税金も支払って、牛肉の平均価格、つまりロースも入り、すべてが入って、上で大体四十一円前後というふうに考えております。だから、五十円以下ならば問題ないんじゃないかというように考えております。
  62. 唐橋東

    ○唐橋委員 大川さんにお伺いしたいのですが、いまのような価格で販売される場合に、大川さんの関係していらっしゃる協会あるいは実際全国的に肉を売っておいでになる方々のこの状態の中で、二万トンなら二万トンを輸入された場合の影響というものをどのようにつかんでいらっしゃるのですか。ということは、具体的に申しますならば、そのためにいまの小売りの価格をある程度下げなければならない、あるいは押えていかなければならないというような重大なる影響が全国的に出てくると推定されますか。
  63. 大川忠男

    大川参考人 先ほどもお話に出ておりましたけれども、肉の価格を比較するということはなかなかむずかしい問題なわけでございます。いまのお話は全国平均ベースでの平均価格の比較のお話だと思うわけでございますけれども、その安い肉が入ってまいりましても、その消費の方向というもの、加工向けのものとかあるいはなま肉用のものとか、そこが食肉価格形成構造の非常にむずかしいところでございます。やはり生産地におきましては、その実態的な価格の形成の面からの影響と、それから気分的な影響、いわゆるムード的な影響と、両方の面があるだろうと思うわけなんです。それで現在の需給事情の状態から申しますと、二万トン入れましてもそれほど強い――多少影響はあると思いますけれども、強い影響というものよりも、むしろムード的に、生産をやめる農家が出るとか、あるいはムード的に、安い肉が入ってくるから買い控えようとか、いろいろな現象があらわれてまいりまして、そういう面で大きい影響があるのじゃないかというふうに考えます。
  64. 唐橋東

    ○唐橋委員 今度また戻りまして清水さんのほうにお伺いしたいのですが、昨年の十一月に二万トン、今後この二万トンが実現され、そしてさらにこれが継続されていくという場合には、この数量の増加ということは相当望めるのですか。たとえば五万トンなり六万トンまでずっと進んでいけるのだというような状態なんですか。どうですか。
  65. 清水英之助

    清水参考人 ただいまの御質問に対してお答えいたします。  御承知のとおり中国は相当発達した大きな畜産国であります。だから肉の供給に対しては問題はないと思います。いまおっしゃったごとくに、二万トンというのはいまの暫定量でございまして、これ以外に四、五年前に覚書事務所のほうでも一万トンの契約をしております。それから、この問題につきましては、やはり日本の需要によってきまると思います。一九六五年でも三十万トン出しておるような状況でございますから、それから推していっても――いま先生は五万トンという仮定のあれをお出しになったと思いますけれども、五万トンや十万トンは、必要とあれば問題ないと思います。
  66. 唐橋東

    ○唐橋委員 もう一点だけ大川さんにお伺いしたいのですが、先ほどの御答弁で気分的影響が大だというお話がありました。その場合は二万トンという数量の場合を仮定しているわけですが、実際大きな影響が業者にあるということが出てくるならば、これは相当大きな問題として取り上げなければならないのですが、いま供給されておる、肉を売っていらっしゃる方に対する影響というものは気分的なものが多い、こういうことになっていくとすれば、私たちは私たち立場からあなたたちの主張というものは非常に了解できない。実際業者にこのような影響があるから押えなければならないというならば、私たちも十分御意見を重視しなければならないと思うのですが、気分的なものがあるから輸入ができないのだということになってくるならば、やはり私たちは消費者の立場に立ってものを考えていきたい、こういう考えなので、もう一度その辺、私の意見も一応加えて、なお大川さんの御意見もお聞きしたいのです。
  67. 大川忠男

    大川参考人 先ほど私は、二万トンの輸入につきましては、牛豚くるめて、羊も入っておりますが、全体の数字だと考えまして、その中から牛肉を考えまして、価格上の影響というものよりもむしろ比較的に申しまして、何だ、一生懸命牛をつくっておっても間尺に合わないじゃないかというような気分を起こさして、そしてやめるようなことになれば、これは日本の増産上非常にたいへんだという意味合いで申し上げたわけでございます。それで、ムード的な影響という意味をちょっと誤解されちゃ困るのですが、その結果来たる増産上への影響というものを考えての意味でございます。私は現実に農村を回ってまいりますと、いま牛をつくろう牛をつくろう――やはり利が薄いものですが、それでもいろいろ農業経営上の関連において牛を飼う人がいまようやくふえかかってきております。そういうやさきにこういうふうな輸入肉が入ってまいりますと、せっかくおれは牛飼をつて日本の増産に貢献しようと思っておっても、そういうようなことで牛を飼うことをやめれば非常にたいへんなことになるのじゃないか。それで、国際的な需給事情を見ますと、これはどこでも横ばいの状態で、いつの日にかまた、飼うのにさえ非常に困難な、また価格も高くなるだろうと思われますが、やはり牛肉の生産というものは、国内での生産増強というものを第一に置かなければならないのじゃないか、そういう意味合いで先ほど申し上げたわけでございます。それで、やはりそういう安い肉が入るというふうな形になりますと、その量の多少にかかわらず、それはまたいろいろ取引価格形成上に影響を及ぼすことは、これはやはり商売上のことでございまして当然だろうと思います。
  68. 唐橋東

    ○唐橋委員 大体わかりました。  私、福島県なのですが、福島県でこの前の県議会で非常に問題になりましたのは、福島県の場合、外国商社と提携して人工肉の製造をする、そうしますと、福島県のいわゆる畜産に多大の影響が出てくるのじゃないかということが非常な問題になっているのですが、先ほど武部委員からの話でも人工肉の問題にちょっと触れたようですが、これに対してはあなたの方の協会はどういうような態度をおとりになっていらっしゃるのですか。
  69. 大川忠男

    大川参考人 人工肉のお話でございますけれども、私の知る限りにおきましては、現在の段階におきましては、そのもとになるものがいわゆる植物性のたん白質とそれから動物性のたん白質とがありまして、それでああいう動物性のたん白質、たとえばプロトゾアーの類のようなものをもとにした動物性のものはものにならなかったものですから、最近出てまいりましたのは植物性のたん白質、その中で大豆と小麦のアミノ酸をもとにしたものがございます。それは毛糸の糸くずを解いたような非常に細いものでして、ほとんど味のない、栄養価の高いというようなものだそうでございます。それをくっつける場合に、いわゆる粘着性とか粘弾性、くっつけたあとの弾力の上においてどちらがいいかということになりますと、小麦より大豆のほうがいいというふうなことの文献も出ております。そうしますと、くっつけて、そうして一応ねばりけができて、そして弾力性の出る固形の形に持っていけるまでの段階、そして今度これをボイルしたら、ばらばらに散ります、そういう技術段階においてまだ大きな隘路があるように考えております。それで、煮たあとなお同じようにくっついて、そうしてそれが肉のような弾力を持つ形にまでの技術が、いつか開発されるかもわかりませんけれども、それはまだ前途長いものではないだろうかというふうな見解をとっております。それで、そういうアミノ酸の糸くずのようなものはむしろまぜものとして、ハンバーグステーキとか、そういうものにまぜて、またかまぼこにまぜてもかまぼこの味になる、それからまた肉にまぜて、ラーメンにまぜる、むしろそういうまぜものとして使ったほうが利用効率が高いということの認識が一方で高まっている。固型的な人造肉のような形でそれを考えるよりも、むしろまぜものとして使ったほうが利用効率的にいいというふうな見解が高まりつつあるように伺っております。ですから私もそういう考えに立って、人造肉につきましてはこれはなかなかものにならぬのじゃないか、何か先の長いことじゃないかという感じでおります。
  70. 唐橋東

    ○唐橋委員 終わります。
  71. 帆足計

    帆足委員長 ただいまの件に関連いたしまして、内藤良平君から質問の希望がございます。かねて和田委員、有島委員から質問の御通告もございますので、その点も御考慮の上、簡にして要を得まして、緩急よろしく、時間を御考慮の上御質問を願います。関連して内藤良平君。
  72. 内藤良平

    ○内藤(良)委員 参考人皆さま御苦労さんでございます。  細川さんにちょっと伺いたいのですが、いままでのお話にもあるように、国内の牛の関係者は輸入に反対しております。結局生産者農村の皆さんも含めて、業界の皆さんも反対しておられる。これは同じ日本国民でございまして、それによって生活をしておるわけでございますけれども、そういう中でも口蹄疫病気のある中国の牛肉をやはり輸入してほしいというようなお考えになるものでしょうか。
  73. 細川かう

    ○細川参考人 細川でございます。  そういう病気のあるような肉でも望むのかということですか、先生のお尋ねは。
  74. 内藤良平

    ○内藤(良)委員 国内のお百姓さん、農家の皆さんも牛を飼っておる、それから業界の皆さんもある、そういう方々にいろいろ悪影響があるような参考人の御意見です。それから中国食肉の場合には病気のおそれもある、こういう参考人の御意見もございます。そういう御発言の中で、細川さんは日本の国民の一人として、食肉輸入、これにつきましては是が非でもやっていただきたい、こういうぐあいにお考えですか。
  75. 細川かう

    ○細川参考人 中国の肉につきましては、先ほどから家畜病気がどうのこうのということでございますが、あくまで安全性の上に立っての食肉を望むわけでございます。ですからその点は、先生方はじめ御専門の方が十分に御検討いただきたいわけです。安全度の高い、安い肉ということです。  それから、国内産の業界の方の立場ももちろん考えてはおります。しかし、やはり現実には自分たちの消費生活を守りたい、これが家庭の主婦としてのひたすらな願いでございます。それで私は、消費者だけがエゴイスチックな発言をしてはいけないと思いまして、埼玉県は農業の県でございますので、県内のいろいろな生産者の方と交流を持っております。それで、豚の飼育をする方に伺いますと、何ですか、非常に飼料が高いということなんです。最近は豚のえさの中に抗生物質を入れて、スピーディーに太らせるような飼料もあるということなんです。ですから、畜産につきましてはやはり安い飼料を提供していただくのが根本ではないかと思います。  それから、食生活といいましても、もちろん肉は重大ですけれども、関連しまして牛乳というようなものもあります。それで、ブロイラーを例にとりましても、卵を産んでしまった鳥は非常にまずいのでございます。卵を産まない若いブロイラーがおいしいのです。ですから、牛にしましても乳牛と肉牛はおのずから違うのではないか。やはり家庭にとりましては、牛乳の供給も豊かにしていただきたいわけです。そうしますと、日本は国土が狭うございますから、乳牛と食用の牛ということはたいへんに困難ではなかろうか。そうしますと、やはり鮮度の高いなまの牛乳を供給していただきたいというようなことも考えておりますので、この点はどうぞ専門の方々がとくと御研究をいただきたいのです。主婦といたしますと、やはり肉、牛乳など安全性の高いものを安く供給していただきたい。しろうとの私で申し上げられるのはこの点ぐらいでございます。
  76. 内藤良平

    ○内藤(良)委員 大川さんにちょっとお願いします。ぼくも秋田のいなかですが、いまお米は余っているということで、政府はいろいろと作付の転換などを考えているわけですけれども、さりとて畜産に一生懸命になるという模様もないのですよ。だから、畜産の増産については、今日国内実情はあなたたちの希望するような、増産になる状態に急速度にどんどんなっておるかどうか、その点いかがお考えですか。
  77. 大川忠男

    大川参考人 最近の飼養頭数増加傾向から見ますと、頭数はふえておるわけでございます。農家の戸数は減っておりますけれども、一戸当たりの飼養規模頭数は大きくなりつつあるわけでございます。統計数字の上から申しましたらそういうことでございますが、私、方々を回って歩きまして感じますことは、農村の、特に山村地方でございますけれども、いわゆる過疎の問題ともからみまして、それでその生産性を高めるための方法として何がいいかというふうな考え方に立ちまして、まず家畜の中で何がいいかといいますと、その人たちの指向の過程と申しますか、乳牛では技術が高いし、労働の競合がある。あるいは豚とか鶏になりますとまたえさの問題もからんでくる。そうしますと、労働の量、質の低下と相まちまして、最も手っとり早いのは、資本の要らない、技術の比較的低くていい、そして土地の有効利用ができる、労働の競合が少ない肉用牛の増産ということをはかって、そして経営をいままでの縦割り的なものの考え方から、横割り的な作目間の結びつきに置きまして、経営を豊かにしようという考え方で、肉用牛振興ということを各地の山村で取り上げております。それで、秋田県ではそれほどというようなお話もございましたけれども、秋田県におきましても、私も先般行ってまいったわけでございますけれども、大規模草地をやるとか、あるいは日本短角種の増殖に力を入れるとか、効果は今後の問題だと思いますけれども、推進さいれてるやに伺ってまいりました。
  78. 内藤良平

    ○内藤(良)委員 さっき大川さんのお話で、生産農家の利幅が薄いということをちょっとおっしゃっておられたようですが、それがやはり生産農民の意欲を減退しておるのではないかと思うのです。お米がうんとできたというのは、あれは保障されておりました。それでみんながほかのものをどんどんやめてしまってお米にいったわけですけれども輸入をやめて国内の牛の肉でということになりますと、急激に増産を期待する場合、薄い利幅を解決しなければならぬというぐあいにはお考えになりませんか。そこら辺をどういうふうにお考えになっておりますか。
  79. 大川忠男

    大川参考人 販売価格のそのときの相場が一番関連すると思うわけでございます。それで現在中国、九州地方の生産地の価格で申しますと、八万円か九万円に値段が下がっております。その辺になりますと、もうとんとんか生産費を割るような形になるわけでございます。ですから、結局そういうふうな不安定な状態じゃなしに、ある程度安定した生産ということに努力が向けられるならば、二万とか三万というふうな一つの値幅を持った飼養体系なり、あるいは生産構造的なものがつくられるのじゃないかというふうに感ずるわけです。現在、昨年の初めごろは、かなり農家も牛の値段がよくて、利幅も少ないと言うわけにもいきませんでしたけれども、現在では利幅が薄い。ですから、むしろ二万とか三万とかいうふうな、安定的にもうかるような形での経営形態なり、それから生産の構造というものを考えていかなければいけないのじゃないか。これは今後の一つの課題ではなかろうかというふうに考えております。
  80. 内藤良平

    ○内藤(良)委員 時間がないようですから終わります。ありがとうございました。
  81. 帆足計

    帆足委員長 それでは、和田耕作君。
  82. 和田耕作

    ○和田委員 入江教授にお伺いいたします。  あなたが直接お調べに行ったときと、その前に一回、あと一回と視察団が行ったわけであります。先ほどいろいろお伺いしたのですけれども、結局総合的な判断として、だいじょうぶだと思うが、しかし絶対とは言われない、あぶないとも言われないという御判断のようですけれども、失礼ですけれども、これは安全だと思うのが大体八割くらいですか。
  83. 入江良作

    入江参考人 何割と言われると困るのですけれども、一応表現的には、だいじょうぶだと思うけれども、やはり危険性はあるということでございます。
  84. 和田耕作

    ○和田委員 これは、日本も何とかできたら入れたいと思うから三回も調査団を出したと思うのですけれども、それに対して中共側は十分に調査の機会を与えなかった。先ほど入江教授もおっしゃっておられたように、五分の一しか自分たちが調べたいところの回答を得られなかったというお話、そういう点は非常に遺憾なことだと思うのですけれども、何しろあの国はメンツを重んずる国で、こちらが買う肉を船上で加工するのはけしからぬというようなことをおっしゃる国であることも事実なんですね。しかし日本としては、とにかく肉類の値段が現在非常に高い、消費者の利益を圧迫しておる、何とか買いたいという強い希望のあることも事実あるわけだと思います。それで先ほど何割くらいの確率かということをお伺いしたのです。私は何とかして危険を防止しながら早く輸入をしたいものだという立場で、いろいろ御質問をしておるわけですけれども、先ほど清水さんから、戦前青島肉を輸入したことがあって、口蹄疫発生したことがあるけれども日本防疫陣はしっかりしておって、これを退治しておるのだというお話であったのですけれども入江さん、そういうことは事実ですか。
  85. 入江良作

    入江参考人 それは確かに事実であります。ところが、その当時は、中国から輸入する場合、二重検疫というものをやっておりました。そのときは日本の勢力下にあったものですから、向こうで検疫するのも日本人が検疫して、それでだいじょうぶだ、またこちらへ来てするというような、二重検疫をやったものですからいいのですが、いまはそういうこともできないというので危険性がある。その当時のように二重検疫ができれば話は別だと思いますけれども……。
  86. 和田耕作

    ○和田委員 二重検疫の問題は一応別にしまして、日本口蹄疫病気発生した。これに対して、大事に至らないで防ぐことができたということは事実ですか。
  87. 入江良作

    入江参考人 それは、発生があったと申しますのは、そのときは肉を入れたわけではないのです。タチで入れました。そして門司の検疫所で検疫中にこれを発見して処理したものなんです。タチで入れるというのは、検疫上非常に楽なんです。ある一定の潜状期間があります。そういうことで、いままでもタチで入れるということになれば話は別になると思います。それはタチで入れて生体のときに発見したものです。症状があらわれて発見したので、国内へ入って、国内でばらまかれて、それがどうなったというのではなく、検疫所内で見つけて、そこで処理したということなんです。
  88. 和田耕作

    ○和田委員 つまり、われわれが解決しなければならぬ問題は、私どもは三回中国へ行っていろいろ調べをした。何とかして入れたいという気持ちで調べをしたけれども中共側からは調べに対する十分な御協力が得られなかったということですね。三回ともそうですね。それ以上中共側に、もう二回、三回、と行って、調べに応ぜられることも怪しいということで、向こうへ行って調べることは非常に困難だという事実はあるわけですね。これ以上調べることは非常に困難だ。しかしわれわれとしては、二百円のものが五十円以下で買えるということになればたいへん魅力のあること、魅力だけではなくて、国民の保健とも重大な関係があるということですね。この問題を解決するには、あなたもおっしゃったように、大体だいじょうぶだと思うけれども、絶対だいじょうぶとは言われないという、これを前提にして、もし入ってもこれを防ぐ何かの対策を考えることができないか。と申しますのは、アルゼンチンのほうからも、その病菌のあるところからも現に肉をいろんな方法を通じて入れておる。入れておっても、これは絶対だいじょうぶとは言われないわけです。絶対だいじょうぶでないときにはどうしよう、こうしようという腹がまえは、政府としてもあると思うのですけれども、そういう問題についての学者としての一つの見通しみたいなものを持っておられれば、お伺いいたしたい。
  89. 入江良作

    入江参考人 非常にむずかしい問題なんですが、この問題で私いろいろ考えておるのですけれども、適切な例かどうか知りませんけれども、大体いまから十年ほど前のちょうど石油ストーブを家庭で買うか買わぬかというような問題じゃないかと思うのです。業者は、これは絶対に安全だというわけです。ところが石油ストーブをひっくり返せばやっぱり火事になる。日本は紙と木の建物で、非常に火事になりやすい状態である。これは日本がが口蹄疫に対して処女地だ、こういうこと。火事になったらどうするか。すぐ大火事になる危険性がある。それで、家庭で石油ストーブの使い方を十分練習する。それは結局国民に口蹄疫に対する防疫思想を高めるということ。また消防士をたくさん養成して、火事のときはすぐ消せるという態勢になれば、石油ストーブを使ってもいいんじゃないか。片一方の木炭業者の方は、消費者の方はだんだん木炭が上がって困っておるのだ、何かストーブをほしいのだというので石油ストーブを入れたら、木炭がいよいよ使われぬようになるんじゃないか。何か私はいまの問題は、現在の時点じゃないのですが、十年ぐらい前の石油ストーブを使うか使わぬかというような問題じゃないかということなんで、それ以上私にはどれが一番いいかということはわかりません。
  90. 和田耕作

    ○和田委員 石油ストーブの例でよくわかりましたけれども入江教授は、とにかくこちらの防疫体制がしっかりしておれば入れてよろしいという判断だと承ってよろしゅうございますか。
  91. 入江良作

    入江参考人 全部はそうでない。その一面も確かにある。
  92. 和田耕作

    ○和田委員 それは、絶対だいじょうぶだけれども、万が一というこの判断は、これは非常に大事な判断だと思いますけれども、これはすべての問題についてそういうことがあるというよりは、特にこの問題については、良心的な学者の人たちがそういう判断を持つのは当然だと思います。先ほどからお伺いしますれば、口蹄疫という病気そのものの性格がそういう面もあるということですから。しかし私どもは、生産者としてこれが五年あるいは七、八年のうちに日本に大きな増産が行なわれて、安く提供できるという見通しが立っておればなお忍ぶこともできると思うのですけれども、そういう見通しはまだはっきり立たないんですね。これは政府のやり方にもよります。家畜頭数を一ぺんにふやすということは非常に困難なことです。そういうわけですから、そういう危険に対して万全の策を講じながら輸入をしてみるということ、もしそれが不安であれば、日本の、入江さん含めて最高権威者の方々、あるいは実際やっておられる方々が集まっての結論というような、そういう努力はされたことはありますか。
  93. 入江良作

    入江参考人 まだ具体的な案は出ておりませんけれども、そういう専門家が集まっていろいろ考えてはおるようです。そのことは、私、その委員会に入っておりませんからよく存じませんけれども、いろいろ考えておると思います。
  94. 和田耕作

    ○和田委員 これは高度の政治判断じゃないのですけれども、やはりそういうふうな一つの場を経て、もう十分いろいろこの問題をめぐっての判断の材料というものは出ておるわけです。先ほど小笠さんも言ったような、非常に大事な問題でわからない点もあるのですけれども、それを前提としながら、日本の現在の権威的な人たちが集まって判断をする。国民はほしいことはほしいのです。何とかして入れてもらいたい。しかし、万が一の危険がある。この危険に対してどうするかという問題を処理してくだされば解決するのじゃないか、こういう感じがするわけです。どうもありがとうございました。
  95. 帆足計

    帆足委員長 有島重武君。
  96. 有島重武

    ○有島委員 参考人の方々、たいへん長い間御苦労さんでございますが、私でおしまいでございますから……。  いままででほとんど質問が出尽くしたような感じがいたしますけれども、大体まとめて考えてみますと、私どもこうやって中国食肉輸入のことについて興味を持ちますことも、これは物価問題から始まったわけでございまして、私も去年、一昨年あたりから、この問題について興味を持って研究もいたしましたし、この席でもっていろいろ伺いました。それから田中良男先生からも直接いろいろなお話も伺っておりました。ここでもって問題になっておりますのは、農政の問題、それから医学の問題。ここでもってまだ国際的な関係問題ということが一つ隠されておるわけですけれども入江教授のお話の中で私のほうで感じましたことは、どうしても中国の肉を入れたくないという立場に国が立ったときには、確かにこれはもっともである。疑いがあるというふうにおっしゃられると思うのです。積極的に国が入れるときめれば、これは入れてもだいじょうぶだという根拠はすでにお持ちになっておる。国が入れるというのに、入江先生は、いや、これは絶対に危険だからやめておけ、そういうような根拠はいまのところお持ちになっていないのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  97. 入江良作

    入江参考人 国が入れるときめていた場合に、手放しでお入れなさいと私は申し上げられない。何かそれには規制があると思います。その規制の方法は、たとえばアルゼンチンの例があるのですが、それを煮るということもありますし、検疫のしかたとか、種類は向こうのどこの産地にするとか、それをどういう経路で入れて、ある場合には日本に入ってきたらどういうふうに使うかという規制はつける。一まつの不安がある以上は、何ぼ政府が方針を立てられても、一応の規制はつきまとうものだと思います。
  98. 有島重武

    ○有島委員 貿易問題は当然いろいろな規制がつきものでございます。ある条件のもとには絶対に反対だという立場ではない、そういうふうに判断できるわけでございますね……。  それから清水さんにお伺いしたいのでございますけれども、こちらは輸入をしたいという立場をとっていらっしゃると思うのです。それでもって、医学的にもこれはもうだいじょうぶだ、外国においてももうだいじょうぶだ、そういった例をあげていろいろ教えていただいたわけでございますけれども日本の農政ということについては、清水さんはどういうふうにお考えになっておるのか。
  99. 清水英之助

    清水参考人 ただいまの御質問お答えいたします。  私は実は日本の獣医ではございません。中国で獣医をやっておりました。そういうような関係で獣医のことは少しながら知っていると思っております。そういう関係上、私はやはり日本の国の家畜発展ということを願っております。そういう観点に立って、この話をしているわけです。  それで、一つの明らかな例としましては、たしか昨年でしたか、日商の足立念頭という方がアルゼンチンに行かれて肉の契約をされました。そのときにはなま肉四千トンだったと思います。私としましては、そのときにその報告を聞きましてびっくりしたわけです。アルゼンチンは口蹄疫発生しているじゃないか、なぜそこから入れるのだ。それで農林省にもこの意見を申しました。そのあとでもってまた変わった問題、つまり、いまさっき言われています煮沸肉の問題です。この煮沸肉の問題につきましては、私は獣医学を修めた以上、これは絶対に反対なのです。なぜならば、こういう危険な、現に口蹄疫発生しているところからなぜ入れなくちゃならないか。しかも、この処理のしかたというものは実にあいまいな処理のしかただということが言えるわけです。これは当時の立川畜産局長の御発言の中にこういう発言がございます。古井喜實先生が、アルゼンチンからこういうような煮沸でもって入れるのはおかしいじゃないかという意見を出されたときのお答えの中に、実はこの古井喜實先生のおっしゃっている七十度一分間というのは中心温度であるということを言われ、そして七十度一分間というのは中心温度のことであって、煮て七十度一分間というわけじゃないというのがその説明の答えでありました。その説明は、八十度で三時間煮てと書いてあります。そうして大きさはわからないかというと、子供の頭くらいの大きさだというようなことが書かれております。これは新聞で云々という問題じゃございません。こちらにも資料がございます。農林省からいただいておる資料、これから見ても大きさの問題が書いてございません。それから、中心温度が七十度一分間といわれておる、これはいまさっきある先生から言われたように、農林省が監修して発行した本の中にはっきり書いてあるわけです。そういう点から見ても、万が一、万が一ということを、いままで何度も農林省はいわれております。それがその万が一だったら、これも万が一に当たることじゃないか。なぜ病気発生したところからそういうような方法で無理して入れてこなければならないか。それに対してなぜ反対運動が起こらないのか。病気がないといわれている中国から入れる場合のみ反対運動が起こるということは、何かそこに問題があるということが言えると思います。
  100. 有島重武

    ○有島委員 私もいまの煮沸の件につきましてずいぶん不審に思って伺ったのですよ。いま私が清水さんにお伺いしたいのは、清水さんが、中国食肉を入れるという立場と、それから日本の農政ということ、そのことについて大川さんなんかは、食肉を入れることが日本の農政を圧迫するじゃないか、そのおそれがあるというふうにおっしゃっているわけですが、このことについてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  101. 清水英之助

    清水参考人 ただいまの御質問お答えいたします。  私はさっき申しましたように日本の一国民でありますし、日本畜産ということをやはり考えております。中国との貿易というものからこの問題は解決していきたいと思います。中国との貿易、つまり商売ですが、日本からの輸出は幾ら、輸入は幾らというふうに大体バランスがとられているわけです。そういう点からいきまして、ほかのものは言わなくても、ただいまの肉のことを考えていうならば、こういうことが言えると思います。将来日本中国とお互いに肉を買ったり種牛を売ったりすることは十分に可能性があります。飼料もしかりと思います。ただ一方的なやり方をすれば、これは相手国としてもそうだし、日本だってそうですが、輸入超過ばかりやってもしようがないし、輸出超過ばかりやってもしようがない。そういう点から、もしこの問題が解決され、正常な貿易がやられるとするならば、さっき参考人のお話によりますと、安い飼料を入れたらということを言われておりますが、この問題も解決するのではなか。  それから、実は私、日本酪農政治連盟というところへ行ったときにおもしろいことを聞いたわけです。その政治連盟の会長のお話の中に、中国はいまみなが御飯を食べるのは無理なのだ、つまり生活がとても貧困の極にある、だから日本から牛はとても出せません、特に乳牛の種は出せないのではないかというお話を伺ったのであります。ぼくはびっくりいたしまして、この問題について説明を申し上げました現在中国乳牛は足りない状況なのです。でございますから、われわれが日本国内で新しい、いい品種をつくり、いい種牛をつくった場合、どんどん輸出ができる。こういう点から考えても日本の産業に大きなプラスになるのではないか。  もう一つ問題は、日本国内生産面ですが、いま利幅が薄いとおっしゃいました。確かに利幅が薄いのになぜこんなに高いのか。肉はいま世界において日本が一番高いのではないかといわれております。これは事実だと思います。では利幅をふやすとなるともっと高い肉になってしまう。これはなぜだろう。こういう点もやはり御専門の農林省のほうでよく御検討を願いたい。  それから、話が前後しますけれども、今後の防疫問題についても私はこういう意見でございます。ワクチンの交流の問題ですが、これは今後大きな交流の問題になるのではないか。私が一九六六年にこちらへ帰ってまいりましたときに農林省に御報告したわけですけれども中国におけるニューカッスルのワクチンのごときはすばらしいワクチンなのです。時間の関係上詳しいことを申し上げませんが、そういうワクチンをどんどん取り入れて使ったらいいと思います。もし危険があると思ったら実験したらいいということを私は時の衛生課長に進言したことがあります。豚コレラもしかりであります。中国豚コレラにつきましては、田中先生報告書入江先生の御証言の中にも書いてあります。向こうはなかなかすばらしいワクチンをつくっているということがいわれているわけです。そういう点から考えても、私たちは、これは向こうのがいいとかこっちのがいいとかいうことではなしに、こちらのいいものは出し、向こうのいいものはこちらに入れるという交流を大いにやっていってもらいたいというように考えております。  農政問題をちょっとはずれたかもしれませんが、私はそういうように考えております。
  102. 有島重武

    ○有島委員 よくわかりました。  大川参考人に伺いたい点は、いままで少し話が出ましたけれども、アルゼンチンから入れている問題については大川さんはどういうふうに思っていらっしゃるのかということです。  もう一つは、利が薄いという点です。利が薄いのに中共食肉輸入するからますます利が薄くなるというお話であったように思うのですけれども、そのことがそれほど関連があるのかどうか。また、全国肉用牛協会でもって中国食肉のことをこれだけ熱心に言われるのだったら、どうしてアルゼンチンについてあまり言われないのか。そこらのことを私は非常にふしぎに思っているわけでございますが、その点のことをちょっと御説明いただきたい。
  103. 大川忠男

    大川参考人 ちょっと話が横にそれるかもわかりませんけれども家畜衛生というのは予防衛生が原則だと思うわけです。ですから、その予防衛生の原則に立って考えれば、あぶないものは入れてもらいたくない。と申しますのは、一たび起こったら、ほかの商品と違うのです、やり直しということは非常に経費と、また日子を要するということがあるわけです。私どもはそういう判断をする上においては専門家ではございませんので、獣医の最高の先生方が集まっていろいろ討議された御意見なり、検討の結果に基づいて判断をしてまいっておるわけですが、アルゼンチンの肉につきましては、いわゆる衛生協定というようなものが両国の獣医専門家の間でつくられておって、その協定を履行した上でなおかつ煮沸して持ってくればだいじょうぶだという、その説明によりまして、われわれはやはりそうした専門家の良心なり専門家の決定したことに基づいて判断してまいっておるわけでございます。  それから利幅の点の御質問がございましたけれども、これはそのときどきの相場によって薄いときも高いときもございますけれども一般に肉牛の経営というものは零細規模で、一頭とか二頭というような現状にあるものですから、全体的に見れば、もうけというものは非常に薄いように感じられるわけなんです。ですから、こういうものを多頭飼養するという方向に持っていきまして、生産構造的なことなりあるいはその販売の方法なりを考えていきますれば、そういう点も逐次改善されていくのではなかろうかというふうに考えております。
  104. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、大川さんのお立場では、これを入れるということになれば、それはもう絶対に反対するというようなことではないのじゃないかというような感じがいたします。国内肉牛の利幅の問題というのも、やはり関連はございますけれども、必ずしも中国の肉のせいばかりではない。それからもう一つ病気問題も、専門の人たち一つの条件をつけて、これだからと言えばそれでもっていいのだ、そういうことになりますと、必ずしも絶対に反対ということではないようですけれれども、その点はそういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  105. 大川忠男

    大川参考人 先ほど私も冒頭の陳述で述べましたように、現在の食肉需給事情から申しますと、どこの国についても同じなんですが、ある程度の輸入ということも、量的にはやむを得ざる状態にあるのではなかろうかという感じではあります。しかし、伝染病ということになりますと、その伝染病が普通の完全なる――どういいますか、防疫体制のもとで防遇できるとかいう一般的な伝染病とは違いまして、口蹄疫は疫学的にも非常に違った特性を持っているやに聞いております。それで、先ほどもいろいろ陳述のときに述べましたように、日本の獣医の最高の方々が二十一人も集まられまして、そして田中報告を含めて、中国衛生状態を討議、懇談された結論が、日本畜産に対しまして安全性が確保されているとはいいがたいというような結論になっております。われわれといたしましては、やはりそういう専門家意見なり良心なりを尊重してものを判断しなければならないのじゃないかというふうに私は考えております。
  106. 有島重武

    ○有島委員 先ほど、疑わしきは入れずという原則が大切なんだとおっしゃいましたですね。疑わしいことからいいますと、アルゼンチンのほうもかなり疑わしいわけなんですね。それでほかの、いま入江先生のほうからのお話では、あるいは、私は直接田中先生から伺ったものですが、これは疑えば切りがないのだ、科学というのは、絶対にどうだと開き直られれば、絶対にだいじょうぶですということは答えられないのだ。それは科学の立場でしょう。実際に入れていくということになれば、まあ疑わしきは入れずということになったら、何もかも全部できなくなってしまうのじゃないか。ところが実際には、すでに肉の輸入ということが始まっているわけですね。それをなお、いま医学上のことだけをたてにとって言われることになりますと、これはやはり何かはかから力が加わっているのじゃないかという感じが出てしまうわけなんです。それで二つの理由をおっしゃいまして、一つは農政上の理由でございました。一つは医学上の理由でございますけれども、いずれも必ずしもこれは中国食肉輸入ということと全部が全部クロスしている問題じゃないように私どもは感じます。きょうの私どもの範囲でも大体感じるわけなんです。ちょっと差し出がましいようなお話になりますけれども大川さんのお立場としては、今後の日本の農政を盛んにするというそっちのほうに一番重点を置いて考えていただいたほうがいいんじゃないか。もしそれでもって中共との貿易が始まったときに、私も種牛のことなんかも前に聞いておりましたけれども、そういったようなプラス面というものはかなりたくさん付加的に出てくるのじゃないか。日本の農政を守っていくという上においても、むしろ積極的な面も出てくるのじゃないか。世界の情勢というものは、これは日本が孤立するよりも、だんだんオープンの方向になっていくのだと思います。その中でもって日本の農政がますます繁栄をしていく方向に、そういうふうに考えていくのが基盤にあっていただきたい。そんなふうな、これは私の感想でございます。  以上で終わります。
  107. 帆足計

    帆足委員長 これにて参考人に対する委員各位からそれぞれの質疑は終了いたしました。  本日は貴重な御意見をいただきまして、本問題の今後の調査のためきわめて重要な参考になりました。  ここに委員会を代表いたしまして、委員長より厚くお礼を申し上げます。(拍手)     ―――――――――――――
  108. 帆足計

    帆足委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕   〔委員長退席、武部委員長代理着席〕
  109. 武部文

    ○武部委員長代理 速記を始めて。  引き続き、物価問題等に関する件について質疑を行ないます。青木正久君。
  110. 青木正久

    ○青木委員 私は、たばこの問題につきまして、専売公社当局に若干お伺いしたいと思います。  消費者保護基本法ができまして、消費者を保護するという全国的なムードが高まっているわけでありますけれども政府関係の機関が直接国民に物を売っているというものの一番代表的なものはたばこではないか。そういう意味におきまして、従来以上にたばこに関する品質はもちろんでございますけれども、その表示とかあるいはデザインというものに細心の注意が必要でありますし、またある意味では一般商品の見本になるような心がまえが必要ではないか、こう考えるわけであります。その点で、たいへんこまかいことのようでございますけれども、私が最近若干気になることがございますので、それをお伺いしたいと思います。  それは、最近出ましたこのセブンスターでございます。これは、表示を見ますと、英語ではセブンスターズと複数になっているが、日本語ではセブンスターとなっています。一体どっちが正しいのか。当然お気づきになっていると思うのですけれども、これにきめるに至った経緯、論議があったのかなかったのか、その辺をまずお聞かせをいただきたいと思います。
  111. 斎藤欣一

    ○斎藤説明員 お答え申し上げます。  セブンスターズが、日本語ではセブンスターになっておる、それから英語のデザインの場合セブンスターズとなっております。先生いま御指摘になりましたとおりでございまして、私どもも発売いたしますときに十分に気がついておったことでございます。実はそういった議論は前にもございまして、御承知のとおりスリーエーというたばこがございます。これはデザインをごらんになりますとAの字が三つ並んでおります。これはスリーエーじゃなくてスリーエースじゃないか、あるいは、エースということばがありますが、そのエースというものをAという字で表現したのだから、スリーエーシスじゃないかというような御質問がございました。  商品の名前、これはいろいろ考え方があろうかと思いますが、商品の名前というものは、できるだけ消費者の方に共感を持っていただく親しみやすい、あるいは発音もしやすいとか、いろいろなことを考えてきめるわけでございますけれども、名前でございますので、必ずしも文法的にどうこうというふうなことにはこだわらなくてもいいんじゃないだろうかというような観点もございます。セブンスターの場合は、セブンスターズにするかセブンスターにしようかといろいろ議論いたしましたが、セブンスターズとSをつけました場合に、日本の消費者の方から見て何かよけいなような感じがするんじゃないか、重苦しい感じがするんじゃないか。ですから、名前ですからセブンスターということでごかんべんをいただきまして、また、正式の名前といたしましてはセブンスターということで登録といいますか、官報に掲載してございます。ただデザインとして横文字を使っておりますので、デザインとして使います場合には文法に従ってSをつけておいたほうがいいのではないか。と申しますのは、この場合、まだ発売いたしましてから間もございませんので輸出した経験はございませんが、将来輸出などというふうなことをいたします場合に、外国のマーケットに出てまいります。そのときに文法的に間違いのないようなデザインになっておったほうがいいんじゃないかというふうに考えまして、デザインのほうはSがついております。そういったようないきさつでこういうことになっておりますが、先生おっしゃいましたように、決して気がつかないで、うっかりしてやっているということではございません。
  112. 青木正久

    ○青木委員 スリーエーのことは私存じておりますけれども、あのときといまとでは、消費者に対する時代の流れが変わってきているわけであります。たとえば消費者保護基本法を読みますと、第四条に適正な表示の実施ということが書いてある。あるいは第十条には虚偽表示の規制が書いてある。虚偽とは申しませんけれども、少なくとも適正な表示方法とこれは違うのではないか。適正な表示が何かということになりますと、スリーエーのときとは違った感覚を持たなくちゃいけない、そう思うわけであります。  それから、その前に出ましたルナですね。ルナという発音が日本人でできる方は少ないと思うのです。しの発音は日本の英語教育上ガンになっている。そういうようなしをかしら文字に使ったようなそういう名前をつけるという感覚は――具体的に申しますと、私は埼玉県でありますけれども、いなかへ行きまして、あまりルナはありませんが、ルナを下さいと言うと、おばあさんが、たばこ屋さんが必ず聞き返します。聞き取りにくいし、発音しにくい。  それで、このセブンスターとルナ、二つをとりましても――セブンスターにしても、日本の英語教育では、三人称単数現在にSをつけるのは、子供がわりとつけられますけれども、普通の複数の場合、英語を読ましてもSを抜かすというのが英語教育の一つの大きな欠陥になっておるのです。それを助長するがごときことが政府機関で出ておるということ、あるいは一番むずかしいしの発音を一番最初に持ってくるような、そういう名前のつけ方ということです。さらに幾らでもございます。ここにたばこを持ってまいりました。ハイライトは完全に俗字です。俗字が書いてある。  そういうことにつきまして、私は国粋主義者ではございませんけれども、英語を使うなら英語らしく、もっとわかりいいというか、親しみやすい英語を使ったほうがいいのではないか。このルナという発音が日本人でできる人はほんとうに少ないと思います。そういう点で、たばこの名前をつける方法、どういう機関でやるか、どういう人が集まってやるか、選定の基準、そういうことをお示し願いたいと思います。
  113. 斎藤欣一

    ○斎藤説明員 具体的にいろいろな御指摘をいただきましてまことにありがとうございます。  確かにしの発音は非常にむずかしゅうございまして、私どもも完全にできるわけではありません。ハイライトもしが入っておりまして、昔からしの入ったものはほかにもあるかと思いますけれども、LとRとを日本人の場合はごっちゃにして使っておるということで、まあ私どもとしてはそういうことをそう気にして考えておったわけではございませんけれども、おっしゃいましたことから考えますと、これから先のことを少なくともいろいろ考えてやらなくちゃならぬというふうに感じたわけでございます。  そこで、名前のつけ方をどういうふうにやっておるかというお尋ねでございますが、商品の名前というのは、商品の符号ということでなくて、やはり商品全体のイメージをつくるたいへん大切な要素であるということで、民間のいろいろな商品の場合も非常に苦労しておいでになるように聞いております。私どもも、商品を出します場合に、どういう名前をつけたらその商品にぴったりするかということを、もう少し砕いて申しますと、どういう趣旨でこの商品を出すか、どういう消費者を対象にしておるのか、あるいは都会の方々を対象にしたのかいなかの方々を対象にしたのか、あるいは中身はどんなものであるか、そういうようなものをできるだけうまく表現するように名前というものも考えていかなければならないという、そういった原則に従って名前をつけるわけでございます。  具体的な手続といたしましては、部内でいろいろ議論をいたします。いろいろなところでチェックして、いろいろな会議でのチェックがあるわけでございますが、形式的には、最終的には総裁がきめるということになっております。それではどういう手続でもってそんな名前を選んでおるかという問題がございます。おそらく商品と名称、この商品の名前にもいろいろな議論があり、背景というものがあってしかるべきではないかというふうに思っておりまして、実はそういうものも持ちたいと思っておりますが、現在のところまだそういった大げさなものはできておりません。したがいまして、現在まではいろいろなケースがございますが、次のような方法で名前を選んでおります。  ある場合には、たとえば富士というたばこ、御存じだと思いますが、昭和二十八年に出た、この富士という名前をきめますときには、広告をいたしまして、そして一般の国民から名前の募集をいたしました。これは一万五千件くらい集まったというふうに聞いております。その中で一番多かった名前が富士でございます。それを選ばしていただいたということでございます。その後そういった一般公募というものはやっておりません。と申しますのも、かなり手続的にやっかいなことがございますし、それから名称の問題は、実はいろいろ登録の関係問題がございまして、私たちがいいと思った名前でも、すでに登録されておって使えないといったようなことがございます。応募者の方がそういったことを御存じなくて、せっかく応募されたのにそういう件でひっかかって当選しないといったような、非常に御迷惑がかかるというふうなこともございますし、そういったことで、自来公募というものはいたしておりませんで、主として部内でもってきめております。  ただ、部内できめると申しましてもいろいろやり方がございます。一つの方法といたしましては、実は私たち名前のストックというものを、絶えずいろいろなものを調べまして持っております。それを特許庁にお願いして登録しております。これはたいへんな数になっておりますが、その中から、出します銘柄に合ったような名前を幾つか引っぱり出しまして、それをいろんな点でもってチェックをしてポイントをきめる。たとえば、この名称は今度の商品にぴたっとしているかどうか、あるいは発音がしやすいかどうか、覚えやすいかどうか、音感としてどうだろうか、それからさっき申し上げましたようにお買いになる消費者の層というものに対して、はたして親近感のあるものだろうか、そんなようなことをいろいろチェックいたします。そして点数の高いものを採用するというようなやり方をしておるという場合もございます。  それから、場合によりましては、そういった中で幾つか名前を選びまして、それを消費者のある程度の数の方にアンケートの形でお送りいたします。そして御回答をいただきまして、そうして得票数の高いものの中から選ばせていただくというようなやり方もやっておるわけでございます。  具体的には、ただいま出ております名前の中で、たとえば去年出ましたエコーというたばこがございます。これなどはいま申し上げましたあとの例によって選んだものでございます。それから最近出ましたものの中で、たとえば泉でございますとか、わかばでございますとか、そういうようなものは、私たちの名前のストックの中から私たちがいろんなチェックリストをもってチェックいたしまして、それの点数の高いものを選んだというふうなことになっております。どのやり方が一番いいかというようなことにつきましては、さっき申し上げましたように、まだちゃんとした体系らしきものがきまっておりませんものですから、従来までのところはケース・バイ・ケースと申しますか、そういった銘柄が出ます時点において適当な方法でもってやっていくということでございます。
  114. 青木正久

    ○青木委員 たくさんの方が御経験あると思いますが、私もたくさん例を知っております。ポーランドにおきまして、自動車を運転する方が日本のたばこをくれというので、日本のピースを出した。そうしたらどうしても日本のたばこを認定しないわけです。これは日本のたばこじゃない、みんな英語じゃないかと言う、こういう経験があります。専売公社は戦前からそういう伝統がありまして、必ずしも拝外主義ではないと思いますし、また日本名のたばこもたくさんあります。しかし、やはりチョコレートとかそういうお菓子と違いまして、もう少し考え直したほうがいいような点もあるのではないか、こう思うわけであります。  それで、日本の名前と英語の名前とありますけれども、よく分けてみますと、英語のもののほうが概して高級なわけですね。日本語のほうが安い。別の言い方をしますと、英語のやつは都会向き、日本語のはいなか向きという感じがするのですが、そういう原則があるのですか。
  115. 斎藤欣一

    ○斎藤説明員 名前につきましては、確かに洋名のもの、和名のもの、両方ございます。実はいまちょっと調べてみましたら、いま専売公社で売っておりますたばこの普通品、と申しますのは両切りと刻みと口付き、これの名前が数にしまして二十ございますが、洋名が十、和名が十、ちょうど半々になっております。おっしゃいましたように、比較的高いものと申しますか、わりに売れ行きの多いものが洋名になっているような感じがいたします。一番高いものは、こはく、やまと、富士といったようなものはたまたま和名になっておりますが、これはブランドとしてわりあいに小さなブランドでございます。それから下級品のブランドとしましては、しんせい、いこい、わかばといったようなものはたまたま和名になっております。  別に原則はございませんが、さっき申し上げましたように、一体こういう銘柄を出した場合に、どういう方が吸ってくださるのだろうか、どういう地域に売れるのだろうかというふうなことを考えまして、それに合うような名前をつけたらいいじゃないか。たまたまお年寄りの方、これはわりあいに安いたばこをお吸いになる。それから都会といなかとを比べますと、いなかのほうが比較的安いたばこをお吸いになる。そんなようなことから、結果的にいなかのほうに売られているたばこのほうは和名のものが多い。都会地で売られているたばこは洋名のものが比較的多いといりようなかっこうになっておりますが、必ずしもおっしゃいましたようなぴしっとした原則があるというわけではございません。
  116. 青木正久

    ○青木委員 ちょっとお伺いしたいのですけれども外国の例で、自分の国以外のことばのたばこが過半数に近いという国の例はございますか。民間のところが多いと思いますけれども……。
  117. 斎藤欣一

    ○斎藤説明員 外国の例はむしろ先生のほうがよく御存じかと思いますが、おっしゃいましたように、外国の場合でもほかの国の名称を使っている場合が必ずしもないではございません。ないではございませんが、日本の場合のように、過半数がそうだというふうなものはないようでございます。たとえば、これはよくわかりませんが、香港なんか、どこの国籍になるか、正式には国としてはイギリスなのかもしれませんが、あそこに住んでおります人は大部分シナ人であります。香港で、地場でつくっておりますたばこの中にはシナ語で書いたものもございますけれども、過半数かどうかわかりませんが、かなり横文字のものも多いように思います。しかしあそこは非常に特殊なマーケットでございますので、必ずしも例にはならないかと思いますが、日本のように、こういうマーケットでもって外国の名前が過半数あるというふうなところは私はないような気がいたします。
  118. 青木正久

    ○青木委員 私は、外国語でもけっこうと思うわけですけれども、やはり発音しにくいものとか、あるいは大きくいえば英語教育に害のあるような、そういうつけ方は考えるべきじゃないかと思う。何も富士山とか桜というのをつけろとは申しませんけれども、そういう点の配慮がやはり必要じゃないか。現にたとえば国鉄の新幹線でもひかりあるいはこだまというのをつけております。国鉄は昔から日本の名前ばかりです。たばこは嗜好品でちょっと違いますが、大衆の一番人気投票の高いやつをつけることがいいか悪いか、これは別問題で、反対意見もたくさんあると思いますけれども、もう少しこまかい点に考慮をしたほうがいいのじゃないか、こう感ずるわけであります。  そこで次に、古いたばこと新しいたばこ――いなかなんかに行くと売れないたばこがいろいろありますが、たばこがいつできたかという表示がどこにあるか。それから、たばこのわきに数字が書いてあります。この数字は一体何を意味しているのですか。
  119. 斎藤欣一

    ○斎藤説明員 たばこがいつできたかということは、実はパッケージにはございません。たとえば普通のたばこでございますと、二十個ボール箱に入っております。外国でいうとカートンになると思いますが、そこにはいつできたかということが書いてございます。たばこ屋さんではそういう形で、公社からたばこ屋に卸が行なわれるわけですが、これは新しいもの、古いものというふうなことをたばこ屋さんのほうで注意していただいて、そうして古くならないように、古いものは私たちのほうで引き取ることにいたしまして、そういったやり方でやっております。  それから、たばこの個々の、一本一本の横に記号が入っております。これは実は昨年でございましたか、始めたわけでございますが、工場の記号、それから工場の機械の番号です。非常にたくさんなたばこの中にはいろいろ不良品も出るわけです。不良品が出ました場合に、できるだけ早くチェックをして、そうして消費者の方に御迷惑をかけないように、そういうことをやっております。
  120. 青木正久

    ○青木委員 そうすると、たいていの方はバラでたばこを買うわけですから、そのバラで買ったのでは新しいか古いかということはわからないわけですか。
  121. 斎藤欣一

    ○斎藤説明員 さようでございます。公社といたしましては、古いものが、消費者の手に渡って御迷惑をかけるということがあってはいけないということで、こういう点には常々注意しておりますし、それから消費者の方が、たまたま古くてこういうものはとても吸うにたえないのじゃないかということで持ってこられると、それはどこのたばこ屋でもお取りかえするようにという指導をしております。
  122. 青木正久

    ○青木委員 それから次にデザインの問題ですけれども、これはどういうふうな組織で、どういうふうな選定でやっているか。
  123. 斎藤欣一

    ○斎藤説明員 デザインにつきましても、名前と同じように非常にむずかしい問題でございます。専売公社の中にデザイナーといいますか、そういった図案をかく職員がおるわけでございますが、新しい銘柄を出しますときには、普通は外部のある程度の人数のデザイナーの方にお願いをしております。それで、実はこういう商品を出したいんだ、これは性質はこういうものだ、そして訴えかける消費者というものはこういうものだ、値段はこの程度のものだというふうなことを説明いたしまして、それで名前はこうしたいんだ、それに合ったような図案をつくってもらいたいということで、数人の方にお願いしてかいていただく。で、当然非常にたくさんのサンプルが出てまいります。それを今度は専門家の方に一応審査をしてもらって、これも専門家の数人の方に審査をしていただきまして、そしてそこでもって選ばれてまいりましたものの中から今度は部内でいろいろ議論をいたしまして、さっき申し上げましたように最終的には総裁がきめるというふうなやり方をいたしております。
  124. 青木正久

    ○青木委員 概していいデザインが多いと思うのですけれども、私この前上野で買いましたのですが、ピースにこういうデザインが入っておる。私はデザインのことはわかりませんけれども、どう見てもあまり高尚じゃないと思う。ごちゃごちゃおもちゃ箱をひっくり返したようなもので。こういう広告を入れるときの基準はどうなんですか、デザインとの関係は。
  125. 斎藤欣一

    ○斎藤説明員 それは広告のではないだろうと思うのです。実は最近こういうことを三年ぐらい前から始めたのでございますが、観光地と申しますか、観光客がたくさん集まるようなところには、特別のその地域の雰囲気を盛ったようなデザインのたばこをつくったらどうかということで二、三年前から始めておるわけでございます。したがいまして、いろいろな観光地においでになりますと、そこの何か特徴を盛ったようなデザインのたばこが売られているのをお気づきになることがあると思います。それもおそらく観光のたばこであると思いますが、そういった観光たばこの場合、これは数量も限定されておりますし、それから発売期間も比較的短いというふうなこともありまして、本格的な原側的なデザインよりは若干簡便な方法でもってつくっております。場合によりましては私たちの部内の図案の関係の職員がかくこともございますし、あるいは外部の方にお願いするというふうなこともございますが、手続はある程度簡便な方法でもって行なっておるということでございます。
  126. 青木正久

    ○青木委員 これを見ますと、やっぱり「観光記念」と書いてあります。「東京」と書いてありますけれども、これはスポンサーはどこなんですか。
  127. 斎藤欣一

    ○斎藤説明員 それはスポンサーはございません。これは専売公社の発意で出すのでありまして、だれからたのまれて出すというわけではございません。ただ事実上、いろいろな観光地の地方団体でございますとかそういったところから、ぜひ私のところの観光たばこを出してほしいという、そういう御依頼があることはございます。しかし形式的にスポンサーというものはございません。別に、たとえば現在では札幌冬季オリンピックのためのスポンサーづきの広告の入ったハイライトというものもあります。この前まで万国博のものもやっておりましたが、これにはちゃんとしたスポンサーがございます。たとえばサントリーのウイスキーでございますとか、そういったものはちゃんとしたスポンサーがあるわけでございまして、そのおっしゃいました観光たばこはスポンサーはございません。
  128. 青木正久

    ○青木委員 それでは、銘柄による最近のおもなたばこの売れ行き状況、わかったら数えてもらいたい。
  129. 斎藤欣一

    ○斎藤説明員 ちょうど四十三年度が終わりまして、四十三年度の結果が出ております。御承知のとおり昨年の五月に値上げをいたしましたので、その結果かなりいろいろな動きがあったわけでございますが、銘柄別に申し上げますと、一番よく売れておりますのがハイライトでございます。ハイライトが全体のたばこのうち四七・三%、半分近くがハイライトということになっております。その次に大きい銘柄がわかばでございます。これが一一・七%、一割強、続いて三番目に大きいのがしんせいで一〇・二%、ですからちょうど一割ちょっと、あとはずっと小さくなりまして、その次がフィルターのついたピース、それから短いホープというような順序になります。
  130. 青木正久

    ○青木委員 時間になりましたのでやめにしますけれども最後に、新しいたばこを出す場合に専売公社は何か秘密にしているような気配があるのですけれども、この次どういうたばこを出す予定であるか、また名前はどういうものを選ぶつもりであるか、そういうものをわかる限りお示し願いたいと思います。
  131. 斎藤欣一

    ○斎藤説明員 実は本年度の予算におきましても新製品を出すということで予算の要求をいたしております。ただその中身につきましては現在まだ具体的にきまっておりません。いま申し上げましたようにハイライトが全体の半分くらいになっております。ですから、このハイライトがあまり大きくなり過ぎますとなかなかいろいろな問題がございますし、そういったところから何かそれを補うようなものをつくっていったらいいのじゃないかというふうなことも考えております。   〔武部委員長代理退席、阿部(助)委員長代理着席〕 それから一番上のたばこ、高いたばこのやまととかこはくというのがございますが、これも値上げの結果高くなりまして、反響もありまして売れ行きが鈍っております。したがいまして、こういったところはもう少し考えて新しいものを出したらどうだろうというような感じはいたしておりますが、まだどういう値段のものをどこにいつ出すかというふうなところまでは考えておりません。
  132. 青木正久

    ○青木委員 もう一つお伺いします。おもな銘柄の原価と値幅ですね、利益、それをわかったら教えてもらいたい。
  133. 斎藤欣一

    ○斎藤説明員 実はここにそういった資料を持ってきておりませんが、大ざっぱに申し上げますと、これは銘柄によって若干の違いはございますございますが、全体といたしましては、たとえば百円の定価でございますと、百円の定価のうち利益と申しますか、これは地方に納める消費税を含めて利益と見ておるわけでありますが、というものが六割弱であるというふうにお考えになっていただければ大体よろしいのじゃないかと思います。ものによって非常に低いものもあれば、若干それより高い――べらぼうに高いものはございませんが、若干それより高いものもございます。低いものと申しますのは、たとえば昔からございます刻みとか朝日とかいうようなもの、これは値上げしておりませんし、非常に手もかかるわけでございます。そういうわけで利益率はかなり低くなっておるはずでございますが、全体としては六割弱程度は利益と申しますか、国と地方に納める、いってみれば専売益金と申しますか、そういうものがその程度になっております。
  134. 青木正久

    ○青木委員 今度新しいたばこを出す場合は、いままでのたばこはみんなアメリカ式ですが、ヨーロッパのアブダうみたいな、ああいう式も考えていただくことを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  135. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員長代理 武部文君。
  136. 武部文

    ○武部委員 本会議との関係で時間が非常に少なくなりましたので、できるだけ簡単に質問いたしますから、そういう点で御答弁をいただきたいと思います。  最初に公正取引委員長にお伺いをいたしますが、前回、前々回、委員長は欠席でございました。私は薬の問題で、リベート、現品添付、マージンが非常に膨大であって、特にある商品においては八〇%もの高い率になっておる、こういう事実を取引部長からも説明がございました。これは当然二十四条の二ただし書きの消費者に不当にというあの項に該当するのではないか、こういう点を問いただしましたところ、取引部長は、自分としてはそう思う。これははっきり議事録に載っておるのでありまして、個人としてはそう思うがということでございまして、いずれにしても、二十四条の二ただし書きにどの程度のものが該当するか、この線の引き方については委員会の決定に待つよりほかに方法がない、こういう答弁が事務局長からもございました。したがいまして、今日あれだけ問題になっておるリベート、マージン、現品添付のパーセンテージから推定をいたしまして、一体公正取引委員会はどの程度に線を引いて、これ以上ならば二十四条の二ただし書きに該当する、これ以下ならば該当しない、そういうことを委員会でおきめになったならばそれを御回答いただきたい。
  137. 山田精一

    ○山田政府委員 確かにごく一部の商品につきまして、またある時期において、ただいま御指摘のございましたような事例があったように承知をいたしておるのでございますが、これにつきましてはほかの同種の商品、また普通の扱いにおいてそれが行なわれておるのかあるいは一時的に行なわれておるのか、それらの点について十分統一的に調査をいたします必要がございますので、現在担当の課において調査を進めておる次第でございます。その上で判断をいたしたいと存じておりますので、現在の段階において何%がどうということはまだ出しておらないわけでございます。
  138. 武部文

    ○武部委員 この再販の問題が爼上にのばり、こうしたことはすでに国民の大多数が知っておる。たいへんなマージンやリベート、現品添付が裏で行なわれておる、このことを国民は知っておる。消費者は知っておる。私どもはこれをぜひ明確に知りたいと思って、皆さんのところに入手した資料でお尋ねしたら、そのとおり。いま委員長はごくわずかとおっしゃるけれども、きょうはここに持ってきておりませんが、ある薬剤師の協会の人たち報告書によるとたいへんなことになっておるのです。そのことが今日まで公正取引委員会において、二十四条の二ただし書きについて何らの検討も行なわれていない、これは私は非常に疑問に思うのです。少なくともあれだけ再販についての洗い直しとか、どうとかこうとかおっしゃっておる公正取引委員会が、こうした問題について何ら今日まで検討をされていない、これについては非常に私は不満です。しからば今日まで第二十四条の二ただし書きについて、公正取引委員会としてはどういうような御討議をなさったのか、ひとつそれをお伺いしたい。
  139. 山田精一

    ○山田政府委員 二十四条の二の各条件につきまして検討をいたしておるわけでございますが、ただいまも申し上げましたごとく、個々の商品につきましては、これは十分実証的な資料を整えまして判断をいたしたい、かように考えておるわけでございます。時間がはなはだかかっておりますのは遺憾でございますが、なるべくすみやかに、また十分深く調査をいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  140. 武部文

    ○武部委員 ただいまの御回答には私はちょっと不満でありますが、きょうは先ほど申し上げるように時間が非常に短いので、このことについては別な機会に、具体的に現品添付、リベート、マージンその他についてパーセンテージをあげて皆さんの御見解を承りたいと思います。  取引部長がおいでになっておりますが、前回私が申し上げた神戸のタキヤですね、あれの商品一つについてはあなたはお認めになりました。そのあとはどうなっておりますか、それをひとつ伺いたい。
  141. 吉田文剛

    ○吉田説明員 この前はタキヤの一番上に載っかっております商品について申し上げたわけでございますが、あと四品目ほどあがっておりますので、それについていまから申し上げます。ただ、リベートにつきましては、これは業者の秘密というふうに一応考えられますので、その品名については具体的に申し上げませんで、A、B、Cで申し上げます。  この前のをAといたしますと、B商品でございますが、これは小売り格は二百五十円、原価――これはリベート等で割り増し後の純粋の原価でございますが、それが百十六円ということになっておりますが、これにつきましても事実このとおりでございます。それで、内訳を申し上げますと、マージンが四〇%、リベートが製販価格の一五%、小売り価格に直しますと九%、それからあと現品添付が約二・六%、こういうふうになっております。しかし、これはある時期において最高のところをとった数字でございます。それからその下のC商品につきましては、小売り価格が二百五十円、原価百十五円というチラシのあれでございますが、これにつきましてはマージンが四〇%、リベートが小売り価格の九%、現品添付が約三%ということでございます。それからその下のD商品が、小売り価格三百円、原価百三十八円、これにつきましてはマージン四〇%、リベートが小売り価格の九%、現品添付が約五%ということでございます。それから一番下のE商品、これは小売り価格百八十円、原価七十七円ということでございますが、マージンが四四%、リベートが小売り価格の八・三%、現品添付約四・九%、約五%ということでございます。ですから、事実であるということであります。
  142. 武部文

    ○武部委員 事実というふうにお認めになったようでございます。これをパーセンテージに直しますとたいへんなことになるのですね。これは原価が四割ぐらいですね。六割ぐらいもうけておることになるわけです。それで、先ほどの委員長に対する私の質問にもこれは関連しておるわけでありますが、そういう答弁でございますから、これはあらためて二十四条の二については論議をしてみたいと思います。――関連がございますので、もうちょっとお残りをいただきたいのです。  畜産局長にお伺いをいたしたいのでありますが、きょうは時間の関係で、肉のことについては、豚肉について上限下限の価格が変動いたしました。これが一体どうなるか、ということは、消費者にとって上限が二十円上がったということになればたいへん大きな問題ではないか。これは実際問題として、いまの価格は、この上限価格と実勢価格問題で私はいろいろ問題があろうと思うのでありますが、きょうはそのことはとりやめまして、牛乳についてお伺いをいたしたいのであります。  まず、農林省にお伺いをいたしたいのは、昨年の十一月突然起きました三円の値上がりが、今日全国的にどういう趨勢になっているか、それをちょっとお伺いをいたしたい。
  143. 太田康二

    ○太田政府委員 飲用牛乳の小売り価格の値上げの問題は、ただいま先生御指摘のとおり、昨年十月中旬以降東京都の一部の小売り店が一合当たり三円の幅で値上げが行なわれたのでございますが、その後値上げの影響は全国的に波及いたしておる状況であります。
  144. 武部文

    ○武部委員 そういたしますと、結果的にはもう半年ばかりのうちに全国的に三円――二円のところもありましょうが、三円程度上がったというふうになるわけですね。  そこで、先般農林大臣は、農水の委員会でございましたか、今後の牛乳問題については何か新しい方法を考えなければならぬというようなことをお述べになったようでございますが、私どもが当委員会でいろいろ問題にいたしました指導価格問題、この問題については、農林省としては直ちに指導価格制を再現する考えはないという答弁がなされて今日に至りましたが、一体新しい市乳価格の決定、この乳価の値上げの内容、こうしたことについて、新しい考えとは一体どういうことなのか、それをお伺いいたしたい。
  145. 太田康二

    ○太田政府委員 先般の衆議院の農林水産委員会におきまして大臣からそういった答弁があったのでありますが、実は毎年毎年飲用乳価の決定をめぐりまして、生産者、乳業メーカー、さらには小売り店まで含めましていろいろ問題があることは御承知のとおりでございます。そこでわれわれといたしましても、昭和四十二年に指導価格を撤廃したというような経緯もございますし、いままでの飲用乳価の決定のルールにつきましていわば一定の方式がないわけでございまして、そのつど対処してきたというようなこともございまして、そういったことでは現在消費者物価がいろいろ問題になっている時期でもございますので、何らかの形で飲用乳価の決定についてのルール化を検討しろという趣旨であろうかと思います。そこでわれわれといたしましても、そういった大臣のお考えもございますので、今後部内におきまして至急検討いたしましてまとめてまいりたいということで、現在まだ具体的にここで御説明申し上げる段階にはないわけでございます。
  146. 武部文

    ○武部委員 それでは現在の二十三円の市乳の内訳をちょっと反復してみますが、一合、百八十ccに直して、農民の手取りが九円五十五銭、メーカーが三円四十五銭、末端の小売り販売業者が十円、こういうことに大体理解してよろしゅうございますか。
  147. 太田康二

    ○太田政府委員 三円どおり値上げが行なわれたといたしますれば、いま先生が御指摘になったとおりになるわけでございますが、いままでわれわれが聞いている話では、東京を除きまして、あとの地域におきましては、メーカーと小売り業者との間の話し合いがつきまして、いまおっしゃいましたように卸価格の改定が一円十銭ということでございまして、生産者が六十銭、メーカーが五十銭ということでございまして、いまおっしゃいましたような数字になるわけでございます。
  148. 武部文

    ○武部委員 いまお話しになりましたのは、三円の値上げを、一円九十銭を販売業者が取って六十銭を農民が取って、五十銭をメーカーが取る。三円上がったものを、こういうやり方で地方では話し合いがついた、こういうことなのですか。
  149. 太田康二

    ○太田政府委員 私が申し上げたのはそういう趣旨でございますが、ちょっと答弁を訂正させていただきたいのでございますが、従来九円五十五銭が生産者の手取りでございましたものが十円五銭、メーカーの段階が十四円十銭、今回こういうことになるわけでございます。
  150. 武部文

    ○武部委員 そういたしますと、三円の値上がりというのは、農林省もあのときにちょっとおかしいとはおっしゃっておったけれども、現実にはだしぬけに、抜き打ちに、人件費高騰のおりから末端業者としては困るので三円値上げをしてくれ、こういうことでございましたね。それで三円上げたわけですね。それが半年たったいまごろになって、その中から五十銭がメーカーにいって、六十銭が生産者にいって、そして人件費高騰のおりから三円上げてくれといっておったのが、半年たった今日、今度は一円九十銭でよろしい、あとは還元して向こうへ出しましょう、こういう話し合いというものに農林省はタッチしたわけでございますか。
  151. 太田康二

    ○太田政府委員 われわれが直接タッチいたしたわけではございませんが、それぞれの乳業メーカー、それと小売り店の方と話し合いでそうきまったように承知いたしております。
  152. 武部文

    ○武部委員 そうすると、農林省としては、非常におかしなきめ方だとは思われませんか。少なくとも去年は、御承知のようにああいうかっこうできまりましたし、二円の値上げのときには、三者が協議をして農林省も大体それでよかろうということで値上げがきまったわけでありますね。今度は末端から逆に上げていった。そして、それを半年もたってから戻していった。これは非常に奇妙なことだと思われませんでしょうか。
  153. 太田康二

    ○太田政府委員 確かに今回の値上げは、小売りの主導型で行なわれた。従来は御指摘のとおり生産者段階の乳価が上がりまして、それから卸の価格の改定、それから小売りが変わるというような形態をとっていたわけですが、今回の場合には、小売り主導型で行なわれたということでございます。そこで、いままでの値上げの際にも、やはりある程度三者間の配分ということもございましたので、われわれといたしましては、少なくとも今後の値上げということがないようにということで、ある程度配分にもわれわれが中に入りまして、生産者とメーカーとの間の配分については、多少の介入もいたして指導をいたしたというようなことがあるわけでございますが、今回の値上げの形態が確かに変則的であったということは御指摘のとおりだと思います。
  154. 武部文

    ○武部委員 いま畜産局長の御説明によりますと、それでは結果的に二十三円の牛乳は、その内訳は、農民が一合で十円五銭、そうしてメーカーが四円十銭、末端の販売業者が八円八十五銭、こういう金額になりますね。間違いございませんか。
  155. 太田康二

    ○太田政府委員 私の理解では、生産者が十円五銭、それからメーカーの段階が十四円十銭でございますから、メーカーの手取りは四円五銭、末端が二十三円で実現をいたしておりますれば、小売りの手取りは八円九十銭、こういうことに相なるわけでございます。
  156. 武部文

    ○武部委員 十円五銭、四円五銭、八円九十銭ですか、そういうことになりますね。  そこで、これはなってしまったことをとやかく言ってもしかたがないのですが、東京ではこの三円の値上がりは、当然人件費高騰の小売業者が取るべきものであって、自分たちがやって上げたのだからこれは何も戻す必要はないということで、東京だけが反対しているのですが、ほかは大体全部了解したのですか。
  157. 太田康二

    ○太田政府委員 東京はいろいろ事情を申し述べております。と申しますのは、たとえば人件費が他の地域に比べて高いとか、あるいは配達店員の人件費が高いとか、末端の小売り段階が近畿に比べるとやや安いとかいうことを言って、まだ最終的にいまの卸価格の一円十銭の改定には応じていないというのが実態でございますが、全国的にほぼ妥結をいたしております問題でもございますので、東京の小売りの方々もいま、ものによっては一円十銭に応ずるというようなことも申しておりまして、近く妥結するようわれわれも指導してまいりたい、かように考えております。
  158. 武部文

    ○武部委員 こういうことがわかったら、私は消費者は納得しないと思うのです。こういう内輪のやり方がわかれば、一番下のほうを先に上げておいて、そしてあとになってから、全く理由のつかぬような理由でメーカーや生産者にそれが返っていくというようなやり方は、消費者は納得しないと思うのです。少なくともあのときは、三円の値上げは確たる理由があるのだ、これは当然末端の小売り業者が取るべきものだというふうにして上げたわけですね。みんな紙を一枚ずつ家庭にばらまかれて、人件費が上がって困りますので三円上げるのだ、こういうことで上げた。ところが、いつの間にやら今度は一円九十銭になってしまっている。あとの一円十銭がほかのところにいったということがわかれば、私は消費者は納得しないと思う。同時に、あのときに主婦連とかいろいろな団体が申し入れをされているのです。何かあのときに、配分をめぐっていろいろ取りざたされているが、納得できぬという文書が私どもの手元にきておりました。これは当然だと思います。そういう価格のきめ方について、農林省は今後一体これをどうしようというのか。こういうやり方がいいと思われるのか。農林大臣が乳価の決定について何か新しい方法を考えたいと言っておられたのは、こういうばかなことは今後許さぬ、今後そういうような一番下が先にきまって、あとになって、何カ月も先になってから、またもとに戻していくのだ、こういうことは許されない、そういう考え方で新しい乳価の決定の指導をおやりになる考えなのか、それをお伺いしたい。
  159. 太田康二

    ○太田政府委員 先ほどもお答え申し上げたわけでございますが、いま言ったような形で乳価が形成されるということは、必ずしも正常な姿ではないというふうにわれわれも感じております。毎年加工原料乳につきましては、政府が保証価格をきめておりますので、それとの関連で飲用乳価の問題が出るわけでございますが、これをめぐって末端の小売り価格まで含めていろいろ問題が起こっていることは御承知のとおりでございます。そこで、われわれといたしましては、何らかの形で飲用乳価の価格の形成のルールについて検討してまいったということでございまして、まだ具体的にこういったルールでやりますということを申し上げる段階でないのが遺憾でございますが、至急検討いたしまして、少なくとも明年度あたりから、そのルールに従ったところの価格の形成というものに持ってまいりたいということで目下検討いたしている段階でございます。
  160. 武部文

    ○武部委員 それでは、これは次回に譲りまして……。  近ごろ新聞の投書に、牛乳の質をめぐってだいぶ論争があるようです。近ごろの牛乳はまずいとか昔の牛乳はうまかったとか、あるいは内地のいろいろなところで飲む牛乳の質、味が違うとかいろいろなことが言われております。私もいろいろ調べてみましたが、牛乳の中で還元乳というような記事がしばしば載っております。この還元乳というのは、厚生省の省令をいろいろ見てもございません。したがいまして、いま還元乳と称されるのは、これは厚生省だと思いますが、この中にある加工乳、こういうものだというふうに理解をするかのか、それをちょっと伺いたい。
  161. 神林三男

    ○神林説明員 お答え申し上げます。  食品衛生法に基づきまして、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令というものがございまして、その第二条第二号において生乳、それから三号で牛乳、さらに四号、五号、六号、七号、八号へまいりまして、八号で「この省令において「加工乳」とは、生乳、牛乳若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものであって、牛乳に類以する外観を有し、かつ、直接飲用に供する目的で販売するものをいう。」というのがございまして、これが加工乳でございまして、還元乳と一般に称せらしておるものあるいは加工乳と称せられておるものは、私たちは、牛乳でなくて加工乳の範疇に加えて取り締まっております。成分規格も、これについては牛乳と同じような成分規格がきめられてございます。
  162. 武部文

    ○武部委員 農林省にお伺いいたしますが、現在、還元乳――厚生省は加工乳というのですが、もう一つ合成乳という名前もあるのです。そういうものをひっくるめて、いわゆる牛乳にあらざる、似たようなもの、これが非常にたくさん出回っておると思えるのですが、推定して大体どのくらいそれが、いま全国で販売されておる中にパーセンテージとして占めるのか、これをひとつお伺いしたい。
  163. 太田康二

    ○太田政府委員 われわれの統計調査部で実施しておりますところの調査によりまして、いま御指摘の還元乳がどのくらいの数量あるかということでございますが、飲用の牛乳生産量と生乳の飲用牛乳等向け処理量というのが統計で出ておるのでございます。その間のギャップがいわゆる還元乳であろうというふうに見ることができるわけでございますが、これを数字で申し上げますと、昭和四十二年が十八万トン、飲用牛乳全体の中の七・八%、四十三年は十五万五千トンで六・三%、こういう状況に相なっております。
  164. 武部文

    ○武部委員 いまお述べになった数字よりも私はまだたくさん出回っているような気がしてならぬのでございます。これはあなたのほうの統計的な数字ですから、私どもの統計的なものもきょうここへ持ってきておるのですが、これは時間の関係でちょっとできないのは非常に残念に思いますけれどもあともう十分ばかりしか時間がないのです。それで残ったのは次回に譲りおくといたしまして、還元乳を牛乳と称して売った場合は食品衛生法違反になるか、あるいはまたこれが不当表示防止法の違反になるか、この点はいかがでしょう。
  165. 神林三男

    ○神林説明員 ただいまの乳及び乳製品の成分規格等に関する省令によりまして、一応これは違反となります。
  166. 山田精一

    ○山田政府委員 還元乳を牛乳と称して売りますことについては、先般御承知のように牛乳に関する公正競争規約ができて、これが実行されておるわけでございます。この公正競争規約によります表示は、牛乳と加工乳とそれから乳飲料、この三つに分けることになっております。かりに還元乳を牛乳と表示いたしますと、この公正競争規約に違反することになるわけでございます。還元乳は加工乳と表示しなければならないわけであります。
  167. 武部文

    ○武部委員 そこでひとつ、きょうは皆さんにこういう事例があることをお知らせをし、御検討いただきたいのであります。  非常にたくさんの還元乳なりその他の牛乳まがいのものが市場に出回って、そして消費者が牛乳だと思って飲まされておる。ところが、これはある薬品会社が乳業メーカーに渡した処方せんの写しであります。これはこういうことになっておるのであります。名前は「合成脱脂乳処方例」、内容は、重曹(四百グラム)プラス・温湯(百四十リットル、七十度C)プラス・ミルクカゼイン(五・八キログラム)プラス・ラクトース(十・八キログラム)――これは乳糖であります――プラス・乳酸カルシウム(若干)プラス・重合燐酸(若干)――これが問題であります。これは安定剤であります――プラス・水四十リットル、これによって脱脂乳が一石できる。百八十七・五キログラムであります。カッコして(ミルクカゼイン、ラクトースの品質は厳選する)と書いてありますが、このできた脱脂乳を牛乳の中に一〇ないし三〇%添加、ミルクカゼインと牛乳との分離を防止するため、フィジン酸、これは金属キレート剤ですが、これを〇・〇二%以下添加する。こういう処方せんが薬品会社から乳業メーカーに渡っておるのでありまして、これは私たいへんなことだと思います。  そこで、乳糖の輸入量を通産省へ行って調べてみました。昭和四十年ころは二万トン、四十三年に至って乳糖が四万トンをこえております。こういうものが製薬会社を通じて乳業メーカーに、この処方せんとともに渡されている。これで乳業メーカーは脱脂乳をつくって、その脱脂乳を牛乳にまぜて、そうして市販をしておる。こういうことが歴然とうかがえるのであります。先ほど七・八%とか六・三%とかいうようなことをおっしゃっていましたが、私はまだまだいまの市販の牛乳の中にこうしたものがたくさんあるのではないか。  また、これを使ったらいかに安いかという例が出ているのであります。これを使った一番安い例、牛乳生産を、メーカーがこういうやり方をしたらどんなに安くでき上がるかということを申し上げます。先ほど申した乳糖とカゼインを使った脱粉、バターは植物性の油、ヤシ油、これは公取が摘発されたヤシ油です。これを原料にしてつくったその合成乳の原価は、百八十cc当たり三円八十銭です。三円八十銭でできるのです。そういうものをメーカーは乳糖やカゼインを使ってつくっておる。これは一番極端な例です。一番安い例ですね。ほかにまだたくさんの例がありまして、いずれにしても脱粉に乳糖とかカゼインとかを使う。バターは安定市場価格で買ったものを使う、こういうことをしても、やはり百八十ccで六円八銭という原価が出るのですよ。こういうふうに牛乳ならざる牛乳が現実に市場に出回る。それも非常に格安でできるからメーカーは大もうけなんですよ。こういう点について農林省はお知りなのか、厚生省も知っておられるのか、これをちょっとお伺いしたい。
  168. 太田康二

    ○太田政府委員 カゼインと乳糖の問題でございますが、御承知のとおり、カゼインにいたしましても乳糖にいたしましてもそれぞれ固有の用途があるわけでございまして、われわれの理解では、その輸入さしたものの大部分は本来の用途に使われておるだろうというふうに考えておるのでございます。たまたま昭和四十一、二年のころ乳製品が不足した時代に、輸入自由化品目でございましたところのカゼイン、乳糖の輸入がかなりふえていることは事実でございまして、その一部がいわゆる代用脱粉として使われておるということも承知をいたしております。しかし、これらのものは、乳製品の代用に使われているといたしましても、そのまた大部分は、どちらかといいますと低級なアイスクリームの原料に使われておるというふうなことでございまして、かりに還元乳に使われておるといたしましても、その数量はきわめて少量であるというふうに考えるのでございます。四十三年度に入りまして生乳の生産が非常に伸びたのでございますが、そういった状況におきましては、先ほども申し上げましたように還元乳自体の数量が統計上減っておるというようなこともございますし、なお乳糖につきましては、御承知のとおり昨年の八月から、従来のAAでありましたものを、それぞれ関係各省でその用途の確認をするということで、AIQに制度を切りかえるというようなこともございまして、これらによりましてなお実情の把握に今後つとめてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  169. 武部文

    ○武部委員 時間の関係で私はこれでやめますが、いま申し上げましたことは、私、資料に基づいて申し上げておるのです。ですから、乳糖が、あなたがおっしゃるような使い道のそういったものとは実はちょっと解せないのです。それで還元乳のパーセンテージも、少し私どもの見解と違います。  なおその他、スタンダライザーを使って牛乳の脂肪分を抜く、そういう問題は厚生省のことですが、またこれは、きょうは時間がなくて申しわけありませんが、次に譲りますので次の機会まで待っていただきたい。
  170. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員長代理 帆足計君。
  171. 帆足計

    帆足委員 交代させていただきまして質問を申し上げますが、ノリにつきまして、ノリの現在の生産輸入につきまして御質問申し上げますが、実はこれは一週間か十日前に御質問申し上げればよかったのですが、ほぼ今年度の輸入計画等はおきまりになったように伺っております。  御承知のごとく、ノリは日本国民にとりましていわば民族的食品と申しますか、朝食にはなくてはならぬものでありますし、またノリ巻き、またおにぎりを巻くもの等々にいたしまして、運動会、遠足等に必要でありますし、カルシウム分、ヨード分、ビタミン等を含むきわめて重要な栄養食品でございます。これは、近年国内生産は減少しておりまして、その上韓国におきましても不作が続きまして、値段も高くなっておると聞いておりますが、そのために、まず今後のノリの増産政策について一貫した政府の御指導を要望いたしたいのと、あわせて需要の増加その他によりまして、ノリは必需品でありますから、韓国ノリとの関係につきましても、計画的に国内産と一貫して調整をはかる。その配給機構等につきましても、輸入と国産との調整が円滑にまいるように配慮を求めたい次第でございます。したがいまして、本年における生産並びに輸入等の見通し並びに価格の見通し等について、ただいま農林省できまっております方針、またはきまりました諸点をお伺いいたしておきたいと思います。
  172. 安福数夫

    ○安福説明員 今年度の国内生産量の現段階におきます数字でございますけれども、御承知のとおり、昨年の十一月以降非常に高温に推移いたしました。それを降雨が十二月に入りましてかなりあった。そういう気候上の条件なり、海況の条件なり、非常にノリの生産に不適当な条件が重なりまして、今年度のノリの生産は昨年度を下回るという感じでございます。大体私ども生産量をつかんでおります数字は、三月末で三十億枚は下回ることはないだろうが、それを大幅に上回ることにはならない、そういうような見通しでございます。  それから、これを今年の消費に回します数量を考えますと、昨年度からの繰り越しの問題がございます。これがどのような数字であるかということも的確には把握はできませんけれども、一昨年なり昨年の消費事情、そういったものを考えますと、昨年度よりも今年度の消費にスリップする在庫量は若干上回っているだろう、こういう見通しでございます。国内生産はそういった数字でございます。  一方、韓国の生産事情でございますが、大体日本と同じような気象、海況の条件であります。韓国のノリは、今年度の生産はかなり大幅な増産計画の目標を持っておるようでございますけれども、現段階におきまして大体十億の大台を割るのではないか、こういうような見通しでございます。御承知のとおり、ノリは大体韓国と日本が食べている、こういうふうに考えていいと思います。国内におきましてもかなりの消費が伸びております。したがいまして、韓国のほうの考えでも、国内と輸出をどう区分けするか、こういう問題があります。率直に申しまして、韓国側が日本に輸出します韓国産のノリにつきまして、品質をできるだけグレードアップすると申しますか、品質をよくするというような努力を韓国政府といたしましては強くいたしております。したがいまして、日本に持ってまいります韓国ノリは、これまででもそうでございますけれども、非常にいいノリが参っております。そういった品質のいいノリというものは、韓国政府の非常に関心のあるところでございます。  そういった面で、韓国が不作の現在において、今年度日本に輸出できます韓国産ノリの限度というものはどのくらいあるだろうかということを、昨日のノリの会談でいろいろ話し合いをしたわけでございます。その結果、昨年の三月にきめました四億八千ないし五億が限度であるだろう、こういうような意見の一致を昨日おそく見たわけでございます。そういう趣旨で、本年度の韓国産のノリの輸入はあくまでも四億ないし五億をめどにして日本輸入するように努力しよう、こういう趣旨でございます。  先ほどいろいろ御指摘のございましたように、ノリはわが国の食生活において非常に庶民的なと申しますか、われわれの食生活に入り込んでいる食品でございます。したがいまして、農林省といたしましても、やはり基本的に安定した価格でノリの供給ができるように考えておるわけでございますけれども、現在のノリの生産にはいろいろな条件が重なりまして、非常に不安定に推移しているという問題がございます。このことは韓国側もある程度同じような条件にあるわけでございますが、何よりもこの生産を安定することが、現在のノリ価格を安定する一番基本的な問題であろうと思っております。現在水産庁といたしましては、沿岸漁業振興のために構造改善事業を進めております。その中で沿岸におきます養殖事業が非常に大きく伸びております。ことに、沿岸漁民の中で、そういった養殖業に従事します漁民の生活依存度、生業依存度が非常に高いノリの養殖が大きなウエートを占めております。したがいまして、沿岸漁業を振興してまいる場合、水産庁といたしまして、やはりそういった事態に目を据えて、その生産が安定する方向に極力努力してまいりたい。現在、生産条件について非常に不安定な面がございます。病害の問題もございますし、漁場の使用のしかた、その他いろいろ公害の問題もこれに重なってまいります。こういった中でわれわれできるだけ努力してまいっているわけでございまして、今後もそういった趣旨でノリの生産を伸ばしていく、それを通じまして商品価格を安定してまいりたい、こういう基本線を貫いてまいりたい、こういうように考えております。
  173. 帆足計

    帆足委員 二、三問だけ時間をとらずにお尋ねいたします。  第一には、ノリは非常に重要な民族的食品でありまして、ノリの品質が低下し味が非常に粗末になることは、私は日本国民の心の品質が低下するのと比例しているような気がいたすくらいであります。そのくらい重要な食品だと思っております。したがいまして、よい品質のノリをさらに増産いたします方法を農林当局はどういうふうにお考えですか。最近海上が汚染されまして、私どもも、従来ノリというものは比較的自然条件のみに依存すると思っておりましたが、養殖ノリの分野が非常に拡大してまいっておりますので、大いに期待している次第です。その見通しはいかがでございますか。
  174. 安福数夫

    ○安福説明員 先ほど申しましたように、品質の問題は量の問題と関連してまいると思います。したがいまして、量がたくさんでき、それが安定的に生産できるという条件をつくり出すことが必然的に質をよくする、こういうことに相なってくると思います。ことしのように非常に量が少ないということになりますと、商品の趨勢といたしまして、やはりグレードの悪いものも高くなる。それがいかにもいい品質であるというような錯覚を起こすわけでございます。したがいまして、やはり生産の基盤を安定した形でできるだけ合理的な生産を進める、こういうことだろうと思います。その場合にいろいろ病害の問題があるわけでございます。ティピカルな病害といたしましては赤腐れなり白腐れなり、こういうものがあるわけでございますけれども、現段階においては必ずしもこれが完全に、どういう原因でどうなった場合にどうなるということが研究的にもまだ確定的なことが言えない、こういう問題がございますので、そういった研究的な基礎的なことを強力に進めてまいっておる段階でございます。そういったものを含めましてノリの生産の安定を進めてまいりたいと思っております。  ただ、いま一般にいわれておりますことは、いま沿岸漁民がノリに非常に依存しておるということで、狭いところでより多くつくりたい、こういうことがどうしても漁民の心理として働くわけでございます。そういうことでいわゆる密植ということがかなり全国的に問題になっております。そういうことが病害にもつながる。これは現象的にも、あるいは学術的にもいえる問題でございまして、そういった培栽方法その他についても十分協力してまいりたいというふうに考えております。
  175. 帆足計

    帆足委員 もう一つお尋ねしたいのですが、ノリはこのような国民の嗜好品でございますから、品質がよいと同時に値段が安いことが大衆にとって非常に重要でございます。ノリが大衆の手の届かないような高いものになることは非常な苦痛でございまして、したがいまして、今年度輸入分を合わせて数量が足りないとするならば、むしろ追加して悪いノリを輸入するよりも、いまのうちに、たとえば検査を厳重にいたしまして、そして格下げ品でも合格して使えるようなものは、輸入関係のものは優良品と一緒に値段をおきめになっておいたほうが有利であり、また、一緒に輸入しておいたほうが有利なように、しろうと考えでは考えられますが、その点はことしの輸入をもって大体まかなえるような御様子ですか。多少再考慮の必要はないものでしょうか。
  176. 安福数夫

    ○安福説明員 御指摘の趣旨は、品質が落ちると申しますか、グレードが落ちるものも追加的に輸入のワクに加えるべきではないか、こういうことだと思いますけれども、先ほどもちょっと触れたかと思いますが、韓国サイドの問題もあるわけであります。韓国側の事情として、国内生産と輸出をどういうふうに割り振るかという問題があるわけであります。ことしのように韓国内部の生産が十億の大台を割るということになりますと、向こうとしましても、国内消費の問題と輸出をどう割り振るかという問題、その一つの限度もあろうかと思います。それと、先ほどもちょっと触れました、韓国としましても品質のいいものを日本に持ってまいりたい、年々品質は向上していると私は思っております。具体的には、等級で申しますと、二等級ぐらいまでが従来の輸入の限度であったわけです。一部三等級がございました。おそらく本年のような不作になりますと、必然的に三等に該当するものもふえてくるだろうと考えられます。それからさらにグレードを落とすということになりますと、韓国サイドの問題としましても、韓国ノリは悪いと見られるというような問題もありますし、これまで入ってなかったそういうものが国内に入ってまいりますと、それ自体が国内のノリの流通についての一つの撹乱要素にもなるわけでございます。そういうことでございますので、韓国内実情を私ども必ずしも十分つまびらかにしておりませんが、現段階におきましては、そういった特別な取り扱いはしないほうがお互いに両国にとっていいだろう、こういうふうにわれわれは考えております。
  177. 帆足計

    帆足委員 これは総じて食料品及び農産物に共通して言えることでございますけれども、一方においては国内の配給機構、もう一つは多少なりとも安く輸入できる品物、または輸入によって補わねばならぬ商品につきましては、常に一貫した総合計画が望ましいと思います。日本の国民の朝の食卓に、また弁当に、よい品質のノリを安く供給し得るように、配給機構をも含めて総合的な計画並びに能率化、合理化が必要だと思います。この問題につきましては私もさらにこの機会に研究いたしまして、次に御要望いたしたいと存じます。  きょうはもう本会議で時間がございませんから、これにて失礼いたします。
  178. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後二時七分散会