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1969-04-03 第61回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年四月三日(木曜日)     午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 帆足  計君    理事 小笠 公韶君 理事 木部 佳昭君    理事 竹内 黎一君 理事 武藤 嘉文君    理事 阿部 助哉君 理事 武部  文君    理事 和田 耕作君       青木 正久君    大野 市郎君       山下 元利君    唐橋  東君       戸叶 里子君    村山 喜一君       岡沢 完治君    有島 重武君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      菅野和太郎君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      赤澤 璋一君         経済企画庁国民         生活局長    八塚 陽介君         経済企画庁総合         計画局長    鹿野 義夫君         中小企業庁次長 新田 庚一君         運輸省自動車局         長       黒住 忠行君  委員外出席者         厚生省環境衛生         局食品衛生課長 野津  聖君         厚生省薬務局参         事官      下村  孟君         農林大臣官房参         事官      小沼  勇君         農林省農林経済         局企業流通部消         費経済課長   宮崎 武幸君         農林省畜産局参         事官      平松甲子雄君         食糧庁業務部長 中村健次郎君         通商産業省重工         業局自動車課長 田中 芳秋君     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 帆足計

    帆足委員長 これより会議開きます。  物価問題等に関する件につきまして調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。武藤嘉文君。
  3. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 きょうは久しぶりに大臣に御出席をいただきまして、物価政策全般について一日お時間をいただいたのでございますが、私があまり時間をとりますとほかの委員の皆さまに御迷惑をおかけいたしますので、私は総括的な問題につきまして、大臣あるいはその他の関連の各政府委員あるいは説明員に御質問をしたいと思います。  最近大臣があちこちでお話が出ておりまして、とにかく物価上昇率は四十四年度においては何とか五%に押える、こういうことを力説をされておられます。もちろんぜひ五%以上にならないように私どもも願っておるわけでございますが、ただ私は、そういう五%というものが決して根拠のあるものではないのじゃなかろうかという感じがいたします。そういう意味からいたしまして、この間企画庁から出していただいた資料を見ておりましても、前年対比五%以上の物価上昇するというのは、先進諸国においてもあまり例を見ない。もちろん日本の場合は、経済成長率先進諸国の中においては極端に高いですから、そういう点からいくと、もちろん物価上昇率というものもある程度高くてもいいじゃないか、こういう理論もそれは成り立つのかもしれませんけれども、しかし私は、それだから五%がいいという問題ではないんじゃないか。そういう意味において、特に現在日本は好況だ、景気がいい、こういわれておりますけれども、それは非常に海外の景気そのもの影響を受けておるところが多いんじゃなかろうか。たとえば日本国際収支が非常に好調を続けておる。これも、悪くなる悪くなるといわれながらアメリカ景気がまだまだ一応調子を上げておるから、国際収支がやはりよくて、たとえば外貨が三十二億ドルまでいった、こういうことにもなろうと思います。そういう点からいきますと、アメリカが現在インフレ対策で、とにかく何とか景気を押えようとしております。あるいはまた一方、西ドイツも押えようとしておりますけれども、こういうことで、ことしの後半において世界の景気が停滞しないとも限らない。そうなってまいりますと、日本経済というものもやはりその影響を受けざるを得ない。しかしながら、そういう経済が停滞をするというか、不景気におちいってきても、現在の消費者の根強い消費購買力その他を考えますと、なかなか物価というものは押えられないんじゃなかろうか。そうなると、経済成長を続けておるからいいようなものの、万が一そういうときになったら、はたしてこの五%というものが妥当かどうかという点においては、私は非常に疑問があると思うのでございますけれども、そういう意味において、五%は当然だというお考えなのか、そうではなくてやむを得ず五%、何とか五%に押えたいけれども、気持ちとしてはもっと押えたいというところなのか、その辺のところについて、今後の経済見通しとの関連において大臣の御答弁お願いしたいと思います。
  4. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 四十四年度は五%ということでしたが、それは昨年の情勢から見ますると、昨年の上半期五・七%、その勢いをもってすれば四十三年度はおそらく五・八%あるいは六%くらいになるんじゃないかということを心配しましたので、そこでどうしても五%に押えなければ——五・五%以上になればこれが他の経済影響するところ大きいのでありますからして、そこで四十四年度は五%に押えるという目標にしたわけです。五%は永久にいいという考えでは全然ありません。できれば五%以下にしたいという考えをしておるのであります。これは二重構造をなくするためにいろいろ政府政策をとっておりますが、これはじみち政策でありますからしてその効果があらわれるには数年間要しますが、日本の二重構造というものがなくなれば、私は、消費者物価も下がるし、経済成長率もある意味では下がるというように考えておるわけでありまして、五%が永久にいいという考えではない。来年度については五%という考え方です。
  5. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 じゃ理想的には、企画庁としては、今後の経済成長率あるいはそれとの関連において、物価上昇率というのは大体何%くらいに押えていったほうがいい、こうお考えになっておられるのか、その辺、もしありましたらひとつお聞かせいただきたいと思います。
  6. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 四十二年度から始めました経済社会発展計画では、四十六年度では三%という目標を立ててあの計画ができておるのであります。今後においては何%がいいかということは、この経済社会発展計画をいま補正しようとしておりますからして、それによって何%が理想的であるか、日本経済にとっては何%が最も適正であるかということを決定したいと思っておりますから、今日何%がいいという即決即断はしがたい、こう思うのです。
  7. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 四十六年度三%というのは前から聞いておりますのですけれども、いまのままのこの物価の動きからまいりますと、はたして四十六年度に三%に落ち込ませることができるのかどうか、その辺について私は非常に疑問があると思うのでございますけれども、その辺の確信と申しますか見通しと申しますか、その点についてもう少し承りたいと思います。
  8. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 四十六年度において三%というのは、私はもう実現不可能と考えております。要するに経済社会発展計画を全部再検討して、そしてまた新しい——新しいというと語弊があるかもしれませんが、いまやっておる発展計画を補正して、そして現在の発展した経済に即して発展計画を立てたい、こう考えておるわけです。
  9. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 企画庁としては、いまのお話を聞きまして、とにかくあの経済社会発展計画というものがどうも理想どおりにはいっていない、計画どおりにはいっていない、だから四十六年度三%に押えるということは不可能だ、こういうお話でございます。私もそう思うのですけれども、そういうことであるならば、ことしもう四十四年度ですから、再来年の問題ですね。そうなってくると、これは早急にやはりつくり直すならつくり直すで、しっかりと国民に対してそういう指標というものを与えるべきだと思うのですけれども、これは大体いつごろそういう計画のつくり直しというか訂正というのか、そういうものをおやりになるのか、あるいはいまおやりになっておるのか、その辺はどうでございますか。
  10. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 補正するという方針をきめまして、そしていまいろいろ材料を集めてその数値を決定したいと思っておりますから、これにはかれこれやはり一年近くかかるのじゃないかと思っております。大体今度の補正した発展計画は四十五年から五十年までとか、あるいは四十六年から五十年までとかいうようなことで計画を立て直したい、こう考えておる次第です。
  11. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 それは見通しとして大体いつごろできるのですか。
  12. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 それはいま申しましたとおり、いろいろ基本的な調査をいまやっておりますから、大体一年近くかかるという見通しです。
  13. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 それでは大臣、御督励をいただきまして、何とか早くそういうものを出していただくことが、われわれも必要なことでございますし、国民にとっても必要なことだと思いますので、ぜひお願い申し上げたいと思います。  次に、物価政策というものにつきましていろいろ具体的にお話を承りたいと思うのでございますけれども、その前に、物価政策というものを考える場合には、一つは近視眼的であってはいけない、物価政策というものは長期的な観点に立って計画的に行なわれなければいけない。そういう面においていまちょっと御質問したわけでございますけれども、そういうことを私は考えておるわけでございます。それと、やはり物価というものが上がってきておる原因というものをよく分析をして、それに対する適切な対策考える。三つの点といたしましては、けさの日本経済にも出ておりますが、企画庁でもお考えをいただいておるようでございますけれども、高効率化といいますか、非常に効率の高い、そしてむだを省くという観点経済政策考えていくところに物価の安定があるのだ。こういうふうに私は大体三つの点で考えておるわけでございます。  そういう面からいってひとつ具体的にお話を承りたいと思うのでございますけれども公共料金の問題でたいへんこの間うち話題になり、いま参議院にかかっておる国鉄運賃の問題がございます。この問題については、そういう面においては、国鉄審議会の答申に基づいて長期的な立場から財政再建計画をお立てになり、それに基づいての一つの柱としての運賃改正なんだ、こういうことで法案が出てきたわけでございます。これについては与党と野党との間においていろいろ意見の違いもあり、不幸な事態を生じたのでありますけれども、いずれにしても、私ども立場からいたしますと、運賃というものが上がることは決して好ましくない。しかしながら、現在のような国鉄赤字状況でこのまま放置しておいたならば、これはどうにもならないところへおちいってしまう、そういう面において国民の足を奪われるというようなことになってはまずい、こういう心配から、何といいますか、心ならずも賛成をしたわけでございます。  ところが、これはこの間ほかの委員会でも御質問があったわけでございますけれども、この国鉄運賃が上がったということは、過去においても何回もあったわけでございます。ところが、その国鉄運賃が上がるたびに、国鉄は、その運賃値上げによって、老朽した資産というものを直すとか、あるいは通勤対策というものを立てるために、通勤で困っておるところへ新しい施設をつくるのだとか、そういういろいろ合理化あるいは全体的な合理化計画を進める、そういうものと運賃改正とあわせてやるのだ、こういうようなことであったわけでございます。ところが現実には、三十二年、三十六年、四十一年あるいは四十三年の定期の運賃値上げ、これだけ続きましたけれども、そのほとんどがベースアップにとられておるという現状だと思うのです。この点については、もちろんベースアップもしなければなりませんけれども、私は——きょうは国鉄の方はお越しいただいておりませんので、企画庁長官のお立場で御指導をいただいておるわけでございますから長官に御質問するわけでございますけれども、そういう面において、この運賃改正後においてまた大幅な、いわゆる国鉄現状に合わないベースアップが行なわれるということになりますと、結果においてまたまた運賃改定をやったことが国鉄再建計画に決してプラスにならない、再建計画に支障を来たす、こういうことも私は考えられると思うのです。その点については、今月はもうベースアップの話もいろいろ出てくるわけでございますが、ひとつ企画庁長官立場であくまでも合理化計画を進めていく、そうして国鉄を再建させる一環として運賃値上げをするのでございますから、運賃改定だけが先に進んでしまって、あとの三本の柱の二つのうちの一つは、これは政府がやらなければならないことでございますが、もう一つ国鉄がやらなければならないこと、これについては、物価を御担当いただいておる大臣といたしまして、強力にひとつ国鉄に呼びかけ、強く指導をしていただきたいと思うのでございますが、その辺についての大臣の御所信と申しますか、御決意と申しますか、そういうものをひとつ承らしていただきたいと思います。
  14. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 国鉄運賃値上げの問題につきましては、これはずいぶんいろいろ経緯がございます。私の最初考え方は、公共料金は一切上げないという方針物価対策を講じたい、こう考えておったのでありますが、国鉄実情を聞けば、非常に困った状況にあるということを聞いたのでありまして、最初料金値上げを言うてきたときに、私は料金値上げだけで解決しようと思ったらそれはだめだ、国鉄としてもっとやるべきことがあるのじゃありませんかということで、まずあなた自身体質改善をやりなさい。その体質改善をやらなくて運賃値上げばかりやっておれば、毎年運賃値上げをやらなければならぬ実情にいまあるじゃありませんか。だから体質改善を先にしなさいということを極力主張しまして、そして、それでは体質改善を踏まえて、前提として、次に、第二に考えてきたのは国並びに市町村財政的援助、これが第二。これは御承知のとおり国が利子の支払いを立てかえるということ、それから市町村に対する納付金を二十五億円減らしたということ、そういうようなこと。それから、それでもなおかつ経営困難ということであれば適正な料金値上げはやむを得ないということで認めたのであります。私ども方針としては、まず国鉄体質改善ということが第一でありますからして、料金値上げ法案と同時に国鉄財政再建計画案というものを議決していただいたのであります。あれが前提条件で、あれによって、そして料金値上げということをあわせて考えるという立場でいっておりますから、この上は、国鉄がその点ははっきり体質改善をやりますということをわれわれにも約束しておりますから、私は国鉄を信頼して、国鉄自身でいろいろ体質改善をやられると思います。したがって、ベースアップの問題も、その意味において国鉄自身が解決されるのではないかということを期待しておる次第であります。
  15. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 期待をしておるというだけじゃなくして、ひとつよく見守っていただいて——やはりあの十年計画を見ておりましても、あの再建計画がそのままうまくいった場合には、たしかもう一度運賃値上げをやられるということが入っておりますけれども、それもあと十年の間に一回やってそれでいいということなら、こんなけっこうなことはないと私は思うのです。ところがいままでの実績ですと、国鉄はどうもおっしゃるとおりやっておられない、そういう点が多いと思うのです。ですから、ほんとうに今度は再建計画、十カ年計画を立ててやるという以上は、ぜひそれを実現できるように、期待をしておるだけじゃなくて、こちらからよくお働きかけをいただきたい、こういうことをお願いするわけでございますが、その辺はいかがでありましょう。
  16. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 これはもう会議でたびたび運輸大臣とも国鉄総裁とも話し合ったことでありますからして、向こうはそれを、体質改善前提としての料金値上げということでわれわれに声明しておることでありますからして、まあやってもらえるということをわれわれは期待しておるのであって、今後の経過を見て、事実やらなければ、またそのときは警告を発するとかいうことになる、こう思っておるのです。
  17. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 それに関連いたしまして、この間うちから政府は国会においても御答弁になり、また新聞によりますと経済団体との会合においてもお話が出ておるようでございますが、この国鉄運賃関連して、今後公共料金値上げというものは極力押える、こういう表現がなされておるわけでございますけれども、極力押えるというのは事実可能性があるのかあるいは全然可能性がないのか、この辺を承りたいと思うのであります。もちろん私は、絶対に押えるということ、物価政策としては絶対に押えていただきたいと思いますけれどもほんとう企業が努力をし合理化を進めてなおかつできないという場合には、ただ押える押えるといっておいて、あとで何か国民を欺いたような形で上げるのじゃなしに、ほんとうに上げなければならない実態があるならば、それをやはり国民の前によくさらけ出して、そして物価政策としては、将来においては、先ほど申し上げたように長期的な観点に立って、これだけ経済成長してきて賃金も上がるあるいは何が上がるから、ある程度こういうものが上がっていくのだ、こういう一つのプランのもとに国民に対して理解を求めるほうがいいのであって、その場だけ極力押えるということばを使っておきながら、結果的にあとになって上げるというようなことになりますと、これはほんとうに政治の不信につながるものではなかろうか。ですから、物価という問題は国民は非常に敏感でございますから、そういう面においてほんとうに押えられるものならばぜひ押えていただきたい。しかしながらほんとう実態がすでにもうどうにもならないところへ来ておるものであるならば、もう少し考え方を変えて、国民理解を深めながら、理解されたところにおいて上げていく、こういうような形になされなければいけないのじゃないかと思うのでございますけれども、その点について、今度公共料金国鉄以外のものについては極力押えるということばを使っておられますので、たいへん私はその点懸念をいたしておるわけでございますが、もしその辺についてのお考え方をお聞かせいただけるならば、ぜひひとつ承らしていただきたい、こう思うわけであります。
  18. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 国鉄料金を最後に私が認めた場合に、そのときの一つ条件としては、交通関係公共料金は極力押えるということが一つ条件になっておるのです。でありまして、国鉄料金はそういうことを無条件で上げることを承知したわけではありません。極力交通関係公共料金値上げを押えるということが一つ条件になっておるのです。  そこで、一切ということは言えないということは、一切も何も、いなかの鉄道あるいはバスなどで、ほかに兼業しておるものはなし、それだけやって、しかも最近の交通関係の変化によって乗客はだんだん減ってくるというようなことで、全く赤字で、もうその線を廃止するかどうかというような民間の鉄道、軽便鉄道地方鉄道などは、これは値上げを認めておるのでありまして、現にやっております。が、しかし、そうでない私鉄その他大都会のタクシーやバスなどは、物価に非常に影響を及ぼすところが多いのでございます。また大手私鉄などは、実際、企業としては赤字ではない、黒字なのでございますから、したがって、この際は物価値上げささないという意味において御協力をお願いしたいということで、大手私鉄運賃値上げについては、私のほうではお断わりをしておるわけであります。でありますからして、およそ物価上昇影響を及ぼすような問題は、極力これは押えるという方針で今日まで来ておるわけでございます。
  19. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 ぜひそういうことでお願いを申し上げたいと思います。  それから、くどいようでございますが、どうしても、実情を見て、上げなければならぬようなときには、やはり早く国民理解を求めておいたほうが私はいいと思うのです。それを何か隠しておいて、国民を欺いてやるというようなことがないようにひとつお願いを申し上げたいと思います。  それからもう一つ大臣にお聞きいたしたいと思いますのは、物価政策についての所信表明の中にございました、国内において、非常に生産性の低い部門は別といたしまして、生産性の高い部門においては相当収益をあげておる、そういう収益をあげておるところの部門についての価格というものについては、ひとつ極力引き下げるように政府指導する、こういうことがたしか所信表明の中にあったと私記憶をいたしておるわけでございますけれども、その後政府におかれましてはどういう方向でこれを具体化しておられるのか、ひとつ承らしていただきたいと思います。
  20. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 具体的な対策は、これは各省でとるのであります。私のほうでは方針を示しておるのであります。先般経団連の幹部諸君にもお会いして、そのことをひとつ皆さん方もお考えおきを願いたいということを申し入れたのであります。皆さん方も、極力協力するということをなにしたわけでございます。これはもう各省でやるべきものであり、私が通産大臣のときには、当時鉄の小棒が非常に値上がりしまして、そこで各製鉄のメーカーに寄っていただいて、この際、建築費をだいぶ高くするからして小棒の値上げはせぬようにしてくれということをお願いして、メーカー諸君も快く、それでは値上げしませんということで値上げはストップしたのであります。これはもう、そういう具体的なことは各省農林省とか通産省、あるいは薬であれば厚生省とかいう、各省でひとつやってもらうことになっておるわけでございます。
  21. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 それでは通産省課長さんにひとつお尋ねいたします。  私ども話を一番よく聞きますのは自動車価格でございますが、自動車価格が、輸出価格国内価格とに非常に開きがある、あるいはよく例にあげられるのが電器製品カラーテレビでございますが、カラーテレビも非常に開きがあるようなことを聞いておるのでございます。これなどは、そういう点からいけば、いわゆる生産性の高い部門で、大臣所信表明でおっしゃいました、価格引き下げをしやすいものではなかろうか。私はこれは何も自動車カラーテレビを例にとって申し上げるわけではございませんが、よく例に出ますので、それ以外にもいろいろあろうかと思いますが、申し上げるわけでございますけれども、そういう面について企画庁長官から通産省に対して、ぜひひとつ価格引き下げられるものは引き下げさせるように、こういうお話があったといまお聞きするわけでございますが、通産省として一体この点についてはどう御指導をいただいておるのか、承らせていただきたい。
  22. 田中芳秋

    田中説明員 自動車量産化に伴いますコストの低下を販売価格に反映させるという点につきましては、私どももそのような方向指導をいたしておるわけでございます。  この点につきましては、過去五年間の実例につきまして、特に日本の乗用車のシェアの大部分を占めております二車種について申し上げますと、これは千五百ccクラスの車でございますが、昭和三十九年に月産約七千台の規模でありましたものか、四十三年には二万台にのぼっておるわけでございます。その際におきます価格でございますが、三十九年の価格が約五十六万円でございます。これに対しまして四十三年度では五十万円と、この間に六万円の価格引き下げを見ておるわけでございます。千三百ccクラスについて申し上げますと、三十九年度月産一万台の規模が、四十三年度におきましては二万三千台の規模にのぼっております。この間におきます価格引き下げは、もちろん同時にエンジン等の改良がありまして、性能は向上しておりますが、約二万円の価格引き下げという形で、量産化に伴いますコストの低下を価格に反映させておるという一例になっておるかと思います。  なお、輸出価格国内価格の問題を御指摘になりましたが、現在におきまして、いま申し上げました車種これが輸出の大宗を占めておるわけでございますけれども、大体FOB価格で千ドルから千二百ドルぐらいになっております。一方、国内に対しますメーカーの蔵出し価格、これは約千ドルという形でございますので、むしろ現状としては輸出すればもうかる、こういう態勢になっておる実情でございます。
  23. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 いまの御説明を聞いておりますと非常によくわかるのでございますが、私は、生産性が高くなったから値段が下がったというよりは、シェア競争によって値段が下がっておるのではなかろうか、そういうふうに、これは非常にひがんだ見方かもしれませんけれども、見ておるわけでございます。  もう一つ、いまお話ございましたように、いわゆる生産者の工場渡しの価格というものは大体FOB価格と同じだ。ところが、消費者が受け取るときの価格とは非常に違いがあるわけです。もちろん物品税の問題もございます。物品税の問題もございますけれども企業においての流通部門においても案外むだというか、いわゆる消費者に負担をかけるものが案外あるのじゃなかろうか。たとえば、普通の商品と違いまして、こういう大手の商品の場合には、生産会社が、つくられるとすぐそれぞれのディーラーへお出しになるのじゃなくて、物はお出しになりますけれども、そこに一つの全国的な統一の販売会社がある。そういうようなところでまた利益が相当あがっているわけでございます。そういう面において、流通段階の機構というものに対しての合理化という面で、中小企業とか農業とかいわれておりますが、案外大手のそういう流通段階に、私は消費者の側からだけ見た場合——もちろん経営の立場でいろいろ考え方はあると思いますが、消費者側の立場からだけ見た場合には、案外むだがあるのじゃないかというふうに私は考えるのでございますけれども、その点についてはどうでございましょう。
  24. 田中芳秋

    田中説明員 御質問は大企業製品一般についてかと存じますが、自動車につきましてお答えを申し上げさせていただきますと、確かに流通部門につきましては、今後いろいろ合理化をしていかなければならない状況にあると存じます。この点で、たとえば御指摘のような販売組織、これが消費者ないし需要と結びつく場合に、どのような形がこうした産業にとって合理的な姿であるかという点をよく見きわめる必要があるかと思います。こうした面から、販売業者が現在の与信業務、すなわち販売金融、こうしたものも販売金融会社等と切り離しまして、そしてセールスというものと金融というものを分化をいたしまして、そこで合理化をはかっていく等々の方法があると考えます。こうした面につきまして、通産省は割賦販売審議会等の各種の御意見を伺いながら、今後とも合理化を積極的に進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  25. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 先ほど申し上げましたように、それは私のひが目かもしれませんので、そういう点がなければけっこうでございますが、いわゆるシェアの競争で価格が下がっておるのである、生産性が高まったからそれを積極的に消費者に還元しようということを、はたしてどれだけ会社がお考えになっておるのか疑問じゃなかろうか、こういう点を思いますので、いまお話ございましたように、いろいろ流通部門のそういう金融とセールスとの問題、いろいろまだあると思うのでございます。ひとつそういう点十分検討していただいて、なるべく消費者に還元されるように今後とも御努力を願いたいと思います。  時間がだんだん経過いたしますのでその次に進ませていただきたいと思いますが、食糧庁にお越しをいただいておりますので……。きのうの新聞で、食管の運営について行管が指摘をして、現在だけでも運送と保管、この二つを考えると十億円は節約できるのだ、こういう話がございました。読んでみますと、米が非常に遠いところから運ばれておる、あるいは保管が、無料で使える政府の倉庫を使わないで、案外営業倉庫を使っておる、そんなようなことが指摘をされております。これにもう一つ、新聞にも書いてございましたが、食糧検査の問題も、現在は案外品質本位でなくて検査が行なわれておるために、多収穫品種のものが結果的に多くなっておるのだ、だから現在の検査というものについてももっと再考慮をしなければいけないし、等級というものも再考慮しなければいけないということが書いてあるわけでございます。  私はこれにもう一つ、私個人が実際検査というもので感じておりますことは、いまの食糧検査官でございますが、この検査は昔はたしか国でおやりになっていなかったと思うのでございます。ところが、いまはずっと国でおやりいただいておるわけでございますけれども、そういう検査の今後の合理化ということ、その中において等級をもっと簡素化しようというような形が将来進められるのかどうかということと、そういう形になってくれば、必ずしもいまの検査官制度そのものを現在のまま置いておく必要はないのじゃなかろうか、もっと思い切って合理化をしていくべきだと思うのでございます。というのは、私が承っておるところでは、食糧検査官の方々の実働時間はそんなに多くないにもかかわらず、常用でありますために食管の経費の中で占められておる検査官の人件費の割合が非常に多い。また検査官が検査官自体の仕事以外のいわゆる統計的な仕事までいろいろおやりをいただいておるために、その事務費も相当かさんでおる。こういうお話も承っておりますので、そういう点が事実であるならば、私は、今後検査制度が合理化されるのに伴って、検査官の制度そのものにもある程度再検討を加えるべきではないか、こういうふうに思うのでございますけれども、ひとつ食糧庁のお考え方を聞かせていただきたいと思います。
  26. 中村健次郎

    ○中村説明員 お答えいたします。  昨日の新聞に出ておりました行官の勧告に関連した記事でございますが、これは十億というような数字が出ておりますが、この十億という数字には全く根拠がございません。私のほうで現在、どういう計算で、どういうことで十億という数字が出たのか、行管といろいろ検討をいたしております。  それから、いま申されました運送で、遠いところから運んでおって運送賃にむだがあると書かれた問題でございますが、これは確かに遠くから運んでおることは間違いございません。たとえば北海道の米を関西、時によりましては九州まで運んだこともございます。それから九州の米をかなり遠くのほうまで運ぶということも行なわれておるのでございます。これは米の性質が、御承知のように、北のほうでできます米は軟質米と申しまして水分が非常に多いわけでございます。西のほうでできます米は硬質米といって水分が少ない。したがいまして、水分の多い米は、これを夏場に保管いたしておりますと非常にいたみやすい。したがいましてできるだけ早く、そういった水分の多い米は夏のつゆを越す前に消費をしたいということがございます。硬質米のほうは保管性がございますので、これは夏を越してから使う。味の面におきましても、軟質米は夏場は味が落ちやすい、硬質米は味の落ちが少ない、こういった品質上の味の問題もございます。そういうことで、できるだけ国民の方々に公平な配給をしたいという意味で品質の調整をやる。あるいは運送賃の問題もそういった意味で、いま言いましたように、東の米をある程度西のほうに、西の米をある程度東のほうにということも、食糧管理をやってまいります上で必要でございますのでやっておることでございまして、決して運送賃のむだづかいということではございません。  それから、保管でございますが、私のほうも、できるだけ保管料のかからない政府倉庫を常に最優先して使っております。そういたしまして、保管料の高い消費地の倉庫をできるだけ最小限に使う、そういう方針で実行いたしております。たまたま時期その他によりまして、生産地の政府倉庫があきまして消費地の営業倉庫に米が入っておるという時期もございます。これは米の量が、現在のようにたくさんございませんで少ない時期におきましては、生産地の米もどんどん消費地へ運んでまいりまして配給していくわけでございますから、次の米が出るまでの間はどうしても生産地では米の倉庫があくといったこともありまして、そういった操作の関係で完全にいつも政府倉庫が一ぱいというわけにはいきませんが、できるだけ政府倉庫を活用していくというふうにつとめております。  それから検査の問題でございますが、検査の合理化ということはわれわれも常に心がけておるところでございます。ただ、何しろ検査につきましては、御承知のように生産が零細でございますし、流通形態が、麻袋なりかますなりにしまして、一俵一俵違ったものが出てくるというような状況でございますので、外国のような、多量にまとめて抽出検査をする、そういった合理化な検査が、人手を食わない検査ということがなかなかむずかしい実情にございます。したがいまして、できるだけ現在の事態に即して検査を合理化していくということは常々検討、研究をいたしております。ただ、等級を減らせば簡単になるのじゃないかというふうな御趣旨のお話がございましたけれども、これは、経済が安定してまいりますに従いまして、消費者の好みというものが複雑になってまいりますし、それを扱います販売業者にいたしましてもいろいろ注文が多くなってまいります。したがって、どうしても品質に応じた扱いということが要求されますので、簡単に等級を減らすというふうなことはなかなか困難な問題ではないかというふうに考えております。  それから、検査官の実働時間が少ないというお話がございましたけれども、これは検査の時期におきましては非常に多量のものをこなしますので、非常に忙しい仕事になります。検査の少ない時期におきましてはある程度検査の仕事が手がすいてまいります。しかし、食糧管理をやってまいります上ではどうしてもいろいろな調査が必要でございますので、そういった調査をやる、あるいは現在農村にたくさん持っております政府の管理米の保管の指導、それから運送いたします場合の運送の立ち会いなり、そういった業務面の仕事等もしてもらっております。そういうものを総合いたしまして、検査官を検査だけの人にするのが合理的なのか、あるいはそういう検査とからみました食糧管理の中で、末端でやらなければならない仕事を検査官にあわせてやらすことが人の使い方として合理的なのか、それらの点でいろいろ検討しなければならぬ問題がございますけれども、現在の体制が一番合理的に使える形ではないかというふうに考えております。
  27. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 きょうは時間がありませんので、あまりこちらも深くお話しできないで残念でございますけれども、私はいま話を聞いておりまして、ただ、いままでの等級格差をそのまま縮めるいうことじゃなくして、いままでの等級格差というものは必ずしも消費者の、いまおっしゃった好みには合っていないと思うのです。これは農林省もお認めだろうと思うのでございます。だから今度自主流通米というものが出たんだろうと思うので、ですからそういう面において、いますぐというわけにはかないかと思いますけれども、自主流通米によって消費の動向というものをよく把握しようということをおやりいただく以上は、将来においてはやはりいままでのような形の等級というものは必要ないのじゃなかろうか。ですから、私先ほど申し上げたのは、いままでの等級だったらもっと簡単にしたらいい、こういうことでございますので、ひとつその辺は誤解のないように。私としてはもっと消費者の好み、品種による格差というものをつくってくればいいのじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございます。  それから検査官は、いまお話しございましたようにいろいろほかのお仕事をおやりになっておられる、これはけっこうかと思いますけれども、ただ私どもいろいろ昔の事情を聞いておりますと、検査官が現在のような食糧庁の検査官でいらっしゃらなかった場合には、そういう面はほかのところでやっておった、ということになると、まあこれは先ほどのお話で、どういう制度が合理的なのかということはこれから御検討いただくわけでございますけれども、少なくとも私どもは、検査官の実働というものは非常に少ないという点から考えれば、場合によればもう少し常用と臨時といいますか、常用の検査官がどれだけで、あとどうしても忙しいときは臨時の検査官を採用するということも考えられる、採用というか、ほかの方が応援に行かれるということも考えられないことはないんじゃないか。もう少しそういう点を効率的におやりをいただくということが、食管の赤字というものからいってもいいことであり、それがやはり米価というものにも影響してくるのじゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。もしその辺について御意見があれば承っておき、御意見がなければけっこうでございますが……。
  28. 中村健次郎

    ○中村説明員 等級格差の問題でございますが、これは品種なりあるいは銘柄を入れました、味を加味した検査をやるべきだということでございますが、これにつきましては自主流通米も発足いたしますことでございますし、そういった方向で検査の体制を整えていきたいということで考えております。  それから常用と臨時の検査官でということでございますが、これは検査の技術というものがかなり年期を入れませんといっぱしになりませんので、むしろ熟練した検査官に能率的にやらすというほうがいいのではないかというふうに考えております。
  29. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 どうも恐縮でございますが、私の聞いておるのでは、たとえば新潟県とか東北においてはすでに臨時の検査官がある、検査にどうしても手が足りないために臨時の検査官があるということを聞いておるのでございますけれども、この点どうなんですか。
  30. 中村健次郎

    ○中村説明員 東北、新潟等で非常に検査の忙しい、どうしてもその検査官で足りないという場合に、現在やむを得ず臨時の検査官を使っておる例がございます。しかしこれは、だんだん臨時検査官を少なくするように、減らしております。
  31. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 きょうはあまり議論してもあれですが、私の考えとしては、現にそういう臨時の検査官があるのであるならば、また食管の経費の中に検査官の占めておられる割合が非常に多いと思いますので、できれば必要な最小限の方は常用で確保していただいて、あとはなるべく臨時でお願いできたら……。私どもはこういう意見であるということだけ申し上げて、今後検討の中でひとつお願いしたいと思います。  次に農林関係で、ことしの野菜が暖冬で非常にだぶついた。しかしながら、これは二月の二十七日ごろの新聞でございますけれども、それを見ておりますと、野菜はだぶついて産地は豊作貧乏だ、こういうことをいわれております。また最近の夕刊にも、タマネギの山が積まれておる写真も新聞に出ておりました。いわゆる産地ではもうどうにもならなくなって捨てておる、あるいは損をして売るということであるにもかかわらず、実際消費者がそれを手に入れるときには相当高い値段になっておる。そこで、流通経費に泣く消費者、こういうことで出ておりますけれども、実際問題私どもも、もう少しこういうことは何とか考えられないのか。  一つにはそういう流通段階、たとえばこれを見ておりましても、一つの品物が非常に遠いところから運ばれてくる。それでまず運賃がかかる。それから卸売り市場から今度八百屋さんへ行きますと、八百屋さんで、まあこれは非常に腐る率が高いというような理由のようでございますけれども、大体平均二倍くらいの値段で売られておると聞いております。そういう点からいきまして、現在せっかく指定野菜産地ということで、野菜産地を指定されたりいろいろ指導もしておられるわけでございますから、今後は大消費地に近いところに、その大消費地でよく消費されるような野菜というものは産地指定をしてでも、どんどんつくらせるべきではなかろうか。  それからもう一つは、運賃はそうするとそれで安くなりますからそうしておいて、その卸売り市場というものもなるべくならば、東京では今度おやりいただいておりますが、都市の周辺に卸売り市場というものを設けて、そしてその都市の中の、いわゆる交通コストの高いところをなるべく走らなくて済むようにするという卸売り市場のあり方、あるいはそれに関連しまして、八百屋さんの近代化といいますか、八百屋さんで腐敗する率をより少なくしていく、こんなようなことが私は必要かと思うのでございますけれども、その点について農林省はどういう指導をおやりになっておるのか、ひとつお聞きしたいと思うのです。
  32. 小沼勇

    ○小沼説明員 御指摘のように、野菜の価格につきましてはかなり変動するわけで、相当不安定でございます。その原因といたしましては、やはり野菜の作付面積なり作柄が変動する、あるいは貯蔵が困難という面もございますし、またいろいろ天候上、気候状況で出荷が十分円滑にいかないという場合もあるわけでございます。そういうことを含めまして、私ども、生産対策、それから流通関係につきましてもコールドチェーンその他のことを研究はいたしておりますが、さらに全体としてこの需要と供給が見合うようにということで、長期の見通しを立てながら、需要の見通しを、実は四十八年と公表しておりますけれども、それを目標にいたしまして産地を形成していくということを、かなり時間をかげながらやっていかなければならないことだろうと思うのですが、そういう面を十分力を入れてやっていくということを考えているわけでございます。なお価格の安定につきましては、御承知のとおり価格安定の事業を法律に基づいてやっていくということでございます。
  33. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 そういうことでぜひやっていただきたいと思うのでございますが、もう一つは、これは畜産関係にも関係があると思いますけれども、私は消費者立場考えつつ、同時に、それをつくる生産者の立場というものも考えた場合には、現在も一応制度としてはあるわけでございますけれども、いわゆる価格の保証制度といいますか、この間豚肉においては一応下限、上限を少し変更されておるわけでございます。あるいはまた、承りますと、ことし農林省では野菜の安定資金協会ですかにお出しいただくのが五億とかいうことでございますけれども、どうも従来のやり方というのが必ずしも生産者に喜ばれてはいないのじゃなかろうか。もちろん、生産者というものが喜んで消費者が迷惑をこうむっては困りますけれども、喜ばれていないというのは、非常に苦しくなっちゃって、その次の年度あるいはその次のシーズンには案外ものをつくらない、こういう場合が過去においてあったのじゃなかろうか。たとえば野菜にいたしましても畜産物にいたしましても、非常に値段が安かったあくる年というのは、大体値段が非常に高騰いたしております。ですから、たとえばことしこの野菜がだぶつきますと——特殊の、いわゆるビニール栽培をやったりあるいは温室でやったりする野菜は別でございますけれども、普通の野天でやられる野菜、こういうものについて、ことしこれだけ非常に苦しめられますと、来年というか、ことしの秋においては、かえって野菜をつくる方が非常に少なくなるのじゃなかろうか。ですから、私は、安定資金協会へお出しになる場合にももう少し——これは私の考え方でございますけれども、いわゆる従来の市場の価格をいろいろ検討されて、それはおやりいただいておりますが、もう少しこれにコスト主義といいますか——コストというものは毎年変わるわけでございます。肥料にしてもあるいは手間賃にしても、何でも非常に変わるわけです。そういうわけで、もう少しコストというものを十分検討の中へ入れていただいて、そうして過去の利潤が大体どれくらいであっただろうか、そうして、ことしのコストにその利潤を加えたところのものを一つの安定価格にして、それ以上にはなるべく上がらない、またそれ以上にしないようにしていけば、農家もある程度安定した収入があって、引き続いてそういう野菜を栽培していく。そうなりますと、先ほどの産地と消費地との関係の計画生産ももちろん必要でございますが、全体的な計画生産をそういう形でやっていくことによって、いわゆる供給も安定し、そして結局高騰ということは起きなくて済むのじゃなかろうか、こういう感じを私はしておるわけでございます。  その点においては、豚については相当コスト主義を入れていただいておるようでございますけれども、それでも、豚肉も一昨年と昨年と比べますと、一昨年は三百二十円でございましたか、最低の過去の下限価格、これでもまだ畜産振興事業団は買い上げ切れなかった。ところが昨年は最高が五百四十円までしてしまった。上限をはるかオーバーした、こういう実態になっておる。それは下限でもささえ切れなかったということで、結局において昨年は非常に消費者が困るような価格になってしまったのじゃなかろうか。もう少し私は畜産についても、たとえば豚肉でございますが、せっかく下限上限をおとりになったならば、なるべくその範囲内でおさまるようにしていただきたいと思うのでございますが、ひとつその点、時間も参りましたので、園芸局と畜産局のほうからそれぞれお答えをいただきたいと思います。
  34. 小沼勇

    ○小沼説明員 いま御指摘のありました価格安定のしかたでございますけれども、現在協会を通じてやっておりますのは、平均価格を割りまして、平均価格からさらに下回りまして、保証の基準価格を割った場合に、その割ったものについて補てんをする仕組みでございます。消費者のサイドも考え、また生産者のサイドも考えるということになりますと、現在の仕組みが十分それに対応し得ると私ども思っておりますが、しかし必ずしもこれで万全ということではないかもしれません。技術的にはいろいろ検討を加え改善をしてまいっておりますけれども、いま御指摘のございました生産費ということになりますと、これは作物の種類なり栽培の形態なり、非常に複雑多岐にわたってまいりますので、生産費を平均的に算出するということは技術的にはかなりむずかしい問題ではなかろうかというふうに思っておる次第でございます。
  35. 平松甲子雄

    ○平松説明員 畜産物の需給につきましては、国民生活が高度化してまいりますにつれて畜産物に対する需要がふえてまいる。その需要に対応して供給が、曲折はございましたけれども、今日まで大体伸びてきておったということは申して差しつかえないかと思います。ただ、ときどきの波と申しますか、需要と供給がフリクションを起こすというような事態はございましたし、それから先生御指摘の豚肉につきましては、世界各国ともビッグサイクルと申しまして、豚肉の価格につきましては一定の周期をもって上下を繰り返すということがあるわけでございます。  そういうふうな事態に対処いたしまして畜産物価格安定法がございまして、それによりまして下限価格と上限価格をきめて、その中に価格を安定させるという仕組みをとっておるわけでございますが、昨年、一昨年、その前と、三カ年間引き続いて豚肉の下限価格である基準価格と上限価格である上位価格を据え置いてまいったわけでございますが、先生御指摘のとおり、昨年は五百四十円程度にまで上回ったという形もございましたし、生産費も上がっておるということもございますので、従来の需要に対応して生産が伸びてきておるということで、需給実勢に対応した価格を決定してまいる、その価格帯の中で安定させるという方式を踏襲いたしました結果、計算をいたしましたのが、今年については下限価格は十五円上げる。上限価格について二十円上げるということにいたしたわけでございます。  こういうような措置をとりますことによって、先生御指摘の下限価格の際に買いざさえができなかったということでございますが、一昨昨年から一昨年にかけましての価格低落時には約八十八万頭の豚を買い入れるということで——買い入れの対象にいたしておりますのは上肉でございますが、その上肉の豚肉につきましては三百二十円の買いざさえを完全に行なったわけであります。ただ、買いざさえを行なって、事業団が持っております豚肉につきまして売り出して、それによって上限価格を守ろうということでございましたが、買い入れました肉だけでは十分でないということで、昨年見ましたような高値になったということでございます。それにつきましては、海外からの輸入によって冷やしていくということで、最近は四百三、四十円まで上限価格を上回っておりますけれども、大体その水準で一応安定いたしておる。  今回の値上げにつきまして、上位価格を上げるということについて、物価対策の上から妥当ではないというような見方もあろうかと思いますけれども、現在の状況で海外の価格と比べまして、上位価格で安定させるということが非常にむずかしという実情、それで海外から持ってまいるということになりますと、大体、部位によって違いますけれども、四百十円なり四百三十円というようなところで海外から持ってまいれる、そういうようなこともございまして、生産費の状況その他を考えまして、今回は上位価格について二十円を上げるという措置をとったわけでございます。
  36. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員 最後に私、皆さんにお願いを申し上げておきます。  まだほかにもちょっとお聞きしたいのでございますが、時間が参りましたのであれでございますが、先ほど申し上げましたように、ぜひひとつ効率よく物価の安定策というものをお考えいただくように、特にいまいろいろ役所の方も御努力いただいておりますが、現実の消費者あるいは現実の生産者の気持ちというものと皆さま方のお気持ちというものに、どうしても食い違いがあるのはやむを得ないのかもしれませんけれども、私はそういう点が相当あると思うのです。それが結局、政治の不信につながるのではなかろうか。ですから、私ども極力努力をいたしますけれども、役所の皆さま方におかれましても、常に消費者立場、同時に生産者の立場もお考えいただいて、そしてほんとう理解ある方向で、物価政策関連のあるそれぞれの政策というものはぜひお取り上げをいただきたい、こういうことだけ一つ最後に申し上げておきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  37. 帆足計

    帆足委員長 阿部助哉君。
  38. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 きょうは大臣が一番最初のごあいさつ以来初めて御出席いただきましたので、国民物価に対する要求やら不満やらは数限りなくあるわけでありますけれども、その個別の問題はまたに譲りまして、せっかく大臣お見えでありますから、できるだけ基本的な問題でお伺いをしたいと思います。  先ほども武藤委員からのお話がありましたし、大臣の当初のごあいさつにもございますけれども政府は、国民生活の安定と経済の持続的発展のため、物価の安定を最重点施策とし、総力をあげてこの問題に取り組む、こうおっしゃっておられる。これはいま始まった問題じゃなしに、物価問題がやかましくなりました三十五、六年ごろから、この御報告にありますように、物価問題というものはもう最重点施策として対策を立てるのだということは、国民はおそらくもう聞きあきていると思う。だけれども物価は一向に安定しない。これは一体どこに欠陥があったのかという問題と、政府の責任というものを佐藤内閣はお感じになっておられるのだろうか、私疑問でならないし、いまのままでは、長官が就任されて努力をされておったとしても、おっしゃることを国民は何も信用しなくなるのではなかろうか。いま武藤委員お話しのとおり、国民の政治に対する不信にこれはつながる問題ではないだろうか。そうすると、これは物価問題もさることながら、政治全体の姿勢の問題につながってくるという点で、私は、非常に重大なものを含んでおると思うのですが、大臣、このように毎年毎年五%も上がってくるというものに対して、何かいままでのような最重点施策として方針がおありなのか。その前にもう一つ、いままでなぜそれが安定をしなかったのかという点を、ひとつ過去の反省を踏まえて、これからの御方針を簡単にお伺いをしたいと思うのです。
  39. 帆足計

    帆足委員長 大臣、先ほど武藤委員からるる質問がございまして、農林省からそれぞれお答えがありましたが、委員長として聞いておりますと、一応おざなりのお答えでそれぞれ御退室になりましたけれども、引き続いて阿部委員から同趣旨の心持ちを強調されましたが、何とぞ議員の質問質問だけに終わらせずに、実施の伴う誠実な責任ある御答弁を切にお願いいたします。
  40. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 物価の問題については、お話しのとおり、これは数年来の問題であって、佐藤総理が実現してからも、この物価の問題に取り組むということで、佐藤総理はしばしば物価の安定ということを声明されておるのであります。そこで佐藤総理は、この物価の問題を解決するという意味において、経済社会発展計画というものを立てまして、それは四十二年からこれを実施することになったのでありますが、大体物価の問題は、その経済社会発展計画で織り込んでおる消費者物価上昇の予定以内でおさまってきておる。ところが、四十三年度は大体四・八%という計画であったのでありますが、昨年の上半期に五・七%上昇いたしましたので、これは容易でないということにみんなが気づき、したがって、この物価の問題は政府の最重点施策としてやろうという決意を、総理をはじめわれわれ一同が持った次第でありまして、また、昨年内閣改造の場合にも、その点ははっきり総理からも所信表明をされたのであります。  でありますからして、物価に取り組んで今日に来ておるのでありますが、そこで、昨年は上半期が五・七%で、その勢いをずっと持続させれば、四十三年度はあるいは六%近くなるんじゃないかということを予想されましたので、それでは経済各方面に影響するところ大きいということで、いろいろ勘案いたしまして、四十三年度は五・四%というように見通しを立てたのでありますが、私は四十四年度からはぜひ五%以内におさめたいということを決意したのであります。しかし周囲のいろいろな情勢から見ると、五%に押えることは非常に困難です。困難でありますが、私は、五%で押えなければ国民が人心安定しないし、先ほどお話しのとおり、政治不信感というものはこの物価の騰貴によって国民は持っておるのでありますからして、この政治の不信感を払拭する意味においても、せめて四十四年度は五%以内でおさめなければならぬということを決意いたしまして、そしていろいろの対策を講じたわけであります。  したがいまして、まず第一に、国民一般が考えておることは、この物価上昇政府が主導しておる、すなわち公共料金政府が上げておるから物価が上がるんだという考え方、この考え方を払拭せしめなければならぬということを考えましたから、そこで公共料金を一切上げないという方針を定めまして、そして閣議もたびたび開いて関係大臣とも相談いたしまして、結局、先ほどもちょっと申し上げましたが、国鉄料金だけはやむを得ないが、ほかの公共料金は上げないという方針をきめたのであります。たとえば米価の問題でも、米価は据え置くという方針をきめたのでありまして、これは総理がたびたび言明しておるとおりであります。そのほかの問題、麦の問題、塩の問題にしても、あるいは電信電話の問題にしましても、それぞれの各省からこれはぜひ値上げしてくれという要望がありましたけれども、私は、物価を押えるという方針からして、それらの要望をみなお断わりをして、そして物価安定に御協力をお願いすることにしたのであります。そういうことで、さしあたりの問題としては、政府主導型の物価上昇ということをまず払拭してしまうという方針をとっておるわけであります。  まあそれで、国鉄運賃値上げ関連して、皆さん方から非常に完ぺきじゃないじゃないかということでおしかりをこうむっておるのでありますが、その点は実は私も重々覚悟はいたしております。そこで、国鉄料金値上げの分は、先ほどもちょっと申し上げましたが、いままで問題は、国鉄料金値上げしますと私鉄料金が便乗値上げをしております。これはいままでの例がそうです。そこで、この便乗値上げは許さぬといりかたい決意をもちまして今日までやってきておるのであります。そういう点で公共料金を押えるという方針で大体来ておる。  それから、根本はやっぱり日本経済が二重構造であるということです。これが解消しなければ物価の問題も解決はできないのである。ところが日本経済の二重構造ということは、これは阿部委員も御承知のとおり、戦後あの悲惨な日本経済がここまで立ち上がるということについては、これはいろいろな無理もしております。そこでいわゆるひずみというものが起こってきておって、一方では生産性の高い産業はどんどん発展するが、生産性の低い産業というものは発展しないということで、二重構造というものができ上がっておる。それによってまた物価が上がっておるのでありますからして、この二重構造をなくするということ、その点を考えなければならぬということで、政府はそういう方針でいろいろ予算も組んでおるのであります。これはしかし、その効果をあらわすのには、直ちに効果があらわれるものではありません。数年かかります。先ほど武藤委員からもお話がありましたが、たとえば流通機構の問題でも、これも流通機構をよくして、そして流通経費を少なくするということについては、これはそうにわかにできるものではありません。多年の商業慣例などで、これを改めるということは容易なことではありませんが、しかし漸次私はこれも改まりつつあるという考えをしております。そういう二重構造をまずなくするということについて、政府があらゆる手段を講ずるということで、これは具体的な予算については、政府委員からもし御必要があればお答えさせますが、そういうことでいろいろ各方面について予算をとってやっておるわけであります。  そこで問題は——(「長いな」と呼ぶ者あり)政府はそういう方針でやっておりますからして、政府は何も方針をとっていないじゃないかというお話があるから詳細にお話をしておるのであって、政府はかくのごとくいろいろ苦心してやっておるということをひとつ申し上げて、決して物価というものをないがしろに、軽視しているのではない、これを重要施策としてやっておるということをひとつ御理解を願いたいと思うのであります。
  41. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 もっと簡単で要領よく御答弁願いたいと思います。  いまお話を聞いておりますと、いろいろやっておるのだ、だから五%くらいはいいということのようなお話、また、過去佐藤内閣がやってからわりかたよくなっておるのだというお話ですが、国民はおそらくそうは思っていない。昨年たまたまある程度でおさまったのは、天候のぐあいで生鮮食料が十月、十一月、わりと安く出回ったのがある程度これを低目にしたということで、それでも五%をこえておるわけです。私は、たしか大臣が、物価は三%ぐらいが適当であるというようなお話をされたような記憶がするんです。しかし三%でも私はたいへんなことだと思う、物価の値上がりとしては。実際、低所得の人たちあるいはまた生活保護世帯あるいは老後の恩給生活者というような人たちにとっては、これはたいへんな苦痛なんですね。数字の上で平均すれば五%というけれども、そういう人たちの生活と隣の金持ちの生活と、個々のものを平均するわけにはいかない。私のところは困っておるからといって、隣のふところに手を入れて金を取り上げるわけにいかぬのです。そうすると、平均で数字の上では五%としても、生活への響き方は、これは個々によってたいへん違う。しかも五%というのは、おおむね定期の金利をちょっと下回るだけじゃないか。五%というもの自体が私は高過ぎると思うんだが、コンスタントに五%ずつ上がるということが、これが物価が安定しておるようなお話にも私ちょっと聞こえるんですが、そういうお感じですか。
  42. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 そのことは先ほど武藤委員にもお答えしたのであって、四十四年度は五%で押えたい。これをそのままにしていけば六%近い物価上昇になりはしないかというので、何とかしてこれを五%で押えたいという考え方であって、これは四十四年度については五%にする。その以後については、理想的にいえば三%以下にしたい。これは三十年ごろは物価上昇は一%ないし一%半ぐらいの上昇率であったからして、そういうように物価はできるだけ上げないほうがよい政治なんですからして、われわれとしては決して三%でいいという考えではない。三%で押えればけっこうだということを申し上げておるのであって、そういうことでやっておりますからして、来年度はどうしても、いまの情勢では五%でも私はよほど困難だと思いますけれども、これはもう全力を注いで五%以内で押えるようにしたい、こう考えておる次第であります。
  43. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、大臣のお気持ちはわかります。だけれども、この五%というのは、これは希望的な観測数字であると、こう理解していいんですか。それともいろいろなデータの中から——自由主義経済でありますから、これがぴしゃりと数が合うとは私も思いません。だけれども、その出した時点では、計算をはじき出す時点ではできるだけ正確なデータを寄せ集めて出されたものがと私は思う。これが政治的な——昨年ですか、宮澤さんじゃないが、まあもっと上がるかもわからぬが、四・八%が目標だというような、非常に政治的な努力目標という意味でのこれは数字なのか。それともいろいろなデータを集めてやってみたら五%という数字が出た。しかしこれから狂うかもわからぬけれども、一応その時点では最大な科学的なデータに基づいて、科学的な計算の上で五%が出たと、こういうことなんですか、どちらなんですか。
  44. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 データからいうと、正直に申し上げれば国鉄運賃さえ上げなければ五%以内におさまります。しかし国鉄運賃は上げなければならぬというところで、われわれ非常に苦心をしておるので、他の方法でその国鉄運賃値上げだけはひとつ消したいということで努力しようということでやっておるわけです。
  45. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 はい、わかりました。それにしても、五%程度ということば自体が私はほんとうは気にかかっていたわけです。日本の電子計算機はデリケートなところまではじき出すのだろうか。あるいは五%とか五・何とかいう数字が出るかわからぬが、程度であるという、程度なんというものが電子計算機からはじき出されるわけはないじゃないか。そうすると、これはやはり五・〇〇なんというのが出たのかもわかりませんが、まあそれはいいですが、そういう点で、程度ということはに私は多少ひっかかりを持っていたわけです。  もう一つお伺いしますが、国鉄運賃で少しこれが狂いを生ずるであろう。もう一つは、政府は来年は自主流通米というものをやろうとしておる。自主流通米というものは、農林省の説明を聞くまでもなく、農民に、政府の買い上げ価格よりもこっちのほうがうまい米は高く売れるがどうだと言えば、農民は高く売れるほうへ出すのはあたりまえだ。そうするならば、特に私の新潟県なんというところのうまい米ができるところは、大半が自主流通米にならないという保証は何もない。政府が百七十万トン程度と見込んでおるけれども、百七十万トンで済むのか、あるいは三百万トン自主流通米に回すのかという保証は何もわからない。そうすると、この自主流通米というものが値上がりするということは、政府としては、企画庁としては当然計算の中へ入っておるだろうと思うのですが、これは入っておるのですか。
  46. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 自主流通米についてだけ先に申し上げます。  御承知のように、現在の段階では百七十万トンというふうに言っておりますし、大体そういうことになるだろう。そのうちの七十万トンは原料米でありますから、百万トンがいわば一般の消費ということになるわけです。一方、消費者物価指数の中では大体五〇〇が従来の配給米、それからあとの二〇〇がいわゆる非配給ということになっております。それから生産地におきます従来の、供出とそれ以外のものとの比率は御承知のように大体七対一くらい、現実の配給の段階ではいま申し上げましたような消費者物価指数の中におけるウエートに近い数字になっております。一方、いわゆる非配給に対しましては、現在食糧庁の見通しは、私どもも大体そういうことだというふうに考えておりますが、従来のやみ米よりは自主流通米というのはやや下がるであろうというふうに見通されるわけであります。これは再々大臣が、自主流通米というのはやみ米よりも下がるべき性質のものであるということを申し上げておられたと思います。そういう意味におきまして、私どもも現在の消費者物価指数の計算の中では、特に自主流通米ができることによって——もちろん従来のような配給米は、これはきっちり計算できるわけでございます。自主流通米の価格水準がいま申し上げましたような見通しであるかどうかは、もちろんこれは一〇〇%断言はできませんけれども、大体そういうところになるといたしますならば、私どもの五%の計算の際にはそれを織り込んで計算をいたしておるというふうに申し上げてよいかと存じます。
  47. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんはいまの統制下における統制の米よりも上がらないとおっしゃるけれども、もうすでに、自主流通米の声が出てやみ米というものはやはり上がっておる。これがある程度大っぴらになってくれば、私はもっと上げざるを得ないと思う。そうすると私は、いまの見通しはこの面からもくずれるのではないかという感じがするわけであります。  それならばもう一つお伺いしますけれども物価見通しをお立てになるのは何のためにお立てになるのですか。
  48. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 最初のことについてだけ申し上げますと、やみ米の価格は確かに先生御指摘のように、過去におけるのとは多少違った動きを示しております。やみ米の価格が配給米より格差が高くなったのは、必ずしも自主流通米の声ということだけではなくて、私はむしろ昨年の秋以降の、いわば新米、古米の問題以後かなり格差が開いたというふうに考えております。その後、本年に入りましてからは、やみ米と配給米の格差はむしろ狭まっておりますし、さらに食糧庁が新米の配給率をふやすということによって一そう狭まったという事態もございます。自主流通米が今後出ますと、それを含めました米価水準がどういうふうになるかということはいろいろ議論のあるところでございますが、一方、従来のようなやみで細々売っておるということとは違いますので、私の感じでは、市場に相当程度出れば、それなりにその量の面からの力が働いて、必ずしもそんなに上がらないというふうに考えておるのでございます。
  49. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 物価を安定せしめるということはどういう目的かというお話でありますが……(阿部(助)委員物価指数を発表するのは何が目的かということです」と呼ぶ)それはやはり国民生活の安定の基準を与えるために物価の指数を発表するのであって、来年度は五%なら五%、四%なら四%上がる見込みであるということを発表するわけです。これはやはりそれによって国民生活というものが安定する、要するに経済活動の一つの基準になる、こう考えておる次第であります。
  50. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は政府の予算あるいはこれからの計画、そういうもののこれが基礎として、めどとして、これに基づいていろいろな予算化であるとか、発展計画であるとかいうものをお立てになるための一つの問題、もう一つはやはり国民の生活の問題であると私は思っておったわけです。それだけに、できるだけこれは最大限度科学的な、希望数字ではなしに科学的なものを出すべきである、私はこういう感じを持っておったわけです。それでいままでお伺いしたわけでありますが、大臣、先ほど各省の予算にいろいろと物価安定のための予算をとり入れておると言われ、それで、たしか予算委員会で提示をされましたね。土地改良からいろいろなものに至るまで各省の予算を出された。しかし、あれを見ても、あれが企画庁物価安定対策としてはどうも粗末過ぎるので、あれは各省の予算の何かかき集めたものであって、菅野さんみたいな大物を企画庁長官に据えるほどのことはないんじゃないかという感じがするのですが、どうなんです。
  51. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 先ほどの物価指数を発表することは、私は国民一般のことについて申し上げたが、もちろん政府がそれによって予算も計上するわけであって、そこで、先ほど申し上げましたことは、二重構造をなくするために各省がどういう予算をとっておるかということを申し上げたのです。物価対策としては、たとえば米価を据え置くということは物価対策の基本であります。あるいは公共料金を上げないというようなこと、それが物価対策の基本であって、これはもう各省がやることである。私どもとしては公共料金を上げないという方針を定めて、各省がそれによって予算をそれぞれ立てておるわけであります。お尋ねの件は、二重構造をなくするためにどういうようなことをやっておるかということを先ほどちょっと申し上げた次第でございます。
  52. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 企画庁のほう、また政府のほうでは、物価の場合に、大体構造論といいますか、二重構造というものが一番大きな原因だと見られておるわけです。いろいろな意見がある。私は何もそれを必ずしも否定はしませんけれども、じゃ、二重構造をなくする手を打っておるとおっしゃるけれども、これは私大蔵委員会質問をしますけれども、二重構造がますます発展するような政策をとっておるのが今日の佐藤内閣の政策じゃないですか。たとえばいろいろな特別措置をつくっておる。貸し倒れ準備金であるとか、貸し倒れ引き当て金であるとかいうのを見ますと、大企業、特に金融関係、ここにとにかくばく大なものが特別償却というような形で、ずっと非課税になって温存されておる。また、いまの政府の資金の出方を見ても、大きな資本家はますます大きくなるように仕組んでおって、二重構造をなくする政策を立てておられるといっても、これはおそらく国民のだれも納得する人はなかろうと私は思う。現実に、いままで物価問題は皆さんのほうで構造問題だといって久しいけれども、この二重構造はますます広がるばかりじゃないですか。実際問題として二重構造がなくなるようなことは、いろいろな宣伝やなにかでいっておるが、ほんとうにそれをなくするような予算化というものはされていないで、あらゆるといっては語弊がありますが、税の問題から見ても、政策から見ても、これはむしろ二重構造を進めるというほうにしか私たちには受け取れないのです。まあ特別措置は大蔵大臣の権限かもしれませんが、大臣、あれ一つごらんになれば、いかに大企業が特別措置でばく大な金を税対象からはずされて、資本蓄積に回しておるかというのは一目りょう然なんです。そういうものを考えずに二重構造を解消するといっても……。それならば具体策をお伺いしたいのです。
  53. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私は通産大臣をしておりましたから、中小企業のことを申し上げますが、中小企業については、税制の点においても、また金融の点においても、大企業よりも優遇しております。いろいろ中小企業政策をとっておりますが、そういう政策をとっておればこそ中小企業がここまで発展してきたと私は思うのです。もしあれをそのままにしておいたならば、私は中小企業というものはここまで発展しないと思うのでございまして、その点で中小企業をいかに成育するかということについてはいろいろの手を講じております。まあこれは一々具体的なことはここで申し上げる時間がありませんが、そういうようにしてやっておることであって、租税の特別措置法でも中小企業についてはやはり特別措置を考えておるわけであります。でありますから、大企業ばかりに有利にという意味では決してないのでありますが、しかし私が御説明申し上げるまでもなく、企業というものは資本と労力によってできておるのですから、企業が発展することは、出資しておる株主も利益を得るが、同時にそこで働いておられる労働者諸君も、それによって賃金も上がることができるしということになるのでありますから、企業自体を発展せしめることについていろいろ政府政策をとっていることは、これは大資本家ばかりのためというように考えることは、ちょっと考え方が狭いじゃないか。これは同時に労働者のためにもやっておることでありますから、その点はひとつそのようにお考えくださったほうがいいのではないか、こう思う次第であります。
  54. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは物価問題から少しはずれてくるあれでありますから、いずれ別の機会にやりますが、私は大臣のおっしゃることには賛成をしかねるわけであります。いままでそういう政策をおとりになったと言うけれども、いろいろ見てまいりますと、政府のいままでの政策は、たとえばこの物価安定対策という皆さんの出したのを見ましても、三十六年ごろからこの物価問題は相当にいろいろな閣議決定をされたり答申をいただいたりしておるわけです。特に財政金融の施策にあたっては、消費者物価を含め、物価の安定に努力する、こうおっしゃっておる。いま大臣は、そういう点でいろいろと中小企業のめんどうを見てきたんだ、財政金融政策でやってきた、こうおっしゃるけれども、いままでやってきたのはほんとう言うと、景気調整にはいろいろと政策をおとりになったけれどもほんとう物価安定のための財政金融政策というものは、やっていないとは言わないけれども、貧弱に過ぎたのではないだろうか。そういう点で私は菅野長官に、この際ひとつ勇気をふるって、財政金融政策もこの物価の安定に資するような形でお願いしたいと思って、実は質問をしておるわけなんですが、実際そういう点で、財政金融政策景気調整だけにといっていいほど、それに終始してきたというふうに私感ずるわけであります。  それで次にお伺いいたしますが、先ほど大臣もおっしゃったが、三十一日に財界の人たちに物価について要請をされた。これもまた生産性向上の分を国民に分かち与えるんだという御意図であろうし、その御意図はわかります。けれども、実際問題として、大臣は先ほど武藤委員質問で、鉄の問題か何かちょっとお話しになりました。全然ないとは私申しませんけれども、実際の自由経済の中で、政府はどういう権限で財界の人たちに物価の安定を要請するのか。ただ口で要請をするだけなのかどうなのか。そこに何らか政府としての方針を持ち、規制するものを持っておるのかどうか。何もないのではないか。ただ同情的にお願いをするというだけなのではないだろうか。それでは実際問題として、三十五年以来生産性の向上分を国民に還元すべきであるという意見は出ておるけれども、これも実際は行なわれていないんじゃないかという感じがするんですが、いかがですか。
  55. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 政府物価に対してなし得る直接的のやり方としては、金融と財政があります。今度四十四年度の財政を編成するにあたりましても、大蔵大臣に、物価安定ということを基準にして予算を編成してくれということをお願いしたのでありますから、大蔵大臣もそのつもりで予算を編成してもらっておると思うのであります。金融の面では、物価の問題についてはこれは非常な影響力を持っていますから、金融面についてはいろいろありますが、いまのところはまだ、日銀が、過度の民間設備投資をしないようにということで、日銀が多少ポジション指導をやっております。そういうことで、いまのところはそれでいいんじゃないかということで、非常にその点は金融業者の方々の御努力にまつところが多いと思うのであります。  そこで、政府が直接物価についてということは、先ほど申し上げました公共料金については、政府が上げる上げないということはできるわけです。そして民間商品の価格は、これは需要供給によってきまることでありますが、しかしあまり物価が騰貴するとかいうようなことであれば、その点については政府が乗り出して行政指導するというようなことができると思うのでありまして、いまの公共料金の、米価は据え置くというのは、これは一つ政府物価政策です。  でありまするから、そういう意味政府が直接にやれることはやるし、間接でやれること、あるいは財政的や金融方面でやられることはそっちでまたやってもらうということ、商品価格自体については、これは経営者の諸君のまた検討も願うということで、各方面にひとつ働きかけて、物価というものを安定せしめたいという方策をとっておるわけであります。
  56. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 物価がこう上がり、貨幣価値がどんどん低落をしてくる、こういうふうになりますと、たとえばサラリーマンが自分で家を建てようとして貯金をしてみても、その大半は物価値上げで食われてしまっておる。いつまでたったって家は建たない。そして老後に恩給であるとかあるいは年金をもらってみても、それでは生活ができなくなって、老後の不安は絶えないというようないまの状態は、何としても政府に相当思い切った物価対策を立ててもらわないと、国民の不安というものは解消しないんではないか。そうしてインフレで——インフレはある意味では間接税と同じような大衆収奪だということばでいわれますけれども、まさに大衆から収奪しながら、独占資本といわれるような大企業だけが高度成長をし、資本の超蓄積を行なっておるというのが——私のことばは乱暴に聞こえるかもわからぬが、現実は日本の大資本はどんどん資本蓄積をし、設備投資をしておる。そして、勤労者は物価値上げ、貨幣価値の低落によって、いつまでたっても自分の家も建たないということは否定することのできない現実なんです。ただ私の言い方が乱暴であるかどうかは別にして、現実はそういう形になっておる。特に先ほど申し上げた恩給生活者であるとか、あるいは生活保護世帯であるとかいう人たちは、この物価値上げの中でますます悲惨な生活をせざるを得ないところに来ておる。そうすると、これは額面どおり、あなたのおっしゃるように、物価の安定は政府の最重点施策でなければならぬと私は思う。生産の一〇%とか十何%という異常な伸びを多少押えても、私はそれがマイナスになれとは言わないけれども、こういう世界まれに見る成長率を多少押えても、物価安定にもう少し政府が本腰を入れないといかぬと思う。そういう点では大臣もおそらく否定をされないと思う。  ところが、一昨日参議院で、私ラジオで聞いたんですから正確ではないのだが、総理は一〇%の成長率と物価の五%はまあ適当だみたいな話をされたという放送を私聞いたんですが、そうすると、大臣お話とちょっと違うのではないか。希望としては三%でも高過ぎる、もっと下げたいという大臣の先ほどのお話と、総理の見解は五%でもまあやむを得ないというか、適当だというようなお話だとすると、これは全く物価問題に、総理は、一番最高の責任者は何を考えておるのかちっともわからない。こんなことでは、私が指摘しておるように、なるほど景気調整はやるけれども物価対策は本腰を入れているはずがないという感じを私は持つし、国民はおそらく、あのラジオを聞いた人たちは非常にがっかりされておると思うのですが、どうなんですか。
  57. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話しのとおり、物価が上がるということは、生産にタッチしていない人には非常に生活を脅かすことになるのであって、お話しのとおり若い人、年寄りあるいは貧しい人たち、そういう人たちには生活の脅威になるのであります。生産に関係しておる人は、経済成長すれば、それによって恩恵を受ける人がたくさんあります。それではいかぬのであって、やはり国民全般の生活を安定さすことが政治でありますから、したがって、物価というものを今日やかましくわれわれが唱えておるのは、それなんであります。  そこで、実際はお話しのとおり、国民の間には、また物価が上がってきた、物が高くなってきて困った困ったという声はあります。いわゆる騰貴感というものを国民が持っておられることは事実であります。そこで、そういう騰貴感をなくしたいというのが私の念願であって、物価はもうこれで上がらぬもんだというように、国民にそういう気分を持ってもらいたいということで、いろいろあの手この手と考えて、公共料金を上げないというようなことも、これもずいぶん抵抗があったのでありますけれども、ひとまず鉄道料金以外の公共料金は上げないということで、これを実現することに努力をしたような次第でありまして、とにかく物価を押えたいというのがわれわれの念願であるし、これがまたまた今日の政治の一大目標でなければならないという考えもしております。  そこで、総理が経済成長率は五カ年ぐらいは一〇%、したがって物価も五%ぐらいという考えを持たれたのは、何も根拠があって言われたわけではないのであって、一〇%も経済成長すれば、まあ物価が五%ぐらい上がるであろうという考えをもって総理は言われたと思うが、私に対して質問がありました。私はいまのような情勢をそのまま続けていくとすれば、経済は一〇%ぐらい上がるかもしれませんが、しかし、私はいまそれを確言ようしませんと言ったんです。総理はそういうことを言われたけれども、私は一〇%五年間上がるということは確言ようしません。いま私のほうでいろいろ材料を集めて調査研究中でありますから、その上でないと五年間一〇%上がるということは、私は確言ようしませんということを予算委員会で私申し上げたのでありますが、いまのままの情勢が、すべて他の条件にして変わらざる限りにおいては、それは一〇%ずつ上がるという見通しは一応考えられることだ、こう私も考えております。
  58. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 成長率が一〇%というのは、これはまあわかりますがね。これは高いほどいいかもわからない。だけれども物価が五%もやむを得ないというような総理のお考えであると、これは全く話が違ってくるのではないか。そこを聞いておるのです。
  59. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 やむを得ないという考え方ではないので、成長率一〇%であれば物価というものは半分ぐらい、いままでの傾向がそういう傾向だから、そういう意味で私は総理が言われたことだと思っておるのであります。私はそういうことは確言しませんと、はっきりそのとき言うたのであります。私の言をひとつ信じてもらいたいと思うのです。
  60. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは全く重大だと思うのですよ。総理が五%とおっしゃっておる。しかし五%というものはたいへんなんだということを国民は身をもって感じておられる。それを、総理がそういうことを考えておられるとすれば、企画庁長官、失礼だけれども、大物大臣であろうけれども、何ぼさか立ちしたって、これはそういう政策が立てられるとは思わない。企画庁長官の二人か三人腹を切って、入れかえをするくらいでなければ、私は物価安定なんというものは望めない。ただ物価安定ということばを政治の場でおっしゃることは、国民に何がしかの幻想を与えるということだけで政治をごまかしていこうという佐藤内閣の姿勢だという以外にはないのでして、これは非常に重大だと思うのです。物価担当大臣としてはようつとまらぬというぐらいの、これは総理にあれしてもらわぬと、物価問題ではいままでも不信感を国民は持っておると思います。過去これだけ上がってきたのだ。それで物価安定、物価安定と口では言っておるけれども一つも安定しない。いま日本国民の大半は、いろんな問題があるけれども物価問題に一番大きな関心を示しておることは大臣も御承知のとおりなんです。そのときに、物価を安定させるのじゃなしに、五%ぐらいなんと言っておれば、物価はもっと上がってくる。  だから私、先ほどから大臣に申し上げるのですけれども、どうもいままで景気調整策はおとりになるけれども——それは私もおとりになったことは幾つか例は記憶しております。だけれどもほんとう物価を安定させようという点はあまり対策はないじゃないか。大臣国鉄料金公共料金値上げに抵抗しておられるという点、これだけじゃないか。しかし、これは公共料金の問題だけじゃない。公共料金は、いまのように貨幣価値が落ちてくれば、町の水道だってどこだって、これは赤字を出していくのは当然なんだ。貨幣価値の低落という問題を考えれば、赤字を出すのはあたりまえのことだ。それをほうっておくわけにはいかぬじゃないですか。それを総理がそうおっしゃっておるとすれば、もう佐藤内閣の物価対策には何にも期待ができない。これは国民を瞞着するものだといっても過言ではないのじゃないかという感じがするのでして、この問題は、大臣、笑いごとじゃなしに、ほんとうに真剣になって考えてもらわぬと私は困ると思うのです。私は一昨日ラジオを聞いて、これはもう、あ然としたわけです。大臣、どうも閣内不統一というよりも、むしろ総理とあなたの考えに非常に大きな開きがあるのか、それとも国民をごまかすために適当におっしゃっておるのか、このいずれかだと私はいわざるを得ないのですが、どうです。
  61. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 私はその場で聞いておったのでありますが、五%はやむを得ないということばはなかったのです。一〇%成長すれば物価上昇も五%ぐらいになるであろうというような、ただ想像的なことばであったと思うので、そこで私は、それは間違っていますということはその場で言えないから、私は確言しませんということをはっきり言うたわけであって、私自身はそんな考えを持っておりません。私自身は、いま君の考えはどうかと言われたら、私は五年間一〇%も成長すると思うということは言えないし、それはいまいろいろ調査研究しておる最中でありますからして、その上ではっきり言えることであって、いま私に言えといったってそれは私は言えないです。物価だって五年間五%上がるということは言えない。私としては、来年度は五%だけれども、それ以後は下げたいという考えでおるのでありますからして、したがって、総理のことばはそれほど慎重にお考えにならないでもいいのではないか、こう私は考えるのでありまして、私のことばをひとつ信じてもらいたいと思います。
  62. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 こだわるようですが、私、時間も来たようですから、あといろいろお伺いしたいのですけれどもこれで終わりますが、まあ大臣ことばも信じたいと思いますが、一番上にある総理が五%になるだろうなんというその程度のお考えであるとすると、どれを信じろといわれてもわれわれや国民は納得しないし、信じようがないと思うのですよね。それでいて、片方では物価安定が最重点施策であるなんというりっぱなうたい文句をしながら、まあ五%ぐらい上がるだろうなんということでは、これは六%になるかどうかわからない。財政金融政策はあげていま物価問題に取り組むべき段階だと思うし、大臣はおそらくそのつもりでおやりになっておるだろうとは思います。しかし何といっても総理のほうが、これは最高責任者であります。その総理がそのようないいかげんなお話では、これはわれわれには、国民には納得のし切れない問題だと思います。そういう点で閣内の不統一でもあるとも私思うのでありますけれども、菅野長官は私のことばを信じてくれというから、佐藤さんを信用しないけれども企画庁長官ことばは信用いたしますが、その点でもっと閣内で、佐藤内閣全体がほんとうに真剣になって物価問題に取り組むという姿勢と具体的な政策を、特に財政金融の面において具体的な政策をもっと打ち立てて、こういうものをやるからこの程度に物価を押えるというものを、公共料金を押えるというだけじゃなしに、もっと財政金融の面からもこういうことをやってこうするからこういうふうに物価が安定するのだということを、近いうちに何とかお示しをいただきたい。それでなくて、ただ物価安定が最重点施策だとか、努力するとか、私の言を信用しろというだけでは、もう国民は信用しない段階にきておりますから、そういう点で私は具体的な対策をお示しを願って、その上で、大臣、信用しろとおっしゃるならば、これは大いにわれわれも御協力を申し上げ、信頼をすることにやぶさかではありません。
  63. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 物価問題について阿部委員からいろいろ御激励のおことばをいただいたのでありますが、実は物価対策について政府は何をしておるかというようなおことばはあちこちで聞くものですからして、そこで政府物価に真剣に取り組んでおるのだということをやはり国民皆さん方にも示さなければならぬということで、従来、臨時物価対策閣僚協議会というのがあったのでございますが、これは問題があったときに協議しておったのでありますが、その臨時ということはとりまして、そして物価全体について閣僚会議を開いて物価対策を講じようということで、構成員もかえまして、三月二十日に初めての協議会を開きまして、そのときに閣議了承事項として発表したものがあるのです。これはいま皆さん方のお手元に差し上げてないようでありますが、あとでお配りしようと思いますけれども、これによって政府の態度をはっきり示しておるのであります。ちょうどこれと符節を合わせるように、三月二十日には西ドイツも物価対策についての政府の決定をしております。それから三月二十六日にはニクソンも物価対策の教書を出しておるのでありまして、各国政府ともにこの物価対策についてはみな苦心をしておることでありまして、そういうことで三月二十日にはそういう態度をはっきり示しまして、そして一部すでに実施しておる問題もありますし、なおこの上とも実施しなければならない問題もありますので、それらはこれから実施して物価の安定をはかりたいということで努力したい、こう考えておる次第でございます。
  64. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まあ、いろいろ委員会をつくったりされますが、政府はどうも最近は委員会とか審議会なんというものは数限りなく、われわれのわからないほどいろんなあれはありますけれども、何といっても政府自体が本腰を入れてやろうとしなければ、何ぼ審議会をつくろろうとあれをつくろうとだめです。りっぱな大臣とこれだけのスタッフを持っておる企画庁でありますし、政府が総理以下ほんとうにやろうとすればできる。審議会をつくることに必ずしも反対はしませんけれども、それをつくったということで大体終わっておる。大臣、一ぺんごらんなさい。次から次と毎年のように閣議決定はしておるわ、御答申をいただいておるわ、だけれども物価は依然として下がらない。それには私は私なりの意見を持っておりますが、時間がありませんので言わないが、だけれども、それに対してメスを入れようとしない。結局いまの日本の大資本の蓄積というところだけに終始しておるあたりに、物価は下がらない、そうしながら経済は発展する、発展するけれども国民の生活は上がらないというギャップをいま生み出しておるのだし、いまのままでいけばこの格差は狭まることはあり得ないという感じを私は持っておるわけでありまして、私の見方が杞憂であれば幸いでありますけれども、先ほどの総理の言や何かを聞きますと——ほんとうはまだあるのです。佐藤総理が財界に行って話したときのお話等も、私はそこの記録を持っておりますけれども、あまりあれだから申し上げませんけれども物価に対しては全くそよ風に吹かれるようだなんという表現をしておるお考えからいままでの発言を見てまいりますと、総理にはどうも物価安定の熱意がなさ過ぎるという点で、特に企画庁長官にその辺がんばってもらわなければ困るということのお願いをして、私の質問を終わります。
  65. 帆足計

    帆足委員長 村山喜一君。
  66. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 与えられました大体一時間、めしも食わないでお互いにやり合いますが、まず初めに長官にお伺いしたいのでありますが、明日、月例経済報告をお出しになりますか。その中身が、きょうは三日ですから、もう大体まとまってきているだろうと思うのです。そこで、これは年度もかわりまして、予算も成立いたしたことでございますし、すでに日銀の月例報告も出ておりますが、経済企画庁物価担当の責任者として今後の見通しというものについては、やはり私たち国民はきわめて重大な関心を抱かざるを得ない。そこで、どういうようなところまで発表できるか、それはわかりませんが、大筋、がまとまっておれば、長官のほうからこの際明らかに願いたい。どうでありますか。
  67. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 大体まとまっておると思いますが、私はちょうどこの委員会に出ましたのですが、先ほど参与会をやりまして、そこで最後的の決定を経て、あす閣議へかけるということになっておるのであります。大体まとまっておると思いますが、大体のことは政府委員からお答えさせます。
  68. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 最近いろいろ問題になっておりますのは、例のかげりという問題でございますが、これについていろいろと議論を取りかわしております。かげりの問題につきましては、もう御質問がございますれば少し詳細に申し上げますが、まず全体の経済動向について申し上げますと、私どもは、国内経済は全体としてはやはり拡大基調を続けているというふうに考えております。それが第一点。第二点は、最近一部には、経済の動向につきまして鈍化のきざしが見られないでもないけれども、これが産業活動全般の基調的な落ちつきになるかどうか、こういった点は、なお今後事態の推移を十分見守っていきたい。こういう点が判断の第二点でございます。したがいまして、政策態度といたしましては、現状のような慎重な政策態度が望ましいのではないか。ほぼ、こういうような感じの月例報告だろうと思います。
  69. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 いまお伺いした中では、日銀の月例報告とほとんど大差がない。また大蔵大臣が談話として発表をいたしております中身とも変わりはない。経済企画庁長官としても、大体いま事務当局の述べたことが当を得ているものだ、こういうような感度でおられるということでよろしいですね。
  70. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いま赤澤政府委員が述べたとおりの感じを持っております。
  71. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこで、財政がゆるむ新年度を迎えたわけであります。新聞によりますと、三千四百億ぐらいの散超になる。その中でコールも一厘引き下げる、こういうような金融緩和政策がとられてまいりました。しかしながら、企業としてはなお設備投資に充当をする借り入れの意欲というものは強い。だから慎重な配慮をしなければならないというのはそこら辺にあるわけですが、その中で、一体長期的に見通した場合に、どういうふうな経済見通しをつけながらやっていくかということは、いま作業中だろうと思うのでありますが、「高能率経済を検討」ということで、日経の四月三日には非常に大きく経済企画庁経済政策がトップに、大きな活字を使いまして出されておる。これを見て私は感じたのですが、中を見てみるとあまりたいしたことはない。  そこで、「高い成長物価安定」、これは望ましいことに変わりはございません。これをはたしてどういうふうにして達成をしていくのかという政策手段が物価対策であるし、また経済政策でなければならぬ。それについては一つのマクロ的な立場からの物価安定と、ミクロ的な意味における物価安定の施策がなければならないと思うのです。そこでこういうふうに大きく出された以上は、あなた方はそれに沿うように——国民期待を持っていると思いますから、それはおれたち知らぬぞ、出したほうが悪いのだといえばそれまでの話ですけれども、新聞に大きく書き立てられて宣伝をしてもらっている経済企画庁としては、まさにわれわれはそういうような方向国民期待に報いるつもりだという何か抱負がございましたら、この際菅野長官から、国民期待にこたえる意味において、御説明いただいたらけっこうかと思いますが、いかがでございますか。
  72. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 日経のほうでどういう感じでそういう見出しをしたのか、内容を見ればたいしたことないというお話でしたが、これは大蔵大臣が財政見通し、私の経済見通しのときにも、正月に本会議で申し上げたことでありますが、安定した経済成長を持続せしむるという一方の目標、一方では物価は安定せしむるということ、それを四十四年度の財政経済の基本にしたいということでやってきておるのでありますから、したがって経済成長します。そこで、高いというようなことが書いてありますが、とにかく経済成長しますが、しかし四十三年度のようには経済成長しないという見通しをしております。それは、大体下期になれば世界的に経済が鈍化しやせぬかということは、これは日本ばかりでなく諸外国もそういう見通しをしておりますし、先ほどもちょっと申し上げましたが、ニクソンの物価対策なり、あるいは西ドイツの物価安定の政策などをやりますれば、やはりこれは経済がそう無制限に成長するというわけのものではない。経済は多少押えぎみだ、ということは、すなわち輸入の制限をやる。たとえばアメリカのように大幅な黒字予算ということであれば、したがって輸入の制限ということも考えられる。そうなってくると日本経済にも影響を及ぼしますからして、したがって四十四年度は四十三年度のようには経済成長しないが、しかし依然として九・八%の実質上の経済成長を見るという見通しをして、それによっていろいろ政策考えておる次第であります。
  73. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 実質九・八%の成長に持っていくための政策手段ですが、「エコノミスト」の四月八日号によりますと、これに日銀の吉野さんの記事が出ておるのです。その中で、西ドイツは過熱的なインフレ的な景気後退ですか、それを押えるために中央銀行が長期の国債のオペレーション政策を取りやめておるようですね。そういうような政策をこの際とらなければならないし、それからなおそのほかに、証券担保の貸し出し金利を一%、公定歩合のそれよりも高目に金利操作をするとかなんとかというようなことやら、あるいは去年から実質的に平価を四%程度切り上げて、そうして過熱状態におちいらないような、そういう経済政策をやるというような措置がとられておるようです。  一体、いま日本景気調整政策は、いわゆる財政の面と金融の面から加えているわけなんです。経済企画庁の菅野長官経済学博士だというふうにわれわれも聞いておる。そこで、通貨政策としてやっております大蔵省なりあるいは日銀の今日の政策というものを、あなたは成長論者だというふうに受け取られるような発言もしておられるようでございますが、一体いまの金融政策というものをどういうふうに見ておられるわけでございますか。西ドイツがそういうような長期国債のオペレーション政策を中止しておるというような記事を見まして、それくらいしなければ——卸売り物価も相当上昇しているようでございますし、世界的に高金利の時代を迎えている中でのこれからの経済運営でございますから、インフレ懸念の傾向の中にあって、日本物価上昇の足取りが早まっているようでございますから、そういうようなときに、慎重に配慮するというだけでは、一体何をやろうとしておるのか。ただ窓口のポジション指導だけでこの問題が片づくように考えておられるかどうか。あなたは経済閣僚の一人として、物価政策の上からどういうふにこの問題と取り組もうとお考えになっておるのか、お考えがあればこの際明らかにしてもらいたいのでございます。
  74. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 物価に対しての金融並びに財政政策としては、いまお話しのとおり、西ドイツは三月二十日にその対策を発展したのでございますが、その中には、できるだけ公共投資を繰り延べするということをいっております。それから公債の減額ということをやっておる。これは、福田大蔵大臣がしばしば公債の減額ということを日本の財政政策としてやると言うておるのでありますが、要するに、西ドイツがとっておる政策にも、それからアメリカがとっておる政策にも、やはり金融財政政策があるのであります。そこで、金利の引き上げということは西ドイツでもやっておりますが、これはヨーロッパの関係上、他の国がみな金利を引き上げておりますからして、西ドイツも多少金利を引き上げをやったと思いますが、日本では私はまだ金利の引き上げをやる必要はないといういまの私の考えです。というのは、日本が一番金利は安いのでありますが、それにもかかわらず世界の流動資金が日本へ集まっております。ということは、日本経済が最も安全だという考え方を世界の人が持っておるのであって、でありますからして、そこへ日本の金利を上げるとますます日本に資金が集まるということになりますから、私はいま金利の引き上げはやる必要はない。ただ民間の設備投資が過度にならぬように、オーバーにならぬように、それにはやはり銀行がひとつ指導してもらわなければならぬということでいいのではないか。もし民間設備投資が非常に伸び過ぎるというようなことであれば、そのときには金利の引き上げをもちろんやる必要があると思います。そういうことで、私はいま政府がとっておる態度でいいと思います。しかし、今後の事情の変化によっては金利の引き上げもやるし、あるいはまた公共投資の繰り延べもやらなければならぬということも、それは今後の事情によっては機動的にやる必要が起こるかもしれぬということだけ申し上げておきたいと思うのです。
  75. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 国際的に見て流動性を増大させるというようなことはすべきじゃないと私たちも思っております。しかしながら、日本のいわゆる資本輸出と輸入の関係を見てみると、差し引き八億ドルくらい日本のほうが対外的には資本が流出しておるという状態の中で、外貨が三十億ドルをこえる状態にたまってきた。それは、基本的にはそれだけの生産力というものを、日本経済の力が自力としてたくわえてきたということだろうと思うのです。その中において、これから大型化した経済体制の中で物価を安定させるための政策というもの、それをマクロ的に推進していくためにはやはり幾つかの柱を立てなければならぬと私は思うのです。そこで、その柱をどういうふうに立てて推進をしていこうと考えておられるのか、その点をお伺いをしたいわけです。
  76. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 経済の全体的な動向というものと物価の問題は、御指摘のように非常に密接な関係があると思います。四十四年度の経済運営全体について申し上げれば、先ほど来長官が御説明申し上げておりますように、私たちは、いまの実勢といいますか、いまの経済の実勢というものは実質的には一二、三%ぐらいの高いもの、こういったものが去年の暮れごろまでの経済の実勢だろうと思うのであります。こういったものが海外の要因と相まって、また四十二カ月を迎えておる大型景気の先行きでもありまするので、私どもはこれが漸次鈍化をしていくだろう、こういうことからことしの経済見通しを九・八というので見通しておるのであります。もちろんこの中には、適切な財政金融政策の運営と相まって、特にいままで上昇機運の高い民間の投資設備、在庫を含めた民間の投資というものが三〇%から昨年度は二〇%台へ、そして四十四年度は一六%前後というところまで落ちてくるだろう、またそういうふうに財政金融政策を運営すべきであるという考え方で、実質の成長率を九・八というふうに私ども考えております。その限りにおきましては、一つ目標、つまり設備投資を一六%前後に持っていき、そして全体の経済の規模というものを実質九・八くらい、一〇%前後に持ってくるという一つの基準を頭に置いた財政金融政策をとりたい。また、それは経済のことでございますからしょっちゅう動きますので、その時期に応じた機動的な対策をとりたいということであろうと思います。  こういった観点から物価の問題と関連をして申し上げますならば、やはり総需要の管理というものが一つ物価政策の重要な基本的な課題であるということがいえると思います。こういったような総需要の管理という一つの柱、一〇%前後の経済成長ということを目標にした総需要を財政金融でもって維持していく、いまの段階からいえば若干スローダウンさしていくという感じが一つあると思います。それから第二の問題は、これは従来からいわれておることでございますし、「経済運営の基本的態度」にも書いてございますように、私どもとしては従来から引き続き構造政策というものを強く推進をしていく。第三には、今後の輸入の自由化問題ともからみますけれども、輸入政策というものを適時発動していく。その他こまかい点は多々あると思いますが、あらまし申し上げれば、そういう全体の経済の流れの中での物価政策ということであれば、そういうことではないかと思います。
  77. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 まあ設備投資を適切のものに押え、なお総需要の管理をやっていくという考え方ですが、その中で、いままで日本経済が高度成長をたどってきたその中には、農村の名目的ななにが非常に高いと思うのですが、やはり農産物の価格を中心にする一つの需要政策というのですか、高度成長経済の一翼をになった一つの柱があった。それからもう一つの柱は、やはり国民の個人消費支出の増大というもの、特に最近においては耐久消費財をはじめ住宅投資等に対する需要が非常に増大をしている。そういうような中で、これからの新しい成長産業というものは住宅関連産業であるというようなことで、株もだいぶ上がってきているようでございますが、そういうようなものが一つの有効需要として働いてきた。  ところが今度、消費者米価の問題は、これは今後問題になりますが、いわゆる生産者米価も消費者米価も据え置きという一つ政策がとられ、自主流通米制度の中で、幾らか自主流通米は配給価格よりも高いところに位置づけられるということになったとしても、低価格政策というものがとられる。片一方、最近、私農村地帯の中で出てきている現象から見ますと、非常に過剰生産ぎみのものがふえてきた。ミカンなどが暴落した姿はもうその例であります。蔬菜にしてもそうであります。非常にひどい状態が出てまいりました。もうほんとうに一時は白菜が二十キロで三十円というような、そういうような暴落ぶりをいたしました。最近は子豚の値段は幾らか持ち合いを続けておりますが、子牛の値段等はこれまた下落しておる。そういうような状態の中で、農村はますます今後——いま固定資産等を売り払って、その譲渡益というものでそれが一つの収入になる、あるいは農外収入、出かせぎ等によりまして兼業農家の形態をたどる中で、全体的な農村の経済はそう落ち込んではおりませんけれども、将来においては、こういうような政策が続いていきますと、一つの有効需要の柱になっておった農村経済が下り坂に落ちていくのではないかという問題を、経済政策の上からも長期的に見ておかなくちゃならないんじゃないかと思うんです。  そのときに、それに代替ができる措置というものは一体どういうふうにするのか、そういうような展望を持ちながら全体の有効需要政策というものを進めていかなくちゃならない。そのときに、どういうような考え方で総需要の管理というものをやって一定の好況を維持していく、安定した成長を維持していくという政策をとろうとしておられるのか、それらの農村の問題については、見通しとしては経済企画庁はどういうような感度でお持ちですか。
  78. 鹿野義夫

    ○鹿野政府委員 いま村山先生言われましたように、農業の問題は、いろいろな面からながめましても、たいへんむずかしい問題にぶつかってきておるというふうに思います。長期的に見た場合に、農業がどういう形で、特に農村を含めて、農村地帯がどういう形で日本経済の中に位置づけられるかということは、これからの長期の経済政策考える場合に、非常に重要な大きな問題点だと考えております。農業の関係につきましては、農林省のほうでも総合農業政策ということをこれから政策的につくり上げていくということでございますが、経済企画庁のほうも、現在の経済社会発展計画をさらに新しい事態に備えまして補正するということで準備作業に入っておりますが、その中の一つの大きな課題は、やはり農業の位置づけを日本国民経済の中で、特に全面的な国際化にだんだん進んでいく中に、農業をどう位置づけるかということを考えていかねばならぬということで、特に委員会を設けて東畑四郎先輩やら多くの方々にもお願いし、特にまた農業以外の目からながめて農業の位置づけをどう考えるかということを十分検討していこうというふうに思っております。  ただ、個人的な感じでこれからの農業の姿がどうかということを考えてみますと、まだそういうことで研究委員会でこれから検討するということでございますが、長期的な計画の関係にタッチしておる一人といたしまして考えますことは、やはりかなり大規模な農業経営が中心になっていかないと、国際的な接触のある日本経済の中で、農業というものはなかなか立ちいかないと思います。そうしますと、農業に従事する方々の数もかなり大幅に減っていかざるを得ない。しかし、都市の周辺の農家の形態というのは、おそらくやはり現在ある兼農的な、兼業農家的な形、その中で兼業の要素がさらに高まっていきましょうが、そういう形の農家というものは、一方ではやはりかなりの数が残っていくのではないか。しかし、農業そのものをささえるのは、非常に大きな規模の、機械化され、高生産性を持った農業が育成されない限り、どうもこれからの日本の農業は成り立っていかない。ちょうどEECで一つの提案がなされて、EEC圏域ですと二月当たりの農家の耕地面積は、たしか平均すると現在十一ヘクタールでございますね。これをおよそ十倍ぐらいに広げたい、八十ないし百ヘクタールくらいの規模に持っていこうという提案がなされて、非常に物議をかもしている。マンスホルト提案でございますね。そのことを考えますと、EECはおそらく、アメリカの農業の規模というのはやはり二月当たり百ヘクタールをこえておりますが、そういうものとの対抗をやはり国際的な視野で考えてそういう提案が実はなされておるのだと思いますけれども日本の場合もそういう意味では、これから国際的に接触していく経済の中での農業を考えるという場合には、ほんとうに農業で太刀打ちしていくような経営規模というものは、かなり大きなものを考えていかなければならないのではないか。しかし一方では、都市の周辺その他に、もっと形の変わった、しかも複雑な経営の農家、おそらくなおかなり兼業的な要素を持つでしょうが、そういうものが相当残っていく。そういう二つの形に分化されていくような姿で農業というのは残っていくんじゃなかろうか。これはたいへん個人的な感覚でございますが、いろいろな方と議論をしている過程に、そんなことを私は個人的に感ずる次第でございます。それ以上のことはこれからの研究の成果にまつて、またお答えいたしたいと思います。
  79. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 それは新しい全国総合開発計画の策定にも関係がある問題でもございますが、とにかく農産物の価格が需要と供給のバランスの関係でくずれて、そのために投げ売りのような形の中で価格が形成をされる。そしてそれが物価のほうには引き下げの要因に働いていく。そういうような形の中で、一時的には物価が下落をする現象が出てきております。しかしながら、これを長期的に見てまいりますと、もうそんなばからしいのはやめたということになって、つくらないようになりましたら、これは際限のない価格上昇が生まれてくる。そういうようなことを絶えず繰り返しながらだんだんに農家人口が減っていく。その中で残っている人たちが一体何をつくりたらいいのかというて私たちに聞くわけです。県の指導者あたりも、いわゆる農業改良普及員というような諸君も、何をつくるように指導したらいいのかといって政治家に聞くような状態が出てくる。これはやはり行政がもっと責任を持ってもらわなければならない分野だと私は思うのです。そうしてなお、そういうようなものを総合調整してもらうためには、経済企画庁がもう少し各省庁のそういうようなものに対する調整の任に当たってもらいたいと思っておるわけです。ですから、これは物価政策の上から見ても、今後のきわめて重要な問題ですから、その点要望を申し上げておきます。  それから、時間がありませんからだんだんにしぼって申しますが、この前私が要求をいたしまして資料をお出しいただきました「物価対策関連予算の概要」というものを、膨大なものをおつくりいただいたわけです。これはあくまでも関連でございまして、そこで端的に長官にお尋ねをいたしますが、経済企画庁で自主的にというのですか、いわゆる自分たちで動かし得る金というものは、ほんとう対策費というものは幾らお持ちなのか。経済企画庁の設置法がありますね。その設置法の第四条の権限規定のところに、「所掌事務を遂行するため、」「物価に関する基本的な政策を企画立案すること。」とある。こういうような権限を経済企画庁は持っておる。そうして経済企画庁組織令第十二条の四の第二号に「重要物資等の価格等の調整」とあり、それから第三号として「長期経済計画に関する関係行政機関の物価に関する重要な政策及び計画の実施に関する総合調整に関すること。」とあって、そういうような設置法上、総合調整の権限等は与えられておるわけです。しかしながら実施する予算は持っておりませんから、かじとりはなかなかむずかしいだろうと思うわけです。そのむずかしいのを推進していくためにはムードづくりだということになってしまう。金がないのですからムードでもつくらなければしょうがないということになったのでは、国民は不幸だと私は思うのです。物価に対する責任を持つべき官庁が、みずからの手足は持たない。そうしてただ調整だけをやって、実力を持っているのはほかの実施官庁だ、こういうことでは、私たちも追及をするのが気の毒になる。しかし、国民は得るものがないということになれば、これは政治、行政の仕組みが悪いということになりますから、ほんとうに責任を持ってあなた方がこたえられるのは一体何なのか。これは国民生活局長に答えていただいて、そうして、大臣が、そういうような状態であれば、これはおれは責任が持ちかねるということで、もう少し政府にハッパをかけるなりしてもらわなくちゃならぬことだと私は思うのですが、ひとつそれを明らかに願いたい。
  80. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 物価対策についての直接的な行動というものはごくわずかであります。消費者保護の問題とかいうようなことでありますが、いまのお読みくださったおことばの中にもありましたとおり、やっぱり総合調整をするところでありますからして、したがって、たとえば先ほど申し上げました米価の問題あるいは交通関係公共料金の問題、これは運輸省が持っていますけれども、私どものほうの同意を得なければこれは実施できないのです。でありますからして、運輸省としては、それは業者から言うてくれば私鉄値上げもしたいでしょう。私どもは、それをがんとしていけませんということを、いま言い張っておるわけであります。でありますからして、やはり運輸大臣経済企画庁方針どおりやりますということをしばしば委員会などでも言明しておるのでありますからして、そういう点についてコントロールしておるわけであります。重要な問題は物価対策閣僚協議会で決定していく。これは閣議決定ですからして、それによってみなそれぞれ各省がやるわけです。そういうことで各省に働きかけて、それで各省に実行してもらうということです。経済企画庁一つのプランを立てるところであって、そういうやはり各省の総合調整をどこかでやらなければ、各省がかってにやっておったのでは、全体的な効果を生ずることができませんから、その意味において経済企画庁が総合調整をして、そして国の方針を立てるということでやっておるわけであります。そういうような意味において非常な権限は持っておりますから、第一線のことは私どものほうではやらずして、各省でやってもらうということで物価対策を実現したい、こう考えておる次第であります。
  81. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 先生のお手元に「物価対策関連予算の概要」ということで説明書を差し上げましたと存じますが、それの七十七ページに「消費者啓発指導等」これが先ほど御指摘になりました、企画庁でいわば自分で使える予算でございます。確かにお話しのとおりごく一部でございます。ただ、物価対策というのは、ただいま大臣から申し上げましたように、一面では経済の運営の結果であり、一面では経済の運営のスタートである。経済そのものであると言っても過言でないと存じます。そのうちの比較的物価関連の強い予算も、そういうような意味において経済省のみならず関係各省にまたがっております。私どもといたしましては、正直に申し上げまして、それぞれの予算を編成する過程にそれほどくちばしをいれておりませんし、実際に使う場合にもそれほどどうこうということは言っておりませんけれども、しかし関係各省と、いわば物価マインドということで絶えず打ち合わせをいたしております。もちろんただいま長官が申し上げましたように、特定の公共料金等をきめます際に企画庁の同意、協議が必要になっておりますから、その点の場合はございますけれども、さらに一般的に指導というような点で、各省とあらゆる機会を通じて連絡をし、場合によっては相当叱吃激励し、場合によってはそういう気持ちになってやってもらうというようなかっこうで進めておるつもりであります。なお不十分なところがあろうかと思いますが、今後ともその点については努力をしてまいりたいと思います。
  82. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 物価関連予算は四千二百億あって、そして国民生活局が使うお金というのは八千七百九十三万九千円しかない。そこに非常に私たちが懸念を持ち、また危惧する数字的な資料の根拠があるわけですよ。やはり予算というのは政策の実行のための裏づけですから、そういうような意味において、もっと経済企画庁はある程度物価に対する政策を点検し、その効果がどれだけのものが期待ができるかという立場からえり分けをして、推進していく任務を持つべきだと私は思うのです。その点で今後また菅野さんの御努力を御要望申し上げておきたいと思います。  そこで最後に、時間がありませんからお尋ねいたしますが、「消費者行政関係予算」を見てみますと、その中でいわゆる危害の防止というような中身の中で、あるいは規格の適正化等のものが出されております。消費者保護基本法が成立いたしましたときにもいろいろな附帯決議がつけられました。まさに消費者の周辺は危険が一ぱいでございますから、その消費者の生活を守るという立場から、今後行政が取り組んでいかなければならないことを政治の段階で要望として決議をしたわけであります。  その中で、今度農林省のJASマークの農林物資規格法の改正案が出ている。ところが食品衛生の立場からは、これは危害防止が現在中心になっておりますが、インチキ食品も横行をして中毒等が出ていることも新聞にときどき出ておりますし、もう少しこの中身を、国民の栄養を保持し、もっと食生活の推進をしていくというような立場に立って、さらに前進をさせるべきではないか、こういうような意見が消費者団体の中から非常に強いわけであります。そこで、ごまかし食品については、加工食品の品質の基準を作成をするというようなことが附帯決議の中でつけられております。ところが、政府はそれに対して努力を約束いたしたわけですが、その食品衛生法の改正はどうも今回見送りになるような動きだと私たち聞いているのであります。JASマークの規制については、これは二日ほど前ですか、閣議で決定をして、国会に提案をされるという運びになったと聞きますが、一体食品衛生法の改正ははかる必要がないのかどうか。消費者の周辺にはそういうような、最近消費者自身が分析ができないような、そして商品の知識がないがゆえに、とてもじゃないけれどもインチキ商品を見破るような眼力がないのが消費者実態ですから、そういうようなのを、衛生基準の強化だけでなくて、食生活の内容を改善するというような立場からもやっていくためには、いろいろな立場から、二重になってもいい、三重になってもいいから、消費者を、国民の生活を守るという立場でいろいろと規制をすべきではないかと思う。  たとえば十円ジュースなどといって売っております。駅のあたりあるいはちょっとした簡単な集会所のようなところに行くと、十円玉を入れたら紙コップで一ぱい飲めるようなそういうジュースのようなものを盛んに売っている。あるいはクリームの入らないアイスクリームがあったりしておりますが、そういうようなものは、食品衛生法上は有害じゃない。有害ではないけれども、カロリーから見たら、これは人工で着色をして人工甘味剤を使って、そして水のかわりに飲むようなものだそうですから、栄養的には価値がない、そういうようなものを売っているわけですね。そういうようなのはやはり、これは栄養的には価値はないのですよという表示をさしたらいいのじゃないかと私は思うのですよ。しかしながら、これは水のかわりには飲んでもよろしいというような表示の方法だってあり得るわけなんです。私たちはそういうような立場から、消費者の生活を守るという立場において問題を取り上げるべきだと考えておるのでございますが、それに対する農林省なりあるいは厚生省なり、そしてまたそれを調整をし推進をされるべき、消費者保護基本法の推進の直接の任に当たってもらわなければならないのは経済企画庁であろうと思いますから、その立場から三者の方々の御意見をお聞きしたいと思います。
  83. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 最初に私から申し上げます。  ただいま村山先生からお話しになりましたように、消費者は、現在のような品物のはんらんの中では、品質を、内容を見きわめて、そうしてそれにどれだけの金を払って、そしてそれがどういう楽しみなりどういう役に立つかということを判断してやるということはなかなか困難な状況でございます。特に食品に関連いたしましては、しょっちゅう買うものでございますが、逆にその点が非常に不十分であるということはまさに現状であろうと思います。そういう意味におきまして、従来ともありました食品衛生法なりあるいは農林物資規格法、あるいは景表法によりますいろいろな品質表示の問題等も、やはりそれなりに改善、充実をいたして、その点の歩を進める必要があるだろうというふうに私ども考えるわけでございます。そういう意味におきまして、昨年のいろいろな附帯決議に関連いたしまして、関係各省それぞれ御努力を願ったわけでございますが、正直に申しまして必ずしも打撃率は高くないということで、私どももこれはまことに遺憾だと存じます。ただ、とにかく改正案を提出をいたす運びになる、あるいは政令、省令の改正の準備をして、少しずつでも状態を改善していくという方向へは歩んでおると存じますので、一そう私どもといたしましてもそういう点については協力をいたしまして、あるいはまたさらに事態を進めていただくように各省——こういうことはを使うと何でありますが、鞭撻をいたしまして、御指摘になりましたような問題を少しずつでも解決をしたいというふうに考えております。
  84. 宮崎武幸

    ○宮崎説明員 農林省におきましても、ただいま国民生活局長がお答えになりましたのと大体同趣旨でございます。最近におきます加工技術の発達というふうなことと、それから消費支出の増大ということに関連しまして、非常にに食品のバラエティーも富んできております。消費者のサイドから見ますと、これの選択ということが非常にむずかしくなっておるわけでございます。私どもとしましては、従来から優良な食品を普及し、国民に供給する、こういう観点のもとに日本農林規格制度というものを持っておったわけでございますが、この制度の発足以来、制度的にはほとんど手直しもなく今日に至っておりますし、制度的にも不十分な点はあるというふうなこと、それからもう一つは、先ほど申し上げました消費者の選択の手がかりを加工食品について与える、こういうふうな観点から、このたび日本農林規格制度の改正ということを考えまして法案を提出いたした次第でございます。今後もその方向に沿いまして、運用等についても十分配慮してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  85. 野津聖

    ○野津説明員 いま村山先生から御指摘がございましたように、食品衛生法につきましても、昨年来、消費者保護基本法が制定されまして以来、その線に乗りまして、厚生省の業務でございます国民保険という立場から検討すべきだということで、鋭意検討を続けてきたわけでございます。その中心言となりますものは、食品の表示制度というものを中心といたしまして、国民の健康保持のために、あるいは健康の増進のために選択するという意味での表示を強化していくということで検討してまいったわけでございます。ただ、これは実際問題といたしまして、法律改正をいたしましても、それが実行力があるかどうかというふうな技術的な問題がからんでくるわけでございます。それからさらには、現在の監視、検査体制というものが整備されておりませんので、せっかく法律をつくりましても、実効ある形で国民の保険のために役に立ってくるかという点の問題がございます。こういうような部分の解明を続けていくということで、現在まで検討を続けてまいったわけでございますが、現在のところそういうふうな時間約な関係がございまして、とりあえず現在の食品衛生法、これは先生から御指摘がございましたように、飲食物に基づきます衛生上の危害の発生を防止する、こういうふうな中で、可能な限り消費者保護という見地から政省令を改正いたしまして、早急に実行できる形をとりまして、さらに食品衛生法の改正の問題につきましては、他の制度等の関連もございますので、十分検討を続けまして、前向きに、できるだけ早い機会に成案を得るようにいたしたい、こういうことで、現在とりあえず実行できます関係の政省令についての改正を検討している状態でございます。
  86. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 予算を見てみましても、食品衛生の中身については指導員の養成経費あたりがわずかに出ている程度で、法律を出しても実行できるだけの予算を持ってないわけですから、それだけ準備がおくれているんだろうと私は思うのですが、いずれにしても、世間では、農林省ベースにやられてしまって、農林省というのはイコール生産者の側に立っておる官庁じゃないか、厚生省消費者の側に立って問題を考えてもらわなければならぬのに、食品衛生法の改正案を厚生省は出し切らぬじゃないか、こういうような見方が非常に強いわけですよ。はたしてそうであるかどうかということはこれから検討をしてまいりますが、そういうようないわれなきそしりの声を受けることのないように、ひとつもっと前向きで厚生省は取り組んでいただきたいと思います。  そこで、もう時間がありませんからこれでやめますが、経済企画庁は今度の国会で、当該委員会消費者を保護する立場で何か法律案を提案される用意がございますか、ないですか。
  87. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 経済企画庁から消費者保護基本法の関連で法律案を提出するという予定はございません。
  88. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 ほかに消費者保護等に関係がある問題として提案される予定があるかどうか、御承知ですか。
  89. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 たとえば通産省におきましてはガス事業法の改正考えております。それから若干おくれておりますけれども、建設省におきましては、現在宅地審議会に諮問をいたしておりますが、その答申があれば例の宅地建物の割賦販売に関する法律案を出したいということで準備はいたしております。それから、これはすでに終わったことでございますが、地方自治法の中で、はっきりと消費者保護の仕事を地方自治体の仕事としてうたうというような法律案が出ております。
  90. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私はこの際委員長に要請を申し上げておきたいと思います。というのは、この前、議会のほうで、議員立法として消費者保護基本法を提出して、そうして成立をいたしたのがこの委員会でございます。政府消費者保護のことについては、残念ながらあまり熱意がございません。法律案という形で出てこないのであります。そこで、今度この委員会は、このままの姿でまいりました場合には、法案の審議をしないで一般論を論議をするという形になってしまうことになるおそれがある。そこで、農林物資規格法の一部改正案が農林省からこの際出ております。これらは従来のものにかてて加えて表示の方式等についていろいろ拡大をして、消費者の利便に供しようという中身を備えているわけでございます。ですから、これらの問題については農林委員会で審査をするかあるいはこの物価対策の特別委員会で審査をするのか、今後付託をされるところはどこになるかはまださだかでございませんけれども、これらの問題について、事情が許す限り私はこの委員会で論議をすることが、今後の消費者行政を推進していく上において、政府を鞭撻することにもなるし、また政治的に見ましても、今後の法案を提出させる一つのきっかけになるのではなかろうか、こういうふうに考えておりますので、委員長のほうにおかれてはそれらの要望に対して善処方を要請申し上げておきたいと思います。  以上で終わります。
  91. 帆足計

    帆足委員長 ただいまの村山議員からの御要望に対しましては、これは御趣旨はまことに合理的ですから、十分理事会で検討いたして……。  同時に、経済企画庁といたしましても、ただいま各委員から御指摘になりましたような各論につきまして、また関係官庁につきましても、御答弁を、御質問に対して風のごとく受け答えするのでなくて、具体的実績があがるように御協力をお願いしたいと思います。  なお、菅野国務大臣から、インフレーションの一般の流れを防止するために当面は五%、しかし目標は三%以下にまで持っていきたいというお心持ちのほどには——物価委員会といたしましては理事会におきましてもちょいちょい話に出ておりますが、これは基本的重要な課題でございまして、五カ年後の将来を考えますと、日本経済の死活に関する問題でございますから、当委員会におきましてもまた理事会におきましても十分に検討いたしますし、そのお心持ちのほどには、企画庁長官に御協力もし鞭撻もいたして尽力いたしたいと存じますから、この問題につきましても引き続き検討いたしたいと思っております。  この際、本会議もございますから、暫時休憩いたします。    午後一時三十四分休憩      ————◇—————    午後三時四十三分開議
  92. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員長代理 休憩前に引き続き会議開きます。  質疑を続行いたします。岡沢完治君。
  93. 岡沢完治

    ○岡沢委員 きょうは、私はタクシー料金値上げ問題を中心にしてお尋ねいたしたいと思いますが、最初に、現在出ておりますタクシー料金値上げの申請の実態について、ことに、公共料金抑制という大方針に反して、この三月一日には滋賀ではすでに二〇%をこえる値上げをお認めになったようでございますけれども、そういう事情も含めて御説明いただきます。
  94. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 今年の三月十一日現在で、全国九十七ブロックから一万八千七十八社のタクシー、ハイヤー運賃改定の申請がございます。それから、昨年の四月以降改定をいたしましたものが、ただいま御指摘の滋賀等を含めまして十一ブロックの五百七十九社でございます。ちなみに、全国を百二十九ブロックに分けまして審査をやっておるような次第でございます。
  95. 岡沢完治

    ○岡沢委員 いま、百二十九ブロックあって、九十七ブロックまで値上げの申請が出ているということでございましたが、その申請の特色ですね、地域別にあるいは業種別に、正確でなくてもけっこうです、もし傾向について特色的なものがありましたらお答えいただきたいと思います。
  96. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 現在の申請は、最近におきますところの原価構成要素の値上がり、中でも人件費等の値上がりを理由にいたしました申請でございます。それで、現在出ておりますものが、いま申し上げましたような九十七ブロックでございまして、おおむね全国的でございます。これは大都市、すなわち七大都市のような大都市と、それから県庁の所在地、それからさらに地方というふうに分けられると思いますけれども、現在ある申請は、おおむね大都市も地方も出ております。  それから、その内容でございますけれども、ブロックごとに分けておりますので、たとえば大都市におきましても、大企業と中小企業とが一緒に申請をいたしておりますので、申請それ自体につきましては特段の特色は見当たらないと思います。ただ経営の内容につきましては、大企業も中小企業も、理由は人件費の高騰でございますが、経営の内容からいいますと、大きな差までは認められませんが、概していいますと、やはり大企業よりも中小企業のほうが経営の内容は悪いというふうに考えております。
  97. 岡沢完治

    ○岡沢委員 いま御答弁の全国的数字からいってそうなりますが、むしろ逆に申請の出ていない三十ブロック、これはどういう地区でどういう特色があるのか、またこれは、いま出ていないけれども出る可能性は十分考えられるところなのか。どういう理由で出ていないのか。大勢が値上げ申請を出されているだけに、かえって出ていないほうを御指摘いただいたほうが、何か問題点をクローズアップすることになるかと思いますので、お尋ねいたします。
  98. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 たとえば北海道につきましても、出ていないところは五地区ございますけれども、これは地方のほうでございまして、札幌地区等は出ております。それから仙台が二地区、それから新潟局の管内が五地区、それから名古屋の管内が一地区、大阪が四地区というふうな数字でございまして、出ていないのは、全国を百二十九ブロックに分けておりまして、それで出ていない地区がいま申し上げましたようにあるわけでございますけれども、これらの地区は、中には若干業者間でいろいろ意見がある場合、それから前回の改定との時間的な問題その他があるかと思いますけれども、何か特段にこの地区が非常に収支状態が特色があるというようなものとは考えられないと思います。
  99. 岡沢完治

    ○岡沢委員 いまのお答えの中で、中小企業大手を比較して、中小企業のほうが値上げ要請に関する希望が強いという趣旨のお答えがございました。これはきわめて素朴な質問でございますけれども、この間私がタクシーに乗りましたら、個人タクシーの運転手でございましたけれども値上げは当分ありませんよ。なぜかと聞きましたら、大手の具体的な名前もあげておりましたが、いましばらく上げないことによって中小企業は行き詰まる、大手企業が中小企業を買い取るのに非常にいい条件になるので、おそらく——政治力の強い人の名前をあげておりましたが、この人が介入しておる限りは、しばらく上がりませんよと言っておりました。国民にとってはいいことでございますけれども、そういう事情で値上げが抑制されるとなるとまた問題があると思います。そういう事情は、おそらく単なる推測だと思いますけれども、そういう気配と申しますか、何か事実があって煙が出ているのか、その辺のところをお尋ねします。
  100. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 タクシーのような区域事業の申請は、同一ブロックは同一運賃の原則でやっておりまして、申請の場合におきましては、関係の協会等に委任状を提出いたしまして、同じようなものを申請をいたしておりますので、特にいま御指摘のような点等は、おそらく憶測であって事実ではないと思います。  なお、個人タクシーにつきましても、やはり大都市の個人タクシーは法人タクシーと同じように、現在申請が提出されております。
  101. 岡沢完治

    ○岡沢委員 三月一日に滋賀で値上げの御認可があったようでございますけれども、その前後に、運輸省としては近い将来京都とか奈良、和歌山、兵庫についても認可の方針で検討したいという趣旨の御発表が、私は新聞で見たのですけれども、あったようでございますが、そういう事実はございますか。
  102. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 他の地区につきましても、これはケース・バイ・ケースでございまして、経営の内容等から見まして改定の必要があるということになりますと、所定の手続その他をやりまして認可するわけでございますけれども、いま申し上げますように、申請の内容につきまして厳格に審査しなければなりませんので、申請があるから直ちに認可するという性格のものではないと思います。
  103. 岡沢完治

    ○岡沢委員 そうすると、いま私がお尋ねしました新聞の記事は間違いだというふうに解していいわけでございますか。
  104. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 申請があります場合におきましては、その申請の内容を審議いたしまして、認可基準等に照らしまして必要がある場合にはケース・バイ・ケースで認可していくということでございまして、現在申請あるものにつきましては、審査の結果でございますところの、どれを認可し、どれを却下するというふうなものを事前に持って処理しておるものではございません。
  105. 岡沢完治

    ○岡沢委員 一般則はわかっているのですが、私は先に具体的に名前にあげて、京都、奈良、和歌山、兵庫の件についてお尋ねしているわけです。むだな時間を省いてもらいたい。  それから、滋賀の料金値上げの御認可のときに、いわゆる山間の割り増し料金、これは廃止をされたようでございますけれども、私も実際問題として、宅地開発、道路の整備等から見て不合理な制度ではないかと思う。まあ地域によると思いますが、この割り増し料金、特に山間地の割り増し料金の廃止ということは、一体方向として一般的に考えていいのかどうか、お尋ねします。
  106. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 山間割り増しにつきましては、三十八年に行政管理庁からの改善勧告がございまして、これを廃止するという方向でございます。したがいまして、現在運賃改定いたします場合におきましては、改定のつど廃止のことで認可しておるわけでございます。
  107. 岡沢完治

    ○岡沢委員 割り増し料金とも関連するかと思いますけれども運賃率が二十五段階に分かれておる。先ほど御答弁ございましたように、全国で百二十九ブロック、非常に複雑な感じがございます。最近の道路事情あるいは交通事情、社会開発等々の進展を見ましたときに、もう少し単純化していい時期に来ているのじゃないか。いまの割り増し料金廃止の方向等を含めまして、料金体系、運賃率等について、今後改定とか地域に応じた単純化というような方向についての御構想があればお尋ねいたします。
  108. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 従来百二十九に分けておりますのは、一つの府県内におきましても府県庁の所在地とその周辺、それから山間というふうなものにつきましては、原価構成要素において相違があります。それと、同じ県におきましても南北につきまして、交通状態、それから総合的な経済状態等が違うという場合がございましたので、相当こまかくブロックを分けておる次第でございますが、今後におきましては、これらはもう少し簡素にいたすべきものであるとは考えておりますけれども、現在ではすでに昨年の春来ケース・バイ・ケースに改定作業を進めておりましたので、従来のブロック別によって作業を進めておる次第でございます。将来におきましてはもっと簡素化したいと考えております。
  109. 岡沢完治

    ○岡沢委員 ここで基本的な問題についてのお尋ねをするわけですけれども、タクシー等の運賃は、申し上げるまでもなしに道路運送法八条によって、自動車運送事業者がこれを定めて、運輸大臣が認可されることになるわけでございます。その基準につきましても八条に規定がございます。そういたしますと、規定の基準に合う場合には当然改定についての承認が与えられるべきものだという感じが私はいたします。適正な原価を償うに足る料金でなくなった場合、あるいは適正な利潤を生む料金でなくなった場合には、申請があれば当然認可なさるべきものだろうと思うのです。ところが一方で、政府物価安定の施策というのは最重点だと、繰り返し当委員会においても本会議においても、また政府のその他の場でも御発言になっているわけであります。公共料金にはいろいろ性格の違いもありますけれども、指摘するまでもなしに、私企業であるタクシー料金等について、政府方針で、物価安定がきわめて大事な要請であるからということだけで、はたして値上げの申請を抑制できるのかどうか、その法的根拠があるのかどうか。けさの菅野長官の他の委員の御質問に対する答弁でありましたように、単に騰貴的な熱をさますのだとかムードづくりということで公共料金値上げ反対だというのは、一般的なスローガンとしてならわかりますけれども政府が直接おきめになるような企業とは違い、特に私企業であるタクシー料金等が、単に政府政策として絶対に抑制の対象になり得るものかどうか、非常に疑問を持っておるわけであります。私ももちろん値上げを要請したり、あるいはまたそれが望ましいというわけではありませんけれども、理論的にいって、八条のどこからいっても、政府方針とかあるいは経企庁の御意向によって抑制ができるという性質のものではないと私は解釈するのでございますが、その辺についての経企庁長官及び運輸省の見解を聞きたいと思います。
  110. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 公共料金の問題につきましては、昭和四十四年の三月十一日の閣議了解によりまして、物価対策閣僚協議会に付議をし、総合的観点から判断を下すこととしてあるのでございます。経済企画庁はこの閣僚協議会の実質的な事務局をつとめておりますし、また物価に関する基本的な政策を企画立案することということになっておるので、公共料金値上げについては、所管省よりの御相談を受けて初めてそこで諾否をきめるわけです。
  111. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 なお、先ほどの道路運送法の「能率的な経営の下における適正な原価を償い」云々、あるいは二号、、三号といろいろございますが、私ども、タクシーにつきまして、いわば理屈も何もなくただストップだということは、法律的に確かに問題があると思います。むしろ、どういう能率的な適正な経営のもとにあるか、あるいは適正な原価であるかということについて、所管省である運輸省から納得のいくまでいろいろお話を伺って公正に判断してまいるということで、御指摘のように、この法律の精神に基づいて、そうしてその法律の中にあります能率的な経営あるいは適正な原価とは何かというところでやってまいるということにいたしておるわけでございます。
  112. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 ただいま企画庁局長から答弁がありましたとおりでございますが、タクシー事業等も、これは申すまでもなく私企業でございます。ただ、道路運送法で認可の基準があるわけでございます。したがいまして、これの申請がありました場合におきましては、能率的な経営のもとにおいてもなおかつ経営の維持がむずかしい事態であるかという点を審議するわけでございまして、原価を構成いたします各要素を詳細に検討いたしますと同時に、現在の収入の状態はどうであるかというような点につきまして調査をいたしまして認可を進めるというふうなことでございます。ただその場合におきまして、所定の企画庁との連絡、協議等の手続をやりまして、物価問題との関連におきましても慎重を期してこれを審議するということでございます。
  113. 岡沢完治

    ○岡沢委員 手続等の問題を私は聞いているんじゃなしに、この料金の認可についての基準は、やはり道路運送法八条ではないかと思います。八条ということになりますと、必ずしも一般物価上昇ということのために、あるいはその抑制のために、運送業者が第八条第二項一号でいう適正な原価を償うことができないような料金、あるいは道正な利潤を含むことができないような料金で抑制されるという理由はないんではないか。私は、タクシー業界には何の関係もありませんけれども、理論的にお尋ねしておるわけであります。国鉄運賃とはちょっと性格が違います。私企業ということが御答弁にもございましたが、事実私企業にとっては国鉄の場合のような国家の補助とか財政の投融資というものがないわけですから、やはり私は、この場合に第八条の原則を無視して、単に一般的な政府政策物価安定が第一であるからということによって、八条を無視して抑制をされるのか、またすべきなのか、その辺のことをお尋ねをしておるわけなんです。もし政府方針によって、これは第八条にかかわらず、物価安定ということで、これは政治家としては至上命令だということはわかりますけれども、私企業の採算の合わない状態を放置して強行するということについては、私は納得できる資料がないような感じがいたしますので、重ねてお尋ねをいたします。
  114. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 先ほども申し上げましたような原則でやるわけでございますが、その場合に問題になりますのは、能率的な経営というのはどういう経営か。あるブロックの中で幾つかの企業がある。その企業のうち、最も限界的な企業まで償うか、限界的な企業まで入れることが能率的な経営といえるかどうか、あるいはどの程度のところであれば能率的な経営であるかというようなことが当然問題になってくるわけであります。その際に、私ども物価担当官庁といたしましては、場合によっては運輸省よりもシビアーな目で見ることは当然であろうと思いますが、いずれにいたしましても、幾つかの企業の中で、どういう企業であれば能率的な企業であるといえるかどうかという問題があります。それからさらに、どういう原価計算がそもそも適正であるか、現実償う、償わないという問題ももちろん判断としては大きな要素でなければなりませんが、しかし現実これだけかかるからということだけで原価を判断していいかという問題もあるわけでございます。そういう意味におきまして、もちろん私企業でございますが、私企業のいわば実態、現実をすぐ容認してそれに承認を与えるということは、必ずしも第八条の要請する読み方ではないのではないかというふうにも考えるのであります。
  115. 岡沢完治

    ○岡沢委員 確かに、「能率的な経営の下に」ということは大前提にあるわけです。しかもその能率的な経営というのは、きわめて断定しにくい流動的な、あるいは非常に価値判断の分かれるところであります。しかし、いままでの改定をお認めになる基準は、一ブロック内の全業者の収支率が一〇〇%を割った場合には改定を許すというのを一応の基準としておられるようであります。これは正しい方向だと思うのです。先ほど自動車局長のお答えになりましたように、百二十九ブロックの中で九十七ブロックが値上げの申請をしている。しかも、申請率は、お答えいただきませんでしたけれども、多いところで五割をこえるんじゃないか。非常に大きな値上げ幅の申請を大部分の業者がしておる。これが全国的な風潮であるということを考えた場合、あるいは従来からのタクシー料金値上げの経過と他の物価上昇率、人件費の上昇率等を考えた場合に、私はおのずから、「能率的な経営の下に」という大前提はございますけれども、現在のタクシー料金が必ずしも適正であるかどうかということについては、簡単にそれが間違いだ、値上げ申請は無理だということが言い切れないようなものがあるような気がするんです。  ところで、政府は従来、特に企画庁長官は、国民の意思を代弁しての御発言だとは思いますけれども、今年度は国鉄運賃以外は、公共料金値上げは原則として認めないという方針をお出しになった。そのかけ声はいいし、また姿勢としては正しいと思いますけれども、しかし資本主義の原則なりあるいは法の規定を無視してまでそれはできないんではないかというふうに私は感ずるわけでございます。これは企業性と公共性との非常にむずかしい問題ではございますけれども、簡単に、政府政策として国鉄運賃以外の値上げは許さないという方針については、私は看板に偽りがある、またそういう理論をおっしゃること自体が矛盾ではないかというような感じが強いだけに——もちろん不当な値上げに応じていただきたいというわけではないし、私も値上げせずに済ませるならそうしてほしいし、特に合理化その他についても業者の方に要求するところきびしいものがあっていいと思いますけれども政府がおっしゃるように、値上げ抑制が大原則であって、国鉄以外は認めないというお立場については、理論的に無理があるんじゃないかということを重ねてお尋ねしているわけでございますが、納得のいく御説明をいただきたいと思います。
  116. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 従来、国鉄値上げがありますと、もうたいがい便乗して値上げをみな申請しておるのです。当然われわれの交通関係公共料金値上げしてもらえるものだという空気がある。この空気は払拭しなければならないと思っております。だから、国鉄料金値上げしても、便乗的に値上げができるものでないという一つ考え方を植えつける必要があると思います。それがやはり他の一般物価にも影響しておるのでありますからして、そこでこの際は便乗値上げは許さぬということです。ただし、実際もう値上げしなければやっていけぬということがはっきりわかれば、現にそれは許しております。現に私が大臣になってからも許しておるのです。そこで、いま申しましたとおり、実際ほんとうにやっていけないかどうかということは、これは運輸省でずいぶん調査してもらえると思いますが、私どもでもなお詳細な調査の結果を運輸省から聞いて、そしてこれは実際やっていけないならいけないということをよく見きわめてやっていきたいと思います。なるほどこれは私企業でありますけれども、やはり事業を始めるについては許可を得ておるし、料金についてはもちろん許可を得ておるのでありますから、半分はやはり公共的な事業でありますからして、そういう立場からやはりむやみに、何でも言うてきたらすぐ上げてやるというわけにもいかぬと思います。だから、国民がみんな納得のいくようにしてなにしなければなりませんし、それから料金を上げること自体は、なるほどそれによって自分のタクシー会社の経営を救うということになるかもしれませんが、またタクシーの料金値上げによって使用率が下がるということ、一般のお客さんが利用することが下がるということも考えてもらわなければならぬ。それから同時に、物価が一般に上がれば、少々もうけがあっても物価の騰貴によって生活には利益しないということは考えられるので、この際にはひとつ物価を押えて、そしてそれによってまず生活を安定させてあげよう。一般国民にそういうふうに生活を安定させようというのがいまの政府の国策でありますから、したがって、タクシー業者個人についていえば、少々利益が減るかもしれない。少々利益が減っても、この際にはひとつ国策に準じて協力してもらうということをお願いしておる。それで私のほうでは協力してくださいということをお願いしておる。これはだめだ、法律的にだめだということは言っていない。ひとつこの国策に協力してくださいということをお願いしておる次第でありまして、そういう意味で、この際には物価影響を及ぼす交通関係公共料金値上げを抑制しようという方針政府は進んでいくつもりであります。
  117. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私も、もちろん物価抑制について反対なんということではなしに、またタクシーも安いに越したことはないので、利用者の人たちももちろんそうなんですけれども、私の質問の要点は、理論的に、単に物価抑制が国民の要請だ、国民の希望だ、政府方針だということで抑制できるか。利潤も減るというような程度で協力を要請する、これは当然でございますけれども、いま私が指摘いたしましたような八条二項一号の適正な原価も償えない、あるいは適正な利潤も生めないというような状況、もちろんその大前提の能率的な経営——能率的な経営とは何かということについては、先ほど局長からもお答えになり私も申し上げましたように、これは厳正に何かといえば、適正な経営とはむずかしい問題でありますけれども、やはり一般的な客観的な基準はあるだろう。そういう前提からいたしました場合に、この法の精神あるいは法の規定を無視して、単に物価抑制が国民的な要望であり政府の大方針だから、また政治家もそれを希望するからということで私企業に対して犠牲をしいることが、赤字経営でも許さないということがあり得るのかどうか。これは大臣自身も、赤字の場合は許したということをおっしゃっておられます。それなら政府方針として国鉄運賃以外は原則として認めないということをわざわざおっしゃることは、理論的にはできないことを——午前中の話で、物価安定のムードをつくる、騰貴感をなくしたいというような意味ならわかりますけれどもことばに酔えますけれども、あまり実質的な意味はないのではないかということを重ねて聞いたわけであります。  こんな問答を繰り返しておりましても時間のむだでございますので、次に進みますが、ただ一点だけ、それでは国鉄運賃一五%の値上げとこのタクシー料金等の値上げとは全く無関件、無縁だと経企庁長官はお考えになりますか。
  118. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 お話しのとおり、全く無縁です。無縁というのは、鉄道料金値上げすればタクシーの料金は当然値上げすべきものだという考え方は、これは払拭してもらいたいということです。
  119. 岡沢完治

    ○岡沢委員 ここで経企庁のほうに、いわゆる公共料金とは何か、おさらいになるかと思いますけれども公共料金の定義というようなものにつきまして、一応すでに閣僚協議会の決定等もあるようでございますけれども国民にもわかるように、簡単でけっこうですから、お答えいただきたいと思います。
  120. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 公共料金は私ども通常こういうふうに考えております。料金ということば自体がさらに問題になるわけでございますが、まず広く価格料金というのを含めて公共料金といっております。たとえば米なんかはいわば料金ではなくて価格であろうと思いますが、一応便宜上公共料金の中に入れております。そのきめ方、態様といたしましては、国会の議決を得る必要のある、たとえば国鉄の基本料金、あるいは政府がきめる、たとえば国立学校の授業料であるとか、非常に小さなものですと戸籍手数料であるとかあるいは博物館の入場料であるとかもございますが、消費者米価等は明らかに政府が自分で、きめていくということになると思います。それから運輸関係も、いまのような私企業ではありますけれども、その公共性に着目して政府の、あるいは政府機関の認可を得るというようなものであると思います。大体そういう態様できまっていくのが公共料金考えておるわけでございます。そういう態様できまる必要があるのは、ある種の公共性があるからであるというふうに考えて差しつかえないと思います。大体、現在消費者物価指数のウエートの中で、そういう形で政府が直接ないし受け身で関与しております物資ないしサービスのウエートは、約二割程度に見ております。必ずしも学問的にきっちりお答えできたかどうかは疑問ですが、実はわれわれが行政の実務を扱っております公共料金の概念は大体そういうことだと思います。
  121. 岡沢完治

    ○岡沢委員 お答えのとおり、公共料金は何かということを別に厳格にきめる、あるいは規定するということは非常にむずかしいかと思いますが、一般に政府が関与できる料金、あるいは価格の決定に関与できる範囲のものをいうというふうに解した場合に、一般の国民は、今度の政府の大方針は、国鉄運賃の一五%値上げ以外は公共料金は上がらないのだというような感じを、政府のPRよろしきを得たのかもしれませんが、持っておる。そこで、一方どんどん、滋賀の例もそうですし、いまの問答からいたしましても、当然一般的な赤字が確認された場合に、タクシー料金等についても上がるほうが当然だという解釈になろうと思います。看板に偽りありという感じを国民は持たざるを得ない。経企長官の便乗値上げ抑制とか、あるいはムードづくりという意味ならわかりますけれども、その辺についてもやはり国民をある意味ではごまかす、というと語弊がありますけれども、誤解を生むような発言は避けられたらいいのではないかという感じが私はいたします。  あわせまして、先ほどの料金改定について、料金を上げることによって利用者が減るというようなことも含め、あるいはまた第八条の二項三号の精神からいうと、滋賀のような場合に、一切利用者である国民料金値上げについての意見開陳等の機会もなしに、いわば抜き打ち的に上げられる。これは法律的に手続が要るわけじゃありませんけれども、やはり国民の納得の上で、あるいはまた経営者等が、もし合理的な要求であればなおさらその辺を、単に認可官庁である運輸省が知っておるというだけではなしに、国民の前に明らかにして、こういう料金値上げについては、もし必要な場合は、認可がなされてしかるべきではないか。一日に八百万人をこえる利用者があるとすれば、いわば大衆の足ですから、また物価にもきわめて影響のあることだけに、そういう手続的にも親切なという語弊があると私は思いますけれども国民理解のもとに、値上げが許される場合は許される。またそれによって愛されるタクシー、あるいは親切なタクシーということを実現する一つの手段ではないかと思いますが、この辺について自動車局長答弁お願いいたします。
  122. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 道路運送法の規定にございますが、申請者、それから利害関係人等の申請がありました場合におきましては、聴聞等をいたして意見を聞くことに相なっております。それから、やはり道路運送法の八条二項三号にありますように、「旅客又は貨物の運賃及び料金を負担する能力にかんがみ、旅客又は荷主が当該事業を利用することを困難にするおそれがないものであること。」という基準がございます。したがいまして、能率的な経営のもとにおける原価計算の要素を審議いたしますと同時に、支払うほうが支払うことができるものでなくてはならないということが当然でございますので、改定いたします場合におきましても、増収率等につきましても無理がないように、極力経営の合理化等も導入いたしまして実施をするように考えております。
  123. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私も一般論を聞いているのでなしに、具体的に滋賀の場合にそれじゃ聞かれたらどうか、また聞くべきではなかったか、聞かれたなら聞かれた。また今後、各地区で値上げの申請が、御答弁がありましたように出ているわけですけれども、手続的にそういう方法をおとりになる意思があるかどうかを聞いているのです。局長のお答えは一般論だけで、私の質問をほんとに聞いてお答えになっているのかどうか、はなはだ残念に思います。
  124. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 ただ一般の本省権限で行なっているものにつきましては、運輸審議会という機構がございまして、そこに諮問をいたしておりますけれども、地方のタクシー、ハイヤー料金は陸運局長の権限でございますので、正式な諮問委員会等の規定はございません。したがいまして、法律的にそういうものがございませんが、一般的にこれらのものにつきましては慎重に審議をするという方針でやっています。ただ、滋賀の場合に具体的にどういう利用者と折衝したかというような点につきましては、現在つまびらかにいたしておりません。
  125. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私は、黒住局長初めてですけれども、非常に不親切な感じを受けるのです。なぜかといえば、これは道路運送法八条によりましても、料金の決定については運輸大臣が認可をすることになっているわけです。扱い上は陸運局長でしょうけれども、それだけに私は、責めを陸運局長にまかされるという感じを、そういうきらいといいますか、そういう感じを受けるような御答弁についてはいささか納得できません。当然、中央における運輸審議会と同じような意味において、陸運局長に対して、料金改定に際しては利用者等の意見を聞く機会を持つべきだという指示があってしかるべきなんで、大臣の仕事の代行を陸運局長はなさっておるのでしょうから、そういう運輸省の方針について、今後どうするか、そういう機会を持つ意思があるのかどうか、持つべきではないかということを私は聞いているわけですから、それに対しお答えになるべきだと思います。
  126. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 タクシー、ハイヤーの運賃料金の認可権限は陸運局長でございます。運賃それ自体につきましても陸運局長でございますけれども、現在は物価関係の問題がございますので、本省と相談をいたしまして、企画庁と運輸省のほうで相談をして、認めるかどうかということを指示してやるわけでございまして、権限は陸運局長でございます。したがいまして、陸運局長のもとにおきまして、個々の申請につきましてこれを諮問するという機関は現在はございません。ただ全体的に、陸運局長には、自動車運送協議会という協議会の制度がございまして、運賃その他の自動車行政に関します根本方針につきまして、それの意見を聞く、あるいは建議を受けるという組織はございますけれども、個々の運賃の問題につきまして、現在の法制のもとにおきましては、これを諮問するという機関はございません。ただわれわれといたしましては、これを処理いたします場合におきまして、やはり世論の動向というふうなもの、利用者の声というふうなものを聞くということは非常に重要でございますから、陸運局長におきましてそれらを十分勘案をして審査して、本省に連絡してくるという、慎重を期した指導をいたしておるわけでございます。
  127. 岡沢完治

    ○岡沢委員 それでは私の不勉強かもしれませんが、道路運送法第八条には、「自動車運送事業者は、旅客又は貨物の運賃その他運輸に関する料金を定め、運輸大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。」という現定がございます。これといまの、陸運局長が認可についての責任者だということの関連を御説明いただきたいと思います。
  128. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 これは法律的には運輸大臣の権限になっておりまして、運輸大臣の権限を法律におきまして職権委任をしておるわけでございます。八条の規定におきましては、これは全部、自動車運送事業の運賃については運輸大臣の認可を受けなければならない、こう書いてあります。その認可の権限につきまして職権委任をしておるわけです。
  129. 岡沢完治

    ○岡沢委員 委任は受けておるかもしれないけれども、認可の権限についてあなたは違うと答えたじゃないか。
  130. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 権限は、ここにありますのは運輸大臣が認可するとあります。その権限を法律によりまして陸運局長に委任……。
  131. 岡沢完治

    ○岡沢委員 法律上は運輸大臣であって、権限を委任しただけじゃないですか。だから最終的な権限は運輸大臣じゃないですか。
  132. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 いや、この権限を委任するのは、法律によりまして職権委任を受ければ陸運局長の名前でもって認可をするということでございます。
  133. 岡沢完治

    ○岡沢委員 こういう問答は、別に消費者にとってもプラスにならぬからあまり深くは言いませんけれども、私はどうも自動車局長の御答弁については非常に不満であるということだけを指摘して次に進みます。  いま、このタクシーに関連いたしましては、値上げを避けたい、あるいは値上げ物価に与える影響等も考えまして、運賃の問題もきわめて大事でありますけれども、あわせまして旅客サービス、特に乗車拒否の問題は国民的な一つの課題ではないかと思うわけであります。一般的に運賃が上がらないで、しかもサービスがよくなれば一番いいと思います。しかしその次には、運賃は上がったけれどもせめてサービスはよくなった、これならまだ国民は納得すると思うのです。運賃は上がった、サービスは少しもよくならない、これでは国民としては踏んだりけったりじゃないかというように感じます。そういう点につきまして、乗車拒否を中心にしまして、自動車運転手の素質の問題あるいはサービス改善の問題について、どういう点を自動車局長としてお考えになっておるか、お尋ねいたします。
  134. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 乗車拒否の問題は、特に東京、大阪等の大都市においてあとを断たないわけでございまして、非常に遺憾に思っております。これにつきましては、総合的な施策が必要だと思います。  まず第一には、需給の関係のアンバランスというものが考えられますので、輸送力不足の地区におきまして増車をしていく。たとえば東京の地区におきましては、昨年の暮れから本年の初めにかけまして、約三千両増車いたしまして輸送力を増強いたしました。増車の場合には、なるべく信賞必罰という趣旨を織り込んでこれを実施していくということにいたしております。  それから、自動車運送事業者、ハイタク業者につきましては運輸規則というものがございまして、これにいろいろのサービスの点等を規定いたしておりますけれども、その運輸規則を徹底的に守らす。  それから乗車拒否につきましての違反でございますけれども、違反につきましては厳重な処分を行なう。これは、運転手につきましては警察のほうにおきまして処分いたしておりますが、さらに会社につきましても行政処分等を行なっておる次第でございます。  それから運転手は、これは特殊の労働でございまして、運転手は直接お客と接触するということでございます。しかも長期間ハンドルを持っておりますので、その運転手の勤務体係あるいは給与体系の改善等が促進されますように、これも労働省等の関係機関と密接な連絡と協力を得て実施をしていきたいと思っております。  なお、運賃改定いたしました場合には、当然これは利用者にも還元すべきであって、その中で最も重要なことは乗車拒否をなくするということであると考えます。さらに今後悪質運転手を排除いたしまして、良質な運転手を確保していく。  それからまた、タクシー運輸の会社は中小企業が大部分でございますから、その運転手に対する福利厚生施設の整備等につきましては、個々の会社がやると同時に、また共同的な力でもってこれを実施するということも必要であるかと思う次第でございます。それにつきましては運転手の登録、いま二つの点につきまして運転手の登録センターのようなものを実現していきたいということで鋭意検討を進めておる次第でございます。
  135. 岡沢完治

    ○岡沢委員 いろいろいまお述べになりましたけれども、現実には、このタクシーの乗車拒否を含めたサービスの悪さについてはいまに始まった問題ではなしに、ずっと引き続いて根本的な解決策を立てられなかったなればこそ、現にそれが続いておるといわざるを得ないかと思います。いま局長がお答えになりました良質な運転手を確保するためにタクシー運転手の登録制度、これは私は画期的な一つの構想だろうと思います。すでに昨年七月二日の「ハイヤ、タクシー行政の改善について」という通達でも自動車局としてお取り上げになっております。これの構想についていま若干お触れになりましたけれども、すでに新聞紙上等でも報道されているようでございますが、いつごろどういう方法で実施なさる御予定か、あるいはそれは単なる机上の空論にすぎないのか、その辺の見通し——すでに国会において提出予定法案の中にも一応顔を出しておるようでございますから、そういう点も含めてお答えいただきたいと思います。
  136. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 本件につきまして、先生いまお話しのように、昨年の七月に一つ方針を通達いたしました場合におきまして、この登録制度を指摘しておる次第でございます。しかし、この登録制度は非常に運転手に直接影響がある問題でございますので、労使双方に対して十分説明をし、その納得を得られなければ、せっかくの制度の実施が円滑にいかないという認識からいろいろ説明をいたしまして、現在労使に対しまして、非公式ではございますけれども意向を打診中でございます。  で、その場合におきまして、われわれが考えております構想は、このタクシー運転手センターを当面は東京、大阪の地域——東京、大阪といいましても、たとえば大阪市だけではなくして、いま一緒に同じような事業区域で動いております守口、堺、東大阪というものを含めての大阪、それから東京につきましても、流しタクシーをやっておりますところの三鷹、武蔵野を加えた区域でございますが、そのような東京、大阪についてセンターを設ける。センターは法人タクシーの運転手の登録、それから法人タクシー運転手の福利厚生施設の設置及び運営、それから法人タクシー運転手の養成、それから運転手に関する指導、これは街頭指導も含みます。その他法人タクシー運転手に関する諸調査を行なう。センターは法人といたしまして、その運営には、利用者、学識経験者、事業者あるいは運転手の代表をもって構成する運営委員会を設けまして、その運営委員会に重要な点を付議して運営をはかっていくというふうに考えております。  これは、この種のものを実施いたします場合におきましては法律を要しますので、現在この内容につきましてはさらにこまかく検討いたしておりますが、登録の場合におきましては登録の要件を定め、それから登録を取り消す場合にどうするか、それから資格の審査会というようなものも要るのではないかというふうに考えておりまして、内容はさらに詳細に検討いたしております。と同時に、これをつくります場合においては、労使双方から準備のために委員を出していただきまして、それらの人にも十分意見を聞きまして、これをできるだけ早くつくり上げていきたいという考え方指導いたしておる次第でございます。
  137. 岡沢完治

    ○岡沢委員 このサービス改善の一つの方法として、すでに先ほど指摘しました昨年七月二日の行政改善の勧告といいますか、通達にも出ておるわけでありますけれども、個人タクシーが一般に法人タクシーに比べてきわめて親切で、あるいは良しな運転手が多いということは否定できない客観的な事実だと思うのです。昨年免許基準等も緩和されて、八月一日からでしたか、年齢等についても引き下げがございました。個人タクシーの今後の認可の方針とか、あるいは昨年実施された基準の緩和と結びつけて何か特徴的な傾向等がございましたらお尋ねします。
  138. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 個人タクシーは御指摘のように非常に評判がいいわけでございます。それはすなわち優秀なる適格者を選んで免許いたしておりますために評判がいいわけでございます。それで、この評判を落とさないように優秀適格者に対して免許をしていきたいと思っておるわけでございます。ただ、時間の問題を見ますというと、法人タクシーは朝から夜までずっと動いておるわけでございますけれども、個人タクシーは必ずしもそうではなくして、毎日勤務いたしておる関係上、一定の時間以上は動かさないわけでございます。したがいまして、やはり大都会におきましては法人タクシーを原則といたしまして、それにプラスして個人タクシーの評判を維持しつつこれを免許していきたいというふうに考えております。  次に、従来は四十歳から五十五歳までの者を免許いたした次第でございますが、昨年の八月一日からは、タクシー運転手で十年以上つとめておる者とか、優秀な者等につきましては、三十五歳以上の者を免許の対象といたしたわけでございます。それで東京につきましては、最近までの免許におきましては二十二名の方が三十五ないし三十九歳で、今度基準をげましたために、免許になっております。  それから、昨年の八月に方針をきめましたが、その前に国会等でも大臣からも答弁等がございまして、三十五歳になれば審査の対象になるということで、七月ごろから急に申請がふえてまいりまして、たとえば四月、五月が百三十人から百七十人ぐらいでございましたのが、六月には二百五十一人の申請になり、七月には五百人以上の申請が出てきております。これは三十五歳に年齢を下げた結果であったと思います。
  139. 岡沢完治

    ○岡沢委員 いろいろこのサービス改善については、各方面といいますか、いろいろな角度から考えられると思いますが、その一つとして、先ほど局長の御答弁の中にありましたけれども、労働省の労働基準局長昭和四十二年二月九日に出しました「自動車運転者の労働時間等の改善基準について」、いわゆる二・九通達というのが完全に実施されるということも非常に大きなウエートを占めているのではないか。もちろん所管は労働省ではございますけれども、運輸省としてもこれに協力なさるお立場にあると思います。この点についても、ぜひ今後ともこの通達が通達どおりに履行されるについて、運輸省のほうとしても労働省と御協力いただき、業者に対する適切な指導等をお願いしたいと思います。  最後に、タクシー料金値上げの問題、最初にいろいろ問答さしていただきましたが、できることなら上げないで済めば一番いいわけでありますが、その一つの方策として、いわゆる時間距離併用メーター制を採用する問題。これはもう外国で広く現に採用されておる制度のように、私も実際に乗った体験もありますし、いわれております。また、特に日本の国産のメーター製造業者なんかに聞きますと、外国への輸出の大部分がこの時間距離併用メーターというようなことを聞いておるわけでもあります。この時間距離併用メーター制一度の採用について、自動車局としてはどういうふうにお考えになっておられるか。  あわせまして、いわゆる人数の割り増し制の問題こういうものも一つのアイデアとして、一方で事業者のほうの収益をあげながら、個人的な利用者の負担を増さずに済ます一つの方策という見方もできるかと思います。それぞれ功罪はあると思いますけれども、この辺について局長の御見解を伺い、そしてもう一点、先ほど持ち出しました四十三年七月二日の「ハイヤー、タクシー行政の改善について」の最後のほうで述べておられます「タクシー事業の協業化、合併等を推進し、事業規模の適正化を図る」ということがございますが、このタクシー事業にとって事業規模の適正とは大体どれぐらいの台数ということを基準に考えておられるのか、その辺についてお差しつかえなければお答えをいただたいと思います。
  140. 黒住忠行

    ○黒住政府委員 タクシーの運賃につきましては、現在は御承知のように、大都会におきましては、たとえば中型車は二キロ百円、あと爾後メーターということで実施しておりまして、一律的に運賃を取っておるわけでございます。ところが、まず第一に、時間距離併用メーターでございますが、これは世界的には相当各地で実施をされております。これの長所は、混雑地域であることを理由とした乗車拒否がなくなるであろう、まあ減少するであろう。それから事故防止対策になるであろう。それからコストからいいましても、その時間はお客さんが借り切っておるわけでございますので、コストを負担してもらっていいんじゃないかということがこれの賛成の考え方でございます。ただそれに対しまして、日本人的な性格からしまして、早く着きたいという場合に、時間がかかったときのほうが高くつくんではないかというようなことに対する批判が一方あるということでございます。それはすなわち、タクシーの料金は、先ほどからもお話がありましたように、原価計算というものの見方と、それから利用者が支払い得るものであるという、利用者から見たものと、両方から検討をしなければならぬと思うわけでございます。  それから人数の割り増しにつきましては、外国においても例がございますし、バス等の運賃と比べまして、現在でも大都会のバスは三十円でございます。そうしますと、四人、五人で乗りますと、近距離の場合、バスよりも安くなるというふうなことがございますので、それらとのバランスを保つためには必要ではないかという意見がございます。しかしながら一方、合い乗りの強要になるというふうな心配、それから乗車拒否を誘発するんではないか、ということは、一人で乗りたいという人に対して拒否されるということが起きては困るというふうな点、それからコストの面におきましては、複数になりましてもあまり大きく開きがないというふうなことがいわれます。その他の制度がございますが、その二点でございます。  しかし、こういうものは一〇〇%長所があるならば直ちに実施すべきであるわけでございますが、やはりこれらの制度には長短があることは当然であると思いますので、長所のほうが大きければこれはぜひ実施したらどうかというふうに考えております。ただし、これにつきましては、時間距離併用メーター等につきましても従来とは非常に違った方法でございますから、今後各方面の意見を十分承りまして検討をしていきたいと思っております。  それから次に、大都市のハイヤー、タクシー業者の適正基準をどうするかということでございますけれども、これはその都市都市に、場所に応じまして、考えなければならぬことで、何両以上が適正であるかということは必ずしも一定しておりませんが、一応新規免許をいたします場合におきましては一定の車両数以上でなければならないということを公示いたしております。たとえば東京特別区におきましてはおおむね三十両以上である、それから大阪につきましても三十両以上であるということを、新免におきますところの最低規模として公示をいたしております。それで、われわれといたしましてはそれを出発点にいたしまして、現在の行政では、台数におきましてはなるべく早く五十両単位になりますように、自動車の数等におきまして考慮をいたして、そういうようなことで指導いたしております。したがいまして、現在におきましては、たとえば東京におきましてはおおむね五十両の目標は達成されておりますし、大阪につきましても近く、万博までにはおおむね五十両は達せられるのではないか。それ以上どの程度の規模がいいかということにつきましては、経営者の能力その他の関係もございますから一律的には申し上げられませんが、一応大都市におきましては五十両を適当な目標として、これをさらに将来は、中小企業というものはなるべく共同の方針1この七・二通達は必ずしも合併を指導しているわけではございませんので、協同組合等を編成いたしまして、協業によって力をつけていただく、そういう指導をしていきたいと思っております。
  141. 岡沢完治

    ○岡沢委員 私の発言中に不穏当な点、特に黒住局長に対して失礼なところがありました場合はおわびをいたしまして、質問を終わります。
  142. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員長代理 有島重武君。
  143. 有島重武

    ○有島委員 朝からずっと、だいぶ時間がたってお疲れのようでございますので、私も一般的なことをいろいろ伺いたいと思いましたけれども、いままでの御質問の中でお考えが大体わかるようなところは全部省略いたしまして、二点ほどに限って伺いたいと思うのでございます。  このたびの政府物価安定政策の中で一番の特徴は、公共料金鉄道以外は全部押える、そういうふうにおっしゃったわけでございますけれども公共料金を押えるというには、やはりそこにはくふうが必要である。そのくふうは、一つには内部の合理化ということもあるでしょうけれども、どうしてもこれは財政でもって補充していかなければならない、そういうことが起こるわけでございます。その物価安定のためにどのくらいのお金を使うのか、公共料金を安定するためにどのくらいの経費が実際にかかっておるのか、その点を伺いたいのです。
  144. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 これは直接のお答えになるかどうかわかりませんが、たとえば国鉄料金値上げの場合でも、政府市町村で財政負担をしなさいということで、大体利子の四百八億円は政府が立てかえてなにする、それから地方の納付金は二十五億円減しましたということで、あれをもしやらなかったらもっと料金を上げなければならぬが、それで料金をなにしておるということです。そういうように国がやっておるわけです。
  145. 有島重武

    ○有島委員 いま菅野長官の仰せられたその数字がございますね。いまのような情勢だと、料金を上げたがっているところがたくさんあるわけですね。その上げたがっているのを経済企画庁長官、が一人でがんばって全部押えておる、そういうことになっているわけですね。押えるために、国鉄の場合にはいまおっしゃった数字があるわけです。ほかのところで、もしもほうっておけば料金は上がるけれども、そのお金は要らなかったというような——それが財政投融資から出る場合もあるし、一般会計から出る場合もあるでしょうけれども、そういうもののデータをひとつ教えていただきたい。
  146. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 それはまあ鉄道料金の中で貨物料金がいままで安かったですね。それを上げてくれという国鉄からの要求だったのです。それは、貨物料金値上げをすればたちまち商品に影響するから上げてもらっては困るということで、それだけ押えたということは、国鉄でそれだけの収入が減るわけであって、それがやはり先ほど申し上げました四百何ぼの中に考慮されておるわけです。財政負担の中でも考慮されて、一方ではそれだけの収入が減ったのだから、したがって利子だけは補給してやらなければいかぬじゃないかというように大蔵省も考えてきてくれていると思うのです。そういうぐあいです。
  147. 有島重武

    ○有島委員 そういうぐあいなんでございますけれども、麦なら麦、塩なら塩、そういうものを全部累積するとどのくらいのけたになるものか。公共料金を下げる方向方向はわかったわけですよ。それをお金で換算するとこういうものになるのだということが知りたいわけです。
  148. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 いま数字等を手元に持ち合わせておりませんけれども、そしてあるいは有島先生の御質問をなおかつ理解していない点があるかと思いますが、たとえば塩につきまして、現在の段階では専売公社が赤になる、したがってその赤が、結局上げなかった場合のいわば財政負担ということになるわけであります。しかし、そういうものはただいまお話しになりましたように、その他のものについてもあり得るわけでございますが、私どもが塩について値上げが困るといいましたその理由は、その分財政負担をすれば上げないで済むというだけの論点では必ずしもなくて、現在の塩の生産の状況あるいは塩の生産の合理化がなおもっと進められるべきである。したがって財政負担という現在の状況をいつまでも固定した形で考えるのではなくて、そういう形にしなくても、合理化が進めば上げなくて済むのではないか。したがって、確かにことしないしは来年等は、合理化が進まない段階では負担の形になるわけであります。この財政負担を一時的にすることが、いわば将来とも事態を解決していくということには必ずしもならない、一時押えの面があるわけであります。そういう意味におきまして、いま御指摘になりましたような塩なら塩がことし幾ら赤字になっておるが、それを上げなくて済ましたのだから、それはその分として幾らであるというような点についてはただいま手元に数字を持っておりません。もちろん資料は出したいと思いますけれども、そういうふうに計算のできない、むしろこちらのほうから、価格を押えていくために、いわば構造の改善をひとつしていただきたいという形で押えておりますから、先生のおっしゃるように数字的に、たとえば私鉄なら私鉄について押えておる、私鉄は赤だろう、その赤は何か財政で見てやらなければいかぬのじゃないかというような形でなかなか出てこないわけでございます。むしろ、料金のストップというのは物価の関係のみならず、物価の関係を通じて構造改善をやって、そしていわば資源の適正配分というところへ落ちつかせようという点があるわけでございます。そういう意味で、もちろん検討いたしまして資料はできるだけつくりますけれども、ちょっと計数に算術的にはあらわれてこないという点を御理解願いたいと思います。
  149. 有島重武

    ○有島委員 当然そうであると思うのですよ。内部的な改善をすること、それから将来を見越していまは押える、そういったこともあるし、これはどうしてもしようがないから急場の補充をするとか、いろいろなことがあると思うのですけれども、数年前に公共料金のあるものをずっと押えた、翌年にはがちっと上がった、そういうことがございます。それでは国民に対しては一種の裏切り行為みたいにもなるわけですね。そういったことを未然に計量的にはっきりさせるということは大切なことなんじゃないか。政府が基本方針として公共料金をとめるということをおっしゃったわけでございますから、それについての裏づけを速急に示していただきたい。これはいま八塚さんがおっしゃましたように、この部分はこうした理由でこの程度、それからこの面はとめても別に算術に乗らない分である、そういうようなことでけっこうでございますから……。そうしないと来年のことが心配になるわけですよ。来年、再来年のことがわかるような、そういう形の資料をひとつくふうして出していただきたい。お願いします。
  150. 八塚陽介

    ○八塚政府委員 私、塩はわりに単純に出ると思います。それから電信電話については、たとえば郵政省は、あるいは電電公社は、当初一二・五%の増収をはかりたい。しかし結局差し引きゼロという形に、私どもお願いをしてなったわけであります。そこで、たとえばいまの電信電話は、ことしそういうことになったから来年は結局一二・五%になるであろうということにはならないのでありまして、来年になりますと、その他いろいろなファクターを考えまして、そんなに上げなければならぬということはまずない、当分はいまの料金で私はいけるんじゃないかと思う。そういう意味で、先生のいまのお話しになりますものについては、ことし私ども各省と打衝いたしまして上げるなといったものの中で、ごく単純に思いつきますのは塩くらいで、いまの電信電話についてもいまのような形で、計数的になかなか出しにくい。それから逆に米についていいますならば、生産者米価、消費者米価据え置き、そのためには三千億という赤字負担をするということでございますが、来年消費者米価を据え置きましても、場合によっては、これはなかなか問題でございますけれども、かりに生産者米価がさらに下がれば三千億でなくても済むというようないろいろな問題がございますから、ことしの段階ではこうだというようなことについては、まあ米あるいは塩等については、商品でございますからわりにはっきりしておりますが、それ以外についてはちょっとそういういわば機械的、算術的計算というのは非常に困難ではないだろうかというふうに思います。
  151. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いまの有島さんが言われたことは、私ははっきりしたほうがいいと思うのです。国民に、なるほど政府は、公共料金やなんかを抑制するためにこれだけの財政的な支出を別に考えておるというようなこと、あるいは将来塩の問題でも、合理化すれば塩の値段を上げなくてもいけるじゃないかというようなこと、そういうことは私は何かの機会があれば示したほうが、国民もそれは納得がいくのじゃないかと思うし、政府物価対策をまた明らかにするゆえんにもなる、こう考えたのでありまして、いままで私自身は気がつかなかったのですが、そういう感じがいま私はいたしました。
  152. 有島重武

    ○有島委員 それではそれをそういった線でひとつお願いいたします。いまこちらの質問している心は、国民がその点を一番心配しているわけです。どうしても公共料金を押えるというのはありがたいけれども、押えるというからにはどこかに無理がかかっているだろう、その無理がどこにはね返ってくるのだろう、そういう点を一番心配しておるわけでございますから、それが何か明らかに表示されるような形をくふうしていただきたい。そういうことをお願いします。  それから、国鉄のことでございますけれども国鉄だけをどうして上げたのかということになるのですね。これを簡単にひとつお願いしたい。
  153. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 国鉄だけを上げたのは、一言でいえば国鉄を救うために上げたので、もうにつちもさっちも行かぬようになっておるということで、国鉄だけは料金を上げることを認めざるを得ないようになったということです。国鉄を救うということです。国鉄というものは御承知のとおり日本の交通の動脈ですからして、これに支障を来たしてはいけないということで、大所高所から国鉄を何とかして生かしたいということで料金値上げを認めたわけであります。
  154. 有島重武

    ○有島委員 そういたしますと、値上げをすれば救われるのかということになるわけなんですよ。この前も二五%値上げをしたときに、あれはちょっと数字ははっきりしませんが、おそらく増収見込みの六割ぐらいしか増収にならなかったと思うのですね。それはやはり見込み違いがずいぶんあったわけですね。値上げしたために貨物がトラックのほうに乗りかえてしまった、私鉄で通う人も多くなった、そういうことになったわけです。今度一番心配されているのは、並行して走っている私鉄のほうに乗りかえてしまえば、これは幾ら国鉄が大動脈だとはいいながら、その見込みどおりにいくかどうか、そういった点はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  155. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 実のところ申しますと、国鉄総裁料金値上げを私のところに言ってまいりました。私は、料金値上げだけで事足ると思っておるかという話をしまして、料金値上げ国鉄は救えないじゃないか、もう少し根本的な問題があるじゃないか、それを解決せずして料金値上げを言ってきたってこれは受け付けられない、こう言ってけったのです。総裁はおこって帰りましたけれども、それはやはり国鉄自体が体質改善をやってもらわなければ毎年料金値上げをしなければならぬという状態になると思いますから、そこで国鉄体質改善さえやれば財政的なことは私のほうでもまた考えましょう、ということで、そこで体質改善という問題が起こってきまして、体質改善前提とすればひとつ政府もこの際、いままで独立採算制をとっておるけれども、財政的の援助をしてあげるべきじゃないかということで、財政的な援助をするということで、その上でかつ足らなければ、赤字であれば、適正な料金値上げを認めざるを得ないということにしたわけであります。そういうことで、私のほうでは体質改善ということが基本です。今度料金とその法律を、二つ一緒に出しましたが、それはその意味で二つの法律を出したわけであって、料金だけの値上げでは、それだけであったら認めぬという方針をきめたわけであります。
  156. 有島重武

    ○有島委員 ところで、値上げ分くらいのものはどこかからくふうできないかというようなことがいろいろ考えられたと思うのですけれども、たとえば鉄道弘済会のようなものがございますね。あれは大体一千億近くなるのではないかと思うのです。税金の措置をすればもっとになるのではないか、千二、三百億円になるのではないかというふうに思います。私鉄がいまどうにか黒字を保っているというのは、これは土地会社をやってみたりそれからデパートを経営してみたりしておって、それでもって黒字になっているのだというふうに説明されておりますね。国鉄はそれがないからだといわれております。国鉄がやたらにそんなに土地会社をやるわけにもいかないでしょうけれども、あの国鉄の内部にそういったものもあるのだ、そういったことについてはお考えにはなれなかったですか。
  157. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 弘済会のことについては私は気がつかなかったのですが、しかしやり方については、親方日の丸という考え方をまず頭からのけてください、何でも政府に頼みさえすれば何とかなるというのがいままでの国鉄のやり方ではなかったか、この頭を第一変えてきなさい、考え方を変えてきなさい、そしてあくまで合理的な経営でやっていくということでひとつやってもらうようにさえすれば、将来は料金値上げはなくてもいけるではないかということを私は指示したわけです。しかし国鉄として無理もないのは、国鉄の路線のうちで大体八割は赤字なんですね。これは地方開発というまた別の国策に準じてやっておる。それを国鉄運賃は一律でやっておるのですから、赤字路線だけを運賃を特別の料金を取るということをやっておりませんから、したがって国鉄赤字が出ておるのであって、その点はわれわれとしても非常に同情しなければならぬ。そういうふうに独立採算制ということは無理だということで、いままでの独立採算制というおきては今度は破ったわけです。大蔵省もそれでようやく財政的援助をしようということになったわけであります。いまのお話国鉄の内部の問題は私はわかりませんが、いろいろまだ体質改善にはくふうすべき問題があるのではないか。しかし根本は、親方日の丸ということを、何とか言えば政府が何とかしてくれるという考え方をまず捨ててもらうことか先決問題だということは私は言ったわけであります。
  158. 有島重武

    ○有島委員 われわれの立場といたしましては、あの法案についてはまうこうから反対であるといりことであったのです。それで、さらに改善できないかというようなことは論じなかったわけです。いまこういった段階になりまして通ってしまった。通ってしまったものなら、今度はなるべくそれを国民生活に響かないようにいろいろくふりしていかなければならない、そういう段階に差しかかってくると思うのですが、たびたびいわれておりました二十円、三十円切符のところにずっとしわ寄せがきて、それで今度一等がなくなって一等と二等と同じようになって、しかも二等が高くなって一等が安くなるというようなことになりますね。これも、一等車というのは相当高く取ったっていいのじゃないかという気がするわけですよ。特に外国人なんかたくさん乗るというようなことが起こります。観光客なんかはみんな安くなって喜ぶかもしれない。これは国としてもへたなやり方ではないかというようなことも思うわけです。ここに運輸大臣がいらっしゃれば運輸大臣に申し上げてもいいのですけれども運輸大臣国鉄を守る立場ですから、経済企画庁長官は国民生活をお守りになる立場ですから、そういう立場からさらにもう一くふうも二くふうもできるのじゃないかということをこの先も言っていただきたい。それをひとつお願いしたいのですけれども、どうでしょうか。
  159. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いまは、日本のいまの国内事情からいえば、物価を上げない、物価を安定させるということが日本の国策でなければならない、こう考えておりますが、その立場からわれわれ国鉄の問題も論じ、公共料金の問題も論じたのであります。しかし運輸大臣はその間の事情をよく知っておりますから、経済企画庁方針のとおりやりますということを言っております。向こうは大体国鉄交通関係を守るべき立場でありますけれども、現在においては二人とも話し合って、円満にこの国策を遂行したい、こう考えておる次第であります。
  160. 有島重武

    ○有島委員 すでに先ほど鉄道弘済会なんかの問題、それから一等料金なんかの問題、二つだけあげましたけれども、そのほかにも私どもは気がついただけでいろいろあるわけでありますから、さらにくふうしていただくことをひとつお願いしまして、長官に対しての質問はこれでもっておしまいにしておきたいと思います。
  161. 菅野和太郎

    菅野国務大臣 いまの一等料金の問題は、実は私もあなたと同じに一等料金は値下げする必要はないじゃないかという話をしたら、実は飛行機を利用するので、飛行機の運賃の関係で安くせざるを得ない、一等に乗る人はたいがい飛行機に乗ってしまうということを聞いたので、それじゃしかたがないなということで、値下げを認めたわけであります。そこらの関係は、将来飛行機が発達しますると、遠距離のお客さんというものは飛行機を利用するようになるんじゃないか、こういうことを私は考えておる次第であります。
  162. 有島重武

    ○有島委員 また話が出ちゃったんでちょっと言っておきますけれども、そういたしますと、ほかのものとのかね合いでもっていろいろ無理が起こってくる。貨物のことについても、そういったことでもって無理が起こって、旅客のほうにはね返っているわけですね。そういったこともさっきの資料の上に乗ってくる数字だと思うのですよ。本来ならばこうあるべきであった、大体常識的にこういう値上げ体系であるはずなんだけれども、この部分はそれだけのものをどっかから補充していると同じことになるわけですね。そういったような無理は、これはどっちみち、そういった変にへっこましているということは、また爆発するおそれがあるわけですからね、原則的にいって。  それでは長官に対する私の質問は以上二点にして、これでもって終わりますが、資料のことはくれぐれもお願いいたします。  それでは厚生省の薬務局に伺いたいのですけれども、これは以前、昭和四十三年の四月二十三日付でもって、私がコールドパーマのことについてお伺いいたしました。その以後どうなったかということを伺っておきたいわけなんです。
  163. 下村孟

    ○下村説明員 先生が昨年御質問なさいました要旨につきまして、私調べたのでございますが、そのときに野海説明員から御説明申し上げたと思いますが、二浴式以外にも新しい方式で申請があった。それで一浴式のコールドパーマの申請について、薬事審議会でいろいろ審議をし、また国立衛生試験所でいろいろ試験をしました結果、これは承認してもいいという結論が出まして、昨年の六月に一浴式のコールドパーマ液の承認をしたわけでございます。そういう経過になっております。
  164. 有島重武

    ○有島委員 何か通達をお出しになりましたですか。
  165. 下村孟

    ○下村説明員 私の承知いたしておりますのは、コールドパーマ用剤基準を改正いたしまして、そして一浴式のコールドパーマをその基準の中に入れたわけでございます。
  166. 有島重武

    ○有島委員 その告示を私は拝見したのですけれども、私はその当時読み違えておったんですよ。これはこういうふうに書いてあるのだ。厚生省告示第二百八十号、「薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第四十二条第二項の規定に基づき、パーマネント・ウエーブ用剤基準を次のように定め、パーマネント・ウエーブ用剤基準(昭和三十五年八月厚生省告示第二百三十三号)は、廃止する。ただし、昭和四十三年六月九日までに製造されたパーマネント・ウエーブ用剤については、なお従前の例によることができる。」、これが昭和四十三年六月十日の厚生大臣園田直さんの告示です。そういうことになっておりますね。「廃止する」というふうに書いてあるのですね。いま参事官は何か別のことばでおっしゃったように思うのですけれども、「廃止する」というのを見て、これは廃止したのか、そういうような印象を受けたのですよ。これはこういった用語を普通に使うのですか。いまは改正というふうにおっしゃいましたですね。
  167. 下村孟

    ○下村説明員 先生がただいまお読みになりました告示の文書を、私手元に持っておりますが、確かにそういうふうに「廃止する」ということばを使っております。一応いままでの基準を廃止をいたしまして、そして全面改正をして新しいものを制定した、こういう手順になっておるのでございます。そして新しいものにつきましては、四十三年六月二十五日付で「パーマネント・ウエーブ用剤基準の制定について」という薬務局長通知を出しております。その中に改正の要点といたしまして、二浴式のパーマネントウエーブ用剤それからその二浴式のパーマネントウエーブ用剤の中でさらに加温式も加えております。その前に、チオグリコール酸及びその塩類を主成分とするコールド一浴式パーマネントウエーブ用剤、二浴式と一浴式を加えて新しく改正してこういうふうにきめたという通知を出したわけでございます。
  168. 有島重武

    ○有島委員 この前、一番問題になりましたのは、二浴式が人体に弊害があるのじゃないかということを伺ったのです。その点についての御見解は、いまはどうなっておりましょうか。
  169. 下村孟

    ○下村説明員 前に、いきさつを昨年お話ししてあると思いますが、昭和二十九年から三十年にかけまして、二浴式のコールドパーマネントウエーブ用剤の使用によって起こったと思われる髪の毛などに対する幾つかの障害例が確かにございました。それで、そのため二浴式コールドパーマネントウエーブ用剤の使用に関しましての実験を行ないまして、特に先生ただいまおっしゃいました安全確保の面から検討いたしまして、その結果に基づいて、昭和三十一年に二浴式のコールド。パーマネントウエーブ用剤の品質を規制いたしますために、コールド・パーマネント・ウエーブ用剤基準というものをつくったわけでございます。この基準の制定にあたりましては、薬事審議会におきまして十分審議を行なった結果でございます。そういたしまして、昭和二十五年から二浴式のコールドパーマネントウエーブ用剤を化粧品として製造を認めてきたわけでございますが、昭和三十一年以降はただいま申し上げました基準に適合する品質のものでなければいけないということにしたわけでございます。昭和三十六年の二月になりましてパーマネントウエーブ用剤を医薬部外品に指定いたしまして、そして個々の品目ごとにその成分、それから分量、使用方法、効果等につきまして内容を提出してもらいまして、そしてその内容について検討いたしました結果、承認をするということにしたわけでございます。
  170. 有島重武

    ○有島委員 昭和三十五年の四月にアメリカのドラッグ・アンド・コスメティックという雑誌に、二浴式のパーマ液が小児麻痺や奇形児の発生のために一つ影響力を持っておる。そこでアメリカのほうでは一九四六年に全面禁止された、そういうことが載っておるわけですね。この文献は厚生省のほうには三十五年の五月に納入されて、薬事課も製薬課も、それから監視課もパーマ調査会でも知っておった。そういう報告があるのでございますけれども、それは御承知ですか。
  171. 下村孟

    ○下村説明員 ただいま先生がおっしゃいました話の内容は、私ども実は全く聞いておらないのでございます。そしてそのことにつきまして専門の二、三の学者に問い合わせを出しておるのでございますけれども、いまだに私どもの手元にはそういうことがあったということを何も知らせてきておらないわけでございます。
  172. 有島重武

    ○有島委員 セービンという学者が日本にも来て、NHKからも放送したというような話も聞いておるのです。私は医者じゃありませんからそういったことはよくわかりませんけれども、チオグリコール酸というものは非常に皮膚の中に浸透率がいい。そしてポリオの培養をする一つの温床をつくっていく働きがあるのだというようなことであったらしいのです。これが事実だといたしますと相当たいへんなことであるわけですね。それを主張する人たちは、パーマネントをやっている美容院のうちに小児麻痺が非常に多い、三〇%まで奇形児がいる、あるいは小児麻痺がいるというようなことを言っております。私は確認したわけではありません。それから奇形児、小児麻痺専門の病院の院長さんもそのことを認めている。そういうような話もあるわけなんですね。それで、これはもう一度そちらでもってよくお調べになったほうがいいのではなかろうかと私は思うのです。
  173. 下村孟

    ○下村説明員 ただいまのお話につきまして、実は昨年の先生の御質問の中にもその御趣旨があったと思いましたので、さっそくほうぼう調べたのでございますけれども、いまのところまだわかっていないのでございます。それでただいまおっしゃいましたように、これからもひとつ一生懸命情報を集めて、ほんとうにそうなのかということを調べたいと思います。もしそれがほんとうにそうならば非常に重要な問題だと思いますので、さっそく対処策を講じなければいかぬと考えております。
  174. 有島重武

    ○有島委員 この前の野海説明員のお答えによりますと、確かに二浴式の従来のコールドパーマネントウエーブ用剤は、使用方法を誤った場合あるいは体質によって若干の障害がある。それで正しい使い方をする限りは間違いがないのだということになっておりますけれども、使用方法を誤った場合というのはこれはどういうことなのか。これは皮膚にそれがつくというようなことを意味しているのでしょうか。これはその使用方法を誤ったということですね。濃度を誤ったということもあるでしょうけれども、皮膚にこれがつくとあぶないというようなことなんですか。
  175. 下村孟

    ○下村説明員 実はコールドパーマ液を使用いたします際の使用上の注意を、個々の商品にちゃんと記載させることにしているわけでございます。その使用上の注意の要点はこういうふうになっております。「皮膚に付着するとかぶれなどの皮膚障害を起こすことがあるので、頭皮、顔面、首筋等に薬液が付着しないように留意すること。特に目には絶対に入らないようにすること。なお顔面等に薬液が付着した場合には直ちに水で洗い落とすこと。」これが一つでございます。それから二番目は、「特異体質の者または頭皮、顔面、首筋、手などに腫物や傷などがある者は、その薬液が皮膚や傷口に付着した場合に激しい障害を起こすこともあるので使用を避けること。」それから三番目に、「使用方法を誤ると毛髪をいためるおそれがあるので、用法「用量を厳守すること。できればあらかじめ毛髪の一部で試験的に本品を使用してみること。なお操作終了後は完全に薬剤を洗い落とすこと。」四番目は薬液の保存のことを書いてございます。「変色したり、沈殿を生じたような液は使わないようにすること。」こういう注意事項を書いております。
  176. 有島重武

    ○有島委員 この第一番目の皮膚に付着しないように注意するということでございますけれども、これはなかなかむずかしい、どうしてもついてしまう、そういうふうにパーマネント屋さんでは言っておりました。それで、それが完全に洗い落とされるかどうか。使用上誤った場合はやっぱり害がある、そういうことになって、その誤った場合の中に、ほとんど避けられないような誤りも含んでいるわけですね、付着していくことは。ですから、これはあまり事が大きくならないうちに真偽のほどを調査して、その調査した結果を公表していただいたほうがいいのじゃないか、そういうふうに思うのです。
  177. 下村孟

    ○下村説明員 実は私どもの手元で事故例につきまして調べておるのですが、この新しい基準に従いまして使用上の注意を書かせるようにいたしましてから三件ばかり事故が起きております。その中の二件は、いま先生が御注意になったような使用上のミスである。それから一件はどうも原因があまりはっきりしない、こういう報告でございます。ところが、昨日埼玉県のほうから事故例が報告がございました。それは調べましたところ、非常に体質的に毛が細い人で、細い毛の場合には薬液の使用量を少なくして注意して使ったわけですが、それでもなお毛が切れた、ところがすぐ、あとに残らないで回復した、こういう報告が入っております。それで、いままでのところ、使用上の注意については、私ども、どういうふうに実際に使っておるのか実情がよくわかりませんので、コールドパーマ液をどういうふうにして美容師さんが使っておるのかという点について本で調べたわけでございます。写真もありまして、使う順序は書いてあるのでございますが、その順序で一応調べましたのですが、その点では、気をつけて使えばそう頭の地までしみ込むことを、ちゃんとして使えば防げるのではないか、こういうふうに私ども見ておるわけでございます。
  178. 有島重武

    ○有島委員 大体これで質問はとどめますが、アメリカのほうではこれは禁止したということでございますね。それからこれは小児麻痺のもとになるのだということでおそれておる向きもあるわけですよ。それで真偽のほどをはっきりしなければならないのではないか、そう思うのです。  それからもう一つ、使用上の注意書きが非常に小さい紙でもって、そういう指導だったかどうか知りませんが、パーマネント屋さんのところに張ってあるのですね。張ってあるのだけれども、だれも気がつかないみたいな、そういった事例は私も知っておるわけです。非常に形式的なことに終わっておるのではないか。現場もお調べになり、それから医学上の影響も早くお調べになって、そのことを公表なさるように要望しておきます。  以上で終わります。
  179. 下村孟

    ○下村説明員 先生のただいまおっしゃいました小児麻痺のもとになるのではないかということにつきましては、鋭意調べて、わかりました後に御報告申し上げます。  それから使用上の注意が小さくて、あれでは困るというお話につきましては、さっそく調べまして、はっきりわかるように対処したいと思います。
  180. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員長代理 本日はこれにて散会をいたします。    午後五時三十五分散会