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1969-06-24 第61回国会 衆議院 農林水産委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月二十四日(火曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 丹羽 兵助君    理事 安倍晋太郎君 理事 仮谷 忠男君   理事 藤本 孝雄君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 湊  徹郎君 理事 兒玉 末男君    理事 森  義視君 理事 稲富 稜人君       伊藤宗一郎君    大野 市郎君       小山 長規君    佐々木秀世君       白浜 仁吉君    菅波  茂君       瀬戸山三男君    田澤 吉郎君       中尾 栄一君    中垣 國男君       中山 榮一君    野原 正勝君       八田 貞義君    福永 一臣君       藤波 孝生君    松野 幸泰君       伊賀 定盛君    工藤 良平君       佐々栄三郎君    芳賀  貢君       美濃 政市君   米内山義一郎君       神田 大作君    斎藤  実君       樋上 新一君  出席国務大臣         農 林 大 臣 長谷川四郎君  出席政府委員         農林政務次官  小沢 辰男君         農林大臣官房長 大和田啓気君         農林省農地局長 中野 和仁君         農林省畜産局長 太田 康二君         林野庁長官   片山 正英君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農地法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四号)      ————◇—————
  2. 丹羽兵助

    丹羽委員長 これより会議を開きます。  農地法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、去る十八日の芳賀委員質疑中、標準小作料算定について中野農地局長より発言を求められておりますので、これを許します。中野農地局長
  3. 中野和仁

    中野政府委員 先日の委員会で、芳賀先生からお尋ねがありました標準小作料算定をいたします場合の家族労働評価につきまして、いろいろ御議論がありまして、当局の統一方針を明らかにしろということでございます。そこで申し上げたいと思います。  作目により、あるいはその土地生産力によりまして収益力にかなりの差異がございますので、全国一律の基準によることは困難でございますけれども、家族労働に対しましては、できる限りその地域における他産業労賃水準は確保されることとなるように指導したい、かように考えております。
  4. 丹羽兵助

    丹羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斎藤実君。
  5. 斎藤実

    斎藤(実)委員 今回の農地法改正で、小作地等所有制限改正を行なっておりますが、不在村地主を一部認めて、借地による農地流動化促進しようということだと私どもは思っておるのですが、この点について、規模拡大のための所有権移転を第一義的に考えて、農民的土地所有基本とする考えは、今後どのような考え方で対処されようとしているのか、局長からお答えを願いたいと思う。
  6. 中野和仁

    中野政府委員 耕作者土地を持つことが望ましいことは、もう当然のことでございますので、われわれといたしましても、今後ともそういう農民的な土地所有というものの促進ははかりたい。このためには、公庫資金低利融資等考えていきたいというふうに考えております。
  7. 斎藤実

    斎藤(実)委員 不在村地主を認めることになれば、地域農業振興計画を立てる場合にいろいろいままで問題があったわけですが、不在村地主を認めるということは、今後、期待される総合農業振興計画推進上に支障が起きるのではないか、こういうふうにわれわれは考えるのですが、この点はどうでしょうか。
  8. 中野和仁

    中野政府委員 農業振興計画を立てます場合に、いま御指摘のような点はあるかと思いますけれども、たとえば、土地基盤整備をやるにいたしましても、小作農が土地改良の第一番目の資格者ということにしておりますし、その賃貸借が安定しておれば、御指摘のように、非常に不安になるということはないというふうにわれわれ考えておるわけであります。
  9. 斎藤実

    斎藤(実)委員 これはいままでいろいろ論議されてきた問題でありますが、寄生地主制復活可能性がある、こういう議論もずいぶんあるわけですが、われわれはこの改正案では、賃借権小作料小作地所有制限等農地制度の根幹、これを農地流動化の視点から緩和しようとしているわけでありますが、政府は、寄生地主制度復活については、その心配がないのかどうか、われわれはもう一ぺんこの点を尋ねたいと思います。
  10. 中野和仁

    中野政府委員 戦前のように、農村が閉鎖的な社会でございまして、それに対して地主がおりまして、小作料に依存した寄生地主ということでございましたけれども、もはや時代が変わりまして、雇用の機会は非常にふえておりますし、また、農地法が現存しております以上は、幾ら大きな地主になってもいいということではございません。原則としては、在村地主一ヘクタールというもので制限をするということでございますので、かつてのような寄生地主復活するとは、われわれ毛頭考えておりません。
  11. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いまの旧地主制度復活問題については、また大臣からお伺いしたいと思います。  それから、やみ小作請負耕作についてお尋ねしますが、現在農地移動農地法秩序外、それでやみ小作あるいは請負耕作の形が広範に発生しているわけです。これは政府も十分御承知だろうと思うのですが、今回の農地法改正によって、これらのやみ移動がすべて法の秩序内に乗るものと確信しているのかどうか。また、改正が実現した場合には、これらやみ小作請負耕作について、積極的にこれとどう対処されるのか、お答え願いたいと思います。
  12. 中野和仁

    中野政府委員 やみ小作あるいは請負耕作という農地法外のものが非常にふえてきておるというのは、御指摘のとおりでございます。このまま放置をしておけば、農地法ワク外での秩序というものがまたできてくるという心配があるということは、先般からるる申し上げているとおりであります。そこで今回の改正案を御提案申し上げているわけでございますが、この改正案が通りますれば、われわれとしましては、その上に立って農地制度としての賃貸借関係を安定させたいというふうに考えております。  ただ、これによりまして、それじゃ一ぺんにやみ小作がなくなるかというと、なかなかそれはむずかしいかという面もございますけれども、できるだけ農地法制度に乗っけるように、強力に指導したいというふうに考えております。
  13. 斎藤実

    斎藤(実)委員 今度の改正法案によりますと、標準小作料設定「できる」ということになっております。この設定できるということは、してもしなくてもよい、こういうふうな疑問が出てくるわけです。この点どうですか。
  14. 中野和仁

    中野政府委員 法律上は、確かに御指摘のように、標準小作料設定できるということになっております。これは都市近郊等で、とうていそういうことはできないような事態もございますのでそういうふうにしたわけでございますが、指導といたしましては、一部を除き全面的に標準小作料がつくられるように指導したい、また、その予算措置も講じたいというふうに考えております。
  15. 斎藤実

    斎藤(実)委員 そうしますと、標準小作料設定しなければならないというふうに指導する、こういうことですね。そうなりますと、やるところもやらないところも出てきて、いろいろ問題点も出てくると思うのですが、やはりこれはきちっと義務づけるべきではないか、こう思うのですが、どうですか。
  16. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま申し上げましたように、義務づけるというような気持ちで強力に指導いたしまして、ほんの例外を除きましては、全面的にこれがつくられるように強力に指導したいと考えております。
  17. 斎藤実

    斎藤(実)委員 そうしますと、いまの法律の条文に、はっきり標準小作料設定「しなければならない」というふうにすべきじゃないですか。できるものとするというのはどうもすっきりしないのですが、どうですか。
  18. 中野和仁

    中野政府委員 最初の御答弁で申し上げましたように、「ねばならない」というふうに書きますと、ほんとうに標準小作料なんかつくらなくてもいいような場所まで無理してつくるというようなことにもなりますので、法律の表現といたしましては「できる」ということにしてあるわけでございます。繰り返すようでございますが、強力に指導して、全面的につくらせるようにしたいというふうに考えております。
  19. 斎藤実

    斎藤(実)委員 標準小作料設定については行政指導をする、こう言っておりますけれども、それでは各市町村間で、片一方では安い、片一方では高いというような著しいアンバランスが出たときはどうするのですか。
  20. 中野和仁

    中野政府委員 今度の標準小作料の策定につきましては、これもしばしばこの委員会で御議論があったところでございますが、われわれとしましては、標準小作料算定方法というのを具体的に各県、各市町村に示したいというふうに考えておりますので、そんなに算定の基礎からはずれたようなアンバランス標準小作料はできないというふうには考えておりますが、そういうような極端な場合には、農業委員会法に基づきまして、知事が再議命令をその委員会に出すということも考えておりますので、先生心配のようなことはないというふうに思っております。
  21. 斎藤実

    斎藤(実)委員 著しく高い小作料が発生したときには、農業委員会当事者減額勧告ができるということになっていますが、勧告を受け入れなければ一体どうなるのですか。この勧告には、強い強制力というものはあるのですか、ないのですか。
  22. 中野和仁

    中野政府委員 勧告でございますから、法的な強制力はございません。しかし、当事者同士の話が合った上での小作料が、その村の水準から著しくオーバーしている場合に勧告をするわけでございますから、できるだけそれに従うように、説得その他につとめるということでございます。
  23. 斎藤実

    斎藤(実)委員 従うように説得すると言いますけれども、納得しない場合はどうなりますか。
  24. 中野和仁

    中野政府委員 納得しない場合は、法的にはやむを得ないことだと思います。
  25. 斎藤実

    斎藤(実)委員 標準小作料水準というものは、一体どの程度が妥当と考えておるのか、お伺いします。
  26. 中野和仁

    中野政府委員 標準小作料につきましては、田、畑、樹園地、いろいろあるわけでございますので、一がいにこの辺が妥当だということは申し上げられないわけでございますが、考え方といたしましては、粗収益からその経費——もちろん労賃評価も、先日来申し上げましたようないろいろな評価のしかたもございます。そういうもので評価をしまして、経営者報酬を除きました残りが地代になるという考え方でやっていきたいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、地域生産力の差が非常にありますので、一律の標準としてこのくらいがよかろうというのは、なかなか出しがたいというふうに考えております。
  27. 斎藤実

    斎藤(実)委員 私は、小作料を完全に国の行政ワクからはずす場合、よほどはっきりした基準なり算定方式行政指導しなければ混乱が起きるのではないか、こういうふうに考えるわけです。局長、再度答弁をお願いしたい。
  28. 中野和仁

    中野政府委員 具体的な算定方法を指示いたしませんと、場合によっては混乱と申しましょうか、非常なアンバラが出るということもございますので、先ほども申し上げましたように、具体的に算定方法を指示いたしたいというふうに考えております。
  29. 斎藤実

    斎藤(実)委員 当事者間で、いまの減額勧告をしてでも受け入れられない場合には、これは裁判以外にないというふうに思うのですが、そのほかに方法はありますか。
  30. 中野和仁

    中野政府委員 減額勧告の場合は、当事者が、たとえばその村の水準が大体一万円でよかろうというのを、二万円にしたというようなことでございますけれども、その場合には当事者の話はついておるわけでございます。だから、当事者農業委員会に訴えるということはございませんので、裁判の問題にはならないというふうに思います。
  31. 斎藤実

    斎藤(実)委員 では次の問題に移ります。  今回の改正によって、農業経営規模拡大、あるいは農地集団化等をはかるために、非営利法人農地取得を認めておるわけです。この非営利法人の構成は、どういうふうに考えておるのか。
  32. 中野和仁

    中野政府委員 たびたびこの問題も当委員会議論になっておったわけでございますが、簡単に申し上げますと、われわれといたしましては、主として県や市町村が出資をいたします公社というふうな組織考えておるわけでございます。
  33. 斎藤実

    斎藤(実)委員 先ほどの和解の仲介制度の件ですけれども、政府農業委員会を真に農業農民代表機関として、制度上も財政的な裏づけ、あるいは相当な組織強化等をはかるべきではないか。なぜかというと、非常に事務的ないろいろな問題点農業委員会に負担がかかってくる、こういうふうに考えるわけですけれども、その農業委員会強化についての考え方をお尋ねしたいと思います。
  34. 中野和仁

    中野政府委員 一部の農業委員会につきまして問題があるという御指摘は、しばしばあるわけでございますが、農業委員会の主要な仕事といいますか、事務分量の八割は農地関係仕事をやっております。農地関係仕事と申しますのは、単なる市町村長がやるというような、そういう独任制機関でやるよりも、やはり合議制機関でやったほうがよろしいというふうにわれわれ考えております。これは選挙制度になっておるものですから、その選挙制度が公正に行なわれれば、最も組織としては望ましいというふうに考えております。  ただ、それに対する財政の裏づけということになるわけでございますが、これも農政局のほうでいま努力をしていただいておりまして、事務職員の給与のアップ、それから必要な事務費というものも、われわれできるだけ確保するように努力をしたいというふうに考えておるわけでございます。
  35. 斎藤実

    斎藤(実)委員 大臣が見えたので、大臣にお尋ねいたします。   〔委員長退席安倍委員長代理着席〕  この農業経営規模拡大して、農業近代化を実現しようとするには、やはり基本的に農地開発造成をはじめとする生産基盤整備拡充が、その前提にならなければならないということは、大臣も御承知だと思うのであります。それで農民年金、あるいは社会保障制度充実、あるいは後継者育成等、これらを強力に実施しなければならない。  ところが、政府の今日までの施策は、われわれは何ら見るべきものがないというふうに判断しておる。したがって、今回の農地法改正は、単なる前提条件整備にすぎない。私は、今後の農業構造改善促進をするための方策を大臣から明らかにしていただきたい。
  36. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 申すまでもなく、経営規模拡大など農業構造改善をはかるためには、今回の農地法改正はどうしても必要であります。しかし、それのみによってその目的が達成されるものではないと思います。御指摘のように、農業構造改善のためには、農用地の開発造成圃場整備、あるいはまた土地基盤充実、これらはもとより、さらに協業等集団的生産組織育成助長経営近代化試験研究、その成果の普及とか、農業地帯振興対策推進等をはかりながら、さらに国有林野の活用、これにあわせまして、農業経営のにない手である農業経営後継者育成農業者年金制度、これら各般施策というものが総合的に、かつ強力に行なわれるようになってこそ、初めてその目的を達するものだと考えるのであります。  しかしながら、御指摘のあるように、その基盤をなすものは何といっても農地でございますので、今回それらを行なわなければならない、また、われわれが唱えておるところの近代的農業を行なっていただかなければならない、こういう考え方の上に立って、今回の農地法改正というものを提案した次第でございます。
  37. 斎藤実

    斎藤(実)委員 再度大臣にお伺いしますけれども、農業基本法が制定されてから八年になるわけです。その間日本経済成長が進んで、大きな経済的な発展を遂げてまいりました。ところが、農業につきましては、非常にきびしい状況というものが明らかになっておるわけです。一つは、農業以外の他産業への労働力の流出、あるいは米以外の農業生産力の渋滞、農家収入の他産業との格差、それから農産物の輸入の増大、国内農産物自給率の低下、こういうふうに考えてみますと、日本農業を取り巻く情勢というのは非常にきびしい。  こういうきびしい情勢を踏まえて、大臣はこの今日までの農政をどう評価されているか、基本的な日本農業についての所見をまずお尋ねしたいと思います。
  38. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御指摘のように、まさに国の内外を通じまして、現在の日本農業は非常にきびしい立場に立たせられておるということは、そのとおりでございます。したがって、政府農業基本法制定以来、各般にわたって施策充実強化をはかってはまいりました。  その結果、農業生産性向上農業生産選択的拡大、あるいは農家所得向上農業構造改善、こういう面では相当成果があがったと思うのでございます。しかし、御指摘のとおり、高度成長を続ける経済の中において、わが国の農業が種々の面においてまた大きな影響を受けて、農村社会にひずみを生じておるということも見のがせないことの事実であります。  これまでの農政について顧みますと、従来の農政というものは米にどうも偏重してきた、そういう点もございます。さらに価格政策だけによって政策が行なわれてきたというような点も指摘できると思うのでございまして、したがって、価格の引き上げに傾斜して運営されてまいりました結果が、米価の高水準と申しましょうか、必ずしも米価が高水準だとは申し上げにくうございますけれども、そういうように偏重をしてきたのでございます。  したがいまして、今後は、これらを構造あるいは生産、こういう点に重点を置きまして、バランスのとれた農政が行なわれなければならぬ。何といっても生産というものは消費者というもののその要求に応じられるような作目をつくっていかなければならない、こういうふうに考えるのでございまして、これを機会といたしまして、さらにその目的が達せられますよう、その基盤を大いに今後つくってまいるつもりで、それがために、やはりこれらの一翼をになってもらいたい、こういうような考え方の上に立って、今回の農地法改正も提案し、御審議を願っておるのでございます。
  39. 斎藤実

    斎藤(実)委員 農業生産性拡大、この問題について、私は農地経営規模拡大だけでは農業生産性拡大にはならないというふうに考えるわけですが、これに対する基本的なお考えをお伺いしたいと思います。
  40. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私もそう思います。経営規模拡大だけで生産性向上ができるとは私も考えておりません。したがって、生産性向上農業規模拡大を行なうとともに、先ほど申し上げましたように、生産構造、これらの諸施策というものが同時に行なわれてこそ、初めてその目的を達することができる、こういうような考え方でございますので、この点、この法案を通過させていただきますならば、本年度からは思い切った施策を必ずなし遂げるという、かたい決意をもって私は臨んでおるものでございます。
  41. 斎藤実

    斎藤(実)委員 大臣からかたい決意のほどを伺ったわけですが、今回は農地法改正を提案されています。それでこの次、当面する農業施策、いろいろな問題があるでしょうけれども、政府として農地法改正して次は何をやられるのか、そういうものをこの際明らかにしていただきたいと思います。
  42. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 なかなかむずかしい質問でございますけれども、まず国民に対して良質、豊富な食糧というものを安定的に供給するために、需要に応じた、つまり食糧構造というものが大きく移り変わってきておるそれに応じた供給ができるよう、そして生産がそれに伴うような方向に向かってまいりたい、このように考えておるのでございます。
  43. 斎藤実

    斎藤(実)委員 局長にお伺いしますが、兼業農家層の手放した耕地が、農外転用がかなり含まれているわけです。専業的農家層規模拡大につながるような方向は、現在のところあまり明確ではないのですけれども、この点はどうでしょうか。
  44. 中野和仁

    中野政府委員 全国何十万件の農地移動が年年あるわけでございます。その中で、兼業農家専業農家に売るというのもございますけれども、何しろ御承知のように、一ヘクタール以下の農家が七割以上を占めている日本農業現状でございますから、移動の面積が全部専業的な農家にはなかなか行きにくいという実情にあることは、御指摘のとおりでございます。
  45. 斎藤実

    斎藤(実)委員 離農する農家数は八万八千戸に及んでいるわけです。その八二%は離農後も居住地を変えていないわけです。こういう現状は、局長、どういうふうに判断されておりますか。
  46. 中野和仁

    中野政府委員 内地の場合は御指摘のようなことであるわけでございます。これはやはり一つには、交通が非常に便利になりまして、自宅から工場に通えるという地域が非常に多いわけでございます。それからもう一つは、やはり農業外の事情と申しましょうか、そういう社会保障的な制度の不安定さということがまだございまして、やはり土地は持っていたいという気持ちが、農家に非常に強いのではないかというふうに思っております。
  47. 斎藤実

    斎藤(実)委員 農地法改正によって、離農する人が非常に多くなるのではないか、こういう意見も非常に多い。確かに離農しやすくなるわけです。ですから、離農促進法ではないか、一部こういうふうに考えている方もおるわけですけれども、離農促進法ではないかというこの疑問について、どう考えていますか。
  48. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま御議論がありましたような日本兼業農家の状態でありますから、この農地法改正によりまして、零細農家を追い出すということは全然考えておりません。ただ、そういう農家離農しやすいようにするという方向で、農地法改正考えておるわけでございます。
  49. 斎藤実

    斎藤(実)委員 小作料最高限度も取り払ってしまう、こういうことですけれども、これによっていろいろな問題が起きるのじゃないか。この小作料最高限度を撤廃するということによって起きる問題点、先ほどいろいろありましたけれども、この点はどうお考えですか。
  50. 中野和仁

    中野政府委員 現在統制小作料があるわけでございますが、これは、農地改革以前からの残存小作地には比較的守られております。しかし、新しい契約については初めから守られていない、ということを農林省で申し上げるのは恐縮でございますけれども、実態はそういうふうになっております。したがいまして、小作料を、全国一律の統制をはずしましたからといって、直ちに日本小作制度に大きな影響があるというふうにはわれわれ考えておりません。  と申しますのは、過去の小作地につきましては、今後十年間統制を続けるということにしているわけでございますので、それほどの影響はなく、むしろやみになっておりましたものを農地法秩序の上に乗っけるという、非常に大きな効果があるというふうにわれわれは考えております。
  51. 斎藤実

    斎藤(実)委員 土地保有下限の三十アールを五十アールにしたわけですね。それで、現在三十アール土地を持っておる、これを四十五アールにしたいんだが、金がないんだ、こういう場合は許可はしないのですか。
  52. 中野和仁

    中野政府委員 いまの御設例の場合は、原則的には今度の場合、取得後五十アールということにしておりますから、許可ができません。ただ、お話のように三十アールを四十五とするのを、もうあと五畝足しまして二十アール買っていただきますと、あるいは借りていただきますと、許可ができるわけでございます。それに対しましては、また公庫資金等融資は便宜をはかりたいと思います。
  53. 斎藤実

    斎藤(実)委員 そうすると、零細農家は非常に圧迫を受ける、こういうふうになるわけですな。確かにそれはいろいろな融資方法もあるかもしれませんけれども、そういう道のない人は何か方法はありますか。
  54. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまのお話の場合でも、地域によりまして、そこが非常に零細な農家の地帯であるという場合には、三十を五十にいたしますけれども、知事が地域を限りまして、そこを四十アールにするとか、あるいは三十アールのままに置いておくという制度もございますし、それからまた、集約的な経営をやる場合には、例外的に知事の許可によりまして、五十アール以下でも許可をするということにしておりますので、大体それで対処できるのではないかと思っております。
  55. 斎藤実

    斎藤(実)委員 それから、小作料について農業委員会勧告できることになっておりますけれども、これだけでは非常に問題がある。旧勢力体制維持のための一つの手段ではないかというふうに考えるわけですが、局長、どうですか。
  56. 中野和仁

    中野政府委員 戦前のような地主、小作の関係というよりも、これからの賃貸借関係というのは、いわば農家同士、どちらかといいますれば農村に残って経営をやっていくというふうな農家が借りるということでありますので、先ほど御指摘のように、旧秩序がそれによって非常に強力になるというふうにはわれわれ考えておりません。
  57. 斎藤実

    斎藤(実)委員 草地権と所有権との関連について、局長、ひとつ説明してもらいたい。
  58. 中野和仁

    中野政府委員 お尋ねの問題は、草地利用権の今回の改正案の問題だと思いますが、現行の農地法によりましても、制度的には未墾地を政府が強制買収をいたしまして、そこを開発するという規定はございますけれども、情勢の変化によりまして、そういう強制買収は困難である。しかし酪農の振興のためには、地域によりましては、草地造成の必要が非常にあるわけでございます。  そこで、所有権は強制的にとらないけれども、場合によっては知事の裁定によりまして、いわば強制的に草地を造成するための土地を、最大二十年間借りるという制度を今回設けたわけでございます。
  59. 斎藤実

    斎藤(実)委員 いま、政府が稲作転換促進ということでやっておりますけれども、一方においては、米作面積の造成というものが行なわれておる。非常に矛盾した政策のようにも考えるわけですが、これはどうでしょうか。
  60. 中野和仁

    中野政府委員 作今の米の需給の急速な緩和に対処しまして、いま御指摘のように、開田という問題が非常に問題になってきたわけであります。そこで農林省といたしましては、本年度から開田の抑制ということを考えまして、新しく開田をやるための調査に入るというのは、全部ストップいたしました。  ただ、現在工事中あるいはもう地元と話がついて、土地の売買も済んだという途中のものにつきましては、その中身を田畑輪換に変えますとか、あるいは畑に変えるということを一部やりながらやりませんと、急激にショックを与え過ぎますものですから、若干は続けるという考え方でやってきております。
  61. 斎藤実

    斎藤(実)委員 大臣にお尋ねしますが、他産業との収益のバランスという面で、あるいは農家所得の収入源を農村に造成して、農村の生活向上をはかるべきではないか。大きな企業というものはやはり都市に集中されておる。そういった面から、農村にそういう企業というものを発展させるべきではないかというふうに考えるわけですが、大臣、どうでしょうか。
  62. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 他産業との均衡ということがございますので、したがって、農村経営をもう少し向上するということは、もちろんそうしなければならない。これが一番の大きな問題だと思うのでございまして、農村向上するために、さらに今後は農村の環境づくりをやりますし、農道等の改良、改善という点についても、さらに重きを置いて進めなければならないと考えております。したがって、他産業との均衡のとれた農業を営んでもらう、こういうことをするためには、たとえば、日本のようなこれほど兼業農家の多い国であり、これだけ定着しているものを急に、先ほどもお話がございましたけれども、あなたはやめてくださいというわけにはまいりませんし、離農させるわけにもまいりませんので、これらをいかに総合して、そうして協業化するとか、あるいは共同化するとか、それに対しては、それらの機械機具というようなものに対しましては、政府は責任をもってこれらの農業向上できるような施策を十分に行なっていくように考えております。  さらに来年度に対しましては、これらの目的が達せるように、十分な手当てを考えてまいるつもりでございます。
  63. 斎藤実

    斎藤(実)委員 今回の農地法改正の骨子としては、自作地による規模拡大と、あわせて借地による規模拡大考えているようでございます。このことによって小作地が非常に増加をするということは、これは当然でしょうが、結局、農地法目的である自作農主義の原則とこれは矛盾するように考えるわけです。さらにまた、農地改革成果を台なしにしてしまうんじゃないか。そして、再び農地改革前の状態に戻ることになることは非常に危険なことである、こういうふうにわれわれも心配しておるのですが、大臣からひとつ明確に御答弁をいただきたい。
  64. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 このたびの農地法改正によって小作地が増加することとなろうが、この改正というものは、自作農が自作地を中心として、これに借地を一部加えて、その経営規模というものの拡大を行なうことが容易にできるようにしてあげたいということであって、自作農主義という原則は、ちっとも今回提案しておる農地法改正とは矛盾はない、こういうふうに私は考えております。
  65. 斎藤実

    斎藤(実)委員 以上で私の質問を終わります。
  66. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長代理 稻冨稜人君
  67. 稲富稜人

    ○稲富委員 私は、与えられた時間が至って短うございますので、要点をつかみまして簡略にお尋ねいたしますから、答弁のほうも、ひとつ簡略にお願いしたいと思うのであります。   〔安倍委員長代理退席、委員長着席〕  まず私は、今回の法の一部改正にあたりまして、最もわれわれが危惧する点、この点を二点ほどにしぼりましてお尋ねしたいと思うのであります。  まず、最初にお尋ねしたいと思いますのは、御承知のごとく、農地法の第一条に、「この法律は、農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、耕作者農地取得促進し、その権利を保護し、その他土地農業上の利用関係を調整し、もつて耕作者の地位の安定と農業生産力の増進とを図ることを目的とする。」という定義が第一条にうたってあります。私がこれに対して質問することは、今回の法の改正が、ややもしますると、この耕作者農地取得促進するということを、逆に阻害する結果になりはせぬかというのが一点。さらに一つは、その耕作者の持っておる「その権利を保護し、」ということが第一条にはっきりうたってありますが、かえってその保護というものがされない結果になるのじゃないかというのが憂慮する点であります。  なぜこういう点を私はここに指摘するかということになりますと、御承知のごとく、これによりましてこの耕作権が緩和される、あるいは小作料というものが緩和される、こういうことになりますと、逆な結果になりはせぬかとわれわれは憂慮するのであって、もしも政府が、この農地法の第一条というものを忠実に行なおうとするならば、今回の法の改正によって、そういう疑いの起こる点を、よほど行政的な指導をもってこれに当たらなければ、私は逆な結果になると思うのであるが、これに対する政府はどういうような見解と、どういうような行政的な指導をやるという方針を持っておられるのであるか、その点をまず承りたいと思うのであります。
  68. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 私では不十分かもしれませんが、御指摘のような農業所得の向上を阻害するだろう、こういうような考え方は私は持っておりません。その第一条に書いてあるとおり、これを忠実に守りたい、こういうような考え方でございまして、公庫の資金をまず増額する、そして土地取得は今後も極力促進ができるようにしたい。したがって、さらに貸借関係に対しましては、弾力的にこれらができ得るような方法を開くことによって、その第一条にある目的を忠実に守ることができ得る、こういうふうに私は考えるのでございます。
  69. 稲富稜人

    ○稲富委員 ただいま大臣が御答弁をなさったような、それだけの考えであるというならば、あまりにも現在の農業経営というものを安易に考えていらっしゃるのじゃないかと私は思うのでございます。  では具体的に申し上げますならば、農地というものは、耕作する者が取得するというのが一番喜ばしいものであると私は思う。これがやはり生産性向上にもつながることである。そういう意味から、農地法の第一条においては、耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めている。しかも、耕作する者が権利を増大することによって、健全な農業経営ができると考える。ところが、耕作者の権利が弱まりますと、あるいは土地所有者が耕作者に将来売りたいと思っておっても、結局売らないで済むということになってくる。こういう点から、農地耕作者みずからが所有することを最も適当であると農地法の第一条に認めておりながら、耕作権を緩和することによって、これが阻害されはせぬかというこの点を私はお聞きしておるわけなんです。  さらにまた、耕作権が緩和されるということとともに小作料も緩和される。いわゆる小作料制限が撤廃される。そうすれば、土地所有者が耕作者土地を売りたいと思っておっても、それを売らないということになってくる。そうしますと、その結果は第一条にあります、耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めている、その基本的な方針に反するような結果になりはしないかということを私たちは憂慮するわけなんです。  この法律の一条を十分知ってから、政府はこれを提案されたとするならば、われわれがそういうように憂慮する点は、よほど強力なる行政的な措置によってやるか、あるいはさらに、何かこれを抑制するような法的措置をとるか、こういうことで防がなければ私はできないと思うのでありますから、こういう問題に対するもっと具体的な含みがあるのであるか、どういうふうな考えを持っていらっしゃるかということを、われわれの納得するように御説明願いたいというのが、私の質問の趣旨でございます。
  70. 中野和仁

    中野政府委員 農地法の第一条の目的改正につきまして、大筋をいま大臣から御答弁があったわけでございますが、今回の改正によりましても、不耕作者農地取得するということを禁止しております原則は変えておりません。それから耕作権につきましても、あとで申し上げますが、改正はいたしておりますけれども、基本的に非常に弱めてしまって、民法的なものにしてしまったというふうにもわれわれ考えておりません。それからまた、優良農地を確保するための農地転用の制度も残しております。  そういう原則の中で今回こういうふうに改正いたしましたのは、ただいま先生指摘のように、耕作者土地を持つという原則は私も賛成でございますし、そのとおりでありますけれども、ただ単にそれだけではいかないような農業内外の情勢の変化が出てきたわけでございます。  たとえて申し上げますならば、先ほどもお話がございましたけれども、兼業農家あるいは離農しようとする農家土地は売たくない、しかし貸したいというようなことがあるわけでございます。しかし、いまそれで行なわれておりますのは、全部やみとか請負とかいうことになってきております。これでは農地法秩序ワク外の問題になってしまうというような事情が非常に出てきましたので、単に耕作者土地を持つだけが一番いいのだ、そういうことだけでは済まないような農地法の実情になってきております。  そこで、先ほど大臣から御答弁ありましたように、もちろん耕作者土地を買いやすいように、農地取得資金の援助等はやらなければなりませんけれども、それとあわせまして、やはり土地を効率的に使うためには貸しやすくする、あるいは協業的な考え方から生産法人に土地の提供がしやすくなる、こういうこともあわせて織り込んでいかないと、今後の農業の発展が期せられないのではないかというふうに考えたわけでございます。  それから、耕作権の弱体化の問題でございますが、これにつきましても、われわれとしましては、先ほどもちょっと触れましたが、既存の小作地につきましては、一つには統制小作料を十年続けます。それからもう一つは、これはたびたび御議論のあったところでございますが、耕作者が合意をしない限りは、別にいまの小作地を返還する必要はございません。  そういう前提に立っておりますので、今回改正をいたしますのも、知事の許可制度についての合意解約の場合、十年以上の契約の更新拒絶の場合だけはずすというような考え方でございます。これは、あまりに耕作権が強過ぎますと、新しい契約としてやる場合にはなかなか許可を受けに来ない、農地法ワク外秩序がだんだん広がるということを心配しておりますので、われわれとしましては、耕作権をもう少し貸し手と借り手のバランスの上に立ったものとして安定させたいというふうに考えておるわけでございます。
  71. 稲富稜人

    ○稲富委員 それで、私も現在のわが国の農業の事情が、最近変化している事実は認めます。しかしながら、それはやはり農地法目的に沿い得る範囲において改正をしなければできないと私は思う。もしもそれを逸脱して法の目的に反するような改正をやらなければできないという事情があるならば、この法の基本的な方針に沿うようなよほど強い行政的な措置というものが、当然行なわれなければできないと私は思う。この点が非常に軽んぜられておるのじゃないかということをわれわれは憂慮するわけなんです。ことに私たちは、どこまでも土地というものは耕作する者が所有するという、この基本的な考え方というものを守らなければできないと思う。  ところが、いま言いますように、あるいは第三者が土地取得することだけできるようになる。農地というものはどこまでも耕作するためのものでなければいけないが、ややもしますると一つの商業的な、商品の対象としての土地の売買というものが行なわれやしないか、こういうことさえ憂慮せられる点もまたあるのでございます。こういう点に対してはいかなる措置をやられるかという、よほどこれに対する政府の的確なる方針がなければ、この第一条の方針が非常に軽んぜられ、ゆがめられるような結果になりはしないかということを私は憂慮するがために、ただいま申しました基本的な問題に対して政府の方針を承りたい、こう言っておるわけなんです。
  72. 中野和仁

    中野政府委員 農地法基本的な精神につきましてのわれわれの考え方は、私もいま稻富先生お話しのとおりだと思います。そのワク内にありまして農地法秩序をつけていかなければ、制度としての農地法はもたなくなるのではないかということを私は先ほど申し上げたわけでございまして、基本的な気持ちはそのとおりでございます。  したがいまして、先ほども触れましたけれども、今回の改正案におきましても、先ほどちょっと先生が言われましたが、不耕作者土地取得するということは一切認めておりません。それから、商品として土地が売買されるというようなことが今度の改正から出てくるのではないかというお話でございますが、そういうつもりもありませんし、また、改正案の第三条の権利移動統制におきましても、そういう観点ではなく、やはり土地農業として効率的に使われるような方向移動統制をやるということにしております。  したがいまして、改正案がもし通りますれば、そういう方向で新しい秩序を立て直すようなつもりで、強力に行政指導はいたしたいと考えております。
  73. 稲富稜人

    ○稲富委員 現時点において利用される土地というものを、できるだけ耕作者が耕作に利用するようにしたい、こういうようなねらいだろうと私は思う。現時点におけるそういうようなもの、あるいは土地が耕作もせられないで放置されておる、これを耕作させればうるさいから所有者がそのまま放置しておるものを、新しく耕作者が借りることによって耕作に利用する、こういうねらいだろうと私は思う。本来からいうならば、耕作者取得することがいいけれども、放さないならば、これを利用するように持っていきたいというのが、あるいはこの法の改正の趣旨じゃないかと私はうかがうのでございますが、新しいそういう事態が生じたものはそれでいい。  ところが、従来から耕作をしておるもの、これに期限等を定めるということは非常におかしいことで、やはり耕作者の既得権というものはどこまでも尊重することが、法の精神からも必要じゃないかと思うのですが、これに対する考え方はいかがでございますか。
  74. 中野和仁

    中野政府委員 今回の第三条の改正におきましても、従来といいますか、今後もそうでございますが、小作地につきましては、小作人が買い受けの優先権があるということは変えておりません。ただ、これも御議論ありましたが、例外といたしまして、その小作人が買わないということに同意をした場合だけ第三者に売れるということにいたしておりますので、基本原則は、お話しのように耕作者、その土地の小作人が、まず土地が買えるということは変えておりません。
  75. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、現在耕作しておる人が買いたいというような場合の融資に対する行政的な措置、こういうものに対しては、積極的に取り組んでいこうという決意がありますか。
  76. 中野和仁

    中野政府委員 農林漁業金融公庫の取得資金の中で、小作地所有についても融資を、現在でもやっております。今後ともそれの拡充をはかりたいと考えております。
  77. 稲富稜人

    ○稲富委員 この場合、それでは現在耕作している人が、自分が買いたいという場合は優先的に買わせる、しかも、これに対する融資には特段の措置をとって融資をするというのですか。買いたいと思っても金がないからというような場合が多いだろうと私は思いますが、そういう場合に特段の措置をやって、その耕作者が買えるように措置をやるという行政的な含みがあるかどうかということを承りたい。
  78. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまも申し上げましたように、取得資金につきましては、小作地取得についての資金の拡充を、できるだけはかっていきたいというふうに考えております。
  79. 稲富稜人

    ○稲富委員 それでは、この問題の結論といたしまして申し上げたいと思いますことは、どこまでも土地というものは、耕作者所有するというこの前提に立って今後の行政指導をやっていく、政府はあらゆる方途を講ずるんだ、こういう決意がおありかどうかということです。
  80. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 そのとおりにやる考え方でございます。必ずそのように推進をいたします。
  81. 稲富稜人

    ○稲富委員 さらに、その次にお尋ねしたいと思いますのは、今回の農地法改正と民法との関係でございます。  御承知のとおり、民法の二百七十条に、「永小作人ハ小作料ヲ払ヒテ他人ノ土地ニ耕作又ハ牧畜ヲ為ス権利ヲ有ス」とあります。ところが、民法上においては永小作権か賃借権かということは明らかにされておりません。今回、政府農地法改正にあたって、従来の小作地というものに対して永小作権、こういうことを認められておるのであるか、あるいは賃借権だという、こういう考え方を持たれておるのであるか、この点をまずはっきりお願いしたいと思います。
  82. 中野和仁

    中野政府委員 われわれの農地方に——われわれのといいますと恐縮でございますが、農地方の中にあります賃貸借につきましては、われわれは永小作権ではなくて、賃貸借というふうに考えております。
  83. 稲富稜人

    ○稲富委員 そうすると政府考え方は、現在耕作している土地に対して、民法の永小作権というものを認めるのか、それとも日本の小作関係においては、永小作権という状態の土地はない、こういう解釈でございますか。
  84. 中野和仁

    中野政府委員 ちょっとことばが足りませんで恐縮でございました。と申しますのは、賃貸借につきましては二十条で、大体原則的には知事の許可がないと解約ができないというように、農地法賃貸借の耕作権を非常に守っておる現状でございますので、私そういうふうに申し上げたわけでございますが、もちろん、いま民法施行法前の慣行による永小作権というものはほとんどもう消滅しておりますけれども、設定契約によりますものは若干ございます。これは大体二十年から五十年という契約で設定をするものですから、そういうものを農地法で否定しているわけでございません。その設定なり移転なりは知事の許可が要りますし、小作地所有制限につきましては、いわゆる賃貸借によります小作地と同じように考えております。現在では小作料統制もございます。しかし、いま申し上げましたように二十条の適用がございません。  それから、十八条の第三者対抗要件につきましては、永小作権は物件でございますから、それ自体対抗力があるわけでございまして、この適用はございませんし、法定更新の十九条の規定の適用もない。それから、ただいま申し上げました二十条の解約の場合の知事の許可がないという違いがあるわけであります。
  85. 稲富稜人

    ○稲富委員 私の聞いているのは、永小作権というものは物権でございますよ。ところが、現在の民法上の解釈によりますと、永小作権も設定契約によって成立することはわかっております。ところが、個々の小作関係は、永小作権かあるいは賃借権かを区別する一般的な標準がないというのが民法上の解釈なんですよ。これは非常に争いがあるわけです。これに対して、永小作権の場合は譲渡権等があるわけです。それであなたのほうでも、永小作権は民法で規定があるけれども、現在のわが国の小作関係においては、永小作権を認めないのだというような解釈でされると、この民法上の永小作権というのは空文になるということになるんですが、そういう解釈でいいのでございますか。
  86. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま御説明申し上げましたのは、認めていないということを申し上げたのではなくて、永小作権も若干ではございますけれども、設定契約によりますのがございます。しかし、これは物権でございますので、それ自体非常に強い力を持っております。賃借のような債権関係ではございませんので、そこで物権としての対抗力なり何なりみな持っておりますので、別に知事がそこで保護する必要はないということで、農地法上の解約の場合に、取り扱いが違うということを申し上げたのであります。
  87. 稲富稜人

    ○稲富委員 これは永小作権の設定契約がないものでも、従来の慣例等によって、小作関係は永小作権であるか賃借権であるかという問題は争いになるところです。争いになるのに、それを農地局が、設定契約がないものは賃借権だという規定をつけられることは、非常に窮屈ではないかと思いますよ。これはいつでも民法上の争いになる問題なんで、それを農地局がそういう断定をされることは非常に問題があると私は思う。そういう法的な解釈はされぬだろうと私は思うのですが、この点どうなんですか。
  88. 中野和仁

    中野政府委員 小作関係の契約が、永小作権の設定契約であるか、賃借の契約であるかというのは、やはりその契約の中身を具体的に判断をして、どちらであるかということをきめるべきだというふうに考えます。
  89. 稲富稜人

    ○稲富委員 それならわかるんですよ。ないとおっしゃるから……。それで今度は、永小作権の場合は譲渡の権利も許されているが、今後小作関係の場合に譲渡を認めるかどうかという問題、いわゆる耕作権の譲渡ですが、これをお認めになるかどうかという問題をお尋ねしたい。
  90. 中野和仁

    中野政府委員 農地法第三条の許可を受ければ、譲渡ができるわけでございます。
  91. 稲富稜人

    ○稲富委員 許可というのは、だれの許可ですか。
  92. 中野和仁

    中野政府委員 第三条は知事の許可でございますが、その村内の者は、今度の改正案が通りますれば、農業委員会許可ということになるわけでございます。
  93. 稲富稜人

    ○稲富委員 この民法上の譲渡というものは、他人の許可を受けぬでもその人の物権であり、その人の権利だから、譲渡する人と譲渡を受ける人が承諾すればいいのではないかと思う。それを、第三条の許可を受けなければ譲渡ができないというのは、非常な所有権の侵害だと思いますが、これはどういうお考えですか。
  94. 中野和仁

    中野政府委員 その点が農地法が存在するゆえんでございまして、農地所有権の移動につきましてもこれをかってにできない、知事の許可を受けなければいけないわけでございます。それと同じように、永小作権についても知事の許可がなければ、第三者には譲渡できないということでございます。
  95. 稲富稜人

    ○稲富委員 どうも答弁がはっきりわからぬような点もありますけれども、私の大体の持ち時間がこれで終了したようでございますので、いろいろまだふに落ちない点がありますが、ただ、最後に希望として申し上げたいのは、私が冒頭に述べましたように、少なくとも今回の法の改正によって、農地法第一条の規定が阻害されることのないような、特段の措置を政府がやらなければできないということ、これに対して十分ひとつ考えて、これがために、少なくとも日本農業経営が後退するようなことにならないような措置をやらなければできないと思いますので、これに対して、ひとつ最後に大臣決意を十分披瀝していただいて、私の質問は、時間がないから終わることにいたします。
  96. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 いろいろお話承りまして、私たちは農地法の第一条の精神にのっとりまして、必ずそのように行なうことをお約束申し上げます。
  97. 丹羽兵助

    丹羽委員長 森義視君。
  98. 森義視

    ○森委員 時間の制約もございますので、今日までの論議の中で触れられなかった、車地利用権と入り会い権の関係にしぼってお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、四十一年一月施行の入り会い林野近代化法について、今日までどのように整備が進捗しているのか、林野庁長官から実情をお聞かせいただきたいと思います。
  99. 片山正英

    ○片山政府委員 お答え申し上げます。  入り会い林野の近代化の実施状況で、四十四年三月末日現在の調べでございますが、整備計画をつくりましてその認可をいたしましたものが二百四十二部落で、面積にいたしまして二万七千ヘクタールでございます。それから、認可申請中になっておりますのは百七十部落でございまして、その面積が一万九千ヘクタールでございます。なお、調査月日が少しずれておりますけれども、四十三年九月末に調査したものでございますが、整備計画をつくりつつあるもの、いわゆる計画に入ってまだ認可申請までは至りませんですが、それを検討し推進をしておる事業体が約千四百六十九で、面積にいたしまして約十五万ヘクタールでございます。  その中で、認可済みの二万七千ヘクタールにつきまして、一応その経営形態はどうなっておるかというものを調査いたしますと、いわゆる生産森林組合等の協業経営をいたしておりますのが三分の二ございます。個別経営ということで個別にやっておりますのは約三分の一でございます。  それからまた、認可済みの二万七千ヘクタールにつきまして利用目的別にはどうなっているかというものを調査いたしますと、林業関係につきまして九八%、農業その他におきまして二%、大体以上のような状況でございます。
  100. 森義視

    ○森委員 いまの御報告の中で、整備後の利用目的が林業用の利用が九八%、圧倒的に林業を目的とする利用が高いわけですが、そういう状態になったのはどういうところにありますか。農林業の利用としての今度の近代化整備が、林業利用に圧倒的に集中しておるようにいまの報告では承ったわけですが、そういう原因はどこにありますか。
  101. 片山正英

    ○片山政府委員 先生承知のように、入り会い林野は大体全国で約二百万ヘクタールございます。そのうち原野と考えられますのが、約一五%の四十五万ヘクタールぐらいあるわけでございます。  そこで、いままで入り会いの近代化によって認可をいたしました経営体が、なぜ林業だけが多いのだという御質問だと思いますが、現在の状況を見ますと、大体その入り会い林の近代化の認可をいたしました事業体の山は、林業をやっておったのが大部分であったということが一つでございます。したがって、自然的条件その他が農業的に不適であったというふうに考えられるわけでございます。  それからもう一つは、やはりそういう林業的にやっておったということから、たとえば、畜産的経営に移行するというような場合でも、経験その他が非常に乏しいというのが実態でございましょうから、そういうわけで、畜産的利用になかなかついていけなかったというのが実態でなかろうかというように考える次第でございます。
  102. 森義視

    ○森委員 私は、ほかに理由があると思うのです。いわゆる入り会い林野の多い地帯というのは過疎地帯であります。今後農業用に利用するとしても、なかなか農業労働力が十分に確保できない。したがって、労働力の比較的要らない林業的使用のほうがいいのじゃないかというところから、林業的使用が多くなってきておるのではないか、そう思うのですが、それはいかがですか。
  103. 片山正英

    ○片山政府委員 確かに先生おっしゃるように、山林地帯がだんだん過疎の傾向がございます。そのような意味で林業的利用というものが、労務関係が畜産と比較するならば比較的少ない労務によって達成できるという諸情勢があることは、そのとおりだと思っております。  ただ、われわれこまかくその実態を調査したわけでもございませんが、先ほど御答弁申し上げましたように、大体林業的にやっておったところが移行されておるのが実態でございますので、人の問題だけで判断されたらどうかというのは、状況としては先生おっしゃるようにわかるわけでございますが、実態としましては、むしろ林業的になれておったところが中心で移行されたというふうに判断いたしておる次第でございます。
  104. 森義視

    ○森委員 いまお聞きのように、入り会い林の近代化による整備で林業的利用が圧倒的に多い、こういう報告を承ったわけでありますが、その地域で、今度は農業的利用を目的とする草地利用権を設定されるわけですが、今度の草地利用権の設定の対象になる里山というのは、大体どういう地区を予定されておりますか。
  105. 太田康二

    ○太田政府委員 御承知のとおり土地改良長期計画で、農林省といたしましては、昭和四十年から四十九年の間に四十万ヘクタールの草地造成をするということを発表いたしておるのでございますが、土地改良長期計画を立てます場合にわれわれが総合調査をいたしたのでございますが、その場合に、入り会い林野で対象になっておるのは約四万ヘクタールということでございます。このうち、土地改良の長期計画の中に組み込まれたものは、約半数の二万ヘクタールということでございますが、そのうちには、すでに農協有のものあるいは市町村有のものというような公有のものもございますので、草地利用権の設定の対象にする必要がないものもあるわけでございまして、そういった面からいいますと、われわれ見通しといたしまして、草地利用権の設定の対象となる可能性のあるものは、一万ないし二万ヘクタール程度にとどまるのではないかというふうに考えております。  しかし、そうは申し上げましても、実は入り会い林野は先生も御承知のとおり、その権利の内容が非常に複雑多岐にわたっておりまして、これらを円滑に解決して利用権の設定が、法律の期待しておるとおり動くというには、なかなかむずかしい問題もあるわけでございますので、いま申し上げた一ないし二万ヘクタールが、すぐそのまま利用権の設定の対象になり得るというふうには考えていないのでございます。
  106. 森義視

    ○森委員 御承知のように、入り会い林野というのは本来その付近の部落民が、いわゆる採草放牧地としてずっと昔から利用してきたものであって、草地造成には一番適した地域が、いわゆる入り会い林野地域ではないかと思うのです。ところが、いまのお話ですと、四十万ヘクタールの草地利用計画の中で入り会い林野に含まれるのは約二万ヘクタールだ、しかも、その中には旧慣使用林野も含まれておるので、したがって、入り会い林野はその半分の一万ヘクタールくらいだろう、こうおっしゃっておられるわけですが、そのことは間違いございませんか。  私は、入り会い林野こそ、いわゆる草地利用権の設定をする対象になり得る歴史的な宿命を持っておる里山地帯だ、こういうふうに思うので、草地利用権の設定の主たる対象が、この入り会い林野地域になるのじゃないかというふうに考えておったのですが、いまの畜産局長お話では、非常に少なく考えておられるのは、これは権利設定の問題について、入り会い林野の場合においては、個人所有林野と違ってたいへん問題があるので、それをよけて通るという形で考えられたのですか、あるいはそういうことは全然考慮に入れずに、いわゆる全体的に見てそういう形になったのか、その点明らかにしていただきたいと思います。
  107. 太田康二

    ○太田政府委員 先ほども林野庁の長官が御答弁なさったのでございますが、入り会い林野の面積が全体で二百万ヘクタール、そのうち採草放牧の可能面積というのですか、約四十万ヘクタールあるということでございます。そこで、われわれが土地改良長期計画で、将来草地の対象になる土地を調べたのでございますが、その場合に、利用の可能性も含めまして調査いたしたのでございまして、その結果、一応八十五万ヘクタールのうち取り上げられたものは四万ヘクタールでございます。土地改良長期計画では、そのうち四十万ヘクタールを当面目標にするということでございますので、対象になりましたものは二万ヘクタールということに相なったのでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、利用の可能性ということに強く視点を置いて調べておりますので、その際入り会いの問題が非常に困難なところというのは、意識的にはずされておるというような問題もあるわけでございまして、なお、今回補完調査を実施いたしておりますので、これによって、最終的にはさらに面積ははっきり把握できるというふうに考えております。
  108. 森義視

    ○森委員 いずれにいたしましても、入り会い林も今度の草地利用権の設定の対象になり得ると思う。私はもっと広い面積がその対象になり得ると考えておったのですが、いまの土地改良長期計画では、わずかばかりでございますけれどもそういう対象になり得る。  そこで、ひとつお尋ねするわけですが、四十一年の入会林野近代化法の制定当時、その審議に加わりました経過からいって、大体あの法律基本的な考え方は個別私権化を確立をする、そして従来の、いわゆる集団で持っておった所有権というものを個人の所有権に想定をして農林業上の利用を促進する、そういういわゆる私権論的な立場に立った法律であったと思うわけです。ところが、今度の農地法改正によるところのいわゆる草地利用権の問題は、公共的、公益的とは申しませんが、集団的な共同利用という形、いわゆる個別私権化とはおよそ発想において違った方向考えられておるわけでございます。ついこの間成立した法律考え方と、今度の草地利用権によって考えておられるところの共同利用の考え方との間に、立法的な発想の基点において食い違いがあると思うのですが、それについていかがですか。
  109. 中野和仁

    中野政府委員 入り会い林野の近代化法につきましては、先生指摘のとおり、私権としての近代化をはかってきたわけでございます。今回農地法にああいう規定を置きましたのは、現在農地法の中にも未墾地買収の規定がございまして、一定の手続によりましてその土地を強制的に買収しまして、草地造成をはかるという規定がございますけれども、これはたびたび申し上げていますように、なかなか所有権まで強制的に買収するという社会情勢ではございません。しかし、一方では自給飼料基盤の造成という面から、草地造成を非常に進めていかなければならないという問題がございます。  そこで、われわれといたしましては所有権には触れないで、しかも、他に森林としての利用あるいは入り会い林としての利用のあるところにまで強引にということではございませんで、遊んでおる土地につきまして、所有権にまで触れないで一定期間賃貸借権を設定いたしまして、そこを草地造成に使っていきたいというふうに考えたわけでございます。それの手段としまして、最終的には知事の裁定という制度を設けたわけでございます。
  110. 森義視

    ○森委員 入り会い林野の近代化法では、いわゆる入り会い権者全員の同意を得なければ、この問題についてのいろいろな処理ができないわけですね。ところが今度の場合には、入り会い権者が草地利用権者との間に話し合いをして協議がととのわなかった場合に、知事の裁定によって一方的に協議したものとみなすという形で権利を喪失する、こういうことになっているわけですね。御承知のように、入り会い権をめぐるところの民法上の紛争議というのは、小繋事件をはじめずいぶん長期にわたる紛争議を、今日まで歴史的にわれわれ承知をしておるところでありますが、そういうややこしい民法上の権利をめぐる紛争議の問題が、今度は条件づきではございますけれども、知事の一方的な裁定によって権利を喪失してしまう。私はその点について民法上問題があると思うのです。  かりにここに百人の入り会い山がある。その中で五十人が草地利用権の設定について同意をした。ところが、五十人はどうしても同意をしない。そこで知事の裁定を経た結果、知事は諸条件を勘案して、これは草地利用権を設定することが適当である、こういうふうに、裁定を下した場合、その同意しなかった入り会い権者の権利というものはその時点において喪失する、この法の解釈を読めばそういうふうに理解されるわけですが、そういう権利というものは、私はやはり入り会い権として残ると思うのです。したがって、たとえば先ほど申しましたように、入り会い山のある地域というのは過疎地帯である。したがって出かせぎ者が多いから、全員協議というのはなかなか得にくい。めんどうくさいから、結局十分協議がととのわずに知事の裁定に持ち込んだ、いまいわゆる協議の対象がはっきりつかめないために、つかめた対象とだけ協議をして、あとの権者というものをしっかり確認をしないうちに、あとは知事が一方的に裁定できるんだからということで、反対があろうとなかろうとやれるんだということで知事の裁定に持ち込んでしまう、そういうことになるならば、入り会い権者の権利というものは、知事の裁定という大義名分によって一方的に葬り去られてしまうという危険性が出てくると思う。  その場合、知事の裁定後に入り会い権者があらわれて、自分の権利を主張した場合どうなるのか。そういう事態が起きる可能性が多分にあると思うのです。その点をどうお考えですか。
  111. 中野和仁

    中野政府委員 入り会い権につきましては、先生指摘のように非常に複雑な権利でございますので、いろいろな問題が起きることもわれわれ承知しております。  ただいまの御設例のような場合に、百人の中で五十人と五十人というようなことになりますと、実際問題といたしましては、知事は裁定し切れないんだというふうに思いますけれども、制度として申し上げれば、最終的には知事の裁定によって入り会い権は、先生さっき喪失というふうに言われましたけれども、われわれは、賃貸借設定している間の権利の制限というふうに考えております。したがって、全面的に制限される場合があればそれは補償しなければなりませんし、共同で利用のできる場合もあるわけでございます。その場合には、その部分についての補償ということになるかというふうに思っております。  そこで、お尋ねの件でございますが、入り会い権者が全員わからなければ、これはお話にならないといいますか、知事が裁定したあとでそういう権利者が反対をすれば、当然、入り会い権は全員との協議が原則として必要でございますから、それは無効になります。そこで別の手段を使いまして、もう一ぺん新しい人との協議から始めなければならないというふうに考えているわけでございます。
  112. 森義視

    ○森委員 そうすると、知事が裁定を下しましても、入り会い権者全員の同意が必要だから、入り会い権者の中で一部は裁定に従わなかった場合においては、その裁定自体が無効になる、こういうことですか。
  113. 中野和仁

    中野政府委員 今回の制度は、まず土地所有者や入り会い権者に協議をするわけでございます。その場合に、なかなかまだ人がわからないという場合があるかと思います。その場合にはさがしまして、裁定までの間に補正をして協議を続けてやるという手続をとらなければならないと思います。  ただ、知事が裁定をしてしまったあと、また別に十人の権利者がおったという場合は、これは協議をしておりませんから、裁定は無効になるわけであります。
  114. 森義視

    ○森委員 具体的な話をしたいと思うのですが、Aという市が今度の草地利用権を設定したい。ところが、Bという部落はいわゆる畜産振興の部落であって、どうしても草地がほしいということで市に申請して、市がCという部落が持っておる入り会い林を草地利用権設定の対象として申請をする。そういう場合に、Bという部落とCという部落が平素から仲が悪く、片方は畜産振興を中心としたところの部落である、片方は林業的土地利用を中心にした部落である、したがって平素からそういうつき合いがない、したがって協議の相手方として入り会い権者の名前を表に出すこともいやがる、あるいは協議自体についてこない、こういう場合があろうかと思うのです。そういう場合に、協議がととのわないからといって知事に裁定を申請する。ところが、知事が客観的に見た場合に、なるほどB地区がほしがるほど草地造成地としては全く適した土地である。したがって、諸条件を勘案した結果、これは国土の高度利用という見地からいうならば、草地利用のほうがいいだろうということで裁定を下す。そういう場合に、Cという部落は全く協議に参加しておらない、裁定だけは服さなければならない。こういうことになれば、民法上のいわゆる地方の慣習に従うという権利が、知事の裁定によって全部喪失してしまうのですか。消滅するのですか。
  115. 中野和仁

    中野政府委員 先ほども申し上げましたように、入り会い権は消滅するのではないというふうにわれわれ考えております。  たとえば、十年間草地利用権と賃貸借の権利を設定いたしますと、その間草地造成をやったために、たとえば、ワラビを取るとか何とかいうような権利でありますれば、ワラビが取れなくなるということで、その分の行使が制限されるわけです。それに対しては借り賃なり、あるいは補償をしなければなりません。十年たって、草地利用権はもう解消するといったような場合には、再び入り会い権の復活と申しますか、生き返ってくる、こういうことになるわけでございます。
  116. 森義視

    ○森委員 草地利用権がある間は、入り会い林の権利者にとっては大きな制限ですね。入り会い山というのは、本来そういう山なんです。そういう山の中で草地利用権が設定されたら、利用権の中の大多数、大部分が制限を受けるわけですね。いわゆる民法上の旧慣のそういう権利が、一方的に知事裁定によって、その利用権だけが取り上げられるという形が認められるのかどうかということなんです。  この入り会い権の問題については、この前の入り会い林野の近代化法の審議の際に、いろいろと民法上起きておる紛争議を調べてみますと、入り会い権というものは非常に高度に保護されているわけです。あの小繋事件のように、山を売り払ってしまったが、全日貝同意していなかったのだからといって反対の人が出てきて権利を主張して、結局最高裁で敗訴になりましたけれども、その後の経過はどうなっておるのか。あのときに、最高裁で敗訴のあれを受けたときに、小繋の部落の人たちは、山がそこにある限りおれたちの戦いは続くのだと言って笑って帰っていった。おそらくまだ入り会い権を主張して、自分たちの採草放牧地として活用しているんじゃないかという気もするのですが、その事情もおわかりならば聞かしていただきたい。協議がととのわなかった場合に、知事の裁定で一方的に制限をするような、そういう簡単なものじゃないと思うのですが、いかがですか。
  117. 中野和仁

    中野政府委員 今度の草地利用権も、制度としましては知事が最終的に裁定いたしますけれども、その前段階としまして協議をし、そして開拓審議会にかけ、この審議会の中にもいろいろな関係者、単に草地利用権賛成派といいますか、促進するような方面ばかりではなくして、いろいろな学識経験者を入れた開拓審議会にも意見を聞きますし、もちろん農協、森林組合その他の意見も聞いて、慎重な手続を経たいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、お話の民法によります入り会い権は、権利の内容としては地方の慣習に従うということになっておるわけでございます。その権利につきまして草地利用権が、別の目的といいますか、公共的な目的から設定された場合には、そういう民法上の権利はある程度制限を受けるということに、関係としてはなるわけでございます。
  118. 森義視

    ○森委員 先ほどちょっと具体的な例を話して、ABCと分けて話しました。A市におけるB村とC村が、平素からそういう部落の交流がない。したがって、協議それ自体に乗ってこないのですよ、最初から。いわゆる畜産振興の立場から草地としての利用権を設定したいということでB村が市に申請する、ところがC地区の入り会い権者が乗ってこないという場合がある。  そういう場合に、あなたは協議するとおっしゃるけれども、協議の相手方がその協議に乗ってこない。協議しなければならぬという義務は入り会い権者にないでしょう。Bという部落が草地利用権を設定したいということでも、C地区の部落民がその協議に乗らなければならぬという義務規定はないでしょう。乗ってこない。おれたちは林業利用にこれをみんなが考えておるのだ、今度の入り会い権近代化法によって、コンサルタントに入ってもらっていろいろ説明を聞いて、なるほどこれからおれたちがこの土地を利用するのには、いわゆる生産森林組合をつくって林業的に利用したい、こういっておるやさきに草地利用権の設定が申請された場合、そのときにどうなるのか。初めから協議にならない。十分協議をされて、その中で、たとえばたまたま出かせぎをしておって、その協議に加わらなかったというような問題が出てきた場合については、それはあとからさがしてでも賛成するように、同意を求めるように話し合いをしていく、そういうことはあると思います。しかし、意識して協議に乗ってこない人たちの入り会い林野の権利についてはどうするか、こういうことをお尋ねします。
  119. 中野和仁

    中野政府委員 改正案におきましては、協議がととのわず、または協議することができないときは、協議をすることについて承認を受けた者が知事に裁定の申請をするということになっておりまので、いまの場合、法律論といたしましては、協議がととのわないという、話に行ったのですけれども、話がつかなかったという場合にあたると思います。  ただ、先生の御設例の場合は、私も具体的にはわかりませんけれども、そういう場合には、なかなか知事としましても、そこの採草放牧地の利用がその村民の生活といいましょうか、生計に密着しておるといった場合には、一方的にそこを草地にしたほうがいいというだけでは、なかなか裁定し切れないのではないかというふうに思います。その辺は具体的な問題として、慎重に取り扱う必要があるというふうに考えます。
  120. 森義視

    ○森委員 そうでしょう。結局、協議がととのわなかった場合、いわゆる入り会い権者が協議する意思がない、そういう場合においては、なるほど利用権を申請しておる人たちは、協議がととのわなかったということで一応知事に裁定を申請する。しかし、知事は協議それ自体が行なわれていないから、その地域が、たとえば採草放牧地として適地であっても、これは草地利用権を設定することはできない、こういうことになるのではないですか。いまおっしゃったのはそうですね。
  121. 中野和仁

    中野政府委員 私、申し上げましたのは、法律上できないということを申し上げたのでなくて、知事が、草地で利用したほうがいいか、そこの村民の採草放牧地の利用に残したほうがいいかという判断の問題にかかっておるということを申し上げたわけです。
  122. 森義視

    ○森委員 その場合に、それでは法律上できないと思うのです。なぜかというと、全員の協議ができない場合、その入り会い林野はどうすることもできない。そのことが法律として一方にあるわけです。そうでしょう、入り会い林野近代化法にちゃんとある。入り会い権者全員の合意がなければ、どうにも動かせない。  したがって、全員協議も何もしてない、もちろん同意もしてない、そういう問題について、知事が一方的に、客観情勢を判断して草地利用権を設定するということは、これは法律的にできないと思うのです。法律的に二重にひっかかってくると思うのです。一つは、民法上の権利をそんなに知事が一方的に制限してしまう、しかも多数の人の民法上の権利をそんなに一方的に制退することはできない。あなたは法律上はできるけれども、実際のその地域の実情に応じて、知事がそういうことを裁定を下さないだろう、こうおっしゃるけれども、私は法律的にもできないだろうと思うのですが、いかがですか。
  123. 中野和仁

    中野政府委員 先ほども申し上げましたように、民法上認められました入り会い権がありましても、それに対して別の目的から、今度の草地利用権のように公共的な目的で私権を制限するということは、制度としてはあり得るというふうに考えて、今度の改正案に草地利用権の設定の規定を置いたわけでございます。
  124. 森義視

    ○森委員 局長の言っておられることと私とちょっと食い違いがあります。大体知事が政治的判断からその地域ではそんな裁定を下さないだろう、協議に参加をしない、そういう入り会い林をもっと林業的利用を考えておる地域の住民の意識を押えて裁定をしないだろう、そういうことで了解をしておきたいと思うのですが、私はこの点は法律的には疑義があると思うのです。  そこで、先ほど林野庁長官の、いままでの入り会い林野の近代化整備法の中で、大体林業的利用が非常に多くなってきておる、そういう報告をいただいたわけですが、二百万ヘクタールの中で近代化整備をやろうとするのは大体百五十万ヘクタールですか、それを年次計画でやっておられるのですから、その点は十分な予算がついて、幾らでもそういう近代化促進してほしいというところの申し出に応じられるような体制にいまなっているのですか、いかがですか。
  125. 片山正英

    ○片山政府委員 先生指摘のように、二百万町歩のうち、近代化の対象に考えておりますのは大体百四十五万町歩でございます。大体十カ年計画で進めておりますが、先ほど御説明申し上げましたように、現在十五万町歩を対象にして進めております。財政当局ともいろいろお打ち合わせをしてその中で進めておるわけでございますが、現在のところ順調な姿である、こういうふうに判断いたしております。
  126. 森義視

    ○森委員 現在の林業的利用をさらに促進する意味で、平地林業というものに対して、林野庁はこの時点で考える段階に来ておるのじゃないか、私はこういうように思うのです。二百万町歩の入り会い林を、いわゆる近代的な林業生産地に転換するということは、これは、日本の林業がいま期待しておるところの総生産の増大に結びつくための重要な基盤整備になると思うのです。そういう点で、今度の里山地域の畜産的な、いわゆる農業的な利用ということで農地法の一部改正のこういう法案が出ておりますが、林業という立場に立った場合に、林野庁長官はどういうようにお考えですか。  従来の日本の林業は山岳林業で、いわゆるいかだを使って、川の流域を中心にして林業が発展してきたわけです。ところが、最近ダムなんかができておりまして、いかだを利用する運搬というのがなくなって、トラックになってきたわけです。そうすると、これからの林業の平地に進出する条件というものは、林業の運搬の変革によって新しく生まれてきておると思うのです。そういう見地に立って、里山地帯のいわゆる平地林業を推進する、そういう観点から考える場合に、今度の草地利用権の設定の問題と平地林業を振興しようとする観点に立った場合の競合問題について、林野庁はどうお考えですか。  農地局のほうは、とにかく総合農政の一環としての畜産の振興のためには、どうしても自給飼料が必要である、そのためには草地造成を急速に考えていかなければいかぬ、こういう観点に立っておられるわけです。ところが、一方林業の立場に立って考える場合に、毎年四億五千万ドルも外材を輸入しなくてはならない、これから木材の需要はさらに拡大していく、そういう場合に、林業用地として活用できる場所と、いわゆる草地を造成して活用する場所とが競合するわけです。そういう場合に、林野庁長官はどちらの側に立たれるのか。
  127. 片山正英

    ○片山政府委員 御承知のように、民有林全体で申し上げますと、人工造林が三割七、八分、残りの六割幾らというのが広葉樹林であり、かつ、そのうちの八〇%は薪炭林、こういう状況でございます。なおまた入り会い林野になりますと、さらにその率が下がりまして、人工造林は二割前後に落ちまして、八〇%の大半が薪炭林であろう、こういうふうに思います。  ところで、薪炭林の需要と申しますのは、御承知のように、薪炭の激減によりましてその需要が急減しておりますので、それらの大半の民有林、入り会い林野の薪炭林は、林業の需給から申しましても、さらに用材林に転換してまいらなければならない、かように思いまして、その推進をはかっておるわけでございます。  ただ、その際に、いまの草地の問題がございまして、その場合の判断は、われわれはやはり土地の高度利用というところに視点を置きまして、社会的な問題経済的な問題、そういうものとのからみ合わせで判断していくべきものだというふうに判断いたしております。
  128. 森義視

    ○森委員 林野庁長官がそんなことでは困りますよ。そんなあなた農林大臣みたいなことを言わずに、林野庁長官としての意見を聞いておるんです。日本の林業が、どんどんダムをつくられ、今度は国有林活用だとか、草地利用という形でどんどん蚕食されていっているのに、自分が林業を守るという立場に立たずに、国土の高度利用から考えるというようなことでは、日本の林業は滅びますよ。林野庁長官としてどう考えるかということを聞いておるのです。それは農地局長としての考えと違うのがあたりまえのはずですよ。日本の国土の高度利用、まるで農林大臣みたいなことを言って、あっちにもいい顔、こっちにもいい顔をしようということでは、日本の林業は滅びますよ。もっと日本の林業を守っていこうという立場から、土地の高度利用を林野庁長官は真剣に考えないとだめになりますよ。もう一回林野庁長官としての考え、林業の番犬としての考え方を聞きたい。
  129. 片山正英

    ○片山政府委員 林業にいたしましても、先ほど申しましたように、用材林への転換によって林地の合理的な利用を推進する。御承知のように、いま林業は外国から四割も外材が入っております。しかも関税はございません。そのような形で、素っ裸の姿で競争いたしてやっておるわけでございます。そのような形で、林道等の問題もございますが、林業として成り立つ基盤をつくってやってまいる。その意味におきます所得というものは、当然高度の所得を期待して指導しておるわけでございます。  一方、草地その他を総合した判断の中において、その部落においてあるいはその社会環境の中において、さらにもっと高度のものがありとするならば、それは調整していくべきじゃないか。林業として十分指導はしますけれども、さらに調整していくべきじゃないか、こういうふうに思っておる次第でございます。
  130. 森義視

    ○森委員 私は、何も農業利用を制限しろとか、そういう立場からものを言っているんじゃないのです。少なくとも林野庁長官として、日本の林業を守るという見地からいったならば、こういう草地利用、いろいろな面で林業が蚕食されてくることについて、何らか抵抗するようなあれがあるだろう、こう思ってお尋ねしたわけですが、あなたの御答弁の中からは、どうも林業は自然の成り行きまかせで滅びる以外にないわい、そういう考え方のように受け取れるわけです。もう少し林業を守るという見地に立って考えていただかないと、これは長期にわたる国土保全の見地から、国民健康の上から、いろいろな面で、林業が公益的に必要な面まで侵食されてくるような危険性がありますので、この点については、ひとつしっかりと林業を守るという見地から、あらゆる施策の中で今後十分その立場を代表する発言をしていただきたい、こういうようにお願いしておきます。  それから、農地局長にお聞きいたしますが、旧慣使用林野は、この草地利用権の設定の対象になりますか。
  131. 中野和仁

    中野政府委員 旧慣使用林野につきましては、行政財産であるか普通財産であるか、いろいろあるわけでございます。大体普通の場合は、普通財産が多いようでございます。その場合には、設定は可能であるというふうに考えております。
  132. 森義視

    ○森委員 それでは、たとえば財産区が持っておる山ですね、旧慣使用林野で財産区が持っておる山、そういう場合に、財産区との話し合いの問題については、これは協議はどういうふうに考えておられますか。
  133. 中野和仁

    中野政府委員 財産区と協議をするわけでございますから、その代表者と協議をすることになるわけでございます。
  134. 森義視

    ○森委員 普通財産区の場合においては、市町村議会で議決をすることによって、一応財産区のいろいろな決定をできるわけなんです。したがって、協議の対象になるのは、財産区の意見を聞くという形にはなりますけれども、一応市町村が草地利用権を設定すると考えた場合においては、会の議決によってこれを利用することができると思うのですが、その点は、入り会い林の場合と若干違ってくると思うのです。そういう場合について、財産区に草地利用権を設定することは非常に容易だと思うのですが、いわゆる入り会い林のややこしい権利関係を調整してやるよりも、財産区を利用するという形のほうが非常に容易だと思うのですが、その点についてどうお考えですか。
  135. 中野和仁

    中野政府委員 民間の入り会い権よりも、お話しのように財産区を相手にしてきちっときめればよろしいわけでございますから、お説のように、そのほうが容易ではないかと思います。
  136. 森義視

    ○森委員 それでは林野庁にお伺いしますが、いわゆる旧慣使用林野の中でそういうふうに財産区を設定しているところですね、そういう林野の面積はどのくらいありますか。
  137. 片山正英

    ○片山政府委員 約六十万ヘクタールでございます。
  138. 森義視

    ○森委員 お聞きのように六十万ヘクタールあるのですね。非常にそういう手続が簡単にいく、そういう地域をできるだけ草地利用権を設定するように利用されたほうが効率的ではないか、そういうふうに思います。
  139. 中野和仁

    中野政府委員 協議の相手方としては簡単でございますけれども、使用の実態からいいますと、いわゆる入り会い権と同じような使用の実態がございますので、その面につきましても、われわれは慎重な態度で、財産区の全員の納得を得るような方向を、実際問題としては指導しなければならないと考えております。
  140. 森義視

    ○森委員 それから、先ほどのことでちょっと抜かしたのでもとへ話が戻りますが、いわゆる百名の入り会い山が草地利用権を設定された。協議の中で九十人まで賛成したが、十名が賛成をしておらないけれども、知事がいろいろな諸条件の中で、これを草地利用権を設定することが妥当であるとして裁定した。ところが、その十名がたまたまそのときに出かせぎに出ておって、協議にも加わらなかったし、その裁定がおりて初めて知った。自分たちの入り会い山が草地利用権が設定されて、かってにおれたちが行って切れないのだ、権利者でない人たちが入ってきてそこでいわゆる草地造成をやるんだ、こういうことになった場合に、いやそれはまかりならぬという形で自分たちが入っていく、そういう事態が具体的な事実として起きてくると思うのです。その場合に、この十名が協議に加わっておらない、裁定だけはおりたという場合に、入り会い林好の法律からいくならば、あとの九十名も入り会い権者として残るわけですね。そういう異議の申し立てがあれば、あとの九十名も権利者として復活するわけです。だからもとどおりの百名が、いままでの協議は全部無効であるという形になるのですが、そういう場合が事実問題として起こり得ると思うのです。  そういう場合においては、先ほどの御答弁では、その十名の人たちが帰るのを待っておって、そしてシラミつぶしに権利者を説得する、あるいはその裁定に従っていただくように努力する、こうおっしゃいました。しかし、それが協議に加わっておらなかったし、かってにやったからということで立腹してしまってなかなかオーケーを言わない、そういう場合においては、せっかく九十名まで賛成しその協議に加わっておりながら、知事も諸条件を勘案して裁定を下しながら、それこそ全体が無効になるというふうに考えるのですが、その点はいかがですか。
  141. 中野和仁

    中野政府委員 いまのお話は、十名が出かせぎに行っておりまして、それを知らないで全く協議の相手方にもしなかった、そういう場合は、お話しのように無効になるわけでございます。出かせぎ者であるということがわかっていて、それに対して、大阪なら大阪に行っている場合に、追っかけていって話し合いをするということもあり得るわけでございます。それからあとで発見をして、途中で協議の相手方に加えるということもできるわけでございますが、最後の裁定までの間に、全然気がつきませんでした場合には、やはり全体としてそこの協議は無効になるというふうに考えております。
  142. 森義視

    ○森委員 長官もお聞きのように、いわゆるライオン・牛論ということがあるわけです。九十人までは賛成しておって、裁定が下ったからそこで草地を造成して牛を飼う。ところが、十名の権利者がひょこっと帰ってきてライオンを放った場合はどうなるか。牛はみな食われてしまう。そういういわゆるライオン・牛論というのがあるわけですね。それが出かせぎで、毎年帰ってきてつかめる状態にある場合はいいですよ。しかしつかめなかった場合に、これは片一方では裁定は下すわ、その権利は無効だというふうになった場合どうなるのですか。
  143. 中野和仁

    中野政府委員 入り会い権の実態からいたしましては、大体地方地方で権利者というのは慣行でわかっております。そこで、大体非常に慎重な手続を経ているわけでございますから、まず十分その辺の調査をやりまして、全員にやるように指導をさせなければならないと考えております。
  144. 森義視

    ○森委員 予定の時間が参りましたので、最後に大臣にちょっとお願いしておきたいのですが、今度農地法で新しく草地利用権を設定されました。これはわが国の総合農政の見地から、いわゆる畜産振興という立場から、飼料自給体制を整えるという点から一歩前進した制度であろうと思います。ただし私は、遊んでおるそういう原野をそういうふうに有効に活用することはいいわけでございますけれども、入り会い権者が持っておる権利を、この法律をたてにとって、知事の裁定で一方的に制限できるのだというふうな形でトラブルを起こさないように、この法の施行については十分配慮を願いたい、このことを要望しておきたいと思います。
  145. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 今度の農地法改正にもありますように、私たちは入り会いを目的として草地をやるというような考え方ではないのであって、先ほど森さんからの御指摘があったように、日本の林業問題をどのように片づけていくかというその問題も大きな問題——総合農政でございますから、総合農政はやっぱり林野も入りますし、漁業も入ります。やはりこういうようなたてまえをとって進めていく考え方でございます。  したがって、ただいまのような草地の問題につきましても、ただ知事の裁定を待てばできるという簡単なものではございませんので、入り会いというものは非常に複雑な面もございますので、それらの面も十分に考慮に入れて、御期待に必ず沿うような方途で進むことをお約束申し上げます。
  146. 森義視

    ○森委員 質問を終わります。
  147. 丹羽兵助

    丹羽委員長 兒玉末男。
  148. 兒玉末男

    ○兒玉委員 大臣にまずお伺いしたいのでございますが、関係条項等については、同僚議員からその大綱をほとんどただしておりますので、総合的な点からお伺いしたいと思うのです。  今回の農地法改正なりあるいは食管法の自主流通米制度の実施によって、全く農民は重大な危機に立たされると思うのでありますが、今回の農地法の意図するところは一体どこにあるか。この法案の提案の理由にも明らかにされておるわけでございますけれども、いわゆる「土地農業上の効率的な利用をはかる」ということが基本になっているようでございますが、この「農業上の効率的な利用をはかる」ということは、具体的には、農民の全体の生産性を高めて農業所得を向上しようとする意図があるのかどうか、まず第一点お伺いしたいと思います。   〔委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕
  149. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 農地法改正のねらいは、農業生産性を高め、国民食糧の安定的な供給を考え、さらに農業従事者の所得の増大をはかりたい。したがって、農政基本目標を実現するためには、農業経営規模拡大、あるいは農業構造改善をはかることが最も肝要であり、したがって、このために農地がより生産性の高い経営によって効率的に利用をされるようにその流動化促進する等、土地農業上の効率的な利用をはかることをまずねらいとして、農地法改正を行なおうとしておるものでございます。
  150. 兒玉末男

    ○兒玉委員 六月十四日から施行されました新都市計画法の策定の過程を見ますと、その市街化区域の対象予定地域というのは、全農地の六割近いということが報道されておるわけでございますが、そういう情勢から考えました場合に、結局、規模拡大をはかるということはわかるわけでありますけれども、限定されました農地を、国土の総体的な農地拡大しないでおって、ますの中で力のある者だけが規模拡大をしましても、残されました九割近くの中零細農業というのは、一体どうなっていくものか、ここに私は非常に理論的な矛盾を考えるわけですが、その辺の関連はどうお考えになっておるのか、お伺いしたいと思います。
  151. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 現今のように、農業地帯というものがいたずらにどこの方面でもかまわずに壊廃をされていくというふうなことがあると、ただいまお話しのように大きな問題が起きてまいります。でありますから、今度は新都市計画法によって、市街化区域とかあるいは調整区域というものを区分をいたしまして、そうして農業が再生産でき、そして生産性を高めていくように、調整区域にはいたずらに壊廃ができないような措置をとっていく、こういうことでありますから、あくまでも農業というものの権利を守り抜きたい、こういうような考え方の上に立って新都市計画法というものは計画をされておるわけでございます。
  152. 兒玉末男

    ○兒玉委員 農地局長にお伺いしたいのでありますが、先ほどの大臣答弁でも明らかにされておるわけでありますけれども、いまの新都市計画法との関連を含めて、今後の日本農業の位置づけといいますか、大体国民食糧を供給するための国内の農地というものは、どの程度の最低限の面積を必要と考えているのか。その中における今後の土地分配というものが、結局弱肉強食の形態をもたらすのではないか、こういう懸念を私はするわけでありますけれども、総体的な最終的な段階における農地の保有面積を、どの程度に想定をされているのか、お伺いをしたいと思います。
  153. 中野和仁

    中野政府委員 最終的と申しますとなかなかむずかしいわけでございますが、われわれ昨年策定をいたしました五十二年の需給見通しによりますと、大体田畑の面積は五百七十五万ヘクタールくらい、それから草地が六十一万ヘクタールくらい造成をしたいというふうに考えておりまして、草地を合計いたしますと、現状よりは拡大をしたいということを考えておるわけでございます。
  154. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それでは大臣にお伺いしたいのでございますが、いま農地局長答弁されました農地なりあるいは牧草地を含めたそれだけの面積において、大体農業全体の所得水準というものをどの程度まで持っていこうと考えておられるのか。  特に、農業基本法が昭和三十六年に制定される過程におきまして、しかも農基法の第一条にも、いわゆる農業並びに農業従事者のこれからの使命の重大性というものを強調し、国民各層における所得の格差を解消することが明らかにうたわれているわけですが、この農基法の第一条の目的と合致をしながら、どの規模において、どの時点においてこの格差が解消されると確信されておるのか、お伺いしたいと思います。
  155. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 農業の他産業に対する生産性の格差は、農業基本法ができます前後の昭和三十四、五年のころは、農業が製造業に対して生産性において二四、五%でございましたが、その後農産物価格の値上がりあるいは農業従事者の減少等々のことがございまして、農業と他産業との生産性の格差というのはよほど縮まったわけでございます。御承知のように、昭和四十二年の農業白青に詳しく分析をいたしておりますけれども、大体三八%前後まで上昇してまいったわけでございます。  ただいま農地局長が申しましたが、昭和五十二年における耕地面積五百七十五万町歩、草地面積六十一万町歩というふうに想定をいたしまして、昨年の十一月に農業生産の長期見通しを出しましたけれども、それによりますと、農業生産の伸びは年率にいたしまして二・七%でございます。そういたしまして、農業従事者の減が四・一%というふうに見込まれるわけでございますから、一人当たりの農業生産性というのは約七%上昇するということになります。これは農業以外の他産業生産性の伸びがどうなるかという問題がございますが、まず六、七%程度というふうに押えますと、昭和四十一年程度に到達いたしました農業生産性は、わずかではございますけれども逐次改善されるというそういう見通しで、私ども農業政策をやっておるわけでございます。
  156. 兒玉末男

    ○兒玉委員 それでは官房長にお伺いしたいのでありますが、去る十六日に農林省が発表しました農業所得の状況というものを見ますと、昭和四十二年が対前年一〇%以上の伸びを示して、大体収人そのものが百三万円、ところが四十三年度は百九万円で、実質的には一割以内に農家の所得の伸び率が低下をしている。しかも、農業所得に依存する度合いというのは、四十二年度は四九・五%でほぼ半分に近い数字を示しておりますが、四十三年度は逆に四七・八%と、農業による所得が減退をしているこの現実をどういうふうに判断をされているのか、お伺いしたいと思います。
  157. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 四十三年におきます農業所得の伸びが、それ以前の数年に比べまして伸び率が下がっておりますのは、四十三年におきまして農産物価格の上昇の度合いが著しく鈍化いたしまして、四十二年までは大体年率七、八%の増加でございましたが、四十三年におきましては大体二%程度の上昇にとどまったということが、私は大きな理由であったと思います。  農業基本法以来、農業の他産業に対する生産性の格差が著しく小さくなりましたのは、農業従事者の人口減あるいは農業生産の増ということもございましたが、大きくは農産物価格の上昇でございますから、農産物価格があまり上昇しないという現実に立つと、今後における農業の他産業に対する格差の是正ということが、なかなかむずかしい状態になることは御承知のとおりでございます。私どもが昨年以来総合農政といい、また農政について新しい構想を打ち出すべき時期であるということを申し上げておりますのも、こういうことを前提といたしまして、今後農業所得を増加し、農業の他産業に対する生産性の格差を是正することがなかなかむずかしいし、それをやるためには、また新しい構想と農政の態度が必要だと思うわけでございます。
  158. 兒玉末男

    ○兒玉委員 この点もう少しお聞きしたいわけですが、その前提として、今後の農家所得の上昇をはかるためには、新しい構造政策も出されておるわけでありますが、私は今後の農地の利用区分といいますか、科学的な調査に基づく長期の展望に立たなければ、農民は一体何をつくっていいのか、将来のビジョンというものを明確に示さなければ、皆さん方が考えているように農地法改正することだけでは、なかなかその目的は達成できないと考えるわけでございますけれども、今後の農業経営の主体といいますか、経営規模ということでなくて、その農業の内容というものはどういう方向に重点を置いていこうとするのか、この点を明らかにしていただきたい。
  159. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私どもも、農地法改正をもって足れりとするのではございません。農地法改正がまさに新しい農政の出発点であって、農地法改正なくして私どもの新しい農政は行ないがたいということでございます。  そこで、新しい今後の問題といたしましては、一つは、農業生産を需要に合わして徹底的に進めるということでございます。そのためには、昨年の十一月に農産物の長期見通しを出しましたけれども、これはあくまで全国ベースでございますから、これを現在地方の農政局単位に区分して作業を進めておるわけでございます。それをだんだんにおろして、農協その地農業団体の自主的な生産と出荷の計画化ということと相まって、私ども何とかして農産物の過剰の問題を今後十分解決していかなければならないと思います。  同時に、農業のにない手といたしましては、基本法の示すところに従いまして、やはり何といいましても農業を一生懸命にやって、農業で生活できる農家をできるだけつくるということが一つでございますが、あわせて兼業農家あるいは零細農家が現実にたくさんおるわけでございますから、その人たちをできるだけ協業の中に入れて、そうして機械力等を用いて生産力の増強をはかり、自立経営育成と協業の助長というこの二つの柱を、農林省としては今後の政策の主要な方向といたしてまいるつもりでございます。
  160. 兒玉末男

    ○兒玉委員 今後農地拡大とか、あるいはそういうふうな構造面の改善をはかっていくべきだけれども、少なくとも農基法農政のもとに展開された構造改善事業というものがなかなか思わしくいかない。その要因として、何といいましても基盤整備等に対する農家の自己負担というのが、非常に大きいというところに最大のネックがあったと私は思うのですが、少なくとも将来の生産性なりあるいは農業所得の向上ということがはっきりと約束をされなければ、今回の新しい構造政策におきましても、前車の轍を踏まざるを得ない結果におちいると思うのですが、やはりこのようないわゆる共同化なり協業化なり基盤整備に対する国庫の負担というものを拡大し、少なくとも基盤整備は全額国庫負担によって行なうという画期的な対策を並行的にとらなければ、その志向するところは決して達成できないと考えるわけですが、これについての官房長の見解を承りたい。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕
  161. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 私どもも農地の改良を進めるために、国庫の協力といいますか、応援がますます必要であるということはそのとおりだと思います。ただ、お話しのように全額国庫負担ということになりますと、農地は公共の目的をある程度まで持っておると同時に、私有財産でもございますので、できるだけ国がめんどうを見るということであって、やはり応分の出費を農家からしてもらうということが筋だろうと私は思います。
  162. 兒玉末男

    ○兒玉委員 農地局長にお伺いしますが、土地の効率的な利用ということと、それから農業基本法第一条に書いておりますように、高度の公共性を持つのが農業だと思うのです。ところが、昨年来展開されましたたとえば作付転換につきましても、全体の五割程度しかこれが進展していないということを考えます場合に、規模拡大なり作付転換等この農地法改正と密接不可分の関係にある意図というものは達成できないと思うのですが、このような作付転換等がなかなか進捗しない背景というものを、どういうふうに理解をされているのか、農地局長にお伺いしたい。
  163. 大和田啓気

    ○大和田政府委員 作付転換の問題と農地法改正とは別でございまして、作付転換できない理由としては、やはり一万ヘクタールの作付転換をことしやってもらおうということで、ただ条件としては全く自主的な農家の協力であって、強権を用いて無理な指導を一切やらないというたてまえをくずさなかったわけでございますから、農家の判断として、米をやめて別のものをつくるということになかなか踏み切らなかったということが一番大きな理由であろうと思います。  しかし、それにいたしましても、私ども締めて申し上げれば、大体五千二百ヘクタールないし五千三百ヘクタールで、それも大体野菜なり飼料作物といいますか、牧草等々を主体として、各県の中では、いろいろ農家が興味のあるといいますか、今後の事態を暗示させるような動きを示していることも事実でございます。
  164. 兒玉末男

    ○兒玉委員 ここで農林大臣にお伺いしますが、先ほど官房長の答弁によりますと、今後の農業所得の増高ということは、年平均二・七%の増を期待しているということを言われておるわけであります。しかし、先般農林大臣は、生産団体の意向を無視して、ことしの米はついに一銭も値上げしなかったわけでありますけれども、少なくとも現在農業中に占める稲作の比率というものを見ますと、四十一年三七・一%、四十二年四〇・四%、四十三年は四二・一%と、稲作に占める比率というのが年々高くなっているわけであります。また、農家収入の中において稲作の寄与率というものを見ますと、昭和四十二年に九・二%米価を引き上げたが、これによって五一・八%の寄与率になっております。ところが、昨年は五・九%しか米を上げていないのに、いわゆる米に対する農家収入の寄与率は、逆に七一%という高率を示しているわけであります。  この数字が明らかに示しますように、もし今後このような状態で推移いたしますならば、本年度は米価を一銭も上げないということになりましたが、農家の収入というものは非常に米に依存する度合いが高いわけでありますから、結局ことしは、先ほど申し上げましたとおり、四十三年度よりもさらに農家収入は減収の方向にあるということが指摘をされるわけであります。  そういたしますと、先ほどの官房長のほうの見解とは逆の結果を招くことを、この数字が明らかに示しているわけですが、これにどう対応しようとされておるのか、お伺いしたいと思います。
  165. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 お米の値上げをしなかったということ、これは御承知でもありましょうけれども、何といっても需給というもののバランスを欠き過ぎていて、従来のようにただ生産すればいいという意味ばかりじゃなくて、せっかく生産をしたものが食糧にならずに、逆に家畜のえさにしなければならないという実情等、こういう面も政治を行なうわれわれは、あわせて考えなければならないと思います。  そこで、農家収入という点については、ただ価格政策ばかりではなくて、今後はさらに生産あるいは構造、こういう面に対して大いに意を用いて農家収入を上げていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。昭和四十三年度というお話でございますけれども、いずれにしても本年度からは、これらの点につきましては思い切った財政負担を国が行なって、生産コストを引き下げられるような方法を必ずやり抜いてまいりたい、こういうふうに考えております。したがって、これらあわせまして農家収入の増大ができるような方法を切り開いていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  166. 兒玉末男

    ○兒玉委員 生産コストを下げるということは、結局農民の犠牲においてやろうとしていることなのか。先ほどの官房長の答弁では、たとえば、生産力を増強するための基盤整備等については、やはり岡の力でやらなければ不可能だ、きわめて困難だ、このことは第一次の構造改善政策がはっきり示しているではないかという私の指摘に対して、農地は個人の私有的財産だから、そう国がやたらにめんどうを見るわけにはいかないという答弁でしたが、それと、ただいまの農林大臣の、いわゆるコストダウンのための大規模な国の財政投資を行なうという意見とは、明らかな食い違いがあるように受けとれるわけですが、いかがですか。
  167. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 食い違いはございませんけれども、いまお話しのように、農民の犠牲においてという考え方は毛頭持っておらないのでございまして、何といっても今日これだけ農業生産性を高めたこと、今年度御承知のようにわが国が世界第二位の工業的な立国にもなっておるという点等々あわせ考えてみましても、いかに今日安定した農業政策があったかということがその結果を物語るものだと思うのでございます。  さらに私たちは、農業というものが今後ますます必要性を増大していくと思います。なぜならば、人口は当然より以上ふえていくということは、毎年の統計に出ているとおりでございます。したがって、経済力が高まるに従いまして国民の生活構造というものが変わってきておりますから、その生活構造の変化に従ったところの農業政策というものが行なわれていかなければいけない。したがって、農産物そのもの自体も変えていかなければならないのだろうと思うのであります。  こういうような大きな転換を控えておりますので、これらを機にいたしまして、農業所得の上昇ばかりでなく、生産性を高めて安定して農業ができるような施策を、本年度からはさらに思い切った施策に変えていきたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  168. 兒玉末男

    ○兒玉委員 大臣にお伺いしたいのでございますけれども、どんなに生産性を高めても、価格形成の一番基本をなすところの流通対策というものを考えなければ、りっぱな土地基盤整備をやり増産をはかりましても、その効果は期待できない。  特に、農産物の例を一つとりますならば、たとえば、カン等の場合におきましても、生産農民の手取りは一キロ当たり三十円程度しかないのに、中央の市場においてはこれが三倍も四倍もの高い価格で販売されておる。またでん粉等の場合については、無計画的なコンスの輸入によって、北海道なり南九州等のカンショ生産農民、バレイショ生産農民は決定的な打撃を受けておる。  このような輸入農産物に対するところの規制、流通面におけるところの抜本的な改革が行なわれなければ、どんなに生産コストの問題、生産性向上なり生産規模拡大をはかりましても、常に農民が泣かされなければいけないという宿命的な立場が、ずっと続いていくということが予想されるわけですが、これについてどういうふうな見解をお持ちか、お伺いしたい。
  169. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 御指摘の流通対策、これが一番重要な問題だと私たちは考えて、まず本年もこれらの問題に対処すべく、たとえば市場機構というような点にもいろいろ意を用いましたし、また漁業の面におきましても、それらを考えたわけでございます。特に今後は、流通対策を重視した政策が立てられなければならないと考えます。  さらにまたコンスの輸入の面でございますけれども、これらにいたしましても、ただ野放しにしておくわけではございませんで、関税割り当て等を行ないまして十分な調整をとって、その上に立った対策を講じておるつもりでございます。  なお、これらに対しまして、今後はより以上十分に対策を立てて、問題が起こらないようにやってまいる考えでございます。
  170. 兒玉末男

    ○兒玉委員 特に農民が購入する肥料なり、農薬なり、農機具、農業用資材というものは、独占価格によって高い商品を買わされている。売る物は、先ほど申しましたように買い手に買いたたかれる。しかも、中間搾取が非常に多いために、そのしわ寄せは常に農民にきておる。この現実を踏まえながら、少なくとも私は、物を生産する農民がこれを市場に出荷するまで、やはり生産から加工、この加工の面について積極的な取り組みをしなければ、いま大臣が言われたような目的の達成なり農民全体の所得を高めることは、私は不可能に近いと思うのですが、これについてどういうふうな御所見をお持ちか、お伺いしたい。
  171. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 生産及び加工、流通、これらにおきまして、加工の面につきましては農協の経済力を十分に生かしまして加工の面を充実させ、流通の面につきましては、われわれは責任をもって今後この解決をはかってまいりたいと考えておるところでございます。
  172. 兒玉末男

    ○兒玉委員 時間の制限がございますので、最後に農地局長並びに大臣にお伺いしたいのであります。  先ほど答弁がありましたとおり、大体昭和五十二年を目途にして農地面積は五百七十五万ヘクタールということを言われたわけでありますが、この五百七十五万ヘクタールの農地所有する農家戸数というのは、農地局長考えている規模拡大方向から考えました場合に、一体どの程度の農家戸数に縮少していって、初めて専業なり農業経営を主としておるところの人たちの生計が成り立ち、また他産業とのいわゆる格差というものが解消できるのか。同時に、これに伴いまして、いわゆる経営規模の小さい農家というものは、おのずから農業を捨てていかなければならないという重大な危機に立たされることが私は予想されるわけでございますが、このような零細農の中高年層の行くえというものは一体どうなっていくのか、ここに今日全国農民が重大な危機と不安を持っていることをわれわれは十分把握しなければいけないと思うのですが、この辺に対して、局長並びに農林大臣の御所見を承りたいと思います。
  173. 中野和仁

    中野政府委員 先ほどの長期見通しによりますれば、農家戸数は、五百四十数万戸の現在戸数が四百五十万戸程度に減少するというふうに見通しております。ただ、この中身はどういうことになるかは、大体推定でございますけれども、おそらく専業的な農家が一部伸びていきまして、兼業が十年後に消えてなくなるということもないと思われます。  そういたしますと、現在でもかなり兼業農家農業生産のウエートがかかっておるわけでございますから、こういう兼業的な農家の協業といいましょうか、そういうものを、生産法人なりあるいは農事組合法人によりまして進めていくということも、あわせて必要かというふうに考えております。
  174. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ただいま局長お話を申し上げましたが、したがって、今後の中高年齢層に対する施策でございますが、これらは、就業構造改善を進める上において基本的な重要な問題であろうと考えるのでありまして、したがって、農家の意向も十分に尊重しつつ、農業経営からの引退あるいは他産業への転職を進める必要があろう。  ただ、この面の施策は、農民年金とか老齢保障とか、こういう問題と他産業への転職の問題などは、社会保障あるいは雇用賃金等の、農政の場をこえた政策分野においても問題があろうと思うのでありまして、これらの面につきましては、十分に関係行政機関とも協議をいたしまして、必要な施策の確立とその方法を円滑に進めてまいるように、大いに努力をしてまいる考え方でございます。
  175. 兒玉末男

    ○兒玉委員 最後に農林大臣にお伺いしたいのでありますが、たとえば、麦なりなたね、大豆に見られますように、ほとんどの重要な食糧が外国からの輸入に依存している。今後予想される農業の中心であるいわゆる米、畜産、果樹等にいたしましても、外国の輸入農産物に依存する姿勢というものを根本的に改革をしていかなければ、私は、将来の農民の生活の向上は絶対に期待できない、こういうように確信をいたすわけです。輸入農産物に依存する度合いというものをできるだけ解消する方向に最善を尽くすべきだと思うのですが、これに対する大臣の見解を承りたい。
  176. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 今後の輸入農産物につきましては、どうしても国内の生産をやりましても引き合わないものがございます。また、土地の気象上なかなかむずかしい面も出てきております。こういう面、たとえばトウモロコシだとか、ヒエだとか、繭だとか、こういうようなものは、どうしても輸入をしたほうが得だというように私たちは考えておるわけであります。反面、といってただ野放しに輸入を進めるという意味ではございませんけれども、国内生産の開発のできる面においては大いにこれを開発する。しかし、どうしてもその不足分というものは、これらは輸入にウエートがかかってくるだろうと考えます。  さらに、果実だとかあるいはその他の御指摘になったようなものに対しましては、われわれは輸入を十分押えて、国内産品においてこれらの消費をまかなうように大いに今後意を用いて、そうしてその目的が達せられるように努力をしてまいる考え方でございます。
  177. 丹羽兵助

    丹羽委員長 他に質疑の申し出もないようでありますので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  178. 丹羽兵助

    丹羽委員長 これより本案を討論に付します。  討論の申し出がありますので、これを許します。兒玉末男君。
  179. 兒玉末男

    ○兒玉委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、農地法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行ないます。  昭和三十年以降、高度経済成長推進する独占資本主義体制に奉仕する政府は、土地、気候等自然条件に左右され、かつ零細農耕制による農業農民に対し、弱肉強食の猛威をふるい、わが党反対の農業基本法の制定をはじめとして、機会あるごとに選別政策を強行し、農業労働力を企業に吸収して、農業の老齢化、婦女子化を招き、農業生産基盤である土地に対しては、資本にものをいわせて蚕食し、農民土地とを資本に従属せしめる政策をとってきたのであります。さらに、外国の圧力に屈して安い農産物を大量に輸入させ、コスト高の国内農産物を国際農産物市場のきびしい荒波にさらすなど、農業農民に対し多大の犠牲を負わせようとしているのであります。  このような動きは最近きわ立って露骨になり、佐藤総理が言う「農業は国のもと」であるとか、福田農林大臣が「だれよりもだれよりも農民を愛する」とかいう口先の美辞麗句の舌のかわかぬうちに、農業の進むべき道を明示しないままに、農民の唯一のよりどころである食管制度について、自主流通米制度の発足、米の作付制限生産米価の据え置きなどを違法のうちに強行して、食管制度をなしくずしに廃止しようと意図したり、あるいは農地につき農外資本によるスプロール化を拱手傍観して、農業経営規模拡大の美名のもとに多くの農民から土地を取り上げ、零細農民の切り捨てをねらいとする農地法改正を行なおとしているのでありまして、いずれも独占資本の支配にこたえる自民党政府の大企業中心の政策から出発したと言えるのであります。  右の農政不在の傾向に対し、農民の反撃が次第に高まり、農基法農政の失敗が明らかにされるに従い、政府は新構造政策の展開から総合農政推進などと、単にことばをかえてその場を糊塗し、現実には食管法、農地法の二大制度の廃止をもくろみ、農業に対する保護政策を放棄しようとしてきゅうきゅうとしているのが今日の姿であります。  かかる観点から、今回の農地法改正法案を見ました場合に、真の農業構造の改革は単なる農地法改正ではなく、まず農政に対する姿勢を根本的に改めた上で、農政全般の抜本的改革を断行することが必要であります。  わが党は、農地制度農業の憲法的存在であることにかんがみ、今回の農地法改正案に対し、農地改革基本精神に逆行し、農業の矛盾を拡大させるおそれが多分にあるものと断じて改正案に断固反対し、農地法はあくまで耕作農民の権利を守り、農業の発展を目ざすものでなければならないとし、このため、一、農地は耕作農民所有することを原則とすること。二、農地の資産保有的傾向の経済環境を改め、農地農業生産に有効利用される政策強化すること。三、農業経営規模拡大は借地制による方向ではなく、外延的拡大をはかりながら、農業生産組合等による集団生産、共同耕作、受託耕作等によるものとすること。四、小作地は自作地化を促進すること等を基本方針として明確にし、以下改正案の具体的内容にわたり反対の趣旨を申し上げるものであります。  まず第一は、第一条の目的改正して、「土地農業上の効率的な利用を図る」ことを加え、借地農制を導入し、具体的には農地等の権利移動制限小作地所有制限賃貸借の規制等を緩和し、小作料統制を廃止する等によって、借地による経営規模拡大をはかろうとするものでありまして、これは現行法の基本理念とする、耕作者みずからの所有経営、労働の三位一体の自作農主義を否定し、ひいては農地改革成果を崩壊させ、寄生地主復活、零細農の切り捨ての政策に転換しようとするものであります。  農地改革が実施されてから二十年、かつて大正デモクラシーの時期に小作制度の確立のため情熱を傾けた農政担当者が、自来四十年の長きにわたり理想としてきた、耕す者がその田を持つ農地制度は、改正案によっていまや百八十度の転換を示し、少数のエリート農業育成に踏み出そうとするものであり、法改正によって借地による規模拡大がある程度可能になり、かつてのような小作人泣かせの地主制度にはならないとしても、種々の弊害が発生しないとは何人も保証し得ないのであります。独占資本の要求に急なあまり、悔いを千載に残すことのないよう、猛省を促すものであります。  第二には、農地等の権利取得制限について、農地保有の上限面積制限及び雇用労働力制限の撤廃は、現行法における家族労働力による場合は制限を越えてもよいことになっており、統計上からも都府県三ヘクタール以上の農家は四万戸、全体の〇・七%しか存在せず、また所有権の移動を見ましても、〇・七から一・〇ヘクタール階層に最も多いことを示している際、これを撤廃しても農業経営発展の可能な経済的、社会的環境がそぐわず、むしろ一部の農家に資本家的農業の幻想を与えるにすぎず、農民が協同して独占資本の経済的収奪に対抗しようとする方向を分断しようとするものであります。  また、農地保有の下限制限面積を五十アールに引き上げる改正は、農地法の原則として強制すべきではなく、これは経営向上の意欲のある者を抑圧することとなり、農業外就業の安定的保障がない今日、貧農切り捨ての政策であるとのそしりを免れないものであります。  次に、農協による経営委託、農地保有合理化促進事業を行なう法人に対し権利取得を認めたことにつきましては、前者は請負耕作の追認であり、これを推進すれば、農協みずから組合員の脱農化を促進するものとなり、さらに現在の農協に受託能力があるかどうか。後者については、地域農民の内発的要請に期待をかけている程度のものであり、質疑においてもその法人の具体的内容も明らかにされないまま、これらについて権利の取得を認めることは、疑問なしとせざるを得ないのであります。  第三には、今回の改正案で最も重大な問題は、小作地所有制限を大幅に緩和して、不在地主制を認めたことであります。すなわち、都府県平均一ヘクタール、北海道四ヘクタールまでの不在地主を認め、また農業生産法人の構成員が所有する小作地経営委託により農協に貸し付けられるところの小作地農地保有合理化事業を行なう法人に貸し付けられる小作地並びに市街化区域内にある小作地については、在村、不在村を問わず、小作地所有制限をしないことにしているのであります。このように、例外的とはいえ、不在地主を認めることは、農地改革成果を崩壊させ、零細農の離農促進による低賃金労働力への流出を意図し、さらに将来大幅に不在地主を認める布石であり、特に農業生産法人の構成員の所有小作地について無制限不在地主を認めることは、寄生地主化を目ざすいわゆる擬装法人を多発させ、農外資本による投機的な農地投資によって農村支配の弊害を惹起させるおそれが多分にあると思われるのであります。農地法基本精神にもとることは必定であり、農地改革の際の不在地主と著しく公平を欠くとのそしりは免れ得ないのであります。質疑において、かつての寄生地主復活はなく、地主は第二種兼業農家であり、借地人は専業農家であるから、その心配はないと判断しているとの答弁でありますが、将来の情勢変化や、現在農外資本による仮装自作地が横行しているときに、かかる道を開くことに対しては、断じて容認することはできないのであります。  第四に、合意による解約や、十年以上の定期貸借の更新の場合に、契約更新の許可を要しないこととしていることは、明らかに耕作権保護の後退であり、耕作農民経営安定をそこなうことになり、生産意欲の低下、土地改良等への投資の減退を招くことは明らかであります。  農地賃貸借制度については、近代農業の確立をはかる上に権利強化は不可欠であり、西欧先進国では、かかる法体系が整備されておるのであります。改正案はこの趨勢に逆行し、弱体化を目ざしております。まして、わが国の農村では、今日なお力関係では地主の立場が強く、合意の名のもとに一方的に土地取り上げが頻発するであろうことは、火を見るよりも明らかであります。現行法による許可制度が、目下のところ妥当と考えるのであります。  第五には、小作料統制を廃止し、新たな小作料については地主と小作との相対契約を原則とし、これに伴い小作料の増減請求権の道を開くとともに、農業委員会小作料標準額の設定及び減額勧告制度を採用しておりますが、もともと小作料統制の主眼は、地主復活の阻止と残存小作地に対する救済的要素を持つものであり、これを廃止することは、自作農主義の放棄に通ずるものであります。現在自作農主義にかわるいかなるものをもってするか、明確なところの展望がないとき、小作料統制を廃止することは早計に過ぎるものであり、廃止された後の土地需要の趨勢から来る地価問題の解決をますます困難にし、小作料の上昇による農産物価格のコストにはね返って、価格政策混乱を招き、あるいは当事者間の紛争を激化させるなど、小作料統制廃止による農地流動化の効果よりも、数々のマイナス効果や弊害を誘発することが予想されるのでありまして、断じて賛成するわけにはまいりません。  なお、従来の小作地小作料は、十年間最高統制額が継続されることにしておりますが、新小作地統制が解除されると、旧小作地まで波及し、事実上これをなしくずしにする結果を見ることは、他の例を見ても明らかであります。  第六に、農業委員会農地法上の権限についての改正案は、農地等の利用関係の紛争に関する和解の仲介、農地等の権利移動許可権限、小作料標準額の決定及び減額勧告等、従来に比して一段とその権限が拡大強化をされているのであります。  現在の農業委員会は、かつての階層別選挙の農地委員会と異なり、選挙による委員と選任による委員により構成されて、部落代表的機関となっております。しかし、実態は著しく弱体であり、このような農業委員会に重要な権限を付与することが、はたして妥当であるかどうか。しかも、農地転用をめぐる不正事件が多発している中で農民の不信を買っている現在、これをそのままにしてこのような権限強化を行なうことは、土地ブローカー化をさらに強めることになり、思い切った改組を断行しないで、かかる権能を与えることには反対であります。  第七に、今回の改正案の中で、草地利用権の設定に関する規定は、前向きの姿勢が見られる唯一のものでありまして、この制度の運用の実があがることには賛成であります。ただ、里山等の山林地主の力関係、あるいは入り会い山等複雑な権利関係の中で、政府が期待するほどその実効があがるものかどうか、現在ではいささか疑問なしとしないのであります。  しかも、現行法の未懇地買収、売り渡し制度は発動されておらず、国の農用地造成の責任を放棄しているのでありまして、このような点にかんがみ、新たに知事裁定による草地利用権制度を設けても、同様の轍を踏むものと考えられるのであります。  最後に、今回の農地法改正案が、農地流動化のための借地農制を組み入れるための措置でありまして、単にこのような改正によって農地流動化するかどうか、農地の資産的保有の傾向が強まり、地価の高騰や農業経営の環境の劣弱、農業生産体制、農産物価格の混迷、あるいは農外雇用の不安定、農村社会保障の未確立等々、農業内外の困難な諸条件をそのままにして、農業経営規模拡大のため農地流動化促進しようとしても、安上がり農政といわれても当然であります。農地法改正に先がけて、これらの条件整備を完了することを要求し、以上指摘しました諸点から、この改正案に対し、日本社会党としては断固反対であることを表明し、私の討論を終わります。(拍手)
  180. 丹羽兵助

    丹羽委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  181. 丹羽兵助

    丹羽委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。(拍手)     —————————————
  182. 丹羽兵助

    丹羽委員長 この際、兒玉末男君より発言を求められておりますので、これを許します。兒玉末男君。
  183. 兒玉末男

    ○兒玉委員 ただいま、農地法の一部を改正する法律案が原案のとおり可決されたのでありますが、私どもは、先ほどの討論で申し上げましたとおり、この農地法の一部を改正する法律案については反対でございます。  反対の理由については、討論の中で詳細に申し上げましたとおりの趣旨によるものでありますが、この趣旨に基づいて、あくまで否決さるべきであるという意見であります。  国会法第五十四条の規定に基づき、この反対意見について、本会議において少数意見の報告をいたさんとするものでありますので、ここにこの意思を表明しておきます。
  184. 丹羽兵助

    丹羽委員長 ただいまの兒玉君の御発言、承知いたしました。     —————————————   〔少数意見報告書は附録に掲載〕     —————————————
  185. 丹羽兵助

    丹羽委員長 この際、本案に対し神田大作君外二名より、自由民主党、民主社会党及び公明党の三派共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨説明を求めます。神田大作君。
  186. 神田大作

    ○神田(大)委員 私は、ただいま議決されました農地法の一部を改正する法律案につき、自由民主党、民主社会党及び公明党の三党を代表して、附帯決議を付すべしとの動議を提出いたします。  まず、案文の朗読をいたします。     農地法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本改正法の施行にあたつて、農地制度基本理念である自作農主義を崩すことなく土地の効率的利用が図られるよう左記各項に十分留意し運用の万全を期すべきである。        記  一、小作関係における規制の緩和によつて農地取上げ等により耕作者が不利にならないよう十分に措置するとともに、小作料については、原則として全国農業委員会がその標準額を設定するようにし、かつ、その設定にあたつては耕作者経営の安定を図ることを旨として定めるようその算定基準を明示して指導すること。  二、農地の権利取得の場合の許可基準改正小作地所有制限の緩和等によつて転用期待の投機的な農地取得等が行なわれることのないよう指導すること。    なお、農地等の権利移動に係る下限面積については、弾力的な運用が図られるよう特に考慮すること。  三、農業委員会の権限強化に伴い、その組織内容を一層整備するとともに、農地転用をめぐる不正事件の多発している現状にかんがみ、農地法の適正な運用が行なわれるようこれが研修、指導等を強化すること。  四、農地取得資金のワクの増大、限度の引上げおよび貸付条件の緩和を行なうとともに、農地保有合理化促進事業を行なう非営利法人に対する財政上税制上の援助措置を実情に即して強力に実施するよう努めること。  五、畜産振興のための草地利用権の設定に関しては、本制度が十分活用されるよう必要な措置を講ずること。    なお、入会権者の権限については、十分に配慮して行なうこと。  六、国土利用計画の策定、農業振興地域整備施策推進と併せて、農業生産基盤整備農業構造改善事業その他農業振興諸施策地域の実情に即して総合的に実施するとともに、地価対策の確立、農外雇用条件の改善社会保障制度整備充実等につき万全の施策を講ずること。   右決議する。  以上の附帯決議の趣旨につきましては、すでに質疑の過程において十分論議されておりますので、御承知のことと思い、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜わりますようお願いいたします。(拍手)
  187. 丹羽兵助

    丹羽委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  別に御発言もありませんので、直ちに採決いたします。  神田大作君外二名提出の動議に賛成の諸君の御起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  188. 丹羽兵助

    丹羽委員長 起立多数。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について、政府の所信を求めます。農林大臣
  189. 長谷川四郎

    長谷川国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を尊重して善処いたします。     —————————————
  190. 丹羽兵助

    丹羽委員長 なお、ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 丹羽兵助

    丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  192. 丹羽兵助

    丹羽委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後一時四十四分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕