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1969-06-20 第61回国会 衆議院 内閣委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十四年六月二十日(金曜日)     午後二時二十八分開議  出席委員    委員長 藤田 義光君    理事 伊能繁次郎君 理事 佐藤 文正君    理事 塩谷 一夫君 理事 塚田  徹君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 浜田 光人君 理事 受田 新吉君       足立 篤郎君    赤城 宗徳君       井出一太郎君    内海 英男君       菊池 義郎君    田中 龍夫君       野呂 恭一君    葉梨 信行君       古内 広雄君    三池  信君       山口 敏夫君    淡谷 悠藏君       岡田 春夫君    木原  実君       楢崎弥之助君    華山 親義君       平岡忠次郎君    永末 英一君       伊藤惣助丸君    鈴切 康雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 有田 喜一君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      荒井  勇君         防衛政務次官  坂村 吉正君         防衛庁長官官房         長官      島田  豊君         防衛庁防衛局長 宍戸 基男君         防衛庁人事教育         局長      麻生  茂君         防衛庁衛生局長 浜田  彪君         防衛庁経理局長 佐々木達夫君         防衛庁装備局長 蒲谷 友芳君         防衛庁参事官  江藤 淳雄君         防衛施設庁長官 山上 信重君         防衛施設庁総務         部長      鐘江 士郎君         防衛施設庁施設         部長      鶴崎  敏君         防衛施設庁労務         部長      長坂  強君         外務省アメリカ         局長      東郷 文彦君         外務省条約局長 佐藤 正二君         外務省国際連合         局長      重光  晶君         文部省大学学術         局長      村山 松雄君         海上保安庁次長 林  陽一君  委員外出席者         外務省経済協力         局外務参事官  沢木 正男君         運輸省航空局技         術部管制課長  泉  靖二君         専  門  員 茨木 純一君     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第五号)      ――――◇―――――
  2. 藤田義光

    藤田委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の発言を許す前に、一言申し上げておきます。  当委員会は、終始一貫、きわめて真剣に、慎重に審議を継続してまいりました。この態勢を持続して、議会政治を正常化するために、皆さん方と一緒に微力を尽くしたいと思います。  どうぞ、委員諸君の御協力をお願い申し上げます。(拍手)  それでは、この際、鈴切康雄君の質疑を許します。鈴切君。
  3. 鈴切康雄

    鈴切委員 防衛施設庁長官にお伺いいたします。  昨年十二月の本会議において、わが党の矢野書記長質問に対して、総理大臣は、この基地は、日本の安全に直接寄与し、極東の安全に重要な役割りを果たしていると述べられておりますが、しかし、整理縮小返還を具体的に推進するため、わが党は、すでに基地の総点検を行ないました。さらに、意識調査を含めての具体的な問題を取り上げました。わが党の米軍基地実態調査によると、米軍基地が存在することによって、全基地の三五・二%、すなわち五十一基地住民が何らかの被害をこうむっており、しかも市街地に多い飛行場周辺では、医療施設などの約三分の二の多数のものが被害を受けております。そのほとんどが一種類だけの公害でなくて数種類の基地公害が併発している状態であります。周辺住民に非常な不便、不安を与えていることは明らかであります。さらに総理は、基地周辺住民の生活上の不安や不便を取り除くことを第一義的に考えまして万全の措置をとる考えであると答弁されておりますが、万全の措置とは具体的にどのようなことであるのか、また昭和四十四年度予算基地公害に対する予算はどのくらい計上されているか、まずお伺いいたします。
  4. 山上信重

    山上政府委員 ただいま総理大臣の御答弁を御引用になりましたように、在日米軍施設日本の安全と極東の平和のために存在するということではございまするが、この基地の存在によりまして周辺にいろいろ障害なり御迷惑なりをかけておるということは事実でございます。それにつきましては、これはどうしても基地運用について十分な効果を発揮させるということも考えねばなりませんし、周辺皆さん方に対する御迷惑を少しでも減少させなければいけないという意味から、基地運用について十分適正を期するのはもちろんでございますが、同時に周辺対策といたしましても、できる限り措置を講じなければいけない。そこで飛行場周辺の問題につきまして言えば、たとえば飛行場内におけるところの騒音の規制とか、あるいは飛行の制限とかいうことをとるのはもちろんでございますが、周辺に対しまするところの措置といたしましては、御承知のように防衛施設周辺整備法を中心といたしまして学校、病院その他公共施設等に対しますところの防音工事であるとかいったような措置、あるいは演習場等周辺におきましては、道路、河川等防災工事だとか、あるいは飛行場周辺におきますところの民家の移転を要望する者に対してはこれらの移転、その他各種の民生安定措置を講じておるわけでございまして、これらの基本的な法規といたしましては御承知のように防衛施設周辺整備等に関する法律、これをもちましてこれの弾力的、積極的な運用をいたすということによって周辺の方々の障害を軽減し、あるいは民生の安定をはかるという措置をとっておる次第でございます。  それらの実際の運用につきまして、御承知のように、昭和四十四年度におきましては、基地周辺対策予算といたしましては総計二百二十五億円の予算予定いたしておるのでございます。これらの内容のおもなものは、騒音防止に約七十六億円、その他の障害防止に約四十六億円、民生安定対策といたしまして十九億円、飛行場周辺等移転補償、これらに約二十一億円、その他の損失補償が九億円、また施設移転集約、これらに約七億八千万円、また測量の適正化のために三十四億円、労務対策に一億九千万円、特別会計に十億円といったようなものがおもな項目になっておる次第でございます。  これらの予算の執行にあたりましては、御承知のように四十四年度におきましては新しく従来の施策に、量をふやすだけでなく内容的にも充実していきたいということで、公民館、図書館あるいは市町村庁舎防音あるいはテレビの共同受信であるとか、あるいは集団移転範囲の拡大であるとか、あるいは防音工事に伴う冷暖房施設の助成であるとか、消防、水道等内容的にも充実をはかっておる次第でございます。もちろんこれをもって万全であるとはいえないかとも思いまするが、できる限りの措置を講じておるという状況でございます。
  5. 鈴切康雄

    鈴切委員 前年度に比べて対基地予算がどれぐらい増加されておるか、その点について伺いたい。
  6. 山上信重

    山上政府委員 前年度に比べまして、基地対策費といたしましては三二%の増でございます。
  7. 鈴切康雄

    鈴切委員 具体的に前年度に比べますと、非常にこのところ基地返還等が多くなされてきているわけであります。そういう観点に立ったときに、前年度の基地対策費に比べて三二%で、はたしてそれを十分に補えるかどうか、この点について。
  8. 山上信重

    山上政府委員 三二%と申しますると、心ずしもそれは私が先ほど申し上げましたとおりこれで万全であるとは申しかねるかとも思いまするが、その前年度が七%程度増額であったのに比べまして、本年度といたしましては、他の国家予算増額の幅に比べましてはるかに多い増額の幅をもってこの対策を講じようといたしておる次第でございます。なお、これらの措置によりまして、今年だけですべてを解決するということにはまいらぬかと思いまするが、今後さらに数カ年をもってこれらの障害防止民生安定等に万全を期してまいりたい、かように考えておる次第であります。
  9. 鈴切康雄

    鈴切委員 その後直ちに日米間において交渉が行なわれまして、一応整理の明らかになったところの基地がたしか四十一カ所、そのように記憶しておりますけれども、さらに昭和四十三年の十二月二十三日に開催されました日米安全保障協議委員会において非常に協議検討された、そのように伺っております。米軍施設区域調整計画に基づく返還等処理状況及び検討状況を明確に答弁をしていただきたいと思うのですけれども、なお現在に至るまでの交渉でどれだけの結論が出たか、それについて昨日の新聞でありますけれども、日米合同委員会は十九日、整理統合についての協議の上、座間小銃射撃場など四基地合意ができたと、そのように伝えられております。まず、返還された場所及び返還される予定合意に達した場所、それについて具体的にお伺いいたします。
  10. 山上信重

    山上政府委員 昨年十二月に日米安保協議委員会におきまして返還ということについて協議がなされたわけでございますが、それらのうち四十一カ所については返還共同使用あるいは移転というような内容のものを個別に発表いたしておるのでございますが、その後これらの施設について日米合同委員会を数回開き、またその下部機関として日米合同委員会のもとに施設特別委員会というのがございます。これの作業をいたすために、今回の基地整理をするための調整部会というのをつくりまして鋭意作業をいたしております。今日までに合同委員会合意に達しましたのは、ただいま先生御指摘のように、昨日の四カ所を含めまして十九カ所でございます。個別に名前を申し上げますと、名寄演習場が三月一日に返還になりました。それから名切谷住宅地区が四月二十五日に返還になりました。それから観音崎艦船監視所が四月三十日に返還になっております。向後崎艦船監視所が五月二十二日返還になっております。それから八戸LST係留施設が六月二日に返還になっております。それから日生台十文字原演習場が六月十日に返還になっております。それから早岐小銃射撃場、これが六月二十日に返還になっております。  あと予定になりますが、横浜兵員クラブが六月末返還予定、それから横須賀海軍埠頭も同じく六月末の返還予定、鳥島の対地射爆撃場が六月末の返還予定櫻谷小銃射撃場が八月三日までの返還予定座間小銃射撃場が八月十七日まで、それから神戸第六突堤、これが同じく八月十七日までに予定でございます。それからイナンバ対地射爆撃場が九月末までに返還、それから大島通信所も同じく九月末までに返還予定長坂小銃射撃場が八月十七日までに使用転換予定でございます。それから広弾薬庫の一部、約十六万五千平米でございますが、これにつきましては移転工事実施条件ということに返還ということになっておりまして、返還日は、工事計画に関して計画が定められたときに返還される、こういうことでございます。横浜海浜住宅地区並びに山手住宅地区につきましては、移転に伴い返還予定でございます。  以上が日米合同委員会において返還合意され、かつ今後返還されるものと、今後返還される予定のものでございます。
  11. 鈴切康雄

    鈴切委員 目下合同委員会において、全部または一部返還方針検討されているというように聞いておりますけれども、その具体的な基地名前をあげてください。
  12. 山上信重

    山上政府委員 現在合同委員会検討中のものは、第一番目として全部または一部返還方針検討中のもの、これは太田小泉飛行場キャンプ千歳補助施設の一部、支笏湖水上訓練場多摩弾薬庫の一部、キャンプ朝霞の一部、それから調布飛行場根岸競馬場地区長浜小銃射撃場、それから使用転換方針検討中のもの、これは呉はしけ停泊施設、呉第六突堤木更津飛行場北富士演習場沼津海浜訓練場、芦屋対地射爆撃場でございます。
  13. 鈴切康雄

    鈴切委員 移転または既存施設への集約方針検討されているものもあるように聞いておりますが、その点について。
  14. 山上信重

    山上政府委員 ただいまおっしゃいました範疇のものといたしましては、赤坂プレスセンターのヘリポート、それから新倉倉庫地区久里浜倉庫地区横浜ランドリー羽村学校地区キャンプ王子水戸対地射爆撃場板付飛行場等でございます。
  15. 鈴切康雄

    鈴切委員 昨年の日米安保協議委員会においてジョンソン前駐日大使は、件数においては米軍基地の百四十八カ所の約三分の一、面積で半分に近いということを強調したと聞いておりますが、実際の問題としては、条件づきあるいは使用転換、さらに代替地要求等がほとんどで、なかなか思うように進んでいないようでございますけれども、施設庁としては、見通しとして、さらに四十四年度中に返還される基地をどのように考えられているか、具体的にお聞きいたします。
  16. 山上信重

    山上政府委員 現在まで合同委員会結論を得たものにつきましては、ただいま申し上げたとおりでございまして、その他の施設につきましては、目下合同委員会検討中でございまして、これらは今後米側との検討の結果、具体的な個所が判明してくるのでございますが、現在におきまして、どれどれが年内というふうには確定いたしておらないのでございますが、ただなお相当数のものを年内措置いたしたいというふうには考えておる次第でございます。
  17. 鈴切康雄

    鈴切委員 今日まで日米合同委員会で実際にどのような審議が行なわれ、どれだけ日米合同委員会協議がされたか、大体いままでの経過についてお伺いいたします。  それからもう一つは、次回、それでは日米合同委員会の具体的な日程があるかどうか、それについてお伺いします。
  18. 山上信重

    山上政府委員 今日までの合同委員会の、審議は、ただいま合意を得たものについて申し上げ、かつ検討中のものを申し上げたと思いますが、それらについて逐次実施をはかっていくという考えでございます。  それから合同委員会で、十二月の協議以来、最初に合意に達したのが二月十八日でございます。御承知のように、合同委員会そのものは二週間に一回ずつ開催いたしております。それから施設委員会は、同じく二週間に一回、合同委員会とダブらない週にやっておりまして、なおその下部におきますところの施設調整部会におきましては、でき得る限りこの作業をすみやかに行なうために、何週間に一回ということでなく、随時、少なくとも一週間に一ぺん以上の回数において開いておって、促進をはかっておる次第でございます。  なお、次回の合同委員会と申しますれば、これは原則として隔週でございますから、昨日の合同委員会のまた次の次の週というふうに予定されております。その際にどれがのぼるかということはまだ確定いたしておりませんので、お答え申し上げかねる次第でございます。
  19. 鈴切康雄

    鈴切委員 このところ基地返還について大きくクローズアップされておる問題でありますけれども、四十一カ所以外にも、すでに日米安保協議委員会において話題に供されているという基地があるのではないか、そのように聞いておるわけでありますけれども、具体的にどういう場所であるか、お伺いいたします。
  20. 山上信重

    山上政府委員 四十一カ所以外につきましても、昨年十二月約五十ということで協議はいたしておりますので、さらに約十カ所くらいのものがあるわけでございますが、これらは大体いずれも移転を主にしたようなものでございまして、これらにつきましては、移転先並び付帯条件の問題がございまして、その辺の見通しをつけないままに発表することは、かえって不適当であるということで、その当時以来今日まで発表を差し控えさせていただいておりますので、御了承願いたいと思います。
  21. 鈴切康雄

    鈴切委員 施設庁として、今後当然交渉の過程を経て返還を強く要求していきたいと施設庁独自で考えられておる基地、それは具体的に言われなければ、大体何カ所予定されておるか、それを伺いたいと思います。
  22. 山上信重

    山上政府委員 基地整理につきましては、御承知のように昨年来、米軍提供施設につきまして使用状況等を十分に勘案いたしまして、それらにつきまして調査検討を行ないまして、遊休と認められるもの等を主体にして、その実態に応じてあるいはその必要性を勘案の上、返還を要請いたしておるわけでございまするが、現在御承知のように十二月の協議委員会での合意に達したものを、まずいたしておるのでございます。  その他のものにつきましては、いま申しました施設実態調査検討した上で、それらの実情に応じてさらに返還を要請していく場合もあり得ると思うのでございます。返還だけではなく、あるいは共同使用あるいは移転等の要請ということがあり得ると思うのでございますが、これらは現在の委員会におけるところの検討経過を勘案して、それらの経過を見ながら推移を見てきめてまいりたいというので、今日何カ所ということを予定してはおらないので、御了承を願いたいと思います。
  23. 鈴切康雄

    鈴切委員 私どもの党の実態調査にあらわれた特徴として、地元返還を希望している基地は、従来から基地公害として問題視されている個所のほかに、米軍基地があることによって何らかの支障を受けておるところは全部で約九十一カ所あります。その基地の六三%に及んでいるわけであります。そうなる場合、四十一カ所の返還を除いてみても五十カ所ありますが、施設庁としては具体的にその点についてこまかく検討されているかどうか、この点について。
  24. 山上信重

    山上政府委員 われわれのほうでは施設実態は具体的にそれぞれ検討いたしております。この場合どこがどうということは申し上げかねまするが、実態については十分に検討いたし、そしてその上に立って今後処理を進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  25. 鈴切康雄

    鈴切委員 群馬県の太田小泉飛行場日米合意ができてからすでに久しい月日がたっておりますが、これは水戸爆場移転問題が解決されなければ返還されないというように聞いております。水戸爆場移転先は一方的に施設庁のほうで新島にきめて、すでに調査費という名目で予算もつけているわけですが、地元の猛烈な反対で移転は不可能な状態であります。防衛庁では水戸爆場問題をどういうふうに考えておられるか、この結論はいつまでにどういう形で出すつもりでおられるのか。また水戸爆場撤去返還要求米側要求するつもりであるのか、また小泉飛行場を分離して交渉すべきであると私は思うのですが、施設庁考え方をお伺いいたします。
  26. 山上信重

    山上政府委員 問題をあとのほうからお答えしてなんですが、太田小泉飛行場返還につきましては、現在水戸爆場移転問題と切り離して米側と折衝を進めておる次第でございます。われわれとしてはこれにつきましてはわりあい明るい見通しを持っている次第でございます。  なお水戸爆場の問題につきましては、御承知のように水戸爆場横田飛行場からの空軍、これが主体でございまして、また厚木におけるところの海軍機は従でございまするが、これらが日本におきますところの在日米軍練度を維持するためにどうしても必要な射爆場でございます。したがいまして、これが去る四十一年に新島移転ということの方針をきめましたのは、あそこに置くということはあらゆる実情から見て必ずしも適当でないということで移転をせしめるということで、ああいう方針をきめましたが、さらばといってこれを完全に撤去してしまって何もなしに済ますというわけにいかない。したがって、代替施設をどうしても必要とするということでございます。それらをいろいろ検討いたしました結果、その当時あらゆる地区検討してみた結果、新島以外に適地がないということでこの結論に達したのでございます。御承知のとおり、新島につきましては、いろいろむずかしい問題もございまするが、これらにつきましては、現在いろいろ調整中でございまして、目下さような調整を続けているという段階でございます。
  27. 鈴切康雄

    鈴切委員 いままでしばしば墜落事故を起こしております板付飛行場は、移転することは決定しておりますけれども、いつまでにこれは解決をするのか、また代替地の問題はどうなっているのか、日米安保協議委員会において、板付基地は、特別の事情がない限り、ことしの夏ごろまでには昨年一月以前の状態に戻すということで、日米間の了解ができたというふうにいわれておりますけれども、これは板付を再び予備基地的な状況に戻すということを意味しているのかどうか。  そこで伺いたいのは、このような了解がはたして日米間で行なわれたかどうか。もしなされたとするならば、政府板付移転を促進しておられるか、それとも移転は一時たな上げになったのか、その点についてお伺いをいたします。   〔委員長退席伊能委員長代理着席
  28. 山上信重

    山上政府委員 板付飛行場を予備基地的にするということは、昨年の十二月の安保協議委員会においてさような意思表示米側からあり、日本側が了承したということでございまして、その結果に基づいて、すでに板付におりました米軍偵察機米本国に帰還いたしておりまして、現在すでに、板付飛行場におきましては米軍機数はわずか数機が、たとえば、輸送機であるとかヘリコプターであるとかあるいはその他連絡用の飛行機が数機おる程度でございまして、いわゆる予備基地化に現実になっている次第でございます。  なお移転の問題は、これは去年の六月政府がそういう方針を打ち出しておるのでございまして、それに基づきまして現在移転候補地調査ということをいたしておるのでございますが、現状予備基地になったから、これは取りやめるというようなことは考えておらない次第でございます。
  29. 鈴切康雄

    鈴切委員 米軍使用転換が多くの基地予定されておりますけれども、これは安保協議委員会自衛隊が使用することが条件となっており、しかも米軍継続使用権を保留したものであります。使用転換は自主的な返還とか縮小という性格のものではないように私のほうでは判断しているのですが、これは近い将来返還されるという前提に立っているのかどうか、それをお伺いいたします。
  30. 山上信重

    山上政府委員 米軍基地使用転換は、これはいわゆる地位協定の二条一項に基づいて米軍に提供し、米軍専用施設としておりましたものを自衛隊等日本機関の主として管理、管轄する施設にして、そしてこれを米側共同使用させる。これはいわゆる地位協定の二条四項(b)という条項によって使用させるということで、日本側管理に移して、そしてそれを米側にも使わせる、こういう形でございますので、いわゆる返還の一種であろうと思っております。そしてこれが返還一つの道程かという御質問でございまするが、これはそれ自身米側が全然使わないということを必ずしも意味しない、さような形では米側に使わせるという前提でございます。もちろん将来それが米側にとって全然必要がないというような事態になれば、完全返還になると思いますが、まあいわば返還はしても、さような形で、やはり米側も、常時ではないがときどき使うという姿になるものと考えておる次第でございます。
  31. 鈴切康雄

    鈴切委員 防衛庁においては、自衛隊基地の拡充というものを予定をしておられるかどうか。もし予定をされているというならば、その具体的な構想をひとつ……。
  32. 江藤淳雄

    江藤政府委員 米軍施設返還または使用転換によりまして、自衛隊が実際にそれを引き継いで使用するものにつきましては、これは従来から自衛隊が持っておる演習場射撃場等で、米軍に一時提供しておったもの、一時貸しておったものについては、当然これは自衛隊が使ってまいるわけでございます。  それからまた、現在まで共同使用しているものにつきましては、できれば返還自衛隊が使いたい、さらにその他の地区につきましての施設の拡充計画というものにつきましては、これは三次防にきめられました予定の範囲内において、具体的に施設の設置をいたしてまいりたい、そういうように思っております。
  33. 鈴切康雄

    鈴切委員 今後の問題でありますけれども、国民的な立場に立ったときに、米軍基地返還をされれば、基地周辺の市町村はさまざまな使用計画などを持っております。また、期待を持っているわけでありますけれども、地方自治体で使用できるように政府は取り計らうべきではないか、そのように私は思うのですけれども、その点についてどういうお考えを持っておるか。
  34. 山上信重

    山上政府委員 米軍基地返還後の利用方法につきましては、これは米側においては使わなくとも、日本側においていろいろな利用方法があるわけでございまして、ただいま申しました自衛隊も、自衛隊施設の拡充に伴いまして、必要とする場合は、自衛隊の使用に専属する、あるいは使用転換をするという場合もあるかと思いまするが、民間の利用につきましても、われわれとしても、できる限りこれが地方の方々の御利用になれるように、今後とも――これは本来大蔵のほうで主管としておやりになることでございますが、われわれとしてもできるだけ協力してやってまいりたい、かように考える次第でございます。
  35. 鈴切康雄

    鈴切委員 具体的に、四十一カ所の中で民間において使用することを考えられている場所、そして、私どもの調査によりますと、返還後、民間で強く要望している利用計画のあるものは合計百五十九件、九十一基地に及んでおります。それは公園、遊園地、緑地帯あるいは住宅団地施設、工場用地、文教施設あるいは市民総合運動場、公共施設等の順になって、かなりの利用計画等を自治体においては考えておるわけでございますけれども、返還のときは、各地方自治体等との協議も考慮して考えられていかれるのかどうか、あるいは施設庁だけで独断にこれはという考え方に立たれるのか、その点についてお伺いいたします。
  36. 山上信重

    山上政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたとおり、返還後の利用につきましては、これは米軍提供でなくなれば、当然いわゆる普通財産でございますから、大蔵に戻るわけでございまして、この利用の方針をおきめになるのは大蔵省でございます。したがいまして、施設庁が独自で方針をきめるというわけにはまいりません。ただいま申し上げましたとおり、国有財産の処分につきましては、そういった財産処分なり処理方針にのっとってやってまいるものだと思うのでございます。われわれが返還を要請する場合におきましては、さような意味において、自衛隊の希望あるいは民間の希望、市町村の希望、これらも十分勘案しつつ、しかしながら、基地実態というものがございますから、みだりに、御要求があるからすぐ返せということにはまいらぬと思いますけれども、そういう点も十分勘案して返還は要請しますが、その後の処置については、ただいま申し上げたような次第でございます。
  37. 鈴切康雄

    鈴切委員 米側より出されておる電波障害緩衝地帯の設置要求についてでありますけれども、これが実施されておる神奈川県の上瀬谷においては、周辺住民の基本的人権すら脅かされておる状態なんです。これは以前より再三質問の対象となっておる問題であり、慎重に検討して善処するということでありましたけれども、当然政府としては基本的態度は明らかだと考えられます。この電波障害緩衝地帯の設置要求に対して明確な政府の態度をお伺いし、その後どのようになっておるのか、具体的にお伺いいたします。
  38. 山上信重

    山上政府委員 最初に上瀬谷の問題でございますが、上瀬谷の通信施設の電波障害防止につきましては、御承知のように、昭和三十七年以来、国と所有者との間で建築物の制限、工作物の設置等についての制限を行なう旨の不作為契約ができておりまして、これは制限内容が、従来相当きついというようなことで地元からの非常な緩和の要請もございました。建築物の範囲、高さその他について緩和を求める要望がございましたので、ことしの三月以来米側と制限基準の緩和について話し合いをいたしました結果、相当緩和されております。現在におきましては、従来の制限に比べまして、建物の高さについてはほとんど制限を設けない、あるいは交通量の制限を解除いたしまして、また世帯数につきましても、千坪当たり何世帯というものもはるかにゆるくいたしまして、地元の要望に沿うようにいたしたのでございます。そのほかにも使用電熱量等の制限も緩和いたしました。地元との間には、現在さような意味合いにおきまして比較的円満に行なわれておると考えておる次第でございます。  なお、その他のいわゆる電波障害制限の区域の設置を要求されておりまする十二の施設につきましては、御承知のように、電波障害制限特別委員会を設けまして、これで検討いたしております。前々から申しましたとおり、この内容たるや国民に及ぼす影響もまことに大きいということで、慎重にこの委員会において検討中でございまして、今日いまだ結論を出していないという実情でございます。
  39. 鈴切康雄

    鈴切委員 わが党の調査によりますと、公害問題は非常に大きな問題になっておるわけです。それをわが党のさらにこまかな調査によって一々これを取り上げながら聞きますと、非常に時間も長くなりますので、その点は省略さしていただきますけれども、第一、基地公害の種類といたしましては、非常に多種多様にわたっております。風紀の紊乱、騒音、墜落、誤投下、テレビ、ラジオの難聴、難視、それから農耕労働の阻害、学童の勉強意欲の低下、誤射爆、水域制限による漁獲量の減少、ヘリの騒音、マラリア、コレラ、ペストの伝染病の不安、あるいは放射能による海水汚染不安、農作物の被害、電波障害周辺開発の支障、交通の迂回指導、制限、道路の損傷、建物の高度制限、悪臭、汚水処理の不備、濁水等の問題があります。その問題を含んだ基地は五十一カ所に及んでいるわけですが、当面の都市計画に支障のある基地も二十六カ所あります。まことにこれは住民の受けておる被害は大きいし、施設庁としても、独自の観点からやはり基地の総点検をされるべきじゃないか。もちろん軍事的な意味におけるところの基地の総点検、これも必要でありますけれども、やはりある程度その基地周辺における公害ということに対しても、基地の総点検をすべきじゃないか。その意味においてわが公明党は、さきに基地の総点検をして一つの布石を提供いたしたわけでありますけれども、施設庁においても、さらにそういう点においては、今後アメリカに交渉する意味においても総点検をすべきじゃないか、そのように思うのですが、その点についての御意向を伺いたい。
  40. 山上信重

    山上政府委員 基地実態につきましては、あるいはその周辺におきますところのいろいろな問題につきましては、施設庁といたしましても、基地対策を行なう上からいって、当然これは内容実態を常に検討し、調査しなければいかぬことは、仰せのとおりだと思います。われわれといたしましても、これらにつきましては、従来ともこれを心がけてやってまいってきておるのでございまして、その調査なり検討なりの結果、そういう内容というものを前提にして、いろいろな施策を立てておる次第でございます。  なお今後ともこれらの調査は十全を期してまいりたい、かように考えておる次第であります。
  41. 鈴切康雄

    鈴切委員 私どもの実態から申し上げますと、面積の上から見た基地の使用状況ですが、使用状況が適当でないもの――現在使用されていないもの、ほとんど使用されていないもの、一部しか使用されていないものなどが基地の約一八・三%、それから目的外に使用されているもの、すなわち米軍自衛隊共同使用自衛隊の使用あるいはゴルフ場等、全基地の三八・七%、一部縮小及び全面返還可能の面積の内訳は、縮小可能と思われる面積その他全面返還可能と思われる施設等六・七%、合計六三・七%は私どもは返送可能な面積だ、このように判断しているわけでありますが、施設庁としてはその点をどのように判断されておりますか。それについてお伺いいたします。
  42. 山上信重

    山上政府委員 提供施設の利用状況その他の点につきまして、公明党さんにおかれましていろいろ総点検、御調査をなすったことは、われわれといたしましても有益な資料として参考にさしていただいておるのでございまするが、利用状況については、必ずしもそのとおり全部利用が適当でないとは考えておらないのでございまして、通信施設等は表はあまり見えなくとも、それがその地域を必要とする区域であったり、あるいは共同使用の場合におきましては、それを他のものが使っておるというような場合もございます。したがいまして、われわれといたしましては、この御資料は非常に有益な資料として参考にはさしていただいておるのでございますが、われわれ独自の検討に基づいて、それらを参考としつつ、検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  43. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 関連。防衛庁長官施設庁長官に伺いたいのですが、先ほど来から基地の問題についてるる答弁がありますが、私はグランドハイツの点について伺いたいわけです。基地縮小あるいはまた返還移転等については、その交渉条件として遊休施設であるとかさらに付近住民に対して基地公害被害が著しい場所、こういうところをまず第一にあげて、基地縮小または整理しておる、このように伺っておるわけでありますが、御存じのように、グランドハイツというのは、現在その使用状況がきわめて遊休的な状況である、こういうふうにいわれておるのです。しかも、このグランドハイツの問題について、施設庁では本年度予算を組んで検討しております。  そこで私は言いたいことは、このグランドハイツがあるために、一つは、汚水処理について付近住民がきわめて悪臭とハエに悩まされておる。これが第一に困っております。さらに都市計画上、あの練馬区の東西を結ぶ交通路が遮断されております。したがって都市計画に大きな障害となっております。それが第二点。さらにグランドハイツはその広さが六十万坪あります。しかも、そこに最近では千世帯程度であります。したがって、一世帯当たり六百坪に住んでおる。回りは住民がものすごく密集して住んでおりながら、あのグランドハイツの中だけは一世帯当たり六百坪、こういうような中にグランドハイツがあるわけであります。したがって、施設庁整理の対象にする中にあっても、このグランドハイツはまず第一に取り上げて返還交渉すべきである。私は、そのために予算を組んだ、こう見ているわけであります。さらにまた、あのグランドハイツというところは第五空軍の住宅地域であります。府中にあるいはまた横田基地にそれぞれの空軍将校が通っているわけであります。最近は非常に交通の渋滞から、いままで二時間のものが四時間かかる。もうそこに住む将校ですら、移転してもらいたい、こういう声が聞かれるわけであります。  したがって、このグランドハイツの問題については、こういうような状況からもまず第一に取り上げて返還交渉すべきである。さらにまた、返せないというならば、直ちに移転をすべきである。まずその交渉をこちらからすべきである。米軍から話があってから臨むのではなくて、自主的にこちら側から、その返還についてはあるいは移転等については前向きで話し合いにこの問題を持ち込むべきである、こう思うわけでありますが、防衛庁長官並びに施設庁長官から伺いたいと思います。
  44. 有田喜一

    ○有田国務大臣 米軍基地に対する私どもの方針といたしましては、前提としまして、日本並びに極東の安全のために必要だというものはどうしても置かなくちゃならぬ。しかしお説のように、比較的利用度の少ないものとかあるいは遊休的なものとか、その他いろいろな条件によりまして、あるいは単に返還でなくて移転しなければならぬ場合もあります。いまのグランドハイツの問題は、汚水の問題も私はよく聞いております。御承知でしょうが、いま一応の処理をやっておりますけれども、それじゃ不十分だろう。そこで予算もとってありますから、それに対して基本的に根本的に抜本的な処理をしたい、こういう考えでいま臨んでおりますが、詳細につきましては施設庁長官から答弁させます。
  45. 山上信重

    山上政府委員 グランドハイツの汚水処理の問題につきましては、先生詳細によく御存じのとおりでございまして、御承知のように、昨年来この汚水処理場の管理の改善につきまして米側にも十分注意を喚起し、改善を求めたのでございまして、これにつきましては、汚水処理場の消毒であるとか、あるいはそれの周囲への影響を少なくするように植樹するとか、あるいはその他の施策を講じておるのでございます。なお、根本的な解決方法として汚水処理場の移転ということ、内容があれは昭和二十何年の古い方式でございますためにいろいろ問題がありますので、これを新しい方式に切りかえるために予算等も計上して抜本的な方法を講じたい、かように考えておるのであります。  なお、道路の問題につきまして、一部地方の方方から、この中の交通等についての要望がございます。これらにつきましては、かねて米側に話し合いをしたこともございまするが、いろいろな事情で実現に至っておりません。これらについては問題はありまするが、今後さらに話し合いを続けてまいりたい。なお、グランドハイツは御承知のように、いま先生もおっしゃいましたように、米軍主体にするところの家族が、千三百世帯以上であると思いますが、おるのでございまして、これが住宅というのはそう簡単にどこにでも得られるものでもございませんし、一見広く見えることは事実でございますが、これは若干そういった生活様式の違いもありまして、これらを将来どういうふうに集約移転するというような方法があるかどうか、これは今後の検討問題といたしたい、かように考えておる次第でございます。
  46. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 防衛庁長官、いま私が言ったことにまだ答えてないので、答えてもらいたいのですが、そこに、そのグランドハイツ住宅地区に住む米軍将校連中は、かわるところがあれば行きたい、これは大半の意見なんです。付近住民も迷惑しておる。さらに練馬区にあっても、都市計画の上からどうしても返還してもらいたい、こういう強い意向があるわけです。そういうように地元米軍側でもそんな考えがあるのに、それが返還交渉あるいは移転交渉ができないという理由はどこにあるのですか。またその気はないのですか。
  47. 山上信重

    山上政府委員 いま申しましたとおり、住宅をつくるということは、この人たちの勤務する地域的な関係その他もございまして、いまのグランドハイツにおる人たちは、この地域の米軍施設に通勤しておる方々でございます。したがいまして、これらを移転するとすれば、当然他に施設を必要とするという問題もございます。われわれといたしましては、これらについていろいろ研究はいたしておりますが、いま直ちにどうということは申し上げかねる次第でございます。ただいろいろ前向きで検討をいたしておる、かような次第でございます。
  48. 伊藤惣助丸

    ○伊藤(惣)委員 要するに、防衛庁長官に伺いたいのですよ。いまも言いましたように、これは米軍が望んでいるのですから、さらに付近住民はとっても困っているのです。都市計画からいってもこれはどうしようもないのです。ですから、じゃ防衛庁はそのグランドハイツを使う意向があるのかということも言いたくなるわけですよ。あの辺は住宅地区でありますし、付近住民はもう住宅に開放してもらいたい。現在もう六百坪に一世帯しか入ってない、家もたくさんあいているのです。どうするのだ、こういう方もいるわけです。また、日本人の労務者も、もうすぐここはだめになるから次の仕事をさがすのだ、こう思っております。したがって、いわば基地としてはどんどんどんどん実質的に小さくなってきているわけですね。それについてこちらから何らの対案を持たない、または放置しておく、これはきわめて無責任であります。私は特にそのグランドハイツのことで言いたいことは、もう今年度は調査費の中で組んでおることは知っております。承知しております。だから今年度やるということは無理でしょう。だから、少なくとも来年度くらいは一番先に、基地縮小やまたは返還させる条件がもうきわめて顕著にある基地でありますので、本年度は無理だとしても、来年度はまず第一に取り上げて交渉しようじゃないか、その点を長官に伺いたいと思います。
  49. 有田喜一

    ○有田国務大臣 基地のあるところ、これはグランドハイツに限らずすべてですが、基地のあるその周辺の人たちの気持ちはよくわかるのです。しかし先ほども言いましたように、それにかわる代替もしなければならぬ。そこで先ほど鈴切さんの御質問に対しても、昨年の暮れに五十ばかりの基地の問題について日米協議会で話し合いましたね。ところが四十一については発表したけれども、まだ発表してないものがあるのは移転する先のところの話がまとまらないと、一ぺん発表しますと、基地のその所在の人はさあいまにもできるとおっしゃるが、いままでそれで……。そこで、私どもはよく事情もわかりますので、前向きに検討していきたいと思っております。しかし、やはりそれならそこをどこに移すのだということはよく見定めていかないと、そういうことでございますから、その点だけはひとつ……。移転先ということもよく考えた上で、勘案の上でやっていかなくちゃならない。そういうことでございますから、ひとつお含みを願いたい。
  50. 鈴切康雄

    鈴切委員 それでは、具体的に今度は基地の問題で、新島の問題をお伺いいたします。  水戸対地射爆場新島移転の問題については、昭和四十四年三月十九日、防衛事務次官の小幡氏より防経施第四百六十一号で、新島本村長前田仁右衛門氏あてに正式文書をもって照会状を出されておりますが、その内容について記録に残しておく必要がありますので読んでいただきたい。
  51. 山上信重

    山上政府委員 全文を読むのでございましょうか。
  52. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうですね、ここのところ全部……。
  53. 山上信重

    山上政府委員 では、読み上げます。  四四・三・一九    新島本村長 前田仁右衛門殿          防衛事務次官 小幡 久男   このことについては、かねてから貴職のご協力をお願いしてきたところでありますが、未だ見通しを得ないまま現在に至っております。   すでにご承知のとおり水戸対地射爆撃場移転は、原子力施設との関係において、国家的にきわめて切実な問題となっております。   この施設移転先については、在日米軍の提案の内容を技術的に検討した結果、新島以外に適地がないとの結論を得ているものであります。この移転を実現するためには関係各位のご納得を得なければなりませんので、是非とも貴職をはじめ村民各位のご理解、ご協力をいただき対地射爆撃場新島に設置いたしたいと考えている次第であります。   移転に伴う設置計画の概要は別添一のとおりでありますが、これは現在設置されている防衛庁技術研究本部新島試験場と両立を図る方針のもとに策定されたものであります。このため、昭和三十四年十月十九日付防衛庁発経施第一三五号をもって防衛庁技術研究本部新島試験場の設置に際して申入れ、貴村のご同意を得た九条項の一部を次のとおり変更することについてご同意を得たく当該条項第九項に基づいて協議いたしたいので、防衛庁長官の命により貴見をお伺いいたします。  一 第一項を次のように改める。    本施設米軍が対地射爆撃訓練を行なう施設(以下「射爆撃場」という。)及び防衛庁技術研究本部新島試験場が試験用飛しょう体の実験を行なう施設(以下「試験場」という。)である。  二 第二項を次のように改める。    射爆撃場及び試験場は、それぞれおおむね別添図面のとおり設置することとし、双方において合意する条件により用地の所有権又は使用権の取得及び海面の使用を行なうこと。  三 第七項のうち、「実験」を「射爆撃及び実   験」に改める。  四 第八項を次のように改める。    射爆撃場及び試験場の発射場区域は第二項のとおりとし、それぞれ村の了解のない限りその区域の拡張は行なわないこと。    なお、防衛庁としては射爆撃場を設置するに際しては、施設の存在と島民の生活が安定的に両立するよう別添二に示すような対策を考慮しております。これは全島民の生活環境を整備するとともに所得を向上し、東京都民としての安定的な生活を確保し得ることを念願して策定したものでありますが、本件の具体的な計画内容については、貴村のご意向を得て十分な調整を図ったうえ計画実施したいと考えております。    また、米軍が演習を行なうに際しては新島の立地条件を考慮し、居住地区上空を避けるよう進入方位を定めるとともに、標的設置についても誤射爆に伴う被害を生じないよう十全の対策を講ずる所存であります。    防衛庁としては、以上の事項を誠実に履行する所存でありますので、意のあるところをお汲みとりいただき、村民各位の理解と協力のもとに対地射爆撃場の設置が円滑に行なわれるよう貴職の特段のご配慮をお願い申し上げます。
  54. 鈴切康雄

    鈴切委員 その本文と新島爆場設置計画概要並びに対策事業計画案等添付されて新島本村に提出されたわけですね。
  55. 山上信重

    山上政府委員 そのとおりでございます。
  56. 鈴切康雄

    鈴切委員 そこで新島におきましては、防衛施設庁からのこの公文書による照会を提示されますと、すぐに村の東大事でありますので、射爆場移転のことについては、三月二十四日直ちに村議会を開いて、防衛庁よりの申し入れに対して提案をいたしました。慎重審議をした結果、防衛庁のほうにその回答を与えておりますが、その内容を明らかにしていただきたい。
  57. 山上信重

    山上政府委員 新島本村長からの回答は、村議会において反対の決議をされたので、条項変更はいたさないことに決定したからという回答の趣旨でございます。なおかつ、今後話し合いには応じがたいので、その点について移転計画を変更してくださるようにというような趣旨の内容でございました。
  58. 鈴切康雄

    鈴切委員 それで防衛施設庁においては、新島本村議会において全会一致でこの問題が否決されたわけでありますが、それについてどのように防衛施設庁では受け取られておられるかどうか。
  59. 山上信重

    山上政府委員 たびたび申し上げますように、水戸の射爆場は、必要な施設として射爆撃場が必要ではありまするが、水戸は原子力施設その他の関係でどうしてもどこかへ移転させにゃいかぬ。その適地をいろいろさがしあぐねた末、新島が最適であるということになったので、過去数年にわたっていろいろな検討をいたしてまいったのでございます。それに対しまして、村長からこういうお断わりの御返事が来ておるわけでございます。これらにつきましては、新島木村としては、われわれの説明なり文書なりが必ずしも十分でなかった点もあるかとも思いますし、なおその他のいろいろなむずかしい新島本村以外の問題もありますので、現在そっちの方面の調整ができるかどうかを検討中でございますが、いずれにいたしましても、新島本村に対しましては、新島本村がこれはどうしても困るというものをわれわれのほうでは強行するというような考えは一切ないのでございまして、これは話し合いの上ですべて解決していかなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  60. 鈴切康雄

    鈴切委員 いま施設庁長官は、文書の中で適当でない部分があったのではないか、そのように言われたわけでありますけれども、あなたがすでに検討されて公文書としてお出しになったその中において、どの点が要するに適当でないと思われる部分なのか、その点についてお伺いすることが第一点、それをまずお聞きします。
  61. 山上信重

    山上政府委員 文書が適当でないというふうには必ずしも考えてないので、内容が十分に説明が行き届かぬというようなことがあるのではなかろうかとも考えておる次第でございます。
  62. 鈴切康雄

    鈴切委員 それでは法制局のほうにお聞きいたしますが、自治体における、いまの要するに私がお話しをしましたもの、それともう一つは、施設庁長官が読まれたそういうふうな観点から、自治体における意思決定の効力については、どのように憲法上においては解釈をされるのか、それについてお伺いいたします。
  63. 荒井勇

    ○荒井政府委員 お尋ねの趣旨が、自衛隊内における意思決定についてどう考えるかということで、十分なお答えになるかどうかわかりませんが、防衛施設の設置というようなことについて、自衛隊内だけで意思決定していいのか、関係地方公共団体の意思なり意向というようなものを十分そんたくしなければいかぬのじゃないのかという御趣旨なのか、お尋ねの趣旨内容が十分まだつかめておりませんので、そういう趣旨に理解してよろしいということでございますれば……。
  64. 鈴切康雄

    鈴切委員 要するに、いまこういうふうな状態で――その前に、ミサイルの射爆場が実は新島のほうに設置をされたのです。そのときに赤城防衛庁長官と本村長との間に、要するにミサイルを受け入れるための九項目にわたるいろいろの協議書がかわされたわけであります。その協議書の中には、第一項目に、「本試験場は、飛しょう体の実験施設であって、基地となるものではない。また射爆物を装てんした飛しょう体の試射は行なわないこと。」第八項目は、「発射場地区を端々地区に限定し、村の了解がない限りその地区の拡張は行なわない。」第九項目に、「以上各項に定めない事項については、そのつど双方協議して決定すること。」こういうふうな協議書がかわされているわけであります。それについて、今度新島の射爆場移転をすることについて、防衛施設庁としては正式な公文書をもって、こういうわけで射爆場を設置したいという、そういう内容のいま防衛施設庁長官がお読みになったものを添付されて、向こうのほうに照会をされたわけです。それについて村のほうではいろいろ検討し、村議会においてもこれをはかった上において、受け入れることはできない、このようにはっきりと態度を示したことなんですね。その示した、要するに新島本村における自治体の意思決定の効力というものは、どういうふうに憲法上において解釈をされるかということについて、お伺いいたします。
  65. 荒井勇

    ○荒井政府委員 憲法問題といいますか、法律問題としてどうかということでございますが、憲法上国の機関の意思と地方公共団体の意思とについて、どういう要件に該当した場合にどうなるということを具体的にこまかく書いているわけでございませんので、非常に大きな観点から、法律論として考えますと、国の防衛に関する問題は、現在の地方自治法の第二条の規定の趣旨からいって、それは国の事務であるということに法律論としてはなると思いますが、その意味で、国が防衛施設の設置をその意思によって推進しようとすること自体が法律に違反するという問題はないと思いますが、ただそれが、たとえば施設を設置するというようなことが住民の福祉に関するという限りでは、これは地方自治法の第一条から見ますと地方公共団体の事務に関連を持ってくるということでございます。その意味で国自体が推進し得る、防衛庁なら防衛庁として意思決定をし得るということ自体は、行政組織あるいは国の事務と地方公共団体の事務との配分という観点から見ますれば、それ自体法律的に可能なことでございますけれども、住民の福祉をはかるという、あるいは保持するということが地方団体の第一義的な事務として掲げられているということから考えますと、その間に十分な調整がはかられることが望ましいというふうに考えられます。御指摘のような協議書といいますかが、かつて防衛庁長官新島村との間でかわされたというのはそういう趣旨に基づくものであろうというふうに考えられますけれども、ですからそれは純粋な法律論として、その一方に権能がある。しかしながら、村の当局のほうには住民の福祉をはからなければならぬという立場がある。その十分な調和をはかりつつ今後そういうような計画なり方向ということが話し合いの上で解決されるということが、現在のわが国の法律体系からいって期待されるところであるというふうに考えます。
  66. 鈴切康雄

    鈴切委員 法律というのはすべて憲法の精神を尊重されてつくられているわけでありますが、憲法第十三条並びに憲法第二十五条、しかも二十五条の生存権という問題、これが破壊をされるというふうな状態においては、これは私は、あなたがいま解釈をされたことはあまりにも甘い考え方ではないか、そのように思います。並びに、要するに自治権尊重という立場において地方自治体が意思決定をしたものについてはやはり私はそういう観点から尊重されなければならない、そう思うのですが、もう一度……。
  67. 荒井勇

    ○荒井政府委員 国が防衛に関する施策をやる場合におきましても、先ほどの協議文書の中にもありましたように、国としては十分住民の福祉を考え、その村の当局の意向も尊重するし、十分な調整をはかった上で行ないたい。その場合に、住民の福祉を無視するというようなものでは決してない、その具体的な方策についてはさらにこまかくいろいろ協議をしてやろうという姿勢でございますので、そのこと自体が憲法十三条であるとか二十五条に直ちに抵触するというようなことにはならないんじゃないかというふうに考えます。
  68. 鈴切康雄

    鈴切委員 かつて増田防衛庁長官は、島の方々の同意が得られない場合、コンセンサスが得られない場合は強行する意思はございませんと答弁しているわけです。長官も同じことを言っておられるわけですが、いまでもそれには間違いありませんか。
  69. 山上信重

    山上政府委員 増田長官の言われたとおりでございます。
  70. 鈴切康雄

    鈴切委員 ミサイルの射爆場設置のとき、あなたも御承知のとおり賛成、反対と村は二分をいたしました。当時は同じ家族の中で骨肉相はむような状態があったことはまことに痛ましい現実でありました。ミサイル射撃場によって常時使用するわけでもないし、危険もまず心配はないだろうという観点から、村議会としては国に御協力申し上げて設置されたのが新島のミサイル射撃場であります。昭和三十四年の十二月十一日防衛庁の技術研究部新島試験場の設置について、先ほど申し上げました防衛庁長官と本村長との間に九項目の協定事項を作成した。明らかに射爆場は御存じのとおり基地でありまして、重要使用変更であり、双方協議事項として正式に公文書によって回答された以上、もはや協議する必要はない、このように思うのですが、撤回をしていただきたい、こう思うのです。
  71. 山上信重

    山上政府委員 昭和三十四年に新島の村長さんに対して赤城長官が出された文書は、われわれとしても十分尊重してその趣旨に沿って対処をいたしたいと思うのでございます。したがいまして、新島本村の了解を得ないで一方的に国がどうするこうするというようなことは全然考えておらない次第でございまして、すべて村の同意を得て、いわゆるコンセンサスを得た七でなければ何事もなせないというふうに理解をしておる次第でございます。
  72. 鈴切康雄

    鈴切委員 要するに防衛庁新島に射爆場を設置することについては、日米共同声明によって新島の島とは何ら関係なく共同声明を出しているわけであります。すなわち、新島に射爆場移転をするという状態であるならば、少なくともそれ以前に防衛施設庁においては当然あの九項目の協議書の上においてその打診をはからなければならないし、また意向を聞かなければならないものだ。ところが、それを無視して、防衛施設庁は一方的にその問題をきめられたということは、明らかに私は背信行為である、かように思うのですが、法制局、要するに国の自治体に対する背信行為は憲法上どのような解釈があるか、ひとつ明らかにしてもらいたい。
  73. 荒井勇

    ○荒井政府委員 防衛施設をどのように設置するかというのは国の事務であるという意味で、それはそういう意向であるというか将来の方向というようなものについて国はそういうことを考えたということで、具体的にやる段階では、先ほど施設庁長官が読み上げられましたように、個別的な協議ということで村の意向をはかり、稲刈をはかっていこうということをされたので、その間に本質的に矛盾するところはないというふうに考えます。
  74. 鈴切康雄

    鈴切委員 防衛施設庁においては、米軍施設庁、運輸省の三者機関において空の調整をしていると聞くが、なかなか調整ができないで非常に難航しているように聞いておりますけれども、いっその検討が行なわれたか、それについてお伺いいたします。また、その内容について公表をしてもらいたい。
  75. 山上信重

    山上政府委員 運輸省との問題は、御承知新島爆場がかりにできた場合におきまして、そこに米軍が射撃をするという場合の、行き帰りの飛行経路の問題あるいは飛行高度の問題、あるいは周辺におけるところの上空における演習範囲といいますか、そういったような問題等につきまして、民間航空がその間に定期的に飛しょうしておるということが主たる問題でございまして、これとの調整ということはなかなかむずかしい問題でございます。   〔伊能委員長代理退席、委員長着席〕 これらにつきましては、昨年来運輸省との間に調整を重ねておるのでございますが、いまだに結論に達していない実情でございます。この民間航空の問題は航空上の安全の問題もございますので、もちろん相当慎重に検討しなければならないことでございますので簡単に結論が出ないのでございます。したがいまして、ただいまのところいつ結論が出るということを申し上げる段階にはないのでございまするが、目下調整中でございます。
  76. 鈴切康雄

    鈴切委員 いま、防衛施設庁長官のお話しになったことは非常に抽象的でございます。いまだに調整できないというところに実は大きな問題があるのではないか。その点について少し煮詰めていきます。  運輸省来てますか。――運輸省は、航空局が昭和四十四年の二月五日、新島爆場の設置について防衛施設庁に回答を与えている四条件、すなわち「一、横田空域から新島爆場にいたる飛行経路は、大島以東は、東京及び新東京国際空港への上界降下に必要な最も輻輳した空域であり、かつグリーン4の最低使用高度の関係もあるので、大島VOR/NDB上又はこれより以西に設定し、その高度制限を行なう。二、新島爆場の広さは大島、スペンサーの待機経路、ホワイト15、アンバー90及び新東京国際空港への飛行経路との重複を避けて、ホワイト15とアンバー90にはさまれた空域で、ほぼ水戸爆場なみとし、上限高度を制限する。三、横田空域から同射爆場にいたる全飛行経路をポジィティブ・コントロールとする。そのため同射爆場にいたる航空機は、事前にその旨を通報する。なお、同経路の無制限使用は他の一般航空に与える影響が大きいので機数制限及び時間制限を行なうこともありうろ。四、横田空域から同射爆場への飛行経路の高度は、低高度であるため、騒音対策についても充分な考慮がなさるべきである。」との四条件を航空局の権威ある見解として提示したわけでありますけれども、この点その三者会談において運輸省航空局においては一歩も譲らなかったかどうか、その点についてお伺いいたします。
  77. 泉靖二

    ○泉説明員 四月の中旬に、府中におきまして防衛施設庁の担当の方と米空軍とともにこの問題を討議いたしました。全体的な討議の中で一審問題になりましたのは、低高度で射爆場に往復することが一番問題になりました。いろいろな点で活発な意見の応酬がございましたが、その点を含まして低高度で往復する点が一番難点になりまして、まだ結論に逃していないという現状でございます。
  78. 鈴切康雄

    鈴切委員 なぜ私が航空局に一歩も譲らなかったかとそのように念を押したかといいますと、一日平均約三百機が、三分に一機の割合にこの上空を通っているわけであります。この四条件が守られなければ重大な影響がある、すなわち危険であるということにほかならないわけであります。その点航空局のほうでもし反論することがあれば御答弁順いたいわけであります。また、この四条件について率直に、あなたは譲ったのか、あるいは譲らなかったのか、その点についてお伺いするわけです。
  79. 泉靖二

    ○泉説明員 運輸省といたしましては、この四つの条件に沿って討議を進めていくつもりでおります。またこの四つの条件をゆるめるということは  いたしておりません。
  80. 鈴切康雄

    鈴切委員 そこで、高度制限の問題でありますけれども、民間航路の新島――大島を飛ぶ高度は大体どれくらいですか。運輸省の方にお伺いいた  します。
  81. 泉靖二

    ○泉説明員 民間航空はこの周辺最も低いところは五千フィートでございます。
  82. 鈴切康雄

    鈴切委員 高いところは。
  83. 泉靖二

    ○泉説明員 最も高いところは三万七千フィートであります。
  84. 鈴切康雄

    鈴切委員 そこでその条件を一歩も譲らないとすると、そこにまた問題が起こってくるわけであります。航空局が上限高度の制限を五千フィート以下に押えて米側に提示をしなければならないという条件下に行なわれるわけであります。それであるならば何フィートであればいいということについて運輸省ではお話になったか、その点についてお伺いいたします。
  85. 泉靖二

    ○泉説明員 四千フィートであります。
  86. 鈴切康雄

    鈴切委員 そこで問題になるのは、アメリカが提示している高度は、横田の飛行場を出て新島まで行く途中の経路が二万フィート、それから現地に着いてからの演習の際の高度は二万フィートということになって、そのことについて私が過日質問したときに政府委員から答弁がありました。この点可能な調整ができるとはたして思われているかどうかということが一つ。それからアメリカでこの点はたしてオーケーをしたか、私は言うはずはない、そのように思うのですが、その点について実際におった運輸省のほうで、その状況をはっきりとひとつ答弁を願いたいと思います。
  87. 泉靖二

    ○泉説明員 この点はまだ調整中でございます。
  88. 鈴切康雄

    鈴切委員 おかしいじゃないですか。要するに四千フィート内になければ上限高度をとることはできない、そのようにあなたはおっしゃっているわけでありますけれども、政府のほうからは、アメリカから要するに一万フィート、二万フィート、そういうふうな数字が示されているということについて、完全にもうこの点において調整ができない大きな原因があるのではないか。アメリカはこんなことをオーケーするはずはないわけですから、そこは一番大きなネックになっていると思うのですが、その点についてはっきりお答え願いたい。
  89. 泉靖二

    ○泉説明員 運輸省といたしまして四千フィートを提案いたしました理由は、先ほども申し上げましたように、大島周辺を航行いたします一般航空交通が五千フィートから三万七千フィートの間にたくさんあるという理由であります。米軍側のほうが一万フィートを提示いたしました理由も、彼らといたしましては最も飛びやすい高度であるということだと思います。四千フィートがいやだといいますことは、燃料費が多いという理由が一番強い理由だろうと思います。この点につきましていまだ調整中でございます。結論に達しておりません。御賢察いただきます。
  90. 鈴切康雄

    鈴切委員 四千フィートの高度でジェット機が飛行をするということは、ちょっと常識では考えられない、私はそのように思うのです。これはジェット機を運航した方ならおそらくその点についてはよくおわかりなんです。あなたが言われた、要するに非常に燃料が多くて危険であるということ、これもそうだと思うのですが、天気が悪くてもし加速でもしておった場合においては、おそらく地域住民周辺住民に与えるところの騒音というものは、それはものすごく大きな比重になってくるのではないか、このように思うのですが航空局の見解をお伺いいたします。
  91. 泉靖二

    ○泉説明員 騒音につきましては、天候状態、飛行の加速の状態によりましていろいろ厳密に調査いたさないと、確実なお答えはいたしかねます。低高度でございますとかなりの騒音があるのではないか、そのように考えます。
  92. 鈴切康雄

    鈴切委員 それから使用時間については、米側は午前七時から二十四時、そのことを米側のほうでは要求をしているわけですが、横田から同射爆場に至る全飛行路をポジィティブ・コントロールするための航空局の事前通告は、米側においてはどのように考えられているか。また機数制限、時間制限を行なうというその問題について、要するに運輸省のほうでははっきりと条件を提示しているわけでありますが、その点について米側としてオーケーをされたかどうか、この点についてお伺いします。
  93. 泉靖二

    ○泉説明員 ポジティブ・コントロールを行ないますための条件といたしましては、この空域を通る飛行機全部に計器飛行の飛行計画を提出してもらわなければならない。それは何分前に提出したらいいかというところまでは実はまだ煮詰まっておりません。通常は飛行の三十分前に提出することになっております。そして、もし一般の航空機が通っていれば、この射爆場に往復する訓練機のほうが待たされる場合がございます。逆に一般の航空機のほうが待たされる場合もございます。そういう点がまだ煮詰まっておりません。討議中でございます。
  94. 鈴切康雄

    鈴切委員 この問題も私はおそらくアメリカが承知しようはずがない大きなネックの問題だと思うのです。そういうふうな大きな問題をはらんでいるから調整できないのであって、施設庁長官は非常に抽象的に調整できないのですというふうに言われたわけでありますけれども、専門的ないろいろの意見を付すならば、やはり常識的にこういう問題があるがゆえに調整ができないという結論になってくる、そのように私は思うのです。  そこで、さらにお伺いいたしますが、現在羽田空港にB滑走路を建設中ですが、これはいつごろできましょうか。でき上がるとすれば、一年間の就航回数はどれくらいになりますか。
  95. 泉靖二

    ○泉説明員 はなはだ申しわけないのですが、B滑走路が確実にいつできるか実は存じません。約二年後と思います。でき上がりましたときの許容能力は十七万五千回近くになります。
  96. 鈴切康雄

    鈴切委員 そこで主として国際線は今度新東京国際空港に漸次移されるようになるとするならば、国内線の羽田空港の就航回数は航空局の判断では減ると思われているかどうか。さらにふえる、そのように判断をされておるか、その点について。
  97. 泉靖二

    ○泉説明員 新空港ができましたときには国際線は新空港に移るわけでございますから、理論的にはその回数だけは現東京国際空港の飛行回数が減るわけでございます。しかしながら、実はいま国内航空を非常に押えぎみに処理いたしておりますので、国際線が新空港のほうに移りますれば、一年ぐらいの間にそれだけの飛行回数はすぐふえていくのじゃなかろうかというふうに考えます。
  98. 鈴切康雄

    鈴切委員 私もそのように判断するわけです。これは新聞にも「ついに満員札止め」、そのように書かれているところを見ても、今後国際線の需要というものは非常に多くなる。ゆえに、B滑走路ができた場合には十七万五千回を上回るような、そういう使用状況になる、私はそのように判断をしております。  そこで新東京国際空港にとりあえず四千メートルの滑走路ができるとすれば、大体いつごろになるのでしょうか。
  99. 泉靖二

    ○泉説明員 まことに申しわけないのでございますが、飛行場の建設のほうはあまり詳しくございませんので、確実なことは申しかねます。大体建設いたしてから二年以内というふうに一般的には考えられます。
  100. 鈴切康雄

    鈴切委員 そのときの飛行回数はどのようにお考えになっておりますか。
  101. 泉靖二

    ○泉説明員 滑走路が全部でき上がると、最盛期には二十六万回というふうに計算いたしております。これは二本滑走路を使った場合でございます。
  102. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうすると、羽田空港は十七万五千回、新東京国際空港はこれからいよいよ最盛期になりますと二十六万回という状態で、考えられないような飛行状態の姿が現実にあらわれるわけであります。そこで、現在でもますますふくそうをしている大島、新島上空の調整、これは実はできるはずがないわけです。もしこのことをあえて米、防衛施設庁あるいは航空局の三者会談を開いて調整しようとすれば、私はおそらく後世の笑いぐさになってしまうのではないかと思うのです。それよりも、アメリカのほうで言うならば、この問題はおたくの問題なのだから、ひとつおたくのほうで調整をしていただきたい、そのようにアメリカから言われるのではないかと私は思うのです。こういう問題を実際にはらんでいる新島の射爆場の問題について、施設庁はアメリカと共同で声明しながら、しかもほかの運輸省、厚生省あるいは農林省等の調整もせずしてこれを発表するということはまことに軽率だと言う以外にないと思うのです。直ちにこの問題についてはもう一度よく検討して、こういうふうなネックがある新島の問題についてはやはり再考慮をすべきじゃないかと思うのですが、防衛庁長官並びに施設庁長官にお伺いいたします。
  103. 有田喜一

    ○有田国務大臣 いまの航空の問題は事人命に関する非常に重大な問題であります。したがいまして、きわめて慎重にやらなくちゃならぬとは考えております。しかし、何ぶん広い空の上のことです。また成田空港の問題でも、これはいま大島にラジオビーコンがあるから、そこのほうにふくそうするけれども、いろいろあるので、そういうことをもっと慎重にして、いませっかく調整中ですから、調整できるかできぬかはこれからの問題でございますが、せっかく三者の間でいま調整中でございますから、その調整がうまくできること、しかも人命に危険はないという結論が得られることを期待しておる、こういう状態でありまして、いま何とも申すことはできない状態でございます。
  104. 山上信重

    山上政府委員 ただいま大臣からお答えのありましたとおり、目下関係の運輸省と調整中でもあります。いろいろその辺のところを検討した上で……。目下折衝中であります。御了承を願います。
  105. 鈴切康雄

    鈴切委員 話はちょっと変わりますが、占領軍の被害者としての遺族に政府が支払っている対象人員は何名でしょうか。
  106. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 先生のただいまのお尋ねの件数と申しますのは、新旧両方ございますが、新法による支払いの件数かと存じますので、その件数を申し上げますと……(鈴切委員「新旧両方」と呼ぶ)旧法におきましては一万四百五十八人、新法におきましては現在のところ九千七百七十六件でございます。
  107. 鈴切康雄

    鈴切委員 いままでにこれらの占領軍被害者の遺族に対してどのような救済措置がとられておったか、これについて具体的に。
  108. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 旧法におきましては、先生御承知だと思いますが、遺族に対する給付金あるいは障害給付金につきましては、無職者の一日の収入日額を二百円と押えまして、それを単価としましてそれぞれ支払ったわけでございますが、よくよく検討いたしてみまするのに、無職者の一日収入日額を押えるということは合理的でないということで、有職者、無職者、これの一日平均収入日額、昭和二十七年におけるその日額を平均いたしました三百五十五円の単価に訂正いたしまして、現在新法を実施しておるというのが実情でございます。
  109. 鈴切康雄

    鈴切委員 昭和四十二年の一月十八日法律第二号をもって一部改正を行ない、さらに約九億円の給付金を支給、三カ年間に分割して本年この問題は完了をすることになっております。しかし、当時福田幹事長が占領軍被害者遺家族に対して昭和四十三年の二月五日に、改正法律は現在実施継続中であり、その経過中においてさらに改正法律案を提出することは、目下のところ非常に困難な事情にある、今後なお十分検討したいと確約をしておられますけれども、政府として何らかの措置考えられているかどうか、この点について。
  110. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 この占領期間中における占領軍の不法行為によりましてなくなった方あるいは傷害を受けた方、こういった方々に対しては非常にお気の毒だということで同情はいたしておりますけれども、現在これを改定して増額するということは考えておりません。
  111. 鈴切康雄

    鈴切委員 この問題についてはイタリアにおいてはこういうふうな一つの補償をとっておるわけであります。生命の補償だけでなく、財産被害にも十分な補償をしている。また西ドイツにおいても国内法によって被害に相応する補償が実施されておる。わが国においては、講和条約において、補償の請求権を行政府の責任においてかってにこれは放棄している問題であります。まことにけしからぬと思う。ところがその後給付金を支給したけれども、実際には撲殺とかあるいはそういうふうな非常にむごい殺し方による問題の補償についてすら三十五万五千円くらいにとどまっているという、まことにお粗末な状態であります。生命を尊重するという立場に立ってこの問題を何にも考えないという政府、この問題について、私はもっと方途を考えていかなければならない、救済措置考えていかなければならない問題だと思うのですが、その点についてお伺いします。
  112. 山上信重

    山上政府委員 御承知のように、この給付金法は昭和三十六年に政府提案によりまして第一次の支給をいたしたのでございますが、その後実情は、ただいま総務部長からお答えいたしましたように、四十二年におきまして議員立法によってこれのさらに上積みといいますか、そういった措置をとって、再度にわたって訂正をいたしたような実情でございます。実情につきましてはわれわれも当時の実情を十分考えますと同情いたしておるのでございますが、いわば過去の打ち切りの、そういった給付金でございますので、この場合、政府がさらにこれを改正するということはいかがかというふうに考えておるのでございまして、御了承をお願いいたしたい、かように考えます。
  113. 鈴切康雄

    鈴切委員 この問題についてはある者はなぐり殺され、あるいは犬同様に暴走車にひき殺され、ある者は酒がないからといって惨殺されておる。不幸な遺族に対して国としては当然――農地報償あるいは在外資産の補償法でも相当の金を出しておるわけであります。日本の国においても経済の発展途上において財政的にも非常に余裕ができてきているとするならば、私は少なくとも人間尊重という立場から、こういう被害者に対しては完全に傷害者等に対する回復の治療を行ない、また行政協定あるいは地位協定の十八条六項に見合うような措置考えていくべきではないか、そういう措置をとるべきではないか、そういうふうに考えるわけでありますが、防衛庁長官にお伺いいたします。
  114. 有田喜一

    ○有田国務大臣 まことにそういう方々はお気の毒だと思います。しかし、鈴切さんも御承知のとおり、これは一時金でございます。せっかく国会において議員立法として、四十二年でございましたか通過いたしまして、議員の皆さんの御意見によって直されたばかりであります。また、その当時の物価事情あるいは貨幣価値からいえば、おそらくこの程度が適切だという前提に立って議員立法で出されておるのであります。年金か何かで続いておれば、物価の関係その他によって増額考えなくちゃなりませんが、何ぶん一時金でございますから、お気の毒はお気の毒と思いますけれども、まずそういうことで打ち切られておりますから、政府としてはこの上これを増額して提案するという意思はいまのところ持っておらぬ。これはもうしかたがないと思います。
  115. 鈴切康雄

    鈴切委員 生命というものは地球よりも重いといわれております。その生命をそのようにして無残にも引きちぎられあるいは殺されるという状態においては、これは許しがたい大きな問題ではないか、私はそのように思うのです。その上において、当時占領状態下におけるところのそういう方方に対して、法の公平な立場からいうならば、もっとあたたかい措置が必要ではないか、そのように思うわけでありますが、その点は要望をしておきます。  次に、今回提出をされました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案防衛庁設置法の改正部分について、今度自衛官の定数を七千七百二人増加するということであります。内容としては陸上自衛官六千人、海上自衛官千二百二十二人、航空自衛官四百八十人になっておりますが、何ゆえにこのように急増計画をされたか、その理由についてお伺いをいたします。
  116. 有田喜一

    ○有田国務大臣 これに対しましては、昨日でしたか、また、その他の機会においても申し上げたと思いますが、その中には、六千人の陸上自衛隊員の増員あるいは海上自衛隊、航空自衛隊、それぞれございますが、まず六千人の問題につきましては、鈴切さんも御承知のとおり第一次防衛計画以来のこれは懸案でございまして、また日本の陸上自衛隊の防衛体制は五方面隊十三師団というものがございまして、日本の土地の地理的状況あるいは防衛的、技術的見地から、いろいろと五方面隊、十三個師団の中において十八万体制が適当であろうという結論できたわけであります。それがいろいろな事情によりまして、今日十七万三千人にまでは到達いたしましたけれども、あと七千人がまだ到達していない。せっかく長い間の懸案でありますので、せめてそのうちの六千人、すなわち三つの戦闘団といいますか、それをふやしたい。そこで、日本の地理的状況から見て一番薄いと思われるところ、そういう方面にふやしまして、わが国の陸上自衛隊としての防衛を一応責任を持ってやれるところまでこぎつけたい、こういう気持ちからきております。あとの海上自衛隊、航空自衛隊は、海上自衛隊というのは昨年から問題になっておるのですが、これは艦船の増強とかその他によって自然にふえるもの、航空のほうも同様なところからふえてきておる、こういうのでございます。
  117. 鈴切康雄

    鈴切委員 過日当委員会において、現行の定員管理制度を改めて、各省庁通ずる定員の総数の最高限度を法定し、三年間五%の削減を試みようとしている総定員法が今国会で論議をされました。その機構改革と逆行して片方では防衛庁設置法第七条を改めて自衛官を増強し、総定員法案の減員数分以上の定員ワクを広げようとされておるけれども、ただ既成事実の積み重ねによって自衛官の増強をはかるというのでなく、なぜ自衛力の増強が必要なのであるか、どういうものをどの程度増強するのか、自衛官の定員を急増する必要がどこにあるのか、全然根本問題に触れていないわけであります。そしていきなり、最小限度の必要人員の分とは全くわからない行政改革の定員削減に逆行する定員増をはからなければならない理由を、国民に納得するように御説明を願いたいわけであります。
  118. 有田喜一

    ○有田国務大臣 それは先ほど簡単に申しましたけれども、日本の陸上自衛隊の体制というものは五方面隊、十三個師団で編成されている。その五方面隊、十三個師団というものは、日本の地理的状況あるいはいろいろな事情から、防衛的、技術的見地に立ってできておる。その十三個師団も、御承知のとおりいわゆる七千人師団といわれるものと九千人師団というもの、そのほかにたった一つ機械化師団というものがございますが、機械化師団を除いたあとの十二個師団のうちで、いわゆる九千人師岡というのは御承知のとおり四つあるわけです。ところが先ほど言いましたように、地理的環境をいろいろ見ましたときに、七千人師団ではどうも不足がちである。具体的にいえば、東北地方、あれだけの広域な面積で二つの師団がありますけれども、いずれも七千人師団です。そこで、ひとつ何とかもう一個戦闘団をふやしまして九千人師団として、そして東北の守りを全うしたい。それからもう一つ、西のほうへいきまして、御承知のとおり、近畿地方は相当広いところでございます。人口も稠密でございます。ところが、伊丹の師団でございますが、これも七千人師団です。この辺でひとつ九千人に増員したい。もう一つは広島でございますが、これはいわゆる中国地方と四国地方を受け持っておるのですが、この広い、ことに瀬戸内海というものをめぐって非常に発展をしておるその土地に六千人師団一つだけというのはあまりにも希薄だ。そこで、広島において千人の増員をやって、そして地理的配置から適正な防衛体制をつくりたい。そして同時にこういうことが増員されますと、いわゆる機動力というものをふやして、いざどこかに何かあるときに、その方面へ師団を全部回わしますと、留守というものがなくなります。しかし、二千人増員されるということ、あるいは六千人増員されるということは、それだけ、いざというときに機動力が発揮できるのでありまして、ことに日本の防衛力を全うというところまではいかぬがおおむねやっていける、こういう見地からこのくらいの増員をお願いしておる、こういう次第でございます。
  119. 鈴切康雄

    鈴切委員 要するに、七千人師団を九千人師団にする、それで三師団増強する、その増強する意味というか、ふやすということはわかるわけですが、しかし、何ゆえにそのようにしてふやさなければならないのかという、そういう根本問題には全然触れていないわけです。世界情勢の上から、こういうふうな状態だからやはりこういうところにはこういうふうな防衛構想が必要であるとか、あるいはこういうふうな体制にしなければならないということに対して全然触れないで、ただ単に七千人師団を九千人師団にして増強いたしますというのでは、なかなか国民は納得しないのではないかと思うのです。  そこで、陸上自衛官は現在十七万三千人体制となっておりますけれども、第三次防終了の四十六年までの三カ年で十八万体制ということになるならば、何も本年度急増する必要はないのではないか。しかも、充足率も九〇・九%である。予算計上の定員の人件費も九〇・何%ということであるならば、充足率を満たすほうに力を入れるべきじゃないか。なぜ大幅にワクを増員しなければならないか、その理由が国民にはよくわからないわけであります。その点についてお伺いします。
  120. 有田喜一

    ○有田国務大臣 もちろんいまの自衛隊には欠員はございます。しかし、だんだんと充足率は向上しつつあります。かつては八〇何%台でございましたが、今日では最近は九二%までいっているということであります。一〇〇%になるのが最も望ましいわけですけれども、なかなかそうはいかぬ。しかしここまで向上しておる。ことに私たちが六千人ということをお願いしておるのは、昨日も申したと思いますが、一つの部隊の編成定員でございます。やはり入れものといいますか、わかりやすく言えば入れもの、そこでたとえば一升のますの入れものがあれば、その一升にいざ入れなければならぬときにこれが九合よりない。いざ有事のときに、人の頭が満たされれば日本の防衛がやっていける。ふだんから人間につきまして、やはり部隊というものをつくりまして、そして常に訓練をしておらなければならない。それにはやはり将校といいますか、それぞれの部隊長も要りましょうし、またそれに伴う装備も要りましょうし、いろいろな設備がそれに伴っていかないと、人間が足らぬからというだけでは急に間に合わない。ことに部隊長とかそういうようなものはやはりふだんから訓練をしておかないといけない。そういうのでひとつ部隊編成としてこの要請を満たしていきたいというのが私たちの考え方です。
  121. 鈴切康雄

    鈴切委員 このように本年度大幅に増員計画をされた理由を素朴な国民の立場から考えてみると、私は三点にしぼられてくるのではないかと思うのです。  そのまず第一は、来年度は一九七〇年、いよいよ安保の年であるから、防衛の増員計画はとうてい国会を通る見通しはないんだ。だから思い切って来年を見越してこの際増員をしよう、そういうお考えに立っておられるのではないか。国民は、急増する増員計画について、そのように考えているんじゃないかと思うのです。その点についてどうでしょうか。
  122. 有田喜一

    ○有田国務大臣 お考えはいろいろあると思いますけれども、私どもとしましては、この三次防で十八万体制をどうしてもやらなければならぬ。そうしますと、本年度は三次防の一番中心の年であります。したがいまして、この一番の中心の山場において六千人を増員してもらう。あと千人が残っておりますけれども、これは来年、再来年というときがありますからそのときにお願いすることにして、三次防なら初年度にやったらどうか、一番末においてやったらどうかというお考えもあるかもしれませんけれども、私は三次防の最も中心といいますか、まん中の年でこの編成をやり遂げたい、こういうことでありまして、別に、来年は安保を控えておるからそれに対してどうのこうのというようなことは毛頭考えていない。
  123. 鈴切康雄

    鈴切委員 私は、やはり素朴な国民の立場からお聞きをするわけでありますが、まず第一に、いまの問題でありますが、国会を通る通らないというのは、これは要するに国民の意思であります。それを十分に理解を与えないで、ただむちゃくちゃに既定概念の上に立って増員をしようというやり方であり、また野党の反対が拙いから逃げて通るという国会運営だけのことしか考えられないやり方、また野党の反対が強いということは国民の中においても相当数政府の行き方に危惧を感じている国民感情も私は無視をしてはいけないのじゃないか、こう思うのです。  そこで第二点目として、沖繩の返還交渉の見合いとして、今秋訪米して行なわれる佐藤・ニクソン会談に、ぜひとも池田・ロバートソン会談できめた十八万体制の姿勢を示すことが必要である、そういうふうな判断に立たれておるのかどうか、その点について。
  124. 有田喜一

    ○有田国務大臣 この点は、昨日も佐藤総理大臣みずからも言われましたように、私どもは少なくとも自主的にやっていこう、日本の防衛を自主的な日本みずからの考えのもとにやっていこう、こういうことで、何もアメリカに行くのに都合がいいとか悪いとかいう、そういうことを考えて提案したものじゃない。ことに、十八万体制というものは、ずっと第一次防からきておる問題でありますから、今日の沖繩返還問題を考えて十八万体制というものがつくられたというわけのものではないと私は思うのです。私は、あくまで日本の防衛の責任者として、一日も早くこの体制を整えたい、そういう考えのもとに今回の六千人の増員をお願いしておる、こういうことでございます。
  125. 鈴切康雄

    鈴切委員 二十八年の池田・ロバートソン会談できめたことだとして、それを一つの根拠として沖繩――これはあまりにもナンセンスじゃないか。それから国際情勢の推移、国力あるいは憲法の制約下における国民的合意に立って、最小限にして精鋭な自衛力というものはいかなるものであるかということに立った自衛隊増員でなくてはならないんじゃないか、このように私は思います。  第三番目には、一九七〇年の日米安保条約改定のときにおける治安体制としての政策的な見地からの増員であるという見方をしている人もいるわけでありますが、長官はその点どう思いますか。
  126. 有田喜一

    ○有田国務大臣 予算委員会におきましても、しばしばそういうような御質問を受けました。しかし、率直に申して私どもは治安の任務は持っております。しかし、あくまでもこれは慎重にやらなくちゃならぬ。何も治安対策をねらうならば、いまの十七万三千人の体制でも――それはやるとは申しません。慎重にやるのでなければならないけれども、何も六千人ふやさなくては治安対策に出動できぬというようなものではないと思います。まあ考え方がいろいろありましょうが、われわれは治安対策のために六千人をふやしたいということではない。あくまでも先ほど申しましたように日本の防衛を、できるだけ日本の安定といいますか、日本の安全を守りたいという見地からこれを提案しておる。その点はひとつ御了承願いたい。
  127. 鈴切康雄

    鈴切委員 治安出動という非常事態に備えて、警察官が五千人増員をされることになっております。この際、いっそのこと便乗して、自衛官のほうもやはりやっちゃえというような、そういう気配もないとも限らないような感も私は受けるわけであります。  それはそれとして、さらに先へ進めていきますが、なぜ十八万体制が必要であるのか、私はちょっとわからないのです。三つの連隊、戦闘団を新しく編成して、東北方面の第六師団、中部方面隊の第三師団、第十三師団を七千人師団から九千人師団にすることが日本の防衛とどういう関係になっているか。またあなたがいま弱体であるというふうに判断されるというのはどういう作戦的見地に立っているか。やはり具体的な根拠がなければ国民はよくわからないと思うのですが、この点についてお伺いいたします。
  128. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 根本的な増員理由は、先ほど大臣からお答えのとおりでございます。少し細部にわたる御説明を申し上げたいと思いますが、十八万体制の根拠としましては二つの面から申し上げることができるかと思います。  一つは先ほど長官からもお答えがありましたが、編成上五方面隊、十三個師団の編成をつくりたいということ、それから一面人数、十八万という人数がほしいという両面の理由があるわけでございます。編成上五方面にし、かつ十三個師団にしたいということについて若干申し上げますと、御承知と思いますけれども、一次防のころは、全国を十の単位にしてわが国の防衛作戦といいますか、防衛上いろいろな戦略を考えておったわけでございます。しかし、いろいろと検討しました結果、日本の全体の地形上、各管区を一つの作戦区域として考えました場合に、十に分けた場合には狭過ぎるというふうな感じが出てまいりました。それで少し大きくしまして、全国を五つの区域に分けて、方面総監というものを置きまして、平時は行政区域の責任者にいたします。行政上の管理責任者にいたします。同時に、有事の際には、隷下の部隊を最も効率的に運用させたいという考え方をとったわけでございます。そういう前提考えました場合に各五つの方面ごとに考えてみますと、まず基本的に最低二佃の戦略単位部隊が必要だ。戦略単位部隊といいますのは、つまり師団でございまして、兵たん補給の能力をみずから備え、独立して長期に行動し得るような部隊、そういうものが二つはほしいというふうに計算が出てまいります。それで計算いたしますと、十個師団要ることになります。五方面ですから十個師団になります。  次に管轄区域の広さとか、地理的特性等、ずっと比較してまいりますと、五つのうち中部、北部にどうしても一つ足りない。いろいろな図上作戦なんかやりまして、その二つだけは三つにしたい。それから北部に一個の機動部隊が必要である。戦略上の重点地域としてもう一つ機動部隊がほしいというふうに計算いたしました。それで合計いたしますと十三個師団になります。実はそれ以外にも戦略の予備部隊として、もう二個程度の戦略部隊がほしいという計算をいたしました。そうしますと、十五個師団になります。しかし、全体のわが国の国力なり国情から考えまして、最後に申し上げました二個師団プラスというのはどうも何とかがまんすべきであろうということで、他の十三個師団の中の単位部隊から、いざというときに捻出するという計算をいたしまして、十五からさらに今度は二を引きまして十三個師団にするということで、五方面、十三個師団という編成を考えたということがまず前提にございます。  以上が編成上の五方面、十三個師団の理由でございます。  なお、これで計算いたしまして出てまいります十八万の根拠でございますけれども、主動部隊を十四万五千、それから後方部隊、学校、補給所等の後方部隊を三万五千というふうに計算いたしまして十八万にしたわけでございます。これはいわば兵力軍の問題でございますけれども、簡単に申し上げますと、その算定では防衛力の両面であります侵略を未然に防止する力というものと、万一侵略があった場合に、これを排除し得る力と両面から評価する必要があります。そこで技術的にいろいろオペレーションリサーチ、いわゆるOR等の手法も用いまして、かりにわが国が侵略を受けた場合を想定しまして、動員能力とか、早期の撃破能力とか、いろいろ算定の方法を試みまして、十八万体制というものが日米安保体制のもとで最小限必要だというふうなOR作業のことも加味しまして、兵力量のほうを計算したということでございます。つまり、編成上の理由と兵力量の理由と、長くなりますので少しはしょりましたけれども、両面から計算いたしまして十八万体制がぜひ必要である、それをお願いしたい、こういうことでございます。
  129. 鈴切康雄

    鈴切委員 編成上の理由、それは一応わかったわけですけれども、政府の国際情勢の推移に対する判断はどのようにとられておるか。しかも、憲法の制約下における日本の防衛に対する明らかな方針を国民に示してこそ初めて、私は納得のいく国民的合意が得られるのではないかと思うのです。われわれ政治家は、特に防衛に対しては、国民が直接生活にとけ込んだ問題とは違って非常にわかりにくい問題だというところから、やはり事実を明らかにしてこそ初めて私は国民の批判を受けることができるし、よりよい方向に進んでいくことができるんではないか。ただ単に、安保堅持、そして自主防衛強化という肩書きで固執してしまって、他の党とはイデオロギーの違いだからというふうなことだけで片づけてしまうということは、私は非常に危険な問題ではないかと思うのです。ことに、中共を敵視するような状態、何ら平和的な努力をしない自民党の対米追随政策の上に立った自主防衛構想は、私はどんどんエスカレートしていくように思うわけでありますが、中共に対するところの脅威をどのように判断されているか、こういうことをまずお伺いをいたします。  私は意見を付しておくわけでありますけれども、やはり何といっても、日本の国というのは地球上のあらゆる国々と平和友好条約を早急に結ぶべきではないか。まず第一に、中華人民共和国と万難を排して結ぶということが非常に大切なことではないか。いつまでもおそれ、疑い、感情的になっていても、この民族は消えていかないわけであります。独立日本国がそれができないわけはないし、また政府自民党が中国を敵視してアメリカの牢固の牽制をおそれ、対米追随のみに明け暮れるとするならば、しこりはますます処置ないガンと悪化してしまうのではないか、日本の命取りになってしまうのじゃないかということを私は非常に憂えるものであります。はるか未来の幾十年先のことをに思いをはせたときに、私はやはり隣人中国と手を結んでいくべきではないか、そういうふうな観点に立っているわけでありますが、その点について防衛庁長官が中共に対する脅威というものに対してどのようにお考えになっておられるか、その点についてお伺いいたします。
  130. 有田喜一

    ○有田国務大臣 原則としましては、防衛力の問題のときには、やはり平和外交ということが外交方針として大事なことだと思います。中共に対する脅威といいますか、これはこの間も申したように、私は最近の中共における核の伸び方、これについて心配するのでございますが、私どもはこういう国会の公の席上でどこがうちの敵だとか、どこがあそこだなんということは、やはり差し控えるべきものだと思うのですよ。したがいまして、ここにどこがこういうことだということは申すことはできませんけれども、われわれは万一の備えというものがやはり必要でありますから、いわゆる対象国ということばできておるのですが、それぞれの備えだけはやはりやっておかなければならない、そういうことで日本の防衛方針を立てていきたい、こういう考えであります。
  131. 鈴切康雄

    鈴切委員 長官、あなたは北風と南風のたとえを御存じですか。要するにその北風と南風が旅人のマントを脱がせるということについては、どちらに勝負があったのですか。聞いているのですよ。答弁です。知らないのですか。
  132. 有田喜一

    ○有田国務大臣 まあ南の風はあったかいでしょう。しかし……。
  133. 鈴切康雄

    鈴切委員 いや、そんなことはいいのだ。要するにイソップ物語の北風、南風で、どちらが先に旅人のマントを脱がせたか、こういうことです。
  134. 有田喜一

    ○有田国務大臣 そういうことは一つのイソップ物語として聞きました。私がここでこうだこうだということは言う必要もないのではないかと思うのですが、もしなんでしたら、だれかほかの人から言っていただきたいと思います。
  135. 鈴切康雄

    鈴切委員 どうぞほかの人、答えてくださいよ。――要するに北風は、自主防衛構想を主として、安保条約を補完的に考えている政府自民党の考え方なんです。南風は、絶対平和主義に立った、人間性尊重の立場をとりつつある、日米安保条約の段階的解消を主張している公明党なんですよ。そこにやはり私は大きな問題がある、そのように思うのです。  それはそれとして、そこで、政府がいままで安保の補完的な考え方から、防衛構想を自主防衛の補完が安保だと政策転換され、急増する防衛体制に、国民は、再び戦争への道を進んでしまうのではないかと非常に危惧していることはいなめないのですが、安全保障というものは何も軍事力のみにあるのではありません。外交、経済、貿易、文化を含めた総合力は、国民の納得のいく合意によって初めて形成されるわけです。その上に立って論議をするということは大切なことだと思いますけれども、あなたが国防白書を出されるというふうにいわれておりますけれども、その国防白書については、具体的に今年じゅうに出されるのか、あるいは来年になるのか。あるいはこの国防白書については当然国防会議を経て出されるのか、その点についてお伺いいたします。
  136. 有田喜一

    ○有田国務大臣 私は、国民の国防といいますか、防衛に対する御理解を一そう深めたいという意味合いにおいて、国防白書をつくりたいと考えております。目下検討中でございますので、いつ出すかという約束はできませんけれども、私は近い機会に、まあ来年なんといわずに、近い機会にこれを出していきたい、かように考えております。
  137. 鈴切康雄

    鈴切委員 いま防衛庁長官は近い将来と言われて、来年といわないということはことしだということがはっきりわかったわけでありますので、その点について、国防白書はことし出されるという、そういう構想に立っておられることはわかりました。  それから自衛官の最高責任者であられるところの防衛庁長官は、自衛官に対してどのような気持ちで接しておられるか、虚心たんかいにお伺いをしたいのであります。
  138. 有田喜一

    ○有田国務大臣 私は、いまの自衛隊というものが御承知のとおり陸海空とありますが、やはり陸海空の力というものが総合的にいかなければならぬというので、その結合ということを考えております。同時に、自衛隊自身というものは、やはり何よりも国民から信頼されるということが大事だと思うのですよ。だから自衛隊の人には、これはまあ普通の人間でございますが、やはり国民から信頼される自衛隊になってほしい、さような考えのもとに自衛隊の諸君にも呼びかけておるのでございます。しかし、また一方、国民からも自衛隊に対して声援を送っていただきたい。いつかも申したと思いますが、自衛隊員に親しく会っていろいろな話を聞いてみますと、災害出動のときなんかほんとうに勇気をもって身を犠牲にして熱心にやってくれておる。その熱心にやる態度というものには、その背後には被災民の方々の、自衛隊頼みますよ、しっかりやってくださいといううしろからの支援、それがあれば勇気百倍だというのです。そういうことから私は、国民の方々が防衛というものに一そう深い理解を持って、国民の諸君から自衛隊を激励し、しっかりやってくれよ、こういうことになれば自衛隊も一そういまの力が私は大いに増していくと思うのですよ。そういうような観点に立ちまして、いまの防衛白書もその一つのあらわれでございますが、あらゆる機会に国民の方々に呼びかける。同時にうちにありましては自衛隊の自粛をやって、そして三軍が統合されて、真にその力を発揮できるように、そして国民から信頼される自衛隊、こういうことを考えながら、自衛隊に指導といいますか呼びかけておる、こういうことでございます。
  139. 鈴切康雄

    鈴切委員 そこで今度大幅に増員を予定する計画でありますが、現在数あるいは充足率、といっても一方的に防衛庁の報告を信用する以外にないわけですが、その数字だけでは内容がよくわからないし、具体的に今度お聞きしますので、明確にお答えを願いたいと思います。  昭和四十一年度末における自衛官、陸海空の数及び充足率についてお伺いいたします。
  140. 有田喜一

    ○有田国務大臣 数字のことでございますから、政府委員から答弁させます。
  141. 麻生茂

    ○麻生政府委員 四十一年度末で陸上自衛隊が十五万三千四百三十一名、充足率が八九・五%、海上自衛隊が三万四千二百五十七名、充足率が九八%、それから航空自衛隊が三万八千八百七十七名、充足率が九八・三%でございます。なお、念のため申し上げますと、四十一年度までの統計は休職者も含めてこの調査をやっておりますので、その点だけ……。
  142. 鈴切康雄

    鈴切委員 四十二年度末における自衛官の数について、また充足率についてお伺いいたします。
  143. 麻生茂

    ○麻生政府委員 陸上自衛隊の現在員が十五万六千二十五人、充足率が九〇・二%、海上自衛隊が三万五千七百十六名、充足率が九七・六%、航空自衛隊が三万九千六百十九名の現在員で充足率が九七・三%でございます。
  144. 鈴切康雄

    鈴切委員 現在の自衛官の数及び充足率について。
  145. 麻生茂

    ○麻生政府委員 現在ということでございますが、四月末で答えさせていただきたいと思うのでございますが、現在員が十五万九千二百九十三名で、充足率が九二・一%でございます。
  146. 鈴切康雄

    鈴切委員 そこで四十二年度に自衛官を採用した人数を陸海空別に、それから四十二年度における自衛官の退職者数を原因別に区分して報告してください。
  147. 麻生茂

    ○麻生政府委員 総計でよろしゅうございますか。
  148. 鈴切康雄

    鈴切委員 はい、どうぞ。
  149. 麻生茂

    ○麻生政府委員 陸上自衛隊が二万三千七百八十七名、海上自衛隊が四千九百名、航空自衛隊が五千四百二十名、合計三万四千百七名でございます。それから四十二年度におきます自衛官の退職者数は陸上自衛隊が二万八百六十二名、それから海上自衛隊が三千三百八十一名、航空自衛隊が四千六百四名、合計二万八千八百四十七名でございまして、これは募集という点から見ておりますので、休職中で退職した者を含んでおります。
  150. 鈴切康雄

    鈴切委員 四十一年度末の現在数に採用者数をプラスして四十二年度における自衛官の退職者数だけを引けば四十二年度における自衛官の現在数になるという計算だと思うのですが、数字が合わないわけです。何かプラスマイナスの要素があるか。
  151. 麻生茂

    ○麻生政府委員 これが生じましたのは、採用以外の増がございまして、陸上自衛隊で四百八十五人、海上自衛隊で百二十二人、航空自衛隊で百六十六人の採用以外の増加がございます。また、退職以外の減少といたしまして陸上自衛隊で八百十六名、海上自衛隊で百八十二名、航空自衛隊で二百四十名がございます。
  152. 鈴切康雄

    鈴切委員 そうすると、四十一年度末が十五万三千四百三十一人に採用者数二万三千七百八十七名その他四百八十五名を足した数から、退職者二万八百六十二名とその他の原因八百十六名を引くと十五万六千二十五名になる、そういうことですね。
  153. 麻生茂

    ○麻生政府委員 そのとおりでございます。
  154. 鈴切康雄

    鈴切委員 そこで、自衛官の死亡については公務上の死亡と公務外の死亡とがあります。昭和四十二年度における公務上、公務外の死因別明細を明らかにしていただきたいわけでありますけれども、実は私がお願いをして防衛庁に資料を提出していただきました。  ちょっと委員長、それから防衛庁、これを見てください。  〔鈴切委員委員長及び麻生政府委員に資料を   示す〕  ところが約十日くらいたって、要するにこういうふうな内訳が来たわけであります。死因別が公務遂行上の事故死、人数が三十七名その他の事故死が七十六名、病死十名で百二十三名、こういう資料を出してきたわけであります。そこで、私が調査した数とまるきり違うわけでありまして、これはおかしい、このように私が言いましたところが、二週間くらいたって第二番目の資料が出てきました。それは要するに、原因がありまして公務災害の認定を受けた者、自衛官が四十八名、自衛官以外が一名、小計四十九名、それ以外のものは自衛官百五十六名、自衛官以外が四十八名、小計二百四名、合計いたしますと二百五十三名という、まるきり前のとは違った数字が出てきたわけです。そこで私はさらにおかしいということから、一つ一つチェックをするから出してもらいたい、そういうふうにお願いいたしましたところが、三番目の資料が出てきたわけであります。これが公称死亡においては自衛官が五十二名、自衛官以外が一名、合計五十三名、それから公称外死亡が自衛官が百四十八名、自衛官以外が四十八名、計百九十六名、それを合わせますと二百四十九名、こういう三通りの資料が出てきたわけであります。昭和四十二年度に自衛官あるいは自衛官以外の方々でなくなられた方々が、三通りの資料が出るということはどういうことなんですか。――ちょっと待ってくたさい。こんなばかげた資料が三通りも出るなんということはとうてい考えられない。おかしいじゃないか。あまりにもいいかげんであるという証拠じゃないですか。こんなことじゃ前に進めませんよ、委員長
  155. 麻生茂

    ○麻生政府委員 この三通りの資料を御提出申し上げましたことに対しましては、直接の監督者である私といたしましてまことに遺憾に存じております。  第一の資料は、昨年の八月のときに持っていった資料だと思います。このとき先生からも御注意があり、私もどうもおかしいからよくチェックせよということで担当の部員に当たらせたわけであります。担当の部員、一生懸命当たってチェックをしたわけでございますが、その場合、病死の点は除きまして公務災害等一々人間にも当たりまして、御提出しましたような資料を御提出申し上げたわけであります。ただ、そのとき、われわれでは各幕僚監部の自衛官が補助機関にも派遣勤務をしているというようなことがございますので、重複して数字を計上してしまったということでございます。したがいまして、その数字を除いた数字を、先ほどお話がありましたように、たしか昨年の九月ごろ第二の報告を御提出いたしました。最近また、今度は病死も含めまして念入りにこれは実はチェックをいたしまして、そして先生のところへお持ちをいたしたということでございます。その間、担当者の変更その他で十分正確な資料を提出できませんでしたことは申しわけなかったと思います。
  156. 鈴切康雄

    鈴切委員 この問題は非常に重要な問題であります。自衛官の現在数、それに充足率というのは、やはりそういう中から初めて出される問題であって、このように三通りの資料が、ただ単に数字が間違ったとかいう問題でなくして、生命に関する問題であるわけです。その点について、いまの状態では私納得いかないのですが、その点について私の納得いくように、委員長、取り計らっていただいて、この点もう少し話し合いをしたいと思うのです。こんな三通りも――事実これは三通り、合っていればいいのですよ。まだ違うのですから。私これから申し上げればまた違っているのが出てくるのですから。ですから私はこれは承服できない。
  157. 藤田義光

    藤田委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  158. 藤田義光

    藤田委員長 速記を始めて。  それでは、防衛庁でも委員会審議中に検討して、またあらためて答弁する必要もあるようでありますから、鈴切氏の質問を一応中断いたしまして、受田新吉君に御発言をお願いします。
  159. 鈴切康雄

    鈴切委員 それでは、受田さんが終わったらまたやらせてもらいますから。
  160. 藤田義光

    藤田委員長 受田新吉君。
  161. 受田新吉

    ○受田委員 この間の私の質問の時間に、夜やらしていただいて、皆さんの御都合を伺って私一時間半で質問を終わって、残余の質問を残しておいたわけでございまするので、その残りをこの席でやらしていただきます。  最初に、外務省の局長さんがおいでいただいておりまするので、局長でけっこうです。お答えを願いたい。  私非常に不安を感じている外交上の問題があります。それは、有田長官、この前あなたも宣言されたし、私も強く主張した、国防というものは単に軍事力だけでなくして、平和外交の外交努力、経済、文化、そういう国際親善関係を進めていくこと、あるいは平和教育を徹底させもしくは国民に国防の意識を高めていくという国民運動、こういうものを総合的に見る国防をほんとに考えるべきだ、そういうことを私が提唱し、またあなたもそれを納得された。その中で、願わくは軍事力を用いないで国防の本務を果たすという道を選ぶのが賢明である、その意味で平和外交を推進するということが国防の重大な一環であることを私この機会にあらためて確認をしてもらいたい。  そこで、今度の日米安保外交並びに沖繩返還外交につきまして、いまからその国防の一環としての外交という立場からお尋ねをいたします。  この間から議論されておる沖繩返還に関する核抜き本土並みというわれわれ民社党の多年の主張、それが大体政府の取り守る原則のようになったことをわれわれは一応歓迎しておるわけです。それを今度米側に示すための愛知外務大臣の訪米、さらにこの秋の総理の訪米という段取りになるわけでございまするが、先般来の国会の審議を通じて、私自身がいさきか政府の意図がどこにあるかはっきりしない点を見つけ出しておるわけです。それは、事前協議というこの条項、交換公文に現在されているこの条項は沖繩にも適用されるという意味で御答弁をされておるわけでございまするが、しかし、イエスかノーかという大事な問題になったときに、それを従来のような方式でよいとするのか、あるいは沖繩という特殊の事情があるところであるから合意議事録で、国会の承認を得ないで政府で独特の判断でこれをやろうとするのか、どこかまだはっきりした答えが出ておらぬ。ただ、はっきり一応私が了解していることは、事前協議条項を特別取りきめで沖繩に適用するようなものを新しくはつくらぬという御意見のようです。ただ、合意議事録につきましては、この事前協議運用について、国益を勘案して、初めは弾力的な運営、今度は適正な運営と発展しておるが、その適正な運営をするのについて合意議事録を用いるかという印象をわれわれ持っておったのだが、これも最近どうやら合意議事録方式をお使いにならぬような御答弁にも拝するわけです。合意議事録というのは、国会の承認を得る場合も私はあろうと思うのです。国会の承認を得る合意議事録というような形ということであれば、国民の意思を十分反映する機会があるから、そういう形をとるか、あるいは政府がそういう形をとらぬ場合には、何か別に秘密外交の方式をとるようなお考えがあるのか、どうも明瞭にうかがうことのできない節があります。外務省の御担当の局長がそれぞれのお立場で、対米交渉にあたって、事前協議に関するいま私が指摘した問題点の中で、特別取りきめもしない、合意議事録も用いない。しからばどんなやり方があるのか。秘密外交で片づけていただいたら、国民外交を念願するわれわれとしても承服できないわけです。こういう重大ないわゆる国益につながるものを秘密で、国民を無視していただいたとなれば、これは絶対に承知できませんので、いま申し上げた点につきましていかなる方法があるのかを、専務当局の立場からでけっこうですから御答弁を願いたい。
  162. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 外務大臣からもたびたび申されておりますように、沖繩返還の話し合いをいたしますにつきまして、わがほうからは返還後の基地の態様については、現行安保条約並びに関連諸取りきめをそのまま適用するという基本的考え方、基本方針をもってアメリカとこれから話をなさる、こういうことでございます。  そこで問題は、そのような形で、ことばをかえて申せば特別の取りきめなしに現行安保条約、関連取りきめをそのまま適用して、しかも日本の安全、極東の安全ということに差しつかえないのだということがわがほうの基本的考え方でございますが、そういう点につきまして、極東の情勢なり安保条約の運用ということについてこれからとくとアメリカと話を詰める。そこで沖繩返還というわがほうの願望も満たし、同時に安全保障上の問題もないという基本的合意に達することを目標としておる。これからそういう方針でさらに話を詰めるわけでございますが、その結果基本的合意に達しますれば、こういうような何らかの形で明らかにすることは申すまでもございません。合意された内容をいかなる形でまとめるかという点は、これからの話し合いの内容にもより結果にもよるところでございますが、具体的にどういう形になるかというところまでは、私の立場から現在申し上げかねるわけでございます。いずれにしましてもわがほうの基本的考え方は、特別取りきめなしでやる、また秘密外交はやらぬ、そういうことでございます。
  163. 受田新吉

    ○受田委員 特別取りきめなしでやる、秘密外交はやらぬ。そうするとどういう方法があるか。これはアメリカ局長としては事務的に、別に大臣でなくて御答弁できるところがあると思います。合意議事録という方式、これは国会の承認をとる方式がありますね。そういうところで国民代表者によるところの審議の対象になる方式が合意議事録でもとれる、これはとれます。
  164. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 御承知のとおり、日米間で合意いたしました後に、それをどういうふうな形式でまとめるかということは、一般論といたしましていろいろあるわけでございます。一番典型的な形は条約でやるということが考えられます。それから交換公文の場合もございますし、議定書という名前をつけたものもございます。合意議事録という形の場合もございます。ただ問題は、形式と申しますよりもその内容が、いままでの安保条約及びそれに関連する取りきめを法律的に変更するようなものが出てまいりました場合には、これはどうしても国会の御承認をとらなくてはならなくなるわけでございます。したがって、むしろ形式と申しますよりもその内容の問題だと私考え  ております。
  165. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、合意議事録の形式をとっても国会の承認をとる方法もあるということですね。
  166. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 合意議事録という形式は、一般に使われておりますのは、ある条約がございまして、それに対する条約の条文の解釈というようなときに通常使われる形式でございます。したがって頭が出ておると申しますか、条約にすでにきまっているものの両政府間の一種の解釈の考え方でございますから、通常の場合には国会の御承認をとらないのでございます。ただその中に法律事項が入っております場合には、これを条約とともに国会の御承認をとった例は、非常に少のうございますが、ございます。
  167. 受田新吉

    ○受田委員 私こういう大事な問題、日本の運命を決する、イエスかノーかを決定する大事な合意事項というものを、やはり国の運命を決するという段階においては国民の意思が反映するような方向の形式というものをきちっととってもらわなきゃいかぬ。これがあいまいにされていると将来の問題が起こるので、秘密外交のそしりがまた生まれてくるし、国民が非常に不安に追い込まれるという意味で、いかなる形にせよ現在より進行するという状態があるならば、国会の承認を得る方式をぜひ採用しなきゃならぬ。特別取りきめでもない、秘密外交でもないとすれば、国会の承認を得る法律内容を持つ議事録として一札取っておかなくちゃならぬ、こう思います。だが沖繩を日本に返す場合に、現状の安保条約の形のままで沖繩にそれが適用されるということを国民は強く願っておるのでございまするから、アメリカの沖繩に対する特別の意欲もありましょうけれども、いま申し上げたような形を国会で承認を得る方式にするか、あるいは秘密外交でないといまおっしゃったけれども、その途中に何かがあるとしても、それは国民の代表者の機関を抜きにするような新しい合意ということは許されないと私は思います。条約局長、アメリカ局長、どちらでもけっこうですが、特別取りきめでもない、秘密外交でもないとするならば、そのほかどんな方式があるのか。外務省の過去における実例などでひとつお答えを願いたい。
  168. 佐藤正二

    佐藤(正二)政府委員 先ほどもお答えいたしましたとおり、内容が問題になりますものでございますから、したがって形式はいろいろございますので、先ほど申し上げましたとおり、合意議事録だから国会の承認をとらないという形には必ずしもなってないわけでございます。むしろその合意議事録に盛ってある内容が、法律事項が入っておりますときには国会の御承認をとるという形になるわけでございますから、形式にどういうものがあるか、国会の承認をとらない形式があるかどうかというお話には、むしろ法律事項が入っていない内容のものでございますれば、国会の御承認をとらないでいいと申し上げるよりしかたがないと思います。
  169. 受田新吉

    ○受田委員 これから進行する日米交渉におきまして、国民が一つ一つに不安を感じないような、秘密外交方式におちいらないような幾つかの方法というものを外務省はきっと考えておられると思う。それをできるだけ秘密外交という形でなくして、国益に関する重大な問題であるがゆえに、このたびは国民的規模の熱願であるだけに、すかっとした形で事務当局もお運びをいただきたいと要求をいたしておきます。そうしないと秘密外交のそしりをまぬかれない。いつの間にかやっかいな約束を引き受けてくる。たとえば朝鮮事変が起こって、前にわれわれ非常に不安を感じたときがある。身近なところで何か事件が起こったとしたときに、すぐ日本に影響する。これは第六条の日本の安全に響くのか、あるいはアメリカが言う極東の安全に響くのか、わけのわからないような問題が起こってくるのです、必ず。日本の身近なところで事件が起こったら、日本の安全にたいへんな問題が起こってくる。そのときにどういう答えをするかということについてもやっぱりはっきりとしたものをつくっておかれないと、政府の独断で結論が出ないようにしておかれないと国民は不安であるということを申し上げておきます。  ここで外務省、どちらの局長でもけっこうですが、朝鮮あるいは台湾、日本の領土にびく近接したところで重大な戦争状態などが起こったときに、日本の安全に直接関係すると思われるか、それでなくて――状態にもよりますけれども、日本の安全に影響する状態が起こると思われるかどうか、お答え願いたいと思います。(「抽象的だ」と呼ぶ者あり)抽象的じゃない。近くでどんどん火の粉が飛んでくる問題です。
  170. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 一般的に申し上げますれば、日本の安全、現在の憲法のもとに日本が安全と繁栄をはかるという立場に立って考えますれば、極東の安全と日本を取り巻く地域の安全ということが、これは直接、間接日本の安全と繁栄というところに関係があるわけでございます。これは申すまでもないと思いますが、特にいま先生がおっしゃいましたように、至近の場所において侵略が起こるというような事態は、これは申し上げるまでもなく直接日本の安全に関係する事態、まあ一般的に申せばそういうことだと思います。
  171. 受田新吉

    ○受田委員 そうした至近の地域においてそういう状態の戦争が起こってきたというときは直接日本の安全に響きます、私もそう思う。そういうときに日本基地から発進する米軍の戦闘作戦行動というものは、これは日本の安全という立場からイエスと言えるかどうかですね、どういうことでしょう、現行制度でよいかどうか。
  172. 東郷文彦

    ○東郷政府委員 事前協議においてイエスと言う場合もありノーと言う場合もある。これは外務大臣がたびたびおっしゃっておられるとおりでございます。その諾否の基準というのはやはり日本自身の国益、特に日本の安全という見地から判断されなければならないという意味におきまして、いま先生のおあげになった場合もまさしくそういう基準から考えて対処すべき事態だと考えます。
  173. 受田新吉

    ○受田委員 防衛庁長官、アメリカ局長のおっしゃるとおり、朝鮮とか台湾とかいうところで戦争状態が発生したという場合は日本が火の粉を浴びるわけです。そういうときにアメリカの部隊が行動を起こしても、それは日本の安全という立場から行動を起こすということになる。今度あなたの御所管に返ってくるわけです。  そこで私、もう一つ軍縮の問題に触れておきたいのですが、国防外交を進める上におきまして、防衛庁長官は自衛力をどんどん強めるほうへ方向をお進めになっていこうとされるけれども、世界の趨勢として軍縮という方向へ平和外交を推進することはわが国としてたいへん大事なことだと思う。今度、七月に日本はモンゴルと一緒に国連の軍縮委員会に参加するという喜ばしい状態が起こっておる。七月二日にジュネーブでその最初の会合が開かれる。外務省は愛知外務大臣が出られるかどうか知らないけれども、本人は御希望を持っておられたようです。そういう意味で、十八カ国の軍縮委員会というものは国防外交の中で一番柱になると思うのです。この点について長官は、この軍縮委員会に参加することをお喜びになっておられると思いますが、同時に問題が一つある。この軍縮委員会は核拡散防止条約という、こういう大事な問題を扱っておる。それから自衛隊、あなたの部下がいま南極条約――これも軍縮委員会の所管なんです。南極を平和利用に開放するということに対して自衛隊協力体制をしいている、法律を改正しまして。自衛隊協力する平和利用の南極条約、これは非常に喜ばしい。こういうところへどんどん出ていかなければいかぬ。  同時に問題は、いま世界でいろいろ取りざたされている、核でなくて毒ガスとか細菌ですね。最近そういうものを使って残虐なる兵器を製造するという傾向がひそかに行なわれていることを聞いている。それを軍縮委員会で禁止しようとしておるようだ。これは見方を変えれば核兵器よりも悪質で、人間のからだを別の意味で残虐なる、みじめな姿に変えるという意味において許されない兵器だ。こういうものを防衛庁は知っていますかどうか。そして外務省は、この軍縮委員会における残虐なる細菌あるいは毒ガス兵器に対して、核兵器とあわせて……。
  174. 有田喜一

    ○有田国務大臣 軍縮という考え方は私も賛成でございます。おっしゃるとおり世界の平和のためにやるべきだと思います。また先ほど来御指摘のいろいろな問題、ことにもう一つ海底の問題があると思うのです。こういうようなことが相当大きな課題になってくると思います。私はさような趣旨においては賛成でございます。詳細については外務省のほうから答弁さしていただきます。
  175. 重光晶

    ○重光政府委員 もちろん政府の態度としては長官の述べられたとおりでございます。  ただ、追加的に私ども事務当局で考えておることを申しますと、先生お話しのとおりで、いままで軍縮委員会あるいは委員会の外においてある種の成果があがっております。これは先生のおあげになったことでございますが、南極条約、南極の地を軍事基地に使わないということ、それから宇宙天体条約がございます。これも天体に大量殺りく兵器を置かないことになっております。それから最近、実は七月からの軍縮委員会の最初の議題でありますが、いま長官の触れられました海底の軍事利用を禁止しようという問題、これらの問題は実を申しますと、いまあるものをとってのけたという問題ではないのでございます。これもやるかもしれない、やったらえらいことになるからやらないことにしようという、大ざっぱに言えばそういった問題でございます。それから細菌、化学兵器、これも七月からの軍縮委員会の議題にのぼっております。これもある意味ではやっておるのかもしれませんけれども、まだ大きな規模ではやっていないらしい。だからこれもやめることができるではないかという考えが各国に強いのでございます。  ただ問題は、今度の軍縮委員会でも第一の議題にあがっておるのは核軍縮ということでございます。核軍縮と一言に言いますが、これはミサイルの制限の問題から、それから全面的な核実験の禁止、したがって残っておる地下実験の禁止の問題でありますが、こういったものが前から論議されて、これも軍縮委員会で論議することになっております。ただ、私どもがいままでの軍縮委員会の論議あるいは委員会以外における軍縮の論議を見ておりますと、核軍縮というものはわれわれとしても最も重点を置いて実現してもらいたい問題でございますが、これはなかなかむずかしい。もちろん成果がなかったわけではございません。部分的核停もそうでございますし、それから私どもの伺っておりますところでは、七月ごろからアメリカとソ連で核ミサイルの制限の交渉を始めると言っております。そういうものに関連して、それでは地下実験の禁止がすぐできるかどうかについてはなかなかむずかしいように見ております。  これが最近の軍縮委員会に取り上げられる問題点でございますが、しかし日本といたしましてといいますか、私ども事務当局から見た問題点といたしましては、何と申しましても、軍縮と申しますけれども、日本は軍縮すべきものはない、そう言うとおかしいですけれども、世界的なレベルから申しますと、そういうことになります。そこで、同じ立場にある各国、それから軍縮をみずから相手国と相談してやっていこうという米ソ両国、それとも緊密に連絡をとりまして、日本国民の熱意と実際の寄与をそこに実現をいたしていきたい、こう考えておるわけでございます。  以上、簡単でございますが……。
  176. 受田新吉

    ○受田委員 国務大臣、あなたは閣議において、防衛担当国務大臣であって、同時に軍縮の強力なる推進者になっていただきたいです。  それでいま、重光さん、私は重光さんのおじさんの重光元外相と、ここで昭和三十年前後に何回か質疑応答をさせていただいた。そのおじさんの平和外交で、ソ連との日ソ中立宣言においでになったときのおじさんのお顔をいま思い起こして、そのおいごさんがいまこうして軍縮提唱の局長として御発言になったことを非常に祝福する。おじさんの霊もきっと安んじていただいていると思う。あなたはいま、つまり日本はいま軍というかっこうのものはないけれども、国際的にこの軍縮の意欲を大いに国連の場を通じて、軍縮委員会を通じて宣伝し、提唱し、実績をあげたいという熱意、そう了解してよろしゅうございますね。そういう熱意があるかないかをもう一ぺん……。
  177. 重光晶

    ○重光政府委員 いま先生のおっしゃるような考えでおります。
  178. 受田新吉

    ○受田委員 これは私、ぜひ外交を通じてこの実績をあけるというような――この軍縮委員会に今度初めて参加するのです。そうでしょう。日本は有史以来の新しいページを七月二日に踏み出すわけですが、担当局長として重光局長の発言を外務大臣にかわった発言として考えられ、また国務大臣もおられるから、閣議においてひとつ推進をお願いをしておきたい。  もう一つある。国連局長、私非常に不安があるのは、日米安保条約の第五条の後段にある、外部が武力攻撃を加えた場合、日米がその共同作戦行行をする、その後段の規定である。一緒に日米共同作戦で立ち上がったあと始末に、国連にこれを訴えて、報告して、安保理事会によって解決をはかる努力をする、それができたらこれを終止する、はっきりこう書いてある。このことはあんまり議論されないでいままできて、攻撃のことばかりが議論されているのですが、この安保条約第五条の後段の、共同作戦が起こった場合に、五十一条の規定による国連の安保理事会でこれを討議してもらって終止符を打ってもらうように努力する、それの結果これを終わるということになっておるが、この問題について外務省は――共同防衛作戦をやるほうはここにおいでになる有田長官だ。後段の戦争終結のために国連を動かすのは、今度は外務省になる。安保条約第五条の後段の規定をどう生かすか、私はすべて平和のほうに平和のほうにという意欲をわかしているだけに、この後段の規定が非常に気にかかる。これをどう扱う。現状における、もし日本が外部の武力攻撃を受けた場合の処理について、後段の規定を利用される、国連における解決の見通しをお答え願いたい。
  179. 重光晶

    ○重光政府委員 日米安保条約もそうでございますが、ほかのいわゆる集団安全保障条約、これはいわばすべて国連憲章のワク内でできておるわけでございます。したがいまして、国連憲章に基づいて、平和の破壊行動が起こった場合の安保理事会の活動が動き出す場合には、地域的安全保障はその活動を法律的にいえば停止して、国連のほうにお願いする、こういうことでございます。  そこで、国連憲章におきましては、その権限が安保理事会というものに専属しておるわけでございます。安保理事会はまずどうするかと申しますと、何か起こりましたときに、まず事実認定をするのでございます。すなわち、平和の脅威、平和の破壊、それから侵略と、事実認定に基づいて、次の安保理事会で国連の行動を起こします。ところがいままでの例によりますと、事実認定のところでつまずいていることが多いのでございます。いままで、事実認定をはっきりできたのは朝鮮事変、これは平和の破壊でございます。それから最近は南ローデシアの問題で、これは平和の脅威という事実認定ができました。できましたというのは――できない場合は、例の拓否権でできないということでございます。その事実認定に基づいて国連行動を行なう。そして武力行為に関する事実認定は、いままでの例は朝鮮事変だけなんでございます。ところが、この場合には、安保理事会は、勧告をいたしまして、決定はいたしていない。軍事行動をとるという決定はしていない。それ以外のいままでいろいろ武力紛争はございました。パキスタンもございましたし、中近東も。これは残念ながら国連憲章に書いておる安保理事会の制裁行動を発動してないのでございます。しかし、われわれとしては、それをもり立てて、それが動くようになったときに、日本の安保条約の問題が起これば当然そちらにいくべきである、こういうふうに考える次第でございます。
  180. 受田新吉

    ○受田委員 それでは外務省、そういうことを国連の場で大いに推進してもらいたい。  では、平和外交の推進者の東郷元外務大臣の御令息と、重光元外務大臣のおいごさん、御苦労さん。佐藤さんも、もうけっこうです。どうぞ。やはり事務当局は非常にすなおでいらっしゃって、純粋でいらっしゃる。  防衛庁長官、私は、来年の七〇年に備えてのいろいろな国民の不安というようなものがある関係上、特に自衛隊法七十六条の防衛出動と、七十八条の命令による治安出動については、ちゃんと、あなたの責任になっている問題ですから、この際ひとつはっきり確認しておかなければいかぬことがあります。  防衛出動をやって、そして実際に米軍との間で共同作戦行動をとる場合、現在置かれている日本自衛隊は、陸海空三幕は、アジアの自由主義国家群の中では最高の実力を持っておるようなものじゃないかと思うが、それをひとつまずお答えを願って、小さな国が進攻してきたぐらいのことは、米軍の力を借らぬでも、日本自衛隊で、つまり単独防衛、自主防衛ができる、共同防衛でない自主防衛ということが防衛出動において考えられるか。そのときには米軍が、いや、せっかく外国が侵略してきたんだ、安保条約があるのだから一緒に防いであげますから遠慮しなさぬなと言うてくるのを断わることができるのかどうか。日本だけでけっこう、このくらいの敵ならということでやれるのか、法律論を私ひとつ伺いたい。御答弁を……。
  181. 有田喜一

    ○有田国務大臣 御指摘のように、日本もだんだんと防衛力が充実しつつありまして、アジアでは近代装備を備えた優秀なものといわれております。もちろん外敵の侵略の規模によりますが、しかし小さな規模のものならアメリカの力を借らなくても、日本自身の自衛隊の力でこれを排除し得る、かように思っております。  法律論としては、法制局からも見えておるようですから、法制局のほうから答弁していただきます。
  182. 荒井勇

    ○荒井政府委員 この問題につきましては、いま防衛庁長官からも答弁されましたけれども、法律問題と事実問題の二つの側面があると思います。  法律論のほうといたしましては、日米安保条約第五条の事態といたしまして、すなわち、そこで書いておりますような「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」と約しているわけであります。ということでございますから、条約上、当然に共通の危険と見て対処するということになるわけでございます。しかし、事実問題としては、たとえば自衛隊のみが駐留する離島に少数のゲリラ隊が侵入したというような場合で、自衛隊の力だけで撃退できるということが明らかであるというようなときは、いま長官答弁されましたが、条約の面から見ますと、第四条の随時協議というようなことを行ない、たとえばアメリカの海軍が航空母艦を派遣したいとかいうような話があれば、それは、そんなことをするまでの必要はないというようなことで、事実上断わるというようなこともあり得るというふうに考えられます。
  183. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、そのときに、米軍が共同防衛責任があるので一緒に防衛しようと申し出た場合に、協議できるのかどうか、法律論……。
  184. 荒井勇

    ○荒井政府委員 その点が、いま申し上げました安保条約第四条でございまして、そこで協議をすることによって、事実上断わる状態というのがあると思います。
  185. 受田新吉

    ○受田委員 協議で断わると、こういうことだな、協議すると。そうすると、アジアにおける日本自衛隊の自由主義国家群における地位というものはどの程度にあるのか。つまり、小さな進攻に対しては自衛隊だけでやって、協力を断わることができるという、事実問題も、いま法制局の荒井部長さんの見解です。だから、有田長官日本自衛隊というのはもう単独防衛ということが法律的にも、いま非常にいい解釈をしていただいておるわけです。あなたとしては意を強うされたと思うのですが、米軍協力なしに、日本自衛隊だけで外部の侵略に対して対処する、そのときに、米国がどうしてもやったろ、やったろ、こういうときに、これをはっきり断わる、これが初めて自主防衛ということになるのですね。それだけの力が、十年前と今日と比べたら、日本自衛隊はアジアにおいて相当の力を持ったと自分で意を強うしているかどうかの御答弁……。
  186. 有田喜一

    ○有田国務大臣 もちろん十年前と今日と比較しますと、相当日本自衛隊は充実しております。ただ、相手のやっぱり規模によりますね。規模とその背後関係、そういうことがありますから、私は、小さなものならやっていけますけれども、全然アメリカの協力なしでいけるということは断言できない。
  187. 受田新吉

    ○受田委員 はっきりしました。単独防衛ということがあり得る、また、そういう方向へ持っていきたいという御希望であります。  そこで、もう一つ法律論。防衛庁長官、あなたが内閣総理大臣の命令を受けて防衛出動をさせられた。ところが、原則は国会の承認を得るとなっているのです。ところが、もう急迫不正の侵略に対して国会の承認を得るひまがないのは、これははっきりしておるじゃないですか、普通は。しかし、そのときに、あとから直ちに国会を召集して承認をとらなければならぬ。しかし、戦争をやってしまって負けでもしたら、そのときは国会でたいへんな責任を追及されていく、そういうときに政治責任というものが起こって、内閣総理大臣防衛庁長官も、国会で不承認となったときは、政治責任をとって直ちに総辞職というかっこうが行なわれるかどうか、それが一つ。  もう一つは、治安出動、これは来年につながる問題です。治安出動については、かってに出動ができるようになっている。これは国会の承認が必要である、二十日以内、こういうことがあるが、原則はかってに出動ができる。判断によって、間接侵略その他に対して、かってに出動ができる。国会の承認は、あとから二十日以内に承認をとるというのが、ただし書きのようなかっこうでできておる。このほうは、ちょっと私には不安なので、二十日以内などといったら、普通は治安出動をやってから、戦い済んで日が暮れて、その場は事は済んでおる。それから、二十日以内に国会で承認をとるというのは、これはナンセンスじゃないですか。治安出動規定というものはナンセンスと思わないかどうか、御答弁願いたい。
  188. 有田喜一

    ○有田国務大臣 前段のいわゆる防衛出動、このときに、国会で不承認というようなこと、おそらくそういうときには、日本の旗色が非常に悪い、こういうときだと思うのです。お互い日本人ですから、日本が有利に展開してくれたらけっこうだと思うのです。万が一そういうことでないときは、それはもう政治的責任は、もちろん腹を割って国民にあやまる、こういう決意でございます。  それから後段の問題ですね。治安出動は、私たちはきわめて慎重にやらなくちゃならぬ、いわば伝家の宝刀というつもりでおります。二十日以内に承認を求める、これは要請でないほうの問題ですが、二十日以内ということは長いじゃないかというお考えもたしかあり得ると私は思います。しかし、それの類似のような法律をずっと見ますと、たいがい二十日以内ということになっておる。そういうところから二十日ということがきめられたものじゃなかろうかと私は思っております。しかし、二十日以内ですから、一週間以内あるいは十日以内に実際問題としては承認を求めるということになろうかと思いますけれども、私はそういうことがないように、あくまでもそういう騒動も起こらぬことを希望するし、また、われわれもそういうことは警察においてやっていただきたい、こういう気持ちでおります。
  189. 受田新吉

    ○受田委員 私、大臣に要望します。この治安出動の規定は、国会の承認を得て出動するというのが筋です。これは間接侵略その他の場合でございますから、外部の武力攻撃とは違ってよほどゆうちょうに事態は発生するのです。外部の急迫不正の侵略はばんばんとくるのです、戦闘機をもって。ところが、間接侵略で飛行機をもって来るというようなのは普通ないのだから、このほうがのんびりしておる。のんびりするほうはまず国会へかけよう、急迫不正のほう、すなわち防衛出動のほうは国会にかけてやるのを原則にしている、そして、時間的余裕のある治安出動のほうは国会承認がただし書きになっている。これは反対じゃないかと思うのです。この点におきましては、治安出動はゆうゆうと国会の承認を得て出動していいという余裕があるのです。そうきびしいことじゃないです、内輪のことですから。その意味においては、治安出動規定七十八条は、国会の承認を得て出動するというはっきりした線に変えること、二十日以内ということは、これは機動力の発達した近代的な行動ができる現状においては、きちっと短くするということをやる、こういうことをひとつ考えていただきたい。  それから、みだりにこういうものは発動するものじゃない。私がいま指摘したところに問題点があるので、この条項は変えたいというお気持ちがあるかどうか、御答弁願いたい。
  190. 有田喜一

    ○有田国務大臣 いま直ちにこれを変えるとかなんとかということは私は申しませんけれども、せっかくの御意見ですから、よく検討してみたい、かように考えます。
  191. 受田新吉

    ○受田委員 これで質問を終わりますが、検討をするというが、これは早くやってもらわぬと来年――私は国会の承認を得て治安出動するという形にしてもらいたいのです。かってに出動してから、あとから承認するというのは主客転倒だと思う。どうですか、国会の承認を得て、そういう余裕があるから、これはいいことだと思うのですが、この点は御賛成だと思うのです。趣旨としては賛成だということを言ってもらいたい。
  192. 有田喜一

    ○有田国務大臣 私は、その問題よりも、そういうような事態が起こらぬことをお互いに非常に努力すべきじゃないか。  それから、先ほど言いますように、われわれ自衛隊の治安出動というものはいやが上にも慎重な態度で臨まなくちゃならぬ、かように考えまして、そういう法律の改正は必要かもしれぬけれども、それはいま直ちにどうのこうのと、これが賛成だとかなんとかということを言わずに、ひとつ検討して、それより前にいろいろな事態が起こらないようにという、こういうことに進みたい、かように考えております。
  193. 受田新吉

    ○受田委員 私、長官に要望したいのですがね。この治安出動という場合は、国会の承認をとるという形式をとるならば、非常に慎重になるのです、国会で討議するのだから。これは出動すべきかすべからざるか、国民代表者が討議できるのだ。あなたがかってに命令による治安出動をやってもらったのでは、あと始末をつけるのにたいへんだということで、私は提唱しているのです。この点は事を慎重にかまえる上においては、受田提案はまことによいということをあなたはお考えかどうか。そういう状態が起こらぬようにすることは大事だが、起こった場合に、国会の討議で出動を承認するという形が筋として通るのじゃないか。私の熱願です。すかっと言ってくださいよ、何とか。
  194. 有田喜一

    ○有田国務大臣 受田さんの気持ちはよくわかります。あくまでも慎重な態度で私は臨みたい。
  195. 受田新吉

    ○受田委員 気持ちはよくわかった。  それではこれで終わりますが、長官、この間、私が質問したばかりの、岩国にベトナムから四百人の帰還兵が戻ってきた。私がこの間指摘したような、基地公害がまた発生する危険が私の地元の岩国に起こっておる。この基地公害に対するベトナム帰休兵の扱いについて、これはどういうお考えを持っているか、これもひとつ御答弁願って、私の質問を終わりたいのです。
  196. 有田喜一

    ○有田国務大臣 ごく最近でございましたが、私も岩国に四百名でございましたか、それが来るという連絡を受けております。私は、特に注意して事故を起こさないように十分努力を払いたい。そのことを米軍のほうにもよくお伝えして、とにかく戦場から帰ってくる部隊ですから、ややもすると気が荒くなっておる。あくまで慎重にやってくれるように、私はそういうことを米軍のほうに建言したい、かように考えております。
  197. 受田新吉

    ○受田委員 これで私の質問を終わります。
  198. 浜田光人

    浜田委員 関連して。長官、いまの一線から帰ってきて日本基地に入る。これはかつての朝鮮事変のときでも、ずいぶん国内へ一線から帰ってきた。非常に気が荒いんですね。たくさん問題を起こしております。私の経験でも、呉なんだが、朝鮮事変のときに、近くもありますし、ずいぶん帰ってきた。いわゆる夜の町とか暴力の町、こういう問題があって、当時、私市会議員当時ですが、市長とこの衆議院に参考人として喚問されたことがある。そういうように、もう夜の歓楽街の問題、あるいは風紀上の問題にしましても、ずいぶん起きてくるのです。そこで、岩国に当面四百名といっておりますが、これが五百、千になるかもわからぬ。そうでなくても、昨日から指摘されておるようにいろいろな問題が起きている。これは多様な問題が起きることが想像できるのです。したがって、具体的に、こういうものを未然に防ぐためにはどうしたらいいか。ただ申し入れ、こう言われますが、それも必要かもわかりませんが、いろいろ外国の基地など、一々行って見てはおりませんが、書類なんか見ると、そういうことに対してもずいぶん神経を使っております。特に、白人種はお互いにうまくいっているのかもしれませんが、黄色人種というか、フィリピンなんかでも、しばしば問題を起こしている。さっき言ったように、日本の国内でも、一線から帰ってきた。必ずやるのです。ピストル事件から、いわゆる売春婦といいますか、そういう事件はたくさん起こしておる。それがひいてはいろいろな意味で、子供の教育にも影響を及ぼしてきている。極端に言えば、当時よくパンパンということばが使われておったんですが、児童に図画をかかすと、ずばりそういうことをかいたりするようなことまで起きるのです。ですから、一線から帰るそこの基地、その地域、町、自治体、こういうところは、徹底的に軍と連絡をとって、できるなら対策委員会等もあらかじめつくる。よその国でもそういうことをやっております。そういうことをきちっとせぬと、必ずトラブルが起きて、ああでもないこうでもない、こういうことになると思うのです。そういう点で、具体的な手を打たなければならぬと思うのですが、そういう点どうですか。
  199. 有田喜一

    ○有田国務大臣 浜田さん御指摘のとおり、私もその連絡を受けたときにぴんときたのは、やはり現地第一線にいたその軍隊が帰るということは、殺伐な気持ちになっておるだろう。これはまず米軍のほうにも十分話をして、また同時に、地元におかれましても、それぞれの機関がございましょうから、別に抗議とか何とかいう意味合いではなくて、風紀上の問題、その他公害に対して十分注意してくれということも地元のほうからも言ったりして、お互いにそういうことのないように努力すべきだ、かように考えております。
  200. 浜田光人

    浜田委員 では、要望して終わります。関連ですから、掘り下げたことは申しませんけれども、一般歓楽街では、商売上いろいろな連絡会議とか、そういう民主団体でやっているのですが、少なくとも自治体とか――むろん防衛庁の出先もあるでしょう、それと軍と、あらかじめそういう機関でいろいろな規定といいますか、拘束するものをつくって、一般の地域住民に迷惑をかけないように、トラブルを起こさないように、未然にぜひそういう対策を立ててもらいたいことを強く要望して、関連質問を終わります。
  201. 藤田義光

    藤田委員長 山口敏夫君。
  202. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 二月十二日に本会議で趣旨説明が行なわれ、五月十五日に本委員会で提案理由説明をされて以来、連日深夜にわたってたいへん熱心な討議が行なわれたわけであります。すでに佐藤総理等に対する質問をやって、あらゆる角度から防衛論議がされたわけでありますし、すでにもう採決してもいいぐらいの議論が行なわれておるわけでありますけれども、審議を尊重する自民党の立場から、重ねてこの問題に対して防衛当局に対して何点かお伺いをしたい、かように思うわけであります。  防衛問題に対する部分部分の究明といいますか、あるいは法律論あるいは人道的な立場に立っての問題点の追及ということの大切さは当然でありますけれども、特に私は与党の立場から、基本的な問題でありますわが国の自衛権の問題とか、あるいは安全と防衛、特に国民の生命とか財産を守る上におきましての問題、そうした観点から、わが国の安全に対する国民的なコンセンサスというもの、防衛問題に対する合意点というものをいかなる形で高めていくかということについて、お伺いしたいと思うわけであります。先週の新聞でありますけれども、アポロ十一号がいよいよ七月二十一日には打ち上げられて、月に第一歩を踏み出すということが書かれておるわけであります。この十一号に先立って、先般アポロ十号が月周回をしてきたわけでありますけれども、私は、今日の人間が持つ最高の科学と技術の粋を集めて実行された月ロケット、この中に人類の無限の可能性というものを信じたくなるわけであります。その十号の前に飛び立ちました、あの初めて月周回を行なったアポロ八号のボーマン隊長の、月からわれわれに対してのメッセージを私は思い起こすわけでありますが、彼は、空に輝く地球を見て、雲の切れ目から見る地球は非常に美しい、たいへんすばらしい。また、月から見る地球は何と小さいものぞ、ということばをわれわれ地球人に対して送ってきたわけであります。おそらくこれは、ケープケネディから発射されるロケットに乗る前に用意されたことばじゃなくて、実感としてこのメッセージをわれわれに送ってきたと思うのでありますけれども、まさにこのことばに代表されるように、非常に科学というものはわれわれの住んでいる地域というものを実感として知らしめてくれたわけであります。非常に小さなささやかな地球だと思うのです。そうした小さな地球でありますけれども、しかし、残念ながら、これは五つの州を有し、三十数億の人類が生活しており、その中には、共産主義国家もあれば、社会主義国家もあれば、また自由主義国家もあり、資本主義国家もある。こういう形でそれぞれがいろいろな生活を営んでおるわけでありますけれども、こうした世界観あるいは国家観の問題のみならず、わが国を振り返ってみましても、この階級間における相互不信であるとか、また隣人同士の不信感であるとか、また世代間の相違といったような、総理も口にしておりますけれども、非常に断絶された社会というものが営まれておる。私は、つまるところ、こうした問題が政治不信というような形になっていくと思のでありますけれども、少なくともわが国の国家的な利益、あるいは国民的な利益を追求しなければならない外交の問題あるいは国防の問題においても、なかなか与野党における合意点というものが高まっていないということに対しては、たいへん残念にも思うし、また、さびしいことだと思うわけであります。また一面、月ロケットに見られるような人類の無限の可能性を信じ、人間の能力それ自身を賛歌できるような夢が広がっていくような中において、外国からの侵略であるとか、あるいは他国からの脅威であるとかいうものを想定しながら防衛論議を積み重ねなければならないという一つのジレンマを、私は感ずるわけであります。しかし、実際のわが国の安全を守らなきゃならない。また、この現状の国際情勢というものを注目した場合において、私は、そうした少女趣味的な甘い考えは許されないと思います。また同時に、少なくとも現実的な平和主義者という立場からすれば、やはり独立国である日本をいかにして守っていくか、日本国民の生命、安全、財産というものをいかなる形で守っていくかということは、やはり政府においても当然の使命だと思うわけです。  そこで、そうした観点に立ちまして、まずわが国の安全を考える場合に、その前提となる脅威の実態というものからもう一度確認をしていきたい。第二次大戦後、非常に最悪な大戦というような事態というものは避けることができたわけでありますけれども、四十数回に及ぶ紛争というようなものも現実に行なわれておるわけであります。そうしたおも立った国際情勢における紛争の実態、特にわが国と関係があるような点と同時に、中国の――これは塩谷委員も伺いましたけれども、核の問題に対してもう一度端的に伺いたいと思うわけです。
  203. 有田喜一

    ○有田国務大臣 私は、あくまでも理想は持たなきゃいけないと思うのです。しかし、やはり現実を見たときに、私は、日本で大事なことは、やはり国の安全ということであると思う。この大事な安全、すなわち、防衛問題に対して、お互いに意見が違っておる。もちろん諸外国を見ましても、多少の意見の食い違いはありますけれども、真正面から対立するという姿は、私は不幸なことだと思うのです。おっしゃるように、外交、防衛というものは、やはり国民的合意、賛成の上に立ってやるべきだと考えております。そうして周辺の問題につきましては、御承知のとおり、いま世界は何といっても二大国の体系のもとに両陣営に分かれており、その両陣営の中においてそれぞれトラブルが起こり、また同じような陣営の中においても、御承知のとおり、ソ連と中共の間には紛争が起こっている。いずれ数字的なことその他は防衛局長から説明させていただきたいと思いますけれども、日本として周囲を見たときに、日本一つを見ましても、われわれはそう安閑としてはおれないのであります。日本に直接的な脅威があるとか侵略があるとかいうことは断言いたしませんけれども、この大事な日本の国土を万が一にもだめにしてしまったらたいへんだということで、私どもは、あくまで日本の国力にふさわしい――もちろん憲法やその他の国民感情、国情からの制約はありますが、少なくともその制約の範囲内において、われわれ日本人の力によって防衛を固めて、国民生活を安定させて、この繁栄を続けていきたい、こういう基本的姿勢に立って、私は防衛に対して最善の努力をしたい、こういう考えでございます。周辺の事情については、防衛局長から説明させます。
  204. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 周辺といいますか、一番近い、たとえば、朝鮮半島あるいはさっきお尋ねの中共の核実験等について数字的に補足して申し上げたいと思いますが、たとえば、朝鮮半島におきましては、先生御承知の金日成首相のいろいろな発言がございます。たとえば、最近では一九六七年十二月の、われわれの世代に朝鮮革命をやり遂げなければならないというような首相の発言がございます。そういったことを背景にして、いろいろ緊張があるということは御承知のとおりと思います。そこで、具体的な数字でございますけれども、これは韓国日報による韓国発表の数字でございますが、非武装地帯への侵入件数が発表されておりますけれども、一九六五年に四十二件、六六年に三十七件という程度でございましたけれども、六七年に至りまして四百四十五件、六八年に四百八十六件というふうに急増しております。あるいは海上からの侵入事件が、やはり数十件ずつあるというふうな発表がございます。こういったものが具体的な数字でございます。  それから中共の核開発の状況でございますけれども、これはもう御承知と思いますけれども、核実験は、昭和三十九年十月に第一回が行なわれまして、昨年の十二月までに合計八回行なわれているという状況でございます。核兵器の開発の見通しといたしましては、わがほうが直接調査する能力を持っておりませんが、いろいろな各方面の資料を総合して申し上げますと、一つは、航空機に搭載可能な原爆及び水爆を設計製作し得る段階に達しているようでございます。それからまた、中共は、当面核爆弾はミサイル弾道用に小型軽量化すること、それからミサイルを長射程にすることに努力しているというふうにいわれております。それから中距離ミサイルの開発には成功しているものと推定されているようでございますが、その数とか、それから軍事的展開については、まだ確認されておりません。一九六八年ごろに展開可能ではないかというふうにいわれておりましたけれども、まだ展開された徴候はないということのようでございます。それから長距離ミサイル、いわゆる大陸間弾道弾も開発中と推定されますけれども、展開可能になるのは早くても一九七〇年代初期、人によっては七二年以降と見ている人が多いようでございます。それからミサイル搭載可能の潜水艦を少数保有している。将来核ミサイルを装備した潜水艦を保有することが考えられるというふうな判断をしている。特に、(発言する者あり)アメリカの国防当局はそういう見通しを持っているようでございまして、各種の資料からそういうことが言えるようでございます。大体以上でございます。
  205. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 いま中距離弾道弾であるとか、あるいは航空機に搭載可能な核であるとか、いろいろまた七〇年代に予測されるICBMの開発等の問題について中共の核の問題が出たわけですけれども、そうした名称ではなく、こういった、たとえば一つのMRBMというような核爆弾は、大体中共の持ち得る核の能力というものが、たとえば第二次世界大戦の破壊力に対して一体どの程度の倍率というか、力を持ち得ているのかということを御説明いただきたいと思うのです。たとえばポラリス潜水艦に積み込まれているポラリスミサイルの一本の破壊力というものが、第二次世界大戦でいずれの国もが使った兵器よりも二・五倍の破壊力を持っているとか、大体そういうような、国民の皆さんがわかりやすい核の威力というものを御説明いただければいいわけです。
  206. 宍戸基男

    ○宍戸政府委員 第二次世界大戦の末期に広島に使われました原爆が、二十キロトンといわれております。その後もちろんいろいろな技術が発達をいたしまして、現在、ポラリス潜水艦は一つの潜水艦で十六基のミサイルを搭載し得るのでありまして、その十六のうちの一つ、これが一メガトン程度の弾頭を持っているというふうにいわれております。つまりその一つで広島に落ちました原爆の五十倍の威力を持つ、こういうふうなことがいわれているようでございます。
  207. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 朝鮮戦争であるとか、あるいはベトナム戦争であるとか、またラオスにおける国内紛争であるとか、いろいろアジアの中においてもいま防衛局長が指摘されたように数限りない局地戦争というか、紛争というものが起きているわけです。同時に、一番われわれの身近な問題である中共においても、非常に広大な国土の中に二百七十万の軍隊と、そしてまたいま御説明にあったような核を持っているわけですね。初めての核実験のときに、人民日報に中共の論説として、日本と米国との結びつきが止まれば強まるほど日本の安全はますます保障されなくなっているというような趣旨の論文が載っているわけですね。そういう一つの脅迫に似たような中共の挑発と――また現状は必ずしも彼らが挑発しているような形で日本の平和というものは脅かされていないと思うのです。むしろ逆な形で非常に核兵器の恐怖というものは感じつつも、むしろ日本人は平和な安定した社会の中で、すでに西ドイツも追い抜いて、国民総生産においても世界で二番目だといわれるような実績を保持しておるわけです。そこでわれわれは、こうした身近なところに地球を破壊してしまうような兵器が存在をしておる、またこれはもう中共のみならず、ソ連にしても、核は持っていないけれども北朝鮮にしても、そうした共産主義国家群というものがわれわれの情勢というものを絶えず監視をしておるわけです。そこでわが国の周辺に、日本を侵略する意図があるなしは別として、いつでも日本を攻撃できる、いま御説明があったような巨大な軍事能力を持っている国が多数存在をしておるわけです。しかし、われわれはそうした中共の核の脅威あるいはソ連、北朝鮮等におけるアメリカ軍も含めた偵察機撃墜等にも見られるような挑発に対しても、非常に国民は安心をしておる。いわばこれは虫歯が痛くて眠れぬ夜があったり、あるいは恋に身を焼いてもんもんとして眠れぬ夜があっても、いつ外国から攻めてくるか、いつ侵略されるかということで夜もおちおち眠れぬという国民は、おそらく一人もないと思うのです。やはりそれはわが国の国民の理解の上に立った政府の安保条約に対する一つの姿勢と、陸海空軍を中心とした若い自衛隊員の熱と意気による、わが国の安全を守るのだ、国土を守るのだという一つの情熱のたまものだと思うわけであります。が、しかし、現実にはいろいろな脅威というものが、われわれの近くに存在をしておる。そこで軍備自体もますます近代化されてくるし、非常にまた複雑な、多様的な要素も含んできておるわけです。現に核の問題にしても、――核自体は別にしても、いつ緊急状態という形になるか、わが国もわからぬわけでありますし、そこでたとえば、この核の問題一つとってみましても、総理はじめわが国の基本的な姿勢、政府の姿勢は、非核三原則に裏づけされておるように、核は持たないということを言っておるわけですけれども、やはりそうした一つの核の抑止力というものも考えた上において、直接軍備の担当大臣であり、わが国の安全を確保するための防衛の責任者である長官の核に対するその考え。特に総理はそういう形で言っておりますけれども、たとえば社会保障であるとか、文教政策等においては、それぞれの所管の大臣が将来これに対してこういうふうな形でやっていきたいというプログラムが組まれているように思うのです。そうした専門的な立場から、総理とはまた別な核に対する感覚も長官おありなのではないかというふうに思うのですけれども、その点はどうですか。
  208. 有田喜一

    ○有田国務大臣 私は、純軍事的に言えば、核ということは考えなくちゃならぬと思いますけれども、やはりわが国の防衛力をしっかりやろうと思えば、国民の賛同を得なくちゃいけない。特に核に対しては、御承知のとおり、日本は特別の感情があるわけでございますから、国民の協力なき防衛ということは私は成り立たぬ、こういう前提に立っておるわけです。また、ことに核というものはいわゆる抑止力でありまして、持たないとやられるかもしれないけれども、やはり抑止力としてめったに――これは伝家の宝刀で、これを抜いたらたいへんなことですよ、そういう見地から申しまして、御承知のとおり、日本が安保条約を堅持しておるということも、もちろん核ばかりじゃない、アメリカの強大な兵力ということもありますけれども、やはりアメリカの大きな核抑止力というものがあって、中共も核をどんどんやっていますから脅威ではございますけれども、これはアメリカの核から、いえば比較にならぬ。かりに中共がそういうことをやっても、アメリカはそれに対する報復力というものが出てきますから、互いにそういうことはできないというのが基本的のものじゃなかろうか、かような見地から、私はわが国として現段階においては、うっかり核を持つとかなんということは、これはできない。しかし、日米安保条約によって日本の足らざるところを補ってもらって、そうして平和でいきたい。しかし、憲法なりその他の国情の許す範囲内においては、日本としてはしっかりした守りの体制でいかなければならない。これが、私の考えるいわゆる自主防衛でございます。
  209. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 確かに核兵器というものが人類の恐怖をかき立てて、非常にせつな的な感じ、あるいは人間自身を非常に厭世的にしている面もあるわけです。若い人たちは、どちらかというと、非常に実存主義的な生き方をしておる。いわゆる平和への願いによって先輩の方々が幾ら戦争の恐怖だとかあるいはこのおそろしさというものを耳にたこができるほど訴えても、なかなか耳をかそうともしない。やはりそれは自分たちの人生というものを、将来というものを、いわゆる自分以外の第三者に握られておる、核兵器のボタン二つ押せばすべて地球はぱあになってしまうのだということが、人間自身の断絶とかあるいはせつな的な生き方というものを生んでおると思うんですね。だけれども、確かにそういう点においては核兵器というものは、一方においては戦争を抑止する力  にはなっているけれども、一方においては人間自身の価値観さえも転換させようとしておることは、私も認めるわけなんです。ただ、第二次世界大戦後二十数年間に、局地戦争というものは何十回となく行なわれておる。しかし、最悪の不幸というものは避けられた。というのは、人間の持っておる英知とあるいは賢明なる一つの判断、戦争に対する認識というものが、戦争を抑止しておる、押えておるということも一面言えると思いますけれども、やはり核というものが、戦争自体を起こしてはいけないのだ、いま長官が言われたように、これはもう抜いたら最後なんだというものが、世界平和というものを、緊張というものを維持していると思うんですね。そこで、たとえば米ソや振り返ってみても、最初はお互いが原爆を持つことによって、冷戦がますます高まっていった。ところが、だんだん核兵器が開発されるに従って、あの偉大なだだっこといわれたフルシチョフは、アメリカは資本主義が最大の制度であると信じておる。また、われわれは共産主義が一番人類の理想だということを思っておる。しかし、それはよろしい。そこで、そのどちらが正しいかは、戦争ではなしに、平和の競争できめようじゃないか、工業の発展であるとか、あるいは農業の進歩であるとか、あるいは文化の業績、そうした中で歴史の判断をまとうじゃないかということを提案をしたわけですけれども、やはりフルシチョフの頭の中には、そうした公式的な見解の発表と同時に、核兵器がもうどうにもならなくなった。これはアメリカと仲よくやっていかない限りは、ほんとうに自分たちの世界の平和は保てないのだ。フルシチョフ自身は、私はマルクスやレーニンでさえも見ないものを見てしまった、あるいは知らないものを知ってしまったといって、天を仰いで嘆いたかどうかわからぬけれども、やはりフルシチョフの頭の中にある核兵器の脅威というものが、平和共存路線に対して強力に一歩を踏み出したということはいえると思うのです。そういう意味から、やはり核という問題を――考えるときに、あまりにも国民感情であるとか――たとえばわが国が直接核の問題を考えるときは、やはり沖繩の問題です。現在、沖繩は国民感情を尊重して当然核抜き本土並み返還、これは政府も言っているし、そうやるべきです。そうやるべきですけれども、やはり核の持つ戦争の抑止力というものを国民のすみからすみまで知っているとは、私は言い得ないと思うのです。そこで、沖繩が返還される前提として核抜き本土並み返還ということで交渉はするけれども、その両三年の一つのめどの期間において核は一体どうすべきかということを留保するという形も、一つの政策といいますか、私はむしろ国民に対する責任だと思うのです。私自身も、核を持つべきかあるいは持たざるべきかということは、はたしてどちらが戦争か平和かの分かれ道かということは、迷いつつこうした質問をしているわけです。やはりもっと国民的な課題として十分煮詰めてから、この三年の間に沖繩の核をどうするか――たとえば、西ドイツなんか、アメリカ軍は帰ってもらいたい、しかし、核だけは置いていってもらいたいというのが、彼らの国民感情だといわれておる。日本は、米軍基地が多少あるのはしかたがないけれども、核だけは持って帰ってもらいたいというのが、現在の国民感情です。やはりそうした核に対する認識とか分析をもっともっと高めて、討議の対象として議論し合うまで宿題としてとっておいてもいいのではないかというふうに思うのですけれども、その点どうですか、長官
  210. 有田喜一

    ○有田国務大臣 私は、ひとり核の問題のみならず、日本の国民が、戦後二十数年間あまりにも平和であった、だから少し平和になれ過ぎて、そうして日本の安全ということに対して無関心な人が多いのじゃないかと思っておる。だから、私はさっきも防衛白書のことも申しました。一番大事なことは、やはり国民に防衛ということについてしっかりした理解と納得をしていただきたい。その上に立ってやりたい。ところが、核の問題は、有識者は知っておるかもしれないが、日本人の大部分は核アレルギーとばかりは思えませんけれども、やはりそういう気風があることは事実です。だから、核に対する理解をもっと深めてもらうことは必要だ。といって、日本がそれを持つわけにもいかない。そういう見地に立ちまして、沖繩も日本に返ってくると、やはり沖繩人の立場からいえば日本本土並みということが当然だと思います。政府はかるがゆえにそういうような前提に立って核抜き本土並みということを提唱しておるのですが、私は、これはそれでけっこうだと思っておりますけれども、やはりこういうものを先ほど言いましたように抑止力にしていくんだ、いわゆるこれはあくまで抜くものじゃない、ここに世界の平和が保たれておる。私自身も、日本の防衛も平和に通ずるものだ、平和を守りたいために防衛をやる、防衛というと、すぐ戦争だ、軍事的だという考え方は、決してない、ほんとうの日本の安全をはかるために、平和を守るために防衛というものをもっと充実していかなければならぬ、こういう見地に立っておるわけであります。
  211. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 長官が言われたように、わが国の安全という問題に対して、国民の理解というか、関心が非常に薄いのではないか。それと同じように、われわれは核の問題からのがれることはできない。できないとするならば、もっと真剣にこの問題を考えるべきだと思う。また同時に、あくまで核は持たないんだという非核三原則自体は尊重されるべきかもしれないけれども、また核がなくなることが何といったって理想であるに間違いないのですから、やはりその辺の状況も十分考えて、私は、むしろ防衛庁があまりにもこそくに、核の問題に対してのがれるような形でなく、いま長官が言われたような前提で、核は持たないんだということをもっと国民にも理解さすべきではないかというふうに思うわけです。  そこで、核自体はアメリカの核抑止力にまかせるとして、あとはわが国の安全ということに対して先ほど受田委員にもおっしゃったように、自主防衛といいますか、自分の立場でこの国を守るということを曲面に押し出しているわけです。実はこの間の新聞で、海上防衛力の増強ということを財界の会合でも発表され、また総理自身も経済人の会合に出て、そうした面も含めた自主防衛を唱えておられるわけです。その辺の真意をもう少し詳しくお聞かせ願いたい。
  212. 有田喜一

    ○有田国務大臣 経団連かどうか知りませんが、そういう財界方面で、防衛を積極的にやらなくちゃならぬ、自主防衛ということも言っておられたようです。ことにマラッカ海峡云々の問題が出ておったようですが、この問題は、予算委員会におきましても、すでに質問も受けたし、われわれも答弁したことがあるのですよ。これはたしか参議院のほうだったと思います。しかし、私の海上自衛隊をもっとしっかり伸ばさなければならぬというのは、いまの三自衛隊を見ましたときに、一番おくれをとっておるのが、やはり海上じゃないかと思われるのです。マラッカまで日本の海上自衛隊が護衛をつけて安全航行をやろう、確保せいなんという、そこまではなかなかいまの海上自衛隊の力ではいきません。けれども、やはり海国日本として、ことに貿易――現在ではほとんど外国から仰いでおる。しばしば言いますように、ことにエネルギー源ですね、石油資源というものが、あちらのほうから来ておる。日本は石油を断ち切られたら、日本の経済も何もあったものではない。一ぺんにふっ飛んでしまう。そこで、海上でそういうことをわがほうだけで守らなければというのは、非常に困難でございますけれども、やはり日本もそういうことに対して十分注意はしておかなくてはならない。同時に、私は一方、いま原子力のほうで、いわゆる新型転換炉あるいは高速増殖炉ということが進められつつあるということは、日本のエネルギー源の確保というところからきておると思う。また、石油源の供給でも、やはり分散的にやっていくとかいろいろな方法を講じて、日本の経済の繁栄のために、われわれはその一翼をになっていかなくてはならぬ、かように考えておるわけであります。
  213. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 そこで、確かに海上自衛力というものが一審おくれておる。日本自身は貿易立国でありますから、そうしたマラッカ海峡等を航行する船等について、いろいろ日本の国益やあるいは国民の生活基盤を守るということは、私は必要だと思うのです。そこで、海上保安庁の方来ていますか。――実は海上保安庁の方に聞きたいのですけれども、いまソ連の監視船によって、公海上の海賊行為といわれるような、非常にわが国の漁船に対する不当な拿捕だとかあるいは干渉、また連れて行って収容するというようなことが、しばしば起きているのであります。この間の五月の二十五日にも、国後島沖でわが国の漁船がソ連監視船の不法な襲撃を受けて沈没したということも伝えられているわけです。そこで、二十一年ごろから今日に至るまで、どの程度の漁船が、またわが国の国民がそうした不当な目にあっているのか、その数字をちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  214. 林陽一

    ○林政府委員 ただいま先生の御質問でございますが、昭和二十一年にソ連によります日本漁船の拿捕が始まっておりまして、日ソ国交回復後におきましても、引き続き発生しておるような状況でございます。本日現在までに、千二百八十六隻の漁船が拿捕され、乗り組み員一万八百六十三人が抑留されておるというような、かような状況でございます。そのうち、まだ未帰還のものが相当ございまして、現在四百六十五隻、八十七人が、まだ帰還してないというような状態でございます。毎年平均、大体三十五隻ないし四十七隻の日本漁船が拿捕されております。本年に入りましてもこの傾向は変わりませんで、本日現在までに、十一隻の漁船が拿捕され、ちょうど百名の船員が抑留されております。
  215. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 そこで、私が長官に申し上げるのはあるいは筋が違うかもしれませんけれども、よく総理をはじめ政府は、国民感情を尊重してということを何かのときにしばしば伺うわけです。私は、こうしたソ連の、いま保安庁の発表にもありましたように、毎年三十五隻から四十五隻に近い日本の漁船が不当に拿捕されておる。また、この未帰還船は四百六十五隻もあり、未帰還者は八十数名の方々がまだ抑留されておるわけです。そうした事実というものは、一部の国民の方々は知っておりますけれども、ほとんどの方はあまり知られていないわけです。と同時に、ソ連のみならず、あるいは山口県沖や九州のほうで操業しておる漁船あたりも、今度は中共や何かの不当な干渉を受けて、中共から領海を侵犯した、この何々丸という船は領海を侵犯したからということで漁業組合に電報が入ると、その船は一カ月ないし二カ月、そういった操業を停止しなければならない。それは自主規制でありますけれども、そういう零細漁民というものが外国勢力の不当な圧力のもとで非常に苦しい思いをしているわけです。私は、この海上自衛隊というものが、他の陸空に比べておくれているということであれば、海上自衛隊の増強、ということも差しつかえないと思う。しかし、やはりこういうような形で、政府のやっておるPRというか、国民に対する防衛問題の啓発というものは、国民感情、国民感情といっているわりには、その国民感情の何たるかをはたして知っておるのだろうかということを非常に疑問に思うのです。たとえば総理が経済団体や何かに行って――あるいは財界から、マラッカ海峡から英軍が撤退する。そうすると、非常にわが国の経済的な問題としては困るんだ。だから、海上自衛隊を増強して商船護送をして、英軍にかわる自衛力というものをつけてもらいたい。そうすると、時を同じうして、総理が経済団体なら経済団体に行って、自主防衛論を説く。確かにそのとおりだというようなことを演説すると、ただでさえ国民は、自民党と財界のなれ合い的な、あるいは財界が言うから、自民党はすぐこういう方向に持っていくんだという形にとるのですよ。これは自民党に所属している私がそう思うのだから、一般国民はもっとそう思うかもしれません。たとえば、こういう漁民や何かの前に行って、総理は北海道や何かで――札幌の市民会館で行なわれた一日内閣にも行っているわけですから、そういうときに、もっともっと外国に対しては、外敵に対しては、わが国の国民の生活と安全を守るのだ、利益を守るのだということで外交交渉をすることによって、そうした不当な拿捕というものを押えなければならないし、同時にまた自主防衛というか、自分の国の国民を守るんだという気概に燃えて、また防衛力も――防衛力というか、そういうことも考慮しなければならぬという気概をぶち上げれば、北海道の漁民にしろ、あるいは九州の漁民にしろ、どんなに喜ぶかわからない。と同時に国民自体も、なるほど、わが国の安全というものは、どういう形で守らなければならないんだ、どういうところで外国の勢力というものが日本自体を脅かしているんだということをすなおに理解できるベースというものが、そこに自然に浮き上がってくると思うのですね。ところが、財界なんかに言われると――言われてからやるわけではない。これはやらなければならない。海上自衛隊に対する一つの力をつけるということ自身が、長官の言われた説明にもあるように、やはり筋は通っているわけですから、そういったテクニックの面において、私はもう少し政府は国民に対するアッピールというものを、そういうテクニックというものを、そういう素朴な国民感情というものを理解せずして――沖繩なんかにおいても、国民感情を優先し、国民感情を尊重してということは、口だけの問題であって、実際は政府が国民自身を理解するどころではないというふうに思うのですが、どうですか、その辺。これは官房長官のほうに聞くのがいいかもしれませんが、長官からひとつ……。
  216. 有田喜一

    ○有田国務大臣 御趣旨は非常によくわかります。われわれはあくまで国民とともに歩む防衛ということを考えておるのですが、これは私のかつての経験でございますが、私はかつて科学技術委員長をやっておりまして、初めて原子力基本法をつくったのです。そのときの考え方は、政府からこれを提案すると、おそらく反対党が出てきて問題になる。この大事な問題は、やはり政党政派を超越してやったほうがいいだろうというので、そのときにはまだ公明党はありませんでしたし、共産党も入っていませんでしたけれども、社会党と共同して提案した。それが今日の原子力基本法ですが、あの当時から見ますと――原子力の原の字を言うても、国民は恐怖におびえておったわけですね。今日はまだ十分ではありませんけれども、原子力の平和利用ということは、国民もだいぶ理解されるようになってきた。これも時間がかかります。わが国の防衛も、これはいままでの沿革がありまして、なかなか国民に十分の理解はしていただけないのだろうが、しかし、幸いにしまして最近の世論調査といいますか、アンケートなんかを見ますと、だんだんと自衛隊に対する共鳴者といいますか、自衛隊の存在の必要ということを唱える人が多くなった。こいねがわくは、政府も大いに遠慮せずに宣伝というか、広報活動をしっかりやらなければならぬと思いますが、これは皆さんにおかれましても、与野党を通じて、やはり日本の国をしっかりやっていこうということは、これはお互い共通した考え方だと思いますから、ひとつお互いに手を握り合って、日本の防衛ということを、決して行き過ぎた戦争なんかやるのじゃないのだ、日本の平和を守るためにこういう程度の防衛力は必要だ、こういうようにして、そして国民のほんとうに心からなる、みずからの国はみずからの手によって守るという気概を、口だけではなくて、ほんとうの腹の中から出るような姿に持っていきたい、かように考えておりますから、山口君もひとつ一そうそういう面にあなた自身もやっていただいて、そうして日本の国民にほんとうの理解と納得を得るようにしたい、かように考えております。
  217. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 時間の関係もありますからはしょりますけれども、いま長官が言われたように一あまりこまかい点について追及していると時間がありませんが、いま、自衛隊に対する理解も非常にふえてきたと言われる。確かにそのとおりです。一番最近の日本の安全をどう見るかという世論調査なんかにおいても、国民の大半が自衛隊を必要という表明で国民の支持が出ているわけです。侵略の脅威は感じていないけれども、自衛隊は必要だ。ことに、若い人たちに積極防衛というものがむしろ多くなっている。また、非武装中立の立場でやっておられる社会党の支持者の方々の中にも、大半が自衛隊は維持すべきだというデータが、これははっきり出ておるわけであります。しかし私は、こうした世論調査に見られる傾向というものは、いま長官自身の御努力、あるいは政府筋の御努力もあるかもしれないけれども、むしろ、私は、税金どろぼうであるとか憲法違反であるとかということを言われながらも、何とか自分たちはこの国を守るための先兵なんだということで気概に燃えている若い自衛隊皆さん方がじみちに努力した結果のたまものであって、大きな政府的なベースにおける啓発よりは、むしろそのほうが、私はこうした形で深まってきておるのじゃないかと思うのですよ。そこで、たとえばこういうふうな面もあります。重態の主婦を急送したとか、県と自衛隊と市が一体となって命を助けたとか、あるいは重態の老人を愛のリレーで自衛隊のヘリコプターで神戸から和歌山の病院へ運んだとか、未熟児を乗せてどうとかいう形で、あるいは輸血の問題であるとか、また災害復旧の問題であるとか、こうした努力を彼らがじみちに繰り返しておる。私は、そうした気持ちというものを、長官自身が何よりも親のごとき立場においてキャッチして、彼らのじみちな努力というものを、政治的なベースで、あるいは大きな社会的なベースで、より高めていってやろうかということに対する思いやりというものがなければ、せっかくこうした形で国民的な合意というものが出始めてきておる――憲法論議まで起こしておる自衛隊でありますけれども、それがここまで深まってきておるわけです。これをもう少し高い次元で吸い上げてやらなければいけないと思うのです。ところが、実際においては、われわれが客観的に見ても、なかなか自衛隊員等に対する社会の目というものは意外にきびしいし、またそれを守り育てるべき政府機関の姿勢というものも、どうも弱腰のような感じがするわけです。すでにニュースとしては国民の目からも忘れられつつあることでありますけれども、また来年もう一度起こるでしょう。それは自衛官の入学の問題なんか、私はやはり自衛官が自分の勤務を終えた時間を有効に生かして自分の金で勉強したい、もっと社会を――われわれは自衛隊という一つの特殊な社会にいるのだから、もっとよその青年とも話し合いたい、もっと勉強もしたいという意欲を持って受験をされる。ところが、自衛官は一部学生の反対にあって入学を拒絶されておるような事件があるわけです。そこで、あれは法務省なんかで勧告を出して、一たん形がついたようになっておりますけれども、私は形がついていないと思う。あの拒否された自衛官は、その後どうなっておるか、、どういう解決をしたか、ちょっと伺いたいのです。
  218. 有田喜一

    ○有田国務大臣 自衛官に対する大学の入学拒否という問題は、言うまでもなく、憲法の趣旨からいっても、教育基本法の趣旨からいっても、実にこれを無視したことだと私は思う。したがいまして、私どもは直ちに法務省の擁護局にそれを訴えまして、その調査を待ったわけです。ところが、普通のことならばともかく、学校の入学というものは、あの調査で入学試験の再試験というわけにいかなくなっておる。文部省からも十分注意し、再度にわたって文部省から学校当局に注意し、そしておそらくこの次から、来年からはああいう問題が起こらない、また起こらないようにしなければならぬ、かように考えておるのです。また山口さんのいろいろの御高見、私は非常に傾聴いたしましたが、ことに自衛隊に対する深き御理解、私は非常にうれしく思いますが、私は、今日の防衛の考え方がだんだんと世論的に高まってきたということは、もちろん自衛隊自身のいままでのたゆまざる努力、これは深く敬意を表していかなければならぬ。そしてもう一息であるから、私どもも自衛隊を、しばしば言いますように、信頼される自衛隊という誇りを持ってもらいたいこと、しかる上に、信頼される自衛隊になるためには、同時に一方国民からも、自衛隊しっかりやってくれ、君たちは日本の国の守りをやってくれておる、ほんとうはいい人なんだ、こういう目で自衛隊に支援を送っていただきたい。そうして相ともに、内部からも外部からもともどもに自衛隊というものをしっかり理解していただいて、ほんとうに日本の平和を守るための防衛体制をつくり上げたい、かように考えるわけです。
  219. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 長官の最高責任者としての隊員に対する愛情というものは、よく姿勢はわかりますけれども、文部省の大学学術局長が来ておられるので、いま長官が、ことしはいろいろ問題があってすでにおそかったけれども、来年はそうした不祥な百態というものは起こさないようにしたいということを言われたわけですけれども、大学局長の立場から、文部省としてはその後どういう――少なくとも来年は、受験期においてこうした混乱を再び起こさないような一つ方針を、どういう形でとっておられるか、その辺ちょっともう一回聞きたいと思うのです。
  220. 村山松雄

    ○村山(松)政府委員 自衛官の大学入学問題は、大学院の場合と学部の場合、それから短期大学の場合、それと昼間部の場合、夜間部の場合、いろいろな態様があるわけでありますが、一番問題は夜間部の四年制の学部あるいは短期大学に入学を希望する場合、そもそも夜間の大学というのは職業を持つ者に大学教育を受ける機会を与えるのでありますから、職業のいかんによってそれを差別することは不当であります。だから、法務省の憲法問題についての見解も出ておることでありますから、関係大学に対しましては再三そのようなことのないように注意をいたし、具体的には都立大学の問題でありますが、都立大学でも志願者に受験をさせなかったということを正当なこととは毛頭考えておりませんので、できるだけ受験させるよう努力したけれども、全体的な入試混乱その他を考えて万やむを得ずああいう措置をとったが、今後についてはなおよく検討するということで、検討の具体的な結果については必ずしも明確にされておりませんが、善処されることと思います。また、都立大学を含めまして、大学の団体であるところの公立大半協会においても、この問題を検討するということになっております。もう一つ、たとえば国立の千葉大学の工業短期大学の場合は、相当な騒動は起こしましたけれども、受験はさせたわけであります。その結果、混乱を生じて、学長あるいは工学部長が辞任するというような結果になっております。それにつきましては、受験はさせたけれども入学できなかった。入学できなかったということについては、試験というのは、判定の結果でありますので、これはやむを得ないということでありますが、混乱を起こしたということ自体は、異常なことでございます。そこで、国立大学につきましても、学長の集まり等を通じまして、勤労者教育の趣旨をよく話しまして、少なくとも夜間部において、職業によって不当な取り扱いをすることのないように、いままでも再三注意いたしましたけれども、これからも機会あるごとに注意を喚起して徹底してまいりたい、かように思っておるのであります。
  221. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 いま局長がおっしゃったような立場に立って、来年はこうした不公平な状態というものをぜひ取り除いてもらいたいと思うのです。これは大体大学がおかしいですよ。これは、やはり国会なんか、だって、いろいろ考え方の違う人があっても、お互いに議論し合って一緒に審議することができるわけですから、ときどき浜田先生に人数が少なくて休憩、散会をさせられる程度のことはありますけれども、やはりみんな審議をしているわけですよ。大学は研究の場所なんですから、やはりそういう意味において、ぜひ大学当局はがんばってもらいたい。都立大の総長が、八千五百人も受験するのだ、わずか三名の受験生のために八千五百名の犠牲を無視するわけにはいかぬ、八千五百名のほうが大切だという発想は、こういう発想の教育者というのは、おそらくおかしいのではないかと思うのですよ。政治の世界だって、土地収用法だとか何かいろいろな行政をする上において、一人の犠牲といえども犠牲者はしようがないという発想で政治をやっている政治家は、一人もいないと思うのですよ。やはりその過程においては、一つ経過においては、多少なりとも結果においてそういった犠牲が出る場合があるかもしれない。あるかもしれないけれども、最初から一人や二人の犠牲はしようがないのだという形で政治や行政をやっていたのでは、やはり国民の不信感を招くものだと思う。そういう意味で、どうか防衛庁は文部省と緊密な連絡をとって、文部省も大学立法だとか大学紛争だとかで頭が痛いと思いますけれども、特に七〇年は、そうした――昨日も総理に対する大出委員の質問の中にもありましたけれども、全学連や学生運動の人たちが自衛官を国民の前に引っぱり出すというような情報のありやなしやということも出ているわけですけれども、そういう点では、七〇年は、特に自衛官に対して受験等に対する公平な状況を維持するということが最もきびしい、むずかしい時期だと思いますので、さらにがんばっていただきたいと思うわけです。  まだまだいろいろお伺いしたい点、あるいは政府の姿勢というものに対してのわれわれの要望というものを申し上げたい点がたくさんあるのですけれども、時間がありませんので、最後に一点聞きたいのは、先ほどの世論調査にもありましたけれども、先ほど言いましたように、確かに日本国民で他国からいつ攻めてこられるかわからぬという侵略の恐怖におののいている人というのは、非常に少ないと思います。むしろ、あるとするならば、間接侵略に対するやはり防衛というものをわれわれはしなければならない。特に沖繩の問題や何かで極東の平和と安全ということがよく出されるわけですけれども、やはり極東に平和と安全がなければ、わが国としても永遠の平和というものは保持し得ないと思うのです。そういう意味で、あくまでこの第三次防という形で、国力に応じた防衛力というその限界等についても聞きたいのですが、そういう点においてふやしていくということはけっこうでしょうが、そういう形をとっても、それが、たとえばアジアにおける国々の民生が不安定な状態だと、共産ゲリラとかあるいは国内の治安の混乱であるとか、そういうものに乗ぜられて、不安定な状況が漸次アジアの中に押し寄せてくる。そうすれば、日本も必然的に緊張ムードを国民は感ぜざるを得ない。そこで外務省の方に伺いたいのですが、海外協力の点についてですが、どの程度の、防衛費と海外協力という形で――私は、民生の安定、国力の充実というものをはかりつつ、日本の大局的な平和と安全というものを守っていかなければならないと思うのです。そういう意味合いで、外務省ベースでの海外協力というものが、どういう形で予算化されているか、防衛費の比率と海外協力費の比率、その辺のデータがあったら、教えていただきたいと思います。
  222. 沢木正男

    ○沢木説明員 一九六七年、六八年、六九年におきます一般会計歳出予算総額に占めます経済協力関係費の割合は、六七年が二・二%、六八年が二%、六九年が二・二%でございます。それで金額については、いまちょっと資料を持っておりませんの……。
  223. 山口敏夫

    ○山口(敏)委員 いや、けっこうです。要は、経済協力というものは、その所管が非常に各省にまたがっておって、考え方自身も必ずしも一貫していないわけです。そこで私はいま言いましたように、やはり日本の平和と安全、国民の生活を守り、財産を守り、生命を守るという点においては、経済協力というものは、私は、間接的な防衛力と民衛力の増強と同じだと思うのです。そういう意味で、沖繩島が返るための外務省と防衛庁との話し合いのみならず、時間がないので私は結論を言ってしまいますけれども、どうかその点も緊密な連絡をとりつつ、総合的なわが国の防衛力の確保という点についても、さらに理解や協力を深めてやっていただきたいと思います。したがって、そういう防衛力の増強のみならず、経済協力とのバランスをとりつつ、日本のアジアにおける役割りだとか使命だとかいうものを高めつつ、日本人自身、国民自身も、そういう国家がやる役割りというものを認識して、そういう面を通じて沖繩返還という沖繩全島民の悲願というものを一ときも早く達成してもらうように努力していかなければならないのではないか。そういう意味合いから、これからは軍備自体――昔はこの軍備ということ自体が侵略への一つのバロメーターになったわけですけれども、現在においては、その軍備の力自体が、国力あるいはその民力の力自体が、戦争を抑止する一つのバロメーターにもなっているわけですから、ひとつそういう点で総合的なわが国の安全保障というものを御検討いただきたい。と同時に、この自衛隊あるいは防衛という問題に対する国民的なコンセンサスを高めていく上においても、こうして空に毎日飛んでいるジェット機を見て、国民が、ああ、あのジェット機がいつ自分の家に落っこちるのかなと思って心配するようじゃ、しようがないのです。やはり空飛ぶ飛行機を見て、ああ、日本の平和と安全のために活躍してもらっているんだなという気持ちを持ち得るような努力を、ひとつ政府においても、あるいは防衛当局においても、しっかりとしていただきたいということを要望しておきます。たいへん与党質問というのは、むしろ委員会等においては他の野党の委員の方々にも御迷惑かけるし、とにかく委員会に提案をされてくること自体、もうすでにわれわれとしては賛成の立場に立って考えておかなければいけないものですから、御迷惑をかけましたけれども、私は、やはり国会運営なり国会の委員会審議というものは、野党と政府のやりとりだけではなくて、与党もこうした席を通じて政府の姿勢や国民的な感情や意見というものを公式の席上においても代弁すべきだと思いますので、あえて一時間をいただいたわけであります。ありがとうございました。(拍手)
  224. 藤田義光

    藤田委員長 次回は、来たる二十四日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時四分散会